衆議院

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第15号 令和6年4月18日(木曜日)

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令和六年四月十八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 古屋 範子君

   理事 斎藤 洋明君 理事 田所 嘉徳君

   理事 田中 良生君 理事 本田 太郎君

   理事 湯原 俊二君 理事 吉川  元君

   理事 中司  宏君 理事 中川 康洋君

      井原  巧君    石田 真敏君

      尾身 朝子君    梶山 弘志君

      勝目  康君    金子 俊平君

      川崎ひでと君    国光あやの君

      坂井  学君    田畑 裕明君

      寺田  稔君    中川 貴元君

      西田 昭二君    西野 太亮君

      根本 幸典君    葉梨 康弘君

      長谷川淳二君    鳩山 二郎君

      古川 直季君    保岡 宏武君

      柳本  顕君    山本 左近君

      おおつき紅葉君    奥野総一郎君

      神谷  裕君    櫻井  周君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    阿部  司君

      中嶋 秀樹君    吉田とも代君

      平林  晃君    宮本 岳志君

      西岡 秀子君    吉川  赳君

    …………………………………

   議員           中司  宏君

   総務大臣         松本 剛明君

   総務副大臣        渡辺 孝一君

   文部科学副大臣      あべ 俊子君

   総務大臣政務官      西田 昭二君

   総務大臣政務官      長谷川淳二君

   法務大臣政務官      中野 英幸君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           湯本 博信君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            今川 拓郎君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房学習基盤審議官)       浅野 敦行君

   総務委員会専門員     阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     梶山 弘志君

  川崎ひでと君     勝目  康君

  長谷川淳二君     柳本  顕君

  岡本あき子君     神谷  裕君

  藤岡 隆雄君     櫻井  周君

同日

 辞任         補欠選任

  梶山 弘志君     金子 俊平君

  勝目  康君     山本 左近君

  柳本  顕君     長谷川淳二君

  神谷  裕君     岡本あき子君

  櫻井  周君     藤岡 隆雄君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     金子 恭之君

  山本 左近君     川崎ひでと君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)

 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案(岩谷良平君外一名提出、第二百十二回国会衆法第一五号)


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     ――――◇―――――

古屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案及び第二百十二回国会、岩谷良平さん外一名提出、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房総括審議官湯本博信さん、総合通信基盤局長今川拓郎さん、法務省大臣官房審議官柴田紀子さん、法務省大臣官房審議官松井信憲さん及び文部科学省大臣官房学習基盤審議官浅野敦行さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。西野太亮さん。

西野委員 皆様、おはようございます。熊本二区選出、自由民主党の西野太亮でございます。

 今日は、早速、プロバイダー責任制限法一部改正案について伺っていきたいと思います。

 現在の我々の生活において、インターネットというものはもちろん欠かすことができない存在であります。しかし、一方で、SNS、さらにはヤフーニュースのコメント欄などを見ますと、本当に見るに堪えない罵詈雑言が散見されます。

 我々は政治家ですので、政策論争における反論、さらには主義主張に対する批判、こうしたものは当然真摯に受け止めなければいけないわけでございますけれども、のりを越えて人格攻撃になる、そういったリスクも我々にはあるわけでございますので、ある意味でそういった誹謗中傷に苦しんでいらっしゃる皆様方の気持ちが一番分かる立場にあるというふうにも言えると思います。我々は、誰もが安心して活用できるネット空間の実現、快適で公正なネット空間の実現に向けて、これからも政治の立場からしっかり取り組んでいかなくてはいけないというふうに思います。

 今回の法案はそういう意味において第二歩あるいは第三歩となる取組だというふうに考えておりますが、こうしたネット空間の規制を考える場合に避けては通れない課題がやはり表現の自由とのバランスということになろうかと思います。

 私、大学は法学部でございますので、憲法の授業で一番最初に習ったことの一つが、表現の自由というものは憲法が保障している様々な権利の中で最大限尊重されなければいけない、そういう権利、人権の一つであるということを勉強しました。

 なぜかと申しますと、表現の自由というのは一旦失われてしまうと民主主義の過程で回復困難だと。つまり、例えば経済の自由などにおいてはたとえ仮に過度な規制がかかったとしても言論活動を通じてそれを回復していく余地がある、一方で、表現の自由については一旦規制がかかってしまうと言論活動自体に規制がかかってしまうから、民主主義の過程においてももしかしたら回復できない可能性がある、だから規制については慎重にしなくてはいけないという考え方だというふうに思います。

 とはいっても、侮辱罪、あるいは名誉毀損罪、さらには脅迫罪といった、表現の仕方次第では犯罪を構成する場合も考えられるわけですから、表現の自由といえども必ずしも無制約、無制限ではないということだと思います。このことは、憲法においても、公共の福祉に反しない限りという文言で表現の自由に対する内在的な制約を規定しているところでございます。

 そうした大原則を確認した上で、まずは、今回の法改正で対象となる違法、有害情報について確認していきたいというふうに思います。

 まず、違法、有害情報と一言で言っても、責任の度合いというのは様々なものがあると思います。一番重いのは、今申し上げました刑事責任を構成するような表現でございます。次に、仮に刑事犯罪とまではいかなくても、例えば他人のプライバシーを侵害する、損害賠償の対象になり得るような民事責任を伴う場合、さらには我々でいえば政治責任を伴うような場合、社会的責任を伴うような言動、責任といっても、違法といっても、いろいろな段階があるんだというふうに思います。

 そこで、お伺いいたしますが、今回の改正で新たに課されることとなる義務の対象となる違法、有害情報としてどのようなものを想定しているのかということを総務省からお伺いしたいと思います。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 インターネット上の情報流通の主要な場となっているSNSなどのプラットフォームを提供する事業者には、違法、有害情報の流通の低減に向けて社会的責任があり、対策の実施が求められているとの認識の下、今回の法律案では、プラットフォーム事業者の社会的な責任を踏まえ、削除などの対応に係る迅速化と透明化を求めることとしております。

 具体的には、違法となる権利侵害情報については大規模なプラットフォーム事業者に対して一定期間の応答義務を課す対応の迅速化を求め、必ずしも違法ではない有害情報については削除基準の策定と運用状況の透明化を求め、異なる内容の規律を課すこととしております。

西野委員 ありがとうございます。

 今いろいろお答えいただきましたけれども、私が思うに、刑事犯罪を構成しないようなものについては当然、被害を受けた方、さらには事業者がいろいろ工夫をしながら削除するのかどうか検討するということが必要になるのかもしれませんが、犯罪を構成するような侮辱罪とか名誉毀損罪とか、そういった刑事責任を伴うような違法情報の発信については、私は、被害者とか事業者に委ねるのではなくて政府としてやはり一定の対応をすべきなんじゃないかというふうに思いますけれども、総務省としてはどのようにお考えか伺いたいと思います。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘がございました刑事責任を伴うような情報について、例えばプラットフォーム事業者に行政機関による削除要請への対応を義務づけることは、行政機関からの要請があれば内容を確認せず自動的、機械的に削除されることにより、利用者の表現の自由を実質的に制約するおそれがあるため慎重な検討が要るとの指摘があり、総務省の有識者会議の第三次取りまとめにおいてもそのような報告がなされたところでございます。

 SNS上の権利侵害情報については、これまでプラットフォーム事業者による利用規約に基づく自主的な削除などの対応を促進してきたところでございまして、このプラットフォーム事業者による削除などの対応が更に適切に進むよう、本法案ではプラットフォーム事業者に対し削除対応の迅速化や運用状況の透明化を求めることとしております。

 その上で、表現の自由に配慮しつつも被害者救済の実効性を確保するため、総務省において、どのような情報を流通させることが法令違反や権利侵害となるのか明確になるよう、関係団体と協力することによりガイドラインなどを示すことを検討してまいりたいと考えております。

西野委員 ありがとうございます。

 昨日、総務省の方々と話をさせていただきましたけれども、確かにこうした刑事犯罪を構成するような表現について、表現の自由を守る観点からがっちりとした規制は難しいんだけれども、実態として、現実問題としてそういったものに関しては速やかに削除されているから問題ない、現実問題としてそんなに問題じゃないという話を聞きましたので、私もそういった点では安心をしているところでございます。

 次に、今回の改正で義務の対象となる違法、有害情報については当然民事責任を伴う情報も含まれるというふうに理解しておりますけれども、例えば、個人攻撃、誹謗中傷、こういったものだけではなくて、不特定多数の皆さん方を混乱させるようなフェイクニュース、こういったものが対象になるのかどうかということについても伺いたいと思います。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありましたフェイクニュースなども含む偽・誤情報については、名誉毀損や著作権侵害、営業上の利益の侵害など、権利侵害に該当する場合には、大規模なプラットフォーム事業者に対して被害者からの申出に対し一定期間内に応答する迅速化の義務がかかることになります。

 また、偽・誤情報が権利侵害情報に該当しない場合であっても、事業者に対して自らの削除基準やその運用状況の公表を求める透明化の義務を課すこととしておりまして、これにより、各事業者の偽・誤情報に関する取組が国民、利用者に分かりやすいように開示され、プラットフォーム事業者自身による削除基準や運用の見直しなどの対応を促すことにつながると考えております。

西野委員 ありがとうございました。個人の権利の侵害になるかどうかということを基準の中心としつつも、利用者、あるいは事業者、さらには発信者、そういった方々が納得できるような仕組みづくりがされるということでございます。私もそれで納得したいというふうに思います。

 続いて、今回の義務の対象となる大規模プラットフォーム事業者について伺いたいと思いますが、SNS事業者のみならず、例えば5ちゃんねる、2ちゃんねるといった掲示板事業者、さらにはヤフーニュースのコメント欄事業者、こういったものも対象になるのでしょうか。SNSのみならず、こういった掲示板やニュースのコメント欄にも罵詈雑言が散見されますので、そういった観点から伺いたいと思います。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 削除対応の迅速化や運用状況の透明化の義務を負う対象事業者については、権利侵害が多く発生する可能性が高いものとして、多くの者に利用されているサービスを提供する事業者を指定することとしております。

 この点につきまして、総務省の有識者会議の報告書では、特に権利侵害情報の流通やその拡散が生じやすいものとして、不特定者間の交流を目的とするサービスであって、他のサービスに付随して提供されるものではないサービスを提供する事業者を対象とすることが適当であるとされております。

 本法案が成立した暁には具体的な対象事業者を検討してまいりたいと考えておりますが、この有識者会議の報告書を踏まえると、不特定者間の交流を目的とするサービスであって、他のサービスに付随して提供されるものではないサービスということでございまして、SNSや掲示板などを提供する事業者のうち大規模なものを対象とすることを考えているところでございます。

西野委員 ありがとうございます。今回の法案では、まずは不特定多数の皆さん方に情報が行き渡り得るSNSを対象としつつ、それ以外のものについては今後検討していくということで理解しているところでございます。

 次に、今回の法案で、様々な義務、削除基準の策定、公表、こういったものが義務づけられておりますけれども、例えばヨーロッパ、EUの基準なんかを見ますと、これに付加して様々な義務が課せられております。こういった今回の法制の義務だけで十分対応できるのか、その実効性についてどうお考えなのかということもお伺いしたいと思います。

今川政府参考人 お答えいたします。

 インターネット上の情報流通の主要な場となっているSNSなどのプラットフォームを提供する事業者には、違法、有害情報や偽・誤情報の流通の低減に向けて社会的責任があり、対策の実施が求められていると認識をしております。

 本法案では、こうした観点から、従来の発信者情報開示の仕組みに加えましてプラットフォーム事業者による削除などの対応に係る迅速化と透明化を求めることとしておりまして、インターネット上の誹謗中傷などによる被害の早急な回復と表現の自由とのバランスに鑑みまして実効的な対策であるというふうに考えております。

 また、本法案により新たに設けられるプラットフォーム事業者における義務規定への履行状況につきましては、政府として、各事業者から公表される内容をしっかり把握し分析した上で、社会情勢や技術の進展などを踏まえて不断に必要な検討を加えてまいりたいと考えております。

西野委員 ありがとうございます。

 どうやってその義務を履行していることを確認するのかということについても今お答えがありましたので、一つ質問を飛ばしたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、例えば、諸外国の規制を見てみますと、アメリカでは、連邦政府レベルでは全く規制を課していない、州政府レベルにおいてもカリフォルニアとか一部の州を除いてこういったネット上の規制を課していないという状況でございます。一方で、EUでは、先ほど申し上げましたように日本以上の規制を課しているというところでございます。

 ネット空間の規制をめぐっては、諸外国の例を見ても、本当に試行錯誤しながら進めているというのが現状だと思います。それほど表現の自由、そして名誉毀損、あるいは人を傷つけるような言動を規制するそのバランスが非常に難しいということだというふうに思いますので、私は、これからも引き続き最適なネット空間の在り方について検討を進めていく必要があるというふうに思います。政府としてどのような決意を持っていらっしゃるのかということを最後に伺って、終わらせていただきたいと思います。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、諸外国においては様々な考え方がある中で、我が国におきましては違法、有害情報の流通が依然深刻な状況であることを踏まえまして、被害の早急な回復と表現の自由とのバランスに鑑み、EUに近しい規律を入れることとし、大規模なプラットフォーム事業者に対して削除対応の迅速化や運用状況の透明化を義務づけることとするものでございます。

 その上で、委員御指摘の最適なネット空間の在り方といったことでございますけれども、総務省におきまして、デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会という有識者会議におきまして、生成AIによる偽・誤情報の流通、拡散などの新たな課題について検討をたゆまず進めているところでございます。

 総務省としては、国際的な動向も踏まえ、この夏頃の取りまとめに向けまして、偽・誤情報の流通、拡散の問題への対処と表現の自由の確保、これら両方をしっかりと見つつ、制度面を含めた総合的な対策の検討を進めてまいりたいと考えております。

西野委員 ありがとうございました。

 松本大臣、渡辺副大臣、西田政務官におかれましても、最後までおつき合いいただいてありがとうございました。

 これで終わります。

古屋委員長 次に、平林晃さん。

平林委員 おはようございます。公明党の平林晃です。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 一昨日、参考人質疑に立たせていただきまして、権利侵害の回復と表現の自由のバランスに対する考え方でありますとか、法案における規定の意図もより深く理解をさせていただきまして、大変勉強になったところでございます。その認識の下、本日は総務省の方に質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、立法事実について確認させていただければと思います。

 総務省におかれましては、誹謗中傷対策あるいは違法、有害情報への対策をこれまでもずっと講じてこられたというふうに認識しております。すなわち、プラットフォーム事業者の責任制限規定の明確化であったり、簡易迅速な裁判手続でありましたり、あるいはユーザーに対する情報モラル及びICTリテラシーの向上のための啓発活動、こういったことにも取り組んでこられたというふうに認識をさせていただいております。こうした経緯の中で今回の法改正に至っている、その意味におきまして、現行制度のどこに問題があって、それを今回の改正によってどう解決しようと考えておられるのでしょうか。西田総務大臣政務官に伺います。

西田大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 総務省では、インターネット上の誹謗中傷等の被害者の救済を円滑にするなどの対応を図るため、利用者のICTリテラシーの向上や、令和三年のプロバイダー責任制限法改正による簡易な裁判手続の創設、相談体制の強化など、総合的な対策を進めてまいりました。

 一方、インターネット上における誹謗中傷等の違法、有害情報の流通は依然深刻な状況でございます。被害者の皆様からは、投稿の削除に関する相談が多く寄せられているところでございます。

 こうした現状認識を踏まえ、被害者にとっては大きな負担となる裁判手続によらなくてもプラットフォーム事業者による誹謗中傷等への適切な対応が促進されるよう、本法案では、大規模SNS等のプラットフォーム事業者に対して、誹謗中傷等の投稿の削除申請について一定期間内の応答義務を課すなどの削除対応の迅速化や、投稿の削除基準の策定とその運用状況の公表等の運用状況の透明化を求めることとするものでございます。

 以上でございます。

平林委員 ありがとうございます。投稿削除に関する相談が多く寄せられており、そこにしっかりと対応していこうということで、なおかつ、参考人の皆様も評価しておられましたけれども、結構バランスにしっかりと配慮されているということでもあって、今回の法案はそういう意味において意味のあるものだと理解をさせていただいております。

 その上で、西野委員からも御指摘がございましたが、諸外国においてもこういった法制が、試行錯誤しながらともおっしゃられましたけれども、進められてきているというふうに認識をしております。とりわけ、EUにおきますデジタルサービス法、いわゆるDSAはある意味我々が目指しているものと最も類似した法整備なのではないかなというふうに伺っているところでございますけれども、こうしたDSAあるいは米国の法整備と比べまして改正案成立後の日本の法整備はどのように評価されるとお考えでしょうか。総務省の御見解を伺います。

今川政府参考人 お答えいたします。

 プラットフォーム事業者への規律について、EUではデジタルサービス法が設けられておりまして、削除申出に対し遅滞なく通知する義務、削除基準の策定、公表義務、運用状況の公表義務などの規律を課しております。

 一方、アメリカでは、連邦法レベルではプラットフォーム事業者に対して対応の迅速化や運用状況の透明化を求める公法上の義務を課しておりませんが、カリフォルニア州では、州法により、プラットフォーム事業者に対して削除基準の策定、公表義務、運用状況の公表義務の規律を課しております。

 このように、プラットフォーム事業者への規律は先進国の中でも様々ではございますけれども、今回の本法案による迅速化、透明化の規律は、プラットフォーム事業者への規律で先行するEUのデジタルサービス法に近しい規律となっておりまして、その上で、EUにはない一定期間内の通知義務も課しているものでございます。

平林委員 ありがとうございます。

 今回の法案はある意味ヨーロッパのDSAを目標としつつ、それ以外の規定も設けられている、そういうお話でございました。これは呼称として日本版DSAという言い方をしてもいいのかなと思うんですけれども、通告していませんけれども、局長、いかがでございましょうか。

今川政府参考人 委員御指摘のとおりと考えております。

平林委員 ありがとうございます。定着していくことを心から期待させていただいております。

 引き続きまして、今回の改正案におきましては、大規模特定電気通信役務提供者を規定し、その事業者に対しまして対応の迅速化、運用状況の透明化に関する各種措置を講ずることを義務としているということでございます。

 ここで、大規模とはユーザー数や通信回数などで規定をされることですけれども、かなり大きな数字、ユーザー数でいえば一千万といったような数字が想定されると伺っているところでございます。こうした大規模事業者に対応を義務づけること、これは当然異論はないんですけれども、それだけでいいのかということはちょっと疑問を持っているところでございます。

 大学などにおける学内のSNS、あるいは社内のSNS、また地域別SNSなど、対象とするユーザーを限定した小規模SNSも数多く存在しているというふうに聞いております。こうした小規模SNSにおいては、誹謗中傷を受けたときの権利侵害は実生活に直結することも考えられまして、日常生活が激変する可能性すらあると考えます。

 そういった意味におきまして、この規定に関することをまとめて聞かせていただきたいんですけれども、大規模特定電気通信役務提供者とはいつどうやって定められるのかということがまず一点、二点目として、その規模は省令で定められることとされていますけれども、その妥当性に関してが二点目、三点目として、具体的にどんな事業者が指定される見込みかということ、また、四点目として、小規模事業者も含むようにすべきではないか。この点に関しまして、まとめてお伺いいたします。

今川政府参考人 お答えいたします。

 先ほども少し答弁させていただきましたが、対象事業者は施行に向けた省令などの整備において具体的に検討していくこととなりますが、利用者に対して削除対応の迅速化と運用状況の透明化を図る必要性が特に高い国内外の大規模なプラットフォーム事業者を対象とすることを想定しております。

 具体的には、アクティブユーザー数又は投稿数を指標に一定規模以上のものを対象とすることが考えられまして、その場合、主要なSNS事業者や掲示板運営者が対象事業者と指定されることになる見込みでございます。

 これは、大規模なプラットフォーム事業者が提供するサービスでは利用者数や投稿数の多さなどから短時間で被害が深刻化する傾向があるため、手当てを行う必要性、緊急性が高いと考えられるとともに、本法案が課す義務の履行には一定の経済的、実務的負担が生じることも鑑みまして、このような対象事業者の考え方としているものでございます。

 一方で、委員御指摘のとおり、中小のプラットフォーム事業者が提供するサービスでも一定の被害が生じていることは事実でございまして、大規模なプラットフォーム事業者に準じて対応いただくことが重要と考えております。

 そのため、本法案が成立した暁には、中小のプラットフォーム事業者においても権利侵害などへの対処が適切に行われるよう、どのような情報が法令違反や権利侵害となるかといったことや、分かりやすい窓口設置の在り方などについて、関係団体と協力しつつ周知することなどにより、適切な対応を促進してまいりたいと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 続きまして、改正案の第二十四条におきまして、対象事業者に侵害情報調査専門員の選任等が義務づけられることとされています。

 この点に関しまして、一昨日の参考人質疑において、私は、金参考人に部落解放同盟の皆様の関連でお聞きしたところでございます。そのお答えの中で、途中を省きますが、どのような知識を持った専門家を要請するのか、法律家、社会学者、歴史学者なのか、こうした点に注目すべきであって、報告させる義務もあるので、そこも大きな論点になるだろうと御答弁されました。この意味するところ、私なりの解釈としては、被侵害者からの申出に基づき行われる調査には明確なものとそうでないものとが含まれ、調査専門員の選任は慎重に実施するように、このように言っておられたのかなというふうに理解をさせていただいております。

 また、専門員の人数に関しまして、ユーザー数や発信数及び種別に応じて総務省令で定められる数以上でなければならないと。この数が余りにも大きいものであれば、今局長の答弁もあったとおり、コストもかかりますし、そもそも集められるかも危惧をするところでございます。

 そこで、この専門調査員には具体的にどのような人材が想定されているのか、その数は省令で定めることとされていますけれども、どの程度の数になっているのか、総務省に伺います。

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の第二十四条に規定する侵害情報調査専門員は、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害への対処に関して十分な知識経験を有する者を選任することとしておりまして、具体的には、日本の法令や文化、社会的背景に精通した者を想定しております。

 また、専門員の具体的な数については総務省令で定めることとなっておりますけれども、有識者や関係事業者の御意見を丁寧に聞きながら速やかに検討してまいりたいと考えております。

平林委員 もうちょっと踏み込んでいただきたかったなという気もいたしますけれども、時間もありますので、次に進みます。

 直近の事案といたしまして、インスタグラムやフェイスブックで著名人に成り済まして投資などを呼びかける詐欺広告が出回り、大きな社会問題となっております。警視庁のまとめでは、現金をだまし取られるなどの被害は、都内で去年一年間に少なくとも二百十件、被害額はおよそ三十八億円に上っているとのことであります。この問題をめぐっては、識者の声として、運営するメタは徹底的に詐欺広告を排除すべきであるのにそれを果たしていないというような声も紹介されています。成り済まされた著名人の方は怒り心頭のコメントを発表しておられるということでございます。

 そこで、西田政務官にお伺いいたします。今回の法改正によって、このような成り済ましによる投資詐欺についても対応はできるのでしょうか。

西田大臣政務官 お答えをいたします。

 SNS等のプラットフォームサービス上で、本人や組織の許可を得ずに、本人であるかのように加工、編集された成り済まし型の偽広告が流通しております。

 こうした成り済まし型の偽広告は、閲覧者に財産上の被害をもたらす場合があるほか、成り済まされた者の社会的評価を下げるなど権利を侵害する可能性もあり、重大な課題であると考えております。

 また、成り済まし行為については、日本人の目から見れば明らかに成り済ましなのに削除されない、削除申出を放置されている、成り済ましに対する削除、アカウント停止の基準はあるが適切に運用されていないなどの課題がございます。

 本法案は、大規模なプラットフォーム事業者に対し、権利侵害への対処に関して十分な知識経験を有する者の選任や、削除申出に対する判断、通知義務、削除基準の策定、公表、削除の実施状況についての評価、公表を求めることとしており、成り済ましの課題にも一定程度対応できるものと考えております。

 本法案が成立した暁には、制度の着実な運用を通じ、SNS上での成り済まし型の偽広告に対しても厳正に対処するとともに、関係省庁と連携して必要な対策に取り組んでまいりたいと思います。

平林委員 ありがとうございます。

 最後に伺います。殺到型誹謗中傷、いわゆる炎上事案に関してでございます。

 一つ一つの投稿は直ちには権利侵害に当たらないレベル程度の誹謗中傷でありましても、それが大人数によって、しかも本当に連続的になされた場合には、被害者の精神的苦痛が権利侵害情報が投稿された場合を上回る、こんなことも起こり得ると考えております。こうした殺到型誹謗中傷に対しましても被害者保護の観点から何らかの適切な措置が講じられるように、プロバイダーや関連団体と協議することは重要と考えます。この点に関しまして総務省の見解を伺います。

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、個々の投稿自体は名誉権やプライバシー権などの権利侵害ではない場合であっても、そのような投稿が大量に行われることによって投稿された方が重大な精神的苦痛を被ることがあるものと承知しております。

 他方で、総務省の有識者会議におきましては、こうした大量の投稿について全体として権利侵害と言えるかどうか、こういったことについては法解釈などの観点から課題があると指摘されているところでございます。

 このため、権利侵害の成否をめぐる関係各所の議論の動向を注視しながら、まずは、今回の法案に基づきまして、プラットフォーム事業者の自主的取組を促進してまいりたいと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 今回の法案に関しましては本当に評価させていただいておりまして、その上で、様々な問題がまだまだあると思いますので、引き続きの議論をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、吉川元さん。

吉川(元)委員 立憲民主党の吉川元です。

 法案の質問に入る前に、一点、ちょっと大臣にお願いしたいことがあります。

 昨日の深夜といいますか昨晩、豊後水道を震源とするマグニチュード六・六の地震があったということで、今朝ニュース等で私も初めてその事実を知ったわけでありますが、この地震の被害状況は、深夜に発生したということもあって、これから確認が進められるというふうに思います。是非、総務省としても各自治体からの情報収集を含めて適切な対応をお願いしたいというふうに思います。大臣にお願いしたいと思います。

松本国務大臣 昨夜の豊後水道を震源とする地震につきましては、私からも被災された方々にお見舞いを申し上げたいと思います。

 総務省といたしましては、発災から速やかに、救助対応として、地元の消防と連絡を取り合い、緊急消防援助隊の出動が必要となる場合に備えて連絡を取り合うなど進めてまいりました。通信につきましては今のところ大きな被害の状況の報告は聞いていないところでありますが、報道などによれば水道などライフラインで既に損害が出ているという話も出てきておりますので、委員からも御指摘がありましたように、被災自治体とも連絡を取り合いまして、復旧を急いで進められるように全力を挙げてまいりたいと思います。

吉川(元)委員 是非お願いをしたいというふうに思います。

 どうしても心配なのは、南海トラフの地震、ここに発展していくんじゃないのかと。気象庁の発表では今回のことが直接そのようには影響はないということでございますが、やはり地域に住まわれている方は大変不安を感じておられますので、そうした不安を払拭できるようにしっかりと取組を進めていただきたいというふうに思っております。

 それでは、法案の質問に入らせていただきます。

 前回は二〇二一年に法改正がされ、発信者情報の特定に際し、従来は二回必要だった裁判手続を簡略化する非訟手続が新設されました。それにより、二〇一九年には六百三十件だった仮処分申立て件数が、法施行後の二〇二二年十月から翌年九月までの一年間で、その件数が三千十九件にまで急増しております。まず伺いたいのは、約五倍近くに増えたわけですが、これは、法改正の効果と見ているのか、もう一つあるのは、今、ネット上の人権侵害の度合いがかなり増えてきている、あるいは深刻化している、そうしたものを示すものなのか。総務省のお考えを尋ねます。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がございました、改正プロバイダー責任制限法が令和四年十月に施行されまして被害者の負担が軽減されたことが寄与しているものと想定されておりまして、発信者情報開示についての新たな制度の利用が着実に進んでいるのではないかと考えております。一方で、御指摘がございましたように、インターネット上の誹謗中傷の被害というのがまだ高止まりしている状況でもございますので、そういった要素もあるかとは思っております。

吉川(元)委員 改正後の裁判所への申立ては、そのうちの九割以上が東京地裁に集中していると聞いております。ネット上の人権侵害が深刻化する中で、裁判所の人的な体制、専門性ある裁判官の育成、配置を急いでいただきたいと思いますし、昨日、法務省そして最高裁にも来ていただいて、是非この点はお願いをしたいということは要望させていただきました。また、我が党は、侮辱罪の法定刑引上げのための刑法改正案の審議の際、関連法案として、発信者情報を広く特定できるよう、発信者情報の定義の変更を含むプロ責法改正案も提出させていただきました。当時よりなお事態が深刻化している現状、発信者情報の開示に当たり、プラットフォーム事業者の体制整備についてもしっかり検証いただき、必要な手だてを講じていただきたいと思います。

 次に、先ほども少し出ておりましたけれども、総務省の委託事業としてネット上の権利侵害などの相談を受け付けている違法・有害情報センターの二〇二二年度の相談件数の内訳を見ますと、五千七百四十五件の相談件数のうち、およそ三分の一に当たる三四・五%は上位五社の事業者で占められております。ここから想定すると、今回の法改正の対象になるような大規模事業者以外のプラットフォームを利用するユーザーも多く存在しているというふうにも考えます。今回の法改正の対象とならない中小事業者での投稿に対する相談件数は全体でどの程度の割合を占めているのかということをお聞きいたします。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案の対象となる大規模事業者につきましては、本法案が成立した暁に利用者数や投稿数を勘案して総務大臣が指定することとしておりまして、現時点で対象とならない中小事業者などをお示しすることは現時点では困難でございます。

 その上で、今御指摘のございました違法・有害情報相談センターに寄せられた相談件数を参考に申し上げますと、相談の多い事業者から順に、ツイッター、現Xでございますが、これは九百四十八件、グーグル、検索、ユーチューブ、マップなどを提供しておりますが、これが五百九十六件、メタ、インスタグラム、フェイスブックなどを提供しておりますが、これが二百五十五件となっております。

 また、一定の件数以下の相談しか寄せられていない事業者、これは中小事業者が多いと考えられますけれども、この相談件数の合計は三千百二件というふうになっているところでございます。違法・有害相談センターのデータによりますれば、それは約五〇%ということでございます。

吉川(元)委員 相談件数が少ないからといって何もしなくていいという話には私はならないというふうに思いますし、より深刻な人権侵害が行われる可能性、あるいは実際に行われていることもあり得るだろうというふうに思います。今回の法改正の対象とならない中小事業者、先ほどの質問にもありましたけれども、しっかりこれは対応していただきたいと思いますが、今後をどのようにお考えなのか、大臣に伺います。

松本国務大臣 今回の法案におきまして権利侵害情報の削除の迅速化や運用状況の透明化の義務が課される事業者については法案成立後に省令で具体的な要件を定めることとなりますが、広く被害の拡大を防止し救済を図る観点から、国内でサービスを提供している国内外の主要なプラットフォーム事業者はいずれも対象となることを想定しております。

 規制の対象を一定規模以上の事業者といたしましたのは、利用者数や投稿数の多さなどから短時間で被害が深刻化し、手当てを行う必要性、緊急性が高いと考えられること、本法案が課す義務の履行には一定の経済的、実務的負担が生じることを鑑みたものでございます。

 しかし、委員がおっしゃったように、法による規制の対象とならない中小のプラットフォーム事業者が提供するサービスでも被害が生じ得ることは事実でありまして、法の趣旨を踏まえて対応いただくことが大切でございます。

 本法案が成立した暁には、中小のプラットフォーム事業者においても権利侵害等への対処が適切に行われるよう、どのような情報が法令違反や権利侵害となるかといったことや、分かりやすい窓口設置の在り方などについて関係団体と協力しつつ周知をいたしたいと思っております。

吉川(元)委員 先ほども述べましたけれども、事業者の規模の大小にかかわらず、重大な権利侵害を伴う誹謗中傷に対しては今の段階ではなかなかそこまでいかない、中小については法規制には入らないということでありますけれども、削除指針や公表の義務化はいずれ必要になるのではないかというふうに思いますし、この点についてはしっかりまた総務省の中で御検討をお願いしたいというふうに思います。

 次に、誹謗中傷情報の削除についてお聞きしたいと思います。

 法案の改正案を見ますと、二条第一項八号では、当該の侵害情報を削除する侵害情報送信防止措置が規定されております。同じく、その次の九号の送信防止措置では、情報発信者のアカウントそのものを停止する措置等を含めることになりました。それぞれについて事業者は基準を明示しなければならないわけですけれども、当該情報のみの削除、つまり書き込んだものを削除するということと、書き込んだその人のアカウントそのものを停止するということ、これはかなり大きな差があるんだろうというふうに思いますが、基準の線引きはどういうものになっていくのかということを考えていらっしゃいますか。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の削除につきましては、個別の投稿を削除するといういわば単発の措置である一方で、アカウント停止は一定期間投稿ができなくなるという違いがございまして、そういった措置の内容が異なるものでございます。ただ、こちらはいずれも法律上の送信防止措置に含まれるものでございます。

 これら削除とアカウント停止の対応につきましては、表現の自由と迅速な被害者救済とのバランスを踏まえまして、一義的には事業者において削除基準に基づきまして適切に対応することが期待されるものでございます。

吉川(元)委員 あくまで事業者が決めることでありますが、どういう基準になるのかというのは、作る側も結構悩ましいところがあるのかなというふうには私自身は感じているところであります。

 今回対象となる事業者には誹謗中傷情報を削除する基準の公表が求められます。第三次取りまとめでは、削除指針を詳細に定めることにより、悪意ある投稿者が指針を参考にして削除の対象になることを避けながら、つまり抜け道を見つけ出して投稿するということが考えられることで、それに従って、過度に詳細な記載は求めないことが適当と。これが第三次の取りまとめです。

 他方、今回の法案の二十六条二項一号、二号では、送信防止、投稿の削除、それから、アカウントの停止の際、対象となる情報の種類をできる限り具体的に定めること、これを求めております。

 取りまとめの方では過度に詳細な記載は求めないとしながら、他方で情報の種類はできる限り具体的に示せと、聞くと一見矛盾するような記載になっているわけですけれども、どういうことを想定されているのか、答弁をお願いします。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、削除対応の透明性を確保する観点から、削除基準の具体性については、削除の対象となる情報の種類が情報を知ることとなった原因の別に応じてできる限り具体的に定められていること、また、利用者などの関係者が容易に理解することのできる表現を用いることなどを求めることとしてございます。

 他方で、委員からも御指摘のありましたように、削除基準の適用について具体的な表現の限界事例を示すなど、過度に詳細な基準を示した場合にはかえって悪意ある発信者に利用されるおそれがあることから、総務省の有識者会議においては、その粒度に至るまで過度に詳細な記載は求めないと提言されたものと認識をしております。

 したがいまして、削除基準につきましては、これらの趣旨を踏まえましてプラットフォーム事業者が自らの判断で適切に策定、公表するべきものであると認識しておるところでございます。

吉川(元)委員 今回の法改正、私も読ませていただいて、大変苦労されながらやられているというのはよく理解をしております。結局、表現の自由それから検閲の禁止の観点から国が直接的な規制を行うことは控え、事業者に規律や義務を課して、最終的には事業者の責任において削除の基準を定めるということになるわけですけれども、先ほど、当該情報のみの削除とアカウントの停止、あるいは今言ったような何を具体的に示すのかというようなことについても、これはなかなか難しいなというふうにも感じております。やはり悪質な侵害情報を野放しにすることは許されるわけではありませんので、事業者が行うということではありますが、国としてもそうした基準作りを支援すべきだということを指摘しておきたいというふうに思います。

 今回の法改正によって、官民の誹謗中傷等に関する相談窓口への相談件数、対象となるプラットフォーム事業者への削除要請件数、これが増加をしていくことも予想されます。その際、相談機関やプラットフォーム事業者の相談窓口、さらには削除手続を進める事業者の処理部門の体制の充実、これが求められていくとも思います。

 この点について総務省はどのように考えられているのか、また、国としてどういう支援が行われていくのか、可能なのかということをお聞きするのと併せまして、削除の仕方についてですけれども、これも、今見ておりますと、非常に難しいといいますか、非常にややこしい手続といいますか、深く深く入っていかないとそこにたどり着けない、つまり簡単に要請ができないということであるとか、あるいは、掲示板によっては、削除を要請する場合は掲示板にその旨を出せと、つまり、この投稿を削除してくださいということを求めているということを不特定多数の人に知らせろと。知らせろというのもあれですが、結果的に知られるわけですけれども、そういうフォームといいますか、やり方というのも行われております。

 そういう意味では、人によってはやはり削除してほしいということが他人に知られたくないという場合もあるわけでありますから、こうした削除の仕方、削除のやり方も含めてどういうふうに考えておられるのか、また、国としてどういう支援を考えておられるのかについて尋ねます。

今川政府参考人 お答えいたします。

 二つ、御質問を頂戴しました。

 一点目、まず相談体制の整備や支援についてということでございます。

 被害者向けの相談窓口について、この充実を図ることは、被害に遭った被害者の方を支援する上で極めて重要だと考えております。

 総務省においては、これまで違法・有害情報相談センターの体制強化などの施策を講じてきたところでございますが、令和六年度からはチャットボットなどのAIを活用した運用を開始することを予定しておりまして、これにより、増加する相談に適切に対応し、被害の深刻化を防ぐための取組を加速化してまいります。

 また、事業者側の処理部門などの体制整備につきましては、今回の法律案におきまして、削除申出窓口の設置ですとか体制整備、その公表についても義務を課しているところでございます。

 本法案が成立した暁には、関係省庁や機関と連携しながら、相談体制の一層の充実や大規模事業者における義務の履行状況のモニタリングなどを通じましてそういった整備の促進に取り組んでまいりたいと考えております。

 二点目、削除のやり方に関しての御質問でございました。

 本法案では、大規模プラットフォーム事業者に対して、被害者から申出があった場合に一定期間内に応答を求める義務を課し、対応の迅速化を図ることとしておりますけれども、被害者救済の観点からは、その申出方法は申し出る方にとって利用しやすいものとなっていることが重要だと考えております。

 この観点から、本法案では、申出方法につきまして、申出者に過重な負担を課するものではないこととの要件を課しているところでございますが、御指摘の申出方法を含めまして、まずは総務省において各事業者の状況を確認し、必要に応じて過重な負担についての考え方を示して、その適正化を図っていきたいと考えているところでございます。

吉川(元)委員 過重な負担といった場合、いろいろな捉え方があるというふうに思うんですよね。手続に非常に時間がかかるとか、非常に複雑な手続をしなきゃいけないという過重な負担ということと、それからやはり精神的な負担というのもあるというふうに思います。先ほど言ったとおり、いわゆる削除してくださいという要望を掲示板に載せないとそもそも受け付けないという、このやり方というのは非常に私は悪質だというふうに思いますし、かえってそれによって、本当は削除してほしいけれども、そうやると削除してくれということを言っていることが知られてしまう、それによってまた更なる二次被害、三次被害が起こる可能性もある、そういう意味でいうとこれもまた過重な負担だというふうに私は思いますので、この点についてはしっかりと、各事業者の動きを見ながら適切な支援をお願いしたいというふうに思います。

 次に、削除の申出に対して、二十五条では申出から十四日以内、取りまとめの方は七日以内に申出者に対して調査の結果を通知することになっております。一方、二十五条の第二項において、この期間を超えて対応を検討することができる、つまり例外的な規定も置かれているわけでして、その二項の一号、発信者の意見を聞く場合、それから二号、専門員の調査を行う場合、この二つは何となく、もしかしたら十四日以内にできないかも分からない、そういう理由になるのかなと思うんですが、その後の第三号の、やむを得ない理由があるときという、こういう規定がありますけれども、これは一体どういうことを指しているのか教えていただけますか。

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のありましたとおり、発信者に対して意見の照会を行う場合や、申出者の権利が不当に侵害されているかどうかにつきまして侵害情報調査専門員に調査を行わせる場合などについては、一定期間内に連絡した上で遅滞なく通知を行えば足りるとするものとしております。

 これにつきましては、対象となるプラットフォーム事業者が期間を遵守することのみにとらわれて、申請内容を十分に吟味せず削除してしまい、発信者の表現の自由に萎縮効果をもたらすことがないよう、事業者による的確な判断の機会を確保することを目的としております。

 また、お尋ねのございましたやむを得ない理由でございますけれども、例えば、天変地異などによりまして営業所が被災したため期間内での応答が難しい場合などを想定しているところでございます。

吉川(元)委員 つまり、誰が見ても物理的な理由等々によって無理だねという場合には例外的に、十四日以内にできなくても、しなければいけないということについての例外規定に当たると。

 見ておりますと非常に、先ほどの、削除を掲示板に載せろというようなものを見ても、利用者側の立場あるいは権利侵害を受けた人の立場に立って運用がされていない局面がこれまで度々見られて、アリバイ的な行為というのもゼロではないのかなというふうには思います。そういう意味でいうと、やむを得ない理由というのはかなり限定されたものであるというふうな理解をさせていただきます。一昨日に参考人から意見を聞いた際にも、今回の大きな柱として削除対応の迅速化があるという指摘がございました。二十五条の第二項による処理期間の例外規定が事業者によって濫用されないように、しっかりと注視をしていただきたいというふうに思います。

 そして、次ですけれども、これも一昨日、参考人質疑で参考人の方が、インターネット上の権利侵害は人の記憶とは異なり、発信者が投稿を削除したとしても、一旦掲載され他人がコピーしてしまえばこれを削除する手だてがない、外部記憶装置のようなものだ、こういうことをおっしゃっておられました。だとすると、被害の拡散を止める手だてとして、まずは有害な権利侵害情報を削除するまでの時間が問われていることになるというふうに思います。

 今回の法改正で削除の申立てが増加するという前提に立てば、あくまでプロバイダーの自主的な取組としてではありますけれども、権利侵害が明白かつ削除に緊急性を要するもの、あるいは公的機関を含めた実績のある相談機関からの申立てを優先的に審査、処理していくという必要性もあると考えますが、この点についての総務省の考えをお聞かせください。

松本国務大臣 被害を救済するためには、悪質かつ対応の緊急性が求められる事案については特に迅速に処理することが求められることは委員のおっしゃるとおりかと思います。

 プラットフォーム事業者によっては、一定の要件を満たす公的機関など相談機関からの要請について優先的に削除基準への該当性などを審査する自主的な取組を行っていると承知しているところでございますが、多数の事案の処理をどう進めるかについては、委員からもお話がございましたように、表現の自由や国による検閲の禁止など、総合的に勘案して、事業者が自らのサービスの実態等に応じて定めることとしたところでございます。

 総務省の有識者会議においては、公的機関からの要請に応じて権利侵害情報と思われる投稿を自動的、機械的に削除することをプラットフォーム事業者に義務づけることについては、利用者の表現の自由を実質的に制約するおそれがあるため慎重であるべきとの提言をいただいているところでございます。

 総務省としては、プラットフォーム事業者におかれて、今回の法改正の趣旨も踏まえまして、権利侵害からの救済が迅速かつ確実に行われるよう自主的な削除等の対応が適切に行われることを期待いたしておりまして、法施行後におきましても私どもとしてもしっかり注視をしてまいりたいと思っております。

吉川(元)委員 私も全く、先ほど大臣が答弁されました自動的、機械的に確認もせずに削除するというようなことはあってはならないというふうに思います。削除の要請があった場合、きちんと審査をして、その上で処理をしていくということは当然のことだというふうに思いますが、先ほども言いましたとおり、放っておいて広がってしまったら、削除しても事実上それはもう実効性がないといいますか、そういう状況にもあるわけですから、できる限り速やかに削除していくということでいうと、やはり審査を少し早めていくということも必要なのではないかというふうに思います。

 次に、今回の法改正は、基本的な人権としての表現の自由の保障、さらには検閲の禁止という憲法上の規定を遵守する立場から、立法を通じてプラットフォーム事業者に対し自主的な規制や義務を求めたものと考えております。

 改めて伺いますけれども、誹謗中傷等インターネット上で増え続ける権利侵害に対して国と事業者の関係はどうあるべきなのかということが問題になろうかというふうに思います。その上で、国が直接的な規制を行うのではなく、事業者を介して被害を最小限にとどめようとする考え方、これは私も理解ができます。他方、例えば事業者に削除の基準策定を委ねた際、当然、各社ごとに基準の在り方に相違が生じることも想定をされるだろうというふうに思います。その意味で、削除基準の策定を含む改正案の運用に際して最低限必要なガイドライン的なものを、もちろんこれは事業者と連携しつつですが、定めていく必要があるというふうにも思いますが、この点についてはどうお考えでしょうか。

松本国務大臣 本法案におきまして、削除基準はプラットフォーム事業者が自らの判断で策定、公表することとしておりまして、運用状況の公表を通じて基準の見直しが促されていくことを基本といたしております。

 ただし、表現の自由に配慮しつつも被害者救済の実効性を確保するため、総務省におきまして、どのような情報を流通させることが法令違反や権利侵害となるのか明確になるよう、関係団体と協力することによりましてガイドラインなどを示すことを検討してまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 今後の運用状況をしっかり検証していただき、当然公表されますので、総務省としても各社の状況を把握できるというふうに思いますし、是非検討をこの後も進めていただければということを申し上げておきたいと思います。

 関連して尋ねますが、今回の権利侵害情報の削除の基準、指針の策定は対象となる事業者の手に委ねられるわけですが、既に存在する法律の規定あるいは裁判所での判例などを基準にできるものについては権利侵害性の早期判断は比較的容易かもしれません。しかし、各事業者で削除の基準を設けたとしても、判断が難しい情報に接する可能性も否定できないんだろうというふうにも私は思います。

 事業者同士で連携し、共通に判断できる基準作りを進められていくことを期待したいと思いますが、加えて、法改正後の運用で削除ケースが積み上がっていく実績、つまり、どういう場合に削除されるのか、どういう基準が適正なのか、こうしたことは徐々に共通のスタンダードというものも形成をされていく可能性が高いというふうにも思います。その際、運用の実効性を更に高めるため、あるいは事業者の支援をする目的で第三者の機関を設置していくこと、これを是非検討していただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

松本国務大臣 既に委員からもお話がありましたとおり、誹謗中傷等の違法、有害情報への対処に当たっては、迅速な被害者救済が求められる一方で表現の自由にも十分配慮しなければならないところでありまして、総務省の有識者会議でもそのような議論があったことを踏まえて、本法案におきましては、被害の拡大防止や救済を図るため、プラットフォーム事業者における削除対応の迅速化、削除等の基準や運用状況の公表を義務づける枠組みを設けたところでございますが、その内容について、事業者の自主的な取組を促すことを基本としているところでございます。

 削除基準の内容を定める際など、事業者において判断が難しい場合もありまして、第三者機関が支援することも考えられるところでございまして、プラットフォーム事業者が判断するに当たって第三者に照会をするとかいうことはあり得るかと思いますが、公的に第三者機関を設置するかどうかということに関しては、独立性や中立性をどのように確保するのかという観点から、本当に誰が設置するのか、政府が設置、運営にどのように関与するのか、どのような構成とするのか、どのような役割を持たせるのか、恒常的な機関であるとすれば何らかのチェックをする仕組みが必要になるのかどうか、様々な課題があると認識をしておりまして、政府としては、有識者、被害者団体、事業者団体その他関係する機関等と協力することで、ガイドラインの策定等、一定の目安を示すことを検討してまいりたいと考えているところでございます。

 政府と事業者が相互にその役割を果たし、民間のノウハウを活用しつつ、プラットフォーム事業者における削除等の自主的取組の透明化を図るとともに、誹謗中傷といった権利侵害への対処にはしっかりと対応したいと思っておりまして、本法案が御理解いただいて成立してからもしっかりと注視していかなければいけないと認識をしております。

吉川(元)委員 今大臣がおっしゃられたとおり、慎重に検討しなければいけないということ、私もそうだというふうに思います。第三次の取りまとめでも、第三者機関の法的整備については慎重であるべきだ、こういうふうにされていることも承知をしております。

 ただ、今すぐというわけではなくて、各事業者が自主的に行われていくこれから先の実績を重ねていくことで、大体こういうラインになるんじゃないのか、こういう基準になるんじゃないのか、あるいは、その都度その都度、基準の見直しもこれから先はしていかなければいけないというふうに思います。そういった際に、それをしっかり支援できるような組織、もちろん政府がやるべきだとは私も思いませんが、やはり第三者機関的なものを、これがどういう形でできるのかということはまだ私も確たることが言えるわけではありませんけれども、こうしたものの必要性は出てくるんだろうというふうに私は思っておりますので、是非総務省の中でも様々な角度から御検討いただきたいというふうに思います。

 今回、事業者は、二十八条の規定によって年一回、削除申出の受付件数を始め、省令の定めにより公表義務が課されております。これによって透明性やアカウンタビリティーが確保され事業者への信頼が高まることを期待するものですが、他方、事業者の運用状況を的確に把握し、更なる対応の必要性を検討していく必要があることは、今日はちょっとそこまで行けるかどうか分かりませんが、偽・誤情報の流通の現状を見ても明らかだというふうに思います。運用状況のモニタリングや検証を今後どう進めていくのか、附則二条に規定される法施行から五年経過後の検討を待たずに必要に応じて法改正を進めるべきだと考えますが、この点はいかがでしょうか。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案で定められた削除対応の迅速化や運用状況の透明化に係る義務規定の履行状況については、先ほどございましたように、プラットフォーム事業者は年一回公表しなければならないこととされております。

 この公表された内容について、総務省としては、有識者会議なども活用しつつ、しっかりと各事業者の取組状況を確認してまいりたいと考えております。

 また、新たに設けられるプラットフォーム事業者における義務規定への履行状況につきまして政府としてしっかり把握し分析を行う必要があることから、本法案の見直しの検討には施行後五年という期間を置いているところでございます。

 ただし、あらゆる行政分野において社会経済情勢の変化に応じて政策を見直すことは不可欠であると考えておりまして、特に情報空間の健全性については、総務省の有識者会議におきまして、生成AIによる偽・誤情報の流通、拡散などの新たな課題について検討をたゆまず進めているところでもございます。このため、技術の進展などを踏まえまして、状況によっては、その以前であっても必要な検討を前倒しで行ってまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 ネットの世界はスピードが物すごく速くて、五年たってしまえば今とは全く現状が変わっているということもあります。附則では五年経過後となっておりますけれども、必要があれば法改正を待たずに是非進めるべきだというふうに考えます。

 事業者の削除基準の策定を義務化し迅速な対応を求める上で障害になっている原因の一つとして、日本では国連が勧告する包括的な差別禁止法が存在をしていないことにあるというふうに私自身は思っております。EU各国ではこの法体系の下に、国内に平等機関あるいは人権機関が設置されていることは周知のとおりです。日本でも、国内的にいいますと、反差別法として、障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消法など、個別の法としての成立はしておりますけれども、差別行為自体への処罰規定が存在をしておりません。

 差別を統一的に解消するのであるならば、やはり包括的な差別禁止被害者救済法を制定し、国内に人権機関を設置する方向性を確固たるものとするということが必要だというふうに私は考えます。これがもし法制化され、こうした機関ができれば、インターネット上の誹謗中傷事案に対する事業者の対応、判断も迅速に行えるようになるとも考えます。

 今日は法務省に来ていただいておりますけれども、包括的な反差別法についてどのように考えていらっしゃるのか尋ねます。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 我が国では、国民生活に密接な関わり合いを持つ様々な分野について、各分野における個別の関係法令により、広く差別待遇の禁止が規定されており、これにより不当な差別の防止が図られていると考えております。

 また、人権救済制度の在り方につきましては、これまでなされてきた議論の状況も踏まえ、不断に検討しているところです。

 法務省といたしましては、差別のない社会実現のため、個別法に基づくきめ細かな人権救済を推進してまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 やはり私は包括的な反差別法が必要だというふうに思います。

 過去、法務省も法案作成を行ってきたということは私も伺いました。ただ、その都度、残念ながら法案が成立しなかった。これは、申し訳ないですけれども、当時の与党の皆さん、あるいは自民党の皆さんの責任が大きいというふうに私は思っております。

 そういう意味でいうと、包括的な反差別法を我々は是非作りたいというふうに考えておりますし、いずれ選挙も行われます、その中でしっかりと政権を担う我々立憲民主党として反差別法の制定に向けて努力していくことを最後に申し上げまして、質問を終わりたいというふうに思います。

古屋委員長 次に、櫻井周さん。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 情報流通プラットフォーム対処法案ということで、早速質疑を始めさせていただきます。

 人を傷つける誹謗中傷は、インターネット上であるか否かを問わず許されない。今般の法改正によって、プラットフォーマーが迅速に対応し、被害者の救済が進むことを期待しております。こうした認識は大臣も同じ思いでいらっしゃるかと思います。

 私自身、インターネット上での誹謗中傷が野放しになっていて、被害者が泣き寝入りせざるを得ない状況は大変深刻な問題だというふうに思いまして、今から四年前、二〇二〇年に問題提起ということで質問主意書も出して御答弁もいただいているところです。また、三年前のプロバイダー責任制限法の改正のときにも質問させていただいております。今般の法改正など総務省の取組には敬意を表するところではありますが、しかし、もっと頑張ってくださいという思いも込めて質問させていただきます。

 まず最初に、表現の自由、憲法二十一条、それから人格権、憲法十三条との関係について質問させていただきます。

 資料一をつけております。読売新聞の記事でございますが、表現の自由、私は大変重要だというふうに思っております。お隣の国では、くまのプーさんまで検閲対象になったりするということで、このような言論弾圧はあってはならない、このようにも考えております。

 一方で、三年前のプロバイダー責任制限法改正案の審議のときにも感じたことではありますが、憲法二十一条の表現の自由が尊重される余り、憲法十三条から導かれる人格権が軽んじられているのではないのかな、そんな印象も受けました。ちょっとバランスが悪いなというふうに感じたところ、是非今回の法改正をきっかけにもう少し改善する方向で進めていただきたいというふうにも考えるんですが、大臣の見解をよろしくお願いいたします。

松本国務大臣 おっしゃるとおり、憲法第十三条の人格権も第二十一条の表現の自由も国民の基本的人権を保障する規定であり、いずれも尊重されなければならないものであるというふうに考えるところでございますが、特に憲法第二十一条、表現の自由はやはり民主主義の根幹にも関わるということで、国、政府としてどのように関与をするかに当たっては配慮しなければいけないものであるというふうにこれまでも考えてきたところではないかというふうに思われるところですが、本法案について申し上げれば、投稿者に保障された表現の自由と投稿者でない方の人格権のバランスを踏まえてプラットフォーム事業者に必要な義務を課そうとするものでございます。

 これからも、憲法上の要請、人格権、表現の自由にとどまらず、昨今の深刻な状況は生存権や財産権にまで様々な影響を及ぼしていると考えられまして、総合的に勘案をすると同時に、社会経済情勢の変化、技術の進化もしっかりと見つつ、インターネット上の違法、有害情報への対策に関する制度は不断に見直しをしなければいけないという認識を持って取り組んでまいりたいと思っております。

櫻井委員 今大臣から、憲法十三条、二十一条のみならず、財産的な話もいただきました。

 続きまして、二ポツのインターネット上での有害情報の取締りについても伺います。

 先ほど大臣がおっしゃられたとおり、インターネット上で投資詐欺などの犯罪が行われているというようなところもございます。こうしたことについて十分取締りができていない、こういう意見もございます。

 先ほど平林委員からも質問がありましたが、著名人に成り済ました投資広告の詐欺、他人に成り済ました愉快犯の取締り、こういったことも課題になっているかと思います。

 資料二にお示ししておりますのは、著名な経済アナリストをかたる投資詐欺で一億二千万円の被害が出ました、こういうことでございます。

 これは、被害に遭われた方というのも大変気の毒といいますか、こういったことはなくしていかなければいけませんし、勝手に名前を使われた著名人にとっても大迷惑、いろいろな、迷惑というだけじゃなくて実害も発生しているというふうに聞いております。一方で、犯罪者にお金が流れてしまっているというのも大問題だというふうに思います。投資詐欺の問題については、そもそもプラットフォーマーが広告の審査をきちんとできていないことが問題ではないかというふうにも考えます。

 また、資料三、これは神戸新聞、私及び大臣のお地元の新聞でございますが、「爆破予告ファクス、兵庫の県立九十八高校にも」ということなんですが、これはファクスで行われている。この件についてはファクスなんですけれども、名前を勝手に使われた弁護士の方はファクスだけじゃなくてインターネット上でも様々な誹謗中傷を受けたりして、被害を受けているというふうに承知しております。

 こういったことが起きているということは大変問題だというふうに私も思っておりまして、インターネット上での投資詐欺などの取締りの必要性について大臣の認識をお伺いしたいとともに、今次法改正で十分な取締りと予防が図られるのかどうか、投資詐欺を根絶できるのか、この点について御答弁をお願いいたします。

松本国務大臣 お話がありましたとおり、SNS等のプラットフォームサービスにおきまして、成り済まし行為、定義もまだいろいろ議論があるんですが、いわゆる成り済まし行為が発生しているということは私も承知をいたしているところであります。

 成り済まし行為は、これも今委員からございました成り済ましを、いわば閲覧した方に財産上の被害をもたらすといった側面があるほか、成り済まされた人にも社会的評価を下げるなどの権利を侵害する可能性もあるものであると考えて、重大な課題となってきているというふうに認識をしております。

 成り済まし行為が他人の権利を侵害する場合には、プロバイダー責任制限法に基づく発信者情報開示制度により発信者を特定して損害賠償請求等を行うことができることとなっております。

 成り済まし行為につきましては既に、明らかな成り済ましなのに削除されない、削除申出が放置されている、成り済ましに対する削除、アカウント停止の基準はあるが適切に運用されていないなどの課題があるというふうに言われてきているところでありまして、本法案では、大規模なプラットフォーム事業者に対しまして、権利侵害への対処に関して十分な知識経験を有する者の選任や、削除申出窓口、手続の整備、公表義務、削除申出への対応体制の整備義務や、削除申出に対する判断、通知義務、削除基準の策定、公表といった削除の実施状況についての評価、公表を求めることとしておりまして、成り済ましの対策としても一定の効果は期待できるのではないかと考えているところでございます。

 さらに、成り済まし行為に対するプラットフォーム事業者の対策に関しては、情報空間の健全性確保の在り方について、偽・誤情報への対応を含め、今、有識者会議で議論、検討を一層進めているところでございます。

櫻井委員 今大臣から、一定の効果が期待できるということで、確かに私も今回の法改正で効果は期待しているんですが、やはりこれは根絶しないといけないと思うんですよね。是非、根絶するんだということで取組をお願いしたいと思います。根絶するには、総務省だけじゃなくて警察とかいろいろな各関係部署があろうかと思いますが、連携をして進めていただきたいと思います。

 続きまして、先ほど西野委員からも偽情報それからフェイクニュースについて質問がありました。私の方からも、資料四をつけておりますけれども、インプ稼ぎというのが最近非常に盛んになってしまっているという問題についても問題提起させていただきます。

 インプというのはインプレッション稼ぎ、つまり閲覧数を増やしていくことでプラットフォーマーから広告収入を得る、こういうことでございます。閲覧数を増やすために偽情報を盛んに発信していくということで、この新聞記事は、能登半島地震のときにいろいろなフェイクニュースを流してアクセス数を稼いだということで、途上国からのアクセスが増えている、こんな話も出てきております。

 また、一方で、差別的な書き込みをして、それでアクセス数を増やして広告収入を得る、そんな者もいるという話もございます。

 大臣にここでお尋ねしたいんですけれども、このインプ稼ぎについて、偽情報の発信をプラットフォーマーが助長している面があると思うんですね、広告収入を得られるからせっせと偽情報を流しているわけなので。やはりプラットフォーマーの責任は極めて重いと考えますが、大臣の認識はいかがでしょうか。そして、今回の法改正によって、こうしたインプ稼ぎのような偽情報の発信を十分に取り締まる、そして予防することができるとお考えか、この点についても御答弁をお願いいたします。

松本国務大臣 まず、令和六年能登半島地震におきましても、残念ながら、救命救助活動、復旧復興活動を妨げるような偽・誤情報が流通したと指摘しておりまして、私も具体的に何件か認識もいたしました。混乱を少しでも軽減するために、総務省として把握ができたものにつきましては記者発表させていただくなどして、報道されることによって関係の皆様には偽・誤情報が流通している旨を知っていただくように努めてきたところではございます。

 今お話がありましたように、偽・誤情報対応として、総務省におきましては、SNSなどのプラットフォーム事業者に対して利用規約などを踏まえた適正な対応を要請するとともに、対応状況のフォローアップを継続的に実施しているところでございます。

 その上で、委員今御指摘がございました、偽・誤情報が流通、拡散される原因として、多数の閲覧やフォロワーを集めたユーザーが収益を得られたり、注目を集めてクリック数を稼いだウェブサイトの運営者が広告収入を得られたりする仕組みが関連しているとする意見があることは承知しておりまして、深刻に受け止めております。

 偽・誤情報につきましては、先ほども申しましたように、情報空間の健全性を確保すべく有識者会議を設けて検討を進めていただいておりまして、構成員の方からは、インプレッション稼ぎを目的とした偽・誤情報等の質の低いコンテンツの発信、拡散は情報流通全体の健全性を確保する上での大きな課題であるとの意見をいただいたところでございます。有識者会議におきましては、いわばネットにおけるお金の流れというのも見ていく必要があるという考え方に基づいて、広告業の団体の方々それから広告主の団体の方々からもヒアリングを行いました。偽・誤情報を発信するウェブサイトに広告費が流出しており、広告主のブランドを守る観点からも何らかの対策が必要であるとの御意見をいただいているところでございます。

 この有識者会議におきましては、外国のデジタルプラットフォーム事業者からも広告に関する対応状況についてヒアリングを実施いたしました。

 総務省としては、これらのヒアリングの結果や国際的な動向も踏まえて、この夏頃の取りまとめに向けて、偽・誤情報の流通、拡散の問題への対処と表現の自由の確保、これら両方をしっかりと見つつ、制度面を含めた総合的な対策の検討を進めたいと考えておるところでございます。

櫻井委員 今大臣から御答弁いただいたとおり、偽情報があって、その隣に広告がぴゅっと出るというと、広告主にしても、えっ、こんなところに広告を出されちゃうのということにもなろうかと思いますから、これは民民の話ということになりますけれども、そういった観点からも是非このフェイクニュース等を減らしていくという努力が必要かと思いますので、その点を総務省としても後押ししていただきたいというふうにお願い申し上げます。

 続きまして、損害賠償責任、損害賠償額の妥当性について質問させていただきます。

 加害者は気楽に誹謗中傷してしまう、被害者は対応するコストが大きい、こういう話が、おとといのこの委員会における参考人からのお話の中にもありました。そして、被害者のコストが大きいということについては、被害者が、弁護士費用を含む裁判費用に対して、裁判で勝訴して損害賠償額を得られたとしても、それが全然少ないということで結果的に赤字になってしまう、被害者が身銭を切って裁判せざるを得ない、こういう状況があるのではないのか、こんな問題意識も持っております。

 そうしたことがあると、被害者は結局、すごくお金がかかるからということで諦めてしまう、泣き寝入りしてしまう、こういうことも起きているのではないか。そうすると、今度、加害者の方は、誹謗中傷を気軽にやって、それで野放しにされちゃって、別に何の反省もないということにもなってしまいます。

 そういったこともあって、三年前のプロバイダー責任制限法改正の審議の中で、損害賠償額の実態把握をお願いしますというふうにお願いいたしました。今日、法務省から政務官にも来ていただいておりますのでお尋ねをいたしますが、損害賠償額の実情、被害者が身銭を切ってしまっているという状況、これをどのように把握されているか、それから、日本の裁判での損害賠償額の認定額が少な過ぎるということについて政府はどのような認識、問題意識を持っているのか、お答えをお願いいたします。

中野大臣政務官 お答えいたします。

 不法行為に基づく損害賠償請求において被害者が支出した各種の費用のうち、どの範囲までが損害と認められるかについては、個別具体的な事案を踏まえて裁判所において判断されるものと承知いたしております。

 御指摘のような事案につきましては、裁判所において損害と認められる慰謝料や弁護士費用の額が低廉であるとの御指摘があることも承知いたしております。御指摘のような事案の裁判例を網羅的に把握することは困難でございますが、裁判例には、例えば、弁護士費用として相当な額に加え発信者を特定するために必要となった費用を認めたものもあると承知いたしております。

 法務省においては、インターネット上の権利侵害事案を含め、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟における慰謝料や弁護士費用等の額に関する判断の動向について、今後、調査研究を実施することを検討させていただきたいと存じます。

櫻井委員 是非、法務省におかれましても損害賠償額が少ないという実情について調べていただきたい。被害者が泣き寝入りするというようなことが絶対あってはいけませんので、そこはちゃんと正当に権利を回復できるような道筋をしっかりと示していくためにも、まずは実態調査、よろしくお願いいたします。

 もう一つ、プラットフォーマーの損害賠償責任というのもあろうかと思います。

 今、損害賠償のお話がございましたが、これは民法七百九条の話でございます。民法七百九条では故意又は過失というのが一つ大きな要件となっているわけなんですが、これを具体的に定めたもの、インターネット上での誹謗中傷等について具体的に定めたものがプロバイダー責任制限法の三条、まさにプラットフォーマーの損害賠償責任の制限を規定しているところだというふうに承知しております。

 すなわち、これまでプロバイダー、プラットフォーマーはこの三条によってある種守られてきたということだと思います。それによって、私はちょっと、過剰に守られ過ぎたがゆえに、この後またやりますけれども、ぞんざいな対応といいますか、不誠実な対応が横行してしまっているのではないのかというふうにも思いますので、この法三条についての解釈をお尋ねいたします。

 今般、二十二条が設けられまして、被害者から申出を受け付ける方法をちゃんと定めましょうということになりました。そして、二十五条では、総務省令で一定期間内に、これは一週間というふうに聞いておりますけれども、被害者からの申出に対する通知を行うということで、一定アクションを取るということになっております。

 二十二条の方法で申出を受けて二十五条の一週間が経過したら、もはや三条一項の一号で規定している知っていたときに該当するのではないのか。一号に該当しなくても二号の知ることができたと認めるに足りる相当の理由に当たるのではなかろうかというふうに思います。

 すなわち、三条の免責はもはや適用されない。すなわち、プラットフォーマーは損害賠償責任を負う立場になるということで、大臣、よろしいでしょうか。もしこういうことであれば、プラットフォーマーが損害賠償責任を果たした裁判例など、もしあれば御紹介ください。

松本国務大臣 本法案により新設される第二十二条以下の各条項は、プラットフォーム事業者が被害者から投稿の削除申出を受け付け、当該投稿の権利侵害性を調査し、削除するか否かの判断を行う仕組みでございます。

 プラットフォーム事業者がこの仕組みに基づいて被害者から投稿の削除申出を受け付け、当該投稿の権利侵害性を適切に調査した結果、権利が侵害されていると認識したにもかかわらず、これを削除せず放置した場合には、法第三条第一項に基づき、被害者に生じた損害について損害賠償責任の制限を得ることはできなくなるということでございます。

 具体的な裁判例その他は、また機会をいただいて御報告させていただくようにしたいと思っております。

櫻井委員 最後、聞き取れなかったんですが、できなくなるとは、何ができなくなるんでしたっけ。

松本国務大臣 繰り返しになりますけれども、プラットフォーム事業者が被害者から投稿の削除申出を受け付け、当該投稿の権利侵害性を適切に調査した結果、権利が侵害されていると認識したにもかかわらず、これを削除せず放置した場合には、法第三条第一項に基づいて、被害者に生じた損害について損害賠償責任の制限を得ることはできなくなります。

櫻井委員 要は、免責がなくなる、こういうことですね。ありがとうございます、そうなんです。

 ですから、やはり今回の二十二条、二十五条、それから三条という流れは非常に大事なことだと思いますし、先ほど来、誹謗中傷の野放しはよくないという話の中で、一方で、政府が直接的に、行政が取り締まるというようなことも、これはある種表現の自由の検閲とかにつながりかねないので抑制的にやらなきゃいけないという話でございます。ましてや、警察が動いて刑罰にしてしまう、これも控えるべきだというふうに私も思います。

 ですから、もう一方の方法としては、誹謗中傷を受けた方、これは民間ですけれども、それから加害者も民間、民民同士である程度処理をしていただくといいますか、対処していただくというのが本来の筋ではなかろうかと思います。

 ただ、これまで三条で加害者ないしは加害者をもしかしたら幇助しているかもしれないプラットフォーマーの立場が守られ過ぎてきたというところがあるから、前回、三年前の改正でも発信者情報の開示をもう少しやりやすくしますとか、あと今回もこういったいろいろな整備をすることによって、被害者の方にある種手段をもう少し与えていくことによって民民での解決が図りやすくなるということで、こうした問題を解決できるのではないのかなというふうにも思いますから、こうしたアプローチを是非強化していただきたいということをお願い申し上げます。

 続いて、四ポツ、五ポツは条文について細かく確認をさせていただきます。また、取組についても細かく確認をさせていただきます。

 まず、プラットフォーマーの取組についてでございます。

 資料の五の一、五の二、それから資料の六はそれぞれ、総務省、警察庁、法務省がそれぞれ相談窓口とかを設けておりまして、その処理の状況について書かせていただいております。

 違法情報や侵害情報が氾濫しているという現状、おとといの参考人の先生のお話ですと、国民の二十人に一人は被害の経験があるとか、さらには、二〇%は被害に遭った、そんな統計もあるような話がございました。

 ですので、相談窓口の受け付けている年間五千件とか三千件とかというのは非常に少ない、氷山の一角というよりも、氷山の一かけらぐらいにしかなっていないのではないのか、やはり多くの方が諦めちゃっている、泣き寝入りしているという状況があるのではないのかというふうにも心配をするところです。

 そこで、一般の国民の方々にこうした総務省、法務省、警察庁の相談窓口とホットラインがどの程度認識をされているのかということについて、これは総務省にお尋ねをいたします。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 誹謗中傷などに遭われた被害者の方々においては、何をしたらよいのか分からないという場合も多く、そうした観点から相談対応の充実は非常に重要と考えております。

 インターネット上の違法、有害情報については、総務省を始め関係省庁や民間団体において複数の相談機関が設置されているところではございますが、総務省が実施したアンケートによれば、誹謗中傷などの被害に遭った際の相談窓口の認知度は約四四%でございました。

 これまでも、利用者に対して分かりやすい相談窓口の案内チラシを作成し、総務省や各団体のサイトなどでの掲載や教育機関などへの配布などを通じて相談機関の周知を図ってまいりましたが、助けを必要とする方により認知いただけますよう、各相談機関とも連携しながら一層の周知に努めてまいりたいと考えております。

櫻井委員 ちょっと、私、いいことを思いついたと自分で思っているんですけれども、やはりプラットフォーマーは政府のこうした相談窓口を周知する社会的責任があると思うんですよ。政府がわざわざプラットフォーマーに広告料を払うんじゃなくて、プラットフォーマーが自主的に、もし困ったことがあったらこういう総務省とか警察庁、法務省の相談窓口がありますから是非相談してみてくださいね、こういうふうにして最初の入口のページの端っこの方にでも載せておけば、ああ、そうかと。だって、誹謗中傷を受けて困っている方もインターネット上の画面を見ているわけですよね、加害者だって見ているわけですよね。ですから、被害者はそういうところにアクセスできるし、気楽に誹謗中傷をしてしまっている人も、そうか、こんなことをやっているとそのうち警察から連絡が来ちゃうかもしれないなと思えば、一歩踏みとどまって、誹謗中傷をやめようというふうに考え直すかもしれません。

 ですから、プラットフォーマーにもこうした責任がありますよということぐらいは、私もこの場をかりて申し上げているんですけれども、ちょっと皆さんも言っていただいて、是非プラットフォーマーにもう少し社会的責任を図っていただくようにしてはどうかなと思うんですが、大臣、いかがですか。

松本国務大臣 委員の御指摘そのものは私も今よく聞かせていただいたところでございますが、政府としてプラットフォーム事業者にどのようなことを負わせるかといったことはまた法に基づいてしっかり対応させていただくことになろうかというふうに思いますが、国会で委員がお取り上げになったということは私自身も記憶にはしっかりとどめておきたいと思います。

櫻井委員 そうですね、大臣にもちゃんと覚えていただいたということで、是非プラットフォーマーの皆さんにおかれましては社会的責任を適切にしっかりと果たしていただくということをお願い申し上げたいと思います。

 続きまして、先ほどお示しした資料六なんですけれども、これは法務省の人権擁護機関による削除要請とその削除対応率の表でございます。

 全体を見ますと、一番下に六九・二六%というのが出ております。法務省の、しかも人権擁護機関が精査をして、これはやはりひどいよねということでプラットフォーマーに削除要請したにもかかわらず、三割は削除してもらえない、無視されている。見ますと、特にツイッターとか2ちゃんねるとかは二割前後しか対応してくれない、ほとんど、八割は野放し、こういうふうになっているんですね。

 法務省から政務官に来ていただいておりますけれども、法務省が問題だと思って判断して削除要請しているのに、一〇〇%にしろと言うとまた別な問題が起きますけれども、九九%ぐらいにはなってもいいんじゃないのかなと思うんです。何でこんなに低いんですか、六九%しか対応してもらえないんでしょうか。これは法務省の判断が間違っているということなのか、それとも法務省がプラットフォーマーに軽んじられている、なめられているということなのか、どっちなんでしょうか。

中野大臣政務官 お答えさせていただきます。

 法務省の人権擁護機関において、被害者からインターネット上の誹謗中傷等の投稿による被害について相談を受けた場合には、相談者の意向に応じ、違法性を判断した上で、プロバイダー等に対して投稿の削除要請などの対応を行っているところでございます。

 法務省の人権擁護機関がプロバイダー等に対して削除要請を行ったインターネット上の人権侵害情報のうち、因果関係は定かでないものの、投稿の全部又は一部が削除されたものの割合である削除対応率は、例年、全体の約七割程度で推移をいたしているところでございます。

 削除要請につきましても、削除されない場合があることの背景につきましては、我が国の人権問題に対する海外事業者の理解不足などがあると認識をさせていただいております。有識者検討会において令和四年五月に取りまとめられた削除の判断基準等の法的整理も踏まえ、総務省を始めとする関係機関とも連携させていただきながら、削除の進まない海外事業者との間での意見交換を繰り返し、理解を求めてきたところでございます。

 今後も、削除要請に対するプロバイダー等の理解を得られるよう、粘り強く取り組んでまいりたいと存じます。

櫻井委員 そうなんですよ、しかもいろいろ粘り強くお話をしていただいているわけですから、プラットフォーマーはもはや知らないわけはないんですよね。先ほどの三条のお話の蒸し返しになりますけれども、知らないわけはないので、プラットフォーマーは責任を果たせと損害賠償請求をばしばしやっていただいたらいいと思うんですね。そういった方法も是非相談者に対してはお答えしていただければというふうに思います。

 続きまして、資料七ですが、これは先ほど政務官にも御答弁いただいた我が国の差別の一つの例でございますが、資料七に示しておりますのは兵庫県のインターネットモニタリング事業の状況についてでございます。部落差別解消推進法を受けて、地方自治体の中には部落差別解消推進条例を制定しているところがございます。そして、条例の中でインターネットモニタリング事業を実施するということを規定している例もございます。

 兵庫県もこうした条例を設けていてモニタリング事業をやっているわけなんですが、特に、今、部落差別、外国人へのヘイトスピーチに対する差別的な書き込みが後を絶たない、こういうことからこうしたモニタリング事業をやっているんですが、これも、削除を依頼して削除に応じてもらえた割合、令和五年度は三三・八%と極めて低い状況にございます。

 私はプラットフォーマーの対応としてひどいと思うんですよ。政務官、この三割という対応状況をどのように受け止めておられますか。政府としては、地方自治体が一生懸命こうやって頑張っているわけですから、こうした取組をもっともっと応援するべきだと考えますが、いかがでしょうか。

中野大臣政務官 お答えいたします。

 地方公共団体が行っている取組を網羅的に把握することは大変に困難でございますが、一部の地方公共団体において、インターネット上の誹謗中傷等に関し、これを積極的に探知するモニタリングやプロバイダーに対しての削除依頼を行っていることは承知いたしております。

 法務省の人権擁護機関としましては、地方公共団体が行う削除依頼の実効性向上に資するよう、有識者会議において令和四年五月に取りまとめられました削除の判断基準等の法的整理について地方公共団体の人権担当職員らに説明するなど、取組を行っているところでございます。

 今後も、法務省の人権擁護機関が行うプロバイダー等への削除要請等の取組に当たっては、総務省、地方公共団体と連携しながら対応をしてまいりたいと存じます。

櫻井委員 地方自治体とも連携するというお話をいただきまして、ありがとうございます。是非していただきたいんですが、地方自治体は一〇〇%自己資金でといいますか、やっているわけなんですね。半分ぐらい国が見てもいいんじゃないのかなというふうにも思いますから、そういったことも含めて連携の一つとして考えていただければというふうに思います。

 続きまして、プラットフォーマーが自ら定めて公表する基準、法二十六条について質問しようと思っていたんですが、時間がないので、これは確認といいますか、要望だけさせていただきます。

 テレサ、一般社団法人テレコムサービス協会のプロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が作成したプロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドラインとか、セーファーインターネットアソシエーションが発行しております権利侵害明白性ガイドライン、これを参考にしてプラットフォーマーが基準を作成するものだと私は思っておったんですが、先ほどの大臣の答弁では、これからガイドラインを示していくというふうにお話がございました。

 是非こうした既にあるガイドラインを、プロバイダー、プラットフォーマーにはしっかりこれを参照して基準を作っていただきますようお願いいたします。また、ここから大きく逸脱しているものについては、ちゃんと、政府が指導していいのかどうか分かりませんけれども、こういうガイドラインがあるんですよということを繰り返し粘り強く示していただければというふうに思います。

 続きまして、五ポツの方に飛ばさせていただきまして、二つ目の質問なんですが、ログの保存期間についてです。

 三年前の法案審議のときにも議論になったんですが、開示請求しても、既にログは消えていました、発信者情報は分かりませんと。それまで一生懸命手間とお金とをかけてやっと開示請求までたどり着いたのに、行ったらログは消えていました、これでは被害者救済されないわけなんですよ。しかも、総務省の方では、ログは用事が済んだら早く消せみたいなことを言っているということなので、それだと被害者救済できないケースがやはり出てきてしまう。

 三年前の法案審議のときには、開示請求までたどり着くのに結構時間がかかる、数か月というか一年近くかかっているケースもあったものですから、せめて六か月ぐらいはログを保存してください、こういう議論もありました。今、大分開示請求までたどり着くのが早くなっていますので、六か月必要なのか三か月でいいのか議論はあるとしても、やはり一定期間プラットフォーマーにログを保存しておく、被害者の方も、三か月なり六か月なり、この期間は必ずログは保存されているからという思いを持ってやれば少しは希望が見えてくると思うんですけれども、ログの保存期間、これもしっかり規定するべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

松本国務大臣 御指摘がありましたとおり、事業者の保有する発信者情報が保存期間の経過によって消去されてしまって被害者救済の観点から課題があるという指摘につきましては承知をいたしているところでございますが、通信記録は通信の秘密及びプライバシーに関わる情報であるために厳格な取扱いが求められております。事業者による個人情報等の取扱いに係るガイドライン等におきましては、事業者は課金、料金請求、苦情対応など業務遂行上必要な場合に通信履歴を保持することができるとされております。

 ガイドラインでは一般に六か月程度の保持が許容されておりますが、記録目的に必要な範囲を超えてはならず、その目的を達成したときは速やかに当該記録を消去しなければならない旨が定められております。

 事業者に対して通信履歴の保存を一定期間義務づけることにつきましては、事業者に業務上の必要を超えて通信履歴の保存を義務づけるということになりますので、通信の秘密、プライバシー保護の観点も踏まえまして、その保存期間も含めてしっかりと検討していかなければいけないところではないかというふうに考えております。

古屋委員長 申合せの時間が来ております。おまとめください。

櫻井委員 質問はもう終わりますけれども、大臣、これでは被害者の救済なんか厳しいと思うんですよ。やはり最低限三か月でもログの保存というのは、ちゃんと残していかないと被害者救済は進められないと思いますので、この点は改めて重ねて要望させていただきます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、阿部司さん。

阿部(司)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部司でございます。

 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 インターネット上の誹謗中傷などの被害が深刻化する中で、大規模プラットフォーマーに対して他人の権利を侵害する投稿の削除対応の迅速化、また削除基準の公表による運用状況の透明化を求める制度整備を行うものと承知しております。

 この法案の立案に至るまでも様々な対策を取られてきたかと思うんですけれども、まず、これまでの誹謗中傷対策の効果そして評価についてお伺いをしたいと思います。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 人を傷つけるような誹謗中傷は許されず、特にインターネット上で行われた場合には、匿名性が高く加害者が特定されにくいことや、急速な拡散による被害の拡大という問題があると考えております。

 総務省では、インターネット上の誹謗中傷などの被害者救済をより円滑にするなどの対応を図るため、ユーザーのICTリテラシーの向上、相談体制の強化、プロバイダー責任制限法の着実な運用など、総合的な対策を進めてまいりました。

 とりわけ、プロバイダー責任制限法については、既に御案内がありましたが、誹謗中傷などを行った発信者の情報開示について簡易な裁判手続を可能とする改正法が令和四年十月から施行されております。発信者情報開示の多くを扱う東京地裁では、直近の年間の請求件数は四千百九十件と、改正前の令和元年における仮処分の申立て件数約六百三十件と比較して七倍近くに増えている状況となっており、被害者救済のための新制度の利用が着実に進んでいるものと考えております。

 一方、インターネット上における誹謗中傷などの違法、有害情報の流通は依然として深刻な状況にございまして、被害者の皆様からは、投稿の削除に関する相談が多く寄せられているところでございます。

 これを踏まえ、被害者にとっては大きな負担となる裁判手続によらなくてもプラットフォーム事業者による誹謗中傷などへの適切な対応が促進されるよう、違法、有害情報に係る投稿の削除に関し、プラットフォーム事業者に対して対応の迅速化と運用状況の透明化を求めるプロバイダー責任制限法の改正法案を今回提出させていただいたところでございます。

阿部(司)委員 ありがとうございます。

 これまでも様々な対策を取ってきて、また今回、もう一段階踏み込んでより被害者に寄り添うルールを整備していく、その新しい御提案をされたこと、非常にいいことだと私は歓迎をしたいと思います。

 皆さん、ここにおられる方々もそうかもしれないですけれども、SNS上では突然知らない人に罵倒されることが日常茶飯事なのかなと思います。私も、旧ツイッター、Xで炎上したことがありまして、一千万インプレッションいったことがあります。また、我が党の音喜多駿参議院議員がおりますけれども、よく炎上しております。もちろん正当な批判ならしっかり受け止めるべきだと思いますけれども、言いたいことも言えない世の中になってきているなという感も否めないと思うんですけれども、大臣、インターネット空間は以前より不寛容になってきていると思いませんか、いかがでしょうか。

松本国務大臣 SNSは、利用者がインターネット上で世界中の利用者と直接つながって自由に迅速に情報を発信し入手できる場を提供しているところでございますが、情報流通を活発にさせるもので、膨大な情報量が流通するようなことになっていることは私どもも認識しております。

 そういった中で、SNSの利用者数や投稿数の多さなどによって一部の利用者による人を傷つけるような誹謗中傷など、いわゆる炎上によって利用者の中にはSNS上での発信をちゅうちょしてしまうといった指摘があることも認識しております。

 表現の自由の下で主張することは自由に行われるべきでございますが、一定の匿名性があって不特定多数と容易につながる情報空間で主張するからには、やはり意見、見解は多様なものであって、相手の主張も受け止める寛容さは大切であるというふうに考えるところでございます。

 その意味で、SNS等利用者の皆さんにもリテラシーを高めていただきたいと思いますし、また、場を提供するプラットフォーマーにおかれても情報空間において社会的な責任を負っていることを自覚していただく必要があると考え、制度整備の一環として今回法案を提出させていただいた次第であります。

阿部(司)委員 まさにそのとおりだなという御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 この前、先日も炎上案件がありまして、いわゆるママチャリ事件というような、そういうことがあったんですけれども。X上である動画が投稿されまして、いわゆるママチャリに乗っておりました主婦の方が車と正面から相対した状況でして、そのママチャリに乗っていた主婦の方が交通ルール違反をしていた、それを御自身は逆に車の方を非難するような態度で、スマホで撮影したりですね。それが非常に大炎上しまして、その方のお名前ですとか配偶者の方の職場、お子さんの保育園までさらされてしまうというような、こんな事案がありました。

 あとは、皆さん御記憶にあられるかもしれませんが、すしぺろ事件というものがありまして、回転ずしのおしょうゆをちょっとなめて、それを面白がって投稿するというような、その少年も社会的制裁をかなり受けたという事案でしたけれども。これ自体、褒められたことではありませんけれども、本来、日本は法治国家ですので、当事者間でしっかり法の下で解決をするというのが本筋だと思います。

 このような行き過ぎたリンチ、私刑といいますか、このようなことが横行しているような状況かと思います。あと、政治ですとかジェンダー、こうした発言に対しても、これもうかつに発信するとたたかれ、罵倒され、炎上する。

 先日、参考人質疑でお越しいただいた国際大学の山口先生もおっしゃっているんですけれども、大衆による表現の規制という新しい現象を生み出していると。誹謗中傷ですとか、そういった罵倒を行ういわゆる極端な人、極端な人と山口先生は指摘をされているんですが、どのくらい存在するのかというと、炎上一件に対して書き込む人は七万人に一人の割合だそうです。ということで、非常に一部の人なんですね。一部の人が大量の誹謗中傷を行っている。また、更にごく少数の超極端な人が数百アカウントを作成して誹謗中傷やデマを繰り返す、こんなこともあったと言われております。

 このような誹謗中傷、罵詈雑言、こうしたものは言論の萎縮を生むと思います。一部の極端な人が公共空間を息苦しいものにして、被害者を生み出している。そのような中で、プラットフォーマーが自主的に削除、運用基準を定めて公表していくことというのは非常に意義があると思います。

 そこで、削除、運用基準の公表について国民の理解をしっかり高めていく上でも、事業者さんだけにお願いをするのではなくて、政府でもいわゆる特設のページを作って公開するような措置が必要だと思うんですけれども、政府参考人、いかがでしょうか。

今川政府参考人 お答えいたします。

 本法案では、大規模SNSなどのプラットフォーム事業者に対し削除基準やその運用状況の公表を義務づけまして、各事業者の取組が国民、利用者に分かりやすいように開示されることでプラットフォーム事業者による削除基準や運用の適正化を促すものでございます。

 このためには、委員御指摘のとおり、国民、利用者に対して分かりやすい形で削除基準やその運用状況が公表されることが重要と認識しております。

 その具体的な方法につきましては、委員御提案の特設ページといった選択肢も含めまして、適切な方法を今後検討してまいりたいと考えております。

阿部(司)委員 前向きな御答弁をありがとうございます。是非よろしくお願いします。

 続きまして、事業者の削除基準、どのような内容でどの程度具体性を持ったものを想定しているのか、こちらをお伺いいたします。

今川政府参考人 お答えいたします。

 プラットフォーム事業者は現在も削除基準に相当するものとしてポリシーを作成しておりますが、一般にポリシーの内容が抽象的であり、例えば嫌がらせや名誉毀損は許されないという観点で記載をされているものの、具体的にどういったものがそれに当たるのかという判断を例示しているようなものは非常に少ないと承知しております。

 そのような状況を踏まえまして、本法案においては、削除基準は大規模プラットフォーム事業者が自らの判断で策定、公表すべきものとしておりまして、削除基準の具体性につきましては、削除の対象となる情報の種類が情報を知ることとなった原因の別に応じてできる限り具体的に定められていること、また、利用者などの関係者が容易に理解することのできる表現を用いていることなどを求めることとしております。

 削除基準の具体性について十分と言えないような場合には、各事業者の運用状況の公表を義務づけて透明化を図ることによりまして基準の見直しを促していくことを考えているところでございます。

阿部(司)委員 できる限り具体的であることということなんですけれども、事業者側からは、削除基準を決めていく上でガイドラインのようなものがあった方が助かるという声が上がっておるんですが、こちらは作成の御予定はありますでしょうか。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案において、削除基準は大規模プラットフォーム事業者が自らの判断で策定、公表すべきものとしており、事業者ごとに削除基準が異なるものとなることが想定されます。

 そのような中で、委員御指摘のガイドラインが存在した方がよいとの御指摘もございますので、表現の自由と被害者救済のバランスを踏まえつつ、総務省において、どのような情報を流通させることが法令違反や権利侵害となるのか、関係団体と協力することによりましてガイドラインなどを示すことを検討してまいりたいと考えております。

阿部(司)委員 ありがとうございます。

 この法案、非常に、事業者さん側がしっかりやってくれるかどうか、実効性の担保というところが重要だと思います。

 その前提でちょっとお話をしたいんですけれども、第三次の取りまとめを私は拝見いたしました。こちらで、ツイッターを除く全ての事業者において、我が国における偽情報への対応及び透明性、アカウンタビリティー確保の取組の進捗は、二〇二二年三月二十八日に実施したプラットフォームサービス第三十四回におけるヒアリングと比較して、一部では進展が見られるものの、ほぼ同等であり、いまだ限定的であると。また、ツイッターからは、口頭での発表が行われたものの、ヒアリングシート及び説明資料の提出がなく、透明性、アカウンタビリティー確保の取組について後退があったという記述があったんですけれども、本日時点での提出状況について、いかがでしょうか。また、未提出なのであれば、提出をしっかりまた改めてお願いするべきじゃないかと思いますが、参考人、いかがでしょうか。

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、総務省の有識者会議が主要なプラットフォーム事業者に対し偽情報への対策状況についてモニタリングを行いましたところ、委員御指摘の事業者からはヒアリングシート及び説明資料の提出がございませんでした。

 この有識者会議につきましては本年一月に既に終了しておりまして、ヒアリングシートなどの提出はなされておりません。

 このような事態がありましたことも踏まえて、本法案においては大規模プラットフォーム事業者に対して削除などの運用状況の公表義務を課すこととしております。

 総務省においては、本法案が成立した暁には、本法案に基づく義務が遵守されるよう制度を運用してまいりたいと考えております。

阿部(司)委員 是非しっかり事業者さん側にやっていただけるよう、しっかりお願いしたいと思います。

 少し話は変わるんですが、最近、メタの、いわゆるフェイスブックの成り済まし広告が非常に問題になっていて、どういうものかといいますと、御存じの方は多いかと思いますが、著名人の方、自分がさもその方が投稿しているような形で投資の案内をするですとか、こうした広告が横行しておるんですけれども、この前も、前澤さんという著名な経営者の方がいらっしゃいますけれども、スタートトゥデイか、こちらの元経営者の方が、メタには本当に怒っているというような投稿をXでされておったんですけれども。プラットフォーマーにしっかり、困っている方がいて、改善を図ってほしいと言ってもなかなか改善していかない状況があると思いますので、その点を是非しっかりやっていただけますようお願いしておきたいと思います。

 続いて、いわゆるシャドーバンの問題ですね。

 SNSでシャドーバンというものがありまして、何かといいますと、何か有害な情報を発信しているアカウントがあったとして、その当事者に通知をしない形で検索から消すようなことをシャドーバンといいます。結局、アカウント自体も有害情報自体も検索できずに全く見えない形になるので、例えば被害に遭っている方は実質的には削除されていることと同等になるんですけれども、シャドーバンというのが本法案における送信防止措置に当たるのか、こちらをお答えいただけますでしょうか。

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のいわゆるシャドーバンは、その定義は必ずしも明確ではないと承っておりますが、プラットフォーム事業者が投稿された情報について当該情報の発信者に通知を行わずに発信者以外の利用者が閲覧できない状態にする措置を含むものと認識しております。

 発信者以外の利用者が投稿を閲覧できない状態とする措置は、本法案第二条第九号の送信防止措置に該当すると考えております。

阿部(司)委員 送信防止措置にシャドーバンが該当するという非常に明確な御答弁をいただけたと思います。

 本法案の第二十七条では、送信防止措置を講じたときは、当該情報の発信者が容易に知り得る状態に置く措置を講じなければならないことという趣旨となっております。シャドーバンされた場合は発信者に通知をされませんけれども、こちらの御見解はいかがでしょうか。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 発信者以外の利用者が閲覧できない状態にする措置は先ほど申し上げたとおり送信防止措置に該当するため、大規模特定電気通信役務提供者には、本法案第二十七条に基づき、送信防止措置を講じた場合には発信者に通知などを行うことが義務づけられるところでございます。

 ただし、本法案第二十七条第二号は正当な理由がある場合には発信者への通知などを行うことを要しないこととされておりまして、この正当な理由には、例えば、過去に同一内容の送信防止措置を講じた旨通知をしている場合、また通知を行うことにより申し出た方に危害が及ぶおそれがある場合などが考えられるところでございます。

 本法案が成立した暁には、正当な理由に何が該当するかにつきまして総務省としてもしっかりと考え方を示してまいりたいと考えております。

阿部(司)委員 ありがとうございます。例外規定があるということでしたけれども、二十七条にこのように書いてあって、さらにシャドーバン自体が送信防止措置に当たるということですので、こちらはX社さんともしっかり話し合って、ちゃんと法にのっとった御対応をいただけるようにしていただければと思います。

 次の質問なんですけれども、違法、有害情報に関しまして、著作権法違反というのは本法案の対象に入ってくるのか入ってこないのか、こちらを確認させてください。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 著作権は、著作物を創作した者に対して付与される権利であるところ、著作権を侵害する情報についても本法案における権利侵害情報に該当し、大規模プラットフォーム事業者は、権利者から申出があった場合には一定期間内の応答などの措置を行うことが義務づけられることになると考えております。

阿部(司)委員 ありがとうございます。こちらは、気になっているという方がいらっしゃいましたので、確認をさせていただきました。

 今回、維新からも、我が党からも法案を提出させていただいておりますので、法案提出者にお伺いをしてまいりたいと思います。まず、維新案と政府案、何が異なるのか、お伺いをいたします。

中司議員 維新案と政府案との主な相違点として、第一に、維新案では、発信者情報開示請求を行う場合の請求先や請求方法の公表を義務づけているほか、毎年少なくとも一回、発信者情報開示の実施状況等を公表するよう義務づけております。このように、発信者情報開示についても透明化を図っております。

 第二に、維新案では、削除や発信者情報開示の実施状況等を公表するに当たって、これらの実施状況等についての自己評価も公表することを義務づけております。これは、表現の自由に配慮しつつ、事業者が自己評価を通して自主的に削除や発信者情報開示の運用について更なる改善、向上に努めることで自浄作用が働くことを期待したものであります。

 このほか、維新案では、対象事業者の指定に当たっての審議会への諮問や削除の実施状況等の公表に関する指針の策定についても定めております。

阿部(司)委員 ありがとうございます。

 特に、いわゆる事業者の自己評価、こちらはプラットフォーム事業者がしっかり法にのっとってやることをやっているのかということ、透明性を高めていく上でも非常に重要なポイントだと思います。是非この点を政府側の方にも御認識いただきまして、修正の御検討をいただきたいと思います。

 次に、維新案の二十三条で定められた総務大臣の策定する指針はなぜ設けられたのか、お伺いをいたします。

中司議員 維新案では、大規模なSNS事業者に、毎年少なくとも一回、削除の実施状況や自己評価等に関する事項を公表することを義務づけておりますが、この公表について、その具体的な方法や内容、自己評価に関する指標等を、指針、いわゆるガイドラインで定めることとしております。

 政府案では毎年一回の公表の詳細について省令で定めることとされておりますが、維新案では、ガイドラインで定めることとすることで、どのように公表すればよいのかを明らかにしつつ、それぞれの事業者が、提供するサービスの違いを踏まえ、その実態に応じて柔軟に対応することができるようにしております。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 維新案では、ガイドラインを定めて、いわゆる今の提出の法案では省令で定めるところを、もう少し具体性を持って指針を示すことでより柔軟に対応できるようにするということですので、こちらも是非政府側には御検討をいただきたいと思います。

 法案の具体的な中身について御質問させていただきましたけれども、少し視点を変えて質問してまいりたいと思います。

 大臣、改めてSNSの有効性、リスクに関する現状認識についてお伺いしたいんですけれども、先ほども御意見をお伺いしましたが、もう少し、もうちょっとマクロな視点といいますか、このような観点からお話をいただければと思います。

松本国務大臣 SNSは、人々がインターネット上で世界中の方々と直接つながって自由、迅速に情報を発信し入手できるということで、お一人お一人がいわば活躍できる場が広がるという意味では民主主義にもプラスではないかと思いますし、もちろん発信をするという意味で表現の自由にもプラスであることは大変大きいと思いますし、そこによって多くの方々がまた御自身のいわば存在についてプラスのものが得られるところもあろうかというふうに思いますが、大変たくさんの情報が流通をする環境がある中で偽・誤情報や違法、有害情報があることも確かでありますし、これが残念ながら迅速に流通、拡散をするという事態もあることは確かでございます。

 改めてこの機会に国民の皆様にネット上の情報にはそういったものがあるということも御理解いただいた上で情報を活用いただきたいというふうに思うわけでありますが、この情報流通の主要な場となっているSNS等プラットフォームを提供する事業者には、偽・誤情報、違法、有害情報の流通の低減に向けて社会的責任があると考え、対策の実施が求められると認識をいたしております。

 今回の法案では、こうした観点から、大規模なプラットフォーム事業者に対して、削除に関しまして、投稿の削除申請について一定期間内の応答義務を課す削除対応の迅速化や、削除基準の策定とその運用状況の公表等、運用状況の透明化を求めることによって社会的責任を果たしていただくことを後押ししていきたいというふうに考えているところでございます。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 先日の参考人質疑でも、国際大学の山口先生が、SNSというものはスーパーパワーを持っている、一国の大統領にも個人が質問できる、とにかく発信力の強いものであるということをおっしゃっておりましたが、使い方を間違えるとやはりいろいろな副作用が出てくる。先ほど来申し上げております言論の萎縮についてもそうですし、今まさに誹謗中傷などで苦しんでおられる、被害者を生み出すことにもつながってくる、さらには偽情報、誤情報というのも非常に私は危険なものだと思っておりまして。

 これもよく言われておりますけれども、今の戦争においては、戦争を起こす前からもう既に日常的にハイブリッド戦が行われているという中で、敵方がそういったフェイクニュースを流す、そもそも戦争になる前からその国の選挙に影響を及ぼすようなデマ、フェイクニュースを流す。こうしたことについても、惑わされないような国民の教育といいますか、そういったものがあるんだよという認識を、危機意識というものをもっと持っていただく必要があると思うんですね。

 そこで、メディアリテラシー教育、こちらについてお伺いをしてまいりたいんですけれども、今般の、今のいわゆる情報リテラシー、メディアリテラシーの教育に関する現状及び課題認識について、総務省、そして文科省、それぞれお答えをいただければと思います。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘があったとおり、インターネット上における誹謗中傷、炎上、そういったものへの対応につきましては、国民一人一人が健全な情報空間確保のために責任ある行動、そういったことを取っていただくことが大事でございまして、そのためにも幅広い世代に対するリテラシーの向上に取り組むということがますます重要であるという課題認識を持っているところでございます。

 総務省におきましては、こういった課題認識の下、ICT利活用が当たり前になる中で、様々なデジタル社会におけるリスクに対処し、安全かつ適切にICTを利用できるよう、関係省庁とも連携しながら様々な施策を講じているところでございます。

 具体的には、学校などに対する出前講座であるe―ネットキャラバンの実施、青少年、保護者、教職員などに向けたインターネットトラブル事例集の作成、公表、高齢者などへのスマートフォンの使い方の支援やリテラシー向上の取組であるデジタル活用支援推進事業の実施などに取り組んでいるほか、本年二月には、新たな取組といたしまして、総務省と関係事業者などが作成しているリテラシーの向上施策を一括して掲載した利用者向けウェブサイトを公開し、活用いただいているところでございます。

 総務省といたしましては、引き続き、関係省庁や関係事業者などと連携しつつ、国民一人一人が健全な情報空間確保のために責任ある行動を取ることができるよう、幅広い世代のICTリテラシーの向上に取り組んでまいりたいと考えております。

浅野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘いただいたとおり、情報化社会が進展する中、情報手段を適切に用いて情報を得たり、情報を整理、比較したり、得られた情報を分かりやすく発信、伝達したりするなど、いわゆる情報リテラシーを含め、情報活用能力を育成することの重要性が一層増してきていると認識しております。

 文部科学省におきましては、小中高等学校の学習指導要領におきまして、情報モラルを含め情報活用能力を学習の基盤と位置づけ、学校の教育活動全体で取り組むよう求めるとともに、特に情報モラルについては社会科、技術・家庭科、情報科等において指導することとしております。

 このような各学校の取組を支援するため、例えば情報の公開やSNSの影響について考えることを内容とした教師や児童生徒が活用できる動画教材を提供したり、教師に対するオンライン研修を開催したりしております。

 また、生成AIの普及も進んでいく中で、子供たちの情報活用能力を育成することはますます重要となっており、特に最近では、フィルターバブルやエコーチェンバーなどの現象を理解させることや、いわゆるファクトチェックについても指導を行うことが課題となっております。

 文部科学省では、こうした課題にも対応できるよう、引き続き各学校の支援に取り組んでまいります。

阿部(司)委員 それぞれお答えいただきまして、ありがとうございました。

 私は、このメディアリテラシー教育、文科省さんでも総務省さんでもやっていただいていることは承知しておるんですが、こんな声を聞いたんですね。学校の先生方から、メディアリテラシーを教えろと言われているんだけれどもちょっと自分自身がよく分かっていない、これは非常に難しい、新しいテクノロジーの話なのでなかなか本当に正しいことを教えられているのかどうか迷いがあるというようなことを聞いてですね。ですので、教員向けの教育、講習、教材開発などをしっかり実施して、教育効果を高めるための取組、こちらを是非進めていただきたいと思うんですけれども、文科副大臣、いかがでしょうか。

あべ副大臣 委員にお答えさせていただきます。

 高等学校の情報科は、情報活用能力を育成する情報教育の中核といたしまして位置づけられている重要な教科でございまして、高等学校学習指導要領におきましても必修の科目として情報一を設けているところでございますが、文部科学省におきましては、特に情報科の指導、ここの指導の部分の充実に向けまして各教育委員会に対しまして指導体制の強化を求めているほかに、オンライン研修講座の開設、また授業のポイントを分かりやすく解説した授業動画の作成など、担当教師の研修の機会の充実を図っているところでございまして、専門性を有する教師の育成また確保、外部人材のサポートのための教育委員会と大学、産業界との連携協力体制の整備の推進などに取り組んでいるところでございます。

 情報活用能力の育成に向けまして、引き続き各学校の取組の支援に努めてまいります。

 以上でございます。

阿部(司)委員 ありがとうございます。

 国語、算数、理科、社会と並んで情報、私は非常に重要で一国の民主主義も揺るがせかねないものだと思いますので、是非充実をよろしくお願いします。

 最後の質問です。

 大臣、本法案の施行後の効果検証の方法そしてスケジュールについてお伺いします。また、見直しの時期を五年と設定した理由、こちらもお伺いできればと思います。

松本国務大臣 本法案で定められました削除対応の迅速化や運用状況の透明化に係る義務規定の履行状況については、プラットフォーム事業者は年に一回公表しなければならないこととされております。

 この公表された内容について、総務省としては、有識者会議等も活用しつつ、しっかりと確認をしてまいりたいと考えております。

 本法案により新たに設けられたプラットフォーム事業者における義務規定への履行状況について政府としてしっかり把握し分析を行っていくことを考えまして、見直しの検討には施行後五年という期間を置いたところでございます。

 ただ、やはり社会経済情勢の変化に応じて政策を見直すことは不断に行わなければならないことと考えておりまして、特に情報空間は大変変化のスピードが速いところでございます、今総務省におきましてもその健全性について有識者会議におきまして偽・誤情報の流通、拡散等の新たな課題について検討を進めていただいているところでございまして、これらの検討も含め、また、技術が非常に速いスピードで進展することもあるかと思われますので、状況によってはその以前であっても必要な検討を行いたいと考えております。

阿部(司)委員 不断の見直し、是非よろしくお願いします。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 個人の内心の思想や信仰は、他の人々に伝えることができて初めて社会的に影響を及ぼすことができます。そういう意味で、表現の自由はとりわけ重要な権利であることは言うまでもありません。

 私は、二〇〇〇年の臨時国会にいわゆるIT基本法が国会提出されたとき、当時は森喜朗内閣で担当大臣は堺屋太一さんでありましたが、参議院交通・情報通信委員会で法案審議に当たりました。そのとき、二〇〇〇年十一月十六日の議事録でこう述べております。

 そもそも情報技術の進歩と民主主義の発展は密接な関わりを持ってまいりました。ルネサンスでの印刷技術の発展がフランス革命に代表されるその後の民主主義の形成に大きな力となった、こういう歴史もございます。新聞や放送などの情報技術の開発と普及が国民の情報入手と発信の手段を広げた、そして言論による民主主義の前進に大きく寄与してきた、これも歴史の事実であります。だからこそ、急速に発展している新しいITという技術をどう民主主義に実らせるのか、民主主義の実現に役立てるのかということが問われていると思うんです。

 あれから二十四年がたち、インターネットの普及は、従来の新聞や放送といった報道、出版などと比べ個人が容易に意見を表明できる場を提供したことで、個人に対して表現の自由を保障し、民主主義の発展に寄与すると思われてまいりました。

 ところが、一方で、インターネット掲示板やSNSの普及に伴い、匿名による書き込みを中心とした誹謗中傷などにより個人の人格を著しく傷つける人権侵害を招き、そのことで深刻な結果に至る事件も起きております。

 深刻な人権侵害に当たる投稿について、まず削除を求めたいという利用者の要望は当然でありますし、更なる人権侵害を招かないためにも重要なことであります。問題は、この法案により投稿の削除が表現の自由との関係で萎縮効果を生じないかが問題となります。

 そこで、聞くんですが、改正案では人権侵害に当たるSNSの投稿の削除に関して新たな規定を設けることとなります。確認いたしますけれども、今後策定する政省令が、事業者に対しモデルとなる削除の基準を示し削除を実行させるというようなものではありませんね、局長。

    〔委員長退席、田所委員長代理着席〕

今川政府参考人 お答えいたします。

 本法案におきましては、削除基準は大規模プラットフォーム事業者自らが策定するものでございます。

宮本(岳)委員 しかし、現在起こっている権利侵害の事例は極めて深刻であります。

 例えば、勝手に成り済ましアカウントを作られて、自分の名前で投資詐欺まがいの株式投資の勧誘が行われている。成り済まされた本人は一刻を争って対処してほしいと思うのは当然だし、このような権利侵害情報の削除対応を迅速化することは当然必要なことだと思います。

 削除対応への迅速性ということでは、法二十五条には、大規模プラットフォーム事業者に申出を受けた日から十四日以内の総務省令で定める期間内に結果を申出者に返すことを求めております。この十四日以内の総務省令で定める期間内という規定は、これは総務省令で七日間を想定しているとお聞きしておりますけれども、この七日間の根拠はどのようなものでございましょうか、局長。

    〔田所委員長代理退席、委員長着席〕

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の回答期限につきましては、総務省の有識者会議の報告書におきまして、被害者の声と事業者の実際の対応を踏まえつつ、一週間程度とすることが適当との御提言をいただいております。この報告書を踏まえまして、総務省としては、一週間を念頭に、省令などに基づく詳細な制度設計を検討してまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 一週間というのは、何か調査の結果でございましょうかね。

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、総務省の調査によりまして、一週間より長く放置されるのは許容できないというユーザーの方が八三・一%いらっしゃるということでございます。

宮本(岳)委員 確かに、その同じ調査で、二十四時間以内という回答も三四・四%に上っております。先ほど述べた、自分の成り済ましが投資詐欺を広げているというような事例では一週間でも許容できないという気持ちは理解できますし、削除期間は個別の事情に応じてより丁寧に事業者において決められるべきものだということは言うまでもありません。

 逆に、被害の届出があれば、内容を確認せずに自動的、機械的に削除するということをプラットフォーム事業者に義務づけるという考え方もございます。これについて、先日の参考人質疑では、上沼紫野参考人も、日本のプロバイダー責任制限法は権利侵害情報一般に関わるので、名誉毀損、プライバシー侵害に関しては、それが例えば公的な機関に対するものとかそういうものも含まれることになる、それが直ちにまず削除という話になると、それは表現の自由なり民主的な過程に対する非常な萎縮効果をもたらすことになるとの趣旨を答弁されておりました。

 総務省も同じ考えでよろしいですか。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げたとおりでございますが、本法案では、どのような情報を削除すべきかということについての判断は大規模プラットフォーム事業者が自ら行うことを前提とした仕組みを構築することとしているものでございます。

宮本(岳)委員 つまり、機械的に直ちに削除ということは取らなかったということでよろしいですね。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮でございますが、大規模プラットフォーム事業者が自らの削除基準に基づきまして削除等についての判断を行うというものでございます。

宮本(岳)委員 削除に該当するとされた場合に、今度は、投稿者の弁明の機会は保障されるのか、また、削除された場合、その削除が不当だった場合の救済措置は事業者において定められるべきだと思うんですが、この辺りはいかがでしょうか。

今川政府参考人 お答えいたします。

 本法案におきまして、大規模プラットフォーム事業者に対して発信者からの不服申立ての手続を定める義務は課しておりませんけれども、発信者に対する通知を義務づけておりまして、発信者が不服申立てを行う契機となるというところでございます。また、運用状況の公表を義務づけて透明化を図ることによりまして、運用の適正化を図っていくということを考えているものでございます。

宮本(岳)委員 もう一つ、これは念のために確認しておかなければなりません。

 いわゆる政権批判に対して、政権や政権党がこれをフェイクだ、人権侵害だと主張されて削除を申し入れ、これが削除されるということになれば、それこそ表現の自由に萎縮効果を及ぼしかねないと私は思いますけれども、そういう心配はございませんか。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮でございますが、本法案では大規模プラットフォーム事業者が自ら削除などを行うことを前提とした仕組みを構築することとしております。

 具体的には、削除基準や運用状況の公表を事業者に義務づけることで事業者の自主的な取組の透明化を図り、国民にとって分かりやすい形での開示を通じまして事業者による削除基準やその運用の見直しを促すとともに、削除を行った場合には発信者に対してその事実及び理由の通知などを義務づけることで発信者に対する透明性も確保するものでございます。

 したがいまして、表現の自由の確保と被害者救済のバランスを取った制度となっているというふうに考えております。

宮本(岳)委員 今おっしゃった透明性というのは非常に大事でしてね。先ほどの成り済ましによる投資詐欺まがいの発信が削除されないという訴えの方も、いろいろ相談窓口をやっと探し当ててそこに通告しても一向にその後の対応が分からないと。つまり、透明性がないということ。だから、なぜそうなっているのか、まだ削除されないのかという説明すらないということを非常におっしゃっていましたから、やはり透明性というのは非常に大事なことだと思います。

 そこで、この後、対案提案者から修正案が提出されると聞いております。

 まず、対案提案者に確認するんですが、日本維新の会提出の対案は、第二十二条で送信防止措置の実施状況の公表について定め、七つの項目の公表を求めております。このうち、第四号と第七号について閣法の第二十八条に盛り込むという趣旨の修正であるやに聞いております。

 しかし、元々の維新対案の第二十二条はあくまで公表を定めたもの、透明化を定めたものであり、その結果に政府が口出しすることを求めるようなものではないと理解しておりますが、提案者、間違いないですか。

中司議員 お答えいたします。

 維新案においては、大規模なSNS事業者等に、毎年少なくとも一回、送信防止措置の実施状況や自己評価などを公表することを義務づけております。これは、事業者に自らの運用状況や自己評価を公表させることによって、事業者自身が自主的に送信防止措置等の運用について更なる改善、向上に努めることを期待したものであります。

 あくまで事業者の自浄作用に委ねるものでありまして、事業者が行った削除等の措置について政府から何らかの口出しをすることを想定したものではございませんので、よろしくお願いいたします。

宮本(岳)委員 そもそも、維新対案の二十二条が事業者の公表内容に政府が介入するような趣旨ではない以上、その中の一部を修正によって閣法の二十八条に移したとしても政府の介入の余地はないと理解いたします。

 念のために政府にも確認をいたしますけれども、政府案二十八条は事業者による公表、透明化を定めた条項であって、これはその公表結果に政府が口出しすることを求めるようなものではありませんね。

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法案第二十八条の趣旨は、大規模SNSなどのプラットフォーム事業者に対し削除基準やその運用状況の公表を義務づけ透明化を図ることで、各事業者の取組が国民、利用者に分かりやすいように開示され、プラットフォーム事業者自身による削除基準や運用の適正化を促すものと考えております。

宮本(岳)委員 改正法案が規定する侵害情報の削除の仕組みは、人権侵害を拡大させないために迅速に対応するための分かりやすい仕組みを事業者が設けていくものであり、大切であります。そして、今回の法案については、先日の参考人の先生方も、非常に慎重に慎重を期した立法の作りではないか、表現の自由とのバランスに配慮された法案になっているとの評価でございました。その点で、この後提案される予定の修正案も含めて賛成できるものと考えております。

 しかし、問題は、この法律改正で問題が全て解決するものではないことは明らかです。とりわけ、先ほど来議論になっている有害情報やフェイクニュースに対する対応は大きな課題であります。

 偽情報の中には、悪意を持って意図的に流すものもあれば、正しいと誤認して拡散しているものもあります。また、偽情報とあえて分かるようにして発信するパロディーもあるわけですね。一方で、災害時にうその救援依頼やうその被害情報を流すといった行為は、まさに命に関わる重大な問題を引き起こします。なかなか難しい問題でありますけれども、インターネット空間の健全な発展のためには、どうしてもこれらは解決しなければならない課題だと考えますけれども、総務省の見解はいかがでございましょうか。

今川政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、権利侵害情報についての削除などの対応を促すこととしておりますけれども、昨今、いわゆる偽・誤情報などいろいろな課題が出てきているところでございまして、例えば名誉毀損や著作権侵害などとなる権利侵害情報に該当する場合には削除対応の迅速化の義務がかかるということでございますし、それ以外の情報についても運用状況の透明化の義務がかかるということで、昨今の偽情報、誤情報といった対策についても一定の役割を果たすのではないかと考えております。

宮本(岳)委員 問題は、現在のインターネットが本質的に抱える在り方にあります。

 インターネット空間は、自由な言論の場というより、企業が利益を最大化するための仕組みを構築し、複雑高度化させてまいりました。そして、企業利益追求の場にもなってきた。

 そのビジネスモデルが構築されてきた結果、金もうけのためにアクセス数を稼ぐとか、どのような内容であっても閲覧者の目につく投稿であればよいとして過激な投稿を繰り返すアテンションエコノミーや、フィルターバブル、エコーチェンバーといった現象が起きております。負の面とも言えるゆがんだインターネットの仕組みが、誹謗中傷やいじめ、分断の温床になってきたことも事実であります。

 日本の利用者がこのようなアテンションエコノミーあるいはエコーチェンバー、フィルターバブルなどといった問題についてどれぐらいの認知度があるのか、総務省はつかんでおりますか。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの日本における偽情報関連用語の認知度の調査についてでございますが、二〇二三年三月の調査結果によりますと、言葉は聞いたことがあると回答した方も含めまして、アテンションエコノミーの認知度は一六・四%、エコーチェンバーの認知度は一八・〇%、フィルターバブルの認知度は二一・七%となっているところでございます。

宮本(岳)委員 資料を見ていただきたいんですね。これは、先ほど御答弁があった、プラットフォームサービスに関する研究会第三次取りまとめで紹介された数字の基となった調査結果の資料であります。総務省からいただきました。先ほどのアテンションエコノミー、一六・四%とかいうものは、黄緑色の、言葉を聞いたことがあるまで入れての数字であって、青の、内容や意味を具体的に知っているだけを見れば、それぞれ、フィルターバブル、二・九%、エコーチェンバー、三・三%、アテンションエコノミーは僅か二・四%しかありません。

 参考人質疑で山口真一参考人は、アテンションエコノミーについて、人々の注目をぱっと引くということがお金につながるという議論だと述べられ、こういったものの対策が今後求められていると指摘をされました。

 そこで、大臣に聞くんです。こうしたアテンションエコノミーやエコーチェンバー、フィルターバブルといった現在のインターネット空間が抱える大きなリスクについて大臣は認識しておられますか。

松本国務大臣 インターネット、SNSの意義については、今委員からもお話がありましたとおり、誰もが発信でき、また、世界の人々とつながって迅速に情報を入手できるという意味でも意義があろうかと思いますが、この審議でも申し上げてきましたように、大量の情報が流通する中で違法、有害、偽・誤情報があり、これがまた迅速に流通、拡散してしまうという事態は大変深刻であり大きな課題であるというふうに私も認識をしているところでございます。

 そういった面から、いわば情報を御利用いただく人々にも是非ネット上の現在の情勢を知った上で情報を利用いただきたいということは機会があるたびに私からもお願いしているところでございますが、情報流通の主要な場となっているSNS等プラットフォームを提供する事業者にもやはり社会的責任を果たして対策を実施することが求められていると認識しているところでございます。

 そういった中で、先ほどもこれも御答弁で申し上げましたが、ネットにおけるお金の流れについても見ていく必要があるということで、私どもとしても健全性を確保すべく有識者の先生方にお願いしている検討会でヒアリングなどを行っているところでございまして、ネットはいわば道具でございますので、よい使い方をしていただいて、よい結果が出るようにお願いをしていくところではないかと思いますが、必要な対策は私どもも利用者、国民の視点に立って機動的に検討したいと思います。

宮本(岳)委員 インターネットの空間は、決してバラ色でも安全でもありません。実社会の投影でもありますが、インターネット空間に何の疑いも持たなくてよいという状況は既に過ぎ去っております。もちろん、だからといって全てを捨てて昔に戻れなどと言うつもりはありません。我々がなすべきは、こうしたリスクに冷静に真剣に向き合うことだと思います。

 先ほど人々も利用する上で知ってもらいたいと大臣はおっしゃったけれども、ところが、この間、政府は殊更に安心、安全のみを語り、いわば安全神話を振りまきながら、安易なDXの推進や無警戒なマイナンバーカード施策を進めております。これは極めて無責任だということを指摘して、私の質問を終わります。

古屋委員長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。若干重なる質問もあろうかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 一昨日、誹謗中傷対策につきましては三名の参考人の方々から大変有意義なお話をお伺いして議論させていただいたところでございますけれども、その議論の内容も盛り込んだ中で質問させていただきたいというふうに思っております。

 これまでの質疑の中でもあっております、インターネットという私たちにとって利便性の高い空間が、ともすれば今回の議題となっております誹謗中傷で大変深刻な状況にあるのも事実でございます。迅速に被害者を救済するとともに表現の自由がしっかりと守られなければならないという大前提の中で、そのバランスをどう取っていくかということも大きな課題であります。一方で、先ほど申し上げましたように、インターネット上の誹謗中傷に耐えかねて自ら命を絶つ方々や、また、そこまでは至らなくても心身共に大変危険な状況で苦しんでおられる方々が多くいらっしゃることも事実でございます。

 アンケート結果からも分かるように、被害を受けている方々の中でも、特に若い世代の方々が被害を受けておられるという実態も明確になっているわけでございますけれども、特に心身共に成長過程にある青少年や若い世代においては、この被害というのは自らの人生を否定されることに等しい大変深刻な事態であるというふうに受け止めております。

 権利侵害情報というものは、削除されなければSNS上に誹謗中傷がさらされ続け、拡散され、被害が瞬く間に拡大していくという現実がございます。この現実を受けて、心身のケアに特化した相談体制の整備など命を守るための対策が必要であるというふうに考えますけれども、これまでのワーキンググループですとか取りまとめの中での議論の中で、青少年における誹謗中傷対策についてどのような議論がなされてきたのかということをお伺いした上で、今後の対策方針についてお伺いしたいというふうに思います。

今川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、SNSは特に青少年を含めた若い世代の方が多く利用しているところ、御指摘のように、成長過程にある若い世代の方が誹謗中傷などの被害に直面していることは大きな課題であると認識しております。

 そのような状況も踏まえ、総務省では、二〇二〇年九月に策定した政策パッケージに基づきまして、ICTリテラシーの向上や相談体制の一層の充実など、教育関係者とも連携しつつ、ネット上の誹謗中傷についての対策を総合的に進めているところでございます。

 具体的には、先ほどの答弁で一部御紹介もございましたけれども、インターネット上の最新のトラブル事例を踏まえ、その予防法などをまとめたインターネットトラブル事例集を公表し、教育委員会などを通じて子育てや教育の現場へ周知するとともに、学校現場への出前講座であるe―ネットキャラバンというものを実施いたしまして、教員や保護者などを含めた普及啓発活動を行っています。このe―ネットキャラバンは、昨年度は二千百六十六件の講座を開催し、約三十九万人が受講されているものでございます。

 引き続き、このような若い世代を含めた誹謗中傷対策を着実に進めていきたいと考えております。

西岡委員 今御説明いただきましたけれども、やはり大変被害を受けて悩んでおられる方々の命を守るための心身のケアも含めた相談体制をしっかり整備していくことにつきましては、省庁を含めた多くの関係団体との連携が大変必要だというふうに思いますので、しっかりお取組をお願い申し上げたいというふうに思います。

 続きまして、インターネットにおける誹謗中傷等における相談機関というものは複数ございますけれども、お互いの相談機関の持っている情報共有、ノウハウの共有を始めとした連携が大変重要だというふうに考えますけれども、この連携の今の現状についてお伺いをさせていただきます。また、窓口のワンストップ化の議論についてはどのような議論があるのかどうか、複雑化する相談内容に対応するためには相談員の確保ですとか相談員の方々の研修など教育体制の整備も大変重要だというふうに考えますけれども、そのお取組についてお伺いをさせていただきます。

今川政府参考人 お答えいたします。

 誹謗中傷などに遭われた被害者の方々においては、何をしたらよいのか分からないという場合も多く、そうした観点から相談対応の充実は非常に重要と考えております。

 インターネット上の違法、有害情報については、総務省を始め関係省庁や民間団体におきまして複数の相談機関が設置されておりますが、例えば、相談機関において相互に連携する連絡会の設置ですとか、利用者に対して分かりやすい相談窓口の案内チラシを作成いたしまして、総務省や各団体のサイトなどでの掲載や教育機関などへの配布などを行うことによりまして、関係機関同士の連携強化や窓口の周知を図ってきたところでございます。

 また、複雑化する相談内容に対応するため、相談員の拡充ですとか相談員の研修強化などに取り組んできたところでございますが、加えて、チャットボットなどのAIを活用した運用を開始するよう現在必要な準備を進めておりまして、相談対応における利用者の方の利便の一層の向上を図ることで、被害の深刻化を防ぐための取組を加速化してまいりたいと思っております。

西岡委員 様々ある相談機関の連絡会の設置を含めて、今一番被害者の方が悩まれているところは、どこに相談したらいいのかということから分からないという状況がございますので、やはりこういう相談窓口があるということの周知啓発、徹底というのは大変重要な課題だというふうに思いますので、しっかりそこもまた進めていただくと同時に、ここは、皆様が相談しやすい体制を強化するということも必要だというふうに思いますので、相談体制の在り方についても不断の検討をお願い申し上げたいというふうに思います。

 続きまして、先ほども質問があって、ちょっとダブる質問になるんですけれども、情報モラル及びICTリテラシー教育の重要性ということは言うまでもございません。一昨日の参考人質疑においても山口参考人から以下の三つの点が述べられたわけでございます。一つは、多様なチャンネルで伝える啓発活動の重要性、二つ目は、インフルエンサー等を活用したショート動画作成等が大変有効であること、また、三つ目としては、教育課程におけるICTリテラシー教育を体系的に構築して実施する重要性、この三つの点を述べられました。いずれも極めて有効で重要な取組だというふうに考えますけれども、総務省、そして文部科学省、それぞれに取組状況についてお伺いをさせていただきます。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ネット社会が急速に進展する中で、利用者が適切にICTを活用するためにも、まさにリテラシー教育などを通じた幅広い世代の利用者のリテラシーの向上がますます重要になっているものと認識しているところでございます。

 このような観点から、総務省におきましてはまさに多種多様な手法を用いて啓発活動というものを充実強化していきたいと考えているところでございます。具体的な取組といたしましては、先ほども御答弁にありましたe―ネットキャラバンの実施や、インターネットトラブル事例集の作成、公表のほか、高齢者などに対するスマートフォンの使い方の支援やリテラシー向上の取組であるデジタル活用支援推進事業の実施、また、総務省や関係事業者などが作成しているリテラシー向上施策を一括して掲載した利用者向けウェブサイトを公開するなど、様々な手法で幅広い世代のICTリテラシー向上に取り組んでいるところでございます。

 また、参考人質疑の中で山口参考人が紹介されたインフルエンサーを活用した動画につきましては、関係事業者主催のキャンペーンに総務省が協力したものでございまして、昨年の九月からインターネット上で公開されております。若者の方々に人気のあるクリエーターの方々が参加して、インターネット上での嫌がらせなどの投稿、拡散を防ぐために個々人がどのような行動を取るべきか具体的に発信する内容となっていると承知しておりまして、関係者からはこれらの動画について好反応があったと聞いているところでございます。

 総務省といたしましては、こうした取組のように、関係省庁や関係事業者などと連携しつつ、若年層も含めて国民一人一人が健全な情報空間確保のために責任ある行動を取ることができるよう、幅広い世代のICTリテラシー向上に取り組んでまいります。

浅野政府参考人 お答えいたします。

 生成AI等のデジタル技術で急速に進展するネット社会において、情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度である情報モラルの重要性が一層増してきていると認識しております。

 委員御指摘のとおり、情報モラルの重要性の啓発といたしましては、ポータルサイトに掲載した学習コンテンツについて、様々なSNSを活用したり、分かりやすいショート動画として編集し、広告として表示されるようにしたりするなど広報に努め、情報モラルをより身近に感じられるよう啓発活動を行っております。

 また、情報モラル教育を体系的に実施することにつきましては、小中高等学校の学習指導要領において、情報モラルを含め情報活用能力を学習の基盤と位置づけ、学校の教育活動全体で取り組むよう求めるとともに、特に情報モラルについては社会科、技術・家庭科、情報科等において指導することとしております。

 今後とも、文部科学省としては、各学校の取組を支援するため、教師や児童生徒が活用できる動画教材を提供したり、教師に対するオンライン研修の開催などの取組の充実を図ってまいります。

西岡委員 総務省、文部科学省共に御説明をいただきましたけれども、総務省様のお取組、全世代へ向けた啓発ということ、教育をしっかりと全世代に向けてということの中で、先ほど御紹介があったように、個々人が自分の問題として捉えることができる、こういうことが起こったときにどういう行動を取るべきかということについて動画で、具体的な事例でお伝えいただくということは大変有効なことだというふうに思っておりますので、是非そういう動画があることも含めた周知、広報をお願い申し上げたいというふうに思います。

 また、文部科学省におかれては、教育課程におけるICTリテラシーの教育というのは、子供さんたちが社会に出て、今実際に、今の状況においても、SNSを通じたいじめを含めて、ここでは具体的には申し上げませんけれども、大変いろいろな憂慮される状況が学校現場でも起こっているということもございます。

 例えば、今回の法律とはまた違うところにあることだというふうに思いますけれども、LINEのステータスメッセージを使った様々な嫌がらせも含めていろいろな事例が起こっている深刻な状況があるという中で、やはりしっかり情報モラル教育、ICTリテラシー教育を学校現場で体系的につくり上げていただくということは大変重要なことだというふうに思っておりますので、引き続きのお取組をお願い申し上げたいというふうに思います。

 続きまして、総務省は令和二年九月にインターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージを公表いたしまして、インターネット上の誹謗中傷対策に取り組んでこられました。

 現在、生成AI等、技術の急速な進展によりまして、先ほどからこのことも議論があっておりますけれども、巧妙な偽情報、誤情報の拡散、蔓延によりまして、災害時、緊急事態の発生時に誤った情報が拡散されることによって救出活動に支障が出たなどの大変憂慮される状況が起きております。また、知的財産権に及ぼす影響であったり、選挙においてもその結果に大きな影響を及ぼすフェイクニュースが拡散されるなど、民主主義をも脅かすことにつながるという意味では、あらゆる局面でその対策が喫緊の課題となっていると認識をいたしております。

 今後、総務省として、政策パッケージの見直しも含めた中で、その対策にどのように取り組んでいかれるのか、松本総務大臣にお伺いをさせていただきます。

松本国務大臣 委員からも御指摘がございましたように、令和二年九月に政策パッケージを策定しておりまして、これは、ユーザーのICTリテラシー向上、事業者への投稿削除申請の制度化、簡易な裁判手続の創設、相談体制の強化といった四つの柱で構成をされておりまして、総合的に対策を進めてきたところでございますが、このうち事業者への投稿削除申請につきまして制度化が進んでおらず、被害者の皆様から投稿の削除に関する相談が多く寄せられてまいりました。このような現状認識を踏まえて、本法案では大規模なプラットフォーム事業者に対し削除対応の迅速化、運用状況の透明化を求めることとしたものでございます。

 また、これからの対応でございますが、これまでも御答弁申し上げてきましたように、大変技術の進歩も速い中、不断の見直し、対応が必要であるという考え方から、情報空間の健全性を確保すべく、この在り方について総務省の有識者会議を設けて御議論いただいておりまして、偽・誤情報の流通、拡散等の新たな課題について検討を進めているところでございます。

 先ほども申しましたように、この中で成り済ましの対応などの議論もしていただいておりますし、また、ネットにおけるお金の流れをやはり見ていくことが必要なのではないかということで、広告の関係の皆様のヒアリングをさせていただき、もちろん外国のプラットフォーム事業者からもしっかりといろいろヒアリングをさせていただく中で、現状をしっかりと把握しながら、必要があれば新たな対策を取っていかなければならないと思います。

 国際的にも様々な動きがございますので、このような動向も踏まえて、この夏頃に検討会におきましては取りまとめをしていただければということで、これに向けて、偽・誤情報の流通、拡散の問題への対処、表現の自由の確保、こちらのいずれもしっかりと見つつ、総合的な対策の検討を制度面も含めて進めたいと考えております。

西岡委員 大変喫緊の課題であるという中で、夏頃の取りまとめというお話が大臣からございましたので、やはり早急な対策、対応が必要となることだというふうに思いますので、しっかりスピード感を持ったお取組をお願い申し上げたいと思います。

 最後の質問になろうかと思いますけれども、どのような投稿が削除の対象となるのか、どのような場合にアカウントが停止になるのかなどの基準を定める削除指針、これは、プラットフォーム事業者の判断に委ねられている状況の中で、誹謗中傷対策に実効性をいかに持たせることができるかはこの指針の内容次第になるというふうに思います。既に現状においてもプラットフォーム事業者が自主的に削除指針を決めて運用がなされておりますけれども、事業者によって大変ばらつきがあるという状況もございます。本改正において実効性のある削除指針となるように、その内容について総務省として一定の方向を示すガイドラインを作成することも必要ではないかということも考えておりますけれども、このことについてはこれまでの質疑の中で、その方向で検討しているという御見解、御回答がございました。

 また、一方、総務省の誹謗中傷対策ワーキンググループでは、公的な相談機関からの削除要請を受けたプラットフォーム事業者に対しては、その削除を義務づけることの必要性が議論されたわけでございますけれども、表現の自由を制限するという観点で慎重であるべきとされたところでございますが、民間事業者の自主的な活動は公的活動を補完し、問題解決に大きく貢献をいたしております。今日お配りをしております資料の中にもございますけれども、セーフラインにおいては、プラットフォーム事業者に対する削除要請の削除率が九割に達しているという状況もございます。

 プラットフォーム事業者が権利侵害の有無を判断することが困難な事例に対しても公平中立な立場から削除要請を行ったり、権利侵害情報の有無を判断するための支援を行うということも含めて第三者機関的な機関の設置が有効であるというふうに考えますけれども、政府、事業者それぞれがそれぞれの立場で取り組んでいくことが必要だというふうに思います。

 最後に松本大臣の御見解をお伺いして、質問を終わらせていただきます。

松本国務大臣 削除基準をプラットフォーム事業者に作成いただいて公表いただくことをこの仕組みで定めさせていただいたわけでありますが、どのようなものを削除すべきかという、いわば投稿の内容に関する適否の判断ということに関わることにどこまで政府が関わっていくのかという視点から、関係の団体などの協力もいただきながら、ガイドラインを策定するところまでは既に御答弁申し上げたとおり検討を進めているところでございますが、削除等の基準そして運用状況の公表を義務づける枠組みは設けましたが、内容については事業者の自主的取組を促すことを基本とする考え方でございます。

 その上で、御指摘の第三者機関ということでございますけれども、第三者機関の位置づけということで、誰が設置するものなのか、政府が設置、運営にどのように関与するのか、どのような構成とするのか、どのような役割、権限を持たせるのか、独立性や中立性といった観点から様々課題があろうかと思います。

 各事業者においてそれぞれ判断をされるに当たって、いわば事業者にとって第三者に当たるような方の意見を聴取されることは、各プラットフォーム事業者のそれぞれの御判断であろうかと思いますけれども、制度として第三者機関を設けることについては、申しましたような課題についての対応が必要となってくると認識しているところでございます。

 まずは、先ほど申しましたように、有識者、被害者団体、事業者団体その他関係機関と協力することで、ガイドラインの策定等、一定の目安を示すことをしっかりと検討してまいりたいと思っておりまして、政府と事業者が相互に役割を果たすことで、誹謗中傷といった権利侵害への対処にしっかりと対応をいたしたいと考えております。

西岡委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

古屋委員長 これにて、ただいま議題となっております両案中、内閣提出、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 この際、本案に対し、斎藤洋明さん外三名から、自由民主党・無所属の会、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの四派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。中司宏さん。

    ―――――――――――――

 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中司委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の中司宏です。

 内閣提出の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 SNS等において深刻化する権利侵害等に対処するため、大規模特定電気通信役務提供者による削除等の運用状況についてより一層の透明化を図る必要がございます。

 そこで、本修正案では、大規模特定電気通信役務提供者が毎年一回公表しなければならない事項として、送信防止措置の実施状況及び当該実施状況について自ら行った評価を明記することとしております。

 以上が、本修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 ありがとうございます。

古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、斎藤洋明さん外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古屋委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古屋委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、斎藤洋明さん外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。藤岡隆雄さん。

藤岡委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の各項の実施に努めるべきである。

 一 大規模特定電気通信役務提供者による投稿の削除について定めた基準の運用状況の公正性等の検証について、被害者救済と表現の自由の担保の観点から、大規模特定電気通信役務提供者に対して必要な助言等を行うこと。

 二 大規模特定電気通信役務提供者による投稿の削除等の実績を踏まえ、削除指針の策定・改訂などの支援を行う第三者機関の設置等について検討すること。

 三 プラットフォーム事業者が自主的な取組として、通報に実績のある機関等からの違法・有害情報の削除要請や迅速な処理を必要とする権利侵害情報への対応を優先的に審査することについて、事後的に要請等の適正性を検証可能とするため、プラットフォーム事業者及び機関等双方において透明性が確保されるよう、求めに応じ支援を行うこと。

 四 本改正を実効性あるものとするため、大規模特定電気通信役務提供者に義務付けられる各措置の履行状況について確認し、その結果を公表すること。

 五 大規模特定電気通信役務提供者にならない中小のプラットフォーム事業者等においても、投稿による権利侵害への対処が自主的・積極的に行われるよう、必要な施策を講じること。

 六 総務大臣による大規模特定電気通信役務提供者の指定の要件に係る総務省令その他の総務省令を定めるに当たっては、必要に応じて総務省に設置される審議会等の意見を聴取すること。

 七 本法附則第二条に定める施行後五年の見直し時期以前であっても、必要に応じてこの法律による改正後の規定の施行状況について検討を行い、その結果を踏まえ、迅速に所要の措置を講ずること。

 八 限定された会員同士が交流するプラットフォーム上の誹謗中傷等が、その閉鎖性から学校や職場におけるいじめ等の温床となっている状況を踏まえ、プラットフォーム事業者等において適切な対応が図られるよう、必要な施策を検討すること。

 九 インターネット上の権利侵害情報による被害が深刻さを増している一方、現状の発信者情報の開示範囲が不十分であること等に鑑み、発信者情報の開示がより迅速かつ的確に進められるようにするための制度の充実に向けて検討を行うこと。

 十 生成AIを悪用して作られた偽情報や、能登半島地震の際に広く流布された偽情報等、偽・誤情報の蔓延が社会に悪影響を与えていることに鑑み、必要な施策について早急に検討し、対策を講じること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

古屋委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古屋委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。松本総務大臣。

松本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

古屋委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

古屋委員長 次回は、来る二十三日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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