衆議院

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第7号 令和5年3月8日(水曜日)

会議録本文へ
令和五年三月八日(水曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      中山 展宏君    葉梨 康弘君

      藤原  崇君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    若林 健太君

      階   猛君    野田 佳彦君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    米山 隆一君

      藤巻 健太君    岬  麻紀君

      伊藤  渉君    山崎 正恭君

      前原 誠司君    田村 貴昭君

      吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣        井上 貴博君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   中村 英正君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    諏訪園健司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           伏見 啓二君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           坂  勝浩君

   政府参考人

   (農林水産省農産局農産政策部長)         松本  平君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           杉浦 正俊君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           恒藤  晃君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  津島  淳君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  宮路 拓馬君     津島  淳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長中村英正君、主税局長住澤整君、関税局長諏訪園健司君、農林水産省大臣官房審議官伏見啓二君、大臣官房参事官坂勝浩君、農産局農産政策部長松本平君、経済産業省大臣官房審議官杉浦正俊君、大臣官房審議官恒藤晃君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。道下大樹君。

道下委員 立憲民主党・無所属の道下大樹でございます。皆様、おはようございます。八時半ということで、初めてこのような朝早くから質問をさせていただきます。

 まず、関税定率法等の一部を改正する法律案なんですけれども、その中の暫定税率等の適用期限の延長に関して幾つか伺いたいと思います。

 まず、航空機部分品等免税制度について伺いたいと思います。

 この航空機部分品等免税制度というものは、日本国内における国産化が難しいだとか、あとは国内の航空産業等の競争力を高めるという目的で創設されている制度なんですけれども、この航空機部分品等免除制度は、昭和二十六年度に創設されてから、もうこれで約七十年間、そして、宇宙開発用物品の免除制度は昭和四十八年度から約五十年間、この暫定税率が設定され、継続されているわけでございます。非常に長いなというふうに思います。この間に、私は、国産化できないのかなとか、何か課題があるのかなというふうに思っているんです。暫定というものがずっと続いているわけですから。

 ということで、航空機部分品等免税制度について、国産困難な理由と国産化に向けた取組の有無などについて、今日お越しいただきました経済産業省より御説明をいただきたいと思います。

恒藤政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねがございました航空機部分品等免税制度は、航空宇宙産業の国際競争力の強化等を目的といたしまして、日本の航空機メーカー等が国内で調達できない部品等を海外から輸入する際にその関税を免除するものでございます。

 例えば、日本の航空機メーカーは海外の大型航空機の主翼などの機体部品を生産をし輸出をしてございますが、それに使用されますボルト等の一部の部品は海外製のものを用いてございます。これは、その航空機を開発した際に、海外製のボルトを使う形で航空機の安全認証を取得をしたため、今から国産品に変更するということが困難というような事情があるためというふうに承知をしてございます。

 また、ロケット等の宇宙機の部分品につきましては、ボルトや金属合金の板などが本制度を利用して輸入されてございますが、これは信頼性の高い部品を製造できる事業者や、安価にこうした部品を製造できる事業者が国内にいないといった事情などによるものでございます。

 経済産業省といたしましては、世界の次世代航空機への採用を目指しまして、CO2、二酸化炭素の排出量の少ない水素エンジンや、あるいは複合材についての研究開発を今進めてございます。こうした取組によりまして、将来の国内生産の更なる拡大を実現していきたいというふうに考えてございます。

 また、宇宙産業におきましては、重要な部品については国産化をしつつ、海外の安価な部品も活用し、競争力のある人工衛星あるいはロケットを開発をしていくということが重要と考えてございまして、引き続き、関係省庁とよく連携をし、鍵となる重要な部品やコンポーネントの国内での開発を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

道下委員 宇宙開発用物品に関しては、ちょうど昨日、我々の期待を込めて発射されたH3ロケットが残念ながら不具合によって指令破壊ということで、残念ながら失敗したということでございますが、当初の予定では、これから商業化を本当に目指して、二〇二九年度でしたっけね、それまで二十四回発射するというような計画があるということで、こういったことの、日本においてロケット技術開発、そして商業化、これを安定的にさせるためには、できる限り国内で宇宙ロケット等の部品の開発、製造というものを本当に進めなきゃいけないというふうに思っておりますので、こうしたところを是非、経済産業省のみならず、文科省など政府全体で取り組んでいただきたいというふうに思います。

 それから、航空機部分品ですけれども、最近では国内のメーカーが国産機を製造しようとして、これは残念ながら頓挫してしまったということで。ちょうどNHKの朝の連続テレビのでも、東大阪のねじ工場が航空機に使えるねじを開発しようとして頑張っていたんですが、これはなかなか難しかったということで。何か我々としてはもっと、私としてはこうしたところも、非常に壁は高いかもしれませんけれども、国産化も含めてこうしたことを積極的に進めていただきたいというふうに思っております。

 次に、個別品目の関税率の見直しについて伺いたいと思います。

 その中で、今回一つの例として挙げられたのがセルラーバンブーパネルについてです。皆さん、セルラーバンブーパネルって御存じでしょうか。よくドアなどに使われるんですけれども、竹細工を格子状にして、そしてそれを合板で合わせて、そしてドアやテーブルの天板などに使うというものなんですが、私、何だろうなと思ってこれを調べてみても、ネットでもなかなか出てこないんですね。

 それで、これは作られるのが東南アジアや南米などで作られているということなんですが、財務省にセルラーバンブーパネルの輸入額や国内における生産額について伺おうと思ったら、これは農林水産省、林野庁に聞いてくださいと言われて、私、林野庁に伺ったんですけれども、実はこのセルラーバンブーパネルは、二〇一七年から調査したところによると、輸入実績がないんですね。国内では、製造している会社はあるけれども、受注生産だというんですね。

 でも、一応関税が決められている。今回、HS委員会によって品目の分類が変更になることによってそれで関税が変わるから、これまでの関税率を維持するために、こうした税細分を新設し、現行の関税率を維持するということで。

 実際には影響はないんだけれども、こういったこともしなきゃいけないんだなというふうに、私は、輸入していないものについてもこういった取扱いというか法改正もしなきゃいけないんだなというふうに感じたことと、もう一つは、セルラーバンブーパネルについては輸入はしていないんですけれども、似たようないろいろな建具だとか家具だとか、そうしたものにはある程度関税がかかっているということを認識しているんですけれども、ここで財務省に伺いたいと思うんですが、そうした輸入される家具にかかる関税率について伺うとともに、それに付随して、建物、家などで使われるカーテンやテーブルクロス、カーペット、マットレスの関税率について、主な、主要な関税率について伺いたいと思います。

諏訪園政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのございました家具の関税率につきましては、例えば、金属製家具や木製家具など、大半の家具の実行税率は無税となっております。

 また、カーテンなどの実行税率につきまして代表的なものを申し上げますと、合成繊維製カーテンが五・三%、綿製テーブルクロスが七・四%、合成繊維製カーペットが七・九%、マットレスが三・八%となっております。

道下委員 ありがとうございます。

 輸入家具に関しては、WTOの協定だとか、あとはEPA締約国間の輸出入は、これは関税ゼロということが決まっているということを伺っておりますが、一方で、今、カーテン、テーブルクロス、カーペット、マットレス等は、国内産業の保護等を勘案して関税がかかっているというふうに思います。

 私がいろいろ伺ったところによると、今のように、輸入家具に関しては一部品目を除きゼロ%が多くて、高くても四%前後ということでございます。

 海外からの高級家具もありますけれども、原材料や人件費が安い国で製造し輸入される低価格の家具は、それでも、ベトナムだとかシンガポールとか、いろいろなところがありますけれども、そういったものはもう関税ゼロということで、日本国内における消費者にとっては非常に助かる一方で、国内の家具製造業を保護することも私は重要ではないかなというふうに思っております。全国にありますし、北海道にもこうしたすばらしい家具を製造されているメーカー、大きなところもありますし、中小もありますし、個人でやっているところもあります。

 この輸入家具への関税なんですけれども、今、例えばベトナムでは、国内の家具製造業の保護を目的に、二〇二二年十月中旬以降、一部の中国からの輸入家具製品に対して二一・四%から三五・二%のアンチダンピング関税を課すとする声明を発表しました。声明では、中国からのテーブルと椅子の輸入が大幅に増加して、ベトナム国内の家具製造業に損害を与えているからとしております。

 ただ、このベトナムの例はちょっと過剰かもしれないというふうに思いますが、こうした関税の目的というのの一つには、国内産業を保護するという役割があると思います。

 そうした点で、今回、セルラーバンブーパネルと関連して、家具の方もちょっと私も調べてみたんですけれども、政府として、国内家具産業保護という観点から、輸入家具関税の在り方について、財務省から見解を伺いたいと思います。

諏訪園政府参考人 先ほど御説明申し上げましたとおり、大半の家具の実行税率は無税となっております。これは、我が国としまして、WTO協定で無税を約束したものでありますので、原則として関税を課すことができませんが、例外的に関税が課せる場合としまして、ベトナムの事例、御指摘いただいたところでございますが、WTO協定に基づくアンチダンピング関税等がございます。

 このアンチダンピング関税につきましては、国内産業からの申請などに基づいて調査を行い、貨物が輸出国における国内販売価格よりも安い価格で輸入されており、それにより国内産業に損害が生じている場合に課税することができる制度でございます。

 財務省としましては、国内産業からアンチダンピング関税の課税を求める申請がある場合には、国内産業を所管される経済産業省などと緊密に連携して、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

道下委員 ベトナムの例は極端かもしれませんけれども、国としての一つの権限というか、他国との権限の一つは関税だというふうに思いますので、もちろん、関税ゼロにして、相互経済流通、国際的な経済流通を深めるということも必要かもしれませんが、一つは国内産業保護という観点も忘れずに取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 同様の観点から、今回、関税割当て制度について質問するに当たって、農林水産省からも来ていただいています。本当にありがとうございます。

 今現在、政府は、食料自給率について、目標四五%を目指しておりますけれども、現状は三八%と、残念ながら年々ちょっと下がっております。それに追い打ちをかけるように、農業に必要な燃油や肥料、飼料など生産資材が高騰して、国内の農家の多くが営農継続が困難な危機的状況にあるというふうに思います。

 国内農業者を保護する観点から、需給動向を勘案した関税割当て制度の適正な運用を図り、農業者が安定的に生産できるように政府は取り組む必要があると考えますが、農林水産省より見解と今後の方針について伺いたいと思います。

坂政府参考人 お答えいたします。

 関税割当て制度には、その割当て数量が国際協定により約束されたものもございますが、政府が割当て数量を決定しておりますいわゆる一般関税割当て制度についてお答え申し上げます。

 一般関税割当て制度は、需要者に一定の輸入品の供給を確保しつつ、国内の競合する品目の生産者を保護するとの観点から、国内生産に悪い影響を及ぼすことのないよう配慮いたしましてその具体的な割当て数量を設定しているところでございます。

 具体的な算定方法といたしましては、原則として、毎年度国内で見込まれる需要量から見込まれる生産量を控除し、前年度からの国内在庫も勘案した上で割当て数量を設定しているところでございます。このため、国内で生産される品は全て消費されるということを前提として、国内での需給動向を勘案した上で具体的な割当て数量を計算しておりますことから、一般関税割当ての数量設定が国内生産を圧迫することはないというふうに考えております。

 農林水産省といたしましては、引き続き、国内生産者の適切な保護に配慮しつつ、関税割当て制度の適正な運用に取り組んでまいりたいと考えております。

道下委員 ここで私がちょっと重視するのは国内における需給動向なんですけれども、今、国内における需要に対して国内の生産はこれだけですよと、まあ、少ないということで、国内の生産量は全て消費されますよ、足りない分を海外から輸入するよというのが関税割当て制度なんですけれども、私は、ここはしっかりと、国内の農業を、更に生産量を増やす、高める、そうしたことを政府一丸となって進めていく、国内の生産量を増やしていって、それでも足りない分は海外から輸入するべきだと思っているんです。

 それが自給率をアップさせることにもつながると思いますし、このままでいけば、本当に、私の地元の北海道でもいろいろな、まあ、酪農も含めてなんですが、政府の残念ながら減反政策というかそういったこともありますし、大規模農業を推進しておきながら、いきなりがらっと政策転換されて、多くの農家は今非常に厳しい状況に置かれているわけであります。

 そうしたことを考えると、私は、本当に今、ロシアによるウクライナ侵攻でこれだけ食料が高騰もしている中で、また、円安政策で海外からの食料品も上がっている中で、これはできる限り、国民の命とか健康とかを守るためには、日本国内で生産できる食料というものはもう可能な限り、最大限生産していくということが重要だと思います。だから、それに対して需要があって、そして供給力を高めて、それでも足りない分は関税割当て制度で対応していくというふうな方針を是非私は日本政府に取っていただきたいというふうに思います。

 次に、今回出ております、もう一つの、暫定税率の適用期限の延長等に関して、農林水産省が、糖価調整制度の目的に照らして、国内産の糖、砂糖ですね、てん菜だとかあとはサトウキビだとかありますけれども、それの支援に充当する調整金を拡大する方針であることなどを踏まえて、加糖調製品六品目の暫定税率を引き下げることとしたわけであります。

 現在、甘味料の使用量が増えて、てん菜糖など自然な砂糖の使用量が減少してしまっておりまして、北海道における製糖工場の合理化などが進められて、道内のてん菜農家や製糖会社は非常に厳しい経営を余儀なくされております。このてん菜の交付金単価の引下げや交付金対象数量の削減は、畑作物の輪作体系や製糖工場の存続にも大きな影響を及ぼすものでありまして、私は納得し難いというふうに思っております。

 一方で、砂糖在庫の累積や調整金収支の赤字が増加しているのは、コロナ禍による砂糖需要の大幅な減少の影響が大きく起因しているためでありまして、生産者だけに生産抑制を押しつけるのではなくて、国による調整金収支の赤字解消や在庫処理対策を講じててん菜が安心して作付できる対策を構築するとともに、将来に向けては、糖価調整制度の抜本的な見直しなどを検討することが重要と考えます。これは私の考えでございます。

 質問については、この加糖調製品六品目の暫定税率について、国内産糖業界を保護する観点からの見解と今後の取組について、農林水産省に伺いたいと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 北海道におけるてん菜や沖縄県、鹿児島県のサトウキビにつきましては、地域の経済、雇用を支える重要な品目であり、糖価調整制度に基づきまして、輸入粗糖から徴収される調整金を財源として、てん菜やサトウキビの生産者、糖業、製糖事業者に対して交付金を交付する支援を講じているところでございます。

 今回の加糖調製品に関します関税暫定措置法の改正内容につきましては、六品目の加糖調製品につきまして、TPP11協定税率の設定状況を踏まえ、暫定税率の引下げを行うことにより、加糖調製品から調整金収入を増加させ、砂糖と加糖調製品の価格差を更に縮小させることにより、国内産の砂糖の競争力の強化を図ることとしているところでございます。

 今後とも、毎年度、暫定税率の引下げの効果を検証しつつ、必要な対応を図ってまいりたいと考えております。

 また、委員からの御指摘がありましたように、糖価調整制度の安定的な運営を図る上において、砂糖の消費拡大は大変重要な課題と考えております。

 このため、農林水産省としましては、SNSなどを活用して砂糖に関する正しい情報を発信する「ありが糖運動」などを展開するとともに、令和四年度補正予算におきまして、輸入加糖調製品から国産の砂糖への切替えを促すための商品開発、販路拡大の取組などに対する支援を措置したところであり、これらを通じまして、てん菜糖を含めた国産砂糖の消費拡大に取り組んでまいります。

道下委員 是非、国内のそうしたてん菜農家や業界含めて、てん菜のみならず沖縄のサトウキビも含めてなんですけれども、こうしたところをしっかりと保護し支えていくという姿勢をほかのところにも、分野にも広げていただきたいと思いますし、本当に農林水産省、今は、地元の農畜産物をSNSでPRして、そして利用拡大につなげているなど、本当に取り組んでいただいていることには敬意を表したいと思いますので、是非今後とも進めていただきたいというふうに思います。

 次に、今回の関税定率法改正案のまた大きな一つの論点であります税関事務管理人制度の拡充について伺いたいと思います。

 今回の法改正案には、税関事務管理人制度の拡充が盛り込まれています。国内に住所等を有しない者、非居住者が税関事務管理人を定めていない場合、税関長が指定できることとなり、審査や事後調査の実効性を高めることができるというふうに財務省は記しているわけでありますけれども、私もそのように考えますが、関税等審査会においての議論を読みますと、税関の現体制で対応し切れるのかどうかという点も指摘されておりますし、私は、税関事務管理人制度が拡充したからといって、今まで起きている問題、課題が全て解消されるとはちょっと考えづらいなというふうに思っています。

 社会の変化だとか、今もう本当に輸入貨物が増加している中で、ちゃんと正しく輸出入している人もいるんですけれども、中には法の網目をかいくぐって輸出入するような人もいるというふうに思いますので、今回の制度見直しが実効性が十分に確保されるというふうに考えているのか、まだ不十分な点があると認識しているのか、見解と今後の取組について、財務省に伺いたいと思います。

諏訪園政府参考人 今年度の関税改正におきまして、非居住者から税関事務管理人の届出がない場合に、税関長が国内関連者を税関事務管理人として指定できる等の規定の整備を行うこととしておりますが、これは、近年、非居住者があらかじめ輸入しておいた貨物を国内でインターネット販売する場合などにおきまして不正な事案が散見されていたことに対応することを目的とするものでございまして、これにより、非居住者に対する輸入通関時の審査や事後調査等の実効性が高まるものとまず考えているところでございます。

 そして、これに加えまして、令和五年度の関税改正におきましては、急増する輸入貨物への対応として、政令上の輸入申告項目に、通販貨物に該当するか否か、国内配送先などの項目を追加することとしております。これにより、通販貨物等の特定を可能とし、税関において、貨物の類型を考慮したリスク管理を行い、めり張りのある審査、検査を実施していくこととしております。

 税関では、これらの取組により、急増する輸入貨物への対策を進めるとともに、国際的な商流、物流の変化、経済社会全体のDX化の急速な進展といった環境の変化に対して、引き続き、迅速かつ的確に対処してまいりたいと思っております。

道下委員 私がちょっと懸念に思うのは、税関事務管理人を税関長が指定して、その後、事後調査ができるということになっていますけれども、事後調査のときにこの指定した人がいなくなったりしたらどうなるのかなというふうにちょっと思ったんですね。だから、完全ではないというふうに私は思うんですけれども、その点について、今後の取組において検討いただきたいというふうに思います。

 次に、税関が発足してから昨年、二〇二二年で百五十周年を迎えられたということであります。コロナ禍の巣ごもり需要により輸入増加は今後も継続される見込みだと思いますし、さらに、水際対策が緩和され、今後は海外との人々の往来が急増するとも思います。訪日外国人旅行客への必要な体制整備やスムーズな通関処理体制の強化、経済安全保障上の脅威への対応、消費税の不正還付取締り、不正薬物や金地金などの密輸の取締り強化など、税関業務の重要性はますます高まると思います。税関事務管理人制度の拡充によっても、税関職員の事務負担増加が懸念されております。

 今後、更なる税関職員の定員確保、拡充が必要と考えますが、財務大臣に見解と今後の取組について伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 税関業務を取り巻く昨今の環境でありますが、道下先生の御指摘のとおり、越境電子商取引の拡大に伴います輸入貨物の急増、不正薬物押収量の七年連続一トン超え、水際措置の緩和に伴います訪日外国人旅行者数の増加、そして経済安全保障上の脅威の高まりなど、多くの課題に直面をしております。

 今般の改正法案におきましても、越境電子商取引の拡大に伴います輸入貨物の急増への対応といたしまして、税関事務管理人制度の拡充を盛り込み、御審議をいただいているところであります。

 こうした課題に対応するため、税関におきましては、より一層効率的、効果的に業務運営を進めていくこと、人員の適正配置を行いつつ、更なる人員確保等必要な体制整備を図ることが重要であると考えております。

 この点、業務運営の観点といたしましては、税関職員の負担軽減や税関業務のより一層の高度化、効率化を図るため、AI等先端技術の活用など、税関業務のDXの推進に取り組んでおります。

 その上で、人員確保の観点といたしましては、税関の定員について、令和五年度予算において百四人の定員増を計上しております。

 今後も、業務運営の見直し、効率化等を最大限に進めるとともに、必要な税関の体制整備に努めてまいりたいと考えております。

道下委員 令和五年度は百四名で、令和四年度は百三名ということでございますので、前年度と比べて一名増えたということでありますので、是非、今財務大臣が答弁された中身、私は、これから本当に、ますます、人と物の往来というのは増えていくというふうに思いますし、DX化等が、あとは様々な経済の技術の開発、又は通信もそうですけれども、そうしたことによって、本当にありとあらゆるものが今まで以上にスピードアップ化されて行ったり来たりすると思うんです。そうしたときには、もちろんAIとかも必要ですけれども、やはり人の目とか経験とか、そういったことも重要だと思いますので、そうした意味では、税関の体制整備というのは、継続的に、そして中長期的な視点を持って取り組んでいただきたいというふうに要望しておきますので、よろしくお願いします。

 次に、今回、関税定率法ということなので、一つ貿易のことに関連して、ちょっと次の質問をさせていただきたいと思います。経済制裁下における対ロシア輸出についてでございます。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、欧米諸国とともにロシアのウクライナ侵攻に対して非難と即時停戦を求める姿勢を示すために、日本も欧米諸国とともに経済制裁を行っております。

 しかしながら、例えば日本からロシアへの自動車輸出、これは特に中古車なんですけれども、これは急増しているということでありまして、ロシア経済やロシア国民への経済制裁の効果は薄いのではないかというふうに専門家が警鐘を鳴らしております。

 更なる自動車輸出制限の必要性を含めて、政府の認識と今後の取組について伺うとともに、あわせて、日本や欧米諸国の企業がロシア国内での生産、販売事業から次々と撤退しているにもかかわらず、ロシアへのロシアの周辺国を通じた正規ルートではないルートでの並行輸入が増加して、ロシア国内では以前と変わらず海外製品やブランド品が流通しておりまして、ロシア国民はロシアに対する各国の非難姿勢や経済制裁の影響を感じているようには見えません。

 こうした状況に対して、経済制裁で連携している各国との検討、議論も含めて、政府の認識と今後の取組について経済産業省から伺いたいと思います。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が国は、ロシアによるウクライナ侵略に対しまして、G7等と連携して制裁その他の経済的措置を行っております。

 制裁の効果につきましては、こうした制裁措置等によりまして、ロシアでは、物価の上昇、外国企業の撤退や操業停止、自動車等の鉱工業生産指数の低下、そして財政の悪化など、様々な影響が出ていると承知しております。

 また、我が国からロシアへの輸出額につきましても、昨年三月以降、前年比で減少が続いております。

 こうした経済制裁につきましては、委員御指摘のとおり、米国やEUなどと連携しながら実施しているところでございますけれども、乗用車につきましては、G7首脳が、プーチン大統領を支えるオリガルヒ等による奢侈品、ぜいたく品の入手を困難とする旨、合意したことを受けて、昨年実施したものでございます。

 具体的には、例えば、欧州では五万ユーロを超える価格の乗用車が規制対象となっておりますが、我が国は、こうしたことも踏まえまして、昨年四月五日より、六百万円を超える乗用車について輸出を禁止するという措置を取っております。

 今後のことでございますけれども、先日、二月二十四日のG7首脳声明におきましても、対ロシア措置の遵守と実施の強化ということを含めまして、協調していくことの重要性に言及しておりまして、G7を始め、国際社会としっかりと連携しながら適切に対応してまいりたいと考えております。

道下委員 まだまだ経済制裁は十分ではないと思います。プーチン大統領の周辺の人たちのオリガルヒへの影響も考えてということだと思いますが、北海道も含めて全国から中古車がばんばん輸出されていて、かつ、ロシアのルーブルの価値が今上がっているんですね。かつ、日本の円は円安ですから、逆に、本当に、日本の特に中古自動車が買いやすくなっているんですね。

 こうした点を考えると、私が先ほど指摘したとおり、残念ながら、本当は、ロシアのウクライナ侵攻を止めるためにはロシア国内からの声を上げてもらう必要がある。そうしたときには、ロシア国民の方々に経済制裁の影響を感じていただいて、そして、プーチン大統領にウクライナ侵略を止めてほしいという声を上げてもらう必要があるというふうに私は思うんです。私は、こういった点をもっと強調して、強く強化していただきたいというふうに思います。

 時間が来てしまいました。この後の質問で、井上財務副大臣など、答弁していただく予定だったのに、申し訳ございません。他の政府参考人の皆様、どうも済みません。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、関税定率法等の一部を改正する法律案に、立憲民主党会派を代表して質問をいたします。

 まず、加糖調製品等に係る関税の取扱いについて伺います。

 お配りした資料、これは、作成は農林水産省ですが、財務省の配っていただいたものにもあったと思うんですが、財務省の説明ですと、国内産糖への支援の原資金となる調整金拡大のため、暫定税率を引き下げるとのことでございます。

 一方で、調整金支給実務を担っております独立行政法人農畜産業振興機構の発表しております調整金収支によりますと、四百四十八億円程度の累積赤字を計上しているとのことでございます。

 まず、調整金金額の決定の仕組みを見る限り、お配りした資料、この緑の四角のところは、これは相互に同じ面積であるはずなんですね。これは国内産糖のシェアが書いていないですけれども、国内産糖と輸入糖を合わせたもののうち、国内産糖のシェアが三七%で、これが調整率になりますので、この緑色の四角は面積は同じということで、そうしますと、調整金徴収額と交付額は同額になるはずですので、通常はプラマイ・ゼロになるはずなんですけれども、なぜこれほどの巨額な累積赤字を呈しているのか、これを御教示ください。

松本政府参考人 お答えいたします。

 砂糖につきましては、糖価調整法に基づきまして、海外から輸入される安価な原料糖から調整金を徴収するとともに、これを財源としてサトウキビやてん菜の生産者、製糖事業者に対し交付金を交付することにより内外価格差を調整する糖価調整制度により、国内での砂糖の安定生産を確保しているところでざいます。

 近年、消費者の低甘味嗜好ですとか人口減少等を背景としまして砂糖の消費量が大きく減少している中、輸入原料糖の減少に伴って調整金収入が減少しており、このことが主な要因となって、糖価調整制度の調整金収支は悪化しているところでございます。

米山委員 事前通告したにもかかわらず、その答えは回答になっていないんですけれども。

 といいますのは、幾ら輸入量が減っても、正しく調整率とシェアが一致していれば、必ず緑色のところは一致しますので。要するに、調整金徴収額が減っても交付金が減るので、マイナスにならないはずなんです。何でこれだけ、四百四十八億円の累積赤字を計上しているのか、その理由を伺っております。

松本政府参考人 お答えいたします。

 委員からお示しいただきました、まず、調整金というものが横書きになっているもの、これが輸入糖から徴収する調整金でございます。これに対しまして、調整金支出としまして交付金として支出しますもの、これにつきましては、国内の生産を維持する観点から事前に調整金の数量を決めておりますので、要するに、左から右に行くものにつきましての差額が生じるということから、調整収支が悪化するということになっております。

米山委員 事前にレクをしてくださった担当者の方はちゃんと分かっておられたのに、答弁者の方が分かっておられないというのは非常に残念なことなんですけれども。

 それはそうなんです。ただし、調整金を決めたとき、要するに、国内産糖のシェアで調整率を決めるわけですよね。そのときに交付金は確かに決定されます。その後に、調整金が前年どおり、要は、輸入量が前年どおり維持されれば、それは予定どおり同額になるからプラマイ・ゼロになるんです、私が説明するのもおかしいんですけれども。それが、毎年毎年、継続的に減少しているから、毎年毎年、前年に決めた調整率と実際に徴収する額が必ずマイナスになるから、これだけの金額が赤字になっているんです。

 事前のレクでもそのように担当者の方は言っておられたので、当然、そういうことがなければこれだけ赤字にならないんですよ。毎年毎年の輸入額の差額ぐらいだったらプラマイ、プラマイになるから、こういうふうに累積にならないんです。そういうふうにちゃんと、答弁されるんですから合理的に御答弁いただかないと、ちょっと困っちゃうといいますか、政府、大丈夫ですかという気持ちになるんですけれども。

 私がもう答えましたけれども、もう一度伺います。何でこんなに累積赤字を計上しているんですか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 毎年の外国から入ってきます輸入糖の数量が減っているという状況から調整金に充てる収入が減るということから、調整金収支が悪化しているということになります。

米山委員 いや、まあいいんですけれども、毎年継続的に減少していて、決め方の問題で、前年とこの年が、毎年毎年ほぼ同じように減少してしまうからなるというのが重要だと思うんですよ。単に減っているからずれているということじゃなくて、本来プラマイ・ゼロになるはずですから。ちょっと、分かっていらっしゃるのか分かっていらっしゃらないか不明で、非常に、何というか、農水省、大丈夫ですかと思いますけれども。

 じゃ、次の質問に行きますけれども、今般、一%関税を引き下げて、その分、調整金収入が上がるということですが、それは、そもそもどのぐらい調整金収入が上がり、そのうちどのぐらいが累積損失の解消に使われて、そのうちどのぐらいを今度は交付金の増加に使われるのか。概算で結構ですので、もちろん、次の年のことは分からないわけですからそれは概算ということになるんですけれども、概算で結構ですので御教示ください。

松本政府参考人 お答えいたします。

 加糖調製品からの調整金収入につきましては、徴収対象となる加糖調製品の輸入数量や価格によって変動するものでございます。

 そこで、これらの数量や価格を前年のデータとするなど一定の前提を置きまして、今回の暫定税率の引下げによる調整金収入の増加分を試算しますと、約三から四億円程度と見込まれるところでございます。

 また、この調整金の徴収につきましては、砂糖勘定の累積損失の解消ではなく、国内砂糖の競争力強化を目的とするものであり、輸入原料糖の調整金の軽減と国内産糖等への交付金の支援に充当し、砂糖と加糖調製品の価格差の縮小を図っているところでございます。

米山委員 結局、これは三億円程度なわけですよね。それが交付金に行って砂糖農家への支援に回るということ自体はいいんだろうと思うんですけれども、同時に、今ほどお話があったように、確かに、制度上、調整金は全部交付金にやるという制度でしょうから、累損の補填には使われないんでしょうけれども、逆に、先ほど、結局、御答弁されずに私が解説しちゃったみたいな話なんですが、元々レクされた内容ですからね、解説しちゃったみたいな話ですけれども、構造的にずっと減り続ける状況では、この累損はずっとずっとどんどん蓄積していくわけですよ。

 政府機関みたいなものですから、別の法人ですけれども、政府機関みたいなものだからひたすら国庫から穴埋めするのであるといえば、それはそれでいいのかもしれませんが、それは、やはりもう四百四十八億も累積赤字があるので、これはどうするんですかというのは考えなきゃいけないと思います。

 一方で、砂糖、これは商品となっている砂糖ですね、商品になっている砂糖は、昨年十二月一日に業界トップのDM三井製糖が三%の値上げをしており、二〇二一年からの累計でもう一五%程度上昇しております。この砂糖の上昇そのもの、また、砂糖が使われている多くの加工品、それはもうケーキから何から、チョコレートから全部使われているわけですので、多くの加工品の値上げによって家計及び事業者が圧迫されております。

 この関税の引下げは砂糖の販売価格の引下げの効果があるのか否か、御答弁ください。

松本政府参考人 お答えいたします。

 輸入加糖調製品から徴収しました調整金につきましては、輸入原料糖の調整金軽減と国内産糖等への交付金の財源に充当することなどを通じまして、国内で生産される砂糖の競争力強化を図っているところでございます。

 令和四砂糖年度におきまして、輸入原料糖の調整金を原料糖一キログラム当たり三・九円軽減しているところでございます。これによりまして、輸入原料糖相場の高騰や資材費の上昇などによる砂糖価格の上昇を抑制し、砂糖の需要確保につながっているものと考えるところでございます。

米山委員 結局、この調整制度が一定程度、少なくとも国内の製糖業界、製糖業者の方々をちゃんと保護するという前提では、砂糖の価格の値下げに寄与しているわけでございます。

 一方、先ほど言ったとおり、累損は構造的にたまっておりまして、しかも、恐らくですけれども、さすがにこれから急激に何か砂糖の需要がV字回復するということはないでしょうから、そうしますと、この累損はひたすらたまっていくということになります。

 そうしますと、結局、このままいってしまいますと、制度を維持できるのか。だって、さすがに累損が一千億とかになったらどうするんだという話になってくるわけですので、そのままいってしまうと維持がかなり困難になってしまうのではないかという懸念がございます。

 その懸念に対しまして、農水省として、今後の御展望を伺います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 砂糖の消費量が減少する中、輸入糖の減少に伴いまして調整金の収入が減少することなどによりまして、糖価調整制度の調整金収支が大幅に悪化している現状でございます。糖価調整制度の安定的な運営を維持するためには、輸入糖と国産糖のバランスを確保することが必要と認識しておるところでございます。

 このため、例えばですが、北海道畑作におきまして堅調な生産が続いているてん菜などにつきまして、その一部を、ポテトチップスですとかポテトサラダ用の加工用バレイショ、あと、豆類などの需要のある作物に転換を進めることにより、調整金収支の均衡を図ることとしているところでございます。

 このことに加えまして、引き続き、砂糖の需要拡大の取組を進め、糖価調整制度の安定的な運営が維持されるよう必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

米山委員 おっしゃるとおりなのかなと思います。

 この砂糖調整制度、TPPで例外として認められた。まあ、日本外交の勝利なのかもしれないんですが。

 それは、いろいろな御意見はあるんでしょうけれども、少なくとも、なかなかほかの作物に転換することはできないという中で、砂糖農家を守りつつ、しかし、それを一定程度、やはり消費者の利益も守るということであると、こういう、ある種、苦肉の策的な糖価調整制度というのは必要なんだと思うんですけれども、それはどう見てもといいますか、どう見ても、輸入糖からお金をもらって、この緑の四角を、そういう趣旨も込めてこの資料は作成されているんだと思いますけれども、輸入糖によってお金を稼いだというのはおかしいですけれども、もらったお金を支援に使っているということですので、両方が成立しないと成立しないものだということだと思いますので、是非そこは、もちろん国内の砂糖農家さんをしっかり守りながらではありますけれども、適宜なバランスを取っていただけることを私からもお願いさせていただきます。

 次に、今般も暫定税率として維持されております豚肉の差額関税制度について御質問いたします。

 この差額関税制度、関税率に関しましては今回、暫定税率でまた維持ということなんですけれども、差額関税制度自体は対象となっておらず、御承知のとおり、この制度は、WTO加盟国では日本の豚肉が唯一、日本が唯一じゃなくて日本の豚肉が唯一という本当に珍しい、極めて特殊な制度となっております。

 そんな豚肉の関税制度を知らない方がほとんどだと思いますので、配付資料を見ていただければと思うんですが、こういう変わった形の関税のかけ方になっておりまして、そうすると何が起こるかというと、一番関税率の低いところで、高い部分と低い部分の肉を併せて輸入するということが行われます。これの、併せて輸入するのをコンビネーション輸入とも言われておりまして、しかも、これは税関が公認しておるという状況になっております。

 ところが、それはコンビネーションでちゃんとやっていれば、まあ本当にいいのかどうか、本当にコンビネーション自体が立法趣旨に合っているのかと言われると、かなり怪しいと思うんですが、いずれにせよ、税関が黙認している状況で、本当にやるならそれはそれでいいんでしょうということになるんですけれども、実際には、高い部位が必要だけ入っていない。要は、安いものばかり輸入して、でもこれは実は単価が高いんですと言って関税を免れるということで、結構巨額な関税法違反の摘発が何度もなされているわけです。

 だから、一方でこれは違反でもある。やり方を間違えると違反になる。間違えて違反になった場合には、それはちゃんと摘発しているわけなので、そうしますと、それは、公正な税関行政という建前からは、こういった違法輸入は取り締まらなきゃいけないと思うんですが、どのような取組をされているのか、教えてください。

諏訪園政府参考人 お答えいたします。

 豚肉の差額関税制度の運用につきましては、一層適正な通関を確保する観点から、平成二十四年四月に関税局長通達を発出し、豚肉の輸入申告に係る審査、検査の充実などを図っているところでございます。

 具体的には、豚肉の輸入に係ります申告価格の妥当性をより一層慎重に審査するため、通関時に単価設定の妥当性を客観的に証明する資料の提出を求めることにより書類審査の充実などを図るとともに、輸入の許可後に輸入者等の元に赴いて帳簿書類を調査する輸入事後調査の充実などを図っているところでございます。

 こうした取締り強化の結果として、平成二十四年四月以降、合計で約二百五十五億円の輸入豚肉に係る関税脱税事犯を六件告発するなど、厳正な取締りを実施しているところでございます。

米山委員 今ほど、皆さん余り知らなかったと思いますが、二百五十五億円とおっしゃいましたが、というぐらい、何とそんな巨額な脱税が起こり得る。これは結構異常なことなわけなんです。

 しかも、正直に、まあ農水省が認めるとは思いませんけれども、要するに、本当に意図的にやっていたら、それは本当にいけないことなんだと思うんですけれども、豚肉の値段というのは時々刻々変わっちゃうので、高いヒレ肉と腕肉とかをコンビネーションで合わせて単価五百二十四円にしたところで、後で変わっちゃったみたいな、そういう、本人的にはそんなに悪気がない違反事案もあるとは仄聞するところです。そこはどこまで悪気があるのかという問題になりますけれども、もっとセーフティーマージンを取ればよかったじゃないかみたいな話はあるんでしょうけれども、そういったものもあると仄聞します。

 この根本的な問題は、豚肉が部位ごとに分類されていない。HSコード、入管のときに、これはどういう品目で、それがどういうふうに当たるのかというHSコードが振られているんですけれども、牛肉なんかはもちろんちゃんと、ヒレ肉と腕肉とか、もも肉とか、違うHSコードが振られているんですが、何と豚肉は全ての肉が同じHSコードということでございまして、それが根本的にこの原因になっているといいますか、元々、税関、農水省共々、この不可解なやり方を黙認するためにそうしていると言われてもやむを得ないんだと思うんです。

 HSコードというのは、別に、全く交渉せずに、交渉なく日本国内だけで決められるものですので、税率が全部同じだって構わないので、これは、違反の摘発に努めているということでありましたら、部位ごとにちゃんとHSコードを決めたらいいんだと思うんですけれども、それを決めるおつもりはあるかないか、御答弁をお願いします。

諏訪園政府参考人 輸入貨物の分類につきましては、豚肉も同様でございますが、HS条約に基づくHS品目表の分類に準拠した上で、関税率の設定や貿易統計の把握などのために、必要な品目について我が国独自の細分を設定しております。

 その上で、豚肉の輸入につきましては、通常の輸入申告の審査時に提出を求める書類に加えまして、単価設定の妥当性を客観的に証明する資料の提出を求めているところでございます。これにより、豚肉の輸入に係る申告価格を慎重に審査しているため、不正輸入の防止の観点から豚肉の分類を部位ごとに分ける必要性は低いものと考えております。

米山委員 これが、もはや完全に矛盾しているわけですよ。

 単価設定の妥当性を調べるためには、それは、妥当性というのはどういうことかといいますと、全部の肉を見て、妥当かなんて分かるわけないでしょう。ヒレ肉は幾ら、腕肉は幾ら、全部合わせて、それぞれの比率でこうなっているから、これは妥当かと調べているわけですよ。調べていながら品目コードはつけていないという、もうめちゃめちゃなことをやっていらっしゃるわけなんですが、それはもういいです、言ってもしようがないですから。

 ただ、ちなみに、TPP11発効から五年が経過して、この五年後、差額関税制度は、農水省は残ると言いますけれども、事実上、少なくともこの形ではない形になる、ほとんど撤廃と言っていい状況になるんですけれども、これを差額関税制度が残っていると言っても残っていないと言っても構わないんですけれども、いずれにせよ、十年後、大きくこの関税制度は変わるんですが、そのとき国内生産者に与える影響をどのように考えるか、御答弁をお願いします。

伏見政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11等により、豚肉の関税は二〇二七年度までに従量税では一キログラム当たり五十円まで段階的に削減されることとなっておりますが、関税削減による国内豚肉生産への影響については、現地の相場や為替等により変わると考えております。

 現時点では、国内の豚肉の価格も堅調に推移しており、国内生産への影響は確認できておりませんが、農林水産省といたしましては、今後も関税削減が進むことを踏まえ、豚肉の輸入動向などを注視してまいります。

米山委員 そういう答弁になるんでしょうけれどもね。

 ちなみに、配付資料二ページを見ていただきますと、要は、十年後どうなるかというと、下のように、割に、まあ、ちょっと線も上がっていますけれども、普通だなという税金のかかり方になるわけなんですよ。

 恐らく、確かにおっしゃるとおり、現在でも、みんなコンビネーションで、高いところだろうが低いところだろうが課税最小額のキログラム二十三円の関税しかかかっていないのが、安い部分、基本的には安い部分が輸入されるわけですからね、安い部分がむしろキログラム五十円になるので、恐らく国内生産への影響はないです。

 逆に言うと、今、この不可解な差額関税制度を、しかも世界で一、これしかないという差額関税制度を使っている理由は正直ないはずです。しかも、これによって、先ほど言いましたように、実は、豚肉業者は、輸入業者は物すごい大変なことをしているわけなんです。いろいろな肉を詰め合わせて五百二十四円ぴったりにして、しかも後になってそれが変動したら巨額の追徴課税をされて、しかも場合によっては刑事告発までされるという、訳の分からないリスクを負いながらやっているわけなんです。

 これは、元々の発祥としては、それは確かに、こういう豚肉を守らなきゃいけないという状況の中で苦肉の策的にできたものであること自体は経緯としては理解するんですけれども、こういう不合理な制度はさっさと、それはあと五年待てばなくなるって、なくなるんでしょうけれども、さっさとなくすことを私はお勧めいたします。

 さらに、なくすために大して難しいことをする必要はなくて、実はHSコードをちゃんとつけるだけということですので、いろいろおっしゃられましたけれども、それこそ税関の皆さんが、こういう不合理な制度を残すことによって自分たちの仕事を増やしているところがあると思いますので、そこはちゃんと合理的な制度をつくっていただければと思います。

 次の質問に移ります。

 次の質問は、恐縮ながら、関税の話をちょっと外れまして、家族関係支出、話題の支出の話にさせていただきたいと思います。というのは、これからのやはり答弁について、いろいろ、この問題を放置していいのかという話だと思いますので、これを御質問させていただきます。

 まず、前提としてですけれども、我が党の馬場議員の質問に対して岸田総理が、家族関係支出は二〇二〇年の段階でGDP比二%を実現しています、そして、それを更に倍増しようではないかということを申し上げているわけですと、はっきりと予算委員会で答弁されました。

 このとおりだとしますと、GDP比四%、二十兆円ほどになり、追加で十兆円の予算が必要になります。

 一方で、二月十六日に磯崎官房副長官が、将来的な倍増を考える上でのベースとしてGDPに言及したわけではない、子供予算を更に強化することにより、防衛費との関係において決して見劣りするわけではないという趣旨を申し上げたと述べて、さらに木原官房副長官は、出生率が上がってくれば倍増が実現される、効果がなければいつまでたってもできないとおっしゃられ、さらに田村元厚労大臣は、規模感、次元が違うということを表現する象徴として倍増という言葉を使われたとおっしゃられており、政府答弁、非常に迷走しております。

 こういうふうに、言葉、何言っているのか分からないということですと、私もこれから御質問できませんので、ちょっとやはりこれはきちんとしていただきたいと思います。

 そこで、鈴木大臣に伺います。

 例えば、仮にですが、今、令和五年のこども家庭庁の予算、これは四・八兆円でございます。これを例えば令和十年に倍増しますと、お幾らになりますか。恐縮ですが、お答えいただけますか。

鈴木国務大臣 仮定のお話として、令和十年度は倍増すると何兆円になるかということでありますが、仮定の御質問でありますが、あえてお答えすれば、令和五年度のこども家庭庁の予算額は四・八兆円でございますので、機械的に二倍をすれば九・六兆円程度になると承知しております。

米山委員 二倍って、機械的以外にはできないんだと思うんですけれども。文学的に二倍ってできないんだと思うんですけれども。

 また、本当に簡単な質問で恐縮なんですけれども、再三恐縮ですが、逆に、令和十年にこども家庭庁の予算が七・二兆円だったとします。仮定の話で恐縮ですが、七・二兆円だったとします。これは令和五年度予算に比べて倍増しておりますでしょうか。大臣の御答弁をお願いします。

鈴木国務大臣 これも仮定を置いての御質問でありますが、あえてお答えを申し上げますと、令和五年度のこども家庭庁の予算額は四・八兆円であることから、仮に令和十年度のこども家庭庁の予算額が七・二兆円となった場合、こども家庭庁の令和五年度予算額に対して二倍の予算額とはなりません。

米山委員 おっしゃるとおりでございます。

 さらに、大変これも恐縮ながら、更に伺わせていただくんですけれども、先ほど、今の四・八兆円を倍増すると九・六兆円になるとおっしゃられました。では、令和十年度の子供予算、こども家庭庁の予算が九・六兆円になっていたといたします、仮に。しかし、これも仮にで恐縮ですが、事実と違う仮定の話で恐縮ですが、仮に令和五年度予算が六兆円だった場合、つまり、令和五年度予算が六兆円で令和十年の予算が九・六兆円だった場合、これは令和五年度予算に比べて倍増していますでしょうか、いませんでしょうか。お伺いいたします。

鈴木国務大臣 これも仮定を置いたお話でございますが、あえてお答えをいたしますと、令和十年度のこども家庭庁の予算額が九・六兆円で、かつ、令和五年度予算額が六兆円だった場合、二倍の予算額とはなりません。

米山委員 本当にこれは大変失礼な質問をしてしまったとは思うんですけれども、指摘するまでもないことなんですけれども、例えば令和十年に予算が九・六兆円になったら、それはすごい規模感なわけですよ。それはもう九・六兆円って大層な額なわけです。だって、増やした後の防衛費と匹敵するわけですから。でも、五年度予算が六兆円だったら、それは倍増じゃないわけです。また、七・二兆円に増やした、それはすごい規模感だと思いますけれども、しかし、それは、今年、五年度予算が四・八兆円ですから、やはり倍増じゃないわけなんです。

 だから、倍増と言えるからには、それはもう本当に言うまでもないことだと思うんですけれども、倍って二倍のことなので、通常の日本語では。それは、今の予算があって、倍増した後の予算があって、それを、まさにおっしゃられるように機械的に比較して二倍だから、二倍と言えるわけなんです。

 そうでない以上、何度も何度も何度も聞いても一切元の予算もその後の予算も答えられない以上、岸田総理が言った倍という言葉は、田村厚労大臣がおっしゃられたとおり、根拠のない象徴であった、今後、岸田総理が倍と言った場合には、それは常に、機械的な二倍という意味ではなくて、たくさんだと。つまり、岸田総理の言うように、倍はたくさんという意味で捉えるということでよろしいでしょうか。大臣の御所見を伺います。

鈴木国務大臣 御指摘の二月十五日の予算委員会での岸田総理の答弁につきましては、総理御自身がその趣旨を二月二十二日の予算委員会において説明されたと承知をしております。

 そして、子供政策に関係する予算をどう見るかについては、様々な見方があるんだと思います。家族関係社会支出以外にも、令和四年度におけます、少子化社会対策大綱に基づく少子化対策関係予算は国費で約六・一兆円、令和五年度のこども家庭庁関連予算は国費で四・八兆円など、様々な整理があるところであります。

 そういう中で、総理は繰り返しまして、まずは今必要とされる子供、子育て政策をしっかり整理した上で、その予算の倍増に向けて大枠を示すと答弁されておりまして、総理が答弁しているとおり、まずは子供、子育て政策の整理をして、その上で、社会全体での費用負担の在り方の検討と併せて子供政策を充実していくものと考えているところでございます。

米山委員 これ以上押し問答するつもりはないんですけれども、今の御答弁は、要するに、総理は、機械的な計算ではなく、全く何をどうするのか分からない上で倍と言ったということでございますので、しかも予算委員会、国会の場でそうおっしゃられたので、今後、岸田総理の倍増という言葉は全て、たくさんというふうに私は考えさせていただきます。

 ところで、鈴木大臣も同じだといたしますと、なかなかこの場での審議は成立しないんだと思うんです。鈴木大臣がもしこの場で倍にしますと言ったら、そんな子供予算みたいな巨額なものでなくて、例えば砂糖調整金を倍にしますと言ったときに、いや、それはたくさんという意味ですと後で言われちゃったら質疑は成立しませんので、鈴木大臣がこれから、今までも含めてなんですけれども、倍増と言った場合には、岸田総理と同じように、それはたくさんという意味なのか、先ほど、私の最初の質問でお答えいただいたように、機械的に二倍という意味なのか、御答弁をお願いします。

鈴木国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたが、岸田総理は、まずは今必要とされる子供、子育て政策をしっかり整理した上で、その予算の倍増に向けて大枠を示すと答弁されておりまして、今の時点での政府の見解であるわけであります。私も、閣内におる者の一人といたしまして、同じ見解を持っているところでございます。

 子供政策に関係する予算には様々な整理がありまして、政策の内容を詰めなければ倍増の基準等を申し上げることはできないと考えています。まずは子供、子育て政策として充実する内容を具体化し、六月の骨太方針までに将来的な子供、子育て予算倍増に向けて大枠を示していくものと承知をいたします。

米山委員 済みません、今の御答弁はなかなかなんですけれども、そうすると、鈴木大臣がたった今おっしゃられた倍増というのは、機械的に二倍という意味なのか、たくさんという意味なのか、どちらか。どちらかでお答えください。

鈴木国務大臣 これは、どちらかともお答えすることは今の時点ではできません。

 先ほど申し上げましたとおり、六月の骨太の方針に向けて、将来的な子供、子育て予算の倍増に向けての大枠をお示しするということでありまして、まさに今その作業をしているところでございまして、政府の見解は先ほど来申し述べているところであります。

米山委員 これは、私も失笑してしまいましたけれども、それはちょっと失笑で済む話ではなくて、要するに、どちらとも言えないということは、すなわち、少なくとも機械的な二倍ではないと認めたということだと思います。だって、どちらか、機械的に二倍するという意味なら二倍と言えるわけですからね。

 つまり、大臣もこの場で、私が言っている倍増というのは二倍という意味ではなくてたくさんという意味だとおっしゃられた。それって日本語として成立しないんですけれども、今後もそういうふうに日本語としてちょっとあり得ない言葉を使われて答弁されるということでよろしいですか。

鈴木国務大臣 何か私の発言の言葉の、ちょっと言葉遣いが悪いかもしれませんが、言葉尻を捉えられての御質問だと思いますが、要するに、今お答えできますのは、政府の方針として、小倉大臣の下で三月までに今必要な子供政策に関わるものをたたき台として取りまとめる、それを六月の段階で骨太の方針としてお示しをする、その中で、そうした必要なものに対する予算、それの倍増に向けての大枠を示すというのが今の時点での政府の立場でございますから、お答えできるのはそれ以上でもそれ以下でもないということであります。

米山委員 確認しますけれども、言葉尻じゃないんですよ、本当に。これは大事なことなんですけれども、確認したものを、今分からないけれども、確認したものをともかくめくら判で二倍にするという意味なのか、それとも、二倍かどうか分からないけれどもたくさんにするという意味なのか、どっちか答えてください。

塚田委員長 鈴木財務大臣、既に持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 六月の骨太の方針をお示しする段階においては必要な子供政策というものをお示しをして、それに関わる予算の倍増についての大枠をお示しすることができるんだと思います。

米山委員 時間なので、結構です。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次回は、来る十日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前九時四十分散会


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