衆議院

メインへスキップ



第17号 令和5年4月26日(水曜日)

会議録本文へ
令和五年四月二十六日(水曜日)

    午前八時三十六分開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      小森 卓郎君    高村 正大君

      塩崎 彰久君    津島  淳君

      葉梨 康弘君    藤原  崇君

      八木 哲也君    若林 健太君

      階   猛君    野田 佳彦君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    米山 隆一君

      藤巻 健太君    岬  麻紀君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   デジタル副大臣      大串 正樹君

   財務副大臣        井上 貴博君

   外務大臣政務官      高木  啓君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    新川 浩嗣君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   前田  努君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            小林 浩史君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           上田 幸司君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 茂木  陽君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  川嶋 貴樹君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  町田 一仁君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 田中 利則君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官官房審議官)           春日原大樹君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            萬浪  学君

   政府参考人

   (防衛装備庁技術戦略部長)            堀江 和宏君

   参考人

   (日本銀行総裁)     植田 和男君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     小森 卓郎君

  津島  淳君     古川 直季君

同日

 辞任         補欠選任

  小森 卓郎君     塩崎 彰久君

  古川 直季君     津島  淳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出第一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁監督局長伊藤豊君、財務省主計局長新川浩嗣君、主計局次長前田努君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君、中小企業庁事業環境部長小林浩史君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官上田幸司君、大臣官房審議官茂木陽君、防衛政策局次長安藤敦史君、整備計画局長川嶋貴樹君、人事教育局長町田一仁君、地方協力局次長田中利則君、防衛装備庁長官官房審議官春日原大樹君、装備政策部長萬浪学君、技術戦略部長堀江和宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。おはようございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 まず、我が国をめぐる安全保障環境についてお伺いいたします。

 先日の本会議でも、総理は、戦後最も厳しく複雑な安全環境に直面している、そういった言葉を繰り返しておられました。

 ちょっとそもそもの質問になってしまうんですけれども、今の安全保障環境は、非常に厳しいとは思うんですけれども、本当に戦後最も厳しいのか、そこまで厳しいのか、こう考えている根拠をお聞かせください。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 ロシアによるウクライナ侵略が示すように、国際社会は戦後最大の試練のときを迎え、既存の秩序は深刻な挑戦を受け、新たな危機の時代に突入していると認識しております。

 東アジアにおいても、戦後の安定した国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性が排除されません。

 中国は、核・ミサイル戦力を含め、軍事力の質、量を広範かつ急速に強化するとともに、東シナ海、南シナ海において力による一方的な現状変更やその試みを推し進めています。

 また、北朝鮮は、特に昨年以降、かつてない高い頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返し、今月十三日には新型の固体燃料推進方式のICBM級弾道ミサイルの発射を強行するなど、核・ミサイル能力を急速に向上させています。

 ロシアは、核兵器による威嚇とも取れる言動を繰り返しながらウクライナ侵略を行うとともに、極東地域においても活発な軍事活動を継続しています。

 このように、中国、北朝鮮、ロシアが軍事力を増強しつつ軍事活動を活発化させる中、我が国はその最前線に位置しています。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、いついかなる形で力による一方的な現状変更が生起するかは予測困難であり、今後も国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜くため、防衛力の抜本的強化は速やかに実現していく必要があると考えております。

藤巻委員 今のお話を聞いていると、非常に厳しい安全保障環境にあるということはもちろん分かるんですけれども、ただ、戦後最もというのはちょっと言い過ぎというか、例えば、朝鮮戦争のときは朝鮮半島でアメリカと中国が代理戦争しているわけですし、ベトナム戦争のときは大量の核を保有していたアメリカとソ連が代理戦争をやっているというところです。

 私は、安全保障環境上最も厳しかったときというのはキューバ危機のときかなというふうに思っているんですけれども、朝鮮戦争だったり、ベトナム戦争だったり、キューバ危機のときよりも今が非常に厳しいのか、そう考えると、ちょっとどうなのかなというところは思っていまして、一歩間違えれば、一手間違えれば破滅的な全面核戦争に突入していたであろうキューバ危機のときよりも、そこまで今の安全保障環境というのは戦後最大厳しいんでしょうか。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 戦後最大ということの捉え方に、そこの若干の差異はあるのかもしれませんが、委員が御指摘された過去においての様々な事案について、これはこれとして、日本としてのそこの関わり方の度合いということも含めて、そこの多少の認識の差があるのかもしれません。

 いずれにしましても、今の、今般のこの我が国近海を取り巻く状況、特にこの東アジアまた北方等については、大変緊迫した、そういうゆゆしき、憂慮されるべき状況であるという意味で、戦後最大と言っても過言ではないというふうに認識しております。

藤巻委員 確かに、差異というか、これは言葉尻を捉えているわけではなくて、総理は、朝鮮戦争のときよりも、ベトナム戦争のときよりも、キューバ危機よりも今が安全保障上最も厳しい状況だ、だから防衛費を増額するんだというふうにおっしゃっていまして。もちろん私も防衛費を増額することは賛成なんですけれども、今は安全保障上の危機だ、戦後最大の危機だ、全面核戦争に突入する前だったキューバ危機の直前よりも厳しい状況だ、このままじゃ大変だ、そう総理自身が、あおるじゃないですけれども、世論をあおって防衛費増額にするようなやり方というのはちょっとどうなのかなと。もう少し冷静に客観的に伝えていくことも大事なのかなと。そういう認識もちょっと持っていただければと思っております。

 続いて、台湾有事についてお伺いいたします。

 これも我が国の安全保障に大きく関わるところだと思うんですけれども、台湾有事はどのくらいの可能性で起きるのか、あるいは、起きるとしたらどのぐらいの期間のうちに起きるのか、それは日本政府としてどのように分析しているのかということをお尋ねいたします。

木村大臣政務官 台湾有事という仮定の御質問にお答えすることは困難であることを御理解をいただきたいと思います。

 台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要です。我が国として、台湾をめぐる問題について、対話により平和的に解決されることを期待する立場です。

 その上で、台湾情勢について申し上げれば、近年、中国が軍事力の強化を急速に進める中、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に急速に傾斜する形で変化しております。

 また、中国は、台湾について、平和的統一の実現を目指すが、決して武力行使の放棄を約束しないと表明しており、昨年八月には、ペロシ米下院議長の台湾訪問に伴い、台湾に近接し、かつ包囲するような形で訓練エリアを設定し、弾道ミサイルの発射を含む大規模な軍事演習を行いました。さらに、今月にも、蔡英文総統の訪米後、台湾周辺の海空域で、空母を含む多数の艦艇、航空機を参加させ、威圧的な軍事演習を実施しました。

 このような中国の軍事動向等は、我が国と国際社会の深刻な懸念事項となっており、防衛省としては、今後も警戒監視に万全を期してまいります。

藤巻委員 米軍のインド太平洋軍のデービッドソン前司令官は、司令官在任中の二一年三月、米上院軍事委員会で、中国が六年以内に台湾侵攻に踏み切るおそれがあると証言しました。二一年三月からの六年ですと、二七年三月だと思うんですけれども。また、アメリカ政府が先月発表した報告書には、中国が台湾有事の際にアメリカの介入を抑止できるだけの体制を二〇二七年までに整えるという目標に向けて取組を進めているというふうにあります。

 このアメリカが分析する二〇二七年という時期については、どうお考えというか、一つの時間的なめどというふうに日本政府としても多少は意識しているのでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど政務官から御答弁申し上げましたとおり、台湾有事という仮定の御質問にお答えすることは困難であるということを御理解いただきたいと思います。

 その上で、先ほど御答弁申し上げましたとおり、今月にも、蔡英文総統の訪米後、台湾周辺の海空域で、空母を含む多数の艦艇、航空機を参加させ、威圧的な軍事演習を行ったところでございます。

 この中国軍の活動の意図、目的について確定的にお答えすることは困難ではございますが、中国は、今回の訓練につきまして、台湾独立分離主義勢力が外部勢力と結託して挑発することに対する重大な警告である旨述べていると承知しております。中国が台湾問題で妥協しない姿勢を示したものとも考えられるところでございます。

 防衛省・自衛隊としては、引き続き関連の動向を注視してまいる所存でございます。

藤巻委員 日本が輸入する半導体の半分近くが台湾製なんですけれども、これもちょっと仮の質問なんですが、仮に台湾からの輸入がストップすると多大な影響が出ることが予想されます。

 これも仮に、台湾有事が起きて中国が台湾を封鎖したとなると、日本に対する経済的な影響はどのようなものが考えられるでしょうか。

塚田委員長 どなたが答弁されますか。

 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

塚田委員長 速記を起こしてください。

 藤巻健太君。

藤巻委員 済みません。ちょっと行き違いがあって、質問通告が経産省の方に伝わっていなかったかもしれないので、次の質問に移らさせていただきます。

 緊急小口資金等の特例貸付けについてお伺いいたします。

 今回の法案では、緊急小口資金等の特例貸付けに係る貸付原資の不用見込みの国庫返納分、一千億であります。この緊急小口資金等の特例貸付け、償還期限は二年となっておりますが、返済の方はしっかりと進んでいるのでしょうか。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 社会福祉協議会におけます緊急小口資金等の特例貸付けについては、今年の一月から償還が始まっております。

 お尋ねの償還状況につきましては、令和五年二月末時点での速報値で、一月から償還が始まっている債権、全部で二百五十八万件のうち、全体の四割に当たる百六万件について償還の免除申請がございまして、住民税非課税等の理由によってこれまでに免除が決定されたものが九十二万件ございます。

 また、病気療養中、失業中、離職中、不安定就労、収入減少、多重債務等のやむを得ない理由によって償還の猶予を決定されたものが五万件となっております。

 また、二月末までに償還予定の債権のうち、これまでに償還された件数は六十三万件となっております。

 これらを除いた八十万件程度については、現在、償還に向けた相談中や償還猶予の手続中の方、まだ償還の手続が行われていない方などとなっておりまして、現在、これらの方々に対して、個々の状況に応じて、償還に向けた相談支援や償還猶予、償還免除などの御案内を行う等のフォローアップに努めているところでございます。

藤巻委員 緊急小口資金等の特例貸付け、経済的に困窮している人には本当に助けになったと思います。また、現在困窮している方には償還免除とすることができます。

 一方、本来であれば必要とは言えない人に貸し出されているということはないでしょうか。また、返済が十分可能にもかかわらず償還免除を試みてくる人がいるということも予想されます。

 貸出審査であったり償還免除審査、どのように行われており、十分に機能しているのでしょうか。

本多政府参考人 お答えいたします。

 緊急小口資金等の特例貸付けにつきましては、その対象を、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付けを必要とする世帯としておりました。

 この貸付けを実施する都道府県社会福祉協議会におきましては、申請者の収入減少の状況などを確認した上で貸付けを実施していたところでございますが、より迅速に貸付けを行うために、申請に必要な書類の簡略化等、一定の柔軟な対応を実施していたところでございます。

 一方で、不必要な貸付けを防止するという観点から、貸付けを行う都道府県社会福祉協議会に対しては、借受人が虚偽の申込みそのほか不正な手段によって貸付けを受けたケースについては、貸付金の一括償還や、将来に向かって貸付けを停止する等、不正事案への厳正な対処をお願いをしておりました。また、あわせて、借受人に対しても、こうした対応について貸付けの際に文書で説明して、署名を求めることとしておりました。

 また、償還免除についてでございますが、借受人及び世帯主が住民税非課税である場合、生活保護を受給した場合、又は、精神又は身体に著しい障害を有する場合等が償還免除の対象となります。これらについて確認できる書類の添付を求めるとともに、仮にその申請書類に虚偽の記載が判明した場合には、償還免除決定を取り消した上で、償還を求める対応をお願いしているところでございます。

藤巻委員 緊急小口資金等の特例貸付けは、全国で不正詐取がかなり横行しました。申請数が膨大で、審査が緩くなってしまうのは仕方ない側面もあるとは思うんですけれども、審査はほぼなかったというようなことが実態かなと思っているんですけれども。

 警察が摘発するのは氷山の一角で、不正詐取はとてつもない数になるのではないでしょうか。そういった部分に対する御見解をお聞かせください。

本多政府参考人 お答えいたします。

 緊急小口資金等の特例貸付けにおきましては、新型コロナウイルス感染症の影響で生活にお困りの方に迅速な貸付けを行うために、収入減少の状況について申立て書による申告を認める運用としていたところでございまして、遺憾ながら、虚偽の内容で申請をするなどの不正事案が発生していたものと承知しております。

 これら不正事案への対応といたしましては、先ほども申し上げましたように、都道府県社会福祉協議会に対しまして不正事案への厳正な対処をお願いするとともに、借受人の方にもそうした対応について貸付けの際には文書で説明をして、署名を求めることとしていたところでございます。

 今後の債権管理におきましても、制度の信頼性や借受人の方の間の公平性を確保する観点から、引き続き、社会福祉協議会と連携をいたしまして、償還が可能な方については適切に償還を求めるよう対応してまいりたいと考えております。

藤巻委員 経済的に困窮している方が償還免除となる、この制度は確かに必要だと思うんですけれども、一方で、十分返済可能な経済状況にあるにもかかわらず、返済したくないから返済しないというような人にはどのような対応になるんでしょうか。社会福祉協議会の人は取立てみたいなものは専門ではないと思うんですけれども、無担保ですから担保を差し押さえることもできませんし、絶対返済しないぞというような感じですごまれたら、一体どうやって対応するんでしょうか。

本多政府参考人 お答えいたします。

 特例貸付けにおきましても、償還が可能な方について適切に償還していただくことは当然必要と考えております。

 このため、償還できる見込みがありながら償還に応じない方に対しては適切に対処を行ってまいりたいと考えておりまして、今、具体の策については検討しているところでございますけれども、まず入口としては、償還指導として、配達証明郵便等による督促状の送付や戸別訪問などの対応を行うことなども検討してまいりたいと考えております。

藤巻委員 この貸付けは法人当てではなくて個人当てですし、審査もなかなか難しいところはあったと思うので、今後、絶対返さないというような人はいっぱい現れてくると思いますので、しっかり、適切とした対処をしていただければと思います。正直に返済する人がばかを見て、絶対返さないとすごんでいる人が得をするような、こういった事態は駄目だと思いますので、そういうことがないよう、しっかりと対応の方をお願いします。

 続いて、関連して、法人へのいわゆるゼロゼロ融資についてお伺いいたします。

 東京商工リサーチの調べでは、二〇二一年の倒産件数は、本来、コロナの影響で大幅な増加が見込まれていたんですけれども、六千三十件の倒産で、五十七年ぶりの低水準となりました。コロナによる業績不振からの倒産を相応に防いで、一定の役割を果たすことはできたと考えております。

 現在、ゼロゼロ融資の返済状況はどうでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の民間ゼロゼロ融資につきましては、二〇二一年三月の制度終了までの間に、約百三十七万件、約二十三兆円の保証承諾を実施しております。また、日本公庫等の政府系金融機関による実質無利子無担保融資等については、本年三月末時点で約百十四万件、約二十兆円の融資を実施しておりまして、このいずれについても、二〇二二年十二月末時点で約六割の事業者が返済を開始しているところでございます。

 なお、これから返済を開始する事業者の返済開始予定時期のピークは、民間ゼロゼロ融資については今年七月に約五万件、日本公庫のコロナ融資については今年六月に約三万件となってございます。

藤巻委員 名古屋の信金で、申請条件に合わせるために売上げを実際より少なく書き換えていたというような不正がありました。

 銀行や信金からすると、このゼロゼロ融資は事実上のノーリスクになるわけですから、そのようなことが起こり得るのかなというふうに考えるんですけれども、売上げを書き換えるというような明確な不正はともかく、実際、審査はかなり緩くなっていたというのは日本中でかなり起こっていると思うんですけれども、そこに関してはどうお考えでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 民間金融機関におきましては、このゼロゼロ融資の制度の趣旨も踏まえ、事業者を支援するという観点から融資審査を行っている。他方で、業務運営につきましては、健全かつ適切な業務運営を行うということを常に私どもからも申しておりまして、これに従って運営を行っているということだというふうに考えておりますけれども、融資審査におきまして、法令遵守体制等に問題が認められた場合には、検査、処分、そうした監督権限を行使いたしまして、適切に対応しているところでございます。

藤巻委員 コロナからの立ち直り、まだ完全ではない中で、このゼロゼロ融資の返済期限の延長だったり借換えなど必要な場合もあるかと思うんですけれども、それに対してはどのような対策をお考えになられているでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 コロナの影響の長期化や物価の高騰に加えて、今後コロナ融資の返済本格化を迎えるなど、中小企業を取り巻く環境は引き続き厳しい状況にあると存じます。

 政府としては、本年三月にも、西村大臣、鈴木大臣らにより、官民金融機関等に対し、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を継続するとともに、事業者に寄り添った対応を徹底するよう要請しているところでありまして、足下の条件変更の応諾率は約九九%と、多くの事業者の申出に応じているところでございます。

 その上で、この民間ゼロゼロ融資につきましては、先ほど本年七月に返済開始のピークを迎えると御答弁申し上げましたけれども、コロナの借換え保証制度というのを本年一月から開始をしておりまして、返済期間を長期化しつつ、その間に収益力改善をしていただくということの御支援をしているところでございまして、これまでに約二万八千件の借換え申込みを承諾しているところでございます。

 また、日本政策金融公庫の融資につきましても、本年三月七日にコロナ資金繰り支援継続プログラムというものを公表いたしまして、スーパー低利融資や資本性劣後ローンの申請期限を本年九月末まで延長し、コロナ融資の借換えを支援しているところでございます。

 引き続き、こうした取組を通じて、中小企業への支援をきめ細かく取り組んでいきたいと存じます。

藤巻委員 ありがとうございます。その辺もしっかりとやっていただければと思っております。

 続きまして、日本の財政に絡んで、日本国債の格付についてお伺いいたします。

 現在、日本国債の格付は、例えばムーディーズですとA1で、Aa3のケイマン諸島やチリより下で、チェコやエストニアと同じというふうになっております。

 ソブリン債の格付は国内銀行や企業の外貨調達にも大きく影響していますし、民間の格付会社が決めているものとはいえ、全く無視できるものではありません。事実、財務省も、二〇〇二年にムーディーズが日本国債の格下げを行った際は、意見書を送付して、その意を問いただしております。二〇〇二年の格下げの際、ムーディーズは、日本の政府債務は戦後の先進諸国では例を見ない未踏の領域に入るというふうに指摘しております。

 ちなみに、これは二十年以上前の二〇〇二年の話なんですけれども、二〇〇二年の日本の政府債務、累積赤字の対GDP比の数字はどのくらいになるんでしょうか。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 IMFによりますと、二〇〇二年時点における日本の債務残高対GDP比は一五四・一%となってございます。

藤巻委員 二〇〇二年が一五四%、今は二六〇%弱ということですけれども、二十年前、一五四%で、ムーディーズは、先進国としては政府債務が未踏の領域に入ったとして格下げをしているわけですけれども、今は二六〇%です。一〇〇%以上増加しているわけですけれども、今の日本の格付含め、この事実をどうお考えになられているでしょうか。財務大臣、お願いします。

鈴木国務大臣 ただいま政府参考人から答弁をさせていただきましたけれども、日本の財政状況について、債務残高対GDP比で見ますと、国債の格下げが行われました二〇〇二年当時は一五四%でありましたが、直近の二〇二一年では二五五%と、更に悪化をしているところでございます。

 この間、日本の財政は、家計の金融資産や経常収支の黒字等を背景にして、大量の国債を国内で低金利かつ安定的に消化できてきましたけれども、今後もこれまでと同様の環境が継続する保証はありません。市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることのないよう、歳出歳入両面からの改革を進めていくことで財政健全化に取り組んでいくことがより一層重要になってきている、それが私の見解でございます。

藤巻委員 先ほども申し上げたんですけれども、ソブリン債の格付というのは国内銀行や国内企業の外貨調達にも大きく影響いたします。今後、日本国債の更なる格下げが仮にあった場合、どのような影響が日本経済にあると分析されていますでしょうか。

鈴木国務大臣 格付そのものにつきましては、民間格付会社によるものでありますので、その一つ一つにコメントすることはいたしませんけれども、国債の格付が下がった場合の影響につきましては、例えばその信用に連動する国内の金融機関や企業の社債等の信用が低下したり、外貨調達の際の担保として使われる国債が担保として認められなくなることなどを通じまして、企業等の資金調達コストが上昇する場合があるとの指摘があると承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、日本国債への市場の信認、これを確保することは重要な課題である、そのように考えておりまして、引き続き、財政規律を確保し、責任ある経済財政運営に努めてまいりたいと考えております。

藤巻委員 民間とはいえ、やはり格付というのは非常に大事ですから、そこの部分、格付というのも決して無視できる要因ではないと思いますし、何より、この二十年間で一五四%から二五五%、何度も言いますけれども、一五四%のときに、この一五四という数字は先進国としては未踏の領域だと言われていたんですけれども、今は二五五%という、その事実というのをしっかり受け止めていただきたい。日本の財政は厳しいと私自身も思っておりますので、そこはしっかりと同じ認識でいていただければなと思っております。

 一方で、ただ、そういう状況なんですけれども、安易な増税に頼るのではなくて、徹底した行財政改革による歳出減、そして大幅な経済成長による税収増というところに向けて全力を尽くすべきだと考えますけれども、改めて大臣のお考えをお聞かせください。

鈴木国務大臣 政府におきましては、従来より、経済あっての財政という方針に沿いまして、経済再生と財政健全化の両立を図ることが重要と考えております。このため、骨太方針に基づきまして、プライマリーバランスの黒字化などの目標を掲げ、財政健全化に向けて取り組んでいるところでございますが、こうした目標達成の前提として、単に増税ありきではなく、先生がただいま御指摘になられました、潜在成長率を引き上げて、歳出効率化努力も継続すること、これが重要であると考えます。

 具体的に申し上げますと、人への投資の抜本強化と労働移動の円滑化による構造的賃上げ、官民連携による成長分野への大胆な投資拡大等を通じて、成長と分配の好循環を実現をし、日本経済を新たな経済成長の軌道に乗せていくとともに、社会保障の給付と負担の不均衡の是正など、歳出歳入両面の改革を継続していくことによりまして、現在の目標の実現に向けて努力していくことが必要であると考えております。

 市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることがないよう、引き続き、責任ある経済財政運営に努めてまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 続きまして、サイバーセキュリティーについてお伺いいたします。

 防衛省の資料は、高い能力を持ち、高度なサイバー攻撃を実施する主体については、国家や軍関連組織の関与が指摘されているというふうにしております。

 サイバー攻撃に対応するためには相応の能力を持った組織が必要かと思うんですけれども、自衛隊のサイバー関連部隊はどのような組織で、どのような能力を持って、どの程度の規模なのか、他国とも比較の上、お答えいただければと思っております。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省・自衛隊には、共同の部隊でございます自衛隊サイバー防衛隊に加え、陸上自衛隊のサイバー防護隊、海上自衛隊の保全監査隊、航空自衛隊のシステム監査隊などの、サイバー攻撃に対処いたします専門の部隊がございます。

 こういった部隊が、防衛情報通信基盤、あるいはそれぞれが管理するシステム、ネットワークを二十四時間体制で監視し、サイバー攻撃に対処しておりますが、こういった部隊の規模につきましては、令和四年度末現在で八百九十名でございます。

 これに対しまして、委員から御指摘ありました諸外国の状況でございますが、必ずしも明らかでない部分も多いんですけれども、防衛白書で御紹介しておりますような数字を申し上げますと、例えば、中国では戦略支援部隊にサイバー攻撃部隊が約三万人いる。あるいは、北朝鮮は軍偵察総局で約六千八百人がサイバー戦に従事している。さらに、米軍におきましては、統合軍でございますサイバーコマンドの下に六千二百人のサイバー任務部隊、それに加えて、陸海空もサイバーの部隊を保有しておるというような状況でございます。

 こうした状況を踏まえまして、今回私どもが策定いたしました防衛力整備計画におきましては、現在八百九十名の部隊を二〇二七年度、令和九年度を目途に約四千人の体制に拡充したいと考えてございます。

藤巻委員 少なくとも、規模においては他国に比べて十分の一とかそういうようなレベルかなというふうに思うんですけれども、自衛隊へのサイバー攻撃のみならず、防衛産業や重要インフラがサイバー攻撃の被害に遭った場合、自衛隊の能力が発揮できないと言われています。そのような事態は防がなければいけないということで、防衛省はサイバー専門部隊要員を、先ほどあった八百九十人から令和九年には四千人程度まで拡大すると言っていますけれども、そのための方策、どのようなものを考えておられるのでしょうか。

町田政府参考人 お答えいたします。

 防衛省・自衛隊として、まず、サイバー要員の大幅な拡充、この面から御答弁差し上げます。

 この人材の確保に当たっては、陸海空自衛隊の学校における課程教育、部外の教育機関の活用、外部人材の活用など、取り得る手段を全て取ることとしております。

 最近の取組といたしましては、専門的知見を備えた優秀な人材の発掘を目的といたしまして、二〇二〇年と二〇二二年に防衛省サイバーコンテストを開催し、二〇二二年には、コンテスト参加者に対する採用案内やサイバー関連業務に関する説明会を開催いたしました。また、国内各地から有為なサイバー人材を採用するため、自衛隊地方協力本部等で人材確保の要員を増員するといった、幅広く人材を求める取組に努めているところでございます。

 また、外部人材の活用の促進については、柔軟な働き方が可能となる新たな自衛官、この人事制度の整備を検討しております。この際は、体力面に関しては緩和することも視野に検討を進めているところでございます。

 国家安全保障戦略を始めとする三文書を踏まえ、引き続き、サイバー人材の確保、育成を実効的に強化できるよう、検討をしっかり進めてまいります。

藤巻委員 サイバー部隊はほかの部隊に比べて多くの情報を扱っており、情報漏えいの懸念は常にありますし、国防上、大きなリスクとなると言えます。

 そうやって部隊を急拡大していく際に、他国の諜報員が部隊に紛れ込んだりとか、情報漏えい懸念というものはないのでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊の円滑な運用や同盟国、同志国等との緊密な連携を確保し、我が国防衛を全うするためには、情報保全の徹底が必要不可欠であり、御指摘のとおり、特に自衛隊のサイバー専門部隊を始めとする日常的に機微な情報を扱う部署においては、一層厳格な取組を行う必要がございます。

 こうした認識の下、先生御指摘の人的リスクへの対策といたしましては、一般隊員や部外者の立入りを制限する区画の指定、また、秘密を取り扱う資格、いわゆるセキュリティークリアランスを付与する際の厳格な審査、さらには、個別の情報ごとに関係者を限定するなどの取組を行っているほか、システムや取り扱う情報の不正利用を防止する対策として、多要素認証の導入、情報の暗号化による不正持ち出しの防止など、様々な施策を組み合わせて厳格な情報の取扱いを実施しております。

 また、サイバーセキュリティーの観点から申し上げますと、例えば、サイバー専門部隊による二十四時間体制での防衛省・自衛隊の情報通信ネットワークの監視、サイバー攻撃への対処、ソフトウェアなどの最新の状態の維持や、ウイルス等の検知に必要な機能の導入によるシステムの脆弱性への適切な対応、システムのライフサイクル全般を通じて常時継続的にリスクを分析、評価し、必要なセキュリティー対策を実施する取組の導入といった施策を実施し、日々高度化、巧妙化するサイバー攻撃への対策を講じているところでございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 その辺の部分というのは非常に大事な部分だと思いますので、しっかりと対策を練っていただければと思っております。

 次に、防衛セキュリティーゲートウェーの整備についてお伺いいたします。

 これは、官民共用のクラウドを導入してデータベースを保護した後、そこから情報を出し入れするものと理解しておりますけれども、防衛省と関連企業、さらには下請企業や孫請企業も含めて導入していくということは、データをメール等で、通信のやり取りで起こる事故やサイバー攻撃に対して一定の効果がある方法だとは思っております。

 防衛セキュリティーゲートウェーについての現在の進捗状況だったり今後の見通しについてお聞かせ願えればと思います。

春日原政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省では、令和五年四月以降に締結する防衛関連企業との契約から、防衛産業サイバーセキュリティー基準、これを適用をしております。

 先ほど委員御指摘いただきました防衛セキュリティーゲートウェーでございますけれども、これは、当該セキュリティー基準の技術的管理策に必要な各種機能を備え、保護すべき情報を取り扱う防衛関連企業との間で安全かつ効率的にデータの共有を行うことを可能とする官民共同クラウドでございます。当省といたしましては、これを令和五年度中に整備をすることとしてございます。

 この防衛セキュリティーゲートウェーの整備は、防衛省が行う事業としまして、より厳格な基準に基づき行うこととしておりまして、例えば、二十四時間体制で監視を行うであるとか、専用の通信回線による安全性の高いネットワークを利用するといったことのほか、継続的なリスクの分析、評価、管理、それから、ウイルス等の高度な検知による脆弱性対応などの取組をしっかり行っていくということを検討してございます。

 これらにより、総合的に情報セキュリティーの強化、情報漏えいの防止を図ることといたしております。

 以上でございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 引き続き、そういった取組をやっていっていただければと思っております。

 時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。国民民主党の前原誠司でございます。

 まず、財務大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 先週の金曜日に参考人質疑がありまして、その四人来られた中の一人が土居丈朗先生、慶応大学の教授でございました。土居参考人からは本法案に賛意が示されまして、私からは、今提出する必要性について質問をさせていただきました。来年度の予算審議の際に予算関連法案として出せばいいのではないかということを申し上げたところ、あらかじめ予算を確保することの必要性についての言及がありました。

 これは参考人との質疑でございますので、しっかりとこの点について財務大臣と議論させていただきたいと思います。

 ちなみに、昨日、我が党でこの法案の賛否について議論いたしまして、反対を決めたところでございますけれども、その最大の理由が、税制上の措置というものがしっかりと決まっていない状況の中で今この議論をする必要性があるのか、来年の通常国会、予算関連法案として、税制上の措置も固まった上で議論すべきではないかという意見が大宗を占めまして、我々としては反対。防衛力強化については賛成でありますけれども、この法案については反対、こういう結論に至りました。この点について大臣と議論させていただきたいと思います。

 まず、この法案の一つの大きな核になっております外国為替資金特別会計の剰余金でありますけれども、令和五年度の外為特会剰余金を法律を作ってまで前倒して繰り入れる必要性は、なぜでしょうか。その点についてお答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 前原先生から、外為特会の剰余金を前倒しで繰り入れる理由についてお尋ねがあったわけでございますけれども、今般の防衛力強化の財源確保に当たりましては、国民の御負担をできるだけ抑えるということで、歳出改革、決算剰余金の活用、そして税外収入の確保など、あらゆる工夫を行っているところであります。

 その際、防衛財源の安定的な確保に向けた道筋を示すためには、現時点で確実に確保できる財源につきましては、先送りすることなく、現時点で確実に確保することが必要であると考えております。

 こうした考え方に基づきまして、今後五年間の防衛力強化に要する経費に充てられる税外収入の確保の一環といたしまして、外為特会の令和五年度の剰余金見込額のうち、為替、金利の動向等を踏まえまして、現時点で確実に発生が見込まれる一・二兆円につきまして、決算を待たず、本法案による特別の措置として、前倒しで一般会計に繰り入れることとしたものであります。

前原委員 防衛力強化につきましては、税制措置、それから防衛力強化資金、そして決算剰余金の活用、そして歳出改革、こういったところで防衛力の強化に関する財源になるわけですね、この四つで。

 その中で、法律になるのは防衛力強化資金だけですよね。歳出改革は法案の中に入っていない。決算剰余金の活用も法案の中に入っていない。そして税制措置はまだ決まっていない。この防衛力強化資金のところだけ、つまりは、一兆四千七百五十億円のところだけを法案で固めているわけですね。ほかのところは別に要らない、税外収入で三兆一千百六十九億円については、これは法律は要らないということですね。

 確実に確保するということの大宗は、外為特会の令和五年度の剰余金だけなんですよ、言ってみれば。一兆四千七百五十億円のうち一兆二千四億円が、外為特会の令和五年度の繰入金の言ってみれば差押えみたいなものですね。ここだけなんですよ。もちろん、国立病院機構の返納四百二十二億円、地域医療機能推進機構の返納三百二十四億円。これは一千億円にもならないですよね。ということは、外為特会の令和五年度の差押えがほぼこの法案の中身と言っても過言ではないんですね。

 でも、防衛力の全体の議論を我々はしているわけで、しかも、税制上の措置というものは空欄で、金額については空欄で、そして閣議決定だけですよね。だったら、現時点で確実に確保するんだったら、このいわゆる外為特会の令和五年度の剰余金については、閣議決定で決めておいたらいいんじゃないですか。だって、税制措置は閣議決定だけじゃないですか。法案を出していないじゃないですか。歳出改革についても、結局法案を出していないじゃないですか。であれば、今の御説明は全く説得力を持たないと思いますけれども、いかがですか。

鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたことでございますけれども、防衛財源の安定的確保に向けた道筋、それを示すため、現時点で確実に確保できる財源につきましては現時点でしっかりと確保することが必要であると我々は考えております。

 そうした中で、外為特会の剰余金の中の、例えば今の進行年度の利用とか、そういうものは法律を通さなければこれはできないものであるわけでありますので、今回、この法案の中におきましてこうした措置をお願いをしているところでございます。

 我々といたしましては、階先生からも昨日御指摘ございましたけれども、震災のときの財源確保法と比べて随分不十分な点があるじゃないか、こういうことで御指摘もいただいたわけでありますが、我々としては、しっかりとした法律改正によって確保するもの、そして、その使い方におきましても、防衛力の資金、それを創設をするということ、こういうことをしっかりと法律でやらせていただく。そのほかの税制措置についてお願いする部分、これらにつきましては、閣議決定でなされていること、それをもって行うということで、たてつけといたしまして、法律改正をしなければならない部分のお願いをし、そして、閣議決定で決まったものについてはそれで対応するということで、今回のこの法律案には入れていない、そういう判断をしたということであります。

前原委員 だから、答弁になっていないんですよ。なぜ法案と閣議決定の違いがあるものがトータルパッケージになっていて、令和五年度の剰余金、外為特会の剰余金だけは仮押さえで法案にするのか。なぜ閣議決定は駄目なんですか。省議決定でもいいじゃないですか、財務省の省議決定でも。そして、これは使うんだよという意思を示しておけば、誰がほかにそれを取るんですか。誰がそれを流用するんですか。財務省の大臣でしょう、財務省の大臣が流用されるおそれがあるということで法案を作るんですか。閣議決定と法案の違いをちゃんと合理的に説明してください。納得できないですよ。

鈴木国務大臣 これは一つの政策判断ということで、今回の法律を構成をして国会にお出しをしているところでございます。

 特に御指摘をいただきますのは、税制措置についてこの法律には触れられていない、こういうことでございますが、税制措置につきましても、閣議決定におきまして、その実施時期につきましては、令和九年度までの過程において、行財政改革を含めた財源調整の見通し、景気や賃上げの動向及びこれに対する政府の対応を踏まえて、閣議決定した枠組みの下で税制措置の実施時期等を判断していくということになっているわけでありますので、そういうことで対応をしてまいりたいと思います。

 閣議決定と法律事項の差は何か、それについてどうしてこういうような法体系にしたのか、そういうことを御質問であって、それに対する答えということになるわけでありますけれども、一つのこれは政策判断としてこのようにさせていただいております。

前原委員 これは説明になっていないです。

塚田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

塚田委員長 速記を起こしてください。

 前原誠司君。

前原委員 先ほど、税制措置については閣議決定でしっかりと担保したとおっしゃいましたよね。政策判断であっても、なぜ、じゃ、この令和五年度の外為特会の剰余金を閣議決定で押さえるということ、それは政策判断だという言葉だけでは説明になっていないですよ。なっていないです。説明になっていない、政策判断では。

 だって、全体の防衛の金額があって、そして、ほかのやつは全部閣議決定とかですから。法律になっている大宗は、令和五年度の外為特会の剰余金だけなんです。何でこれを閣議決定にしないで法律にしたのかということについては、政策判断ではないんですよ、それは。つまりは、合理的では全くなくて、政策判断だということじゃなくて。

 じゃ、違う点で質問します。これを閣議決定で押さえることについては、なぜ駄目なんですか。その説明をしてください。

塚田委員長 新川主計局長。(前原委員「いやいや、大臣に聞いているんです。大臣との議論をしている」と呼ぶ)

 まず参考人から説明を求めた後に。

新川政府参考人 外為特会その他税外収入の繰入れにつきまして、制度上、技術的な点がございますので、私の方から答弁させていただきます。

 令和五年度予算におきましては、税外収入につきまして、予算におきまして四・六兆円程度の税外収入を計上しているところでございますが、このうち、例えば外為特会からの繰入金について、合計三・一兆円のうち、令和五年度の進行年度の剰余金繰入れ一・二兆円分については、現行の制度上、法律上の繰入れが認められていないため、特例法をもってその繰入れを行う措置を取る必要がございます。

 それから、財投特会からの繰入金につきましても、合計六千億のうち〇・二兆円部分について、これも財政融資勘定でありますけれども、これにつきましても、現行の法令上は繰入れができないことになっておりますので、今回の法律措置をもって繰入れをするもの。それから、国立病院機構、地域医療機能推進機構の〇・一兆円についても特例法が必要になっております。

 全体として四・六兆円の税外収入の確保ということを閣議決定をもって全体像をお示しした中で、五年度一般会計予算におきましても税外収入四・六兆をお示しし、あらかじめ防衛力整備計画の確保のために必要な財源の措置について全体をお示しした上で、どうしても法律上の措置が必要な一・五兆円程度につきまして、本法案において措置をしたということでございます。

前原委員 新川主計局長は、極めて優秀な方で立派な方だという認識は持っているんですけれども、私の聞いていることと全く違うことを答えられているわけですね。

 私は、別に今法律を出さなくていいじゃないと。今法律を出すのは、繰り入れられないから、法律でやらないと繰り入れられないという説明は、それはもう分かっている質問をしているわけですよ。何で来年出さないのと言っているわけですよ。

 来年、令和五年度の剰余金は使えるじゃないですか。今繰入れできないというのは分かっていますよ。だから、今閣議決定で、これだけは繰り入れる予定ですと閣議決定すればいい話であって、別に特例で今繰り入れる必要はないんですよ。

 だから、令和六年度の予算案の審議のときに、だって、令和五年度の防衛費というのはもう確保できているんですから、令和六年度以降の防衛費の確保のためにこのいわゆるパッケージをつくるわけでしょう。令和六年度の予算編成のときに、これを令和六年度の予算関連法案として出したら、別に特例法じゃなくて、今繰り入れなくていいじゃないですか。令和五年度の剰余金だから、令和六年度に使えるじゃないですか、何も法改正しなくて。

鈴木国務大臣 今回、私どもとして、この法律をこの国会に提出してお願いをしている、御審議をお願いしているということでございますが、新たな防衛力整備計画、これに基づきます防衛力の整備を確実に進めていくためには、現時点で確実に確保できる財源について先送りすることなく現時点でしっかりと確保し、防衛財源の安定的な確保に向けた道筋をできるだけ早期に示すことが重要と考えている、これが一つの我々の思いなんでございます。

 このために、令和五年度予算においては、現時点で見込める最大限の金額であります四・六兆円の税外収入を確保したところでありまして、今回の財源確保法案においては、令和五年度予算における特別会計からの繰入れや独立行政法人からの国庫納付による追加的な税外収入の確保、確保した税外収入はプールし、令和六年度以降に活用できるようにするための防衛力強化資金の設置、こういったような法律上の手当てが必要なものを今回お願いをしているところでございます。

 繰り返しになりますが、私どもが今回この法律をお願いしているというのは、私が前段で申し上げたところでありまして、防衛財源の安定的な確保に向けた道筋をできるだけ早期に示すこと、これが極めて大切だという思い、これがベースになっているわけであります。

前原委員 同じ答弁はもう結構ですから、ポイントだけ、もう分かっておられると思いますので、なぜ法律なのか、なぜ閣議決定では駄目なのか、そのことだけお答えください。だから、政策判断じゃないんです。政策判断に至った、その違いを教えてください。その政策判断をするに至った、閣議決定と法案の違いを教えてください。

鈴木国務大臣 まあ、政策判断と申し上げましたが、政治判断と言った方がよかったのかもしれません。いわゆる、そういうふうに判断を総合的にしたわけでございます。

 それで、閣議決定事項とそれから法律で規定される事項の性格上の違い、これは、ここでちょっと私も明確に、学術的にお答えすることはできませんけれども、先ほど新川主計局長からも話がありましたとおり、この法律を通さなければ手当てできない財源、そういうものをしっかりやるという意味においては、やはり閣議決定ではなく法律でやることが重要である、筋である、そういうふうに判断をしたところです。

前原委員 全く、すれ違いというか、答弁になっていないんです。

 だから、本来であれば、意思をしっかり示すのであれば、私から言わせると、税制措置は閣議決定だ、だけれども、決算剰余金の活用とか歳出改革なんかは逆に法案にして、やはり歳出改革に対するしっかりとした政府の決意を示すということも私は大事だと思うんです、逆に言うと。それが本当の政治判断だというものだと私は思いますよ。それをやらないで、外為特会の令和五年度だけ、これだけ確保させてくださいねという、基本的なものだけ、それで法律で議論してくださいという、この法案というのは本当に意味が分からない。そこが私は大きな問題だということは申し上げておきたいと思います。

 これに関連して、別の観点からまた質問いたします。

 教育予算を増やしますよね、教育予算を。何をもって倍増とするのか分からないけれども、教育予算の倍増ということが示されて、この六月に骨太の方針に書かれることになるわけでありますけれども、令和六年度予算から子供、子育て関連予算は大幅に増加されるということでよろしいんですか、財務大臣。

鈴木国務大臣 今、御承知のとおり、担当大臣が三月にたたき台を出しました。かなり網羅的なものであります。それを受けまして、今、総理大臣の下の会議体ができまして、そこで、これから政策強化する内容、それに係る財政的なものはどれぐらいか、そしてそれを賄う財源はどうか、こういうことを六月の骨太の方針に向けて決めていくということでございまして、今時点で何か定まったものがあるかというと、それはないわけであります。

 しかし、子供、子育て関連の政策ということにつきましては、もう既に、こども庁が発足する前からいろいろなやるべきことはやってきておるもので、例えば出産育児一時金の増額とかをやっておりますので、そういう流れの中で、来年度予算からも子供、子育て予算に対する必要な予算措置というものはなされていく、こういうふうに判断しています。

前原委員 だから、なおさら、防衛費だけは外為特会剰余金の一・二兆円を押さえるということの法律を作ると、子供予算にはそういう、だって、来年度から増やすわけでしょう。平仄を合わそうと思ったら、教育予算でも何か法案を出して予算を押さえるということをしなきゃいけないはずなんですよ。だって、両方とも来年度から増やすわけでしょう。

 防衛も増やす、教育も増やすということであれば、防衛だけ何かこういう資金のパッケージをつくって一部予算を確保するということになると、ちまたで言われているように、何か教育よりも防衛の方がやはり重要なのかという話になりますよね。どちらも重要なんです。教育も大事、そして防衛も大事ということになれば、同じような、平仄を合わせなきゃいけない。こういうふうに防衛だけ一部外為特会の剰余金を手当てするということになると、教育予算には取らせないぞということの中でこれを押さえたというふうに外形的には見えるんですよ。

 だから、そういう意味においても、しっかりとやはり来年の通常国会で、防衛についても、教育についても、財源論も含めて堂々と議論するということの中で、こういった一部、一兆二千億円だけは押さえますよという法案というのは、極めて整合性が取れていない。それが政治判断と言うのであれば、極めて間違った政治判断だというふうに私は思いますが、改めていかがですか、今の教育予算との合体の話の中で。

鈴木国務大臣 教育予算を含める子供、子育て関連予算でありますが、これは極めて重要な政策であると思います。防衛力強化ももちろん重要でありますけれども、子供、子育て関連の政策、これも重要である、こういうふうに思います。

 したがいまして、防衛力強化と、少子高齢化対策を含む子供、子育て予算、教育もそこに含まれると思いますが、こういったものをどちらか一方という二者択一の問題として考えてはいけないんだ、こういうふうに思います。政府の責任として、共に財源を確保しつつ必要な予算額を措置をしていくこと、これが重要でございます。

 その上で、六月に向けて、そうした将来の在り方についての大枠も示していくということになるんだと思います。

前原委員 今財務大臣がおっしゃったように、どちらが大事かということじゃないんです。国家にとっては、僕は、人的、やはり教育、人材育成というのは基本である、しかし防衛も非常に大事ということで、どちらかということでなくて、両方ともしっかりと強化していかなきゃいけない。でも、どちらも財源が要りますよね。

 そういうことの中で、今回のように、わざわざ法律を一部だけ作って、何度も何度も申し上げて恐縮でありますけれども、外為特会だけ前倒しをしてそこだけ押さえるというような、極めていびつな法案になっているということを改めて指摘をして、だからこそ我々は反対をするということは申し上げておきたいというふうに思います。それが政治判断と言うんだったら、私は、極めて間違った、不誠実な政治判断だということは申し上げたいと思います。

 日銀の植田総裁、お越しになっておられますけれども、今の議論を聞いていただいて、財源の議論がこれから大変重要になってくると思います。防衛費でいうと大体四兆円とか五兆円とかの増額。子供予算は、どこからを発射台にして倍にするかという議論はありますけれども、今の文教・科学技術費が五・四兆円ですので、令和五年度が。それが例えば発射台だとすると、それも五兆円ぐらい。合わせて十兆円ぐらいの財源の話を、こういうふうに、外為特会だ、決算剰余金だ、あるいは国立病院機構だというようなところから集めてきている中で今段取りをしているわけですけれども。

 しかし、私は非常に大きなマグマがたまっていると思っているのは、日本の抱える財政赤字なんですね、財政赤字。国債発行残高で一千兆円を超えていますよね。一千兆円を超えていて、今まで、過去、特にこの十年間は異次元の金融緩和ということで金利を抑えてきたということの中で、一千兆円のボリュームはあるけれども、その利払い費というものはかなり低く抑えられてきたということであります。

 仮にですよ、総裁、一%、物価上昇目標が達成できるということになって、一%増えるということになると、初年度は三・七兆円ですよ、利払い費で増えるのは。御存じですよね、三・七兆円。でも、それは初年度であって、ずっとずっとそれが、一%が続くとなると、簡単に言うと、一千兆円の一%ですから、十兆円ですよ。今議論している財源の議論は吹っ飛ぶんです。

 つまり、日銀が一%利上げをする、それはいきなり一%ということはないかもしれないけれども、一%、物価安定が達成できて、そして利上げをするということになると、一%上げただけで、今我々が議論していることについては吹っ飛ぶんですよ、利息だけで。こういう、まあ言ってみれば、爆弾、マグマがたまっている状況の中で、しかし、物価安定になればちゅうちょなく利上げをするという意思を日銀総裁はお持ちですか。

植田参考人 金融緩和ですが、これは言うまでもなく、物価の安定を実現するという政策上の目的のために行っているものでありまして、財政資金の調達を支援することを目的としているわけではございません。

 したがいまして、国債利払い費への配慮から必要な政策の遂行が妨げられるということはないと考えてございます。

前原委員 その物価安定の目標で引き続きお話をしていきますと、じゃ、日銀が一千兆円と気にせずに、物価安定の目標の中で金利を仮に上げていく、そして、それに対して、先ほど申し上げたように、一%で、初年度は三・七兆円かもしれないけれども、十兆円、二%だったら二十兆円、こういう話になるわけですね。

 本当に、今までの政策のツケで、我々がその財源についての議論というものが追っつけるかどうかという、我々、選挙というものを乗り越えなきゃいけなくて、国民がその意識がついていけるかどうかという、大変大きな、そういう意味でのマグマを抱えてきているわけでありますけれども。

 じゃ、日銀が金利を上げていく、それに対する財源の議論が追いつかなかった場合に、現在は先進国最悪の財政状況でありますから、日本への財政の信頼が揺らぎかねないですね。先ほど同僚議員の話もありました、格付の話もしかりであります。

 そうなると、一番私は変化をしてくる一つの大きなポイントは通貨だと思うんですね。円安というものが起きてくる可能性がある。去年は一時的に一ドル百五十円まで行きました。そのことによって、去年は平均が百三十数円になって、過去最大の貿易赤字ですよね、赤字になったということであります。というような状況になってくると、通貨が信認が揺らぎ、円安に傾く。円安に傾けば、これは輸入物価が上がりますね。輸入物価が上がれば、結局、言ってみれば、物価上昇に伴ってまた更に金利が上がるということになりかねない。

 しかし、この十年間を見ても、企業の利益は八八%増えていますけれども、名目賃金は三%しか増えていない。そして、実質賃金、物価上昇分を割り引いたものは、むしろ六%減っているということで、この十年間で実質賃金、実質可処分所得は減っているんですね。

 ということは、景気がよくならない中で、通貨の信認が揺らぎ、そして、輸入物価が上昇する中で金利上昇が共になるということになると、日銀総裁としては金融の引締めをやらなきゃいけないんじゃないですか。でも、そのときには完全にスタグフレーションという可能性も出てくる。

 このいわゆるスタグフレーションの可能性が出てきても、物価安定、金利を抑えるということをやるというふうな政策判断を取られますか。

植田参考人 財政運営の話から質問は始まったと思いますけれども、繰り返しになりますが、財政運営は政府、国会の責任において行われるもので、具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。

 ただ、金融政策の方は、主として金利、為替レートを含みます資産価格を通じて経済、物価に働きかけるものでございます。したがって、財政に対する信認が維持されるというような施策が取られる下で、様々なリスクプレミアムが資産価格に発生しないというふうに形成されることが、日本銀行が適切な金融政策運営を行っていく上で極めて大事であるというふうに認識しております。

前原委員 総裁、そろそろ真っ正面から答えるようにお願いしますね。

 つまり、私が伺っているのは、金融政策と財政状況というのは切っても切り離せないということなんです。それはお分かり、当たり前ですよね。

 となると、財政の信認が揺らげば、通貨の信認が揺らぐ。そのことによって、円が安くなり、輸入物価が上がる。そのことによって、嫌なインフレが起きる。つまりは、ディマンドプルではなくてコストプッシュ型ですね。言ってみれば、需要と供給が過熱をしてのインフレではなくて、違う形のインフレが起こるという可能性はありますよね。その可能性はありますよね。そのことをちょっとお答えください。

植田参考人 もちろん、先ほど申し上げましたような、何らかのリスクプレミアムが発生して、それが回り回ってコストプッシュ型のインフレーションに陥るという可能性はゼロではないと思っています。

前原委員 そのときに輸入価格が上がり、そして物価上昇し、景気がよくない状況の中でも、それは物価安定が日銀の目的であると、日銀法二条でしたかね、に基づいて金融引締めをやるということ、それはスタグフレーションもやむなしということですか。

植田参考人 一般論として申し上げますと、コストプッシュのときの金融政策対応というのはかなり難しいものがございます。一方で、インフレーション、インフレ率が上がっていきますので、これは抑えたい、他方で、コストプッシュは景気にはマイナスの影響を与えますので、こちらへ配慮した場合は余り引き締めたくない、そのバランスをどこに取るかというのは極めて難しい問題でございます。

 その時々のそもそもの出発点のインフレ率がどの辺にあるかということを含めて、そのときの経済状況によるのかなと考えてございます。

前原委員 コストプッシュ型の政策運営は難しいということですけれども、そのリスクは今、日本にはあるというふうにお考えですか。

植田参考人 財政に関するものという御質問でございましょうか。(前原委員「コストプッシュの」と呼ぶ)コストプッシュ、はい。

 様々な理由でコストプッシュインフレーションが起こると思いますが、現状では、コストプッシュインフレーション、原燃料価格の上昇に伴って発生したものは、ピークを越えて下火になりつつあるというふうに考えてございます。

前原委員 いや、私が聞いているのは、財政の信認が揺らいできて、そして通貨の信頼が揺らぎ、そして、燃料価格とかウクライナによる、侵攻による穀物の価格とかじゃなくて、円安が進むことによる言ってみればインフレーションの可能性はあると考えているかと聞いているんです。

植田参考人 もちろん、将来は不確実でございますので、そういう可能性が全くゼロであるというふうに言い切る自信はないわけでございますが、現状ではその可能性は低いかなと思ってございます。

 ただ、その可能性は低いままキープしていただくためにも、持続的な財政構造の確立に向けて、政府、国会で努力していただくということが重要かなと思ってございます。

前原委員 その低いけれどもゼロではないということの前提として、この十年間のアベノミクス、異次元の金融緩和というもののツケがやはり大きくマグマとして、副作用としてたまっているという認識、それはお持ちですか。

植田参考人 この間、経済状況、反省してみますと、ある程度の経済成長がアベノミクスの下で実現されておりますし、消費税の増税もなされております。ということで、財政にその結果として物すごいツケがこの十年間の結果たまっているというふうには必ずしも考えてございませんが。

前原委員 いずれにしましても、大きな爆弾というかマグマが財政赤字というものでたまっていて、そしてやはり財源の議論をしっかりやらないと、先ほど申し上げたように、一%金利が上昇しただけでも、初年度で三・七兆円、そしてしばらくすると十兆円規模に一%でもなるというような、我々は本当にマグマを抱えている、その中で難しい金融政策のかじ取りもしていただかなきゃいけない。だからこそ、前回、この委員会で、もう一遍、もう一回、日銀と政府の間で共同声明を結び、お互いがそういったところをしっかりと確認するということが大事じゃないかということは申し上げたところであります。

 日銀総裁、これで結構でございますので、ありがとうございました。

塚田委員長 日本銀行植田総裁、御退室いただいて結構です。

前原委員 最後に、安定財源の議論をしていく上で、一つだけ是非お聞きしたいことがあります。

 民主党政権のときに、社会保障・税の一体改革というものを決めまして、私、そのときの政調会長をやらせていただいたんですが、そのときにマイナンバー制度の導入というものを進めました。その前提となったのは、やはり資産の把握というものをしっかりとやらなければいけないのではないかと。

 例えば、七十五歳以上の方々であっても、現役並みの所得のある方は医療費は三割負担ですよね、ほかの方々は一割負担ですが。しかし、現役並みの所得はないけれども、ストックをたくさん持っている方って結構おられると思うんですね。そういった方々にも応能負担、応分負担をしていただこうということの中で、マイナンバー制度を使って資産の把握をさせていただき、そして、そういった方々にも、応能負担、応分負担をしてくださることにより歳出面での改革ができるのではないかというのが、我々がマイナンバー制度の導入を決めた一つの大きな目的でありました。

 このマイナンバー制度の現状と、そして資産へのひもづけと、そしてその意図については継続されて持たれているかどうか、その点を御答弁をいただきたいと思います。

大串副大臣 マイナンバー制度は、デジタル社会の基盤として、国民の利便性向上と行政の効率化を併せて進め、より公平公正な社会を実現するためのインフラでございます。

 資産の把握を含む応能負担の在り方については、一義的には、社会保障制度や税制等の所管省庁においてその在り方や制度設計が検討されるものと考えております。これらの制度におきましてマイナンバーの利用が必要となる場合には、マイナンバー法の改正やシステム改修等が必要になることから、デジタル庁として、緊密に制度所管省庁と協力をして取り組んでまいりたいと考えております。

前原委員 財務大臣、この資産へのひもつけ、そして、応能負担、応分負担を資産を持っておられる方々にしていただく、特にシニアの方々に。そういったお考えについては、いかが財務大臣としてはお考えですか。

鈴木国務大臣 従来は、やはり年齢で区切って、それで負担のお願いの多寡を決めるというのが昔からのやり方でありましたが、やはり、前原先生の御指摘のとおり、シニアであっても、不動産等を所有している方もあり、様々な金融資産を持っている方もおりまして、私は、基本的に応能負担をしていただくというのはこれは大切なことである、そういうふうに思います。そういう中で、マイナンバーの活用、これは極めて有効な手だてである、そういうふうに思います。

 ただ、いろいろ、国民の皆さんのことを全部把握しているわけではありませんが、どうも自分の口座を全てひもづけをするというようなことに対する抵抗感、そういうものがあるというのも事実であると思います。

 そういうことを、これから政府としても、マイナンバーの活用、それによる応能負担の推進、その重要性、必要性を十分に示して、これを活用していく、応能負担を進めていくこと、これは重要なポイントであると認識しております。

前原委員 財政状況が厳しい中で、しかし、教育や防衛など、新たな取組が必要で、必要な財源の議論というのはしっかりやっていかなきゃいけませんが、増税ありきではなくて、やはり歳出の在り方の見直し、あるいは新たな負担を求めていくということもしっかりと議論しながら、国民の理解を得ていく議論をこれからも進めていきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 軍拡財源法案について質問します。

 政府は、アメリカの要望に応えてGDP比二%への軍事予算倍増を決定し、防衛装備などを積み増ししました。その内容も、アメリカからの武器、装備品の購入のためのFMSを四倍に膨れ上げたことなどが原因で、さらに、後年度負担も大幅に増えています。なし崩しの防衛費増大です。

 先日の参考人質疑で、金子勝元慶応大学教授は、なし崩し的な増大が財源においても行われようとしていると危惧を抱いていると述べました。そして、多くの議員がこの審議の中で、決算剰余金などを軍拡財源に充てる今回の仕組みについて、国債ロンダリングと批判してきました。金子参考人も、一旦予備費や基金を経由しているが、ほとんど防衛費と異なる財源であり、単年度予算主義からは外れており、かつ、多年にわたって支出されるにもかかわらず、国会のチェックが非常に甘い、透明性が乏しいので、ある種のマネーロンダリングに近いと批判しました。

 鈴木大臣、まさにマネーロンダリング、国債ロンダリングではありませんか。

鈴木国務大臣 防衛力の抜本的な強化を安定的に支えるための裏づけとなる財源、これは将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が将来世代への責任として対処すべきという考え方であります。この考え方は何を言っているかといえば、国債発行額を増加させないよう、しっかりとした財源を確保することということであります。

 令和五年度予算におきましても、防衛力強化のための税外収入として四・六兆円を確保したところであります。このうち、国立病院機構及び地域医療機能推進機構の積立金からの国庫納付、中小企業基盤整備機構の新型コロナウイルス感染症基金からの不用見込み分の国庫納付、緊急小口資金等の特別貸付けの不用見込み分の国庫納付といった税外収入の財源、これは元々は新型コロナ対策として補正予算時により措置した事業に由来するものでありまして、先生が御指摘がありましたが、そのとおり、国債と全く無関係とは言えないとは思います。

 しかしながら、こうした国庫納付は、通常であれば基本的に一般会計の一般財源として歳入に計上されるものであり、今般も、国債発行額を増加させないという考え方に基づき、しっかりとした防衛力強化の財源として確保したものであります。

田村(貴)委員 大臣、答弁で、国債とは全く無関係とは言えないと。原資が赤字国債なんですよ。そして、軍事費の財源に赤字国債を充てるのは事実なんです。過去にこういうやり方をしてこなかったのも事実なんです。

 参考人質疑で、元内閣官房副長官補の柳澤協二参考人は、現役の官僚であった頃には、財政法の原則というのは、国債で戦費を調達した反省を踏まえて、防衛の分野には使わないと思っていた、財源の便宜だけのためにこういう原則をいじるような議論は、個人の思いとして、していただきたくないというふうに述べられたんです。

 大臣も参考人の意見陳述を聞かれたと思いますけれども、国債で戦費を調達してはいけない、これこそが歴史の教訓というものではありませんか。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 抜本的に強化されます防衛力、これは将来にわたって維持強化していかねばならないものでありまして、これを安定的に支えるため、令和九年度以降、歳出改革等に最大限努力しつつ、裏づけとなる財源をしっかり確保することが必要であります。そして、先ほど申し上げましたとおり、この負担を将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々の世代の責任として対応すべきものであるということで、国債の発行、これを増やさないということの意味がここに込められているわけでございます。

 将来世代への負担の先送りとなる国債につきましては、令和九年度以降、将来にわたり強化された防衛力を安定的に支えるためのしっかりとした財源措置として位置づけられるものではない、そのように考えます。

 その上で、税外収入の財源については国債と全く無関係とまでは言えないこと、これは委員御指摘のとおりでありますが、こうした税外収入の活用により、国債発行額を新たに増加させるものではないことから、しっかりとした防衛力強化の財源として確保することとしたものであります。

田村(貴)委員 大臣、こういうやり方をなし崩し的なやり方というんですよ。金子参考人も、赤字国債で軍事費が歯止めを失った、だから、赤字国債を避けなければいけないという歴史の教訓があると強調されていました。

 もう一つの歴史の教訓は、臨時軍事特別会計でお金をプールし、軍事優先の予算編成を戦前許してしまったことであります。今回創設される防衛力強化資金は、臨時軍事特別会計をまさにほうふつさせます。国有財産の売却収入も財源にするといいます。これは、来年度以降の税外収入を先に軍事費にプールするものであります。

 大臣、軍事費のためなら将来の予算審議権を国会から奪ってもいい発想ではありませんか。これは戦前の考え方と同じじゃありませんか。どうなんですか。

鈴木国務大臣 防衛力強化資金に、いろいろな財源をそこにためておくということが、将来の、これから先の国会の審議権に影響を与えることではないかということでございますが、防衛力強化資金について我々の考えを申し上げますと、今般の財源確保法案においては、様々な取組により確保した税外収入等を、令和十年度以降も含めて、防衛力の整備に計画的、安定的に充てるための継続的な仕組みとして防衛力強化資金を設置することとしております。

 このような対応によりまして、現時点で確実に確保できる財源について先送りすることなく現時点でしっかり確保しておくこと、これは防衛財源の安定的な確保に向けた道筋を示すために重要である、そのように考えております。

 同時に、来年度以降も通常分の税外収入は一般財源としてしっかり確保していく方針であることなどから、何か、将来の、これから先の国民生活を支える予算をこれによって抑制することになるのではないか、そうはならないと考えているところでございます。

田村(貴)委員 その答弁は全く信用なりません。本当に歴史の教訓がなおざりにされています。金子参考人は、この法案をこのまま通せば歴史に本当に禍根を残すことになるのではないかと強く述べられましたけれども、私も全く同感であります。

 次に、防衛力強化資金に繰り入れられる財源について伺います。

 中小企業向け支援であるゼロゼロ融資、中小企業基盤整備機構の返納金二千三百五十億円について伺います。

 コロナで苦境にある中小企業の資金繰り対策として実施された実質無利子無担保の貸付けが二〇二二年九月末に申請受付を終了したので、基金の残金を返納させ、これを軍事費に転用させる、とんでもないやり方です。

 大臣、聞いていただきたいと思います。

 中小企業や零細企業の事業者が置かれた状況というのは極めて深刻な状況です。東京商工リサーチ社によりますと、二〇二二年の休廃業、解散は四万九千六百二十五件で、過去二番目の多さです。コロナ対応融資、ゼロゼロ融資の返済は中小企業の深刻な重荷となっています。そうですよね。また、二〇二二年度の実質無利子無担保融資を利用後の倒産、ゼロゼロ融資を利用した後の倒産は五百四十一件で、前年度の三・六倍増と急増しています。コロナ禍の中で増えているわけです。

 ゼロゼロ融資の本格的返済が始まっていきますけれども、東京商工リサーチ社は、元本返済と金利負担から資金繰りに窮する企業が更に増えていくことが危惧されると指摘しています。さらに、物価高騰や人手不足などによるコストアップが経営苦に拍車をかける。返そうにも返せないという状況なんですよ。

 倒産、失業、そして廃業を回避すべき、今、時期じゃないんですか。だから、事業継続のために、基金は返納せずに、それこそ中小企業支援のために使うべきではないんですか。いかがなんですか。

井上副大臣 お答えいたします。

 ゼロゼロ融資などのコロナ禍で増大した債務の返済負担に苦しむ事業者に対する支援は喫緊の課題だと我々も思っております。私自身も、コロナ対策救済メニューをつくらさせていただいたときの財務大臣政務官でもございました。このコロナ、ゼロゼロ融資もそのうちの一つでございます。

 御指摘のとおり、今後、本年夏頃をピークに、民間金融機関によるゼロゼロ融資の返済が本格化を迎えます。日本政策金融公庫のゼロゼロ融資を含むコロナ融資についても、本年六月、約三万件の融資の返済開始が見込まれております。

 政府といたしましては、こうした借換え需要の増加等に対応するため、本年一月からコロナ借換え保証制度の運用を開始し、民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減を図るとともに、先月七日にコロナ資金繰り支援継続プログラムを公表いたしまして、日本政策金融公庫等のスーパー低利融資やコロナ資本劣後ローンの申込期限を本年の九月まで延長することといたしました。

 今後も、こうした資金繰りの支援策を活用して、事業者の方々の資金繰りに万全を期していきたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 井上副大臣、そういうことを述べられたんだけれども、ゼロゼロ融資を別枠債務にする、そういう方策は取られていますか。そして、債務の減免を含めた中小企業や事業再生スキーム、これをより小規模な事業者にも適用すべき。こうしたことの対策はやられていますか。借換えだけなんですか。

 そういった、今度の返済ができないという人たちに、廃業そして倒産が起きない、それを回避するための実効ある措置を本当に取っているんですか、政府は。

井上副大臣 お答えいたします。

 コロナ禍で積み上がった債務の返済負担等に苦しむ中小企業等の事業者を支えることは、我々にとっても大変重要であるというふうには考えております。

 他方、御提案のような、ゼロゼロ融資を通常の債務から切り離して返済猶予をもししたとしても、いずれ返済が必要な債務であることには変わりはありません。金融機関の融資態度を、与える影響がどの程度見込めるかといった点に加え、単に返済猶予をして新規融資をすれば、債務が更に積み上がり、経営改善につながらないという懸念もございます。慎重な検討が必要だというふうに考えております。

 また、政府といたしましては、債務が積み上がった事業者の返済負担を軽減する観点から、官民の金融機関に対しまして、ゼロゼロ融資を含む既存債務につきまして、返済猶予、条件変更等に柔軟に対応することを要請するとともに、日本政策金融公庫等のスーパー低利融資について、債務負担が重い事業者であれば売上げが減少していなくても融資対象となるような、利用要件を緩和するなど、借換えの円滑を図っています。(田村(貴)委員「委員長、もういいです」と呼ぶ)よろしいですか。

田村(貴)委員 ちょっと時間がもうないので、これはまた後で議論します。

 更に問題なのは、復興所得税からの軍事費への転用であります。木村防衛大臣政務官、来られています。これは後で聞きますね。先に、復興所得税の方で財務省の方に聞いてまいります。

 東日本大震災の復興費に充てている復興特別所得税の税率を現行二・一%から一%に引き下げる、その約半分、二千億円程度を軍事費に転用し、その分、復興税は期限を示さず延長するといいます。

 大臣、これは誰がどこから見ても目的外使用ではありませんか。

井上副大臣 お答えいたします。

 復興特別所得税につきましては、現下の家計の負担増にならないよう、その税率を引き下げるとともに、課税期間の延長をすることとされておりますが、その延長幅につきましては、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされているところでありまして、復興事業に影響を及ぼすことがないようにしております。

 また、復興財源との関係で申し上げれば、復興債の発行を通じた柔軟な資金調達が可能であるため、復興特別所得税の税率を引き下げても、毎年度の復興事業の円滑な執行には問題を生じません。

 こうしたことから、復興特別所得税を防衛費に目的外使用していることには当たらないというふうに考えております。

田村(貴)委員 鈴木大臣、被災地がどういう声をこの問題で、この提案に対して上げているのか、それを今から言いますので、聞いていただきたいと思います。

 昨年十二月の福島民報社、福島テレビの共同の県民世論調査では、復興特別所得税の一部を防衛費増額の財源に充てることに全く納得できないと余り納得できないが、合わせて六一・五%にも上りました。被災者を始め国民不在と指摘される中で進んだ議論の在り方などに多くの県民が腑に落ちない実態が浮き彫りになったと指摘されています。

 この被災地の世論をどう受け止めておられますか。

鈴木国務大臣 私も被災地の出身の人間でありまして、そうした声が被災地の、特に被災者の方々のところにあるということは承知をしているところでございます。

 しかし、先ほど井上副大臣が答弁をいたしましたとおり、このことにつきましては、二〇三八年以降も負担は延びるものでありますけれども、総額において復興予算、復興財源を確保するということには、これは間違いないわけでありまして、こういう点について、被災地の皆さんに御理解をいただけるような努力をしっかりとして、説明を尽くしていかなければならない、そのように考えます。

田村(貴)委員 声は知っていると言いながらも、召し上げるんですね。

 自治体首長からもおかしいとの声がいっぱい上がっています。岩手県大槌町の平野公三町長は、復興特別所得税は多くの国民の理解の下に成立した、被災地を含めた国民の同意を得るのが筋だ。福島県南相馬市の門馬和夫市長は、復興特別所得税を活用する議論が展開されてきたことは不安を感じている。宮城県東松島市の渥美巖市長は、復興のために国民からいただいたもので、目的が違い、やめた方がいい。

 この自治体の首長の声について、大臣、この声を無視するんですか。

鈴木国務大臣 私どもの立場は、先ほど井上副大臣が述べたとおりであります。

 一%に下げた分、当然のことながら、その分、復興財源の一年の入ってくるものは減るわけでありますから、二〇三八年以降もこれを延長しなければならないということがありますが、結果といたしまして、復興財源に関わる総額を確保できる期間に延長するわけでありますので、そうしたことにつきまして、丁寧に、特に被災地の皆さん方に説明していく努力、これをしっかりとしてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 委員長に提案します。

 前回も申し上げましたけれども、やはりこうした、被災者それから被災地の声を聞くこと、本委員会として聞くこと、それから公聴会を開催することなどを提案したいと思います。

 理事会で協議をお願いします。

塚田委員長 後刻、理事会で協議いたします。

田村(貴)委員 際限のない税金投入について伺います。

 まずは、イージスシステム搭載艦です。

 防衛力整備計画には、イージスシステム搭載艦の建設費四千億円、港湾施設などの関連経費に一千三百億円の金額が計上されています。

 イージスシステム搭載艦は、イージス・アショアが、地元住民の反対に加えて技術的にもコストの面でも問題があり、配備断念に追い込まれました。その結果、搭載艦が出てきました。既にシステム本体や発射装置などに千九百億円以上を費やしており、これだけでも六千億円になります。建造費の総額は、現在検討している装備を追加するなど、更に膨れ上がると言われています。

 政務官、イージスシステム搭載艦を取得するための総経費は幾らになるんですか。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 イージスシステム搭載艦の総経費につきましては、令和五年度に実施する設計を通じて今後船体の建造費が精緻化されること、令和五年度に調達する水上レーダー等防空機能やCEC等通信システムなどの装備品について、システムインテグレーションに係る内容、経費に関して米国政府等と協議中であり、今後精緻化されることといった様々な要素を踏まえて積算する必要があることから、現時点で具体的な経費をお示しすることは困難であることを御理解願います。

田村(貴)委員 総経費も分かっていないと。

 陸上のイージス・アショアの経費は、三十年間の維持整備費を含めて四千五百億円と説明されてきました。イージスシステム搭載艦二隻の費用は現時点でも六千億円です。維持整備費用などを含めると一兆円以上かかるとの指摘もあります。最新鋭の「まや」型のイージス艦でも一隻二千五百億円です。

 イージスシステム搭載艦の建造には幾らでも予算をつぎ込むということなんですか。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘の、幾らでもつぎ込むという、決してそういう認識ということではございません。今申し上げましたとおり、米国等との協議を踏まえてもろもろの積算が精緻化されるということでございますので、何とぞ御理解いただきたいと思います。

田村(貴)委員 搭載艦への追加を検討している装備として、垂直発射装置、VLS、極超音速滑空兵器、HGVへの対処のための将来的な拡張の保持なども上がっています。どれだけの経費を見込んでいるんですか。これらのVLS、HGVは四千億円の中に含まれているんですか。

川嶋政府参考人 御答弁申し上げます。防衛省でございます。

 今御質問の、イージスシステム搭載艦にどういうものを備え付けるのかという御質問でございますが、先生もおっしゃっておりましたように、具体的には、垂直発射、VLSの追加によりまして迎撃ミサイル等の増強、あるいは、今後は、極超音速滑空兵器、HGV等への効果的な対処ができるための将来的なデバイスの備付けに備えた拡張性の保持、あるいは、弾道ミサイルや極超音速滑空兵器に対し、ターミナル段階で対処する能力を有する対空ミサイルの装備、あるいは、有名になりましたけれども、一二式地対艦誘導弾能力向上型の装備、こういったものを計画してございます。

 イージスシステム搭載艦は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、我が国が抑止力、対処力を保持していくために必要な能力を付与するということで整備を進めており、イージス・アショアよりも経費が高ければ直ちに選択肢から脱落するというものではないと考えてございます。

 いずれにしても……(田村(貴)委員「経費を聞いているんです。幾らですか」と呼ぶ)経費ですか。それは、イージスシステム搭載艦の経費の中には含まれてございませんで、それぞれのミサイルあるいは種類に応じて計上してございます。

田村(貴)委員 結局、四千億円の中にも入っていない、今から幾らかかるか分からないと。全く不明のものがまた出てきた。これには、今ある技術でなく、今後の開発も含めた費用が必要になってまいります。HGVへの対処のための開発、実験などの費用を日本政府の軍事費で対処することになれば、莫大な費用がかかります。

 アショアのときは、ハワイの試験施設の建設費までアメリカが日本に負担を求めてきました。開発費用も、これまた日本が負担することになるんですか。イエスかノーかで答えてください。

川嶋政府参考人 御答弁申し上げます。

 開発経費というのがちょっと何を指すかよく分かりませんが、イージスシステムに搭載するイージスシステムそのものの開発ということであれば、もう既に物財はアメリカに発注をして造られておりますので、今後それについて負担をするということにはならない、そういうふうに考えてございます。

田村(貴)委員 防衛省の説明では、まさに青天井になっています。イージスシステム搭載艦をこういうやり方によって建造するということなんですね。

 財政審の建議では、防衛省の予算に関して、費用対効果が低い装備は廃止も含めて大胆に見直すべきと指摘されているじゃないですか。さらに、イージス・アショアの洋上化について、人員等の運用面や費用面を懸念する声があると、これは名指しで批判されています。

 防衛省は建議の指摘を無視して装備計画を進めていくんですか。この建議についてはいかがなんですか。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 財政制度等審議会が令和四年十一月に公表した令和五年度予算の編成等に関する建議について今委員から御指摘がありましたが、ミサイル防衛分野では、イージス・アショアの洋上化について、人員等の運用面や費用面を懸念する声があるとの御指摘が出されていることは承知してございますが、財政制度等審議会の建議は財務大臣に対して述べられた意見であると承知しており、防衛省としてコメントすることは差し控えさせていただきます。

 その上で、海上自衛隊の負担を局限すること、効率化、合理化を徹底した上で防衛力を整備していくことは不可欠であり、この点に留意しつつ、イージスシステム搭載艦の整備を進めてまいります。

 いずれにせよ、イージスシステム搭載艦は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、我が国を弾道ミサイルの脅威から防護することを主眼とするものであり、情勢に応じて常時持続的に我が国全域を防護し得る体制の構築により一層貢献するものであります。防衛力整備計画においても、引き続き、イージスシステム搭載艦を二隻整備することとされ、令和九年度末に一隻目、令和十年度末に二隻目の就役を目標に整備を進めているところでございます。

田村(貴)委員 元海上自衛隊自衛艦隊司令官の香田洋二さんは、イージスシステム搭載艦はイージス・アショアと比較してかなり高額になる、十分な検討期間を経ずしてイージスシステム搭載艦の導入が決まった結果、ツケを支払わされるのは国民だと指摘しています。そして、中SAM改良型搭載の影響で高額になりましたと説明しようとしているのではないか、価格上昇の原因をあやふやにしていないかと疑っていると。様々な、これからイージスシステム搭載艦の値をつり上げる要素がここにもあるわけですよ。これは現場におられた方の、専門家の指摘ですよ。何もお答えにならないんですけれども。

 陸上のシステムが駄目になったので、無理して洋上に使おうとするために、船は大型化になる、経費は莫大に増加する、それをごまかすためにあらゆる装備を追加しようとして更に経費が膨張していく。本当にずさんな計画だと思います。これだけでも徹底した審議をしなければいけません。

 委員長に重ねてお願いします。

 イージスシステム搭載艦に関する総経費、その装備、詳細について、本委員会に提出していただきたいと思います。取り計らいをお願いします。

塚田委員長 理事会で協議いたします。

田村(貴)委員 財務大臣に、先ほどのところで、財政審の建議でこういう指摘があったことについて、財務大臣はこの建議の指摘を無視するんですか、どう生かされるんですか。

鈴木国務大臣 財政制度等審議会におきましては、昨年十月に防衛をテーマに議論が行われ、この議論を基に昨年十一月に取りまとめられました建議において、イージス・アショアの洋上化について、人員等の運用面や費用面を懸念する声があるとの指摘がなされた、そのことを承知をしております。

 その上で、昨年末に策定されました防衛力整備計画におきましては、イージスシステム搭載艦の整備やその関連経費として〇・五兆円計上されたところでありますが、こうした計上に当たりましては、防衛省において、財政制度等審議会の建議の指摘も踏まえ、既存人員を最大限活用することにより乗組員を確保すること、令和五年度の事業の進捗を踏まえ、ライフサイクルコストを算出した上で継続して管理することといった対応が講じられると承知をいたしております。

田村(貴)委員 艦艇の建設費だけじゃないんですね。イージスシステム搭載艦が寄港する海上自衛隊の港湾の整備などで千三百億円、これがまた見込まれています。この積算根拠を明らかにしていただきたいのと、我が党の赤嶺政賢議員がこの問題を取り上げたときに、イージスシステム搭載艦二隻のために、五つの総監部、横須賀、佐世保、呉、舞鶴、大湊、この海上自衛隊の基地に入港する可能性が想定されると答弁されていたんですよ。二隻のために、なぜ五つの海上自衛隊基地を整備する必要があるのか。これについてお答えください。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 まず、御質問の前段の、経費の内訳一千三百億円についてでございます。

 防衛力整備計画において、イージスシステム搭載艦の関連経費として、港湾施設の整備、火薬庫等の整備、実射試験、試験設備等に係る経費として約一千三百億円を計上してございます。この内訳についてでございますが、令和五年度予算で実施する設計や調査等を通じて検討、精査していくため、現時点で確定的にお示しすることは困難であることを御理解をいただきたいと思います。

 そして、後段の、港湾整備について、なぜ五か所なのか、あの二隻に対してという御質問についてでございますが、イージスシステム搭載艦は、我が国を弾道ミサイルの脅威から防護することを主眼としつつ、情勢に応じて必要な海域に展開することとしております。

 イージスシステム搭載艦は、海上自衛隊の他の艦艇と同様に、情勢によっては、五つの総監部、具体的には横須賀、佐世保、呉、舞鶴、大湊でございますが、が所在する海上自衛隊の主要な港湾に入港する可能性が想定されます。このため、港湾施設の整備に関連するものとして、令和五年度予算では、各地の港湾のしゅんせつの要否等の調査として約二億円を計上しております。

 一方、港湾施設の実際の整備場所、港湾施設の規模等の具体的な内容につきましては、令和五年度に実施する設計を通じて船体のサイズ等が精緻化されるとともに、この設計や調査の結果を踏まえつつ、所要の検討を経た上で具体的な港湾施設の整備等に着手することとなることから、現時点でお示しする段階にはないことを御理解いただきたいと思います。

田村(貴)委員 でも、総額で千三百億円計上されているんですよね。全然分からないじゃないですか。

 もう一つお願いします。

 この千三百億円の根拠について、子細について本委員会に提出していただきたいと思います。委員長、お願いします。

塚田委員長 理事会で協議いたします。

田村(貴)委員 際限のない税金投入は、鹿児島県の馬毛島基地についても同様であります。

 種子島住民の反対の声を聞かずに、政府は、FCLP、米空母艦載機訓練等、自衛隊の基地の建設を進めています。調査検討、施設整備、事務費を合わせて、令和五年度までの予算額は七千六百八十億円とされていますけれども、馬毛島の総経費は幾らになるんですか。

木村大臣政務官 馬毛島における施設整備に関し、環境影響評価書の公告も踏まえて、順次、予算への計上や契約等を進めております。令和六年度以降に予算計上する施設もあり、引き続き、所要額の精査を進める必要があるところでございます。

 それに加えて、この施設整備は、外洋に接した、各種のインフラが整っていない、離島という極めて特殊な条件での大規模な工事となります。これらのことから、総事業費について現時点でお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。

田村(貴)委員 これも幾らお金がかかるか分からないんです。

 資料をお配りしています。

 これまでにかかっている予算だけでも七千六百八十億円です。そして、その子細を要求したら、これしか出てこないんですよ。工事は来年の三月、四月で、来年になったら三千人から四千人の作業員が島に入ると。これで仮設プレハブとかが必要になるんだけれども、これだけでも一千億円を見積もっているわけですよ。

 元々、当初の整備費は、滑走路等で約三百五十億円、係留施設等で千七百億円、仮設桟橋で約六百億円でありました。この三つ、最終見積額は、滑走路二本で九百十億円、そして係留施設二千二百億円、仮設桟橋三か所で八百四十億円、それでいいですね、政務官。いいですね。そういうことなんです。

 だから、この三つだけでも、滑走路が二・六倍、係留施設が一・三倍、そして仮設桟橋で一・四倍になった。この短い間にどれだけお金がつり上がっているか、こういう問題があります。

 更に積み上がる可能性もあります。二〇二二年度当初予算では、係留施設と仮設桟橋では契約ベースで千百二十九億円でありました。ところが、実際の契約金額は千二百四十億円で、予算を超えています。予算を超えて契約しているんです。予算を超えての工事契約をしていいんですか。

 差額の百十一億円、これはどうやって工面したのか、お答えください。

田中政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の係留施設等や仮設桟橋への予算措置でございますけれども、施設整備を着実に進めるために、馬毛島の施設整備の予算の中で、予算成立後の状況に最も適した形で執行させていただいたものでございます。その上で、これにつきましては、国会の議決を経て配賦された令和四年度の項、在日米軍等駐留関連経費、目、提供施設移設整備費の馬毛島の移設整備の予算の範囲内で、財政法の規定に基づく手続を行った上で予算措置をしたものでございます。

田村(貴)委員 また在日米軍等駐留関連経費ですか。

 これは資料を配っていますけれども、これは自衛隊馬毛島基地の施設整備に要する経費なんですよ。こうやって、自衛隊の施設整備なのに、在日米軍等駐留関連経費、ここをまた流用してきているんです。

 私、かつてこの問題を取り上げましたけれども、取得のときも国会に諮らず、予算も計上せず、この在日米軍等駐留経費からの流用で賄っているんです。本当に、軍事費、これを審議できないんですよ、こういうやり方をしていたら。非常に不透明なんですよ。それがもうなりふり構わず、あらゆるやり方を通じてこういうやり方をしてきている。これは認めるわけにはまいりません。

 こうやって調べて指摘するまで分からないんですよ。このような軍事拡大は、なりふり構わぬやり方で成り立っています。国会を軽視するものだと私は思いますけれども、政務官、いかがなんですか。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 米軍再編関係経費からの支出についての御指摘でございますが、馬毛島における自衛隊施設は、我が国の防衛、また日米同盟の抑止力、対処力の強化に大きく貢献する重要なものであり、この自衛隊施設が併せて米軍のFCLPの恒久的な施設として使用されることは、これまで一貫して説明してきているところでございます。

 その上で、恒久的なFCLP施設の確保は安全保障上の重要課題であり、この訓練の移転は喫緊に解決すべき課題として日米間で特定され、これまで馬毛島の取得に取り組んでまいりました。

 こうした性格の自衛隊施設について、米軍再編関係経費から必要な経費を措置することは適切であると考えております。

田村(貴)委員 政府は、軍事費の目標をGDP比二%にしました。アメリカの要求に基づいて二%にしました。それに合わせようとする、それに近づけるためにどんどん軍事予算が増えることになっているわけです。イージスシステムにしても、馬毛島にしても、無理筋のものまで入れていく、なりふり構わぬやり方も入れていく。全く見えない状況が多々あります。

 この委員会、もっともっと審議しなければいけません。徹底審議の上に、本法案は廃案とすることを強く求めて、今日の質疑を終わります。

塚田委員長 次に、八木哲也君。

八木委員 自由民主党の八木哲也でございます。

 ただいまの法案につきまして質問をさせていただきたい、こういうふうに思いますが、今回、いろいろな角度から厳しい質問も出ております。しかしながら、私は今回、防衛省・自衛隊と、そして住民、国民との信頼関係というものをベースにして、その疑問等を解消するためにいろいろな質問が出ている、こういうふうに思いますけれども、そういう観点から、まず冒頭、質問をしていきたい、こういうふうに思っております。

 二〇一一年三月十一日、鈴木大臣も経験されたということでありますけれども、東日本大震災が起きたわけであります。そのときに、自衛隊、地元の消防団、そして全国の警察署等々が総動員して復旧努力に当たっていただきました。

 私も、震災後、東日本を訪れました。そのときに、私は一つの言葉に感動を覚えました。それは、住民の人の自宅の塀に大きく、自衛隊の皆さんありがとうという一言でありました。まさに、被災された方々にとっては、本当に自衛隊の皆さんに感謝の言葉を述べなければならない、そういう思いがあったのではないか。そこには防衛省・自衛隊と住民との信頼関係があった、まさにウェルビーイングな関係にあったと私は思いたい。その信頼関係こそが、この防衛予算において信頼されるのかという思いがあります。

 また、防衛省・自衛隊は、国民の一人までを取り残さない、救出されなければならないという使命もあるわけであります。

 そのことを思いますと、私は若い頃、実はインドを放浪しておったことがありまして、四か月後ぐらいから血便がずっと出ておりました。非常に苦しかった思いが今よみがえるわけでありますが、そのときに、私は、ニューデリーの大使館まで何とかたどり着かなければ命の危険があるような気がして、たどり着きました。そのときに、大使館の日の丸、国旗を見たときに、何か安堵感があって、感慨深い思いをいたしました。大使館の人からすると、一見、着のみ着のままの浮浪者のような若者にも丁寧に対応してくれて、すぐ大使館の車で病院まで付き添っていただき、大げさかも分かりませんけれども、一命を取り留めた感じがいたしました。

 この度、スーダンの内紛において、いち早く、邦人退避のための、外務省の要請で浜田大臣が救出自衛隊機をジブチに送り出しまして、各国の支援もありましたけれども、無事退避されたことが報道にありました。過去にもジャーナリスト一人のために救出に当たったことも記憶しているわけでありますが、そのように、国民の命を守る、この使命感、その最善の努力をしているんだな、こういうふうに思います。

 そういうことからして、まず第一に聞いておきたいのは、自衛隊と国民とのウェルビーイングな関係、信頼関係、これをどのように捉まえているのかということを最初に聞いておきたいと思います。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 私の個人的な思いも含めて答弁させていただきます。

 八木委員からウェルビーイングというお話、フレーズがありましたけれども、自民党の部会等においても、先生、積極的に関わってこられたということで、こういったフレーズも織り交ぜていただいたのかなというふうにも拝察したところでございます。

 自衛隊・防衛省、信頼関係というもの、これが本当の一番根底にあってしかるべきものであるというふうに私も受け止めております。これは自治体とだけではなくて、国民一人一人の御理解、御協力があって、信頼関係を醸成しながら各部隊が頑張っていけるということであると思います。

 私の地元のことで申し上げさせていただきますと、青森県、陸海空それぞれの部隊があって、大変、北の要衝の地であると私は受け止めておりますが、非常に、各部隊、地域の皆様に溶け込んで共存共栄が図られているということ。例えば、昨年以来、鳥インフルも頻発しております。青森県でもありました。私、県庁時代もありまして、部隊の皆さんには大変助けられたという思いがあります。また一方で、ねぷた祭りで運行参加だとか、雪灯籠祭りに雪像を作るために御尽力いただいている、こういった部分、これはまさに地元の皆様方と一緒になって取り組んでいる。そういったことで信頼関係が構築、醸成されてきているのではないかなというふうに思っております。

 防衛省・自衛隊としては、引き続き、日々の訓練あるいは様々な活動について御理解をいただけるためには、まずは国民の皆様に対して積極的な広報をしていくということと、あわせて、それぞれについて、折に触れて、逐次しっかりと説明責任を果たしていくということ。

 また、例えば、各自治体からの様々な御要望もございます。私も時折対応させていただいておりますが、そういったことにもしっかりと真摯に対応していくということが大事であり、今後とも、緊密に、地域社会また地域の国民の皆様方としっかりとコミュニケーションを取りながら、様々な対策に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

八木委員 そのとおりでありまして、そこの部分が、今回の予算等々においてもいろいろな質問が出ておる。そこはやはり、そこに懐疑的な部分があるということでありまして質問が出るんだ、こういうふうに思いますので、しっかり国民の皆さんに説明でき、そして理解できる、そういう丁寧な説明が必要ではないか、こういうふうに思うわけであります。

 今、国際情勢を見てみますと、ロシアのウクライナ侵攻は当然でありますけれども、昨年の二月二十四日に侵攻が始まって、一年余がたつわけであります。いまだ終息の兆しが見えてきていない。その長期化によって、世界中が、経済の面であるとかいろいろな面において、影響が莫大なものが出ているわけであります。

 また、中国の台湾有事の可能性も指摘されておりまして、こういうことにも我々は対応していかなければならない。また、中国、ロシアによる日本領空侵犯、頻繁に起こっておりまして、今年も八百件以上があった。多いときではもう一千件を超えておるというような状況にある。空では緊迫した状況にあるという思いがいたします。

 そして、最近のニュースでは、北朝鮮が軍事偵察衛星を近々上げるというニュースが出てまいりました。北朝鮮の度重なるミサイルや、そういう軍事偵察衛星の打ち上げ準備等が始まっているわけではありますが、そういう緊迫した状況に日本があるということであります。

 こういう国際状況の緊迫を客観的に分析して、それらの危機にどのように対応する、そのための防衛体制を構築していかなければいけないことは、先ほど言いました国民との信頼関係という部分に帰結していかなければいけない、こういうふうに思うわけであります。また、そういう有事の想定とは別に、大規模自然災害などあらゆる事態にもシームレスに対応するための総合的な体制を平時から構築していかなければいけないと私は考えております。

 そのための防衛費を大幅に増やしているわけでありますけれども、日本の防衛が先進諸国と比べて遅れている、すなわち脆弱性があるためであり、その脆弱性をよく認識しなければならない。今回の予算措置で、日本の防衛における脆弱性を補い、更に高めることが実現できるのではないかと考えますけれども、防衛省の見解をまず聞いておきたいと思います。

川嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛力の抜本的強化の検討に際しましては、今先生御指摘もありましたけれども、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを行いました。結論は、率直に申し上げまして、現状では十分ではないという結論でございます。

 このシミュレーションを踏まえた、したがいまして、最優先課題というものが出てきてまいります。可動率向上や弾薬、燃料を確保すること、主要な防衛施設の強靱化を図ること、スタンドオフ防衛能力を強化すること、ミサイル防衛システムと反撃能力を組み合わせた統合防空ミサイル防衛能力を強化すること、宇宙、サイバー、電磁波等の新たなドメイン、新たな領域への対応を進めること、南西地域の防衛体制を強化することなど、必要となる防衛力の内容を積み上げまして、四十三兆円程度という防衛費の規模を導き出したものでございます。

 この四十三兆円程度という防衛費の規模は、防衛力の抜本的強化が達成でき、防衛省・自衛隊として役割をしっかりと果たすことができる水準と考えてございます。

 今後、自衛隊が国民を守る責務を完遂し、国民の期待と信頼にしっかりと応えられるよう、防衛力の抜本的強化の実現に向けて着実に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

八木委員 今、四十三兆円という抜本的な強化の話がありましたけれども、抜本的強化ということは、更に強化するということと同時に、今までの他国等々と比較した、その脆弱性をしっかりカバーしていくという二面の考え方があると思うわけでありますけれども、私は、脆弱性の部分から今回ちょっと質問を考えたい、こういうふうに思っているんです。

 まず第一に、諸外国の防衛予算を比較してみました。

 国防費の対GDP比で見てみると、日本は一・〇九、アメリカが三・一二、韓国二・五七、豪州が二・〇五、英国が一・九九、フランスが一・九二、ドイツは一・三一などとなっておりまして、これを国民一人当たりに換算すると幾らぐらいなのかな、こういうふうに見てみますと、国民一人当たりの国防費で見ると、日本は四・九万円、アメリカは約二十一万円、韓国は約十二万円、豪州は約十一万円、英国は約十万円、フランスが約十万円、ドイツが約七万円となっているわけでありまして、日本が一番少ないわけであります。

 その次にドイツが約七万円と少ないわけでありますけれども、ショルツ首相は、防衛力強化のために、今後、防衛費の対GDP比二%以上を維持する方針ということを表明しておりまして、一人当たりの国防費というものは上がってくるのではないか、こういうふうに思っておるんです。

 日本の現状は、そういうことを思いますと、非常に、半分ぐらい、低いわけであります。

 今回の予算規模で、国民一人当たりの防衛費がどの程度の金額となり、そして、ほかの国と、今言ったような国と比べどの程度の水準までになるのかということをお聞きしておきたいと思います。

茂木政府参考人 お答えいたします。

 我が国の令和四年度の防衛関係費は五兆一千七百八十八億円でございました。これを機械的に国民一人当たりに換算いたしますと約四・一万円、ドル換算いたしますと約四百二十四ドルとなっていました。

 主要国の一人当たりの国防費を機械的に試算いたしますと、例えば、令和三年度の英国が千十ドル、フランスが千二十二ドル、ドイツが七百六十五ドルでございますので、我が国と比較いたしますと、英仏が日本の約二・四倍、ドイツが日本の約一・八倍となっていたところでございます。

 その上で、今般、防衛力の抜本的強化のため、令和九年度の我が国の防衛関係費は八・九兆円程度に大きく増額されるところでございます。これを計算いたしますと、一人当たりの防衛関係費は約七・一万円、ドルに換算いたしますと約七百二十九ドルとなるところでございます。

 また、国家安保戦略では、令和九年度におきまして、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を併せまして、その予算水準が現在のGDPの二%に達するよう所要の措置を講ずるとされております。現在のGDPの二%が約十一兆円となるところでございますので、これを試みに一人当たりに換算すれば約八・九万円、ドルに換算いたしますと約九百十八ドルというふうになるところでございます。

 五年後の各国の防衛費の水準、為替水準について見通すことが困難でございますので、五年後の各国との比較というのは困難ではございますけれども、総じて申し上げれば、我が国の一人当たりの防衛関係費はG7主要国の水準により近くなると考えておるところでございます。

八木委員 今、GDP比二%ぐらいで換算したときにも八・九万円ということでありまして、今私が列記した国よりも、まだ若干低いわけであります。

 お金だけで比較するわけにはいきませんけれども、やはりそういうものもしっかり国民の皆さんに提示して理解を求めていく、国民負担になるわけでございますので、理解していただくという努力もしていただきたいな、こういうふうに思っているところであります。

 防衛の技術とか設備等の脆弱性も私は指摘しておきたい、こういうふうに思うわけでありますが、四月十九日の新聞の記事を見ました。ちょっとびっくりいたしました。それは、北朝鮮の軍事偵察衛星が打ち上げの準備に入っておるということであります。

 そこの記事によりますと、金正恩総書記が、同国の国家宇宙開発局を十八日、現地指導して、開発を進めてきた軍事偵察衛星について、一号機を計画した期日内に打ち上げられるよう最終準備を急いで終える方針を示して、軍事偵察は我々の様々な戦争抑止手段の軍事的な効用性や実用性を高めるために最優先の課題となるとの認識を示した、こういうことでありまして、まさに最優先の課題なんですね。ですから、近々上げられるのではないかということが予測されるわけであります。

 非常に大きな脅威と考えているわけでありますが、こうした中で、今後防衛力で力を入れていく分野というのは、地上戦もしかりではありますけれども、従来型の戦いではなくて、まさに宇宙、サイバー等々、IT、AI、DX等々を駆使した分野であるのではないか、こういうふうに思います。サイバー分野に限らず、民生を含めてITの先端性を追求するということが防衛力の強化にもつながりますし、民生分野への波及効果も期待されるわけであります。

 我が国において、こうした分野における最先端技術への投資を強化して優位性を確保していかなければいけないのではないのかということを考えているわけでありますが、その点についての御見解をお伺いしたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境にございまして、今御指摘ございましたように、科学技術の急速な進展は安全保障の在り方を根本的に変化させると考えております。委員から御指摘ございました分野も含めまして、民生の最先端技術を防衛分野に早期に取り込んでいくことは、一層重要になってくると考えておるところでございます。

 こうした考え方の下、戦略三文書にもございますとおり、将来にわたって技術的優越を確保し、他国に先駆け先進的な能力を実現するため、防衛用途に直結し得る技術に重点的に投資していくこととしております。

 委員から御指摘ございましたように、世界の趨勢や技術の動向を踏まえまして、民生先端技術の活用を目指して投資を強化することにつきましては、防衛省としても、大変重要なことであると考えておるところでございます。

 防衛力整備計画に基づき、今後も必要な研究開発予算をしっかり確保できるよう、省一丸となって取り組んでまいります。

八木委員 最先端技術の活用というのは、防衛省だけでは、防衛に対する危機感や抵抗感があり難しい部分もあろうか、こういうふうに思っております。我が国の技術力を結集するものとして、やはり、私は、産学官の連携をどのように防衛省としても捉まえていくのかということは重要な切り口ではないか、こういうふうに思っているわけであります。

 時間の関係もありますので、最先端技術の中で、私は、半導体とサイバーについてちょっと質問しておきたい、こういうふうに思っております。

 次世代半導体に代表される先端技術は特に重要でありますけれども、今、民生の部分でも非常に重要でありまして、千歳空港に隣接するところにラピダス、そして、熊本にTSMCの誘致がありまして、大きな期待と話題になっているわけであります。

 しかし、よく考えてみると、半導体というのは、三十年、四十年前は日本が世界でトップを走っておったんですよね。それがいつの間にか、今ではほかの国の後塵を拝しておるという残念な結果であります。

 なぜそうなってしまったのかということも、今からきちんと頑張りましょうというだけじゃなく、なぜそうなってしまったのか、なぜ衰退して、また盛り返さなければいけないのか、そのことはやはり政治としても検証すべきではないかと私は思って、じくじたる思いをしているわけであります。遅きに失したとは思いますけれども、我が国として、半導体分野に力を入れて技術者を育てていけるような土壌を早急につくっていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 そういう中で、TSMCの熊本県誘致に伴って、地元の熊本大学や九州大学等々の、またさらには、九州にある全ての高専、高等専門学校と連携して、半導体技術の育成に積極的に取り組み始めております。また、大学において、豊橋技術科学大学では、次世代半導体集積回路技術教育研究共創拠点として、校舎内に半導体製造の実験棟を十三億円かけて大幅に拡張して取り組んでいるところもあるわけであります。

 半導体は様々な装備に組み込まれて非常に重要な構成品だと理解しておりますけれども、半導体産業は防衛省の所管外とは思いますけれども、半導体分野での技術開発についても、防衛省において何らかの取組を進めていくべきではないのか。

 令和四年度の予算の内訳を見てみましても、研究開発費が三・二%、一千六百四十四億円となっておりますけれども、今回、予算枠拡張によりまして研究開発の増加が必要と思いますけれども、防衛省の見解を伺いたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、半導体は様々な装備品に組み込まれている非常に重要な構成品でございます。半導体の性能は、レーダーやデータ処理装置など、防衛装備品の性能を左右することから、半導体技術の革新は極めて重要なものと認識してございます。

 また、委員御指摘のように、産官学連携につきまして、防衛省におきましては様々な取組を進めてございまして、例えば、安全保障技術研究推進制度というものがございまして、革新的、萌芽的な技術を発掘するため、大学や研究機関、スタートアップを含む企業等から広く研究課題を公募し、将来の防衛用途につながることを期待した投資を行っております。

 この中で、今御指摘がございました半導体につきましても、次世代の半導体技術に関係する基礎技術も着手しておるところでございます。例えば、一例を申し上げますと、平成二十九年度から令和三年度にかけて、最新の半導体材料、これは窒化アルミニウムというものを使っておりますが、これにダイヤモンド等を用いた放熱技術を組み合わせることにより、高い効率性、機器の小型化を実現するためのデバイス製造技術の確立を目指した基礎研究を実施してございます。

 防衛省といたしましては、次世代半導体に関連する技術も含め、民生の最新技術を取り込み、活用できるよう、将来を見据えた研究開発を一層強化してまいりたいと思います。

八木委員 防衛関係費の約九割が国内向けの支出でありまして、今後の防衛力の抜本的強化は国内産業にも大きな寄与があると私は思っております。防衛生産、技術基盤の維持強化は経済成長の観点からも重要であります。

 そういう意味からして、防衛産業を伸ばすために、防衛産業を育成し、技術的な裾野を広げていくべきであり、このために四十三兆円という予算が必要と考えますけれども、防衛省の考え方をお聞きしたい。

 と同時に、時間の関係で、通告では六番でありますけれども、七番目と併せてお話ししたい、こういうふうに思います。

 防衛省・自衛隊は、防衛産業のサプライチェーン全体に支えられているわけであります。例えば、戦闘機を造るのに約千百社、護衛艦は約八千三百社、戦車等は約千三百社のサプライチェーンで構成されていると言われております。そのうちの一社でもこけたら防衛できないと言って過言ではありません。サプライチェーンの強化が必要だと私は考えております。

 例えでありますが、卑近な例かも分かりませんけれども、私が以前勤めていた会社が自動車部品を作っておったんですが、一昨年、サイバー攻撃に遭いました。たった一社なんですけれども、実は、それは自動車全体の生産を止めてしまったということがありました。

 そういうことからいたしまして、サイバーは、一番の上位企業を狙うだけではなくて、ティア1、ティア2、ティア3ぐらいを狙った方が狙いやすいんです。そうなると、それらは関連して、系統立っておりますので、弱いところを狙っていけば、上の上位会社のところまで、親会社のところまで影響が相当出るということであります。

 機敏な動きによってすぐ復旧はいたしましたけれども、サイバーに攻撃された会社としては、完全復旧まで、サーバーを替えるとかコンピューターを替えるとかいろいろな手を打ちまして、結局、一年かかったんです。そういうことからすると、本当に、そういうことがあった場合、大きな時間的ロスと費用的なロスはあるわけであります。

 そういうことからいたしまして、やはり、防衛省・自衛隊のところだけでなく、サプライチェーンをどのように強くしていくのか、連携を強めていくのかということが大事であると思います。十分な機密を保持して、サイバーセキュリティーの体制をしいて、全体的な防衛を図るということが重要と考えております。

 今、防衛省にはサイバー人材が二千人、こういうふうに言われておりますけれども、その辺の規模感も含めて、防衛省の見解を伺いたいと思います。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 委員おっしゃいますように、まず、今般の防衛力強化におきまして四十三兆円の規模がある、そのうち多くが、八割程度だと思われますけれども、国内向けの支出となるということが考えられるところでございます。

 その場合に、委員も御指摘いただきましたように、防衛産業、非常に裾野が広い、それぞれ数千社の裾野があるところでございますので、これらへの経済的波及効果を我々としても考えてやってまいりたい。

 ただ、その場合に、これも委員御指摘のように、サプライチェーンリスクというのがありまして、その中の代表的な例が、御指摘のサイバーセキュリティーリスクでございます。

 これにつきまして、まず、防衛産業に対するサプライチェーンリスクというところですと、防衛産業のプライムだけではなくて、一次、二次、三次と、下請もございますので四次、五次と、多くの下請に対しても、サイバーセキュリティーを始めとしたリスクに対応いただけるように、対応を取ってまいりたいと考えてございまして、これは具体的には、我々、サイバーセキュリティーの例を取りますと、本年の四月以降、防衛産業サイバーセキュリティー基準というのを整備し、これの適用を開始してございます。

 この適用を開始し、守っていただくとともに、それに対する、企業に対する、これはサプライヤーも含めて、いわゆるサプライヤーの企業がそうしたサイバーセキュリティーレベルを上げるに当たっての経費を我々が支弁するということを含めて、これを進めてまいりたいと考えてございます。

 それが防衛産業のサイバーセキュリティーの向上でございましたけれども、委員おっしゃるように、防衛省自身と防衛産業と、共にこのサイバーセキュリティーレベルを上げなければいけない、おっしゃるとおりでございます。

 防衛省自身におきましては、御指摘いただいた二千人というレベルを数千人引き上げていく、あるいは、防衛省の中でも、サイバーセキュリティーそのものの事業に従事はしないけれども、その知見を有する者を増やしていくということをやってまいりたいと考えてございますので、これも五年間の計画の中で進めてまいりたいと考えているところでございます。

八木委員 今、脆弱性という観点から、予算の問題、また技術の問題、そして一番大事なのはやはり人の問題、脆弱性だ、こういうふうに思うんです。

 今も、サイバーセキュリティーを、要員を二千人から更に数千人上げていくという御答弁がありましたけれども、やはり人をどういうふうに補っていくのかということは大事なことでありまして、令和四年度の自衛官の定数が二十四万七千百五十四名に対しまして、実員が二十三万三千三百四十一名ということでありました。すなわち、その差を引くと、一万三千八百十三名の乖離が見られるわけであります。令和四年度単年度だけではなくて、これはずっと続いてきておるわけでありまして、慢性的な人手不足になっております。

 この人手不足の解消を、どのように立て直しを考えていくのか。そして、今の人材で果たして、今まで言われてきたことが、またほかの人たちが質問に当たられる中で、本当に対応できていくのか。ちょっとその辺が危機感を私は持っているんですけれども、その点に対して、どのような立て直し、ないし考えを持っているのか、お聞きしておきたいと思います。

町田政府参考人 お答えいたします。

 防衛力の中核は自衛隊員であり、委員御指摘のとおり、防衛力を発揮するに当たっては、必要な人材を確保することが不可欠です。

 防衛省・自衛隊におきます自衛官等の応募者数、これは、近年の少子化の影響もございまして、平成二十四年度は約十一万四千人、令和三年度は八万五千人であり、この十年間で約三万人減少しているところでございます。

 こうした厳しい募集環境にあっても、必要な人材を確保すべく、国家防衛戦略等に基づき、まず、募集能力の強化、人材の有効活用、生活、勤務環境の改善、そして給与面の処遇の向上といった各種政策を講じ、第一線を担う自衛官の充足率の向上に努めるなど、自衛隊員の人的基盤を強化し、我が国の防衛に万全を期してまいります。

 今後、防衛大臣の下に設置いたしました防衛省・自衛隊の人的基盤の強化に関する有識者検討会、この提言もいただきながら、取組を具体化してまいりたい、そのように考えております。

八木委員 ありがとうございます。

 今、日本の防衛の考え方は本当に大きな曲がり角にある、こういうふうに思っておりますし、それが国民への理解と自信につながっていく、安全につながっていく。

 日本はここまでやっているんだよ、こういうふうにしていくんだよということを、是非、G7、ここで首脳会議がありますので、広島サミットでその辺の強い発信をしていくことも私は重要だ、こういうふうに思います。その点につきましてお願いをして、私の質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

塚田委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 本日は、委員長、理事の皆様に本委員会での質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 ここまでで、かなり質問の方も出てきた中で、重複する質問等もございますが、確認の意味も込めまして質問をさせていただきたいと思います。前半は、特に大きな内容になりますが、特に重要な部分でもありますので、確認させていただきたいと思います。

 我が国を取り巻く世界情勢は、力による一方的な現状変更や北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。このような脅威から国民の命と平和な暮らしを守ることは政治の使命であり、そのために防衛力を強化し、抑止力を高めることは必要不可欠と考えます。また同時に、このことについて国民が更に理解を深めるために我々が説明責任を果たしていくことが、今政治に求められていることだと思います。

 そこで、先日の参考人質疑の中で、国民への説明責任を果たしていく上で、また合意形成を得るために、特に国民に説明すべき点はどのようなことがありますかとお伺いしたところ、土居参考人からは、防衛整備計画において、重要な七分野に関しては、直接的に、国民保護ということについて、国民が守られるんだと伝わりやすいと思うが、それ以外のところは、安全保障に詳しくない国民の方にどういう形で生命と財産が守られるのかということを丁寧に説明していくことが必要ではないかとの御意見がございました。

 また、末澤参考人からは、グローバル化された世界で、地経学の観点から、戦争に至らない段階でも、実は国民生活に相当大きな影響が出てくる、そういった観点から、国民の皆さんに、いろいろなリスクを我が事、自分事として理解していただくことが重要ではないかと、少し違った角度からの御意見がございました。

 国民の命を守るために、我が国自身の防衛体制の強化とともに、それに裏づけられた、より一層の外交努力が必要であるということだと思います。

 この点については、柳澤参考人も以前に、外交で平和をというと弱腰だと批判されますが、これは簡単なことではないが、今の日本に最も重要なことであり、日本だけでなく、韓国やフィリピンなどアジア諸国はみんな戦争なんて起きてほしくないと思っているはずだから、そうした国々も巻き込んで、戦争を起こさない国際世論をつくっていくことが重要であると、外交努力の重要性について指摘されています。

 そういった仕組みを更に積極的に行い、国民にしっかりと伝えていくことにより、より理解が深まっていくということだと思います。

 そこで、我が国の安全保障に関わる外交力や防衛力の強化の必要性について、改めてお伺いいたします。

高木大臣政務官 山崎正恭先生の御質問にお答え申し上げます。

 我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化することの重要性がより一層高まっております。

 こうした中、まず優先されるべきは、積極的な外交の展開であります。同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要でございまして、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるのかとの観点から、いわゆる安保三文書の改定は、防衛力の抜本的強化を具体化したものでございます。

 その上で、外交力、防衛力を含む総合的な国力を最大限活用していく必要があり、そうした中で、政府としては、現実的な外交を積極的かつ力強く展開していくとともに、防衛力の抜本的強化のための施策に早急に取り組んでまいります。

 外務省としては、引き続き外交力強化に取り組んでいく考えであり、その上で、日米同盟の強化、自由で開かれたインド太平洋実現に向けた取組の更なる推進を含む同志国等との連携、周辺国、地域との外交などの戦略的アプローチを着実に実施することによって、我が国を取り巻く安全保障環境の改善に取り組んでまいります。我が国として、主導的かつ積極的な外交を展開すべく、ODAの実施や人的体制、在外公館の整備も進めてまいります。

 こうした外交方針等については、今後も丁寧に国民に説明していく所存でございます。

木村大臣政務官 防衛省の立場からお答えさせていただきます。

 平成二十五年に我が国初の国家安全保障戦略が策定されてから約九年が経過し、我が国を含む国際社会は深刻な挑戦を受け、新たな危機に突入しています。中国は、東シナ海、南シナ海において力による一方的な現状変更及びその試みを推し進め、北朝鮮は、かつてない高い頻度で弾道ミサイルを発射し、核の更なる小型化を追求するなど行動をエスカレートさせ、ロシアは、ウクライナ侵略を行うとともに、極東地域での軍事活動を活発化させております。

 今後、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいても、戦後の安定した国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性が排除されません。特に、国連安保理の常任理事国であるロシアがウクライナへの侵略を行った事実は、自らの主権と独立の維持は、我が国自身の主体的、自主的な努力があって初めて実現するものであることを教えています。

 我が国も、戦後最も激しく複雑な安全保障環境の中で、現実に正面から向き合い、防衛力の抜本的強化を行うとともに、いついかなるときも力による一方的な現状変更とその試みは決して許さないとの意思を明確にしていく必要があります。

 そのような認識の下、政府では、国民の命と暮らしを守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを始めとする様々な検討を行い、必要となる防衛力の内容を積み上げました。

 率直に申し上げまして、現状では十分ではなく、今後五年間で、現有装備品の最大限の活用のための可動率向上や弾薬確保、主要な防衛施設の強靱化への投資の加速や、スタンドオフ防衛能力や無人アセット防衛能力等、将来の防衛力の中核となる分野の抜本的強化に取り組んでいく必要があると考えております。

 さらに、防衛力の抜本的強化を補完する取組として、国力を結集した総合的な防衛体制を強化するための取組と位置づけた、研究開発、公共インフラ、サイバー安全保障、我が国及び同志国の抑止力の向上等のための国際協力の四つの分野を進めるほか、いわば防衛力そのものとしての防衛生産、技術基盤の強化や、防衛装備移転の推進、防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための人的基盤の強化や、衛生機能の変革などに取り組んでまいります。

 これらの取組により、我が国の抑止力、対処力を向上させることで、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。

 もとより、外交努力の重要性は言うまでもありません。政府としては、我が国の平和と繁栄、自由で開かれた国際秩序の強化のために、まず優先されるべきは積極的な外交の展開であると考えており、国家安全保障戦略においても、我が国の安全保障の第一の柱は外交力であることを掲げました。

 同時に、国家安全保障の最終的な担保は防衛力であり、国際社会の現実を見れば、この機能は他の手段では代替できるものではありません。政府としては、防衛力の抜本的強化により、国民の命と平和な暮らしを守り抜く体制を構築していきたいと考えております。

山崎(正)委員 非常に丁寧な答弁、ありがとうございました。

 木村政務官、ここで御退室していただいて結構でございます。

塚田委員長 木村防衛大臣政務官、御退席いただいて構いません。

山崎(正)委員 少し急ぎます。

 次に、財源の確保について、改めて確認させていただきます。

 防衛力強化のために、五年間で約四十三兆円の財源確保に当たっては、国民負担をお願いする前に、歳出改革や税外収入の確保など政府の努力が先立つことが筋であり、政府として最大限に努力した上で、これ以上はどうしても捻出できないというところまで来て初めて国民にお願いすべきだということも、我が党としては主張してまいりました。

 そこで、今回の財源確保に向けて政府がどのように努力されてきているのか、改めてお伺いします。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の防衛力整備計画において示されました、令和五年度から令和九年度までの五年間の防衛関係費につきましては、令和四年度当初予算を五年間総額に換算した金額と比較いたしますと、十四・六兆円程度の増額となります。

 この十四・六兆円につきまして、まず歳出改革で、毎年度、対前年度比で〇・二兆円強の徹底した歳出改革を継続いたしますことで、令和九年度時点におきましては、対令和四年度比で一兆円強、五年間の総額で三兆円強の財源を確保することといたしてございます。次に、決算剰余金におきましては、直近十年間の平均を踏まえまして、五年間の総額で三・五兆円程度の財源を確保することといたしております。第三に、税外収入でございますが、これは本法案による措置も含めまして、令和五年度予算において四・六兆円を確保いたしました。今後も引き続き、更なる税外収入の確保に努める中で、合計で五兆円強の活用があり得るものと見込んでございます。

 先生御指摘のとおり、こうした行財政改革を最大限努力した上で、なお足りない分につきましては、令和九年度に向けまして税制措置をお願いしたいと考えているところでございます。

山崎(正)委員 次に、本法案の意義、目的についてお伺いします。

 我が党としましては、昨年の与党税制協議会において、丁寧な議論をすべきだと主張し、税制措置については、二〇二四年以降の適切な時期として改めて議論を行うこととしましたが、国民の皆さんの中には、本法案で直ちに税負担が拡大すると誤解されている方も少なくありません。防衛力強化の財源を確保するための法案でありますが、決して増税ありきではない、直ちに税負担が拡大するものではないということを改めて確認したいと思います。

 また、先日の参考人質疑では、土居参考人より、防衛強化のための増額分を国債で賄うことのないようにするための法案審議をしているんだという御指摘がございました。国債で賄うことがないよう、青天井にならないためにきっちりこの法案を作っているということの指摘だと思いますが。

 直近の調査、例えば昨年の十二月二十六日の日経新聞の調査によると、防衛力の強化に対して、支持するという国民は五五%です。しかし、昨日の産経新聞によると、防衛増税に賛成になると、これが三七%になってまいります。この差を埋めていくことが非常に重要でありますし、この数字は非常に動いていくものだと思います。

 そこで、こういった状況からも、本法案の持つ意義や目的について国民に分かりやすく説明することが重要だと思いますが、その認識についてお伺いいたします。

井上副大臣 お答えいたします。

 防衛力を抜本的に強化し、安定的に維持していくためには、これを安定的に支えるためのしっかりとした財源が不可欠であります。

 この財源確保に当たりましては、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、あらゆる行財政改革の工夫を行う必要があり、その一環として、今般の財源確保法案を提出をさせていただきました。本法案は、防衛強化のための財源確保策のうち、主として税外収入について所要の措置を講じるものでございます。

 具体的には、財政投融資特別会計財政融資資金勘定から一般会計への繰入れが〇・二兆円、外為特会からの一般会計への繰入れが一・二兆円、国立病院機構及び地域医療機能推進機構からの国庫納付が〇・一兆円について規定するとともに、確保した税外収入を令和六年度以降も活用するため、防衛力強化資金を設置すること等について定めるものでございます。

 委員の御指摘のとおり、今法案は税制措置についての規定は盛り込まれておりません。これは、税制措置については、昨年末に閣議決定した枠組みの下、その実施時期については、行財政改革を含めた財政調達の見通し、景気、賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応を含めて今後判断していくこととされているためでございます。

 今般の財源確保法案により、防衛力の整備を計画的、安定的に支えられるよう、現時点で確保できる財源を先送りすることなくしっかりと確保してまいりたいというふうに思っております。

山崎(正)委員 防衛力強化の四十三兆円の中身について、何をどのように整備するかなど、どのように積み上げて四十三兆円になったのか分からないという指摘が本委員会の議論でも重ね重ねありました。この積み上げた結果を示していくことが重要なことだと思いますし、国民の皆様に対して説明していく際にも非常に重要なことだと思います。

 しかし、現実的には、防衛力をつまびらかにできないということもあり、事細かに、何に幾らかかるといったようなチェックはできないと思います。

 また、中身がよく分からないことに加えて、防衛装備品については、長期的なスパンで見たときに、安全保障上の効力が長く続くものもあれば、周辺国が軍事力を強化することにより我が国の装備が陳腐化してしまう事態も出てくる可能性があります。

 防衛力においては、余り情報をオープンにできない、装備品の効力も評価しにくいといった特性があるのかと思いますが、国民から見たときに、本当に効果的な装備品を購入しているのか、無駄な使途はないのかなど疑念が生じないような努力も今後必要となると思います。

 そこで、防衛力について、国民につまびらかにできないこともありますが、変化する世界情勢の中で、予算が実効性のあるものになるよう、防衛力整備計画などを今後しっかりとフォローし、国民の皆様が安心して生活ができるよう、またそう感じていただけるような取組が重要だと考えますが、見解をお伺いします。

川嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、国際社会は、先生御指摘のとおり、戦後最大の試練のときを迎えております。既存の秩序は深刻な挑戦を受けまして、新たな危機の時代に突入しているというふうに考えてございます。

 我が国が直面する安全保障上の課題、例えば、一つには北朝鮮の核・ミサイル開発の進展、あるいは、中国の広範かつ急速な軍事力増強と東シナ海における力による一方的な現状変更の試みの継続、あるいは、ロシアによる、国際秩序の根幹を揺るがすウクライナ侵略と、我が国周辺では活発な軍事活動を継続させているということ、これなどは一層深刻化しておると考えてございます。

 また、情報戦を含みますハイブリッド戦といった新たな戦い方や、情報通信等の分野の急速な技術革新、少子高齢化への対応等も喫緊の課題でございます。

 防衛力の抜本的強化の検討に際しましては、こうした戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを始めとする様々な検討を行いました。実務期間一年以上にわたって活発な議論を積み重ねまして、その過程において、必要となる防衛力の内容を積み上げ、現在の防衛費の規模を導き出したということでございます。

 具体的には、一つには、スタンドオフ防衛能力、二つ目、統合防空ミサイル防衛能力、三つ目、無人アセット防衛能力、四つ目、領域横断作戦能力、五つ目、指揮統制、情報関連機能、六つ目、機動展開能力、国民保護、最後に七つ目、持続性、強靱性、こういった七つの分野を中心に強化するとともに、防衛生産、技術基盤、人的基盤等の要素を重視いたしまして、必要な内容をしっかりと積み上げたものでございます。

 今後必要なことは、積み上げた事業を着実に実施していくことと考えておりまして、引き続き、防衛力の抜本的強化の実現に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えてございます。

 同時に、情報保全等の観点はありますものの、国民の皆様に対して効果的な情報発信を目指さなければならない、そういう考えもございます。

 ありがとうございます。

山崎(正)委員 済みません、ほかに何問か答弁を用意していただいたんですけれども、時間になりましたので、これで質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

塚田委員長 この際、お知らせいたします。

 安全保障委員会との連合審査会は、午後一時から開会いたします。

 次回は、来る二十八日金曜日午前九時から参考人の意見聴取及び質疑を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.