衆議院

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第5号 令和4年2月16日(水曜日)

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令和四年二月十六日(水曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 薗浦健太郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 藤丸  敏君

   理事 稲富 修二君 理事 末松 義規君

   理事 吉田 豊史君 理事 角田 秀穂君

      井上 貴博君    石井  拓君

      石原 正敬君    門山 宏哲君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      国定 勇人君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      鈴木 隼人君    田野瀬太道君

      中川 貴元君    藤原  崇君

      三ッ林裕巳君    八木 哲也君

      柳本  顕君    山田 美樹君

      若林 健太君    江田 憲司君

      櫻井  周君    階   猛君

      下条 みつ君    中川 正春君

      野田 佳彦君    伴野  豊君

      赤木 正幸君    沢田  良君

      藤巻 健太君    日下 正喜君

      岸本 周平君    田村 貴昭君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣        岡本 三成君

   財務大臣政務官      高村 正大君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 五味 裕一君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    栗田 照久君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 辺見  聡君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電波部長)         野崎 雅稔君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   奥  達雄君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   阿久澤 孝君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (国税庁次長)      重藤 哲郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           長井 俊彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            飯田 健太君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行理事)     山田 泰弘君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     柳本  顕君

  鷲尾英一郎君     国定 勇人君

  櫻井  周君     階   猛君

  中川 宏昌君     日下 正喜君

同日

 辞任         補欠選任

  国定 勇人君     鷲尾英一郎君

  柳本  顕君     高村 正大君

  階   猛君     櫻井  周君

  日下 正喜君     中川 宏昌君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

薗浦委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、理事山田泰弘君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官五味裕一君、金融庁監督局長栗田照久君、総務省大臣官房審議官辺見聡君、総合通信基盤局電波部長野崎雅稔君、財務省主計局次長奥達雄君、主計局次長阿久澤孝君、主税局長住澤整君、国税庁次長重藤哲郎君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君、農林水産省大臣官房審議官長井俊彦君、経済産業省大臣官房審議官蓮井智哉君、中小企業庁事業環境部長飯田健太君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。立憲民主党の階猛です。

 今回の税制改正で、国税分で百八十億円ぐらい平年度で新たな税負担が生じるというふうに伺っております。

 財務大臣に一般論としてお尋ねします。

 財務省は、国民に税負担をお願いする以上は、税を使うに当たって適正かつ厳格な手続を経ること、それから正当性と合理性のある理由が備わっていることが必要ではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 そのとおりであると思っております。

階委員 それでは、果たして財務省自身が税を使う上で適正かつ厳格な手続を経ているのか、それから正当性と合理性のある理由が備わっているのか、この点について確認させていただきたいと思います。

 これは予算委員会でも取り上げていますけれども、佐川元国税庁長官の公文書改ざんの指示が原因となって自殺した赤木俊夫さんの御夫人が起こした国賠請求訴訟についてなんですが、国が請求を認諾して国民の税金から一億一千万円も払いながら、佐川氏には国賠法上の求償権を行使しない、この判断を厳しく検証する必要があると思っています。

 まず第一に、手続の点。十四日の予算委員会で理財局長は、請求認諾という判断をする際、法務省と協議をしたけれども、協議そのものの内容を記録した書面を作っていないという答弁をされました。これは皆さんにお配りしている資料の一ページ目の上段の辺りに書いております。

 このことは、同じ資料の四ページ目、御覧になってください。これは公文書改ざんの問題を受けて、現在、財務省が職員向けに行っている研修の資料から抜粋したものです。一番上に書いていますけれども、「意思決定過程や事務・事業の実績を合理的に跡付け・検証することができるよう文書を作成。」というふうになっていますけれども、これに反していると私は考えます。

 この点について、同じ日の大臣の答弁は、一ページ目に戻っていただくと下段の方に書いてあります。大臣がおっしゃるには、法務省との協議の際に用いた被告第四準備書面に請求認諾の理由が書いてあるので、これをもって意思決定を合理的に跡づけ、検証できるということをお答えになっていますが、全く的外れだと思います。この書面は、局長も答弁したとおり、財務省が法務省との協議の場に持っていったものであって、これは協議の前提となる資料です。協議でのやり取りを記載したものではありません。

 改めて伺いますが、協議でのやり取りを記載した書面を作成していなかったことは極めて問題だと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 この点につきましては、先ほど、ただいま階先生から御指摘のありますとおり、さきの予算委員会でお答えをしたとおりでございます。

 私どもといたしまして、訴訟において国の損害賠償義務を認めるに当たりまして、御質問にございます被告国第四準備書面にて法務省と協議を行っていたものと承知をしております。認諾に至った詳細な理由につきましても記載がされているところでございます。当該準備書面やその提出に係る決裁文書をもって財務省における意思決定過程や事務及び事業の実績を合理的に跡づけているものと考えているところでございます。

階委員 今大臣、一ページ目の下段の前回の答弁をなぞるようなことをお答えいただいたんですけれども、いいですか、法案の審議になぞらえて考えますと、法務省との協議の場に持っていった文書というのは法案みたいなものですよ。その法案を基に協議を、審議をするわけじゃないですか、委員会でも。審議をして最終的に法案が成立するわけですよ。だとすると、今大臣がおっしゃったのは、あたかも、法案だけ文書があれば審議の記録は要らないと言っているようなものですよ。おかしいじゃないですか。審議の過程が大事なんでしょう。それを文書にしなかったら、何のための研修で言っていることなんですか。研修にちゃんと書いているじゃないですか。意思決定過程を合理的に跡づけ、検証できるよう文書を作成しろと言っているわけですよ。前提となる文書を作ればいいというものではないと思います。まさに議論の過程を記録しないと、ちゃんとやったことにならないでしょう。おかしいですよ、大臣。官僚の言うことをそのままうのみにしないで、常識で答えてください。大臣のおっしゃっていることは、国会での議事録は要らないと言っているに等しいですよ。お答えください。

鈴木国務大臣 訴訟において国の損害賠償義務を認めるに当たっては、被告国第四準備書面にて法務省と協議を行ったものでございます。

 それで、法務省との協議でございますが、これは正式な会合ということでなくて、被告国第四準備書面を作成する過程で、両省の担当者間で随時相談をしていたものでありまして、したがって、法務省との協議の過程及び内容については結論のものとして当該書面に表れているもの、そのように考えております。

階委員 全く納得いきませんね。そもそも、そんないいかげんな協議で意思決定すること自体というのがおかしいですよ。

 加えて、資料の五ページ目を御覧になってください。これは、上の方に国家公務員制度改革基本法九条三号というところに色塗りをしていますけれども、「国家賠償法に基づく求償権について、適正かつ厳格な行使の徹底を図るための措置を講ずること。」というふうにありまして、これを受けた政府の決定が下の方にあります。一番下に「求償権の適正かつ厳格な行使」という見出しがありまして、前段の方では、「各府省において、国家賠償法の求償に係る規定について関係職員に周知するとともに、求償権の存否を判断する体制、手続等を明確にする」というふうに書かれていますけれども、これも前回、予算委員会でのやり取りで、全くなされていないということが理財局長は答弁されました。

 このような状態で求償権の存否を判断する、それがふさわしいと言えるんでしょうか。そもそも、判断する前提となる体制が整っていないと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 階先生から「国家公務員制度改革基本法等に基づく改革の「全体像」について」の中の指摘を今質問をいただいたところでございますが、そうした御指摘の点につきましては、各省庁において適切に対応を図るべきものと思っております。

 そして、その上で、私ども財務省におきましては、まず、求償に係る規定について職員に対し周知するといったことは行っておりませんが、大臣官房等における関係職員においてはこの規定も把握した上で業務を行っているものと承知をしております。その上で、周知の在り方につきましては、今後も検討の上、これに努めてまいりたいと思っております。

 また、求償権の存否については、訴訟を担当する部局において、必要に応じ大臣官房等の関係部局と協議の上、組織として判断することが通例でありまして、今後もこのように対応をさせていただきたいと思っているところであります。

階委員 いや、だから、これ、政府の決定でちゃんと体制や手続をつくれと言っているわけですよ。やっていないから問題じゃないかと言っているわけですよ。やっていないことは問題ないんですか、この政府決定を守っていると言えますか。お答えください、端的に。

鈴木国務大臣 求償権の存否を判断する体制でありますとか手続等について財務省として文書として形にしたものはない、そういうふうに承知をしております。

 その上で、決定に反するか否かについて財務省としてお答えすることは困難なところもございますが、財務省においては、訴訟を担当する部局において、必要に応じ大臣官房等の関係部局と協議の上、組織として求償権の存否を判断することが通例でありまして、そのような形で対応をさせていただいたということでございます。

 いずれにしても、改善点があればそれをしっかりと改善をしていかなければならない、そのように思っております。

階委員 改善点どころか、大きな不備があったわけですよ。不備がある中でこんな、求償権の行使、見送るという判断をしたことが問題だと言っています。

 もう一つ、手続的な大きな問題。これは、さっきの五ページ目の「求償権の適正かつ厳格な行使」の一番下のところに、「各府省における求償権の存否等の判断に当たって、必要がある場合には、法務省の「法律意見照会制度」を活用する」というふうになっていますけれども、これを活用したのかどうか。前回、予算委員会で理財局長は、よく意味の分からない理由で答弁を拒否されました。

 ここは大臣にお伺いします。

 この法律意見照会制度、活用したのかどうか、明確にお答えください。

鈴木国務大臣 先生のおっしゃっていることは、予防司法支援制度と言ってもいいんだと思います。(階委員「現在はそういう名前だそうです」と呼ぶ)はい。

 これを利用したか否かにつきましては、その利用の有無をお答えすると政府としての業務遂行に支障を生じさせかねないため、その答えを差し控えさせていただくということが、国としてそういう取扱いになっているということを承知をしているところであります。

階委員 そもそも、そういう取扱いになっているって、どこにそれがあるんですか。その取扱いなんて、私は見たことも聞いたこともないんですが。どこのどういう取扱いですか。文書で示してもらえませんか。

鈴木国務大臣 私がそう申し上げましたのは過去の答弁からでございまして、平成二十九年三月七日の衆議院法務委員会におきまして、金田法務大臣の答弁でありますが、階先生から質問がございまして、それに対して、今のような質問だったと思いますが、「個別案件につきましては、相談の有無も含めまして差し控えさせていただきたいと思います。」、そういう答弁から引いてきたところでございます。

階委員 個別案件といっても、まさに税金の使い方が問われている、そういう案件なんですよ。いいですか。この求償権を行使しないことによって、一億一千万、請求を認諾した金額、丸々税金から払われるんですよ。一億一千万という請求の認諾、過去の事例と比較して桁違いに大きな数字だということは、前回、予算委員会で法務省から確認しています。

 いいですか。それぐらい大きなことを決めるのに、ちゃんとした手続を経ているかどうか。これは、我々、税金の使い方を監視する国会の役割があります。我々にちゃんと答弁する責任がありますでしょう。個別の事案で逃げないでください。これは本筋の話ですよ。ちゃんとした手続を踏んでいるかどうか、それが聞きたいんです。さっき言った支援制度、利用したのかどうか、お答えください。(発言する者あり)

薗浦委員長 不規則発言はやめてください。

鈴木国務大臣 本件に係る求償については、必要に応じて国家賠償法の求償権に係る規定の解釈に関する法務省の専門的知見も踏まえまして、本件に係る事務を処理する所管行政庁として財務省において判断をしたものでございます。

階委員 ちょっと今の答弁の趣旨が分からなかったので、確認させてください。今のは、この制度、ちょっと正式名称を私も覚えていないんですが、過去でいう法律意見照会制度、これを活用したという意味なのか、活用していないという意味なのか、どっちなんですか。

鈴木国務大臣 この制度を利用したということではなく、法務省の専門的知見を活用させていただいたということであります。

階委員 専門的知見をどのように活用したんですか。

鈴木国務大臣 国の内部におけます検討過程について、これを明らかにすると国の内部の率直な意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれや事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、情報公開法の不開示事由に該当すると考えておりまして、詳細に申し上げることは差し控えたいと思います。

階委員 今の答弁も官僚が書いたものを読み上げただけなんですかね。

 過去に、森友案件については、まさに、土地の値引きについて、法律相談の文書を、最初はないないと言っていたものが後から出てきたんですよ、情報公開請求に応じて。だから出せるんですよ。あるものは出せる。なければ、ないと言ってください。あるんだったら出してください。どっちなんですか。

鈴木国務大臣 文書でやり取りしたのかあるいは口頭なのかということも含めまして、国内部の検討過程に係ることでありまして、詳細に申し上げることは差し控えたいと思いますが、私が聞くところでは、先ほど申し上げました被告人国四号ですか、それと決裁過程に関わる決裁の文書、そのほかには文書はないということを聞いております。

階委員 さっきも言ったように、桁違いの求償権を行使しないという判断なんですよ。税金の使い方、これでいいのかということをもっと真摯に検討すべきじゃないですか。そもそも、文書がないという、それも素直に受け止められないんですけれどもね、過去に前例、前科があるので、皆さんがやったことは。

 私は、財務大臣はそういったことには絡んでいないので期待しているんです。鈴木財務大臣しかこの財務省の体質を変えられる人はいないから、今日は厳しくお尋ねしているんです。財務大臣の判断でこれは変えられます。協議の内容を文書として出してください。お願いします。

鈴木国務大臣 出せるものがあればということでございますが、私の聞いているところによりますと、この第四準備書面、それとそれに係る決裁文書のほかには文書はないということを聞いております。

階委員 驚くべき話で、こうした大事なことを文書に残さないで、さっき言った研修の趣旨はどこに守られているんですかね。おかしいじゃないですか。仏作って魂入れずとはこのことですよ。何にも改まっていないじゃないですか、財務省の体質は。

 私は、財務大臣に厳しく指導していただきたい。鈴木財務大臣しかいないんですよ、この体質を改められるのは。私は、鈴木財務大臣に期待しているんです。お人柄も尊敬しているんです。鈴木財務大臣だからこそこれほど厳しく言うんです。お願いしますよ。こんないいかげんなやり方では、第二、第三の赤木事件が起きますよ。ちゃんとやってください。

 大臣、こんないいかげんな手続で求償権を行使しないなんて言われたくないですね。これは手続的に大きな問題があります。求償権の行使をしないという判断をもう一遍見直す、これを約束していただけませんか。

鈴木国務大臣 財務省の体質とかあるいは文書管理の在り方について、階先生から大変厳しい御指摘がございました。

 財務省の風土を変える、また体質を変えることにつきましては、今、秋池参与の下で一連の検証が行われまして、さらに、こうしたことの取組を継続させていきたい、進化させていきたいと思います。

 そして、不備のある点あるいは改善すべき点については、私としてもしっかりと改善をするようにしていきたいと思います。

階委員 時間が参りましたので、この続きはあしたの分科会でやります。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、下条みつ君。

下条委員 立憲民主党の下条みつでございます。

 私は、先週に引き続き、今般かかっている租税の関連について丁寧にちょっと進めていきたいというふうに思います。誠意あるお答えをいただきますようにお願い申し上げたいと思います。

 まず最初に、5G導入促進税制についてお聞きしたいというふうに思います。

 IMD世界競争力センターのデジタル競争ランキングというのがあります。これは、昨年は、二〇一三年の調査開始から、そのときは二十位だったんですね、二〇一三年のときはデジタルの競争ランキングが日本は二十位だった、どんどんどんどん落ちてきちゃって、最低記録更新の二十八位になってしまった。簡単に言うと、十年間、政府も頑張ってきたんでしょうが、実際は、ほかの国の方がどんどんどんどんデジタルの競争力のランキングを上げていっていて、この日本丸は何と二十八位になってしまった。中国、韓国に差をつけられ、マレーシアにも負けちゃっている。

 これは、政府がデジタル化の推進を唱え続けているんですけれども、まあ、物というのは結果ですから、この結果、どんどん十年間で落ちてきちゃったことについて、まず最初に大臣に御所見をいただきたいというふうに思います。

鈴木国務大臣 世界デジタル競争力ランキングで日本が二十位から二十八位に下がったという御指摘でございまして、このランキングそのものについて私が論評することは控えるといいますか、できませんが、デジタル技術の活用によりまして、日本の国際競争力の確保あるいは国民の利便性の向上、これを促すことは、先生御指摘のように重要な課題である、そのように認識をしております。政府といたしましても、昨年九月にデジタル庁を設置したほか、行政の電子化やマイナンバーカードの普及などに取り組んでいるところでございます。

 その上で、税制におきましても、令和三年度改正では、企業のデジタル技術活用を後押しするデジタルトランスフォーメーション投資促進税制を創設をし、今般の税制改正では、地方における5Gネットワークの整備を加速するなどの観点から、5G導入促進税制の見直しを行うことといたしております。

 また、特に中小企業のデジタル化に関しては、中小企業経営強化税制におきまして、遠隔操作等のデジタル化を推進する設備に対する税制措置を既に講じているところでございます。

 こうした税制によりまして、企業変革に向けたデジタル投資が促進をされ、我が国のデジタル競争力が向上すること、それを期待しております。

下条委員 大変丁寧にお答えいただきましたが、私が聞きたかったのは、政府が旗印を上げてやってきたデジタル化の結果が思ったよりいかなかったし、ほかの国はどんどん先陣を行って、抜かれちゃっているよという意味なんですよ、大臣。

 ですから、これから促進税制でやるんだよという意味も分かりますが、この十年間で結果的には遅れてきたのは、今のやり方でいいのかなというのは疑問を、僕はクエスチョンを持っているという意味であります。

 そこで、今、中小企業のデジタル化の話も大臣おっしゃりましたが、一方で大事なのは、これからの国の財産である学生さんたちの、これからのデジタル化に対する我々の、国としてのサポートじゃないかなというふうに思うんですね。

 そのときに、若年層リサーチによるテスティーラボというのが、先般、小学校は、御存じのように、私も文科委員会をやっていましたから、小学校は大分もうパソコンは皆さん手が届くようになってきたんですよ。ところが、高校と大学生が今どんな、この日本丸の学生さんたちが持っているかというと、高校生が自分で持っているというのは約二八・五%、三割弱ですね。大学生が約七四%ちょっとということでございます。

 つまり、これは今後の話なんですけれども、これからのデジタルをやっていく、それを支えていく学生、小中高、大学生に、もっともっとパソコンを持てるように、小学生だけじゃなくて中学生も高校生も大学生も、これだけ今実際にアンケートで出ていますので、これをどんどん進めていっていただきたいという要望を私はしておきたいというふうに思っております。

 つまり、彼らが、いろんなものを、政府がお金をかけて、減税をしてデジタルの整備をしていても、受ける側が持っているものがなければ全然前に進めない、そういうことであります。実際に数字が、皆さんが思っているよりも学生さんは持っていないということなんですね。兼務で持っていたりするのはあるけれども、個人所有の話をすると、こういう段階であります。これを要請を今しておきたいと思います。

 それで、私は、この5Gというのは非常にいろんな問題点があるのかなと思うのが、まず、5Gの、直近で構いませんので、直近での税制の執行状況、これを、控除額とそれから事業者数で教えていただきたいと思います。お願いします。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 5G導入促進税制が創設されました令和二年度の税額控除額の実績につきましては、総額で約七千八百万円となっております。この内訳でございますけれども、携帯電話事業者が整備する全国5Gにつきましては、税額控除額が約七千五百万円、一社でございます。また、地域の企業などが主体となって整備するローカル5Gにつきましては、税額控除額が約三百万円、これも一社となっているところでございます。

下条委員 さっき、競争ランクが落ちてきたという話をしました。

 私は、どういうプロパガンダをして、どうなっているか、皆さんも努力しているんだろうけれども、やはり結果なんですよね。まずは、十年間どんどん落ちてきちゃった、競争力が。そして、今おっしゃったように、税額控除をした先が一社ですよ、皆さん。5Gで一社、七千五百万円。ローカル5Gで一社、三百万円。二つだけです。それで、やってきたという実績が残っているということですね。これについて、私は非常に、何というんですかね、その一方で、目標というのがちょっと手元に届いています。基地局数で、全国で千五百。千五百が一になったわけですね。ローカルでは二百を目標にしているんだ、それが一だと。これは一体どういうことかというのをお答えいただきたいと思います。

 目標に対して、それは半分でもよくやった、私はそう思うし、千五百で一、二百で一というこの数字の結果が、何が問題点なのかなと僕は思っているんです。要は、全然進んでいない。だから、政府があれだけ旗を揚げて、デジタル、デジタルと言っておいても、実際、結果がそれに追いついていない。そこをどうお考えでしょうか。

辺見政府参考人 令和二年度の適用実績額が少ない理由についてでございますけれども、税制の適用を受ける条件となる事業者の認定が令和二年の十二月からとなりました事情がございます。四か月間という限られた期間となったことなどによるものでございます。

 今年度におきましては、現時点では、まだ年度途中でありますので、実績の取りまとめは行っておりませんが、昨年度に比べると増加をするものと見込んでいるところでございます。

下条委員 時間が四か月になったから目標が千五百のうち一と言われちゃうと、僕は、そうかなとしか答えられません。

 やり方がやはりちょっと遅れていたのかなと同時に、私は何でこれを言っているかというと、要は、税制の控除はどんどんどんどん、過疎地以外については期限が迫っている中で、この促進する税制についての議論を僕らはしているわけで、その促進する税制の期限がもうちょっとで終わっちゃうんです、過疎地以外は。それが一五から九、また落ちていってしまう。

 簡単に言えば、税制をほとんど、大臣、使わない状態で、それを今度の法案で落としていったらどうだというのに、私としては非常にクエスチョンを持っているという意味なんですよ。この数字が、今申し上げたとおり、皆さんの口から出た数字でございますので、それを私は最初に申し上げたいと思います。

 そこで、現在のローカル5Gの開発実証というのはどんな感じなのか、お答えいただきたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたローカル5Gの開発実証でございますが、課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証という形で事業を行っているところでございます。この事業は、ローカル5Gにつきまして、様々な課題解決や新たな価値の創造等の実現に向けて、現実の利活用場面を想定した実証を行っているものでございます。

 本事業は、令和二年度から開始をし、令和二年度十九件、令和三年度は二十六件を実施しているところでございます。

 これまで、農業、建設現場、工場など様々な分野において実証を行っておりまして、例えば、農場におけるトラクターの自動運転、高精細映像によります道路建設現場におけるリアルタイムの監視、また、工場の生産ラインにおきましてAIを利用した画像解析による製品の検査など、様々な実証を行っているところでございます。

下条委員 大変重要な実証が幾つか出てき出していますね。

 私は、何でもそうですけれども、百メーター走るのに、いきなり走れと言われても走れません、それは分かる。柔軟体操をしたり、屈伸、何じゃらかんじゃらストレッチをやる。だから、それに、やはり離陸するのには私は時間がかかると思うんですよ。

 だから、一年で切って、いきなり、一五パーしかやらないぞと言っていた部分をがくっと下げていくというのは、今せっかく開発実証をやり出している人たちがちょっと増えてきている、ちょっと増えている、これはいいことだと思うんですよ、それを、さらに、もう来年から過疎地以外については、来年度、税制のパーセンテージをどんどん下げていっちゃうよと言われて、それは皆さんからの言い方をすれば、急がせて、駆け込みで家電販売店が物を買わせるようにやらせようと思っても、そうはいかないと僕は思うんです。時間がかかるし、開発実証とかいろいろなものに金を投資しなきゃいけない。

 だから、それを会社で判断した民間がいろいろやり出すのはまさにこれからだと僕は思うんです。だから、開発実証の、開発に向けてのあれが動き出している。それが証拠じゃないですか。実際に、さっき言ったように、目標が千五百が一、ローカルが二百が一しか出ていないんです、控除は。その段階で、私が大臣に申し上げたいのは、大臣、こういう実績や実態ですよね。これは私が言ったんじゃないです、皆さんが言っている実態。

 こういう実態の中で、これからまさに、さっき言った、子供たちに向け、中小、困った人たちに向けてのデジタルを進めていく中で、ここで突然、一年たったぞ、だから一五パーを今度下げちゃうよというのをやっていくのは、このせっかく進んでいるものに対して、駆け込みでやらせるという答えは僕は要らないです、どうやって、その人がやりやすくするようにやっていくべきときに、私は、この5G、ローカルGについての見直し部分についてはもうちょっと待つべきじゃないかな、その清い判断をいただけないかと。

 もう一回言います。一年間の実績、さっき言ったとおり、確かに四か月、五か月かもしれない。でも、今まさに開発をやり出している中で、今大事なのは、その人たちがやっているんだから、そのお金の中で、政府に沿ってやっているんだから、この控除の下げていくのを、もうちょっとゆっくりになってくれないかなというお願いであります。大臣、いかがでございますか。

鈴木国務大臣 今般の5G導入促進税制の見直しに当たりましては、本年度、本来は今年度限りの措置だったわけでありますが、適用期限を三年延長した上で、令和四年度は、大企業に対して認められるものとしては異例の高さであります一五%の税額控除率としているところでございます。その上で、先生御指摘のように、令和五年度以降、段階的に引き下げることとしております。

 先生から、早くするということの答えは要らない、こういうことでございましたけれども、段階的に下げていきますのは、やはり狙いといたしまして、企業が早期に設備投資を行う場合のインセンティブを大きくすることによりまして、5G全国ネットワークについて、高度なインフラを都市、地方で一体的に整備しつつ、特に条件不利地域における整備を加速すること、それから、企業等の多様な主体から自らシステムを構築するローカル5Gについても、社会課題解決や事業革新等に向け導入を後押しすること、これを目的としたものであります。

 したがいまして、5Gネットワークの整備をより強力に推進するための措置である、そのように御理解をいただければと思います。

下条委員 大臣、お人柄で言っていただいたと思うんですけれども、私が言いたいのは、やはり、飛行機が離陸するときもすごくGがかかるわけですよね。最初に、やはり、いろいろな企業が今これだけ不景気の中で政府に沿って何とか頑張ってやろうとしているのに、すぐに、あとちょっとで下げてしまうというのは、私は今言った実績からすると非常に危惧をしているわけですよ。

 今、例えば、千五百という目標があったりしたときに、せめて七百ぐらいやっているならいいですよ。それはもう大分今の日本の情勢に合ってきてやっているんだなと。ただ、さっきは、控除は一社と。一社ですよ、一社。ローカルに至っては、今ローカルの遅れと言っていますけれども、ローカルはもっと僕は時間がかかると思います。私も田舎出身で、大臣も東北の方のすばらしいところの御出身だと思いますけれども、やはり時間がかかるんですよ。

 だから、急げ急げといったって、それは、いろいろなものを抱えながら、また、こういう不景気やコロナだ何だかんだある中で進めていく中に、私は、もう一回この議事録に残しておきますけれども、もう少しゆっくりやって、その人たちが控除を使いやすくしてやるべきだなということを申し上げておきたい。それを申し上げておきます。

 時間の限りがありますので、次に参りたいと思います。次は、これも賃上げ促進税制であります、賃上げ促進税制。

 まず一つ目は、私も海外にちょっとおりましたけれども、大企業の賃上げの税制を優遇したり、それから経済団体に賃上げを要請するようなことが、ほかの国であるのかなという話をちょっとお聞きしたいと思います。いかがでございますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 国が大企業の賃上げのために税制を優遇する事例が他国についてあるのかというお尋ねでございますが、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスといった主要国の範囲で、網羅的に調べ尽くしているわけではございませんが、現時点で把握している範囲で申し上げますと、我が国の賃上げ促進税制のように、企業の賃上げに対して税制上の優遇措置を講じている例は承知はしておりません。

 また、経済団体に対する賃上げ要請の件については、ちょっと所管外でございまして、お答えするのは難しいということを御理解いただければと思います。

下条委員 明確に、ほかの国では、もうかっている企業が賃上げを少しでもしたら、また、教育部門でいろいろな配慮をしたら優遇税制をしてやるよということを、国がそのもうかっている黒字の企業にやっているところはないんですよ。だけれども、今言ったように、私も昨日レクのときに申し上げたけれども、全世界で調べたらどっかであるかもしれないし、いろいろな形があるかもしれない。それは大変なので主要でやったらどうだということで申し上げて、今の回答、丁寧な回答だと思います。ありがとうございます。ただ、現時点では、ないということなんですよ、大臣。

 昨日、野田元総理が、G20のどうのこうのあったですけれども、私も個人的には、今この大事な時期は行くべきで、そういうところでいろいろな発信を我々の代表としてやってきていただきたいなとは思うんですが、そういうときに、いろいろな諸外国のそういうミニスターの人たちといろいろな税制の話をしたりすると、いろいろないい御経験になるし、日本のプラスになると僕は思うんですね。ですから、昨日の野田元総理の御発言に私も大賛成で、私からも、是非時間があったら行くべきではないかなと申し上げておきたいと思いますけれども。

 そういうときに、何を言いたいかというと、ほかの国の情勢というのはやはり大事だと思うんですよ、ほかの国の情勢。やはりこれだけ税制で、税収が少ないときに、私は、基本的に、もうかっている企業を控除してあげてというその考え方がちょっと違うんですね。

 そこで、これはまたちょっと違う話になるかもしれませんが、大臣、御存じですか。ハーバード大学のマイケル・サンデルという教授がいて、副大臣御存じかもしれませんが、これは、「実力も運のうち 能力主義は正義か?」といって、資本主義はよくないと言っているんじゃなくて、世の中にある能力主義の結果によって、おごりと劣等感によって勝者と敗者が分離を招いている、離れちゃっている、だから、それをやはり是正していくには、勝者が謙虚になるべきだし、気持ちを出すべきだというのをハーバードのマイケル・サンデル教授というのはやっているんですけれども。

 これは非常に私も胸に響くものがありますけれども、大臣、これ、レクでお聞きしてありますけれども、読んだことあるか、それとも共鳴するか、読んだことないか、どうでも構わないんですが、大臣、今の御所見、聞きたいと思います。いかがでございますか。

鈴木国務大臣 残念ながら、まだ読んでございません。ですから、中に関わることは申し上げることはできませんが、恐らく、下条先生の話を伺いまして、この書にも恐らくそのように書いてあるんだと思いますが、問題意識としては、所得再分配ということが重要だというようなことにもこの財務省の関係ではつながってくるんだと思います。

 そういう意味におきましては、私も、税制において所得再分配機能が適切に発揮されること、これが大変重要なことである、そのように思っております。

下条委員 丁寧なお答え、ありがとうございます。

 所得再分配というのは非常にいい言葉であって、その所得をどこに再分配するかだと思うんです。それで、このハーバード大学の教授は、それが能力だけでやることによって格差を開いてしまっている、だから、そのおごりをなくして丁寧に、能力を持ち得ない、今の、現在の評価体制の中でそれをサポートしていってあげてくれ、こういう中身が書いてあるんです。これは簡単に言うとそう。大臣もお忙しいから、読むのは難しいと思います。

 そこで、私が何を言いたいかというと、これは、内閣府で今月の七日に「日本経済二〇二一―二〇二二」が公表された、ジニ係数の話であります。

 ジニ係数が、要約すると、二十四歳から三十五歳の若年層でどんどん上昇している、つまり格差が開いている、晩婚化や少子化への対応では、結婚や子育てを控える層の所得増加が重要であると。具体的な年齢別でいうと、二十五―二十九では〇・二四から〇・二五まで上昇、三十―三十四歳でも〇・三一一から〇・三一八に上昇していると。

 この内閣府が出している報告書は、男性で非正規社員の比率が高まり、労働時間が減ったことが背景にあると分析しています。男性で非正規、そして、その人たちが労働時間が減ったので格差が開いちゃう、ジニ係数が上がっているということであります。二十五歳から三十四歳までは単身世帯の割合が高まった一方、夫婦と子供世帯が減少している。大切な、夫婦になったり、お子さんを持つ世帯がどんどん減少している。以前の五年間、一四年から一九年と比較したところ、所得五百万円未満の世帯は子供を持つ割合が大きく低下しておる。こういうことが載せてあります。これは今月七日に内閣府が出した報告書の要約であります、要約。

 そこで、私は大臣に聞きたいんですが、このジニ係数というのは、要するに、格差がどのぐらいあるか、一が最大ですが、どんどん、それが少なくなれば、その開きが少なくなっていることですね。その中で、さっき申し上げたとおり、再分配と大臣おっしゃいましたけれども、一番大事なのは、どこが、必要な再分配にお金が行き渡る、若しくは控除が行き渡るかなんですね。やればいいんじゃないです。やればいいといったら、お金持ちをどんどん控除すれば、それはやったことになる。そうじゃなくて、再分配とは、さっきのサンデル先生がおっしゃったように、弱った方とか所得が苦しんでいる方がどうやって、それがいいか。

 その中で、私はいろいろな方と面接しました、今度。そうすると、やはり非正規社員というものの待遇の問題です。これはさっきの内閣府の報告にも出ています。去年から今年にかけてのやつです、報告の一番新しいやつ。そこでは、国の未来を担う、さっきの学生のパソコンの問題もありますけれども、若い人たちが非常に非正規で苦しんでいるんですね。

 それで、私は、この非正規で苦しんでいる人たちに手を伸ばしていくことが、やはりこの国を支えていく次の若い世代につながり、それが、家庭を持ち、お子さんを持っていくことがまた、それは大臣が、税収でいう、働く人が増えるということですよ。働く人が減っていることをどうやってそこで処理していこうじゃなくて、働く人を増やしていくにはどうしたらいいかということじゃないかなと思うんですが。

 このジニ係数の数字の開きについて、つまり、一に近づいちゃっていることについて、大臣の御所見をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 岸田政権におきましては、成長と分配の好循環を生み出す新しい資本主義を実現していく中で、官民が協働して成長の果実を国民に広く分配をする、そして国民一人一人が生き生きと暮らせる社会を目指しているところでございます。

 そのために、同一労働同一賃金の徹底、学び直しや職業訓練の支援、最低賃金の着実な引上げなどを通じまして、先生が御指摘になられました、非正規雇用労働者の待遇改善と、こうした方々の正社員化を推進していくことが重要であると考えておりまして、令和四年度予算におきましても、三年間で四千億円のパッケージを措置しているところであります。

 税制につきましても、社会保障と税の一体改革の中で、消費税の増収分を社会保障の充実、安定化に充てる、今般の賃上げ促進税制において非正規も含めた雇用者の給与総額の増加を対象としているなど、非正規雇用労働者の方に対してもしっかりとした対応を行っているところでございます。

 今後の税制の在り方については、様々な経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続き検討していきたいと思っております。

下条委員 まあ、そうなんですが、それをおっしゃるなら、僕がお聞きしたいのは、まさに今回の税制の改正において、資本金十億円以上で常時使用従業員千人以上の企業にマルチステークホルダー宣言を課しましたよね。何で、この十億円以上また千人以上だけにマルチステークホルダー宣言をしたのか、これを聞きたいと思います。いかがでございますか。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のマルチステークホルダー方針に関する要件でございますが、株主のみならず従業員や取引先を含めたマルチステークホルダーに配慮した経営の実現、これを通じた企業の価値向上を促す観点から、極めて重要な位置づけと認識してございます。

 その上で、従業員の還元や取引先への配慮などの方針の公表を税制の適用要件とすることは、この税制が初めての試みでございます。

 その考え方でございますが、多くの従業員を抱え、多くの下請企業を有し、社会的な責任や影響力がより大きい大企業にこうした方針の公表を行っていただくことによりまして、それを一つの起点として、民間企業全体の中で、株主のみならずマルチステークホルダーに配慮した経営の実現に向けた機運が生じていくということを強く期待してのものでございます。

下条委員 マルチステークホルダーというのは、今は余り、これは皆さん、釈迦に説法だから言わないけれども、一つの宣言ですよね。

 僕は、十億以上じゃなくて、一億以上もどんどん課せばいいんですよ。これをやりました、この関係はどうですか、どんどん宣言させればいいんだと思うんです。そこはちょっと、だんだん時間が迫ってきちゃったのでカットしますが、さっき大臣おっしゃっていた、同一賃金同一労働とおっしゃいましたね、さっき、答えでね。私は、このマルチステークホルダー宣言の中に、取引適正化とか、それから非正規社員に対する同一労働同一賃金の徹底を含めるべきだと思っているんですよ、マルチステークホルダー宣言に。これはいかがですか、お考えは。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 同一労働同一賃金は、働き方改革の関連法により、同一企業、団体における正規雇用労働者と非正規の雇用労働者との間の不合理な待遇差の禁止や、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化などがなされたものと承知しております。

 これは、大企業、派遣会社については令和二年の四月一日から、中小企業については令和三年四月一日から、これらの規定が適用されてございまして、政府として、これをしっかり運用していくことが重要と認識してございます。

 その上で、御指摘のマルチステークホルダーへの配慮の方針に関する要件、この中身につきましては、現在、制度設計の詳細を関係省庁において議論しているところでございますけれども、御指摘も含めて、どういった内容をどのような形で公表を求めるかということについて、引き続きしっかりと検討してまいりたいと思っております。

下条委員 法的拘束はないにしろ、それがぱんと大企業に張りつけられるのであれば、やはり、非正規、さっき申し上げた、その人たちが苦しんでいるんだから、再分配というんだったら、そういう人たちに行けるように、そこに、宣言の中に入れてくれということを議事録に残しておきたいと思いますので、是非前向きに検討していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ちょっと時間がどんどんたっちゃって、次に行きます。

 次は、これは、私の地元でも十九号台風の災害があって、大きな被害がありました。そこで、この税制の中で、火災保険に係る異常危険準備金制度の問題について、次にお問合せしたいというふうに思います。

 まず、内閣府の、災害に係る民間保険、民間共済、現状、課題等々の中を見たり、それからホームページを見たときに、現状の、把握なさっている火災補償とか水害補償とか地震補償の件数みたいなのは、内閣府で、これはホームページに載っているみたいですが、いかがでございますか。教えていただきたいと思います。最新のやつで構いません。

五味政府参考人 内閣府では、平成二十七年度末時点の持家世帯の保険、共済の加入件数と加入率を試算しているところでございます。

 具体的には、建物に対する補償でございますが、火災補償ありが二千八百八十万件で、加入率といたしましては八二%、水災補償ありが二千三百七万件で加入率六六%、地震補償ありが千七百三十二万件で加入率四九%となっております。

 以上でございます。

下条委員 そこで、それに未加入、していないという理由があると思うんですね、今おっしゃった中で。例えば、火災補償、今、八割ぐらいとおっしゃったけれども、また、水災は六十幾つだから四〇%近く入っていないじゃないですか、これだけ台風とかいろいろあって。その未加入の理由をちょっとお聞きしたい。

五味政府参考人 未加入の理由でございますが、平成二十八年に、水害に対する備えに関する世論調査というものを実施しておりまして、自宅建物について水害による損害を補償する火災保険や共済に加入していない理由をお尋ねしております。

 その結果としましては、自宅周辺で水害は起こらないと思うからという理由が四三・四%、自宅周辺で水害が起こっても自宅建物は被害を受けないと思うからという理由が一七・六%、保険料が高いと思うからという理由が一七・〇%などとなっております。

下条委員 最初の二つは、誰もが思う、災害がないかもしれない、だから入らないよです。三番目が、要するに高いというところですね、問題は。そこがポイントです、僕が言いたいのは、高いと。

 何で高いかというと、確かに、今から七年前の調査ではそういうのが出ているけれども、その後に、実を言うと、温暖化で更に、台風が、一番大きかった平成三十年の台風二十一号で、保険金支払いが、大臣、一兆円ですよ。これはもうえらいこと。元年の十九、これは、私どもも、長野県も被害が多くあって、あの亡くなっちゃった羽田雄一郎さんと一緒に現場に行ったりして、そこも約六千億円です。そのぐらいいろいろな被害が重なっている。

 私は、ちょっと時間がなくなってきちゃって申し訳ないですけれども、この異常危険準備金制度の問題点というのは何かというと、これは赤字になってもやらざるを得ないというところなんです。

 そこで、私は、この保険料の推移があると思うんですね。ちょっと今、高くなったと三番目の理由で、あとは自分のところに来ないと思っているから入らないと言っているんだけれども、保険料が高くなったこの推移を、直近のあれで構いませんので、例をいただきたいと思います。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 保険料の推移につきましては、損害保険料率算出機構が公表しております火災保険の参考純率は、ここ数年引上げ傾向でございまして、二〇一四年、一八年、一九年、二一年と引上げが行われておりまして、二〇二一年では一〇・九%の引上げということになっております。

下条委員 ここなんですよ。要は、損保でやっている人が多く入っていて、ちょっとこれは時間がなくなっていくからいただいたあれでいくと、損保が、ほとんどの人が入っていますけれども、JA共済で九百六十万、全労済で四百、約千四百万世帯ぐらいですね、だから三分の一ぐらいです。それ以外の人は損保に入っているわけですね、大臣。損保に入っていると、要するに、水害とかあれでどんどん支払いが増えて、赤字の部分になっちゃっているわけですよ、その災害の部分の支払いが。だから、それを、簡単に言うと顧客に転嫁して、だから、今言ったように、一〇%も上がっちゃっているんですよ。どんどんどんどん、昨年で一〇パー、その前が五%ぐらいですか、どんどんこの支払いが上がっちゃっているのが、これは、国が見ていて、このまま民間の方に負担していいのかなと、僕は疑問をこの数字を見たとき持ったんです。

 今回の異常危険準備金制度のそのパーセンテージを少し上げたのは、それはそれで一時的にいいと思うんです。ただ、もっと抜本的に考えていかなきゃいけないと僕は思っているんですね。

 それはどういうことかというと、今言いましたように、今日は、JAさんの関係、来ていらっしゃるのかな。JAさんと全労済さん、ちょっと、今の加入と、それから収支について、分かる範囲で教えてください。

長井政府参考人 お答えいたします。

 JA共済の建物更生共済につきましては、掛金につきましては、現行の仕組みが始まりました平成二十九年四月から令和三年に至るまで、おおむね同水準で推移しております。

 また、建物更生共済の収支につきましては、平成二十九年度から令和二年度までの間、黒字が続いているところでございます。

本多政府参考人 こくみん共済coop、全労済につきましては、風水火災共済の一口当たりの共済掛金は直近十年間で引き上げられておりません。

 また、収支状況についても、直近十年間で、西日本豪雨が発生した平成三十事業年度を除きますと、黒字で推移しております。

下条委員 時間が来ていますから、最後に言います。

 要するに、JAさんと全労済さんは、簡単に言うと、とんとんなんですよ。うまくいっちゃっている。ところが、一般の損保については、大変に水害の支払いが多いから一割も上げちゃったんですよ。例えば、一万三千円だと千三百円上がっている。それが顧客に転嫁されているんですよ。

 だから、私は、財務大臣というよりは、むしろ全体像として、この災害についての問題の件については、大きくコントロールタワーがいて、なぜ、じゃ、JAさんとあれが通常でとんとんいっちゃって、損保が大赤字なのかという部分を詰めていかなきゃいけないと思うんですが、これは、昨日、もう時間が来ているので最後に申し上げますけれども、内閣防災の方にちょっとレクを振っておりますけれども、その部分について最後にお答えを聞いて、終わりにしたいと思います。お願いします。

五味政府参考人 まずは、私どもの基本的な考え方といたしましては、被災者生活再建支援金などの公的支援には一定の限界がございますので、やはり、災害保険に加入するなどの事前の備えが大変重要であるというふうに考えておりまして、関係省庁の御協力、あるいは全国知事会との連携を通じまして、まずは、災害保険の加入を広げていくという取組、普及促進を今後とも図っていきたいというふうに考えているところでございます。

 水災リスクに係る保険の問題につきましては、現在、金融庁において懇談会を設置するなどして御検討されているというところでございまして、これに関係する私どもも参画させていただいて、一緒に議論を進めさせていただいているところでございます。

下条委員 もう時間が来ましたので、最後にします。

 ともかくコントロールしていただいて、損保にかかっている人だけどんどん払いが上がっちゃっている、それがポイントですので、是非進めていっていただいて、また後日御質問させていただく機会を設けたいと思います。よろしくお願いします。

 今日はありがとうございました。以上です。

薗浦委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 今週に入り、ロシアの動向を軸に、世界のマーケットはダイナミックな動きを見せております。

 原油先物は一バレル九十六ドルに到達し、円安のトレンドは定着しつつあります。米国債、十年債の利回りは二%を超え、日銀が十四日に行った国債の指し値オペは二〇一八年七月三十日以来の三年半ぶりとのことで、米国の金融引締めの余波も併せて、まさに日本に届いているような感じがします。

 世界の金融が大きくつながっている今、財務金融委員会の役割は大変大きなものとなります。

 本日も、鈴木大臣、関係省庁の皆様、委員部の皆様、委員長、是非よろしくお願いいたします。

 前回の質疑にて、賃上げ税制についていろいろと質問させていただきました。

 平成二十五年から始まった賃上げ税制の取組とはなりますが、正直、効果としては芳しくありません。賃上げ、教育訓練に協力してくれた会社には法人税を優遇しますよという仕組みは至ってシンプルですが、こういう取組はずっと続けております。ただ、賃金制度の硬直性にひびを入れるだけのインパクトにはなっていない。だからこそ、効果として出ていないというふうにも感じます。

 というのも、私、中小企業を自分でやってきた中で、多くの中小企業に格差があります。大企業に近い形で雇用を継続し、しっかりと従業員とまた地域の活動にも参加できるような中小があれば、ブラック労働であったり、育児休業が取れない、有給休暇も取れない、こんな中小企業もあり、大きな格差があると思います。

 そういったことも含めて、今回の賃上げ税制というものは、恩恵がない、又は少ない企業というものが多数にあるという部分に、最近、地域を回って多く声をいただきます。

 当然、相当な法人税を支払う企業には、先ほどもお伝えしました、恩恵があると思います。ただ、納税していない、又は少額の法人税しか払っていない、そもそも論にはなりますが、制度の周知をしていない会社には全く恩恵はありません。特に中小企業では、経営者の状況によって格差があるということもあるので、そういった部分での優遇体質に対して、自分たちが法人税を減税してもらえる、恩恵が得られるということに対して、賃上げをしていこう、教育訓練を入れようということがイコールに感じない、こういう場合も多様にあると思います。

 質問させていただきます。

 今回の賃上げ税制は、大企業と中小企業の二本立てで行われました。こういった部分も踏まえて、制度設計を丁寧にしたのでしょうか。また、今回の賃上げ税制以外で、中小企業への賃上げ提案につながる取組や問題意識がありましたら、是非教えてください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 賃上げ促進税制につきまして、中小企業と大企業の要件の違いにつきましては先生も御指摘のとおりでございますけれども、ここでは、賃上げ税制以外の措置について御説明させていただきたいと思います。

 御指摘のとおり、中小企業の賃上げを進めるためには、税制だけでなく、賃上げの原資を生み出すための生産性の向上の支援でございますとか、あるいは、中小企業が大企業と取引して、ちゃんと賃上げの原資を残してもらえるような取引の適正化、こういったことにも努めていかなければならないと考えております。

 まず、生産性の向上でございますけれども、幾つか補助金を御紹介させていただきたいと思います。

 事業再構築補助金でございますけれども、大変応募、たくさんいただいておりますけれども、従業員百一人以上の事業者が大幅な賃上げを行う場合に補助上限額を一億円に引き上げるということでございますとか、あと、中小企業にとってたくさんお使いいただいていますものづくり補助金、あるいは小規模事業者持続化補助金、こういったところにおきまして、賃上げの加点要件でございますとか、あるいは賃上げを行う場合の補助上限の引上げですとか、こういったことを行っておりまして、生産性の向上をまずしっかり進めていくということだと考えております。

 それから、下請取引でございますけれども、こちらにつきましては、昨年の九月に初めて、価格交渉促進月間というものを設けさせていただきました。

 あるいは、先週でございますが、二月の十日に、パートナーシップ構築推進会議というのをやっておりまして、こういった場で、労務費などの上昇を含めて、価格交渉の重要性を親事業者に働きかけてまいりましたところでございます。

 それから、取引の適正化の実効性を確保するという観点からは、下請Gメン、今、全国百二十名という体制でやっておりますけれども、これを倍増いたしまして、全国各地の下請企業の現場の悩みを丁寧に伺って、発注者と受注者側の歩み寄り、それから、業種別にガイドラインを作っております、これの改善など、取り組んでまいりたいと思っております。

 こうした総合的な支援を通じまして、中小企業の賃上げを何とか後押ししてまいりたいというふうに考えております。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 やはり中小企業庁の取組の方が、中小企業の目線がすごくあるように感じます。

 先ほども言った、下請が価格の協議すらできないという現場は実際に起こっていることで、制度をつくっていくときにしっかりとこういう形でやってくださいと言っても、どうしても現場では動かないということは多々あります。ただ、逆に、これまたGメンを、人員を増やして対応していこうとしても、またこれにも限界があると思います。今、デジタルトランスフォーメーションなどの話も出てきておりますので、いろいろな取組をして、是非中小企業の目線をより取り入れていただければというふうに思います。

 ちなみに、教育訓練に協力という面でも、やはり同じようにちょっと感じるものがございまして、教育訓練も、大企業と中小企業というくくりではなく、教育訓練から成功体験を得て安定している企業は投資していただけると思うんですが、有休も取らせられない、育児休業なんてもってのほか、こういう会社も多くあると思います。そういった会社に教育訓練の選定にコストを使ってもらい、そして成功体験にまでつなげていただくというのは、僕は大きな幻想にしかならないと思います。

 そういったことを想定して、何か対策や工夫、問題意識、こちらもあったら教えてください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 教育訓練や研修といったことでございますけれども、これは、大企業と異なりまして、中小企業ですとやはり従業員が少ないということで、一人の従業員の方がいろいろなお仕事をしなきゃいけないということでございます。したがって、教育訓練とか研修にその専門の部署を設けたりとかいったような形で対応するのは難しい状況にあろうかと思っております。

 それから、中小企業の方がやはり相対的に、大企業に比べますと離職率が高いという傾向もございます。したがいまして、経営者としては、せっかく教育訓練を行っても離職されてしまうということで、そういったことを実施することをちゅうちょするおそれもあるという指摘もございます。

 こういった観点から、まず、直接的な支援といたしましては、これは私どもというよりは厚生労働省さんの方で行っていただいていますけれども、例えば人材開発助成金でございますとか、あるいは認定職業訓練制度ですとか、こういった制度によって中小企業が教育訓練を行う際の助成率を高めるようなことも含めて行っていただいているというふうに承知をしてございます。

 中小企業庁といたしましては、やはり、今御指摘がありましたけれども、経営者の方々に、教育訓練を実施してそれが成功体験につながっているということを感じていただくことが大事だと思っておりまして、擬似的な成功体験という意味で、具体的な事例集の紹介ですとか優良事例の御紹介ですとか、こういったことをさせていただいております。

 今日は二つ御紹介させていただきたいと思いますけれども、一つは、中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集という、百五十ぐらい作っているんですけれども、この中で、そういった教育訓練が定着につながって営業利益の上昇にもつながった、そういったような事例を御紹介をしております。それから、毎年やっておりますけれども、はばたく中小企業・小規模事業者三百社というのがございまして、この中でも、人材育成の観点から優良な取組を行う事業者を選定して、表彰などを行っております。選定企業全ての優れた優良事例を取りまとめてホームページにも公開してございまして、これらを見ますと、取組前の状況と、それから、実際どんなことをやったのか、それから、それが取組後にどういうふうに具体的な効果が上がったかということで、一種ロードマップみたいな形になっておりますので、御活用いただけるんじゃないかなと思っております。

 こういった事例についても、税制の周知などとも併せながら中小企業者にしっかりお示しして、教育訓練の取組を促してまいりたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 以前から感じていたことが、どうしても、制度としてはすばらしい、使ってみたいけれども、知っている人しか使えない、又はそれを調べるまでに物すごいコストがかかる。これはやはり大きな問題だと思うんです。そういった意味で、簡素な仕組みをつくっていくことであったり、広く、目的をどこに設定して使っていただくということをやっていくことは大事だと思います。役所とかに、一々、何かこんな補助金があるんじゃないか、こういったものがあるんじゃないか、又はネットで調べる、こういうコストは、目先の収益をかなり厳しい状態で追いかけられている中小企業の経営者の中ではやはり難しいことだと思います。

 逆に、それを社労士さんを使ってどう広げていくかではなく、制度を出すのであれば、全ての方々にしっかりと利用していただける、周知していただける、そういったことを簡素に考えていただければと思いますので、是非、工夫の中にも考えていただければと思います。

 ただ、賃上げの話と比較すると、どうしても今のミクロの話になってしまうんですけれども、当然、恩恵を受けられる方が実は全員ではないのではないか。これはいろいろなところで言われている部分でもありまして、私は、今回の賃上げ税制という、これをやることで、今まで賃金が上がっていないという現状を抜本的に考えるというのはやはり無理があるのではないのか。前回もお伝えしたんですけれども、賃金制度の硬直性自体は、終身雇用制度や大変強固な解雇規制による弊害とメインでは考えつつも、同時に、経済が社会全体まで分配を広げていくことの強さがない中でプライマリーバランスの黒字化という緊縮政策を同時に行っている、こういうことにも問題があると考えております。

 岸田総理も、経済あっての財政と、これは再三にわたって言っているにもかかわらず、こっちでは経済、こっちでは緊縮では、やはり方向性というものは、役所の皆様も含めて、どう動かしていいのかと混乱する部分も多々出ると思います。

 質問です。

 プライマリーバランスの黒字化に向けた歳出改革の具体的な成果である金額を直近五年で各々教えてください。

阿久澤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、プライマリーバランスの黒字化目標、これにつきましては、先日の経済財政諮問会議におきまして、現時点で、目標年度、これは二〇二五年度でありますけれども、変更が求められる状況にはないということが確認されたところでございます。

 この目標の達成に向けましては、成長と分配の好循環の実現に向けた取組を強化をいたしまして力強い成長を実現することに加えまして、社会保障制度を持続可能なものとするため、受益と負担のアンバランスという構造的な課題に取り組んでいくなど、歳出歳入両面の改革をきちんと継続していくことが前提となります。

 具体的な各分野におきまして、改革工程表に沿って改革を進めまして、各年度の予算編成に反映していくこととしております。

 例えば令和四年度予算につきましても、後期高齢者医療の患者負担割合の見直し、また、被用者保険の適用拡大といった改革の着実な実施や、診療報酬のめり張りある改定など、様々な経費の合理化、効率化に努めまして財政健全化に取り組んでいるところでございます。

 こうした歳出改革努力を積み重ねた結果としまして、例えば、年金スライド分を除く令和四年度の社会保障関係費、これは、いわゆる自然増六千六百億程度が見込まれたところを、高齢化による増加分四千四百億程度に収めることができたところでございます。

 なお、こうした社会保障関係費における歳出抑制努力はこれまでも続けてきているところでございまして、例えば令和三年度におきましては、毎年薬価改定の実現などによりまして、年金スライド分を除く社会保障関係費のいわゆる自然増、これが大体五千億程度と見込まれたところであったんですが、高齢化による増加分三千七百億程度に抑制をしたというところでございます。

 こうした不断の改革、取組を進めまして、財務省としても、経済再生と財政健全化の両立にしっかりと取り組み、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標を目指してまいりたい、このように考えております。

沢田委員 済みません、お答えになっていないんですけれども、やはりこういった計画的にやることですので、当然、数値というものがあると思います。プライマリーバランスの黒字化というものは、数値がある以上は、歳出改革について、当然、財務省さんの方でも、単年度ごとに全ての結果、成果、これは御自身の評価にもつながることだと思いますので、出ているはずです。これが出ていないというのであれば、それこそ、実際何を目的に、どういった行動を行っているのかという話になりますが、データがあるんですか、ないんですか。

 前回も、具体的に教えてほしいと言ったときに御答弁なさっていないんですけれども、ここはしっかりと、大事なポイントだと思いますので、私は、この直近の五年各々で、実際に幾らの歳出改革で実際にこれだけのお金を生み出したということを教えていただきたいです。

阿久澤政府参考人 お答えを申し上げます。

 令和三年度及び令和四年度につきましては、先ほど申し上げました、歳出の自然増が見込まれるところを一定程度に抑制をしたと御説明させていただいております。

 令和四年度につきましては、先ほどの自然増と実際に収めた金額の差、これは二千二百億程度ということになります。

 また、令和三年度につきましては、先ほどの見込まれた自然増と、結果として収めた金額の差が千三百億程度ということになってまいります。それで、抑制効果が千三百億程度となっています。

 また、五年間ということになりますと、例えば、平成三十年度から申し上げますと、平成三十年度の抑制効果は、抑制額は千三百億円です。それから、令和元年度の抑制額、これも千三百億円。それから令和二年度につきましても千三百億円ということで、こうした努力を続けているというところでございます。

沢田委員 やはり、単なる数字だとは思いますが、一般的な民間の企業であったらば、何かの目標に向かって数字を出していく、そしてそれが根拠になってどうつなげていくというのは当たり前の話だと思います。特に、数字を扱う財務省であるからこそ、こういったところに対してしっかりと御答弁いただけないと、私たちも、どういうふうにこれに対して問題提起をすればいいのかよく分からなくなりますので、是非、簡潔に今後もよろしくお願いいたします。

 ただ、こういったことをつなげていって、方向性として、実際に賃上げにつながっていくのかというのは、私はやはり、先ほども言ったとおり、疑問に感じるところがあり、そして、このプライマリーバランスの黒字化という言葉は、当然、財政の健全化、ここにつながるものが、その結果としてプライマリーバランスの黒字化というものを望んでいると思います。

 これも、まさに定義が曖昧であり、いろいろな経済学者、関係省庁の皆様、これに対していろいろな定義を言われます。

 例えば、その中の一つとして、財政の健全化というと、債務残高の対GDP比が発散していない状況をつくり、それに対する国民の信頼が定着する状態を定義するというものがあります。そして、その考えにのっとると、逆に、健全化していない状況とは、国民あるいは海外の投資家が日本政府は最後まで債務を将来払えなくなるのではないかという疑念が生じた場合は、健全化ではないと考えられる、このパターンになります。

 その視点でいいますと、クレジット・デフォルト・スワップという、CDSというデリバティブの商品の日本の財政破綻の保証料は〇・四%と大変低く評価されており、世界中の投資家は日本の財政が破綻するとは思っていない、こういう意見もございます。

 さらに、健全化するためには経済を成長させるべき、経済を成長させれば大きな税収につながる、今引き締めれば必ず税収が減るという意見もあります。

 質問です。

 成長と分配の好循環、又は経済あっての財政、これは、岸田総理がおっしゃる中でも、プライマリーバランスの黒字化を降ろさない、今の政府の姿勢は、当然ですけれども、それが両立できるという根拠があるという上で言われていると考えます。

 財務省の財政健全化の定義と、そして、プライマリーバランスの黒字化を目指しても賃上げや経済の好循環を阻害しないと言える根拠は一体何なんでしょうか。

鈴木国務大臣 歳出改革でありますが、これは、単なる予算を削減するということを目標としているのではなくて、厳しい財政状況の中でありますけれども、将来の成長力、企業の活力につながるよう、質の高い予算としていくことが重要である、そのように考えております。

 例えば、令和三年度補正予算において措置したものづくり補助金では、赤字でも賃上げ等に取り組む事業者に対して補助率を引き上げて支援する特別枠の創設、また、従業員規模に応じた補助上限額の設定などの見直しを講じまして、事業者の生産性向上と賃上げを強く推し進めるために、支援のめり張りをつけて行うといった工夫をいたしております。

 また、令和四年度予算においても、人材育成や非正規労働者のステップアップなどの人への投資の推進などに予算を重点化する一方で、後期高齢者医療の患者負担割合の見直しや、被用者保険の適用拡大といった改革を着実に実施するなど、歳出の抑制を図りながら、成長に向けた重点化を進めているところでございます。

 そして、その上で、賃上げを進めるために、今般、税制改正では、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から賃上げ税制を抜本的に拡充することとしたほか、公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、いろいろな政策を総動員していくこととしているところでございます。

 このように、賃上げを含めた経済再生と予算の質の向上等の歳出改革は両立可能であると考えておりまして、新型コロナの危機を乗り越え、経済を立て直し、財政健全化に向けた取組を進めていくことによりまして、次の世代に未来をつないでいくことが大変重要なことであると考えております。

沢田委員 大臣、ありがとうございました。

 時間となりましたので、答弁、以上とさせていただきますが、今、自民党の中でもいろいろな意見が出ていると思います。是非、統一感を持って、国民の皆様に賃上げを実現できるように動いていただければと思います。

 どうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、赤木正幸君。

赤木委員 よろしくお願いいたします。

 日本維新の会、赤木正幸です。

 本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 ここ二回は不動産というか住宅に関連したものを質問させていただきましたが、赤木は不動産しか興味がないのかともうそろそろ言われますので、今日は、オープンイノベーションとか、あとスタートアップ支援に関する質問とさせていただきます。

 これも日本の将来にとって非常に重要なテーマですので、強い関心と、あと課題感を私自身持っています。これは、政策的な関心だけではなくて、実は、ある意味、当事者としての関心も私は持っています。

 私、不動産ビジネスと同様に、自分自身が創業者、スタートアップ企業を創業したことがあります。実際に、スタートアップ企業を立ち上げて、ベンチャーキャピタルから資金を調達して、エンジニア、いわゆるプログラムですね、を採用して、ゼロからITサービスをつくって、それを顧客に提供するという、いわゆる典型的なスタートアップの一連のことをやっております。

 なかなか衆議院議員の中でも、自分でスタートアップ企業を立ち上げて、プロダクトなりサービスを展開したことがある方というのは結構少ないと思われますので、ある意味希少な、実体験に基づいた質問とさせていただければと思います。

 それでは、質問に入らせていただきますが、たしか令和元年六月だったと思うんですが、成長戦略実行計画で、こういった新たなベンチャー企業の創業支援を図る必要があるというふうに、オープンイノベーションの推進の必要性が述べられています。

 こういった場合に、いわゆるベンチャー企業側の支援と、あと逆に、そのベンチャー企業に出資したりする、あとは提携したりする側の、既存企業サイドへの支援という二つの側面があると認識していますが、ここで質問になります。

 オープンイノベーション促進に係る税制の拡充に関連して、この推進の内容とか、意図、目的、さらには焦点について、政府としてどうお考えかを、御見解をいただければと思います。

鈴木国務大臣 成長と分配の好循環を実現するためには、イノベーションの担い手でありますスタートアップを徹底支援をして、新たなビジネス、産業の創出を進めることが重要であると考えております。

 こうした認識の下で、オープンイノベーション促進税制では、一定のベンチャー企業への出資に対し所得控除を認める極めて異例の措置を設けているところでございます。

 さらに、今回の改正では、設立十年以上十五年未満の研究開発型スタートアップを適用対象に追加をするとともに、取得した株主の保有期間を五年から三年に短縮するなどの拡充を図った上で、適用期限を二年間延長することとしたところでございます。

 企業においては、こうした税制措置も活用をし、成長と分配の好循環の実現に向けて、企業価値を高める投資に積極的に取り組んでいただきたいと考えております。

赤木委員 ありがとうございます。

 スタートアップを徹底支援するという言葉が、すごく、私自身にも響きますし、私の知人を含めたスタートアップをやっている人間たちの心強い励みになります。

 このオープンイノベーション促進に係る税制の拡充の内容についてですが、出資者が増えるということが非常にスタートアップサイドとしてもすばらしいことですし心強いんですが、一方、この制度が、場合によっては、言い方をすると、既存企業の優遇策に偏っていったりするということは、そもそも制度の趣旨からゆがんだ結果を招きかねないと考えております。

 そこで、質問になるんですけれども、株主保有期間を五年から三年に変更する理由、変更に至った経緯について、御説明と御見解をいただければと考えております。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 本税制を執行していく中ででございますが、スタートアップとスピード感を持って協業する流れが加速しているという中で、事業会社とスタートアップの協業の実務を踏まえますと、五年間の協業期間あるいは五年間株を持っている、こういった期間を前提とする必要は必ずしもないんじゃないかといったようなお声をいただいているところでございます。

 こうした声を踏まえまして、オープンイノベーションを一層促進する観点から、実務の実態を踏まえて、株主の保有期間の要件を五年から三年に短縮するということを予定しているところでございます。

赤木委員 ありがとうございます。

 既存企業サイドへの取組と同じぐらいスタートアップサイドへの支援も重要と考えているんですが、これまでこのスタートアップサイド、スタートアップの企業サイドですね、育成とか支援の内容、方針等について、御説明、御見解をいただければと思います。

蓮井政府参考人 これまで経済産業省では、資金の供給、人材の育成、海外展開支援など、様々な観点でスタートアップ支援を行ってきたところでございます。

 資金面では、官民ファンドの産業革新投資機構ですとか、中小企業基盤整備機構によるリスク資金の供給、あるいはNEDOによるベンチャーキャピタル等と連携した研究開発の支援を行っております。

 また、今御指摘いただいたオープンイノベーション促進税制の延長、拡充というのも今回予定しているところでございます。

 また、人材面の取組でございますけれども、次世代のイノベーションを担う人材をシリコンバレーに派遣するといった事業を通じまして、起業家人材の育成を図っているところでございます。

 加えまして、J―Startupによる有望スタートアップのグローバル展開支援などを加速していくなど、スタートアップが成長するためのエコシステムの構築も進めているところでございます。

 こうした支援策の効果もあるかと思いますが、スタートアップ環境の目安となる資金調達額は、二〇二〇年で五千二百億円を超えまして、安倍政権、前の政権の発足以降、約六倍に拡大しているということでございます。

赤木委員 ありがとうございます。

 様々な取組が既にされていることを理解できましたが、一方で、スタートアップの現状、そもそも足下、どういった把握をされているかという部分は、やはり実態とちょっとかけ離れている部分が少なからずあるかなと思います。

 そもそもスタートアップとベンチャー、あとは、いわゆる飲食経営みたいなスモールビジネスですね、この辺りが一緒くたになって、かなり切り分けて議論されていると思うんですけれども、世の中の感覚が結構一緒になってしまっている部分はあるかなと思います。

 実際、これは私自身の創業の経験の話になるんですが、立ち上げるときは、自分たちの成功しか信じていないので、ある意味失敗とか考えないんですね。一方、始まってからが大変です。

 一般的なスタートアップというのは、資金調達をしてプロダクトなりサービスをつくっていくんですが、赤字の時期がずっと続くんですね。こういった経験は、私も企業に勤めているときからもう一切なくて、あと何か月この会社がもつのかというところを冷や冷やしながら、一方で、スタートアップなので投資しないといけないですね。たくさんいろんな方を採用して、新しいプロダクトを作っていって、自分たちのプロダクトが評価が上がっていって、それに応じてまた次の資金繰りをしていくという、かなり精神衛生的に厳しい経営をしているのが現状なんですけれども。

 ここで質問になるんですが、こういった日本のスタートアップの状況について、どういった評価をされているかをお聞かせいただけますでしょうか。

蓮井政府参考人 今、委員の自らの御経験に基づく御指摘をいただきましたけれども、我が国におきましてスタートアップを取り巻く環境、先ほど申し上げたように、資金面ではかなり増えている、あるいはITを中心に結構スタートアップが増えてきているという話も伺うわけでございますけれども、一方、アメリカを始めとする海外と比べまして、グローバルに成長するようなスタートアップというのは、質、量、共に大幅に、非常に少ないという現状でございます。

 その理由の一つといたしまして、成長資金の供給量でございます。先ほど、二〇二〇年に五千二百億まで日本は増加したと申し上げましたけれども、米国ですと十七兆円超という話で、大きな差があるということでございます。その差が更に開いているというふうなことを認識してございます。

 こうした資金供給が少ない原因でございますけれども、やはり米国と比べまして年金の基金あるいは大学基金、こういった出資額は極めて少ない、それから、海外からのリスクマネーの流入なども限定的であるということが考えられるところでございます。

 また、人材面でございますけれども、これはアンケートを取った結果がございまして、日本で起業が少ない原因として、失敗に対する危惧が強い、それから、身近に起業家がいないといったことなどの課題も指摘されているところでございます。

赤木委員 ありがとうございました。

 そうですね、本当に五年前ぐらいに比べれば、出資してくださる会社さんもすごく増えて、資金量は増えているんですが、海外と比べてしまうと、まだまだ日本の国力を考えるとこのスタートアップ資金は増えてもいいのかなと考えております。

 今、少し従業員の方のお話をしていただいたんですが、実はこのスタートアップという議論になったときに、創業者にばかりスポットライトが当たることが多いと思っています。ガレージで、本当に飲まず食わずで、もう本当に眠るか眠らないかでやっていくような、グーグルとかああいったもののイメージが強いんですが、実は私、個人的には注目していただきたいプレーヤーがいて、それは従業員ですね。スタートアップで雇用されている従業員の方が、実は一番リスクを取った働き方をされています。

 今、私がお話ししたみたいに、スタートアップは資金繰りとの戦いですので、そもそも従業員に多額の給与を払うことはできないですね。できないと言い切るとあれですけれども、非常に難しいです。一方で、資金繰りとの戦いのもう一つの側面として、いつ潰れるか分からない。でも、やはり従業員の方も創業者と同じぐらい、このスタートアップで世の中を変えていこうとされて厳しい雇用環境に飛び込んでチャレンジされていますので、そういったある意味スタートアップの主役は従業員の方かなと私個人は思っております。

 そこで、質問となるんですけれども、こういったスタートアップの従業員を支援する施策のようなものがあるかどうかについてお答えいただけますでしょうか。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、経営資源の制約が非常に厳しいスタートアップにおきましては、数少ない資源はまさに人材でございます。そのスタートアップのスピーディーな成長の実現を図るためには、優秀な人材の確保は極めて重要な課題というふうに認識してございます。

 このため、経済産業省でございますけれども、ベンチャー企業が国内外の高度な専門人材を円滑に獲得できるように、令和元年度に、ストックオプション税制の適用対象者を、従来の取締役や従業員からスタートアップの成長に貢献する社外の高度人材、外部協力者にまで拡大を行っているところでございます。

 また、大企業の従業員がその経験をスタートアップで生かすことを後押しするため、兼業や副業のガイドライン、厚生労働省が出していただいておりますけれども、これが改定をされたということに加えまして、大企業人材のスタートアップでの活用支援を令和三年度補正予算で措置をしたところでございます。

 今後も関係省庁と連携をしながら、経済産業省といたしましてもスタートアップに必要な人材を機動的に確保するための環境整備に取り組んでまいりたいと思っています。

赤木委員 ありがとうございます。

 そうですね、まさにストックオプションの税制に関しては、非常にスタッフ、従業員の方たちも使いやすいものになっています。ただ、ちょっと分かりづらい制度になっているので、ちょっとそこの告知をもう少ししていただけるとありがたいなと考えております。

 私、持ち時間はまだあるんですけれども、維新新人三人組はもう一蓮託生なので、私がちょっと時間を調整して、最後の質問とさせていただきます。

 最後、資金関係の話なんですけれども、どうしても資金というと出資の話になりがちです。一方で、やはりスタートアップといえども、赤字を掘り下げながら、PLを、言い方はあれですけれども、汚しながらやっていく経営の中で、融資との相性が非常によろしくない状態なんですけれども、ここで最後の質問になるんですが、このスタートアップの融資を支援する施策についてお話しいただけるとありがたいです。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 スタートアップにおきましては、株式の発行による資金調達が一般的でございますけれども、経営者の議決権の比率が低下して迅速な意思決定が阻害されるといったことがないように、融資による資金調達のニーズもあるというふうに認識してございまして、こうした融資への支援というのも重要でございます。

 スタートアップに対する国の融資支援制度といたしまして、日本政策金融公庫において、高い成長性が見込まれる新事業を行う企業を支援する新事業の育成資金でありますとか、女性、若者・シニア起業家支援資金など、新たに事業を始める事業者ですとか開始して間もない事業者向けの創業融資、資金繰りの安定化と資本増強効果のある挑戦支援資本強化特例制度、これはいわば資本性のローンでございますが、こういったものを提供しているところでございます。

 また、自ら研究開発や生産を行うスタートアップが量産段階で大規模な資金調達を行う、こういったのもどうも実例も出てきたようでございまして、こういったことに対する支援が行えますように、昨年の産業競争力強化法の改正によりまして、中小企業基盤整備機構による研究開発型スタートアップへの債務保証制度を設けているところでございます。

 こうした支援を通じまして、我が国のスタートアップの成長を強力に後押ししてまいりたいと考えております。

赤木委員 ありがとうございます。

 最後と言いながらもう一つだけ、今御説明いただいた制度を実際どれぐらい活用されているか、実績値を知ることでスタートアップの関係者がすごく安心して勇気をもらえますので、そこだけ、最後、お答えいただければと思います。

岡本副大臣 お答え申し上げます。

 今し方経産省から説明をいたしましたスタートアップ企業に対する日本公庫の融資のメニュー、それぞれ令和二年度の融資実績をお答え申し上げます。

 まず、新事業育成資金につきましては三百三十六件の融資で総額二百十七億円、次に女性、若者・シニア起業家支援資金を含みます創業融資につきましては二万一千八百九十四件の融資で総額一千六十三億円、最後に資本性の劣後ローンにつきましては百四十三件の融資で総額九十七億円となっております。

 こうした日本公庫の融資や経営サポートを受けて上場した企業がここ三十年で約八百社に上っておりまして、スタートアップ支援につきまして一定の貢献をしているものと認識しております。

 今し方赤木委員と経産省の議論を聞いておりまして、委員の実体験に基づく様々な問題意識、非常に重要だと感じました。財務省といたしましても、引き続き、政策金融を通しまして、新たなビジネス、産業創出の支援に取り組んでいきたいと考えております。

赤木委員 ありがとうございました。

 金額はやはりなかなか小さいんですけれども、件数はかなりあるということで、私も含めて周りも、スタートアップ関係者も勇気をもらいましたので、引き続き、よろしくお願いします。

 私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。

 昨日は、皆様からいただいた貴重な質疑の時間を十分に活用できず、議論を僅かながらも深めることができず、大変申し訳ありませんでした。おわびに今日は五分長くというわけにはいきませんので、持ち時間、押しておりますので、しっかりと活用させていただければと思っております。

 私、二〇一〇年から三年ほど、短いながらも、金融市場、マーケットの世界で働いておりました。マーケットの世界というのはやはりニューヨーク時間、日本の真夜中に大きく動きますので、毎日寝不足、二十代の一番元気な頃とはいえ、体がきつかったのを懐かしく思い出します。そんな駆け出しの頃、総理大臣をされていたのが野田佳彦先生でした。そして、その少し後、強烈な黒田バズーカとともに颯爽と現れたのが黒田日銀総裁です。お二人は私にとってテレビの中の人、日本を引っ張っていく、まさに雲の上の存在でした。そんなお二人とそして財務大臣の前で発言の機会をいただいていること、元金融マンとしてこれ以上なく光栄に感じております。同時に、なぜ自分がここにいられるのか、いまだに実感が持てません。金融マンにとってここは夢の舞台、改めてそう感じております。ありがとうございます。

 それでは、早速、質問の方に移らせていただきます。

 本日は、日銀の指し値オペに関して、そのテーマを中心に質問させていただきます。

 昨日の野田委員の指し値オペの質問に対する御答弁で黒田総裁は、金利差は為替だけで決まるわけではないと御答弁されておりましたが、日米金利差が開けば、一〇〇%の要因とはならないまでも、ドル高・円安の一大要因になるのは為替業界では常識です。

 昨日の日経新聞にも、欧米では長期金利が急上昇する一方、日銀はゼロ%程度の金利に抑えつける方針で、内外金利差は開きやすくなる、円安は輸入物価の上昇を通じて、二%の物価目標の達成に貢献する一方、家計や輸入企業の負担を高める面もあるとあります。

 また、物価上昇には円安の影響は軽微だとの御答弁でしたが、今までは円安がそれほど進んだわけではありません。日銀の金融政策が、指し値オペで長期金利の上昇を抑えるということを世界に公言した以上、かなりの円安が進むということも考えられます。

 そこで、財務大臣にお伺いいたします。

 円安が進行すれば、ガソリン価格は円貨で上昇すると思われます。政府が抑えようとするガソリン価格を日銀が押し上げようとするということに結果としてなってしまう可能性があります。政府の方策と日銀の政策、矛盾するということはないでしょうか。ガソリン補助金の効果を打ち消してしまうということはないでしょうか。

鈴木国務大臣 日銀では、二%の物価安定目標に向けまして、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、適切に金融政策運営を進められているものと承知をしております。

 御指摘の指し値オペを含め、金融政策の具体的な手法は、これはもう日銀に委ねるべきだと考えております。

 その上で、足下の物価上昇の動きについては、為替による影響も見られるものの、主には原油等のエネルギー価格の国際的な上昇によるもの、そのように承知をしております。雇用の改善や賃金の上昇が本格化する前に物価が上昇いたしますと、家計の所得環境を圧迫して、消費にも影響が出る可能性があります。

 政府としては、足下の物価上昇に対して、ガソリンや灯油などの急激な値上がりを抑制するための措置等を講じるなど、物価の動向が経済に与える影響にしっかりと対応しなければならない、また対応していきたいと思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 現在、ウクライナの情勢も非常に気になるところではございますので、物価の上昇をしっかりと注視していただければと思います。

 続いて、昨日の御答弁にありましたように、令和三年度上期の日銀保有国債の平均利回りは〇・二二六%です。これ以上利回りが上昇すれば、日銀の保有国債に評価損が生まれることになります。指し値オペの〇・二五%はこの数値に極めて近いレベルで、日銀が保有国債の評価損を避けるために防衛ラインを設定したとやはり考えてしまいます。昨日、黒田総裁は指し値オペ実施の理由をいろいろ述べられておりましたが、本音はここにあるのではないかと思料せざるを得ません。

 その御答弁の中で総裁は、日銀は簿価会計をしているから、評価損も出なければ、債務超過にならないと御答弁されておりましたが、信用リスクは、信用を供与する方が自分の方法で評価するものです。銀行ローンを借りるときは、借り手が自分を評価をするのではなく、貸し手である銀行が借り手の信用を評価して融資するかどうかを決めるものです。同じように、日銀がどのような会計手法を取っていたとしても、それとは関係なく、信用を判断する方が決めるわけです。

 外資では、簿価会計は前世紀の遺物です。格付会社や外資系金融機関は時価評価で日銀を評価してくると思いますが、日銀の評価損が大きくなると日本の格付が下がり、日本の銀行、企業とも窮地に追いやられるリスクがあると思います。時価会計上いつ債務超過に陥ってもおかしくない現状を、簿価会計だから大丈夫と言ってもいいのでしょうか。黒田総裁、お答えください。

黒田参考人 日本銀行では、保有国債の評価方法について、一部の例外を除いて売却を行っていないという保有実態も踏まえまして、償却原価法を採用しております。したがいまして、金利が上昇し、国債の市場価格が下落したとしても、決算上の期間損益において評価損失が計上されることはなく、財務の健全性が損なわれることはないというふうに考えております。

 なお、日本銀行では、参考情報として保有国債の時価情報についても公表しておりまして、令和三年九月末時点で約十兆円の評価益となっております。

 そうしたことで、今申し上げたように、償却原価法を採用しておって、評価損益が変動したとしても決算上の期間損益に影響はないわけですが、その上で申し上げますと、仮に、将来、評価損に転化、転じたとしましても、中央銀行には継続的に通貨発行益が発生いたしますので、信認が毀損されたり、政策運営に支障が生じるということはないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、日本銀行としても、財務の健全性にも留意しつつ、責務である物価の安定のために必要な政策を実施してまいりたいというふうに考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 今おっしゃったのは、いわゆる統合政府論ということだとは思うんですけれども、私の質問の趣旨としては、格付機関であったり外資系の金融機関が時価会計で評価したときに信用が失われてしまうということですので、今のお答えもやはりちょっと、簿価会計だから大丈夫で、これからもしっかりやっていくというふうにしか聞こえなかったので、そこの部分はちょっとどうかなと思うんですけれども。債務超過、やはりこれに陥ってしまう可能性、時価会計ですと、ということも考えられますので、引き続き注視させていただきます。

 ちょっと時間の関係もございますので、通告していた質問、一問飛ばさせていただきます。

 同じく昨日、黒田総裁は、今の話と同じなんですけれども、やはり御自身で債務超過の可能性に触れました。日銀当座預金の付利金利を引き上げても、資産サイドの国債も高い金利の国債に入れ替わるから、さほど心配はないとの御答弁でした。しかし、昔のように短期債や政府短期証券しか保有していなかった時代とは異なり、昨年十二月末時点で保有している国債の大部分は長期国債です。長期国債は、固定金利で、満期が来るまで利回りは変わりません。そんなにたくさん国債の満期が来るとは思いませんが、それでも受取利息が十分に上がるとお考えでしょうか。やはり、債務超過に陥る可能性、十分にあり得るのではないでしょうか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますように、いわゆる国債の評価損云々のことについては、先ほど申し上げたような会計処理をしているということであります。

 その上で、将来、出口に差しかかるということになると、当然のことながら、出口戦略ということで、拡大したバランスシートをどのように調整していくか。それから、政策金利、短期の政策金利、今、一部の当座預金にマイナス〇・一%、大半の当座預金に〇%、それから、かつての当座預金の残高にはプラスの金利をつける、そういう三層構造になっておりますけれども、いずれにいたしましても、政策金利を引き上げていくということになりますと、当然、支払い利息が増えていくということになります。

 他方で、受取利息の大半を占める国債、これについては、当然のことながら、金利も上がっていくと思いますけれども、その中でより高い金利のものに入れ替わっていく。日銀の保有しております国債の平均残存期間、七年弱ぐらいじゃないかと思うんですけれども、ということは、二、三年とか、四、五年とかそういう国債も相当持っているということです。他方で二十年債とか三十年債も持っております。そういう中で、売却しなくても、償還期限が来たものについて、償還されたものについて再投資をしていく。実は、米国のFRBもそういうふうにしているわけですね。FRBの場合は、保有国債の残存期間は日銀よりもっと長かったと思いますけれども、それでも売却せずに、償還されるたびに再投資をしていくということをやっているわけですね。

 ですから、もちろん、政策金利、短期金利が物すごく急上昇しないといけないというようなことになれば、一時的に逆ざやになるということはあり得ますけれども、そういうふうになるというふうに決めつけることもできず、いろいろなシナリオを描いてみると、逆ざやになる可能性もあるけれども、そうでなくて、プラスの形が続く可能性もあるということで、一概に出口に差しかかると日銀の収益がマイナスになるというふうに決めつけることはできないと思います。

 ちなみに、FRBはかつて出口戦略をかなり早くに示して、そのときには、出口のときに数年にわたってFRB全体として赤字になるということを示していたんですけれども、結局それはされずに、コロナが来る中で緩和をずっと続けて、今頃正常化のプロセスを始めるということでありますけれども、恐らく、FRBも赤字になるという可能性は薄いんじゃないかなと思います。

 したがいまして、日銀の場合も、もちろん、日銀はGDP比大変大きな額の国債を持っていますので、それが減っていくプロセスというのは時間が相当かかると思います。

 したがいまして、そういうふうに時間をかけてバランスシートを調整していく中で、一時的にその収支が赤字になる可能性を排除することはできませんけれども、必ずそうなるということでもなく、収益が減りますけれども、今、日銀は一兆円以上の収益を出しているんですけれども、それは減ると思いますけれども、赤字になるかどうかというのは必ずしも一概に言うことはできないというふうに思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 もちろん、赤字になるとは限らないというようなお話でしたけれども、逆をつくと、やはり、赤字になってしまう、債務超過になるということも十二分に考えられると思います。やはり、保有長期国債、これだけかなり多いと、逆ざやになってしまうということも当然考えられると思います。その場合、やはり非常に大きな事態ですので、当然、日銀としてもシミュレーションをしっかりとやっていかなければならないと思っております。引き続き私の方でも注視させていただきたいと思っております。

 ちょっと時間の関係でここで終わりにさせていただきますけれども、またの機会に是非どうぞよろしくお願いいたします。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 本日は、昨日に引き続きまして、インボイスの関係の質問をさせていただきたいと思います。

 といいますのも、本当に、インボイスの導入については、私どもは実務の観点からも反対をずっとしてきたわけですけれども、しかし、時間が経過をし、もう目の前にインボイスの導入ということになろうということになっています。そうなりますと、本当に今、現場の方でいろいろな意味で動揺も広がってきております。

 昨日も申し上げましたけれども、課税事業者でない、売上げが一千万円以下の方々で今課税事業者を選択されていない方々からしますと、これは課税事業者にならないとインボイスは発行できませんから、当然、従来の取引の中から外されるのではないだろうかという心配が非常に強い。さりとて、それまで非常に零細な事業しかしていないわけですから、複雑な税務はおよそ苦手だという中で、本当に今現場が悩んでいらっしゃる。また、それを今御相談を受けているのが税理士の皆さんで、税理士の皆さんも個別のクライアントのお悩みと向き合ったときに本当に困っておられるということがあるものですから、少し今日は詳細にわたって実務的な話になりますけれども、大臣政務官の方からお答えをいただいて、少しでも現場の皆さんの動揺を抑えていただくようにお願いをしたいと思いまして、実務的な質問をさせていただきたいと思います。

 実務ですので、現場の方々が頼りにしていますのは、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」、こういうものがありますので、それを基に、けんけんがくがく今御議論されているわけであります。

 これの例えば問いの九という項目がありまして、個人である免税事業者、個人です、個人である免税事業者が令和五年度の適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、令和五年度適格請求書発行事業者の登録をするという場合に、QアンドAによれば、令和五年十月一日から令和五年十二月三十一日に行った課税資産の譲渡等及び特定仕入れについて、消費税の申告が必要であるということになっています。逆に言いますと、令和五年の一月一日から五年の九月三十日までの取引については免税になるということの裏返しだと思いますが。

 今回の改正で、経過措置期間が六年間延長されております。令和五年十月一日の属する課税期間の翌課税期間以降の期の途中に適格請求書発行事業者となった場合も、このQアンドAと同様に、適格請求書発行事業者登録日から課税事業者となるのかどうか、期首から登録までは免税と考えてよいのかどうか、これが非常に現場で疑問だそうですので、お答えをいただければと思います。

藤原大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、今回の税制改正において盛り込まれております経過措置、六年間の延長、これの適用を受けて、その課税期間の途中においてインボイス発行事業者となった場合には、同様に、登録された日から納税義務の免除がされず課税事業者になる。登録された日から納税義務の免除がされず課税事業者となるということは、裏返して言うと、登録されるまでは従来どおり免税の事業者ということになります。

岸本委員 ありがとうございます。そこをはっきりさせていただきましたので、現場も安心をすると思います。

 引き続きましてですが、この登録に際しまして、令和五年分を適用開始課税期間とする課税事業者選択届出書を提出した場合に、令和五年一月一日から同年の十二月三十一日に行った課税資産の譲渡等及び特定仕入れについて、消費税の申告が必要になるのかどうか、必要と考えてよいのかどうか。経過措置を適用して適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には課税事業者選択届出書を提出する必要がないというふうになっておりますのも、上記のようなケースを想定していると考えてよいのかどうか。お答えをいただければと思います。

藤原大臣政務官 お答えいたします。

 免税事業者である個人事業者を前提といたしますが、令和五年分から課税事業者となることを選択するためには、令和四年の末までに消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります。その際には、令和五年一月一日から十二月三十一日までの、十二月末までの取引について、これは消費税の申告納税をする必要がございます。

 他方、免税事業者の方が経過措置を適用いたしましてインボイス発行事業者の登録を受ける場合には、課税期間の初日、つまり、年の初めではなく、登録を受けた日以後についてのみ消費税の申告納税を行うというふうになっております。

岸本委員 ありがとうございます。そこもはっきりさせていただきましたので、ありがたく思います。

 それで、引き続きましてですけれども、免税事業者、個人の事業者ですけれども、免税事業者が令和五年十月一日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した消費税簡易課税制度選択届出書を納税地の所轄税務署長に提出した場合には、その課税期間の初日の前日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされるというふうにQアンドAは読めるんですけれども、この場合、登録日の属する事業年度に簡易課税選択届出書を提出する必要があるとされておりますけれども、具体的には令和五年十二月三十一日までに提出する必要があると解してよいのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

藤原大臣政務官 お答え申し上げます。

 個人事業者を前提とする場合でございますが、委員御指摘のとおりであります。

岸本委員 それで、制度はそうなっているので明快なんですけれども、初めて、免税事業者になる、これまで全く消費税の実務経験がない方々がいるわけで、これも、昨日の審議でも何万人になるのかみたいな話がありましたけれども、かなりの数の恐らく免税事業者の方が今回チャレンジをされるということになると思います。

 この場合、令和五年度の消費税の確定申告書の提出期限まで簡易課税選択届出書の期限を延長した方がトラブルを回避できるんじゃないかというふうに考えます。これは令和五年度だけの処理でいいと思うんですけれども。実際、私の友人でも、脱サラして自営業をやって、一千万を超えたんだけれども、簡易課税者の要件を満たすんだけれども、簡易課税者のを満たすんだけれども、その届出を失念していたというか、うっかりしていたということで、困った例もあったようですので、その辺は、副大臣、どうですか。

岡本副大臣 ありがとうございます。

 この簡易課税制度ですけれども、そもそも、中小事業者の皆さんの事務負担に配慮をする観点から、消費税を御負担いただく消費者との間で、課税の公平性、これに反しない範囲で設けられた制度です。

 今委員が御提案されたように、消費税の申告期限まで簡易課税制度選択届出書の提出がもし可能となってしまいますと、納付税額の有利、不利の考慮によって、制度の選択、不選択が行われまして、中小事業者の事務負担への配慮としている元々の制度の趣旨とは異なるような運用、適用が行われるおそれがあります。

 御指摘のようなトラブル、先生が今御指摘されたトラブルに関しましては、免税事業者であった方がインボイス発行事業者となって課税事業者となる場合も踏まえまして、簡易課税制度選択届出書の提出期限についても丁寧に周知を行って、皆様に御理解をして行っていただきたいというふうに思っております。

岸本委員 確かに、制度の運用をされる側からするとそういうお答えになるんだろうと私も思いますけれども、現場の方々からの気持ちからすると、なかなか、お上は冷たいなというような感じになりますので、是非、理屈上やむを得ないと思いますけれども、いろいろな工夫を今後検討していただければと思います。

 それで、これも実務上の話なんですけれども、確認も含めてなんですけれども、私の理解が正しいかどうかも含めてお願いします。

 申告書とか申請書等の提出期限、これが、営業日でないといいますか、日曜日等の休日に当たる場合、その期限はその翌日等に延長するというたてつけになっております。

 ところが、簡易課税制度の選択届出書について私が知るところでは、この提出期限の延長の定めがないように思うんですが、そこの確認と、そうすると、この点についてもトラブルが予測されます。今まで消費税の実務経験の全くない免税事業者の方が大勢今回出られるということなのですが、今、周知徹底に努められるということでしたけれども、この点の広報をどうなさるのか。あるいは、免税事業者が課税事業者となる初年度のみ、申告書の提出期限の延長と同様の措置が取れるのか取れないのか。若しくは、災害等による消費税簡易課税制度選択届出に係る特例承認申請書と同様の、申請書の提出をすれば承認を受けることができるようなことが果たして可能なのかどうか。その辺について実務的な御答弁をいただければと思います。

岡本副大臣 今の岸本委員の御理解は、正しい御理解でございます。

 簡易課税制度選択届出書につきましては、その提出の有無によって、日々の帳簿の作成、請求書等の保存といった仕入れ税額控除のために必要となる事務が変わってきますので、原則として、課税期間が開始するまでに提出していただくことになっておりまして、この期限が仮に日曜ですとか祝日に該当した場合でも、翌日に延長されないことになっています。

 なお、事業を開始した課税期間や今回の経過措置の適用を受けた場合につきましては、例外として、適用を受ける課税期間の末日までに提出すればよいことになっていますけれども、この期限も、仮に日曜、祝日に該当した場合でも、原則の場合と同様に、提出期限が延長されないという取扱いになっています。

 御指摘いただいたようなトラブルが起こりませんように、課税事業者の方々に対して分かりやすいリーフレットを作成いたしまして、簡易課税制度について御案内をすることに加えまして、免税事業者向けの説明会を開催をいたしまして、簡易課税制度も併せて説明をするなどいたしまして、丁寧な周知広報活動に努めてまいりたいと考えています。

岸本委員 ありがとうございます。

 今日は、現場で本当に実務に携わっている方々、それから、今、本当に悩んで、課税事業者になろうかな、どうしようかなと思っている方々の現場のお悩みの声を代弁させていただきました。

 本当にこれは、制度上、我々は反対ですけれども、制度を運用していくならばある程度仕方がない部分もあるとはいえ、本当に誠実に真面目に事業を行っていて納税倫理の高い方々が対象ですので、どうか、御当局としていろいろな配慮をしていただくことをお願い申し上げまして、本日の、あ、どうぞ。ありますか。どうぞ、副大臣。

岡本副大臣 済みません。最後の広報活動につきまして、トラブルがないように、私、先ほど、課税事業者の方々に対して分かりやすくというふうに申し上げましたけれども、済みません、免税事業者の方々に対して分かりやすく広報活動を徹底してまいります。

 失礼いたしました。

岸本委員 是非よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 今日は、法人税について質問をします。

 配付資料一を御覧いただきたいと思います。新しい資本主義実現会議に出された政府の資料です。

 二〇〇〇年度から二〇二〇年度にかけて、資本金十億円以上の大企業の現預金は八五・一%の増加、経常利益は九一・一%の増加、配当は四八三・四%の増加。一方、人件費は〇・四%の減少で、設備投資は五・三%の減少となっています。つまり、過去二十年間の大企業の財務の動向というのは、人件費はマイナス、配当と内部留保が増えたという結果になっているわけです。

 大臣にお尋ねします。

 アベノミクスの期間も含めて、企業の収益が改善しても好循環は起こってきていません。ここを岸田政権を挙げて問題視されているわけですよね。なぜ、配当や現預金及び内部留保だけが増えていると認識されていますか。

鈴木国務大臣 我が国におきましては、バブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレによりまして停滞の時代を経験をし、消費者は将来への不安などから消費を減らさざるを得ず、その結果、需要が低迷しデフレが加速をするという悪循環だった、そのように承知をいたしております。

 こうした中で、企業収益や配当は増加したものの、企業収益の伸びが賃上げや国内投資に十分結びつかず、現預金や内部留保が増加してきたと考えられます。

 政府としては、新しい資本主義の下、市場や競争に全てを任せるのではなくて、官と民が協働して、賃上げ等の人への投資やデジタル化など、課題を克服しながら成長と分配の好循環をつくっていきたいと考えております。

田村(貴)委員 安倍、菅政権の下で、賃上げや社会保障などによる分配は強化されなかったんです。むしろ、法人実効税率の引下げ、それから租税特別措置の拡充など、大企業への減税を繰り返してきたんですよね。ここにメスを入れない限り、賃金の引上げなどにはつながりません。好循環は生まれないのではありませんか。

 大臣、ここは、新しい資本主義をつくるところの会議に、政府の資料で、こうやって明暗ははっきりしているわけですから、やはり、租税特別措置の改正とか、そうしたところに踏み込まなければいけないと思いますよ。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 法人税率につきましては、稼ぐ力の高い企業の税負担を軽減をして、積極的な投資や賃上げが可能な体質への転換を促すという、そういう観点から、平成二十七年度、二十八年度改正において引下げを行ったところでございます。これは課税ベースの拡大等を併せ実行したものでありまして、単なる法人税減税ではなく、税収中立の考え方の下で行われたものであります。

 こうした経緯もあることから、法人税の改正について直ちに見直すことは考えておりませんが、租特、特別措置を始めとする今後の法人税制の在り方につきましては、これまでの税制改正の趣旨や経緯のほか、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続き不断に検討をしてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 最終的には検討ということなんですよね。検討ばかりです。

 正すべき租税特別措置のことについて質問をしますけれども、やはり一部の企業に恩恵が集中するなどの税制上の問題があるにもかかわらず、正されてきていません、検証もなされていません。例えば、研究開発減税は上位十社の占有率が高い。一部の大企業の既得権益になっています。

 そこで、質問します。

 二〇一三年度から二〇二〇年度までの研究開発減税の総額及び上位十社への適用総額、その合計と割合について説明してください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一三年度から二〇二〇年度までの研究開発税制の適用額につきましては、適用総額については四兆八千五百七十三億円、上位十社への適用額の合計につきましては一兆五千七百十一億円、適用総額に占める上位十社への適用額の割合につきましては三二・三%となっております。

田村(貴)委員 この中で、八年間ずっと十位にランクしている企業というのは何社ありますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 この租税特別措置の適用実態調査の報告書におきましては、個別の企業の競争上の不利益が生じるおそれがあることから、対象となる個別の企業名は公表しておりませんが、適用額の上位十社については、それぞれの租税特別措置ごとに、個別の企業名ではなく、毎年度ランダムに割り振ったコード番号をお示ししているところでございます。

 このコード番号につきましては毎年度変更することといたしておりますが、同じ企業に継続して割り振ることとした場合には、その企業の行動でありますとか、そのときの業況等により、個別企業名を類推することが可能となり、企業名を公表するのと実質的に同様の効果があるためでございます。

 こういった事情から、委員御指摘のような、八年間継続して上位十社に入っている企業名や企業数についてお答えできないことを御理解いただければと存じます。

田村(貴)委員 特定の大企業に集中しているということで解き明かしたいと思いますけれども、私が手に持っているのは、租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書というものがあります。国会に出されています。これはこれまで、この委員会でも、岸本議員そして中川議員が調査結果を使って質問されています。私も活用したいと思います。

 配付資料二を御覧いただきたいと思います。研究開発減税の推移です。この報告書から、この分厚い報告書から、連結と単体を毎年拾って、上位十位を並べました。そして、この間の業種の一位のほとんどが輸送用機械器具製造業となっています。このことから、常に一位で減税を受けてきたと考えられるのが、トヨタ自動車ですよね。そうですよね。

 研究開発減税が一部の大企業に集中し、既得権益化している。そうではありませんか。お答えください。

住澤政府参考人 先ほど御説明しましたような事情がございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

田村(貴)委員 答えられないということです。

 では、研究開発減税により、日本の企業が、その研究開発が増えてきたのかどうか、それについて効果を示していただきたいと思いますが、いかがですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 企業の研究開発につきましては、企業の経済活動が税制のみならず内外の経済状況や個別の企業収益の影響を受けるため、税制の効果だけを取り出して研究開発投資への判断の影響を測定することや、この税制の導入による研究開発投資の促進効果を定量的にお示しすることは難しいというふうに考えております。

 他方、文部科学省の科学技術新指標二〇二一という資料がございますが、これによりますと、日本の企業部門の研究開発費は、二〇一三年度から二〇一九年度にかけまして十二・七兆円から十四・二兆円、GDP比で申しますと二・四八%から二・五四%へと増加いたしております。こういったデータから見ても、研究開発税制については一定程度寄与した可能性が否定できないものと考えております。

田村(貴)委員 この研究開発減税のいびつな形によるですね、検証はやはりすべきですよ。そして、日本の中堅企業、大企業を含めて、全体的に研究開発がどの程度この減税によって、押しなべて増えてきているのかどうか。そうじゃないでしょう。そうしたことはちゃんと検証しなければいけないと思います。

 問題点についてただしたいと思います。

 研究開発減税の中心は、総額制度であります。ここが問題で、二〇二〇年度では、全体のうち総額制度が占める割合が九三%にも達しています。この結果、研究開発の比重が高い一部の製造業に恩恵が偏る仕組みになっています。この総額制の下では、研究開発を増やすインセンティブにならないのではありませんか。ここは改めるべきだと思いますけれども、いかがですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 総額型の措置におきましても、研究開発費の伸びに応じまして控除率が累進的に変化するといったような仕組みを取っておりまして、この研究開発費の増加に対するインセンティブとしての措置は組み込まれているというふうに考えております。

田村(貴)委員 今年一月九日付の日本経済新聞でも指摘されているんですけれども、研究開発減税による研究開発費の促進の効果は極めて疑わしいと報じられています。科学技術研究費の総額は総務省によると二〇一九年度に十九兆五千七百五十七億円だったが、国内総生産、GDP比ではほとんど伸びておらず、過去十年間は三・五%前後と横ばいが続くと。先ほどお示しした数字とは違う、こういう指摘があるわけですよ。

 大臣、伺います。

 幾ら減税しても、研究開発費は伸びず、配当や内部留保に回っている。新しい資本主義実現会議に出た、今、岸田政権が政権挙げて問題としている、この資料に表れているじゃないですか。このどこをどう改善するのか、大臣、しかとお答えいただけないですか。

鈴木国務大臣 研究開発税制は、大企業、中小企業にかかわらず、将来の経済成長の礎となる企業の研究開発投資を後押しするものでありまして、大企業を優遇するものではなく、また中小企業については控除率も優遇をされているところでございます。

 また、これまでの税制改正におきましても、その必要性や有効性を踏まえつつ、例えば平成二十七年度改正では、試験研究費の総額に対する一定の控除についてその減税幅を縮減する、平成二十九年度改正では、研究開発投資の増減に応じて減税幅を変動させる仕組みに改正をいたしました。また、令和元年度改正では、研究開発の増減に応じたインセンティブを強化する観点から控除率を見直し、令和三年度改正では、厳しい経営環境にあっても研究開発投資を増加する企業の控除率を引き上げる一方で、控除カーブを見直すなど、これまでにもめり張りをつけた見直しを行ってきているところでございます。

 こうしたような経過も踏まえまして、税制改正の趣旨、経緯のほかにも、経済社会の構造変化もしっかりと捉えて、引き続き、必要な見直しを検討をしていくべきものと考えております。

田村(貴)委員 めり張りというふうにおっしゃいました。特定の大企業に偏っためり張りがあるわけです。そして、必要な見直し、私も述べましたので、着手してください。

 そして、資料の三ですけれども、会社標本調査に基づいて財務省が作成したものであります。大企業の法人税の負担率は極めて小さい。そして、資本金十億円超の単体法人及び連結法人の税負担割合は、たった一三%ということになっています。

 法人税制全体にわたっても抜本的に是正すべきと考えますけれども、大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 先生の御指摘は、法人税率を引き上げるべきではないかということでよろしいでしょうか。

 平成二十七年度、二十八年度税制改正における成長志向の法人税改革におきまして、租税特別措置の縮減、廃止等により課税ベースを拡大し、財源をしっかり確保しながら、法人税率を引き下げてきたところでございます。

 今後の法人税制の在り方につきましては、これまでの改正の趣旨、経緯のほか、経済社会の構造変化も踏まえながら検討する必要があると考えております。

田村(貴)委員 本当に分配をするというのであれば、特定大企業に偏った優遇税制を根本的に是正しなければならない、そして、賃金は引き上げられない、研究開発さらには設備投資に結びつかないということを指摘して、時間が来ましたので、ごめんなさい、金融所得課税についてはまた次回に質問させていただきます。今日は終わります。

薗浦委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 今回の令和四年度の改正の中にあります航空機燃料税、まだ余り取り上げられなかった、についてまず伺います。

 航空機燃料税は、航空機に積み込まれた航空機燃料に課税され、航空機の所有者又は使用者が納税義務を負う。本則の税率は一キロリットル当たり二万六千円の従量税率であるということでございます。

 航空業界は、旅客需要の大幅な減退によって未曽有の危機にあって、従業員の賃金、賞与はカットされ、年収三割減が二年続くという厳しい生活を強いられ、やむにやまれず、離職者が続出をしているという状況でございます。

 島国である日本の国際間輸送や公共交通機関としての大きな役割を担うとともに、二〇三〇年六千万人のインバウンドを支える産業として期待をされているわけでございます。

 資料の一枚目を御覧ください。この間の国際、国内の輸送人員数でございます。これは見て一目瞭然でございますが、二〇二〇年の二月から、上の方、国際線は減りまして、最盛期、二〇一九年、二百十一万人だった数が、二〇二〇年、三万人にまで減っている。国際線に関しては、ずっとそのままほぼ横ばいであるということ。国内線に関しては、同じく二〇一九年に最も多い輸送人数を記録しましたが、二〇二〇年からは、コロナの感染そしてそれが収縮と歩調を合わせるように数が上下をしているという状況でございます。

 私は福岡ですので、飛行機で地元へ帰ったりすると、これがすごくよく、実感としても肌感覚としても分かりまして、二〇二二年、恐らくこれも、ここにはありませんが、国際線もそうですけれども、国内においても徐々に下がっている状況だろうということを感じております。

 そこで、租特の規定によって、そうはいっても、政府としてもこれまで多くの取組をしてまいりました。軽減措置が講じられ、令和三年度税制改正で、キロリットル当たり一万八千円から、一年間の特例として九千円に軽減措置が拡大をされたということでございます。

 で、来年度です。オミクロン株がまだ不透明な中、あるいは航空業界、これからまだどうなるか分からないという中、今回ではキロリットル当たり一万三千円ということで、軽減措置をより縮小するということでございますが、なぜそういう縮小をしているのか、まず御答弁をお願いいたします。

鈴木国務大臣 稲富先生が御指摘のとおりに、新型コロナの影響によりまして、航空会社が極めて厳しい経営状況となっておりました。

 そういうことを踏まえまして、航空燃料税につきましては、一年限りで軽減措置の大幅拡充を行ったところでございます。

 そして、令和四年度におきましては、航空会社の経営状況に一定の改善が見られることを受け、令和三年度に行った軽減措置をそのまま維持することはいたしませんでしたけれども、新たな変異株の発生等もあり、依然として厳しい状況にある中、航空燃料税についてはキロリットル当たり一万三千円とすることとしたところでございました。

 こうした措置を通じまして、令和四年度においても、引き続き、航空ネットワークを維持、確保するとともに、需要回復後の成長投資を下支えしてまいりたい、そのように考えているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 資料二を御覧ください。上の方ですね。

 この訪日外客数の推移ということを見ていただくと、航空産業の非常にその他の産業と大きく異なることは、二〇一九年まで、国として二〇二〇年四千万人という目標を掲げて、東京オリンピックに向けて、ある意味、駆け上がって成長してきた産業ということでございます。ですので、二〇二〇年、二〇二一年と、がたっと崖のように落ち込んでいるのが分かるかと思います。成長をずっと続けてきたということ、それが突如として下がったということで、それまで、これも飛行機を使われている先生方も御実感されているように、機材が変わって、あるいは、要するに、設備投資を随分とやってきたわけです。それが二〇二〇年、がくっと下がっているという状況で、それが他の産業と大きくまた異なる状況かと思います。したがって、先ほど申し上げたように、離職者等も出ざるを得なくなっているということで。

 こういう今の状況の中で、国としても、当然、様々な措置で入国制限をせざるを得ない場面もあったかと思います。したがって、その減収のうち、一定程度、やはり、国として減税措置その他を含めての支援が必要だということは私も思います。

 そこで、今減税のお話をいただきましたけれども、その他、国としてどのような対応をされるのか、お伺いをいたします。

鈴木国務大臣 燃料税の減免につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、そのほかについては、他業種にも関わりますが、雇用調整助成金等、そうしたメニューで対応をしていきたい、そう思います。

稲富委員 ありがとうございます。

 空港使用料の減免ということも併せて国としてされるものと思いますが、ごめんなさい、これはちょっと通告しておりませんでしたが、合計で幾らぐらいの減税幅か、これは事務方で結構ですので、今おっしゃっていただいた今回の減税と、空港使用料の減免、合わせてどれぐらいの規模かということをお答えをお願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねは、航空機燃料税の減免額と空港使用料の軽減措置、これを合わせて幾らかというお尋ねと理解いたしましたが、よろしゅうございますでしょうか。

 そういう前提でお答え申し上げますと、令和三年度につきましては、総額で千二百億円、このうち航空機燃料税の減免額が三百億円でございます。令和四年度につきましては、総額で七百億円、このうち航空機燃料税の減免額が百九十億円でございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 大臣、これ、先ほど、数字を、旅客数の変移を見ていただいたと思うんですけれども、昨年度よりも来年度の方がより大丈夫にはなっているのではないかという予想の下、減税幅を縮小し、対策についても、先ほど御答弁ありましたけれども、一千二百億から七百億という減少をしたということだと思うんですけれども、これはまだ不透明だと思うんですよね。なので、是非機動的にここは対応していただきたいなというふうに希望を申し上げるわけですが、何か一言、是非よろしくお願いします。

鈴木国務大臣 航空会社の経営状況につきましては、昨年よりも少しは改善したとは思いますが、しかし、新たな変異株の状況もございます。そうしたような状況を今後ともしっかり見極めつつ、まずは足下の公租公課の減免をしっかり実施していきたいと考えております。

稲富委員 これから不透明な中、是非機動的に対応いただきたいと思います。

 この航空機燃料税のそもそもの問題を指摘したいと思います。

 この燃料税については、資料二の下の方を御覧いただきますと、事業者から一般会計に繰り入れられている部分と地方への配分があるということでございます。空港整備等の特定財源ということの位置づけかと思いますが、そもそもの設立の経緯、目的、使途について、簡単で結構です、御説明をお願いします。

鈴木国務大臣 航空機燃料税でありますが、これは、空港整備等の財源確保の観点から、昭和四十七年四月に創設をされ、その税収は、国、地方の空港整備や維持運営費等の財源として使われております。

稲富委員 ありがとうございます。

 約五十年前。先日、我々議論している住宅ローン、住宅促進の税制とほぼ、たしか四十七年だったかと思います。五十年続いているわけでございます。先ほど御説明ありましたように、当時は空港も建設をしなければいけないという事情があって、そのために、課税をして、それを財源として使ってきたという経緯がある。その当時の意味は分かります。

 しかし、これだけ空港もたくさんできているということ、また、もう五十年たっているということ、そして、空港経営そのものの改革が必要であるということ、国としても取り組んでいること、また、燃料税そのものが諸外国にはない税、要するに、日本の航空会社のみに課税をされるということ、グローバルな競争に勝ち抜くために、日本の航空会社だけが負担しなければいけないというのはちょっとどうかということを併せて考えると、やはり将来的にはこの税そのものを見直す、段階的に縮小すべきという方向にあると思いますが、大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 先生から、創設以来五十年近くたって、時代背景も変わってきているというようなことのお話もございまして、御指摘のような御意見があるということは承知をしているところでございます。

 また、一方におきまして、現在も、各地の空港の機能強化をしなければいけない、あるいは老朽化対策をしなければいけない、これは重要な課題でございます。そのために、航空機燃料税を廃止縮小するということは適当ではない、そのように思っています。

稲富委員 是非このコロナへの機動的な対応と、また、税については、その設立の経緯あるいは趣旨を踏まえて、今後、対応していただきたいというふうに思います。

 次に、賃上げ税制に移ります。

 昨日、伴野先生が、その効果について、多角的にいろんなアプローチで質問されました。この効果について、昨日、局長さんが様々、政府の公式見解ではないけれどもということで、幾つかこういう調査結果があるということをお示しをされました。

 それで、私、その結果を見たんですけれども、まず、平成二十九年の内閣府のディスカッションペーパーというものでございます。これには、確かに、二〇一三年から二〇一六年にかけて一・四六兆円増加だということで、結果があるわけですけれども、そもそも、これ、減税額の幅として八千億の減税をしているわけでございます、その間。したがって、それに対して一・四六兆円の増加をしたということで、まあ、言うと、倍以上の増加にはならないということがはっきりしている、この結果ではそういうことが言えるということ。

 それと、もう一つ、経産省のでしょうか、平成二十九年の所得促進税制の効果測定等に関する調査結果の中で、賃上げの後押しをしたという方が、大いに後押しをしたという企業が二四・四%、後押しをしたが三七・五%ということで、約六割ちょっとがこの税制によってすごく、要するに賃上げをしたということもおっしゃいました。しかし、これを見ますと、大いに後押ししたというのは四分の一にすぎないわけでございます。

 それで、資料三を御覧ください。

 同じく、日本政府データカタログサイトというところの経済産業省の中の資料の中にあるデータでございます。令和元年度企業雇用状況等に関する調査研究というもので、中小企業に対する部分で、アンケートで、賃金を引き上げた理由のところで、所得拡大促進税制の適用を受けるためというのは一・三%、令和一年の予定、今後もですね、促進税制の適用を受けるためというのは一・三%にすぎないということでございます。

 この委員会でも、この効果はどうなんだということは様々な委員から、私もそうですけれども、申し上げ、あるいは、質問も多岐にわたってありました。なかなか測定するのは難しいですよというのが政府のこれまでの御答弁なんですよね。

 しかし、租特のところで、ここはちょっと私は少数派かもしれませんが、効果のはっきりしないものについて、そもそもやめるべきじゃないかというのが私の見解なんですね。これは私個人の見解です。租特は、これまでも議論ありましたように、税制の中立、公平、簡素という原則を破るものである、ある意味、政策誘導である。だからこそ、それが意味のある、効果のあるものじゃなければやってはいけないということが原則とすれば、効果が要するに分からないというものに対してはやるべきじゃないんじゃないかと私は思うわけですが、大臣、見解をお伺いをいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、租税特別措置は、税制の公平、中立、簡素という原則の例外を設けるものでございますので、やはりその政策効果でありますとか必要性についてきちんと検証していくべきだという御指摘は、まさにそのとおりかというふうに存じます。

 また、この賃上げ税制の効果につきましては、先日来御説明申し上げておりますように、この税制の効果だけを取り出してその効果の測定をするということはなかなか難しいというふうに申し上げているわけですけれども、不断に、適用状況など活用可能なデータはきちんと活用しながら検証を続けていくことが必要だというふうに考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 そこで、今、要するに、税制を使って賃金を引き上げると、その他の政策も使って、併せて。そこのベースになっている与党の税制大綱の中にこういう表現があります。「近年の累次の法人税改革も、意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない。」と。先ほど来ありましたように、課税ベースを広げて税率を下げて、政府としては努力をしてきた。しかし、意図した成果、すなわち人への投資や設備投資を十分に企業はやってこなかったんじゃないかということかと思います。

 ここの表題には「未来への投資等に向けた経済界への期待」、期待というふうに書いてあります。税制その他の施策を通じて企業の利益を吐き出そうということかと思うんですが、先ほど申し上げましたように、はっきりしないというものでありますので、私は、王道はやはり課税をして分配をするということだと思うんです。企業への、言うと、投資に期待とすることは政府の役目ではなくて、課税をして分配をするというのが政府の役目であると思うわけです。

 だから、これをやっていると、あとはどうなるのかというと、やはり内部留保に課税しちゃいいんじゃないか。あるいは、先ほどありましたけれども、法人税を増税しなきゃいけないんじゃないかという議論にやはりなってくると思うんですよね。

 そこで、ちょっと伺います。内部留保金課税についてです。これは私が賛成している、反対しているということではなく、議論にもまだ相当上っているわけではございませんので、現状の政府の考え方を伺います。

 内部留保金課税、利益剰余金は、二〇二〇年から、二〇一五年で八十兆円増え、二〇一五年から二〇二〇年まで百兆円増えているということで、今五百兆円弱というところまで来ている。ここに対する課税について、政府として検討しているのか、あるいは、これって二重課税になると考えるのか、他国はどうなっているのか、見解を伺います。

鈴木国務大臣 内部留保への課税でございますが、これにつきましては、先生もお触れになりましたけれども、二重課税に当たるとの指摘がございまして、慎重な検討が必要になると考えております。政府におきましても、具体的に検討はいたしておりません。

 一方、内部留保を企業がため込むだけではなくて、それを投資や賃金引上げ等に積極的に取り組むことは、これは重要なことと考えておりまして、そのために、今般の税制改正において、賃上げに係る税制措置の抜本的強化、オープンイノベーション促進税制の拡充を行うところでございます。

 なお、内部留保課税と類似したものが外国にあるかということでございますが、他国の事例につきましては、アメリカや韓国においてはいわゆる内部留保に課税する制度が存在をしている、そのように聞いております。

稲富委員 ありがとうございます。

 法人税について伺います。

 当委員会でも、法人税の国際的な引下げ競争というのは一息、一定のルールの下で落ち着いたということでございますが、こうなると、じゃ、内部留保金課税ができない、あるいはしないとなると、法人税の増税はどうするんだ、じゃ、そっちの方かということになろうかと、議論がなるかもしれないということで、法人税の増税について考えているのか、あるいは、我が党でも言っておりますが、累進税率化、多段階化というのは考えるのか、政府の見解を伺います。

鈴木国務大臣 法人税率につきましては、稼ぐ力の高い企業の税負担を軽減をして、積極的な投資や賃上げが可能な体質への転換を促す観点から、平成二十七年度、二十八年度税制改正における成長志向の法人税改革において、租税特別措置の縮減、廃止等により課税ベースを拡大し、財源をしっかり確保しながら法人税率を引き下げたところでございます。

 今後の法人税制の在り方についてでありますが、これも、これまでの改正の趣旨、経緯のほか、経済社会の構造変化も踏まえながら検討する必要があると考えております。

 それから、法人税の累進税率についてでありますが、法人税につきましては、法人は、自然人である個人と異なり、税負担を回避するために会社分割を行うというふうなことも可能であること、また、法人税制は、企業の規模、形態に対し中立的であることが望ましいことなどから、累進税率ではなくて単一税率を採用しているところでありまして、法人に対する累進税率の適用には課題があると考えております。

稲富委員 ありがとうございます。御答弁ありがとうございました。

 続きまして、今回の法案の中の特定税額控除規定の不適用措置の見直しのところです。

 去年でも、今年でも、直近のところで、この不適用措置がどういうふうに適用されているのか、これが研究開発税制その他の租特にどのような影響を与えるのか、政府にお伺いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 特定税額控除規定の不適用措置でございますが、これにつきましては、私どもが公表しております租税特別措置の実態調査の対象にはなってございませんで、と申しますのも、この実態調査の対象になっているのが税負担の軽減を図る法人税の措置ということでございますので、対象になってございません。

 そういったこともございまして、この詳細を把握することはなかなか難しいということは御理解いただきたいと思いますが、令和二年度の税制改正におきまして、この措置の改正をいたしました際に、増減収額は僅少ということで計上いたさなかったわけですけれども、その際に民間のデータベースを用いまして推計をいたしましたところ、国内投資が減価償却の三割に満たないとか、あるいは人件費が増加していないといったような、利益が増えているにもかかわらずですね、そういったような企業の研究開発費が研究開発費全体に占める割合というのは大体〇・一%ぐらいといったようなデータがございましたので、恐らくそういった企業全体の研究開発に与える影響というのはかなり小さいというものだというふうに考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 影響は小さいということでございますが、今回、いわば賃上げ税制の中でここはむちの部分で、税制の促進のあめとむちを使ってより賃上げを促進をするということなんですけれども、賃上げというのはやはり高度な経営判断だと思うんですよね。このような政策をやって何とか賃上げをしようとすること、あと、ここも私は多分少数派かもしれませんが、今回、大企業に対するマルチステークホルダー宣言というのを要件にするとか、効果もよく分からないようなことを企業に求め、そしてそれを使って何か政策を実行しようとすることがどうも私は、何というか、よくないんじゃないかというふうに思っております。

 それで、資料の四を御覧ください。大臣、ちょっと質問が飛びますが、与党の税制大綱のところで、下線部のところでこういう記述がございます。企業が研究開発や人的資本などへの投資を強化し、中長期的に稼ぐ力を高めるとともに、その収益を更なる未来への投資や、株主だけでなく従業員や下請企業を含む多様なステークホルダーへの還元へと循環させていくことを通じ、企業としての持続的な成長を達成するという本来の使命を果たしていくと与党税調は書いておりますけれども、この企業の本来の使命、ここに書いてありますけれども、大臣もこのように思われていらっしゃいますか。

鈴木国務大臣 昨年十二月に取りまとめられました令和四年度の与党税制改正大綱におきましては、稲富先生御指摘の考え方が税制改正の基本的な考え方として示されております。

 このことにつきましては、私も同様の見解でございます。

稲富委員 企業の本来の使命ということで、大上段にここにいろいろ書かれてあるわけですけれども、私は、企業の本来の使命は利潤の追求であって、それ以上のことを企業にいろいろ求めていくというのは非常に難しい話だなと、非常に、何というか、管理的な経済といいますか、非常に私はここに違和感を感じております。

 この与党大綱の中で、先ほど、企業への期待という項目もあって、こうすることを期待している、法人税を下げた、法人税改革をしたけれども企業はそれに応えていない等々の表現があって、いわば企業にそういうことを要請をする、期待をするということなんですよね。

 でも、先ほど申し上げましたように、企業は利潤を追求し、政府はそこから税金をいただいてそれを分配するということに私は特化をした方がいいと思います。

 この税制の中で私が問題だと思うのは、二年後、またこの雇用促進税制は恐らく議論になると思うんです。本当にやめられますかということなんですよ。効果も分からない、八年続けて、今回は法案としてやって、効果も定かではない、難しいから分からないということを更に二年続けるわけです。

 大臣、これってやめられますか。賃金がその間ずっと上がって、上がってですよ、上がって、もう迷いなくこの税制は要らないとなればそれはいいですよ。ならなかったときに、ぐんぐん上がらなかったときにやめられますかということなんですよ。

 住宅ローン減税、もうこれも五十年近く続いてきた。その目的、使途、私は格差に寄与していると思いますけれども、そういった問題もあるにもかかわらず五十年続いているんですよ。これも、果たして、二年後、見直すと言って、やめられるんですか。何を基準にやめるんですか、効果も分からないのに。

 ここは、だから政府がどこまで、それに介入し出すと、やり出すとやめられなくなるんじゃないかと危惧しています。八年間で二兆円の税金を使ってきました。それに、効果も分からない。二年後、見直しです。大臣、どうやって見直しますか。是非お答えをお願いします。

鈴木国務大臣 極めて一般論になりまして恐縮でございますけれども、租税特別措置につきましては様々な御意見があるわけでありますけれども、やはり、本当にその時代時代の、必要性があるのか、あるいは有効性があるのか、そういうことをよく見極めた上で不断の見直しを行っていくということ、一般論でありますけれども、そういうことであると思います。

稲富委員 今の段階ではそういうお答えだろうと思います。

 ただ、やる以上は、どういう効果があるのかということをやはり見ないと、この見直しが実質はできず続いていくということを大変私は心配をしております。

 続きまして、住宅ローン減税についてお伺いします。

 これも、当委員会でもう御答弁ありました。住宅取得、持家の促進であり、内需の拡大、この二つが目的なんだということでございましたが、もう一度伺います。要するに、賃貸ではなく持家を促進する、国が住宅取得を促進する必要があるのかということ、この一点。簡潔でも結構です。お答えをお願いします。

鈴木国務大臣 先生の御質問は、なぜ国民の住宅取得を国が支援する必要があるのかということでございますが、住まいはやはり生活の基盤であると思います。様々なニーズに応じた住まいの確保を支援していく一環として、住宅取得については住宅ローン控除の仕組みが設けられているものと承知しております。

 その上で、今回の見直しでは、中所得者層以下の納税者への支援の充実を図るとともに、会計検査院からの指摘への対応や二〇五〇年カーボンニュートラルの実現などの観点から、必要な改正を行った上で、適用期限を四年間延長するものでございます。

 住宅ローン控除も含めた住宅政策全般の在り方につきましては、所管いたします国土交通省とも連携をしつつ、引き続きよく検討をしてまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 次に、制度の簡素化と納税者に対する周知、広報の徹底についてお伺いします。

 住宅に関する税制、土地建物は非常に複雑でありまして、土地建物を取得するとき、あるいは保有時、国であり、県、市、それぞれ固定資産税、取得税、都市計画税等あるということで、非常に複雑でありますし、一生に何度も出くわすという状況でもないということでございます。

 平成三十年の十二月に国税庁が、平成二十五年分から平成二十八年分にかけて住宅ローン控除に係る誤った申告を発表しております。他の制度との併用による控除計算の誤り等です。最大約一万四千五百人について過大な控除が行われていたという発表をされました。

 本当に複雑な制度で、今回も要件が変わるということで、より、こういう複雑な制度を活用し、誤りのないようにするためということで、制度の周知、広報の徹底等が必要かと思いますし、制度の簡素化というのも必要だと思いますが、政府の対応、見解を伺います。

鈴木国務大臣 住宅ローン控除制度でございますが、今回の改正によりまして、住宅の環境性能に応じて減税内容が変わります。その点につきましては、国土交通省から本制度の利用者等に対して分かりやすく説明するなど、制度の正確な運用に努めていくものと承知をしております。

 また、先生から御指摘のございました会計検査院からの指摘でございますが、所得税、住宅借入金等特別控除と贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例、二つある中で、そのいずれも申告をしている場合等に関しまして、納税者の申告誤りが多く見受けられたとの指摘を受けたものであります。それを受けまして、国税庁では再発防止策を講じていると聞いてございます。

 改正後の住宅ローン控除制度におきましても、国税庁において、納税者の方に申告ミスが生じないよう適切な広報、周知に努めてまいりたいと思っております。

稲富委員 是非、やはり制度が複雑になればなるほどこういうことが起こると思いますので、より簡素なという原則に立ち返るようお願いを申し上げます。

 最後に、時間が限られておりますので、贈与税の非課税措置についてお伺いします。

 今回の住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置の見直しがありました。それと同時に、贈与税の非課税措置は、教育資金の一括贈与、あるいは結婚・子育て資金の一括贈与についても非課税措置があります。これら非課税措置について、税制調査会の中期答申からは、やはり格差の固定化につながるのではないかという懸念の声がある。当委員会でも何度かお話が出ました。与党大綱でも、不断の見直しが必要だということでありますけれども。

 この住宅取得、そして結婚、そして教育資金、これらがそうつながらないような措置をどう検討されているのか、お伺いします。

鈴木国務大臣 住宅取得等資金を含む各種の贈与税の非課税措置につきましては、与党税制調査会の大綱において、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要があるとの指摘がなされているほか、稲富先生御指摘のとおりに、政府の税制調査会の答申におきましても、格差の固定化につながりかねない側面があり、機会の平等の確保の観点等を踏まえ、その在り方についても検討していく必要があるとの指摘がなされているところでございます。

 財務省といたしましても、こうした御議論を踏まえまして適切に対応をしてまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございました。

 済みません、ちょっと事務局に質問を一つ。住宅、教育、結婚・子育て、それぞれの減税幅について御答弁をお願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置につきましては、令和三年度予算ベースで五百九十億円程度の減収となっております。同じく令和三年度予算ベースで、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置につきましては、二百十億円程度の減収となっております。結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置につきましては、僅少というふうに見込んでおります。

稲富委員 ありがとうございました。

 この非課税措置そのものは私も大いに活用すべきという立場でございますが、先ほど大臣に御答弁いただいたように、格差につながらない様々な対策を講じていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

薗浦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十二分散会


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