衆議院

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第17号 令和6年4月25日(木曜日)

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令和六年四月二十五日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 古屋 範子君

   理事 斎藤 洋明君 理事 田所 嘉徳君

   理事 田中 良生君 理事 本田 太郎君

   理事 湯原 俊二君 理事 吉川  元君

   理事 中司  宏君 理事 中川 康洋君

      井原  巧君    石田 真敏君

      石原 正敬君    尾身 朝子君

      勝目  康君    金子 恭之君

      金子 容三君    川崎ひでと君

      国光あやの君    坂井  学君

      田畑 裕明君    寺田  稔君

      中川 貴元君    西田 昭二君

      西野 太亮君    根本 幸典君

      葉梨 康弘君    長谷川淳二君

      鳩山 二郎君    古川 直季君

      堀内 詔子君    保岡 宏武君

      山口  晋君    山本 左近君

      吉田 真次君   おおつき紅葉君

      岡本あき子君    奥野総一郎君

      鈴木 庸介君    堤 かなめ君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    阿部  司君

      中嶋 秀樹君    吉田とも代君

      平林  晃君    宮本 岳志君

      西岡 秀子君    吉川  赳君

    …………………………………

   総務大臣         松本 剛明君

   総務副大臣        渡辺 孝一君

   総務大臣政務官      西田 昭二君

   総務大臣政務官      長谷川淳二君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           湯本 博信君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           笠置 隆範君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            小笠原陽一君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         古賀 信行君

   参考人

   (日本放送協会会長)   稲葉 延雄君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 小池 英夫君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 山名 啓雄君

   参考人

   (日本放送協会理事)   中嶋 太一君

   総務委員会専門員     阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     金子 容三君

  川崎ひでと君     山本 左近君

  寺田  稔君     堀内 詔子君

  中川 貴元君     勝目  康君

  西野 太亮君     石原 正敬君

  鳩山 二郎君     吉田 真次君

  古川 直季君     山口  晋君

  岡本あき子君     鈴木 庸介君

  藤岡 隆雄君     堤 かなめ君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     西野 太亮君

  勝目  康君     中川 貴元君

  金子 容三君     金子 恭之君

  堀内 詔子君     寺田  稔君

  山口  晋君     古川 直季君

  山本 左近君     川崎ひでと君

  吉田 真次君     鳩山 二郎君

  鈴木 庸介君     岡本あき子君

  堤 かなめ君     藤岡 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


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     ――――◇―――――

古屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、放送法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本放送協会経営委員会委員長古賀信行さん、日本放送協会会長稲葉延雄さん、日本放送協会専務理事小池英夫さん、日本放送協会専務理事山名啓雄さん及び日本放送協会理事中嶋太一さんの出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房総括審議官湯本博信さん、自治行政局選挙部長笠置隆範さん及び情報流通行政局長小笠原陽一さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田畑裕明さん。

田畑委員 おはようございます。自民党の田畑裕明でございます。

 質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 放送法の改正でございますが、まず、先に能登半島地震の関連で一問ちょっと質問させていただきたいと思います。

 発災以来、総務省はもちろんでありますが、NHKまた民放連の各局の皆様方がそれぞれの使命に基づいて連携協力をし、被害状況であったりですとか復旧情報、また避難所、給水などのライフラインの情報等を的確にお伝えいただいたことに、私、地元は富山でありますが、被災地選出の議員の一員として改めてお礼、感謝を申し上げたいと思います。もちろん復興への道のりはまだ道半ばでございますし、今も避難所で苦しい生活をなさっていらっしゃる国民の方もいらっしゃるわけでありますが、今回の様々な教訓を更に次の対応にしっかり生かしていくということも大事なのではないかというふうに思います。

 とりわけ、中継局の停電等があったりですとか、非常用電源の確保の困難さ、また長期間にわたって電源確保のためのバックアップの方法の新たな検討等、今、教訓があぶり出されているのではないかというふうに思います。また、偽りの救助要請であったりですとか、人工地震説などが広がるなど、避難ですとか救助、支援に影響が出かねない、そのようなこともあり、注意喚起の放送等もNHKさんも行っていただいていたというふうに理解をしてございます。繰り返しますが、まだまだ復興の道のりは道半ばであり、しっかり取り組んでいただきたいということであります。

 また、被災地域におきまして、放送設備の被害も甚大だというふうにもお伺いをしてございます。今後、中継局、NHKさんも含めてでありますし、民放の設備の共同利用の検討などにおきましても、能登半島地震被災地の放送設備等の強靱化への対応も含めて総務省にはしっかりお支えをいただきたいということも改めて申し上げたいというふうに思います。

 その上で、まず一問目でございますが、今、被災地においてはNHKの放送受信料の免除というものが一定の条件の下に行われているというふうに認識をしてございます。現状と今後の動向への対応につきましてまずお聞きをしたいというふうに思います。

稲葉参考人 お答え申し上げます。

 能登半島地震におきましては、災害救助法が適用された地域のうち、建物が半壊、半焼又は床上浸水以上の程度の被害を受けられた方が免除の対象となります。免除の期間は当初の二か月から六か月に延長してございます。また、災害対策基本法に基づく避難指示等を一か月以上受けている方も対象に加え、その期間が六か月を超えた方については解除された月の翌月まで受信料を免除することとしてございます。

 免除申請のお手続については、放送あるいはホームページでのお知らせに加えまして、被災された方へ郵送で御案内するなどして広く周知を行っておりまして、これまでにおよそ七千件の免除申請を受け付けてございます。

 また、これらの取組に加えまして、特に被害の大きい奥能登地域などではNHK職員による現地調査を行いまして、免除の適用を進めているところでございます。

 今後も、被災された方へ免除のお手続などについて丁寧に周知するとともに、免除の再延長などについては国や公営企業などの支援策の動向なども注視しながら検討してまいりたいというふうに考えております。

田畑委員 稲葉会長、ありがとうございます。言うまでもなく被災地の皆様方に寄り添った対応をお願いしたいというふうに思いますし、今、六か月間の免除期間が設けられているということ、また、七千件にわたる免除が行われているということ、しっかり受け止めさせていただいた次第であります。

 今回、BS一〇三の空いているところを活用して金沢放送局の地上波放送を三月末まで放映していただいたわけでございます。いろいろ工夫をしながら引き続き被災地への寄り添った取組をお願いする次第でございます。

 それでは、放送法の改正案につきまして質疑させていただきたいというふうに思います。

 放送を取り巻く様々な環境の変化等々があり、近年、総務省においてもいろいろな放送の在り方の検討、幾つかの論点を整理されながらこれまでも解が出てきたところ、また、こうして法改正につながって案が提示されていること等々があるところであります。とりわけ、今回はいわゆるインターネット配信の活用業務をNHKの必須事業化するということに相なるわけでございます。世界の潮流からしてみても、やや遅きに失している部分もあるのではないかというふうに思いますが、我が国特有の様々な条件、状況があり、有識者を含めて議論の末に今回の成案になっているというふうにまず理解しているところであります。

 NHKの地上テレビジョンとラジオの番組放送は、現行下において、ラジオは平成二十三年から「らじる・らじる」、テレビ放送については令和二年からNHKプラスという名称で、任意業務のインターネット活用業務として配信がされてきたところであります。改めてでありますが、今回の任意業務としてのインターネット活用業務から必須業務化にする理由につきましてまず総務省の方に確認をしたいというふうに思いますし、また、このことによる国民のメリットを改めて御説明いただきたいと思います。

小笠原政府参考人 ただいま委員から御指摘もいただきましたとおり、近年、放送をめぐる視聴環境が急速に変化しておりまして、インターネットへと情報空間が拡大し、偽・誤情報なども流通する中で、放送の二元体制を含むメディアの多元性を確保することで、放送事業者が制作、発信する放送番組等を国民・視聴者に届ける環境を整えることが重要ではないかというふうに考えております。そこで、本法案におきましては、テレビ等を設置しない者に対してもNHKの放送番組等を継続的かつ安定的に提供するため、放送番組等のインターネット配信を行うことをNHKの必須業務とすることとしております。

 また、必須業務化に伴う国民・視聴者にとってのメリットということでございますが、テレビ等を設置しない者であっても受信料を公平に御負担いただいた上でNHKの放送番組の同時・見逃し配信を視聴することができるようになるということがございます。そして、本法案では、必須業務としての配信を国民・視聴者がアプリやブラウザーで受信できるようにする義務をNHKに負っていただき、かつ、必須業務に用いる配信用設備につきまして一定の基準への適合義務もNHKに負っていただくということになり、こうしたことで国民・視聴者の方々がNHKの放送番組等を継続的、安定的に受信することができるようになるというふうに考えているところでございます。

田畑委員 ありがとうございます。

 今後、国民お一人お一人のメディアとのつき合い方というか、視聴の形というのはますます変わっていくのではないかというふうに思います。実際、様々な調査によりますと、五十代、六十代以上と十代、二十代のメディアとの向き合い方というのは相当傾向が違うということなんだというふうに思いますから、今おっしゃっていただいたメリットの周知も含めてでありますが、各世代や年代また地域にもよるのかもしれませんし、健常者、障害者を含めてでありますが、きちっと国民のメリットが伝わるように、総務省の取組をお願いしたいと思います。

 改めてNHKさんに聞きたいというふうに思いますが、今回の必須業務化、どのような姿勢で正確で信頼できる社会の情報の提供に努めていく御意思があるのか、改めてお聞きをしたいと思います。

稲葉参考人 お答え申し上げます。

 御案内のとおり、国内では自然災害が頻発し、激甚化してございます。海外では、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化など国際秩序が混迷を深めてございます。さらに、フェイクニュースの拡散など社会の分断にも歯止めがかからない、そういう状況にあるというふうに認識してございます。

 こうした中で、正確で信頼できる情報やコンテンツ、多角的な視点を提供し、インターネットを含めた情報空間の健全性を確保するということは非常に大事なことで、健全な民主主義の発達に資するという公共放送の役割は一層高まっているのではないかというふうに考えてございます。

 NHKといたしましては、インターネット上においても、安全、安心を支え、あまねく伝えることで健全な民主主義の発達に資するという公共的な役割を果たしていきたいというふうに考えてございます。同時に、正確で信頼できる情報を発信する担い手として、民放や新聞、それにNHKといったメディアの多元性を確保しながら、常に信頼される情報やコンテンツを提供するという情報空間の参照点の役割も果たしていきたいというふうに考えてございます。

 公平公正で確かな情報や豊かでよいコンテンツを間断なくお届けすることによって、視聴者・国民の皆様のお役に立ち、ひいては日本や世界の人々が平和で豊かに暮らせる社会の実現にNHKとしても貢献してまいりたいというふうに考えております。

田畑委員 会長、ありがとうございます。今の御姿勢で、きちっとNHKらしさをしっかり発揮していただきながら公共的な役割を果たしていただきたいというふうに思います。

 受信契約と料金のことについてちょっと確認をしたいと思いますが、必須業務化されますと、これまで契約されている方は特段何らかの新たな費用負担というものが発生するわけではないというふうに理解をしてございますが、受信契約の対象となる特定必要的配信の受信を開始した方は受信契約を締結しなければならないことというふうになると存じています。

 受信契約を締結していなくても配信を受信できる仕組みとなるのであれば、特定必要的配信の受信を開始した方に受信契約の締結についてどのように理解を求めていくのか、ここはしっかり整理しながら理解促進に努めていかなければならないわけでありますが、改めて確認をしたいと思います。

小池参考人 お答えいたします。

 法改正された際には、新たに実施するNHKの必要的配信のサービス全体について視聴者・国民の皆様にしっかりと周知していく必要があると考えております。加えて、特定必要的配信の受信を開始した方のうち、どういった場合に新たに受信契約の締結が必要となるかについても広く分かりやすく周知していくことが大切でございます。

 特定必要的配信に関わる契約の在り方や、契約締結また解約の手続等については、契約勧奨の方法を含め、現在検討中でございます。

 NHKとしても受信料の公平負担は重要な課題だと考えておりまして、法改正後も、様々な接点を通じて受信料制度の意義や公共放送の役割を丁寧に御説明することで、納得して受信料をお支払いいただける方を増やしてまいりたいと考えております。

田畑委員 ありがとうございます。当然、国民にとって最大に近い関心事項ではないかというふうに思いますから、丁寧な対応を改めてお願い申し上げます。

 もう一問ですが、視覚、聴覚等障害者の方々への状況といいますか、どのような取扱いにするのかということについても改めて念のために確認をしたいというふうに思いますが、テキストでのいろいろな情報の提供ということなんだと思いますが、引き続きどのような体制でこうした視覚や聴覚の障害者の方々への情報の伝達ということに努めていかれるのか、お聞きしたいと思います。

山名参考人 お答えいたします。

 NHKは、幼児、子供からお年寄り、目や耳に障害のある方など全ての視聴者が見やすく、聞きやすく、分かりやすく、安心して視聴できるユニバーサルサービスの充実に努めております。

 現在、視覚障害のある方にも御利用しやすいよう、NHKオンラインテキスト版を提供し音声読み上げソフトウェアなどに対応しているほか、聴覚障害のある方に向けて、大雨や津波などの災害時に手話CGで警戒や避難を促すサービスを理解増進情報として提供しております。こうしたサービスにつきましては、NHKとして、必須業務化後も番組関連情報として位置づけ、引き続き提供できるようにしていきたいというふうに考えております。

田畑委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間が来ましたので閉じたいと思いますが、引き続き、ようやくと申しますか必須業務化ということで位置づけをされるわけでありますから、NHK関係者の方々の御努力に改めて御期待申し上げ、また、国民のための情報の発信に引き続きしっかりと努めていただきますことをお願い申し上げまして、質疑を終了したいと思います。

 ありがとうございました。

古屋委員長 次に、中川康洋さん。

中川(康)委員 おはようございます。公明党の中川康洋でございます。

 本日も質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 今日は、放送法の改正ということで、私も何点か総務省並びにNHKに御質問をさせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 最初に、理解増進情報制度の廃止及び番組関連情報制度の創設について大臣にお伺いをしたいと思います。

 昨年十月に公表されました公共放送ワーキンググループの取りまとめでは、インターネット活用業務を必須業務化する場合には現在の理解増進情報制度は廃止し、必須業務として提供されるテキスト情報等として再整理されるべきであるとまとめられるとともに、本改正案では、その取りまとめに基づき、これまでの理解増進情報制度は廃止し新たに番組関連情報制度を創設すること、これが明記をされました。また、この番組関連情報は、新たにNHKが放送する又は放送した放送番組の内容と密接な関連を有するものであって、かつ、放送番組の編集上必要な資料により構成されるものであり、その業務規程についても、一つ目には国民・視聴者の要望を満たすもの、二つ目には国民・視聴者の生命又は身体の安全を確保するもの、三つ目には民放、新聞のネット配信等との公正な競争の確保に支障を生じないものに適合するものでなければならない、このようにされております。

 しかし、この番組関連情報の定義づけ、私は、この定義づけについては国民の側から見ても、さらには視聴者の側から見ても少し分かりづらいものになっている、このように感じる一人でございます。そこで、総務大臣に伺いますが、今回の改正案による理解増進情報制度から番組関連情報への移行については、その制度が変わっても引き続き国民や視聴者にとって必要な情報はインターネット配信で提供されるものと理解してよいか、ここの点、大臣に御見解を伺います。

松本国務大臣 御答弁申し上げたいと思います。

 放送法におきましては、NHKは放送を通じて広く国民・視聴者に放送番組を提供することを使命とし、これに関連する情報をインターネットで提供してきたと理解しております。

 本法案は、放送をめぐる視聴環境が急速に変化する中、放送という手段に加え、インターネットを通じて国民・視聴者に放送番組とともに番組関連情報を提供することをNHKの必須業務とするものでありまして、本法案におきましても基本的な考え方を変えるものではございません。

 その上で、本法案により必須業務として配信されることとなる番組関連情報は、今委員からの国民・視聴者の要望を満たすものということが業務規程に書かれておりましたように、国民・視聴者の多様なニーズに応える形で放送番組の内容を伝えるものであり、国民や視聴者にとって必要な情報がインターネット配信で提供される点において、現在任意業務として配信されている理解増進情報と考え方が変わるものではございません。

 具体的な内容はNHKが業務規程で定めることとなりますが、NHKさんにおかれては質、量の両面においてサービスの一層の充実向上に取り組んでいただきたいと考えております。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 必須業務になる中で、必要な情報がインターネット配信で絞られていくんじゃないか、こういった懸念も一部聞かれるところでありますので、そこは、必要な情報はこれからもしっかりと提供ができる、そういった部分を確認させていただいたところでございます。

 そして、今、田畑委員からも御指摘がありましたが、特に聴覚障害者とか視覚障害者の方々はテキスト情報が非常に大事なんですね。今NHKからはそこはやはり引き続きという御答弁をいただきましたが、監督する側の総務省としても、必要なテキスト情報はこれからも配信する、そういった理解で総務省としてもいるというところ、ここも確認したいと思いますが、局長、いかがでしょうか。

小笠原政府参考人 ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおり、NHKは広く国民・視聴者に放送番組を提供することを使命としており、その使命は本法案による改正の前後を通じて変わらないところであります。

 これまでNHKが理解増進情報として提供してきたテキスト情報につきましては、放送番組と同一の内容を基本としつつ、インターネットの特性を生かして国民・視聴者の多様なニーズに応えるための番組関連情報として配信することとなりますが、その配信に当たりまして、御指摘の聴覚障害者や視覚障害者の方などを含む国民・視聴者のニーズを満たしていくことは当然であるというふうに考えております。

 NHKさんにおかれましては、放送番組の内容を視聴環境に適した形態で配信することで良質なサービスを継続していただきたいというふうに考えているところでございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 田畑委員はNHKに確認していただいて、私もこの点を総務省にも確認させていただきました。障害をお持ちの方々に対して情報をどう正確に素早く伝えるか、これは大変に重要なことでございますので、そういったところでの確認をさせていただいたわけでございます。

 次に、NHKに二点ほどお伺いいたします。

 まずは、インターネット配信に係る受信契約の料金についてお伺いをします。

 本改正案では、その第六十四条三項において、テレビ受信機の設置者及びインターネット配信の受信を開始した者は、そのいずれについても同等の受信環境にあるとして、両者の受信契約の内容については公平に定めなければならない、このように書かれております。

 この考えに基づくと、今回新たに発生するインターネット配信の受信を開始した者の受信料はテレビ受信機の設置者と同一、具体的には、地上放送の一か月料金は千百円ですから、その千百円というふうに理解ができます。しかし、一方で、NHKが有料でのブロードバンド配信をしておりますNHKオンデマンドは、配信期間中何度でも視聴可能なまるごと見放題パック、これが月額九百九十円というふうに現在の地上放送の受信料より安い料金となっております。そこで、NHKに確認をいたしますが、今回新たに創設されるインターネット配信の受信を開始した者の受信料は具体的にどのような料額になると考えているのか、NHKに見解を伺いたい。

 さらには、本改正案では衛星放送の番組の配信についても必須業務の範囲とされていますが、NHKは、費用対効果等の観点から当分の期間衛星放送の配信については見送るというふうに方針を示しております。そこで、併せて伺いますが、今後衛星放送の配信が開始された場合、インターネット配信の受信を開始した者の受信料はどのようなものになるのか、ここの部分も併せて御答弁ください。

小池参考人 お答えいたします。

 放送法の改正案が成立した場合のインターネット配信に関わる契約の在り方などについては現在検討中でありますが、既にテレビを設置して受信料をお支払いいただいている方はインターネットのサービスにおいても追加の負担なく御利用いただくことを想定しております。

 一方、当分の間は衛星放送の放送番組の同時配信また見逃し番組配信の実施は困難であることも踏まえ、インターネット配信のみを利用する場合の受信料額は地上契約と同じ水準とする方向で検討しております。

 衛星放送の放送番組の配信については、権利上の課題に加えて衛星放送の編成の在り方やコストの問題なども含めて対応していく必要があるため、実施時期は現時点では決まっておりません。開始した場合の受信料額についても、サービスのありようと併せて今後検討してまいりたいと考えております。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 今日は衛星放送もいつぐらいからインターネット配信をするのかというところも聞こうかと思ったんですが、そこはちょっと時間がかかりそうな部分がありますので、そうなったときの料額ですね、やはり国民の皆さんに分かりやすい料額というところでよろしくお願いをしたいと思います。

 もう一点、インターネット配信の受信契約における受信料免除対象者への免除の適用、ここについてお伺いをします。

 現在、NHKにおきましては、例えば公的扶助受給者や視覚、聴覚など身体に何らかの障害をお持ちの方、さらには親元などから離れて暮らす学生等を対象に、テレビ等受信機を設置して締結する放送受信契約の全額ないしは半額免除の措置を行っております。また、今般の能登半島地震など災害救助法において救助が行われた地域の災害被災者に対しても全額免除の措置がございます。

 私は、これら免除規定を社会的弱者の方や親元などから離れて暮らす学生等を対象に実施することは、NHKがユニバーサルサービスの提供など公共放送としての責務を担っていること、さらには災害時や緊急時において常に国民に対して正確な情報を提供する等の役割を有していることからも必要な措置だと考えております。ゆえに、今回創設されるインターネット配信の受信契約のみを行う者のうち、そういった当該対象者についても同じく免除規定を適用すべきであるのではないか、このように考えるわけでございますが、NHKの基本的な考え方、見解を伺います。

小池参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、放送受信料の免除は、教育的な見地や社会福祉的な見地から、例外的な措置として、公的扶助受給者や市町村民税非課税の障害者、年間収入が一定額以下等の別住居の学生及び災害被災者等を対象に実施しております。

 放送法の改正案においては、テレビ等の受信設備を設置した者と特定必要的配信の受信を開始した者を同等の受信環境にある者として取り扱い、受信契約の内容を公平に定めなければならないとされております。

 NHKとしましては、特定必要的配信の受信を開始した場合の免除の対象についてもテレビ等の受信設備を設置した場合と同等となるように検討していく考えでございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。今、明確な答弁をいただいたかと思っています。

 確かに、今、免除基準を見ますと、そこにはテレビ等受信機を設置している者というふうに書かれているんですね。それだけを見ると、いわゆるインターネット配信を契約したのみの方は入らないというふうになるわけです。

 しかし、今、公平な基準だというところにおいて、いわゆる公的扶助を受けている方とか親元から離れている学生、さらには社会的な弱者、また学校とか福祉施設といったところにおいては同じく半額ないしは全額の免除規定というところの答弁をいただいたと思っています。これからテレビを持たない世代も出てくると思いますし、例えば聴覚障害の方々なんかはやはりインターネット配信の方がいいということもあると思います。そういったところに適切にアナウンスしていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 最後、総務省に一点お伺いします。民間放送事業者への協力義務の強化についてお伺いをいたします。

 NHKには放送法第二十条五項において難視聴状態を解消するための措置を講ずる義務が課せられているのとともに、民間放送事業者における難視聴解消措置については同法第九十二条によってその努力義務が明記をされております。また、令和四年の放送法改正では、これは皆さんも記憶に新しいとは思いますが、この民間放送事業者の難視聴解消措置に対してNHKは必要な協力をする努力義務が新たに規定されたところでございます。

 しかし、今回の改正案では、そのNHKの民間放送事業者に対する協力を一昨年改正の努力義務から義務に強化するとともに、民間放送事業者から難視聴解消措置の具体的な内容に関する協議の求めがあったときはNHKはその協議に応じなければならないというふうに明記がされているところでございます。そこで、総務省にお伺いをしますが、このNHKの民間放送事業者への協力については、一昨年の法改正後二年もたたない中でなぜ努力義務から義務へと強化することとしたのか、また、今回の義務化によって具体的にどのような効果があると考えるのか。この点、総務省の見解をお伺いします。

小笠原政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、令和四年の放送法改正によりまして、NHKは業務の円滑な遂行に支障のない範囲内で民放が行う難視聴解消措置の円滑な実施に協力をするよう努めなければならないということにされました。

 また、昨年の放送法改正によりましてNHKと民放が中継局を共同で利用することが制度上可能となり、昨年十二月から、私ども総務省も交えまして、NHKと民放が全国協議会のほか全国各地で地域協議会を立ち上げ、各地域において当事者間で検討が進められているところでございます。そのような中におきまして、地方放送局の経営状況は依然として厳しいものがございます。NHKさんが民放に協力して難視聴解消措置に取り組むことに対する期待がより一層高まっている状況にあるというふうに考えております。

 こうした事情を踏まえまして、本法案におきましては、現行法の努力義務規定を義務規定に強化するとともに、協力内容を具体化する観点から、中継局の共同利用等の難視聴解消措置につきまして、民放から具体的な内容に関する協議があった場合、協議に応じることをNHKに義務づけることとしたものです。

 これによりまして中継局の共同利用に向けた検討がより一層円滑に進むことを期待するところでございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 私も、毎年法改正をしていて、努力義務から義務になったりとか、共同利用ということで変えているので、ちょっと急ぎ足かなと思ったんですが、その背景を考えると必要性はあるなというふうに実感をいたしました。ゆえに今回は義務にしたということの意味合いはあるなと思っています。

 例えば、今回、石川県の能登半島で地震が起きました。これは実は民放の中継局が結構使えないという状況があるんですね。そこを何とかしてほしいということで依頼があったわけですけれども、やはり現状の補助金では限界があったわけなんです。恐らく共同利用とか義務規定があれば、その枠組みによって対応ができたんじゃないか、こんなふうにも思うわけでございます。今その枠組みが協議されているということでございますが、一日も早くそういった体制をそれぞれの地域ごとにおつくりいただいて、視聴者の方々に正確な情報があまねく伝えられる、こういった体制を維持していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 以上で質問を終わります。大変にありがとうございました。

古屋委員長 次に、吉川元さん。

吉川(元)委員 立憲民主党の吉川元です。

 早速質問に入らせていただければというふうに思います。

 まず、偽・誤情報についてなんですが、新しい名前に変わりましたけれども、プロバイダー責任法の改正の際にも少し議論になりましたが、偽・誤情報について、プラットフォームサービスに関する研究会の第三次取りまとめを読みますと、「近年、米国や欧州において偽情報が社会問題になっていることから、我が国においても近い将来同様の問題が生じ得ることを念頭に、」こういう表現があるわけです。

 最終案がまとめられたのは今年の一月だというふうに伺っておりますが、もう既に、今年の元旦に起きた、これもこの場で何度か議論になりましたけれども、能登半島地震での偽情報等が多く投稿、発信され、閲覧も急増して、復興対策にも影響を与えているということは周知のとおりであります。先ほどの第三次取りまとめ、近い将来起こり得るという、この認識というのはちょっと遅いのではないかというふうに感じざるを得ません。

 今の日本の偽・誤情報の流通の現状をどういうふうに認識されているのか、大臣に伺います。

松本国務大臣 委員がおっしゃいましたとおり、プラットフォームサービスに関する研究会第三次取りまとめにおきまして、「近年、米国や欧州において偽情報が社会問題になっていることから、我が国においても近い将来同様の問題が生じ得ることを念頭に、今後の対策を検討すべく、本研究会では、我が国における偽情報への対応の在り方について記載した二〇二〇年報告書を策定・公表した。」このようになっているところでございます。

 情報通信技術、サービスに関しましては、変化のスピードが大変速く、普及、発展に伴って生活や社会に占めるウェートが高まって国民生活の利便性が向上する面もある一方、委員がおっしゃったように、インターネット上では偽・誤情報の流通、拡散やそれによる社会活動への影響が顕在化していると認識をいたしておりまして、現状を深刻に捉えなければならないと思っており、強い問題意識を持って対応を進めることが必要であると思っております。

 いわゆる成り済ましなども起こっておりますし、課題があって、今お話がありましたように、今国会でまだ審議中でございますのでプロバイダー責任制限法の改正案ということで、これに対しましてはプラットフォーム事業者に対して削除に関連する対応を求めることとしておりまして、偽・誤情報対策としても一定の効果が期待できるものと考えております。

 さらに、総務省では、デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会におきましても議論を重ねていただいておりまして、外国のプラットフォーム事業者からもヒアリングをしたり、ネット上のお金の流れを見ていったりということでいろいろ御議論いただいて、国際的な動向も踏まえて、この夏頃の取りまとめに向けて議論を進めていただいております。偽・誤情報の流通、拡散の問題への対処と表現の自由の確保、これら両方をしっかりと見つつ、制度面を含めた総合的な対策の検討を更に進めてまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 実は、この後、広島AIプロセスに関してお聞きしようと思ったんですけれども、これはちょっと省かせていただいて、次の質問に移りたいと思います。

 今回の能登半島地震に関する偽動画、偽情報の多くは、これも委員会の中で少し議論になりましたけれども、海外から発信をされていて、その動機も閲覧回数稼ぎ、広告収入を得るためのものであったというふうにされております。お金稼ぎのための投稿が続いて、とにかく、うそでも何でもいい、人の目につく投稿、注目を集めることだけを目的としたアテンションエコノミーというものが横行している現状にあるというふうに思います。ほかにも非常に露悪的な映像が流されたりとかしておりますけれども、広告収入あるいは経済的利益を目的としたアテンションエコノミーと結びついた偽・誤情報の横行、このビジネスモデルが続く限り、なかなかなくすことというのは簡単じゃないのかなというふうに思いますが、どう対応していくべきなのか。

 それから、偽・誤情報についてはどんどん、先ほど近い将来と言っていますけれども、日本は今そういう状況にあるんだという危機感を持っていただいて早急に、取りまとめを急ぐべきだ、先ほど取りまとめの話もされましたけれども、急ぐべきだというふうに思いますが、この点について大臣はいかがお考えでしょうか。

松本国務大臣 先ほど申しましたように、現状は大変厳しく受け止めておりますし、また委員からも今お話がございましたように、偽・誤情報流通、拡散の原因として、多数の閲覧、フォロワーを集めたユーザーが収益を得られたり、注目を集めてクリック数を稼いだウェブサイトの運営者が広告収入を得られたりする仕組み、いわゆるアテンションエコノミーに入る部分だと思いますが、これが関連しているとする意見があることは承知しているところでございます。

 そういった視点も踏まえまして、先ほど申しましたデジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会におきましても、構成員の方から、インプレッション稼ぎを目的とした偽・誤情報等の質の低いコンテンツの発信、拡散は情報流通全体の健全性を確保する上で大きな問題であるとの御意見をいただいております。そういった中で、これまでの視点に加えて、ネットにおけるお金の流れをやはり見ていく必要があるのではないかというお話もございまして、広告に関係する団体、広告業であったり広告を出しておられる広告主の団体からもヒアリングをさせていただいておりまして、その方々から、偽・誤情報を発信するウェブサイトに広告費が流出している、広告主のブランドを守る観点からも何らかの対策が必要であるとの御意見があったところでございます。

 この有識者会議においては外国のデジタルプラットフォーム事業者からも広告に関する対応状況についてヒアリングも実施しておりまして、総務省としては、これらのヒアリングの結果や国際的な動向も踏まえて、先ほど申しましたように、この夏頃の取りまとめに向けて総合的な対策の検討を進めたいと考えております。

吉川(元)委員 次に、NHK会長に伺います。

 今の偽・誤情報、NHKの対応は非常に重要だというふうに思いますし、その果たす役割は大きいというふうに思います。この点についてどうお考えなのかということ。

 あわせまして、今回、ネット業務、配信業務ということで法改正が行われます。偽・誤情報がどこで広がっているかというと基本的にネット空間で広がっている、だとするならば、もちろん放送の中で偽・誤情報について注意喚起をしたりすることも必要ですけれども、まさに、主戦場という言い方がいいかどうか分かりませんが、ネット空間の中でそうしたことが行われているときに信頼に足る情報というものをNHKは提供していく、そういう役割も果たしていかなければならない。とりわけ情報空間の参照点ということを会長はずっと言われておられますけれども、この点からもネット空間における偽・誤情報をNHKとしてどういうふうに考えておられるのか、尋ねます。

稲葉参考人 委員御指摘のとおり、偽情報、誤情報の拡散の問題というのは大変大きな問題だと認識してございます。このため、放送でも、あるいはインターネットにおいても、安全、安心を支え、正確で信頼できる情報をあまねく伝えていくことが公共放送であるNHKとして重要な役割だというふうに考えてございます。

 御質問の偽情報、誤情報への具体的な対応でございますけれども、NHKでは、インターネット上の投稿などをウォッチするチームを二十四時間体制で配置してございまして、偽情報や誤情報の拡散をキャッチしてございます。その情報は、取材部門で確認、検証を行った上で注意喚起を含めて報道してございます。

 また、能登半島地震の際には、例えば地震の原因を人工地震だと主張するような、そういう根拠のない情報が拡散したこともございましたが、その場合には、地震のメカニズムに詳しい専門家を取材してその内容を否定するといったようなことを通じまして、偽情報、誤情報を打ち消したり、あるいは注意を促したり、そういうニュースを発信してまいりました。

 さらに、中期経営計画では、コンテンツ戦略の六つの柱といたしまして、「“フェイク”の時代だからこそ顔の見える信頼のジャーナリズム」ということを掲げまして、顔の見える信頼のジャーナリズムにNHKがなるということで、取材過程がはっきり見えるような報道を展開するということ、あるいは他の報道機関とも連携するというようなことを通じて偽情報、誤情報対策に当たるということにしてございます。

 いずれにしても、公共放送NHKには情報空間の健全性を確保することで平和で豊かに暮らせる社会を実現し健全な民主主義の発展に寄与するということが求められているわけでございますから、今後もこうした取組を強化してまいりたいというふうに考えてございます。

吉川(元)委員 今、若い世代はテレビを持っていないという世代、いろいろな情報をネットから得る、そういう方もたくさんいらっしゃるというふうにも聞いております。私も、NHKを見ておりますと、偽・誤情報に関する注意喚起の番組といいますかコーナーを見させていただくこともあります。大変よくできているものもあります。ただ、先ほど言ったとおり、そもそもテレビを見ない人がいらっしゃるわけで、そういう人に対してどうやって情報を届けるかといったときにネット配信というのは非常に大きなものがあるということで、是非取り組んでいただきたいということ。

 それから、この二、三日前かな、NHKの「クローズアップ現代」でいわゆる著名人を使った詐欺が取り上げられておりました。NHKとして、「クローズアップ現代」で取り上げて、こういう問題があるんだということを報道されておられました。

 そういう点からいうと、NHKは大変信頼性が高いんですが、逆にその信頼性がもろ刃の剣として使われる場合もある。例えば、私もネットでばっと見ておりますと広告があります、その中に、例えばNHKで紹介されたとか、あるいはNHKで放送の痩せ菌がすごいとか。確認してはいませんけれども、NHKの名前を使って、その信用、信頼を使った広告、これは機能性表示食品の広告ですけれども、そういったものも散見をされるようになっております。ですから、そうした点も今後、総務省を含めてこれからいろいろなことをやられていくということでありますけれども、しっかり対応をお願いしたいというふうに思います。

 次に、今回の法案について確認の意味で何点か質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、二十条一項四号で配信についての期間が書かれております。総務省令で定める期間が経過するまでの間、当該放送番組の配信を行うこととありますけれども、期間を過ぎるとどういう扱いになるのかについて簡潔に御答弁ください。

小笠原政府参考人 今御指摘のありました当該期間を経過した放送番組の取扱いでございますが、一義的にはNHKさんにおかれてその取扱いを検討されることとなると思いますが、任意業務として行う配信、例えばNHKオンデマンド等による配信が考えられるというふうに考えるところでございます。

吉川(元)委員 次に、これも先ほど少し出ましたけれども、二十条の四の二項の部分、全部で三つあります。二項では、業務規程の内容について、次の各号のいずれにも適合するものでなければならないと。その三つが、公衆の要望を満たす、公衆の生命又は身体の安全の確保のために必要な情報が迅速かつ確実に提供される、三号は、公正な競争の確保に支障が生じない。この三つを挙げられているわけですが、これがいずれにも適合しているという書き方になっております。

 全てに適合する場合もありますけれども、例えば生命を守るため、あるいは公衆の要望を満たすためということでいうと、それぞれが相反する局面というのは出てくるというふうに思うんですが、どのようにこの三つのことについて考えればいいのか、これも答弁をお願いします。

小笠原政府参考人 御指摘の三つの要件についてでございますが、業務規程に従って行われる個々の番組関連情報が全ての、この三つの要件に適合しているということを求めるものではございません。

 その上で、番組関連情報配信業務に係る業務規程の要件への適合性につきましては、NHKさんがまずは業務規程を作成し、業務の実施状況について定期的に評価を行う中で検討し、判断することになるというふうに考えております。

吉川(元)委員 次に、二十条の四の六項、七項、つまり変更勧告それから命令に関連して何点かお聞きしたいというふうに思います。

 変更の勧告あるいは命令、これはあくまで業務規程についてであり、番組そのものについてということではない、つまり、放送法の第三条には、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」というふうに規定されておりますが、ここに書かれている放送法三条の「法律に定める」ということとは関係がないということの理解でよろしいんでしょうか。

小笠原政府参考人 御指摘の点、本法案におきまして、総務大臣の措置は、配信される個別の放送番組を対象として変更を強制するものではなく、業務規程について全体として放送法への適合性を確保するものというふうになるものと考えております。

吉川(元)委員 次に、同じ二十条の四の五項で、総務大臣は学識経験者及び利害関係者の意見を聞かなければならないというふうにされているわけですけれども、この利害関係者というものは誰を想定されておられますか。

小笠原政府参考人 御指摘の点でございますが、この法案の前提を御検討いただいた総務省の有識者会議の取りまとめにおきましては、競争評価のプロセスは民放あるいは新聞社、通信社等メディアの関係者の参加や理解を得ながら進めるべき旨の提言をいただいております。したがいまして、NHKから業務規程の届出や業務の実施状況について評価の報告があったときは、利害関係者としてこうした方々から意見を聞くことを想定しております。

 利害関係者の関与の在り方につきましては、この提言の内容を踏まえまして、現在、日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合において検討を進めてまいります。

吉川(元)委員 今、いわゆる競合関係にあるような方々、有識者ということだったんですけれども、そういうことでこういう条文になっているのかと思いますが、意見聴取、二十条の四の二項三号に適合しているかのみをここで意見を聞くということでありますけれども、そうした理由というのは何でしょうか。

小笠原政府参考人 今御質問のありました公正な競争の確保に係る要件の部分でございますが、番組関連情報配信業務の実施によって他の事業者が実施する配信事業等の経営を不当に圧迫することにならないか、そういう観点から、こうした他の事業者の立場を把握する必要があるということから、総務大臣において、NHKから業務規程の届出を受けたときに学識経験者及び利害関係者の意見を聞く仕組みというふうになっております。

 その上で、総務大臣において、学識経験者及び利害関係者から聴取した意見も踏まえまして、公正な競争の確保に係る要件を含め三つの要件全てについて業務規程が適合しているかどうか判断することとなるというふうに考えております。

吉川(元)委員 条文を見ますと、有識者会議の意見を聞いて、その上で必要があれば総務大臣は電監審の方に諮問して答申を受けて、今言ったような変更勧告、命令を含めて行うということでありますけれども、その際、当然NHK側にはNHK側の考えといいますか主張はあるというふうに思うんですよね。NHKの考えあるいは意見を聞く機会というのは確保されているんでしょうか。また、確保されているとすれば、どういう機会にその場が設けられるというふうに考えればよろしいんでしょうか。

小笠原政府参考人 御指摘の点でございますが、業務規程の届出を行っていただくNHKさんにも競争評価のための会議に出席いただき、その中で業務規程に関する説明を受けることを想定しているわけでございます。

 そういった会議の開催を検討しているところでございますが、具体的な枠組みにつきましては、現在、日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合を開催し、検討を進めているところでございます。

吉川(元)委員 ずっと聞かせていただきまして、やはりこれは、あくまで業務規程について議論をしたり、あるいは必要があれば変更の勧告や命令ができるという規定でありまして、番組そのものは対象としていないということを私自身確認をさせていただきます。

 その上で、今度は経営委員長にちょっとお伺いしたいんです。

 かつて、かつてといいますか、いまだに裁判も行われておりますけれども、かんぽの問題をめぐって「クローズアップ現代」の番組で、上田会長に対して当時の経営委員会が厳重注意を行いました。そのときの正式な議事録というのはいまだに出ていないということでありますけれども、漏れ伝わってくるいろいろな情報あるいは報道を見ておりますと、経緯を全部話すと時間がないので簡単に言いますと、結局、現場の担当者が言い方を少し間違えた、あるいは言葉足らずな表現の仕方で、会長は個々の番組には関わらない、責任はないんだというような話をされて、それはガバナンスの問題だということで、郵政側からNHKの経営委員会に対していろいろな意見が出てきて、それが経営委員会の中で議論されております。

 正式な議事録はないですけれども、いろいろ出てきた資料を見ますと、正直言っておぞましい議論が経営委員会の中で行われております。

 その中で、私、今回の法案で唯一、唯一といいますかちょっと不安を感じるのは、今言ったとおり、今回の放送法で業務規程について、これについていろいろ議論はあったとしても、放送番組そのものについてはそれは対象にはなっていない。私はそれでいいと思うんですが、かんぽの問題のときにはまさに、実際に、新聞の記事ですけれども、番組の作り方について議論がされていて、法律に触るからこういう言い方になっている、つまりガバナンスの問題として言っているだけであってと。また別の委員からは、本来の不満は内容にあって、内容についてはつけないから手続論の小さな瑕疵で攻めてきている、こういう発言もあったというふうに報じられております。

 つまり、ガバナンスの問題を糸口にして放送番組そのものに圧力をかけようとした、また、そのことについて経営委員会は認識をしながら、オープンジャーナリズムがいいとか悪いとか、実際の取材の手法だとかを含めて、非常に、先ほど言いましたけれども、おぞましい議論が行われた。私は、今回の問題が決してそういうものに使われてはならないですし、そうした話が来た場合にも、やはり経営委員会としてきちんと、それは違いますということで対応していただきたいというふうに思います。

 当時は経営委員会におられなかったので、その当時の細かなところまでは知らない部分もあるかと思いますけれども、やはりこうしたことは二度とあってはならないというふうに思いますので、経営委員長にその考えをお聞きしたいと思います。

古賀参考人 放送における表現の自由を確保するために放送法三条の規定が、先ほど議員がお触れになりましたが、定められているわけで、このとおり、NHKにおきましては、放送番組編集の自由を保障するということは極めて重要なことだというふうに私は認識いたしております。

 また、放送法第三十二条の規定のとおり、経営委員は個別の放送番組の編集に干渉できない、このように定めているわけでございますので、これも大変重要な規定だと認識いたしております。

 年度が替わりましたので、四月の最初の経営委員会、四月九日に開かれましたが、その席でも私の方からこの規定を改めて、番組の是非についての議論は経営委員会では行わないということを確認いたしております。

 経営委員会といたしましては、このような規定を踏まえまして今後しっかり運営してまいりたい、このように考えております。

吉川(元)委員 是非よろしくお願いします。

 公正な競争というのは確かに大切なんですけれども、一方で、NHKがいろいろ取材をして得た情報、これは受信料によって得られた情報でありますから、そうしたことが適時適切に視聴者・国民に届けられるように、配信についても業務をしっかり会長はやっていただきたいと思いますし、いろいろな関係者があると思いますので、みんながウィン・ウィンになれるような、そういう役割を是非NHKは果たしていただきたいということを最後にお願い申し上げまして、質問を終わります。

古屋委員長 次に、福田昭夫さん。

福田(昭)委員 立憲民主党の福田昭夫でございます。

 本日は、NHKが事業構造改革と新規領域創造を同時に進める経営改革に直結する放送法の改正なので、政府とNHKにお伺いいたしますので、松本大臣、稲葉会長始め答弁者は簡潔にお答えください。また、さきの三人の委員の皆さんが質問した事項については同じようなことがあるかもしれませんので、それは簡潔にお答えいただいて結構ですので、よろしくお願いいたします。

 まず、NHKにおけるインターネット配信の必須業務化についてであります。一つ目と二つ目で、まとめてお伺いします。必須業務化の意義についてでありますが、必須業務化とする理由と、必須業務化することによってNHKと視聴者にとってどのような利点があるのか、二つ目が、イギリス、フランス、ドイツなどの公共放送に比べて必須業務化が遅れたのはどんな理由があるのか、まとめてお答えください。

小笠原政府参考人 では、二つお答えさせていただきます。

 まず、必須業務化の意義についてでございます。

 近年、放送をめぐる環境が急速に変化しており、情報空間の拡大に伴い偽・誤情報の拡散などが課題となる中、放送の二元体制を含むメディアの多元性を確保しながら、質の高い、よい放送番組を国民・視聴者に届けることが重要であります。そこで、本法案の必須業務化を通じまして、テレビをお持ちでない方であってもNHKの放送番組等を継続的、安定的に視聴できる環境を整備することを狙いとしているところでございます。

 次に、諸外国に比べたお尋ねでございますが、NHKの業務の在り方につきましては、情報通信技術の進展あるいは国民・視聴者の生活様式など放送を取り巻く環境の変化を踏まえまして、NHKが公共放送として果たすべき役割ということも検討しながら行うものというふうに考えております。総務省におきましては、これまでも、NHKのインターネット配信業務の在り方について、数次にわたり、その時々の環境の変化を踏まえ、適時、制度を設計してきているところでございます。

 我が国におきましては、平日のメディアの平均利用時間が平成二年度になって初めて全年代平均でインターネットがテレビを上回ったこと、あるいは情報空間の拡大に伴い偽・誤情報の拡散などが課題となるなど、放送を取り巻く環境が急速に変化していることを踏まえて、令和三年十一月から有識者会議を開催し、放送の二元体制の下、NHKがデジタル時代に果たすべき役割等について様々な論点について御議論をいただきました。

 この有識者会議におきまして、令和五年十月、NHKの役割として、放送コンテンツのプラットフォームとして放送番組の流通を支え、二元体制を基本とする我が国の放送全体の発展に貢献する役割、あるいは、放送の二元体制の枠組みの下、放送という手段に加えて、インターネットを通じて放送番組を視聴者に提供する役割がある、そういった取りまとめをいただいたことを踏まえまして本法案を今国会に提出させていただいたものでございます。

福田(昭)委員 遅れた理由も分かりました。

 三つ目は、特定必要的配信に係る受信契約の新設の理由についてであります。通信機器などを用いて視聴を開始した者向けの受信契約を地上契約、衛星契約とは別に新設する理由は何なのか、教えてください。

小池参考人 お答えいたします。

 放送法の改正案では、特定必要的配信の受信を開始した方は、受信契約の締結義務の対象となるとされております。これは、放送と同じようにインターネット経由でもNHKのコンテンツをお届けすることをNHKに義務づけていることと承知しています。このため、インターネットのみでサービスの利用を開始した方にも受信契約の対象として相応の費用負担をしていただく趣旨と理解しております。

 ただ、既に受信契約を結んで受信料をお支払いいただいている方は、追加の負担なく御利用いただけます。また、スマートフォンやパソコンなどを持っているだけでは費用負担の対象とならないと承知しております。

福田(昭)委員 分かりました。

 四つ目ですけれども、同時配信から除外される番組についてであります。特定必要的配信のうち、同時配信の対象となる番組は原則として放送番組全てだ、こうされておりますけれども、現状のNHKプラスやNHKラジオ「らじる・らじる」では政見放送などは配信されておりません。

 是非、これは総務大臣にお伺いいたしますが、まさに、民主主義を充実させるためには投票率の向上が欠かせません。投票率が今、御案内のとおり、国政も地方の選挙も下がるばかりであります。これも政治不信感かもしれませんけれども、しかし、そんな中でも投票率をちゃんと向上させるという役割をやはりNHKが果たすということを考えれば、ネット配信の下でも必須業務化に合わせて政見放送と経歴放送などを配信すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

松本国務大臣 委員からもお話がございましたとおり、本法案は、放送をめぐる視聴環境の変化を踏まえ、NHKに対しまして豊かでよい放送番組を、放送という手段に加え、インターネットを通じて国民・視聴者に提供することを義務づけるものでありますため、原則として全ての放送番組が同時・見逃し配信の対象となるところではございますが、具体的に同時配信に関してどのような番組を必須業務の対象とするのか、猶予するものの指定について検討をしていく予定でございます。

 地方放送局におきましては、設備整備費用などの観点から同時配信の環境が整うまでに時間がかかるところもあるというふうに聞いております。そのような場合には必須業務としての配信が猶予されるところになるわけであります。

 地方向け放送番組が当分の間必須業務の対象から外れて猶予されるとすると、特定の地域で放送される政見放送等のみが全国で配信をされることになる、また、同時配信ということでいきますと、視聴者の、放送であれば電波の受取ということでそれぞれの地域の属性に合わせて受け取る番組が決まっていきますが、インターネットの場合はお聞きになる方の地理的特性によって番組が配信されるということがありませんので、そういったことの課題もありますし、また、見逃し配信につきましても、候補者等によって放送の日時が異なるので、選挙期間中のいわゆる見逃し配信期間が異なってしまうことにもなりかねないといったようなこともありまして、候補者等の間の公平の観点での課題についても取り組まなければいけないところがあるところでございます。

 御案内のとおり、今お話がありましたとおり、現在、放送番組の配信を任意業務としている現時点では政見放送や経歴放送の配信は実施していないところでございますが、この度の放送は視聴環境の変化でインターネット配信から情報を得ることのウェートが高まっていることに合わせて必須業務とすることからいきますと、国民の皆さんの政治参加に関わるものについては議論が必要ではないかと思います。

 政見放送、経歴放送は、国民の皆様が候補者等の政見を知るために重要な機会でありまして、総務省としては今申し上げたような課題への取組も含めてNHKと協議をしながら検討してまいりたいと考えておりますが、御承知のとおり、現在の政見放送、経歴放送は公職選挙法の定めに従っているところで、その定めの中で公平性等も担保されているかと思いますが、インターネット配信については特段の定めがないところでございますが、公職選挙法の議論につきましては、是非各党各会派の御議論に、私どもも注視してまいりたいと思っているところでございます。

福田(昭)委員 もちろん公職選挙法の改正が必要でありますけれども、しかし、テレビも見られる人と見られない人がいるんですよ、たくさん。逆に、インターネットだったら見られるという人もいるわけですよ。ですから、どれが公平なのかというのはよく考えていただきたいと思っております。

 五つ目でありますけれども、五つ目は民間放送事業者との配信プラットフォーム共有についてであります。現在、ラジオ放送の配信については、平成三十一年四月より株式会社ラジコが運営するラジコにおいてAMラジオ第一及びFMラジオの番組が正式な配信になっているそうであります。そこで、テレビ番組の配信について、NHKプラスのみで行うのか、今後はラジコのように民間放送事業者のプラットフォームにおいても配信を予定しているのか、教えてください。

小池参考人 お答えいたします。

 民放とNHKの二元体制は着実に根づいて、互いに切磋琢磨する中で協力や連携を図ってきております。今後も二元体制は堅持していく必要があると考えております。

 これまでも民放とは放送法を踏まえてTVerを通じたNHK番組の配信を行っておりますけれども、民放やNHKなど、日本の質の高いコンテンツを海外も含めてどのように提供していくかは課題だと認識しております。NHKとしましても、放送業界全体への貢献の観点から研究が必要だと考えておりまして、民放各社の御意見や御要望を伺いながら検討してまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 まあ、これも将来の課題なのかもしれません。

 次に、理解増進情報制度の廃止について、第一から第三点までまとめて伺います。先ほど中川先生などから質問がありまして、回答がありましたので、簡潔に答えてください。

 一つ目は、国民・視聴者の不利益についてであります。先ほどは、実際に番組関連情報に移行することによって不利益はないんだ、このような答えがありましたが、簡潔に答えてください。

 ただ、そんな中で、番組関連情報に移行するに当たって、今回の改革とも絡んで、代表的なコンテンツのうち残るコンテンツ、廃止されるコンテンツなどが何かあるとしたら是非教えてください。

 それから、三点目、理解増進情報の視聴覚等障害者に向けたサービスとしての視点については、先ほどちゃんとやりますよという答えがありましたので、簡潔にお答えください。

 以上、教えてください。

小池参考人 お答えいたします。

 放送法の改正案で示されています必須業務化は、公共放送として取り組むべきことを放送でもインターネットでも行うということだと認識しております。視聴者・国民の皆様に放送経由でもインターネット経由でも同じ情報内容や価値、受益をもたらすことを求められると考えております。

 サービスの具体的な内容については検討を進めているところでございますが、番組関連情報については、災害情報や地域情報を含めて、政治、経済、社会、科学、文化、スポーツなど国内外の様々なニュースをインターネットの特性に合わせた動画や記事で提供していきたいと考えております。

 サービスの縮小や低下といった御指摘、御意見が出ないよう、ニュース記事などのテキスト情報を含めて、NHKのコンテンツをインターネット上においても継続的、安定的にお届けしていくことで、公共放送としての使命を果たしていきたいと考えております。

福田(昭)委員 それこそ制度が廃止されるということになると、あれっ、どうなのかなという疑問を持ちますので、そうならないように頑張ってほしいと思います。

 四つ目は、偽・誤情報対策への影響について。先ほどうちの吉川先生の方からも話がありまして、NHKはしっかり取り組むという話でありますが、やはり一番信頼性が高いのはNHKなんですよね。ですから、NHKが偽・誤情報対策にしっかり取り組んでくれるということは非常にありがたいことなので、是非そうしたことがないようにお願いしておきたいと思っております。

 五番目、一番心配しておるのは、NHK取材成果の活用についてであります。放送に至らなかった取材成果について今後どのように活用していくのか、また、NHKが取材活動を抑制や縮小する方向へ転換する可能性はないのか、取材活動を抑制することなく社会的なロスを減らすための方策というのを、どのようなことが考えられるのか、是非教えてください。

山名参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、必須業務化後のサービスの具体的な内容につきましては検討を進めているところでありますけれども、放送番組の同時配信、見逃し配信に加えまして、番組関連情報としまして、災害情報や地域情報を含め、政治、経済、社会、科学、文化、スポーツなど国内外の様々なニュースを継続的、安定的に提供してまいります。

 視聴者・国民の皆様にお伝えすべき取材の成果に関しましては、放送でもインターネットでもしっかりお届けし、公共放送としての役割を果たしていきたいと考えております。

福田(昭)委員 私は、NHKが経営計画でまとめてありますコンテンツの六つの柱、非常によくできていると思うんですよ。でも、事業支出改革の中では、この部分のところで六百億も削減するというんですよ。非常に心配をいたしております。ですから、せっかく取材しても映像として国民の皆さん、視聴者の皆さんに提供されないたくさんのいい情報があるんじゃないかと思っておりまして、非常に心配しております。しかも、NHKは、健全な民主主義の発展に資するんだ、こう言っております。

 そんな中で、先日のNHK予算の質問の中でもちょっと申し上げましたが、稲葉会長は金融機関出身だというんですが、先日も挙げましたけれども、二宮金次郎って御存じですか。知らないですか、残念なことです。二宮金次郎、尊徳さんでありますけれども、この方は実は世界に誇れるような人物なんですよ。内村鑑三先生が「代表的日本人」という本を書いて、最初に英語で書いてアメリカで発売した。アメリカで有名になって、世界中に広がっていった人なんです。その代表的五人のうちの一人に実は二宮尊徳翁が入っているんです。

 その二宮尊徳翁は、アメリカの、占領されたときの占領軍、GHQ政府のインボーデンという新聞課長、少佐がおりました。この少佐は何と言っているかというと、戦後の日本の復興は二宮尊徳翁に学べ、なぜなら尊徳翁は近世日本が生んだ最初の民主主義者なんだ、こう評価しています。インタビュー記事を最後まで読んでいきますと、もっとすごいことを言っているんですよ。二宮尊徳翁の教えは真理だ、だから時代を超えて通用するんだと。その真理という教えは積小為大という教えですけれども、小を積んで大をなす、これは真理だと言うんですよ。ですから時代を超えて通用するんだと、こういうことをインボーデン少佐が高く評価しておりました。

 一方、国際二宮尊徳思想学会というのができているんですが、これは中国人の、その頃北京大学の教授であった劉金才教授が提唱して、今でも活動しております。その劉金才教授の基調講演をたまたま私も聞く機会がありましたけれども、こういう話を彼がしていました。

 今、人類が抱えている大きな解決すべき命題は三つある、それを解決するために世界中を探したけれども、やっと小田原で見つけた、二宮尊徳思想だと。その一つが、人と人との対立、人間と人間との対立、二つ目が、国と文化、国と国、文化と文化との対立、三つ目が、人と自然との対立、この三つの対立をいかにして解決したらいいかということを考える、そのための参考として二宮尊徳思想を勉強して学会をつくって解決の糸口を見出すんだというのが彼の基調講演でした。

 私は、その話を聞いたときに背中がぞくぞくするほど感動しました。ですから、そういう意味ではアメリカ人にも二宮尊徳思想をよく理解している人がいる。中国人にもいたんですね、もう亡くなっているでしょうから。中国人にもそういう人がいる、国際二宮尊徳思想学会ができて日本の学者も参加して今も行われている、こういう話なんですよ。ですから、もし本当にNHKが健全な民主主義に資する、しかも世界平和にも貢献する、こういうことを考えると、二宮尊徳思想をNHKはしっかり学んで、是非、いろいろな取材をして、番組でも何でもやってほしいなと思っているんですよ。

 今、ロシアとウクライナの戦争だとか、あるいはイスラエルがイラクに攻めたとかいろいろありますけれども、根底にあるのはもしかすると宗教戦争なのかもしれないんですよ、根底にあるのは。ですから、それを考えると、共に共生するということを考えると、多分、私が知る限りでは世界の中で多神教の国は日本とギリシャしかないんですよ、私が知る限りですよ。日本人は何でも神様にしちゃうじゃないですか。ですから、そういう意味では世界平和に貢献できる最大の国が日本なんだと思うんですよ。それはやはり尊徳翁の教えというのをよく勉強してみるとよく分かってくる、こういう話で、是非NHKにはこれをしっかり、世界平和に貢献する、地域からグローバルまでということであるならば是非取り組んでほしいな、こう思っているわけであります。余分な話をしてしまいましたが。

 次に、競争評価についてであります。これについても三つまとめてお伺いします。

 一つ目の、公正な競争の定義とその確保のための手続の全体像についてであります。他の放送事業者との公正な競争とは何か、何を基準として判断されるのか、また、公正な競争の確保のための手続の全体像及び詳細について現在どんな検討をしているのか、教えてください。

 二つ目、競争評価等に係る受信料等の負担について。NHKでは三か年で一千億円の事業支出改革を進めておりますけれども、業務規程のうち競争評価に係る事項の策定あるいは競争評価の実施による費用負担を具体的にどの程度見込んでいるのか、その負担がNHKの放送・サービスの向上など直接の受益とならないことについて受信料を払う国民・視聴者の納得が得られるのか、教えていただきたい。

 三つ目が、NHK・民間放送事業者の中継局設備の共同利用についてであります。これも同じように三か年で一千億円の事業支出改革を進めているわけでありますが、そんな中で今回の共同利用を義務化する理由は何なのか、義務化によって民間放送事業者の難視聴解消措置にどのような効果があると考えられるのか、NHKの過剰な負担にならないのか。

 私はやった方がいいとは思っているんですよ、やった方がいいと思っているんですが、NHKが三年間で一千億も削減する中で、こうしたことが今回の経営計画の中でできるのかどうかということについて、三点お答えいただきたいと思っています。

小笠原政府参考人 三点お尋ねをいただきました。

 その前に、先ほどの委員の御質問で、視聴環境の変化の中でメディアの利用時間が、インターネットがテレビを超えた年について先ほど平成二年というふうに申し上げてしまいましたが、令和二年ということで、おわびして訂正させていただきます。

 それでは、順次、まず公正競争の定義等々からお答えいたします。

 公正競争についてでございますが、本法案においては、NHKが番組関連情報配信業務を行うに当たり定める業務規程の内容は、当該業務の実施により全国向け又は地方向けに他の放送事業者その他の事業者が実施する配信の事業その他これに関連する事業における公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるものであることを満たす必要があります。

 ここにいう公正な競争とは、NHKの番組関連情報配信業務の実施によって他の事業者が実施する配信事業等の経営を不当に圧迫することにならないかという趣旨だというふうに考えております。

 次に、その確保のための手続の全体像というお尋ねでございました。まずは、NHKにおいて、経営委員会の議決の下、番組関連情報配信業務の実施に関する業務規程を定め、総務大臣に届け出る、それとともに公表していただきます。

 その業務規程の内容につきましては、当該業務の内容や実施方法が公衆の要望を満たすものであること、業務の実施により公衆の生命又は身体の安全の確保のために必要な情報が迅速かつ確実に提供されること、そして、先ほどちょっと内容を申し上げました、当該業務の実施により他の事業者が実施する配信等の事業の公正な競争の確保に支障が生じないこと、この三つのいずれにも適合する必要があるということになります。

 その上で、NHKにおいて、番組関連情報配信業務の実施状況について、三つの要件に適合しているかどうか定期的に評価を行い、その結果を総務大臣に報告をいただきます。

 そして、NHKさんから業務規程の届出それから評価結果の報告、これがあったときには、総務省において学識経験者あるいは視聴者代表あるいはメディア関係者を含む利害関係者の意見を聞いて、それを踏まえて業務規程を適宜見直していくということになります。

 次のお尋ねとして、今申し上げたプロセスで行われる競争評価について、受信料の負担との関係についてのお尋ねでございました。

 今申し上げた番組関連情報配信業務についての評価のプロセスでございますが、一つは、放送の二元体制を含むメディアの多元性の確保、もう一つは、放送番組の視聴に関する国民・視聴者の方々の要望を満たし、また、生命身体の安全の確保に必要な情報の提供、こういったことを目的として実施するものであります。

 そして、公共放送であるNHKが放送法に定められた業務を行い、組織を維持運営するために必要な財源を受信料によって賄うことが受信料制度の趣旨でありますので、このような受信料制度の本旨に鑑みますと、競争評価プロセスのような、NHKが法にのっとって適切に業務を行うための費用もまた受信料によって賄われるべきものではないかというふうに考えているところでございます。

 最後に、中継局整備の共同利用について、今回の改正案に盛り込まれた内容についてのお尋ねと、それから効果についてもお尋ねがございました。

 まず、地上基幹放送事業者は、それぞれの放送対象地域にあまねく放送番組を届けるため、自ら多くの中継局を設置しております。

 一方、放送を取り巻く環境が大きく変化する中、民放の経営状況は以前にも増して厳しく、中継局等のインフラの維持に要する費用が課題となっているところでございます。

 こうした背景を踏まえて、さきの通常国会で御審議いただいた放送法の改正により、NHKと民放が中継局を共同で利用することが可能になりました。

 そして、中継局の共同利用を早期に実現するため、総務省も交えましてNHKと民放で協議を開始しておりまして、現在、全国各地で地域協議会が組成されるとともに、まずは共同利用会社の設置に向け、検討が進められているところでございます。

 こうした中で、NHKさんの放送全体への貢献という役割に対する期待ということが一層高まっている、そういう状況にあったということで今回の改正案ということになったわけでございますが、今回の改正案によって、民放が行う難視聴解消措置への協力に関するNHKの努力規定が義務規定ということになるわけでございますが、これによって中継局の共同利用の取組が更に一層推進されることを期待しているところでございます。

福田(昭)委員 私は、三年間で一千億円の削減が非常に厳しいんじゃないかなと思っているので聞いているわけです。

 やること自体は私は反対しているわけじゃないんですよ。民放と共同でやるということはいいことだし、しかも、聞くところによると難視聴地域が全国に一万か所以上あるというんでしょう。共同の中継局の整備によってそういうところがだんだんなくなっていくというか、共通アンテナをしないでも見られるようになるとか、そういうことになればいいことだなと思っています。

 次に、四番目のNHK経営計画二〇二四―二〇二六の見直しについてであります。資料の四を御覧ください。三つ、提案してお聞きして、まとめて答えていただきます。

 まず、一つ目の事業支出改革について、一千億円の削減であります。

 読んでみますと、コンテンツの総量削減、設備投資の大幅削減等により収支を改善するんだ、一千億円削減の実現ということですが、私からすると収支の改善じゃなくて収支の改悪じゃないかなと思われるような削減ですね。次に、コンテンツDXの推進、クラウド時代のワークフロー見直し等で実現。これは少しは実現するかもしれません。しかし、もしかすると電気料が上がってきちっとやったら分からなくなるかもしれません。それから、メディアの整理、削減、衛星一波、音声一波を削減。これについては、これからの少子化時代を踏まえるともしかすると必要な改革なのかもしれません。そんなことで、コンテンツの総量削減、設備投資の大幅削減は、私は、それこそ放送センターの建設もまだ全体計画ができていないぐらいの中で非常に心配をいたしております。

 二つ目の受信料収入についてでありますけれども、新たな営業アプローチ、支払い率は現状維持というんですが、確かにここにありますように書いてあります。

 特に新たなアプローチ、新たなアプローチは中身がよく分からないんですけれども、もしかすると、私も検証したわけではありませんけれども、今まで受信料が伸びてきたのは、訪問員による銀行振り込みを進めてきた、銀行振り込みを進めてきたことによって受信料が、収納率というか、非常に高くなってきたんじゃないかな、こう思っているんです。ただし、ちょっと人件費がかかり過ぎた、こういうことなんじゃないかなと思っているものですから、そういう意味では新たなアプローチで銀行振り込みなり、あるいはそれこそ今流のカードで振り込むとかいろいろなことが考えられるかもしれませんが、そこでしっかり受信料を払っていただけるようになるのかどうかということだと思います。

 三つ目が、副次収入等、受信料外収入の拡大検討についてであります。

 コンテンツの海外展開で、資料によりますと、毎年少しずつ増やしていく、七十億、八十億、二〇二六年には九十億に増やしていく、さらに、関連会社からの受取配当金についても五億増やして二十二億ずつでいく、こういう形でありますが、これで最大化しても、もし運よく全部入ったとしても百十二億ということであります。これでは、とてもとても一千億削減するうちの本当にごく僅かということであります。

 こんなことを考えれば、本当に、三年間で一千億円を削減してコンテンツを総量削減というんですが、どんなNHKの番組になっていくのか。あるいは、取材も当然ながら減らさなくちゃならない、こういう形になるわけですよね。皆さんもよく御存じの、テレビを見ていますとすばらしいことがありますが。時間がなくなってきましたから、やりますか、ちょっと難しいですかね、どっちか一言で答えてください。

小池参考人 お答えいたします。

 コンテンツの中身について御質問いただきました。

 いずれにしても、容易ではありませんけれども、公共放送としての役割を果たし続けつつ、事業支出削減を実現するために可能な限りの方策を講じたいと考えております。

 また、新たな営業アプローチについても、支払い率の維持向上につなげてまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 そろそろ終わりにしたいと思っていますが、会長と総務大臣にお伺いします、最後に。以上を踏まえて稲葉会長と松本大臣にお伺いします。

 受信料の値下げは国民・視聴者にとってはよかったことだと私は思っておりますが、しかしながら、事業構造改革と新規領域創造を同時に進める経営改革は、まるで経営破綻した民間会社の再生計画のように見えます。仮に今回の放送法の改正が実現すれば今次の経営計画の見直しをすることになるわけでありますが、関連団体を含めた剰余金などが結構あるようでありますから、そんなものも活用して、国民の財産であるNHKをハードランディングさせないでソフトランディングさせるような、そうした経営計画に見直してほしいと思っておりますが、いかがでしょうか、一言ずつ。

稲葉参考人 委員御指摘のとおり、中期経営計画で掲げました二〇二七年度までの事業支出削減、一千億の削減、一方で、重複するような番組などは整理しまして実質的にコンテンツは質、量共に確保する、この二つを両立させるということは大変大きなチャレンジだと認識してございます。

 しかし、具体的に、放送波の削減とか、設備投資で当面の不必要なものを削減するとか、あるいは既存業務の大胆な見直し等々、構造改革を断行していくということでこれは成し遂げられるというふうに考えてございます。一方、業務の効率化あるいは生産性向上につながる投資、これはしっかり行うということで、各年度の改革の成果をうまく取り込みながら、着実にステップを踏んで経費を削減していく。三年という期間は非常に短い、余裕があるわけじゃないですけれども、しっかり、より効率的な業務体制を構築したいというふうに思っております。

松本国務大臣 受信料は国民・視聴者に広く御負担いただいておりますので、コスト意識を持って業務の不断の見直しを行って経営に取り組んでいただくことは必要だと考えております。

 中期経営計画では、設備投資等の固定的経費の削減等により約一千億円の事業支出の削減に取り組み二〇二七年度に収支均衡を目指すとされているものでございますが、同時に、コンテンツについては重点投資を行い、その質と量を確保し、公共的価値を実現するとされていると承知しておりまして、総務省としてはこの計画を着実に実行していただきたいと考えております。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

古屋委員長 次に、おおつき紅葉さん。

おおつき委員 立憲民主党・無所属のおおつき紅葉です。

 松本大臣、本日はお誕生日と伺いました。お誕生日おめでとうございます。

 それでは、大臣も含めて、これからの放送について、今日は皆さんと一緒に議論をしていきたいと思っております。

 まずは、改正案の前に、これからの放送について大変大切な議論が先週政府の会議で行われたということで、このことも含めてお話をさせていただきたいと思います。

 先週の十七日、政府の新しい資本主義実現会議で、コンテンツ産業の課題などが議題となったと報道で見ました。このコンテンツ産業への支援、今、大臣も、福田委員に対しての答弁にもありましたけれども、これを拡大していくことが重要だと私自身も考えております。

 この会議には是枝監督や山崎監督が出席をされまして、例えば、クリエーターの労働環境の改善や次の時代を担う若手の育成、また今の収益構造の見直しの必要性などが指摘されて、これを受けて岸田総理も業界の実態調査を行って改善を図っていく意向を明らかにしました。

 コンテンツ産業というのは映画業界だけではありません。テレビもそうだし、これからインターネット業界もそうです。やはり、映画業界だけではなく、作り手、クリエーターの声を大切にしていただきたい、現場環境に見合った予算の配置をしてほしいということだと私は受け止めました。

 そこで、我が国では、経産省においてコンテンツ産業の海外展開支援のための補助金制度が設けられておりまして、また、総務省においても放送コンテンツの海外展開を促進する補助金制度が設けられているというように伺っております。

 まず、総務省の補助金制度の設置理由と補助対象は何なのか、また、経産省が設けている補助金の目的との違いについて、伺います。

小笠原政府参考人 お尋ねの補助金についてでございますが、総務省におきましては、放送コンテンツの海外展開を通じまして、日本各地の魅力を海外に発信し、各地域に海外から需要を呼び込み地方創生を推進するということを目的として、放送コンテンツによる地域情報発信力強化事業ということを実施しております。

 具体的には、地域の放送事業者あるいは番組制作者の方々、こういった方々が地方公共団体などと連携をしていただきまして、放送コンテンツを海外の放送局と共同制作し、現地で発信する取組ということを支援することで、地域の活性化及び地域の放送事業者あるいは番組制作者の方々の番組制作能力の向上、強化ということを図っているところでございます。

 他方、経済産業省さんが実施されております我が国の文化芸術コンテンツ・スポーツ産業の海外展開促進事業ということについては、映像、音楽等のコンテンツを制作する法人等を対象に、コンテンツの制作工程のデジタル化あるいは新たな技術を活用した取組などを支援することで我が国のコンテンツ産業の海外展開促進を図るものというふうに承知しているところでございます。

おおつき委員 総務省は地域の情報発信という形で支援されているということで、私はソフトパワーへの投資というのはやはり大事だと思うんですよ。

 私自身、一期生の仲間と一緒に二年前に韓国に視察に行かせていただいたときに、地元の有識者の方だとかシンクタンクの方々、また政府関係者の方々とも意見交換をさせていただいたときに、私自身、民放出身なんです、なので、最近のKポップを始めとした韓国の文化の海外発信の在り方というものはすごいものだというお話をこちらからさせていただいたら、皆さんが一斉に言ったのは、私たちは予算を増やしたんです、これはチャレンジングだったんだ、でも、増やしたからこの成果が出てきたんだというお話をお聞きして、ちょっと鳥肌が立ちました。

 私自身、今回調べさせていただいたところ、韓国は、ソフトパワーの強化に一九九九年から取り組んでおられまして、二〇〇九年の五月には、これまで放送、ゲーム、アニメそして音楽などの産業別に分散していた担当の組織を、文化産業振興基本法第三十一条に基づいて設立されたコンテンツ振興院という準政府機関というものに一元化したそうなんですね。これは日本で例えると、文科省の文化庁、スポーツ庁、そして国交省の観光庁、経産省のコンテンツ産業課が合体した機関などと紹介をされております。

 このコンテンツ振興院では、例えば、二〇一一年から二〇二一年の十年間で予算を二・五倍に拡大しているんですよ。この拡大に伴って、コンテンツ産業の成長に伴って重要性が増しているので、予算規模が増加傾向にあって、二〇二二年には五千億ウォンとなっているんですけれども、それはつまり十年前の二・五倍に膨らんでいるという形なんですよね。

 この結果、どうかというと、今日NHKさんの方もお越しだと思いますが、紅白歌合戦ではKポップアイドルが過去最多の六組出てきたりとか、あとは、ネットフリックスも、ランキングを見ていると上位にやはり韓国のコンテンツがかなり来ていますよね。こうやって、世界に見られるコンテンツが作られてきて、ソフトのパワーというのがかなり強化されているということを、私自身、自分の世代として目の当たりにしております。

 片や、日本はどうかといいますと、この間、YOASOBIが日本の大変重要な会談の中に出席されたことなどがありましたが、二〇一三年に安倍政権下で始まった例えばクールジャパン戦略、これは多くの投資が失敗したと言われていて、累積損益が膨らんで、二〇二二年度の累積赤字は三百五十六億円に上ったなどという報道もされております。

 このクールジャパン戦略をめぐっては、今年の六月をめどに新たな戦略を出す準備などということも伺っておりますけれども、正直、お隣の韓国に比べたら、なかなかこの投資、産業への効果と分析を含めて、やはり日本はまだまだ弱いと私は感じております。

 そこで、韓国のコンテンツ振興院等の取組を参考にして、日本の支援もより効果的にしていくために現状の補助金制度の運用の改善も試みた支援が必要だと考えますが、総務省に限ってでもいいです、今後の放送コンテンツの海外展開を促進する支援の在り方について、大臣に伺いたいと思います。

松本国務大臣 韓国におかれては、政府を挙げて熱心にコンテンツの輸出などに取り組んでおられるというのは私どもも感じているところでございます。

 総務省として、放送を所管する立場から、放送コンテンツの海外展開に向けて、関係省庁とも連携して、放送事業者などによる国際見本市出展の支援や海外の放送局との共同制作の支援などは行っているところでございます。

 世界のコンテンツ市場におきまして、豊富な資金を有する海外プラットフォーマーがグローバルに展開し、多くの視聴者を獲得しております。そういった中で、日本のコンテンツには、本来、そのものには大変力がある、また大きな魅力があると考えておりますが、日本のコンテンツが持つ潜在的な可能性というのはまだまだ生かさなければいけないところがあるというふうに思いますし、コンテンツ分野そのものも、恐らくこれから世界においても大きな成長分野になるのではないかというふうに考えているところでございます。

 このため、我が国の優れた放送コンテンツの海外への流通を支えるプラットフォームとして、NHKを始め放送事業者の皆様にはコンテンツ産業の競争力強化に更に貢献いただくことを期待してまいりたいと思いますし、総務省として、放送、インターネット配信のプラットフォームの充実強化を図り、コンテンツの4K化など制作力の強化を後押ししてまいりますし、また、放送分野を担当する側面から、制作される側が適正に評価される、対価を受け取れるような制作環境の整備にも後押しをしてまいりたいと思っております。

 その上で、今委員からお取り上げいただきましたように、今、政府全体として、我が国のコンテンツの本来持つ競争力を生かして、成長する分野において我が国がしっかりと対応することによって我が国の力にしていくことが必要なのではないか、そのような考えでいろいろ今議論させていただいているところでありまして、私自身も政府の一員としてコンテンツ産業には大いに期待をしている。

 その中で、新しい資本主義というのは、基本的に官民連携によって世界に対する競争力を高めるといった考え方もその中にありますので、コンテンツ産業の位置づけと具体的な支援策について、また議論を深めていきたいと考えております。

おおつき委員 多分、官として大事なところというのは、今ある補助金制度とかも含めて、特有のノウハウがないとそこにリーチできなくて、企業として使いにくいということとかも問題だと思うんですよね。

 こういった観点を皆さんたちには是非取り組んでいただいて、現場が運用しやすい制度にできるように、また、そこにリーチができないと、その補助金にリーチができないと制作費がゲットできない、そうすると、スピード感に欠けて、コンテンツ制作者の立場で何が必要とされているのかどうか、現場が何を求めているのか、これはやはり調査とか研究というのが今の段階では不十分なので、費用面、費用対効果という面も含めて、問題解決へ向けて力を尽くしていただきたいと思っております。

 さて、では放送法の関連に入らせていただきたいと思います。

 現在、NHKでは、NHK・フォー・スクールとして、学校向けのコンテンツを無料で提供されています。受信料に関しても、職員室はテレビ受信料を徴収しているものの、各教室で子供たちが視聴するテレビについては、受信料免除基準というものを設定しておりまして、無料で番組情報を子供たちに提供されています。

 ただ、今回の改正案を鑑みますと、子供たちがインターネット配信で学校向け番組情報を得ようとするときに、果たしてどのような考え方に立つのか、その議論がほとんどされておらず、関心も持たれていないことが非常に残念に思います。

 そこで、子供たちの中には、例えば不登校のケースが当然ありまして、受信料の支払い状況は問われずに学校向けのコンテンツに接することができる枠組みを考えていくべきだと思いますが、例えば学校を通じて子供向けのコンテンツを見られるIDを発行するというようなことも考えられるんじゃないかと思うんですけれども、NHKに伺います。

小池参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、不登校の方にNHKの教育コンテンツを視聴していただくことは重要だと考えております。

 今回の法改正によりまして、御自宅で受信契約を締結されている場合には、追加の負担なくインターネットで教育コンテンツを視聴いただけることを想定しております。また、そのような条件が整わない場合でありましても、放送同様の免除制度を設定するほか、放送法の改正案の趣旨を踏まえて、インターネットにふさわしい形の提供を検討していきたいと考えております。

 引き続き、しっかり公共放送の役割を果たしていきたいと考えております。

おおつき委員 是非、子供たちのためにも、そういったところは分かりやすく設定をしていただけたらと思います。

 次に行きます。

 本改正案では、これまで受信契約の締結義務があるとされていたテレビ等の設置者と、新たに受信契約の締結義務があるとされる特定必要的配信の受信を開始した者、これはちょっと難しい言葉なんですけれども、つまり、スマートフォン等の通信端末機器を用いてNHKのインターネット配信の受信を開始する準備を整えた人について、放送法の第六十四条第三項において、いずれも同じような受信環境であるということで、両者の受信契約の内容を公平に定めなければならないということとしています。

 そもそも第六十四条第三項の公平にとは具体的にどのようなことであるのか。例えば受信料額が同一であるということを意味しているのか。又は、総務省に伺わせていただきたいんですけれども、特定必要的配信の受信を開始した者の受信契約はどのようなものになるのか、現時点での想定を伺います。

小笠原政府参考人 お尋ねの条項でございますが、この規定については、受信料制度に関するものですが、平成二十九年の最高裁の大法廷判決において、受信料につきまして、国家機関等から財政面での支配や影響がNHKに及ばないようにし、NHKの放送を受信することのできる環境にある者に広く公平に負担を求めることによって、NHKがそれらの者ら全体により支えられる事業体であるべきことを示すものというふうにされていると承知しております。

 本法案で新設します六十四条第三項、この規定はこの判決を踏まえたものでございます。すなわち、一般論として、NHKの配信の受信を開始した者が、テレビ等を設置した者と同等の受信することのできる環境にある者として、同一の受信環境であれば、受けるサービスと負担が同等であることが必要であるという基本的な考え方を示したものであります。

 なお、具体的な受信料の額については、NHKさんが毎事業年度の収支予算を作成する中で検討し、国会が当該収支予算を承認することで定めることというふうにされておりまして、NHKにおかれましては、国民・視聴者の方々の御理解が得られるよう努めていただきたいというふうに考えておるところでございます。

おおつき委員 次の確認ですが、現状、テレビ等の設置者でNHKとの受信契約を締結している人がインターネットのアプリのNHKプラスを視聴したい場合、追加の費用負担なく、一つの受信契約で一つのIDを取得できることになっています。また、一つのIDで同時視聴できる画面の数の上限は、ほかのサービスの状況や国の統計調査での一世帯当たりの標準的な人数などを勘案して、五画面までということになっております。

 確認なんですけれども、今後、例えばそういった要件を鑑みていくと、テレビ等の設置者が同時に視聴できる画面数について、五画面から変更する予定というのはありますか。

小笠原政府参考人 本法案におきましては、先ほど申し上げた受信料の公平負担の観点から、一の受信契約におけるIDの適切な利用を確保するために、NHKさんは、受信契約を締結している者を識別するIDを用いてインターネット配信を同時に受信できる通信端末機器の数の上限を定めるなど、必要な事項などを受信契約の条項に記載するというふうになっております。

 そこで、具体的な通信端末機器の上限値などにつきましては、本法案が成立した暁には、NHKさんが様々な状況を勘案して具体的に定めるということになるのではないかと考えております。

おおつき委員 それでは次に、先ほどの実は福田委員の資料の中にもあったんですけれども、他国の件についてちょっと伺っていきたいと思います。

 NHKのインターネット活用業務の在り方について検討されてきた総務省の有識者会議では、諸外国における公共放送のインターネット配信の状況も参考に議論されてきたと承知をしております。私自身も、大学時代、五年近くイギリスに住んでいたんですけれども、例えば度々比較対象とされるイギリスのBBCでは、既に二〇〇七年からインターネット配信についても必須業務として位置づけられておりまして、BBCアイプレーヤーというサービスで提供されています。また、日本と異なって、イギリスでは、BBC以外のライブストリーミングサービス、例えばユーチューブとかアマゾンプライムビデオでテレビ番組を視聴する場合にも、NHKの受信契約に相当する有料のテレビライセンスが必要であるということになっております。

 そこで、ちょっとイギリスの例について伺いたいんですが、インターネット配信された動画を視聴するに当たって、どのようなサービスのときにはテレビライセンスの対象外となるのか、テレビライセンスの対象範囲について総務省に伺います。

小笠原政府参考人 お尋ねのイギリスの公共放送BBCの財源である受信許可料につきましてでございますが、ただいまの対象外ということについては、七十五歳以上でかつ高齢低所得者に向けた最低保障給付制度である年金クレジットを受給している方に限り、受信許可料が全額免除されているというふうに承知しております。

おおつき委員 こういった海外の事例も是非これからも参考にしていただきたいと思っております。

 現在、NHKがインターネット活用業務を実施するに当たって定めることとされているインターネット活用業務実施基準では、NHKが同時・見逃し配信をすることができる放送番組については地上波テレビジョン放送の放送番組のみとされておりまして、衛星放送の番組については配信しないこととなっています。一方で、今回の改正案では、原則として、NHKが放送する又は放送した全ての放送番組についてインターネット配信することを必須業務にすることとされております。

 しかしながら、衛星放送の番組の配信については、公共放送ワーキンググループの中で、プロスポーツ番組や海外からの購入番組など、番組配信の権利が取得できない、あるいは費用対効果の観点等から取得しない番組が多く、インターネット配信を行う上では権利上の課題が多いということで、仮に取得が可能であっても相当高額な費用になることが想定されるとNHKが示したこともありまして、本改正案の中では経過措置というものが設けられて、総務省令により当分の間は配信の対象から除外する見込みとなっております。

 そこで、伺いますけれども、いずれ衛星放送の放送番組の配信が開始された場合においては、特定必要的配信の受信を開始した者の受信契約をどのように取り扱う見込みなのでしょうか、また、地上波テレビジョン放送の放送番組の配信だけに限定する契約を準備する予定なのでしょうか、NHKに伺います。

小池参考人 お答えいたします。

 放送法の改正案が成立した場合のインターネット配信に関わる契約の在り方等については現在検討中でありますが、既にテレビを設置して受信料をお支払いいただいている人はインターネットのサービスについても追加の負担なく御利用いただくことを想定しております。

 また、放送法の改正案においては、テレビ等の受信設備を設置した者と特定必要的配信の受信を開始した者を同等の受信環境にある者として取り扱い、受信契約の内容を公平に定めなければならないとされていると承知しております。

 必須業務につきましては、当分の間は衛星放送の放送番組の同時配信、見逃し番組配信の実施は困難であることも踏まえて、インターネット配信のみを利用する場合の受信料の額は地上契約と同じ水準とする方向で検討しております。

 御指摘の衛星放送の配信につきましては、インターネット配信を行う上では権利上の課題が多いことに加えて、衛星放送の編成の在り方やコストの問題なども含めた検討が必要になると考えております。お尋ねの点も含めて、衛星放送の配信を開始した場合の受信契約の在り方につきましては、テレビ等の受信設備を設置した者との公平性を考慮して今後検討してまいりたいと考えております。

おおつき委員 次に、最大同時視聴者数の想定について伺いたいと思います。

 NHKの放送番組のインターネット配信が必須業務とされていますが、放送とインターネット配信では、視聴者数が増加した場合における事業者側の対応というのは異なってくるんですよね。具体的には、放送波を使う放送では、たとえ視聴者数が急激に増加しても、その増加に伴う設備投資は基本的に必要がありません。しかし、インターネット配信の場合、視聴者数に応じて通信回線の帯域の拡張や配信サーバーの増強など、配信設備を増強する必要が出てきます。

 ふだんの平均的な視聴者の数のみを前提とした配信設備では急激に視聴者の数が増えた場合に安定的な配信を維持することができませんが、一方で、過剰な配信設備は固定経費の増大につながってしまいます。そのため、現実的には、サービス停止という最も重大な障害を起こさないよう、新たな視聴要求の拒否や、画質を落として通信回線の帯域を確保するという措置を取ることがあります。

 例えば、今年は元旦に能登半島地震が発生し、一週間ほど前には愛媛県、高知県において最大震度六弱を観測する地震が発生しておりますが、地震等の自然災害の発生時には、情報を得るためにまずはNHKの放送番組を見てみようという習慣がある国民の方々が多いんじゃないかと思うんです。このような自然災害発生時や、大規模で国民の注目が集まるスポーツイベントの配信時には、NHKプラスにおいてもふだんをはるかに超える視聴者数になることが想定されます。

 そこで、まず、NHKプラスにおいて、ふだんの視聴者数と比べて、災害時、例えば能登半島地震の発生時などや、又は東京オリンピックのように大規模なスポーツイベントの配信時の視聴者数はどの程度変わるんでしょうか。NHKに伺います。

山名参考人 お答えいたします。

 能登半島地震が起きました一月一日の週、週当たりの視聴ユニークブラウザー数、これはすなわち視聴した端末の数ですけれども、通常週のおよそ一・六倍に増えました。また、東京オリンピックの際には週当たりの視聴ユニークブラウザー数が通常週の三倍近くに増えました。

おおつき委員 一・六倍、三倍ということで、やはり急激に視聴者数が増えるんですよね。こういったことを想定すると、やはり過不足のない配信設備の準備というのは欠かせないと思うんですけれども。

 そこで、NHKにおいて、これまでNHKプラスの視聴者数についてどの程度を見込んで配信設備を用意してきたんでしょうか。特に、災害時の視聴要求に応えられるようなどんな対策を行ってきたんでしょうか。

山名参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、災害時などにはアクセスが急増することがございますので、現状のNHKプラスでは、大規模配信を実現するシステムを導入して、アクセスの増加に対応できる仕組みを構築しております。最大の同時接続数の想定は特に定めてはおりませんけれども、これまでのところ、大型イベントや大規模災害の際にも安定的なコンテンツの配信を実現しております。

 必須業務化後にどのような対応が必要かは、放送法の改正案が成立した後に総務省令において配信用設備等の基準が定められると承知してございます。その内容を踏まえた上で、安定的なサービスを提供できるよう検討してまいります。

おおつき委員 是非、引き続きその検討を続けていただきたいと思います。サービス停止になっては本当に大変なことになると思いますので。

 それでは、総務省に伺います。

 本改正案の中でも述べられているように、配信の品質が総合的に評価して基幹放送の品質とできる限り同等の水準であるようにすることということが述べられているんですけれども、例えば画質の著しい低下や配信の断絶が起こらないように維持することなどが想定されると思うんですけれども、具体的に何を意味しているんでしょうか。また、配信において品質やサービスの安定性に大きな影響を及ぼす同時視聴者数の急激な増加という点について、総務省令で定める基準ではどのような形で具体的に定められているのでしょうか。伺います。

小笠原政府参考人 ただいまNHKさんからも言及がございましたが、本法案におきましては、NHKのインターネット配信を必須業務とするに当たり、NHKの放送番組が継続的かつ安定的に提供されるようにするために、NHKに対して、放送設備と同様、一定の基準に適合するよう維持しなければならないという義務を課しております。

 もっとも、インターネット配信につきましては、ただいま委員が御指摘されておりますように、その品質あるいはサービスの安定性というのは、視聴者から配信サーバーへのインターネットのアクセス環境の影響ということを受けるなど、放送と通信との技術的特性ということの違いを勘案してサービスの品質水準を定める必要がございます。

 具体的には、携帯端末、パソコン、あるいはインターネットに接続されたテレビ、視聴者の方々が御自分の選択で受信端末ということを選ばれることになります。そういった受信端末に応じて、映像、音声あるいは遅延時間等々、こういったものが最適化されたコンテンツを提供するための基準ということを策定する必要があるというふうに考えております。

 こうした受信環境の相違を勘案して、配信の品質については、基幹放送の品質とできる限り同等の水準を確保するというふうにしたものでございます。

 この上で、本法案が成立した暁にはNHKの放送番組の継続的かつ安定的な提供が確保されるよう、総務省令の内容について具体的に検討してまいりたいと考えております。

おおつき委員 では、次に、今回の改正案を受けて、やるからには見てほしいと多分ここに座っていらっしゃる委員としては皆さんも思うと思うんですけれども、本改正案のニュースがネットニュースで流れたとき、どんな声が広がったか、皆さん御存じですか。実は、スマートフォンを持っているだけで受信料を取られるんじゃないかという懸念の声が巻き起こったんですよ、特にヤフーニュースのコメントのところなんかに。

 もしかしたら、若い方々は分からないかもしれないんですけれども、昔、ワンセグってありましたよね、ワンセグの影響があるんじゃないかなと私は思っておりまして、スマートフォンを持っているだけで受信料を取られるという誤解は、ワンセグ機能も受信契約の締結義務があるとした平成三十一年三月の最高裁判決が関係しているんじゃないかなと思います。

 そこで、二点同時に伺います。

 今回、スマートフォンなどの通信端末を所有しているだけでは受信契約を締結している義務はなく、受信料を支払う必要はないということを改めて確認したいのが一つ。

 そして、ワンセグ機能つきの携帯電話については、所有するだけでNHKの受信契約の締結義務の対象になっていたにもかかわらず、今回の改正案ではスマートフォンなどの通信機器端末の所有だけでは受信契約の締結義務の対象としなかった理由について、総務省に伺いたいと思います。

 また、こうやってちまたで心配されている方々の声に対して、こういった誤解に対して、総務省としてどのように認識して今後対応していくつもりなのか、伺います。

小笠原政府参考人 ただいま委員から御指摘のあった点につきまして、改めて繰り返させていただきます。

 本法案におきましては、IDやパスワードの取得、入力など、通信端末機器の一定の操作等を経て、協会が必須業務として行う放送番組等の配信の受信を開始した者を受信契約の締結義務の対象としております。すなわち、スマートフォンやPC等の通信端末を保有しているだけで受信契約の締結義務が発生することはございません。

 そして、ただいまのワンセグ機能つきということでございますけれども、ワンセグ機能つきについて、御案内のとおり、最高裁判決におきましては、ワンセグ機能という放送受信機能を有する携帯電話につきましては、客観的に放送を目的としないというふうに認めるのは、そういうことは困難であるということで判決がなされているわけでございますが、今回、インターネット配信の受信のために利用するスマートフォンやPC等の通信端末機器につきましては、これは基本、汎用的な機器でございます。したがいまして、これらの機器を保有しているだけではなくて、NHKの放送を受信することができる環境と同等の受信環境に至る一定の行為、これを要件として受信契約の締結義務の対象とすることというふうにしているところでございます。

おおつき委員 時間が来たので終わりますが、是非、今回の制度改正に伴って、半島の先に住む人も含めて、要望する情報にみんながたどり着けるような制度設計にしていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終えます。

 ありがとうございました。

古屋委員長 次に、中司宏さん。

中司委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の中司宏でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 放送法の一部を改正する法律案についてですが、既に論点も出尽くしている感もありますけれども、通告に従いまして順次質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 初めに、今回の法改正の基本的な考え方についてですけれども、放送と通信の融合が急速に進む社会にありまして、時代に取り残されない、ふさわしい公共放送への転換、これが今求められていることは言うまでもありません。

 今回はそのための法改正と受け止めておりますが、この改正案が目指す公共放送の在り方について、まずは松本総務大臣にお聞きいたします。

松本国務大臣 基本認識として、もう御案内のとおりでありますが、国民・視聴者の多くが主な情報入手手段としてインターネットを利用しつつある状況でありまして、国民・視聴者の視聴スタイルの変化、情報空間の拡大という社会環境の変化を背景として、インターネットを通じて放送番組を国民・視聴者に提供する業務をNHKの必須業務として位置づけ、継続的、安定的な実施が義務づけられるように制度を変更していくべきではないか、公共放送ワーキンググループの取りまとめにおいてもそのように御示唆をいただく中で、放送法の改正という形で対応をさせていただきました。

 公共放送としての役割を担い広く受信料によって支えられるNHKと広告料収入によって支えられる民間放送がそれぞれ存在する二元体制の下で、その双方が切磋琢磨することによって放送全体が発展をしてきたと考えておりますので、本法案におきましても、公共放送と民放との二元体制を確保しつつ、NHKの放送番組をテレビ等を設置しない者に対しても継続的かつ安定的に提供するため、放送番組等のインターネット配信をNHKの必須業務とすることとしたものでございます。

 その上で、NHKには、番組関連情報を含め、質、量の両面においてサービスの一層の充実向上に取り組んで、国民・視聴者の皆様に対し、質の担保された情報をこれまで以上にしっかりと届けていただけるようにしていただきたいと考えております。

中司委員 インターネットの普及でスタイルが変化したということで、テレビ離れ、NHK離れが進んでいるということでございますが、昔は、家族の団らんの中心にテレビがあり、またNHKがあるということがありました。そうしたことを考えますと寂しくもあるわけですけれども、しかし、時代の流れですので、それに対して対応していかなければなりません。

 この改革についてですけれども、既に、先ほどもありましたが、イギリスやドイツ、フランス、こうした諸外国でははるか先に進んでいるという状況ではありますが、それらの国々に比べて、残念ながら日本ではインターネットへの対応は大きく遅れた、これは否めないと思っております。

 法制度とか組織体制、それぞれの国によって違うと思うんですけれども、急激なデジタル社会への変化というのは、これはどの国も同じだったわけでありますが、その中でなぜ日本がこれだけ遅れてきたのか、このことについて伺います。

小笠原政府参考人 御指摘の点でございますが、NHKの業務の在り方ということにつきましては、技術の進展あるいは放送を取り巻く環境の変化ということを踏まえまして、NHKのインターネット配信業務の在り方について、数次にわたり、総務省といたしましても、その時々の環境の変化を踏まえ、適時に制度を設計してきているところでございます。

 一方、我が国において、平日のメディアの平均利用時間が令和二年度になって初めて全年代平均でインターネットがテレビを上回ったこと、そして情報空間の拡大に伴い偽・誤情報の拡散などが課題となるなど、放送を取り巻く環境が急速に変化していることを踏まえまして、令和三年十一月から有識者会議を開催し、放送の二元体制の下で、NHKがデジタル時代に果たすべき役割等について様々な観点から御議論をいただいたところでございます。

 有識者会議において、令和五年十月、NHKの役割として、放送コンテンツのプラットフォームとして放送番組の流通を支え、二元体制を基本とする我が国の放送全体の発展に貢献する役割、あるいは、放送の二元体制の枠組みの下、放送という手段に加え、インターネットを通じて放送番組を視聴者に提供する役割がある、こうした取りまとめをいただいたことを踏まえ本法案を今国会に提出させていただいたものでございます。

中司委員 ちょっと聞こえにくかったんですけれども、インターネットの普及が急速に行われてきた、その端緒は諸外国に比べて日本では遅かったということですかね、最初におっしゃったのは。それでスタートが遅れた、こういうことですか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 原因として、放送を取り巻く視聴環境の大きな変化ということを申し上げましたが、その一環として、令和二年度、今申し上げたメディアの平均利用時間がインターネットがテレビを上回ったことがその一つにあるということは申し上げられると思います。

中司委員 そういう状況もあったんでしょうけれども、先ほどからも話題になっておりますが、利害関係者等の声、これの調整とか、それから受信料の問題とか、こういうこともあったんじゃないかと思うんですけれども、こうした状況を乗り越えてこその改革ですので、しっかりと対応していただきたいと思っております。

 こうした状況を打開するためにNHKは公共放送としてどんな役割を果たそうとしているのか、今回の必須業務としての意義、これはどうなのか、それによって国民にどんなメリットがあるのか、この辺をお伺いいたしたいと思います。

稲葉参考人 必須業務化と申しますものは、これは、命と暮らしを守る正確な情報を始めとする基本的なサービスをきちんとお届けしなければならない、そういう義務がNHKに課されることだというふうに理解してございます。視聴者・国民の皆様に放送経由でもインターネット経由でも同じ情報内容や価値、受益をもたらすことが求められているというふうに考えてございます。

 国内では自然災害が頻発、激甚化しております。海外では、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化など国際秩序の混迷が深まっております。さらに、フェイクニュースの拡散など社会の分断にも歯止めがかからない、こういう状況でございまして、こうした中で、正確で信頼できる情報やコンテンツ、多角的な視点を提供し、インターネットも含めた情報空間の健全性を確保することで健全な民主主義の発達に資するというNHKの役割は一層高まっているというふうに理解してございます。

 NHKとしては、インターネット上においても、安全、安心を支え、あまねく伝えることで健全な民主主義の発達に資するという公共的な役割を果たしていきたいと思っております。

 公正公平で確かな情報を、豊かなよいコンテンツを間断なくお届けすることで、視聴者・国民の皆様のお役に立ち、ひいては日本や世界の人々が平和で豊かに暮らせる社会の実現にNHKとしても貢献してまいりたい、こういうふうに考えております。

    〔委員長退席、中川(康)委員長代理着席〕

中司委員 今、NHKを取り巻く環境は様々な課題があるということをおっしゃって、その中で、確かで、豊かで、確実に伝えていく、こういうことをおっしゃったと思うんですけれども、その辺を踏まえて取り組んでいただきたいんですけれども。

 若い世代を中心に視聴者離れが進んでいる、こういうことですけれども、視聴者の数、それから契約数、どの程度この改革で増えると思っておられるのか、その辺をお伺いします。

小池参考人 お答え申し上げます。

 放送法の改正案は、放送と同じようにインターネット経由でもNHKのコンテンツをお届けすることをNHKに義務づけるとともに、インターネットのみでサービスの利用を開始した人には受信契約の対象として相応の費用負担をしていただく内容だと承知しております。

 テレビを所有していない世帯がスマートフォンやパソコン等を使って配信を受信するための一定の行為をどの程度行うか分からないため、契約数や視聴者数にどのような影響が出るか算定することは難しいと承知しております。

 放送法が改正された際には、放送と同様にインターネットを通じても公共放送としての使命を果たすことで、公共的価値に共感して、納得して受信料をお支払いいただける方を増やしてまいりたいと考えております。

中司委員 次、これも先ほど質問がありましたが、今後配信業務が増大して拡大していくと考えられるわけですね、これから更に。そうすると、放送波によるこれまでの放送と違って、視聴者の増加に伴って配信設備の増強が必要となってきます。ましてや、災害時とか有事あるいは大規模なイベントにおいても、いっときに通常よりはるかに大きなニーズが発生します。公共放送においては、インターネット配信を必須業務に位置づけるということでありますのでこうした事態に的確に対応しなければなりませんが、この見解についてどうなのかということですね。

 それから、いっときに視聴する人の数を最大どれぐらいまで見込んでおられるのか。これも先ほどありましたが、これに対してどのような計画を立てて対策を講じていかれるのか伺います。

稲葉参考人 配信設備のお尋ねでございます。

 御指摘のとおり、災害時などにはアクセスが急増するということがあるために、現状のNHKプラスでは、大規模配信を実現するシステムを既に導入してございまして、アクセス数の増加に対応できる仕組みを構築してございます。最大の同時接続数がどのぐらいかといった想定は特に定めてはおりませんけれども、これまでのところ、大型イベントあるいは大規模災害の際にも安定的なコンテンツ配信が実現できるものというふうに考えてございます。

 必須業務化後にどのような対応が必要かということでございますが、放送法の改正案が成立した後、総務省令において配信用設備等の基準が定められるというふうに承知してございます。その内容を踏まえた上で、安定的なサービスを提供できるよう検討してまいりたいというふうに思っております。

    〔中川(康)委員長代理退席、委員長着席〕

中司委員 特に災害において、情報は命に関わるものでございますので、ニーズが集中することで配信のキャパを超えてネットが使えなくなる、こういうことのないように、懸念が少しありますので、その辺について、また対応していただきますようにお願いいたします。

 それと、配信設備の増強に関して、設備への投資がどの程度必要で、経常収支にどういう影響を与えるのか、この辺についてもお伺いいたします。

小池参考人 お答えいたします。

 配信用設備等の基準につきましては、放送法の改正案が成立した後、総務省令で定められると承知しております。配信用設備の具体的な仕様は、その内容を踏まえた上で、安定的、継続的にサービスを提供できるよう定めていくことになると考えております。

 現在、アクセスの増加に対応できる仕組みを構築しておりますが、仮に配信用設備の増強が必要となる場合でも、費用対効果の観点も踏まえ、また外部の知見も取り入れながら、コスト抑制に努めていく考えです。

 必須業務化による配信設備の増強がNHK全体の収支に与える影響については、現時点で限定的な規模にとどまると見込んでおります。

中司委員 次に移ります。

 今回の改正でこれまでの理解増進情報制度が番組関連情報に移っていく、こういうことでございます。これはデメリットの方が大きいんじゃないかというふうに受け止めざるを得ないんですけれども、移行することの意義と視聴者にとってのメリットについてお伺いいたします。

小笠原政府参考人 お答えいたします。

 放送法におきましては、NHKは放送を通じて広く国民・視聴者に放送番組を提供することを使命とし、これに関連する情報をインターネットで提供してきたものというふうに理解しております。

 本法案は、放送をめぐる視聴環境が急速に変化する中、放送という手段に加えまして、インターネットを通じて国民・視聴者に放送番組とともに番組関連情報を提供することをNHKの必須業務とするものであり、本法案においても基本的な考え方を変えるものではございません。

 本法案により必須業務として番組関連情報が配信されることで、インターネットの特性を生かして国民・視聴者の多様なニーズに応える形で放送番組の内容を伝えることとなり、国民や視聴者にとって必要な情報がインターネット配信で継続的、安定的に提供されることになるものであります。

 なお、具体的な内容につきましてはNHKさんが業務規程で定めることになりますが、NHKにおかれましては質、量の両面におきましてサービスの一層の充実向上に取り組んでいただきたいというふうに考えているところでございます。

中司委員 NHKさんにサービスの向上に努めていただきたい、こういうことでございますが、国民の受信料で取材した多様な意見とか情報をストックしていく、そして活用していく、その仕組みは大変重要だと思っております。その点が十分に機能するのかどうかですね。サービスの低下ではないかと思うんですけれども。

 イメージがもう一つ湧かないんですけれども、その辺について具体的にお聞かせいただいたらありがたいんですけれども。

山名参考人 お答えいたします。

 必須業務化後のサービスの具体的な内容は検討を進めているところでございますけれども、放送番組の同時配信、見逃し配信に加えまして、番組関連情報としまして、災害情報や地域情報を含め、政治、経済、社会、科学、文化、スポーツなど国内外の様々なニュースを継続的、安定的に提供してまいります。

 視聴者・国民の皆様にお伝えすべき取材の成果につきましては、放送でもインターネットでもしっかりお届けいたしまして、公共放送としての使命を果たしていきたいと考えております。

中司委員 公共放送としての使命を果たしていただきたいとは思います。わざわざこの制度を変えるということは、利害の調整の中でそういう形を取らざるを得なかったのかなということも何となく感じるわけなんですけれども、しっかりと対応していただきますようにお願いしたいと思います。

 それから、視聴覚に障害がある方にとって、テキストの情報とか自動音声の読み上げ機能は大変重要なコンテンツであると思うんですね。今回の改正によって視聴覚の障害者の方々への情報のアクセス権に不利益が生じないのか、これについてお伺いいたします。

山名参考人 お答えいたします。

 NHKは、幼児、子供からお年寄り、目や耳に障害のある方など全ての視聴者の方が見やすく、聞きやすく、分かりやすく、安心して視聴できるユニバーサルサービスの充実に努めております。

 現在、視覚障害のある方にも御利用しやすいように、NHKオンラインのテキスト版を提供し音声読み上げソフトウェアなどに対応しているほか、聴覚障害のある方に向けては、大雨や津波などの災害時に手話CGで警戒や避難を促すサービスを理解増進情報として提供してございます。こうしたサービスにつきましては、NHKとして、必須業務化後も番組関連情報と位置づけ、引き続き提供できるようにしていきたいというふうに考えております。

中司委員 よろしくお願いいたします。

 次に、これまた何回も出ておりますが、偽情報それから誤情報、これへの対応についてお聞きします。

 画像とか音声の編集技術、生成技術の高度化によりまして、いわゆるフェイク動画の拡散が問題視されているところは御承知のとおりでございます。とりわけ生成AIの普及に伴って、特別な技術や知識がなくても簡単に、本物か偽物かの判別がつかない画像とか音声が配信できるようになったわけでありまして、また、NHKに成り済ました配信もあるでしょうし、誤った情報と分からずに拡散してしまうケースもあろうかと思います。

 国民からの信頼性の高いNHKが結果として偽情報や誤情報の流布や拡散に手をかすようなことがあってはならないと思うんですが、これに対してどのような対策を取られるのかお伺いします。

山名参考人 お答えいたします。

 自然災害が激甚化し、国際情勢が混迷を深める中、偽の情報や誤った情報の拡散などが社会の混乱を招くことは大きな問題でありまして、正確で信頼できる情報をお伝えしていくことは公共放送NHKとして重要な役割だと認識しております。

 NHKでは、インターネット上の投稿などをウォッチするチームを二十四時間体制で配置しておりまして、このチームがSNSの探索を行う中で偽の情報や誤った情報の拡散をキャッチしております。その情報は、取材部門で確認、検証を行いまして、注意喚起も含めて報道しております。

 能登半島地震では、地震の原因を人工地震と主張する根拠のない情報が拡散したことにつきまして、地震のメカニズムに詳しい専門家を取材しその内容を否定するなど、偽の情報や誤った情報を打ち消したり、注意を促したりするニュースを発信してきました。また、先週十七日深夜に愛媛県と高知県で震度六弱を観測した地震でも、情報空間において偽の情報や誤った情報が拡散いたしましたので、インターネット上で注意を呼びかけました。

 今年度からの経営計画では、コンテンツ戦略の六つの柱としまして、「“フェイク”の時代だからこそ顔の見える信頼のジャーナリズム」を掲げて、取材過程が見える報道を展開することに加えまして、ほかの報道機関などとも連携して偽の情報や誤った情報の対策に当たることにしております。

 公共放送NHKには情報空間の健全性を確保することで平和で豊かに暮らせる社会を実現し民主主義の発展に寄与することが求められていると考えており、今後も取組を強化してまいります。

中司委員 国民の皆さんに周知徹底、その辺をよろしくお願いしたいと思うんです。

 次に、公正な競争の確保ということなんですけれども、このことについては、そもそも、国民の受信料で成り立っているNHKと他の事業者との間で公正な競争の原理が働くとは、そもそも論として思えないわけなんですね。そして、利害関係者の意見を聞くことによって配信活動を縛るというようなことはすべきではない、こういうふうに思っています。

 こうした状況の中で、番組関連情報の配信業務規程の中でうたわれていることにつきまして、どのような事業を行っていくのか。やはりこれはサービスの低下ではないのかと繰り返し言いますけれども、この点についてお伺いします。

小笠原政府参考人 再度、また理解増進情報によるサービスの低下ということに関する御懸念ということでございますので、それに関して、もう一度説明をさせていただきます。

 番組関連情報ということにつきましては、一応、法律の中では、放送番組と密接な関連を有する情報、あるいは放送番組の編集上必要な資料により構成されるものというふうに定義をされておりますが、先ほどちょっと御説明しましたとおり、NHKさんの公共放送の役割ということで、必要な情報を国民にきちんとお届けしていくということについては、これは今までもこれからも変わるところはないというふうに考えているところであります。

 したがいまして、先ほど申し上げましたとおり、放送番組ということについて更なる充実ということを先ほどからNHKさんは申し上げていますが、当然、それに伴いまして、放送番組に関連した情報ということについても、更に今後のサービスの一層の充実強化ということが期待されるところでございます。

 したがいまして、こうした番組関連情報が確実に、そして安定して国民の皆様にお届けされるということで、視聴者の方々へのサービスの向上ということがより一層図られるということを期待しているところでございます。

中司委員 繰り返し私の方も質問しておりますので、しっかりと対応していただければと思っております。

 さて、次に、受信料の在り方なんですけれども、訪問徴収を廃止されたこと、それから値下げを行われたこと、これは一定、この間の改革は評価するところでありますけれども、抜本的な経営基盤として、現在の受信料契約に基づく経営、これは決して持続可能であるとは言い難いと私は思っております。

 NHKはこれまで、テレビ等を設置していれば視聴の有無に関係なく受信契約を行う義務を課してきたわけでありますが、今回の改正では、インターネットに接続してNHKの配信を視聴する際に、一定の手続を経た者が受信契約をする、こういうことになっています。これは実質的にはスクランブル契約の実施と言えるのではないかと考えます。

 これまでスクランブル契約については、一貫して、公共放送の役割になじまないということで見解を示されてきたわけなんですね。法改正によって現実にネット配信が増加することにこれからなってくると思いますが、これまでの考え方との整合性が取れなくなってくるのではないか、こう思うんですけれども、これについて見解を伺います。

小笠原政府参考人 受信料制度に関するこれまでの考え方との整合性ということについての御質問でございます。

 受信料制度の趣旨ということについては、平成二十九年の最高裁判決におきまして、NHKの放送を受信することのできる環境にある者に広く公平に負担を求める、それによって、NHKがそれらの者ら全体により支えられる事業体であるべきことを示すものとされているというふうに承知をしております。

 そして、本法案における取扱いでございますが、今委員からも御指摘がありましたとおり、受信契約の対象となるインターネット配信の受信について、受信できる環境になった者を受信契約締結義務の対象としておりまして、これは受信料制度の考え方ということにのっとったものであるというふうに考えているところでございます。

中司委員 受信料の今の制度にのっとってこれを拡大していくということだという説明だと思うんですけれども、ただ、現在のように世帯単位で契約されているところ、これにどれぐらいの端末がひもづくのかとか、いろいろこれから条件的に、制限とか、検討していかなきゃならないことはたくさんあると思うんですね。

 ですから、一旦これは始まったら、私は、スクランブルの契約というものが、そういうところに一定足を踏み込んでいくということになるので、根本的に受信料の徴収の在り方というものを考えていくべき時期に来ているのではないかなというふうに思っております。

 今回の義務づけによってスクランブル配信に道を開いたということになりますので、小手先の改善ではなくて、抜本的な改革に向けてどう考えておられるのか、これは大臣にお考えをお聞きいたします。

松本国務大臣 これまでも議論がありましたけれども、そもそも、やはり、受信料によって支えられているNHKと広告料収入によって支えられている民放といういわば異なるビジネスモデルがそれぞれ存在する二元体制に意義があると考えておりまして、その双方が切磋琢磨することによって放送全体の発展もあったのではないか。

 そのような意味では、受信料という広く国民・視聴者に負担をいただくという考え方は大切であると考えておりまして、今回も受信料制度の基本的な考え方にのっとって制度設計をさせていただいて御提案を申し上げているというふうに理解いたしているところでございます。

 その上で、今申しましたように、いわばビジネスモデルが異なる中で公正な競争も確保されなければならないということで、番組関連情報の配信について業務規程によって公正な競争の確保を図ることを今回の放送法で御提案させていただいている、これが今回の考え方の基本的なところだというふうに御理解をいただけたらというふうに思っております。

 繰り返しになりますけれども、二元体制ということ自身は、多様な在り方、多様な情報の提供という意味でも意義がある中で、これからも確保していくべきものというふうに考えているところでございます。

中司委員 これまでから二元体制のことにつきましては何回か議論しておりますが、その辺のところはある程度将来的な課題ということで考えていただきたいんですけれども、ただ、今回の改正というのはあくまで受信料について現在の制度の延長でやっていくんだということですので、それではこれから先が行き詰まってくる可能性が出てくるんじゃないかと思いますので、その辺を改めて抜本的に変えた方がいいんじゃないかという提案なんですけれども、会長、どうでしょうか、最後に。

稲葉参考人 受信料制度につきまして、やはり公共放送の財源といたしましては、広く視聴者の皆様に負担していただく受信料がふさわしいものと考えております。そのためにも、視聴者にNHKならではの放送・サービスを通じてNHKの公共的価値に共感していただいて、納得して受信料をお支払いいただくということが大変重要ではないかというふうに思っておりまして、この点は、放送と通信の融合時代においてもこうした考え方に変わりはない、変える必要はないのではないかというふうに思っております。広く視聴者の皆様に負担していただく仕組みとして受信料制度はやはり必要ではないかと考えてございます。

 もちろん、受信料で成り立つ公共放送といたしましては、視聴者・国民の皆様の御期待に応えるためにも絶えず経営改革に取り組んでいくことが不可欠だ、重要だというふうにも考えてございます。

中司委員 ありがとうございました。私たちも、NHKを広くこれからも継続してやっていけるように、そういう観点からの改革というものを提案しているわけでございますので、これはこれから先の議論とさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。これで終わります。

古屋委員長 次に、吉田とも代さん。

吉田(と)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の吉田とも代と申します。

 本日は、放送法の質疑ということで、NHKの稲葉会長、そして古賀経営委員長や役員の皆様にお越しいただきました。先日の本会議では総務省松本大臣にいろいろお伺いをいたしましたが、本日はNHKの皆様のお考えも伺いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今年三月には古賀経営委員長の下で新たな経営委員会となり、本日理事の方々の交代もあって、新たな経営体制が発足したところと承知しています。公共放送として政府からの独立性を堅持する必要があるからこそ、国民から信頼されるNHKとして、不祥事を未然に防ぐ自律的なガバナンス体制を構築し、地方放送局を含めた全国NHKの職員にコンプライアンス精神を浸透させる地道な取組が不可欠かと考えますが、NHK古賀経営委員長と稲葉会長、それぞれの御決意をお聞かせください。

古賀参考人 委員御指摘のとおり、NHKの自主自律を維持するためにも、きちんとしたガバナンスを利かせた体制というものが不可欠だというふうに考えております。このガバナンス強化というのは、今委員も御指摘されましたように、地方を含めて職員一人一人がその自覚を持って取り組んでいく、こういうことの徹底だと思います。これには、単に何かをやったからすぐできるというものじゃなくて、やはり持続的にそれを努力していく、こういう姿勢が極めて大事だというふうに考えております。

稲葉参考人 かねて私が経営で重要だと考え申し上げてきている点は、中期経営計画でもお示ししているとおり、説明可能な、アカウンタブルな経営を徹底することだというふうに考えてございます。視聴者・国民の皆様への説明責任を果たすとともに、経営陣の経営能力の向上も図ることができるというふうに考えてございます。

 その一つとして、中期経営計画の予算、事業計画の策定に当たりましては、役員間での検討を三十回以上重ねて、率直かつ濃密な議論を行いました。ガバナンスにおいて重要だと考えている合議によって決める、そういうことに力点を置くことで経営意思の決定プロセスの改善が図られたというふうに思っております。

 昨年公表いたしました不適切な調達手続の再発防止策といたしましては、理事会や稟議にかける議案の審査の一元化、あるいは法的リスクを含めた多面的観点でのチェック、さらにコンプライアンス精神の浸透というようなことに向けて、公共放送で働く役職員の役割、責任に関する人材教育の強化の面などで取り組んできてございます。

 また、ガバナンスの面では、経営委員会との定期的な会議体などというのも設けるというのが必要ではないかなというふうに考えてございまして、両者の協議を進めて、今後具体的な詰めを行っていければいいなというふうに考えているところでございます。

 いずれにしても、執行部として適切な情報共有を図るなど、経営委員会としっかり連携しながら、会長として私がリーダーシップを発揮して、今後ともガバナンス強化にしっかりと取り組んでいく決意でございます。

吉田(と)委員 経営委員会は、NHKの業務執行を監督する立場にあります。前経営委員長においては放送法が禁じる番組介入があったのではないかと指摘をされ、さらに、それにまつわる当時の経営委員会の議事録も公開されなかったというガバナンス上の問題があったと批判をされています。

 今、稲葉会長そして古賀経営委員長の方から様々なお取組を御紹介いただきましたけれども、公共放送を担うNHKであるからこそ、国民の信頼を得られる組織でなければなりません。信頼を得られる組織であるのか、今NHKが岐路にある、危機に瀕しているという現状認識が求められていると思います。

 野村ホールディングスでは企業統治の第一人者として御活躍された古賀経営委員長の手腕に大いに皆様が期待しているところかと思います。経営委員会がルールにのっとり、執行部と緊張感を持って相対できなければなりません。今の裏金問題と同じで、再発防止策が今後は何より大切であり、これまでの経験を生かした、NHKにとってよりよい視点を持って取り組んでいただきたいと思います。

 次に、地方におけるNHKの役割についてお伺いします。

 情報のデジタル化が進む日本では、世帯年収や年齢、地域間によって、情報格差、いわゆるデジタルデバイドが生じています。例えば、特に、過疎化している地域では電話回線やインターネット通信などICTインフラが充実していない傾向にあり、民放ローカル局や地方紙など、住民が日常的に触れるメディアの数は限られているのが実態です。

 全国に五十四の放送局を持つNHKが、日本各地の地域放送局が丹念に取材したローカルニュースから海外の公共放送が報じる国際的なニュースまでを総合的に提供する役割を担うことが重要と考えますが、NHKが地域において果たすべき役割について、NHK自身の考えと地域への貢献に向けた決意をお伺いします。

稲葉参考人 NHKは、全国五十四放送局のネットワークを生かして、地域の情報や課題を地元だけじゃなく全国、世界へと発信して、地域の課題解決や発展に貢献していくことが大変重要な役割だというふうに考えております。

 中期経営計画には、災害対応あるいは地域取材を基軸に、地域の取材体制をそれぞれの地域に合った形態でサービスを展開していくということを明記してございまして、新しい技術も取り入れながら地域の取材体制をしっかり維持していくという方針でございます。

 また、大規模な災害時にあっても放送・サービスを継続することができるように、停電対策を始め、災害に備えた設備整備にも取り組んでいきたいというふうに考えております。

 さらに、地域の放送ネットワークインフラの維持管理コストや保守管理の人材確保というのが課題となるわけですが、地域の皆様にNHKと民放の放送を将来にわたって届けていくということも重要だというふうに考えておりまして、民放と協力して、経済合理性を追求した持続可能な仕組みの検討を今進めているところでございます。

 今後も地域の皆様に必要な情報をお届けできるよう、地域の放送・サービスの充実や地域の放送ネットワークインフラの維持に努めてまいりたいというふうに考えております。

吉田(と)委員 特に、地方に行けば行くほど、地域メディア機能の格差や空白地が生じないようにすることが求められているのではないかと思います。全国にネットワークを持つNHKが、このネットワークを生かして地域に密着したニュースや地域の課題を発信する。例えば、大河ドラマの舞台になった地域がそれを利用して地域の活性化につなげてきた事例があります。いかに地域の役に立って、そしてまた地域の方々の信頼を得て存在感を認めてもらうかが大切だと思います。

 人口減少が進み、産業の衰退、災害の激甚化など、全国、多くの地方が様々な課題を抱える中で、自治体の姿が大きく変わっていくであろう将来に向けて、地方における情報流通がますます必要不可欠です。NHKのネットワークは民放とは比べ物にならないぐらい全国を網羅していますので、極論からいいますと、市民にとってはどこの放送局でも構わないんだろうと思いますけれども、どこであろうと、地域に真摯に向き合って、地域の課題解決型の放送局が求められ、また生き残っていくと考えます。

 コンテンツ戦略六つの柱の一つ、「幅広いジャンルと地域情報で多様性・多元性の実現」とありますが、地域への貢献は他メディアとのすみ分けにも大きく影響すると考えます。ネット配信が本法案によって必須業務化すれば、最終的には全国どこででも各地方局の番組が見られるようになるかと思います。そういったコンテンツの充実もNHKの持つ強みとなるのではないかと思います。

 この地域情報の発信は、これまで視聴することのできなかった、ゆかりのある地域の情報に触れることができる、あるいは、地域の観光や名産品の消費などを通じた地域の活性化にもつながることが期待できると思います。地方創生を願う我々日本維新の会としても注目をしているところです。

 さて、先ほど稲葉会長からもネットワークインフラについてお話しいただきましたけれども、昔、特にアナログ時代にありました技術的な問題による放送事故ですとか支障といったものは最近めっきり聞かなくなりました。放送局には、優れた番組を制作、発信することと同様に、放送波を確実に届けるための、放送局の心臓部と呼ばれる各局舎内に設置しているマスター設備と、そしてまた、放送波を届けるために設置している多くの中継局を事故なく運用することが大切で、近年は大過なく運用ができています。しかし、これらの設備の保有や維持の経費が個々の事業者経営を圧迫しているとの課題がございました。

 この課題解決に、地域を支えるNHKの役割としてもう一つ重要とされるのが、放送インフラの共同利用です。昨年六月に成立した改正放送法が本年四月から施行され、中継局の共同利用がいよいよ制度的に可能となり、現在、全国各地にNHK、民放の地域協議会を立ち上げて共同利用に向けた検討が進められていると承知しています。

 現状についての御説明をお願いいたします。

小笠原政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、地域の基幹放送事業者の方々は、それぞれの放送対象地域にあまねく放送番組を届けるため、自ら多くの中継局を設置されているわけでございます。

 一方、放送を取り巻く環境が大きく変化する中で、民放の経営状況は以前にも増して厳しく、中継局等のインフラの維持に要する費用が課題となっているところでございます。

 今御指摘いただいたとおり、こうした背景を踏まえまして、さきの通常国会で御審議いただいた放送法の改正により、NHKと民放が中継局を共同で利用することが可能となったところでございます。

 この中継局の共同利用を早期に実現するために、昨年の十二月でございますが、総務省も交えてNHKと民放で協議を開始しております。そして現在、全国各地で地域協議会が組成され、全国ではもう組成がほぼ終了しつつある段階というふうにお聞きしておりますが、そうした体制の中で、まずは共同利用会社の設置に向け、検討を進めているところというふうに承知しております。

吉田(と)委員 民放との連携という観点では、既に地上デジタルテレビのNHKの放送所約二千二百か所のうち約七割で民間放送事業者との共同建設が行われたと承知をしています。民間放送事業者の経営が厳しい中、そこから更に進んだ中継局の共同利用においてNHKが果たす役割は非常に大きいと考えます。

 次に、本件に関し、総務省の有識者会議の報告書案に対するパブリックコメントにおいて、民放はNHKに対し、地域事情への配慮と経済合理性を強く意識して民放が受け入れやすい提案を準備してほしいとの要望を述べていたとのことですが、地域事情への配慮と経済合理性に関してどのような課題があるのか、NHKの御認識を伺います。

小池参考人 お答え申し上げます。

 中継局の共同利用などの取組につきましては、放送業界全体における経済合理性を追求し、将来にわたって地域の皆様にNHKと民放の放送を届けていくことを目的としております。NHKとしましても、全国各地の民放各社と協力しまして、設備の維持管理コストが課題となっている放送ネットワークインフラの効率化の検討を進めまして、放送業界全体のコスト抑制を推進していきたいと考えております。

 先ほど総務省さんからも答弁がありましたけれども、昨年十二月に中継局共同利用推進全国協議会及び関東協議会が発足しまして、更に順次、各地域で地域協議会が発足しております。まさに各地域の事情に応じた施策を検討する場として地域協議会が発足していると受け止めております。

 具体的な検討はこれからとなりますけれども、地域によって事情が異なるのはNHKも同様でありまして、地域合理性を意識しながら、地域民放と連携して各地域協議会でしっかり議論を進めてまいりたいと考えております。

吉田(と)委員 また、今回の法案では、現行の放送法第二十条第六項の協力努力義務を、努力を除いて協力義務に引き上げるとともに、第二十条第七項を新設して、民間放送事業者から具体的な内容に関する協議の求めがあったときはNHKにその協議に応じる義務を課す改正が示されていますが、元々の協力努力義務が創設された令和四年からどのような事情の変化があったのか、総務省にお伺いします。

小笠原政府参考人 ただいま委員御指摘の、令和四年からどのような事情の変化があったのかということでございますが、令和四年からの事情ということでいえば、昨年、放送法改正でNHKと民放が中継局を共同で利用することが制度上可能になったということ、そして昨年十二月から、我々総務省も交えて、NHKと民放が全国協議会のほかに全国各地で地域協議会を立ち上げ、各地域において当事者間で検討が進むなど、共同利用会社ということを念頭に置いた具体的な検討の進捗が見られているということ。そのような中で、地方放送局の経営状況は依然として厳しく、NHKが民放に協力して難視聴解消措置に取り組むことに対する期待がより一層高まっている状況になったというふうに言えるかというふうに考えるところでございます。

 こうした事情を踏まえまして、本法案においては、現行法の努力義務規定を義務規定に強化する等々の措置を講じ、共同利用に関する議論の一層の進捗ということを期待しているところでございます。

吉田(と)委員 中継局の維持経費は、民放連によれば民放百二十七局を合わせて年間約二百九十億円、NHKによれば年間約二百三十億円かかっているとされています。全ての経費のうち約半分は、山間地等に設置されている、カバーエリアが狭く対象世帯数が少ない小規模中継局等の施設だとのことです。

 中継局の共同利用は、特に地域のローカル局の経営にとって喫緊の課題であり、NHKの積極的な協力が不可欠と考えますが、本法案により期待される効果について、総務大臣のお考えを伺います。

松本国務大臣 NHKは、放送法において、あまねく全国において豊かでよい放送番組を受信できるよう放送を行うことと、放送全体の進歩発達等に貢献することが目的とされ、いわば使命を負っているというふうに考えておるところでありますが、そういった中で、地方も含む全国において、先ほども申してまいりましたが、広く視聴者・国民からの受信料によって支えられるNHKと広告料収入によって支えられる民間放送の二元体制が存在することには極めて意義がある。

 そういった中で、今御議論の中にもありましたが、地方のローカル局の経営状況は楽観できない状況がある中で、事業運営の効率化に資する手だてを増やしていく必要がある。そのような考え方から、委員からお話がありました、中継局を共同で利用することが制度上可能となる令和四年の放送法改正が行われて現在協議、検討が進められているところだというのは、先ほど御答弁申し上げたとおりであります。

 この法案が成立した暁には、NHKの民放への協力義務が強化される中で、NHKが放送全体の発展に貢献する放送コンテンツのプラットフォームとしての役割を積極的に果たしていただくことで、中継局の共同利用に向けた検討が円滑に進み、地域のローカル局を含む放送全体のインフラが将来にわたって維持されることを期待しております。

吉田(と)委員 少子高齢化、人口減少などの深刻化する日本の課題に加えて、放送を取り巻く環境も変化しています。テレビを見ない、又はテレビを持たないという世代も増える中ではありますが、そもそもインターネットを使える環境にない、又は使えない方も一定数おられます。NHKにはあまねく放送の義務がありますので、持続可能という観点からも、引き続き、情報を届けるという使命に基づき、民放とも協力しながら是非前に進めていただきたいと思います。

 私の考える放送の役割は、どこにいるかという地域に関係なく、国民の安全、安心を守り、豊かでよい情報を届けることだと思います。NHKも民放も社会における民主主義を下支えする豊かで良質なメディアが必要と考えますので、是非、総務省としても、そういった観点からの後押しをお願いしたいと思います。

 時間の関係上、一つ質問を飛ばしまして、五番目の質問に移らせていただきます。

 九日の本会議では、国際放送のコンテンツの強化について質問をした際に、総務大臣の答弁において、NHKの中期経営計画に日本の視座を発信するとの記述があるとの言及がありました。令和六年度NHK予算の大臣意見においても国際放送のより一層の充実強化が求められているところですが、日本の視座を発信するための具体的な取組について、NHK会長に御説明を求めます。

稲葉参考人 委員御指摘のとおり、中期計画では、コンテンツ戦略の六つの柱の一つとして、民主主義の一翼を担い、平和で持続可能な世界の構築に貢献することというのを掲げてございます。

 その点、国際放送でも、実は、日本人の物の考え方といったような日本の視座を世界に向けて発信していくことが重要な役割ではないかというふうに考えてございます。日本人の多くの方々が、健全な民主主義は大事である、平和で持続可能な社会を構築することは大切だというふうに常々考えておりまして、こういった日本人の物の考え方、日本の視座を世界に向けて発信していく、それによって健全な国際世論の形成に貢献したいということでございます。

 今年度、それに関連する様々な取組はございますけれども、いずれにしても、今後も日本の公共メディアとして、公平公正で信頼できるニュースや多様で良質なコンテンツを通じて日本の視座を発信し、国際社会との相互理解を深めてまいりたいというふうに思っております。

吉田(と)委員 激変する国際社会において、世界から見た日本がどう映るのかといった視点で捉えていく必要があるかと思います。その意味では、例えば、日本語である国内放送コンテンツをただ翻訳して放送するというのではなく、日本を理解してもらう、日本に興味を抱いていただく、日本人はどう物事を考えているのかという、視座というからには、日本人の哲学論、文化論に踏み込むなど、魅力的な日本として世界に情報を発信する国際放送であってほしいと考えます。

 公共のメディアであるNHKであるからこそ、日本の未来を担う国際放送を発信するという観点で取り組んでいただきたいと思います。現状において、立場の違いこそあれ、NHKにおかれましては、視線を海外に向けて、日本を代表する立場だという気概を持って常に取り組んでいただきたいと思います。

 時間となりましたので、私の質問は終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

古屋委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五十四分開議

古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。宮本岳志さん。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 NHKの全ての放送番組がインターネット配信されることは、国民の要望に応えるものであり、我が党は決して反対ではありません。

 しかし、本法案は、NHKのネット配信の必須業務化に当たって、同時配信や見逃し配信だけでなく、番組関連情報の配信も新たに必須業務に加えた上で、その実施状況をNHKが総務大臣に報告する制度を導入し、それを受けて総務大臣がNHKに対する勧告や命令までできるという、極めて重大な内容を持つものであります。

 それにしても、そもそもこの制度の導入をこんなに急ぐ理由が私には分かりません。インターネット環境の整備が進むにつれて、二〇二〇年にはついにネット視聴時間がテレビ視聴時間を超え、確かに、若い世代を中心に、テレビを持たない人も増えてまいりました。国民の間には、スマホやパソコンの普及に合わせて受信契約を広げ、受信料収入を増やすために法改正するのではないかといった不安の声もございます。

 そこで、まず局長に確認するんですが、今回の法改正でNHKの番組をインターネットでも同時配信することをNHKの必須業務にするのは、受信契約を広げ、受信料収入を増やすために行うのですか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 午前中の説明と重複して恐縮でございますが、今回の法案の背景といたしまして、今委員の御指摘にもありましたとおり、放送をめぐる視聴環境、特にインターネットを通じて情報を入手するという方が非常に増えている、その結果インターネットと放送の視聴時間というのが逆転している、そういう背景があったことということに加えて、それによって情報空間が非常に拡大しているということに加えて、偽・誤情報、そして放送の信頼性や役割への期待、こういったものが非常に大きくなっている、更に加えて、午前中でも御指摘をいただきました諸外国の状況、そういったことを踏まえ、令和三年の十一月から検討会で御議論いただき、インターネット必須業務化ということの必要性を御提案いただき、その内容を踏まえて今回の法案を御提案させていただいているという経緯でございます。

宮本(岳)委員 余り問いに答えずに別のことをおっしゃったんですが。私は、これはお金をたくさん集めるために、受信契約を広げるためにやるんですかということを聞いたんですね。

 これまで受信契約の締結義務が生じる対象としては長く、協会の放送を受信することができる受信設備を設置した者、こうなっておりました。今回、インターネット業務の必須化とともに、特定必要的配信の受信を開始した者も受信契約の締結義務の対象となります。この仕組み導入は、あくまで受信機を設置していない者が自らID登録のような手続をした上で開始したものとなると理解しております。しかし、この法案についての情報が広がる中で、これも先ほどありましたけれども、インターネットにつながるスマホやパソコンであれば受信契約を結ばなくてはならないのかという疑問の声も聞こえてまいります。

 局長、端的に、法案に言う特定必要的配信の受信を開始した者とはどのようなものをいいますか。

小笠原政府参考人 お尋ねの部分でございますが、本法案におきまして前提としておりますのは、IDやパスワードの取得、入力など、通信端末機器の一定の操作等を経て、NHKが必須業務として行う放送番組等の配信の受信を開始した者を受信契約の締結義務の対象としているところでございます。したがいまして、スマートフォン、PC等、通信端末を保有しているだけで契約義務が発生することはないというところであります。

宮本(岳)委員 それは当然なんですね。

 だが、以前に強引な営業が問題になった際、スマホを持っているだけで、ワンセグがつながるといって意図しない契約を求められたことが問題となったこともありました。誤解に基づく強引な契約締結は、国民の信頼を失う結果となります。地デジ移行の時期にはアンテナやテレビの環境が変わり、集合住宅などで衛星放送の意図しない受信が生じるということもかつてございました。

 この法案では、インターネット業務は原則実施となりますけれども、当面、衛星放送は除くことが想定されております。地上波契約と思っていたら、衛星放送もやがて必須業務となった途端に契約変更を求められるというようなことにはなりませんでしょうか。

小笠原政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、受信契約の締結義務の発生ということの要件として、NHKの放送を受信することのできる環境と同等の受信環境になるための能動的な行為ということを要件としているところでございます。

 したがいまして、衛星放送の放送番組等のインターネット配信の受信ということに関しましても、端末上の操作等により受信できる環境を自らつくるという能動的な行為ということが必要となるというふうに考えております。

宮本(岳)委員 もちろん、解約の仕組みもきちんと示さなくてはなりません。

 原理的には、ネット上でID登録を解除すればNHKの側はすぐに確実に分かるということに今後はなると思うんですね。しかし、ID登録を解除しているにもかかわらず契約が続くというようなことが発生すれば、国民・視聴者の理解は到底得られないと思うんです。ID登録を解除すれば特定必要的配信の受信はできなくなるのでありますから、条文に照らせば、受信契約はそこで終了し、受信料の徴収もそこでストップするのは当然だと思います。これも間違いないですね、原理的に。

小笠原政府参考人 御指摘の点でございますが、NHKの放送を受信することのできる環境がある者と同等の受信環境にあるとは言えない、そういう状態になったときには契約締結義務はなくなるということになります。

 今御指摘の、NHKから発行されたインターネット配信サービスを利用するためのIDの登録を取り消した場合ということなどは、この一例として考えられるということでございます。

宮本(岳)委員 受信料をめぐっては、国民の間にも不信は多いんですね。ここまで確認してきたようなことを丁寧に説明を徹底することは不可欠だと思います。NHK自身はもちろん、総務省としても法律内容を周知していくべきだと考えますが、どのような対処を考えておられますか。

小笠原政府参考人 今御指摘をいただきました件、能動的な行為があって初めて通信端末については受信契約の義務の対象となるという点についてでございますが、これまでも、この点については法律の説明ということを関係者の方々に説明する際にもあえて強調してきたところでもございますし、当然ながらこれからNHKさんもこの旨をきちんと丁寧に説明していただきたいとも思いますし、また、当然ながら法案の所管として総務省としてもこの点は可能な機会を捉えて丁寧に御説明していきたいというふうに考えております。

宮本(岳)委員 国民の信頼なくしてNHKは成り立ちません。ここまでの答弁を聞く限り、強引な受信契約拡大と受信料増収が目的ではなさそうであります。この前、二〇二四年度のNHK予算の国会承認の審議を行いましたけれども、NHKの受信料に関しては引下げが進められている、このことを見ても、今すぐ何かしなければ経営破綻するというようなことはないと思うんですね。

 では、法案の一つ一つの中身を聞いていきたいと思うんです。

 本法案は、NHKのネット配信の必須業務化に当たって、放送の同時配信や見逃し配信とともに番組関連情報の配信というものを必須業務にいたします。NHKは、これまでも任意の業務として、現行二十条二項二号に定める理解の増進に資する情報、いわゆる理解増進情報のネット配信を行ってまいりました。まず確認するんですけれども、この理解増進情報の配信と今回新たに必須業務に加える番組関連情報のネット配信は同じものなのか、それとも違うものなのか。局長、いかがですか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 番組関連情報につきましては、本法案においては、放送番組と密接な関連を有する情報であって、放送番組の編集上必要な資料により構成されるものというふうに定義をされております。それから、理解増進情報というのは、まさに放送番組の理解を増進するために必要な情報という趣旨が法案に記載されたわけでございます。

 いずれにいたしましても、公共放送としてのNHKの役割、すなわち必要かつ国民の間で共有されるべき情報ということを基本的に国民にきちんとお伝えしていくこと、そこの点についてはNHKさんもこれまでも行ってきておられますし、これから、今後とも、この法案が成立した暁にもそういった役割を果たしていただいているというふうに考えております。必要な情報をきちんとお届けしていくということについては、理解増進情報あるいは番組関連情報ということ、いずれにおいても変わるものではございません。

 したがって、法案ということにつきましては、今の定義の差、それから本法案で定めました様々な手続ということの差が出てまいりますが、それについての必要性ということについては、この前提となる有識者会議の御議論において、そこで指摘された必要性ということに基づいて措置をさせていただいているものでございます。

宮本(岳)委員 NHKがネット業務をどの範囲で実施するかは、公共放送として国民の利益を最大限に保障する方向で検討すべきものであります。

 ところが、改正案二十条の四では、番組関連情報の配信の業務を行うに当たって、NHKは番組関連情報配信業務の実施に関する規程を定めて、これを総務大臣に届け出なければならないとされております。そして、二十条の四の二項にはその業務規程の内容が三項目にわたって列挙され、次の各号のいずれにも適合するものでなければならないと定めております。

 言うまでもなく、放送法三条は、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」と、放送番組編集の自由を定めております。そもそも、NHKがネット業務をどの範囲で実施するかは、公共放送として国民の利益を最大限に保障する方向で自らが決めるべき、こういうことではないんですか、局長。

小笠原政府参考人 まず、今御指摘をいただきました点につきまして、御指摘の放送法二十条の四第五項から七項までに規定する措置ということについて今言及がありましたところでございますが、この措置の基本的な考え方については、NHKの今委員からもおっしゃいました自主性を最大限尊重しつつ、しかしながら放送法の今回の法案がNHKに求める要件ということに適合すること、これを確保するために慎重な要件、手続の下で一定の行政措置ということを講ずる、そういった仕組みを取っているものでございます。

 具体的に申し上げれば、本法案は、まずNHKの番組関連情報配信業務について要件を三つ定めておりますが、この要件を踏まえました業務規程の作成、その規程に従った業務の実施、業務の実施状況の定期的な評価、あるいはこれを踏まえた業務規程の必要な変更、こういった基本的なプロセスにつきましてはNHKの判断と責任ということに委ねるということにしているところでございます。

 一方、これまでの議論の過程で、他の放送事業者との公正な競争の確保等々に支障が生じないというような観点の、放送法の今回の案に定められました要件に適合するということを確保するということの必要性も指摘されたところでございます。したがいまして、確保の手段ということで、今回、電波監理審議会への諮問、答申を経て、あくまで必要に応じてということでございますが、変更の勧告や命令を可能という仕組みにしているところでございます。

宮本(岳)委員 いや、そこなんですよね、私が問題にしたいのは。

 二十条の四の二項に列挙された、今もおっしゃった番組関連情報の配信の業務に当たっての三つの業務規程の内容、一つ目は公衆の要望を満たすということでありますけれども、その後にわざわざ、必要かつ十分なものであることと書かれておりますね。必要かつ十分なものであるという言い方は、つまり公衆の要望を満たす上で足りないものが一つでもあってはならない、また余計なものも一つでもあってはならないというふうに読めるわけでありますけれども、こんなことまで指図するんですか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありました適合要件の部分についてでございますが、これは業務規程の内容が全体として適合しているということを求めるものでありまして、その業務規程に従って配信される個々の番組関連情報の内容が適合しているということを求めるものではございません。この点は午前中の当委員会における御議論においても説明させていただいたとおりでございます。

 したがいまして、先ほど申し上げましたようなNHKの自主性ということを尊重した上でのプロセスということでございますので、それに従った御提案ということをさせていただいているところでございます。

宮本(岳)委員 いやいや、そこが問題になるわけですね。

 当該業務規程に従った番組関連情報配信業務の実施により、全国向け又は地方向けに他の放送事業者その他の事業者が実施する配信の事業その他これに関連する事業における公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるものであること、これは三号になるんですけれども、三つ目にはこれが挙がっています。つまり公正な競争の確保、すなわち民業圧迫にならないかどうかということをこれまた要件に挙げております。

 つまり、これまでも理解増進情報の配信などもやってきたんですよ、既にNHKは、任意ですけれどもね。そのときにはこのような規定は放送法にはありませんでした。公正な競争の確保、すなわち民業圧迫にならないかどうか、これを要件として放送法に書き込むというようなことは、これは初めてのことですね、間違いないですね。

小笠原政府参考人 今委員御指摘の、今回の法案で新たに創設しているプロセスであるということはそのとおりでございます。しかしながら、その背景としては、放送法の制度の前提の趣旨から始まる議論というのがございまして、午前中にも申し上げましたが、我が国の放送制度は、広く受信料によって支えられるNHKと広告料収入によって支えられる民放とそれぞれが存在する二元体制、双方が切磋琢磨することによって放送全体が発展してきたもの、こういった仕組みで今までの放送制度ということは運用されてまいりました。言い換えますと、放送の二元体制ということを含むメディアの多元性ということを確保することで放送番組を国民・視聴者にお届けするという環境が整備されてきたということでございます。

 そして、今まさに委員御指摘のとおり、今現在NHKがインターネットで番組を配信しているということ、これは実態として行われているわけでございますが、一方、近年、国民・視聴者の多くがインターネットを主な情報入手手段として利用しつつあるなど、放送をめぐる視聴環境は急速に変化しております、インターネットの情報空間拡大と偽・誤情報の問題ということも顕在しております、そういった背景の下に御議論いただいた結果、有識者会議でも御提案をいただき、それを基に今回のプロセスを御提案させていただいたところでございます。

宮本(岳)委員 インターネットが発展するに従って放送をインターネットでも流してもらいたい、これは故あることでありまして、国民の利便の向上に役立つ、国民の要望に応えることになる。我が党は賛成だと言っているわけですね。

 問題は、番組関連情報というものを必須業務に入れるには、このような基準まで定めて、こういう複雑な仕掛けをつくらなければならないということになっているのがいかなることかということを申し上げているわけなんですよ。

 これまで、民業圧迫にならないように、あるいは公正な競争の確保、これまでも民放との二元体制だったとおっしゃるけれども、では放送法にそういう定めはこれまでありましたか、あるいはそれ以外でもそういった定めを掲げてやってきたんですか。

小笠原政府参考人 まさに委員おっしゃいますとおり、現在の放送法制度ということが、先ほどから申し上げております様々な環境変化ということの中でどう考えていくべきかということを有識者会議の中で御議論いただいたわけであります。そして、今委員から再三、やはり必須業務の範囲ということについて、放送番組の同時及び見逃し配信ということを超えて、今回、番組関連情報を必須業務の範囲に入れているということについての問題意識を御指摘いただいております。

 その論点についてでございますが、やはり有識者会議でも御議論もあったところでございます。その中で、インターネットへと情報が広がる中で、公共放送の役割ということを議論する過程で、例えば聴覚障害をお持ちの方々への文字情報の配信あるいは災害時などにおける迅速なプッシュ通知といった、全ての国民・視聴者に対し放送番組の内容をインターネットの特性を生かして届けることの必要性という御指摘を受けているわけでございます。

 そして、そういった議論の過程を経て、取りまとめにおきましても、そこの論点、つまり必須業務化の範囲をどこまでにするか、要は放送番組の同時及び見逃し配信ということを超えてどこまで入れるかということについては、番組関連情報ということの必要性について、NHKの設置趣旨に鑑み、国民の知る権利への奉仕という公的な側面を勘案すれば、民間放送事業者や新聞社、通信社のほか、NHKを含めた様々な主体から視聴者が多元的に情報を受け取ることができる環境を整えることが望ましい、こういった御指摘を得ているところでございます。

 こういった御指摘も踏まえて今回の御提案とさせていただいているところでございます。

宮本(岳)委員 いやいや、今回の法案に盛り込んだようなことはこれまでなかったんですよね。今日は資料で配りましたが、これまでは理解増進情報についてはNHKインターネット活用業務実施基準の中に競合事業者という言葉はございますという説明をいただきました。第三十九条ですよ。競合事業者又は外部事業者から意見、苦情等が寄せられたときは、適切かつ速やかにこれを受け付けて対応する。至って当たり前のことを書いているわけでありまして、これと今回のものが同じなわけはないんですね。

 今回、だから、私は、同時配信と見逃し配信をやり、それ以外にこれまでやってきたような、つまり今ここで紹介したような任意の、必須業務でない理解増進情報の提供、これを今までどおりやるということに別に反対しませんよ。もちろん、今のままでいいかどうかは改善の余地があるかも分かりませんが。

 ただ、番組関連情報というものを必須業務に入れて、それを入れるからにはこういう仕組みをつくらねばならぬというこの議論が本末転倒に思えて仕方がないのです。内容は全く違うし、そもそもインターネット活用業務実施基準は、総務大臣の認可を受けるものの、NHK自身が作成する自主的な基準なんです。一方、今回の改正案の二十条の四、二項三号は、法律に、競合事業者との公正な競争の確保に支障が生じないようにせよなどと書き込むものですよね。

 そこで、小笠原情報流通行政局長に聞きます。これはつまり、今後は、番組関連情報の配信業務に関してだけであるとはいえ、NHKに対して、競合事業者との公正な競争の確保に支障が生じないようにせよという制約を法律で押しつける結果になります。これは、放送法三条が定めてきた、何人からも干渉され又は規律されることがないという放送の性格をゆがめるものではありませんか。

小笠原政府参考人 ただいまの点につきまして、まず二点申し上げます。

 第一点であります。まずはNHKの自主性との関係でございますが、先ほどプロセスの点で申し上げましたとおり、今御指摘のありました業務規程の作成、それの公表、それの実施状況の報告、それからその変更等々、いずれもこれはNHKの自主性ということに委ねられているわけであります。

 そして、次の第二点で申し上げますが、では、業務規程ということについてどういうプロセスに乗せて、大臣の勧告といったようなプロセスに乗せていくかということにつきましては、あくまでもNHKの業務規程の内容あるいは実施状況について、三号の公正競争のところについては様々な方々の意見といったようなことを踏まえて必要があると判断した場合、しかもその場合には電波監理審議会、新たな第三者機関の審議を経た上で総務大臣が判断するということであります。

 更に加えて申し上げますと、総務大臣の勧告の対象でありますが、そこのところは、今委員が御指摘になりました個々の番組の内容ということを対象としているわけではなく、あくまで業務規程ということ全体に対するものということ、その点は御理解いただければと思います。

宮本(岳)委員 いやいや、これまでと全然違う仕組みが入るわけですよ。報告を三年に一回、長くともですね、三年ごとに番組関連情報の配信業務の実施の状況について総務大臣に報告をさせる、これを義務づけております。二十条の四の五項にはその報告を受けたら総務大臣は何をすると書いてありますか、局長。

小笠原政府参考人 二十条の四第五項においては、総務大臣は、第一項の規定による届出又は前項の規定による報告があったときは、業務規程の内容が第二項第三号に適合しているかどうかについて、学識経験者及び利害関係者の意見を聞かなければならないというふうに定めております。

宮本(岳)委員 これも驚くべきことですよ。公共放送たるNHKの業務について利害関係者が影響を及ぼす規定が入っている、しかも意見を聞くのは総務大臣なんですよ。

 NHKからの報告を総務大臣が受けて、総務大臣が利害関係者の意見を聴取するという仕組みは、この法改正の内容を検討してきた公共放送ワーキンググループの取りまとめにも一切なかったものですよね。私、逐一読ませていただいたけれども、これですけれどもね。公共放送のワーキンググループの取りまとめにない、総務大臣がやるというものは一体どこで決めたんですか、局長。

小笠原政府参考人 お尋ねのところにつきまして、議論の経緯について御報告を申し上げます。

 今委員御指摘になりました、総務大臣が意見を聞く、その場についての御議論でございますが、昨年の十月、一旦報告を頂戴した後、これも報告の、御提言に基づいて設置された会合でございますが、具体的な競争評価の仕組みということについて御議論いただく場として日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合が開催をされ、そこの中で検討を進めていただきました。

 そこで、どういう場において要するに議論すべきかというところが議論されたわけでありますが、競争評価の仕組みについて、ワーキングの議論、つまり去年の十月の時点では例えば電波監理審議会というような場も出ていたわけでありますが、今申し上げた準備会合という場の中で改めて御議論があった結果、業務規程ということについて議論することとなると、電波監理審議会のような、放送事業者さんが委員として参加できない、そういったところで行うのではなくて、やはり当事者が、幅広い関係者が集まって議論する場ということ、そこのところが適当ではないかという御意見が出たところであります。そういった御議論も踏まえまして、今読み上げさせていただきました仕組みということを提案させていただいているところでございます。

宮本(岳)委員 いやいや、この中では第三者機関(電波監理審議会等)となっていまして、等ともついているわけですね。問題意識は、第三者機関でないとやはり駄目ですよね、こういう議論なわけですよ。総務大臣が直接これを聞いて勧告できたり変更を命令できる、こういう項目を六項と七項に入れる、この仕組みはNHKとNHK放送番組に対する総務大臣ひいては政権の介入につながりかねないものではないか、そういう可能性が排除されていると言えますか。絶対にそういうことはありませんかね。

小笠原政府参考人 今御指摘の点については、午前中の当委員会の議論でも御指摘を受けたところであったと思います。あくまで勧告、命令の対象というのは、個々の番組内容ないしは個々の番組関連情報の内容ということではなく、業務規程全体が対象であるということについて御説明をさせていただいたところでございます。

 それから、今、こういった勧告、命令の仕組みというところがどういったプロセスでこういったところに出てきたのかという御質問でございます。

 先ほど御紹介申し上げました日本放送協会のインターネット活用業務の評価に関する準備会合の中の検討ということを進めていただく中で、例えば競争評価の結果、NHKさんの業務規程等々に問題が仮に生じた場合、総務省において何らか対処する仕組みということが整備が必要ではないかというような御意見がありました。そして、確かに行政指導等々いろいろな行政措置の手段はあるけれども、やはり問題があった場合の是正手段ということについては様々検討が必要ではないか、そういった御意見もいただいているところでございます。

 したがって、そういった御意見を踏まえまして、今般、総務大臣による勧告、命令措置を含めた仕組みということを提案させていただいたところでございます。

宮本(岳)委員 時間が来ましたから終わらざるを得ないんですけれどもね。

 駄目ですよ、それは。あなた方は勧告やあるいは命令のときには電監審に諮るということを言うけれども、そんなことはほとんどないんです。これまでの理解増進情報でも勧告とあるんですけれども、やられたことは一回もないんです。三年に一回報告を取り、その報告は利害関係者に見せて意見を求めることは分かっているわけですから、NHKはそこで勧告されたりあるいは命令されたりするような報告は上げないんです。あらかじめそういうことにならないような法文になっているんですよ。これがNHKに対する圧力になるということを私は申し上げているんです。こういうやり方はきっぱりやめるべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

古屋委員長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 本日は、放送法改正案の質疑ということでございますけれども、その前に一問、松本総務大臣に質問をさせていただきます。現在行われております衆議院補欠選挙に関連しての質問でございます。

 今、全国三か所で補欠選挙が行われておりますけれども、東京十五区におきまして、ほかの候補者の演説を大音量で妨害するなど、選挙運動を妨害する等の行為が繰り返されておりまして、先般はけが人が出る事態となっております。

 妨害行為によって有権者は候補者の演説を聞く機会を奪われるなど、民主主義が脅かされている事態となっていると認識をいたしております。岸田総理におかれましても、先般の予算委員会で我が党の田中委員の質問に対して、何らかの対応が必要だという御答弁がございました。

 公選法第二百二十五条には選挙の自由妨害罪が規定をされまして、その中に演説の妨害という文言も盛り込まれてはおりますけれども、近年、極端な行動をネット上に投稿することによって閲覧数ですとかインプレッション数を稼ぐ手法も含めてそのようなことも背景にあって、過去には想定し得なかった事態がインターネット空間も含めて発生しているという現状も踏まえまして、現行法で、例えば演説の妨害の具体的な例示も含めて法律の見直しを含めたことが必要ではないかと考えております。国民民主党としては既に改正に向けての議論をスタートいたしておりますけれども、松本総務大臣の認識と今後の対応につきまして、御見解をお伺いさせていただきます。

松本国務大臣 選挙が主権者である国民の皆様が政治に参加する大変重要な機会であって、選挙が公正に行われるためには選挙運動は自由に行われなければならないことは申し上げるまでもないかと思いますし、これを妨害することはあってはならないというふうに申し上げなければならないと思います。選挙運動の自由を暴力、妨害等で侵す行為については、候補者であったとしても、選挙に関し、選挙人や他の候補者などに対する暴行や、他の候補者が行う街頭演説への妨害など、法の定めに該当することがあれば公職選挙法上の選挙の自由妨害罪や刑法上の暴行罪等の処罰の対象となり得ると考えております。

 候補者、選挙運動関係者におかれては、刑法、公職選挙法を始めとする法を犯すことなく、公正、適切に選挙運動を展開していただきたいと考えております。

 選挙の自由を妨害する行為については申し上げたとおり罰則が規定されているところでありますが、公職選挙法において新たなルールを設けることにつきましては、国会において各党各会派における御議論を私どもとしても注視してまいりたいと思っております。

 なお、インターネットにおける問題のある情報の取扱い、先ほどの議論でもありましたが、いわゆるインプ稼ぎやアテンションエコノミーといったことについても、総務省としては今、情報空間における健全性を確保するべく検討会を開いていただいておりまして、この夏頃に取りまとめが行われましたら制度を改めることについても検討を進めてまいりたいと思っております。

西岡委員 当然、表現の自由、言論の自由は守られる大切な権利だと思いますけれども、今般行われている他の候補者の演説を大音量で妨害するということは、有権者の皆さんが演説を聞く権利を奪うということも含めて、今規定されております公選法の改正を含めた、やはりこういうことが起こらない体制をしっかりつくっていくということも必要だというふうに思っておりますので、我が党としてもしっかり、法改正も含めてこれから議論を先導していきたいというふうに思っております。

 それでは、放送法改正案につきましての質疑に入らせていただきます。

 本日は、NHK会長、役員の皆様にはお越しをいただいて、本会議の開催がございましたので、それを挟みまして引き続き御出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、先般、NHKグループの合同の入局・入社式が行われまして、三百十三人の新入社員をお迎えになったこの入局式、入社式におきまして、会長の講話の中でも、インターネット必須業務化について言及がありまして、更に業務が拡大する可能性を担う、大変重要な役割を果たしてもらうことになるということが述べられております。

 また、稲葉会長が、先般、新年度の最初の記者会見におきましても、インターネット活用業務の必須業務化を盛り込んだ放送法の改正案にも触れられまして、法案成立に向けて様々な検討を加速すると述べるとともに、放送にまつわる多様なリスクへの対応や、適正な価格転嫁や調達の在り方、女性活躍を中心とした多様性と受容性のある豊かな組織づくりの実現、人権、人道上の問題への対処を課題として挙げられております。また、確かな手応えも感じているという言及もございました。

 改めて、新年度に当たっての抱負、また取り組むべき課題について、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

稲葉参考人 お答え申し上げます。

 今月から新しい中期経営計画の期間に入りましたので、いよいよ計画でお示しした内容を番組やコンテンツなどで具体化していく、そういう段階に移ってございます。

 また、今ほど御議論ありましたように、本日の議題になっている放送法改正案の成立に備えた様々な検討を加速させる必要があるというふうに考えてございます。

 また、それだけでなく、先ほど委員から御言及いただいたように、NHKとして、例えば人権、人道上の問題にどう対処するかといったような、難しい、新しい課題が次々に出てきてございます。

 新年度に当たりましても、こうした様々な課題に対して役職員が一丸となって真摯に取り組み、一つ一つ着実に答えを出していきたいというふうに考えてございます。

西岡委員 今会長から新年度に向けた御決意が述べられたわけでございますけれども、今般の放送法の改正によりまして、インターネットの必須業務化ということが盛り込まれておりますが、既に御承知のように、英国、ドイツ、フランス等の公共放送におきましては二〇〇〇年代に必須業務化をされていた一方で、我が国におきましてはかなり遅れて、現在までこのことが必須業務化をされてこなかったという状況がございます。

 このことの理由について、また、本改正によって今必須業務化することの意味、立法趣旨、また視聴者にとってどの観点でメリットがあるかということにつきまして、総務省に改めて立法趣旨も含めてまずお伺いをさせていただきます。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 NHKの業務の在り方につきましては、技術の発展あるいは放送を取り巻く環境の変化を踏まえ、NHKが公共放送として果たすべき役割を検討しながら行うものというふうに考えておりまして、実際、総務省におきましても、これまでも、NHKのインターネット配信業務の在り方について、数次にわたり、その時々の環境変化を踏まえ、適時適切に制度設計してきているところでございます。

 我が国におきまして、まず、令和二年度、平日のメディアの平均利用時間が初めて全年代平均でインターネットがテレビを上回ったこと、そして情報空間の拡大に伴い偽・誤情報の拡散などが課題となっていること、そういった急速な環境変化ということで、令和三年十一月から有識者会議を開催し、放送の二元体制の下で、今申し上げたような環境変化を踏まえ、NHKがデジタル時代に果たすべき役割について様々な論点について御議論をいただきました。その結果、令和五年十月、NHKの必須業務の在り方ということについて御提案をいただき、それに基づき本法案を今回提出させていただいたということでございます。

 その際の立法趣旨及び視聴者にとってのメリットということでありますが、近年、先ほど申し上げました放送をめぐる環境の急速な変化ということが生じており、また情報空間の拡大に伴う偽情報の拡散ということが課題になる中、放送の二元体制を含むメディアの多元性を確保しながら、質の高い、よい放送番組を国民・視聴者に届けるということが重要であり、この必須業務化を通じて、テレビをお持ちでない方であってもNHKの放送番組等を継続的、安定的に視聴できる環境を整備するということを狙いとしているものでございます。

 具体的には、本法案をお認めいただいた暁には、こういったテレビを持たない方々に対しても、放送番組等の配信を通じ、国民・視聴者の要望を満たし、また、生命身体の安全の確保に資する情報が提供されていくということを期待しているところでございます。

西岡委員 ありがとうございます。

 今、立法趣旨を含めて述べられたわけでございますけれども、先ほど稲葉会長の、記者会見の中でも言及されておりましたけれども、インターネット必須業務化に対する準備を加速するというお言葉がありました。

 先般質疑が行われました令和六年度NHK予算におきまして、インターネット活用業務に係る費用につきましては百九十五億円が計上されたところでございます。そのうち十五億円が必須業務化に備えた予算となっておりました。インターネット活用業務を必須業務化する放送法の改正に備えた準備費用とされておりましたけれども、その具体的な使途につきましてNHKにお伺いをさせていただきます。

山名参考人 お答えいたします。

 インターネットの活用業務を必須業務とする改正放送法が成立した場合に、二〇二四年度内に準備を行う費用として十五億円を計上しております。具体的には、インターネットサービスのIDや認証情報を管理する認証基盤の機能追加や、地方向け放送番組配信の機能整備といった事項を想定しておりまして、いずれも改正放送法が成立した場合に予算を執行することとしております。

 改正案は国会に提出されておりますけれども、細部は総務省令等で定まるものが多いと承知しております。現時点では詳細な要件が固まらないため、予算は現状業務や設備整備における知見を基に計上しておりまして、今後、総務省令等の内容を踏まえ精査していきたいと考えております。

西岡委員 今言及がございましたけれども、細部については総務省令で定められるということの中で、また、具体的に決定していない状況が大変多い状況があるということは私も認識をいたしております。

 インターネット必須業務化というのは大変NHKにとって大きな転換点になるというふうに思っておりますけれども、この必須業務化が認められた後の適正な予算規模について、また現在はその上限が、二百億円とされております上限というものがございます。

 NHKの質疑のときには、NHK会長と松本総務大臣に対しまして、公共放送の役割を果たすために必要な事業規模についてということで質問をさせていただきましたけれども、今回、インターネット必須業務化となった場合に、インターネット必須業務化に係る上限が二百億円ということもあることも踏まえて、どのような予算規模についての認識をお持ちかということを稲葉会長と松本総務大臣にそれぞれお尋ねさせていただきます。

稲葉参考人 まず、NHK全体の予算規模について申し上げますと、中期経営計画では、受信料一割値下げを堅持することに伴いまして、事業収入は減少する見込みでございます。したがいまして、今後コスト削減を行っていく必要がある、こういうふうにしてございます。その中で、インターネット上におきましても公共放送の使命や役割をしっかりと果たしていくために、必須業務となった場合には、事業の効率化や生産性の向上を図りながら必要な予算を確保していきたいというふうに考えてございます。

 現行制度では、インターネット活用業務が任意業務であることから、放送などの必須業務の実施に支障を来すことのないよう上限が定められているというふうに理解してございます。

 必須業務になった場合でございますけれども、放送と同様に、予算、事業計画において予算を編成し、国会において御審議いただくことになるというふうに思ってございます。

 現在のところ、サービスの設計を開始した段階でございまして、具体的な予算規模は今後精査していくということになると思いますが、いずれにしても、いたずらに拡大するということは想定してございません。

松本国務大臣 NHKのそれぞれの業務に必要な費用の規模につきましては、NHKが毎事業年度の収支予算を作成する中で検討されるものと考えているところでございます。

 NHKにおかれては、国民・視聴者が支払う受信料に支えられていることを踏まえて、必須業務化が認められた場合のインターネット配信の費用の規模の適正性を含め、説明責任を適切に果たしていただくようにお願いをしたいと考えております。

 本法案におきましては、必須業務化に伴って、インターネット配信の費用について上限を設けることはしておりません。総務大臣として、NHKの収支予算に対し、インターネット配信の費用の規模の適正性を含め、必要な意見を述べることとなっております。

 なお、番組関連情報の配信に関しても、これに要する費用について明らかにした上で、公正な競争の確保などの観点から問題ないかをチェックすることを想定しているところでございます。

西岡委員 これまで任意業務であったものが必須化されるということで、大きな転換ということの中で、今後、その予算、今サービスを設計中というお話がございましたけれども、NHKがインターネット必須業務化にどれぐらいの予算を必要として予算を計上するかということにつきましては、私たちもしっかりそこは注視をしながら、また、今回の法律で様々な制度を設けられるというふうに思いますけれども、そこについてもやはり適正な制度運用がなされるということは必要だというふうに思っておりますので、引き続きこの総務委員会を含めて議論をしていきたいというふうに思っております。

 次の質問は後に回させていただきまして、五番目の質問へ移らせていただきます。

 インターネット活用業務の必須業務化につきましては、受信料制度の下で既にテレビを設置して受信料を払っている方々については追加の負担なく視聴可能ということが、先ほどからの答弁でも明確に答弁をされております。

 本改正について、携帯ですとかPC、タブレット等においてインターネットの利用を新たに開始した方については、テレビを設置した場合と同様の受信環境にある者として受信契約の対象となり、アプリのダウンロードやID取得等により受信契約の意思を示したこととなり契約の対象となるということが明らかになっております。

 受信料の公平性の観点から価格設定についてはどのように考えておられるのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。NHKにお願いいたします。

小池参考人 お答えいたします。

 放送法の改正案が成立した場合のインターネット配信に関わる契約の在り方等については現在検討中でありますけれども、既にテレビを設置して受信料をお支払いいただいている人はインターネットのサービスについても追加の負担なく御利用いただくことを想定しております。

 また、放送法の改正案においては、テレビ等の受信設備を設置した者と特定必要的配信の受信を開始した者を同等の受信環境にある者として取り扱い、受信契約の内容を公平に定めなければならないとされていると承知しております。

 必須業務については、当分の間は衛星放送の放送番組の同時配信、見逃し番組配信の実施は困難であることを踏まえまして、インターネット配信のみを利用する場合の受信料額は地上契約と同じ水準とする方向で検討しているところでございます。

西岡委員 まだ明確に、具体的なところはこれからということの中で、一般視聴者にとってはどのような金額設定になるのかというのは大変大きな関心のあるところだと思っております。やはり、もっとしっかり早急にこの方向性はお示しをいただく必要があるのではないかと思っております。

 続きまして、今の質問に関連をいたしますけれども、NHKに限らず、このことに限らずですけれども、インターネット上のサービスを利用する場合には、利用をスタートする場合には大変簡単にスタートができるんですけれども、逆に、解約する場合の手続が大変分かりにくいという問題がそもそもあるというふうに思っております。

 新しく契約される方々の解約方法についてはどのように考えておられるのかということにつきまして、NHKにお尋ねをさせていただきます。

小池参考人 放送法の改正案が成立した場合のインターネット配信に関わる契約の在り方や契約締結、解約の手続などについては、現在検討中でございます。

 解約については、現在の手続と同様になると考えておりまして、放送でもインターネットでもNHKのコンテンツを受信する環境にないことを確認した上で受け付けることになると想定しております。

 具体的な内容についてはまだお示しできる段階にはありませんけれども、視聴者・国民の皆様に分かりやすい手続となるように検討していきたいと考えております。

西岡委員 今と同様の解約手続ということでございまして、そこを確認するということも含めて、どのような状況なのかということが、ちょっと今の御説明では明確に分からないわけでございますけれども。

 今回、法改正が行われますけれども、様々なところでまだ詳細について全く明確でないというところが、今回の法改正で私自身は大変気になるところなんです。しっかり、契約についての様々な手続は視聴者・国民にとって大変重要なところでございますので、そこについては明確な方針を早急にお示しいただくということが法律が成立した暁には必要なことだということを申し上げさせていただきたいと思います。

 続きまして、七番の質問に移らせていただきます。

 本改正案によって、インターネット配信業務の範囲につきましては、同時配信、見逃し配信、番組関連情報というふうになるわけでございますけれども、番組関連情報の定義、要件について御説明をまずいただきたいというふうに思っております。

 また、このことにつきましては、民放や新聞協会含めて、受信料で事業を行っているNHKと広告収入で行っている民放の公正な競争が維持されるということが原則でなくてはならないということを踏まえた中での今回の法改正だというふうに思っておりますけれども、何が番組関連情報に入り何が入らないのかということにつきましての具体的な方針について、総務省にお伺いをさせていただきます。

小笠原政府参考人 番組関連情報の定義、要件等についてのお尋ねでございますが、まず、基本的な考え方から申し上げますと、放送法において、NHKさんは放送を通じて広く国民・視聴者に放送番組を提供することを使命とし、これに関連する情報をインターネットで提供してきたというふうに理解をしております。

 そして、本法案は、放送をめぐる視聴環境が急速に変化する中、放送という手段に加えて、インターネットを通じて国民・視聴者に放送番組とともに番組関連情報を提供することをNHKの必須業務とするものであり、本法案においても基本的な考え方を変えるものではありません。

 以上の観点から、番組関連情報につきましては、放送番組と密接な関連を有する情報であって、放送番組の編集上必要な資料により構成されるものというふうに定義することとしているわけであります。

 具体的にどのようなものが番組関連情報となるかということでありますが、NHKが番組関連情報配信業務を行うに当たりましては、NHKさんが自ら業務規程ということを定めることになりますが、その業務規程につきましては、三つの要件、第一が、当該業務の内容、実施方法等が公衆の要望を満たすものであること、第二が、当該業務の実施により公衆の生命又は身体の安全の確保のために必要な情報が迅速、確実に提供されること、第三に、当該業務の実施により他の事業者が実施する配信等の事業の公正な競争の確保に支障が生じないことということであります。

 その上で、番組関連情報として具体的にどのようなものになるのか、具体的に配信する内容につきましては、NHKさんが作成された業務規程ということにつきまして、放送の二元体制を含むメディアの多元性を確保する観点からの競争評価プロセスを経まして確定するということになります。

西岡委員 今御説明があったわけでございますけれども、一方で、放送とインターネットの受信契約は公平であると規定をされておりまして、今までの理解増進情報制度は廃止されることとなりました。関連して、必須業務化に関しましては、例えばオンライン上の政治マガジン等の独自のコンテンツである六つのサイトの更新が既に停止をされております。今後、ネットオリジナルのコンテンツは作らない方針であるとされております。二〇二四年から二六年度の経営計画においては、コンテンツ戦略六つの柱を掲げられまして、情報の多様性も含めて情報の質、量がより充実する方向が示されているわけでございますけれども、このことから、この方向性が後退することはあってはならないというふうに考えております。

 今後どのような方針で取り組んでいかれるのかということにつきまして、NHKにまずお伺いをさせていただきます。

山名参考人 お答えいたします。

 必須業務化は、公共放送NHKとして取り組むべきことを放送でもインターネットでも行うということだと認識しております。

 サービスの具体的な内容につきましては検討を進めているところではありますけれども、番組の同時配信、見逃し配信だけではなく、番組関連情報として、インターネットの特性に合わせた動画やニュース記事などのテキストを継続的、安定的に提供することで、正確で信頼できる情報を引き続きお伝えしていきたいと考えております。

 インターネットのみで御利用いただく方にも放送と同一の価値を感じていただけるよう充実を図りまして、公共放送の役割を果たしてまいります。

西岡委員 続きまして、今、番組関連情報の御説明もあったわけでございますけれども、視覚、聴覚を含めて障害をお持ちの方々、また情報へのアクセスが大変脆弱な、多様な方々が必要とされる情報をしっかりとその方々に届けること、また、ネットも含めたユニバーサルサービスの提供が極めて重要でございますし、これを一層充実することが今求められているというふうに考えております。

 今回、理解増進情報制度の廃止によってこのような方々に不利益が生じることはあってはならないというふうに思います。そのことに対するNHKの今後の方針、また、今、偽情報、誤情報対策が喫緊の課題となっているわけでございますけれども、今申し上げたような情報へのアクセスが脆弱な方、障害をお持ちの方々を偽情報や誤情報から守る対策も大変重要だと考えております。このことへの対策についてのNHKのお考え、方針をお伺いさせていただきます。

山名参考人 お答えいたします。

 NHKは、幼児、子供からお年寄り、目や耳に障害のある方など全ての視聴者が見やすく、聞きやすく、分かりやすく、安心して視聴できるユニバーサルサービスの充実に努めております。

 現在、視覚障害のある方にも御利用しやすいよう、NHKオンラインのテキスト版を提供して音声読み上げソフトウェアなどに対応していますほか、聴覚障害のある方に向けて、大雨や津波などの災害時に手話CGで警戒や避難を促すサービスを理解増進情報として提供しております。こうしたサービスにつきましては、NHKとして、必須業務化後も番組関連情報として位置づけ、引き続き提供できるようにしていきたいと考えております。

 また、偽の情報や誤った情報が拡散され、社会の混乱を招くことが懸念されておりまして、障害のある方々に対しても大規模災害時などに正確で信頼できる情報をお伝えしていくことは一層重要になっているものと認識してございます。

 今後も、障害がある方々を偽の情報や誤った情報から守るため、非常時、平常時を問わず、正確な情報を様々な手段を使って迅速に発信してまいりたいと考えております。

西岡委員 時間となりました。

 これまで理解増進情報で行ってきたことは、しっかり今後も番組関連情報として行っていくということがございました。引き続き、情報アクセスの大変脆弱な方々、障害をお持ちの方にしっかり正確な情報をお届けいただきますようにお願いを申し上げ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

古屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。宮本岳志さん。

宮本(岳)委員 日本共産党を代表して、放送法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。

 NHKの全ての放送番組がインターネット配信されることは、国民の要望に応えるものです。しかし、本法案は、NHKがネット配信を必須業務化するに当たり、番組関連情報について、民間放送事業者等が行うネット配信等との公正な競争の確保に支障を生じないもの、すなわち民業圧迫にならないなどの要件を含んだ業務規程策定と、配信内容が民業圧迫となっていないかどうか定期的に検証することをNHKに義務づけるとともに、総務大臣は、NHKから届出や報告があったとき、競合事業者などの利害関係者から意見を聞き、検証した上で、是正勧告、命令までできるとしています。

 NHKがネット業務などをどの範囲で実施するかは、公共放送としてNHK自身が国民の利益を最大限に保障する方向で検討すべきです。

 NHKのネット配信の必須業務化を議論してきた公共放送ワーキンググループでは、現在のNHKのネット配信事業がどれだけ民業圧迫となっているかのエビデンスは示されませんでした。不明確なエビデンスを基にNHKのネット業務の範囲に制限をかけ、競合する利害関係者である業界の利益を優先するものにほかなりません。

 しかも、重大なことは、政府がNHKの配信内容について、競合する利害関係者の意見を聞き、勧告、命令までできる強い関与の仕組みを導入することです。これは、NHK及びNHKの放送番組に対する権力の介入につながりかねず、反対です。

 本改正案の議論過程では、NHKのインターネット配信の必須業務化による将来ビジョンなど根本問題についての議論は十分に行われず、ネット配信の必須業務化ありきで法制化を急いだものです。

 インターネットが一般化した下で、NHKが放送と通信の融合による新しい公共メディアを目指すのであれば、国民の知る権利が一層充実し、民主主義の発展に寄与する目的のために実践されなければなりません。しかし、こうした根本問題を十分議論しないまま、自民党情報通信戦略調査会が業界の意向に沿って政治決着させると称し、いわばそこにつけ入るように大臣や政権がNHKに介入する余地を開くなど、重大な問題があると指摘して、反対討論といたします。

古屋委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより採決に入ります。

 放送法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

古屋委員長 次回は、来る五月九日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十九分散会


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