第14号 令和6年4月16日(火曜日)
令和六年四月十六日(火曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 古屋 範子君
理事 斎藤 洋明君 理事 田所 嘉徳君
理事 田中 良生君 理事 本田 太郎君
理事 湯原 俊二君 理事 吉川 元君
理事 中司 宏君 理事 中川 康洋君
井原 巧君 石田 真敏君
尾身 朝子君 金子 恭之君
川崎ひでと君 木村 次郎君
国光あやの君 坂井 学君
鈴木 英敬君 鈴木 隼人君
田畑 裕明君 寺田 稔君
中川 貴元君 西田 昭二君
西野 太亮君 根本 幸典君
葉梨 康弘君 長谷川淳二君
鳩山 二郎君 古川 直季君
宮路 拓馬君 保岡 宏武君
おおつき紅葉君 奥野総一郎君
堤 かなめ君 馬場 雄基君
道下 大樹君 阿部 司君
中嶋 秀樹君 吉田とも代君
平林 晃君 宮本 岳志君
西岡 秀子君 吉川 赳君
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総務大臣政務官 西田 昭二君
総務大臣政務官 長谷川淳二君
参考人
(虎ノ門南法律事務所弁護士) 上沼 紫野君
参考人
(龍谷大学法学部教授) 金 尚均君
参考人
(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授) 山口 真一君
総務委員会専門員 阿部 哲也君
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委員の異動
四月十六日
辞任 補欠選任
尾身 朝子君 鈴木 隼人君
西田 昭二君 木村 次郎君
鳩山 二郎君 鈴木 英敬君
岡本あき子君 馬場 雄基君
同日
辞任 補欠選任
木村 次郎君 西田 昭二君
鈴木 英敬君 宮路 拓馬君
鈴木 隼人君 尾身 朝子君
馬場 雄基君 堤 かなめ君
同日
辞任 補欠選任
宮路 拓馬君 鳩山 二郎君
堤 かなめ君 岡本あき子君
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本日の会議に付した案件
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案(岩谷良平君外一名提出、第二百十二回国会衆法第一五号)
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○古屋委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案及び第二百十二回国会岩谷良平さん外一名提出、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
これより質疑に入ります。
本日は、両案審査のため、参考人として、虎ノ門南法律事務所弁護士上沼紫野さん、龍谷大学法学部教授金尚均さん及び国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授山口真一さん、以上三名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、各参考人からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、まず上沼参考人、お願いいたします。
○上沼参考人 ただいま御紹介にあずかりました弁護士の上沼と申します。
本日は、貴重な機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。
私は、誹謗中傷等違法・有害情報対策に関するワーキンググループの副主査として、本改正の前提となる検討会に携わってまいりました。その立場から、本件に関し、少し意見を述べさせていただきたいと思います。お手元の資料に沿ってお話をさせていただこうと思います。
まず、本検討の前提としてのSNS利用の現状についてお話をさせていただきます。
皆様御承知のところだとは思いますが、インターネット以前については、意見表明の機会というものがマスメディアにしかなく、各人はそれぞれの小さな規模のグループの中でお話をするだけということになっていました。ところが、インターネット時代により、各ユーザーがそれぞれ意見を表明する機会を世界に対して持てるようになったということが一番のインターネット時代の特徴かと思っております。
おめくりいただいて、次のSNS利用の現状のソーシャルメディア利用者数の推移及び予測のところを御覧ください。これを見ていただければ分かるとおり、ソーシャルメディアの利用者数というのは増加の傾向を示しており、これが減少するということは恐らくないというふうに思われます。
それを前提に六ページを御覧いただくと、要するに、インターネット上の世界というものが相隣関係を模すことができるのではないかというふうに思われるわけです。法的紛争の典型例に相隣関係というお隣同士の紛争というものがあるわけですけれども、これは、人同士の接触があると一定の摩擦が生じ得るということを表しているものです。人が多くなり接触の機会が増えると、どうしても摩擦が避けられないということになります。
おめくりください。七ページが、インターネット空間における人と人の関係を示した模式図になります。このように、インターネット上では人と人とが常にお隣同士という関係になっており、これはどうしても紛争というか摩擦が避けられない状況かというふうに思います。ここで白い丸で示されている部分というのが、いわゆるプラットフォームということを私としては示したものということになります。ここのプラットフォームごとに町というかコミュニティーを形成しており、プラットフォーム事業者がそれぞれの町をつくっているというようなものがインターネット上の社会というふうになると思います。
これを前提に、本改正の背景について御説明いたします。八ページ目ですね。これは、私がリーガルアドバイザーを務めている総務省の受託事業であるインターネットの違法・有害情報相談センターの相談件数です。このとおり増加の傾向を示しており、これが減少するということは基本的にはございません。若干減少部分が見えるのは、コロナの対応により人との接触が若干増えたことによるものかと思っております。
おめくりいただければと思います。このようにインターネット上の相談が増えているということに関し、被害者の救済手段として何があるのかということを示した図が九ページにあります。被害者の救済手段としては、過去の権利侵害に対する損害賠償と、今現在権利侵害の情報がネット上に載っていることについて、現在進行形で進行する権利侵害に対する削除という二つの救済手段がございます。
このうちの過去の部分に関しては、二〇二二年の十月施行のプロバイダー責任制限法の発信者情報開示請求の手続の簡易化と申しましょうか、によってある程度の手当てがなされているところです。これに対し、削除については、プロバイダー責任制限法が制定されたときから特に手当てはされていなかったというものでございます。ところが、被害者にしてみれば、削除がされない限り現在進行形で侵害が継続するので、削除が極めて重要な手段であるということになります。
それを前提に、十ページのお話になりますが、先ほどインターネットの社会についてお話をしたときに、それぞれのコミュニティーというか町をプラットフォーム事業者がつくっていると考えることができるのではないかというふうに申し上げました。
プラットフォーム事業者がインターネット上の権利侵害情報に関してどのような関わりがあるかと申し上げますと、まず、権利侵害情報に関し条理上の削除義務を負うということが裁判例で言われております。また、自ら管理する場所の利用ルール、自らつくった町のルールを自らが決定できるということもあります。さらに、今のインターネットの世界では、ネット上、プラットフォーム上で発言ができるかできないかということで、意見表明の機会の場があるかどうかということが重要ですので、事実上のパブリックフォーラムとしての側面、そして、町ですので、いわゆる被害者と加害者の双方が混在するというのがプラットフォーム事業者の特性でございます。
このような前提に基づき、今回の改正のポイントを、おめくりいただいた十一ページからお話をさせていただきます。
改正のポイント、三つお話をさせていただきますが、まず一つ目が、被害者救済のための事業者による削除対応の迅速化というところです。先ほど申し上げたとおり、削除がされない限り被害が続くということですので、被害者から見て分かりやすく、迅速な削除のための体制整備というのが非常に重要です。
具体的には、そもそも削除のための窓口が分からない、あるいは日本語で削除請求ができないなどということがないように、分かりやすい窓口と手続を整備していただきたい。そして、一旦削除請求をした後に、削除の対応がされているのかされていないのか不明であるということがないように、一定期間内での対応を要請したいというふうに思っています。この場合の期間の目安に関しては、過去の楽天チュッパチャプス事件などの裁判例及びアンケート結果などにより一週間程度が妥当ではないかとは考えておりますが、これは法律では十四日以内というような規定になっていると承知しております。
そして、二つ目のポイントが、事業者による削除等の運用状況の透明化です。事業者が策定するルールは町づくりの基本であります。町に適用するルールはユーザーである住民にとって重要な関心事です。あらかじめ何が削除の対象になるかということは明らかになっているべきだというふうに考えます。
そして、この部分に関して、十四ページですけれども、違法、有害情報に関しては、この四つの分類で検討することが多いわけですけれども、左半分は違法情報ですので、元々法律で禁止されている、あるいは権利侵害という情報です。そのうち右の部分は法律で決められていない情報ですので、どのような情報を削除するかしないかということは事業者自体が決定する必要があるということです。決定したものはあらかじめルールとして明示しておいてくださいということをお願いしたものが、この透明化ということになります。
さらに、おめくりいただいて十五ページです。事業者による削除等の運用状況についても透明化を徹底していただきたいというふうに考えております。ユーザーが町の住民であることからすれば、事前にルールが明らかになっているだけではなく、一旦、自分が削除の対象、あるいはアカウントバン、そもそもサービスの提供が受けられないというような措置を受けた場合に、何が削除対象になったのか、あるいはならなかったのかということを知らせていただきたいというふうに思うわけです。そうでなければ何が起こったのかも分からず、安心して町には住めませんし、仮に行われた措置が不服であった場合であっても、それに対する不服申立てもできないということになります。そういう意味で、運用状況についての透明化というのも非常に重要なものだというふうに理解しております。
最後に、これも重要な点ですが、一番最初に申し上げたとおり、インターネットにより意見表明の場というのが、各個人に対して機会が与えられるようになりました。これは非常にメリットだというふうに思っております。
それが表現の自由として尊重されるべきことではありますが、その一方で被害者の救済というのも非常に重要なことであります。そのバランスをどういうふうに取っていくのかということを重要だというふうに考えておりますので、このバランスをどういうふうに検討するかという結果が今回の改正というふうになっており、基本的には、あらかじめ透明化していただく、そして迅速に行うべきことは対応していただくということを、町をつくったプラットフォーム事業者の方に自主的に取り組んでいただくということで、このバランスを取っていきたいなというふうに考えている次第です。
私の方からは以上となります。(拍手)
○古屋委員長 次に、金参考人、お願いいたします。
○金参考人 おはようございます。金尚均と申します。
それでは、私の意見を述べさせていただきます。
資料にございます一ページ目の一から五、これが概要ですが私の意見でございます。では、それに基づきまして以下説明させていただきます。
現状のプロバイダー責任法では、いわゆる権利侵害の被害者が、いわゆる発信者、違法情報を投稿した者が誰であるのかということを特定し、それに基づいて損害賠償について定める、そういったようなことを主に規定してきました。他方で、プロバイダーの責任を制限するというふうなたてつけになっております。そこでは、いわゆるデジタルプラットフォーム、SNS事業者に対して、内部苦情処理の制度並びにその透明性については何ら法的には定められてこなかったというふうなことでございます。
しかし、この間、ヘイトスピーチを始めとして様々な違法情報が社会の中で問題になる中、二〇二〇年九月、総務省はインターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージを策定し、プラットフォーム事業者の取組支援と透明性、アカウンタビリティー向上を促進してまいりました。ここではいわゆるソフトロー、非規制的な方式でSNS事業者に事業内容開示を求めるというふうなやり方を取ってきたわけでございます。
しかし、二〇二二年三月七日、ツイッターの清水氏の発言がございました。そこでは、開示する理由を議論されていないまま開示することを求められているような気がしますとの、いわゆる法的根拠ないしは規制のないまま自らの事業の内容を開示しなければいけないことの理由、これについて反論があったわけです。これは、総務省等々に非常にショックを与えたというふうなことでございます。
そこで、二〇二二年八月、総務省の研究会が公表した第二次取りまとめでは、プラットフォーム事業者による運用の透明性やアカウンタビリティーの確保が不十分であるというふうなことから、行政からの一定の関与というものが必要であるということが具体化されたわけでございます。そういった中、今回の法案につきましては、いわゆるSNS上の違法情報による被害の深刻化を前にして、情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律として、事態の改善のために大きな一歩を踏んだというふうに評価できるかと思います。
その上で、本案に言及したいと思います。
まず、定義についてでございます。二ページ目、第二条の六号、侵害情報につきまして、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が当該権利を侵害したとする情報をいうというふうに定義されております。しかし、この日本におきまして、インターネット上の問題が起きた大きな一つの理由というものは、明らかに二〇一〇年以降巻き起こったヘイトスピーチなど差別的言動にあったのではないでしょうか。
その証拠として、二〇一六年以降に施行された反差別法を御覧ください。いわゆるヘイトスピーチ解消法ですね。二〇一六年六月に施行されました。これを皮切りに様々な法律ができたわけです。
例えば、部落差別解消法の一条によりますと、この法律は、現在もなお部落差別が存在するとともに、ここです、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じているというふうに、明らかにインターネットの問題を指し示しているわけでございます。
米印に行きまして、ヘイトスピーチ解消法の、こちら衆議院の附帯決議などを見てみますと、一号で、ヘイトスピーチというのは何も外国人だけに向けられるものではないというふうな注意書きが示され、かつ、三号で、ここです、インターネットを通じて行われる本邦外出身者に対する不当な差別的言動を助長し、又は誘発する行為の解消に向けた取組に関する施策を実施することというふうな附帯決議が示されるに至っております。
これを受けて、二〇一九年三月八日、法務省人権擁護局調査救済課長の依命通知によりますと、集団等が差別的言動の対象とされている場合であっても、1その集団等を構成する自然人の存在が認められ、かつ、2その集団等に属する者が精神的苦痛を受けるなどの具体的被害が生じている又はそのおそれがあると認められるのであれば特定の者に対し差別的言動があったというふうに評価すべきというふうな依命通知が出されるに至っております。
そういったようなことも踏まえまして、三ページ目の真ん中、(二)ですね、提案をさせていただきたいと思います。
二条の定義に、不当な差別的言動という規定を入れるべきだろうというふうなことでございます。それは、不当な差別的言動、総務省令で定める要件に該当する言動のことをいうという一文を加えるべきではないかというふうな提案でございます。この総務省令で定める要件に該当する言動とは、先ほど示しました二〇一六年以降に施行された反差別法のことを指します。又は以下にあります不当な差別的言動、公然と以下の要件を示すべきではないか。この要件は、昨年出版されました国連高等弁務官事務所の包括的反差別法制定のための実践ガイド、これに基づいて作成させていただきました。
これにより、第二条、侵害情報というものは、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が当該権利を侵害したとする情報又は総務省令で定める要件に該当する不当な差別的言動をいうというふうに規定すべきではないかというのが私の提案でございます。
三ページから四ページに行きます。三番目、侮辱罪の重罰化でございます。この間、刑法二百三十一条の侮辱罪が改正され、重罰化されました。これは、いわゆる被害者の保護というふうな観点で大きな変化があったというふうに言えます。それによって刑事訴追時効が一年から三年に延びるというふうな変化もございます。
しかし、刑法二百三十条の名誉毀損並びに二百三十一条の侮辱罪を含めても、日本では年間の有罪件数が二百件足らずなんです。それに対してドイツでは三万件ある。これをどのように見るかというふうなことです。同じ法文化を持つドイツと日本において、なぜこれだけ違うのか。いわゆる精神的な法益、精神的な名誉というふうなものについて、日本とドイツでは価値が違うのかというふうな問題を私たちは直視すべきではないかというふうに思います。そういったようなことから、捜査機関における精神的法益の被害に対する認識の改善の必要性がまず何においてもなければいけない、被害者に寄り添った警察による聴取というふうな手続がなければいけないというふうに考えます。
二番目、侵害情報送信防止措置、いわゆる削除の問題であります。なぜ削除が必要なのかというふうなことでございます。
これは、削除の目的で、情報の拡散を防ぎ、被害を最小限にとどめるというものです。先生方御存じのように、インターネットの情報はコピペされ、そしてシェアされるわけです。そうすることによって、発信者でも手がつけられない状況になる。そして、それによってどういうふうになるか。例えば、今の私の話を先生方はお弁当を食べたら忘れてしまうわけです。何を話していたか忘れるわけです。しかし、インターネットの情報は忘れられないんです。ここが問題です。
こういったような点に鑑みまして、インターネット上に掲載された情報は、速報性、広域性、拡散性に特徴があり、その情報がコピーされシェアされインターネット上に残る限り被害者の侵害は継続されるわけです。終わらないんです。ここがオフラインの名誉毀損とは違うところでございます。また、脅迫とは違うところでございます。その意味で、二十六条の申出期間、申出から十四日という期間が果たして妥当かというふうなことに着目すべきだろうというふうに思います。
そこで、四ページ目の下から、ヨーロッパの動向ということで、二〇一五年から一連の動きがございます。
例えば、二〇一六年には欧州議会で、オンライン上の違法なヘイトスピーチとの戦いに対してプラットフォーム行動規範というものが立てられて、そこでは二十四時間以内に迅速に削除しなさいと。なぜ二十四時間かというと、インターネット上の違法情報が拡散し、そして差別が助長されること、ないしは扇動されることを最小限にするというふうな目的がございます。
そういったことで、それを具体化したのがドイツのネットワーク執行法三条二項でございます。ここでは、二十四時間の削除審査をしなさいというようなことが明文化されるに至りました。そうでなくても、二十四時間で分からなければ七日以内、そして、それでも分からなければ独立した規制機関に、判断機関に委ねなさいという三本柱で判断枠組みができております。
そういったことを受けて、ヨーロッパでは、デジタルサービス法というものが規則としてEU圏内に施行されるに至りました。そこでも意識されているものは、まさにヘイトスピーチの問題であったわけでございます。それが五ページから六ページにあります。
とりわけ、前文パラの八十を見てください、システミックリスクに対する言及がございます。ヘイトスピーチや児童の性的虐待の描写というものがインターネット上に掲載される、それによって、社会からの排除、そして民主主義の瓦解という二次被害、三次被害が起きる、これがまさにシステミックリスクなわけです。そういったようなものについて慎重に検討しなさい、また、プラットフォームに対し対応しなさいというふうなことを迫っているわけです。
そういったようなことから、ここでも、最後にありますように、二十四時間以内の削除の手続を事業者に求めなさいというふうなことが示されています。現在、ドイツでもデジタルサービス法が施行されていますけれども、同じくヘイトスピーチ等々に対しては二十四時間以内の削除の実務が行われているわけでございます。
最後に、本立法は、民事法そして行政法から刑事法に移行したわけでございます。なぜなら、本法の罰則として拘禁刑そして罰金刑が示されております。そういったような見地からして、三十五条、三十七条、三十八条に罰則があるわけですけれども、本法には至る所に総務省令で定めるというふうな文言があります。これは、市民に事前予測可能性を失わせるというふうな観点で大きな問題をはらんでいます。すなわち、いわゆる白地立法の問題でございます。これはまさに罪刑法定主義から非常に懸念すべき問題であるというふうに考えておりますので、その是正が求められると思います。
私の意見は以上です。ありがとうございました。(拍手)
○古屋委員長 次に、山口参考人、お願いいたします。
○山口参考人 皆さん、おはようございます。ただいま御紹介いただきました国際大学の山口と申します。
この度は、大変貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
では、お手元の資料、こちらを御覧いただければ幸いです。
まず二ページ目、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は経済学博士でして、特に専門は計量経済学というデータ分析手法の一種です。私はその手法を使って、SNS上のフェイクニュース、誹謗中傷、ネット炎上といった諸課題について実証研究を主にしております。今日の関連するところで申しますと、総務省のデジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会などで構成員を務めさせていただいております。私は法律が専門ではございませんが、そういった実証研究を専門としている立場からお話をさせていただければ幸いです。
では、ページをめくっていただきまして、三ページ目、まずは現在のインターネット上の誹謗中傷の現状についてお話をしたいと思います。
以前、下の方に参考文献が載っておりますが、二〇二三年に誹謗中傷に関する大規模調査結果というものを公表しております。そのときは、脅迫・恐喝や侮辱・攻撃などなどの九つの誹謗中傷に関しまして、それぞれどれぐらいの人がSNSなどのネットサービスで過去一年以内にダイレクトメッセージやリプライという直接分かる形でされたことがあるかといったことを調査いたしました。
その結果が左側の図一ですね。一番下のオレンジ色の部分がいずれか一つ以上経験したことのある人の割合なんですけれども、四・七%ということで、大体二十一人に一人ぐらいは既に過去一年間で経験があるということが言えます。しかも、それを性、年代別に見たものが真ん中の図二となります、こちらは御覧いただければ分かるとおり、若い世代ほど誹謗中傷被害に遭っているんですね。ですから、これはもちろんインターネット上の問題なわけですけれども、同時に青少年のインターネット利用における課題ということも言えるかなと思います。
さらに、総務省のプラットフォームサービスに関する研究会の第三次取りまとめでは、図三のようなグラフが引用されていると思います。他人を傷つけるような投稿、誹謗中傷、されたことがある人というものが一八・三%というふうになっております。
結構違いが出ておりますが、もちろん対象としたサンプルの違い、あるいは直接の攻撃に絞っているかどうかなどが影響していると思いますが、いずれにせよ、少なくない方がインターネットを利用して誹謗中傷の被害に遭ってしまっているということは否定できない事実としてあるかなというふうに思います。
では、次のページ、四ページ目に参ります。こういった被害が出ている誹謗中傷に関しまして、どのような社会的影響があるでしょうか。
まず、あるケースでは、図四で示しているんですけれども、ある方がネット上で誹謗中傷を大量に受けた、それこそ開示請求して、裁判を起こした結果分かったのが、被告の男性が二百以上のSNSアカウントを使ってこの方に攻撃していたということなんですね。このように、大量のアカウントを使って大量に攻撃する、こういったこともインターネット上では起こっております。
また、皆さんも御存じのとおり、インターネット上で誹謗中傷を受けて、それを一因として自ら命を絶ってしまうような事例というものも国内外で発生しております。こういった誹謗中傷の恐ろしいところは、一つ一つももちろんつらいメッセージなわけですが、それが大量に来るということ、これが非常に大きな特徴かなというふうに思います。
このように、精神的な負荷とか、あるいは命を絶つということだけではございません。誹謗中傷が原因で表現の萎縮が起こっているということも明らかになっております。
例えば、図五、こちらは、同じく私が二〇二三年に発表したジャーナリストへの誹謗中傷の調査結果です。御覧いただければ分かるとおり、過去一年以内にジャーナリストのSNSアカウントで誹謗中傷を受けた経験というもの、こちらは何と二〇%を超えていて二一・五%なんですね。先ほど、同じ調査の四・七%という生活者調査がございました。これと比較しても非常に高い割合であるということが言えます。
その上で、では誹謗中傷を受けた後にどのような業務への影響があったかといったものを調査したのが図六です。済みません、文字が小さくて申し訳ございませんが、この中では、同様のコンテンツや近しいコンテンツに関しての記事を書くのをやめた、二〇・九%、調査の方法や書く記事の内容を変化させた、一一・六%、新しい仕事を探し始めた、二・三%など、極めて表現の萎縮が起こってしまっているということが言えます。
こういったことは恐らく生活者でも起こっているというふうに考えられます。つまり、誹謗中傷が怖くてSNS上で政治の話がしにくいとか、ジェンダーの話がしにくいとか、そういった様々な社会的なイシューについて、重要なイシューほどネット上では投稿しにくい、なぜかというとどこからともなく誰かに攻撃されるかもしれない、こういった表現の萎縮が恐らく起こってしまっている。
つまり、誰もが自由に発信できる時代が来ています。SNSが普及して、誰もが自由に世界に情報発信できる、これを私は人類総メディア時代というように呼んでおりますが、この人類総メディア時代が来たことによって、その発信が逆に表現の萎縮を引き起こしてしまっているわけですね。これはつまり、議論を前提とした民主主義というものそのものに対しても悪影響を与えているのではないかということが言えるわけです。
では、次のページに参りまして、五ページ目となります。こういった中で、では現在の課題として何があるかというところです。
まず、前提として、多くのSNSサービスにおいては、ブロックとかミュートといったような身を守る手段というものはほとんど用意されております。しかしながら、いざ、例えば投稿内容を削除したい、あるいは法的手段を取りたい、こういったときに、加害者の手間に比較して被害者が対応するコストが余りにも高いわけですよね。加害者は非常に気楽に誹謗中傷します。しかしながら、被害者はなかなか申出とか情報開示請求ということができていないということなわけです。
図七は調査結果なんですけれども、誹謗中傷された後にどのような対応をしたかという結果です。ブロックやミュートで身を守っている人もそこそこいるんですけれども、一方で、下の枠、警察に通報した、五・七%、利用サービスの通報、報告機能を用いて通報した、九・二%ということで、警察に通報はおろかサービス内での通報とか報告ということもほとんどなされていないという現実があるわけです。
さらに、右側、違法・有害情報相談センターの件数の対応手段別の内訳というところを見ますと、削除方法を知りたいというものが圧倒的に多いわけですよね。やはりこのように、対応をどうすればいいのか、私は一体どうやってこれに対して行動を起こせばいいのか、ここに対して疑問を持っている人が非常に多いということが言えるわけです。
さらに、多くの場合、シェアを取っているものがグローバルプラットフォームであることが多いです。そのために、日本での対応とか対策とか透明性レベルというものに非常にばらつきがあります。特に、要請ベースで対応をお願いしているときには、日本の拠点がやりたいというふうに思ったとしても、本社の許可を得られるかどうかまた分からないわけですよね。なので、そういったことが対応のばらつきの一因となってしまっているのではないかということが言えるわけです。
他方で、こういった誹謗中傷問題、非常に大きな問題をはらんでいるわけですが、強い法規制をしいてしまいますと、表現の自由に悪影響を及ぼす懸念もある。そういった法律を悪用して、例えば、自分に批判的な人を、おまえは誹謗中傷を言っているというふうに言って捜査の対象とする、そういったようなリスクも世界中で懸念されているわけですね。ですから、バランスを取るということが極めて重要になるのかなというふうに考えております。
以上の現状を踏まえまして、次のページ、六ページ目に参ります。今回提出されております両法案に関しまして、ポイントと評価ということを書かせていただいております。
まず一つ目、大規模プラットフォーム事業者の選定を行い、その事業者のみに義務を課すというところですね。こういった法律、義務を新たに課すということによって、プラットフォーム事業者の運営コストは増大するでしょう。それが懸念される中で、大きな言論の場となっている大規模プラットフォーム事業者のみを対象としております。これによって中小事業者の負荷が増大して、むしろ健全な市場競争が阻害されるといったような現象を防ぐ工夫がなされているというふうに評価しております。
二点目、国内における迅速化規律と透明化規律をセットで導入しております。迅速化というところで申しますと、被害者の申出窓口を設定し公表するとともに、被害者から申出を受けた場合には迅速に必要な調査を行って結果に基づいて措置を講じる。また、透明化というところで申しますと、削除の実施基準を定め公表し、削除した場合に発信者に通知したり、削除の申出方法や開示請求方法を変え公表する、そしてさらに実施状況を公表するということが義務化されております。こういったことで、まず申出方法などをユーザーに分かりやすく伝えることで、被害者はより簡便に申出や発信者情報開示請求を行うことができるようになるというふうに考えております。
また、現在、先ほども申し上げたとおり、被害者負担は非常に大きいです。そういった意味でも迅速化ということは欠かせないわけです。ただし、プラットフォーム事業者のコンテンツモデレーションのプロセスは複雑です。今回の迅速化規律がどのようにプラットフォーム事業者の対応あるいは言論の空間といったものに作用するかということを検証すること、これは極めて重要です、プラットフォーム事業者が恣意的に何かやっていないかということですね。その点において、プラットフォーム事業者の恣意性を排除するという意味でも、透明化と迅速化、これが両輪であることに意義があるというふうに考えております。ですので、総じて、権利侵害問題への対応を強化し、より高い透明性と責任を求める点で肯定的に評価できると言えます。
三番目です。侵害情報調査専門員を配置するということで、日本語対応ということだけではなくて、特に差別的表現とか風刺とかいろいろあるわけですけれども、そういったものは、日本の文化を知るということは極めて重要なわけですね、文化を踏まえた上で対応する。ですから、この専門員の配置及びその状況の公表というものは大変意義があるというふうに評価しております。
最後となりますが、次のページ、七ページ目です。今後の課題について述べさせていただきます。
まず一つ目、オーバーブロッキングの可能性及び委員会による定期的な審査などの重要性ということで、そもそも本法案は、迅速化と透明化に焦点を絞っておりまして、表現の自由と被害者保護、救済のバランスを非常によく取っているというふうに考えておりますが、迅速化規律とか罰則の規定などによって、オーバーブロッキング、つまりプラットフォーム事業者が罰則を避けるために迅速に対応しなきゃというふうに焦って過剰に削除してしまう、こういったことが世界中で、そういった問題は起こらないのかということが様々な法律に対して指摘されているわけなんですけれども、そういった可能性が本法案でもゼロではないのかなというふうに考えております。
また、スラップ訴訟という問題がございますが、同じように、手当たり次第に申出をしてアカウントを停止させようとか、そういったような動きが活発になる懸念もゼロではないのかなというふうに考えております。
こういったことを踏まえまして、客観的で恒常的な委員会による定期的な審査などで法律の効果を継続的に確認していくことが重要であるというふうに考えております。その審査結果を受けて、エビデンスベースで随時改正を検討していくことが望ましいです。
二つ目、誹謗中傷被害の実態調査の継続ということで、誹謗中傷の被害の経験とか、実際にこの法案の導入前後で開示請求や申出を行った経験がどのように変化したかとか、そういったような継続的な調査を実施して、実態を把握し続けるということが重要であるというふうに考えておりますし、これは法律の効果の計測ということにもつながると思います。
三番目、具体的な透明性項目の定義ということで、大枠の定められた透明性ということ、今回、法案に入っております。しかしながら、より具体的な項目とか公開の方法の定義をどんどん進めていく必要があるかなというふうに思います。
事業者に負担をかけるということになりますので、どういった社会を目指して、そして透明化された情報を基にどのような分析や施策を行うかということを具体的に提示し、それを基に各事業者が真摯にやっていくべきだろうというふうに考えております。
四番目、プラットフォーム事業者の責任の範囲はどの程度かというところでして、法案を読ませていただいておりますと、発信者情報開示請求に関する手順というところの公表という話がありました。この手順の認知度は極めて低いです。ですから、被害者が開示請求をするハードルの一つとなっていること、これはもう間違いございません。私も危機的な意識を持っております。
他方で、開示請求を円滑に行うための必要な情報の公表までをプラットフォーム事業者がするべきかどうか、これには議論の余地があるかなというふうに考えております。例えば、分かりやすく開示請求をする方法をまとめたページをどこかに用意して、そこにリンクで誘導してくださいみたいな、そういった解釈も可能になっているといいのかなと。つまり、例えば新型コロナウイルスに関しましては、プラットフォーム事業者は厚生労働省のウェブサイトとかにリンクを飛ばしてくれたわけですね。こういったように、別のウェブサイトに飛ばす、そういった方式もあり得るのかなというふうに考えている次第です。
私からは以上となります。ありがとうございました。(拍手)
○古屋委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○古屋委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。根本幸典さん。
○根本(幸)委員 おはようございます。自民党の根本幸典です。
本日は、質疑の機会をいただいたことに感謝を申し上げます。
三人の参考人の皆様方におかれましては、大変忙しい中、総務委員会に御出席をいただいて、そして、ただいま大変貴重な御意見を賜ったことにまず心から感謝を申し上げたいというふうに思います。
その上で、まず、本改正案に関する個別の論点について幾つかお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
本改正法案を措置する以上、実効性を伴うように制度設計することが何よりも大事だというふうに考えております。特に、プラットフォーム事業者の多くが外国事業者であります。その観点から、本改正法案による義務の実効性を確保する上で、有識者会議ではどのような点に留意して議論されたのか、先ほど御説明の中でも、総務省のワーキンググループの副主査をされています上沼参考人にお伺いしたいというふうに思います。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
外国事業者に関する検討に関しては、そもそも、先ほどちょっと申し上げたとおり、削除窓口が日本語じゃないとかというようなお話がありまして、その中で、日本の手続に則した調査員を置くというような形にするという形で検討されています。あと、今回、送達等の手続回りのところも手当てされているというふうに承知しております。
以上です。
○根本(幸)委員 ありがとうございます。
続けて、同じように個別の論点なんですが、削除の迅速化として、一定期間内の判断、応答義務を課すことにしているわけでありますが、被害者の救済の観点から迅速な対応が求められている一方、事業者の実務で考えると、申出のあった対象情報にもよりますけれども、一定程度時間を要することとなるというふうに考えられるわけであります。この点、どういうふうに有識者会議では、どのような考え方により、どれくらいの期間が適当といった検討がされたのか、上沼参考人に御質問したいと思います。
○上沼参考人 ありがとうございます。
事業者が一定の期間が必要だというのは当然有識者会議の方でも承知しておりまして、それなので、もし時間がかかる場合には時間がかかる旨を通知しなさいという形でその部分についても手当てをいたしました。一定程度の期間は、先ほど申し上げたとおり、アンケートや過去の裁判例等を参考に検討しております。
以上です。
○根本(幸)委員 ありがとうございます。
続いて、削除対応の運用状況の透明化として、基準の策定、公表やその運用状況の透明化の義務を課すこととしているわけでありますけれども、事業者の対応を透明化するだけで被害者救済に資するものとなるのか、有識者会議における議論の考え方を上沼参考人に御教示いただきたいというふうに思います。
○上沼参考人 今の御質問に対してお答えします。
透明化だけでは実効性がないのではないかという御意見はもちろんありましたけれども、透明化、公表するということについて、それがいろいろな人の目にさらされるということになりますので、それ自体が一種の自浄作用があるのではないかということ。あと、今回の法案に関しては、一応、努力義務とはいうものの、それなりの、手続回りについて検討が必要だというようなことも入っておりますので、総合的に考えれば、その辺りのところも透明化が実効性に資するものというふうに考えております。
以上です。
○根本(幸)委員 ありがとうございました。
続きまして、昨今、生成AI等で精巧に有名人等に成り済ました投資詐欺等が多発して報道をにぎわせているわけでありますが、本改正法案では、削除対応の運用状況の透明化として、アカウントの停止も含めた基準やその運用状況の公表義務を課すこととしているわけであります。
こうしたインターネット上における成り済ましによる投資詐欺等の事案に対して、有識者会議の議論を踏まえて措置された改正法案によりどの程度効果があるというふうに考えられているのか、引き続き上沼参考人にお伺いしたいというふうに思います。
○上沼参考人 御質問にお答えします。
成り済ましそのものを特に深く議論したわけではないんですが、成り済ましによる結果が権利侵害になるということは認識されておりまして、権利侵害に関する対応として、今回、迅速化と透明化が実効性があるという形になっておりますので、成り済ましについても同様に実効性を持っているものというふうに認識しております。
以上です。
○根本(幸)委員 ありがとうございます。
続いて、削除対応の迅速化や運用状況の透明化の義務をプラットフォーム事業者に課すこととしておりますけれども、対象となるプラットフォーム事業者は、誰もが想起するような大規模な事業者のみならず、インターネット上には限定されたコミュニティーのみで使用される小規模なSNSや掲示板等も運営されているわけであります。
今般の義務をどの範囲の事業者に課すべきかについて、有識者会議における議論や考え方を上沼参考人に御教示いただきたいというふうに思います。
○上沼参考人 今の御質問の件については、以下のとおりです。
もちろん、大規模事業者のみならず小規模もあるということは有識者会議の場でも検討されておりまして、大規模事業者だけに義務を課すべきではなく、広く課すべきではないかという意見ももちろんございました。
ただ、今、山口参考人の意見にもありましたとおり、小規模事業者に対する負荷が余りに高くなるのもそれはそれで望ましくないのではということと、権利侵害とかトラブル発生率が、ユーザーの人数によって、閾値を超えたときに急に増えるという経験則がございまして、そういう実効性から考える、あと、実際の執行の観点から考えても、一定以上の大規模事業者に関して今回は対象を絞るということが実効的ではないかというような結論になっております。
以上です。
○根本(幸)委員 ありがとうございました。
続きまして、誹謗中傷等の違法、有害情報への対処としては、これだけ社会問題となっていることを踏まえると、より強力な被害者救済を行うことが必要とも考えられるわけでありますが、改正法案では一定期間内の判断、応答義務を課すこととしていますが、更に進んで、被害者から申出があった場合には削除義務を課すことや、拡散防止の観点から一旦削除してから最終的な判断を行わせること等も考えられます。この点について有識者会議ではどのように検討されたのか、引き続いて上沼参考人にお伺いしたいというふうに思います。
○上沼参考人 今の御質問の件にお答えします。
申出に対する削除義務を課すという、ノーティス・アンド・テイクダウンというんですかね、についても検討はいたしております。
ただ、ノーティス・アンド・テイクダウンのように直ちに削除ということになりますと、そもそもインターネット上の情報発信の機会を相当狭めることになります。また、ノーティス・アンド・テイクダウンでプラットフォーム事業者が自ら考えずに削除をするということ自体が、これは個人的な意見なんですけれども、それが必ずしも望ましいかどうかというのも疑問の余地があるかなというふうに考えております。
その結果、両方のバランスを図るものとして、直ちに削除義務を課すのではなく、一定期間の対応を義務づけるという形で今回の法案となっております。
以上です。
○根本(幸)委員 ありがとうございます。
また、特に、捜査機関、あとは救助機関、人権擁護機関等を始めとした行政当局からの削除要請には、より削除対応の蓋然性も高く、こういった場合には事業者に応答義務や優先的な対応義務を課すことも考えられるというふうに思います。この点について有識者会議ではどのように検討されたのか、上沼参考人に引き続きお伺いしたいというふうに思います。
○上沼参考人 今の御質問の件ですけれども、公的機関に対する対応についても検討はいたしました。
ただ、公的機関からの削除要請に対応を義務づけるということになりますと、公的機関による削除を認めることに等しくなり、事前抑制のような効果が働くことになります。それは表現の自由に対する大きな侵害となりかねないということもあり、今回はそのような義務を入れていないということになっております。
○根本(幸)委員 ありがとうございました。
続いて、偽・誤情報のことについてお伺いをしたいというふうに思います。
今年一月の能登半島地震においても、数多くの偽・誤情報がインターネット上で流通しており、社会問題になったところであります。加えて、偽画像や偽動画の投稿、成り済ましによる偽広告などを始めとして、AI等の技術の急速な発展により一層深刻化しており、偽・誤情報対策はまさに大変重要な課題だというふうに考えております。
本改正法案においても、権利侵害情報等であれば削除対応の迅速化や運用状況の透明化が図れることとなり、成り済ましを始めとした偽・誤情報対策に対しても大きな効果があるものと認識しております。
こうした偽・誤情報対策について抜本的な対策を講じていくことが必要であることから、本改正法案に加えてどのような対策が必要となるか、これは山口参考人にお伺いをしたいというふうに思います。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
御指摘のとおり、今、偽・誤情報というものが世界中で大きな問題となっております。それは、政治的な偽・誤情報だけではなくて、インフルエンサー、つまりセレブリティーの方ですね、そういった方の偽・誤情報で被害が出るとか様々なものが出ておりまして、その中には、生成AIによって偽画像や偽映像を作る、こういったものも増えてきていて、恐らく今後そういったものは加速度的に増加するということが考えられます。
御指摘のとおり、本法案でも、権利侵害がある場合には対象とするということになっております。一方で、では更に今後偽・誤情報が増加する中で強い法規制が必要なんじゃないかというような議論もあるわけです。
実は、エビデンスで申しますと、私が調査すると、あるいはほかのものもそうなんですが、大体七五から八〇%の人は偽・誤情報に法規制は必要であるというふうに回答するというような傾向が見られます。
しかしながら、偽・誤情報に関する法規制というのは非常に大きなリスクもはらみます。それは、誰が言うかによって何が偽か、フェイクニュースかというものが変わってしまうということですね。ここで事例は挙げませんけれども、例えばある国ではフェイクニュース対策法という名目で、法律を理由に自分たちの政権に批判的な人を捜査の対象とするということがかなりされてしまっていたりする、ジャーナリストの言論統制などにもつながってしまっているということですので、強い法規制というものはやはり慎重であるべきなのかなというふうに考えているところです。
そういったことを踏まえまして、では何が必要かと申しますと、偽・誤情報が氾濫する場となっておりますプラットフォーム事業者と密に連携しながら、積極的に、例えば能登半島地震、あるいはこれから選挙とかがあります、そういったときにはローカルの対応を厳格にしていただくということを引き続き求めていく。実は、各プラットフォームの利用規約を見ると、選挙とか災害のときの偽・誤情報は明確に駄目だと書いてあるわけですね。しかしながら、それが適切に運用されていないからまだ蔓延しているということですので、そういった規約の厳格な運用ということも求めていき、それでも不十分であるということになれば、また新たな対策ということを今後議論していくのかなというふうに考えている次第です。
以上です。
○根本(幸)委員 ありがとうございました。
続きまして、三人の参考人の皆さんに、最後になりますが、お伺いをしたいというふうに思います。
今般、プロバイダー等の事業者の免責や発信者情報の開示制度を設けている現行のプロバイダー責任制限法を改正して、プラットフォーム事業者に対し削除対応の迅速化、運用状況の透明化といった義務を課すこととしているわけでありますけれども、改正法案に対する期待を三参考人からお伺いしたいというふうに思います。
○上沼参考人 この法案に対する期待ですけれども、正直に言うと非常に期待しております。
というのは、今までプロバイダー責任制限法は余り改正が、二〇二二年十月より前はほとんどされていないような状況なので、ここが非常に抜本的な改正というふうになっております。なので、プロバイダーに対する透明性と迅速性を義務づけることで、より被害者の救済が図られるというふうに私としては期待しているところです。
以上です。
○金参考人 今回の法案については、大きな一歩を踏み出したというふうに認識しております。
その上で、今回の法案において、特定の個人的な被害者の権利侵害、これに対してのみ焦点を当てたというふうになっておるので、より大きな考慮が必要かなというふうに考えています。
それは、特定集団に対するヘイトスピーチ等々ないしは差別的言動に対してどのように対処するか、これがやはり世界中のインターネットの違法情報に対する対処の大きな論点だったというふうに思います。その意味におきまして、このようなヘイトスピーチが起こる前提としてのフェイクニュースの問題、これを連動させながら考えていく必要が今後の日本の立法においては必要かというふうに考えております。
以上です。
○山口参考人 ありがとうございます。
私は二点考えております。一つは被害者救済という点ですね。これは言うまでもございませんが、こういった迅速化、あるいは日本語での対応、様々な面から、被害者、より多くの人が救われるということを期待しております。もう一点が抑止効果ですね。こういった法改正、又は請求している人がいるということがメディアで報じられることによって周知される、それによって、ああ、やはりネット上も誹謗中傷とかは駄目なんだなということが改めて伝わって、それによって抑止されるということ。この二点を私は期待しております。
こういった効果を計測するためにも、継続的な効果計測ということ、そしてエビデンスをベースに今後の法律の在り方ということを考えていくことがとても大切なんだろうなというふうに考えている次第です。
以上です。
○根本(幸)委員 本日は、上沼参考人、金参考人、山口参考人におかれましては、大変貴重な御意見そして示唆に富む発言をいただいたことに感謝申し上げ、私からの質疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○古屋委員長 次に、奥野総一郎さん。
○奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。
今日は、質問の機会をありがとうございます。
今日、私は、初めて資料を読ませていただきまして、それに従って、感じたことを中心に伺っていきたいと思います。必ずしも法的な話じゃない部分も出てきますが、よろしくお願いします。
最初に、金先生御提案の、定義にヘイトスピーチをきちんと読み込めるように書く。EUなんかは例示としてヘイトスピーチが挙がっているということでありますが、定義に加えることで広がる部分というのがあるのか、要するに権利侵害という定義だけでは全て救済し切れないというふうにお考えなんでしょうか。
○金参考人 今回の提案におきまして、先ほどから申していますように、個人の権利侵害だけじゃなくて、インターネット上の問題が起きた一つの大きなきっかけというのは、やはりインターネット上のヘイトスピーチの問題だと思うんですね。特定集団に対する誹謗中傷ないしはうその情報、そういったものがインターネット上で巻き起こる、そういったものが特定の集団の構成員、とりわけ弱い子供たちや女性に向けられるといったような構図があるかと思うんです。そういったようなことからいたしますと、特定の個人の被害を救済するだけではなく集団に対する差別的言動を含めることによって、より十全な対応が取られるのではないかというふうなことであります。
逆に、こういった特定集団に対するヘイトスピーチというものが今回の改正においても取り上げられないというふうなことにつきましては、そういったことになるならば、いわゆる被害者集団の人々の法に対する信頼というものはいまだにかち取れないというふうな問題も残り続けるだろうというふうに私は理解しております。
○奥野(総)委員 私もそのように思うんですが、上沼先生に伺いますが、今のような議論は検討の中ではどういうふうに議論されていたんでしょうか。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
ヘイトスピーチに関する議論は、先ほど四象限で言った有害情報として鋭意検討していまして、もちろんヘイトスピーチの中に個人の権利侵害に当たるものもあるのは承知しており、そこの部分は今回の改正の権利侵害情報として対応するという形になります。有害情報に関しても、今回、透明化の義務がかかります。なので、運営事業者はあらかじめ、何をいわゆるコンテンツモデレーションというか削除の対象にするかをあらかじめ明確にし、それをどう運用するかもあらかじめきちんと公表しろというようなことになっておりますので、そのような対応で実効性が図られるのではないかというような形で検討会では考えておりました。
以上です。
○奥野(総)委員 こちら側を委ねるということなんですが、ちょっとさっき思ったんですけれども、事業者によってはばらつきがあり得るのかなと思うんですね、何がヘイトスピーチなのか、何が有害情報なのか。違法というのは、ほぼはっきりしてくるんでしょうけれども。それを本当に、特にヘイトスピーチのような問題について事業者に委ねていいのかと思うんですが、その辺りは議論があったんですか。
○上沼参考人 事業者によってばらつきがあるということはもちろん承知はしておりますが、元々ヘイトスピーチに関しては違法ではない部分があるというところが問題でありまして、だとすると、あらかじめ各事業者が自分はそれについてどう考えるのかということを明確にしていただければ、ユーザーとしては、ここの事業者さんはこういうふうに考えているんだから例えば使うのをやめようとか、ここであれば自分は賛成するとか、そういうふうな選択の機会も与えられるということになるのではないかなというふうに思っております。それが結果としてよい方向に回るのではないかというのが意見としてあります。
以上です。
○奥野(総)委員 プラットフォームはマンションみたいなものだと思えば、管理人さんがいて住民の管理規約があって、規約はそれぞれマンションによって違いますよ、住民は住みづらければ要するに引っ越せばいいというようなお話かなと思うんですが、ただ、一旦流布してしまうと甚大な被害が及ぶような話もあるわけですよね、だから引っ越せば済むという話でもなかなかないのかなと思うんですね。マンションの規約はどうかみたいな話を、例えば仮に訴訟になって、恐らくだんだんと事例が積み上がっていって収れんしていくということは起こり得ると思うんですが、そのように考えておるんですかね。
○上沼参考人 一定程度そのように考えているところはございます。ただ、緊急性のあるものについては、恐らくそれは個人に対する権利侵害にも当たるような内容になることが多いだろうというふうに思っております。なので、そういうものについては権利侵害情報として迅速に対応ができるかなというふうに思っておりますので、マンションが空っぽになるだけではなく、もうちょっと強い対応ができるのかなというふうに思っております。
以上です。
○奥野(総)委員 今回そこは少し進んだのかもしれないですけれども、進んだとはいえ、全体として見たときには収れんするには時間がかかると思うんですね。さっきお話があったけれども、ドイツだと三万件のものが日本だと数百件。なかなか日本じゃ訴訟も起こさないですよ。恐らく訴訟手続も大変で、お金もかかってハードルが高いということだと思うんですね。だから、もう一歩踏み込んだこともこれからは必要になってくるんじゃないかと思うんです。運用を見ながら、公表された規約を見ながらですね。余り言うと検閲になるとか通信の自由の侵害になるみたいな話になるんですが、そこはもう一歩進んで、いずれモデル規約のようなものを作るというようなことはあり得るんですかね。
○上沼参考人 モデル規約のようなものを作るというのは十分検討されておりまして、あと、権利侵害の考え方についても、今回、日本の文化を十分よく知っている方を調査員として入れるようにというふうに言っておりますので、日本独自の問題等に関する権利侵害についても必要な対応ができるのではないかなというふうに思っております。
○奥野(総)委員 金先生、今の話を伺って反論があれば。
○金参考人 今先生のおっしゃられた意見は、一つ、日本型の対処の仕方というふうに考えます。私の一に示しました二〇一六年以降の反差別法、いずれも、罰則規定がないというふうな、非常に世界的に見たら異色な立法形式なんですね。他方、ヘイトスピーチとされる言動については海外では、特にヨーロッパでは違法、とりわけ刑事罰が科せられています。そういったような状況が、日本とヨーロッパではとりわけ立法形式が違う。立法形式が違う中で、どのように日本の中でこのようなヘイトスピーチに対応するのかというふうなことで、今回、これらの反差別法につきまして、総務省で規定するというふうな形式にして対応すべきではないかというふうに考えたわけです。
また、その背景には、SNS事業者、いわゆるGAFAとかつて呼ばれた会社は世界のいわゆるグローバル企業なんです。例えばヨーロッパやアメリカでは、ヘイトスピーチをコミュニティースタンダードで既に規制しているわけです。今回のプロバイダー責任法の改正において、日本では、権利侵害、例えば肖像権やプライバシー、名誉といったものに限定するというふうなことが、日本ではヘイトスピーチ等々、そういったものは我々は削除しなくてもいいんだというふうな誤ったメッセージを送らないか、これを本当に保証できるのか、ここが私の懸念するところでございます。
○奥野(総)委員 EUのデジタル・サービス・アクトでしたっけ、の中にもきちんと挙がっていますよね。
今回の法案というのは全体の中の一部、権利侵害に限ったごく一部を捉えている話だと思うので、先生のおっしゃるように、そこをもっとEUのようにきちんと全体的に広げていくというような話は私はありだと思うんですね。だから、まずはこれは第一歩、駄目だとは言いませんが、まず第一歩として権利侵害に対応するという意味では大事なことだと思いますけれども、もう少し風呂敷を広げてと言うと言葉は悪いですけれども、もう少し大局的に、EUのような形で全体を見ていく、その中には偽情報、誤情報対応とか生成AI対応なんかも含めた議論をこれからはしていかなきゃいけないのかなというふうに思いました。
もう一つの、金先生が提案している二十四時間ですね、ドイツでしたっけ、二十四時間以内にということ。これは大事なことだと思うんですけれども、明らかに違法、明らかにおかしなものについては即座、ノーティス・アンド・テイクダウンとおっしゃいましたけれども、これは何でもかんでもすぐ削除という話だと思うんですが、そうじゃなくて、明らかに違法なもの、明らかにおかしなもの、あるいは極めてそういう疑いが強いものについては二十四時間以内というふうに、そういう規制をきちんと課すということもあり得ると思うんですが、そうした議論はなかったんですかね、上沼先生。
○上沼参考人 二十四時間対応というような検討は余りしていませんで、ノーティス・アンド・テイクダウンの方で議論が集約されていたかなというふうに認識しています。結局、権利侵害かどうかの判断にきちんと対応しようとすればそれなりの時間はかかるだろうなということに対する考慮もございまして、そういう意味で、二十四時間対応のようなことは入れてはおりません。
ただ、事業者さんが自主的にいわゆるサービスレベルのようなものを考えていただくことは当然にできることなので、そういうような対応は権利侵害の内容に応じてしていただける可能性はあるのかなというふうに期待しております。
以上です。
○奥野(総)委員 全く私の思いつきなんですが、例えば、一旦アカウントから消して、即座に消して、時間をかけて審査して、権利侵害がない、あるいは違法、有害ではないということが確認されればまた戻すというような、そういう仮処分的な考えというのはあり得るんですかね、上沼先生。
○上沼参考人 元々、プロバイダー責任制限法ができたときに、プロバイダー責任制限法の対象が権利侵害情報一般ということで、名誉毀損とかプライバシー侵害とかも入っている関係で、一旦消すということが必ずしも表現の自由や民主社会との関係で望ましくはないという価値判断もございまして、今のようなことになっております。
というのは、一旦消してしまうと、日本の国民性というか、紛争が余り好きではないところからすると異議の申立てとかに対して萎縮効果が生じる可能性があるというところもございまして、そういうところが必ずしも、直ちに消すということが本当に今の状況で望ましいかどうかというのはまだちょっと検討の余地があるのかなというような検討でした。
○奥野(総)委員 なかなか難しくてですね、表現の自由と権利侵害における不利益をどう考えるか、バランスの問題だと思うんですけれども。総務省がしっかりしているのか、日本はやはり表現の自由の側に重きが置かれがちなんだけれども、でも必ずしもそうじゃない部分があると思うんですよね。
金先生、今の議論、二十四時間と提案されていましたけれども、いかがですか。
○金参考人 私が二十四時間以内の削除を紹介したというふうなことは、例えばEUやドイツの中で二十四時間削除というふうな要件が出たのは三つです。ヘイトスピーチ、テロ情報、そしてチャイルドポルノがやはり規制の対象になったわけですね。これはデジタルサービス法でも受け継がれています。そこでは、何よりも、これが一旦インターネット上に掲載されると瞬く間に拡散されてしまうというふうなことなわけですね。これに対してどのように対処すべきかというふうなことにやはり悩まされてきたわけです。そういった中から、まず何よりも、もう被害は起こっているけれどもそれを最小限にするというふうな方策が練られたわけですね。そこで、できる限り短い期間に削除しましょうというふうなことなんです。
現在、ヨーロッパでは、いわゆる大規模SNS事業者の事業報告は今回の日本の法案では年に一回というふうになっていますけれども、実は年二回なんですね。だから、今回の日本の法律というのは実は画期的な一歩なんですけれども、恐らくSNS事業者からすると甘いたてつけになっているかと思います。事業報告の中で、どれぐらいの期間で削除したかということで、二十四時間以内、七日以内、七日以上、そして独立した判断機関に委ねるというふうな、四つ構えで判断がされています。実は、どの規制対象情報についても二十四時間以内の削除が七五%以上なんです。そういったようなことが実際に行われている。
例えば、ドイツなどでなぜそれができたかというふうな背景には、法曹制度が大学等々で整えられているという社会があります。それは実は日本でも可能なわけです。日本でも、法学部を始めとしてロースクールというふうな制度がございます。そこで、多くの法的素養を持った人々がこのような違法情報、有害情報に対して対処できる社会ないしは法曹養成制度、そしてその構築というものがあるところで、特定の個人の権利侵害以外にも、やはり判断すべき余地とその能力というものが日本にはあるだろうというふうに私は見ております。
○奥野(総)委員 そうなんですね、なかなか。今回は確かに画期的な一歩なんですけれども、もう少し広げてこれからは考えていかなきゃいけないということだと思うんです。
山口先生に伺いたいんですが、この中で、先ほど、人類総メディア時代の到来によってその発信が逆に表現の萎縮を引き起こしていると書かれていますね。ジャーナリスト個人、もちろん個人の誹謗中傷という話であれば権利侵害になるんでしょうけれども、そうじゃないような場合もあるでしょうから、今の話は全体として公益ですよね。表現の自由という公益、憲法に守られている人権の一つが総体として影響を受けているという話。これはなかなか漠然として難しいんですが、ではこの状況をどうやって改善していくのか、どうやってバランスを取りながら改善していくのか。これからの課題だと思うんですが、先生はどのようにお考えですか。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
御指摘のとおり、先ほども申し上げたとおり、人類総メディア時代、誰もが自由に情報発信できるようになったことによって、その発信がほかの人の発信を萎縮させてしまっているという矛盾が生じているわけですね。ということを考えますと、SNSという非常に利便性の高いツール、道具が普及して大きな効果というものが生まれているわけなんですけれども、プラスの効果を同時に抑制してしまっているというのが今の状況なのかなというふうに考えております。
私は経済学出身ですので、常に考えているのが社会的公正の最大化というところです。すごく簡単に言うと、人々の幸福感というものを足し合わせたもの、これが最大になるような施策というものが非常に重要である。つまり、今回の件でいうと、表現の自由には十分に配慮する、ただ、問題点だけをピンポイントで抑制する、そういった法律あるいは別の仕組みづくりということが今も、そして未来も求められているのだろうなというふうに考えております。
私のエビデンスのところから申しますと、例えばネット炎上について私は研究をしております。その中で分かったのが、ネット炎上一件につき、X上、旧ツイッター上でネガティブな投稿をしている人というのがネットユーザー全体から見ると約〇・〇〇〇二五%しかいないということが分かったんですね。つまり、四十万人に一人ぐらいであると。
だから、ネット炎上が一たび起きると世界中がその人を攻撃しているかのように見えるんですが、実はそこで反映されているのは結構ごく一部の人の意見であるということなんですね。同じことが誹謗中傷などにも言えて、同じ人が大量に攻撃していたりということが結構日常的に行われています。ですから、その少数の人たちにピンポイントで何かができると、これは非常に効果があるんじゃないかなというふうに私は思っているわけですね。
そこで、例えばプラットフォーム事業者が利用規約違反でアカウントを削除するとか、こういったことというのは極めて効果がある話だと思うんですね。同時に、例えば、複数アカウントが取られてしまうわけですけれども、それを電話番号認証するか、しないかとか、そういった話もあり得るのかなというふうに思います。
例えば、ある企業の施策では、ニュースサイトのコメント欄に投稿する際に電話番号登録を義務づけしたんですね。その結果として利用規約違反のような投稿がなされる量がかなり減ったというように発表されております。この施策がベストかどうかは別として、ただ、一例としてそういったものもあるかなというふうには考えておりますので、引き続き、何か、ピンポイントで悪影響を抑え込むような対策ということを検討していくのが大事だというふうに考えております。
以上です。
○奥野(総)委員 今回の法案自体を私は反対はしませんけれども、これからももっと、やっていかなきゃいけないことはたくさんある、ヘイトスピーチについても包括的に含んだ立法も必要ですし、今言ったような公益の部分を守っていくための立法も必要だと思いますので、引き続き国会としてはそこを求めていきたいというふうに思います。
以上です。ありがとうございました。
○古屋委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○古屋委員長 速記を起こしてください。
次に、阿部司さん。
○阿部(司)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部司でございます。
参考人の皆様、本日は大変参考になるお話をありがとうございます。
まず、ちょっと基本的な質問になるんですが、私は、SNS、こちらを触り始めたのが学生時代ですね、今から二十年ぐらい前になるんですけれども。当時はミクシィがはやり出して、ミクシィと、あとグリーですね、新しいサービスが出てきたということで面白がって触って、どんどんつながりが増えていって、非常に楽しくSNSを使っておったんですけれども。
当時はまだツイッターなどでも特に炎上なんかもなく、非常に牧歌的な空間だったのかな、今日は何を食べたとか、個人的な生活のことだとか意見だとかというのを表明して、みんながそれにいいねをしてくれるというような非常に牧歌的な空間だったと思うんですけれども、これが、昨今、炎上ですとか誹謗中傷、大変社会問題化しているわけであります。なぜ、昔は牧歌的な空間だったSNS空間がこのように社会問題化してしまったのか。その辺りの基本認識、参考人の皆様からそれぞれ御見解をいただければと思います。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
牧歌的だった時代は私も存じ上げてはいるんですが、今の状況の変化は、まず一つにはユーザーの増加だと思います。先ほどちょっと申し上げたとおり、閾値のようなものがあって、ユーザー数が一定割合を超えると急にトラブルが増えるという傾向があります。なので、それが一点かなと。
あと、もう一点は、これは本当に個人的な感覚なんですけれども、ちょっと社会が寛容じゃないような気がするなというのがちょっと感じるところです。ネットでいろいろな情報が発信できるので、みんなで目を皿にして、ほかの人の言動が分かるというようなところがあるからかなというふうには個人的には思ってはおります。
以上です。
○金参考人 私がインターネットを使い始めたのは一九九五年ぐらい。恐らく、ここにおられる先生方もインターネットをいつぐらいから始めたかなと思うと、恐らく一九九五年ぐらいだと思いますね。そのときにはまだ、メールも一部の人しか使っていなかった。そこの状況というのは、インターネットというのは、まさにアップル社の社長がおっしゃられたように、ドント・ビー・エビル、邪悪になるな。親切心ないしは良心で情報提供し合うコミュニティー社会というものがインターネットでは描かれていたと思います。これは今でもやはりあると思うんですね。そういったような側面があるということが一部。
他方で、匿名の、顔を見せない、目と目で見えない言動の中で知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまう、ないしは誤った正義感から社会的な排除を生む言動が生まれるといったような、いわゆる匿名化が非常に緻密になり、その中で人々を傷つけるような言動が生まれてきたというふうに考えます。
そこでは、インターネットのいい側面、表現の自由というものが、かつては、本当は、テレビや新聞等々、いわゆる物を書くとか表現できる手段を持った人だけが実は表現の自由を謳歌していたわけです、それに対してインターネット時代では誰もが表現の自由を行使できる、民主主義の武器を行使することができる側面は、私はやはり積極的に評価すべきだろうと。しかし、他方で、今般の問題では表現の自由というものがまさに、弱者がこの民主主義社会で持つ唯一の武器であるはずのものが弱者を潰すための武器になってしまったというふうな現状をやはり私たちは直視すべきだろうというふうに考えます。
以上です。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
私からは二点あると思っております。
一つは、そもそもSNSというのはやはりスーパーパワーを持ったツールであるということ、これは今も昔も変わらない。それが、例えばどこまでスーパーパワーかというと、ある一人の市民が急に著名な、例えばどこかの国の大統領とか、そういった方にリプライで平気でヘイトスピーチとか攻撃ということをしかけられてしまうというのが今の状況なわけですね。ですから、多くの人が過剰な情報発信力を持っているというのがこのツールの特徴なのかなというふうに思います。
過剰な情報発信力を持っているツール、いろいろないい点があるわけなんですけれども、これが人数が増えてくるとどうなるかというと、その中に一部いる攻撃的な人とか、そういった方たちがどんどん、割合としては少なかったとしても、先ほど私が炎上の研究で申し上げたとおり、仮に割合としては少なかったとしても人数としては増えていくわけですよね。ですから、少人数が牧歌的にSNSをやっていた時代と、ほとんどの人がSNSをやっている今の時代だとそういった攻撃的な投稿というものが目立ってしまう、それは結局、過剰な発信力を悪用する人が出てきてしまうからだというのが一点目です。
もう一点が、SNSというものは大きな特徴を持っています。それは能動的な発信しかない言論空間だということですね。つまり、言いたいことのある人が、モデレーターもいないで、とにかく言い続けられるというのがSNSの特徴です。
例えば、メディアがやっているような世論調査とかは、聞かれたから答えるという受動的な発信なわけですね。だから、社会の意見分布とある程度近くなる。しかしながら、能動的な発信しかない言論空間だと何が起こるかというと、極端で否定的な意見を持っている発信の意欲の高い人ほど大量に発信して、中庸的な意見を持っている人は別にそこまで発信しないし、更に言うと発信すると攻撃されるので発信から撤退してしまうということが起こるんですね。その結果として今、SNS上ではかなり攻撃的なメッセージが目立つということになっているわけですけれども、それは、攻撃的な人が社会に増えたのではなくて、あくまでもそういう人が大量に投稿していて目立っているということなのかなというふうに考えております。
私からは以上です。
○阿部(司)委員 大変参考になる御意見をありがとうございました。
今、山口先生がおっしゃった点、スーパーパワー、こちらは非常に分かりやすい表現だなと思いまして、このスーパーパワーを我々は持て余しているというのが現状なのかなと思います。そういった状況にありまして、そのスーパーパワーの使い方、これってしっかり教育はなされているのかというのが問題になってくるかと思うんですけれども。今般、文科省さんにおきましても、総務省さんにおきましても、またプラットフォーマー各位におかれましてもいわゆるメディアリテラシーの教育をいろいろやられているとは思うんですけれども、これが十分に浸透し、教育ができているかというと、不十分であると思うんですね。
国民、ひいては世界の市民の皆さんで、このスーパーパワーの使い方はやってはいけません、これは効果がありますからうまく使っていきましょうという教育をよりしっかり行っていくべきだと思うんですが、メディアリテラシー、能力向上の方策について参考人の皆さんから御意見をいただければと思います。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
メディアリテラシーの向上は、今回の一連の検討課題の中の一つの重要な指針ともなっておりまして、リテラシー教育について重視されているところですが、おっしゃったとおり、持て余しているのは本当にそのとおりで、今までと違って、親が子供に教えるとか、年長者が若い人に教えるとかという仕組みがうまく回らない世界なんですね、誰も知らないからというところなんです。
なので、そういう意味で、例えば、総務省のリテラシーに関する検討会では、それぞれの年代に対してどういうふうにアプローチするか、何をアプローチするかというのをまだ検討しているところでして、いわゆる大人世代も必要だし、使い始めたお子様世代に対するアプローチも必要だというようなことで、それぞれの世代に対してのアプローチというのが重要かなというふうに今認識されているところではないかなというふうに思っております。
以上です。
○金参考人 今おっしゃられた議論と全く同じなんですけれども、とりわけ、私は大学で勤めているわけなんですけれども、今大学生の中で統計を取ってみますと、パソコンを持っている人たちが減っているんです。それに対して圧倒的に持っているのは携帯です。そういったような状況の中で、学生たちは全ての情報をパソコンではなく携帯で取ります。ですので、携帯の使い方というものが非常に問われてきた、ないしは今も問われている時代ではないでしょうか。
後ほど山口先生からのお話もあるかもしれませんけれども、携帯からの情報というものは、非常に小さい画面でたくさんの情報が出て、しかも時間につれてその情報が変わっていくわけですね。そうすると、どういったようなところで情報のファクトチェックをするかというふうなことが実は大学などでも大きな課題になっています。それはほぼできないんです、先生。何で情報のよしあしを判断するかといったら、自分にとって都合のいい、自分にとって心地よい、すなわち都合のいい情報なんですね。
そうすると、インターネットによって何を私たちは当初求めていったかといったら、情報の流通だったりコミュニケーションの流通だったわけですね。それはまさにコンピューターを使ってファクトを持ってコミュニケーションすることであったはずが、感情、自分にとって都合のいい情報、そして極端な情報というふうな、非常に情緒的な社会ができ上がりつつある。ここが、インターネットによって逆の方向性が、私たちの今直面している社会ではないかというふうに理解しておりまして、そういった中で、私たちの大学でも情報リテラシーを大きな課題として扱っているところです。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
私からは三点あると思っております。
まず一つ目が、多様なチャネルで伝えていくということですね。
どういうことかと申しますと、例えば、私が以前調査したところ、青少年のインターネット利用などなどについて、学校の講座とかチラシとか、あるいはインターネット上の動画とかショート動画とか、そういったもので知りたいというニーズが非常に高かったんですね。
更に言うと、大人の世代だとやはりマスメディアとかというのを結構見ますけれども、子供だと余り見ない。一方、子供は、SNSはいっぱい見ているし、動画共有サービスも見ているということで、昔と異なって、ある一つのチャネルで発信すると多くの市民に伝わるというような状況ではないということを理解した上で、様々な人に情報を届けるためにも多様なチャネルで啓発していく、これが非常に重要だと考えております。
なぜかと申しますと、SNS上の誹謗中傷という問題あるいは偽・誤情報などの問題は、青少年だけではなくて、老若男女問わず、全ての人が関わる問題だからですね。だからこそ多様なチャネルで伝えていく。
二つ目が、インフルエンサーの活用です。
現在、既にもう第二弾が出ておりますけれども、ある動画共有サービスの運営企業と総務省さんと私どもで組みまして、インフルエンサーの方と組んで啓発のショート動画というものを作成したんですね。第一弾は偽・誤情報というテーマで、第二弾が誹謗中傷だったんですけれども、第一弾では八名のクリエーターの方と組みまして、一分のショート動画の中に偽・誤情報に関してこういうエビデンスがありますよとか、こういうふうなことを言ってほしいなということを提示して、あとは自由に作ってもらうということでキャンペーンをしました。その結果、何と今はその八名の方の動画の合計再生回数が千万回ということで、若い世代を中心に多くの人に届いて、しかもコメント欄では非常に好反応があるというふうになっております。こういったような施策も効果があるかなというふうに考えております。
三つ目、やはり最終的には教育課程に入れるというのが最も重要であると考えておりまして、私が考えているのがメディア情報リテラシー教育というものを体系的に教育課程に入れるということですね。これはあくまで私の個人的な意見となりますけれども。難しいことは重々承知しておりますし、また、現在既に、情報モラル教育ということで、例えば誹謗中傷的なものを投稿してはいけないとかそういったこと、あるいは誘い出しのリスクとかそういうことの啓発がどんどんどんどん進化しているということは理解しております。
実は、今の例えば大学生になった二十歳前後の人たちと今の高校生の習っている内容すらかなり違って、今の高校生が知っていることを今の大学生は習ったことがないですというようなことも起こっているぐらいどんどん進化している。これは私はすばらしいことだと思います。しかしながら、更に一歩踏み込んで、情報空間の特性とか、発信する内容はどういったものがいいかとか、そういったものを体系立てて啓発、教育するような仕組み、これが欠かせない時代なのかなというふうに考えているんですね。
こういう話をすると、例えば、以前、某省庁上がりの方からこんなふうに言われたことがあるんですね。言っていることはよく分かる、しかしながら防災の研究をしている人は防災教育を入れろと言ってくるし、それぞれの専門家がそれぞれのものを教育課程に入れるべきだと言ってくる、既にきつきつなのに、更に追加するのはすごく大変なことなんですというふうに言われて、まあ、それはそうだなというふうに思ったところです。
しかしながら、考えてみれば、私たちは今、算数、国語とか、あるいは数学とか国語とか理科、社会とかそして英語とか、いろいろ習うわけですね。こういったものを私たちが教育課程で習う理由は、それを習うことが一人一人にとってもちろんプラスになる、それを知っていることがプラスになるだけじゃなくて、その知識のある人、その能力のある人が社会に増えることが社会全体にとってプラスになるからです。
私は、メディア情報リテラシーというものは、今、そのレベルに来ていると思うんですね。一人一人がそれを身につけることが、その人がだまされない、その人が他人を傷つけない、そういうことにつながるだけじゃなくて社会全体にとって大きなプラスになるというふうに考えておりますので、そういう意味でも、やはり教育課程に入れるというのが私はすごく大事なことなのかなというふうに感じております。
以上です。
○阿部(司)委員 大変参考になるお話をありがとうございました。
最後の質問なんですが、私、このSNSというのは使い方を間違えると本当に民主主義の危機に陥ると思います。今、まさしく陥りかけているのではないかなと思います。また、他国からの、いわゆるハイブリッド戦争を仕掛けられて、それによってコントロールされてしまうというリスクもありまして、有効なものであると同時に危険なものであると思うんです。今回の法改正で第一歩を、個人の権利を守るということが一歩進んだと思うんですけれども、今後更に検討していくべき課題ですね、偽情報ですとかフィルターバブルですとか様々な分断、いろいろあると思いますけれども、山口先生、最後に、この次にやるとするならばどういったルール整備が必要か、あと一分なので端的に御意見をいただけたらと思います。済みません、よろしくお願いします。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
一分ということで手短に申し上げますと、もちろん、今申し上げたように、教育とか、プラットフォーム事業者との連携とか、業界団体との連携とか、さらに政府の法律とか、様々な面から検討していく必要があると思っております。
私が今一番重要だと思っているのが、生成AI系の偽・誤情報問題、あるいは生成AIを活用した中傷とかが今後技術革新とともにどんどん増えていくということですね。ですから、そこに関する何かしらの仕組みが必要なのか、あるいは仕組みじゃなくて何かしらを要請ベースでやるのかとか、そういった議論をどんどんしていくべきだというふうに思います。
私からは以上です。
○阿部(司)委員 終わります。ありがとうございました。
○古屋委員長 次に、平林晃さん。
○平林委員 公明党の平林晃と申します。
参考人の先生方におかれましては、本当にお忙しい中、国会までお越しいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。また、先ほどから本当に様々、示唆に富む御意見をいただいておりまして、本当に勉強させていただいているところであり、この点に関しても改めて感謝を申し上げます。
私の方からも、本当にちょっと基本的な部分、また、かぶる部分もあろうかと思いますけれども、様々聞かせていただけたらというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。
先ほどから一つ論点になっているというか、議論のベースにあると思うところが、権利侵害と表現の自由のバランスであろうかというふうに思います。個人的には権利侵害を受けている被害者に寄り添いたいと思うところではございますけれども、その一方で、表現の自由、これは大変重要な権利であり、先ほど金参考人も、今までは一部の人によってしか使われていなかったものがSNSによって万人に開かれた、こういうような御意見もあって、本当になるほどなというふうに思って聞いていたところでございます。
それぞれの参考人にお伺いしたいところになりますが、皆様全員にお聞きしようと思うんですけれども、バランスに対する参考人個人のお考えと、バランスという観点から見たときに今回の法改正を、先ほどの議論からポジティブに受け取られているというのは理解しているんですけれども、バランスという御自身の見地から見たときに今回の法改正をどのように評価しておられるのか。順によろしくお願いいたします。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
バランスは非常に重要だと思っておりまして、私、相談を受けたりする立場からすると、被害者の状況は、本当に気の毒だなと思われるような状況もございます。そういう意味で、権利侵害が明らかな方は速やかに対応をされるということが非常に重要だと思っております。それと同時に削除等が行き過ぎないようなバランスというのが非常に重要だと思っておりまして、そういう見地から検討しますと、権利侵害情報について迅速化を義務づけ、全般的に透明化を義務づけるという今回の改正は、その両方に対し細かく目配りをされている法案ではないかなというふうに私は評価しております。
以上です。
○金参考人 表現の自由と権利侵害との関係で申しますと、まず、まずもってこの社会が自由主義社会であり民主主義社会であるというふうなことでいうならば、私たち市民が唯一、社会に参加し、社会に決定する唯一の手段はしゃべることなんです。その意味では、まさに表現の自由というものは私たち市民にとっての唯一の武器であり、手段、ツールである。その意味では、表現の自由というものに対して、いささかも譲ることができない権利として私たちは常に肝に据えておくべきでありましょう。
他方、それを濫用するというふうなことが私たちの社会の中で現実に起こっているということも事実なわけであります。そういったようなことによりまして様々な被害者が泣き寝入りをする、また、私の意見にもありましたように、なかなか日本では、名誉とかといったような権利についてなかなかまだ捜査機関における認識が甘い、ないしは重大性に対する認識が低い点はやはり否めないと思うんですね。そういったようなところが、被害者が泣き寝入りせざるを得ない、ないしは被害者が自分の生命や身体を害するに至るような事態に陥っているということも他方で否定することができません。
また、インターネット上の言論の問題におきましても、表現の自由というふうなものが常に全て一〇〇%認められるものではないというふうな認識というものは私たちは改めて考えるべきではないかというふうに理解しております。
そういった中、例えば先ほどから私が説明しているようなヘイトスピーチというふうなものでは、例えばヨーロッパ諸国では、何が侵害されているのかというと人間の尊厳なんだ、同じ人間であるということが否定されているんだと。そういったようなことがまさに表現の自由として認められるのかというと、それはノーであるというふうなのがいわゆる世界的な認識ではないでしょうか。そういったような中で表現の自由と権限の行使とその濫用というものを常に意識しながら、私たちはインターネットの問題も考えていく必要があるというふうに理解しています。
以上です。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
そうですね、まさに権利侵害、そして被害者救済というところと表現の自由というところのバランス、これは極めて重要だというふうに私も考えております。
昨今の文脈でいう表現の自由の議論というのは三つあると思っていて、一つがもちろん政府による表現の規制、そういったことにつながらないように法律というものはバランスを取る必要がある。二つ目が、プラットフォーム事業者による恣意的な削除とかあるいはオーバーブロッキングのようなところ、こういったことも懸念されるので、過剰にプラットフォーム事業者に権力を持たせるような法改正というのは逆によくない。三つ目、あとは、力を濫用する一市民といいますか発信者ですね。先ほどから繰り返し申し上げているとおり、人々の発信によってほかの人の発信が抑制されてしまうという、それもやはり問題であるので、それも抑制したいというところで、三つの観点があるかなというふうに思っております。
そういったところでまいりますと、今回の法改正は、大規模事業者の対応において迅速化規律というところと透明化規律というところの二点に絞って行っているということを考えますと、まず、申し上げた政府による悪用とかあるいはプラットフォーム事業者による悪用ということもかなり考えにくいもので、一方で、被害者救済という意味でいうとしっかりとなされているというふうに考えておりますので、意義のあるものかなというふうに思っております。
以上です。
○平林委員 ありがとうございます。
表現の自由、それとともに被害者の権利に対してもバランスを取っている法制であるというふうに評価していただいているということでおおむね理解させていただきましたし、あと、本当に表現の自由の大事さというものも、私の中でもより理解を深めさせていただきました。ありがとうございます。
続きまして、上沼参考人にお聞きさせていただければと思います。
今回の改正案は、大規模特定電気通信役務提供者に対して様々義務が課せられる、対応の迅速化というポイントで削除申出窓口等々、また、透明化ということで削除基準の策定、公表等々ということであるわけです。この大規模という点は、先ほども少し議論があったわけですけれども、ユーザー数とかあるいは発信数ですかね、それで規定をされるということである、ここは当然私は異論はないんですけれども、一方で、それだけでいいのかという、中小のプラットフォーム事業者に対する問題意識というところもございます。
私、その点について素人的に考えたところですけれども、一つ、今回の義務の中で体制の整備ということがあるかと思います。この整備は、人的、あと経済的、どっちにも負担が出てくるというところで、やはり大規模事業者じゃないと対応できないというところはあると思います。そういった意味において、例えばですけれども、小さなところでも集まって一つの組織をつくるとか、そういうようなことで何か負担を軽減するような工夫を導入したりして、それは一つじゃないかもしれませんけれども、そういう工夫をすることによって負担を減らすこともできるのではないかなというようなことも考えております。
また、先ほど閾値ということも少しおっしゃられたと思うんですけれども、その点もどの程度を、今政府の認識では一千万ユーザーみたいなことを想定しておられると思うんですけれども、この閾値という意味も含めて、二点、上沼参考人にお聞きできればと思います。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
まず、小規模事業者さんの共同とかに関して申し上げますと、今回の検討では、小規模事業者さんが自主的に行っていただくことはむしろ望ましいと思っておりまして、小規模事業者さんが自分たちだけでは効率的ではないということで、一緒に集まって何らかの共同関係を築いていただくということがあるのであれば、それは是非歓迎したいなというふうに思っています。ただ、法律上の義務としてはしていないというだけですので、今後の方針として、もししていただけるのなら、むしろ歓迎だというところです。
あと、大規模事業者さんのサイズに関して言うと、どこで切るかという問題なんですが、ただ、いわゆる誰でも知っている大手事業者さんは恐らく閾値は超えているというふうに考えられますので、そこが全部入るような形であれば対象として適切なのではないかなというふうに思っているところです。そういうところじゃないと、法執行の面でもなかなか、細かいところまで全部やると政府のリソースも難しいかなとちょっと個人的には思っておりますので、そういうものも含めてユーザー人数とかで検討するというのはいいのではないかなと思っております。
以上です。
○平林委員 ありがとうございます。
関連してといいますか、諸外国の状況に関して、先ほどから議論が出ておりますけれども、例えば、EUではデジタルサービス法ですかね、米国は昔からある法律の通信品位法ですかね、そういったものでの対応がなされているということなわけですけれども、ここでも規模のこととかが設定をされているというふうにお聞きしていますが、こうした主要国、地域における法整備の概要と、これらと比較して、今回の改正案を含めた日本の法整備をどのように評価しておられるのかという点、できたら上沼参考人と山口参考人にこの点をお聞きできればというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
外国の、例えばデジタル・サービス・アクトに関して申し上げますと、デジタル・サービス・アクトの中にあるプラットフォーム事業者に対する規律に関しては、おおむね重要な部分は今回の法律の改正案の中に入っておりまして、入っていないのは、今回の検討の中で表現の自由に関してもう少し慎重な検討が必要だと思われる公的機関からの要請に対する対応とか、そういう部分なんですね。なので、そういう意味では大体、海外と同じぐらいのレベルになっているのではないかなと思います。
アメリカに関して言うと、統一連邦レベルでは、先ほどおっしゃっていただいた通信品位法とかですけれども、通信品位法はどっちかというとプラットフォームの責任を免じる方向というか、出版者として扱わないよという法律なので、少し方向性が違うようなところかなと。ただ、カリフォルニア州法レベルとかではもちろんそういうような検討はされていて、それと同じような規律は今回の方策でも入っているというふうに認識しております。
以上です。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
私は法律家ではございませんので、あくまでその目線でお話をさせていただきますと、今、上沼参考人からもお話のあったとおり、特に例えば意識されがちなEUのDSAとかそういったものと比較して、重要な箇所というものはエッセンスとして入っている、今回の法律案に入っているというふうに考えております。
また、例えばドイツのネットワーク執行法の議論とかも出ましたけれども、そういったものに比べて例えば過料が結構違うとか、そういったこともあるかと思いますが、私の個人的な意見とすると、今回の法案というものは表現の自由とのバランスが極めていいものだというふうに理解しておりまして、そういう意味でいうと、いいとこ取りをしているんじゃないかというのが私の見解でございます。
以上です。
○平林委員 ありがとうございます。
続きまして、金参考人にお聞きできればと思います。
先ほどの意見開陳、非常に精緻な御議論をいただいた上での質問で、ちょっとざっくりとした質問で恐縮なんですけれども、私も地元で、中国地方なんですけれども、被差別部落に関しまして御意見をいただいておりまして、解放同盟の方と意見交換をさせていただいております。なかなか人権法制の状況が芳しくないこととか、部落差別解消推進法の罰則規定のこととか、こういったことを指摘しておられました。その上で、当然、主眼はインターネットの上での差別行為である、プライバシーの侵害等々である、こういうことをおっしゃっておられるわけで、今回のプロ責法の改正というものに対する期待を述べておられたわけでありますが、ちょっと本当にざっくりとした質問で恐縮なんですけれども、今回の改正案はそうした部落解放同盟の皆様の思いに応えたものになっているとお考えでしょうか。お聞かせください。
○金参考人 今回の法案、例えば土地識別情報に関連しまして特定の人の情報に、特定の人の権利侵害に結びつくというふうなことであるならば、それは一つ、削除の対象になるだろうというふうに私は考えます。また、既に従前に非訟手続等々がございますので、その点は問題ないというふうに考えています。ただし、被差別部落全般の情報についてどのように今回のプロバイダー責任制限法の中で扱われるのか、また、各プロバイダーのコミュニティーガイドラインでどのように被差別部落情報に対する取扱いが行われるのかということが実は注目されるところだと思います。
それは、例えば、調査専門員を設けるというふうに新たな法案では書かれているんですけれども、どのような知識を持った専門家を要請するのか。すなわち、ここは非常に重要な問題ですけれども、法律家を専門家として雇用するのか、それともいわゆる社会学者ないしは歴史学者を雇用するのか、ないしは非専従としてその都度都度情報を寄せるのかというところが注目すべきところでございます。
これについても、新たな法案では、誰を雇用したのかというふうなことをちゃんと報告しなさいというふうに各SNS事業者には求めていますので、そこは非常に注目すべきところで、そこは実は今回の法案の大きな論点になっているかと思います。
○平林委員 ありがとうございました。
ほぼ時間になりましたので、私の質問は以上となりますけれども、本日、参考人の皆様からいただきました貴重な御意見、明後日の法案審査にしっかりと生かしていくということを申し上げまして、私の質問を終わります。大変にありがとうございました。
○古屋委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
三人の参考人の先生方、誠に貴重な御意見、ありがとうございます。
実は私は、二十三年前にこのプロバイダー責任制限法というものを作ったとき、参議院議員でしたけれども、最初に審議に当たった本人なんですね。二〇〇一年十一月六日の議事録を懐かしく読んだわけでありますけれども、こう言っています。「名誉毀損やプライバシーの侵害などから国民の権利をどのように守るのか、自由な言論、市民の情報発信の権利と機会をいかに拡大するのか、こういう大きな観点から見るならば、」この当時の法案ですよ、「本法案はプロバイダー営業保護法案とでも言うべき範囲の狭さを指摘せざるを得ないものになっております。」と。
本当にこの先、ネット社会というものをどう人類の文化と民主主義の発展に資するものに育てていくかという点での大きな視野からの検討がまだまだ足りないんじゃないかということを当時申し上げて、それから二十三年たって、今回こういうふうにプロバイダー責任法という、法律名も変えてプラットフォーム事業者の自主的な規律をという点での発展に至ったということは感無量なものがございます。
そこで、もちろん一番の論点は、表現の自由と被害の救済といいますか、そういうことになってこようと思うんですけれども、これをしっかり議論されてバランスの取れたものになっているというのが大体先生方のお話だったと思います。
そこで、まず上沼参考人にお伺いしますけれども、プラットフォームサービスに関する研究会の第三次取りまとめを見ておりますと、しかしながら、被害の届出、要請に応じて自動的、機械的に削除するということをプラットフォーム事業者に義務づけることについては、公的機関等からの要請があれば内容を確認せず削除されることにより利用者の表現の自由を実質的に制約するおそれがあるため慎重であるべきであるという結論が書かれておりますし、先ほども、ノーティス・アンド・テイクダウンについて、直ちに削除というのは問題が多い、こういうお話がございました。
この辺りの判断について、まず上沼参考人からお話をお聞かせいただきたいと思います。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
まず、公的機関からの削除要請に関して言うと、公的機関が既に存在する情報の削除を直接要請して、それについて判断なく削除を認めるということになると、公的機関が直ちに削除できるということと同義になりますので、これは公的機関による検閲とか事前抑制とかにつながりかねない結果をもたらすというふうに考えましたので、そこについては日本の法律としては適切ではないのではないかなというようなことを考えた結果としての今の状態であります。
あと、ノーティス・アンド・テイクダウンに関しては、二〇〇一年の検討のときに携わられたということであれば、そのときにも似たような議論がされているのではないかと思いますが、プロバイダー責任制限法のモデルとしたDMCA、デジタルミレニアム著作権法ですね、あれはノーティス・アンド・テイクダウンなんですけれども著作権に限っているので、なので、そういう意味で、民主の過程に関わる情報発信が日本のプロバイダー責任制限法よりは少ないだろうという価値判断があったわけです。
日本のプロバイダー責任制限法は、権利侵害情報一般に関わりますので、名誉毀損、プライバシー侵害に関しては、それが例えば公的な機関に対するものとか、そういうものも含まれることになります。そうなりますと、それが直ちにまず削除という話になると、それは表現の自由なり民主的な過程に対する非常な萎縮効果をもたらすことになるというふうに考えられますので、ノーティス・アンド・テイクダウンという方策はここでは取られていないというような形になっております。
以上です。
○宮本(岳)委員 そういう意味では、私は、今回の法案に罰則が盛り込まれたということについて最初は随分検討を私たちも重ねたんですね。それが、何らかの形での表現行為が罰則によって規制されるということがあればこれは重大なことでありますけれども、今回の罰則というのは、自主的なルールを大規模プラットフォーム事業者に作ってもらって、あらかじめ公表もしてもらう、そして対応についてのルールも明らかにしてもらう、そういうことをやってくださいよということを全体としてお願いしながら、それが守られなかった場合に例えば勧告であるとか命令であるとかという形で、報告を求め、勧告をし、命令という形で重ねた上で、最終的な実効性の担保のためにということになっていようかと私たちは受け止めております。
直接プラットフォーム事業者を国が罰則でもって規制するというようなことは私は日本の憲法上許されないというふうに思うんですが、この点については、では三人の参考人の皆様方、順々に、そういうことは許されないというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
今回の罰則のたてつけに関しては、おっしゃっていただいたとおりでして、直接、例えば削除したり削除しなかったりしたことについての罰則というわけではなくて、あくまでも、御自分で作ったルールを明らかにしてくださいとか、そういうことについて、それに実効性を持たせるためのものとなっております。
表現行為についての削除や削除しないという判断そのものを罰則の対象にしてしまうということは、非常に表現の自由に対する侵害となる可能性が高い行為だというふうに認識しておりますので、そのようなことにはならないようにというふうな配慮はされていると思います。
以上です。
○金参考人 今回の法案は、先ほど申しましたように刑事規制立法になったわけですね。拘禁刑も定められています。また、罰金刑というふうな形で、行政罰であるいわゆる過料ではなくなりましたね。そこはやはり今回の国会、立法者の強い意思を見ることができるかと思うんです。
ただし、今回の刑罰の対象というのはあくまで、SNS事業者が自ら作ったコンプライアンスプログラム、これに対する違反なわけですね。それをどれだけ遵守しているかという、そこにまずは改善を置き、そして改善に従わなかったときに命令し、最後に罰則の適用を検討するという、いわゆる直接罰方式ではなくて間接罰方式を取っているというふうなことでございます。今回は、罰金の額もそうですけれども、非常に慎重に慎重を期した立法の作りではないかというふうに考えております。その上では、非常に合理性を担保しているというふうに私は理解しております。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
私からは三点ございます。
まず一点目、罰則のたてつけというところに関しますと、まさに御指摘のところかなというふうに考えております。既に各参考人がおっしゃっているところですので私からは割愛いたしますが、とりわけ、あと、例えば罰則についても、多額の過料を科すとかという話になってくるとやはりオーバーブロッキングの懸念とかも出てきますので、そういう意味でも、今回かなり慎重を期して、バランスということに注目して法律案というものが出てきたのかなというふうに考えている次第です。
二点目に関しまして、御指摘のとおり、言論の場となっている民間事業者に対して、判断そのものに対して罰則を設けて介入するということ、これは極めてリスクの高い行為ですので、あり得ないというのは私も同意するところです。
三番目、この問題は、もちろん今回はプラットフォーム事業者が議論のメインとなっておりますのでプラットフォーム事業者の話をするわけですけれども、事業者だけでどうこうというような問題でもないんですよね。例えば私が提示しましたインターネット上での誹謗中傷経験率のデータがございましたが、これが何と、インターネット以外、つまりリアルの社会でどんな経験がありましたかというふうに調査すると、何とインターネット上のたしか二倍弱ぐらいの経験があるんですね。つまりインターネット以上に現実社会で誹謗中傷されているというふうに答える人が多いということで、誹謗中傷というのは、インターネットはもちろんですが、インターネットだけじゃなくて社会全体の課題であるというふうに私は非常に理解しているところです。そういう意味でいっても、多角的なアプローチは極めて重要でして、情報の生態系全体について、プラットフォーム事業者に今回はフォーカスして規律というものを作っているわけですが、その他の手段も併せて社会全体としてこの問題に取り組んでいくということが何よりも大切かなというふうに考えている次第です。
以上です。
○宮本(岳)委員 やはり被害は深刻なものは深刻でして、私の同僚議員、うちの党の議員も成り済ましのような形の被害があって、これが大規模プラットフォーム事業者はなかなか改善してくれないということで、そういう質問も先日御本人がされておりましたけれどもね。なかなか、相談、そういうことを申告する、届け出る窓口がよく分からないとか、日本語で書かれていないということから分かるように、まさに大規模プラットフォーム事業者というのはグローバル事業者ですよね。そういう点で、これの実効性、先ほど、そういう枠組みでの、罰則も含めてということですけれども、しかし、一方では、我々はグローバルでやっていて日本の法律に縛られる筋合いはないんだという言い分というものが出てくる可能性がないのかなとちょっと心配するわけであります。これは上沼参考人に、グローバルな事業者に対してどう実効性を担保していくのかという点ではどういう検討がなされたんでしょうか。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
グローバルな事業者さんが多いというのはおっしゃるとおりなんですけれども、検討会の場では、日本で事業をしている以上、日本の法律に従っていただくのは当然でしょうという前提でおりましたので、そういう意味で、グローバルな事業者だから緩くなるということは全然なくて、むしろグローバルな事業者にどう日本の法律あるいは日本の社会に対応した対応をしていただくのか、そのための実効性をどうするのかというような形での検討をしておりました。それが今回の例えば調査員の選任の義務とか、そういうような形で立法化されているという認識でございます。
以上です。
○宮本(岳)委員 今出ている事業者、想定される事業者というのは、今お話があったように、日本国内での連絡先も全部明かしてもらうというようなことで対応していくということでしょうけれども、ただ、こういうものができますと、それをすり抜けるような大規模プラットフォームというものができてこないのか。つまり、逆にそれをすり抜けるために様々な知恵を持ち出してくるということがあり得ないわけではないでしょうけれども、最終的にそれをどうにかするというのは可能なんでしょうかね。上沼さん、もう一言。
○上沼参考人 いわゆる脱法行為の検討があるというのはどの法律でもあるかなと思っていまして、やはりそれは、そのような行為ができたときにそれに対応して最も適切な対応方法を考えるしかないのかなというふうには思っております。そういう意味で、今現在検討される今現在の対応に対する対策というふうに考えている次第です。
○宮本(岳)委員 先ほど上沼参考人も、一方では社会が寛容でないような気がするという言葉も少し出されました。
それから、山口先生のお書きになったものを読ませていただきますと、まさにアテンションエコノミーであるとかフィルターバブル、エコーチェンバー、こういったものが特にネット社会に特有の現象として指摘をされております。これはなかなか重要な論点だと思うんですよね。
こういうものについてどう対応していくのかというのは、これからのネット社会の、私が二十三年前に、そのときのプロバイダー責任制限法ではプロバイダー事業保護法にすぎないと言ったその立場から翻れば、こういう問題にどう対処していくのかということこそ本当に今我々が考えなきゃならないことだと思うんですけれども、この点について、口端に上せられた上沼参考人と、そして山口先生から少し御意見を御開示いただきたいと思います。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
フィルターバブルとかアテンションエコノミーとかに関する問題は、インターネットの根本に関わる重要な問題であると認識はしておりまして、ただ、これをどう規制するのかは非常に難しい問題だと思うんですね。
なので、まずはユーザー個人が適切に情報を取捨選択できるようにするということを前提に、例えば、それを教育、システム、あるいは法制度が使えるのであれば法制度という形で多角的に検討していかないと、ここはまさに民主的基盤に関わる問題だと思っておりますので、喫緊の課題だなというふうには認識しているところです。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
私からは、時間の都合上、一つのテーマに絞ってお答えさせていただきたいと思います。
私が昨今特に注目しているのがアテンションエコノミーというテーマです。
アテンションエコノミーについて簡単に申し上げますと、関心経済というふうに訳せるわけですが、要するに、情報があふれる高度情報社会において人々の注目をぱっと引くということがお金につながるというような議論ですね。例えば、昔であれば、ネットメディアのあおり見出しとか、そういったことがよく問題になったわけですね。つまり、中身と全然違うあおり見出しをつけることによって、あるいは過激な見出しをつけることによってページビュー数を稼いでお金をもうける。こういったことが非常に問題になっていたわけですが、昨今更にこれが加速しています。なぜか。どんどん個人レベルに落ちてきているんですね。
例えば、動画共有サービスでは、個人が動画を投稿してお金を得るということが可能になっています。その結果として、例えば暴露系とか迷惑系とかあるいは私人逮捕系とかいろいろなジャンルができていますけれども、共通しているのが過激なコンテンツということですね。こういった過激なコンテンツをなぜ作るかというと、結局、ビュー数を稼いでお金をもうけたいという意思なわけです。
ところが、去年、ここに更に大きな動きがありまして、Xで収益化プログラムというものが出てきたわけですね。これはすごいことでして、要するに、百四十字の短文を投稿すると、それのインプレッション数を稼ぐことでお金がもうかるというようなことなわけですね。動画と何が違うかというと、投稿する難易度並びにコピーする難易度が全く違うわけです。
ここに来て、アテンションエコノミーはまさに裾野が物すごく広がって、誰もが自由にこのアテンションエコノミーという中に参入できるという時代になりました。その結果として、例えば能登半島地震では、国内外で偽の救助要請などなどが投稿されまして、それによって混乱が生じたということがありました。
ですから、こういったものの対策、例えばそういう投稿をしている人を迅速に規約違反ということで排除するとか、そういった様々な規律とか、あるいは偽・誤情報を公開しているウェブサイトへの広告収入の停止とか、そういった様々な対策を積み重ねていくということが今後求められているかなというふうに感じております。
以上です。
○宮本(岳)委員 時間が参りましたので、終わりたいと思います。
三人の先生方、誠にありがとうございました。
○古屋委員長 次に、西岡秀子さん。
○西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。
三人の参考人の先生方には、本当にお忙しい中にお越しをいただきまして、大変貴重な御意見をいただいております。心から感謝を申し上げ、若干かぶります質問もあるかというふうに思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、山口参考人にお尋ねをさせていただきます。
冒頭、今のインターネット上の様々な問題の中で特に青少年で深刻な誹謗中傷の被害があるという言及がございまして、その中で人の命そして民主主義への社会的な大きな影響があるということで言及がございました。
これまでの質疑の中でも、被害者救済と表現の自由のバランスというのが大変重要でありまして、この表現の自由をしっかり担保していくということは大前提なんですけれども、被害に遭っている方々の深刻な状況を考えたときに、特に誹謗中傷に耐えられず若い貴重な命を自ら絶つ事例も今多く起こっている中で、この法改正において様々な対策が取られますけれども、実際に誹謗中傷の侵害情報として断定をされれば削除されるわけでございますけれども、なかなか、文言を含めて、削除するという判断がされないままにネット上にずっと拡散し続けられるという、このことも大変大きな問題だと私は考えております。このことに対してどのように対応していくべきかということについて御意見をいただければというふうに思います。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
御指摘のとおり、被害者の心情というものを考えますと、被害というものは計り知れないものがあるというふうに私は理解しております。亡くなるケースもありますし、亡くならないケースでも深刻な被害を受けているというような例を私も見ております。とりわけ青少年でそういったことが起こる率が高いということも一つ大きな問題だというふうに私も理解しております。
他方で、繰り返し私も表現の自由というところを申し上げているとおり、自由な言論の場である程度自由に発言できるように担保するということも極めて重要なことだとは思っておりまして、今、被害者という話をしておりますが、正当な批判であったとしてもそれを例えば通報された、それによって自分のものが削除された、削除された理由も分からなくて復活しない、こういったケースもかなり多いんですね、実は。そういう立場になるとそれはそれでやはりかなり心情的にはつらいものがあるということですので、そのバランスを取るということがやはり重要になるのかなというふうに考えております。
今回の法案で申しますと、迅速化規律というところが一つ入っていますので、かなり早く対応していただくというところ、並びに罰則がありますよね、透明化規律というところもあって、恣意的な運用をさせないというところ、さらに、どういう基準かということが明確になるということ、そういった点はかなり評価できるのではないかなというふうに考えております。これによって被害者が救済されるのかどうかということは、今後、法律の効果をよく観察し、定量的にも定性的にも分析すること、これが極めて重要だというふうに思っております。やはり被害者救済ということが非常に重要ですので、そこの点はそうしていただきたいなというふうに考えている次第です。
以上です。
○西岡委員 ありがとうございます。
先ほど、山口参考人からも、しっかりこの運用を評価、検証していくことと、誹謗中傷の実態を適宜調査していくことが必要だというお話がございましたけれども、参考人のお立場で具体的に評価の在り方ですとか調査のやり方等について、もし御見解があれば教えていただきたいと思います。
○山口参考人 ありがとうございます。
幾つか考えられますが、例えば、私は定量分析屋ですので定量的な話で言いますと、誹謗中傷の経験というものについても定点観測していくということですね。つまり、毎年毎年、継続調査を重ねていって、その量がどうなっているかということを観察していくこと、これが極めて重要だと思います。
更に踏み込んで申しますと、例えばサービス内での通報機能の利用ですね、申出の方法を公開するとかということで簡便になるはずなので、そういったような機能の利用状況とか、被害を受けたときに警察に相談したかとか、あるいは相談窓口ですね、業界団体の相談窓口に相談したかとか、そういった動向がどうなっているかということの調査、これも重要だというふうに考えております。
この法律施行後にそういった件数が増えれば、やはり分かりやすくなって皆さんよかったんだなというふうになりますし、そうじゃなければ、これだけでは駄目なんだなという議論ができるかもしれません。更に言うと、こういった法改正によって人々が安全に言論の場を使えているかどうかということ、市民の法律に対する評価というものも調査していくこと、これが極めて重要なのかなというふうに考えている次第です。
以上です。
○西岡委員 ありがとうございます。今御指摘いただいた点を含めて、しっかり今後取り組んでいかなければいけない課題であると認識をいたしております。
それでは、上沼参考人にお尋ねをさせていただきます。
様々なこれまでの議論の中で、特に青少年の誹謗中傷被害対策についてどのような議論があったのかということ、また、今回、相談窓口が分かりにくいという中で法改正がなされているわけでございますけれども、誹謗中傷を受けている青少年を含めて、全ての方にとって相談する窓口の重要性というのは大変重要だというふうに思いますけれども、相談窓口の拡充やしっかり強化していくことについてどのような議論があったかということについて、併せてお伺いをさせていただきます。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
相談窓口の重要性は今回の検討会の前からかなり議論されていまして、この検討会の前に、「No Heart No SNS」という特設サイトが設けられていたり、どのような場合にどの相談機関を利用できるかというような一覧表が作られていたりというような対応がされているところです。それでもまだまだ不十分だということで、一応、例えば電話対応をするのはどうかとかという議論はされてはいるんですけれども、ただ、今回の議論の中で、例えば電話対応を義務づけるとかいうところまでは入らなかったというようなところです。
相談対応がどうなっているのかというのはユーザーからすれば重要なところですので、きちんと事業を行う事業者であればそれなりの対応をしてくださるようになるのではないか、そうでなければユーザーが減ってしまうんじゃないかなと個人的には思っているところです。そういう意味で、自然的に収れんしていくのかなというふうに期待しているところです。
○西岡委員 今、相談窓口については従来から議論があるということでおっしゃっていただいたんですけれども、様々な相談窓口が持っております情報ですとかノウハウについての横の連携強化、また共有をしていくということも大変重要な視点ではないかというふうに思っております。
続きまして、金参考人にお伺いをさせていただきます。
これまで、ヨーロッパの例を含めまして、二十四時間対応、そして七日間、それでも難しいときは独立した機関が判断をするということについての御紹介があったわけでございます。表現の自由とのバランスということもありますけれども、迅速な対応ということも一方でやはり必要なことであるというふうに思います。重ねての質問になりますけれども、この辺りにつきましての金参考人の御見解をお伺いしたいと思います。
○金参考人 もちろん、先生がおっしゃられますように、表現の自由というものがまず大前提にございます。他方で被害者の権利救済というふうな視点が、それは昔から、これが民事上の損害賠償の問題であれ、刑事規制の問題であれ、あったわけであります。
しかし、改めて申しますと、インターネット上でなぜ二十四時間という、聞いたところ非常に短い、短時間で規制しなければいけないのかというふうなことは、オフラインとは違った、インターネット上の特殊性に照らした対応が必要であるというふうな点に私たちはやはり着目すべきだろうというふうに思います。これも繰り返しになりますけれども、現実の世界ではできないコピー、ペースト、またシェアという非常に便利な機能、これがどんどんどんどん、次から次へとされていく。そしてまた、もう一つは、例えば先生も御存じのように、他人の情報をコピー、ペーストすると、自分がそれをまた処理できるわけですね。それはもう発信者は自分では処理できないわけですよ。そういったようなことが二十四時間以内ないしは一週間以内に繰り返されるというふうな点をやはり私たちは直視すべきだろうというふうに思います。
山口先生のお話にもありましたように、確かにそのような発信をする人たちは少数でしょう。しかし、それにあおられた大多数の人々がいるというその背景を、私たちは、より、もう一つ見るべき点として考えるべきです。それが、例えばヘイトスピーチであれば差別扇動というふうな言葉に、この間のヘイトスピーチ解消法での立法にも表されていることかと存じます。
そのような意味で、今回の法案で十四日以内とありますけれども、具体的にどの期間と総務省令で定められるのかというふうなことは、この総務委員会でもより深く議論していただきたいところでございます。
○西岡委員 重ねまして金参考人にお伺いをしたいというふうに思いますけれども、先ほど意見陳述をいただいた中で、総務省令で定めるという言葉が大変多く、いわゆる白地立法の問題ということを御指摘されておりますけれども、このことについて御見解をお伺いしたいと思います。
○金参考人 この点についても、私は総務省令というふうに言いましたけれども、これはできる限り避けるべきだと思います。刑罰というのは、行為が行われる事前に全ての市民にどういう行為がどういう要件で規制の対象になっているのかということを示す必要があるわけです。これは憲法上の要請でもあります罪刑法定主義の要請なんですね。
今回の法律は非常に一定厳しい罰則として刑罰が規定されていますから、従来の過料とは異なる立法態様ないしは規制態様が必要だろうというふうに考えます。そういったような意味から、今回の改正法は非常に大きな一歩というふうに言えますけれども、他方で刑事立法である限り、このような白地立法への危機感をこの総務委員会でも持っていただきたいというふうに思います。
○西岡委員 ありがとうございました。
続きまして、上沼参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。
プラットフォーム事業者が例えば権利侵害性の有無がなかなか判断できない、困難な事例というのも大変多く存在するというふうに思っております。様々これまでも議論があっているというふうに思いますけれども、ノーティス・アンド・テイクダウンにつきましてはやはり慎重な議論があったということで御紹介がありました。
一方で、独立した第三者的な機関がそのことについて支援をしたり助言をしたりということも考えられるわけでございますけれども、このことについてはどのような議論があったのか、また、参考人の御見解というものをお伺いしたいと思います。
○上沼参考人 御質問ありがとうございます。
第三者機関については議論いたしておりまして、ただ、結論としては第三者機関を創設することが必ずしも救済に直結するかどうかはよく分からないというようなことで、今回は見送りという話になっています。
一つの理由が、第三者機関を創設したとしても、裁判を受ける権利が憲法上の権利である以上は、第三者機関だけで終わることはできず、結局、裁判所にそれを持ち込む手段を残しておかなければいけないということになります。そうすると、第三者機関の判断で終わらず裁判所に行くことになるのであれば最初から裁判所の仮処分等の方が早いかもしれないというのが一点。
あと、もう一つ、第三者機関の判断がどの程度信用できるかということに関しても、事業者さんからすれば、第三者機関の判断に従ったとしても、それが必ずしもパーフェクトかどうか分からないという話になれば、やはり裁判所の判断を仰ごうということになるのではないかというような考えもあり得るというところだったので、今回は入っておりません。
ただ、第三者機関によるアドバイス等が有用だということであれば、研究会の取りまとめにも入っているように、事業者が自ら第三者機関をつくって、そちらの判断に自ら従うというふうな自主的な運用をされること自体を否定するものではありませんので、そこが必要なのであれば御検討いただければいいのかなというふうに個人的には思っております。
以上です。
○西岡委員 同じく、金参考人、山口参考人にも今の質問をさせていただきたいわけでございますけれども、なかなか権利侵害の有無を事業者自体が判断できない困難な事例が大変多くあるということの中で、ノーティス・アンド・テイクダウンや第三者機関設置についてのお考えをお伺いいたします。
○金参考人 第三者機関の設置についてですけれども、例えばドイツのネットワーク執行法においては、七日間以内に事業者が判断できなかった場合において、例外的に、独立した自己判断機関に委ねるというふうな規定がございました。これは現在もデジタルサービス法の下でドイツなどで運用されております。しかし、現実には、そこで判断されるのは半年以内でも大体三件ぐらいだそうです。ほぼないんですね。そういったようなことからしますと、おおむねSNS事業者内で判断できているというふうに評価していいかと思います。
ただ、少ないながらも事業者自体では判断できないものについて徹底的に、被害者救済の観点から慎重に判断すべきだというふうな考慮がこの総務委員会でもよりされるならば、このような独立した第三者機関を設けるというものは中立な判断を促すという意味では効果的であろうというふうに考えます。
○山口参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
そうですね、事業者が権利侵害の判断ができないというケース、これは間々あるだろうというふうに私も思っております。重要なのは、プラットフォーム事業者が勝手にどんどんどんどん判断して、どんどん削除することがいい社会なのかといったら、必ずしもそうではないわけですよね。ですから、判断ができない場合には正直に判断ができないと、その後どうするかをしっかり考える必要があるというふうに私は考えております。
そういった中で、もっとじっくりと議論を内部でしていただくのか、あるいは第三者委員会のような中立なものをつくってそこで御判断いただくのかというのは、やり方はいろいろあると思うんですね。第三者委員会をつくるということに私は反対ではないです。ただ、それで解決するのかどうかもちょっと分からないので、まずは議論をテーブルに出して、しっかりとそういったものの意義などなどを検討した上で、要請するのかどうかといったところについてもまた議論を重ねるのが大事かなというふうに思いました。
以上です。
○西岡委員 貴重な御意見をありがとうございました。またこれからの委員会質疑にもしっかり生かしていきたいというふうに思います。ありがとうございました。
○古屋委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
次回は、来る十八日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十五分散会