衆議院

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第12号 令和5年3月29日(水曜日)

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令和五年三月二十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石井  拓君    石原 正敬君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      大野敬太郎君    勝目  康君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      杉田 水脈君    津島  淳君

      中山 展宏君    西野 太亮君

      葉梨 康弘君    藤原  崇君

      本田 太郎君    八木 哲也君

      若林 健太君    階   猛君

      野田 佳彦君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    道下 大樹君

      米山 隆一君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣官房副長官      木原 誠二君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        井上 貴博君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   経済産業副大臣      中谷 真一君

   経済産業副大臣      太田 房江君

   防衛副大臣        井野 俊郎君

   内閣府大臣政務官     自見はなこ君

   外務大臣政務官      吉川ゆうみ君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   国土交通大臣政務官    西田 昭二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  吉田  綾君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 吉岡 秀弥君

   政府参考人

   (内閣府休眠預金等活用担当室室長)        小川 康則君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松多 秀一君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  栗田 照久君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  井藤 英樹君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   寺岡 光博君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    三村  淳君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官)     田中佐智子君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       柏原 恭子君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         山田  仁君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房海外プロジェクト審議官)   天野 雄介君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房施設監) 杉山 真人君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  川嶋 貴樹君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    内田 眞一君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    氷見野良三君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事)         中澤慶一郎君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十九日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     西野 太亮君

  塩崎 彰久君     本田 太郎君

  津島  淳君     池田 佳隆君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     杉田 水脈君

  西野 太亮君     神田 潤一君

  本田 太郎君     勝目  康君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     塩崎 彰久君

  杉田 水脈君     津島  淳君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 納税者の権利擁護に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五〇三号)

 同(笠井亮君紹介)(第五〇四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五〇五号)

 同(志位和夫君紹介)(第五〇六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五〇七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第五〇八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五〇九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第五一〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第五一一号)

 同(本村伸子君紹介)(第五一二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第五九一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、副総裁内田眞一君、副総裁氷見野良三君、独立行政法人国際協力機構理事中澤慶一郎君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣参事官吉田綾君、内閣府大臣官房審議官吉岡秀弥君、休眠預金等活用担当室室長小川康則君、大臣官房審議官松多秀一君、金融庁総合政策局長栗田照久君、企画市場局長井藤英樹君、監督局長伊藤豊君、財務省主計局次長寺岡光博君、主税局長住澤整君、国際局長三村淳君、国税庁次長星屋和彦君、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官田中佐智子君、経済産業省通商政策局通商機構部長柏原恭子君、資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官山田仁君、国土交通省大臣官房海外プロジェクト審議官天野雄介君、防衛省大臣官房施設監杉山真人君、防衛政策局次長安藤敦史君、整備計画局長川嶋貴樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小田原潔君。

小田原委員 自由民主党の小田原潔であります。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 本日は、どちらかというと総括的に、これまでのアベノミクスの期間の業績について振り返らせていただきたいと思います。

 まず、我々が非常に苦しんできたコロナ禍に対する対策であります。

 コロナ、コロナと言い出した令和二年度ぐらいから現在まで、いわゆるコロナ対策費の、私たちの同志たちが真水百兆といろいろなところで言っていたということもあって、結果的にいわゆる真水というのは幾ら出したのか、教えてください。

寺岡政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの新型コロナ対策の関連予算につきましては、直接的な感染防止対策のみならず、新型コロナによって影響を受けた経済、雇用への対応など多様な事業が関連予算として含まれ得ることから、明確に切り分けてお答えすることは困難な面がありますが、その上で、新型コロナ対応のための緊急的な支出として、令和二年度第一次補正予算から令和四年度第二次補正予算までの六回の一般会計補正予算、そして、令和元年度から令和四年度までの四か年における一般会計予備費の使用決定額のうち新型コロナの関連予算と考えられるものを機械的に切り分けて単純に合計いたしますと、ちょうど百兆円程度になるということでございます。

小田原委員 ありがとうございます。

 私たちの同志がこうするべきだと言ったとおりのことをしていただいたんだというふうに思います。

 さて、そのとき我々は、消えた売上げ、消えたお客、消えちゃうかもしれない産業、大変危機感を持って協力を仰いだわけですが、結果的に、その間、個人預金と法人預金、それから税収はそれぞれ幾らずつ増えたでしょうか。教えてください。

栗田政府参考人 まず、預金について申し上げますと、国内銀行の令和二年三月末と令和四年三月末の預金残高を比較いたしますと、個人預金は約五十五兆円、一般法人預金は約四十九兆円増加しております。

小田原委員 五十五兆円増えたのと、四十九兆円増えた。

 我々は、コロナになって商売ができなくなって大ごとだと思ってお金を出したわけですが、出したお金よりも貯金が積み上がったお金の方が多いという、何とも皮肉な結果のようにも見えます。困っている人と預金を積んだ人はもしかしたら違うかもしれませんけれども、ただ、全体的に見て、真水を出したものがほとんど貯金になっているというのはどういうことかということを考えなければいけないというふうに思います。

 私たちは、この三十年間の間、三百円の牛丼が大好きになりました。よくあんな安いお金であんなおいしいものが食べられると思います。サッカーの本田選手が、先月ですかね、日本のラーメンは余りにおいしくて、こんなに安いんじゃかわいそうだから二千円払うと言ったら、炎上していました。だけれども、外国人からすると、それが自然な感覚だと思います。

 ちょっとオタッキーな話になりますが、恐らく一九八〇年代の前半からラーメン道みたいなものができて、それまでは、引揚者が中華そばを出す、料理人がラーと言ったからラーメンということだったと思いますが、環七、環八、仕事を終えたタクシーの運ちゃんがおいしいラーメンにたかるようになって、外苑前のHケンとか、世田谷の代田のNデンKデンとかというラーメン道ができた。そうすると、どんなにおいしくても千円を超えたものはラーメンじゃないという制約の中で、あれだけおいしいラーメンを作っても千円以上のものが出せなかったというようなことではないかと思います。

 さて、牛丼の話に戻りますが、一時アベノミクスがうまくいって、二年間ぐらいはプレミアムブームみたいなものができましたが、少し正気に戻ると、私たちは、千二百円のスープとサラダつきのランチを一回食べるよりも、同じ千二百円ならあのおいしい牛丼を四回食べられることの方がうれしいという人の方が多いと思います。それはなぜかというと、四回、一度おいしい牛丼を食べても、あと三回、未来にあの牛丼が食べられるということに満足感を感じるからでしょう。

 老若男女、お金を使わない理由はみんな同じでありましょう。それは自分が何年生きるか分からないから。今、女性が八十七歳まで生きて、男性が八十一歳まで生きる。百歳になるのも時間の問題ではないかとみんな思っていると思います。そうすると、二十年親の負担で教育を受け、四十年現役で働いたとしても、それから無収入の時間が四十年ある。だから、今のうちに将来いろいろなことに使える安心感が欲しいということでお金をためちゃったということではないかと思います。

 別に個人預金が増えても、それはよかったですねという気持ちはあるんですけれども、私が訴えたいのは、政府支出を増やしても個人消費は反応しないという三十年間だったのではないかということであります。

 三年前、コロナの自粛期間があってとても時間ができたので、私は、その頃ぶいぶい言わせていたMMTの、五年前に出た一番初めのランダル・レイさんが書いた入門書と、同じくランダル・レイさんとビル・ミッチェルが書いた英語の原書を、それぞれ三回、部分によっては四回、一時は両方とも丸暗記するぐらい読みました。何でそんなことをしたかというと、本当に原書に書いてあることが正しく日本語に訳されているのか、本当に原書にはお金は刷り放題だからじゃんじゃん公共投資をしろと書いているのかというのを突き止めたくて読みました。

 結論から言うと、主に先進国の自国通貨、主権通貨は破綻しないとは確かに書いてあります。かといって、じゃんじゃん刷って公共事業をしろとは書いてありません。どちらかというと、MMTというのは左派の理論で、国内で最もいけない政策というのは失業者をつくること、なぜなら、国民生産を落とし、社会不安をつくり、元に戻すのにこれまた社会的なコストがかかるからだ、したがって、失業者が出たら、国はお金を刷ってでも失業者を雇い、仕事のトレーニングをして、いつか景気が上向いたときに政府が払う賃金よりも高い世界に送り出してあげる人材のプールをつくりなさいというのが、MMTの訴えの本質でありました。

 ただ、日本だとどうしても、政府の負債は民間の資産だからいいことなんだということを言う人が割と多くて、だから、じゃんじゃん道路を造って、じゃんじゃん橋を造って、新幹線を通して。それも大事ですよ、大事だけれども、そうしたら経済がうまく回るのかというと、そうじゃないんじゃないかということです。

 実は、MMTの本にはそう書いてありますが、それと同時に、GDP、これはMMTに限らず、消費と投資と政府支出の合計です。それから三部門収支、海外部門と民間部門と政府部門の収支というのは、一年のフローを足してもゼロになるし、その蓄積のストックを足してもゼロになる。この二つが頭から離れると政策を間違えると、結構初めの方に書いてあります。

 政府支出を増やすというのは、確かにその分だけGDPをちょっと上げるかもしれないけれども、消費とは関係ありません。また、国の負債は民間の資産だというのは、ストックの話をしているわけであって、今年一年間のフローの話ではありません。だから、じゃんじゃんお金を使うと個人消費が伸びるはずだというのは、現実的にはうまくいっていなかったんじゃないかと思います。

 さて、今じゃんじゃんお金を使えと言う人たちの間で、需給ギャップを公的支出で埋めろという議論がよくありました。大体二十兆円ぐらいの話をする人が多いと思いますが、先ほど教えていただいた期間で需給ギャップはそれぞれ幾らだったか、教えてください。

松多政府参考人 お答え申し上げます。

 経済全体の需給状況を示すGDPギャップでございますが、数値については幅を持って見る必要がございますが、内閣府の推計値では、令和二年度はマイナス四・六%、金額に換算するとマイナス二十六兆円程度、令和三年度はマイナス二・五%、金額に換算するとマイナス十四兆円程度となっております。

小田原委員 ありがとうございます。

 したがって、大体、需給ギャップを公的支出で埋めるべきだと言っている水準感というのは正しいのでありましょう。

 しかし、ここは是非、大臣にお伺いしたいと思います。

 現実を見ると、需給ギャップを公的支出で埋めても、お金を使う動機になるカンフル剤にはならず、個人消費と民間投資は、増えないとまでは言いませんけれども、余り相関関係はないのではないかと思うのですが、大臣の御所見を聞かせてください。

鈴木国務大臣 政府といたしましては、必ずしもGDPギャップを埋めるという考え方には立たないところでありますが、経済状況に的確に対応するために、これまで累次の経済対策を策定してまいりました。こうした累次にわたります経済対策の実施、補正予算の編成は財政支出増加の一因であることは指摘できることである、そういうふうに思います。

 また、一九九〇年代のバブル崩壊以降の低い経済成長と長引くデフレによりまして個人消費や民間投資が低迷する一方、家計や企業の現預金は過去最高水準に達している状況であります。

 こうした課題に対しまして、岸田内閣としては、市場や競争に全て任せるのではなく、二千兆円を超える個人金融資産のうちその過半が現預金として保有されている中で、貯蓄から投資へとシフトさせる、GXなど成長分野における大胆な投資を官民連携で推進することにより民間投資を喚起する、賃上げを内閣の最重要課題として、構造的賃上げなどを通じた成長と分配の好循環を実現するといった新しい資本主義の考え方に基づく経済財政運営を行うことにより、経済対策による一時的な需要喚起ではなく、民需主導で持続可能な成長を図ってまいりたい、そのように考えているところです。

小田原委員 ありがとうございます。

 私は、アベノミクスの成果というのは非常に大きいという大前提でお話をさせていただいています。少なくとも、前の政権をどうのこうの言うつもりはさらさらないんですけれども、十一年前、いわゆる有名大学から何から、どんな大学を出ても五人に一人は就職できませんでした。家の中に就職しない二十二、三歳の若者がいたら、どれだけ夕食の時間がつらいものになるか。みんな考えていることは一つなんだけれども、それが口に出せない。また、どの家族の一員を取っても自分の力ではどうしようもないというところから、コロナのときだけは捨象して、この十年間、余りこだわらなければ、大学生ほぼ全員が、卒業したら就職できるようになりました。その結果、この五年間ぐらい、面白い起業家が若い人たちの中でどんどん出てきました。私は、日本経済とそれから若者の将来については、個人的には楽観をしています。

 さて、そのベースを踏まえて、今日は黒田総裁にわざわざ来ていただきました。僕は、与党で行儀がいい方なので、余り、どうしても大臣ということはこの十一年間なかったんですけれども、今日はどうしても鈴木大臣と黒田総裁に来てくれというふうにお願いをしました。

 と申しますのは、民間の場合は、いわゆる機関銀行というものは不健全というふうにされます。それはそのとおりであります。民間の、皆さんからの一般の預金を、持ち株会社なり親会社なり、特定の事業に十分な審査もせず貸し付けたら、それは大変不健全でありますが、中央銀行と政府の関係は別ではないかということであります。

 僕は、全然勉強しなかったので自分から言うのは本当は嫌なんですけれども、小宮隆太郎先生のゼミにいました。白川前総裁と私の大先輩YモトKゾウ先生は、同じ同門小宮ゼミの一年先輩後輩なんです。ところが、十一年前に初当選をしたときから、Kゾウ先生は白川総裁のことをけちょんけちょんにおっしゃるんですね。それはもう本当に、私は星飛雄馬のお姉さんみたいに陰から胸を痛めていたんですけれども。

 白川総裁が三年前、「中央銀行」という本を書かれました。ついついYモト先生の話だけ聞いていると、通貨の番人と称しながら何にも仕事をしなかったじゃないかというようなことが多かったんですけれども、物すごく悩み、考え抜かれた五年間だったというのがよく分かりました。特に、「中央銀行の独立性という考え方は試練に直面している。」飛ばして、何だかんだ言って、「中央銀行という組織も、それを代表する総裁も、社会からの「共感」を得ることが不可欠である。」と書いてありました。それを読んで、私は、ああ、白川総裁は、どれだけ自分の決定や政策が社会から共感を受けているかということを、三百六十五日掛ける五、ずっと直面しながらお仕事をされていたんだなというのがよく伝わりました。

 さて、黒田総裁、受け継いだとき、日銀の資産規模は百六十四兆円、令和三年度末が七百三十六兆二千五百三十五億円、五倍近く資産規模が膨れるわけです。これはどうでしょう。スタートアップのベンチャー企業ならいざ知らず、物すごい勢いで資産規模が増え、しかも、それはほとんどが社債を日銀が引き受けている。これを、僕は何度も言いますけれども、アベノミクスの成果は評価していますけれども、財政ファイナンスとも言いませんけれども、この間、日銀の、中央銀行の独立性だけに焦点を当てろとは申しませんが、特に、大蔵省から来られた日銀総裁は、中央銀行というのはどういうもので、どういうことをするべきで、これからどうあるべきだというふうに思いながら仕事をされていたのか。独立性だけではないですけれども、政府との関係、そして、中央銀行というのは何のためにあるのかということをお聞きしたいと思います。

黒田参考人 私は二〇一三年の三月に日本銀行総裁を拝命したわけですが、それまでの十五年間はデフレが続いておりまして、失業率も四、五%、就職氷河期と言われた時代が十五年間続いたわけです。

 日本銀行の使命は物価の安定ということで、これは日本銀行法にもはっきり書いてあるわけでありまして、日本銀行総裁を拝命したときに、やはり、デフレ、これを克服して物価の安定を達成するということが日本銀行総裁として最も重要なことであるというふうに考えました。

 なお、二%の物価安定目標をできるだけ早期に達成するということ自体は、既に二〇一三年一月に白川総裁の下で金融政策決定会合で決定し、かつ、政府と日本銀行の共同声明にも盛り込まれていたわけであります。そういうことを踏まえて、共同声明に沿ってそれぞれの役割をしっかりと果たしながら、連携してマクロ経済政策の運営に当たってきたわけであります。

 その下で、先ほど来申し上げているとおり、日本銀行は、物価の安定という自らの使命を果たすために、二%の物価安定の目標の持続的、安定的な実現を目指して金融政策を運営してまいりました。この目標やその実現に向けた具体的な施策は、いずれも日本銀行が金融政策決定会合において決定したものでありまして、物価安定の目標、これを実現するために中央銀行の独立性が必要であるという考え方自体は、歴史的な経験を踏まえて世界的に確立されておりまして、この点は一九九八年の新日銀法によってはっきりと、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」という形で明確に定められておりまして、それを踏まえて適切な金融政策の運営に努めてきた次第であります。

小田原委員 ありがとうございます。

 物価の番人であるということは、元々、中央銀行の独立性というのは、お金を刷り過ぎてインフレになっちゃいけないから目的に加えられたというのがスタートだったと思います。

 我々は、物の値段が下がる中で物価の番人になるというのは物すごく難しかった、結果的に資産が増えちゃったということじゃないかと思いますけれども、私がこんなことを言う資格があるわけではありませんけれども、本当に長い間お疲れさまでございました。

 さて、中央銀行とは別に通貨を発行する仮想通貨という考え方が十年ぐらい前から起こりました。実は、このMMTの入門書には、後ろの方に一ページだけ、仮想通貨とはという章があって、何と書いてあるかというと、ランダル・レイは、仮想通貨とは間抜けをだます道具であると書いてあります。世の中には十分に一人、間抜けが発生するというようなことが書いてあって、これは僕が言っているんじゃないですからね。

 この仮想通貨は暗号資産というふうに言い換わりました。この仮想通貨を暗号資産と言い換えるようになった理由について教えてください。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十九年四月に施行されました改正資金決済法におきまして、仮想通貨を定義づけ、仮想通貨交換業者を登録制とする規制を導入いたしました。

 その後、仮想通貨は通貨の役割を果たしていないんじゃないかといった指摘などもありまして、G20等の国際的な議論の場におきまして、クリプトアセット、すなわち暗号資産ということでございますが、こうした表現が使用されるようになったこと、仮想通貨という名称は法定通貨との誤認を招きやすい、こういった指摘も出ておりました。

 こうしたことを踏まえまして、令和二年五月に施行されました改正資金決済法におきまして、仮想通貨から暗号資産に名称が変更され、現在に至るまでその名称が使われております。

小田原委員 ありがとうございます。

 確かに、ブロックチェーンというのが画期的だ、改ざんができない電子記号だというところから、通貨としても使えるんじゃないか、いろいろな証書としても使えるんじゃないか、そこまでは私も全く同意をします。しかし、現実的には、例えばビットコインキャッシュとか、偽物が、パソコン一万台さえあれば別の宇宙がつくれるということが明らかになりました。結果的に、本来通貨の満たす三機能、交換機能、価値の尺度、そして富の保存、三つとも満たしていないと私は強く感じます。

 例えばビットコイン、二〇〇九年に初めてビットコインでピザ二枚を買ったという取引以外に、ビットコインで何か買ったという人を聞いたことがないし、本当は、そのピザ屋がそのときピザ二枚を売って持っていたビットコインを四年前まで持っていたら、二百億円になっていました。

 事ほどさように、物の決済に使っていない、それから、価値が乱高下し過ぎて尺度にもならない、したがって富の保存にもならない、こういったものを、十年前に随分自民党も陳情を受け、これを通貨として認めないと国際競争から取り残されるということになってそうしているんですけれども、本来は、一番近い実物資産に例えて言うと、金地金みたいなものだと思います。

 金には、取引すると消費税がかかります。なぜ暗号資産は消費税を取らないままなのか、その考えを教えてください。

鈴木国務大臣 暗号資産でありますけれども、暗号資産の現状を見てみますと、一般的に、価格変動が激しく、投機の対象として取引が行われているケースも多いことから、小田原先生御指摘のとおりに、必ずしも通貨の役割を果たしていない状況にあること、それは認識をしているところでございます。

 その一方で、徐々にではありますけれども、暗号資産を支払い手段として使用できる店舗は増加しており、また、メタバースでの取引やNFTなどのトークンを取引するビジネスにおいて暗号資産が支払い手段として使用されているケースも増えてきているもの、そのように承知をしております。そうした状況を踏まえますと、暗号資産は、資金決済法で定める代価の弁済に使用できるとの性格もあるものと考えられます。

 いずれにしても、暗号資産に係る事業者間の健全な競争により、ブロックチェーン技術を始めとしてデジタル分野にイノベーションをもたらしている面もあり、イノベーションとのバランスに留意しつつ、適切な利用者保護が図られるような規制の枠組みをつくっていくことが、そうした技術の発展のためにも重要ではないかと考えております。

 そして、先生から暗号資産の消費税についてお話がございました。

 暗号資産の取引に関し消費税が非課税とされている理由についてでありますけれども、暗号資産は、資金決済法において、代価の弁済に使用できる財産的価値と定義され、支払いの手段として位置づけられていること、EUなどでは暗号資産の譲渡は非課税とされていることなどを踏まえ、支払い手段に類するものとして非課税とされているところであります。

小田原委員 僕は、メタバースは避けられないし、これからもいろいろな世界が出てきて、しかも競争と淘汰が起きていくんだと思います。暗号資産は今二千とか三千とかあるらしいですから、どういう競争が起きるのか分かりませんが、テクノロジーを尊重し、育て、世の中のプラスになればいいなと期待をするのみであります。

 最後に、三年前、五月二十二日に、私は国土交通委員会で、スルガ銀行によるかぼちゃの馬車事件というんですかね、女性専用のシェアハウスを素人に建てさせて、本当は実現もしないような高いレントロール、事業計画と、時によっては売買契約を偽造して、建築費の実際の相場よりも倍とかそれぐらいのものを建てて、スルガ銀行がお金を貸す。ところが、そんな虫のいい家賃は入ってこず、売ろうとすると、三億も四億も借金をしょっちゃったのに、数千万円でしか値段がつかないような物件をつかまされた。結果的に、金融庁さんの御尽力もあって、これは全額銀行持ちで、チャラにしました。

 ところが、この元になっている、スルガ銀行によるアパート・マンションローンというのがあります。これは七、八年前、かぼちゃの馬車の前から、いわゆる被害者がいっぱいいます。スルガ銀行に八千億ぐらいローンの残高があって、どうも一千億円ぐらいはもう引き当てをしてあるようなんですが、一つ一つの、例えば改ざんしただろうとかいうものは幾つか裁判が起こっているみたいで、個別の裁判で解決してくださいという、僕が前回、金融庁からレクを聞いたら、そういうお話でした。

 しかし、何百人いて、しかも、お医者さんとか上場のサラリーマンとか、立派な人なんだけれども、金融リテラシーというか、家主になるという教育を受けていない人が、銀行の言うことだからきっと全部正しいんだろうと思って借りちゃった。これはさすがに、一件一件の裁判で解決しろというのは、先進国の我々の政府としては冷た過ぎるような気がいたします。

 だからといって、残念ながら、一括で政府が救うという筋合いのものでもない。したがって、金融庁や政府としてできるのは、できるだけ銀行が……

塚田委員長 申合せ時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。

小田原委員 はい。すぐ終わります。

 調停を促すようなことはできないのか、教えてください。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、金融庁は、スルガ銀行に対しまして一八年十月に業務改善命令を発出して以降、シェアハウスにとどまらず、アパマン融資についても、民事調停、ADR手続を活用しながら、今、解決方法について協議を行っているわけですけれども、多くの債務者にとって可能な限り早期に問題解決が図られるよう、スルガ銀行に対し、債務者弁護団との協議に真摯に応じることを含め、引き続き申し上げているところでございまして、今後とも、適切な対応を求めてまいりたいというふうに考えております。

小田原委員 ありがとうございます。被害者をどうか救ってください。

 終わります。

塚田委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 本日は、本委員会での質問の機会を与えていただきまして本当にありがとうございます。

 早速、質問に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、金融リテラシー教育についてお伺いします。

 二〇二二年十一月に新しい資本主義実現会議が資産所得倍増プランを決定し、その柱の一つとして、NISAの抜本的拡充、恒久化を打ち出し、これからは、二千兆円を超える家計金融資産を投資につなげ、勤労所得に加え、金融資産所得を増やしていこうという政策が進んでいきます。

 国民一人一人が安定的な資産形成を実現し、自立した生活を営むためには、金融リテラシー、お金についての知識を正しく理解し、適切な判断ができる能力を高めていくことが重要です。

 しかし、二〇一九年に金融広報中央委員会が行った金融リテラシー調査によれば、金融教育を受ける機会があったと回答した人は八・五%にとどまっています。

 先ほどの、NISAなどを通じた、個々のニーズを踏まえた安定的な資産形成に向けた投資教育や、デジタライゼーションの進展を踏まえた情報・金融リテラシー教育は重要であります。その中でも特に重要なのが、成年年齢が十八歳に引き下げられたことを踏まえて、若年期からの金融リテラシー教育であります。

 そこで、国民一人一人が安定的な資産形成を実現し、自立した生活を営む上で、昨今の環境変化も踏まえた金融経済教育を推進、拡充していくことが重要であると思いますが、金融庁の認識を伺うとともに、実際の日本の金融教育の現状についてお伺いいたします。

鈴木国務大臣 山崎先生御指摘のとおりに、個々人が自らのニーズやライフプランに合った適切な金融商品・サービスを選択をして、安定的な資産形成を実現していくためには、金融リテラシーを高めていくことが重要である、そのように認識をしております。

 そのため、金融庁や財務局では、昨年四月から成年年齢が引き下げられ、また高等学校の新しい学習指導要領が実施されていることも踏まえまして、職員による出張授業や教員向け研修会を実施しているほか、文部科学省とも連携をしながら、高校向け指導教材を作成、周知するなど、金融経済教育の普及に向けた様々な取組を行ってきております。

 一方で、これも御指摘ございましたが、金融経済教育を受けたとの認識がある方は約七%にとどまるとの調査結果もあり、現状では、金融経済教育が広く国民に行き届いていないと認識をいたします。

 今国会に提出をした法案では、新たに金融経済教育推進機構を設立をして、官民一体となって金融経済教育に関する戦略的な対応を進めていくこととしております。

 金融庁といたしましては、この新たな機構を中心に、家計管理や生活設計を含めまして、より一層効果的な金融経済教育の推進に取り組み、家計の金融リテラシー向上に努めてまいりたいと考えております。

山崎(正)委員 御丁寧な答弁をありがとうございました。

 次に、不正還付や報酬の無申告事案への対応についてお伺いします。

 今年の三月一日や二日の新聞報道によると、コンサルティング業務を手がける会社が、副業などで赤字が発生した場合には本業の給料と副業の赤字を損益通算して税金の還付が受けられるという制度を悪用し、副業で赤字が出たとする虚偽の申告書作成の代行を行い、百九人に手口を指南し、不正に利益を得たとありますが、事実関係や現在の対応状況についてお伺いします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の事案は、不正指南者がSNSを利用して、正社員の人が受け取れる還付金等をうたい文句に勧誘いたしまして、納税義務者百九名の所得税の確定申告におきまして、各納税義務者とそれぞれ共謀の上、いずれも給与所得との損益通算の対象となる事業所得の損失が生じたように装い、所得を秘匿する方法によりまして、各納税義務者の平成二十七年分から令和三年分までの所得合計約七億二千九百万円を秘匿し、所得税合計約四千三百万円を免れたとして、令和五年二月二十八日に東京国税局が東京地方検察庁に逋脱犯として告発したものでございます。

 それから、国税庁の取組でございますが、所得税の不正還付につきましては、虚偽の事業所得に赤字があるものとして、給与所得との間で損益通算し、給与所得について源泉徴収された所得税額の還付を受けようとする事案などが把握されているところでございます。

 これに対しまして、国税当局といたしましては、申告書の添付書類や保有する資料情報等に基づき厳格な審査を行いまして、申告内容に疑義がある場合には、還付を保留した上で実態確認等を行い、申告内容に虚偽等が認められた場合には、確実に是正しているところでございます。なお、特に悪質な事例につきましては、税務調査を実施するなど、厳格な対応を行っているところでございます。

 また、税務調査等の結果、悪質な不正還付申告の事実が確認をされ、刑事上の責任を追及する必要があると判断した事案につきましては、先ほどの事案のように、逋脱に該当する場合には、国税当局において犯則調査を行いまして、検察当局へ告発をし、詐欺罪に該当するおそれがある場合には警察当局に告発するなど、厳正に対応しているところでございます。

 今後とも、不正還付事案につきましては、厳格な審査と税務調査等を通じまして的確に対応してまいりたいと考えております。

山崎(正)委員 詳細な対応状況について、ありがとうございました。

 この件はSNSを使って会員を募るなどの手口ですが、今後の防止策についてお伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税当局といたしましては、適正に納税を行っている方々が不公平感を抱くことのないよう、まずは、副業等収入がある方々を含め、納税者に自発的に納税義務を履行していただくことが重要と考えております。

 このため、副業等収入がある納税者の方々による自発的な適正な申告に向けまして、申告等の税務手続や申告が必要な取引に関する課税上の取扱いにつきまして、国税庁ホームページへの掲載や報道機関に対する情報提供、仲介事業者や業界団体等を通じた適正申告の呼びかけ等の取組を行っているところでございます。

 また、あらゆる機会を通じまして、課税上有効な資料情報の収集に努めまして、悪質な無申告者など、必要があると認められる場合には、税務調査を行うなど、厳正に対応しているところでございます。

 こうした取組を通じまして、引き続き適正、公平な課税の実現に努めてまいりたいと考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 次に、今年三月十三日の朝日新聞では、動画をユーチューブに投稿し、その報酬などとして約三千六百万円を得ていた男性が、確定申告をしていなかったとして、重加算税を含む約七百万円を追徴課税されたという事件が報道されました。また、今年三月八日の読売新聞には、SNS上で高い発信力を持つインフルエンサーと呼ばれる女性九人が、二〇二一年までの六年間で計約三億円の申告漏れを指摘され、所得税など百数十万円から約三千万円を追徴課税されたと報道されています。さらに、今年二月十六日の西部読売新聞では、福岡県の四十歳代の男性が、副業とするネット販売で二〇二〇年まで七年間で得た一億四百万円について申告せずに、一部で所得の隠蔽を図っていたとして、重加算税を含め約二千百万円を追徴課税されたと報道されています。

 報道によると、これら三件とも、申告しなければならないと認識していながら確信的に申告しなかった事案であるとのことです。

 そこで、昨今、副業をする方が増える中でこういった事案が増加してきていますが、どのような対策を講じられているのか、お伺いします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど既にお答え申し上げましたけれども、副業等に対しましては、副業等がある方々を含めまして、納税者に自発的に納税義務を履行していただくことが重要と考えておりまして、こういった副業等収入がある納税者の方々による自発的な適正な申告に向けまして、申告等の税務手続や申告が必要な取引に関する課税上の取扱いにつきまして、国税庁ホームページへの掲載や報道機関に対する情報提供、仲介事業者や業界団体等を通じた適正申告等の呼びかけ等の取組を行っているところでございます。

山崎(正)委員 先ほどの読売新聞の報道によると、インフルエンサーによる広告は近年拡大を続けており、SNSマーケティング会社サイバー・バズなどによると、今年の市場規模は二〇二〇年の二倍以上の七百四十一億円で、二〇二七年には一千三百二億円に上ると推計されています。

 また、福岡の男性の事案のシェアリングエコノミーを見ると、一般社団法人シェアリングエコノミー協会によると、市場規模は拡大しており、二〇二二年度は約二兆六千億円で、四年間で約七千億円増加しています。

 国税庁によると、昨年六月までの一年間に、確定申告をしなかった人に対する税務調査は前年比の三倍に増え、三千八百二十八件に達し、所得漏れ額は前年比約一・四倍の一千百十九億円に上り、追徴税額は前年比二倍超えの百九十億円となっています。

 コロナ禍でリモートワークが広がったことや、ユーチューバーやインフルエンサー、ネット販売などが拡大しています。こうしたように、個人で稼ぐことのできる環境が急速に拡大している中で、正しい税の知識を持っていなければ、知らず知らずに脱税をしてしまったという状況にもなり得ます。

 また、先ほどの所得税の脱税の指南事件などは、税の知識のなさゆえに、安易に節税できるという甘い言葉に飛びついてしまった面もあると思います。

 そこで、これらの現状を踏まえ、こういった事件を繰り返さないためにも、正しい税知識をつけるために、今までも行ってきた子供たちへの租税教育の推進、拡充がますます重要になってくると考えますが、財務省の認識と実際の租税教育の現状についてお伺いします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 納税意識を向上していくためには、学校教育から段階的に、租税の役割等について正しく理解していただくことが重要であると考えております。

 そのため、国税庁におきましては、関係機関とも連携いたしまして、児童生徒を対象とした租税教室への講師派遣や租税教育用副教材を作成するなど、学校教育における租税教育の充実に努めております。

 租税教育の内容につきましては、学習指導要領を踏まえ、納税の義務を取り上げているところでございますが、ユーチューバーや副業者の増加など社会環境の変化も踏まえながら、教育機関とも連携をし、継続的に工夫を重ねてまいりたいと考えております。

山崎(正)委員 次に、教育に対する公的支出についてお伺いします。

 岸田総理は、今国会の施政方針演説において、我が国の経済社会の持続性と包摂性を考える上で、最重要政策と位置づけているのが子供、子育て政策と言われています。また、急速に進展する少子化により、我が国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれており、子供、子育て政策への対応は、待ったなしの、先送りの許されない課題であると語られました。そして、年齢、性別を問わず皆が参加する、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい、そして、本年四月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において必要とされる子供、子育て政策を体系的に取りまとめつつ、六月の骨太方針までに将来的な子供、子育て予算倍増に向けた大枠を提示しますとも語られました。総理の並々ならぬ、今後の我が国の子供、子育て政策への決意表明でありました。

 子供、子育て予算といいましても、やはり教育費が、ある意味でそのど真ん中にあると思います。

 そこで、私は元々中学校の教員でありましたので、そういった観点において、あえて本日は財務委員会でこのことを確認したいと思いまして、質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、その取組に向かう上で、現在の日本の立ち位置、現状について確認をしたいのですが、去年十月のOECD、経済協力開発機構の発表によると、国内総生産に占める教育機関への公的支出の割合、二〇一九年時点が、日本は二・八%と、データのある加盟国三十七か国中三十六位でありました。

 このことに対する財務省の今までの見解を見てみると、教育は子供一人一人に対するものであるという観点から、在学者一人に対しどの程度の公財政教育支出を行っているかで見ると、日本はOECD諸国平均と遜色ない水準という捉え方、見解をしているようです。

 これはどういうことかというと、要は、三十六位だけれども、教育費を子供人数で割った一人当たりの教育費はそんなに見劣りしていない、そういう見識だと思います。

 しかし、先ほどの総理の施政方針にあったように、急速に進展する少子化により、我が国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれており、子供、子育て政策への対応は、待ったなしの、先送りの許されない課題。従来とは次元の異なる少子化対策を実現していくのであれば、GDP比をもっと上げて、在学者一人に対する公財政教育支出も、世界に比べて遜色ないレベルではなくて、世界の上位に躍り出るぐらいの思い切った公財政教育支出の拡充を検討すべきではないかと考えますが、見解をお伺いいたします。

井上副大臣 山崎先生にお答えいたします。

 今、OECDの報告書のことにつきましては、もう山崎先生から御説明いただいたとおりでありまして、OECDの全体の平均は四・一%ですけれども、日本は二・八%、そして、子供一人一人に対する観点から考えますと、OECDの平均二一・四%に対しまして二一・一%ということで、遜色がないというふうに答弁をさせていただいたんだろうというふうに思います。

 そういう中で、教育予算が重要であることは間違いないところでありまして、人口構成の状況や財政状況も踏まえながら、予算全体の中で必要な額を確保していくことが重要だと考えております。

 昨日二十八日に成立いたしました令和五年度予算におきまして、小学校四年生の三十五人学級制の実現や、小学校高学年の教科担任制や、GIGAスクール構想の推進など、教育環境の整備等を図るため、文教関係予算につきましては、対前年度百三億円増の四兆二百十六億円を措置しております。また、子供対策強化につきましては、十七日に総理から会見がございまして、三月末をめどに具体的なたたき台をまとめた上で、その後、必要な政策強化の内容、予算、財源について更に議論を深め、六月の骨太方針までに将来の子供予算の大枠をお示しするということが発言されたところでありまして、それに沿って検討が進められていると承知しております。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 前年比百三億円増ということで、また、更なる思い切った前向きな検討を是非よろしくお願いいたします。

 次に、続けまして、先ほどのOECD報告の、大学レベルの教育費の家庭負担についてお伺いします。

 OECDの報告書によると、大学レベルの教育費の出どころについて、二〇一九年のデータを使って分析した結果、日本は家計負担が五二%で、OECDの加盟国平均二二%の倍以上で、比較可能な三十五か国中四番目に高い状況であることが分かりました。

 ただ、日本政府は、二〇二〇年度から低所得世帯の学生に授業料減免と給付型奨学金を支給する修学支援制度を始めていますが、データが二〇一九年なので、その制度の分は現在反映されていません。しかし、OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は、日本は、制度が導入された、これを加算されたとしても、私費負担に比べて公費負担がまだまだ小さいと指摘し、奨学金の返還額が卒業後の収入と連動するオーストラリアやイギリスの制度の例を挙げ、検討を求めています。

 このことに対する財務省の見解としましては、教育負担の状況の背後には、教育は社会が支えるという福祉国家主義と、日本や韓国などの家族主義と、アングロサクソン諸国の個人主義の教育観の相違があるとし、イギリスやオーストラリアなどは、かつて授業料が無償、政府負担であったが、財政悪化により授業料を徴収することとした。低所得者層を始め、進学率が低下しないよう、在学時の授業料負担を繰延べし、学生本人が卒業後に返還する制度を導入し、政府負担を減らし、本人負担を増加させているというような資料を作っておられますので、これが財務省の見解なのかなとも思いますが。

 公的支出と家計負担の割合については大変大きな議論が必要なところでありますが、公明党としましては、家計負担が大きい状況にあって、経済的理由により大学への進学を諦めてしまうといったことがないように、奨学金の拡充には今までも全力で取り組んできました。

 そして、昨日も、党として、大学などの高等教育無償化の対象範囲の拡大、具体的には、まず無償化の対象範囲を多子世帯や理工農学部を対象に中間層まで拡大する等を盛り込んだ、次世代育成のための緊急事態宣言等についての提言を岸田総理、小倉こども政策担当大臣に提出しました。やはり、更なる家計支援が必要であると考えています。

 そこで、この大学レベルの教育費で、家計負担の割合が、日本は五割を超え、三十五か国中四番目に高いとの発表があったことに対する認識と、更なる家計への支援策の拡充についてお伺いいたします。

井上副大臣 お答えいたします。

 今もう山崎先生が御説明されましたけれども、OECDの報告書によれば、日本の高等教育の費用に占める家計負担がOECD平均に比べて高いということは事実でございます。承知しております。

 高等教育の費用につきましては、どの程度を教育サービスを受ける本人やその家族が負担をし、どの程度を低所得者や大学に行っていない方々も含めた国民全体の税金で負担するかというのは難しい議論ではありますが、日本においても、財源を確保しながら、順次、教育費の負担軽減の取組を進めてきております。

 例えば、今回のOECDの報告書では、日本のデータは、今お話がありましたとおり、二〇一九年度のを用いられており、加味されていないと聞いておりますが、二〇二〇年度から、給付型奨学金の支給、それから授業料減免を併せて行う高等教育の修学支援新制度を開始しております。また、この修学支援新制度につきまして、令和六年度から、多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ対象を拡大することとしており、現在、文科省において詳細が検討されているとお聞きしております。

 このように教育費の負担軽減の取組を続けてきたところでございますけれども、教育費の負担軽減は継続的に実施される性格のものであることから、これを拡充するという場合には恒久的な財源の裏づけが必要だということを前提に検討しなければならないというふうに考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 総理は、施政方針演説の中で、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えてまいりますというふうに言われております。また、何よりも優先されるべきは当事者の声だということで、総理自身が徹底的に当事者からお話をお伺いするところから始めますと言われております。

 先ほどの財務省が作った資料は、政府負担、本人負担、家計負担の三種類に分かれていますが、実際に本人負担と家計負担の境目は曖昧で、奨学金の返還を親がやっている家庭もありますし、学生時代からアルバイトをして、ほとんど本人の負担の家庭もあります。そういう意味においては、要は、公的負担か私的負担の二つというのが実態であります。そういう意味におきまして、総理が何より優先されるべき当事者の皆様方の声をしっかりと聞いていただいて政策を練り上げていくことが、待ったなしの、先送りの許されない課題、従来とは次元の異なる少子化対策を実現していくことになると思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 最後に、日本の学校の学級規模についてお伺いします。

 続けて、先ほどのOECD報告によると、日本の公立小中学校の学級規模は、小学校が一クラス平均二十七・二人、中学校が一クラス平均三十一・九人で、G5、先進五か国の中で最も高い国であることが分かりました。

 公明党は、今までも、小学校における三十五人学級の実現など、この問題に積極的に取り組んできましたが、私は、元教員として、このことは非常に重要であると考えています。

 私は、教員生活の中で何度も学級担任をしましたが、今、日本の法律では一学級四十人までですが、私が受け持った学級の一番多かった学級は一クラス三十八人でした。一番少ないときが二十七人でしたが、十一人違うと、あらゆることが全く違います。

 具体的に言うと、教員は、朝、子供が学校に来たときから、何かいつもと様子の違う子供はいないか、それは、体調面と心理面の両方から見ます。そして、毎日子供が提出してくる生活ノート、これを見ます。そこには、生徒の前日の一日の感想を書く欄がありますが、そこで、悩みを書いてくる子供もいますし、ずっと楽しそうに書いていた子供が突然書かなくなったりもします。また、学級の中には、発達障害があり対人関係が苦手であったり、多動ぎみであったりするので、しっかり見守ってあげていないといけない子供もいますし、お家が経済的に心配であったり、虐待も視野に入れて見守らなければいけない生徒が自分のクラスに在籍している場合もあります。

 そして、今は何といっても重要なのが、いじめと不登校の問題です。令和三年度の小中高等学校のいじめ認知件数は六十一万五千三百五十一件で、過去最多となっていますが、これは、過去最多の件数が一概に悪いのではなくて、昔は、いじめ件数は絶対悪で、私たち教員も、いじめが一件でも多かったら自分の教員としての力量不足の表れだったという感じで考えていたので、国のいじめ調査でもいじめゼロ件という学校がたくさんありましたが、その実際はどうだったかというと、いじめを見過ごしてきていた実態がありました。

 その反省を踏まえ、今国はどういうふうな方針で現場も取り組んでいるかというと、とにかく教師がびんびんにいじめに対するアンテナを張って、小さい嫌がらせや悪ふざけの段階から見逃さずに、早期に発見し、しっかり把握して指導していこうという流れに変わっています。

 そう考えたときに、先ほど言ったように、三十八人と二十七人では、教員の目の配り方、いじめの発見の精度、一事案にかけることのできる時間がかなり違ってきます。極端な話、私の子供は高知の田舎の学校で、一学級六人でしたが、六人だと、先ほどのいじめだけでなくて、ふだんの学習面なんかも、先生の一人当たりの子供への指導時間のかけ方が全く違ってきます。

 不登校も同じです。今、九年連続で史上最多を更新し、小中高校で約三十万人もの子供が不登校の状態ですが、ふだんから子供の様子をしっかり捉え、小さな変化を見逃さずに不登校を未然に防ぐ点からも、また、もしなってしまった場合でも、家庭訪問や保護者の方との連絡、相談などの時間があり、学級規模はそれらの支援の精度に大きく関係します。

 これについても、財務省は、日本は諸外国と比べ学級規模が大きいとの指摘があるが、教員一人当たりの児童生徒数は主要先進各国の平均を下回っていると言っていますが、これはどういうことかというと、近年、例えば特別支援教育のニーズが高まったのに合わせ、通級指導を行う教員や、外国人の子供への日本語指導への教員の配置など、学級担任以外の教員を他国より厚く配置しており、それはそれですばらしい取組なのですが、ここで私が言いたいのはそういうことではなく、学校において多くの子供が学んでいる学級の規模を小さくしていく、すなわち、一クラス当たりの人数を減らして、学級数を増やし、教員を配置していくことが、今、不登校やいじめ問題が非常に深刻な日本には重要であるということです。

 そこで、G5で一番大きい学級規模の縮小に取り組むべきだと考えますが、財務省の認識をお伺いします。

井上副大臣 お答えいたします。

 今御説明がありました、不登校やいじめの問題を含め、複雑化、困難化する様々な教育課題があることは、財務省としても認識しております。

 このため、令和五年度予算におきまして、小学四年生の三十五人学級の実現などに必要となる教職員定数をしっかりと措置したほか、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーなど外部人材の活用なども含めて予算を計上したところであります。

 御指摘のとおりでありますけれども、現在、義務標準法改正法の附則規定に基づきまして、文科省におきまして、少人数学級に関する実証研究が進められていると承知しております。こうした効果検証を踏まえつつ、学校の教育環境や指導体制など、個々の教育課題に応じて引き続き必要な措置を講じていくことが必要だと考えております。

山崎(正)委員 済みません、この問題は本当に、文科省だけでは駄目で、財務省の理解が重要であるとの認識で質問をさせていただきました。

 総理は、子供、子育て政策は、最も重要な未来への投資です、安心して子供を産み育てられる社会をつくると言われています。安心して子供を小学校、中学校、高校に通わせられると言われるような、是非、学校規模の縮小に取り組んでいただくことをお願いしまして、私の質問を終わります。

 大変にありがとうございました。

塚田委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 今日は、四月に行われるであろう財源確保法の観点で、基礎的なことについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 その前に、三月二十八日に、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価対策予備費というものが発表されました。

 後藤衆議院議員や小沼参議院議員も国会で指摘していましたけれども、毎年度末に予備費を一兆円、二兆円という規模で濫用していくという感じですね。通常、予備費というのは五千億程度だと私は認識しているんですけれども、コロナ以降、例えば令和二年度末に、三月二十三日ですけれども、二・一兆円の駆け込みの予備費使用というのが決定された。令和三年度末においても、三月二十五日に一・五兆円の駆け込み予備費使用が決定された。今年度末も、三月二十八日に二・二兆円の駆け込み使用が決定された。

 こういう、毎年度末、駆け込みの予備費の巨額の、これは濫用と言っても私はいいと思うんですけれども、年度末まで数日間でこんな巨額のお金をさばけるわけでもないわけですから、これはきちんと改善していった方がいいと思いますが、財務大臣の認識と、改善の決意をお願いしたいと思います。

 それと、特に、例えば、目玉となるLPガスの支援について、一番円安が進んで困っていた昨秋、そのときよりも今年の方が、今の方が落ち着いている中でやっているんですけれども、昨秋にもっと予算をきちんと取るべきではなかったのか。その点も併せてお聞きします。

鈴木国務大臣 予備費の使用に当たりましていろいろ御指摘をいただいたところでありますが、予備費の使用に当たりましては、憲法及び財政法の規定に従いまして、臨機応変かつ機動的な対応を行うということで、国民の命と暮らしを守る観点から、適切にその使用を判断してきているところであります。

 今般使用を決定しましたコロナ、物価予備費につきましても、現に足下で国民生活に大きな影響を及ぼしておりますエネルギー、食料品を中心とした物価高騰に対して、必要性や緊急性などに鑑みまして、予備費を活用し迅速に対応することが不可欠である、そのように判断したものでありまして、年度末だからという理由で使用を決定したものではございません。

 その上で、末松先生からLPガスの支援について御指摘がございましたが、昨秋にやるべきであった、タイミングがずれているのではないかという御指摘だった、このように思いますが、LPガス支援につきましても、昨年の十一月の令和四年度第二次補正予算におきましても、人件費、配送費の効率化に向けた支援を行ってきております。

 また、自治体において、昨年九月に措置されました重点交付金を活用して、地域ごとの利用状況や小売事業者の体制に応じた値引き支援や、LPガス料金に利用可能な地域商品券の発行といった取組が行われている、そのように承知をしているところでございます。

末松委員 統一地方選の直前にこういう巨額のことをやると、政治的な思惑があるんじゃないか、そんなこともうわさされるようになりますから、是非そこはきちんと改善をしていただければと思っております。

 次に参ります。

 今度、防衛費の四十三兆円の根拠について、政府の方でしゃべられていますけれども、私から見ると、なかなか納得ができないんですね。

 NATOが防衛費がGDPの二%であるというのは承知しておりますけれども、NATOのメンバーでもない我が国が、防衛費にいきなりGDPの二%、五年間で四十三兆円も割かなければいけないのか。しかも、NATO諸国も、二〇一四年から十年間かけてGDP二%に持っていこうという合意であったと思っております。日本は今回、一気にGDP二%に持っていこうとしています。そこまで生真面目に我が国がNATO水準を守る必要があるのか。

 そう考えますと、日本にとって極めて無理がある選択を米国から実質的に強制されているのではないかという意見もあるんですね。財政を預かる大臣として、これはしかるべく反対すべき立場でもあったのじゃないかと思うんですけれども、財務大臣の思いと、それから認識に対して問いたいと思います。

鈴木国務大臣 政府全体の考えの中で進められるわけでございますけれども、新たに策定された国家安全保障戦略では、二〇二七年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を併せ、そのための予算水準が現在の国内総生産の二%に達するよう所要の措置を講ずるということがそこに書かれているところでございます。

 これは数字ありきではなくて、安全保障環境が一段厳しさを増す中におきまして、一年以上にわたって議論を積み重ねる過程において、必要とされる防衛力の内容を積み上げた上で、同盟国、同志国などとの連携を踏まえ、国際比較のための指標も考慮をして、我が国自身の判断として導き出されたものであります。

 また、防衛力整備計画におきまして防衛力整備の水準として定めた四十三兆円につきましても、同様の議論の過程を経て、今後五年間に必要となる防衛力の内容を積み上げ、その規模を導き出したものでございまして、無理のある選択を他国から強制されたものということではないわけであります。

末松委員 その大臣の今のお言葉で、大臣も、政府の一端を担っておられる、貴重な、本当に根幹でもある大臣でありますから、政府方針に従わざるを得なかったというのはあるんですけれども、四十三兆円の確保について具体的に見ていきますと、どうも、例えば、一度きりの国有財産の売却とか、毎年の歳出改革を努力論でやろうとしていたり、あと、決算の剰余金というのを、過去の例を引っ張ってきて、それを織り込んで見ている。私から見たら、大半があちらこちらの財源を引っ張ってきて手当てしている印象が強いんですね。

 だから、本当に、大臣が今言われたような、日本を取り巻く安全保障環境が劇的に変わったんだ、だから防衛費の負担を国民の負担拡大として国民にお願いしなきゃいけない、そういうのを切々と感じているのであれば、やはりこれは政府として、防衛費の増額のために、しかるべく、防衛増税のような形で恒久的な財源をしっかりと国民に対してお願いをしていく、これが財務大臣としては重要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。特に、安全保障環境が劇的に変わったというのが本当ならば、それは国民も理解するのではないでしょうか。

鈴木国務大臣 抜本的に強化される防衛力は、将来にわたって維持強化していく必要がございます。この防衛力を安定的に支えるため、令和九年度以降、裏づけとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が不可欠である、そのように考えます。ただし、財源確保に当たりましては、増税のみに頼るのではなく、国民の負担をできるだけ抑えるとの観点も重要であると考えます。

 末松先生からはいろいろな財源を引っ張ってきているとの御指摘もあったところでございますが、政府としては、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保などあらゆる工夫を行うことで、結果として、必要な財源の約四分の三に当たります約三兆円を確保し、国民の負担を圧縮をしたところでございます。

 その上で、今般、令和十年度以降も含めて、防衛力の整備に計画的、安定的に充てるための継続的な仕組みとして防衛力強化資金を創設することとしており、今後、更なる税外収入等の確保努力を通じて、しっかりとした財源にしていく必要があると考えてございます。

 先生からは、増税が筋といった御提案もいただきましたが、政府としては、防衛力の維持を安定的に支えられますよう、この継続的な仕組みを通じて税外収入などの確保に努めるとともに、歳出改革の徹底にも最大限取り組んでまいりたい、そのように考えております。

末松委員 防衛費で様々な予算が引っ張ってこられるということは、逆に、子供のための予算とか、いろいろな社会保障のための予算が引っ張ってこられないということにもつながっていくわけですね。そこのバランスを見るのが財務大臣としての役割だと思うんですね。だから、しっかりとそこは、防衛費だけわあっと、利用できる財源はもうへとへとになるまでそっちの方で考えていくという話になったら、バランス上、私は非常におかしなことになると思うんですね。

 あえて聞きますけれども、この五年が終わった更に次の五年、また同じような形でGDP二%ということを念頭に置いた財源を考えていくんでしょうか。岸田総理の答弁を見ていると、GDPの二%というのが何回か出てくるんですね。だから、NATOの基準というものは、本当にそこはベースにあるんだなということが非常に気になるんですけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほども答弁をさせていただきましたが、政府としては、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているという中で、先ほど来申し上げたとおり、また先生からも御指摘がありますとおり、抜本的に防衛力を強化をする、こういうことの方針でございまして、これは令和十年度以降も続くわけでございます。そういうことで、九年度以降、裏づけとなる毎年約四兆円のしっかりとした財源を手当てしていかなければならないわけでございます。

 その際に、ほかにもやはり必要な様々な予算がございます。先生は教育ということを挙げられたわけでございますが、そういうことについても、やはり全体のバランスを見る中で、必要な手当てすべきものにはしっかりと手当てをしていく、そういう姿勢で予算編成にこれからも臨んでまいりたいと思います。

末松委員 その心意気はいいんですけれども、そういうお金がなくなってきたときに、そっちの方にバランス上取れないじゃないかというのを私は懸念して申し上げているわけでございます。

 もうちょっと、私の方でいろいろ選挙民の方含めて一般の方ともお話をするんですけれども、非常に大きな懸念が、今言われているいわゆる台湾有事ですね。この台湾有事の際、アメリカは我が国の自衛隊の出動も当てにしているんじゃないかという懸念。そして、台湾有事に向けた実質的な日米の共同演習なども行われていくんじゃないかという懸念。この懸念を更に言いますと、国民の間では、米国が自衛隊を米軍の下請として使うのではないかという大きな懸念さえ高まっているわけです。

 今の防衛力の整備で、私自身は防衛力の一定の整備は当然必要だと思ってはいるんですけれども、この防衛力の整備によって、今度は、防衛力が高まれば高まるだけ、台湾有事の際にアメリカから日本の自衛隊が頼りにされて、そして、日本が今度は、その設定といいますか、台湾有事ということで、アメリカの圧力というのかな、アメリカのそういった台湾を守るという構図の中に引き込まれて、日本は戦争への道を走り続けることにならないかという一般の方々の大きな懸念があります。

 この懸念に対しては、どういうふうに大臣として、反論というか、あるいは認識を表明されますか。

鈴木国務大臣 財務省というよりも政府の立場でお答えさせていただきますと、台湾有事ということでありますが、相手のある国際関係におきまして、仮定の質問にお答えすることは控えなければならないんだと思いますが、台湾海峡の平和と安定、これは、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であると考えており、台湾をめぐる問題について対話により平和的に解決されることを期待するというのが、我が国の従来からの一貫した立場でございます。

 その上で、今般の防衛力の抜本的強化の目的は、あくまで力による一方的な現状変更やその試みを許さずに、我が国への侵攻を抑止することにあると書かれておりまして、このことは国家防衛戦略にも明記をされております。

 したがって、御指摘のように、我が国の防衛力が、我が国への侵攻の抑止を超えて他国と戦争への道を走り続けるために用いられることになるとは考えておりません。これが政府の立場であります。

末松委員 日本の抑止力が高まるというのは、私はそれは賛成なんですね。ただ、抑止を超えて事態が発展したときは、日本が破局に至るというふうに私も考えているわけです。

 ですから、破局に至らないように様々な外交努力もやらなければいけないというのは当然のことなんですけれども、本当に、今は、破局に至らないような、抑止力を超えた形に事態がならないように願うだけなんですけれども。

 本当に、そこはきちんとやらないと、様々なところから、私も予算委員会で質疑をしたときに、中国と北朝鮮とロシアというふうに三方に向かうようなことになれば、日本というのは本当に破局に至るなという強い感じを持っております。それは、アメリカ及び我々の同志国のバックをもってしても、事態がそういう形にならないという保証はありませんので、そこは是非、外交を含めた形でやはり日本としてやっていかなきゃいけないというのを強調したいと思います。

 それから、日米の防衛協力において、盾と矛の役割、これは従来から、岸田総理始め安倍元総理大臣のときもそういうふうに、日米の盾と矛の関係は変わらないということを度々おっしゃられていました。でも、他国に対する敵地攻撃能力、反撃能力を自衛権の行使ということと絡ませて言えば言うほど、どうしても、専守防衛という立場から外れて、日本が矛の役割を担うこととなって、これは日米の盾と矛の従来の関係からどうしても変更ということが起こるというふうに私は思うんですね。

 これを全く従来と同じように日米の盾と矛の関係は変わりませんと言うのは私は虚偽の答弁のような気がしてならないんですけれども、そこはいかがですか。これは防衛省ですね。

井野副大臣 先生御指摘の、まず、盾と矛という役割についてでありますけれども、この点については、政府として確立した定義があるということで申し上げたということはないというふうに認識しておりまして、岸田総理も、それを前提に、定義があるわけでないと述べられた上で、二〇一五年の策定された日米防衛協力のためのガイドラインに明記されている、日本は日本の防衛を主体的に実施する、米国は自衛隊を支援し補完するとともに、拡大抑止を提供するといった日米の基本的な役割分担は変わらないというふうに答弁されたものというふうに認識しているところであります。

 その上で、近年、我が国周辺では、ミサイル関連技術と運用能力が飛躍的に向上し、質、量共にミサイル戦力が著しく増強される中で、既存のミサイル防衛網だけでは完全に対応することが難しくなりつつあるという現実がございます。そういったことを前提に、我が国としても、反撃能力を保有し、国民の命、暮らしを自らの力で守り抜く努力が必要であるという認識に立っております。これにより、日米同盟の抑止力、対処力を一層向上させ、我が国に対する弾道ミサイル攻撃などに対応していくことが必要不可欠な状況だというふうな認識に至っています。

 そういった意味で、我が国が反撃能力を保有することに伴い、弾道ミサイルなどの対処と同様に、日米が協力して対処していくということは何ら変わりないという関係にあると思っております。

末松委員 表向きはそうなんですけれども、日米で統合司令部のようなコーディネーションが行われようとしているところで、要するに、相手国の攻撃を防ぎ、そしてさらに、相手国に対して攻撃を行うようなことが日米で話し合われる。これは日米共同対処という次元の話なんですけれども。そういった場合に、アメリカから、日本はこの地域については、是非そこで日本の特異な状況を生かして攻撃してくれよというようなときは、そこは日本政府としては断る、矛の役割はしない、こういうことでよろしいんですね。

井野副大臣 具体的に台湾侵攻がどのような形で行われるかなど、仮定の話について、どう対応するかということに対してお答えすることは、現時点では困難であります。

 また、我が国としての必要最小限度の防衛としてどのように対応するかということは、その現場現場において判断されていくというふうに認識をしております。

末松委員 私が聞いているのは、具体的な現場の状況はいろいろとあると思いますけれども、日本は矛としての役割は果たさないよというのは、これはそれでよろしいですよねとクリアに聞いているだけです。

井野副大臣 先ほどちょっと御答弁申し上げたとおり、政府として、我が国の防衛として、日米の関係において盾と矛というような関係があるということは、定義として申し上げたということはございませんので、何が盾で、何が矛、どのような防衛力の態様が盾で、何が矛であるかということも、お答えすることも難しいという状況であります。

末松委員 そうすると、盾と矛の関係は、その事態事態によって変わっていくという認識ですか。

井野副大臣 変わっていくといいますか、そもそも、盾と矛というような関係にあるわけではないというふうなことであります。

 すなわち、明確に政府として盾と矛の役割を定義したわけでもございませんし、ちまたではそういうことをおっしゃられる方はいらっしゃると思いますけれども、ただ、政府として明確に、アメリカと日本の防衛協力が盾と矛の関係にあるということを申し上げたということではございません。あくまでも、日本は日本の防衛を主体的に実施し、そして、米国は自衛隊を補完するとともに、拡大抑止を提供するという関係にあるというふうに思っております。

末松委員 井野防衛副大臣、この盾と矛というのは従来からずっと答弁されてきているんですよ。何を言っているんですか。安倍元総理も言ってきたし、岸田総理も言ってきた。だから、定義されていないとかそういう話じゃなくて、盾というのは、日本の自衛に関してきちんと専守防衛をするというのが盾でしょう。それを超えると矛という話になるんでしょう。それが何か、事態事態で、あなたの言うように、変わっていくんです、定義されていないから分からないんですという話になっちゃうと、これはとんでもないことになりますよ。もう一回答弁してくださいよ。

井野副大臣 同じような答弁になって大変恐縮ですけれども、岸田総理自身も、盾と矛の役割については、政府として確立した定義があるわけではないと述べられた上で、二〇一五年の策定された日米防衛協力のためのガイドラインに明記されている、日本は日本の防衛を主体的に実施する、米国は自衛隊を支援し補完するといった基本的な役割分担は変わらないというふうに答弁されたものと認識はしています。

末松委員 だから、具体的にどの場合にどうこうというところの定義はないというのは、それはそうなんですよ。ただ、専守防衛の立場を超えないのが盾じゃないんですか。それも定義もできないんですか。

 もう一回言ってくださいよ。おかしいよ、それは。

井野副大臣 専守防衛というものは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限るという受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、これが我が国の防衛の基本方針であるというふうに認識しています。

 そして、反撃能力については、我が国の、武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイルなどによる攻撃が行われた場合、武力行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンドオフ防衛能力などを生かした自衛隊の能力と国家安全保障戦略等に明記されていると思います。

 当然ながら、どちらも、相手から武力攻撃を受けた場合の必要最小限度の自衛の措置という観点では整合しておりますし、政府としても、専守防衛の姿勢というものは堅持していく考えであります。

末松委員 今、あなたは自衛権の定義を言っているだけであって、だから、防衛省としても同じ立場ですか。要するに、今まで言ってきたのと、私の解釈は、おかしいなと思うんですけれども、そこはどういうふうに整理されているんですか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど副大臣が御答弁申し上げましたとおり、いわゆる盾と矛の役割について、政府として確立した定義があるわけではございません。

 いずれにいたしましても、我が国が反撃能力を保有することに伴いまして、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していくことになると考えております。

 その上で、先生の御質問にお答え申し上げますと、自衛隊による全ての活動につきましては、米軍との共同対処も含めまして、我が国の主体的な判断の下で、日本国憲法、国内法令等に従って行われておりまして、自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動することになってまいります。

末松委員 安倍元総理とかあるいは岸田総理が日米の盾と矛との関係は従来と変わりませんと言った、この答弁は事実なんですよ、私もずっと見ていますから。そこで、盾と矛との関係が定義されていないので、あたかも動いていくような、そんな印象というのは私は非常に問題だと思うんです。

 委員長に申し上げますけれども、お願いしますけれども、盾と矛の関係をクリアに、定義できないということではなくて、それは防衛省の公式見解を改めてちょっと求めますので、理事会で協議をよろしくお願いします。

塚田委員長 後刻、理事会において協議いたします。

末松委員 こればかりやっているとちょっと時間がなくなりますので、トマホークの購入問題について伺います。

 今、トマホークの取得のため、防衛省の予算の中で二千百十三億円が計上されていて、あと、トマホーク発射のプラットフォームの取得、改修等で、イージス艦に搭載するトマホークの関連器材の取得というのも含めて一千百四億円が計上されております。

 一方、日本がトマホークを発射するためには、必要な部隊の創設とか、米国の技術支援料の支払いとか、教育訓練費用等が不可欠と当然なってきて、これらが高いんですよね、非常に高い。そして、アメリカがFMSでやっているものですから、その時価がどんどん上がっていっているというのがございます。

 これらの費用というのはどこに計上されていますか。

井野副大臣 先ほど先生が御指摘いただいたとおり、この一千百四億円に、発射機能付与に必要な関連器材の取得、米国からの技術支援、米国による自衛隊員の教育、発射機能付与後の試験など、ここの関連経費に、この一千百四億円の中に入っているという状況であります。

末松委員 昨日、防衛省のレクチャーを受けていたんですけれども、そのときに、イージス艦に装備してあるので、ランチャーなんかはほとんど費用がかからないんだ、そういう言い方をされていました。一千百四億円の中に含まれていると。

 これはイージス艦だけなんですか。地上から発射するという計画、その運用計画というのはどうなっているんですか。イージス艦だけになるんですか。陸でそれを装備するという話になったら、また計画が違ってくるんですけれども、そこを、今の運用計画を述べてください。

川嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 トマホークにつきましては、これは艦載、船に積むということを前提にいたしましたミサイルでございまして、先生御指摘のとおり、イージス艦に搭載して運用するということを念頭に置いてございます。また、現段階におきましては、陸上から発射する、あるいは航空機から発射するということは考えてございません。

 以上でございます。

末松委員 このトマホークのブロック5について、私も米国のネイビーの予算書を見ました。そうしたら、大体一発五億二千万円ぐらいですかね。それで、その海軍の予算書には、四十基を二〇二三年度は購入するということが書いてございました。

 一方、ある報道によれば、米海軍が七十基、そして海兵隊が五十四基、陸軍が三十基で、計百五十四基、レイセオンから買うというような報道があったんですけれども、これは、ブロック5は最新型なので、アメリカもあるいはイギリスもまたどんどん最新型を買っていくという話で、日本が言っている、ブロック5を四百基も買えるような、そんな余裕があるのかというのが私の素直な印象なんですけれども、いかがですか。

川嶋政府参考人 お答えをいたします。

 確かに、米国自身の調達というのはあるんでしょうけれども、我が国がトマホークミサイルを購入するに当たりましては、米国と密接に調整の上、その上で五年度の予算計上をさせていただいております。したがいまして、十分に米国側と調整済みである、そう認識しておりまして、適切に購入できるものと考えてございます。

末松委員 そうなると、米国政府との調整、今、済みと言いましたよね。レイセオン社からも、それが調整済みだと考えていいわけですか。

川嶋政府参考人 お答えいたします。

 米国政府とも、また、米国政府を通して会社、企業さんとも話をしておりまして、密接に調整しておりますので、適切に購入できるものと考えてございます。

末松委員 あと、このミサイルについて私がやや疑問に思っているんですけれども、今、国産ミサイル、六種が同時に開発されているんですね。一二式、一兆円ぐらい予算をかけていますし、また、島嶼防衛用ということで、高速滑空弾、これも研究百五十八億円、量産で三百四十七億円。あと、島嶼防衛用の高速滑空弾、HGV、能力向上型ということで、開発が二千三億円。さらに、島嶼防衛用の新対艦誘導弾の研究ということで、三百四十二億円。あと、極超音速誘導弾ということで、HCMですか、この研究が五百八十五億円。さらに、極超音速迎撃ミサイル、これが中距離地対空誘導弾ということで、改善型で七百五十八億円。

 こういう六種が国産で一挙に開発しているんですけれども、ちょっと多過ぎないか、もう少しこれは集約できないのか、資源の分散ということは大丈夫なのかという懸念があるわけですけれども、そこの点はいかがですか。

川嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 スタンドオフ防衛能力につきましては、東西南北それぞれ三千キロに及ぶ我が国領域を守り抜くため、島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して脅威圏の外から対処するスタンドオフ防衛能力を抜本的に強化する。まず、我が国への侵攻がどの地域で生起しても、我が国の様々な地点から重層的にこれらの艦艇や上陸部隊を阻止、排除できる必要かつ十分な能力を保有する。次に、各種プラットフォームから発射でき、また、高速滑空飛翔や極超音速飛翔といった多様かつ迎撃困難な能力を強化するということが必要でございまして、その旨、国家防衛戦略についても、記載をされてございます。

 これを踏まえまして、防衛力整備計画におきましては、射程、速度、飛翔の態様、対艦、対地攻撃の区別、性能、発射プラットフォームといった様々な点で特徴が異なる、様々なスタンドオフミサイルを整備することとしてございます。様々な特徴、個性を有するスタンドオフミサイルを整備することによりまして、我が方の重層的な対応が可能となり、相手に複雑な対応を強いることが可能となるものと考えてございます。

 例えば、我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊に対しまして、統合運用の下で、一二式地対艦誘導弾の能力向上型を陸海空それぞれのプラットフォームを用いて様々な地点から発射するといったことや、こうした亜音速のミサイルに加えまして、極超音速誘導弾等の先進的なスタンドオフミサイルを組み合わせて使うということによりまして、相手方の対処が一層困難になるものと考えてございます。

 これら様々な特徴を有するスタンドオフミサイルの導入は、我が国への侵攻を我が国が主たる責任を持って阻止、排除し得る防衛力を構築し、自衛隊の抑止力、対処力を向上させることを可能とするものであり、武力攻撃そのものの可能性を低下させるためにも必要な取組と考えてございます。

 以上でございます。

末松委員 時間が来たのでこれで終わりますけれども、このトマホークも、約九百キロぐらいしかスピードが出ない、結構、阻止されちゃうとか、いろいろな問題があるので、これもいろいろと併せて今日は質問したかったんですけれども、時間がなくなったので、今度の財確法のところでまた質問させていただきます。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 暗い話題が多い昨今ですが、今日は明るい話題から入りたいと思います。

 ちょうど一週間前の二十二日の日でした。この委員会の開催中に大谷投手がトラウト選手を三振に切って取って、WBCで日本が三大会ぶりに優勝したという快挙がありました。

 その大谷選手は投打で活躍してMVP、佐々木朗希投手は準決勝を含め二試合に登板し勝利に貢献したということで、大臣も私も二人と同じ岩手の出身ですから、当然、大臣もお喜びになったと思います。

 私も野球をやっていまして、本当にこの二人はすごいなと思うのは、二人とも日本で一番速い球、百六十五キロという球を投げるんですね。私はどんなに頑張っても百三十キロ台でした。二人にとってみればチェンジアップみたいな球しか投げられなかったんですけれども、大臣には、こうした岩手が生んだ宝ともいうべき異次元の才能を持つ若い力の活躍が日本の野球の世界一に貢献したことについてどういう感想を持っているか、率直なところをお聞かせください。

鈴木国務大臣 階先生は盛岡第一高等学校、それから東京大学の野球部でエースだったというお話を聞いておりまして、野球に大変お詳しいわけでありますが、ふだん野球にそれほど興味を、持たないわけではありませんけれども、そういう私にしても、あの大会期間中は本当にくぎづけでありました。

 すごくうれしかったのは、やはりあの大会、WBCがあんなに盛り上がったということ、それでヨーロッパなんかにも野球というのはしっかり根づいているんだなということが分かって、まさにそういう中であの大会が盛り上がった。その盛り上がった原因は侍ジャパンでありましたし、そして侍ジャパンが優勝したことは、やはり、お話がありました大谷選手でありますとか佐々木朗希選手でありますとか、そうした同郷の選手が大活躍をしてこの日本の優勝に、そして大会の成功に結びつけたということが大変うれしく思ったところです。

 冒頭、階先生からお話がございましたとおり、暗いニュースもある中、久しぶりに、何と言ったらいいのでしょうか、国民の皆さんが本当に沸き立った、元気の出るすばらしいニュースであったと思いまして、大谷選手、佐々木選手だけではありませんが、侍ジャパンの選手お一人お一人に賛辞を送りたいと思います。

階委員 ありがとうございました。

 大臣、野球はそんなにお詳しくないということでしたけれども、さっき私、チェンジアップという言葉を使いましたけれども、野球でチェンジアップというのはどういう投げ方というか、そういうのを意味するかというのは御存じでしょうか。

鈴木国務大臣 それぐらいは分かっているつもりでして、ストレートを投げるのとほとんど同じ、変わらないフォームで、実際は緩い球が投げられる、こういうことだと理解しています。

階委員 おっしゃるとおりです。

 それで、ここからが本題なんですが、この十年の黒田総裁の下での金融政策、当初は、異次元金融緩和で二%の物価安定目標を二年で達成するという威勢のいい直球を投げて、市場の期待に働きかけていたわけです。

 ところが、戦力の逐次投入は、当初やらないと言っていたのに、二〇一四年秋には量的緩和を拡大し、また、二〇一六年初めには、直前までやらないと言っていたマイナス金利を導入しましたし、その秋には、それまでのマネタリーベースから長短の金利に操作対象を切り替えて、国債買入れを年間八十兆円純増させるという話もフェードアウトさせたりといったこともありました。そして、とどのつまりは昨年暮れの、金融緩和の効果を阻害するとしてやらないと言っていた長期金利の上限を引き上げるといったようなこともありました。まさにチェンジアップのように市場の期待を裏切り、裏をかかれた市場の混乱を招いてきたというふうに言わざるを得ないわけです。

 昨日の日経新聞の朝刊を見たところ、秋野財務副大臣の国会答弁が取り上げられていました。金融政策に当たっては、市場との対話が重要だ、強調しておきたいといった旨の答弁が取り上げられていました。要は、市場の裏をかくチェンジアップというようなことは控えろという趣旨だと私は理解しています。

 大臣には通告していませんが、この秋野副大臣の答弁、大臣も同じ考え方だというふうに理解してよろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 基本的に金融政策は日銀の独立性に関わることでございますから、個々の政策については申し上げませんが、やはり、市場との対話ということ、いろいろな金融政策によって、為替の動向等あるわけでございますので、予見可能性といいますか、ある程度の市場との対話と申しますのは重要な点であると認識いたします。

階委員 今日は、多分最後の質問になると思いますが、黒田総裁にもお越しいただいています。

 三月十五日の当委員会で、私は野田元総理とのやり取りを伺っていました。野田元総理が様々な観点からこの間の金融政策の失敗を指摘していらっしゃったんですけれども、黒田総裁は最後まで失敗を認めず、反省の弁もありませんでした。

 三月十日の記者会見で、黒田総裁は、巨額の国債とETFの出口戦略もないまま植田総裁に引き継ぐことへの反省を問われて、何の反省もないし、負の遺産だとも思っていないというふうに断言されていました。

 しかし、このような黒田総裁御自身の評価と市場の評価は全く異なるということを指摘したいと思います。

 今日お配りしている資料の一ページ目を御覧になってください。

 黒田総裁の個別政策への評価を、債券市場関係者百十四人に聞いた結果ということです。評価しない、全く評価しないを合わせた割合は、ここに掲げてあるほとんどの項目で五〇%を上回っているということです。特に一番下の市場とのコミュニケーションという項目では、八七%の人が評価しない、全く評価しないという結果でした。

 まさに、市場との対話を軽視し、チェンジアップを投げ続けた結果がこの数字に表れていると思うんですが、黒田総裁の見解を伺います。

黒田参考人 まず、過去十年間の大規模な金融緩和は経済、物価の押し上げ効果をしっかりと発揮しており、我が国は物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっております。

 一方で、副作用として、特に、金融機関収益を圧迫し金融仲介機能に影響を与える可能性、あるいは市場機能の低下が挙げられております。御指摘の評価は債券市場参加者を対象とした調査であると思われますが、こうした副作用を意識した評価ではないかと考えられます。

 政策には常に効果と副作用があり、それらを比較考量しながら、最も適切な政策を実施する必要があります。私としては、この間の大規模な金融緩和は、効果が副作用を上回っており、我が国経済にとって必要かつ適切なものであったというふうに考えております。

 なお、市場との対話につきましては、金融政策の効果を円滑に発揮していく観点から極めて重要であるというふうに認識しております。

 そうした観点から、日本銀行の経済、物価、金融情勢の現状及び先行きに対する見方や、それを踏まえた政策運営の考え方については適切に説明を行ってきたと考えておりますし、御案内のとおり、金融政策決定会合における議事の議事要旨というものはその次の金融政策決定会合で承認した後に公表するということになっておりましたけれども、それに加えて、金融政策決定会合の直後に金融政策決定会合で議論された主要な論点も紹介するという形で、様々な形でコミュニケーションを高める努力もしてまいりました。

階委員 長々と答えられましたけれども、要は、市場とのコミュニケーション、八七%の人が評価しない、全く評価しないというふうに答えられていますけれども、こちらの方が間違いだ、黒田総裁は反省すべきことはないというお答えだったというふうに理解してよろしいでしょうか。

黒田参考人 債券市場関係者の方がこういう考え方を持っておられるということは私も存じておりますけれども、金融政策として反省すべきというふうには全く考えておりません。

階委員 いや、本当にもう、全く反省もないからますます独善的になって、市場との断絶が生まれて、そして市場のゆがみが生じるということがよく分かります。本当に、もっと早く退任していただければこんな結果は出なかったんだろうなというふうにつくづく思います。

 そこで、最後の政策決定会合だった三月十日公表文には、従来同様、二%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点までイールドカーブコントロールを継続する旨が書かれています。

 イールドカーブコントロール、長短金利操作というふうに訳されていますが、長期の金利の方の操作、コントロールについて見た場合、これは物価安定目標を達成するまで続けるという理解でいいのかどうか、総裁、お答えください。

黒田参考人 何度も申し上げますけれども、量的・質的金融緩和を含む大幅な金融緩和をこの十年間続けてきたわけですが、それぞれのフェーズで、調整をしたのは、そのときの経済、物価、金融情勢を踏まえて、更に効果を高めるための政策を打ってきたわけであります。

 そこで、物価安定の目標を持続的、安定的に実現するにはなお時間がかかると考えられまして、また、先行きの経済をめぐる不確実性も大きいわけでございます。こうした経済、物価情勢を踏まえますと、金融緩和を継続していくことが適当であるというふうに考えられます。

 日本銀行は、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付量的・質的金融緩和を継続するという方針を明らかにしております。

階委員 相変わらずコミュニケーション能力がないんですけれども、私が聞いたのは、今最後におっしゃった、二%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点までというのはどういう意味かというのを聞いているんですよ。それは物価安定目標達成までという意味に捉えていいのかどうかということを聞いているわけですよ。どういう意味なんですか、お答えください。

黒田参考人 これは、二%の物価安定目標を二〇一三年の一月に導入して以来、日本銀行が繰り返し申し上げているわけですけれども、一時的に輸入物価の上昇によって物価が上がったということで二%が達成されるということではなくて、二%の物価安定目標が持続的、安定的に達成されるということが必要だということであります。

 その場合の持続的、安定的に達成されるというのは、当然のことながら、消費者物価の足下の動き、それから今後の見通しも関係しますし、その重要なファクターである賃金の上昇率、さらには経済の動向、そういったものも総合的に踏まえて物価の動向を把握し、そして二%が達成されたかどうかということが判断をされるわけでして、これは別に日本銀行だけというわけではなくて、世界中の中央銀行、特に先進国の中央銀行は全て、二%の物価安定目標を持続的、安定的に達成するということを目標に金融政策を運営しておられますけれども、その場合の判断というのは、今申し上げたようなことを総合的に判断して政策を決めておられるということであります。

階委員 何度も申し上げますが、本当にコミュニケーション能力のない総裁だなと思いましたよ。私が聞いているのは、二%物価安定目標がいつ達成されたと判断するかということではなくて、長期金利のコントロールをいつまで続けるかということで、物価安定目標達成まで続けるのかということを伺っているんですよ。何、関係ないことを言っているんですか。長々と答えるんだったら必要ないですよ。何でそういうふうにコミュニケーションしようとしないんですか、おかしいじゃないですか。長期金利のコントロールは物価安定目標達成まで続けるのかと質問通告していますよ、明文で。そのことだけお答えください。

黒田参考人 それは先ほど既にお答えしていますよ。

 日本銀行は、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付量的・質的金融緩和を継続するとの方針を明らかにしているということであります。

階委員 そんなことは百も承知で聞いているんですよ。だから、昨日だってレクしているじゃないですか。後ろの人たちも何やっているんですか。

 じゃ、質問を変えますけれども、私は、二月二十四日に議院運営委員会で植田新総裁にも質問していますけれども、はるかにコミュニケーション能力が優れていたと思います。植田新総裁は今の質問について何と言っていたかというと、基調的な物価の見通し、これが一段と改善していくという姿になっていく場合には、イールドカーブコントロールについても見直しを考えざるを得ないというふうに答弁されていたんですよ。今の黒田総裁のように、私も知っている、みんな知っているような、公表文に書かれた文言をただなぞるだけではなくて、自分の言葉で言っていましたよ。基調的な物価の見通し、これが一段と改善していくという姿になっていく場合には見直しを考えるという話でした。

 この植田新総裁の説明と黒田総裁の答弁とは、整合性が取れているのか取れていないのか、ここだけ確認させてください。

黒田参考人 植田新総裁の発言についてとやかくコメントすることは避けますけれども、あくまでも、日本銀行の金融政策決定会合で決定したことは先ほど申し上げたとおりでありまして、何ら、それが今の時点で変えなければならないということでもないし、はっきりと、二%の実現を目指して、安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付量的・質的金融緩和を継続しますと言っているわけでして、植田新総裁がどのような考え方で何をおっしゃったかということについては、私から何かとやかく言うのは避けたいというふうに思います。

階委員 必要な時点というのは、植田総裁がおっしゃるような、基調的な物価の見通し、これが一段と改善していくという姿になっていく場合ということでいいんですよね。違うんですか。お答えできますか。分からなければ分からないで結構ですよ。

黒田参考人 何度も申し上げますけれども、植田新総裁が何を考えて何をおっしゃったかということについて私からコメントするのは適切でないと思いますので、差し控えたいということであります。

 ただ、先ほど来申し上げているとおり、物価の足下の動向、先行きの状況、そして賃金の状況、さらには景気その他を踏まえて物価の基調を判断するということには、日本銀行は、従来から申し上げているとおり、そういうものを総合的に判断してやるということは申し上げているとおりであります。

階委員 この十年間、不毛なコミュニケーションをさせられて、本当に市場関係者も苦労が絶えなかったんだろうなというふうに思います。

 今日は、新たに就任された内田副総裁にも来ていただいておりますけれども、内田副総裁には、さっきの、新たな総裁になられる植田さんの発言についてまず聞きたいんですけれども、植田さんが言うには、基調的な物価の見通し、これが一段と改善していく姿ということがイールドカーブコントロール見直しの条件ということでした。

 この、基調的な物価の見通し、これが一段と改善していく姿とはいかなる状態を指すのか、市場関係者にきちんと伝わるよう、今までの黒田総裁のような冗長で抽象的で定性的で不明確な言い方ではなくて、端的で具体的で定量的で明確な説明をお願いします。

内田参考人 お答え申し上げます。

 基調的な物価の動きというのは、私どもが今コミットメントという形で申し上げている、二%の目標の実現を目指し、これを安定的に実現するのに必要な時点までという判断をする上で極めて重要な要素だというふうに思っております。

 基調的な物価についてどのように理解するかということは、これは、様々な指標を見ていくというのがむしろ正しい言い方であって、例えば、一つの指標、様々ないわゆる基調を表す指標というのはありますけれども、そういったものを見るのではなくて、様々な物価指標を見た上でこれを総合的に判断していく、ここは今総裁から申し上げたとおりでございまして、まさにそのためにこそ政策委員会というのは存在し、金融政策決定会合で毎回議論しているということかと思います。

 その中身については、私どもとしてはきちんとお伝えしてきたと思いますし、これからも、この点は、市場を含め国民の皆様に分かっていただけるようにきちんとコミュニケーションを取ってまいりたいというふうに思っております。

階委員 黒田総裁の下で長らく金融政策に携わってこられた内田副総裁としては、やはり黒田総裁と違うことは言えないんだろうと思います。

 どういう場合に長期金利のコントロールを見直しをするかということは相変わらず不明確ですけれども、いざ見直しをする場合に、論者によれば、大きく二つの方向性があるやに伺っております。

 一つは、長期金利のコントロールについて、今、〇・五が上限金利ですけれども、ここを引き上げたり対象年限を短くしたりする漸進的なやり方をすべきという意見。それからもう一つは、そういう漸進的なやり方では、将来の長期金利のコントロール撤廃を見越した投機的な動きが生じて好ましくないということから、いきなりコントロールを撤廃する急進的なやり方の方がいい。こういう二つの意見があると私は認識しています。

 市場との対話を重視するというのであれば漸進的なやり方がいいようにも思うのですが、長期金利のコントロール、今後見直しをする場合、市場との対話とどのように両立すべきかということを内田さんにお答え願いたいと思います。

内田参考人 お答え申し上げます。

 市場とのコミュニケーションという意味では、まさに大臣もおっしゃいましたし、総裁からも申し上げましたが、金融資本市場というのは金融政策の主な波及経路の一つですので、政策意図を正確に市場に伝えるということは金融政策を円滑に発揮していく上で重要だと思います。そうした観点から、経済、物価、金融情勢についての見方、あるいはそれを踏まえた政策運営について、今後とも丁寧に説明していきたいと思います。

 ただ、毎回の決定会合につきましては、そのときのデータそれから情報に基づいて議論していくものですので、それを先取りするような情報発信というのは通常やりませんし、やるべきでもないと思います。この点はイールドカーブコントロールに限られるものではないと思います。

 その上で、確かに、イールドカーブコントロールの性質上、例えば、いわゆる見直しということでおっしゃったようなことを含めまして、何か事前にこれを市場に織り込ませるということは、これは難しいわけですけれども、一方で、直接金利をコントロールして、そのことによって市場の変動を抑え、市場の安定を図ってきているということでございます。

 こうした特性を踏まえた上で、イールドカーブコントロールという枠組みの下での適切なコミュニケーション、それから市場の安定、これを図っていくということが必要であると思っておりまして、具体的に申し上げることは適切ではありませんが、今後とも、こうしたことを踏まえて、政策それからコミュニケーションを図ってまいりたいというふうに思っております。

階委員 結局、漸進的なやり方でいくのか急進的なやり方でいくのかということについて言えば、私は、市場とのコミュニケーションという意味では漸進的な方がいいと思っていますけれども、その考え方についてはどう思われますか。

内田参考人 事前に、こういう政策をすべきだ、あるいはこういうふうに考えられるべきだということを今の時点で申し上げることは不適当だと思います。それこそ、市場に混乱を与えるものであろうというふうに私は思っております。

 そういう意味で、今後、様々な条件が整い、何らかの見直しが必要になってくるということは、これはよい方向に向かえば当然あり得ることですけれども、その場合に、最も適切な方法を考えるということでございますし、その際には、おっしゃったとおり、金融市場の安定ということは極めて重要な要素の一つになるというふうに思っております。

階委員 手堅いけれども、しかし、相変わらずコミュニケーションとしてはどうなのかなという気はします。

 さて、また内田副総裁に伺いたいのですが、そもそも、なぜ二%かというお尋ねをするわけですよね、毎回。毎回というか、何回もしていますよね。物価安定目標、なぜ数値は二%なのかということを聞いた場合に、必ずお答えになる理由の一つが、金利水準を上げて、金融政策ののり代を確保して、将来の金融緩和に備えるという理由を挙げられますよね。ということは、物価安定目標二%が達成されれば、当然、長期金利もその辺りの水準になるという理解でいいのかどうか、お答え願えますか。

内田参考人 お答え申し上げます。

 一般的に、名目の長期金利というものは、実質成長率とそれから物価上昇率に関する見通し、そのことに国債保有に伴ういわゆるタームプレミアムを加味して決まってくるというふうに理論的には考えられます。

 このうち、タームプレミアムに関しましては、現在、私ども、先ほどのコミットメントとは別にオーバーシューティングコミットメントというのを採用しておりまして、二%の物価安定目標を達成した時点では、この条件は通常であれば満たされていないと思いますので、大規模な国債保有を継続していることが想定されます。この保有残高に伴う効果、いわゆるストック効果と呼ばれておりますが、これは残りますので、その分、おっしゃった物価情勢あるいは実質成長率、こういったものから、金利を更に押し下げる方向で働くというふうに考えられます。

 したがって、その時点での長期金利の水準というのは、様々な要因、このほかにも海外金利の動向等もありますので、具体的な水準として幾らということを申し上げることはできないというふうに思っております。

階委員 今、金利の理論値みたいなことを、計算式を挙げられましたよね。中長期的なGDPの実質成長率とか予想物価上昇率とかリスクプレミアム、これらの合計によって決まるということなんですが、そもそも、中長期的なGDPの実質成長率は潜在成長率と近似するケースが多いと思いますし、予想物価上昇率については、今前提に置いているのが物価安定目標二%を達成しているという前提ですから、二%以上になるのではないかというふうに思います。リスクプレミアムも、通常であればマイナスということはあり得ないわけで、こういうことを考えていくと、今、潜在成長率は日銀は〇・三とか言っていますから、二%は理論的には上回るはずだし、恐らく、実際上の長期金利もこれに近づくのではないかと思うんですけれども、この考えは間違っていますか。

内田参考人 お答え申し上げます。

 経済及び物価の状況が反映するということはおっしゃるとおりかと思います。

 その上で、タームプレミアムがマイナスかプラスかという点ですけれども、この点は、先ほど申し上げました日本銀行、これは一般的には中央銀行が保有するストック効果、これも含めて考えなければいけませんので、当然マイナスということはあり得ますし、そうした可能性は否定できないというふうに思います。

 したがいまして、必ず二%を上回るということではないかと思っております。

階委員 長期金利が二%になると確実には言えなくても、まず、そもそも、物価を二%上げるために今やれることは何でもやるといってもう十年たちますけれども、やれることは何でもやるという前提で今異次元の金融緩和を無理やりやり続けているわけですね。

 そして、物価の基調が上昇したら、さっきの話ですけれども、長期金利のコントロールもやめるということでしたから、やはり今から長期金利が二%になった場合にどういうことが起きるかということは想定しておかなくちゃいけないと思うんですね。

 そこで、日銀の財務内容についてお聞きしたいんですけれども、長期金利が二%になったと仮定した場合に、保有国債の含み損、どれぐらいになるとお考えでしょうか。

内田参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点は、十年以内の金利がどうなるかという仮定にも依存いたします。

 そういう意味で、試算の起点として何らかのイールドカーブを想定しないといけないということになりますが、この点、例えば、長期金利が〇・五%であった二月末時点のイールドカーブを前提にしまして、そこから更にあと一・五%程度、イールドカーブ全体がパラレルに上昇したという場合でございますが、試算をいたしますと、約五十兆円程度という評価損になるということでございます。

階委員 五十兆程度の含み損ということなんですが、非常に巨額なわけですよね。

 ただ、内田副総裁おっしゃったとおり、イールドカーブ全体がパラレルに上に上がったという前提ですから、もし仮に短期金利を今の低い水準のまま抑えられれば、この数字は変わってくるのかなと思います。

 かつ、なぜ短期金利を抑えるかというと、短期金利が上がると、当座預金が今五百兆以上ありますよね、法定準備率を超える部分、この五百兆について、もしパラレルに上がったとしたら、そこに二%近い金利を払わなくちゃいけないということで、もう大変ですよ。大赤字で、あっという間に債務超過転落になりますよ。

 だから、私は、先ほど来、長期金利のコントロールを見直すべきだという話はしているんだけれども、一方で、短期金利の見直しということは慎重にしなくちゃいけないなと思うんですけれども、このように、短期金利は低い水準に抑えたまま、長期金利だけ見直して二%とかにしていくというのは、金融政策としては十分可能だという理解でよろしいでしょうか。

内田参考人 どういう水準が短期及び長期の金利水準として適切かは、これは私どもの財務というよりは、日本経済にとってどちらがよいかということで決めるべきかと思います。

 その上で申し上げますと、私どもの財務との関係では、短期と長期の関係によって逆ざやが生じ得るということはおっしゃるとおりです。

 ただ、これも、どちらが先に上がるか、あるいはどのぐらいのペースで上がるのか、それによって、長期のところの国債の入替えが起こりますので、そういった前提によってかなり違ってまいりますので、これも、赤字になるケース、そうでないケース、両方試算はできるわけでございまして、様々なことがあり得るということかと思います。

階委員 やはり、様々なことがあり得るという中で、どういう選択肢があるのかということ、選択肢の種類は明らかにしてもらう必要があると思うんですよ。

 短期金利は低いまま、要するに金融緩和を維持したまま、長期金利については物価の上昇に合わせて二%とかに正常化していくということは、選択肢としてはあるということでよろしいですか。

内田参考人 もちろん、今、長短金利それぞれについてコントロールをしているという政策をしているわけですし、実際に二%に近づいていく過程においては様々なことが考えられますので、あらゆる手段、あらゆる方策を、これは今行われていないことも含めて考えていくというのが私どもに与えられた役割というふうに思っておりますので、それが日本経済あるいは物価安定のために必要であれば、あらゆる選択肢を排除しないということでございます。

階委員 財務大臣にもう一度別な質問をします。

 やはり、長期金利が二%になるということを今から想定すべきだということを感じているわけですけれども、今、大体元本が長期国債一千兆円ぐらいだということで、借換えの規模なんかを見ていますと、大体五、六年で一千兆円が新しいものに置き換わっていくわけですね。仮に五、六年で全て二%の長期金利の水準で置き換わっていくと、現在、一千兆円に対して支払っている利息が八・五兆円ぐらいで済んでいるんですが、二%になれば、一千兆円に対して二十兆円の利息ということになって、今より十一兆円ぐらい利払いが増えるというふうに計算されるわけです。

 令和五年度の予算で見ますと、国債発行額は三十五兆円です。十一兆円利払いが増えた分を赤字国債で補うのか、そうすると、国債発行三十五兆円が四十六兆とか莫大な金額になってきます。あるいは、既存の予算を減らしたりして賄うのかということで、どっちも大変な話だと思いますけれども。

 もし二%に長期金利がなって、そして既存の国債がこういった金利水準に置き換わっていった場合、どういう方法で国債発行あるいは予算編成を考えていくのかということをお答えいただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 いろいろなことを想定をしながら今から考えておくことということは大切なことだ、こういうふうに思います。

 殊にも、今、階先生から御指摘があった点でありますけれども、御存じのとおり、我が国の公的債務残高、これはもうGDPの二倍程度に累積をしているわけでありまして、大変に厳しい状況にございます。こうした中で、御指摘のように、金利が上昇すれば、利払い費の増加によりまして政策的経費が圧迫されるのみならず、利払い費を賄うために政策的経費の大幅な削減に迫られるといったおそれがあるということは十分想定をしなければいけない、そういうふうに思います。

 その際、じゃ、どうすればいいのか、こういうことでありますけれども、私どもとしては、まずは財政規律を守るということが極めて重要である、そういうふうに考えておりまして、累積する債務残高を中長期的に減少させていくために、プライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化すること、これによりまして債務残高対GDP比を安定的に引き下げること、これを政府の方針としているところでありまして、これに沿った財政運営を行っていく、そういう中におきまして、政策的経費に対する圧迫といいますか圧力、そういうものをできるだけ最小化していくということがまずやるべきことであると思います。

階委員 最後、金融庁にもお尋ねします。

 長期金利が二%になったと仮定した場合の金融機関の収益や融資先の返済負担、預金者の利息収入に与える影響について、なるべく具体的にお答えください。三月十五日に藤巻委員も、米国のシリコンバレー銀行の破綻に絡んで、米国と同じ四%に長期金利が上がった場合のことについて同じような質問をされていましたけれども、余り明確な答えがなかったと思います。改めて、二%になった場合、これは日銀も目指しているところですから、これについては想定すべきですから、きちんと答えてください。最後、お願いします。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 長期金利が二%になった場合の金融機関への影響ということでございますけれども、これは、個々の銀行におきますそのときの貸出しとか有価証券運用の状況、あるいは預貸金利の状況によって様々な可能性が考えられるわけでございますので、これを定量的に申し上げることは困難だというふうに考えております。

 その上で、一般論として申し上げますと、まず、バランスシートの健全性の観点からいえば、金融機関が保有する有価証券の評価損益を悪化させるという面があるというふうに考えております。他方で、貸出しや運用の利回りの改善を通じまして、中長期的には金融機関の収益にプラスの影響を与えてくるのではないかというふうに考えている次第でございます。

階委員 藤巻委員のときと代わり映えのしない答弁でがっかりしました。また、引き続き、この点については取り上げていきたいと思います。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 私も、黒田日銀総裁に、二期十年間の任期中、二〇一三年四月から現在に至るまで続いている、いわゆるアベノミクスの金融政策であるところの異次元の金融緩和についてお伺いしたいと思います。

 昨年十二月六日にも御質問しましたが、正直言って、黒田総裁の御説明は難解である、なかなかちょっと理解し難いところがあるので、やはり、ここまで続けてきた政策の中身というのはちゃんと国民が理解すべきだと思いますし、国民に説明していただく義務があると思いますので、御質問させていただきたいと思います。

 まず、総裁、二〇一三年一月二十二日に、「日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で二%とする。 日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。」そういった内容のアコードを結ばれました。このアコードは現在も有効である、相変わらずこれはそのまま生きているというふうに承知しております。これは前回もそんなお答えでしたのでね。

 その後、二〇一三年四月四日の金融政策決定会合の記者会見において、黒田総裁が、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率二%の物価安定の目標を、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する、このため、マネタリーベース及び長期国債、ETFの保有額を二年間で二倍にし、長期国債買入れの平均残存期間を二倍以上に延長するなど、質、量共に次元の違う金融緩和を行うと打ち出されました。これが異次元の金融緩和です。

 これはどう見たって、どう考えたって、どう読んだって、二年でできますと言っているわけなんです。何の理由もなく二年で、しかも、聞きますと、黒田総裁は、理由をちゃんとは言ってくれないんですけれども、逆に、何の理由もなく言いましたとも言ってくれない。

 何の理由もなく言ったのでないんだったら、ちゃんとした論理的な、理論的な理由があると思うんですけれども、これは何で二年でできると思ったのか、そのとき思った理由を御説明ください。

黒田参考人 日本銀行は、共同声明において、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現することにコミットしておりました。このできるだけ早期にというのは、英語で、アズ・スーン・アズ・ポシブルじゃなくて、アット・ジ・アーリエスト・ポシブル・タイムというかなり切迫した感じの言い方をしておりました。

 そこで、二〇一三年四月に量的・質的金融緩和を導入した際、二年程度の期間を念頭にというふうに期間に言及しましたのは、それまでと比べて量、質の両面で思い切った金融緩和を行うこととしたことを踏まえたものであります。

 なお、その際、必要となるマネタリーベースと長期国債買入れの増額規模につきましては、市場や経済主体の期待への働きかけ、それから政策効果についての分析、オペレーション上の対応可能性などを踏まえて判断したところであります。

 なお、諸外国の例を見ましても、金融政策の効果が浸透する期間として二年程度のタイムスパンを考えながら物価安定の実現を目指すということは一般的になっております。

米山委員 今の回答を要約すると、早くしなければならないから二年と言いました、諸外国でも二年ぐらい必要だから、まあそれでいいと思います、これしかないんです。これしか言っていないんです。

 論理的根拠はなかったということを非常に長々とおっしゃられているんですけれども、つまり、二年間で実現する論理的根拠はなかったということでよろしいですね。

黒田参考人 今申し上げたとおり、そのために必要となるマネタリーベース、つまり、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定の目標を実現するというために必要な金融政策がどういうものかというものは十分検討いたしまして、その際の検討の基本的なファクターとしては、一方で、市場や経済主体の期待への働きかけというのもありますし、それから、こういう政策をした場合に経済や物価にどういうふうに影響が出てくるかという分析もいたしました。そしてまた、オペレーション上の対応可能性というものも考えないといけない。こういったことを踏まえて量的・質的金融緩和というものを打ち出したわけでありまして、そういった意味では、十分根拠があったと思いますけれども。

 ただ、二年というのは、金融政策の効果が波及する期間としてはどこの国でも二年程度というのを考えて、FRBでもECBでもそうしているわけですけれども、結果的に、確かに、日本ではまだ二%の物価安定目標が達成されていないわけですけれども、実は、FRBやECBも、リーマン・ショック後に金融政策を拡大して、やはりそれぞれ二%が達成される時期は予測として出しておりましたけれども、二年程度の先に達成されるということで金融政策をやってきたわけですけれども、実際にはそれが達成されなくて、その後、米国でもQE1、2、3とかいろいろなことをやってきましたし、ECBでもそういうことをやっておりますので。

 二年程度というのは、先ほど申し上げたように、一定の根拠で必要な金融政策を考えて打ち出したわけですけれども、結果的にそれが二年程度の期間では達成されなかったという意味では大変残念だと思いますけれども、量的・質的金融緩和を導入したときには、さっき申し上げたようなことを十分考えて、必要で十分な金融緩和であるというふうに考えて打ち出したということは事実であります。

米山委員 それならそれで、さっきの答弁と変わったんですけれども、今度おっしゃられたのは、いや、ちゃんと二年程度で実現できるという、一応マクロモデルか何かを使って計算はしましたということですよね、計算はしました。

 そして、波及するのに二年かかるというのは、それは音の速度があそこに届くまでに二年かかるよというような話であって、波及するのに二年かかるということは、二年で二%にできていることとは関係ないんですよね。少なくとも二年以上かかる、そこに波及するのに二年かかるということは、物価上昇するのに二年以上はかかるということしか担保できないのであって、二年で二%にできるという意味ではないので、それは根拠にならないです。

 でも、今おっしゃられたことは、少なくとも最初の段階では、一定のモデルを用いて二年でできると思ってやりました、でもそれは失敗しました、ちなみに、その失敗はほかの中銀もやっています、要約するとそういうことだと思うんです。

 つまり、日銀のモデルは失敗したんです。ほかの中銀がどうだっていいんです。日銀が自信を持って二年でできると思ったことは成功しなかったんです。

 その理由は何ですか。

黒田参考人 これは、効果の分析というのは様々な手法でやりますけれども、それは日銀のみならず、ほかの中央銀行もそうですけれども、マクロモデルのシミュレーションなども含めて様々な手法を取るわけですけれども、こういった分析によるものの結果というのはある程度の幅を持って判断する必要があるということはもちろん事実ですけれども、やはり一番重要なことは、定量的な分析に基づいて先行きを予想したとしても、経済情勢の変化などによって前提が変わりますと、それに応じて結果が変わってくるということはあり得るわけでして、そういったことは各国の中央銀行も同じですけれども、前提としていた条件が変わってきたときには、それに応じて金融政策を調整していくということはやはり必要になるというふうに思います。

米山委員 今の御回答は、いや、俺の計算は正しかったけれども経済状況が変わったからだという御回答だったと思うんですけれども。

 そうしますと、冒頭述べたように、十年間経過しているわけで、しかも、もう今、CPI三・三%、コアコアCPI三・五%になったけれども、なお目標を達成していないと言っているわけです。そうすると、二年ずつやったとして、五回失敗しているわけです。しかも、経済状況はそんなに大きく変わりましたかね。大きく変わったところってそんなにないと思うんですよ。

 一回目で失敗するのはいいとして、それはだって、何か変わったなら、何か計算が足りなかったなら、二回目には算入するわけでしょう。二回目で失敗したなら、三回目にやるわけですよね。通常、何だって、三回失敗したら、それは駄目、スリーストライクでアウトなんですけれども、五回失敗して、なおまだ続けている。

 五回失敗したら、もうこの計算方法は駄目だなと普通は思うと思うんですけれども、なお黒田総裁はこのやり方で今後も続けられるとおっしゃられているわけなんですが、それは、今後は、黒田総裁が今まで十年間あった経済状況は全部やったから、もう次は経済状況は変わらないということでよろしいですか。

黒田参考人 過去十年の間に経済や物価に対して大きな影響を与えたことというのはたくさんありますけれども、例えば、よく言われる点は、二回の消費税の増税の消費に対する影響というのがあったことは事実です。

 ただ、それよりも、よく思い出すんですけれども、石油価格、原油価格が二〇一五年頃から低下し始めて、それまでバレル百ドル前後だったのが五十ドルぐらいになって、二〇一六年の初めには三十ドルを割るという、物すごい勢いで原油価格が下がったんですね。これは相当、消費者物価に影響を与えました。

 それからまた、先ほど触れられた、二〇一六年にマイナス金利を入れたんですけれども、そのときは、こういった意味で、石油価格が非常に下がって、物価上昇率も下がってきたということに加えて、中国の人民元が暴落するという状況にあって、金融市場も非常に不安定になっていたんですね。

 だから、そういう下で、それまで量的・質的金融緩和を続けてきたんですが、二〇一六年の一月にマイナス金利付量的・質的金融緩和にした。それから、いわゆる総括的検証という形で、それまで続いてきた量的・質的金融緩和の効果、副作用等を分析して、二〇一六年の秋に、いわゆるイールドカーブコントロールという形に変えたわけですね。

 その後も、実は、いわゆるコロナ感染症が二〇二〇年から二〇二一年中というか二〇二二年の初めぐらいまで相当な影響を与えた際には、企業に対する、大規模な企業の資金繰り支援というものもやりましたし、いろいろなことは、その時々に応じて金融政策の調整ということは行ってまいりましたけれども、全てを統一して言えることは、やはり二%の物価安定目標を持続的、安定的に達成するということがそもそもの目標であり、それを達成するために様々な金融政策の調整を行ってきたということでございます。

米山委員 今いろいろおっしゃられましたけれども、何といいますか、当たり前じゃないですか。十年間、世の中って変わるわけですよ。いろいろなことが起こるのは当然なんです。

 今おっしゃられたことは、要するに、世の中が変わっている以上、日銀は物価を自由には動かせませんということですよ。そうでしょう。あなたが今おっしゃられたのは、要するに、世の中に何にも起こらない、原油価格も全て同じ、為替も全部同じ、コロナも起こらない、戦争も起こらない、そういうことが続かない限り日銀は物価なんて意図的には上げられません、実際、十年間上げられなかったんだからということをおっしゃられたわけです。つまり、はなから無理な政策だったと思うんです。

 ちなみに、先ほど小田原委員への答弁の中で、十五年間デフレだったとおっしゃられました。日銀総裁に対して大変失礼とは存じますが、デフレの定義を一度教えてください。

黒田参考人 デフレの定義というのは、一般的には、物価が持続的に下落する状態を表すということでありまして、一九九八年から二〇一二年、この間の平均的な物価上昇率はずっとマイナスだったんですが、しかも、この十五年間のうち十一年間は物価上昇率がマイナスだったんです。ですから、まさに持続的な物価下落が続くという意味で、デフレだったということは確かだと思います。

 しかも、その後、二〇一三年以降は、先ほど申し上げた原油価格の大幅な下落とかコロナ感染症による世界的な景気の後退とか、そういうことの影響はありましたけれども、なべて見ると物価上昇率はプラスであり、多くの年においてプラスであって、マイナスというのは極めて例外的であり、そういう意味では、デフレでない状況というのがつくり出されたということは確かであります。

米山委員 お手元の資料を見てください。

 マイナスの時期もあるんですよ。でも、これを見て、これはIMFが出している日本のインフレ率の推移なんですけれども、普通に見て、これは持続的に下落していますかね。おおむねゼロ%より上で、下がっているところはあるけれども、上がったり下がったりだと思うんです。それは皆さんの実感としてもそうだと思うんですよ。

 物価は上がってはいないですよ。でも、下がりましたか。いや、下がったときもありますよ、それはバブル崩壊後は下がったし、リーマン・ショック後は下がりましたよ。でも、特段、下がってなんかいないわけですよ。タクシーの運賃だって下がっていないし、ビッグマックだって別に下がっていないわけです。変わらなかった。先ほど小田原委員がおっしゃられた、それは牛丼も、確かに、リーマン・ショックのときには格安セットみたいなものがありましたけれども、全体には別に、非常に下がったとかということはないんです。

 これはチェックしましたけれども、一九八〇年以降の日本がインフレ率マイナスになったのは、一九九五年、九九年、二〇〇〇年、二〇〇一年、二〇〇二年、二〇〇三年、二〇〇四年、二〇〇五年、二〇〇九年、二〇一〇年、二〇一一、一二年とありまして、結局、十五年間あるんですけれども、一九九三年から二〇二二年、直近三十年で見たら、半分はマイナス、でも半分はプラスで、全部平均すると〇・二六%ということで、かつ、マイナスになったのは、一九九一年からのバブル崩壊期、また二〇〇八年からのリーマン・ショック期、また二〇二〇年からのコロナ危機と、はっきり理由がある。

 普通に見て、これはインフレ率がほぼほぼゼロ%で、それこそ総裁がおっしゃられたように、その時々の状況によって、世界的な不景気があったり、世界的な疫病があったり、原油が下がったりすれば下がったりすることもあるけれども、ほぼゼロ%に張りついていた。

 賃金を見ても、それは緩やかに下がっていると言えるのかもしれませんけれども、三ページ、四ページなんかを見ていただきますと、全体的に変わらないんですよ、男女の賃金というのは。二〇〇一年のときに、例えば、三十四万円だったのが、三百三十八万円になって、それは二万円減っているかもしれませんけれども、基本、変わっていないわけです。

 多くの人が言っているのは、賃金が上がらなかったと言っているのであって、下がったと言っているんじゃない。物価が上がらなかったと言って、下がっているんじゃないんです。

 これを日銀総裁がずっとデフレだと。しかも、デフレというのは、今ほどおっしゃられたように、相当長期的に物価が下がっていく状況だと思うんです。一定程度、何かあったら下がって、それが終わったら上がるみたいなのは、デフレと言わないと思うんですけれども。

 このIMFの数字、グラフを見てもなお、この三十年間日本はデフレであったと日銀総裁がおっしゃるということでよろしいですか。

黒田参考人 私は、三十年間デフレだと言った覚えはありません。一九九八年から二〇一二年にかけて、この十五年間がデフレだったと言っているわけです。

 しかも、先ほど申し上げたように、平均的に〇・三%ぐらいのマイナスが続いたわけですけれども、それよりも何よりも、十五年のうち十一年間は物価上昇率がマイナスだった。これはまさに典型的な、物価が継続的に下落するという意味でデフレだった。それはこの十五年間に限られているわけです。

 その後はそういったことはなく、なお、ちなみに、この十五年間はベアもなく、賃金は物価よりももっと下がっていました。その後は実は賃金は上がっているんですが、御承知のように、四百万人ぐらい新規雇用が出て、そのかなりの部分が女性でパートだったということもありますので、そのまま賃金を入れて比較すると間違った指標になるわけですので、正しい指標としては時間当たり賃金、これを見ますと、九八年から二〇一二年にかけてずっと下落していたんです。それが二〇一三年から、ずっと時間当たり賃金は上昇しているんです。しかも、先ほど申し上げたように、四百万人以上の新規の雇用が出たために、雇用者所得は大きく増加しています。

 ですから、二〇一三年以降、デフレでない状況になったということは、経済学者も含めてみんなが認めるところであります。

 それから、その前の十五年がデフレだった、つまり、物価上昇率が平均的にマイナスというだけじゃなくて、十五年のうち十一年マイナスだった、賃金はずっと物価よりも大きく下がっていたということからいって、典型的なデフレだった。それがこの十年間はデフレでない状況になったということは事実であります。

米山委員 そこは見解の相違ということなんでしょうけれども。一九九八年から一二年、今印をつけましたけれども、この部分を取って黒田総裁はデフレだデフレだとおっしゃっているんだと思うんですけれども、しかもそれがアベノミクスによって回復したとおっしゃっていると思うんですけれども、まずもって、九八年からのマイナスは、それはバブル崩壊による、それこそ特殊な事情によるものなわけです。実際問題、二〇〇八年にはちゃんと上がっているわけなんです。

 このとき、次にマイナスになったのは、私、世界の経済をそこまで詳細に把握していませんけれども、これはリーマン・ショックがあったからですよね。世界中で失業率が上がって、恐らく物価も下がったんだと思いますよ。

 その後上がったのは、これは別に日本だけじゃなくて、だんだんだんだん回復していくじゃないですか。これは別に日本だけじゃなくて、ちょっとその資料を持ってこなかったんですけれども、世界中で回復したわけなんです。

 だから、別に、この一定期間の、リーマン・ショックとか、バブル崩壊は世界ではないですからね、だから、日本においては、バブル崩壊からやっと回復したらリーマン・ショックがあったから、あたかも一九九八年から二〇一二年までマイナスが続いているように見えるだけで、全体的に見たら、別段、それは特にデフレなんというものじゃない。それこそ、特殊事情によって一回単に下がって、そして世界経済とともに上がっただけなんじゃないですかねと思います。

 ちなみに、失業率に関しましても、やたらとアベノミクスで雇用は改善したと言いますけれども、リーマン・ショック後のアメリカも同様にというか、アメリカはもっと失業率が高い状態からどんどんと回復していますので、それは全然、異次元の金融緩和のおかげではなくて、世界経済の回復によるものかと思います。

 ちなみに、黒田総裁、先ほどからおっしゃられているのは、二%に上げられなかったのは世界経済のせい、だけれども、雇用が改善したのは私のおかげとおっしゃられていて、それは随分おかしな話で、成功は、失敗が、二%に上げられなかったのが世界経済のせいであるならば、実は失業率に関しても、大部分は世界経済回復のおかげだと思いますよ。別に質問しないので、御反論は結構です。

 ちなみに、なぜか今回の御質問では、次の、既に通告しているので言われなかったのかもしれないんですけれども、今まで黒田総裁はずっと、なぜ上げられなかったか、それはノルムというものが非常に強固であった、人々の間にノルムというものが非常に強固にあったから上げられなかったというふうにお答えをいただいていたと思うんです。なぜか今回は言われないんですけれども。

 ちなみになんですけれども、もういいですよ、じゃ、これから二%の物価安定目標に到達するとしましょう、到達するとして、それって二%でぴたっと終わるんですか。それとも、それこそオーバーシュート型でやっているわけですから、三%や四%に上がっちゃう可能性はあるんですか。一体全体どうなるのか、それを教えてください。

黒田参考人 まず、先ほど申し上げた原油価格の低下とかその他の話は、そういうことに応じて、量的・質的金融緩和を調整して効果を発揮するようにしたということを説明したわけであります。

 そうした下でも経済は回復し、デフレからは、脱却とまで言うかどうかは別として、デフレでない状況をつくり出し、賃金も物価も上昇したということでありましたが、やはり、十五年にわたって続いたデフレの下で、物価や賃金が上がらないことを前提とした考え方や慣行、いわゆるノルムというものが定着して、その転換に時間がかかったということは事実であります。

 そうした下で、ここに来て、女性や高齢者の労働参加率というのは、これ以上高まる可能性は難しい。御承知のように、アメリカよりも、今、女性の労働参加率が高くなった。アメリカだけじゃなくて、フランスやイタリーなどよりも、たしかカナダよりも高かったと思うんですけれども、そういう状況になっているということもありますので、これ以上新たな労働力が出てくるという可能性は薄い。

 さらに、現在、春闘の中で物価を考慮した賃上げの動きも見られているということで、二%の物価安定の目標に近づいてきているということは事実だと思いますが、それで二%になったら、それじゃ、そこでずっと二%でいられるのか。これは、その時々の経済、金融、物価情勢に応じて適切な金融政策を行うことによって、二%程度の物価安定目標を達成するということが必要だと思いますけれども。

 そういう意味で、いきなり三、四%になるとか、そういうことは余り考えられない。というのは、金融の、いわゆるゼロ金利制約の下での金融緩和というのは特有の難しさがありますけれども、そうでない、ゼロ金利制約のないところでの金融引締めというのは、伝統的な金利引上げということは十分可能ですし、欧米もそういうふうにやっていますけれども、そういう意味では、三、四%という高いところに行っちゃうという可能性はないと思いますけれども、かっちり二%をずっとぴったり毎年毎年達成するというのは、それは難しいというふうには思います。

米山委員 まず、黒田総裁、次々と、何か都合が悪くなると話を変えるのは本当にいかがなものかと思うんですけれども、私が先ほど聞いたのは、何で二年で二%実現できなかったんですかということで、それに対してひたすら、いや、原油が上がったからとか、疫病がはやって、コロナがはやったからとか、いろいろ言われたわけです。

 別に、私が聞いたのは、デフレから脱却したかでもないし、雇用が増えたかでもないんです。何で二%増えなかったかに関して、黒田総裁はひたすら、いや、国際情勢のせいです、いろいろなことが起こったからですとおっしゃられたんです。

 それを言われたら、今度は、いやいや、いろいろなことがあったけれども、何か調整してちゃんと雇用が増えましたみたいに言うのは、それは違いますからね。少なくとも、黒田総裁は、二%を何で十年間も、二年と言ったのを五回も失敗したかということに関しては、それは国際情勢のせいです、そういう言い訳をされたので、その事実を変えないでください。

 その上でですけれども、今ほど、二%より上に行くことはありませんと言いましたけれども、それはおかしくないですか。だって、ゼロ%から二%には全然上げられなかったわけですよ。十年間も失敗したわけですよ。しかも、その原因は、いろいろなことがあるから失敗したということですよね。

 それで、じゃ、二%に物価が上がった後に、引き締めれば大丈夫、欧米はできていますって。欧米はできていないですよ。だって、アメリカは一生懸命利上げしているけれども、全然インフレは抑えられていないじゃないですか。今度引き締めるときには何にも起こらないんですか。何か今まで二%上げるときにできなかったのは、いろいろあったから駄目ですと。でも、今度、二%、例えば三%になったときには、必ず大丈夫です、そうおっしゃられているようにしか聞こえないんですけれども、それは都合がよ過ぎると思うんですよ。

 十年間も二%に上げられなかったなら、三%、四%になったときにそれを二%に抑えることもできない。なぜなら、黒田総裁がおっしゃったように、いろいろなことが起こるからです。なぜなら、日銀のモデルというのは十年間もそれをできなかったからです。

 同じように、三%、四%になったときにそれは二%にできないと私は思うんですが、あえてもう一度お答えを伺います。御所見を。

黒田参考人 先ほど来申し上げたとおり、二%の物価安定目標がなかなか達成されなかった中で、量的・質的金融緩和を次々に強化してきたということは申し上げたとおりであります。

 そうした下で、足下の三%台の消費者物価の上昇、これはほとんど全て輸入物価の上昇によるものですので、輸入物価上昇率はもう下がってきています。さらに、政府のエネルギー補助によって更に下がっていくということで、二%を来年度半ばに割る可能性がありますが、今の賃金の上昇を見ますと、その後はリバウンドしていくのではないかというふうに思っております。

 ただ、その下で、金融政策で引締めを行うことについては、先ほど来申し上げたように、ゼロ金利制約の下で緩和を行うということが非常に難しくて、いろいろな工夫をしてきたということはあるんですけれども、ゼロ金利制約のなくなった下での金融引締めというのは、それ自体として非常に困難ということはないというふうに思いますし、我が国においても、そういう場合に、適切な金融引締めによって物価上昇率を抑えるということはできるわけです。

 ちなみに、バブルのときには、すごいインフレになったように言われていますけれども、バブルの最盛期でも物価上昇率は二・四%だったんですね。平均的にも一%台だったんです。

 ですから、金融政策としては、物価が異常に上がるということは、かつて、戦後間もない頃、これは供給制約、それから第一次石油ショックのときに二〇%ぐらいになったことはありますけれども、その後は、金融政策で、物価上昇率が三、四%になる、それを抑えられないでということはなかったんです。

米山委員 黒田総裁の御主張としては、どうやらゼロ%金利の下で物価を上げるのは極めて難しいと。ちなみに、二年でできるはずだと言ったのとそれは矛盾するんですけれども、そうであるならば、今後とも二%に上げるのは極めて難しい状況は変わらないわけですよ。だって、今だってゼロ金利政策をやっているわけですから。

 そうすると、まず、今後一体どうなるんですかだと思います。ゼロ%金利は極めて難しいけれども、物価上昇を抑えるのは極めて簡単だ、絶対大丈夫だと。今うなずいていらっしゃいますから、そうおっしゃられているわけなんですけれども、いや、それもどうなんですかと。

 じゃ、絶対大丈夫ですとおっしゃるなら、それ以上聞いたって、大丈夫ですという答え以外は返ってこないんだと思うんですけれども、今度は、先ほど来、階委員がお話しされたように、そもそも、だって、金融政策で引き締めるのは簡単だと言いますけれども、二%が四%になったときに引き締めるんだったら、金利を二パーとか三パーに上げなきゃいけないわけですよね。

 じゃ、つまり、物価が四%になったら簡単に金利を上げますということでよろしいですね。

黒田参考人 先ほど来申し上げているように、足下で三%になっていますが、これは輸入物価の上昇によるものです。ですから、そういう一時的なものはあり得ると思いますけれども、トレンドとして、趨勢として三、四%になるということは、金融政策で十分コントロールできるというふうに思っております。

米山委員 済みません、じゃ、どうやってコントロールするか教えていただいていいですか。

黒田参考人 それはまさに、ゼロ金利制約の下での非伝統的金融政策でなく、伝統的な短期金利の操作によって十分行うことができるということであります。

米山委員 つまり、利上げをするということですね。

黒田参考人 先ほど来いろいろな議論が出ていましたように、どういったペースでどのようにいわゆる金融の正常化をして金利を引き上げていくかというのは、あくまでも二%の物価安定目標が持続的、安定的に達成される暁に考えるべきことであって、今の時点で、どういうことをやるということは申し上げられません。

 ただ、仮定の話として、物価が持続的に、つまり一時的な要因でなく持続的に三、四%上がるというようなことになった状況を防止できないということはないということであります。

米山委員 いや、黒田総裁、簡単に抑えられるわけでしょう。簡単に抑えられるからには、簡単な方法でないといけないわけですよ。物すごく複雑で物すごく難しい方法で今から何にも分からないようなことだったら、簡単に抑えられないわけです。

 そして、誰もが分かっていることなんですけれども、それは利上げしかないんですよ。ほかの方法で簡単に抑えるなんて、そもそも、日銀というのはそんな複雑なことはできませんから、利上げ以外の手段なんて、さしてないわけです。

 おっしゃられていることは、要するに、三%が続いたら利上げします、そういうことでよろしいですね。

黒田参考人 何回も申し上げますけれども、三、四%になるというふうに思っておりませんし、それから、現在の金融政策を、まず、その二%が達成された暁に正常化していくということになりますと、短期の政策金利をどう調整するか、それから拡大したバランスシートをどのように調整するか、これはテンポといい、どちらが先になるかと、いろいろな形で正常化というものが進んでいくと思いますが、その暁に三、四%のインフレになるかと言われたら、そういうことにはならないし、また、そういうことになりそうになれば、一時的な要因でなくてそういうふうになるということであれば、当然、金融の引締め、金利の引上げを含めて様々な手段で、これは伝統的な手段ですけれども、オペとかその他も含めて、十分対処できるというふうに思っております。

米山委員 ずっとそうおっしゃられるんですけれども、今までの黒田総裁の答弁をまとめさせていただきますと、結局、日銀のそれなりのモデルを持って二年間で二%に上げられると思ったけれども、十年間できなかった、その理由は、少なくとも自分は分かっていない、国際経済のいろいろなことがあったからだと。別に雇用のことを言っていないですよ、失業率のことを言っていないですよ、二%に上げられなかったのは、それはほかのことがあったからだと。つまり、日銀は、二%に上げるなんということを自由にできない。それはもう認められたんだと思うんです。いや、認めていないというのはびっくりなんで、それでずっと首を振り続けるのは本当に驚くんですけれども、そうおっしゃられていますよ。

 そして今度は、三%に上がったときには、いずれにせよ、それはなぜか利上げという言葉を絶対言いませんけれども、三%になったときには、伝統的な金融的な操作をしなきゃいけない。それも認められたわけですよね。

 ちなみに、そうすると、先ほど来いろいろお話があっているように、それは日銀は何とかなるかもしれませんけれども、直ちに日本国の財政も困るし、いろいろな金融機関も困っちゃうわけですよ。だから、事実上、本当に上げられるのか。逆に、今度、それは簡単に制御できる、制御できると言いますけれども、ほかの国では制御できていないわけです。

 しかも、ずっと、今まで黒田総裁は、いや、ノルムがノルムがとおっしゃられたわけですよ。そのノルムを変えるわけですよね。今までゼロ%だと思ったノルムを、皆さんの思い込みを変えて、物価が上がると思うから変わるわけですよね。そうしたら、そのノルムが形成されちゃうじゃないですか。そして、一回、そのノルムが、二%であり三%、ずっとともかく三%で上がるとか思っちゃうわけですよね。そうしたら、そのノルムを今度は変えられなくなるはずだと思うんです。

 何か、自分の都合のいいことは変えられると言い、都合の悪いことはそれは人のせいだと言う、そういうことをずっと言われて、正直、説明として整合性が取れないことをやられておられたというのが、私は今までの日銀の在り方であったと思います。

 これはちょっと繰り返しになってしまいますけれども、本当に、黒田総裁、もし金利が上がり過ぎてしまったら、だって、今まで十年間、大量にお金をばらまいているわけですよ、一回上がり出してしまったら、一体全体、どうやってそれを回収するのか。そして、一体全体、人々のノルムが三%、四%になったらどうするのか。利上げをしたら日本の財政はもつのかということに対してどうお考えなのか、もう一度御回答をお願いします。

黒田参考人 まず、すぐに三、四%になるという可能性はゼロだと思います。いずれにせよ、将来、二%が持続的、安定的に達成された後に、何らかの理由でそういうことが生じるということがあれば、当然、金融政策で十分対応できるということであります。

 ちなみに、賃金も物価も上がらないというノルムは十五年間のデフレの下で醸成されてきたんですが、それが少しずつ緩んできたところへもってきて、今はこのノルムが少しずつほどけてきている。ただ、それは、長期の予想物価上昇率が二%ぐらいにアンカーされるということなんですね。だから、別に、突然三%、四%にアンカーされるという話ではないんですね。だから、すぐに何か、国内的な事情、一時的な事情じゃなくて、三、四%のインフレになるということはあり得ないし、そういうものに対しては、伝統的な金融政策で十分対応できる。

 ちなみに、我が国の金融機関は国債、社債等も持っておりますけれども、その状況は、金融庁の方が御説明されたように、金利が上がればその分の評価損というのが出てくることは事実ですけれども、それが金融機関の金融仲介機能を阻害するようなことになるという可能性はないということであります。

 それから、日本銀行の財務については、日本銀行は確かに膨大な国債を持っていますが、これは先ほど申し上げたように、正常化の過程で少しずつ金利の高い国債に換わっていく。それとともに、当然ですけれども、欧米がやっているように、バランスシートも緩やかに調整していくということになると思いますので、仮に、起こらないと思いますけれども、三、四%のインフレがそういった一時的要因でなくて起こって、それが定着しそうだということになれば、それは当然、日本銀行が、金融政策、金融の引締めによってそういうことは十分防止できるというふうに思っております。

米山委員 最後、一言だけ言わせていただきますけれども、現在のインフレ率は、何せもうCPI三・三%、コアコアCPI三・五%ですので、本当に、過度な楽観、根拠なき楽観、そして不合理な説明だと思います。

 以上です。

塚田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塚田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も一般質疑の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 ちょっと順番を入れ替えまして、まず最初に、予備費についてお伺いをいたします。

 先ほど末松委員からも質問ございましたが、岸田内閣は、昨日三月二十八日に、二〇二二年度予算の予備費から二兆二千二百二十六億円の支出を閣議決定ということでございます。二〇二二年度は今日を含めて残り三日、これで予備費を執行するということです。しかも、二〇二三年度、来年度の予算が可決、成立するその日に予備費の執行でございます。

 そもそも予備費とは、憲法八十七条、それから財政法二十四条で、「予見し難い予算の不足に充てるため、」ということになっております。本当に必要な予算であれば、二〇二三年度の予算に盛り込んでおけばよかったものです。正々堂々とこの予算審議をやって、そして、正々堂々と執行すればよかったわけでございます。

 そこで、ちょっと大臣にお伺いをいたします。

 今般の年度末の予備費の駆け込み執行というのは、憲法八十三条の財政民主主義にも反するし、憲法八十七条の予備費の規定にも反するのではないでしょうか。このような予備費の濫用をやっていては、財政の健全化はいつまでたっても果たせないのではないですか。そもそも、これはどこが予見し難いのか、御説明をお願いいたします。

鈴木国務大臣 予備費の使用に当たりましては、憲法及び財政法の規定に従いまして、臨機応変かつ機動的な対応を行うことで国民の命と暮らしを守る観点から適切に判断してきているところであります。

 今般使用を決定をいたしましたコロナ、物価予備費につきましても、現に足下で国民生活に大きな影響を及ぼしているエネルギー、食料品を中心とした物価高騰に対して、必要性や緊急性に鑑みまして、予備費を活用して迅速に対応することが不可欠であると判断したものでございまして、決して年度末だからという理由で使ったわけではございません。

 そして、予備費につきましては、予見し難い事柄ということでありますが、確かに物価高騰等というものは予見できるわけでありますが、予見し難いというのは、事柄は予見ができても、実際に幾らぐらい予算として必要になってくるのか、額の面について予見ができないもの、これも含まれると解されております。

櫻井委員 いや、金額は予見できないと言ったら、それこそもう財務省は要らないですよね。主計局は要らないですよね。しかも、大体、今の物価高騰というのは、今よりもう少し、数か月前、去年の秋から冬にかけての方がもっとひどかったわけですよね。一ドルが百五十円になっていたのが十月ですから、その頃の方がもっと大変だったわけですよ。

 しかも、プロパンガスが今回入っていますけれども、プロパンガスの対策は、当時、我々は入れるべきだと。そもそも、都市ガスよりプロパンガスの方が高いのに、安い方の都市ガスについては支援をして、高い方のプロパンガスは支援しないということになっていておかしいじゃないですかと、そういうことも指摘をしていたわけですよ。だから、そのときにやっていればまだ話は分かるんですけれども、それを今頃になってやるって、おかしいじゃないですか。

 しかも、予備費の執行はそうかもしれないですけれども、これは地方自治体が実際やるわけですよね。地方自治体がやるのは六月の定例会でやって、まあ、専決処分とかをやっちゃうところもあるかもしれませんけれども、まだまだ先の話になるんじゃないですか、実務上は。

 だから、そういうふうに考えると、一体どこが予見し難いのか、どこが臨機応変なのか、全く分からないですよ。(発言する者あり)だから、こういう使い方をしているからいつまでたっても財政再建が進まないということで、これは、ちょっとやじもありましたけれども、自民党の統一地方選挙対策にこんな国民からお預かりしている大事な大事なお金を、税金を選挙対策に使っちゃっている、こういうことなんじゃないかと思うんですけれども、こんなことをやっていたら、もう国民の税金を託すに値しないと思うんですが、いかがですか。

鈴木国務大臣 予備費の活用につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。当初予算の予算編成時点で物価高が続くことはあらかじめ予測できたわけでございますが、予備費は予見し難い予算の不足に充てるための万全の備えとして計上しているものですが、憲法第八十七条や財政法第二十四条における予見し難いとは、支出を要する事柄自体が予見し難い場合だけでなく、事柄は予見し得るが、その金額が予見し難い場合も含まれると解されておるわけでありまして、今回、まさにそういうことでございます。

 そして、LPガスにつきましてももっと早い段階でやるべきだった、こういう御指摘でございますけれども、LPガス支援につきましても、昨年の十一月、令和四年度二次補正予算におきまして、人件費、配送費の効率化に向けた支援を行うことによってLPガスに対する対応もしてきたところでございまして、さらには、自治体において、昨年九月に措置されました重点交付金を活用して、地域ごとの利用状況や小売事業者の体制に応じた値引き支援や、LPガス料金に利用可能な地域商品券の発行といった取組が行われているものでございます。今回は、そうした取組に対する追加的なものとして行うということでございます。

 それから、何か統一地方選挙を前にしたタイミングでということもございましたが、先ほど御質問の中にも、令和二年度、令和三年度も、こうした年度末に予備費を使ったことがあって、常態化しているのではないかという御指摘が末松先生からもあったところでございまして、今年に限りこうなってしまっているわけではありません。

櫻井委員 予備費を、年度末駆け込み執行が常態化しているということを、いや、今年に限った話ではないと。ますます問題で、そうすると、この後の法案としては財源確保法が法案審議ということなんですけれども、そんなんだったら、財源なんか幾らあっても足りないじゃないですか。

 ちょっと、この話をやっていると前に進めなくなってしまいますので、通告の順番に戻りまして、物価とそれから賃金の議論に移りたいと思います。

 日本銀行の金融政策について議論する前提として、今日は、賃金水準について、まず厚生労働省に確認をしたいと思います。厚生労働省から審議官に来ていただいておりますので、まずお尋ねをいたしますが、今春の春闘では高水準の賃上げ回答が続いているような、そんな感じの報道が出ております。連合によりますと、三月二十四日の二次集計分で三・七六%のアップということにはなっております。一方で、総務省が発表しました消費者物価指数の物価上昇、一月は四・三%、二月は三・三%、半年以上三%以上の物価上昇が続いているということでございます。また、厚生労働省が発表しております毎月勤労統計で実質賃金、最新のものは一月分ですけれども、これはマイナス四・一%ということになっております。

 厚生労働省にお尋ねをしたいんですが、物価上昇を上回る賃上げになるかどうか、つまり、毎月勤労統計の実質賃金のところがプラスになるかどうか、政府の見通しはどのようになっておりますでしょうか。

田中政府参考人 まず、春闘の現下の状況でございますが、先生御指摘ありましたとおり、連合の第二回の回答の集計結果によりますと、加重平均での月例賃金、賃上げ額一万一千五百五十四円、賃上げ率三・七六%ということで、昨年、またコロナ禍前の二〇一九年の同時期の集計と比較して、大きく上回っているところでございます。また、六月末時点の最終集計との比較になりますが、一九九三年の三・九〇%と同水準となっておりまして、三十年ぶりの高水準と今のところなっているというふうに承知をしております。

 大企業を中心に、労働組合からの要求に対する満額の回答ですとか、ベースアップを含めて昨年を大幅に上回る回答が出ておりますので、様々な産業で賃上げの力強い動きが出ているというようなことについては前向きに捉えております。

 政府といたしましては、目下の物価高に対する最大の処方箋、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現をするというようなことと考えておりますので、もちろん、その賃上げ自体、各企業の支払い能力を踏まえながら、個別に労使が交渉して、合意した上で決定されるべきものではありますけれども、そうした中での、物価も踏まえた最大限の賃上げを期待したいと考えております。

櫻井委員 いや、ちょっと、質問で答えてもらっていないんですけれども、実質賃金がプラスになるのかどうなのか。つまり、賃金が上がっても、それ以上に物価が上がっている状況だったら、それは足りないわけですよ。賃金と、それから物価、ちゃんと、物価上昇を上回る賃金になりそうかどうか、その点を教えてください。

塚田委員長 田中総括審議官、質問の趣旨に沿って答弁してください。

田中政府参考人 重ねてになりますが、賃金自体、各企業の支払い能力を踏まえながら、個別に決定をされるものでございますので、その動向についてなかなか申し上げることは難しゅうございますけれども、政府としては、総理も物価高に負けない賃上げというようなことをおっしゃっております。そういうことを踏まえて、個別の労使が最大限の賃上げをしていただけるように期待したいというふうに考えております。

櫻井委員 要するに、分からないということですよね。それはそうですよね、これからまだまだ交渉が続くわけですし。今、大手が先に回答しますけれども、これから中小企業の回答が出てくるわけですから、どういうふうになるのかはちょっとまだ分からないということがお答えだと思います。

 あともう一つお尋ねをしたいのは、この賃上げの報道の中で、例えば三・七六%とかという報道もありますけれども、この中身なんですよね。ベースアップと定期昇給、合わせた数字が報道されている。

 ただ、実質賃金、世の中全体の給与総額を考えたときに、ベースアップが上がれば、これは増えます。でも、定期昇給の分というのは、皆さんちょっとずつ、一年ずつ、働いて経験を積んだ分だけ給料が上がっていくとしても、一番ベテランの方が定年退職でいらっしゃらなくなる。一番高い人がいなくなるわけですから、必ずしも賃金総額を増やすということにはつながらないわけでございます。

 やはり、物価上昇と定期昇給の合計ではなくて、ベースアップに着目するべき。そうでないと、物価上昇を上回る賃金になるかどうか、実質賃金がプラスになるかどうか分からないと思うんですけれども、この点、この理屈をちょっと説明いただけますでしょうか。

田中政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどの三・七六%も、賃金全体の賃上げ率というようなことでございまして、そこの中には、賃金の改善分ですとか、ベースアップ分ですとか、定期昇給分ですとか、そういったようなものが含まれております。

 これを実質賃金との関係で見ますと、平均的に見まして、労働者一人一人というふうなミクロで考えた場合には、こういうようなことも含まれて、名目の賃金が、物価に負けないように、定期昇給も含めて上昇するというようなことで、一人一人のミクロで見た場合は賃上げにつながってくるというふうに思います。

 一方で、マクロで見た場合に、ベースアップ分で物価上昇をカバーするというようなことが重要になってくるというふうには考えておりますし、そういうようなことから、経団連の経労委報告の中でも、ベースアップの目的、役割を再確認しながら、前向きに検討することが望まれるというような発言もありますので、そういうことも踏まえて労使交渉が行われていくべきものだというふうに考えております。

櫻井委員 いろいろ詳しく御説明いただきましたけれども、要するに、ベースアップの分とそれから物価を比べないと、これはざっくりですけれども、そうしないと本当に実質賃金がプラスになるのかどうかは分からないよ、こういうことだと思います。

 そうした議論を踏まえて、日本銀行の黒田総裁に本日来ていただいておりますので、質問に移らせていただきます。

 これまで、何度も物価と賃金の関係について質問させていただきました。物価が上がる上がらない、これはやはり、賃金との関係において考えていかなければいけない。そのことは黒田総裁も、これまで、そのように御発言されていたというふうに受け止めております。

 ただ、この物価と賃金の関係について、何度も御答弁いただいているんですが、例えば、資料一におつけしましたとおり、これは、随分前、平成二十五年三月の参議院での財政金融委員会での答弁でございますが、「当然、物価が上がるときには賃金も上がっていくし、あるいは賃金が上がるときには物価も上がる」、このように答弁をいただいております。

 ただ、現状においては、物価は上がれど賃金は上がっていない。だから、毎月勤労統計の実質賃金マイナス四・一%、こういうことになっているわけです。

 日本の賃金の話については、これまでも何度も委員会でも議論させていただいておりますが、資料二にありますとおり、ほかの国はおおむね上がっているのに日本は全然上がっていないという状況が続いているというのが資料二に示されているとおりでございますし、この実質賃金の上昇率の推移を見ますと、資料三にありますとおり、主要国の中で日本だけが下がっているという姿が明らかでございます。

 また、これも以前お示しをしておりますが、資料四を御覧いただきますと、これは私が勝手に作ったものではなくて、昨年の政府の経済財政諮問会議の内閣府が提出した資料でございます。この二十五年間で、中央値、所得分布を見ると、グラフが全体的に左に寄っている、全体的に貧しくなっているということ、百万円以上貧しくなっているという姿が見て取れます。

 じゃ、賃金を上げるためにはどうするのかという話の中で、いや、労働生産性が上がらないと賃金を増やせないんですよ、こういうことがよく言われます。資料五を御覧いただきますと、実質賃金はほとんど上がっていない。労働生産性は上がっているんですよ。労働生産性は上がっているのに、実質賃金は全然上がっていない、こういう姿が見えてまいります。

 あと、また賃金の話で、企業の収益が上がらないと賃金を増やせない、ない袖は振れないですよ、そういう話もございます。資料六、御覧いただきますと、これは、企業は、この間、二十五年間を見ますと、経常利益は三倍に増えています。三倍以上増えています。ところが、従業員の給与を見ますと、下がっています。九七%ということで、ちょっとだけ下がっているんですね。

 じゃ、その経常利益、一体どこに行ったのかといいますと、まず、配当金、これは七倍増えている。七倍以上に増えている。内部留保も三倍増えているということで、株主資本主義というか、株主至上主義にどんどんなってしまっているという姿が見て取れます。格差がどんどん拡大しているという姿かと思います。

 こうした状況を踏まえまして、黒田総裁に改めてお尋ねをいたしますけれども、物価上昇に賃金上昇が全く追いついていないということから、これはやはり、アベノミクス、間違いだったんじゃないのかと改めて考えるわけですが、そのことについて御答弁をお願いいたします。

黒田参考人 物価と賃金の関係につきましては、いわゆるフィリップス・カーブの考え方に基づいて説明しておりまして、景気の改善に伴って需給ギャップや労働需給が改善していけば、それに応じて物価や賃金には上昇圧力が加わるというメカニズムを基本にしております。この点、これまでの大規模な金融緩和は、経済、物価の押し上げ効果を発揮しておりまして、その下で、労働需給はタイト化し、賃金は緩やかに上昇しております。

 なお、平均賃金というのは、御承知のように、パートの人の賃金も含めてしておりますので、パートの方は、いわゆる常用労働者のように一日八時間働くというのではなくて、例えば一日二時間とか三時間とかになっていますので、パートの人自身の賃金は、実は、今でも三%ぐらい上がっているんですが、レベルが二分の一とか三分の一、それを足してそのまま平均しますと賃金が上がっていないように見えるんですが、実は、時間当たり賃金で見ますと、九八年から二〇一二年までずっと下がっていたんですけれども、二〇一三年からずっと時間当たり賃金は上昇しているんです。

 それからさらに、平均労働時間は減っていますけれども、四百万人以上の雇用が拡大したということで、いわゆる雇用者所得も増加しています。

 だから、そういうことも考えなくちゃいけないということもあるんですが、おっしゃるとおり、足下で、さっき申し上げた名目賃金、これは時間当たり賃金じゃないんですけれども、それが、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響で、消費者物価の前年比が、プラスが、足下でも三%台ですけれども、そういうことによっていわゆる実質賃金がマイナスになっていることは事実ですけれども、私どもの考えでは、労働需給の引き締まり、それから、先ほど厚生労働省の方が説明されたように、この春闘でも、物価上昇を踏まえた賃金交渉が行われているということもあって、賃金の上昇率も高まっておりますので、足下での消費者物価の前年比のプラス幅が縮小していくために、今後、委員の指摘されている実質賃金でもマイナス幅は減っていくと思いますし、先ほど申し上げたように、時間当たり賃金あるいは雇用者所得というところで見ると、プラスに転化していくということだと思います。

櫻井委員 いろいろなお話をされましたけれども、さっき、米山議員への答弁の中で、物価上昇の目標二%を、二年どころか九年ぐらい達成できずに、最後の一年は輸入物価インフレで達成したと言えば達成したことになるんですけれども、なぜ二年で二%、達成できなかったのかという話の中で、二〇一〇年代の半ばに原油価格が下がったから、一バレル百ドルから三十ドルぐらいまでがっと下がったということで、だから物価は上がらなかったんですという御答弁でした。

 物価と賃金に相関関係があるから賃金も上がらなかったんだということなのかもしれませんけれども、ちょっとそれ、もし原油のことが大きな理由だとおっしゃるんだったら、話は逆じゃないのかなと私は考えるんです。

 すなわち、原油価格の下落ということは、輸入代金で支払っている分が安くなるわけですから、その分、日本の富が国内に残るわけですよね。今は逆に、エネルギーの値段が上がって、いっぱい出ていっちゃっているから、我々は輸入物価インフレで非常に苦しんでいるわけなんですけれども、原油価格の下落は、日本経済にとっては非常にプラスなはずで、それでコストが下がった分、本来だったら賃金に回ってもよさそうなものだったのに、賃金に十分に回らなかったというのが大きな問題なんじゃないですか、こういうことなんですよ。

 ですから、やはり、金融政策で賃金が上がるとか、物価が上がれば賃金も上がるという考え方自体に間違いがあったのではないのか。賃金が上がれば物価は上がることはあるでしょうけれども、物価が上がったからといって必ずしも賃金が上がるわけではない。だから、そこは相関関係は、因果関係は逆なんじゃないですかということをさんざん申し上げてきました。

 さらに、今年の春闘についていろいろ、景気のいい、威勢のいい回答が出てきているやに報道もされておりますけれども、ただ、今後、後半戦は、中小の企業、特に内需型の企業の回答が多くなってくるということになりますと、資料七におつけしておりますけれども、やはり価格転嫁が非常にできないということなんですよね。

 これは去年の中小企業白書でございますけれども、ここで、ちょっと字がぼやけていて恐縮ではあるんですけれども、この右側のところが価格転嫁できなかったということなんです。調達の原材料費は上がっているけれども、販売の方には価格転嫁できなかったということになりますと、企業としては収益が圧迫される。まさに、ない袖は振れないという状況になっていくわけなんです。

 こういう状況からすると、やはり賃上げは難しくなってくるんじゃないんですか。結局、十年たっても、物価とそれから賃金上昇の好循環といいますか、そういうことは全然達成できなかった、達成できないままに退任をされる、こういうことでよろしいでしょうか。

黒田参考人 先ほどから申し上げているとおり、この十年間の大幅な金融緩和ということは、日本経済がデフレでない状況になったということもありますし、企業収益が増えたというだけではなくて、時間当たり賃金も上昇しており、雇用者所得も増えて、特に新規の雇用が四百万人以上も増えたということで、経済に非常によい影響を与えたことは確かだと思いますが、御指摘のような、いわゆる平均賃金というか、そういうものについて十分な上昇がなかった、それから物価も一%弱ぐらいで二%に到達しなかったということはそのとおりでありまして、その点では、従来から申し上げているとおり、十五年のデフレ期に醸成された、物価、賃金が上がらないという慣行というか習慣というかノルムというか、そういうものがなかなか変更するのが難しかったということだと思います。

 ただ、足下では、先ほど来申し上げているとおり、一方で、春闘でもかなり物価上昇を踏まえた賃金交渉が行われておりますし、他方で、一番大きい要素としては、四百万人の雇用が増えたという場合に、女性の雇用が中心だったわけですけれども、女性の就業率は今や七〇%を超えており、G7の中でも非常に高い方で、米国やフランスなどよりもかなり高くなっています。これは、二〇一二年は女性の就業率というのは六〇%ぐらいだったんですが、今は七〇%まで来ていまして、これ以上、欧米諸国よりももっと高いところまでいくという可能性は薄いと思いますので、労働供給が出てくる可能性も薄くなっていますので、こうした中で景気が回復した。

 そういう中で、やはり、賃金の上昇が、いわば賃金上昇圧力が高まっているということは事実でありますので、その意味では、今すぐではないにしても、二%の物価安定目標を持続的、安定的に達成されるためには賃金の上昇を前提とした物価上昇じゃなければならないんですけれども、それに近づきつつあるということは言えると思います。

櫻井委員 黒田総裁と議論させていただくのもこれで最後になろうかと思います。

 私自身は、昔、国際協力銀行で働いていたときに、黒田総裁がアジア開発銀行、その前は国際金融局長もされていた、財務官もされていたというときに、あのときは、私は非常に憧れのまなざしで見ておったんですが、ちょっとこの日本銀行に来られてからのことについては非常に残念だなというふうに思っております。

 ともかく、十年間お疲れさまでございました。

 続きまして、ちょっと同じことの話、今度は氷見野副総裁にお尋ねをいたします。

 所信を二月二十四日の議院運営委員会で聴取をいたし、そして私も質問させていただきました。この中で、賃上げを伴う形で物価安定、こういうことを言及されております。これについて、これはどうやって実現するのか、黒田総裁、十年頑張ってできなかったことです。どういうふうにされますか。

氷見野参考人 お答えいたします。

 確かに、物価安定の目標の実現という場合には、幅広い企業の経営もよくなり、雇用、賃金も増加する中で、物価も緩やかに上昇していく、そういう好循環の形成を目指していくということだというふうに思います。

 そのために何をするかという御質問だったと思いますけれども、現在の環境や見通しの下では、金融緩和を継続して我が国経済をしっかり支えることで、企業が賃上げをできる環境を整えることが重要であるというふうに考えております。

 政府の方でも様々な施策に取り組まれているわけでありますし、また、経済界でも価格転嫁を円滑に進めるためのパートナーシップ構築宣言などの取組も進められているわけでありますので、日本銀行の金融緩和と、政府の施策、民間の取組が相まって、構造的に賃金が上昇する状況を生んでいく、そういう姿を目指したいというふうに考えております。

櫻井委員 議院運営委員会での私の質問に対して、御答弁の中で、「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」という論文集を読んだけれども、どれもそれなりのように思えるけれども、決定打はどれかよく分からなかったというような御答弁をされていました。また、就任したら日銀のエコノミストとよく議論をするということも話をされておりました。

 是非議論いただいて、賃金が上がるような経済につくっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ちょっともう時間も大分なくなってきておりますし、あと、大勢、参考人に来ていただいておりますので、ミャンマーの支援について議論を移させていただきます。

 日本銀行のお二人はもうこれで終わりですので、ありがとうございました。

塚田委員長 黒田総裁、氷見野副総裁は御退席いただいて結構です。

櫻井委員 ミャンマーについての支援なんですが、これは資料九と資料十におつけしましたとおり、世界銀行とアジア開発銀行は、ミャンマーに対する貸付実行は停止をしております。ディスバースメントは止めております。止まったままだというふうに承知をしておるんですけれども、時間がないのでちょっと局長の答弁は割愛させていただいて。

 そういう中で、我が国は、後で出てきますバゴー橋への円借款など、既にもう再開をしてしまっている状況です。クーデターを起こした軍事政権の状況は何ら改善されていないというふうに思うんですが、我が国のミャンマー向けの開発協力の方針、これはどういうふうに考えているんでしょうか。

吉川大臣政務官 お答えいたします。

 昨今のミャンマー情勢に鑑み、国軍が主導する体制との間で新規のODAは行わないということといたしております。同時に、ミャンマー国民に直接裨益する、国際機関あるいはNGOなどを経由いたしました人道的支援、こちらにつきましては、引き続き行っていく所存でございます。

櫻井委員 いや、世界銀行、アジア開発銀行は、既に貸付契約をしているものについても、貸付実行、お金は出さないと言っているんですよ。

 一旦、円借款も、事実上、治安の問題もあって止まっていたんですけれども、例えば先ほど申し上げたバゴー橋の建設事業については、これは去年の四月に再開をして、しかも、いろいろな工事も進んで、お金も出しているという状況です。

 今日は木原官房副長官にも来ていただいておりますので、ちょっとお尋ねをしますが、資料十一から十三をおつけしましたとおり、内閣審議官がこの前後にミャンマーに出張されています。一月と三月と、それから四月から五月にかけて、二週間ずつ三回も内閣官房の審議官が出張。これは結構長い期間、一回の出張にしても長いなと思うんですけれども、それを三回もやっているわけなんですね。

 これは一体どんな成果があったのか、ちょっと副長官、是非御報告をお願いいたします。

木原内閣官房副長官 お答えを申し上げます。

 今、櫻井先生から御指摘いただきましたとおり、安藤内閣審議官が、まさに御指摘いただいたとおりの二〇二二年一月、三月及び四月から五月の三回、ミャンマーに出張をさせていただいている、このように承知をしております。

 内閣官房におきましては、インド太平洋地域の経済開発に資する調査、これを実施してきておりまして、その一環といたしまして、ミャンマーにおける日本企業の現況に関する現地事情等の把握のため出張をした、このようなことでございます。

 安藤審議官におかれては、出張を通じて、現地の雇用状況、経済状況等につきまして、日本企業関係者や大使館、JICA、ジェトロ関係者、現地有識者等との意見交換や視察を行った、このように承知しております。

 どのような成果か、こういうことでございましたが、これらの調査任務を通じまして、目的でありました現地の雇用状況や経済状況について把握することができたもの、このように承知をしてございます。

櫻井委員 この出張概要、資料十一から十三をつけましたけれども、書いてあるこの目的についてはほぼ一緒でございます。出張の目的には、経済開発の協力については言及がございますが、軍事クーデター、住民虐殺、人権弾圧、言論統制などは一切言及がございません。しかも、内閣審議官のこの出張の前後、二〇二二年四月に、ミャンマー向け円借款のバゴー橋建設事業、工事再開をしております。

 岸田総理は、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視と繰り返し発言していますが、こうした実際の政策の執行を見ますと、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を踏みにじっているように見えますし、そうした軍事政権に協力する姿というのは、まさに民主主義、人権、それから法の支配といった普遍的価値を無視するということのように見えますが、こういった方針で岸田内閣はミャンマー政策を進められておられる、こういうことでよろしいんでしょうか。

木原内閣官房副長官 まず、岸田政権として、民主主義、人権、法の支配というものを重視をしているという、御指摘をいただいたとおりでございます。

 その上で、ODAの在り方等々については、これは担当の省庁にお伺いいただくのが筋かというふうに思いますので、私から申し上げることは控えたいと思います。

 先ほども申し上げましたとおり、御質問いただいております安藤審議官につきましては、まさに、インド太平洋地域の経済開発に資する調査ということを実施する、その中で、今回はミャンマーにおける日本企業の現況に関する現地事情等の把握をするために行ったということでございまして、先ほども申し上げましたとおり、まさに現地の雇用状況や経済状況、これを把握するということを目的に、その成果を達したということでございまして、我々の、人権や法の支配や民主主義を重視するということとの間では何のそごもない、このように考えているところでございます。

櫻井委員 ちょっと、言っていることとやっていることは全然違うんじゃないのかなというふうにも思います。

 副長官への質問はもうこれで終わりですので、退席をいただいて大丈夫です。

塚田委員長 木原副長官、御退席いただいて結構です。

櫻井委員 バゴー橋の建設事業の再開についてなんですけれども、これは再開をして、しかも問題なのは、バゴー橋の建設事業のサブコントラクターにMEC、ミャンマー・エコノミック・コーポレーションが入っていて、これはミャンマー軍の軍系企業であるということでアメリカから経済制裁を受けている。そのことは外務省も認識しているということで、二月の予算委員会でも御答弁いただいているとおりです。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、ちょっと幾つか飛ばさせていただいて、こういうようなことがあって、しかも、JICAは最初、二年前ですけれども、私、この委員会で質問させていただいたときには、軍関係企業は入っていないと言っていたのに、実は入っていましたということになったんですね。

 結局のところ、サブコントラクターで入っていると分からないということなんです。そういうことが今後ないようにということで、当時、私も、責任あるサプライチェーン等の人権遵守のガイドラインというのが去年もうできているわけですし、それ以前からそういった、ビジネスと人権というのを外務省も、政府を挙げて言っているわけですから、ちゃんとやってくださいねということをお願いをしておりました。

 これは二年もたっているので、JICAにお尋ねをいたしますが、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドラインを策定されているわけですから、JICAにおいては、円借款事業におけるサブコントラクターも含めたサプライチェーンを管理する体制を整えたというふうに期待をしているんですが、現状、いかがでしょうか。

中澤参考人 お答え申し上げます。

 JICAの資金協力におきましては、原則、主契約者について確認を行っております。サブコントラクターあるいはサプライヤーについて明文規定はございませんけれども、原則として、主契約者がサブコン契約等の管理を行うこととなってございます。

 先ほど委員から言及のありました、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のガイドラインについてでございますけれども、このガイドラインについては私どもも承知しておりますし、私どもの環境社会配慮ガイドラインの中でも人権等をうたっておりますので、政府の方とも相談をしつつ、今後、適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。

櫻井委員 今、今後適切にということで、要するに、まだやっていないということですよね。

 経済産業省からも副大臣に来ていただいておりますけれども、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン、これは独立行政法人も当然対象になっているんですよね。ですから、JICAも当然このガイドラインを遵守しなければいけない。

 これは対応が遅いんじゃないんですか。経済産業省は一生懸命ガイドラインを作ったわけですから、作ったのに守られていなかったら、やはりおかしいじゃないですか。いかがですか。

中谷副大臣 サプライチェーンにおける人権尊重の重要性が高まる中、我が国も支持する、国連でございますけれども、ビジネスと人権に関する指導原則というのが、二〇一一年、策定されました。これを受けまして、国家の人権保護義務だけではなくて、企業の人権尊重についてもしっかりと規定をしているというところであります。

 政府においては、これを受けまして、昨年の九月にガイドラインを策定したところでありますが、企業がしっかりと自社のサプライチェーンリスクを把握し、総点検するよう、ガイドラインの遵守を求めているところであります。

 ガイドラインは、JICAを含め独立行政法人も対象としているところでございます。独立行政法人においても、これをしっかりと活用していただき、人権尊重の取組が進展することを期待をしているというところであります。

 また、JICAのことになりますが、これは、各省庁ごと、所管事業者に対して、人権の取組について確認を徹底するというふうに承知をしているところでございまして、JICAについては、所管する外務省が適切に対応するというふうに考えているところであります。

櫻井委員 持ち時間が終わってしまいましたので、今日の質問はこれまでとさせていただきます。

 せっかく来ていただいた国土交通政務官、申し訳ございません。またの機会に、JOINのミャンマーでの事業について議論させていただきたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 本日、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、先ほど来より質疑がありますが、昨日閣議決定いたしました予備費についてお伺いしたいと思います。

 この予備費、毎年非常に巨額な額が積み上がって、そして昨日は、新型コロナウイルス、物価高騰対策の予備費から二兆二千二百二十六億円の支出が行われることが決定したということでございます。

 我が党はこれまで、国会のチェックが及ばない巨額の予備費を積み上げることに対して、いかがなものかというような意見を表明してまいりました。また、経済対策においても、我が党は、家計消費の下支えとして、消費税の減税であったり、低所得者層の社会保険料の減免、再エネ賦課金の一時徴収停止による電気料値下げであったり、事業者の維持、活性化として、中小企業、輸入業者の社会保険料の事業者負担分の半減、中小企業の法人税率の引下げなど、徴収して配るというより、そもそも徴収しないというようなことを我々は訴えてきたところでございます。

 この中身についても、予備費で支出する場合は、我々、何も意見が言えないというような状況でございます。まずは、今回閣議決定された経緯、そして内容について、御報告をお願いいたします。

吉岡政府参考人 お答えいたします。

 今回の物価高の主因がエネルギー、食料品であることを踏まえまして、政府はこれまで、ガソリン、小麦等の価格高騰対策など、エネルギー、食料品に的を絞った対策を講じるとともに、低所得者の方々に重点的な支援策を講じてまいりました。

 こうした中、総合経済対策、補正予算に盛り込んだ電気・ガス料金の負担軽減策によりまして、二月の消費者物価指数が一月より一%ポイント上昇幅が縮小するなど、対策の効果が表れてきているところでございます。

 他方で、これまでの原材料価格の上昇や円安の影響による値上げが続いております。また、電気料金の今後の見通しに対して、国民や事業者の不安の声が届いておるところでございます。

 このため、引き続き、物価高の主要因であるエネルギー、食料品に的を絞った対策を講じるとともに、負担感の大きい低所得者の方々の生活をしっかりと下支えするための対策を講じていくことが必要であり、追加策を講じることとしたところでございます。

 具体的には、エネルギーにつきましては、電力の規制料金の改定申請への厳格かつ丁寧な審査や、再エネ賦課金の改定による負担軽減、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金の増額による特別高圧契約者向けの支援やLPガス利用者への支援等、地域の実情に応じたきめ細やかな支援の一層の強化、それから食料品につきましては、飼料価格高騰対策や、輸入小麦の売渡価格の激変緩和措置、低所得の方々への支援といたしましては、住民税非課税世帯への一世帯当たり三万円を目安とする支援、これに加えまして、一人親世帯など低所得の子育て世帯に対して、児童一人当たり五万円の給付金をプッシュ型で支給すること等の追加策を講じることといたしております。

 物価高から国民生活や事業活動を守り抜くため、総合経済対策、補正予算の執行を更に加速するとともに、昨日、コロナ対策と併せまして、二・二兆円のコロナ、物価予備費を措置したところでございまして、今回の追加策について、早急に実行に移してまいりたいと考えております。

住吉委員 これも末松委員また櫻井委員からもございましたが、今月末から本格的に統一地方選挙が全国各地で始まります。知事選挙や政令市長選挙は既に始まっておりますが。この統一地方選挙を間近に控え、しかも二〇二二年度が終わる目前に、地方を看板に掲げて交付金を配る対策を政府が実施する。その原資として、昨年末の補正予算で巨額を積み上げた予備費の残りを何兆円もの規模で取り崩すことでございます。いろいろなニュースを見ていますと、統一地方選挙を意識したばらまきだという意見もございます。

 まず、大臣に確認させていただきたいんですが、これは統一地方選挙のためのばらまきではないという理解でよろしいですね。

鈴木国務大臣 先ほども答弁を申し上げましたが、年度末間際に駆け込みのようにやるのはよろしくないという御指摘もいただきました。そのことの当否は別といたしまして、現実を、実態を話しますと、令和二年度、令和三年度におきましても三月の年度末にやっているわけでありまして、何か、今年、統一地方選挙があるからそのタイミングでということはございません。

住吉委員 そういうことなんだと思いますし、私もそういう今のお言葉を信じております。

 一方で、やはり、この巨額の予備費を閣議決定で使えてしまう、これは、時期によってはいろいろな見方がされるわけでございます。例えばですけれども、内閣支持率が下がったときに、その回復のために使える。しかも、巨額を積み増しているので、そういうふうに思われても仕方ない。制度自体がそういうふうになっている。だからこそ、我々、この巨額の予備費というのはおかしいんじゃないかと言ってきたところでもございます。この経緯についてはしっかりと国民に説明していく必要があるだろうということは指摘させていただきます。

 ところで、コロナ以降、巨額の予備費を積むというのが慣例化しております。これも何度も何度も、この委員会であったり、また予算委員会でも財務大臣に申し上げておりますが、予備費というのは、具体的な使い道は予算成立時に決まっておらず、使い道の事前議決が義務づけられている一般の政策経費とは異なり、国会の監視が及びにくく、財政民主主義に反している。これも数多くの議員からも指摘があるところでございます。

 この巨額の予備費を積むということ、これは臨時的な措置という理解でよろしいんでしょうか。また、今後もこのように予備費を巨額に積み上げる、計上し続けるのか、御見解をお願いいたします。

鈴木国務大臣 予備費の使途につきましては、昭和二十九年に行われました閣議決定において、使途が限定をされております。そこに、予備費でなければ対応できない緊急的なものについては使えるということになっておりまして、それに基づいて対応をしているところでございます。

 ただ、最近予備費が大きくなっているのは、住吉先生からも御指摘のとおり、コロナのパンデミックが起こった、そしてウクライナ侵略等によりまして物価高騰が起こったということで、いずれもなかなか先の状況が読めないこと、特にもコロナの問題につきましては、今まで経験がなかったことであります。そうしたことで、予見し難い状況でありますので、それに万全を期す、備えるという意味で予備費がここ二、三年大きくなっているということ、それは言えるんだと思います。

住吉委員 ということは、コロナが収束して、また、ウクライナの問題、こういったことが収束すれば、当然、通常の、コロナ前は大体五千億円とか、そういったふうに戻っていくという答弁と理解いたしました。

 続いて、昨日、二〇二三年度予算、これが参議院本会議で可決、成立いたしました。この一般会計総額は過去最大の百十四兆三千八百十二億円となりました。

 一方で、ここ最近は、年末に巨額の補正予算が計上されております。これも何度も指摘させていただきましたが、補正予算で緩めて当初予算で絞るような予算編成が二〇二〇年からずっと取られているという印象です。

 財政法は、特に緊要となった経費の支出について補正予算の編成を認めておりますが、この補正予算というのは、短期間で編成する。当初予算と比べて厳格な査定が難しく、これまでのコロナ対策でも、本来の目的から逸脱した事業が散見されております。

 過去最大の、今回成立した百十四兆三千八百十二億円ですが、昨年末に成立した補正予算は、令和五年度で概算要求している項目も数多くあり、必要な措置をしたとおっしゃっておりますが、予算の先食いが常態化しているという印象を拭えません。予算編成のモラルが崩壊していると私も指摘してまいりましたし、そのように考えておりますが、副大臣の見解をお願いいたします。

井上副大臣 お答えいたします。

 補正予算では、その時々の経済社会情勢等を踏まえて、緊要性の高い政策課題に対応するために必要な経費等を措置してきたと考えております。

 委員の御指摘の、災害のことはちょっと触れられませんでしたけれども、災害対策のほかにも、近年、新型コロナ対策や物価高騰等に対して累次の補正予算等により対応してまいりましたけれども、これは、国民の命を、暮らしを守るために必要な財政出動をちゅうちょなく行わなければいけないという考え方の下で、足下の状況に照らして早急に取り組むべき課題に対応するために予算を計上しており、それぞれの、財政法二十九条が定める緊要性の要件を満たすものとして適切に対応してきたというふうに考えております。

 その上で、財政規律の問題につきまして申し上げれば、これまでの新型コロナの対応や累次の補正予算の編成等により、より一層厳しさを増していることは事実であります。新型コロナへの対応という例外からの脱却、平時への移行を図りながら、歳出歳入の両面の改革の取組を続けることで、財政規律をしっかりと意識しながら、責任ある経済財政運営を進めていくことが重要だというふうに考えております。

住吉委員 平時への移行ということなんですが、今のやり方というのは、当然、緊急事態的な対応だと思っております。当初予算で厳しくしている形にして、補正で緩い形にしていると指摘させていただきましたが、コロナ禍においてこのような形が続いており、毎年このような形が取られているわけでございます。

 このような財政運営、これは先ほど申したように、コロナ禍でこういうふうに緊急的に取られているという形なんですが、本来であれば本予算で措置すべきようなことを補正予算で先食いして措置している、又は対応しているというような状況がずっと、もう三年近く続いております。

 ある意味、これをずっと続けていくと、なかなか元に戻すのは難しいんじゃないかなというふうに考えるわけですが、通常に戻していくことは可能なのでしょうか。お答えください。

井上副大臣 お答えいたします。

 先ほどの、新型コロナや物価高騰を乗り越えて経済をしっかり立て直す、そして財政健全化に向けて取り組んでいくという、従来からの、経済あっての財政という考え方には変わりはありません。

 その上で、累次の補正予算の編成等により財政状況が過去に例を見ないほど厳しさを増していることは、先ほども言いましたとおり、事実であります。財政は国の信頼の礎でありまして、市場や国際社会における中長期的な財政の自律可能性への信認が失われることのないように、新型コロナ対応という例外からの脱却、平時への移行を図りながら、歳出歳入の両面の改革を、取組を続けてまいりまして、経済再生と財政健全化の両立を図っていかなければならないというふうに考えております。

住吉委員 次に、ちょっと財源の考え方についてもお聞きしたいと思います。

 我々日本維新の会は、政策的に、消費税の減税を提案してきたわけでございますが、そのときはいつも、社会保障費のための財源で、削減はできないと何度もお答えになっております。それだけ聞くと、もっともらしい答弁に聞こえますが、昨今のこのようなずさんな予算編成、ちょっと言い方はきついかもしれませんが、このように言わせてもらいます、ずさんな予算編成を見ると、説得力に欠けるわけでございます。

 予算編成の手法は、予備費や基金を積み増し、本来本予算で措置しないといけないような事業や施策を補正で措置する、しかも、大部分が国債の発行によって措置しているわけでございます。

 今国会でも話題の一つになっております防衛費の増額についても、足りない分は増税ということが言われているわけですが、これだけずさんな財政運営がなされている状況でなぜ捻出できないのか、不思議でなりません。毎年のように莫大な予備費を計上して、基金を更に積み立てている状況です。防衛費のための基金を積めばいいじゃないかと思ってしまうわけでございます。

 この議論については後日していくとして、防衛費や子供、子育て支援、異次元の少子化対策など、財源などの議論はもちろん重要ですが、最初に安定財源もどきみたいなものを確保した事業については、その後はずさんな運営がなされているわけでございます。そのような印象を受けるわけでございます。

 増え続ける社会保障費、子育て、教育予算の拡充、防衛費の増額など、この財源はこれこれ、この財源はこれとひもづけるのではなくて、歳入と歳出のバランスを考えていくことが重要だと思いますが、大臣の財源に対する御見解をお願いいたします。

鈴木国務大臣 お答えする前に、先ほど、昭和二十九年の予備費の使用についての閣議決定について申し上げましたが、正確には、国会開会中の予備費の使用については、昭和二十九年の閣議決定により、予備費を使用できる経費について限定しているところというのが正しいものでありまして、つけ加えさせていただきたいと思います。

 そして、ただいまの御質問でありますけれども、予算編成に当たりましては、従来より、骨太の方針等に基づきまして財政規律の方針を定めつつ、真に必要な財政需要に対応するため、恒久的な歳出を大規模に増加させる場合には、これに対応した安定的な財源を確保することで、個別に対応してきております。

 ただし、一般論として申し上げれば、予算制度としては、歳出と歳入の全てを個別にひもづけているわけではなく、住吉先生からも御指摘があったとおり、歳出と歳入のバランスに着目した財政運営を行っているところであります。

 具体的には、基本方針二〇二二等にあるとおり、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化、すなわち、二〇二五年度に政策的経費に係る歳出を税収等による歳入により賄える状態とすることを目指しております。令和五年度予算もこうした方針に沿って編成し、歳出改革の取組を継続すること等により、一般会計のプライマリーバランスを昨年度当初予算と比較して二・三兆円改善するものとしたところでございます。

住吉委員 そういうことなんだと思います。財源を、これはこれに使っているというようなひもづけではなくて、歳出と歳入のバランスを見ていくところが重要だと思っております。

 最後の質問に移りたいんですが、これも何度も質問しておりますが、消費税の減税について、改めて財務大臣のお考えを伺いたいと思います。

 今回の予備費を通じた対策については、住民非課税世帯に向けての給付も含まれております。この住民非課税世帯には、多額の資産を持つ方も含まれているわけです。

 国民の生活も困窮している。帝国データバンクによりますと、国内の食品や飲料メーカー百九十五社を対象に二月末時点での値上げの動きをまとめたところによりますと、三月に値上げされる食品や飲料、また、再値上げや価格を変えずに内容量を減らす実質値上げを含めて、三千四百四十二品目となっております。さらに、四月は、ウィンナー製品のほか、牛乳やバター、ヨーグルト製品などで値上げが相次ぎ、品目の数は四千八百九十二品目に上ります。

 いろいろな調査を見ますと、値上げというのは、一気に上げるのではなくて、段階を追って値上げしていきますので、今後も値上げラッシュというのは続いていくだろうと予想されております。さらに、電気料金や、鳥インフルエンザの流行や、飼料の高止まりによる卵価格の高騰など、不確実性は高まるばかりです。賃金は物価上昇ほど上がらず、国民の生活は相対的に苦しくなるのが今の日本の現状でございます。何が言いたいかといいますと、困っているのは住民非課税世帯だけではございません。

 日本維新の会は、物価高騰に係る総合経済対策として、家計消費の下支えとして、消費税の減税、これを訴えてまいりました。さらに、経済学的には、消費税を減税すると名目経済成長率は上昇し、上昇すると税収も増える。つまり、消費税を減税すると、税収が増えるということになります。

 消費税の減税をし、広くあまねく国民の負担を軽減すべきだと考えますが、大臣のお考えをお願いいたします。

鈴木国務大臣 足下の物価高騰に対しまして、三月二十二日に、追加の物価高対策として、電気・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金の増額でありますとか、低所得の子育て世帯への給付などを行うことを決定をいたしました。こうした支援措置によりまして、一律の減税とは異なり、物価高に苦しむ世帯等に的を絞った、また地方の実情にも即した、柔軟できめ細やかな対応を取ることが可能となる、そのように考えているところでございます。

 そして、消費税につきましては、いつも同じ答弁で恐縮でございますが、急速な高齢化等に伴い、社会保障給付費が大きく増加する中におきまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源として位置づけられている消費税でございますので、減税を行うことは考えていないところでございます。

住吉委員 予想した答弁でございました。

 制度の中ではそうなんでしょうけれども、例えば減税に対して大臣は政策的にどのように考えているのか、最後、御答弁をまたお願いしたいと思います。例えば、給付というのは、もらえる人とそうでない人、不公平感もありますし、また、使った人が恩恵を受ける減税の方が需要喚起の効果が高いと我々考えて、このように提言しております。もちろん、消費税が社会保障費の重要な財源、これはおっしゃるとおりなんですが、減税の効果について大臣はどのように考えているのか、最後、お願いします。

鈴木国務大臣 物価高騰対策につきましては、政策の選択であると思います。そういう意味におきまして、給付などを行うこうした措置の方が、先ほど申し上げましたとおり、的を絞ったピンポイントの支援ができるという考えを我々政府は取っているところでございます。

 そしてまた、減税に対する、全体の経済に対する効果ということでございますが、御承知のような今の厳しい財政状況の中で、こうした減税ということにつきましては、慎重に対応しなければならない事柄である、そのように思っております。

住吉委員 私が聞きたかったのは、減税の効果、もちろん、減税することによって財源が減ってしまいますけれども、それによる、経済を回していく需要喚起にもつながっていくと我々は考えているんですが、そういったところについてはどう思うのかという質問の趣旨でございました。もし、最後、あれば御答弁をお願いします。

鈴木国務大臣 かつて、レーガン大統領が大幅な減税をして、そして経済の刺激策を取ったというのは一つの端的な一例である、そういうふうに思うところでございますが、今、我が国において具体的なそうした経済政策を取るということ、それは俎上にのっていないところである、そういうふうに理解をいたしております。

住吉委員 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 皆様、お疲れさまでございます。日本維新の会、岬麻紀でございます。

 さて、本日は、デジタル給与についてと休眠預金について質問通告をさせていただいておりますが、主に休眠預金の方を中心に質問をさせていただきます。御了承ください。

 それでは、通告の順番を変えまして、休眠預金から質問をさせていただきます。

 休眠預金の活用についてということで、皆様方に配付資料をお配りしております。一枚目、御覧くださいませ。

 休眠預金等活用制度というものがございます。民間の創意工夫により、社会の諸課題の解決を図るものということで、超党派による休眠預金活用推進議員連盟におきまして検討を行い、二〇一六年十二月に休眠預金等活用法が成立しております。二〇一八年一月一日から施行されています。この休眠預金等活用法をもちまして、十年間取引がなかった預金について、預金保険機構に管理が引き継がれる仕組みとなっています。この図にもありますように、移管されるということでございます。

 内閣総理大臣に指定をされました、預金保険機構から指定活用団体、一般財団法人日本民間公益活動連携機構、JANPIAというところが唯一、全国で一者、一つの事業がございますが、ここで事業の計画を策定しまして、預金保険機構から交付を受けた休眠預金等交付金を元にしまして、資金分配団体を選定、そして助成、さらに、資金分配団体によりまして助成を受けた実行団体という、これは三層構造になりますが、国及び地方公共団体が対応するということがなかなか困難で社会の諸課題が解決ができないものを解決をしていくことを目的とした、民間の団体が行う公益に資する活動ということでございます。

 そこで、概要を説明しましたが、質問です。この休眠預金の現状について教えていただきたいのですが、預金保険機構へ毎年どれくらいの額が休眠預金として引き継がれているのでしょうか。まず教えてください。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 制度創設以降の各年度の休眠預金発生額につきましては、二〇一九年度、千四百五十七億円、二〇二〇年度、千四百八億円、二〇二一年度、千三百七十四億円でございます。

 また、各年度におきます預金者への支払い額でございますが、二〇一九年度、四十五億円、二〇二〇年度、百八十八億円、二〇二一年度、二百五十二億円というふうになってございます。

岬委員 簡潔にお答えいただきまして、ありがとうございます。

 今のですと、二〇一九年度は千四百五十億円、そして二〇二〇年度は千四百八億円、二〇二一年度は千三百七億円でしょうか、いずれにしても、大体千四百、千三百億円ほどが休眠預金ということで引き継がれているということでございます。これは、ぱっと聞くとかなり大きな額だなというふうに思う方も多いのではないでしょうか。これが預金保険機構へと毎年のように引き継がれているということが大前提でございます。

 では、なぜそんなに多くの金額が休眠預金となるのかという部分を考えてみたいと思いますが、第一経済研究所によりますと、休眠預金の活用の現状と海外事例というレポートがございます。そこには、日本の口座数というのは、諸外国と比較をしましてかなり多いんですね。全体では十二億口座もあるということですから、人口が一億人と考えても、一人頭、ざっと十を超える口座を持っているのではなかろうかということが分かるわけです。休眠預金の預金者には、その存在を完全に失念しているケースも少なくないとあります。その中で、メインバンクとしてよく使っている口座というのは恐らく限られていまして、長年の間そのままになっている、それが幾らかは残っているかもしれない、だけれども、それがもう記憶にもないという通帳は、いろいろなところに、皆さんのところにも眠っているのではないでしょうか。

 そこで、質問です。

 やはり、十年間という長期にわたりまして取引がない、引き出しをしたり預金をしたりすることがないという預金口座というのは、少なくとも十年間、そのまま、ある意味放置をされているわけですから、そうした口座があったことすら忘れていたりとか、また、その金額を考えても、そんなに大金がそこに残されているということが忘れられるということは考えにくいのではないかと思われます。そうすると、少額、若しくは、お札では、キャッシュカードで下ろしづらいという、硬貨な部分ですね、少額、九百九十九円以下と想定されるわけです。

 この点、休眠預金の内訳、一口座当たり、大体一件当たりどれくらいの額が眠っているのかと想定されているんでしょうか。教えてください。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと手元に詳細、分析したデータがございませんけれども、先生おっしゃったように、かなりの部分が少額な預金かなというふうには存じてございます。

 今後、データを精査いたしまして、先生の方にも御説明に伺えればというふうに考えてございます。

岬委員 ありがとうございます。

 先日のレクですと、一万円以下が九割ぐらいということで、ほぼほぼ一万円以下であろうということを教えていただいておりますが、いずれにしても、その預金がないと家庭での暮らしが立ち行かないという額が残っているとは思いづらいということです。

 では、次に、先ほども御答弁いただいているかもしれませんが、預金保険機構へ引き継がれたものの、預金者の支払い請求によって支払いをしていく、これは必要なことですよね。これは、毎年どれくらいの支払い請求があるんでしょう。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 この休眠預金制度につきましては、二〇一九年度以来の創設でございますが、創設以降生じました休眠預金に対する支払い金額に対する請求につきましては、二〇一九年度、四十五億円、二〇二〇年度、百八十八億円、二〇二一年度、二百五十二億円となってございます。

岬委員 ありがとうございます。

 そうすると、徐々に増えているということだと思います。

 こちらは、最初に御説明をしました一枚目の資料でも分かるように、三層構造での社会の諸課題を解決する支援をするということなんですね。資金分配団体を公募をして、採択をして、選定していくという流れがあると思われます。

 今、指定活用団体となっているのはJANPIAですけれども、そこの資料を見てみますと、二〇二一年度、通常枠の申請事業数、六十一事業、採択事業数は二十一事業、これは採択率に換算しますと三四・四%でございます。さらに、二〇二一年度は、コロナ枠というものがありまして、こちらの申請事業数は三十一事業、採択事業数は十五事業、そして採択率は四八・三%です。

 まだ厳密に言えば二〇二二年度の中にありますが、この二〇二二年度、通常枠は、申請事業数、七十一事業、そして採択事業数は二十一事業、採択率は二九・五%と、かなり低くなりました。そして、二〇二二年度の、コロナ・物価高枠というものがございます。申請事業数は三十二事業、そして採択事業数は十五事業、そして採択率、四六・八%でございました。

 この採択率を見てみますと、二九・五%と著しく低いものもありますが、大体四割ほどかなという感じがいたします。これはもちろん、予算の制約もありますし、この数字が大きい小さいでよしあしを測れるものではないとは承知をしておりますが、ここで質問です。

 少し気になったのが、申請事業数、通常枠、コロナ枠を合わせても、二〇二一年度で九十二事業、二〇二二年度で百三事業でございます。これは、どこかの県だけではなく、全国でございますので、全国から公募を集めているという割にはかなり少ないのかなというのが私の印象なんですが、この点、内閣府はどのような御見解でいらっしゃいますか。

小川政府参考人 お答えをいたします。

 休眠預金の課題、特に、申請数に関しての御質問でございました。

 休眠預金活用制度におきましては、その趣旨にふさわしい事業、これを選んで、選定して、的確に支援をする、こうしたことを目的としておりまして、事業の公募に際して、一定の要件、それから手続を定めて、その下での公正な審査を行って選定する、このような仕組みにしているところでございます。

 一方で、こうした仕組みに関しては、事業の申請に際して多大な事務作業を要するですとか、あるいはその目的に比して過剰な手続が求められている、こういったような声も聞かれたところでございます。

 こうしたことから、先生御指摘ありましたJANPIAにおきまして業務改善プロジェクトチームを設置しまして、業務改善策でありますとか、事業負担、事務負担の軽減等を図って、それによって応募を容易にしよう、こうした取組を進めてきたところでございます。

 なお、現在、休眠預金活用推進議員連盟におきまして、この法律の見直しの検討が進められておるというふうに承知しております。その中では、この制度の担い手となる団体、こうした団体がより多く育成されるように、これらを支援する仕組みを創設する、こうしたことが予定されていると承知をしております。

 先ほど申し述べました業務改善プロジェクトチームの取組、それから今後見込まれる支援の仕組み、こうしたものが相まって、活用の促進、申請の増加、こうしたものを期待したい、このように考えておるところでございます。

岬委員 ありがとうございます。大変分かりやすい御答弁をいただきました。

 まさに私が今指摘をしようと思っておりましたのが、資金分配団体の採択に至らないという、これが、かなりハードルが高いからだという意見が来ております。その理由としましては、やはり、採択の要件が厳し過ぎるであるとか、応募書類が非常に多くて複雑である、煩雑であるというような声が課題に挙げられているということを私の方も認識をしております。

 それで、もう少し踏み込んで、不採択となった事業者に対してきちんと理由が告げられているのか、また、不採択となった事業者の方が次にまたトライができるように、手を挙げていただけるようなサポートであるとかアドバイスであるとか改善提案ということなどが行われているんでしょうか。その辺りはいかがでしょう。

小川政府参考人 お答えをいたします。

 不採択となった事案に対する対応でございますが、この制度の発足以降、応募を複数回にするということにしてございます。このため、初回において採用されなかった、採択されなかったものについては、その事業のいわば磨き上げをJANPIAとして支援をする、このようなことによって、複数回の、後次、次の回においてその事業が採択されるように支援をする、こうした取組を進めておりまして、これは年度の途中から始めた取組でございますが、最近になってその功を奏してきているところがあろうか、このように受け止めておるところでございます。

岬委員 ありがとうございます。

 複数回チャレンジできるようにアドバイスをしたり、理由をお伝えいただいているということで、更なるブラッシュアップをしていただこうという試みがされているということでございますね。

 そうなると、今、不採択となった事業者が不採択となった理由についてアドバイスが受けられるということですけれども、不採択となった理由が具体的にどんなものがあるのか、改善提案としてはどういうことをされたのか、そして、再度手を挙げていただけている状況なのか、そして、再度手を挙げたところが採択をされているのか、その辺りは実際いかがでしょう。もう少し具体的に教えてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 事案に対する対応は様々でございますが、一例を申し述べますと、例えば、採択に当たって、基準といたしましては、この事業が将来的に自立する、すなわち、助成なしでも独り立ちしていける事業かどうかでありますとか、事業手法に革新性があるかといったようなことを基準として設けておるところでございます。

 そうした観点から見て、初回の応募においてはそれに到達することがなかった、いま一つ及ばなかったというような場合に、類似の事例あるいは先進的な事例を紹介することによってその事業をブラッシュアップしていただいて採択に至る、こういった形が二度目、三度目の採択に至るケースの最も典型的なものであろう、このように考えておるところでございます。

岬委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいた将来的な自立という部分は非常に重要だなと思います。これからの社会、持続可能という言葉がよく使われておりますけれども、まさに、日本においても、持続可能な社会を実現するために、例えば、高齢者の皆様のフレイル予防であったりとか、介護予防であるとか、健康寿命をいかに延ばしていける事業なのかとか、さらには、未来を担う子供たちのための貧困対策であるとか教育という分野にも是非力を入れていただけたらなと考える次第でございます。

 また、予算の制約によって採択数を絞り込まなくてはいけないという状況もあるのかなと考えていますけれども、毎年、引き継いだ休眠預金全てが活用されているのではないですよね。毎年積み上がっていく状況を考慮すると、もう少し予算の枠を広げて、積極的に使える状況をつくっていくのもいいのではないかなと考えます。

 そこで、休眠預金の活動していくところをやっていただいたからには、今お話しいただいたように、将来の自立も含めて、成果があったのか、効果検証をする必要が当然あると思います。

 そこで、二〇二〇年七月の資金分配団体・実行団体に向けての評価指針というものがありました。ここには、休眠預金等の活用に当たっては、最終的に社会の諸課題の解決を図るという成果を目に見える形で生み出すことが求められている、このため、この成果、達成度合いを重視した社会インパクト評価を実施することで、成果の可視化に取り組むことが求められているとございます。

 そこで、質問です。

 社会インパクト評価の実施によりまして、成果が可視化をされて、国民の理解を得ることにつながっているんでしょうか。そして、指定活用団体JANPIAにおきまして、資金分配団体、実行団体による評価実施について、評価ツールの提供であるとか、専門家への相談の機会の提供といった様々な支援に取り組んでいるということはお聞きしておりますが、これまでの休眠預金による活動の成果、いかがでしょうか。

小川政府参考人 お答えをいたします。

 まず、前半の評価についてでございます。

 御指摘のとおり、休眠預金活用制度は、あらかじめその事業内容が特定されているわけではありません。応募によって、こうした事業をやりたい、これでこうした成果が出るはずだ、こういうことも含めて御提案をいただきまして、これを採択をするということになっております。

 したがいまして、その事業の実施においては、その実施後における評価、これを明らかにするということが必須なものでございます。また、その方法についても、それぞれの事業に即した方法を自らお考えをいただくということが重要になるものでございます。

 そうした点からも、インパクト評価を実施をし、これを可視化し、国民の皆様、預金者の皆様にこれを見えるようにすることが特に求められる、こうした類いの施策であろうというふうに考えております。

 このため、JANPIAにおきましても、こうした評価の仕組みですとか、評価の基準、あるいは、評価の、今御指摘ありましたツールですね、こうしたことにつきまして、必ずしも現場のNPO等々の団体の方々は詳しくないところもございます、こうした方々に、そうしたノウハウの提供でありますとか、あるいは研修、講習の場の提供、こうしたことを行っておるところでございます。

 評価の結果でございますが、この事業が、制度が実質動き始めたのが二〇一九年度からでございます。二〇一九年度に交付した事業が最長三か年の事業でございますので、ちょうど三か年が終わって、これから成果の評価が始まる、こういう段階になってございますので、いましばらくしますと、今申し上げましたような仕組みに基づく、成果、これらを取りまとめて、可視化をし、皆様に御提供する機会が参る、このような段階に至っている、このような状況でございます。

岬委員 ありがとうございます。

 そうですね、もちろん、継続的な事業を展開する中での評価が必要なので、三か年の計画というのは非常に重要な部分であると思います。

 さて、この休眠預金の活用制度の一番大事なところというのは、国民の皆様の眠っている預金、いわゆる休眠預金というものを活用するというところなんですね。これというのは、知らず知らずのうちに、国民の皆様方のお持ちになっている預金が、生活に支障することなく、さらに、改めて寄附を求めるものではなくて、負担もない中で、国民が、知らず知らず社会課題の解決に向けての一助になっているんだ、こういうことを御理解いただくと更にこの事業は進んでいく可能性がありますし、そして、一千四百億という大きなお金が動くということで、一家庭の一つの口座には数百円若しくは数千円に満たないものしか残っていないにしても、これを集めるとそれだけの力になるというところが非常に意義のあるものではないかと思います。

 そのためには、周知や広報の必要性も考えていくべきではないかと思うんですね。休眠預金活用制度、認知度がまだまだ低いと思われています。

 政府としまして、二〇二三年二月二十七日に、二〇二三年度休眠預金等交付金活用推進基本計画というものがございました。これは、本制度の意義や内容、採択された事業内容やその進捗状況及びシンボルマーク等について十分な周知広報を行うということ、さらには、地方公共団体や金融機関など関係団体への周知を更に進めるということ、さらに、指定活用団体は、資金分配団体や民間公益活動を行う団体及びそれらになり得る団体など支援の担い手との対話を進めるとともに、先行事例の周知、普及を図るとされています。

 ここで、質問です。

 どれだけ休眠預金を活用した活動が実際に社会の課題を解決して社会に貢献しているのか。これはまだまだ国民の皆様には知られていない状況だと思われますが、今後、国民の皆さんにどのように知っていただいて、さらに、どのように事業を増やしていこうか、また申請数を増やしていこうかとお考えでしょうか。

小川政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘のとおり、この休眠預金活用制度は、これまで有効に活用されてこなかった、銀行の雑益、収入として処理されてきた休眠預金を社会のために活用する、こうした考え方で議員立法によってつくられた制度でございます。

 このサイクルを預金者さらには国民の皆様に御理解をいただくということが、この制度への信頼、あるいはこの制度の発展につながるもの、このように私どもも受け止めておるところでございます。

 その意味では、この活動の認知度を高める、そのための広報を行うということの重要性、ここは御指摘のとおりでございます。今引用いただきましたけれども、来年度の事業に係る基本計画におきましても、この点に特に意を用いて、御紹介いただきましたようなところをJANPIAに対する指針としてお示しをした、このような状況になっておるところでございます。

 具体的な取組でございますけれども、指定活用団体であるJANPIAにおきまして、休眠預金の活用事業サイトを立ち上げまして、活動内容の動画を掲載する、また、これらが、事業内容ですとか地域ですとか様々なタグで検索して、閲覧ができるようにする、このようなサイトを作っております。

 それから、子供食堂等々、課題別のラウンドテーブルをつくりまして、同じ問題意識を持つ方々のラウンドテーブル、意見交換の場を設ける。あるいは、今後の展望に関するシンポジウムを開催する。こうしたようなリアルな場を用いて皆様にお知らせをする、参画を求めるといったことも行っておるところでございます。

 また、御紹介いただきましたシンボルマークを作りまして、これを各種の事業、広報媒体、チラシ等に掲載をすることによりまして、そのシンボルマークと休眠預金活用事業の意識づけ、リンクづけ、これをより強めるということも進めたいというふうに考えておるところでございます。

 加えまして、来年度からは、各団体、これまでの活用されてきた団体の事業に関する事業につきまして、事業別、地域別、縦串、横串で閲覧可能にするために、JANPIAのシステム改修を予定しております。そのための予算も計上しておるところでございまして、これらを通じて更なる情報発信の強化を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。

岬委員 ありがとうございます。

 好事例を御紹介いただいたりですとか、地方自治体や金融機関、NPOなどとも連携を深めて、活用したいと思う方が是非活用できる環境づくりというものも必要かと思います。

 では、お時間、間もなくですのでまとめとなりますが、現在、この休眠預金等活用法の改正案が議論されています。

 この改正案、これまでの資金を渡すという、助成がメインで行われていましたが、これからは、更に踏み込んで、情報や人材の支援をしていくという伴走支援が検討されているとお聞きしております。出資や投資も可能になるということですが、ここで、ノウハウや人材の育成も含めて、支援が非常に大切となってくると思います。

 休眠預金を活用した事業、まだまだ始まったばかりですが、その活動の成果、そして、今後、伴走支援もどのようにしていくとよろしいか、どんな展望を持ってこの事業を進めていかれるのか、教えてください。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 休眠預金等活用制度の創設時には資金的支援に主眼が置かれていましたが、これまでの制度運用を通じ、現場では、非資金的支援、すなわち人材や情報面による伴走支援がソーシャルセクターの担い手としての育成や能力強化にとって不可欠との認識が浸透してまいりました。

 本制度の見直しを検討してきた休眠預金活用推進議員連盟におきましては、非資金的支援を制度上明確に位置づけるとともに、専ら非資金的支援を行う活動支援団体を創設するなど、現場に寄り添った支援を行うための法律改正を予定しているものと承知してございます。

 政府におきましては、法案の動向を注視しつつ、現行の制度の運用においても伴走支援の充実にしっかりと取り組んでまいります。

岬委員 ありがとうございます。

 どうかどうか、実際の現場に即した伴走支援ができるように、是非ともこの事業、休眠預金という、日本ではなかなか、寄附という文化がありませんけれども、皆さんの負担なく、そして、眠っているお金、財源が活用ができて、社会の課題解決ができるすばらしい取組だと思いますので、是非積極的に進めていただきたくお願い申し上げます。

 本日はありがとうございました。

塚田委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、物価の見通しについて質問させていただきます。

 二月の物価指数は三・一%と、一月の四・二%から減速しました。しかし、これは見せかけの減速であり、日経新聞は、政府のガソリン補助等の抑制策がなければ四・三%と加速していたと分析しています。また、コアコアで見ても三・二%から三・五%に加速しております。

 パウエルFRB議長は、当初、インフレは一時的と判断し、引締めが遅れたことを非難されています。

 財務省は、今後、日本の物価上昇率の伸びが縮小されていくと分析されているようですが、その内部の誰かの分析を盲目的に信じているように聞こえます。正確に言うと、信じているというよりも、信じたいのかもしれません。インフレの制御に四苦八苦し、金融不安を引き起こしつつある欧米と同じになる可能性はないと言えるのでしょうか。インフレは本当に鎮静化するのでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 今後の物価見通し、あるいはその方向感について御質問がございました。

 今後の物価見通しにつきましては、政府経済見通しにおける令和五年度の消費者物価上昇率について申し上げますと、エネルギー、食料価格の上昇が見込まれるものの、総合経済対策による電気・ガス料金、燃料油価格の抑制効果などもあって、一・七%程度と、令和四年度の見込み三・〇%程度より上昇幅は縮小するものと見込まれております。令和五年度の物価の上昇幅は令和四年度の上昇幅よりかは縮小するという見方、これは民間エコノミストの見方にもおおむね沿ったものであると考えております。

 今般の物価高騰については、ウクライナ情勢等による国際的な原材料価格の上昇に加え、円安などの影響によるものと考えておりますが、引き続き警戒感を持って注視をしてまいりたいと考えているところであります。

藤巻委員 そういう見通しがあるのは分かるんですけれども、そこを盲目的に信じることなく、違う可能性、違う場合が起きたというのもちょっと頭に入れておいてほしいなというふうには思っております。

 日銀が様々な金融緩和政策を取って物価を押し上げようとする一方、政府は物価対策をして物価を押し下げようとするのは、ある意味で支離滅裂な部分もあるかと思います。本来は、物価対策の前面に立つのは中央銀行であるというのがオーソドックスな金融論の教えだとは思うんですけれども、物価対策について、政府と日銀の役割、どうお考えになられているのでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほどもちょっと触れましたけれども、足下の物価高、これは主に日常生活に密接な食料品あるいはエネルギー分野を始めとするコストプッシュ型の価格上昇によるものであると認識をいたしております。

 こうした認識に基づきまして、政府は、これまでの累次の物価高騰対策におきまして、物価高騰の影響によって厳しい状況にある方々や、エネルギー、食料品等の個別の品目に焦点を当てて、きめ細かく対応をしているところでございます。

 これに対しまして、日銀の黒田総裁は、賃金の上昇を伴う形で二%の物価安定目標を持続的、安定的に実現する必要があるとの認識の下、金融緩和政策というのは今の時点では継続すると述べられていると承知をしております。

 このように、政府の対策は、日常生活に密接なエネルギー、食料品等の価格高騰による影響にきめ細かく対応しようとするものであるのに対しまして、日本銀行の金融政策は、賃金上昇を伴う形で持続的、安定的な物価安定目標の実現を目指すものであり、相矛盾するものとは考えておりません。

藤巻委員 おっしゃっていることは、ある意味でよく分かるんですけれども、一方で、やはり逆方向の政策を打っているなという印象は拭えない部分はあるのかなというふうに考えております。

 続きまして、欧米での流動性リスクに関する質問の方に移らさせていただきます。

 二〇〇八年のリーマン・ショック時に、リーマン・ブラザーズを倒産させたのは、リーマンが決済機能を持たない証券会社であるからという見方が当時は主流でございました。銀行でも証券でも、経営者のモラルハザードを防ぐためには、不適切な経営をしていたところは倒産もやむを得ない面もあるかとは思います。一方、銀行は、決済機能を有しているので、下手をすると連鎖倒産の可能性があります。モラルハザードのリスクよりも連鎖倒産のリスクの方が高いと考えられる場合には政府が介入して助ける、今回のSVBのケースはこのケースだと考えられます。

 仮に、仮になんですけれども、日本の金融機関がSVBと同じように経営危機に陥ったとしたら、日本政府は救済するのでしょうか。その場合、連鎖倒産リスク、つまり、金融システムに多大な影響を与える場合と、その金融機関一社に影響が限定的な場合とに分けて考えるのでしょうか。現時点でいいので、現時点における日本政府の方針をお聞かせください。

鈴木国務大臣 まず、日本の金融機関でありますけれども、総じて充実した流動性や資本を有しておりまして、金融システムは総体として安定している、そういうふうに評価をしております。

 その上で、仮にシリコンバレーバンクのような破綻が生じた場合の対応についての御質問でありますけれども、我が国では、日本銀行に流動性供給機能があることに加えまして、これまでの金融危機等の経験を踏まえ、充実した預金保険制度が整備されております。

 具体的に申し上げますと、原則、預金者当たり元本一千万円とその利息を保護しつつ、法人などの決済用預金については全額保護としており、大口預金の急激な流出に対する一定の歯止めとなるものと考えます。また、信用秩序の維持等の必要がある場合には、破綻時あるいは破綻前でも、預金全額保護の下で銀行を公的に管理することができる枠組みが整備されております。こうした枠組みを活用して適切に対応していくことになるのだろう、そういうふうに考えております。

 いずれにいたしましても、政府としては、引き続きまして、様々なリスクがあり得ることを念頭に置き、日本銀行を始め各国の金融当局とも連携しつつ、内外の経済金融市場の動向や、それが金融システムの安定性に与える影響等について、強い警戒心を持って注視をしてまいりたいと考えております。

藤巻委員 昔の日本の銀行は、かつて護送船団方式で、それが日本の銀行の国際競争力を弱めたとも言われております。経営危機に陥った金融機関を救済したり保護したりすると、これは一方でモラルハザードを誘引してしまう可能性もあると思います。

 つまり、ずさんな経営をしていて経営危機に陥ったとしても最終的には政府が助けてくれるから大丈夫というような考えが銀行の経営者サイドの方に蔓延してしまう可能性があるわけです。それでは財務健全性の高い、国際競争力のある銀行というのは生まれにくくなってしまうと思います。そういったモラルハザードといったような部分に関しては、どういう御見解をお持ちでしょうか。

鈴木国務大臣 金融機関に関するセーフティーネットは、預金者の保護や信用秩序の維持のために設けられているものでございまして、金融システムに対する信頼を確保していく上で不可欠な枠組みである、そのように考えております。

 一方、藤巻先生御指摘のとおり、セーフティーネットを構築していく上では、銀行経営者等のモラルハザードが生じないように十分に留意する必要があると考えます。金融機関の破綻処理制度を定める預金保険法におきましては、モラルハザードを防止する観点から、例えば、金融機関を破綻に至らしめた経営陣に対しては民事、刑事の両面から厳格な責任追及を行うこととしているほか、破綻金融機関は原則として消滅させ、あるいは、公的に管理する場合でも、株式は全損させ、これまで、経営陣は全て入替えを行ってきております。

 金融庁といたしましては、こうした枠組みを適切に運用していくことで、金融機関において御指摘のようなモラルハザードが生じることを防止していきたい、そのように考えております。

藤巻委員 平等感の問題だったり、おっしゃるように、モラルハザードと救済の、てんびんにかけた、難しいところはあると思うんですけれども、是非そういった部分をしっかりとやっていただければと思っております。

 今回、SVBでは、預金の引き下ろしが急激に起きて、それに対応するために満期保有の債券を途中売却しなければならなくなりました。それに伴って、簿価評価をしていた満期保有債券を時価評価に変更しなくてはならなくなり、また、評価損が実現損に変わって、一層混乱が広がったというふうに聞いております。

 一方、多くの大手米銀は、たとえ満期保有債券で簿価評価をしていても、バランスシートに時価評価をした損益などを、脚注、下の方とかですね、脚注などで表示していると理解しています。すなわち、実質、保有債券を全て時価評価しているのと同じです。

 金利上昇期の金利リスク把握には、保有国債の時価評価というのは欠かせないと思います。日本の銀行も、財務諸表に保有債券の時価評価を別途表示したりしているのでしょうか。信用組合、信金など金融機関も、リスク管理上、きちんと時価評価できているのでしょうか。今後、仮に長期金利が上昇していくと、この辺のリスク管理がきちんとできているかというのが倒産するか否かの分岐点になってくるとは思うんですけれども、金融庁としては、その辺の管理監督、しっかりとできているのでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 地域銀行を含め、銀行におきましては、自らが保有する有価証券について、時価を適切に把握するとともに、内外の経済金融市場の動向等も踏まえながら、リスクがどの程度あるのか、そのリスクに対してどういった対応を取るかなどをタイムリーかつ組織的に判断するための体制を構築する必要がある、そのように考えております。そして、各行において、これに向けた取組が進められているものと認識をいたしております。

 金融庁のモニタリングにおきましては、銀行内でのリスク管理に関する議論や有価証券の評価損益に関するデータなどについて、銀行から定期的、継続的に報告を受けておりまして、また、その分析を通じて各行のリスク管理の状況把握に努めているところであります。そして、個々の銀行の状況に応じ、市場変動への対応も含めた適切なリスク管理体制の構築を促しているところであります。

 金融庁といたしましては、引き続き、銀行の有価証券運用やリスク管理体制をしっかりとモニタリングしていくとともに、内外の経済金融市場の動向が個々の銀行や金融システムに与える影響等について、強い警戒心を持って注視してまいります。

藤巻委員 米国の場合、債券の満期保有と売買目的の区別は非常に厳しいというふうに聞いております。一度でも満期保有の債券を途中売却した場合、その銀行は満期保有する意図も能力もないというふうに判断されて、全て満期保有の債券をトレーディングアカウントにシフトしなければならない、すなわち、全ての保有国債を時価評価しなくてはならないというような話も聞いております。これは、銀行にとっては厳しく、つらいかもしれないんですけれども、預金者そして投資家を守る上では非常に重要なことでございます。

 日本の銀行はどうなっているのでしょうか。満期保有債券を多少売っても、ほかの満期保有債券は満期保有債券としてそのまま簿価評価をして、時価評価をしなくていいのか。そうだとすると、財務状態、財務諸表の開示が不徹底となってしまいまして、投資家、預金者、関係者、これを保護していないということにもなってしまうんですけれども、そういった部分、日本の銀行はどうなっているのでしょうか。

井藤政府参考人 日本の会計基準についてのお尋ねと考えておりますけれども、日本の会計基準におきましても、満期保有目的の債券の一部について売却した場合、売却しなかった残りの銘柄については、原則として満期保有目的が否定されることにより、保有目的区分を売買目的有価証券又はその他有価証券に変更することになります。当該変更した債券は、変更時の償却原価をもって振り替えられ、期末におきましては、貸借対照表上の評価額は時価評価というものになります。

藤巻委員 そういうことですと、先ほど大臣から日本の銀行は十分に安定しているという答弁は繰り返しあるんですけれども、もし満期保有目的債券のものを売ると全ての部分が時価評価に変わるということで、そう考えると一気に状況は変わり得るのかなと。今まで見えていなかった部分が急激に見えてきて、安定していると思われた日本の銀行は実は非常に危機的だったというようなことが一気に顕在化して、それが結果として、今回SVBが起きたような、取付け騒ぎが起きてということも十分に考えられるのかなというふうに、今発言を聞いて思いました。

 いずれにせよ、時価評価をして今の財務状況をしっかり把握しておくというのは、金利が世界中で上がっている局面におきましては非常に大事だと思いますので、監督省庁である金融庁としてもしっかりと確実にウォッチしていかなければならないというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続いて、同じ流れで、SVBでなんですけれども、今回、急速に集まった預金を運用する先が見つかるまで債券保有という形で一時しのぎをしていたせいで、金利リスクにさらされているとの評価が市場に出回り、さっきも言ったように取付け騒ぎが起きたと聞いています。

 資金運用の原則でいえば、金利上昇期には長期調達、短期運用が当然なのですが、それと逆のことを大規模にやっていたのだから危機に陥るのは当然といえば当然なんですけれども、SVB、二〇二二年の早い時期からチーフ・リスク・オフィサーが不在で、その辺のコントロールができていなかったという話もあります。

 さっき昼休みにちょっとニュースでも見たんですけれども、FRBのマイケル・バー副議長も、明らかにひどいリスク管理をしていた、明らかにひどいリスク管理だったというふうにSVBのことを批判しています。

 それでは、日本の地銀など銀行には、それなりの経験を持ったチーフ・リスク・オフィサー、十分そろっているのでしょうか。さっきの質問とちょっとかぶってしまう部分もあるんですけれども、日本の銀行のリスク管理はちゃんとしっかりとできているのでしょうか。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 地域銀行は、市場リスクに係る内部管理体制を適切に整備し、経営の健全性の確保に努める必要があるということは、委員御指摘のとおりでございます。

 このため、リスク管理部門には、各行のリスクテイクの状況に応じてリスク管理に資する様々な情報を集積、分析し、主体的にリスクの把握を行い、経営陣等に報告を行う、こういうことができる知見、経験を有する人材が必要でございます。

 各行ともこうした人材を配置しているものというふうに私ども承知をしておりますが、金融庁といたしましては、銀行との対話などを通じて、こうした適性のある人材の確保、不断の育成を行うよう促しているところでございます。

 加えまして、経営陣におきましても、市場リスクについてしっかりと見ていくようにということも重要でございますので、こうしたことも金融庁から繰り返し地域銀行に対して申し上げているところでございまして、金融庁といたしましては、引き続き、各行の市場リスク管理体制の状況をしっかりとモニタリングしてまいるということを考えております。

藤巻委員 日本の地銀などでも、集めた預金を国債や地方債で多額に運用していると考えられます。しかも、メガバンクと違って、高い利回りなどを求めてより長期の債券で運用しているところも多いと想像します。SVBと同じリスクを背負っている金融機関は多々あるのではないでしょうか。金利上昇局面では、海外の投資家、機関投資家などから空売りを仕掛けられるかもしれません。

 先ほども言ったように、大臣は、日本の金融システム、日本の銀行は総体として安定しているという答弁を繰り返されておりますが、あくまでそれは現時点でのという意味だと思います。さっきも言ったように、満期保有目的の債券が少しでも売られた場合、いきなり全てが時価評価になって、要するにバランスシートが全く違うものになってくる、全く違うバランスシートの景色が見えてくるということですので、リスクという観点から、潜在的危険性という観点からは、あくまで現状は安定しているという意味ではなくて、将来的に潜在的危険性はどれぐらいあるのか、日本の地銀などの金融機関の財務状況をどう分析しておられるでしょうか。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からも御答弁ございましたとおり、地域銀行も含めて日本の金融システムは総体として安定しているというふうに考えておりますが、これも先ほど申し上げたとおり、個別の銀行についても、市場リスクも含めて、私どもしっかりとモニタリングをしているというところでございまして、先生御指摘のように、状況は、区々、毎日のように変わっておりますので、こうしたことも踏まえて、強い警戒心を持って見ていきたいというふうに考えております。

藤巻委員 今は大丈夫でも将来的には実はやばいんですなんてことは、なかなか口が裂けても言えないところではあると思うので、そういう答弁になってしまうのは仕方ないのかなと思うんですけれども、ちょっと、ここでいつまでも押し問答をしていてもしようがないので、次の質問に移らさせていただきますけれども。

 ゼロゼロ融資の終了で、多くの企業の経営リスクが顕在化することが考えられます。つまり、銀行としても不良債権を多く抱えてしまうリスクが顕在化する可能性があります。そういった状況をどうお考えになられているでしょうか。

鈴木国務大臣 地域銀行の取引先である事業者は、藤巻先生御指摘になられましたとおり、新型コロナや物価高騰などにより、引き続き厳しい状況に置かれており、今後、ゼロゼロ融資の返済が本格化していくことが見込まれる中、地域銀行においては、資金繰り支援や事業再生支援など、借り手の事業者に最大限寄り添った総合的な支援に取り組んでいくことが求められております。そうした取組を通して、地域銀行自身の貸付債権の健全性も確保していくことが重要であると考えます。

 足下の金融市場でリスク回避的な動きが見られる中でも、日本の地域銀行は総じて充実した流動性や資本を有していると評価しておりますが、地域銀行が経営体力を維持向上させるためには、早め早めに将来を見据えた経営改革に取り組み、金融機能の強化や企業価値の向上に努めていくことも重要な課題であると認識しています。

 金融庁としては、今後も、様々なリスクがあり得るということも念頭に置きながら、地域銀行の更なる経営基盤の強化に向けた取組を促していきたい、そのように考えます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 まあ、総じて安定しているというところ以外はなかなかお答えになっていただけないなという部分はあるんですけれども。

 続いて、少し専門的というか、あれなんですけれども、AT1債についてお尋ねいたします。

 このAT1債なんですけれども、発行側企業からすると、株式、AT1債、TLAC債と、同様に資本に組み入れられるとして、金利を多く払いつつも使い勝手のいい債券という側面もあります。また、運用サイドも、リスクを取りながら、低金利環境での運用難の中で、信用枠の中で投資すれば、リスクを管理して高運用益を得られる商品として人気がある投資先でもあります。

 リーマン・ショック後、資本強化を求められた金融機関は、積極的にこれらの債券を発行し、資本強化を図り、また、運用サイドも、低金利下の運用先として、銀行財務が悪化した際には保有者が損失を引き受けるというリスクを承知の上で積極的に投資をしており、需要と供給がマッチしていました。

 このAT1債は、自己資本に組み入れられるため、多くの銀行が発行し、一方で、高い利回りを得られるために、運用会社などが積極的に購入しています。二〇二〇年の段階で、世界で百程度の金融機関が発行し、そのほとんどが欧米の機関ではありますが、日本のメガバンクも、三グループで三・六兆円の発行をしているようでございます。

 日本のメガバンクが相応のAT1債を発行しているという現状について、どう捉えておられますでしょうか。

鈴木国務大臣 三メガバンクにおいても、資本調達の一環として、昨年十二月末時点で、AT1債を合計で三・九兆円発行していると承知をしています。

 クレディ・スイスのAT1債には、特別な公的支援がある場合に元本削減される旨の特約があり、今回のスイス当局による一連の措置は、この特約に基づき、銀行の顧客や金融システムの安定のために行われた、そのように承知をしています。

 そうした特約は、日本のメガバンクのAT1債にはないと承知をしており、一般に、公的支援が行われたことにより元本が削減されることはありません。

 いずれにしても、現在、三メガバンクを含め、日本の金融機関は総じて充実した流動性や資本を有しており、金融システムは総体として安定していると評価をいたしております。

 その上で、金融庁としては、引き続き、様々なリスクがあり得ることを念頭に置きまして、日本銀行を始め各国の金融当局とも連携しつつ、内外の経済金融市場の動向、それが金融システムの安定性に与える影響などについて、強い警戒心を持って注視してまいります。

藤巻委員 ありがとうございます。

 今答弁あったように、CSの条項には、国から支援があった場合、元本割れになるという特殊な条項が入っていたため、今回、こういう事態を、AT1債の価値がゼロになるというようなことが起きました。

 一方で、日本のメガバンクの場合、そういった条項はないということで、それに関しては大丈夫という話は私も聞いております。

 それで、AT1債の条項に関してなんですけれども、クレディ・スイスの問題から派生して、AT1債への投資にちゅうちょする投資家が出始めると、今度は銀行の資本強化が問題となってきます。AT1債の発行コストが上昇して、銀行経営を圧迫するなどの事態も考えられます。

 AT1債に附属する条項をある程度統一して、いざというときの対応をスムーズに打てるようにする必要もあるのかなというふうに考えるんですけれども、AT1債条項の共通化だったり定型化だったり簡素化だったり、AT1債投資家に対する保護的な政策を打つようなこと、それについてはどうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 AT1債につきましては、国際基準でありますバーゼル合意に基づいた共通の枠組みの下で、各国で適格性の要件が定められているところであります。ただし、各金融機関の発行するAT1債には、今般のクレディ・スイスのように追加的な特約が付される場合があることから、発行体によって契約条項に差異が生じ得る、そのように承知しております。

 こうした特約は契約条項として明記されているものなので、基本的には、金融機関がAT1債を発行する際に契約内容を十分に説明するとともに、投資家においても、債券の内容をよく理解し、適切にリスク評価、管理することが重要であると考えています。

 いずれにいたしましても、金融庁としては、海外当局とも連携をして、AT1債を含め、今般のクレディ・スイスの事案により明らかとなる課題を見極めながら、必要に応じて適切に対応していきたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 SVBの問題にしてもCSの問題にしても、非常に大きなことですので、これをしっかり見ていただいて、日本の金融システムの安定のためにしっかりと把握していっていただければと思います。

 時間になりましたので、私の質問を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 まず、金融政策につきまして、黒田総裁にお話を伺います。黒田総裁との質疑もこれが最後になるかもしれません。よろしくお願いいたします。

 この十年間で、私どもはかなり辛口の評価をしてまいりました。発行済みの国債の半分以上を保有するという実質的な財政ファイナンスを行って、そのため、財政規律は弛緩し、国債市場は機能不全に陥っております。また、ゼロ金利政策が導入されることによりまして、いわゆるゾンビ企業などが生き残り、企業の淘汰や競争力強化がなかなか進まない、そのことが潜在成長率の低下、低迷の一因をつくり出している。また、一部マイナス金利の導入により、金融機関の経営は厳しくなり、金融仲介機能が低下をしております。さらに、ETFを大量に購入し、株式市場をゆがめる。こういったマイナスの評価というのは免れないだろうと思います。

 ただ、今日は、こういった副作用のことを議論しても恐らく押し問答になるだけだというふうに思いますので、ちょっと違った観点から議論させていただきたいと思います。

 他方で、異次元の金融緩和によって二年で二%の物価上昇を実現というものを掲げた就任当初は、大いなる期待を持って迎えられたのも事実でありました。私も期待をした者の一人であります。当時は、総裁と私、同じ認識を持っておりました。

 お配りをしている資料の図一、一ページを御覧いただきたいと思います。これは、民主党政権の最後、野田政権のときに私は経済財政担当大臣をさせていただいておりまして、この共同声明というものをまとめさせていただきました。正直申し上げて、白川総裁は本当に嫌がっておりました。この共同声明を結ぶことに対して非常にネガティブでありました。

 ポイントは、ここの一ページの三のところでありまして、政府は日本銀行に対して、上記二の方針に従ってデフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続することを強く期待する、この文言を入れたわけであります。

 なぜこういう文言を入れたかといいますと、リーマン・ショックがありまして、それまでかなり日銀のバランスシートというのは大きくなっていたんですね、他の中央銀行よりは。しかし、その後の変化率というものが、他の中央銀行はより量的緩和を進めて、バランスシートが広がっていった。それに対して、日本銀行は変わらずに、そのいわゆる金融政策の差によって、一時期、一ドルが七十六円まで円高になるということになりまして、私も、全国、その前は政調会長をさせていただいておりましたけれども、輸出業者を中心に、何とかしてほしい、こういった悲鳴が上がっておりました。

 そういう意味においては、同じ問題意識を持って、とにかく、他の中央銀行が金融緩和をしているのにやらないということについて、この異常な円高を生んでしまっている、こういったことから、しっかりとやはり金融緩和をすべきだということで、繰り返しになりますけれども、嫌がる白川総裁を野田総理に説得してもらって、そしてこの共同声明を結んだというのが、この一ページであります。

 二枚目を御覧いただきたいわけでありますが、これは第二次安倍政権で結ばれた政府、日本銀行の共同声明であります。同じように日本銀行に対して金融緩和を求めるということで、それは、黒田総裁は就任当初から、安倍総理の持っておられた問題意識に呼応される形で、二年で二%の物価上昇を実現するという強い意思の下で総裁に取り組まれて、そして金融緩和を強力に進められたということであります。

 そこで、黒田総裁にお伺いをしたいと思います。

 共同声明というのは、政府と日本銀行がお互いに責任を負うべきものなんですね。お互いに責任を負うべきものだから共同声明なわけです。一方的な声明じゃないんですね、共同声明なんですね。

 この図、三を御覧いただきたい。二ページの三ですね。これは政府が果たすべき役割が書かれているんですけれども、政府は、我が国経済の再生のため、機動的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、日本経済再生本部の下、革新的研究開発への集中投資、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争と成長力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に推進する、これが政府に課された責任であったわけであります。

 十年たちました。そして、先ほど申し上げた副作用の問題がありますけれども、私は、日銀のみに今の状況の責任を負わせるというのはいかがなものかという考え方でもあります。共同声明というのはお互い責任を持つという立場の中で、政府が役割を果たしたと黒田総裁はお考えになるかどうか、お答えをいただきたいと思います。

黒田参考人 御指摘のように、二〇一三年以降、政府と日本銀行は、共同声明に沿って様々な政策を実施してまいりました。これも委員の御指摘のとおり、それぞれがそれぞれの分担する分野で適切な政策を行うとともに、それらが全体としてマクロ政策となって、デフレ脱却、そして経済の活性化、再生ということを目的としていたわけであります。

 その下で、我が国の経済、物価は、確かに、着実に改善して、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況になったわけでありますけれども、その下で、特に、経済の改善が労働需給のタイト化をもたらしたということの中で、政府による働き方改革の施策などにより、女性を中心に労働参加が非常に進んだということで、生産年齢人口が大きく減少する中でも四百万人を超える雇用の増加が実現しておりますし、また、ベアが復活し、雇用者報酬も増加いたしました。そういう意味では、共同声明の下で政府と日本銀行が緊密な連携を図りながらマクロ経済政策運営に取り組んできたことは、着実に成果を上げてきたものというふうに考えております。

 ただ、御指摘のような、いわゆる成長戦略というか構造改革という面で、全世代型の社会保障制度の導入とか、さっき申し上げた女性活躍の促進とか保育所等の拡充とか、様々なことを政府もされましたし、その成果があったとは思うんですけれども、いわゆる新しい技術、イノベーション、その面ではやや、当初政府が目標としたところまではちょっと到達しなかったかなというふうには思っております。

 しかし、共同声明に沿って、日本銀行のみならず政府も、機動的な財政運営とともに、成長戦略に向けて様々な構造改革をされたということは事実だと思います。

前原委員 もう総裁、最後ですから、余り気にせずにちゃんと御答弁をいただいた方がいいと思います。思い切って、腹蔵なきように、ちゃんと御答弁をいただきたいと思います。

 三本の矢というのは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略というものだったんですね。

 差し障りがありますので名前は伏せますけれども、私、現職の閣僚の方と話をしたときに、この順番でいうと、五段階評価で、大胆な金融政策、よくやってくれた、Aだ、そして財政出動、機動的な財政政策、これもまあまあやったな、Bだ、しかし、民間投資を喚起する成長戦略、これはできていない、Eだということで、並べるとアベということをおっしゃった方がおられました。誰だとは申し上げませんが。

 私、実はこういう感覚に非常に似ているんですね。金融一本足打法みたいな言い方もされましたけれども、やはり金融政策に頼り過ぎた。それは我々は批判をします、批判をすることは野党としての務めだと思いますので。ただ、公平に考えると、金融政策だけに頼っていて、それだけで日本の構造転換ができるはずがないわけでありまして、そういう意味では、私は、政府はちゃんとした責任を果たしてこなかったというのがかなり大きな問題ではないか。だって、今、潜在成長率はほぼゼロですからね。

 そういう意味では、私は三本の矢の三本目というものが足りなかったというふうに思いますが、この点、いかが考えられますか。思い切ってどうぞ。

黒田参考人 私も実は、財務省を辞めた後、一橋大学の教授というのを二年ほどやりまして、試験の採点で、御承知のように、アメリカ流に言うなら、A、B、C、D、E、最後、フェール、Fということで、試験、それからゼミの関係の評価というものをいろいろ苦心してやった覚えがあるんですけれども。

 ただ、これはなかなか難しいのは、大学の試験は基本的に、どこまで理解しているかということで、試験問題を作るときからハードルをきちっとつくっていて、どこのハードルを越えたらどこまで行くとか、どれも越えていなければFになる、不可になるということでやっていたんですが、政府の政策の場合は、それが具体的に述べられていることは事実ですけれども、その具体的なものが数量的に示されているわけではないので、どこまでの評価をしたらいいのかというのは、これ自体はそんなに簡単ではないと思うんです。

 ただ、結果論かもしれませんが、確かに、企業収益が大幅に、倍増したわけですし、それから設備投資もそれなりに増えたんですけれども、アメリカなどと比べると、新技術、新商品、そういうものが、イノベーションがどんどん拡大していくというところは、やはり十分ではなかった。そういう下で、人口減はずっと続いていますので、潜在成長率は今一%を割っているわけですけれども、政府は潜在成長率を二%程度まで引き上げるということを目標にしておられたと思うんですけれども、そこは成功していないということは事実だと思います。

 ただ、それが政府の政策の不十分さだけなのか、もう少し根の深い話なのか、そこは、大学の試験問題のように客観的に評価するというのはなかなか難しいのではないかというふうに思います。

前原委員 我々の仕事というのは結果が全てで、責任を負わなきゃいけないわけですし、やはり結果というのは大事だと思いますね。

 十年間で、確かに、おっしゃったように、企業の利益は八三%増えているんですよ。ほぼ倍増、倍増までいかないけれども、八三%増えている。ただ、問題なのは、内部留保がほぼ同じぐらい伸びている。設備投資は二〇%しか増えていない。そして、名目賃金は二%しか増えていない。物価上昇を割り引いた実質賃金はむしろ下がっている。五%下がっている。

 一番上がったのは、総裁、何だと思われますか。配当ですよ。配当が一・二倍になっているわけですよ。つまりは、八〇%増えているのに、一二〇%配当が増えて、そして、賃金はほぼ横ばい、実質賃金は下がっている。設備投資には、八割、八三%の四分の一程度しか使われていない。そこにやはり大きな問題があるわけで、企業がもうかったから成功したんだではないんですね。やはりそういったものがどういうふうに配分をされたのかといったことがすごく大事なことなんだろうと私は思っています。

 先ほど同僚議員からもお話がありましたように、物価上昇というのは、やはり賃金上昇というものが伴わなければいけないということで、日本は、名目賃金が約三十年間横ばい、そして実質賃金は、先ほど申し上げたように、下がっているということであります。これを全て日銀に責任を押しつけるというのは本末転倒でありまして、先ほど申し上げた、企業としての八三%の利益をどう配分するのかといったことと同時に、政府ができる施策というものはしっかりとやらなきゃいけないと私は思うんですね。

 後で財務大臣やあるいは厚生労働省にも話を聞きますけれども、私は、三つのことがまずできるんじゃないか、やらなきゃいけないことがあるというふうに思っています。

 一つは、人への投資。これは、この頃、リカレント教育とかリスキリングとか、昔でいうと職業訓練とか、こういったものについて、全世代型の教育、人材投資をしっかりやる、人材育成をしっかりやるということが一つ。

 それから、後で取り上げますけれども、年収の壁。これは、この二十年ぐらいで、三十年ぐらいで、パートやアルバイトの賃金は約三〇%上がっているんですよ。しかし、この年収の壁があるために、トータルのいわゆる年収は変わっていなくて、働く時間が大幅に減っているんですね。これだけ労働力が不足をしている中で、言ってみれば、パートやアルバイトの賃金を上げても、年収の壁で働く時間が制約される。これは解消しなきゃいけない。これが二つ目。

 それから、最低賃金ですよ。最低賃金というものは持続的に上げていかなきゃいけない。日本は最低賃金でも世界でも低いレベルでありますし、今、最低賃金だったら、まともに働いても生活できないですよ。これが今の日本の現状ですよね。

 政府としてはやはりこういうことをしっかりやっていかなければいけないというふうに思いますけれども、これについての総裁のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 この点につきましては、委員の意見に全く賛成です。

 人への投資という場合は、リスキリングとかそういうこともありますけれども、私自身は、一番重要なのは、やはり大学の研究教育をいかに強化していくかということ、これが非常に、先端技術にとっても極めて重要だと思います。

 統計、OECDのデータを見ますと、企業の技術革新投資というのはOECD諸国並みなんですけれども、大学の研究教育投資の額がやはりOECDの中でも低い方なんですね。ですから、様々なことがあり得ると思うんですけれども、人への投資が非常に重要であるということは、おっしゃるとおりだと思います。

 それから、年収の壁も、いろいろな考え方があると思いますけれども、私も、何らかの措置を取って、こういった、ある意味では人為的な壁ですので、それを何とか緩和するような措置を取るということは非常に重要だと思います。

 それから、三つ目の最低賃金は、これも非常に重要で、もちろん、中小企業の賃金支払い能力ということも十分考えないといけないんですけれども、他方で、最低賃金を上げることによって、実は、最低賃金の上の層の賃金も上がるんですね。だから、これは最低賃金の適用を受ける層だけでなくて、その上の層も含めて賃金が上がるので、極めて重要な政府の政策だと思います。ただ、これはあくまでも、中小企業を含めた支払い能力ということも十分考えながらやっていくということだと思います。

 ただ、三つの点について、私も全く賛成です。

前原委員 今なぜこういう質問を日銀総裁にさせていただいたかというと、植田新総裁は、私も議運で質疑をさせていただきましたけれども、政府と日銀の共同声明を見直す必要はないと今言われているんですよ。

 中身についてはそうかもしれない。ただ、今日まさに黒田総裁と議論させていただいたのは、日銀と政府で共同声明をまとめれば、中身をしっかりとお互いが実行する責務を負うんだといったところが大事だと思うんですね。つまりは、字面が、今、取り組むことが変わる変わらないじゃなくて、立派なことを書いてあるんだったら、それを実現してくださいよということがすごく大事なことだと思うんです。実効性の問題だと思うんですね。

 実効性を高めるためには、これは総裁、共同声明を見直さなくていいと新総裁もおっしゃっていますけれども、じゃ、もし実効性を高めようと思ったら、十年の御経験として、どうしたらいいと思われますか。

黒田参考人 植田次期総裁の個別の発言についてコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、現在の共同声明が、二〇一三年以降、政府と日銀がそれぞれの役割を分担して適切な政策を行うという面でプラスの効果があったことは事実だと思いますし、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況を実現したということも、この共同声明の下で可能だったと思います。

 ただ、今後どうすべきかという点については、ちょっと、間もなく退任する私が何か申し上げるのは僭越だと思いますが、政府は政府として、様々な施策、経済政策の体系をパッケージとして打ち出してきておられますので、個人的な感想としては、かなり充実したパッケージを打ち出してこられているように感じました。

 ただ、まだ一部はこれからということもありますので、私が今の時点で何か申し上げるのは余り適切でないと思いますが、いずれにせよ、共同声明を今後どうするというのは、これはあくまでも政府と新しい総裁、副総裁などの考え方によるもので、私から何か申し上げるのは適切でないと思います。

前原委員 私は、共同声明をどうするかどうかということじゃなくて、十年間経験された総裁として、実効性を高めるためにはどうしたらいいかということを伺いたかったんですけれども、御退任をされるということの中で御遠慮されたと。是非、後任にアドバイスをしていただければというふうに思います。

 総裁はこれで結構でございますので、ありがとうございました。

塚田委員長 黒田総裁は御退室いただいて結構です。

前原委員 さて、残りの時間で、ちょっと順番を変えて、せっかく厚生労働副大臣も来られておりますので、今の並びの中でお話をさせていただきたいと思います。

 実は、前々回のこの委員会で年収の壁の質問をさせていただいて、そのときは厚生労働省からは伊佐副大臣がお越しをいただいたわけでありますけれども、そのときに、その前からも質問をしていたことなんですけれども、年収の壁を財政支出で仮に埋めた場合、働く時間が増えて収入も増える、税収も増える、トータルでどのようなプラスマイナスになるかという試算を政府として行っていただきたいということを私はお願いをいたしました。そして、理事会では、財務省から厚生労働省に対して働きかけをして、政府として対応できるように取り組むということでございましたが、主管の厚生労働省としてのお考えを聞かせていただきたいと思います。

羽生田副大臣 いわゆる年収の壁をなくすためには、年収が百六万あるいは百三十万円、これを超えた場合に生じる社会保険料の本人負担分が、国が給付した場合幾らかかるのかということでございますけれども、また、民間試算によりますと、給付を行った場合には働き手が増えて税収が増えるとされておりますけれども、これについての試算ということでございます。

 手取り収入の減少について、仮に給付措置により対応する場合の必要額に関する試算を行うに当たりましては、対象要件や給付水準をどのようにするのかということ、そして、どのような給付の制度設計をするのか、そしてまた、その給付によりどのような世帯にどのような行動変容が起きるのかということ等の大きな論点があると考えておりまして、現時点におきまして、これを試算を行うことは大変に困難であるというふうに考えているところでございます。

 いずれにせよ、いわゆる年収の壁を意識して労働時間を調整する方がいるという課題につきましては、どのような対応ができるか検討していくということで考えているところでございます。

前原委員 今は無理でも、ちゃんと条件が整えば出していただけるということでよろしいですか。

羽生田副大臣 現時点では、対応できるというお答えはちょっとできない状況でございますので。

前原委員 また理事会で議論させていただきますけれども、努力を是非行っていただきたいと思います。

 財務大臣にお伺いをいたします。

 防衛費の増額、そして教育、あ、厚生労働大臣、もうこれで今日は結構でございますので。ありがとうございました。

塚田委員長 羽生田厚生労働副大臣は御退室いただいて構いません。

前原委員 教育予算の倍増ということであります。時間が限られておりますので、どの予算の倍なのかという議論はまた後日に譲りたいというふうに思いますけれども、新たな財源が必要となるのは明白であります。

 我々国民民主党は、今の五・四兆円ですか、昨日成立しました文教・科技費、これを倍にするという意味での倍増というものをうたっておりますが、当面はそれを教育国債というものに充てるということでありますが、二つ併せて伺います。

 この教育国債についてのお考えと、あるいは、安定財源というのであれば、消費税というものを上げるということをこの教育予算の財源として考える予定があるのかどうなのか、その点についてお答えください。

鈴木国務大臣 いわゆる教育国債につきましては、たしか予算委員会だったと思いますが、昨年ですけれども、玉木代表からも御提言をいただいたところでございます。

 それのときにお答えしたのと同じになりますが、教育予算につきましては、確実な償還財源もなく、新たに特別な国債を発行すること、これは実質的に赤字国債の発行にほかならないわけでありまして、今以上に借金を子供世代に背負わせることとなることから、慎重な検討が必要である、そのようにお答えをさせていただいたところでございます。

 そして、教育、大切でございまして、教育の財源をどういうふうに考えているか、こういうことでございますけれども、財源につきましては、もし教育予算を大幅に拡充するのであれば、まさに財源をどうするかということでございますが、恒久的な施策には恒久的な財源が必要である、そのように考えてございます。

 教育予算が重要であること、これは私もそのとおりだと思いますが、人口構成の状況でありますとか財政状況も踏まえながら、予算全体の中で必要な額を確保していくことが重要である、そのように考えております。

前原委員 この財務金融委員会でも、私、一つの提言を前にいたしました。外国為替資金特別会計というものの一部を基金化をして、そしてその運用をして、それを財源の一部に充てればどうかといった提言をさせていただきました。

 三枚目の資料を御覧いただきたいというふうに思います。

 その際にも私がお示しをしたものでありますけれども、ハーバード大学、イエール大学というものの基金の運用実績でございます。これは過去十年間の運用実績でございますけれども、ハーバード大学は、過去五十年間、すごいですよ、平均収益率一一%ですよ、一一%。イエール大学は、過去三十年間で平均収益率は何と一三・六%。もちろん、リーマン・ショックとか、上がり下がりはありますけれども、五十年間で一一%、三十年間で一三・六%。オルタナティブ投資というものをやってこういった収益を上げて、そして教育、研究開発に回しているということであります。

 前回は、この外為特会を活用して一部基金化をするということについてはネガティブな御答弁でありましたけれども、同じことなのか。それとも、外国為替資金特別会計じゃなくても、今、世界の趨勢は、こういうオルタナティブ投資を含めて、いわゆる運用でその果実を得て、それをしっかりと財源に充てて、その国の必要な経費、政策、成長に充てていくといったことをやっているわけでありますが、こういったものをもっと取り入れるというような、このハーバード大学、イエール大学の運用実績を見られて、こういう基金運用をして、そして財源に充てるというお考えはないですか。

鈴木国務大臣 まず、外為特会について申し上げますと、この運用資産、これは市場の急激な変動の際に機動的な介入を行うための資金でございますので、流動性それから安全性に最大限留意して運用する、これが基本である、そういうふうに思っております。

 ハーバード大学やイエール大学の基金、これは、寄附金等を原資として、大学の教育研究をサポートするため、長期的に高い収益を生み出すことを目的としているものと理解しております。このため、運用対象のうち、預金、債券の割合が一割程度にとどまる一方で、非上場株式やヘッジファンドなど、流動性が低く、リスクがある資産にも積極的に投資しているものと承知をしております。

 これに対しまして、外為特会が運用する外貨資産は、政府短期証券を通じた借入れを原資として、市場の急激な変動の際に機動的な為替介入を行うための資金でございまして、大学の教育研究を支えるための資金と異なりまして、為替介入等のタイミングでありますとか規模を事前に見通すことは困難であることから、流動性及び安全性を最大限に留意した運用を行っているところでございます。

 このため、我が国の外貨準備の規模が為替市場の取引高等に照らして過大とは申し上げにくい状況の中で、一部であっても、流動性の確保に支障を来すような運用を行うことについては、慎重な検討が必要だと考えているところでございます。

前原委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、私が申し上げたのは、外為特会でなくても、オルタナティブ投資などによってこういった高い運用益というものを日本も取り入れませんかということを申し上げているわけですね。

 ですから、長期にわたってとおっしゃいましたけれども、年平均で一一パーとか一三・四%を生み出しているわけですよ、そのお金を。こういったことをやはり財源論の中でしっかり議論をするということが財務省の一つの役割だということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、物価高騰対策について質問します。

 物の値段が上がり続けていて、国民の悲鳴の声が止まりません。子供の習い事をやめさせた、昼食はバナナ一本で済ませている、お風呂も控えている、年金がカットされてたまらない、そんな声で、日本全国、まだまだ満ちあふれています。

 内閣府の二〇二二年度社会意識に対する世論調査でも、現在の日本の状況で悪い方向に向かっていると思う分野を聞いたところ、物価が七〇・五%と最多であり、前年度の調査から三二・六ポイントも増えています。

 今日は、LPガス、プロパンガスの料金への対応について、今日も委員会で質問が出されていますけれども、これについてまず最初に質問します。

 本会議でも質問したことがありますけれども、ガス料金は都市ガスだけ対象になっている。政府は、LP、プロパンは、小規模零細事業者が多いことから、政府の直接の対策とはせず、電気・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金、この推奨事業としています。

 経済産業省にお伺いします。

 では、この交付金を活用したLPガス料金対策の事例について、簡潔に紹介をしていただけますか。料金引下げとなった世帯数とか活用額とか、分かれば教えてください。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年九月に措置をいたしております六千億円の電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金では、経済産業省の調査によりますと、約半数の都道府県で対応されていると聞いております。

 例えば、栃木県や茨城県では、LPガスを使用する一般家庭などに対して値引き支援を行うほか、大分県では、LPガス料金の支払いにも利用できる地域商品券を発行するなど、その地域の実情に応じた様々な対応がなされていると承知をしております。

田村(貴)委員 活用額について、料金の引下げ額とかについては分かりますか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 例えばでございますけれども、栃木県におけるその制度においては、一立米当たり三十二円で上限十二立米、毎月、月当たりですけれども、そういった形での支援が行われると承知をしております。栃木県の場合は、予算額として六・八億円の予算が出されているというふうに承知をしております。

田村(貴)委員 昨年決定した地方交付金というのは六千億円でありました。LPガスの引下げの活用は、全自治体ではもちろんないし、一部の自治体にとどまっているし、事前レクで聞いたところでは数十億円程度だったということです。

 政府は、二十二日、地方交付金の追加を発表しました。推奨事業メニューは七千億円計上されていますけれども、LPガスというのは、事業者も多くて、そして、自治体、その事業者共に、事務の煩雑さの問題もあり、この活用というのは限られるのではないかと思いますが、いかがですか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘ございましたとおり、現在、私、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、約半数の都道府県で対応を今されているということを承知しておりますけれども、地方創生臨時交付金が既に不足しているという都道府県もあることから、今回積み増しを行って、推奨事業メニューの中で、生活者支援として、LPガス使用世帯への給付を明示をさせていただいたところでございます。

 今後、地方自治の自主性は尊重しながらも、LPガス利用者の多い地域には重点的に配分されることを踏まえまして、経済産業省として、自治体や関係団体などに対して、LPガス使用者に対する支援を強化するよう、積極的に働きかけを行ってまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 そうはいっても、もう全国的に、全自治体的には広がらないんですよ、秋からやってきて。

 ここからは大臣にも聞いていただきたいんですけれども、この生活者支援の推奨メニューの中には、小中学校における学校給食等への支援というのもあるわけです。これは引き合いも多くて、多くの自治体が活用してきました。だけれども、時限的にとどまっている。五百十一の自治体で活用額二百八十億円というのがあります。ここで重要なのは、地方交付金を使って物価高騰対策をする自治体もあるんです。だけれども、できない自治体もあるんです。国費を使って住民サービスに差がついているという現状があるわけです。

 私は、先ほども議論が出ていましたけれども、やはり、国民みんなが物価高騰に対して対策が享受できる、みんなが享受できる、そして最も効果的な物価高騰対策は、消費税の税率を引き下げる、これが最大の対策だというふうに思っています。

 社会保障制度を相次いで後退させてきた今の政府において、社会保障の重要財源という理由は成り立ちません。消費税減税をやはりこの機会に政府として決断すべきときに来ているんじゃないですか。鈴木大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 先ほど来、先生から事務方にお尋ねがありましたけれども、足下の物価高騰に対して、三月二十二日に追加の物価高対策を行いました。その中におきましては、LPガス利用者への支援に活用可能な電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金の増額、それから、低所得者の子育て世帯への給付などを行うことを決定をしたところでありました。

 こうした支援措置によりまして、先生御提言の一律の減税とは異なりまして、物価高に苦しむ世帯等に的を絞った、また、それぞれの地方の実情にも即した柔軟できめ細やかな対応を取ることが可能となると考えて、政府としてはこうした対応を取らさせていただいたところでございます。

田村(貴)委員 次に、防衛予算について質問します。

 政府は、防衛費を二〇二七年度に国内総生産、GDP比二%に増額することを決めています。

 各国の軍事費で比較しますと、例えばスウェーデンのストックホルム国際平和研究所、ここの二〇二二年度軍事費では、GDP比二%に引き上げた場合の日本の軍事費は、アメリカ、中国に次いで世界第三位に浮上します。まさに軍事大国となるわけです。

 配付資料一を御覧ください。財政制度審議会に提出された財務省の資料です。

 国の債務残高対GDP比は、二〇二二年度で二五五%に膨れ上がり、ハイパーインフレを起こした戦前の財政悪化を超える状況となっています。

 大臣、こんな状況で軍事予算を倍にすれば、財政状況は更に悪化するんじゃないでしょうか。どこまで債務残高が増えても問題はないと考えているのか、そうでなければ、どこで歯止めをかけていくおつもりなのか、お答えください。

鈴木国務大臣 先生が今資料でお示しをくださいましたけれども、我が国の財政、債務残高がGDPの二倍以上に累積をするなど、大変厳しい状況がございます。

 このような中で、財政健全化、極めて重要でありまして、累積する債務残高を中長期的に減少させていくこと、そのために、国、地方のプライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化すること、これによりまして債務残高対GDP比を安定的に引き下げること、これを政府の方針としているところでございます。

 具体的には、人への投資の抜本的強化や官民連携による成長分野への大胆な投資拡大等を通じまして成長と分配の好循環を実現し、日本経済を新たな経済成長の軌道に乗せていくことや、新型コロナ対応など非常時の財政運営から脱却をして平時への移行を図ること、社会保障の給付と負担の不均衡を是正し、持続可能な社会保険制度を構築すること、こういうことをして歯止めをかけていきたい、そのように考えているところでございます。

 先ほど先生から、我が国がGDP比で二%に達すると、二〇二七年度時点における各国の防衛費との比較について三番目だというお話があったわけでございますが、いずれにいたしましても、我が国は他国に脅威を与えるような軍事大国になろうとしているわけではなくて、あくまで専守防衛の考え方を堅持し、憲法の範囲内において、また国際法の範囲内において、自衛のために必要となる防衛力を保持していくものと考えております。

田村(貴)委員 その言い分は政府内部ですよ。他国が脅威と感じませんと言っているんですか。世界第三位の軍事費を持つんですよ。それが脅威にならずに何と言いますか。

 昨年十一月の防衛力有識者懇談会の報告書には、防衛力強化の財源について、国債発行が前提となることはあってはならないと書かれています。防衛力強化の財源として、大臣、国債発行を認めるのですか、認めないのですか、見解を求めます。

鈴木国務大臣 抜本的に強化される防衛力、これは将来にわたって維持強化していかねばなりません。そして、これを安定的に支えるため、令和九年度以降、歳出改革等に最大限努力しつつ、裏づけとなる財源をしっかりと確保することが必要であると考えます。

 この財源確保につきましては、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々の将来世代への責任として対応すべきものと考えております。

 この点、将来世代への負担の先送りとなる国債につきましては、令和九年度以降、将来にわたり、強化された防衛力を安定的に支えるためのしっかりとした財源措置として位置づけられるものではない、そのように考えております。

田村(貴)委員 今後五年間の整備計画でも、決算剰余金あるいは歳出改革による財源が捻出できなければ、国債発行とか、あるいは国民負担の増大、こうしたところで穴埋めせざるを得ないというふうに私は思います。財政投融資の積立金等や独立行政法人からの繰入れによる拠出というのは、これはもう限界に来ているのではないでしょうか。

 そもそも、大臣、GDP二%という数字の根拠はどこから来ているのでしょうか。これはアメリカの要請による数字じゃないんですか。

鈴木国務大臣 繰り返しになる部分がございますけれども、新たに策定された国家安全保障戦略では、二〇二七年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を併せまして、そのための予算水準が現在のGDPの二%に達するよう所要の措置を講ずるということとしております。

 これは数字ありきではなく、安全保障環境が一層厳しさを増す中で、一年以上にわたって議論を積み重ねる過程において、必要とされる防衛力の内容を積み上げた上で、同盟国、同志国等との連携も踏まえ、国際比較のための指標も考慮して、我が国自身の判断として導き出されたものでございます。

 今後、国家安全保障戦略等に基づきまして、防衛省を始めとする関係省庁において、総合的な防衛体制の強化を含め、国民の平和な暮らしが守られるよう具体的な取組を着実に進めていただきたい、財務省としてはそのように考えているところであります。

田村(貴)委員 必要な防衛力を積み上げてきたとおっしゃいました。その大軍拡路線の中で、予算の使途について幾つかお尋ねします。

 配付資料の二を御覧いただきたいと思います。これは、防衛省の資料です。

 火薬庫の整備の予算は、二十三基地で約百六十億円計上されています。そのうち、スタンドオフミサイル等の大型弾薬庫の火薬庫の確保に四か所、五十八億円計上しています。名前からしてすごいですね、スタンドオフミサイル等の大型弾薬庫の火薬庫の確保。これは自分の自治体で近所にこういうのが来たらどう思うんですかね。

 防衛力整備計画で、五年間の予算総額、整備箇所数については、これはどうなるんでしょうか。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 国家防衛戦略及び防衛力整備計画におきましては、自衛隊の十分な継戦能力の確保、維持を図る必要があることから、必要十分な弾薬を早急に保有することとしております。このため、弾薬の取得量に見合う火薬庫の確保を進めることとしております。

 具体的には、令和九年度までに、火薬庫の整備に係る経費として、約七十棟程度、〇・二兆円を計上しているところでございます。(田村(貴)委員「もう一回言ってくれる、聞こえなかった」と呼ぶ)令和九年度までに、火薬庫の整備に係る経費といたしまして、約七十棟、経費として〇・二兆円を計上しているところでございます。

田村(貴)委員 資料二の右の表を見ていただきたいんですけれども、スタンドオフミサイル等の大型弾薬等の火薬庫の確保。大分分屯地では、来年度新設工事、約四十五億円計上されています。

 お尋ねします。

 これは弾薬とともに敵基地攻撃用の長射程のミサイルもここでは保管されるということですか。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 現時点で、個別具体的な火薬庫につきまして、スタンドオフミサイルを保有するか否かを決定しているわけではございません。

 また、個々の火薬庫に保管する弾薬の種類につきましては、その詳細を示すことによりまして自衛隊の能力が明らかになるおそれがあるため、具体的にお示しすることは困難であるということを御理解いただければと思います。

田村(貴)委員 だって、この文書に「スタンド・オフ・ミサイル等」と書いておるじゃないですか。書いておるじゃないですか。置くのか置かないのかと聞いているんですよ。

 陸上自衛隊大分分屯地のある大分市鴛野は、住宅密集地と隣接しています。敷戸と鴛野の二つの校区だけでも六千二十四世帯、一万一千五百三十二人が暮らしています。分屯地から三キロ以内には、五つの小学校に、大分大学や大分工業高校もあります。スタンドオフミサイル等の大型弾薬等の火薬庫ができれば、有事の際にはこれは攻撃対象となりますよね。極めて危険な基地であります。なぜここにと、住民から不安と疑問の声が広がっています。

 今日は、防衛省井野副大臣、お越しいただいています。なぜこの地を選定したんですか。四十五億円の巨費を投じて何をするんですか。近隣住民にはどう説明されたんですか。お答えいただきたいと思います。

井野副大臣 防衛力整備計画では、国家防衛戦略に従い、火薬庫を始めとする自衛隊施設の強靱化などにより、我が国への侵攻が生起する場合にはこれを阻止、排除できるように防衛力を強化し、粘り強く戦う態勢を確保していくということとしております。

 こうした防衛力の抜本的強化に向けた取組の目的は、あくまで、力による現状変更やその試みを許さず、国への侵攻を抑止することにあり、防衛力の抜本的強化により武力攻撃そのものの可能性を低下させていくという認識でございます。

 令和五年度予算に計上している火薬庫を新設する防衛施設が所在する県及び市に対しては、整備内容について説明をさせていただきました。引き続き、様々な形で情報提供をさせていただきたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 私が聞いているのは、大分のなぜこの分屯地なんですかと聞いているんです。住民には説明されたんですか。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 火薬庫の新設に当たりましては、部隊運用上の利便性、自衛隊用地内での地積の有無、保安距離の確保の可否等を総合的に勘案した結果、整備を行うこととしております。

 それから、住民への御説明の件ですけれども、大分県それから大分市には内容を説明させていただいているところでございまして、現時点では住民への説明を特に求められていない状況ではございますが、引き続き、関係自治体には様々な形で情報提供をさせていただきたいと考えております。

田村(貴)委員 要するに、ここが便利だからここに配備するということですよね。

 自治体に示した文書の中には、こういう表現があります。地元との密接な関係に配慮してまいります、よろしくお願いいたしますと。

 地元との密接な関係に配慮って、これはどういう意味ですか。配慮すると言って説明しないというのはどういうことなんですか。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 地元との関係でございますけれども、長年にわたって大分分屯地、所在しておりますので、自治体と自衛隊、あるいは福岡にあります九州防衛局と様々な形でおつき合いをさせているということでございます。

田村(貴)委員 全然分かりませんね。結局しないんですね、説明。そんなのでいいんですか。地元無視の基地強行ですか。これは納得できませんよ。

 資料の三を御覧いただきたいと思います。

 昨年十二月二十三日、防衛省が自衛隊施設の強靱化のためにゼネコン関係者を集めて行った会合で、防衛省が提出した資料であります。ここにHEMP攻撃とかCBRNE防護性能という言葉がありますけれども、これはどういうことなんでしょうか。説明してください。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 防衛力整備計画におきましては、主要な装備品や司令部等を防護し、粘り強く戦う態勢を確保するため、主要司令部等の地下化、構造強化、電磁パルス攻撃等の対策等を実施することとしております。

 電磁パルス攻撃とは、瞬時に強力な電磁波を発生させ、電子機器に過負荷をかけ、誤作動をさせたり損傷させたりするものであり、そのうち、お尋ねのHEMP攻撃とは、高高度での核爆発により電磁パルスを発生させる攻撃であります。また、CBRNE攻撃とは、化学、生物、核、爆発物等による攻撃のことをいいます。

田村(貴)委員 核爆発による電磁パルスや核兵器などの攻撃を想定して、自衛隊施設の強靱化を行おうとしている。本当にもうびっくりすることばかりですね。武力攻撃がある、そして被害を受けることを前提にしている。このこと自体は私は問題だと思います。

 防衛力整備計画では、自衛隊施設の強靱化に五年間で契約ベース約四兆円が総事業費として見込まれています。浜田防衛大臣は、最終的には、おおむね十年後に全国約三百の自衛隊施設全てに対して措置するというふうに述べています。

 全体でどれだけの予算を投じるのか、教えてください。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 来年からの五か年の総額、約四兆円を見込んでおりますけれども、内訳としましては、抗堪性向上のための司令部の地下化等に必要な金額として〇・二兆円、火薬庫整備につきまして〇・二兆円、大規模自然災害対策について〇・四兆円、それから既存施設の防護性能付与に必要な費用として一・七兆円、部隊新編や新規装備品導入に連動する施設整備の費用一・四兆円、合計約四兆円を見込んでいるところでございます。

田村(貴)委員 全体でどれだけの予算を投じるのかというのは、これは四兆円でいいんですか。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 今後五年間で見込んでおる施設整備費として、四兆円ということでございます。

田村(貴)委員 HEMP攻撃、元陸上自衛隊化学学校長の鬼塚隆志氏によると、約十キロトン程度の小型の核兵器、核爆発装置を高高度約三十キロから四百キロメートルで爆発させて発生する電磁パルスの威力は、瞬時に半径数百から数千キロメートルに存在する電気系統をほぼ破壊し、個人、組織の諸活動を崩壊させるということです。もう完全に経済が止まりますね。そして、社会生活は成り立ちません。こんなこと自体が起きたら、もう壊滅状態ですよ。そういうことを想定して自衛隊の基地を強靱化させるんですか。

 HEMP攻撃を想定して強靱化する自衛隊施設、これはちょっと時間がないからお聞きしませんけれども、基地だけを強靱化しても、こんな攻撃があったら、もうひとたまりもない、意味を成さない。なぜ基地だけを強靱化することになるんでしょうか。教えてください。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 防衛力整備計画においては、主要な装備品、司令部等を防護し、自衛隊が粘り強く戦う態勢を確保するために、各種の対策を実施することとしております。

田村(貴)委員 半径数百キロメートルから数千キロメートル以内の電気系統を全部破壊する、そういう状態をつくらないことが大事じゃないんですか。

 井野副大臣、お伺いします。

 そういう事態とならないために何が必要だとお考えですか。そういう事態が発生しても、住民そして住宅、いろいろな生活活動、そんなところは関係ない、自衛隊施設だけ強靱化だ、こういう提案ですよ。これはどう考えていますか。

井野副大臣 もちろん、我々としては、そういう事態に至らないように、まずは防衛力を強靱化し、そして抑止力を高めていくということがまずは第一前提で考えておりまして、その一環として、もちろん司令部だとか、そのほか国民防護等もしっかりと併せて取り組んでいくというふうな形で今回の防衛力整備計画を立てているというところでございます。

田村(貴)委員 そうはそうして、GDP比二%にしても、こういう攻撃を想定するわけでしょう。違うじゃないですか、そういう事態が起こらないために外交努力を積み重ねるのが政府の責任じゃないんですか。

 資料四を御覧ください。資料五も併せて御覧ください。

 主要司令部等の地下化も行われます。来年度で予算が計上されている熊本県陸上自衛隊健軍駐屯地。健軍駐屯地は町の真ん中にあります。この写真のとおりであります。このような環境の中にある基地の地下化というのは、どのような攻撃を想定しているんですか、井野副大臣。

井野副大臣 先ほど事務方からも答弁ありましたとおり、粘り強く戦う態勢を確保するために、主要司令部などの地下化、構造強化、電磁パルス攻撃対策などを実施するということとしております。

 そういった中で、この御指摘の熊本の施設についてもその対象になるというところでございます。

田村(貴)委員 核爆発を起こして電磁パルスが数千キロに及んでいて、そして、人が生き死に、経済活動が全くできない中で、ここだけで戦っていくんですか。そんな想定のことで基地の地下化をやっていくんですか。もう荒唐無稽としか考えられませんね。

 資料五の、主要司令部にある地下化というのは、陸上自衛隊那覇駐屯地、それから陸上自衛隊健軍駐屯地、これは今の熊本ですね、それから自衛隊那覇病院、それから福岡県の航空自衛隊築城基地、同じく航空自衛隊、宮崎県の新田原基地、那覇基地が対象になっています。

 防衛省にお伺いします。

 これは、何で九州と沖縄だけがこの基地の地下化の対象になっているんですか。九州と沖縄というのは、攻撃の可能性が高まっているということなんですか。

杉山政府参考人 お答えいたします。

 必ずしも九州と沖縄だけではございませんで、先ほど委員がお話しくださった基地以外にも、舞鶴でも現在計画しているところでございまして、引き続き検討を続けているところでございます。

田村(貴)委員 お答えになっていません。お答えできないんでしょう。整合性がないし、理由もないし。

 築城と新田原基地、日米共同訓練をやっている、普天間の緊急時使用にもなっている、こういうことがあるからリスクがあって、そして地下化しなければいけない、そういうことじゃないんですか。ちゃんと説明してくれないと駄目ですよ。

 防衛財源確保法は提出される、審議されると聞いていますけれども、そこでもしっかりと審議をしていきたいと思います。

 今日は以上で終わります。

塚田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会


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