衆議院

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第4号 平成28年10月26日(水曜日)

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平成二十八年十月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川信英君

   理事 井上 信治君 理事 土井  亨君

   理事 藤丸  敏君 理事 宮下 一郎君

   理事 山田 賢司君 理事 木内 孝胤君

   理事 伴野  豊君 理事 伊藤  渉君

      石崎  徹君    大岡 敏孝君

      大野敬太郎君    大見  正君

      鬼木  誠君    勝俣 孝明君

      神田 憲次君    斎藤 洋明君

      坂井  学君    助田 重義君

      鈴木 隼人君    田畑 裕明君

      中山 展宏君    福田 達夫君

      宮路 拓馬君    村井 英樹君

      山田 美樹君    菊田真紀子君

      鈴木 義弘君    古川 元久君

      前原 誠司君    松田 直久君

      鷲尾英一郎君    浜地 雅一君

      真山 祐一君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 嶋田 裕光君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 原  宏彰君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   菅久 修一君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    遠藤 俊英君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     巻口 英司君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      村瀬 佳史君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            吉野 恭司君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 今井  純君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  津島  淳君     田畑 裕明君

  宗清 皇一君     宮路 拓馬君

  今井 雅人君     松田 直久君

  重徳 和彦君     鈴木 義弘君

  古本伸一郎君     菊田真紀子君

  上田  勇君     真山 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     津島  淳君

  宮路 拓馬君     宗清 皇一君

  菊田真紀子君     古本伸一郎君

  鈴木 義弘君     重徳 和彦君

  松田 直久君     今井 雅人君

  真山 祐一君     上田  勇君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明させていただきます。

 世界経済の不透明感が増す中、新たな危機に陥ることを回避するため、あらゆる政策を講ずることが必要となってきております。

 これを踏まえ、政府は、国税に関し、消費税率の引き上げの実施時期の変更及びこれに関する税制上の措置につきまして所要の改正を行うこととし、本法律案を提出させていただいた次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明をさせていただきます。

 第一に、消費税率引き上げ実施時期を平成三十一年十月一日に変更するとともに、消費税の軽減税率制度及び適格請求書等保存方式等の導入時期を二年半延期することといたしております。

 第二に、住宅ローン減税制度等の適用期限を二年半延期するとともに、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の適用期間を変更する等の改正を行うことといたしております。

 第三に、地方法人税引き上げの実施時期を二年半延期することといたしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようよろしくお願いを申し上げます。

御法川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本放送協会専務理事今井純君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官嶋田裕光君、大臣官房審議官原宏彰君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長菅久修一君、金融庁監督局長遠藤俊英君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長巻口英司君、財務省主税局長星野次彦君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長村瀬佳史君、中小企業庁事業環境部長吉野恭司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村井英樹君。

村井委員 おはようございます。自由民主党の村井英樹です。

 麻生財務大臣、また木原副大臣、そして財務省の皆様方、連日お疲れさまでございます。

 また、この財務金融委員会で初めて質問の機会をいただきました。御礼を申し上げたいと思います。

 本日審議をされます税制改正法案につきましては、消費税率の一〇%の引き上げ、これを二〇一九年十月まで延期をする、そしてまた、その他の関連する措置、反動減対策等もそれに合わせて基本的にはスライドをさせていく、そういったような趣旨であると承知をしております。財政政策の一番の柱であります二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化、もちろん、これに向けて消費税の引き上げを着実に行っていくことは大切でありますけれども、それにあわせて社会保障改革も着実に進めていかなくてはならない。

 そういったような趣旨から、きょうは、我が国の経済社会構造の変化を踏まえつつ、私が今最も個人的に関心を持っております、年齢を基準とした給付、負担ではなくて、負担能力に応じた公平な負担をしていくべきではないかといったような観点から質問をさせていただきたいと思います。

 後ほど、年齢基準で今制度が設計をされております、代表選手と呼んでおります公的年金等控除の話、さらには高額療養費の話を、突っ込んで話をさせていただければとも思っております。

 我が国の社会保障のあり方というものをちょっと引いて見てみると、大胆に言えば、やはり一つの前提ですね。若者世代は非常に元気でがりがり仕事をして十分な所得を稼いでいる、その一方で、高齢者の方は仕事もなくて資産もなくて少しかわいそうな人、そういう前提の中で我が国のこの社会保障制度というのは設計をされてきたのではないか。

 これも当然の話といえば当然の話で、日本の社会保障制度は、戦後、高度経済成長期の中ででき上がってきていて、そのときは、二十年学んで、四十年働いて、そしてまた二十年老後がある、こういう単一のレールの中に多くの方がいたわけです。特に、現役で働いているときは、多くの方が十分な所得があって、一旦定年を迎えて卒業すると、その後は基本的には老後としてもう仕事はしない。多くの方がそのステージに沿ってライフスタイルを過ごされていたので、そのような年齢を基準としたさまざまな仕組みというのが正当化されていたんだと思います。

 ただ、その一方で、ここに来てかなり、若者だから元気、高齢者だからかわいそうというのが、本当にそうなのかというような部分が出てきているんだろうと思います。

 特に、私の手元に資料があるんですけれども、資産分布、これを見ても、若年世代、四十歳未満は五割以上が資産が五百万以下、他方で、高齢者、六十五歳以上の世代は五割以上が一千万以上の資産を持っているわけであります。

 さらには、そういったような金銭面だけじゃないんですね。本当の身体的な体力、元気さ、これも、高齢者の方というのは年々元気になっていく。握力、上体起こし、前屈、全て高齢者は能力が上がっている。その一方で、若者は能力が落ちているんですよ。

 本当にこれまでの我々のイメージが徐々に変わってきていて、高齢者の方も、お金を持っていてかつ元気、若者は、私もそうかもしれませんけれども、余りお金がなくて元気がない、こういう状況が生まれてきているのかなと思いますが、こういうような経済社会構造の変化を踏まえると、やはり、これまでの年齢を基準とした給付、負担のあり方というものを、負担能力に応じて変えていく、高齢者もいろいろ、若者もいろいろという前提で仕組みを組み直していく必要があるんじゃないかと思っております。

 ちょっと前置きが長くなりましたが、そういう中で公的年金等控除について質問をさせていただくわけでありますけれども、我が国の公的年金等控除は、改めてでありますけれども、まず、保険料を積み立てるとき、保険料を出すとき、拠出時も控除が認められていて、さらには、それを将来給付されるとき、これも公的年金等控除という形で控除が認められております。

 ただ、この仕組み、我が国にいると当たり前のようでありますけれども、英米独仏、諸外国と比べるとかなり広範に認められております。英米は保険料の拠出段階で控除はない。ドイツとフランスは両方あるんですけれども、かなりアッパーが低目に設定をされていて、控除額が限定をされて、また給付額が限定をされていたりする。

 そういう意味で我が国のこの公的年金等控除の仕組み、諸外国と比べてもかなり広範に認められているのではないかと思いますが、そもそもこの仕組みができ上がった設立の背景、経緯、またその意義について、まずは財務省から見解を伺いたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、公的年金につきましては、収入に応じた額の公的年金等控除が適用された後に、累進税率によりまして課税される仕組みとなっております。

 この公的年金等控除は、昭和六十二年度の税制改正で創設されたものでございます。それ以前は、公的年金は給与とみなされて、給与所得控除が適用されておりました。これに加えまして、受給者が六十五歳以上である場合には、老年者年金特別控除という控除が適用されておりました。

 そうした中で、給与所得控除は、あくまでも勤務関係を前提に経費を概算的に控除するなどの性格を踏まえて設けられていて、公的年金に適用するのは合理的でないのではないかという指摘、また、老年者年金特別控除につきましても、公的年金の課税所得を計算するための配慮という部分と老年者に対する配慮という二つの側面が混在しているのではないかといった指摘がございました。

 そのため、昭和六十二年度の税制改正におきまして、制度の整備、合理化を図る観点から、公的年金の所得分類を給与所得から雑所得に改めまして、給与所得控除の対象から除外することといたしました。

 また、あわせまして、老年者年金特別控除を廃止するとともに、公的年金が、通常、経済的稼得力が減退する局面にある者の生計手段とするために公的な社会保険制度から給付される、そういう年金であるという性格等から、課税所得を計算するための配慮として公的年金等控除を創設したということでございます。

村井委員 今、星野局長からお話がありましたけれども、公的年金等控除がなぜまず認められているのかというのが、意外と、わかったようでわからないような話なんです。

 給与所得控除については、局長からもお話しありましたけれども、経費性ですね、スーツを買ったり文房具を買ったり、そういったようなことがある。なので、税額を計算する前に、そういったような必要経費的なものもあるだろうということで給与所得控除が認められている。

 経緯はあるんです、経緯はあるんですけれども、その一方で、この公的年金等控除については、そもそも、公的年金をもらうための経費性というのが別にあるわけじゃないんですね。さらに、拠出時も、先ほど申し上げたとおりで、控除をされているわけなんです。

 そういう意味で、そもそも考えていくと、給与所得控除の方が公的年金等控除よりも大きくて当然なんだというのが理論的な帰結だと思うんですが、今お手元に配付をしております資料を見ていただくと、実はこれが逆になっているということであります。

 ちょっとぐちゃぐちゃしていますけれども、真ん中の方のグラフです、これを見ていただきますと、六十五歳以上が基本的に年金をもらっている方ということで見ていただくと、百二十万のライン、ずっと年金収入が横軸になっていますけれども、六十五歳以上の方は基本的に百二十万、控除が認められている。他方で、この点々線が給与所得控除でありますけれども、六十五万からスタートをして、なかなか公的年金等控除に追いついていかないということであります。

 例えば、この二百五十万円の赤字で書いてあるライン、ここを見ていただきますと、公的年金等控除だと百二十万円控除されておりますけれども、給与所得控除だと九十三万円の控除となっていて、控除額に二十七万円差がある。税額に直すと約四万円、五万円程度の差があるということであります。言うなれば、年齢によって手取り額に差があるということであります。

 これは同じ収入の方なんですよ。収入が違うというならわかるんですけれども、収入が同じ、高齢者の方でも若者でも同じ。特に最近の若者、低所得で三百万円以下に収入が張りついてしまっている、社会保険に入れないような方々もたくさんいる中で、この公的年金等控除が、そもそも経費性もない中で認められているのにこれだけ広範に認められるというのが本当に合理的なんだろうかという指摘であります。

 こういったような点についてさらに言えば、追加で言えば、資産の側も、若者よりも高齢者の方が最近では相当額が多いという話も先ほど申し上げました。

 そういう面からいくと、まず、そもそも何であるのかという理屈の話、さらには、同じ収入水準で公的年金等控除の方が大きい、さらには資産も高齢者の方が持っているということからいくと、この逆転現象というのはやはりおかしくて、公的年金等控除の水準を是正していくべきなんじゃないかと思いますけれども、財務省の御見解を伺いたいと思います。

木原副大臣 村井委員にお答えいたします。

 昨年十一月に政府税制調査会が取りまとめた「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理」におきまして、そこでは、「若年層の低所得化や高齢世代内の経済格差など、再分配施策を取り巻く課題が変化してきている中で、誰が困っているのかを改めて問い直し、セーフティネット機能を新たな視点で考える必要が生じてきている。このため、年齢ではなく、所得や資産など経済力を踏まえた制度とし、再分配機能を高めることが必要である。」とされているところであります。

 これは村井委員の言われている意見と方向性としてはほぼ同じなのかなというふうに思いますが、そうした中で、公的年金等控除を含めた年金課税については、こうした政府税制調査会での議論を踏まえながら、税制抜本改革法や、また、社会保障制度改革プログラム法の趣旨に沿って、今後、世代間、世代内の公平性を確保する観点から、今後の年金制度改革の方向性を踏まえつつ検討を行ってまいりたいと思っております。

村井委員 木原副大臣、ありがとうございました。

 今お話しございましたけれども、やはり、担税力、誰が本当にその税金を払う能力、たえることができる能力があるのかという視点でぜひもう一度この仕組みを見直していただいて、この資料の中にもありますけれども、昨年取りまとめました経済・財政計画の中には、「社会保障改革プログラム法等に基づき、」「公的年金等控除を含めた年金課税の在り方の見直し等について、引き続き検討を行う。」となっておりますし、改革工程表にもその同旨が記載をされているわけでございますので、ぜひ、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化に向けて実現をしていただきたい、このように思っているわけであります。

 きょうは、もう一つ似たような話を御紹介また御質問させていただければと思います。それが、資料もお配りをしておりますが、高額療養費制度についてであります。

 まず、この高額療養費制度の前に、医療費の自己負担というのも、よくよく考えてみると年齢によって違うんですね。この表にもありますけれども、いわゆる現役世代は三割負担で、高齢者は、もちろん所得によっても違いますが、二割負担、一割負担となっているわけであります。ここについてもいろいろ議論はあると思いますが、きょうはそこはおいておいて、高額療養費制度の話です。

 重い病気だとか、長期間入院して通院したりすると、窓口で払う自己負担額が多くなってきて、病院に通う、また、病気になったことによって家計が崩れてしまうといったようなことを防ぐために高額療養費制度といったようなものを設けているわけでありますが、この表を見ていただいたらわかるとおり、「現役」と書いてある青いところと「高齢者」と赤字で書いてあるところで額がかなり違うわけであります。

 例えば年収一千百六十万円以上の方は、高額療養費が二十五・四万円で七十歳未満の場合は認められている一方で、高齢者は八・七万円で打ちどめなわけであります。高齢者で一千百六十万円以上稼いでいる方というのはかなりの方だと思うんですが、それでも八・七万円以上は入院費用を払わなくていいということであります。

 さらに、年収が七百七十万円から一千百六十万円の方については、現役十七・二、高齢者が八・七、もう少し下がってくると八・七で同様なんですが、さらにもう少し下がって、年収が三百七十万円までの方に関しては、現役で五・八、その一方で高齢者は四・四万円が上限となっているわけであります。

 同じ所得で同じような病気にかかって同じように入院しているケースでありますので、ここにどういう合理性があるのかというのはなかなか難しいのだと思います。人間誰しも、がんだとか大きな病気にかかれば医療費が高額になるのはやむを得ないわけでありますし、この制度自体はもちろん合理性があるわけでありますけれども、七十歳以上の方であっても働く現役の方、例えば私のような三十代でもこの負担があるのは同様であって、この仕組みの根底にはやはり、高齢者だからかわいそうだというような思想が流れているのではないかと思います。

 さらに言えば、外来の部分です。高齢者は特別に、入院ではなくて外来ですけれども、四・四万円、現役所得並みの所得があれば上限があったり、一般所得でも一・二万円。だから、一般の所得のある高齢者の方というのは、外来での負担というのが一・二万円が上限になっているわけであります。かなり広範にこの仕組みが認められているなと思いますし、やはり先ほどから申し上げているとおりでありますけれども、年齢を基準としたこういう給付、負担のあり方ではなくて、負担能力に応じた負担、現役でも高齢者でも、かわいそうな人はかわいそうだし、大丈夫な人は大丈夫なので、この高額療養費制度についても、年齢による差を是正して、現役世代に合わせる方向で是正すべきだと考えますけれども、財務省の御見解をお願いいたします。

麻生国務大臣 これは村井先生御指摘のとおりでして、社会保障制度については、これは年齢ではなくて、負担能力に応じていわゆる公平に負担を分かち合うという制度にしていくということは、これは、社会保障という制度並びに財政そのものの持続可能性というものをきちんとしたものにしていくことと、それから、制度への信頼、また、負担していただいている方々への納得感等々を確保していく上からもこれは大変重要、これが一番大前提なんだと思うんですが、御指摘の高額療養費については、同じ所得水準であっても、すなわち低所得者同士とか高所得者同士で比べてみても、これは間違いなく高齢者は現役より負担の条件が低く設定されております。

 その背景は、多分、先ほど局長からいろいろな説明がありましたように、そもそもできた最初のころは、勤労者六人に高齢者一人、今のように七十でも八十でもぴんしゃんしている老人が永田町に限らずいっぱいいますから、そういうのは余りいなかったんですよ、あの時代は。大体平均寿命も、五十七、八になっていませんから、あのころは。だから、定年が五十五でも、終わられると大体数年で亡くなられるという前提で社会全体ができていたものが、定年になってから亡くなられるまでの時間が非常に長くなってくるという状況。

 傍ら、少子という形、子供が五人、六人、私なんかは六人兄弟ですけれども、私のところなんかを含めてどこでもみんな一人とか二人とか三人とかいうことになってくると、これはもう負担と恩恵を受けられる方の比率が一対六から一対二とか二・幾つということになって、これはとてもじゃないけれどももつわけがありませんので、そういった意味では、これはいろいろ変えていかないかぬのではないかと。

 さらに、今は外来の話をされましたけれども、これは外来も間違いないのであって、入院した場合よりも負担の上限が低くなるという話が、高齢者がですよ、高齢者が外来で入院された方の場合、受診をされた場合の方は、そうでない方に比べて負担の上限が低いというような特例が設けられている。これは確かなんです。

 したがって、我々といたしましては、これは、年齢ではなくて、負担の能力に応じたもので公平なものに変えていくべきではないかという観点から、高額療養費について、高齢者の負担上限を現役と同様にする等の見直しを行うということをあの財政制度審議会に提案をさせていただいたところであります。

 これは今、村井先生から御指摘もありましたけれども、この年末へ向けて、歳出改革というものを改めて進めてまいらねばいかぬと思っております。

村井委員 ありがとうございます。麻生大臣から、受けとめていただくような温かいお答えをいただきました。

 私も、きょうずっと、年齢基準ではなくて負担能力に応じたといったようなことを申し上げておりますけれども、何も私は、世代間対立というんですか、それをあおろうとか高齢者が得をしているとか、そういうことが言いたいわけではなくて、本当に困っている方というのがやはり時代時代に応じて変わってくるんだろうということであります。また、その変化に合わせて社会保障の側も変わっていかなきゃいけない。そういう中で、やはり、負担能力に応じた負担というものをこれからはしっかり追求をしていかなければならないということを申し上げたかったわけであります。

 最後になりますけれども、麻生大臣からもございました、ことしの年末というのは、歳出改革、社会保障の効率化という面でいくと、勝負の年なんだろうと思います。選挙の話もありますし、なかなか選挙前はきついんじゃないかというような弱気な意見も若干聞こえるところでありますけれども、やはりこの社会保障の効率化の話というのは、もう議論はし尽くした感じがあるんです。福田政権のときの国民会議みたいなものから始まって、何をすべきかというところは大分整理をされてきた。

 だけれども、最後、どうしても政治の決断がなくてこれまで先送りになってきたもの、それは、私が申し上げたような、本当に困っている人に対して社会保障を振り向けていくというところもそうですし、また、持続可能な仕組みをつくっていくという意味においても、やはり、これまで政治の決断がなかったというところが残念ながらあるんだろうと思います。

 そういう意味で、私も政治の側の一員になったわけでありますが、この年末に向けて、本当の意味で将来世代のことを考えた、また、今、足元困っている方のことを考えた仕組みづくりに向けて逃げることなく戦っていくということを私自身申し上げさせていただいて、きょうの質問、若干時間が余りましたけれども、質問とさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 おはようございます。公明党の伊藤渉でございます。

 きょうは、いわゆる消費税法等の一部を改正する法律案、消費税を八%から一〇%に再び引き上げさせていただくタイミングを、目下の国内の経済そして世界経済に鑑みて、二年半、平成二十九年四月から平成三十一年十月まで延期する、そうしたことを規定する法律の審議でございます。

 この法律の審議において最も大事なことは、今の議論でもそうですけれども、日本国の財政を立て直していくということ、そして、国民に対して将来の見通しそして安心感を与えていくということ、そういう意味では消費税収は大変重要な税収でございますので、やはり、消費税率を上げられるような環境を、これはもう与野党関係なくどうやってつくっていくのか、そのことに国会は全力を挙げていかなければならない。そんな問題意識、考え方から幾つかお伺いをしていきたい、こういうふうに思います。

 まず初めに、本年の常会、第百九十回通常国会で、所得税法等の改正の審議の中で、私どもが主張してきました軽減税率制度の導入の決定をこの国会でしていただきました。このときの論点、改めてまず最初に整理をさせていただきたい、こう思います。

 消費税八%に増税をさせていただき、次に一〇%に上げる際に、三党合意を経て税制抜本改革法という法律が成立をしておりまして、その中で、この第百九十回常会で導入の決定を見た軽減税率制度は、給付つきの税額控除、そして総合合算制度と並んで、この消費税率の引き上げに伴う低所得者への配慮という観点から検討が重ねられてまいりました。

 ここで、消費税率一〇%時に導入することを決定を見ているこの軽減税率制度の導入に至る議論のポイントを確認させていただきたいと思います。

 まず、軽減税率制度は、給付つき税額控除といった給付措置とは異なりまして、日々の生活の中において幅広い消費者が消費そして利活用している商品の消費税負担を直接軽減することによって、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるということ、この点が特に重要であるというような判断から導入が決定をしております。

 また、年収の低い方の飲食料品等の消費支出に占める割合、これが高収入の方よりも高くなっております。また、消費税が有しているいわゆる逆進性の緩和という観点からも、このことからしても有効である。またさらに、日々の生活の中で痛税感の緩和を実感していただくことで、消費者の消費行動にもプラスの影響があるということも期待をできるというような論点がこれまで整理をされてきました。

 ちなみに、給付つき税額控除、そして総合合算制度につきまして、その制度そのものをもちろん三党合意の中で比較検討するということになっておりましたので、このことについても質疑の中で論点を整理しておりまして、まず一つは、低所得者層の所得把握、特に、課税最低限以下の皆さんの所得の把握をどのようにするのかという問題、また、所得は少ないけれども多額の金融資産を有しているという方、こうした方に対して資産の把握というものをどういうふうに対応していくのかということが議論されてきました。

 また、これまでいわゆる確定申告を行ってこなかった方にもやはり申請をしていただく必要がありますから、これに対する行政執行の可能性やコストの問題も議論されてきました。

 それから、既に給付つき税額控除が導入されているアメリカやイギリス等におきましても、給付額の一割から二割程度が、過誤、過ちであったり不正受給であったりするなどの適正性の問題も、これまでこの財務金融委員会での議論で明らかになってまいりました。

 こうした論点整理を経まして、税制抜本改革法において検討対象であった軽減税率制度、給付つき税額控除、そして総合合算制度の中で、低所得者への配慮を可能にする、現実的に実施可能である制度は軽減税率しかない、こういう結論に至ったわけでございます。

 二年半、消費税率を一〇%に再増税するタイミングをずらしたわけですけれども、二年半という時間は、長いようで短いと思います。

 まず麻生大臣に所見をお伺いしますけれども、この軽減税率制度の導入に向けてもろもろの準備は着実に進めていただきたい、こう思いますので、大臣の所見、お伺いをいたします。

麻生国務大臣 これはもう伊藤先生御指摘のとおり、与野党が合意してこの種の増税法案を議会で通したというのは、先進七カ国の中でも他に余り例がありませんので、日本という国の民主主義制度の成熟度を示すものとしては各国からはかなりの称賛というか、驚嘆の的の対象になったという経緯があります。

 今般の法律では、これは御存じのように、今言われましたように、三つの中から軽減税率というのをとるに至るまでの経緯の話は大分この席でやらせていただきましたので繰り返すことはいたしませんけれども、結果として導入を平成三十一年の十月に変更することといたしておりますが、円滑な導入というのに向かいましては、これはいろいろ今までとは違ったものが導入されますので、それに係る準備期間が要るというところも延期することになった一つの大きな理由だったと思っております。景気の、消費がいま一つだったということプラス手間暇かかる、インボイスの話やらいろいろありましたので。

 そういった意味で、それを扱われる中小零細の企業においてこの準備状況をどうするのか、例えばレジはどうするとかいろいろな話がいっぱいありましたので、具体的には、これに対してことしの四月にいわゆるQアンドA等々を公表させていただいたりして、各地で説明会を開催して、周知、広報を図っておるところであります。

 導入のときは、これは時間がないというのでえらい焦ってやっていたときに比べれば二年半伸びておりますので、あのときに比べればペースが少し落ちてきたことは間違いないとは思いますけれども、それだけ余裕もできましたので、その分だけ丁寧に中小零細業者へのレジの導入等々の支援も行っておりますので、これは商工業を扱われている通産省もそうなんでしょうけれども、私どもとしても、こういった準備状況というのをいろいろ把握しつつ、対応を引き続き進めてまいりたいと思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。ぜひとも、着実な導入に向けての推進をよろしくお願いしたいと思います。

 それでは次に、まさに消費税率、これは社会保障の財源ですから、やはり社会保障制度の安定、充実を考えると、これは上げさせていただきたい。加えて、将来へのやはり期待というか、今、自公政権、安倍内閣で経済対策を含めさまざまな取り組みをしておりますけれども、将来への明るい見通しというか期待、これをもっと強いものにしていかないと、いわゆる経済の好循環というのはまだまだ起こりづらい。

 言い方をかえれば、この約二十年間刷り込まれたデフレマインドというのはいかに根強いものかということを痛感しながら日々過ごしているわけですけれども、将来への見通しを明るいものにしていくという意味では、国家の財政の健全化ということも極めて重要でございます。

 そういう意味では、このデフレの原因の一つとして、何らかの危機が将来にある。逆を返せば、将来に対する明るい見通しがなかなか立ちづらい。こういうことがデフレの原因の一つにもなっていると識者の方の指摘もあるわけでございます。

 その明るい見通しを立てづらい、また、立てていただく、そのためにも、一つは財政の問題を決着していく。これは非常に重要なわけですけれども、今回、経済対策という意味で補正予算を組みました。これはこれで目下の経済対策として、政府の財政出動を図り、経済を下支えしていく。これは極めて重要です。

 一方で、財政再建に対してどういう影響があるかということも目配りをしておかなければなりませんので、まずこれは内閣府の政府参考人にお伺いをいたしますけれども、今回成立した補正予算を考慮いたしますと、二〇一六年度の基礎的財政収支の対GDP比、これはどのようになりますでしょうか。

嶋田政府参考人 お答えいたします。

 今回成立いたしました補正予算を踏まえました二〇一六年度それから二〇一七年度の国、地方の基礎的財政収支の対GDPにつきましては、経済対策の効果も含む今後の経済動向に大きく左右されることですので、ただ、GDP比という形では現時点でお示しすることだと困難でございますけれども、なお、補正予算によります国、地方の基礎的財政収支の影響について、あえて経済対策の効果を踏まえた税収等の変化は考慮せずに、一定の想定のもとで機械的に試算いたしますと、二〇一六年度は一兆円台半ば程度、二〇一七年度は三兆円台前半程度の赤字拡大要因というふうに試算しているところでございます。

伊藤(渉)委員 そうか、GDP比ではなかなか出しづらいわけですね。

 今後、経済対策の効果を把握してGDPが明らかになってきたところでまたわかってくると思いますけれども、もともと、二〇一五年度が対GDP比でマイナス三・三%。ここでいわゆる二〇一〇年からの対GDP比プライマリーバランスの半減ということを達成して、当初予算の段階でこれがさらに改善をして対GDP比はマイナスの二・九、こういう状況でございました。この状態がどうなるかというのは、今後きちっと見ていかなければならないというふうに思います。

 今後の将来を考えると、当然のことながら、先ほどの質疑でもありましたとおり、やはり高齢化率は上昇をしていきますから、単純に考えて、社会保障費、これも当然増大をしていくわけでございます。

 そういう意味で、重ね重ねですけれども、消費税収は不可欠な財源である。また、あわせて財政の健全化等への取り組みを行って安心の社会保障を確立していくことも、将来への見通しの明るさを与えることになり、経済についてもプラスに寄与していく、こう考えるわけでございます。

 そういう意味で、このデフレを脱却していくためにも、財政健全化の取り組みもその都度明確に国民に向けてアナウンスをしていかなければならない、こういうふうに考えます。

 そこで、これは副大臣の御答弁かと思いますけれども、一つの大きな目標である二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化という財政再建目標の達成についての見通しについて答弁を求めたいと思います。

木原副大臣 伊藤委員にお答えいたします。

 我が国の財政は、毎年度、予算の三分の一以上、三十兆円以上をいわゆる借金に頼っており、例えば今委員おっしゃったように、社会保障関係費は予算全体の三分の一を占め、これは毎年度増加をしているわけであります。将来世代への先送りと表現されても仕方がないほど、大変厳しい状況にあるわけでございます。そのことは言うまでもございません。

 そして、安定した社会保障制度を次世代に引き渡すため、財政健全化は避けて通ることができないわけであります。また、財政への信認を確保することは、人々の将来への不安を払拭し、持続的な経済成長にもつながるし、委員のおっしゃる期待にもつながるものと考えております。

 二〇二〇年度にプライマリーバランス黒字化を実現するという財政健全化目標をしっかりと堅持し、その実現に向け、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針のもと、財務省といたしましては、未来への投資を実現する経済対策を初めとする、強い経済の実現を目指した取り組みを進めていく所存でございます。

 あわせて、歳出歳入両面からの取り組みも必要であります。

 そのため、経済・財政再生計画の枠組みのもと、改革工程表に基づきまして、社会保障の改革を含め、徹底的な重点化、効率化など、歳出改革を継続してまいります。また、二〇一九年十月に消費税率を一〇%に確実に引き上げ、社会保障と税の一体改革を確実に進めてまいります。

 こうした取り組みによって、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化に向けてしっかりと財政健全化に取り組んでいく所存でございます。

伊藤(渉)委員 木原副大臣、ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。

 また、その中の取り組みで、社会保障制度の改革も当然取り組まなければなりません。これは率直に申し上げて、痛みを伴う部分も当然出てまいります。

 先ほど来申し上げているとおり、今、デフレマインドを払拭するために一生懸命取り組んでいて、そのためには、やはり将来に対する不安を取り除いていかなければいけない。また、将来に対する不安を取り除く上で、現在に痛みを伴うことも全く避けるわけにはいかないんですけれども、大事なことは、それが将来の明るさにつながるんだ、このことをよく理解をしてもらいながら前に進む、これが極めて重要だと思います。

 重ね重ねでございますけれども、これは与野党を超えて取り組まなければならない国家的課題ですから、そのことをよく心に置いてこの財務委員会では質疑に取り組んでいきたい、こういうふうに思います。

 今副大臣からもございましたとおり、まさに成長と分配の経済の好循環、成長と分配ですから、まずはやはり成長をさせていかなければならないということで、こちらもいろいろな取り組みをしているわけですけれども、時間に限りがありますから、時間の許す限り確認をしていきたいと思います。

 一つは、いわゆる金融機関の融資における事業性評価の取り組みということについて少し御質問をしたいんです。

 では、これはまず統計的に金融庁の政府参考人にお伺いをしたいと思いますけれども、そもそも近年の資金需要及び貸出金の残高の動向がどうなっているか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 国内の資金需要は緩やかな増加傾向にあり、預金取扱金融機関の貸出金も緩やかに増加していると承知しております。

 国内の資金需要につきましては、日本銀行の資金需要判断DI統計によれば、二〇一三年十月以降、企業向けの資金需要が増加と回答した金融機関が減少と回答した金融機関を上回っております。このDI統計は年四回公表されるものでございまして、一三年十月以降、十三回連続で増加が減少を上回っております。

 また、貸出金につきましては、日本銀行の統計によれば、国内銀行、信金の貸出金、これは平残ベースでございますけれども、前年度比で、二〇一三年度二・〇%、二〇一四年度二・三%、二〇一五年度二・四%と増加しております。最近三カ月では、前年同月比で、七月二・一%、八月二・〇%、九月二・二%という形で推移しております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 いろいろな取り組みがいわば功を奏して、状況は改善をしつつあるということだと思います。

 私の常日ごろからの問題意識は、まず、これまで約二十年、バブル崩壊後、大変厳しい経済状況が続きましたので、企業はリストラをし、金融機関は不良債権処理をしてその健全性を回復してきたと思います。そうした一方で、いわゆる金融機関の融資は、償還の確実性を求めて担保に着目した手がたい査定が続けられてきた、こういうふうに思います。そして、それも、金融庁もそういった指導をもちろんしてきたんだと思います。

 約二十年続いていますから、二十年の間に、今まさに取り組もうとしている事業性評価、これはつまり、将来これは有望だという事業、企業、これを見きわめて融資をするということですから、簡単じゃないと思うんです。二十年間そういう人を育てる状況になかったものですから、そもそもそういう人材が不足しているんじゃないかということも大変心配をしているというか、それも越えていかなきゃいけない。こういうことだと思うんです。

 今、金融庁はさまざまな取り組みをしていただいていて、企業の経営の改善、生産性の向上のために、コンサルティング機能も十分に発揮して積極的な資金提供をしていただきたい、こういうことなわけですけれども、肌で感じる現場は、もうお金は別に借りなくてもいいというところには貸しに来るんだけれども、ここは借りたい、もしかしたら成長につながるかもしれないという、まさに金融機関の目ききが必要なところに資金が拠出をされて成長につながっているかというと、兆しはありますけれども、まだまだ十分じゃない。

 こういうふうに現状を認識しておりまして、この辺の取り組み、特に強化をしていってほしいという思いも込めて、目下の取り組みについて金融庁にお伺いしたいと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、金融機関は、企業の事業の内容あるいは成長可能性、これを適切に評価して、融資でありますとか本業支援などを通じて企業の生産性向上に貢献していくことが期待されております。

 金融庁は、さまざまに金融機関の取り組みについて議論し、モニタリングをしてまいりました。金融仲介の取り組みの内容とか成果につきましては金融機関によって相当のばらつきがあると思いますけれども、委員の御懸念の点からすると、かなり積極的に、こういった事業性評価でありますとかコンサルティング機能というものに取り組む金融機関が出てきております。地元の取引先企業のニーズ、課題の把握、経営改善の支援を継続的に実施することによって、みずからも安定した顧客基盤や収益を確保しているところということでございます。

 幾つかそういった取り組みについて事例を申し上げますと、例えば、人事部、これを廃止して、経営方針の作成部署、ここに吸収してしまうという形で、企業に対するコンサルティング機能の発揮という経営方針を実行していくための人材育成とか人材配置というものを機動的に行っている銀行でありますとか、あるいは、ノルマといいますか、数値目標、この達成度ではなくて、顧客企業とのかかわり方のプロセス、ここに主眼を置いて業績評価体系を抜本的に変更し、結果としてその数値目標を達成した、そういった銀行でありますとか、あるいは、一定額以上の与信先、具体的には一万二千社、これを分析して、経営者と経営課題を共有し、経営改善支援に効果を上げている銀行等々が見られるところでございます。

 委員御指摘の人材育成ということに関しては、非常に重要な問題でございます。

 金融庁といたしましては、金融仲介機能のベンチマークなどの客観的指標を活用して、人材育成に向けた前向きな取り組みについて深度ある対話を進めていきたいと考えておりますし、また、金融機関における取引先企業に対する支援能力向上のために、地域経済活性化支援機構による特定専門家派遣機能の活用を促すといった取り組みを進めているところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、金融庁といたしましては、金融機関に対し、企業の事業の内容を理解し、その生産性向上につながる融資、本業支援に取り組むように促してまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。さまざま地道な取り組みをしていただいていることはよく承知をしております。

 これはたがを緩めずに、この事業性評価、資金を中小企業、小規模事業者に回していく、ここが、企業数でいくと約三百八十万社ありまして、雇用でいうと七割生み出しているわけですから、ここの活性化のためにもこの金融機関の事業性評価は非常に重要な取り組みだと思いますので、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。

 残り五分になりましたので、ちょっと最後の質問にしたいと思います。大変恐縮ですが、経済産業省、中小企業庁、公取の皆さん、来ていただいておりますけれども、また次回の機会に送らせていただきたいと思います。

 最後は、まさに成長、これは少し中長期的な意味で、しかし、手を打ち続けなければならないと認識をしている科学技術関連予算ということについてお伺いをしたいと思います。

 本年、平成二十八年度から、いわゆる第五期科学技術基本計画、これがスタートをしております。よく言われることですけれども、資源のない我が国にとって、科学技術、これは大変重要な資源とも言えます。

 この第五期科学技術基本計画では、投資目標をGDPの一%、五年間で約二十六兆円として、その達成に向けて取り組みをスタートいたしました。

 あわせて、大学等に対する民間企業からの寄附等も三倍にしよう、こんな取り組みも始まっているところでございます。

 第二次安倍政権がスタートをしてから、イノベーションに最も適した国、これに向けて不断の努力を行い、またあわせて、CSTI、総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能をより強く発揮する、そんな環境づくりにこれまでも取り組んできております。

 先日、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典先生、東京工業大学の栄誉教授でございますけれども、今、日本人のノーベル賞の受賞が続いておりますけれども、これらの受賞は、もう御存じのとおり、数十年前の成果なんです。これが今やっとノーベル賞の受賞につながっている。

 そういう意味では、研究というのは大変息の長い取り組みが必要で、目下の研究開発投資をきちんと継続をしていくことが、我が国の重要な資源でもある科学技術の維持、育成につながっていく。こういう考え方で、科学技術特別委員会にも籍を置いて、常日ごろからこうした議論をさせていただいております。

 それでは、最後に麻生大臣にお伺いをしますけれども、成長戦略の大きな柱の一つである科学技術、そして、その投資目標の達成といわゆるCSTIの司令塔機能の強化について、この総合科学技術・イノベーション会議のメンバーでもあり、予算全体を俯瞰する立場にある麻生大臣の所見をお伺いをして、私のきょうの質問を終えたいと思います。

麻生国務大臣 CSTI、カウンシル・フォー・サイエンス・テクノロジー・アンド・イノベーションを略して今はCSTIと呼んでおる、科学技術基本の中の司令塔になっておるんですが、この政府研究開発投資において科学技術基本計画というのを立てておりまして、その中で、経済・財政再生計画との整合性というものを確保しつつ、GDPの一%を目指したいというのを、いわゆる試算がされております。

 この経済・財政再生計画におきましては、社会保障関係費を除きます、一般歳出全体の増加の目安は、今後三年間、二十八年から三十年度までで約一千億円程度とされておりますので、研究開発投資につきましても、こうした枠組みのもとで着実に一歩ずつ進めていかざるを得ないものだと思っておるんです。

 いずれにいたしましても、政府の金に限らず、これは民間からの投資というものをかなり置かなければならぬということで、民間もこの目標を立てておられますが、民間は今、目標のほぼ三分の一もいっていない。政府どころの騒ぎじゃなくて、民間の方こそ何をしておられるんですかということもこの間の会議で申し上げましたけれども、反論ゼロ、何の声もありませんでしたので、皆反省をしておられるんだと思いますけれども。ここのところが一番大事なので、ぜひこういった点も含めまして、司令塔機能も十分に生かして、これは官民が連携していきませんと、研究者にとりましては、政府から来ているか民間から来ているかというより、別に金に色がついているわけではございませんので、そういったところをきちんとしてやっていかないとだめだということはもうはっきりしておりますので、きちんとしてこういった方向を進めていかねばならぬ。

 これはもう八年、十年ぐらい前からきちんとこの方向で進めさせていただいて、これまでの流れがずっと続いてきていると思いますので、今後とも引き続きこの方向で進めてまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 お運びをいただいた政府委員の中で御質問できなかった方は御容赦いただければと思います。

 以上で質問を終わります。

御法川委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 おはようございます。民進党、木内孝胤でございます。

 本日は、消費税の引き上げ延期法案につきまして質問させていただきます。

 先週の火曜日、本会議場におきまして既に代表質問をさせていただいておりますが、おおむねその質問に沿って本日は質問を進めたいと思っております。

 ちょうど二年前、安倍総理が、今度という今度は絶対に延期をしないとおっしゃいました。その間、二年前の十月末、日銀が五十兆円の金融緩和を八十兆円に規模を拡大させたり、あるいは、GPIFが二四%のポートフォリオを倍増以上の五〇%にさせたりと、なかなか激しい動きをしながら、とにかく強い不退転の決意をいろいろな形で、消費税の引き上げ延期しないということをお示しされたというふうに理解しております。

 その上で、改めて麻生財務大臣に、なぜ今回、消費税引き上げ延期することになったのか、お伺いをいたします。

    〔委員長退席、土井委員長代理着席〕

麻生国務大臣 これは現下の経済情勢というのを見ていただいたらおわかりのとおり、有効求人倍率というのを見ますと、これは間違いなくかつての〇・八二から一・三七、ということは、百人の学生が出れば、昔は八十一社から求人広告を出したのが今は百三十七社からの求人広告が来る。簡単に言えばそれを有効求人倍率と言っておるわけですけれども、極めて高くなって、これは二十四年ぶりの高水準になっております。

 失業率も、御存じのとおり、三・一%まで失業率も下がってほぼ完全雇用に近くなってきておりますし、賃金の引き上げ率も三年連続で、間違いなく今世紀最高水準ということで、ことしも二十八年度で約二%、昨年度も二・二%ということになっておるんですが、雇用・所得環境というのは大きく改善しておりますので、これは確実に、経済の数字から見ましたら、経済というものの状況は再生している方向にあらわれているのは、これはもうはっきりしておると思っております。

 ただ、他方、個人消費というものを見ますと、これは力強さを欠いておる状況にある。これもはっきりしているんだと思いますが、加えて、世界経済というものを見ますと、まあ、中国は言うに及ばずですけれども、新興国の陰りなど、これは需要が低迷している、成長の減速リスクは高まってきているというような懸念があるんだと思っております。

 したがって、消費税率の引き上げは、こうした点を踏まえて、伊勢志摩サミットにおいても経済再生とかデフレ不況からの脱却に向けて万全を期すということを皆さんで約束をしておられますので、構造改革の加速など、総合的かつ大胆な経済対策というものもあわせて講じるということを必要なものだと判断させていただいた上での決定と御理解いただければと存じます。

木内(孝)委員 ことしに入りましてからも、本委員会あるいは本会議場でも十回以上、私は麻生大臣に質問をさせていただきました。その都度、私は、先ほど大臣がおっしゃいました雇用関係の数字あるいは企業収益の改善等のいい部分をきちんと評価した上で、個人消費の低迷ぶりが極めて厳しい状況ではないか、こんな個人消費の状況で本当に消費税なんか上げられるのかどうかということを十回以上質問いたしました。その上で大臣からいただきました答弁は、先ほどの雇用関係の数字等もありましたけれども、経済は好循環、ファンダメンタルズは良好、経済は強い、リーマン・ショック級の理由がない限り引き上げ延期は一切考えていないというのを、毎回毎回同じ答弁を繰り返されていました。

 今の答弁と五月までの答弁の内容と、ある意味もう完全なちゃぶ台返しではないかと思っております。

 といいますのは、例えば世界経済のリスク。世界経済のリスクというのは所与のものであります。例えば、昨日の十月の月例経済報告、大臣も出席されていたと思いますけれども、その中で、世界の景気は弱さが見られるものの全体としては緩やかに回復をしている、こういう説明をなさっています。要は、今までにない理由で、世界経済のリスクということを理由にして消費税を延期されてしまうと、今まで我々が本委員会等でもさまざまな形で議論を積み上げてきたものを、たった一つの言葉、世界経済のリスクということで引き上げ延期をできてしまう、そういうことにほかならないと思っております。

 もう一つちゃぶ台返しのキーワードがあると感じております。それは、安倍総理がおっしゃった新しい判断。この新しい判断という表現も、新しい判断をされたら何でもできるということになってしまう。私はそのように感じております。

 もう一つ言うと、これは日銀の表現ではありますけれども、適合的な期待形成という言葉を使っております。これは、現実の物価上昇率に影響されてしまうから、今までの金融緩和はきちんとした物価上昇に結びつかない。

 今までの答弁ときょうの答弁が余りにも矛盾しているというふうに私は感じるわけでございますけれども、この矛盾を覆い隠しているのが、巧みというか、余りにも信じがたいような、新しい判断とか、こういう表現だと思っております。

 麻生財務大臣、今までの説明ときょうの延期理由の説明との矛盾、これについてどうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 我々としては、基本的には、申し上げていることに何ら矛盾はないと考えております。

 今、一番申し上げておりますのは、やはり、伊勢志摩サミットにおいて全員でこの点についてはかなりの合意が見られた点、また、ブレグジットというような話は、イギリスの世論調査を見ましても、世界じゅうのファイナンシャル・タイムズ等々を見ましても、いわゆる離脱はしないという前提の方が圧倒的に高かったというのが実態じゃありませんでしたか、あのときは。

 それから、中国の状況が極めて厳しいことになって、このところ中国の財政が出動しているようで形を整えてはおりますけれども、中国の経済も急激に弱さが見られてきつつあるという状況はもう去年からはっきりし始めてきておりましたので、私どもとしては何回も警告を出して、毎月十兆円も外貨準備が減っているという状況は異常でしょうが、どうされるつもりですかということを何回も中国に言い、ナシのつぶてだったんですが、結果としてそれが返ってきて、財政出動しますというような話を向こうもして形を変えてきているということを、我々に伝わってくる表向きの情報と実際とはかなり違っているのではないかということを考えましたので、伊勢志摩サミットの合意を見ても、とにかくありとあらゆる対策を講じるという話に決まりましたものですから、我々としてはそれに合わせて対応をしたというふうに理解をいたしております。

木内(孝)委員 今大臣がおっしゃいましたブレグジットにつきましても、予見不能であったというのはそのとおりだと思います。五月、六月の段階では、イギリスはEUから離脱しないだろうという見立ての方が私も多かったと思います。

 ただ、だからこそ、これだけ予見不能な世界経済のリスクを理由にされると、今後一年間で世界経済においてどういうリスクがあるかなど、我々は誰も予見できません。それを予見したとして、消費税延期の理由にされたら、恐らく三年後、また世界経済を理由に、十分に、簡単に延期理由になってしまう。そのように感じるわけであります。

 今回の消費税増税を延期したことによって、当然、税収が大きく減ります。今まで想定をしていたさまざまな政策の財源、これが当然その分ショートするわけであります。

 世界経済とかそんな簡単な理由で、しかも、世界経済、IMFの見通し、七月に出したものでいえば、ブレグジットがあったから成長率を〇・一%引き下げたけれども、あれがなかりせばむしろ引き上げていたというぐらい、見通しをむしろ好転させているわけでもあります。

 したがいまして、こうして国民の生活に物すごく影響のある消費税増税の、引き上げの延期をするということは、国民の、例えば今、子育ての問題、あるいは先ほども伊藤委員から話がありました社会保障の安定化の問題、こうした問題に直接的に私は影響があると思いますし、それを実現できなかったことに対する責任、今までの答弁との不一致、こうした問題を財務大臣としてどうお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

    〔土井委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 当然のこととして、一〇%というものの値上げということができないということになりましたので、結果として、私どもとしては、お約束をしていたかなりな部分が全部が全部できないということだけははっきりしております。

 したがいまして、我々としては、その中でできる範囲の中でということで、介護五十万人とか保育の五十万人とか、いろいろなことを申し上げた話でできる限りのものをやっていこうということで、年金の二十五年を十年にとかいうようなことは、限られた財源の中でとにかくやりくりしてやっていこうではないかということを決めて、今、予算編成の過程でいろいろ取り組ませていただいておりますけれども、できないということになったら、そのできる範囲内でやれるだけのことをやるということで臨んでいかねばならぬと思っております。

木内(孝)委員 今回の増税の延期、政府は世界経済のリスク等々おっしゃっておりますけれども、明らかなことは、やはり、個人消費の低迷が続いているということが一番の原因だと私は考えております。

 現在の個人消費の動向について、政府の現在の見通し、現状認識についてお聞きかせをいただければと思います。

木原副大臣 木内委員にお答えをします。

 個人消費の動向ということでございますが、ちょうど昨日十月二十五日に月例経済報告が公表されましたが、その中の個人消費の動向についての部分につきましては、消費総合指数は二〇一四年四月以降ほぼ同水準で推移しているものの、実質総雇用者所得は緩やかに増加し、消費者マインドに持ち直しの動きが見られる中で、総じて見れば底がたい動きとなっていると承知をしております。

 先行きについては、雇用・所得環境が改善する中で持ち直しに向かうことが期待される、そのように理解しております。

木内(孝)委員 お手元にグラフをお配りしておるんですが、こちらのグラフは、一九九七年に消費税を上げた際のその後の消費動向、今回、二年半前に消費税を上げた際の消費の動向のグラフでございます。

 前回も、アジア通貨危機とかさまざまな金融危機等々、いろいろな問題がございました。しかしながら、消費税を上げた一年前から比較すると、この紫のグラフのとおり、一定程度の消費の回復というのは見られました。

 一方で、今回につきましては、見通しが甘かったのか何かわかりませんけれども、あるいは対策が不十分だったのかわかりませんけれども、消費税を上げる一年前から見ると、もちろん一過性の駆け込み需要があり、その後の反動減がありということではありますが、その後も消費が極めて低迷しているということが一目瞭然なグラフだと考えております。

 先ほど副大臣からお話しいただきました消費の動向についてということでございますが、これは、十月の月例経済報告、私も手元にありまして、これを読むと、「個人消費は、総じてみれば底堅い動きとなっている。」先ほどの副大臣の答弁と一緒でございます。ただ、中身をこうやって読みますと、「消費総合指数は、一部に天候の影響もあり、八月は前月比一・二%減となった。個別の指標について、最近の動きをみると、「家計調査」(八月)では、実質消費支出は前月比三・七%減となり、実質消費支出は同二・三%減となった。」こういうふうになっております。

 販売側の統計を見ましても、例えば商業動態統計でございますけれども、これも一・二%減。

 この実際の数字だけを見て、見出しが「個人消費は、総じてみれば底堅い動きとなっている。」というのは、私は極めて大きな違和感があるんです。なぜこういう表現になるのか、ちょっと理解不能なのですけれども。

 では副大臣、先ほど御答弁いただきましたが、これは何か違和感がありませんか。

木原副大臣 足元、八月の消費総合指数につきましては、ここにも表現がありますが、天候というのは、台風等がございまして、その天候不順による影響がある中での前月比マイナス一・二%減だった、そのように理解しております。

 また、違和感と言われましたけれども、確かに小売業の販売額は前月比一・二%減ですが、新車の販売台数というのが持ち直しの動きが見られるということ、また、家電販売、また、旅行は弱い動きとなっていますが、外食などはおおむね横ばいというふうになっている。そういうことを総合的に考えた場合には、この表現でも理解はできるかなと思っております。

木内(孝)委員 横ばいというのが二つぐらいあるだけで残りは全部マイナスの中でこの表現になっているということ自体が、そもそも現状認識を正確に認知できていないので、実現するべき政策目標もこれは誤ってしまっている。

 要は、今の安倍内閣の問題というのは、私は、過度な円高を修正して一定程度円安になったということは評価しておりますし、それで企業収益が改善したということも評価はしております。しかしながら、その結果として何が起こっているかというと、企業の中で内部留保がたまって、なかなか設備投資とか、とりわけ実質賃金の上昇に結びついていない。

 もう一つのグラフ、実質賃金のグラフも添付しておりますので、これもごらんいただきたいんです。

 要は、一言で言いますと、実質賃金は下がり続けております。失業率や有効求人倍率がここまで下がってきましたので、足元、若干改善の兆しがあることは非常に私も評価はしておりますけれども、これを見ると、むしろ何か当時の民主党政権のときの方が実質賃金は上がっていたんですねというのがわかるわけですけれども、これは実は、麻生総理のときのリーマン・ショックの対策として大型の補正予算を組んだ成果が恐らく民主党政権の前半に出てきたのかなと。

 なかなか、これは景気の遅行性もありますので、難しい判断ではございますけれども、とにかく、企業の収益がよくなり、内部留保が大きくたまり、結局それが好循環につながっていないというのが今の状況でございます。

 株価だけには物すごく熱心に、GPIFの公的資金や、あるいは、今度日銀もETF等を通じて、株価維持操作と市場関係者が断定するようなやり方をなさっておりますけれども、なぜもう少し個人消費に徹底的に注力したような経済政策を打たないのか。株価頼みというか、株価だけは何か熱心なんですけれども、個人消費にもうちょっと目を向けていただきたい。

 その第一歩となるのが、こういう見出しを、誤解されるような見出しということをやめてほしいということもございますけれども、麻生大臣にお伺いしたいんですが、次、消費税を上げるか上げないかの判断のときは、全体的な世界経済とかなんとかとか、いろいろなことは当然見ないといけないと思いますけれども、個人消費の回復なくして増税なし、そういう考えでやっていただかないと、いずれにしても消費税増税はできっこありません。

 そうしたお考えはないでしょうか。

麻生国務大臣 この種の、消費税というような話を考えるときには、個人消費に限らず、世界経済、ありとあらゆるものを考えた上での総合判断なのであって、個人消費もその中の重要なものの一つだと思っております。

 今言われたように、内部留保がたまっているのは確かです。三年間で、二十五兆、二十四兆、二十四兆四千億で、約七十五兆円ほどたまっておりますので、そういった意味では、明らかに企業の内部留保がたまった割には、企業がいわゆる賃金に回した率は、三兆円から五兆円の間ぐらい、設備投資で約八兆から九兆の間ぐらいと言われておりますので、そういった意味では、明らかに企業の内部留保というものがたまった割には、賃金、配当、もしくは設備投資に資金が回っていない。結果として、労働分配率が七七、八%から一〇%以上下がっている。

 これは主に労働組合の仕事なんだと思いますけれどもね。皆さん方を応援していただいておられるんだと思いますが。我々は、そこから応援されていないところが労働組合のかわりを言うのはいかがなものかといつもじくじたる思いがないわけじゃありませんけれども。私どもは、そういった意味では、間違いなくこれは上げてもらわなきゃなりませんよということを直接企業に働きかけさせていただいておるというのが実態です。

 経営者の方も、やはり二十年間という、デフレが長かったんです。結果としてかなりマインドが萎縮しておられますよ。したがって、金利がゼロでも金は借りないとか、金利がゼロでも預金するとか、どう考えてもこれまでの行動じゃ考えられない事態が起きておりますから、今積極的に企業として投資をしておられる方々、していない方々というのを見ていれば、企業の経営者の性格の違いもありますし、オーナー経営者だったりそうじゃなかったり、いろいろな分析ができるとある経済学者の人と話していて結果が出ていますけれども。

 私ども、そういった意味では、これはもうしばらく後押しをして、マインドが変わっていく方向で、しつこく、この傾向、経済を成長させていくという方向でいくという姿勢を政府としてとり続けるというメッセージはきっちり送り続ける必要があると確信しています。

木内(孝)委員 今の御答弁に関連するんですが、期待成長率あるいは期待インフレ率、これを上げるために一番大切だなと思うことは、やはりデフレ脱却に向けたメッセージを明確にするということだと思います。

 これは具体的に言いますと、先ほども、財政健全化目標、プライマリーバランスの黒字化二〇二〇年度という話がございました。何でこの目標が設定されているんでしょうか。

 私は実は、この目標設定自体があるために、期待成長率、例えば二〇〇二年から二〇〇七年くらいというのは、当時、期待成長率が約二%ありました。現在は、期待成長率というものが一%まで低下しております。要するに、この政権はちょっとでも景気が回復するとすぐに増税、ブレーキを踏むんだろうというふうに市場関係者、企業経営者はみんな思っております。

 そういう意味でいうと、本来であればプライマリーバランス黒字化というのは、この部屋にいらっしゃる方ほとんどが正しい目標だとちょっと思い込み過ぎているのではなかろうかという問題意識を私は有しております。

 その中で、新しい目標としては、債務残高対名目GDP、これを少しずつ引き下げていくという目標に変えない限り、デフレマインドの脱却というのはできないと思っているんです。

 麻生大臣、先ほど、企業経営者と会うと賃金を上げるように働きかけをなさっているという話をしました。私は、そうするべきでないと思っています。

 我が国は自由主義経済ですし、計画経済ではないのに、財務大臣のお立場の方が、仲間の中で給料を上げてくれよと働きかけるのは結構なことですけれども、自律的にしか企業というのは賃金を上げるわけがありません。私も労働組合の方と親しくさせていただいていますけれども、彼らも、結局、もうけがなければ、潜在成長力が上がらなければ賃金が上がらないことはよく理解しております。それを働きかけると公言すること自体が私は正直違和感がある中で、ちょっとプライマリーバランスについてお伺いをいたします。

 二〇二〇年度の基礎的財政収支は、ベースライン、普通の場合でマイナス九・二兆円、経済再生ケースでもマイナス五・五兆円となっております。

 その後、黒田日銀総裁や日銀関係者からも、総括的な検証を通じて、物価上昇目標の達成時期等についても弱気の発言が相次いでおりますけれども、実は今、ベースラインケースよりも大分下振れて推移しているのではなかろうかと思います。

 余りこういう目標は短期的に変えるべきではないということは十分に承知しながらも、ここまで乖離しているとなると、逆に、いいかげんな、荒唐無稽と言うと失礼になりますけれども、マーケットの人たちはみんなもうこんな目標は無理だからと断言している目標になっていますが、こういう意味のない目標あるいは無理のあり過ぎる目標を設定すると、政策にも影響しますし、あるいは税収の見通しにも影響します。

 既に物価上昇率等の前提も大きく下振れているかと思いますが、今後、このPB目標達成に向けての道筋、参考人の方あるいはどなたでも結構ですので、御答弁いただければと思います。

嶋田政府参考人 お答えいたします。

 財政健全化につきましては、これまでも社会保障の改革を含め徹底的な重点化、効率化の歳出削減にも取り組んできたところでございまして、この結果、社会保障関係費につきましては、その実質的な伸びを年平均五千億円に抑えるなど、歳出改革の取り組みは着実に成果を上げているというふうに考えております。

 御指摘の二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化目標につきましては、これは二〇一八年度時点で目標達成に向けた歳出改革等の進捗状況を改めて評価することにしておりまして、必要な場合には、できるだけ経済再生を堅持する中で、歳出歳入の追加措置等を検討するということにしておるところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、経済・財政再生計画の枠組みのもとで、改革工程表に基づきまして、社会保障の改革を含め、徹底的な重点化、効率化の歳出改善を継続してまいる所存でございます。

木内(孝)委員 財政再建は喫緊の重要な課題だということは認識しております。私も市場に近い立場で働いておりましたので、将来的に国債が暴落するのではないかとかいろいろなことが言われております一方で、これだけ消費税延期を重ねても我が国の国債のクレジットコストについても非常に安定的に推移しておりますし、私は、どう見ても、早々、すぐに破綻するとか国債が暴落するとかいう状況ではないと思っております。財政健全化を軽視するということではなくて、結局、名目GDPをきちっと上げる形でやらない限り、財政健全化に向けた道筋というのが明らかにならないと思っています。

 個人金融資産千七百七十兆円。いろいろ我が国には資産があります。デフレマインド、先ほど大臣がおっしゃっていたそのマインドを脱却さえすればまだまだ成長できる可能性があるという中で、現在のプライマリーバランス黒字化の目標が政策の足かせとなって、将来に対する不安を助長していると私は思っておりますので、前も消費税は絶対上げると言っていたのに延期してくださいましたし、ぜひ、プライマリーバランス黒字化というのが本当に正しいのか、この目標設定についても頭の片隅に置いておいていただければと思います。

 もう一つ関連しまして、名目GDP六百兆円。二〇一五年度で五百一兆円です。二〇二〇年ごろというのをちょっと拡大解釈すると、二〇二〇年度とすると二〇二一年三月末ということになろうかと思いますが、これは理論的には年率何%で実現できる数字でしょうか。これは計算式なので、三・七%です。過去二十五年間で何回名目三・七%成長したのか。

 そして、プライマリーバランスほど確固とした目標ではないのでそんなには問題ないかもしれませんけれども、やはり余りにも現実離れした数字をこうやってお示しするということは、これまた、税収の見通しとかあるいは政府の見通しに対する信頼性という観点から大きな問題があると思っておりますけれども、一体全体、この六百兆円をどのように実現をしようとしているのか、教えてください。

嶋田政府参考人 お答えいたします。

 これまで、アベノミクス三本の矢によりまして、二十年間続いたデフレからの脱却にチャレンジし、デフレではないというような状況をつくり出す中で、名目GDPは三十三兆円近く増加するというような経済の好循環が生まれていることは事実でございます。

 ただ、この流れをより確かなものとするために、先般、事業規模二十八兆円を超える経済対策を決定いたしまして、先日、補正予算を成立させていただいたところでございます。その円滑な執行を行うということで内需を力強く下支えするとともに、未来への投資というのを大胆に行っていくということにしております。

 引き続き、金融政策とか財政政策、構造改革などあらゆる政策を総動員するということで、実質GDP成長率二%程度、それから名目GDP成長率三%程度を上回る経済成長を実現し、委員の御指摘のように、二〇二〇年ころに六百兆円経済を達成するということを目指したいというふうに考えておるところでございます。

木内(孝)委員 潜在成長率もいろいろな試算があるのであれですけれども、〇・三とか〇・四とか非常に低い水準の中でこれを実現するというのは全くあり得ない数値目標だと思いますけれども、大臣、この六百兆円の目標の位置づけとか実現性についてどうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは、目標としてこれをきちんと、いわゆるプライマリーバランスのチャラという話も、今、二〇二〇年と言っていましたけれども、二〇一五年度で半減と言ったときも、あのころも皆さん方はあり得ないと言っていたじゃないですか、我々も言っていたけれども。けれども、結果的には半分になったんですよ。だから、やはりあのころの新聞の予想はみんな間違えた。はっきりしていますよ、今になってみれば。だからその意味では、これはきちんと最後までやってみないとわからぬというのは、この三年か四年の実績としてははっきりしたと思っております。

 したがって、さらにそれが引き続きうまくいくかどうか、これは全然別問題です。これは引き続きやっていかないかぬことははっきりしていますので、私どもとしては、財政投融資を使わせていただいたり、これだけ金利が下がった分だけ積極的に財政投融資等々は、いろいろな意味で使わせていただける大きな要素になり得るとは思っていますけれども、そういったものでは、やはり五百兆、六百兆という一つの目標としては、五百四十五兆円なんというよりはよっぽどわかりやすい。掲げる政策目標としては決して間違った数字とは思いませんけれども、その六百兆を一兆でも下回ったらどうのこうのとかいうような数字と思っているわけではありません。ただ、目標としては決して間違っているとは思っておりません。

 加えて、やはりデフレとインフレとではこれは全く、御存じのように数字が違ってしまいますので、そういった意味では、デフレーションによる不況というのをやったことは、過去七十年間、世界でやった国はありませんので、その意味では、日本の場合は明らかに世界の中で、事デフレに関しては先進国になったことははっきりしています。ほかの国はディスインフレとかわけのわからない新しい言葉をつくっていますけれども、基本的にはデフレですから。

 そういった意味で、ヨーロッパの場合のように、不良資産の整理も全然終わっていないそういったようなところと違って、日本の場合は、銀行、企業いずれも不良資産は九七年並びに二〇〇八年、この二回でほぼ不良資産の償却が終わって、償却というか解消が終わっておりますので、内容としては極めて健全な内容でありますから、先ほど言いました企業のマインドが変わっていかない限りはなかなか前に進んでいかないと思っておりますので、そこの企業のマインドをどうやって変えるかというところは引き続ききちっと、選挙で勝った我々はそれをやり続けるんだというメッセージは発し続けなければならぬ。これははっきりしております。

木内(孝)委員 私は、六百兆円の目標がいけない目標だとかそう申し上げているのではなくて、逆にそれを実現するための具体的な策、一言で言うと、どこの分野にどう投資するか、予算を配分するかというのは、それは政党によっても好み等々趣味もありますけれども、やはり積極財政に転換をするということが実は財政再建に向けた近道ではないかというのが、まあ、我が党もいろいろな幅広い考え方がございますけれども、私がことしに入ってから消費税は引き上げを延期するべきではないかと申し上げてきた内容と一貫していると思いますけれども、私は二年半前の消費税増税のときも全然無理だということを申し上げ続け、実際私は、アベノミクス、そこそこうまくいっていたものを二年半前の増税でかなり失敗に持っていったというふうに思っております。

 いずれにしましても、この六百兆円という目標に向けて、とにかく積極財政、足かせとなっているプライマリーバランスの黒字化、この目標が私はこの国の経済政策をゆがめて、誤った方向に持っていっているのではないかというふうに思っております。

 一つ、潜在成長率はなかなか今後も上がる見通しというのは私はそう高くないと思っております、残念ながら。それは上げないといけないわけですけれども。その中で、例えば五百兆円のGDPの中で、日本の場合、個人消費の占める割合が大体六割です。アメリカなどは七割です。

 昨年の経済財政諮問会議の中で、ある委員から提案があって、日本も経済全体に占める個人消費の割合を六割から七割に引き上げるという長期的なビジョンを持って経済政策運営に当たった方がいいんじゃないかという提言があって、それは報道にあったものですから、その後の結果についてはなかなか実現はしていないように思います。

 実は、私ども民進党が言っている人への投資というのは、個人消費の割合を上げる、そういう政策とも合致していると思っておりまして、社会保障を充実させたり、さまざまな形で人への投資というのが個人消費の割合を引き上げ、同じ五百兆円であっても、七〇%になれば三百五十兆円になります。あるいは、六百兆円で七割であれば四百二十兆円になります。そうすれば、国民一人当たりの個人消費は百万円ふえる形になるんです。

 そこに向けて徹底的にあらゆる政策を総動員するということをやれば、私は、企業マインドも変わると思いますし、デフレマインドから脱却できるというふうに思いますけれども、大臣の御所見を伺います。

麻生国務大臣 これは木内先生御指摘のとおり、日本の場合は個人消費が五八・〇ですかね、アメリカの場合が六八・幾つだった。六割と七割という表現は大体当たっているんだと思います。

 日本経済の場合は、所得環境を中心に大きくこの四年間で改善はしておりますけれども、力強さが個人消費には欠けておるというのはもう御指摘のとおりだと思いますので、その点を踏まえて消費税率の引き上げを二年半延ばしていただくということをさせていただいたりしましたけれども。

 いわゆる働き方改革とか所得の底上げを通じた消費喚起をつなげる施策というものをやらないかぬとおっしゃっているんだと思いますが、我々は年金受給資格期間の短縮をやってみたり、雇用保険料の引き下げ等々、経済対策をいろいろ策定したところなんですが、今回も経済対策における公共投資というものは、これは単なる需要喚起というものだけではなくて、今後、民需主導の経済成長につながる未来への投資に重点を置いた公共投資でないと、例えば港湾なんかが、少なくとも日本の一級港湾は水深が十五メーターとなっておりますけれども、パナマ運河は十八メーター、スエズ運河は既に二十メーターになっておりますのは御存じのとおりですし、四国の今治造船が既に全長四百メーター、水深十八メーター、幅五十九メーターのいわゆるコンテナ船を来年進水いたしますが、日本に泊められる港はありません。それが実態です。

 これは明らかに公共投資等々がおくれたということは確かですから、そういった点に関しまして、未来への投資というものに今後とも政策の重点を置いていかねばならぬということは確かだと思っておりますので、そういった意味では、潜在成長力というものが低迷しているというところが問題なので、そういった意味では、港湾をやっていくためには、いわゆる財政の出動が必要ではないか、おっしゃるとおりだと思いますので、第一の矢、第二の矢というその二番目の矢のところの財政のいわゆる機動的出動ということを申し上げて、財政緊縮一本やりみたいな話じゃだめです、金融も金融引き締めだけじゃだめですということで、日銀と私どもとの間で共同声明を出させていただいたという背景がそれなんですが、おかげさまで、財政出動させていただきましたけれども、結果としては、新規の国債発行は十兆円減らすことができましたし、税収も、地方税と合わせて二十一兆円、そのうち消費税を六兆円引いていただきますので十六兆円ふえたことになります。

 そういった意味では、おっしゃるように、財政出動という形をとった結果として、今のところそこまでうまくいっておりますので、さらにこういったものを進めていくのに、これだけやるともう少し僕は民間企業が伸びてくるかなと思ったんですけれども、民間企業はいま一つまだというような状況がありますので、これをさらにもうしばらく続けなきゃならぬかなという覚悟はいたしておりますけれども。

木内(孝)委員 今の御答弁からすると、なぜ景気判断条項を外すのかがいま一つ理解できないんです。

 といいますのは、いろいろな政策を実現してきちんと経済が再生されていれば、景気判断条項があっても十分に私は、三年後、消費税を上げることができると思うんです。それをわざわざ外すというのは、実は、不退転の決意、覚悟を示すのではなくて、自信のなさのあらわれというふうに市場関係者はとっているんです。

 これを不退転の決意とするのは、一回目、二回目はみんな聞くかもしれませんけれども、これは正直、オオカミ少年扱いになっておりますので、三年後の消費税増税は多分できないだろうと多くの人が正直思っています。思っているからこそ、景気判断条項、何で今回つけるんですか。前回もつけて失敗しているじゃないですか。

 五月に消費税延期するのに、今法案審議しているというのは、法律で法改正しなければいけないわけですけれども、景気判断条項があればこういうこともやらずに自信を持って引き上げ延期することもまたできますので、何で判断条項を入れるのか、御答弁いただければと思います。(発言する者あり)入れないのか、御答弁をお願いします。

木原副大臣 消費税率一〇%への引き上げというものは、国民の安心を支える社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するために本当に必要なものであって、二〇一九年十月には確実に引き上げを実施するとしているところであります。

 政府としては、二〇二〇年度にプライマリーバランス黒字化を実現するという財政健全化目標を堅持しておりまして、その実現に向けて、民需主導の経済の好循環を確実なものとすることを通じまして、この二〇一九年十月の消費税率の一〇%への引き上げが可能な環境を確実に整えるべく、経済財政運営に万全を期していくということとしております。

 このために、今般の法案には、御指摘の景気判断条項は盛り込んでいないというところでございます。

木内(孝)委員 余り納得感のある答弁ではございませんけれども、何度も同じ答弁を聞いていますので、わかりました。

 次の質問ですけれども、今回、消費税引き上げを延期することによって、国、地方における税収が減ります。減った結果、幾つかの政策実現が延期になったり等々するわけですけれども、そういうふうに影響が出ないようにいろいろ御努力はいただいているということは理解しておりますけれども、やはり、低年金対策とか介護保険低所得者対策とか、個々の財政支援強化とか、いろいろ期待されていた政策の中で先送りになっているのもあると思います。

 ここら辺の先送りになったことに対する責任というのは誰かおとりになるんでしょうか。どういう政策が実際見通しが立っていて、どういう政策が見通しが立っていないのか。御答弁お願いします。

麻生国務大臣 社会保障の充実につきましては、これは給付と負担のバランスということを考えれば、消費税率の一〇%引き上げというのを延期する以上は、全てできるということはありません。当然のことだと思いますので。ただ、赤字国債を財源として社会保障の充実を穴埋めするというつもりもありません。

 その中で、今言われましたように、待機児童ゼロに向けた保育の受け皿五十万人分の確保というものにつきましては、これは来年度までの達成に向けて約束どおり実施をさせていただきたいと考えております。

 また、先ほども申し上げましたが、年金の受給資格の短縮、これは平成二十九年度中に、例の二十五年から十年というものにつきましては、政府としては所要の法案を今国会に提出させていただきたいと考えております。

 また、保育士、介護職員の処遇の改善などについては、この一億総活躍プランの中におきまして取り組んでおりますけれども、アベノミクスの成果の活用も含めて、財源を確保してこれは優先的に実施をしていきたいものだと考えております。

 その他の取り組みにつきましても、これはちょっと優先順位を今からいろいろつけないかぬところだと思っておりますけれども、いずれにしても、今後の予算編成をやらせていただきますので、その過程の中で最大限努力をしていきたいと考えております。

木内(孝)委員 わかりました。ありがとうございます。

 次に、逆進性対策としての軽減税率と給付つき税額控除の比較についてお伺いをいたします。

 先ほど伊藤委員から論点整理もありましたし、伊藤委員のお話を聞いていますと軽減税率もいいのかなという気もすることもあるんですが、実は私、二〇〇九年に初めて選挙を戦ったときに、生活必需品は軽減税率にするべきだと自分のチラシに個人の政策としてうたっておりました。外地に十六年ほどおりましたので、行った国々みんな軽減税率が導入されていて、それが定着していて、こんなすばらしい政策はないんじゃないかと。三党合意の過程で党内で議論しているときも、給付つき税額控除といっても、意味も最初は理解できずに、私も軽減税率がいいと思ってずっと議論をしておりました。

 しかしながら、その後研究を進めた結果、あるいは当委員会でもいろいろな方がいろいろな指摘をされて、新聞の軽減税率おかしいじゃないかとか、麻生大臣からもこの委員会、昨年だと思いますけれども、面倒くさいという一言で切り捨てていただいたりとか、やはり事業者負担がなかなか大変だと。こういう問題点もあって、今、結論的には、逆進性対策にまずならないということとか事務負荷とかコストとかいろいろなことを含めて、私は給付つき税額控除の方がいい制度だと思います。

 もちろん、まだ制度が導入されておりませんので、途中、経過措置として不都合等々あるのは承知の上で、それも含めて給付つき税額控除がいいと思っております。

 実は私、自民党の議員の方も大勢個人的にはおつき合いもございまして、今までに一人も、軽減税率、私は強く賛成なんだという人にお会いをしたことがないんです。政治的に決まったから、決まったことに俺は従うという意見しかいただいたことがなくて、これだけ大勢の人が反対しているというのは、私は、政治的に一回支援者とかに約束をしてしまったからこれを強引にやるというのは間違っていると思っていまして、やはり研究を進めると政策転換というのはあると思うんです。

 この論点はもう十二分に議論されておりますので、ちょっと飛ばしたいとは思いますけれども、やはり逆進性対策というのは個人消費の低迷を見ても非常に大切な論点でございますので、ぜひ御努力いただければというふうに思っております。

 個人消費を押し上げる具体策についてお伺いをいたします。

 今回、簡素な給付措置というのが補正予算等でもございました。ちょっと金額が、年間六千円とかいうと大分つつましい感じだなということで、効果があるのかなという気はしますけれども、こういうのもやらないよりやった方が確実に効果がありますし、いいと思います。

 でき得れば、先ほど申し上げた給付つき税額控除という制度、日本版ベーシックインカム、金額をふやしたり減らしたりすればいろいろな形で生活最低保障的な制度になりますので、これも私は制度として導入したらいいと思っております。まあ、ほかに社会保険料の減免とかいろいろありますけれども。

 この間本会議でちょっとお伺いしまして、これは必ずしも麻生大臣の所管ではないのですが、やはり公共料金というのも割と高く放置されてしまっているのがあると思っています。

 昨年の予算委員会で私はNHKの受信料を下げるべきではないかと言ったら、籾井会長も高市大臣もゼロ回答でございました。一切下げる気はありませんと。

 ただ、新社屋三千四百億円、これはおかしくないですか、新国立と金額が似ていたので軽い気分で聞いたら、いや、これは二十六万平米掛ける百三十万円で三千四百億円ですという答えが返ってきて、これはおかしいだろうと指摘をしたら、現在、千七百億円という金額に変わっています。まあ、放送施設とかいろいろ入っていないかもしれませんけれども。あと、バランスシートを見ると、もちろん前受け金だ何だとかいろいろな勘定はありますけれども、かなりのお金がたまっています。

 私は、受信料を五%から一〇%程度下げることができると思うんです。麻生大臣は、財務大臣でもございますけれども、副総理でもありますし、以前、総務大臣もやられていたのでNHKの土地カンといいますか、あるのではなかろうかと思います。

 この間の高市大臣の本会議場での答弁で、NHKさんに対して、引き下げということなのか、受信料の見直しの指示をしているという話がございましたけれども、何%、いつごろまでをめどに引き下げることを御検討なさっているんでしょうか。

今井参考人 お答え申し上げます。

 NHKの受信料のあり方についてのお尋ねでございますが、NHKの受信料につきましては、4K、8K、スーパーハイビジョンでございますとか、あるいはインターネットの活用業務等々新たな業務への対応、また、それらも含みます今後の収支の状況等を踏まえまして、以前から内部的には議論を進めているところでございますが、現時点では何か具体的な方針は決まっておらないというふうに御理解いただければと思います。

木内(孝)委員 三千四百億円の新社屋を建てると言って、いきなりそれを千七百億円にしたりとか、やはり、保有している現金の使い道、受信料引き下げの原資があるにもかかわらず下げていないというのは私は極めて乱暴な話だと思っておりまして、高市大臣からもああいった御答弁をいただきましたので、ぜひ受信料引き下げ、これは家計に直接届く政策となります。個人消費を押し上げるためのあらゆる政策に手をつけていただきたい、そのように思っております。

 もう一つ、電力料金についてでございます。

 東京電力さんは、原賠機構を通じて、交付国債というスキームを通じて九兆円の枠があって、今、六・五兆円ぐらい負担しているという理解でありますけれども、今後、これが九兆円を超えて、場合によってはこの交付国債の額もふえる可能性があります。

 今、貿易収支が大きく改善していると言われている中で、その一番の理由は、いわゆる油、原油、エネルギーにかかわる調達コストが円高、原油安で非常に改善をしている。そういう中で、本来であればこの円高、原油安メリットを我々消費者個人が家計として受け取れるはずのものが、この九兆円という重い十字架を背負わされているために、電力会社が電気料金を引き下げする大きな障害となっていると思います。

 これはどちらかというと経産委員会の問題ではあると思いますけれども、やはり個人消費を押し上げるために電力料金の引き下げを実現するためにも、そもそも原賠法三条であの地震、事故が天変地異に相当しないということ自体が、法律として私は誤っていると思いますけれども、この電力料金引き下げになぜ円高、原油安が結びつかないのか。御答弁をお願いできればと思います。

村瀬政府参考人 御答弁させていただきます。

 まず九兆円のことでございますけれども、福島第一原発に係る賠償、廃炉・汚染水対策等につきましては、同原発を所有いたします原子力事業者であり、事故を起こした東電みずからが責任を持って行うことが大原則かと認識をしております。

 ただし、福島再生に向けて除染、中間貯蔵施設事業を加速させるとともに、国民負担の増大を抑制し、電力の安定供給に支障を生じさせないようにする、こういう観点から、平成二十五年十二月の閣議決定で、国も前面に出るということで、国と東電の役割分担を整理いたしているところでございます。

 具体的には、閣議決定では、九兆円の支援枠の財源について、被災者賠償分については、全原子力事業者の一般負担金と事故を起こした事業者の特別負担金を主な原資としまして回収される。それから、除染費用分については、原賠・廃炉機構が現在保有する東電株式の将来的な売却益により回収をする。さらには、中間貯蔵費用相当分につきましては、エネルギー対策特別会計からの資金交付により回収を図る、こういうことになっているところでございます。

 引き続きこうした閣議決定に沿って国としても適切に対応していきたいと思っておりますが、電気料金につきまして、現下の燃料価格の変動に対応してこれを料金に反映させる制度、いわゆる燃料費調整制度というものが設けられておりまして、本制度によりまして、足元の電気料金につきましては、震災以降上昇しておりました電気料金につきましても、最近では、燃料費の低下に伴いまして電気料金の方も低下傾向ということになってございます。

木内(孝)委員 この九兆円は、電力会社さんが負担をするという形にはなっていますけれども、実際は、電力料金を通じて国民全体が重い十字架を今後三十年、四十年かけて背負い続けるという制度になっております。

 したがいまして、個人消費、せっかく円高、原油安差益を還元できるところ、それがなっていないという実情を私は国民の皆様にも理解いただいた上で、麻生大臣も、この点、交付国債ということを通じて電力料金にも目を配っていただければというふうに思います。

 それと、きょう私ずっと積極財政、積極財政ということばかり申し上げてまいりました。だからといって、私は財政健全化を軽視しているわけでは全くございません。私は、やるべきことは、国が保有している資産をどんどん売却できるものはしていけばいい、そのような考えです。単に売却するということでもなく、我が国の政策はいわゆる計画経済的な要素を含んだ政策が非常に多うございますので、これを自由主義経済に大きく転換するためにも、私はいわゆる完全民営化等を推進するべき立場であります。

 JR九州が昨日完全民営化され、非常にすばらしい形の上場で、私もうれしく思っております。その中で、JR九州も赤字ローカル線をたくさん抱えていると承知しています。だからといって、電車を通さないとかすぐ廃止するとかそういうことはやっていないと思うんです。やはり公益性が非常に高いですし。

 この間、NTT株の売却が可能じゃないかという話をしたら、全国あまねく通信網をといういつもの答弁をいただきました。私は、一〇〇%株を売却しても、全国あまねく安定した通信網を整備することは物すごく簡単に実現可能なことだと思っております。

 それともう一つ、これは財務省の所管でございますが、前に大臣からも御答弁いただきましたが、日本たばこの株式、これも二・六兆円ございます。全量買い取りという制度そのものはよく私も承知しております。二倍、三倍近い内外価格差があることも承知しておりますし、葉たばこ農家を切り捨てろとかそういうことを言っているのではなくて、きちんと農家を保護した形で制度設計をして、私は、一〇〇%売却をして六兆円程度の財源の捻出が十分に可能だと考えますが、最後に大臣の御答弁をお願いいたします。

麻生国務大臣 NTTとたばこと両方あったんですが、電話サービスというもの、これは、公平、適切、安全にきちんと提供するというのは、これは間違いなく公共的役割ということがあろうと思いますので、これとJR九州と一緒にするのはちょっといかがなものかということだという感じが率直な感じです。

 それからJTの話ですけれども、国産葉たばこの全量買い取りというのを実質的に担保するというのは、これは意義があると私は思っております。これを全部やめちゃうという話はなかなか簡単な話じゃないのであって、今、TPPの話やら何やらも全部関係してくるところだと思いますが、ちょっとこれは慎重に検討を要するところだと思っております。

 国内葉たばこ農家を保護するという具体的内容をまだ伺っていないので直ちにコメントすることはちょっと難しいんですが、JTと葉たばこ業者との間の長期契約というのは当然結んでいると思いますけれども、その関係というものを考えたときに、いろいろな対策というものを指しておられるのであれば、そもそも、長期契約を終了した後の葉たばこ業者の生産というのをどう考えるか、言えば、どこかほかのところに売るんですかという話とか、完全民営化後の株式会社に対して、長期間の経済負担というか経費負担を負います買い入れ契約を強制するということが政府として可能かと言われたら、ちょっとなかなか難しいと思いますし、政府保有義務の存続を強くする葉たばこ農家の不安というものも考えておかないかぬところだと思いますので、これはいろいろ慎重な討議が必要だろうと思っております。

木内(孝)委員 ありがとうございました。終わります。

御法川委員長 次回は、来る二十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三分散会


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