衆議院

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第5号 平成28年10月28日(金曜日)

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平成二十八年十月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川信英君

   理事 井上 信治君 理事 土井  亨君

   理事 藤丸  敏君 理事 宮下 一郎君

   理事 山田 賢司君 理事 木内 孝胤君

   理事 伴野  豊君 理事 伊藤  渉君

      石崎  徹君    小倉 將信君

      大岡 敏孝君    大野敬太郎君

      大見  正君    鬼木  誠君

      勝俣 孝明君    神田 憲次君

      斎藤 洋明君    坂井  学君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      竹本 直一君    津島  淳君

      中山 展宏君    福田 達夫君

      宗清 皇一君    村井 英樹君

      山田 美樹君    若狭  勝君

      今井 雅人君    小川 淳也君

      奥野総一郎君    重徳 和彦君

      鈴木 克昌君    初鹿 明博君

      古本伸一郎君    鷲尾英一郎君

      渡辺  周君    上田  勇君

      浜地 雅一君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 古市 裕久君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 池田 憲治君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 開出 英之君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (国税庁次長)      飯塚  厚君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            吉野 恭司君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十八日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     小倉 將信君

  宗清 皇一君     若狭  勝君

  今井 雅人君     鈴木 克昌君

  重徳 和彦君     初鹿 明博君

  古川 元久君     奥野総一郎君

  前原 誠司君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     竹本 直一君

  若狭  勝君     宗清 皇一君

  奥野総一郎君     古川 元久君

  鈴木 克昌君     今井 雅人君

  初鹿 明博君     重徳 和彦君

  渡辺  周君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     前原 誠司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として総務省大臣官房審議官古市裕久君、大臣官房審議官池田憲治君、大臣官房審議官開出英之君、財務省主税局長星野次彦君、国税庁次長飯塚厚君、中小企業庁事業環境部長吉野恭司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 おはようございます。民進党の鈴木でございます。

 初当選以来、ほとんどが財務金融委員会に所属をさせていただいたんですが、おかげさまで、今回、総務委員会の方に出世をすることができました。ただ、きょうはまたこちらに呼び戻されまして、麻生大臣のお顔を久しぶりに拝見をするということで、大変うれしく思っております。

 法案の質疑に入る前に、日銀の国債の買い入れについて総裁に二、三お伺いをして、そして本題に入りたいというふうに思います。

 確認するまでもないわけでありますけれども、日銀の国債の直接引き受けは財政法第五条で禁止をされております。日銀は、一旦金融機関が買って市場に出た国債をオペで買い入れている、したがって財政法違反ではないという説明をされております。

 確かに、法律上ではそのような解釈になるかもしれませんが、実際は、金融機関が買った例えば翌日や、極端に言うと一分後とか一秒後に日銀が買い入れるということがもしあるならば、それは果たしてどんなものなのかという疑問を呈せざるを得ないわけであります。

 法律論よりも実体論を重視されている経済学者というふうに言われておりますが、FRBのバーナンキ前議長、それからアメリカのサマーズ元財務長官は、日本の金融政策を、政府の借金を中央銀行が直接引き受けるヘリコプターマネー政策に似ていると言っているわけであります。その疑いが指摘をされている以上は、財政法第五条の精神からしても、独立府の人間がチェックする必要があるわけであります。

 そこで、きょうは総裁に、直接引き受けについて、現状と、それから、それに対するお考えをお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、財政法で日本銀行が国債を直接引き受けることは禁止されておりまして、日本銀行が現在行っておりますのは、あくまでも、金融政策の観点から必要な国債を市場から買い入れているわけでございます。

 具体的に申し上げますと、日本銀行が行っております大規模な金融緩和政策、これはあくまでも二%の物価安定の目標を実現するために行っているものでありまして、これは、財政ファイナンスあるいはヘリコプターマネーとは異なるものであるというふうに考えております。

鈴木(克)委員 なぜ私がこのような確認をするかということを申し上げますと、ちょっと古い話ですけれども、昭和四十六年の十一月一日に、第二十二代の佐々木直日銀総裁が参議院の予算委員会でこのようにおっしゃっているわけです。

 財政法の規定、それからまた日本銀行として今とっております国債の直接引き受けはしない、それからまた発行後一年未満の国債あるいは政保債の買い入れは、これは右から左に消化するという印象を与えるということで、やっぱりそこに歯どめの効果を持たすために一年未満は買い入れをしない、この二つの原則は日本銀行として強く維持していくつもりでありますと述べておるわけであります。

 ただし、この一年ルールは、二〇〇二年にオペ対象銘柄を拡大する目的で、発行後一年以内のもののうち、発行年限別での直近発行の二銘柄をオペ対象にしないというように縮小をされたわけであります。

 現在、日銀は国債購入にどのような歯どめを設けているのか。歯どめがなくなれば、かつて懸念していた右から左に消化する事態となって、財政法による制約は事実上消えうせることになるというわけであります。

 総裁、この点はいかがでしょうか。

黒田参考人 国債が大量に発行されるようになった以降、当初は、たしか私の記憶では、大蔵省、財務省と国債を引き受けるシンジケート団との間の合意事項として、国債を引き受けた金融機関、銀行は、一年は市場に売らないというようなことをしていたわけです。それはまだ国債市場が十分発達していないところに、ニクソン・ショック以降、国債が非常に大量に発行されるようになった。そういうルールをしていたわけですから、そのルールも、当然のことながら、国債市場が発達してきて、なくなっているわけです。

 今や財務省が発行する国債につきましては、そもそもシンジケート団という形をとっておりませんで、プライマリーディーラーがマーケットメークをするという形になっております。

 そういう形で、国債市場が非常に深く、広く、流動的なものになってきたということを踏まえまして、日本銀行も、国債についてそういったような規制、制約は必要ないだろうということで順次緩和をしてきておりまして、現在は、御指摘のような制約、規制というのは課しておりません。

 ただ、そのことは、今申し上げたように、国債市場の発展に合わせて最も適切なオペを行うことを目的として行ってきたものでありまして、先ほど来申し上げておりますように、国債の直接引き受けであるとかあるいは財政ファイナンスを意図したものではございません。

鈴木(克)委員 もう少し申し上げたいと思うんです。

 現在、財務省による国債発行の入札の翌日に日銀はほぼ必ず大規模な国債買い入れオペを実施している。全体として金融機関や機関投資家が日本国債を買う意欲は弱くなっているため、証券会社の債券ディーラーは、国債を財務省から購入しても転売する当てがなく、翌日日銀が買ってくれることを前提にして国債発行の入札に応札している。

 これは、ある方の本から、まあお名前を申し上げても別にいいんですけれども、抜粋をしたものでございます。

 ここで重要なのは、政府から国債を購入する証券会社は、そもそも国債を保有する意思も他の金融機関へ転売する意思もなく、ただただ日銀が買ってくれることを前提にして政府から国債を購入しているのだという事実であります。

 つまり、証券会社は文字どおり、政府、日銀間のトンネル役にすぎません。国債が証券会社の手元にあるのは一日だけ。これは日銀の直接引き受けと全く変わりません。

 それでも財政法違反ではないと言う根拠はどこにあるのか。一旦証券会社の手に国債が渡ったのだから財政法違反ではないと言うのであれば、仲介業者さえ入れれば、政府は幾らでも日銀に国債を引き受けさせることができるということになるわけであります。

 これは財政法を骨抜きにする解釈と言わざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、現在、日本銀行が行っております大規模な金融緩和政策は、あくまでも二%の物価安定の目標を実現するために行っているものでありまして、日本銀行が主導して行っているものでありまして、政府から言われて国債を買うとか、あるいは、政府から直接国債を引き受けるといったようなことは全くしておりませんで、財政法の違反とか、そういう問題は生じておらないというふうに理解をしております。

鈴木(克)委員 私は少し見解が違うわけでありますが、話をちょっと先に進めます。

 日銀の金融政策がヘリコプターマネー政策と断定するには、恒久的なマネーの増加等により日銀がインフレファイターの役割を放棄したと言えることが必要であります。

 それには決定的に重要な要素が幾つかあるのだと思いますが、政府は本当にインフレによらない財政再建を進める心づもりはあるのか、私は疑問に思っております。最近の政府の財政出動一辺倒の姿勢からはその覚悟が感じ取れないわけであります。

 政府が財政再建に取り組まないと、日銀にその気はなくても市場にヘリコプターマネー政策と捉えられてしまうおそれがありますが、この点について総裁の御見解をお伺いします。

黒田参考人 繰り返しになって恐縮ですが、あくまでも、日本銀行が行っております国債の買い入れは、物価安定の目標を実現するために行っているものであります。一方、御指摘の財政運営あるいは国債管理政策等は、政府、国会において決定されるものであるというふうに理解をしております。

 政府は、機動的な財政政策を行うとともに、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化目標などの中長期的な財政規律を堅持する方針であるというふうに私ども理解しておりますし、また、二〇一三年の一月に政府と日本銀行で取り交わしました共同声明におきましても、政府が、持続的な財政を実現するために健全化を進めるということをはっきりとコミットしておられるというふうに理解をしております。

鈴木(克)委員 続いて、確認を含めてお伺いをするんですが、一月にマイナス金利政策を導入されました。先月の長短金利操作つき量的・質的金融緩和導入までの間、日銀トレードという言葉が流行いたしておりました。長期金利の水準がマイナス水準まで下がり過ぎて、さらにイールドカーブがフラット化したことが指摘をされているわけであります。

 これを冷静に分析をすると、長期金利水準が市場水準を下回る国債バブル状態であった可能性が出てきます。そうすると、政府の国債による金利コストを日銀が補填していたという疑いが出てきます。この間、相当の額の国債を発行したと思います。

 今回の日銀の政策枠組み変更には、金融仲介機能の低下、金融政策の効果の低下という副作用を解消するという表向きの理由もありますけれども、ヘリコプターマネーに足を突っ込み始めたところを引き返したという面もあるのではないかというふうに思います。

 長短金利操作つき量的・質的金融緩和を実施するに当たっては、長期金利を引き上げる必要がありますが、これには相当な金利上昇圧力がない限りは、結果的にテーパリングが必要とはなりませんでしょうか。日銀の見解をお伺いします。

黒田参考人 御指摘の長短金利操作つき量的・質的金融緩和におきましては、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、二%の物価安定の目標の実現に向けたモメンタムを維持するというために、最も適切なイールドカーブの形成を促すということにしております。

 九月の決定会合では、具体的に、短期政策金利をマイナス〇・一%にするとともに、十年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行うという金融市場調節方針を決定いたしました。

 その際、国債買い入れについては、保有残高の増加額年間約八十兆円をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運用することとしておりまして、大きく買い入れ額が減少するとは考えておりません。

 なお、市場の状況等により買い入れ額が多少変動することがありましても、これはあくまでも長期金利操作目標を実現するための技術的な調整でありまして、FRBが金融政策の正常化に向けて出口政策の一環として国債買い入れ額を段階的に減少したいわゆるテーパリングとは全く性格を異にするものではないかというふうに考えております。

鈴木(克)委員 そうすると、テーパリングは必要ではないという総裁の御見解というふうに理解をしていいんでしょうか。

 もし、総裁がおっしゃるようにテーパリングが必要ないというのであれば、金利上昇圧力が市場には存在をしており、日銀が金融政策で市場水準を下回るように金利低下を促していたことになるんではないでしょうか。このことは、先ほど述べましたように、日銀から政府への利子補填に当たるのではないか、私はこのように思いますが、間違っておるでしょうか。総裁、いかがですか。

黒田参考人 金融政策はあくまでも、いわゆる中立金利と申しますか自然利子率というか、それよりも低い金利を実現することによって、経済を刺激し、物価を安定させようという政策でありますので、当然のことながら、自然利子率あるいは中立利子率よりも低い実質金利を実現しているわけであります。

 それは、経済に今申し上げたような刺激的な効果を与え、物価を二%程度安定的に引き上げていくということの実現のために行っているものでありまして、政府に対する補助金を云々するというようなものでは全くございません。

鈴木(克)委員 私とは少し見解が違うということであります。この問題はまた機会があれば議論をさせていただきたいというふうに思っていますが、最後に大臣、今の私と総裁のやりとりを聞いておみえになって、何か御感想、御所見があればお聞かせをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 総裁も答えられておりますとおり、日本銀行の一連の金融政策は、これは四年前の日本銀行との共同声明によって、物価目標というものを二%というのがいわゆる目標であって、その他のものはそれに当たっての手段ですので、私どもとしては、今行われている一連の長短金利操作つき量的・質的緩和政策等々、こういったようなものを含めまして、これは極めて目的は明確であって、日銀の財政ファイナンスであるかのごとき話は違っていると思っております。

鈴木(克)委員 ぜひ一度、また機会を捉えて議論をさせていただけたらというふうに思います。

 それでは総裁、これでお引き取りいただいて結構でございます。

 それでは、消費税法等の改正案について順次お伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 まず最初に、消費税率引き上げ再延期の理由であります。これについては、本会議でも、また当委員会でも質疑が再三行われておるわけでありますが、私は、再延期の理由について改めて確認をさせていただきたいというふうに思います。

 前回の消費税引き上げ延期の際、安倍総理は、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施をしていくとたびたび答弁されておりました。そして、今般の消費税率引き上げ時期の再延期に当たり、安倍総理は、新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面しているとの認識を示した上で、現時点でリーマン・ショック級の事態は発生していない、熊本地震を大震災級だとして再延期の理由にするつもりはないとしながら再延期をするという判断をされたのは、これまでの約束と異なる新しい判断なんだ、こういうこともおっしゃいました。

 つまり、新たな増税延期の理由が見つかったから過去の発言を撤回し、選挙に勝ったから再延期しますということではないか。私はそのように思えてなりません。

 安倍総理の前回の増税延期の表明が平成二十六年十一月、そして、今回の再延期の表明が本年六月、わずか一年半程度で、リーマン・ショック級の事態が発生していないにもかかわらずここまで政策転換する状況に追い込まれたのは、やはり、アベノミクスの失敗と私は指摘をせざるを得ないわけであります。

 改めて、麻生大臣から消費税率引き上げ再延期の理由についてお聞きをしたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、現下の経済情勢を見ますと、きょうも有効求人倍率が一つ上がったと思いますが、一・三八に上がったのかな、いずれにいたしても、百人の学生が卒業すると、この間までは八十一社とか二社からの求人広告が今では百三十七社からの求人広告があるというのは、景気がよくなっていること以外の何物でもない。当たり前の話だと思っております。失業率も、きょうも〇・一下がっておりましたので今は三・〇になったと思いますが、いずれもそういった意味では低水準でありますし、賃金の引き上げは三年連続で最高水準ということになっておりますので、雇用の所得環境とか、雇用関係というのは大きく変化をし改善しておりますので、確実に経済再生に向けた成果が生まれておりますので、アベノミクスは失敗との御指摘は当たらぬと思っております。

 他方、個人消費というものに力強さを欠くという状況にあることは確かですので、新興国の経済に陰りがあるというのもはっきりしておりますので、需要の低迷とか成長の減速リスクが懸念をされていることはもう間違いないところだと思いますが、こうした状況を踏まえて経済・財政再生というものを考えたときに、いわゆる資産のデフレーションから始まった今回の、少なくとも過去七十年間で初めて起きた、デフレーションによる不況というものからの完全な脱却に向けた取り組みに万全を期すためということで、五月に行われた伊勢志摩のサミットのときにも、あらゆる経済政策を総動員するという合意がなされておりますので、構造改革の加速などを含めまして、我々としては、総合的かつ大胆な経済対策というものを行わねばならぬということとあわせて判断をさせていただいたという結果の話だと考えております。

鈴木(克)委員 いろいろその成果が出ているということをおっしゃいました。ただ、後半で個人消費が伸びていないということもおっしゃったんです。つまりそれは、アベノミクスがうまくいっていないということじゃないですか。

 これはかなり苦しい言いわけをされなきゃならない。大臣のお立場も私はわからないわけではありませんけれども、いずれにしても、この理由でそうですねと言うわけには私はいかない。おまえが一人いかなくても関係ないよとおっしゃればそれまでのことですが、私は、非常に理由にもならない理由であるというふうに思っています。

 それで次に進めさせていただきますが、消費税率の引き上げの時期、つまり、なぜ三十カ月延長をしたのかということなんです。ここも明確ではないんですよ。

 今般の消費税率引き上げの時期の再延期に当たり、安倍総理は、二〇二〇年度の財政健全化目標は堅持するとした上で、そのため、ぎりぎりのタイミングである二〇一九年十月には消費税率を一〇パーへ引き上げることとし、三十カ月延期すると表明をされたわけであります。

 しかしながら、その後、内閣府において消費税率引き上げ時期の再延期を前提として試算をされた資料では、国、地方を合わせた二〇二〇年度の基礎的財政収支は、ベースラインケースでマイナス九・二兆円、経済再生ケースでもマイナス五・五兆円という結果になっておるわけです。

 そこで、安倍総理が御発言をされたぎりぎりのタイミング、つまり、二〇一九年十月というのはどのような根拠に基づく判断であるのか、大臣にお尋ねします。

麻生国務大臣 御存じのように、政府としては、一〇%への引き上げを延期することとさせていただきましたし、事実、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化は堅持する、実現するんだという財政健全化目標はそのまま堅持をいたしておりますので、その実現というものを損なうことがないように、今言われましたように、十月ということを、引き上げを実施しますということを申し上げさせていただいております。

 これは、その時期までに行えば、二〇年度におきます国の消費税収というものがほぼ平年度化することを踏まえたものであります、一九年十月であれば。

 いずれにいたしましても、消費税率引き上げを前提にした、今御指摘のありました内閣府の中長期試算というものの経済再生ケースでも、二〇二〇年度においてマイナス五・五兆円のプライマリーバランスの赤字は見込んでいるというところも確かでありますので、引き続き我々といたしましては、歳出歳入両面の取り組みを進めていく必要がありますし、事実、これまでも、この三年間の間、間違いなく、見ていただいたら御存じのように、新規国債発行は十兆円減額をいたしておりますし、税収は地方、国合わせて約二十一兆円増収になっておりますし、いろいろな形でそれなりの成果は上がってきておるんだと思っておりますので、私どもとしては引き続き、社会保障等々の伸び率が一兆円とか言われたものも、この三年間で見ますと約五千億程度でおさまっているという状況を継続していくというような形、プラスさらにいろいろな努力をするんだということになりますけれども、きちんとその方向に沿って事は進めていると思っております。

鈴木(克)委員 さらに努力をするという意気込み、これについては私もある意味では評価をしたいと思いますが、ただ、財政健全化目標達成に向けたその具体的な方策は、私はやはり、たださらに努力をしますと言うだけでは済まないと思うんですよ。

 一方で、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化を実現するという目的は堅持します。それで、未来への投資を実現する経済対策を初めとする強い経済の実現を目指して進みます。努力をします。こういうことであります。だけれども、それによって私は、なるほどそうですかと言うわけにはやはりいかないと思うんです。

 というのは、上げますと言って上げられなかった。経済指標も外しました。必ずやりますと言って、結局また今度も上げられなかったということです。上げるのがいい悪いの議論は別としても、今まで言ってきたことがやはり実行されていないわけですよ。だから私は、アベノミクスは失敗しておるんじゃないですかと。現に、道半ばだと三年半言い続けてみえるわけですよ、道半ば、道半ばと。

 例えば子供たちに、歩いて、遠足でもいいですよ、ようやく半分まで来たからな、半分まで来たというのはあと残りは半分ですよ。だけれども、またさらに半分行ったら、もう半分まで来たからな。これはやはりもう繰り返しだというふうに思います。

 いずれにしましても、財政健全化目標に向けた具体的な方策というのは、さらに努力をしますという言葉だけではないのかなというふうに私は思いますが、いやそんなことないということであれば、再度御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 少なくとも、一九九二年からバブルが崩壊したと多分もうしばらくすると歴史家が書くんだと思いますけれども、これ以後、今日まで二十数年間続いたいわゆるデフレーション、正確には資産のデフレに伴いますデフレーションによる不況というものの影響というのは、極めて長く経営者のマインドに響き、いろいろな形で影響を与えているというのは事実だと思います。少なくとも、ああやって給料を減らしているんですから。組合もそれを黙っておるわけでしょう、応援してもらっているからよくわかっておられるんでしょうけれども。こっちがかわりに言ってんだぜ。おかしいと思わぬですか。皆さん方のときに言わなきゃおかしかったんじゃないの。

 そして、我々になったときには、労働組合の給料は上げてください、なぜならば、少なくとも労働分配率は下がっているじゃないですかと。かつては七八、七九あったんですよ。それが今は七八どころか、六八とか七とかいうところまで下がった。というところまでに下がった最大の理由は何ですか。経営者と労働組合との話し合いの結果、みんなが納得してそれで下げておられるから給料は上がらないんだ、だから消費がふえないという話をしておられるんですから、やはりこういった意味では、法人税を下げるの何よといろいろ言っておられる割には給料がふえない、そちらの方には内部留保が七十四兆だ五兆だとたまっている割には給料に回っている分は三兆とか五兆しかないのはおかしくありませんかという話を我々は申し上げ続けておるわけです。

 これは民間の話ですから私どもとしては何とも限度があるんですけれども、少なくともそういった傾向の中にありますので、そういう上げられる状況になっているということは、これはアベノミクスが成功したから上げられる状況になっているということなのであって、そこから以後の話は、これは労働組合と経営者の間の話であってみたり、設備投資につきましては、これは株主と経営者との話とかいろいろなことも考えられるでしょうし、会社の中での意見というのも違っているんだと思いますが、いずれにしても、そういう話をしていただかないと、我々がそういったようなことがしやすい状況に税制をやってみたり規制をやってみたりいろいろいたしましても、それに応える対応というのはさらに時間がかかるから、したがって道半ばと言わざるを得ないということだと思っております。

鈴木(克)委員 経営者と組合の話は、それは大臣のお考えということでお聞きをしますが、私が申し上げたいのは、要するに、上げますと言って上げられなかった、やりますと言ってやれなかった。ここなんですよ、問題は。

 だったら、できないのなら最初からできないとおっしゃれば、では、どうしたらできるようにしますかお互いに考えましょうねということになると思うんですけれども、やります、できます、努力しますと言って、結果的に、何年かたったらできませんと言うから、アベノミクスは失敗しているんじゃないですか、道半ば、道半ばというのはいつまでも許されませんよということを申し上げているわけであります。

 いずれにしましても、これを言っているとまた時間がどんどん過ぎてしまいますので、大臣、個人的に御指導をと言うとまた叱られるかもしれませんけれども、御指導をいただけたらというふうに思います。

 次に、あとわずかでありますが、やはり、この消費税増税と裏腹にあるのは社会保障の充実ということだと思います。この社会保障の充実のスケジュールと、それに対する財源確保についてお伺いをしたいと思います。

 社会保障の充実については、消費税率引き上げによる増収分のうち、本年度は一・三五兆円程度、消費税一〇%段階では二・八兆円程度を充てられる予定であると承知をいたしております。

 今般の消費税率引き上げ時期の再延期による社会保障の充実への影響について麻生大臣は、消費税率一〇%への引き上げを延期する以上、全てを行うことはできないが、赤字公債を財源に社会保障の充実を行うような無責任な、どこかの党が言ったのか知りませんが、無責任なことは行わない旨、答弁をされております。

 また、待機児童ゼロに向けた保育の受け皿五十万人分の確保については、来年度までに達成、年金の受給資格の短縮については、平成二十九年度中に実施できるように、所要の法案を今国会に提出しているとも答弁をされているわけであります。

 さらに、保育士、介護職員などの処遇改善など、一億総活躍プランに関する取り組みについては、アベノミクスの成果の活用も含め、財源を確保して優先的に実施することも答弁されております。

 そこで麻生大臣にお伺いをするわけでありますが、例えば、年金生活者支援給付金や介護保険料の低所得者軽減強化などの社会保障の充実について、また、その優先順位はどのような基準で判断をされるのでしょうか。また、その財源に関して、アベノミクスの成果の活用とは具体的にどのように算出をされるのか。御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 社会保障の充実の優先順位という話ですけれども、これは予算編成を今からやってまいりますので、その過程の中においてこれは厚生労働省とよく議論をしていくことになっていくんだと思いますが、現時点で何らかの基準を既に決めているというわけではありません。

 また、アベノミクスの成果について、これは経済再生の取り組みによって、例えば失業給付というのはかなり減っております。減少した額、多分、失業給付が二千五百億ぐらい減ったと思いますので、そういったものを生じておりますので、そこらが出ているある程度の成果と申し上げられるんだと思いますが。

 したがいまして、予算編成の過程においては、これらのことを含めまして経済再生が社会保障給付に与える影響、また、社会保障の効率化とか制度改革の進捗など等々いろいろなものを見きわめないかぬものがあろうと思いますので、財源確保というものをいろいろなところから考えなきゃいかぬと思っていますが、きちんと取り組んでまいりたいと思っておりますが、少なくとも、一〇%延期ということ、延ばすということになった以上、これが全額赤字公債で埋めるとか、そういったことは考えておりません。

鈴木(克)委員 そこもちょっと議論をしたいところでありますが、もうあと本当にわずかになりましたので、最後の質問をさせていただきます。やはり、景気判断条項を設けない理由、これをどうしてもお聞きをしておきたいんです。

 前回の消費税率延期を表明した際、安倍総理は、景気判断条項を付すことなく確実に実施します。三年間、三本の矢をさらに進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。このようにおっしゃいました。

 これは、我々も多くの国民の皆さんも聞いておるわけですよ。これを受けて、前回の消費税率引き上げ再延期に景気判断条項というのは削除されたわけであります。

 さて、一方、今般の再延期に当たっては、大臣が、民需主導の経済の好循環を確実なものとすることを通じて二〇一九年十月の消費税率の一〇パーへの引き上げが可能な環境を確実に整えるべく、経済財政運営に万全を期してまいります。このため、今般の法律には景気判断条項を盛り込んでおりません。こうおっしゃったわけであります。

 そこで、いわば退路を断って景気判断条項を削除したんだけれども、結局上げることができなかった、これの繰り返しということでありますが、最後の質問として、ぜひひとつ、大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 今般の消費税率一〇%というものの話ですけれども、これは基本的には、国民の安心を支える社会保障制度というものをきちんと次世代に引き渡していく責任というものを果たすということが一点。

 また、市場とか国際社会からの国の信認というものを確保する必要がありますので、そういった意味では、二〇一九年十月には引き上げをさせていただきたいと考えております。

 この法律が今般通りますと、二〇一九年十月の消費税率の一〇%の引き上げが可能な環境というものをきちんと整えておかねばならぬわけなのであって、経済財政運営に万全を期していく責任を負うということになりますので、このため、今般の法律案には御指摘のいわゆる景気判断条項は盛り込んでいないという背景はそういう意味であります。

鈴木(克)委員 ありがとうございました。

 久々に議論させていただいて、もう一度財金に戻ってくる日を夢見て頑張ります。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。民進党の初鹿明博です。

 いつもは厚生労働委員会で向こうの部屋なんですが、初めてこちらの部屋に来させていただきました。麻生大臣とは昨年予算委員会で議論させていただきまして、ことしの予算委員会では残念ながら大臣への質問がなかったので、ここで議論させていただくことを非常にうれしく思っております。

 では、きょうは消費税の延期法案についてですが、その前に一つ、先般の十月十八日の本会議でのこちらの木内孝胤議員が質問をした件について、ちょっと気になる答弁がありましたので、御確認をさせていただきたく、まず最初に質問させていただきます。白紙の領収書についてのことです。

 木内議員から、「飲食店で白紙領収書に勝手に金額を書き込むことでも税務上の経費として処理して差し支えないのか、」という問いに対して、大臣はこう答えたんですよ。「領収書の要件につきましては、法人税法及び所得税法上、特段の定めはありませんが、適正な申告を確保する観点から、領収書を含めた帳簿の保存義務が設けられております。」

 要件が決まっていない、まあそれは要件は決まっていないんですけれども、保存していればいいということなんですか、これは。

 次に、続けて、「仮に、」「白紙に金額を書き込んだ領収書があり、その内容に疑義が生じた場合は、他の帳簿書類を含め、帳簿書類全体として、金銭の支払いといった事実関係の適正性が総合的に判断されるものと承知をいたしております。」と答えています。

 つまり、白紙の領収書でも構わない、調査してきちんとお金の支払いが確認できればいいんだというふうに、事実上、白紙の領収書を認めてしまったような答弁なんですが、本当にこれはいいんですか。議員の皆さんも、今、飲食店とかで食事した後に領収書くださいと言われると、白紙にしますかとか言われませんか。そうやってからかわれたりしませんか。それぐらい今、国民は非常に関心を持っているんですよ。何で政治家は白紙の領収書が認められるんだ、これは結構指摘されますよ。

 これを、大臣のさっきの答弁だと、白紙でも別に構わないけれども、後で税務調査とかが入ったときに説明がつけばいいんだというようにとられかねない答弁だと思います。

 私は、法律上は要件はないけれども、白紙の領収書は好ましいものではないから、税務上やはり経費としてこれを認めるわけにはいかないとか、そういうような答弁はせめてしてほしかったなと思うんです。

 そこで改めてお伺いしますけれども、白紙の領収書を経費として計上する、使うということは認められるんですか。

麻生国務大臣 まず最初の方から。

 法人税法及び所得税法上の話ということで、株式会社や事業を行う個人には、適正な申告を確保する観点から、領収書を含めた帳簿書類の保存義務が設けられている。もうこれは御存じのとおりです。その要件については特段の定めというのはないんですが、一般的には金銭の支払いといった事実関係が客観的に確認できる内容ということが必要とされておりますので、具体的には宛名とか金銭の受領年月日とか受領金額などというのが記載されたものになっておるんですが、仮に、御質問のような、白紙に金額を書き込んだ領収書がありまして、その内容に疑義が生じる場合には、他の帳簿書類を含めて、帳簿書類全体として、金銭の支払いといった事実関係の適正性が総合的に判断されるものと承知している、これがこの間の答弁の内容だったと思っておるんです。

 株式会社などの一般企業には法人税の申告が必要だというのはもう御存じのとおりなんですが、他方、政治団体というのは、これは法人税法上、公益法人等または人格のない社団などに該当することになります。したがって、税法に定められた収益事業から生ずる所得以外の所得については法人税を課さないこととされております。もう御存じのとおりです。

 したがって、政治活動のみを行って収益事業を行っていない政治団体につきましては、これは法人税の申告義務は生じない。領収書などの帳簿書類の保存義務を課せられておりませんことから、そうした政治団体に係る領収書が税務上適切であるかについて、これは財務省としてコメントすることはできないということを申し上げておるわけで、長く説明すればそういうことになります。

初鹿委員 政治団体としては確かにそうだと思いますが、パーティーをやって、政治団体が発行した領収書が白紙だったとします。企業が政治家のパーティーに行って白紙の領収書をもらって、それをそのまま、ほかの政治家の方がやっているとおりに使うこともこれは認められるということになりますよね、今までの答弁だと。それはやはり疑問じゃないですか。違いますか。

麻生国務大臣 税務上、損金また必要経費となるかどうかについては、その支出の事業との関連性とかその支出の目的とか、そういうのを踏まえて判断するということなんだと承知しますが、仮に、御質問のような、白紙に金額というのを書き込んだ領収書が保存されていたとしても、その領収書に記載された内容が正しいかどうかということにつきましては、これは税務調査などにおいて確認をしてもらうということになるんだというように承知をしております。

 いずれにしても、損金や必要経費となるかどうか、これは領収書だけで判断しているものではありませんけれども、納税者の方が支出をした事実とか内容を明らかにするに当たっては、ほかの人から受領した領収書を適切に保存する等々、領収書を適切に保存するということが望ましいということだと思います。

初鹿委員 いや、私はそんな難しいことを聞いているわけじゃなくて、確かに、確認がとれればいいということなんだと思いますけれども、やはり、白紙の領収書は好ましくないということぐらいはきちんと、大臣なんだから答弁してもらいたいと思いますよ。

 では、今の話だと、白紙でもらったもので、要は税務調査でばれなかったらそのままでいいんじゃないかということになりますよ。しかもそれで、損金扱いするのに、本当は二万円払ったのに二十万円にするとか、そういうことだってできないわけではなくなるわけじゃないですか、白紙なんだから。それを何か事実上認めてしまうようなことになりかねないんですから、やはり私は、白紙の領収書は好ましくない、本来は好ましくないということをきちんと答弁するべきだと思いますよ。違いますかね。

麻生国務大臣 これは現状において法律的に言っている話であって、私の個人的見解を述べてもどうにもなりませんので。少なくとも法律としては今申し上げたとおりということに御理解いただく以外には、ほかに今の段階ではないと存じます。

初鹿委員 法律に反しなければ何でもいいのかということでもないと思うし、これは税務署の人だって、白紙であったらわざわざ確認をして、場合によっては先方に本当に支払ったかどうかをチェックしに行かなければならないというように、手間がかかるようになるわけだから、基本的に白紙は好ましくないというふうに大臣がここで答弁をしておいた方が、それこそ、税務署の、国税庁の職員も楽になると思いますよ。私は、法律で要件が定めていないから別に構わないみたいなことを何で言うのか、ちょっと理解ができませんよ。

 やはりこれは、中小企業の皆さんたちだってどっちなんだろうと思っているわけで、白紙でも構わないというんだったら、本当に悪用する人も出かねないんですから、ちょっとこれは答弁を考え直していただきたいと思います。もう一回お願いします。

麻生国務大臣 いわゆる一般的な領収書というのは金銭の支払いの事実を明らかにするという必要があるんだと思いますが、この場合は、法人格というものは極めて不明確ですから、そういった意味では、金銭の支払いにかかわる取引はどのようなものだとか、領収書がどのような状況において作成されたものかとか、そういったいわゆる個別の事実に即して判断されるということになりますので、今言われたように、白紙は望ましくないということを言っても、その場合においてはいずれにしても、白紙の領収書が出てくる場合というのを私の個人的見解で望ましくないと言って、税務署の職員の手間が省けると言って労働強化を減らすように努力していただいていることには感謝しますけれども、そういった意味からいって、私どもの方として、私の一存でこれを決められる段階にはないということであります。

初鹿委員 一存で決められる段階ではないというほどのことではないと思います。余りしつこくやるほどのことでもないので、ここで本来の消費税の話に移ります。

 まず最初に、私の消費税に対しての考え方を述べさせていただきますが、私も、消費税の税率の引き上げを、未来永劫、ずっとこのまま引き上げないでいいとは思っておりません。ただ、やはり引き上げるタイミングというのは非常に重要で、皆さん方も当然御承知のとおり、消費税を引き上げることによって消費が冷え込んで景気が減退をする、そういうことになってしまったら元も子もないということで、まずタイミングが非常に重要だというふうに思います。

 それとやはり、もう一つ考えなければいけないのは、消費税は、所得の低い人ほど税の負担割合が高くなるという逆進性が非常に強い税制でありますから、この逆進性対策ということをしっかりと行った上でやらないとならないというふうに思うんです。

 特に、高度経済成長のときは右肩上がりで給料も上がっていくので、年齢が、とっていくにつれて給料が上がっていくから、最初は確かに消費税の負担割合は重かったのが、給料が高くなってくればそれが下がる。人生のトータルで見たらとんとんで、大体みんな平均ぐらいになる。そういう時代だったと思うんですよ、高度経済成長は。

 今はそうではなくて、所得の高い人は一定程度ずっと所得が高いままであり、また、所得の低い人は、非正規労働者が多くて、学校を出てもすぐに非正規で、それこそ、一生年収が二百万円ぐらいでずっといってしまうような人も多くなっている。

 そういう時代になっているわけですから、そういう人たちの負担割合が常に高所得者よりも高いままでとまってしまうということはやはり好ましいことではないので、逆進性対策をしっかりと行わなければならないというふうに思っております。そういう観点からすると、今のこの軽減税率が好ましいのかどうかというと、私は非常に疑問を持っております。

 まずは、そういうスタンスであるということを表明いたしまして、今の再延期についての質問に移ります。

 まずちょっとおさらいをいたしますけれども、二〇一四年の十一月に、消費税の一〇%の引き上げを一年半延期いたしました。このとき延期をした理由は、どのような理由だったんでしょうか。

麻生国務大臣 この消費税引き上げの延期の判断というのは、これは、消費税率の八%の引き上げが、予想していたより消費の落ち込みが大きかったという中で、我々としては、いわゆる資産デフレ不況からの脱却というものを目指して、アベノミクスというものの成功というものを確実にするためには、景気判断条項に基づいて、二〇一五年十月に予定した消費税率を一〇%へ引き上げるのを、二〇一七年四月まで十八カ月間延期をさせていただいたものであります。

初鹿委員 つまりは、この二〇一四年十一月の時点で延期をしたのは、景気判断条項があって、それに基づいて延期をしたということなんですね。この時点で、今答弁で、八%に引き上げてみたら、予想以上に消費が落ち込んだということですね。アベノミクスの結果、経済成長がしている、そういう認識は一方にあるけれども、消費は落ち込んだ。

 このときの判断として、この二〇一四年の十一月時点で、我が国はデフレから脱却をしていなかった、そういう御判断もあって延期をしたんですか。

麻生国務大臣 少なくとも、状況は明らかに、企業の経常収支は上がっていましたし、いろいろな形での法人税収も伸び始めていましたので、デフレと言われるものの中での資産のデフレというのが一番大きな理由なので、株が下がったり、動産とか不動産とかいう資産が下がっておりましたので、それが下げどまっていたということは確かですし、株価も七千円だった八千円だったものが一万円台までということで上がってきていましたし、いろいろな形で、土地の値段も確実に上がり始めているという兆しが出ていましたので、私どもとしては、いわゆるデフレ不況というものから脱却しつつあると思っていましたけれども、これは間違えると、もう一回いわゆるデフレに戻っちゃうというのだけは、もう一回戻すとこれはどうにもならぬという意識がありましたので、そういった意味では、デフレから脱却していたかと言われれば、私どもは、完全に脱却していたというほどの自信はなかった。

 一番大きな理由は、あの当時は内部留保が七十五兆円もふえたにもかかわらず、あのときは企業は給与を三千四百億減らしたんです。ふやしていないんですよ。減らしたの。私どもは企業に向かっておかしいじゃないですかと言って、物すごくやり合いましたよ、はっきり言って。私どもとしては随分申し上げて、翌年から五兆だか何だかふえましたけれども。

 少なくともそういったような状況で、我々は随分やり合った記憶がありますので、いま一つまだ企業の意識が変わっていないから、ちょっとどうかなという意識は、正直、私の気持ちのうちに二、三割ありました。

初鹿委員 十分にデフレからまだ脱却できていなくて、ここで引き上げるとまたデフレ状態に戻るかもしれない、また、企業の側も、アベノミクスで期待をしていたような効果を、十分に企業の側に協力してもらえていなかった。そういう理由で延期を一年半いたしました。

 そのときに政府が言っていたのは、次は必ず上げるということを断言していたんですよ。先ほど鈴木先生も言っていましたが、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施すると断言をしていて、それで景気判断条項まで削除しちゃったんです。

 これは、削除したということは、引き上げ時期が二〇一七年四月になるんですか、一七年の四月の段階で仮にデフレの状態からまだ抜け切れていなかったとしても引き上げる、そういうつもりでいたということでよろしいんですか。景気判断条項を取ったじゃないですか。だから、その引き上げのときは、デフレの状態でも引き上げるつもりだったのか。

麻生国務大臣 前回の判断のとき、二〇一四年十一月、安倍総理の二〇一七年の四月のについて、確実に実施するという発言をされておるんですが、これは御指摘のデフレ脱却云々というよりは、リーマン・ショックとか東日本大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に引き上げるということを強く思っておられたということだけは確かだと思っております。

初鹿委員 私が聞きたいのは、リーマン・ショックや大震災がなくても、二〇一四年の十一月に延期をしたような状況で、GDPが四半期のマイナスが続いたとか、そういう状態になっていたとしても、二〇一七年の四月は景気判断条項をとったんだから引き上げる、そういうつもりでいたのかということを聞いたんです。

麻生国務大臣 経済条項を外す、外さないは内部でいろいろと意見が分かれたところでしたので、そのときには、これはつけるべきという意見と、つけるべきでない、まあ、誰がどう分かれたということまで言うつもりはありませんけれども、いろいろ御意見が分かれたんですが、断固やると言うので、これはきちんとやるからという御意見だったので、私ども財務省としては当然上げるという説に近い方だったですから、当然のこととして、やってもらいましょうという気がありましたよ、私自身は。

 しかし、これはくっつけた方がいいんじゃないかという意見は、これは財務省の中にもありました。ほかの役所からもいろいろ出ていましたので、そういったときに私どもとしてはこの話を申し上げたと記憶しますが。

 今言われたように、少々のことなら必ずやらねばならぬ、三じゃない、二じゃないか、あのときは三%、今回は二%じゃないかとか、いろいろな御意見があって、その気でおられたということだけは確かだと思います。

初鹿委員 つまり、本当によっぽどのことがない限り上げるという決意でいたわけですよね。当然、麻生大臣はその思いが強かったんだと思います。

 ところが、ことしの六月一日に、安倍総理は再延期を記者会見で表明することになりました。その前の、麻生大臣、各国との財務相・中央銀行総裁会議が五月二十一日にありまして、そこでも消費税増税は予定どおり実施すると約束をしてきましたよね。記者会見とかでも、国際公約だとか、世界の信用を失墜しないようにちゃんと上げなければいけないということを、結構、再三再四、発言していますよね。

 それぐらいに麻生大臣は、国際公約ぐらいに思っていたというふうに思うんですが、それは事実でよろしいんですよね。

麻生国務大臣 サミットが始まりますまでに、それまでいろいろな各種の大臣会合は十幾つあると思いますけれども、そういったものの中の一つに、私ども、財務大臣・中央銀行総裁会議を仙台で開かせていただいたんですが、そのときに私どもとしてはきちんとした対応をさせていただきたいと思っておりましたので、我々としては、そういうつもりでおりましたことは確かです。

 これは、一番変わったのは、多分、伊勢志摩サミットなんです。あのときに、各国からいきなり、あの段階で多分ブレグジットの話が出ていたんだと、私は裏の話は知りませんけれども、いろいろな話やら何やらがずっと出始めて、中国のあれがぐあいが悪くなってきているという数字がもうあのときは出始めましたので、数字を上げてくれという話を言わざるを得ないほどぐあいが悪くなって、中国は介入をして再び財政出動をやって、景気をもとに上げるという努力も中国に要請する。IMFやら何やらでいろいろありましたけれども、そういったこともやりまして、私どもは、このままやったら上海の暴落がもう一回ですよという話も直接しましたし、いろいろな話を私どもしましたので、その合意に基づいて、世銀、IMF、いろいろなところが動いたというふうに思いますけれども。

 私どもとしては、きちんとした対応をやらねばならぬと思っておりましたが、伊勢志摩サミットのときには、その二カ月ぐらい後なんですけれども、あの間には結構いろいろな状況としては変わっていったんだというように私どもとしては理解しております。

初鹿委員 サミットは五月の後半ですから、この財務相・中央銀行総裁会議は五月二十一日ですから、一週間後ぐらいですから、そんなに大きく変わるような期間はあったとは思えないんですけれども。

 ちなみに、麻生大臣は、安倍総理から正式に再延期をするというのを聞いたのはいつですか。

麻生国務大臣 正確に記憶しておりませんけれども、これは初鹿先生、この内容の過程についていつだったかと申し上げることは、ちょっと差し控えさせていただきます。

初鹿委員 報道によりますと、五月二十八日に首相官邸で総理と財務大臣、麻生さんがお会いしましてその報告を受けて、財務大臣からは、反対だという強い抗議というか、意思表明をしたというふうに報じられております。

 次の日、富山で五月二十九日に、麻生大臣と当時の自民党の幹事長の谷垣幹事長とが一緒に自民党の会合に出席しているんです。そこで、増税を延ばすなら、もう一回選挙をして信を問わないと筋が通らない、これが私と谷垣さんの言い分だ、そうほえていたようなんですが、それは間違いありませんね。

麻生国務大臣 大体報道は間違っていますけれども、その報道はめずらしく合っていました。

初鹿委員 つまり、ぎりぎりのところまで大臣は再延期反対だったはずですよね。反対だったんだということですよね。

 ここでお伺いしたいんですけれども、麻生大臣は、今回の安倍総理の再延期の判断は正しかったというふうに思っていらっしゃいますか。

麻生国務大臣 私どもは宮仕えをいたしておりますので、組織におられたらおわかりと思いますけれども、基本的には、いろいろ自由民主党というのは意見が出されるんですが、最終的に、内閣の話では内閣総理大臣が、自民党の話は自由民主党総裁なり幹事長が決めたらそのとおりにやるというのが我々の暗黙のルールでもありますので、この判断が正しかったか、正しくなかったか、私は、これは歴史が判断するところなので、もうしばらく時間がかかるんだと思っております。

 ただ、今の状況としては、決められたことはきちんとそれに対応するべく動く、それが我らに与えられている仕事だと思っております。

初鹿委員 今の答えが全てを物語っているんだと思いますが、二十九日にそういう発言をしていて、六月一日に再延期を表明して、その二日や三日で麻生大臣の気持ちが変わっているとは思えないので、本音はやはり、安倍総理の判断はいかがなものだったのではないかなと今でも思っているんじゃないかと私は推測をいたします。これは答弁は求めません。

 ただ、私も、今の状況で消費税を上げるべきではないと思っています。でも、やはり安倍総理の理屈が余りにもよくわからないというか、意味がわからない。景気判断条項も取って、絶対に上げると言っていて、それで再延期をする。これはきちんとした説明が必要ですよ。それなのに、ちゃんとした説明になっていない。先ほども鈴木克昌先生の質問で大臣が答えていましたけれども、さっぱりわかりませんよ。だって、リーマン・ショックや大震災が起こらない限り必ず上げると言っていたんですよ。

 皆さんのお手元に安倍総理の六月一日の記者会見を配っておりますが、ちょっと回してください。

 一番上、下線を引いていますが、「現在直面しているリスクは、リーマンショックのような金融不安とは全く異なります。」「世界経済の将来を決して「悲観」しているわけではありません。」また、下の方に行きますけれども、「熊本地震を「大震災級」だとして、再延期の理由にするつもりも、もちろんありません。」その上にも、「現時点でリーマンショック級の事態は発生していない。それが事実であります。」

 リーマン・ショックでもない、熊本の地震でも大震災でもない、そして世界経済の将来にも悲観していない。でも、再延期するという判断は、「これまでのお約束とは異なる「新しい判断」であります。」では、この新しい判断の中身は何なんですか。リーマン・ショックではないんですよね。大震災でもないんですよね。

 世界経済、この上で、「「リスク」を正しく認識し、「危機」に陥ることを回避するため、しっかりと手を打つべきだと考えます。」リスクには備えなければなりませんと書いてある。

 ただ、リスクには備えなきゃならないと思いますけれども、世界経済が失速するかもしれないリスクなんてずっとあると思うんですよ。でも、その次に言っているのは、悲観していないと言っているわけだから、悲観していないぐらいのリスクなんですよ。

 何でここで再延期をするのか、この新しい判断というのをもっとわかりやすく説明していただけないですか。

麻生国務大臣 この文章を改めて読み直してみているところですけれども、いずれにしても、こういった中で、下の方の最後の太字で書いてあるように、「これまでのお約束とは異なる「新しい判断」であります。」多分これが全てなんだと思います。

 世界経済というのが、新興国の陰り等々を含めまして、需要の低迷というものと経済のいわゆる成長の減速リスクが上がってきているというのはもう確かだと思っております。それはずっとそうじゃないかと言われれば、もうそれは間違いなくずっとそうですよ。特に東ヨーロッパを含むヨーロッパの経済とか、また、中国を含めますところが急激に、あれはかなり危ないものがあるな、これはみんな世界じゅう言うところだと思います。

 そういう中にあって、日本の場合、給料が上がらないことに伴って個人消費が伸びない、またぞろ何とかじゃないか。いま一つマインドが変わっていない等々があるんだと思います。

 そういった意味で、新たな判断という状況というのは、デフレ不況からの脱却というものに万全を期さないかぬ、もう一回デフレになったら終わりですよということで、これは、ほかの国は今からデフレに入ってくる、ディスインフレとかいろいろな表現をしていますけれども、基本的にはデフレですから。そういったような方向にヨーロッパは今から落ちつつあるというような状況の中にあって、銀行に限らず、企業も資産内容が極めて危ないというような状況がよくみんなうわさされておりますので。

 そういった中で、やはり、伊勢志摩サミットにおける合意というのは、それはお互いみんな知りながら、我々としてはあらゆる政策を動員するんだという話が出てきて、そこが多分一番のきっかけになったんだと思いますが、構造改革の加速等々いろいろやるにしても、まずはもう一回これを延ばして、できる限り確実なものにしておいてからやるべきだという判断に最終的に立たれたというのが一番大きな理由じゃないかなと思っております。

初鹿委員 よくわからなかったんですけれども、やはりアベノミクスが十分に成果を出していないというのが最大の理由なんじゃないんですか。

 やはり、賃金が上がっているとか雇用もふえていると言っていますけれども、消費が伸びていないということが全てをあらわしていて、要は、実質賃金は下がっているわけですよ。だからお金を使えなくなっているんですよ。雇用がふえているといっても、その中身をやはりきちんと見ていかないといけないと思いますよ。

 高齢者が働かないと暮らしていけない、また、女性も共働きじゃないと暮らしていけない、そういうことで働く人がふえている。これは決して悪いことではないのかもしれませんけれども、やはり、実質賃金が下がってきているというのは、非常に大きなアベノミクスの失敗であると私は思いますよ。

 そこで伺いますけれども、では、次の期限が来ますね、次に引き上げるとき、今度は必ず上げるんですか。

麻生国務大臣 私が財務大臣をしているかどうかは別にして、うかつなことは言えませんので。申し上げておきますけれども。

 しかし、私どもの今の立場からいいますと、やはり社会保障と税の一体改革というものは、初鹿先生、やはり、日本にとって人口構成の変化、いわゆる高齢者人口の増加、勤労年齢人口の減少というものは、かつての一対六から一対二・幾つというところまで来れば、簡単なことを言えば、昔でいえば厚生年金等々社会保障割合、二倍、三倍出してもらわないと計算が合わないということになりますので、そういった意味では、財政健全化等々とあわせてこれは待ったなしの話なんだと私どもは基本的にそう思っています。

 だから、将来的にやらないかぬという御意見には私は全く賛成なんですけれども、やはりタイムリミットとしては、二〇一九年十月というのが、私どもとしてはもうこれは確実に、絶対行わねば、最終リミットはこれかなと思っているのは、プライマリーバランスというものを、随分、最初のころはこんなものできっこないと言われたのが一応半分達成できましたけれども、残りをチャラにしますというところが二〇二〇年なんですから、そこまでにきちんとした、仮におくれてもというような目安がきちんと立てられるところまでいかせるためには、どうしたってこれはやっておかないかぬというのがこの二〇一九年の十月の消費税だと思っていますので、これは私どもとしては経済運営というものに万全を期して、きちっとこれまでにやり上げねばならぬものだ、そう思っております。

初鹿委員 おっしゃることも理解はするんですけれども、そうはいっても、経済は生き物ですから先がどうなるかわかりません。そのときに、景気が本当に減速しかねないような状況では、やはりこれは引き上げを延期することも考えなければいけないと思うんですよ。

 そういう意味では、景気判断条項というのはやはり必要だったんだと思いますよ。私は、ここで再延期をするに当たって、もう一回、景気判断条項を戻す必要があると思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 景気判断条項というものをつけるべきではないかということですけれども、少なくとも今回は、きちっとその環境を整えるんだという、退路を断つとかいろいろな表現が当時もありましたけれども、私どもは経済財政運営というものに万全を期していくんだと言ってきちっとその姿勢を示さないと、これをつけたらまた延ばすんじゃないかというのを先行き皆思わせられぬよう、人が勝手にそう思っちゃう、ああこれはまた次に延びるんだなというように思われるようなことだけは断固避けたいという気持ちが強くあったのは確かです。

初鹿委員 私は逆に、今回みたいに何の理由があるのかわからなくいきなり延ばすよりも、景気判断条項があって、景気の大体の見通しがついて、これはちょっと引き上げるのは厳しいかなというふうに思って、それで条項があるからそのとおりに延期になるんだというふうに予測がついた方が、世の中の人にとってはありがたいと思いますけれどもね。そのときの総理大臣の何か気分によって、新しい判断だとか言っていきなり延期されて、私からすると、アベノミクスの失敗を隠すために、そして参議院選挙が目の前にあって、そこで野党から消費税を上げていいのかと責められて選挙がやりづらくなる、それよりかは、延ばしちゃった方がいいというのが新しい判断だったんじゃないかなというふうに思いますよ。でも、そんな総理の都合によってころころ変わるようじゃ、財務大臣だって困るでしょう。多分今も困っていると思いますが。

 ここで次の話題に行きますが、ちょっと時間がなくなったので、軽減税率について伺います。

 これは二〇一九年の十月まで延期になったわけですよね。二年間、議論をする、検討する時間ができました。私からの提案ですが、軽減税率の導入は見送って、給付つき税額控除の導入を、二年あるんですから検討しましょうよ。

 軽減税率については、皆さん方、多分自民党の方々も反対だった人が多かったと思いますよ。やはり線引きをどうするんですか。外食だ何だと言うけれども、私が定食屋さんだったら、昼のランチは全部持ち帰れるような容器で出して、場所は提供しますよ、基本は持ち帰りですよと言って出すようになりますよ。それは外食だから高い税率になるんですか、安い税率になるんですか、そういう話になってくるじゃないですか。

 だから、こういう軽減税率は、事業主にも負担が多い、線引きもよくわからない、そして本当に逆進性対策になっているのかといったら、私はなっていないと思いますので、ぜひ給付つき税額控除の検討に入っていただきたいと思うんです。

 しかも、マイナンバーが導入されて、今まで所得の把握が難しかったと言うんですが、二年あって、来年からスタートしたとして一年ちょっとですから、大分定着してきているわけじゃないですか。ですから、今までと状況が変わるんですよ。

 どうですか。もう軽減税率はやめて、給付つき税額控除の検討を始めませんか。

麻生国務大臣 税制抜本改革法の中において、御記憶あろうかとは思いますが、軽減税率の話と給付つき税額と総合合算制度と、三つについて検討することと三党の間でされていたんだと記憶をします。

 このうちで、御存じのようないきさつで、ふだん消費者が消費、利用、活用しているようなものについて直接軽減するということの方が、いわゆる逆進性を緩和しつつ、買い物の都度痛税感を感じられるというのを緩和できるというような利点があるということから、この軽減税率というのを最終的に採用することにさせていただいたんですが、この中で、いわゆる逆進性の緩和に効果的ではない、有効ではないという御指摘については、これは、家計調査の中を見ますと、酒類とか外食を除く飲食料品の消費支出に占める割合は、年収一千五百万円以上の世帯では一五%、二百万円未満のところでは三〇%となっておりますので、こういった状況にあるというのが一点と、酒類とか外食を除く食料品に係る消費税の収入に関する割合というのを見ますと、低所得者の方が高所得者よりも高くなっておりますことから、これは、軽減税率の導入による消費税率の軽減度合いについては、低所得者層の方がより大きくなっておるという意味では逆進性の緩和につながるんだと、基本的にはそう思っております。

 また、今言われましたように、所得の捕捉とかいう話でマイナンバーの話が出ましたけれども、これは以前より正確な所得把握が可能になる、これは確かです。そういうことになるんだと思いますが、しばらく時間はかかるとは思いますけれども、今入っている分の資産の話は別にして、課税最低限以下の所得の方々についても、そもそも申告義務がないものですから、その所得が把握できないなどまだまだ考慮する必要はあろうかと思いますけれども、いずれにしても私どもは、こうした御意見があることは承知しておりますけれども、今の段階で給付つき税額控除の導入を再検討するということを考えているわけではありません。

初鹿委員 ちょっと時間がなくなったので最後に一つだけ言わせていただきますが、資料の後ろから二枚目を見ていただきたいんですけれども、我が国の再分配政策の一番の問題は、高齢者に偏り過ぎて、若い人にほとんどないということだと思うんですよ。しかも、子育て世代には子育てに対するさまざまな給付がありますけれども、独身の若い人には全くない。生活保護しかないんですよ。

 今、この国の最大の問題は少子化じゃないですか。若い人がきちんと働いて給料をもらって、そして結婚して子供が産める環境をつくるというのは、私は一番重要だと思うんですよ。そういうことを考えたときに、この資料を見てください。単身世帯の年齢別の種類別食料消費支出の割合という資料なんですが、三十四歳以下、外食が五六・四%ですよ。つまり、軽減税率の対象にならないんですよ、若い人たちは外食が多いから。これを見ても、やはり偏りが出るんですよ、軽減税率というのは。本当にターゲットにしたい人にきちんと恩恵が行くわけじゃない。

 だから、ちゃんと低所得者の方がターゲットになって、きちんと恩恵が的確に行く給付つき税額控除の方が逆進性の対策にはなる。軽減税率はあくまでも痛税感の緩和ですからね。その場で払う税率が少なくなってよかったよかったというのと、逆進性を解消するというのは全く違う問題であるということを指摘をさせていただいて、質問を終わらせていただきます。

御法川委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民進党の鷲尾でございます。

 きょうは、四十分時間をいただきまして質問させていただきたいと思いますけれども、きょうも黒田総裁にお越しをいただいておりまして、冒頭、三問だけちょっと質問させていただいて、それから、総裁は御公務だということで退席していただいて結構でありますので、その後に麻生大臣にたっぷりと質問をしたいというふうに思います。

 消費税の先送りにつきまして、今回、過去の消費税増税と比べますと、消費がなかなか戻ってこないということも分析されているところでございます。先送りの判断を六月にされてから、今、十月の月末に近い状況でありますけれども、現時点において、総裁から、インフレ目標達成にこの消費増税先送りがどのような影響を及ぼしているかということを冒頭まずお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 御指摘の、消費税の増税の時期が変わったことによってどのような影響があるかということでございますが、確かに、消費税の税率の引き上げが経済に与える影響というのは基本的に二つあると思いまして、一つは、税率引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動減、それからもう一つは、税率引き上げに伴う実質可処分所得の減少というこの二つの経路がありまして、実体経済に影響を及ぼすというふうに考えております。

 振り返ってみますと、二〇一四年四月の消費税率引き上げが経済に与えた影響を分析してみますと、このうち、駆け込み需要の発生とその反動が事前予想をかなり上回ったのではないかというふうに考えております。

 そういう意味で、消費税の税率の引き上げの時期が後ろ倒しになり、二〇一九年の十月ということになったことは、従来のように、二〇一七年、その前後に駆け込みと反動減があるというのが後ろ倒しになりまして、私どもが現在展望レポート等で示しております二〇一六年度、一七年度、一八年度というところには、そういった駆け込み、その反動減といったものがほとんどあらわれてこないであろうというふうに思っております。

 そういう意味で、前回の展望レポートでも、既にそういったことを織り込んで見通しをつくっております。

鷲尾委員 九月二十一日に日銀が発表されましたいわゆる総括的な検証で、自然利子率が趨勢的に低下しているということで、なおのことでしょうけれども、期待へ強く働きかけて予想インフレ率を上げて、実質金利を下げていく必要があるという話でありました。自然利子率の低下トレンドをしっかりと指摘をされているということなんですけれども、さらに金融緩和を強めるほど、将来の自然利子率というのは御承知のとおり低下していくものだというふうに思います。

 そこでなんですけれども、もはや、自然利子率を上げていくような政策がないと、今の金融緩和をして需要を前倒していくということを続けていっても、自然利子率が根本的に上がっていかないと二%のインフレ目標というのは達成できなくなってしまう、こう思いますが、この点どう認識されていますでしょうか。

黒田参考人 御指摘のように、先般公表いたしました総括的検証でも示しましたとおり、日本の自然利子率は、潜在成長率の低下とともに趨勢的に低下してきております。

 こうしたもとで、日本経済を物価安定のもとでの持続的な成長に導いていくためには、今回のような長短金利操作つき量的・質的金融緩和によって、より強力な緩和を行う。ただ、それだけでなく、それとともに、構造改革や成長力強化の取り組みを通じて、御指摘のように、潜在成長率あるいは自然利子率を引き上げていくということが極めて重要であるというふうに考えております。

 この点、政府におかれては、八月の初めに未来への投資を実現する経済対策を策定するなど、財政政策、構造政策面での取り組みを進めておられます。

 日本銀行としては、引き続き、こうした政府の取り組みが着実に実行されていき、それが潜在成長率あるいは自然利子率の引き上げにつながっていくことを強く期待しております。

鷲尾委員 期待されている度合いがどんどんと、総裁が就任当初からウナギ登りにこれは期待されているんじゃないか。そこの期待度合いも含めて御答弁をいただきたかったんですけれども、何か答弁席の表情を見ていますと、そのとおりということなのかなということを勝手に解釈をさせていただきまして、次の質問であります。

 今回、総括的検証ということで、部分的には、期待インフレにどう働きかけていくかというそのプロセスも含めて検証されているというふうに思いますけれども、市場関係者としては、やはりもう少し、本当に関心度の高い、判断が大きく変化したその理由でありますとか、出口で国債管理政策上の問題点を生じない形で金利誘導の自由度をどう回復させていくかとか、これが市場関係者としては非常に不安だし、そこで何かアナウンスがないと、どう考えているんだろうという不安なままでは、本当に期待をどう形成していくかというところのプロセスにかなり支障があるんじゃないかというふうに思っています。

 そういう意味で、総裁が市場に対してどういうふうに期待形成させていくかというその情報発信のやり方も、私はもう少し丁寧にやっていくべきだというふうに思いますが、この点の総裁の見解もお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、金融政策は、金融市場あるいは金融機関を通じて効果が実体経済に波及していくというものでございますので、その運営に当たりましては、政策に関する考え方、あるいは、その前提となる経済・物価情勢についての判断をできるだけわかりやすく説明し、理解を得ていく必要があるというふうに思っております。

 御指摘のありました総括的な検証、これなども含めまして日本銀行としては説明に努めてきているわけでございますけれども、引き続き丁寧な説明を行ってまいりたいというふうに思っております。

鷲尾委員 市場参加者が何を期待しているかというところをもう少し全体の枠組みの中で適切に発信をしていただくと、確かに、総裁が常に意識をされているんだろうと私も思いますけれども、サプライズというか、予想を超えるものを発出することによってそれが期待形成につながるというのもわかるんですけれども、やはり、もう既に皆さんが不安を抱えていらっしゃる国債管理政策上の問題、これをどう生じさせずに金利の自由度をどう高めていくか、これはもはやある程度市場にメッセージを発出しなければならない段階になっているのかなと。その部分が見えないということは、いかにいろいろな判断を変えてうまくコントロールしようとしても、これからの日銀と市場の対話というところではこの問題というのは大きく横たわり続けるんだろう、このように感じておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 ということで、総裁に対する質問は以上でございますので、どうもありがとうございました。離席していただいて結構でございます。委員長、お取り計らいください。ありがとうございました。

 それでは、先ほどの総裁のコメントにもありましたけれども、今政府において財政政策をやっているということでありますし、構造政策というコメントもありましたけれども、そこに期待しているところが大なのかなというところなんですが、一方で、資料を、一枚物をきょう配らせていただきましたけれども、実質GDPの構成項目の中で公的部門が拡大して民間部門が縮小しているんじゃないかという、そういう表でございます。実は前回の委員会でも提出させていただいたんですけれども、そのときはカラーで提出させていただいたんですが、二度目ということで白黒に変えさせていただいております。

 これは少し見にくいかと思いますけれども、薄く網かけになっている部分を比べていただきますとこれは一目瞭然でございますが、特に下の図を、増減額の構成比というところでごらんになっていただくと一番わかりがいいわけでございます。右側の箱をごらんになっていただきますと、二〇〇九年―二〇一二年、それから二〇一二年―二〇一五年の推移をごらんになっていただくと、民間最終需要と政府需要というところの、国内最終需要に占める構成比をごらんになっていただくと、二〇〇九年―二〇一二年が、民間最終需要の方が約九割、政府需要が一割であったのに対して、二〇一二年―二〇一五年の推移でいきますと、民間最終需要が約二割で、政府需要が八割ということで、かなり公的部門の割合が高まってきているのではないかと。

 そしてまた、今も、総裁は構造政策とおっしゃっていましたけれども、財政政策をさらに打とうとしているというところでありますから、経済のダイナミズムから考えると、イノベーションといいましょうか、民間がいかに市場の機能を高めながら経済のダイナミズムを生み出していくかということが大事なんですけれども、足元の状況を見ると、ちょっと様相が違うんじゃないかな、こういう分析が成り立つと思うんですが、大臣、この点の見識をお示しをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは鷲尾先生、いい指摘だと、私はそう思います。

 少なくとも、この四年間ですけれども、三本の矢というものの一番問題は三番目の矢で、一番目は日銀、二番目が財務省とか政府ということになるんだと思いますが、三本目が一番問題なんだということは最初から申し上げておったので、私どもは、この三番目の、民間の経営者のマインドをデフレからどうやって変えていくかというためには、日銀の金融政策、政府の財政政策が大きくこの政権によって変わったんだということをかっちり印象づけて、おお、これは間違いなくデフレは終わった、インフレなんだということを思わせない限りは、金をじっと持っておきさえすれば、物価が下がって金の値打ちは上がった、税理士をやっておるからもうよくおわかりのとおり、そういう状況が二十数年続いていますのでそんな簡単には変わらないんだとは思っていたんですが、このデフレマインドというのは意外としつこく残っているなと。一九三〇年代というのを調べてみますと、やはり、同じようにかなり長いこと経営者の意識が変わっていなかったというのはあのときのようですので、時間がかかるんだと思っております。

 私どもとしては、これはさらなる取り組みが必要なので、企業が三百八十兆近く内部留保だけでやってみたりしておりますけれども、当然のこととして、それは配当に回ったり、賃金に回ったり、設備投資に回ったりしてしかるべきものが、なかなかそういったように回っていないというのは現実でありますので、そういったものに加えて、労働分配率というものは、ちっとも上がらないどころか下がっておるという状況というのは、これはどう考えても今までの意識が変わっていないものの最たるもので、六七、八になっているんだと思いますので、そこらのところがこれはどう考えても企業収益の伸びに対して不十分というのは、はっきりしていると思っております。

 したがって、民間の取り組みを大いに期待するんですが、それを民間がさらに進めるためには、政府として、やはり、民間の生産性が上がらない限りは絶対に賃金は伸びませんので、生産性が上がりやすくしてやるためには例えばというので、いろいろなものがきちっと対応できるようにするためには、規制の緩和なのか構造改革なのか、また、おくれてしまっているインフラを、港の建設等々きちんとできていないところがいっぱいありますので、そういったところをやるとか、そういったようなもので強い経済の実現に資するいろいろな投資というものは今後ともやらないといかぬので、結果として民間の比率の方が上がってくることを考えないといかぬ。私もそう思います。

    〔委員長退席、土井委員長代理着席〕

鷲尾委員 今、金融市場の方も、主に、日本の年金基金がどう動くかとか日銀がどう動くかというところが株価にかなり影響を与える、こう言われてきております。ですから、そちらも、官製相場と言ったら語弊がありますけれども、かなり公的部門の役割が増大している。そして、今ごらんになっていただいたとおりでございます。国内の最終需要の方もこれだけ公的部門が拡大している。

 そういう中で、今、大臣も常々気にしていただいておられます労働分配率の話もしていただいている。ある意味、今は本当に異常事態なのかなと。やはり、労働分配率あるいは賃上げというのを政府の方からしなさい、しなさいと言うのも異常事態ではあると思うんです。それほどまでに政府が主導しなければ経済がうまく回りそうもないのか。こういう事態に陥っていること自体が、過去、もう余りにも財政政策に頼り過ぎてしまっていて、新しいものを生み出す力というのがなかなか出てきていないんじゃないか。その点をどううまく政策転換していくか。

 先ほどの、日銀が出口政策をどうするんだ、金利の自由度をどうするんだ、これは表裏一体だと思っていまして、我々も、イノベーションをどう起こしていくんだ、民間のその部門の割合をどう高めていくんだ、これは表裏一体だと思っていまして、その問題に真正面から取り組んでいかないと、いつまでも財政だ何だ、大臣もおっしゃるとおり、規制緩和、三本の矢が大事なんです大事なんですと言っているだけでは、もういいかげん、そちらの方で結果を見せなければいけない段階に来ているだろうということを申し上げておきたいと思います。

 それで、前回の質問でもさせていただきましたが、きょうはビールに関する税金の質問の続きをさせていただきたいというふうに思います。消費税と同じ間接税でもありまして、関係も浅からぬビール税につきまして、一週間前にちょうど大臣にもお聞きしましたが、少し深くお聞きしたいというふうに思います。

 ビール税の一本化に向けた税制改正というのは、我々の与党時代も議論はさせていただいてきたつもりでありますけれども、いわゆる第三のビール、これは、度数の関係とかスピリッツを垂らすとか、いろいろな工夫の中で第三のビールというのができているそうでございますが、この税率を上げて、一方で本物のビールの税率を下げていくということで皆さんがおいしいビールを買いやすい環境になるということで、私としては、その類似する酒類間の税率格差というのを是正していくべきであるということを考えてまいりました。

 今回、消費税を先送るということでありましたし、消費税の一〇%の増税が先送りされたことを踏まえれば、ビール税の税制改正をする、ある意味千載一遇のチャンスなんじゃないか、こういうふうに捉えているわけであります。

 こうした中でちょっとウオッチをしていましたら、二十五日の火曜日、産経新聞の「安倍日誌」、いわゆる首相動静欄に、二十四日月曜日の総理の日程として、午後六時五十七分に東京・紀尾井町のホテルニューオータニ着、宴会場AZALEAでサントリーホールディングスの佐治会長、新浪社長と懇談、麻生太郎副総理兼財務相ら同席とあるんです。麻生大臣もそこに同席されていたと新聞紙上ではされております。事実だと思いますが。

 公表資料によりますと、この総理と大手ビールメーカーのサントリー社との懇談が午後七時半過ぎまで三十分ほど続いたようでございますけれども、気になるのは、昨年のこの会合の直後にビール税制先送りの報が一斉に流れたんですよ。それで記憶しておったんですけれども、今回、ことしもまた、懇談の翌々日早朝にNHKで「ビール税一本化 来年度中は見送る方針 自民税調」という記事が配信されたんですね。偶然にしても、二年連続で随分とタイミングがいいものだなと、こう私は思った次第でございます。

 知り合いの与党議員は、名前は出しませんけれども、税調でこんな議論は出ていないのにどうしてこんな報道が出たんだろう、こういぶかしがっている声もありまして、恐らく、こういう質問をすると大臣はこれまで、自民党税調の意見も踏まえといった答弁をされてきたと私は少なからず認識をしておりますが、税調での議論にもなっていないのになぜこういう結論めいた報道が出るのか、私はちょっとおかしいなと首をかしげざるを得ない、こう思っております。

 何度も申し上げますけれども、私は、類似する酒類間の税率構造にやはりゆがみがあるのであれば、消費税を先送りしたこのタイミングを捉えて税制改正すべきだというふうに思っております。

 恐らく財務省当局の皆様方もその思いは私はあるとこう確信をした上で、実は先週も、さまざまなロビー活動が行われつつある中で大臣の決意を質問させていただいて、大臣から御答弁をいただいたところもあります。大臣は財政を預かる立場でありますから、その点、省内の思いも踏まえて大臣が御答弁いただけるものだ、こう願いつつ、質問に入らせていただきたいと思います。

 今ほど申し上げたとおりでございますが、酒税改正の舞台は私は整ったと思っております。先週も指摘しましたけれども、ビール各社でいろいろな綱引きがある。つまり、ビールの会社にとっては、得意な酒類、得意でない酒類、そうある中で、その特定の社のある意味ロビー活動によって税制改正がゆがめられてはならない、こういう思いが私は裏腹にあるわけであります。

 大臣、このビール税制改正は実現すべきだ、私はこのタイミングしかないと思っていますが、大臣の御見解をぜひお聞かせいただきたいと思います。

    〔土井委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 まず最初に、ビールの話で、総理と宴会の席には、ほかにもこれは、毎年この時期なものですから、ここにおられる方々は、ビールに関係なく、大島議長を初め、ずらり昔からの関係者がこれにずっと出ている人、毎年私は十何年出ていると思いますけれども、ずっと同じメンバーが出てきていると記憶をしております。

 今回は、話の内容は税金の話は一切出ないで、主に出ていたのは、サントリーの佐治信忠が病気していましてしばらく出てきていませんでしたので、それが全快して出てきたので、おうおうという話が主な話題で、そういったのが主たる話題と、あとは、議員の方は福岡六区で負けた麻生太郎を慰労していただいたぐらいのもので、あとは税金の話はほとんど出なかったというのがこちら側の席の話であったと記憶をいたしています。

 さて、それで酒税の話ですけれども、これは御存じのように、昨年末、与党の税制改正の中において、いわゆる同一の分類に属する酒類間の税率格差が結果として商品開発や販売数量に影響を与えておるのではないかという問題意識のもとで、それらの税率格差を縮小、解消する方向で見直しを行うということで、これは速やかに結論を得るとの方針が示されたというのはもう去年の話であろうと思います。

 こういった話を受けて私どもはこれをスタートさせていただいておりますので、今、安いビールとか発泡酒とかいろいろな表現はありますけれども、そういったようなものの方がうまいから飲んでいるより安いから飲んでいるという方の方が圧倒的に多いんだそうで、そういうものからいきますと、ビールというものをもう少しどうにかした方がよろしいのではないか、少なくともこの税率の格差については。まずくするために一生懸命商品開発するなんというのはあほらしゅうて考えられぬ、こんなものは。どう考えても、うまくするために研究開発費使うならともかくも、おかしいじゃないかという話から、そういうことからこの話をさせていただいて、今少なくとも、麦芽の比率がどうたらとかそういったようなことだけでこれがなっておりますので、少しそういったものも含めて考えないかぬのじゃないかと思って検討をさせておりますことは事実ですが、だからといって、それはことしすぐやるとか来年やるとか再来年やるとかそういう話じゃなくて、目下検討を開始したというところまでが今の段階だということでありまして、少なくとも、何とか新聞の記事というのは、例によって例のごとく違っておるというふうに理解されたらよろしいと思います。

鷲尾委員 毎年この時期にやっている会合ということで、ちょうどその税制の議論もあることでございますし、私も大臣の答弁のとおりだと思っていますけれども、ぜひそういう政治の力で、今大臣が言った方向性がかえってゆがめられないような形で改正をお願いしたいということを強く私は申しておきたいと思います。

 このビール税の一本化に向けて今は検討を開始ということですから、当然、いずれそういう結論も見るであろうというふうに予想されるわけでありますけれども、メーカー各社が新商品の開発に力を入れていくだろう、こう予想されるわけであります。

 それに向けて御提案なんですけれども、いち早く副原料の緩和を実施すべきではないかというふうに思っております。それがわからないと、各社もどんなビールを開発したらいいのかわからないまま困ってしまうと思うんです。これは全国地ビール醸造者協議会という業界団体からも要望が行っているというふうに思います。

 大臣、この点はどういうふうにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 現行の酒税法の中におけるビール、これは明治三年に日本に初めて輸入されたものなんですけれども、そういったものの範疇というのは、これは、麦芽とかホップとかそういったようなものに水というものを必要な原料として、その三つを主な原料として、それ以外に使用できるものとして、今鷲尾さんの言われた、副原料と言われましたけれども、米とか麦とかなど一定のものに限定をしてやることになっておるんですが、その使用割合は、麦芽の比率が六七%なんとかいう一定の比率があるんだと記憶しますけれども、副原料の範囲とか麦芽の使用量というのも同様にこれは制限をされておるというのがビールというものの基準、いわゆる定義であろうと思います。

 一方で、地ビールというのが今、先生のところにあるかどうかは知りませんが、あちらこちらに地ビールというのは結構それなりの使用量がふえておりまして、そういった意味では、ビールの副原料としては認められていないので、その地域限定として、ビールとは名乗れないものですから発泡酒と称しているんですけれども、基本的にビールみたいなものを製造しておるというのが現状なんだと承知をしております。

 そういった意味では、この副原料の緩和については、どの範囲までというものをビールの副原料として認めるのかということについても、これは正直言って、御存じのように、ビール各社は全部意見が違います。全く意見が違います。じゃんじゃんいろいろなものを認めろとか、この地域においては、俺のところは柿が産地だから柿をその中へ入れさせろとか、俺のところは何とかがというので、ビールの中にいわゆる果物のにおいだとか、ワインと似たような話で、そういったようなものをもっと認めさせろとか、絶対量が何万リットルとかいうんじゃなくて、もっと小さい量でも認めろとか、いろいろな話がいっぱい出てきておりますのはもう御存じのとおりなので。

 ちょっとこれは今さらによく検討していかなならぬというのは、さっきのビールの税金よりこっちの方がもっと副原料が多いものですから、いろいろその範囲をどれまでにするかというのは結構難しいところかなと、話を聞いていて、今の段階ではそう思っております。

鷲尾委員 ただ、御承知のように、私の地元でも、日本最初の地ビールでエチゴビールとかあるんですけれども、確かに、果汁だとかハーブとかスパイスとか、大臣がおっしゃるとおりいろいろあるんですけれども、逆に言えば、これはかなりビジネスチャンスになりますよね。これは今政権でやられている地方創生にもつながりますし、こういったところをうまく指導して、難しい議論ですけれども、やっていただくと、地元での活性化だけじゃなくて、今はインバウンドが御承知のとおり物すごいですし、逆に海外に売っていくこともできますし、今でいうと、クラフトビールと言うみたいですけれども、ぜひここはやっていただくと、それなりの効果があるんじゃないかなと思うんです。その提案をさせていただきたいと思います。

 それから、では続きましてですけれども、租税回避について質問をさせていただきたいと思います。

 グローバル多国籍企業、いわゆるアマゾンとかアップル、グーグル、フェイスブックと言われる企業、ほかにもスターバックスとかいろいろありますけれども、こうした世界各国で事業を展開する企業は、税率の低い国に利益を移転して税負担を軽減するということが問題になっている。これは御承知のとおりだと思います。

 この租税回避は、法律に違反しているわけじゃないですから、節税ということなんでしょう。ですが、こうした国境を利用した節税は、いわゆる大企業と富裕層にしかできないことでありますし、普通の個人とか企業ではもう全く手が届かない。つまり、国内で真面目にやっている人には税金を払わせて、そうでない人は節税が可能だと。これは少し状況としてよくないんではないかと思います。

 この点について民間税調のメンバーからも、「パナマ文書が明らかにしているのは、結局、租税回避の「違法性」ではなく「異常性」の問題だ。」と指摘しておられまして、「このまま対策をしなければ、結局、国から出られない人や企業にばかり税金を払わせる非・民主主義的な税制度になってしまう」、こういう警告も民間税調のメンバーからなされております。

 こうした問題意識に基づきまして、具体的な税制のあり方について質問させていただきたいと思います。

 特に、我が国の居住者が電子書籍を購入したり、お金を払ったりして音楽の配信を受ける場合、インターネットでサービスを販売するアマゾン等の海外の事業者からは消費税を徴収できず、紀伊国屋を初めとする国内業者との間に圧倒的な価格競争力の差が発生するという事態が長く続いてきたというのがこれまでで、この点につきましては、消費税法改正によりまして、昨年の十月より、海外事業者から、ネット経由でのサービス購入であっても消費税を徴収できるようになったと承知をいたしております。

 これなんですけれども、どういう考え方でこの徴収を可能にしたというふうに我々は思えばよろしいでしょうか。その理論といいましょうか、その部分を教えていただきたいと思います。

木原副大臣 鷲尾委員にお答えいたします。

 平成二十七年度改正前の消費税制度では、国外事業者が行う電子書籍等の配信等は、サービス提供者が国外に所在していることに着目し、国外取引として扱われ、消費税は課されていなかったわけでありますが、この点については、問題意識としては、消費税が課される国内事業者との間で競争上の不均衡が生じていた。楽天には課税されるけれどもアマゾンにはされない、そういう不均衡、または、OECDにおいても、サービスの提供を受ける者の所在地において消費税を課すべきとの方向で議論がなされてきたことなどを踏まえて、二十七年度改正において、国外事業者が行う電子書籍の配信等において、サービスの提供を受ける者の所在地が国内にある場合には消費税を課すこととしたわけであります。

 なお、通常であればサービスの提供者が消費税の納税義務者となるが、国外事業者に消費税を課すに当たっては、国内でサービスの提供を受ける者が事業者、法人である場合には、我が国の執行管轄が及ぶ当該事業者、つまりこれは、サービスの受け手が納税義務者として申告納税することとしております。リバースチャージ制度と言われているものでありますが。

 一方、国内でサービスの提供を受ける者が消費者、個人である場合には、通常の取引と同様に、国外事業者が納税義務者として国内の納税管理人を通じるなどして申告納税することとしていること、そういう理論でございます。

鷲尾委員 そこで少し議論をさせていただきたいんですけれども、グローバルに展開する多国籍企業の租税回避が進む中、イギリスのナイジェル・ローソン貴族院議員、この方は一九八三年から八九年までサッチャー元首相のもとで財務大臣を務めた方でありますけれども、同氏がテレグラフ紙のインタビューで、法人税は主要財源ではなくなってきている、これからは企業の売り上げに基づいたより柔軟な税を導入する必要があるとして、多国籍企業はみずからが好きに選択した税管轄に利益を人工的に移転することができる、一方で売り上げは移転させることはできないんだ、こういう主張をされていまして、だから、売上税、つまり企業の売り上げをベースにした新たな課税の導入を主張されています。

 こうした主張について財務省が承知をしているかどうか。また、海外の事業者から消費税を取れるようにした考え方というのは、こういう売上税の考え方と似ている面もあると思いますけれども、この点、どうお考えになっているかということをお聞かせいただきたいと思います。

木原副大臣 ナイジェル・ローソン貴族院議員の発言は報道で私どもも承知をしておりますが、その真意といいますか、詳細まではまだ承知していない段階でございますが、御指摘の、国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直しについては、OECDにおいて、我が国の消費税に相当する付加価値税に関し、付加価値の生み出される国で課税された上で輸出されれば、同じ市場の中で異なる税負担の商品やサービスが提供されることとなり、経済取引への中立性を損なうこととなるため、消費される国で課税されることが望ましいとされたことを踏まえて実施したものであります。

 いずれにしましても、基幹税である所得税、法人税、消費税により安定的に税収を確保すること、これが重要だと考えております。

鷲尾委員 最後に、今、租税回避の問題を私は取り上げました。不公正な租税回避に対して本格的に日本は取り組んでいくんだということ、日本こそしっかりそれは取り組んでいこう、逆に、世界のその議論をリードしていくという気概があってもいいと思うんです。

 最後、大臣にそこのところを、これまでの議論を踏まえた上で御見解をお示しいただけたらありがたいです。

麻生国務大臣 四年前でしたか、五月の、バーミンガムシャーというイギリスの地方でG7の蔵相・外務大臣会議というのがあった。そのときは日本の円の独歩安というのがほとんどの各国の話題だったんですけれども、そのときに日本の方から、俺は初めてこの席に出てくるが、中央銀行総裁は関係ない。財務大臣はこの二重非課税の話をほたっといているというのはおかしくはないか。少なくとも、今までは二重課税の話ばかりしているが、これは二重非課税になっているんだ。それに関して何もしないヨーロッパなんていうセンスは俺にはついていけない。これはどうするつもりにしているんだかぜひ聞かせてもらいたいと言ったのがそもそもの皮切りで、うわっと、早い話が日本の独歩安の話はどこかへ飛んじゃって、もうそれだけでうわっとG6はそっちだけで集中して、一言も発言しなかったのがアメリカ。

 やはりこっちは、それにやることによっていろいろな企業の分がもうかるのか、自分のところはより損をするのか、その分がちゃんときちんと自分のところに落ちるのか、まだ計算ができ上がっていなかったと思っております。

 しかし、これは日本が音頭をとって始めて、たまたまOECDの租税委員長が日本人の浅川という今の財務官だったために、これのことも手伝って、日本が租税委員長として四年間やり、去年の十一月のG20でOECDを含めてこれに全員で賛成し、結果として、ことしの五月でしたか六月でしたか、京都で第一回のBEPSの会議をやらせていただいて、アメリカも含めて八十五カ国が人を出してきて、これは全部出して会議をさせていただきましたおかげで、少なくとも、これが今は各国別ずっと実質のあれが始まったところでもありますので、今のところは間違いなく日本がこれはリードしているというところは、鷲尾さん、間違いないんだと思います。

 これは合意をするだけでも大変でしたけれども、これをきちんと詰めていくには、施行させるためには結構時間がかかりますし、これはもうとてもじゃないけれども、私らみたいな漠然とした頭のやつじゃなくて、ちゃんと税理士とか計理士とかそういったのをきちっと入れたところで、各国プロを出してやるんだという話で、各国別にいろいろな話をさせるためのベースを今つくり上げつつあるというところまで来ておりますので、世の中で言われているよりはるかに事は進んでおると思っております。

鷲尾委員 時間が来たので終わらせていただきます。質疑通告してきょう質問しなかった分はまた別の機会にさせていただきたいと思います。

 大臣、御協力ありがとうございました。

 以上とさせていただきます。

御法川委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 重徳和彦でございます。財務金融委員会で初めて質問させていただきます。

 本日は、社会保障・税の一体改革法の改正ということで、消費税の引き上げ時期を再延期するということについての議論であります。

 もとをたどれば、この消費税増税の議論は、四年以上前、いわゆる与野党の三党合意のあたりから議論が固まってきたものでありまして、当時は民主党政権でもありましたし、今と与野党の関係も違います。

 また、私自身も含めてですが、二〇一二年初当選組の多くの二期生の皆さんは、与野党とも、まだ議員でもなかったというような時期でありますので、この三党合意から始まりましてこれまで四年間の経緯も含めて、きょうは、麻生大臣は普通の大臣と違いますので、本当に与野党を超えた大局的な見地からさまざま御見解をいただきたいと思っております。

 質問の前提としましてちょっと確認したいんですが、三党合意の意義あるいは重みというものについて改めて私ども理解をしておきたいと思うんです。

 麻生大臣、当時の三党合意、この意義、いまだにその意義というものがあるのか、つまり、三党合意というのはまだ破棄されたものではなく続いているものなのかどうかも含めて、ちょっとそのあたりについて御見解をいただいてよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 世界の先進国の中で、税金というような最も議論のなされるような話を、少なくとも与野党で合意ができたという上で実行せしめたということは、過去に他国にはない。少なくとも皆さんの国より俺のところの方がはるかに民主主義の成熟度合いは高いというのは、これ一事で証明している、そう思っていると言って、それに反論した他国の財務大臣は一人もいませんから、そういった意味では、誇れる、立派な結果だったと思っております。

重徳委員 そして、その合意というものは、今なお生き続けているという認識でよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 それに基づいて今日までいろいろ、それは部分部分いろいろあるんだと思いますが、基本は、その合意があってこの消費税というのが成立したんだと理解しております。

重徳委員 当時、三党合意、そしてそれに基づいて社会保障と税の一体改革の関連法が何本も成立をしたわけですが、当時の野田総理は、与野党の協力による決め切る政治、それまでは決められない政治というふうにやゆされてきたものに対して、決め切る政治なんだということをおっしゃっています。また、谷垣当時の総裁も、国の行く末を左右する政治案件で、与野党が合意を目指す舞台ができたというのは本当によかったというコメントも残されています。

 この合意に基づきまして、あるいは法律に基づきまして、二十六年四月、消費税は五%から八%へと引き上げられ、関連する社会保障の充実あるいは後世代への負担の軽減というものが実現をされてきたところです。

 その後の経緯をもう少したどってみたいと思うんですが、平成二十六年十一月十八日、安倍総理大臣が記者会見を行いまして、その三日後の衆議院解散を控えて、消費税の八%から一〇%への引き上げを延期するという話をされました。いわゆる七―九のGDP速報が残念ながら成長軌道に戻っていないというようなことも勘案して決定したということであります。

 そこで、私は、今麻生大臣が言われた、世界に誇るべき与野党の合意に基づいた消費税増税、これに関しては、法律には景気判断条項があるというのはもちろん承知はしておりますが、しかしながら、三党合意の経緯からすれば、政府・与党のみで判断するのでなく、合意のときは与党だった、しかし、平成二十六年十一月時点では野党となっておりました、今は民進党ですけれども、その当時、民主党に対しましても、延期をするということについて改めて合意をする、こういうプロセスを経るべきではなかったのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 それは法律でありまして、税制抜本改革法附則第十八条の三項というのがありまして、景気判断条項なんですけれども、経済状況の判断状況から、景気を万全にする観点から判断したものといろいろなことが書いてあるんですが、三党合意でこの附則第十八条については、消費税率の引き上げの実施等はその時の政権が判断することと完全にそっち側にしてありますので、まさにこれに沿った対応をさせていただいたものであって、民主党との協議を行う必要があったというわけではないというように、ルールからそういうようになっておると理解をいたしております。

重徳委員 法律はもちろんそうなんですね。ですから、法律に沿っていないとは言えませんし、また、これは三党合意に基づいた法律附則十八条三項でありますので、合意にも基づいているんだという説明は一定程度理解できると思うんです。

 しかしながら、これは総理の平成二十六年十一月二十一日の会見、つまり、十八日に消費税の増税を延期するとおっしゃいました。そして、その三日後の二十一日に解散の会見がありました。その中でこう総理は述べておられます。

 「消費税の引上げ延期は野党がみんな同意している。だから、選挙の争点ではないといった声があります。しかし、それは違います。野党の人たちは、ではいつから一〇%へ引き上げるのでしょうか。その時期を明確にしているという話を、私は聞いたことがありません。」というように、選挙の争点にしているわけです。

 ですから、もともと三党合意に基づいて、与野党ともに合意に沿って今回の判断をしているといいながら、その判断権はもちろん、判断を提起するのは政府・与党側であっていいと思うんです、時の政府であっていいと思うんです。しかしながら、野党となりました当時の民主党は、いつ一〇%に引き上げるのか言っていないじゃないか、これをもって争点にしようとしている、そういう会見だったんです。

 ここがどうも、世界に誇るべき与野党合意に基づいて判断したにもかかわらず、少し挑発的といいましょうか、野党は無責任だということをここでおっしゃっているわけなんです。

 ですから、私は、そういう意味も含めて、実際、安倍総理がこう述べておられるわけですから、こういったことは、まさに選挙の争点、いわば政争の具にしようとしている。このような姿勢をとるのであれば、そうじゃなくて、ちゃんと、いついつ、当時は一年半延ばすということであったわけですから、そういったことも含めて三党で改めて合意するべきではなかったかと思うんですが、麻生大臣、いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 御意見はいろいろあろうと思いますが、あのとき、消費税を争点にするというよりは、基本的に我々は、政権はとったけれども、我々がヒットを打って点を入れたのかと。相手がエラーしただけで点が入った、三年間でエラーした分、三年半の間のエラーの分だけで点が入ったんじゃないのかと。俺たちがヒットを打ったかといったら、ヒットを打っておらぬのだから。したがって、この二年間の成果を問うて選挙をすべきというのが、当時の与党内の意見の圧倒的な理由はそれだったと記憶をします。

 少なくともアベノミクスのこの二年間の成果を問うて、その上で、我々は世論の支持があるということを言わないと、安倍が三分の二とったって何ぼのものだ、人のエラーだけじゃないかというのは、与党内だけでもすごい御意見があった。反安倍の人たちは特にその御意見が強かったと思いますので。私どももその意見はわからぬわけではありませんし、事実ですから、私どもは、この二年間の成果でということをあのときは申し上げたと思いますので、消費税を主に争点にして何とかというよりは、そちらの方が当時の意識としては大きかったかなという記憶であります。

重徳委員 実際に安倍総理も、今私が言及したところは確かに言及されたのは事実なんですが、つまり、消費税も争点だという言い方もされている一方で、今回は一言で言えばアベノミクス解散です、こういうこともおっしゃっているわけですから、まさにこれがヒットじゃないかと。それは、今、麻生大臣が言われたこととその点では一致すると思うんです。

 しかし、今回の延期に当たっても、野党各党から指摘があるように、延期せざるを得ないのはアベノミクスが失敗しているからじゃないか、こういう声があるわけです。ここは政治の難しいところではあると思いますが、消費税増税について合意した、そして、延期するかどうかについても、合意に基づいて時の政府が判断することになっている、合意から全く離れていない判断をしているのだと政府・与党が言っても、野党側は、いや、それはアベノミクスの失敗によるものなんだというふうに、だんだん合意から遠ざかっていく方向にお互いが進んでいくように見えるわけであります。

 そういう意味でも、この後も今回の延期判断についても申し上げますが、これは憲法改正についてもそうだと私は思うんですが、与野党がそういった大事なことについては合意をしながら、少しずつ軌道修正するときも合意をしながら進めて、そして増税の実施、引き上げの判断をする。こういった仕組み、慣行を、この小選挙区、特に二大政党を前提としたこの制度である以上、こういった慣行を、仕組みをもっと原則とするべきじゃないか、このように考えるんですが、麻生大臣、いかがお考えですか。

麻生国務大臣 それは、基本的には、与野党国対委員長会談とか幹事長会談とか、二国二幹とか、そういったところで主に意見が調整されたり修正されたり、意見の交換がされるということになるのが通常なんだと思いますので、そこらのところの話を、ちょっと私、二幹二国の話をよく知らないんですが、そういったような形できちんと党と党の間でされていくということの段取りを踏まないかぬというのは通常よく行われるケースなんだと思いますので、そういったのがきちんと行われるというような人間関係を幹事長間同士で、国対委員長同士でつくり上げておかれないとなかなかそういったことが難しくなるんだと思って今伺っていました。

重徳委員 政府と国会の役割分担、これは、議院内閣制でありながらも立場はちょっと使い分けなきゃいけないという意味で、答弁される側も質問する側もなかなかやりにくいんですけれども、あえて言えば、二幹二国を含めて国会における与野党の協議、あるいは駆け引きと言ってもいいかもしれません、こういったことに政府の政策が大きく左右されるわけですから、その意味で、もちろん麻生大臣も人任せというわけではない。

 その観点から、財務大臣として、国会において与野党でしっかり協議を行って、がっちり手を握って進めていってもらいたい、そういう希望はありますか。

麻生国務大臣 法案を出す側の立場に立った場合は、副大臣、大臣はもちろんのこと、そういう立場にいて、法案を抱えておりますいわゆる役所を含めまして、これは当然、与党国会対策委員会との連携は極めて密にせざるを得ない。法案を通す、審議していただく優先順位から、つるしからおろしてもらう段取りから、全部話をしないと国対というのは回りませんから、いわゆる初歩的な知識として誰でもやっているんだと思いますので、そういったところはきちんとやっていかないとなかなか国会というのは回っていかないんだと私どもはそう、三十年間ぐらいここにおりますけれども、法案が幾らよくても審議されなければ話になりませんから、そういった意味では、ちょっと間違えると審議未了、廃案とすぐなりかねませんから、そういったのは十分に国対と話をしてやってしかるべきものだ、私はそう理解しております。

重徳委員 今のはあえて私の質問にお答えにならないという姿勢の御答弁なのかわかりませんが、私がお聞きしたのは、三党なら三党で合意をしてこの法案の審議を進めていってもらいたいと。

 国対との密な連携はもちろんですが、主に与党の国対、議運との調整だと思いますが、それはもちろんのことでありますが、そういう密な連携を生かしながら、与野党三党で合意をしながら進めていくべき、あるいはいってもらいたいものだ、そういう希望はやはりありますか。

麻生国務大臣 これは重徳先生、意見の合わないものは幾らやったって全然合わないんだと言う方はいっぱいいらっしゃいますよ、そういう方も。そういう方もいらっしゃいますけれども、基本的に、いろいろな意見というものは出される。これは議院内閣制ですから、多くの方々が意見を言われる。おまけに、ここは一党独裁でもなければ全体主義でもありませんので、民主主義ですから、多くの選ばれてきておられる方々がそれぞれの意見というのをお持ちで、それで、最終的には多数決というのがルールですから。

 そういった意味では、なるべくいろいろな方々の合意というのが出されて、今、国会で見ても、全会一致というのもあれば、全くそうじゃないのもありますので、いろいろな形でああいったような話は国会対策なり議院運営委員会で議論がなされて、それまでの間、いろいろな意見の違い等々は個別に交渉されたり話をされた上で話がまとまっていくという形になっているんだと理解しております。

重徳委員 なかなかストレートにお答えいただけないことなのかもしれませんけれども、ちょっと次のステージに入ります。

 ことしの六月一日、先ほどから話題になっております安倍総理大臣の新しい判断というものが下されたところであります。その新しい判断とは何ぞやということについては、先ほどからの御答弁が一応あるんですが、ちょっと中身は余りよくわからない。そして、先ほど麻生大臣御自身が、新しい判断という言葉に尽きるといったような話もありましたので、理屈じゃないというようなことがあるんだと私は受けとめております。

 そして、六月一日の安倍総理の記者会見の議事録を見ますと、こう総理は言っています。「率直に申し上げて、現時点でリーマンショック級の事態は発生していない。それが事実であります。 熊本地震を「大震災級」だとして、再延期の理由にするつもりも、もちろんありません。そうした政治利用は、ひたすら復興に向かって頑張っておられる被災者の皆さんに大変失礼なことであります。 ですから今回、「再延期する」という私の判断は、これまでのお約束とは異なる「新しい判断」であります。「公約違反ではないか」との御批判があることも真摯に受け止めています。」このようにおっしゃっています。そして、参議院の、連立与党で改選議席の過半数の獲得をもって国民の信を得ることになる、こうおっしゃっているわけなんです。

 しかし、印象も含めてですけれども、公約違反じゃないかという御批判も真摯に受けとめるなんて言いますけれども、しかし、公約に反して増税するんだったら厳しいことになりますが、公約に反して増税を延期すると言うんですから、その後選挙に臨むというのは、これは楽な話なわけですよね。言葉をたがえたという意味では突っ込みは入るでしょう。しかし、国民から反対論が物すごい勢いで出て突き上げられる、こういう状況にはなり得ない。まして、そのとき野党各党も既に延期すべきだと言っているわけですから、先ほどの一回目の延期と同じように、選挙の争点にすらならない話じゃないか。ですから、少しこれは、言うは言うけれども、それほどの語弊は、誤解を恐れず言えば、それほどのことではないというようなことになるんじゃないかなと思います。

 そして、改めて麻生大臣にお聞きしますが、ことし六月一日にこのような新しい判断であるということを安倍総理が言ったその時点においてもなお三党合意は生きているというふうに言えるんでしょうか。

麻生国務大臣 別に、破棄するという話でもありませんが。繰り返しになりますが、先ほども申し上げましたように、消費増税というか、税率の引き上げを予定どおりに実施するかしないかということについては、これは時の政権が責任を持って判断すべきもの、いわゆる附則十八条、そういうことになっておりますので、その判断の内容につきましては、御党を含めまして各会派にあらかじめ協議を行うということは、必ずしも必要なものではないと私はそう思っております。

 いずれにせよ、この消費税率引き上げの延期というのは、国会での御議論というものを得た上で法律改正によってこれは決定されるものですから、特段の御意見があるのであればその場で御意見を述べられる党もいっぱいあると思いますので、そういった意味では、私どもとしては、協議というものに関しましては先ほど申し上げたとおりであります。

重徳委員 政策論じゃなく、少し政局的なお話をさせていただきますが、三党合意は、破棄されたとか崩壊したということはおっしゃらないわけですから、基本的に生きている、そういう認識でおられると思います。

 ことし六月のころを思い出しますと、世の中あるいはマスコミは、伊勢志摩サミットにおいて各国の首脳との間で世界経済が思わしくないという話をした上で増税延期を決断して、そして衆参ダブル選挙を安倍総理は打つんじゃないか、こういうことを論調として言っていたわけですね。

 そういうものを、やはり政治家のさがというものもあるんでしょうが、政府・与党がそれを打ち出す前に、野党は、経済の状況も踏まえつつ、やはり選挙において政府・与党に先手を打たれたくないという思いもあって、この増税延期というものを先に打ち出した。こういう状況の中で六月一日を迎えたということだと私は思うんです。

 五月十八日に党首討論で岡田代表が、今回は消費税増税を延期すべきということを初めて明言されました。その後の六月一日に総理も同じ主張になったわけですから、これをもって、主な政党はみんな延期すべきだというふうにそろってしまったんですね。

 残念ながら、日本の政局、日本のみならず政局というのはこういうものなのかもしれませんけれども、こういったことによって消費税増税が延期されることになってしまう、非常に大きな影響を受けるということについて麻生大臣はどのようにお考えですか。

麻生国務大臣 税というのは、極めて、国民の暮らしを支えるという意味においては社会保障の根源ですから。そういったものでは、消費税についてはいたずらに政局化するべきものではないというのは、基本的な考え方として、国会議員としては持っておくべき矜持の一つだと、私はそう思いますけれどもね。そういった意味では、問題意識として私は共有いたしますけれども。

 したがって、こういったものは三党の真摯な話し合いを経て、結果として、三党合意というのができた結果が今日のこの消費税の話なんだと思っておりますので、こういった問題をいろいろな意味で、長期的な話ですし、税金というのは一過性のものではありませんので、そういった意味では、きちんとした話をして、誰かが責任を持ってこれをやっていかないかぬということだと思っております。

 いずれにしても、消費税率というものを引き上げるということを与野党合意でなされたというのは、これは極めて大きな、歴史的なことだった、多分、後世評価されてしかるべき判断だった、私はそう思っておりますので、私どもといたしましては、八%をやってさらにという意見と、今はそうではないという意見と分かれたという現実に合わせて、多くの方々の意見を聞かれた結果、今は延期をすべきだという結論に関しては、全党がほとんど合意をされたんだと思っております。

重徳委員 私は、麻生大臣がおっしゃるように、消費税増税、政局化すべきではない、それはそのとおりだと思うんです。そして、三党合意は、そのためにも非常に後世からも評価される合意だったと思います。しかし、合意がされたことだけでその後延期延期では、後世から評価されることにはなりません。だから私たちは、ここで改めて議論をして、本当にこれでいいのかということを真摯に審議をしていかなくちゃいけないと思っているんです。

 それで、その意味で、あえて我が党の前代表の会見を少し引用をしたいと思います。退任をされるときの九月八日の岡田克也代表のコメントです。「私としては消費税の引き上げ先送りは本当にしたくなかったですね。しかし、今の経済状況ではやむを得ない。もう一つは、安倍総理が引き上げ延期を選挙のテコとして使ってくる。総選挙もそうだし、今度の参議院選挙もそうですね。そのことはわかっていて、やはり我が党の議員を守るためにも、私としては先送りを言わざるを得なかった。しかし、そんなことがいつまでもできるはずはないわけで」云々とおっしゃっています。

 これは、非常に正直なコメントだな、岡田さんらしいなということを言われるかもしれませんけれども、こういうふうに考えると、理屈は理屈になっていないような理屈で、新しい判断と言わざるを得なかった。その六月一日の会見においては、参議院選挙への影響を考えると安倍総理大臣の頭には引き上げという選択肢はもうなかったんじゃないか、選挙前であるがゆえになかったんじゃないかと振り返ってみても思うんですが、麻生大臣はいかがお考えですか。

麻生国務大臣 社会保障と税の一体改革というのが一番の消費税引き上げの背景です。したがって、消費税で増税された分につきましては、その全額を社会保障、介護、医療保険等々社会保障に全額突っ込むということになっておるわけですから、少なくとも社会保障とかそういったことに、いわゆる社労族としてお詳しいと思われる安倍総理の中に、この消費税を上げなければ、それによって約束してあるいろいろなものができなくなるということは十分に頭の中に入っておられますから、少なくとも、そういったものを考えて引き上げることを考えていないというのは一方的な分析じゃないか、私にはそう見えます。

重徳委員 基本的には想定内のお答えなんですけれども。私は、やはり、建前と言い切ってしまっては失礼なのかもしれませんが、おっしゃることを本当に実現するために、政策はもちろん正しいと信じることを進めなきゃなりませんが、政局も含めて考えて、与野党で知恵を出していかなければ、消費税増税というのはなかなか実現できないんじゃないかなというふうに思っています。そして、これで合わせて四年間引き上げ時期が延期されるわけですが、その分だけ将来にツケが回っていくわけであります。

 その意味で、先ほどから、この場においては私の一方的な主張になっておりますけれども、しかし、恐らく、多くの委員の皆さんそして世の中は、やはり選挙、政局というものがあって今回の消費税増税の延期というものが進んできているということは、誰もが認めざるを得ないことだと思うんです。その意味で、そうした選挙の事情を乗り越えるための私どもの知恵というものが三党合意だったはずだし、これからもその精神にのっとって、これは国会の国対とか議運の場を含めてでありますが、しかし、テーマはこの財務金融委員会のテーマでありますので、これを我々はあらゆるレベルで政策推進に向けて邁進するべきではないか、このように思うわけであります。

 今度の一〇%に引き上げるという時期は、三十一年の十月ということでございます。安倍総理大臣も三期目に入ることができれば、その判断をするのも安倍総理大臣ということになるのかもしれません。プライマリーバランスの黒字化の期限が三十二年でありますので、もうそれ以上の延期はできないはずでありますが、しかしながら、まださまざまな事情で、またさらなる新しい判断が出てくるのかもしれません。そういったことについて、もうこれ以上の先送り、延期はできない、できるはずがないと私は思いますが、麻生大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 我々も、消費税というものをさらに先送りするということは、社会保障と税の一体改革がなかなか事は進まなくなる、今お約束していることももちろんのことですけれども、それを赤字公債を発行してやるつもりはありませんから、そういった意味では、延期ということは社会保障の実現がおくれる、まずそれが第一点。

 また、プライマリーバランス、いわゆる基礎的財政収支というものを、我々は半減目標というのを掲げてここまで来て、一応、絶対達成しませんという予想を裏切って達成することができましたのは、我々としては大変よかったと思っておりますけれども、これをチャラにするところまで持っていかぬと日本の財政というものは健全化していく緒につきませんので、今、新規国債発行額を十兆円減らしたとはいえ、金利分がふえているわけですから、そういった意味では、我々としては、きちんとしたものをするためには、プライマリーバランスや基礎的財政収支をゼロにしていくというところまで含めまして、これはこの内閣に与えられた非常に大きな目的であります。

 それを達成するために、やはり、消費増税、消費税率の引き上げというのはこれは避けて通れぬ。ほかのものがよほど景気がよくなるとか、何か極端なもので税収がふえるとかということでも起きない限りは、これはなかなか難しいという感じがいたしますし、人口構成が急激に変わるとも思えませんから。

 したがいまして、今の状況では、やはり消費増税というものは避けて通れないと思っておりますので、今申し上げましたように、我々としてはきちんと、次回、二〇一九年には消費税の増税というものはやりたいと思っております。

重徳委員 しかしながら、やりたいと大臣今おっしゃいましたが、今のような状況が続きますと、平成三十一年十月の引き上げですから、恐らく、判断するのは平成三十年の秋ごろだと思うんですが、その時点において今と同じ状況であれば、要するに、与党も野党も、自分らが引き上げると言って相手が延期だと言ったら選挙は戦えない、こういう心理が働くわけで、その意味で、与党も野党も一致して、この三十一年の十月は引き上げるということで合意を改めてするという知恵を働かせたらどうかと私は思うんです。

 改めて、同じことばかり聞いているようでありますが、三党なのか何党なのかわかりませんけれども、与党、野党で、少し先のことでありますが、三十一年十月に引き上げるということについて、国会においてですけれども、ですから大臣が直接その責任者としてお答えになる立場ではないかもしれませんが、今お考えのことを最大限述べていただくことはできませんでしょうか。

麻生国務大臣 国会に来られてしばらくたたれておられますので、役人とは違うので、ここのルールもおわかりだと思って、その上で聞いておられるんだという前提で答弁しますけれども。

 少なくとも、役所が考えている、自治省が考えたから法案が通るなんというようなことではない、財務省が考えたから法案が通るわけでもないのです。与党が、野党がある程度合意を得るというその場が国会対策であり、議運であり、というものをきちんと手続を踏まないと事は前に進んでいきませんので、今のお話ですけれども、麻生が言ったからと一存で決まるような、そういった、帝国議会でもありませんし、議会が一応ありますので、きちんとした手続を踏まなければ事は進んでいかぬというのは現実ですから、ぜひその点も踏まえて、今後ともこういった話はいろいろ丁寧な議論というものを各党の間でしていかれるという必要があろうと存じます。

重徳委員 時間も迫ってきておりますので、一つ、民進党の代表選挙のときに玉木雄一郎議員がこども国債というものを訴えておりました。こども国債について少し御見解をいただきたいと思います。

 増税、今回も延期しました。本来、消費税を充てるべき子ども・子育て支援新制度の施策があるわけなんですけれども、これについては、何とかいろいろなところから財源を引っ張ってきて支障がないようにする、このような方針であると聞いておりますが、これもこれで、何だ、財源はあるんじゃないか、その分は引き上げる必要はそもそもなかったんじゃないかという議論も呼びかねません。

 ですから、消費税を上げるのは延期しながら財源を何とかする、そういう論法で社会保障制度をこれから進めていくというのは、やはり論理として破綻していくものだと思っています。ですから、やはり、一言で言えば、安定財源を確保する必要があると思うんです。

 とりわけ、社会保障といっても、子ども・子育て分野と年金、医療、介護分野があるわけでありますので、特に財源不足の部分、金に色はありませんので、建設国債以外は今全部赤字国債で賄っているわけでありますが、その中でも、子ども・子育て、あるいは教育、どこまで充てるかというのは制度設計もできていないので何とも言えませんが、いわゆるこれは一般国民感覚からして、将来投資に充てるべきであるという財源については、こども国債という枠組みの中で財源調達をして、そこは消費税増税が先送りされようと何であろうと国債をもって賄うことができる、このような仕組みをつくってはどうかと思うわけです。

 そして、主に高齢者を対象とした財源については、それはまさにその年の税収をもってその年に使うという一般的には施策でありますので、その意味で、消費税といった税収確保の策がおくれれば、まあ少なくとも子供たちには影響を与えない、こういった新しい財政の枠組みを考えていくべきではないかと考えているんですが、麻生大臣のお考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 おっしゃっていることは、赤字公債をこども国債と名前を変えるというだけの話で、言っている内容は、裏づけのない借金をするという点においては、名前が違う以外は言っておられることは同じだと思います。

 私どもは、やはり、その国債を返済されるのは将来の子供が返済することになっていますので、そういった意味では、いわゆる特定財源というものは建設公債のような裏づけがないというようなものだと、基本としては資産の形成に資することになりませんので、子供を資産だというようにお考えになってそう言っておられるのか、ちょっとそこのところは理解がよくできていませんけれども、いわゆる建設公債とこれは全然種類が違う話なものですから。

 少なくとも、後の世代に費用負担を求めるということでは同じでありますので、そういった意味では通常の赤字国債と同じということだと思っておりますので、この種の名前を変えて新しい公債を発行することにつきましては、我々はより慎重であらねばならぬ、そう思っております。

重徳委員 これで終わりますけれども、社会保障財源は本当に多くの人たちが心配しているところでありますので、それも一くくりで足らざる部分は今現に赤字国債で賄っているわけですから、そこを少しでも納得感のある、国民の理解を得られる財源構成にしていこう、こういう議論でありますので、引き続き党内でも議論させていただきますが、これからもよろしくお願いいたします。

 以上です。ありがとうございました。

御法川委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時十五分開議

御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古本伸一郎君。

古本委員 民進党の古本伸一郎でございます。

 連日の御対応、大臣を初め政府の皆さん、お疲れさまでございます。

 午前中の審議で三党合意の話が随分出ておりましたけれども、きょう、その当時の原本の写しを持ってまいりましたので、委員長のお許しをいただいてお配りをいたしております。

 今、野党も各党いらっしゃるわけでありまして、この三党という言葉は、理念なり哲学、さらには政策が一致するのであれば、当然四党でも五党でも私はいいと思いますけれども、当時、将来世代に借金をツケ送らないんだ、社会保障の財源をきちっと確保するんだということで消費税の税率引き上げの合意に至れた当時の三党であった。その意味で三党合意ということを言うことについて御理解をいただきたいということを冒頭申し上げておきたいと思います。

 実は、この三党合意が生きていると私も信じたいですし、実はこの一番後ろに当時のサイン、このときサインした筆を私は家宝として今でもとっていますけれども、このサインをされたのは、自由民主党は亡くなられた町村信孝先生、公明党は斉藤税調会長、私どもは民主党の藤井裕久先生であったわけでございます。

 亡くなられた町村信孝先生は、合意に至ったこの日の夜の、もう未明の共同記者会見で、議会制民主主義において与野党が租税の引き上げについてこういった形で合意したというのは、世界に類例のない画期的な第一歩であるという趣旨の会見をなさったことは、私は胸に深く刻んでおりますし、議会人の端くれとして、誇りであります。

 この精神が今も受け継がれているということが午前中の審議で麻生大臣からもありましたので大変うれしかったわけでありますし、また、その後に当選されてこられた諸先生方もおられますので、事あるたびに、このことは歴史の事実として申し上げる責任が当時の事務局の一人としてあるんじゃないかなというふうに思っています。

 ちなみに、自由民主党の町村先生のそばで事務を担当されていたのが、現在の税制調査会長の宮沢先生であります。

 つまり、関係者は、少なくとも当時の議論を受け継ぐことができる人間はそれぞれのハウスに今もおるわけでありますので、ぜひこの議論は、当財務金融委員会あるいは関係する総務委員会を初め関係委員会で受け継いでいく責任があるんだろうなというふうに思っております。

 その際、第七条、一ページをごらんいただきますと、実は、低所得者対策で当時議論をしたのは、給付つき税額控除もしくは軽減税率、今で言う軽減税率、当時は複数税率と呼んでおりましたけれども、これを併記したというのが、これまた画期的な合意事項だったと思うわけであります。実はこの後、これは法律事項として書き込んでおりますので。

 手前どもは、この給付つき税額控除がいわゆる逆進性対策としてはすぐれているという立場を今も崩しておりませんけれども、当時、多くの同僚議員が、与党でしたから百人、二百人の大変大勢の議員が税調総会に駆けつけて、連日連夜の議論の中で、実は軽減税率の方がすぐれているという論陣を張る議員、同志もたくさんいたんです。その皆さんに、実は、お金持ちがビフテキを買っても軽減されるというのはおかしいじゃないか、松阪牛を買っても神戸牛を買っても軽減されるというのはおかしいじゃないかということを随分言いました。財源もかかるという話も言いました。その際、この給付つきが大変難しいなという物言いが他方で指摘を受けた第一の理由に、所得の把握ができないということがありました。

 きょうは財務省にお越しいただいていますけれども、現在、この所得把握という課題について半歩でも前進したのではないでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 古本先生から、給付つき税額控除の関係で多少でもその前進があったのではないかという御指摘がございました。恐らく、マイナンバー制度の導入により、以前よりも正確な所得の把握が可能になっているのではないかという御指摘かと思います。

 確かに、マイナンバー制度の導入により、以前よりも所得把握がしやすくなる、名寄せ等も含めてそこはやりやすくなっている面があるのは確かでございます。

 ただ、逆に限界もございまして、マイナンバーが導入されたからといって完全な所得把握ができるかといえば、そこはまだまだ課題が多いのではないかというそういう認識を持っております。

古本委員 めくっていただきますと、次の二ページに簡素な給付措置というのも書いているんです。現在、制度として歳出でとっていただいている簡素な給付措置。実はこの給付つき税額控除、いわゆる税戻し、あるいは軽減税率が導入されるまでの間は、この簡素な給付措置で低所得者の皆様にいわゆる痛税感を緩和しようということで生きているわけでありまして、実は、これも有力な選択肢なわけであります。

 つまり、今回の抜本改革法、通称で言わせていただきますと、消費税延期法案の中には軽減税率を大前提とされている。この三党合意の精神が生きているのであれば、やはり給付つき税額控除も、もっと言えば、簡素な給付措置だっていいんじゃないかというオプションはやはり併記をしながら議論を進めなければ、なかなか私たちはついていけないという問題意識をまず指摘しておきたいというふうに思います。

 きょうは総務省もお越しをいただいております。自治財政と自治税務にお越しをいただいています。今回、実質的に二年半先送るわけでありますけれども、この間の得べかりし税収は幾らぐらいになるんですか。

開出政府参考人 お答えいたします。

 地方消費税の税率一・七%から二・二%への〇・五%の引き上げに伴う税収は、平年度で約一・四兆円と見込んでいるところでございます。税率の引き上げが二年半延期になることを踏まえ、仮に、これに二・五を乗じることにより単純に計算いたしますと、約三・五兆円となります。

古本委員 では、この三・五兆円は、恐らく消費の多い地域とそうじゃない地域とで少し偏在性はあるでしょうけれども、恐らく、いわゆるシェア率、中で調整されれば案分されるんでしょうけれども、特に影響の大きい、あえて歳入欠陥という言い方をしていいんでしょうか、この歳入欠陥をする自治体の、ある意味ワーストファイブというんでしょうか、上位五つというのはどこになるんでしょうか。

開出政府参考人 先ほどの三・五兆円につきまして、各都道府県の地方消費税の現時点における清算基準で仮に機械的に計算いたしますと、多い順に、東京都約四千九百億円、大阪府二千六百億円、神奈川県二千三百億円、愛知県二千百億円、埼玉県千六百億円となります。

古本委員 では、その歳入欠陥した分はどうやって各都県は手当てされるんでしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 地方税収、地方の減収につきましては、地方消費税、そしてまた地方交付税の法定率分の減収があるわけでございますけれども、消費税率の引き上げ時期の延期に伴いまして、予定されていた引き上げ分の地方消費税収等の歳入が得られなくなるわけでございますけれども、地方団体が地域に必要な行政サービスを確実に提供しつつ安定的な財政運営を行えますよう、年末の地方財政対策におきまして、地方交付税を初めといたします地方の一般財源総額をしっかりと確保できるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

古本委員 交付税ということは、交付税の出どころは税収でありますね。

 他方、地方債は発行しないんですか。臨財債、地方債で手当てということはないんですか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 一般財源総額をしっかりと確保するということでございます。一般財源の中には、地方税、地方交付税、そしてまた臨時財政対策債といったものがございます。

 いずれにいたしましても、地方財政対策におきましては、歳入歳出をあわせまして、全体として地方財政が安定的な財政運営を行えるよう確保するということでございまして、そうした中でしっかりと取り組んでまいりたいということでございます。

古本委員 今は交付税を言われましたけれども、資料をいただいていますけれども、いわゆる不交付団体は全国で七十七、七十六市町村と一県がございます。当然、県は東京都だと思いますけれども。この七十七については、得べかりし税収は地方債を起債するしかないんじゃないですか。利回りは幾らですか。地方債の利率は幾らですか。これは誰が返すんですか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 地方債を調達する際の利率につきましては、当然、そのときの金利情勢などによって変化いたしますが、ちょっと今は直近のものは手元にございませんが、今の金利の低い状況の中で、〇・一%とか、そういった数値だったかというふうに存じております。

古本委員 今はコンマ一という話がありましたけれども、ただでさえ、財源という意味で、オリンピックのスタジアムを建てるのにも非常にセンシティブに今は東京都もなっておられるようでありますけれども、東京都の四千八百億を筆頭に、借りなくてもいい借金を新たにしなきゃいけないわけですよね。不交付団体ですから交付税はもらえない。

 つまり、総務省、御省は、今回の先送りに当たり、省を挙げて先送ってはならぬという努力をされたかどうかなんです。全国六団体の会合、あるいは市長会、知事会、さまざま、先送りが決まった後に、せんだっての会議等々でも財源措置を頼むと書いていますよ。それは誰だって首長はそう言いますよ。先送る前に、予定どおり上げなければ、全国約千七百ある市、町では、介護の充実やら子育ての充実やらさまざまな、消費税の税率が一〇%になる前提で、場合によっては総合計画を書きかえた自治体もあるかもしれません。入ってくるはずの財源が二年半先送られるというのは、自治の当局としては大問題であるということをどれだけ言ったかということなんです。

 きょう、麻生大臣もいらっしゃいますから、言いたいことがあるのなら今言ったらどうですか。予定どおり上げるべきだったんじゃないですか。

開出政府参考人 総務省としてのということでございますが、引き上げにつきまして総務大臣が五月の参議院総務委員会において答弁している内容でございますけれども、「消費税率の引上げというのは、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすということとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するためにも必要なことであると考えています。」ということを答弁しているということでございます。

古本委員 委員長、ちょっと前後しましたけれども、私、通告の二日前主義というのを何とかやりたいと思っていまして、前、内閣委員にこの二年ほど行っていた間に、井上信治委員長にお取り計らいを当時いただいて、うちも泉筆頭理事を中心に、野党とはいえ、できるだけ二日前通告しようということではあったんですが、ちょっとにわかに指令があり、きのうの朝早い時間にできるだけ通告しようとしたんですが、その心は、やはり領域通告をするだけでも、多分、税が当たるのか計が当たるのか理財が当たるのか、これで待機の解除になるんですね。だから、きょう言わなきゃいけないような理事がいなくて何ですけれども、こっちも野党側がいらっしゃるので、物すごく激突している何かがあるのならばそういうことはなかなか平和的には言えないかもしれませんが、できるだけ二日前通告を私はしたいと思う。ですから、井上信治筆頭でいらっしゃるので、ぜひ当委員会もそういう文化が育まれるといいなというふうに思っていますので、うちの理事には私からも言っておきますよ。

 それで、実はこの話は総務省には私は言ってありますよ、利率の話も。だから、にわかにわかりませんとかと言われると何かすごく私も悪いことをしているような気がしますので、通告はしてありますし、同時に、実は総務省として大臣がどういうやりとりを麻生大臣と当時したかということも含めて問題意識はありますけれども、委員会の運びの話はまた次回に理事間でぜひお願いをしたいと思いますが、議論を進めます。

 要は、地方の財源確保という意味からいえば、予定どおり消費税率を一〇%に私は上げるべきだったと思いますよ、この観点からも。地方の財政調整機能を極めて偏在性のないレベルにできる財源というのは、消費税以外にないですよ。この消費税の財源をぜひ充てなきゃいけないという議論のそのさなかに、あろうことか、法人住民税の召し上げみたいなことで少しお茶を濁そうということを考えられたわけでありますね。

 今回、法人住民税の召し上げも二年半自動的に延期されると延期法案の中に入っていると承知しておりますけれども、今回召し上げられる自治体は全体でどのくらいあるんですか。そして、影響額は何億円ぐらいあるんですか。

開出政府参考人 平成二十八年改正法におきます地方法人課税の偏在是正措置でございますけれども、これは、地方消費税率の引き上げによる不交付団体の増収が財源超過額の増となるということと、地方団体間の財政力格差の拡大につながるということを踏まえまして、法人住民税法人税割の一部を国税化しまして、その税収全額を地方交付税の原資とするということとあわせまして、法人事業税交付金を設けまして、市町村の減収を補填するなどの措置を講ずるものでございます。

 この措置におきましては、ほとんどの市町村は、地方消費税交付金の増や法人事業税交付金の新設による増収が法人住民税法人税割の減収を上回って、全体として地方税源が充実するという形になります。

 個別の団体への影響額ということでございますが、地方自治体の法人住民税法人税割の税収構造はまちまちでございまして、個別に特殊な増減収の要因もあるというふうに考えられることから、具体的な減収となる団体ということについては、総務省としてはお示しすることとしておらないということでございます。

古本委員 ちなみに、代替案として示されているのが、同じくこの歳入欠陥になる、いや、これは何か悪いことをした自治体じゃないんですよ。企業を立地したり、さまざまな設備投資を促したり、インフラを整備したり、インターチェンジを一生懸命つくっていただいたり、そして、大変産業を立地し、結果として法人税の寄与度が高い自治体に発生することなんです。

 その自治体が何のいわれもなく歳入欠陥になり、実は私の地元では、百億、平年度で歳入欠陥になります。これを市民一人当たりに置きかえたら数万円です。この話を自治区の何かの会合で話したら、どよめきますよ。百億と言ったらぴんときませんけれども、市民一人当たり幾ら召し上げられると言ったらどよめきます。

 そして、その召し上げた税が、残り千六百幾つの交付団体、かつ、そういう産業立地のない、法人住民税の寄与度の低いところに行くんです。行くんですが、それを平均すると、大体どのぐらい行くんですか。

開出政府参考人 先ほど申し上げましたように、今回の措置というものにつきましてはほとんどの団体で税源が充実する形になるということでございますが、御指摘のように、今回の措置におきましても減収となる団体が出てくるということでございます。

 そのため、法人事業税交付金は各市町村の従業者数を基準に交付するということといたしておりまして、各市町村の産業の集積度合い、すなわち税源涵養努力が反映される制度としているほか、法人事業税交付金の導入におきまして、法人住民税法人税割の税収減の影響を緩和する経過措置を設けるということとしてございます。

 交付団体と不交付団体の調整につきましては、交付税全体の中で措置されるということでございますので、具体的な金額についてはお答えすることができません。

古本委員 要は、単純に暗算したら、恐らく何千億も召し上げるわけじゃない。かき集めて数百億でしょう。それを千六百の交付団体にきれいに配分、ばらまいたとしても、シェア率を入れたっていいですよ、それを入れたところで、恐らく一千万あるかないか、数千万のオーダーですよ。その数千万のオーダーの財源が来たからといって、喜ばれるかどうかなんです。ああ、これは東京都が召し上げられたおかげでこっちに来たんだとみんなが喜ぶかどうかなんです。

 つまり、交付税制度がそろそろ限界に来ているんじゃないかということを、地方の財政調整を議論する上で、消費税を先送るんですから、こういう議論もきっかけとして私は大いに総務省はやるべきじゃなかったのかなというふうに思う。つまり、小手先のことで抜本的な財源確保にはならない、小手先のことで国家百年の計に立った議論にはならないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 いずれにせよ、頑張った自治体が何やら召し上げられるというのはもう余りやらない方がいい。絶対にやらない方がいい。そこは起債するしかないんです、不交付団体ですから。交付税をもらえるのならもらいたいですよ。これは余りにも不公平です。そこに住んでいる、法人のみならず個人も住民税を納税していますから、私も。会費制のもとに取るのがそもそも地方税の原則じゃないですか。地方税というのは会費制原則でしょう。どうなんですか。もう、はいかいいえだけでお願いします。答弁が長い。

開出政府参考人 地方税の性格にはいろいろなものがございますけれども、地域社会の会費的性格を帯びた税であるということは間違いございません。

古本委員 つまり会費制なんです。私は、自分の町に住んでいる会費と思って個人住民税を納めたのに、それがどこかに行ってしまうという感覚を持たざるを得ませんね。なぜなら、法人住民税というのは、そこで働く人、あるいはそこで経営される経営者の皆さん、皆さんの総合努力で法人住民税という形で納税しているんですから。

 これはもうこういうやり方はやめた方がいい。それより、堂々と消費税を上げて、財源のない自治体も含めて、シェア率をきちっと充てて割り振ればいいというそれだけの話です。その議論から逃げておいて、こんな小手先の話でお茶を濁そうたって、ゼロの数が三つか四つ足りませんよ。よく指摘をしておきたいと思います。

 同じような話で、消費税を先送った原因が、午前中の議論でもありましたけれども、非常に私も言っていて半分つらいのは、当時の私どもの代表である岡田さんもQTで先送りを提言していますから非常に心中複雑ですけれども、経緯は申し上げたとおりなんです。

 こういう経緯の中で、似たような話がまたぞろ起こりそうな予感がします。主税局にお尋ねします。配偶者控除です。

 もとより配偶者控除は、私は持論はきょうは言いませんけれども、その廃止に当たっては、賛否両論ある、真っ二つに分かれる議論がございます。当時、与党のときも、このマル配控除、いわゆる配偶者控除は大変議論が分かれた項目の一つであります。

 家事労働の評価というのをどう考えるか。専業主婦の家庭における頑張りの評価、あるいは、その配偶者控除を倒した場合の財源を何に使うか。あるいは、子育て世代の方あるいは子育てが終わった方、場合によっては不妊治療されている方、それぞれ配偶者控除に入っている人が倒された場合、到底納得いかないという話はもう目に浮かびます。

 そのときに、あまねく全員が難しいにしても、大多数の人がなるほどなと思える使い道を指し示した上で、この配偶者控除の議論というのは大いに可能性はあったと私は思うんです。

 現在の配偶者控除の議論の状況についてお尋ねします。

麻生国務大臣 これはもう今に始まったことじゃない、結構昔からこの配偶者控除の話というのは出ていたと記憶をしますけれども、いろいろ今は報道がなされていますけれども、現時点で、配偶者控除に関する方法、廃止、見直し等々いろいろ出ていますけれども、決まった方針があるわけでは全くありません。

 この見直しについては、家族のあり方の話とか働き方の話とか、国民の価値観に深くかかわってあるところでもありますので、これは幅広くかつ丁寧な議論がなされないかぬということで、この問題に関しては、政府の税調やら何やらはもちろんのことですけれども、いろいろなところでこの議論がなされておりまして、この間も政府税調等々でこの話をさせていただいておりますけれども、引き続きこの話は、ちょっと今はわあっとなっているからこの話をして、はい、ではこの程度でやっていこうというような簡単な話じゃないのであって、働き方に関係しますし、価値観にも関係しますし、これは物すごく難しい問題だということで、いろいろな方の御意見がまことにまちまちだったので、議論を聞いていながら随分いろいろ御意見があるんだと思って非常に参考になったぐらいでしたので、少々時間をいただかなければ答えがなかなか出せぬものだと思っております。

古本委員 巷間言われています百三万円の壁というのは、やはりあると思うんです。特に、中小事業者に聞いたら、年末の出勤調整に入っちゃって、ピンチヒッターを雇わなきゃいけない、二重のコストだという悲鳴がよく聞こえてまいります。他方、専業主婦世帯の皆さんでも、ちょっとパートに出ているという方からしたら、百三万円というのは、ある意味、ほどよい湯かげんであると言う方もおられます。

 まさに、家族観、家族のあり方、女性の働き方、女性とは限りませんが、専ら女性の働き方は大変大きなテーマであるからこそ、今大臣が答えてくださったので、麻生さん、やはり選挙の風が吹いたから引っ込めるんじゃなくて、むしろ選挙で問うべきテーマなんじゃないでしょうか。

 この間何十年も温めてきて、実はこれ、八百屋さんの奥さんの家事労働をどうやって評価するかというところから、三十年代、拡充してきた歴史的背景もございます。もう今や大多数の女性が仕事を持っていて、何らかの形で社会に出ておられる。他方で、何と半数の女性が配偶者控除を受けておられる。つまり、制度の狙いが実は実態にミスマッチになってきているんじゃないかという意味では、むしろ機は熟しているんじゃないかということさえ思うわけであります。

 消費税の先送りを判断されたという意味では、手前どももそういう意味では実に責任を感じつつ、こういった骨太な、しかも基幹三税です、所得税ですから、基幹三税の話こそ選挙で問いかけるべき、各党がかくあるべきという働き方を問いかけるべきテーマだと思うんですけれども、もう一つ尋ねてから、最後、大臣に答弁を求めたいと思います。

 もう一個は、消費税先送りによる国の方の歳入欠陥、大体これは幾らぐらいになるんですか。とあわせて、子ども・子育て分野の充実分というのは大体幾らぐらいか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 国税分についての消費税率引き上げ延期による税収への影響でございます。

 国税分につきまして機械的に平成二十八年度予算をもとにして平年度ベースで試算いたしますと、消費税率の引き上げ延期によりまして約四・一兆円の減収ということになります。あと、軽減税率の導入の延期によりまして約〇・八兆円のむしろこれはプラスということになります。

 これを二年半分ということで、それぞれ二・五倍、機械的に試算いたしますと、消費税率の引き上げ延期によりまして十・二兆円の減、軽減税率導入延期により二兆円の増というふうに見込まれます。

麻生国務大臣 今のもう一点の話、選挙のあるなし、これは関係ないですよ。基本的にはこの話は、私どもがもう大分前に提案したのは、私どもの役所の中で俺が最初に提案した話ですから。考えるとおかしいだろうが、大体、昔は亭主一人で専業主婦という前提でつくっていく四人家族が、現代、実際問題としては、夫婦二人で四百対二百とか三百対二百とかいろいろ人によって違うんでしょうけれども、そういったところのものを前提にして考えないと、家族の構成自体の所得が違っているんだから、前提を考えないと全然おかしいんじゃないのということから始まって、そうしたら物すごい意見が出てきた。

 ちょっと短期間じゃいかぬなと思ったものですから、継続審議みたいな形で今やっと始まったところであります。

古本委員 配偶者控除は、逆に私どもも、ではどういう考えだというのをきちっとまとめていかなきゃならない。お互いに議論を深めるテーマだと思います。選挙で問うということでいえば、私どもも逃げずに、廃止する場合ははっきり言ってこれは増税ですから、お互いに、その使い道も含めていろいろな議論をするべきテーマだと思っています。

 さっきの話に戻るんですけれども、恐らく子ども・子育て分野の充実分というのは、〇・七兆円がいわゆる一対四の配分だったと思いますので、充実分の一のうち子ども・子育て分野は〇・七兆円、当時の当事者ですから、忘れもしない数字ですから大体覚えていますけれども。つまり七千億なんです。

 今は高等学校の無償化を、大臣、当時、手前どもがやったときに、忘れもしない、連日連夜の予算委員会で、無駄遣いするなと当時の自公の先生方からばり雑言、やじをたくさんいただきました、この高等学校の無償化。

 でも、私は、政権交代の一つの果実だったと思うのは、今、御党の中でも、自民党さんの中でも、幼稚園の無償化という話が少しあるというふうに聞いています。一方で、所得からいえば、やはりフルタイムで働いておられる、保育園、こども園に通園させている御家庭こそ、無償化してあげたら家計費が助かるわけです。これというのは物すごくいい政策競争だと思うんです。

 だから私どもは、もし御党が幼稚園とおっしゃるのであれば、例えば私どもは保育園こそというのも、実は、高等学校の無償化の議論を少し惹起し、いいものは引き継いでくれているという中で、所得制限が入ったのは玉にきずですけれども、いい議論があったと思うんです。

 そこで、消費税を二年半先送り、今、四兆円前後のオーダーでの歳入欠陥があるという話もありましたけれども、一つ、子育てに関してこれはどうかなと思うのが、大学のいわゆる給付型奨学金の財源を特定扶養控除の廃止も検討にと、これまた報道で読むんですけれども、もともと要る子育て世代の方に負担させてそちらに持ってくるというのは実に世知辛い。もっと広く薄く負担していただいてやっていく方法が一つあるんじゃないかと提案します。

 今、最低ブラケット五%、ここにいる会場の職員の方も大臣もみんなブラケット五は、まずは最低ブラケットは適用になっていますね。このブラケット五%を六ポイントに上げたらどのぐらい増収になりますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 一定の仮定を置かないといけませんのですぐに金額が出てくるわけではありませんけれども、ほぼ目の子として、約七千億程度の増収になるかなと思います。

古本委員 大臣、これは数字がぴったりなんです。消費税を先送って入ってこない七千億を、実はブラケットの五を一つ上げるだけで、多分課税所得によって違いますけれども、御負担を薄く広くいただいて、それを子供の数に応じて税を戻す。

 実は、何とか手当とか何とか無償化というのは私たちも苦い思い出があります、ばらまき何とかといって大変レーベル張りをしていただきましたので。でも、高等学校の無償化とか非常にいいものもあったんですが、やはり手当とか無償化というのは、日本人の高潔な思いからしたらどうしてもだめ。

 ところが、薄く広く全体に増収をかけておいて、その分を財源に、子育ての数に応じて、大学生がいる御家庭も入れたっていいと思います、専門学校生の御家庭も入れたっていいと思います、税を戻せば、実は、独身の方も薄く広く負担していただく、子育てが終わった人も負担していただく。一つの考え方だと思うんですけれども、財務省いかがですか。

木原副大臣 古本委員の御提案、大変傾聴に値するものだと思っております。

 若年層、低所得層に配慮する観点や子供を産み育てやすい環境を整備するという観点から、税制の見直しを行っていくことは重要な課題と認識をしておりまして、御提案のような増減税を行うことについては、以下のような論点があると思っています。

 まず一つ目は、子育て世帯に対しては既に児童手当や扶養控除といった措置が設けられているが、これらとの関係をどのように整理するかということ、もう一つは、所得が課税最低限に満たない子育て世帯には減税の効果が及ばないということをどう考えるか、三つ目は、子供のいない世帯や独身世帯に五%限界税率が適用される、低所得世帯を含めて負担増となることをどう考えるかというようなことがあるというふうに考えておりまして、今後の所得税の改革について、税制全体の中で、こういうことは比較的長い制度になると思いますから、安定的な税収の確保、また、基幹税のバランスをどう考えていくかということで検討してまいりたいと思います。

古本委員 ありがとうございました。

 最後に、もう時間が参りましたので、大臣、私は、二〇〇九年の政権交代のときに藤井裕久先生のおかげで財務政務官にしていただいて、大臣を支えました。そのときの最初の仕事は忘れもしません、あの判断、藤井大臣の決裁。それは何だったかというと、麻生総理があの与謝野先生と一緒になってつくられた附則百四条を継承するかどうかでした。このことは、当財務金融委員会に所属される全ての議員がちゃんと理解しなきゃいけないことだと思っていますよ。

 麻生総理は、発足当時の支持率を随分落とされ、政権運営に苦労され、支持率二〇%前後まで低迷して危険水域に入る中で附則百四条をおやりになったんです。それは、消費税をやらなきゃいけないと書いてある法律なんです。それを与謝野先生と一緒に書かれたんです。所得税改革も相続税改革も全部やらなきゃいけないということを網羅的に書いてあったんです。

 これをアサインするかどうかというのは、財務省の皆さんと大変な議論になったときに、当然継承しなきゃいけないだろう、政権がかわろうとも国家として継承すべきだという大変高潔な判断をしたんです。そして私たちは、その附則百四条に出発点を見出して、税制抜本改革に、社会保障と税の一体改革に走ったんです。これは歴史の事実です。

 そのことからすると、この三党合意で確認し合ったことに、全て反しているとは言いませんけれども、骨格にある、例えば逆進性対策はどうするのかとか、医療の損税の問題はどうするのかとか、あるいは住宅のさまざまな負担の問題はどうするのかとか、こういったことの議論には、やはり私たちはコミットする責任が野党としてもあると思っています。

 今回の議論のプロセスで、先送りも含め、どうだという相談はあったかなかったかは私は執行部にいませんのでわかりませんけれども、恐らくなかったんだろうと思います。やはり、この附則百四条、麻生総理が与謝野さんと書かれたあの附則百四条を私たちは守りましたから、ぜひそのことは申し上げておきたいというふうに思います。

 もう時間が来ましたけれども、何か御所見があれば求めたいと思います。

麻生国務大臣 きちんとした形での選挙をやって、その結果政権が交代した場合において、前の政権がやっていたことは全てひっくり返すというようなのはやめたがええというのは、これは、成熟した先進国においては言われるということなんだと思っております、これは同じ政党であっても。

 例えば、今度のメイというイギリスの財務大臣も、これはかなり自分の考え方と違う案を引き継がざるを得ないところになっている部分もかなりあるんですけれども、それでも、ブレグジットの話やら何やらいろいろ今やっている最中、まあどういう形になるか知りませんけれども。

 そういったようなものはすごく大事なことなのであって、今後とも、日本の中で二大政党制がいいとか悪いとかいろいろな論議はありますし、今アメリカを見ていても、何か二大政党制というのはろくなものじゃないんじゃねえかと言っている人が今いっぱいアメリカ人でもいますし、いろいろな国でいろいろなことが言われておりますけれども、私どもとしては、少なくともこの制度をきちんと、我々はよくも悪くもこれまで育ってきて、明治この方百四十何年間、議会政治ができても百年近くになるんですが、そういったものの中で、やはり前の政権がやったことを全部ひっくり返していると、韓国みたいなことをやっていたらどうですかねと、これは韓国人の人が言うんですから間違いないんだと思いますが、そういったような話を我々としてはきちんと受け継いで、政権交代が起きましたので、そういったことを我々としてはきちんと耳に残して、今後とも政権を運営するに当たっては、我々としては十分に踏まえて対応せねばならぬものだと思っております。

古本委員 終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 消費税増税延期法案について質問いたします。

 麻生大臣は、消費税増税延期の際の記者会見で次のようにおっしゃっておられました。

 日本の場合、伸びていないのは個人消費、正直申し上げて我々としては予想外だったと思っている。それが消費税率八%への増税の影響かと言われると、そうじゃないと反論したくても我々としては難しい。GDPの六割以上を占める個人消費が伸びていないことに対応するために、私どもとしては、消費税をもう一回上げるというのは今の時期ではない。こうおっしゃっておられます。

 安倍総理の言う世界経済のリスクというのを振りかざしての説明よりは、個人消費に着目して増税延期するという説明だったかと思いますが、非常にそういう点では安倍総理よりは常識的な説明だなというふうに思って聞いておりました。

 二〇一四年の消費税増税は、二〇一四年、二〇一五年とGDPの個人消費二年連続マイナスという戦後初めての事態をもたらしました。二〇一六年度に入りましても、総務省の家計調査では消費支出はマイナス続きです。内閣府の消費総合指数も低迷を続けております。

 この間、春の国会でも随分議論しましたけれども、その際は個人消費の持ち直しが期待されるという答弁が続いたわけですが、期待どおりにいかなかった。消費税増税が長期にわたって個人消費を落ち込ませている。このことはお認めになりますね。

麻生国務大臣 基本的に、今言われましたように、この数字を見ましても、五から八へ上がった段階で、次の四―六でマイナス四・八%というのが、需要減という形になっておりますので、回復としては極めて緩やかなものだったのは間違いない事実だと思っておりますし、また、賃金の上昇率が物価上昇率、いわゆる消費税率の引き上げ分を含むものを下回ったということも事実ですので、そういったことなどいろいろ挙げられると思います。

 内閣府の試算を見ましても、これは二〇一四年の個人消費というのを見ますと、駆け込み需要の反動減により三兆円減少した、消費税率引き上げによる物価上昇で約二兆円台半ば程度減少したと試算をされているものと承知をいたしておりますので、私どもとしては、今言われました点につきましては十分にそういうようなものは、今言われた数字の、二〇一四年のことに関しましてはそのとおりだと理解しております。

宮本(徹)委員 二〇一四年だけではなくて、二〇一五年、二〇一六年と個人消費の停滞は続いているわけです。

 それと、先日、民進党の木内さんも質問されておりましたけれども、消費総合指数、前回の一九九七年の増税のときと比べても、今回、長期にわたって低迷しておりますが、これは、原因はどう分析されているんでしょうか。

麻生国務大臣 消費税率がいわゆる三から五に引き上げられた一九九七年以降の経済動向というのと比較の話をしておられますけれども、あのときと今とは大分違うのであって、あのときはいわゆる通貨危機というのがありましたし、また、金融システムというのは極端なことになって、あの年には山一証券倒産、三洋証券倒産、それから北海道拓殖銀行が倒産して、翌年には長銀ですか、不動産銀行も倒産しましたのは、そういったようなものが随分大きな、ほかにもいろいろ銀行が、もう昔の名前で出ている銀行が二つぐらいしか残っていないぐらいになったほど銀行もやっていけなくなったという事態だったので、あのときというものを見た場合に、これが消費増税のことだけかというと、なかなかそうはいかないんじゃないのかと。

 日本の消費にマイナスを与えたということは間違いないとは思いますけれども、いわゆる景気後退の主因であったかと言われれば、これは、いわゆる一連の資産のデフレから始まる金融危機等々のものも大きな影響を与えたというのであろうと思います。

 一概に、これが全てと言えるということはなかなかできないと思いますけれども、非常に悪い、マイナス影響を与えた、四・八ですから。それははっきりしていると思っております。

宮本(徹)委員 一九九七年のときはアジアの通貨危機だとかがあったわけですけれども、そのときに比べても今回の方が、先日の木内さんの出したこのグラフを見ても、消費は低迷しているわけですよ。そこをやはりしっかり見なきゃいけないと思うんですよ。

 私はやはり、なぜ一九九七年のあの通貨危機があったり金融危機がいろいろあったときよりも今消費が低迷しているのかと考える場合に、働いている皆さんの賃金がどうなっているのか、収入がどうなっているか、可処分所得はどうなっているのか、ここを見なきゃいけないと思うんですよ。

 一九九七年が賃金のピークです。そこからどんどん下がって、一方、社会保険料は上がっております。厚労省の毎勤調査では、労働者一人当たりの賃金は一九九七年に比べて五万円下がっている。総務省家計調査では、実質可処分所得は月七万円下がっている。年金生活者の皆さんも年金は下がっているというわけですよ。

 ですから、実際の可処分所得が一九九七年のときよりも大きく落ち込んでいるもとで増税をかぶせたということが、前回の増税よりもはるかに大きな個人消費の低迷をもたらしているというふうに思います。

 そこでお伺いしますけれども、この消費税八%への引き上げはどういう世帯の消費支出に大きな影響を与えたでしょうか。

麻生国務大臣 これは消費税率引き上げ後の消費動向について見ますと、高所得者層の落ち込みというものの税率引き上げ後は消費水準の五%程度にとどまっているのに対して、低所得者層の落ち込みは一〇%程度と、比較的大きくなっていると思っております。また、世帯主が四十四歳未満の家計と五十五から六十四歳の家計の落ち込みが他の世帯と比べて大きくなっている、私どもはそう理解をいたしております。

 その背景は、やはり若年子育ての世帯や、勤労所得というものがなくて年金などの安定収入も少ない六十歳代前半の無職世帯などの構造的な弱さを持つ世帯というものが消費を抑制したというように分析をいたしております。

宮本(徹)委員 つまり、低所得者ほど消費が落ち込んだというのが政府の分析なわけですよね。

 ですから、結局、消費税の性格として低所得者ほど負担が重い逆進性があるから、今回のような消費の落ち込みをもたらしているんじゃないですか。

麻生国務大臣 先ほども申し上げましたように、これは低所得者層の落ち込みの方が比較的大きくなっているというのは確かですが、また、低所得者ほど収入に占める税負担の割合が高いという意味では、消費税はいわゆる逆進性を有している。これも事実であります。

 ただ、今回の社会保障と税の一体改革では、消費税の増収分というものは全額社会保障の充実、安定化に充てるということにしておりますので、その受益を見ますと、これは低所得者層ほど大きなものになるというのは理の当然であって、また、消費税率八%の引き上げに当たっては、軽減税率導入までの暫定的、臨時的措置として、低所得世帯に対しては簡素な給付措置というのを実施するということになります。

 このように、消費税率の引き上げを含みます一体改革の影響については、負担の面だけではなくて、受益の面というものもあわせて評価しないといかぬのではないかと理解しております。

宮本(徹)委員 その負担と受益を両方合わせても、低所得者の方は負担が実際ふえているわけですよ。しかも、四十四歳未満の家計だとか五十五歳から六十四歳のところというのは、これから政府が一〇%に引き上げたときにやる年金の底上げというのも来る世帯じゃないわけですよ。そうならないところで消費が落ち込んでいるというのが政府の分析なわけであります。

 私は、いろいろな税金の中でも、法人税だとか所得税だとかいろいろありますけれども、消費税ほど増税したら景気にマイナスの影響を与える税金はないと思いますよ。そういう認識はございますか。

麻生国務大臣 消費税というものの主体からいって、消費に影響を与えるというのははっきりしていると思っております。

宮本(徹)委員 消費に影響を与えるわけですよ。ですから、今回、増税の日付を延期する、二〇一七年四月に上げるよりははるかにいいわけですけれども、しかし、延期しても、実施すればそのときにまた大きく個人消費の低迷をもたらす、日本経済に対して大きな悪影響を与えるというのははっきりしているんじゃないですか。

麻生国務大臣 この法律を最初に出したときの経緯というのを、先ほど古本先生のお話にも出ていましたけれども、これは、国民に安心を与えます社会保障制度というものを次世代までにきちんと引き継いでいかねばならぬというのが我々の世代に与えられている大きな使命だ、その点ははっきりしておるということを考えたときに、人口構成を考えて、今後とも若い人が減り、いわゆる高齢者の比率が勤労者に対して比率がふえていきますので、そういったことを考えた場合に、どういった形でこういった社会保障制度を次に引き渡すことができるのかという点を私どもは真剣に考えたということだと思っております。

 また、市場やら国際社会からの信認ということを考えるときに、日本の抱えております借金等々は十分に、私どもはそれを返済していこうという意思が明確であるということもきちんと伝えておかないと、国際社会における信認の面も得るということだと思っておりますので、この増収分につきましては、全額社会保障の充実、安定化に充てるということにしておりますので、そういった意味で、国民に還元されるものなんだというように理解して、私どもとしては、一定のプラスという面も与えられるというのははっきりしていると思っておりますので、経済財政というものの運営に万全を期していかねばならぬところだと思っております。

宮本(徹)委員 日本経済にマイナス影響を与えるのは明らかじゃないかというふうに聞いたわけですが、それに対してお答えがなかったわけです。

 朝の民進党の皆さんの質疑の中で総理の記者会見が紹介されておりました。私も改めてこの総理の記者会見を見ましたけれども、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきであると言っているわけですよ。だから、消費税を上げたら内需の腰折れが起きるというのは、今であっても、それは二年半延長しても、同じことが起きると思うんですよ。それは当たり前の話だと思うんです。

 ですから、総理の言っている新しい判断の中で唯一言っている、内需を腰折れさせかねないから税率は引き上げないんですということでいけば、これはもう上げない、ずっと上げないというのが出てくる選択肢じゃないかと思うんですが、そうなりませんか。

麻生国務大臣 私ども、自由主義経済というのをやっております。全然、考え方の哲学が、根本が違っていると思います、御党とは。

宮本(徹)委員 何の答弁なのかさっぱり私はわからないんですけれども、私らも自由主義経済のもとで質問させていただいております。

 はっきり言いまして、個人消費が伸びないと国内総生産も伸びない、当たり前のことを麻生大臣も増税延期の記者会見のときにおっしゃっていましたけれども、やはり、私は消費税増税と日本経済の発展は両立し得ないというふうに思います。

 しかも、消費税増税したら、今、国会に提出されています年金カット法案の関係でも大きな問題が出るんですよ。(発言する者あり)カット法案じゃないという話でありますけれども。今度の法案の中でマクロ経済スライドが変わります、キャリーオーバー制度というのが入りまして、これまで物価上昇が小さい場合やらなかったマクロ経済スライドの分はまとめて発動するということになるわけです。

 消費税を二%引き上げると、軽減税率があっても物価は一%程度上がります。これまで実施してこなかったマクロ経済スライド、キャリーオーバーが執行されるわけですよ。そうすると、年金は物価が上がってもスライドせずに、実質一%目減りするということになります。

 さらに、賃金が変わらないという想定のもとでいきますと、物価が上がれば今度は実質賃金が一%削減するわけですよ。そうすると、この実質賃金一%の削減分が、今度の年金カット法案との関係で、その後三年間にわたって年金の削減というのをもたらすことになるわけですよ。

 ですから、消費税は上がっていく、年金は実質二%分目減りしていくというのが、この消費税増税を行うと年金生活者のところにはやってくるというふうになります。そういうことになりますと、いよいよ個人消費に与える影響は重大だというふうに思います。

 ですから、絶対私たちは、延期してでも上げるべきではない、消費税とは違う方法で増税はすべきだということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 その上で、この消費税増税は、政府の掲げる経済政策とも両立しないのではないかというふうに思います。

 政府と日銀は共同声明まで出して、デフレからの脱却と言ってきました。日銀は二%の物価安定目標を掲げました。ただ、達成の見通しはどんどん先送りされているという状況であります。

 先日の日銀の総括的検証の背景説明の中で、二%の物価安定目標が実現できていない理由として、三つの外的要因というのを挙げておられます。その一つが、消費税率引き上げ後の需要の弱さということです。

 きょうは黒田日銀総裁に来ていただきました。伺いますが、この消費税率引き上げ後の需要の弱さというのは、消費税が長期にわたって個人消費の低迷をもたらしている、このことも含んでいるということでよろしいんでしょうか。

黒田参考人 御指摘の総括的な検証におきましては、二〇一三年四月の量的・質的金融緩和導入以降、一年強にわたって順調に上昇していた予想物価上昇率が二〇一四年の夏ごろから横ばいに転じた要因の一つとして、御指摘のような、消費税率引き上げ後の需要の弱さというものを指摘しております。

 御案内のとおり、一般的に、消費税率の引き上げは、税率引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動、それに、税率引き上げに伴う実質可処分所得の減少というこの二つの経路を通じて実体経済に影響を及ぼすというふうに考えております。

 二〇一四年四月の消費税率引き上げの経済に与えた影響について見ますと、このうち、駆け込み需要の発生とその反動が事前予想をかなり上回ったということではないかというふうに思っております。

 なお、足元の最近の個人消費について一言申し上げますと、ことし前半はやや弱目の動きとなっておりますけれども、ここの中には、一方で、雇用もふえ、賃金も上昇して雇用者所得がふえているわけですけれども、他方で、年初来の株価下落による負の資産効果が影響しているという面と、それから、ごく足元では台風などの天候要因の影響があったということだと思います。

 ただ、今申し上げたとおり、雇用・所得環境の着実な改善がこのまま続いていけば、消費についても緩やかに増加していくのではないかというふうに考えております。

宮本(徹)委員 だから、緩やかに増加していくんじゃないかと言いながらずっと低迷を続けているというのが、この間の個人消費の推移だったというふうに思います。

 日銀は、先日の政策でオーバーシュート型コミットメントということを掲げることになりました。しかし、消費税を一〇%に増税すれば国民の懐を冷え込ませる、そのことによって物価上昇率も予想物価上昇率も下がるということがまた起きるんじゃないですか。総裁、どうでしょうか。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、消費税率を再び引き上げる際にも、税率引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動、それから、税率引き上げに伴う実質可処分所得の減少という二つの経路を通じて実体経済に影響を及ぼすことが予想されます。

 もっとも、これらの具体的な影響については、その時点における景気の状況とかあるいは雇用・所得環境などにも依存しますので、二〇一九年の十月の、消費税率引き上げ前後の景気あるいは経済への影響を今から具体的に申し上げることは非常に難しいと思います。

 物価上昇率に与える影響という点では、日本銀行としては、実際の消費者物価上昇率の低下が直ちに予想物価上昇率の低下につながることのないように、欧米のように、フォワードルッキングな期待形成というものを強めて二%の物価安定の目標にアンカーしていくということが重要ではないかと考えておりまして、そういった観点からも、オーバーシュート型のコミットメントという形で金融緩和をしっかり続けていくということを今回の金融政策決定会合で定めたわけでございます。

宮本(徹)委員 ですから、もう何度も何度も目標を引き延ばされているわけですから、そう言われても説得力を感じる国民の方というのは本当に少ないというふうに思います。

 そして、実質可処分所得の減少というのを、消費税を引き上げたら必ずもたらすわけですよ。そうなれば国民全体の購買力は落ちるわけですから、当然、物価上昇率を下に引っ張る力は働くというのは当たり前の話だというふうに思います。

 麻生大臣にもお伺いしますが、日銀が総括的検証でおっしゃっています消費税率引き上げ後の需要の弱さというのが物価上昇率の下押しの要因になった、この分析は政府も同じ認識でしょうか。

麻生国務大臣 二%の物価目標の実現というものを阻害した要因について、今総裁が言われましたように、総括的な検証の中において、いわゆる消費税率引き上げ後の需要の弱さのほかに、原油価格の下落とか、新興国経済政策の減速とか、そのもとでの国際金融市場での不安定な動きといった外的な要因によって実際の物価上昇率が低下した、これが予想物価上昇率の下押しに作用したためというように説明されたものと理解しております。

 実際に一般の物価上昇率というのは、消費税率引き上げ後の需要動向だけではなくて、経済情勢とか、国際金融市場とか、その他予想物価上昇率とか、いろいろなものが要因となって決まるものだと思っておりますので、消費税率の引き上げによって直ちに物価安定目標の実現が困難になるというようなものではないのではないかと思っております。

 いずれにしても、消費税率の一〇%の引き上げというものは、先ほど申し上げましたように、社会保障制度というものをきちんと次世代に渡す責任とかその他国の信認とか、いろいろなもののためにこれはぜひとも必要なものだと思っておりますので、我々としては、デフレ不況からの脱却というものにこれまでも、結果としてはかなり三年間、それなりの経済というものは、これまでとは比べ物にならないぐらい経済のあれを見た場合には、間違いなく法人税はふえておりますし、また、GDPも伸びておりますし、また、新規国債発行も十兆円減っておりますし、いろいろな意味で私どもとしてはそれなりの成果というものを、少しずつではありますけれども確実に上げてきていると思っております。

宮本(徹)委員 私がお伺いしたのは、日銀がおっしゃっているように、消費税率引き上げ後の需要の弱さというのは物価上昇率の下押しの一因になった、これは含まれるのかと聞いているわけですよ。それだけだということを私は言っているわけではないわけですよ。その点は日銀と同じですか、違うんですかということをお伺いしています。

麻生国務大臣 今丁寧にお答えしたと思いますけれども、重ねて申し上げましょうか。(宮本(徹)委員「いやいや、だから一言だけでいいですよ、含まれているなら」と呼ぶ)先ほど黒田さんが一番最初に申し上げたと思ったら、聞いておられなかったかどうか存じませんけれども、最初のところに、さまざまで決まるものであるということで日銀の総括的な検証についても述べたと思いますが。

宮本(徹)委員 では、同じ認識でいいということだと思います。

 同じ認識ということになれば、結局、消費税を増税したら、そのことが物価を下に引っ張っていく、下押ししていくということになるわけですね。そうすると、消費税増税というのは政府の脱デフレ戦略とも両立しないというのは、この間の経験で明らかなんじゃないですか。

    〔委員長退席、土井委員長代理着席〕

麻生国務大臣 見解が全然違うんだと思いますが。私どもとしては、きちんとこれをやる本来の目的というものを考えて、それを達成しないと我々は後世に社会保障等々のものをきちんと引き継いでいくことができない。

 それを達成するためには、我々は、税というものをきちんとやらない限りは、人口構成のことを考えても、国家というものの形態を維持しづらくなってくるという状況を考えたときに、経済を再生させた上で、その上で消費税によってそこの分をきちんと補って、その分で、増収した中において低所得者等々、私どもとしては社会保障やら税の一体改革というものをきちんとやっていかないかぬということなのであって、経済を再生させることによって景気をきちんとよくし、その上で私どもとしては消費税をいただけるような経済情勢をつくり上げるように今努力をしているということだと理解しております。

宮本(徹)委員 私がお伺いしたのは、政府の脱デフレ戦略と消費税増税というのは両立し得ないんじゃないかと。そのことに対しては御答弁がなくて、社会保障のためには必要なんだというお話でありました。私は、政府の経済政策から見ても、消費税増税路線というのは袋小路に陥るだけだというふうに思います。

 日曜日の産経新聞に編集委員の方が、「国会は増税ドグマを払拭せよ」という「オピニオン」を掲載しておりました。私たちは産経新聞とはそれこそほとんど見解を異にしておりますが、この点では、やはり、消費税増税が日本経済を破壊する現実をしっかり認識すべきだという点は同じ思いだということでございます。

 きょうは総裁、お忙しい中を来ていただいてありがとうございます。退席していただいて結構でございます。

 その上で、もう一点、消費税については、やはり税制としての根本的な欠陥があるのではないかというふうに考えております。

 昨年度は消費税の新規滞納額が大きくふえました。前年の三千二百九十四億円から四千三百九十六億円です。消費税の新規滞納が急増した理由、国税庁、説明していただけるでしょうか。

飯塚政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一五年度の消費税の新規発生滞納額でございますけれども、先生御指摘のように四千三百九十六億円となっておりまして、前年度から一千百二億円、三三・四%増加しているところでございます。

 一般的に、滞納が発生する要因につきましては、個々の納税者の営業やあるいは資金繰りの状況などさまざまな事情によるために、確たることは申し上げにくいわけでございますが、二〇一五年度の消費税の徴収決定済み額、全体で前年度より二兆四千三百七億円、一六・九%増加しておりまして、このことが一定程度、新規発生滞納額の増加につながったのではないかと考えております。

宮本(徹)委員 徴収決定済み額は一六・九%だけれども、これは税率を引き上げたからですよね。徴収決定済み額よりもさらに大きな比率で新規滞納がふえたという数字だというふうに思います。結局、税率引き上げで納める税額が大きくなって払えなくなっているということだと思います。

 では、もう一つお伺いしますが、消費税の新規滞納の発生件数と一件当たりの滞納額、幾らになっているでしょうか。

飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。

 二〇一五年度の消費税の新規発生滞納件数でございますが、五十七万二千件でございます。一件当たりの平均発生滞納額は七十六万八千円でございます。

宮本(徹)委員 一件当たり七十六万八千円ということです。ですから、多くの場合は、この数十万円の消費税を納めるのに大変苦労されているということだと思います。

 御存じのとおり、中小企業、小規模事業者、零細業者の皆さん、大半の場合がもともと赤字なわけですね。売り上げがあっても、仕入れなどの運転資金に回っていく。手元にいつでもまとまったお金があるというわけではないわけであります。そうすると、消費税を納める期限に手元にお金がないと滞納になり、滞納になったら延滞税も発生するということになっているわけです。

 それで、きょう、私もグラフもつくってきましたけれども、国税庁にお伺いしますが、国税収入全体に占める消費税の比率と税の新規滞納額全体に占める消費税の比率、増税前の二〇一三年と二〇一五年を比べて紹介していただけますでしょうか。

飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。

 国税の徴収決定済み額、すなわち申告等により課税された額でございますけれども、その全体に占める消費税の割合が、二〇一三年度が二〇・九%、二〇一五年度が二八・九%でございます。

 また、国税の新規発生滞納額全体に占める消費税の割合でございますけれども、二〇一三年度が五一・四%、二〇一五年度が六四・〇%でございます。

宮本(徹)委員 私のきょうつくってきた資料ですけれども、これは徴収決定済み額と違って、国税庁のホームページから抜いたので若干パーセントが、税収の方が割合が変わっていますけれども、ほぼ同じなので見ていただきたいと思います。

 実線の方が、新規発生滞納額、青が消費税、赤が法人税、緑が所得税、それぞれ全体の滞納額に占める比率です。それから点線の方が、国税収入、印紙収入も含めてですけれども、そこに占める、消費税、法人税、所得税の占める比率です。

 所得税を見ていただければわかりますけれども、この実線と波線はほぼ同じように推移しております。若干差がありますが、法人税の場合は滞納額の方が占める比率は低いとなっています。ところが消費税は、ワニの口をあいたように、税率を引き上げるたびにこの差が大きくなって、新規発生滞納額全体に占める消費税の割合は実に三分の二近くまで膨れ上がるということになっております。

 法人税と比べて、ここまでなぜ消費税の滞納の割合が高いのか。これは、国税庁、理由はどう分析されているんでしょうか。

飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほどお答え申し上げましたとおり、二〇一五年度の国税の徴収決定済み額全体に占める消費税の割合が二八・九%でございますが、他方、国税の新規発生滞納額全体に占める消費税の割合が六四・〇%ということで、御指摘のように、徴収決定済み額と比べて高くなっているところでございます。

 しかしながら、一般的に滞納が発生する要因は、個々の納税者の営業や資金繰りの状況などさまざまな事情がございますので、その理由については確たることは申し上げにくいところでございます。

 いずれにいたしましても、二〇一五年度の消費税の滞納とその整理状況を申し上げますと、消費税の新規発生滞納額は四千三百九十六億円であるのに対しまして、整理済み額、すなわち納付等がなされた額は四千五百三十三億円ということで、新規発生滞納額を百三十八億円上回っておりまして、その結果、滞納残高は前年度より減少しているということでございます。

 国税庁といたしましては、引き続き、消費税の滞納の未然防止と整理の促進に努めてまいりたいと考えております。

    〔土井委員長代理退席、委員長着席〕

宮本(徹)委員 なぜ法人税は割合がここまで低くて、消費税が高いのかという説明は全然ないわけですよね。

 かつての答弁をずっと調べていましたら、こう答えていますよ。法人税の場合は、赤字になれば法人税の納税はございませんから滞納も発生しない。一方、消費税は、赤字、黒字関係ございませんから、経済情勢に沿って滞納があるのではないかと。二〇〇三年三月二十五日に答えていますよね。

 こういうことなんじゃないんですか、理由は。

飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。

 確かに御指摘のような要因もあろうかと思いますが、一方で、先ほどお答え申し上げましたとおり、滞納が発生する要因につきましては、営業ですとかあるいは資金繰りの状況とかいろいろな状況が影響してくるものでございまして、一概には言いがたいというふうに考えております。

 また、先ほども申し上げましたとおり、新規発生滞納額が増加するとともに、同一年度内の滞納整理額もふえているというところで残高が減っております。また、二〇一五年度の消費税の徴収決定済み額のうちで九九・三%がその年度中に納付等がなされている状況にございまして、御指摘のような、利益の有無によって全体の滞納額に占める消費税の割合が高くなっているということは、なかなか、一概には言いがたいというふうに考えてございます。

宮本(徹)委員 御指摘の要因もあるというふうにおっしゃいましたけれども、納めなかったらみんな差し押さえされちゃうわけですから、当然、皆さん納めますよ。それを、納めてもらっているから問題ないんだという言い方はおかしいんじゃないかと思います。

 麻生大臣、ここまで差があるというのは、やはり消費税の性格からくるのは間違いないというふうに思いますので、こういう税金でいいのかというところは私は真剣に考えなきゃいけないと思います。

 しかも、実態として見た場合は、価格転嫁ができていなくても売り上げに応じて納めなきゃいけないという問題があります。

 ちょっとお伺いしますけれども、経産省が消費税の転嫁状況に関するモニタリング調査をずっとやられておられます。最新の九月のもので見ますと、「全て転嫁できている」と答えているのが、BツーBで八五・七%、BツーCで七二・六%。

 二〇一四年四月、増税のときの調査を見ますと、BツーBで七九%、BツーCで六九・三ですから、このときと比べれば数ポイントは改善しております。

 ところが、ここのところずっと数値は足踏み状況にあります。もちろん、かつての消費税五%のころみたいに半分の業者が転嫁できないとかそういう事態ではないですけれども、いずれにしても、全業者が転嫁できる状況にはおよそなっていないというのが今の現状であります。

 きょう中小企業庁も来ていただいておりますが、消費税の価格転嫁が足踏みしている原因は何でしょうか。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のありました消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査でございますけれども、この調査では、一部を転嫁できている、それから転嫁できていない方々に対しまして、転嫁ができていない理由についても回答をいただいております。

 それについて申し上げますと、事業者間取引、消費者向け取引ともに、他社との価格競争があるといったところ、事業者間取引におきましては、取引先業界の景気が悪い、それから消費者向けに関しましては、消費者の財布のひもがかたいといった理由が多くなっているということでございます。

宮本(徹)委員 つまり、他社との価格競争がある、消費者の財布のひもがかたい、だから価格転嫁ができていないという状況なわけですよ。

 これは、他社との価格競争なんて、先ほど自由主義経済というお話がありましたけれども、自由主義経済である限りなくならないということですよね、当然。そうすると、価格転嫁というのは、絶対、いつまでたってもできる状況にならないということにもなるというふうに思います。

 消費税増税で業者の皆さんは大変苦労されております。資料の二枚目に、全国商工団体連合会が行った最近の調査と、そこで寄せられた声も若干掲載させていただきました。

 そもそも業者の皆さんは、消費税増税で消費が落ち込んで売り上げが減る。売り上げが減る中で、BツーCの場合は当然お客さんに転嫁するのも大変な状況があるわけですよね。BツーBの場合も、先ほどおっしゃったように、他社との価格競争があって価格転嫁できない状況があるわけですよ。ここに出されている声をぜひ麻生大臣も見ていただければというふうに思います。

 ですけれども、価格転嫁できなくても、自腹を切っても消費税は納めなきゃいけないわけですよ。大変私は不条理だというふうに思います。

 麻生大臣、消費税が、そしてその増税がこういう不条理をもたらしている。価格転嫁できなくても、自腹を切ってまで消費税増税を納めなきゃいけない。業者の皆さんを苦しめていることについてどういう責任をお感じでしょうか。

麻生国務大臣 消費税というのは、これは御存じのように、価格への転嫁というものを通じて最終的に消費者に御負担をいただくということが予定されている税でありますので、価格転嫁をできるということはこれは極めて重要な要素、これははっきりしていると思っております。

 したがいまして、政府としては、消費税率の引き上げに際しまして、転嫁対策特別措置法というものまでつくりましたし、買いたたきなどに対して公正取引委員会等が指導、勧告を適切に実施する、社会保障と税の一体改革を趣旨とする、国民の皆様に御理解いただけるような広報を行うといった取り組みを行っていますのは御存じのとおりであります。

 今言われましたように、本年の四月、中小企業庁が実施した消費税の転嫁状況に関するアンケート調査というのが出てきておりますが、「全て転嫁できている」と答えた事業者は、BツーBで八五・七ということになっております。消費者向けで七二・六であった一方、「全く転嫁できていない」という回答をいただいた事業者の方々は事業者間取引で三・三%、消費者向け取引では五・六%であったという数字が挙がっております。

 したがいまして、御指摘のように、事業者は消費税を適切に転嫁できていないのではないかと言うけれども、実質問題は三・三ですから、それはある程度、適切な転嫁がかなりできているというように私どもとしては理解をしております。

 いずれにいたしましても、引き続き、事業者の方々が消費税というものを価格に転嫁できるように、我々としてもしっかり応援をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 全く転嫁できていないと同時に、一部転嫁できていない方々もたくさんいらっしゃるわけですよね。それも含めていえば、BツーBでいえば十数%、BツーCでいえば二十数%になるわけですよ。全くじゃなくて一部転嫁できていない人も、その転嫁できなかった分は自腹を切って納めなきゃいけない、そういう仕掛けになっているわけですよ。

 これは私は余りにも不条理だと思いますが、不条理だというふうには思われないですか、大臣は。

麻生国務大臣 我々商売をしたことがありますので、あなたがどういう御経歴か知りませんけれども、私は長いこと商売したところからこの世界に来ましたものですから、少なくとも、お客に払った金を払っていただけないというのを含めまして、いろいろな難しい問題を抱えて商売しておる、自由主義経済ではそういうことになっております。

 したがって、ある程度のもので、取り切らなかった場合は、わしは取れなかったからその分だけ税金まけてください、これが通る世界でありませんので、私どもは基本的に、引き続き商売をしていく上では、最低限の努力というものをやった上できちんと対応していかねばならぬ、それは自前の才能でやらなしゃあないというところだと覚悟しております。

宮本(徹)委員 ただの民間業者間の話じゃないわけですよ。この消費税自体は国の制度なわけですよ。価格転嫁できていなくても、その分も含めて納めなさいというのが今の消費税の仕組みになっているわけですよ。ですから、自由主義経済、民間と民間の話じゃないんですよ、民間と国との関係で起きている問題だから私は言っているわけでありますよ。その点について本当に責任を感じないというのは、非常に問題だというふうに思います。

 仮に一〇%に引き上げたら、この価格転嫁の状況だとか消費税の滞納の状況というのはどうなるというふうに予想されますか。

麻生国務大臣 先ほども申し上げましたように、事業者が消費税を適切に転嫁できないという状況ではないというように考えております。

 その上で、今回の法律は、平成三十一年の十月に引き上げということになっておりますので、私どもは転嫁対策特別措置法の期限も二年半延長をしているところであります。

 引き続き、この法律の枠組みのもとで、買いたたきとか、また、いろいろな形での介入に対して、私どもは指導、勧告を適切に実施するなどしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 また、滞納につきましては、これは個々の納税者の営業とか資金繰りの状況などさまざまな事情によって発生するものでありますので、お尋ねの消費税の滞納に関しましてもこれは確たることは申し上げられませんけれども、納税者から相談があれば、分割納付等々、法令に基づいていろいろ対応しているんだと思いますので、できればこういったものはきちんとした対応がしていただけるように、我々としては引き継ぎ対応を続けてまいりたいと思っております。

宮本(徹)委員 どれだけ価格転嫁の対策をしても、価格転嫁がもう進まない状況になっているんですよ。足踏みする状況に今なっているわけですよ。その理由も、先ほど紹介がありましたように、それこそ自由主義経済だったらなくならない理由によって価格転嫁ができないということになっているわけです。そうである以上、これを一〇%に引き上げたら、ますますこの不条理が拡大するということになります。この不条理が拡大するような消費税の増税は断じて認められないということを申し上げまして、次に、消費税にかわる財源策についての質問に移りたいというふうに思います。

 私たちとしては、社会保障、若者支援、子育て支援、そのための財源確保は待ったなしだというふうに考えております。そのための財源確保を真剣に行う必要があります。租税特別措置初め大企業優遇税制の見直しを進めていく必要があります。

 その点で、これは本会議でもお尋ねしました研究開発減税、二〇一四年度を見ますと減税総額六千七百四十六億円、このうち九五%が大企業が利用しているものであります。このうち増加型と高水準型の適用期限が今年度末ということになっております。この減税額が一千九十億円です。ですから、このまま何もせずに寝ていれば、一千九十億円、暮らしに回す財源が生まれるということになります。ところが、経団連や経産省はこの減税規模を維持してほしいという要望を出しているわけです。

 麻生大臣は私の本会議の質問に対して、租特については真に必要なものに限定していくんだ、研究開発減税についても、研究開発投資に向けた有効なインセンティブとなっているかといった観点からもしっかりと検討してまいりたいとおっしゃいました。真に有効なものなのか、必要なものなのか、きょうは議論させていただきたいと思います。

 きょう、総務省に来ていただきました。今週、総務省の行政評価局が、租税特別措置等に係る政策評価の点検結果を発表しました。研究開発減税についても、経産省の事前評価書についての点検というのを行っております。

 総務省にお伺いしますが、このうち、過去の効果、将来の効果について経産省が説明責任を果たせているのかということについて説明していただけるでしょうか。

古市政府参考人 お答えいたします。

 総務省におきましては、各行政機関が実施した租税特別措置等に係る政策評価の点検を実施し、その結果を十月二十五日に各行政機関に通知するとともに公表したところでございます。

 お尋ねの、試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充につきましては、民間研究開発投資を二〇二〇年度までに対GDP比三%以上との目標を掲げ、要望されたものでございます。

 今回の点検では、この目標達成の基盤となる本特例措置によって民間企業の研究開発投資がどの程度拡大したか、また、今後どの程度拡大するかについて定量的な分析がなされていないことから、この点を課題として指摘したところでございます。

宮本(徹)委員 ですから、どれぐらい効果があるのか定量的な分析がされていないというのが、経産省の事前評価書を見た総務省の点検結果ということになります。

 これは、見ましたら、やりとりしているわけですよね。説明できていないから、経産省に対して再説明を求めています。再説明を求めたのについて点検結果というのがされているわけですよ。再説明を受けてもまだ説明されていないというのが総務省の判断ということになっております。

 この研究開発減税の過去の効果、将来の効果について、経産省の説明では説明責任が果たせていない、こういう総務省の指摘については大臣はどう受けとめられているでしょうか。

麻生国務大臣 これは行政レビュー等いろいろなものをやっておりますが、研究開発税制というものを含みます租税特別措置につきましては、目標の達成に向けて有効かどうかという観点から不断の見直しを行っていくことが重要、これは当然のことだと思っております。

 したがいまして、総務省の政策評価の点検結果にありますように、これは各省庁、通産省に限りませんけれども、税制改正や既存の制度の延長を要望される際にはしっかりその効果などについて証明すべきだ、これは当然のことだと思っております。

 平成二十九年度の税制改正において、総務省の点検の結果などにつきましても要望省庁に説明を私どもとしては求めながら、研究開発税制の制度全般にわたってめり張りをきかせながら、研究開発投資を促す有効なインセンティブとなるように、私どもとしてはしっかり検討を行ってまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 効果を証明すべきという話なわけですけれども、同じ政府部内でも、総務省から見れば効果が証明できていない、説明できていない。この点を踏まえてやはりしっかり査定をしていっていただきたいというふうに思います。

 もう一点、研究開発減税の高水準型の「僅少・偏りの状況」についても総務省は点検をなされておりますが、この点検結果についても説明していただけるでしょうか。

古市政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充につきましては、平成二十六年度の適用数が百三十件である高水準型について、上位十社の適用額に占める割合が九三・二%、また、平成二十六年度の適用数が百六十一件であるオープンイノベーション型について、上位十社の適用額に占める割合が八四・三%となっております。

 今回の点検では、これらが想定外に特定の者に偏っていないことについて十分な説明がなされていないことから、この点を課題として指摘したところでございます。

宮本(徹)委員 「想定外に特定の者に偏っていないことについて説明されていない。」というのが総務省の点検結果だったわけです。

 この点については、大臣の受けとめはどうでしょうか。

麻生国務大臣 これは、総務省が実施をされました平成二十九年度租税特別措置に係る政策評価の点検結果という話を今説明したんだと思いますが、御指摘のありました高水準型というのとオープンイノベーションという形、特別試験研究費でしたか、何かそういうのだと思いましたが、つきましては、これは上位十社の適用金額が八割以上に偏っているということに関して、特定の者に適用が偏っているのではないかということについて説明が不足しておる、ないというのの御指摘がされたものだと承知をいたしております。

 確かにそれぞれ上位十社の適用額の全体に占める割合が高くなっておりますが、高水準型の方は、研究開発に向けて相当の努力を行う企業に対してはさらなる取り組みを促す仕組みであるということ、また、オープンイノベーション型、今申し上げました特別試験研究費のことですが、これは、質の高い共同研究に集中的にいわゆる投資を行うように促すものであることなどについては留意する必要があろうと思っております。

 いずれにいたしましても、税制改正、租税特別措置のことですが、税制改正においてはその利用の実態というものを踏まえながらしっかり検討してまいらねばならぬと思っております。

宮本(徹)委員 二〇一四年度の政府税調で法人税改革の議論がなされまして、そのときの見直しの基準三というのがあるんです。三つありますその三つ目ですけれども、「利用実態が特定の企業に集中している政策税制や、適用者数が極端に少ない政策税制は、廃止を含めた抜本的な見直しを行う」というふうに政府税調では確認をされているわけですよ。そして、偏りがないかどうか説明しろということを、昨年は会計検査院から指摘されました。しかし、それは、一生懸命経産省が説明しても、説明ができていないというのが、今回、総務省の点検結果だったわけですよ。

 役所の皆さんに対して説明がつかないものを財務省としてこのまま進めるわけには絶対いかないと思いますが、厳しい査定が必要なんじゃないでしょうか。

麻生国務大臣 これは先ほども申し上げましたとおり、各省庁が税制改正とか既存制度の延長という要望をされる場合には、その制度の効果について説明責任というものを果たしていただく必要があるというのは当然のことだとして、財務省としては適切な評価を行うように求めていくというのは当然のことです。

 要望時における政策評価が不十分だとの課題が示されたことだけをもって直ちにその制度全てが問題というわけではありませんで、廃止、見直しを行うべきであるということとは少し考え方が違いますけれども、こういった指摘を踏まえて、各省庁に対して税制改正プロセスにおいて説明責任というものを果たさせていくように強く求めていくことになろう、引き続きお願いはせねばならぬということだと思います。

宮本(徹)委員 説明責任が果たせていない、ここまで言われているわけですよ。

 結局、経団連がこれを続けてくれと言って、それを丸のみして説明がつかないものを続けるということになったらこれは大変問題だということになりますので、総務省の指摘も含めて、あるいは去年の会計検査院の指摘も含めてしっかり受けとめて、そして、政府税調の本来の、租特は期限が来たものは原則的にきっぱりやめていくんだ、研究開発減税の総額型というのは補助金にすぎないんだからこれは大胆に縮減するんだ、私が言っているんじゃなくて、政府税調が言ってきたわけですから、この立場に立って査定していただくことを求めておきたいというふうに思います。

 残された時間で、あと通告してあります金融所得課税の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 経済同友会も、税制改革の提言の中で、今月、公平公正の実現に資する税制ということで、金融所得課税の税率引き上げを提言いたしました。税率を五%程度引き上げるべきだ、高所得者の実効税率の適正化を図っていくべきだということを言いました。私も大変、財界の中からの声ですから、注目をいたしましたが、このことについての大臣の受けとめはどうでしょうか。

麻生国務大臣 同友会が、今言われたような提言をされたということは承知しております。これは小林さんのところでしたかね、知っておりますし、これに対してですけれども、これは、個別の団体の提言に対してコメントを一つ一つするなんということは差し控えさせていただきます。

 その上であえて申し上げさせていただければ、金融所得に係ります分離課税の税率に関しまして、平成二十六年度から、一〇%の軽減税率を廃止して、二〇%の本則の税制にしたところであります。したがいまして、今後の税率の水準については、この改正の効果というのは、まだ一年ですので、改正の効果を見きわめるとともに、また、景気の情勢とか市場の動向とか税制とか社会保障制度に係る所得再分配の状況とか、税制全体のあり方の中での金融所得課税の位置づけ等々いろいろ勘案しなくちゃならぬものがいっぱいありますので、そういうものを検討した上で検討する必要があるというぐあいに考えております。

宮本(徹)委員 先日、「NHKスペシャル」でも、アメリカの中で愛国的な経営者の皆さんが、富裕層に課税を、そして最低賃金を引き上げようという運動をやられていることが紹介されていましたけれども、せっかくこういう経済同友会みたいな動きがあるわけですから、ここはぜひ富裕層の皆さんの課税強化に踏み出すことを、検討をお願いしておきたいというふうに思います。

 それから、あともう一点、所得税にかかわりまして、今、政府税調、与党税調で控除の見直しの議論が行われておりますが、この点にかかわって一問だけ質問させていただきたいと思います。

 昨年の論点整理の中でも、所得再分配機能を回復するんだ、このことが今度の議論の大元に据えられているというふうに思います。そういった場合は、やはり生計費非課税の原則というのが貫かれることが原則だというふうに思います。

 ただ、先日、この委員会の議論の中で、公的年金控除について与党の委員の方が触れられました。これは、縮小することになりましたら、私は高齢者の生活を考えれば大変厳しいと思います。年金生活者、夫婦世帯で見ますと、課税最低限は今でも二百八万円、社会保険料や利用料、こういう負担増もいっぱい計画がされているわけです。前に私も質問しましたけれども、介護の問題でいえば、今でも利用料が高くて必要なサービスを抑制せざるを得ないという状況があるわけですよね。

 どうするのかということが考えられるわけですが、先日、この課税最低限が年金受給者と給与所得者で逆転している、世代間の公平から公的年金控除縮小みたいな議論がありましたが、私は逆でして、現役世代の控除が低過ぎる、現役世代の控除を引き上げる、基礎控除の引き上げあるいは低所得者の給与所得控除の引き上げなどによって全体の課税最低限を引き上げる、このことによって所得再分配機能の回復を図るというのが大事だと思いますが、その点については、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 いわゆる課税最低限、ここまでは税負担が生じないという収入の水準、最低水準を示す指標のことですけれども、これはあくまでも、基礎控除とかいわゆる給与所得控除とかといったいろいろな控除がありますので、その控除の額を積み重ねた結果として計算されているものですから、そのあり方を考える際には、その控除の一つ一つをきちんと考えた上で検討する必要がある。まずこれが大前提だと思っております。

 その上で、個人所得課税における諸控除のあり方につきましては、一人一人の働き方とか家族のあり方の変化とかいった、先ほどのお話と関係しますけれども、経済社会の構造変化というものも考えながら、公共サービスというものを賄うための負担につきましても、所得税としてどのような税負担を求めるのが適当かといった観点も含めて検討していく必要があるものだと考えております。

 したがいまして、こういうあり方の検討なくして、あくまでも計算の結果である課税最低限のみに着目するというのは、水準の議論とかいろいろありますけれども、必ずしも適当ではないと考えております。

宮本(徹)委員 やはり、税金というのは幾つかの原則を置いた上で考えるべきだと私は思います。特に所得税でいえば、やはり、生計費非課税というのが一番の大原則になるのではないかというふうに思います。

 そして今、控除の見直しの議論をずっとされていますけれども、このことを税収中立でやるんだということになっているわけですよね。控除の見直しを税収中立だけでやろうとしたら、これは高所得者じゃない方にも負担がふえる可能性があります。ですから、私、先ほど言いましたけれども、株式譲渡益や配当だとか金融所得課税を引き上げる、それとセットで控除の見直しをやれば、高所得者以外の方が負担をしない控除の改革というのができるんじゃないかというふうに思いますので、その点もぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 時間になりましたので終わりますが、きょうは消費税増税延期法案ですが、延期実施ではなくて、きっぱり断念することを求めまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 昨日、三笠宮親王殿下が薨去あそばされました。謹んでお悔やみ申し上げますとともに、お隠れになった親王殿下のみたまの安らかならんことをお祈り申し上げます。

 大臣におかれましては、非常に並々ならぬ御関係でいらっしゃる三笠宮家でございます。もしよろしければ、どのような方でいらっしゃったのか、人柄がわかるようなエピソード等をお話しいただければと思うんですが、大臣、殿下をしのんでお言葉を賜れますでしょうか。

麻生国務大臣 少なくとも皇族方のことに関して、どのような場であろうと、批判、絶賛含めまして、私どもとして、こういった場でその人のことに対してコメントということについては、差し控えさせていただきます。

丸山委員 そうですね、おっしゃるとおりだと思いますが、しかして、すごく親しみを持てるお人柄だったという話を報道等では聞いております。私も直接お会いできたわけではございませんので、そういった意味で、もしそういったエピソードがお聞きできればと思ったんですが、おっしゃるとおりだと思いますので、ここでこれは終わらせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、薨去されたということに関しましては、謹んでお悔やみ申し上げたいというふうに思います。

 さて、本題でございます。消費税の引き上げの延期の判断について今回お聞きをしていきたいんですけれども、前回、委員会で少しお伺いして大臣にお答えいただいているんですけれども、いまいちちょっと私の中で、議事録も拝見したんですが、理解が及ばないところがありましたのでもう一度重ねてお伺いしていきたいところもありますが、それは御容赦いただきたいというふうに思います。

 まず整理をしますと、ことしの参議院選挙の前に総理が、いわゆる世界経済のリスクがあるから、それによって問題が生じ得る、だからこそ消費税の引き上げを延期するんだというお話を会見でされました。そして、総理の会見であれば、何を指標にしたのかということもその会見では述べられていて、具体的なデータです、国際商品価格がどうであるか、そして、新興国、途上国の経済指標、特に、投資を含むという投資の話をされていますけれども、この伸び率が下がっているんだというお話をされています。そして、新興国への資金の流入が減っていますよという点を問題視されている。そして各国の成長率の予測の推移、世界の貿易額。今挙げたような五つぐらいを具体的に会見で挙げられて、この点について問題がある、それによって世界経済のリスクになるんだ、このままではまずいので増税はしませんという会見でございました。

 そういった意味で、総理は世界経済のリスクを強調されたんですけれども、麻生大臣は、前回のお話も、きょうもお話しありましたけれども、個人消費というものが力強さを欠くということが一番問題だったというお話をされています。一方でこの個人消費というのは、世界経済のリスクというものとは明らかに違うわけですね。

 この点、総理の御説明と麻生大臣の御説明がずれがあるんじゃないかなと。これをどう整理すればいいのか。いま一度お話しいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 この種の話をする場合には、これは実にいろいろなことを考えて、全体として話を考えてみて、その上で決断をおろされるということになろうと存じます。

 そういった意味では、今回、前回五%から八%へ上げるときと違って、少なくとも経験を積まれた結果もありますので、いろいろな意味で、私どもとしては、少なくともいろいろな数値がよくなってきていることは確かですし、経常収支、法人税収、GDPの伸び、賃金の伸び、いずれも過去最高を示しておりますし、有効求人倍率も史上空前ですから、言うことはないというほどの数字なんですが、言われましたように、個人消費の点に関しましてはいま一つ力強さに欠けているというところが、GDPの中に占めます比率が高い日本みたいなところにおいては、この分が伸びてこないと、GDPが伸びる、すなわち、全体としての経済性はなかなか成長しないということになりますので、それを考えるというのが私どもの立場ですけれども、同時にやはり、この国、貿易比率がGDPの中に占める比率は、ほかの国というか、ヨーロッパみたいに高いわけでもありません。

 その中にあっても、新興国の中でいろいろなものというのを、この一月に入りまして、ちょっとアメリカのテーパリングの話が出た途端にいきなりどんと新興国からドルが戻る、また、中国あたりでいきなり毎月十兆円ずついわゆる外貨準備高が減っていく、四カ月続きましたかね。そういったような続くというのを見ると、これはえらいことになったなという感じになっておられたんだと思いますし、私らもそう思いました。

 そういった意味では、これはちょっとハンドリングを間違えたらえらいことになるなという意識というのは、これは、国際金融とかそういうものをやっております方から見ると同じようなことを感じるんですけれども、いろいろなものを総合された上で判断をされておられますので、私どもとの間に意見がそんなに違っているというようなわけではございません。

丸山委員 そんなに離れているわけじゃないという御回答ですけれども、お聞きしている感じだと、総理の方はどちらかといえば世界経済のリスクを当時も今も強調されているんですよ。でも、大臣はどちらかというと国内経済の部分を御説明されているところがあって、明らかに少しずれはあるというふうに聞いている方は感じるんです。

 事務方で構いませんのでちょっと確認なんですが、総理はこの会見でこういう御発言をされているんですけれども、つまり、イコールしましたら、客観的な景気指数から今回の延期を判断したということで間違いないんですよね。主観に基づくものではない。はい、どうぞどうぞ出てください、その間に事務方にお伺いしたいんですけれども、客観的な数字に基づいたんだ、客観的な景気指数から判断したんだという認識でよいんですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 本年六月の会見におきまして総理が、原油などの商品価格の下落、新興国の投資の落ち込みなどを挙げて発言されたとおり、世界経済は、新興国経済の陰りなど、需要の低迷、成長の減速リスクが懸念される、また、日本経済も個人消費に力強さを欠く状況にあるということを御発言されたわけでございますけれども、総理が述べられましたのは、個々の経済指標の動向だけを捉えて判断されたのではなくて、伊勢志摩サミットにおいて、さまざまな経済指標も参考にしつつ、世界経済について首脳レベルの幅広い議論が行われて、その結果、G7として世界経済の見通しに対するリスクが高まっているとの認識が共有され、新たな危機に陥ることを回避するため、適時に全ての政策対応を行うことで合意した、そういうことを踏まえて判断したというふうにおっしゃっておられます。

丸山委員 個々それぞれのデータから客観的には判断したわけではないという理解なんですね。

星野政府参考人 そうでございます。伊勢志摩サミットにおける首脳レベルの議論を踏まえて先ほど申し上げました認識に至った、合意したということを踏まえて判断したということでございます。

丸山委員 全体を見て今回の判断をされたということですけれども、通常であれば、今挙げられたような個々のデータもきちんと客観的に景況判断してほしいんですよ。そうしないと、本当に主観で何でも決められてしまう。税が客観性を失っていくその最初になりかねないと思います。

 そういった意味で総理は御判断をされて、参議院選を経ています。民意を確かめるために参議院選挙を経ておりますが、しかして、税を決める上で、果たしてその客観的な指数を判断していないというのは、私、いささか問題があるんじゃないかなというのは思います。

 とはいえ、具体的な、何が問題になっていると考えているのが挙げられているわけで、それについて、その後、政府がそれぞれどうなっているんだという理解はされていらっしゃるのかどうかお聞きしたいんですけれども。

 そもそもの今の話だと、それぞれの指標ごとでは判断していないという話だったので、当然、それぞれの指標ごとにその後どうなったかというのは余り判断の話ではないと思うんですけれども、やはりその全体において、では、その後、世界経済は危機に陥った、新たな危機のリスクがあるということですから、新たな危機に陥ったのかどうか。危機は、陥ったんだとしたら継続中なのか。それとも陥っていないのか。陥っていないのであれば、何が陥らなかった理由、変化した理由、危機があったはずなのに陥らなかった理由。その場合に、当時リスクがあったかどうかということは、今でもそのときの判断はリスクがあったという判断でいいのかどうか。

 大臣、お答えいただけますか。まずは事務方、ではお答えいただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 そのときの総理の御判断は、要するに、さまざまなそのリスク要因を挙げて、そういったリスク要因が存在をするということで、各国ともそれに対して最大限の対応をしていくということでサミットで合意をした。そういったリスク要因については、引き続き存在するというその認識に今もあるということかと考えております。

麻生国務大臣 その後どうかという点の方は私の方から申し上げさせていただければ、各国はかなり緊張感を持って対応しているのがこの数カ月だと思います。

 少なくとも、あのブレグジットというのが行われた次の日に、今、G7は日本が議長国なものですから、私の方から声をかけて、G7のあれはすぐ電話会議、その日にもう電話会議をやって、各国全部時間を決めて、時差がありますので、この時間ばんと決めて全部電話会談をやって、これでまとめるという文書を日本がつくって、これでいきますというので、結果的に、御存じのように、ポンドがぼんと下がったのは最初のスタートのところだけで、翌日からはちゃんとというような形になりましたし、また、ドイツのジャーマン・バンクの話等、何だかんだいろいろうわさが出ましたし、イタリアの銀行の名前も挙がったり、いろいろしていますのは御存じのとおりなので、これが広がらないようにみんな各国すごく手を回して、そういったようなことが起きると自分のところに波及してくる可能性があるからみんな抑えている。

 アメリカも、ちょいと余りよく経済のわかっておらぬ不動産屋のおじさんが出てくるかもしれないと思えばそれなりに対応せざるを得ませんから、片一方の方もいまいち大丈夫かというと、ちょっと正直なことを言ってみれば、民主党政権ですから、民主党政権の方にはそれは話ができますが、共和党は誰が入ってきて誰がやるんだか全然わかりませんから、したがって、誰がやるんだとよく電話しましたけれども、知っているやつに電話したら、いや、俺じゃないと。いや、おまえじゃないのはわかっている。では誰が入るんだというか、それがわかれば苦労せぬと。しかし、影響をするのはおまえの国だけじゃなくて、こちらもみんな迷惑するんだから、ちゃんとしかるべきやつ、わかるやつとちゃんと話してくれと言っていろいろな話をする。

 それは、みんな何となくやばいなと思ってなかなか電話ができなかったのが中国ですけれども、ここも乗ってこざるを得ないところになってきて、みんな乗ってきて、向こうからこっちへ寄ってくるようになりましたし、何となく木で鼻をくくったような返事をしていたスワップ、あっち向いてほいみたいな顔をした人たち、韓国もいきなりこっちへにこにこ寄ってこられたりして、何か私の後ろに誰かほかに人がいるのかと思うぐらいにこにこして寄ってこられたものですから、俺のところに来たのかと思って驚くぐらいでしたけれども、それは急激にやばいなと思ったのは、この七月ぐらいからですよ、みんな何となくいろいろ動きが出てきているのは。

 したがって、綱渡りとは言いませんけれども、かなりみんな緊張感を持ってコンタクトを密にして、どこかがいかれたら自分のところにというのは、今これはぎりぎりでもっているんだから、これをちょっと一カ所破られたら、ざっと波及効果が出てきたらもっと出てきちゃうという意識があることだけは確かです。

 だからそういった意味では、危機は去ったのかといえば、まだ最中で、ナローパスとか英語で言うんですけれども、細い道をずっと今渡っている最中というように、私の感覚ではそうです。

丸山委員 非常に興味深いエピソードを添えていただきまして、まあ韓国なんかは、あっち向いてほいしていたのがいつの間にか横にいたというのは、なかなかしたたかな国だなと。だまされないように外交をやっていただいている麻生大臣でございますので何も申し上げませんけれども、そういったエピソードも聞きつつ、最後に大事な御発言がありました。

 事務方と同じだったので繰り返しますと、リスク要因は当時もあったと考えていて、そして、現在もあると考えている。そのリスクがあるがゆえに、しかもそれは、ナローパスという表現をされましたけれども、結構その狭い道を今は歩いていて、もし何かあればそれはすぐ落ちてしまうような、非常に危機の状況が続いているという御認識を今も政府がお持ちだというのが今の御答弁でわかりました。

 そうすると、では、もしその危機が続いているんだとしたら、今回の期限を二〇一九年に先延ばしていますけれども、その同じタイミングでもナローパスを歩いている可能性は十分にあると思うんです。

 そういった意味で、私は、今回景気条項を外されたというのは非常に今の御発言と矛盾しているとは思うんですが、その景気条項についてのお話をする前に確認をしておきたくて、この委員会でも私はこの消費税の話、一人会派でございますので、ずっとずっと、何度も何度も総理とも麻生大臣ともお話をさせていただいて繰り返し御表現されたのが、リーマン・ショック級というお話と東日本大震災のような事態、これらがない限り必ず増税するんだという御発言をずっとされていたわけです。最後までそれは変わらなかったです。だから、これはそうなんだと思ってきました。

 しかし一方で、ことしの六月、参院選前に違う御決断をされて、それは、新たな危機だという御発言をされました。これは、それまでのリーマン・ショック級、東日本大震災のような事態ということと新たな危機というのは、確認です、違うということでよろしいんでしょうか。お伺いできますか。

麻生国務大臣 リーマン・ショック級というのを言って、一体何がリーマン・ショックかといえば、もう御存じのように、世界じゅうから現金がなくなったんですな。全くマーケットからキャッシュが消えましたから、日本が十兆円という金を出さない限りは、間違いなく世界では、金融収縮によるいわゆるクレジットクランチというんですか、クランチが起きたということになるんですが、それがならずに済んだほどの騒ぎだったんですが、今は逆に金は余っておるわけですから、全然状況は違います。

 ただ、今の状況というのは、今度は全然別の意味で、ヨーロッパ等々があのときに不良債権というものを、日本の場合は、九七年のアジア通貨危機と二〇〇八年のいわゆるリーマンのときの二回にわたって、銀行を含めまして金融機関、企業、全部不良資産と言われるものをほとんどきれいに整理していますので、自己資本比率からいきましたら、多分日本というのはやたら高いと思っております。

 そういった意味では、日本の場合はかなりうまくやってきたんだというのは、この数年間つくづくそう思いますけれども、ただ、G7が始まる前に、他国、六カ国をずらっと回られて、これはえらいことになっておるな、多分そう思われたんだと思います、特にヨーロッパの場合で、おい、これはえらいことになっているなという、多分、ドイツ・バンクの話から何からみんな全部聞かれているはずですから、そういった話で、これはちょっとえらいことになったな、これは日本一人だけがやれる話じゃないなと思われたのが一点。

 私もあの二〇〇八年のときに、あのリーマンのときはたまたま総理をやったんですが、あのときの解散というのをちょっと引っ込めざるを得なくなった大きな理由は、これはアメリカはもちろんのことですけれども、ほかの国がえらいことになっていましたので、これは日本も一緒にというのはとてもじゃないなというのが、選挙をやれなくなったと自分らに覚悟した一つの瞬間でした。

 やはり、他国の状況が猛烈と今は絡み合っていますものですから、そこらのところを考えたときに、やはりなかなか難しいなと思われたのが判断だと思いますので、今までの国内的な大震災とかアメリカのいわゆるクレジットクランチとか、ああいった話とは全然違ったもので、別の、ちょっと踏み外したら危ないなという感じをすごく感じられたのが総理だと思いまして、私の場合はずっと国内で消費の伸びがちょっといかがなものかという意識がありましたものですから、私の場合はそちらの方を強く申し上げたので、国際金融の社会でしょっちゅう行っていればやはり同じような感じは持っていましたので、総理の言っておられる意味は私はよくわかるところなので、いろいろな意味を含めまして、これが今後、あと二年半たってその状況が解消しているかと言われたときに、はい、ヨーロッパはどうですと言って、ブレグジットの後一体どうするんですというような話はちょっといま一つ見えてこない。中国の場合も同様です。

 アメリカの場合が、正直、その中ではまだいい方なんだと私らにはそう見えますけれども、それでも、金利を上げないと、連銀はいずれも金利を引き上げろ、上げないと土地のバブルが起きるというのは、あれだけわんわん言ってもFRBが上げ切らない最大の理由は何かといえば、上げたら、金利が上がって、当然のこととしてドルが上がって、他国から一斉にドルが引き揚げてきてというようなことが考えられるからどうしてもああなるんだと思って、物すごくいろいろなことが絡み合っていますので、長々としゃべりましたけれども、そういったもの全部絡み合っておりますので、今の段階で、先ほど日銀総裁からも答弁があっておりましたけれども、一九年十月の段階までにきちんとそういったものをクリアして、上げるような努力をきちんと我々はやる。それが私らに与えられた仕事だと思っているんですけれども、そこに至れるようにするまでに世界じゅうのあれはいま一つ大丈夫かということを先生にもし念を押された場合は、ちょっと、一〇〇%とはなかなか言えぬというのが正直なところです。

 ただ、私どもの立場としては、きちんとこれをやり上げていかないと、日本の場合の社会保障とかいうものを考えた場合に、今後の日本の社会のためには、国民皆保険等々の社会保障関係のものは維持できなくなるという状況は、これは断固避けなきゃいけませんので、私どもとしては、そういったものをやれるような状況にするためにも、経済というもののかじ取りに全力を挙げねばならぬものだと思っております。

丸山委員 きょうは非常に時間をいただいておりまして、いつもだとなかなか麻生大臣のお話をお聞きする機会がないんですけれども、きょうはお時間があるので、すごく興味深く拝聴いたしておりました。

 その中で、一番大事な御発言があったのは、再々延期にならないように努力をされる、それは当然やっていただかなきゃいけません。そのときに、しかして一〇〇%そうなるかというと、そうではないという御発言が今あったと思うんですけれども、つまり、今回、景気条項を外されましたけれども、もちろん確実にやるように目指すんだけれども、一般的に言って、世界経済の状況によっては再々延期も可能性は排除はされないというふうな今の御答弁だと理解していますけれども、そういうことでよろしいんですね、可能性は排除されない。

麻生国務大臣 退路を断った、基本的にその意気でやらねばならぬものだと思って、これは、やられるなら景気条項を外していただきますというぐあいに申し上げましたので、退路を断っていただきますという表現をしましたので、そういった意味に理解していただければと思います。

丸山委員 今のお話だと、大臣から総理に進言をされて、やるのであれば退路を断ってやるべき、そういった意味でこの景気条項を外されたという御発言が今あって、背景はわかりました。

 しかし、今までも総理はずっと、リーマン・ショック級か東日本大震災のような事態がなければ消費税は必ず上げますとおっしゃったのに、それじゃないのに、今の御発言は、違うバージョンだとおっしゃった新たな危機、違うものが起きたら、総理はその御発言、前言を撤回されたわけです。そうですよね。となれば、同じことが二〇一九年にも起こり得る可能性は排除できないですよね、論理的には全く矛盾していないというふうに。もう委員の皆さんもうなずかれていますけれども。

 つまり、もう一度麻生大臣にお伺いします。再々延期の可能性は排除はされないんですよね。一〇〇%とは言えないとおっしゃったということは、つまり、再々延期の可能性は排除できない。

麻生国務大臣 一番足を引っ張られるネタを提供したような話にとられて甚だ問題かもしれませんけれども、私どもは経済というものを常に一〇〇%だというものは、経営をやっておられたらみんな誰でも知っている話で、一〇〇%はありませんから。

 私ども、そういった意味で、今の古本さんのおられたトヨタ自動車が昭和二十五年には倒産している会社だと知っている人は今いませんから。事実でしょうが、倒産したんですから、あの会社は。それが二十六年の朝鮮動乱で助かった。そういう会社です。そういう歴史ですから、だから、一〇〇%はあの天下のトヨタでもない、そういうものだと思っていますから、私どもは、一〇〇%と言われると、政治家としては一〇〇%ですと言わざるを得ないからそう申し上げますけれども、では本当かよと言われたら、これは世界経済の中の日本ですから、それは一〇〇%だと言われたら、限りなく九九・九九%かもしれませんけれども、とにかく何らかの可能性が常にあるものだ、私は経済というのはそういうものだと理解しております。

丸山委員 先ほどお話しされたのと同じです。

 つまり、それを裏返せば、一〇〇%じゃないんですから、〇・一%なのか一%なのか三〇%なのかわかりませんが、恐らく、少ない可能性の中でという御発言だと思うんですが、消費税を再々延期する可能性もあるということですよね。

 一〇〇%じゃないとおっしゃったわけで、その中に、つまりそれは九九・九九何%なのか九〇%なのかわかりません、しかし、再々延期の可能性は排除されないということでよろしいんですよね。

麻生国務大臣 何回も同じ答えで恐縮ですけれども、経済には一〇〇%はないというのは、自分でそこにいましたので、選挙に一〇〇%がないのと同じで、そういうものだと思っておりますから、私どもは今やらせていただく段階で、次、二〇一九年の十月には必ず上げるという前提でこの法案を出しておりますし、その覚悟で今進んでおりますけれども、では、一〇〇%そうなるのか、おまえが言っているように、経済情勢は、その二〇一九年の二年先をおまえは見通しているのかと言われたら、それはなかなか私どもとして世界を二年半先まで読めているわけではありませんので何とも申し上げられませんけれども、私どもとして、今この法案を二年半延ばすということをお願いしている前提としては、二年半先に上げさせていただきますという覚悟でやらせていただいております。

丸山委員 非常に苦しい答弁だと私は思っております。

 矛盾をもう明らかにしているわけで、御発言が一〇〇%ではないというふうにおっしゃったということは、つまり、再々延期の可能性はあるとお認めになったということだと思うんですけれども、私、でも、これは例えばどういうことだと詰めたいわけではなくて、ただ当たり前のことをおっしゃっているんだと思うんです。

 消費税を延期したけれども、二〇一九年にきちんとできるように最大限努力をされる。しかし、ナローパスだという表現をされましたけれども、現在も危機の状況にあって、二〇一九年に危機の状況にある可能性だってあるわけですよ。これも大臣はおっしゃいました。つまり、そういう状況であれば再々延期をせざるを得ないじゃないですか。当たり前です。そこで無理やりやられても、逆に困ります。だからこそ一〇〇%じゃないんですよ。

 再々延期する可能性だって、大分お答えしやすいようにお聞きしています。一般的に言って、再々延期の可能性は排除されない、再々延期される可能性も排除されないということでよろしいんですよね。

麻生国務大臣 政治的に申し上げれば、必ずやらせていただきます。

 ただ、一般的にという言葉を言われましたので、一般的にと言うのであれば、経済という生き物を扱っております以上は、私どもとしてはいろいろな可能性を考えて言わねばなりませんので、一般的に申し上げれば、再々延期ということの可能性を排除するものではありませんというようにお答えすべきかと存じます。

丸山委員 そうです、そうなんですよ。何か逆にそれを言ってはいけないかのようなあれが出るんですが、当たり前の話で、今回だって総理は、法律に景気条項まできちんと法律にあって、それは何ですかと聞いたら、リーマン・ショック級、東日本大震災のような事態がなければ延期は絶対しないんだとおっしゃったのに、それをひっくり返したわけです。

 一方で、今回は景気条項はないわけですよ。ないからやらなきゃいけないんですけれども、しかし、結局のところ、そのときの状況によったら総理の御判断でひっくり返せる、そういう状況になってしまっていますし、我々この委員会に所属する委員としては非常に残念です。

 というのは、さんざんあのときも、この場に立って、これがどういう状況かという御説明をいただいて、真摯な御説明があったと私は思います。それに基づいて国民の皆さんも、消費税がこうなるんだろうというのを思われたはずです。しかし、その議事録は一切、一切とは言いませんけれども、ほとんど意味がなくなってしまう。では何のために審議をしていて、何のためにこの法律の改正をやったんだということを問われる、そんな状況じゃないでしょうか。

 大臣、これについてはどう思われますか。この委員会に対する責任だと思うんですけれども。

麻生国務大臣 政治家として私どもとしては極めて厳しい状況にあったんだと思いますが、国策なり国益というものを考えて、総理としては苦渋の選択をされた。政治家としては厳しい状況であったんだろうとは思いますけれども、きちんとした選択をされ、結果として日本の経済というものを今のような状況にしている、さらに先に上がっていくという状況にできたというように自分なりに納得をしてやっておられるんだと思いますけれども、私どもとしては、今言われたように、この委員会の審議をいろいろ踏まえた上での結論が出されたので、この委員会の審議は全く無意味だったというふうに考えているわけではありません。

丸山委員 今回、景気条項を外されているわけですよ。でも、やはり麻生大臣のお話を聞いていても、目指すけれども一〇〇%ではなく、一般的に言って再々延期の可能性は排除されるものではなく、そして、前例としてあの法律をつくって、しかして、新たな判断で、新たな危機が生じる可能性がある、リスクがあるということで総理は延期をされたわけですよ。その教訓を踏まえるならば、景気条項をしっかり入れてしかるべきだと思うんですよ。

 そしてなおかつ、前回のように限定してしまった、リーマン・ショック級、東日本大震災とおっしゃったから矛盾が生じているわけで、もう少し、ある程度先の見えないことも読める景気条項を入れておくというのが通常考えた筋で、当然だというふうに思うんですけれども、不退転の決意、要は、必ずやるんだという決意で恐らく今の話だと大臣から総理にお話があって、総理は、ではそうしようということでやられたんだと思うんですけれども、非常にこれが逆に今後の足かせといいますか、どうなっているんだ、矛盾しているんじゃないかと言われても仕方ないような状況を生み出しているというふうに思うんですよ。

 同時に、最初にもお話をお聞きしたような、総理は、世界経済のリスクが非常に問題だ、根本の部分だ、麻生大臣は個人の消費の部分に光を当てられているんです。おっしゃっていることも、ここもずれているところがある。

 こういった意味で、前回の委員会でも総理に来ていただいてお話を聞きました。こんなに違いがあるんだったら、総理に最後もう一回ここに来ていただいて、前回との違いだとか、今申し上げたようなお話をやはり聞いていかないとだめだと私は思うんです。しっかり聞いていかなきゃ、やはりおかしいですよ。

 今お聞きになった皆さん、矛盾点、確かになというふうに思っていらっしゃると思いますけれども、このあたり、総理からちゃんとやはりお聞きしないと、後々、二〇一九年にこの委員会での議事録が非常にまた重要になってくるんですね。でも、それが麻生大臣のお言葉しかなかったら、総理のお言葉がなかったら、またそのときによくわからない状況になってしまうんです。私はしっかり総理のお話をこの委員会でも聞きたいというふうに思いますし、それが国民に対する責任だというふうに考えております。

 運営については委員長や、私はオブザーバーですけれども、理事会でお話をすることになりますけれども、やはりその点は委員会でも強調しておきたいというふうに思います。(発言する者あり)委員長、ぜひ理事会で御協議ください。

御法川委員長 理事会で協議いたします。

丸山委員 そういった意味で、非常にまだまだお伺いしていくべきところがさまざまあると思います。

 一番大きいところからさらに深掘りしていきたいんですけれども、財政健全化目標を政府の方で立てられております。これは総理もお答えされていて、国、地方を合わせたプライマリーバランス、PBを二〇二〇年度までに黒字化するという財政健全化目標を立てておいて、これは消費税にかかわらず堅持するというふうにお答えになっております。

 一方で、今回、税収が大きく減るわけで、非常にこのプライマリーバランスの黒字化は厳しくなっているというのは客観的に見てもとれますし、現に政府の側でも、この間、内閣府が最新の試算を出されまして、二〇年度のプライマリーバランスは、その分析だと、いろいろな経済状況によって分けられているんです。例えば、ベースラインケースという一番マイナスがでかくなる部分だと九・二兆円。そして、経済再生ケースといって、ある程度経済が上向いているという状況であれば五・五兆円。これもマイナスなんです。いずれにしても、九・二兆円から五・五兆円のマイナスが、プライマリーバランスが二〇二〇年になりますよという予想を同じ政府の内閣府が出しているわけですよ。

 しかし、総理はプライマリーバランスを二〇二〇年度までに黒字化する目標を堅持するとおっしゃっているんですから、この財源をどうするんだという穴埋めをしていかなければなりませんし、このずれはどういうことだという素朴な疑問がどう考えても生まれてくると思いますけれども、この目標達成に向けた具体的な方策、どのようにお考えでしょうか。

木原副大臣 丸山委員先ほど言われたように、政府としては、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化を実現するというこの財政健全化目標は、堅持をしているところでございます。その実現に向けて、もうこれは、基本方針であります、経済再生なくして財政健全化なし、そういう方針のもとで今回新たに、未来への投資を実現する経済対策を初めとする、強い経済の実現を目指した取り組みを決定したというところでございます。

 あわせて、歳出と歳入の両面からも取り組んでいく必要がありまして、そのために、経済・財政再生計画の枠組みのもとで、改革工程表に基づきまして、社会保障の改革を含めて、徹底的な重点化、効率化など、歳出改革を継続していきます。

 また、今まで議論がありましたとおり、二〇一九年十月に消費税率を一〇%に確実に引き上げるということがつながってくるというわけです。

 さらに、二〇一八年度の時点で、目標達成に向けた歳出改革時の進捗状況を評価をして、必要な場合には、歳出歳入の追加措置等を検討するということとしております。

 こういった総合的な取り組みによって、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化に向けてしっかりと財政健全化に取り組んでまいります。

丸山委員 先ほど御紹介した内閣府の試算も、実は、今御答弁のあった一九年に上げようとされている消費税を含んだ上で、財源を入れた上でプライマリーバランスが九・二兆から五・五兆マイナスだとおっしゃっているんですよ。

 非常に厳しい中で、今、残念ながら消費税以外のは、具体的な方策という意味では財源を生み出すものはなかったと思うんですけれども、厳しいというのは大臣も認識は同じようにお持ちだと思うんですけれども、これはどう考えても実際に難しいんじゃないですか。本当に大丈夫なんですかね。

麻生国務大臣 今のプライマリーバランスを、基礎的財政収支を半減すると言ったときに、みんなだめだと言ったじゃない。できると書いた新聞はゼロですよ。思い出してみなさいよ、四年前。あのときゼロだったんだから。できた。今度は二〇二〇年がだめです、常にそういう話をするの、悲観的な方々は。しかし、楽観的なことをやる、ある程度意思を持って、こういうことをやるんだという意思を持たない限りはできません。

 我々はきちんと二〇二〇年までにやる。それのためにはいろいろな問題があることは確かですから、いわゆる歳出削減を含めまして、増税だけではなくて歳出削減を含め、また、経済成長というものも含めて我々はいろいろなことを考えて、きちんとした形で限りなくゼロに近づけたいというので、その意思をきちんと持ってやり続けなけりゃならぬと思っております。

丸山委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、なかなか意思だけでは難しいのが財政でございますので、細かい議論、この後の委員会でまたお伺いしていきたいと思います。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次回は、来る十一月一日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十二分散会


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