衆議院

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第4号 令和5年2月21日(火曜日)

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令和五年二月二十一日(火曜日)

    午前十時十分開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    上杉謙太郎君

      上田 英俊君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      加藤 竜祥君    金子 俊平君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    小森 卓郎君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      瀬戸 隆一君    津島  淳君

      中曽根康隆君    中山 展宏君

      葉梨 康弘君    深澤 陽一君

      藤原  崇君    本田 太郎君

      八木 哲也君    若林 健太君

      梅谷  守君    階   猛君

      野田 佳彦君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    道下 大樹君

      米山 隆一君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        井上 貴博君

   経済産業副大臣      中谷 真一君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   国土交通大臣政務官    清水 真人君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   松浦 克巳君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中澤 信吾君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   品川  武君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  井藤 英樹君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   中村 英正君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房スタートアップ創出推進政策統括調整官)        吾郷 進平君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 哲也君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    清水 幹治君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     加藤 竜祥君

  大野敬太郎君     瀬戸 隆一君

  神田 潤一君     小森 卓郎君

  塩崎 彰久君     中曽根康隆君

  津島  淳君     上田 英俊君

  中山 展宏君     深澤 陽一君

  米山 隆一君     梅谷  守君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     津島  淳君

  加藤 竜祥君     青山 周平君

  小森 卓郎君     神田 潤一君

  瀬戸 隆一君     大野敬太郎君

  中曽根康隆君     上杉謙太郎君

  深澤 陽一君     中山 展宏君

  梅谷  守君     米山 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     本田 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  本田 太郎君     塩崎 彰久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長松浦克巳君、内閣府大臣官房審議官中澤信吾君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長品川武君、金融庁総合政策局審議官堀本善雄君、企画市場局長井藤英樹君、監督局長伊藤豊君、財務省主計局次長中村英正君、主税局長住澤整君、国税庁次長星屋和彦君、経済産業省大臣官房スタートアップ創出推進政策統括調整官吾郷進平君、大臣官房審議官田中哲也君、特許庁総務部長清水幹治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 おはようございます。立憲民主党の末松義規でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 私は、今日は、インボイスについて、反対の立場から審議をさせていただきます。ただ、その前に、NISAと、それからスタートアップ企業への支援、これを最初に話をしてから、あとはインボイスに集中してまいりたいと思いますので、ちょっと順序を変えます。

 まず、NISAについてなんですけれども、NISAの設立趣旨というのは、一般の方々の資産保有形態を貯蓄から投資に転換させようということでございまして、例えば、大金持ちの方々とかあるいは株式の専門の心得のある方、これの株式投資の無税化を促進することではないと理解をしております。

 ここで、具体的に言えば、一般NISAで、二百四十万円まで年間枠がございます。これを、二百四十万円の枠内で株式投資の売買を、例えばデートレーダーみたいに、どんどん、毎日毎日、二百四十万円の枠内で売却を、あるいは買入れ、売却を繰り返していくと、一年間で、例えば、株式の心得があって、セミプロの方とか、あるいはこれは外国人トレーダーもオーケーだと思うんですよね、日本に居住という事実があれば、そういう方々がどんどんどんどんやっていったら、単にこれは、株式を無税で売買できる、こういう抜け穴をつくるんじゃないかと思うんですけれども、これは元々の趣旨に反しているのじゃないでしょうか。大臣、お願いします。

鈴木国務大臣 非課税保有限度額につきましては、非課税枠の再利用を可能とすることは、長期投資を促す上で、将来を見通しにくい若年期等の世代において、一度投資を行うと二度と非課税枠の再利用ができないことによる投資控えや消費控えを防ぎ、ライフサイクルに応じて柔軟に積立てと取崩しができる、中間層にとって使い勝手のよい制度とするとの観点から、必要なものであると考えているところでございます。

 末松先生御指摘のように、成長投資枠の中で、毎年など短期的に売買を繰り返すことはできますけれども、枠が復活しない投資上限として、年間投資枠二百四十万円、これを設けることによりまして、短期売買を繰り返す行為を一定程度抑制できるのではないか、そのように考えております。

 また、相場は一本調子に上昇するものではなく、他の取引との損益通算ができないNISA口座は短期売買には向かないこと、それから、売買の繰り返しによって総額の買い付け額を大きくしたとしても、成長投資枠の非課税枠はあくまで簿価残高の一千二百万円までに限られること、さらに、今申し上げましたとおり、非課税枠は簿価残高であるため、短期売買よりは長期的に保有し続ける方が時価上昇の恩恵を受けやすいことなどを踏まえますと、投資余力が大きい富裕層への優遇措置にはならない、そのように考えているところでございます。

末松委員 それは、投資を行う人がどう考えるかという話であって。だから、二百四十万で、私が聞いているのは、これは、デートレーダーはそういう形でどんどんどんどん売買できるんですよねということを、仕組みとしてできるんですよね。そこを確認させてください。

鈴木国務大臣 それは、やろうと思えばできるわけでありますが、それは政策目標として目指すところではないわけでありまして、先ほどの二百四十万円という枠を設けることによって、こうしたデートレーダー的な行為を一定程度抑制できるのではないかと考えているところであります。

末松委員 ということは、これ以上、そういった方々、セミプロみたいな方々が利用すること、これを制限をつけるということはないということですね。

鈴木国務大臣 それは、望ましい方向として政策目標で考えているわけではありません、デートレーダーみたいなことをされることを。

 しかし、これ以上、それを制約する、抑えるための何か措置を講ずるということは、今回のお願いをしております法案につきましては考えていないということであります。

末松委員 ここで、そういうセミプロ、プロの方でもできるということですから、外国人トレーダーがいろいろと、利益を強力にやっていくようなときを含めて、そういうことは趣旨でないならば、何かやはり制限をつけるということもあり得ることだと思うので、そこは検討をまたお願いしたいと思います。

 次に、スタートアップ企業の支援についてなんですけれども、創業者とかエンジェルの関係者のみが、株式を売買した利益ということのみをもって、スタートアップをするときは税制優遇を受けるということなんですけれども。スタートアップ企業に対しての支援は、そこはしっかりとやっていった方がいいと思うんですね、これからの日本を支えていくためには、いろいろな企業をつくっていくためには。私は大賛成なんですけれども。

 この支援のやり方なんですけれども、アメリカのモデルを研究したという話ではありますけれども、何で、創業者とかエンジェルとか、その方々のみに絞って出資をすることでこの法律が適用されることにしたのか。もっと一般からいろいろな形で支援をするということでよいのではないか。この法律の主体、それが余りに限られ過ぎているということは、私はちょっとおかしいと思うのが一点。

 二点目は、この法律の適用の対象が、株式の売買益、これを元手にスタートアップ企業に投資すると。これもおかしい。例えば、不動産でもうけた方がスタートアップ企業を支援するときに、これも無税にするとか、そういう形でどんどんやればいいじゃないですか。何で、株式の売却益という、株式を通じた形だけに絞るのか。これは私はおかしいと思うんですけれども、そこはいかがですか。

鈴木国務大臣 スタートアップ育成五か年計画、昨年十一月に決定をいたしましたが、この五か年計画におきましては、スタートアップの起業加速への環境整備といたしまして、創業者などの個人からスタートアップへの資金供給のため、保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合の優遇税制を整備するとされたところであります。

 こうしたことを踏まえまして、今般の税制改正におきましては、我が国にスタートアップを生み育てるエコシステムを創出するという観点から、自らリスクを取って出資する創業者を金銭面から力強く後押しするとともに、特に、資金の集まりにくい創業初期のプレシード、シード期におけるエンジェル投資家からのスタートアップへの出資をこれまで以上に支援するため、自己資金による創業やプレシード、シード期のスタートアップへ再投資した場合に限り、二十億円を上限とした非課税措置を設けたところでございます。

 そして、先生からも御指摘がありました、一般といいますか、それ以外のことにつきましては、既に我が国におきまして、個人投資家からスタートアップへの資金提供を支援するための措置としてエンジェル税制が設けられているわけでありまして、これにおきまして、株式譲渡益がなくても、年間八百万円までを上限として寄附金税制を適用できる仕組みとなっているところでございます。

 まずはこうした仕組みを積極的に活用していただきまして、その効果を見ていくことが重要である、そういうふうに考えております。

末松委員 この制度は二十億までオーケーなんですよね、無税。一般の人たちには八百万円限度で、それも寄附金税制という枠になっている。この人たちもどんどんスタートアップ企業支援をもっと積極的にやれるように、条件を緩和してやっていった方がいいんじゃないですか。

 特に、株式ということにちょっとこだわり過ぎている、株式売却にこだわり過ぎている、これはおかしいですよ。例えば、宝くじで一億円当たった人がスタートアップ企業を支援したい、こういうところにも適用できるような仕組みをやればいいんじゃないですか。あるいは、不動産売買でもうけた人、そういう方々に、どうせスタートアップ企業というのはリスクを取るのは同じなんですよ、創業者であろうがエンジェルだろうが、同じなんですよ、リスクを取ることは。その方々の層を厚くして、株式売却だけじゃなくて、いろいろなところも条件を緩和してやっていくべきじゃないですか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、昨年十一月に決定したスタートアップ育成五か年計画、これに基づいて、今、法案としてお願いをしておりますこの税制改正におきまして、先ほど来申し上げたとおりの新たな非課税措置を設けたところでございます。

 スタートアップを育成していくということ、これは日本経済を新たな成長軌道に乗せるという上においても大変重要なことであります。そういう意味で、まず、今回、こうした税制改正をお願いするところでございますが、先ほど御紹介をいたしました寄附金税制の適用もできる仕組みとなっておりますので、まずはこうした仕組みを積極的に活用していただきたい、そして、私どもとしてもその効果をしっかりと見ていきたいと思っております。

末松委員 貯蓄から投資という、総理が号令をかけてやっているんですから、そこはやはり、できるだけその可能性を一挙に高めていく。一年一年、私たちができる、何というか、余りちょっと、トゥーリトルという感じですね。だから、そういうことを思い切ってやるということをやっていくのが本筋じゃないですか。それをまた、効果を見て、またちょっと緩めて、また効果を見てなんて言ったら、今、私もこの前質問したように、ドイツに抜かれちゃう、世界第四位の経済大国になっちゃう。こういうことがないように、くれぐれもそこはお願いしますよ。

 では、インボイスについて話を続けていきます。

 私は、インボイスは反対の立場からやるわけなんですけれども、そこは結構厳しい当たり方になると思いますけれども。

 実は、インボイスの決定に関する国税審議会の議事録というのを、私も、関係しているところは全部読んだんですよ。二〇一六年からやっていますよ。でも、おかしいのは、ほとんど、この問題点について審議された議事録の部分が少ないんですね。審議も、二〇一六年に一回、二〇二一年の三月に一回、二一年の十月に一回、二二年の十一月に一回ですよね。そこで議事録を見てみたら、他の議題と併せてこのインボイスが審議されているんですけれども、それもほんのちょろっとですよ。だから、こういう審議がほとんどされていないから、いろいろな問題点に対する対応なんかも、審議の上で議論されていないんですね。

 私、その中で、二二年の、去年の十一月十八日の国税審議会で、鹿取さんという委員から、ワイナリーが非課税事業者の農業者からのブドウ購入を中止する可能性について懸念が示されたんですね。そういうときどうするんだ、取引排除になるんじゃないかというのが鹿取さんの本意だったと思います。

 これに対して国税庁が、私から見たら問題をすり替えて、インボイス制度に関わる広報の徹底という説明に終始しているんですね。問題点をそういった、取引から排除されるということについての本質的な解決を探る審議じゃなくて、これはもっとインボイス制度というものを広範に説明していけば大丈夫なんだみたいな言い方をしているわけですよ。

 こういうことであったら、今、大きな、国民から、インボイス反対、困るという様々な意見が出されているときに、そういうことを、まず、その制度をつくる審議会が十分な審議をしていない、そこが私は一番大きな問題だと思うんですけれども、それについてはいかがですか、大臣。

鈴木国務大臣 御指摘の国税審議会でございますが、国税審議会は、法令に基づきまして、所掌するところは、税理士試験や税理士の懲戒処分、酒類に係る公正取引や表示の基準などを審議するため国税庁に設置された機関でありまして、インボイスの制度そのもの、先生は先ほど本質という言葉をお使いになりましたけれども、それについて議論をする場ではない、言い換えますと、この国税審議会の所掌の外にあるということでございまして、そうした議論が十一月十八日もなされたんだと思っております。

末松委員 そうしたら、インボイスの制度を導入する際の専門の審議会があるということですか。そういうことなのか、それとも、この国税審議会というのは、そういうインボイスの制度とは関係ないものだから審議は少なかった。じゃ、どこでやられたんだという話。あるいは、その趣旨にかなっていない審議会で安直にやっていたということですか。

鈴木国務大臣 現在の税制についての決定プロセスについて申し上げますと、中長期的なものにつきましては政府の税制調査会で議論をする、それから、比較的短期的なもの、中期に関わるものもございますが、これは与党の税制調査会で議論をし、決定をするというのが今の税制改正のプロセスであります。

末松委員 じゃ、インボイスは中期的なものじゃないという話になるのか、あるいは、じゃ、与党でやるということであれば、財務省で、これは主管ですよね、そこで審議をした形跡がないということですか。

鈴木国務大臣 もちろんインボイスのことは、数年前に法律で定まって、実際に行うのが今年の十月から、こういうことでございますが、そうした法律をお願いし、国会で審議をし、成立をしたわけでございますけれども、それに遡って数年間、政府税調においても、また与党税調においても議論が行われた。もちろん、特に政府税調におきましては、事務局としての財務省としての役割がございますから、そこに関わりを持ちながら議論を進めて、検討を進めてきたということだと思います。

末松委員 政府税調。だったら、どこを私は議事録で見ればいいんですか。政府税調の議事録にインボイスのことが非常に詳しく書かれているわけですか。

塚田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

塚田委員長 速記を起こしてください。

 鈴木財務大臣。

鈴木国務大臣 政府税調についても、もちろん議事録を出させていただいております。その中において、中長期的なものについての御議論というものがもちろんあった、それについてはその議事録に書かれているということであります。

末松委員 いや、だから、インボイスについて。インボイスですよ。中長期的なものにインボイスが位置づけられているわけですか。

鈴木国務大臣 中長期的な消費税に関わる課題という中でインボイス制度が議論をされた、そういうふうに理解をしております。

末松委員 この議論を繰り返しても時間がたってあれなんですけれども、やはりそこは、ちょっと何か、国税審議会で議論されているということもあるので、私はずっと全部読み込んだんですけれども。じゃ、私は政府税調の議論をまた全部読み返していくという話にこれからなるのかもしれませんけれども、それにしても、国税審議会も本当に議論としてはお粗末。本当に、私は、そこはまずは強く指摘しておきたいと思います。

 次に、私の提出資料の一ページと二ページ目が、消費税区分の一覧表ということで、ここに八十項目、提出したわけでございますけれども、これは全国青年税理士連盟の幹部の方からこの資料を提供されたわけです。インボイス導入に際して、税理士が、基本的にはこの八十項目を中心に全部分類して、その一つ一つチェックをしていくという話でございます。

 その幹部の方いわく、正確を期して区分作業をやると、その三倍の区分、つまり八十の三倍、二百四十項目ぐらい、細かく細かくやっていかなきゃいけない。そんな膨大な区分に従って作業をやるというと、私が税理士の立場だったら、一瞬吐き気を思い出したんですね。吐き気を覚えるほど、本当に作業に大変な時間と労力がかかるわけです。

 これは、税理士の方も、やはり数百件、免税事業者を含めてこういったことをやっていかなきゃいけない。税理士の方々の膨大な作業は大変ですし、一つ一つ書き込む側も大変なんですよね。これが、今、免税事業者の数をカウントすると四百八十万人いる。その中でBトゥーCが六割いて、そうではない方々の、簡易課税を使った人たちを除いても、免税事業者で課税事業者になるとしたら約百六十一万人、これは財務省の私に伝えてくれた数字ですけれども、百六十一万人が全部やるとすると、一つ一つそういった作業をやらなきゃいけない。

 この前、私は、秋葉原で東京土建さんがやったインボイス反対という、そこで集会に参加したんですけれども、そこで農業者の方から、あるおばあさんの話が出てきて、そのおばあちゃんが牛三頭を飼っていることに生きがいを見出してやっていますと。こんなおばあちゃんに対して、こんな区分のインボイスをやるときに、彼女に本当に強要するのか。あるいは、父ちゃん、母ちゃんでやっている商工業の方々とか、あるいは、一人親方をやっている、真面目に仕事をやってこれまで納税してきた方々に本当にこんな作業をやらせるのかというのは、本当にこれはおかしいんじゃないかと思うんですね。

 特に、税理士の方も膨大なチェック作業ですよ、自分の顧客に対して。それを更にチェックする徴税官、国税の方も膨大なチェック作業になる。この前、私は、国税の方々が、大臣からも、国税のチェックは本当に大物というか、非常に大どころで、しかも悪質なところに限ってやっています、そういう細々したところは基本的に私たちは見る余裕もないということもいただいたんですけれども、本当にこんな膨大な作業をさせるんですか。改めてお伺いします。

鈴木国務大臣 インボイスの導入に当たりましては、様々なお声があり、また様々な不安があるということは承知をしております。殊にも、その中で多いのは、中小・小規模事業者の方々にとっての事務負担が膨大なものになるのではないか、そういうお声は度々各方面から寄せられているところでございます。

 その事務負担を軽減する、配慮する観点から、中小・小規模事業者の方々につきましては、現行でも簡易課税制度が設けられておりまして、この制度を選択をすることで、インボイスの保存がなくても、売上高のみで納税額を計算できる、また、仕入れ税額控除のための帳簿の記帳や請求書等の保存等の事務が不要になるなど、事務負担が相当程度軽減されることになると思います。実際に、課税事業者のうち約四割の方がこれを選択しているところでございます。

 また、税制措置による負担軽減について申し上げますと、令和五年度税制改正においては、免税事業者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を売上税額の二割に軽減する三年間の負担軽減措置を講じることとしております。この措置により、業種にかかわらず、一律に売上税額の八割を控除することを認めることとなっておりまして、簡易課税制度と比べて、更に事務負担の軽減に資するものと考えております。

 そして、予算措置による負担軽減でありますが、事務負担に関しては、令和四年度補正予算においても、IT導入補助金について、インボイス対応のため、より安価な会計ソフトも購入できるよう補助対象の拡大、インボイス対応に向けた税理士等の専門家への相談費用を補助することができる持続化補助金について、インボイス発行事業者に転換した場合の補助金の五十万円一律引上げといった様々な支援策の充実を盛り込んでおります。

 引き続き、こうした寄せられるお声の中にもあります負担軽減策について、その制度の内容、また支援策、きめ細かく事業者の方々に周知をしていきたいと思っております。

末松委員 簡易課税制度がそんなに税金も安くて便利だったら、何で四割しか簡易課税制度を導入しようとしないんですか。あとの六割は、何でそれをやめているんですか。要するに、どうも税金を多く払い過ぎるという声もあるわけですよ、それで。だから、そこのところをもっと、一〇〇%簡易課税で全部やれるような特典をきちんとやってくださいよ。そうじゃないと、たった四割しかやっていないという見方もできるわけですね。

 それから、今大臣が言われたIT導入補助金による、インボイス導入、制度を見据えた中小事業者のデジタル化を通じた事務負担の軽減策という、ちょっと舌をかみそうなんですけれども、そこは、予算はどのくらいなのかということと、対象を救済する、何人ぐらいがその予算を使えるのかということ。

 あと、持続化補助金、これについても、経費の削減支援策の予算とその対象とされる人数、これはどのくらいなのかというのを、極めて、数字だけ言ってください。ほかのところは別に、制度の趣旨は言わなくていいですから。経産省ですか、そこは。

中谷副大臣 先生御指摘の、インボイス対応をしっかり支援していくということは、極めて重要というふうに考えております。

 経済産業省では、令和四年度第二次補正予算において、IT導入補助金、持続化補助金、ものづくり補助金、そして事業継承・引継ぎ補助金、これを合わせまして、生産性革命推進事業といたしまして二千億円を措置をしております。

 ただ、このうち、インボイス対応の補助金において、何者から申請がされるかというところは、これは明示できないというところでございまして、インボイス対応に充当する予算額をあらかじめ設定することは困難であります。

 ただ、使い勝手をよくするために、先ほど大臣がおっしゃった、IT補助金については、五万円という補助下限額を撤廃、さらには、持続化補助金におきましては、免税事業者から課税事業者への転換を図る事業者に対しましては補助金を五十万円上乗せしていくなどの対応を行っているところであります。

 この二千億円でありますが、今回は二千億円、令和三年度も二千億円を同じく措置をしたところでありまして、このインボイス対応については、切れ目なくということでありますから、更に、必要であればそれについてはしっかりと要求をしていきたいというふうに考えているところであります。

末松委員 二千億円というのは、別に、それは全体のデジタルに対する支援策であって、インボイスがどのくらいそこで割当てになるのか、本当にさっき言った中小零細業者が予算を獲得できるのかを含めて、これは私はかなり疑問に思っているんですよね。メニューはそろえた、でも実際はなかなか救済にならないといったケースが非常に多いというのは、私も一時期通産省に出向してよく分かったものですから、いずれにしても、ちょっとそういう支援はしていただければと思いますけれどもね。

 あと、今度は救済という観点から、下請かけこみ寺とか、駆け込みホットラインとか、下請Gメンとか。私が聞いた限り、下請かけこみ寺というのは全国四十八か所。駆け込みホットラインというのはちょっと実態はよく分からない。さらに、下請Gメンという、もう大体三百名ぐらいと言われている。これで百六十一万人の中でかなりの部分をカバーしていけるのか。公取も、相談窓口というと、全国で何か所あるんだと聞いたら、八か所しかないんですね。これは本当にカバーしているのか、救済できるのか。

 たとえ救済の相談に乗ったとしても、結局、言っていることは、言うことは一つなんですよ。法律がこうなって、こういうふうに省令でもやられているから、結局、それのとおりにやってくださいね、これしかないんですよ。それ以外に救済なんて言えるわけがない。ただその言っている人の文句を聞いているというだけになるわけですよ。実態がほとんどそんな状況なんですね。それはまずいでしょうということなんです。

 時間がないので、最後に、ちょっと論点を移りますけれども、私たち、アニメ業界とか声優業界で、収入を見たら、大体八割の方が三百万円以下、そして二十代、三十代の五割以上は百万円以下しか収入がないわけですね。そして、インボイス制度の影響について尋ねたら、廃業するかもしれないと答えた人は約三割、三〇%ですよ。そのうち、二十代が二八%、三十代が五四%ということで、約八割の人が若い年代で廃業を考えているということなんですね。

 こうなると、アニメとか、これは世界に冠たる日本の文化の大きな支柱ですよね。今、こういう方々が、インボイスをやめてくれ、そうじゃないと廃業するかもしれないということを言っているわけですよ。

 今、もう一つ大きな問題は、こういう所得が低いところで、会社を中国の企業がどんどん買っていっているという話。要するに、日本のアニメ産業が中国に乗っ取られようとしている。あるいは、所得の低い若手の有望な方々を、その十倍の給料を払って引き抜いていくとかいうことも往々にしてやられているわけですね。そうなったら、日本が誇るアニメ産業が中国の産業という話になっていいのかと、私は本当にそこは危惧しているんですよ。そのきっかけがインボイス導入になったという話になったら、これこそ本末転倒じゃないですか。

 これから伸びるシルバーボランティアの方々は、厚労省がいろいろなアレンジをして、別の委員会、厚労委員会で野間議員が聞いて、大体二百億円ぐらいの支援をしていくという話があるわけですよ。これも本末転倒の話。何で、シルバーボランティアの方だけそういった補助を受けて、インボイスで問題が消えるように救済されているのか。これは問題。税金を使ってやっているというのはおかしいじゃないか。

 あと、時間がなくなったので、まとめて言いますと、経産省の再エネ固定価格買取り、FITというプロジェクト、これも、資源エネルギー庁による対応で、年間五十八億円、これを電気料金に上乗せしてカバーするというような案も今出ているわけですよ。

 何で、インボイスを導入して、そういう、税金とかあるいは電気料金の上げということで、一般の消費者の負担にさせなきゃいけないのか。これは全くおかしな話なんですよ。

 一言で言えば、こういう免税事業者の方々の解決には、インボイスをやめればいいんですよ。余計な税金とか、何で払わなきゃいけないんだ、このために。おかしな話じゃないですか。あるいは、これらの産業が、いろいろな方々が、免税事業者も傷つかないように、もう煩瑣な事務をやめさせるような抜本的な改定をやらない限り、これは本当に尾を引きますよ。

 百六十一万者のうち何人が、これでまた企業が取引から排除されたり、もう本当に事務が煩瑣で、お年寄りで一生懸命頑張ってきた方々が廃業せざるを得ないのかと聞くと、これは本当に悲惨なものだと思います。

 だから、是非、大臣、そこは、そういう大きな日本の産業を救っていくということを含めて、インボイスの制度の在り方を抜本的に改めるようお願いしたいんですが、いかがですか。

鈴木国務大臣 政府としての基本的立場で申し上げますと、複数税率下において適正な課税を実現するためにはインボイス制度は必要なものである、そういうような立場でございまして、これを、国民の皆様方からのいろいろな御心配や御意見というのもあります、そういうものを真摯に踏まえながら、これまでも、経過措置あるいは事務負担の軽減措置等々を予算面で、あるいは税制面等でやってきているわけでありまして、こうしたものをしっかりやる中でインボイス制度を緩やかに移行をしていきたい、そのための努力をこれからもしっかりと進めていきたいと思います。

 そして、それぞれの産業のことについても先生お触れになられました。アニメーターの方々を含むアニメ業界でございますけれども、これもやはり重要な産業である、こういうふうに思っております。これにつきましても、経済産業省におきまして、アニメ制作業界全体に対する支援も進めているところでございまして、こうした個々の取組についてももちろんしっかりと目くばせをしていかなければならない、対応していかなければならないと考えております。

末松委員 今、そういった産業、重要な産業も、いろいろと施策を行っていくということ、これは当然必要ですよね。そういった中で、やはり、インボイスをやることによって、特に免税業者、これで事業が本当に大変な、父ちゃん、母ちゃんの事業、商工業者も含めて、そういった、建設業だ、タクシー業だ、いろいろな業界が本当に煩瑣な事務で困っているんですよ。

 そうしたら、彼らはそれに対して不幸になるわけですよ。しかも、税理士さんも、そういった企業の方々を支援している税理士業界も、物すごい煩瑣になって、不幸になるわけですよ。国税の調査官というか職員も、それをチェックするとなると、本当にまた不幸になるわけですよ。そういう、誰しも幸せにならない仕組みというのは、これは政治そのものがおかしいと思いますから、そこの制度を抜本的に変えてくださいよ。

 と同時に、先ほど二割しか、三年ね、救済措置ということでやったと、更に三年は五割だということを言われましたよね。あれだって、結局は、首に縄をつけるのは同じじゃないですか。経過措置だけで、後、全部それが一〇〇%適用されるわけでしょう。

 だから、そういうやり方じゃない仕組みを考え直してください。私は真摯にこれを求めて、インボイスの反対の議論をさせていただきました。やはり、今後とも是非そこは御検討ください。

 終わります。

塚田委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 貴重な時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 本日のこの所得税法等の改正案については、去る二月九日の衆議院本会議でも質疑させていただきました。この中で、私から財政健全化について、なかなか現実的ではない、正直ではないという指摘をさせていただき、それに対して、だから作り直してはどうですかという提案をさせていただきました。しかし、大臣の答弁は、作り直すつもりはない、こういう御答弁でした。ですので、今日は、改めて、なぜ作り直す必要があるのかということを議論させていただきたいというふうに思います。

 大臣の財政演説それから大臣所信の中では、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革を着実に推進してまいりますというふうに述べられています。ここまでは毎年同じ文句で言われて、同じ言葉で言われているんですが、その続きが今回の大臣所信にはありまして、有事であっても日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、平素から財政余力を確保していくことが不可欠だ、こういう言葉が入っております。これは一年前の大臣所信にはなかったことです。

 私も、まさに、平時において、平素において財政余力を確保していく、これは本当に重要なことだというふうに思います。世の中には、それこそリーマン・ショックのようなこともありましたし、それから感染症による混乱ということもあったわけでございますから、そうした有事の際に対応できるように、平時においてはきちっと財政を規律していく必要があるというふうに思います。

 そこで、本日お持ちしました資料一でございますが、これは一月二十四日の経済財政諮問会議に内閣府が提出した資料です。

 こちらの資料、中長期の経済財政に関する試算というのは、これは毎回、経済財政諮問会議、毎回といいますか、一月とそれから七月に示されているものでございますが、こちらのケースにおいても、この成長実現ケースという、ある種、本会議でも私、異次元の楽観論というふうに申し上げましたけれども、このケースですら、二〇二五年度は基礎的収支、マイナスになっている、赤字のままということになっています。

 しかも、このケース、例えば二〇二四年度、二〇二五年度の実質GDP成長率を見ますと二・〇ということで、この十年間は自民党内閣での平均の実質GDP成長率〇・六%でしたから、到底実現できないのではないのか、こんなふうにも思ってしまいます。

 ちなみに、その前の民主党内閣では一・五%の経済成長だったということですから、この十年、自民党内閣になって、経済成長、落ちているという状況です。

 次に、資料二を御覧いただきたいと思います。こちらの方は、ベースラインケースということで、こちらの方がより現実的にはなってきております。

 特に、これまで、非現実的だという批判も、これは私だけでなく様々なところからそういう批判があり、昨年七月の段階でこの実質GDP成長率、例えば二〇二五年度の部分については一・五%というふうにそれまで示していたところを、一・一%に下方修正したりと、より現実的になろうとしているその努力は見られます。見られますが、今日、内閣府から審議官にも来ていただいておりますので、ちょっとお尋ねをいたします。

 国債費のところをずっと見ていきまして、三段目の欄でございますが、国の一般会計の姿という欄の国債費というところを見ますと、昨年十二月の日本銀行の金融政策の変更、つまり、金利上限を〇・二五%から〇・五%に引き上げた影響を反映しているのかどうなのか、反映していないように見えるんですが、どうですかという質問です。

 つまり、借換債を含めて毎年二百兆円以上の国債を発行している。金利が〇・二五%上昇すると、それだけで毎年の利払いは少なくとも五千億円増えるということになります。さらに、もちろん残高、プライマリーバランス赤字ですから、残高はどんどん増えている。それ以上に利払いが増えているということになります。

 ただ、ここを見ますと、国債の増額のトレンドは、この利払い費の増加に対応できていないように見えるんですけれども、いかがでしょうか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 本年一月に公表しました中長期の経済財政に関する試算におきまして、足下の長期金利につきましては、前回七月試算では〇・一%としておりましたが、今回の一月試算では、直近の実績に基づきまして、二三年度以降、当面の間は〇・四%程度と、上昇する姿になってございます。

 委員御指摘のとおり、こうした長期金利の上昇は利払い費の増加をもたらします。国の一般会計の国債費は、前回七月試算と比べて増加しております。

 具体的には、例えば二〇二四年度に関しましては、委員御指摘のとおり、新発債と借換債で合わせて二百兆円、それに金利上昇幅、それに累積の年数分、利払い費が増加するということになりますので、二〇二四年度は二年度分の効果の累積で一・一兆円、二五年度に関しましては三年分の効果の累積で一・六兆円、七月試算に対しまして増加している、こういう姿になってございます。

櫻井委員 ちょっと今いろいろ数字をおっしゃっていただきましたが、質問は、要するに、昨年十二月の日本銀行の金融政策の変更、これは反映できているんですかという質問なんです。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 冒頭申し上げましたように、今回の試算では、長期金利〇・四%程度と設定してございます。これは、昨年十二月二十一日の、決定会合から、十二月三十日までの期間の平均金利である〇・四%、これを採用しておりますので、そういう意味では、反映をさせていただいているということでございます。

櫻井委員 最後、一番大事なところは、反映させた、させていない、どっちなんですか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 十二月二十一日以降の金利の上昇、つまり、十二月二十一日から十二月三十日までの平均金利が〇・四%、これは政策決定会合の決定を受けた後の金利でございます。これの平均金利である〇・四%というものを今回の足下の金利として設定してございます。そういう意味では、反映させているということでございます。

櫻井委員 ちょっと反映したというふうに受け止めさせていただきました。

 それから、この国債費の上のその他のところを見ますと、これはほかの項目と見比べていきますと、その他というのは、社会保障関係費、地方交付税等、地方自治体に関する部分ですね、それから国債費、以外の全てということだと思います。二〇二三年度は三十五・八兆円ということになっておりますが、二〇二七年度には三十・三兆円ということで、五兆円以上減っているということになります。

 この試算に、防衛費、これは倍増ということで、この間、五兆円増えるということになろうかと思いますが、これは含まれているんでしょうか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の中長期試算では、防衛費につきまして、防衛力整備計画を踏まえまして、二〇二三年度から二七年度までの五年間におきまして四十三兆円程度が経費として措置されているというふうに想定してございます。したがいまして、反映させてございます。

 一方で、先生御指摘のとおり、二〇二三年度に関しましては、政府予算案に基づいて数字を置いてございますので、予備費でございます新型コロナウイルス感染症等の四兆円、それとウクライナ情勢経済緊急対応予備費一兆円、合計五兆円が二三年度には措置されておりまして、一方で、二四年度以降はそういった措置がなされないものと想定しておりますものですから、そこで段差が生じているということでございます。

櫻井委員 ちょっと今、興味深い答弁でしたけれども、五兆円の、異次元のこの予備費の多さですね、これはもう来年度以降はやらないという想定だということなんですか。

 ちょっと大臣、我々、この予備費五兆円というのを、やり過ぎだろう、これは駄目でしょう、財政法といいますか、憲法違反だろうということを指摘させていただいていたんですが、来年度以降はさすがに五兆円の予備費はやめる、こういうことでよろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 内閣府の試算でございまして、いろいろな前提を置くんだと思います。来年度の予算について、この予備費に限らず、今から、どれを措置してどれを措置しないというのはまだ決まっていないわけでありますので、申し上げることはできません。

櫻井委員 予備費で五兆円削ったとしましても、防衛費で五兆円増えるわけですよね。そうすると、総額、あと五兆円、どこか削っていかないといけないということになるんですけれども、現状、三十五兆円で、防衛費五兆円ぐらいですから、そこを引くと三十兆円。三十兆円で、教育、運輸、建設、子育て、いろいろなことに使う。あと、予備費五兆円も入っているということですが。

 二〇二七年度のその他は三十兆円、うち、防衛費が十兆円ということになります。先ほど、五兆円は予備費、もうやりませんという試算だということなんですけれども、防衛費以外で二十兆円で、教育、運輸、建設、子育てなど、ほとんど全ての予算を賄っていかないといけないということになりますけれども、大臣、二十兆円でできるんでしょうか。

鈴木国務大臣 これはあくまで内閣府の試算でございます。そういう意味で、内閣府が様々な前提を置いて作られたものである、そういうふうに思っております。ですから、そこの二十兆円で賄い切れるのかどうかということは、私の立場からは申し上げません。

櫻井委員 しかし、大臣は、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて、歳出歳入両面、歳出の改革を着実に進めるというふうに、本会議でも、それからこの委員会でも宣言をされているわけですよね。これは内閣府が作ったものだからわしは知らぬでは、ちょっとそれは余りにも無責任ではなかろうかというふうに思います。

 それから、もう一つ大事な点で、岸田総理は、二月十五日の予算委員会で、家族関係社会支出について、二〇二〇年度にはGDP比二%を実現している、それを更に倍増しようではないかと申し上げている、このように発言をされています。

 確かに、二〇二〇年度の家族関係社会支出は十・八兆円でした。倍増なら更に十兆円増えるということで、全体で二十兆円。そうすると、先ほどの二十兆円はもしかすると全部家族関係社会支出になるのかなというふうにも思うんですが、これはちょっと、まず先に内閣府にお尋ねします。

 この岸田総理の二月十五日の予算委員会での発言、子供、子育て費用倍増という話について、これはこの試算に含まれているんでしょうか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の子供、子育て関係経費の倍増の部分に関しては、試算には含めてございません。

櫻井委員 これは倍増に含めていないというのもちょっとおかしな話で、子供関係の予算倍増というのは、防衛費の倍増よりずっと前から、去年の通常国会のときから言っている話ですから。しかし、それは含めていないと。本当にやる気があるのかと、これはこれで心配になってくるわけなんですが。

 大臣、ちょっとお尋ねをいたしますけれども、岸田総理、家族関係社会支出というか、子供、子育て費用、これは倍増するというふうにおっしゃられているわけですから、これは当然やるんですよね。

鈴木国務大臣 先生からの御質問の趣旨は、先日十五日に、国会での総理答弁でのことだと思いますが、その際は、防衛力強化の取組との比較を問われた際に総理が発言されたわけでありまして、政権交代以降、保育の受皿整備など、必要な支援を進め、子供予算をしっかり拡充してきたことを説明をされました。

 その一つの例として、国際比較可能な家族関係社会支出対GDP比という指標で見ると、二〇一二年度の一・一%から、二〇二〇年度には二・〇%まで増えてきたというこれまでの取組を紹介し、子供予算を更に強化することにより、防衛費との関係においても決して取組が見劣りするわけではない、そういう趣旨を申し上げたものと承知をしております。

 したがいまして、将来的な倍増を考える上でのベースとしてこの家族関係社会支出対GDP比に言及されたわけではない、そのように承知をしております。

櫻井委員 いや、そうですか。私も議事録を読ませていただきましたけれども、だって、はっきりと、二〇二〇年度にはGDP比二%を実現している、それをですよ、それを更に倍増しようではないかというふうに総理がおっしゃられているんですから、その総理の発言を大臣が否定されるというのはいかがなものかというふうに思いますが。

 いずれにしろ、子育て支援の予算、これは倍増すると一年前からずっと岸田総理はおっしゃられているわけですから、当然されるんだと思うんですね。これはどうやって捻出するのかということになるんですが、しかも、十兆円なのか、この母数についてはいろいろな議論がありますけれども、少なくとも、一番少ない説であっても四兆円ということになりますから、一体その費用、どうやって財源を捻出するのかということになるんですが、大臣、どうやって捻出されるんですか。

鈴木国務大臣 次元の異なる少子化対策ということでありまして、その中身、そしてそれに必要な財源についてこれから示していくということになると思います。

 今までもいろいろと御答弁もさせていただいているわけでありますけれども、今後こども家庭庁を中心に具体的に検討を進めていくわけでございますが、その前提として、小倉担当大臣が、三月までに、関係府省庁会議、ちょっと私、正式な名称じゃないかもしれませんが、等を通じて議論をして、まず、一体どういうものが子供、子育ての事業として必要であるか、そういうもののいわばたたき台を示して、それを受けて、六月までに骨太の方針にそれを盛り込む、そして骨太の方針の中で子供予算全体の倍増についての大枠を示す、そういうようなことになるというわけでありまして、個別具体の中身についてはこれからであると思っております。

櫻井委員 そのまさに大枠で、防衛費については、四十三兆円という大枠は先にあって、それから慌てて中身をせっせと詰め込んだという感じなんですけれども、子供、子育ての方についてはちゃんと積み上げてやっていく。積み上げて計算していく、それは大事だと思いますけれども、一年前から言っているのにまだ積み上がっていないというのは、これはやる気が問われてきますよ。

 論点をちょっと変えます。もう一つ大事なところで、経済予測、これについて、そもそも信用されていないという問題もございます。

 一月二十三日の日本経済新聞で、これにかなり厳しい記事がございました。ほかの何か政府に対して批判的な新聞じゃないですよ。これは日本経済新聞ですよ。この中で、当たらないことで知られる政府の経済見通しが公表から一か月で早くも揺らいでいる、このような記事がございました。

 これはどういうことかというと、先ほどの話で、日本銀行の金利について、少し盛り込んでいます、こういう話ではございましたけれども、金利が一%上昇すれば経済成長率は〇・三%押し下げる効果があるというようなことをこれまでも内閣府はいろいろなところで示してきたかと思います。

 それから、為替のレートの影響ですけれども、今朝の為替レートは一ドル百三十四円。内閣府の見通しの前提は一ドル百四十二円というふうに承知をしております。為替レートが一〇%円高の方に振れますと経済成長率を〇・三%押し下げる効果があるというような民間の試算もございます。

 それから、政府は、二〇二三年度、実質賃金はプラスになる見通しだというふうに考えているようでございますが、民間の予想では、マイナスになるだろう、マイナス〇・四%ぐらいじゃないのか、そんなふうな見立てをしています。

 それから、政府の経済成長率の予想は一・五%ということになっておりますが、民間シンクタンク十五社の予想の平均は一・〇%ということになっています。

 この内閣府とそれから民間シンクタンクの見通しの大きな違いは、個人消費、住宅投資、設備投資。つまり、賃金は、政府は上がると言っているけれども、民間の予想では上がらないでしょうと言っているわけですし、金利が上がったら住宅や設備投資もなかなか伸びないのではないのか、こんなふうにもなっているんですね。

 ちょっと内閣府にまずお尋ねをいたしますが、やはり、こうした観点から見ましても、今回の政府の見通し、過大な予想になってはいないでしょうか。実態よりも高い成長率になっているのではないでしょうか。いかがでしょうか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の政府経済見通しに関しましては、私がこれまで申し上げてきました中長期の経済財政の試算とちょっと別物でございまして、中長期の経済財政の試算の二〇二三年度の数字は、政府経済見通し、使っておりますが、ちょっと別物でございまして、私、大変申し訳ないんですが、担当外でございますので、お答えを差し控えさせていただきます。

櫻井委員 要は、今年も外すんじゃないのか、こういうふうにもう既に見られているということなんですが。

 確かに、経済成長率、ぴたっと当てるのは難しいと思います。ただ、当てるのは難しいんですけれども、真ん中を狙っていったら、上に外したり下に外したりというふうにやっていって、十年ぐらい平均すると大体いいあんばいになるものだというふうにも思います。

 ちょっとこれもお尋ねしたいんですけれども、過去十年間ぐらいで、上に外した回数と下に外した回数、それぞれ何回ずつぐらいか分かりますか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 大変申し訳ないんですけれども、ちょっと担当でないものですから、数字を今手元に持ち合わせてございません。申し訳ございません。

櫻井委員 内閣府で、経済見通しの担当部署では、やはり、過去十年間どういう成績だったのか、ちゃんと情報を共有していただきたいと思うんですね。

 先ほどした日経新聞の記事だと、過去十二年間で、過大な見通し、だから、上に外したのは十回ということで、意図的に過大に見積もっていたのではないのかと。それ以前は、大体、上に外したり下に外したり、半々ぐらいだったみたいなんですね。ところが、最近は上にばかりやっているということなので、甘い見通しを立てているのではないのかというふうに、世間の人たち、私もですけれども、思ってしまうということです。

 それで、日本経済新聞の先ほどの記事では、見通しは目標値と言い切る内閣府幹部からは精度を高めようとする姿勢はうかがえないまま、こういうふうに言われてしまっているんですよ。

 ちょっと、最後に済みません、何度も聞いていますけれども、内閣府にお尋ねをいたしますが、経済見通しを正確に行う、そういう気はあるのかどうか、お答えいただけますか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと繰り返しになって申し訳ないんですが、政府経済見通しの担当でございませんので、お答えを差し控えさせていただきます。

櫻井委員 大臣にもお尋ねしたいんですが、こうした、過大に見積もられたというふうに少なくとも民間からは見られているこの経済見通しに基づいて予算を編成し、財政再建計画を立てているというふうになってきますと、大臣が財政演説、大臣所信で述べられた、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面での改革を着実に推進してまいりますと言っても、信じてもらえなくなってしまうんじゃないでしょうか。

 今日は、いろいろな論点、こうしたことが入っていないんじゃないですかとか、実際入れたらとてもじゃないけれども収まらないじゃないですかと、いろいろな面から指摘をさせていただきました。やはり、改めて、正直にやるところから始めるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 政府の今の姿勢といいますか、今の方針ですね、方針といたしまして、二〇二五年度に国と地方を合わせたプライマリーバランスを黒字化するということでございまして、その根拠となっておりますのは、二〇二三年、最近では一月に示された中長期試算に基づいて、成長実現ケースで示されたような力強い経済成長が実現をし、あわせて、今後とも歳出効率化努力を継続した場合には、これが実現できるという姿が示された、そういうふうに思ってございます。

 先生が度々、今日も御指摘をいただいたわけでありますが、近年の経済成長率の実績を踏まえれば、この目標の達成、これは容易ではありませんけれども、決して実現不可能とまでは言えず、現時点で、我々としては、この目標を堅持していきたい、そういうふうに思っております。

 ただし、この目標の達成に向けましては、成長実現ケースで想定している高い成長が必要であるわけでありまして、このため、人への投資の抜本強化とか労働移動の円滑化による構造的賃上げ、官民連携による成長分野への大胆な投資拡大等を通じて、成長と分配の好循環を実現して、日本経済を新たな経済成長の軌道に乗せていくとともに、歳出歳入両面での取組を続けることで、まずは現在の目標実現に向けて努力をしてまいりたい、そういうふうに思っているところでございます。

櫻井委員 今、経済成長、実現困難だけれども頑張りますという、ある種、決意表明をされたわけですが、その中で一つ、一点気になるのは、労働の移動を促進することでというくだりがございました。

 確かに、成長力の高い成長分野に人が移動することに、労働者が移動することによって成長分野を更に押し上げていく、これは必要なことだと思います。

 ただ、今、日本の政府、小泉構造改革以来やっていることというのは、この二十年やっているということは、例えば派遣労働を増やし、非正規雇用を増やしということで、雇用を不安定化することをやっちゃったんですね。それによって、むしろ成長が阻害されているのではないのか。人が育てられなくなってしまっているのではないのか。これが低迷の原因の一つになっているのではないのかということなので、労働市場の流動性を高めるというのは必要なんですけれども、やり方を間違えちゃうとマイナスの方向に振れてしまっているというふうに思います。

 ただ、それは財務金融委員会で議論するというよりは厚生労働委員会で議論すべきことだと思うので、今日はこれ以上申し上げませんが、ただ、ちょっと資料三も持ってまいりましたので、こちらに移りたいと思います。

 この資料は、先ほどの資料一ないしは資料二に示した数字のうち、三段目の国の一般会計の姿の歳出のうちの一番上、括弧書きで書いてある基礎的財政収支対象経費ということで、プライマリーバランスの歳出部分についてずっとこの資料では書いてあるわけなんですが、それを全部並べてみました。

 作成年と左側に書いてありますけれども、これは二〇一五年に見通しをした、二〇一四年は実績ですし、二〇一五年もほぼ実績みたいな予算ということになりますけれども、そこから先は見通しということで、二〇二三年までの見通しを二〇一五年には作っているということです。同じように、二〇一六年も横にずらっと並べてまいりました。

 実際、これを並べてみると興味深いことが分かるんですね。大体、当初予算では、一生懸命、それなりに、当時の財務大臣も頑張られて、しっかり絞り込んだのかもしれませんが、その後、次の年を見てみると、結局、補正予算等でじゃぶじゃぶやってしまって、膨らんでしまうんですよね。ということで、結果的に余り当初の見通しどおりには進んでいないのではないのか。さらに、二〇二〇年度以降は、これは感染症の影響もありました。もう規律も何もなくて、野放しというか野方図になってしまっている、そんな状態です。

 こういうふうに野方図にならないようにということで、我々は、東日本大震災の震災復興のときのように、ある種、特別会計的にやって、ちゃんと、歳出をする部分、その当ても、ちゃんと財源も見通した上で、確保した上でやりましょうと言っていたんですが、それをせずに、それこそ逆に予備費でばんばん積んじゃってやったものだから、こんなことになっちゃったというふうにも思います。

 こうした補正予算での大盤振る舞いをしてしまって、財政規律、緩んでしまっているというような状況です。さらに、子供、子育て費用の倍増とか防衛費の倍増とか、威勢のいい言葉が先行しているわけです。

 これでは到底、経済見通しに基づいたこのベースラインのケースですら実現できないんじゃないのか、こんなふうにも思うんですが、大臣、改めて、当初、大臣所信、財政演説で言われたこの財政健全化、着実に進めていくということについての決意をお述べいただきますようお願いします。

鈴木国務大臣 先生御指摘のとおりに、足下の財政状況を見てみますと、度重なる補正予算の編成でありますとか、それは主にコロナの対応、それから、間もなく一年になりますけれども、ロシアのウクライナ侵略による様々な日本経済に与える影響、こういうものに対応するために、こうした補正予算も含めて予算規模が膨らんできているということは、これは事実でありまして、その分足下の財政状況は大変厳しいものになっている、そういうふうに思っております。

 また、加えまして、岸田総理も言っておられますが、今ちょうど新しい時代への切り替わりといいますか、そういう認識の中で、防衛力整備もそうでありますけれども、DX、GX、子供、子育て予算、そういった財政需要の大きなものにも取り組んでいかなければならない、そういうような今状況の中で、厳しい財政状況の中での予算編成をやっていかなければならない。それだけに、大変厳しい道のりではあるということは思いますが、今の財政再建に向けての一つの方針、二〇二五年度のPBの黒字化に向けて、厳しいからこそ、しっかりとそれを堅持して、それに向けて最大限、全力で努力していくということが必要である、そういうふうに思っております。

櫻井委員 実現できそうもないことをあたかもできますと言ってしまうことがより財政規律をゆがめてしまっているのではないのかというふうにも思いますので、ここについては更に今後もしっかりと議論をさせていただきたいというふうに思います。

 続きまして、次のテーマに移らせていただきます。

 子育て支援に関連して、昨今、国会の中ではN分N乗なる議論も出てきております。ちょっとこれは、もう時間が押していますので、今日は主税局長も来ていただいているので、ちょっと質問させていただきたいんですが、二月十四日の日本経済新聞では、所得税のN分N乗の関連する記事がございました。

 財務省の試算によると、このN分N乗をやると、全体で四兆円から五兆円ぐらい減収につながると分析という記事があったんですけれども、これは、N分N乗方式を実施すると、やはり四兆円から五兆円ぐらいの財源がかかる、こういうことでよろしいでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の試算は、仮に日本の所得税の税率構造はそのまま維持したという前提の上で、フランスと同じようなN分N乗の制度を導入した場合にどのような税収への影響が生ずるかということを計算したものでございまして、おおよそ四兆円から五兆円の税収が失われるというふうに試算してございます。

櫻井委員 そうなんですよね。N分N乗をやるんだったら、所得税の累進のカーブとかいろいろ変えるということが前提での議論なのかもしれませんが、でも、そのまま、今のままやっちゃうと、四兆円から五兆円の財源は必要だということになるわけです。

 これだけの財源があれば、それこそ保育の無償化、教育完全無償化など、これまで懸案でなかなかできていなかった政策が全部実現できるようになるのではなかろうかというふうにも思いますし、このN分N乗というのは高所得者への減税ということになってしまうわけでして、減税ですと、何か皆さん余り気にせずに大盤振る舞いしたがる傾向にあるんですけれども、給付でやったって財政的な負担という意味では同じなわけなんですから、これはやはり、ワイズスペンディングとかよく言いますけれども、有効活用、より効果があるということを考えるのであれば、N分N乗じゃないだろうというふうに私は考えるんですけれども、大臣、これは予算委員会でも何度も答弁いただいているかと思いますが、改めて、このN分N乗、いかがお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 N分N乗についての見解でございますが、もう先生も質問の中でも触れられておりましたけれども、これは所得税率の累進性を緩和することができる仕組みでありますが、我が国では約三割の世帯において所得税が非課税となっております。そしてまた、納税者の中でも約六割の方が五%の最低税率が適用されておられるわけでありまして、このN分N乗を導入しましても、これらの方々については累進緩和の効果が全く及ばないということになります。

 一方において、高額所得者、とりわけ片働き世帯に税制上の大きな利益が生ずることになるわけでございまして、この導入については、そうした大きな乗り越えなくちゃならない課題があるんだ、そういうふうに思っているところでございます。

 引き続いて、先生ちょっと触れられましたが、給付の方が税制措置よりも政策効果が高いのではないかということについて申し上げますと、少子化対策として税制上の措置を講じた場合、子育て世帯の税負担がより軽減されることが見込まれる一方で、例えば、総世帯の、先ほど申し上げましたが、約三割を占める所得税非課税世帯の方々には効果が及ばない、元々税負担の大きい高額所得者に有利となり得ることといった懸念点が考えられるところであります。

 他方で、給付による支援には、税を納めていない方に対する支援が可能となる面や、支援対象となる者の世帯収入などを勘案し、きめ細やかな支援が可能となる面があると認識をしております。

 このような特性を踏まえながら、給付や、それから税制措置といった政策手段をよく併せて検討することが重要である、そういうふうに思います。

櫻井委員 大臣からも御答弁いただいたとおり、私は、一番いいのはやはりサービス、行政サービスを提供するというところをしっかりやるというのが一番いいと思っております。それは、そのサービスが必要な人しかそのサービスを受け取りませんから、そういう意味ではこれは一番いい。その次、給付の方が、まだ減税とかよりはいいだろうというふうに思っております。だから、減税というのは余り政策の手段としてはよろしくないんじゃないのかなということを改めて申し上げさせていただき、その認識については大臣とおおむね同じなのかなということで、安心をさせていただきました。

 次に、ちょっともう時間がなくなってきておりますが、資産所得倍増とキャピタルフライトの話、これも本会議で取り上げさせていただきました。前原議員も本会議で取り上げられていたかと思いますが、要は、これは資料五に示したとおり、TOPIXとそれからMSCIを比べますと、MSCIの方がはるかにパフォーマンスがいいということですので、どうしてもそっちの方に行ってしまうのではないのか。個人資産二千兆円と言われておりますけれども、その一割の二百兆円でも外国投資に向かったら、もうこれはすごい円安圧力になってしまって、悪い円安を引き起こす。

 今までこういうキャピタルフライトが起きなかったのは、いずれ円高になって為替で損するだろうということが一つ大きな歯止めになっていたと思うんですね。ところが今、今や貿易赤字ですよ、二十兆円貿易赤字。経常収支はまだ黒字だといっても、経常収支だってもう半減しているわけですね、黒字幅が。こういう中で、将来的な円安要因を抱えているというふうになっちゃうと、これまで外国株に投資を思いとどまっていた理由がなくなって、むしろ、外国投資でパフォーマンスがよくて稼げて、さらに円安になったら為替でも稼げるわけですから、二重においしくなっちゃうわけですよね。

 こういうことになっちゃうと、どんどんキャピタルフライトが進んでしまうんじゃないのかと大変心配をするんですが、大臣の御答弁ではそうした危機感が全く感じられなかったものですから、改めてお伺いいたします。これは大丈夫ですかね。

鈴木国務大臣 家計による安定的な資産形成、そのためには、長期、積立てによる投資のほか、分散投資も重要であり、貯蓄から投資へのシフトに伴いましてその一部が外国の資産への投資に向かうことも十分ある、そういうものと考えております。

 一方で、新しい資本主義の下、成長も分配もを実現するためには、家計の資金が日本企業の成長投資の原資となって、持続的な企業価値向上の恩恵が金融資産所得の拡大という形で家計にも及ぶという、成長と資産所得の好循環を生み出していくことが重要だと考えています。

 そうした点から、家計による投資の対象として魅力のある日本の金融資本市場を構築していくことが不可欠でありまして、それは同時に、海外投資家の資金を日本に呼び込むことにもつながるものと考えております。

 このように、投資資金は内外の双方向に流れることが考えられ、また、為替相場は様々な要因を背景に市場において決まるものであることから、資産所得倍増に向けた取組がキャピタルフライトや円安を招くとは一概には言えないのではないかと考えております。

 しかし、いずれにしましても、貯蓄から投資へのシフトによる我が国の経済や金融市場にもたらす影響、それについては、先生御指摘の面も含めまして十分に留意していきたいと思っております。

櫻井委員 危機感が全く感じられない答弁で、ちょっとがっかりをいたしました。

 最後にちょっと、時間も参りましたので要望だけさせていただきます。

 税務の執行体制について、これは、消費税の還付法人の調査とか国際税務など、まだまだ手薄な分野がございます。是非、こうした分野、しっかりやっていく、徴税を確保していく、適正、公平な徴税を行っていくためにも、国税職員の定員の確保を要望させていただき、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党の藤岡隆雄でございます。

 本日も、まず地元栃木県第四区の皆様に感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩、関係各位に感謝を申し上げまして、質疑に入らせていただきたいと思います。

 NISAのことについて、最初にお伺いをしていきたいと思っております。

 私は、本来、ある条件をセットにとか、先ほどの回転売買とか、いろいろな細かな制度設計の話を除けば、個人的には、NISAの抜本拡充という方向自体は、本当はやっていただきたいというふうに思っております。

 ただ、先ほど来、末松先輩議員の質疑、また、階先輩議員の先日の質疑をお聞きしておりまして、先ほど、大臣、末松議員の質疑に対して、成長投資枠の中で、毎年など短期的に売買を繰り返すことはできますけれどもというふうな話もされて、また、先日、階議員の質疑に対して、やはりこうした短期のものは趣旨に反するということまでおっしゃっているというふうに思うんですね。私も、是非、長期、積立て、分散という投資をやはり根づかせていくことが本当に大事なことだと思っております。

 ただ、こういう制度設計だと、私は、やはり毎年などの短期に売買を繰り返す、こういうこと。通常、投資の現場でしのぎを削っている投資家の皆さんからしたら、少しでも、当然、利益を取ろうと。これは当然、自然な活動になってくるんですけれども、こういう今回のような制度になりますと、当然、この趣旨に反する取引に、ある意味殺到するといいますか、こういうところに、必ずやろうとするというのは、これは自然な流れであって、そういうふうになってきてしまうと思うんですけれども、大臣、この受け止め方、捉え方、どうですか。

鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、そもそもスタートから考えますと、日本の家計の金融資産、これが二千兆円を超え、その過半が現預金で保有されている。現金をそのままただ置いておいてもそれだけなわけですから、それを投資をすることによって、勤労所得に加えて金融所得も国民の皆様方に果実としてしっかりと受け取ってほしい、そういうことでございます。

 そういうことで、NISAの、これはそもそもはNISAは民主党政権のときに誕生したと伺っておりますが、それの拡充、それから恒久化措置をさせていただくところでございます。

 最初申し上げましたとおり、あくまで国民の皆さんの金融資産を増やして、そして豊かな暮らしに続けるということでありまして、ただ、その形成過程において、本来私たちが望んでいない手法、先ほど来お話のありました回転売買みたいな、デートレーダーみたいな方、そういう方、そういうやり方は政策目的と一致していないわけであります。

 こういうことにつきましては、金融教育を始め、また、枠においても一定の枠がございますので、そうしたもので、あるべき姿の方にしっかり持っていくという努力、それは継続してやってまいりたいと思っております。

藤岡委員 金融教育とかだけですと、やはり、投資家の方、短期売買をやろうとする方には、既に、そういう教育ということだけでは当然効果がないということになってしまうと思うんですよね、効果が乏しいといいますか。

 実際、投資家の方はこういうふうな回転売買の方に、やろうというふうに当然集まってきてしまうというか、やはりそういう厳しい認識を持っていただかないといけないと思うんですけれども。普通に投資家の行動原理を考えれば、こういう短期の回転売買の方をやろうということに、制度の利用の方に当然走っていってしまうというか集まってくるというのは、これは普通、自然だと思うんですね。そういうふうにまず受け止めなくちゃいけないと思うんです、大臣。

 これは趣旨に反するわけですから。私は、長期、積立て、分散がやはり基本ですから、また短期で何かいろいろなことがあってということだと、やはり市場に対するいろいろな信用を失って、また問題が起きてしまってもいけませんので、大臣、やはり、この趣旨に反する取引に投資家の方が集まってきてしまう、こういう認識は普通に持っていただかないといけないと思うんですよ。大臣、いいですか、それ。

鈴木国務大臣 NISAによって、これから、今まで投資をしていない方が投資をしていただくきっかけになるんだと思います。先ほど金融教育と申しましたけれども、まさにこれからやろうという方に、金融教育におきまして、そうしたデートレーダーみたいなものではなくて、長期に資産を形成していく、そういうことをしっかり理解していただいて、これからやり始めた方がそっちに回らないようにということは重要なことだと思います。

 実際にそういう方々に対してどういう効果があるのかといえば、それは課題として残ると思いますが、今回のNISAの枠組み充実、恒久化、そういうことがそういう方々に対してどういうふうに影響していくのか、その点は極めてしっかりと見ていかなければならない重要な点であると思います。

藤岡委員 最初に、冒頭申し上げましたけれども、私も、いろいろな、仮定の条件を除けばとか、拡充というのは本当にやっていただきたいと思っているんです。ただ、ちょっとここ、こだわらせていただきたいんですけれども、やはり大臣の認識として、普通に、回転売買をやろうと思って、投資家の方は利用をしようと思って集まってきてしまうと思うんですよ。そこはちゃんと捉えた上で今後の対策を取らなくちゃいけないと思うんですね。

 大臣、これ、集まってきてしまうと思いませんか、普通に投資家の行動原理を考えたら。やはり、それは役所として厳しい認識を持った方がいいと思うんですよね、趣旨に反する取引ですから。どうですか。

鈴木国務大臣 先ほど来申し上げていますとおり、こういう回転売買というのは、今回の措置の趣旨に全く反するものでございます。

 そういう固い思いを持ってしっかりと、どういう影響を与えてしまうのか、それを見て、場合によっては必要に応じて何らかの措置を検討するということもあり得るのではないか、そういうふうに思います。

藤岡委員 何らかの措置を検討することもあり得るというふうに今おっしゃっていただきました。

 是非、やはり、趣旨に反する取引ということは最初から分かっているわけでございますから、普通に考えれば多分そこを使いますよ、そういうふうに、目的で。当然の行動原理で。だから、きちっと対策、本当に大至急検討をお願いしたいということを思います。

 じゃ、次の課題に行かせていただきたいと思いますけれども、貯蓄から投資へということですね、最初の質疑の順番に戻らせていただきますけれども。

 久しぶりに私もこの言葉をお聞きしましたけれども、私も、済みません、役所に入らせていただいたときに、ちょうど二〇〇一年、平成十三年頃に、貯蓄から投資への転換というふうなことをよく耳にもしておりましたし、これは必要なことだなというふうには思っておりました。

 二〇〇一年ぐらいから本格的にこの転換ということでよかったでしょうかね。お世話になりました堀本審議官、どうぞお願いします。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問のとおり、貯蓄から投資への考え方自身は、二〇〇一年六月に取りまとめました骨太の方針で示されておりまして、それから、貯蓄から投資へという言葉自身は、同じ二〇〇一年の八月に公表された証券市場の構造改革プログラムで明示されております。

藤岡委員 それからしますと、約二十年以上、この貯蓄から投資、まあ、途中で、貯蓄から何か資産形成にというふうに変わっているようにも思うんですけれども、久しぶりにまたこの貯蓄から投資へという言葉が復活されたかのように自分には見えたんですけれども。

 今日お配りしてある資料、改めて、もう皆さんも御存じのとおり、この金融資産残高のシェアの割合を見ますと、二十年前からほぼ変わっていないというところが言えると思うんですよね。

 二十年という長い年月になるわけですよね。この間、いろいろな経済政策もあったわけですけれども、二十年間、この貯蓄から投資へということが言われながら、このように変わらなかった理由、どのように大臣、捉えますか。

鈴木国務大臣 藤岡先生も金融庁御出身であるわけでありますが、金融庁としても、二〇〇一年以来、貯蓄から投資へに取り組んできたところでありまして、これまでの取組を申しますと、例えば、二〇〇三年から証券税制の優遇措置を導入をいたしましたり、横断的な投資者保護法制である金融商品取引法の施行を始めといたしました、投資しやすい金融資本市場の環境、これを整備し、また、二〇一四年には現在の時限的なNISA制度を導入するなど、個人投資家の市場参加を促すための様々な施策に取り組んでまいりました。

 しかし、なかなか伸びていないではないかという御指摘でございますが、やはり、背景を考えてみますと、この間の市場、経済情勢の影響や家計のリスク回避的傾向が強いことなど、様々な要因があると思います。結果として、家計に対する貯蓄から投資の後押しや動機づけが十分でなく、我が国の家計金融資産は、米国等と比較して、株式や投資信託などのリスク性資産の割合が低い水準にとどまっている現状にあるのだ、そのように思っております。

 一方において、リスク性資産の保有に積極的と見られております米国でも、かつては家計の株式や投資信託の保有比率は日本と同程度にとどまっておりました。米国においては、家計の資産形成を支援する様々な政策的対応を通じて現在のような姿を実現したものと考えております。

 こうしたことを踏まえまして、今般の資産所得倍増プランでは、NISAの抜本的拡充、恒久化を始め、金融経済教育推進機構(仮称)を設立し、官民一体となって金融経済教育に関する戦略的な対応を進めていくこととするなど、これまでにない思い切った対応を盛り込んでいるところであります。

 これらの政策を総動員して、貯蓄から投資への流れを実現してまいりたい、そのように思っております。

藤岡委員 家計への動機づけが足りなかったというような話も今ございました。

 先日、階先輩議員からもあった、バブルのときの後遺症とか、私もそういうこともあると思っているんですね。今回いろんな抜本拡充をしていく中で、本当に改めて、今回こそ、長期、積立て、分散で、きちっとした投資の流れを本当につくっていっていただかなければいけないというふうには思っているんですね。

 そういう中で、先日、木原官房副長官が、NISAの日の記念のイベントにおきまして、このような発言をされているんですよね。できれば一億総株主になっていただいてというふうな話をされているんですけれども、大臣、これは同じ考えということなんでしょうか。

鈴木国務大臣 木原副長官の発言については、直接伺っていませんので、伝聞の範囲でしか分かりませんけれども、一億総株主ということについての定義でありますとか範囲については、政府として、定義を置いて用いているものではないと思っております。これは恐らく、特定の年代層を除くという趣旨ではなくて、広く国民の皆さんに投資をしていただき、企業価値の向上を通じた資産所得の拡大につなげていく、成長と資産投資の好循環を意図されているのではないか、そのように推察をいたします。

藤岡委員 何か子供関連予算のときは官房長官と同じだという発言をされましたけれども、これについては違うということで今おっしゃったということだと思うんですけれども。

 そうすると、大臣、もう一回、一億総株主というのは、これは政府としては使っている言葉じゃないということなんですね。

鈴木国務大臣 この一億総株主という用語でありますけれども、自民党の経済成長戦略本部とか自民党の金融調査会の提言には記載されてはおりますけれども、政府が利用している用語ではございません。

藤岡委員 政府が利用されている用語ではないということですと、官房副長官がこういうふうな発言をされているというわけでございますから、非常に言葉の使い方によっていろんな印象を受け止められるということもあると思いますので、これは本当によく注意して、むしろこの辺は、いただかなければいけないのかなというふうに私は思うんですよね。

 一億総株主というふうな話が出ますと、今日も資料をお配りしておりますけれども、結局、金融資産がゼロの世帯の方というのが非常に現状多くいらっしゃる。全世代平均で、二三・一%もいらっしゃる。今回の制度は、特に、中間層には恩恵が行くということでありますけれども、まさに、この金融資産がない方、投資余力のない方には恩恵が行かないということが、かねてよりこの委員会でも指摘をされているというところだと思うんですね。

 こうすると、当然格差も広がりますし、一億総株主というふうに官房副長官が、個人の思いなのかどういう思いなのか、おっしゃられているという中にあって、できれば、みんな株主になって、成長の果実を受け取ってほしいということだということでおっしゃったのかもしれませんけれども、そうすると、投資余力がない人、金融資産がない人にとってみたら、そういう果実を受け取れないということに当然なってしまうわけでございますから、やはり、格差が広がる懸念はあって、何とか具体的な措置を取っていかないといけないと思うんですよね。

 大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 岸田内閣におきましては、藤岡先生御指摘の、金融資産を持たず、今は投資余力がないという方も含めて国民所得を広く引き上げていくことが重要だ、そのように考えております。成長と分配の好循環の鍵となりますのは賃上げでありまして、賃上げに向けてあらゆる政策を総動員して取り組んできたところです。

 具体的には、政権発足当初から、賃上げ税制の拡充、公的価格の引上げ、最低賃金の見直しなどに取り組んできており、その結果、二〇二二年におきましては、名目賃金の伸びは過去三十一年間で最高の二・一%、最低賃金は過去最高の三十一円の引上げ、パーセントに直すと三・三%でありますが、となりました。

 さらに、政府としては、賃上げに取り組む中小企業等の生産性向上の支援の拡充などに取り組むとともに、成長分野への円滑な労働移動を人への投資の強化と一体的に進めるなど、構造的な賃上げの実現を図ってまいりたい、そのように考えているところでございます。

藤岡委員 賃上げ等いろいろなその今おっしゃった施策は、中間層にも、またいろいろな、投資余力のない方々に、両方に当然いろいろな対策ということだと思うんですけれども、今回のNISA、あくまで中間層ということになりますと、本当に、改めて、今のお話を聞いておりましても、投資余力がない方に対する対応としては、やはり直接的な措置というのも含めてちょっと今感じられなかったかなというふうに私は思うんですよね。

 大臣、これだと、本当に、まだ格差が広がる。なかなか、この投資余力のない方、一億それこそ総株主ということを副長官、その思いなのかもしれませんけれども、おっしゃっているのであれば、ちょっとこれは、やはりまだ十分な、更に検討していただく必要があると思うんですよね。いかがですか。

鈴木国務大臣 NISAという、投資をしやすい、そういう制度をこの度拡充をして強化をしたわけでありますが、そもそも、投資をする資金的余力のない方、この方々に対してはどうするかということでありますが、やはり、そういう方々に少額でも投資をしていただくためには、先ほど申し上げました、まずは賃上げ等によりまして家計の余力を持っていただく、そのための努力をしっかりやっていくことが重要なんだと思っています。

藤岡委員 やはり、この辺り、まだまだちょっと対策が足りないということは指摘をさせていただきたいと思っております。

 その中で、一億総株主という発言があった中で、今回、ジュニアNISAというのを廃止をされていると思うんですけれども、これはなぜ廃止されたんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 ジュニアNISA制度は、平成二十八年に未成年者を対象として創設されたものでございますが、その創設に当たっての議論におきまして、子供自身には投資に関する判断能力が備わっておらず、親が子供のジュニアNISA口座を実質的に自らの口座として、いわゆる借名口座として利用することや、格差の固定化につながることなどへの懸念も示されたところでございます。

 こうした懸念を踏まえて、子供が十八歳に到達するまでは口座からの払出しをしないことを前提に非課税措置を認めるなどの制度設計を行ったところでございます。

 こういった懸念や制度設計を背景としながら、ジュニアNISAにつきましては、その後の利用実績の状況を見ますと、非常に利用実績が乏しいということなどから、令和二年度税制改正において、口座開設期間を延長せずに令和五年末に終了する旨が決定されたものでございます。

藤岡委員 利用実績、直近ではすごくまた伸びていたと思うんですよね、一時期までは当然あれだと思うんですけれども。今回、各ライフプランに応じたいろいろな投資もということもおっしゃっていると思うんですよね。それから、若年層の、投資のいろいろなアンケートというか、聞くと、やはり教育資金、このために金融資産をということで出ていると思うんですよね。

 いろいろなそういう観点からすると、大臣、これは廃止しないという考え方は取れないんですか。

鈴木国務大臣 ジュニアNISAについてでありますが、今ほど主税局長から答弁をさせていただいたとおり、親が子供の口座を実質的に利用することや格差の固定化につながるなどの懸念がある中で、子供が十八歳になるまでは口座からの払出しを制限する等の措置を設けた上で、平成二十八年に創設されたところでございます。

 その後、令和二年度税制改正における議論の中で、利用実績が乏しいことなどから、口座開設期間を延長せずに令和五年末に終了する旨が決定されたものであります。

 こうしたことを踏まえて、今般の新しい制度の対象者には、未成年者を含めず、十八歳以上としていることを御理解をいただければと思うところであります。

 その上で、今般のNISA制度の見直しにおいては、制度の恒久化や非課税保有期間の無期限化により、今は未成年の方であっても、将来、制度を利用することが可能となっていることと併せて、未成年の方を含めた金融経済教育の充実や金融機関等による顧客本位の業務運営の確保などの取組を総動員することによって、必要な金融知識を得て、長期、積立て、分散投資による継続的な資産形成を行っていただけるような仕組みにもなっているものと考えております。

 政府として、こうした様々な施策を総動員することにより、家計の資産所得倍増につなげていきたい、そのように考えております。

藤岡委員 先ほど来、格差の固定化という話がありました。本当に、そうしたら、この抜本拡充自体が格差の固定化という話にもなりかねないということでありますから、余りその説明はいいふうに思えませんね。自分はそのように感じました。

 この件は、ちょっとまた、次の質疑に入らせていただきたいと思っておりますけれども。

 貯蓄から投資へというこの流れの中で、やはり懸念しなくちゃいけないこともあると思っているんですよね。いわゆる国債の消化、あるいは流通市場の取引に与える影響。

 今回の資産倍増の中で、当然投資も倍増させていくんだということでありますから、例えば貯蓄の規模が二百兆、三百兆動いていくと、じゃ、それが国債市場に与える影響、先日の階議員の質疑にもございましたけれども、ちょっとその答弁、いまいち分からないところもあったんですよね。改めて、大臣、もう一度ちょっと御見解をお願いできますでしょうか。

鈴木国務大臣 貯蓄から投資によりまして金融機関への預貯金が減少する可能性、これは投資の元手を、貯金にあるとすればそれを取り崩すことになるわけでありますから、そういう金融機関への預貯金が減少する可能性、これはあります。しかし、現状、金融機関には日本銀行の当座預金として極めて潤沢な資金があるため、預貯金が減少しても国債購入の資金源に直ちに影響はないと考えています。

 一方で、安全資産である国債は、金融機関にとってリスク管理上引き続き極めて重要な運用対象でありまして、金融機関等がデリバティブ取引や資金調達を行う上でも、国債は不可欠な担保資産になっています。

 さらに、家計が海外資産を購入するためには円貨から外貨への交換が必要となりますが、当該交換により円貨を取得をした金融機関等による国債需要も考えることができると思います。

 このため、直ちに国債の安定消化に支障を来すものではない、そのように考えております。

藤岡委員 直ちに、直ちにが何度もございましたけれども、今の答弁は私はちょっと大事な視点が抜け落ちていると思うんですよね。

 あくまでそれは、金融政策のいろいろなことが変わっているという前提であれば、今のような話も、ああ、なるほどな、そうなのかもしれないなというふうに思うんですよね。今の異次元金融緩和が継続をしているという中にあって、今の、日銀当預があるから大丈夫なんだと。本当にそうなんですかね。

 だって、今の場合は、国債よりも日銀当預が選ばれてしまうということだって否定できないということもあるわけですよね。普通はそういうことはないわけですけれども。普通はないというふうなのが自然なんですけれども。ただ、今の答弁ですと、日銀当預があるから大丈夫だと。これは本当にそうですかね。実際、金利の先高感がある中において、国債をなかなか選ばないというふうなことというのは、現状、取引が成立しないとか、いろいろなことも今起きているわけですよね。

 今の日銀の金融政策の前提の中にあったら、ちょっと大臣、もう少し危機感を持った方がいいと思うんですよね。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 先ほどもちょっと触れたわけでありますが、現状、金融機関には日本銀行の当座預金としては極めて潤沢な資金があるということで、預貯金が減少しても国債購入の資金源に直ちに影響はないということを申し上げたところでございますが、現状、日本銀行の当座預金残高五百二十四兆円でございまして、金融機関の預金残高が一千六百一兆円、このようになっているところでありまして、こういう中においては、先ほど申し上げた答弁のとおりになるのではないかと思っております。

藤岡委員 通常であればそういうふうに考えても、ただ、私はそういうふうに言い切っていいのかどうかなということはあると思うんですね。金利の先高感があるときに、国債がなかなか選好されないで、直ちに。逆にそういうこともあると思うんですよね、今のこの金融政策の現状においては。そうすると、本当にそういうふうに言い切れるんでしょうかね、大臣。

鈴木国務大臣 やはり一つは、安全資産としての国債の位置づけ、国債が安全資産であるということ、それが大きな安定消化につながっていくのではないか、こういうふうに思います。

藤岡委員 これ以上あれでもあれですから、ちょっと問題意識を持って、是非、貯蓄から投資へというときに、今の金融政策を前提に考えたときに、本当にそれ、大丈夫なのかどうかというのはよくよく検討をしていただきたいと思う。これは答弁をお願いします。検討してください、お願いします。

鈴木国務大臣 このことに限らず、やはり様々なリスクが財政を動かしていく上ではあるんだと思います。そういうことについては、リスクと思われること全てに対して、しっかりと、ある意味危機感を持って、注視をしていかなければならないと思っております。

藤岡委員 本当にちょっと、今の異次元緩和を前提とした場合の対応というのは、よくよく本当に検討をお願いしたいと思います。

 それからもう一つ、異次元緩和の中で、ETFが、これだけ多額に日本銀行が間接的にというのか保有をされている、時価にして四十八兆円。資料をお配りもしておりますけれども、結局、これで名立たる大企業の株主にも事実上なっていると。これはあくまで、企業の何か個別に批評をしたというものではありません、ただの事実関係だけを書いているものでございますけれども。

 こういう、NISAを抜本拡充をして、長期、積立て、分散をしっかりやっていこうというときに、ある種、市場にゆがみがあるわけですよね、通常ないゆがみがある。私は、こういうゆがみがないときに、きちっとNISAの話というのは本当は進んでいってほしいなというふうに思うんですよね。

 ある意味、日本銀行がこれだけのETFを持っていて、じゃ、今後、これ、どうするんだと、もちろん出口の話がですね、どうするんだということがあるわけですけれども、ここまで持っていることに関して、しかも売らないというふうに今なっていることに関して。将来、いきなり、NISAをやってみたら、何か突然、日銀が売りに入ってきた、何だ、こんなことだと思っていなかったのにというふうに投資家だってそれは思いかねないこともあるわけなんですよ。

 金融市場に与える影響を、大臣、どのように捉えていますか。

鈴木国務大臣 日銀におけますETFの保有、これはあくまで金融政策の一環として行われており、その買入れにつきましても、株式市場等に与える影響に留意しつつ行われている、そのように承知をいたしております。

 実際の日々の株価も、企業の動向に加え、企業を取り巻く内外の経済金融情勢の動向等を背景にしながら市場価格を形成しており、日銀によるETFの買入れが株式市場に悪影響を与えているとは考えていないところであります。

藤岡委員 市場をゆがめているという認識は、大臣、ございますか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたが、株式市場に悪影響を与えるとは考えていないところであります。

藤岡委員 なかなか言いづらいのかもしれませんので、ちょっと次の話に入りますけれども。

 ETFのこと、これは金融教育でも、きちっと、むしろこれはちゃんと伝えてほしいと思うんですよね、こういう状態にあることを。これから参加する個人投資家の方に、ちゃんと、こういう状態にあることもきちっと私は伝えていただかなくちゃいけないと思うんです。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 先ほど、私、日銀によるETFの買入れが株式市場に悪影響を与えているとは考えていないということを申し上げたわけでありますが、その上で、金融経済教育の在り方については、個人が自らのニーズ、それからライフプラン、それに合った適切な金融商品・サービスを選択して、安定的な資産形成を実現するための金融リテラシーを高めていくこと、これが重要だと考えております。

 金融庁におきましては、これまでも幅広い層へ様々な情報発信や金融経済教育の推進を図ってきたところですが、資産所得倍増プランでは、金融経済教育推進機構(仮称)を設立して、官民一体となって金融経済教育に関する戦略的な対応を進めていくこととしており、より一層の効果的な金融経済教育の推進に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

 そうした中で、今先生の御指摘されましたこともございますが、しっかりとした金融教育をやってまいりたいと思います。

藤岡委員 今御指摘のこととおっしゃっていただきましたけれども、ETFのこの問題も、じゃ、伝えていただけるということでよろしいですか、大臣。

鈴木国務大臣 来年、この機構を設立して、そしてどういうような体制でどういうような取組をしていくかというのはこれからでありますが、様々な課題、論点があるんだと思います。そういう中には含まれる可能性はある、そういうふうに思います。

藤岡委員 可能性があるとおっしゃっていただいたので、是非伝えていただければということを思います。

 続きまして、さっきの回転売買の話でちょっと質疑を残してしまった件なんですが、監督指針で金融機関の方にはいろいろな規制をしていくということ、規制と言っていいのか、監督指針には規定をしてやっていくということだと思うんですけれども、これはどういうふうなイメージになるんでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のNISAの拡充に当たっては、NISA制度が安定的な資産形成を目的とするものであることを踏まえ、監督指針を改正いたしまして、証券会社等によりNISAの成長投資枠を活用した手数料目当ての回転売買の勧誘が行われることのないよう、当局としてモニタリングを行う旨を監督指針に明記する方針でございます。

藤岡委員 ちょっと重ねてになりますけれども、金融機関への対応はそれでやるということで、じゃ、実際に何かあったときには、当然、監督上の措置を発動されるということでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 仮に証券会社等によってこうした監督指針に反する不適切な勧誘行為が行われた場合には、その重大性、悪質性を踏まえつつ、必要に応じて、金商法に基づく報告徴求や行政処分を含め、適切に対応していくということを考えております。

藤岡委員 あと、それに加えて、やはり個人に対してどういうふうに伝えていくのかということですね。

 これは、大臣、どうですか、個人に対して。

鈴木国務大臣 個人に対して伝えていくということは大切なことであると思います。

藤岡委員 どういうふうに抑止効果を持つようにお伝えしていきますか。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 やはり、金融庁としては、金融経済教育に当たって、長期というだけではなくて、投資を分散させて、定期的に一定額を投資していく、この手法というのは、まとまった資金がない方や投資初心者の方でも安定的な資産形成を行うのに適している、こういうふうな観点を伝えていきたいというふうに考えております。

藤岡委員 本当に、きちっと是非伝えていただくことが必要だというふうに思います。

 ちなみに、今回、一千八百万と、この非課税の関係の枠のことで、老後二千万円という以前話がありましたけれども、これは何か関係はあるんですか。

鈴木国務大臣 御指摘の老後二千万円問題、これは、二〇一九年に金融審議会のワーキンググループが取りまとめた報告書において、高齢世帯の収入、支出の平均値を用いた計算が、当時あたかも公的年金だけでは生活費として老後三十年で二千万円不足するといった国民の誤解を招いてしまったことを受けまして、金融庁として当該報告書を正式な報告書としては受け取らないこととしたものである、そのように承知をしております。

 当該報告書では、ライフプランに応じた資産形成の検討や、これに対応した適切な金融サービスの提供と行政機関等による環境整備の重要性を指摘しております。こうした観点については、中間層を中心とした幅広い層の資産形成をサポートするとの今般のNISA制度の改正の趣旨とは共通するところがあるものの、非課税保有限度額の水準を含め、改正そのものとは、老後二千万円問題と保有限度額一千八百万円、これは関係するものではありません。

藤岡委員 時間も少なくなってまいりましたので、最後に、インボイスのこと、先ほど末松議員からすばらしい御指摘があったので、私からちょっと一点だけ、大臣の思いをちょっと教えていただきたいと思うんですけれども。

 改めて、免税事業者の方が、売上げ一千万円、取引から排除される、また、いわば、どういう言い方をするかは別として、益税などが剥奪をされてしまう、あるいは事務負担がかかるというところで、非常にやはり、どちらかというと弱いふうに置かれている方たちに対して追い詰めるような措置とも言えなくはないと思うんですよね。

 大臣、やはり、こういうことに関して、何か心を痛めませんか。私、すごく、これは非常にそういう思いを持ちます。大臣、これは心を痛めることはないですか。そこを教えてください。私は、中止、廃止するべきだと。

鈴木国務大臣 財務大臣として御答弁申し上げますけれども、政府といたしましては、従来、インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものである、そのように申し上げているところでございます。

 そして、この移行によりまして、様々な業種の方々、そして免税事業者の方々、そして中小・小規模事業者の方々から様々な不安のお声等も寄せられているわけでありまして、それは私も承知をしているところでございます。

 様々な、取引環境の整備でありますとか、予算措置による支援でありますとか、そうしたものをよく説明をし、御理解をいただき、御利用いただく中におきまして、このインボイス制度がソフトランディングをしていくように、これからも努力しなければいけないと思っております。

藤岡委員 本当に、そこに何か厳しい措置、結果として、なぜやるんだろうというところ、非常に私は疑問に思います。改めてインボイス制度中止、廃止を求めまして、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塚田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。道下大樹君。

道下委員 立憲民主党の道下大樹でございます。

 私からも、今回の所得税法等改正案を含めまして、幾つか質問をさせていただきます。

 鈴木大臣、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、その前に、前回、二月十日の財務金融委員会で私が質問させていただいた令和五年度の税制改正の提言、これは立憲民主党から出したものに関しての災害損失控除について、ちょっと伺いたいというふうに思っております。

 我々立憲民主党としては、多発化、深刻化する災害に対応する税制として災害損失控除の創設を求めましたところ、財務大臣からは、特定非常災害による損失に係る雑損失と純損失の繰越期間について、損失の程度や記帳水準に応じて、現行の三年から五年に延長する措置を講ずることとしたところという答弁がありました。つまり、災害による損失は雑損失のままということでございます。

 しかしながら、雑損失と純損失の控除の順番について再質問したところ、主税局長より、控除の順番については、雑損控除を引いた上で、その後に基礎控除等の人的控除が引かれるという仕組みはこれまでどおりという答弁がありました。

 なぜ災害による損失を雑損失のままにしておくのか、政府参考人から伺いたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正案におきましては、雑損控除、純損失の双方につきまして、特定非常災害の場合については繰越期間を五年間に延長するという特例を設けることといたしておりまして、実質的には雑損控除の特例という形ではございますが、特別の取扱いを災害について行うものでございます。

 今の控除の順番についてのお尋ねでございますが、所得税の課税所得の算出の手順でございますけれども、まず初めに、事業所得の必要経費や給与所得控除など、所得を得るために必要な経費などを収入から差し引いて所得を算出いたします。その上で、人的控除等の所得控除によりまして、それぞれの納税者の方の世帯構成などに配慮した担税力の調整を行うといった仕組みとなってございます。

 このような仕組みとなっておりますのは、災害など異常かつ不可避な理由によって住宅や生活必需品など生活の基盤に生じた災害の損失、これは担税力を直接的に減殺させ、所得計算上、先に考慮すべきものだという観点でございまして、この点は、災害によって、例えば御商売されている方々の事業用資産に生じた損害について、事業所得の計算上、必要経費として考慮するのと同じ順番になっているわけでございます。

 こうしたことで、人的控除よりも災害による損失に係る控除を先に行うという仕組みになっているものでございます。

道下委員 ちょっと、観点というか、順番の理由づけという、ここについて違うなというふうに思うんです。

 課税所得の計算上、現行の雑損控除制度では、災害による損失と盗難又は横領による損失を同じ扱いにしています。しかしながら、災害による資産に関する損失は、盗難又は横領による損失よりも多額になることが多いと思います。

 災害による損失は、生活基盤である資産に生じた偶発的な損失でありまして、収入を得るための必要経費的なものではないと考えるんですね。通常じゃないですから、偶発的ですから、災害なんて。災害、二年か三年に一回起きます、そういうものではありませんから。

 このため、課税所得の計算上における所得控除等の順序についても私は考慮する必要があるというふうに考えるわけです。災害による担税力の喪失を最大限に勘案する観点から、まず、災害の有無にかかわらず適用される災害損失控除以外の他の所得控除を適用して、最後に災害損失控除を適用すべきだと考えますが、まずこの点について、財務大臣、伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 所得税における控除の順番につきましては、ただいま主税局長から答弁したとおりでありまして、人的控除よりも先に災害による損失に係る控除を行うものとなっております。現行の仕組みは、それぞれの控除の性質に鑑みて適切なものと考えているところであります。

 したがって、災害による損失に係る控除を最後にすべきではないかとの先生の御指摘につきましては、慎重な検討が必要である、そのように思っております。

 控除の順番だけでよろしいですか。(道下委員「順番だけです」と呼ぶ)

道下委員 災害による損失の控除の順番を先にしてしまうと、雑損失と純損失と同じようにしてしまうと、元々、私も先ほど申し上げましたとおり、人的控除等、その年しか控除されないようなものを引く前に、それでもう全部、控除額が上限に達してしまうんですよ。本来、毎年毎年引かれるべきものが引かれないということ。

 この後質問いたしますけれども、それは繰越しが三年とか五年とかに延びても、それだけで終わっちゃうんですよ。例年、全ての人たちが当然のように所得税から控除される分、これが引かれないで、災害に遭った人だけ、雑損失ということに組み込まれた災害の被害の分の損失を控除されるということでは、私は不公平だというふうに思うんですね。慎重な検討とおっしゃいますけれども、これは慎重に検討したら、いや、これは控除の順番はやはり後の方がいいよねというふうに私はなると思うんです。

 是非ここは、令和五年度の税制改正はもう上げられて今議論しているところなので、すぐにとはいかないかもしれませんが、この点については是非次年度の税制改正等に生かしていただきたいと思いますし、また、当年分の所得金額から災害損失控除及び純損失を控除し切れない場合の繰越控除期間は、現在の三年間よりも延長されるべきだと思います。

 令和五年度税制改正においては、財務大臣から御答弁があったように、雑損失及び純損失の繰越期間を三年から五年に延長する措置を講じるとなっています。東日本大震災時には五年間の繰越しが認められたことや、所得税の更正期間との平仄を考えれば、最低でも五年間の繰越しが認められるべきでありますし、法人税における災害損失欠損金の繰越控除期間が十年であることを踏まえれば、損害額に係る一定の書類の保存を要件に、控除期間の更なる延長も検討すべきと考えますが、大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 道下先生から、控除期間の延長についてのお話がございました。

 この控除期間につきましては、先生からもお話ございましたが、令和五年度税制改正において、特定非常災害による損失に係る雑損失と純損失の繰越期間について、損失の程度や記帳水準に応じまして、現行の三年から五年に延長する措置、これを講ずることとしたところであります。

 他方で、これは、被害が極めて甚大で広範な地域の生活基盤が著しく損なわれて、被災前のように生活の糧を得るまでに時間を要するような災害の被災者や被災事業者に特に配慮する観点からこの延長が行われたものでありまして、広く災害一般を対象とするものではないわけであります。

 更なる控除期間の延長が必要との御指摘につきましては、帳簿上明確でない損失について損失額を確認するための仕組みをどう構築するかなどの論点があり、納税者間の公平性が損なわれるおそれがあることから、慎重に検討する必要があると考えているところであります。

 いずれにいたしましても、最近、異常災害、大雨等、加えて地震など、頻発する自然災害が多発しておりまして、政府としても、こうしたものに対応することが大変重要な課題と認識しております。

 税制だけではなく、歳出も含めた総合的な対応を行うことが重要であり、今後も適切に対応してまいりたいと考えております。

道下委員 この五年というものも妥当なのかどうか、私は、しっかりと災害のその後の復興ということも、観点を踏まえて検討すべきだと思います。阪神・淡路大震災、東日本大震災、本当にそういったことを踏まえると、三年や五年で十分回復できているかというと、そうではないと思います。是非、こうした繰越期間の延長も十分に検討いただきたいと要望をいたしておきます。

 次に、今回の所得税法改正にもありますが、研究開発税制の見直しについて伺いたいと思います。

 これまで、政府は研究開発税制を度々見直してきました。これまで、どれくらい研究開発税制が利用され、どれくらい税収が減ったのか。一方で、研究開発が促進されたことによって、どれだけの成果が上がり、企業等にはどれくらいの利益が出たのか。なかなか難しいと思いますが、できれば、企業が利益を上げたことにより、国として、最終的に法人税がどれだけ収入として得られたのかなど、こういう研究開発税制を行ったことによる効果の検証というものをしっかりとやらなきゃいけないというふうに思うんですが、そうした把握はされた上で今回の研究開発税制の見直しとなったのか、伺いたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 研究開発税制は、研究に伴う現金の流出を税額控除によって抑制する形で、企業の経営判断に影響を及ぼし、企業の研究開発を推進するということを目的とするものでございます。

 その活用状況につきまして申し上げますと、平成二十九年度から令和三年度の五年間を取りまして、その間に合計でどの程度の適用があったかということですが、適用件数が約五万件、五年間における減収額は約三兆円というふうになってございます。

 この税制の効果ということでございますが、企業の活動は、税制のみならず、内外の経済状況や個別の企業収益の状況などからも影響を受けるものでございますので、研究開発税制の効果だけを取り出して経営者の投資への判断の影響を測ることや、本税制の導入による研究開発投資の促進効果、それにより生じた企業利益や経済への影響について定量的にお示しすることはなかなか難しい面があるというふうに考えておりますけれども、例えば、日本の企業部門における研究開発投資の対GDP比の水準を見てまいりますと、現在、GDP比で三・五九%ということで、アメリカやドイツを上回って高い水準にあるということもございまして、本税制も一定程度寄与した可能性はあるものと考えております。

道下委員 今、三兆円、税収減になったということでありますが、それらがはっきりと、こういったことで最終的に企業利益、そして最終的には法人税の増収とつながったかということはなかなか分かりづらいと思います。

 もう一つ、あわせて、今回、オープンイノベーション促進税制の件も見直しが図られております。政府が昨年十一月に発表したスタートアップ育成五か年計画では、オープンイノベーション促進税制の見直しについて、十分に実効的な税制措置とするとしていますが、今回の見直しの内容が、どのような考え方を基に実効的な措置となるとしているのか。

 つまり、このオープンイノベーション促進税制も、さっきの研究開発税制と同じように、どれだけの効果が得られた、若しくは課題があるか、そして、じゃ、どのように見直すのかという、ちゃんとこれまでの取組の効果を検証した上で見直しの措置となるのかということを伺いたいと思いますとともに、あわせて、この税制のこれまでの効果ですね、さっきも申し上げました。税収減とスタートアップ企業への投資額などの追跡調査、こういったことについてどのように認識、把握しているのか、伺いたいと思います。

住澤政府参考人 オープンイノベーション促進税制でございますが、令和二年度の税制改正で創設されたばかりの税制でございます。事業会社による一定のベンチャー企業への新規出資に対して出資額の一定部分の所得控除を認めるという極めて異例の措置として、二年度の税制改正において創設されました。

 企業の投資行動は、先ほども申し上げましたが、税制のみならず、内外の経済状況や個別の企業収益の状況によっても影響を受けるものでございますので、この税制の効果だけを取り出して影響そのものを測ることは困難であるというふうに考えておりますが、令和二年度、令和三年度の両年度の合計で、本税制の適用件数は九十九件となっておりまして、適用金額は百四十四億円となっているところでございます。

 そして、今回の見直しでございますが、今回の令和五年度税制改正におきましては、スタートアップエコシステムの抜本的強化が重要な課題になっているということに鑑みまして、従来このオープンイノベーション促進税制の対象となっておりましたのが、ベンチャー企業に対する出資によるニューマネーの投入だけが対象となっていたところ、今回はスタートアップ企業の既存株式の取得についても本税制の対象とすることとしたところでございます。

 これは、スタートアップ企業を育成していく上で、そのスタートアップの出口戦略をより多様な手段によって支援していくということで、大企業等によるMアンドAによってスタートアップの株式が取得しやすい環境を整備するということが重要な課題であるという議論に基づきまして、今回の改正を行ったものでございます。

道下委員 今の研究開発税制とオープンイノベーション促進税制について、私は、全てとは言いませんが、先ほどの研究開発税制は五万件ということでしたよね、私は全部ではなくても抽出調査をすべきではないかなと。それぞれの企業に対して、どれだけのこの税制の取組が利用されて、その企業に、どれだけの研究開発やまたスタートアップ、促進がなされたのか、そしてその企業がどうなったのかということを抽出調査をして、改めて、この研究開発税制やオープンイノベーション促進税制、これらの見直しに寄与すべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、法人関係の減収を伴う租税特別措置につきましては、租特透明化法に基づきまして、毎年、各企業から報告を受け、国会に御報告をしているところでございます。この租特透明化法に基づく報告書のデータなども踏まえながら、不断に見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。

道下委員 こういったことを、財務省はいろいろな、様々な省庁にちゃんと効果を検証しろというふうに言ってきているわけですよね。財務省もそういうことをやらなきゃいけないと思いますよ、私は。是非お願いしたいと思います。

 ちょっと順番等を入れ替えまして、次、奨学金について伺いたいと思います。

 立憲民主党は、二〇二三年度税制改正について、奨学金の返還に追われる若年層を支えるため、奨学金制度の拡充を前提としつつ、貸与型奨学金の返還額について所得控除の対象とすることを提言しています。

 大学等を卒業後に就職しても、奨学金の返還に追われ、資金を蓄えることができない、もちろん金融資産投資もできない。お金がないから、好きな人と結婚したり子供を産み育てたりすることができないような環境に置かれている若者が多いことは御承知だと思います。

 給付型奨学金の拡充については文部科学省などに頑張ってもらうことといたしまして、貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象として支援することも必要と考えますが、見解を伺います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 貸与型奨学金の返済者に対しまして、税制の優遇措置、特に所得控除の対象とするというお尋ねでございますけれども、こういった措置を講じました場合、比較的高い所得を得ている方々には大きな恩恵があり得る一方で、所得が小さくて奨学金の返済余力が小さいという方々に対しては、所得税の税額がそもそもなかったり少なかったりするということがございますので、所得控除等の効果は限定的であるという面がございます。

 具体的に申し上げますと、世帯の中で約三割は所得税がかかっていないという状況にございますし、所得税がかかっている納税者の中でも六割は五%の最低税率の適用という状況でございますので、所得控除の効果は非常に小さいものになってくるということがございます。

 したがいまして、御指摘の点についての税制上の措置での対応ということについては、なかなかなじみにくい面があるのではないかと考えてございます。

道下委員 なので、我々立憲民主党は、そうした所得控除の割合が少ない方々に対しては給付つき税額控除の創設を提言しているんですよ。奨学金の返還だけではなくて、様々な点で、この給付つき税額控除というのは低所得者の方々へのプラスの面が多大にある。今おっしゃったような、高所得者の方々には恩恵が高い、でも低所得の方々には恩恵が少ない若しくはないといったものの課題を解消できるのが、私は給付つき税額控除だというふうに思っております。ずっとこれは立憲民主党は提言してまいりました。

 この点について、是非ともこれは、私はやった方が、今までの財務省がやってきたことも含めて、そして今、全ての政党が税制改正をいろいろと求めていますけれども、それらを大きく取り入れて、そしてそれぞれのメリットが生かされるのが私は給付つき税額控除だと思いますので、是非検討いただきたいというふうに思っております。

 次に、これは財務大臣に本会議での財政演説について伺いたいと思います。

 今国会召集日に行われた鈴木財務大臣の財政演説の中で、文教及び科学振興費につきましては、小学校高学年における教科担任制の推進等のため、教職員定数の合理化等を図りつつ云々かんぬんというふうに演説されましたけれども、この合理化等とは何を意味するのか、その意味を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 教職員の定数をめぐりましては、学校における働き方改革や少人数学級によるきめ細やかな指導など様々な課題があるということは財務省としても認識をしております。

 財政演説における合理化等ということに対するお尋ねでありますが、これは、加配定数の見直しや国庫負担金の算定方法の見直しを図ることを意味しておりますが、令和五年度予算においては、あわせまして、小学校高学年の教科担任制の推進、小学校四年生の三十五人学級の実現などの課題に対応し、そのために必要となる教職員定数をしっかりと措置したところであります。

 今後とも、個々の教育課題に応じて引き続き必要な措置を講じていくこと、これが重要であると認識をいたしております。

道下委員 ちょっと具体的に伺いたいと思いますけれども、加配定数の見直し、それから国庫負担の見直しというのは、方向性としてはどっちでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣から答弁させていただいた加配定数の見直しでございますけれども、こちらは、例えば、既存の加配の基準といたしまして少人数指導加配というのがございますが、これは児童生徒へのきめ細やかな指導を行う目的で措置されているものでございます。これは、三十五人以下学級や教科担任の推進も基本的に同じ趣旨で達成するための方策であるということから、この少人数指導加配を振り替えまして、三十五人以下学級や教科担任制の推進に振り替えながら、きめ細やかな指導という教育課題に対応することとしているものでございます。

道下委員 つまり、少人数指導というものは同じ目的だから、加配定数を減らして、その分を三十五人学級とかのそっちの方の予算に振り分けたということですね。確認いたします。

中村政府参考人 先生御指摘のとおり、振替をさせていただいております。

道下委員 それでは学校における先生の数は変わらないんですよ。

 今まで、一生懸命、義務教育標準法で決められた先生の数、今、本当に先生方は長時間労働で大変なんです。加配定数、加配制度があって、それを何とか利活用して、学校の先生の数を増やしてきたんです。それぞれの教育委員会や学校が努力して増やしてきたんです。その一環であるのが、四十人から三十五人学級のこの取組なんですよね。それを財務省は残念ながら、趣旨が同じだからということで加配定数の分の予算を減らしてしまって、結局は学校の先生の数は変わらないというか、逆に、もしかして減る場合もある。

 こうした、片一方では三十五人学級、四十年ぶりにやりましたけれども、一方で加配定数の予算は削減した、振り分けたということは、これでは日本の教育予算は全然増えないということになるんですよ。

 私は、この点はもうちょっとというか、もっと財務省として、日本の教育はもっと予算を増やさなきゃいけない、公教育予算を増やさなきゃいけないという、意識を転換しなきゃいけないというふうに思うんですね。だから、三十五人学級だったり、我々は、更なる少人数学級、そして加配を増やして、そして、一クラスに一人の先生じゃなくて二人、三人、自由に子供たちと向き合い、寄り添い、そして指導や相談に乗ってあげられるような先生の数を、学校の先生の数を増やすべきだと言っているんです。

 もう一つ。今、日本の教育環境は、教員不足、長時間労働等、過労による長期の病気休暇を取らざるを得ない教職員が増加の一途をたどっています。

 少子化だから教職員も減らすというふうに財務省は言っていますね。子供たちが減っているんだから、学校の先生を減らすのも当然でしょうと言っていますよね。そうではなくて、欧米の先進国のように、二十人程度の少人数学級を推進することや、そもそも、先生の教える時間、こま数を減らして、その分、先生の数を増やしていくというようなことをやりながら、義務教育標準法などで教職員定数を拡大する必要があり、そのための予算拡充が必要だと考えます。

 岸田政権が掲げる人への投資は、大人になってからのリスキリングも重要とは考えますけれども、その前に、子供たちのために豊かな教育環境を整備充実させることが最優先事項ではないでしょうか。

 教職員定数拡大などに向けた予算拡充について、財務大臣の見解を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 公立小学校そして公立中学校の教職員定数は、法律に基づいて、主に児童生徒数や学級数に応じて算定される仕組みとなっておりまして、少子化により児童生徒数が減少しているため、連動して教職員定数が減少している、そういう法律に基づいた対応が取られていると承知をしているところでございます。

 その上で、令和五年度予算では、小学校高学年の教科担任制の推進や、小学校四年生の三十五人学級の実現などのため、必要となる教職員定数をしっかり措置したところです。

 財務省といたしましても、個々の教育課題に応じて、必要な教職員定数は引き続き確保していくことが重要であると考えます。

 なお、令和五年度予算におきましては、教員業務支援員やスクールカウンセラー、ソーシャルワーカーなど、外部人材の活用のための予算も計上しており、こうした予算も活用しながら、教員が授業等に注力できる環境を整備してまいりたいとも考えているところであります。

道下委員 三十五人学級に向けた予算は増えているけれども、加配定数のための予算は減らしているんです。

 そして、外部人材の登用、これを推進していますけれども、教員不足で学校の先生がいないんです。沖縄県では、先生が足りなくて三十五人学級ができなくて、四十人学級に戻そうとしているんです。

 こういったことでは、これからの社会を担う子供たちの教育環境なんか、ずたずたになっちゃいますよ。その点を私は財務省にしっかりと理解をしていただきたい。

 学校の先生を増やすためには義務教育標準法です。これは文部科学省です。でも、それを改正するためには、財務省の予算の裏づけが必要なんです。財務省と文部科学省でしっかりと連携して、こうした子供たちのための豊かな教育環境の整備、そのための教員定数の拡大など、是非お願いしたいと強く要望しておきます。

 次に、国税庁の役割と国税職員の定員について伺いたいと思います。

 国税労働組合総連合、いわゆる国税労組の調査によりますと、所得税申告者数並びに法人税申告件数は年々増加している一方で、法人税実調率は、二〇一二年から二〇一八年までの間で三・〇%から三・二%を推移していましたが、二〇一九年は二・四%、二〇二〇年は〇・七%と、減少傾向にあります。

 二〇二一年の法人税実調率と減少している要因について伺うとともに、もう一つあります。法人消費税の還付申告件数も増加傾向にあるものの、この法人消費税の還付申告に対する調査件数は、二〇一四年と比べると二〇二〇年は半分以下に減少しているんです。その要因を伺うとともに、国税庁に、調査件数を増加する考えはあるのか、伺いたいと思います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三事務年度におきます法人の実地調査割合、いわゆる実調率でございますが、一・三%となってございます。

 それから、実調率が低下している要因でございますが、税務行政を取り巻く環境を見ますと、経済活動のグローバル化、デジタル化等に伴う調査事務の複雑化、困難化などによりまして、実地調査一件当たりの日数が増加しております。また、法人数は年々増加傾向にあり、これも法人に対する実地調査割合を押し下げる一因となっているところでございます。

 さらに、令和元事務年度以降におきましては、新型コロナの感染拡大に伴う外部事務の抑制によりまして調査事務量が減少したこと、それから、実地調査を行う際には新型コロナの影響等を踏まえまして納税者等の状況に即した対応を行ってきたことなどによりまして調査件数が減少したことも、実地調査の割合、実調率が低下した要因となったものと考えております。

 それから、二つ目の御質問でございますが、法人の消費税の還付申告件数は増加傾向にある一方、それらに対する調査件数は減少している状況でございます。

 調査件数の減少につきましては、輸出免税を悪用するなど、事案が複雑化、巧妙化しているほか、新型コロナの影響によりまして調査事務量が減少したことも一因となっていると考えております。

 国税庁といたしましては、消費税の不正還付への対応を重点課題として位置づけて取り組んでおりまして、新型コロナの影響が緩和する中、必要な調査事務量を確保し、調査件数の回復に努めてまいりたいと考えております。

道下委員 今の御答弁によりますと、余り、私も事前にやり取りさせていただきましたけれども、コロナの影響ってそんなにないんですね。その前から、実調率だとか、あとは調査件数が減少しているんですね、ほかの要因で。

 国税庁の職員の数を増やさなきゃいけないじゃないですか。私はそう思いますし、また、新規、消費税滞納額ですね、様々な税の滞納額、新規発生滞納額は減少傾向にあったものの、二〇二一年は増加に転じ、そのうち消費税滞納発生額の割合は、二〇一一年から五〇%以上を推移しています。その要因について伺いたいと思います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 滞納が発生する要因につきましては、一般的に、個々の納税者の事業の状態や資金繰りなど様々な事情によりますことから、お尋ねの、新規発生滞納額全体に占める消費税の割合が五〇%以上で推移した要因につきましては、確たることは申し上げられないということは御理解いただきたいと思います。

 国税庁におきましては、従来から、適正かつ公平な徴収を実現するため、期限内納付に関する広報、周知など、滞納の未然防止を徹底するとともに、滞納となった場合におきましては、個々の実情に即しつつ、法令等に基づき適切に滞納処分を行うなど、組織を挙げた対応を行ってきたところでございまして、引き続きこうした取組を推進してまいりたいと考えております。

道下委員 答弁ありがとうございます。

 今答弁ありましたとおり、法人税実調率や法人消費税の還付申告に対する調査件数の低下、消費税滞納発生額の割合が増加するなどを踏まえても、政府が十月から導入しようとしているインボイス制度によって混乱が生じ、それに対して国税庁や各地の税務署が十分に対応できるのか、私は疑問です。立憲民主党は、インボイス制度の廃止若しくは導入延期を求めています。

 先ほどもお話があったとおり、コロナが大体収まったら、更なる税務調査など、職員が非常に必要になってきますし、インボイス制度が導入されたら税務署などへの問合せも格段に増えると思います。本当に大変になると思います。だから、いろいろな疑問や課題があるインボイス制度は廃止すべきだと言っているんですね、税務署がそれだけの対応能力を持っていないんですから。

 だから、まずは、私は、消費税専門官や特別国税調査官、特別国税徴収官の増設など、国税庁の定員の増員確保、これが重要であり、しっかりとそれを進めるべきだというふうに思います。

 定員合理化計画により、一九九九年から二〇一六年まで、千四百三十四人減員となりましたが、その後は、障害者雇用推進のための定員も含めて、二〇二二年度で三百三人増員となっています。

 今後の定員についての国税庁の考え方を伺います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 実調率の低下なども示しておりますように、経済活動のグローバル化、デジタル化に伴います調査、徴収事務の複雑化、困難化などによりまして、税務行政を取り巻く環境は厳しさを増しているところでございます。こうした環境の変化に的確に対応し、税制を適正に執行していくためには、税務執行体制の強化を図ることが重要であると考えております。

 こうした中、令和五年度予算におきましては、インボイス制度の円滑な導入に向けた対応、消費税の不正還付や国際的な租税回避への対応などを図るため、国税庁における所要の体制整備を盛り込み、三十七名の定員増となっているところでございます。

 今後とも、適正、公平な課税、徴収を実現するため、必要な定員を確保し、税務執行体制の強化に努めてまいりたいと考えております。

道下委員 国税庁からは今、適正な定員の確保ということでありました。

 是非、鈴木財務大臣、こういった点も含めて、やはりしっかりとした実調、税務調査を徹底的に行う体制の整備や、やはり、滞納をさせないということに対しては、税務署の能力というか、人の数を増やして、そうした活動がしっかりと行われるようにしなきゃいけない。

 法人税実調率が、コロナの影響もあったとはいえ、〇・七%、国税労組の調査によると。余りにも低いと思います。元々三%ですから、三十年に一回ぐらい企業に対して来るかなぐらいで、それはちょっと少ないんじゃないかなというふうに思っていますので、その点は是非財務省としても、国税庁の職員の定員の確保、拡大、是非後押しをしていただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間がもう限られておりますので、次の、所得税のN分N乗方式について、一点だけになるかなと思いますが。

 いろいろと今、N分N乗方式についての議論が起きていますし、先ほども同僚議員からもお話がありましたが、財務省としては、もしN分N乗方式を取り入れた場合に四兆円から五兆円の減収になるというふうな話がありました。それでもN分N乗方式を取り入れるべきというような意見もあるんですけれども、その目的の一つに、子育て世帯というか、そういったところの支援ということもあるのかなと思うんですけれども、N分N乗方式を取り入れた国における出生率に与えた影響について、財務省として調査などをされていたら伺いたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 子供も含めたN分N乗方式につきましては、フランスにおいて導入されている制度でございます。

 遡れるだけのデータということで、一九八〇年以降のフランスにおける出生率の推移とN分N乗方式との関係について見てまいりますと、一九八一年に、フランスにおきましては、このN分N乗方式を拡充いたしまして、第三子以降について、N分N乗の計算上有利に取り扱うような、そういう制度の拡充をいたしたわけでございますが、その後のフランスにおける出生率の推移を見ますと、基本的に、このN分N乗方式の改正以後、十年程度にわたりまして、出生率はどちらかというと低下傾向をたどり、その後、各種の手当てでありますとか未婚のカップルに関する制度の改正などなどを背景といたしまして、その後、上昇に転じたという経緯がございまして、N分N乗方式とフランスにおける出生率との間に有意な関係が直ちには認められないという感じになってございます。

道下委員 時間が来ましたので、これで質問を終わります。どうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速ではございますが、質問に入りたいと思います。

 まずは大きなところから質問させていただきたいと思います。昨年の税制改正においては、岸田内閣は令和三年十月四日に発足し、その直後に税制改正となりました。そのときの喫緊の課題、何とか賃金を上げて、経済の好循環をつくるという意図で、賃上げ税制というのが一つの主題、テーマであったと記憶しております。

 この賃上げ税制の効果については、今後、検証していく必要があると思いますので、またの機会に確認させていただきたいと思いますが、賃上げ税制のように、税制は国民に政策を示していく上で非常に重要なメッセージとなってまいります。

 その後、令和三年十月十五日に閣議決定で新しい資本主義実現本部を設置し、同日、新しい資本主義実現会議を開催するなど、一年間議論を積み重ねて、岸田内閣、政府が実現したい政策、新しい資本主義の考えを反映した税制を今回打ち出されたものと思います。

 そこで、まず、今回の税制改正においての、政府として、将来、この国をこうしていくんだ、これを実現したいという政策的なメッセージ、特徴についてお伺いいたします。

鈴木国務大臣 今回の税制改正に込められた岸田政権としての思いということであると思いますが、岸田内閣におきましては、社会課題の解決を成長のエンジンとして、成長の果実を分配することで更なる成長へつなげていくことといたしております。

 こうした観点から、令和五年度税制改正におきましては、個人金融資産の過半が現預金で保有されている現状や、欧米に比べて低い水準となっております開業率や企業による人材投資といった課題を踏まえ、持続的な経済成長に向け、NISAの抜本的拡充、恒久化を行い、スタートアップエコシステムの抜本的強化、企業の成長を先導する人材の育成を促す税制措置を講じることといたしております。

 同時に、社会に対する国民の信頼を高める意味においても、より公平で中立的な税制を実現していくことは重要であり、こうした観点から、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置の導入、資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築、グローバルミニマム課税の導入を行うことといたしております。

 このように、来年度税制改正は、持続的な経済成長と税制の公平性、中立性確保の両立を図るものですが、今後とも、経済社会構造の変化等を踏まえまして、時代にふさわしい税制となるよう不断に見直しを検討してまいりたいと考えているところでございます。

住吉委員 成長の果実を再分配していくこと、また公平で中立的な税制の実現、これについてはまた後ほど質問させていただきますが、一方で、我が国の少子化、これは深刻な状況です。

 言うまでもございませんが、二〇一六年の出生数というのは九十七万六千九百七十八人となり、明治三十二年の統計開始以来初めて百万人を割りました。

 ちょうど私もその当時、地方議員であり、それまで地方議会はどちらかというと社会増対策に政策的に力を置いていた、どうやったら都会に人口が流出しないか、どうやったら若者が地元に戻ってくるのか、そんなことばかり議論されておりました。私は当初から非常に違和感を感じており、最初の本会議での質問、これは少子化対策を取り上げさせていただいたわけですが、社会増対策自体は人口の取り合い、パイの奪い合いという、こういったことに地方自治体は多くの注力を注いでいたわけでございます。このちょうど二〇一六年、百万人を割ったというインパクトとともに、少子化対策、自然増対策、これを目標にした議論が地方自治体でも行われるようになったと記憶しております。

 それから六年がたった昨年、コロナの影響もあり、出生数は更に減り、二〇二二年の数は、八十万人を割り込み、統計開始以来最少となる見通しで、国の予測よりも八年も早いペースで少子化が進んでおります。

 今年の最優先課題として次元の異なる少子化対策を打ち出した岸田総理ですが、この喫緊の課題に対する対策が今回の税制改正に反映されているとは思えません。少子化対策の一つと言える、例えば、先ほど来より議論されておりますが、N分N乗方式、また給付つき税額控除なども議論されている中で、この税制改正に少子化対策に寄与する税制が反映されなかった理由についてお伺いいたします。

井上副大臣 御質問ありがとうございます。

 住吉先生の御質問にお答えしたいというふうに思います。少子化対策の財務省の受け止めと今後の取組についてということでお答えをしたいというふうに思います。

 急速に進展する少子化により、昨年の出生数は八十万人を割り込むと見られ、我が国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際とも呼ぶべき状況に置かれています。子供、子育て対策の対応は先送りが許されない課題であると考えております。

 その上で、子供政策の強化は最も有効な未来への投資であり、総理からの指示を踏まえ、今後、こども政策の強化に関する関係府省会議において具体的な検討を進め、三月末をめどに具体的なたたき台を取りまとめていくと承知しております。また、六月の骨太方針までに将来的な子供、子育て予算倍増に向けた大枠が示されるものと承知しております。

 財務省といたしましても、こうした共通の認識に立った上で、こども家庭庁や厚生労働省などともよく議論をしてまいりたいというふうに思っております。

住吉委員 先送りが許されない状況にもかかわらず、先ほど指摘させていただきましたように、今回の税制改正には一年間以上時間があったわけでございます。それにもかかわらず、六月に政府が取りまとめる骨太の方針に合わせて議論をしていくという予定とのことですが、喫緊の課題に対して、やはり、次元の異なる少子化対策と言った割には動きが遅過ぎ、とても本気で少子化対策に取り組んでいるとは思えません。少子化対策、これは待ったなしの状況ですので、是非一刻も早い抜本的な対策をお願いいたします。

 続きまして、前回途中で終わったわけですが、一億円の壁について、前回の続きをさせていただきたいと思います。

 一億円の壁という、ある意味不公平な税負担率を公平な形にするために議論がスタートし、どういう議論があったのかは前回質問させていただきましたが、出てきたのは、大体三十億円を超える方に負担を少し求めるようなものでした。

 そもそも、岸田総理大臣は、自民党総裁選挙に当たっての政策集で、この一億円の壁の打破を打ち出しました。その背景には、富の分配の仕方を見直すことで分厚い中間層をつくり、格差の解消につなげようという狙いがあるという認識でございます。

 以前、この議論の経緯について質問させていただいた際には、社会保険料も加味すると、かなりの高所得者層の負担率の方が低所得者層よりも低い状況にあり、負担構造として問題があると答弁しております。その不公平感を解消するために今回の改正を行っているのではないでしょうか。一方で、譲渡所得は長期間の価値上昇の効果がいっときに発生する面がございますので、その平準化効果も勘案する必要があると答弁されており、結局、何がしたいのかよく分からないというのが印象です。

 また、三・三億円という特別控除も、サラリーマンの生涯年収が二・五億円と言われている中で、それを優に超える非常に大きなものでございます。最高税率の半分である二二・五%という税率についても、根拠が不明瞭でございます。

 今回の改正は、公平性の観点から税負担の適正化を図ることが趣旨、最初、冒頭大臣が述べられた趣旨でございますが、この改正でその目的が達成できるとお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 現下の所得税の負担率を見てみますと、所得が一億円を超える辺りの所得層では負担率がそれほど大きく低下していない一方で、それを上回るかなりの高所得者層では負担率の低下が著しい状況がございます。

 このような負担率の状況等を踏まえまして、与党税制調査会において幅広い観点から御議論をいただいた上で講じた今般の極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置により、税負担の公平性の確保に向けて一定の対応が図られたものと認識をしております。

 政府としては、まずは、令和七年から施行されます今回の改正の効果、これをよく見極めてまいりたい、そのように考えております。

住吉委員 一億円の壁の問題ですが、これは、全体として見ると、高所得者層に対して税率が低くなっているという状況を何とかしなくてはということでスタートされたと思いますが、そもそもですが、一億円の所得を得ている人でも、例えば、給与所得を得ている人、また、株などでもうけた人、ここでも、税率の高い人、低い人、こういったある意味不公平感も発生するわけでございます。こういった不公平感に関しては、今回、何も議論されていないわけでございます。

 結局、これは総合課税と分離課税が混在していることが原因であるわけであり、そこに対して踏み込んでいかなければ、公平性の観点から税負担の適正化、これを図ることができないと感じております。

 高所得者層の税制を適正にすることによって、例えば、その増収分、これは僅かかもしれませんが、子育て世代の負担を減らすような税制に変更していくことも必要ではないかと考えております。

 今回の議論のスタートである目的を達成するためには、小手先の変更ではなく、抜本的な所得税制の見直しが必要だと考えますが、お考えを伺います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 所得税制におきまして、分離課税と総合課税される所得とが混在をしていることに対して、抜本的な対応が必要ではないかという御趣旨かと受け止めました。

 上場株式の譲渡益ですとか配当などに対します課税方式は、いわゆる金融所得課税の一体化という考え方の下で、原則として、他の所得から分離をいたしまして、一律二〇%の税率で課税する、そして、その金融所得間の損益通算を認めるというような考え方で課税が行われているところでございます。

 この考え方は、こういった仕組みを取りますことによって、税制が金融市場に対してゆがみを及ぼしにくいという効果が期待できるほか、仮に総合課税の仕組みに移行した場合に、諸外国等でも経験されたことでございますが、他の所得の発生状況を踏まえながら、全体の税負担の軽減を目的といたしまして、意図的に損失の出た株式を譲渡する等の行為によっていわゆる節税を行う行為などが発生するという問題も、総合課税の問題として指摘をされているわけでございます。こういった問題を回避しつつ適正な課税を行うための方法として、諸外国においても分離課税の方法というのは採用されている例が多々あるということでございます。

 さらに、総合課税となりますと、納税者の方々がそれぞれ申告をして納税をしていただく必要があるわけでございますが、現行の金融所得課税の一体化の枠組みの下では、特定口座制度の仕組みによりまして、納税者が税務署に申告を行わずとも損益通算を含めた課税を行うことができる、そういった簡便な仕組みにもなっているということでございますので、現在の金融所得等に対する課税方式自体には一定の存在理由はあるものと考えております。

 他方で、おっしゃいますとおり、一億円の壁の問題で象徴されるように、極めて高い水準の所得について、この分離課税の仕組みによって低い税率が適用される結果、かなりの高所得者層において負担率が著しく低下している状況について、税負担の公正性の観点から問題があるという指摘がかつてからなされていたわけでございます。

 こうした状況を踏まえまして、今般、極めて高い水準の所得に対して最低限の負担を求める措置を導入するということに至ったということでございます。

住吉委員 これは結局、三十億円、極めて高い人だけの是正、これが目的にされているんでしょうか。また、二二・五%という数値もかなり低い数字だと思うんですけれども、そういったところはいかがなんでしょうか。元々がもう極めて高い人だけ是正する、そういう目的でしようとしているものなのでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の措置を講ずるに当たりまして、昨年秋に政府の税制調査会でもこういった問題について御議論いただいたわけでございますが、その中での御指摘の一つとしては、譲渡所得に関しては長期にわたって発生した所得がいっときに発現するという性格がございますので、そういった場合、他の、事業所得でありますとか給与所得のように毎年毎年経常的に発生している所得と同様に総合課税を行うという考え方では、ちょっと負担の在り方として問題がある、平準化を考慮する必要があるという御指摘があったところでございます。

 実際、一億円を若干超える程度で数億円程度の所得が長期間にわたって発生した譲渡所得である場合を想定いたしますと、現行の一五%という分離課税の国税の税率で課税した場合であっても、数十年にわたって平準化して総合課税を行った場合の税負担率と比べてみると、高過ぎになるケースも出てまいります。そういったことも考慮して、今回の三・三億円という特別控除の水準は、株式の譲渡所得等だけで構成される所得の場合には、およそ十億円までは追加的な負担が発生しない水準として設定をされているものでございます。

 さらに、二二・五%という最低課税額を計算する上での適用の率でございますが、こちらの方は、所得税の本法におきまして、長期譲渡所得に関しては二分の一を乗じた上で総合課税するということが定められておりますので、最高税率四五%の二分の一ということで二二・五%としているものでございます。

 その結果として平均しますと、令和二年度の申告納税のベースで見ますと、三十億を超える方のところで平均的には追加的な負担が生ずるという結果になったものでございますが、今のような議論を踏まえて制度設計がなされているということでございます。

住吉委員 結局、何の目的で法改正しているのか。富の分配の仕方を見直すことで分厚い中間層をつくり、格差解消に果たしていくというのが、今回の改正で果たして寄与するのでしょうか。そう考えると、当初の目的は何だったのでしょうか。そうなるとちょっと堂々巡りになりますのでここでは再質問しませんが、そういう印象を受けます。

 また、今回の改正案は、岸田総理が提起した金融所得課税の強化、これは封印し、限られた超富裕層だけの増税となった、これが事実でございます。株式市場の反発を警戒し続けたとの報道もございます。一昨年に金融所得課税の強化を図る方針を打ち出しましたが、株価が下がったのを見て、岸田総理は、この方針をすぐには実行しない、先送りにしました。もちろんマーケットとの対話については必要ですが、マーケットに配慮し過ぎて制度の改変が骨抜きになるのは本末転倒です。

 各国の中央銀行による大規模な金融緩和を背景とした株価の上昇がコロナ禍の中で格差を広げたという指摘があるのも事実です。また、マーケットがネガティブな反応を示すことで、自分たちに不利な政策をストップすることができるという前例をつくってしまったのではないかとも危惧します。制度を変更する場合には大なり小なり影響が発生しますし、その都度、マーケットの影響を勘案していると切りがありませんし、配慮し過ぎているのではと考えますが、どのような認識を持っているのでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 これも昨年秋の政府税調で様々な御議論をいただいたわけでございますが、そうした中で、一億円を超える所得の内訳について、きちんとデータを踏まえて議論をする必要があるということでございまして、実際、一億円を超える所得を稼いでおられる方々というのは一・九万人ほどおられまして、一億円を超える所得の総額は五・六兆円というふうになるわけですけれども、こうした所得の三割弱が非上場株式の譲渡所得でございまして、いわゆる金融所得という言葉から想起されるような上場株式の譲渡所得については一四%程度にとどまってございます。主体としては、非上場株式の譲渡益が多いという状況でございます。

 そういった中で、金融市場への影響も考慮しながら検討するということが従来から与党ですとか政府の税制調査会では課題になってございましたので、市場に対する影響を勘案するということは、これは当然必要なことであったというふうに考えております。

 そういった中で、金融所得に対して適用されている税率を一律に引き上げるということに関しては、一般投資家の方々に対しても大きな影響を及ぼすということもございますので、政府税調における議論の中でもかなり慎重な御意見も多かったというのが実情でございます。

 そういった中で、この一億円の壁に対して、ピンポイントで対処していく観点から、先ほど申し上げたような議論を経て、今回の極めて高い所得に対する最低限の負担を求める措置に至ったということでございます。

住吉委員 繰り返しになりますが、元々、税の公平性を、是正するというところが議論のスタートだったと思っています。いろいろ議論があって、また、マーケットの影響も勘案してというお話でしたが、今回の改正自体、これが完成形という認識でいいんでしょうか。それとも、本来はもっと踏み込んだ形にしたかったが、いろいろ配慮してこのような形になった、今後段階的に公平性の観点から抜本的な改正を行う、その道の途中の第一歩目という認識でよろしいのでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの点につきましては、先ほど大臣からも御答弁がありましたように、今回の適正化措置によりまして、税負担の公平性の確保に向けて一定の対応が図られたものと認識をいたしております。

 政府としては、まずは、令和七年から施行される今回の改正の効果をよく見極めてまいりたいと考えております。

住吉委員 その効果を見極めていくということで、それ次第では今後どうしていくのか検討していくことだと思って受け止めました。対象が余りにも、二百から三百ということで、成長と分配の好循環、果たしてこれは何の役に立つのかなというのが感想でございます。

 ちょっと関連して、次の質問に移りたいと思いますが、岸田総理は成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現を目指しているものと理解しております。その観点から見ると、今回の税制、果たして成長と分配の好循環に資するものでしょうか。NISAの拡充については、先ほど来よりけんけんがくがくと議論があったところですが、我が党も賛同するところでございますが、岸田総理は総裁選で、先ほども言いましたが、一億円の壁の打破を訴えたにもかかわらず、今回の税制改正では約三十億円以上が対象と、余り踏み込んでおりません。相続税についても、既に比較的控除額が大きく、一般的な家庭には非課税となることが多く、結果として高所得者がより恩恵を受ける、そういう制度ではないでしょうか。

 また、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置や、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置なども、どのような所得の世帯が活用しているかのデータはないとのことですが、制度上、これは恐らくですが、資産を多く持っている方や所得の高い人がより恩恵を受ける制度となっております。

 また、スタートアップへの再投資に係る非課税措置についても、実際に本制度で恩恵を受ける者はスタートアップ投資家やベンチャー投資家など、大多数が一般的に富裕層と言われる方が想定されております。

 一つ一つの制度を見ると、方向性としても我が党とも一致する考えのケース、これも散見されますが、全体的に見たときに、これでは金持ちが優遇される制度ではないかと考えますが、この御所見をお伺いいたします。

井上副大臣 住吉先生にお答えいたします。

 教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置、それからNISA制度の抜本的拡充と恒久化、それと、先ほど言われておりましたいわゆる一億円の壁、これについて、実際、成長と分配の好循環を弱めるのではないかという御指摘がありましたので、その点についてお答えをしたいというふうに思います。

 教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、若年世代への資産移転により教育、結婚、子育てに要する若年世代の負担を軽減し、これらを後押しすることを目的にされ、導入をさせていただいたものであります。これらの措置については、令和五年改正において、格差の固定化防止の観点を踏まえ、節税的な利用につながらないように、契約終了時の使い残しに対する贈与税の税率を特例税率から一般税率に引き上げるなど、所要の見直しを行うようにしております。

 NISAについてですけれども、投資未経験の方、それから、今、投資機会に恵まれない方を含めて、中間層を中心とする幅広い層の方に持続的な資産形成を行っていただけるような仕組みとすることによって、家計の資産倍増を目指すものとさせていただいております。

 それと、極めて高い水準、いわゆる一億円の壁についての御質問がございました。先ほど大臣から答弁されたとおり、税負担の公平性の確保に向けて一定の対応が図られたものと認識しております。

 主税局長並びに大臣からも御答弁があられたとおり、令和五年度税制改正は、持続的な経済成長と税制の公平性、中立性の確保の両立を図り、成長と分配の好循環の実現に資するものであり、金持ち優遇であるという御指摘は当たらないというふうに考えております。

住吉委員 その一つ一つの制度については明確に反対するというわけではないんですが、今回の税制改正自体が全体的に金持ちの方が得をするような、そういうような改正になっているという指摘でございます。

 ちょっと時間もないので、最後の質問をさせていただきます。消費税減税について質問させていただきます。

 我が党は、税制改革において、法案も提出して、消費税の減税、これを訴えております。

 大臣は、二月九日の本会議で、消費税について、全世代型社会保障制度を支える重要な財源であり、これを減免することは考えておりませんとも答弁されております。

 一方で、経済学的に、消費税を減税すると、名目経済成長率は上昇し、税収も増える、いわゆる全世代型社会保障制度を支える重要な財源が増えるということにもなります。インボイスであったり、そういった中小零細企業への猶予、こういったことも考えられておりますが、そもそも、こういった猶予ではなくて、消費税の減税等で対応すべきと考えております。

 さらには、二月十七日のこの委員会で、前原委員の質問に対する答弁において、単一税率であるならインボイス制度は要らないということだと思いますとの見解も示しております。

 現行の制度に修正、修正を重ねて複雑な制度をつくっていくよりも、よりシンプルで簡素な税体系へ移行する、こういったことも必要だと思いますが、こうした観点から、消費税の減税のお考えについてお伺いいたします。

鈴木国務大臣 物価高騰対策としての消費減税をすべきではないかということでございますが、度々同じ答弁になってしまいますが、消費税につきましては、急速な高齢化に伴って社会保障給付費が大きく増加する中におきまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源として位置づけられている消費税につきましては、減税を行うことは考えていないところであります。

住吉委員 時間が来たので終わります。

塚田委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問の方に移らせていただきます。

 先週の金曜日からの流れで、まず、研究開発税制の見直しについて議論させていただきます。

 本税制は、厳しい国際競争に直面する企業の技術開発力を高めるために、企業を支援し、我が国の成長力、国際競争力の源泉となる研究開発環境を適正水準へと促し、更に加速させていくために必要であるという趣旨は理解できます。

 しかし、一方で、研究者、技術者に対する報酬は十分な水準にあるのでしょうか。ノーベル賞を受賞した中村修二氏が青色発光ダイオードを発明したときに企業側から得た報酬は二万円だったという話は有名です。海外の研究者仲間には、スレーブ中村と、陰であだ名をつけられたそうです。スレーブ、奴隷ですね。

 後に、その特許の対価をめぐる訴訟では、東京地裁は、その価値を六百四億と認定しています。六百四億の価値のある発明をしても、その報奨金は二万円、もちろんその後の昇給やボーナスで報酬は支払っているとは思いますが、日本の一般的な企業の報酬体系を考えると、その程度というのは計り知れます。

 例えば青色発光ダイオードレベルの大発明をした際に、主要先進国において、研究者や技術者、どの程度の報酬をどのような形でもらっているのでしょうか。昨今、日本の研究者、技術者が外国の企業などに高報酬で引き抜かれるというような話をよく報道などで耳にします。日本と海外では、企業のサラリーだったり、発明に対する対価の支払い、これはどれほど違うのでしょうか。お答えください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論で申し上げますと、従業者等が行った職務発明の対価は、その使用者等と結んでいる契約や勤務規則等に基づき支払われることから、その詳細を把握をすることは困難でございます。

 他方、職務発明の対価について訴訟に至った事例につきましては、一部把握をすることが可能でございます。

 特許庁として海外の事例について把握しているものとして、現在の為替レートで換算した額で申し上げますが、例えば、二〇〇九年の英国の裁判例では、企業に約八十億円の利益をもたらした心臓造影剤の特許につきまして、発明した従業者のうち一名に約一億六千万円、もう一名に約八千万円の補償額を認めたものがあると承知をしております。

 また、二〇一二年のドイツの裁判例では、抗カビ性能のあるマニキュア液の特許につきまして、発明した従業者に支払われていた約一億五千万円の対価の上乗せを裁判所が認めなかったという例も承知をしているところでございます。

 なお、議員御指摘の青色発光ダイオードの職務発明の対価につきましては、我が国で争われた裁判では、最終的に、二〇〇五年に約八億五千万円で和解がされたと承知をしております。

藤巻委員 裁判という話になるとデータはあると思うんですけれども、確かに、民間企業のサラリーなどの数字というのは、データなどが出ていないので何とも言えない部分はあるとは思うんですけれども、一般論として、恐らく、発明の対価だったり企業の報酬というのは、日本は海外に比べるとやはり低いのではないかということは想像できます。

 実際問題として、優秀な研究者、技術者は海外に行ってしまっているケースが多く見受けられます。中村氏も、アメリカ国籍を取得し、アメリカに住み、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授となっています。

 さらに、昨年、円安がかなり進んで、最近もまた円安が進んできて、今百三十四円ぐらいだとは思うんですけれども、そういう状況を鑑みると、ただでさえ、円よりもドルやユーロで報酬をもらった方がいいというインセンティブが、考えが働きやすい状況でございます。

 実際問題として、人材が、優秀な研究者、技術者が海外に流出してしまっている状況をどのように捉えて、今後はどのような対策を考えられているのでしょうか。

中谷副大臣 先生御下問の、海外に日本の研究者が流出しているという件でございますけれども、喫緊のデータ、二〇一六年のデータを見ますと、海外への研究者の流出については、他国に比して実は少ないというのが現状であります。ただ、海外から入ってくる研究者の数が圧倒的に少ないという現状もございまして、非常に流動性がない可能性があるというふうに思っております。また、優秀な方が出ていっている可能性もあるので。

 それに対して、研究者を含め、人材に対する処遇の課題というのはあるというふうには思っているところであります。一人当たりの実質賃金の伸びが非常に先進国に比べて低いということでありまして、報酬面での魅力が下がっているという可能性があるというふうに思っております。

 ただ、一方で、優秀な研究者の処遇の改善に取り組んでいる先駆的な企業も出てきております。例えば、専門性の高い研究者を役員並みの報酬で処遇する制度、また、博士号の取得のための費用を企業が全額補助する企業も出てきているというところであります。

 こうした中、研究人材の処遇を含めました環境改善を促すために、令和五年度税制改正では、研究開発費を増やした企業、これは報酬面でも処遇していくということでございますので、これを優遇する措置、さらには、高度研究人材の人件費を増加させた場合、新たな優遇措置を設ける等々をしたところであります。

 引き続き、関係省庁とも協力しながら、国内外問わず優秀な研究者が集まって、そして創造的なイノベーションを起こしていけるように、研究者の魅力的な環境整備、特に報酬面を後押ししていきたいというふうに考えているところであります。

藤巻委員 今のお話を聞いていると、人材の待遇、処遇、少しずつ改善していっているのかなという感想は持ちました。

 ただ、日本の場合、研究環境自体も充実とはほど遠いのではないかというような意見もよく聞きます。日本では、相応の実績があっても予算を確保するのが難しかったり、大学院を出たばかりの若手研究者は自分の生活を成り立たせることすら難しいというような話もよく聞きます。

 おととし九月、光触媒の発見者でもありノーベル賞候補にも挙がる藤島元東京理科大学長を中心とする研究グループが中国の上海理工大に移籍すると発表されました。それを受けて、元経済再生担当大臣の甘利明氏は自身のツイッターで、半分は国家の責任だと述べられました。

 半分がどの程度かは分からないんですけれども、研究者の研究環境の整備の責任は一定国にあって、人材流出、それから発表論文数が伸びていないということは今までの政策に一因があるというような、国の方にも責任があるというような認識をお持ちなのでしょうか。

中谷副大臣 国として、やはり産業競争力を高める観点から、優れた研究者にとって望ましい環境を整えることは重要というふうに考えております。先生と同じ認識であります。

 そのために、各企業における研究開発投資額の増額が大事だというふうに思っているところであります。さらには、高度研究人材が、一定の裁量を持って、自由な発想に基づく研究開発を行える環境整備も重要というふうに考えているところであります。

 先ほど申し上げた研究開発税制、また、博士人材など高度研究人材の人件費を増やした場合の税制優遇に加えまして、特に、これは、対象となる研究テーマを社内外で公募したりとか、あとは高度研究人材の提案に沿った内容になっていることを要件として、高度な研究を行う人材の研究の自由度を高める企業に対して優遇していくというようなたてつけにしていくとか、こういったことをやっていこうというふうに考えているところであります。

 また、政府といたしまして、その資金が入っていかなければいけませんので、量子やAI、そして半導体、バイオ、こういった戦略分野へ政府として投資を拡充していく、また、研究開発ベンチャーへの資金供給強化を行うということでありまして、これはディープテックで一千億とか、あとは創薬ベンチャーで三千億、こういったものをしっかりと供給して強化していきたい。

 企業における研究開発費の量的拡大を促すということで、優秀な研究者にとって魅力的な研究開発環境の整備につなげてまいりたいというふうに考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 様々な政策を引き続き打っていっていただきたいと思いますし、優秀な研究者が、先ほど申し上げているように、国内で研究に集中できる環境を整備することは本当に急務であり、科学立国として生き延びることができるか、その分水嶺にあると思います。税制も含めて、しかるべき対応を継続的にしていただければと思います。

 続いて、スタートアップへの投資に係る税制措置について伺います。

 本税制は、スタートアップが技術革新を通じた経済成長や社会的課題解決の担い手であり、その成長のための必要な投資を促すため、公的資金の活用を抜本的に強化するということであります。スタートアップは世界各国でもその経済成長を大きく支える一員となっておりますが、残念ながら、我が国の取組はまだまだ遅れているということもまた事実でございます。

 新規事業を起こす場合や起業間もない企業への支援策として、例えば経済産業省が進めるパッケージとしてスタートアップ支援策があります。これは、新規開業支援、オープンイノベーション促進税制、エンジェル税制など、補助金、税制により幅広く支援することでイノベーションを巻き起こすものであります。また、グローバルに活躍するスタートアップを創出するために、官民によるスタートアッププログラム、J―Startupも実施しているということを聞いております。

 こうした取組は、企業にとっては今すぐには稼ぐことのできない投資であり、一朝一夕で成果が出るものとは思っておりません。しかし、それでもなお、二〇二二年では我が国の開業率は五%前後であり、ユニコーンの数はやっと二桁と、米国やインド、欧州に比べて低い水準で推移しております。

 大きな可能性を持つベンチャー企業やユニコーン企業を生み出すためには、フロンティア精神や個性を育む教育、起業しやすくする制度、再チャレンジを是認する社会の意識等、様々な要素が不可欠でございます。そういった状況の中で、今回の税制措置に至った経緯、制度のすみ分け、そして今後の方向性、総合的にお伺いできればと思います。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、これまでも経済産業省では、スタートアップが各成長ステージで抱える、人材、資金、それから事業、それぞれの課題に対策を講じてきたところでございます。

 本日御指摘の、特に投資リスクの高い創業期のスタートアップに対しましては、個人による投資の呼び込み、これが非常に重要だろうということでございまして、これまでも、エンジェル税制という税制措置を講じまして、スタートアップへの個人からの投資を促進してきたところでございます。

 しかしながら、海外の状況と比較いたしますと、まだまだ個人によるスタートアップへの投資額というのは極めて低い水準にございまして、一層投資促進が必要であろうというふうに考えております。

 そういったことで、今回、令和五年度税制改正におきまして、エンジェル税制の拡充のお願いをさせていただいているところでございます。

 具体的には、プレシード、シード期と言われる、まさに事業化前段階のスタートアップに対しまして一層の投資を呼び込むということで、個人投資家が保有する株式の譲渡益を元手にスタートアップに再投資を行った場合には二十億円を上限といたしまして非課税とする、そして起業家自身による会社設立についても同様の措置を講ずるというような要望をさせていただいているところでございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 二〇二二年をスタートアップ創出元年とした政府のスタートアップ育成五か年計画によると、目標については、創業の数のみではなく、創業したスタートアップの成長である規模の拡大にも注目するということであります。

 創業すること自体がもちろん大変なことではあると思うんですけれども、現実問題として、創業よりも、それを継続すること、維持することの方が困難ではあります。政府から手厚い保護が続く間は企業を生き長らえさせることはできるかもしれませんが、その支援、ずっと続くわけではありません。せっかく創業しても、自己破産や倒産に至るケースが決して少なくないのが実情でございます。

 このような当面の支援がなくなっても生き延び、その先にある成長をつかみ取ることができるのか、安定した経営をつかみ取ることができるのか。これは将来にわたって波及効果のある仕組みもまた必要なのではないでしょうか。例えば、また、一度うまくいかなくても再起できる、再チャレンジできるような環境も必要なのではないでしょうか。お考えをお聞かせください。

松浦政府参考人 先生から御紹介ありました、日本にスタートアップを生み育てるエコシステムを創出するため、昨年十一月にスタートアップ育成五か年計画を策定したところでございます。

 本計画におきましては、スタートアップへの投資額を五年後に十兆円規模と十倍増にすることを目標に、人材、ネットワークの構築、資金供給の強化と出口戦略の多様化、オープンイノベーションの推進を三本柱とする取組を一体として強力に推進していくことでございます。

 お話のありました、創業後のスタートアップの成長に着目した支援といたしましては、例えば、税制措置といたしまして、ストックオプション税制の拡充、オープンイノベーションを促すための税制措置、また、財政措置として、海外アクセラレーターによる支援の拡充、ベンチャーキャピタルへの公的資本の投資拡大、公共調達におけるスタートアップの活用など、こういった支援策を盛り込んでいるところでございます。

 五か年計画を着実に実行いたしまして、スタートアップを生み育てる環境の整備を進めてまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 それに続いて、創業者は、会社の連帯保証人となって、私財を担保に会社資金を借り入れることが一般的ではないかと思います。もちろん、クラウドファンディング等、新たな資金調達方法はありますけれども、やはり銀行の資金による直接金融が主な資金調達の手段となるということが予想されます。

 政府の研究開発費に対する税額控除は評価できるとは思うんですけれども、それだけでは足りない部分、ここにもあるのかなというふうに思っておりまして、もし経営がうまくいかなかった場合、会社は倒産するんですけれども、会社財産はもちろん、私財も全てなくなってしまうということになってしまいます。そうすると、自己破産となって、次にビジネスを始めようとしても、資金もなく、自己破産者としてブラックリストに載り、しばらくの間、連帯保証することも、資金が借りられない状態になるということになります。

 会社創業者の個人資産と会社財産、ある程度分ける必要はあるのではないでしょうか。スタートアップの後押しをしているならば、そもそもスタートアップを始める環境づくり、これが大切です。失敗したら全財産なくしてしまうのであれば、なかなかスタートアップで起業しようと思う人は少なくなってしまうのではないでしょうか。そこの部分について御見解の方、よろしくお願いいたします。

鈴木国務大臣 個人保証についてでありますが、個人保証につきましては、財務基盤の弱い中小事業者等の資金調達を円滑化する面もありますけれども、一方で、スタートアップの創業をちゅうちょさせたり、早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、課題が多く指摘をされているところであります。このため、金融機関においては、個人保証に依存しない融資慣行を確立していくことが重要であると考えています。

 そうした金融機関の取組を金融庁として後押しするため、全銀協等が作成した、経営者保証が不要となる要件等を定める経営者保証に関するガイドラインの活用を促したり、関係省庁と連携して、昨年十二月に経営者保証改革プログラムを取りまとめました。

 その中には、スタートアップ向けに、経営者保証を徴求しない新しい創業信用保証制度の創設等が盛り込まれているところです。また、スタートアップ等が資金調達しやすくなる環境を整備するため、金融機関が経営者保証等によらず事業価値や将来性を評価して融資するための新しい制度として、事業成長担保権の創設に向けた検討も進めているところであります。

 金融庁といたしましては、こうした取組をしっかりと進めることによって、金融機関による個人保証に依存しない融資慣行を確立させていきたい、そのように思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 本当にそこの部分はしっかりと進めていっていただければと思っております。私も銀行員をやっておりましたので、連帯保証の重さというのは重々に承知しているんですけれども、やはり制度というのは少なからず資金の流動化というのを妨げていってしまっている側面もあるとは重々に思っておりますので、引き続き進めていっていただければと思っております。

 終身雇用それから年功序列が浸透している我が国では、起業し、挑戦しにくいという現状もまたあるとは思います。新卒で就職しなければ条件が不利になってしまう、中途採用だと選択肢が狭まってしまう、そんな側面があると思います。起業してうまくいけばいいんですけれども、うまくいかなければ、新しい分野にチャレンジする、あるいはほかの企業に改めて就職する、そういった将来はなかなか描けないというのが今の日本の現状ではあると思っております。

 現在の日本の主流であるプロパー社員重視、あるいは終身雇用制、どのようにお考えでしょうか。

畦元大臣政務官 お答えします。

 年功序列や終身雇用を含む日本的な雇用慣行は、長期雇用の前提に長期的な視点に立った人材教育、組織の一体感の醸成、企業特殊的な能力の効率的な形成、蓄積等の観点から、一定の合理性があるものと考えております。他方、年齢が上がるにつれて転職、再就職自体のハードルが高くなりやすい傾向があると考えております。

 厚生労働省としては、こうした日本的な雇用慣行の優れた面も大切にしながら、時代の変化を踏まえた見直しを、労使と納得のいく対話を通じながら進めていくことが重要と認識はしております。

藤巻委員 今のお話にもあったんですけれども、やはり私個人としては、雇用の流動化、柔軟化を進めていくべきだと思っております。多様な働き方ができる社会が望ましいとは考えております。

 例えば、今の会社よりも自分の求める条件、スタイルに合っている会社に転職する、やりたい分野の仕事をするため、業界をまたいで仕事を替える、給料は六割でいいので週休四日がいい、あるいは、逆に、もっと高い報酬を得るためにがんがん働きたいという人もいると思います。雇用の流動化、柔軟化が進めば、人材の最適な配置が進み、経済にもその効果は大きいと考えます。いわゆるブラック企業は見向きもされなくなり、自然と淘汰されると思いますし、子育てとの両立もしやすくなります。転職のリスクも減り、再チャレンジがしやすくなります。当然、スタートアップに挑戦する人も増えるはずです。

 多様な分野で多様な働き方ができるようにするために、日本経済を活性化するためにも、個人の価値観やスタイルに合った働き方をするためにも、雇用の流動化、柔軟化には大きな意義があると考えておりますが、どのようにお考えでしょうか。また、それを進めるための方策、税制など、どうお考えになっていられるでしょうか。

畦元大臣政務官 お答えいたします。

 意欲ある個人が能力を最大限生かすことができるよう、円滑な労働移動を推進することは、構造的な賃上げにつながる好循環を生み出す鍵となるものであり、希望する労働者がスキルアップを図るとともに、主体的に、安心して労働移動ができるよう支援していくことが重要と考えております。

 このため、厚生労働省としては、令和五年度予算案において、より高い賃金で新たに人を雇い入れる企業の取組支援、新規事業に従事する労働者へのリスキリングへの企業を通じた支援、個人向けの学び直し支援策として、労働者等が主体的に教育訓練を修了した場合の費用の一部を支給する教育訓練給付の対象講座の拡充等を盛り込むとともに、引き続き、職業情報提供サイト、日本版O―NETですが、の整備など、就職や転職に資する情報提供の充実等に取り組むことにより、円滑な労働移動に向けた支援を進めてまいりたいと思っております。

藤巻委員 本当に、雇用の流動化、柔軟化、これは、今、日本が抱える様々な問題を解決する、その方法となり得るものだというふうに考えておりますので、引き続き、是非積極的に進めていっていただければと思っております。

 時間が少なくなってきましたが、最後の質問に移らせていただくんですけれども、ジュニアNISAのことに関して聞かせていただきたいんですけれども、今度廃止されるということで、先ほど、廃止される理由等々については答弁ありましたので、そこの問題は一つ飛ばさせていただきまして。

 ジュニアNISAについては、海外においては、例えば、クリスマスプレゼントに企業の株式を子供に買ってあげて、子供の成長と企業の成長を共に喜び、子供は社会参加の学習の機会と捉えている、そういうこともあるそうです。投資の学習を家庭で実際にやってみる、その投資枠として活用できるのではないでしょうか。

 もちろん、投資は自己責任ではあるんですけれども、このように子供たちの社会参加、金融の勉強を促して、小さな額でもいいので実際にやってみる、そういう金融教育的側面もあっていいのかなというふうには思うんですけれども、ジュニアNISAにおける金融教育、その側面に関してどのようにお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 ジュニアNISAにつきましては、先生御指摘のとおり、子供たちといいますか、若年層への投資の裾野の拡大につながることが期待されていた面もありました。しかし、先ほど政府参考人からも答弁したとおり、利用実績が乏しいということ等から、令和五年末に終了する旨が決定されたものであります。

 一方におきまして、個人が自らのニーズやライフプランに合った適切な金融商品・サービスを選択し、安定的な資産形成を実現するためには、若年層を含めた国民の金融リテラシーの向上に向けた取組が重要である、私もそのように考えます。

 そのため、金融庁それから財務局では、金融経済教育に関して、職員による出張授業や教員向け研修会を実施しているほか、文部科学省とも連携しながら、学習指導要領に対応した高校向け指導教材を作成、公表し、各都道府県の教育委員会を通じて周知するなど、様々な取組を行っているところでございます。

 ジュニアNISAは廃止ということではありますけれども、引き続き、安定的な資産形成の促進に向けた、若年層を含めた幅広い層への効果的な情報発信、これを図るとともに、金融経済教育の推進を図っていきたいと思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。本当に、金融教育、非常に大事だと思っております。

 また、例えば、祖父母から生前贈与を受けて、その資金を貯金ではなく株式を購入してジュニアNISAに入れる選択肢もあると思いますし、シニア層の貯蓄を投資に向けて生前贈与を促すならば、受皿としてジュニアNISAというのはありだと思います。シニアの方々の預金を早い段階で若年層に贈与することによって少しでも多く消費に回す、市場に資金を供給するためにも、一旦資金を受け入れる受入先としても意味はあるのではないかと思っております。

 例えば、出入金制限を緩和したり、何か形を変えた資金の枠組みをつくるということは視野に入れて、その必要性というのもあるとは思うんですけれども、最後にそこについて改めて御見解をいただければと思っております。

鈴木国務大臣 親や祖父母等から若年層への世代間の資産移転を促すという、そのことの脈絡におきまして、世代間の資産移転を促していくこと、これは重要な課題であると認識をしております。

 そして、ジュニアNISAは廃止されますけれども、今般の資産課税の改正におきましても、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進する観点から、生前贈与でも相続でも、ニーズに即した資産移転が行われるよう、資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築を行っているところでございます。

藤巻委員 私としては、子育て中の両親の選択肢を広げることのできるような資金的な枠組み、形を変えてでも何かしら必要だと思いますので、前向きな検討をお願いいたします。

 時間が参りましたので、私の質疑を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

塚田委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 皆様、お疲れさまでございます。日本維新の会、岬麻紀でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。

 本日は、金融経済教育推進機構について、そして、租税特別措置について、さらに、インボイス制度について質問をさせていただきます。

 まずは、令和六年に新設される金融経済教育推進機構について質問をさせていただきます。

 金融経済教育については、先週金曜日の委員会において、どのように貯蓄から投資を促進していくのかという質問をしたところ、金融経済教育の推進など様々な施策を総動員して資産所得倍増につなげていきたいと鈴木大臣からの御答弁もいただきました。

 新設される金融経済教育推進機構については、資産所得倍増プランで、NISAの抜本的な拡充や恒久化と併せて、中立的な金融経済教育の機会の提供に向けた常設組織、金融経済教育推進機構、これを令和六年中に設置するとされています。

 この機構は、英国にある政府外の公共機関と言われるMaPSを参考にする、この英国機関は、二〇二〇年一月、ファイナンシャルウェルビーイングのための英国国家戦略二〇二〇―二〇三〇を策定し、金融教育の司令塔を担う、日本でも金融庁が事務局を担い、協議会などを通じて国家戦略を策定するとされています。

 まず、この新しい機構を法定化するその趣旨についてお聞かせください。

藤丸副大臣 お答え申し上げます。

 個人がライフプランに合った適切な金融商品を選択し、安定的な資産形成を実現するためには、国民の金融リテラシー向上に向けた取組が重要であります。

 金融経済教育推進機構(仮称)は、官民一体となって金融経済教育を広範かつ効率的に実施するために設立するものです。

 これまで金融経済教育は、政府や金融機関、団体が個別に取り組んできましたが、実際に教育を受けた認識のある者は少数で、広く国民に届いていない、政府や関係団体の取組が十分に調整されていない、実施主体が民間の団体では受け手に敬遠されるため、中立的な国が積極的に関与する必要がある、そういった指摘があります。

 新たな機構の活動を通じて、国民一人一人の金融リテラシー向上を図り、よりよい暮らしを送っていただけるようにしていきたいと考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 まずは、この新しい機構の法定化をする趣旨を伺いました。

 そこで、既存の組織として、金融経済学習の支援等を行う金融広報中央委員会が存在をしております。ですが、資産所得倍増プランにおいて、同委員会の機能を新機構に移管、承継するということでしょうか。そうすると、法律で設置する新機構が行うことで、どのような変化があり、どのような改善が行われるのか、法定化する意義や必要性を改めてお聞きします。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど副大臣の方からも答弁があったとおり、金融経済教育推進機構は、官民一体となって金融経済教育を広範かつ効率的に実施するということを目的としてございます。

 先生おっしゃるとおり、現在、日銀におきましても、あるいは業界団体等におきましても、金融教育はそれぞれ各般の取組がなされているところでございますけれども、金融教育を届けるべき相手は国民全体と言っても過言ではございませんで、こうした方々の隅々までに金融教育を幅広く提供していくためには、官民が一体となって効率的に金融教育を展開していく必要があろうというふうに考えてございます。

 こうした面では、官民の力を結集して金融教育を推進する機構の意義というのは極めて大きいものがあるというふうに考えてございます。

岬委員 ありがとうございます。

 法律によって位置づけるということは、業務としてできることがかなり付与されてくるということにもつながると思われます。同組織の設置がいわゆる官の肥大化であるとか、また、度々問題となっております天下り先につながるという批判も出るかもしれません。国民にとってどのような便益があるんでしょうか。分かりやすく教えてください。

鈴木国務大臣 金融経済教育推進機構につきましては、その必要性等について、先ほど来、御答弁をさせていただいているところでございますが、決して、これは必要なものであって、先生の御指摘のとおり、何か官の肥大化でありますとか天下りの受皿になるというようなことであってはならないし、そういうつもりでつくるものではないわけであります。

 したがいまして、この機能というものを適切に発揮させるために、金融や経済などに関する知識経験がある人材、これを適材適所に配置する必要がある。国民からそのような誤解を得ないようにしなければいけないと思っております。

 そうした観点から、機構の役員人事については、天下り先との批判を受けることがないよう、適切に対応していきたいと考えております。

岬委員 大臣、ありがとうございます。是非ともそのようにお進めいただけたらと考えております。

 さて、資産所得倍増プランにおきましては、消費者の金融知識の不足を補完をして、他方では、消費者が信頼ができる中立的なアドバイザーが求められます。資産形成について相談が中立的にできるもの、気軽に行える仕組みというのは、消費者に対して中立的で信頼できるアドバイザー制度の整備をするというふうにうたわれておりますが、この認定アドバイザーについて伺います。

 具体的な商品名を提示してアドバイスするためには、金融商品取引法で規定されている投資助言業の登録がまずは必要であるということですね。さらに、登録するということは、何と五百万円の営業保証金、供託金の支払いが必要だとお聞きしております。そうすると、実際に小規模事業者には非常に高額であり、ハードルが高いのではないでしょうか。

 この点、金融庁は、有識者会議において、助言対象をつみたてNISAやiDeCoに絞りまして、投資助言業の登録要件の緩和を検討することも提言をされています。

 しかしながら、金融機関からのキックバックに依存しない、そして非富裕層向けのアドバイスが、果たしてビジネスとして成立するでしょうか。そこがまずは疑問です。

 さらに、肝腎な、アドバイザーというなり手が本当に存在するのかという課題も浮かんできます。なぜならば、実態として、大半のファイナンシャルプランナーと言われる保険募集人や証券外務員などを兼ねているため、中立的な立場にある人材を見つけること自体が困難なのではないでしょうか。

 金融機関と全くつながりを持たないアドバイザーが中間層のサポートに専念できる環境を整備するという制度の理念に沿った人材の確実な確保というのはできるのでしょうか、集められるのでしょうかという指摘もありますが、その辺りはどのようにお考えでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃるとおり、個人が、あるいは家計が資産形成をしっかり行っていくためには、良質なアドバイスを受けられるような環境を整備していくことは極めて重要だというふうに考えてございます。

 こうした中で、中立的なアドバイザーというものを認定して、個人がより気軽にそのアドバイスを受けられるような環境を整備していくことの必要性というものが、いろいろと指摘してきたわけです。

 先生おっしゃるとおり、そういったビジネスが成り立つために十分なフィーが得られるのか、あるいは、そういうなり手が十分いるのかというようなことはあろうかと思います。

 ただ、私どもといたしましては、こうしたアドバイザーによるアドバイスを普及させるという観点から、具体的には、今後、機構において、先ほど来御議論になっています金融経済教育推進機構というものにおきまして検討すべきことだというふうに認識してございますけれども、例えば、こうしたアドバイザーに対して、機構が行う企業向けセミナー等の教育事業の担い手として参加することを積極的に促していく、あるいは、個人が認定アドバイザーの相談を利用しやすくなるための支援についていろいろと検討し、また実施していくといったようなことは考えてございます。

 いずれにせよ、金融庁といたしましても、顧客あるいは家計が良質なアドバイスが気軽に受けられるような環境を整備できるよう、先生の御指摘も踏まえまして、今後検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

岬委員 ありがとうございます。

 気軽にというような相談環境を整える、セミナーなどを運営したりですとか、そういう機会をつくっていくということだと思うんですけれども、やはり中立的であるかということが非常に大事であり、それが実質的に保たれるのかというところは非常に疑問が残っておりますので、よろしくお願いいたします。

 また、中立性を担保するために金融機関からの報酬を得ないとすると、投資未経験者を含む顧客からの報酬だけであれば、やはりビジネスとしては到底成立はしないのではないか、厳しい状況ではないかと推察します。

 報道によりますと、当該報酬は無償又は少額とされています。その代わりに、アドバイザーに対して補助金を、資金の支援をしていく、援助をしていくということもお聞きしております。そうなると、税金を投じていくということになるわけですよね。そうする以上は、やはり、成果が出なければ、この機構をつくっていく、プランを進めていくこと自体が本末転倒になってしまいますので、是非、ここを改めて御認識をいただきたく存じます。

 新機構は、金融リテラシー向上のための教材ですとか統計作成といった仕事で満足することなく、金融機関や企業も巻き込み、国民の金融力の底上げにきちんとつながる支援をしていただけるような仕組みづくりをお願いいたします。

 それでは、次に、租税特別措置について質問を移らせていただきます。

 このテーマにつきましては、先日、二月十日に当委員会でも質問をいたしました。その際に、租税特別措置の必要性や政策の効果をどのように検証するかを伺いました。井上副大臣からは、各省庁の税制改正や既存の制度の延長を要望する場合に、その制度の効果等について、まずは政策を所管する各省庁において、必要性や政策効果について適切に評価すると御答弁をいただきました。

 そこで質問です。各省庁の税制改正や既存制度の延長を要望する場合とありますが、全部で三百六十六項目あるとお答えいただいておりますけれども、租税特別措置のうち、期限があるものが幾つで、また、期限のないもの、つまり恒久的な措置は幾つあるのでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 租税特別措置法に基づく特例措置につきまして、カウントの仕方について一定の前提を置いて整理をいたしますと、適用期限のないものが二百四十一項目、適用期限のあるものが百二十五項目、合計三百六十六項目になっております。

岬委員 ありがとうございます。

 では、次に、期限のある措置については、井上副大臣が御答弁いただいたスキームに乗ってくると考えることができます。しかし、恒久措置の租税特別措置ですと、いつ、どのように効果検証が行われているのか、効果をどのように測っていくのかというのは、至って見えてはこないのですが、この辺りはいかがですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 期限のない租税特別措置の中には、税負担の軽減を図るものとして今措置されている通常の期限つきの租特と同様の性格を持っているものもございますし、他方で、例えば、利子所得の源泉分離課税のように、長い期間にわたって課税方式そのものの特例を定めている、そういった安定的な運用を図る必要があるようなものも入ってございます。また、手続の特例というようなことで、例えば、特別償却について重複適用を禁ずるといったような規定のような、減収額が観念されにくい、そういった性質のものも混在しているということについては御留意いただきたいと思います。

 これらの期限のない租特につきましても、減収効果のある法人税関係の租税特別措置につきましては、租税特別措置の透明化に関する法律に基づきまして、適用件数、適用金額、適用の偏りなどを調査の上、報告書を作成し、効果の把握、検証を行っているところでございます。

岬委員 ありがとうございます。

 今御答弁をいただきました。租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律の第四条第一項のお話だったと思います。ここには、財務大臣は、法人税関係特別措置について、適用額明細書に記載された事項を集計することにより、法人税関係特別措置ごとの適用法人数、適用額の総額そのほかの適用を調査するものとするとございます。これらの規定から、適用実態調査を行っていることは認識ができました。

 そこで、この適用実態調査の対象が、現状、法人税のみとなっているのはなぜでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 この適用実態調査の実施に当たりましては、納税者の方々に対しまして適用額明細書という書類の作成及び提出ということで、一定の事務負担をお願いすることになります。

 法人税につきましては、基本的に、全ての法人が申告を税務署に対して行うことになっておりますので、納税申告の際にこの明細書の提出を求めるということが、実務的にも合理的であり、また、対応もある程度可能だという事情がございます。

 他方、所得税などの納税者の場合について見ますと、所得税の納税者の大半は、確定申告を行っていない、年末調整によって課税関係が終了している給与所得者の場合が多うございます。かつ、法人と比べても、個人の場合は、こういった申告に伴う事務負担能力に限りがあるということもございますので、こういった個人に対して新たな事務負担を課すことには慎重であるべきという考えもあったことから、この租特透明化法に基づく適用額明細書の提出については、法人税関係の減収を伴う租税特別措置に限定してお願いすることとされたものと承知をしております。

岬委員 お答えいただき、ありがとうございます。

 そこで、租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書というものがありまして、その中には、五ページに、これは上位の十社に限ってここに報告がされております。この十社の適用額及び割合を表示している理由、なぜ十社なのか、何か理由はあるんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 この租特透明化法におきましては、租税特別措置の適用状況の透明化を図るとともに、適切な見直しを推進し、もって公平で透明性の高い税制の確立に寄与するということを目的といたしまして、先ほど申し上げたような報告書を作成して、財務大臣から国会に御報告をするということになっているわけでございます。

 この租税特別措置の見直しを行うに当たりましては、これがどのように利用されて、どのような効果を生じているかについて、ある程度明らかになるような措置を講ずることが必要でございます。その際、この個々の措置の適用上位社の状況が公表されることによりまして、適用が想定外に特定の社でありますとか特定の業界に偏っていないかといったようなことを明らかにする、また、公平の原則に照らしまして、国民の納得できる必要最小限の特例措置となっているか、こういったことを判断していく材料といたしまして、上位十社について公表しているということでございます。

 この上位十社という数字についてですけれども、これは租特透明化法の制定当時におきまして、集計に係る事務作業量ですとか、あるいは、業種等の偏りをお示しするためにどの程度の社数にすれば必要十分であるかといったような観点を勘案して検討され、現状の十社という数字になったものと承知をいたしております。

岬委員 ありがとうございます。

 このように適用実態調査がきちんと行われているとするならば、是非ともこれをしっかりと御活用いただいて、不要なものはしっかりとやめていくという御判断もこれから速やかに行い、精査をしていただければと考えます。

 次に、この義務づけの対象となっていない税目について調査をしていないというのはなぜでしょうか。また、義務づけの対象となっていない税目は調査をする必要はないという認識なんでしょうか。この辺りはいかがですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 法人税だけが対象になった理由につきましては、先ほど御説明したとおりでございまして、所得税等につきましてこういったことを求めた場合、ふだんは確定申告を行っていない納税者の方についても新たな事務負担を課す可能性があるということが背景であったと承知をいたしております。

 他方、租税特別措置につきましては、租特透明化法に基づく報告のほかに、所管省庁におきまして政策評価等を行うに当たって、アンケート調査等の手法によって利用実態の調査を行っており、これに基づいて議論が行われてございます。例えば、先ほどのジュニアNISAなどについても、適用件数が僅少だということもあり、廃止に至った経緯もあるわけでございます。

 今後も、租特透明化法の報告書や各省庁の調査等も踏まえまして、租税特別措置の不断の見直しに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 それでは、次に、三つ目のテーマです。インボイス制度について御質問させていただきます。

 本年十月に導入を控えているこのインボイス制度ですが、私ども日本維新の会では、インボイス制度そのものに反対をしているというわけではありません。しかし、余りにも反発が多く、皆さんが困惑をしているという声が続々と届いておりますので、これはいかがなものかと言わざるを得ない今状況でございます。

 免税事業者から、取引が排除されるであるとか、納税負担や事務コストの負担が重いという声、様々な委員からも、様々な党からも声が上がっています。

 今回の税制改正では、免税事業者が課税事業者への転化をした場合の負担軽減措置であるとか、少額取引の場合にインボイスを不要とする特例等が設けられていますね。このインボイス制度に関して、これまで、消費税引上げ延期に伴う導入の延期であるとか、免税事業者からの仕入れ税額の控除の特例に関する経過措置期間を後ろ倒しにしていただくであるとか、さらには今回の経過措置による特例の創設、またインボイス発行事業者登録の期限の後ろ倒しなど、様々な展開を、流動的というか、よく言えば柔軟にという言い方もあるかもしれませんけれども。

 そうなると、私の印象としては、制度自体が安定していないなという気持ちになるわけなんです。事業者の多くの方がここに不安を覚えているのではないか、懸念を抱いているのではないか。それはある種、当然でもあると私は考えます。

 そこで質問ですが、この実態調査によりますと、インボイス制度が複雑でよく分からない、こういった御意見がアンケート調査で回答の約五割を占めております。今回の改正より、複数の経過措置があることによってどんどん複雑化しているような感じです。このインボイス制度、このままでいいのかなという大変不安を持っておりますが、政府としてはどのようなお考えでしょうか。

井上副大臣 岬先生の御質問にお答えしたいというふうに思います。

 インボイス制度への移行によりまして、免税事業者のままでいた場合に取引から排除されるのではないかという御不安や、課税事業者になったとしても価格転嫁ができない又は新たな事務負担が生じるのではないかということ、それから、制度自体が今御指摘ありましたように複雑で分からないということ等が中小・小規模事業者の方々の御心配だろうというふうに思っておりまして、その点について説明をさせていただければというふうに思います。

 まず、免税事業者のままでいた場合の御心配についてでございますが、免税事業者であっても直ちに取引から排除されることがないよう、制度移行後も六年間は免税事業者からの仕入れであっても一定の割合を控除できるようにするなど、十分な経過措置を設けているところでございます。こうした取組をまた周知していきたいと思っています。

 次に、課税事業者となる場合の御心配については、免税事業者を始めとした事業者の取引について、独禁法、下請法等の取扱いをQアンドAにより明確化し、各事業者団体への法令遵守要請を行うなど取引環境の整備に取り組むとともに、引き続き、独禁法等に基づく書面調査の実施や下請Gメン、相談窓口での対応等の取組を実施し、適切に対処していきたいと思っています。

 また、令和四年度補正予算におきまして、持続化補助金について、インボイス発行事業者に転換した場合の補助金額五十万円一律引上げをしております。それと、IT導入補助金について、インボイス対応のため、より安価な会計ソフトを購入できるように補助対象を拡大など、様々な支援対策の充実を図ってきたところでございます。

 さらに、令和五年度税制改正におきましては、免税事業者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を売上税額の二割に軽減する三年間の負担軽減措置、一定規模以下の事業者の行う一万円未満の取引について、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入れ税額控除を可能とする六年間の事務負担軽減措置、それから、インボイス発行事業者の登録申請の期限について柔軟な対応などを講じることとしております。

 最後に、制度が複雑でよく分からないという御心配については、中小企業団体相談体制の整備のため、予算措置などで対応しております。

 インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであります。引き続き、制度の円滑な実施に向けて、関係省庁と連携しながら、制度の内容やこれからの支援策をきめ細かく事業者の方々に周知してまいりたいというふうに思っています。

 以上です。

岬委員 ありがとうございます。

 いろいろと支援策があるということで、柔軟に対応している、きめ細かく対応しているということをおっしゃっているんだと思いますが、何度もいろいろな議員から、委員からも聞かれていて、同じように懸命にお答えいただいているのは分かるんですが、この様々な支援というのがより一層分かりづらい。どんどんどんどん後に倒されていくことによって、こんな六年も先のことを言われても不透明過ぎて、やはり、該当者になる方、当事者にとってはただただ不安なだけ、訳の分からないだけという結果になりかねないのではないかと思われます。

 本日、午前中に、党は違いますけれども、藤岡委員が、心を痛めていないかというお話がありました。やはり、国民の一人一人が、常に心配で不安でどうなっていくんだろう、これ自体がよろしくない。象徴の言葉だったなと、私は、今日、大変印象深く残りました。

 鈴木大臣が何度も御答弁もされています。事業者の方にとって分かりやすく簡素な仕組みとすべきです。大臣は、今のインボイス制度、分かりやすく簡素な仕組みになっていないのが現実なんですけれども、財務省、インボイス制度について何度も御答弁されていますが、周知徹底して、丁寧に説明して、御理解いただくだけでは不足しています。やはり、理解して、納得がいただけて、さらに、やっていただくために受け入れられるという体制にしないとこれは一向に進まないのではないかと感じておりますが、これらを含めまして大臣の御見解、最後にお聞かせください。

鈴木国務大臣 ただいま井上副大臣から答弁をしたところでありますが、インボイスの円滑な実施に向けまして、負担軽減措置、あるいは各種の支援策、これを令和五年度の税制改正や令和四年度補正予算において実施をしているところであります。

 こうした措置がかえって複雑さを増しているのではないか、こういう御指摘でありますので、そういう面は確かにあろうかとも思います。したがって、これから重要なのは、十分にこうした措置を御説明して、先生がおっしゃるとおり、理解をしていただき、納得をしていただき、受け入れていただく、そういう努力をこれからするということが大切であるんだ、そういうふうに思っております。

 具体的には、今回の税制改正における負担軽減措置や補助金などの支援措置を分かりやすくまとめたリーフレットの作成、税務署の窓口や確定申告会場での配布、全国ネットでのテレビCMや全国紙への広告掲載、インターネットを活用した広報、インボイスコールセンターの体制の拡充といった取組を行ってまいりましたが、さらに、こうした周知、広報の推進に際しまして、新たに内閣官房において関係省庁会議を立ち上げまして、重点的に支援すべき業種や業界を見定めて必要なサポートを行うこととしております。

 今後も、制度の円滑な移行に向け、関係省庁と連携しながら、制度や支援策について丁寧に周知徹底を図ってまいりますが、先ほど申し上げましたが、先生おっしゃるとおり、納得して、受け入れていただけるように、これからもしっかりと対応していきたいと思います。

岬委員 繰り返し御答弁いただき、ありがとうございます。

 とにかく、力業でやってしまったなんということにならないよう、本当に国民一人一人が、弱い者いじめだ、そんな印象になってしまわないように、力業だけではやれないということを御認識いただいて、何とかよろしくお願いいたします。

 今日はありがとうございました。失礼いたします。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 私も、引き続き、インボイス制度について質問をさせていただきたいと思います。

 先日、二月十七日の当委員会で、鈴木大臣は私の質問に対して、単一税率であればインボイス制度は要らないということだと思いますと答弁をされましたけれども、これをもう一度再確認させていただきたいと思います。

 このとおりでよろしいですか。

鈴木国務大臣 従来から、政府といたしましては、インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものである、こう申し上げてまいりました。御指摘の私の答弁は、こうした政府の立場を踏まえたものであります。政府としては、単一税制の下でのインボイス制度の必要性を主張してきたものではありません。

前原委員 これを、私もその後、週末に地元に帰って、ミニ集会等も行いまして、この御答弁を紹介したら、それだったら単一税率にしてくれという意見が圧倒的に多いですね。八%、一〇%の複数税率の方がむしろややこしくて、それで、もし一〇%になってインボイスがなくなるんだったらその方がいい、こういう意見がかなり多くあったことはお伝えをしたいと思いますし、我々は、複数税率、例えば八%にして、本当に負担軽減になるのかということをずっと言ってまいりました。

 もう一度原点に戻るような話なんですけれども、この複数税率というのは本当に低所得者層にプラスになりますか。

鈴木国務大臣 八%から一〇%に引き上げるときに様々な議論があったと思います。そうした中で複数税率の導入というのは決まったわけでありますが、その目的は、累進性を緩和をするということと、やはり一番の大きいことは、毎日の買物等におけます痛税感、そうしたものを緩和するということ、その二つが目的であって導入が決まった、そのように私は理解しております。

前原委員 累進性、緩和されますか。

鈴木国務大臣 先ほど、逆進性と申し上げるところを累進性と申し上げました。

前原委員 逆進性ですね。

 それで、逆進性も緩和されますか。つまりは、結局、税率を下げているだけなんですよね。そして、低所得者ほど、当然ながら、言ってみれば、そういった食料品などの比率は高くなるし、また、お金持ちほど、いいお肉を買ったりあるいはいいブランド米を買ったりするわけでありますので、そうなると、お金持ちほど、より、言ってみれば、税金が相対的に安くなる、こういう制度なんですね。

 ですから、結局、私は、このインボイスを入れるに当たって、これから三年とか六年とかいう経過措置を入れていく中で、そして、これから本当に八パー、一〇パーでいくんですか。日本の財政を考えたときに、将来的に私は税率見直しということは現実の政治的な課題としてあり得ると思います。そのときに、単一税率になったときに、じゃ、このインボイスをなくしますということをおっしゃるんですか。今の御答弁だったら、先ほどの御答弁だったら、税率を見直して単一税率にするということになったときにはインボイス制度を廃止するということでよろしいですね。

鈴木国務大臣 消費税率につきましては、岸田総理も度々答えておられますが、当面、消費税率に触るつもりはない、こういうことを言っております。ですから、先生の今の御質問の手前のところで止まっているわけでありますので、万が一消費税率をいじるというようなことになれば、それはそのときの議論になるんだと思います。

前原委員 いや、別に岸田内閣のことを聞いているわけじゃないんです。

 この日本の財政の状況を考えたときに、何の税で今の財政赤字も含めて財源を確保するかという議論はいろいろあると思いますよ。あると思うけれども、これを単一税率にしていこうと、私は単一税率にすべきだと思いますよ、そして給付つき税額控除なんかを入れた方がより逆進性は緩和されると私は思っていますので、そういう意味では、単一税率で税率を見直すということはあり得ると思うんですけれども、その場合にですね。別に鈴木大臣のときの話をしているんじゃないんです。

 将来的に、今の御答弁というのは、これはずっと、言ってみれば、議事録に残って、日本の政治、政策の決定を縛るわけですね。議事録というのは、国会での、国権の最高機関での議論ですから。別に鈴木大臣のときだけの議論じゃないんですから。ずっと、過去の議論が政府の見解としてまかり通るわけですから。私はそれを聞いているわけです。岸田政権とか鈴木大臣のことではなくて、将来的に単一税率になったときにインボイスを廃止するんですかということを聞いているんです。

鈴木国務大臣 それは、前原先生、極めて仮定の話だ、こういうふうに思うんですよ、私には。これから先、消費税率がどういうふうに改正されるのか、これは今の段階では全く分からないわけでございまして、この分からない段階で、仮定のことを申し上げて、その際にはこうなるということは、これは明確に申し上げることが難しいと思います。

前原委員 それは本当に逃げの答弁ですよ。自分の答弁したことをちゃんと私は証明してくださいと言っているわけですよ。仮定の話じゃなくて、先ほどは、単一税率だったらインボイスは要らないとおっしゃったんですから。

 だから、税率を仮に見直す中で、まあ、仮定の議論になりますけれどもね、それは。単一税率にしたときに、それは、我々は今、このコロナ禍において五%に引き下げようということを言っているわけですから、五%に引下げというときには単一税率ですよ。そのときには、例えば下げることも上げることもあるでしょう、単一税率になればインボイスは要らないということを答弁されたんでしょう。だったら、税率が変わって単一税率になったらインボイスは要らないということですね。

鈴木国務大臣 仮定の話でありますけれども、五%に下がったからといって単一税率になるとは限らないと思うんですね。そのときの議論だと思います。

 私が言えますのは、政府として、従来、インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものである、こういうふうに申し上げてきたわけでありまして、政府として、単一税率の下でのインボイス制度の必要性を主張してきたものではないということであります。

前原委員 今の御答弁は、単一税率になった場合はインボイスは要らないということですよね、そのことをおっしゃったわけですね。単一税率の前提でインボイスというものを導入しているわけじゃないということをおっしゃったんでしょう。ということは、単一税率だったらインボイスは要らないということですね。

鈴木国務大臣 先ほど来申し上げていることでございますが、それは、つまりは、単一税率ならインボイス制度は不要ということに解釈していただいていいんだと思います。

前原委員 これから、私、大きな政治の議論の中で、やはり消費税はどうあるかというところの中で、このインボイス制度が導入困難になったときに、単一税率だったら要らないのかということの不満というのは出てくると思いますよ。そういう意味においては、今の御答弁は、しっかり政府の答弁として、単一税率だったらインボイスは要らないんだということは、それはしっかりとこれからも貫いてもらわないと、仮定の議論では逃げられない話ですので、そのことだけ申し上げておきます。

 その上で、先般、免税点制度の存在による減収という話、これがありました。その中で、平成三十一年の二月二十六日の衆議院財務金融委員会で、当時の星野主税局長が、軽減税率の減収の見込みに対する財源の一つとして、インボイス制度が二千四百八十億円と答弁をされているわけでありますが、これは平成二十七年度の国勢調査を基にしている数字なんですね。

 では、今、現時点において最新の国勢調査に基づく、インボイス制度の導入による、言ってみれば、この財源というのはどのぐらいと見込まれていますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先日、前原委員の御質問の際に、私、突然の御質問だったこともあり、インボイス制度の存在による減収額ということを言葉として申し上げましたが、インボイス制度による減収額という観点で計算をした場合、当時の二千四百八十億円に対応する年次のベースでいいますと六千二百八十億円程度ということでございますので、その点はちょっと訂正をさせていただきます。

 その上で、二千四百八十億円という当時の星野局長の答弁でございますが、この二千四百八十億円という数字の試算につきましては、インボイス制度への移行に当たりまして、全てのBトゥーBの取引を行っている免税事業者が全面的に課税事業者になるという前提で機械的に試算がなされたものでございます。

 現時点で、免税事業者が実際に課税事業者になって納税をされるかどうかという点につきましては、例えば、取引先の事業者の方が簡易課税制度の適用を受けている場合、課税事業者の四割が簡易課税制度の適用を受けておりますけれども、そういう場合にはインボイスの必要性がないでありますとか、あるいは、経過措置が各種設けられておりますのでその適用があるかどうか、また、個々の取引当事者間の関係においてインボイスの必要性がどの程度と認識されるか、さらには、今回新たに講じることとしている税制上の負担軽減のための経過措置、こういった様々な要素によって影響を受けるため、インボイス制度導入に伴う増収額について、現時点において確たることは申し上げられないというふうに考えております。

前原委員 平成三十一年度の二月の財務金融委員会では、いろいろな数字を置かれて、免税事業者、約四百八十八万者から、農協等に出荷する農林水産業、非課税売上げが主たる事業の事業者を除いた免税事業者三百七十二万者程度に対して、BトゥーBの取引割合である約四割を乗じた百六十一万者程度が課税事業者になる、こういった仮定を置いてちゃんと計算されているんですよね。

 今になったら計算できないということじゃなくて、これは恐らく水かけ論になると思いますので、これは委員長にお願いしたいと思いますけれども、最も新しい国勢調査の前提条件の中で、このインボイス制度を入れた場合、どのぐらい税収になるのかということについて、当委員会に財務省から提出をしてもらいたいと思いますが、理事会にお諮りいただきたいと思います。

塚田委員長 後刻、理事会で協議いたします。

前原委員 大臣、是非、今のことについては前向きに考えて、理事会に提出をしていただきたいというふうに思います。

 さて、次に、NISAのことについて質問をさせていただきたいと思います。

 これは、本会議でも私、鈴木財務大臣に質問をさせていただきまして、元々所得倍増だったのが何か資産所得倍増になりましたねという話をし、本来であれば、二十代、三十代、四十代、こういった方々が、結婚というハードルを越える、そしてまた子育てというハードルを越えていくために所得倍増というのが必要じゃないかということを申し上げました。

 特に、二千五百兆の中で、大体、五十歳以上の方々が持つのが八二%でありまして、六十歳以上になると七割近くということでありまして、もちろん、この資産所得倍増、NISAの拡充、恒久化というのを否定するわけではないんですけれども、しっかりと、日本の学力の低下、そして日本の成長力の低下、国際競争力の低下、そして少子化、様々な問題、人口減少、地方の過疎の問題、こういったものを考えたときに、やはり若い方々に対する賃金を上げる、教育の負担を減らしていく、そして子育て環境、結婚しやすい環境をつくっていく、そういうために、所得倍増ということの方が、むしろ私は重きを置くべきだということを申し上げたわけであります。

 様々な賃金を上げるためのお取組というものはされていると思いますし、これから検討もされていると。例えば、年収の壁の問題とか、N乗N分の話についても検討の俎上にのせるとか、様々な議論が出ていますけれども、そもそもの議論として、政治というのはやはり大目標を立てることが私は必要だと思います。

 鈴木大臣、そもそも、所得倍増ということを岸田総理は初めにおっしゃっていて、資産所得倍増になった。所得倍増ということも私はやはり目標に掲げるべきだと思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 岸田総理は当初、令和版所得倍増、こう述べられておりましたが、これは、広く多くの方々の所得を全体として引き上げるという基本的な方向性を示したものだと思います。

 したがいまして、先生が今最初にお触れになりましたNISAによる拡充、恒久化によりまして、勤労所得も、そして金融所得も両方併せて、こうした広く多くの方々の所得を全体として引き上げるということについて整合をしている、そういうふうに思います、令和版の所得倍増と言っていたこととですね。

前原委員 岸田総理がおっしゃったことなので、鈴木大臣が御答弁されるということについてはダイレクトではありませんけれども、私が伺いたかったのは、所得倍増ということもしっかりと政策目標と掲げるということのメッセージ性というのは私は大事じゃないかということを申し上げたわけですけれども、それについては、所得倍増という目標というのは大事だ、今でも令和版所得倍増というものは大事だと思っておられるということでよろしいですか。

鈴木国務大臣 所得を広い意味で増やしていく、倍増というのは、その方向性を示していることだと思います。

 そして、所得を増やすものの一番の中心的にならなくてはいけないのは賃上げである、こういうふうに思っているわけでありまして、岸田内閣におきましても、政権発足以来、賃上げ税制を始め様々な賃上げに向けての努力、例えば、公定価格による取組、あるいは最低賃金の引上げ、そういうことを通じて取り組んでいるということであります。

前原委員 とにかくメッセージ性を持って、資産所得倍増だけではなくて所得も倍増するというメッセージ性が私は必要だということを申し上げているわけでありますので、是非そういったことを、いつの間にか資産所得倍増になっちゃっているんですね、所得倍増が。所得倍増ということも極めて大事なんだと。

 つまりは、若い方々にとっては資産はないんですから、資産所得倍増というよりは所得倍増ということの方がやはり力が出るし、日本の課題を解決する私は根本になっていくということは申し上げておきたいと思います。

 その上で、これも本会議で質問させていただいたことでありますけれども、キャピタルフライトの話ですね。やはり私はこの蓋然性が高いというふうに思っております。

 単純にちょっと鈴木大臣にお伺いしますけれども、鈴木大臣が資産運用される場合、カントリーリスクは同程度、それから為替リスクは無視できる程度であれば、金利が低い国と高い国ではどちらで運用されますか。

鈴木国務大臣 資産をこれから、金融資産について増やしていこうということになりますと、我々もNISAで推奨しているわけですけれども、長期、分散、積立てということでございます。

 そういうことにおいて、海外の例えば様々な債券について、当然、分散する中で、そういうものも買うということにはなるんだと思います。

前原委員 いや、分散はいいんですよ。分散はいいんですが、私が聞いているのは、そういうリスクというものが同程度であれば、金利が高い方で運用しますか、低い方で運用しますか、どちらで運用しますかということを聞いているわけです。

鈴木国務大臣 金利だけで判断するということもないんだと思います。様々な意味での、経済状況や政治状況といったいわゆるカントリーリスクもあるんだと思いますし、また、振り返って、足下の日本の金融資本市場を見てみた場合に、これから我々としても国際金融センターを目指していくということで、魅力ある金融資本市場をつくっていくということをやってまいるつもりでおりますので、そうしたときに、日本にも、極めて魅力的な市場であり、そこにある日本の債券等もこれも魅力のあるものとして、そこに投資をするということ、それは十分あるんだと思います。

前原委員 まだそこまで聞いていないんですよ。

 つまりは、金利が高いところで運用するか、低いところで運用するかというと、私は前提を置いていますからね、カントリーリスクは同じで、為替のリスクが無視できる程度であればという前提で聞いているわけですから、誰だって金利が高い方で運用するわけですよ。当たり前でしょう、そんなことは。だから、今、どんどんどんどん海外に口座をつくって外貨で運用する人が増えているんじゃないんですか。今その傾向じゃないですか。

 財務大臣、そんなことも認められないんですか。当然でしょう。株価の上昇率も違う、金利も違う。だからみんな、どんどんどんどん海外に口座をつくり、海外での投資を増やしているんじゃないですか。私はそのことを言っているわけですよ。

 それを、日本が国際金融センターにするから、行って帰ってこいということで、ちゃんと相互で行き来ができるから、キャピタルフライトの心配は要りませんと。何を根拠におっしゃっているんですか。よく分からないんです。

 国際金融センターの実現ということで、何か、積極なプロモーションの活動の展開、広報チャンネルの拡大、専用ウェブサイトの、何をもって、国際金融センターを実現したら日本にお金が投資されるんですか。そうじゃないでしょう。日本の成長率が高くて、いわゆる株価として本当に魅力のある企業がたくさんあって、成長する余力があって、初めて外国から投資されるんじゃないですか。

 国際金融センターの実現だけで、本当にキャピタルフライトというのが相殺されるぐらいお金が入ってくるんですか。その根拠を示してください。

鈴木国務大臣 先ほど、カントリーリスクを一緒にして、金利の高い方に流れるのじゃないかということについては、それはもちろん、基本的にはそういう傾向にあるんだと思いますし、それを私は何も否定をするつもりはございません。

 その上で、国際金融センターで海外からの投資を呼び込める何か根拠を示せということでありますが、これは、国際金融センターに向けて今構築していこうということでありますので、今現在、足下での根拠をお示しするということ、これはなかなか難しいことと思います。

 しかし、その上で申し上げますと、現状におきましても、例えば、海外投資家は東証等における日々の売買の七割前後を占めております。また、海外投資家による日本の上場会社の株式保有率、これは三割に上っております。

 資産所得倍増プランでは、我が国が国際金融センターとしての地位を確立していくための施策を盛り込んでおりまして、具体的には、スタートアップや、ESG等の社会課題解決による成長に資する資金供給の円滑化、企業の持続的な成長と中長期的な価値向上を図るためのコーポレートガバナンスの推進や、人的資本に関する開示ルールの整備を掲げているわけでありまして、こうした取組を通じて、我が国の金融資本市場、魅力を向上させ、海外からの投資を日本に呼び込めるよう取り組んでまいります。

 これからの取組でありまして、今現在、状況もお話しさせていただきましたけれども、何か根拠を示すということが難しいということは、これは御理解をいただきたいと思います。

前原委員 この委員会でも、キャピタルフライトに対する懸念というものは同僚議員からも何度も示されているところでありますし、私もその懸念を共有している。

 その意味において、キャピタルフライトが起きてしまったときの為替への影響、そしてまた国債市場への影響、そういったことも含めてしっかりと注視をしていただきたいし、そして、この国際金融センターの実現、昔から何か日本を国際金融センターにということはずっと聞いているような気がするんですね、私も議員になってから。それは、短期で売買はされると思いますけれども、やはり先ほど、これは本会議でも申し上げましたけれども、株価上昇率というのはやはり日本は極めて低いですよね。二〇二一年で四・九%、ほかの国では一五%とか二〇%台ですよ。

 そういう意味では、魅力的な市場、魅力的な企業、そして成長余力、そういったものがなければ、キャピタルフライトというものは起きてしまうということを私は指摘をしておきたいと思います。

 さて、自動車について少しお話をさせていただきたいと思います。

 自動車というのは、私が申し上げるまでもなく、これは日本の大黒柱、日本経済を支える大黒柱であります。自動車産業の雇用者数は約五百五十万人、これは全就業人口の一割でございますし、出荷額は約六十兆円、これは製造業の約二割を占めている。そして、約十五兆円の外貨を稼いでいる、輸出総額の約二割であります。また、裾野が広い、他の産業への波及効果というものが大きい。例えば、鋼材生産は、全体の鋼材生産の中の自動車用が三七%、板ガラスの生産は自動車用が全体の三四%ということで、本当に大黒柱であるということなんですが、問題なのは足下なんですね。

 これまでは国内生産一千万台体制ということでありまして、特にバブルの時期なんかは、一番年間の生産台数が多かったのは、千三百四十九万台だったんですね、バブルの絶頂期には。千三百四十九万台。二〇二一年には、約半分の六百六十二万台にまで落ちているということで、バブル期の半分、一千万台体制どころじゃないというところまで落ちてきているわけですね。

 しかも、今はコロナ禍において、半導体が不足をしている、原材料が高くなっている、そして納期が遅れているということで、本来ならば数か月だった納期が半年とか何年とか、それぐらい納期が遅れていて、そして全体の販売台数にも大きく響いている。

 大黒柱がこういう状況であれば、日本経済への影響というのは非常に大きいと私は思うわけでございますけれども、そのことを前提として、しかも、二〇五〇年のカーボンニュートラル、世界各国がGX、DXということでどんどんどんどん投資をして、まさに生き馬の目を抜くような競争をしている世界でもこの自動車はあるわけでありますけれども、さて、その大黒柱の自動車をどうやって支えて伸ばしていくのかということは、これは本当に日本の経済においてもかなり大事なことであると思いますけれども、その一つとして、やはり消費者の負担を減らすということが大事だと思うんですね。

 なぜなら、原材料の高騰によって新車価格への転嫁がある、つまりは、納期は遅い代わりに新車価格は高くなっている、こういった状況があるわけでありまして、せめて消費者の負担というものを減らしていかなくてはいけないというふうに思っているわけですが、車には幾つもの税がかかっているんですね。

 例えば、その税の中でも、税の上乗せというのが五十年近く続いているものがあるんですね。

 例えば、車体課税の中の自動車重量税は、本来の税率との比較で一・六倍、上乗せ期間は四十七年間、燃料課税の揮発油税は、本来の税率の二倍で、そして上乗せ期間は四十七年間、揮発油税は一・二倍で四十七年間、軽油引取税は二・一倍で四十五年間、こういったいわゆる本則の上乗せ課税というものが五十年近くも続いているということでありまして、やはり消費を喚起していくということから考えると、この上乗せを見直して、全て一旦本則に戻すということが私は必要であると思いますが、その点についての御答弁をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 自動車諸税のことの前に、先ほどのキャピタルフライトでありますが、いずれにいたしましても、貯蓄から投資へのシフトによる我が国経済や金融市場にもたらす影響につきましては、先生御指摘のキャピタルフライトも含めまして十分に留意し、注意していきたい、そういうふうに思います。

 そして、自動車産業が極めて日本経済をしょって立つ大きな立場であるというのは、私も、全くそのとおりである、こういうふうに思っております。そして、自動車関係諸税、非常に複雑になっていると思っております。

 そういう中で、自動車業界は、CASE、何かこれは、つながる化のコネクテッドのC、それから自動化のオートマチック、そしてあとは、利活用、電動化、これの頭を取ってCASEというんだそうでありますが、これに代表される百年に一度と言われる大変革に直面をしておりまして、税制につきましても、こうした変革に対応した見直しを行っていく必要があるんだ、そういうふうに思っております。

 そして、自動車関係諸税の在り方についての現状でありますが、与党税制改正大綱におきまして、日本の自動車戦略やインフラ整備の長期展望、カーボンニュートラル目標の実現への貢献、インフラの維持管理、機能強化の必要性などを踏まえて、国、地方を通じた財源の安定的な確保を前提に、受益と負担の関係も含め、中長期的な視点に立って検討を行うということであります。

 まさに、百年に一度と言われる大変革に直面しているということでありますので、今申し上げたこの与党税制大綱にあります観点に沿って、検討を政府としても進めてまいりたいと思っております。

前原委員 その中で、私が今質問をさせていただいた、上乗せ期間が五十年も続いている税、本則に戻すということもそういった検討に含まれるということでよろしいですか。

鈴木国務大臣 基本的な考え方が政府税制改正大綱においては示されただけでありまして、個別具体の中身についてはこれからだと思います。

前原委員 本則に戻すべきだと思われませんか。つまりは、いわゆる上乗せが五十年近くも続いているというのは異常だと思われませんか。

鈴木国務大臣 まさにそういうところも今度の議論の論点になるんだ、こういうふうに思います。

 先ほど、私、政府税制大綱と言ってしまいましたが、与党税制大綱の誤りでございました。

前原委員 もう一つ。

 私、ずっと、私も車が好きで、車はずっと乗っているんですけれども、ガソリンを入れると、揮発油税にそれから消費税がかかりますよね。タックス・オン・タックスと言われるものでありますけれども、これはやはり是正されるべきだと私は思いますが、この二重課税をしている、言ってみれば、元の考え方というのはどこにあるんですか。二重課税は是正されるべきだと思われませんか、大臣。じゃ、どうぞ。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 前原委員御指摘の、ガソリン税の上に消費税がかかるという御指摘につきましては、これは欧州諸国の付加価値税においても同様の取扱いになってございまして、そもそも蔵出しのこの個別間接税につきましては、消費者にガソリンが売り渡される段階におきましては、コストとして価格の中に溶け込んでいるという関係にございます。

 そこで、世界各国の付加価値税におきましても、個別間接税である揮発油税等を含む価格の上に付加価値税がかかるという仕組みになっているわけでございまして、我が国だけが特殊な取扱いをしているというものではございません。

前原委員 ほかの国がやっているからうちもやっていいんだ、そういう答弁は納得は私はできないですね。税の上に税がかかっているということについては、一般の国民はおかしいと思っているわけですから、ほかの国でもやっていますからそれは日本の国民の皆さん方も我慢してくださいといった答弁は、なかなか一般の国民が理解されるものではないと思います。

 しかも、揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税、そして石油ガス税、こういった四つがあるわけでありまして、せめてこういった四種の税は一本化して、そして二重課税はなくすということですけれども、やはり、簡素、公平という税の原則からすると、この複雑な四種の税、これを一本化し、そして二重課税は見直すということについて御検討いただけませんか。大臣、お答えください。

鈴木国務大臣 外国がやっているから日本もやるというのは説得力がないというお話でございますが、これは国際標準であるという話は私も聞いているところでございます。

 そのことについて、極めて個別具体なタックス・オン・タックスについての御提言であるわけでございますが、まさにそういうことも含めて、今後、中長期的な観点に立って議論が進められていくんだと思います。

前原委員 四種の税の一本化についてはいかがですか。

鈴木国務大臣 自動車関係諸税でございますので、先ほどお答えしたのと同様でございます。

前原委員 この自動車に関する税制については、現在は、取得、自分で持つときですね、例えば自動車税など、それから今度は保有する、これは重量税など、そして今度は走らせる、今申し上げた揮発油税など、こういった、取得、保有、走行、三段階で税が徴収されているということなんですけれども、例えば、これから、走行ということになれば、電気自動車それから燃料電池自動車ということになると、揮発油税では、それは電気ですから、そういった税体系ではなかなか難しくなるということと、保有も、複数人で特定の自動車を共同使用するカーシェアリングとか、そして、自動車を一定期間利用できる、サブスクと言われる、サブスクリプションのサービスというものも出てきているわけであります。

 そうなると、今までの、この三つの前提で、言ってみれば、税を国民からいただいて、そして自動車というものについての様々な施策をやるということは難しくなってくるというふうに思いますけれども、この自動車をめぐる環境変化を踏まえた税体系の見直しの必要性、ちょっと時間がなくなってきましたので、ちょっと具体的に二つお話をさせていただきます。

 この環境変化を踏まえた税体系の見直しは必要だと思われると思うんですけれども、そのときに、どういったところで、じゃ、負担をお願いするのかということでありますが、一つ言われたのが、走行距離ですよね。これは、地方に行くと本当に不満が渦巻いている。地方に行けば行くほど、それは走行距離が長くなりますから。走行距離、これはないということでいいのか。あるいは、モーター出力税のようなものは検討されるのか。

 まずこの必要性についてどう考えられるかということと、それから、走行距離についての課税というものを考えるのか考えないのか、そしてモーター出力税のようなものを考えるのか考えられないのか、そういったところをお答えをいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 いわゆる走行距離課税につきましては、当委員会以外でも、何か数回、御質問を受けたことがございます。

 これが注目されたのは、恐らく、政府税制調査会、昨年の十月二十六日に開かれた調査会において、一部の委員の方からこの走行距離課税についての御意見を頂戴したことによるものだ、そういうふうに思いますが、政府として、走行距離課税を導入するという方針を決めているものでは全くございません。

 それから、確かに、もうガソリン車がなくなってきて電気自動車になるという、環境が変わるわけでありまして、そうした自動車を取り巻く環境に対応した税制というもの、それも考えていくことは当然のことである、そういうふうに思っております。

 与党の税制大綱におきましても、電気自動車等の普及等の観点から、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進めるとされているところでございまして、政府としても、与党の議論を踏まえつつ、様々な検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

前原委員 これで終わりにさせていただきますけれども、大臣も御認識をいただけると思うんです、共通の。自動車というのは日本の経済の大黒柱だ、そしてどんどんどんどん今売上げが落ちてきている、そして、様々な、所有の形態とか、自動車の、ガソリンから電気自動車、燃料電池自動車へと形態は変わっていっている。

 その中にあって、しかしながら、自動車産業というものをしっかり守っていくという観点で、単に税を取るという、財務省はそれが仕事なのかもしれませんけれども、言ってみれば、金の卵を産む鶏を絞め殺すことのないような、つまり、自動車産業を育てるということの中で、成長させるということの中で税体系をしっかり考えてもらいたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、税制環境整備の一つに挙げられている税理士法の改正案について質問をします。

 税理士法第五十四条の二に、税理士等でない者が税務相談を行った場合に、財務大臣が税務相談の停止などの措置を命令できる規定が新たに設けられようとしています。本制度は、従わなければ刑罰を伴う厳しい制度となっています。財務大臣が命令を発出できる要件を具体的に説明していただけますか。

鈴木国務大臣 現状におきましても、法令上、税理士等でない者が税務相談を始めとする税理士業務を行うことは原則として禁止をされているところでありますが、これは、そのような者が他人の求めに応じ税理士業務を反復継続して行うことが納税義務の適正な実現を阻むことを考慮し、これをあらかじめ防止するためと解されているところであります。

 一方で、税理士等でない者が行う税務相談は、元来その違反の状況が顕在化しにくく、また、SNSの普及等に伴い、不特定多数の者に脱税指南等が行われるリスクが高まっている状況に鑑みて、国庫歳入や社会への悪影響を未然に防ぐ必要性が高いと考えております。

 こうした状況を受けまして、今般の税務相談の停止等に係る命令処分は、税理士等でない者が行う税務相談について、不正に国税を免れさせることなどによる納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすこと、具体的には、脱税指南により不特定多数の者が脱税を行う等の行為を防止するため緊急に措置を取る必要があると認めるときに行うことができるとしているところであります。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

田村(貴)委員 非常に抽象的で、大ざっぱに聞こえました。

 条文には、納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するためとあります。大臣、防止することがこの命令の目的なのであれば、問題が起こる前、つまり、おそれの段階で強制力を行使することになります。

 財務大臣は、どのような基準で税務相談の停止を命令することができるんでしょうか。その基準や要件は、政省令などに記載されるのでしょうか。若しくは、財務大臣が主観的に判断し、恣意的に強制力を行使できるというものなのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 税理士等でない者が行う税務相談につきましては、元来その違反の状況が顕在化しにくく、また、その違反の態様や悪質性についても様々であるものと承知をいたしております。そのため、税務相談の停止等の命令処分を行う際の具体的な基準や要件について政省令などで一律に規定することは適当ではないと考えておりますので、この法律案にはそのための委任規定は設けてございません。

 一方で、命令処分を実際に行う際には、この法令に基づきまして、税理士等でない者が行う行為が業として行われる税務相談に該当するのかどうか、その税務相談の内容が、規定されております、脱税や不正還付を指南するものであるかどうかといったような要件の該当性について個別に確認をし、その上で、納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため緊急に措置を取る必要があるかどうかについて、個別具体的な事実関係に基づいて判断することとなると考えております。

 したがいまして、政省令などに規定されないということではございますけれども、財務大臣が主観的に判断し、恣意的に命令するというようなことではございません。

田村(貴)委員 命令の内容について確認します。

 条文では、その税務相談の停止のほかの当該停止が実効的に行われることを確保するために必要な措置を講じることを命ずることができるとしています。命令できる措置とはどのようなことを想定しているんでしょうか。それは、政省令などに記載されるのか。先ほどと一緒です。これも、財務大臣が主観的な、必要な措置と考えれば、どんなことでも命令できるんでしょうか。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどと同様ですが、税理士等でない者が行う税務相談は、その違反の状況が顕在化しにくく、また、その違反の態様や悪質性も様々であるため、財務大臣が命令することができる税務相談の停止のほか、その他その停止が実効的に行われることを確保するために必要な措置につきましては、個別具体的な事実関係に基づいて判断されるべきものと考えております。

 このため、命令処分の具体的な内容について政省令などで一律に規定することは適当ではないと考えておりますが、具体的な例を挙げますと、税理士等でない者による営業広告の中止等が該当するものと想定をいたしております。

 いずれにせよ、命令処分を行う際は、この法令に基づき、要件の該当性等を個別に判断するところとなります。政省令などに規定されないことはそういうことでございますが、財務大臣が主観的に判断し、恣意的に命令することができるということではございません。

田村(貴)委員 ちっとも分かりませんね。

 命令というのは、権力の行使ですよね。今聞こえてきたのは、相談活動の停止、そして営業広告の中止。これだけなんですか。本当に大ざっぱで、よく分かりません。発出命令の要件が満たされるかどうかについて第三者の判断を求めることもない、それから、財務大臣が自ら判断し、自ら命令を執行できるというこの制度は、私は、大臣に強力な強制力を与えることになって、恣意的な発出の懸念も拭えないと考えています。

 続いて質問しますけれども、改正案の説明を何度も聞いてまいりました。セミナーやSNSなどを通じてお金を取って、そして脱税や不正還付の手口を教える、そういう偽税理士やコンサルタントなどがいるというふうに伺っています。

 では、本改正の立法事実に当たる事件とか犯罪というのはどのような事例なのか、教えていただけますか。また、そのような犯罪というのはどのぐらいあって、例えばこの五年間で財務省はどのぐらい把握しているのか。立法事実についてお答えください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 国税当局が実施をしております税理士法第五十二条違反行為、いわゆる偽税理士行為に係る国税庁からの接触件数は、過去五年間において、おおむね年間百件から三百件程度となっております。コロナ禍以前におきましては三百件程度だったということでございます。このうち告発に至ったものにつきましては、年間十件前後という状況と承知をいたしております。

 税理士等でない者による税務相談のみの違反については特に潜在化しやすく、接触しても実態の確認まで至らない事例も多い状況でございます。その中には、当局による質問に対する対応を拒否されるなどの理由のため、情報収集が困難であり、指導等には至らなかった事例や、被害を極小化するためには、より早期に機動的な対応が必要であったと考えられる事例もあったと承知をいたしております。また、SNSの普及等に伴いまして、不特定多数の者に脱税指南等が行われるリスクが高まっているものとも認識をいたしております。

 このような状況に対応するため、いわゆる税理士等でない者による税務相談については、税理士制度が企図する納税義務の適正な実現のため、機動的に対応する必要性が高まっているというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 前は三百件、今は百件とかで数字は出されたんだけれども、大体そういう詐欺的な行為、不正還付、脱税、摘発された、検挙されている、そうした事例はどういうものがあるんですかと聞いているんですよ。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 こうした事例は非常に多様なものでございますので全てを申し上げることは困難でございますが、例えば、コミュニティーの中で不正還付の指南を行い口コミで当該手口が拡散した事例でありますとか、個人事業主向けのセミナーを開催し脱税指南を行っている事例でありますとか、コンサルタント会社が顧客に対して不正還付を指南している事例などが把握されているというふうに承知をいたしております。

田村(貴)委員 局長、それは犯罪で検挙された事例というふうに捉えていいんですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 この個別の事例につきまして、指導等でとどまったものか、告発に至ったものかについては、承知をいたしておりません。

田村(貴)委員 大臣でも局長でもいいですけれども、確認しますよ。

 この法改正というのは、脱税とか不正還付などの違法行為を防止することが目的なんですね。いかがですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 元々、税理士等でない者が税務相談を始めとする税理士業務を行うことは原則として禁止をされておりますが、これは、そのような者が他人の求めに応じ税理士業務を反復継続して行うことが納税義務の適正な実現を阻むことを考慮し、これをあらかじめ防止するためということで解されているところでございます。

 一方、今回の措置につきましては、税理士等ではない者が行う税務相談が、元来その違反の状況が顕在しにくく、また、SNSの普及等に伴い、不特定多数の者に脱税指南等が行われるリスクが高まっている状況に鑑みて、国庫歳入や社会への悪影響を未然に防ぐ必要性が高いということから、不正に国税を免れさせること等による納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすこと、具体的には、脱税指南により不特定多数の者が脱税を行う等の行為を防止するため緊急に措置を取る必要があると認めるときに命令処分を行うことができることとするものでございます。

田村(貴)委員 全文、条文を丸ごと読まぬで、端的に答えてくださいよ。脱税とか不正還付の違法行為を防止することが目的なんですよねと聞いているんですよ。そういうことでいいんですね。

 脱税とか不正還付を指南する行為を問題視するのであるならば、なぜ税務相談という広い範囲の活動が命令とか緊急措置の根拠となっているんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 究極的な目的は、不正に国税を免れさせること等による納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止することにございますが、そのためには、不正な税務相談によりまして、脱税指南等によって不特定多数の者が脱税を行う等の行為を防止することが必要だということでございます。

田村(貴)委員 二〇二〇年十一月に法人税法違反で名古屋国税局が告発したケースがあります。二〇二二年六月に節税コンサルタントが法人税法違反で逮捕されたケースがあります。現行法で対応できています。今回の改正による新しい命令制度がないと摘発ができない事案というのはどういうことなんでしょうか。その例を挙げてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の措置の趣旨といたしましては、不正に国税を免れさせること等により納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため緊急に措置を取る必要があると認めるときに税務相談の停止等を命ずることができるというものでございまして、現に脱税が行われて、その脱税犯の摘発に至る前の段階でそういった行為を抑止するということが必要だということでございます。

田村(貴)委員 おそれの段階から権力の行使をするということなんだけれども、それにしては、どんな場合が相談停止の命令なのか、どんな基準なのか、そして立法事実は何なのか、全然答えられていないじゃないですか。

 日本の税制制度というのは、戦前の賦課制度を廃止して、申告納税制度に転換した経緯があります。申告納税制度は、民主的な租税思想に親和的な制度であるというふうにも言われてきました。当然、納税者が租税制度を自主的に学び合って、話し合って自らの申告を進めることを規制することなどはあってはならないことだと私は考えます。

 今回、この措置が、財務大臣が主観的に恣意的な判断を実行する懸念が拭えない制度であるということは非常に重大だと考えます。専門家の諮問もなく、立法事実についても曖昧である。法制化の手続にも問題がある。この問題は、引き続き取り上げていきたいと思います。

 次に、新NISA、資産所得倍増プランについて伺います。

 この委員会でも問題が取り上げられてまいりましたけれども、岸田総理が就任時に掲げた令和版所得倍増計画がいつの間にか資産所得倍増プランに変わって、これが政府の方針となっています。令和版所得倍増というのは、これはもう、鈴木大臣、諦めたんでしょうか。現在の岸田内閣の方針にないということでしょうか。

鈴木国務大臣 令和版所得倍増というものを諦めたのか、こういうお尋ねでございましたが、総理が述べられているとおり、令和版所得倍増は広く多くの方々の所得を全体として引き上げるという基本的な方向性を示したものでありまして、政府といたしましては、賃上げあるいは資産所得倍増の取組をしっかりと進めてまいりたいと考えているところであります。

田村(貴)委員 資産所得倍増プランとは、家計に眠る現預金を投資につなげることで我が国企業の成長投資の原資となり、持続的な企業価値向上を促し、金融資産所得も増えると鈴木大臣は説明されていました。

 家計に眠る現預金とは、銀行の預貯金として管理され、企業への間接融資や国債購入などの原資となっています。新NISAでは家計から企業に成長投資につながる資金を回していくというふうにされていますが、なぜ銀行の融資よりも個人が株式を買う方が企業の成長につながるのか、説明していただけますか。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 NISAの投資というのは、企業から見れば株式等の資金を受け入れることを意味いたします。よって、この投資は、一定のリスクテイクの下、リターンの源泉であります企業価値の向上、これを比較的強く求める資金でございまして、一定のマーケットメカニズムの下、企業の成長を支える原資になるということでございます。

 この成長の果実が家計に還元されて、家計の資産所得は拡大して、更に投資につながる、これが成長、資産所得の好循環を生むということでございまして、このことによって企業の価値が持続的に向上する、そういうふうなことが期待されます。

田村(貴)委員 安倍政権の下での日本銀行の金融政策は、異次元の金融緩和、マイナス金利の長期に、企業への投資を促してきました。でも、思ったように繁栄にはつながっていません。つまり、我が国企業の成長が起こっていないというのは、投資のための原資がないということが問題ではないと思います。

 そもそも、資産所得倍増プランは、五年間でNISAの総口座数を現在の千七百万から三千四百万へ、買い付け額を二十八兆円から五十六兆円に、共に倍増させるものであります。買い付け額を更に五年間で二十八兆円、一年当たり五兆六千億円増やしたところで、日銀の金融緩和政策と比較すればこれは微々たるものであります。

 どうして年五・六兆円で株式を購入することが企業の成長を促すと期待できるんでしょうか、お答えください。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問のとおり、資産所得倍増プランについては二つの目標を掲げさせていただいております。ただ、これによってだけではなくて、これを契機といたしまして、様々な資産所得についての増加の施策を講じることによって、先ほど申しましたように、我が国の二千兆円を超える家計資産の現預金を投資に全体としてシフトさせる、こういうふうなことを所得倍増プランは狙っておるということでございます。

田村(貴)委員 これまで政府は、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人、このGPIFによる株式などのリスク投資を大幅に増やしてきました。そして、日本銀行は、上場株式に連動する上場投資信託、ETF、この買入れを強化してきました。

 数字を申し上げますね。二〇二二年三月末時点で、GPIFが四十九兆五千億円、日銀が五十一兆三千億円、この株式とETFを既に保有している。更に積み増しするということはもう困難になっているということです。

 そうなると、NISAの目的というのは、上限枠を一人千八百万円まで、倍以上に引き上げて、五年間で二十八兆円の買入れを増すという、これはもしかしたら第三の株価対策ではないんじゃないんですか。いかがですか。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 本件は株価対策ではございません。本件は、あくまでも、一方で、金融経済教育等を行うことに伴いまして、国民の安定的な金融資産、これを形成していく、この中で現在の預貯金等について投資にシフトさせていく、こういうふうな狙いを持った政策でございますので、御指摘は当たりません。

田村(貴)委員 貯蓄から投資への方針は、小泉内閣から二十年近く進めてきました。ほとんど進んでいません。

 資料をお配りしています。資料一です。昨年十月十七日の新しい資本主義実現会議資産所得倍増分科会に配付された資料です。

 これによると、家計の金融資産の保有目的として挙げられているのは老後の生活資金、これが各世代において大きな割合を占めています。四十代までは子供の教育資金も多い。そのほか、病気や不時の災害などへの備えとしての金融資産を保有していることが分かります。

 毎年のように社会保障制度が後退する、負担が増える、年金が下がる、こんな中で貯蓄が減っていったら、リスクがある株式投資にそうたやすく自分の財産を回すわけないじゃないですか。預貯金の目的が老後の資金やいざというときの備え、教育資金であるならば、NISAの上限を引き上げても貯蓄が投資に向かうというインセンティブにはならないんじゃありませんか。私は、この資料からそう読み取りましたけれども、いかがですか。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御提示の資料の数字でございますけれども、まず、この調査の結果の前提といたしまして、現在、国民の皆様で金融経済教育を受けたとされる方が七%であるということに留意する必要があると思います。金融経済教育を通じて、各自のライフプランに応じて最適な資産形成、これについて検討を行うサポート、これが必要でありますけれども、その結果として、現在の預貯金への偏りが適切かどうかというのを考えていく必要があります。

 事実、同じく金融広報中央委員会の調査の中には、金融経済教育を受けたと認識している方が、そうでない方に比べて、リスクを十分認識した上で、より多くの投資を行う傾向にあるという結果もございます。そういう点で、金融経済教育の重要性というものはあるというふうに認識しております。

 さらに、この数字でございますけれども、仮にこの結果を前提としても、例えば災害への対応というよりは、子供の教育資金あるいは老後の生活資金のようなライフプランが立てやすい資金ニーズについては、十年、二十年の長期投資が可能であるというふうに我々は考えておりますので、この結果をもって、貯蓄から投資への更なる促進が不可能であるというふうには考えておりません。

田村(貴)委員 一人千八百万円、夫婦で三千六百万円まで使えるNISAの上限を引き上げて、どれだけの国民が活用そして運用するんでしょうか。やはり、これは、必要な預貯金を残した上で投資ができるという富裕層なのではありませんか。結局、今度の改正というのは、富裕層の資産倍増のための制度に行き着いていくんじゃないんでしょうか。いかがでしょうか。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申しましたことの若干繰り返しになりますけれども、我々、御提示いただいた数字においても、十年、二十年の長期投資を行っていく家計については、金融経済教育の推進であったり、あるいは、そのほか、金融事業者に対する顧客本位の業務運営の徹底等を通じて、十分に投資に向かう環境は整備できるというふうに考えており、その考え方に基づきまして資産所得倍増プランを策定しております。

田村(貴)委員 このところで最後の質問ですけれども、大臣に伺います。

 本会議でも、私、伺いましたけれども、いわゆる所得一億円の壁、是正されていません。今改正案では、所得三十億円、超富裕層、二百数十人程度への課税強化が盛り込まれただけであります。超富裕層への負担率の上限はこれでも二二・五%。所得税の最高税率四五%には全く追いつかず、およそ格差是正と言えるものでありません。

 これ以上の是正はもう行わないんですか。大臣、答えてください。

鈴木国務大臣 今般の税制改正プロセスでは、一億円の壁の是正についても議論してまいりました。

 現下の所得税の負担率を見てみますと、所得が一億円を超える辺りの所得層では負担率がそれほど大きく低下していない一方、それを上回るかなりの高所得者層では負担率の低下が著しい状況にあります。

 このような負担率の状況等を踏まえまして、与党税制調査会において幅広い観点から御議論をいただいた上で、今般、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置を講じており、税負担の公平性の確保に向けて一定の対応が図られたものと認識をしております。

 政府といたしまして、まずは、令和七年から施行される今回の改正の効果というものをよく見極めてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 所得倍増から資産所得倍増にシフトした。これは、所得税の再分配機能の強化というよりも、資産家優遇の傾向を強めたものにほかならない、私はそう考えます。税制における所得再分配、この機能を強化し、そして、最低賃金の再改定など、政府ができる所得の引上げに本腰を入れて取り組んでいただきたい。強く要望したいと思います。

 最後に、インボイスについて伺います。

 最初に、大臣にちょっと所感をお伺いしますけれども、前回の質問で、私、FIT制度の買取り義務者である電力会社が仕入れ税額控除ができない分を再エネ賦課金で補填することについて質問しました。そのとき、十七日の本委員会で、エネルギー庁は、二〇二三年度は五十八億円ほどの賦課金が必要だというふうに答弁されました。

 しかし、二〇二三年度というのは半期分しか影響を受けないので、これは一年分だと百十六億円になります。さらに、インボイスの導入後三年間の経過措置で、免税業者からの仕入れの八割は控除できる措置を使って試算をしているので、これは、経過措置がなくなる七年後には、同じ条件だと、五百八十億円程度の補填が、再エネ賦課金が必要になる。つまり、国民負担が生じるということです、五百八十億円です。

 インボイス導入によってこれだけの消費税負担が国民に転嫁される。しかも、FIT制度だけにおいて仕入れ税額控除のこういう特例が与えられる、政府の音頭によって。

 大臣は、取引の実態がそれぞれあるから、対応がばらばらになるというふうに是認されました。これはやはり、消費税、インボイスの主務大臣、そして主務官庁としては本当に無責任だと思いますよ。国民は納得しませんよ、こんなやり方をしておったら。ある省庁はこんな優遇策をやる、この省庁は何もない。そして、力を持ったところだけには支援措置が出ていく。やはり、大臣、これはおかしいと思いますけれども、いかがですか。

鈴木国務大臣 これは先般の委員会でお答えしたとおりで、契約でありますとか取引の形態がばらばらでございますから、それに対応する扱い、これも当然変わってきてしまうと思います。それぞれ担当する省庁においてそうした対応策が考えられていくんだ、そういうふうに思います。

田村(貴)委員 今日、各議員がインボイスの問題を取り上げています。そして、単一税率の税制だったらインボイスは必要ないと大臣の方からお答えがありました。そして、大臣は、複数税率の下で公平な税を執行すると何度もお答えになっています。今、複数税率が導入されています。インボイスは導入されていません。じゃ、税の不公平が起こっているのか。局長、どこが不公平、起こっているんですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、区分記載請求書の保存方式ということで軽減税率の運用が行われておりますが、こういったインボイス制度に至る前の請求書等保存方式の下での調査事例におきましては、例えば、標準税率が適用されるお酒と軽減税率が適用される食料品の間で、この適用税率の適用間違いであるとか、あるいは、過少な申告が行われているという実態があるというふうに国税庁からは聞いております。

田村(貴)委員 何度も何度も同じ答弁ですよね。世の中はこれで大問題になっているんですかと聞いているんですよ。今のままでいいじゃないですか。複数税率制の下でも、インボイスを使わずに仕入れ税額控除をやっていったらいいじゃないですか。私は、今のままでいいというふうに指摘しておきたいと思います。

 今日の質問なんですけれども、税制大綱の中にあるインボイス制度の特例措置について伺います。

 課税売上高が一億円以下の事業者を対象に、一万円未満の取引にはインボイスを不要とする措置、少額特例が盛り込まれています。

 資料二の財務省のQアンドA、この問いの十一のところに書いてあります、例として。国税庁のこのQアンドAで、少額特例の判定単位は、課税仕入れに係る一商品ごとの金額により判定するのではなく、一回の取引の合計額が一万円未満であるかどうかによって判定すると。だから、例として、九千円の商品と八千円の商品を同時に精算した場合は、一万七千円の取引となって、少額特例の対象とならないというふうに書いてあります。この一万円のやつはややこしいんですよね。

 お尋ねします。

 例えば産直市場で販売している免税業者の農家からお米と野菜を合計一万七千円購入する場合、お米九千円と野菜八千円にそれぞれ分けて買ったとすれば、例えば時間的に差があるときに買ったとして、少額特例の対象となるんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の少額特例は、制度の定着までの実務への配慮といたしまして、中小零細企業の事務負担の軽減を趣旨として設けることとしておりまして、課税売上高一億円以下の事業者が行う一万円未満の仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入れ税額控除を可能とする六年間の事務負担軽減措置となっております。

 その上で、少額特例の判定単位につきましては、御指摘のとおり、一回の取引の合計額が一万円未満であるかどうかにより判定するというふうにされておりまして、その実際の判定は取引の実態に即して行うこととなります。

 今お示しいただいた事例につきましては、特定の判定単位について申し上げますと、取引の実態に即して判定する必要がございますので、それぞれが独立した個別の取引であれば特例の対象となり、一体の一つの取引であれば特例の対象とはならないということでございます。

田村(貴)委員 だから、分からないから聞いているんですよ。朝お米を買って、昼から野菜を買ったらどうなるんですかという例えをしているんですけれども、お答えになっていません。

 別の例です。

 工務店が新築住宅を建設するときに、免税業者に一万八千円分の水道工事を発注したとします。単純に九千円の領収書二枚に分けて支払えば、少額特例に、これは対象となるんでしょうか。

 配付資料の十二を参考にしますと、役務の取引金額で判断すると書かれています。水道工事の場合、二か所に分けて別々に契約したことに対して、九千円の領収書二枚に按分すれば、これは対象になるんでしょうか。

住澤政府参考人 御指摘の事例につきましても、それぞれが独立した個別の取引であれば特例の対象となり、一体の一つの取引であれば特例の対象とならないということで、まさに取引の実態に即して判定をするということでございます。

 お示しいただいている事例の内容だけでは、こうした実態に即した判定の材料としては不足していると思いますので、あくまで取引の実態に即して個別具体に判定をしていくということでございます。

田村(貴)委員 個別具体的に判定していくといっても、膨大なレシートでどうやって判定していくんですか。あるのは買ったときの領収書とインボイスだけじゃないですか。できるんですか。

 もう一つ伺います。

 免税業者の個人タクシーに乗って、通常なら一万五千円かかる場所に移動する場合に、運転手さんに九千円のところで一回停止してくださいと言って精算する、再度そのまま乗ったならば、九千円と六千円の領収書が出てきますけれども、これは対象となりますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮でございますが、お尋ねの事例につきましても、それが独立した個別の取引であれば特例の対象となり、一体の一つの取引であれば特例の対象とはならないということでございまして、御指摘の事例がどういった実態のものなのかということを個別具体的に判断していくことになるということでございます。

田村(貴)委員 この話をまとめると、売る人と買う人との間で合意があれば、一万円以下の領収書に分けてしまうことができるんですね。一回の取引の判断が非常に難しいんですよ。逆に考えると、一万円以下の領収書を利用した節税対策にも使われかねない。こういったことになっていくんですよ。

 だから、制度をつくるたびに、先ほどお話がありました、話が本当に複雑で、ややこしくなっていくわけなんです。分からなくなっていくんですよ。やめたらどうですか、インボイス。

 真面目に支払いをすれば仕入れ税額控除のためにインボイスが必要になり、領収書を分ける努力をすれば少額特例が使えるというのも、不公平なことじゃないでしょうか。しかも、判断基準は曖昧です。後から税務署に対象にならないと言われかねない、こうした懸念もあります。予見性が低くて見えないんです。激変緩和措置も、これは三年間の時限措置です、三年たったらおしまいです。しかも、免税業者は課税業者を選択するのが前提となっています。増税となっている、これが前提の少額特例ですよね。

 こうしたやり方は、より制度を複雑にするだけでなく、納税者を困惑させるだけです。インボイスは、やはり中止すべきであります。

 このことを強く指摘して、今日の質問は終わります。

塚田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十八分散会


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