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第3号 令和4年2月9日(水曜日)

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令和四年二月九日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 薗浦健太郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 藤丸  敏君

   理事 稲富 修二君 理事 末松 義規君

   理事 吉田 豊史君 理事 角田 秀穂君

      井上 貴博君    石井  拓君

      石原 正敬君    門山 宏哲君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      国定 勇人君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      鈴木 隼人君    田野瀬太道君

      中川 貴元君    藤原  崇君

      三ッ林裕巳君    八木 哲也君

      山田 美樹君    山本 左近君

      若林 健太君    鷲尾英一郎君

      江田 憲司君    櫻井  周君

      下条 みつ君    中川 正春君

      野田 佳彦君    伴野  豊君

      赤木 正幸君    沢田  良君

      藤巻 健太君    中川 宏昌君

      岸本 周平君    田村 貴昭君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣        岡本 三成君

   農林水産副大臣      武部  新君

   内閣府大臣政務官     宮路 拓馬君

   財務大臣政務官      高村 正大君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   経済産業大臣政務官    岩田 和親君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (国税庁次長)      重藤 哲郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           長井 俊彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            飯田 健太君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           塩見 英之君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石坂  聡君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月九日

 辞任         補欠選任

  中川 貴元君     山本 左近君

  鷲尾英一郎君     国定 勇人君

同日

 辞任         補欠選任

  国定 勇人君     鷲尾英一郎君

  山本 左近君     中川 貴元君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

薗浦委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長住澤整君、国税庁次長重藤哲郎君、農林水産省大臣官房審議官長井俊彦君、経済産業省大臣官房審議官蓮井智哉君、中小企業庁事業環境部長飯田健太君、国土交通省大臣官房審議官塩見英之君、大臣官房審議官石坂聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田野瀬太道君。

田野瀬委員 自民党の田野瀬でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、早速質問を始めさせていただきたいと思います。

 目下、我が国が抱える問題、我が国だけじゃなくて全世界の課題として、やはりコロナ禍というのがあるわけでございます。政策を総動員して、しっかりとこのコロナを乗り越えて、コロナの前の日常を取り戻す、これは今やらねばならない一番の問題であることは論をまたないわけでございますが、コロナが始まる前からの我が国の抱える重要政策、問題点はたくさんあろうかと思うんですけれども、私は、その中でも特に人口減少というのが乗り越えなければならない大事な大事な課題であるんだ、そういう問題意識を持っているものでございます。

 人口減少、少子化、高齢化、これが経済に与えるマイナスの影響も計り知れないものがあるわけでございまして、例えば、生産年齢人口、労働力人口がそもそも減っていくわけでございますので、これは経済に対してマイナスの影響しか与えない。購買力も、人口減少とともにパイがどんどんどんどん縮小していく、そういう問題があろうかと思います。

 この人口減少を何とか食い止めて、そして経済を回していくということが非常に大事な観点であろう、こう考えておるわけでございますけれども、経済が持続的に成長していくためには、二つの大きなベクトル、方法、手法があろうかと思っております。

 一つ目は、人口減少で働き手がいなくなる、そこにデジタル、機械、ロボット、AI、その辺りを充てて生産力を維持するという手法ですね。これはどんどんどんどん、これまでも我が国は政策として推し進めていっているわけでございますが、これが一つ。もう一つは、残っているマンパワー、人に対する投資を思いっ切り充てていく。恐らく、この大きな二つのベクトルで経済を持続的に成長をさせていくという必要があるのだと私は考えておるところでございます。人へ投資をすることで、労働生産性を高めるのみならず、所得水準を持続的に向上させることもこれまた可能なので、人への投資というのが大事であろうかと考えておるところでございます。

 岸田内閣が掲げます成長と分配の好循環、さらには新しい資本主義、これは、私も総理の言葉等々をチェックしながら、非常に期待を持っている者の一人でございますけれども、トリクルダウンじゃなくて、分配に重きを置いて、そして成長につなげていく、そういうメッセージがちりばめています。私も、これからの政府の方針をどんどんどんどん注目していきたいと思っているんですけれども、この成長と分配、両面をしっかりと後押しをしていくということが非常に重要だと思っております。

 そんな中、本日の議題となっておりますけれども、令和四年度の税制改正法案にもこの成長と分配を促進するためのエッセンスがちりばめているわけでございます。特に、その中、本日は、賃上げ促進税制について御質問させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 これまでも、政府は、平成二十五年創設されたと私は記憶しておりますけれども、民間部門、民間企業における賃上げを促すべく、税制による後押し、これは今までもしてきておるわけでございます。

 これまでの取組の概要と、減税した規模であったりとか適用した企業の件数等々、これまでの実績を教えていただきたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 企業の賃上げに係る税制措置につきましては、平成二十五年度の税制改正におきまして、個人の所得の拡大を図り、消費需要の回復を通じた経済成長を達成するため、企業が給与等支給額を増加させた場合に、その増加額の一定割合の税額控除を可能とする、いわゆる所得拡大促進税制を新たに創設いたしたところでございます。

 その後の賃上げ税制の主な改正内容について御説明いたしますと、平成三十年度の税制改正におきまして、デフレ脱却と経済再生に向け、持続的な賃上げや設備投資を強力に後押しする観点から、大企業向けの税制の方の適用要件につきまして、十分な賃上げや設備投資を行った企業に見直すなどの改正を行ったところでございます。

 さらに、令和三年度の税制改正におきましては、ポストコロナに向けて、新たな人材確保、人材育成を促しつつ、第二の就職氷河期を生み出さないようにするといった観点から、大企業向け税制の適用要件について、新規雇用者に対する給与を一定割合増加させた企業に見直すなどの改正を行ってまいりました。

 御指摘の賃上げ税制の適用件数や減税規模につきましては、平成二十五年度から令和二年度までの八年間におきまして、延べ約七十六万件の企業が税制措置の適用を受けておりまして、その減税規模の累計は約二兆円となっております。

田野瀬委員 ありがとうございました。

 平成二十五年から計七回の改正を加えて、賃上げをするための促進をこれまでも政府は行ってきたという御答弁でございました。令和二年度までで七十六万件という数字をおっしゃっていただきましたけれども、これをもっと増やしていくべきだと考えます。

 私の持っているデータでいきますと、平成二十五年は一・一万件、二十六年度は七・八万件、ずっと増えていくんですけれども、平成三十年度の十三・一万件を境に、件数が単年度当たりでは減っていっています。是非それを、PRも含めて、賃上げ、この税制を適用する企業をしっかりと増やしていくということを、不断の努力で推し進めていっていただけたら大変ありがたいなと思っているところでございます。

 また、いろいろな有識者や専門家は、平成二十五年度から令和三年度までの行ってきておる賃上げ税制の効果は限定的であったと言うような方も中にはおっていただきますし、賛同する声もあるんです。この賃上げ税制の適用を受けた企業は、受けていない企業に比べて労働生産性が有意的に上昇しているという数字を挙げておられる専門家もおってもらえるんですけれども、しっかりと過去の検証、実績を、数字をしっかりと検証しつつ、今後の政策に当てていっていただけたらと、大変、お願いですけれども、よろしくお願いしたいと思っております。

 さて、その過去の経緯があって、今年の、令和四年度の税制改正になるわけでございます。今般の賃上げに係る税制措置の抜本的な強化を図っているということでございますけれども、その狙いを教えていただけたらと思います。

岡本副大臣 お答えいたします。

 今般の税制改正におきましては、成長と分配の好循環の実現に向けまして、積極的な賃上げを促すとともに、株主だけではなくて従業員、取引先など多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化することとしています。

 具体的には、企業の税額控除率を、大企業で最大三〇%、中小企業で最大四〇%に大幅に引き上げております。加えまして、一定規模以上の大企業につきましては、持続的な賃上げなど、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することをこの税制措置の適用要件としております。

 政府といたしましては、この税制措置と併せまして、下請対策の強化、また、公共調達における賃上げを積極的に行う企業に対する加点措置など様々な取組を講ずることを通じまして、企業の賃上げに向けた環境整備を推進していきたいと考えております。

田野瀬委員 ありがとうございます。

 しっかりと実効性を高めて、先ほど申しましたように、件数を是非一件でも多く適用していただけるように、PRも含めて、推し進めていっていただきたいと願っております。

 三問目の質問に入ります。

 この賃上げの促進につきましては、税制で優遇するという政策のみならず、ターゲットに応じた政策手段を用いていく、これが大事であると考えておるところでございます。

 例えば、この税制優遇制度は、よく言われるんですけれども、赤字企業には効果がないんだと言われております。そういうところには補助、いろいろな政策的補助を充てていく必要があると思っております。

 また、ターゲットを決めてですけれども、今までもやっていましたけれども、春闘、官製春闘だとか言われておりましたけれども、そういうところに賃上げをお願いに行ったりだとか、若しくは、これは厚労省になりますけれども、最賃、最低賃金を上げる努力。これは、だから、財務省、税制だけじゃなくて、経産省も厚労省も、政府一体となって、賃上げの政策をパッケージで推し進めていっていただく必要があろうかと思っております。

 今日は経産省にもお出ましいただいておるんですけれども、政府として、賃上げの促進に向けて、税制のほかにどのような政策を現在検討しているのか、この辺りにつきましてお答えをいただけたらと思います。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業の賃上げ促進でございますけれども、これは税制による支援ももちろん大事でございますけれども、御指摘のとおり、中小企業、労働分配率が高くなってございますので、生産性を高めるということが非常に大事だと思っております。

 そうした観点から、まず、補助金でございますけれども、幾つかございまして、昨年末の補正予算で事業再構築補助金、あるいはものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金など、生産性向上を支援する事業を行っております。それから、赤字に苦しんでおられる中小企業の皆様向けということでは、このものづくり補助金と小規模事業者持続化補助金で赤字事業者向けに補助率を引き上げる、こういったようなことも行いまして、きめの細かい支援を実施してまいりたいと思ってございます。

 それからもう一つ、補助金以外ですが、下請取引の適正化も大事だというふうに思っております。

 生み出した付加価値が適切に中小企業に残るように、大企業と中小企業の共存共栄を促すパートナーシップ構築宣言というものを進めてございます。また、昨年の九月に価格交渉促進月間というのを設けまして、労働賃金も含めました価格交渉を促していくということもやってございます。

 それから、そういった取組について、下請Gメン、今全国百二十名でございますけれども、これを体制を強化して、全国各地の下請企業の現場の悩みを丁寧に伺いながら、発注者側と受注者側の歩み寄りなどに取り組んでまいります。

 PRにつきましても進めておりまして、例えば、取引適正化に関しましては、今年度は全国紙で四回、全面紙面広告を行っております。そのほかにも、ホームページ、SNSなどを通じて広報もしてまいりたいと思っております。

田野瀬委員 ありがとうございます。

 いろんな取組をやっているんだということを是非多くの場でPRしていっていただいて、この補助金もどんどんどんどん取りに来てくださいというようなことを、これも先ほども申しましたが、もう政府一体となって取り組んでいっていただくことが大事だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 最後の質問になりますが、我が国の賃金の増加ペース、今までのいろんな様々な答弁もございましたけれども、いろんな取組をしておるんですけれども、胸を張って、うまく賃金は上がっているんですというふうに言える状態には今のところまだなっていない、私はそのように感じておるわけでございますけれども、ただし、日本企業全体を見ますと、このコロナ禍の影響で、業界別にはいろいろばらつきはありますけれども、経常利益であったりとか現預金保有高であったりとか、若しくはまた内部留保、これは引き続き高水準であるんだということは、あらゆるいろんなところの数字がそう物語っておるところでございます。

 是非、その内部留保等々を持っている、特に大企業ですね、前向きな投資、賃上げに積極的に取り組んでいただかなければならないと私は考えておるところでございまして、先ほど副大臣からも御答弁いただきました、今般の賃上げに係る税制措置の見直しにおきましては、特に、大企業につきましては適用要件を付加する、すなわち、株主だけじゃなくて従業員や取引先等々の多様なステークホルダーに配慮した取組を宣言するということを付加して求めておるわけでございまして、これは政府が進める新しい資本主義の実現にも大きく資すると考えておるわけでございますけれども、そのマルチステークホルダーに対する意義であったりとか政府が期待する効果を最後にお答えいただきたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 マルチステークホルダー方針に関する要件でございますが、資本金が十億円以上で従業員数が千人以上の企業を対象に、賃上げや人材投資を行うこと、取引先と適切な関係を構築することなどの方針の公表を求めることとしております。

 こうした方針の公表を税制の適用要件とすることは本税制が初めての試みでございまして、本要件を通じまして、大企業の賃上げを促すことはもちろん、株主のみならず従業員や取引先を含めたマルチステークホルダーに配慮した経営の実現を通じた企業の価値向上が促されることを強く期待しているところでございます。

田野瀬委員 時間ですので終わります。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、鈴木隼人君。

鈴木(隼)委員 自民党の鈴木隼人でございます。

 本日は、質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速質疑に入らせていただきます。

 近年、格差が拡大をし続けております。このままでは我が国社会が分断をしかねないというような状況でございます。このため、格差対策、これから最も重要な政策の一つに位置づけられると考えております。本日は、格差対策の切り口から所得税法改正案について質疑をさせていただきます。

 今回の所得税法改正案には、先ほど田野瀬議員からの質疑にもありましたけれども、賃上げ促進税制が含まれております。

 私は以前、仮に最低賃金で働き続けた人がいたとして、その人の生涯の暮らしぶりがどうなるのか、表計算ソフトでシミュレーションをしてみたことがあります。結果は、フルタイムで働き続けても、なおかつ年金が満額支給されたとしても、老後の生活は破綻をするという大変残念な結論でありました。であれば、社会の安定のためにも、賃上げはマストであります。

 そこで、政府に、今回の賃上げ促進税制について簡潔な説明をお願いしたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正におきましては、積極的な賃上げを促すとともに、多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化いたしております。

 具体的には、大企業向け税制につきまして、税額控除率を最大三〇%に引き上げるとともに、一定規模以上の大企業については、持続的な賃上げなど、様々なステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを適用要件とするなどの見直しを行っております。また、中小企業向けの制度につきましては、税額控除率を最大四〇%に引き上げるなどの見直しを行ってございます。

 企業においては、こうした税制措置も活用し、持続的な賃上げに取り組んでいただきたいと考えております。

鈴木(隼)委員 今の政府の御説明の中にありませんでしたけれども、実は、中小企業については継続雇用者の賃上げが要件になっていません。これは、私は大変残念なことだというふうに思っております。政府の努力は高く評価しつつも、真の意味で中小企業の賃上げを促進する税制となるように、今後の工夫を期待したいと思います。

 格差是正の文脈では、金融所得課税の強化は大きな意味を持つと考えております。昨年九月の自民党総裁選の際には議論が盛り上がりましたけれども、その後、このトーンが落ちたように感じております。

 そこで、政府にお尋ねをいたします。現在、政府内で金融所得課税の強化に向けた検討は行われているのでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 政府内におきましても、かねてより、政府税制調査会などの場で金融所得課税の議論が行われてきております。

 政府税調の令和元年に発表されました中期答申におきましては、「勤労所得との間での負担の公平感や所得再分配に配慮する観点から、諸外国の税制も参考にしつつ、総合的に検討していくべきである。」といった指摘が盛り込まれているところでございます。

 今後の金融所得に対する課税の在り方につきましては、令和四年度の与党税制改正大綱においても方向性をお示しいただいておりますので、今後、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくものと考えており、私どもといたしましても、その議論に基づきまして適切に対応してまいりたいと考えております。

鈴木(隼)委員 大変慎重な答弁ぶりをいただきましたので、政権としても様子を見ているのかなというふうにお察しをするところであります。批判を気にすることなく、骨太の政策を是非打ち出していただきたいというふうに考えております。

 冒頭、格差対策が重要であると述べさせていただきました。極めて重要な政策でありまして、重点的に手当てをしていかなければなりません。

 ただ、問題があります。それは、ただでさえ国債依存度の高い我が国の財政が、コロナ対策で大規模な歳出を重ね、極めて厳しい状況にあるということであります。つまり、格差対策のような、社会的公正を実現するために必要な予算の確保すら容易ではないという実情がございます。

 その背景の一つに、不健全な税制があります。

 お配りをしております資料の一枚目、こちらを御覧をいただきたいと思います。これは、主要国の法人税率の推移をお示ししたものであります。時系列で見ますと、どの国も法人税率が下がり続けているのが分かります。自国の企業が法人税率の低い国に逃げていってしまうと困るということで、各国が法人税の減税合戦を繰り広げているということがよく分かります。

 次に、二枚目、今度はこちらの資料を御覧いただきたいと思いますけれども、こちらを御覧いただきましても、所得税も同様に、各国の減税合戦が繰り広げられているという様相が見て取れるかと思います。

 本来、どの国もこのような不毛な状況は望んでおりません。社会的公正の実現に必要な税財源の確保は、我が国にとって極めて重要な国家的な課題でありまして、世界共通の関心事項でもあります。

 この点について、最近、大きな動きが見られました。昨年の十月、約百四十か国が参加をする国際会議におきまして、グローバルミニマム課税、すなわち、法人税の減税合戦に終止符を打つ制度の導入が合意をされたところであります。

 そこで、政府にお尋ねをいたします。

 グローバルミニマム課税の制度の概要と施行に向けた今後のスケジュールについて、御説明をお願いいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 一九八〇年代以降、法人税の引下げ競争ともいうべき状況が続いてきたということは、国際社会にとっても非常に重要な課題であるということで、OECD、G20の場におきまして、御指摘のグローバルミニマム課税についての検討が積み重ねられてまいりました。

 昨年の十月におおむね合意に達しておるわけでございますが、このグローバルミニマム課税につきましては、年間の総収入金額が七・五億ユーロ、円に換算いたしますと約一千億円以上の多国籍企業を対象といたしまして、軽課税国、課税の軽い国に所在する子会社等の実質的な税負担率が一五%の最低税率に至るまで、親会社の所在する国や地域において課税するといったルールでございます。

 この合意の実施に向けまして、現在、詳細なルールの策定に向けた国際的な議論が続いておりまして、我が国としても積極的に貢献すべく努力をしているところでございます。この議論の進展を踏まえつつ、我が国におきましても、令和五年度以降の税制改正におきまして、国内法の整備を行う方向で検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

鈴木(隼)委員 グローバルミニマム課税の制度の創設自体は画期的なものでありまして、極めて高く評価すべきだと考えておりますが、現在の各国の法人税率を考えると、一五%という設定は低過ぎると言わざるを得ませんし、また、日本円で一千億円以上の売上げがある企業しか対象になっていないというのも、いささか網の目が粗過ぎるのではないかというふうに考えております。こういった部分については、今後、更なる深掘りを期待したいと思います。

 今回のグローバルミニマム課税、これは法人税に関する合意でありまして、この中に所得税は含まれておりません。多国籍企業が軽課税国に移転する動きを封じるところから議論が始まったという経緯がありますので、今回の合意が法人税だけになっているのはやむを得ないことかなというふうには思います。しかし、一部の高所得者が所得税率の低い国に移住をしているという実態、これは皆様も御案内のとおりであります。このままでは、所得税の世界では減税合戦が止まらないということになってしまいます。

 社会的公正を実現するための税財源の確保のためにも、所得税についても、法人税におけるグローバルミニマム課税、類似の制度を創設すべきであると私は考えます。

 そこで、政府にお尋ねをいたします。

 国際会議の場において、これまで、所得税に関して各国共通の最低税率を検討すべき、こういった議論が提起されたことはありませんでしょうか。

住澤政府参考人 お答えいたします。

 法人税につきましては、先ほど来御指摘いただきましたグローバルミニマム課税に係る国際合意がなされ、法人税の引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争条件の確保を図る観点から、最低限の実効税率一五%の課税を確保するといった方向で合意がなされ、その実現に向けて現在調整が行われているわけでございます。

 他方、所得税に関しましては、御指摘のように、各国共通の最低税率を設定するといったような方向での国際的な議論は現時点では行われていないというのが実情でございます。

 所得税がグローバルな人材の移動に及ぼす影響というのは当然考えられるわけでございますけれども、所得税がグローバルな人材移動に及ぼす影響につきましては、最低限の税率の水準、最低税率の水準だけではなく、累進性を持っている税率構造全体の在り方がどうなのかということでありますとか、あるいは諸控除の在り方など、制度全体の姿の影響を受けるというふうに考えられるわけでございまして、法人税の場合と比べますと、各国それぞれ、所得税に影響している社会や経済の在り方というのは様々でございますので、より議論が複雑になろうかというふうには考えております。

 こうした観点も踏まえて、今後検討する必要があるものと考えております。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 技術的になかなか困難も伴う、こういった説明がございましたけれども、そういった壁を乗り越えて議論が進むように、私自身も機運の醸成に努めていきたいというふうに考えております。

 若干時間がございますので、ちょっと話を戻します。

 賃上げ促進税制についてなんですが、先ほども、中小企業について継続雇用者の賃上げが要件になっていないという指摘をさせていただきました。

 これは本当に残念なことでありまして、まさに、貧困を食い止めるという観点からいくと、大企業の賃上げもいいですけれども、どちらかといえば、中小零細企業の賃上げの方がよっぽど重要なわけなんですよ。そこの中小零細企業の賃上げを促進するような税制に今回なっていないというのは、何でこんなことになっちゃったんだろうなというふうに思います。こんな状況で本当に政治はいいのかというふうに疑問を持たざるを得ません。そこを一つ、最後に指摘をしておきたいと思います。

 最後にまとめさせていただきます。

 格差の拡大、これからの政治の大きなテーマであります。格差の是正に向けて、政府にも力を尽くしていただくことを期待し、我々も全力で取り組むことをお約束しまして、本日の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 本日は、貴重な質問の時間を与えていただきまして、感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思いますけれども、まず確定申告についてお伺いをしたいと思います。

 今月十六日から始まる確定申告について、感染力が今極めて強いオミクロン株が年明けから全国で猛威を振るっております。現在、多くの都道府県において蔓延防止重点措置が適用され、一日当たりの感染者数も増加の一途をたどっており、なかなかこれが減少する傾向が見られないという状況が続いております。濃厚接触者の増加とも相まって、社会活動にも大きな影響が出ている。

 そうした中にあって、令和三年分の確定申告の時期を迎えようとしているわけでありますけれども、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、昨年、一昨年については、一律に期限の延長が行われました。今年の確定申告については、感染者や自宅待機者のほか、通常の業務体制が維持できないなど、新型コロナウイルス感染症の影響により申告等が困難な方については、令和四年四月十五日までの間、簡易な方法によって申告、納付期限の延長を申請することができるという取扱いとされました。

 過去二年間の一律延長に対して、今回一律の延長としなかった理由について、まず御説明をいただきたいと思います。

重藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今委員からも御説明がございましたが、国税庁では、令和三年分確定申告に向けまして、従来以上にe―Taxを推進することや入場整理券等によって来場者の分散を図るなど、納税者が安心して申告相談できるよう感染症対策を徹底しております。

 また一方で、オミクロン株による急速な感染の拡大に伴いまして、確定申告期間にかけて、感染者や自宅待機者のほか、通常の業務体制が維持できないこと等により、申告が困難となる納税者が増加することが想定されるところでございます。

 そのため、三年分の確定申告期間につきましては、申告期間が、申告所得税であれば二月十六日から三月十五日までの間となってございますが、ただいま申し上げましたような状況を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の影響によって申告等が困難な方は、四月十五日までの間、簡易な方法によって申告、納付期限の延長ができることとし、その旨を二月三日に公表したところでございます。

 過去二年間は一律延長であった、それに対して今回このようにしたその理由は何かということでございますが、これにつきましては、過去二回の経験を踏まえますと、一律に期限を延長いたしますと、申告相談を早めに済ませることが可能な方も含め申告が全体として後ろ倒しになるということが予想されるところでございます。そのため、今回は延長の対象を新型コロナの影響を受けた方とすることで、そのような方々により丁寧に対応したい、そのように考え、今回のような方針としたところでございます。

角田委員 今回の措置につきましても事前に申請は不要ということで、これは申告書を提出するときに新型コロナウイルスによる申告、納付期限延長申請と記載をすることで、また、e―Taxでの場合には、送信準備の画面で特記事項欄に新型コロナウイルスによる申告、納付期限延長申請、こういうふうに入力すれば延長が認められるということで、極めて簡素な手続で延長を行うことができるということは、納税事務に携わる方にとっても助かる取扱いだろうというふうに思います。ただ、これまで過去二回とは違いまして、新しい対応ということですので、この点に関して、納税者に対する周知徹底に努めていただきたいということをまず要望させていただきたいと思います。

 続きまして、賃上げ税制について幾つか質問させていただきます。

 先進国と比較して依然として低い水準にとどまっている実質賃金の伸びを背景として、成長と分配の好循環の実現に向けて積極的な賃上げを促す、このような観点から、賃上げ促進税制を拡充して、令和四年度は、雇用者全体の給与総額を対前年度で増加した場合、大企業については最大で三〇%、中小企業については最大四〇%、税額控除することとしております。賃上げに係るものとしては、過去最高水準の思い切った税額控除であり、企業の賃上げを力強く後押しすることが期待をされております。

 改正案では、特に大企業の収益が、株主だけではなく、下請中小企業などにもしっかり還元されるよう、資本金十億円以上かつ従業員一千人以上の大企業については、マルチステークホルダーに配慮した経営の取組を宣言、公表していることが要件に加えられております。

 この要件とされているマルチステークホルダー経営宣言には、従業員に対する持続的な賃上げや教育訓練などの人的投資、下請先を含む取引先に対する取引適正化などについてどのような配慮を行うかを宣言するということが予定をされていますが、これらの項目についての記載の内容について具体的にどのような内容を求めるのか。例えば、下請先を含む取引先に対する取引の適正化への配慮については、どのように記載すれば要件を満たしたことになるのか伺いたいと思います。

 あわせて、大企業の収益が、株主だけでなく、取引先を含む多様なステークホルダーに還元、循環させるためには、大企業が宣言どおりに行動しているのか、宣言の内容が着実に実行されているのかが問われることになりますが、宣言の実効性を確保するために向けた具体的な方策については、どのように考えているのか伺います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 マルチステークホルダー方針に関する要件に関する御質問でございますが、株主のみならず従業員や取引先を含めたマルチステークホルダーに配慮した経営の実現を通じた企業価値向上を促す観点から、これは極めて重要な位置づけというふうに認識してございます。

 具体的には、資本金十億円以上、従業員数が一千人以上の大企業を対象に、賃上げや人材投資を行うこと、取引先と適切な関係を構築することなどの方針の公表を求めることとしてございます。

 こうした方針の公表を税制の適用要件とするのは本税制が初めてということでございまして、現在、この具体的な内容につきましては、どこまで、どういった内容を、どのような形で公表していくのか、しっかり詰めている最中でございます。

 なお、その実効性はまさに御指摘のとおりでございまして、従業員、取引先のみならず、方針の内容を広く公表させることによって、企業はそれに反する行動を取ってはならないという社会的責任も生ずると考えておりまして、こうした制度設計をどのように具体化するかにつきまして、引き続き真剣に検討してまいりたいと考えております。

角田委員 詳細については検討中ということですので、大企業の収益が下請等にしっかりと還元されるようにという趣旨が生かされるよう、具体的な検討、実効性確保のための対策を講じていただくよう要望させていただきたいと思います。

 また、今回の改正では、中小企業向けの税額控除率の上乗せ要件として、教育訓練費の増加割合を一〇%以上とした場合に控除率一〇%が上乗せをされるということとされており、現行において、雇用者全体の給与総額の増加を一定の割合以上に引き上げることと教育訓練費の増額の要件を共に満たした場合に控除率一〇%上乗せと従来していたものから、より一層人的投資を促す方向への見直しになっているかと思います。

 厚生労働省の労働経済の分析によりますと、二〇一〇年から二〇一四年の企業の能力開発費の対GDP比は、アメリカの二%を始めフランス、ドイツ、イギリスなど、いずれも一%を超えているのに対して、日本は〇・一%と極めて低い水準にとどまっており、しかも、二〇〇〇年以降下がり続けている状況です。特に、規模の小さい企業ほど能力開発に消極的な姿勢が見て取れます。その一方で、ある業務を遂行するに当たって、労働者の能力不足に直面していると答える企業の割合は、国際比較でも日本は突出して高いという結果が出ております。

 コロナ禍を経験して、これから大きく変化することが見込まれる事業を取り巻く環境の変化に柔軟に対応していくためには、経営者だけでなく、従業員を含めた全体での取組というものが不可欠であり、そのためにも、人材の育成のための教育訓練の重要性というものはますます高まってくると思われます。

 今回の見直しの目的、また期待される効果についてはどのように考えているのか、お伺いをしたいと思います。

岡本副大臣 まず、先ほど御質問いただきましたコロナ禍での確定申告、これは、事前に、角田委員を始めとして公明党の財政・金融部会の皆さん、現場の確定申告をされる方々の声をいただきまして、コロナの影響がある方に関しては期限を延長させていただくという決定にも、十分それを加味させていただきました。ありがとうございました。

 今し方の御質問ですけれども、今般の税制改正におきまして、成長と分配の好循環の実現に向けて、積極的な賃上げを促すとともに、株主だけではなくて従業員、取引先などの多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化することとしています。

 また、この従来の賃上げ税制でも、教育訓練費を一定割合増加させた企業については税額控除率を上乗せする措置を設けておりましたが、今回の改正におきまして、それを強化をしております。

 例えば中小企業税制におきましては、これまでは、更なる賃上げを行った上で、加えて教育訓練費を増加させなければ税額控除率を上乗せすることはできませんでしたけれども、今般の改正では、教育訓練費の増加要件だけを満たすことができれば税額控除率を上乗せすることができるように要件の見直しを行っておりまして、企業が教育訓練費をこれまでよりも増加させるインセンティブをつけるように工夫をしているところであります。

 こうした税制措置によりまして、企業の積極的な賃上げや人的資本への投資が促されるとともに、成長と分配の好循環が早期に起動するように努めてまいります。

角田委員 ありがとうございました。

 言うまでもなく、税制によって賃上げのインセンティブが働くのは、税金を納めている企業にとどまります。黒字企業に対しては賃上げを促す効果が期待をできますが、中小企業の約六割を占める赤字企業はこの制度を利用することができません。企業の九九%以上を占め、労働者の八五%が働く中小企業を含め、幅広く賃上げを推し進めていくためには、税制とともに様々な政策で賃金を押し上げていく取組が求められます。

 この点について、令和四年度は、賃上げ促進のための税制の拡充のほかに、小規模事業者の販路開拓等を支援する持続化補助金や、ものづくり・商業・サービス補助金などの補助金に特別枠を設けて、赤字等業況が厳しい中でも賃上げに取り組む中小企業を優先的に採択したり、補助率や上限額の引上げといった支援策を講じることとされております。

 これまでそういうものだというふうに考えられてきたところに従いますと、まず初めに物価が上がる、それに釣られて賃金が上がるということでしたけれども、しかしながら、現状、日本の状況は、長い間物価が上がらない、上がらないというか、上げることができない状況が長らく続いています。この状況が長く続くほど、社会の活力が徐々にそがれていくことにつながり、決して好ましいことではないと考えております。

 この状況を転換するためには、今、あらゆる対策を講じていく必要があり、賃上げ促進策もその一つと考えております。実効性のある各種対策の推進を各省総力を挙げて取り組んでいただきたいと、この場で改めて要望をさせていただきたいと思います。

 あと、賃上げということに関して、公的部門で働く方の収入の引上げについて伺いたいと思います。

 昨年十一月に取りまとめられた経済対策において、看護、介護、保育、幼児教育など、新型コロナウイルス感染症への対応と少子高齢化への対応が重なる最前線において働く方々の収入の引上げを含め、全ての職員を対象に、公的価格の在り方を抜本的に見直すことがうたわれ、まず、保育士と幼稚園教諭を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を三%、月額にして九千円引き上げるための措置を二月から実施するための予算が令和三年度補正予算で措置をされたところであります。

 月額九千円上がるということで、現場の方々にも歓迎されておりますが、一方で、過去の同様の対策について、賃金改善に充てなかった施設があるという報告もあります。貴重な予算が目的どおりに使われるよう、しっかり点検していただきたいと思いますけれども、この点について見解を伺います。

 あわせて、もう一点、保育士の場合を例に確認をさせていただきたいのですが、補助額については公定価格上の職員配置基準を基に算定することとされており、例えば、保育の質を向上するために手厚く保育士を配置している保育所などの場合、九千円を下回る結果となってしまうのではないかとも思われます。質の向上に資する取組にはやはり一定の加算も考えられるべきではないかと考えますが、この点についても含めまして、併せて見解をお伺いしたいと思います。

宮路大臣政務官 お答えいたします。

 今回の処遇改善につきましても、保育士等への賃金改善に確実に充てられることが重要と考えておりまして、施設に対して給与改善の計画や実績報告の提出を求めるなど、補助額を全額給与引上げに充てたことを地方自治体において確認していただく仕組みとしております。

 また、併せてお尋ねの、今回の処遇改善の補助額の算定につきましては、各施設の事情や職員配置状況は様々であり、また、地方自治体ごとに単独補助事業の実施状況も異なる中で、全国一律に統一的なルールに基づいて算定する必要があるというふうに考えております。

 このため、今回の処遇改善におきましても、これまでの処遇改善等加算と同様、公定価格上の配置基準に基づいて算定するということを考えておりまして、この点、御趣旨は分かるんですが、御理解をいただければというふうに考えております。

角田委員 現場の方からすると、なかなかちょっと理解しづらいところもございますので、この点は、是非、質の向上というところも加味した在り方というものを今後検討していただきたいというふうに要望をさせていただきたいと思います。

 続きまして、オープンイノベーション促進税制について質問をさせていただきます。

 企業が自己開発にこだわることなく、新しい技術やノウハウ等を持つベンチャー企業との連携協力で経済に活力を与えるような革新的な事業創出などを推し進めるため、既存企業等がオープンイノベーションに取り組もうとするスタートアップ企業に出資した場合に、出資額の一定割合について所得控除を認めるというオープンイノベーション促進税制について、通常であれば、株式出資を行った場合はその株式の売買を行うまで損益が出ないわけですけれども、出資時点で二五%の損金計上が認められる、企業に対する出資への減税措置という極めて異例の措置として令和二年度に創設をされたものですが、その後、事業会社等によるベンチャー投資額が増加するなど、一定程度の投資促進効果があったのではないかとも思われます。

 ここまで実施してきた促進税制の効果についてはどのように評価をされているのか、お伺いをしたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 オープンイノベーション税制につきましては、御指摘のような極めて異例の措置を講じておりまして、オープンイノベーションや事業の革新に向けて事業会社が行うベンチャー企業への出資を後押しするものとなっているわけでございます。

 企業の投資行動につきましては、税制のみならず、企業収益の状況やその事業内容にも影響を受けるものであり、税制の効果だけを取り出して影響を測ることは困難でございますが、令和三年十月一日時点におきまして、経済産業大臣からこの制度の基準に適合することの証明を受けた実績ベースでの数字を申し上げますと、投資案件数で百十八件、出資金額の合計で約三百四十九億円となっております。

角田委員 オープンイノベーションの促進に一定程度の効果は上げられているということだろうと思いますけれども、ただ、諸外国との比較では、アメリカに比べても約二十分の一程度の投資額にとどまっており、制度創設当初に掲げた、企業価値が一千億円を超えるようなユニコーン級のベンチャー育成という点においても、まだまだその目的には遠い状況にあるようであります。

 今回の改正では、適用期限を二年延長するとともに、事業会社等がベンチャー企業に出資した株式を売却した際に所得控除が認められる金額が益金算入される株式取得後の保有期間、現行の五年から三年にこれを短縮することとしており、これはベンチャー企業にとっては資金をより調達しやすくなるということが、効果が見込まれますが、一方で、株式を保有していなければ制度を利用できない期間が短縮されるということで、事業会社の方が短期的な収益獲得の視点で投資に走り、長い目で見る必要のあるイノベーション促進という本来の目的から外れてしまうというおそれもあるのではないかと考えますが、今回の改正の背景についてお伺いをしたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のオープンイノベーション促進税制の改正の背景でございますけれども、本税制、先ほど来御指摘がありました、これを執行していく中で、スタートアップとスピード感を持って協業する流れが加速している中で、事業会社とスタートアップの協業実務を踏まえますと、五年間の協業期間を前提とする必要は必ずしもないのではないかといった声をいただいているところでございます。

 こうした産業界などの声も踏まえまして、オープンイノベーションを一層促進する観点から、株主保有期間の要件を五年から三年に短縮するということを予定しているところでございます。

 なお、委員御指摘の点でございますけれども、この税制を適用するに当たりまして、事業会社は、投資の目的はスタートアップとのオープンイノベーションであると証明するということが必要でございますし、税制の適用後も、経済産業省が毎年度継続的に事業会社とスタートアップの協業の状況を確認するという仕組みとしてございます。

 したがいまして、本税制の株主保有期間の要件を短縮することによって、事業会社によるスタートアップとの協業を伴わない投資を助長するということには必ずしもならないかと考えております。

角田委員 ありがとうございます。

 言うまでもなく、イノベーションの創出には、税制のみでなく、環境を整備するための各種の取組を併せて推進していくことが不可欠であろうかと思います。

 オープンイノベーションを進めていく上での課題としては、法制度面での課題であるとか、資金調達など資金面での課題のほかにも、人材を含めた推進のための組織的な課題など、様々考えられると思いますが、特に適切な外部連携先を探索する、見つけるためのネットワーク構築など、情報面での課題を克服する、そのための支援も積極的に行っていく必要があると考えます。

 今後のオープンイノベーション推進への支援については、どのように取り組んでいくお考えなのか、お伺いをしたいと思います。

蓮井政府参考人 委員御指摘のとおり、我が国の成長のためには、新たなビジネスや産業を生み出す、これは全く不可欠でございまして、そのためにイノベーション創出の環境を整備する、そのためにはオープンイノベーションは極めて重要な施策だと思っております。

 経済産業省といたしましては、あらゆる施策を総動員したいと思っておりまして、イノベーションの担い手であるスタートアップが成長するためのエコシステム、これをいかに評価していくか、それから、大企業などが自前主義に陥ることなく、社外の経営資源を活用したオープンイノベーションの促進、さらに事業再編といった日本企業の変革を促していきたいと考えてございます。

 こういったことを踏まえまして、昨年十一月に産業構造審議会で新しい部会を立ち上げまして、世界で勝負できるスタートアップの創出、日本企業の経営改革などについて議論を開始してございます。この場での検討も踏まえまして、早期にイノベーションの推進に向けた具体的な政策に取り組んでまいりたいと考えております。

角田委員 しっかりと、どういったことが求められているのか、これから検討されるところも多いかと思いますけれども、有効な対策が打てるよう、取組を要望させていただきたいと思います。

 あともう一点、税理士制度の見直しについてお伺いをしたいと思います。

 今回、税理士制度の見直しとして、税理士業務の電子化の推進や、多様な人材確保また受験者数の減少に対処するための税理士試験の受験資格の見直しといった内容が盛り込まれておりますが、与党税制大綱において掲げられていたものの改正案には今回盛り込まれなかった、無登録で税理士業務を行っている、税理士を名のっている、いわゆる偽税理士を税理士調査の対象に加えるということについては見送られました。偽税理士の調査については、これまでの行政指導による証拠収集しかできないというのが実情でした。税理士業務の適正を確保する観点から、今後どのように検討を進めていくのか、お伺いをしたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 税理士法に基づく税理士業務の制限又は名称の使用制限に違反したと思料される者、いわゆる偽税理士に対する調査の規定の整備につきましては、与党の税制改正大綱で御決定いただきましたが、今回の法案には盛り込まれなかったというのは御指摘のとおりでございます。

 この点につきましては、次回の税制改正に向けまして、引き続き、税制改正大綱に沿いまして、主に法制的な観点から精査すべき点がございますので、規定の精査を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

角田委員 あともう一点、税理士法人の業務範囲の拡大について、現行、税理士業務と定款で定める財務に関する業務、財務書類の作成などに限定されているものを、租税教育、普及の業務や成年後見業務を加えるということとしておりますが、具体的な業務の範囲は税理士法施行規則で定めることとされております。

 業務範囲を広げる理由と、具体的にどのような業務を追加するお考えなのか、確認をさせていただきたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 税理士法人は、税理士業務を組織的に行うことを目的として設立される法人でございますため、税理士個人とは異なりまして、その可能な業務の範囲が法令で限定列挙されております。現行では、御指摘のように、税理士業務及び定款で定める財務に関する業務、具体的には財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行などでございますが、こういったものが定められているところでございます。

 このため、税理士法人の社員である税理士や所属している税理士が、例えばその知見を生かして租税教育やその普及に関する業務に取り組む場合、法人の業務として行うことができないという状況にございまして、休暇を取得して参加をしておられるといった事例もあると聞いております。

 こうしたことを踏まえまして、今般、税理士個人が行うことができる業務の一部について、税理士法人としても取り組むことができるよう、その業務範囲を拡充することとしたものでございます。

 具体的に追加する業務につきましては、今後、施行規則で定めることとしておりますが、御指摘いただいたような、その専門的知見を生かした租税教育、普及に関する業務や成年後見業務を追加することを想定いたしております。

角田委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 立憲民主党の野田佳彦でございます。

 税制改正について鈴木大臣中心にお話をお伺いをしたいというふうに思いますが、税制改正の話の前に、もう既に今日も、今の公明党の角田さんの御質問にもございましたが、私も、まず、確定申告をなぜ今回期限延長しないのかについてお尋ねをしたいと思います。これは、先週の金曜日も、維新の藤巻さんや共産党の田村さんも触れておられました。

 私は、多くの国民がオミクロンに対して強い警戒心を持って対応しているときに、何で去年やったこと、おととしやったことを今年はやらないのか、明快な説明がないと思っているんですね。

 今日、私は、千葉県の中でも有数のターミナル駅である西船橋の駅頭で、朝六時から九時まで三時間、街頭に立ってきました。委員長は土地カンがあると思いますけれども。やはり、まだリモートワークとか時間差通勤が多いんだと思います。通常よりもやはり少ないんですよね。それだけやはり皆さんまだ警戒をしていますし、蔓延防止の重点措置も多分これは延長されるでしょう。という状況の中で、なぜ去年やったこと、おととしやったことをやらないのかという明快な理由が分からないんです。

 御説明は、簡易な方法で延長すると。申告が困難な人、御自身が感染したり、顧問税理士が感染したり、申告が困難な人はいますよね。そういう人たちのためには簡易な延長はするという説明はある。

 でも、去年やったこと、おととしやったことは、通常だったら何百万人も確定申告の会場に来るのを、期間を延ばすことによって密を避けようという措置じゃないですか。簡易なやり方と違って、密を避けるための予防なんですね。

 それをなぜやらないかという説明は、さっきの説明の中では若干あって、期限を延ばしても後ろの方で申告する人が出てくるからだということだったんですね。それ以外、不都合はあるんですか。

 私は、去年もおととしも、確定申告に行って感染したという人はいなかったと思います。確定申告の会場がクラスターを発生した、なかったと思います。効果があったんじゃないんですか。

 私は、せんだって、地元の税理士会の皆さんがいわゆるボランティアでやっている無料相談の会場に行ったんです。そうすると、やはりe―Taxとは無関係な、お年を召した方がたくさん来ていらっしゃる。持ってきている資料を見ると、医療費の控除の関係なんですよ、いっぱい持ってきているんですよね。その人たちが、これから確定申告の会場、そういう年代の人たちがいっぱい行くと思いますよ。そうすると、医療費の申告とか、まさに基礎疾患を持っているような高齢者、重症リスクを持っている人たちが残念ながら集まってしまう会場になりかねない。

 だとするならば、去年もおととしも感染者が出なかった、頑張ったと思いますよ、もう一回、私は期限延長を考えるべきだと思いますが、明快な御答弁をいただきたいと思います。

重藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、令和三年分の確定申告に関しましては、私ども、e―Taxを強力に推進する、確定申告会場に来なくても申告できるe―Taxの強力な推進にまず努めております。

 それから、確定申告会場におきましては、まずレイアウトをゆったりするということ、それから職員のマスクやフェースシールドの着用を徹底すること、それからパソコンなどの備品の消毒とか換気の徹底といったことに努めております。また、入場整理券方式を導入することによりまして来場者の分散等に取り組むこと。こういった形で、まず確定申告会場での感染防止対策には、これまで以上に徹底を期しているところでございます。

 その上で、また今、過去二年間やった一律延長をなぜしないのかということで御質問でございますが、そこに関しましては、先ほども申し上げましたが、過去二年間の経験を踏まえますと、一律に期限を延長いたしますと、申告相談を早めに済ませることが可能な方も含めて、申告が後ろ倒しになるということが予想されるところでございます。そのため、今回は、延長の対象を新型コロナの影響を受けた方とすることで、そのような方にはより丁寧に対応したいと考えているものでございます。

 なお、基礎疾患がおありの方のお話もございましたが、基礎疾患があるためになかなか密になる会場に行くことができないといった方は、個別に期限の延長に応じることとしているところでございます。

野田(佳)委員 なかなかかたくなでありますけれども、各党からそういう要請とか疑問があったということはよく踏まえて、去年も緊急事態宣言になってから、二月二日だったですか、その時点で急遽期限を延長したりしましたよね。まだ判断する余地はあると思いますので、よく御検討いただきたいと思います。

 これは再質問みたいになって恐縮ですけれども、質問通告していませんが、還付申請というのは、期限に間に合わなくてもいいわけですよね、期間内じゃなくても。五年遡ってできるでしょう。そういうことはもうちょっと周知徹底した方がいいんじゃないですか。その辺、ちょっと改めて御説明いただきたいと思います。また、周知徹底するように要請したいと思います。いかがでしょうか。

重藤政府参考人 今委員から御指摘ございましたように、いわゆる還付申告につきましては、基本的には申告期限というのはございません。また、過去五年分遡って還付申告をするということも可能でございます。したがいまして、この時期にあえて確定申告の会場に来てしていただく、期限という意味でいえば、その必要はございません。

 そういったことは、私どもも、これまでも対外的に周知をしているつもりではございますが、きちんとそういったことが伝わるように、そこは努めてまいりたいと思います。

野田(佳)委員 よろしくお願いいたします。

 いよいよ、では、鈴木大臣に質問をさせていただきたいと思いますが、鈴木大臣と親しく交流をさせていただいたのは、大臣、覚えていらっしゃいますかね、二〇〇七年のIWC総会、アラスカのアンカレジで開催をされました。そのときに、党は違いますけれども、日本代表として参加をさせていただきまして、科学的根拠に基づいて反捕鯨国に対して論陣を張っていくという意味では、同志として活動させていただきました。

 このテーマについては全く同志中の同志だと思いますが、財政については果たしてどうなるか、今日は、改めて、質疑を通じて確認をしていきたいというふうに思います。

 まずは、令和四年度の税制改正の基本的な考え方について御質問していきたいというふうに思います。

 新しい資本主義とか、あるいは成長と分配の好循環とか、大変大きなテーマを掲げていらっしゃる岸田内閣だと思うんですが、それらの理念を、大きな構想を実現するための有力な政策手段は、私は税制だと思うんです。それを、残念ながら、使い切っているとは、私は今回、思えません。思えません。

 正面から取り組まなければいけない課題については先送りをしているし、参議院選挙を意識しているのか、小粒の減税のオンパレードであって、小粒感と、新味がないという意味においては、ちょっと私は残念な税制改正だったなというふうに思わざるを得ないんですね。その点について大臣はどういう評価をされているか、まずお尋ねをしたいというふうに思います。

鈴木国務大臣 令和四年度の税制改正の評価ということであると思いますけれども、令和四年度の税制改正におきましては、成長と分配の好循環の実現に向けまして、賃上げを積極的に行い、そして、マルチステークホルダーに配慮した経営に取り組む企業に対しまして税制上の措置を抜本的に強化するほか、オープンイノベーションを更に促進するための税制措置を講ずることで新たなビジネスの創出を進め、事業革新と付加価値の向上につなげるなどの措置を盛り込んでいるところでございます。

 また、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けまして、住宅の省エネ性能の向上などの観点から住宅ローン控除について延長するほか、5G導入促進税制については、税控除率の見直しを行った上で延長するなどの措置を講じているところでございます。

 このように、成長と分配の好循環やグリーン化、デジタル化にも対応した改正となっておりまして、私は決して小粒で新味に乏しい税制改正であるとは思っていないところであります。

野田(佳)委員 そこは全く認識が私は違います。

 例えば、先ほどもちょっと出ていましたけれども、金融所得課税については、今回また見送りですね。私は、残念だったというふうに思います。

 金融所得課税が二〇%に本則で設定をされたのが二〇〇三年でございました。その後、その間に、いわゆる軽減税率で、一〇%の措置でずっと来ました。その期限がずっと延長されてきて、なかなか本則の二〇%に戻らないときに、二〇一〇年の十二月だったと思いますけれども、閣議決定で二〇%に、本則へ戻すということを決めたときの私は財務大臣であります。それで、二〇一四年実施でした。これは麻生財務大臣のときでございました。

 金融所得課税については私も関係をしてきたという意味で、今回の自民党の総裁選挙では岸田総理が金融所得課税について前向きな発言をされていたので、そろそろ今度は動くんだなというふうに注視をしておりましたけれども、残念ながらこれが消えてしまったということは、私は残念でございます。

 格差是正というのは、最も今大きなテーマだと思います。その財源確保をするために私は有力な選択肢だったと思いますが、それを何で今回は見送ってしまったのか、このことについてお尋ねをしたいと思うんです。

 私は、このタイミングだったら、もちろんマーケットの情勢とか、いろいろ心配なことがあったのかもしれません。でも、でもですよ、これまでGPIFであるとか、あるいは日銀のETFで株価を支えてきて、そこによって恩恵を受けてきた人たちに、相当な負担をお願いするんじゃなくて、相応の負担をお願いすることぐらいは、これはひるんでは私はいけないというふうに思います。

 東日本大震災の復旧復興のときの財源確保のために、法人税、所得税、住民税の引上げを決定いたしたのも私のときでございました。あのときは批判がもっとあるかと思ったんだけれども、福島や宮城や岩手はみんな困っている、困っている人たちのために国民みんなで負担しようといったときに、基本的には多くの国民に御賛同いただきました。

 同じように、コロナで格差が広がっているときに、金融所得、これは明らかに給与所得に比べれば優遇されているわけですから、相応の負担をこの時期お願いするということは、私は政治家が責任を持って訴えるべきだと思っていました。それができなかったことは残念に思いますが、大臣はどういうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 金融所得課税の見直しにつきましては、岸田総理からも本会議等で度々答弁をしているところでございますが、成長と分配の好循環を実現するための様々な分配政策、今、野田先生も、格差を直すということが大切だというお話がございましたが、そうした分配政策の選択肢の一つとして挙げられたものであります。

 分配政策につきましては、様々な政策の順番が大事との考え方の下で、令和四年度税制改正におきましては、賃上げに向けた税制の抜本的強化に取り組むこととしたところでございます。

 今後の金融所得に対する課税の在り方につきましては、令和四年度の与党税制大綱におきまして、高所得者層において所得税負担率が低下する状況を是正をして、税負担の公平性を確保する観点から検討する必要がある、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行うとされているところであります。

 今後、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくわけでございますが、財務省としても、その議論に基づきまして対応してまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 政策決定プロセスとして与党の税調の議論の推移というのを踏まえていくというのは、一つの手順として押さえていらっしゃるということはよく分かります。だけれども、財源調達機能、欧米についてはポストコロナをにらんでいろいろな動きがあるじゃありませんか、そのときに金融所得課税の強化は有力な選択肢ですね。私は、もっと政府としても能動的に考えていくべきだというふうに思います。

 多分、ちょっと違うなと思ったのは、金融大臣も兼ねているから中立的に言わざるを得ないんですかね。私は財務大臣だけだったから、まさに金融所得課税強化の立場で、別の方が金融大臣でしたけれども、一生懸命かんかんがくがくの議論ができました。両方兼ねているからそんなマイルドなことしか言えないんですか。もっと、私は、政府として金融所得課税に能動的に取り組んでいく、党の動きを待つだけではなくてという姿勢が必要だと思いますけれども、改めてお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 先ほど御紹介申し上げました令和四年度の与党の税制大綱にも書かれておりましたけれども、そうした所得税負担率が高所得者層において低下するという公平性の話と、一方において、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分注意する、これは、様々な場でも、両方の意見があるんだと思います。

 それを踏まえて、党の税調におきましても、そうした議論が行われてまとめられたこの税制大綱である、こういうふうに思っておりまして、私としても、そうした二つの意見があるということはしっかり受け止めなければならないんだと思っております。

野田(佳)委員 ちょっと、これ、話が尽きなくなっちゃいますから、また機会があったらやりたいと思いますけれども、税制改正の中身の話を、もう限られた時間ですので、進めていきたいと思います。

 賃上げ税制については、もう多くの方が触れてきましたけれども、私も触れてみたいと思うんですが、先ほど田野瀬さんが過去を振り返っての賃上げの歴史みたいなことをお話しされていました。私は、それを総括的に考えると、限定的な効果しかなかったという多くの評価がありますが、私もやはりその立場なんですね。

 やらないよりはよかったのかもしれないけれども、平成二十五年度に初めて、第二次安倍政権の下で所得拡大促進税制としてスタートして、累次の改正が行われてまいりましたけれども、賃上げに関わる改正をやらなかったというのは、たしか平成二十八年度と令和元年度ぐらいなんですよね。ほとんど毎年のようにやってきているんですよね。適用期限が来ない間にも、もう変えているということもしょっちゅうありました。むしろ、猫の目のように変えざるを得ない試行錯誤の歴史であった。それは、実質賃金が上がってこない、主要国に比べても圧倒的にその伸びがない、そういう中で試行錯誤しながらやってきている、そういう歴史であって、私は、効果は、今までは限定的だったと言わざるを得ないと思うんですけれども、この評価をどうされていますか。

鈴木国務大臣 賃上げ促進税制の効果でございますが、私は、一定の効果はあったのではないか、そういうふうに思っております。

 野田先生からお話がございましたとおりに、賃上げ税制につきましては、平成二十五年度から令和二年度までの八年間で延べ七十六万件の企業が税制措置の適用を受けまして、その減税規模は累計約二兆円となっております。

 賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものであり、税制の効果だけを取り出して経営者の賃上げ判断への影響を測ることや、この税制の導入による賃上げの効果を定量的にお示しすること、これは難しいと考えております。

 一方で、企業に対するアンケート調査の結果において、賃上げの後押しになったと回答した企業が多くあったことから、冒頭申し上げましたけれども、企業の賃上げに対して一定の効果があったと考えているところでございます。

野田(佳)委員 私も全くなかったとは申し上げてはおりませんけれども、限定的であったと言わざるを得ないということを申し上げているわけでございまして、より効果を上げていくためには、給与総額を基準に控除率を定めるという、そのやり方を改めて、これは議論があったはずでありますけれども、ボーナスなどの一時金を除いた基本給ベースで賃金の持続的上昇につなげていくという工夫というものをやはりすべきであったのではないかと思いますが、この点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 今般の賃上げ税制については、各企業の給与体系が多様になっておりまして、様々な支給方法に対応する必要があること、それから、企業の実務面を踏まえまして煩雑でない制度設計とする必要があることに加えまして、重要な課題であります賃上げをより多くの企業に行っていただきたいとの政策判断によりまして、賞与を含めた給与総額を税制措置の適用要件としたところでございます。

 企業においては、こうした税制措置も活用して持続的な賃上げに取り組んでいただきたい、そのことを強く思っております。

野田(佳)委員 それは私は建前のお答えじゃないかと思うんですけれども、基本給ベースにすると社会保険料が跳ね上がってしまうから、だから手をつけられなかったということではないんですか。そういう要素はなかったんでしょうか。

鈴木国務大臣 そうではなくて、先ほどまさに申し上げたとおり、今、各企業の給与体系が多様になっているという中におきまして、そうした支給方法に対応する必要があったこと、また、中小企業を始め企業の実務面を踏まえますと煩雑でない制度設計をする必要があること、それと、賃上げをより多くの企業に行っていただきたいとの政策判断でありますが、賞与を含めた給与総額をこの税制措置の適用要件にしたということでございます。

野田(佳)委員 そうではないと明確に言われましたけれども、果たしてそうなのかなと私は思います。

 今回の控除率、上乗せをしていくと、要件の中に教育訓練費が入ってございますね。大企業の場合だと、前年度比二〇%以上ということの教育訓練費となると控除率がプラス五%、中小企業の場合だと、前年度比一〇%以上ということにすると控除率上乗せ一〇%、こういう、いわゆるあめとむちという中のあめをこの教育訓練費で使っているわけでありますけれども、公平感をどう担保するかというのは物すごく大事だと思っていまして。

 教育訓練は大事だと思いますよ、そこに着眼を置くというのはいいんですけれども、運用の面でよく考えなきゃいけないのは、これまで全く教育訓練費を使っていなかった企業が突然そのためにお金を費やすということになったら、これは一〇%あるいは二〇%以上の教育訓練費の増加というのはできるんですよ。そうすると、控除率の五パーでも一〇パーでも獲得できます。でも、長い間継続して教育訓練に一生懸命、毎年何百万円も何千万円も使ってきたような企業が、一〇パー、二〇パー急に上げろなんてことはできないんですよ。そうすると、恩恵を受けないじゃないですか。

 ということは、継続的に取り組んできたところは残念ながら恩恵を受けられない、何か突発的に一過性で取り組もうというところは恩恵を受けるというようなことになっては私はいけないのではないかと思うんですが、その辺をどう捉まえていらっしゃいますか。

鈴木国務大臣 人的資本への投資、これが重要であるということは、今、野田先生もお話しになられたところでございます。

 そうした観点から、賃上げに係る税制措置に関して、従来からの教育訓練費を一定割合増加させた企業については税額控除率を上乗せする措置を設けてきたところでございます。

 企業に対し、日本の企業はまだまだ人的資本への積極的な投資というものが少ないわけでございますので、これを促すために、今回このような仕組みを取らせていただいたということでございます。

 先生御指摘のとおりに、今までずっとやってきたところと、やっていなくてというところは、事実としてそういうことはあるんだと思います。

野田(佳)委員 今申し上げたような心配を申し上げたのは、税制改正の中で、賃上げは過去二回だけやっていない。平成二十八年度と令和元年。あとは、結構要件を変えながらやってきているじゃないですか。短期間で要件が変わっちゃうと、一過性で取り組んだところが得しちゃう、継続してやってきているところが損をするということになりかねないという心配があるから御指摘を申し上げたということだけは、御留意をいただきたいというふうに思います。

 あめだけではなくて、むちも利かせようということで、賃上げに消極的な企業には研究開発などの優遇税制の対象から外すという措置を取っていますね。まあ、あめがあればむちもあるというのは一つの考え方ですが、むちの使い方によっては、本来、なぜ政策減税を取り入れたのか、優遇税制にしたのかというところの目的と矛盾をしてくる可能性があると思います。

 余りむちが利いちゃうと、賃上げしなかったために研究開発が進まなくなる。国家戦略的に研究開発をしなければいけないと思って政策的に減税しようとしていたことが、逆に、賃上げによってその芽が絶たれるということがありはしないのか。

 あるいは、5G導入促進税制も対象じゃないですか。場合によっては、これをむちとして使うということですね。今まで、対象は一社だったですね、5Gの促進税制の対象。あの大手の携帯電話の会社だけじゃないですか。控除率を一五%にしたというのは、破格の扱いだったと思いますけれども、いろいろ議論はあったと思うんですが、これは経済安保の観点から一五パーにしたんじゃなかったんですか。経済安保の観点から一五パーにしたやつを、これから緩和はしていきますけれども、むちとしても使って、賃上げをちゃんとやらなかったらこういうのは使えませんよとやっちゃうんだったら、そうすると、まさにあの経済安保の観点から進めてきたことと矛盾が出てくるような気がしますし。

 むちをうまく効果的に使うためには、本当にいろいろな配慮が必要だと思います。そこはどういうお考えなんでしょうか、お尋ねをしたいと思います。

鈴木国務大臣 御指摘の特定税額控除規定の不適用措置でございますが、これは、企業の保有する現預金等が増え続けているといった状況を背景にいたしまして、所得が増加しているにもかかわらず、賃上げも行わず、また減価償却費の三割程度の設備投資も行わないような、極めて限定的な大企業を対象としているものでございます。

 これは、このような大企業に対して研究開発税制などの政策的な優遇税制を適用し法人税を減税することは適当ではないという、そうした議論から創設されたものでありまして、企業の賃上げや設備投資を促す観点から必要な措置である、そのように認識をいたしております。

野田(佳)委員 これは既にほかの方も御質問されていましたけれども、税だけではこの賃上げというのは効果が上がらない理由というのは、やはり赤字企業がたくさん存在をすると。特に中小企業の場合は、四百二十万社あるうち六割から七割が赤字企業じゃないですか。税によって賃上げを促進しようと思っても、こういうところは対象にならないわけですから、効果は残念ながら限定的にならざるを得ないわけですが、そういう赤字企業も賃上げしよう、そういうインセンティブをつくるにはどうしたらいいのか。

 今、物価が上がって、特に企業物価が上がってきちゃって、燃料を含めて大変なときに、価格転嫁できない中小企業はいっぱいいますよ。その価格転嫁できないような中小企業が賃上げをしていこうというには、相当な何かインセンティブがないと難しい、環境整備が必要だと思うんですけれども、その点について、大臣としてのお考えがあればお示しをいただきたいというふうに思います。

鈴木国務大臣 今般の賃上げ税制の見直しに当たりましては、企業の税額控除率を大幅に引き上げるだけではなくて、一定規模以上の大企業につきましては、従業員、取引先などの多様なステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言をしていただくということを税制措置の適用要件といたしております。こうした大企業と取引する中小企業への還元も後押しする仕組みでございます。

 なお、御指摘がございましたとおりに税制措置のメリットを受けられない赤字の中小企業に対しましては、こうした税制措置と併せまして、賃上げを行う中小企業への補助金の補助率の引上げなど、予算面での取組を行っているところでございます。

 また、それに加えて、下請対策の強化、公共調達における賃上げを積極的に行う企業に対する加点措置など様々な取組を講ずることを通じまして、中小企業の賃上げに向けた環境整備を進めていきたいと考えております。

野田(佳)委員 いろいろ方法としてはお示しされましたけれども、一番効果があるのは、特に赤字の中小企業でも賃上げをすることができる環境整備というのは、税負担よりも重たい負担感となっている社会保険料の事業主負担を軽減することではないのかと私は思います。それこそが一番賃上げのインセンティブになっていくと私は思います。

 大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 賃上げを促進するために社会保険料の負担を軽減すべきだというお話であったと思います。

 若者、子育て世帯を中心にいたしまして、保険料負担の増加を抑制をして可処分所得の増加につなげていくこと、これは分配戦略を進めていく上で重要なことであると認識をしております。

 一方、被用者保険の社会保険料の事業主負担につきましては、働く人が安心して就労できる基盤を整備することが事業主の責任であるとともに、働く人の健康の保持及び労働生産性の増進を通じまして、事業主の利益にも資するという観点から、事業主に求められているものと承知をしております。

 また、社会保障の給付の見直しを行わないまま単に社会保険料の事業主負担のみを引き下げるということになりますと、持続的な社会保障にはつながらないわけでありまして、この負担を減らすのであれば、給付の方も考えていく、そうした不断の社会保障制度の改革ということに対する取組も重要な点ではないかと考えます。

野田(佳)委員 私は、中小企業を経営をされている皆さんの心理的なハードルを相当に下げる効果があると思いますので、私自身は、これは従来、我々の立憲民主党、あるいはその前の民進党、民主党の頃からも主張をしていることでございますので、ちょうど質疑時間が終了しましたけれども、これからも強く主張をしていきたいというふうに思います。

 いろいろ申し上げましたけれども、賃上げがなされることは望ましいことですので、今回の税制改正が、本当に効果があるかよく分かりませんけれども、少なくとも春闘の側面支援になることを期待をして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、下条みつ君。

下条委員 立憲民主党の下条みつでございます。

 久しぶりに財務金融委員会に戻ってまいりまして、以前、この同じ場所で、高校の同窓であった香川俊介主計局長が一生懸命頑張っていた話を今もって何となく思い出しました。

 そういう意味では、日頃から、財務省の皆さん、そしてそれを支えている行政の皆さんを含め、そして政府の皆さんに、インプルーブメントしている今の税制改正については、それはそれなりの評価を僕はしたいというふうに思っております。

 今日は、限られた時間の中ですので、私は、基本的に提案型で大臣そして政府委員の方に申し上げていき、私は大臣と同じように民間から選ばれてこの席に立たせていただいておりますから、やはり、その民間の人の生活、そして税の基本というのは、困った人に優遇して、そして、お金持ちから基本的に税金を取って、困った人にその分を振り分けていくのが僕は税の基本だ、これは釈迦に説法でございますけれども、そう思いますので、その辺を含めて御提案をさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 まず、国税庁から配られた令和二年度の給与階級別の諸控除、簡単に言えば、給料をこのぐらいもらっている人は税金をこのぐらいは払っていないよという表があります。私は、これを見てちょっと愕然としました。

 まず一つは、つまり、税金を払っていない人、これが、百万から二百万までの方々、それぞれ二八%ぐらいいらっしゃる、その枠の中に。二百万から三百万円の方については、六・五%の人が納税していない。それから、三百万から四百万が約四・八%、五%ぐらい納税していませんよという表であります。これは国税庁が出した表です。

 一方で、四百万から五百万、給与がちょっと上がってきた。そうしたら、何と、二百万―三百万、三百万―四百万円より多く、七・五%の人が納税していないんです、大臣。納税していない。一方で、五百万から六百万は九・八%。逆に言うと、四百万円、三百万円の所得の人よりも、五百万―六百万の人は十人に一人納税していないんですよ。それから、これから六百万から七百万だと、これまた八・四%。簡単に言えば、三百―四百万の人の倍ぐらい税金を納めなくて済んじゃっているというこの表の数字というのは、非常に、私はもらったときに愕然としました。

 私は、言いますけれども、ともかく、税金というのは、困った人たちのためにお金持ちから取って、それを、困った人たちが生活できるように、暮らしていけるように優遇していくんじゃないかと思ったのに、こういう表が出てきたときに、まず、この表の中身についての御説明を簡単にできれば、そちらからしていただきたいと思います。それが一つ目です。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 お示しいただきました令和二年分の民間給与実態統計調査、国税庁の資料でございますが、これによりますと、年末調整後の所得税額がゼロとなる非納税者、税金を納めておられない方の割合につきましては、御指摘がありましたように、年収三百万円超四百万円以下の給与所得者では四・九%、年収四百万超七百万円以下の給与所得者について、三つの階級をまとめて計算いたしますと八・五%となっておりまして、年収四百万超七百万円以下の方の方が非納税者の割合が高くなっているというのは事実でございます。

 この年末調整後の所得税額につきましては、各種控除の適用状況などによって変わってくるものでございますが、この年収四百万円超七百万円以下の非納税者の方々の控除の適用状況を見ますと、九八・四%の方々が住宅ローン控除の適用を受けておりますので、住宅ローン控除の適用があることが、この年収層における非納税者の割合が高くなっている一因になっているというふうに考えております。

下条委員 全く、こうですよという答えを出していただきまして、ありがとうございました。

 大臣、ここがポイントなんですよ。ここがポイント。私は、後でちょっと、時間の範囲内が限られていますので、その範囲内で御説明また御要請したいと思うんですけれども、要は、住宅を持てる人のために、所得が低い人たちが税金を多く払っている。住宅を持っているお金持ちの人たちが、その人たちの税金で控除を受けている。これがこの表の実態なんですよ、大臣。そうですよね。私は別に間違ったことを言っていない。そのとおりの、国税庁のお話からして、簡単に言えば、住宅控除をして税金を払わなくて済んだ人が多い。でも、その人たちは、税金の控除を受けていない人たちの税金でもって賄われている分が非常に多い。そして、払っていない人の割合が非常に高いというのが、これが現実。これは、大臣、どう受け止めますか。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

鈴木国務大臣 例えば、今住宅ローン控除のお話がございましたけれども、この住宅ローン控除制度につきましては、今般の税制改正においては、控除率の見直し、これを行う一方、新築住宅等について控除期間を十年から十三年に延長する措置を取ってきたところでございます。この結果、従来の制度では満額控除できなかった中低所得者層の納税者にとっては、控除期間が延長されることによりまして総控除額が増えるといった支援につながっていると思います。

 また、住まいの確保につきましては、持家のみならず賃貸住宅も対象に、公営住宅やセーフティーネット登録住宅を通じた低所得者の家賃負担の軽減策などの支援も予算措置で行っているところでございまして、先ほど先生が御指摘になられました、比較的所得の、何と言ったらいいんでしょうか、やや低い方々が税負担しているということでございますが、そうした予算措置によってそうした低所得者の家賃負担の軽減策等も行っているということは申し上げたいと思います。

下条委員 後でちょっといろいろ細かい話をしようと思いますが、今ちょっと大臣から幾つか出ましたけれども、要は、簡単に言えば、所得の低い人は控除が低いんですよ。持家を持てる人たちは控除を多くもらえる、税金を払わなくて済む。これが今、国税庁の方の話でも数字で出ています。これをまず原点に今日は話を進めていきたいと思います。

 次に、課税最低限という推移がありますけれども、これは昭和六十二年からいろいろ表が出ているんですが、十二年のときは、課税最低限というのは、単身で百十四万、夫婦のみで二百二十万、夫婦子供一人で二百八十三万、夫婦子二人で、それぞれ、中学生の場合は三百八十四、大学生、高校生は四百二十万、課税所得最低限の金額があった。それが、ここに、表をいただいたのは二十七年までですから、現状、今、どのぐらい変わっているか、正確なのは分かりませんが、二十七年を見ると、単身が百二十一万で上がって、夫婦のみは百六十八、夫婦、一人も百六十八、夫婦子供二人がそれぞれ二百八十五と三百五十四万になっている。

 これはどうしてこういう推移になったか、政府委員の方、御説明いただきたいと思います。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今御紹介いただきましたように、夫婦の世帯あるいは子供がいる世帯につきましては、平成十二年当時と比べて、いわゆる課税最低限が下がってきておりますが、この主な要因につきましては、まず、平成十六年の改正におきまして、配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止が行われたこと、それから、平成二十三年、この年には、子ども手当の導入に伴いまして、いわゆる年少扶養控除の廃止が行われ、及び、高校無償化が行われたことに伴いまして、特定扶養控除の縮減、高校生を対象とする特定扶養控除の縮減が行われてきたということによるものと考えております。

下条委員 ありがとうございます。この表にある備考欄を読んでいただいたというふうに思いますけれども。

 私は何を言いたいかというと、この扶養控除を含めて、課税最低限がどんどんどんどん低くなっちゃったがために、前は、ある意味で単身でいても夫婦でもそこそこ飯は食えた。だけれども、これだけ下がっちゃって、扶養控除も収まっちゃうと、これは一人でいた方が楽なんじゃないかと。だから、やはり、夫婦で結婚してやるよりも、自分一人で生きていこうという人が必然的に数字の中で増えてきちゃっている、私はそう思っているんです。これは数字が言っていますよね。

 現状、これだけ、例えば少子化だ、高齢化だといって厚生省の予算がどんどん膨れていますけれども、それはそれでおいておいて、そういう意味で、どんどんどんどん単身者が楽だ楽だになっていて、子供を持ったりしてもそんなに得にならないというのであれば、みんな結婚しなくなるような感じが私はしているんですけれども。

 これ、政府の方を含めてどう感じますか、この実際の数字で。この頃から私は少子化に拍車がかかってきているんです、今日はあえて数字は申し上げませんが。どうお考えでしょうか。

住澤政府参考人 夫婦世帯あるいは子供を持っている世帯の課税最低限の問題でございますが、課税最低限が平成十二年に比べて下がっている要因は先ほど申し上げたような事情でございます。

 単身世帯と夫婦世帯との課税最低限の差、これは基本的に配偶者控除の存在によるものでございますが、この配偶者控除につきましては、一定の収入以下の配偶者がいる方の税負担能力に配慮する観点から、積極的にその意義を評価する、そういった意見がある一方で、女性の就業に対する税の中立性の観点から、その役割を見直すべきといったような御意見もあるなど、様々な御意見があるところでございます。

 また、子供がいる場合の課税最低限につきましては、先ほど申し上げましたように、その水準が下がってきましたのは、子供向けの支援を減らしたということでは必ずしもございませんで、所得控除から手当へという考え方の下で、子ども手当を導入した際に年少扶養控除を廃止したことや、教育の充実のために高校無償化を行った際に高校生の特定扶養控除を縮減するといったことが行われてきたことによるものでございまして、課税最低限を構成しております各種の控除につきましては、近年の見直しの流れを振り返ってみますと、社会保障制度などの関連する制度や政策も含めた様々な観点から検討が行われてきた結果でございまして、こうした観点から総合的に考えていくべきものであるというふうに考えております。

下条委員 政府委員としてはそういう答えになるなとは思いました。

 一方で、今言った百二十一万とか百六十八万で計算していった場合、単身世帯は、だから百二十一万ですよね、これを十二で割るとしたら、一月十万円で生活するかなと。夫婦百六十八万の場合は、十二で割ると十四万円で生活する。夫婦、中学生だと百六十万プラス児童手当が月一万円ですよね。月一万円ですからね、一日三百三十円の話で賄われていると言われても、僕は、これはどう見ても、税金を控除する額を減らしたとしか思えません。

 私は何を言いたいかというと、今言った数字で、例えばアパマン、そういうホームページに載っていましたけれども、東京の都心で、ワンルームで住むと相場が約十万、一DKで十二万、二DKで十四万ぐらいかかる。立川まで行けば、ワンルームが五万とか、一DK八万とか、二DKが七、八万ぐらいになる。それを差っ引いたときに、とても、今言った部分で、東京都心部の中で賃貸でも住めない。一方で、立川でも、単身赴任だと一日千円ぐらいですね、余るのが。それで暮らしていかなきゃいけないというのが現状の課税最低限の、残った金でどうするかです。例えば病気をしたり、物を買ったりすることは一切できない、この状態が課税最低限であります。

 そこで、私が申し上げたいのは、そろそろ、こういう非常事態で、これだけ何年間もコロナで困っていて、財務省もコロナ対策でいろいろ支出があるのは、それは大変でしょうけれども、これはもう世界中がそうやっているんですからね。私が思うのは、そろそろこの課税最低限というのを引下げから上に上げるべきじゃないかと思うんですね。

 それで、それを今すぐ言っちゃうと答えが返ってきちゃうんですけれども、それじゃ、何を財源にするかという話になると思うんですよ。

 私は、今回の税制改正で非常にポイントになっている、さっき言った、国税庁の皆さんが言っていた住宅ローン減税があるがために、その方たちが家を持ったときの控除の額が非常に、ほとんど、九八、九%とおっしゃいましたね、だから、だからこそ、その人たちが払わなくて済んでいるということを淡々とおっしゃる。それは数字の答えですから、そのとおりだと思うんですよ。

 私は何を言いたいかというと、住宅ローン減税、控除というのは、私はそろそろ見直すべきじゃないか。さっき大臣が、ちょっと見直しをしたと言うんですけれども、これは、会計検査院が言って、非常に問題が、控除が多過ぎたので下げてくれ、そういう改正なんですね、今回は。これはもう皆さんの方がよく御存じだと思いますけれども。

 私は、この住宅ローン控除というのは、例えば海外でいった場合は、フランス、イギリス、ドイツは、もう住宅ローン控除というのはやめちゃっているんです。やめると。だって、住宅を持てるんだからいいでしょうと。金も入っているし。

 だから、私はそろそろ、住宅ローン減税、全部やめろとは言いません、全部やめろとは言わない、かなり圧縮していっていい、しかるべきときに来ているんじゃないかと。さっき言ったように、数字で、二百万、三百万、四百万所得がある人よりも、家を持てて、五百万、六百万、七百万の人の方の税金を払わない率の方がずっと高いんですから。これはおかしいと僕は思うんですよ。このおかしいことを僕が抱えて今日ここへ立たせていただいていますので、私は、住宅を持っちゃいけないとは言わない。持てるんだから、それは持てばいいけれども、持っていない人の方がもっと多くて、海外ではもう住宅ローン控除をやめにしているんですよ。

 だから、私は、この住宅ローン控除の部分について、やはり、今回はきっと間に合わないと思いますけれども、一考するべきじゃないかと思っていまして、そこで、住宅ローン控除では一体どのぐらいのお金が支払われているかをちょっと政府委員の方にお聞きしたい。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 住宅ローン控除の存在によります国税の減収額ということのお尋ねかというふうに受け止めましたが、令和三年度予算ベースで申し上げますと、およそ六千七百億円程度というふうに承知をいたしております。

下条委員 あと地方もあるでしょうから、合わせて約九千とか、そのぐらいいくのかな。あ、いいですよ。どうぞ。

住澤政府参考人 失礼をいたしました。

 ちょっと突然のお尋ねでございましたので、数字を言い間違えましたけれども、令和三年度予算ベースで七千六百七十億円、これが国税分の減収額でございます。訂正させていただきます。

下条委員 丁寧に答えていただき、ありがとうございます。

 私は、国税だけで七千七百億、八千億近くですけれども、これによって、もう一回言いますけれども、二百万、三百万、四百万までしかない所得の人たちよりも、マンションを持ったり、一戸建てはなかなか都心部は難しいと思いますけれども、マンションを持ったり、一戸建てにしろ何にしろ、持った人の方が税金を払わなくていい人たちが多いということが、一つのこの税制のゆがみにつながっていると思うんですよ。

 だから、最初言ったように、インプルーブメントしている、税制は、どんどん質疑をやって、与野党を含めていろんな改善がされているんですけれども、もう一回私がこの委員会の議事録に残しておきたいのは、こういうことを私が言ったということを残しておきたいんですよ。それを、どういう形であれ、これからいろんな意味で審議していって、おかしい、海外はやめているんですから。その部分を、持家がない人の公営住宅の家賃補助とか、そっちの方に回しているわけですよ。それが政治だと僕は思うんですけれども、この辺の考えは間違っていますかね。

 大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 先ほどの答弁に、ちょっとまたかぶってしまうかもしれません。そこはお許しいただきたいと思いますが、住まいの確保につきましては、持家のみならず賃貸住宅も対象に、公営住宅やセーフティーネット登録住宅を通じた低所得者の家賃負担の軽減策などの支援も現に行っているところでございます。

 それから、税制においては、既存住宅については、耐震、省エネ、バリアフリー等、住宅ストックの質の向上に資する改修等に対する支援も行っているところでございます。

 先生から、課税最低、課税基準のことからいろいろお話を伺っているわけでありますが、今後の住宅ローン控除制度の在り方につきましては、今回の税制改正において、我が国の経済状況も踏まえて、控除期間につき、当面の措置として上乗せ措置を講じる等の見直しを行うところでございますけれども、今後、与党税制調査会において議論をし、それを受け、政府としても適切に対応していきたいと考えております。

下条委員 ありがとうございます、大臣。

 私は、何回も申し上げますけれども、税制も改善されていることは評価したいと思います。ただ、実際、会計検査院がそう言って、下げてきたというのは、金利がどんどんどんどん下がっちゃっていて、逆に一%をやったときの問題点が出ているから、それで今回会計検査院が指摘して、皆さん動いたと思うんですね。

 やはり、僕らは別に会計検査院じゃないですけれども、民間から選ばれた我々の仕事としては、これだけ困って、持家がないのに、私たちは賃貸で苦労しているんだよと。

 要は、よく答弁でなさるのは、この部分はやっているからと言いますけれども、どの程度やっていて、どの程度それが行き届いていないからそれを改善していくというのがこの議論だと僕は思うので、やはり大臣、この課税最低限を、私は、財務省としては、例えば、さっき言った、国税だけで七千七百億、住宅ローン控除にかけているのであれば、さっき言ったように、お金を持っている人がちょっと我慢してもらって、その部分を課税最低限の方に回す、若しくは賃貸で苦労している人たちに回す、そういうふうにすべきだという提案なんですよ、大臣。そこなんです、僕が言いたいのは。

 要するに、今、確かにインプルーブメントして下げてきたのは、それは僕は改善点として認めます。それは正しいと思う。ただし、今後の話として、この委員会では、今回のこの通常国会では決まらないかもしれないけれども、これは、国会は永続して人間が存在する以上やっていくわけですから、その中で、是非大臣、前向きに答えていただきたいんですよ。

 要するに、財務省として支出を多くするわけじゃないんです。海外のように住宅ローン控除を圧縮していく、ゼロにしろと言っていない、圧縮していって、その部分を、賃貸若しくは課税最低限所得の人たちを守るために、最低限の枠を少しずつ上げていってもらいたい、こういう提案であります。

 大臣、いかがでございますか。

鈴木国務大臣 今後の住宅ローン控除税制の在り方については先ほど述べたとおりでございます。

 そして、課税最低限のことでございますが、課税最低限を構成する各種控除につきましては、社会保障制度などの関連する制度、政策も含めた様々な観点から総合的に検討すべきものである、そのように考えております。

 現時点で、給与所得者の課税最低限について、引き上げるべき状況にあるとは直ちに考えておりませんが、その在り方につきましては引き続き検討を続けてまいりたいと思います。

下条委員 ありがとうございます。

 その答えは、一応ベストでいただいたというふうに僕は考えたいと思います。というのは、現時点でと言っちゃうと、この国会の中で大臣含めてやっていかなきゃいけないということになりますので、ですから、現時点では、これは十分でないけれどもインプルーブメントしているというお答えじゃないかと僕は思いますけれども。

 ただ、本当に、持家を持っている人たちが優遇されていて、私がもう一つ言いたいのは、これは政府の方に言いたい。

 持家でどんどんどんどん、十年、十三年優遇していく。どんどん控除して、どんどんどんどん優遇していって、家を持ちますよね。ローンがどのぐらいあるか分からない。僕も金融マンでいたので、十年ローンもあるし、十五年も二十年も三十もあるし、金利が低いから。その間に税金でもって自分の控除をどんどん受けているその人たちが、例えば十年、十三年後に、もう補助がなくなって控除もなくなったから、いいや、もうこれは十分控除をもらって、いい値段で物を手に入れたので、これは、例えば売っちゃっても何か罰則はないんですよね。そこを僕は言いたいんですよ。

 いろいろなつながりがあるんですよ。控除をもらっておいて、いろいろなお金を払っている低所得者の人たちも苦労している、消費税も、今日は消費税の話はしませんが、その苦労している人たちの税金を使って、自分たちがどんどんどんどんどんどん、十何年も控除をずうっと受けてきた。その控除が終わった途端に、これはもういいや、売っちゃえ、控除で思いっ切り自分がもうかったからといって、これは売っても何しても別に罰則はないんですよね。これはちょっとお聞きしたい。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 住宅ローン控除につきましては、この控除の適用を受けられる年につきましては居住が継続していることが条件でございますけれども、この制度の適用が終了した後につきましては、売却された場合等につきまして、何らペナルティーなどの措置は講じられてございません。それは事実でございます。

下条委員 大臣、そういうところなんですよ。

 私は、言いにくいけれども、家を持っちゃいけないとは言わないけれども、国民が、皆さん、バイトを含めて非正規をどんどん増やして苦労している中で、やはり、家を持てたりマンションを持てるというのは、ある程度僕は恵まれていると思うんですね。ところが、十年、十三年たったらもう、いただくものだけいただいてトンズラすることもできるというのは、私は、この税制のちょっとゆがみで、まさにさっき政府の方がおっしゃったように、もうその後は関与しないようになっちゃっているんですよ。だから、そういうところで税金が逃げていくということが僕は悔しいんです、民間人の代理人として。

 だから、そういう意味を、今日この委員会で質疑として議事録に残しておきたいと思いますし、大臣、今日答えられないかもしれないけれども、そこだけはちょっと考えてください。是非、本当にこれはゆがんでいますから、インプルーブメントしているけれどもゆがんでいる、それだけは申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間がどんどん迫っちゃっているので、次に、これはもう何人も、同僚そして与野党含めて出ていると思うんですけれども、やはりガソリンの値段ですね。

 これはもう皆さん、ほとんどの方は、私の母方も東北なので岩手の近くでございますし、地方に行ったら本当にバスも、私の足下のところのバスは確かに四十分に一本ぐらいですけれども、ちょっと離れれば一時間に一本。その中で、やはりガソリンというのは一番重要ですよ。

 これは何かというと、今度の世界情勢も含めて、また、液化ガスの分配が増えたり、いろいろな話が出ている中で、やはり私は、このトリガーの部分については、これは英断として実行すべきときが来たんじゃないかと。というのは、大臣、これはどんどんどんどん物が高くなっていきますよ。一番は運搬費用だから。これがもうどんどんどんどん高くなっていって、液化ガスの問題もあります、それは今日はやらないです。ただ、ウクライナの情勢は、今の時間でどうなっているか僕は知りませんが、どういうふうにやるかによって、またそこでロシアとの関係の問題があって、また生産が減ってくればもっと上がっていく。だから、私は、この五十何円のうちの二十五・一円の部分のトリガーの分については、そろそろ英断していいんじゃないかと思います。

 私は、震災のときも、大臣の足下の岩手も、僕も母方がそうなものですからそっちへ行きました。何回も行きました。みんな苦労しているのを見てきた。でも、その当時に出た、この二十三年に出たトリガー税制については、これは岸田さんが何と言おうと、財務大臣として、これは結局は上がっちゃえば国民は困るし、さっきちょっと野田元総理からお話がありましたけれども、小出しにするんじゃなくて、思い切った英断をして、誰が困って、どうして価格に反映する、例えばマクドナルドから始まって、バターも何もかも全部上がっていきます。

 この状態は、大臣、そろそろ、そろそろですよ。補助金を元請に何円か、三円か四円出して、二円ぐらい下がった方だと、そんなレベルじゃないですよ、百七十、百七十三円のレベルは。そろそろ、時限制でもいいから、そういう方向でやるよという考えをどうしても僕はお聞きしたいと思っているんですよ。

 これは、財務大臣として、実入りを減らす話だから非常に苦しいと思います。それは分かります。皆さん、実入りをなるべく多くして、支払いを減らすためにやっているわけですから。だから、私はそれは分かる。だけれども、国民が現時点で、東北の震災以上にいろいろな方が苦しんで、第六波が、第七波がどうなるか分かりませんが、また変異株が出るか分かりませんが、この中で物がどんどん高くなって、さっき言ったように所得者がどんどん苦しんでいる状態です。

 ですから、ここで僕は大臣に、もう余り時間がないんですけれども、いいお答えいただきたいのは、ここでイエスと言わなくてもいいから、是非、総理と話していただいて、こういう声が非常に多いんだ、時限的でもいいから、落ち着くまではトリガーを実行しようじゃないかというのを言ってもらいたいと思うんですが、どうですか、大臣。

鈴木国務大臣 トリガー条項の凍結解除につきましては、私も予算委員会等でも御質問を受けているところでございます。

 これまでも申し上げてきたところでございますが、発動された場合、ガソリンの買い控えやその反動による流通の混乱があるという心配、それから、下条先生もお触れになりましたけれども、国、地方の財政への多大な影響が出るのではないか。一度解除をして、それから次にまた発動をするに当たっては、百三十円が三か月続かないと発動できないということは、恐らく長期間にわたってこの解除の状況が続くんだと思います。そうすると、一年間で一兆六千億、地方と国合わせて歳入が減るわけでございますので、こうしたことを考えますと、その凍結解除は適当でないと考えております。

 その上で申し上げれば、今回の燃油価格高騰に対しまして、政府としては、激変緩和措置や業界、業種ごとへの支援、地方自治体が独自に支援する際のしっかりとした財源支援といった様々な対策を重層的に用意しております。

 そういった様々な対策の中で何が効果的なのかについては、昨日も総理から検証を行うよう指示があったところでありまして、政府全体として、関係大臣と連携をして検討を進めてまいりたいと思っております。

下条委員 最大限のお答えをいただいたとは思いますが、今、最後に申し上げると、苦しんでいるのは、誰もそうです。政府も苦しんでいる、地方も苦しんでいる。でも、一般の、税金を払っている権利者の人たちが一番苦しんでいることだけを最後に申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

 以上です。

薗浦委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 稲富修二でございます。今日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど、同僚の下条議員が住宅ローン減税について御質問をされました。それに倣って、ちょっと私も順番を変えて、そこから質問をさせていただければと思います。

 今回の控除の見直しということなんですけれども、元々この住宅取得の控除制度が始まったのが、昭和四十七年に導入されて、昭和六十一年に住宅取得促進税制として設立をされた。昭和四十七年ですから、持家促進であるとか、景気対策のために導入をされたものと思います。

 改めて是非お伺いをしたいのは、この住宅ローン控除の制度の目的、これは何でしょうか。

鈴木国務大臣 現行の住宅ローン控除制度、これは、住宅ローン残高の一定割合を控除する制度としまして、昭和六十一年度の税制改正で創設されたものでありまして、目的といたしましては、住宅取得者の初期負担を軽減して住宅取得を促進するということ、それと、住宅建設の促進を通じた内需の拡大等に資するということでございます。

 したがいまして、住宅取得の促進という側面と内需拡大という側面と、両面あるというふうに認識しております。

稲富委員 ありがとうございます。持家の促進と経済対策、言い換えればそういうことかなと思います。

 ちょっとごめんなさい。事実関係で、先ほど主税局長、お答えいただきましたが、この住宅ローン控除で、国は七千六百七十億というお話でしたけれども、地方を合わせて幾らかということと、あとは、令和三年度の予算ということだったんですけれども、令和四年度と多少プラスマイナスがあるのかということ。ごめんなさい、ちょっと通告していなかったので、分かれば教えていただけますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年度予算ベースの国税分につきましては、今御指摘いただいたとおりでございます。地方分につきましては、ちょっと、通告もいただいておりませんでしたので、今直ちに手元にございませんので、後ほど確認できればお答えしたいと思います。

 また、令和四年度予算ベースの数字につきましては、様々なデータに基づきましてこれから試算をしていくという段階でございます。ですので、現時点で正確な数字を申し上げることは困難でございますけれども、今回の国税の方の税制改正におきます税収への影響というのは余り大きくございませんので、大幅な変動というのは想定しにくいかなというふうには考えております。

稲富委員 済みません、ありがとうございます。

 ということは、様々、例えば、控除対象者を若干要件を変えたり、年限を変えたりしているものの、ほぼ全体としての、控除全体としては変わらないのではないかという御回答だったと思います。

 やはり、今おっしゃっていただいた、まず持家促進という面でいうと、これだけもう人口が減少局面に入って、空き家も増えている、そして、これから単身世帯がもう二〇四〇年には四〇%になると言われている中で、この昭和六十一年のときの設立目的がそのまま今も生きているというのは、もう時代に合わなくなっているんじゃないかとまず思います。

 次の、経済対策について少し申し上げますと、まず、今、住宅価格、非常に上昇しております。例えば、首都圏の二〇二一年の十月の新築マンションの平均価格は一戸当たり六千七百五十万円である、バブル期の一九九〇年を超えて最高値をいっている。とすれば、要するに、需要と供給の意味でいえば、需要は旺盛にあるということであります。

 したがって、経済対策として、なぜ需要を更に刺激するような政策が必要なのかということは是非お答えをいただきたいというふうに思います。

鈴木国務大臣 今回の改正では、我が国の経済状況も踏まえた当面の措置といたしまして、控除期間については十三年と広げる一方で、会計検査院の指摘を踏まえまして、控除率の方は引き下げるということを行っていることから、全体として住宅価格等を始め住宅需要に大きな影響を与えることはないのではないか、そのように考えております。

稲富委員 先ほど主税局長がおっしゃったように、全体のインパクトとしてはほぼ変わらない、要するに減税幅としては変わらないということであれば、それは昨年度も今年も変わらないと私は思うわけです。

 だから、経済対策として、これだけ、例えば私の福岡では、相当にマンション中心ですけれども高騰していっております。それに対して、なぜ需要刺激をするような政策が必要なのかということは、もうちょっと真正面から答えていただきたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほどお尋ねのありました地方税の方の令和三年度予算ベースの減収額でございますけれども、千八百十三億円というふうに聞いております。国、地方合計で申し上げますと、九千四百八十三億円というふうになります。

 その上で、経済対策としてなぜ必要なのかというところでございますが、ただいま大臣からも御答弁がございましたように、今回は、控除期間を長くする一方で、控除率の方を引き下げるという見直しになっておりまして、税収に及ぼす影響もかなり小さいというものでございますので、マクロ経済に対する影響という意味で、需要を刺激したり、あるいは価格に影響を及ぼすといったような効果はさほど大きくないのではないかというふうに認識をいたしております。

 また、住宅価格が昨今上昇しております背景には、資材価格の高騰など様々な要因があるものと承知をいたしております。

稲富委員 ちょっと、何かかみ合わない気がします。全体としては、先ほど国、地方合わせて、今伺ったところ、九千五百億の減税インパクトがある、ほぼ今年、令和四年度も変わらないのではないかということだったので、それは年度を引き延ばそうが全体としての減税幅は変わらないということだと思うんですね。

 じゃ、ちょっと視点を変えてまた質問します。公平性の話、先ほど下条議員もおっしゃいました。

 資料の二ページを御覧いただけますでしょうか。持家の比率なんですけれども、これは所得階層別に持家の比率を表にしたものでございます。

 現在の状況ですので、この政策はどうかということは一概には言えないとしても、明らかに言えることは、所得が高ければ持家の比率が高いということでございます。

 したがって、先ほど、これも下条先生が御指摘あったように、所得が高ければ高いほど持家の比率が高いということであれば、当然、所得が高いほどこの控除の制度も利用できる、利用している人も多いのではないかと言えるわけです。

 そうすれば、当然、全体として、税ですからみんなが負担をして、そこに対して控除しているということですから、どこだけが負担しているというわけではないけれども、少なくとも言えることは、やはり高額所得者に対しての所得移転が大幅に起こっているということは言えると思います。

 それに対して、先ほど大臣は、いや、低所得者に対しても様々な住宅政策としての支援があるんだ、だから、たとえ中高所得者に対しても支援があったとしても、低所得者に対しても支援があるんだという御答弁だったかと思うんですが、そもそも、先ほど申し上げましたように、高額所得者に対してこれほどの一種の補助金を、あるいは減税幅を与える必要があるのかということなんですね。

 それは公平かと考えればおかしいんじゃないかというふうに思うわけですけれども、大臣、もう一度、これは本当に公平と言えるのかということについてお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 今回の見直しでは、まず、所得要件を三千万円から二千万円へと引き下げることとしておりまして、本来、住宅ローンを組む必要がない高所得者による借入れや控除の適用が起こりにくい仕組みへと見直しをしております。

 また、住宅ローンについては、例えば、国税庁の統計によりますと、五百万円超六百万円以下の給与水準において最も住宅ローン控除適用者が多いなど、必ずしも高所得者のみが住宅ローンを利用しているわけではないと考えております。

稲富委員 確かに、三千万から二千万に減らしたというのは当然のことだと思いますし、従来よりも狭めているというのはそのとおりだと思います。

 ただ、二千万の方は一億のローンも組めるわけです。当然、頭打ちになって、そこまでの対象じゃないけれども、その方に対しての控除があるというのはおかしいというふうに思うわけです。だから、景気対策あるいは経済対策としても、公平性の観点からも、私も、この住宅ローン減税というのはやはり考え直すときが来ていると思うんです。

 昭和六十一年からずっとこれは続いている。創設は、若干、始まったのは、住宅補助という制度として昭和四十七年から始まって、もう五十年続いているんですね。景気対策、経済対策というのが、昭和六十一年からしても三十五年続いているんですね、途切れることなく。これをずっと続けるんですか。経済対策というのは一時的にやるものじゃないですかと私は思うし、やはり考え直すべきときに来ているんじゃないかと。私は住宅政策は必要だと思います、先ほど大臣がおっしゃったような。住宅政策は必要だけれども、このローン控除の制度については、やはり考え直すべきときではないかと思います。

 続きまして、住宅取得に関する贈与税の非課税措置というのが、今回の中でもまた延長されております。

 そこで、ちょっと質問なんですけれども、贈与税の非課税措置を、住宅取得資金に係る非課税措置を二年延長ということは、私は、贈与の非課税措置というのは政策としてありだと思います。同時に、今、同じように、教育資金に関しても贈与税の非課税措置の制度がある。同時に、結婚・子育て資金の贈与の非課税措置もある。これは、私は、政策として、やはりあると思います。いい制度だと私も思っています。

 ただ、今回の住宅取得に関して言えば、受ける側の所得は二千万まで受けられるというのに対して、教育資金は一千五百万、結婚資金、子育て資金については一千万ということで、住宅取得の方に対しては幅広く受けられるようになっている、非課税措置が受けられるようになっているということなんですけれども、なぜそこに差があるのかということをお伺いします。

鈴木国務大臣 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置は、子や孫が住宅の購入資金の贈与を受けた場合に非課税とする措置でありまして、所得要件を原則として二千万円以下としております。

 一方、先生からお話ございました教育資金や結婚・子育て資金に係る贈与税の非課税措置は、子や孫が一括して贈与を受けた場合に非課税とする措置でございまして、これは住宅取得等の場合とは異なり、これらの措置を使わずとも、例えば、結婚したときですとか子育てとか、そういう必要な都度贈与されてもこれは非課税であるということ等を踏まえまして、所得要件を一千万円以下としているところでございます。

 このように、それぞれの措置で制度の趣旨等が異なっているために、所得要件の水準についてもそれぞれの制度の趣旨等を踏まえ設定されているところと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 その制度の趣旨はもちろんそうなんですけれども、なぜ住宅が幅広く受けられるのか、所得要件がより広いのかということについて、やはり私は納得がいかないですね。むしろ、子育て世帯、あるいは教育資金、そういったところについての幅がなぜより狭いのか、所得要件がよりきついのかということの説明は直接はいただけなかったものと思います。私はそれを考えるべきだと思います。

 続きまして、賃上げ税制についてお伺いをしたいと思います。

 今回の最大の目玉ということで、岸田政権の目玉政策です。低い賃金が日本の経済の最大の課題であるという認識は、全く私も同じです。

 本当に驚きました。OECDの二〇二〇年の調査では、日本の一人当たりの年収は二十二位である、韓国は十九位ということで、日本より年収が四十万円ほど高いということ。これもよく言われていることですが、この三十年で米国は一・五倍になったけれども、日本は五%しか上がっていない。時給でいっても、この二十年で日本はマイナス八・八%、約九%、二〇一二年比でいえば二%増であるということ。非常に衝撃的な数字であります。

 しかし、他方で、何でこうなっているのかということなんですよね。今、企業は、内部留保を増やしてもうかっているということ。そして、コロナになって多少状況は今は違いますけれども、その直前期は人手不足だったわけです。人手がいないということが、あらゆる業種で私も言われました。普通に考えれば、人手不足であって、企業にお金があれば賃金は上がるはずだと思うわけです。なぜ賃金が上がらないのかということは、これは最大の課題だし、それに応えることがやはり政府の、私は必要なことだと思うんです。

 ただ、これまで様々、委員会、本会議でもありまして、私も答弁を見ましたけれども、なぜそれが上がらないのか、人手不足で、企業はもうかっているのになぜ上がらないのか。ここについて、是非、理由を教えていただきたいというふうに思います。

鈴木国務大臣 日本でなぜ賃金が上がらないのかということでございますが、我が国では、一九九〇年代のバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレによりまして、企業は投資や賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を減らさざるを得ず、結果として、需要が低迷し、デフレが加速し、企業が積極的に賃上げを行う環境ではなかったと考えているところでございます。

 こうした中、ある程度デフレでない状況というものがつくり出され、二%程度の賃上げを実現したものの、相対的に賃金水準の低いパートで働く方々の比率が上昇する中で、雇用者全体の一人当たりの賃金が伸び悩んでいる状況にある、そのように考えているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 資料三を御覧いただけますでしょうか。

 これまでなぜ賃金が上がらないのかという理由について、岸田総理を始め、質問主意書に書かれていることをちょっと抜粋をさせていただきました。今大臣が御答弁いただいたこととほぼ同じことです。なぜ上がらないのかということについて、下線のところで、雇用が増加する中で、相対的に賃金水準の低いパートで働く方の比率が上昇したこと、質問主意書に対しても、ほぼ同じような、賃金水準の低い女性や高齢者の労働参加が進んだことというふうにおっしゃっている。

 デフレが続いて、しかしデフレではない状況になったということですので、そのことが原因ではなくて、今、唯一おっしゃったのは、賃金水準の低いパートで働く方、あるいはその低い方が労働参加をすることが賃金を抑制した原因であるということをおっしゃったと思います。

 であれば、今回の対策、税制の対策というのはその対策になる、要するに低賃金の方に対する賃金を上げる政策になるというふうにお考え、そういうことでよろしいんでしょうか。

鈴木国務大臣 賃上げ、今一番大切な局面だと思っておりまして、政府といたしましては、賃上げに向けてあらゆる施策を総動員することにしております。

 まずは、賃上げ税制の拡充、それに加えまして、看護、介護、保育等の公的価格の引上げ、さらに、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備、さらには、パートで働く方々にも影響すると思いますが、最低賃金の引上げを目指す、そういうような政策を総動員して、賃上げの実現に向けてしっかり取り組んでいきたいと思っております。

稲富委員 もう一度伺います。

 今回の税制改正というのは、何の問題に対して、要するに賃上げ税制、何の問題を解決するため、それは賃金を上げるためということでしょうけれども、今おっしゃった、賃金が低い方の賃金を上げるためにこの税制は利くんでしょうか。そのことをまず伺います。

住澤政府参考人 今回の措置でございますけれども、大企業につきましては、継続雇用者全体の賃上げに着目した要件設定となってございますので、当然、パートの方々を含めて、賃金が必ずしも高くない方々も含めた、賃上げ全体に貢献できる制度設計になっているというふうに認識いたしております。

稲富委員 資料四枚目を御覧ください。ちょっと、済みません、見にくいんですけれども。

 正規、非正規、必ずしも非正規の方と正規の方という分類ではないとしても、賃金が低い方、低いであろうと思われる方が、より会社が大きい方に多いのか、より会社が小さい方に多くいらっしゃるのかということなんですけれども、この表を見ていただきますと、五百人以上の規模の会社の非正規の職員さん、従業員さんの割合というのは一番右下の三五・二%である、より小さい会社であれば、一番右にありますけれども、非正規の割合は四二・六%になるということで、正規と非正規の、まあ同一労働同一賃金になったとはいえ、全体としては非正規の方が賃金は低いというデータがあると思います。そういう意味でいえば、中小企業、それも小規模事業者の方がより非正規の割合が高いわけです。

 したがって、今、さっき局長さんがおっしゃいましたけれども、今回の税制は、先ほど来議論がありましたけれども、主に大企業です、やはり。七割が黒字なんだから、赤字は三割なんですから。すなわち、非正規の方がより少ないところなんですよ。数としても、中小企業あるいは小規模事業者と比べてもやはり少ないんですよ。だから、確かに、この税制をやることによって、今おっしゃった効果はありますよ。だけれども、最初大臣がおっしゃった、賃金が低い方が労働市場に入ってきたから賃金が下がるとおっしゃったけれども、それは全然、その原因に対する対応になっていないんじゃないですか、この税制は。黒字の企業の、もうかっている企業の非正規の賃金が低い方のところが減税措置になっているだけであって、賃金が低い方の賃金を上げる政策じゃないんじゃないですか。大臣、答弁お願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 税制につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、賃上げに向けて、政府としては、これまで大臣からも何度も御答弁申し上げておりますとおり、あらゆる施策を総動員するという姿勢で臨むこととしておりまして、この賃上げ税制の拡充に加えまして、看護、介護、保育等の公的価格の引上げ、それから中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備、また、補助金におけます中小企業向けの手当て、こういったものを通じて、中小企業において、パートの方々も含めてしっかりとした賃上げができるように、あらゆる施策を投入しているということでございます。

稲富委員 大臣、国があらゆる施策を投入してとおっしゃっていますけれども、国があらゆる施策を投入して賃金というのは上がるんですか、上がるとお思いですか。

 先ほど効果がどうかという質問が、ちょっと、どなたかあって、一定程度の効果があるであろうというふうにおっしゃいましたけれども、岸田総理、三%という数字まで出しておっしゃっていましたけれども、あらゆる施策を国が投じて、今回の税制でいえば、税の減税幅というのは全体として三千億弱ですよ、国全体の給与総額といったら二百四十兆とかですよ。そんな規模感で、その全体の給与を上げるということなんてできるんですかね。そもそも、こんな政策で賃金なんか上げられるんですかね。是非お答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 賃上げ、今とても重要なことでございまして、賃上げ、是非実現していきたい、こう思ってございますが、税制だけで賃上げをできるとは思っていませんし、それのみをもってすることはできないわけでございますので、先ほど来政策を総動員するというのは、税制も行う、それから、そのほかの、例えば、公定価格の引上げを行う、最低賃金の引上げを目指す、そうした様々な取組をやって、それによって賃上げの方向に向かっていこう、こういうことでございます。税制だけをもって賃上げを実現するという考えではありません。

稲富委員 私の趣旨は、大臣、税制もそうですけれども、補助金でもそうです。先ほど来ありましたように、赤字企業に対して、中小企業に対しては、様々な補助あるいは公定価格を引き上げることによって何とか上げようという政府の趣旨は分かります。だけれども、私は限界があるんじゃないかと思うわけです。なので、これはむしろ、本当に政府がここまで賃金に介入していくこと、あるいは労働市場に介入していくことが本当に国のためになるのかと私は思うんです。

 当初、賃上げ税制が平成二十五年に始まった当時は、もう政府がそこに介入をする、あるいは賃上げを財界に要請することについて相当抵抗があったと思いますよ。だけれども、もう八年たって、当たり前のようになって、毎年、当然のように、総理が三%という数字まで出して、是非期待すると、言葉は分かりませんけれども、賃上げを要請すると。国が賃金というものを介入して何か上げるということは私は非常に難しいんじゃないかと思うんです。

 もう一つ言えば、先ほどのローン控除もそうですけれども、あのローン控除は三十五年続いているんですよ、毎年一兆円弱あるいは九千億もの税金を使って。

 これからも、この二千億あるいは多額の税金を使って、そして、上がるかどうかも分からない、先ほど効果は一定あると言いましたが、私はそんなにないと思います。効果があるかないかも分からないところに二千億の税金を毎年突っ込んでいくのかと。私は、本当にこういうことをやっていて、日本の税金の使い方もそうですし、賃金が上がるのかというふうに思うんです。

 最後になりますが、やはり、これは何で上がらないのかという原因をもっとはっきりとした方がいいと思います、政府として。最後、是非御答弁お願いします。

鈴木国務大臣 なぜ上がらないかというのは先ほど申し上げたとおりで、繰り返しになりますので繰り返しませんけれども、一九九〇年代以降のバブルの崩壊の中で、企業の方も、こうしたマインドの問題としても、投資をするとか賃上げをするとか、そういう方に行かなかった、そして消費者の方もまた、将来不安等によって消費を抑え込んだ、こういうような両面をもって賃金が上がらなかったということが続いてきてしまっている。先ほどの答弁のとおりでございます。

稲富委員 どうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。

 先日の質疑に続いての質問の機会、ありがとうございます。慣れなく、戸惑う日々が続いておりますが、しっかりと勉強させていただいております。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問の方に移らせていただきます。

 先ほどからの質疑とはちょっと違うスタンスにはなるかと思うんですけれども、住宅ローン控除制度の見直しに関してお尋ねいたします。

 会計検査院の指摘により、今回、控除率を一%から〇・七%へ引き下げたのは存じておりますが、この控除率の引下げが住宅市場に与えるマイナスの影響に関してはどのようにお考えでしょうか。この控除率引下げにより、住宅購入を検討中の人が買い控え、住宅市場が冷え込むということは考えられないでしょうか。

鈴木国務大臣 今回の税制改正におきましては、会計検査院の指摘を踏まえ、先生のお話のように控除率の見直しを行う一方、新築住宅等について控除期間を十年から十三年に延長する措置を講ずることとしております。

 この結果、従来の制度では満額控除できていなかった中所得者層以下の納税者にとっては、控除期間が延長されることにより総控除額が増えるといった支援の充実につながる見通しとなっておりまして、買い控えが生じないよう配慮した仕組みとしているところでございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 確かに、控除期間の延長であったり床面積要件の緩和などの措置はありますが、これで十分なのでしょうか。もし、住宅市場が相応に冷え込んでしまった場合、今後、更なる緩和措置あるいは改善措置を検討していただくことは可能なのでしょうか。

 また、今回、逆ざやであるというのが理由で控除率を引き下げておりますが、もし、金利が上昇局面になり、逆ざやが解消されれば、再び一%へ戻すというようなこともあり得るのでしょうか。よろしくお願いいたします。

鈴木国務大臣 今後の住宅ローン控除制度の在り方についての御質問であったと思いますが、今回、制度を延長したこと等の結果、大規模な減税が継続する結果となっておりまして、与党税制改正大綱におきましても、「今後の状況を踏まえて必要な見直しを行う」とされているところでございます。

 そして、国、地方の厳しい財政状況等も踏まえて検討する必要があることから、控除率のみを取り出して見直しを議論するということは適切ではないのかな、こういうふうに思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 住宅は、本当に人生最大の買物です。そして、人生の幸福度に直結するものでありますので、是非、適切な税制、よろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 法人課税、オープンイノベーション促進課税の見直しに関してお伺いいたします。

 なぜ日本にはGAFAが生まれなかったのでしょうか。アマゾンは、ジェフ・ベゾス氏がインターネットによる物販の可能性に気づき、ゼロから一人で始めたものです。フェイスブックも、今はメタ社という名前に変更されましたが、ハーバードの学生であったマーク・ザッカーバーグ氏がルームメートとともに始めたものです。共に、今や時価総額で世界トップテンに入る企業でございます。アップルはトヨタの十倍の規模です。なぜ我が国にはアップルがないのでしょうか。日本にはスティーブ・ジョブズがいなかった、そう答えるのは簡単です。しかし、それでは前に進めません。

 今のオープンイノベーション促進課税だけで第二のアップルを生み出すことができるのでしょうか。ベンチャー企業育成支援のために、我が国の総合的な施策をお教えください。

岡本副大臣 お答えいたします。

 オープンイノベーション促進税制は、事業会社による一定のベンチャー企業への出資に対しまして出資の一定額の所得控除を認める極めて異例の措置といたしまして、令和二年度税制改正において創設されたものであります。

 さらに、今回、成長と分配の好循環の実現に向けまして、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進する観点から、設立十年以上十五年未満の研究開発型スタートアップを適用対象に追加するとともに、取得した株式の保有期間を五年から三年に短縮をするなどの拡充を行っておりまして、税制として十分な措置を講じられているものと考えております。

藤巻委員 大きな可能性を持つベンチャー企業を生み出すためには、フロンティア精神や個性を育む教育、起業しやすくする制度、再チャレンジを是認する社会の意識等、様々な要素が必要不可欠かと考えています。

 また、終身雇用、年功序列が浸透している我が国では、若者が起業し、挑戦しにくいという現状があると考えております。新卒で就職しなければ自分の希望する仕事に就けない可能性が高い、中途採用だと不利な条件になってしまうことが多いからです。起業し、うまくいかなければほかの企業に改めて就職をする、そういった将来がなかなか描けません。

 今申し上げたように、終身雇用、年功序列、採用時新卒至上主義の打破を含め、大きなイノベーションを起こすことができるベンチャー企業を生み出すために、更に今後どのような施策をお考えになっているのでしょうか。

岩田大臣政務官 スタートアップの育成に関しまして、今後の政策ということでの御質問でございました。

 本当に、今、委員からの御発言を伺いながら、私も大きくうなずくところがございました。

 日本がこれまで、非常に成長が十分にできてこなかった、そしてまた、人口減少など大きな課題がある中で、かつ、デジタル化であったり、若しくはグリーン化、こういった大きな課題に取り組んでいかなければなりません。もちろん様々な政策を進めていくことが大事でありますが、そういった中で、やはり現場で具体的に取組を進めていくという意味においては、このスタートアップが活躍をしていく、本当に一つでも多くそういった大きな企業が生まれてきて、この新しいイノベーションを進めていくということは極めて大事だ、このように私も考えておるところでございます。

 そういった中、岸田総理が本年の年頭の会見の中で、スタートアップ創出元年ということを申し上げまして、大規模なスタートアップの創出に取り組むというふうな発言をしたところでございます。政府としても、これから五か年計画の具体化なども進め、そして、スタートアップの支援を一層加速していく必要がある、このように考えているところでございます。

 今後、海外勢との競争に打ちかっていくべく、スタートアップに集中的に政策資源を投入をしていく。具体的には、株式公開価格の設定プロセスの見直しやリスクマネーの供給拡大によります資金調達の容易化、また、大企業人材のスタートアップでの活用やプロの起業家の創出促進による人材確保、そして、スタートアップのグローバル展開支援や海外投資家の呼び込みなど、本当に様々な政策を総動員をして、そしてまた関係省庁とも連携をして取り組んでいくということが重要だと考えております。

 そしてまた、先ほどもお話ございましたけれども、やはりスタートアップになかなかこれだけ増えていかない。ある調査によりますと、その理由として、やはり、失敗したときの不安であったり、あるいは周辺に、自分の周りにそういったものに、スタートアップに取り組んでいる人がいないというふうな、そういう現状があるようでございます。

 こういった、特に若い人たちを取り巻く環境といったものも改善をして、一人でも多くの方がその仕事の選択肢として起業といったものを考えることができるような、そういう環境整備といったものも是非必要だ、私もそのように考えているところであります。

 また、重ねてでありますが、経済産業省としましても、スタートアップが生まれて、そして育っていく環境の整備のために全力を尽くしていきたいと考えております。

藤巻委員 非常に前向きな答弁、ありがとうございます。

 時代が変われば、企業の新陳代謝が必要です。時代のニーズに合った企業が国内でどんどん勃興してこなければ、激化するグローバルな企業間競争に敗れてしまい、国益は毀損されます。

 新陳代謝を円滑に促し、促進する制度は必要不可欠です。起業し、イノベーションを起こし、世界に通用する企業をつくりたい、そういう企業で働きたい、若い世代がそんな大きな夢を見ることのできる制度の策定をお願いいたします。

 次の質問に移らせていただきます。

 賃上げ促進税制に関してお伺いいたします。

 先ほどからの質疑にちょっとかぶってしまう部分もあるんですけれども、現在、新型コロナウイルスの影響もあり、日本企業の雇用の七割、企業数では九割以上を占める中小・小規模企業での多くの企業が赤字に陥っています。こうした中小・小規模企業の中には、法人税を納めることのできない企業も多く存在します。

 こうした法人税が払えないような中小・小規模企業には、本当に減税の効果はあるのでしょうか。苦しい経営環境で倒産の可能性もある、そんな危機にある企業は、賃上げなどを実施できるのでしょうか。決して減税するばかりがいいとは考えておりませんが、賃上げするから減税ではなく、減税によって企業経営を立て直した上で、そこで初めて賃上げが可能であるように、順序が逆なのではないのでしょうか。

 企業が給与総額を一定程度引き上げた場合、税額控除が可能となるこの法案ですが、実質的に経営がうまくいっている企業のみが減税の恩恵を受けることができる、そういった事態が想定されますが、その部分に関してはどのようにお考えでしょうか。また、それに対する対策はどのように講じておられますでしょうか。

岡本副大臣 今般の賃上げ税制の見直しに当たりましては、企業の税額控除率を大幅に引き上げるだけではなくて、一定規模以上の大企業については、従業員、取引先などの多様なステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを税制措置の適用要件としておりますが、この大きな目的の一つは、こうした大企業と取引をする中小企業への還元を後押しする仕組みを実現するということであります。

 なお、御指摘のように、この税制措置のメリットを直接受けられない赤字の中小企業に対しましては、この税制の措置と併せまして、賃上げを行う中小企業へ補助金の補助率の引上げなど、予算面での取組を行っております。

 また、それに加えまして、下請対策の強化、公共調達における賃上げを積極的に行う企業に対する加点措置など様々な取組を講じることを通じまして、中小企業の賃上げに向けた環境整備に全力を尽くしてまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 一時的な目先の税優遇より、企業の将来的な成長、ひいては日本国全体の成長戦略を考えた政策を推し進めることが肝要かと考えております。

 先日もお話しさせていただきましたが、そのためには雇用の流動化を促進し、労働力を生産効率の高い分野や大きな経済成長をもたらす分野に移動させることが有用な政策の一つと考えています。引き続き御検討の方、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後の質問に移らせていただきます。

 住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置の見直しについてお伺いいたします。

 この法案では、非課税限度額が一千五百万円から一千万円に引き下げられております。生涯をかけて蓄えた資金を自分の子や孫に贈与し、その資金でマイホームを購入し、子や孫に幸せになってもらう、それを後押しする意義のある制度と考えておりますが、不動産価格が上昇傾向にある現状も鑑みて、限度額の維持や増額、あるいは適用要件の緩和など、そういった検討の余地はあるのでしょうか。

岡本副大臣 今、藤巻委員御指摘いただきましたように、この住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置は、高齢者から若年世代への資産の早期移転を通じて、裾野の広い住宅需要を刺激する観点から講じられているものであります。

 他方、本措置の非課税限度額を更に拡大することにつきましては、多額の贈与を受けることが可能なごく一部の富裕層のみが恩恵を受けることになることや、贈与税の過度の軽減は相続税を補完する贈与税の役割を弱めることになってしまうことなど、格差の固定化防止等の観点に留意する必要があるというふうに考えています。

 このため、今般の改正では、消費税率引上げに伴う反動減対策としての上乗せ措置はその役割を終えていること、加えまして、格差の固定化を防止する観点等を踏まえまして、非課税限度額を最大一千万円とした上で、適用期限を二年間延長することとしております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 確かに、今おっしゃられたように、格差の固定化を阻止するという意味においては納得できるんですけれども、一方で、祖父母や親から子へ、高齢者から若年層に資金移動を促し消費を喚起するという観点からは、この制度は有用であると考えております。

 先ほどの答弁と逆の話になってしまうんですけれども、贈与税の減税など、世代間の資金移動を促すような、そしてそれに伴って消費の喚起を活発化させる、そういったような施策は検討しているのでしょうか。

住澤政府参考人 相続税ですとかこの贈与税の課税の在り方につきましては、従来から、政府の税制調査会でありますとか与党の税制調査会におきまして、生前贈与をできるだけ円滑にしていくという観点に加えまして、相続税が持っている格差の固定化を防止する機能、これを十全に発揮させるという観点も踏まえて、諸外国の例なども含めて検討していくということが課題とされてきておりまして、そういった方向での検討が行われておるところでございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 消費が停滞する現在、高齢者層から若年層に資金移動を促し消費を喚起することは、低迷する日本経済へ十分な刺激策となり得ると考えております。また、人生の幸福感に直結する自宅購入のサポートをすることは、国家にとっても重要な命題の一つと考えております。是非、引き続き最善の制度を目指していただければと考えております。

 私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会の埼玉の沢田良です。

 財務金融委員会での質疑は二回目となります。本日も、この衆議院インターネット中継又はこの動画を御覧いただいている国民の皆様を意識して、しっかりと分かりやすくお伝えできるよう質問をさせていただきます。本日は、鈴木大臣ほか関係省庁の皆様、委員部の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 今回、住宅ローン控除率の制度見直しについて提案がありましたが、住宅ローン控除は租税特別措置の一つです。仕組みとしては、経済政策や産業政策などの政策的な見地に基づいて、税法改正しないで、特別法で税負担を軽減、免除、逆に重くする措置を取れます。大きくは、法人税率の特例、税額控除、特別償却、準備金等の四種類のものと分かれると思います。

 質問です。

 この四種類に分かれる分類の直近の適用額を各々教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 直近の適用実態は、令和二年度の適用実態調査の結果でございます。これに基づきまして今の四類型について申し上げますと、まず法人税率の特例につきましては、適用件数は九十九・二万件、適用額は三兆九千五百二十五億円でございます。また、税額控除につきましては、適用件数は十四・六万件、適用額は七千百二十八億円でございます。次に、特別償却につきましては、適用件数は四・三万件、適用額は八千百三十四億円でございます。最後に、準備金等につきましては、適用件数は〇・四万件、適用額は六千七百八億円となっております。

沢田委員 ありがとうございます。

 適用額だけ見ると、突出して法人税率の特例が高いというふうに見受けられます。

 ここで質問です。

 どのくらいの企業が適用を受けているのか、教えてください。また、租税特別措置によって税収がどれぐらい減っているのかも併せて教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 法人税率の特例についてのどのぐらいの企業が適用を受けているかという御質問と受け止めましたが、これにつきましては、適用件数ベースで九十九・二万件ということでございます。

 なお、突出して適用額が大きいという御指摘でございましたが、これは、法人税率の特例が適用されている所得金額のベースで申し上げておりますので、減税金額そのものとなりますと税率等が更に作用してくることになりますので、そこについてはまた別の話になるということでございます。

 そして、お尋ねのございました法人税関係の租税特別措置の減収額でございますが、令和二年度の実績につきまして、一定の前提を置いて試算いたしますと、一兆五千八百億円程度となっております。

沢田委員 ありがとうございます。

 先ほどの法人税率の特例の適用額が突出して高かったということは、説明、ありがとうございました。

 ただ、一部の業界や企業への優遇措置であるとか、自民党への献金額と相関性があるなど、不公平感への、疑念の声が生まれているのも事実です。租税特別措置における問題は、経済政策、産業政策などの政策的な見地で判断という曖昧な裁量で減税を簡単に行えてしまっているということに考えます。

 大臣に質問です。

 税の在り方として、簡素、公平、中立という観点からも、公平性をゆがめてしまっていると感じますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 租税特別措置につきましては、特定の政策目的を実現するために有効な政策手段となり得る一方で、税負担のゆがみを生じさせる面があることから、その必要性でありますとか政策効果をよく見極めることが重要であると考えております。

 その上で、毎年度の税制改正プロセスにおいて各省庁が税制改正や既存制度の延長を要望する場合には、その制度の効果等について、まずは、政策を所管する各省庁において、一部の企業や大企業に適用が偏っているかどうかも含め、しっかりと説明責任を果たしていただく必要があると考えております。

 引き続き、租税特別措置につきましては、その必要性や有効性をよく見極めた上で、不断の見直しを行っていくことが重要であると考えております。

沢田委員 大臣、ありがとうございます。

 そもそもなんですけれども、私は、政治判断で一部の業界や特定の産業を支援するということ自体が、市場のゆがみを生んでも大きな成果は上げられていないと、懐疑的な部分もあります。そして、住宅ローン控除などの租税特別措置が、一部の方や一部の企業などにのみ一・六兆円もの莫大な税金支払いが免除されている現状というものは、公平公正の観点からも見直しが必要と考えております。

 日本維新の会は、昨年末に法案提出しました消費税五%への減税、これについては、コロナ対策も含めて、全ての個人、全ての会社に公平公正に恩恵がありますこともつけ加えさせていただきます。

 続きまして、賃上げ促進税制というものがありますが、適用要件として、大企業ならば継続雇用者の給与総額が対前年度増加率三%以上、中小企業は雇用者全体の給与総額が対前年度増加率一・五%以上とあります。

 質問です。

 ここ最近は、コロナ禍において雇用調整助成金が積極的に活用されている部分もありますが、この税制における雇用調整助成金の扱いについて教えてください。また、控除率の上乗せ要件に教育訓練費というものがありますが、どのような理由で入っているのかも教えてください。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 一点目の雇用調整助成金の扱いでございますが、これは、助成金の支給の有無によって不公平な扱いにならないようということでございまして、税制要件の適用の可否を判定する際には、例えば、前年度に助成金を受給し、適用年度に受給していない場合、助成金を前年度の給与総額から除いてしまいますと、控除してしまいますと、適用年度の給与総額が増加したというふうに判定されてしまいますので、そういうことにならないように、雇用調整助成金の支給額を給与総額に含めるという扱いでございます。

 一方、税額の控除額を算定する際には、これは、法人の自己負担ではない雇用調整助成金の額が入ってしまいますのは適当ではございませんので、これは雇用調整助成金の支給額を給与総額に含めないという扱いでございます。

 二点目でございますが、教育訓練費に係る要件が上乗せ要件になっているという理由でございます。

 持続的な賃上げを促すという観点で、企業が従業員や人材への投資を行い、生産性を向上させるということが重要であるということでございまして、こうした上乗せ要件、平成三十年度から設けているところでございます。

 今般の改正におきましても、同様の目的から本要件を維持し、引き続き企業の人材投資を後押ししていくこととしております。

沢田委員 雇用調整助成金の問題は、是非企業の皆様にも分かりやすく啓発していただければと思います。

 また、教育訓練の方も御説明ありがとうございました。

 そもそもなんですけれども、質問になります。なぜ日本で賃金の増加が起こっていないと考えられているか、是非教えてください。

岡本副大臣 お答えいたします。

 我が国では、一九九〇年代のバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレによりまして、企業は投資や賃金を抑制し、また、消費者も将来不安などから消費を抑制いたしました結果として、需要が低迷、そしてデフレが加速をいたしまして、企業が積極的に賃上げを行う環境ではなかったというふうに考えています。

 こうした中で、政権交代以降、デフレではない状況をつくり出しまして、二%程度の賃上げを実現をいたしましたけれども、近年、この賃上げ率が再び低下傾向になっているものというふうに承知をしております。

 政府といたしましては、成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現するため、あらゆる施策を総動員をして、賃上げに向けてしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。御認識、確認させていただきました。

 更に質問させていただきます。

 今回、賃上げ促進に向けて、一部大企業に向けて、特にマルチステークホルダーへの配慮という新しい文言がついたのですが、具体的にどのような波及効果を狙っているのでしょうか、教えてください。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 マルチステークホルダー方針に関する要件でございますが、資本金が十億円以上、従業員数が千人以上の大企業を対象に、賃上げや人材投資を行うこと、取引先と適切な関係を構築することなどの方針の公表を求めることとしてございます。

 こうした方針の公表を税制の適用要件にすることは本税制が初めての試みでございまして、本要件を通じまして、大企業の賃上げを促すことはもちろん、株主のみならず従業員や取引先を含めたマルチステークホルダーに配慮した経営の実現を通じた企業価値向上が促されることを期待しているところでございます。

 こうした公表をするということが非常に社会的に重要だというふうな認識を持たれるというような責任が生じるというふうに認識してございまして、具体的にどういった内容をどのような形で公表を求めるかなどの制度設計の詳細は、引き続き真剣に検討してまいりたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 そのような形で賃金制度の硬直性を緩和する効果がもしできたらというふうに思う反面、平成二十五年度から複数回にわたり改正をしながら賃上げの取組をしてきたにもかかわらず、安定的な賃上げという結果につながっていないことを鑑みますと、見ている方向が少し違うと感じる部分がございます。

 私は、賃金制度の硬直性は、終身雇用制度と大変強固な解雇規制による弊害と考えております。雇ったらずっと雇用しなければならないという仕組みならば、給与を上げるにしても、長期にわたるものを想定してしまい、二の足を踏んでしまうというのは当たり前かと思います。

 また、岸田総理の答弁でも、パートの方が増えている。これもやはりこういった強固な解雇規制により、どうしても終身雇用では雇えないけれども、パートや非正規で雇おう、こういうインセンティブが働いてしまっているという状況も私は指摘したいと思います。

 ただ、金銭解雇などの解雇規制の緩和を言うと、首切り法案だ、こういうことを言われるんですね。その都度議論すらしなくなってしまう今までの政府の経緯もありますが、私はずっとおかしいと思っていたのですが、大企業で働かれている方々がこの解雇規制というものを特に強く言われている部分があるんですけれども、労働者の中では約三〇%しかいません。役所の方が約六%、その他、六四%の方々が中小零細企業でお勤めになり、非正規、パートも込みですね、労働環境の中で簡単に解雇をされてしまう。こういう見過ごされてしまっている現状を考えると、その六四%の方にとって金銭解雇は労働環境の改善にもなると私は考えております。にもかかわらず、弱い側の労働者に寄り添う政治が今までなぜ機能してこなかったのか。

 大臣に質問です。

 賃上げを目指して今日までいろいろな試行錯誤が続いてきましたが、解雇規制の緩和による労働市場の流動性を上げるというチャレンジは行ってきておりません。労働市場の流動性と賃金制度の硬直性について、大臣の御見解を教えてください。

鈴木国務大臣 岸田内閣におきまして、賃上げは、成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現するための重要課題の一つとまず認識をしております。そのため、政府として、賃上げに向けてあらゆる施策を総動員することとしております。

 まずは、今ほど経済産業省から御説明がありました、マルチステークホルダー宣言を要件に含む賃上げ税制の拡充に加えまして、看護、介護、保育等の公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備などの施策にしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

 財務省としても、引き続き、関係省庁と連携して、持続可能な賃上げの実現を目指してまいります。

 なお、御指摘の労働市場の流動性や賃金制度の硬直性といった我が国の雇用を取り巻く環境について、財務大臣という立場でお答えする立場にはございませんが、デジタルなどの成長分野への労働移動の円滑化については、自律的な経済成長を実現していく上で大変重要である、そのように認識をしております。

沢田委員 ありがとうございます。

 今までやったことのないチャレンジでもあり、やはり、この日本の終身雇用、強烈な解雇規制、こういったところを変えていけるように、是非、大臣含めて、総理にお願いをしたいと思います。

 次の質問に行かせていただきます。

 先ほど藤巻議員からも指摘がありましたが、住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置を現行の一千五百万円から一千万円に減額するという提案について、今の日本の問題は、先ほども副大臣がおっしゃったように、デフレの状況があったという話をされておりました。

 やはり、資産が市場に出てこない、固定化してしまっている、この状態に対して、総需要不足に陥り、インフレターゲット二%目標で大規模金融緩和を十年近くしても、一向にインフレ率は二%に届く勢いがないということになります。

 ここから質問です。

 贈与税上の問題も当然あると思うんですけれども、住宅を購入するという消費の目的に対する贈与というものは積極的に緩和をすべきと考えますが、どうでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の改正を行っておりますが、これについては、消費税率引上げに伴う反動減対策として、消費税率一〇%が適用される住宅の場合について最大千五百万円までの上乗せ措置が講じられてきたものでございまして、今般の改正では、消費税率引上げに伴う反動減対策としての上乗せ措置はその役割を終えていることに加えまして、格差の固定化を防止する観点や、課税の公平性の観点などを踏まえまして、非課税限度額を最大一千万円とした上で、適用期限を二年延長することとしております。

 この非課税限度額を更に拡大するということにつきましては、多額の贈与を受けることが可能なごく一部の富裕層の方々のみが恩恵を受けることになることや、贈与税の過度の軽減は相続税を補完する贈与税の役割を弱めることになることなど、格差の固定化防止等の観点に留意する必要があると考えております。

沢田委員 時間が来ましたので、質問をちょっと二つほど飛ばさせていただきます。準備いただいた関係省庁の皆様、御準備ありがとうございました。申し訳ございません。

 最後になりますが、先ほどの、やはり大臣にお願いした部分、解雇規制の緩和について、私たち日本維新の会は、徹底して、これからの未来につなげていく大きな提案だと考えております。是非、大臣含め、今日いらっしゃる皆様方にも、新しい提案として考えていただき、積極的に未来に新しい状況を残せるように動いていただければと思います。

 以上で質疑とさせていただきます。

 日本維新の会、埼玉の沢田良でした。どうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、赤木正幸君。

赤木委員 日本維新の会、赤木正幸です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 今回、二回目の質問、前回も同じことを言いましたが、今回、生まれて二回目、こういった質問ですので、是非よろしくお願いいたします。

 前回は、ちょっと初めてということもあって、鈴木大臣への質問をあえてしていなかったんですが、今回、勇気を振り絞って質問させていただきますので、こちらについてもよろしくお願いいたします。

 では、早速質疑に入らせていただきます。

 私、前回の質問では、ポストコロナにおける日本の成長の重要性を強調した質問として、成長とか、あと投資といった、未来に向けた質問をさせていただきました。

 今回は、私のある意味バックグラウンドでもある不動産に関する質問として、具体的には、住宅ローン控除制度の見直しについて質問させていただきます。先ほどの下条先生、稲富先生に引き続き、また住宅ローン控除制度かということになりますが、私自身、不動産会社を起業したこともありますので、少し切り口が変わった質問になるかと考えております。

 ちなみに、私は、父親も不動産業を営んでいまして、七十三歳、現役の不動産会社の人間なんですが、この不動産業というのは、やはり、政治家と同じぐらい、生涯にわたって現役を続けられる職業ですし、たくさんの方たちの生活とか人生に影響を与えられる職業と私自身も考えております。

 さらに、この住宅ローン、これはマイホーム取得の非常に重要な要素ですし、不動産ビジネスにとっても、これは言うまでもなく非常に重要な要素を持っています。また、あと、定住者を増加させるという意味においても、やはり自治体にとっても非常に重要な論点と考えていますので、かなり重視して、今回の質問にさせていただきます。

 まず、この住宅ローン控除制度の見直しについて幾つか質問させていただく大前提として、そもそものこの制度の趣旨、目的について議論させてください。

 私は今、四十六歳なんですけれども、この住宅ローンの控除制度は年齢より長く続いている制度というふうに認識しております。当然、国会議員としては、所与のものとして当然視するのではなくて、現時点において、まだ必要なのか、今後も必要な制度なのかということを再検討することは無駄ではないというか、必要と感じております。

 一方で、私自身、不動産事業者として考えた場合に、これはなくてはならない制度として認識していますし、一方で、消費税引上げの影響の平準化といった機能は十分に果たしてきているとして評価しています。

 当然、制度というものは状況によって変わっていくものではあるんですが、一方で、制度が継続していくのか、継続蓋然性ということも、これは非常に重要と考えております。不動産ビジネスというのは、そもそも一年単位でやっていくものというよりかは数年単位でやっていきますし、本制度のある意味主人公でもある住宅を購入される方というのは、ライフプランとして、年単位、それどころか数十年単位でこの制度を見ながら、生活、人生設計を立てられているというふうに認識しております。

 前置きがちょっと長くなりましたが、最初の質問として、この住宅ローン控除制度のそもそもの趣旨や目的、そして今後の継続可能性について、鈴木大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 現行の住宅ローン控除制度でありますが、この制度は、そもそも、先生もお触れになりましたけれども、先生がまだ生まれる前の昭和四十七年度税制改正で創設された住宅取得控除、これに代わるものとして、住宅ローン残高の一定割合を控除する制度として昭和六十一年度税制改正で創設されたものであります。

 その目的とするところは、住宅取得者の初期負担を軽減をし、住宅取得を促進すること、そして、住宅建設の促進を通じた内需の拡大等に資すること、これを目的として創設されたものでございます。

 今後の住宅ローン控除制度の在り方につきましては、今回の税制改正において、我が国の経済状況も踏まえ、控除期間につき、当面の措置として上乗せ措置を講じる等の見直しを行っている、その趣旨も踏まえながら与党の税制調査会において議論をし、それを受け、政府としても適切に対応していきたいと考えております。

赤木委員 ありがとうございました。

 住宅ローン控除制度に対する鈴木大臣のお考えがよく分かりました。まさに、マイホーム取得の促進とか住宅投資の活性化を目的にされた制度として、今後も一定の役割を果たし続けることも理解いたしました。

 一方、本日はちょっと時間の関係もあって質問とはしませんが、先ほど稲富先生も触れられていました、不動産価格の上昇の場面において必要なのかとか、こちらも下条先生がもう真正面から切り込まれましたが、中高所得者への優遇じゃないか、こういった部分の議論については私も非常に関心がありますので、折を見て質問させていただきたいと考えております。

 では、次の質問になるんですけれども、この住宅ローン控除制度の見直しの中でも、特に控除率、このパーセンテージが引き下がっていることについて、これは数年前に会計検査院から報告を受けたことへの対応につながっているのかと認識しています。

 素人考えでいくと、一%を切る住宅ローンが出てきた瞬間に逆ざやになる可能性があるというふうに思う一方、とはいいながらも制度というのはそう簡単には変えられないということも、皆さん、私も含め、住宅ローンを使われる方たちも理解しているとは思っております。

 今回は金利が下がったことに対しての変更と認識しているんですが、今後、例えば金利が上がった場合、まだこの制度があった場合に、この控除率のパーセンテージが変更される可能性もあり得るのかとは考えています。こういった制度の予見性というか、制度の継続性とか、今後どうなるかというところを担保する意味でも、次の質問をさせていただきます。

 今回の住宅ローン控除制度の見直しの発端、若しくは理由について、発覚してから見直しに至るまでどういった手続があったか等について、財務省に御質問させていただきます。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の控除率の引下げに至る経緯についてのお尋ねでございますが、会計検査院から令和元年十一月にいただきました平成三十年度決算検査報告におきまして、住宅ローンの借入金利が一%を下回るケースが相当程度あるということで、そうした場合には、毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払い利息額を上回ることになることから、住宅ローンを組む必要が必ずしもないのに住宅ローンを組む動機づけになったり、あるいは、住宅ローン控除特例の適用期間が終了するまでは住宅ローンの繰上げ返済をしない、そういった動機づけになったりすることもあるといった指摘があったことを受けて、見直しをすることになったものでございます。

 この見直しにつきましては、令和三年度の税制改正のプロセスにおきまして、与党の税制調査会においても、この会計検査院からの指摘を踏まえて御議論をいただき、ちょうどコロナ禍の真っ最中ということもございましたので、次の令和四年度税制改正において見直すという方針をお示しいただいた上で、国土交通省、関係業界とも調整を行った上で、今回の税制改正で控除率の引下げを行うということになった経緯でございます。

赤木委員 ありがとうございます。

 ただ単に、金利が下がるだけで判断されているわけではない、その後に様々な手続を経て、制度の公平性を担保されている、努力が行われているということは理解させていただきました。

 この制度、非常に重要であることに加えて、国民だけではなくて、事業者からもこの行く末が非常に注視されている制度と認識しておりますので、今後の方針変更等については、できるだけ見やすい方法を検討していただければと考えております。

 次の質問に移らせていただきます。

 今回の住宅ローン控除制度の見直しにおいて、カーボンニュートラルの実現に向けた措置として、住宅性能などに応じた借入限度額の上乗せ措置が提案されていると認識しております。

 これは、再生可能エネルギーの固定買取り制度、いわゆるFIT同様に効果が期待されると私自身も考えているんですが、一方で、どういった住宅であれば、この住宅ローン控除制度の認定住宅、若しくはZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅となるのか。マイホームを購入を検討されている国民の皆様だけではなくて、関連した事業を行う方たちにも周知する必要があると考えております。

 特に、既存住宅、いわゆる中古住宅は、これまでの修繕履歴とか改修履歴というものが日本はなかなか備わっていないものが非常に多いと認識していますので、混乱が生じる可能性もあるかとちょっと懸念しているところです。

 そこで、質問になりますが、住宅ローン控除制度の見直しにおけるカーボンニュートラルの実現に向けた措置について、認定の基準や認定方法、これを、新築住宅、既存住宅の両方について、国交省の御見解をお伺いいたします。

塩見政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の税制改正におきましては、カーボンニュートラルの実現に向けまして、低炭素住宅や長期優良住宅として認定を受けた住宅につきまして、ローン減税においてより優遇した支援が行われるということになってございます。

 この認定の手続でございますけれども、これは、必要な書類を都道府県等の所管行政庁に提出をしていただいて、認定の基準に適合する確認を受けていただくということになります。

 この認定の基準でございますけれども、これを、税制をより多くの方に使っていただくためには、この認定の基準をより御理解いただくということは確かに重要でございます。

 認定の基準の考え方でございますけれども、まず、低炭素住宅につきましては、高い省エネ性能を有しているということに加えまして、節水とか木材の利用など低炭素に配慮した措置、これが講じられているということを基準といたしております。さらに、今年の秋からは、求めます省エネ性能の基準を引き上げるということにいたしておりますし、また、地球温暖化対策計画等の改定を踏まえまして、再生可能エネルギーの導入を必須の要件にするといった改正も予定をしてございます。

 一方、長期の優良住宅につきましては、これは、一定の消費性能に加えまして、省エネ性能に加えまして、耐震性、それから柱などの防腐、防水対策、さらには維持管理の計画をきちんと策定しているというようなことで、多世代にわたって良好な状態で使用するための措置、これが講じられていることが基準になってございます。今年の秋からは、求める省エネ性能の基準の引上げも予定しているところでございます。

 こうした認定基準あるいは見直しにつきまして、ホームページや講習会等を通じまして、分かりやすい周知に努めてまいりたいと思います。

 なお、先生から、既存住宅と分けてというお尋ねもございました。

 基本は、新築も既存住宅も同じような手続ということでございますけれども、既存住宅の場合には、建設をした当時の設計の図書と、それから建物の現況、これを照らし合わせるということが別途必要になります。そのための手続なども明確にして周知をさせていただいているところでございます。

 既存住宅についても、認定の手続が円滑に行われますように取り組んでまいりたいと考えております。

赤木委員 ありがとうございます。

 相当に詳細な基準や方法を準備されているということを認識いたしました。

 せっかくの制度ですので、国民だけじゃなくて、事業者に向けたこういった周知プログラム等も既にされているとのことですが、私も、不動産バックグラウンドを持つ議員として、何かしら御協力させていただければと考えております。

 ちょっと時間が迫ってきているので、最後、一つだけ質問させていただきますと、このカーボンニュートラルに向けた措置が、購入限度額の上乗せ金額が二年先になると減っていくという、この減っていく措置期間、差が生じる措置期間があると考えているんですが、これについてはどういった趣旨とか意図、効果を期待して設けられたかというところを、財務省の御見解をいただければと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 認定住宅でありますとかZEH水準省エネ住宅等につきまして、借入限度額の上乗せ措置を講ずることといたしておりますが、御指摘のように、令和四年分、五年分の入居分と、令和六年分、七年分の入居分につきましては借入限度額が異なる、そういった制度になってございます。

 これにつきましては、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けまして、省エネ性能等の高い住宅の普及をできるだけ早期に促進していくという観点から、四年間、制度は延長いたしますけれども、その中で、二年後にこの制度の内容を切り替える、こういった仕組みにさせていただいているところでございます。

赤木委員 ありがとうございました。

 私の持ち時間も参りましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 国民民主党の岸本周平です。

 早速質問に入らせていただきます。

 今日は賃上げ税制について私も質問したいと存じますが、まず最初に、これは租税特別措置であります。租税特別措置、今回の所得税法等の一部改正法案は租税特別措置の改正が多うございます。つまり、抜本的な大きな改革がないということの裏腹でもあるんですけれども。

 じゃ、そもそも租税特別措置というのはあった方がいいのか、なかった方がいいのか。税制はいろいろな基本原則がありますけれども、簡素というのがやはり大きな眼目であります。簡素という観点からすれば、租税特別措置はない方がいいわけであります。租税特別措置というのはたくさん数があります。所得税にもあります。主として法人税であります。

 実は、ここに今持っていますのは、租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書。これは大変評判が悪かった民主党政権のときにできた画期的な政策の一つでありますけれども、これは全ての租税特別措置についての適用実績を毎年、全て、業種別、資本金別で網羅した資料であります。これは宝の宝庫です。

 同僚議員の皆さん、是非、これは一日で読めますから。めちゃめちゃ面白いです。どの業種がどれだけ使っているか、適用額が資本金別で全部入っています。これで、租税特別措置が本当に役に立っているのか役に立っていないのか、これも一目瞭然であります。役に立っていないのはたくさんあります。ほとんど適用のないものもあります。

 これはいろいろな業種があります。租税特別措置、これは野党の先生方は余り御存じないかもしれませんが、自民党の同僚議員の皆さんは党税調で一年生のときから経験をされています。いろいろな業界団体がこの租税特別措置に群がってまいりまして、これをいろいろな業種、業界団体が、租税特別措置を延長してもらう、あるいは新たに獲得するために、年末になりますと情熱を燃やされるわけでありまして、これがまた与党の代議士の醍醐味であります。私も、与党は三年しか経験しておりませんが、やはり与党になりたいです。

 与党になりますと、こういう政策をツールとして、いろいろな業界団体のもちろん生の声も聞けるわけであります。お悩みも聞ける、苦労も聞ける、そういう意味では、決して私は全て否定しているわけではありませんけれども、それでも、これを見ますと、何十年も前からあるけれども余り適用されていない、あるいは、非常にごく一部の業種に限っている、場合によったら、件数が少ないけれども金額が多いということは、ある特定の会社に偏っているのかもしれません。そういうことが全部分かるんです。

 したがいまして、租税特別措置は基本的にない方がいいというのが財務省主税局の住澤局長のモットーであります。主税局はそうなんです。法人税率を引き下げるときには課税ベースを拡大する、これはグローバルスタンダードなんです。法人税率を国際競争で下げてきましたけれども、そのときはどの国でも課税ベースを拡大するんです。課税ベースを拡大すれば、税率を下げても税収が減りません。そういうことなんです。

 したがって、日本でも、これまで法人税率を下げるときにはこの租税特別措置を減らしていく、課税ベースを拡大するということとの裏腹でやってきましたので、財務省主税局と経団連の税金の担当者は、そこでマクロですごくしのぎを削ります。そういうことなんですね。租税特別措置を減らす代わりに、その代わり税率も下げましょう、財源をニュートラルにしましょうというのが大原則であります。

 また、そのような改革がないときであっても、租特の中で仮に新しい租税特別措置をつくるなら、スクラップ・アンド・ビルドという考え方がありまして、件数も財源も、いや、いいですよ、経済産業省さん、こういう新規の要求があるのであれば、あなたの省の中で使っている減税の金額、財源を出してくださいと。古くて要らない租税特別措置はやめてください、そのことでブレーキをかけるといいますか、財政規律を守ってきた。これが租税特別措置の基本的な考え方であります。

 租税特別措置にも準備金とか特別償却とか、いわゆる課税の先延ばしだけで、いずれ国庫に戻ってくるような制度はまだ罪が軽いのでありますけれども、税額控除してしまう、戻ってこないというようなものについては、やはりこれは財源を確保して、スクラップ・アンド・ビルドでつくってくださいということになっています。

 さて、そこで、今回の賃上げ税制、法人税の税制の改正による減収額、これが、法人税だけ見ますと大体約一千億円減っています。丸々減収になっているんです。もちろん賃上げ税制というのはもっと大きい減税額です。二千億超えますからね。これは前年の改正と比べての減収額ですから、ほとんどが賃上げ税制です。

 大臣にお聞きします。財務省は、租税特別措置に関するスクラップ・アンド・ビルドの原則は放棄されたんですか。

鈴木国務大臣 租税特別措置につきましては、特定の政策目的を実現するために有効な政策手段となり得る一方で、税負担のゆがみを生じさせる面があることは認識をしているところでございます。

 そのために、岸本先生が御指摘のとおり、措置の必要性や政策効果をよく見極めた上で、ゼロベースで見直しを行うことや、措置の創設、拡充を行う場合には財源を確保することが重要であると考えております。

 その上で、今回の税制改正における賃上げ税制の抜本強化については、成長と分配の好循環の実現に向けて、企業に積極的な賃上げを促す観点から講じた措置でありますが、税制改正全体として財源を確保できていないことも事実であります。

 今般の改正に係る財源の在り方につきましては、今後、企業の賃上げの状況も踏まえながら、次年度以降の企業関係租税特別措置の見直しの中で、関係省庁とも相談してまいりたいと考えております。

岸本委員 ありがとうございます。スクラップ・アンド・ビルドの考え方を堅持していただいているということをお聞きしまして、安心をいたしました。

 そこでです、同僚議員の皆さん。この賃上げ税制、今までの審議を聞いていると、何か、いかにも日本政府が、この賃上げ税制は、もちろん税制だけではないけれども、効果がある、ずっと七年間やってきましたというようなたてつけの御説明をされていますけれども、同僚議員の皆さん、だまされちゃ駄目ですよ。本当にそうなんですかということなんです。

 実は、令和三年の税制改正では、この賃上げ税制は縮減されているんです。縮減されているんですよ。長いことやってきても効果がないとお考えになったのか、あるいは、さっき言ったスクラップ・アンド・ビルドというのがございますから、新しい租税特別措置の財源が要るために、この効果が余りないかもしれないと野党の我々は言っていますけれども、賃上げ税制を縮減して、そこで財源を出して、租税特別措置の新たな柱を立てた。そういうことなんです。

 賃上げ税制は、そんなに一貫して、日本政府が、すばらしい、これで賃上げしましょうといって続いてきたわけじゃないんです。去年は縮減しているんです、これは大企業の分ですけれども。大企業が結構金額が多いですから、大企業を縮減すれば財源が出る、まさにスクラップ・アンド・ビルドができる。その程度のものなんです、扱いとしては。日本政府としてはそう考えてきたんです。

 そのことは、本当に、我々財務金融委員会としては認識をした上で、審議をしていかなきゃいけないと思います。

 それで、本当にどうなったんでしょうかね、令和三年度、この賃上げ税制を縮減したのは。政策効果を検証されたんでしょうか。その後、今回はある意味減税額を大きくして、復活をされたということであります。

 これは効果をどのように検証されたかをお聞きしたいと思いますけれども、減税額が小さいから効果が薄かったとお考えになって、だから、減税額さえ増やせば効果があると、去年は縮減したんだけれども、今年は減税額をばらまけば効果があるというふうにお考えになったのか。その辺の効果の検証はどうなさっていたのかということなどについて、財務省の、財務大臣の御見解を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 岸本先生御指摘の令和三年度の税制改正におけるこの賃上げ税制でございますが、これは、ポストコロナに向けて、新たな人材確保や人材育成を促しつつ、第二の就職氷河期を生み出さないようにする観点から、大企業向けの賃上げ税制について、それまでの継続雇用者に着目した要件を見直して、新規雇用者に対する給付を一定割合増加させた企業に税額控除を適用するという要件に改正したところでございます。

 効果のお話がございましたが、租税特別措置の適用実態調査も参考にしつつ、効果の把握に努めており、賃上げ税制が創設された平成二十五年度から令和二年度までの実績については集計、公表をしているところでございます。

 令和三年度改正後の賃上げ税制については、実態の把握や政策効果の検証が十分にできているわけではありませんが、令和四年度税制改正においては、成長と分配の好循環を早期に起動させ、分配政策として持続的かつ積極的に賃上げを進めていただく観点から、税制の抜本強化を行うこととしたところであります。

 政策効果の検証につきましては、政策評価などを含め、引き続き検討してまいりたいと考えております。

岸本委員 今、大臣のお答えの中で明快にはおっしゃっていただけませんでした。逆に、令和三年は、新卒の初任給ですね、初任給を上げることに対しての税制改正に変えましたと。これ、今年はないんですね。

 何で令和三年だけ新卒の初任給、これは簡単なんです。減税額がほとんどないんです。新卒の初任給アップについての租税特別措置の減税額は百億円程度です。ほとんどないです。その結果として、一千億円の財源が出てくる、そういうことだったんです。

 スクラップ・アンド・ビルド、そのための理屈が新卒の初任給引上げということで、結局、継続的な雇用についてのインセンティブは大企業についてはなくしてしまって、そこで捻出した財源をいわゆる開発促進税制の財源に充てたんですよ。その程度のものとして認識されているんです、この税制はそもそも。

 これはもちろん、財務大臣も苦しい答弁の中でおっしゃいました。トータルのいろいろな政策を全部総動員して、全部総動員してやっていくんです、税だけではできません、そういう御見解、まあ分かっていらっしゃるということだと思います。

 岸田内閣、賃上げ税制で何か鬼の首でも取ったように言っていますけれども、政府自体がその程度のものだとしか認めてこなかった税制であるということは、私たちはしっかりと認識をすべきだと思います。

 それで、時間がないので質問を絞りますけれども、結局、大臣もおっしゃったように、最低賃金の引上げあるいは下請の取引の適正化、いろいろなものをやりましょうという中でお願いしたいのは、例えば、私たち国民民主党が提案しているのはこういうことです。

 法人税は、赤字企業、六割の赤字企業には利きません。だったら、固定資産税はどうですか、法人事業税の外形標準の法人事業税はどうですか。これは総務省管轄だとおっしゃるかもしれない。

 更に言うならば、社会保険料が一番大変なんですよ、中小企業。皆さん、現場で汗をかいている同僚議員は一番分かると思います。中小企業が一番大変なのは社会保険料なんですよ。だからどうしても、パートさんを雇ったり、人を削ったり。もし賃上げして、社会保険料がまかりますよ、減りますよというのもインセンティブになるかもしれません。これは厚生労働省の所管だとおっしゃるかもしれない。

 しかし、そういう意味で総動員と、まさに財務大臣の御認識を今日の委員会質疑でお伺いしたものですから、所管外かもしれないんですけれども、日本のトータルの経済とか財政を所管されているというお立場で、鈴木大臣に是非お答えいただきたいのは、事業税や法人税にもインセンティブをつける、あるいは、社会保険料の世界でも、賃上げをしたら社会保険料を割引しますよ、ゼロにしますよ、そのような、所管省庁はいっぱいありますけれども、いろいろなトータルの政策をなさるおつもりはありませんか。財務大臣、よろしく御答弁お願いします。

鈴木国務大臣 先ほど来答弁させていただいておりますけれども、成長と分配の好循環をつくるという上で、賃上げというものは今一番重要な課題の一つとなっております。

 それを実現するために、この賃上げ税制はもちろん、税制だけで賃上げは実現できませんので、先ほど来申し上げておりますように、あらゆる施策を動員していくことが重要である、そういうふうに思っているところでございます。

 先生から具体的に御指摘がございましたけれども、地方税について言えば、やはり総務省の所管ということでございまして、一般論としては、法人事業税や固定資産税の減免については、地方の貴重な財源であるという点を踏まえる必要があると考えております。

 また、社会保険料の減免につきましては、社会保障の給付の方の見直し等も併せて行わない限り社会保障制度の持続可能性が保てなくなる、そういう心配も考えなければならないと思っております。

岸本委員 時間が来ましたので、また来週審議を続けさせていただきます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 インボイス制度について質問します。

 まず、配付資料一を御覧ください。これは、昨年十一月十八日に開催された第二回消費税軽減税率制度の円滑な運用等に係る関係府省庁会議に提出された日本商工会議所の資料であります。

 インボイス制度導入後、免税業者の約二割が課税業者になる予定と回答する一方で、約五割はまだ分からないとしています。また、廃業を検討すると回答した事業者も四%存在しています。これは重大です。国の都合で変えた税制によって中小企業が廃業に追い込まれる、これは憲法で保障された営業の自由を侵害しているのではありませんか。

 大臣に伺います。

 インボイス制度のために業者の生きる手段を奪ってよいものでしょうか。鈴木大臣の見解を求めます。

鈴木国務大臣 インボイス制度についてでありますが、この制度は、複数税率の下で適正な課税を行うために必要なものとして、法律に基づいて来年の十月から始められることとなっております。

 日本商工会議所が令和三年十一月に公表した調査結果によれば、BトゥーB取引を行う免税事業者の方で、インボイス制度導入後は廃業を検討すると回答された割合が四%の方がいたということは承知をしております。

 他方で、このような免税事業者が行う取引であっても、取引先の事業者が簡易課税制度の適用を受けている事業者はインボイスの交付を求められることがないなど、全ての取引でインボイスの交付を求められるわけではございません。

 今後とも、こうした点を説明会などの場で丁寧に説明していくなど、制度の円滑な移行に向けて、関係省庁で連携しながら、各種の支援策や制度の周知、広報を進めていくことが重要である、そのように考えております。

田村(貴)委員 大臣、簡易課税制度とかおっしゃいましたけれども、そのような制度を用いて、ここに出ている廃業というのは回避できるんですか。全ての中小零細業者は、制度導入による影響や負担もなくて、今までどおり経営ができるのでしょうか。そこは非常に大事なところなんですよ。お答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたとおりに、免税事業者が行う取引でありましても、取引先の事業者が簡易課税制度の適用を受けている事業者はインボイス交付を求められることがありません。全ての取引でインボイスの交付を求められるわけではございませんので、今後とも、こうした点の説明などを丁寧に進めていき、また、各種の支援策や制度の周知、広報を進めてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 大臣、質問に答えておられません。私が聞いているのは、廃業は回避されるのか、全ての中小零細業者は今までどおり経営ができるのかということを聞いているんです。これ、来週も審議は続くので、財務省はちゃんと知見を持ってお答えいただきたいと思います。ここは、中小業者、中小企業が最も今悩んで腐心しているところなんです。

 時間がないので質問を続けます。

 インボイス制度導入による事業者への影響が大きいことが想定されるために、二〇一六年度所得税法の一部を改正する法律の附則第百七十一条第二項に次の条文が盛り込まれました。政府は、消費税の軽減税率制度の導入後三年を目途に、適格請求書等保存方式の導入に係る事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性を検証し、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとするとされています。

 そこでお尋ねしますけれども、政府として、インボイス制度による影響について検証し、必要な措置をこれまで講じてこられたのか、お答えください。

鈴木国務大臣 田村先生御指摘の法律の附則の規定では、インボイス制度について、事業者取引への影響の可能性を検証し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとされております。

 これを受けまして、検証の結果と、それに基づく取組の方針を昨年の十一月に公表をいたしました。これは、令和三年十一月十八日に内閣官房のホームページで公表をしたところでございます。

 この検証におきましては、免税事業者である売上高一千万円以下の事業者の行う取引の約六割が消費者に対するものであり、取引の相手方が課税事業者であっても、約三分の一は簡易課税を適用している事業者であるため、このような場合は、免税事業者がインボイスの交付ができなくても取引に影響がないと改めて確認したところであります。

 また、関係省庁と財務省で連携し、実際に免税事業者と見られる個人事業者と取引のある事業者にアンケート調査を実施いたしましたところ、インボイス導入後の取引について、約半数の事業者からは、条件を変えずに取引を継続する、残りの約半数の事業者からは、関係法令を踏まえてこれまでの取引価格を変更できないか検討するや、課税事業者になるように提案するとの回答があったところでございます。

 こうした結果に基づきまして、優越的地位を利用した一方的な価格引下げなどに対しても、独占禁止法や下請法等の取扱いをQアンドA等によりまして明確化し、各事業者団体への法令遵守要請を行うなど、免税事業者を始めとした事業者の取引環境の整備に取り組んでいくこととしております。

田村(貴)委員 その結果を見ても、不安定要素がいっぱいじゃないですか。

 そして、先ほど言っているように、これまでと変わらず事業が継続できるのか、そして税収が増えないようにするのか、これについての措置は今聞かれませんでした。今日はそこをしっかりと答えていただきたいと思います。

 インボイス制度が導入されたらどうなるか。農家と農産物の販売所を例に紹介したいと思います。

 例えば、産地直売センターの場合、売上げが五千万円以上あれば本則課税となって、事業者は簡易課税を選択することはできません。こういうことになるんです、大臣。農産物を納入する農家はその九割が免税業者で、課税業者として登録してもらわなければ、仕入れ税額控除を使えないわけです。すなわち、消費税納税額が大幅に増えて、免税事業者の農家と取引のあるレストランや直販所、直売所などでは、対応について今大変苦慮されているわけであります。

 農水省、武部副大臣、来られております。このような事例があることは承知されていると思うんですけれども、どのぐらいこの国に事例があるのか、把握しておられますか、調査されていますか。お答えいただきたいと思います。

武部副大臣 田村議員にお答えいたします。

 田村議員の、いただいた配付資料で産直センターの例がございましたけれども、この直売所の影響について少しお話をさせていただきますが、まず、消費税のインボイス制度につきましては、軽減税率導入による制度の適正な運用を確保するため、直売所に限らず、業種横断的に措置されるものと承知しております。

 農産物の直売所につきましては、出荷者からの委託を受けて販売するものが約九割、出荷者から買取りをして販売を行うものが約一割となっております。インボイス制度が導入された場合に仕入れ税額控除の方法等に変更が生じるというのは、この買取り販売である約一割であると考えております。

田村(貴)委員 ちょっとよく分からないんだけれども、先に進めましょうね。

 配付資料二を御覧いただきたいと思います。これは、農民連の機関紙「農民」に載っていた産直センターの例であります。年間の売上げが三億円あって、今は年間約四百八十万円の消費税を納税しています。インボイスの導入で、免税業者の農家が課税業者にならなければ、年間約一千四百四十万円の消費税負担となります。結果的に、九百六十万円の消費税の負担が増えるわけです。この産直センターは、これでは経営が継続できないと訴えているわけであります。

 どうすればこうした新たな負担もなく事業を継続することができるのか、このような事業に対してどういう措置が講じられるのか、それについて、武部副大臣、しっかりと答えていただきたいと思います。大変不安が渦巻いています。

武部副大臣 田村先生の資料にあった、先ほどお答えしたんですけれども、全て買取りで行われている場合については先生の資料のとおりでございますけれども、先ほど申し上げたとおり、直販所では九割が委託販売されておりますので、これについては直接直売所が税負担が増えるということにはならないと思っております。

 また、この影響についてどのような措置を取るかということでございますけれども、農林水産省におきましては、令和五年十月からのインボイス制度導入に向けまして、直売所等を含む農林漁業、食品産業等の事業者に対して、インボイス制度の内容を周知するとともに、対応方法等について御検討いただくため、国税庁等々の関係省庁とともに連携しながら、広報資料の作成、ホームページ等の掲載、説明会の開催、相談窓口での問合せ対応等に取り組むとともに、業界団体等を通じてインボイス制度への準備の状況、現場の課題等の把握に努めております。

 引き続き、関係省庁と連携し、制度の円滑な導入に向けて取り組んでまいりたいと思います。

田村(貴)委員 結局、現状から不利益を被る増税に対する措置がないんですよ。周知と広報と相談、それだけですか。これだったら、後で言いますけれども、離農はどんどん増えてまいりますよ。

 それから、直販と委託と言われましたけれども、その中でもやはり影響があるというふうにはおっしゃったじゃないですか。

 例えば、道の駅は、全国に一千百九十三か所が登録されています。JAが免税農業者の適格請求書を発行できる農協特例が及ばない販売所は、これは無数にあるわけですよ。影響を受ける事業者数も把握していない、対応は制度の周知徹底程度。これでは今の生産者、それから事業所の不安に応えることにはなっていません。どうしますか、こんな状況で。

 一方、免税農家はどうなるか。

 レストランや直売所は、それまで可能だった仕入れ税額控除ができなくなって、消費税負担が増えます。そこで、利益を維持するためには次の三つの対応が考えられます。一つ、免税農家に課税業者になってもらうように依頼する。二、免税農家への支払いを八%相当分値引きしてもらう。三、取引を止める。これは、どの選択肢を選んでも農家の負担は増えるだけではありませんか。

 例えば、年間売上げ、税込みで九百万円の農家があったとします。課税業者となることを選択して簡易課税による納税をする場合に、単純計算すると、単純の計算でどれくらいの納税額になるか、財務省、試算をお願いしていますが、どうですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 軽減税率の適用対象となる飲食料品の譲渡に係る事業のみを行う農家が簡易課税制度により申告する場合のみなし仕入れ率は、八〇%が適用されることになってございます。

 これを前提といたしまして、年間売上げが税込み九百万円である農家の消費税及び地方消費税を合わせた納税額を機械的に算出いたしますと、約十三万円となります。

 なお、先ほど来、武部副大臣等からも御答弁がありましたとおり、インボイス制度への移行に伴う免税事業者である農家への影響につきましては、消費者に直接販売する場合ですとか、取引先の事業者が簡易課税の制度の適用を受けている場合に加えまして、農産物の直売所による直売であっても、委託販売の形態で消費者に販売されている場合などにつきましては、インボイスの交付を求められることがなく、全ての免税事業者である農家について影響があるわけではないということは付言させていただきます。

田村(貴)委員 大臣、来週、まだこの所得税法等の審議があるので、引き続きやりたいと思いますけれども、今日答弁があったところをまとめていくと、私冒頭に、商工会議所のアンケートで、四%の方がもう廃業を考えざるを得ないと。そして、こちらの農業の問題では、免税農家は、これはやはり増税になると離農が促進されますよ。

 農水省、離農という事態は絶対に避けなければならないですよね。増税によって離農が増えることは、これは回避しなければならないと思いますけれども、武部副大臣、どうですか。

薗浦委員長 武部副大臣、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

武部副大臣 インボイス制度の導入によって、免税事業者である農業者はインボイスを発行できなくなりますが、今財務省からも答弁があったとおり、消費者に直接販売する場合、あるいは、農協、卸売市場、委託して販売する場合は、条件が変わることはございません。

 また、農産物の取引については、価格面だけじゃなくて、例えば、直接取引先を持っていらっしゃる方は、品質ですとか鮮度ですとかそういったことに自信を持って販売されていらっしゃる方もいて、その方々は、農協を通さずに販売されていらっしゃる方々もいらっしゃいますので、仕入れ税額控除ができるか否かという観点のみで決められるものではないと考えております。

 また、経過措置もございますし、関係省庁と連携しながら、周知啓発等に努めてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 深刻な影響が及ぶことを認識されていないことは重大であることを指摘して、今日は終わります。

薗浦委員長 次回は、来る十五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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