衆議院

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第9号 令和5年3月15日(水曜日)

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令和五年三月十五日(水曜日)

    午前九時十分開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 青山 周平君 理事 井林 辰憲君

   理事 越智 隆雄君 理事 中西 健治君

   理事 宗清 皇一君 理事 櫻井  周君

   理事 末松 義規君 理事 住吉 寛紀君

   理事 稲津  久君

      石井  拓君    石原 正敬君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      大野敬太郎君    金子 俊平君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      塩崎 彰久君    津島  淳君

      中山 展宏君    葉梨 康弘君

      藤原  崇君    八木 哲也君

      若林 健太君    階   猛君

      野田 佳彦君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    道下 大樹君

      米山 隆一君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        井上 貴博君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  栗田 照久君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           長井 俊彦君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

三月十五日

 理事青山周平君同日理事辞任につき、その補欠として越智隆雄君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

三月十五日

 株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)

 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)

 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事青山周平君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に越智隆雄君を指名いたします。

     ――――◇―――――

塚田委員長 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総合政策局長栗田照久君、総合政策局審議官堀本善雄君、監督局長伊藤豊君、財務省主税局長住澤整君、国税庁次長星屋和彦君、農林水産省大臣官房審議官長井俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。塩崎彰久君。

塩崎委員 おはようございます。愛媛一区の衆議院議員の塩崎彰久でございます。よろしくお願いします。

 昨日は、靖国神社で標本木が開花をいたしまして、東京も桜の開花宣言が行われました。

 一方で、世界の金融業界はまさに春の嵐といった様相でございます。週末、十日にはアメリカのシリコンバレー銀行が経営破綻をいたしまして、十二日にはニューヨークのシグネチャー銀行が事業停止。どちらも、アメリカの金融破綻、歴史上二番目、そして三番目の規模の破綻でございます。

 資産残高が二千億ドルもある金融機関がなぜ突然破綻したのか。その見方については諸説ございますが、巷間言われているのは、一つは、金融の大幅な、急激な引上げによって、保有していた米国債が値下がりをした、そこに来て、預けをしている企業が資金需要によって引き出しを図ったところ、含み損が発生してしまったというところでございます。まさに流動性の問題から破綻をしたと言われているわけでございます。

 アメリカの財政当局そしてFRBは、週末にかけて対応策を発表いたしました。銀行タームファンディングプログラム、BTFP、こう呼ばれる流動性供給のプログラム、こちらを発表いたしまして、ドッド・フランク法で定められている預金保護の二十五万ドル、これを超えて、全預金者の預金を保護するということを発表をしております。

 そこで、財務大臣にお伺いしたいと思います。

 日本でも現在、低利の日本国債を大量に保有している金融機関は多くあると理解しております。今回アメリカで起きたようなことが日本でも起きないのかと心配に思っている方は多いのではないかと思います。そうしたことについての財務省としての見立て。また、万が一そうしたことが起きたときに、今回アメリカが取ったような、預金保護の上限を超えたような流動性供給の枠組み、こうしたことについて、あらかじめ議論し、準備をしておく必要がないか。こちらについて、大臣の所感を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 現在、経営破綻をいたしました米国の銀行について、情報収集に努めているところでございます。

 シリコンバレーバンクにつきましては、そもそも、資金流出が起きやすい、大口の法人預金が多いという預金構造であったところ、保有債券の売却損と急激な預金流出が生じる中で資金繰りが行き詰まり、経営破綻に至ったもの、そのように承知をいたしております。

 この点につきまして、日本の銀行については、一般的に小口の個人預金が多く、シリコンバレーバンクなどとは状況が異なる面がある、そのように認識をいたしております。

 また、米国等での金利上昇に伴い、日本の金融機関が保有する有価証券の評価損益は外国債等を中心に悪化をしておりますが、一方、株式の含み益などの影響もありまして、昨年十二月期決算を見ますと、銀行の有価証券の評価損益全体はプラス、つまり評価益が出ていると承知をしております。

 日本の金融機関は総じて充実した流動性、資本基盤を維持しておりまして、金融システムは総体として安定していることも踏まえますと、シリコンバレーバンクの経営破綻のような事例が日本で起きる可能性は現時点で低いと考えております。

 また、そうした場合の、万が一の場合の備えについてでございますが、シリコンバレーバンクのような破綻が生じた場合の備えにつきましては、我が国では、過去の金融危機等に対処するために整備されてきた充実した破綻処理制度があります。具体的には、預金保険法に基づき、通常の預金定額保護による破綻処理に加えまして、信用秩序の維持等の必要がある場合には、破綻時あるいは破綻前でも、預金全額保護の下で銀行を公的に管理することができる枠組みが整備されております。

 また、アメリカが創設した、中央銀行による金融機関への流動性供給プログラムのような枠組みが必要ではないかという御質問につきましては、現時点で、我が国の金融システムは総体として安定しておりまして、そうした流動性供給が必要な状況ではないと認識をしております。

 いずれにいたしましても、日本銀行において、金融機関の日々の資金不足に対処する流動性供給制度を適切に運用しているものと承知をしているところであります。

塩崎委員 破綻した二行と日本の金融機関、構造的に必ずしも同じではないということを伺いまして、少し安堵したところでございます。

 さて、金融システムの健全性、信頼性を確保する、この重要性について触れましたが、今、日本が取り組んでいるのが、デジタル化による決済の高度化でございます。

 全銀協では、昨年十一月に、手形・小切手機能の「全面的な電子化」に関する検討会を開始をいたしました。特に、この中で、手形そして小切手の利用、これは企業に書面、押印、対面、これを伴う非効率な業務を発生をさせておりまして、産業界でも年間で七百億円のコスト削減が電子化によって進められるのではないかというふうに言われております。

 二〇二一年六月の成長戦略実行計画において、小切手の全面的な電子化を図るというふうにされておりますが、実は、この小切手の削減がなかなか進んでおりませんで、昨年でいいますと九%程度しか進んでいない。このままではなかなか計画が達成できないのではないかというふうに言われております。

 この小切手の電子化が進まない理由につきまして、金融庁に見解をお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 小切手の電子化に関しましては、金融業界では、二〇二一年七月に手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画を策定いたしまして、取組が進められているというふうに承知をしております。

 委員御指摘のように、事業者にとっては、紙の小切手から、主な代替手段となるインターネットバンキングに移行することで、事務負担の削減や現物管理に係る紛失、盗難リスクの軽減につながるといったメリットがあるというふうに考えておりますが、一方で、小切手の電子化に向けた課題といたしましては、取引先との関係で決済手段を変更しづらいといった商慣習、それから、パソコン等の操作への不安、インターネットバンキングのセキュリティーに対する不安といった声が挙げられているものというふうに承知をいたしております。

塩崎委員 現在の商慣行、そしてインターネットバンキングに対する不安が原因というところでございますが、これは何とかやはり進めていかないと、日本の金融決済システムの高度化というのは進まないのではないかというふうに危惧をしております。

 余談になりますけれども、私が司法試験を受けた頃には、商法の中で手形・小切手法というのがございまして、よく問題文の中で、小切手をおっことしてしまった当人がいかに悲惨な末路をたどるかということをさんざん論文で書いたことでございます。

 こうした取引の安定性の観点からも、やはり電子化というものを、今の時代、進めていく必要があるのではないかと強く思っているところでございます。

 もう一つ、このデジタル化の関係で大事になってまいりますのが、全銀EDI、この仕組みの導入でございます。

 御案内のとおり、今、銀行の送金電文、こちらについては、日本では、半角二十桁の固定長電文、これが長く使われてまいりました。しかし、やはり半角二十桁ですとどうしても織り込める情報量が限られるということで、海外などでは銀行送金電文ではXML電文というものが使われておりまして、このXML形式にすることによって、送金情報に、どういう振り込み、どういう売買に伴う取引なのか、こういった情報を付加することができるようになります。

 現在、中小企業では、毎月月末に平均五時間、経理担当者の方が腕まくりをして、伝票の消し込み作業というものをやっていらっしゃるわけでございます。こうした作業が不要になるのが、このZEDIのXML電文の導入でございます。

 二〇一八年の未来投資戦略では、二〇二〇年までに送金電文の全面的XML化を着実に実現する、そのために金融界、産業界、関係省庁が連携すると書かれております。二〇二〇年まで。現在、二〇二三年でございます。

 今、全取引件数の、ZEDI対応しているのは〇・〇一%にとどまるということでございます。なぜこの導入が遅れているのか、金融庁の見解をお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 全銀EDI、ZEDIは、御指摘のとおり、二〇一八年の十二月、企業間の決済を効率化させる目的で設けられたところでございますけれども、受取企業においては売掛金の消し込み作業等の事務効率化に資する一方で、支払い企業においては導入のメリットが乏しい、それから、ZEDIに対応した会計ソフトが普及していないといったような理由から、広く利用が進んでこなかったものと承知をしております。

 他方で、電子インボイスの普及を契機とした全銀EDI、ZEDIシステムの利活用促進に向けた関係事業者による取組を政府としては後押ししていきたいというふうに考えているところでございます。

塩崎委員 ありがとうございます。

 やはり、電子化の取組については、業界任せにしないで、これは政府としてもしっかりと後押しして、この電子化を進めていくべきではないかというふうに考えております。

 例えば、ZEDIにつきましては、今、政府が発注している様々な公共調達とか事業、こういう官公需もあるわけでございます。例えば、まず率先してこういう官公需でZEDIを導入してXML電文で送金をしていく、こういうローンチカスタマーとしての役割なんかも考えられるのではないかと思いますが、小切手、そしてZEDIの電子化、こういったものを進めていくにつきまして、財務大臣、是非心意気をお伺いできればと思います。

鈴木国務大臣 塩崎先生御指摘の小切手の電子化や全銀EDI、ZEDIの普及は、企業の生産性向上などの観点から重要な取組である、そのように認識をいたします。そのためには、企業や金融機関などの各関係主体において、決済手段だけでなく、取引の受発注から決済に至るプロセスを一気通貫でデジタル化していく取組が重要となると考えています。

 こうした観点から、金融庁といたしましては、知見を持つ金融機関に対しまして、取引先企業におけるデジタル化の取組の支援を促しているところであります。

 また、官公需取引のデジタル化につきましては、デジタル庁を中心に進められている契約、決済プロセスの改革の中で検討されているところであり、金融庁もそれに参画をすることで、決済手段のデジタル化をしっかりと後押ししてまいりたいと考えております。

塩崎委員 ありがとうございます。

 官公需取引のデジタル化についても言及をしていただきまして、是非、こうした点から政府が実践して、行動を通じて業界に変革を迫っていく、そうしたリーダーシップをますます発揮していただきたいなというふうに思っております。

 「春風や闘志いだきて丘に立つ」、これは私の地元の高浜虚子の句でございますが、是非、鈴木大臣にこれからもますますリーダーシップを発揮していただきまして、金融業界の健全性、強靱化、これを進めていただければと思います。

 以上、私から期待とエールを込めまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久です。

 それでは、早速、通告に従いまして、順次質問をしてまいります。

 まず、最初の質問は、国税納付のデジタル化ということについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 二〇二二年分の確定申告が三月十五日まで実施をされていて、二〇二一年分の確定申告では、百五十三万人がスマートフォンを使い、e―Taxで申告するなど、普及が進んでいます。

 昨年十二月一日からは、所得税や贈与税といった国税について、スマートフォンの決済アプリによる納付が可能となりました。これまで、自動車税などの地方税で導入例はありますが、国税としては初めての制度ということで、アプリで決済をすると手数料がかからないとか、あるいはまた、ポイントが付与されるといったメリットもあります。一度に納められる上限は三十万円、このように承知をしております。

 そこでお伺いしたいのは、コンビニでの納税は二〇二一年度には二百四十七万件の利用があったということでありますが、決済アプリによる納付はどのくらいの利用件数を見込んでいるのかということが一つ。それから、これにより国税納付のデジタル化が更に進んでいく、このように思っておりますが、政府は本件の意義をどのように認識をして、今後、デジタル化を進めるに当たって、どういった手段を考えているのか、検討しているのか、お伺いします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 令和四年十二月一日に利用開始いたしましたスマートフォンの決済サービスを利用した国税の納付、いわゆるスマホアプリ納付につきましては、令和五年二月末現在で約五万三千件利用していただいているところでございます。

 スマホアプリ納付は、スマートフォンを利用して電子申告をした納税者にとりまして利便性が高い納付手段でございまして、特に確定申告期におきまして、個人の納税者の方に利用していただいているところでございます。

 なお、スマホアプリ納付の利用見込みについて、確たることを申し上げることは困難でございますが、スマホアプリ納付は取扱上限金額を三十万円としておりまして、令和三年分確定申告において、スマートフォンを利用して電子申告し、三十万円以下の納税額が発生した納税者の方は約三十五万人ございますので、こうした納税者の方はスマホアプリ納付を利用することができるのではないかと考えてございます。

 それから、二つ目の御質問でございますが、スマホアプリ納付の導入は、国税の納付のキャッシュレス化を一層推進するものでございまして、納税者の利便性の向上や、現金管理等に伴う官民のコストの縮減に資すると考えております。

 国税庁におきましては、e―Taxを利用して申告した後に簡単に納税できるダイレクト納付、インターネットバンキング、さらにはスマホアプリ納付など、デジタルを活用した納付手段の普及に向けまして、日本銀行、金融機関及び地方公共団体等の関係者と緊密に連携し、利用勧奨や周知、広報を推進していくこととしております。

 国税の納付のデジタル化につきましては、今後とも、納税者のニーズを踏まえまして、納付手段の機能改善を図るなど、利便性の更なる向上に取り組んでまいりたいと考えております。

稲津委員 国税納付のデジタル化については、今お話し、御答弁いただいたように、いろいろな手法があるのは存じておりますが、この決済アプリ、三十五万件程度かなというお話が、答弁ありましたが、私は、先ほど申し上げましたように、非常に利便性は高いと思っておりますので、是非、この決済アプリ納付をしっかり進めていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 次は、事業者向けの二者間ファクタリングについてですけれども、今、コロナで大変疲弊した経済がコロナ前に戻りつつあるということで、今後の経済活動が活発になってくるだろう、このように期待をいたしています。そうした状況の中で、突発的な資金需要が発生した場合の中小零細事業者が、正規の貸金業者ではなくて、二者間ファクタリングと呼ばれる業者を利用する傾向が高まっているという傾向。正規の貸金業者ではなくというのはちょっといろいろな異論があると思いますけれども。

 二者間ファクタリングの手数料は年利換算で数百%にも及び、利用する中小零細企業も資金調達手段として現実には利用していることから、このビジネスモデルは、場合によっては闇金融ではないか、こういうふうに指摘をする学術論文も散見されるわけです。

 こうした一部で違法性が指摘される二者間ファクタリングにおいて、債権を譲渡した中小零細企業が回収した代金をファクタリング業者に支払わない場合、業者はその売り掛け先に直接、売掛金の回収を行うこととなっている。もし、この売り掛け先が消費者の場合、ファクタリング業者は当然、売り掛け先となっている消費者に回収をするわけでございますが、もちろん、ファクタリング自体は決して違法ではなくて、資金調達の一つの手段であることは間違いありませんが、その上で申し上げると、このファクタリング業者には法律の規制がないということから、貸金業法で禁じられている回収行為も行えることになる。

 こうした現状をどのように認識しているのか、また、今後どういった対応をされていくのか、見解をお伺いします。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるファクタリングにつきましては、法的には債権の売買でございまして、その実態から見て貸金業に該当すると判断されるものを除きまして、貸金業法の規制は適用されないというふうに承知をしております。また、ファクタリング業者の中には、厳しい取立てを行うなど、不適切な行為を行っているという者がいることも耳にしておるところでございます。

 現在、金融庁におきましては、ファクタリングを装って違法な貸付けを行う業者につきましては、金融庁ホームページですとかSNSなどを通じて、代表的な手口などについて注意喚起を行うとともに、無登録営業に関する情報を得た場合には、捜査当局とも連携しながら、実態把握、警告を行うなどの対応を行っております。その他の追加的な方策につきましても、貸金業法の運用を通じて、実態調査に努める中で、必要な対応を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

稲津委員 今、大事な答弁をいただいたと思います。この件について実態調査を行っていくということでございますから、こうしたいわゆるファクタリングを装って貸金登録のない闇金業者が闊歩、はびこることのないように、しっかり今こそ手だてを打っていくべき、このように思っておりまして、実効性のある実態調査を進めていただくことをお願いをさせていただきます。

 次は、政府、日銀共同声明、いわゆるアコードについてなんですけれども、第二次安倍政権発足直後の二〇一三年の一月、政府、日銀は、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」と題して、共同声明、いわゆるアコードを公表した。以来、政府と日銀の緊密な連携が継続されている、このように認識をしています。

 そして、黒田現総裁が二〇一三年四月に就任し、この十年間、このアコードに従って、いわゆるデフレ脱却に向けても取り組んできたということ。ただ、この十年間で、経済状況も金融市場も、これは当然ですけれども、いろいろな形で変わってきている。そして、同時に、政府の役割、日銀の役割についても様々な課題も生じてきたということ。

 私は、特に物価高への対応を今やはり、現下、考えていかなきゃいけないんだろう、それから、個人的には、持続的な賃金の上昇についてもアコードに盛り込むべきではないか、このようなことを考えておりますが、いずれも喫緊の課題であると思っています。

 異次元緩和の出口戦略を含む市場との対話や、政府、日銀の政策連携の在り方を始め、内容の再検討をした上で、この十年という節目、また、四月には新たな日銀総裁が誕生するという節目、政府、日銀の共通目標としてのいわゆる新たなアコードを策定すべきではないか、このように考えておりますが、大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 共同声明の取扱いでございますが、これにつきましては、新しい総裁とも議論する必要があると考えておりまして、その内容を含めまして、具体的に申し上げることは時期尚早であると考えております。

 なお、賃金上昇の重要性については、政府、日銀共に共通の認識を持っておりまして、具体的には、現行の共同声明の下でも、日銀は、国民経済の健全な発展に資することを理念として、これまでも賃上げを伴う物価安定目標の実現に取り組んでいると承知をしております。

 また、四月九日に就任予定の植田新総裁も、実質賃金を含め、賃金の上昇は日本銀行にとっても非常に重大な関心事と発言しておられるところであります。

 一方で、現行の共同声明において、政府は、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に推進することとされておりまして、まずは物価上昇を超える賃上げの実現を目指すとともに、賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、それが更なる賃上げを生むという好循環をつくり上げる、すなわち構造的な賃上げ、この実現を目指してまいりたいと思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 やはり、賃金上昇、これを持続的にどう行っていくかというのは最重要課題だと思っていますので、私もそれを今聞かせていただいて、大臣からも御答弁ありました。具体的なアコード等についてはこれからのことになりますので、是非、今後も、しっかり改めて質疑を深めていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 次は、金融リテラシーの向上についてですけれども、まず、基本方針の方向性についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 日本の金融資産の五五%近くが、御存じのとおり、現金、預金で占めているということ、家計の金融資産の伸びもなかなか伸びてこないということも指摘されているということで、家計の安定的な資産形成を促して資産所得の増加につなげていくことも一つの課題であると思っています。

 そのためには、金融事業者の顧客本位の業務運営の確保、そしてもう一つが、やはり金融リテラシーの向上は欠かせないのだ、私はこのように思っておりますが、今国会で、政府から金融商品取引法等の一部改正案が提出をされておりますので、詳細は法案審議の際に種々質疑をさせていただきたいというふうに考えています。

 この金融リテラシーの向上のところで何点か伺っていきたいと思いますが、まず、資産形成の支援に関する施策を総合的に推進するための基本方針を政府が策定することとしておりますが、どのような目的で、また、どのような内容の方針となるのか、伺っておきたいと思います。

鈴木国務大臣 今般の法案では、金融リテラシーの向上を含む国民の安定的な資産形成の支援に関する施策を国全体として総合的、計画的に進めていくため、政府が国家戦略としての基本方針を策定することとしております。

 この基本方針には、安定的な資産形成の支援に関する施策の基本理念のほか、その具体的施策として、NISA等の関連する制度の利用促進に向けた取組や金融経済教育推進機構等が実施する金融経済教育の取組、これらを行うために必要な調査及び研究に関する事項、関係する国の機関、地方公共団体及び全銀協や日証協等の民間団体等の連携協力等が盛り込まれることとしております。

 金融庁といたしましては、この基本方針を基に、広く官民が協力しながら、家計の資産形成に必要な施策を推進していきたいと考えているところであります。

稲津委員 ありがとうございました。

 通告していた質問がまだ二問ぐらいあるんですけれども、時間が参りましたので以上で終わらせていただきますが、是非また、今後とも、今日質疑をさせていただいたことを前提に、更にまた深めていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

塚田委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。

 本日も、貴重な質疑の時間、誠にありがとうございます。

 それでは、早速質問の方に移らせていただきます。

 先ほどもあったんですけれども、シリコンバレーのビジネスエコシステムの中核を担ってきたシリコンバレーバンク、SVBが十日に経営破綻をいたしました。

 まず、この影響、日本経済にも及び得るのか、どのように分析しておられるのか、大臣のお考えをお聞かせください。

鈴木国務大臣 経営破綻をいたしました米国の銀行につきまして、情報収集に努めているところでありますが、シリコンバレーバンクにつきましては、そもそも、資金流出が起こりやすい、大口の法人預金が多いという預金構造であったところ、保有債券の売却損と急激な預金流出が生じる中で資金繰りが行き詰まり、経営破綻に至ったもの、そのように理解をいたしております。

 この点、我が国の地域銀行につきましては、一般的に小口の個人預金が多く、シリコンバレーバンクなどとは状況が異なる面がある、そのように認識しております。

 また、米国等での金利上昇に伴いまして、日本の金融機関が保有する有価証券の評価損益は外債等を中心に悪化をしておりますが、一方、株式の含み益などの影響もありまして、昨年十二月期決算を見ますと、地域銀行の有価証券の評価損益全体はプラス、つまり評価益が出ている、そのように承知をいたしております。

 日本の金融機関は総じて充実した流動性、資本基盤を維持しており、金融システムは総体として安定していることも踏まえますと、シリコンバレーバンクの経営破綻のような事例が我が国で起きる可能性は現時点で低いと考えております。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、引き続き、金融機関に対しては有価証券運用を含め適切なリスク管理体制の構築を促していくとともに、内外の経済金融市場の動向が金融システムの安定性に与える影響を注視をしていきたい、そのように考えております。

藤巻委員 おっしゃるように、SVBと日本の銀行、預金構造は違うと思うんですけれども、SVBが経営破綻した理由としては、金利の上昇に伴って保有債券の含み損が膨らんだということも非常に大きな主因であると思うんですけれども、仮に、日本でも、金利が上がった後、日本の地銀など、やはりこれも、日本の地銀も債券をかなり保有しているとは思うんですけれども、日本の金利が上がった場合、同じような理由から、日本の多くの地銀が経営危機、経営破綻するような事態というのは想定されておるのでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 今大臣からも御答弁ありましたとおり、シリコンバレーバンクと日本の特に地域銀行につきましては、預金の構造でございますとか、流動性の状況、財務基盤の状況、かなり異なっているというふうに考えておりまして、こうした観点から、現時点において同じような状況が起こるということは私ども想定しておりませんけれども、ただ、これも先ほど大臣から御答弁ありましたように、引き続き、私ども、監督、検査、いろいろな手段を講じて金融機関の実態についてよく把握していきたいというふうに考えております。

藤巻委員 今、日本の国債十年、利回り〇・五%程度なんですけれども、これが仮にアメリカと同じ程度の四%程度になったと仮定すると、日本の地銀、何行中何行ぐらいが債務超過、経営危機になるんでしょうか。お答えください。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 金利の上昇が金融機関の経営、財務にどのような影響を与えるかという点でございますけれども、これは有価証券全体の含み損益の状況、個別のでございますね、それから有価証券運用、リスク管理体制がどのようになっているか、それから預貸利ざや、これは貸出しの方の金利の問題もございますので、こうしたところにどういう影響が出るかというような様々な要因によって決まってまいりますので、一律に、金利が上がったときにどういう影響が出るかということはなかなかお答えがしづらいんですけれども、いずれにしても、特定の仮定に基づいて個々の金融機関の経営状況についてお答えをする、仮定をするということは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 他方で、仮に長期金利が上昇した場合、バランスシートの健全性の観点からは、有価証券の評価損益を悪化させるということはございますけれども、貸出しの運用、先ほど申し上げたように、利回りの改善を通じまして、中長期的には収益にプラスの影響を与えるという面もございます。

 先ほど申し上げましたけれども、金融庁といたしましては、今後の国内外の経済金融市場の動向、それから、これが日本の金融機関にどのような影響を与えるかということを、必要に応じて、金融機関に対してリスク管理体制をしっかりしてくれということも引き続き申し上げながら、注視をしていきたいというふうに考えております。

藤巻委員 おっしゃっていることは分かるんですけれども、もう少し具体的なお答えが欲しいというか。

 では、仮に、もろもろの、諸々の条件を同一と仮定した場合、今〇・五が、短い期間で〇・五が四になったと仮定した、諸条件が一緒で利回りが上昇した場合、バランスシート的に、正確な数字はいいので、大体どれぐらいの、何割とかいう数字でもいいんですけれども、どれぐらいの銀行に大きなダメージがあるか、財務状況が厳しくなるか、これぐらいだったらお答えいただけますでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりまして大変恐縮でございますけれども、様々な、先ほど申し上げたように、貸出金利の上昇、それから、金利がどういう時間軸で上がっていくのか、これに対してどのような対応を金融機関がしていくのかということとも密接に関係をいたしますので、なかなか一律に、その計算をしてお答えするということは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

藤巻委員 お答えは難しいということだったんですけれども、やはり、金利が上昇していくと、恐らくかなりの多くの日本の銀行も債務超過に陥るというようなことが予想されます。

 仮にそのような事態が起きれば、シリコンバレーバンク一行が破綻した、そういうようなレベルではない、もうとんでもない事態が想定されるとは思うんですけれども、大臣の、そういう事態は想定されていないとは言ったんですけれども、仮に、金利上昇に伴って地銀の複数行が、たくさんの銀行が債務超過、経営危機に陥った場合、どのような御対応を想定されているのか、大臣、お答えいただければと思います。

鈴木国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたとおり、今回のシリコンバレーバンクの預金構造等が違いますので、直ちに日本の銀行等に影響を与えるとは考えていないところでございますが、しかし、何か楽観をしているということではないわけでありまして、金融庁として、今後、国内外の経済金融市場の動向、それから日本の金融機関に与える影響等についてしっかりと注視をしていくとともに、必要に応じまして、金融機関に対しまして有価証券運用等に関する適切なリスク管理体制の構築を促すというようなことは適切にやってまいりたいと思っております。

藤巻委員 楽観することなく、預金構造が違うから大丈夫だ、アメリカの話だから日本には余り影響はない、そう考えるのではなく、〇・五から四%に金利が上昇するなんということは容易、十分にあり得る話です。もしそうなったら、日本経済のまさに有事、日本の金融システムの危機だと思いますので、金利が数%上昇することというのはしっかりと想定して当然に備えるべきことだと思いますので、そこはしっかりと認識して、起こり得る有事というものに備えていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、話はちょっと大分変わるんですけれども、今度は競馬の払戻金、いわゆる当たり馬券に係る税金について、ちょっと議論させていただければと思っております。

 競馬の払戻金に対する税金、どのような課税が適切であるか。この七、八年ほどでも、四回ほど最高裁まで裁判が行われております。報道でも大きく取り上げられたのですが、この裁判における大きな争点は、競馬の払戻金、当たり馬券の払戻金、これが一時所得に該当するのか、それとも雑所得として認められるのか。つまりは、外れ馬券が経費として認められるのかということでございます。

 ぴんとこない方もいるかもしれませんが、簡単な例でお話しさせていただくと、年間、仮にですよ、ちょっと大きいですけれども、三百万円馬券を買いました。そのうち百万円が当たったと仮定します。この人は、年間トータルで二百万円損しているんですけれども、二百万円損しているにもかかわらず、当たった百万円にも課税するというのが今の税制となっております。トータルで損をしている人に、更に少し当たって取り返した分にも課税をしていく、追い打ちをかけるように課税をしていく、これが今の税制になるんですけれども、これが株だったらこんなことはあり得ません。年間トータルで損していれば税金はかかりませんし、その損を翌年以降に繰り越して、次の年の利益から控除して税金を減らすこともできます。

 こういう状況を鑑みると、競馬の払戻金に係る税制、余りにもひどくないでしょうか。株のように分離課税と言わないまでも、せめて外れ馬券は経費として認めていただけないでしょうかというのが先ほど挙げた裁判の争点でございます。

 この裁判、先ほど言ったように、この七、八年で四回ほど行われたんですけれども、結果は二勝二敗。二件は外れ馬券が経費として認められ、二件は認められなかったわけです。この二件の違いは、回収率が一〇〇%を維持しているか、そういうところに分岐点があるのかなと思っているんですけれども、いずれにせよ、競馬の払戻金に係る税制は、ほかの税制と比べて不公平感がありますし、外れ馬券が経費として認められるのか認められないのか、曖昧、不透明な部分も多くの人が感じております。

 このまま事例ごとに毎回裁判をするのでしょうか。裁判をするというのは、納税者にも、国税側にとっても当然大きな負担となってしまいます。また、税の原則である簡素、中立、公正の公正に反する面もあると思います。競馬の払戻金に係る今の税制、本当に問題はないのでしょうか。大臣、お考えをお聞かせください。

鈴木国務大臣 競馬の払戻金に係る所得につきまして、国税当局におきましては、それが一時的、偶発的な所得であり、一時所得に区分される場合には、外れ馬券の購入費用は収入を得るために直接要した経費とはなりませんが、他方、営利を目的とした継続的な行為から生じたものであり、雑所得に区分される場合には、収入を得るために直接要した経費に含まれるものとしていると承知をしております。

 ただし、一時所得の場合は、所得の計算において五十万円の特別控除額を控除する、税額の計算におきまして所得の二分の一に相当する金額を課税対象とするなど、税負担への配慮が行われているところであります。

 このように、一時所得と雑所得の間で一方的な不公平が生じているものではなく、それぞれの所得の性質を踏まえて異なる課税方法が取られているもの、そのように承知をしているところでございます。

藤巻委員 おっしゃるように、営利を目的とする継続的行為をするならば雑所得として認める、つまりは外れ馬券を経費として認めるというのは国税の通達も出ているんですけれども、じゃ、営利を目的とする継続的行為とは何かという話なんですけれども、簡単に言うと、ソフトウェアを使用して、年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入して、さらに、年間の収支がプラスになる、これをもって営利を目的とする継続的行為といっているんですけれども、はっきり言って、こんな人はほぼいません。特殊な、極めて特殊な人です。

 ソフトウェアを使用していなくても、あるいは全てのレースで馬券を購入していなくても、営利を目的とする継続的行為と判断するのは日本語的にでも自然だと思いますし、営利を目的とする継続的行為の結果、収支マイナスになってしまうということも十分にあると思うんですけれども、いわゆるこの解釈、ソフトウェアを使用して、年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入して、さらに、年間の収支がプラスにならなければならない、この極めて厳しい要件の下ならば外れ馬券を認めるというのが国税の解釈になるんですけれども、果たして、この極めて特殊な解釈、極めて狭い解釈、これはどうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 このハードルが高いという話でありますが、これも、過去二件示されました、四件のうち二件でありますが、最高裁の判例に準じているということでございます。

 過去の最高裁判例におきましては、所得税法上、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分をされているということ、雑所得に該当するか否かは、行為の期間、回数、頻度などの態様や利益発生の規模、期間などの状況等を総合的に考慮して判断するのが相当とした上で、馬券の払戻しに係る所得について雑所得に該当すると判断したものである、そのように承知をしております。

 その上で、国税当局としても、こうした最高裁の判例を踏まえまして通達を改正してきたところでありまして、適切に対応しているものと考えているところであります。

藤巻委員 その二件というのは、先ほど申し上げたように、かなり特殊な例ならば何とか外れ馬券が経費として認められるという、かなり特殊な例になってしまうのかなというふうに思うんですけれども、そもそも、なぜ外れ馬券が経費として認められないのか。

 昔は、競馬場に行けば、そこら中に外れ馬券が落ちています。その外れ馬券を拾って、これは自分が買った外れ馬券だと申告されてしまえば、その真偽を測るのは難しい、確認するのは難しいという理由で、外れ馬券を経費として認めることができないというような話を聞いたことはあります。

 昔であったならそんなことは起こり得たと思うんですけれども、現代であれば、しっかりとした、例えば馬券購入管理アプリのようなものを何か使えば、馬券購入の管理は簡単にできますし、適正に外れ馬券を管理することもできます。

 例えば、こういう、アプリのようなものを使って、適切な確定申告をして、適切な外れ馬券の管理をすれば、外れ馬券を経費として認めることに十分な合理性はあるかと思うんですけれども、税の公平性からも、適切に購入を管理して適切に申告をすれば雑所得として認める、そういったお考えはないでしょうか。

鈴木国務大臣 この前のお答えとかぶる部分があって恐縮でございますが、所得税につきましては、所得の性格等に基づき、一時所得、雑所得等の所得区分が設けられておりまして、それぞれの所得区分に応じて課税方法が定められているところであります。

 この点、馬券の払戻金については、最高裁判決において、馬券購入の期間、回数、頻度、利益発生の規模、期間などの事情を総合的に考慮し所得区分を判断することが相当である旨が判示されているところと承知しております。

 したがいまして、藤巻先生御指摘のように、外れ馬券を管理していることだけをもって雑所得として取り扱うことは適当ではないのではないか、そのように考えます。

藤巻委員 そもそも、馬券を買う際、購入者はその時点で事実上の税金である国庫納付金を払っています。その上で更に払戻金に課税をするのは、これは二重課税に当たるのではないでしょうか。

鈴木国務大臣 御指摘は、日本中央競馬会は既に国庫納付金を納めているため、馬券の払戻金には所得税を課すべきではないということだと理解をするところでありますが、馬券の払戻金であっても、個人が稼得して担税力を増加させるものであることには変わりないことでありますので、所得税を課税すべきものであると考えているところであります。

藤巻委員 いろいろ言ったんですけれども、競馬は、法律で認められた公営ギャンブルで、何もやましいことはありません。競馬でもうかったお金はどうせあぶく銭なんだから税金をかけておけばいいんだ、そういうような競馬に対する偏見というのはございませんでしょうか。

鈴木国務大臣 私は、日頃、馬券は買わないんですけれども、ただ、重賞レースなどはテレビで見て大変面白いなと思っておりまして、競馬を決して、何というんでしょうか、いかがなものかというような思いで見たことはありません。

藤巻委員 今言ったような問題で、競馬、払戻金に係る税金はちょっと不透明でよく分からないというような印象があります。万馬券が当たったら、ある日突然、国税が家に来て多額の徴税をされる、そんなようなイメージがございます。これでは、結果として競馬の人気が落ちて、新規ファンの取り込みも難しくなって、結果として税収減に当たってしまうのではないでしょうか。

 競馬の払戻しに係る税金、これを簡素、明確化して、そうすることによって、競馬の人気が再び出て、税収面から見ても、もちろん競馬ファンにとっても望ましいことが予想されますけれども、そういったことも踏まえて、競馬界の将来について、大臣、どうお考えで、どのようなことをやっていくべきかなというふうなことをお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおりに、馬券の払戻金に係る所得区分につきましては、最高裁判決の考え方に沿って取扱いを定めているところでございます。

 競馬の振興ということも、これも大切なことであると思いますが、競馬の振興という別途の政策目的のために税法の解釈、運用を変更するということは適当ではないと考えておりまして、こうした税法上のことではなく、別の政策をもって競馬の振興というものを進めていくべきである、そういうふうに思います。

藤巻委員 ありがとうございます。

 そういう税制の在り方も含めて、是非、競馬界の振興の方を盛り上げていって、人気を得て、税収を上げる、そういうことを進めていっていただければと思っております。

 最後に一言だけ言わせていただきたいんですけれども、私も、大臣と同じく、競馬は全くやりません。純粋に競馬の未来を、そして公平な税制の在り方というのを、そういった観点からの質問でございました。

 本日は、貴重な機会、ありがとうございました。これで私の質問を終わらせていただきます。

塚田委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 皆様、おはようございます。日本維新の会の岬麻紀でございます。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速ですが、先週の委員会では、訪日外国人のインバウンド消費におけます免税制度における消費税の不正還付に絞って質問をさせていただきましたが、本日は、国内の消費税全体の不正還付について見ていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 私も調べましたところ、現状でございますが、法人の消費税の納税申告数というものは、平成三十年には百八十七・一万件、それが令和三年を見ますと百八十五・七万件ということで、全体を通じて横ばい若しくは安定していると思われます。これを法人の消費税の還付申告数ということで見てまいりますと、平成三十年には十四・九万件、そして令和三年には十九・八万件です。これは約五万件増えております。

 では、次に、法人の消費税還付税額というものを見ていきます。そうしますと、平成三十年には四・三兆円、それが令和三年には五・八兆円になっています。その差は一・五兆円増えているということです。

 それでは、ここで質問です。

 法人の消費税納税申告数、この件数は大体百八十六万件前後で推移をしているわけです。そして、消費税の還付申告数、今御紹介をしたように、全体に増えています。これは右肩上がりでございます。それに伴いまして還付税額も増加をしております。政府は、還付申告数の増加についてどのような理由を考えていらっしゃるか、またどのような分析をしているのか、まずはそこから教えてください。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 直近三年度の法人の消費税の還付申告件数を申し上げますと、令和元年度、年度ベースでございますが、約十五万四千件、令和二年度は約十八万三千件、令和三年度は約十九万九千となってございまして、委員御指摘のとおり、増加傾向にございます。

 還付申告件数が増加している要因につきまして、一概に申し上げることは困難でございますが、一般論として申し上げますと、消費税は売上げに係る税額から仕入れに係る税額を控除して税額を計算する仕組みでございますので、例えば、多額の設備投資を行ったことや輸出免税取引が多くなったことにより、売上げに係る税額よりも仕入れに係る税額が大きくなる場合には還付となりますことから、こうした法人が増加すれば、還付執行件数の増加要因となり得ると考えてございます。

岬委員 ありがとうございます。

 もちろん、その差額ということになってくると思いますし、また、ここ近年を見ますと、コロナの影響も、企業にとって売上げが減っているなども考えられるかと思います。

 次に、政府の取組についても調べてみました。

 消費税不正還付について、こちらは、実際は還付金を受け取っていないのに、虚偽の申告を提出して、その時点で罪が問えるようにするというものがございます。これが消費税不正還付の未遂罪、二〇一一年度の税制改正で創設をされています。

 本日、皆様にも新聞記事を配付をしております。この記事は二〇二三年二月十五日の読売新聞の記事でございます。さらに、この記事によりますと、国税庁によると、この未遂罪、初めて適用されたのは二〇一四年度で、その後も少なくとも全国で十数件の告発が行われております。それでもまだこの不正還付申告、今も後を絶ちません。昨年六月までの一年間に全国の法人に対して行われた税務調査では、七百九十一件の不正申告が見つかっています。法人への追徴課税、前年比で約三倍です。百十一億円にも上ったとこの記事には記載がございます。

 東京国税局は、昨年九月の三十日に、この消費税の不正還付への取組を強化するということで、消費税不正還付対策本部を立ち上げていらっしゃいます。これは全国で初でございます。申告を専門的に調べる調査官や課税の可否を審査する審理部門、さらには税金の徴収部門ということで、職員の皆様約百三十人体制で整備をされていると伺っております。

 そこで、二つ目の質問でございますが、実際に、この法人の消費税還付申告に対する調査件数、どのように行われているでしょうか。教えてください。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 消費税還付申告法人に対する税務調査につきましては、新型コロナの影響によりまして税務調査全般を抑制していた中で、コロナ前に比べ調査件数は減少してございますが、令和三事務年度におきましては、四千二百五十二件の実地調査を行いまして、約三百七十二億円を追徴課税したところでございます。

 このうち、不正計算を把握したものは、全体の一八・六%に相当する七百九十一件ございます。コロナ前の平成三十事務年度が一二・七%でございましたので、これに比べては増加しているところでございます。また、不正計算に係る追徴税額は約百十一億円となってございまして、コロナ前と比べても二倍以上となっているところでございます。

岬委員 ありがとうございます。

 今の答弁をまとめますと、つまりは、平成三十年には六千五百五十三件のうち、令和三年になると四千二百五十二件、調査する件数は減っているけれども、その中で不正を見つけた割合は増えている、そして追徴課税などでしっかりと取ってきた、その成果がある、そういったお話だと思います。

 それでは、次の質問です。

 それの中で、政府はこれまでも、今のように不正防止のために調査体制を強化して、さらに、不正の解明ですとか抑止ということでも力を注いでいらっしゃったと認識をします。ただ、全てをチェックをしていくというのはかなり困難ですし、煩雑な業務でもあると考えます。

 国税庁は、これまでの申告状況から、消費税の不正還付が想定される法人をリスト化をして管理をしていることもお聞きしました。この中で、やはり一番大事なのは公正性、厳正性ということだと思われます。調査の件数で、優先度合いであるとか、またどのような方針で、またどのような目標を持って御対応されていくのか、確認をさせてください。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 消費税の不正還付問題につきましては、輸出免税制度を悪用するなど事案が複雑、巧妙化していることから、国税当局といたしましては、重点課題として位置づけて取り組んでいるところでございます。

 具体的には、消費税に係る還付申告書の提出があった場合には、申告書の添付書類や保有する資料情報等に基づきまして厳格な審査を行い、申告内容に疑義がある場合には、還付を保留し、書面照会や実地調査を行うなどいたしまして還付原因等の解明、確認を実施し、申告内容に誤り等が認められた場合には確実に是正をしてございます。

 また、還付後でありましても、還付申告の内容に疑義が生じた場合には実地調査を通じて解明、是正を行うなど、国税当局として厳正に対応しているところでございます。

 今後とも、不正還付事案の態様や手口も見極めながら、こうした厳格な審査と的確な税務調査等を通じまして、不正還付の防止に努めてまいりたいと考えてございます。

岬委員 ありがとうございます。

 今のお話、まとめますと、結局、徹底的にきちんとやるんだ、そういった実績をお答えいただいて、さらに、時代によって複雑化、巧妙化している、手口もいろいろと新手が出てくるということで、その辺りもチェックをしているということだと思われます。

 そして、重要なのは、今お話にもありましたように、還付をまずは保留して止めるというところなんだと思われます。結局、不正を行う側も、やっても無駄だと思わせれば、それを食い止めていく抑止力にもつながるかと思われます。一方、正規できちんと申告をしている方には、一刻も早く、速やかに還付処理をしていただいて戻していただくように、強くお願いをしたいと思います。

 それでは、次に、これまでも幾度となくインボイス制度の質問や是非が問われてまいりましたが、今年十月のインボイス制度の開始によりまして、税務調査の際に請求書がインボイスであるのかそうでないのかという確認も必要になってくると思われます。税務調査を行う調査官のいわゆる作業の負担、調査の負担にもなるのではないでしょうか。

 まず一つ目、インボイス制度の導入が税務調査に与える影響、そしてもう一つ目が、インボイスの導入による消費税不正還付への影響、この二つはいかがお考えでしょうか。お答えください。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス制度の開始後は、仕入れ税額控除の適用を受けるためには、原則として、課税仕入れに係る帳簿及びインボイス発行事業者から交付されたインボイスの保存が必要となります。

 具体的には、買手の行った課税仕入れにつきまして、適正なインボイスの保存がない場合、その不足する内容を他の書類等から確認できない限り、原則として仕入れ税額控除の適用を受けることはできないこととなります。したがいまして、税務調査におきましてもこのような確認が必要となるということでございます。

 それから、インボイス制度開始後は、インボイス発行事業者と通謀等しない限り、仕入れ税額控除、架空仕入れを計上することは困難になると考えられますので、消費税の不正還付につきましても一定の抑制が働くものと考えてございます。

 また、国税当局といたしましても、税務調査の際に、登録されたインボイス発行事業者の情報や発行されたインボイスを通じまして、消費税不正還付の解明、是正に活用することが可能となると考えてございます。

 引き続き、様々な情報を活用しながら、的確な税務調査等を通じまして、不正還付の防止に努めてまいりたいと考えてございます。

岬委員 ありがとうございます。

 税務調査の調査官の負担も増えるけれども、不正を行おうと試みる側も一手間、二手間増えていくので、それが抑止になるのではないかということなのだと私も認識をいたしました。

 今お答えいただいたように、そして、先月に審査されました所得税法の一部を改正する法律案の附帯決議では、社会的関心の高い消費税の不正還付防止への対応の強化というものもございます。

 やはり、消費税というものは、全ての国民が品物を買ったりサービスを受けたりした場合に平等に課せられてくるものですから、社会的な関心度は必然的に高くなるとも思われます。ですからこそ、公平性というものは非常に重要でございますので、是非とも引き続ききちんとした調査を行っていただきたいと思っております。

 なお、この不正還付につきましては、消費税だけではなく、所得税での不正還付の報道もございました。これが配付資料の二枚目の記事でございます。「所得税不正還付 百九人に指南」というもので、二〇二三年三月一日の読売新聞でございます。これは、内容を言いますと、会社員百九人の所得税の不正還付を指南しまして、架空の事業で赤字が出たとする虚偽の確定申告を税務署に提出をさせて、計約四千三百万円の不正な還付申告を行わせたという記事でございます。

 一人一人が正しい申告に基づく日本の納税制度の維持には、先ほども何度も申し上げているように公平感が不可欠です。不正な手段がまかり通ってしまうと、制度自体の信用性を損ないかねません。副業や兼業の推進と併せて、税制度などについても更に周知や徹底を図っていくべきだという意見もございます。

 そこで、最後の質問となるかと思われます。

 不正を防ぐために、まずは不正を行わせないようにする制度の見直し、そして適正化が必要です。二つ目に、不正を行っていないかしっかりとチェックをする機能が必要になります。三つ目に、不正をした場合には、その者に対してきちんとしたペナルティーを科すことによって、それが周りへの周知をすることによっての抑制にもなると考えられます。

 この不正還付の防止に対する観点から、最後、大臣からのお言葉を頂戴したいと思います。お願いいたします。

鈴木国務大臣 国税庁次長からも答弁をさせていただきましたけれども、国税庁におきましては、従来から、消費税の適正課税の確保、これを重要課題と位置づけておりまして、とりわけ不正還付事案につきましては、重点的に税務調査を行うなど、厳正に対処をしているものと承知をしております。

 その上で、税務執行体制の強化を図るため、令和五年度予算におきましては、業務の見直し、効率化等を最大限に進めつつ、消費税の不正還付への対応を始め、全体として三十七名の定員増を行うなど、国税庁の体制整備を進めることとしております。

 今後とも、消費税の不正還付事案に対しては、税務執行体制の強化も図りつつ、厳正に対応してまいりたいと考えます。

岬委員 ありがとうございます。

 全ての国民の皆様方に関わってくる消費税の不正還付について今日は伺ってまいりました。これからも、厳正なる、そして公平な措置をお願いしたく存じます。

 それでは、質問時間が終了いたしましたので、終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 今日は、賃金についてお話をさせていただきたいと思います。

 日本は、先進国の中でも三十年間賃金が上がっていないということであります。他の国は上がっていて、そして物価も上がるということになれば、例えば、輸入物価も上がる、日本の賃金は変わらない。そうすると、日本の実質賃金、実質可処分所得は減り続けるということになります。また、優秀な人材は海外に流出をし、外国人労働者は日本をマーケットとして選ばないといった、様々な問題点があります。

 今日は八年ぶりに政労使の会談が行われるということで、いい成果を求めたいと思いますし、また、今日は春闘の集中回答日ということで、基本的には賃金というのは労使の関係で決まるものでありますけれども、政治の世界でしっかりとやれることについてはやらなければいけない。その観点から、年収の壁について取り上げたいと思います。

 まず、皆様方にお配りをしている資料、一ページを御覧いただきたいと思います。

 これは、一九九七年を一〇〇としたものでありまして、時給は上がっているのに、年収は横ばい、そして月間総実労働時間は減り続けているということであります。

 これが年収の壁に起因するものが多いわけでありますけれども、野村総研によりますと、配偶者のいるパート労働者の六二%が就業調整を行っている。つまり、年収の壁があることによって、時給が上がっても、結局、労働時間を減らしている、こういうことであります。労働者不足であるにもかかわらず、こういった問題が起きているということであります。

 まず、財務大臣に伺います。税に関わることでありますので。

 百三万円の壁、百五十万円の壁というのは存在するんでしょうか。

鈴木国務大臣 いわゆる百三万円の壁と呼ばれます所得税の配偶者控除の問題につきましては、配偶者の所得の大きさに応じて控除額を段階的に減少させる配偶者特別控除により、配偶者の収入が百三万円を超えても世帯の手取り収入が逆転しない仕組みとなっており、税制上、いわゆる百三万円の壁は解消をいたしております。

 また、平成二十九年度税制改正において、配偶者控除等における控除が満額適用できる配偶者の給与収入の上限を百三万円から百五十万円に引き上げる見直しを行っており、現在では、百五十万円までは控除額三十八万円が満額適用を受けられ、百五十万円を超えると配偶者特別控除の額が段階的に減少するという仕組みになっております。

 したがいまして、前原先生御指摘の百三万円、百五十万円のいずれにおきましても、配偶者の収入増による税負担の増が世帯全体としての収入の増を上回ることはない仕組みとなっており、税制におきましては、働きたい人が就業調整を行うことを意識しないで働くことのできる制度となっているものと考えます。

前原委員 おっしゃるとおりなんですね。

 二ページ目を御覧いただきたいと思います。

 今財務大臣が御答弁をいただいたことで、税に関わるところは百三万、百五十万円ということであります。百六万、百三十は後で議論しますが、これは社会保障、年金の話なんですね。

 三ページを御覧いただきますと、今御答弁をいただいたように、今、現行はこれです、百三万円、百五十万円。確かに、百万円から住民税が発生して、百三万円が所得税、そして百五十万で配偶者特別控除が段階的に縮小され始めるということでありますけれども、壁にはなっていないんですね。傾きは変わっていますけれども、右肩上がりは変わっていないということで、傾きは変わらないということで壁はないわけです。

 問題は、指摘したいのは、四ページを御覧いただきたいと思います。

 これは民間企業における配偶者手当に関するデータ、四ページなんですけれども、御覧をいただきたいと思うんですけれども、「家族手当制度がある」というのが令和四年度で七五・三%なんですけれども、そのうち「配偶者に家族手当を支給する」が五五・一でありますが、収入制限の額というものが、百三万円、百五十万円というのがまだ残っているんですね。

 つまりは、税制上の壁はないにもかかわらず、会社側が、百三万、百五十万があるときの、言ってみれば、引きずっているのか、あるいはわざと打切りのために使っているのか分かりませんけれども、足すと二五・一%。つまり、四分の一もまだ、なくなっているはずの税制上の壁のところで、いわゆる家族手当の収入制限をしているということでありますが、これはなくすべきだと思われませんか。そして、なくすための、政府としての事業者への働きかけについて、中身を御答弁いただきたいと思います。

鈴木国務大臣 前原先生がお示しになられたこの資料によりますと、確かに、いまだに百三万円、百五十万円というところで、民間企業においてそれぞれ手当についての差を設けているということが表れているわけでありますが、先ほど申し上げましたとおり、税制におきましては、働きたい人が就業調整を行うことを意識しないで働くことのできる制度となって、もう既になっているわけでございますが、そういうことになっているんだということを民間企業を含めた関係者の皆様に正確に御理解をいただくことが重要だと思います。そのために、適切な周知それから広報、これを引き続き努めていきたいと思います。

 これは民間企業関係者ということにも、働く方も、国民の皆さん全体にも知っていただく必要があるんだと思います。そうしたことをもって、こうしたようなことを解消していく努力をしたいと思います。

前原委員 エクスキューズに使われないように、百三万円、百五十万の壁はないんだといったことを前提に、しっかりと広報していただきたい、そして賃金が上がる状況をつくっていただきたいと思います。

 厚生労働副大臣に伺いたいと思います。

 百六万円の壁はないということでよろしいですね。

伊佐副大臣 百六万円の壁につきましては、一定の要件を満たす短時間労働者への被用者保険の適用拡大、現在取り組んでおりますが、その適用要件の一つが、月額賃金が八・八万円以上、これを年収換算すると百六万ということになっております。この基準を満たして新たに被用者保険が適用される被扶養者の方にとっては、医療保険料等の負担が生じて、これが手取り収入の減少になるという、これがいわゆる百六万の壁というふうに呼ばれているというふうに承知をしております。

前原委員 今副大臣が御答弁いただいたように、八・八万円の壁はあるんですよ、月額。しかし、百六万円の壁はないんです。

 つまり、八・八万円以下であれば、例えば賞与は別だし、そして残業手当も別ですよね。ということは、百六万円以上働いても実は構わないにもかかわらず、この八・八万円というところで単純計算をした百六万円というものが独り歩きをして壁のように見られているといったことであり、これは是非、百六万円の壁はないんだ、八・八ということなんだということで、これも、副大臣、厚生労働省でしっかりと、八・八万円は、これは厚生年金保険法に書いてあることでありますので、これは前提としても、賞与とか残業というのは関係ないんだ、百六万円以上働いてもいわゆる三号保険者でいられ続けるんだといったところは是非周知徹底をしてもらいたいと思います。

 その八・八についても後で伺いますけれども、百三十万円の壁でありますけれども、妻の年収、これは逆でもいいんですけれども、百三十万円未満であれば、夫の被扶養者として年金において第三号被保険者となり、夫の健康保険の加入者となることができるから、この百三十万円の壁が生まれているということであります。

 五ページの図を見ていただきたいのでありますけれども、この百三十万円でがくっと壁ができているんですね、実際問題。そして、百三十万円以降については、第二号、つまりは厚生年金に入るのか、あるいは国民年金に入るのかによってまた違ってくるわけでありますけれども、第二号であれば百五十一万まで増やさないと壁がリカバーできない、そして、第一号、つまり国民年金を選ぶと百六十一万まで年収が増えないと壁がリカバーできない、こういうものになっているわけであります。

 厚生労働副大臣に伺いたいんですけれども、これは百三十万円の根拠は法律ではないですね。厚生省の保険局長の通知、しかも、一九七七年、四十六年前のものなんですね。何で全く時代遅れなものに固執するんですか。

伊佐副大臣 百三万の壁については、これは、被用者保険が適用されていない……(前原委員「百三十万」と呼ぶ)百三十万円、失礼しました。適用されていない人しか百三十万円の壁というのは当然ないわけでありまして、そういう意味では、被用者保険をしっかりと拡大していくということが重要だというふうに思っております。

 百六万の壁についても、最低賃金の引上げによって解消されていくというふうに見込まれておりますので、現在の、政府としては、引き続き、この適用拡大を始めとする取組をしっかりと進めていきたい、その上で、働き方に中立的な制度の構築を図ってまいりたい、政府として幅広く対応策を検討してまいりたいというふうに思っております。

前原委員 最低賃金が上がっていく中で解消されていくだろうということでありますし、また、私も、今副大臣が御答弁をされたように、基本は、第三号保険者というものは将来的になくしていく。もちろん、なくす上で、今の既得権者をどうしていくのかということは大事だと思うんですけれども、第三号保険者は保険料を払わなくて年金をもらえるわけですよね。やはり、これはいかがかという議論は根強くあるわけでございまして、将来的には、五百一人以上から今度百一人以上になって、今度、五十一人以上に二〇二四年からなりますよね。これをやはりもっと下げていって、そして第三号保険をなくすということは私もベースだと思うんですけれども、それは今後御検討いただくとして。

 財務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、六ページを御覧いただけますか。

 これは百六万になっているわけですけれども、先ほど五ページで見ていただいたときには、百六万円というのは先ほど私、壁がないと申し上げましたので、月額八・八万円の壁はあるわけですね、八・八万円の壁と、それから百三十万円の壁というのは現に存在しているわけです。そして、先ほど一ページで見ていただいたように、時給は上がっているのに、いわゆる就業調整をして、結局この壁のところでとどめているという人たちが六二%もおられる、こういうことであります。

 賃金が上がらないことと労働者不足を言ってみれば起こしてしまっているということでありまして、早急にこれは私はなくさなきゃいけないと思うんですね。

 まず、我々が、国民民主党が提案しているのは、この六ページの「手取り落ち込む「働き損」」の部分を財政支出で埋めるということをまずやるということを行うべきだということを我々は提案をしております。そして、まず壁をなくす。少なくとも、働いたら働き損になることはやめる。

 しかし、こうすると、逆に、働けば、就業調整も要らないし、そして、結果として税収も上がるわけですね。百万から住民税、百三万から所得税は入るということでありますし、それ以上に働いても大丈夫だということになれば、どんどんどんどん税収は上がってくるんじゃないかと思います。

 そういう意味においては、まずは財政で働き損を埋めるけれども、トータルで税収増になるんじゃないかという前提で、このことをやはり私は御検討いただくべきではないかと思いますし、ちょっと、質問時間が終わりましたので、もう一つ併せてお聞きすると、政府としての一度試算を出していただきたいんですよ。これはいろいろなところのシンクタンクが試算を出しているんですけれども、政府として、一旦こういうふうな穴埋めをした場合、どれだけ働き手が増えて、そして税収が増えて、プラスマイナスどうなるのかというものを出してもらいたいと思うんですが、いかがですか。

鈴木国務大臣 資料六にあります手取りが落ち込むところを当面財政出動で埋めるというような御意見は、予算委員会でも他の委員からも御提案がありまして、総理からもそれに対しての答弁がございました。

 一つの考え方であると思いますが、ただ、課題をあえて申し上げますと、同様に働いております被扶養者でない単身世帯の方、あるいは、国民健康保険や国民年金の加入者のうち、百三十万円や百六万円の基準未満の収入であっても保険料を負担をしている方との公平性の確保をどう考えるのかという課題もあるということは指摘をさせていただきたい、そういうふうに思います。

 また、試算については、必要に応じて試算をするということだと思います。

前原委員 これで終わりますけれども、あくまでも暫定措置で、先ほど伊佐副大臣が御答弁されたように、抜本改革はやっていただくんです。そのいわゆる暫定期間として穴埋めをし、そして、働き損がないような状況で、働きたい方は幾らでも働いてもらえる環境をつくって、そしてトータルで整合性の取れた制度にしていくということが大事だと思います。

 是非試算についてはしていただき、是非委員会に提出をしてもらいたいと思いますが、委員長、お計らいをお願いいたします。

塚田委員長 後刻、理事会で協議いたします。

前原委員 はい、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 消費税インボイスについては、本委員会でこれまで、各地において、また各業種においていろいろな問題が起こり、そして様々な懸念の声が上がっていることを紹介してまいりました。

 今もまたいろいろなことが分かってまいりましたので、そうした懸念事項、そして想起される問題について政府は掌握しているのか、今日はそういった立場から質問をさせていただきたいと思っています。

 まず最初に、公益財団法人シルバー人材センターについて質問します。

 仕入れ税額控除ができずに増税となる消費税約二百億円、これを穴埋めするために、地方自治体がセンターへの発注単価を引き上げる予算案が、今、各地の自治体で提案されています。財務省はこのことについて掌握されていますか。

鈴木国務大臣 各地方自治体における予算案の個別具体的な内容については必ずしも詳細を承知しておりませんが、インボイス制度への移行に当たって、全国のシルバー人材センターが、地方自治体や地方議会に対し、安定的な事業運営のための適切な措置を求める要請を行っているということにつきましては承知をいたしております。

田村(貴)委員 例えば、鹿児島県鹿児島市の来年度予算案なんですけれども、シルバー人材センターに委託している業務の単価で、例えば、庁舎の清掃業務の簡易清掃は、来年度、四月から九月が見積基準表の単価で一時間当たり千八十九円とされています。これが、インボイス制度が始まる十月から三月までは一千百六十四円に引き上げる予定と聞いています。

 ところが、時間当たりこの七十五円の引上げ分について、シルバー人材センターを通じて働く高齢者の配分金単価の引上げにはつながらないというふうになっているんです。そうすると、これは事実上の補助金になってしまいます。

 大臣、公益財団法人が負担できない新たな消費税の納税負担を、地方自治体の予算、つまり国民の税金で穴埋めするというのはおかしくないですか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、各地方自治体の予算案の詳細については承知をしていないわけでございますが、インボイス制度移行に伴いシルバー人材センターに生じ得る負担につきまして、地方自治体側で負担を行う場合であっても、経過措置により、免税事業者からの仕入れについては、制度移行後、初めの三年間は八割、その後の三年間は五割の仕入れ税額控除が可能となっていることから、地方自治体への影響も相当の期間にわたって影響は緩和するもの、そのように考えているところでございます。

田村(貴)委員 大臣、ずれました。シルバー人材センター、この公益財団法人のシルバーだけ、何で、交付金で穴埋めするのはおかしいじゃないかと聞いているんですよ。

 学校給食協会など、ほかにも免税業者との取引で仕入れ税額控除ができない公益財団法人はあります。ところが、地方自治体が消費税の税負担の支援をする団体とそうでない団体があるというのは、これは不公平、不公正なことではないでしょうか。

 国や地方自治体が支援する公益財団法人は、シルバー人材センターのほかにもどれぐらいあるんでしょうか。財務省はこのことを掌握されていますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 シルバー人材センターの事例のように、自治体への適正な価格設定の要請がインボイスに関して具体的に行われ、その上で発注価格が引き上げられるといった対応が行われている公益法人の事例を、他に具体的に承知しているわけではございません。

 一方、このシルバー人材センターの事例につきましては、地方公共団体が締結する契約の予定価格については、規則によりまして、取引の実例価格、需給の状況等を考慮して適正に定めなければならない等の規定がございまして、このような中で、今般のシルバー人材センターの件について、適正な価格設定の要請がなされ、対応が行われているものと承知をいたしております。

 インボイス制度の円滑な移行に向けては、公益法人を含む様々な事業者の方々に対し、税制上の経過措置でありますとか取引環境の整備を始めとして、各種の支援措置を講じているところでございます。

田村(貴)委員 インボイス、導入するんでしょう、財務省、財務大臣。主務官庁でしょう、主務大臣じゃないですか。では、何でこういうおかしなことについて、そして問題点について掌握されていないんですか。まるで他人事じゃないですか。

 日本商工会議所は、昨年九月公表の令和五年度税制改正に関する意見で、「まず政府は、免税事業者の取引排除等による倒産・廃業の可能性や、現行の「区分記載請求書等保存方式」でどういった問題があるのか等を含め、「検証」を徹底的に行うべきである。」、日商はこういうふうに求めているわけであります。

 財務省に伺います。

 日商の意見から半年たちました。倒産、廃業の可能性やインボイスで生じる問題について、検証は行いましたか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイスに関しましては、平成二十八年度の税制改正法の附則の規定に基づきまして、一昨年の秋から冬にかけて与党の税制調査会でも御議論いただいたところでございます。

 その上で、今回の令和五年度税制改正におきまして、免税事業者の方々が課税事業者に転換する場合につきまして、激変緩和措置を新たに設ける、あるいは事務負担の軽減のための経過措置を設ける等の対応を取らせていただいております。

 また、インボイス制度への移行に伴いまして、日商に加盟されているところに限らず、免税事業者を始めとした小規模事業者が取引において不当な取扱いを受けないよう、独禁法等のQアンドAを公表し、各事業者団体へ法令遵守要請を行うなど、取引環境の整備にも取り組んでおりまして、引き続き、関係省庁で連携しながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 つまり、日本商工会議所が求める、倒産、廃業の可能性とか、インボイスから生じる問題について、何ら検証が行われていないということですよ。今おっしゃった対策は問題の先送り、その措置でしかありません。

 鈴木大臣、何度もこの委員会で私は質問しているんですけれども、例えば、先日の委員会でも大臣は、いろいろな業界ごとで取組とか契約が違いますから様々な影響が出ておりますが、そういうものに対して、例えばFIT制度の中で行うとか、それからシルバー人材センターに対するそうした取組を地方公共団体にお願いするとか、様々個別の取組をしております、そのように答弁されたんですね。

 消費税、インボイスの主務大臣です。消費税、インボイス導入の主務官庁でありながら、各地で起こっているこうした問題に、どうして他人事のようにされるんですか。そういう姿勢でいいんですか。

 消費税法、そもそも、所得税法等の一部を改正する法律には何と書いてあるか。所得税法等の一部を改正する法律には、政府がインボイス導入に係る事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証し、必要な措置を取ることと求めているではありませんか。しかし、政府は全く実態を掌握していません。適格請求書等保存方式の円滑な導入等に係る関係府省庁会議というのがあるんですよね。そういう会議があるんだったら、ここでやはり実態を掌握すべきではありませんか。

 大臣、これは法律による指示なんです、大臣に対する。いかがですか。

鈴木国務大臣 インボイス制度の導入につきましては、様々な団体、様々な立場の方々、中小事業者、非課税事業者の皆様方から、いろいろな課題でありますとか御不安の声というもの、これは届いているわけでありまして、私どもといたしましても、それはしっかりと把握をして、正面から把握をしているところでございます。

 そして、先生御指摘になりましたような、そうした会議体もございます。そういう中で、財務省だけではなくて、政府全体としてそういう課題、お声というものを共有をする、そういう中で対応策、この対応策というのはインボイス制度導入に当たって円滑に導入するための対応策でありますけれども、そうしたものを取っているということであります。

 そして、それぞれの省庁に何か他人事のように任せているのではないか、こういうことでありますが、しかし、それぞれの省庁の所管をするところで課題が出ているということでございます。

 先ほどお話がございましたようなシルバー人材センターにつきましては厚生労働省でありましたり、あるいは、地方自治体が負担をするということになりましたら総務省でありますとかそういうところ、あるいは、FITの中で対応をするということ、これにつきましては資源エネルギー庁で、そういうふうに、所掌するところで行うというのは、これは行政を進める上で当然のことであります。どうしてばらばらになるかといえば、それは契約とか取組が違っているからということでございます。

田村(貴)委員 シルバー人材センターは地方自治体、つまり、国民の税金をもって補填していく。大手電力会社はFIT制度の中で国民の電気料金をもって補填していく。こんなのでいいんですか。おかしいじゃないですか。様々な問題が出てきていますよ。

 農業について尋ねます。

 資料もお配りしているんですけれども、長野県伊那市議会で昨年六月二十四日に採択された意見書には、次のように書かれています。上伊那地域では、中山間地の農業を支える役割として、農事組合法人形態の集落営農組織が地域の農業の核となっていますが、その構成員のほとんどが免税事業者であるため、作業委託料、圃場管理等について仕入れ税額控除ができず、消費税の納税負担が増えることにより集落営農組織の経営収支が悪化し、その影響は構成員にまで波及し、地域全体の農業の担い手の減少と、遊休荒廃地の増加を招く結果となりかねませんと。ここまで地方自治体が、議会が意見書を上げて国に対して対応を求めているわけです。

 農業の担い手の減少、遊休荒廃地の増加、この懸念について、大臣、声を聞かれていますか。受け止めはいかがですか。

鈴木国務大臣 今先生が御指摘になられました件そのものではございませんけれども、農家を含む免税事業者やその取引先など、中小・小規模事業者の方々の声につきましては、各種の報道でありますとか、また、国会での御質問等を通じた事務方からの説明等の機会を通じて承知をしているところでございます。

 具体的には、免税事業者のままでいた場合に取引から排除されるのではないか、課税事業者になった場合に新たな事務負担が生じることになるのではないかといった御心配があるものと承知をしているところでございます。

田村(貴)委員 その心配の声を、解決処方は今の政府にはありません。唯一あるとするならば、これは、インボイス制度を中止すべき、中止するしかないんです。

 もう一例紹介しますね。資料をお配りしています。二の方です。

 これは、北海道のJA北ひびきのホームページ、消費税インボイス制度から抜粋したものであります。免税事業者が課税事業者への転換をするかどうかのチェックポイントとして挙げられています。免税事業者として農協特例が受けられるのは限られると解説されているわけであります。

 農水省、お越しになっておられますかね。「多くの免税事業者は簡易課税事業者へ転換することが望ましい環境下が想定される。」としている。農家の九割が免税事業者ですよ。その中で、実際には、多くの農家が課税事業者への転換が余儀なくされる。農協特例も一部に限られる。更に離農者の増加、地域農業の破綻が起こるのではありませんか。農水省は、こうした状況について、実態調査、影響調査、されていますか。

長井政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省といたしましては、農業者等に対しまして、取引先がインボイスを必要とする場合は、話合いを促すため、地方農政局ごとの説明会の開催、相談窓口での問合せ対応に取り組むとともに、農業団体が行う説明会への講師派遣によりまして、準備を促しているところでございます。

 また、事業者取引への影響に関しましては、免税事業者であります農業者が農産物を販売するルートなど、取引の実情は様々でございまして、どれだけの免税事業者である農家が課税事業者に転換するかを推測することは困難でございますが、免税事業者は、農協等に委託して農産物を販売する場合でありますとか、直売所等で直接消費者に販売する場合が多く、また、制度移行後六年間は免税事業者からの仕入れであっても一定の仕入れ税額控除を可能とする経過措置が設けられているなど、様々な要素により影響を受けることとなるため、免税事業者が課税事業者になるかどうかにつきましては、こうした取引状況等を踏まえまして、また、今後の経営展望を踏まえまして御判断いただくことになるものと考えております。

田村(貴)委員 結局、制度の説明と、それから問題の先送りの解説にすぎないんですよ。ちゃんと影響を受けることについて、せめて、やはり調査、そして実態を把握すべきではありませんか。

 インボイスの中止を再度重ねて申し上げて、今日の質問を終わります。

塚田委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党の藤岡隆雄です。

 本日も、まず地元栃木県第四区の皆様に心から感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩、関係各位の皆様に感謝を申し上げまして、質疑に入らせていただきたいと思います。

 今日は、まず、スルガ銀行のアパート、マンションに関する不正融資問題から入らせていただきたいと思います。

 大臣、今日、本当に多くの、被害に遭われた、本当に苦しい思いをされている方、傍聴にいらっしゃってくれております。是非、大臣、今日はしっかりした政治決断、政治的な対応というのをまず冒頭お願いをさせていただいて、質疑に入らせていただきたいと思います。

 資料をお配りさせていただいております。ちょっとページ番号を打っていなくて大変恐縮でございますが、後ろから六枚目、「スルガ銀行不正融資問題 被害の実態」というところ、前から数えますと十一ページ目になるんですが、お配りさせていただいております。

 委員の皆様には釈迦に説法ということだと思いますが、まずスルガ銀行の不正融資問題につきまして、いわゆるシェアハウス、これについては一応全面解決を見たというのが今の実態だと思います。次に、アパートまたマンションに関する不正融資問題がいまだ未解決になっている、ここをしっかりどうしていくかということが極めて重要な課題だと思います。

 もちろん、これは根っこが同じだというところで、例えばレントロール、家賃の明細、家賃がかさ上げをされて、サブリースや家賃保証も高くかさ上げをされてというようなことで、実際、物件価格が高くかさ上げをされて、そして高値でつかみをされてしまう。もちろん、家賃保証はなかなか続きませんから、崩れて、そして、皆さん、大変なローンを抱えて苦しい思いをする。ある意味、そのまさにレントロールのところでのかさ上げというのは、実際、第三者委員会での銀行のところでもこれは認められているところであると思います。

 そして、その高値にされた物件を今度は購入するときに、本来できないはずの融資が行われてしまっている、この二つ目のことになるわけですね、できないはずの融資。それは、当然、物件を買うに当たって自己資金が一〇%ぐらい本当はなくちゃいけない。ところが、自己資金がなくても、何と預金通帳が、信じられないことに改ざんが行われてしまう。私もかつて金融行政を経験させていただきましたけれども、本当にちょっと信じられないと私は思っております。

 その中で、先ほどのお配りしている資料をもう二枚めくっていただきますと、LINEで銀行の行員の方の関与がはっきりと出ているわけですね。更にその次のページに行きますと、通帳の偽造、改ざんが行われているわけですね。何か聞くと、パソコンソフトで何か数字をつけ加えたというふうなことが言われていて、本当は原本を確認してくれというのは、当然、当たり前のように思うんですけれども、そういう銀行のルールがなかったとか何かという話になっているようでございますが。

 こういうふうなことで、自己資金も高くあるからということで改ざんが行われて、いわゆる高値の物件、これを本来行われないはずの融資によってつかまされるというふうなことで、大変な被害に遭われているということだと思います。

 したがって、本来、自己責任というのは銀行業務の健全かつ適切な運営が大前提でございますから、銀行業務の健全かつ適切な運営がなされていないこの状況にあって、しっかり金融行政としての対応が必要だと思いますし、だからこそ、業務改善命令を発動されて、そして、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立なども当然命じられているということだと思います。

 そういう中で、いわゆるアパート、マンションに関する不正融資問題について、弁護団を結成されて、いろいろな銀行にも申入れが行われて、もう約一年十か月ぐらいが経過しているんですよね。随分時間がまたたってきているんです。

 これまで、大臣、金融庁としてどういうふうな、銀行に早期解決、これは早期解決が必要だということは大臣も共有していただけると思うんですが、金融行政としてどのような対応、指導をなされていたんでしょうか。

鈴木国務大臣 まず、スルガ銀行の投資用不動産向け融資をめぐる問題につきましては、こういうことはあってはならないことであると思いますし、それから、早期のこの問題に対する収拾がなされるということ、これが大切なことであると思っております。

 金融庁はスルガ銀行に対しまして、二〇一八年十月に業務改善命令を発出して以降、個々の債務者への適切な対応を行うよう繰り返し求めてきたところでございます。

 そうした中で、藤岡先生が御指摘になられましたが、シェアハウス向け融資の債務者については、これまでの民事調停手続を踏まえた問題解決が図られたもの、そのように認識をいたしております。

 そして、いわゆるアパマン向け融資の債務者においても、民事調停、ADR手続等を活用しながら、両当事者が具体的な解決方法の内容について協議を行っているものと承知をいたしております。

 銀行は、これはもう金融庁の監督対象であるわけでございますが、民間事業者ですので、こうした民間当事者間での協議等について行政当局が強制できるものではないこと、これは御理解をいただきたいと思いますが、しかしながら、金融庁としては、多くの債務者にとって可能な限り早期に問題の解決が図られること、これは重要と考えておりまして、スルガ銀行に対しては、様々な機会を通じまして、債務者弁護団との協議に真摯に応じることを求めているところであります。

 引き続き、スルガ銀行に対しまして適切な対応を求めていきたいと考えております。

藤岡委員 今大臣おっしゃった、個々の当事者に強制というところ、もちろん私もその点は理解をさせていただきたいというふうに思います。

 一方で、しかしながら、例えば、業務の改善命令の中で出ておられます、適切な対応を行うための態勢の確立ということを業務改善命令で出していただいて、それでフォローをしていただいていると思うんですけれども、この態勢がちゃんと確立しているかどうかという視点では、個々の案件をきちっと見ていくことというのは当然必要な局面もあると思うんですね。

 だって、何か態勢ができたら、これはいわゆる金融行政的に、済みませんね、マニアックなことになって。態勢、これは態という、体じゃありませんから、ちゃんとこれは機能しているかどうかとか含めてですから、それは、ちゃんと機能しているかどうか、その態勢がですよ。そのためには、時には、その個別の対応状況がぴしっとしているかどうかを見なければ、銀行に聞いたって、できています、できていますと言うのが、当然そういう回答になってしまうわけですよね。そのときに、個別に、銀行が債務者の皆さんに対し、弁護団の皆さんに対し、どういうふうな対応をされているかどうかを時には見なければ、態勢面がしっかりしているかどうかのチェックというのはできないというふうなことになってくるんだと思います。

 その意味で、一番最後にちょっと資料をつけさせていただいておりますが、ちょっとこういう交渉状況になっているということを、私、弁護団の皆さんからお聞きしております。

 これは、大臣、大変恐縮なんですが、是非よく御理解をいただいて、ちょっと個別にしっかり見て、態勢の確立がしっかりしているかという観点で、しっかり金融行政として私は見ていただきたいと思うんです。

 今、ちょっと文字が小さくて申し訳ないんですが、一番最後のページを見ていただいていいですか、配付資料の。済みません、よろしいですか。

 通常、いわゆるこのレントロールの改ざんというところがあるときに、ある程度、当然、早期の解決をするには、個々の債務者ごとにでは時間がかかることがありますよね。一定の定型的な枠できちっと、こういう場合は救済しましょうとか、そういうふうにやっていかなければ、当然、なかなか早期の解決は進みませんよね。

 そういうふうに今、弁護団と当然銀行の方で交渉が行われていると思いますが、その中で、銀行と弁護団の交渉の中で、じゃ、銀行サイドがどういうふうに今話をしてきているかというのを、ちゃんと実態を一回見ていただきたいんですね、最後のページなんですけれども。

 当初、銀行と、いわゆる管理会社、また債務者の間で約束をされた、例えば賃料というのがありますね。これは一番右なんですけれども、横表の一番右で百五万四千七百円というのが、審査時には大体その物件の家賃が百五万だったというふうにまず出ているわけですね。百五万ですけれども、実際はこれは百五万じゃないわけですね、かさ上げされているから。

 そこで、ちょっと左の方を見ていただいて、管理会社、真実の家賃というのが真ん中ぐらいにあって、八十七万七千円。これは実際、管理会社が教えてくれたりするらしいんですね、その後に。つまり、百五万じゃなくて、八十七万七千円。満室になった場合ですよ。でも、その隣に三十五万とあって、実際の賃料は三十五万だったわけですね。三十五万しか入っていないんです。

 それが、空室保証だとか実際の賃料で百五万になっていて、審査を受けたときには百五万で通っちゃっているんですね、百五万で。でも、実際は三十五万だとか八十七万だとか、すごく家賃は実は安いわけですよ。

 そうすると、これを見ると、当然、これは改ざんが行われていたんだから、定型的な枠の入口の一番にまず入っていきますね。その後、また何かの要件が入る可能性はそれはあるかもしれませんよ。まず、ここのところで、当然、こういうふうな改ざんはある疑いが極めて濃厚ですよねというふうにまず見なくちゃいけないですよね、普通は。

 その次に、じゃ、一番右なんです、大事なのは。大臣、一番右に、百二万というデータが出ているんですね。文字が小さくて申し訳ないんですけれども、百二万と出ているんです。これは、購入して、直後に、大体、当時は、最初の頃は空室保証が機能していますから百二万をもらっているんですね。銀行側は、債務者や弁護団の皆さんに対して、直後に百二万入っているんだから、これは改ざんされた案件じゃありませんというふうな話になっちゃっているわけですよ。

 これは明らかにおかしくありませんか。こういうふうな交渉になっていると、改ざん案件をしっかり捕らえ切れなくて、早期の救済はできないですよ、金融庁がおっしゃっているような早期の解決。実際、こういう交渉になっているんですよ、現実が。

 これは、こういうふうに見せないと迫力がないから今日私はお見せしておりますけれども、こういうふうなことが言われているのが、本当に態勢として確立されているんですかということが重要なんですよ。だから、この個別欄、ここを見ていただきたいんですよ、ちゃんと。当事者に強制しろじゃないんです。どういう交渉が行われているか、その銀行の出されるやり方をちゃんと見ていただかないと、これは早期の解決になりませんよ、こんな押し問答が続いていたら。

 例えば、その下に、これは二十四番という案件なんですが、百八十一万という賃料でお客さんが当時認識していてというデータ、下の二十四番という列は、これは弁護団の方が出してくれた資料なんですけれども、ADRか何かで、これは口頭で言います、書類を出すわけにはいきませんから。百八十一万という家賃で最初に出てきた物件があるんですね。銀行側がADRなどの局面で、この百八十一万の当初の家賃に対して、その後、百三十七万というのが一番右下のデータであるんですが、これは購入直後じゃなくて、ちゃんと二年後ぐらいに、家賃保証とかが何とかなっちゃって百三十七万円だったということで、銀行側もちゃんとADRか何かの局面で、百三十七万円でしたねということを、やはりある一定の、認めて、数字を出してきているんですね。

 ところが、今、債務者の弁護団と銀行の協議の中では、先ほど申し上げたように、購入直後の家賃。購入直後の家賃で見たら、それは改ざんされていないように見えますよね。購入直後じゃなくて、家賃保証が機能していないとか、その後の状況をちゃんと見ないと、その状態を見ないと、改ざんされているかどうかということで、なかなか入口で捕らえ切れないじゃないですか。

 だから、大臣、こういう交渉になっているんですよ。だから、態勢がちゃんと本当に、業務改善命令を打って今フォローされているけれども、態勢が確立されていないんじゃないんですかということを私は申し上げたいんです。何も当事者に介入して直接、強制的に妥結させろなんてことを、金融行政、それは越権になる可能性はありますよ。でも、態勢、これはできていますか、これで早期の解決ができますかということを、大臣、本当に、私はバイアスをかけていません、純粋に申し上げているんです。本当に困っているんですよ、皆さん。

 だから、大臣、ちゃんとこういうところまで見て、態勢ができているかどうかをしっかり検討してやっていただきたいと思うんですけれども、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 藤岡先生から、今、銀行と弁護団の間で協議していることについて御説明をいただいたところでございますが、その協議していることの内容について金融担当大臣として私が適切か適切じゃないかということを申し述べることは、これはまさに不適切なわけでありますので、申し述べませんけれども、スルガ銀行によるアパマン向け融資においては、いわゆるレントロールの改ざん等が行われた事案があるということは承知をしているところであります。

 こうした事案を踏まえまして、金融庁では、スルガ銀行に対する業務改善命令を発出し、個々の債務者に対する適切な対応を行うための態勢の確立を命じており、その実効性を確保する観点から、アパマン向け融資も含め、債務者への対応の状況についてスルガ銀行から定期的に報告を受け、引き続き、その進捗について確認をしているところであります。

 そのような中で、御提示の件に関しましては、現在、裁判所の民事調停に銀行も参加した上で、当事者が調停委員を交えて具体的な解決方法の内容について協議、交渉を行っているもの、そのように承知をしております。

 繰り返しになって恐縮でありますが、行政当局として、個々の債務者との間での具体的な解決方法について介入することはできないということ、これはもう御理解をいただきたいと思いますが、金融庁としては、多くの債務者にとって可能な限り早期に問題解決が図られますように、スルガ銀行に対しまして、債務者弁護団との協議に真摯に応じるなど、引き続き適切な対応を求めてまいりたいと考えております。

藤岡委員 大臣、もう一回申し上げさせていただきたいと思うんですが、大臣にお答えいただきたいと思いますが、態勢をチェックしていただきたいと申し上げているんです、態勢をね。だから、個々のやり取りの中の何かに介入とかじゃないんですよ。態勢をチェックしてくださいと言っているんです。態勢をチェックはできるはずですよ、これは。態勢のチェックをやらないんだったら、これは業務改善命令が機能しているかとかチェックしていないということですよ。

 ちょっと言い方がきつくなりましたけれども、態勢をチェックしていただきたいんです。態勢チェックするには、個別の状況を見ていただかないと、機能しているかどうか分からないですよ、大臣。

 だから、大臣、是非、今、本当に多くの、今日、被害者の皆さん来ていただいております。態勢をもう一段きちっとチェックする、それを私は今お願いさせていただいているんですけれども、大臣、御見解をお願いします。

鈴木国務大臣 業務改善命令を発出いたしまして、その中で、個々の債務者に対する適切な対応を行うための態勢の確立を求めているところであります。

 業務改善命令も、もう出しっ放しで、あとはそのままということであってはいけないわけでありまして、これの実効性を高めていくということは重要なことであると思いますので、業務改善命令の中に含まれていることがしっかりと確保されるように、我々も対応していきたいと思います。

藤岡委員 態勢の実効性がちゃんと上がっているかどうかということをきちっと確認していただけるということでよろしいですね。大臣、決意をちょっと、被害者の皆さんいらっしゃいますから、改めて、ここで決意をお願いします。

鈴木国務大臣 繰り返しになりますが、業務改善命令を出しっ放しで、それでいいという問題ではありません。その中で態勢の確立を求めているわけでありますから、本当に態勢が確立できているのかどうか、そこはしっかりと対応してチェックしたいと思います。

藤岡委員 是非お願いしたいと思いますが、ちなみに、大臣、被害者の皆さんからお話を聞いたことはありますか。

鈴木国務大臣 直接は伺ったことはございません。

藤岡委員 一度聞いていただけませんか、直接。大臣、お願いします。

鈴木国務大臣 必要に応じて考えたいと思います。

藤岡委員 本当に、不正融資ということに端を発し、これは自民党の先生方も質問されている方もいらっしゃるんですけれども、もちろん。その中で、こういうことが起きてしまっているということ、本当にこの被害者の皆さんに寄り添って御対応をお願いしたいと私は思うんです。

 そういう意味で、大臣、是非、弁護団の皆さんまた被害者の皆さんに一回直接会って、是非お話を聞いていただければと、私は聞いていただきたいなということを思いますので、是非、大臣、よろしくお願いいたします。最後に、大臣、お願いします。

鈴木国務大臣 民間同士の裁判での話合いが今行われているところでありますから、行政として、それに介入することはできませんし、介入しているように誤解を与えるようなこともあってはいけないと思います。そういう意味で、どういう形でそこの方々の協議の中身について私がお話をお聞きするのかというふうなことは、いろいろ、公平性といいますか、行政の介入してはならない部分の話にも関わることでありますから、よく考えなければいけないと思いますが、藤岡先生の今日の委員会でのお申出はしっかりと受け止めたいと思います。

藤岡委員 是非、しっかりお声を聞いて、十分な対応をお願いしたいと思います。

 では、続きまして、次の質疑に入らせていただきたいと思いますが、シリコンバレー銀行の破綻の影響についての質疑に入らせていただきたいということを思います。

 先ほど来質疑が行われておりましたけれども、あくまで、我が国にどういうふうに波及をしてくるかというところで、当然、シリコンバレー銀行など、大口の預金が多くを占めているとか、あるいは定期性の預金の割合が少ないだとか、そういういろいろな預金の構造ということが先ほど来も言われておったと思いますが、改めて、日本の銀行、預金取扱機関は、こうした構造にあるところは、同じような構造にあるというところはないということでよろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 経営破綻をいたしました米国の銀行につきまして、現在情報収集に努めているところでありますが、シリコンバレーバンクにつきましては、そもそも、資金流出が起こりやすい、大口の法人預金が多いという預金構造であったところ、保有債券の売却損と急激な資金流出が生じる中で資金繰りが行き詰まって、経営破綻に至ったものと承知をいたしております。

 また、シグネチャーバンクにつきましても、シリコンバレーバンクと同様に大口の法人預金に偏った預金構造であったところ、シリコンバレーバンクの破綻を契機に急激な預金の流出に直面したことが指摘されているものと承知をしております。

 そこで、シリコンバレーバンク等と同様の脆弱性を有する日本の銀行はないのかとのお尋ねでありますが、金融庁御出身の藤岡先生がよく御存じのとおり、金融当局として、個別の銀行の財務状況に言及することは、風評等が生じかねないので差し控えなければならないと考えておりますが、ただし、日本の銀行については、一般的に小口の個人預金が多く、シリコンバレーバンク等とは状況が異なることは申し上げることができる、そのように思います。

 また、足下の金融市場ではリスク回避的な動きが指摘されていますが、米国当局は、経営破綻した二行の預金の全額保護や金融機関に対する流動性供給策など、信用不安を拡大させないための措置を迅速に講じていると承知をいたしております。

 加えて、現在、日本の金融機関は総じて充実した流動性、資本基盤を維持しており、金融システムは総体として安定していることも踏まえますと、現時点で、今回の破綻が日本の金融システムの安定に重大な影響を及ぼす可能性は低いと考えています。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、引き続き、金融機関に対しては有価証券運用を含め適切なリスク管理体制の構築を促していくとともに、内外の経済金融市場の動向が金融システムの安定性に与える影響というものを注視をしていきたい、そのように考えているところです。

藤岡委員 一昨日でしたか、官房長官は、可能性は、我が国の金融システムに与える影響は高くないというふうに答弁されたと思うんですが、大臣は低いとはっきりおっしゃいました。一日で答弁ぶりが変わっておりますが、これは何か背景はありますか、大臣。

鈴木国務大臣 背景は特にございません。

藤岡委員 高くないというふうに聞くと、決して低いとは言い切っていないわけですから、あ、慎重に言われたなと思ったんですが、低いというふうにはっきりおっしゃったので、どういうことなのかなというふうにちょっと今お聞きをさせていただきました。

 やはり、これは緊張感を持って、私、是非対応していただきたいと思うんですよ。大臣、閣議後の記者会見で火曜日に初めて発信されましたけれども、やはりこれは月曜日には、月曜日中にはメッセージを出すとか、これはやはりもっと危機感を持って、私、緊張感を持って対応していきたいと思うんですよ。

 これは、世界の中でもどういうふうに伝播していくかということで、やはり、私、慎重に見ていかないといけないと思うんですね。これはどういうふうに伝播していくかというところで、大臣、リスクはどういうふうに見られていますか。

鈴木国務大臣 現時点では、先ほど申し上げましたが、今回の破綻が日本の金融システムの安定に重大な影響を及ぼす可能性は低いと考えております。

 今後の先行きにつきましては、米国当局による取組を踏まえて、米国の金融システムや金融市場がどのように推移していくかを見極めていく必要があると考えております。今後、例えば両銀行に対する取引や投資を行っていた者を通じた影響、日本の国内のですね、それから金融市場に動揺が生じることで内外経済や金融機関に与える影響など、様々な点に留意する必要があると考えております。

 金融庁としては、様々なリスクがあり得ることを念頭に置きまして、今後の国内外の経済金融市場の動向や、それが日本の金融機関に与える影響等について、感度を高くして注視をしていく必要があると考えております。

藤岡委員 本当に感度を高く、厳しい見立てを持って見ていただきたいと思うんです。

 黒田総裁、帰国後早々にありがとうございます。バーゼルの銀行監督委員会ですかね、中央銀行総裁会議に出られてきて、帰国をされて即御出席をいただきまして、ありがとうございます。

 ちょうど行かれていたということで、御出張されていたということで、この話も出ていたのかどうか、もちろん、言える話、言えない話はあると思いますが、黒田総裁、この件、シリコンバレー銀行などの破綻についてどのように見られているでしょうか。

黒田参考人 私、十二、十三日のBISの総裁会議に出てまいりました。当然そこでは、シリコンバレー銀行の破綻に関する議論がなされました。米国のみならず世界の金融市場に対する影響はどうかということが議論されたわけですが、幸い、かなり迅速に米国の政府及びFRBが対策を講じられまして、かなり安堵したという感じがBISの総裁会議でもありました。

 具体的には、御案内のとおり、シリコンバレーバンクが破綻して、いわゆる連邦預金保険公社、FDICの管理下に置かれているわけですけれども、米国の財務省及びFRB及びFDICが、預金の全額保護ということ、これはシステミックリスクを回避するということでありまして、それを公表されました。

 それからまた、FRBが銀行向けにターム物資金を供給するプログラムも新設されまして、こうした米当局による金融システム安定のために必要な対応が講じられたというふうにBISの総裁たちも感じて、いわば安堵したということであります。

 ただ、御指摘のように、今後どのような影響があり得るかということについては、大臣が今言われたように感度を高くしてよく見ていく必要はあるというふうに思っております。

藤岡委員 リーマン・ショックのときは、たしか蜂に刺された程度だというふうな話が出たりしていて、非常にその後大変な状況になったということもありました。リーマンと今回のケース、それは金融機関としてのありようというのが違うということはあるのかもしれませんが、いずれにしても、非常に私は危機感を持って、どういうふうに伝播していくか、スタートアップの企業がどういうふうな、また今後、影響になるのか。ヨーロッパの方でも何かまたそういう影響もあるんじゃないかなんという報道も出ていたりもして、非常に、どういうふうに回り回ってくるのかなということがやはり見えない段階だと思いますので、是非、本当に感度を高くお願いをしたいなということを思います。

 あと、この件で最後ですけれども、先ほど来地銀の含み損の話など出ておりましたけれども、外債への投資を増やしてきていて、債券の含み損の状況、今のところということでさっきおっしゃっていましたが、改めて、今回の件も受けて、この点だけちょっと確認させていただきたいと思うんですけれども。

鈴木国務大臣 米国等での金利上昇に伴いまして、日本の金融機関が保有する有価証券の評価損益は外債等を中心に悪化をしておりますが、一方、株式の含み益などの影響もありまして、昨年十二月期決算を見ますと、地域銀行の有価証券の評価損益全体はプラスと出ている、プラス、つまり評価益が出ていると承知をしております。

 加えて、日本の地域銀行は総じて充実した流動性、資本基盤を維持しておりまして、金融システムは総体として安定をしていると評価をしております。

 いずれにしても、金融庁といたしましては、引き続き、金融機関に対しては有価証券運用を含め適切なリスク管理の構築を促していくとともに、内外の経済金融市場の動向が金融システムの安定性に与える影響、これをまさに感度を高くして注視をしてまいりたいと思います。

藤岡委員 本当に厳しい見立てを持って注視をお願いできればと思います。

 続きまして、黒田総裁、金融政策について質疑をさせていただきたいと思います。

 本当に、十年間ということで、十年間激務に当たられたことにつきましては、大変お疲れさまでございました。

 同時に、やはりこの異次元金融緩和、私は、長くなったことについてのやはり検証というのはしっかりしていかなければいけないというふうに思います。

 そういう中で、白川前総裁が先日寄稿をされている中で、いわゆる金融政策の大実験というふうな形で批判的に論じられているところであります。このことについて、黒田総裁の御見解をお伺いしたいと思います。

黒田参考人 白川前総裁が寄稿されたことはよく承知しておりますけれども、個別の論文についてコメントすることは差し控えたいと思います。

 その上で申し上げますと、二〇一三年当時、十五年にわたるデフレが続いていた状況におきまして、二〇一三年四月に導入した量的・質的金融緩和は、政府の様々な施策とも相まって、経済の押し上げ効果をしっかりと発揮し、我が国がいわゆる物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況に至るという意味で、大きな役割を果たしてきたというふうに考えております。

藤岡委員 非常に、どういうふうに評価をするか。総裁は、成功だったというふうにかなり強く言い切られておるのでございますが、やはり、この間の国際比較をすると、様々な実質賃金、これは国際比較をする資料をお配りしておりますけれども、国際比較をすると、日本が非常に低迷をしてしまう。また、そもそも物価安定目標二%の持続的なところの達成は未達と。それから、一人当たりの名目GDPの国際比較。やはり、国際比較をしたときに、この十年間の間、経済がなかなか低迷をしたという、私はこれは現実としてあると思います。そういう中で、この経済をよく検証、この金融政策を私は本当に検証していかないといけないということを思います。

 その中で、昨年十二月のイールドカーブコントロールの運用の見直しのところで、いわゆる許容する変動幅〇・五%というところの変更がなされたわけでございますが、資料二ページ目に読売新聞の記事も出させていただいておるんですけれども、以前はけんけんがくがくに議論が行われていて、なかなか、今は何か単に皆さんの、委員が報告をされているような場になってしまっているというような指摘もあります。

 今回の議事要旨、公表されているのを見ますと、それよりは少し議論もあるのかなというふうには思えるところもあるんですけれども、この金融政策決定会合で、これまで、これは大きな私は見直しだと思うんですね。私、別にこの見直しについてはいいと思っていますけれども、この〇・五にしたことについて。これまで皆さん全員、逆の立場を取られていて、まあ、高田先生のはちょっと除きますけれどもね、高田先生、なったばかりですし。突然また今回大きな変更で、またみんな全員賛成になっているわけですね。

 正直、私、これ、感じたときに、ちょっと違和感を感じたんですよね。以前の決定会合を見ると、結構反対が出ていたりとか、様々な対応が行われているんですけれども、この重大な変更に当たって、今までみんな逆の方で、また今度みんな一斉に逆の方でというふうに流れているわけなんですけれども、総裁自身が、いや、これは利上げに当たるというふうに言って、否定的な立場を取られていて。

 この決定会合、これはどういうふうに、それぐらい、いわゆる市場機能度といいますか、大変だったという状況だったからこういうふうになったというのか、これはどういうふうな流れでこのようなことになったのか、言える範囲で結構ですので、お答えをお願いしたいと思います。

黒田参考人 毎回の金融政策決定会合における具体的な対応につきましては、その時々に得られる様々なデータあるいは情報に基づいて経済、物価、金融情勢を詳細に点検して、それらを踏まえて決定されるものであります。

 また、政策委員は、執行部の説明や決定会合などでの議論を踏まえて、それぞれ独立の立場で議論し、採決に参加しております。

 私のこの十年の体験から申しますと、けんけんがくがく、様々な議論が行われるということは引き続いておりまして、何か議論が行われなくなったということは感じておりません。

 そこで、十二月の決定会合においてこういう決定をした背景というのは、我が国の金融資本市場では、昨年の春先以降、海外金利が上昇していくという局面で市場機能の低下が見られていたわけですが、昨年十二月の決定会合におきましては、実は十一月上旬以降、海外金利は低下してきていたわけですね。にもかかわらず、市場機能の低下が常態化しているというふうに判断したわけであります。

 そこで、具体的には、国債市場において、各年限間の金利の相対関係、あるいは現物と先物の裁定などで市場機能が低下している、さらには社債市場においても発行スプレッドの拡大などが見られたということもありまして、債券市場の機能度の低下が確認されたということもあって、昨年十二月の決定会合では、金融環境は全体として緩和した状態にあるものの、こうした債券市場の機能度が低下した状態が続くと企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼすおそれがあるということで、御指摘のような、変動幅をプラスマイナス〇・二五%からプラスマイナス〇・五%に拡大するということについて全員一致で決定したということであります。

藤岡委員 この十年の間に、本当に決定会合、今お話を聞いていても、少しまだ疑問が私は残りますけれども、その中で、やはり異次元金融緩和の限界といいましょうか、例えば、今回これだけの、いわゆる社債の適正な金利が一体どのぐらいなのかがなかなか見えにくい、必要以上にプレミアムを乗せなくてはいけないだとか、国債の金利が、適正な金利がどのぐらいなんだとか、いろいろな市場機能度の低下という具体的なまさに弊害が出たということで、この変更にということになったと。

 さらに、これに併せて海外が金利を上げざるを得ない状況になった。その中で、日本の現在の金利、そしてその中でなかなか、円安に振れる、金利差によって。この金利差による円安に振れる要因ももちろんこれは否定できないというところだと私は思うんですけれども、そういう中で円安で物価が上がって、しかも、円安によって以前よりは日本経済が決してプラスとは言えない状況、むしろマイナス面も目立ってきているという状況があったと思います。

 つまり、海外の金利が上がっていて日本はなかなか上げられない状況になっているところ、そして市場機能度が低下してきてしまっている現在の状況になっているということ、こういうことをやはり見たときに、こういう状況をやはり異次元金融緩和の限界という側面で私は見た方がいいのではないかなというふうに思うんですけれども、黒田総裁はどういうふうにお考えでしょうか。

黒田参考人 御案内のとおり、日本銀行は、二〇一三年の一月に金融政策決定会合において、二%の物価安定目標を設定し、これをできるだけ早期に実現するべく金融緩和を行うという決定をしております。

 この二%の物価安定目標というのは、物価指数の性格とか、あるいは金融政策における余地を残すとか、そういうこともあって二%という目標を設定したわけですけれども、これは今や、世界の主要な中央銀行全てが二%の物価安定目標を目指して金融政策を運営するという形になる、いわゆるグローバルスタンダードになっている。そうした下で、私どもとしては、量的・質的金融緩和、そしてマイナス金利の導入、さらにはイールドカーブコントロールといった形で、様々な形で最も効果的な金融緩和を追求してきたわけです。

 その一方で、金融緩和に伴う副作用というものについても十分配慮して、国債の貸出しの条件を緩和したり、あるいは、十年物国債の目標をゼロ%としつつ、その変動幅をプラスマイナス〇・二五にし、さらには昨年の十二月にプラスマイナス〇・五%にしたということであります。

 そうした中で、今や物価上昇率は四%台になっていますけれども、これはほとんど輸入物価の上昇を起点とするものでして、もう既に輸入物価の上昇率は下がってきております。さらに、政府のエネルギー対策の補助金によって消費者物価の上昇率には更に下押しの効果が出てきますので、今後、二〇二三年度半ばにかけて物価上昇率は低下して、二%程度を割り込む可能性が高いと見ておりますので、現在の金融緩和を続ける必要はあるというふうに考えておりますが、他方で、御指摘のような副作用については、その状況に応じて適切な対応を取ってきたし、今後ともそういうことは十分考えていく必要があるというふうに思っております。

藤岡委員 本当に、長過ぎる異次元緩和のしっかりした検証が必要だということを申し上げまして、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 黒田総裁に、今日は四十分、質問させていただきたいと思います。

 国際会議からお帰りの直後のお疲れのところでございますけれども、お運びをいただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 私、総理を辞めた後、しばらくの間、相当長く衆議院の懲罰委員会におりまして、国会議員は必ず一つの常任委員会に入らなきゃいけないんですが、懲罰委員会というのは開催しない方がいい委員会でして、実際、出番がなかったんですね。それはよかったんですが、やはり全く質問をしないと政治家は劣化してしまうなという危機感を感じまして、その後、ほどなく財務金融委員会に所属をさせていただくようになりました。

 この間、黒田総裁とも金融政策をめぐって何度も質疑をさせていただきましたが、恐らく今回が最後のやり取りになるかもしれないなと思います。今日は、本当はアメリカの緊迫した金融情勢などの話もしたいところでありますけれども、やはり、この十年間をきちっと振り返って、この国会の中に、黒田総裁としての異次元の金融緩和をどう総括するか、議事録として残す意味からも、少し過去も振り返りながらの質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 まずは、十年間を振り返って、先週の金融政策決定会合の直後の記者会見で、成功だったというお話をされました。これは切り取っただけであると誤解をされやすいと思うんですね。多分いろいろな観点から成功だったという表現をされたと思うんですが、異次元の金融緩和十年を振り返って成功だったと言った、その真意を改めてお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 まず、二〇一三年に導入した量的・質的金融緩和、これは、その後様々な調整も行いましたが、基本的に量的・質的金融緩和という形で大幅な金融緩和を続けてまいりました。

 この結果、もちろん政府の様々な政策とも相まってでございますけれども、経済、物価の押し上げ効果をしっかりと発揮してきておりまして、我が国は物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっていることは確かであります。一九九八年から二〇一二年まで十五年間続きのデフレというものが克服されたということは事実であります。

 また、経済の改善ということが労働市場のタイト化をもたらしまして、女性や高齢者を中心に雇用がはっきりと増加して、この十年間で実は四百万人以上雇用が拡大をしております。その結果、いわゆる十五年続いたデフレ期に言われた就職氷河期というようなことは全く解消しております。そういう意味で、若年層の雇用環境が非常に大きく改善したということもあります。

 そして、二〇一四年以降、ベアが復活して、雇用者報酬も増加しております。十五年間のデフレ期にはベアがなかったわけですけれども、二〇一四年以降、毎年ベアが行われているということであります。

 もちろん、この間の大幅な金融緩和に伴う様々な副作用が指摘されていることは承知をいたしております。当然、政策には効果と副作用がありますので、それらを比較考量しながら、最も適切な政策を実施する必要があるということは確かであります。この間の大規模な金融緩和は、先ほど申し上げたような効果が副作用を上回っているというふうに考えております。

 もちろん、二%の物価安定の目標の持続的、安定的な実現に至っていないのは事実でありまして、今後も副作用にも十分配慮しながら金融緩和を続けていくことで、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的、安定的に達成することは可能ではないかというふうに考えております。

野田(佳)委員 いろいろ副作用もあったかもしれないけれどもプラス効果の方があったという御説明だと思うんですけれども、これに一つ一つ反論するつもりはありませんが、高齢者や女性を含めて雇用が増えたとお話しでした。でも、やはり、非正規が増えたわけであって、この間の十年間の実質の成長率はそれほど伸びていない分、雇用が増えたと言うけれども、その分、生産性はむしろ低くなっているということですので、この評価は私は一面的だと思うんですね。

 これでどうのこうのじゃありません。問題は、副作用よりもプラス効果があったということによって成功だったとおっしゃりたいんだと思うんです。という解釈をいたしましたけれども、私は、その評価というのは、最初のプレゼンと、まさに総裁に就任したときの鮮烈な、黒田バズーカと言われた、二年で二%、二倍という、二、二、二という数値を政策目標として掲げたわけですから、それに沿って判断するのが、成功か失敗かだと思うんですね。

 その意味でいうと、数値まで挙げたわけですから、政策効果を掲げて。結局、二年と言ったけれども、六回延長して、最近では、粘り強く実現を目指すみたいな表現になっているわけでしょう。結局、十年、日本銀行総裁としては最長期間ではありませんか。それでも、結局未達だったわけですから、数字で挙げた政策目標は残念ながら到達しなかったということは、結果としては私は失敗と受け止めるしかないというふうに申し上げたいと思いますが、いかがですか。

黒田参考人 二%の物価安定目標、これが持続的、安定的に達成できる状況になっていない理由としては、やはり基本的に、十五年続きのデフレが続く中で、物価や賃金が上がらないことを前提とした考え方や慣行、いわゆるノルムが定着して、その転換に時間がかかっているということだと思います。

 二〇二一年三月に金融政策の点検を行いましたけれども、その際に、物価上昇率が高まりにくい背景として、予想物価上昇率に関する複雑で粘着的ないわゆる適合的予想形成のメカニズム、あるいは、先ほど申し上げた、四百万人の雇用が増えたわけですけれども、弾力的な労働供給による賃金上昇が抑制されたことがある、あるいは企業の労働生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収などの要因を挙げておるわけですけれども、ここに来て、女性や高齢者の労働参加率はもう既に相当高くなっておりまして、女性の就業率は米国を上回っているという状況でありまして、追加的な労働供給が徐々に難しくなる面で、労働需給の面では、賃金が上がりやすい状況になっている。また、賃金や物価が上がらないというノルムについても、この春の労使交渉では、労使双方からこれまでと違う声が聞かれておりまして。

 そういう意味で、二%の物価上昇目標が達成されていないことについては私も残念だと思っておりますけれども、十五年続きのデフレを解消し、経済を活性化させ、雇用も拡大し、そうした面では、金融政策、金融の緩和の効果というものはあったというふうに見ております。

 二%の目標を掲げて、それが達成されていないという点は委員の御指摘のとおりでありまして、その点については、先ほど申し上げたような理由があったとはいえ、大変残念だと思っております。

野田(佳)委員 残念というお言葉だけれども、総括では、私も残念でございまして、もう一つ、未達の理由をよく解明していかなければいけないと思うんです。ノルムというお言葉でしたけれども、それだけ大変な構造だったということだと思いますけれどもね。

 いろいろな方が総括をしている中で、消費税の増税が二%物価上昇を阻んだという意見を言われる方もいらっしゃいます。これについては、黒田総裁はどういうお考えでございますか。

黒田参考人 個人的なことを申し上げますと、私、大蔵省におりましたときに、いわゆる一般消費税の経済効果の分析などを担当いたしましたし、また、売上税が検討された際もそれに関与したことがありますし、消費税が実際に引き上げられたときにも関係しておりましたし、その後、三%から五%に引き上げられたときにも大蔵省で関係するところにおりました。

 そういう意味で、消費税率引上げの影響について申し上げますと、一般的に、確かに駆け込み需要とその反動減というのがありますし、もう一つは税率引上げに伴う実質所得の減少という、二つの経路を通じて確かに経済に影響を及ぼすわけでして、二〇一四年と二〇一九年の消費税率引上げの際にも、程度の差はあるものの、これらの影響が生じたというふうに考えております。ただ、消費税率の引上げというものは、長い目で見れば、将来不安を軽減して、前向きな支出行動を後押しするという面もあるとは思います。

 いずれにせよ、こうした消費税率引上げの影響には様々なものがありますので、金融政策としては、そうした点も含めた経済、物価、金融情勢全体を点検の上で決定されるべきものであるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、物価安定の目標の持続的、安定的な達成に至っていない理由としては、基本的には、やはり十五年続きのデフレの中で賃金や物価が上がらないということを前提とした考え方、慣行が定着して、その転換に時間がかかっているということが挙げられると思っております。

野田(佳)委員 消費税の影響については、冷静な、バランスの取れた分析だと私は思います。

 そうじゃない人も結構今いますよね。かつてはデフレは貨幣的な現象だと言っていた人たちが、金融政策の一本足打法だけでは駄目だったということに気づき、その言い訳として消費税を取り上げるケースがあるし。かつての副総裁もそうじゃないですか。私は、あれは見苦しいと思っていますよ。言い訳しないと言った人が、見事に言い訳でこれを使っている。突発的な事項があって言い訳せざるを得ないということはあるかもしれないけれども、これは法律で決まっていた所与の条件でしょう。その所与の条件の上で副総裁を引き受けた人がこんな言い訳をすべきではないと思っていまして、その意味ではまだ、まだと言っちゃ失礼ですけれども、バランスの取れたお考えだというふうに思います。

 デフレは貨幣的な現象とか、一時ははやった議論でありますけれども、二%の物価目標とか異次元の金融緩和の依拠した理論というのは、いわゆる期待理論じゃないですか。期待に働きかけるって、これはどう思いますか。結局駄目だったわけじゃないですか、この理論が、この立論が。これについてどう総括されますか。

黒田参考人 二〇一三年に導入いたしました量的・質的金融緩和というのは、一方で、量や質の両面で思い切った金融緩和を行うことで名目金利を引き下げる、それと同時に、二%の物価安定目標に対する明確なコミットメントによって人々の予想物価上昇率を引き上げる、それを通じて、実質金利の低下を起点として、金融緩和、緩和的な金融環境を実現して、経済や物価に好影響を及ぼすことを想定していたわけであります。

 二〇二一年三月の点検で示したとおり、量的・質的金融緩和の導入以降、確かに名目金利は大幅に下がっていますし、それから実質金利もかなり大きく下がっていまして、需給ギャップがプラス幅になり、さらにプラスの物価上昇率が定着するなど、いわゆる物価が持続的に低下するという意味でのデフレではなくなったというふうには思っておりまして、また、こうした下で、現在も予想物価上昇率は全体としては上昇しております。

 そういう意味で、期待に働きかけるということは意味があるとは思いますが、期待に働きかけるだけで、実質的な金融緩和を行わなくてもそれで物価が二%上がるということはないわけでして、我々の追求していた量的・質的金融緩和というのは、名目金利を引き下げるということと、予想物価上昇率、期待に働きかけてそれを引き上げて、この両者相まって実質金利を大幅に引き下げるということを意図したものでありまして。

 そういう意味では、期待に働きかける部分の予想物価上昇率の部分は、今はもう相当上がっているんですけれども、過去十年間を取りますとなかなか二%に達していないという状況が続いたという意味では、期待に働きかける効果が、二%をできるだけ早期に実現する、あるいは二年を目途に実現するといったことが、期待に直接働きかけて予想物価上昇率を二%に引き上げるということは実現しなかった。

 そういう意味では、期待に働きかけると、意味はあるし、一定の効果を持ったけれども、それだけで何か二%の予想物価上昇率が実現するということはなかったという意味では、半ば成功したということかと思います。

野田(佳)委員 いや、そこから半ば成功に持っていくにはちょっと飛躍があると思うんですけれどもね。私は、そもそも、物価上昇二パーというのは、あの鮮烈な会見のときはみんな二という数字を認知したと思うんですけれども、それ以外は金融関係に詳しい人以外は物価上昇二パーなんということを念頭に置いて消費行動とかはしていないんですよ。認知していないんです。承知していない、消費者が。承知していないことに期待なんて持つわけないわけなので、そもそも、やはり空回りした議論ではないのかなというふうに私は思います。この議論の話はまたおいておいて。もっといっぱいあるんですよ、テーマが。

 この間の記者会見、あの三月十日の会見で一番私はこれは看過できないと思った発言があるんです。それは、国債とかETFの大量購入を、何の反省もないし、負の遺産だとも思っていないという、これはちょっと随分開き直った発言だと思いましてね。

 これはちょっと国債とETFを分けてお聞きしますけれども、まず、国債の大量購入、何の反省もないし、負の遺産だと本当に思っていないんでしょうか。改めてお伺いしたいと思います。

黒田参考人 国債買入れは、二%の物価安定の目標を達成するために、その時々の経済、物価、金融情勢に応じて、効果と副作用を比較考量しながら、最も適切と考えられる政策を実施してきたわけであります。敷衍いたしますと、量的・質的金融緩和導入以降に実施してきた国債買入れは、イールドカーブ全体を低位に安定させることによって大規模な金融緩和がつくり出される、そして良好な金融環境を持続するという意味でも効果を発揮してきたと思います。

 この点、もちろん、日本銀行の国債買入れが大きく増加してきたことや、それから、イールドカーブコントロールの下で金利をコントロールしていることが国債市場の機能に影響する面があるということは事実でありまして、これに対しては、これまでも、国債市場の機能度に配慮する観点から、いわゆる国債補完供給の要件緩和その他様々な手段を講じてまいりましたし、昨年の十二月には長期金利の変動幅を拡大するなどの運用の一部見直しを実施したところであります。

野田(佳)委員 一部何か努力したというお話ですけれども、日銀が今年の一月現在で保有している国債は五百八十四兆円ですよね。中央銀行の国債保有率を見ても、全体の半分を超えているのは日本銀行だけです。これは突出していますよね。

 その突出して国債を保有したことによって、今、市場の話をされていましたけれども、債券市場、国債市場においてはモンスターのような存在であって、市場機能は著しく低下をしていると私は思いますし、加えて、超低金利がずっと続いたがゆえに、企業のぬるま湯的な体質が生まれて、産業の新陳代謝が進まないというような、いろいろな要因が生まれています。

 そして、何よりも、これは第一義的には政府の責任があると思いますけれども、やはり財政規律が緩んだ大きな要因にもなっているというふうに思いますので、これは、何の反省もないし、負の遺産だと思っていないという御認識では、後を託される人がお気の毒だと私は思いますね。

 次に、ETFについてもお聞きしたいと思うんですけれども、ETFの大量購入も、これも何の反省もないし、負の遺産だと思っていないということですか。

黒田参考人 ただいまの御質問にお答えする前に、国債買入れが財政規律を弛緩させたのではないかという点につきましては、財政運営については、政府、国会の責任で行われるものでありますので、私からコメントするのは差し控えたいというふうに思います。

 ETFの買入れ、これは、市場のリスクプレミアムを抑制して、金融市場の不安定な動きなどが企業や家計のコンフィデンス悪化につながることを防止することによって、個人消費や設備投資を下支えする効果を発揮してまいりました。この点、ETF買入れについては、株式市場の機能度あるいはコーポレートガバナンスへの影響といった副作用が指摘されていることも認識しております。

 もっとも、ETFを構成する個別株式の議決権については、スチュワードシップ・コードを受け入れた投資信託委託会社によって適切に行使される扱いとなっておりますし、また、買入れ対象につきましても、個別銘柄に偏った影響をできるだけ排除するため、指数の構成銘柄が最も多いTOPIX連動型としております。

 このように、現在の枠組みは、中央銀行としてミクロの資源配分に具体的に関与することはできるだけ回避しつつ、企業経営の規律づけを確保する仕組みとなっております。

 いずれにしましても、ETF買入れは、二%の物価安定目標を達成するため、その時々の経済、物価情勢に応じて、効果と副作用を比較考量しながら、最も適切と考えられる政策を実施してきたというふうに考えております。

 なお、日本銀行は、将来、仮に保有するETFの処分を行うという場合には、ETF市場の情勢を勘案して、適正な対価により行うという方針を示しております。この場合、当然ですけれども、日本銀行の損失発生を極力回避することと、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避することを考慮して、処分の方針を定めることとなっております。

 もっとも、現時点では、大幅な金融緩和の一環ですので、具体的なオプションを示すことは出口の方針を示すことになりますので、今の時点はやはり時期尚早であるというふうに考えております。

野田(佳)委員 ETFの購入というやり方を取っている中央銀行というのは、ほかには例はないと思うんですね。ただ、スタートは、正確に言うと、黒田総裁のときではなくて、白川総裁のときに、四千億円ちょっとぐらいのスタートだったと思いますが、黒田総裁になってから年間の購入額を一兆、三兆、六兆、十二兆と、ずっと枠を増やしてまいりました。今保有しているのが三十七兆ぐらいあるんでしょうか。

 今、処分の仕方のお話をされましたけれども、国債は満期が来れば減らしていくことが可能だと思いますけれども、ETFは、どこかで売るというタイミングとか額とか、これは私は市場に大きな影響があると思うので、相当難しい作業だと思います。

 いずれにしても、国債にしろ、あるいはETFにしろ、大規模緩和の後始末は物すごく困難なことだと私は思いますので。困難だと思います。だから、余りにも簡単に、何の反省もないしとか、あるいは負の遺産だとも思っていないということは、言い過ぎだと私は思いますね。その言葉は不適切だと思いますけれども、改めてそこだけは変えてもらいたいと思いますね。

黒田参考人 影響がないとかなんとか申し上げたわけではなくて、様々な副作用も十分考慮しながら、それに対応する対応策も取りながら国債の保有あるいはETFの保有を行ってきたということであります。それはそれなりに効果があったということだと思います。

 出口に際してのいろいろな方法につきましては、実際、既にFRBとかECBも金融の正常化を始めています、これはインフレが非常に高進したということもあってですけれども。その際も、それぞれの中央銀行ごとに、例えば、米国の場合は、御承知のように、国債だけでなく資産担保証券を相当たくさん購入していますので、それをどのように調整していくかとか、そういうことをこれからやっていかれると思います。それから、ECBの場合は、二十の中央銀行の集まりですので、二十の国の国債が保有されていると思いますけれども、その対応というのはそう簡単ではないと思いますけれども。

 いずれにしても、その正常化の過程の中で適切な対応を取っていかれるというふうに思いますし、私は、二%の物価安定目標が持続的、安定的に達成される状況になれば、当然、金融の正常化、出口ということになると思いますけれども、その際も、そのときの経済、物価、特に金融情勢などを踏まえて適切に対応していただけるし、適切に対応できるというふうに思っております。

野田(佳)委員 新たに総裁に就任をされる植田和男さんも、大量に買ったものを今後どういうふうにしていくかは大問題という認識を示されておりますので、引き継ぐ人が大問題だと思っているわけですから、そのことをおもんぱかった発言をされた方がいいというふうに私は思います。

 どうも頑固に、変わらないようですから、次の質問に行きたいと思いますけれども。

 量的な緩和をずっと推し進めてきたけれども、効果がなかった。例えば、国債は年間八十兆まで枠を拡大した、だけれども駄目だった。

 分岐点になったのは、私は、マイナス金利の導入、二〇一六年の一月の決定だと思うんです。先ほどのあの藤岡委員の資料を見ていたら、確かにそうだったと思ったのは、あの金融政策決定会合、五対四の採決で決めているんですよ、ぎりぎりで。あれは本当に私は大きな分岐点だったと思うんですよね。このまま量的緩和は限界があるから、もうちょっと立ち止まって冷静に考えようかと言うか、それとも、金融政策に過信して更に突っ込んでいくかの分岐点がマイナス金利だったと思います。

 今改めて、この評価はどうされていますか。私は、これも失敗だったと思いますが。

黒田参考人 マイナス金利政策というものは、御承知のように、欧州の中央銀行は日本銀行よりずっと前に既にやっておられたわけですけれども、日本の場合は、まさに量的・質的金融緩和によってイールドカーブ全体、金利全体が引き下げられてきていたわけですけれども、あの頃の状況というのは、委員もよく御承知のように、一方で、石油価格が百ドルを超える状況から、二〇一六年の初めに三十ドルを割るぐらいにエネルギー価格が非常に大きく下がって、物価上昇率が日本の場合も大きく下がった状況になりました。

 それから、これはよその国のことですけれども、人民元が非常に暴落して、為替市場が非常に不安定な状況になっていたということもありました。

 いずれにいたしましても、マイナス金利政策そのものは、やはり、イールドカーブの起点を引き下げることでイールドカーブ全体にわたって金利低下圧力を加えて、企業の資金調達コストを低い水準に維持している、このことは、企業収益や雇用・所得環境の改善に寄与し、経済全体を下支えしているというふうに思います。

 その運用面では、御案内のとおり、いわゆるイールドカーブコントロールの枠組みの下で、金融緩和による経済、物価への刺激効果と同時に、金融仲介機能への影響にも配慮して、バランスを取って金利を決定しているほか、これも御案内のとおり、マイナス金利が実際に適用される残高というのは日銀当座預金のごく一部にとどまっていまして、これは、欧州の中央銀行がやっておるマイナス金利は、当座預金全部にマイナス金利ということで、金融機関への影響が大きいという批判もあったわけですけれども、日本銀行の場合はそういうことも配慮して、日銀当座預金のごく一部にとどまる形にしております。

 マイナス金利を含む低金利環境は確かに金融機関の収益を圧迫する可能性があるわけですけれども、その結果、その金融仲介機能に悪影響が出ているかといいますと、我が国の金融機関は充実した資本基盤を備えておりまして、金融仲介機能は円滑に発揮されているというふうに思っております。

 マイナス金利については、確かにその副作用の議論がいろいろあることは事実でありまして、その点は十分考慮しつつ、効果が副作用を上回って、全体として所期の効果を発揮しているのではないかというふうに考えております。

野田(佳)委員 二〇一六年当時というのは、日本だけではなくてEUも、スウェーデン、デンマーク、スイス、ハンガリー、幾つかマイナス金利を導入していたと思いますけれども、ほかは全部もう撤退しているじゃないですか。やはり、異次元の金融緩和、長過ぎる象徴がやはりマイナス金利一つだと私は思います。

 五対四で決めるぐらいですから、内部で熟した議論もしないままやったから、多分金融機関は驚いて、長期金利も下がってきたから、混乱が生じて、そして、慌てて次にひねり出したのが今度、長期金利の操作、いわゆる長短金利操作、イールドカーブコントロールに入っていくわけですよ。

 私は、どんどんどんどんとマイナス金利から追い込まれた金融政策に入ってきているというふうに思うんです。イールドカーブコントロールというのは、アメリカ、FRBも検討したけれども、難しそうだから二〇二〇年、やめていますよね。オーストラリアは一回踏み切ったけれども、やはり大変で、出口も混乱した。そういうのを見ているのに、なぜここまで突っ込んでしまったのか。今は、失敗したな、こんな曲芸みたいなこと、やらなきゃよかったと、内心はそう思っているんじゃないんですか。いかがですか。

黒田参考人 マイナス金利を導入する決定を行った金融政策決定会合では、確かに五対四というふうに意見が分かれたことは事実でありますけれども、当然ですけれども、金融政策決定会合の日にだけ議論するのではなくて、その前からずっといろいろな形で審議委員の方とも議論をしてきたわけでありまして、これは私の感じですけれども、多くの人はマイナス金利導入が適切だというふうに思っておられたと思うんですけれども、そのうち一部の方は、やや時期尚早、一月の段階でやらないでもう少し様子を見てからやった方がいいというお考えだったのではないかと思っております。

 ですから、議論がなかったとかそういうことではなくて、それ以前から、内部ではいろいろな議論をしておりましたし、金融政策決定会合でも様々な議論があって、そして五対四で導入が決定されたということであります。

 その後、そういった状況全体を勘案した上でイールドカーブコントロールというものを導入したわけですけれども、それは、量的・質的金融緩和で国債購入の量をターゲットにしている場合には、海外のいろいろな要因とかなんかによって金利はかなり動いてしまう。そうすると、十分な金融緩和を続けていく必要があるときに、海外の要因その他で金利が動いてしまうのは金融緩和を持続的に、効果的に続ける意味では問題があるということで、イールドカーブコントロール、それはもちろん政策金利でマイナス〇・一%というものを導入した後にそうしたわけですけれども、量的・質的金融緩和のような国債購入額の量をそのターゲットにして運営するというのではなくて、むしろ、名目金利を、十年物国債をゼロ%程度に維持するように国債買入れ額は変動させるという形にしたわけですので。

 そういう意味では、確かに、御指摘のように、量的・質的金融緩和という形でかなり長く続いていた下で、引き続き、低い名目金利を維持して実質金利マイナスを維持するという面では、海外のそういう影響が過度に及ぶのは金融緩和の効果をそぐというふうに考えて、むしろ、より効果的な金融緩和である量的・質的金融緩和の改善というか、全く異質のものというんじゃなくて、大幅な金融緩和のときの金融調節の中間目標を国債買入れ額からイールドカーブに変えたということでありまして、それ自体は何か、追い込まれてそれ以外できないということよりも、むしろ、そういった状況で、より持続的に明確に金融緩和を続けていくということができるようにしたということであるというふうに考えております。

野田(佳)委員 私は全く見解が違いまして、例えばマイナス金利の導入も、金融政策決定会合の八日前に国会では明確に、マイナス金利を導入しないとお話をされているわけです。それはサプライズのためにあえて言ったのかというと、本当にそう思っていたのかもしれない。なぜならば、その議論が熟していたなら、もっと金融機関は準備をしているはずじゃないですか。あの右往左往は、余りにも突発的過ぎたと私は思っていますし、その結果の失敗だと思っています。

 その上であの長短金利操作に入ってくるわけですけれども、これについては、多分、予期せぬいろいろな展開になったと思うんですね。

 例えば、長期金利の上限を去年、〇・一から〇・二五に上げたとき、いわゆる指し値オペについて議論をこの委員会で私はやらせていただきました。そのときに、総裁は、ラストリゾートだとおっしゃって、最後の手段だ、めったに使うものじゃないとおっしゃったんですよね。しばらくしたら、それをしょっちゅう使っていましたので、おかしいじゃないかと私は質問したんです。伝家の宝刀をぶるんぶるん振っているんじゃないか、おかしいと言ったら、簡単に撤回されたんです、ラストリゾートという言葉は不適切だったと。驚いたんですよね。よく考えた上でやっているとはとても思えないなと思いました。今日に至っては、まさにこの指し値オペで、あの上限が去年の金融政策決定会合で〇・二五から〇・五になった。一月で二十三兆も国債を買わなきゃいけないような状況になりましたね。

 私は、この指し値オペの対応を見ても、これが常態化しちゃったということは、これは総裁の予想外の出来事ではないかと思いますが、いかがですか。

黒田参考人 現在の我が国の経済、物価情勢を踏まえますと、イールドカーブコントロールの枠組みによって金融緩和を継続することが適当であるというふうに考えております。その場合、確かに様々な手段を組み合わせてイールドカーブが円滑に形成されるように市場調節を行っておりまして、指し値オペについても、御指摘のように、かなり機動的に活用されているということであります。

 マイナス金利のときもそうですし、いずれも、金融政策の決定についてもそうですけれども、もちろんその時点で様々なことを考えて、しかも政策委員会で十分な議論を行って決定していくわけですけれども、その政策委員会で決定するものを事前に私が何か市場に伝えるということは、これは不適切ですので、そういうことはしませんし、できません。それはほかの中央銀行も同じでありまして、具体的に次の金融政策決定会合で行われる金融政策について示すということは適切でないというふうに思います。

 もちろん、いわゆるフォワードガイダンスというものは、これは日銀が最初に始めたやり方なんですけれども、二〇〇〇年代の初めに始めたわけですけれども、今や、各国の中央銀行はフォワードガイダンスというものを使っていますし、我々もフォワードガイダンスを示している部分もありますけれども、金融政策の調節のやり方について、その時々に決めることを事前に、決める前に、金融政策決定会合で、合議体で決める話を事前に何か決まったかのようにそうなるというようなことを示すということは、各国の中央銀行もできませんし、我々もしないということだと思います。

野田(佳)委員 イールドカーブコントロールに関わることの中で、十年物の金利よりもその未満の金利の方が少し高くなってきちゃっているという、いわゆる国債市場のひずみの問題、これを解消できないまま去ることになりますよね、総裁が。

 私は、よく野球でピッチャーが交代するときに、そのピッチャーは次のマウンドに立つピッチャーのためにマウンドをならしていくじゃないですか、自分の足跡を消して。せめてこの国債市場のひずみぐらいは直していってもらいたいと思ったんですが、それもできないまま去ることについて、どういうお考えをお持ちですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げているように、債券市場の機能度低下の背景には、海外金利の変動の高まり、それから先行きの金融政策運営をめぐる市場参加者の思惑などから債券市場のボラティリティーが上昇していた、そして、イールドカーブコントロールの下で日本銀行の国債買入れが増加してきたというようなことも影響しているというふうに思います。

 これに対しては、先ほど来申し上げているように、機能度に配慮する観点から、国債補完供給の要件の変更とか様々な手段を講じておりますし、昨年十二月には長期金利の変動幅を拡大するなど、運用の一部見直しを行っております。

 今後も、様々な手段を有効に組み合わせて適切な市場調節運営を続けることで、時間はかかるものの、市場機能は改善していくというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、各国も同じですけれども、中央銀行総裁はその時点で最善と思われる政策を行うということで、何か後継者のためにその時点では最善でないことでも何かやるということはあり得ないということを申し上げたいと思います。

野田(佳)委員 総裁の十年間が最後の一言でよく分かりました。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

塚田委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案及び国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣鈴木俊一君。

    ―――――――――――――

 株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案

 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木国務大臣 ただいま議題となりました株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案及び国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 国際情勢の変化等を踏まえ、株式会社国際協力銀行の機能強化を通じ、日本の産業の国際競争力の維持向上に資するサプライチェーンの強靱化や、スタートアップ等の日本企業のリスクテイク推進等を進めるとともに、ロシアの侵略戦争に直面するウクライナの復興を支援するため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、日本企業のサプライチェーン等を支える外国企業への貸付けや、物資を日本企業が海外で引き取る場合の貸付け、海外でのサプライチェーン強靱化のための事業資金の国内大企業経由での貸付けを可能とすることとしております。

 第二に、デジタル、グリーンなどの成長分野を見据えた、日本企業の更なるリスクテイクを後押しするため、海外事業を行う国内のスタートアップ企業や中堅・中小企業への出資等を可能とするとともに、特別業務勘定の対象分野を拡大することとしております。

 第三に、国際協調によるウクライナ復興支援への参画に向け、国際金融機関によるウクライナ向け融資を国際協力銀行が保証できるようにすることとしております。

 次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 現在、ウクライナの復興支援や公衆衛生危機への対応強化が国際的な喫緊の課題となっている中、国際復興開発銀行において、こうした課題への対応を目的とした基金の設立が進められております。

 政府は、国際復興開発銀行が果たす役割や、本年のG7議長国として日本が国際社会でリーダーシップを発揮することの重要性に鑑み、同銀行が加盟国の復興又は開発を支援するために設ける基金に対して国債による拠出を可能とするため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、国際復興開発銀行に設けられる基金に対し、予算で定める金額の範囲内で国債による拠出を可能とすることとしております。

 第二に、当該基金に対して、外国通貨建て国債による拠出を可能とすることとしております。

 以上が、株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案及び国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

塚田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十二分散会


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