衆議院

メインへスキップ



第2号 令和5年2月10日(金曜日)

会議録本文へ
令和五年二月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      勝目  康君    金子 俊平君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      佐々木 紀君    塩崎 彰久君

      瀬戸 隆一君    津島  淳君

      土田  慎君    葉梨 康弘君

      藤原  崇君    古川 直季君

      宮澤 博行君    山口  晋君

      若林 健太君    階   猛君

      野田 佳彦君    馬場 雄基君

      福田 昭夫君    道下 大樹君

      山田 勝彦君    米山 隆一君

      藤巻 健太君    岬  麻紀君

      伊藤  渉君    山崎 正恭君

      前原 誠司君    田村 貴昭君

      吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        井上 貴博君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   防衛副大臣        井野 俊郎君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 畠山 貴晃君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中澤 信吾君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  井藤 英樹君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   阿部 知明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   寺岡 光博君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   中村 英正君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    三村  淳君

   政府参考人

   (財務省財務総合政策研究所長)          江島 一彦君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文部科学戦略官)       伊藤 学司君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官)          山下 恭徳君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 堀井奈津子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松本  圭君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  川嶋 貴樹君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   参考人

   (日本銀行理事)     貝塚 正彰君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     勝目  康君

  中山 展宏君     宮澤 博行君

  八木 哲也君     佐々木 紀君

  若林 健太君     山口  晋君

  藤岡 隆雄君     馬場 雄基君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     神田 潤一君

  佐々木 紀君     瀬戸 隆一君

  宮澤 博行君     古川 直季君

  山口  晋君     若林 健太君

  馬場 雄基君     山田 勝彦君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     土田  慎君

  古川 直季君     中山 展宏君

  山田 勝彦君     藤岡 隆雄君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     八木 哲也君

    ―――――――――――――

二月九日

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)

 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、副総裁雨宮正佳君、理事貝塚正彰君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官畠山貴晃君、大臣官房審議官中澤信吾君、金融庁企画市場局長井藤英樹君、デジタル庁審議官阿部知明君、外務省大臣官房審議官岩本桂一君、財務省主計局次長寺岡光博君、主計局次長中村英正君、主税局長住澤整君、国際局長三村淳君、財務総合政策研究所長江島一彦君、国税庁次長星屋和彦君、文部科学省大臣官房文部科学戦略官伊藤学司君、科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官山下恭徳君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官堀井奈津子君、大臣官房審議官松本圭君、大臣官房審議官宮本悦子君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄君、防衛省整備計画局長川嶋貴樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中西健治君。

中西委員 おはようございます。自由民主党の中西健治です。

 理事会のお許しを得ましたので、久々にマスクなしで質疑をさせていただきます。

 今回も、財務金融委員会、たくさんの、多くの重要な法案がありますけれども、まず、大臣の所信の質疑に立たせていただく機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 日本銀行の総裁が誰になるのかというようなことが今市場の大きな関心事になっておりますけれども、そしてそれに伴って、共同声明の見直しというのがあるのかないのか、こうしたことも関心事となっていますが、見直しをするのかと大臣に聞いても、きっと今日の時点ではお答えできないということだろうというふうに思いますので、まず私の方からは、十年前に結ばれました共同声明について、その意義をどのように考えるかということについてお聞きしていきたいと思います。

 もはやデフレではないという状況がつくられたというのが政府の認識だろうというふうに思いますけれども、我が国の物価研究の第一人者であります東京大学の渡辺努教授は、近著の中で、まだ安定的なデフレ脱却は果たされていない、現在の状況については、急性インフレと慢性デフレが同時進行していると警鐘を鳴らしております。

 まだまだ危うい状況であるのかなというふうにも思いますけれども、この十年前の政府と日銀の共同声明についての評価、これを大臣にお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 政権交代後の平成二十五年一月に、政府と日銀は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために政策連携を強化することとしまして、これを共同声明として公表をいたしました。

 この共同声明においては、政府は、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組や、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を進めるとされ、日銀は、日銀が定めた物価安定の目標の下、金融緩和を推進するとされており、これまで、この共同声明に沿って、政府、日銀一体となって、デフレからの脱却に向けて取り組んできたところであります。

 その結果、御指摘のように、デフレではないという状況をつくり出すとともに、GDPや企業収益を高め、雇用環境を改善するなど、大きな成果を上げたと認識しております。

 しかし、他方、女性や高齢者等の労働参加比率の上昇等を背景とした一人当たりの賃金の伸び悩みが見られ、新型コロナ対応等のため財政状況の厳しさは増しておりまして、また、黒田総裁は、まだ二%の物価安定目標を安定的、持続的に達成する状況にはなっていないと述べられており、それぞれの課題が残っているということ、これも事実であります。

 政府としては、引き続き、政府、日銀が一体となって、物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け取り組んでいくことが必要と考えておりまして、今後ともしっかりと連携をして対応してまいりたいと考えております。

中西委員 ありがとうございます。

 今の大臣の総括というか評価の中では、プラスの部分もあったけれども、まだ足りていない部分もある、こういうことだったと思います。

 そのうちの一つの例として、一人当たりの賃金の伸び悩みということも挙げられておりました。元々の共同声明にしても、物価の上昇そのものがやはり明示的に掲げられていて、掲げるのは当然なんですけれども、それだけが唯一の目標になっているのではないか、このようなことが疑義として持ち上がるようなところがございました。

 大臣もよく御承知のとおり、アメリカのFRBは、物価ということのほかに、雇用の最大化という、デュアルマンデートが与えられております。やはり、何らかの形で、雇用ですとか賃金ですとか、こうしたことも目標の中に据えるべきであったのではないかというふうに考えているところであります。

 そんな中で、今、政府が、岸田政権としては、やはり賃上げということが最大の目標の一つになっているということは間違いなかろうというふうに思います。今度の共同声明の中で、私は、賃金や雇用について書き込むべきであるというふうに思っておりますし、元々、この共同声明のたてつけというのが、一番初めに、政府と日銀は共に共同して努力していくんですというようなことが書いてありますけれども、今大臣もまさにおっしゃられたとおり、書かれていることは、日本銀行は、政府はということで、それぞれの役割の整理をしている、こういう形になっております。

 雇用ですとかあと賃上げというのは、日銀だけで達成できるものでもありませんし、政府だけという話でもないだろうと思いますので、私は、たてつけの中自体を変えて、政府と日銀は共に雇用の最大化や賃上げについて一緒に努力するというようなことが明示的に書かれるべきであろうというふうに思っておりますが、書く、書かないということは今大臣からお答えできないだろうというふうに思いますので、今後、新総裁が選ばれて、新総裁と政府がいろいろな議論をしていくと思います。その中で、大臣は、これは達成していかなきゃいけないだろうと考えているような目標について教えていただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 今後の共同声明について、御提言、お考えをいただいたところでありますけれども、共同声明の取扱いにつきましては、新しい総裁とも議論する必要があると考えておりますし、日銀も、新しい体制の中で、内部での議論で方向性を定めていくということもあるんだと思います。したがいまして、今の段階で共同声明の在り方を含めまして具体的に申し上げることは時期尚早と考えているところであります。

 その上で、共同声明の目的でありますデフレ脱却と持続的な経済成長の実現、これは依然として重要な政策課題である、そのように考えております。そして、この政策の課題の実現に向けましては、御指摘のとおり、賃上げの実現、これは非常に重要なポイントであると認識をいたしておりまして、政府としては、賃上げに向けて各種の取組を行っているところであり、また、賃上げの必要性についての認識については、日銀の黒田総裁も述べられているところであります。

 こうした認識の下で、構造的な賃上げを伴う経済成長と物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けまして、政府、日銀が一体となって取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

中西委員 どうもありがとうございます。

 是非、新総裁とのいろんなこれからの話の中では、雇用と賃上げについては明示的に取り上げていっていただきたいと思います。

 共同声明は、内閣府と財務省、それと日本銀行の三者のクレジットということになっておりますので、是非お願いしたいと思います。

 続きまして、これから税法の議論がされることになりますけれども、その中でNISA、これが大幅に拡充、もし通れば大幅に拡充されて、来年から使いやすいものができるということになってまいります。

 私も、もう何年も前から参議院の方でもずっと財政金融委員会でこのNISAの拡充ということを取り上げてまいりましたし、今は、自民党内ですけれども、財務金融部会長として、こちらを何とか拡充できないかということをやってきましたので、もしこれができるということになったら、これは大変すばらしいことだというふうに思っております。

 その中で、少し気になることがございます。それは、株式の投資単位、株を買うときの必要な最低の金額という問題なんです。

 二〇一八年の十月に株式の売買単位が百株に統一されました。それまでは、一株ですとか二百株、五百株、二千株とかいろんな種類があって、なかなか投資対象にならないものが多かったのが、百株に統一はされました。それ自体は本当にこれまでの東証の努力を多としたいというふうに思いますが、しかしながら、直近のデータを見ても、まだこの株価に百を掛けて買える最低投資単位が相当大きい金額になってしまっている上場会社が幾つもございます。

 金融庁にお尋ねいたします。

 百株、いわゆる投資単位を買うために五十万円以上かかる、そうした会社、どのような会社が何社あるんでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 東京証券所では、上場規則におきまして、上場株式の投資単位が五万円以上五十万円未満となるよう、その水準への移行及び維持に努めるものとするとされてございます。

 先月末時点でこの規則の対象となります上場会社三千七百九十五社のうち、投資単位が五十万円を超える会社は二百三社となってございます。

中西委員 ちなみに、その二百三社の中にはおなじみの会社というのは多分たくさんあるんだろうと思います。いわゆるハウスホールドネームという、そうした会社、幾つか紹介していただけますか。

井藤政府参考人 どの会社が有名かどうかと私の中では言い難い部分がございますけれども、例えば一月三十一日時点で申しますと、ファーストリテイリングですね、ユニクロを運営されていますけれども、これだと七百万円を超える、あるいはオリエンタルランド、東京ディズニーランドを運営されている、これは二百万円を超える、あと、例えばJR東海、東海旅客鉄道でございますけれども、これは百五十万を超えたり、ソニーグループでありますと百万を超える、そういう状況でございます。これはあくまでも一例でございますけれども。

中西委員 今、挙げていただいたようなネーム、ファーストリテイリングですとかソニーですとかオリエンタルランドですとか、やはり個人投資家が買いたいものなんじゃないかというふうに思います。

 去年は、個人投資家が久々に大きな金額で買い越しをいたしました。おととしも、小さな金額でしたけれども買い越しで、二年連続買い越しというのは、八三年に統計を取り出してから初めてのことであります。そして、昨年の一兆円を超える買い越しというのはバブルのときの九〇年以来ということになりますので、ようやく貯蓄から投資へという流れができつつある、あと、バブルの後遺症から癒えつつあるというところなんじゃないかというふうに思いますので、何としてでも、せっかくのこの流れを太いものにする、それがNISAなんだろうというふうに思うんですが、そのNISAで買えない株があってはいけないんじゃないだろうかというふうに思います。

 あと、とかく言われることですけれども、日本人の個人投資家は高配当の株を買うことが多いということなんですが、やはり成長する株も買ってもらいたいだろうというふうに思うんです。ソニーもまだまだ成長するかもしれません。そうしたところにお金が入りやすいようにするためには、是非とも投資単位を引き下げてもらいたいと思います。

 東証はやっているんです。東証は、昨年の秋も、東証の山道社長が要請という形で文書を上場企業に出しております。お願いはして、お願いに応えてくださる、ファーストリテイリングも分割をいたしました。それでもまだ二百万円以上するんですけれども、更に分割が必要だというふうに思いますが、そうした東証がやっていることを、東証だけにしないで、金融庁として推し進めていく。特に、来年新たなNISAができるのであれば、それに向けての環境整備をしていく。

 大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 上場株式の投資単位を個人投資家が投資しやすい水準にすること、これは、貯蓄から投資へのシフトを進める上で大変重要な点であると考えております。

 井藤局長からも答弁がありましたが、東証は、これまで、個人投資家の投資環境を整備するため、上場会社に対して投資単位が五十万円未満となるよう促してきたところであり、その効果もありまして、足下では約九五%の上場会社が五十万円未満となっているものと承知しています。

 しかしながら、依然として投資単位が高い水準にある上場会社も存在しておりまして、金融審議会においても、昨年十二月の報告書において、東証等は、投資単位の大きい上場株式を発行している企業に対して、投資単位の引下げに向けた更なる取組を促すべきである旨の御提言をいただいたところであります。

 投資単位の水準の引下げには株式分割が必要であることから、上場会社の理解が不可欠でありまして、金融庁といたしましては、来年からNISAの抜本的拡充、恒久化も見据えまして、東証に更なる対応を促すなど、取引所や上場会社、市場関係者による議論が深まりますよう、取組を進めていきたいと考えております。

中西委員 大臣、是非よろしくお願いいたします。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 昨日、本会議がありまして、いろいろ議論がされました。一部、私の今日の質問、重複するところがあると思うんですけれども、党として、また個人としてしっかり伺っておきたい、そうした趣旨を含めて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、基本的なことでお伺いを二点させていただきますが、最初は、物価情勢の見通しについてということで、大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 インフレ率二%、この目標水準に実質的には未到達ということで、いろんな有識者からも意見をいただいてまいりましたが、生鮮食料品を除く物価指数、消費者物価指数、昨年十二月の段階で四%となっておりますが、ここをいろいろ分析すると、酒類を除く食料、それからエネルギー、ここが極めて上がっているということで、総合では、これを除きますと、総合的には一・六%。ですから、三か月連続で一・五%は超えているけれども、二%はこの食料、エネルギーを除くと超えていない、こういう状況でございます。

 ですから、そう考えていくと、直近のこの物価上昇の要因というのは、エネルギーやそれから穀物などの輸入品の値上がりが原因だ、コストプッシュ型であるということで、あわせて、後で伺いますけれども、賃金も上がっていないことから、景気はむしろ下押しの圧力が働く可能性がある、こういう見方もできると思うんです。

 そこで、改めてお伺いしますけれども、現状の物価情勢に対する認識と今後の見通しについて、まず大臣にお伺いしておきます。

鈴木国務大臣 今般の物価高騰につきましては、ウクライナ情勢等による国際的な原材料価格の上昇に加えて、円安などの影響によるものと考えております。

 物価見通しについてでありますけれども、政府経済見通しにおいては、令和五年度の消費者物価上昇率は、エネルギー、食料価格の上昇が見込まれるものの、総合経済対策による電気・ガス料金、燃料油価格の抑制効果等もあって、一・七%程度と令和四年度の見込みより上昇幅は縮小すると見込まれております。こうした見方は、民間のエコノミストの見方にもおおむね沿ったものである、そのように考えております。

稲津委員 もう一つ、基本的なことをお伺いさせていただきたいと思いますけれども、日銀が、消費者物価指数の前年比上昇率の実績率が安定的に二%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するオーバーシュート型コミットメント、これを採用しているわけで、結果としてどうなっているのか。

 様々な情勢はありますけれども、アメリカとの金利差が広がって、それから円安もそこに加わってくる中で、更に資源高、それから食料品なども非常に上がっているということで、国内の物価上昇を加速している。その結果、どうなってくるか。物価高が家庭の購買力ですとかそれから企業収益を圧迫している、こういう構図になっているんだというふうに思っております。

 ここで一つ大事なことが、いわゆるアベノミクスに端を発した異次元の金融緩和、このことによって確かに資金量は増加しているけれども、資金供給は増加しているけれども、物価の基調としては低インフレ、こういう状況なんだろうと思います。

 これは、大臣に直接聞くことよりも日銀総裁にお伺いすべきかもしれませんが、大臣の見解を改めてお伺いしておきたいと思いますけれども、こうしたことが、結果として、物価の基調の低インフレ、このことについて、私が今申し上げたようなことが結果的に妥当ではないかというふうに思うんですけれども、見解をお伺いしておきたいのと、あわせて、この金融緩和政策を今後もやはり継続すべきなのかどうか、この点について、大臣のお考えをお伺いしておきたいと思います。

鈴木国務大臣 今のお尋ねは、異次元の金融緩和で資金供給量が増加したけれども、物価は政府、日銀が目指しているように安定して上昇していないのではないかということと、金融緩和を今後とも維持すべきか、それとも維持すべきでないか、こういう二つの御質問であったと受け止めました。

 政権交代以降、政府と日銀は、互いに連携をしながら、それぞれの責任において、必要な施策を実施をしてきております。その結果、デフレではないという状況をつくり出すとともに、GDPや企業収益を高め、雇用環境を改善するなど、大きな成果を上げたと認識しております。一方、黒田総裁は、まだ二%の物価安定目標を安定的、持続的に達成する状況にはなっていないと述べられていることも承知をしております。

 その上で、金融緩和を維持すべき、あるいは維持すべきではないといったことでございますが、これはまさに金融政策の具体的な手法に当たるわけでありまして、この判断は日銀に委ねられるべきと考えていますが、日銀には、引き続き、政府との連携の下、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営を行っていただくことを期待をいたしたいと思います。

稲津委員 ありがとうございました。

 基本的なことを二つお伺いしましたけれども、その上で、今度は賃上げ税制についてお伺いをしていきたいと思います。

 これも今、様々議論がなされているところではございますが、二月七日に厚生労働省が発表した二〇二二年の毎月勤労統計調査、ここで、実質賃金、前年比〇・九%のマイナス、こうなった発表があったわけでございます。結果として、物価上昇に賃金が追いついていっていないという、二年ぶりに前年を下回ったということで。

 これはもう至極当たり前のことですけれども、やはり物価上昇に伴う賃上げの実現が何よりも一番大事なことなんだと。その対策としてこの賃上げ税制があるわけですけれども、この制度、皆さんも御存じのとおり、企業の労働分配を促す措置として二〇一三年から導入されて、繰り返し繰り返し制度の見直しも行われて、実施をしてきているということです。

 岸田政権の中でも、成長と分配の好循環の実現に向けてということで、人材確保等促進税制、これが積極的な賃上げを促す、そういう措置に改組されて、一層の賃上げを促進する、こういう趣旨でこれが措置されているわけでございます。

 そこで、お伺いしておきたいのは、政府がこれまで行ってきたいわゆる度重なる賃上げ税制について、効果がどこまで出ているのかということを伺っておきたいと思います。

 それから、もう一つは、さりとて、この賃上げ税制を否定するわけじゃないんです。しかしながら、結果として、状況を見ているとなかなか難しいものがあって、今後、企業の経営者が賃上げをする、しやすい環境を整備していくことがむしろ私は非常に重要じゃないかなと思っているんですが、こうした考え方について、是非、大臣の見解を伺っておきたいと思います。

鈴木国務大臣 賃上げは、これは税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものでありますので、税制の効果だけを取り出して経営者の賃上げ判断への影響を定量的に測ることは難しいと思っております。

 一方で、過去に行われた企業に対する調査によりますと、賃上げ促進税制が賃金の引上げを後押ししたと回答した企業、これが六割以上に上ったことや、毎年、おおむね約十万社の企業に御活用いただいていることなどを踏まえますと、企業の賃上げに対して一定の効果があったのではないかと考えております。昨年の春闘においても、官民が連携した取組の結果、賃上げは過去二十年で二番目に高い引上げ率となったと認識をしております。

 いずれにいたしましても、令和四年度税制改正で拡充した賃上げ促進税制が適用された申告書は、通常、本年の五月以降、順次提出されることとなります。そうしたものを踏まえて、引き続き、賃上げ税制の適用実績について注視をしなければならないと思っております。

 あわせまして、労働者の七割を占めるのが中小企業でありまして、中小企業に賃上げの流れを波及させていくこと、これは、先生御指摘のとおり、重要なものと考えております。

 このため、中小企業においても物価上昇を超える賃上げに取り組んでいただけるように、令和四年度税制改正で拡充した賃上げ税制において、中小企業について税額控除率を大幅に引き上げたほか、事業再構築、生産性向上等支援と一体に行う賃上げ支援を大幅に拡充する、下請Gメンを三百名体制に拡充するなど、価格転嫁を強力に推進するなど、中小企業においても賃上げを行うことができる環境整備にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

稲津委員 大臣、最後のところの答弁でありましたように、中小企業、中小・小規模事業者の賃上げがやはり伴ってこなければ、底上げ、総体的なものになっていかないと思うんですよ。

 そこをどうするかということで、私どももいろいろ伺っていますけれども、やはり中小・小規模事業者の事業主からは、賃上げしたくないんじゃないんだ、賃上げしたいんだ、したくても原資がない、こういう話。だからこそ、環境整備が必要だ。そのためには、例えば、大企業と下請間における取引価格の価格転嫁をしっかりやっていくですとか、あるいは、いわゆる政府が推進しているDX、GX、こうした生産性の向上とか投資も必要になってくる、そのように思っております。

 今、政府が、八年ぶりの政労使会議を開催できないかということで調整に入ったというふうに伺っています。これもそうしたことの一環かなというふうに思っておりまして、今、私どもが総力を挙げて取り組んでいかなきゃいけないのは、やはり何といっても、中小・小規模事業者の方々の賃上げをどういうふうにサポートしていけるかどうか、このことが極めて重要だと思っていますので、これは本委員会においてもこれから何度か議論させていただきたいというふうに思っております。

 ほかにも質問があったんですけれども、防衛費関係費の公債発行の対象経費について、是非伺っておきたいと思っておりました。昨年の委員会でも、私、建設国債のことに触れて、大臣からもこのことについて答弁で触れていただきました。

 いろいろな見方はあるかもしれないけれども、しかし、現下の情勢を考えたときに、やはり国民負担をどうやって軽減して、理解していただけるか。これも次の段階でしっかり議論させていただきたいと思っておりますので、今日のところは以上で終わらせていただきたいと思います。

 大変どうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 財務金融委員会、今年もしっかり頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今日の議題は、おとといの大臣所信に対する質疑ということになります。まず、その所信について質問させていただきます。

 この大臣所信でいろいろ書かれていること、これは大体去年も似たようなことをおっしゃられていたかと思うんですけれども、去年も気になっていたんですけれども、主計局と、要は、予算とそれから税のことについては書いてある、主計局とそれから主税局の話は出てくるんですけれども、それ以外の部署、関税局、理財局、国際局の業務についてほとんど言及がないんですね。

 ほかの大臣は大体、これはいいか悪いかは別として、大体満遍なく各部署を一通りは言及するようなものがあるんですし、鈴木大臣も金融担当大臣としては一応一通り言及されているんですけれども、財務大臣としては主計局と主税局だけ何かひいきしているようなところがあるものですから、それ以外の部署の方がちょっとやる気を失ってしまうんじゃないのか、寂しい思いをしているのではないのかというふうに思ったものですから、ちょっと質問をさせていただきます。特に、財務省の中には主計にあらずんば人にあらずというような言葉があるやにも聞いたりしたこともあるものですから、聞かせていただきます。

 特に、関税局については、経済安保ということも大変注目をされておりますし、貿易とか、それからいろいろな犯罪関係の取締りという観点でも非常に重要な部門であると思いますし、理財局は、これから金利がちょっと上昇局面に入っているかもしれない中において、国債発行ですとか、あとまた防衛増税の議論の中で、やはり国の資産の中で有効活用されていないものがあるのではないのかというようなことからも、国有財産の管理、こういった観点も重要ですし、あと財政投融資など、いろいろな重要な業務を担っているかと思います。

 そういった意味で、取りあえず、まず、関税局とそれから理財局の業務に関する所信をお聞かせください。

鈴木国務大臣 先日の所信表明で、関税局と理財局の業務についての所信を述べなかったということで、決して両局の業務を軽んじているわけではないわけでございますが、結果としてそうなってしまいました。御指摘を受けて、今後の所信表明に大いに、作成の参考にさせていただきたいと思っております。

 その上で、関税局の業務につきましては、私も、東京税関でありますとか広島税関支署などを視察をいたしまして、現場の第一線で頑張っておられる方々ともいろいろお話をさせていただきました。

 越境電子商取引の拡大に伴う輸入貨物の急増、それから水際対策の緩和による入国者数の増加など、税関を取り巻く環境というのは大きく変化しております。こうした中、一層安全で豊かな社会の実現や、更なる貿易の円滑化を推進するために、昨年十一月、ちょうど税関発足百五十周年を迎えたわけでありますが、これを機会に、スマート税関の実現に向けたアクションプラン二〇二二を公表いたしました。様々な環境変化に対応を図ることとしているところであります。

 さらに、G7広島サミットも予定されているところでありまして、関税局、税関といたしましては、引き続き迅速な通関と厳格な水際取締りに努めてまいりたいと思います。

 理財局の業務につきましては、主として国の資産、債務の管理等に関わる業務を担当しているところでありますが、国債発行総額が極めて高い水準にある中、引き続き、市場との緊密な対話に基づき、安定的な国債発行に努めてまいります。

 また、令和五年度以降のGX経済移行債の発行に向けて、関係省庁と検討を行っているところです。

 また、財政投融資を活用して、新型コロナや物価高の影響により厳しい状況にある事業者への資金繰り支援や、新しい資本主義の加速などに取り組んでまいります。

 さらに、国有財産行政に関しましては、地域や社会のニーズを踏まえた国有財産の有効活用などにも取り組んでまいりたい、そのように思っているところです。

櫻井委員 あと、国際局についてもほとんど言及がない状況です。

 特に国際局に関連する話題としましては、おとといの大臣所信の中で、「世界的なエネルギー、食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、」と、ここまで国際局が関係するところを言いながら、その先は、「日本経済を取り巻く環境には」ということで、急に内向きな話になって、国際局が、じゃ、何をするのかというところが抜けちゃっているところなんですね。

 特に、財務金融委員会においても、国際局の業務に関連するところとしましては、中国の債務のわな問題とか、そういったこともこれまで議論させていただきました。さらに、こうした問題、開発途上国の債務の問題が金利上昇局面によって顕在化するリスクもあるというふうにも思います。

 そういったことを考えますと、国際局は、世界銀行やアジア開発銀行など国際機関も所掌しておりますし、JBICや円借款の業務、開発金融の業務も所掌しているということで、非常に重要だと思うんですね。しかも、今年は、JBIC法改正、それからIBRDの加盟措置法の改正もあるわけですから、やはりここはちゃんと言及していただく必要があったのではないのか。さらに、外国為替、去年は為替介入もやっております。これも国際局の業務ですから。

 大臣、この国際局の業務についてもしっかり言及をいただきたいというふうに思いますので、もし所信があれば御発言をお願いいたします。

鈴木国務大臣 改めまして、国際局の業務についても所信を申し述べさせていただきます。

 世界そして地域経済、これは、ロシアのウクライナ侵略に伴うエネルギー、食料不安でありますとか欧米各国の金融引締めの影響を始めとして、多くの困難、課題に直面をしているところであります。

 ウクライナ支援や対ロシア制裁、債務問題を抱える脆弱国の支援といった喫緊の政策課題には、迅速かつ適切な対処が必要であります。また、気候変動や国際保健、経済安全保障、金融デジタル化、国際課税などの分野も着実に取組を進める必要がございます。

 日本は、本年のG7議長国、ASEANプラス3共同議長国として、こうした諸課題の解決に向けて国際的な議論を主導していきたいと思っております。

 また、本日の閣議で、朝方の閣議では、JBIC法と世銀加盟措置法の改正法案を閣議決定いたしました。

 JBIC法改正案は、国際情勢の変化等を踏まえ、サプライチェーンの強靱化、スタートアップ等の日本企業のリスクテイク推進等とともに、ウクライナを支援するために、JBICの機能強化を図るものであります。

 世銀加盟措置法改正案は、ウクライナ支援等を目的に世界銀行に設けられる基金に対し、国債による拠出を可能とするものであります。

 両法案、これは、日本がウクライナ支援を主導し、G7議長国にふさわしい貢献を積極的に示す観点などから重要なものであり、今国会に提出させていただくものであります。

櫻井委員 特にウクライナ支援も非常に大きな課題ですし、私も、友人といいますか、昔の職場の先輩がウクライナ大使館に今度派遣されて、復興支援の準備を進めるんだという話も聞いておりますので、是非こちらも併せてよろしくお願いします。

 本日は、日本銀行の黒田総裁にも来ていただいております。黒田総裁も、国際金融局長、それから財務官、アジア開発銀行と、まさに国際局の業務のど真ん中で御尽力いただいてきたということだと思いますので、その点も踏まえて、国際局の業務もしっかりお願いいたします。

 今日は、来ていただいておりますので、ちょっと順番を入れ替えまして、四ポツの物価と賃金の話を先にさせていただきたいと思います。

 先週金曜日、予算委員会で黒田総裁とも議論をさせていただきました。この物価と賃金の話、これはやはり、この十年間のアベノミクスといいますか、異次元の金融緩和においてどうだったのか、黒田総裁はこれまで、物価が上がれば賃金も上がるということをお話しされておりましたけれども、実態はそうではなかったのではないのかということです。

 まず、今日お持ちしました資料、まず資料一ですけれども、この二十年近くの実質賃金の動きを資料一にまとめております。

 これを見ますと、民主党政権時代の方が実は実質賃金は高かった。自民党政権になってから、平均するとマイナス〇・七%、昨日の本会議でも指摘させていただきましたけれども、低いんですよね。要は、黒田総裁が日銀総裁に就任したこの十年間、結局、物価の上昇に賃金上昇が追いつかなかったということの表れでございます。

 それから資料三、これも先週の予算委員会でもつけさせていただきましたが、主要国の平均賃金の推移です。

 日本は、今から三十年前、それなりの賃金水準にあったわけですが、そこから全然伸びていない。ほかの、よその国は大体伸びているのに、日本だけが伸びていない。実は、よく見るとイタリアも伸びていないんですけれども、日本とイタリアだけが伸びていない、ほかは上がっているという状況です。その結果、どんどん追い抜かされていって、お隣の韓国にも抜かされている状況です。

 この賃金の上昇率を資料四の方にまとめました。実質賃金の上昇率を見ますと、むしろ日本は下がっているというような状況でございます。

 それから資料の五は、これは昨年の三月三日の経済財政諮問会議に内閣府が提出した資料でございます。私が勝手に作ったものではなくて、内閣府が作った資料で、これによりますと、一九九四年から二〇一九年の二十五年間で、いかに日本の世帯が貧しくなったかということですね。特に中央値で、所得再配分後ですけれども、五百九万円から三百七十四万円、これだけ減っている。分厚かったはずの中間層がぐっと下の方に押し下げられてしまっているような状況がはっきり分かるグラフでございます。

 この実質賃金が上がらないことの話として、よく、労働生産性を上げる必要があるんだ、労働生産性が上がれば実質賃金が上がるんだというんですけれども、この二十年間を見ますと、むしろ、労働生産性は上がっても実質賃金は全然上がらない、むしろ下がっているかもしれない、逆の相関があるんじゃないのかということで、話が全然食い違ってしまっております。

 じゃ、日本の会社がもうかれば、利益が上がればその分給料も上がるんじゃないのか、こういう話もあるわけなんですが、実態はどうかというふうに見ますと、この二十五年間で企業の利益は、全体としては三倍に増えています。ところが、従業員の給料を見ますと下がっています。三%ぐらい下がっちゃっている。

 じゃ、企業のもうかったお金は一体どこに行ったのかというと、配当は七倍以上増えている、内部留保も三倍以上増えている、役員の給料は四〇%ぐらい増えているということで、現場で働いている人のところには全く還元されていないという状況があります。

 何でこんなことになってしまったのかということについて、予算委員会でも黒田総裁に質問させていただきました。黒田総裁は物価が上がれば賃金も上がると言っていたけれども、そうなっていないじゃないですか、何でですかという質問をさせていただきましたが、ちゃんとお答えにならなかったので、改めて質問させていただきます。

 黒田総裁の十年間、トータルで実質賃金はマイナスです。私はこれは失敗だというふうに思いますが、黒田総裁御自身は、この十年間の結果についてどう評価されていますか。

黒田参考人 まず、過去十年間の金融緩和政策が賃金を十分引き上げることができなかったというのは、そのとおりであります。

 そう申し上げた上で、この十年間の金融緩和の下で雇用が四百万人以上も増加した、それからデフレでない状況にはなった、そして経済成長も一%程度ですけれども復活したというような意味では、一定の効果があったと思いますが、御指摘のとおり、賃金が十分上がっていなかったということはそのとおりだと思います。

 なぜこうなったかということにつきましては、過去、物価や賃金の上昇率が高まりにくかった背景としては、やはり、長年にわたるデフレの経験から、物価や賃金が上がらないことを前提とした考え方や慣行が根強く残っているということが影響したと思っております。

 もちろん、この間、弾力的な労働供給、先ほど申し上げたように、四百万を超える雇用が増加したわけですけれども、これは、結果として賃金の伸びを弱める方向に作用したかもしれませんが、雇用者数が大幅に増加したことで雇用者報酬は増加をしております。

 金融政策は、あくまでも、総需要に働きかけるマクロ経済政策でありまして、物価や賃金に影響を与えることは可能であると思いますけれども、何といっても、物価や賃金が上昇するためには、経済活動全体が回復して需給ギャップが減少し、さらにプラスになる、そして労働需給がタイトになるということがあって、その下で賃金、物価が上昇していくということだと思います。

 足下、コロナ禍からの回復過程にありまして、需給ギャップもほぼ解消しつつあります。労働市場は極めてタイトになっております。先行き、経済活動全体が回復していく下で、労使間の賃金交渉において、労働需給の引き締まりや物価上昇率の高まりを反映して、賃金上昇率も高まっていくのではないかというふうに見ておりますが、今後とも、賃金、物価の動向については十分注視してまいりたいと思っております。

櫻井委員 大体、いつも今後の話という、未来志向の話でごまかされてしまって、過去十年間、いや、これが一年とかだったらそうですよ、でも、黒田総裁、二年で二%と言っていたわけじゃないですか。ところが、二年たってもそれができず、この十年来てしまって、この最後の最後の局面、これは、日本国内の事情というよりは世界的な、感染症とかそういったことがあって、むしろ供給制約によるインフレの側面もあろうかと思いますけれども、そういったことがあってインフレになってみたけれども、結局、賃金の方はそれに追いつかないということでした。

 それから、もう一つ申し上げると、経済が上がってこなければというお話ですけれども、黒田総裁の前のとき、つまり白川総裁のときですけれども、民主党政権のときには、実質GDP成長率一・五%だったんです。それを、その後の自民党政権になって、黒田総裁が就任して、〇・六%、この十年間のを平均しますと。

 ですから、その観点からしても、GDP成長率が低いことを全て日本銀行の責任だと言うつもりは毛頭ございませんが、しかし、やはり、その責任の一端はあるのではないのか、そもそも、この物価の問題、デフレというのが貨幣現象だというふうに見立てたところから間違っていたのではないのか、そのことを改めて指摘をさせていただきます。

 もう一回お尋ねをしますけれども、この十年間で実質賃金マイナスなんですよね。ある部分を切り取ってとか、今年だけ切り取れば、それこそ去年の十一月、岸田内閣ですね、一昨年の十月発足ですけれども、実質、選挙がありましたからスタートしたのは十一月、二〇二一年の十一月から二〇二二年の十一月までのこの一年間、実質賃金マイナス二・八%ですよ。一年だけ切り取ればマイナス二・八%、大変悪い数字ですけれども、そこだけじゃなくて、十年間押しなべて見てもやはりマイナスだったわけですよね。

 ですから、これは何でこんなことになってしまったのか、やはりここに対する分析がないと、二年間でやると言ったことをできずに十年間引っ張って、またその先同じ失敗をずっと繰り返し続けるんですかということになるんですよ。やはり、ここは、間違っていましたと、次の総裁には、ちゃんと修正してくださいという申し送りが必要なんだと思うんですが、総裁、いかがですか。

黒田参考人 以前から申し上げておりますとおり、この十年間の金融緩和政策というのは、デフレでない経済をつくり出し、さらに、賃金、物価、確かに上がり方が極めて緩やかですけれども、九八年から二〇一二年までベアがないという世界だったものが、この九年間は毎年ベアがあるという世界になっておりました。

 ただ、その下でも、先ほど申し上げたとおり、賃金も物価も十分な上昇をしていなかったということはそのとおりであります。

 その理由としては、先ほど来申し上げているように、賃金や物価の上昇率が高まりにくかった背景としては、賃金や物価が上がらないことを前提とした考え方や慣行が十五年続きのデフレの下で醸成されていた、それが変化していくのに時間がかかっているということだと思います。

 なお、足下で四%の消費者物価上昇率になっているのは、御指摘のとおり、輸入物価の上昇によるものがほとんどでありまして、そういう意味では、既に輸入物価も上昇率が低下してきておりますし、二月からは政府の電気代への補助も効果が出てきますので、そういったこともあって、二〇二三年度の半ばにかけて物価上昇率はだんだん下がっていくというふうには思っております。

 そういう意味では、御指摘のとおり、二%の物価安定目標が持続的、安定的に達成されるという状況にまだなっていないということはそのとおりでありまして、そういう意味では大変残念に思っております。

櫻井委員 それから、先ほどの発言の中でも、今後、労使間の交渉において、労働需給の引き締まりや物価上昇の高まりを反映して賃金上昇、高まっていくというような発言がございましたけれども、先ほど、黒田総裁がいらっしゃる前に、公明党の稲津議員の質問の中で、コストプッシュインフレだったら景気の下押し要因になるのではないのか、こういう指摘もありましたし、この十年間を見ても、資金量は増えたけれども物価の基調は上昇しなかった、こういう指摘もあったんですね。これは、野党側、我々が言っているだけじゃなくて、与党側からもそういった指摘がありましたし、あと、中西委員からも、FRBのデュアルマンデートに言及しつつ、日本銀行とそれから政府との間のアコードに関して、物価だけじゃなくて雇用もちゃんと見るべきではないのか、そういう提案もあったわけなんですね。

 ですから、これまでの政策というのはやはりおかしかったんじゃないのかという問題意識は、我々野党側だけじゃなくて与党側の中にもあるということも指摘をさせていただきます。

 その上で、じゃ、今後、労使間交渉で賃金が上がるのかといったときに、昨日も実は、JAMといいまして、機械とか金属の産業別の労働組合の集会がありまして、そこで実際の話を聞きました。やはり、これだけコストプッシュのインフレになってしまうと、仕入れの値段はいろいろ上がっているけれども、じゃ、それを販売価格にその分転嫁できるかというと転嫁できない、だから価格転嫁は待ったなしだ、そういう集会を昨日やっていたんですよ。

 価格転嫁できなければ、それでコストは上がっている、売上げは伸びないということになりますと、結局、人件費は上げられないということになっているんですよ。賃上げどころか、賃金が上げられない、さすがに賃下げとまでという話にはなっていませんでしたけれども、それぐらい厳しい状況なんですよね。ですから、物価が上がったから労使交渉で賃金も上がるなんという話では、そんな状況では全然ないというふうに思います。

 それはもちろん、一部の輸出企業、大企業、グローバルにやっている企業は、それは賃上げやりますし、そういったことはニュースにはなっていますけれども、しかし、雇用の七割は中小企業なわけですよね。そういったところでは、とてもじゃないけれども賃上げは困難だという声もあります。

 そうしたことを踏まえると、現在の、現状のいろいろな現場の声を聞くと、賃上げどころではない。だから、先ほど黒田総裁が説明されたような、労使間交渉で賃上げ、これから期待できるというような話では全くないというふうに思うんですが、この今の、現下の経済状況、どのように分析されていますか。これでも賃上げが期待できるというふうにお考えでしょうか。

黒田参考人 先ほども申し上げましたとおり、我が国経済は、現在、コロナ禍からの回復過程にあります。今年度、来年度、そして再来年度と、潜在成長率を上回る成長が見込まれております。そうした下で、需給ギャップも解消し、労働需給も更にタイトになっていくという見込みであります。

 そうした下で、労使間の交渉において賃金が上昇していくということが期待されるわけですが、昨年の状況を見ますと、昨年一年間で恐らく物価上昇率は三%程度になったと思うんですけれども、賃金は二%程度しか上がっていません。したがって、実質賃金はマイナスになっています。それはそのとおりなので、そういうことも踏まえて恐らく労使交渉が行われると思いますけれども、経済の実態を見る限り、経済は比較的順調に回復しており、その下で労働市場も極めてタイトになっているということで、賃上げにいわばポジティブな状況になっているということは確かだと思いますが、御指摘のように、実際に賃金がどの程度上がるかというのは、この春の労使交渉、さらには、これは大企業だけじゃなくて中小企業も含めたところでどの程度賃上げが実現するかということに懸かっているわけですので、その点については、確かに、予断を持つことなく注視してまいりたいというふうに考えております。

櫻井委員 この話、押し問答はもうずっとやっているわけなんですけれども、結局、問題の本質の一つは、日本銀行ができないこと、私は別に、物価、賃金、それからGDP成長率、これは全部日本銀行がしょうものだというふうに言うつもりは全くございません。そんなことではないと思うんですが、ただ、あたかも日本銀行が、物価もちゃんとやります、それから経済成長もやりますというように聞こえるようなことを言ってしまうがゆえに、政府の方も、じゃ、日本銀行にお任せしようといって甘える、そういう構図があって、それがこの十年間の停滞、失われた十年間につながってしまったのではないのかというふうに思うんです。

 本当は、賃金でいえば、もっともっと厚生労働大臣がやるべきことがあるというふうに私は思いますし、そのことは先週の予算委員会でも申し上げたところではございますけれども、そういうところがしっかりと仕事をせずに、まあ日本銀行がやってくれるだろうということが今回のこの状況を招いているんだと思うので、できないことはできない、これは政府の責任ですということをちゃんとはっきりさせるということが、同じ失敗を繰り返さない一つのきっかけになるのではないのかというふうに思います。

 多分、黒田総裁、この後再任されるということはなさそうな、そういう雰囲気ではございますけれども、さすがに、二期と言われますけれども、もう三期ですよね、正確には。今期の任期を満了すると十年と二十日ということになりまして、非常に長いわけですから、それはそれで、それ以上もっとやってくださいというのもそれは大変な話ではございますけれども、やはり、次の方に引き継ぐときには、そこはちょっと違うんだということを、十年間の成功もあったかもしれないけれども、失敗もちゃんと引き継いでいただきたいということをお願い申し上げます。

 今日は、財政健全化計画の信憑性とか、それから、資産所得倍増の問題、これがキャピタルフライトにつながってしまうのではないのかということも質問させていただこうと思っておりましたが、ちょうど質問時間が終了してしまいましたので、これはまたの機会に質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日はどうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 立憲民主党の福田昭夫でございます。

 今日は、鈴木大臣の所信に対する質問だというので、大変楽しみに来ました。

 ただ、時間がありませんので、大臣始め政府関係者は簡潔にお答えをいただきたいと思います。そのために、質問の順序をちょっと変えさせていただきます。

 大きな二番目の、令和五年度予算及び税制改正大綱について、これは多分質問する時間がないので簡潔に申し上げておきたいと思っていますが、初めに、子供、子育て支援の強化につきましては、今国会から地方創生特がどうも地・こ・デ特別委員会になるようでありますから、その中でしっかり質問させていただきたいと思っております。

 それから、二つ目のデジタル田園都市国家構想の地方公共団体のデジタル実装の加速化について、一点だけ質問をさせていただきます。

 地方自治体の基幹業務システムの統一、標準化についてでありますけれども、これを、ガバメントクラウドを受託している米国の四社は、どのような電気設備を用意をしてデジタルサービスを提供するのか、ちょっと教えていただきたいと思っています。

阿部政府参考人 お答えいたします。

 住民記録、地方税、介護や福祉といいました地方自治体の二十の基幹業務システムにつきまして、ガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへ移行できる環境を整備する統一、標準化の取組を現在進めてございます。

 御質問ございましたガバメントクラウドでございますが、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度でありますISMAPに登録されたサービスのうち、不正アクセス防止やデータ暗号化などにおいて最新かつ最高レベルの情報セキュリティー確保ができるものを選定するということで今進めているところでございます。

 具体的には、ガバメントクラウドサービスにおきましては、サーバー、OS等を複数自治体が共同で利用、システムが取り扱うデータを安全に管理するデータセンターの機能、それから、新たなサービス導入のためのシステムの迅速な構築、柔軟な拡張を可能とする機能、加えまして、セキュリティー対策や運用監視を自動化して行う機能など、住民の利便性向上と地方自治体の業務効率化のシステム上の基盤としての役割や、それを担う設備が期待されてございます。

 ガバメントクラウドは、地方自治体にとりましても有益になるものと考えてございまして、安心して利用いただけるように取り組んでまいります。

福田(昭)委員 とんでもない話ですね、これは。日本国民一億二千六百万弱の個人情報が全て米国に行ってしまうという話ですよ、これは。こんな危険なことをやっちゃいけません。日本の富がどんどんどんどん外国へ流れていくという話です。これは後でまた特別委員会でやりますけれども、とんでもない話です。指摘をしておきたいと思います。

 それから、三つ目の、防衛力の抜本的強化やその裏づけとなる財源確保と日本の平和外交力の強化についてでありますが、こちらの方も、財源確保の法案が出るようでありますから、こちらは次の財金で。それから、そのほかの、防衛力強化のための2と3、これについては予算の分科会で是非やらせていただきたいと思っています。

 ただ、一言申し上げておきますと、日本はいかなる国とも絶対戦争はしてはいけない、また、できないということです。

 できない理由は二つあります。一つは、財政危機です。もう既に御案内のとおり、今、日本の公債は国、地方合わせて一千二百兆円を超えるような状況でありますが、とてもとても、もうGDPの二二〇%ということでありまして、戦費が調達できない、戦争をやろうと思っても。それからもう一つは、原発六十基と大量の使用済核燃料を持っています。これはもう原子爆弾を持っているようなものです。ですから、とても、日本は戦争をやりたくたってできないんです。

 ですから、ここは、このことをしっかり考えて、それこそ、戦後、僅か二か月余りで辞めちゃいましたけれども、石橋湛山総理に学んで、平和外交を徹底するべきだと思うということを一言申し上げておきたいと思います。

 では、委員長の許可が出れば、厚労省の皆さんやデジタル庁の皆さん、防衛省の皆さん、退席して結構ですので、委員長、よろしくお願いいたします。

塚田委員長 今ほどお話があった皆さん、御退席いただいて結構です。

福田(昭)委員 それでは、一番目の日本経済の現状と財政改革の基本的な考え方について、財務大臣を始め皆さんにお聞きをしたいと思います。

 一つ目は、日本は財政危機ではないのかという話でありますが、今ほど申し上げましたように、今年度末には国、地方合わせて千二百兆円を超える債務を抱えることになりますが、まだ財政危機ではないとどうも財務省の皆さんが言うんですが、大臣、いかがなんですか。

鈴木国務大臣 財政危機とはどのような状況かというお尋ねでございますが、例えば、IMFの報告書によりますと、財政危機の事例として、債務返済の不履行が発生していること、IMFなどから例外的に大規模で公的な財政支援を受けていること、市場からの資金調達が困難になるなど、市場からの信認が失われていることなどのケースがIMFの報告書では挙げられていると承知をしております。

 現在のところ、市場では大量の国債が低金利かつ安定的に消化されておりまして、日本の財政はIMFが事例として挙げているような財政危機の状況には陥っていないと考えております。

 一方で、今後もこれまでと同様の環境が継続するといった保証はない中で、公的債務がGDPの二倍を超えるまで積み上がるなど、諸外国と比べても極めて厳しい状況であることを考えれば、将来にわたって楽観できる状況ではないと認識をいたしております。

福田(昭)委員 IMFが考えている条件はまだ満たしていないから財政危機ではないという話ですが、そうしたら、IMFはどうして二〇三〇年までに消費税を一五%に上げろなどという勧告をしてくるんですか。二〇三〇年までには危なくなるという話じゃないですか。そうすると、これは、まあ、余計なお世話かもしれない、IMFは。でも、それは、しかし、真摯に考えなくちゃならないんじゃないでしょうかね。

 資料の一を御覧ください。これは財務省の資料ですけれども、これを御覧いただければ、消費税を平成元年につくってから、五%、八%、一〇%と八%、上げるたびに、よく言われるワニの口ですね、一般会計の歳出と一般会計の税収の開きが、乖離がどんどんどんどん大きくなってきている。

 これはどうしてなんですかね、こういうふうに大きくなっていくのは。財務大臣、教えていただければと思います。

鈴木国務大臣 財務省の見方としては、主とした要因は、やはり社会保障費の支払いの伸びが伸びているということが主たる原因であると考えております。

福田(昭)委員 社会保障費の伸びがこういうふうに開いているというんですが、それは違うんじゃないでしょうかね。

 闘う政治家と言われている白井聡さんがこう言っています。日本は戦争も内乱もないのに国が滅ぶという大変神秘的な国だ、これをしっかり改めるような政治勢力は出てこないのか、こう指摘しております。

 私が申し上げると、これは、やはりこの原因は、消費税をつくって、同時に、法人三税、国税は一つだけだけれども、法人三税、所得税、住民税、それから金融所得課税、これを大幅に減税した、そのために税収が足りなくなったんじゃないですか。しかも、消費税は、経済活動あるいは消費活動に対する罰金を与えるようなものですから。

 元日本の国の国税庁の検査官で、富岡幸雄先生が二〇一九年に書いている本があります。「消費税が国を滅ぼす」「いま必要なのは消費税の減税だ!」と。私もよく読ませていただきましたが、富岡先生の指摘はまさにこの表に表れている、私はそう思っております。

 そこで、次、二番目に行きますけれども、二つ目は、令和四年中の国際収支の状況についてであります。

 日本の財政の健全化を維持する上で大切なのは、国際収支がやはり黒字であるかどうかということがまず基本だと思っています。

 まだ年度は出ておりませんので、令和四年中の経常収支の総額と内訳を教えていただきたいと思います。

三村政府参考人 お答え申し上げます。

 令和四年中、暦年の経常収支でございますけれども、約十一・四兆円の黒字という状況でございます。

 その大きな内訳でございますけれども、まず、貿易収支につきましては、これは、資源価格の上昇等々で輸入額が増えたということもございまして、赤字に転化をしてございまして、十五・八兆円ほどの貿易赤字という状況でございます。

 サービス収支でございますけれども、こちらも、研究開発費ですとかマーケティング費用等々の支払いが海外向けに増えたという状況などもございまして、赤字が拡大ということで、五・六兆円のサービス収支の赤字という状況でございます。

 対しまして、黒字になっておりますのが第一次所得収支でございまして、こちらは、海外子会社からの配当金の受取が増えたといったようなことで大幅に増えてございまして、三十五・三兆円の黒字、これは過去最大の黒字ということで。

 こういった状況の総合的な結果として、冒頭申し上げました十一・四兆円の経常収支黒字、こういう状況でございます。

福田(昭)委員 今お聞きいただきましたように、第一次所得収支が三十五兆円を超える大幅な実は拡大をした。これによって何とか黒字を保っているんですね。

 でも、経常収支の推移を見てみますと、ちょっと皆さんのところに出しておりませんけれども、これを見ると、第一次所得収支の黒字幅は多くても二十兆円前後なんですよ。ですから、もし三十五兆円も第一次所得収支が稼いでいなければ、貿易収支の赤字が大幅になっていますから、経常収支、これは赤字になっているんですよ。経常収支が赤字になったら、国債の発行もだんだん怪しくなるんじゃないですか。

 私も麻生財務大臣と議論したことがありますけれども、麻生大臣、こう言いましたよ。要するに、日本は簡単に財政破綻しない、なぜかといったら、経常収支が黒字で、発行している国債が全て自国の通貨建てだ、円建てだ、だから簡単に財政は破綻しないんだ、こう言いましたけれども、しかし、今回のこの経済危機は本当にとんでもない危機ですからね。過度な円安と、それからウクライナの侵略、ロシアの。それによって、いろいろな物価高、悪いインフレと言っていますが、それによって本当に貿易収支の赤字幅が大きくなっちゃった。二十兆円超えちゃう。

 だから、もし第一次所得収支が二十兆円ぐらいだったら経常収支は赤字ですから、こんなのが続いていたら、だんだん国債発行できなくなってきますよ。

 ですから、私は、もう既に財政危機にあって、これをちゃんとしなくちゃならない、こういうふうに思っております。

 三つ目ですけれども、令和三年度末の法人企業の内部留保資金についてであります。

 これにつきましては、まだ令和四年度末が出ておりませんので、三年度末の銀行業、保険業を加えた総額と、それから製造業と非製造業の金額を教えてください。

江島政府参考人 お答えいたします。

 令和三年度の金融、保険業を含む全産業の内部留保の金額は約五百八十五兆円となっており、その内訳は、製造業約百八十六兆円、非製造業約三百三十兆円、金融、保険業約六十九兆円となっております。

福田(昭)委員 法人企業の内部留保資金は、コロナにもめげず、毎年毎年増やしているんですね。これはすごい話です。

 財務省は、今後、是非マスコミに、どれだけ企業がため込んだかという発表をするときには、必ず銀行、保険業を加えた数字をマスコミに書かせるように、報道するようにしてください。話によりますと、製造業、非製造業の調査をした後から加えたから、最初からの比較ができないからそうしているんだ、こういう話でございますけれども、しかし、銀行、保険業も全産業には違いありませんから、しっかり国民に事実を伝える、真実を伝えるということを財務省はやってほしいと思います。

 四つ目ですけれども、令和四年九月末の家計の金融資産及び法人企業の金融資産についてであります。

 家計の金融資産の総額と現金、預金、保険、年金、定型保証及び法人企業の金融資産総額と現金、預金を是非教えてください。

貝塚参考人 お答え申し上げます。

 私どもが四半期ごとに発表しています資金循環統計で見ますと、今御指摘のありました令和四年九月末の家計の金融資産残高が二千五兆円、家計の金融資産残高のうちの現預金保有残高、これは千百兆円、それから保険、年金の保有残高、これが五百三十九兆円ということになっています。

 それから、法人の方ですけれども、民間非金融法人企業の金融資産残高が千二百七十一兆円というふうになっていまして、法人の方の現預金でいくと三百三十兆円、こういう残高になっております。

福田(昭)委員 ありがとうございます。

 今それぞれ、財務省の方から法人企業、そして、日銀の方から金融資産の方の話がありましたけれども、まさに、コロナにもめげず、みんな増やしているんですよ。法人企業も、特に大企業を中心に貯金を増やしている。それから、家計もどんどんどんどん増やしている。この千百兆円に目をつけて、資産所得倍増計画みたいなのでNISAの話が出てきたわけですが。

 ですから、根本的に間違っているのは税制なんですよ、税制。税制が余りにもひどいから、税金が入らなくなっちゃったし、格差も拡大してきたし、貧困も拡大してきた。

 ですから、次、括弧五にいきますけれども、物価上昇を上回る賃上げの実現可能性についてであります。

 そこで、先に、時間の都合上、資料の二と三を御覧ください。

 資料の二は、国の法人税率及び国、地方合わせた法人実効税率の国際比較ですが、上の方だけ申し上げます。国の法人税率で、実は、韓国は法人税に現在、二〇一八年から四段階の累進税率を入れています。それから、アメリカも二〇一七年まで、トランプ大統領以前まで四段階の累進税率を法人税に入れています。

 さらに、資料の三ですけれども、資料の三は、日本の所得税の税率の推移です。これを御覧いただきますと、昭和五十八年、五十九年から六十一年あたりを見ると、八千万を超えると七五%という税率、あるいは五十九年からは七〇%という、高額所得者に対する税率でした。しかし、消費税をつくってから格段に引き下げられて、やっと、少し税金が足りなくなったものだから財務省も方針を変えて、平成二十七年から現在までは四千万を超えると四五%です。

 ですから、それこそ、今こそ、一億円を超える課税所得を稼ぐ人がたくさんいるのに、七〇%が四五%じゃ安過ぎるでしょう。こういうものも改めていく必要がある。

 それから、法人税に累進税率を入れれば、大臣、税金は増えますよ。大きな企業は税金が増える、小さな企業は税金を減らすことができる。そうしたら、賃上げにも有効に働くんですよ、大臣。

 じゃ、今、これから質問しますが、まず、政府は、企業の賃上げの原資に欠かせない価格転嫁を後ろ向きな企業を公表するなどして進めておりますけれども、総理が言う物価上昇を上回る賃上げは実現できますか、どうですか。大臣、お考えを聞かせてください。

鈴木国務大臣 賃上げは、成長と分配の好循環により持続的な経済成長を実現するために不可欠な取組であると考えております。

 福田先生御指摘の価格転嫁対策につきましては、賃上げ原資の確保につながるように、現在、下請Gメンを三百人体制に拡充するなど、その強力な推進に取り組んでいるところであります。

 政府としては、物価上昇を超える賃上げに向けて、こうした価格転嫁対策だけではなく、令和四年度税制改正において賃上げ税制を拡充するとともに、中小企業等に事業再構築、生産性向上等の支援を行う際、それと一体となった賃上げ支援を大幅に拡充するなど、あらゆる政策を総動員することで、賃上げを行うことができる環境整備に取り組んでまいります。

 さらに、成長分野における大胆な投資の促進により生産性と賃金の高い産業、企業を創出するとともに、こうした成長分野への円滑な労働移動を人への投資の強化と一体的に進めることで、構造的な賃上げの実現を図ることといたしております。

福田(昭)委員 私は、価格転嫁、これも必要だと思いますけれども、これだけでは無理だと思っています、先ほども案内ありましたけれども。やはり、中小企業がなかなかやりづらい、なかなか上げられないというのが調査でも出ております。

 私は、そういう意味では、やはり、物価を下げるという方法と、もう一つ、賃上げと、二つの方面で、二正面作戦で物価上昇を上回る賃上げを実現する必要があると考えております。

 物価を下げるにはどうしたらいいかというと、まず一つは、日銀総裁が替わるので少し変わってきましたが、過度な円安をやはり改めるということが一つです。それからもう一つは、消費税を五%に下げるということです。五%に下げたら物価は必ず下がると思いますが、大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 消費税率を下げれば、物価は下がることは下がります。

福田(昭)委員 ですから、消費税を下げることが全ての国民にひとしく恩恵を与えるんですよ。

 ですから、例えば、ガソリンを引き下げるために、企業に、元売に補助金を出しています。これはとんでもないやり方です。令和四年度、五年度を合わせると補助金が六兆円にもなるというんですが、しかし、ガソリン税、もしトリガー条項の凍結を解除すると、一年間に一兆六千億円税金が入らなくなるというんですよね、国と地方合わせて。二年合わせると三兆二千億ですよ。どっちが高いか、安いか。そして、そのお金でどれだけ国民が恩恵を受けるか、考えてみたらどうですか。

 お金の使い方で、よくワイズスペンディングとか言われますが、どっちの使い方がいいですか。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 福田先生から、お金の使い方ということの一つの例として、トリガー条項の凍結解除についての見解はどうかという質問であったと理解いたします。

 トリガー条項につきましては、自民党、公明党、国民民主党による三党検討チームにおきまして、補助金と異なり、揮発油税、地方揮発油税、軽油取引税がかかっていない重油、灯油について対応することはできない、発動、終了時に大幅な価格変動が生じ、発動前の買い控え、終了前の駆け込み、それに伴う配送の乱れや品不足といった流通や販売の現場に与える影響が大きい、ガソリンスタンドと元売の顧客対応を含め、事務負担が大きいなどの課題が存在をいたしまして、現時点で発動に際して解決するための具体的な方策について結論を見出すことに至っていないため、引き続き検討するということとされていると承知をしております。

 なお、原油価格の高騰に対しましては、トリガー条項では対象にならない灯油や重油も含めた燃料油の激変緩和事業を延長しているほか、低所得者世帯に対する給付金、地方創生臨時交付金を活用した生活者、事業者への支援を行っておりまして、こうした対策を着実に実施することで、国民生活、企業活動への影響を最小限に抑えていきたい、そのように考えているところです。

福田(昭)委員 だって、ガソリンは補助金を出して、元売が過去最大の利益を上げた、その原因は何だといったら、円安と補助金だというんですよ。だから、国民にやはりひとしく恩恵が及ぶような政策をやらなきゃ駄目じゃないですか。それを指摘しておきたいと思います。

 だんだん時間がなくなってまいりましたので、一つだけ申し上げておきますが、これは。

 やはり、もう一つは、法人税に累進税率を入れることです。

 私、実は何人かの社長さん方と話をしていますが、法人税に累進税率を入れると、大企業は増税になります。そうすると増税になる。それから、中小企業は減税になります。両方の、税金が増える企業の経営者も減る方の経営者も、やはり、社員の待遇を改善しよう、給与を上げようとか設備投資しよう、そういうふうな決断をすることになります。

 その一番いい例が、経団連の十倉会長ですよ。岸田総理が、防衛費の財源として法人税を考えると言ったら、最初、反対だと言ったんですよ。ところが、政府が本当にやる気だと思ったら、豹変しちゃった、態度が。しかも、びっくりしましたよ、十倉会長、賃上げは企業の責務だまで言いましたからね。びっくりしましたよね。

 ですから、経営者のマインドを変えることが大事。そのためには、法人税に累進税率を入れることです。そうすれば、三方よしになるんですよ。消費者もよくなる。企業だって後で、賃金が上がればいい社員を雇えたり、あるいは商品が売れるようになる、経済がよくなれば売れるようになるかもしれない。国も地方自治体も税収が増えるんですから、こんないいことないじゃないですか。

 さて、では、最後の質問に行きますけれども、括弧六ですね、経済再生と財政健全化の両立の実現性についてであります。

 先ほど所得税の話もしましたけれども、私は、大臣が言う経済再生と財政健全化の両立は、今のやり方じゃ簡単にできないと思っております。先ほど櫻井議員からも指摘ありましたけれども。

 まず、財政健全化の指標をプライマリーバランスの黒字化なんて言っているのでは、財政再建はできません。私は、財政健全化あっての経済再生だと逆に思っています。

 実は、アベノミクスの間違いだと思っていますが、アベノミクスが華々しくスタートしたときに、当時の甘利担当大臣と私、内閣委員会で一時間議論しました。そのときに私が言ったのは、一本目の柱と二本目の柱はあべこべですよと言いました。ですから、大胆にやるのが財政政策で、機動的にやるのが金融政策ですよと申し上げました。そのときに甘利さん、残念ながら答えられませんでした。だって、あの当時からもう企業はお金余りで、いっぱいお金が余っているのに、金融を緩和してどうするんですか。そうじゃなくて、大胆な財政出動をやって、経済をよくしていく。経済がよくなって、三本目の柱の民間が本当に頑張るようになってきて、お金が足りないといったら金融緩和じゃないですか。だから、一本目の柱と二本目の柱はあべこべだったんですよ。

 だから、先ほどから櫻井議員も、十年間何やってきたのと。だから、政策が間違っていたんだ、アベノミクスの。あべこべなんですよ。私はそれを内閣委員会で甘利さんと一時間たっぷり議論していますから、是非、もしアーカイブスでもあれば御覧いただければと思いますが。

 ですから、私は、財政健全化するためには、しっかり、まずは、何といっても税制を抜本的に改める。こんないびつな税制は駄目です。ですから、消費税は下げる、法人税に累進税率を入れる、そして、所得税ももっと最高税率も上げていく。さらに、金融所得課税も上げていく。あるいは総合課税する。そういう形でまともな税制にしていけば、日本の経済は復活しますよ。財政もよくなっていきますよ。

 そういうことを提案して、今日はちょっと時間がなくなりましたので、終わりにしたいと思いますが、最後に一言申し上げておきたいのは、これは、元国税庁の検査官、十年務めた大村大次郎という人が出した本です。消費税、巨大権益という本です。ここで、悪いのは朝日新聞、トヨタ、経団連、財務省と書いてあります。自分がいた財務省が一番悪い、こう言っているんですよ。この本もすばらしい本です。

 ですから、日本を再生させるためには、ここにも、それこそ元内閣官房参与の藤井先生と公認会計士、税理士が書いていますが、「消費税減税 ニッポン復活論」と書いてありますが、まさに、ここは、財務省、大蔵省は自分たちの失敗は認めて、ここで大転換するということを申し上げて、質問を終わります。

塚田委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規です。

 今日は幾つかちょっと質問したいと思いますけれども、岸田内閣の経済政策の評価というのを主にやりたいんですけれども、その前に、インボイスの導入反対の立場からの視点なんですけれども、国税庁の職員の増加、これとちょっとインボイス反対の立場を絡めて、まずそこから議論させていただきたいと思います。

 私、ずっと四年間、野党側の筆頭理事として、毎年、国税庁の職員の増加について努力してきました。今年も、業務の飛躍的拡大によって、国税庁の職員、また増加をお願いしたいと思いますけれども、大臣にちょっとまずその御決意、御判断をよろしくお願いします。

鈴木国務大臣 私も、国税局に視察をして、大変現場で皆さん頑張っておられる、こういうふうに思っております。

 私の記憶では、たしか来年度も増員になるのではないか、そういうふうに記憶しております。

末松委員 そこをまた御努力いただきたいということをお願いします。

 それで、私、インボイスの導入については反対でございまして、るるこの財務金融委員会でも申し上げてきたとおり、中小零細の消費税免税事業者なんかは多大な悪影響を受ける。事務的な煩雑さとか、あるいは商取引からの排除という危険もあるし、そういった意味で、百万人以上が廃業の危機に直面しているという報道もございます。

 ここで、私自身、さらに、インボイスの導入反対ということで、昨年できたインボイス反対の超党派議員連盟の会長もやっているわけですけれども、また、与党の中にも、自民党議員を含め、切実な中小企業の声を踏まえて、やはりインボイスについては慎重な議員が多いということも聞いております。

 国税庁の職員の定員増加と絡めて言うのは、幾ら国税庁の職員を増加しても、インボイスに関わる様々な調査が大変な状況になってくると、結局、増員してもそちらの方に取られてしまって、実際に、実調率、実地調査率というのを上げることに貢献しない。そこがちょっと、私から見たら、ふざけるなという感じがするわけですね。

 だから、是非、大臣に対して、国税職員がそういったインボイスの、まだこれから定着するのにかなり時間もかかっていろいろなトラブルも出てくるわけですけれども、そういったところに国税庁の職員をできるだけ関わらせないような、こういう措置を講じてほしいと思いますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 国税当局が行います税務調査につきましては、大口で悪質な不正計算が想定されるなど調査必要度の高い納税者を対象としているところでありまして、これまでも、請求書等の保存書類についてなどの軽微な記載事項の不足を確認するための税務調査は実施していない、そのように承知をしております。

 インボイス制度導入後も、こうした方針に特に変更はないと聞いております。

末松委員 ということであれば、制度が定着するようなところも含めて、そういう軽微なことについて中小事業者をある意味じゃいじめるような、そういったことは、国税庁としてもそこは十分に勘案して、そういった方々に極力面倒をかけないということを是非お約束していただきたいと思います。これは国税庁に聞きます。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁といたしましては、インボイス制度について、制度の定着を図るため、調査の過程でインボイスの記載不備を把握したとしても、インボイスだけでなく他の書類等を確認するなど柔軟に対応していくということで考えてございます。

末松委員 そういうことであれば、極めて柔軟に対応するということで、そこは多くの中小事業者も本当に安心するということだと思います。

 とにかく私自身は、インボイスの導入に反対であり、しかも延期をしてくれという立場、これはこれからも続けていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 二番目に、岸田内閣の経済政策の評価なんですけれども、岸田内閣は、新しい資本主義というのを標榜して、まだ内容が定かでないんですけれども、新しい資本主義への大転換と叫びながらこの一年半、経済政策をやってきましたけれども、結果どうだったんですかというのを問いたいんです。何が成功して、何が効果を上げていない、あるいは失敗だったのか、その大臣の認識をお聞きしたいと思います。

鈴木国務大臣 岸田政権が発足をいたしましてから一年半が経過をいたします。この間、具体的に何が成功で何が失敗であったかというのは、最終的には国民の皆様が判断すべきことであると思いますが、我々といたしましては、様々な御批判には謙虚に耳を傾けつつ、やるべき課題には正面から取り組むことが重要である、基本的にそう考えております。

 その上でお答えを申し上げますと、岸田政権においては、ウィズコロナの下、社会経済活動の正常化を進めていくとともに、ロシアによるウクライナ侵略や、これに伴う物価高騰など、経済社会情勢の変化に切れ目なく的確に対応してきたと考えております。

 また、成長と分配の好循環の実現のため、賃上げの実現に向けた各種の施策を総動員し、昨年の春闘においても、官民の連携した取組の結果、賃上げは過去二十年間で二番目に高い引上げ率となったと認識をしております。

 一方で、女性や高齢者の労働参加が進んだこともあり、一人当たりの賃金に伸び悩みが見られ、新型コロナ対応等のため、財政状況の厳しさ、これは一層増しているなど、課題が残されていることも事実であります。

 こうした中で、日本経済を民需主導で持続可能な成長経路に乗せていくために、新しい資本主義の下、成長と分配の好循環の実現に向けた各種の取組を進めているところであります。

 今後とも、経済再生と財政健全化の両立を図ることができますよう、しっかりと取組を進めてまいりたいと考えております。

末松委員 今、賃上げについて過去二十年間で第二位の上昇率という話がございましたけれども、資料の図一と二を御覧いただきたいと思います。

 これが、二〇二二年、まず共同通信の方が、ここがかなり、十一月の前年同月比で三・八%の減ですね、マイナス三・八%。そして十二月もマイナスの二・八ということで、櫻井議員がおっしゃったように、結局、二二年でも〇・九%の実質賃金の低下を招いているわけですね。図二は、ずっとこの実質賃金が指数でいえば下がってきている。

 こういうことで、岸田内閣が一番強調していた賃金の上昇、これが失敗していると言わざるを得ないんじゃないですか。そこはちょっと、大臣、どういう認識なのか、明らかにしてください。

鈴木国務大臣 賃上げは、成長と分配の好循環により持続的な経済成長を実現するために不可欠であると考えております。

 岸田内閣におきましては、政権発足当初から、賃上げ税制の拡充、公的価格の引上げなど、賃上げに向けた取組を行ってきているところであります。そして、先ほども申し上げましたけれども、昨年の春闘においては、賃上げは過去二十年間で二番目に高い引上げ率となったわけでございます。

 しかし、一方で、足下において実質賃金がマイナスになっていること、これはもう末松先生御指摘のとおりであります。これは、ロシアによるウクライナ侵略を背景とした国際的な原材料価格の上昇、そして円安の影響などによる物価上昇の影響が大きい、そういうふうに思っております。

 こうした状況を踏まえまして、物価上昇を超える賃上げが実現しないと実質の賃金は下がってしまうわけでございますので、関係省庁でしっかり連携をして、賃上げに取り組む中小企業等の生産性向上の支援の拡充などに取り組むとともに、構造的な賃上げの実現、これを目指してまいりたい、そのように思っております。

末松委員 確かに、世界的にいろいろな状況が起こって、円安状況もつくられた、それはいろいろとありますよね、物価が上昇してきたとか。

 だけれども、私、賃上げについて、最低賃金のこともずっとこの委員会でもかなり議論もさせていただきましたけれども、やはり、私なんかは、公的資金を大規模に投入して、五年間ぐらいで最低賃金を千五百円まで引き上げる、そういった、ある意味じゃ強行的な政策でもやらない限り最低賃金は上がらないなというのが私のずっと実感でございますし、また、先ほど答弁がございました、一部の大企業で五百八十五兆円もの内部留保を抱えるということ、これを何とか、その内部留保をそれだけ抱えさせないように、逆に、それを賃金の方に、賃金の上昇に上げていく政策、根本的な政策をやはりやっていかないと、そう簡単に賃金なんて上げられないですよ。価格転嫁なんかも中小企業はできないのが現状ですよ。

 しっかりそこは頑張っていただかないと、経済の低成長、もう日本だけですよ。恥ずかしい限りなんですよ。世界はどんどん賃金も上昇して二倍、三倍、日本だけ下がっている。世界はGDPを上げている、日本だけずっと下がっている。こんなことを繰り返さないでほしいということを是非お願いしますし、そこを強くお願いします。

 じゃ、次に質問を続けますけれども、岸田内閣は、発足当初から、国民の所得倍増、資産倍増ということで、それをキャッチフレーズにやってきていますけれども、結局、所得は、さっきの実質賃金の減少も含めてうまくいっていない。一方、四十三兆円もの防衛費負担増、これを国民に押しつけるという形になっているわけですよ。

 こうすると、国民から見たら、どうもこれはペテン師じゃないかというように感じてしまう。私の選挙区でもそういう方が多いんですよね。何だ、資産とか所得とか倍増とか言っていたのに、結局大きな防衛費の負担かよと。それが国民の偽らざる気持ちだと思うんですね。その辺について大臣の所感をお願いします。

鈴木国務大臣 岸田政権におきまして、成長と分配の好循環を通じて国民の所得を引き上げて、未来に希望を持つことができる社会をつくり上げていくことが重要、そういうふうに考えて施策をこれまで展開してまいりました。そうした考え方の下で、政権発足当初から、賃上げ税制の拡充、公的価格の引上げなど、賃上げに向けた取組を行ってきているところであります。

 一方において、先ほど来、末松先生御指摘のとおり、足下において、名目賃金は伸びているものの、物価上昇の影響によって実質賃金はマイナスとなっており、こうした事実に対しては真摯に向き合う必要があると考えております。

 このため、政府としては、物価上昇を超える賃上げの実現に向けて、賃上げに取り組む中小企業等の生産性向上の支援の拡充等に取り組んでまいります。また、成長分野における大胆な投資の促進によりまして生産性と賃金の高い産業、企業を創出するとともに、こうした成長分野への円滑な労働移動を人への投資の強化と一体的に進めることで、構造的な賃上げの実現を図ってまいりたいと思っております。

 また、お話にもありました資産所得倍増につきましては、家計の資金が我が国企業の成長投資の原資となって、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で家計にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を生み出していくため、昨年十一月に資産所得倍増プランを策定したところであります。NISAの抜本的拡充、恒久化など、プランに盛り込まれております様々な施策を総動員していきたいと思います。

末松委員 政策を掲げる意義はいいんですよ。でも、役人が書いた答弁をずっと、諸策を並べていっても、私が今言っているのは、結果がどうなんだ、それについてどう思っているんだということなので、もし結果が思わしくなかったら、そこは、ここが悪かったから反省します、しっかりとこういう形でまたやり直していきますぐらいの答弁をしてもらわないと、我々としては、あるべき姿をいかにもずっと答弁されても時間が足りなくなるだけなので、そこは大臣、よろしくお願いしますね。

 時間がなくなってきたので次に行きますけれども、資料の第三、二ページ目を、裏を見てください。

 これは、最近言われ始めているのが、日本とドイツの名目GDPの推移ということで、この記事にも書いてあるように、どうも、為替の影響もありますけれども、日本とドイツの立場が逆転して、世界第三位の経済大国はドイツになる、日本は四位で追い越されるというのは、かなり議論をされ始めているわけでございます。

 もしこれで、今までの施策が結局間違っていた、あるいは効果が上げられなかったという話になって、ドイツに経済的に追い抜かされたと言われたら、ドイツは日本の人口の七割の国ですから、そういうふうにでもなったら、これは国民に対してどう責任を取るんですか。

鈴木国務大臣 今、末松先生御指摘なのは、ドルベースでGDPの国際比較をした場合にドイツに抜かれる可能性があるのではないか、こういうことであると思いますが、ドルベースでの比較は、様々な要因によって変動し得る為替の動向によって大きく変わるということも留意が必要である、そういうふうに思います。

 我が国のGDPの約六割、これは民間消費が占めておりまして、実際、多くの国民は、円で生活しており、給料も円でもらっています。そのため、まずは何より自国通貨、円建てのGDPを成長させる取組を進めることが重要であると思います。

 岸田内閣では、様々な社会課題を成長のエンジンに変えていく、そういう考え方の下で各種の取組を進めております。

 例えばでありますけれども、我が国経済の課題であります生産性向上に関しては、人への投資の抜本的強化と労働移動の円滑化による構造的賃上げや、官民連携による成長分野への大胆な投資拡大等に取り組むことによって、成長と分配の好循環を実現してまいりたいと思っております。

 岸田内閣が誕生してから一年半であります。やはり、一年半の間に期間的に結果を出さなければならないものもありますが、長期的、中期的に継続して取り組んでいかなければ結果が出ないものもあるんだと思います。したがいまして、そうした時間軸も、評価する上で是非考えていただければと思います。

末松委員 大臣、まずちょっと、ドル表示でランキングを決めるので、日本人の生活は円だから関係ないというこの答弁はやめましょうよ。世界でやはり比べるのはみんなドルなんですよ。(発言する者あり)そうそう。だから、日本人だけガラパゴスと言われるんですよね。それはもうやめてください。そういう厳しい、世界での、ある意味じゃそういうランキングというのがあるというのをしっかり頭に入れてくださいよ。

 それと同時に、もし抜かれたらどうするんだと。もうこれは、今の与党、面目丸潰れですよ。政権、替わらないといけない。そのぐらい自覚してもらわないと困りますよね。

 あと、それから、またいろいろと政策を読まれましたけれども、とにかく、日銀の黒田総裁みたいに、二%物価上昇といいながら、十年たって道まだ途中ですと言われたら、政治責任を取っているなんてことは言えませんよ。それは政治責任の取り方じゃないんだ。だから、一年半で、まだまだです、これから五年後、十年後を見てくださいと言われても、我々として、それが政治の責任ということと思っているんですか。それはおかしいですよ。

 是非そこは、本当に一瞬一瞬が勝負だという世界でやって、政策が正しいんだったら、そこに対して成果もある程度上げていってもらわないと、それは国民として納得できません。

 ちょっと話が、もう時間が押してきたのであれですけれども、ちょっと日露戦争の借金問題について伺います。

 一九〇四年に日露戦争は起こっているんですけれども、そのとき、高橋是清、当時の日銀の副総裁ですか、が、ヨーロッパとニューヨークで、ロスチャイルド家の方々とお話をして、八千二百万ポンドの借金を四回にわたってやってきた。これは成功したんです。その戦時国債がないと日露戦争は勝てなかったと言われている。

 その外債が、完済するのが一九八六年なんですね。これは事実かというのと同時に、一九四五年に日本は一回敗戦で潰れているんですよ。それでも、そういう借金というのは返済をしていかなきゃいけないという事実になると思うんですけれども、そこの辺はいかがですか。

鈴木国務大臣 日露戦争に際しましては、今、末松先生からお話がありましたとおり、四回にわたりポンド建て公債を発行し、借換えを経て、戦後、一九六八年までに償還を完了したものと承知をしております。

 ドイツなどの他国の戦争時の国債の償還については詳細を把握しておりませんけれども、国債については、償還が確実に行われると信頼されることが重要でありまして、我が国としても引き続き、確実な償還など、国債の信認の維持に取り組んでまいりたい、そのように思います。

末松委員 今、一九六八年とおっしゃいましたね。私はちょっと、ほかの本で八六年という話を……(鈴木国務大臣「六八だそうです」と呼ぶ)六八ですね、分かりました。確認しました。

 でも、一回破綻した国であっても、そういった借金の返済は続くということですよね。逆に言えば、金を貸している国際金融大資本の方々から見れば、それだけ返してもらうんだったら、戦争というのもかなりそこはおいしいビジネスになるねという話になると思うんですけれども、そういった中、これが戦争が結構終わらない理由ともいろいろな本に書いてあるわけですけれども。

 そういう観点でいった場合、今、一九四四年の、第二次大戦、日本が負ける直前の公債費率というんですかね、GDPに対して約二五〇%程度だと言われているんですけれども、今が実際、GDPとの比率が二四〇%前後ですか、そういう指摘もありますけれども、こういう状況で、戦争に負ける直前の比率と今の比率、借金の比率、ほとんど同水準だという中でいけば、今、台湾有事とかいろいろなことを言われていますけれども、四十三兆円の武器及び防衛体制をきちんと確立すると言われていますけれども、こんな状況で、もし例えば戦争のようなものに巻き込まれたときに、日本の財政というのはもつんですか。さっき福田議員からも言われたように、日本は戦争できない国になっているんじゃないですか、財政的に。それをちょっと、認識をお願いします。

鈴木国務大臣 先ほど先生からお話ありましたけれども、令和四年度末における我が国の政府債務残高は、GDPに対する割合は約二三七%となる見込みであります。そして、昭和十九年においては、政府債務残高対GNP比が二〇〇%程度であったという数字が出ております。

 それで、今のような状況で、まあ戦争をするというわけじゃありませんけれども、そうした有事に巻き込まれたらどうなるのか、こういうようなお話であると思いますが、この点につきましては、昨年十二月に閣議決定されました国家安全保障戦略においても、「我が国の経済は海外依存度が高いことから、有事の際の資源や防衛装備品等の確保に伴う財政需要の大幅な拡大に対応するためには、国際的な市場の信認を維持し、必要な資金を調達する財政余力が極めて重要」とされておりまして、末松先生の問題意識と、政府としても十分そこは共通した認識を持っている、そのように思うわけでございます。

 有事を想定した仮の御質問に答えるということはなかなか困難でありますが、財政は国の信頼の礎であるということを度々申し上げておりますが、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保することが不可欠であると考えております。

末松委員 でも、戦争に巻き込まれるというのは結構突然来るという危険性がありますから、そこは、今、経済安全保障を含めた、あるいは軍事の安全保障を含めた議論は確かにやっていますけれども、要は、この国は戦争に入らせちゃいけないということを強調したいと思います。

 最後になりますけれども、厚労副大臣、来られていると思いますけれども、最低賃金の中央審議会の資料、これは物価が急激に上がる前の資料でみんな審議して、昨年の最低賃金を決めているんですよ。それで、いろいろな団体から、やはりそちらに要請が行っているんですよ。

 つまり、昨年の六月までの資料でやっていて、これから一挙に上がってきたのは九月ぐらいからなんですね。だから、最低賃金をもう一回審議し直してくれといって、そういった要望に対して、結局、厚労省が言った答えは、いや、一年に一回しかやらないから、また来年決めるというような、そんな対応をしているという話を聞いているんですね。

 でも、本当に、岸田内閣は賃金の上昇と言っているわけだから、それに対して厚労省の対応は、何というか、全く合っていない。それは責任を感じるべきですよ。すぐさま、そこはもう一回、事情が一挙に変更したら、そこは最低賃金の審議をやり直す、そういうことがあるべき姿じゃないですか。

伊佐副大臣 厚労省として、あるいは法令上、一年に一回しか賃上げ、最低賃金の審議は行わないということは規定はされてはおりません。

 ただ、その上で、最低賃金の決定というのは、消費者物価指数のみではありません。労働者の生計費でありますとか、あるいは賃金、また企業の賃金支払い能力、こうしたデータを総合的に勘案して決めるということになっておりまして、今後の最低賃金の決定に向けて、引き続き、物価動向、また今年の春闘も始まったところでございますので、この春闘の状況も含めて、各種指標を注視していきたいというふうに思っております。

 物価高に対しては、政府として、総合経済対策の迅速かつ着実な実行を図っておりまして、その状況も注視していく必要があるというふうに考えております。

末松委員 とにかく早くそれをやってくださいね。そうしないと、一番底辺で頑張ってこられている方々が本当に今厳しい生活をしているんですから。そこをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党の道下大樹でございます。

 今日は、鈴木大臣への質疑ということでお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 時間も限られておりますので、早速始めたいと思いますが、まず、今年は五月にG7広島サミットが行われます。そうしたところで、鈴木大臣にもいろいろと活動、活躍される場はあると思いますけれども、そんな中で、やはりG7の日本以外の国々は、LGBT、性的マイノリティーの方々の差別を禁止する法律や同性婚を法律で認めるという国でございます。G7の中で唯一日本だけがそうした性的マイノリティーの差別を禁止する法律や同性婚を認める法律がないという国でございます。残念でございます。

 そうした中で、先日、岸田総理の発言、そして総理秘書官のLGBT差別発言がございました。私は、これはあってはならない発言であると思いますし、速やかにこの日本においてLGBT差別を解消する、まあ今回、今、理解増進ということでございますけれども、最低でも理解増進をするようなその法律、そしてその先には差別禁止、そして同性婚を法律で認める、そして選択的夫婦別姓、こうしたものを進めていく必要があるというふうに思いますが、鈴木大臣のお考えを伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 今の、差別をなくすための法律でありますが、与野党で今協議をまた再度して、総理からもできるだけ早くその法案を成立するように各党と協議するようにというふうな旨のお話があった、そういうふうに私は理解をしております。

 G7の議長国というお話もございましたけれども、そうした各党のこの協議の中で一つの結論が出るということを私も期待をしているところであります。

道下委員 鈴木大臣としてはこうした方向性について賛成されるのか反対されるのか、ちょっと伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 内心の自由ということにも関わりますので、私個人としてのそれぞれの事柄に対することは申し上げることは控えたいと思いますけれども、私は共生社会の実現ということは極めて重要であると思っております。

 私も、前に東京パラリンピックを担当をする仕事をしておりましたけれども、私の思いは、二〇二〇年、まあ二一年に開催になりましたけれども、東京パラリンピックを通じて共生社会というものをレガシーとして日本の国に根差したいということで、ずっとやってまいりました。性的指向、性自認を理由とするような不当な差別、偏見、そういうものはあってはならないんだ、そういうふうに思います。それぞれの立場、あるいは、それぞれの個性と言ったらいいんでしょうか、また、それぞれのそうした自分の気持ち、そういうものを、それぞれ、人権や尊厳、これを大切にしながら、多様性が尊重される共生社会というものの実現、それが大切である、そういうふうに思っています。

道下委員 ありがとうございます。

 内心の自由ということはありますけれども、もう既にこのように、世界では、このようなLGBTQだとかSOGI、そのSOGIの後にEをつけたり、SOGIEと言ったりしますけれども、そうした多様性を認め合う社会が当然であるという流れがありますので、こうしたことは是非とも私は率先して、鈴木大臣も、個人として、また内閣の一員として進めていただきたいなというふうに思っていますし、これは議員立法で今、理解増進法案、進められておりますけれども、本来であれば政府がこれは出すべきだと私は思っております。

 では、順番をいろいろと入れ替えさせていただいて恐縮でございますけれども、次に、異次元の金融緩和政策の見直しについて伺いたいと思います。

 日銀は、今年一月三十一日、二〇一二年七月から十二月に開いた金融政策決定会合の議事録を公開しました。ちょうど自民党が政権奪還を決めた衆議院選挙直後の十二月の会合もあり、それらを見ると、インフレ目標を二%と設定することに慎重だった当時の白川総裁は、中央銀行への信認が低下するなど、物価目標二%や大胆な金融緩和を掲げた自民党が衆議院で政権奪還したことにより、そうした中央銀行への信認が低下するという心配というか、そういう懸念を表明されていたんですけれども、こうした自民党による政権奪還により、その後の二〇一三年一月二十二日の政府と日銀による共同声明に示されているように、日銀の金融政策の方向性が激変した様子がうかがえるわけであります。

 さて、それから十年後の現在を見るとどうなったのかということでございますが、先ほど来、我が党の議員もお話をしておりますけれども、その共同声明と今の現実と、どうなっているのかということを見ていきたいと思います。

 まず、白川方明元日銀総裁が今年一月二十一日、週刊東洋経済に寄稿された文章を私は拝見いたしました。これについて、鈴木大臣、最初にお伺いしますが、これは読まれましたでしょうか。

鈴木国務大臣 済みません、新聞報道等を通じてしか目を通しておりません。

道下委員 この寄稿されたものを読むと、二〇一二年の十二月からの金融政策決定会合、そして共同声明に至る状況がやはり分かる。そして、そのときにどのように白川当時の総裁が考えられていたのか、慎重に、そして、この共同声明に、ある意味で自民党から強いプッシュで記載せざるを得なかった内容や、あとは、何としても日本銀行としては守らなければいけない線というものを何とか確保したとかいったことが書かれております。

 その中の一文を紹介しますと、「「共同声明」にうたわれた「持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」という政府の取り組みが進んだとは思えない。 財政規律は明らかに緩んだ。」また、この十年間についてなんですけれども、「十年間の最大の変化は、大胆な金融政策の結果を現実に観察することによって、量を拡大しさえすれば物価が上がるとか成長率が上がるといった単純な話ではないことを以前よりは多くの人が理解するようになったことである。」「もう一つの大きな変化は、日本経済の低成長の原因は物価の下落ではなく、直面している課題は潜在成長率の低下を食い止め、生産性上昇率を引き上げることだと以前に比べると多くの人が実感を持って理解するようになったことである」というふうにおっしゃっているんですね。

 これは、私は、白川総裁は結果論で述べていらっしゃるとは思いません。これは、当時からこのようなお考えであったと私は思っております。

 そしてまた、「本当の課題はデフレ脱却、物価上昇率の引き上げということではなかった。」「高齢化、人口減少がさらに進む状況の下でも一人当たり所得が持続的に成長できる経済をつくることが最も大事な課題だ」「そのカギを握るのは生産性の向上である。」「人口減少がどこかの時点で止まるという展望を持てるようにすることである。」というふうにも述べられております。

 まさに、十年前に当時の白川総裁が心配され、懸念され、ある意味、心の中で警鐘され、また、政策決定会合や自民党からの意見に対して意見を申されたことが的中されたのではないかというふうに私は思うんですけれども、今、この現実はそうなってしまっているのではないかと思いますが、鈴木大臣のお考えを伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 白川総裁の寄稿したこの内容から、この間、物価や成長率は上がらず、財政規律も緩んだのではないかという、そういうお話を道下先生から指摘をされたわけであります。

 まず、金融政策、この間の成果は、度々申し上げておりますので何か恐縮ですけれども、共同声明を公表いたしまして、それぞれの責任において、この間、必要な施策を実施してまいりました。このうち、金融政策については、日銀が定めた物価安定目標の実現を目指して金融緩和を推進してきたと理解をしております。そうした政府と日銀の取組の結果、デフレではないという状況をつくり出すとともに、GDPは、コロナ前時点において、名目、実質共に過去最高水準になったほか、企業収益が高まり、雇用環境が改善するなど、大きな成果を上げたと認識をいたしております。

 そして、財政規律への影響でありますけれども、日銀の金融政策は、日銀が物価安定目標の実現に向けて金融政策の一環として実施しているものと承知をしておりまして、政府としては、日銀が国債を買い入れるということを前提に立った財政運営を行うことが適切であるとはもう全く考えていないわけでありまして、また、市場からそのような疑いを持たれ、市場の信認を失うような事態を招くことがないようにしていく必要があると考えております。

 したがいまして、財政規律が緩んだという御指摘は当たらないものと考えておりますけれども、今後とも、財政健全化に向けて、プライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化することなどの方針の下で、引き続き責任ある経済財政運営に努めてまいりたい、そういうふうに考えています。

道下委員 財政規律が緩んだとは思っていないということなんですけれども、びっくりですね。ここまで緩み切っているというか、もう、これは、ほかの専門家が、多くの専門家が聞いたらびっくりするような、今までも答弁されていますので、聞き慣れてしまっている我々が、ある意味でちょっと麻痺してしまっているかもしれませんが、そうではないと思います。

 私は、白川元総裁がおっしゃるように、財政規律が狂っていると思いますし、ましてや、一つは、二〇一三年の共同声明では、物価上昇二%、これは何年と規定していないんですね。これは、実は黒田総裁になってから、二%を二年間でということを掲げた。それが全然達成されていない。達成されなかったのがこんなに何年も続いて、なぜ方向性を転換するとかしなかったのか。

 実は、この二〇一三年の共同声明では、四番目、ここでは、「経済財政諮問会議は、金融政策を含むマクロ経済政策運営の状況、その下での物価安定の目標に照らした物価の現状と今後の見通し、雇用情勢を含む経済・財政状況、経済構造改革の取組状況などについて、定期的に検証を行うものとする。」としているんですね。

 しかしながら、実際は、この経済財政諮問会議、総理が議長を務めていますが、きちんとした検証を行ってこなかったから現在のようにだらだらだらだら続けていって、検証して、じゃ、ここが違うから変えていきましょうという方針転換ができなかったのではないでしょうか。大臣に伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 道下先生御指摘のとおり、経済財政諮問会議の場において、専門的、中立的な知見を有する学識経験者なども参画する形で、絶えず政策の検証を行いながら、幅広く経済財政運営について議論を行ってきた、そのように考えております。

 具体的には、年四回程度、日本銀行から金融政策、物価等についての説明を受け、議論を行うことで、金融政策を含むマクロ経済政策運営の状況、その下での物価安定の目標に照らした物価の現状と今後の見通し、雇用情勢を含む経済財政状況について検証を行うとともに、経済・財政一体改革について、主要分野における改革の方向性を具体化した改革工程表も活用しつつ、改革の進捗管理、点検、評価を行っているところであります。

 引き続きまして、定期的な検証、これに努めていかなければならない、努めていきたい、そのように考えております。

道下委員 定期的な議論は行ってきたかもしれませんが、検証し、それを実際に政策の変更等にも生かしてはいなかったと私は思います。

 今年の一月三十日に、民間の令和臨調が緊急提言で、政府、日銀による過去十年の政策効果を検証した上で、新たな共同声明を作成、公表すべきであるというふうに提言しています。私もそう思います。ただ、日銀と政府でやることは、やはり今までのような、間違っていない、財政規律は緩んでいないとか、そういったことしか出てこないんじゃないかと思います。

 私は、これは、この十年間はどうだったかということは、身内で、政府や日銀で検証するのでなくて、中立的な第三者機関でしっかりと検証してもらう必要があると思うんですが、大臣、どう思いますか。

鈴木国務大臣 現状は、先ほど申し上げましたとおり、経済財政諮問会議において、説明を受け、議論を行っているところであります。そして、現時点では、過去十年の政策効果をまとめて検証することにはなっておりませんけれども、政府の立場といたしましては、引き続き、諮問会議における検証の枠組み等を活用しながら、物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向けて、政府、日銀が一体となって取り組んでいくことが必要であると考えております。

 いずれ、しっかりと様々な政策を経済財政諮問会議において議論をするということ、これは大切なことである、そういうふうに思っております。

道下委員 政府と日銀による検証というのは、一つは必要かもしれません。ただ、それだけでは正しい判断はできないと思います。もう一つ、しっかりとした中立性を保った第三者機関による検証をしてもらって、そして報告してもらう、これはいわゆるパラレルレポートと言われるものでございます。こういう十年間をちゃんと比較できるようなものを用意して、そして、政府、日銀のこれまでやってきたことは正しかったと言った方が説得力を持つし、私は、ある意味で、政府、日銀、今までのことを失敗でしたという検証結果を報告をすることは私はないと思うので、やはりこういった点では国民にしっかりと信頼してもらえる機関に十年間の検証をしてもらうべきだというふうに提言をしていきたいというふうに思います。

 次に、税制についてちょっと伺いたいと思います。

 税制に関しても、特に生産拠点や海外資産の国内回帰策について伺いたいと思います。

 昨今の円安の進行や地政学リスク、新型コロナウイルス感染症による供給停滞への警戒、海外の人件費増などにより、海外生産を国内生産にシフトしたり検討している国内メーカーが出てきております。生産拠点が国内に回帰することは、雇用を増やし、地域経済の活性化にもつながるなど、メリットが大きいと考えられます。

 こうした生産拠点を国内に戻す企業を支援するための税制について、認識を政府参考人に伺いたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 海外生産を国内生産にシフトする国内メーカーに対する支援に関してでございますが、海外に生産拠点が五〇%以上集中している製品の製造を行っているような企業につきまして、地域経済牽引事業という枠組みがございますけれども、こういった事業を都道府県内で行う等の要件を満たしている場合、最大五〇%の特別償却や最大五%の税額控除が可能となる、そういった制度が用意されてございます。

 企業環境の変化を踏まえまして、税制においても、その必要性や政策効果をよく見極めながら、こういった施策に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

道下委員 是非、そういった政策は、状況を見ながら、私は進めていくべきだと。どんどんどんどん生産拠点を海外に移してきたということはありますけれども、これはやはり、今の円安の状況や、また国内における雇用の場の確保ということも含めると、また技術の海外への流出ということも考えられますと、国内でどんどん生産できるような、そういった税制によるプッシュをお願いしたいというふうに思います。

 もう一つ、日本の企業の海外での利益を国内投資に向ける税制の必要性の認識と導入の検討状況について伺いたいと思います。

 なかなか、海外で利益を上げている企業の資産が、利益が国内に戻ってきていないというのがよく指摘されていますね。こうした点について、やはりもっともっと海外における利益が国内に戻ってくるように、国内に投資されるようにしていく必要があると思いますが、この点についても伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 今御指摘がございました海外で得た利益に着目した税制について、現時点で具体的な検討を行っているわけではありませんけれども、成長と分配の好循環の実現のためには、海外で得た利益を含めた資金を国内での投資や賃上げに活用していただくことが重要であると考えておりまして、税制の面でもこのような企業の行動を積極的に後押しをしているところでございます。

 日本企業には、今般拡充をすることとしております研究開発税制や本年度改正で抜本強化した賃上げ税制といった措置を積極的に活用していただきたい、そのように考えているところであります。

道下委員 是非とも、検討して、政策として実現していただきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、税制なんですけれども、昨年十二月九日に、鈴木大臣、お忙しいところを、私ども立憲民主党の、二〇二三年度税制改正についての提言、申入れを受けていただきまして、ありがとうございます。今日、皆様にお配りしている資料でございます。

 コロナ禍、物価高騰で困難な状況にある個人、事業者等への支援ということで、先ほど末松議員にもありました、インボイス制度の廃止、少なくとも導入延期、また時限的な消費税減税と税制全体の見直しなどがあります。また、一部企業の過大な内部留保が賃上げに回るように、税制等を強化すること。また、NISAの拡充、同時に、所得税、金融所得課税の累進性強化などがあります。また、配偶者控除などにより就労調整が生じないように、当面は控除額の引上げ、中長期的には人的控除の抜本的見直し等、そうしたものを、大きくは十点について、詳細には鈴木大臣にいろいろと説明をさせていただきまして、回答もいただきました。ありがとうございます。

 その中で、ちょっとお伺いしたいのは、一つには、多発化、深刻化する災害に対応する税制についてであります。

 私ども、災害損失控除の創設を以前から提言しておりますけれども、これはいまだ実現されておりません。是非進めていただきたいと思いますけれども、この点について御答弁をお願いします。

鈴木国務大臣 十二月に御提言をいろいろいただきまして、短い時間でしたけれども、有意義な意見交換ができたと思っております。私からも感謝を申し上げたいと思います。

 そして、頻発する自然災害への対応、これは大変重要な課題でありまして、税制においても災害への対応は重要である、そのように考えております。

 令和五年度税制改正においては、被害が極めて甚大で広範な地域の生活基盤が著しく損なわれ、被災前のように生活の糧を得るまでに時間を要するような災害の被災者や被災事業者に特に配慮する観点から、特定非常災害による損失に係る雑損失と純損失の繰越期間について、損失の程度や記帳水準に応じて、現行の三年から五年に延長する措置を講ずることとしたところであります。

 災害への対応につきましては、税制もこのように手を加えたわけでありますが、税制だけではなく、歳出も含めた総合的な対応を行うことも重要であり、今後も適切に対応してまいりたいと考えております。

道下委員 ちょっとその点について伺いたいんですが、それは、いわゆる雑損控除と同様の扱いということでしょうか。つまり、所得から控除を引く順番なんですけれども、雑損控除は最初に引かれるんですけれども、それは最初なんでしょうか、後なんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正内容は、雑損控除につきまして、特定非常災害の場合について繰越期間の特例を設ける、五年間まで延長するということと、純損失、これは御商売されている方の所得について損失が生じた場合でございますが、これについても同様に特定非常災害の場合に五年に延長するということでございまして、控除の順番については手を加えてございません。

道下委員 最初の方ですよね、最初に引かれるんですよね。

住澤政府参考人 控除の順番については、雑損控除を引いた上で、その後に基礎控除等の人的控除が引かれるという仕組みはこれまでどおりでございます。

道下委員 我々は、また特に中小企業と取引する税理士会、税理士政治連盟なども、これは雑損控除とは別にして、そして、これは最後にすべきだと言っているんです、控除を引く順番を。

 なぜかというと、災害による損失というのは膨大です。それが先に控除として引かれたら、それでもうほかの控除がなくなってしまう。繰り越しても、それが先になったら、その損失控除を受ける額が最初に、そして、繰越しが延びたとしても、そのほかの控除が、今度、期間が短くなって、引かれるべきものが期限切れで引かれなくなるということなので、これは、いろいろな控除を先に引いた上で、そして、そういう災害による損失控除を後、一番最後に引いて、それで、引いてもまだ残っていたら、それを翌年、翌年、翌年に繰り越す、それを五年とか十年に延長すべきだというのが我々や税理士会等、また多くの方々の意見なんですよ。

 だから、今回はちょっとだけ手を加えたんですけれども、雑損控除のままでは、これは余り効果を私は発揮しないと思います。だから、災害損失控除というものを別に設けて、そして、控除として引く順番は最後にすべきだ、これを私は、まあ、ここで変わることはないと思いますけれども、強く指摘をしておきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、皆様にお配りをした資料なんですけれども、二枚目を御覧いただきたいと思います。

 これは多くの方々も見ていただいた、配られているものだと思います。所得税の負担率です。いわゆる一億円の壁です。

 我々立憲民主党は、NISAの拡充は強く求めましたが、それと同時に、所得税や金融所得課税の累進性の強化も一緒にやるべきだと求めました。しかし、今回の所得税法改正では、三十億円から、そして対象が二百人から三百人という、余りにも、極めて限定的な方しか対象にしないものであります。

 岸田総理が、総裁選のときなども含めて、金融所得課税を含めて強化すると言ったものがいつの間にか消えてしまって、そして、これも、今回は、やったふりのような感じで、所得税法、三十億円から、二百人から三百人、これは余りにも、一歩とは言いませんし、半歩まで言いませんけれども、前進はしたかもしれませんが、数センチかもしれません。

 この表を見ていただくと、本当に、一億円から、一億円の壁ということで、こうしたところの一億円以上の高額所得者の方々に、ちゃんともうかったらもうかった分、その利益の税金を各々払っていただく必要があるというふうに訴えているわけでございます。

 その点について大臣に伺いたいと思いますとともに、あと、この資産所得倍増計画なんですけれども、資産ゼロ世帯が二〇%、そして、今では、個人の資産は、資産ゼロの単身者、二十代が四三・二とか、三十代も三一・一、そうした資産もない人に対してはどうするのか。私は、資産所得倍増と言う前に、賃上げ政策、賃上げ税制、これをしっかりと政府としてやるべきだと思いますが、大臣に伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 超高額所得者についてのお話が初めにございましたけれども、今の社会保険料を加味した所得税の負担率を見てみますと、所得が一億円を超えた辺りの、その辺りの所得層は負担率がそこまで大きく低下していない一方で、かなりの高額所得者層の負担率の低下が著しい状況にあります。

 このような負担率の状況を踏まえて、与党税制調査会において幅広い観点から御議論をいただいた上で、今般、税負担の公平性を確保する観点から、おおむね三十億円を超える高い所得を対象として最低限の負担を求める措置を導入されたこと、これは、税負担の公平性確保に向けて一定の対応が図られたものと認識をしているところでございます。

 そして、賃上げについてでございますが、賃上げ税制について、賃上げの効果ということでありますが、先ほど来申し上げておりますように、岸田内閣において、賃上げの重要性というものは強く認識をしているわけでございます。

 政府といたしましては、物価上昇を超える賃上げの実現に向けて、賃上げ税制の拡充に加えて、賃上げに取り組む中小企業等の生産性向上の支援の拡充などに取り組むとともに、成長分野への円滑な労働移動を人への投資の強化と一体的に進めることで構造的な賃上げの実現を目指しているところでございます。

 賃上げ税制の効果につきましては、賃上げは、税制のみならず、企業収益、雇用情勢等に影響を受けるものでありますが、過去に行われた調査を見てみますと、おおむね六割を超えている企業が賃上げの後押しになったと回答があります。また、毎年おおむね十万社の企業に御活用いただいているということを考えますと、一定の効果があるのではないか、そのように考えているところでございます。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

道下委員 時間が来ましたので終わりますけれども、本当に、金融所得課税に関しては余りにも範囲が狭過ぎる、そして、賃上げに向けた抜本的な税制改正だとか、まだまだ足りません。是非ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

中西委員長代理 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 今日は、我が会派の最後の質疑者ということになりますので、ここまでのところで、ほかの議員とのやり取りで気になったことなども伺っていきたいと思っております。

 その上で、まず日銀総裁にお尋ねします。

 先ほど来、我が党の議員から、二年で二%の物価目標が達成できないこととか、あるいは物価が上がっても実質賃金が上がらなかったことであるとか、また、異次元緩和を長年続けたことにより、財政規律が弛緩したりとか様々なリスクやコストがかかってきたこと、こういったことについていろいろな指摘があったにもかかわらず、総裁からは、残念に思うといったような話しかありませんでした。人ごとのような話でありました。

 残念に思うというよりも、自らやったことに対して責任を感じて反省する、これが筋ではないかと思うんですが、責任を感じたり反省の弁を述べたりということはされないんでしょうか。

黒田参考人 現時点で物価安定の目標の持続的、安定的な実現に至っていないというのは事実でありますけれども、二〇一三年に導入した量的・質的金融緩和は経済、物価の押し上げ効果を発揮してきております。

 一方、金融緩和の副作用としては、主に、金融機関収益を圧迫し金融仲介機能に悪影響を与える可能性や、市場機能の低下が挙げられておりますが、この点については、副作用をできるだけ抑制しつつ、持続的な金融緩和を行うための工夫を講じてまいりました。

 政策には常に効果と副作用があり、それらを比較考量しながら、最も適切な政策を実施する必要がありますが、この間の大規模な金融緩和は、政策の効果が副作用を上回っているというふうに考えております。

階委員 ですから、効果が全くなかったとは言いませんけれども、肝腎なところで失敗しているわけですよ。二%を二年で達成するとか、あるいは物価が上がれば賃金は上がるであるとか、そして財政規律をゆがめないとか、肝腎なところで失敗している、その部分について、責任を感じたり反省を述べたりということはないんですか。そこだけ答えてくださいよ。成果が出たことは聞いていませんから。我々が問題だと思っていることについて、責任を感じたり反省の弁を述べたりということはないんですか。そこだけお答えください。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、量的・質的金融緩和というものは一定の効果を発揮しているというふうに考えております。ただ、現時点でも二%の物価安定目標を持続的、安定的に達成するに至っていないということは大変残念であるというふうに思っております。

 その上で、何度も申し上げていますけれども、政策についての効果あるいは評価という場合には、現在、量的・質的金融緩和を行ってきたことと違った政策がどのようなものであって、その場合に、現在の経済状況より、よりよくなっているかということを考えていただく必要があるわけでありまして、私どもとしては、最善を尽くしてきたというふうに考えておりますし、適切な政策であったというふうに考えております。

階委員 客観的事実として、黒田総裁の次の総裁は非常に難しいかじ取りを迫られるわけですね。これだけ日銀のバランスシートも膨らみ、イールドカーブコントロールで、市場のゆがみもまだ直っていないわけですね。こうしたものを次の総裁に全部丸投げして、御自身は引退されるからいいかもしれませんけれども、そういうことで、本当に良心の呵責というものを感じないんでしょうか。

 失敗しても、何か人ごとのようにしか思えないんですけれども、まさに、それですと、我々としては無責任だと言わざるを得ません。そういうことを感じないで十年間やってこられたということは、本当に信じ難いことであります。

 黒田総裁、そもそもなんですけれども、先ほども道下さんが言っていましたけれども、元々、黒田総裁が就任前、二%の物価目標には、二年という縛りはなかったんですね。二年という縛りがついたのは黒田総裁のときからです。しかも、今日お配りしている資料の三ページ目に、白川総裁の本から抜粋した部分があったんですけれども、これは白川総裁のときに共同声明を締結したときの経緯が書かれていまして、左側の線を引いた部分ですね。

 議論が最も紛糾したのは達成期限であった。日本銀行は中長期的な物価安定を主張した、政府は二年にこだわった。その後、云々かんぬんとあって、日本銀行は二年という期限を設定して二%目標を達成するという金融政策を行うことだけは絶対に受け入れられないという立場で臨んだ。激しい議論を経て、最終的にはできるだけ早期に実現することを目指すという表現で決着したということがあるわけですね。

 それが、なぜか黒田総裁が就任した直後、私の資料でいいますとその前のページになるかと思いますけれども、二ページ目を御覧になっていただくと、共同声明のときとは話が変わってきているわけですよね。二年でというのが入ってきています。しかも、二年を念頭に置いて異次元の金融緩和をやっているわけですね。二年というものがなかりせば、これほど弊害の大きい、異次元の金融緩和を十年にもわたって続ける必要はなかったということだと思いますよ。だから、二年というものを入れたというのが非常に大きなターニングポイントで、これは黒田総裁になってから入っているわけですね。

 なぜ、この二年というものを入れたのか。黒田総裁、お答えください。

黒田参考人 諸外国の例を見ましても、金融政策の効果が浸透する期間として二年程度のタイムスパンを考えながら物価安定の実現を目指すということは一般的であるというふうに考えております。

 日本銀行は、二〇一三年一月に公表した共同声明に記載されているとおり、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現することにコミットしております。二〇一三年四月の量的・質的金融緩和の導入時に二年程度としたのは、それまでと比べて大規模な金融緩和を実施することとしたことを踏まえたものであります。

 当初想定していたよりも時間がかかっているのは事実でありますけれども、物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという方針には変わりありません。日本銀行としては、その実現を目指して金融政策を運営しております。

階委員 関係ないことをだらだら話していただきたくないんですけれども。なぜ、二年という期限を区切ってしまったのか。日銀が二年を入れることはまかりならぬと粘りに粘って共同声明から排除した二年という言葉が、なぜか黒田総裁のときに入った。その転換、なぜ行われたのかということを聞いているわけですよ。

 黒田総裁の意思で行われたのかどうか、まずそこを確認させてください。黒田総裁の意思なのか何なのか、お答えください。

黒田参考人 まず、二〇一三年一月に公表した共同声明に記載されていることは、日本銀行自身が一月の金融政策決定会合で決めたことであります。そして、二〇一三年四月に量的・質的金融緩和を導入したときに、先ほど申し上げた二年程度というふうにしましたのは、それまでと比べて大規模な金融緩和を実施するということを踏まえたものであります。

 なお、金融政策は、御案内のとおり、総裁、二人の副総裁、そして六人の金融政策に関する審議委員、この九名で議論して決めているわけであります。四月に量的・質的金融緩和を導入したこと自体については、九人のメンバー全員が一致して行ったことであります。

 もちろん私自身、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するという日本銀行の一月の決定を踏まえて、先ほど来申し上げているとおり、二年程度のタイムスパン等を考えながら、できるだけ早期に実現すべく大幅な金融緩和を、もちろん私自身も主張しましたし、九人の政策審議委員全員で十分議論してこの導入を決めたということであります。

階委員 あと半年もすれば、そのときの政策決定会合の議事録は出てくるわけですよ。どうしてこれほど反対していた日銀がまさに白から黒に変わったのか、そこが明らかになるので、今のうちにはっきりおっしゃっていた方がいいと思いますよ。辞めた後だからもう後は野となれ山となれというのは、非常にこれも無責任な話で、やはり御自身が音頭を取って二年というのを入れたのであれば、それが失敗したのであれば、やはり反省はすべきだと思いますよ。そうじゃないんですか。

 客観的事実として、さっき全員の議論でと言いましたけれども、日銀は強く反対していたわけですよ、白川体制のときは。それがたった数か月でみんなころっと変わるということは、誰かが音頭を取ったに違いない、それは黒田総裁に違いないと思っているんですが、これは客観的事実とは全く違う、私の単なる当て推量ですか。お答えください。

黒田参考人 先ほど来申し上げているとおり、白川総裁の下で、二〇一三年一月に金融政策決定会合において二%の物価安定目標というものが設定されたわけです。そして、共同声明にもそれが盛り込まれて、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということに日本銀行としてコミットしていたわけですね。

 そういうことを踏まえて、審議委員全員でよく議論して……(階委員「二年は駄目だということを議論していたんじゃないの。なぜ変わったのかということを聞いているんですよ。質問に答えてくださいよ」と呼ぶ)先ほど来申し上げているとおり、白川前総裁が何をおっしゃったかというのは私にとって全く関係のないことであります。

 私にとって関係あることは、金融政策決定会合において一月に二%の物価安定目標というものを設定し、それを共同声明に盛り込んで、できるだけ早期に二%を実現するということに日本銀行としてコミットしているということを踏まえて、先ほど来申し上げているとおり、九人の金融政策決定会合のメンバーで十分議論して量的・質的金融緩和の導入を決めたということであります。

階委員 白川時代から何人替わったかは分かりませんけれども、総裁、副総裁、三人替わったとしても過半数は残っているわけですよね。当然、その二年を入れないことにこだわった人たちも多数含まれている中で、なぜか黒田総裁が就任した直後、二年というのが加わったということは、やはり黒田総裁の責任は大きいと思います。それをうやむやにして反省の弁も述べない、私はここが最大の問題だと思っています。

 それで、もう一つ黒田総裁にお聞きしなくてはいけないんですけれども、やはり、昨年の米山さんとのやり取りで、実質賃金がプラスになっても、物価上昇率が二%を下回っている限り、量的・質的長短金利操作付金融緩和、いわゆる異次元金融緩和を続けるという趣旨の答弁だったと思うんですけれども、これは本当に国民の望んでいることとはかけ離れていると思うんですよね。実質賃金がプラスだということは望むんだけれども、別に物価を二%以上上げてくれということは誰も望んでいません。

 それで、これほど長く異次元の金融緩和を続けてきても効果が出なかったわけですから、実質賃金がプラスになってもなお二%の達成にこだわっているうちに、どんどんどんどんまた経済が悪化して、金融緩和がまた続いてしまうということで、いつまでたっても異次元の金融緩和から抜けられないという悪循環になると思うんですね。

 実質賃金を目標にすべきだというのが我々の考えなんですけれども、なぜ二%にこだわり続けるのか、しかも、二%を達成するために通常の金融緩和ではなくて異次元の金融緩和にこだわり続けるのか、ここが全く理解できないところです。

 以上、我々は、異次元の金融緩和にこだわる必要はないし、二%の目標にもこだわる必要はないと考えておりますけれども、総裁の考えを教えてください。

黒田参考人 もとより、生産性の上昇を反映して高い実質賃金の伸びが実現するということは大変望ましいことだと思いますけれども、日本銀行を含めて先進国の中央銀行は、物価安定の数値的目標を掲げて、それを実現するために金融政策を運営しております。したがって、二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現するために必要と判断される限り、金融緩和を継続する必要があるというふうに考えております。

 なお、二〇一三年一月に日本銀行が物価安定の目標を二%と定めたのは、第一に、消費者物価指数には、統計の性質上、上方バイアスがあること、第二に、景気が悪化した場合の金融政策の対応力を確保しておく必要があることを考慮したものであります。また、海外の主要中央銀行も、消費者物価上昇率で二%を目標として政策運営を行っておりまして、いわばグローバルスタンダードというふうになっていると考えております。

 日本銀行としては、こうした考え方自体は引き続き妥当であり、二%の物価安定の目標の持続的、安定的な実現を目指すことが適当であるというふうに考えております。

階委員 我々は先週、新しい金融政策というものを公表させていただきました。やはり、異次元の金融緩和は弊害が大き過ぎる。

 日本経済への影響ということでいえば、昨年来、悪い円安、物価高を招いている。さらに、国家財政も、先ほど大臣は否定されていましたけれども、何とこの間、政府の長期債務の残高は三百兆増えています。消費税は五%から一〇%に倍に上がって税収も倍になっているにもかかわらず、借金はどんどん増えています。

 また、地域経済への影響ということでいえば、地方の金融機関の経営も悪化していたり、あるいは中小企業の経営も厳しくなっているといったような中で、金融政策は正常化に向けて、そろそろ改めていかなくてはいけないと思っております。

 そのためには、市場のゆがみが是正されていない長短金利操作、イールドカーブコントロール、これは一層の柔軟化をすべきだし、アコード、共同声明も、先ほども言いました、物価目標二%という余り意味のない目標、かつ、達成のめどが十年たっても立たず、これから先、二年たっても立たない、そういった意味のない物価目標ではなくて、実質賃金を上げることを目標にすべきだというふうに考えています。

 今日は資料でもお配りしていますけれども、令和臨調というところも、やはり二%という目標にこだわるべきではないということで、大事なのは賃金だということなどを表明した意見書を出しておりました。

 私たちは、こういったことをやることによって、余りにも長過ぎた異次元の金融緩和、コストパフォーマンスもタイムパフォーマンスも悪過ぎると思っています。将来に禍根を残さないために、こうした取組、我々の提案するような取組、令和臨調も同じようなことを提案されていますけれども、こういうことをやるべきだと思います。

 このことについて、先日は似たようなことを日銀総裁にお尋ねしていますので、今日は財務大臣にもお尋ねしたいと思います。

鈴木国務大臣 階先生の方から、様々な新しい政策についての御提言があり、御説明もいただいたところでございますが、その中にあります、共同声明の見直しでありますとか、新たな目標を定めて、異次元の金融緩和から通常の金融緩和に移行していくべきではないか、そういうことだと思います。

 共同声明の取扱いにつきましては、やはり、次の総裁とも議論をする必要があると考えておりますし、日銀の方におかれましても、新しい体制の中で協議をして、方向性をいろいろする時間が必要であると思っております。このために、共同声明の見直しについて具体的に申し上げることは、今の時点では少し早過ぎると考えております。

 そして、御指摘のような具体的な手法、これはまさに金融政策そのものでありまして、これは日銀に委ねられるべき事項であると考えております。したがいまして、それに対する、金融政策に対するコメントは控えさせていただきたいと思います。

階委員 政府も日銀も、実質賃金を引き上げることが重要だと繰り返し述べられていまして、それだったら、物価よりも実質賃金を上げるということを政府と日銀の共同声明に盛り込む、これは国民にとっても理解しやすいし納得しやすいことだと我々は考えております。

 こういったことを、今、アコードを見直すタイミングじゃない、新しい総裁が就任する前だからというお話だったのではありますが、じゃ、果たして、新しい総裁、どういう方がなるんでしょうか。

 今までと同じようなことを繰り返すだけでは、同じ失敗を繰り返すだけだと思います。なので、私は、日銀総裁については、過去のやってきたことを真摯に反省し、そこから教訓を導き出して、新たなことをやっていくような方が望ましいと思っています。

 こうした日銀総裁の人事、これは、先日、野田元総理も予算委員会で岸田総理に尋ねていらっしゃいましたけれども、そういう中で、例えば、そのときに岸田総理は、主要国中央銀行トップの緊密な連携、そして内外の市場関係者に対する質の高い発信力と受信力ということが格段に重要だということで、そういう方を、日銀総裁としてふさわしい方だという答弁でした。

 そういう素養を持った方であることは当然として、やはり、今までの金融政策について、虚心坦懐に、反省すべきことは反省して、見直すべきところは見直していくといったような方がふさわしいのではないかと思いますけれども、財務大臣の見解をお伺いします。

鈴木国務大臣 その前に、先ほどの共同声明の見直しについては、今、まだお話しする段階ではないということでありますが、その中に、賃金の重要性は岸田内閣も認めているわけでありまして、決して、どうなるか分かりません、やるかやらないかも含めて分かりませんけれども、それが含まれないということを言っているわけではないということをまず御理解をいただきたいと思います。

 その上で、階先生から今御指摘がありました、二月八日の野田元総理と岸田総理とのやり取りでございますが、今私から申し上げられるのは、その答弁の、岸田総理の答弁のラインでしかお答えすることができないわけでございます。

 私といたしましても、その時点で日銀総裁に最もふさわしいと判断する方を任命することが基本であると考えます。

 そして、総裁人事、これは、御承知のとおり、国会同意人事でございますので、国会においてもお認めいただけるような、ベストと思われる方を提示をすることが重要であると思います。

階委員 今日こちらにいる同じ会派のメンバーとともに、これから提示されるであろう日銀総裁、副総裁人事については、しっかり我々としては検証させていただいて、チェックさせていただいて、しかるべく判断をさせていただきたいと思っております。

 その上で、財政についても少しお尋ねしたいんですけれども、先ほど、これは末松先生の議論の中で、大臣が所信で述べられたことと同じようなことを述べられていたと思います。財政は国の信頼の礎であり、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保していくことが不可欠であるということをおっしゃっていました。

 先日の所信表明のときは、その後に、責任ある経済、財政を進めるに当たっては、経済あっての財政という方針に沿って、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要でありますということだったんですが、この文脈として、私は聞いていてちょっとおやっと思ったのが、財政は国の信頼の礎で、平素から財政余力を確保しておくことが不可欠だと前段で述べておきながら、次に、経済あっての財政という話になっているんですね。

 この経済あっての財政という方針というのはいかなるものなんだろうかというのがちょっと抽象的で分からないので、経済あっての財政というのはどういう意味なのか、教えてください。

鈴木国務大臣 御指摘の、経済あっての財政ということでありますが、これは、まず経済を立て直して、そして財政健全化に取り組んでいくという基本的な考え方を示したものである、そういうふうに考えているところでございます。

 この基本に立って、経済状況を無視した硬直的な財政運営を行うのではなく、例を挙げますと、新型コロナや物価高騰等、足下の経済状況に機動的に対応するとともに、歳出歳入の両面の改革を続けていくこととしているところであります。

階委員 今のお話を聞いていると、何か、平素から財政余力を確保しておくことが不可欠ということとか、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要だということと、ちょっと矛盾しているような気がするんですね。財政規律よりもまずは経済を立て直すことが重要だというような答弁だと私は伺ったんですけれども、何か、それを前提にすると、ちょっとほかの文言と整合しないような気がします。

 両立というんだったら、財政健全化の努力を今からすべきだと思いますし、また、平素から財政余力を確保していくというんだったら、これほどどんどん借金を膨らませるのではなくて、もう少し健全な財政運営に努めるべきだと思いますが、なぜ、経済あっての財政と言われるのか。もし本当に経済あっての財政ということであれば、ほかのことは犠牲になると思うんですけれども、それでいいんでしょうか。

鈴木国務大臣 経済あっての財政ということは、先ほど申し上げましたけれども、経済を立て直し、そして財政健全化に取り組んでいくという基本的な考え方を示したものであります。そして、その結果として財政の健全化も進み、その中において平時における財政余力も確保する、それを目指しているということを申し上げたいと思います。

階委員 ところが、まさに財務省が作っている将来の財政の見通しがありますよね。これによると、一ページ目の資料を御覧になってください、後年度影響試算というふうに名称が付されていますけれども、経済成長率が三%、ちなみにそのときは物価上昇率は二%ということだと思います。この三%のケースだと、国債金利はあと四年ぐらいすると一・六%に上昇するという前提で、国債費、いわゆる借金の返済分が四・五兆円増加する。今のは一・六%に金利が上がった場合ですけれども、普通は、長期金利というのは、物価が安定的に上昇すればそれを上回って上昇するはずですから、一・六よりも多くなるかもしれない。仮にこれが更に一%上振れすると、三・六兆円、借金の支払いが増える。こうしたシナリオだと、四・五兆足す三・六兆で八・一兆も増えるということなんです。

 これは経済が成長するケースです。経済成長すれば財政再建が進むといったようなお話でしたけれども、本当にそうなんでしょうか。経済成長して、経済成長にだけ委ねていて本当に財政再建できるのか。ちょっとそこは私は腑に落ちないところもあるので、説明していただけますか。

鈴木国務大臣 今お話ございました後年度影響試算でありますけれども、先般、財務省より本委員会に提出させていただきました。

 そこにおきましては、足下の当初予算を前提とした後年度の歳出歳入の姿を示すという考え方の下で、金利の前提につきましては、予算積算金利を土台として市場動向を勘案して設定しており、その市場動向によっては金利の値が上下に変動する可能性があり得るものであります。

 このため、ストレステストとして、金利が一%上昇した場合の国債費への影響額について、一年目はプラス〇・七兆円の増加ですが、以後、高金利の国債に置き換わっていくに従いまして、二年目には二・〇兆円、それから三年目には三・六兆円と増加するという試算をお示しをしたところでございます。

 その上で、後年度影響試算での想定以上に金利が上昇した場合には財政再建の困難さが高まる可能性が高いというのは、そのとおりであります。低金利下にあっても財政健全化に向けた努力が重要であるということをしっかりと認識していきたいと思っております。

階委員 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塚田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。住吉寛紀君。

住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 今日は、この質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に移りたいと思います。

 二月二日に、我が党は、日銀法改正案を形式整理して再提出させていただきました。手続上、継続審議中であった法案を先日取り下げさせていただきまして、再度提出するものでございます。

 その中身は、先ほど来より様々に議論ありましたが、日本銀行の目的、これは現行法では、日本銀行法第一条で、通貨及び金融の調節を行うと定められております。一方、我が党は、日銀法改正案の中では、日本銀行の目的を、物価の安定並びに雇用の最大化及び名目経済成長率の持続的な上昇を図るため通貨及び金融の調整を行い、もって国民経済の健全な発展に資することと定めております。

 現行の日銀法では、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することは、理念とすると定められているにすぎません。物価の安定並びに雇用の最大化及び名目経済成長率の持続的な上昇という重要な事項は、理念ではなくて、一つ上の目的として位置づけるべきと考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 日銀法第二条においては、金融政策は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること、これを理念とするとされており、現行法においても、日銀は金融政策の運営に当たり雇用や経済成長に配慮することが求められていると解されております。

 住吉先生御指摘のとおり、このことは日銀法第一条の目的には規定されておりませんけれども、物価の安定等は日銀の機能のうち金融政策によって実現されるものであることに鑑みれば、現行日銀法にあるとおり、第二条において金融政策の理念として位置づけることが適当であると考えているところであります。

住吉委員 御答弁あったとおり、物価の安定や雇用の最大化というのは、これは重要なことだという認識はあるのかなというふうに思います。我々は、それをしっかりと目的に規定して、そして、この法案、改正法の中ではしっかりとコミットしていただくというような内容で書かせていただきました。共通認識は一緒なのかなと思います。手段がそれぞれ違うだけなのかなというふうに思います。ちょっとそれについては今後もしっかりと議論していきながら、最善のところを見出していきたいと思っております。

 そして、次の質問に移りますが、本日は黒田総裁にお越しいただきました。

 現在の金融政策においては、マーケットが日本銀行に、金融政策に信頼を置き、的確なメッセージを発してマーケットと日銀のそごがないことというのが重要でございます。そのためには、日本銀行とマーケットが対話を通じてお互いの意見を密に交換することが必要であり、相互の対話が乏しく、信頼を欠く状況ですと、マーケットが過剰に反応して急激な、昨今ございますが、為替変動を引き起こす、これは日本経済にとってもよくないことであるということは、黒田総裁も鈴木財務大臣もおっしゃっておりました。

 このような状況を避けるため物価の安定が重要であるということに異論はありませんが、どのような状態をもって物価の安定というか、これが議論があるところでございます。

 物価の安定の判断基準には、消費者物価上昇率、CPIを使用することが通例ですが、CPIにも、生鮮食品を除いた指数であるコアCPIや、食料及びエネルギーを除いた指数であるコアコアCPI等、幾つかの種類があります。

 日本銀行の金融政策においては、どのCPIを重視し、どのような状態をもって物価の安定と考えるのか、総裁の意見をお伺いいたします。

黒田参考人 御指摘の物価安定の目標につきましては、家計が消費する財・サービスを包括的にカバーしている消費者物価の総合で二%と定義しております。

 その上で、物価上昇率が一時的に二%に到達すればよいわけではなく、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的、安定的に実現することが重要であるというふうに考えております。

 こうした観点からは、物価の基調を評価することが極めて重要であります。そのためには、実際に観察される物価の変動から一時的な変動要因を除き、基調的な変動を的確に見極める必要があります。

 我が国の場合、生鮮食品の価格が天候要因を主因として一時的に大きな変動を示す傾向が強いことから、日本銀行では、従来から、物価の基調判断において生鮮食品を除く消費者物価を重視して、その見通しも作成、公表してまいりました。

 また、近年、エネルギー価格が大幅な変動を示す中、昨年四月以降の展望レポートでは、物価の基調の評価や見通しに関する日本銀行の考え方を定量的に分かりやすく説明する観点から、御指摘の、生鮮食品、エネルギーを除くいわゆるコアコア消費者物価の見通しも公表しております。

 日本銀行としては、今後とも、様々な物価指標に加え、物価変動の背後にあるマクロ的な需給ギャップ、予想物価上昇率や賃金上昇率の動向についても丹念に点検し、的確に物価情勢の判断を行っていくとともに、そうした判断に関する丁寧な説明に努めていく方針でございます。

住吉委員 ありがとうございました。

 本当に様々な外的な要因もあり、このときはこうだったけれども、また一年後、二年後すれば変わってくるというようなこともあります。そういった意味で、今、物価の安定、様々な指標を見ながら判断していくということでございます。

 定量的にやはりマーケットに伝えていくという意味で、また新たな指標をした方がいいのではないか、そういった問題意識の下でこの質問をさせていただきました。

 黒田総裁には、この質問で終了ですので、委員長のお許しが得られれば、御退席いただいて結構でございます。

塚田委員長 日本銀行黒田総裁、御退席いただいて結構です。

住吉委員 それでは、続きの質問に移りたいと思います。

 先ほどの日銀法改正案、我々の提出した日銀法改正案ですが、この案の中には、内閣又は財務大臣は、日本銀行の役員が職務上の義務に違反したときその他の日本銀行の役員たるに適しないと認めるときは、委員会の意見を聞いて、その役員を解任することができるものとすることとの役員解任規定を定めております。

 この趣旨は、役員を解任するというわけではなくて、金融政策において市場の予想が重要な役割を果たすところ、日本銀行が物価安定目標をいつまでも達成できなければ、市場は日本銀行の金融政策を信用できない状況となってしまいます。しかし、この解任規定があれば、日本銀行は何が何でも物価安定目標を達成しようとするであろうと市場が予想し、日本銀行の金融政策にも実効性が生じることとなるためでございます。

 参議院の本会議において、我が党議員からの質問においては、総理は、解任については慎重に考えなければいけない旨の答弁をしております。

 禁錮以上の刑に処せられたとき等以外に役員解任権がない現行法において日本銀行がどのように結果にコミットさせていくのか、政府のお考えをお伺いいたします。

鈴木国務大臣 政府と日銀は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のため、共同声明を公表し、これまでも、その再確認を行いつつ、互いに連携し、それぞれの責任において、必要な施策を実施をしてまいりました。その結果、デフレではないという状況をつくり出すなど、成果を上げてきているところでありまして、協定締結の法律への明記等を行う必要があるとは考えておりません。

 そして、役員の解任についてでありますが、平成九年に全面改正されました日銀法において、日銀の金融政策の自主性を担保する観点から、役員の解任事由が明確に限定されることになりました。したがって、解任事由を広げることには慎重であるべきである、そのように考えております。

 そして、結果責任に関して申し上げれば、まず、共同声明において、日銀が自ら二%の物価安定目標を定め、これをできるだけ早期に実現することを目指すとされております。その上で、政府との関係においては、経済財政諮問会議において金融政策等について検証する仕組みが設けられており、また、国会との関係においても、日銀法上、説明のため国会への出席を求められた場合、これに応じなければならないとされているところであり、こうした会議や国会での議論などを通じて、日銀が自ら定めた目標の達成状況について、日銀には説明責任が求められていると考えております。

 日銀の自主性を尊重する現行の日銀法の趣旨を踏まえれば、こうした説明責任を超える結果責任を課すことには慎重な議論が必要であると考えますが、いずれにいたしましても、日銀自身がこうした説明責任をしっかり果たすことによって、金融政策に対する国民の理解を得ていくことが重要であると考えております。

住吉委員 ありがとうございます。

 我が党の法案の中には、しっかりと説明責任を果たせば解任規定から除外されるというような条文もございます。言っていることは一緒だと思っております。それをしっかりと明文化するかどうかの違いかなというふうに思っております。

 この日銀法改正案、我が党が二月二日に提出させていただきましたので、また議論をさせていただきたいと思っております。

 次の質問に移りたいと思います。研究開発税制についてお伺いいたします。

 私は、修士課程まで進みました。博士課程への進学ということも勧められましたが、就職では余り有利に働かない、仕事に就いて社会に出る方が自己成長につながると複数の方々に言われて、博士課程については魅力を感じず、就職をした経緯がございます。

 その私が言うのもなんですが、やはり優秀な学生がより専門性を磨くためには、博士課程に進んで、それも選択肢の一つとして、進んで日本の未来のために研究等に励んでもらう必要があります。

 日本の博士号の取得者の数、また、就職状況や就職率が芳しくない場合の理由等、日本の博士号取得者の現状についてまずは教えてください。

伊藤政府参考人 お尋ねの日本の博士号取得者の数等についてお答えを申し上げます。

 日本の博士号取得者数は、近年、ほぼ横ばいとなっており、令和元年度では一万五千百二十八人となっております。また、博士後期課程修了者の就職率については、二十年ほど前と比較をいたしますと高まってはいるものの、近年はほぼ横ばいとなっており、令和四年三月時点で六九・三%となっております。

 博士号後期課程修了者の就職率が停滞している理由につきましては、複合的な要因が考えられますが、例えば、大学側の課題としては、博士後期課程のカリキュラムと社会や企業の期待との間にギャップが生じていること、また、企業側の課題といたしましては、博士の学位や博士後期課程修了者の評価について多くの企業の理解が十分にまだ高まっていないこと、さらには、博士人材に見合った処遇ができないと考えていることなどが課題であると認識してございます。

住吉委員 そして、今回の税制の中で、ドクターの就職を後押しするような税制がございます。研究開発税制の見直しとして、特別試験研究費の対象費用に博士号取得者等の人件費を追加する措置が取られるということになっております。

 この措置によって博士号取得者の就職状況にどのような影響が見込めるのか、その効果について政府の認識をお伺いいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 令和五年度税制改正案におきましては、御指摘のとおり、研究開発税制を拡充いたしまして、博士号取得者等を雇用した場合に、その人件費について、一定の期間、一定の要件の下に、二〇%の税額控除を特別試験研究費として行う新たな類型を創設することといたしております。これは、企業におきまして、最先端の知識を有する博士号取得者や経験を積んだ外部の研究人材の新規雇用などに積極的に取り組んでいただくよう促すために行ったものでございます。

 こうした取組を通じて、企業が有する既存の知識経験と博士号取得者等が有する新たな最先端の知識を融合させてイノベーションが促進されることを期待しております。

住吉委員 本当に、博士号取得者がその知識、見識を活用して社会に有用な成果を生み出していくということは、資源の乏しい我が国において、今後成長、発展していくためには必要不可欠なことでございます。

 博士号取得者の就職が厳しく、その能力を活用できないとなると、我が国にとっても計り知れない損失でございます。そのような事態を招かないためにも、今おっしゃったこと以外で、博士号取得者の就職を後押しし、社会で活躍できるような人材を育てる、そういう環境を整えることが重要と考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 科学技術・イノベーションを活性化するための最大の鍵は人材でございまして、希望する学生が博士課程に進学し、博士号取得後、高い意欲を持った優秀な研究者を始めとして社会の多様な場で活躍するための育成、確保の取組は極めて重要であると考えております。

 このため、文部科学省においては、博士後期課程学生への経済的支援とキャリアパス整備の抜本的な充実、企業と連携した長期、有給のジョブ型研究インターンシップの推進、研究人材と求人機関とのマッチング支援等を行うポータルサイトの運営などに取り組んでいるところです。

 文部科学省といたしましては、今後とも、関係省庁とも連携し、科学技術・イノベーションを担う優れた人材の育成及び活躍促進に向けた取組を強化してまいります。

住吉委員 ありがとうございます。

 本当に、しっかりと進めていただいて、人こそ宝でございますので、資源の少ない日本において人材こそ宝であるということをしっかりと頭にたたき込んで、進めていただけたらと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 今国会は、防衛費の問題が非常にクローズアップされております。私も、予算委員会でも取り上げさせていただきました。復興特別所得税、これについては、ほかの、他の委員からも、疑問に思われるような発言、質問が相次いでおりました。

 それに関連して、私の地元兵庫県の震災関連県市債について、再度お伺いしたいと思います。予算委員会でも質問しましたので、くどいと思われるかもしれませんが、簡単に内容を説明したいと思います。

 阪神大震災から二十八年がたちましたが、兵庫県の財政的な傷み、これは、実はまだまだ残っております。

 阪神・淡路大震災から創造的復興のため、事業総額約十六兆三千億円の復興計画を立てて、そのうち兵庫県の負担というのが二兆三千億円、これは当時の兵庫県の一般と特別会計を合わせた額とほぼ同等ですので、一年分の事業を全て県単独で行うのと同等の負担だったわけでございます。県債管理基金を取り崩して、一兆三千億円もの県債を発行しました。そして、それを約三十年間で返していく。ほかの都道府県にはない、年間約五百億円から六百億円の負担が重くのしかかっております。その間、兵庫県は投資的な事業を相当に抑制してまいりました。

 そして、この震災関連県債、兵庫県に関して言えば、あと十年近く返済していかなければなりません。兵庫県を始め関連の市において、震災関連の債権が二〇二一年度決算ベースで三千八百三十二億円残っているというような状況でございます。

 もちろん国の方には、復旧復興のため、特例法を早期に成立させ、補助率のかさ上げなどをやっていただいている、このことには大変感謝しております。しかし、阪神大震災の場合、最大で地方が五二・五%負担する、事業によってそういう負担になっております。一方で、東日本大震災においてはほぼ一〇〇%国が負担するスキームとなっており、非常に大きな差が生じております。

 あるエリアでは長期間にわたって県民が尻拭いをしていかなければならない、あるエリアではほとんど負担がないというような状況でございます。このような状況を大臣はどのように考えておられるのか。

 また、大臣は、予算委員会の答弁で、関連の債権の返済に交付税措置をしていると述べられましたが、もちろんこれは普通よりかなり大きな手当てをしていただいておりますが、それでもやはり、阪神大震災と東日本大震災では大きな違いがございます。

 私も、予算委員会で質問すると、地元の県議からいろいろ反響もございましたが、過去に遡って兵庫県が負担したものを面倒を見てくれ、それはなかなか難しいと思いますが、今なお残っている震災関連県市債については、国が責任を持って全額手当てするというおつもりはございませんでしょうか。御所見をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 予算委員会のときと同じような答弁になって大変恐縮だとは思いますが、今般の復興特別所得税の税率引下げを含む税制措置、これは防衛力の抜本的な強化を安定的に支えることを目的としたものでありまして、その際に現下の家計の負担増にならないよう配慮したものであります。したがいまして、この財源を他の経費に充てるということは考えていないところであります。

 阪神・淡路大震災と東日本大震災においては、いずれも通常よりも手厚い支援を行っているところでありますが、二つの大震災については、その被害の規模を始め様々な差異がありまして、いずれの支援内容が手厚いかどうか、単純に比較することは難しいものと考えます。

 その上で、阪神・淡路大震災においては、例えば、土地区画整理や市街地再開発といった復興事業について、通常の交付税措置率は二二%のところを八〇%とするなど、地方負担に対して通常よりも手厚い支援を行っているものと承知をしておりまして、これ以上の措置が難しいものであることは御理解を賜りたい、そのように考えます。

住吉委員 手厚い支援は十分理解しております。一方で、関連の債権が今なお残っている、兵庫県はあと十年間返し続けなければならない、そういった中で、やはり、投資的経費を相当抑制して、それの尻拭いをしていくというのは、最終的には県民になっていくわけでございます。

 これ以上は、この場では、もう時間もありませんので議論はしませんが、兵庫県選出の議員として、要望として是非受け止めていただけたらと思っております。

 次の質問に移りたいと思います。防衛費増額の歳出改革について質問いたします。

 まず、財政運営についてお伺いいたします。

 昨今の国会情勢を見るに、年末に大型補正予算が組まれ、使われない莫大な予備費が積み上がるといった、ずさんな財政運営がなされております。補正予算とは、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出又は債務の負担を行うため必要な予算の追加を行う場合に行うことです。これはもうずっと他の委員からも指摘があったことです。

 しかし、本来、本予算で措置すべき性質のものも、補正予算頼みで組み込まれているという事業も少なくございません。財政規律のモラルが失われていると言われても仕方のないようなやり方が毎年横行しております。そのような現状をどのように考えているのか、政府の見解をお伺いいたします。

井上副大臣 御質問ありがとうございます。お答えいたします。

 補正予算の編成並びに近年の財政運営の状況について御質問いただきました。

 まず、一般論として申し上げれば、今お話がありましたとおり、補正予算は、財政法より、当初予算編成後に生じた事由に基づき緊急性の高い経費の支出を行う場合や、義務的経費の不足を補う場合に編成されるとされております。

 その上で、近年、新型コロナウイルス感染症対策や物価高騰対策等に対して、累次の補正予算等により対応してまいりました。これは、国民の命と暮らしを守るため、危機に必要な財政出動はちゅうちょなく行わなければならないという考えに基づいて行ったものであり、適正な対応であったと考えております。

 他方で、御指摘ありましたとおり、こうした対応をちゅうちょなく行うことができるのは、我が国の財政への信認があってからこそであります。

 新型コロナへの対応という例外から脱却し、平時への移行を図りながら、歳出歳入の両面の改革に取り組み続けることで、財政規律をしっかりと意識しながら、責任ある経済財政運営を進めていくことが重要だというふうに考えております。

住吉委員 その上で、令和四年度予算は、当初予算と補正予算を合わせて約百四十兆円となっております。そして、令和五年度予算において、防衛費確保のための歳出改革で二千億円程度の財源を確保すると聞いております。

 政府は、防衛費確保のために、歳出改革、決算剰余金の活用、防衛力強化資金で対応し、残りの一兆円強は税制措置を講じるとしております。しかし、防衛力強化は五年の期間があります。まだまだ時間があります。そうであるならば、より一層の歳出改革等の努力ができるのではないでしょうか。我が党は身を切る改革を進めておりますが、政府ももっと身を切るべきではないかと考えます。

 レクでも、歳出改革で二千億円を捻出するために相当頑張っているとおっしゃっておりました。しかし、昨年の予算、当初と補正予算を合わせた割合でいうと、たったの〇・一四%です。本当にこれ以上の歳出改革、これは無理なのでしょうか。

寺岡政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛力の強化に必要となる財源の確保に当たりましては、歳出改革を含め、徹底した改革の努力を行うことが必要と考えております。

 他方、その時々の社会経済状況を踏まえ、補正予算なども通じて、教育や科学技術の振興、災害への対応を含め、必要となる公的サービスを提供することは、いわば予算の重要な役割でございます。

 今般、そうした必要な予算を確保しつつも、抜本的に強化された防衛力を安定的に支えるために必要となる財源確保の一環として、歳出改革により、令和九年度時点において、対令和四年度比で一兆円強を確保するということとしてございます。

 この水準は、五年間の年平均で〇・二兆円強の歳出改革を継続することに相当いたしますが、直近十年間における防衛関係費を除く非社会保障関係費における歳出改革の最大額が平成二十七年度予算時点で二千百億円程度でございましたことを踏まえますと、まさに最大限の歳出改革を継続しなければ実現できない水準であると考えてございまして、毎年度の予算編成におきまして、まさに最大限の努力をする必要があると考えてございます。

住吉委員 最大限努力をして二千百億円、二千億円ということの答弁をいただいたと思っています。

 一方で、この前の所信表明においては、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革を着実に推進してまいりますと述べられております。

 そこで、財務省のホームページを見ると、我が国の二〇二二年度の一般会計予算、これは当初予算ベースで考えてみると、政策的経費とは、歳出総額から国債費の一部を除いた八十三・七兆円、税収等とは、歳入総額から公債金を除いた七十・七兆円であり、プライマリーバランスは十三兆円の赤字になっていますとなっています。

 これは当初予算ベースですので、当然、補正予算も含めると赤字額はもっと大きくなるでしょう。これを二〇二五年度、黒字にしようとすると、二年で少なくとも十三兆円、一年で六・五兆円、プライマリーバランスを改善しなければならないという計算になります。

 しかし、財務省から、防衛費確保において、歳出改革で二千億円捻出、もうこれが限界だという答弁が今ございました。

 そこで、話は戻りまして、防衛費は、歳出改革等を行い、足りない分を増税という話ですが、繰り返しになりますが、本当に二千億円しか出せないのでしょうか。二〇二五年度プライマリーバランス黒字化と言うならば、増税せずに防衛費を確保できるのではないでしょうか。また、プライマリーバランス黒字化を目指すのであれば、防衛費は歳出改革で出るのではないかと思いますが、防衛費は歳出改革で生み出すと言えないのでしょうか。政府のお考えをお伺いいたします。

鈴木国務大臣 今回、二〇二三年一月に内閣府より出されました中長期試算では、力強い成長を実現し、今後も歳出効率化努力を継続した場合には、前回試算時、これは二〇二二年七月でございますが、そのときと同様、二〇二五年度に国と地方を合わせたPBが黒字化するという姿が示されました。

 PB黒字化目標の達成に向けては、その前提として、潜在成長率を引き上げ、歳出効率化努力も継続することが重要であり、具体的には、経済あっての財政との考え方の下、成長と分配の好循環を拡大することなどにより力強い成長を実現することに加えて、歳出歳入両面の改革を継続していくことが必要であると考えております。

 その上で、二〇二五年度にPB黒字化することが示された今回の内閣府試算においては、防衛力強化については、防衛力整備計画等に沿って、財源確保も含めて所要の措置が取られていることが前提になっていると承知をしております。

 このため、防衛力の抜本的強化のための財源を確保できない場合には、今申し述べたPBの黒字化目標の到達は困難となる、そのように考えております。

 政府としては、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることがないように、引き続き責任ある経済財政運営に努めていく必要がある、そのように考えているところであります。

住吉委員 もう時間が来ましたので終わりますが、二〇二五年PB黒字化というのはかなりハードルが高いと思っております。このハードルに向けて、目指していくというのであれば、防衛費に関しても、逆に、それを歳出歳入改革で達成できれば、この財源分ぐらいは生み出せるのではないかなというふうに思います。そういった、本当に本気でやっていただきたいなというふうに思います。

 もう時間もないので、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 皆様、お疲れさまでございます。日本維新の会、岬麻紀でございます。

 本日は、先ほどまで質疑に立たれました日本維新の会の住吉議員の引継ぎもございますが、本日、財政健全化、プライマリーバランスについて、そして時間を見ながら租税特別措置について質問をしてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず、財政健全化、プライマリーバランスについて質問をいたします。

 令和四年十二月、政府は、防衛力整備計画を決定し、令和五年度から九年度までの五年間において必要な防衛力整備の水準に係る金額、四十三兆円程度としました。防衛費増額の方針を示したということですが、この賄う財源や、また、令和九年度以降の防衛力を安定的に維持するための財源として、歳出改革、また決算余剰金の活用、そして税外収入を活用した防衛力強化資金の創設、そして税制措置等、歳出歳入両面において所要を講じていくということだと思います。

 まず、この防衛費増額について、プライマリーバランスへの影響、政府はどのように御見解でしょうか。教えてください。

井上副大臣 お答えいたします。

 先ほど財務大臣からも、住吉委員の御答弁にも触れることになるかというふうに思いますけれども、本年一月に発表されました内閣府の中長期試算におきましては、防衛力強化について、防衛力整備計画等に沿って、必要な防衛力整備の水準に係る金額が措置されるとともに、同計画の財源確保に関する所要の措置も並行して講じられていると想定されておりまして、そう承知しております。

 こうした前提の下で試算を行った結果、力強い成長を実現し、今後も歳出効率化の努力を継続した場合には、前回の試算時、二〇二二年七月同様に、二〇二五年度、国と地方を合わせたプライマリーバランスが黒字化するという姿が示されております。

 財政規律の観点からは、従来より、真に必要な財政需要に対応するため、恒久的な歳出を大規模に増加させる場合には、これに対応した安定的な財源を確保することで個別に対応してきております。今般の防衛力の抜本的強化についても同様の考え方で対応したところでありまして、今回の中長期試算にも反映されているものと考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 今、目標ということで計画を立てていただいているということは分かりましたけれども、岸田内閣総理大臣は、施政方針演説におきまして、防衛力強化に係る財源に関して、令和九年度以降、毎年度四兆円の新たな安定財源が追加的に必要となりますが、歳出改革、決算余剰金、そして税外収入の確保など行財政改革の努力を最大限に行った上で、それでも足りないとき、これは四分の一程度、一兆円強というふうに算出されていますが、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が将来世代への責任として対応する旨を述べていらっしゃいました。

 追加の財源として国債には頼らないという方針かと推察するわけですけれども、一方、防衛力整備のために、防衛費の一部に建設国債を活用することですとか、決算余剰金を防衛費に充てるとか、これまで決算余剰金を補正予算で財源として活用していることもあります。それを防衛財源費に回すとすれば、その分赤字国債の追加発行になるのではないかと考えるわけです。このため、防衛費増額、プライマリーバランスに影響を与えるという指摘も実際にございます。

 このような指摘がある中で、今国会冒頭の財政演説、おとといの当委員会における所信表明においても、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革を着実に推進すると述べられました。

 そこで、質問です。

 政府はこのように、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標を堅持していらっしゃるような印象を持ちますが、率直に、この目標を堅持している理由、どのところにあるんでしょうか。大臣、伺えますでしょうか。

鈴木国務大臣 財政健全化に向けましては、累積する債務残高を中長期的に減少させていくこと、これが重要でありまして、骨太の方針において、国、地方のプライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化すること、これにより債務残高対GDP比を安定的に引き下げること、これを政府の方針として定めているところでございます。

 これを堅持する理由ということでありますけれども、政府としては、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認を確保できるよう、財政規律を守るためにこうした目標を定めること、これは重要であると考えておりまして、責任ある経済財政運営に引き続き努めてまいりたいと思っております。

岬委員 ありがとうございます。

 今大臣からも中長期の試算というところでお答えいただいているんですが、結局は、達成の見込みがあるから目標は変えないということなんでしょうか。いま一度お願いいたします。

鈴木国務大臣 率直に言って、高い成長率と今までの歳出改革、これをきっちりやっていくということで、その道のりは、正直言って、そうたやすいものではないと思っております。

 しかし、示された試算によれば、これはその二つをしっかりとやっていけば達成できる、そういう姿が示されておりますので、これはしっかりと政府としてこれに向かって目標を進めていって、財政健全化につなげていきたい、そういうふうに考えています。

岬委員 ありがとうございます。

 たやすくないとお答えいただきましたけれども、数字上は操作をすることは幾らでもできるのではないかというふうに考えるわけです。それを思いますと、なぜ目標をそんなに堅持して、まあ、もう少し柔軟に、達成しやすい現実的な目標を掲げることも一つではないかと思うんですが。

 そこで、目標を変えられないのはなぜなのかなと考えてみました。幾つかあるんですけれども、例えば、財政健全化に対する姿勢が後退したと受け止められることを避けたいであるとか、二つ目に、国内外の信認がなくなってしまうことを懸念されているとか、三番目には、財政規律の歯止めが失われてしまう、これらが挙げられるのか、ほかの理由があるのか分かりませんが、とにかく、デメリットとして挙がってくることを避けたいのではないかと思うんですが、この辺りはいかがでしょうか、大臣。

鈴木国務大臣 繰り返しになりますけれども、先ほど私が申し上げましたとおりに、この目標の達成、これは容易ではありませんけれども、努力すれば決して実現不可能なものではない、そういうふうに考えているところでございます。

 政府として、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認を確保する、そのためには財政規律を守るということでございますので、この達成を努力すれば可能であるという姿が示されておりますので、これをしっかりと堅持していくことが責任ある経済財政運営につながるものと考えています。

岬委員 ありがとうございます。

 一月二十四日の経済財政諮問会議において内閣府が公表した中長期経済財政に関する試算では、将来の国と地方のプライマリーバランスに関する試算が示されています。これが成長実現ケースというものです。この中には、二〇二四年度以降の国内総生産が、物価変動を除いた実質で二%程度、名目で三%程度増えることを前提とする成長実現ケースであり、二〇二六年度にプライマリーバランス黒字化で達成できると見込んでいるわけです。さらに、これまでの歳出効率化の努力を継続した場合に、二〇二五年度の黒字化という財政健全化の目標の達成も視野に入るとされています。

 しかし、前提となる成長実現ケース、潜在成長率が足下の〇・五%程度から二%近くまで高まり、企業の技術革新などを反映する全要素生産性が一九八二年度から一九八七年度並みに上昇する、そういう想定になっているんです。これはかなりな難易度で、現実離れしているんじゃないかなと感じるんです。

 なぜならば、名目成長率が三%を超えたという実績は、過去二十年間においてたった一度しかありません。この奇跡的なというか、はるかに上回る経済成長をしなければ、試算、どこまでこれは意味があるのかな、現実的にどうなのかという疑問が残っております。

 いろいろなところでそれを、懸念はありますし、また、楽観的であり、根拠に乏しいという指摘もございます。この見解、内閣府はどのようにお考えでしょうか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の中長期試算ですけれども、経済再生と財政健全化の進捗状況を評価するということとともに、今後の取組に資する検討に必要な基礎データを提供するということを目的としております。その観点から、成長実現ケースとベースラインケース、二つのケースを示してございます。

 ベースラインケースといいますのが、経済が足下の潜在成長率並みで推移するという姿である一方で、成長実現ケースにつきましては、政府が掲げる政策、例えば人への投資ですとか成長分野への投資拡大、こういったものが効果を発現する姿を示したという性格を持ってございます。

岬委員 少し回答がずれているかなという印象があるんですけれども。

 では、鈴木大臣にお聞きします。

 率直に、このような成長実現ケースの試算、必要性や意義、どんなところに感じていらっしゃいますでしょうか。余りにも、絵に描いた餅というか、奇跡的な、希望的な観測ではないかなというふうに私は感じますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 これはあくまで、内閣府において出された数字、その中で、二〇二五年度においてPBの黒字化が、厳しい道のりではあっても、努力することによって実現可能だという姿が示された、こういうことでございます。

 そして、御指摘の中長期試算、これは、過去の実績や足下の経済トレンドを基に、内閣府の計量モデルを基礎として、二〇三二年までの十年間の経済、財政の姿を示した試算でありまして、経済再生と財政健全化の進捗状況を評価することを目的としているもの、そこに先ほど申された姿が示されたということであります。

岬委員 それでは、実現ができるということでお進めいただくということなんでしょうか。

 それでは、これまでの歳出効率化の努力を継続するというふうにお答えいただきましたけれども、具体的に、では、どのような努力をいつまで継続して、実際には、毎年度、どの程度の歳出削減効果を見込んでいるんでしょうか。具体的にお答えをお願いいたします。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の中長期試算におけます、これまでの歳出効率化努力を継続した場合でございますけれども、過去の実績も踏まえまして、いわゆる歳出の目安に沿った予算編成が行われることによる効果ということでございまして、歳出自然体といいます、物価上昇ですとか高齢化、こういったものを想定した歳出自然体の伸びからのプライマリーバランスの改善効果、これは一年当たり一・三兆円という想定でございますが、それが二〇二四年度、二五年度と継続した場合の姿ということで示してございます。

岬委員 今の御回答ですと、自然体ということですから、自然にそうなればいいなというところで、私が今お聞きしたのは、そこではなくて、歳出効率化の努力という言葉を使われていますから、努力とは具体的にどのような努力であり、それをいつ頃まで継続をされ、それをした結果どうなっていくのかということを聞いております。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと繰り返しになって恐縮ですけれども、歳出効率化努力につきましては、いわゆる歳出の目安に沿った予算編成を行うということをもってして、そうではない場合に比べてPBが改善するという効果を示したものでございまして、金額的には一年当たり一・三兆円という想定で置いてございます。

 これも繰り返しですけれども、それが二〇二四年度、二〇二五年度と継続した場合ということで想定を置いて計算をしてございます。

岬委員 それが努力となるのかは疑問が残るわけですけれども、一方、先ほど触れられましたベースラインケースというものを見ていきたいと思います。

 この中長期経済財政に関する試算において、日本経済の潜在成長率が現在のゼロ%台半ばの状況が将来にわたって推移する、これがベースラインケースと呼ばれるもう一つの想定であります。この試算では、プライマリーバランスは赤字を脱することはできない、そして、試算期間の最終年度である二〇三二年度に向かうにつれて緩やかに悪化するというものでございます。

 現在の経済状況を鑑みれば、現実味を帯びているのは、まさに、さきに申し上げた成長実現ケースではなくて、こちらのベースラインケースだと思うのが自然ではないかと多くの方が感じるのではないかと思いますが、鈴木大臣、そこは率直にどのようにお感じでしょうか。

鈴木国務大臣 繰り返しになりますけれども、この目標達成、これは容易ではありませんけれども、努力すれば、このベースの高い方の成長実現ケースで想定しているような力強い経済成長、これは努力すれば可能であると。

 それから、一方における歳出削減の努力につきましても、先ほどお話がございましたように、予算編成の目安、例えば、社会保障費につきましては高齢化率の枠内に収める、非社会保障費につきましては、今までは三年間で〇・一兆円、これは物価の動向等もございますので、それで引き直して、今は一年間で一千五百億円、そこの枠内に収めるという努力、これをすれば、これは決して実現不可能なものではない、そのように考えております。

岬委員 容易ではないとお認めつつ、そこはやはり固持していくという感じなんですけれども。

 一月二十五日、朝日新聞の記事において、防衛費増額の財源として余剰金などを盛り込んだが、その見積りも妥当性が問われるであろう、増税もできるかどうかも分からない、世界経済の減速懸念も高まっており、高い経済成長には疑問符がつく、これまで以上に不確実な要素が増えているという指摘が、財政の分野での有識者である一橋大学佐藤教授もおっしゃっています。

 また、岸田総理御自身も、一月二十四日の経済財政諮問会議におきまして、成長実現ケースで示された成長率が実現し、これまでの歳出改革努力を継続した場合には、プライマリーバランスが二〇二五年度に黒字化する姿が示されたものの、一方で、不確実性が高まる中、こうした姿が実現することは容易ではないと。

 皆が認めていることを、どうして目標をもう少し柔軟に見直すというアクションにはならないのかが不思議なんですけれども、現在の二〇二五年度の黒字化という目標を固持するのではなくて、より現実的な目標に修正した上でそれを達成していくことが、具体的な歳出歳入両面の改革、明示していくべきではないかと思いますが、いま一度、鈴木大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 総理の御答弁のとおりに、不確定要素が多いということ、これは事実であり、また、この目標の達成は、先ほど来申し上げているとおりに容易なものではありませんけれども、政府としては、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることのないように、PB黒字化目標を堅持することを示すこと、これは重要なことでありまして、今後とも、責任ある経済財政運営に努めてまいりたいと思っております。

岬委員 私ども日本維新の会の維新八策二〇二二にも、このプライマリーバランスについて記入がございます。現実的な黒字化の目標期限を再設定して、その上で、経済成長、歳出削減、そして歳入改革のバランスの取れた工程表を作成して、増税のみに頼らない成長重視の財政再建が行いたい、行っていくべきであるということを明示しております。

 それでは、今後の展開についてお聞きしていきたいと思います。

 岸田総理が打ち出しました異次元の少子化対策では、児童手当ですとか児童保育サービスの拡充など、検討が始まります。実現には数兆円単位での財源が必要になるとも思われます。この財源を国債に頼るならば、プライマリーバランスの黒字化達成、更に更に遠のくのではないでしょうか。

 少子化対策の財源として、国債の活用については、鈴木財務大臣も先日の二月三日、予算委員会におきまして、確実な償還財源を確保せず国債を発行するというのは、今以上に借金を子供世代に背負わせることになる、責任ある財政運営とは言えないと述べていらっしゃいます。本日もそのような御答弁もあったかと思われますが、国債の発行に関して慎重であることは理解をしております。

 しかし、少子化対策に大規模な財源が必要であるとすれば、結果的に国債を頼らざるを得ない状況にはなり得ませんでしょうか。

 そして、先ほど御紹介をされました中長期の経済財政に関する試算について、少子化対策の予算の増額、この影響については考慮されていないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 子供、子育て予算、それからその政策でありますけれども、御承知のとおりに、三月までに小倉大臣の下で、何が子供、子育て政策として必要なのかというものを取りまとめて、それを六月の骨太の方針で具体化をし、その中で、子供予算の倍増についての道筋といいますか大枠を示すというのが今の政府のスケジュール感でありまして、したがいまして、六月のその中において大枠を示すということで、その安定的な財源をどこに求めるのかというのはこれからの検討次第である、そういうふうに思っております。

 そういう中で、いろいろな社会保障制度との関係、あるいは国と地方の関係、公平性の観点、そういった様々な論点があると思いますが、そういうようなことを検討する中で、こうした安定的な財源、恒久的な措置には恒久的な財源が必要であるというのが我々の考えでありますので、そこに考えられていくんだと思います。

 そして、今回の内閣府の試算の中には、子供政策に対する予算というもの、それは、まだ決まっていませんので、反映されていないと理解しています。

岬委員 さらに、経済、物価の状況によって、日本銀行が今後金融緩和策の修正をするという可能性もあるかと考えられます。この場合、長期金利も上昇しますと国債の利払い負担も膨らむということは当然ながら想定され、考えられるということです。

 このように、今直面している少子化問題への対策であるとか、起こり得る長期金利による国債の利払いの増加など、現時点で想定できるものだけではなくて、絶え間なく変化をしていくわけです。経済の、社会経済情勢を受けて追加の政策も必要になることもあるでしょうし、問題への対策を緊急的にも求められたりすることも考え得ます。今後の予見できない事柄、様々な経費が生じてしまうのではないでしょうか。

 こうした中で、本当に二〇二五年度の黒字化目標を達成できるのかと、聞けば聞くほど不安になるんですが、いかがですか。鈴木大臣、お願いします。

鈴木国務大臣 先生御指摘のとおり、それは不確定要素が多くあるということ、それは先ほども私も認めているところでございます。

 しかし、そうしたような様々な不確定な状況はありますけれども、元に戻りますけれども、今般、内閣府で示されたこの試算におけば、二〇二五年度のPB黒字化というのは容易なものではないですけれども、努力をすることによってそれは実現可能であると。そして、こういうことの目標を堅持するという姿を示すことが、市場において、あるいは国際社会において日本の財政の信認を守るということにつながる、そのためにもこの目標を堅持して頑張らなければいけない、こういうふうに思っています。

岬委員 今の御答弁をいただいていた中に、そうすると、先ほど私が申し上げた、この目標を固持していて、固持せざるを得ない、なぜならば、デメリットを言ってしまうといけないからというところに結局戻っていってしまうと思うんですね。それを固持し続けていくことによって信認を得ていくんだという、今発言がありましたので、結局、そのデメリットを懸念されて修正できないのではないかなという結論になってしまうんですけれども。

 さらに、鈴木大臣、所信表明で、日本の財政は、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応や異次元での補正予算の編成等により、過去に例を見ないほど厳しさを増していると、やはりおっしゃっています。さらに、財政は国の信頼の礎であるともおっしゃっていますし、責任のある経済財政運営をしていく必要もあるとおっしゃっています。

 であれば、やはり、夢や目標が大きく高いものであるというのは非常に重要ではありますけれども、それは国の経済や財政では当てはまるのでしょうか。現実的な、実現ができることを、きちんと未来を見据えて実現可能な目標を設定していくことこそが、やはり、信頼を、信認を得られるのではないかと思いますが、いま一度、確認のために、大臣、お願いいたします。

鈴木国務大臣 例えば成長実現ケース、成長実現ライン、これを実現するために、今、岸田内閣として、新しい資本主義の下、様々な施策を打ち出して、安定した経済成長の軌道に乗せるべく、今、進めているところでございます。

 そうした政策というものが経済の成長につながる、上の方の成長ラインの方の成長を実現していく、それによってPB黒字化も可能になっていく、こういうことで努力をするということでございます。是非、この点は理解をしていただきたいと思います。

岬委員 もちろん理解はしたいですけれども、ベースラインケースというのもあるのであれば、そちらもしっかりと併せて、目標の見直しも必要なのではないかということも述べたいと思います。

 それでは、続きまして、少しだけお時間がございますので、触れていきたいと思います。租税特別措置についてでございます。

 この租税特別措置については、昨日の本会議でも、日本維新の会、住吉議員からも、法人税関係の特別措置ですとか、特別措置の総量規制など質問をしております。

 防衛費増額に当たりまして国民の負担を求める前に、不要になった、効果の見込めない措置について廃止をするなど、徹底した、本気での、既得権益、ここに切り込んでいく必要があると思いますし、少なくとも、そうした姿勢を見せることこそが必要なのではないか、国民の理解を得られないのではないかと思っております。

 この租税特別措置というもの、まずは、総数が幾つあって、そしてこの措置で減収額、どれくらいになっているのか、そこから伺いたいと思います。お願いいたします。

井上副大臣 お答えいたします。

 喫緊の数字でそれぞれ御報告をさせていただきたいと思います。

 令和五年一月時点での租税特別措置の措置数につきましては、全体で三百六十六項目ありまして、うち、法人税関係が九十八項目、それ以外の項目が二百六十八項目になっております。

 法人税関係の租税特別措置による減収額につきましては、各法人からの提出書類を集計した租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告を基に推計したところ、令和三年度におきまして一兆九千億円程度になっております。

 また、法人関係以外の租税特別措置による減収額につきましては、令和四年度予算ベースで試算したところ、租税特別措置による増収額を差し引いて、四兆八千億円程度と見込んでおります。

岬委員 こういったところをしっかり見直すことこそが非常に重要であると、今お聞きしていても思いました。

 もちろん、法人税、令和三年の実績の数、また法人税以外は令和四年度の予算の推定額ということですから、簡単に、単純に足せばいいというものではないかということは理解をしております。

 この租税特別措置については、いろいろな問題も指摘されております。

 例えば、効果が検証されないまま温存されているものが多いであるとか、どんな企業が制度を使ってどのような効果が出たのか検証できるような透明性がいま一つである、これは高めていく必要があるであろうということです。それから、税負担を優遇しておいて効果を十分に検証されていない、これは重大な問題である、それぞれが有効であるのか、また根本から見直すべきではないか、こういった意見が多数あります。

 昨日の本会議において、租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な手段となり得る一方で、税負担のゆがみが生じる面もあることから、継続ありきではなく、必要性や政策効果をよく見極めた上で、必要な見直しを行っていくことが重要という答弁もございました。

 まさにそのとおりであると思いますし、一刻も早く徹底した見直しが必要であると思います。その必要性や政策の効果、どのように検証されているんでしょうか。具体的に教えてください。

井上副大臣 お答えいたします。

 租税特別措置につきましては、毎年度の税制改正プロセスにおいて、各省庁の税制改正や既存制度の延長を要望する場合には、その制度の効果等について、まずは政策を所管する各省庁において、財務省が実施する租特透明化法に基づく適用実態調査の調査結果も参考にしつつ、その必要性や政策効果について適切に評価をするなど、しっかり説明責任を果たしていただく必要があると考えております、各省庁ごと。

 様々な措置がある中で、一律にその費用対効果を検証する方法を確立することは困難ではありますが、今後とも、租税特別措置の適用実態調査、ツール等を活用するとともに、各省庁においてしっかりと政策効果の検証に努めるように求めつつ、引き続き不断の見直しを行ってまいりたいというふうに思っております。

岬委員 各省庁にまたがっていて、とても複雑で煩雑になっている、ですから検証も大変困難である、そういうことなのではないかと思います。そうであるならば、いずれにしても、分かりやすく、そしてもう少し簡単にしていく、そういった整理が必要なのではないでしょうか。税体系自体を分かりやすくしていくというのは、今後、大変必要なことだと思います。

 それでは、時間も迫っておりますので、これが最後の質問になるかと思います。

 いずれにしても、国民の負担を求める増税の前に、このような租税特別措置の見直しであるとか廃止、さらには徹底した歳入改革を進めるべきだと考えています。それをせずして次には進めません。また、理解を得ることもできません。

 鈴木大臣、この辺り、いま一度、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 防衛費の抜本強化につきましては、常々お話をしておりますとおり、税外収入でありますとか、また剰余金の活用でありますとか、それから徹底した歳出削減でありますとか、そういうことをかなりぎりぎり、できるところはしているところでございます。

 そうした前提となります努力を国民の皆さんに是非御理解をいただくように我々としては努めなければならない。そして、そうした努力をした上で、なおかつ足りない四分の一について税制をお願いをしなくてはいけない。税制でお願いするということを言う以上は、その前提となる様々な工夫、努力、そういうものを御理解いただけますように、国民の皆様に丁寧に説明をしていくことが重要であると考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 是非、堅実に、既得権益などがないように、しっかりと切り込んでいただきたいと思います。増税なしで何とか進めていただけるような、そういった確保をお願いしたいと更に思っております。よろしくお願いいたします。

 では、お時間となりましたので、質問を終了いたします。

 鈴木大臣、副大臣、ありがとうございました。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 まず、金融政策について雨宮副総裁にお話を伺いたいと思います。

 雨宮副総裁、微妙な時期にありがとうございます、お越しをいただきまして。

 十四日に日銀の総裁、副総裁の人事が示されるということが与野党で合意をされたようでございます。この十年間の異次元の金融緩和というものに対するやはり総括と、新体制になることによって、見直さなければいけない部分が私はあると思っておりまして、その点について幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、イールドカーブコントロールについてでございます。

 昨年の十一月二日にこの委員会におきまして、私は黒田総裁に対して、長期金利の柔軟化の提案を行わせていただきました。具体的には、長期金利の金利目標の振れ幅をゼロ、プラスマイナス〇・二五から広げるべきと申し上げたわけであります。その意図は何だったかというと、日銀がかたくなな金融緩和の姿勢を取り続けることによって、利上げを続けるFRB、ECBなどの他の中央銀行との金利差が広がり、急速な円安が進んでおりました。いっとき百五十一円ぐらいまで行ったかと思いますけれども、それが輸入物価を押し上げて、国民の生活に大きな打撃を与えるという、そういった強い危機意識でありました。

 そのときの黒田総裁の答えは、御指摘の点は十分考慮したいと思いますというものでありました。日銀はその後、御承知のとおり、十二月二十日の政策決定会合で、ゼロ、プラスマイナス〇・二五からプラスマイナス〇・五へと幅を拡大をしたわけであります。

 現在は、一ドルが、今日は百三十一円程度だというふうに思いますけれども、推移をしておりまして、一旦よかったと考えております。

 しかし、現在の長期金利は、朝調べますと、〇・四九六%ということで、もう〇・五に張りついている、こういう状況であります。

 お配りをしている資料の一枚目を御覧いただきたいと思います。これはイールドカーブでありますけれども、この一番上の赤が直近のイールドカーブでございまして、二〇二二年の初めからは上がっていって、そして、十年物のところでの押しピンが押されたような状況というものは、若干緩和されたとはいえ、まだいびつな状況というものが解消されていないということでございます。

 二枚目を御覧いただきたいと思います。

 十年の金利をゼロにする、プラス〇・五以内に収めるために、かなり、直近は、日銀は国債の買入れを行っているわけであります。去年の六月、十二月が大体十六兆円ぐらい。そして、今年に入りまして、先月は過去最高額の約二十四兆円、二十三・六九兆円ですかを買っているということでございまして、その結果として、今、日銀保有の長期国債が発行残高に占める割合は五三・七%ということで、半分以上。実質的な財政ファイナンスが更にひどくなっているという状況であります。

 この背景は、皆様御承知のように、日本も物価上昇が続いているからであります。日本銀行が本日公表した国内企業物価指数は前年同月比九・五%の上昇と、十二月の一〇・五%と比べると若干下がっているものの、まだまだ高い伸び率が続いております。昨年十二月の全国コアCPI、消費者物価指数は前年同月比四%の上昇ということで、四%台というのは四十年ぶりということだそうであります。

 さて、質問に入らせていただきたいと思いますけれども、物価が上昇したら金利が上昇するのは当たり前だと思うんですね。それを無理やり抑えつけるのはやはり限界があるということでございまして、イールドカーブコントロールを修正するかやめるかの必要が私はこの十年の節目であると思いますけれども、雨宮副総裁の御答弁をお願いします。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず、御指摘のありました物価情勢でございますけれども、御指摘のとおり、この十二月には、生鮮食品を除くCPIの前年比四%という高い上昇になりました。しかし、私どもが目標としておりますのは、あくまで持続的、安定的な物価安定目標の実現でありまして、賃金、あるいは物価、収益、企業活動等が好循環の中で安定的に実現できるということを目指しております。

 その観点で申し上げますと、ただいまの物価上昇率の四%は、主として輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響によるものでありまして、この輸入物価の前年比プラス幅は、本日公表した統計でも見て取れるとおり、もう縮小をし始めております。この後、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果もあるため、消費者物価の前年比は、来年度の半ばにかけて、二%を下回る一%台まで低下するというふうに見ております。

 こうした物価情勢でございますので、まだ我々としては持続的、安定的な物価安定目標の達成までには距離があるということを踏まえまして、基本的に現在の金融緩和政策を維持することが適当であるというふうに考えている次第でございます。

 ただし、ただいまのYCCという金融緩和政策につきましては、やはり副作用もあるわけでございまして、例えば、副作用の一つとして、今御指摘のありましたような、国債市場、金融市場の機能に悪影響を与えているという点がございます。この点を踏まえて、先般、イールドカーブコントロールの運用見直しをしたわけでございます。先生御指摘のとおり、まだひずみ、ゆがみは残っているわけではありますが、改善には向かっております。

 我々、この後もいろいろなオペレーション手段を使いながら、さらに、先般新しく導入しました共通担保資金供給オペといった手段も組み合わせながら、機動的な市場調節運営を続けることで市場機能の改善を図ってまいりたいというふうに考えております。

前原委員 確かに、企業物価指数、これも一〇・五から九・五に下がってはいますけれども、先ほど申し上げたように、高い水準であるということであります。

 IMFは、国際通貨基金は一月二十六日に、日銀の金融緩和の修正案を盛り込んだ声明を発表しました。副総裁も御存じだというふうに思います。これは年に一度の対日経済審査を経て公表されたものでありまして、今副総裁言われたように、日本が低インフレに戻る可能性を念頭に、金融緩和は全体としては適切であるという評価をしているわけでありますが、他方でこうも言っているんですね。物価は上振れリスクの方が大きいと。つまりは、下がるけれども、上振れリスクの方が大きいということをIMFは見ているということであります。

 その上で、IMFはイールドカーブコントロールの修正を提案しています。内容は三つありまして、長期金利の変動幅を柔軟に、つまりは、プラスマイナス〇・五を更に広げるということ。それから、金利操作の対象を短期にする。今は十年物ですよね。それをより短なものにする。そして、目標を国債購入量に移行するということ。この前の二つと、今申し上げた目標を国債購入量に移行するということは、前は、これはいわゆる暫定的な、イールドカーブコントロールを継続した上で修正するということで、後は見直すということでありますけれども、これは、IMFが専門的にやっているというよりは、マーケットの考え方を踏まえてIMFがこういった提案をしているというふうに私は認識をしております。

 その意味においては、まず、イールドカーブコントロールを続けるにしても、この〇・五プラスマイナス、先ほど一ページ目のイールドカーブを見ていただいたように、やはりまだまだ、四%の物価上昇という中で、長期金利のところについて、実は十年物についてはひずみが起きているわけですね。だから、そういう意味においては、やはり人為的にまだ下げているということでありますので、言ってみれば幅を広げるということと、あとは、もう少し、十年より短なものにターゲットを変更するという、イールドカーブコントロールの修正があってもいいのではないかと考えますが、それについての御答弁をいただきたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず、御指摘のありましたIMFの対日四条協議の声明文、私ども、この間、大変時間をかけて熱心に議論をして、その結果公表されたものでございます。

 金融調節、YCCの柔軟化に関する提言についてでございますけれども、まず、これは今先生も御指摘になられたとおり、IMFとしても基本的には現在の緩和的な金融政策スタンスは適当であると評価しているということはまず御理解いただきたいと存じます。

 その上で、具体的な金融政策の運営についてでありますけれども、これは私ども前から申し上げておりますとおり、こういう政策、やはりYCCというのは異例な政策でございます。こういう政策を運営していく上では、やはり効果と副作用を客観的に検証しながら、できるだけ副作用を緩和し、効果が出るような工夫を凝らしていきたいということは最前から申し上げて、そのような努力をオペレーション面でも重ねてきたつもりでございます。したがって、この後も、そうした効果、副作用のバランスを勘案しながら、最善の政策効果が出るような努力は続けていきたいというふうに考えております。

 ただし、昨年の十二月に先ほどから議論になっていますような運用の変動幅の拡大ということを実現し、少し改善の動きが出ているところでございますので、現段階では、こうした機動的な市場調節運営を続けることでこの改善の動きを見守っていくことが重要かというふうに考えておりまして、現段階では、更なる柔軟化が必要というふうには考えておりません。

前原委員 現段階ということは、検討の余地は今後あるということですね。もうその場でお答えください。

雨宮参考人 現段階では、更なる柔軟化の必要はないというふうに考えております。(前原委員「検討の余地は」と呼ぶ)

 一般論として申し上げますと、金融政策運営につきましては、先ほど申し上げたような効果と副作用の比較衡量を図りながら、弾力的に運営を考えていくということが基本であります。

前原委員 アメリカが、FRBが一九四二年から一九五一年までの九年間、このYCCをやっているんですね、イールドカーブコントロールをやっている。これは、戦費調達をするためにわざわざ金利を下げて、国債金利を下げて戦費調達をしているわけでありますが、戦後、やはり物価が上昇して断念せざるを得なくなったということでございまして。

 YCCは、私は持続可能なものだと思っていません。今は、現段階ではということでしたけれども、その意味においては、今後の見直しというものはあり得る、弾力的にということでありましたので、是非市場との対話をしっかりされながら弾力的に見直していただきたいということをお願いをしておきたいと思います。

 二番目は物価目標です。

 そもそも、二年で二%と、十年前は安倍元総理は何か二%でも三%でもみたいな、バナナのたたき売りみたいな話をされていて、二%、三%に対する根拠は全くなかった中で、とにかく、しかし金融政策をやればデフレは脱却できるんだ、そういった感覚でお話をされていたことを、私は何度もやり取りしていましたのでよく覚えています。

 その意味においては、十年間のこの異次元の金融緩和の壮大な社会実験を経て、私は、二年で二%は到底無理で、今は、このいわゆる世界的なインフレ、コロナとかあるいは戦争とか、そういった特殊な要因というものを経てようやく、皮肉なことに最終段階で物価が上昇しているということだと思いますし、先ほど副総裁が御答弁されたように、来年以降はまたそれが落ちてくる、こういう見立てであるということでありましたけれども、この二%、そもそもの物価目標に私は無理があったんじゃないかと思うんですね。

 他国も二%だからという答弁をよく黒田さんはされていましたけれども、他国と日本は違います。例えば、よく最近は言われるようになりましたけれども、日本の賃金は三十年間上がっていない、ほかの国は、例えばアメリカとかスウェーデン、イギリスなんかは、二・五倍前後この三十年間で上がっています。それから、潜在成長率もどんどん今は下がってきていて、今は〇・六%ぐらいですか、日本の潜在成長率というのはそのぐらいまで落ちてきていると。

 そして、一番私は大きな違いだと思うのは、やはりこれは莫大な財政赤字ですね。財政赤字というのは国債を発行する、国債を発行するということは政府の資金需要が生まれるということですから、本来なら民間に行くお金というものが言ってみればそちらの方に行っている、これはクラウディングアウトというそうでありますけれども、こういった様々なものが日本のやはり経済の停滞要因になってきていると。

 もちろん、ほかにもろもろあると思いますよ。教育や研究開発にお金が行っていないとか、人材投資をしていないとか、様々なものがあると思いますけれども、そもそもやはり二%というものは私は無理があったのではないかと思います。

 そこで、三ページ目を御覧ください。

 これは、私が野田政権のときに経済財政担当大臣をさせていただいて、政府と日銀の間でいわゆる共同声明をまとめたものであります。そのときの二番を御覧いただきたいわけでありますけれども、二番の第二パラグラフでありますけれども、日本銀行としては、中長期的な物価安定のめどを消費者物価の前年比上昇で二%以下のプラスの領域にあると判断しておる、当面、消費者物価の前年比上昇率一%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していくと。

 つまりは、目標物価上昇率は一%で、そして二%以下のプラスの領域に中長期的になればいい、こういうことでありましたけれども、この物価目標は、この十年間やってみて、ちょっと、二%目標、だから、二%を目標にするから無理な金融緩和になるわけですよ。これそのものを見直すべきだというふうに私は思いますが、副総裁の御意見を、御見解をいただきたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず、二%物価目標についてでございますが、先ほど先生から御指摘のありましたグローバルスタンダードというか、海外の欧米先進国と合わせて二%ということだけではございませんで、これは、私どもも検討の中で、消費者物価指数には統計の性質上高めに出るいわゆる上方バイアスがあるということですとか、あるいはデフレとか景気が悪化した場合の金融政策の対応力を確保していくと。

 インフレの場合には中央銀行は幾らでも金利を上げることができますけれども、逆の場合にはどんどんマイナスを深掘りするということは難しゅうございますので、やはりインフレとデフレでは政策対応が対称ではないという問題があるということで、よく言いますけれども、景気後退やデフレへののり代を取っておくために高めが必要であるというような議論とグローバルスタンダードを合わせまして、やはり二%が適当であるというふうに判断しているわけであります。

 実は、この物価安定の目標というのは、日本銀行が一番最初に導入したのは二〇〇六年でありまして、この頃は物価安定の理解と呼んでいたわけなんですけれども、その頃はたしかゼロから二%程度で、大体真ん中の一%あたりに委員方の意見は集まっているというような曖昧な言い方だったわけでありますけれども、それが時を経るにつれ、様々な知見や研究を深めながら、この一二年のときの一%の物価安定のめどということに進化し、更にそれが現在の二%ということに、私としては進化してきたというふうに考えているわけであります。

 その上で、この物価安定目標の下で私ども金融政策運営を行ってきた結果、その間、政府の諸施策もありまして、我が国の経済、物価は着実に改善し、デフレではない状態を実現できるというところまで来たわけでございます。

 もちろん、先ほど申し上げたとおり、二%の物価安定目標の安定的、持続的実現は達成していませんが、この間、経済、物価状況は大きく改善したわけでございますので、この政策は適切であったというふうに判断しております。

前原委員 デフレはよくない、それはそのとおりだと思いますし、のり代の議論というのは分からないでもないですけれども、一%を着実に実現して、だって十年間できていないわけでしょう、今は特別な状況で実現をしてしまっていますけれども。十年間やってできなかったものというのは、これは成功したと言えるんですか。私は言えないと思いますよ。しかも、黒田さんは二年でやると言っていたじゃないですか。二年でやると言っていて、十年たってもできていなくて、ようやく今できているということが成功であったというふうに言うのは、それは私は少し傲慢じゃないかという思いがあります。

 したがって、これは民間臨調でも、最近の答申というか政府に対する申入れでは、二%を中長期の目標にして、一%を確実に超えるような物価安定目標にするということが大事だということでありますが、そういうことに全く見直されるつもりはありませんか。端的にお答えください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 物価安定目標が何%が適当かということは、海外でも実は議論が残っておりまして、例えばアメリカでも、むしろ、この間の経験を踏まえ、三%か四%に引き上げるべきではないかというような議論さえあるわけであります。その意味で、こうした政策運営の尺度とか在り方については、様々な議論があってしかるべきであるというふうに私は考えます。

 ただし、現段階では、日本銀行は、やはりグローバルスタンダードであるこの二%の安定的、持続的な実現を目指すことが適当であるというふうに考えておりますし、先生御指摘のとおり、日本は特殊な状況であるというのは御指摘のとおりでありますけれども、やはり、長年デフレが続いたという特殊な状況であるがゆえに、これを実現することが必要であるというふうに私は考えております。

前原委員 それは、上に目標を設定するということは、気合の議論なら分からないでもないですけれども、科学的な根拠とか合理的な根拠とか、そういう意味においては、余りにも実態よりも高い目標が掲げられていることによって、金融政策が言ってみればゆがんでいるという、そして副作用が生まれているということも、先ほど副作用もあるということは認められたわけですから、そこは柔軟に、私は、新体制以降は考えられるべきだということは申し上げておきたいと思います。

 最後は、ETFです。

 これは図四を御覧いただきたいわけでありますが、この十年間で約三十七兆円、簿価でETFを買っている、こういうことであります。

 そして、五ページ、五枚目を見ていただくと、上位二十社、つまりは日銀の株主としての保有割合の高いものからいくとこういう順番になっているわけでありますが、一〇%を超えているものだけでも六十八社あるんですね、今。一〇%を超えているのは六十八社あるということであります。

 私は、じゃ、それで日本の株が上がって経済はよくなったのかということで、これもなかなか禅問答みたいなところはあるんですけれども、ただ言えることは、日本の株価上昇率は、やはり他国より低いんですよ。二〇二一年の株価上昇率は、日本は四・九、アメリカは一八・七、ドイツ一五・八、フランスは二八・九。十年間じゃないですけれども、三十年間で見ると、日経平均株価は一・二六倍。アメリカは十倍以上なんですよ。

 ですから、日銀が頑張ってETFを買っても、それが経済にプラスの影響が、株価に影響が及んで、それが好循環になっているということは、私は言えないんじゃないかと思うんですね。

 しかし、国債も、そして株式も、官製相場にしてしまっていることについては大きな問題だと私は思うんですね。

 ETFをこのまま買い続けるということでいいんですか。私は、やめるべきだというふうに思います。したがって、このETFを続けるというお考えなのか、あるいは、これについては一旦立ち止まって見直すということなのか。

 今、実はこのETFの年間分配金が今や日銀の収入の半分ぐらいになっているんですね。だからやめられないという答弁は駄目ですよ。やはり金融政策として、金融緩和政策としてどうだったのかという検証と、本当に続けるのか、やめるのか、そのことを御答弁ください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず、ETF買入れの目標でございますが、我々、このETFの買入れで、人為的に株価を操作するとか、人為的に株価を押し上げる、あるいは一定水準まで持っていくということは目指してございません。そうではなくて、我々が流動性面で必要に応じて出動することによって、資本市場、金融市場におけるリスクプレミアムの抑制を通じてマーケットの安定を図るということを目的にやってきたわけであります。

 実際に、これは二〇二一年の三月に実施した点検においても、そうした危機時のリスクプレミアムに対応する上で有効であったという結論を得ています。

 ただし、これは、やはりそういう危機時に対応することが適当であるということがより明確になりましたので、その後、買い方をよりめり張りの利かせた買い方にするというふうに変えているわけであります。

 また、それに加えまして、ETFの買い方や買う銘柄についても、それこそ、市場機能に対する影響をできるだけ小さくしますように様々な努力を積み重ねてまいりました。

 こうした努力もあって、やはりETF買入れはこの間の大きな金融環境の改善に貢献してきたというふうに考えております。

 そうはいっても、やはり中央銀行がこうした株式を買うというのはとても特殊な政策であることは事実であります。そのことは承知しておりますし、このETFの処理についていろいろな議論があることも承知しております。

 ただ、現段階では、物価安定目標の実現になお時間を要するという状況において、そうした具体的なETFの処理も含めた出口政策について議論するのは時期尚早であるというふうに考えております。

 もちろん、その目標の実現が近づいてくれば、出口に向けた戦略や方針についてきっちり金融政策決定会合で議論し、適切にコミュニケーションは図っていきたいというふうに考えております。

前原委員 時間が参りましたので、これで終わりますけれども、十年間の総括をきっちりしていただき、先ほどおっしゃったプラス面、マイナス面、副作用についてしっかりと総括した上で新たな体制というものに引き継いでいただくということをお願いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、軍事費拡大問題について伺います。

 二月一日の予算委員会で鈴木財務大臣は、財政法第四条は、あくまで健全財政のための財政処理の原則を規定したものであって、戦争危険の防止そのものが同条の立法趣旨であるとは考えていない、このように答弁されました。しかし、財政法の規定には、戦火や、戦後の預金封鎖などの混乱で国民生活を困窮させたことへの反省が込められていると言われてまいりました。

 昨年六月八日、私も大臣に質問をしました。戦時中の歯止めなき公債発行が国民の資産を毀損したと財務省が認識していることについて、鈴木大臣は、過去のこうした事実があったことも忘れることなく、国民的議論を積み重ねることが重要だと答弁しました。

 大臣に改めてお伺いします。

 戦前、軍事費の膨張を許した財政政策について、どのように認識されていますか。その歴史の教訓というのは財政法には反映されていないとの認識でしょうか。

鈴木国務大臣 まず、財政法上との関係のお話がございましたので、財政法第四条について申し述べたいと思います。

 財政法第四条第一項、これは、国の歳出は租税等をもって賄うという、いわゆる非募債主義を定めております。その上で、同条ただし書において、公共事業費等の財源に限って公債、これは建設公債のことでありますが、これの発行を認めることとしております。

 この非募債主義を規定した経緯については、昭和二十二年に財政法が制定される際、国会の法案審議において、公債をむやみに出して国の債務を膨大ならしめ、そうして財政全体の基礎を危うくするということがないように公債発行を限定したものであると説明しております。したがって、財政法第四条は、あくまで健全財政のための財政処理の原則を規定したものであって、戦争危険の防止そのものが同条の立法趣旨であるとは考えておりません。

 その上で、歴史の教訓をどう酌み取るかということでございますが、歴史の教訓について申し上げれば、戦前のような、国力に見合わない債務残高の累増の結果、国家財政や国民生活を危うくすることがあってはならないと思っております。

 財政は国の信頼の礎であって、歳出歳入両面の改革を続けて、経済再生と財政健全化の両立を図ることで、責任ある経済財政運営に努めていくことが重要であり、これが歴史の教訓として受け止めているところであります。

田村(貴)委員 果てしない軍事費調達のための国債発行が国民の暮らしを毀損させた、絶対忘れてはならない教訓だと思います。

 財務省にも要望したいんですけれども、戦後の焼け野原の中で、二度と戦争は起こしてはならないとの思いで、新憲法の論議とともに財政法を起草して成立させた当時の財務官僚のこの思いというのは想起すべきであるというふうに思います。

 政府は、安全保障三文書を閣議決定して、五年間で四十三兆円もの空前の大軍拡に踏み出しています。政府の財源案では、五年後の二〇二七年度予算では約一兆円の歳出改革が行われるとし、来年度予算も既に二千百億円の歳出改革が盛り込まれています。

 そして、おとといの大臣の所信では、歳出改革について、社会保障関係費については、実質的な伸びを高齢化による増加分に収めるとしました。社会保障関係費以外は、防衛費関係の増額を達成しつつ、経済、物価動向を踏まえて柔軟な対応を行うと。

 大臣、この柔軟な対応というのは、削減するということですよね。結局、軍事費の規模ありきで予算編成をすれば、国民の生活を支える予算を減らさざるを得ないということになりはしませんか。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 防衛力の抜本的強化、これは、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増す中で、喫緊の課題であります。こうした問題意識の下で、一年以上にわたる議論の積み重ねを経て、昨年十二月に、防衛力整備計画において、今後五年間で必要となる防衛力の内容と規模を定めたところであります。

 これに基づいて、令和五年度予算において、必要な防衛関係費を計上するとともに、その裏づけとなる財源を確保しており、こうした対応は、まさに我が国が直面する重要課題に対応するため不可欠な取組であると考えております。

 そして同時に、本予算におきましては、一般歳出の約六割を社会保障や教育などに充てておりまして、国民生活の向上に直結する経費など、必要な施策を盛り込んでいるところであります。したがいまして、御指摘のように、防衛費の規模ありきで予算を編成をして、国民生活を支える予算を抑制しているというわけでは決してありません。

 いずれにいたしましても、国民の皆様の御理解をいただけますよう、引き続き丁寧な説明を行ってまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 我が党は、大軍拡、大増税に断固反対です。この委員会で引き続きこの問題を論議していきたいと思います。

 次に、再生可能エネルギーの固定価格買取り制度におけるインボイスについて質問します。

 資料一を御覧ください。これは、資源エネルギー庁が一月下旬、FITの認定業者に送付したはがきです。自宅に太陽光パネルを設置している一般家庭にも送付されました。受け取った方から私の方に連絡がありましたけれども、驚きと戸惑いの声が寄せられています。

 「インボイス制度 登録準備はもうお済みですか?」というはがきが突然届いたら、これはびっくりしますよね。事業者ではなければ、そもそもインボイス制度のことは分かりません。このはがきによって既に混乱が生じています。免税の方が間違って課税事業者の登録をしてしまったら、インボイス制度導入後、消費税の納付義務が発生してしまいます。

 そこで、資源エネルギー庁に伺います。

 このはがきは、二百六十五万者のFIT認定業者に全て送付する計画なのですか。発送を中断したと担当の方に聞きましたけれども、じゃ、出し直しをするんですか。

 十キロワット未満の住宅用認定業者は約百八十五万に及ぶと聞いています。毎月数万円程度の発電で、ほとんどがごく小規模の事業で免税だと考えられています。免税では駄目なんですか。なぜ、課税業者でない家庭にまでこうしたはがきを郵送したのですか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 FIT制度は、再エネ特措法に基づきまして、FIT認定事業者の発電する再エネ電気を一定期間、固定価格で買い取ることを電気事業者に対して義務づけまして、再エネ導入を促していく制度でございます。

 このように、電気事業者は再エネ電気の買取りが義務づけられていることから、インボイス制度の開始後は、FIT認定事業者がインボイス登録を受けない場合には、当該取引分の仕入れ税額控除ができず、買取り義務者に新たな消費税負担が生ずることとなります。

 こうした追加的な消費税負担により、買取り義務者に過度な負担が生じ、FIT制度に基づく再エネ電気の買取り業務の継続が困難とならないように、FIT認定事業者に対する御指摘のはがきの送付などにより、課税事業者の方々にはインボイス登録をお願いしているところでございます。

 御指摘の十キロワット未満の太陽光発電設備の所有者につきましても、事業用途での売電を行っている場合など、課税事業者に該当する方は一定数存在していると認識しております。このため、全てのFIT認定事業者に対して、メール送付を基本としつつ、他方、メールアドレスの登録のない方に対して補足的にはがきを送付する形で、課税事業者のインボイス登録に向けた周知を行うことを検討しております。

 なお、先生御指摘の免税事業者につきましては、FIT制度上、インボイス登録に関する対応は不要であり、インボイス登録がなくとも、現行の買取り価格が変更されることもございません。

 また、先生御指摘のとおり、我々が送付しましたはがきに対しまして、幾つかの、かなりの件数のお問合せをいただいております。丁寧に、応答率高く、今御説明をしっかりしておりまして、こうした御説明の状況を踏まえながら、我々の方の周知のやり方につきましてもしっかりと検討を深めていきたい、かように考えてございます。

田村(貴)委員 正直にお答えいただきたいんですけれども、このはがき、幾つ用意して、幾つ発送して、幾つ止めているんですか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、送付しているはがきは現状五十万件でございます。そして、我々といたしましては、恐らくメール送付という形で対応できるものが二百六十四万件ほどあると考えております。

 また、はがき送付につきましては、先ほどの五十万件も含め、百二十七万件程度が必要ではないか、かように考えております。

田村(貴)委員 膨大な数ですよね。送らなくていいはがき、そして、書いている内容も非常に問題があるから、こういうことになっているわけでしょう。

 このはがきの、QRコードがついているんですけれども、これはQRコードを読み取っても、免税業者のままでいいとの情報は一切ないわけですよ。不正確な情報でFIT認定の一般家庭にまでインボイス制度の登録申請をさせる、そういう誘導の意図を持ってやっているんじゃないですか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 本日、先生からも御指摘いただいておりますはがきにつきましては、我々といたしましては、赤字で書かせていただいているとおり、課税事業者の方々に対してこうした取組を行っていくという趣旨ではがきを送っております。

 他方で、先生御指摘のとおり、問い合わせいただいているところでは、免税事業者の方々から、あれはどうなんでしょうかといったようなお問合せもございます。

 こうした点も踏まえまして、我々といたしましては、今後送付するはがきあるいはメール等につきましては、混乱が生じないように、より一層分かりやすい周知の仕方を考えていきたい、かように考えております。

田村(貴)委員 だから、間違いなんですよ。よくなかったわけでしょう。

 そして、用意したはがきは一旦止めて作り直すわけだと。これに要する経費というのは幾らですか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 現状、我々といたしまして、こうしたインボイス制度につきましてしっかりと周知を行っていくといったようなことにつきまして御予算をいただいておりまして、インボイスにつきまして全体で確保しております予算、その中から、現状、我々がはがき送付を検討している予算につきましては、百二十三万件の、先ほど申し上げたとおりですが、約六千八百万円を見積もっております。

田村(貴)委員 無駄な出費をされていますよね。免税事業者にもインボイスの登録を進めようとする意図は明白であります。

 財務省は、お伺いします、財務省、このはがきの送付や文面について、エネ庁から事前の相談、それから確認をしていますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省におきましては、資源エネルギー庁から、課税事業者である再エネ事業者にどのような文面で登録申請の手続を案内するかといった点について相談を受けておりましたので、そうしたはがきが送付されることについては承知をしておりましたが、具体的な宛先や送付枚数については相談を受けておりません。

 また、一般家庭による発電から生じた余剰電力の売却について、免税事業者という御指摘がございましたけれども、消費税の課税対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等でございますので、サラリーマン等の一般家庭におきまして、生活用の資産として設置している太陽光発電設備等から生じた電気について、余剰が生じた場合に電力会社に売却する等の場合につきましては、消費税法上の資産の譲渡等には該当しませんので、元々課税対象ではなく、また、その一般家庭は事業者としては扱われないということでございます。

田村(貴)委員 相談も合い議もしなかったということですよね。本当にお粗末極まりない、そして無責任だと言わなければいけません。このはがきを受け取って困惑されている方にちゃんと説明はしていただきたい。要望しておきます。

 そして、再エネの固定価格買取り制度とこのインボイスの問題については、もう一つ大きな問題があります。この裏の、配付資料二を御覧いただきたいと思います。経済産業省の、インボイス導入に伴うFIT制度運用上の対応方針等を示した文書です。

 家庭用パネルを持つ認定事業者が免税のままであれば、認定事業者から電力を購入する買取り義務者はその分の仕入れ税額控除ができなくなる、先ほどもありました。そして、じゃ、どうするのか。この後段のところに書いてあります。買取り義務者に過度な負担が生じ買取り義務の継続が困難となることのないよう、以下のような措置を検討とし、インボイスが発行されない取引については、買取り義務者の消費税負担分を制度的に措置する。

 これはやるんですか。この消費税負担分とは、この文書の真ん中にある、買取り事業者、納税額B円というところであります。これを経済産業省資源エネルギー庁が税金で補填するということでしょうか。それとも、再エネ発電賦課金を引き上げて対処するということでしょうか。どうなんでしょうか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 こうした、先生御指摘の、課税事業者のインボイス登録に向けた周知に取り組んだ上でもなお買取り義務者に生ずる追加的な消費税負担につきましては、FIT制度に基づく再エネ電気の買取り業務の継続が困難とならないよう、御指摘いただいた審議会でも御審議をいただいております。

 先日、審議会の場では、いわゆる電気料金に賦課されております……(田村(貴)委員「結論でいいです」と呼ぶ)はい。電気の需要家の皆様から御負担いただく賦課金から充てるということで審議会では御議論いただきまして、現状、パブリックコメントにかけているところでございます。

田村(貴)委員 再エネ賦課金を引き上げるということになったら、このインボイス制度が元になって、また電気料金が上がるわけですよ。こんなことをしていいんですか。大手電力会社を始めとして買取り義務者の消費税負担を国民負担で賄っていく、仕入れ税額控除で発生するこのような問題をこのようなやり方で解決していく、おかしいではありませんか。

 厚生労働省にも来ていただいています。何度かこの委員会で議論しましたけれども、シルバー人材センターの会員さんにインボイスの問題が発生します。少額の収入しかない会員の消費税負担を増やさないようにする、つまり課税登録しないようにすると厚生労働省は言っています。そうすると、センターそのものの消費税負担というのが大きく跳ね上がってまいります。一センター当たり約一千五百万円以上、全国で二百億円もの消費税負担が発生するんですけれども、厚生労働省は、このセンターの消費税負担について補填措置をする考えはあるんですか。

堀井政府参考人 お答えいたします。

 シルバー人材センターについて、インボイス制度導入後も安定的な事業運営が確保できるようにということで、まず、厚生労働省としましては、様々な取組を実施をしているところです。

 具体的に御紹介をさせていただきますと、まず、地方公共団体がセンターに業務発注をする場合に適正な価格設定を行っていただくように、都道府県知事に対して依頼をする文書を発出……(田村(貴)委員「それは聞いてきましたから知っています」と呼ぶ)済みません。それ以外にも様々な取組を行っているところでございます。

 そして、田村委員が御質問をされました、インボイス制度の導入に伴ってシルバー人材センターに新たに生じる可能性のある消費税の直接的な補填をするかという点につきましては、現在、厚生労働省としてそのような方策は考えておりませんが、しかしながら、令和四年度の第二次補正予算におきまして様々なデジタル化の推進、そして、ウェブ上の受注拡大というようなことでセンターが安定的に事業を実施できるようなそういう予算を獲得したり、あるいは、会員が安全、安心に就業できるように契約方法を見直したりと、様々な観点の取組を進めております。

 そのようなことをシルバー人材センターや団体の御意見も伺いながら進めてまいりたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 今のケースは、再エネ賦課金を引き上げる、あるいは税金投入、これしかないんですよ、この方針に基づくと。だけれども、国民負担でやっていくというんです。こういう例があるのか。ここだけですよ。

 大臣にお伺いしたいと思います。

 新たに生じるこのインボイスに伴う消費税の負担を補填することは、厚生労働省でも、ないということなんです。仕入れ税額控除の問題というのは民間の取引でも同じようなことが起こるんですけれども、これは国は補填しません。

 じゃ、なぜFITに限ってこういう待遇が生まれてくるのか。なぜ買取り事業者だけ国民の負担をもって救済していくのか。これはインボイスの制度そのものの中として不公正が発生しているんじゃないですか。大臣、おかしいと思いませんか。

鈴木国務大臣 インボイス制度への円滑な移行の観点から、免税事業者からの仕入れについて、制度の移行から三年間は八割、その後三年間は五割の仕入れ税額控除が可能とされており、免税事業者と取引のある事業者への影響も相当程度の期間にわたって緩和されると考えておりますし、このことについては先生も御存じのとおりでございます。

 こうした措置に加えまして、関係省庁においても、必要に応じ、免税事業者との取引がある事業者への対応について検討されている場合があるものと承知をしております。

 こうした検討に当たりましては、それぞれの制度や契約内容、取引の実態に応じ、免税事業者と取引のある事業者への影響を軽減できるよう適切な方策を検討されているものと承知をしており、そのための具体的な手法が異なることもあり得ると考えているところであります。

田村(貴)委員 大臣、是認するんですね。

 私は、これは制度上の大矛盾だと思いますよ。インボイス制度を導入するがゆえに、こうした問題が生じてきます。省庁でも異なる対応が生じています。この矛盾について、大臣は是認するという。こんなことで国民の理解は、あるいは免税業者の、課税業者の理解は得られると思いますか。十月から本当にこんなことで制度を実施していいんですか。やれないじゃないですか。やってはいけないと思いますよ。

 どうして買取り事業者だけが国民の負担によって救済されていくのか。このことについてはおかしいと思いませんか。

鈴木国務大臣 関係省庁において様々この対応をされていると思います。資源エネルギー庁においてのこの対応については、私は事前に承知しているわけではございませんけれども、先ほど、お話を聞きますと、審議会等の議論を経て、今、パブリックコメントにかけている、こういうことでございまして、資源エネルギー庁の判断である、そういうふうに考えます。

田村(貴)委員 そうしたら、残り時間で確認しておきたいことがあるんですけれども。

 はがきに戻ります。

 課税事業者に該当する場合は、二〇二三年三月三十一日までに登録申請手続を行っていただきますようと書かれています。これは現在の財務省の方針とは違うのではないですか。財務省、いかがですか。

住澤政府参考人 資源エネルギー庁からのこのはがきやホームページにおける御案内ですけれども、今後新たにFIT認定を受ける場合のうち、消費税の課税事業者に該当する方については、インボイス発行事業者としての登録を行うことをFIT認定の要件とする予定ですと案内されていると承知をいたしております。

 したがって、委員御指摘のように、FIT認定の要件に、課税事業者であることは要件とされておらず、免税事業者の方もFIT認定の要件から排除はされていないものと承知をいたしております。

田村(貴)委員 排除はされていないんですよ。免税であり続けることもできるんですよ。それを、このはがきは混乱させている。こういうことを多額の公費をもってやっている。こうした問題が次から次へと出てくるじゃないですか。

 インボイスは、こうした問題、矛盾がいっぱいあるんですよ。とてもこの秋からの導入実施は認められない。またこの委員会で論議をしていきたいと思います。

 時間が来ました。今日はこれで終わります。

塚田委員長 以上で、大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

塚田委員長 次に、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣鈴木俊一君。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木国務大臣 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 政府は、持続的な経済成長や、より公平で中立的な税制の実現等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISA制度の抜本的拡充及び恒久化を行うこととしております。

 第二に、スタートアップエコシステムを抜本的に強化するため、スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設等を行うこととしております。

 第三に、より公平で中立的な税制の実現に向け、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、グローバルミニマム課税の導入及び相続時精算課税制度等の見直しを行うこととしております。

 このほか、土地の売買等に係る登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

塚田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.