衆議院

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第3号 令和5年2月17日(金曜日)

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令和五年二月十七日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      武部  新君    津島  淳君

      土田  慎君    中山 展宏君

      葉梨 康弘君    藤原  崇君

      穂坂  泰君    八木 哲也君

      若林 健太君    階   猛君

      野田 佳彦君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    道下 大樹君

      米山 隆一君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        井上 貴博君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   品川  武君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            堀本 善雄君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    諏訪園健司君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松本  圭君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 哲也君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    清水 幹治君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            横島 直彦君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十七日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     武部  新君

  高村 正大君     穂坂  泰君

  塩崎 彰久君     土田  慎君

同日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     大野敬太郎君

  土田  慎君     塩崎 彰久君

  穂坂  泰君     高村 正大君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長品川武君、金融庁総合政策局審議官堀本善雄君、財務省主税局長住澤整君、関税局長諏訪園健司君、国税庁次長星屋和彦君、厚生労働省大臣官房審議官松本圭君、大臣官房審議官宮本悦子君、経済産業省大臣官房審議官田中哲也君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄君、特許庁総務部長清水幹治君、中小企業庁経営支援部長横島直彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。石原正敬君。

石原(正)委員 お疲れさまでございます。自由民主党の石原正敬でございます。

 本日は、所得税法等の一部を改正する法律案についての質疑ということで、質問の機会を与えていただきまして、塚田委員長さん始め理事及び委員の皆さん方に感謝申し上げます。ありがとうございます。

 質問に入る前なんですけれども、先日、私の友人のお子さん、大学生なんですけれども、つみたてNISAについて教えてほしい、こういうようなことを私の友人に尋ねたそうであります。その友人は、なぜ突然自分の子供がNISAに興味を持ったのかなといろいろと考えておりまして、私に相談がありました。いろいろ考えを巡らせましたら、二月十三日の、その後でしたので、つまり、NISAの日についての各種報道を見てNISAに関心を持ったんだろうなという結論に至りました。

 この二月十三日、NISAの日……(発言する者あり)済みません、知らなかったですかね、なんですけれども、二〇一三年、およそ十年前に制定されて、十年がたつそうであります。

 やはり、こういう普及啓発というのは大変時間がかかり、地味なものであるんですけれども、それをきっかけに関心を持つということは多いわけでございますので、是非、NISAの日以外でも、税制改正含めて多くの税制を活用していただく、それを周知していくということが、新しい資本主義、そして貯蓄から投資へというようなことの積み重ねになろうかと思いますので、是非、財務大臣含め関係各位の皆さん方の、普及啓発にかける、そういった取組をよろしくお願いいたします。

 さて、質問に入ります。

 今般提出されております法案では、より公平で中立な税制の実現に向け、グローバルミニマム課税を導入し、新たな国際課税に対応することとなっております。これは、近年のいわゆる経済のデジタル化やグローバル化に端を発している新たな課題に対応するものだと認識しております。

 具体的には、市場国に物理的拠点を置かずにビジネスを実施するグローバル企業、例えば巨大IT企業などの多国籍企業が増加してきたことや、低い法人税率や優遇税制によって外国企業を誘致する動きが活発になってきたことによります。

 これらの動きに対しまして、国際社会も対応を協議してまいりました。

 具体的に申し上げますと、二〇一二年にOECDは、時代に即した形での適正な課税の実現を目指してBEPSプロジェクトを立ち上げ、二〇一五年にはBEPS最終報告書を取りまとめました。

 さらに、経済のデジタル化に伴う課税上の課題について、OECDやG20による議論が進められ、その後、二〇二一年に、二つの柱、すなわち、第一の柱は市場国への新たな課税権の配分、第二の柱はグローバルミニマム課税による解決策等を国際的に合意いたしました。

 この第二の柱につきましては、全ての多国籍企業グループが最低限の法人税負担をするために、三つのルールを導入することとしています。この三つのルールは、一つに所得合算ルール、二つに軽課税所得ルール、三つに国内ミニマム課税であります。日本政府としては、このルールへの対応として、一の所得合算ルールを導入することとなり、今般の法改正となりました。

 そこで質問ですが、この制度の目的と内容はどのようなものなのかをお尋ねいたします。

 加えて、この一の所得合算ルールを含む第二の柱のグローバルミニマム課税が進めば、世界の法人税収が年二千二百億ドル増える可能性があるとの指摘もあります。日本においての増収はどれぐらい見込んでいるのでしょうか。御答弁を願います。

鈴木国務大臣 今般の改正では、二〇二一年十月のOECD、G20、BEPS包摂的枠組みにおける国際合意のうち、第二の柱でありますグローバルミニマム課税を導入することとしております。

 具体的には、石原先生、御質問の中でもう触れられておりますが、軽課税国に所在する子会社等の税負担が最低税率である一五%に至るまで、親会社に対してその所在地国が課税する、所得合算ルールに係る法制化を行うこととしております。

 こうした措置によりまして、法人税の引下げ競争に歯止めをかけて、企業間の公平な競争環境の整備に資することとなり、日本や日本企業にとってメリットが大きい取組であると考えております。

 また、本制度の導入による税収についてでありますが、今後、軽課税国において税負担の引上げ措置が取られると考えられるため、最終的には、主として軽課税国において増収が生じることとなり、日本においては追加税収は見込んでいないところであります。

石原(正)委員 ありがとうございます。

 恐らく、世界の最低法人税を決めることによって、日本の企業がより活動しやすくなる、そういうことを意図を持って取り組まれるということでございます。しっかりとこれを適用しながら、日本の経済復興のために力を尽くしていただければと思っています。

 そして、今、一の所得合算ルールについて御答弁をいただいたんですけれども、あと二と三、軽課税所得と国内ミニマム課税に関しては今般の税制改正に盛り込まれておりません。

 一を先行させたのはどのような考え方によるものなのか、また、残っている二の軽課税所得ルールと国内ミニマム課税について今後どのような取組を進めていくのか、御答弁を願います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法改正案におきましては、制度の詳細に係る国際的な議論の進展や諸外国における実施に向けた動向等を踏まえまして、まずは、所得合算ルール、IIRに関する法制化を行うことといたしております。

 残る軽課税所得ルール、UTPRと、国内ミニマム課税制度、QDMTTにつきましては、国際合意におきまして、IIRに一年遅れて施行することを目指すということとされておりまして、OECDにおきまして、本年以降、詳細が議論される見込みでございます。

 我が国といたしましても、国際的な議論に積極的に参加するとともに、次の令和六年度税制改正以降での法制化を検討してまいりたいと考えております。

石原(正)委員 ありがとうございます。

 一年遅れで議論をしていくということでございまして、即座に令和六年の税制改正で採用できるかどうか分かりませんけれども、やはり、国際ルールに積極的に関与しながら、是非、法制化できることを期待しておりますので、よろしくお願いします。

 第二の柱であるグローバルミニマム課税の対象となるのは、年間収入金額が七・五億ユーロ、約一千百億円以上の多国籍企業で、OECDの統計では、世界で一万社を超える企業、そして、日本では八百六十社を超える企業が対象となると言われています。グローバルミニマム課税の導入によって、それらの企業は多大な事務負担が発生すると懸念されます。企業活動に及ぼす影響を可能な限り回避する必要があると私は考えております。

 そこで質問ですけれども、これらの対象企業、特に日本企業に対してなんですけれども、事務負担の軽減のための方策というのを考えておられるのか、御答弁願います。

住澤政府参考人 第二の柱に関しましては、OECDにおいて、制度の対象となる企業の事務負担に配慮しながら議論が進められてまいりまして、各国が国内法を制定する場合の基礎となるモデルルールがこれを踏まえて策定されたところでございます。

 具体的には、簡易な計算をすれば税額が発生しないということが見込まれる一定の場合、適用の対象から除外することができる、いわゆるセーフ・ハーバー・ルールを導入することが国際的に合意されております。

 我が国におきましても、こうした国際的な合意に沿って、セーフ・ハーバーの措置を導入することで対応してまいりたいというふうに考えております。

石原(正)委員 ありがとうございます。是非、周知徹底をしていただきたいと思います。

 一方で、企業の負担の発生も懸念されるんですけれども、新たな課税の導入に伴う申告や納税などには、税務当局の事務負担の増加も見込まれます。

 話は少し違いますけれども、本改正案には、国内においても、高額な無申告に対する無申告加算税の割合の引上げや、一定期間繰り返し行われる無申告行為に対する無申告加算税などの加重措置の整備を行うこととされています。このことは、国税職員の業務が多様になり、事務負担が増加することにつながると容易に想定されます。

 さらに、経済のグローバル化による人と物の流れが活発化することによって、税関職員の業務増加も課題となっています。

 以上のことも含めまして、国税や税関の組織強化についてどのように考えているのかを御答弁ください。

井上副大臣 お答えいたします。

 石原先生おっしゃるとおりでありまして、税関は、日本の水際を守り、貿易を通じた経済発展を支えるという重要な役割を担っております。税関は昨年、発足百五十周年を迎えました。百五十年の間にも、経済や社会のグローバル化が進み、税関を取り巻く環境は様々変化しております。

 そういう状況下の中で、具体的には、越境電子商取引の拡大に伴う輸入貨物の急増、不正薬物押収量も七年連続で一万トンを超えております。国際的なテロの脅威の継続、それから水際措置の緩和に伴う訪日外国人の旅行者数の増加など、多くの課題に直面しており、税関は、こうした課題に適切に対応しつつ、より一層安全で豊かな社会の実現や更なる貿易の円滑化に貢献していく必要があります。

 そのため、税関の定員数について、令和五年度予算において百四人の定員増を計上させていただいております。

 また、国税庁の定員についても、経済活動のグローバル化や電子化に的確に対応し、適正、公平な課税、徴収を引き続き実現していくために、税務執行体制の強化を図っていくことが重要だというふうに考えています。

 そういう中で、令和五年度の予算において、国際的な租税回避などへの対応を図るため、国税庁における所要の体制整備に取り組み、三十七名の定員増を計上させていただいております。

 財務省としては、御指摘がありました税関、国税庁について、適切な体制整備を行うことが重要と考えておりまして、今後とも、業務の見直し、効率化等を最大限に進めるとともに、必要な定員確保に努めてまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

石原(正)委員 ありがとうございます。

 前回のこの場でも定員増についていろいろお願いした結果、税関の職員の増員ということをやっていただいて、本当にありがとうございます。引き続き、業務が多様化、そして業務が増加しておる中におきますので、是非、組織強化をしていただければと思っております。

 最後、もう時間がありませんので、要望といいますかお願いになるんですけれども、人への投資を加速させるということになっておりまして、オープンイノベーション型の研究開発税制、これが一つの柱となって今税制改正に上がってきています。これは、大学等の研究機関と民間企業の人材交流のきっかけになると思っています。

 でも、この制度を知らなければ、なかなかこれを活用しようとするような企業あるいは大学が出てこない可能性もございます。当初のNISAの話ではございませんけれども、やはり、せっかくつくった制度は活用してこそこれが生かされるわけでございますので、そういったことの周知徹底を図りながら、人への投資を加速させる、その後押しを是非取り組んでいただければと思います。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございます。

井上副大臣 先ほど、不正薬物押収量が七年連続で一万トンと答えましたけれども、一トンの間違いですので、済みません。

塚田委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 鈴木大臣におかれましては、連日の予算委員会、そして当委員会の対応、大変にお疲れさまでございます。

 時間が短うございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 今回の所得税法等一部改正法案の中で非常に重要だと思っておりますのが、本年十月からスタートいたしますインボイス制度についての課題克服に向けての取組、このことについて確認をさせていただきたいと思います。

 インボイス制度の実施後は、もう御存じのとおり、免税事業者や消費者など、適格請求書、つまりインボイス発行事業者以外から行った課税仕入れに係る消費税額を控除することができなくなります。しかし、激変緩和の観点から、免税事業者等からの仕入れについても、実施後三年間は仕入れ税額相当額の八〇%が控除可能、さらに次の三年間は仕入れ税額相当額の五〇%が控除可能とする、制度導入後の経過措置が既に設けられております。

 こうした激変緩和措置が既に取られているものの、現場では依然、インボイス制度導入に向けて免税事業者が取引から排除されるのではないかといった根強い不安がございます。

 そうした声を受けまして、今回の税制改正では、与党税制協議会での議論も踏まえて、様々な負担軽減措置を盛り込んでございます。順次確認をさせていただきたいと思います。

 まず一つ目は、小規模事業者に対する納税額に関わる事務負担軽減措置について。

 免税事業者が課税事業者を選択した場合、課税売上高一千万円以下の事業者の皆さんのことですけれども、この皆さんが課税事業者を選択した場合、事務負担軽減を図るための激変緩和措置が設けられることになりますが、その詳細について、分かりやすく答弁をお願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイスの導入に伴いまして、これまで免税事業者であった方々がインボイス発行事業者になる場合、新たに生じる消費税納税額の転嫁が難しいのではないか、あるいは消費税の申告等について新たな事務負担が生じるのではないかといったような課題があると御指摘いただいております。

 こういったことを踏まえまして、小規模事業者に対して、納税額に係る負担軽減措置を講ずることといたしております。

 具体的には、免税事業者であった方がインボイス発行事業者となる場合につきまして、納めるべき税額を売上税額の二割とする措置を三年間講ずることといたしております。この措置によりまして、納税額の激変緩和を図り、税負担の転嫁の困難さを和らげつつ、事業区分が不要となるなど、簡易課税制度よりも更に事務負担を軽減する効果を期待しているものでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 関心を持っていただいている方はよく分かると思いますけれども、今ありましたとおり、納税額を売上税額の二割に軽減をする、もう一つポイントは、いわゆる今存在する簡易課税よりも更に事務負担を大幅に軽減をする、そこの具体的な説明が現場に届けば届くほど、今御心配をいただいている皆さんが安心をいただけると思いますので、その点、法案成立後、周知を徹底していただきたいというふうに思います。

 次に、中小事業者等に対する事務負担の軽減措置について。

 軽減税率制度の実施によりまして、少額な取引であっても正確な適用税率の判定のために領収書等の証票が必要となることから、こうした取引についてもインボイスの保存が必要となります。これにより、やはり事務負担の大幅な増加が懸念をされております。

 この点についても軽減措置がされることとなっておりますけれども、これについても分かりやすく御答弁をお願いいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイスへの移行に伴いまして、委員御指摘のような事務負担面での御懸念がございました。

 これを踏まえまして、インボイス制度への円滑な移行を図る観点から、今回の改正案におきましては、制度の定着までの実務に配慮いたしまして、基準期間における課税売上高が一億円以下の事業者の方々が行う一万円未満の仕入れにつきましては、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入れ税額控除を可能とする六年間の事務負担軽減措置を講ずることとしたところでございます。

伊藤(渉)委員 これも、まさに税制度の協議の中で議論をさせていただく中で、いわゆる少額の取引のうち、三万円未満の課税仕入れのうち、特に一万円未満が取引の八二%程度を占めている、こういうエビデンスに基づいて今回の措置が施されていると承知をしております。これについても着実に実施をしていきたい、こう思います。

 三つ目は、少額な返還インボイスの交付義務の見直しについて。

 これは、インボイス制度への移行に伴って、インボイスの交付義務とともに、値引き等を行った際にも、売手と買手の税額の一致を図るために、値引き等の金額や消費税額等を記載した返品伝票といった、いわゆる返還インボイスの交付義務が課せられます。例えば、一番言われていたのは、決済の際に、買手側の都合で差し引かれた振り込み手数料相当額、数百円とかこういう金額、これについても、売手が売上値引きとして処理する場合など、新たな事務負担が生じる、これは物すごい数が生じる、こういうことが現場で心配をされておりました。

 こうした新たな事務負担の心配の声に対して、これも具体的な対策を講じることとしておるはずですけれども、これについても御答弁をお願いいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる返還インボイスに関する委員御指摘のような御懸念を踏まえまして、今回の改正案におきましては、事業者の方々の実務に配慮して、事務負担を軽減する観点から、この返還インボイス等に係る一万円未満の少額の値引き等に関しては返還インボイスの交付を不要とする見直しを行うこととしているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 これまで申し上げたとおり、幾つか、これまで現場から寄せられているインボイス導入に対しての御不安の声がございます。これは今もございます。

 しかし、そうした声を我々は一つ一つ受け止めながら、その改善に向けて取組を進めているということも多くの方に知っていただく必要があると思いますし、何といっても、一般の消費者の方が納めていただいている消費税がより正確に国庫に納まり、社会保障費の重要な財源として活用をいただくということは極めて重要であるというふうに考えております。

 よって、このインボイス制度が様々な御不安の声にしっかり配慮、対応をしながら進んでいくように、取組を進めていきたいと考えているわけであります。

 さらに、税制ではありませんけれども、このインボイス制度導入に向けていろいろな設備投資が必要になるわけです。このインボイス登録に向けて必要となる機械装置の導入や開発費などに対する持続化補助金の上乗せ、また、IT導入補助金についても、安価な会計ソフトも対象となるよう、今までの補助メニューだと補助額の下限値みたいなのがあって、本当に簡易な設備投資だと対象にならなかったりするんですけれども、そうした補助の下限額も撤廃するなど、補助メニューでも支援が強化をされていると承知をしておりますけれども、中小企業庁、この辺り、また答弁をお願いします。

横島政府参考人 御指摘のとおり、経済産業省は、インボイス制度の導入に対応する中小企業、小規模事業者のために、補助金等の支援を強化しています。

 まず、IT導入補助金は、インボイス制度に対応した会計ソフト等を導入する場合、補助率が二分の一から最大四分の三に引き上げられます。また、PC等のハード購入も補助対象となります。さらに、より安価なITツールが販売されていることを踏まえ、従来は五万円だった補助下限額を二月公募分から撤廃することとしました。

 一方、小規模事業者持続化補助金は、三月公募分から、免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者の補助上限額を一律五十万円引き上げることとしています。

伊藤(渉)委員 今答弁いただいた投資上の補助についても、これは既に始まっておりますけれども、まだまだやはり知られていないというのが、私自身、現場を歩いてみて感じている印象でございます。政府においても、また我々も、現場の皆さんにこうした一つ一つの我々としての取組、努力も、報告、説明をさせていただきながら取り組んでいきたいというふうに思っています。

 今、こうした税制上の事務負担の軽減措置、また補助メニューの拡充などが進んできますと、やはり最終的にいわゆる課税事業者への登録ということを、今年の十月からなわけですけれども、私はしたい、こういう方が出てくる可能性があります。そうしたときに、今後、この課税事業者への転換を考える事業者が増加してくることが想定されて、これまでは原則として本年三月末までに登録申請書の提出を求めてきましたけれども、この点についても柔軟な対応をすることというふうに改めると承知をしておりますが、財務省、答弁をお願いします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス制度の開始日であります令和五年十月一日からインボイス発行事業者の登録を受けようとする場合の原則的な申請期限は、法令上、本年三月三十一日とされております。ただし、三月三十一日までに登録申請書を提出することにつきまして困難な事情がある場合には、登録申請書にその事情を記載し、九月三十日までに提出すれば、十月一日付で登録を受けたものとみなすという経過措置が既に設けられていたところでございます。

 さらに、今般、この経過措置につきまして、事業者の方は、令和五年度税制改正法案の激変緩和措置の内容も踏まえつつ登録の要否を検討する必要があるということで、三月三十一日までに申請を行うことが一般的に困難な状況にあると考えられますことから、令和五年度税制改正の大綱におきまして、運用上、登録申請書に困難な事情の記載を改めて求めないこととしたところでございます。

 したがいまして、制度開始日の十月一日の登録を受けようとする事業者の方から九月三十日までに登録申請がなされた場合には、申請書への困難な事情の記載の有無にかかわらず、全て十月一日付の登録とする柔軟な対応を図ることとしておりまして、国税庁におきましてもホームページ等で周知を図っているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 繰り返して申し上げますが、こうした取組をよく御不安をいただいている皆様に御説明をしながら、それでもなお乗り越えなければならない課題を抽出をして、一つ一つ丁寧に取り組んでいきたいと思います。

 最後になりますけれども、こうしたインボイス制度の実施に当たって、事務負担軽減を図るための激変緩和措置と、これは繰り返しになりますが、周知徹底を、あらゆる機会を通じて、鈴木大臣にもリーダーシップを取ってお願いをしたいと思っております。

 また、このインボイス制度の実施への対応に加えて、改正される税法にのっとって税収を適切に確保することにより国の財政を支える職務を遂行しているのが国税の職員の皆様、また、今後議論になる関税法の関係で、税関の職員の皆様も同様でございます。

 グローバル化、デジタル化が進む中、今後とも適切かつ公平な課税を実現していくために、国税組織、税関組織の定員と拡充、機構の充実を着実に進めていただきたいとお願いを申し上げますが、鈴木大臣、最後に御決意をお願いします。

鈴木国務大臣 伊藤先生の御質問の中で、インボイス制度の導入に向けて様々な負担軽減措置が取られているということが示されたわけでありますけれども、こうした様々な負担軽減措置、それを個々の事業者の方々に、内容、各種の支援策、これを御理解いただき、必要な準備を行っていただくこと、これは重要であると考えております。

 丁寧な周知、広報や相談窓口体制の強化に努めているところでありますが、これからもしっかりと対応してまいりたい、そのように思っているところでございます。

 具体的なものでありますと、リーフレットの作成、それを税務署の窓口や確定申告会場での配布などもいたしておりますし、全国ネットでのテレビCMや全国紙への広告掲載、インターネットを活用した広報も行っております。また、インボイスコールセンターの体制の充実といった取組も行ってまいりました。さらに、新たに内閣官房におきまして関係省庁会議を立ち上げまして、重点的に支援すべき業種や業界を見定めて、必要なサポートを行うこととしております。

 今後とも、こうした取組をしっかり進めまして、制度の円滑な移行に向けて、各省庁、関係省庁連携をして、丁寧に周知徹底を図ってまいります。

 また、税務執行体制の強化についてお話もいただいたところでございます。

 経済活動のグローバル化、デジタル化に的確に対応するとともに、インボイス制度を含めまして税制を適正に執行していくためには、税務執行体制の強化を図ること、それが重要であると考えているところでございます。

 令和五年度予算におきましても、業務の見直し、効率化等を最大限に進めつつ、インボイス制度への対応や国際的な租税回避への対応を始め、全体として三十七名の定員増を行うなど、国税庁の体制整備を進めることとしているところであります。

伊藤(渉)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 立憲民主党の福田昭夫です。

 本日は、所得税法等の一部を改正する法律案を審議する時間でありますけれども、今まさに、格差が拡大した余りにも不公平な税制と雇用制度を抜本的に改革をして、日本の経済、財政、賃金を改善するという観点に立って、本日は、特に税制でありますが、政府の考え方をただしてまいりますので、鈴木大臣始め答弁者は是非簡潔にお答えをいただきたいと思います。

 まず、法律案についてであります。

 一つ目は、法人税についてであります。

 第一点は、地方で若者が起業する場合の、スタートアップ企業への優遇措置ができないかという話であります。

 総務省が派遣しております地域おこし協力隊、これが今六千人ぐらいですけれども、令和八年度までには一万人ぐらいにしたいという目標がありますけれども、意外や意外、この人たちの地方の定着率、これが六割を超えるぐらい、なかなかすごい人たちが定着しているんですね。

 したがって、そうした若者が地域資源を生かして起業する場合の優遇措置を是非、普通の法人が何か赤字は十年間繰り延べられるという話でありますが、それ以外に、やはり優遇措置をして地方に移住をさせる、これがやはり地方創生にもつながるんじゃないかと思っていますが、いいアイデアがあったら是非教えてください。

鈴木国務大臣 福田先生から、地域おこし協力隊の例を引かれたわけでありますが、御提案のような地方や若者に限定しているわけではございませんけれども、令和五年度改正におきましては、スタートアップ企業への再投資に係る非課税措置を創設し、また、オープンイノベーション促進税制において、スタートアップ企業の成長につながるMアンドAにも適用できるよう、対象を拡大することとしております。

 政府としても、こうした環境整備を通じましてスタートアップ育成に取り組んでまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 ありがとうございます。

 今度は首都圏の大学の定員を増やすなんという、地方創生とは別な観点から、これは文科省がやるようですけれども、とんでもない話もありますので、せっかく新型コロナでそれこそ地方への流れが出てきたところをまた戻しちゃうという、とんでもない動きも政府の中にありますので、政府の中のちぐはぐがないように、GXやDXでもどちらでもいいと思うんですけれども、やはり地方で創業して定着をする、そういう人たちを増やすということが今大事なんじゃないかなと思っています。

 第二点は、第三点とダブるかもしれませんが、法人に担税能力に応じて負担をしてもらうにはどうしたらよいかという話であります。

 資料の一を御覧いただきたいと思いますが、これは我が国の法人税率の推移であります。消費税を創設する平成元年度までは、実は留保分と配当分に税率を掛けて負担してもらっていました。平成二年から一律に比例税率となり、三七・五%からスタートして、現在は、平成三十年以降、二三・二%と大幅に引き下げられたままとなっております。

 その結果として法人税額も減り、二〇〇四年度から、地方の外形標準課税には赤字法人でも資本金一億円以上には納税をさせるようになりましたけれども、昨今、資本金を一億円以下に、減税をする企業が何かどんどんどんどん増えてきているということで問題となっております。こうした問題を解決するためにも、法人税に累進税率を新設するということが非常に有効なのではないかと考えております。

 そこで、三点目でありますけれども、法人税に四段階の累進税率を新設したらどのような効果が考えられるかということでありますけれども、応能負担の原則が導入されるので、担税力に応じて負担してもらうことになるので、税金の増える企業も減る企業も出てきますが、どちらの経営者も、社員の待遇、特に給与を改善しようか、あるいは設備投資をしようかと考えるので、賃金が上がって、働く人にとっても。それから、いい社員を確保して自分のところのいい商品を作れば売れるようになったり、企業にとっても。税金が増える、行政にとっても、国にとっても地方自治体にとっても、よい税制となり、まさに三方よしということで日本復活の起爆剤になるのではないか、こう考えております。

 是非、そういった意味では、法人税に累進税率を入れて、やはり財政健全化に向けた大きな一つの一歩にするということを考えたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 福田先生から、法人税につきまして二点御質問をいただきました。

 一つは、法人に担税力に応じて税の負担をしてもらったらいいのではないかという御指摘だったと思います。

 これまでの成長志向の法人税改革におきましては、租税特別措置の縮減等による課税ベースの拡大によって財源を確保しながら法人税率を引き下げることによりまして、企業の積極的な投資や賃金引上げが可能な体質への転換を促してきたところであります。

 そして、今後の法人税制の在り方につきましては、これまでの法改正の効果を見極めるとともに、経済社会情勢の変化も踏まえつつ、税制全体の中で引き続きよく考えてまいりたいと思っております。

 そして、法人税に四段階の累進税率を新設したらいいのではないかという御提言でございました。

 法人税の累進税率につきましては、法人は、自然人である個人とは異なり、税負担を回避するために会社分割を行う可能性もあること、法人税制は、企業の規模、形態に対して中立的であることが望ましいことなどから、累進課税ではなく単一税率を採用しているところであります。

 四段階の累進税率といった御提案でございますが、今し方申し述べましたような結果を招く可能性があり、法人に対する累進税率の適用には課題があるのではないか、そのように考えているところであります。

福田(昭)委員 大臣、隣の韓国は四段階入れていますし、アメリカもトランプ以前は入れていました。トランプは企業経営者ですから、自分の会社のために比例税率にしちゃったんですよね。それから、イギリスの、辞めちゃいましたけれども、ジョンソン首相も、コロナで傷んだ財政を立て直すために法人税に累進税率を入れると言っています、まだ入れていないかもしれませんが。ですから、今やそういう時代だと思います。

 ですから、日本の財政が危機だというのにそんなのんきなことを言っていられないと私は思っておりまして、この間も言いましたから言いませんが、経団連の十倉会長の豹変ぶりを見れば分かるでしょう。これは、大企業の、税金が増える企業の経営者だったら、そんなに税金を取られるんだったら、じゃ、社員の給料を上げようかとか、そういうふうに思いますよ。設備投資しようかとか。私も数人の中小企業の社長と話していますが、それはいいねと賛同をたくさんの人からいただいております。

 それから、さらに、企業にとって、企業がどうやったら伸びるかというと、やはりTKCの税理士会長もこう言っていますよ。企業が自分の企業を伸ばすためには、付加価値を高め、納税をする企業になれ、こう言っていますよ。税金を納めるような企業になれ、そうすれば自分の企業はよくなるぞ、成長するぞ、こう言っていますよ。だから、税金を課すということが、むしろ企業を鍛えてよくすることにつながると私は思いますよ。

 余りにも、今までの日本って、円は安くするわ、本当に全て全て、消費税は還付しちゃうし、法人税は下げるし。こんなことばかりやっているから、実は遅れちゃったんだと思いますよ。失われた三十年をつくっちゃったんだと思いますよ。

 そこで、二つ目は、消費課税についてであります。

 先ほど伊藤委員からも質問がありましたけれども、第一点は、私は、適格請求書等保存方式、インボイス制度の円滑な実施に向けた措置は廃止をすべきだと思っております。小規模事業者に対する負担軽減措置は三年だけであり、その後はまた戻ってしまって事務負担が増えるので、やはり廃止した方がいいと思っております。

 一人親方や、文化、スポーツ、芸術振興に取り組むフリーランスの方々もみんな反対しております。複数税率になったから導入するんだ、EUでは全部の国がやっているからという考えはやめて、日本の伝統文化をちゃんと守ったり、あるいはアニメを始め新しい文化、もしかすると、これだってなくなっちゃうかもしれませんよ。アニメに取り組んでいる人たちは、きっとほとんど一千万以下ですよ、売上げ。そうしたら、日本が誇るアニメ文化だってなくなっちゃうかもしれない。

 そんなことを考えたら、やはり決断すべきだと思いますが、いかがですか。イエスかノーかで答えてください。

鈴木国務大臣 インボイス制度を廃止するかどうかということでありますが、イエスかノーかで答えろということでありますと、これが安定的な導入に結びつきますように、様々な軽減措置を取りながら、これを着実に導入をして進めてまいりたい、そのように思っております。

福田(昭)委員 一千万以下の収入の人たちも、特に一人親方の人たちは、今の適格請求書制度でもちゃんと納税しますよ、そういうふうに、ちゃんと彼らも言っていますよ。ですから、しっかり、そんなにいじめなくてもいいんじゃないかなというふうに私は思っています。小規模事業者にはインボイス制度で多大な事務負担をさせておいて、この後申し上げますが、多額の輸出免税還付金を、輸出産業を始め大企業からは多額の還付金をしておいて、小さな企業からはインボイス制度で事務負担をかける、こういうのは矛盾しているんじゃないでしょうかね。

 その次、時間の関係で行きますけれども、ロですけれども、輸出免税還付金。輸出は免税だから国税収納金整理資金に受入れするのか、しないのかでありますが、国税は全て国税収納金整理資金に受け入れてから、過誤納金などを還付して、正確な税金を一般会計や特別会計又は地方へ支出する仕組みとなっておりますが、輸出免税還付金は国の整理資金に納入されているんですか、いないんですか、どちらなんですか。お答えください。

鈴木国務大臣 輸出につきましては、消費税が免除され、売上げに係る税額は生じませんけれども、その結果、売上げに係る税額よりも仕入れに係る税額が大きくなる場合には還付となります。

 還付となる場合でありますけれども、還付ですから、むしろ国から出すわけで、国税収納金整理資金からの支払いとなります。したがって、同資金への受入れというものは生じないということでございます。

 また、法令上、輸出を原因とする還付を切り出して計算し申告することは求められていないわけでありまして、国税収納金整理資金から還付金を支払う際も、輸出を原因とした還付金を区分することはいたしていないというところであります。

福田(昭)委員 それでは、今まで私が三回聞いても答えてもらえなかったんですが、令和三年度の輸出免税還付金は国と地方を合わせて幾らなのか、教えていただきたいと思います。どうしても教えられないということであれば、教えられない理由をちょっと教えてください。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたが、輸出につきましては、消費税が免除をされ、売上げに係る税額は生じませんけれども、その結果、売上げに係る税額よりも仕入れに係る税額が大きくなる場合には還付となるところでございます。

 しかしながら、事業者において輸出分に係る仕入れをそれ以外の仕入れと切り分けることは困難であると考えられるために、法令上、輸出を原因とする還付を切り出して計算し申告することは求めていないところでございます。したがいまして、輸出を原因とした還付の額を明確に切り分けることは困難であること、このことについての御理解をいただければと思うところであります。

福田(昭)委員 そうすると、売上げ一千万以下の小規模事業者より、もっとひどいんじゃないですか。だって、実際に還付しているんでしょう。実際に還付しているのに、輸出に係った消費税がどれだか分からないというのでは、その還付がでたらめだということにもなりかねませんよ。

 だって、消費税法には、輸出は免税とするしか書いておりませんから。何で免税するんだという理由が書いていないんですよね。輸出はどうして免税とするのか、これが、EUがやっているからという理由では理由にならないような気がするんですが、きちっと、輸出は免税とする理由を消費税法に書かなくちゃいけないんじゃないですか。

 例えばですけれども、消費税法にはこう書いてあるんですよね。消費税における非課税取引は大きく言って二つあって、一つは、税の性格から課税対象とならないもの、土地の譲渡及び貸付けなど、有価証券など。それから、二つとして、社会政策的な配慮に基づくものということで、医療保険各法等の医療とか、介護保険法の規定に基づく居宅サービス、施設サービスなどとか。こうした、税の性格から課税対象とならないもの、社会政策的な配慮に基づくものと、二種類法律に指定されているわけですが、輸出は何で税率ゼロで免除になっちゃうんでしょうかね。その理由を簡潔に教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきました非課税取引に関しましては、取引の性質上、非課税とされている土地取引等でありますとか、社会福祉事業のように、政策上、非課税取引とされているものがございます。これは御指摘のとおりでございます。

 ただ、これは非課税取引でございまして、売上げが非課税とされる一方、仕入れに係る税額については非課税取引に対応するものは控除しないという取扱いになっておりますので、輸出の免税の場合とは異なるということでございます。

 その上で、輸出が免税とされている理由でございますが、これは世界各国の付加価値税、消費税において共通のルールでございますが、消費税、付加価値税は国内の消費者に最終的な負担を求める税金でありますので、外国で消費される輸出に係る売上げについては免税とされるということが国際的に共通のルールとなってございます。そのため、輸出企業については、売上げに係る消費税が生じない一方で、仕入れの際に支払った消費税額を控除することにより結果として還付が生じる場合があるということでございます。

福田(昭)委員 それはいいですよ。いわゆる、WTOとOECDが仕向地主義ということで、今主税局長が言ったようなことを書いてあります。だから、消費税は返すんだということが書いてありますので、それはよく私も勉強しておりますから、それは結構でございます。

 だから、問題は、国内の消費税法、日本の消費税法にきちっと書かないと駄目なんじゃないですか。だって、輸出は免税とするなんということを知っている国民はほとんどいませんよ。しかも、多額に上るんじゃないですか。だって、平成元年に消費税をつくってから幾ら還付したかは教えないんですよ、国は。発表しないんですよ。

 それも、事業主が仕訳が大変だからというのが財務大臣の理由じゃないですか。それを考えたら、小規模事業者がインボイス制度で仕訳するのとどっちが大変ですか。大きな企業の方が事務職員はいっぱいいて、スタッフはいて、ちゃんと公認会計士や税理士も雇えて、そっちの方が簡単にできちゃうじゃないですか。しかも、毎日毎日、備付け簿に、誰さんと取引をして消費税を幾らもらったか、幾ら払ったかというのをつけているでしょう。大きな企業であればあるほど、それをちゃんと処理する、それこそ電算システムだってあるんじゃないですか。そうしたら、幾らだって出せるんじゃないですか。

 今後、やはり法律を改正して、そこを明らかにすべきだと思います。そこは財務省の怠慢だと私は思いますよ。

 それでは、その次に行きますけれども、二番目の、徴収した消費税額の二〇%以上を還付する税金は公平と言えるのか、適正と言えるのか。

 消費税は仕訳していないから還付金を発表できないという話ですが、平成三十年度決算では、国、地方合わせて、消費税額が、税務署分と税関分を合わせて二十九兆七百四十五億円、一応徴収されました。還付金が六兆六千二百五億円です。還付率は二二・七七%。二三%近く、実は消費税を還付しちゃっているんですよね。このうち、輸出免税還付金が幾らだか分からないんですが、過誤納金は多分ほとんどないと思うので、ほとんどがどちらかというと輸出免税還付金かなと思いますが、この傾向は、実は、平成十五年度以降、二〇%前後還付されております。

 こうした多大なお金を還付してしまうような税金が本当に公平な税金と言えるのか、適正なのか、ちょっとお答えください。

鈴木国務大臣 徴収した、その二〇%以上の多額の還付金が生じているということで、公平、適正と言えるのかという御質問であったと理解をいたしましたが、消費税の還付につきましては、輸出取引を行っているか、国内で事業を行っているかにかかわらず、売上げに係る消費税額から仕入れの際に支払った消費税額を控除をして、マイナスとなれば還付が生じることになっております。

 輸出との関係で申し上げますと、消費税は国内の消費者に最終的な負担を求める税金であるために、諸外国の付加価値税と同様に、外国で消費される輸出に係る売上げについては消費税は免税とされております。そのため、輸出企業には、売上げに係る消費税が生じない一方で、仕入れの際に支払った消費税額を控除することにより還付が生じるということになるわけであります。

 輸出取引を行っていない事業者も、売上げに係る消費税額から仕入れの際に支払った消費税額を控除しておりまして、輸出企業が何らかの優遇を受けているわけではないために、公平性や適正さについて問題があるとは考えていないところであります。

福田(昭)委員 大臣、同じ答えを何度もしなくていいですよ。申し訳ないけれども。

 次に、それでは、括弧三ですけれども、消費税のメリット、デメリットについてでありますが、時間の関係で、これは次の機会に回したいと思います。

 ハの、人頭税と同質の消費税を全世代型社会保障の財源とするのか、消費税で財政健全化ができるのかであります。

 先日も指摘をいたしましたが、消費税は消費活動、経済活動に罰金を科すようなものですから、税率を上げれば上げるほど景気は停滞します。しかも、一人頭一〇%と八%を徴収するという、人頭税と同じ性質を持っていますから、税の根本原則である応能負担の原則に反します。累進税率のある所得税や、法人税に累進税率を新設して財政の健全化を図るべきだと思いますが、しかし、こうした考え方が先ほどないというのが分かりましたので、指摘だけしておきます。

 ニですけれども、物価高対策として、全ての国民、中小・小規模事業者に恩恵が行き渡る消費税率の引下げをしませんかということであります。

 大臣、実は、消費者物価は四%を超えている、企業物価は一〇%を超えている、その差は六割もありますけれども、日銀が一月十一日に実施した、生活意識に関するアンケート調査というのがあります。その調査によりますと、物価に対する実感を聞いたんですね。消費者の人たちが、実際に上がった物価じゃなくて、体感として、体で感じた物価はどれぐらい上がっているかというのを聞いたんですよ。そうしたら、一年前に比べてどれだけ上がったか、平均値が何と一二・一%、前回が去年の九月ですが、このときが一〇・三%で、中央値は一〇%でした。

 本当に、ですから、それぞれ消費者が、特に家庭の主婦が、実際に買物をしていたらば、要するに、数字に表れる物価上昇率よりも、本当に物すごい物価の上昇を体で感じているわけです。買物をしながらですよ。

 ですから、そんな中で、確実に、消費税率五%に下げれば五%物価は下がる、これを下げれば多くの、全ての人に恩恵が行き渡る、こういうのを是非やるべきだと思いますが、物価高対策として、いかがですか。やりませんか。

鈴木国務大臣 福田先生から、今の物価高騰に対して消費税を下げることで対応したらいいのではないかという御提案でございましたが、政府といたしましては、この物価高騰に対しましては、家計への影響が大きい低所得世帯を始め、きめ細やかな支援策を重層的に、また切れ目なく講じてきたところであります。

 今先生から、体感の物価高は大きいというお話がございましたが、これはやはり、エネルギーそれから食料といった、必需品と言ったらいいんでしょうか、そういうものの値上がりが大きいから体感の高騰感が大きいんだ、そういうふうに思います。

 政府でも、こうした国民経済に広く影響を及ぼすエネルギー価格高騰に対しても、電気・都市ガス料金の負担緩和策等によりまして、一月使用分から家庭において電気料金の二割程度を値引きすることなどによりまして、来年度前半にかけて、標準的な世帯においては総額四万五千円程度の負担軽減を講じることとしております。また、燃料油価格につきましても、激変緩和措置を講じることで対応をしているところでございます。

 その上で、急速な高齢化に伴い社会保障給付費が大きく増加する中におきまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源として消費税は位置づけられているわけでありまして、これを減税をするということは考えていないところであります。

福田(昭)委員 大臣、電気料金は、一旦下がるけれども、またこの春に上がるんですよ。電力各社が値上げ申請しておりまして、また上がっちゃうんですよね。

 それから、この間も申し上げましたが、ガソリン価格等も、トリガー条項凍結を外せば、要するに、予算措置よりも安いお金でガソリンは下がるし、灯油などもそれに準じて下げれば、それでも多分、予算措置を下回ると思いますよ。だって、二か年で六兆二千億だというじゃないですか。それはちょっと、それよりも安いお金でガソリンが下がったり灯油が下がったりすると思いますよ。本当に、ですから、お金の使い方が間違っていると思います。しかも、元売が円安と補助金で過去最高の利益を上げたというんですよ、ガソリンのですよ。だから、ちょっと考え方がおかしいと思います。

 それでは、次に、失われた三十年の原因と解決方法について、残された時間がだんだん少なくなってまいりましたが、行きたいと思います。

 一つ目は、日経新聞の「チャートは語る」、昨年の十二月二十五日の指摘についてでありますが、資料の二を御覧いただきたいと思いますが、大見出しは、「硬直財政 成長阻む悪循環」「政策経費三割どまり 税収伸び、米欧に見劣り」と。それから、チャート、「成長が鈍れば税収も低迷」、政府収入、税収など、二十年前比ということで、過去二十年間の平均実質GDPの成長率、「日本は社会保障費の膨張が他の政策経費を圧迫する」「日本は未来に向けた政府支出が少ない」、GDP、研究開発費、教育、社会保障、三つ挙げております。

 ここで問題なのは、やはり、財務省の皆さんのマスコミを通したレクチャーが行き届き過ぎているということです。

 その一つは、税収の伸びが米欧に見劣りするとありますが、日本は消費税創設と併せて、前も指摘しましたが、法人三税、所得税、住民税、金融所得課税を大幅に引き下げたからであって、現行の税制が駄目だから税収が伸びていないということであります。それは資料の三で示しております。

 資料の三を御覧いただきたいと思いますが、これは、元国税庁の検査官で、それこそ中央大学の名誉教授の富岡先生がまとめた資料を、私の事務所で更に見やすく整理したものであります。

 「「社会保障の充実」目的のはずなのに! 法人税と所得税・住民税減税の穴埋めに消えた消費税収」ということで、何と、減収額の方がでかくて、消費税でいただいたお金を百七十六兆円も上回って、赤字の方が税金は多い、こういう数字でございます。これはまさに国税庁の元検査官の先生がまとめた資料でありますので、全く現実味のある資料であります。こういうでたらめな税制をやっているから、実は税金が伸びなかったし、そういう資料でございます。

 それから、その二つは、社会保障費の膨張が他の政策経費を圧迫すると言っておりますが、しかし、それは、ある程度の理由にはなっていると思っておりますが、私は、国の予算編成が行政需要に応じたものになっているかどうか、なっていないからだと思っています。社会経済の変化に応じて、必要性が薄くなった分野を削って、必要性が増した分野にやはり予算を振り向ける、そういうきちっとした予算編成ができていないからだと思います。

 新型コロナ緊急拠出金の不用額が、前回も指摘しましたが、会計検査院の指摘によると、令和二年度、何と、四兆六千七百七十四億円の不用額、令和三年度、四十四兆四千四百八十九億円もの不用額。このようなずさんな予算編成、こういったことが、私は、必要な経費を圧迫しているんだ、こう思います。

 それから、先ほども申し上げましたが、ガソリン税の補助金なども、これもしっかり、凍結を外して、二十五円十銭下げてやれば、多くの人たちが、全ての人が喜ぶ話であります。

 まさに、そういった意味では、予算編成が、幾ら重点項目をつくって、各省庁二割カットしろ、それを拠出しろ、それを政府が重点分野に充てるからと言っても、各省庁みんな頭がいいから、何だかんだ理屈をくっつけてそこは予算を出してくるんですよ。そして、査定したら、結果として各省庁のシェアリングは全く変わっていなかったというのが、ずうっとやってきたことですよ、政府が。ですから、そんな予算編成をやっているから駄目なんです。

 都道府県や市町村は、首長が替われば、予算のつけ方ががらっと変わります。そうすれば、まさに、予算は、お金は、国民の大切な税金は、効率的に使われるところに、必要なところにきちっと予算が行く。そういう予算編成ができていないということであります。

 それでは、次に、括弧三へ行きますね。失礼しました、括弧二がまだあるんだな。消費税創設と法人三税、所得税、住民税の大幅な減税が財政危機を招いていると思わないんですかということでありますが、ここは、はっきり、一目瞭然なので、これは飛ばして、時間の関係で、括弧三に行きますね。

 先日、鈴木大臣は、IMFの基準に照らして財政危機ではない、こう言いましたけれども、本当かどうかという話です。

 先日、IMFの報告書によると、財政危機の事例として、鈴木大臣は、債務返済の不履行が発生していること、IMFなどから例外的に大規模で公的な財政支援を受けていること、市場からの資金調達が困難になるなど、市場からの信頼が失われていることなどのケースが挙げられており、我が国はそのような財政状況にはないから財政危機ではない、こうおっしゃいましたけれども、大臣、しかし、この状態はもう財政破綻状態じゃないですか、IMFのこの事例は、ケースは。いわゆる財政危機なんじゃないですか、今は。ですから、こういうIMFが指摘しているような事例を挙げたら、あら、もうバンザイしちゃった、こういうことなんじゃないですか。ですから、全く政府の認識は私は間違っていると思いますよ。ですから、もう財政破綻が迫っている、そういう財政危機にあると考えた方がいいと思います。

 元内閣府の官僚でありました島沢論さん、関東学院大学教授でありますが、彼が日経新聞にこういう論文を書いています。「財政政策と国債増発の行方」「破綻回避の期限は二〇三六年」と。財政は拡張的であり歳出規模の削減が必要だ、政府規模の過度の拡大は経済成長を抑制してしまう、日銀の長短金利操作をやめ市場規律回復を、こんなことを書いております。

 しかも、最近の予算編成を見てみますと、補正予算の方がでかいんですよ。指摘しておきますと、経産省の補正予算、ひどいですよ。補正予算の方が当初予算の四倍あったりですよ。今年はもっとひどいかな、多分。本当に。

 ですから、やはり、決算ベースで物事を考える。政府は、予算ベースでばかり、それこそ、補正予算で国債を使っちゃったりして、国債の依存度が当初予算は減った減ったと言って宣伝していますけれども、こんなことを繰り返しているから駄目なんだと思いますよ。ですから、きちっとしたやはり予算編成をやる、そしてそれはあくまでも決算ベースで考える、そういうことをやらなければ、財政健全化への道はどんどんどんどん遠のくと思います。

 先日、二〇二五年度には、無理やり、何かプライマリーバランスを黒字化するんだということを決めたようでありますが、しかし、昨日の報道でも、何と、一月の貿易赤字が最大となった、三・四兆円が赤字だというのが出ました。これは、この間も指摘したように、もし貿易赤字が大きくなっていって、経常収支まで赤字になったら、国債がだんだん発行できなくなりますよ。今のところは、それはまだ発行できるかもしれません。しかし、貿易収支の赤字が大き過ぎますからね。だから、所得収支と合わせた経常収支が赤字になったら、国債の信認だって失ってしまいますからね。ですから、今から準備をしなければ、私は、本当に財政破綻状態になってしまうと思いますよ。

 財政破綻状態になったら大変じゃないですか。太平洋戦争に負けた後、当時の政府が何をやったかというと、当時の政府がやったのは、一つは預金封鎖でしょう。二つ目が新円切替えですよ。三つ目が財産税ですよ。預金封鎖して、せっかく政府が優遇税制で法人の内部留保資金五百八十五兆円もため込ませた、貯金を積ませた、家計の金融資産二千兆円を超えた、現金、預金は一千百兆円もある、こんなふうに、政府がでたらめな税制で、金持ち優遇、大企業優遇でため込ませた貯金、これが紙くずになっちゃうんですよ、太平洋戦争に負けたときと同じようになれば。

 ですから、そんなことを言ったら、今からきちっと予防していかないと駄目なんじゃないですか、基本的に。だって、これはもったいないと私は思いますよ、それだけせっかくため込ませたものを。だから、そうしたため込ませたものは、企業の皆さんも大金持ちの皆さんも大事に使ってくださいと。その代わり、これから毎年毎年発生する所得があるはずです、大企業もそれから大金持ちも。なぜかというと、今、株主・金融資本主義ですから。お金でお金をもうける資本主義ですからね。必ず発生しますから、毎年毎年。ですから、これからは、国の危機を救うために、大企業の皆さんも大金持ちの皆さんも、国民のため、国家のため、奉仕をしてくださいと。そのため、能力に応じて、応能負担の原則に基づいて、それこそ法人にもちゃんと累進税率を入れて。

 だって、ひどいじゃないですか。中小企業が八百万超えれば二三・二%の税率。一兆円利益があっても、二兆八千億ある大企業だって二三・二%ですよ。これじゃ、税金は入ってこないじゃないですか。やはりそういうところには累進税率を入れて、もうちょっと能力に応じて負担してもらう。それだって潰れませんよ、それだけの大企業は。大金持ちだってそんな、使い切れないほどのお金を持っているから。だから、政府は、NISAなんというものを拡大をして、一千百兆円の現金、預金を是非株式などに投資をさせようなんということを考え出したんじゃないですか。

 そんなことよりも、ちゃんと税金を納めてちょうだいと。所得税の方も、ちゃんと累進税率を、もう少し課税段階も何段階か増やしたり税率も上げたりして、もう少し所得税も、また金融所得課税も、ちゃんと増やしてください、それで日本の財政危機を是非救ってください、こうやるのが政府の役目じゃないですか。だって、もうどんどんため込んじゃっているんですよ。もうそれ以上ためなくたっていいじゃないですか。だって、政府が破綻したら紙くずになっちゃうんですよ、せっかくため込んだやつが。そうさせないようにするのが政府の役目じゃないですか。

 私はそう思いますが、質問時間が終了しましたので、いずれまたやらせていただきますが、一応、今日の質問は以上で終わりにします。

 以上です。

塚田委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲民主党会派を代表して御質問させていただきます。

 まず、一問だけなんですが、ちょっと、所得税法ではないんですけれども、最初に一点確認させていただきたいということで確認させていただくんですが、二月十五日の予算委員会で総理が、我が党の馬場議員からの質問に対して、家族関係支出は二〇二〇年度の段階でGDP比二%を実現しています、そして、それを更に倍増しようではないかということを申し上げているわけですと、はっきり御答弁されました。

 そのとおりだとしますと、家族関係支出、GDP比四%ということになりますので、二十兆円ほどになる、今から追加で十兆円ほどの予算が必要になるということでございます。

 一方で、昨日でございますけれども、磯崎官房副長官が、将来的な倍増を考える上でのベースとしてのGDP比に言及したわけではない、子供予算を更に強化することにより、防衛費との関係においても決して取組が見劣りするわけではないという趣旨を申し上げたと、かなり不可解なことをおっしゃられ、さらに、午前中も松野官房長官が、これはそういう趣旨でしたという、何を言っているのかよく分からないことをおっしゃられているんですけれども。

 これはやはりはっきりしないといけませんので、是非、財政を担当する財務大臣として、これはだって追加で十兆円必要なんですからね。これは一体全体、四%を実現するつもりがあるのかないのか、十兆円を確保するつもりがあるのかないのか、お答えください。

鈴木国務大臣 このことにつきましては、午前中の予算委員会でも質問がありまして、そして官房長官からお答えがあったわけでありまして、私も、政府の一員として、官房長官の発言を私の意見としているところでございます。

 朝の予算委員会でも言われたわけでございますけれども、先日の国会での総理の答弁、これは防衛力強化の取組との比較を問われた際に、政権交代以降、保育の受皿整備など、必要な支援を進め、子供予算をしっかり拡充してきたことを説明する中で、その一つの例として、国際比較可能な家族関係社会支出対GDP比という指標で見ると、十年前の二〇一二年度の一・一%から、二〇二〇年度には二・〇%まで増えてきたというこれまでの取組を紹介し、子供予算を更に強化することにより、防衛費との関係においても決して取組が見劣りするわけではないとの趣旨を申し上げたものと承知をいたしております。

 したがいまして、将来的な倍増を考える上でのベースとしてこの家族関係社会支出対GDP比に言及したわけではない、そのように承知をしております。

米山委員 この問題を押し問答するつもりはないんですけれども、ちょっと整理だけさせていただきますと、事実として明らかなのは、岸田総理もそうなのかもしれませんが、ともかく政府として、このGDP比四・〇%、二十兆円を実現する気はない、これは事実なんだと思います。

 今ほど御答弁いただいた、いや、岸田総理は、先ほどの、岸田総理の答弁はGDP比四%という意味で言ったんじゃない。これは鈴木大臣の解釈でございまして、皆さんが御都合のいいように岸田総理の答弁を、誰が見たってそうじゃないだろうことを御都合よく解釈されているだけでございますので、それはそういうものだということでお聞きいたします。

 それでは、私の質問に入らせていただきます。NISA拡充について御質問いたします。

 今般の所得税法改正の目玉はNISAの拡充であると伺っております。財務省からいただいた資料におきましても、何せ一番トップのところにNISA拡充が出ております。

 ところでということでございますが、一昨年、二〇二一年九月八日、自民党総裁選に出馬を表明されたときに、岸田総理、格差是正に向けて、従業員の賃上げに取り組む企業への税制支援や金融所得課税の見直し、教育費、住居費の支援などを盛り込んだ令和版所得倍増というものを発表されました。発表されたんです、皆さんもうお忘れかもしれませんけれども。

 ところが、総理になられるや、二〇二二年五月五日に、なぜか日本ではなく、イギリスのロンドンの、しかも、なぜか金融街シティーで、資産所得倍増プランに着手する考えを明らかにして、十一月二十八日に発表されております。いつの間にか、所得倍増が資産所得倍増プランに変わったわけでございます。

 そして、その目玉がこのNISAでございまして、五年間でNISAの総口座数、これを現在の千七百万から三千四百万へと倍増する、五年間で、NISA買い付け額を現在の二十八兆円から五十六兆円へと倍増させるという短期目標が書かれておりまして、これらの目標の達成を通じて、中間層を中心とする層の安定的な資産形成を実現するため、長期的な目標としては資産運用収入そのものの倍増も見据えて政策対応を図ると書かれております。

 御質問なんですけれども、これはどこからどう見ても、金融投資でお金をもうけるという資本家としての金融所得倍増。資産倍増というのはそういうことです。しかも、NISAというのは株式投資ですからね。だから、どこからどう見てもこれは金融所得倍増なわけでございまして、所得再分配もくそもないといいますか、全然格差是正じゃないんだと思うんです。

 これはどう見ても、所得再分配はしません、資本のある人が株式に投資してもっともうけてください。つまり、新しい資本主義ではなくて、元々の、むき出しの資本主義であると思うんですけれども、岸田内閣は、もう新しい資本主義といいますか所得再分配は諦めて、むき出しの資本主義に方針転換したということでよろしいですか。財務大臣の御所見を伺います。

鈴木国務大臣 新しい資本主義は、成長も分配もを目指すものでありまして、資産所得倍増プラン、これは、我が国の家計に眠る現預金を投資につなげることで、我が国企業の成長投資の原資となり、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で企業にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を実現させるために策定されたものであります。

 その中で、例えばNISAの拡充に当たっては、高所得者層に偏ることなく、中間層を中心とした層が貯蓄から投資へのシフトを通じた金融資産所得の拡大の恩恵を受けられるように取り組んでいます。

 具体的に申し上げますと、年間投資枠や一生涯にわたる非課税保有限度額を設定することによって、投資余力が大きい高所得者層に対する際限ない優遇とならないように留意をしております。また、こうした一定の制限を設けつつ、制度の恒久化や非課税保有期間の無期限化を併せて行うことにより、これから投資を始めようとする若い世代の方々や、資金に余裕があるときに集中的に投資を行うニーズのある方々など、幅広い層にとって使い勝手のよい柔軟な制度となるようにしております。

 資産所得倍増プランでは、このほかにも、金融経済教育の推進により家計に広く働きかけを行う施策なども盛り込んでおり、こうした様々な施策を動員し、家計の資産所得倍増につなげてまいりたいと考えております。

 所得再分配は放棄して、資本のある人がよりお金をもうけるという方向に変化したとは考えておりません。

米山委員 今るる御説明されましたけれども、それは、使い勝手はいいかもしれませんけれども、それを使うにはお金が要りますのでね。それはもう本当に所得再分配じゃないんですよ、単にお金がある人が更にお金をもうける、そういう制度ですので。それは否定されるんでしょうけれども、明らかに単なる資本主義、むき出しの資本主義です。

 そして、次にお伺いしますけれども、それはそれとして、資産所得倍増を今おっしゃられました。目指すというからには、これは子供予算倍増でもそうなんですけれども、今資産所得が幾らあって、それを幾らにするかがないと倍増と言えないですよね。倍というのは二ですから。倍増の倍率だけきちんと数字が分かっているのに、母数と結果が分からない、それはおかしいですよ。

 なので、まず、倍増というからには、当然、政府の方では、それぞれの世代について、二十代から八十代までのそれぞれの十年ごとの世代、そして全世代平均で、資産所得の、資産所得ですよ、資産所得の平均値、中央値、最頻値を持っていると思いますので、その資産所得の平均値、中央値、最頻値のデータを教えてください。

 そしてまた、資産所得がゼロの人、これも結構いるはずですから、資産所得ゼロの人の割合も教えてください。

鈴木国務大臣 御指摘の資産所得の平均値、中央値、最頻値、それから資産所得のゼロの人の割合につきましては、残念ながら、それらのデータを政府として把握しておらないところでございまして、したがって、お答えすることが困難であることを御理解いただきたいと思います。

米山委員 そうしますと、資産所得倍増って一体何なんですかという話になるんですよ。何せ資産所得ゼロの人も結構いらっしゃるわけなんですけれども、ゼロは倍にしてもゼロだから、それでいいという話なのかと。

 一体全体、何がゴールなのか分からない、そんなものが経済政策の目玉、成長戦略の目玉というのは、それは余りにも雑といいますか、何かプランになっていないでしょうということだと思うんです。それは、せめて、今からでも結構ですので、だって、分かるでしょう、財務省、納税履歴を見れば。一定程度調べる方法はある。それは、絶対、すごい正確でなくたっていいわけですから、ある程度推計で調べる方法はあると思いますので、それは政府の目玉政策なんですから、今一体全体どのぐらいの資産所得があるのか、それは是非示していただきたい。

 そして、資産ゼロの人が一体何%いるのか。資産ゼロの人が例えば八割とかいるんだったら、この政策は八割の人置き去り、それが今の政府の政策だということになりますので、逆にそうでないということを示していただかないとそれはちょっと納得できませんので、是非これはちゃんと調べてお示しいただければと思います。

 これは、お諮りいただいてよろしいでしょうか、出していただけるように。

塚田委員長 ただいまの資料要求につきましては、後刻理事会で協議いたします。

米山委員 そして、いずれにせよ、そこは全然、現在値も目標値も分からない前提で、金融所得を倍増する、資産所得を倍増するということであるとして、新しい資本主義実現会議決定、令和四年十一月二十八日の決定では、所得別のNISAの状況を見ると、今ほど大臣がおっしゃられたように、NISAを利用する個人の七割は年収五百万未満である、また、所有資産額別では、NISA利用者の過半数は世帯保有金融資産が一千万未満となっている、我が国の家計の平均保有金融資産額は単身世帯が千六十二万円、二人以上世帯で千五百六十三万円であることに鑑みると、NISA制度は中間層を中心とする層の資産形成のために活用されていることが分かると。

 各世代のNISA口座の開設状況を見ると、どの世代でもおおむね二割の国民が口座を開設している、三十代まではつみたてNISAの開設が多く、四十代以上では一般NISAの開設が多い、特に足下では二十代から三十代の若年層の買い付けが伸びている、六十歳代以降の買い付け額は一般NISAが多いなどと書かれており、幅広い世代で使われているというふうにこの決定の中でアピールされているわけなんでございます。

 ただ一方、これは公表されているものなんですけれども、お配りした資料一を御覧ください。

 じゃ、本当にそうかいなと思って、それぞれの、二十代、三十代の人口から計算しますと、この第七コラムのところを見ますと、確かに口座開設数は一一パーから二〇パー弱ぐらいそれはあるんだなと。それはそのとおりかと思います。

 ところでということで、それぞれの人口でその買い付け額を割ってみますと、大体一人当たり七万円とか、二十代で七万円、三十代で十九万円、一番多い六十代でも四十三万円とかという額がためられているわけなんです、買われているといいますかね。

 正直、ほとんど何の足しにもならなくないですか。二十万なり三十万なり買ってもらうことは、ちょっとはいいことかもしれませんけれども、何か、社会保障とか、このNISAを持つことが個人の生活にとってどれほどのインパクトを与えるのか。ほとんど与えないんじゃないですかということだと思うんです。

 さらに、次のページを見ていただけると、とはいえ、本当にそうかいなと思ってよく見ると、よく見ましょうということで、利用状況を見てみますと、何と、NISA口座はつくったけれどもゼロ円の人、二十代で四五%、三十代で四二%、四十代で四三%、五十代で四五%、七十代で五五%、八十代で七三%。これは、全部平均すると、五一%が、口座はつくりましたがゼロ円。それは、お得だから口座はつくってみようと、先ほど石原議員からのお話もありましたけれども、石原議員のお友達はきっと大量に買うんだと思いますけれども、半数の人は実は使っていないんです。

 そうしますと、結局、本当に使っている人は、人口の二割の更に半分なので一割しかいないということだと思うんですが、正しいとは思うんですけれども、事実上これは一割ぐらいしか本当には使っていないということでよろしいでしょうか。

堀本政府参考人 御質問の数字の点について、私の方から御説明申し上げます。

 議員が御質問されました、全体で五一%がゼロという数字でございますけれども、これはNISAのうちの一般NISAと言われている制度の数字でございます。NISAにはこれ以外に、つみたてNISA口座というのがございまして、これについては、ゼロ円というのは二八・三%、裏を返せば稼働率は実は七一・七%でございます。

 それから、議員御指摘の二十四万二千八百十円、平均の数字でございますけれども、これはNISAの累計買い付け総額を総人口で割った数字だと思います。それはその数字でございますけれども、御承知のとおり、NISAは人口の全ての方が使っているわけではございませんので、NISAの口座数で割りますと百四十四万七千円でございます。

米山委員 それは私もそのとおり、おっしゃるとおり把握しております。

 ただ、つみたてNISAはゼロ円はないんですよ、でも、積立てなので、本当、五万円とか、それはほぼほぼゼロ円でしょうというようなところがいっぱいいるので、それは分かりづらいので一般の方をやりましたが、要は、大して変わらぬです。結局のところ、本当に使っているのは一割ぐらい。

 おっしゃるとおり、全人口じゃなくて二十代以降の人口で割っているんですけれども、人口で割ると二十四万で、使っているのは一割だから、結局、一割の人はざくっと平均すると百四十万なり、若しくは、口座数で割らないでゼロ円のところを省いて割れば、恐らくこれは倍ぐらいになるから、二百何十万。使っている人は二百何十万使っていて、でも、使っている人は一割にすぎないというのがNISAの実情だと思うんです。

 ですので、また話を戻しますけれども、これは結局、一割の人だけを優遇する、二百何十万円か株を買える一割の人だけを優遇する政策だ、むき出しの資本主義だと思うんですけれども、先ほど財務大臣に聞きましたので、金融担当大臣の御所見を伺います。

鈴木国務大臣 現状におきまして、NISAの利用者の七割は年収五百万円未満であり、また、過半数は世帯保有金融資産一千万円未満となっておりまして、NISAは中間層を含めた幅広い層の資産形成のために活用されていると考えているところであります。

 また、資産所得倍増プランは、こうしたNISAを更に使い勝手のよい柔軟な制度にすることや、個人の金融リテラシーを向上させ、ライフプランに応じた適切な資産形成を支援する観点から、金融経済教育を推進することなどを通じまして、利用者の裾野を更に大きく広げていこうとするものでありまして、現状の利用者だけが更に豊かになることを推進するものとは考えていないところであります。

米山委員 ちなみに、先ほど来、NISAを利用する個人の七割は年収五百万未満だと言っておられますけれども、それは統計の誤用と申しますかね。それは単に、日本人の、七割かどうかは分かりませんけれども、多くは年収五百万未満であると。特につみたてNISAになったりすると、若い人が多いわけですから、若い人のほとんどは年収五百万以下であるということを反映しているにすぎないわけなんです。それをもって、あたかもNISAが年収五百万以下の方々の資産形成に非常に寄与しているかのように言われるのは、明らかにミスリードだと思います。だって、実際、一割の人しか使っていないんですから。そういうミスリードなことをされるというのは本当によろしくないと思います。

 正直に、これは本当に一部の人しか、今後改善したいというのはそれはそれでいいんですけれども、少なくとも、現時点において、人口の一割の、余裕のある人しか使っていないものだというふうにおっしゃられるのが、私は正直だと思います。

 そして、ちょっと繰り返しみたいになって恐縮なんですけれども、そうであれば、ひたすら、NISAをどんどんどんどん、先ほど、二月十三日、NISAと言えばどんどん広がるみたいなことをおっしゃられていましたけれども、いや、違うでしょう。実際問題、もうNISAを登録しているのに、五割の人は使っていないわけですよ。なぜか。NISAを知らないからじゃないですよ、NISA口座を開設したんだから。お金がないからですよ。

 だから、口座数を増やすなんということよりも、まず、賃金を増やす方向の政策にした方がいいんじゃないですか。それが真っ当じゃないですか。使われていないNISAをどんどんどんどん増やして、これからまた倍増したって、その倍増のうちの半分は使われないですよ。もっと使われないかもしれませんよ。そんなことに、二・一三はNISAの日なんということに宣伝費を使うんじゃなくて、まず、個人の所得を増やす政策を使うのが真っ当だと思うんですけれども、大臣の御所見を伺います。

鈴木国務大臣 国民の所得を引き上げていくということにおいては全くそのとおりであると思いまして、岸田内閣におきましても、賃上げなどを通じまして所得を引き上げ、成長と分配の好循環を進めていくことが重要だと再々申し上げているところでございます。

 こうした考え方の下、政権発足当初から、賃上げ税制の拡充、公的価格の引上げなど、賃上げに向けた取組を行っているところでありまして、昨年の春闘においても、官民が連携した取組の結果、賃上げは過去二十年間で二番目に高い引上げ率となったと認識をいたしております。

 さらに、政府としては、賃上げに取り組む中小企業等の生産性向上の支援の拡充等に取り組むとともに、成長分野への円滑な労働移動を人への投資の強化と一体的に進めることで構造的な賃上げを実現をして、国民の所得を引き上げてまいりたいと思っております。

米山委員 この議論は、じゃ、次に移らせていただいて、とはいえ、少なくともこのNISAによって投資と成長の好循環は起こる、分配の話はさておくとして、起こるということが政府の政策の目的だと思うんですけれども、例えば、これが目標のとおり、今の二十八兆円から五十六兆円に増えたとして、それは、二十八兆円分、何かお金が湧いて出てきたわけじゃないわけですよね。もちろんそれは投資に向かう前に若しくは貯金されていたお金かもしれないし、やはり、じゃ、消費をやめて投資にしよう、そう思ったお金かもしれないわけなんです。二十八兆円増えたから二十八兆円分、何かそのまま効果があるというのは、プラスはあるかもしれませんけれども、当然マイナスもあるわけですよね。

 さらに、東証の時価総額はおおむね七百兆円規模だと思うんですけれども、二十八兆円、それはそれなりの規模かもしれませんが、とはいえ、一〇パーで七十兆円で、それの更に半分以下なわけだから三、四パーみたいな話で、そんなにこれ、効果あるかなという話だと思うんです。

 だって、今だって使用率が五〇%程度なものを、無理やり無理やりやって二十八兆円から五十六兆円にして、一体全体どんなふうに日本経済は成長すると思っておられるのか。試算でも結構ですので、概略で結構ですので、その道筋をお示しいただければと思います。

鈴木国務大臣 数字の試算ではございませんけれども、資産所得倍増プランでは、五年間でNISA買い付け額を現在の二十八兆円から五十六兆円に倍増させること、これを目標といたしております。そして、そのことが日本経済に与える影響はということでありますが、これは、実際にどのような株式、投資信託、債券にそれぞれどの程度の規模の投資がなされるかなどにより様々であるために、具体的な数字でお答えすることは難しいということでございます。

 その上で、一般論として申し上げれば、まず、資産所得倍増プランでは、家計に眠る現預金を投資につなげることで、勤労所得に加え金融資産所得を増やしていくことを目指しており、これが家計の可処分所得の増加となって、消費の増加につながることが期待できると考えます。また、家計の投資が企業の成長の原資となれば企業価値の向上が期待され、それはまた家計の金融資産所得の更なる拡大につながるものと考えております。

 政府といたしましては、こうした成長と資産所得の好循環を実現していきたい、そのように考えているところであります。

米山委員 投資なんだから、はっきり分からないのは、それは当然だと思うんですよ。それはそうだと思いますよ。でも、さすがに、マクロ経済モデルって何のためにあるんですかと。幾ら何でも、これで何%ぐらい成長を押し上げますとかというのがないんだったら、全くそれは政策としての体を成していないと思うんですよ。

 更に御質問させていただくんですけれども、令和五年度税制改正の大綱を見ますと、NISAの拡充によって百五十億円の減収になるということなんですけれども、これを千七百六十五万四千三百七口座で割りますと、一口座当たり八百五十円分減税効果があるということなんですよね。はてと。これで計算しますと、結局、NISAをやっても、ほとんど何にもメリットはないというか、八百五十円ですかと個人にとってもなるわけなんです。

 だから、皆さん、今は、NISAって得だよ、得だよと言われているから、そうかと思いますけれども、もし政府の試算が正しいんだったら、全然得でも何でもない。何かもう、八百五十円といったら、証券会社に行くのか何なのか、その交通費だけで終わっちゃうよという話で、この試算も何なんだか正直よく分からないです。

 何でこの百五十億円の減収で済むのか、それを教えていただいてよろしいでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 NISAの抜本的拡充に伴う減収額につきましては、現在、預貯金や株式等で運用され、利子ですとか配当について課税されている資金が、新たに今回の拡充に伴ってNISA口座に預け入れられることによる影響を、現行のNISAの利用実績や今後の口座数等に関する政府目標も踏まえて、百五十億円程度と試算しているものでございます。株価の影響については織り込んでございません。

 なお、現行のNISAによる租税特別措置による減収額につきましては、令和四年度ベースで四百六十億円というふうに見込んでいるところでございます。

米山委員 今の話は、要するに、超低金利だから、超低金利で、預金から上がってくる利子に対する課税が少ないから、減収分はそれしかないという、これは欺瞞ですよね。それはうそじゃないですか。

 これは、本来、ちゃんと株価が上がって、その収益が上がって、その分の税金は取りっぱぐれますよ。もちろん、NISAをやっている人は得でいいですよ。でも、その分だけ所得再分配機能は落ちますよ、かつ、何なら、その分だけどこかで増税をして帳尻を合わせないといけませんよと、これも正直に言わなきゃ駄目じゃないですか。

 その試算を全くせずに、それは分かりませんと。いや、もう、株価だから全然分かりません、だけれどもお得ですというのは、それはもう政策の打ち出し方として欺瞞に満ち満ちている。それは幾ら何でも、例えば、だって別に、誰もどのぐらい株価が上がるかを正確になんて言っていないんですよ。でも、例えば、政府がGDP成長率二%、三%と言っているんだったら、それは株価だって二%、三%大体上がると思ったらいいわけじゃないですか、だって試算なんだから。二%、三%上がりますよということで計算してくだされば、そうしたら、五十六兆円の投資がなされて三%の値上がりをするんだったら、大体一・六兆円の利益が出るはずです。それで、二〇%の分離課税だったら、三千二百億円ほど税収が上がるはずなのに、それを取りっぱぐれるわけですよ。

 だから、これはやはり、三千二百億円税金が減ります、NISAを持っている人にはそれは還元されるかもしれないけれども、逆にそれを取ることによって、もっと生活が困っている人に配って、いろいろな社会保障の給付をして、そして、それこそ、新しい資本主義で言っていたはずの格差是正ができない、子供支援ができない、そういう政策なんですよ、そういう政策を岸田内閣は目玉として推進しているんです、これが岸田内閣の新しい資本主義です、皆さん選んでください、そう言うのが、私、正直だと思いますよ。

 何で、こんなふうに、いや、低金利だから百五十億円ですなんということをされるのか。本当に残念です、こういうごまかし方をされるのは。

 その上でお聞きしますけれども、財務大臣、今ほどお話ししたように、三%だとすれば、ざっとした計算で、それは細かくは三千億円だか二千億円だか一千億円だか知りませんよ、でも、少なくとも数千億円の税収の穴は出るんです。それは回収する予定はありますか。何かほかの税金で回収するんですか。それとも、これはほっておいて、NISAを持っている人だけが得をして、その分だけの所得再分配機能は諦める、金融所得課税をまるで諦める。だって、岸田総理、最初は金融所得課税をやると言ったのに、その反対のことをする。そういうことでよろしいですか。

鈴木国務大臣 NISAの拡充、拡大による税収が減ることでございますけれども、政府といたしましては、先ほど主税局長が答弁をいたしましたとおり、今般のNISA制度の拡充による減収額については、マイナス百五十億円程度と見込んでいるところであります。

 このように一定の減収が見込まれること、これは事実でありますけれども、NISAの抜本的拡充、恒久化は、中間層を中心とした幅広い層が、若年期から高齢期に至るまで、長期、積立て、分散投資による継続的な資産形成を行うための環境を整える上で中心的な役割を担うものと考えております。成長の果実を分配して更なる成長へつなげる、成長と分配の好循環を推進するためにも必要な政策であると考えているところであります。

米山委員 次の話題に移る前に一言だけといいますか、一言じゃ終わらないかもしれませんが、感想を述べさせていただきますと、結局、今ほど来の質問で分かったことは、NISA制度、これは、資産所得倍増の中心的な政策でありながら、そもそもの資産所得は分からない、これによってどのぐらい経済成長するかの試算もない、そして減収幅すら正直インチキと言っていい、減収幅すら単なる低金利を利用して小さく見せかけるようなことをしている、そして利用している人は僅か人口の一割、そして口座を持っている人の半分は使っていない、そういう制度なんです。

 こんな不確かで、非効率で、かつ、所得の再分配に反する、そんな政策を進めることは私は全く賛成できません。そして、これは改めるべきことだと思います。是非、岸田総理に、最初に立候補されたときの、本当に新しい資本主義をつくる、所得の再分配をして、ちゃんとみんなが安心して暮らせるようにする意思があるなら、この政策、考え直すべきだと思います。

 次の質問、もう時間が大分迫ってきたので駆け足でやらせていただきますけれども、高水準の所得についての最低限の負担を求める措置について御質問させていただきます。

 本来ならば、NISAをやるんでしたら、NISAをやって、だって金融所得を、何なら小さい投資額に関しては、その税金をまけますよ、金融所得課税をまけますよという話をしているんだから、じゃ、高負担の人にとっては、高負担の人から取らなきゃ、取って回収しなきゃいけないわけなんです。

 今般の改正では、特別控除額を三・三億円、税率を二二・五%とするということなので、結局、お話によりますと、年収三十億円以上という極めて限られた人に、しかも、最高で二二・五%という税金を課しているにすぎません。

 じゃ、それでも、これをやらないよりやった方がいいということで、これをやるとして、二〇二〇の納税実績に当てはめたときに、一体、この税制の対象人数はどれほどなのか、また、これによって新たに増える税収はどれほどなのか、御教示ください。

住澤政府参考人 今般の措置を過去の、令和二年度の納税実績に当てはめた場合の影響についてのお尋ねでございますが、これに関しては、仮に令和二年度当時に今回の措置があった場合に高所得者層がどういう行動をしていたか、こういったことが見込み難いこと、また、納税者ごとに所得の組合せも異なりますので、今回の措置の対象となる納税者の正確な範囲が既存のデータからは明らかでないことから、正確にお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。

 その上で、目安として申し上げますと、国税庁が公表しております令和二年分のデータから見ると、今般の措置で対象となる可能性がある者、これを機械的に見ますと、おおむね二百名から三百名程度、増収規模に関しては、あくまで機械的な試算でございますけれども、二百億から三百億円程度という試算も可能でございます。

米山委員 そのぐらいということですね。これは極めて限られていると思うんです。

 三・三億円を控除にしたんですけれども、これを一億円にしたらもっといいんじゃないですか。別に、だって、一億円控除ぐらいでも十分でしょうと思うんですけれども、一億円にした場合、また、この際、控除額を別にゼロにしたって大丈夫だと思うんですよ。一億円にした場合とゼロにした場合、やはり、二〇二〇年に当てはめた場合の対象者の人数と増収額を教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の措置におきましては、税率について、所得税法の本則における考え方を踏まえまして、二二・五%と設定することとした上で、お尋ねのこの控除額の水準については、所得階級別の負担率の状況等や、譲渡所得が長期間の価値上昇の効果が一時に発生する面があり、その平準化効果も勘案する必要があることから、三・三億円と設定したところでございます。

 この基礎控除の下では、譲渡所得のみを稼得する場合、約十億円を超えると追加的な負担が生ずることとなります。一方で、十億円を下回る譲渡所得が長期間で平準化された場合には、現行の総合課税の下でも一五%を下回る負担率にもなり得るところでございますので、このようなことを考慮した上で、今般の措置においては三・三億円という控除の水準を設定したものでございます。

 その上で、お尋ねの、今般の措置を過去の納税実績に当てはめた場合の影響について、仮に一億円の控除額とした場合の影響がどうかということでございますが、先ほども御説明申し上げましたように、仮にその二〇二〇年当時に今回の措置があった場合に高所得者層がどう行動していたか見込み難いことなどから、特別控除額を三・三億円から一億円にした場合についても、対象となる人数や増収額について一概にお答えすることは困難でございます。

 ただ、先ほどと同様に機械的に当てはめて数字を出しますと、対象人数については、これは三・三億円の場合とほぼ同様ですが、二百人から三百人程度、また、増収額については三百億から四百億程度という機械的な試算も可能でございます。

米山委員 もちろん、何でもかんでも増税すればいいというわけじゃありませんけれども、やはりそれは、格差是正というからには、どこかから取らなければ格差は是正されないといいますか、どこかから取ってどこかに渡さなきゃ是正されないわけですので、先ほど言ったとおり、NISA制度、そもそも私は余り賛成もできませんけれども、でも、それでも、百歩譲って、NISAをやるというのであれば、是非、きちんと高所得者に対する金融所得課税を考えていただければと思います。

 特に、今ほどさんざん批判しましたけれども、実は、このスキームは、高所得者に対する総合課税の第一歩と捉えれば、それは総合課税の第一歩なんだと思います。総合課税に対して、課税額を決めていますから。

 ですので、そこはちゃんと総合課税をして、やはり、きちんと、それは御負担も願うのは大変ですけれども、御負担できる方には御負担していただくという、最初の、おっしゃられたことを実現していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

塚田委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 今日も我が会派の最後のバッターですので、ここまでの質問も振り返りながら質問させていただきたいと思います。

 私の直前の米山議員の問題意識は、今回のNISAの改正は金持ち優遇ではないか、そして、再分配に、あるいは格差是正につながらないのではないか、こんな問題意識だったと思います。私も、それに沿った質問を用意してまいりました。

 最後の方に米山さんがおっしゃったとおり、NISAを拡充するのであれば、やはり、高所得者には応分の負担を求める、これが筋だと思っています。

 今日お配りしている資料の最後のページ、我が民主党時代の税制改正大綱、抜粋したものをつけさせていただいております。

 我々の政権のときにNISAを導入したときは、上場株式等に係る税率を、当時、一〇%の軽減税率でしたけれども、これを二〇%の本則税率に引き上げる、これとセットにしたわけですね。単純に税の負担を軽くするということだけをやったわけではないということです。

 これによって、たくさんもうかった人には応分の負担が当然生じて、所得再分配機能を回復できるということが我々の哲学だったわけです。

 しかし、今回は、三十億以上、二、三百人というほんの一握りの方は少し負担が増えるけれども、大勢に影響はないということなわけです。

 このNISA制度について、我々とは哲学が違うということと、今回は資産所得倍増プランというものと結びつけている、これもちょっと理解し難いわけです。

 というのも、資料の一ページ目を見てください。総理の施政方針演説から抜粋したものが上段に書いております。ちょっと分かりづらいので、かみ砕いた部分が、資産所得倍増プランという政府の決定文から抜き出したもの、これが下段に書いております。

 要は、NISA拡充と恒久化をすることによって、五年間でNISAの口座数、買い付け額、これらを倍増する、その後、家計による投資額を倍増する、そして長期的には資産運用収入の倍増という流れになっておるわけで、これで資産所得倍増が達成されるかのように読めるわけですけれども、そもそも、NISAの買い付け額が倍増したからといって、その十倍近い規模の家計投資額が倍増するとは限らないわけです。まして、資産運用収入、長期的に倍増と言っていますけれども、長期的にというのがどれぐらいの期間を指すのか不明ですし、倍増するかどうか、これは市場環境次第です。

 NISAを拡充、恒久化することが資産所得倍増につながるというのは、いわば風が吹けばおけ屋がもうかるといった類いの議論だと思っています。中間層の資産形成を支援するというのがNISA制度の本来の目的だったと思いますので、この本来の目的に立ち返るべきではないかと思うのですが、財務大臣の見解をお願いします。

鈴木国務大臣 資産所得倍増プラン、それとNISA拡充との関係ということだと伺いましたけれども、資産所得倍増プランは、我が国の家計に眠る現預金を投資につなげることで、我が国企業の成長投資の原資となり、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で家計にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を実現するために策定したものであります。

 NISAの抜本的拡充、恒久化は、資産所得倍増プランの中で資産所得倍増に向けた七本柱の一つに位置づけられているものでありまして、中間層を中心とした幅広い層が、若年期から高齢期に至るまで、長期、積立て、分散投資による資産形成を行うための環境を整える上で中心的な役割を担うものである、そのように考えているところであります。

階委員 資産所得倍増というのがいかにいいかげんなものかということは後で言いますけれども、その前に、今回のNISAの改正で長期保有の投資家が育つのだろうかという疑問を持っています。

 今回の政府の資産所得倍増プランの中で、NISAの非課税保有期間を無制限にする、その理由が書いています。それによると、現行制度では、非課税期間に期限があると、短期的に損益を確定してしまい、長期で保有を継続するインセンティブが生じにくいので、それを強化するために非課税保有期間を無制限にするんだということが書かれております。

 ところで、今回改正で、つみたてNISAの年間投資枠は二倍、一般NISAの年間投資枠は三倍に拡大した上で、両者合わせた非課税限度額の総枠は約二・三倍から三倍に拡大されるということです。

 それに加えて、何と、一回使った枠、そこで買い付けたものを売った後、枠が空きますということで再利用が可能になっているということです。

 この枠の再利用が可能ということであれば、利益が出た銘柄を早期に売却して、非課税の恩恵を受けながら再投資を行うという短期売買のインセンティブが生じると思います。さっき言った法改正の趣旨、すなわち、長期で保有を継続するインセンティブを強化するという部分と根本的に矛盾していると思いますが、どうでしょうか。

鈴木国務大臣 今般のNISAの見直しでは、制度の恒久化、それから非課税保有期間の無期限化を行うこととしておりまして、それによってNISA制度の予見性が高まるとともに、複利効果によって長期間の投資を有利に行うことができるようになると思います。そのため、これまで以上に、中間層を中心とした幅広い層が、若年期から高齢期に至るまで、長期、積立て、分散投資による資産形成を行いやすくなるものと考えております。

 長期投資を促す上で、全体の非課税保有限度額につきましては、将来を見通しにくい若年期等の世代において、一度投資を行うと二度と非課税枠の再利用ができないことによる投資控えや消費控えを防ぎ、ライフスタイルに応じて柔軟に積立てと取崩しができる、中間層にとって使い勝手のよい制度とするとの観点から、非課税枠を再利用できることとする必要があると考えております。

 ただし、階先生御指摘のように、短期売買にNISA制度が利用されること、これは好ましくないことでありまして、こうした措置に併せまして、年間投資枠を設けて、枠が復活しない投資上限を設けることにより、短期売買を繰り返すデートレーダーの利用を抑制するほか、金融機関による回転売買の勧誘を規制するため、監督指針を改正してモニタリングを強化し、また、ライフプランに応じた安定的な資産形成の重要性について家計の理解を深めるための金融経済教育を推進するといった対応も講じることとしているところであります。

 これらを通じまして、若年層、中間層を始めとする幅広い層が長期にわたって安心して投機に取り組むことができる環境を整備していきたいと考えております。

階委員 回転売買が可能となる制度をつくっておいて、それをなるべくさせないようにしますというのは、マッチポンプじゃないですか。そもそも、短期売買なんか、このNISAを使って非課税でやらせること自体がおかしいわけですよ。

 いいですか。大臣、NISA、先ほど私申し上げました、中間層の資産形成を後押しするのが本来の目的であり、そのNISAというものが正式な名称が何であるかということは、大臣、御存じでしょうか。

鈴木国務大臣 済みません、存じ上げません。

階委員 これは五ページ目の私の資料にも出ているんですが、非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置というわけですよ。少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置ということですから、回転売買でたくさん投資をする、そしてたくさんもうけさせるために、これは予定していないわけです。

 若年層の人も、今回、枠が広がって、千八百万まで達すれば、これは十分資産形成はできただろうということで、その後は、本則に戻って、ちゃんと税は納めてもらう、これでいいじゃないですか。それが少額の意味ですよね。何で多額の非課税を認めるんですか。おかしいじゃないですか。制度趣旨からして、根本的に間違っていると思いますよ、枠の復活を認めることは。見直していただけませんか。

鈴木国務大臣 そうした再利用できる枠を認めない場合に、これは先ほども申し上げましたけれども、若年期の世代において、一度投資を行うと二度と非課税枠の再利用ができない、それによって投資控えや消費控えを防ぐという一つの目的、それから、ライフサイクルに応じて柔軟に積立てと取崩しができる、中間層にとって使い勝手のよい制度とするという観点から、再利用できることとする必要があると考えたところであります。

 しかし、先ほどもお話しいたしましたとおり、こうした短期売買は趣旨に反するものでございますので、それを抑制するために、年間投資枠を設けて、枠が復活しない投資上限を設けるといったことや、あるいは、金融機関が回転売買を勧誘して手数料をもうけよう、そういうようなことを規制するための監督指針の改正をする、そして金融経済教育を推進するといった、そういう補完的な対応も取って、こうした心配に対して一定の対応をしていきたいと思っております。

階委員 確認したいんですが、年間投資枠は復活しないということをおっしゃったと思うんですが、一般とつみたて合計で三百六十万、マックス投資できるわけですよね。三百六十万、一回、年の初めに投資しました、もうかったので途中で売却しましたというと、年の途中で仮に残高ゼロになったら、もうその年は三百六十万は使えないということでいいわけですか。

 それともう一点、仮にそうだとしても、三百六十万、五年間やれば千八百万で、全体の上限に達しますよね。五年目のところで三百六十万売れば、次の年はまた三百六十万できるということでいいですか。お答えください。

鈴木国務大臣 初めの例と二番目の例、これも両方ともできるということであります。(階委員「できるの」と呼ぶ)できる。(階委員「一番目は」と呼ぶ)

 ごめんなさい。一番目はできない、二番目はできるということです。

階委員 二番目ができるということになってしまうと、千八百万という上限が事実上空文化するわけですよ。永久に、一生涯、三百六十万の範囲で毎年毎年、非課税の投資ができるわけですよ。いいですか。少額投資の非課税制度だということを名前として冠にしている以上、それとは根本的に矛盾すると思うんですよ。

 枠の復活はおかしくないですか。大臣、常識的に考えてください。三百六十万、三十年やると幾らになりますか。一億を超えますよ。若いときからずっとやっていって、仮にそれぐらい積み立てていけば、一億を超えますよ。それで本当にいいんですか。お答えください。

鈴木国務大臣 繰り返しやるとそういう額に達するという御指摘でございますが、私どもの狙いは、先ほど申し上げましたけれども、全体の非課税保有限度額につきましては、将来を見通しにくい若年期等の世代において、一度投資を行うと二度と非課税枠の再利用ができないことによる投資控えや消費控えを防ぎたい、それから、ライフスタイルに応じて柔軟な積立てと取崩しができる、中間層にとって使い勝手のよい制度としたいという観点から、非課税枠を再利用できることとする、こういう制度を考えたということでございます。

 額において、一億円を超えるようなものになるのが適当かどうかということについては、それはまたいろいろな、また別の受け止めもあるのではないかと思います。少額という名称とふさわしいかということになると、確かに、そこは、一億を超えれば、名称との整合というものはどうかなという気もしないではありません。

階委員 大臣、正直に最後おっしゃられましたが、私、今、名前を変えるべきだということを申し上げようと思っていたんですよ。もう少額投資なんて言えないですよ。今までのNISAとは似て非なるものになりますよ。それで本当にいいのかということを強く申し上げたいと思います。

 それと、そもそも、新しい資本主義というのは、こんな巨額の投資を非課税ですることを認める、それが新しい資本主義だったんでしょうか。そもそも、格差を是正するために、岸田政権は新しい資本主義を掲げて、成長と分配の好循環を起こして所得倍増を実現するはずだったのに、今やろうとしているのは、貯蓄から投資へで、成長と資産所得の好循環を起こし資産所得を倍増するという考え方で、まさに先ほど米山さんが言ったとおり、むき出しの資本主義、金融資本主義ではないですか。これがなぜ新しい資本主義と言えるのか、全く理解できません。

 大臣、御所見をお願いします。

鈴木国務大臣 そもそも、資産所得倍増プランでありますが、我が国の家計に眠っている二千兆円の金融資産、とりわけその半分が預貯金であるというものを、これをそのまま、現金のまま眠らせておくのではなくて、これを投資に回していく、それによっていい循環をつくっていこうと。つまりは、我が国の企業の成長投資の原資となって、持続的な企業価値の向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で家計に及ぶ、こうした成長と資産所得の好循環、これを実現しようというのがそもそもの考えの基本である、こう思っているわけでありまして、広い意味で、新しい資本主義ということにも合致するのではないかと思っております。

階委員 好循環というのはサイクルなわけですよね。仮に資産所得が増えたとしても、それは消費に行かないでまた投資に回って、それが成長につながって資産所得につながるというサイクルは、これは分配にもならないし、格差の是正にもならないし、消費を伸ばすことにもならないと思いますよ。これは新しい資本主義とは全く真逆のことをやろうとしているということを指摘したいと思います。

 それから、先ほど米山さんの方からも指摘がありました、資産所得倍増と言っているんだけれども、倍増となるベースは何なのかということです。金額も定かではないんですが、せめて、資産所得倍増と言っているこの資産所得、この定義をはっきりさせてもらえませんか。何をもって資産所得と言っているのか、教えてください。

鈴木国務大臣 資産所得倍増プランの目標には資産運用収入そのものの倍増というものを掲げておりますが、これはあくまで、長期的な目標として、資産運用による収入を大きく増加させるという方向性を示したものでありまして、現時点で具体的に数値目標を念頭に置いているものではありませんということでございます。

階委員 資産運用収入というのは、フローの収入だけを指すのか、あるいはストック、売却益も含めて言っているのか、あるいは時価評価が上がった含み益も含めて言っているのか、この辺りははっきりさせてもらえませんか。

鈴木国務大臣 一般論で言いますと、資産運用によって得られる収入としては、株式、債券などの利子、配当金、そのほか、株式、債券などを売却したときに実現する売却益が想定されるものと認識をいたしております。

階委員 利子、配当金、売却益、これは金融庁の方で多分資料を持っていると思いますよ、年間どれぐらいになるか。それをちょっと、後で提出してください。大臣、よろしいですか。

鈴木国務大臣 ちょっと答えさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げました株式、債券などの利子、配当金、それから売却益につきましては、我が国全体におけるこうした収入についてデータがなくて、直接に把握することができません。

 ですが、例えば、二〇一九年全国家計構造調査等を基に推計をいたしますと、全世帯が取得した利子、配当金の合計は一兆六千三百八十七億円となります。また、資金循環統計に基づき、保有金融資産の価格変化分をキャピタルゲイン、ロスと仮定した場合、二〇〇〇年から二〇二一年までの年平均で十一兆六千四百三十一億円のキャピタルゲインを得ていることとなります。

階委員 ようやく数字が出てきたので、売却益が十一兆で、利子、配当金が一・六兆だと、十二、三兆というイメージかなと思います。これを倍増していくということなんですが、そもそも、その前段階で、家計による投資額の倍増ということも言われていますよね。この家計による投資額は既に数字が政府の文書の中にも出ていて、二百四十四兆円という数字になっていたかと思います。これを倍増するということになると、五百兆ぐらいというイメージかと思います。

 私が気になるのは、資料の二ページ目を御覧になってください。今、預金が一千兆余りだとして、ここから、倍増するためには、二百四十四兆を五百兆にするには、二百五十兆ぐらい、現預金から投資の方に移るわけですよね。現預金というのは金融機関にお金が行くわけですけれども、このお金の大宗が国債に回っているんじゃないですか。つまり、国債の安定的な消化財源として国民の現預金はあるわけですよ。ここが四分の一ぐらい外れてしまうということで、財政的に大丈夫なんでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 階先生御指摘のように、貯蓄から投資によりまして金融機関への預貯金が減少する可能性、これはあると思います。しかし、現状、金融機関には日本銀行の当座預金として極めて潤沢な資金があるため、預貯金が減少しても国債購入の資金源に直ちに影響はないと考えております。

 一方で、安全資産であります国債は、金融機関にとってリスク管理上引き続き極めて重要な運用対象であり、金融機関等がデリバティブ取引や資金調達を行う上でも、国債は不可欠な担保資産にもなっております。

 さらに、家計が海外資産を購入するためには円貨から外貨への交換が必要ですが、当該交換によって円貨を取得した金融機関等による国債需要も考えられると思います。

 このため、直ちに国債の安定消化に支障を来すものではないと考えております。

階委員 ちょっと後半の方、よく分からなかったので、後で議事録を精査したいと思います。

 千百兆円近く、現預金が家計の金融資産の中にある。これを貯蓄から投資へで移動させたいということのわけですけれども、そもそも、なぜこれだけ家計の金融資産の中で預貯金の割合が高いのか、大臣の率直なところをお聞かせください。

鈴木国務大臣 御指摘のとおり、我が国の家計金融資産はその過半が現預金でありまして、米国等と比較して、株式や投資信託などのリスク性資産の保有割合は低くなっております。

 その理由は何でかということでございますが、市場、経済情勢の影響とか、それから家計のリスク回避的傾向が強いことなど、背景には様々な要因が考えられると思いまして、一概に申し上げることは困難である、そういうふうに考えますが、リスク性資産の保有に積極的と見られているアメリカでも、かつては家計の株式や投資信託の保有率は日本と同程度にとどまっていたところでありまして、米国においては、家計の資産形成を支援する様々な政策的対応を通じて現在のような姿を実現したものと考えているところでございます。

階委員 なぜ預貯金の割合がこれだけ高いかということを、ちゃんと原因を把握しないと、幾らそこから二百五十兆円移動しようと思っても、笛吹けど踊らずになると思いますよ。

 私は、預貯金の割合が高い理由は主に三つあると思っていまして、一つは、やはりバブルの崩壊のときに大変な打撃を受けた家計が多いということだと思います。私も、当時銀行に勤めておりまして、破綻しました。持ち株会で投資していたものがパアになったという方がたくさんいらっしゃいます。それとか、こういう、先が分からない、見えない時代で、いざというときに備えておこうということで、流動性の高い現預金にお金を置いておこうということが二つ目。あと三つ目は、家計に余裕がない、長期的に運用する余裕がないということで、目先の運用、一時的な運用にとどまるというところが、家計の金融資産に占める預貯金の割合が高い理由だと私は考えています。

 それで、一点目については、要はバブルの記憶がまだ払拭されていないということなんですが、客観的事実を見ると、さすがに、今、投資環境はその当時と比べると随分よくなってきている。つみたてNISAの場合はちゃんと銘柄が指定されていて、それがどれぐらいのパフォーマンスを上げているのかということを、私、昨日、金融庁の方に聞きました。調べていないということで驚きましたけれども、じゃ、簡単に調べられるはずだからということで、調べてもらえました。

 そうすると、過去一年間で、つみたてNISAの銘柄、全部で対象が二百本、二百十二本ぐらいの母集団の中で、価格が上昇した銘柄が百七十五本だそうですよ。下がったのが三十七本。平均すると二・三七%上昇しているということですから、今日つけさせていただいていますけれども、三ページ目には一年物の定期預金の金利を出していますけれども、預金金利は、御案内のとおり、〇・〇一%ですよ。はるかにこれを上回っている。

 我々、どうしても過去の苦い記憶というのは消されないんだけれども、こういう情報発信、こういうのを積極的にやれば、だんだん家計の、今、現預金、預貯金に閉じこもっているお金が動き出すのではないかというふうに思います。

 そこは是非、大臣として、今まで余りやっていなかったようなので、やるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 様々なこうしたデータをしっかりと分かりやすく出すことによって、やはり国民の皆さんの、今の預貯金のままでいていいのか、投資に回した方がいいのじゃないか、そういうようなことにもつながるんだと思います。

 金融教育という面からはちょっと外れるかもしれませんが、補足的なものとして活用を考えたらいいのではないかと思いました。

階委員 それと、日本の運用リターンが低いというのが、二ページ目の下段の方に資料、これは金融庁の資料をつけさせていただいておりまして、これは、過去二十年ぐらいの間、米国は、元本が二・六倍に対して、運用リターンで三・四倍に総額が増えました。イギリスは、元本が一・六倍増えたのに対して、総額は二・三倍になりました。日本は、元本は一・二倍増えたけれども、一・四倍しか増えていませんということなんですね。

 これは、あたかも日本が、日本のマーケットは運用するのによろしくないという環境だったというふうに見えるんですけれども、最大の理由は、やはり日銀の金融政策だと思いますよ。

 さっき見ていただいた三ページ目なんですけれども、定期預金金利〇・〇一%、その前の十年、更にその前の十年、遡ればバブル期から、物すごい低下していますよね。長期国債の金利も、うんと下がっているわけです。これでもうけろという方が無理なわけで、逆に言うと、日銀の異常な超低金利がここにも弊害を及ぼしているということは、大臣、お認めになりますか。

鈴木国務大臣 御指摘がございました日本の家計金融資産の伸びでありますが、御指摘のように、アメリカやイギリスと比較して低い水準にとどまっておりますけれども、その理由につきましては、各国の市場、経済情勢の違いや、家計のリスク回避傾向の差を背景とした現預金、株式、投信などの保有資産の割合の違いなど、様々な要因が考えられると思います。

 また、金融政策は、日本銀行によって、物価安定目標の持続的、安定的な実現のために行われているものと承知をしておりますけれども、黒田総裁も、低金利環境の長期化が、利子所得の下押しなどを通じて、家計部門に影響を及ぼしている、マイナスの影響を及ぼしていると認識をされている一方で、金利水準の低下が、経済活動を刺激して、雇用・所得環境の改善、資産価値の上昇などを通じて、家計部門にプラスの影響を及ぼしている、そうしたことも指摘をされておられるところでありまして、家計金融資産の運用リターンが低いことと金融政策の関係について一概に申し上げることは困難ではないかと思っております。

階委員 だんだん家計も、この異次元の金融緩和で、国内の預貯金では全く収益は見込めないということは認識してきたようでして、四ページ目を見ていただきたいんですが、これはみずほ銀行の唐鎌大輔さんという方の作られた資料なんですけれども、今、貯蓄から投資ではなくて、円から外貨というのが進んでいるんだそうです。これが、円安リスクでまた物価高につながるという懸念もあるんじゃないかという御指摘でした。

 下の方、左側を見ていただきますと、投資信託の株式売買ということで、国内株式と外国株式を比較すると、一二年三月以降、ほぼアベノミクスの期間と重なりますけれども、実は、国内株式よりも、投資信託は外国株式をたくさん買っていたということであります。まさに、円から外貨という流れが進んでくる。

 これは、家計にとっては合理的な行動ではあるんですけれども、昨年末、大臣ともさんざん議論した円安、物価高、これを促進する要因にもなるわけですね。ここをどうやって、貯蓄から投資へという流れを進めながら、円から外貨、これを防いでいくか、これはなかなか厳しいと思いますよ。なぜならば、さっきのつみたてNISAの銘柄のパフォーマンス、これも調べてもらったんですが、先ほど申し上げたとおり、全体では二・三七%の平均パフォーマンスなんですけれども、外貨のもの、海外物でいうと、為替ヘッジをしないものについては更に倍ぐらいのパフォーマンスなんですね。四・四三とか、そんな数値になっています。

 ですから、これはうまくやらないと、貯蓄から投資へが円貨から外貨へということになって、円安を加速化する要因になりかねない、こういう問題意識があるんですけれども、大臣、この辺はどのように対応されますか。

鈴木国務大臣 資産形成に当たりましては、長期、積立て、それから分散投資ということが重要であると言っておるわけでありまして、こうした貯蓄から投資へのシフトに伴いましてその一部が外国の資産への投資に向かうこと、これはあるんだ、そういうふうに思います。

 一方で、新しい資本主義の下、成長も分配もを実現していくためには、家計の資金が日本企業の成長投資の原資となって、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で家計にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を生み出していくことが重要と思っております。

 そうした観点から、家計による投資の対象として魅力ある日本の金融資本市場を構築していくこと、これは大切なことであると思っております。そして、それは同時に、海外投資家の資金を日本に呼び込むことにもつながるものと考えます。

 このように、投資資金は内外の双方向に流れることが考えられ、また、為替相場は様々な要因を背景に市場において決まるものでありますことから、資産所得倍増に向けた取組がこうしたいわゆるキャピタルフライトでありますとか円安を招くということは一概には言えないと思いますが、このことについては十分に注意をする、留意をする必要があると思います。

階委員 ちょっと話題を変えまして、五ページ目になります。

 今回、先ほど米山さんもおっしゃっていたとおり、三十億円を超える所得の方については総合課税を導入したわけです。五ページ目の下線部分の二つ目のところ、本来、全ての所得を合算して課税する総合課税が理想ではありますということを私たちの政権のときには税制改正大綱の中で述べていたわけです。

 先ほど米山さんも言っていましたが、この理想に一歩近づいたという理解でいいのか。そして、これからこの総合課税という流れを更に進めていくおつもりがあるのか。もしそうであれば、我々は今回、NISA制度はちょっと本来の趣旨から外れていると思いますけれども、総合課税が進んでいくのであれば、その過渡的な一つの方策かなと思って、容認できないわけではないと思っております。

 この総合課税、今回導入した理由と、今後どうしていくのか、お答えください。

鈴木国務大臣 いわゆる一億円の壁と呼ばれる問題につきましては、税負担の公平性を確保するという観点、それから市場への影響も踏まえる、そういう総合的な検討を行うこととされてきたところであります。

 こうした中で、かなりの高所得者層の所得税の負担率の低下が著しいことなど、現下の状況等を踏まえ、このような所得税の負担構造の問題について早期に是正する観点から、与党税制調査会において幅広い観点から御議論をいただいた上で、今般、極めて高い水準の所得について、所得税法の本則であります総合課税の考え方、すなわち、税率の累進構造などにより所得再分配を図ることが重要であるといった総合課税の考え方を踏まえつつ、最低限の負担を追加的に求める措置を導入することとしたわけであります。

 そして、今後のことでありますが、令和七年度以降の状況というものをしっかりと見て、適切な対応をしなければならないと思っております。

階委員 是非、総合課税を更に進めていっていただきたい、格差是正、所得の再分配、中間層の復活のために、大臣にも御尽力いただきたいということを申し上げ、私からの質問を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。限られた時間でございますので、早速質問に移りたいと思います。

 まずは、国税徴収の体制整備についてお伺いいたします。

 国税庁の定員については、平成十一年では五万七千百人で、令和四年では五万五千九百六十九人と、平成十一年から千百三十一人減少しております。

 税務行政を取り巻く環境というのは、経済取引の国際化や情報通信技術を利用した取引市場の拡大に伴い、調査、徴収事案の複雑困難化が顕著となるなど、大きく変化しております。社会経済情勢の急激な変化に応えて、適正、公平な課税と徴収の実現と歳入の確保のためには、マンパワーが必要になり、人員の増員が必要になってくるとも思われます。

 もとより、消費税専門官や国際税務専門官等、専門知識、経験を持った様々な分野の専門家の育成も必要になってくると思われます。国税職員が減少すると実調率が当然低下し、また、徴収事案の複雑化、困難化によりマンパワーの必要性は増大しております。

 このような状況に鑑み、国税職員の増員、これが必要と考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 実調率の低下も示しておりますように、経済活動のグローバル化、デジタル化に伴います調査、徴収事務の複雑化、困難化などによりまして、税務行政を取り巻く環境は厳しさを増しているところであります。

 こうした中、令和五年度予算におきましては、消費税の不正還付や租税回避などへの対応を図るため、国税庁における所要の体制整備を盛り込みまして、三十七名の定員増となっております。今後とも、適正、公平な課税、徴収を実現するため、必要な定員を確保し、税務執行体制の強化に努めてまいりたいと考えております。

住吉委員 短期的にはマンパワーが必要、人員の増員、これをしていかなければ、当然、徴収というのが上がってこないんだと思います。一方で、いつまでも人を増やし続けていくということは現実的に不可能であり、長期的な視野でDXを推進していかなければならないと考えております。

 さきの本会議の質問でも、私、述べさせていただきましたが、現在の税制については、非常に複雑で、本当に、増築を繰り返した建物のように複雑怪奇となっております。なかなか専門家でも全てを把握しているとは言い難い、そういうような状況でございます。それを人の力で処理していくというのには、どうしても限界があります。

 私も毎年、確定申告をしております。今でこそe―Taxでかなり便利になりましたが、毎年ちょうどこの時期に、確定申告会場には長蛇の列となっていることが風物詩となっております。会場には、整理する係であったり、確定申告をサポートするスタッフ等、非常に多くのコストがかかっております。

 細かいところは後ほど我が党の藤巻委員からも質問があると思いますが、例えば、勤めている会社等にもマイナンバーを申告しているように、マイナンバーで所得や控除の対象をひもづけて、確定申告をわざわざしなくても還付や追加の徴収額が分かるような仕組みができないものかと思料するところでございます。これは一例ではございますが、こういったDX、これを進めていくことによって、職員、納税者共に、これはもちろん楽でありますし、ミスも少なくなります。

 人員が不足する中で、DX、これを推進していく、また、推進していく余地があると思いますが、現状の課題や取組状況についての御所見をお伺いいたします。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 税務行政のDX、デジタルトランスフォーメーションでございますが、納税者にとりましては、手続の簡便化や計算誤りの防止に資するほか、国税当局にとりましても、デジタル技術の活用により事務の効率化、高度化が進むなど、官民双方にメリットがあるものと考えております。

 国税庁におきましては、令和三年六月に「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション 税務行政の将来像二・〇」というものを策定、公表しておりまして、あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会を目指すとともに、データの活用により課税、徴収を効率化、高度化し、組織としてのパフォーマンスの最大化を目指すこととしております。

 また、委員御指摘の各種情報を所得税の申告書に自動反映する仕組みについてでございますが、e―Taxとマイナポータルを連携させることによりまして、医療費控除や生命保険料控除などの情報に加えまして、本年一月からは公的年金等の源泉徴収票データなどが自動入力されるほか、来年からはiDeCoなどのデータも自動入力の対象とすることとしております。

 今後とも、納税者利便の向上を図る観点から、申告書の自動入力の対象項目の拡大に向けて、関係省庁とも連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。

住吉委員 ありがとうございます。

 本当にDXが必要になってくると思います。人が限られている中で適正で公平な徴収をしていく、これは短期的にはマンパワーが必要ですが、長期的にはやはり今おっしゃられたようなDXをもっと踏み込んでやっていく必要があると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続いて、税関の体制整備、これについてもお伺いしたいと思います。

 税関職員は、日本の海岸線、空の玄関に目を配り、二十四時間三百六十五日、水際を守るために御尽力いただいているということに敬意を表したいと思います。不正薬物の取締りやテロ関連物資の取締り、知的財産侵害物品の取締り等、国民の安全、安心の確保に取り組んでいることは承知しております。

 一方で、水際対策については、年々悪質で巧妙な手口で、イタチごっこ状態となっております。SNSを用いたラブコネクションや空き室への置き配など、最近の流行に合わせて自然な形での手口が横行していると聞いております。

 主な不正薬物の密輸入押収量の推移は、平成二十八年から令和三年まで六年連続一トン超え、覚醒剤押収量に占める税関摘発量の割合は九割以上と聞いております。

 まずは、水際取締りの実情及び課題についてお伺いいたします。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

諏訪園政府参考人 お答え申し上げます。

 税関業務を取り巻く環境について御質問いただきました。

 まず、越境電子商取引の拡大に伴います輸入貨物の急増、さらには、議員から御指摘いただきましたとおり、不正薬物押収量の七年連続の一トン超え、そして国際的なテロの脅威の継続、さらには水際措置の緩和に伴う訪日外国人旅行者数の増加など、多くの課題に直面しているところでございます。

 幾つか具体的に申し上げますと、輸入貨物につきましては、越境電子商取引の拡大に伴い、令和元年の約四千六百万件から令和四年約一億一千万件へと輸入許可件数が急増しているところでございます。また、御指摘いただきましたとおり、不正薬物の密輸手口には巧妙な手口のものも見られるところでございます。

 税関といたしましては、これらの課題に適切に対処できるよう、水際取締りに万全を期してまいりたい、このように考えているところでございます。

住吉委員 ありがとうございます。

 非常にこのように悪質で巧妙な手口というのが横行しているということでございます。今後、コロナがどうなるか分かりませんが、収束する方向に動きつつある中でインバウンドの増加も見込まれます。また、グローバル化の進展に伴い、税関業務が増大し、複雑化する中で、適切かつ迅速な税関業務を行い、また、不正薬物、銃器等の密輸入の防止はもとより、今後日本で開催される予定のG7広島サミットであったり、また大阪・関西万博などのテロ対策としても、テロ関連物資が国内流入されないように水際対策にも努めていかなければなりません。

 しかし、先ほど申し上げたように、近年の手口の巧妙化、複雑化に伴い、特に経験を積んだ職員の育成も含めて、これもマンパワーで対応していく必要があると考えます。税関職員の増員も必要と考えますが、政府の御所見をお伺いいたします。

井上副大臣 お答えいたします。

 委員が御指摘をいただいたとおり、税関は、日本の水際を守り、貿易を通じた経済発展を支えるという重要な役割を担っております。税関は、昨年、発足百五十年を迎えましたが、この百五十年間にも、今御指摘がありましたとおり、経済や社会のグローバル化が進み、税関を取り巻く環境も様々変化しております。

 そういう中で、先ほど関税局長が御答弁をさせていただきましたけれども、税関は、こうした変化に適切に対応しつつ、一層安全で豊かな社会の実現や更なる貿易の円滑化に貢献していく必要がございます。

 そのためには、より一層効果的、効率的な業務運営を進めていくこと、エックス線検査装置、不正薬物・爆発物探知装置などの最新の取締り検査機器の活用をすること、それから、職員の専門性を高めるための研修を実施すること、人員の適正配置を行いつつ、更なる人員確保等を必要とすること、体制整備を図ることが重要であると考えております。

 その上で、人員確保の観点に関しましては、税関の定員について、令和五年度予算において百四人の定員増を計上させていただいております。

住吉委員 ありがとうございます。

 定員増ということですが、こちらも先ほどと同様ですが、短期的には人員を増やしてマンパワーで対応していくと。それも専門的な知識や経験を持った人材が必要なわけでございます。一方で、こちらも限りがあるわけで、そこで、人材不足を補うためには、テクノロジーの力を活用していく必要がございます。

 税関を取り巻く環境は、越境電子商取引の拡大による輸入貨物の急増及び経済連携協定等の更なる進展等による国際的な商流、物流の変化、民間部門を起点とした経済社会全体のDX化の急速な進展、経済安全保障上の脅威への対処を含む新たなニーズの出現など、大きく環境が変化しております。そのような中で、ミスなく、負荷軽減、またコスト削減の意味でも、税関のDX化、これを強力に推し進める必要があると考えますが、御所見をお伺いいたします。

諏訪園政府参考人 お答え申し上げます。

 税関におきましては、二〇二〇年にスマート税関構想二〇二〇を取りまとめまして、世界最先端の税関、スマート税関を目指して取り組んでいるところでございます。

 昨年十一月には、構想策定後における税関を取り巻く環境変化やニーズに対応するため、新たに税関検査場のDX化に向けた取組を盛り込むなど、構想に掲げる施策をアップグレードし、スマート税関の実現に向けたアクションプラン二〇二二を取りまとめ、公表いたしました。

 現在、税関におきましては、密輸手口の巧妙化などに対応するため、先端技術を活用した機器などの導入を進めており、例えば、デジタル化された貨物情報及び画像情報を複合的に活用した審査及び検査、AIを活用した検査対象郵便物の自動識別といった取組を進めているところでございます。

 今後とも、AI等、先端技術を活用しつつ、税関業務のDX化を推進し、一層の業務の高度化、効率化に取り組んでまいります。

住吉委員 こちらも是非進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 続きまして、一億円の壁についてお伺いしたいと思います。

 岸田総理の総裁選でも、一億円の壁、一億円のところから税率がうんと下がってしまっているということ、それを是正していく、そういったことから議論がスタートしていったという認識でございます。

 一方で、今回政府の方から出されたのは、もちろんケース・バイ・ケースになりますが、大体三十億円の人から少し税率がちょっと上がるというような、一億円の壁ではなくて、ある意味、三十億円の壁になっております。

 その経緯といいますか、元々一億円の壁を是正する、それが、出てきたのが三十億円の壁ということで、その議論の経緯について教えていただけませんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる一億円の壁と呼ばれる問題につきましては、税負担の公平性を確保する観点から、市場への影響も踏まえて総合的な検討を行うこととされていたところでございます。

 市場への影響という観点からは、高所得者の所得の全体の構成に関する客観的なデータ、一億円を超える高所得者層の所得のプロファイリング、こういったところを踏まえた検討を行ってきたところでございまして、また、税負担の公平性の観点からも、政府の税制調査会などにおきまして、社会保険料も加味すると、かなりの高所得者層の負担率の方が低所得者層よりも低い状況にあり、負担構造として問題があるという指摘があった一方で、譲渡所得は長期間の価値上昇の効果がいっときに発生する面がございますので、その平準化効果も勘案する必要があるといった趣旨の御意見も出されていたところでございます。

 こういった御意見なども踏まえながら、与党の税制調査会において幅広い観点から御議論いただき、今回の措置では、所得税法の本則において、五年を超える株式等の長期譲渡所得に関しては、平準化の観点から二分の一を課税対象とされていることを踏まえ、所得税の最高税率の四五%の二分の一に当たる二二・五%という水準の率を設定した上で、一億円を若干超える程度の所得の負担率の状況等や、譲渡所得は長期間の価値上昇の効果がいっときに発生する面があり、その平準化効果を勘案する必要があることを踏まえ、三・三億円の特別控除を設定して、譲渡所得のみを稼得する場合には、約十億円を超える場合に追加的な負担が生ずるような仕組みとしたところでございます。

 こういった制度設計の結果として、おおむね平均的な水準としては約三十億円を超えるような極めて高い水準の所得を対象として、最低限の負担を求める措置を導入することとされたものでございます。

住吉委員 済みません、もう時間が来たので終わりますが、果たしてそれで公平性の観点からこの目的、達成できるのかと、疑問が残るところでございます。この続きはまた、二十一日に委員会がありますので、それでさせていただきたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。

 本日は、貴重な質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 グローバルマーケットは、現在、世界的な物価上昇、金利上昇局面にあります。三日に発表されたアメリカの雇用統計は予想を大きく上回る数字で、依然FRBはインフレ対策に追われ続けなければならない可能性が示されました。

 一方、我が国では、四月に日銀黒田総裁が退任される予定で、十年に及んだ異次元金融緩和と今後どう向き合っていくのか、日本経済は大きな岐路を迎えます。

 そのような中で行われる本委員会の議論は、非常に大きな意味を持つと考えております。その一端を成せることを非常に光栄に感じると同時に、大きな責任を感じております。今国会も、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、質問の方に入らせていただきます。

 課税、徴収関係の整備、適正化についてお伺いいたします。

 今般の法案の改正により、高額な所得を得ていながら無申告のままとしていた事例や、長年にわたって無申告となっていた事例への対応として、高額な無申告に対する加算税割合の引上げや、無申告の常習者への加重措置の整備が行われます。

 加算税の引上げや加重措置の整備を行うことで、無申告者が抜本的に減少するのでしょうか。加算が大きくなるとますます無申告を貫く、こういった可能性も無視できません。

 また、既存のマイナンバーをより一層活用するといった考え方はありますでしょうか。もちろん、マイナンバーへのひもづけの実施は、個人情報保護の議論もあって不安視される向きもあり、なかなか進んでいないことは理解しております。とはいえ、コロナウイルス感染症に対する持続化給付金の支給の遅れで課題が顕在化したように、日本はこの分野で遅れていると言われております。

 こうした無申告者の把握、加重措置の対応は、IoT活用など含め、どこまで進んでいるのでしょうか。お伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁におきましては、これまでも、マイナンバーを活用することによりまして、税務執行の効率化に取り組んできたところでございます。

 税務執行の効率化につきましては、マイナンバーを用いることによりまして、法定調書の名寄せや申告書との突合がより効率的かつ正確に行えるようになっており、所得把握の効率化、適正化につながっていると考えております。

 今後とも、関係省庁等と連携しつつ、税務行政におけるマイナンバーの活用を推進してまいりたいと考えております。

藤巻委員 そもそも、毎年変わる複雑怪奇な税制、膨大な作業量、確定申告制度というのはそもそも納税者の負担が大き過ぎはしないでしょうか。税の原則である公平、中立、簡素の簡素から大きくかけ離れているのではないか、そう考えております。毎年、申告の時期になると作業が大変過ぎて本業に手がつかなくなるというような話もよく聞きます。多くの人の仕事が止まるわけですから、当然、経済にも負の影響はあるかと考えます。

 税制の簡素化など、もう少し何か、少しでも納税者の事務負担を減らすようなことは考えておられますでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 税制の簡素化についてのお尋ねでございます。

 御指摘のように、税制の申告に係る事務負担などを軽減していく観点から、極力この制度を簡素化していくことは重要な課題というふうに考えております。

 他方で、税制の公平性を確保する観点でありますとか、あるいは、様々な政策税制につきましては時々の政策的な要請に応えて対応を図っていく観点から様々な改正が行われておりまして、簡素性が損なわれている面も否定はできないところでございます。

 こうした簡素性と公平性あるいは政策的な要請の間のバランスをきちんと取りながら検討していく必要があるものと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 本当にかなり負担になっている方も多いと思いますので、そこは不断の見直しを行っていただければと思っております。

 この数年間、新型コロナの影響で、申告期限を四月十五日に一か月延長することが認められております。いまだコロナの影響は大きく、感染症法上の分類も二類のままでございます。今年も四月十五日まで申告期限を延長することはできるのでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでのコロナ禍における確定申告におきましては、令和元年分、令和二年分につきましては、全国的な行動制限等を伴う政府方針を踏まえて、十分な申告期間を確保するため、申告、納付期限を一律で一か月延長し、令和三年分の確定申告につきましては、蔓延防止等重点措置の対象地域拡大とこれに伴う行動制限等を踏まえ、簡易な方法により申告、納付期限の延長を申請することができるとしたところでございます。

 他方、令和四年分の確定申告につきましては、過去三年間のように行動制限等を伴う政府方針は示されていないことから、申告、納付期限の一律延長等は考えていないというところでございます。

 なお、新型コロナへの感染等によりまして期限までに申告等が困難となる場合には、申告等が可能となった段階において申請書を提出していただくことにより、申告、納付期限の延長を申請することができるとされております。

 いずれにいたしましても、納税者の方から申告、納付の期限について相談がある場合は、個々の事情に応じて丁寧に対応してまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 よく、誰々が脱税で逮捕された、起訴されたという報道を目にします。これは、国税が検察に告発するという流れかと思うんですけれども、この告発に動く基準、例えば申告漏れ何億円以上は告発するとか、そういう明確な基準はあるのでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 特に悪質な脱税犯につきましては、検察官に告発し、刑事訴追を求めるため、査察調査といたしまして、国税通則法上の強制調査権に基づきまして犯則調査を行っております。

 査察事件として調査を行うかどうかにつきましては、それぞれの事案について、偽りその他不正の行為などの法律上の構成要件に該当する事実があり、これを立証し得る見通しがあるかどうか、それから悪質な事案であるかどうかといったことを十分に検討した上で個別に判断することとしております。

藤巻委員 明確な基準はないということですので、多少恣意性が残ることに心配はあるんですけれども、そこは公平性、公平公正を心がけていると信じております。

 一方、逮捕や起訴された事案に関しては、容疑者として氏名が公表されるとは思います。それでは、逮捕も起訴もされなかったにもかかわらず、国税局が無申告者や申告漏れの人の氏名を公表するということはあり得るのでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 税務職員には、国税通則法上、一般の国家公務員よりも重い守秘義務が課されておりまして、国税当局におきましては、職務上の秘密保持について万全の注意を払っているところでございます。

 このため、国税当局といたしましては、個別の税務調査の具体的内容について、査察事案で公表する場合を除きまして、報道機関に対する情報提供というものは行っていないということでございます。

藤巻委員 守秘義務があるということで、情報漏れはないということなんですけれども、二〇一九年には、芸能人の徳井義実氏の申告漏れが公となりました。また、二〇一二年には、元プロ野球選手の板東英二氏の申告も、これもマスコミによって報道されています。

 これらの情報は漏れてしまったのでしょうか。それとも、意図的に漏らしたのでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、国税当局といたしましては、税務職員に対しまして、国税通則法上、一般の国家公務員よりも重い守秘義務が課されておりますので、当局から個別の税務調査の具体的内容について、報道機関に対して情報提供を行っているということはないというふうに考えてございます。

藤巻委員 国税側から漏れたということでないならば、本人から漏れた、本人が自分から漏らしたということになってしまうのかというのは、ちょっとどうなのかな、本当なのかなと思ってしまうところもあるんですけれども。

 いずれにせよ、確かに彼らの行いというのは駄目だと思います。当然に重い追徴課税や厳しい指導を受けるべきですし、実際に受けております。ただ、それで終わりにすべきだと思っております。事実を明らかにして、日本中の誹謗中傷の的にされて、その職業人生に致命的な傷を負わせる、これはやり過ぎなのではないでしょうか。ほかにも無申告の人や申告漏れの人は大勢います。なぜ彼らだけが重い罰を受けなければならないのでしょうか。

 本法案にもあるように、無申告者には相応の罰則を規定しています。だったら、その罰則を適用し、それ以上の制裁は加えるべきではない。本件に限らない話ではあると思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。大臣、お答えください。

鈴木国務大臣 先ほど来お答えを事務方からいたしておりますとおり、税務職員には、国税通則法上、一般の国家公務員よりも重い守秘義務が課せられております。

 国税当局では、職務上の秘密保持について、あらゆる機会を捉えて職員への周知徹底を行うなど、細心の注意を払っていると承知をしております。

 今後とも、納税者の情報を取り扱うことの重みというものを踏まえまして、国税当局において情報管理の徹底に努めることが重要である、そのように考えます。

藤巻委員 納税というのは、非常にセンシティブな、パーソナルな情報ですので、情報管理、情報漏えいがないようにしっかりしていただきたいと思うんですけれども。

 一般論的な考え方をちょっとお伺いしたいんですけれども、一罰百戒という考え方があります。これは、特定の人を厳しく罰することによって、ほかの多くの人の戒めにするという考えでございます。いわば見せしめです。申告をちゃんとやらないとこんな恐ろしい目に遭うんだから、ちゃんと申告をするように。あるいは、無申告をするような人間は、見せしめに何人か社会的に致命的なダメージを与える。これは、本当に、恐怖政治の発想だと思います。

 本件の話をしているわけではないんですけれども、私個人としては、一罰百戒という考え方は間違っていると思います。見せしめは駄目だと思います。同じ過ちには同じ罰であるべきだと思っております。

 一般論としてお答えいただきたいんですけれども、一罰百戒という考え方について、鈴木大臣、どうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 何か、罰を与えるということが恣意的になってはいけないんだと思います。やはり、法令にのっとって、それから証拠によって、そうしたものが厳正に判断されるべきものである、そういうふうに思います。

藤巻委員 今回の申告の件だけではなく、世間一般に言われることではあると思うんですけれども、特定の人を罰して、見せしめにして、多くの人の戒めにするというのは、これはちょっと、余りいい考え方ではない、私は間違っていると思うので、政府としても、ちょっと、あくまで私の意見として頭の片隅に置いていただければなと思っております。

 続いて、次の質問に移らせていただきます。研究開発税制の見直しについてお尋ねいたします。

 研究開発促進の考え方は、低迷が長引く日本経済をイノベーションの面から再構築するために必要な取組であることに疑いの余地はありません。これまで数年にわたり、質の高い研究を後押しすること等を目的として、研究開発投資の多様化を図るための税制見直しを行ってまいりました。

 半導体や5G、電気自動車などの分野を優先しつつ、国際サプライチェーンで主要な地位にある自国企業の研究開発費の二五%、先端製造工程を備えた設備購入費の五%を法人税から控除するように法改正した台湾の産業イノベーション条例にも見られるように、アジアを中心とする各国も、同様の支援をかなり大胆にやっております。

 我が国も、研究開発の投資に対する税額控除を実施してまいりましたが、今後は、コロナ禍で大きな痛手を被った日本経済を下支えする中小企業を始め、企業の国際競争力の一層の強化も視野に入れなければなりません。

 そこで、今般、税額控除率の見直しを行うということですが、これまで実施してきた税額控除率との違いを教えていただければと思います。また、どういう企業がどれぐらい利用しているのか、把握しているのでしょうか。これまでの税額控除率の改正などの取組は想定していたよりも効果がなかったということなのでしょうか。これまでの取組状況、効果、現状認識について、お答えください。

鈴木国務大臣 研究開発税制でありますが、毎年、おおむね約一万件程度利用されておりますが、研究開発の促進を通じて企業活動を活性化し、成長と分配の好循環につながっているもの、そのように考えております。

 そして、令和五年度税制改正では、控除率カーブにおいて、研究開発費の増加率に応じたメリットをより高める一方、控除率の下限を引き下げるといっためり張りのある見直しを行っておりまして、イノベーションの源泉である研究開発投資の更なる増加を期待をしているところであります。

藤巻委員 ありがとうございます。

 今もありましたように、研究開発費のインセンティブを強化するために、研究開発費の増減割合に応じて控除上限が変動する制度を導入するとともに、控除率の傾きを見直すことで、これまで以上のめり張りづけを行うとされていますが、これは研究開発費を増加させる余裕のある大企業には有利に働くかもしれませんが、その余裕がない中小企業やベンチャー企業には厳しいものとなるのではないでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 研究開発税制におきましては、現行におきましても、中小企業に配慮する観点から、大企業と比べ、より優遇された控除率が適用をされております。

 例を挙げますと、改正案、今回の改正案でありますが、控除率については、大企業が一から一四%であるのに対して、中小企業は一二から一七%ということでございます。

 その上で、これまで、適用件数を見てみますと、全体が約一万件に及ぶ中で、中小企業の利用も約七千件と幅広い企業に利用されております。今回の見直しでは、大企業も中小企業も同様に、投資インセンティブを強化するために控除率カーブの傾きを変えることとしておりまして、イノベーションの根源であります研究開発投資の更なる増加を目指していきたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございました。

 ちょっとまだ続きがあったんですけれども、時間となりましたので、続きは次回火曜日にやらせていただければと思います。

 本日は誠にありがとうございました。

塚田委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 皆様、お疲れさまでございます。日本維新の会の岬麻紀でございます。

 そして、大臣、本日も予算委員会で、私どもの日本維新の会の議員が御質問した際に、朝の六時から連日業務が続いているということで、大変ハードな毎日かと思います。改めて、お疲れさまでございます。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、本日は、所得税法の改正案、そして税制改正に関する質疑ですので、今回の税制改正の目玉ともなっておりますNISA制度について質問いたします。

 何人かの先生方がこの件を質問されておりますが、私どもは一応賛成という立場でございますので、その立場から質問をいたします。

 このNISAというのは、少額投資非課税制度ということでございます。本法案は、NISA制度の抜本的な拡充そして恒久化を行うとされております。先ほども申し上げましたように、私ども日本維新の会は、以前からNISA制度の恒久化及び投資枠の上限拡大を提言しております。基本的な方向性は今回の改正案と一致しております。ということで、反対ではなく、よりよいものにしていくための質問と捉えていただければと思います。

 このNISAですが、最近はよく耳にし、NISAという言葉を知っているという方は大変増えているかと思います。平成二十六年にNISA制度の導入をされてから、今年で十年目となります。

 NISA口座の開設数を調べてみますと、令和四年九月末時点で一千八百四十六万件、日本人の約七人に一人が口座を開設しているという計算になります。一方で、二〇二一年中に買い付け額がゼロという口座、一般NISAで約五割、半分です、つみたてNISAで約三割というように、開設はしたものの、活用、稼働はされていないという口座、相当数存在しているということです。

 そこで、この現状、まずは、政府としてどのように認識、分析をされていらっしゃいますでしょうか。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、まず、事実を申し上げまして、NISA口座の稼働率、これは二〇二一年で、一般NISAが四九・三%、つみたてNISAが七一・七%でございます。

 この数字は、制度開始以降、いずれも伸びております。特につみたてNISAは、制度が開始された二〇一八年のときの稼働率は五八・三%でございましたので、足下七一・七%ということなので、この数年間で大幅に伸びているという状況でございます。

 この結果、NISAの買い付け額、投資額も増えております。一般NISAが開始されました二〇一四年には三・〇兆円であったものが、二〇二一年には二十五・五兆円というふうに、実際の投資額も伸びております。

 無論、我々としても、こうした流れを更に加速させる必要があるというふうに考えておりまして、資産所得倍増プランでは、NISAの総口座数の倍増だけではなくて、買い付け額の倍増も目標として掲げているところでございます。

 この点について、先日鈴木大臣が発言されたとおり、政府としては、今年を資産所得倍増プラン元年と位置づけまして、NISA制度の普及等を図っていくことにしておりますけれども、その際には、単にNISA口座を開設するという、それだけではなくて、それぞれの国民の皆様が自らのライフプランに応じて適切にNISAを活用していって安定的な資産形成を進めていっていただく、この重要性に重点を置いて進めてまいりたいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 いろいろアンケートもございまして、調べてみますと、口座は開設しましたが活用していないという、なぜなのかといいますと、そもそも口座を開設するつもりはなかったけれども、銀行の方に、金融機関の方に勧められて何となく流れで口座を開設してしまった、こういった意見が一番多かったです。次に、商品が多過ぎて、何をどのように選んだらいいのかということで、分かりづらいというような、そもそも資金がないというものもございますけれども、今回このように税制改正が行われますと、口座開設をして活用していかなくては、余り意味がございません。

 口座数を増やすばかりではなく、では、どのようなアプローチをして、しっかりと開設した口座を稼働していただこうというように考えていらっしゃいますか。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 やはり、NISAの開設とともに、金融経済教育、これをしっかりと、なるべく多くの国民の方々に提供していく、これが非常に重要だというふうに考えております。

 その中で、皆さん、それぞれのライフプランをお持ちでございますし、それぞれの資金ニーズがあるわけですから、それらに基づいて資産形成をしていただく、その中にNISA等の活用もきちんとはめていただくというふうなことをやっていかないと、口座開設だけの周知ではなと思います。

 したがいまして、今回は、我々としては、NISAの抜本的拡充に加えまして、金融経済教育に関して、その拡充について様々な施策を同時に御提案申し上げるということでございます。

岬委員 ありがとうございます。私も、そこの点が非常に重要だと考えます。

 さらに、口座を開設していただいたところで、それなりにそれを知っていたり、何らかの興味、関心を持っていることではあると思いますので、やはりそこのスタートが、つみたてがあるであるとか、スタートをしやすい情報提供も金融機関の中であともう一押し、そういった部分も必要なのではないかと考えます。

 それでは、続いてですけれども、この資産所得倍増プラン、NISAを含めておりますけれども、政府は、五年間で、口座数を三千四百万、そして投資額を五十六兆円にいずれも倍増させると目標を掲げているということは何度もお聞きしております。

 ただ、これを見てみますと、個人の金融資産二千兆円から目標額のこの五十六兆円と考えますと、二%強にしかすぎないということなんですね。また、我が国の家計金融資産、二千兆円ですけれども、その半分以上はどうなっているかというと、リターンの少ない、普通預金と言われる現預金で保有されているというものが大変多いです。これはなぜなのかなと考えますと、将来不安が漠然と立ちはだかっているというのが、様々な理由はあるにしても、これが大きな要因ではないかと考えます。

 なぜ家計金融資産の半分以上が現預金であるのか、その理由、そして、どのようにすればこの倍増プラン、しっかりと達成していけるのか、どのような見解をお持ちでしょうか。

鈴木国務大臣 岬先生御指摘のとおりに、我が国の家計金融資産、その過半は現預金でありまして、アメリカ等と比較して、株式や投資信託などのリスク性資産の保有割合は低いものとなっております。

 その理由でありますが、これにつきましては、市場、経済情勢の影響や、家計のリスク回避的傾向が強いことなど、様々な要因が考えられ、御指摘のような将来不安が理由であるとは一概には言えないのではないかと思います。

 しかし、リスク性資産の保有に積極的と見られるアメリカでも、かつては家計の株式や投資信託の保有比率は日本と同程度にとどまっていたところでありまして、アメリカにおきましては、家計の資産形成を支援する様々な政策的対応を通じて現在のような姿が実現されたものと考えております。

 我が国におきましても、家計金融資産を貯蓄から投資へシフトさせていくためには、中間層を中心とした幅広い層が、将来のライフプランを見据えて、少額ずつでも継続的に、かつ長期的に投資をしていく、そのための環境を整え、家計を後押ししていくことが肝要ではないか、そのように思っているところであります。

岬委員 ありがとうございます。

 もちろん、様々な将来不安というのがあると思いますけれども、やはり、手元に、すぐに出し入れができるというところに現金を置いておきたい、そういった気持ちが、なかなか投資であるとか流動的な使い方には結びついていないのではないかと考えます。

 そこで、こうした将来不安を取り除いていかなくてはいけないと思うわけですけれども、一つの提案として、税制、そして社会保障、さらには成長戦略といったパッケージで改革をしていく必要があるのではないでしょうか。私ども日本維新の会は、日本大改革プランというものでそのことを提唱しております。その都度、何かあるたびに小手先のびほう策だけでは、もうなかなか立ち行かないということだと感じております。

 さて、先ほど鈴木大臣からもおっしゃっていただきました貯蓄から投資へという流れ、どのようにすればしっかりとそれが行われていくのか、活発にその流動ができるのか、具体的な策はございますでしょうか。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 やはり、貯蓄から投資へというふうに資金の流れを動かすためには、成長と資産所得の好循環、今回の資産所得倍増プランでもキーワードとして掲げさせていただいておりますけれども、この成長と資産所得の好循環、これを実現しなければいけないということだと思います。

 具体的に申し上げますと、家計の資産が我が国の企業の成長の投資の原資になっていく、その成長の結果生まれます企業価値の向上、この果実を、金融資産の所得という形で家計に及ぶというふうな形で好循環になっていく、そういうふうな流れをつくり出していかなきゃいかぬということだというふうに考えております。

 したがいまして、今回、我々といたしましては、資産所得倍増プランでは、NISA等の拡充策を掲げましただけではなくて、企業やあるいは日本の金融市場の、資本市場の魅力の向上ということも併せて掲げさせていただいています。

 例えば、企業の持続的な成長とか、あるいは中長期的な価値向上を図るためのコーポレートガバナンスの改革についての取組であったり、あるいは、人的資本に関する開示ルールの整備といった、企業によって人的資本にしっかりと投資をしてもらう、そういうふうなことを促進するということも含めて、そういう形で様々な施策を推進していきたいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 まさにそういった対策は必要かと思いますけれども、今おっしゃっていただいた成長と資産所得の好循環、この言葉もよく聞きます。さらに、家計の資産が企業の成長投資の原資となっていく、これも、先ほどの質問でも鈴木大臣からも御答弁いただいております。

 次のような指摘もございます。個人の資金が本格的に貯蓄から投資に流れるためには、投資した人がリターンを得て、更に投資を増やす好循環をつくる必要がある、そのためには、上場企業が投資先として魅力をもっと磨くべきだ。こういった魅力を磨くという言葉も先ほどの答弁にもございましたが、では、具体的にどのようにその魅力というのを見出し、また磨いていくんでしょうか。

 さらに、日本株市場の魅力は低いまま、国民のお金、アメリカですとか海外の、成長期待が高い海外の市場に流出するのではないかという懸念もございます。

 さらには、個人のお金が投資に向かう道筋が必要です。幅広い国民の株高の恩恵を受けられるようにするとともに、経済を牽引する成長産業を株式市場が後押しする好循環をつくっていく、このような記事がございました。

 では、この指摘において、政府として、個人のお金が国内の企業に投資をしていただくためのその方向に向かう道筋は、どのようにつけていくとお考えでしょうか。さらに、企業が投資をしてもらえるように魅力を高めていくには、どのようにしていけばよろしいんでしょうか。教えてください。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 若干繰り返しの部分がございますけれども、やはり、日本企業及び日本の市場、金融市場、これが世界から見て魅力的なものにならなければいけないということでございます。その結果として、今回のNISA等も含めた成長原資が日本の企業に流れてくるということでございます。

 そこで重要なのが、やはり大きな企業のコーポレートガバナンスということでございます。あるいは、それを支える開示制度ということ、これが非常に重要な要素になってまいると思います。

 金融庁の方では、この二つのものについて、更に促進をするために、様々な施策を今回は併せてやっていきたいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 私たちは改正案には大筋賛成であるということを最初に申し上げておりますが、それをよりよくしていく、更によくしていくためには、やはりもう少し具体的な策が必要であると思います。大変上辺だけの施策になってしまわないように、しっかりとしたお取組をお願いしたいと思います。

 さて、これで本日は最後の質問になるかと思いますが、若年層の資産形成にも目を向けてみたいと思います。

 日本株の保有、やはり高齢者に偏っているなという印象がございます。証券保管振替機構によりますと、金額ベースでは七十歳代以上が株主の四割を占めています。では、若年層と言われる二十代、三十代はどうでしょうか。たったの十分の一、四%にすぎません。

 ただ、ほかの見方もございます。水面下ではこの若年層また中年層の投資は広がりつつあるということなんです。証券保管振替機構と日本証券業協会によりますと、二十代、三十代の株主数は、二〇一五年の百十五万人から、二〇二二年九月には五割ほど増えているという数字が出ています。二〇二二年九月の末時点では百七十四万人でございます。人数ベースでは、株主全体の一二%程度になるのではないでしょうか。

 そこで、最後の質問、鈴木大臣にお願いします。

 高齢者の皆さんの資産を取り崩して生活費に充てているというケースが非常に多く感じられます。保有する株式の資産を現金化する動きが想定されるということです。一方、若い世代の方に投資を促進していくことは、若年層の資産形成に資するだけではなく、企業側にとっても安定した資金供給のために重要な意味を持っていくのではないかと、未来、考えております。

 株主の世代交代、これを本格的に進めていく必要もあるのではないでしょうか。先ほどから繰り返し申し上げているように、日本企業の魅力を高めていくことが条件であると思われます。日本企業の稼ぐ力、いかに高めていくでしょうか。また、若年層の資産形成による所得向上をどのようにつなげていくか、最後に御答弁をお願いします。

鈴木国務大臣 御指摘のように、我が国の家計金融資産は、六十代以上の方が六割以上を保有しているということでありまして、若年層の安定的な資産形成を後押ししていくこと、これは重要な課題である、そういうふうに認識をしております。

 NISAは、長期、積立て、分散投資による資産形成を支援するために利便性の高い制度でありまして、現在のつみたてNISAの利用状況を見ますと、若い世代を中心に利用者が増加しておりまして、投資に関心を持つ方が増えていると認識をしております。

 こうした状況も踏まえまして、NISAの抜本的拡充、恒久化によって、若年層や中間層等の方々の資産形成を更に促進をし、また、金融経済教育の推進など、資産所得倍増プランに盛り込まれた様々な施策も総動員をいたしまして、家計の資産所得倍増につなげていきたいと考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、投資が目的ではなく、ライフプランが実現できるための手段としていくように推し進めていただきたいと思います。

 結果、資産所得倍増が目指すべきは、家計の資金を、有望な日本産業、また企業への流動をさせていただきまして、日本経済が成長、是非とも引き上げていただくために、この改正案、頑張って進めていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、ありがとうございました。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 まず、個人所得課税について、大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 よく言われる一億円の壁と言われるものがなぜあるか。申し上げるまでもありませんけれども、所得税の累進課税と、そして資産課税の、国が約一五パー、そして地方が約五パー、約二〇パーの定率課税の中で、一億円を超えてくると税率自体が下がってくるというのがこの一億円の壁と言われるものでございますけれども、今回、これの対策をするということで、一億円の壁どころか、三十億円から対応するということでございまして、この三十億円に至った経緯を、まず、大臣から御説明をいただけますか。

鈴木国務大臣 現下の所得税の負担率を見てみますと、所得が一億円を超えた辺りの所得層では負担率がそれほど大きく低下していない一方で、それを上回るかなりの高額所得者層では負担率の低下が著しい状況にあります。

 このような負担率の状況等を踏まえまして、与党の税制調査会において幅広い観点から御議論をいただいた上で、今般の措置におきましては、長期間の価値上昇の効果を反映した譲渡所得についての負担の平準化も勘案をして、三・三億円の特別控除を設けた上で、所得税法の本則において、株式等の長期譲渡所得については二分の一が課税対象となっていることも踏まえまして、極めて高い所得については、最低でも最高税率四五%の半分、二分の一の二二・五%に近い負担を求めることとしたものであります。税負担の公平性の確保に向けて、一定の対応が図られたものと認識をしております。

 政府としては、令和七年度から施行される今回の改正の効果というものをよく見極めて、また今後についても考えてまいりたいと思います。

前原委員 この一億円以上の納税者については、一万九千人おられるんですね。今回、この三十億円以上という方々は、これは財務省から説明をいただきましたけれども、二、三百人ということで、余りにも少ないなということであります。

 なかなか国民の理解を得られるような一億円の壁に対する取組ではない、私はそう思いますけれども、今、大臣は、効果を見極めた上で今後検討するということでありますが、実際これをやってみて、そして更なる、言ってみれば、二百人から三百人を、対象範囲が広がるような、そういうものはやはり検討すべきだというお考えで今の答弁をされたんでしょうか。

鈴木国務大臣 今回の措置につきまして、いろいろなところから、対象者が少な過ぎるという御意見、それは私も耳にするところでございます。

 令和二年分の国税庁の統計データを見てみますと、この負担率が著しく低下している方々、大変に高所得者層の方々でありますが、そうした方々の所得がおおむね二十億円あるいはそれ以上であることを踏まえますと、全体として見て、税負担の公平性の観点から一定の対応が図られたと考えております。

 今後につきましては、令和七年度から実施される状況を踏まえて、まずは与党の税制調査会等で議論がされるんだと思います。それを踏まえて政府としても対応をしていくということになるんだと思います。

前原委員 一億円の壁の是正策として、今回はこういう形が取られたわけでありますけれども、よく言われているのが、一つは金融所得を総合課税化するということ、それからもう一つは、この金融所得に対する税率、先ほど国、地方合わせて約二〇%ということを申し上げましたけれども、これを引き上げるというのがありますし、また、イギリスとかアメリカでは金融所得課税に対して段階的な課税方式が採用されている、つまりは、分離課税を維持しながら段階的な税率を導入するという案もあるわけですよね。

 やはり、この程度の適正化であれば、金持ち優遇は残っていると言われても仕方がない、私はそう思っておりますけれども。

 今三つのことを申し上げましたけれども、与党の税調の考え方を待ってというよりは、大臣自らが、やはり、これからのこともありますでしょう、防衛の財源あるいは子供予算の財源、こういうことも含めて、今申し上げたようなことを検討する余地はないのかどうか、その点について御答弁をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 いずれ一定の対応をしたということだと思います。そして、今後につきましては、令和七年度の実際に実施した際の状況を見てみなければならない、そう思っております。

 その際に、今、前原先生がおっしゃられました、金融所得の総合課税化でありますとか、今の税率の引上げ、市場に対する影響がどう出るかとか、様々考えなければいけないことがあると思いますけれども、万が一与党の税調で議論するとなれば、そういったことも当然論点になってくるのではないか、今の段階では、何と言ったらいいんでしょうか、そうなるのではないかということまでしか申し上げられませんが、そんな思いをしながら先ほどの話を伺っておりました。

前原委員 岸田総理が総裁選挙に出られるときに、総合課税化に言及されていたと私は記憶しています。それが岸田ショックと言われる株価の下落というものに一つはつながっているということでありますけれども、変更すれば、当然ながら、その時点においては株価が下がるということはあり得ると思うんですけれども。要は、ファンダメンタルズを反映するわけですから、制度を変えるときはそれは下がるかもしれないけれども、中長期的な国家の財政運営というものを考えたときに、もちろん市場との対話というものは大事だと私も思いますけれども、しっかりとやはりこの一億円の壁の是正策というものを、一万九千人いて二、三百人ということではなかなか国民の理解は得られないということで、是非、今申し上げた三つのことを選択肢に、財務大臣にはリーダーシップを発揮していただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 次に、インボイスについてお話をさせていただきます。

 まず、しっくりこないんですね、このことについて。要は、何がしっくりきていないかというと、二つありまして、一つは、免税事業者というものは堂々と認められたものであったはずなんですよね。五千万円、三千万円、一千万円と免税点は下がってきてはいますけれども、免税事業者というのは堂々と認められたものなのに、このインボイスが導入されるということになると、言ってみれば、何か、日陰者というか、はみ出し者というか、はぐれ者というか、この人たちを悪い人たちというふうな形に追いやっているんですよね。

 この免税事業者に対する考え方、つまり、残すべきと考えているのかどうなのか、それとも、免税事業者はなくすということの一環としてインボイスについて取り上げられているのか、どちらですか。

鈴木国務大臣 今免税事業者である方が課税事業者になるか、あるいはならないか、これは御自身の仕事などを通じて判断されるものであって、何か、将来なくしていくとか、そういうことはないんだ、そういうふうに思います。

 ただ、今、インボイス制度の導入を前にいたしまして、やはり、免税事業者の方々からの様々な心配事ということがよく聞かされているところでございます。ですから、免税事業者に対する対応、そういうものもしっかりやって、円滑な移行をしなければならないと思っております。

 具体的に申し上げれば、免税事業者であっても直ちに取引から排除されるというようなことがないように、制度移行後も六年間は免税事業者からの仕入れであっても一定の割合を控除できるなどの十分な経過措置が設けられております。

 また、免税事業者の方が課税事業者となった場合については、免税事業者を始めとした小規模事業者が不当な取扱いを受けることがないよう、引き続き、独占禁止法等に基づく書面調査の実施や下請Gメン、相談窓口での対応等の取組を実施しまして、適切に対処していくということになっているところでございます。

 いずれにしても、様々な対応策を取りながら、このインボイス制度への移行をしっかりやっていきたいと思っております。

前原委員 建前のような気がするんですね、答弁が。つまり、免税事業者は残しますよ、選んでくださいよということですけれども、この制度を入れることによって、結局は、今まさに大臣が御答弁をされたように、取引から排除されたりとか、それから不当な圧力を元請から受けるとか、そういうことが起き得るわけですよ。起き得るのに、どちらかを選んでもいいですよというのは、それは私はおかしな制度だと思いますよ。

 もし、全ての免税事業者はなくしますということの方針の中でインボイスを入れるということであれば、そして経過措置を設けるということであれば、まだ理解できるんですけれども、免税事業者という制度は残します、どちらを選んでもらっても結構ですよ、でも、免税事業者を選んだら不利益を被るということで選んでくださいというのは、これは、極めて不公平な仕組みを残したまま、建前だけ免税事業者制度は残しますよということにならないですか。

鈴木国務大臣 極めて零細な小規模事業者の方にとりましては、自分が免税事業者でいるということのメリットもあるんだと思います。そういうことで、自らの仕事の在り方を踏まえて自らで検討していただくということで、免税事業者という立場をなくしてしまうということは今考えていないところであります。

前原委員 まあ中途半端ですね。もっと言えば、本音を言うと、益税をなくしたいということじゃないんですか。益税、つまりは、免税事業者が、言ってみれば、取引の中で消費税を得てしまっていて、税として納められないと。益税は幾らですか。分かっていますけれども、お答えください。益税は幾らで、本音はそこにあるんじゃないですか。益税をちゃんと出させて、そしてその益税をなくしていくということが。

 いや、私は、それはそれという考えだったら、先ほど申し上げたように、本音を言った方がいいと思うんですよ、国民に対して。免税事業者をなくしていきます、インボイス制度を導入します、その代わり、経過措置は設けます、そして、益税というのはなくなります、公平公正な税になりますよと言われた方が、私は、国民は、納得するかどうかは別にして、分かりやすいと思うんですけれども。免税業者は残します、そして、どちらか選んでください、でも、免税事業者を選んだらどんどんどんどん不利益を被ると。私は、おかしな感じがしてならないんですね。

 益税は幾らで、本音はそこにあるんじゃないですか。

鈴木国務大臣 いわゆる益税と言われるものをなくしていくということが本音ではないかといえば、財務大臣としての立場から、そうだということは申し上げません。

 以前から申し上げましたとおり、日本におきましては、一〇%に引き上げた際に複数税率を導入をするという決断をしたわけでありまして、インボイス制度は、複数税率の下で、売手と買手の税率の認識を一致させ、適正な課税を確保する上で必要な制度である、そういう財務省としての認識の下で、安定的にインボイスの制度を導入していきたいと考えているところです。

前原委員 二千億円ぐらいですよね、今答弁されませんでしたけれども、益税は。そんなもんですよね。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 免税点制度の存在による減収額について言及されているのかというふうに推察いたしましたけれども、いわゆる益税と言われるものは、免税事業者の場合でも仕入れに消費税の負担を負って仕入れをしておりますので、それに見合った値づけをしている限りにおいては益税というものは生じないわけでございまして、免税点制度の存在による減収額、いわゆる益税というものの金額というのは違う概念であるということを申し上げておきたいと思います。

前原委員 少し、次回も質問がありますから、そこはやはりはっきりされた方がいいと思いますよ。

 それから、その前の財務大臣の御答弁の中で、複数税率を導入したからという言い方がありましたし、一月二十五日の岸田総理も、インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものですと。だったら、複数税率でなければインボイスというのは必要なかったということですか。

鈴木国務大臣 複数税率である軽減税率制度につきましては、消費税一〇%への引上げに伴う低所得者への配慮として、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の税負担を直接軽減するもので、導入されたものでありますが、消費税の逆進性を緩和しつつ、痛税感を緩和するということで、実感できるという、一定の効果はあるものである、そういうふうに思っております。

前原委員 質問に答えてください。

 要は、複数税率の下で適正な課税とおっしゃっているということですから、複数税率でなければ、単一税率であればインボイスは要らないんですかと聞いているんです。

塚田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

塚田委員長 速記を起こしてください。

 鈴木財務大臣。

鈴木国務大臣 単一税率であるならばインボイス制度は要らないということだと思います。

前原委員 もう時間も参りましたので終わりますけれども、今大事な御答弁だったと思うんですね。単一税率ならインボイスは要らない。こういうことをおっしゃったということは、複数税率にしていることが問題である。我々は、一〇パーを単一税率にして、その代わり低所得者に対してはしっかりと税額控除するという仕組みの方が本当の低所得者対策になると言っていましたので、インボイスは単一税率では要らないという御答弁はちょっと驚きました。

 今日は終わらせていただきます。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 前回に続いて、FIT制度におけるインボイスの問題について質問します。

 十キロワット未満の住宅用太陽光発電を設置している場合、その利用者の大部分は消費税納入義務を持たない一般消費者であります。したがって、インボイス実施後は仕入れ税額控除ができなくなります。そこで、資源エネルギー庁は、インボイス制度の実施後、電力会社などの買取り義務者が仕入れ税額控除できない部分を再エネ賦課金で補う仕組みを検討していると、前回の答弁はそういうことでありました。すなわち電気料金への上乗せ、すなわち国民負担で補うということです。

 お伺いします。

 電力会社を支援するために、一年間でどのぐらいの金額が必要になるのか。機械的な計算でいいですので、お答えください。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 FIT制度では、先生御指摘のとおり、再エネ特措法上、電気事業者に対して再エネ電気の買取りを義務づけておりますので、インボイス制度の開始後、仕入れ税額控除ができない場合には、買取り義務者に新たな消費税負担が生じます。

 こうしたインボイス制度の導入に伴う買取り義務者への影響の抑制に向けまして、課税事業者のインボイス登録に関する周知に取り組んでいるところでございます。

 その上で、なお、FIT制度に基づく再エネ電気の買取り業務を行う中で、仕入れ税額控除できないことによりやむを得ず生ずる負担につきましては、法律に基づく再エネ電気の買取り業務の継続が困難とならないように、二〇二三年度につきましては、資源エネルギー庁の審議会での議論を踏まえて、先生御指摘のとおり、FIT制度において手当てする予定でございます。

 この二〇二三年度に必要となる金額につきましては、FIT認定事業者に対して我々が実施いたしましたアンケート調査の回答結果から機械的に試算いたしますと、十キロワット未満の太陽光分が約十五億円、十キロワット以上の太陽光分が約三十九億円、その他の再エネ分が約四億円の計五十八億円と試算されます。

 これは、二〇二二年度の想定販売電力量から機械的にキロワットアワー当たりの単価に換算いたしますと、〇・〇〇七円程度という金額になります。現在、二〇二二年度の賦課金単価が三・四五円でございますので、これの〇・二%程度の水準に当たるというのが機械的な試算になります。

田村(貴)委員 何か、聞いていると、二〇二三年度のみ、そして額が少ないからいいんだというようなお答えでしたけれども、私、これはとんでもない話だと思いますよ。七年後、軽減の規定もなくなったら、単純計算でも百八十一億円になります。これだけのお金を、ある日突然、国民にも諮っているかのようで諮っていない。そして、再エネ賦課金で、あら、上がっているじゃないの、そうなっていくんですよ。再エネ賦課金を積み増しして、更に電気料金が上がる仕組みをつくる。多くの国民はこの制度のことは知りません。電気料金がこれだけ高騰している、その中で、更に電気料金が上がるという議論をしていること自体が信じ難いことです。

 今日の読売新聞には、「電気代 春から負担増」という大きな記事がありまして、電力大手会社が申請した家庭向け電気料金の値上げをめぐり、経済産業省が各地で公聴会を開いていると。そして、公聴会では、値上げ幅をできるだけ圧縮してほしい、物価高騰の中、更なる値上げは国民生活に大きな影響を与えるといった利用者の不満が相次いだと。

 高騰電気料金で利用者の不満が相次いでいるじゃないですか。なぜそこに国民負担をまた求める議論をわざわざするのか。だから、インボイスは問題なんですよ。

 国民の理解が得られると考えていますか。国民の合意を得るためには、エネ庁、経産省は何をしていますか。

井上政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま御指摘ありましたインボイス制度の影響に伴います、影響への対応に関しましては、これまでも、資源エネルギー庁の審議会で、二〇二二年六月、二〇二二年十二月、二〇二三年二月の計三回にわたって御議論を重ねていただいてきております。

 こうした御議論の中身は全て全面公開で行わせていただいておりますが、今回の措置につきましては、こうした審議会における議論の過程といったようなものをしっかりと公開させていただき、また、FIT制度の概要につきまして、当省でのホームページにおけるPRなどなど、そうした観点で、しっかりと更にPRに努めてまいりたい、かように考えてございます。

田村(貴)委員 パブリックコメントは求めていますか。

井上政府参考人 お答えを申し上げます。

 現在パブリックコメントにかけているところでございます。

田村(貴)委員 そのパブリックコメントなんですけれども、意見を受け付けるというのは、二月九日に公示された再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等というものに対してであります。

 資料をお配りしています。資料一です。この枠で囲んでいるところが政府の説明部分、つまり、国民に意見を求めるとしたところの説明であります。

 大臣にお伺いします。

 大臣、一国民になったつもりで、この四行の文章、目を通していただいて、私、読み上げますので、聞いていただきたいと思います。

 第十三条三の三、調整交付金の額の算定方法。法第十五条の三の規定に基づき算定して得た額から控除する額として、消費税に係る仕入れ控除税額、交付金に係る消費税相当額のうち、消費税法の規定により仕入れに係る消費税額として控除できる部分の金額をいうを新たに追加する。

 私、これは何度読んでも分からないんですよ、何のことか。

 つまり、ここが、電気料金に上乗せされている賦課金を増額して、電力会社が仕入れ税額控除ができなくなる部分を補填して、そういう制度をつくるという説明なんですよ。そういうことでしょう。これを読んでも全然分からないですよ。そして、説明に努めている、国民に声も求めている、パブリックコメントをかけていると言ったけれども、これだけなんですよ、クリックして出てくるのは。これじゃ全然分からないですよね。

 大臣、率直にどうですか。仕入れ税額控除で、電力買取り業者、電力会社などにおける仕入れ税額控除部分の消費税、これを補填するという措置を定めた、これについて意見を求めているんだけれども、大臣はこれは分かりますか。

鈴木国務大臣 法律の規定でありまして、なかなか分かりにくい、一読して、確かに分かりにくく思います。

 その上で、インボイスの導入に係るFIT制度における対応方針につきましては、制度等の特徴でありますとか取引の実態等がそれぞれ異なりますが、そうした実態等を踏まえて資源エネルギー庁において検討されているもの、そのように承知をして、前回の委員会でもそのように答弁をさせていただいたところであります。

田村(貴)委員 大臣言われるように、本当に分かりにくいんですよ。これで説明責任を果たしていると言われるんだったら、それは間違いです。しかも、なぜFITだけ、なぜ電力会社だけに国民の負担で補填をする措置を取るのか。これだけなんですよ。FIT制度だけなんですよ。

 免税業者の方が困るという話は、今日、各議員の方から出されました。私もまた例を紹介したいと思います。先日、インボイス検討の超党派議員連盟で、そのヒアリングでお越しいただいた方がおられるんです。関東地方で有機農業に励む若手農家の方であります。この方は、野菜とか果物、自家製ジャム、キノコ、これらの農産物を道の駅で委託販売をしています。この方が語られた部分をちょっと紹介しますので、財務省、大臣、聞いていただきたいと思います。

 高齢の農家がインボイスに対応することは難しく、このままだと廃業してしまい、それが全国的な規模で起こるわけで、今でさえ少ない国内の食料自給率は更に減ってしまいます。免税事業者を排除しないでと、取引を続けてもらう方法を探ってもらえないかという要望を道の駅の管理者にお伝えすると、私に対して、そんなことを言う生産者とは取引をしないという選択もあると言われた。今まで築き上げてきた関係にまでひびが入り始めてしまっています。しかし、インボイスに対応してほしいという指定管理者の思いも理解できます。販売の委託をしているわけですが、その手数料はぎりぎりなので、指定管理者はインボイス制度を受け入れざるを得ません。このような制度がなければ、今起こってしまうような対立や分断はなかったのではないかと思います。

 大変厳しい状況です。そして、取引停止とか、それから泣く泣くの課税登録をしていく、こうした話が今この瞬間にも全国各地で起こっているわけなんです。そのことに思いを寄せていただきたい。

 大臣にお伺いします。

 大企業の電力会社が仕入れ税額控除ができないと、国民負担で補填していく。一方で、道の駅というところを始めとして、そうした事業所には全くの支援はない、だから、免税業者の農家さんが割を食って大変厳しい目に遭い、収入を失っていく。こういう不公正なことがインボイス制度とそして救済措置によって起こっていることについて、大臣は矛盾をお感じになりませんか。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 たしか先週のこの委員会でも先生から御質問いただいたわけでありますが、やはり制度等の特徴や取引の実態というものがそれぞれ違いますので、そうしたことに対する対応というものはやはり個別ばらばらになるということはあり得るんだ、そういうふうに思っております。先週もそのように答弁させていただきました。

田村(貴)委員 これは、商取引をされている方、それから免税業者の方、そして免税業者と取引をしている事業所の方が聞かれたら、それはおかしいだろうと思いますよ。そこを大臣がやはり是認しては駄目ですよ。しかも、電気料金が高騰している、一月の請求書が来たらもうこれは恐怖だと言われる中で、再エネ賦課金を足してまた電気料金を上げる議論を今この瞬間やっている。これは、政府の対応としては、本当に国民生活を見ていない、そして商取引の慣行を見ていないと言わざるを得ません。

 免税業者にとって迫られる対応というのは、課税業者になるか、免税業者のままで消費税一〇%相当分を売上げから減額されるか、こうした厳しい道です。

 もう一例紹介したいと思います。資料の二です。

 これは、昨年の十一月頃に、ある飲料メーカーが販売員に対してインボイスの対応を迫ったものです。事業所と免税の販売員との間で仕入れ税額控除の問題が発生します。ここに選択肢は二つと書かれています。課税業者になれば消費税を納税しないといけないけれども、その半分は会社が実質負担する、これは会社の対応です、半分の残りは販売手数料を増額するので、たくさん販売して頑張って穴埋めをしてほしいという提案です。もう一つの選択は、免税業者を選択すれば販売手数料を消費税相当分減額するという提案であります。

 公正取引委員会、来ておられると思うんですけれども、免税業者にこのような選択肢しか提示されない、ここで生じるのは不利益だけです、こうした飲料メーカーの説明というのは独占禁止法の中の優越的地位の濫用に該当するのかしないのか、見解はいかがでしょうか。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 今御提示をいただいた通知文書を拝見いたしましたけれども、個別の行為が独禁法違反になるかどうかということにつきましては、通知の文面のみで判断をするものではございませんので、本件、個別の事案についてはちょっとお答えを差し控えさせていただきますけれども、一般論として申し上げれば、取引上優越した地位にある買手の事業者が、免税事業者との取引におきまして、自らの都合のみで著しく低い価格を設定いたしまして、免税事業者が負担していたような消費税額も払えないような価格を設定するという場合には、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となるものでございます。

 また、取引上優越した地位にある買手の事業者からの要請に応じまして課税事業者になったという場合に、仕入れ先が納税義務を負うことになる消費税分を勘案した取引価格の交渉が形式的なものにすぎず、著しく低い取引価格を設定したというような場合も同様でございます。

 いずれにしても、公正取引委員会としましては、独禁法上問題となる行為には厳正に対処してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 今説明があった独占禁止法において問題となる行為、公取が出している文書です。再交渉というのがあるんですけれども、圧倒的に会社の方が大きいですよ、力が、販売員さんですから。再交渉の余地など私は存在しないと思います。それから、仕入れ側、事業者のみの都合のみで著しく低い価格を設定し、この会社は手だてを作っているといったところはあるんですけれども、やはりこの二つの条件から見れば不利益が生ずる、そして、今まで得られていた自分の収入が減ってしまう、これはもう間違いない事実なんですよ。免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として独禁法問題になりますと。

 もうちょっと、個別の事案は答えられないと言うんだけれども、私は、この委員会でこうした事例もあるということを何回も取り上げてまいりました。不利益が生じたら、やはり日本経済は大変なことになってしまいますよ。こうした販売員の方はたくさんおられるわけですから。

 最後、大臣にお伺いします。手取りの収入が確実に減ります。これが今現状起こっていることです。こうしたことを起こしてしまってはいけないんじゃないですか。やはり、インボイスは一旦立ち止まって見直すべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 田村先生からもうずっと、様々な問題点、免税事業者の方々を中心に、不安に思っている声なども紹介していただいておりますが、私どもとしては、できるだけ丁寧に御説明をしながら、また様々な緩和的な措置も講じながら、インボイスの導入については、やはり、複数税率下において公平な税を執行するという観点からも必要なものである、こう思っておりますが、これからも丁寧な説明等に努めていかなければいけない、そう思っております。

田村(貴)委員 時間が参りました。この続きは、また来週行いたいと思います。

 終わります。

塚田委員長 次回は、来る二十一日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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