衆議院

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第15号 令和5年4月21日(金曜日)

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令和五年四月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    五十嵐 清君

      石井  拓君    石原 正敬君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      大野敬太郎君    勝目  康君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      津島  淳君    土田  慎君

      葉梨 康弘君    藤原  崇君

      八木 哲也君    若林 健太君

      階   猛君    野田 佳彦君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   参考人

   (慶應義塾大学経済学部教授)           土居 丈朗君

   参考人

   (SMBC日興証券株式会社金融経済調査部金融財政アナリスト)       末澤 豪謙君

   参考人

   (元内閣官房副長官補(安全保障・危機管理))   柳澤 協二君

   参考人

   (淑徳大学大学院客員教授)

   (慶應義塾大学名誉教授) 金子  勝君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     中村 裕之君

  石井  拓君     土田  慎君

  石原 正敬君     保岡 宏武君

  津島  淳君     山口  晋君

  岬  麻紀君     早坂  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     石井  拓君

  中村 裕之君     青山 周平君

  保岡 宏武君     石原 正敬君

  山口  晋君     津島  淳君

  早坂  敦君     岬  麻紀君

同月二十一日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     五十嵐 清君

  塩崎 彰久君     勝目  康君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     神田 潤一君

  勝目  康君     土田  慎君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     塩崎 彰久君

    ―――――――――――――

四月二十日

 消費税インボイス制度の実施中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八二三号)

 同(笠井亮君紹介)(第八二四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八二五号)

 同(志位和夫君紹介)(第八二六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八二七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八二八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八二九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八三〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第八三一号)

 同(本村伸子君紹介)(第八三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学経済学部教授土居丈朗君、SMBC日興証券株式会社金融経済調査部金融財政アナリスト末澤豪謙君、元内閣官房副長官補(安全保障・危機管理)柳澤協二君、淑徳大学大学院客員教授、慶應義塾大学名誉教授金子勝君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず土居参考人にお願いいたします。

土居参考人 皆さん、おはようございます。

 ただいま御紹介いただきました慶應義塾大学の土居でございます。

 お手元に、財源確保法案に関する私見と題しました横長の資料を用意させていただいておりますので、それに沿いましてお話をさせていただきたいと存じます。

 本法案に対しての私の評価ということで、二ページ目に記しておりますけれども、防衛力強化のための経費の増額に必要な財源を先送りすることなく事前に確保して明示しているという点で、この法案を私は高く評価しております。

 本法案におきまして、決算剰余金を用いるということになっておりますけれども、この決算剰余金は、その二分の一を下回らない金額を公債、借入金の償還財源に充当するということが従前決められておりまして、それを踏まえた上で防衛力強化のための財源に活用するということとしているというのが本法案であるというふうに承知しております。その点で、この措置は適当であるというふうに思います。

 さらには、外国為替資金特別会計からの繰入金についても措置が法案によってなされておりますけれども、現時点において確実に発生すると見込まれる金額が計上されていて、それに限っているという点でも、この法案のたてつけというのは適当であるというふうに考えております。

 三ページ目に移りまして、本法案に基づいて確保される税外収入については、今年度だけでなく、年度を越えて、令和六年度以降にも防衛力整備のための支出に充てていくということが見込まれているということであります。したがいまして、何らかの形で年度を越えて合法的に資金を回していくということが必要になってくると思われます。

 通常ならば、特別会計を設置するということも考えられなくはないとは思います。ただ、防衛省は、そもそも、東日本大震災復興特別会計を除きまして、防衛省が所管している特別会計というのは現存しておりません。

 また、特別会計に対する見方というのは、世の中では必ずしも芳しくない面もあって、欠点ということで申しますと、そこで囲われた特別会計の資金が既得権益の温存につながりやすいというような批判も世の中にはあります。そういう意味では、軽々しく特別会計を設けるというのは、私は、その点については慎重になるべきだというふうに考えております。

 その点では、今回のこの法案におきまして、防衛力強化資金というものを一般会計に設置するということになっていて、それを当分の間設置するということになっておりますから、必要に応じて、年度を越えて資金を回していくために、一般会計において防衛力強化資金というものを設けて、そこで経理していくということは、私は適当であろうというふうに考えております。特別会計を設けるよりも、一般会計で防衛力強化資金という形で資金を管理するということの方が望ましいというふうに思っております。

 あと残された課題ということで申しますと、この法案の域を超えている面もございますが、防衛力強化のための財源というのは歳出改革によっても捻出するということが今後見込まれているというように承知しておりますので、そういう意味では、今後、財源確保のための歳出改革というものにも一層注力していただきたいというふうに望んでおります。

 四ページに移りまして、この法案を取り巻く環境ということで申しますと、そもそも、御承知のように、防衛三文書が昨年十二月に閣議決定され、その中の防衛力整備計画において四十三兆円の防衛力強化のための歳出規模が示された、経費の規模が示されたというように承知しております。

 もちろん、防衛力整備計画自体の妥当性というのは、私は軍事面での専門家ではありませんが、少なくとも、これまでの国会での審議それから報道等で私なりに見聞きをしておる範囲におきましては、一方的な現状変更が困難であるというように諸外国から認識されるような程度の抑止力を備えるというための防衛力整備であるというやに聞いております。そういう意味では、私としてもこれを支持したいというふうに思います。

 もちろん、外交があって、その後での防衛力である、国民の生命と財産を守るための防衛力であるというふうに思います。そういう意味では、もちろん、防衛力も大事なんですけれども、経済、財政、金融の脆弱性をできるだけ払拭するということも我が国にとっては大事ではないかというふうに思います。

 軍事的な緊張が高まった場合に想定される現象ということで、私も委員をさせていただいております、財務大臣の諮問機関の財政制度等審議会におきまして、昨年十一月に取りまとめ、財務大臣に手交した建議には、この四ページにありますような資料が掲げられております。

 軍事的な緊張が高まった際に想定される現象の例として、外貨が不足するかもしれないとか、日系企業、金融機関の収益が低下するとか資金繰りが困難になるというような面があるかもしれないとか、供給制約による物価上昇、それから国内金融資産からの逃避というものが起こるかもしれないという、もちろん、杞憂であってほしいし、こういうことにならないように未然に防いでいただきたいというふうには思うわけでありますけれども、そうなったときにも、きちんと、金融、経済、そして財政面でもしっかりと我が国を支えられるように、平時から備えていく必要があるというふうに考えております。

 その点に鑑みますと、五ページになりますけれども、我が国の公債依存度、これが、二〇二〇年のコロナ禍最初の年には、決算ベースで七三・五%、つまり、約四分の三が歳出の財源として国債発行に依存せざるを得なかったというような状況から、徐々に公債依存度が低下して、令和五年度予算、当初予算の段階では、公債依存度は三一・一%と、コロナ前の水準に戻ってきているという意味では、平時からの備えとして、できるだけ公債に依存することなく財源を確保して、財政余力をきちんと確保していくということが不可欠なのではないかというふうに考えております。

 私からは以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 ありがとうございました。

 次に、末澤参考人にお願いいたします。

末澤参考人 どうも、SMBC日興証券、末澤でございます。よろしくお願いします。

 私の方からは、資料、「二〇二三年の経済・金融市場の動向」というものを御用意しました。ただ、何分時間が極めて限られております関係で、今回はパーマクライシス、危機の長期化、こちらを中心に御説明させていただきたいと思います。

 パーマクライシス、これは、パーマネント、永続化、長期化という言葉と、クライシス、危機の造語でございまして、イギリスのコリンズ英語辞典、こちらの二〇二二年のワード、単語として選出されております。コリンズは、長期にわたり不安定で安心できない状態と定義しておりまして、私は、このパーマクライシスが今後長期化し、世界の経済金融市場にも大きな影響を与えるのではないかと懸念しております。

 続きまして、一ページを開けていただきまして、本日は、世界経済と金融市場の動向、あと、パンデミック、ウクライナ情勢、ねじれ議会、インフレ高進、世界経済の回復シナリオ等を御説明させていただきます。

 二ページ目でございますが、これは、端的に申し上げますと、二〇二〇年、パンデミックが起きて世界経済は一旦後退局面に入りましたが、その後、空前絶後、未曽有の金融緩和、財政出動によって世界経済は着実に回復していました。ただし、その間にウクライナ戦争も起き、また、供給制約もあって、足下では、物価上昇、インフレですね、あと、それに対応した世界の中銀の金融引締め、これが大きな問題となっております。

 三ページ目に行っていただきたいんですが、三ページ目右側。

 今、実はマーケットが注目しておりますのは、五月の二日、三日、アメリカのFRBが利上げをするかどうか。私は、〇・二五利上げして、政策金利を五パー、五・二五という水準に持っていくと思っておりますが、ちょうど一年前、去年の三月に利上げを開始しております。そのときは〇―〇・二五から上げているんですね。つまり、一年ちょっとで五%の利上げになります。この利上げペースは、一九八一年、第二次オイルショック以来の水準になります。

 四ページ目でございます。

 この背景となったのが、やはりインフレですね。これはIMFの世界経済見通しでございます。四月十一日に出たものでございます。ちょっと細かくは説明できませんが、左側のIMFのコメントのところだけ御覧いただきたいと思います。青字ですね。インフレ率は当初予想より高止まっている、地経学的な、これはジオエコノミクスでございますが、地経学的な分断化の本格的な脅威がますます高まり、分断化されたブロック間でのイノベーションとテクノロジー採用のペースが遅くなっている、こういうふうに評価されております。

 五ページ目でございます。

 五ページ、六ページは米国経済の動向ですが、一言で申し上げると、まだ米国経済は堅調です。個人消費のウェートが七割。その個人消費の原動力となっている資産効果、これは右上でございますが、過去最高水準にあり、雇用もこの一月は三・四%と、これは一九六九年以来の低水準になっておりますから、現時点ではまだ好調です。

 ただし、やはりインフレに対応した金融引締めの影響は出てきておりまして、六ページ、やはり住宅市場はやや失速しかけている、こういう状況でございます。

 七ページ目。

 三月にアメリカの地銀二行が破綻しまして、これはどうなのかということなんですが、時間がないのですが、これについて申し上げると、金融システミックリスクにつながる可能性は低いと思っております。ただし、中長期的に世界経済後退局面になれば、これは、不良債権の増加という形で、影響は不可避だと思います。

 八ページ目でございます。

 我が国も今、経済再開でこれから成長率の上昇が期待できますが、ただ、今年の一月には全国コアCPIが前年比プラス四・二%、これは、一九八一年九月以来、四十一年ぶりの高水準、やはり第二次オイルショック以来の水準になっています。

 九ページでございまして、我が国の今の経済の動向なんですが、やはりバブル期との大きな違いは、グローバル化、特に新興国の台頭と、あと少子高齢化の進展。特にインフレの関係で申し上げますと、九ページの右下なんですが、雇用の不足感が相当高まってきております。多分、このままいくとバブル期を超える人手不足になるだろうと。

 十ページ、十一ページは、これは為替と株価の動向でございますので省略させていただきます。

 十二ページまで行っていただいて、十二ページで申し上げたいのは、昨年の十月でございますが、実質実効為替相場、このグラフですと左下になります。これはインフレ調整した世界の通貨に対する円の立ち位置を示したものですが、これは、一九七〇年八月以来、つまり一ドル三百六十円以来の円安になったということでございます。

 十三ページ、これは我が国の金利と株価の動向でございまして、省略します。

 十五ページ、パンデミックのところなんですが、ここでは二点申し上げたいと思います。

 一つは、十五ページなんですが、通常、パンデミックと言っていますが、WHOの正式な今回の危機に対する名称は国際的な公衆衛生上の緊急事態、PHEIC宣言でございまして、これは、実は、二〇〇九年以降、七回発動されておりまして、二年に一度。背景に、やはりグローバル化と気候変動が影響している可能性があるということでございます。

 十六ページ、十七ページ、十八ページは、これは足下の感染者や死者の世界及び日本の動向でございますが、一言で申し上げると、収束傾向にあるということです。これは、東アジアで昨年暮れ、中国を中心に感染爆発が起きて、やはり集団免疫が相当確保できた、これがある。

 十九ページ、二十ページです。

 ただし、我が国に関して言うと、今アメリカでXBB系統がもう九九%に比率が上がっていますが、日本でも東京都で五割を超えています。

 二十ページですが、我が国では、やはり、諸外国と比べて自然感染率が低いということを鑑みますと、この夏に第九波が発生する可能性は十分あると思う。

 二十二ページでございます。ウクライナ情勢です。二十二ページはここまでの経緯。

 二十三ページまで行っていただくと、一言で申し上げると、これは長期化必至と。ちょうど三月、四月にリークされましたいわゆるディスコード・リークと言われていますが、ここでも、アメリカのDIA、国防情報局のペーパーで二〇二四年まで戦争は続くと評価されておりますが、やはり、ここまで戦争が大きくなると、サンクコスト、埋没コストが大きくなって、勝敗が明らかになる、両国が消耗し厭戦気分が高まるか、世界の警察官が仲裁に入らないと、なかなか戦争は終わらない。このどれにも当たらないということでございます。

 二十四ページ。

 そうしたところでやはり重要なのは、原油価格の動向だと思うんですね。かつて、ソ連邦が崩壊した一九八八年―九一年、またロシア危機が発生した九八年、いずれも原油価格が暴落しておりました。やはり、エネルギー価格の動向が、これはウクライナ支援に対する西側の支援疲れ、これも含めて重要だと思います。

 二十五ページ以降はアメリカの今の政治状況でございまして、二十六、二十七は、これは中間選挙に至る過程の話でございまして、二十八ページまで行っていただきます。

 結果でございます。一言で言うと、ねじれ議会。上院は一議席増となりましたが、下院は共和党が取るということで、今、実はマーケットで心配されているのは、六月以降、アメリカの資金繰りは尽きるんじゃないかと。いわゆるデフォルトですね、このリスクがあるんですが、これについてうまく法案が成立できるのか、また、来会計年度の歳出法案の行方、こういったところが懸念されております。

 三十ページですね。

 インフレ高進と欧米中銀の金融引締め加速とございまして、冒頭申し上げましたが、アメリカはまだ、利上げを一年続けておりまして、多分、今年の五月までは利上げする。これは、背景には、三十ページの右下でございますが、昨年六月のCPIが前年比九・一%、第二次オイルショック以来の上昇幅となったことがありまして、今日、第二次オイルショック以来という言葉をよく使っていますが、三十一ページを御覧いただくと、これは欧州でもそうでございまして、左上を御覧いただくと、主要国の消費者物価は、欧州では一〇%を超えているというところもあります。イギリスは三月分が出ましたが、これでも一〇パーを超えているところでございまして、いずれも第二次オイルショック以来。そうした中で金融引締めが続いているわけですね。

 最後、三十三ページでございます。まとめでございます、ここはちょっとゆっくりいきたいと思うんですが。

 今日申し上げたいのは、COVID―19パンデミックは収束、経済は正常化する、ただし、新たなリスクが浮上している、しかも、これはパーマクライシス、相当長期化すると考えられています。オミクロン株の感染爆発で、中国を含め世界中で集団免疫を獲得し、経済は正常化します。ただし、感染収束も終息せず、供給制約もあり、中長期的にはレジーム転換の可能性も考えられます。

 まず、パンデミックなんですが、通常、経済学的にはデフレ要因とされています。ただし、百年前のスペイン風邪のときも、実はこれはインフレになっているんですね。その後、ハイパーインフレになっています。当時、これは第一次世界大戦と同時で起きた要因があるんですが、実は、スペイン風邪では二千万人ほど、最大五千万人亡くなったと言われていますが、大半が若者が亡くなっているんですね。ですから、それが労働制約、いわゆる労働参加率の低下要因になっておりまして、これは実は今回も似ています。欧米でも若者は働かなくなってきている。ですから、なかなか失業率が上がらないという状況ですね。

 また一方で、中長期的なリスクということで、東西冷戦再燃とグローバル化の巻き戻し、地経学、ジオエコノミクス的な分断の深化が懸念されます。

 私は、二十世紀から二十一世紀に替わって、世界経済はよくなったと思います。なぜかというと、ベルリンの壁崩壊、中国の改革・開放政策で、二〇〇〇年以降、安い労働力や商品の供給、生産が可能になり、市場も急拡大する、軍縮で軍やNASAなどの技術者や技術が民間に移転する、こういう軍縮の影響ですね、ICT化が進展しました。結果、低インフレ、低金利、高成長という新たなビジネスモデルが生まれたんですね。

 では、今何が起きているかというと、そこら中で壁をつくっているわけでございます。今日も報道で、対ロシア向けの貿易をストップするような話もちょっと出ておりますが、やはり、中国の新体制も鑑みると、かつての大戦前、冷戦期のようなブロック経済化が部分的であれ進展する可能性がある。そうするとインフレが長期化する。また、気候変動問題は、この間、深刻化しております。グリーンフレーションの問題もある。一方で、我が国は、少子高齢化の進行、南海トラフ地震等巨大地震、火山噴火、スーパー台風等のリスクも、これは全く減っていない、むしろ増えてきていると考えられます。

 そうしたことを考えると、やはり、今回の法案なんですが、私の所見を最後に申し上げますと、私は、防衛力の抜本的強化と申し上げても、これは、言うはやすく行うは難し、一朝一夕でできるものではございません。本日御説明しましたように、我が国を取り巻く環境は、国際情勢、経済金融市場などを含めて、今後急激な変化が予想されます。まずは、二〇二七年度に向けて大幅な強化策が必要と思われます。

 一方、防衛装備品等も、新たな開発、調達は長期化が予想されます。例えば、我が国が英国やイタリアと進める次期戦闘機の開発計画はGCAP、グローバル戦闘航空プログラムですね。フランスやドイツ、スペインの計画はFCAS、ここのFはフューチャーですが、フューチャー・コンバット・エア・システム、将来戦闘航空システム。米空軍と米海軍が各々進めている計画はNGAD、これはネクスト・ジェネレーション・エア・ドミナンス、次世代制空優勢とよく訳されていますが、いわゆる第六世代戦闘機の開発計画にはファイター、戦闘機という文字が入っておりません。背景には、無人機やAIの活用等、次元が異なる装備となることが想定されているということであります。

 こういった装備品はほかにも多数ございまして、やはり環境面、装備面を取っても、当面の対応には、加えて、やはり従来以上の長期の戦力計画、そして予算が必要になることは確実であり、今回の財源確保法案の立法化が必要と考えております。

 以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 ありがとうございました。

 次に、柳澤参考人にお願いいたします。

柳澤参考人 柳澤でございます。

 時間が限られておりますので、お手元に二枚のレジュメを用意させていただきました、それに従って考えを述べさせていただこうと思っています。

 私の問題意識は、経済の専門家でもありません、この間の、昨年のいわゆる安保三文書の閣議決定以来、そしてこの国会での議論も伺いながら、どうも、これは政策に対する財源手当てを今論じておられるわけですけれども、その前提になる政策そのものの妥当性が私にはまだまだ、十分詰められているようには思えないのであります。

 そういう観点から、二つの点について主に申し上げていきたいと思っています。

 まず、いわゆる反撃能力ということなんですけれども、これは、政府の説明の論理は、そして国会における議論もそうでしたけれども、いわゆる先制攻撃になるのかならないのかということであったわけですけれども、先制攻撃にはならないというためのキーワードは、我が国に対する武力攻撃の着手があったとみなされるかどうかということなんですね。

 私はこれがどうも分からなくて、なぜかというと、相手はまさにミサイル、弾道ミサイルなわけで、弾道ミサイルというのは、発射準備にあるという段階では、実は、それがどこに向けられたものかというのは物理的に分からないんですね。撃たれてみないと、どこに飛んでいくかというのが、その撃った後の航跡を解析して初めて分かるものであるわけですね。

 そして、それに対して、ミサイル防衛システムなんかでは有効に対処できないので、発射前にそれに対応しなければいけない。そのために四百発のトマホーク巡航ミサイルを購入するというような政策の中身があるわけですけれども、ただ、このトマホーク巡航ミサイルというのは、長射程の巡航ミサイル、ジェットエンジンで飛ぶミサイルですから、仮に我が国への攻撃準備だということが正しく判定できたとしても、それを長距離の地点、離れた地点から巡航ミサイルで破壊しに行っても、恐らく数十分単位の時間がかかるはずなので間に合わないんじゃないかという、非常に素朴、単純な疑問があって、それが私はどうしてもいまだに納得できないのであります。

 これは、だから、第一撃を防ごうとする議論をするからこういうことに多分なってしまうので、恐らく、最初のミサイル攻撃というのは、これはどこの国でも防ぐということは不可能に近いんですね。だから、そこの議論じゃなくて、やられた後に、第二撃以降にどう対応するかという議論であればまだ物理的には分からないではないのですけれども、だとすると、それは、じゃ、そういう体制を持つことが果たしていわゆる抑止力になるのか、抑止として機能するかということを考えなければいけないんだろうと思うんですね。

 例えば、仮に、さっき申し上げた四百発の巡航ミサイル、これは四百発一遍に撃てるわけではありません。例えばイージス艦に搭載してそこから発射するとなると、どういう積み方をするか分かりませんが、恐らく二十発とか三十発とかが一度に撃てる数になってくるんだろう。では、それだけ撃って相手のミサイル攻撃力を減殺したところで、相手は残ったミサイルで必ず再反撃をしてくるわけですね。つまり、普通にミサイルの撃ち合いの戦争に拡大していくという流れになっていくんだろうと思うんですね。

 さらに、イージス艦が一番ああいう大型のミサイルを撃つプラットフォームとしては適しているんだろうとは思うんですが、これは、私はちょっと兵器のプロでもありませんし、弾を改造するのか発射台を改造するのか分かりませんけれども、イージス艦を改造して、反撃能力、トマホーク発射能力を与えてそういう任務に就かせた場合に、その間、つまり、ミサイル防空のシステムは使えなくなるんですね、それはトレードオフの関係にあるので。果たしてその辺の最適なすみ分けというのをどう考えたらいいのかというようなことは、私のような半分兵器の素人でも気がつくような疑問点なわけですね。こういうことをきっちり議論していく必要があるんだろうと私は思っております。

 さらにもう一つ言えば、巡航ミサイルの弾頭の破壊力は限られておりますので、地上にむき出しになっているものは破壊できるけれども、強固に防護されたような陣地を破壊するようなことはできないわけで、そういうことをトータルに考えて、これは本当に、分かりません、いいのかもしれないけれども、私には納得できるだけの構図が見えないということを申し上げたいと思います。

 それから二番目の、いわゆる台湾有事が今懸念される焦点になっていると思うんですけれども、これも私もあちらこちらで、新聞へのコメントなんかでも申し上げているんですけれども、台湾有事がいきなり日本有事になるのかというと、実は、論理的な構造はそうではなくて、台湾有事というのは中国が台湾に武力行使をすることなんですね。そこでアメリカがその防衛に参加すると、今度はそれが中国とアメリカの戦争になってくるわけで、その際に、アメリカ軍は日本の基地、日本を拠点にしないととても戦えないわけですから、日本の基地を使うことも含めて、あるいは自衛隊がサポートすることを含めて、日本がそれに協力するとなった段階で初めて台湾有事が日本の日本有事という形に変わってくる、そういう流れになっていくんですね。

 つまり、そこで日本が協力すれば日本が戦争の当事者になってしまうということ、そして、日本がアメリカ軍に協力しなければ恐らく日米同盟はもうもたないことになるだろうという、こういう実は究極の選択が迫られる、非常に考えたくもない、悪夢のような事態なんだろうと私は思っているんですね。

 次のページですが、やはりそういうことそのものを避けなければいけない。だとしたら、台湾有事そのものを何とか回避するという政治の努力が必要なんじゃないかと思っています。

 これは、台湾についての武力行使の心配というのは、中国は台湾の分離独立に対しては武力行使も辞さないと言っている、武力行使すれば米軍は守ると言っている、だとすると、台湾の地位に関する現状維持というものを改めて確認するということが、当面、戦争の動機を、敷居を下げる、下げるというか上げるというか、動機を少なくする道なのではないか。

 それは、抑止、ディターランスというのは、基本的には、武力による相手への被害を与える予測によって戦争を抑えつけるということなんですけれども、それはあくまでも相手の心理作用であって、こちらがミサイル一発持ったらその分プラスされるというような足し算の話ではないので、だから、誤算の危険も必ずあるので、それをカバーするための外交手法として、いわゆる安心供与という手段も取られている。アメリカと中国の間でも、相互のレッドラインを認識するための対話を続けるということを去年の十一月の首脳会談で合意しています。今、バルーンの問題があってちょっと中断しているわけですけれども。

 そういう形で、私は、ウクライナについてこれが通用したかどうか分かりませんが、台湾について、あるいは体制維持が最大の目的である金正恩の北朝鮮との間では、何らかの形の安心供与、つまり戦争の動機を下げる外交が可能であると思っています。

 そして、最後になりますが、国民もさることながらですけれども、戦争になれば真っ先に命を落とすことになるのは自衛隊員であるわけで、戦争が、政治の目的達成の手段としての戦争であると私は思いますけれども、だとすると、政治が何とか、政治の力で防げる戦争は是非防いでいただきたいということを最後に申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 ありがとうございました。

 次に、金子参考人にお願いいたします。

金子参考人 金子でございます。

 レジュメが三枚ほどありますので、それを見てお話をしたいと思います。

 私は、一人の財政学者として、この法案をそのまま通すことは非常に歴史に禍根を残すのではないかという意見を持っております。国会議員の方に是非意見を聞いていただくと同時に、実行していただきたいことを述べたいと思っております。

 まず第一に、この防衛費の増大がウクライナ侵略や台湾有事が本当の理由なのかということに疑問を持っております。図一を見ていただければ明らかなように、安倍政権が誕生して、後年度負担が三兆円前後だったものが、今や五兆円を超え、六兆円近くになろうとしております。そもそもその時点で、GDP一%を守ることが不可能になるようななし崩しの防衛費増大政策が行われてきた結果なのではないかということを私は危惧しております。

 同じように、なし崩し的な増大が財源においても行われようとしていることにも危惧を抱いております。

 財源は、皆さんが御存じのとおり、中期防衛整備計画五年分の対象経費二十六兆円弱に対して、四十三兆円に満たない約十七兆円をどう捻出するかということになっております。防衛力強化資金、決算剰余金、歳出改革、建設国債、残る四兆円が増税になります。

 四分の三が税外収入とされていますが、実は、ほぼ公債、国債、財投債、為券と言われる政府短期証券が主であります。一旦予備費や基金を経由しておりますので見えにくい。ほとんど防衛費と異なる財源であり、単年度予算主義からは外れており、かつ、多年にわたって支出されるにもかかわらず、国会のチェックが非常に甘い。言葉は悪いですが、透明性が乏しいので、ある種のマネーロンダリングに近いのではないかというふうに私は考えています。

 二〇二〇年のコロナウイルスの大流行以降、予備費又は基金の形を通して使途不明の予算を大きく膨らませて、かつ、それを大量に余らせているという予算の運営が行われております。予備費は、当然のことながら、本来、災害など例外的な場合に限り国会審議を経ずに支出できるということで、東日本大震災でさえ二兆円規模だったのが、二〇二〇年から二二年まで、二枚目の表一で明らかなように、これは一部繰越しがあるのでダブりがありますが、単純合計で三十兆円を超えるような予備費が計上されていて、そこから決算剰余金が出てくるのは当然であります。

 そのような予算運営がいいのかということに関しては、昨年十一月、二〇二一年度の会計検査院の決算報告によれば、コロナ事業に対して、十八事業のうち法律違反に当たる不当事項が十事業あり、未執行が実は約十八兆円あり、繰越金額が十三・三兆円あり、そして国庫に残った不用額が四・六兆円もあったということが報告されております。

 新聞、ジャーナリズムでも、昨年十二月一日、実は、十一の特別会計で、二〇一四年から二一年にわたって約六兆円の、毎年八千億円の余剰金があり、四月二十二日付の日本経済新聞によれば、コロナ予備費十二兆円のうち九兆円が具体的にどう使われたか特定することができないというくらい、国会のチェックが甘くなっております。

 さらに、今年の三月十日付東京新聞によれば、二一年度の十二省庁での百七十六の基金があるうち、休眠基金は実は二十七もあり、残高が十二兆九千億円もあるということを指摘されております。

 これらの財政運営をそのまま放置して、これを防衛費に流用するということであれば、これは、この法案をこのまま通せば歴史に本当に禍根を残すことになるのではないかということを強調したいと思います。

 昭和十一年に二・二六事件があって、そして昭和十二年、日中戦争のために臨時軍事費特別会計が国債で運用されて以降、一度の決算もないまま戦争が終結されて、その後、終戦とともにハイパーインフレーションになったという歴史を我々は知っております。

 今の日本の状況はどんどん似てきているのではないでしょうか。戦時中に匹敵する一千兆円もの国債を発行し、そのうち五百八十兆円も日銀が長期国債だけでも抱えており、中央銀行が金融政策の柔軟性を完全に失っている。こうした防衛費倍増の方針を続ければ、少子化対策や社会保障の歳出を出すこともできなくなってくる。

 更に言えば、このような後年度負担を積み上げてなし崩しに防衛費を拡大する運営を行った上で、多年度にわたる支出で、国会のチェックも利かないような予備費や基金、特会や財投、こういうものを運用目的を無視して意図的に余らせてなし崩し的に財源をつくり出すということを、止めなければいけない。

 次の四つを是非実行していただきたいというふうにお願いをして、最後の話にしたいと思います。

 一つは、五年後、後年度負担が幾らになるのか、そのための財源はどのように設定しているのか、このきちんとした見通しを明らかにするべきではありませんか。なし崩しの防衛費増大が今日の事態を招いたとするならば、四年の任期しかない国会議員が、歯止めをかけるためのきちんとした国会のチェックの機能を果たさなければいけないというふうに私は考えています。

 第二に、巨額の予備費の、あるいは基金の形を取ったものが、その使途が一体どうなっているかを明らかにするべきではないか。予備費の使途を明らかにできないならば、予備費は直ちに削減するべきではないか。二兆円に対して三十兆円は、余りにも野方図な財政運営であると言わざるを得ません。少なくとも、新型コロナウイルスが五類へ移行するというふうに政策をしている一方で、二三年の五兆円の予備費がいかなる根拠で計上されているのか。この点も矛盾すると思われるので、直ちに精査するべきであるというふうに私は考えています。

 第三に、膨大な貿易赤字は、二二年度、二十一・七兆円まで積み上げていて、産業衰退が非常に憂えられている。その中で、やがて経常収支の赤字になりかねないような状況で、マイナス金利の政策で短期国債の財政負担が軽いからといって、外為特会を隠れ財源として流用していいのかということは、議論が残る点だと私は思っています。少なくとも、将来の日本経済の状況に対するリスクに対する甘さというのを私は危惧しております。

 四番目に、歳出改革の具体策が明らかになっておりません。もしそれが基金などの余った余剰資金の圧縮であれば、それは決算剰余金と出どころは同じになりますし、あるいは、外為特会以外の特別会計の余剰金を使ってやるならば、これまた、国債発行を意図的にマネーロンダリングして出していくような、つまり、見えにくい形の資金を防衛費に充当させるというやり方であります。

 少なくとも、こういう野方図な財政運営は、憲法八十三条の財政民主主義に最も反する事態であります。それを抑えながら、真に国民に役に立つような予算運営というのに心がけていただきたいというのが、私が持っている願望であります。是非私の願いをお聞き届けいただくようにお願いして、発言を終わりたいと思います。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。津島淳君。

津島委員 自由民主党の津島淳でございます。

 四名の参考人の先生方には、大変示唆に富む、そして貴重な、それぞれのお立場からの御意見の開陳をいただきました。まず、心より感謝申し上げます。

 戦後日本において、我が国の防衛、そしてそれに係る財源について真っ正面から議論が行われる、今まさに私はその場に立っているわけで、これは、今を生きる者の責任として、次の世代にもどういう形の日本を残していくかという部分で非常に重要な議論をまさに行っている、そのように考えています。

 そういった中で、今日の参考人の皆様への質疑で一体どのような質疑を行えばいいのかというのは、非常に、この質疑の登板が決まったときから思い悩んでまいりました。真っ正面から法案について質疑をすべきか、いやいや、そうではなくて、もっとそもそも論のところから話をしようか。今、むしろそのような方向で、まずそもそも論から話をしていきたい、そのように考えてございます。よろしくお願いします。

 まず、土居先生とそれから金子先生、お二方、経済学の御専門ということでお聞きをしたいんですが、そもそも、国防ということ、我が国流でいうと防衛ということになるんですが、公共経済学というカテゴリーの中では、国防に係る装備だとかというのは、典型的な公共財、純粋公共財と言われている。この純粋公共財とは何ぞやということですけれども、これは複数の者が同時に消費可能であるという性質、非競合性と、対価を支払わない者でも消費できるという性質、非排除性を併せ持った財・サービスとして定義をされている。私はさように認識しているんですが、まず、この定義というのは、認識は間違いないかどうか、そこをお伺いしたいと思います。まず、土居参考人、金子参考人、お願いします。

土居参考人 お答え申し上げます。

 津島先生の高い見識がお示しされたと私も思っておりまして、まさにそのとおりでございます。

 特に、国防については、必ずしも自分自身が税などでの負担をしなくても、安全保障によって、その国の中で生命と財産が守られるということはあります。もちろん、一々、国防、安全保障によってもたらされる便益を、その便益に応じて負担を求めるということはなかなか難しいところがございますので、そういう意味では、幅広く財政運営の中で財源を捻出して、そして、必ずしも直接その便益と一対一でひもづいているわけではないけれども、みんなで財源を負担して、そしてみんなで便益を享受していくというものにおいては、まさに安全保障というのは非常に重要な純粋公共財であるというふうに思っております。

金子参考人 財政学の一般的な定義としては、津島先生のおっしゃるとおりです。

 ただ、大砲かバターかとかいういろいろな問題があるように、国民の合意の下にしっかりと負担がどうあるべきかを考えるべきであって、別段、その定義は全体の金額を決めるわけではないということをあらかじめ申し添えたいというふうに思います。

 以上です。

津島委員 ありがとうございます。

 広く国民にとって便益がもたらされる重要な分野というのが国防であると。一方で、国民的な合意というものが大事であるとの金子先生の御示唆もありました。

 その国民的合意というのはどういったことでもたらされるのか。これは我々政治家の役目としては非常に大きいものがあると思うのですが、やはり、安全保障、あるいは平和を守るということは、これはどういう立場にあるにせよ、みんな同じ思いでこの場にいるはずです、国会という場に。国民のものである国会にいるわけですね。では、その平和を達成するためにやはりあらゆる努力というのが日々行われていて、そこには当然コストというものが発生して、それを何がしかの形で負担をしていただくというのが大前提であると思います。

 その負担というものをよりちょっと深掘りしていくと、じゃ、税の世界で、負担能力による応能負担によるのか、あるいは、便益を受けた者がその便益を受けた程度に応じて負担をする応益課税によるのか。その二つの考え方に立った場合、安全保障、国防に関しては、一体に世界各国は応能負担でやっている、そういうふうに考えます。

 一方で、国民的合意の基となるのは、平和を達成するための障害となるリスクというもの、これを客観的に評価をし、そのコストというのはどのぐらいなのかということをきちっと明示をしていくということも極めて大事なことだと思っております。

 そこで、リスクということで、この点について、末澤参考人、柳澤参考人、お二方から、それぞれの立場からの御意見の開陳があって、少し補完的にお尋ねしたいことがあります。

 まず、台湾有事に関して。私、一つ考えておかねばならぬことは、いざ事が起きたときに、台湾から避難してくる方が当然に日本に来るわけですね。なぜそのことを思うのかというのが、まさにロシアによるウクライナ侵攻があったとき、多くの避難民の方が、まず隣国ポーランド、そこからヨーロッパ各国、そして日本にも来ているという現実があった。

 実は私、昨年四月、そのウクライナ避難民の状況を、当時、政府、法務省に副大臣としておりましたので、林総理特使の随行という形でポーランドに行っていろいろ調査をした。そういう経験があって、あのとき感じたことは、ポーランドが一番の避難民の受入れ国であって、巨額の財政負担というものを、これはある意味、国民の間で今もって、合意は得られた形になっています、しかし、やはり一部でも、巨額の財政負担はどうなのかという意見も出てきております。そして、ヨーロッパ各国においては、避難民の受入れの人数であるとか、それからウクライナからの距離で、やはりその考え方に温度差があるようにも受け止めています。そして、歴史的にロシアとの関係で、様々、第二次世界大戦、歴史があった国では、よりウクライナに協力的なのだなということも感じております。

 さて、じゃ、台湾有事というときに、その避難民ということを考えたときに、どうしたって日本に来るであろう避難民の方を、これは人道的には受け入れざるを得ないと思います。そして、その方々を、単に、避難をしてきた、助けを求めてきた人として受け入れて物を与え続けるということでは、本当の支援ということでは私はないと思っていて、やはり自立ということを考え、いずれかの職に就いていただくとか、当面の間は、自分で物を買うという、ある意味生活する上で基本的な行動というものをやっていただくために現金支給ということをやっていかなければいけないなどといろいろ対策を考えるときに、財政的な負担がかかってくるということがあります。これは日本として、まず台湾有事に関して私は考えておかなければいけないことであろうと思っています。

 もう一つは、自然災害リスクということは、これは当然に、日本国内の固有のリスクとして評価をしておかなければいけないし、そこでも財政負担というのは生じる。

 以上の私の考え方について、末澤参考人それから柳澤参考人から、それぞれ御見解をいただきたいと思います。

末澤参考人 よろしくお願いします。

 まず、台湾有事に関しまして、本日御用意しましたペーパーの三十六ページに、これはアメリカの政府及びOBの発言を網羅しておりますが、相当な方々が、台湾有事、二〇二七年に比べて可能性はあるということを言っています。ただ、これはウクライナ戦争の際も、ニューヨーク・タイムズが報道、ワシントン・タイムズですかね、が報道したように、事前にこういう発言をすることで抑止をするという面もあると思いますので、実際に確率はどこまで高いかは分かりません。ただし、相当可能性がある。逆に言えば、これは避けなきゃいけないということでこういう発言が出ていることを考えると、それに対応することは我が国は必要だと。

 実は、おっしゃるとおり、仮に起きた場合、やはり島が近い沖縄県に相当な方が来るのは間違いないということで、そういったシナリオも、事前には、水面下においても考えておく必要はあるんだろうと思います。

 一方で、自然災害。これは、気候変動の問題でスーパー台風等の発生が今後予想されるとともに、我が国独自の問題として、巨大地震、火山噴火の問題もございます。いわゆる南海トラフ地震、これは三十年内の発生確率が約七五%程度、首都直下型地震も三十年内の確率が七〇%というふうに試算されておりまして、だからすぐ来るということではないんですけれども、仮に起きたら、これは相当な被害を受ける。やはり、防災、減災の観点からもこの備えは必要である。

 ということで、逆に言えば、相当次元の異なるワイズスペンディングをやって、いわゆるバッファーをつくっていくということが私はやはり必要だろう、これは防衛力の強化においても、全ての面でそうかと思います。

 以上でございます。

柳澤参考人 台湾有事の際の避難民の受入れのようなことは、これは当然やらなければいけないことだと思います。

 そこで考えなければいけないのは、これは実は、政府の文書の中でも南西諸島の住民避難の問題意識が述べられているわけですけれども、しからばどこに避難させるかというときに、現在のコンセプトでは、沖縄本島も実は安全とは言えないので、九州まで避難させるというようなことが住民の場合は言われています。これは実は、離島の住民だけではなくて、そこにいる外国人であろうと観光客であろうと、やらなければいけないこと。台湾から避難される方がおられるとすれば、それも基本的には同じような扱いにしなければいけない。

 ただ、問題はやはり、長期化する場合に、そして、戦闘が終わってすぐに帰って生活が再建できないときにどこまで生活保障的なことを考えていくかというのは、これはそのときの判断だと思うんですが、そういうことも踏まえて、そういうところにお金がかかるのは当然であります。

 ただ、私は、それだけでは済まない、つまり、避難したからそれでいいよねというわけにはいかないので、だから、そういう危機的な事態にならないような前広な外交努力を大いにやることこそが政治に期待される一番大きな役割ではないかということを申し上げたいと思っているわけであります。

津島委員 ありがとうございます。

 末澤参考人から、次元の異なるワイズスペンディングということが大事であると。ということは、きちっとリスクに対応するために、それに係る予算というのをきちっと見積もる上で、そのリスク評価というのはやはり大事なことである。

 そして、そういう御指摘があって、それから柳澤参考人から、その事態に至らしめないための外交努力、これはもちろん私はすごく大事なことであって、現実的なリスクに対していかなる備えをするのかということをやりつつ、やはり外交努力ということをやらなきゃいけない。

 その面では、この三年間というのは、我々国会議員、政府においてもそうでしたけれども、直接対面での対話ということの機会が得られなかったというのは非常に、そういう意味では、単に三年という時間を超えたロスというのが私はあったと思っております。しかし、今からこのコロナの状況を踏まえて外交努力というのをしっかりやっていく必要があるというのは、当然に認識をしております。

 さて、その上で、きちっとリスク評価をして、その上で、備えのための予算というものをどのように負担していくかということを国民の皆様にきちっと説明をしていくということになってくるわけです。

 先ほど、基本的に応能課税で賄われているということを申し上げました。この応能課税によって防衛財源は基本的に私は賄われるべきであると思っておりますし、そのためには、制度設計として、税制の中立性だとかそれから公平性といった租税原則を勘案しつつ、個人の担税力というものを端的に反映する課税ベース、所得とか消費とか、そして、対象を個人にするのか法人にするのかということを選択して税率を決定すべきと考えております。理論的にはそうなんです。

 そして、新たな負担というものをお願いしなければいけないときに、その新たな負担というのをいつから始めるか、どのような形で行うかということも、これは極めて慎重にその実施するタイミング等を計っていかなければいけないということも当然にあります。

 しかし、そもそもの話として、税によって賄われるべきだという私の考え方について、これは土居参考人、そして末澤参考人、お二人にお聞きをしたいと思います。

土居参考人 お答え申し上げます。

 まさに、基本的には税である。もちろん、増税する前にすることがあるだろうという話もございますから、無駄な支出があるならばそれは抑えて、そして、そこで財源が浮くならばそれも新たな経費の増額に充当していくということは大事なことだと思いますが。

 元々は、そもそも、歳出削減によって確保できた財源というのは、国民が負担した税金によって賄われることになったであろう歳出だったわけなので、元をたどれば、歳出削減も、税で国民がその財源を負担しているというところに、元がそこにたどり着けるということになりますから、結局は、もちろん決算剰余金も、元をたどればといえば、税金である。

 もちろん、一時的に国債を発行するということがあったとしても、それはいずれ国債を償還するときには税で賄われるということになりますから、タイミングがずれていたとしても、いずれかの時期において国民が税金で負担をするということになるという意味においては、すべからく国民の税である。

 もちろん、税という形以外の負担の仕方というのは、それはそれとして別途あったとしても、一般名詞で言うところの税という形で、何らかの形で、法律に裏づけられた形で国民に御負担をお願いするということが財源の根源であるというふうに考えております。

末澤参考人 まず、御参考に申し上げますと、米国では、国防予算はちょっと違うんですが、義務的経費等の恒久的な増については、ペイ・アズ・ユー・ゴーということで、恒久的な財源、これは歳出カットか増税が必要だということでございます。

 ただし、実は、今年一月にアメリカで下院、共和党が取りまして、共和党は新たに規則を改正しまして、カット・アズ・ユー・ゴーという原則をつくりました。これは税は駄目なんですね、新たな歳出増には全て歳出カットを充てなきゃいけない、こういうことで、相当厳しいものでございます。

 私は日本でそこまでやるとは申し上げませんけれども、やはり、長期的な財源というのは、税なり長期的な歳出カット、つまり、五年後、十年後でも安定的なものである必要がある。ただし、今回これは急いでやる必要がありますので、短期的な対応と中長期的な対応は、別途、分けて考える必要があるんじゃないかと考えております。

 以上でございます。

津島委員 ありがとうございます。

 そうなんですよね。直接的な税負担ということが、国民の皆さんからすれば負担ということに捉えられがちですけれども、歳出削減ということもある意味許容していただくということは、何がしかやはりそこは負担をお願いするということになりますし、そこをやはり我々率直に国民の皆様に言えるかどうか、我々の覚悟が問われている、そういうときに今我々はいるのだということを再認識いたします。

 そしてもう一つ、土居参考人からお話があった国債、特例公債について、これについて少し、あと五分ですので、これは全ての参考人の皆様にお聞きをしたいと思っております。防衛予算に特例公債を充てることについての是非ということになります。

 我が国では、もう先生方も御承知のように、これまで特例公債の発行対象に防衛費を含めてこなかったということであります。これは昭和四十一年の当時の福田赳夫大蔵大臣の答弁などが端的に表しているわけです。

 しかし一方で、理論的には、防衛装備品について物理的な耐用年数が認められると考えますし、政府は、それを調達した上で配備をし、それを自衛隊員等の資源と組み合わせて運用することで国民に防衛サービスというものを提供している、そういう考え方が成り立つんだと思います。それを前提とすると、防衛サービスのコストというのは、そのサービスの便益が生ずる期間にわたって負担されるべきという考え方が成り立つのではないかと思います。

 そして、二〇〇九年二月に、国連の統計委員会で、国民経済計算をめぐる新しい国際基準、二〇〇八SNAというのがあります。ここでも、一年を超えて使用される防衛装備品が固定資本として扱われている。

 こうした流れというのがあって、我が国でも、令和五年度予算では、一部防衛設備や防衛装備に建設国債を充てるということがなされたわけですね。

 しかし、こうやって理論的には可能であるということが成り立つとする一方で、じゃ、実際に建設国債を充てるとして、そして固定資本として扱うとして、耐用年数をどう客観的に示すのかという実務的な課題。そして、我が国財政に対する圧迫要因というものにも当然なり得ますので、国際的な信認ということ。そして、いざというときの財源調達。ということは、例えば、自然災害が発生したときにどれだけ財政余力を残しておくのかという部分でも、これはやはり慎重にならざるを得ないだろう。そして、歴史に学ぶべきこと、歴史の教訓から得た今の財政法の規定というものも、我々は法に基づく法治国家でありますので、当然に尊重しなければいけないということであります。

 ですので、理論的には可能であっても現実には難しいというのは私は思っていて、よって、まず、今回の法案のような、行財政改革によって財源を出していく。その中身についてはこれからまた国会で議論をしてまいりますけれども、国債については私はそういう考え方でおるんです。

 この点について、最後に、多分これで最後の質疑になると思いますので、各参考人の先生方から御見解をいただきたいと思います。

土居参考人 お答え申し上げます。

 建設国債の考え方というのは、便益が将来にも及ぶということですので、その建設費を今の国民だけに税負担を強いるというのではなくて、恩恵を受けるであろう将来の国民にもその建設費の一部を御負担をお願いするという発想の下に定義されていると思います。もちろん、建設国債発行対象経費の定義というものは、歴史的経緯があっていろいろ定義が変わって、むしろ範囲は拡大する方向ではあるというふうに思います。

 今回の防衛装備品にまつわる建設国債発行対象経費の定義の範囲の拡大というところは、私が聞いておりますのは、防衛目的でない施設などで既に建設国債発行対象経費になっているものが、防衛用であるということでもってそれは対象経費でなかったというものの整合性を取ったということが、今回の定義の改正だったというふうに承知しております。

 ですから、その点においては、防衛目的であろうがなかろうが、国民に対して長年にわたり便益をもたらすということであれば、それは定義を統一して、防衛用であろうが民生用であろうが、同じように建設国債発行対象経費にするということは適当であるというふうに思います。

 もちろん、不必要に国債を増発するということはやはり慎まなければならないということですから、赤字国債、特例公債については、しっかりと財源を税などで別途確保して、できるだけ特例公債の依存から脱却していけるような財政運営に心がけていただきたいなというふうには思っております。

末澤参考人 現在、我が国では、国債の償還は六十年でございます。ただ一方で、原則、建設地方債であります。地方債の償還は三十年ということでございますので、ある面、三十年程度の償却年数があるものにつきましては、建設国債を充てるということは、考え方としてはあり得ると思います。

 ただし、今日も申し上げましたように、我が国を取り巻く環境、また少子高齢化等を考えますと、将来的な歳出増要因が本当にすごいことになっている。やはり余裕があるときにバッファーをつくっていく、そのためには、なるべく国債の発行は抑えるということが基本的に必要だと考えております。

 以上でございます。

柳澤参考人 私は、現役の官僚であった頃には、財政法の原則というのは、国債で戦費を調達した反省を踏まえて、防衛の分野には使わない、そういう背景があって続けられてきたんだと思っています。ですから、それにチャレンジするようなことは全く考えておりませんでしたし、そして、本当にやっていこうとすると、実は、防衛装備品というのは、正しく本来の目的に従って使うことは、それは消耗することにつながるわけですね。

 ですから、余り、私は、財源の便宜だけのためにこういう原則をいじるような議論は、個人の思いとして、していただきたくないと思っております。

金子参考人 歴史的な経緯から、臨時軍事費特別会計で国債を、赤字国債で軍事費が歯止めを失った。結果、最終的にはハイパーインフレになった。だから、そういうところから、赤字国債を避けなければいけないという歴史的教訓がある。

 それを避けるために、では、国債費や基金という形で、ほとんど国会のチェックも利かないようなものを膨大に膨らませて、そこから決算剰余金やあるいは歳出改革でお金を出すというのは、迂回しただけで、赤字国債が出どころになっている可能性は十分にあるので、それをしっかり精査することが大事なんだと思うんです。

 特に、予備費の金額は異常に膨張していますし、基金も膨張が異常ですし、中身はほとんど使途がチェックできないという状態であれば、赤字国債が出どころであろうがなかろうが、そのこと自身がまず間違いであるんですが、それが財源の裏づけとして赤字国債になってしまう可能性が非常に高い。

 それから建設国債も、赤字国債と違って、本来ならば、経年でいろいろな、あと、効果が後年度で残る可能性があるんですが、軍事の場合には非常にセンシティブで、これがいわゆる歯止めを失って、建設国債ならば何でもいいということになったら、そういうことになってしまう可能性を秘めているのが一点と、それから経済効果という意味では、橋や道路と違って、普通の国民にとって、経済効果というのが見えにくいわけです。だから計測することが非常に困難であるという上で、なおかつ、外国製の武器を買ったときにそれがどういうふうに経済効果として及ぶのかということを考えたときに、建設国債であればいいという話にもならないような面をたくさん抱えているので、きちんと精査しなければいけないというのが私の意見であります。

 以上です。

塚田委員長 津島君、質疑時間が経過しております。

津島委員 ありがとうございました。終わります。

塚田委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 本日は、参考人の皆様に御質問させていただきます。早速質問の方に入りたいと思います。

 まず、土居参考人の方にお聞きしたいと思います。

 「本法案に基づいて確保される税外収入等について、今年度だけでなく、年度を越えて、防衛力の整備に計画的・安定的に支出してゆくことが必要」というふうに、先生、資料の中にも書かれておりますが、私もそういうふうに考えます。

 防衛力強化税外収入は、国有財産の処分などの税外収入であって、国会の決議を経た範囲のものとなりますが、通常の税外収入として扱うものと区分けすることになると思うんですけれども、その判断基準について、何か先生のお考えがあれば教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

土居参考人 お答え申し上げます。

 今回の税外収入というのは、単年度で見ますと、過去になかなか例のないほどの大きな金額の税外収入ということになっております。もちろん、国有財産の売却だとかそういうものは、必ずしも今年度中にしなければならないというほどの必須性というのはないかもしれません。

 だけれども、じゃ、令和六年度以降に売却できるとかというようなことになったとして、その売却収入が確実に防衛力強化のための財源に充てられるかどうかという保証は、今年度にコミットしない限り、来年度になったら来年度の事情でほかのものに使われるかもしれないという可能性があって、そうすると、元々その防衛力強化のために財源が必要だと言っていたところに穴が空いてしまうというようなことになりかねないということで、あらかじめ早期に今年度において手当てをして、それをきちんと収入として実現して確保して、それを防衛力強化資金という形でキープするということは、私は非常に適当な措置なのではないかというふうに思っております。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 続いて、また土居参考人の方にお聞きしたいんですけれども、今回のウクライナ侵攻をしたロシアに対して先進国がまず取ったことが経済制裁だったことを挙げられて、安全保障上、経済基盤が重要であると言われて、本日の資料の方でも、我が国経済、金融、財政の脆弱性として、軍事的緊張が高まった際に想定される現象例を挙げられていますし、有事にしっかり耐えられる経済、金融、財政とするための、マクロ経済運営が特にあれだと思うんですけれども、平時から行っていくことが安全保障上でも不可欠であるというふうに言及されておられます。

 物資不足、物価上昇、経済悪化のリスクに直面する中、民間の社会経済活動を維持しつつ、侵攻に対して国家として立ち向かうための財政余力が不可欠というふうに言われておりますけれども、これは一番は、具体的には備えが大事だということだと思うんですけれども、先生、最初、お時間もなかったと思いますので、この財政余力が必要、この財政余力ということについて、もう少し、規模感も含めて、具体的にどういうことを先生が一番言われたいのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

土居参考人 お答え申し上げます。

 一番、目に見える形で財政余力ということで申しますと、私の資料の最後のページの五ページにありますように、国債を発行するだけの余力を残しておくということは、これが全てではありませんけれども、一つの目に見える指標としてあると思います。

 まさにコロナ禍で、最初の二〇二〇年度において国債を大幅に増発して、それで国民生活を支えたということがありました。もちろん我が国の政府債務残高は大きいものがあるんですけれども、日銀にも助けられたという面もありますけれども、何とかコロナ禍でも国債を増発して国民生活を支えたと。

 もちろん、これからコロナ後の経済を見据えて平時に戻していかなければいけないということですので、いつまでも国債を増発する形で財政運営を行っていくということになると、いざ次のリスクが起こったときに、更にもっと国債で賄うということが本当にできるのかということになったりするということではないかというふうに思いますものですから、できるだけ平時は国債に依存しないような形で財政運営を行っていく。そして、いざ事が起こった、起こってほしくないですけれども、いざ事が起こったときには、そのために、国債を増発することで国民生活が支えられるということであるならば、しっかりとその財源を確保する。その財源を確保するという余力を平時から残しておくということで、有事の備えになるのではないかというふうに思っております。

山崎(正)委員 いわゆるこういうふうな軍事的緊張が高まった際に想定される現象として、今度は末澤参考人にもお聞きしたいんですけれども、末澤先生が、現在の世界の最新の経済金融情勢、今日は様々教えていただいたんですけれども、末澤参考人さんから見たときに、軍事的緊張が高まった際に想定される状況や、それに対する日本が備えなければならないことについて、御知見があれば教えていただきたいと思いますが、どうでしょうか。よろしくお願いいたします。

末澤参考人 まず、私は、金融市場、特に国債市場に関して申し上げると、いわゆるキャピタルフライト。かつて、よく外国人が日本の国債を売るので金利が上がるというような説明がされたことがあるんですが、私の経験では、私は一九八〇年代から債券のディーラーをやっていますが、そういうことはほとんどございません。大半の金利上昇は、国内の金融機関が売却したことなんですね。

 日本の場合ですと、やはり九〇%以上は国内が保有しています。特に利付国債については水準が大きいので、やはり日本人自身が、日本のことは危ないと思わせない、つまり、安全保障、また経済金融市場、いずれも大丈夫だ、ステーブルだ、安定しているというふうに思わせる、思っていただく、自信を持っていただく、これが実は一番重要じゃないかと思っています。

 以上でございます。

山崎(正)委員 続いて末澤参考人にお聞きしたいんですけれども、末澤参考人が、財政制度審議会財政制度分科会において、アメリカと日本は防衛力の強化等については方向性は同じだが、財政収支を均衡させる財政保守主義については、少し強まっているアメリカと日本とは全く逆であると言及され、アメリカは恐らく自分のポケットに人が突っ込むという意識があるのではないか、日本は余り将来の赤字を考えない、恐らく我が事として考えていないというふうに、日本が相当遅れていると言われている投資教育と財政教育の両方をやるべきだと提案してくださっています。

 末澤先生が考えられる投資教育と財政教育というのは、具体的に、例えばどの発達段階、例えば中学生からなのか、高校生からなのか。また、具体的に必要だと思っている投資教育と財政教育の中身について、末澤先生の御知見をお伺いしたいと思います。

末澤参考人 先ほどの、実はアメリカの下院のカット・アズ・ユー・ゴー原則の話とも関連して申し上げたんですが、日本と米国を比べますと、向こうは移民国家、日本は相当長い歴史を持った国家でございまして、やはりそういう国民性の違いもあると思うんですが、米国では、いわゆる国債発行、歳出増、いずれも将来ないし今の自分のポケットからお金を突っ込まれると思っていらっしゃる方が共和党の支持者を中心に相当多い。ですから、今年の一月のアメリカの下院規則改正では、新たな歳出増については、別の歳出で、カットによって財源をつくらないと、つまり増税でも駄目だという、相当極端な規則が作られたわけでございます。

 翻って、我が国においては、相当、ある意味家族主義だということで、家族主義というのはすごくいい面もあると思うんですが、ただ、逆に言えば、いろんな日本のリスクだとか将来の問題を我が事、自分事で考えにくい。いつかは親が、周りが見てくれる、こう思っていらっしゃる方も相当多いんじゃないか。

 ただし、現実には、我が国の少子高齢化はもう世界で断トツに進んでおります。いわゆる老年化指数といいますが、六十五歳以上人口を十五歳未満人口で割った比率は、我が国は何と二五〇%。世界で二〇〇%台の国はないんですね。ということは、将来は相当、ある面、私は厳しいと。そういう面では、財政とともに自らの投資、資産も、ある面、資産所得倍増計画もありますが、増やしていって、当然、国として守っていただくとともに、自分で自分の身を守るということの必要性もやはり一つ考えていただく。

 そういう面では、財政教育と投資教育を両輪として、ここから広めていくことが必要なんじゃないかという趣旨で申し上げた次第でございます。

 以上でございます。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 済みません、また続けて末澤参考人にお聞きしたいんですけれども。

 昨今、経済安全保障の世界的な情勢で、今、最近の報道であるように、人口が、インドが中国を抜いて一番になったというふうな報道がされていますが、今まで、特に中国は一帯一路というふうな流れの中で、しっかりグローバルサウスの国々というかそういった方々に今までは投資を行ってきたんですけれども、このグローバルサウスの方々が債務について、借りている国々の人から最近疑義が唱えられ始めまして、これから中国においては非常にそういったところの難しいかじ取りが迫られているというふうに思うんです。

 先生、これは先生の御知見で構わないんですけれども、そもそも聞きたかったのは、中国のファイナンス自体というのは、どういうふうな状況になっているのかというか、どういうふうな中身になっているとかというのが、もし御知見があれば教えていただきたいなと思いますが、よろしくお願いいたします。

末澤参考人 まず、中国に関して見ると、外貨準備は日本に次ぐレベルですし、米国債の保有額も、今はちょっと日本がトップですけれども、相当近接した、大きな資産を持っています。

 やはり、さっきも申しました、二十世紀以降グローバル化が進む中で、中国は特に米国また欧州等に輸出することで外貨を稼ぎ、またそれを国内のインフラ投資にも充ててきましたから、私は、現時点では相当まだ国力は強いと思っています。

 ただし、人口は減少に転じ、また中国の場合は少子化、つまりこれは、一人っ子政策をずっとやってきた経緯がありまして、現時点ではまだ老齢人口は日本より比率で少ないんですが、この状況が続くと、例えば十年後、二十年後は相当国力が落ちる。そのために中国もいろいろなリストラクチャリングを多分本来しなきゃいけないんですが、ただ、現実的にはなかなか進んでいないということで、インドに人口等も抜かれてきておりますから、私は、中国もこれから十年後、二十年後には日本が直面したような大きな試練に向かうことになるのではないかと考えております。

 以上です。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 続いて、土居参考人は、防衛装備品について、長年にわたりそのまま安全保障上の効力を持ち続けるものは年を追うごとに少なくなるだろうというふうに、五年や十年もたてば周辺国が強化する軍事力に陳腐化する装備品が続出することもあり得、そうなると短期間で更に高度な防衛装備品を購入しなければならないため、国債で防衛費を賄うと、その恩恵を受ける期間がごく短くなり、その元利償還費の負担が長期にわたり国民にわたるため、国債を増発しての防衛費の拡大はよくないというふうな見解を示されていると思います。

 それとともに強く主張されておられるのが、防衛力整備を規模ありきで進めると、有効でない防衛装備品を割高な値段で購入することを容易にしてしまうと指摘され、国民の生命と財産を守るためにはどんな防衛力が必要かを考えることが求められる、真に効果的な防衛力を整備するために質の高い防衛費とすることが重要であると述べられて、防衛費の積み上げが重要であるということを指摘されています。

 それで、今回、四十三兆円というふうな額が積み上げられてきたんですけれども、本当に、真に効果的な防衛力というところとこの四十三兆円という今回の積み上げに対する御所見といいますか、こういったところを、できれば土居参考人とまた末澤参考人、それぞれにお聞きしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

土居参考人 お答え申し上げます。

 今回の防衛力整備計画で四十三兆円という金額が示されました。

 私が最初に聞いたのは、昨年の十二月八日の岸田総理からの御発言で四十三兆円という金額を知りました。それまでの経緯は後になって知るんですけれども、その十二月八日時点では全く存じておりませんでしたものですから、四十三兆円という金額を聞いて、中身がよく分からないな、規模ありきということになっているということだと大変心配だなというふうにその瞬間は思いました。

 その後一週間たって、令和五年度予算政府案が閣議決定されました。その同日に公表された財務省の資料には、その四十三兆円というものがどういうものから成り立っているかということが示されていて、私は直接軍事の専門家ではありませんから、事細かく、ミサイルが何発だとかというところは存じませんけれども、少なくとも、七つの重要な分野において四十三兆円というものをこういう形で割り振って金額を示すんだということが示されましたものですから、それは、四十三兆円という最初の御発言は、金額が最初に示されたという印象を持ちましたけれども、後にしっかりとその内容が示されたということは大変重要なことだったと。つまり、積み上げていると。

 そして、本当に四十三兆円という規模が妥当なのかどうなのかというところについては、私自身は軍事の専門家ではありませんので、それは軍事的にどういうような必要性があるかということはきちんと防衛省なりが御説明なさるべきなのではないかとは思いますけれども、防衛省側のお話をお伺いしていますと、元々は四十八兆円という要望だったんだ、それが四十三兆円という形になったと。では、この五兆円ほどのものの差額というものは何なのかというふうに私が問いましたところ、経費の節減、調達の工夫、そういうようなものを講じることによって、必要な装備品は四十八兆円として要望したときと変わっていないけれども、最終的に四十三兆円で決着したというような御説明を防衛省の方から私自身が直接賜りました。

 私は、それを信じておりますけれども、そういう意味においては、もちろん、その内容の妥当性は今後国会でも御審議されるんだと思いますけれども、少なくとも私が今日時点で聞いている話を踏まえますと、それなりのしっかりとした根拠を持って四十三兆円というものを計上されたんだというふうに思います。

 それともう一つは、増額をする部分において、国債を発行しないという形で財源を賄うということ、まさにこれが、今、財務金融委員会で御審議されておられます財源確保法案だと思いますので、そういう意味では、そこに国債が充当されていないということ、増額部分のところにおいて充当されていないということは適当な判断なんだろうというふうに思います。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

末澤参考人 四十三兆円の妥当性ということでよろしいですか。

 こちらも御参考までに申し上げますと、今回、日本でも、GDP比二%というのはNATO基準だと。NATO基準というのは、海保とか遺族年金とかそういうのが入りますので、いわゆる日本の防衛費とはちょっと違いますけれども。

 NATOは、二〇一四年の首脳会議だったと思いますが、ここで、二〇二四年ないし二〇二五年までにGDP比二%基準を作るという宣言を出しています。ただ、昨年段階で二%を超えているのは、アメリカとイギリス、二国だけなんですね。ただし、ウクライナ戦争を受けて、ドイツは、御案内のとおり、一千億ユーロのファンドをつくり、また、今一・五%のを二%にするというプログラムをつくっています。フランスも、ちょうど今月、LPMというんですが、軍事予算法案というのを出しまして、七年計画なんですけれども、四〇%増の予算案を出しておりまして、これによって数年後には二%を超えてくる、今一・九%ぐらいなんですが。ということで、多分、一・五程度にとどまるのはイタリアとカナダだけということでございます。

 そういう意味では、我が国はかつて、本当に専守防衛で、平和憲法でやってきておりましたが、やはり、諸般の環境が相当変わってきているということと、同盟国との関係を遵守するとなると、一つ目標として二%というのはあり得る。

 ただし、先ほどから申し上げましたように、要は中身なんですね。全く実際に実効性のないものに予算を使っても意味がございませんから、ここは本当に一から見直していただいて、本当に次元の異なる防衛力整備計画、中身が実効性のあるものになるように、本当にこれからも引き続き見直しは必要だと考えております。そういう面で、妥当ではあるけれども、今後のフォローが極めて重要だと思っています。

 以上でございます。

山崎(正)委員 それでは、最後の質問になるんですけれども、先ほどそういった、両参考人のお話の中からも出てきたんですけれども、本当に今回、土居参考人の方も、経費の増額に必要な財源を先送りすることなく事前に確保して明示している点が高く評価できるというふうに言われています。

 また、やはり、防衛費のための追加の税負担を国民に正面から問い、負担増と歳出増のバランスをうまく取って、多くの賛同を得ることによって、国民の生命と財産を守ることが重要だということは、土居参考人も今まで言及されてきたと思うんですけれども、やはり本当に、これからそういうふうな形で命を守るということで、この負担が起きてくるといいますか、歳出が出てくるんだというふうなところへの説明責任と合意形成が何よりも重要であると思います。

 この点について、特にこういうふうな説明が国民になされていくべきじゃないかというふうな御知見がございましたら、また申し訳ないですけれども、土居参考人、末澤参考人からそれぞれいただければと思います。よろしくお願いします。

土居参考人 お答え申し上げます。

 私自身の軍事の専門家ではないという立場から申しますと、防衛力整備計画において、重要な七つの分野がある、それぞれ、もちろん直接的に、国民保護とかという部分は余り説明をしなくても、ああ、これで国民が守られるんだというふうに思うわけですけれども、それ以外のところで、必ずしも安全保障についてお詳しくない国民の方でも、どういう形で国民の生命と財産が守られるのかということを、詳しく丁寧に、防衛省なりに御説明をいただくということが非常に重要なことではないかというふうに考えております。

末澤参考人 やはり、アカウンタビリティー、国民に対する、極めて詳細で、若しくは分かりやすい説明が必要だと思います。

 ちなみに、地政学、ジオポリティクスという言葉なんですが、こちらは金融市場でも、使われたのはちょうど二十年前です。私の記憶だと、二〇〇二年に、アメリカのグリーンスパンFRB議長がG7財務相、首脳会合で発言して、それが議事録に載ってから一般に使われるようになったと考えています。

 背景は、二〇〇三年春にもいわゆるイラク戦争が発生するということが、もうマーケットにも相当織り込まれていたんですが、さすがにイラク戦争リスクという表現はできませんでしたので、グリーンスパン氏は地政学的リスクということを言った。それ以来、日本は金融市場でもすごく使われています。

 最近出てきているのは、先ほど申しましたが、ジオエコノミクス、地経学ですね。地理と、あと経済でございます。

 なぜ地経学という言葉がここ数年出てきているかというと、これは私はグローバル化の影響だと思うんですね。

 かつて、冷戦体制、二極化しているときは、戦争が起きても、別に経済には直接、いわゆるオイルショックのようなケースは別ですけれども、起きなかったんですが、もう今はグローバル、ロシアとの関係、中国との関係、本当に経済は結びついていますから、何か起きると止まってしまう。今、実際、止まっているんですが。ということは、つまり、大きなそういうリスク、戦争に至らない段階でも、実は国民生活に相当大きな影響が出てくるということなんですね。

 ですから、やはり、いろいろな意味のリスクを本当に我が事、自分事として理解していただいて、必要なところにはいろいろな意味で御負担を本当にいただけるような環境をつくっていくということが必要だと考えています。

 以上でございます。

山崎(正)委員 以上で終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 各参考人の皆様におかれましては、本当に専門性に基づいたすばらしい御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 私の方からは、早速、二十五分間ですので、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、この四十三兆円という我々の議論の前提の、安全保障環境の厳しさとそれに対する日本の対応ということで、柳澤参考人の方にお聞きをしたいと思います。

 防衛問題については、アメリカの意向を聞きながら防衛省はやってきたとか、あるいは日本はやってきた、そういううわさもよく入ってまいりますし、また、二〇一四年に、NATOの方でGDPの二%を防衛費に使うというのも、基本的にはアメリカのイニシアティブでやられたというふうに聞いております。十年後に防衛費を二%にするということでございます。

 今回、日本が急に五年間でGDP二%まで引き上げるんだ、こういうことをやはり余りマスコミの方にはメジャーに伝えられていませんけれども、アメリカと岸田総理が約束をしたということからも始まっていると思うんです。

 そういった中で、このGDPの二%ですか、これで四十三兆円というのは、これはアメリカの方から圧力がかけられたのではないかと言われたときに、岸田総理の言い方で言うと、そういうふうにアメリカから要請されたことはないということだったんですけれども、実際に日米で、日本がアメリカの武器を大量購入をしてきた経緯、あるいは日米安保条約の存在、そういったところから、やはりアメリカから何かそこは大きな要請があったのかな、そういうふうに懸念を持たれている方も多いんですけれども、柳澤参考人の役所におられた体験とか、そういったところから、どういうふうにお考えになられておるか、お伺いしたいと思います。

柳澤参考人 ありがとうございます。

 私は、どういう形で具体的にアメリカとのやり取りがあったかというのは実は分かりませんが、客観的な流れを見ると、去年の二月のロシアのウクライナ侵攻があって、そして、NATOもその姿勢を変えてくるわけですね。そういう中で、日本も、国内的にも防衛力増強という意見が非常に高まってくる。そして、具体的に、GDPの二%というようなのは、恐らくNATOで言われていることも参考にしたとは思うんですが、それ自体は別に、防衛的な効果にとって何の意味もないことだと私は思うんです。

 岸田総理とバイデン大統領が、今年一月に首脳会談を行って、方向性が一致しているということを確認されたわけですが、実は、国家安全保障戦略なんかの文言をずっと読んでいきますと、アメリカの国家安全保障戦略で使われているような表現なり論理と非常に似通っているわけで。向こうの方が去年十月で先に出ていますので、それを意識して書けば、それは方向性が一致するのは当たり前だろうなとは思っているんですが、私が懸念しているのは、むしろ、今、国際情勢が厳しいということの内容なんですね。

 今、我々が一番影響を受けるのは、アメリカと中国という二つの核大国が、いわゆる、俗に言えば覇権争いの真っ最中である、その関係が極めて不透明、不安定である、そのはざまに日本が置かれている、そこをどうしていくのか。以前のような、冷戦期のような相対的な安定が米ソの間にあったのとは違う大国関係があって、そのはざまに日本がいる中で、どのようにして戦争に巻き込まれないようにしていくかということが今問われている。

 そういう認識の違いが、恐らく、安全保障戦略の中でも、アメリカの主導する自由で開かれた国際秩序が中国の挑戦によって脅かされているから、それを排除して守ることが安全保障の最大の目標というような定義の仕方をしていますので、そういう定義からすれば、それはアメリカと一緒にやっていくという方向に当然なっていくわけですが、果たして本当に、考えておくことはそれだけでいいのかというようなことをもっと広い視野から考えてみる必要があるんじゃないかと私は思っております。

末松委員 全く同感でございます。

 特に、自公政権の中で、敵地攻撃能力、反撃能力と最近言っていますけれども、これもアメリカが、強大になってきた中国、これをどこかで差し止めるんだという、中国の挑戦という言い方を日本の政府もやり始めていますが、中国を抑え込むという、この表現は非常ににじみ出ているんですよね。そういうことを、何か仮想敵国のような表現というのは、私はまずいんじゃないかとは思っているんです。

 その中で、その敵地攻撃能力というのは、要するに、言い方として、ミサイルの基地なんかをたたくと同時に、さらに、表現が、指揮統制のある場所についても敵地攻撃の場所だというふうに規定しているということは、私は、実は、自公政権の発想ではない、そこまで日本人が考えられるのかと。これは専門家が言っているんですけれども、やはりここは、アメリカが、もし台湾有事になったときに日本の自衛隊を下請で使うためにやっているんじゃないかという御意見もありますけれども、その辺についてはいかがですか。

柳澤参考人 そういう、何というんでしょうか、アメリカ陰謀説的な御意見もあるのは承知しているんですけれども、私、アメリカという国は一貫して、自分の同盟国あるいは友好国であっても、自分の国益に合わない戦争に巻き込まれたくないというのが、アメリカの一貫した国家の傾向なんですね。

 台湾についても、実は、そこのところが非常に、特にウクライナについて軍事介入を否定していたということもあって、台湾世論の中でも、本当にアメリカはいざというときに来ないんじゃないかということも気にしている。アメリカ自身も、専門家のウォーゲームなんかを見ましても、本当に中国本土の攻撃みたいなことを政治が許可するんだろうかというふうなことを危惧しているというようなこともある。

 そういうことを見ていると、本当にアメリカが日本の自衛隊に中国本土を攻撃するというミッションをやらせようとしている、あるいはやってほしいのかというのは、どうも私にはよく理解できない。そういうことをしようとしたら、アメリカはむしろちょっと待てといって止めに入るようなメンタリティーではないかという気もするんですね。

 そういうことも踏まえて、いわゆる反撃能力の議論というのが、さっきも申し上げたように、本当に抑止の議論としても全く私は詰められていないと思いますし、それに伴う犠牲の強要の議論も全くなされていないわけですから、そういうことも踏まえて、その意味で、日本の防衛政策の大転換なんです、この部分はね。

 だから、アメリカの捉え方も含めて、日本なりの独自の新しい防衛政策の構築というのは、ここは本当にいろいろな多角的な議論をして、何よりも、結果、かえって心配になっちゃいけないので、本当に安心できるような結論に到達するという作業が非常に求められているんじゃないかなという思いでおります。

末松委員 どうも、極めて慎重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 私、日本が武力攻撃されて、これに対しては日本としては当然反撃をするという形で今進められていると思いますけれども、その場合、日本とアメリカが統合司令部をいずれつくるというふうに言われている中で、日本の防衛力も、ここでこの四十三兆円という、それ以降もGDP二%に相当する額をずっと保っていくという、かなりの防衛力増強になっていく中で、この前の本会議で私も代表質問をやったときに、日米の共同作戦、もしそうなった場合、日本の反撃能力の活用がアメリカから要請された場合どうするかというふうに問うたら、岸田総理の方が、我が国の主体的判断の下で運用されるので、日本が戦争に巻き込まれることになるか、あるいは日米同盟を破綻させることになるかという選択につながる問題ではありませんと言い切ったわけですね。

 これは、国民に対して、ちょっと何か、もうほとんどそういう戦争の危険もないんだよというふうに、何か誤ったような、楽観論というか、お花畑の議論をしているんじゃないかと私は非常に危惧をしているわけでございます。

 実際、柳澤参考人が今言われたように、アメリカが日本に対して、自衛隊に対して何かをしろということは、可能性は少ないんじゃないかという話もございましたけれども、ただ、米国と中国がある意味、じゃ、戦争になったときに、在日米軍の存在そのものが、先ほどもおっしゃられていましたけれども、それが、日米同盟との関係で日本が協力を示せば、当然、中国から見たら敵国に当たるわけですから。中国が思うだけじゃなくて、北朝鮮とかあるいはロシア、この前、昨年の九月に、中国とロシアは、自国の核心的利益に対しては相互に援助する義務ということも決めていますので、そうなったときに日本が非常に厳しい。

 もし、アメリカの米軍に支援をすれば中国と対戦、もし、しなければ、日米の防衛関係が破綻というところまで、本当にそこは究極の問題に発展すると思うんですけれども、いかがですか。

柳澤参考人 私は、先ほどの、冒頭の意見陳述の中でも申し上げました、特に台湾防衛、アメリカ軍の拠点である在日米軍基地がどうしても必要ですから、そこからの出撃というのは、実は事前協議の対象ともされているわけです。加えて、自衛隊にも、当然、後方支援とか情報支援とか、そういったことは要請してくると思うんですね。日本の基地を拠点にして、中国との、ありていに言うと戦争になるわけですから、それはもう当然日本は戦争当事国にならざるを得ない。そういう流れの中で、日本に対するミサイル攻撃というのも、当然、予想しておかなければいけないわけですね。

 だから、結局、そういうふうになっていくだろうということが一方であるわけですね。しかし、そこは自主的に判断するからそうはならないということは、論理的には、そういう話ではなくて、自主的に判断するがゆえにそうなっていくということなのですね。ですから、これは、私は、政治には、もう極めて、何というか、本当に最も深刻な、究極のナイトメアの問いだと思うんですね。それは、そうならないようなことを、まさに政治でしかできないことなんですから、それを是非真剣にお考えいただきたいと思っているわけであります。

末松委員 私も全く同感でございます。

 私自身も、本会議でも言ったんですけれども、イラン・イラク戦争のときに、ちょうどバグダッドで外交官として、スカッドBというミサイルが私の家のすぐ前にも落ちてきて、本当に、何といいますか、とんでもない場面を、戦場を見させられたという思いがあって、そういう中で、本当に一旦戦争が始まると、日本も、日中あるいは日ロ、日本と北朝鮮なんという話になっちゃうと、こちらも全くとんでもないことになるので、これは絶対避けなきゃいけない。

 そういった意味で、柳澤参考人が言われた台湾の独立というのは、そこはちょっと何としても、我々として、我々の安全保障として、それは制止していかなければならないなというのを前にも予算委員会で言ったわけでございます。

 さて、次に、金子参考人にお伺いをさせていただきます。

 先ほど申し上げているように、二〇二七年に、八・九兆円プラスアルファ、大体十兆円ぐらい防衛費がかさむということになる。これを三十年続けたら、約三百兆円の防衛費が我々の予算から出ていくことになると思うんです。一旦この防衛費、通ったら、そう簡単にはこれを下げるということはできないと思うんですね。

 そこで、私の方で一番懸念するのは、日本で財政余力がなくなってくるということでございまして、参考人が先ほどから申し上げておられるとおりなんですけれども。

 日本の場合、今、借金のGDP比率が二五〇%前後だということで、戦争を遂行できるような状況でもない中で、更に防衛費が突出して我々の予算にどかっと組み込んでいけば、先ほど参考人がおっしゃったように、日銀の金融政策の柔軟性が全く今ないということと同時に、今度は、財務省を含めた日本の財政政策の柔軟性が今後またなくなってくる。これは、参考人が先ほどるるお述べになったところでございます。実は、そういう、憲法九条を持った国でそれほどまた防衛費にかけるというのもちょっと、私からしたらなかなかこれはのみ込めないところでもあるんです。

 日本の経済全体の中で、例えば、これから利上げの状況が、今どんどんインフレの関係で上がってきています。だから、幾つかの世界的な中での、銀行も破綻したり、そういう状況がある中、こういう防衛の予算を一挙に増やすということで、経済というのはちょっと、ここは大きな、何といいますか、破綻の可能性も含めて、ちょっとやばくなるんじゃないか、まずくなるんじゃないかという思いがあるんですけれども、参考人の正直な御感想をお願いします。

金子参考人 国債費が非常に累積しているのも問題なんですが、日銀の政策が事実上、金融政策が麻痺状態になっているのは御存じのとおりだと思うんですね。実際に、財務省は、金利が一%上がると国債費が二〇二五年で三・七兆円、二%で七・五兆円というふうに言っていますが、想定している名目成長率が三%なので、恐らくそれで済まない、そんな成長をした実績はこの数十年ないわけで、そこは非常に厳しい。

 それから、国会の答弁でも、二%上がると日銀が持っている国債の含み損が五十兆円になると。事実上、もう国債を売れないで、日銀の中でロックインしちゃう状態になっちゃうので、そうすると非常に、国債が一千兆円あって動いているんですが、長期債で五百八十兆持って、残った部分が投機マネーが狙いやすい状態になるわけですよ。実は、薄くなっちゃうんですね、マーケットそのものが。日銀が貸して無理くり介入しているみたいな異常な状態が続いている。さらに、金利が上がったときに、今の貸付金が非常に累積されていって、四十兆円を超えるゼロゼロ融資の残高が今、いわゆる返済に迫られてきつつあるわけですね。この状態の中で野方図にずっと財政赤字を続けていって国債を累積させていけば、リスクがもっと大きくなっていくよと。つまり、金融政策のところが動きが取れない、こんなにインフレなのに日本だけが金利が上げられない状態というような異常な状態が、麻痺状態なんだというふうに私は思っているんです。

 そのときに、さっき言ったように、十兆円ずつやったときに、四分の三税外収入になっている状態で、しかも国債をマネーロンダリングみたいに別に出した形でやったときに、いや、国防が必要だということはあったとしても、自分の身の丈に合っていないような状態でやることは実際はできないので、そこで国債が非常に累積したときのリスクは、通常の財政破綻とかいうようなのどかな話ではなくて、金融政策も巻き込んだ形で問題が発生する可能性が高いというふうに私は思っているわけです。

 だから、合意が必要だといったときに、有識者会合だけで安保三文書をやって、国会の議論が十分になされていない中で、国民的合意が曖昧な中で、歯止めを失うようなことが起こるんじゃないかということをさっき危惧したのは、意思決定、つまり、先ほど末松議員がおっしゃったように、本当に議論した上で必要な国防の強化なのかどうかということに疑問を持たざるを得ないんですね。

 私は別に軍事の専門家じゃないですけれども、先制攻撃というのは、普通は、戦略核について、核弾頭を持ってそこに燃料をぶち込んでいくときに、相互に人工衛星で監視しているから先制攻撃で使えなくなっているというのが現実に使う議論なんだと思うんです。

 ところが、普通の戦術核の問題や、通常兵器で先制攻撃を防ぐなんということはできないし、最近見たJアラートで見れば分かるように、事実上、アメリカの人工衛星のレーダー機能で、それに依存してやらざるを得なくなっちゃう。そうすると、自分たちの国が自分たちで開戦するという決定権がそもそも奪われちゃう状態で、自主防衛という名前には値しないような事態になる。

 おまけに、トマホークに至っては、巡航速度が非常に遅いので、多数撃たないといけなくなったら全面戦争になるわけです。では、撃たれたときに反撃するというとき、つい最近起きたことは、ポーランドで、撃ち込まれたときに、NATOが実際にそれを止めるわけですよね。なぜかといったら、後で見ればウクライナの誤射だったと。だから、きちんとした、戦争が起こるときに、どういう形で合意をして、国民の中で意思決定を透明にしながらやるかというような歯止めの措置というのをしっかり真剣に考えないままこんな防衛費の拡大というのをやったときに、武器の使用に関しても、きちんとしたコントロールを国会ができなくなっちゃうということに私は危惧を持っています。

 財政が破綻する危機は、金融危機も含まれているということの上で、きちんとした議論を、コストのリスクをしてほしいということを強調したいと思います。

 ちょっと長くなって済みませんでした。

末松委員 済みません、ちょっともう時間がなくなってしまったんですけれども、せっかくお二人、末澤参考人とそれから土居参考人、今日来られているので、一言だけ、ちょっといいですか、最後に。

 末澤参考人の方から、パーマクライシスというのがございました。例えば、本当に、パンデミックの第九波とか、ウクライナの復興支援で奉加帳が回ってくるとか、それから大震災が起こるとか、こういった場合、それの何か予算技術的なところが、何か積立資金とか、そういう形の形式があるのか。

 それから、土居参考人には、それがそういった中で起こった場合に、今の四十三兆円の仕組みでいいのか。

 その二点だけ、お聞かせいただければと思います、これで終わりますので。

塚田委員長 それでは、まず末澤参考人、持ち時間が経過しておりますので、簡潔に御答弁いただければ、ありがとうございます。

末澤参考人 ファンドということですか。

 一言申し上げたいのは、いろいろなリスクが膨らんできますので、やはり、これはIMFなんかも最近提言していますけれども、今後、財政バッファーを確保しておくことが必要だと。いろいろな備えですね。備えあれば憂いなしといいますけれども、いろいろな意味の様々なリスクに対する備えが、やはりふだん、特に平時においてはつくっていく必要があるということだと思います。

 以上です。

土居参考人 お答え申し上げます。

 もし国民が合意して、その四十三兆円という規模が必要で、それが税で全て賄ってよいということであれば、今回の財源確保法案のような、いろいろな資金を集めるというようなことはしなくても済んだのかもしれませんが、それは今の政権の御判断ということもあるのかもしれませんし、全てを増税でというのでは、その負担増はかなわぬということで、国民の暗黙の批判といいましょうか、そういうことなので、まずは増税をする前に様々な歳出改革も含めた財源の確保ということをなさっておられるというのが今回のこの法案なのではないかなというふうに評価しております。

末松委員 どうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 本日は、貴重なお話、ありがとうございました。

 日本維新の会の藤巻健太と申します。

 私、十五年ほど前、慶応の経済学部の学生だったので、当時から、金子先生と土居先生、お名前はもちろん存じ上げておったんですけれども、先生方の授業を取っていたのか一生懸命思い出そうとしたんですけれども、余り授業に出ていなかったせいか、全然思い出せませんでした。申し訳ありません。もしかしたら教え子かもしれないし、そうではないかもしれない。先生お二人のお話を聞いて、非常に懐かしい思いをしたような気もしますし、全くそんなようなこともないような気もします。そんな私ですけれども、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 柳澤先生にお伺いいたします。

 台湾の地位を現状維持することに成功したとしても、結局、台湾有事というのは中国の思惑次第、究極的には習近平国家主席の政治的思惑次第かなという部分はあると思うんですけれども、台湾有事を避けるためには、日本にできることというのは具体的にはどういうことがあるのでしょうか。また、台湾有事が本当に起こる可能性、時期についてはどうお考えでしょうか。

柳澤参考人 台湾をめぐる対立関係というのは、つまり、中国の譲れない目標というのは、やがて台湾を統一して、中国は一つだという主張が元々あるわけですから、それを実現する。

 そこで、私は、今の習近平の政権の末期にその遺産をつくるためにやるんだとか、あるいは、そこで軍の体制が整うからそこが危ないんだとかいう、それはそれで警戒するのは別に構わないと思うんですけれども、やはり、私は率直に言って、仮に中国が武力を行使してくる段階はどの段階かというと、平和的な手段で統一を実現することが不可能になったと彼らが考える段階だと思うんですね。それは典型的には、台湾による独立宣言であるとか、あるいはそれを何か国家がサポートするとかいう動きになったときに、もう黙っていられなくなるんだろうと思います。そういう意味での政治的な動機というものがあるので、仮に指導者が何とかしたいと思って願望していても、あるいは軍事力が整ったから今が絶好のチャンスと思ったとしても、やはりそういう大きな動機に照らして判断されるものだと思っているんですね。

 そこでどうするかといえば、もちろん、台湾問題の解決というのは、これはもう台湾の人たちは中国との統一なんか全く望んでいないと思いますし、これをどうするかというのは、実はジェネレーション単位の時間が必要なんだろうと思うんですね。それは彼らが、両岸の当事者が自由意思で判断してお決めになることで、それがどういう選択であろうと、それを我々は、周りの国がとやかく言うことではない。何が困るかといえば、武力を使ってはいけないというのが我々の基本的な立場。それをもうかなりはっきりさせているわけです。

 問題は、さっきも申し上げたように、台湾が分離独立する、習近平の昨年の党大会の政治報告の中でいえば、この武力の行使というのは、外国による干渉とか、それから一部の分離独立勢力に対するものであるということを言っているわけですね。ですから、それは暗に、アメリカがそれを後押しして干渉するな、そして分離独立のような政治的な動きをするなという牽制でもあるので、ですから、本当に、お互いに、現状維持の中身自体も少しずつ、じゃ、下院議長が行ったらどうなんだ、今度は総統がアメリカを訪問したらどうなんだというようなことで、お互いにチキンゲームをやりながら探り合いをやっているような状況が続いています。

 ただ、その中でも、何とかこれを五年、十年、さっき申し上げた、もうこれで平和統一が不可能になったと言わせないような条件を維持していくということが一番大事なポイントだろう、そのために日本もできるだけのいろいろなサポートがあり得ると思うんですね。そんなことをもっと前広に考えていけるんじゃないかと思っております。

藤巻委員 先生の方から先ほど、アメリカは自国の利益につながらない戦争はしないと。私もまさにおっしゃるとおりかなというような感覚を持っているんですけれども、アメリカというのは本当に最終的に台湾を守るのかというところをちょっと思っていまして、中国と戦争するというのはとんでもないことなわけですよ。場合によっては自国の滅亡すらあり得るような、そんな危機です。

 台湾というのは、確かにアメリカにとってはインド太平洋戦略における要衝なのかもしれないんですけれども、自国の究極的には滅亡の危機を冒してまで守るのかというところも思っておりまして、自国を侵攻されでもしない限り中国とは絶対に戦争したくないというのが、これがアメリカの本音なのかなというふうにも思っておりまして、逆に言うと、習近平国家主席も、そういった本音が分かっているから、台湾侵攻に踏み切る可能性はあるとは思うんです。

 つまり、中国と台湾が戦争することはあるのかもしれないんですけれども、中国とアメリカが戦争するという可能性は極めて低いのかなというふうに私は思っているんですけれども、そこに対する御見解はどうでしょうか。

柳澤参考人 中国とアメリカの大国同士が戦争する敷居はかなり高いというのは、そう思います。

 実は、ウクライナの防衛のために米軍を派遣しないと言っていたのも、これは同盟国ではないということはあるんですが、一方で言えば、理屈を言えば、台湾も同盟国ではないわけですね、国連加盟国でもないわけなので。

 最近のウクライナ支援疲れのような流れの中でも、中国に対する対抗心という意味では超党派のアメリカの潮流がありますけれども、じゃ、しかしそこで本当にアメリカの兵隊を送り込んでアメリカの青年の血を流すのかということになると、昨年九月のバイデン大統領のCNNのインタビューでも、血を流すのかと聞かれて、イエスとは答えた、ただ、その後に、アンプレシデンテッドな武力行使があればという留保をつけるわけですね。

 やはりそこのところは、本当にぎりぎりのところで、かなりいろいろな危機管理のフェーズがあって、いきなりはとにかくぶつからないような、そういう仕組みも今軍の間では模索されていると思いますけれども、そういうことをやりながら、とにかく、どこかでお互いが、ここをやらなければ武力行使しないよねという確かな点を探っていく、そういう外交が今求められているし、アメリカは、やはり自然発生的にでもそういうことを今やって、模索している段階であると私は思います。

藤巻委員 おっしゃられるように、私も同じような感覚を持ってはいるんですけれども、明確な主権国家であるウクライナへの侵攻ですら、アメリカを始めとする国際社会は直接的な介入には踏み切らなかったわけです。

 主権国家であるウクライナですら国際社会が直接介入しなかったということを考えると、中国が台湾に侵攻した際に、中国は多分、これは自国内の台湾という一地域における反政府組織の鎮圧だというような建前で恐らく侵攻するのかなというふうに思うんですけれども、国際社会というのはこれを明確にはなかなか否定するのは難しいかなというふうに思います。逆に言うと、アメリカは、台湾侵攻は内政問題であるという中国の主張を我々は明確に否定できない、明確に否定できないのだから軍事介入はしないというような大義名分を持っているというふうにも思うんですよね。

 その観点からも、やはり、仮に中国が台湾に侵攻したとしても、アメリカは直接的に介入することはなく、武器供与などで終わらせる可能性が高いのかなというふうに思うんですけれども、ちょっと同じような質問になっちゃうんですけれども、どうお考えでしょうか、柳澤先生。

柳澤参考人 これは本当に決め打ちはできない話なんですけれども、私も、昨年八月のペロシ下院議長の台湾訪問を受けての中国軍の行動パターンなんかを見ますと、今回もそうですが、どうも、いきなり大軍勢を台湾に送り込んで占領しようというような戦い方を考えているというよりは、台湾を孤立させ、封鎖させるような戦い方をしてくるのではないか。そのときに、だから、かえって、アメリカの方は、その包囲網を破って台湾に武器支援を続ければ、そこでいつ不測の事態になるかも分からないということで、判断を預けられるわけですね。私は、どうもそんな形で物事が、仮にあるとすれば始まるのかなという感じがしています。

 そうだとすると、一九六二年のキューバ危機のような、首脳レベルでの危機管理の瀬戸際の外交というのが働く余地はまだまだあるのだろうというふうに思います。そのときに日本の政治リーダーも、そういうオプションも絶えず頭に入れて、そのときにあんた何しに来たのと言われないような関係はつくっておく必要が、欲しいなというふうに私は思います。

藤巻委員 ありがとうございます。

 ちょっと話が変わるというか、また柳澤先生にお答えいただければと思うんですけれども、ロシアによるウクライナ侵攻の帰着点というか、今後の展開というのはどう予想されておるでしょうか。

柳澤参考人 これは本当に悩ましい状況です。単に戦闘状態を止めようとするのであれば、ウクライナは西欧の武器支援がなければ恐らく戦い続けることができないと思いますので、武器を止めれば、それはロシアの思いどおりという形での停戦というのはできると思います。しかし、それは認めてはいけないことなんですね。まさに主権国家、主権平等の原則に、戦後の世界秩序の一番根本的な原則に違反しているわけですから。

 ただ、そこの点で抵抗を続ければ続けるほど、被害は増えていくわけですね。恐らく、さっきの、ほかの参考人からちょこっとお話がありましたけれども、やはり戦争というのは両方が本当にくたびれ果てるまで終わらないんだという見方もあります。それから、双方が妥協しないと、どこかで停戦というのはできない。

 そうすると、私は、例えば、アメリカと中国が、この際ほかの争いはさておいて、この戦争を止める一点で、そしてその戦後秩序構築の保証人の役割も果たすということで、そういう仲介者としての能力を、能力というのは、双方の当事者に対する保証を与えられるというのと、停戦条件に反したときの懲罰ができる能力という意味で、やはりアメリカと中国が一致するような戦争の止め方というものが今本当に真剣に求められているんじゃないか。というのが、実は、戦争が始まったのは、アメリカの秩序に反対するようなロシアの発想はあるわけですね、今また米中の間でそういう国際秩序をめぐる確執、対立があるわけですが。ここは、だけれども、そこにこだわっていてはこの戦争は終わらないんじゃないか。

 私は、今そんなことを考えると、道のりは長くても、こういう戦争があった機会ですから、そういう価値観の対立ではない、戦争をとにかくしてはいけない、戦争を止めなければいけない、そこに向かっての大国間の新たな合意のようなものをつくっていくチャンスにしていかなければいけないかなという思いでおります。

藤巻委員 ありがとうございます。

 今度は北朝鮮の方なんですけれども、北朝鮮の最終的な目標というのはどこにあるのかなというふうにお考えなのでしょうか。核弾頭搭載可能なICBMを完成した上で、その軍事力を背景に、アメリカと外交、経済の交渉、ある意味対等な立場に近いような形で交渉のテーブルに着くところにあるのでしょうか。どうでしょうか。

柳澤参考人 北朝鮮については、私は、さっきから申し上げているのは、戦争の動機がどこにあるかということをベースに物事を考えるんですが、北朝鮮が一番必要としていることは何かといえば、今の金王朝の政治体制の維持だと思うんですね。それを破壊する能力と、もしかしたら意思を持つ一番怖い相手はアメリカですから、そのアメリカをいかに抑止しようかという、アメリカを抑止するための核・ミサイル開発ということ、それが北朝鮮の一貫したモチベーションだと思っているんですね。

 トランプの時代に、二〇一八年にシンガポールでトランプと金正恩の首脳会談がありました。あれはいろいろな見方はありますが、私は個人的には、あれは金正恩もかなり本気で、アメリカが体制を保証してくれるのと引換えに、将来にわたって核の廃棄ということを話合いのテーブルにのせてもいいと思っていたと思うんですね。

 その後、アメリカの政権交代もあって、また、アメリカはその後ずっとほったらかしていますので、北朝鮮としては、この間に、話合いよりは、まさにアメリカに対抗できる抑止力として彼らなりのものを持つことによって、もちろん、戦争したら滅ぼされることは分かり切っていますから、北朝鮮からしかけるというオプションはないと思うんですが、アメリカに対する、いわゆる刺し違えの最小限抑止としての能力を持つ、それによって、アメリカも気が変わったら話合いのテーブルに着け、その代わりこれは昔ほどやすくはないぞ、こういうポジションをいつでも取れる、そんな状態を今続けているのかなというふうに思います。

藤巻委員 柳澤先生、ありがとうございました。大変勉強になりました。

 続いて、財政の方の質問に移らさせていただきたいんですけれども、先ほどもあったんですけれども、日本の累積赤字の対GDP比、これは約二六〇%ほどです。これは世界で断トツで悪い数字でございます。ちなみに、二番目に悪いのはギリシャの二〇〇%ほどなんですけれども。

 まず、率直に、この今の日本の財政状況についてどうお考えになられ、どう捉えられているのかなということを聞きたいんですけれども、先ほど金子先生には少しお話しいただきましたので、土居先生と末澤先生、お答えいただければと思います。

土居参考人 お答え申し上げます。

 非常に悪化しているというふうに思います。我が国の財政状況というのは、今でこそまだ金利は低いですけれども、金利が低いから、何とか、先生御指摘のような政府債務残高対GDP比でありながら、大きな災いが国民生活には及んでいないということでありますけれども、いざ事が起こってしまうと、非常に国民生活にも悪影響を及ぼすようなものになるのではないかという意味では、できるだけ今後は国債に依存しない財政運営にしていただく必要があるんじゃないかというふうに思います。

末澤参考人 国際的に断トツな政府債務の対GDP比率ということでございます。

 ただ、じゃ、それがなぜ成り立っているかというと、我が国の対外純資産が世界一だということで、過去、戦後我が国の国民が本当に苦労して働いて、輸出して膨大な外貨準備と対外純資産をつくった、その備えがあるから、現時点では市場は安定しておるということだと思います。

 ただし、今日申し上げましたように、我が国は相当少子高齢化が進んでおりまして、潜在成長率はどんどん下がっていく。昨日も出ましたけれども、昨年の貿易収支が二十一兆円という過去最高の赤字でございます。要は、かつてほど稼げないんですね。稼いでいるのは所得収支、つまり配当、利子ということでございまして、この収支というのは、割と、案外不安定です。つまり、お金持ち、大企業のもうけですから、これが本当に国内に戻ってきているかどうか分かりません。

 しかも、今日申し上げたように、三つほど私は大きなリスクがあると思っておりまして、一番長期的には少子高齢化ですね。これがずっと進んでいくと、やはり今ISバランスが悪くなって、本当に、経常収支も、今は黒字でございますけれども、赤字化するおそれがあるということ。あと、やはり、南海トラフ等大きな巨大地震が起きると、これで前回、東日本大震災でも相当サプライチェーンが壊れて、これでまた貿易が相当沈滞したということがあるんですが、本当に、日本の成長率をどんと下げる可能性がある。あと、最後は、台湾有事等、地政学的な問題がございます。

 つまり、いろいろな長期的な問題、あと短期的なリスクを考えると、やはり、今まだ余力がある間にそういった問題を解決していくことが絶対必要だというふうに考えております。

 以上です。

藤巻委員 ありがとうございます。

 おとといもちょっと大臣と議論させていただいたんですけれども、プライマリーバランスの黒字化、これを二〇二五年に達成すると大臣は明言されているんですけれども、コロナ禍だとマイナス三十兆ぐらいの赤字ですし、コロナ禍以前もマイナス十兆ぐらいの赤字が続いております。

 率直に、二〇二五年のプライマリーバランスの黒字化というのは達成可能だと思いますでしょうか。土居先生、末澤先生、金子先生、それぞれお答えいただければと思います。

土居参考人 お答え申し上げます。

 私は、歳出改革努力をきちんと維持すれば達成可能であるというふうに考えております。

 その根拠と申しますと、消費税率は一〇%に上がりましたけれども、過去最高の税収というものを、コロナ禍でありながら過去最高の税収を更新しているというような状況。今のところ、欧米経済が大きく落ち込むというようなことさえなければ、これから我が国はコロナ禍の打撃から抜け出していく局面に入っていくということですから、コロナ禍でも過去最高の税収が入っているということであった上に、これから我が国ではコロナ禍から脱却していく経済に入っていく、そういう予想ですので、今のところ、大きく税収が落ち込むということは考えにくいというふうに思います。

 ただし、歳出改革努力は引き続き続けていかなければいけない。これは内閣府の中長期試算でもそのようなことは示されておりまして、そういう意味では、不要不急の歳出をきちんと改革して、そして収支の改善につなげていきさえすれば、あと二年、つまり二〇二四年度と二〇二五年度というこの二か年度を頑張って乗り切ると、二〇二五年のプライマリーバランス黒字化というのは見えてくるのではないか。少なくとも、一度はそういう、財政健全化目標を達成したという成功体験を我が国で持つべきなのではないかというふうに思います。

末澤参考人 私は条件次第だと思います。過去の内閣府の試算を見ると、これは一貫して、歳出歳入、両方水膨れした試算になっているんですね。ということは、何が言いたいかというと、税収が維持できれば、歳出カットによって達成可能です。ただし、税収が、これも相当水膨れした数字ですから、何らかの外的な要因等で世界景気が後退するとかになれば、これはかつて先送りされたように厳しくなる。ですから、やはり相当前提つきな試算ということだと思います。

 以上です。

金子参考人 内閣府の中期財政試算で、目標を達成されないで、ずっと延期が続いているわけですね。現状で名目の成長率が二パーで、二〇二四年から三パーに跳ね上がるんですね。過去それだけの名目成長率ができたかというと、ほとんどできていないわけですね。成長率は三パーの半分ぐらいが精いっぱい、名目で。実質がもっと厳しくなる可能性は、今の物価上昇から考えると、これが本当に落ち着くかどうか。ウクライナ戦争が長引いたりすれば、あっという間に実質も相当落ち込む可能性が高いというふうに考えると、楽観できる根拠はほとんどないんじゃないかというのが私の意見でございます。

 以上です。

藤巻委員 本日は、貴重なお話、ありがとうございました。私の質問を終わらせていただきます。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 四名の参考人の皆様方、御多用のところ、わざわざお越しをいただきまして貴重な御意見をいただきましたことに感謝申し上げます。ありがとうございます。

 では、それぞれに少しずつお話を伺ってまいりたいと思いますけれども、まず、土居参考人にお伺いいたします。

 私は、防衛力強化ということ自体は必要だと思っております、中身はちょっと別として。ただ、この法案の評価については参考人とはかなり異にしておりますので、その点を少し質問させていただきたいと思います。

 まず、法案の評価。二ページ、一のところで、経費の増額に必要な財源を先送りすることなく事前に確保して明示している点で高く評価ということなんですが、これは税制措置は示していないんですよね。そのことによって、防衛力強化資金も四・六から五強とか、五兆円強とか、決算剰余金の活用も三・五兆円程度とか、極めて曖昧な数字になっております。

 そういう意味では、この税制措置を示していないということについて、私は、それも含めて評価できるのかどうかということについて、お答えをいただきたいと思います。

土居参考人 お答え申し上げます。

 私は一人の学者でありますので、今後どのような形で政策決定がなされるかというところまでは予断を許さないところがありますけれども、少なくとも、税制措置につきましては閣議決定をされているということは承知しております。もちろん、実施時期というものが重要な課題として残っている。私は、しっかりこれは政府・与党の方で財源をきちんと確保できるような形で執行時期を決めていただくということができるのではないか、ないしは、していただきたいというふうに希望を持っているというところであります。少なくとも、法人税、所得税、たばこ税で税制措置を講じるということは閣議決定されているというところが、私としては、重要な担保ではないかというふうに考えております。

前原委員 ありがとうございます。

 今の話も含めて、私、この法案の議論をしていればいるほど、今この法案は必要じゃないんじゃないかと思うわけです。なぜなら、来年の通常国会で全然間に合うんですね。令和五年度の防衛予算というのももう担保されているわけですね。ですから、令和六年度からその後の四年間の財源の話なので、別に、今議論する必要はないんです。令和六年度の通常国会のときに予算関連法案で議論したらいい話なんですね、これは。

 つまりは、この法案の中身というのは、財投特会の繰入れ二千億円、それから、令和五年度の剰余金、外為特会の繰入れ一兆二千四億円、そして、国立病院機構からの返納四百二十二億円、地域医療機能推進機構返納が三百二十四億円ということでございまして、大宗が外為特会の令和五年度の剰余金なんですね。そして、財投特会繰入れも二千億ですけれども、ただ、来年の話なんですよ、これは中身も。法案の大宗が、中身が来年度の話なんでありまして、今議論する必要は全くない。来年度の通常国会で、いわゆる予算関連法案として議論したらいい。

 つまりは、そこでちゃんと税も示してくれれば、こんな、防衛力資金も四・六から五強とか、決算剰余金の活用も三・五兆程度とか、曖昧な議論を我々国会議員がしなくてもいいというふうに思うんですが、いかがお考えですか。

土居参考人 お答え申し上げます。

 既に令和五年度予算は成立しているということでございますけれども、私は財務大臣ではないので、一学者として、政府がおっしゃっておられることを財政学者として解釈するとということで申し上げると、本年度で、令和五年度で必要な防衛費の増額というのは一・四兆円ぐらいあって、そのうち二千百億円は歳出改革で賄ったけれども、残りの一・二兆円がその財源として税外収入を充てなければいけないということになっているというか、している。そうすると、その一・二兆円をどう確保するのかというところについての措置というのがやはり法的に担保されるべきではないかということがまず一点ある。それが今回の財源確保法なのではないかというふうに思います。

 それともう一つは、今年度、進行年度で出るであろう剰余金をあらかじめ確保しておくということも、この財源確保法案の中では重要な意味を持っている部分ではないかというふうに思っておりまして、往々にして、決算剰余金とか進行年度における剰余金というのは補正予算の財源になるという可能性もある。

 もちろん、それはそれで政策判断なんだろうとは思うんですけれども、そうすると、防衛財源のための確保というものがおろそかになってしまうかもしれないということですから、進行年度で補正予算がどうなるか全く私も予断を許しませんけれども、そのときに、今回財源確保法案の中で挙げられている財源が防衛財源ではなくて補正予算の財源になってしまうと、結局、防衛財源はあらかじめ確保するということができなくなってしまうということが、私はそれは問題ではないかというふうに思いますので、やはり、防衛財源に穴が空かないようにするためには、確かに今すぐじゃなくてもいいかもしれないけれども、あらかじめ法案で通してコミットしておくということが大事なポイントになってくるのではないかというふうに思います。

前原委員 まさにおっしゃったとおり、決算剰余金を先に使うということは、補正予算なんかで使う財源の先食いでしかないんですね。

 ですから、単年度で見れば、ずっと補正予算というのは組まれてきていますので、これを仮に防衛財源として確保しても、いわゆる剰余金、決算剰余金というものを先に防衛財源として使うわけですから、結局、補正予算を組むときには決算剰余金がない。そうすると、赤字国債の額が膨らむだけで、どちらでも国の予算としては同じじゃないですか。

 結局、先に使うか後に使うかだけであって、ボリュームとしては同じで、決算剰余金の額も決まってくるわけですから、結局同じことなんじゃないですか。

土居参考人 お答え申し上げます。

 そのような政策判断をなさるとそういうことになるんだろうと思います。

 ですが、私の財政学者の立場として申し上げるならば、やはり、これまで補正予算、令和四年度、三年度とこれまでにないような規模の補正予算が組まれていたというふうに思います。コロナ前までの補正予算というのは例年約三兆円前後であったということですけれども、令和二年度はコロナ禍の最初の年度ですから、予期しないことがあったということであえて申し上げないとしても、令和三年度、令和四年度と三十兆円規模の補正予算が組まれているという意味では、コロナ前の十倍の規模の補正予算になっている。

 それはそれで政策判断なのかもしれませんが、これから、新型コロナも感染症法上の位置づけが五類に変わっていく、コロナ後を見据えた経済社会の動きになっていくという中では、私個人の意見としては、もう三十兆円ほどの補正予算というのは要らないのではないか。

 そうなれば、身の丈に合った規模の補正予算を、まあ、必ず組まなければいけないということも私はないとは思っているんですけれども、補正予算は身の丈の規模で組むなら組むとなれば、特例公債をそんなに出す必要もないし、先ほど藤巻議員の御質問にお答えしたところでも申し上げたように、できるだけ国債に依存した財政運営にならないようにしていくべきであるという私の考えからしても、補正予算で大幅な赤字国債の増発というのは避けるべきではないかというふうに思います。

前原委員 補正予算の額というのは、それはそのときに応じて判断をすればいい話であって、私が申し上げているのは、決算剰余金の先食いでしかないということ。

 トータルで考えれば、単年度で見れば防衛費に使うのか補正予算に使うのかの違いでしかないということで、それを確保するということの意味については私は理解できないということは申し上げておきたいと思いますし、金子参考人がおっしゃったように、また土居参考人が五ページでおっしゃっているように、公債依存度というのは三〇%を超えているわけですね。となると、一般会計予算の中での予算というのはかなりの部分が公債発行によって賄われているということからすると、決算剰余金というのは、元々のお金は赤字国債の発行によって生まれているものもある。

 しかも、予備費が十倍規模になっている、五兆円規模になっているわけですね。五兆円規模になっていて、それで、今余っているのが四・二兆円なんですね。この予備費までひょっとしたら決算剰余金の中に入って、そしてその半分が防衛財源になるということになると、この予算では赤字国債は発行しませんといいながら、結局、種銭というのは、先ほどの金子参考人の意見と私は全く同じで、これは国債のマネーロンダリングでしかないんですよ。

 つまりは、元々の国債というものが形を変えて決算剰余金になり、そして結果的にその半分が防衛費に充たるということになれば、それは赤字国債で充てているのと何ら変わらない。トータルでやはり国の財政は見なきゃいけないということになれば、前もって確保するということの意味は、私は、そこは全くもってないということは申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、予備費の活用ということも一部与党の中で出ているようでありますけれども、財政民主主義に反するような巨額の予備費が計上されているんですね、それを言ってみれば、また余りました、半分剰余金として使います、防衛費に回して、例えば一兆円の増税については選挙前はやめておきましょうなんということも、できないことはないわけですね。

 予備費について、どういうふうに土居先生はお考えですか。

土居参考人 お答え申し上げます。

 予備費はできるだけ大きくない方がいいということは、私もそのとおりだと思います。できるだけ、あらかじめ使途を定めて、国会の審議を経て、可決された後に執行するべきだというふうに思います。

 もちろん、どうして予備費が要るのかというところは、それは私が説明するというよりかは政府が説明するということなんだと思いますけれども、おっしゃるように、予備費が巨額でありながら余っているというような状況というのは、私は、そもそも予備費は大きくない方がいいというふうに思いますけれども、一旦、予備費も予備費で、予備費として国会で議決を経ているということですから、その予備費が不必要に使われる必要はないという意味で、余らせたということは、それはそれとしてきちんと、不必要なものにお金を使わなかったという意味で評価されるべきではないかというふうに思います。

前原委員 私も、早く予備費については、コロナもどうなるか分かりません、第九波は第八波よりも大きくなると言う方もおられるので、備えというのはある程度必要かもしれませんけれども、さはさりながら、大体五千億程度だったものが五兆円になって、ウクライナでのものに関して更に一兆円積んでいるわけですね、物価対策も含めて。こういう予備費の積み方というのはよくないし、その予備費の財源というのは、結局、赤字国債の増発によって賄っているわけですね。そして、その余った分の半分が、結局、いわゆる剰余金として一般財源になるということは、まさに金子先生のおっしゃったような、私はロンダリングでしかないということで、予備費は徹底的に小さく、ある程度の、一定規模にしておくべきだということは申し上げておきたいと思いますし、ましてや、巨額の予備費を積んで余ったからそれを防衛費に回すというものは、これは安定財源とは言えないということは申し上げておきたいというふうに思います。

 この五年間の四十三兆円、上の部分だけでいいますと十四・六兆円ですけれども、私は、税制措置が示されていない中で、安定財源としてこれからしっかりと担保していかなきゃいけない一つは歳出改革だと思うんですね。

 先ほど同僚議員の質問に対して、歳出改革をしっかりやらなければプライマリーバランスの黒字化というのは難しいということをおっしゃいましたけれども、防衛費として、これから令和十年度以降も一定程度の防衛費を確保していくためには、この五年間で毎年二千百億円の歳出改革をやっていかなきゃいけないということでありますが、これで十分だと先生は思われますか、土居先生。

土居参考人 お答え申し上げます。

 不要不急の歳出は、幾らでも無駄な支出は削るべきであるということです。それが二千百億円を超えようが超えまいが、無駄な支出は差し控えるべきであるということです。

 もちろん、防衛財源のために歳出改革で賄うということで、政権がその姿勢をお示しになっておられるということであれば、是非それは実現していただきたいというふうに思いますし、もちろんプライマリーバランスの黒字化のためにも必要だというところになると、ダブると言っては言い方は悪いかもしれませんけれども、防衛財源のための捻出もあるけれども、プライマリーバランスの黒字化のためにも一層頑張っていただきたいというふうに、私は期待を込めて申し上げたいと思います。

前原委員 ありがとうございます。

 それでは、柳澤参考人に質問させていただきたいと思います。

 一番初めに反撃能力について幾つかのことをおっしゃっていたんですが、細かい点は別として、中国の軍拡、そして北朝鮮の核、ミサイル、またウクライナに侵攻したロシアというのは、日本の周りの国ですよね。非常に周辺環境が厳しい状況でありますけれども、この反撃能力について否定をされるということはさておき、こういった厳しい周辺環境にどう対応していったら基本的にいいかということについて、端的に御見解をお示しをいただきたいと思います。

柳澤参考人 単純化して申し上げれば、情勢が厳しい状況にあるがゆえに、独りそれをいわゆる軍備というのか防衛力だけに頼って安心を求めても、これは際限のない話になるので、それは不可能なことでもあるわけですから、厳しくなっている構造を知って、厳しい対立関係を私は解消することはなかなか難しいんだろうと思うんですね。さっき申し上げたように、大国同士の対立関係がルールなき対立にいわばなってしまっている、そこに戦争の一番の心配の種があるんだろう、私はそういう見方をしています。

 だから、大国同士の対立をやめろといったって、これはやまらないでしょう。だけれども、対立するのはしようがないけれども、戦争にはするな、そういう国際世論ですとか外交の知恵の出し方というのがある。ですから、防衛力だけ、防衛力増強では絶対に間に合わないわけですから、それと併せて、外交の新たな知恵というのか、そういうものを同時に推進していかないと、私は本当に心配は尽きないというように思います。

前原委員 私はやはり、戦後、日米同盟関係に頼り過ぎてきて、自国防衛の努力を怠ってきたということが一つの大きな要因だと思いますし、外交力といっても、自国の防衛力というものがやはり交渉力にもつながっていくということだと思いますので、一定程度の防衛力増強、そして、アメリカに過度に依存しない、自国の能力を向上させるということは必要だということを申し上げておきたいと思います。

 台湾有事については、台湾有事とは、中台戦争、米軍が参戦して米中戦争にということでありますけれども、一つ、私、台湾有事は日本有事になり得ると思っているのは、尖閣の問題なんですね。台湾も尖閣は自分の領土だと言っていますし、中国も台湾省の一部だと言っています。

 したがって、台湾有事になると、当然ながら、尖閣だけを外して中国が侵攻するということはないと思うんですが、その点、台湾有事は日本有事になる可能性はあると思うんですが、いかがですか。

柳澤参考人 先ほど私が申し上げた流れというのは、台湾に対する武力侵攻を、米軍が出て、その米軍をサポートしてということで、実は、日本、我が国固有の中国との紛争要因というのは一応抜きにお話ししました。尖閣というのはあるんですが、要するに、大きな目標というのか、大きな流れは台湾なんだと思うんですね。それに付随したマヌーバーとして尖閣というのはあり得るんだろうと思うんです。

 しかし、尖閣だけを取り出して言えば、これは、今海上保安庁が頑張っていますけれども、何とか武力行使に至らないような形での現状維持というのを図るべきで、もちろん、そこは、台湾有事という流れの中で尖閣を攻撃対象にするという可能性は当然あると思うんですね。それはその場合に日本有事になっていくわけですが、その大本はやはり中台の紛争であり、そこに米軍が入ってくることによる米中の戦争、そこに対する日本の立ち位置というものが大きく影響するんだろうという大きな流れは変わらないというふうに思っています。

前原委員 尖閣は我が国固有の領土ですから、尖閣が取られるということは日本有事になるということははっきりしておかなくてはいけませんし、また、台湾の地位をめぐる現状を守ることということなんですが、やはり中国というのは、台湾統一というのは悲願なんですね、中国の夢であって、現状維持してくれればいいけれども、これは中国の意図というものが非常に大事になってきますので、香港を見ればそれは明らかなわけであって、その中でどうしていくかということの議論というのが必要なのかなというふうに思いました。

 金子参考人に伺いたいと思います。

 幾つかの視点でためになるお話をいただきまして、ありがとうございました。国会議員として、ちゃんと、責務だということについて幾つか御示唆をいただきましたので、これについてはしっかり、宿題と捉えて少し勉強させていただきたいというふうに思います。

 一つ教えていただきたいんです。

 一番最後のページで、外為特会のところ、三のところで外為特会の話を金子参考人はされているわけであります。今はそのとおりだと思うんですね。政府の短期証券を発行して資金調達をし、それがいわゆる為替介入資金として積み上がってきている。今一・二五兆ドルぐらいたまり金はあると思いますし、こちらの金利は低い、調達金利は低くて、そして運用の方が、米国債を中心に運用していて、利回りの数字の方が高い。そのことによって外為特会の剰余金が生まれてきているということだと思うんですけれども、金子参考人がここでおっしゃっていることは、いざというときに日本経済の破綻をもたらすリスクを無視してはならないということでありますが、この視点、ちょっと私は理解できなかったものですから、ちょっと教えていただけますか。

金子参考人 今の時点ですぐ危機が発現するということではなくて、多分、貿易赤字が、年間、年度で二十一・七兆円で過去最大になっている。RNA医薬品で四・六兆円の赤字、ワクチンも作れなくなっている。それから、IT関係で四・五兆円の赤字である。再生可能エネルギーは圧倒的に遅れているので、化石燃料の輸入が止まらない。

 今問題なのは、EV、自動車一本足打法と言われている部分で、多分、電気自動車のインフラが整っていない東南アジア等ではまだ何とか生き延びていけるかもしれないけれども、実は、東南アジアの貿易収支もどんどん減ってきているんですね。中国、韓国、アメリカに食われている。

 この傾向がウクライナ戦争が長引く中で持続した場合に、先ほど参考人の方からも出てきたように、外から来る所得収支だけで経常収支が黒字化が維持できるかどうか分からない。そういうリスクを考えて備えるということがあるから安心している部分があるので、その備える部分を野方図に出していって、僕が先ほどからすごく案じているのは、後年度負担でずるずるなし崩しで防衛費を増大する。財源も、特定の税金があるわけでもなく、先ほど言ったように、どんどんロンダリングみたいな形で出している。五年後に同じようなことをやったときに、後年度負担があるから防衛費はもう動かせないというふうになったときに、一体どうなっちゃうんだろうか。

 それを踏まえると、異次元の少子化で八兆円の財源というんだけれども、これもないわけですよね。大企業の健保組合も赤字の状態というのを考えたときに、肝腎の日本経済が、これまで強いと言われていた貿易収支、経常収支の黒字が揺らいできたときに、そのショックアブソーバーになるような手段のお金まで手をつけちゃったときに本当に大丈夫なのかというのを、将来的に、例えば、四年の任期の国会議員はそれを未来に向けて責任を負わなくてもいいということではなくて、むしろそういう問題について、国の有事というのは、経済でもあるし、子供が圧倒的に少なくなるのも有事なわけだし、多くの人が貧困になって国内の治安が悪くなるというのも有事なわけですね。

 そういうふうに考えたときに、外為特会を安直に、目的を簡単に、余っているからということで流用することでもたせていくというやり方は少しどうなんだろうかなというのが私の考えであります。

前原委員 ありがとうございました。

 末澤参考人にも質疑をしたかったんですが、時間が参りましたので、終わらせていただきます。

 皆様、ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 四人の参考人の皆さん、本日はありがとうございます。

 最初に、柳澤協二参考人に何点かお尋ねさせていただきます。

 初めに、安保三文書のアメリカとの関係なんですけれども、アメリカのインド太平洋軍などは、南西諸島から南シナ海に至る地域の島々に長射程ミサイルを配備する計画を早くから主張していました。軍事費をGDP二%に引き上げるという目標も、これまで、トランプ大統領あるいはエスパー国防長官の発言に見られるように、アメリカが同盟国に対して繰り返して要求してきたものであります。

 安保三文書とアメリカとの関係について、先ほど参考人は、米国の国防文書が、去年十月ですか、先行したというふうにおっしゃられましたけれども、どのように考えておられるでしょうか。このアメリカの文書を日本の安保三文書は踏襲したというふうに見ておられるのでしょうか。いかがでしょうか。

柳澤参考人 今日の世界をどのように捉えるかというところについても、まず、自由で開かれた国際秩序を守らなければいけない、それに挑戦してくる勢力があって、それに対して同盟国や有志国のネットワークで対抗しなければならないという、その哲学、思想自体が全く一致しているんですね。これは、ですから、表現も極めて似たものになってしまうんだろうと。

 それから、もう一つ、私が単純に感じたのは、一番最後のところに、日本の方の国家戦略ですけれども、この十年が決定的に重要で、これが将来を決める十年になるというような表現がある。これは実は、アメリカのNSSが出された前後に、アメリカのNSSそのものを私は全部読んでいるわけではないんですけれども、アメリカのそれに対するコメントの中でこの十年が決定的に重要であるという言葉もあったりして、何かすごく下敷きにしている関係はあるんだろう。

 もう一つ感じるのは、政治家の言葉が本当に見えないんですね。いわゆる日米関係を専門とする政策スタッフの作文なのかな、それといい悪いは別問題ですけれども、でき上がりとしてはそんな印象を持った次第です。

田村(貴)委員 続いて、敵基地攻撃能力、反撃能力のことについてお伺いします。

 従来、日本政府は、日米安保条約もないような、ほかに全く援助の手段がない場合に限り敵の誘導弾などの基地をたたくことは法理的には可能とする一方、そうした事態は現実には起こり難いので平素から他国を攻撃する兵器を持つことは憲法の趣旨とするところではないとし、違憲の見解を確立してきているところであります。

 敵基地攻撃能力、反撃能力を、憲法そして専守防衛の原則に照らして、柳澤参考人はどのようにお考えでしょうか。

柳澤参考人 憲法論として従来言われてきた、いわゆる座して死を待つ論というのがございましたけれども、これは核弾頭を搭載した大きな戦略ミサイルの脅威を対象にしたお話だったと思うんですね。今日のような、さっき金子先生もおっしゃっていたように思いますけれども、通常弾頭で、しかもミサイルが主な手段となっている戦い方のような中で、どのような事態が、これは実は存立危機事態の認定とも関わってくると思うんですが、本当に日本の領域、特に在日米軍基地に二、三発のミサイルが着弾するということは我が国の存立が根底から覆されるような事態なのか、座して死を待つというような当時の憲法論を闘わせておられた国会の御意思はそういうことを考えていたんだろうかということは、これは立法者としてももう一回ちょっとちゃんと精査していただく必要はあるんだろう。

 そして、専守防衛という意味からいくと、私は、専守防衛というのは、一つの日本的な戦略思想、戦い方の思想だと思っておりまして、守っているばかりじゃ勝てないだろうということをよく聞きます。そのとおりなので、つまり、専守防衛というのは、おまえのところをたたきのめして意思を変えさせるような、そういう戦争はしない。つまり、まあ、戦争の決着というのは典型的に言うと相手の政権の打倒なんですけれども、そのような戦い方はしないので、だから、戦争の一方で、戦争の要因としては、富と名誉と恐怖というようなものもあって、相手に対する不信と恐怖というのが大きく戦争の誘因になるわけですから、そういう日本に対する恐怖あるいは不信感から日本を攻撃しなければいけないという動機を相手に持たせないようにする、そういう戦い方というのか、防衛力の運用の仕方の指針を示しているんだろうと思うんですね。

 私は、個人的にはそこが、要は、さっき申し上げたように、これが抑止力としてどう機能するのかのようなことがはっきり語られずに、そのまま実行すれば当然ミサイルの撃ち合いを覚悟しなきゃいけなくなるような政策であるならば、専守防衛とか憲法論とかよりも以前に、そもそもそれは日本国国民の安全のために役に立たないどころか有害ではないか、そういう観点で私は批判的な見方をしています。

田村(貴)委員 そこで、戦争回避についてなんですけれども、柳澤参考人は、週刊誌の寄稿で次のように述べておられます。深刻な対立があるからこそ戦争回避の外交が必要なのだ、台湾有事でも、最も影響を受けるのは日本なのだから、外交で防げるはずの戦争を招くのは政治の大失敗であり、無駄な戦争である、無駄な戦争で一人の命も奪ってはならない。私も同感であります。

 そこで、陳述の中でも、また、多くの文献の中でも参考人が主張されている安心供与のことについてです。

 日本の外交の現状について参考人はどのように見ておられるでしょうか、また、安心供与というのを中国、それから台湾、アメリカとの関係に当てはめると、これはどういう作用をしていかなければならないのか、その間に入る日本政府の役割というのはどういうものが求められるのか、それについて教えてください。

柳澤参考人 ありがとうございます。

 まさに、私は、今はやはり厳しい国際情勢というのはそのとおりなので、それは、さっきも申し上げましたが、米中という大国間のいわば、何というか、合意なき対立があるがゆえに、戦争も非常に危険な状態にあるんだろうと思っているんですね。

 その対立というのは、これは、米ソ関係が、冷戦当時、安定するまでもやはり一定の期間が必要でした。今のアメリカと中国の関係も、やはりしばらくお互いのすみ分けがあらあら合意ができるまでにはまだ時間がかかる。その間は、やはり、何というか、ハンドリングミスで戦争につながるという危険は絶えずあるんだろう、そこを何とかしなければいけない、そして、それの一番の焦点になっているのが、米中にとっては台湾問題なんだと思うんですね。

 台湾をめぐる対立の構造をひもといてみると、それは、何が何でも武力行使と中国は言っているわけではない、要は、平和的な統一の道が閉ざされたときにはそれを放棄しないという言い方をしている、そうすればアメリカも防衛をするであろうという宣言をしている、そして、当の台湾も、多くの国民世論としては、あえて独立を宣言するというようなことで戦争をさせるようなことまではしなくてもいいじゃないかというのが大宗なんじゃないか、こう思っているんですが。

 であればこそ、そういう三者の現状維持、それぞれの思惑は違ってはいても、大きく現状維持というものを維持していく、まさにそこを改めて再確認していくようなプロセスというものが是非必要なんだろうと私は思うんですね。

 そこで、どうやっていくか。それは、日本としては、直接のその意味では当事者ではない、しかし、将来戦争になれば被害者ではあるわけですから、当然言うべきことを三者に対して言わなければいけないんだろうと思います。

 そして、同時に、台湾をめぐる米中戦争を望んでいないのは日本だけではなくて、韓国でも、フィリピンでも、東南アジアの国々も、基本的にはそんなものを歓迎する国はありませんから、歩調を合わせて、いわば、形の上では米中どちらのイデオロギーにもくみしないような装いは私は必要だと思うんですけれども、そういうミドルパワーの国々との連携というようなものが具体的に日本でもやれる、努力になっていくんじゃないかなと思っています。

田村(貴)委員 集団的自衛権についてもお聞かせください。

 日本が武力行使を受けていない下で集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行った際、今国会、予算委員会で、浜田防衛大臣は、事態の推移によっては、他国からの武力攻撃が発生し、被害を及ぼす可能性があると答弁しました。

 そんな事態を絶対につくってはならないと私は考えますけれども、日本に惨劇をもたらしかねない米軍との一体の集団的自衛権の行使について、柳澤参考人の見解をお示しいただければと思います。

柳澤参考人 かつての安全保障法制の最大の焦点は、自衛隊と米軍との軍事的一体化だったんですね。私がまだ官僚として仕事をさせていただいているときの最大のキーワードは、米軍との一体化を避けるということであったわけです。そうやって何とか巻き込まれないという形を保とうとしていたんですが、安全保障法制の哲学は一体化ですから、まさに巻き込まれてしまう、そのまま素直にあの法律を執行すると巻き込まれてしまうというリスクが非常に大きいわけですね。

 それはそういうものなので、そこにさらに、使われる手段がミサイルであって、こちらも相手のミサイル基地をその手段の一つとして敵の根拠地を攻撃しなければいけないということになると、今までの単なる海の上で米艦を護衛するだけにはとどまらない、本土に対する攻撃ということで一段レベルアップせざるを得ないんですね。

 ここに来て、ですから、もう一度、私は、安全保障法制のときよりも一歩更に深刻化した同盟のジレンマというものを認識せざるを得ない状況になっていると思うんです。

 だから、申し上げているように、これは何も大っぴらな議論をしろと申し上げているんじゃなくて、本当に、国会議員の皆さんも、じゃ、現実問題として、米軍基地に二発ミサイルが落ちたらやるのかというようなところをブレーンストーミングをしておくことが是非必要なんだと思うんですね。そういう、リアリティーを持った、今のうちに考えておくべきことはたくさんあるんだろうと思っています。

田村(貴)委員 ありがとうございました。

 続いて、金子勝参考人にお伺いします。

 この法案を通せば将来にわたって禍根を残すことになるという指摘がございました。後悔先に立たずという状況は今も将来も絶対につくってはならないと私も考えております。そして、金子参考人は、財政破綻、まあ、そうなんだけれども、金融危機も含む、そういう破綻が予想されるとお述べになりました。

 金子参考人から見える禍根というのは、一体どういう状況なのか。このことについて教えていただけるでしょうか。国民生活にとって、それから日本の財政状況について等々あると思います。まず、それ一点です。

金子参考人 まず、法案の中では、先ほど述べたように、後年度負担がずるずると何の定義もないまま来てしまった。事実上、防衛費が増えるというやり方が、なし崩しはよくない。有識者会合というような、一部の、悪いけれども、防衛省に都合がいい人物が何かを決めて安保三文書が決まるというやり方、意思決定のやり方が、合意のつくり方がまずい。

 先ほど前原議員がおっしゃっていましたけれども、一年かけてきちんと議論をするゆとりがあれば、国民に、何が必要で、どういうリスクがあって、どういう防衛力強化が必要なのかという議論が深まってくれば、もうちょっと違った法案になったのではないかというふうに、もう一つ思っています。

 それから、財源の中で、予備費と基金が膨大に膨らんでいて、基金は非常に多年度で、しかもチェックがつかないので、それが決算剰余金だったり歳出改革の名前で使われると、予算の決定、つまり、元々憲法というのは、議会の、法律も、租税法定主義から始まって、議会が歳出歳入を決めるという基本的な憲法の原則が壊れていっちゃうということだと思うんです。

 その一方で、先ほど外為会計の問題がありましたけれども、産業の衰退がひどい、それから貿易赤字がひどい、人口は八十万人も減っている、世界の国で四分の一世紀以上にわたって実質賃金が低下している先進国は日本だけだ、こういう状態で防衛力の強化に十兆円近くを費やすゆとりがある国なんですかということ。見分けというか、自分たちの国にとって、いろんな歳出を考えて、国全体をつくる上でバランスの取れた形で防衛力の議論をするということが今求められているのではないか。

 そういうことがないと、一方だけ、防衛力だけ強化しても、人口は減るわ、賃金は減って駄目になるわ、産業が衰退して貿易収支は困っちゃうわ、財政金融政策で金融は破綻はしちゃうわというような、つまり、リスクをほとんど無視、無防備の状態で、一方だけ、偏ったようなリスク理論というのをやるというのはバランスに欠けているんじゃないかということを私は強調したいというふうに思っています。

 以上です。

田村(貴)委員 政策の優先順位というところについてもお伺いしたいんですけれども、物価高騰が今、国民生活を直撃しています。そして、賃金が物価の上昇に全く追いついていません。一方、大企業の内部留保はたまる一方。金子参考人が今おっしゃった様々な課題がある。参考人は、日本経済を根本的に転換して、所得を上げて安心の雇用を築く等々、いろいろな提言をされています。気候危機打開の問題もあります。それから、少子化対策はもう先送りできません。

 こうしたところで、今、この国が重点的にやらなければいけない、そして真っ先にこれをやらなければいけないというところで、金子参考人が思っておられることについて教えてください。

金子参考人 ちょっと一、二分でしゃべるのは無理のような気がします。

 ただ、今の貿易赤字は、加工貿易の発想でやっているんですが、産業戦略がほとんど駄目で、次々と産業の競争力が落ちているので、これをどう立て直すのか。時間がかかるのは人への投資なんですね。ところが、人への投資は時間がかかってきて、教育とか研究の予算を増やしていかなきゃいけないんですが、その間、貿易がどんどん悪化しちゃうので、やはりエネルギーと食料の自給というのをもっと高めなきゃいけないということが大事だし、格差をなくすために、多分、金融緩和を続けて賃金が上がらないというのはこの間はっきりしているのに、今もその状態になっているわけです。

 一つは、国際会計基準で、フリーキャッシュフローをやったり、株価を維持する政策をやって、賃金の配分が会計基準からの縛りでできていないという問題があります。

 さらに、今の状態でいうと、労働生産性がアベノミクスになってからずっと下がり切りで、日銀自身が、潜在成長力がゼロになっているという、そういう状態。この状態をどう克服するかというのがなければいけないわけですね。

 もう一つ重要なのは、非正規雇用が大量に増えているので、大企業が幾ら賃上げしても、なかなか全体の実質賃金の上昇に結びつかない。最低賃金を上げようとすると、中小企業を支援しない限りなかなか難しい。そういう政策も実はお金が要る。

 科学技術を上げるために、まあ学術会議の法案は見送りましたけれども、やはり時間をかけて、予算をかけ、予算を出し、科学技術、人を育てていく、研究を育てていくということの大事さというのは、なかなかすぐに効果が出ないんですが、そういう政策をしっかりやっていくということはとても大事なことなのではないかというのを私は思っています。

 防衛力ももちろん大事かもしれないけれども、全体の、もう少し、今起きている日本経済のリスクというものをどう減らしていくかということをきちんと考えて、バランスの取れたいわゆる優先順位づけというのをしっかり議論していただくということがとても必要になっているというふうに思っています。

 以上です。

田村(貴)委員 ありがとうございます。

 一、二分で大変重要な御指摘をいただいたと思います。

 最後に、土居丈朗参考人、末澤豪謙参考人にお伺いします。

 防衛費増額の財源確保のために国債の六十年償還ルールというのが見直しの議論がされています。この見直し、撤廃となれば、予想できないほどの悪影響があるというふうに土居参考人は述べておられますけれども、どんな悪影響が想定されるのか、これについて教えていただきたいです。

 末澤参考人にも同じ質問です。よろしくお願いします。

土居参考人 お答え申し上げます。

 六十年償還ルールは、お金を借りる側の政府が自ら設定したものです。もちろん根拠があるわけですけれども、お金を借りている分際で、お金を返す期限を延ばしますと言ったら、普通、多くの方はどう思われるでしょうかということ、それが六十年償還ルールの撤廃ということであります。

 日本政府は、いつでもどこでも誰からでも借りられるというほど傲慢な存在なんでしょうか。そうではないと思います。やはり、丁寧に頭を下げてお金を貸してくださいと言わなければならない存在だし、実際、その実務に当たっておられる方も、頭を下げて投資家にお金を貸してくださいと言っている。

 それなのに、頭ごなしに六十年償還ルールを撤廃するということは、俺に貸してくれるなら幾らでも金を貸してくれるだろうというふうに踏ん反り返っているような、そんなような態度を示すことにさえなってしまうような、そういうことですから、やはり六十年償還ルールは是非とも堅持していく必要があるものだと考えております。

末澤参考人 六十年償還ルールは、我が国、ある意味、独自の規定ではございますが、これは、各国各々、別の財政保守的な決まりがあります。米国ですと、例えば債務上限ですね。今ちょっと問題になっているんですけれども、これは、法律、歳出法が通っても、これ以上借金しちゃいけないというバーがございまして、デットシーリングと言っているんですが、これを超えられない、つまり、場合によったら国債の利払いもできないというような規定があるんですね。相当厳しい規定です。一方、EUですと、フローまたストックベースの財政の基準があります。

 つまり、各国、それらに、歴史的な経緯の下、自らのそういった縛りを作っているわけでございまして、それを我が国が放棄するというのは、よっぽど財政状況が改善して、もう黒字ですよ、PBどころか財政ベースでも黒字ですとか、こういう状況なら別なんですが、相当厳しい財政状況の中でこれをやるのは余りよろしいことではない、やはり、国債の信認、日本国の信認にとっても私はマイナスだと思います。

 以上です。

田村(貴)委員 時間が参りました。終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る二十五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十三分散会


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