衆議院

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第6号 令和4年2月21日(月曜日)

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令和四年二月二十一日(月曜日)

    午後四時開議

 出席委員

   委員長 薗浦健太郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 藤丸  敏君

   理事 稲富 修二君 理事 末松 義規君

   理事 吉田 豊史君 理事 角田 秀穂君

      井上 貴博君    石井  拓君

      石原 正敬君    門山 宏哲君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      塩崎 彰久君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    中川 貴元君

      藤原  崇君    三ッ林裕巳君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      若林 健太君    鷲尾英一郎君

      江田 憲司君    櫻井  周君

      下条 みつ君    中川 正春君

      野田 佳彦君    伴野  豊君

      赤木 正幸君    沢田  良君

      藤巻 健太君    竹内  譲君

      中川 宏昌君    岸本 周平君

      田村 貴昭君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣        岡本 三成君

   財務大臣政務官      高村 正大君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 坂田  進君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 吉岡 秀弥君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

薗浦委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官坂田進君、大臣官房審議官吉岡秀弥君、財務省主税局長住澤整君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 立憲民主党・無所属の末松義規でございます。

 今日は、岸田総理と政治家としての質疑をさせていただきたいと思うので、よろしくお願いします。

 一応、今回の税制審議に当たって、私も、総括の質疑をするために、全ての議事録を読み返しました。そこで、岸田内閣の肝煎りである賃上げ税制の効果についてかなりの審議が行われましたし、また、租税特別措置の効果の検証や、空き家が目立つ中での住宅ローン控除の見直しに対する数多くの御指摘もなされたわけでございます。また、G20財務大臣会合への大臣派遣問題から始まって、ガソリン価格を下げさせるためのトリガー価格問題やインボイス導入の是非とか、さらには、財産課税の強化問題やデジタル化、カーボンニュートラルの視点からの質疑、さらには、森友裁判の認諾関連の質疑も行われました。それらの中で、今日は私も幾つかのテーマで質問させていただきたいと思います。

 まず、その質疑にも出ましたG20の財務大臣会合で、野田元総理から、財務大臣、しっかりとG20の方に参加して、要は、各国の、やはり国際金融、財政のお偉方とか、あるいは金融マフィアとも言われるようなボスもいますから、そういう方々とも知己になっていただいて、それから、そういう中での、インナーの中で情報収集や、あるいは親密さをこれからも保ってもらいたい、そういった意味で、きちんと大臣そのものが行っていただきたいという話がございました。もし大臣が駄目だったら政務の副大臣に頼むということを言われたんですけれども、結局、財務官が参加したということでございます。

 これについて、総理から、こういった国際経済情勢とかあるいは金融情勢が大きく風向きが変わっていくような状況、そこは鈴木大臣に、そういうときはあなた自身で是非参加して行ってきてくれというふうに、私もそう思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のG20財務大臣・中央銀行総裁会議、これは、主要国と新興国が一堂に会し、世界経済の諸課題について議論する大変重要な機会であるということ、これは私も十分意識を共有するところです。

 ですので、こうした会議に財務大臣自ら出るということについては大変重要なことであり、鈴木大臣自身も参加すべく準備を行い、最後まで参加の可能性、追求したものだと報告を受けています。しかしながら、国会における審議日程など国内の日程を含め、総合的に判断した結果、やむを得ず参加を見送るという決定をしたと報告を受けています。

 そして、もし財務大臣が出ないのであるならば、これは副大臣等が参加するべきである、出席するべきであるという御指摘についても、財務大臣の意向をしっかり受け止めて、そして、意向の下に、指揮の下に、この会議において的確に行動する代理、どういった人間がいいかという判断について、G20の会議の準備に深く関わっている財務官を自身の代理として現地に派遣し、現地から適時に報告を受けつつ必要な指示を行った、交渉、調整に当たらせた、こういったことであったということも報告を受けています。

 こうした対応については、我が国のみならず、今回のG20においては、財務大臣が現地に参加できない国のうち、代表団を派遣している国は、事務方の責任者である財務大臣代理、すなわち財務官が現地で議論に参加する対応をほかの国々も取っていたということも承知をしており、そうした状況も踏まえた上で、代理についても財務官の出席を判断したということを報告を受けているところであります。

末松委員 その経緯についてはそういう御説明をいただいていますけれども、できるだけ、そういった、バイで各国の金融あるいは財政の責任者と財務大臣がしっかりとやれるように、また御指導していただきたいと思います。

 次に、賃上げ税制と最低賃金アップ問題についてお話をさせていただきます。

 岸田総理が強調してきた賃金アップをさせる政策については、私としても大賛成でございまして、この点については力強くまた応援をしていきたいと思っています。

 周知のように、日本経済が低迷していたガンというか、それは、資料の一にございますように、この資料一で、日本の平均賃金がほとんど低迷で上がっていない。そして、資料二に見えるように、最低賃金も日本が本当に最低レベルで、韓国よりも下回っている日本の県が三十三県ほどある。これはちょっとショッキングなんですね。それから、資料の三、一ページ目の裏を開けていただくと資料の三というのがございますけれども、OECD加盟国の中でも、日本は韓国よりも下で、OECDの平均よりもかなり下。これはやはりちょっと憂うべき状況だなと思うわけでございます。

 だから、これからやはり経済を発展させていくには、岸田総理もそうだと思いますけれども、六千万人のサラリーマンの賃金を上げて、個人個人の消費力を本当に上げていかないと、景気はよくならない。そして、そういった消費力が本当にないと、企業の収益が下がり、GDPも伸び悩んできた。これが日本の三十年間の分析でもあり、教訓だったと思うんですね。

 そういった意味で、まず、個人個人のサラリーマンの消費力をいかに拡大させること、こういう賃上げ政策が原点となるということは私も共通の認識を持っています。その観点から言えることは、労使交渉に頼るだけでなくて、政府がしっかりとサラリーマンの消費力アップというものを、つまり賃上げを後押ししていく必要がある、これも共通でございます。

 例えば、経団連とか日本商工会議所が、賃金を上げれば、企業収益の足を引っ張って、これが国際競争力というものを下げていく、あるいは企業が海外に逃げていくというふうに言っておりましたけれども、本当にこれは発想が時代遅れだと私は思っていまして、逆に、サラリーマンの給料をどんどん上げていけばいくほど国内の消費力が高まって、それが今度は景気がよくなる、そういった循環に持っていって、そうすると更に賃金が上がっていく、そういう善の循環というんですかね、これにやっていかなきゃいけないと思っているんです。

 問題は、では、どうやって平均賃金を上げるかということなんですけれども、この財務金融委員会でも、所得拡大税制という今までのやり方を見たら、どうも効果が分からないし、効果が極めて薄いんじゃないか、こういうことが指摘されました。これはさっきの表にも表れていて、結局、平均賃金は上がらないよねと。正直言って、財務省が、二〇一三年から二〇年の間、八年間で七十六万社に対して二兆円の税額控除をやったと胸を張っていましたけれども、結局これは、賃金が低迷して、目立った効果がなかったというのがデータ上も明らかなんですね。

 これをやはりきちんとやっていくには、賃上げの税制控除方式というのを第一のメインな政策にするのではなくて、この税額控除方式に加えて、政府が賃上げのための主要政策として給付を行う、国費を投入するということが私は一番重要だと思っているんですね。その点で、その手始めとして、最も効果のあるものが最低賃金を引き上げていくことだと考えています。

 それでも、菅政権が言ったように最低賃金千円という目標では、月収に直して十六万円、年収にしても百九十六万円にしかならない。これでは消費力が上がらないのは当たり前のことだと思うんですね。この図の、一枚目の二にあるように、ほかの先進国はほとんど、今の時点で千三百円から千七百円。そういうことをしっかりと踏まえてやっていく。

 私たちは、立憲民主党として、選挙公約でも、千五百円レベルまで上げるべきだと考えていました。そして、私自身が、立憲民主党の中で最低賃金男とも言われてきたんですけれども、この数年間、ずっと最低賃金のことを深く研究してきて、選挙公約にするまで磨いてきたんですね。

 だから、ちょっとこの表は初めてなんですけれども、二枚目の資料四、これは最低賃金引上げの費用概算ということで、私の方でこれは作らせていただいた紙ですけれども、六年間で最低賃金国債というのを二十五兆円発行して、最低賃金を、大体、最低賃金レベルの千二百万人の労働者の方々、これを毎年百円ずつ上げていって、六年かけて千五百円にしていく。私の計算では、平均最低賃金が六年後に千五百円になり、七年後にはこれは全国一律千五百円になるということになります。その後は、景気を見ながら二割から三割ずつその補助金を、国費を減らしていく。

 ここまで本腰を入れて対策をしないと、最低賃金というものは上がらないんですね。私に言わせたら、今までの政府の最低賃金政策というのは、メニューを、こんなメニューがあるんだよと見せながらやっているだけであって、やっているふりをしているとしか私には思えない。

 そして、こういう政策を、私の政策を取ると、経済波及効果を計算したところ、二十五兆円のコストの二倍を超える五十六兆円という経済波及効果が生じるということで、この点については説明資料はありませんけれども、そこは私ども計算をしているところでございます。そうすると、景気もよくなって、GDPも上がっていく。こういうことが私は必要じゃないかと思うんですね、この国にとって。

 ですから、とにかく、まずは、この国の賃金、特に最低賃金のレベルの方々を引き上げていく、これによって消費力を拡大し、それによって景気をよくし、そしてGDPも上げていく、こういうことが一番必要だったと思っているんですけれども、総理、お考えをお聞きしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、委員御指摘のように、賃金の引上げ、これは大変重要な取組であり、そうした社会の機運を盛り上げるためにも、政府、官が呼び水となるべき政策をしっかり進めて、社会全体として賃上げを盛り上げていく、こうした雰囲気をつくっていくことが重要であると考えます。

 そのために、政府としてやるべきこと、呼び水となるような政策をしっかり進めていきたいということで、賃上げ税制ですとか公的価格の引上げですとか、こういった政策を表明させていただいています。

 そして、こうした政策に加えて、よく御指摘いただくこととして、赤字企業においてこうした税制、賃上げ税制、活用されるかという御指摘があります。

 そういった部分についてもしっかり手当てをしなければいけないということで、法人事業税についても、赤字法人でも課税される外形標準課税の対象法人に対して、三%以上の賃上げを行った場合に税負担の軽減を措置するとか、あるいは、補助金の支給においても賃上げを行う企業への優先的な取扱いを行う、あるいは、公共事業、さらには委託事業、公共調達、こうした際にも賃上げに積極的な企業を優遇するなど様々な取組、さらには、中小企業の適正な価格転嫁を行うための環境整備、こういった政策メニューを用意することによって、社会全体の賃上げの機運を盛り上げていきたいと考えています。

 そして、その中で、御指摘の最低賃金の話ですが、最低賃金、これも、社会全体として賃上げの機運を盛り上げる上で一つの大きな手がかりであると認識をいたします。

 最低賃金の引上げに当たっては、今申し上げた賃上げしやすい環境整備に取り組みつつ、まずは、現実的な目標として、できる限り早期に全国加重平均千円以上となることを目指すとしており、千円に達した後も継続的に引上げに取り組んでいきたいと思います。そして、こうした引上げが可能となるためにも、経済を再生することによって、経済の好循環を実現することによって、中小企業を中心に、こうした最低賃金の引上げを可能とする環境をつくっていくことが重要であると思います。

 こういった考え方の下に、賃金の引上げを盛り上げていきたいと考えます。

末松委員 今、総理の答弁では、とにかく、いろいろなことの環境、賃金上げの環境を整えると。それでも、本当に、私も計算していてびっくりしたんですけれども、六年間で二十五兆円というと、一年間で四兆円ぐらいになりますよ。そこぐらいしないと、本当の意味で、これは千二百万人の方々をアップさせる、千五百円までアップさせる計算になるので、本当にこれはしんどいなというところなんですね。でも、それをやっていかないと、やっていけない。

 最低賃金千円だとしたら、これで大体、さっき言ったけれども、月収で十六万円、年収で百九十六万円にしかならないんですよ。これじゃ無理なんです。千五百円になれば、月収で二十六万円、そして年収で三百十三万円。厚労省の計算にいうとそうなるんですね。だから、そのくらいまでやっていくというのを、是非そこはお願いしたいと思います。急にこの場で同意はできないかもしれませんけれども、是非そこは政府内でしっかりと、最低賃金も上げるんだ、世界レベルに合わせようということは是非お願いしたい。

 最後になりますけれども、イージス・アショアの政策変更に伴う無駄金の責任問題というのを、私、四日前に岸防衛大臣と話を予算委員会でしました。

 これは最後の資料五というところに書いてございますけれども、ここで、陸上のイージス・アショアからイージス艦への政策変更があったわけです。そこで、無駄金というか、政策変更に伴う、今までそういった金をまいてきた、あるいは使ってきた、これがどのくらいのロスになっているかということで聞きましたら、防衛省からは、三十六億円が、これは無駄、将来的に使えないよねという回答を得たわけです。

 これで、岸大臣に話を聞いたら、この無駄金について岸大臣に聞いたら、こういう答弁なんですね。

 イージス・アショアにつきましては、配備を急ぐ余り、非常に、米国との協議やそれを踏まえた安全措置の検討、地元の説明を並行して行うことになってしまいまして、結果的に、地元に対して説明したことが、約束が実行できなくなってしまったということがありました、慎重さ、誠実さを欠いた対応となったと思います、こういった背景としては、防衛省内の体制や地元への説明、技術面での制約、この三点が挙げられますと、政策変更については反省の弁は述べたんですけれども、じゃ、無駄になった三十六億円については、全く責任を負っていない回答だったんですね。

 岸防衛大臣は、さらにこう言っているんですよ、答弁で。

 既に支払った三十六億円の契約によって得られた成果物については、イージスシステム搭載艦や今後の防衛省における事業の参考として活用できる可能性があると考えておるところです、防衛省としては、無駄にしないように、これらの契約によって得られた情報を活用できるように、引き続き検討していく考えであります、無駄との御指摘が必ずしも当たるものではない、こういうふうに考えておりますと。

 これは、今まで払って無駄になりましたということに対して、人を何か食ったような答弁、こういう国会がまかり通るのであれば、役所の仕事というのは責任を問われないという点からすると、本当に笑いが止まらないなということだと思うんですね。

 私も外務省にいたんですよ。そういったところで、こういう場に何回か居合わせたことはあるんです。内心じくじたる思いを持ちました。

 結局、要するに、どんな政策の変更があっても、失敗があっても、これをきちんと検討して、将来の事業にまた生かせるように頑張ります、だから無駄はないんです、こういう言い方をされると、本当に役所は、無謬性というか、間違いはないんだ、だからお上の言うことを聞いていればいいんだと。結局、失政あるいは間違いはないということ。こうなっちゃうと、国民が、おかしいだろうと言っても、結局、何だかんだとへ理屈を重ねて、全て将来につなげていきますという話になっちゃうと、これは国民に対して私は礼を失すると思うんですね。こんなことをやっていればやるほど、何だ、役所というのはと、本当に信頼がなくなっていく。

 だから、そういうことで、人間のやることですから、それはいろんな失政もあるでしょう。そこについて私は別に否定はしませんよ。でも、ちょっとこれはおかしかったな、無駄金が出たなと思うときは、国民に対して、ここはちょっと本当にいろんな事情で、結局は政策が変更になったために無駄金になってしまった、その点については申し訳ないということをわびるというか、一言、そこはきちんと姿勢を正して、あるいは責任をきちんと示すということにしないと、どんな変更にあって、どんな失敗があっても、いやいや、これは大丈夫なんです、私たちはこれからまた将来に向けて参考にして、その事業をつなげていきますというへ理屈をずっとやったら、これは本当に国民の信頼を失うと思いますよ。

 そこをちょっと、一国の総理として、あるいは政治家としてどういうふうに考えておられるか、そこの私は総理の答弁を聞きたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘のイージス・アショアの取組については、委員自身も今御指摘されたように、この配備を急ぐ必要があると考え、米側の協議、安全措置の検討、そして地元の説明、これを並行して実施するということによって、結果として約束を果たすことができなくなった、慎重さあるいは誠実さを欠いた対応となったと認識をしています。この点については、これは大いに反省しなければいけない点であると思います。

 そして、それをそう反省した上で、実際、御指摘がありました三十六億円のお金、これについては、これは最大限無駄にならないようにしっかり生かす努力はしていかなければならない、こうしたことであると思っています。

 三十六億円のうち二十七億円については、イージスシステムに関する情報収集だと聞いておりますが、これは、こうした情報、イージスシステム搭載艦において活用できると報告を受けていますので、そうした活用もしなければならないと思いますし、ボーリング調査の費用等においては、そのまま活用するのは困難なのかもしれませんが、これは他の駐屯地における施設整備等においてできるだけ生かす努力をして無駄にならないようにする、こうした努力は求められるんだと思います。

 このように、イージス・アショアの件については、しっかりと振り返り、それを検証した上で、かかった費用については無駄にならないように努力をする、こうした経験を今後イージスシステム搭載艦という新しい取組の中でもしっかり生かしていく、こうした姿勢は大事ではないかと考えます。

末松委員 もう時間が来たのでここで終わりますけれども、要するに、役人答弁をそのままなぞっているだけなんですよ。是非、そこはちょっと血の通ったような答弁をお願いしたいと思うんですね。だから、いろいろと無駄にならないように頑張るという言い方、これじゃなくて、やはりそこはきちんと頭を切り替えて、そこの税金の無駄金になるようなところについては国民に対してわびるということも私は必要だと思います、政治の信頼を築くためにも。

 ということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日は、所得税法等の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。

 まずは総理、私は先週金曜日の予算委員会にて初めて総理と議論をさせていただきました。短い時間でしたが、充実した議論をさせていただけたと思っております。最後の最後に岸田総理と言うところを前総理の名前がなぜか口から出てしまい、大変申し訳ありませんでした。反省をして、本日も丁寧に分かりやすく、この委員会をオンラインで見ていただいている皆様も、そして後で動画で見られる方々にもしっかりと伝わるように質問をさせていただきます。

 岸田総理、鈴木財務大臣、関係省庁の皆様、委員部の皆様、本日はよろしくお願いいたします。

 私は、この財務金融委員会では、賃上げについてどうやって盛り上げていくか、どうやったら国民の皆様の所得を一円でも引き上げていけるのか、その仕組みをどうやってやっていけばいいのか、これをずっと考えておりました。会社を経営していた経験を踏まえて、様々な提案をさせていただきながら、鈴木財務大臣とずっと議論をしてまいりました。

 予算委員会にて鈴木財務大臣より賃金が上がらない考えをお伺いしましたら、長引くデフレにより、企業は投資や賃金を抑制する、消費を抑制し、結果として需要が低迷、そしてデフレが加速するなど、企業が積極的に賃上げを行う環境ではなかったと総括をしておりましたが、デフレ脱却は、まさに大規模金融緩和にて需要不足を補い、雇用の安定化を図り、それを財政出動にて後押しをしたアベノミクスの効果と考えます。これは財務省がまさに賃上げの要因に経済そして金融緩和の関係を認識している答弁と感じます。

 鈴木財務大臣に質問です。

 財務省として、賃上げ、経済、金融緩和の関係についてどのような認識をされているのでしょうか。

鈴木国務大臣 岸田内閣におきましては、賃上げは成長と分配の好循環により持続可能な経済を実現するための重要課題の一つと認識をしております。

 今般、賃上げ税制の抜本的な拡充だけではなくて、介護、看護、保育等の公的価格の引上げ、それから下請対策の強化など、中小企業が適切な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員していくことといたしております。

 このほかにも、賃上げのためのインセンティブづけとして、事業再構築補助金など各種企業向け補助金における賃上げを行う企業への優先的な取扱い、また、国の調達における賃上げに積極的な企業への優遇措置の導入などの施策によって生産性向上に取り組み、賃上げにつなげていく企業を支援していく考えであります。

 そして、金融政策も含めということでございますが、金融政策の具体的な手法については、これは日銀の独立性ということを考えなければならないわけでありますが、黒田総裁も、金融緩和によって経済活動が活発になり、企業収益も増えて雇用も増え、賃金も上がっていくと発言をされていること、私も承知をいたしているところでございます。

 引き続きまして、日本銀行とも緊密に連携をしながら、政府としては、あらゆる施策を総動員をして、持続的な賃上げに向けてしっかり頑張っていきたいと思っております。

沢田委員 財務大臣、ありがとうございます。

 同じ質問で大変恐縮なんですけれども、また、総理、別の意識であったり、又は、総理からもこういった認識があるということがございましたら、この賃上げ、経済、金融緩和について一言いただけたらと思います。

岸田内閣総理大臣 賃上げ、経済成長、そして金融緩和、この三者の関係についてということで、財務大臣からも今答弁があったわけですが、別の視点で申し上げるならば、こうした経済の好循環ということで申し上げるならば、物価だけではなくして、物価だけが上がる状態ではなく、企業収益の拡大が賃金の上昇や雇用の拡大につながる、そしてそれが消費の拡大や投資の増加を通じて更なる企業収益の拡大に結びつく、こうした好循環が求められているんだと思います。経済成長に見合った物価上昇が実現する、そして賃金も上がっていく、こうした循環が求められているということであります。

 是非、これから日本の経済を再生していかなければならない、今申し上げたような循環も実現できるような経済をつくっていくことが経済の持続可能性にもつながっていくと信じて政策を進めていきたいと考えます。

沢田委員 総理、丁寧にありがとうございました。

 まさに今、日銀が進めているリフレの政策というのは、需要不足を補い、完全雇用を目指していくという形が軸になっていくと思いますが、日本銀行の役割は、私は、大変大きなものだというふうにまさに感じているところがあります。

 私から見れば、これは今、日本銀行は物価の安定のために強力な金融緩和をもう十年近く不退転の覚悟で続けられているにもかかわらず、消費税を一気に三%も引き上げたり、プライマリーバランスの黒字化にこだわったりと、政府は経済と財政を中途半端につまみ食いするような姿勢で足を引っ張っている、そういうふうに感じております。

 世界の中央銀行が過熱感とインフレ懸念のために金融引締めの傾向が進む中、金融緩和を継続する日本との政策ギャップはいろいろな形で実際に我々の生活に影響を与える可能性があります。だからこそ、私は、中途半端な政府の姿勢が日銀委員の人事にまで無責任に影響を与えることを危惧しております。

 少し先になりますが、今年七月に審議委員二名が任期満了となり、来年春には総裁、副総裁人事もあります。今の日本の現状は、内閣府の最新情報にてGDPギャップがマイナス四・八%とあり、止まらない原油高も含めて、コストプッシュインフレで一時的にインフレ率二%の達成するタイミングがあっても、継続は難しいと考えます。だからこそ、現状のリフレ政策の方向性を継承又は拡大できるような委員人事とすべきと私は考えます。総理の御認識を教えてください。

岸田内閣総理大臣 要は、日銀の人事についての御質問ですが、今の黒田総裁の任期は令和五年四月八日までとなっています。内閣としては、その時点で日本銀行総裁に最もふさわしいと判断する方を任命する、これが基本であると思います。よって、今の時点において、現時点において、特定の人事案についてお答えするということは控えなければならないと思います。

 是非、今後の経済の動向も見ながら、的確な判断をこの令和五年四月八日に向けて行っていきたいと考えております。

沢田委員 総理、ありがとうございます。

 ただ、先ほどもお伝えした、今年七月に審議委員二名、これは任期満了となりまして、正確なところは政府の皆さん御存じだと思いますが、政策の方向性が違う委員が二人異動というふうな形になると私も認識しておりますので、是非、総理の方でもしっかりと経済にコミットした判断をしていただけるようにお願いいたします。

 私は、本日のやり取りの中で、マクロ経済政策の必要性を政府が認識していることに安心すると同時に、経済あっての財政、そして経済成長からの分配とおっしゃる岸田総理には、言葉のとおりに実行に移していっていただきたいということもお願い申し上げます。

 一定の効果を出したアベノミクスも、力強い経済の好循環になる前に消費税を三%も一気に引き上げ、消費の腰を折りました。さらに、約束した三本目の矢である成長戦略、そして潜在成長率を上げるための規制緩和、そして構造改革にはほとんど手をつけなかった点も、いまだインフレターゲット二%すら達成できない弱い経済状況をつくった元凶と考えております。

 今まさにやるべきは、いい流れをつくったアベノミクスを中途半端にしてしまい、失敗に導いてしまったことを繰り返さないことです。そして、元安倍総理が、元総理が残した負の遺産を正の好循環につなぎ、国民の命や暮らしを守るために大胆な判断につなげることができるのが、まさに今のリーダーである岸田総理の役割だと私は考えております。

 令和二年度末の債務超過は、過去最高の六百五十五兆円。令和三年度の国民の皆様のお給料に対しての保険やそして税金の負担率は、四八%まで上っております。国民の多くは限界であり、政治の失敗に増税というツケを払わされる余裕はもうありません。

 岸田総理に提案です。

 国債の金利は安定しており、日本の破綻リスクを占う金融商品でもあるCDSは〇・四%と大変低いものであり、日本は、市場においても、国際社会においても客観的に信頼をかち得ております。急ぎ財政健全化をする理由は見当たりません。急ぐべきは、インフレターゲット二%の実現と力強い経済の実現です。

 プライマリーバランス二〇二五黒字化目標を一旦降ろし、経済あっての財政、そして経済成長からの分配を有言実行してくださらないでしょうか。お願いします。

岸田内閣総理大臣 まず、今コロナ禍の中で大変な危機的な状況にあり、国民の命、暮らし、そして事業を守るためにあらゆる政策を尽くさなければいけない、そのために必要な財政出動はしっかり行わなければいけない、こうしたことで経済政策あるいは予算についても政府として取り組んでいるということであります。

 そして、その後を考えた場合に、経済の再生、これにまず取り組まなければならない、経済あっての財政であるというのが今の内閣の基本的な考え方です。経済再生をしっかりと進めた上で、財政にも思いを巡らしていく。この順番を間違えてはならないと思っています。

 そして、財政についても、財政は国の信頼の礎でありますので、マーケットにおいて、あるいは国際社会において日本の信頼、これが損なわれないように、財政はしっかりとコントロールしていかなければならない、こうした課題であると認識をしています。

 この順番を間違えずに、経済の再生を果たし、そして財政についても考えていく、結果として日本の国際社会やマーケットにおける信頼を損なうことがないように、政府としてしっかりとしたかじ取りを行っていきたいと考えます。

沢田委員 総理、私は、地域を回っていて本当にいろいろな方から声をかけていただきます。

 私は、投票に行かれない方がいる、それに対して、有権者はばかだと言うような方もいらっしゃいますが、多くの国民の皆様は賢明であると常々感じております。

 財政健全化やプライマリーバランス黒字化は実現しても、国の信頼をかち得ることは私はできないというふうに考えております。

 長引くデフレは、日銀の政策判断や政治の失敗の結果、明るく未来が見えなくなっている国民の皆様の悲痛な叫びそのものです。

 負債だけを取り上げて、国民一人当たり九百万円も借金があるといった無責任な報道をしてきたメディア。そして、少子高齢化を国民の皆様のせいにするような政治の今までの姿勢。多くの皆様は、つつましく毎日を暮らし、少しずつ貯蓄をし、年金が減ることも、もらえなくなることも、健康保険料の負担率が上がることも、消費税や各種税金が上がることも認めて今暮らしているんです。ここ直近の選挙においても、消費増税やほかの負担が上がってもなぜこれほどまでに自民党が選挙で勝ち続けていることか。これは、多くの国民が、もう今、目の前に暗いものがあることを納得し、認めて生きているんです。

 総理に、最後に、もう一度だけ考えていただきたいんです。

 プライマリーバランス黒字化目標は、まさに多くの国民にとっての既定路線です。このままいくんだろう。その既定路線を変えられるのは、唯一総理の判断だけです。是非、プライマリーバランスの黒字化を降ろして、経済に、そして国民の皆様の賃金を上げるために、まさにそこに一歩進ませる。一言いただけないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げたように、まずは、経済の再生にしっかりと取り組んでまいります。そして、その先に財政も考えなければならないということを申し上げました。

 財政は国の信頼の礎でありますが、信頼というのは、自分自身が信頼できると言い張って得られるものではありません。評価するのは国際社会であり、マーケットであります。こうした信頼に堪え得る財政政策をしていかなければならない。そのために何が必要なのか。経済をしっかり再生した上で、そうした観点から財政についても考えていきたいということを申し上げております。

沢田委員 やはり、これだけ時間をかけても、この話がちょっと前に進まなかったことに大変残念な気持ちを覚えながら、我々日本維新の会は経済優先の姿勢を明確化しております。私は、大規模金融緩和の継続、財政出動としての消費税の減税、成長戦略として規制緩和、構造改革を実行して、完全雇用の実現から、賃上げ圧力を大きく高める経済を実現させたいというふうに考えております。

 本日の会話は、必ずこれからの先に結果が出ることだと思います。我々がしっかりと目指した未来を総理の中でまたもう一度考えてくださる、そういった一日が来てくださるように切に願いながら、我々も、これからの国民の皆様に一日でも早く楽な、幸せになる、そういうつながる毎日を目指して動いていきます。

 時間となりましたので、ここで質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 国民民主党の岸本周平です。

 本日は、締めくくり総括質疑の機会を与えていただいて、ありがとうございます。

 この間、財務金融委員会では、十分な、充実した審議が行われてきたと思います。特に、拝聴していて、野田委員や中川委員のような大先輩の非常に格調の高い質問、大変参考になりました。そして、かなりの時間、審議をした中で、分かってきたことがあります。これはこの法案の目玉である賃上げ税制のことでありますけれども。

 やはり、審議が進むにつれて、適用対象の問題から、どうも持続的な引上げ効果は望み薄ではないか、あるいは業種間の適用のアンバランスもありそうだ、あるいは全企業の六割を超える赤字企業にはなかなかインセンティブにはなり得ないというような問題点が浮き彫りになってまいりました。

 その上で、財務大臣とも質疑をさせていただきましたけれども、財務大臣からは、税制だけで、一本足でやるわけではないんだ、賃上げは大事なんだ、そのためには、例えば中小企業向けの補助金の優遇、あるいは公共調達の場面での優遇とか、さらに下請取引の適正化など、総合的な施策の必要性についても言及があったと記憶しております。おっしゃるとおりなんです。

 ただ、財務大臣は、所管があるということで、総務省とか厚生労働省の政策に対する私の提案には正面からお答えいただけませんでした。それは何かといいますと、例えば法人事業税、外形標準であれば赤字企業も払います。固定資産税であれば赤字企業も払います。さらに、中小企業で一番大事なのは、社会保険料の重荷なんです。社会保険料の減免というインセンティブもあるかと思うんですね。

 これに対して、全省庁を所管されている岸田総理から、総合的な政策、我々国民民主党も、ともかく給料の上がる社会をつくりたいということで衆議院選挙も戦いました。ほとんど、予算にしても税法にしても、方向は一緒なんです。どうか、総合的な政策をやって、何が何でも賃上げをするというような御決意をお聞かせ願えないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 賃上げが大事である、人への投資が重要である、こういった認識は全く同感であります。共有しております。

 そして、そのためにあらゆる政策を動員しなければいけないということで、既に財務委員会でも、賃上げ税制ですとか様々な議論が行われてきたと承知をしています。補助金における賃上げを志向する企業への優遇ですとか、公共調達や公共事業における優遇ですとか、様々な取組、さらには、それ以外にも、価格転嫁がしっかり行われなければいけないということで、この辺りは公取を始めとする役所の役割ということなんだと思います。

 そして、さらに、今御質問は、法人事業税と固定資産税とそして社会保険料、三つ御指摘がありました。これらについてもしっかりと活用しなければいけないと思いますが、ただ、法人事業税についても、赤字法人でも課税される外形標準課税の対象法人に対して三%以上の賃上げを行った場合に税負担を軽減する措置を講ずることとしております。

 一方、固定資産税については、税の性格上、これは資産の価格に応じて負担する税でありますので、固定資産の所有者の企業活動によって負担が左右されるというのは、少し無理があるのかなとも思います。

 また、社会保険料について申し上げるならば、我が国の社会保障について、社会保険料の事業主負担分を単に軽減するだけでは、持続的な賃上げ、そして持続的な社会保障にはつながらないと認識をしています。むしろ、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなで支え合う持続的な社会保障制度を構築することによって、現役世代の保険料の負担増の抑制、これを目指していくという形で実質的な可処分所得の確保につなげていく、こうした考え方が大事なのではないかとも思います。

 いずれにせよ、今申し上げました様々な政策をフル稼働することによって賃上げを目指していきたいと考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 また私たちも具体的な提案をしてまいりたいと思いますので、何とか賃上げのできる経済をつくっていくことを一緒にやっていきたいと思います。

 その上で、今、私の前の維新の委員の質疑にもありましたけれども、まず経済再生が大事、しかし、やはりその上で財政規律というのも大事だろうと思います。それは国の信用という、総理がおっしゃるとおりなんですね。一方で、そのためには、本当の意味の財政規律を守るために何が必要か、いろいろなツールがあります。

 まず、プライマリーバランスの黒字化というのは、少し落ち着いた先に私は必要な物差しの一つだと思いますけれども、そのために今内閣府がやっているのは、どうしても、名目三%、実質二%というような、とても高い、楽観的な数字を置いた推計をしています。ベースラインとは別なんですけれども、どうも議論は三%と二%。それに余りこだわると、やはり余り現実的な物差しにならないという点があると思うんですね。

 皆さん、御記憶でしょうか。二〇一五年、当時、安倍内閣で、二〇二〇年のGDP、名目GDPの目標を六百兆円と掲げました。すばらしい目標でしたけれども、二〇二〇年、蓋を開けたら、幾らだったでしょうか。GDPは五百三十六兆円でした。もちろん、コロナ禍がありました。したがいまして、少しハンデがありますから、コロナ禍前のトレンドで延ばして、コロナ禍の影響を取った場合でも大体五百五十五兆円ぐらい、六百兆円にはおよそ届かなかったんです。あれだけ機動的な財政、金融の緩和、異次元のことをやっておきながら、実際、全く六百兆円には届かなかった。つまり、楽観的な目標を基に財政規律を守ることは非常に難しい、どこの国でも。したがいまして、保守的な推計をして財政再建というものをやっていくということなんです。

 しかし、これは、言うはやすく行うは難しで、民主主義ですから、政治家ですから、どうしても政治家が担当する政府は楽観的な数字を置きがちなんですね。それは、実はアメリカなんかもそうです。したがって、OECDの国では何が起きているかというと、政府から独立した独立財政機関を置いて、どうしても楽観的になるような税収の見積りの前提になる経済見通しや財政の見通しをできるだけ保守的に見積もるというような財政機関があったり、あるいは、政府のそういう財政見通し、経済見通しをチェックする機関があります。

 これは特に二〇〇〇年代になってから、OECDの、三十五か国ございますけれども、三十六ですか、この中で、地方政府も入れますと、二十八の加盟国が独立財政機関を実は設けているんです。大変な数だと思います。

 一番有名なのは、アメリカの議会予算局ですね。これは職員、五百人います。予算も五十億円規模です。カナダも議会に置いています、議会予算局です。そして、イギリスは、財務省の中に独立的な行政機関として置いています。あとは、ドイツなんかは評議会形式ですね。あるいは、会計検査院のようなところが独立して予算もチェックするようなところもあります。

 総理にお伺いしたいんですけれども、財務省がこれまでやってきた結果として、財政規律は守られてきませんでした。これは、独立財政機関をつくって、政府から独立したところが財政の規律を外からチェックした方がいいと考えられるんですけれども、この件についての総理の御所見をお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘の点について、政府としましては、内閣府に設置された経済財政諮問会議において、専門的、中立的な知見を有する学識経験者なども参加する形で、経済見通しや予算編成の基本方針など、経済財政運営についての議論を行っており、こうした体制で引き続き適切な政策運営を行っていきたいと考えておりますが、委員御指摘のように、各国とも様々な工夫をしています。

 独立機関を設けるなど、様々な取組を進めているわけですが、例えば、英国の財政責任庁、これは財務省とは別の行政機関として、経済、財政見通しの作成や、財政の長期的な持続可能性の分析を主な業務とする行政機関です。こうした役割を、日本では、財務省とは別に、内閣府の経済財政諮問会議が担っていると承知をしています。

 また、米国の議会予算局、これも委員の方から御紹介がありましたが、こちらは、党派に中立的に、大統領予算案の分析、長期的な経済、財政の試算を主な業務とする、議会に置かれる機関です。

 院内における機関の設置については、国会において御議論いただくべき事柄であり、政府としてお答えは控えますが、予算編成権の制度的な違い、この点については留意する必要があると認識をいたします。

 それ以外にも、ドイツにおいては安定化評議会諮問会議という組織があるようでありますが、それぞれその特徴があり、メリット、デメリットがあるようです。

 基本的に、我が国においては、先ほど申し上げた方針で臨んでいきたいと思いますが、こうした各国の状況もしっかり見ながら、議論を続けていくこと、これは大事なことではないかと認識をいたします。

岸本委員 ありがとうございます。

 是非、この財務金融委員会の場で、独立財政機関のメリット、デメリット、必要性について議論を続けたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 岸田総理に質問します。

 総理が昨年、就任直後まで訴えておられた金融所得課税の見直しは、来年度の税制改正を決める所得税法改正案に盛り込まれませんでした。総理の判断でこれは先送りされたんでしょうか。それとも、自民党税調の判断を受け入れた結果でしょうか。端的にお答えいただけますか。

岸田内閣総理大臣 金融所得課税の見直しについては、成長と分配の好循環を実現する上で、様々な分配政策を進める選択肢の一つとして挙げたものであります。そして、分配政策については様々な政策の順番が大事だということを申し上げております。

 令和四年度税制改正においては、政府としては、賃上げに向けた税制の抜本的強化、これを優先的に取り組むということにした次第であります。

 私自身も、こうした分配政策を進める上で、様々な政策の順番が大事だという観点から、御指摘のような取組を行ったということであります。

田村(貴)委員 時間がないから進めますけれども、配付資料の一は、内閣府が二月七日に公表した「日本経済二〇二一―二〇二二」です。ここでは、有価証券の保有割合が大きいことなどを背景に、第十分位、これは所得の最も多い層ですけれども、ここの利子、配当金収入の分布は上昇した、資産所得の格差は拡大傾向と書かれているわけです。金融広報中央委員会の調査でも、明確な資産格差の拡大を示しています。

 総理、高所得者層の金融資産が増えて、そして所得税負担率が低下する、いわゆる総理が訴えてこられた一億円の壁を是正するということは、税負担の公平性を確保するために必要で、やるならやはり今じゃないでしょうか。総理のリーダーシップで、そして政府主導で、金融所得課税の強化を始め、所得税の累進性を取り戻す改革を断行すべきではありませんか。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、私自身としては、分配政策の中で賃上げ税制を優先するべきであるという判断の下に、政策を用意いたしました。

 一方、御指摘の金融所得に関する課税の在り方については、令和四年度の与党税制改正大綱において、高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況を是正し、税負担の公平性を確保する観点から検討する必要がある、一方、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないように十分配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う、こうしたことを大綱の中に盛り込んでいます。

 資産所得の格差に関する指摘も含め、様々な意見があるということは認識をしています。こうした意見も踏まえながら、今後、与党の税制調査会においても議論が進んでいくものだと思います。そういった議論も我々としてしっかり注視しながら、基本的には先ほど申し上げました考え方に基づいて、賃上げ税制をしっかりと優先的に進めていきたいと思っております。

田村(貴)委員 総理、そのスタンスでは一向に進まないじゃないですか。総理が言われる新しい資本主義、まさにここが本丸じゃないんですか。

 配付資料の二、上のグラフを御覧いただきたいと思います。新しい資本主義実現会議に出された「大企業の財務の動向」であります。二〇〇〇年から二〇二〇年の二十年間、小泉構造改革、アベノミクスなど、新自由主義的経済政策で大企業の税負担は大幅に引き下げられました。そして現在、資本金十億円以上の大企業の利益は大幅に増えたものの、それは配当や内部留保の原資となって、人件費の拡大には波及しませんでした。このグラフが語っているとおりです。

 一方で、消費税の増税が家計の可処分所得を大幅に減退させています。配付資料二の下のグラフの方です。新しい資本主義実現会議の資料ですけれども、「家計の可処分所得の増減要因」です。過去十年間で増えた可処分所得は十三・九兆円とされていますけれども、ここの説明にあるように、消費税増税による増収分は可処分所得の増加分のうちに含まれているため、実質の可処分所得の増加は更に小さいというふうに書いているわけであります。

 総理に伺います。消費税増税は、なけなしの可処分所得の増額分を奪って家計消費を低迷させているではありませんか。消費税を減税し、家計消費を増やして、そして経済の好循環を今こそつくるべきではないですか。

岸田内閣総理大臣 消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から社会保障の財源として位置づけられており、当面、消費税について触れることは考えておりません。

 そして、賃金の引上げ、大事だという議論を先ほど来させていただいておりますが、そのためにも、私は、成長も分配も共に大事だということを申し上げています。成長をしっかりと果たして、成長の果実を分配するということが好循環を実現する上で大事だということを申し上げています。分配の財源をいきなり税に求めるというのでは、この好循環ということについていかがかという考えに基づいて、是非、成長を実現した上で分配を促進していく、こうした循環を実現して、経済の持続可能性を実現していきたいと考えております。

田村(貴)委員 成長と分配をずっと言われてきて、可処分所得が下がっているわけなんですよ。実質、消費税に食われているわけですよ。

 私、計算しました。二〇一〇年から二〇二〇年の消費税の負担額は、地方消費税含めて合計十四・二兆円になっているんです。ここのグラフに、政府が出している、十三・九兆円の可処分所得を丸のみしているのが現実じゃないですか。やはり、消費税を減税しないといけません。

 インボイスについても総理に伺います。

 売上げ一千万円以下の免税業者である中小零細業者、農家やフリーランスなど多くの方々が課税業者の選択を迫られようとしています。その多くの方々は、いまだにコロナ禍の中で減らした売上げが元に戻らず、商売の営業も、自らの生活も困窮して、先が見えない状況となっています。そして、法律ではインボイス制度導入による影響の検証が定められているにもかかわらず、政府は、どれだけ免税業者が転換を迫られているのか、これすら調べていないことが本委員会のこれまでの審議で明らかになりました。

 総理、インボイス制度導入による影響の検証ぐらいはちゃんと調べるべきではありませんか。

鈴木国務大臣 御指摘の法律の規定では、事業者取引への影響の可能性を検証するとされておりまして、これに沿って、影響を受け得る事業者の数ではなくて、事業者取引への影響に焦点を当てて検証を実施したところであります。

 この検証では、BトゥーC取引を行う免税事業者や、取引の相手方が簡易課税を適用している事業者についてはインボイス制度の導入による影響がない点を改めて確認をいたしました。

 さらに、免税事業者と見られる事業者と取引のある事業者にアンケート調査を実施したところ、約半数の事業者が条件を変えずに取引を継続すると回答しており、こうした事業者と取引を行っている免税事業者との取引には影響がないことを確認をいたしました。

 他方、残りの約半数の方、関係法令を踏まえて取引価格を変更できないか検討するとか、課税事業者になるよう提案をすると回答した事業者もいることから、委員御指摘のような、不当に課税事業者への転換を迫られる免税事業者といった事態を把握し、不当な買いたたき等が生じないよう、独占禁止法や下請法等の関係法令に基づいて必要な対応を行ってまいります。

 今後とも、関係省庁で連携をいたしまして、免税事業者への影響を軽減できるよう、免税事業者を始めとした事業者の取引環境の整備に取り組んでいきたいと考えております。

田村(貴)委員 消費税は減税して、そしてインボイスは中止する、このことを多くの国民、業界団体が求めています。そのことを訴えて、今日の質問を終わります。

薗浦委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の討論をいたします。

 本法案の審議に当たって、立憲民主党は、本法案の抱える問題を摘示し、解決策を提案してまいりました。

 まず、税金の制度を議論する大前提として、国民の皆様からお預かりした税金は一円たりとも無駄にしない、無駄にしてはならない、無駄があるのではないのかと国民の皆様から疑われるようなことがあれば直ちにその疑念を晴らさなければならないということです。

 こんな当たり前のことを財務金融委員会の場でわざわざ申し上げるのは実に情けないことではありますが、森友学園に係る決裁文書改ざん問題において、国民の財産が不当な安値、九割引きで販売されたのではないのかという疑念がありました。この点を明らかにしてもらいたいという国民の真っ当な声に対して、決裁文書の改ざんで応えたというのが財務省です。

 また、そうした真実を明らかにしたいという切実な声、決裁文書改ざんを強要されたことに起因して命を失うことになってしまった財務省職員の赤木さんの御遺族が提起された訴訟を、真実を隠すために認諾で終結させてしまいました。そして、その一億七百万円の賠償金は、何と、国民の税金から支払おうとしております。どうして国民が財務省の隠蔽のために一億七百万円を支払わなければならないのか。国民の皆様に申し訳ないというふうに思わないんでしょうか。

 もちろん、赤木さんの御遺族が賠償請求するのは正当なことです。賠償金を支払うのは国民ではなく、決裁文書改ざんを指示した財務省幹部職員です。したがって、本法案の審議において、国民の信頼を僅かでも取り戻すために、財務省は改ざんを指示した当時の佐川理財局長などに対して求償権を行使することを財務大臣に改めて提案申し上げました。

 そして、森友学園問題に関する様々な疑惑の真相を明らかにすることを財務大臣に改めて提案申し上げたというところでございます。

 次に、今回の法案には、賃上げ税制の拡充が盛り込まれています。政策目的には大いに賛同するところですが、今回の法案審議を通じて、政策手段として効率的、効果的なのかは大いに疑問があることが明らかになりました。赤字企業を含めて幅広く賃上げのインセンティブとなるような仕組み、具体的には、社会保険料の軽減などを賃上げの実現の政策として財務大臣に改めて提案申し上げました。

 また、消費税の複数税率導入に伴って導入が予定されているインボイス制度について、免税事業者が多大なる不利益を被るリスクがあることは、現場から切実な声が上がっています。このことも審議を通じて確認されました。したがって、インボイス制度導入の中止を財務大臣に改めて提案申し上げました。

 さらに、原油価格の高騰を受けてガソリンなどの値上がりが続く中で、自動車がなければ生活が成り立たない地方から、何とかしてほしいと切実な声が上がっています。そこで、民主党内閣において制定された租税特別措置法八十九条、いわゆるトリガー条項の凍結解除を財務大臣に改めて提案申し上げました。

 なお、本日の予算委員会において、岸田総理は、トリガー条項の凍結解除も含めて、あらゆる選択肢を排除せず、更なる追加の対策を早急に検討するという発言がございました。今更、早急に検討と言われても遅過ぎます。立憲民主党・無所属は、トリガー条項の凍結解除の法案を提出していますので、早急な検討ではなく、早急な実施を提案申し上げます。

 我々立憲民主党・無所属会派は、国民の暮らしを守るための政策をこのように数多く提案してまいりました。しかし、誠に残念ながら、こうした提案は本法案には盛り込まれておりません。これでは大変厳しい国民の暮らしを守ることはできないことを申し上げ、私の反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございます。(拍手)

薗浦委員長 次に、赤木正幸君。

赤木委員 日本維新の会、赤木正幸です。

 私は、政党を代表して、所得税法の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論をいたします。

 岸田総理は、施政方針演説の中で、成長と分配の好循環の要となるのが分配戦略、その第一は、所得の向上につながる賃上げですと声高に宣言されました。そして、賃上げに関わる税制措置の抜本的強化と銘打って、本法案に盛り込まれた賃上げ税制の拡充を示されました。

 しかし、税制改正のほかに示された公的価格の引上げ、中小企業の価格転嫁のための環境整備、最低賃金の引上げ等を含め、いずれも小手先の対応、従来施策の延長のオンパレードです。これでは、格差の是正を正す新しい資本主義を掲げる岸田政権としては余りに乏しい内容と受け止めています。

 日本維新の会は、コロナ禍で社会全体があえいでいる現況を考えれば、まずは高騰するガソリン代に対応すべく、速やかにトリガー条項の適用を可能とする法案を提出するとともに、二年間の消費税五%への減税を断行して国民の可処分所得を上げるべきであると主張しています。

 加えて、構造的問題から逃げることなく、税制、社会保障制度について正面から大改革を図る日本大改革プランを発表しています。まず、フローからストックへをコンセプトとする税制改革、次に、セーフティーネットとしてのベーシックインカム導入による抜本的な社会保障改革、さらに、成長戦略としての、地方分権改革、労働市場改革、規制改革、デジタル改革、これら三位一体の改革プランで、真の意味で持続可能な社会保障システムを構築するとともに、閉塞感の強い国民生活に豊かさの実感を取り戻していこうとするものです。

 従来の発想や既得権益にとらわれることなく、抜本的な制度改革、規制改革を断行すべきであり、我々日本維新の会は、その先頭に立って、国民の皆様のための政策実現を目指すことをお誓いして、本法案についての反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 私は、国民民主党・無所属クラブを代表し、本法案に賛成の立場で討論をいたします。

 本法案の目玉政策である賃上げ税制については、賃金を引き上げることは日本経済にとって喫緊の課題であり、国民民主党もさきの衆議院総選挙では、給料が上がる経済を公約に掲げました。

 一方で、資本金一億円以下の法人は約六割が赤字であり、本税制のインセンティブは働きません。我が党は、賃上げのためのインセンティブとして、法人事業税、固定資産税などの軽減措置を提案しています。中小企業にとっては、社会保険料の減免をインセンティブにする方策もあり得ます。

 そもそも、企業の生産性が向上しない限り、賃金は上がりません。政策のターゲットは企業の生産性向上であるべきです。

 一方で、政府も、補助金や公共調達での優遇や下請取引の適正化など、税制以外の環境整備を進めるとの答弁でした。国税以外の地方税や社会保険料の減免など、総合的な施策を使うことが必要だと考えます。

 更に言えば、国民の税金で給料を上げるぐらいであれば、直接、所得型の給付つき税額控除の実施を提案します。その財源を株式配当などへの金融所得課税に求めれば、所得再分配にも資することになり、格差是正が進みます。財源は所得控除の整理、縮減でも捻出できます。所得控除から税額控除に移行すれば、富裕層の負担を増やし、所得再分配効果が更に強化されます。

 政府はガソリン補助金制度を実施していますが、現場のガソリンスタンドでは、値下げは一部に限定され、据置き若しくは引き上げたスタンドすら見られ、大変混乱しています。補助上限の引上げなど、政府も新たな政策を検討していますが、さきの予算委員会締めくくり総括質疑で、我が党の玉木代表提案のトリガー条項の発動について、岸田総理から前向きに検討する旨の答弁があったことは高く評価いたします。

 本法案審議の過程で、租税特別措置についてスクラップ・アンド・ビルドの原則を維持するということについて、財務大臣の前向きな答弁をいただきました。コロナとの戦いが終息した暁には、財政規律を守る姿勢を堅持していくべきです。

 東日本大震災の後、巨額の復興予算が必要になった際に、当時の国会は将来の世代にツケを回さないために震災復興特別税を決めました。その結果、二年間の復興特別法人税に加え、二十五年間、二・一%の所得税の付加税を徴収し、住民税は十年間、千円引き上げる形で財源に充てることができています。

 コロナ禍に対応するため、真に国民の命と暮らしを守るための歳出増加はやむを得ないと考えますが、そのための債務は特別に管理し、将来は震災復興特別税のような仕組みで、後代に負担を残さないようにすべきです。

 そのことを申し上げた上で、本法案の狙いである成長と分配の好循環及びカーボンニュートラルの実現に向けた改正案の内容は、必ずしも十分なものとは言えないものの、我が党の政策と方向性において軌を一にするものであり、今後我が党の提案を真摯に取り上げていただくことを前提に、本法案に賛成いたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、所得税法の一部を改正する法律案について反対討論を行います。

 法案に反対する第一の理由は、オープンイノベーション促進税制や5G導入促進税制など、財界の要望に応えて大企業に対する減税制度の拡充や継続を盛り込んでいることです。賃上げ促進税制も含め、政策効果も疑わしいまま大企業に有利な減税措置を繰り返しても、賃上げなど家計には回らず、配当や内部留保を拡大させるだけです。

 岸田内閣の目玉政策である賃上げ促進税制は、二〇二〇年度の実質賃金は二〇一三年比で四・八%減少するなど全く効果を上げていません。そもそも、二〇一九年度に利用した企業数は、国内企業数約二百七十五万社に対して約十三万社、たった四・七%です。法人税額から所得控除する仕組みは変わらず、約六割が赤字の中小企業に恩恵は及ばない本制度では、貧困と格差の是正にはつながらず、大企業の内部留保を拡大させるだけであります。

 中小企業支援の抜本的拡充と一体に、最低賃金を千五百円へ引き上げ、正規雇用者の割合を増やす労働法制の改革など、賃上げ政策の根本的な転換が必要です。租税特別措置などの累次の大企業減税政策によって資本金百億円超の大企業や連結法人の法人税負担割合は、法人税率二三・四%に対し、僅か一三・〇%程度まで引き下げられました。新自由主義の弊害を是正するのが新しい資本主義と言いながらも、大企業優遇税制の拡大、継続を更に図る本法案には反対です。

 反対する第二の理由は、岸田総理が総選挙でも所得税の一億円の壁の改善を公約したにもかかわらず、本法案に金融課税強化を盛り込まずに棚上げしたことです。格差是正への逆行でもあり、重大な公約違反であります。

 政府の白書でも指摘しているように、新型コロナウイルス感染症の影響の下でも、近年の株価の上昇により更に所得格差、資産格差が拡大しているのです。富裕層を優遇する金融所得課税の温存ではなく、格差是正の所得税の見直しが求められています。

 第三の反対理由は、納税環境整備として盛り込まれた加算税の厳罰化の問題です。申告納税制度の趣旨に反するものであり、本改正には賛成できません。

 本案には、子育て世帯への給付金、住民税非課税世帯への給付金など、コロナ関連の給付措置の非課税措置、差押禁止措置や財産債務調書制度の対象拡大など賛成する改善点もありますが、上記の反対理由から、全体として本法案には反対します。

薗浦委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 これより採決に入ります。

 所得税法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

薗浦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、井林辰憲君外五名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。稲富修二君。

稲富委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 本法律案の狙いである、成長と分配の好循環及びカーボンニュートラルの実現に向け、賃上げ及びオープンイノベーションの促進に係る税制の拡充や住宅ローン控除制度の見直し等の措置がどのように貢献したのかについて、効果を検証し、かつ公表することで政策効果を適切に把握できるように努めること。さらに、租税特別措置は、政策誘導をするための行政手段としては、その効果について、さまざまな問題が指摘される中、不断の見直しと改革に努めること。

 二 成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現するため、実効性のある戦略の下、民間企業の賃上げ等を支援する中で、積極的な賃上げ等の機運が醸成できるよう制度の適切な広報・周知を図り、利用を促進するとともに、税制上の措置と補助金等を適切に組み合わせることで、政策効果を最大化するよう努めること。

 三 感染症の影響もあり、特に貧困世帯の増加や所得格差の拡大・固定化は深刻度を増している。また、少子高齢化、働き方やライフコースの多様化、グローバル化や経済のデジタル化の進展等の経済社会の構造変化も加速している。こうした状況を踏まえ、再分配機能の強化を検討するとともに、公平で中立的な課税に配慮しつつ、税体系全般の大胆な見直しを早急に進め、その結果をもって必要な改革をちゅうちょなく実行するよう努めること。

 四 法人税や消費税等の税収の見積りと実績のかい離が生じた場合には、国債発行額などに影響を与える可能性もあることから、政府経済見通しや税収の見積りに当たっては、経済や産業構造の変化等を的確に分析し、これらの変化等が税収に与える影響について検討し、消費の実態を適切に捉えているかなど不断の見直しを行うよう努めること。

 五 高水準で推移する申告件数及び滞納税額、経済取引の国際化・広域化・ICT化による調査・徴収事務等の複雑・困難化、新たな経済活動の拡大、軽減税率制度実施等への対応など社会情勢の変化による事務量の増大に鑑み、適正かつ公平な課税及び徴収の実現を図り、国の財政基盤である税の歳入を確保するため、国税職員の定員確保、職務の困難性・特殊性を適正に評価した給与水準の確保など処遇の改善、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を払うこと。

   特に、社会的関心の高い国際的な租税回避行為や富裕層への対応、消費税の不正還付防止への対応を強化し、更には納税者全体への税務コンプライアンス向上を図るため、定員の拡充及び職員の育成等、従来にも増した税務執行体制の強化に努めること。

 六 新型コロナウイルス感染症をめぐる現状を踏まえ、国税職員を含む財務省職員の健康管理の徹底等、感染拡大防止に万全を期すとともに、必要に応じ迅速かつ適切な措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

薗浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

薗浦委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣鈴木俊一君。

鈴木国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

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    〔報告書は附録に掲載〕

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薗浦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十五分散会


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