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第5号 令和5年2月28日(火曜日)

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令和五年二月二十八日(火曜日)

    午後一時九分開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      津島  淳君    中山 展宏君

      葉梨 康弘君    藤原  崇君

      八木 哲也君    若林 健太君

      階   猛君    中谷 一馬君

      野田 佳彦君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    米山 隆一君

      藤巻 健太君    岬  麻紀君

      伊藤  渉君    山崎 正恭君

      前原 誠司君    田村 貴昭君

      吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣        井上 貴博君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  道下 大樹君     中谷 一馬君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 一馬君     道下 大樹君

    ―――――――――――――

二月二十七日

 軍事費二倍化ではなく、税の集め方の抜本的見直しに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七九号)

 同(笠井亮君紹介)(第八〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八一号)

 同(志位和夫君紹介)(第八二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八六号)

 同(宮本徹君紹介)(第八七号)

 同(本村伸子君紹介)(第八八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 質疑の申出がありませんので、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の討論をいたします。

 バブル経済崩壊以降の三十年間で、世界経済は成長していたにもかかわらず、日本経済は停滞してきました。この間、非正規雇用が増加し、中間層は痩せ細り、経済格差は拡大しました。

 しかし、特にこの十年は、問題の本質に迫るどころか、問題を先送りしてきました。その結果、この十年間、自民党内閣での経済成長率は〇・六%で、その直前の民主党内閣の一・五%を下回っています。この十年間の実質賃金は何とマイナス〇・七%で、その直前の民主党内閣のプラス〇・一%を下回っています。

 二〇二一年秋の自民党総裁選挙において、岸田総理は、格差是正と新しい資本主義を主張しました。政府がようやく問題の本質に切り込むと期待をいたしました。しかし、看板倒れでした。

 まず、所得税について。

 岸田総理は、金融所得課税の強化を主張していました。極めて高い水準の所得についての最低限の負担を求める措置は今回導入ということで盛り込まれたものの、対象となるのは主に三十億円以上の高所得者であって、一億円の壁の解消にはほど遠い内容です。

 岸田内閣の看板政策だった所得倍増はいつの間にか資産所得倍増にすり替えられ、今次改正でNISA制度の拡充が盛り込まれました。長期保有の一般投資家を育成するという方針には賛成するものの、今次改正では、短期売買でもメリットを受けられるなど、趣旨と異なる法案となってしまっています。岸田総理の言う新しい資本主義とは、結局、むき出しの資本主義であると指摘せざるを得ません。

 法人税については、租税特別措置を使いこなす大企業の実効税率が中堅企業よりも低くなるという逆転現象が起きています。大企業優遇の税制から公平な税制に改める必要があります。グローバルミニマム課税の一環で国内ミニマム課税の方針が示されたことは一歩前進であるものの、抜本的な改革にほど遠い内容です。

 消費税については、逆進性などの問題が指摘されてきました。軽減税率では、逆進性の緩和にはなっていません。給付つき税額控除の導入を改めて提案申し上げます。

 また、消費税の複数税率導入に伴って導入が予定されているインボイス制度について、免税業者が多大なる不利益を被るリスクがあることは、現場から切実な声が上がっています。このことも審議を通じて確認されました。したがって、インボイス制度の導入の中止を財務大臣に改めて提案申し上げます。

 我々立憲民主党・無所属は、会派として、国民の暮らしを守るための政策をこのように数多く提案してまいりました。しかし、誠に残念ながら、こうした提案は本法律案には盛り込まれておりません。これでは国民の暮らしを守ることはできないということを申し上げ、私の反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 私は、日本維新の会を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案に反対の討論をいたします。

 今回提出された法案は、NISAの抜本拡充やスタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設等、個別の制度変更に関して言えば、我が党とも賛同するところでもございます。

 一方で、いわゆる一億円の壁の解消などでは、マーケットに配慮して小規模で、全体的に見ると、所得の高い人や資産の多い人が優遇されている制度となっており、格差是正につながらず、岸田総理の掲げる新しい資本主義、成長と分配の好循環を実現できるのか、甚だ疑問です。税負担の公平性確保や再分配機能強化の観点から、今回の税制改正案では踏み込みが甘いと言わざるを得ません。

 また、我が党は、結党以来、簡素、公平、中立の税制を、簡素、公平、活力の税制に転換すべきとの理念を持って税制改革の提言をしてまいりました。現行の制度に修正を重ね、増築を繰り返した建物のように複雑怪奇な迷路のようになっている現在の税制を抜本的に改革し、真に国民に寄り添った税体系に変えていかなければなりません。

 燃料費増や円安に起因する物価上昇の影響を大きく受けている中小零細企業への負担増は、制度の猶予などの個別の対応ではなく、そもそも、消費税や法人税の減税、あるいは社会保険料の減免などで対応すべきと考えます。

 また、喫緊の課題である少子化対策において、N分N乗方式や給付つき税額控除など、早急に議論を進めていかなければなりません。

 従来の発想や既得権益にとらわれることなく、抜本的な制度改革、規制改革を断行すべきであり、我々日本維新の会は、その先頭に立って国民の皆様のための政策実現を目指すことをお誓いして、本法案についての反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党・無所属クラブの前原誠司です。

 私は、会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場で討論を行います。

 日本の最大の課題の一つは、言うまでもなく、少子化による人口減少です。教育予算の倍増と教育の無償化による家計負担軽減とともに、政府は、資産所得倍増ではなく、所得倍増を真正面から目標に掲げ、賃金の上がる経済実現に努力をすべきです。

 本法律案に盛り込まれたNISA制度の拡充と恒久化については、これを否定するわけではありませんが、懸念も残ります。日本の成長率は他の先進国と比べても低く、そのことが株価の伸び率の差にも表れています。そのため、資産運用を政府が奨励すればするほど、海外へのキャピタルフライトを促し、円安も助長するのではないでしょうか。

 また、現在、日本の国債残高は約一千兆円に上り、先進国で最悪水準にある日本の財政を支えているのは国民の預貯金ですが、貯蓄から投資を促せば、国債の安定消化が難しくなり、外国資本の比率を高めて、金利上昇リスクが高まることも考えられます。本法律案では、これらのリスクを排除するための十分な措置が取られていません。

 所得が一億円を超えていくと税負担率が下がっていくと言われる、いわゆる一億円の壁問題については、今回の措置により新たに負担が生じる平均的な所得水準は約三十億円、対象者は二、三百人程度と想定されるなど、本法律案の内容では全く不十分だと言わざるを得ません。税負担の公平性確保の観点から、金融所得の総合課税化や金融所得に対する税率の引上げ、あるいは、分離課税を維持しながら段階的な税率を導入するなど、中長期的な国家の財政運営という見地に立って、より実効性のある措置を講ずる必要があると考えます。

 インボイス制度について、鈴木大臣は二月十七日の当委員会における私の質疑に対し、単一税率であるならばインボイス制度は要らないということだと思いますと答弁をされました。インボイス制度導入により、免税事業者の方々が取引から排除されたり、不当な値下げ圧力を受けたりするような懸念も指摘されています。大臣の答弁にあるとおり、単一税率であれば、国民に多くの負担を強いるインボイス制度は導入する必要がありません。消費税率を単一税率にし、インボイス制度の導入は撤回すべきです。

 以上のような理由から、所得税法等の一部を改正する法律案に反対することを表明し、討論といたします。(拍手)

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 所得税法等の一部を改正する法律案に反対討論を行います。

 反対する第一の理由は、インボイス制度に関して設けられる激変緩和措置等が、導入前提の時限措置で、多くの免税業者にとって問題の先送りでしかないことであります。

 中小零細業者や建設業などの免税業者が取引から排除される懸念は、現実のものとなっています。取引先から課税業者か消費税分の値引きを迫る通知文書が各地で突きつけられています。インボイス制度の実施時期が近づくにつれて、シルバー人材センターを始め、道の駅などで販売する農家や、また、アニメ、漫画、俳優、声優などのエンタメ業界でも、深刻な影響が徐々に明らかになり、業界そのものが成立しないなどの告発が次々に起こり、インボイス反対の声は大きく広がっています。

 その結果、激変緩和措置や少額特例などの措置が本法案で盛り込まれましたが、課税業者になることを前提とする、問題の先送りにすぎません。小規模な事業者やフリーランスなど、数百万人の人々に多大な負担をもたらす本質に変わりはなく、インボイス制度そのものを中止すべきであります。

 第二に、岸田政権が当初述べていた所得再配分機能の強化に背を向けて、むしろ格差拡大を助長する所得税改正案も問題です。株式投資を促進するためのNISAの改正は、一人当たりの投資可能上限額を大幅に引き上げて一千八百万円とし、現行の二倍以上にするものです。

 これだけの規模の証券投資ができるのは、ごく一部の富裕層の金融資産保有者であり、優遇措置の拡大でしかありません。所得が一億円を超えると所得税負担率が下がる一億円の壁の是正策も、所得三十億円以上の二百人程度の超富裕層に僅かばかりの増税を課すだけで、とても所得再配分機能が強化したとは言えません。

 第三の理由は、税理士法の改正、税務相談停止命令制度の創設です。

 税理士でない者の税務相談を停止させる権限を財務相に、質問検査権を国税庁、税務署に与えるもので、命令違反には刑事罰が科されます。今回の改正により、おそれの段階で財務大臣等の曖昧な基準による強大な権限行使が可能になることは重大です。

 本来自由であるべき納税者同士の相談活動に国が介入できる仕組みとして拡大解釈されるおそれがあり、税金のことを学び合って申告する自主申告運動が潰されかねません。日本国憲法でもうたわれる申告納税制度の原理を踏みにじる本改正には反対です。

 第四に、研究開発減税による大企業優遇措置など租税特別措置の抜本的な改正を行わず温存することで、大企業の税負担率が中小企業よりも低い状況を改善されていないことも大きな問題です。コロナ禍でも積み上がる内部留保の実態を考えれば、大企業に応分の負担を求める法人税の改正が求められます。

 賛成できる項目もありますが、以上の理由から、本法案には反対します。

 以上で反対討論を終わります。(拍手)

塚田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 これより採決に入ります。

 所得税法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塚田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、中西健治君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。米山隆一君。

米山委員 それでは、ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 NISA制度の抜本的拡充に当たっては、制度の適切な広報・周知により利用の促進を図るとともに、長期的かつ小規模な投資による資産所得の形成支援という趣旨を逸脱した利用、例えば、短期の回転売買などを抑制するための対策を講ずること。また、「貯蓄から投資へ」の観点から、適切に金融資産の選択・運用が行われるよう国民の金融リテラシー向上に努めること。あわせて、市場の国債消化能力等の観点から、家計金融資産の動向を注視すること。

 二 「貯蓄から投資へ」の推進が資本逃避による円安を招くことがないよう、民間企業の賃上げや設備投資等を引き続き支援し、国内企業の生産性を向上することによって企業価値を高め、投資資金が国内企業へ十分に供給されるよう努めること。

 三 実質賃金が上昇しない中、物価の高騰が加速し、所得格差と資産格差が拡大しており、税負担の公平性確保や再分配機能を強化する観点から所得税の課税の在り方について検討を行い、その結果をもって必要な改革を実行するよう努めること。

 四 スタートアップへの再投資に係る非課税措置については、より多くの資金がスタートアップ企業をより柔軟に支援するための投資に充てられるよう、制度の利用状況及びその効果を踏まえ、必要に応じ適切な措置を検討すること。

 五 適格請求書等保存方式(インボイス制度)実施に当たっては、同制度に対してなお慎重な意見があることを踏まえ、免税事業者の取引からの排除や廃業という深刻な事態が生じないよう最大限の配慮を行うとともに、免税事業者が課税事業者に転換する場合の事務負担についても軽減されるよう努めること。

 六 高水準で推移する申告件数及び滞納税額、経済取引の国際化・広域化・ICT化による調査・徴収事務等の複雑・困難化、新たな経済活動の拡大、軽減税率制度実施等への対応など社会情勢の変化による事務量の増大に鑑み、適正かつ公平な課税及び徴収の実現を図り、国の財政基盤である税の歳入を確保するため、国税職員の定員確保、職務の困難性・特殊性を適正に評価した給与水準の確保など処遇の改善、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を払うこと。

 特に、社会的関心の高い消費税の不正還付防止への対応、国際的な租税回避行為や富裕層への対応を強化し、更には納税者全体への税務コンプライアンス向上を図るため、定員の拡充及び職員の育成等、従来にも増した税務執行体制の強化に努めること。

 七 新型コロナウイルス感染症をめぐる現状を踏まえ、国税職員を含む財務省職員の健康管理の徹底等、感染拡大防止に万全を期すとともに、必要に応じ迅速かつ適切な措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

塚田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塚田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣鈴木俊一君。

鈴木国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

塚田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

塚田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時二十七分散会


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