衆議院

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第20号 令和5年6月2日(金曜日)

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令和五年六月二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      勝目  康君    金子 俊平君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      岸 信千世君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      津島  淳君    中山 展宏君

      葉梨 康弘君    藤原  崇君

      若林 健太君    階   猛君

      野田 佳彦君    馬場 雄基君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        井上 貴博君

   文部科学副大臣      井出 庸生君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   国土交通大臣政務官    西田 昭二君

   政府参考人

   (内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局審議官) 朝川 知昭君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局次長)           役田  平君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        田辺  治君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  栗田 照久君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 的井 宏樹君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    齋藤 通雄君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           澤井  俊君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            小林 浩史君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           高桑 圭一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 茂木  陽君

   参考人

   (日本銀行総裁)     植田 和男君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     勝目  康君

  米山 隆一君     馬場 雄基君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     塩崎 彰久君

  馬場 雄基君     米山 隆一君

    ―――――――――――――

六月一日

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

五月二十九日

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(大河原まさこ君紹介)(第一三三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 去る令和四年八月三十日及び十二月九日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣鈴木俊一君。

鈴木国務大臣 おはようございます。

 令和四年八月三十日及び十二月九日に、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出いたしました。

 報告対象期間は、通算して、令和三年十月一日以降令和四年九月三十日までとなっております。

 御審議に先立ちまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、今回の報告対象期間中に、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は行われておりません。

 次に、預金保険機構による資金援助のうち、救済金融機関等に対する金銭の贈与は、今回の報告対象期間中に信用組合関西興銀の救済金融機関である整理回収機構に対する一千二百万円の増額が生じたこと等により、これまでの累計で十九兆三百十九億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関等からの資産の買取りは、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆五千百九十二億円となっております。

 なお、預金保険機構の政府保証付借入れ等の残高は、令和四年九月三十日現在、各勘定合計で一兆四千五十五億円となっております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。

 金融庁といたしましては、今後とも、各金融機関の健全性にも配慮しつつ、金融システムの安定確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

塚田委員長 これにて概要の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

塚田委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局審議官朝川知昭君、人事院事務総局給与局次長役田平君、公正取引委員会事務総局審査局長田辺治君、金融庁総合政策局長栗田照久君、総合政策局審議官堀本善雄君、監督局長伊藤豊君、総務省大臣官房審議官的井宏樹君、財務省主税局長住澤整君、理財局長齋藤通雄君、国税庁次長星屋和彦君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君、大臣官房審議官宮本悦子君、経済産業省大臣官房審議官澤井俊君、中小企業庁事業環境部長小林浩史君、国土交通省大臣官房審議官高桑圭一君、防衛省大臣官房審議官茂木陽君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。岸信千世君。

岸委員 皆様、おはようございます。自由民主党の岸信千世です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、この委員会におきまして初めての質疑となります。是非、お手柔らかに、よろしくお願い申し上げます。

 早速質問に入りたいと思います。

 世界の国際秩序が大きく揺らぐ中で、本年は日本がG7の議長国ということで、先月には新潟のG7財務大臣・中央銀行総裁会議、また広島でG7の首脳サミット、各国と議論を重ねてきました。その中で、金融システムの強靱性の維持、そしてサプライチェーンの強化、途上国の債務の脆弱性に対処していくなど合意がされておりまして、本当に高い評価を得ている、そのように思います。

 改めて、今回のこうした、日本でG7のサミットが開催できた、この意義と成果、また、本年末まで任期がまだ残っておりますけれども、最後の最後までどんな成果を更に追求していこうとお考えか、政府と、財務省にお考えを伺いたいと思います。よろしくお願いします。

鈴木国務大臣 先月新潟で開催いたしましたG7では、各国の財務大臣それから中央銀行総裁との率直な意見交換を通じましてG7の結束をより一層強固なものとすることができ、また、財務トラックにおける国際保健やサプライチェーンの強靱化などに関する成果につきましては、広島サミットにおける成果文書にも盛り込まれたところでございます。

 そして、今年一年、議長国を務めるわけでありますが、今後につきましても、新潟会合における議論や合意内容を踏まえまして、ロシアによる制裁迂回対策としての情報共有の強化、迅速な途上国の債務再編の実施、クリーンエネルギー関連製品のサプライチェーンに関する互恵的パートナーシップ、RISEの年末までの立ち上げ、パンデミック時に必要な資金の迅速かつ効率的な供給のための新たなサージファイナンスの枠組みの具体化などにつきまして、議論の深化や取組の具体化を進めていく必要があると感じております。

 引き続き、G7議長国として、世界経済の抱える諸課題の解決に向けた議論、これを主導していければ、主導してまいりたい、そのように考えております。

岸委員 大臣、ありがとうございます。本当に力強いリーダーシップを期待しております。

 また、やはり、昨今の日本を取り巻く安全保障環境は大変緊迫化をしておりまして、北朝鮮のミサイルが繰り返し発射される、またロシアによるウクライナ侵略など、本当に厳しさを増しております。その中で、日本の防衛力強化というものは喫緊の課題でして、何としても対処をしなきゃいけない。

 その中で、財源を確保することは本当に重要なことだと思っております。先般、財源確保法案もこの衆院を通過いたしました。今、参議院でも審議中です。

 そうした中で、私も地元に、岩国市で自衛隊を抱えておりますけれども、その基地の関係、本当に、老朽化をしていたりとか、全国的にも、施設、そういったところの強靱化も求められているところでございます。

 そうした中で、隊員の生活環境、また、そういう改善の面もありますけれども、やはりその施設の強化というものが防衛力の強化につながると私は考えておりまして、そうした中で、防衛力整備計画の中では、五年間で四十三兆円を計上しております。

 この財源の確保というものがいかに重要か、また、この防衛費の増額というものが日本の防衛力を強化する上でいかに重要かということを、防衛省、もしよろしければ、見解をお聞かせください。

茂木政府参考人 お答えいたします。

 委員から多岐にわたる御質問をいただいたと承知をいたします。

 まず、防衛力の抜本的強化の必要性でございますけれども、現在、国際社会、戦後最大の試練のときを迎え、既存の秩序は深刻な挑戦を受け、新たな危機の時代に突入していると考えております。

 我が国が直面する安全保障上の課題を見ましても、例えば、北朝鮮の核・ミサイル開発は進展しております。中国の広範かつ急速な軍事力の増強、東シナ海における力による一方的な現状変更の試みも継続しております。ロシアによる国際秩序の根幹を揺るがすウクライナ侵略と、我が国周辺での軍事活動の活発化なども一層深刻化しております。また、情報戦を含むハイブリッド戦といった新たな戦い方も出現してきておりますし、情報通信等の分野の急速な技術革新、少子高齢化への対応等も喫緊の課題となっております。

 こうした戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、政府の最も重要な責務といたしまして、国民の命と平和な暮らし、そして我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜かなければなりません。このため、防衛力を抜本的に強化することにした次第でございます。

 今般の検討に際しましては、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを始めとする様々な検討を行いまして、防衛力の不足を検証しまして、必要となる防衛力の内容を積み上げさせていただきました。こうして導き出されたものが四十三兆円程度という防衛費の規模でございまして、私どもとしては、この規模につきましては、防衛力の抜本的強化が達成でき、防衛省・自衛隊としての役割をしっかり果たすことができる水準として不可欠なものだと考えております。

 この防衛費の規模を活用いたしまして、今後五年間の最優先の課題といたしまして、スタンドオフ防衛能力、無人アセット防衛能力といった能力の強化に努めてまいりますとともに、委員から御指摘ございましたように、現有装備品の最大限の活用という観点から、装備品の可動率向上、弾薬、燃料の確保、さらに、主要な防衛施設の強靱化に取り組んでまいりたいと考えております。

 この施設整備につきましては、次に申し上げますと、まず、防衛省におきまして、御指摘の岩国基地を含めまして、全国に所在いたします約二万三千棟の建物について状況を確認いたしました。戦前に建てられました建物も散見されますほか、旧耐震基準、すなわち築四十年以上ということになるわけでございますけれども、こういう建物が全体の約四割ということでございます。岩国基地でも約二十棟が築四十年以上、旧耐震基準ということでございます。

 このため、防衛力整備計画におきましては、老朽化対策を含めまして、自衛隊施設の強靱化の事業費といたしまして約四兆円見込んでおりまして、五年間で集中して実施していくことにしておるところでございます。

 このように抜本的に強化される防衛力は、将来にわたって維持強化されていかなければならないと考えております。このため、この防衛力を安定的に支えるためには、しっかりとした財源が重要だと考えているところでございます。

 今後の取組について、最後に申し上げます。

 今般の防衛力整備計画では、防衛予算の相当な増額を見込んでおりますが、各事業を的確に執行してこそ初めて防衛力の抜本的強化が実現されるものでございます。このため、防衛省におきましては、防衛大臣の下に防衛力抜本的強化実現本部を立ち上げまして、この下で、施設整備の事業を含めまして進捗管理を徹底し、予算の効果的、効率的な執行に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

 以上でございます。

岸委員 ありがとうございます。

 国民の皆様の安全な暮らしというものがなければ、皆様の快適な暮らし、また金融的な営みもない、私はそのように思っております。

 また、質問は変わりまして、今、国内に目を向けてみますと、日本の人口が減少傾向にある中で、やはり、日本の国力の基礎を維持していく上では、少子高齢化対策、とりわけ少子化対策というものが非常に重要になってくる、そのように思います。特に、今般、子供政策、少子化対策においては、岸田内閣が力を入れて取り組んでいます。

 今回のこども未来戦略方針案の中では、この財源について、消費増税は行わない、また支援金制度の設立、こども金庫、そして歳出改革を図る、またこども特例公債の発行等によりまして、年三兆円台半ばを確保したいというふうに記載をされておりますけれども、この財源については、将来世代にツケ回すことなく、安定的な財源を確保することが重要だと考えております。

 また、行く行くはこの予算も倍増したい、そのような指針も示されていると思いますけれども、今後、この少子化対策、どのようなものが効果的、またさらに、どのように財源の確保を図っていくのか、政府の見解をお伺いしたいと思います。

朝川政府参考人 お答えいたします。

 子供、子育て政策の強化の内容、予算、財源につきましては、こども未来戦略会議において具体的に御議論をいただいておりますが、昨日の会議では、これまでの御議論を踏まえまして、こども未来戦略方針の素案をお示ししたところでございます。

 二〇三〇年代に入るまでのこれからの六年、七年が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスでありまして、少子化対策は待ったなしの瀬戸際にあるという認識でございます。

 このため、素案におきましては、今後三年間を集中取組期間として実施します加速化プランをお示ししておりまして、具体的には、児童手当の拡充、高等教育費の負担軽減などの経済的支援の強化、こども誰でも通園制度の創設などの、全ての子供、子育て世帯を対象とする支援の拡充、男性の育児休業の取得促進や、育児期の柔軟な働き方の推進など、共働き、共育ての推進、子供、子育てに優しい社会づくりのための意識改革について、できる限り前倒しして実施することとしております。

 また、加速化プランを支える安定的な財源につきまして、素案では、二〇二八年度までに徹底した歳出改革等を行い、それらによって得られる公費の節減等の効果及び社会保険負担軽減の効果を活用しながら、実質的に追加負担を生じさせないことを目指していくということ、経済的基盤及び財源基盤を確固たるものとするよう構造的賃上げと官民連携による投資活性化に向けた取組を先行させること、これらを前提として、企業を含め、社会経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で広く負担していく新たな枠組み、仮称として支援金制度としてございますが、この制度を構築することとしまして、その詳細につきまして年末に結論を出すということ、また、加速化プランの実施が完了する二〇二八年度までに安定的財源を確保することなどをお示ししてございます。

 今後、こども未来戦略方針の取りまとめに向けまして、引き続き取り組んでまいります。

岸委員 ありがとうございます。

 この子供政策というものが、少子化政策というものが日本の成長力の鍵だと私は思っております。

 また、幅広い世代に向けての政策というものも大切だと考えておりまして、少子化だけではなくて、高齢者や、今の働き手の皆さん、現役世代の皆さんにおいてもいろいろな政策が必要だと思っております。

 次の質問では、岸田内閣では今、資産所得倍増プランを策定中で、また、貯蓄から投資にを実現をするために取り組んでおられると思います。現役引退後の皆さんの生活が長期化している中で、現役期間中の資産形成も重要であると同時に、また、高齢になりまして現役を引退された方の資産運用というものも非常に重要になってくると思います。

 令和五年度の税制改正においてNISAの抜本的拡充というものを行っておりますけれども、老後に向けた資産形成の強化というものについて、すごく注目が集まっております。

 日本の家計金融資産については、六十代以上の保有比率が六割超、また、そのうち高齢者世帯の現預金の割合が三割を占める。これは少なくない割合なんだと思いますけれども、こうしたものが市場の投資に回るとまた非常に金融の巡りがよくなると私は思いますけれども、こうした高齢者等による適切な投資、資産運用、これをどのように促していくのか。また一方で、投資においては、金融リテラシー、こうしたものの向上も求められると思いますけれども、これをどのように図っていくのか。財務省にお伺いしたいと思います。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、高齢者における現役引退後の期間についての運用というのは非常に重要であるというふうに考えております。

 今般のNISAの制度の改正におきましては、高齢者の方を含めて幅広い層にとって使い勝手のよい柔軟な制度にするということでございまして、例えば、今般のNISA改正におきまして、つみたてNISAと併用を可能としました成長投資枠が設けられております。さらに、年間投資枠あるいは非課税保有限度額、こういったものも大幅に拡充されておりまして、こうした結果、既に積み上げた預貯金などによるまとまった資金での投資、これも可能になるような形になっております。

 また、委員御指摘のとおり、個々人が自らのニーズやライフプランに合った適切な金融資産、サービスを選択する、これは御高齢者においても重要なことでございまして、このために、金融リテラシーを高めること、これが重要であるというふうに考えております。

 金融庁では、より一層効果的な経済教育の推進というために、今国会に提出させていただきました法案において、金融経済教育推進機構を設立しております。法案を成立させていただければ、この機構を中心に、資産運用に関する知識も含めて、御高齢者も含めて、国民の金融リテラシーの向上のために必要な教育を戦略的に進めてまいりたいというふうに考えております。

岸委員 質疑の時間が来てしまいました。

 本当にありがとうございました。

塚田委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 時間が短いので、早速質問に入らせていただきます。

 まず初めは、経済、財政、いずれにしても目下極めて重要なのが賃上げでございます。この賃上げについて、少し報道の情報が古いですけれども、五月十日に読売新聞には、実質賃金が十二か月マイナス、三月は二・九%減、物価の上昇に追いつかずという見出しの記事が載りました。

 二〇二三年の春闘では、基本給を底上げするベースアップやボーナスに関する労働組合からの要求に満額回答する企業が相次いでおります。今後、春闘での積極的な賃上げの結果が反映されていけば、実質賃金の改善ももちろん期待をされます。エコノミストなどは、今年の後半には賃上げ効果が表れるのに加えて、物価の伸びは落ち着き、実質賃金がプラスになる可能性があるとの指摘もございます。

 その上で、現場で耳にする声は、年初から言われていたことですけれども、コロナの状況が改善をする中で、圧倒的な人手不足にあらゆる業態が遭遇をしております。よって、賃金の上昇圧力は高まっていると考えていいと思います。もちろん、企業の経営判断で可能な範囲の賃上げになることは言うまでもございません。

 その意味で、繰り返し、私、各委員会で申し上げておりますが、取引価格の適正化、これが極めて重要になってまいります。現場では、小規模事業者の方にお話を聞くと、転嫁を要請すると、もちろん拒否はされないけれども、様々な理由の説明を要求される。これは小規模事業者にとっては、実質的に価格転嫁に応じてもらえない、そういう印象を持つというお話を聞きます。一方で、価格を下げるときは書面による通知だけが来て、それで済まされてしまう。中には、残念ながら、リーマン・ショック以降、取引価格は上がっていないという声もいまだに耳にいたします。

 政府は、下請Gメンの強化など、取引価格の適正化に向けてこれまでも粘り強く取組を進めていただいていることは承知をしております。その上で、もう一重強化がやはり必要ではないかと考えております。このことは今年の予算委員会でも聞かせていただきました。

 具体的には、例えば、各種団体にも協力をいただいて、業界ごとに主な取引の適正な価格について検討をして、目安あるいは適正価格の考え方等を示すなど、取引価格の適正化に向けて更に力強く取組を進めていただきたいと思いますが、経済産業省、いかがでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 取引適正化についての御質問でございました。

 まず、二月の予算委員会で西村大臣からも御答弁されておりますが、適正価格の目安や算定方式自体の設定は、価格の相場形成が期待できる一方、各企業の製品の品質等に応じた価格設定や交渉が難しくなる懸念も存在いたします。

 公正取引委員会による独占禁止法に関する指針でも、業界団体による適正価格の目安等の設定は、具体的な数値等を用いて価格に関する算定方式等を設定する、そういうことであれば独占禁止法に抵触し得るともされておりますので、慎重な検討が必要と考えてございます。

 他方で、この取引適正化、価格転嫁、非常に重要な課題だと考えてございまして、経済産業省としては、下請振興法の振興基準において、取引対価は、合理的な算定方式に基づき、下請事業者の適正な利益を含み、十分に協議して決定するもの、こういった適正価格の考え方をお示ししておりまして、各業界別のガイドラインや自主行動計画に反映させた上で、調達現場での実践を要請しているところでございます。

 今年四月にも、磯崎官房副長官の官邸のワーキンググループにおきまして、今年一月から三百名体制に増強いたしました下請Gメンにより把握をいたしました各業界の取引実態や課題を踏まえて、事業所管官庁に対して、各業界の自主行動計画の改定や徹底について指示をいただいたところでございます。

 また、取引適正化に係る取組に関しましては、これまでもやってきておりますが、毎年九月、三月に価格交渉促進月間というのをやってございます。三月のこの月間の結果を踏まえた発注事業者側の価格交渉、価格転嫁の状況のリストの公表、そして、評価の芳しくない親事業者の経営陣に対する指導助言、こうした実施を引き続きしっかり行っていきたいと思います。

 また、あわせて、サプライチェーン全体の共存共栄を目指すパートナーシップ宣言、こういったものについても、数は伸びてきて、宣言数は増えてきておりまして、現在、足下、二万五千社まで拡大しております。今後、更なる拡大の呼びかけと実効性の向上に取り組んでまいります。

 いずれにしても、公正取引委員会や事業所管官庁と連携しながら、きめ細かくアプローチをして、価格転嫁の取組をしっかりと進めてまいりたいと存じます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 既に、賃金という目で見ると、アジア周辺で日本の賃金は若干見劣りするようになり、海外からの人材も我が国に来づらくなってきているという話も聞きますので、今答弁いただいた内容を粘り強く進めていただきますことをお願いを申し上げたいと思います。

 同じく賃上げについて、税制について質問をいたします。

 令和四年の税制改正後、大企業向けの賃上げ税制の適用要件が、新規雇用者の給与等支給額から、令和二年度までと同様に、継続雇用者の給与等支給額に変更されることになっているため、ベースアップや賞与の上乗せのみならず、定期昇給率分も合わせて三%の賃上げを達成すれば適用要件が満たされることとなっております。このため、定期昇給率が二%台後半の水準にある業種では、この税制改正に伴う賃上げ税制の制度変更に伴い、賃上げの実施が検討されやすい状況になっていると承知をしております。

 ちなみに、大企業は、雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大三〇%を税額控除、中小企業は最大四〇%を税額控除。税においても賃上げを粘り強く後押しをしているわけですけれども、賃上げ税制に対する評価、効果の検証をしながら、粘り強く税制においても賃上げを促進していくことは極めて重要であるということは論をまちません。

 より効果的な賃上げ税制の構築に向けて検討を重ねていただきたいと思いますが、財務省の答弁をお願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものであり、税制の効果だけを取り出して賃上げ税制の賃上げ判断への影響を定量的に測ることは困難でございますが、過去に行われました調査等によりますと、賃上げ促進税制が賃金の引上げを後押ししたと回答した企業が六割以上に上ったことなどを踏まえますと、企業の賃上げに対して一定の効果を有しているのではないかと考えております。

 本年の春闘におきましても、五月八日時点の連合の集計によりますと、定期昇給相当込みの賃上げ率が全体で三・六七%と、高い引上げ率になっていると承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、令和四年度税制改正で拡充をいたしました賃上げ促進税制が適用された申告書は、通常、本年の五月以降に順次提出されることとなりますので、その状況も注視しつつ、賃上げ税制の在り方については検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 やはり税というのは、その制度ももちろん重要ですし、賃上げ税制というもの、そのもののメッセージ、国を挙げて賃上げを促進しているというメッセージという意味でも極めて重要ですので、不断の検討を是非お願いをしておきたいと思います。

 同じく賃金に絡む質問で、次は厚生労働省に同一労働同一賃金についてお伺いをしたいと思います。

 いわゆる非正規雇用は、勤務時間や雇用期間などを限った雇用形態の総称に当たりますけれども、流通や外食のパート、アルバイト、オフィスの派遣社員、自動車工場の期間従業員などが含まれ、総務省の労働力調査によりますと、二〇二二年の国内の非正規雇用労働者は二千百一万人、前年比で一%増、役員を除く雇用者のうち約三七%を占めるに至っております。企業にとっては正社員に比べて雇用調整が比較的容易な利点がある一方で、労働者にとっても短時間勤務など柔軟な働き方を実現しやすいというニーズはあります。

 一方で、課題は給与水準です。

 厚生労働省によりますと、非正規の給与の平均は年々改善状況にはありますけれども、正社員の約六八%にとどまる。インフレで食料品の価格や電気代などが上昇しており、収入が少ない分、生活への影響が大きいわけでございます。

 流通などの労働組合が加盟するUAゼンセンは、二〇二三年の春、春季労使交渉で、パート時給の五%引上げを要求することを決めました。正規と非正規の待遇格差を解消する同一労働同一賃金は、道半ばでございます。

 パートタイム・有期雇用労働法が二〇二一年に全面施行されましたが、厚生労働省によると、同法の施行後、同一労働同一賃金の企業の取組は着実に進んでいるものの、いまだ七%の企業は取り組んでおらず、また、企業規模が小さいほど取組が進んでいないとの調査結果も出ているところでございます。

 このような状況の改善に向けて、今後の同一労働同一賃金の遵守に向けた取組はいかがでしょうか。厚生労働省、お願いします。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、昨年十二月より、労働基準監督署と労働局によります同一労働同一賃金の遵守の徹底に向けた取組を開始しますとともに、賃上げの流れを非正規雇用労働者へ波及させるため、三月十五日から五月末までを同一労働同一賃金取組強化期間と定めまして、企業への働きかけや指導等に集中的に取り組んできたところでございます。

 また、特に、中小企業におけます取組の徹底が課題と考えておりまして、四十七都道府県に設置されております働き方改革推進支援センターにおきまして、周知やきめ細かな相談支援等を行っているところでございます。

 これらの対策にしっかりと取り組むことによりまして、同一労働同一賃金の遵守を徹底してまいりたい、このように考えてございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 これも、一朝一夕に進んでいくものではないことは十分承知しておりますので、粘り強く取組を進めていただきたいと思います。

 これまで三問、賃上げについて質問させていただきましたが、もう一つ、我が国が越えていかなければならない、また進めていかなければならない方向性、これは健康長寿だと考えています。健康で長生きをできる社会、また、年を重ねることが楽しい、こういう世の中をつくっていくことが経済、財政にも資するという意味で、現場からのかなり細かいことですけれども、一問質問させていただきます。それは、帯状疱疹ワクチンの定期接種化でございます。

 八十歳までに三人に一人が罹患すると言われております帯状疱疹。実際に罹患をされた方にお話を伺ってきました。顔に疱疹が出ると外に出ることもおっくうになる、入院された方もいる、二割くらいの方が神経痛を発症するとも聞く、こうしたことが影響してQOLが低下し、メンタルに支障を来す方もいるなどなど、様々な声が届いており、ワクチン接種の助成制度を始めている自治体が増加をしております。

 第十九回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会では、予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会、二〇二二年八月四日、定期接種化を検討中のワクチンの検討についてでは、帯状疱疹ワクチンによる疾病負荷は一定程度明らかになったものの、引き続き、期待される効果や導入年齢に関しては検討が必要とされています。

 平成二十六年、二〇一四年から水ぼうそうが定期接種化をされて、大人の自然感染が減少した結果、帯状疱疹に罹患される人が増えているという声も聞いております。

 財政にも資するという意味で、健康長寿社会を実現していく中の一環として、この帯状疱疹ワクチンの定期接種化に向けた検討状況を厚生労働省にお伺いします。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 帯状疱疹ワクチンを定期接種に位置づけることにつきましては、御紹介いただいたとおり、これまでも審議会において御議論いただいておりまして、科学的、医学的知見等についての整理を進めております。

 現状でございますが、このワクチンにつきましては、発症予防効果等の持続期間に関する最新の科学的知見やこれを踏まえた費用対効果等について更に評価を行い、これを踏まえた上で、どの年齢層にどのような方法で接種すべきか等、様々な検討課題があるものと認識しております。

 こうした審議会での議論の結果に基づきまして、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 時間が来ましたので終わります。国税庁への質問を残してしまいました。準備をいただいた皆様におわびを申し上げまして、終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 財務大臣に伺います。

 最初の質問に入る前に一つ確認したいんですが、間もなく新たな骨太方針が確定すると思うんですが、従来から掲げている二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標、これは維持するのかどうか、この点、お答えいただけますか。

鈴木国務大臣 骨太の方針につきましては、これから、今検討のさなかでございまして、最終的にどういうような表記になるか分かりませんが、一月の時点で内閣府から出された試算によりますと、高い成長率を実現をできて、そして、今後とも歳出改革を徹底的に行うということを通じて、二〇二五年のPBの黒字化は、これは達成できないということにはならないということが示されました。

 それを受けて、一月の段階で、政府として、PBの二〇二五年黒字化の方針、これを変えないということをその時点で確認しているところであります。

 骨太の方針にどう表現するかは、ちょっとよく、まだこれからだと思います。

階委員 では、変えないという前提で伺いますけれども、プライマリーバランスが黒字化になるということは、防衛費や少子化対策の予算や社会保障や公共事業などなど、様々な行政サービスを提供するためのいわゆる政策経費を税収等で賄える状態を指すわけですね。

 ところで、先般議論になりました防衛財源確保法案の前提となる防衛力整備計画では、五年間で四十三兆円の防衛力整備のための財源のうち、一部は建設国債発行で賄うということになっています。

 二〇二五年度以降についてはプライマリーバランスが黒字化するということであれば、政策経費である防衛費を国債発行で賄う必要はなくなるのではないかと思うわけですけれども、この点、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 御指摘のとおりに、令和五年度予算では、防衛省・自衛隊の施設整備、それから艦船建造に係る経費について、これを建設公債の発行対象経費として整理することにしたわけであります。そして、プライマリーバランスが黒字化するという目標が達成された場合、これは当該年度の歳入をもって政策経費を賄う、こういうことでございますが、これが、黒字化という目標が達成された場合でありましても、国債費を含む国の一般会計全体では、税収等だけでは歳出全てを賄えない状況がしばらく続くことが想定をされます。その場合は、建設公債の発行が不要になるとまでは言えない、そのように考えております。

階委員 もちろん、プライマリーバランスを黒字化したとしても、利払い費の分だけ借金は増えるということは分かっていますよ。ただ、問題は、利払い費のために借金をするか、防衛費のために借金をするか、これは同じ借金だから変わらないだろうということではないと私は思っています。なぜならば、これは先般も議論になりましたけれども、政府は、今回方針変更するまでは、戦時国債の発行によって軍事費が大きく膨らんで戦後のハイパーインフレを招いた、この教訓を踏まえて、防衛予算を賄うためには国債発行しないということでずっと続けてきたはずだと思うんですね。

 なので、やはり、二〇二五年度以降は、従来に戻って、防衛費を国債発行で賄わない、こういう方針に戻すべきではないかと考えるんですけれども、この点、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 そもそも、今回、この防衛力強化で、自衛隊の隊舎でありますとか、あるいは自衛隊の艦船でありますとか、それを建設国債の対象にしたということは、これは、従来、海上保安庁の艦船等につきまして建設国債の対象経費になっていた、今回のこの計画の中で、自衛隊と海上保安庁が補完するものとして連携をするということでございまして、きちっと位置づけられましたので、そうした防衛力を強化するという、そういう中で整合を取るためにそもそもこの対象経費にしたということであります。したがいまして、そういう整理をして、これからもその整理の下で防衛力の整備を進めていきたいと考えております。

階委員 建設国債を防衛費に充てることができるかということと、できるとしても実際に充てるかどうかということは大きな違いがあると思うんですね。できるとしたとしても、先ほど言ったような歴史的な経緯を踏まえて、私は元の方針に戻すべきだというふうに思っております。まずそのことを申し上げます。

 そして、昨日、政府から、こども未来戦略方針というものが発表されたというふうに伺っておりますけれども、その中で、最初の基本的考え方には、前倒しで速やかに少子化対策を実施するということで、その間の財源不足は必要に応じてこども特例公債を発行するといったことが書かれてあるわけです。

 来年度以降、更に政策経費を賄うための国の借金は増えて、プライマリーバランス黒字化への道筋はますます険しくなるというふうに思います。

 そういう中で、私は、財政をコントロールする手段として、今年一月の予算委員会で、防衛費だけでなく、少子化対策や金利上昇に伴う国債費の増加などを考慮して、中期財政フレームを作ったらどうかということを総理に求めたわけです。総理は、国民の皆さんに説明するための資料を作っていきたいというような答弁でした。

 その後、どうなっているのでしょうか。財務大臣、お答えいただけますか。

鈴木国務大臣 一月三十日の予算委員会で階先生から総理に質問がございまして、中期的な財政フレーム、これをきちっと作るべきであるという、そういうお話、御指摘であったと思います。

 市場や国際社会におけます中長期的な財政の持続可能性への信頼を維持しつつ、国民に対する説明責任を果たすためにも、中長期の経済財政の見通しを示すこと、これはもう御指摘のとおり重要なものと考えているところでございます。

 そして、総理との質疑におけます総理の答弁につきましては、具体的な形式はともかくとして、中長期の経済財政の見通しをしっかり示しながら経済財政政策のありようについて説明していく考えを述べられたものであると承知をいたしております。

 具体的にどうなっているかということを申し上げますと、もう御存じのとおりでありますけれども、経済財政諮問会議において防衛力強化や直近の金利動向も踏まえた中長期の経済財政の見通しが示されており、これを踏まえて、金利上昇の影響など経済財政運営について議論が行われているところであります。

 そうしたことで、政府としては、市場や国際社会におけます中長期的な財政の持続可能性への信認を確保できるよう、経済再生そして財政健全化の両立を図り、引き続き、責任ある経済財政運営に努めてまいりたいと考えております。

階委員 中長期財政見通し、内閣府が出しているもの、これを出すことで私の質問に対する答えになっているというような趣旨だと思うんですけれども、ちょっとそれは全然違っていて、あれはあくまで見通しを示すものであって、財政をコントロールするものではないんですね。かつ、今現在、あの見通しには、少子化対策の予算が財政に与える影響というのは全く反映されていないわけですよ。これはいつ、新たな少子化対策の予算を反映した中長期の財政見通しは出されるんですか。お答えいただけますか。

鈴木国務大臣 スケジュールも含めて、中身もそうなんですけれども、内閣府において検討されることである、そのように承知をしているところでございます。

 それから、先ほどの、前の質問に関連して一言申し上げますと、この中期的な経済財政の見通し、枠組みでありますが、本年四月二十六日に開かれました経済財政諮問会議におきまして、総理から、経済財政諮問会議で中期的な経済財政の枠組みの検討に向け議論を深めるよう、そういう発言があったところでありまして、財務省としても、その議論を踏まえながら財政運営を行っていきたいと考えております。

階委員 後段でおっしゃったことは少し前進したかなと思いますけれども、そもそも、少子化対策の財源を六月ぐらいには示すという話だったと思うんですよ。これが今は、その財源とか国民の負担がどうなるのかということを示さずに、耳触りのよい少子化対策のメニューだけを並べているわけですね。レストランに入ってメニューだけ見せられても、値段がなければ、これがいいのか悪いのか判断できないわけですよ。コストパフォーマンスが合っているのかどうか判断できないわけです。

 解散・総選挙のうわさが出ていますけれども、国民の審判を仰ぐ前に、この少子化対策で国民負担がどうなるのか、これははっきり示すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 解散があるかどうかにつきましては私も全く分からないところでございまして、私も中にいた議論の中で、何かそうした、解散の時期を意識してこうした国民負担についてのことは後に回すというような、そういうような議論はなかったと正直思っております。

 実務的に考えましても、年末にならないと、予算編成過程でないと決められないものというのは実務的にあるんだと思います。診療報酬の改定、あるいは介護報酬の改定もそうであると思いますし、子供、子育てにつきましても、いわゆる新たなこの枠組み、支援金、(仮称)となっておりますけれども、これもまだ、今現在、確たる形がないわけでありますので、どうしても、三月にこのたたき台を出し、六月に大枠を示し、しかし、実務的にも十二月の予算編成過程で決めていかなければならないものというのは、これはあるわけでありまして、その点については御理解をいただきたいと思っております。

階委員 確たるものを示せていないという意味では、防衛財源についても、全体の法的なものはできていないわけですよね。それで、今回、子供予算についてもそういうことで先送りされるということですから、まずはそれを先にやっていただくことが先決だ、それなくして解散はないということは申し上げておきたいと思います。

 日銀総裁に来ていただいております。

 今日は、二十九日に発表されました日銀の決算について少し伺いたいんですが、今日お配りしている資料、一ページ目を見ていただきたいんですが、今回の決算で損益がどうなったのかということなんですよ。これは、びっくりしたんですが、当期剰余金、一番下の欄ですが、昨年より八千億円近く増えています。

 その要因ということで、上の方に、右側の欄外に、前年比増減要因というのをいろいろ書いているんですが、要は、ETFの配当収入と大量に抱え込んだ国債の利息収入、これが当期剰余金の上乗せ要因になっているわけです。この剰余金の中から政府に国庫納付金が支払われるわけですね。

 二ページ目を御覧になってください。

 これもびっくりしたんですけれども、何と、二〇二二年度の場合は、予算段階では九千三百億程度だったものが、決算では二兆円ほどになっている。つまり、一兆円も予算を上回っているわけですね。私は、ちょっとびっくりしたんですが、このことは事実として指摘させていただいた上で、日銀総裁には次のことをお尋ねしますね。

 まず、何でこんなに納付金が出せるのかということなんですが、もう一回一ページ目に戻っていただいて、特別損益というところ、真ん中やや下ぐらいにあると思うんですが、特別損益が八千百九十億円マイナスということなんですが、その内訳は二つの損失引当金、すなわち、長期国債の利息と負債の逆ざやが生じた場合に備えた損失引当金と、外国為替関係の損失が生じた場合に備えた引当金、こうしたものを積んでいることで八千百九十億円マイナスなんですけれども、この金額自体は、これだけ利益が膨らんだにもかかわらず、全然増やしていないわけですね。国債については、御案内のとおり、イールドカーブコントロールで無理やり長期金利を抑え込んだために、国債を、保有額、大量に増やしています。

 その結果、今度は三ページ目を見ていただきたいんですが、日銀の保有国債残高に占める損失引当金の割合は、前年の二・二%から一・一%に下がっているわけですね。そうすると、今後金融政策が正常化された場合に、しばらくは国債の運用利回りを当座預金での調達利回り、これが上回ってしまう、いわゆる逆ざや状態になって、この損失引当金では賄い切れないのではないかという懸念があります。

 一方、外為の損失引当金の比率は、この三ページ目の下の方にあるとおり、二五%と、前年より向上していますけれども、これも、昨年は、一時期、三〇%も為替相場が変動したことがあったわけですよ。本当にこの引当金で万全なのかどうかということも分からないわけです。

 そういう中で、収益が増えた分は、先ほど指摘したとおり、ほとんど国庫納付金の増額に充てていますけれども、損失引当金の積み増しに充てなくて大丈夫なんでしょうか。日銀総裁に伺います。

植田参考人 日本銀行はこれまで、財務の健全性を確保する観点から、委員おっしゃいました債券取引損失引当金の積立てを含めまして、自己資本の充実に努めてきてまいります。

 特に、この債券取引損失引当金でございますが、現在行っております量的・質的緩和に伴う収益の振幅を平準化し、財務の健全性を確保する観点から大きな効果を持つというふうに考えてございまして、現在の対応で、将来いろいろな不確実性があるわけですが、事前の対応として十分なものと認識してございます。

 ただし、今後とも、この積立ての状況につきましては、日本銀行の財務の状況、収益の状況等を総合的に勘案しつつ、毎年度の決算において適切に対応してまいりたいと考えてございます。

階委員 今の引当金の水準で十分だということで、国庫納付金は、先ほど指摘したとおり、一兆も膨らんでいるわけですけれども、これは取りも直さず、国の決算剰余金の増加要因となるわけですね。

 この決算剰余金の増加要因となったものが防衛財源に充てられるのかどうか、このことについて財務大臣にお尋ねします。

鈴木国務大臣 日本銀行の国庫納付金でありますが、日銀法に基づき、当期剰余金から法定準備金の積立額等を控除した残額を国庫に納付することとされているものでありますけれども、予算上の見込額に対して実際に国庫納付された金額が上振れた場合には、税外収入の増加の要因になるわけであります。

 その上で、税外収入の増加と決算剰余金との関係について申し上げますと、日銀の国庫納付金を含めた税外収入の上振れが見込まれる場合には、歳出不用が見込まれる場合と同じに、特例公債法の規定に基づき、税収等の動向も見極めながら、特例公債の発行額の抑制に努めることとしていることから、日銀の国庫納付金の上振れの金額が直ちに決算剰余金の金額に対応するわけではありません。

 したがいまして、日銀の国庫納付金の上振れがそのまま決算剰余金となり、防衛財源となることではありませんが、特例公債の発行抑制を行った上で、それでも結果として決算剰余金が生じた場合には、その半分を防衛財源に充てることとしております。

階委員 今の御答弁は、防衛財源確保法のときに、予備費の使い残しが決算剰余金になって防衛財源に回るんじゃないかという我々の指摘に対して答えられたことと同じようなことをお答えしたと思うんですね。

 ただ、私は、予備費というのは政府がお手盛りでコントロールできるものですけれども、日銀の国庫納付金というのは、日銀の金融政策の結果生じるものなので、政府のお手盛りではないと一応言えるかと思うんです、ちょっとそこも、本当にそうなのかというのは疑義があるかもしれませんが。

 そしてなおかつ、さっき日銀総裁がお答えになったとおり、この引当金の水準で十分だということは、国庫納付金は有効活用できるということだと思います。だとすれば、先ほど述べた少子化対策予算の財源を国債に依存するのではなくて、こうした日銀納付金を使ってもいいのではないかというふうにも思うわけです。

 日銀納付金がなぜこれほど増えているのかということを、背景を考えてみますと、これは異次元の金融政策を続けるからでありまして、その影響で、今度は、家計が保有する預貯金の方は一千兆円あるわけですけれども、ほとんど利息がつかない状況が続いているわけですね。こうした家計の負担を緩和する、還元するという意味でも、日銀納付金を少子化対策予算に充てるというのは筋が通ると思うんですが、この点、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、結果として生じた剰余金、日銀の納付金に係る剰余金につきましては、その半分を防衛財源に使わせていただくという、そのフレームの中での活用を現在考えているところでございます。現在の考えはそういうことであります。

階委員 またこの点については、次回議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党・無所属の藤岡隆雄でございます。

 まず、本日も、地元栃木県第四区の皆さんに感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩、関係各位に感謝を申し上げまして、質疑に入らせていただきたいと思います。

 まず、早速質問に入ります。

 昨日明らかになったこども未来戦略方針の素案の財源の詳細に関してお伺いしたいと思います。

 まず、鈴木財務大臣にお伺いしたいと思います。

 答弁でも、予算、財源について、具体的な検討を深めて大枠を提示するというようなことをおっしゃっていたと思いますが、なぜ今回、防衛財源のような財源フレームのような形で示されなかったんでしょうか。

鈴木国務大臣 まず、昨日こども未来戦略会議で議論されました、こども未来戦略方針の素案におきまして、今後三年間の集中取組期間において実施すべき加速化プランの内容とともに、財源の基本骨格が示されたところでございます。

 この財源の基本骨格につきまして申し上げますと、まずは歳出改革など。これは全世代型社会保障を構築する観点からの歳出改革の徹底、既定予算の最大限の活用などでありますが、これを先行させ、それによる公費の節減等の効果及び社会保障負担軽減の効果を活用しながら、実質的に負担増を生じさせないことを目指す。2として、経済活性化、経済成長への取組を先行させ、経済社会の基盤強化を行う。3として、これらの取組の中で、新たな枠組み、例えば支援金制度(仮称)でありますけれども、これを構築するという基本骨格で安定財源を確保するということを述べておりまして、基本的に、年末にならないと、予算編成過程でないと決まらないものもありますけれども、財源の基本骨格につきましては、先ほど申し上げましたように、昨日の素案でお示しをしているとおりであります。

藤岡委員 今御答弁をお聞きしておりましても、基本的な骨格というふうにおっしゃるんですが、例えば、防衛財源のときにおいては、歳出改革で今後三兆円、そして令和九年度においては一兆円強とか、あるいは税外収入など、ある意味、破綻した財源フレームといえども、財源のフレームを示そうとされていたとは思います。今回、まだそこまでも示されない。

 歳出改革について今おっしゃいましたけれども、じゃ、具体的に何兆円それで捻出をしようとするのかとか、具体的な検討を深めてこの六月を迎えたと思うんですけれども、これは改めて、これでは私は、財源の詳細が示されているとは到底言えないと思うんですね。

 大臣、六月のせめて骨太の方針の発表までには、財源のフレームの詳細、示すべきではないでしょうか。

鈴木国務大臣 まず、昨日の素案でありますけれども、今ようやく、与党におけます議論が始まるところでございます。それで、与党におけます議論を十分踏まえて、そしてそれを最終的にまとめるということであるということ、これはひとつ御理解をいただきたい、そういうふうに思うところでございます。

 そして、六月の骨太までにきちっと示すということでありますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたとおりに、年末の予算編成過程でないと決められないものがあります。それは先ほども例示しましたが、ほかにもあるんだと思いますが、例えば、診療報酬、介護報酬もそうでありますし、それから、いわゆる支援金(仮称)というものも、その規模等についても検討を予算の中でしていかなければならない。そういうことで、全てを六月の段階で示せるかというと、そういう形にはなかなかならない。したがいまして、昨日お示ししたような財源確保の基本的な方針を出させていただいたということであります。

 なお、具体的に細かくどういうふうに整理するのかというのは、これは内閣府において行われるということであります。

藤岡委員 本当に、昨日発表されたものでして、私も本当に、少子化対策はもちろん待ったなしというところは当然共有をいたします。だけれども、昨日の財源の骨格は、これはすかすかとしか本当に言いようがありませんし、先ほど階先輩議員が指摘をしましたように、おいしい料理を並べて、値段は後から教えますということでは、これでは本当に、衆議院選挙をにらんだ負担隠しというふうに言われてもしようがないと思うんですよね。

 大臣、私、ある意味、一つ、大変僭越なんですけれども、同情するところと言うと失礼かもしれませんが、あるんですけれども、五月三十一日に、一日で岸田総理から、五千億積み増しというふうなことが突如話が出て、一日の報告書にはもう既にそれが反映されたものがなると思うんですけれども、これは事実だと思うんですけれども、総理から一日で指示があって変わる。これは具体的な検討を深めてというふうに総理も言っていたわけなんですよ。

 この指示で一日でということに関して、大臣、これはお怒り、戸惑い、なかったんでしょうか。自信はあるんでしょうか、財源確保に。

鈴木国務大臣 五月三十日に総理から、今まで三兆円と言っていた、これを三兆円の半ばまで、そのメニューについてはこういうようなことも考えながらという御指示があったのは、これは事実であります。それ以上は私から申し上げることではない、御指示を受けて、それに沿ってしっかりと中身を詰めていきたいと考えております。

 五月三十一日でした。済みません。

藤岡委員 一日で精査というのはできるんでしょうか、財源。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げました財源確保の基本的な考え方、それに基づき、年末の予算編成過程で決まるものもあるわけでございますが、しっかりと財源確保に努めていきたいと思っております。

藤岡委員 非常に、本当に苦しい御答弁としか言いようがないと思っていますが、そもそも歳出改革というのは、報道などによりますと、二兆円強、二兆円程度そこで捻出をというふうな話も出ておりましたが、最終的には金額は一切盛り込まれていないということだと思うんですが、この歳出改革は、防衛財源はいわゆる非社会保障関係費というところですけれども、今回は社会保障関係費を削る、そういうことでよろしいんですか、その考え方、政府の。

鈴木国務大臣 繰り返しになりますけれども、六月一日、昨日官邸の会議で議論されましたこども未来戦略方針の素案の財源の基本骨格において、歳出改革につきましては、全世代型社会保障を構築する観点から、その取組を徹底することとされているところでございます。

 それから、この間いろいろな報道がたくさん出ておりますが、必ずしもその報道が全てが正しいというわけではないわけでありまして、したがいまして、その点はお含みおきをいただきたい、こういうふうに思います。

藤岡委員 そうしますと、大臣、今、歳出改革で念頭に置かれているものはあるんでしょうか。ないということですか。今ちょっとよく分からなかったので、教えてください。

鈴木国務大臣 念頭に置いてあるものはもちろんございますが、今まさに与党でもその点御議論をいただいているところであります。そうした決定プロセスをきちっと踏まえて一つ一つ詰めていくことがこの手の話をまとめていくためには大変重要なことで、そこが欠けると、まとまるものもまとまらないということになると思います。今まさにこの決定プロセスに向けて進めているということであります。

藤岡委員 そうすると、歳出改革、今念頭に置かれているものがあるという話でしたが、例えばどういうものなんでしょうか。

鈴木国務大臣 個別具体なことは申し上げることはできませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、歳出改革につきましては、全世代型社会保障を構築する、それが一つの観点であります。

藤岡委員 なかなか、まだまだ見えてこない。本当に全く見えてこないので、メニューだけ並んで、値段は後で教えますというふうにしか思えないんですが、大臣、この少子化対策において、今回のこども未来戦略方針に沿った予算措置に関して、この報告書、素案を踏まえまして、一切の増税はなしということでよろしいんですね。

鈴木国務大臣 岸田総理から、消費税の引上げも含めて、増税ということについては考えないという御発言がございました。

藤岡委員 藤丸副大臣、今日は、済みませんね、金融担当でもあると思いますが、内閣府の副大臣としても、財源フレームを早急に、やはり骨太の方針までに示すべきじゃないでしょうか。

藤丸副大臣 率直に言って、この素案において、例えば、財源もですけれども、支援金制度についても、やはり社会全体で支える。ですから、社会全体の理解もコンセンサスも必要になってきますので、そういう意味では、詳細については、そういうコンセンサスを得ながら年末に結論を出すこととしておりまして、具体的な仕組み等をまだ、そういう意味では、コンセンサスを得ながらということでありますので、併せて年末に検討するということになっておりますので、御理解いただければと思います。

藤岡委員 本当に、そうすると、くどいようですけれども、メニューで料理を並べて、後で値段を教えますということでは、ちょっとこれは、大変、やはり衆議院選挙をにらんだ負担隠しとしか言いようがないですよね。

 これはちょっと、もし、若干細かいことなので、分かればお答えをいただきたいんですが、今日資料をお配りしておるんですが、こども未来戦略方針の案の一ページ目、四番目の丸のところで「歳出改革等による公費と社会保険負担軽減等の効果を活用する」と書いてあるんですが、この歳出改革等による公費と社会保険負担軽減等の効果というのは、社会保険料を下げるという意味になっていて、それに見合うというもので、これは結局、社会保障関係費を削るというようなことを政府としては念頭に置いているということを書かれているということなんでしょうか。ちょっとこの考え方が分からなかったので、財務大臣にお聞きしたいと思います。

鈴木国務大臣 具体的なことは年末になるわけでございますので、予算編成過程で決めるということでありますので、今私がここでこうだと申し上げますと、年末になってそれと違うことになってもいけないと思います。

 そういうことで、今ここでは具体的なことは申し上げないわけでありますが、例えば、社会保障制度改革において国費の支出が減りますと、それによって負担が下がるという点は、それはもう当たり前の話ですけれども、そういうことはあるんだと思います。

藤岡委員 国費の支出で負担が下がる、そこは具体的にどういう。ごめんなさい、ちょっと今の。

鈴木国務大臣 具体的なことについては年末の予算編成過程で決めていくということでございます。

藤岡委員 今やり取りさせていただいても、この方針案に書かれていることなんですよね、書かれていることについての解釈、考え方が今この場でもなかなか御説明いただけないというのでは、これは非常に詰まっていないというか、後にやはり先送りをしているとしか非常に言いようがない。その政府としてのスタンスが一体どういうスタンスを取っているのかということ自体が非常に不明確だなということは、改めて指摘をさせていただきたいと思います。

 では、続きまして、植田総裁、お待たせいたしました。質問させていただきたいと思います。

 藤丸副大臣、内閣府、特にございませんので、御退席いただいて結構です。

塚田委員長 藤丸副大臣は御退室いただいて結構です。

藤岡委員 植田総裁、では、よろしくお願いいたします。

 最近、日銀のいろいろな、総裁の挨拶原稿だとかいろいろな講演原稿とかをちょっと見ていると、説明の、私、以前よりすごく分かりやすいなということを本当に思います。その点、敬意を表したいと思いますし、個人的には、どこか、何とか今の金融政策をちょっと軌道修正ということもにじんでいる思いもやはりあるのかなということも非常に感じなくもないのかなというふうに思っているんですが、今日は、基本的なところをまず確認していきたいと思っているんです。

 物価安定目標二%、当然、黒田総裁の場合は二年程度ということを語ったわけですけれども、今回、達成時期は示されていないというわけでございますが、改めて、植田総裁、達成時期を示すということはやはり適当ではないというふうな考え方を取ったということでよろしいんでしょうか。

植田参考人 お答えいたします。

 物価の基調的な上昇率については、目標に向けて徐々に高まっていくというふうには考えてございますけれども、まだなおしばらく時間がかかるというふうに思ってございます。それも含めまして、物価の先行きについては、いろいろな要因で不確実性が極めて高い状況と考えてございます。

 そうした中で、現時点で、達成の時期について確たること、具体的なことを申し上げることはなかなかできない状況にあると考えてございます。もしも不確実性の高い中で達成時期を具体的に示してしまいますと、かえって市場等に不測の影響を発生させるリスクを高めてしまうというふうにも考えてございます。

藤岡委員 ありがとうございます。

 植田総裁、そうしますと、当初、いわゆる十年前に黒田総裁が達成時期を示したということは、これはやはり適当ではなかったというふうな評価ということでよろしいですか。

植田参考人 当時、黒田総裁は二年程度でということをおっしゃったんだと思うんですけれども、それは、様々な金融政策の発動から効果が出るまでの時間的なラグ、これに関する分析の平均的な結果を見ますと、二年程度というのが当時の一つの結果でございましたので、それを御覧になって二年程度ということをおっしゃったんだと思いますが、現実には、二年であったり、一年半であったり、三年、四年というふうに様々に動くものですので、その二年とおっしゃったことが不適当とは思いませんが、事後的には、残念ながら二年では達成できなかったということと思っております。

藤岡委員 そういう中で、共同声明の考え方に沿ってちょっと金融政策の評価的なお話をお伺いしたいと思うんですが、共同声明には、本当に、できるだけ早期に実現するということがうたわれているわけですね。できるだけ早期に、この物価安定目標二%の達成に関してですね。当然、これは当時の白川元総裁、また当時の首相官邸、いろいろなやり取りも東洋経済などにも書かれているところだというふうには思っているんですけれども。

 改めて、今、植田総裁にお聞きしたいのは、二〇一三年四月から、まあ、一月から共同声明は始まっておりますけれども、これから当然、異次元金融緩和というものが始まって、このできるだけ早期にという基準に照らしたときに、これはやはり二%の目標達成ができなかったというふうな評価ということで、考え方でよろしいんでしょうか。

植田参考人 先ほど申し上げましたとおり、現時点でもまだ目標に到達していないということでございますので、まだ時間がかかりそうである。できるだけ早期に二%の目標を実現するということは、デフレでない状況をつくり出したという意味では、若干の、あるいはかなりのプラスがあったかとは思いますが、できるだけ早期に実現するということは残念ながらできなかったというふうに考えてございます、これまでのところですね。

藤岡委員 今のは非常に重要な話だと思うんですね。できるだけ早期にという考え方に立ったときに、できなかったということであれば、このできるだけ早期にという概念は、ある意味、十年を超えるというか、できるだけ早期にという中で、できなかったというふうに今言われたので、そうすると、実際、このできるだけ早期にの考え方についての時期的な目安というのは、やはり一つ、十年以内というか、そういう概念で考えていらっしゃるということなんでしょうか、植田総裁。

植田参考人 申し上げましたように、金融政策の動きから効果が出るまでの時間的な長さについては様々な分析がありますが、一つの結論として、状況によってすごい動き得るということですので、特定の期間を念頭に置いて、できるだけ早期にというふうに申し上げているわけではございません。

 その上で、十年を超えるような長期のようなところが中心的な考え方というわけではなくて、やはりできるだけ早期にということで、抽象的で申し訳ありませんが、考えてございます。

藤岡委員 長期的なことによって、当然、柔軟性がどこまであるのかなという面で非常にこの考え方は重要で、特に、これを今引き継がれているという状況ですから、じゃ、これを、今ずっと続いているということですから、もう既に十年を超えているということですから、そうしたら、非常にまた機械的に、やはり緩和を行うというふうな考え方にもなりかねないなというふうなことにもなってくると思うんですよね。そうすると、やはり日銀の柔軟な金融政策運営というのもなかなか厳しくなってくるのかなというふうに今感じたんですけれども。

 その中で、共同声明の中に、重要なところで、資料をお配りして、五ページ目に共同声明を配付しておりますけれども、日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴いというふうに書かれていて、これが当然前提となって物価上昇率というのが高まっていくし、ある意味、日銀の金融政策だけではなくて、当然、成長戦略やそうしたものがあってということでありますから、こちらに対する評価がしっかりされていないと、金融政策だけが過剰に進んでいってしまうとかそういうことになってくるので、当然、この評価というものは重要だと思うんですね。

 今、植田総裁としては、この日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展というのがあったというふうな評価なのか、この評価についてお聞きしたいと思うんですね。というのは、やはり潜在成長率等、非常にこの十年の間も低迷していると思います。私はこの取組の進展が本当に十分だったのかなという点について極めて疑問を持っておりますけれども、植田総裁の見解をお聞きしたいと思います。

植田参考人 委員がおっしゃいますように、日本経済にとって、潜在成長率を高めるということは極めて重要な課題でございます。

 その上で、政府の施策でございますが、ずっと推進してこられました働き方改革などによって女性や高齢者の労働参加が進みまして、これはある程度、潜在成長率の下支え要因になってきたというふうに考えてございます。また、現在も、政府におかれましては、労働移動の円滑化あるいは人への投資等を通じた構造的な賃上げの推進、デジタル化等に向けた重点的な投資の推進など、成長と分配の好循環の実現のために様々な取組を行っていらっしゃるというふうに承知しております。

 その上で、これらを踏まえて私どもの金融政策でございますが、毎回の金融政策を決める決定会合におきまして、様々なデータや情報を使いまして経済、物価、金融情勢を丁寧に点検した上で政策を決めているわけでございますが、その中で、政府の様々な取組の影響も、当然のことですが、反映させた見通しなりリスクを考えた上で政策を決定している状況でございます。

藤岡委員 この十年の潜在成長率の推移や一人当たりのGDPや様々な推移を見たときに、植田総裁、今、らしくないといいますか、政府の対策に対して、やはりもう少し厳しい評価になってもいいのではないかなというふうな私は感じがいたします。

 ちょっと時間もあれなので、先に一点、国際金融センターの話を鈴木金融担当大臣という立場でお聞きをさせていただきたいと思うんです。

 資料をお配りをしておるんですが、十一ページなんですけれども、これは新聞の記事の抜粋だけで、詳細はここには添付を申し上げなかったんですけれども、イギリスの調査機関の中で、国際金融センターインデックスの最新版で、国際金融センターとして東京の順位が非常にまた下がっているというところで、十年前は六位で、そして今回はまた二十一位でというところで、もちろん、この測り方の詳細について公表されていない面もありますから、あくまで一つの指標だということは重々理解するんですけれども、また、これは近年、非常に細かいデータを見ると、すごく下がっていってしまっているんですよね、三位から二十一位だとか、いろいろな下がり方もしているんですが、鈴木大臣の認識と、できれば、国際金融センターとしての地位が低下をしないように本当に危機感を持って御対応をお願いしたいと思うんですけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 お示しをいただきましたランキングの調査でありますけれども、算定方法の詳細が不明確な特定の民間調査機関が公表する指数について評価を申し述べること、これは必ずしも適当ではないと思いますが、こうした調査で東京が低位に位置づけられているということは、率直に残念に思うところでございます。

 ただ、大切なことはこうした調査に一喜一憂することではないと思いますが、しかし、こういう評価が現にあるということを踏まえて、日本が国際金融センターとしての地位を確立していくために必要な取組、これを不断に続けていくことが大切であると考えます。

 金融庁では、これまでも、海外の資産運用業者の日本拠点開設を後押しするなどの対応を進めてまいりましたが、今後におきましても、日本をアジアのGXのハブとすることを目指し、GX投融資を促進していくほか、我が国の二千兆円を超える豊富な家計金融資産を有効活用していく上で重要な役割を担う資産運用業等の抜本的な改革にも取り組んでまいります。

 また、投資対象となる上場会社の中長期的な企業価値の向上に向けて、四月に取りまとめましたアクションプログラムに沿って、コーポレートガバナンス改革の実質化も進めていこうとしております。

 様々な取組を通じまして、国内外の資金を成長分野等へとつなぐ、魅力ある金融資本市場を構築し、日本の国際金融センターとしての地位向上、これを図っていきたいと考えております。

藤岡委員 一定の厳しい認識の入った御答弁をいただき、ありがとうございました。

 済みません、植田総裁、もう一点お伺いしたいと思うんですけれども、経済財政諮問会議で清滝先生が御指摘をされている点なんですけれども、一%以下の金利でなければ採算が取れないような投資を幾らしても経済は成長しない。ある意味、率直な厳しい御指摘。そして、新規企業の参入や若い世代の住宅取得が難しくなるから、生産性や総生産の成長が停滞すると。やはり異次元金融緩和の長期化によるいろいろな懸念を私は示されたと思いますが、これに対する総裁の御見解をお伺いしたいと思います。

植田参考人 委員おっしゃいましたように、長期間にわたる低金利の環境あるいは強い金融緩和政策が経済の新陳代謝を遅らせたり生産性に悪影響を及ぼしたりするのではないかという議論があることは、この清滝先生の見解も含めて承知してございます。

 ただ、日本銀行が金融緩和を粘り強く続けることは、それはそれで、企業の前向きな取組を後押しするということを通じて、長い目で見た生産性の向上にも資するというふうに考えてございます。

 逆に、いま一つ経済に力強さが欠けている状態で金融引締めに転じてしまいますと、健全な企業にも負担をかけたり、あるいは新しいビジネスの創出を阻害したりするということで、かえって経済の活力を阻害してしまう、そいでしまうという可能性もあるというふうに思ってございます。

藤岡委員 済みません、時間が来ましたので。

 最後の点は理解しますけれども、しかし、やはり、異次元長期化の問題点についてしっかりまた懸念を深めて、また今後の政策運営に努めていただければと思います。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 持ち時間も三十分と短いものですから、早速質問に入らせていただきます。

 これまで、質問通告をしていて、前回、御答弁いただく時間ができなかったということで申し訳なかった案件が幾つかございますので、まず、そちらについて質問させていただきます。

 ミャンマーへの日本の経済支援について、まず質問させていただきます。

 ミャンマーに対して、日本は様々な形で支援をしてきたということがございます。野田総理の時代に、ミャンマーが軍事政権から民政へ移管する、転換していくということで、日本も支援してきたわけでございますが、ただ、残念ながら、二年前に軍事クーデターが起きて、またあの軍事政権に戻ってしまったということがございます。そうした中で、日本のミャンマーに対する支援の在り方というのは全面的に見直さなければいけないと何度もこの場で申し上げてまいりました。

 それで、その中で一つ、海外交通・都市開発事業支援機構という、株式会社ではありますが、九割以上が政府出資という官製の会社、政府の会社みたいなものですね、JOINというのがございますが、こちらのミャンマーでの事業でございます。

 ミャンマーのヤンゴン市の中で、Yコンプレックスというふうに称されている事業、これは、ミャンマー軍が所有する土地にホテルやショッピングセンターなど複合施設を建設するという不動産開発事業でございます。これはJOINのほかに東京建物、フジタなどが出資をして運営をしようという事業でございますが、これに対して、JOINは五十六億円の出資をし、四十七億円を保証している。合計百三億円ということが投じられているわけでございます。クーデター発生後は工事は中止をし、東京建物とフジタは損失計上して、それを公表しております。今日お配りしております資料一には、東京建物の財務諸表も載せております。字がちっちゃくて恐縮ですが、要は、ちゃんと公表されているというところでございます。

 また、同じくヤンゴン市内の不動産事業としましては、ヤンキン都市開発事業というのがございまして、これはJOINとともに鹿島建設も出資をしております。鹿島建設は損失計上しております。

 あと、ほか、ランドマーク事業というのがヤンゴン市内であって、これは三菱商事と三菱地所とともにJOINが出資をしている。四十五億円出資をしている。こちらも工事は止まっていると承知をしております。

 こうした事業があるんですが、一方で、JOINは、にもかかわらず、この損失について明らかにしないという姿勢をこれまで取ってきております。そのように答弁されてきております。

 JOINの投資計画の進捗状況というのを見ますと、資料二におつけしているものですが、これを見ても、損失を計上している形跡がない。つまり、ミャンマーの先ほど申し上げた三つの事業、損失計上しておりますと三百億円ぐらいの損失になるのではないのかというふうにも考えるんですが、それが計上されている痕跡が全くないということです。

 そこで、今日は国土交通政務官にも来ていただいておりますので、質問させていただきます。

 それぞれの事業に出資している民間企業は、既に損失計上、公表しているわけです。なぜJOINは損失計上、していなさそうなので、なぜしないのかということ。それから、JOINの株主は国民ですよね。民間企業、上場企業は株主に対する説明責任として公表しているわけですが、だったら、国民に対する説明責任として、ちゃんとそのことを、損失を計上した上でそれを公表するべきだというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。

西田大臣政務官 お答えをいたします。

 一般に、事業の損失計上を行うかどうかは各社の判断によるものであり、また、商慣習上、個別事業の損失計上の有無など事業を通じて知り得た情報は、対外的に秘密にする義務が共同出資者との契約において定められております。

 ミャンマーにおいてJOINが参画する都市開発事業においても、損失計上の有無について、共同出資者との契約に基づく守秘義務がございます。このため、これらの事業に係るJOINの損失計上の有無について、回答を差し控えさせていただきます。

櫻井委員 今の答弁はおかしいでしょう。共同出資者との守秘義務と言っているんですが、相手方は、だってもう公表しているんですから。何でJOINは隠すんですかということ。

 それから、判断はJOINが決めるんだというのであれば、次、ちょっと、JOINの社長さんにもう一回来ていただいて、質問させていただこうと思いますが、これは国民に対する背任ですよ、こんないいかげんなことをやっていたら駄目ですよということを改めて申し上げて、次の質問に移らせていただきます。

 政務官、今日はどうもありがとうございました。

塚田委員長 西田国土交通大臣政務官は御退席いただいて結構です。

櫻井委員 続きましては、ミャンマーに対する円借款についての支援方針について、これは財務大臣が国際局の業務として所掌されていると承知しておりますので質問させていただきます。

 軍事クーデター以降、世界銀行もアジア開発銀行も、ミャンマー向けの貸付実行を停止しております。これは日本政府も同様にするべきだと、つまり、新規の円借款供与を停止するだけでなく、既に融資契約済みの事業についても貸付実行を停止するべきだということを重ねて提案してまいりましたけれども、むしろ、一旦治安上の問題等で中断していたバゴー橋の事業など、既に再開をしてしまっているというようなことになっております。やはり、これは、ちゃんと停止するものは停止するべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 櫻井先生が御指摘のとおりに、ミャンマーにおきますクーデター発生以来、日本としては、ミャンマー側に対して、暴力の停止等を繰り返し求めてきたところでございますが、それにもかかわらずに多数の民間人が死亡する事態が引き続き発生していること等につきましては、深刻に懸念をしているところであります。

 こうした情勢の中で、日本政府としては、国軍が主導する体制との間では新規円借款は行わない方針としているところでございます。

 既存のODAについてでございますけれども、今後の情勢の推移、我が国が要求しております暴力の即時停止、被拘束者の解放、民主的な政体への早期回復の三点や、ASEANの五つのコンセンサスをめぐる進展の有無などの諸要素を勘案しながら、どのような対応が効果的か、総合的に検討していくことを政府の方針としているところでありまして、外務省を中心とする関係省庁ともよく連携をしてまいりたいと考えております。

櫻井委員 でも、もう、そうやって検討しても、ずるずるとこの二年やってきちゃったわけですね。その間にずるずると貸付実行もして、結局、結果的に軍事政権を支援しちゃっているんですよ。

 昨日も、ちょっと私、ミャンマーのNGOの方とお会いしましたけれども、結局、ミャンマーで何が行われているか。日本が支援していても、日本が支援していますと言わないんですよ、軍事政権が自分でやっていますみたいな顔をしてやっているんですよ。そうやって、どんどんどんどん。

 それで、そのことはミャンマーの人は、知っている人は知っているんですね。ああ、日本は、そうやって、人権外交とか、普遍的価値に基づく外交、価値観外交とか言っているけれども、やっていることは人権軽視なんだなというふうに思われるんですよね。そのことはもう国際社会みんな、知られているわけですよ。税金使って、それで、日本は、ああ、人権軽視なんだとそしりを受ける、これはもう、税金の無駄遣い以上に罪深いと思いませんか。

 これは、今、大臣は、例えば、先ほど藤岡委員が配付したこども未来戦略方針の中でも、「歳出改革の取組を徹底する」と一番最初に書いてありますよね。だって、お金を使って世界から批判されるようなことをやっちゃったら、税金の無駄遣い以上に害悪じゃないですか。だから、こういうのをまず、歳出改革と言うんだったらまず止める、そこからやるべきだということを改めて提案をさせていただきます。答弁を求めても多分同じ答えが返ってくるので、これ以上答弁は求めませんが、こうした重大な問題があるということを指摘をさせていただきます。

 続きまして、次の項目に移らせていただきます。

 歴史的転換における財政というタイトルで通告させていただいておりますが、これは、五月二十九日の財政制度審議会から出された建議のタイトルでございます。大臣、これは受け取られておりますよね。この中で、幾つか興味深い、幾つかというか、たくさん興味深い指摘があるわけなんですけれども、ちょっと順番を時間の関係もありますので入れ替えさせていただいて、五ページに記載されていること、これをちょっと質問させていただきます。

 経常収支はエネルギー価格高騰等の影響により悪化しており、少子高齢化の進展等により更に悪化していく可能性も指摘されている、それが更なる円安に結びつき、国内物価の上昇を助長するおそれがある、円の信認を支えてきた経済的ファンダメンタルズが絶対のものでなくなりつつあることを強く認識しなければならない。これは、昨年来、我が党の議員がいろんな場面で指摘をしてきたこと、そのとおりでございます。要するに、悪い円安、悪い物価上昇が起きているんじゃないのかということですし、これは、経常収支の悪化と、特に貿易赤字、巨額の貿易赤字、相まって起きているのではないのかということなんです。

 もう少し具体的に言えば、物価高になりましたということで、政府は、エネルギー補助金、ガソリンとか電気代の補助金を出しています。そうすると、確かに今、物価高で国民生活は苦しいというのでこういう政策が必要だというのは分かりますけれども、結果的に何が起きるかというと、省エネのやる気がそがれてしまうということにもなってしまって、いわゆる市場メカニズムが働きにくくなってしまうわけです。エネルギー輸入が抑制されないから、貿易赤字がどんどん膨らんで、更にそれが円安要因となり、更に物価高を招くという悪循環を起こしているのではないのか。また、物価高が起きてエネルギー補助金、赤字国債をどんどん発行してしまう。日本銀行がそれをせっせと買い入れるということで、金融緩和がどんどん進んでしまう。そうすることによって、また円安になり、物価高と。こういう何か悪い循環が起きてしまっているのではないのか。それで残るのは何かというと、大きく膨らんだ借金。

 これは、財務大臣、こんな経済政策でいいんでしょうか。もう少し考え直した方がいいと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 櫻井先生から、財政制度等審議会の建議に関しまして、例えば今の経済状況の、先生の解説の中で、円の信認を支えてきた経済的ファンダメンタルズが絶対的なものでなくなってきているのではないかという御指摘も今いただいたんだ、そういうふうに理解をいたしました。

 そのうち、まず、為替についてでありますけれども、為替の相場、これは様々な要因によりまして市場において決定されるものでありまして、変動の要因を一概に申し上げることはできませんが、一般論として申し上げれば、国際的な競争力、内外の金利差、市場参加者のセンチメント、投機的な動きなどに加えて、経常収支についても数ある為替相場の変動要因の一つであると考えております。

 また、円安の日本経済への影響につきましては、輸出や海外展開をしている企業でありますとか、あるいは輸入に頼らなければならない我が国における輸入価格の上昇ということで、立場といいますか、それによりまして、プラス面、マイナス面、これが様々あるということでございます。

 その上で、円の信認につきましては、経常収支や経済規模、国際競争力など、様々なファンダメンタルズに支えられてきたものと理解しておりますが、健全な財政状況も一つの重要な要素であると考えているところであります。

 したがいまして、引き続き、円の信認を保つためにも、経済成長に向けて取り組むとともに、財政健全化をしっかり進めていくことが必要である、そのように考えているところでございます。

櫻井委員 ちょっと今、大臣から、財政健全化の取組とおっしゃいますが、こちらの建議の中には、十二ページ目ですね、「これまで基礎的財政収支黒字化目標の達成年度は繰り返し延期されてきており、」というふうに、だから、結局、口では財政健全化、頑張りますと言っても、目標はどんどん先送りされている。先ほど、階議員それから藤岡議員の質疑の中でも、そういう傾向が見られるということで、そういう指摘になっちゃっているわけですよ。

 ちょっと、今日は日本銀行の植田総裁にも来ていただいておりますので、同じ質問をさせていただきますが、やはりこういう、何かエネルギー補助金とかいうようなことで、省エネ、市場メカニズムが働かないということで、エネルギー輸入が抑制されないような政策、それから、赤字国債を増発することによって更なる円安を招きかねない、こういう政策。経済学の入門書でもこういうことは駄目ですよということが書いてありそうなんですけれども、植田総裁、こういう政策を続けていていいものなのかどうなのか、そのお考えをお聞かせください。

植田参考人 私の立場からは、財政に関連したことを具体的に申し上げるのは差し控えさせていただきますが、委員おっしゃっていました、円の信認を支えてきた経済的ファンダメンタルズということに関連して日本銀行の立場から申し上げれば、そのファンダメンタルズの最大の構成要素の一つは物価の安定でございます。ですので、私どもとしましては、二%の物価安定目標を持続的、安定的に実現するということを目指し、それを達成することを通じて通貨の信認を確保していきたいというふうに考えてございます。

櫻井委員 じゃ、ちょっと金融政策の方についてもお尋ねをさせていただきます。財政が交じっていると答弁しにくいとおっしゃるので。

 資料三は、日本銀行の政策委員のCPIインフレ率の見通しについて、過去十年間について並べてみたものです。一番横に書いてある年限が、これは展望レポートで、年間四回発行されて、今後の物価見通しはこうですよというふうに書かれているわけです。それが右にずらっと三つ、四つ並んでいる部分でございます。

 例えば、一番下、二〇二三年四月の展望レポートでは、二二年度の見通しとして三・〇%、これは見通しというよりも実績でございますが。そして、二三年度については一・八%、二四年度二・〇、二五年度一・六というふうになっております。

 これ、興味深いのは、縦に見ていくと、最初は、黒田総裁の初期の頃は、当初は高めに出していて、例えば二〇一六年を見ますと、最初は二・一%だと言っていたのが、だんだん時期が近づいてくるとゼロになり、ゼロを下回って、最終的には、実績はマイナス〇・三%といって、結局、真逆の結果になった。最初は二年で二%を達成しますと言っていたけれども、達成できなかったというのがこれでよく分かるわけです。

 こうして見ていきますと、結局、日本銀行の予想というのはことごとく外れています。この十年間、全て外れているんですよね。何かでたらめにやったら半分ぐらい、そのままか上がるか、二つに一つなわけですから、半分ぐらいは当たりそうなものなんですけれども、半分当たらぬじゃなくて、全部外しているんですよ。これは何かすごいなと、ある意味。ことごとく逆を行くというね。これは何か意図を持ってやっているのかなというふうにも思わざるを得ないんです。

 もう一つ、ちょうど一年前の議論ですけれども、一年前の五月三十日、参議院予算委員会で立憲民主党の森ゆうこ議員の質問に対して、黒田総裁は、二〇二二年度、今年度は物価上昇率は一・九%程度になるというふうに見込んでおります、来年度については政策委員の中央見通しでは一・一%程度に低下するというふうに見ておりますというふうに言っているんですけれども、一年たって、既にもう大きく外れていることが明らかとなっております。

 こうした状況で、もう一つ、二〇二四年度、現時点では二・〇%と言っているわけですよね。今年の、直近ですと四月の物価上昇率が総務省から出ておりますけれども、既に三%を超えている状況です。

 こういう状況の中で、先ほど植田総裁の答弁では、物価二%の目標はまだ到達していないと。あれ、だって、三%とか、一時期四%とかになっていましたよ、三年連続でもう二%、到達しているじゃないですか。しかも、国民生活は物価高で苦しんでいる。だから、先ほどちらっと申し上げましたけれども、政府は物価高対策でいろんな補助金まで出しちゃっているんです。物価を一生懸命抑えようとしている。それでもまだ達成していないとおっしゃるんでしょうか。

 植田総裁、御答弁をお願いします。

植田参考人 取りあえず、後半の方の御質問にお答えしたいと思います。

 委員がおっしゃいますように、足下では三・五%程度のインフレ率となっておりまして、明らかに二%を超えてございます。

 ただし、これも委員が前半でおっしゃいましたように、いろいろ外れてきたこともある見通しでございますが、現時点での私どもの見通しでは、このインフレ率が、年度後半に向けて、半ばから後半に向けて、かなりはっきりと低下していくという見通しを持ってございます。ちょっと複雑ですが、その上でまた上がっていくという経路を念頭に置いて政策を決定してございます。

 ですので、ならしますと、あるいは全体を見ますと、まだ持続的、安定的な二%の達成にはちょっと間があるということで、金融緩和を続けているところでございます。

櫻井委員 いや、今の答弁、年度後半に向けて物価は下がっていくとおっしゃるんですけれども、でも、財務大臣、ガソリン補助金はこれから段階的に削減していくんですよね、九月末でやめるんですよね。ですよね、そういうふうになっていますよね。答弁はいいですけれども、うなずいていただいたので。そうしたら、その分上がるじゃないですか。電気料金だって、六月から値上げですよ。これからどんどん上がっていくんじゃないんですか。だから、年度後半に向けて下がるという意味が、私はちょっと、全く理解できない。

 さらに、為替だって、今、一ドル百四十円ぐらいで、年の前に比べて、この二、三か月前に比べてまた上がってきていますよ。上がるというか、円が下がってきていますよね、円安になってきている。

 何か、悪い円安による悪い物価高、まだ、起きつつあるんじゃないのかなというふうにも見るので、ちょっと、日本銀行の今の総裁の見通し、非常に不思議に思いました。

 ちょっと、時間もないので、次の質問に移らせていただきますが、こういう物価高騰を抑えるために、異次元の金融緩和はもうそろそろ卒業するべきだと私は思うんですが、取りあえず、そのことについて質問してもお答えは一緒でしょうから、ちょっとずらして。

 ETFとJ―REIT、これを買い続けるというのを、また四月の金融政策決定会合でも、まだそれを決めていますよね。これはもうさすがにやめたらどうですか。株価だってもう、バブル以降で最高値だとか言っているわけですし、それから、東京の土地の価格も、バブルを超えて上がっているわけですよ。

 J―REIT、買うタイミングじゃなくて、今、売るべきタイミングじゃないですか。いかがでしょうか。

植田参考人 今の、J―REITの買入れでございますが、これは、それ単独で行っている政策ではなくて、先ほど来の、物価安定の目標を実現するための大規模な金融緩和の一環として実施してございます。

 その上で、委員からは御議論ありましたが、私どもでは、まだ物価安定の目標の実現に時間を要する状況であるというふうに考えてございまして、したがいまして、大規模な金融緩和も継続するという判断でございます。

 その結果、J―REITの売却も含めて、出口局面における政策運営について、具体的に議論できる段階にはまだ至っていないというふうに考えてございます。

 その上で、実績として申し上げれば、二〇二二年七月以降、J―REITの買入れは行ってございません。

櫻井委員 まあまあ、実績として、方針として買入れと言っているけれども、さすがに、これだけ上がっているのにまだ買うかというところについては、さすがに買っていませんよということなんですけれども、いやいや、もうそろそろ売るタイミングじゃないですかね。だって、資産インフレになって、これはバブルは、はじけて初めてバブルだと分かるわけですけれども、さすがに、ちょっとこの最近の値上がりのスピードってすごいですよね。ちょっとここらで冷や水をかけておかないと、後で大変なことになるんじゃないかなということを、だから、日本銀行がまさか資産インフレをあおるようなことをやっちゃいけないということも重ねて申し上げておきます。

 それから、次の質問に移りたいので、総裁はこれで質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

塚田委員長 植田日本銀行総裁、御退席いただいて結構です。

櫻井委員 続きまして、国際金融のことについて質問させていただきます。

 実は、今日、六月二日で世界銀行のマルパス総裁が退任をされて、新たにバンガ総裁が就任される日。日本時間ではもう既に六月二日ですが、アメリカは東部時間ではまだ六月一日だと思うので、微妙な時間でございますが、まだアメリカ時間ではマルパス総裁、日本時間ではバンガ新総裁という微妙なタイミングになっておりますけれども、このマルパス総裁、五月二十九日、日経新聞でインタビュー記事を載せておりまして、非常に興味深い話がございました。

 鈴木財務大臣も、これまで開発途上国の債務問題について、いかにして特に大口の債権国である中国を巻き込むかということについて腐心をされてきたというふうに承知をしております。その中で、マルパス総裁、インタビューの中では、やはり債務国が、借入国が返済を一旦停止をする、それで債権国に対して協議を促すようなこともやったらどうかというような発言もされております。

 確かに、それぐらいやれば債権国の方も話に乗らざるを得ないのかな、具体的に申し上げれば、嫌がる中国を引っ張り出すことができるのかなというふうにも思うんですが、最悪なのは、中国が、そういう協議がまとまる前に貸し剥がしみたいなことをやって、自分だけお金を持って逃げちゃうというようなことがあってはいけないので、その点についてもしっかりとやっていただきたいと思うんですが、その取組状況について御説明いただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 途上国の債務再編の話でございますけれども、これは極めて深刻な状況にある、喫緊の課題である、そういうふうに考えております。

 櫻井先生御指摘のとおり、特定の債権国だけが先行して自分の債権を回収してしまうということがないようにするということ、これは重要な視点である、そういうふうに思っております。

 債務再編の合意前に全ての債権国への債務返済を一時的に停止することも検討し得る一つの手段である、そう思いますが、その実施のためには、中国を含む債権国の総意が必要でございます。

 こうした中で、現在、日本が債務再編を主導しておりますスリランカにつきましては、スリランカの大統領が、債権者が適切な債務再編に合意するまではその債権者に返済しないということを対外的に表明しており、こうした債務国側のコミットメントによりまして、全ての債権者への返済が止まっていると承知をいたしております。

 日本としては、こうした取組も促しながら、今後の債務問題の対処に当たりましては、債権国間の公平性、これが確保されますように、諸外国と連携を密にしていきたいと考えております。

櫻井委員 ありがとうございます。

 続きまして、最後に、インボイス制度について一つ質問させていただきます。

 四月十日、衆議院の決算行政監視委員会で、原口議員が鈴木財務大臣に質問されているかと思います。消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法、これが失効しているということで、このときにこの質疑の中で確認をされているかと思います。要するに、価格転嫁をするためのカルテルができないということになります。

 先ほど公明党の伊藤委員から、価格転嫁が進まないことが問題だという指摘もございましたけれども、まさに十月のインボイス導入に当たって、この特措法がないとやはりいろいろな混乱が現場で起きてしまうのではないか、特に中小の弱い立場の事業者が困ってしまうんじゃないのかというふうに思うんですが。そのことを考えたら、やはりこの特措法、インボイス導入は私、反対ですよ。反対ですけれども、やるんだったら、せめてこの特措法、もう一回作ってからじゃないですか。特措法なくしてインボイス導入はやめた方がいいと思うんですよ。

 大臣、この特措法をまず作って、その後にインボイス、いかがでしょうか。

塚田委員長 鈴木財務大臣、既に持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

鈴木国務大臣 御指摘の消費税転嫁対策特別措置法、これは平成二十六年及び令和元年の消費税率引上げのときにおきまして設けられたものでありますが、その際は、全ての事業者に税率の引上げ分に応じて一律の価格転嫁の必要性が生ずることから、その際の消費税の円滑かつ適正な転嫁に支障が生じないように、一律の特別な措置として実施したものであります。

 今般のインボイス制度への移行におきましては、制度移行後も免税事業者であり続ける事業者と課税事業者が混在している場合も多いことが想定される上に、個々の免税事業者によって課税事業者になった際に必要な転嫁の程度も異なるなど、制度の導入による影響は事業者によって様々であると考えられます。

 政府としては、こうした個々の事業者の個別の状況に応じて対応をしていくということで、免税事業者であり続ける事業者が取引で不当に取り扱われないようにする、課税事業者になった際、価格の転嫁ができる環境をきめ細かく整備するといったことが重要で、そうした対応をしてまいりたいと思っております。

塚田委員長 櫻井周君、申合せ時間が経過しております。おまとめください。

櫻井委員 はい。

 これで終わります。質問は終わらせていただきますけれども、今の答弁はおかしいですよ。必要だから法律を作っていたわけでしょう。その法律が失効してしまっているし、他方で、与党の議員ですよ、公明党の伊藤委員から価格転嫁が進まないという指摘があったわけですから、それを無視してしゃにむにやりますというのは、これはよろしくないと思いますので、そのことを指摘して、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、ちょっと身近なところをテーマに質問させていただければと思っております。

 本日、まず、新五百円玉についてお伺いいたします。

 この新五百円玉なんですけれども、発行から一年半たつんですけれども、結構なところで使えないというような状況になっております。自動販売機であったり、コインパーキングの精算機、それから飲食店の券売機、私の感覚では七割ぐらいの場所で使えないんじゃないかなというような印象を持っております。五百円玉が手元に来ると、うわあ、使えないのが来たよというような嫌な気持ちになってしまうわけですけれども。

 機器の対応コストだったり半導体不足の影響もあることも推測されるんですけれども、ここまで使えない新五百円玉、本当にこれを造る必要があったんでしょうかね。偽造防止という大義名分はあるんでしょうけれども、どう考えても、その偽造防止の効果よりも、多くの人が、みんなが感じている不便さ、こっちの方が上回っているように感じます。社会全体で見ると、不利益の方が大きいんじゃないでしょうか。

 新五百円玉の発行、これをどう統括されていますでしょうか。

鈴木国務大臣 新五百円貨幣の発行は、今、藤巻先生が御指摘になられましたように、偽造貨幣の発生及びそれに伴う事業者や国民の経済的被害を未然に防止する目的で実施をしたものであります。

 過去には偽造貨幣が急増した事例もあることや、前回の改鋳から約二十年が経過することも踏まえまして、将来的な偽造貨幣による経済的被害や社会的混乱を未然に防止する観点から、新五百円貨幣を早期に発行する必要があった、そのように考えております。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

藤巻委員 一昔前は、自動販売機だったり、コインパーキングの精算機、飲食店の券売機も今ほどの数はなかったと思うんですよ。それで、硬貨だったり紙幣を新しいものに替えても、対応にそこまで大きな手間やコストはかからなかったと思うんですけれども、今の世の中は自動で精算する機器にあふれております。

 例えば、ラーメン屋。私はラーメンが好きでよく行くんですけれども、昔と違って、最近は大体食券制です。店へ入ってまず券売機で食券を買うというようなシステムになっているんですけれども、日本中あまたあるラーメン屋さんの券売機を全て新五百円玉に対応できるようにすると、それだけでも膨大な手間とコストがかかることは容易に想像できるわけでございます。

 日本中の自動販売機、精算機、それから券売機、これを新五百円玉に全て対応させる、これはかなり大変なことだと思うんです。社会全体で見ると膨大な費用になると思います。先ほど偽造防止という答弁があったんですけれども、それをはるかに超える金額なんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、そういった社会的コストというのはちゃんと考えていったのでしょうか。

 今まで、さっき二十年というのがありましたけれども、二十年置きに定期的に硬貨を替えていくということがあったので今回も替えておこうと、慣例に従って深く考えず替えてしまった、刷新してしまった、そんな側面はないでしょうか。

齋藤政府参考人 少し機器の入替え等も含めて技術的な面もございますので、私の方からお答えをさせていただきます。

 新五百円玉の発行に伴うコスト、リターンの比較みたいなところでございますけれども、リターンといいましょうか、目的のところは、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、偽造通貨の防止、それから、それに伴います経済的損害の発生の未然の防止といったようなものがあるところでございます。

 一方で、先生御指摘のとおり、コストというところもあるわけでございますけれども、今回の改鋳では、事業者の事情にも配慮をいたしまして、公表から実施まで約二年半の対応期間を設けた上で改鋳を行っておりますし、新五百円貨幣の発行後も、直ちに全てが新しい貨幣に入れ替わるわけではない、事業者側の都合に合わせたタイミングで金銭機器の改修を行うことも可能ということでございます。

 例えばでございますけれども、先生御指摘ありましたような食券の券売機ですと、法定上の耐用年数は八年でございます。それから、野外にありますような自販機ですと耐用年数五年でございますので、そうしたサイクルで機械が入れ替わっていくということでございます。

 したがって、先ほど申し上げた改鋳のサイクル二十年というところで申しますと、どんなに長くても五年ないし八年たてば機械が入れ替わってくる中で使えるようになってくる。そうした中で、時間をかけて、利便性、それからコスト、そして偽造防止、そういったところをバランスを取りながら進めていければと考えている次第でございます。

藤巻委員 八年というのがあったんですけれども、そうすると、最長で八年間五百円玉が使えないような自動販売機が町中にいっぱいあるというようなところで、入替えのコストももちろんあるとは思うんですけれども、消費者側が、普通の、一般の国民の方々が使っていく上で、やはりそういった不便性というのは当然、絶対的にあると思いますので、今回はもう発車してしまっているんですけれども、次回、硬貨を新しく替える、まあ、二十年後になるのかもしれないですけれども、そういうようなときは、改めて社会的コストをしっかりと計算して、本当に新しく硬貨を替えていく必要があるのかというのは、ちょっと一度立ち止まっていただきたいなというふうに個人的には考えております。

 続きまして、キャッシュレス決済の方にテーマを移らさせていただきたいんですけれども、新五百円玉についていろいろ言わせていただきましたけれども、一方で、キャッシュレス決済の方は徐々に浸透してきております。まだまだ現金しか使えないところも多いんですけれども、電子決済ができるところも着実に増えてきております。

 今後の方向性ですが、大臣としては、キャッシュレス決済の促進、つまり、余り現金を使わない、そんな社会へとかじを切っていくべきなのか。どのようにお考えでしょうか。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木国務大臣 政府といたしましては、経済産業省を中心にいたしまして、キャッシュレス決済比率を二〇二五年までに四割程度にするという目標を掲げ、キャッシュレス決済の推進に取り組んでいるところであります。一方で、今後、キャッシュレス化が進展する中でも、現金のニーズ、これは引き続き存在すると考えております。

 財務省といたしましては、通貨及び民間の多様な決済手段が国民に対し安全かつ効率的に提供されることが重要だと考えております。引き続き、国民のニーズに応じた通貨の供給に努めてまいりたいと思います。

 取りあえず、二〇二五年までに四割程度というキャッシュレス決済比率、この目標がある、それに向けて進んでいるということだと思います。

藤巻委員 おっしゃるとおり、キャッシュレス決済、徐々に浸透してきたとは思うんですけれども、世界的に見ると、日本の浸透はまだまだだと思います。

 ただ、日本の現金の信用性が高いことであったり、現金を持ち歩いていてもひったくりだったり強盗に遭う可能性の低い治安のよさがあるからこそ逆にキャッシュレス決済が進まないというのもあるので、浸透が遅いのが一概に悪いこととは思わないんですけれども、ただ、利便性や効率性を考えると、私もやはり、キャッシュレス決済は促進、推進していくべきだろうと思っております。

 キャッシュレス決済推進のための現在の取組、それからまた、推進を妨げる要因というのはどのようなものがあるとお考えになっているでしょうか。

澤井政府参考人 お答え申し上げます。

 議員から御指摘がございましたとおり、キャッシュレス決済につきましては、消費者の利便性の向上、それから、レジ締め等の短縮等、店舗の業務の効率化、こういったものに資するもの、こういうふうに認識してございます。

 他方、普及の課題といたしましては、中小の店舗にとって加盟店の手数料が割高であるといった問題や、キャッシュレス決済の導入のメリットが具体的な形で見えにくいといった課題があるというふうに承知してございます。

 このため、経済産業省では、クレジットカードの、クレジットカード会社間でやり取りするインターチェンジフィー、こういったものの標準料率を公表するとか、あるいは、クレジットカードのコスト情報を店舗に説明してもらうといったような取組を進めて、手数料の透明化、こういったことを進めてございます。また、業務効率化につきましても、メリットの定量化、見える化を進めてこれを周知している、こういう状況でございます。

 今後も引き続き、こういった取組を進めまして、キャッシュレス決済の更なる普及に努めてまいりたいと考えてございます。

藤巻委員 ありがとうございます。その部分は是非進めていっていただきたいと思っております。

 これはちょっとJRとかの話になってしまうんですけれども、SuicaとかPASMOのチャージできる金額、これは上限二万円というのはちょっとおかしいなと個人的には思っておりまして、私は今PASMOを使っていて、今、スマホでPASMOのアプリとクレジットカードをひもづけているので、スマホでぱっとチャージできるようになったんですけれども、それ以前は、二万円チャージして、買い物とかをして使い終わったら駅に行ってまたチャージするというようなことを繰り返しておりました。

 これは何で二万円しかチャージできないのかと電話相談窓口にちょっと聞いてみたら、落としたときに大変だからというようなことを言っているんですけれども、これはちょっと余計なお世話なんじゃないかなというふうに個人的には思っていて、これは、落としたとき大変だから二万円しか入らない財布を作る財布メーカーなんかないと思うんですよ。落としたときのことを考えたり、すりに遭ったときのことも考えて、リスク管理の中で財布の中に幾ら入れておくのか、これはもう本当に個人の自由なのかなというふうに考えているんですけれども。

 二万円というのは、Suicaを電車の運賃とかそういったものにしか使わなかったときだったらこれでいいと思うんですけれども、今スーパーとかコンビニで自由に使えるような中で、これは明らかに低い水準かなというふうに思っております。

 Suicaの発行枚数は現在、九千万枚ほどあるそうです。一企業の発行する交通系ICカードとはいえ、もはやこれは社会インフラとも言えます。社会インフラたるSuicaがこの使い勝手というようなところで、一企業の話ではあるんですけれども、こういった非合理性がキャッシュレス決済促進の障害になっている、そういうふうにも言えると思います。

 これはJR側から見ても、九千万枚の発行の下地があるわけですから、利便性を追求して、キャッシュレス決済市場のシェアを大きく取りに行く、そういったチャンスを無駄にしているとも言えます。そういった経営努力が足りないからこそ、経営不振のJR北に税金投入というような事態を招いているというような側面もあるとは考えております。

 このSuicaチャージ上限二万円という非合理的な設定はJRの経営努力不足の象徴ですらあるというふうに個人的には考えているんですけれども、御見解をいただければと思います。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 電子マネーのチャージの上限額につきましては、これは発行者の経営判断によって設定されているものでございますので、その妥当性について当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、一般論として申し上げれば、チャージ上限額の引上げは、御指摘のように、利用者にとって利便性の高いサービスになるということでございますけれども、他方で、不正利用等により利用者に経済的損失が生じるリスクも高まるということでございますので、いずれにいたしましても、各事業者におかれまして、利用者利便と利用者保護の両方の観点から適切に判断いただきたいというふうに考えているところでございます。

藤巻委員 不正利用のリスクというのは、ある意味、個人の判断によるところかなとは思っておりますけれどもね。

 同じような質問というか、これもちょっと民間の商慣習みたいなところはあるんですけれども、クレジットカード決済の話なんです。

 これは海外だと、目の前で読み取り機を操作して決済するパターンがほとんどだと思うんですけれども、日本だと、レストランとかで、クレジットカードを預かって店の奥で店員が決済をして、最後に本人がサインをするというような商慣習が普通に行われておりまして、クレジットカードに記載してある名前、カード番号、有効期限、セキュリティーコード、これを記憶されるかあるいは写真でも撮られでもしたら不正利用され放題かなというふうに思っておりまして、私自身も、クレジットカードを目の届かないところに持っていかれると、若干心配な気持ちにもなります。

 これはあくまで民間の商慣習みたいなところもあるとは思うんですけれども、かなり不健全なものであるというふうに思うんですけれども、これについてはどのような御見解をお持ちでしょうか。

澤井政府参考人 お答え申し上げます。

 従前から、レストラン等において、議員の御指摘のように、従業員がクレジットカードを預かって決済処理を行うということが行われてきたことは我々も承知してございます。

 割賦販売法におきましては、店舗におけるクレジットカード番号の漏えい防止や不正利用防止といったことを義務づけておりまして、その具体策として、決済時に、ICクレジットカード、これは番号が漏えいしにくいカードでございます、それから、暗証番号を入力するという形での取引を求めているところでございます。今では面前での決済が可能な移動式の端末もございますので、テーブル会計を行う飲食店などでも面前での決済に移行してきている、これが普及がだんだん進んできているというふうに認識しております。

 こうした面前での決済が普及していくよう、引き続きセキュリティー対策に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

藤巻委員 私も、おっしゃるとおり、クレジットカードを使う場合はやはり面前でやっていただきたいなというふうに思っていますので、そういうような働きかけというのは引き続きやっていっていただければと思っております。

 キャッシュレス決済において、多くのサービスが今競うように展開されて、ちょっと過当競争ぎみになっている部分もあるとは思っております。これは交通系ICカードのほか、有名どころでも、例えば、LINEペイだとか楽天ペイだとか、メルペイだとかファミペイだとかペイペイだとか、ほかにもあまたのサービスがあります。

 結果、どのサービスがどのようなもので、どのようなメリットがあってデメリットがあるのか、ちょっと混乱して訳が分からなくなって、やはり現金が分かりやすくて安心みたいな、一周しちゃうようなパターンもあると思うんですけれども、これはもちろん民間の健全な競争であるのは十分分かっているんですけれども、今の現状をどう見ておられるでしょうか。

澤井政府参考人 お答え申し上げます。

 QRコード決済や電子マネー等様々なキャッシュレス決済サービスの出現は、消費者ニーズに応じた多様な決済の選択肢が提供されるという観点からメリットがある一方、議員の御指摘のとおり、消費者にとってはどのサービスが一番いいのか分かりづらいという声があることは承知してございます。

 一般論で申し上げますと、消費者がどの決済サービスを選択するかというのは、皆様の、それぞれの方のニーズに合ったものを選択するということでございますので、そういった中で、最終的には一定数の決済サービスに収れんしていくものというふうに考えてございます。

 ただ、現状、分かりづらいという声があることから、経済産業省では、主なキャッシュレス決済手段の特徴等を紹介したガイドブックや動画というものを作成して周知、広報に努めておるところでございます。こうした形で、消費者のキャッシュレス決済の理解増進に向けて引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

藤巻委員 ありがとうございます。そのような案内みたいなものは非常に大事だと思うので、是非周知していっていただければと思っております。

 また、キャッシュレス決済は、これはやはり、電子上の決済ですので、フィッシング詐欺だったり、それから不正ログインなどセキュリティーの問題を完全に除去することはできません。あるいは、災害時にスマホの充電ができなくなったり、大規模な通信障害が起きたりすることも想定されます。現金を持たずにそういった事態に遭遇してしまったらどうするのかといった問題も考えられます。

 そう考えると、やはり現金の必要性は一定感じるところではありますが、そういったセキュリティー上の問題等々についてはどのようにお考えになられているでしょうか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに御指摘のとおり、キャッシュレス決済サービスには、フィッシング詐欺、不正利用のおそれですとか、通信障害や災害時に使用できなくなるというおそれがあるということを承知しております。

 こうしたことから、例えば、電子マネーの発行者に対しましては、セキュリティー対策として、多要素認証あるいは端末認証など、取引リスクに見合った適切な認証方法を導入することですとか、不測の事態に備えましてコンティンジェンシープランを策定していただくこと、バックアップシステムを構築していただくことなどを求めております。

 また、全てのキャッシュレス決済サービスが一時的に利用できないような大規模災害などもあり得るわけでございますけれども、そうした際の備えといたしましては、これは預金取扱金融機関も含めた金融業界全体で金融サービスの提供を行っていくということが重要であるというふうに考えているところでございます。

藤巻委員 ありがとうございます。引き続き、健全な環境への整備を続けて、キャッシュレス決済を推進していただければと思っております。

 これで私の質疑を終わります。本日はどうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 皆様、お疲れさまでございます。日本維新の会、岬麻紀でございます。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、前回残しましたデジタル給与について質問いたします。さきの藤巻議員からのキャッシュレス化の質問に続いてということでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 参考として、本日、二枚の資料をお配りしております。

 まず、配付資料一枚目を御覧ください。こちらは、二〇二三年三月二十日の読売新聞でございます。「デジタル給与 来月解禁」というものでございます。この記事は今年の四月一日からデジタル給与が解禁というものですが、これまで賃金の支払いといいますと、現金を原則としつつ、労働者の同意を得た上で、銀行等の預貯金口座への振り込み又は証券総合口座への振り込みができるとされておりました。

 今般、資金移動業者の口座への資金移動もできるようになるというものでございます。給与振り込み先の拡大という点では、一九九八年の証券口座が対象となって以来二十五年ぶりということで、四半世紀ぶりでございます。

 二〇二三年三月の公正取引委員会を見てみますと、フィンテックを活用したサービスに関するフォローアップ調査報告書五十九ページには、資金移動業者のアカウントへの賃金支払いについては、利用者に一定のニーズがあると考えられ、利用者の利便性の向上にも好ましい影響が生じると考えられるとしております。

 つまり、今後は、銀行を介すことなく直接、労働者のスマートフォン上のQRコード決済アプリの残高になるということですが、スマホ決済の利用者はチャージの手間も省けるなど、よいと思われる、利便性も高まるという見方もございます。

 ここで、まず質問です。

 このように、給与のデジタル払いが利用者の利便性に好影響をもたらすとしていますが、今回の解禁に当たりまして、デジタル給与は実際にはどれくらい利用されるでしょうか。金融庁としてどのような見解をお持ちなのか、まずは教えてください。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話のありました資金移動業者の口座への賃金支払いにつきましては、四月一日から制度が開始されまして、厚生労働大臣の指定を受けようとする資金移動業者の申請が可能となっているというふうに承知をしております。

 どれぐらい利用されるかということにつきましては、今後は、資金移動業者において提供されますサービスの内容ですとか、労働者、使用者の御利用の御意向などによるために、現時点で確たることを申し上げることは困難であることを御理解いただきたいわけでございますけれども、一般論として申し上げれば、例えば、現在、資金移動業者の利用者が銀行口座から資金移動業者の口座へその都度チャージをされている場合にその手間を省くことができるといったメリットは指摘されているというふうに承知をしておりますし、幾つかの資金移動業者は強い参入意欲を示されているというふうに承知をしておりますけれども、いずれにしても、利用者の利便性の向上につなげていかれることを期待したいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 このデジタル給与の、参入する資金移動業者ですけれども、厚生労働省の指定を受ける必要がございます。そのためには、資金移動業者として課せられる規制のほかにも、賃金の確実な支払いを担保するために、上乗せ規制として、要件が七つ課せられております。

 対象となる一回当たりの送金が百万円以下の第二種資金移動業者ということで営んでいらっしゃるわけですけれども、この資金移動業者は四月三十日現在で八十三者と伺っております。既に厚生労働省に申請した事業者も複数あると伺っておりますが、サービスの設計次第では、労働者だけではなく、使用者に当たる企業にも利便性の向上が可能性としてあるのではないでしょうか。

 次に、そうすると銀行への影響も出てくるのではないかという視点から質問を進めていきたいと思います。

 このデジタル給与解禁で銀行への影響ということで、デジタル給与が解禁されても、やはり日本は、海外と比べて現金へ依存しているというか、現金の存在感は依然として大きいのではないかと私は考えるわけです。賃金の金額を丸ごとデジタル給与にしていこうと思う労働者は、さほど今のところは多くないのではないでしょうか。また、資産形成のために銀行口座は当然必要であるため、銀行と顧客との接点がなくなってしまうということも考えにくいと思われます。

 そのほかにも、制度導入当初は、元々QRコード決済アプリを利用していて、銀行口座や現金からQRコード決済アプリにチャージをしていた方、この方々がまずは利用をされるのではないでしょうか。そうすると、預金量が大幅に減ってしまうといったことが起こるというのも考えにくいのかなというふうに今は感じております。

 この資金移動業者への上乗せ規制を見ますと、銀行なくして結局成立はしない制度となっていることも分かります。とはいえ、今後、この資金移動業者のサービス設計次第では、デジタル給与が大幅な広がりを見せる可能性は否定はできません。

 そのほかにも、これを契機に、クレジットカードや現金から決済アプリへと決済の手段をシフトしていく後押しになるという可能性は見られると思われます。

 さらに、銀行業界、近年は決済サービスの利便性を向上するための取組も進んでおります。まさに、このデジタル給与払いに参入を申請をしているということで、デジタル給与払いの解禁が決済サービスへの参入の契機となって、決済ビジネスにおいての新たなステージで競争が始まっていくのではないでしょうか。

 それを踏まえて、質問をさせていただきます。

 こうした現在の銀行業界の決済ビジネスの状況をまずは教えてください。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、銀行業界におきましても、こういう新しい資金移動業者の出現、参入を踏まえまして、デジタルに対応した様々な資金移動サービス、決済サービスを提供を始めているところでございますので、こうした中で顧客の利便性が向上していくということを金融庁としても期待して、後押しをしているところでございます。

岬委員 ありがとうございます。

 電子マネーの台頭を背景にしまして、銀行業界も、使い勝手の向上であるとか、新たに、手数料の引下げなど改革を急いでいるという動きもございます。デジタル給与払いの解禁後、送金や、また決済をめぐる競争、一段と激しくなっていくという見方もございます。そのほか、新聞記事によりますと、参入する資金移動業者の数も不透明であるという部分、そして、保証機関との契約などのコストが高いという部分、さらに、参入が少ないとなると、期待をしていた振り込み手数料などの競争が起こりにくいのではないかといったような指摘がございますが、この辺りはどのようにお考えですか。

伊藤政府参考人 先ほど委員もお話しいただいたとおり、実際の指定と参入がこれからということもございますので、これもおっしゃるとおり、どのぐらいの者が参入してくるかとか、それから、給与振り込みを利用する会社の数がどのぐらいになるかというようなこととも、その影響の度合いなどが関係してくると思いますので、一概には申し上げられないと思うんですけれども、やはり、いろいろな競合が起きまして、これが競争に結びついて効率化が推進されるという反面、またいろいろな問題がないように、今御指摘いただきましたようないろいろな規制もあるということでございますので、これらの兼ね合いでどのような競合の形になるのかということではないかというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 もちろん、現金への依存度は、まだまだ存在感は日本では大きいというお話を最初にしましたけれども、キャッシュレス化も実際進んでおりますので、こちらにも視点を向けていきたいと思います。

 このデジタル給与の解禁による変化として、少なくともこれまでよりは現金需要は減っていくのではないでしょうか。

 そこで、この現金需要が減るということは、銀行にとっても、むしろ現金取扱いコストが減るというプラスの効果も見られると考えます。

 特に、今、人口減少という地域で、ATMコスト、決して小さくないという問題も指摘されておりますよね。二〇一九年の九月二十一日の朝日新聞にもそのような記事が載っております。そうなると、コスト削減のため、銀行同士がATMを相互開放するといった工夫も進んでいるとお聞きしております。

 キャッシュレス化が進展して、銀行にとってもプラスの効果があると思えますが、QRコードの決済を利用すればコインの取扱いも減るということで、例えば、小売店の利用者にとって利便性が高まるのかなというふうにも見方が出てまいります。

 政府としても、令和元年の六月二十一日閣議決定において、成長戦略フォローアップでは、二〇二五年六月までにキャッシュレス決済比率を倍増して四割程度にしていくということの目標を掲げられました。また、経済産業省によれば、決済でキャッシュレスが占める割合、二〇一〇年は一三・二%、これが昨年、二〇二二年は三六%へと拡大をしております。

 ここで質問です。

 政府が掲げましたキャッシュレス決済比率四割程度の目標ですけれども、今回、デジタル給与の解禁によりまして、どれだけキャッシュレス化の進展に結びついていくとお考えでしょうか。大臣、お答えください。

鈴木国務大臣 資金移動業者が提供しております決済サービスは、近年のキャッシュレス決済比率の伸びに寄与していると認識をいたしております。

 給与のデジタル払いに関しても、資金移動業者の創意工夫により、利用者が安心して利用することができる利便性の高いサービスが提供されていくことになれば、更なるキャッシュレス決済の進展につながることが期待できると考えます。

 資金移動業者を所管する金融庁としても、政府として掲げるキャッシュレス決済比率目標の達成に向けまして、厚生労働省における給与のデジタル払いに関する制度の円滑な運用に協力するとともに、利用者がキャッシュレス決済を安心して利用することができる環境整備に貢献をしてまいりたいと考えております。

岬委員 大臣、ありがとうございます。

 キャッシュレスの支払い額というのは、現状は大幅クレジットが占めております。電子マネーですとかコード決済による支払い額はまだまだ少ない状況でございます。平成三十年四月十一日に策定をされましたキャッシュレス・ビジョンによりますと、将来的には、キャッシュレス決済比率は世界最高水準の八〇%を目指していくという方向性も出ております。

 次に、国家公務員ではデジタル給与の支払いについてどうなっていくのかという点にも目を向けていきます。

 配付資料の二枚目を御覧ください。

 こちらの記事は、今年の四月二日、日経新聞でございます。この記事によりますと、国家公務員のデジタル給与払いに対する検討状況などが書かれておりますが、実際、現状はどうなっているんでしょうか。教えてください。

役田政府参考人 お答え申し上げます。

 本年四月から、民間において資金移動業者の口座への賃金支払いを可能とする枠組みが整備されたものと承知をしてございます。

 国家公務員の給与の支払いにつきましては、給与事務の効率化やコスト軽減の観点から、人事院規則に基づきまして、基本的に、一つの銀行口座への振り込みにより行われております。

 人事院は、国家公務員の給与のデジタル払いの取扱いにつきまして、民間部門の動向も注視しつつ、関係機関とシステム面などの課題も含めた議論を行うとともに、給与制度上の検討を行っております。

岬委員 ありがとうございます。

 次に、外国人労働者側への視点からも質疑を進めていきます。

 外国人労働者の受入れ拡充にもつながる見込みというこの給料の支払い形態ですけれども、元々この議論が行われたところから背景を見ますと、デジタル給与の解禁の議論というのは、銀行口座の開設がしづらいという外国人労働者の対応から始まったものだと承知をしております。

 今回の制度、デジタル給与を受け取る決済アプリの残高が百万円を超えた場合に備えて、あらかじめ銀行口座等をひもづける必要がございます。口座の開設が難しいという外国人労働者にとっては利便性の向上につながらないのではないでしょうか。元々議論が始まったものの、結局それが実現できないのではないかと感じるわけですね。

 もちろん、これはマネーロンダリングの対策などから、このように余り簡単には口座がつくれないようにするという慎重論というのが根強くあることは承知をしております。足下では、慢性的な人手不足から、再びこのように外国人労働者の需要が高まっていることも事実でございます。

 そこを踏まえまして、このような背景から考えますと、外国人労働者がデジタル給与払いを選択しやすい環境を整えて更に利便性を高めていくという検討も必要ではないかと思います。

 外国人労働者に対する利便性の向上について、確かに、それを進めていくと課題が見えてくると思います。この課題はどのようなところにあると具体的にお考えでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 やはり、デジタルになっても、銀行口座がないとなかなか生活その他で不便が生じるということであると考えておりまして、やはり外国人の方が銀行口座をつくりやすいようにいろいろな施策を講じることが重要であるというふうに考えておりますが、他方で、委員御指摘のとおり、マネーロンダリングの観点から、口座開設に当たりまして本人確認ですとかその他の手続をしていただく必要もございますので、そういうところについて利便性をどうやって高めるかということが課題であるというふうに考えております。外国人の方は日本語によるコミュニケーションが困難であるというケースも多かろうと思いますし、いろいろな手続もプラスでかかってくるというような点がございます。

 こうした中で、一部の金融機関では、例えば、口座開設の申込書を多言語対応のウェブサイトで事前に作成、印刷できるようにすることで来店時のスムーズな手続を可能にする、書類の記入例や顧客パンフレット、ウェブサイト等を多言語で提供する、職員が大学や企業を訪問し、留学生や技能実習生等の手続をまとめて受け付ける、SNSを活用してサービス内容を分かりやすく周知するなどの具体的な取組が進められているというふうに承知しておりますが、こうした動きを横展開をすることによって、より外国人の方が口座開設をしやすい環境を整備していきたいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 やはり、個別の対応というのはかなり手間もかかり、大変なのではないでしょうか。今お答えいただいたように、やはり言語の問題というのもございますし、こういった銀行の口座開設というのは、日本人の私たちでも、大変、書面が複数にわたっていたり、同じことを何度も書かなくてはいけないであったり、あと、来店するとかなり混んでいて予定の時間内には収まらないというようないろいろな不便が、これは外国人だと更なる不便もあるでしょうと考えるのは容易でございます。

 ただ、いろいろな規制をもってきちんと管理をしていくという側面は忘れてはならないところだなというふうに感じております。

 そこで、最後の質問になりますが、今のような課題解決とともに、規制と利便性のバランス、これが一番大切な部分になってくると思います。具体的に、ではどのように進めていこうと思われますか。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まさに今委員おっしゃったとおり、両方を、マネロン対策ということと利便性の向上ということを両方進めていかなければいけないというふうに思っておりますが、具体的な方策は、先ほど申し上げたような個々の金融機関のよい対応をできるだけ多くやっていくということでもございますし、金融庁といたしましても、例えば、多言語でパンフレットを作って、外国人の方とのマネロンの関係でいいますと、日本を出られるときに、既につくった預金口座を悪い人に売ってしまうというようなこともございますので、こういうことは犯罪ですよというようなことを周知する、そんなこともやっておりまして、金融機関と金融庁も協力して対応をしていきたいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 外国人の方が母国に帰るときには日本の口座は閉鎖をするであるとか、思い切ったやり方も必要な部分もあるかと思います。

 それでは、質問の時間が参りましたので、以上で終了いたします。本日もありがとうございました。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 まず、鈴木大臣と質疑をさせていただきたいと思います。

 昨日公表されましたこども未来戦略方針の素案、児童手当の拡充が目玉のようでありますけれども、確かに子供さんを持つ親御さんは助かるでしょうし、喜ばれるでしょうけれども、少子化対策にはほど遠いのではないかと思います。役に立たないと私は思っております。

 やはり少子化対策には、子供の教育には基本的にお金がかからない社会をつくるということ、それから給料が上がる経済の実現、この二つがないとなかなか抜本的な少子化対策にはならないということをまず申し上げておきたいと思います。

 しかも、安定財源の議論は先送りでありまして、今議論されております防衛力強化財源確保法案も、何度もこの委員会で指摘をしましたように、中身はすかすかであります。基本的には決算剰余金と外為特会の剰余金を当てにして、とても安定財源とは言えない代物であります。それに加えて三・五兆円の子供、子育て予算の増額ということになりますと、恐らく今のままの議論でいくと砂上の楼閣に屋上屋を重ねるような話になるのではないかと思っております。

 他方で、我々は安易な増税には反対であります。まずは徹底した歳出の見直しが行われなければならないと思います。また加えて、今日議論することでございますけれども、資産運用を強化することが大切だと考えております。

 私からは、この委員会でも何度か、外為特会の一部を基金化して運用し、財源に充てることを提案をさせていただいております。

 そこで、鈴木財務大臣にお伺いいたしますけれども、岸田内閣は、資産所得倍増を掲げ、拡大NISAの導入も決めました。政府の資産を運用して新たな財源とすることに対する見解を問いたいと思います。

鈴木国務大臣 一つ前の御質問、NISAのことについてもお話しになったと思います。

 NISAにつきましては、家計の資産が二千兆円を超えるという、そのうち半分は現預金化ということで、これを積極的に投資に回していただく、それによって投資先の会社の、企業の価値が上がる、それがまたぐるっと回って普通の所得、給与を始めとする所得の財源にも回っていく、そういうようないい循環をつくっていこうということであります。そういう中で、企業の価値が上がる、業績が上がるという中で、例えば、法人税の増収、税収につながる、そういうことだと思います。(前原委員「質問に答えてください」と呼ぶ)

 ええと、済みません、先ほどの……(前原委員「もう一度聞きましょうか」と呼ぶ)はい。

前原委員 拡大NISAは、個人の資産ですよね、個人の金融資産をいわゆる資産所得倍増ということで運用に回すということでありますが、私が伺っているのは、政府の資産を運用して新たな財源とすることに対する見解を聞いております。

鈴木国務大臣 政府の資産ということで、例えば、大学ファンドというものが最近設置をされたところでございます。これの運用益を将来、呼び水としてやっているわけでありますけれども、それぞれ大学において、大学の努力において運用をして、それを教育財源として活用していこう、そういうような考えであると思いまして、こうしたようなところにも、資産を大きくしていくということ、一つのやり方としてこういう例があるのではないかと思います。

前原委員 私が質問しているのは、政府の資産を運用して新たな財源にするということ。

 大学ファンドというのは、後で文部科学副大臣に伺いますけれども、これは、財投とか含めて十兆円集めて、それを運用するということをやって、それは子供の予算に使う、ある意味でそれは財源に使うということかもしれませんし、また、GPIF、これも厚労副大臣に後で伺いますけれども、これも預かったお金を運用するということにおいては、そういった運用面で大学ファンドそしてGPIFというのがあると思うんですけれども、私が指摘をしているのは、新たに資産運用する中で、新たな財源というものの確保に向けて検討したらどうかということであります。

 これはいいです。またこれについては後ほど指摘したいというふうに思います。

 岸田総理は、去る四月二十六日の経済財政諮問会議で、資産運用業などを抜本的に改革することが重要だとしまして、資産運用会社の運用能力を強化するように金融庁に指示をいたしました。

 私の理解では、改革の背景として、二千兆円超の家計金融資産のうち約半分を占めると言われる約一千兆の現預金を投資に回すことと、それから、運用能力の強化の中には運用利回りを上げることが含まれるという理解をしているわけでありますが、この二つについて端的に御答弁ください。

鈴木国務大臣 総理からも、経済財政諮問会議で指示がありました。

 先生おっしゃるとおり、資産運用会社というものは、これは重要な役割を果たすわけでありまして、その改革というもの、これが必要であると思っております。

 様々な問題点があるんだと思いますけれども、政府として問題意識を持っておりますのは、大手資産運用会社の経営トップ、これがグループ内の他社から就任するケースが多くて、資産運用会社の経験が少ないケースもある。また、運用体制や保有銘柄の開示が十分なされていない。それから、我が国独自の慣習やシステムベンダーの寡占によりましてコスト高、新規参入障壁となっているなどの課題、問題意識としてそういうものを持っておりまして、資産運用会社の改革、こういう点からも進めなければならないのではないかと考えています。

前原委員 今お話をされた、経験の少ない人がトップに立っているとか、運用銘柄が十分に開示されていないとか、コスト高だとか、そういった課題を解決する真の目的というのがあるはずですよね。それが、私が今申し上げている、要はそういったことを踏まえて、預貯金、一千兆円と言われるものを、預貯金から投資に回していくということと、そして、そういった課題を解決することによって運用利回りを上げていくという認識でいいかということです。

 大臣、いつも二度、三度聞かないと答弁が出てこないので、一回で答えていただくようにしていただけますか。

鈴木国務大臣 前原先生おっしゃるとおりで、前半について言えば、一千兆円を超える家計の預貯金、それを投資に回していくということであります。それとともに、資産運用業、これが適切に機能を発揮して、家計により高く安定した投資リターンをもたらしていく、そのために必要である、先生のおっしゃったとおりだと思います。

前原委員 お配りをしている資料の二ページを御覧いただきたいと思います。

 これは何度かこの委員会で使わせていただいているものでございますけれども、GPIF、収益率が二〇〇一年度以降で三・三八。この直近の二十一年間だと三・七一だと思います。若干上がっていると思います。シンガポールの政府投資会社が四・二%。

 いつも指摘をしているように、ハーバード大学、一九七四年以降で収益率が一一%。イエール大学も、過去三十年で一三・六%ということで、高いいわゆる収益率を果たしているわけですね。やはりこういったものを目指していくということが私は大事じゃないかと思います。

 次の三枚目を御覧いただきたいと思います。

 三枚目は、運用というのは、いいときもあれば悪いときもあるんですよ、当然ながら。したがって、ハーバード大学の過去十年の推移、イエール大学の過去十年の推移を見ていただいても、いいときもあれば悪いときもあるということなんです。

 要は、ポートフォリオを、いわゆるオルタナティブ投資ということで、かなり多岐にわたらせているということが大事なことだと思いますけれども、こういったことをしっかりと運用会社、そして、後で質問いたします大学ファンドやGPIFの利回りを高めていこうと思えば、結局は、こういった目利きの人材育成、しっかりとこれをやれる人を育てていくことに私は尽きるんじゃないかと思いますが、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

鈴木国務大臣 やはりそうした専門性、目利きのある人、これは重要であると思います。特に、ポートフォリオをどうするかとか、長期にわたるものもありますし、短期にわたるものもありますし、いずれにしても、そういう目利きをいかに確保するか、そして育てていくか、これは重要なことであると認識しています。

前原委員 それでは、今日は文科副大臣、厚労副大臣に来ていただきましたので、お伺いしたいと思います。

 まず、大学ファンドについてでありますけれども、運用は、科学技術振興機構、JSTが選定した運用会社が行っていて、私が今知り得ているものでは、二〇二二年四月から九月の運用実績はマイナス三・六七%、金額ではマイナス千八百八十一億円ということでありますが、去年一年間、二〇二二年四月から今年三月までの運用実績を示してもらえますか。

井出副大臣 お答えを申し上げます。

 先生が御質問の中で指摘されたものが、公表されたものとしては最新のものと私も理解をしております。

 JSTにおきましては、毎事業年度のものをその翌年度の夏に業務概要書を作成し、公表することとしておりますので、まだ鋭意作業中だと思います。

前原委員 一年間の運用実績、私はマイナスだから駄目だと言っているのじゃないんです。先ほどハーバードやイエール大学を見ていただいたように、マイナスのときもあるんです。ですから、マイナスだから駄目だと言っているのじゃなくて、やはりしっかりとした運用を行われて、そして、情報開示をしっかりしていくということでありますので、情報開示がされたらしっかりお示しをいただきたいと思います。

 ファンドの年間運用目標は四・四九%だということでありますが、この根拠をお示しをしていただきたいと思います。

井出副大臣 四・四九は、支出目標率三%プラス長期物価上昇率、これを令和五年度に当てはめますと四・四九と算出をしております。

 この運用目標の定義は、総合科学技術・イノベーション会議の下で専門家の御議論を得て、その中で、四%という運用目標の達成は十分可能であるという考えが示されたものでございます。

前原委員 三%、三千億円ですよね、毎年三千億円を拠出をする、それプラス長期物価上昇率ということで四・四九だということであります。それについては承知をしております。

 じゃ、それを踏まえて、厚労副大臣に伺いたいんですけれども、GPIFについてですね。

 先ほど鈴木大臣とのやり取りを聞いていただいたと思いますけれども、政府のファンドというのは、今のところ、大学ファンド、そしてGPIFというのが大きなものとしては存在をしているわけでありますが、大学ファンドが四・四九ですよね、で回していくということであります。

 GPIF、途中でポートフォリオを見直して、四分の一ずつですよね、今。国内の株が四分の一、海外の株が四分の一、そして国内の債券が四分の一、海外の債券が四分の一ということでありますが、先ほどの私がお示しをした資料で見ていただいたように、イエール大学とかハーバード大学というのは、オルタナティブ投資ということでかなり幅広い運用にして、利回りを上げているわけですね。

 もちろん、年金のお金ですので、一定程度のやはり安定性というのは大事だと思いますが、大学ファンドが四・四九ということになれば、直近の二十一年間で三・七一のGPIFの運用目標をやはり上げて、そして将来の年金の言ってみれば安定財源に資するような運用というものをしっかりと行うべきだと私は思いますが、まずは大学ファンドと合わせるぐらいの運用目標にするということで、ポートフォリオを見直される考えはありませんか。

伊佐副大臣 目標でございますけれども、公的年金の財政検証を踏まえて、将来の年金給付の財源を確保する観点から、厚労大臣がGPIFに対して示している中期目標の中で、名目賃金上昇率プラス一・七%を長期的な運用目標として設定をしてございます。

 この長期的な運用目標を最小限のリスクで確保するという観点で、GPIFの専門的な知見に基づいて現在の基本ポートフォリオが定められているということでございます。

前原委員 先ほど文科副大臣は、三%プラス長期物価上昇率と。一・七%プラスインフレということでしたよね。しかも、その算定されることが将来の、要は年金を安定的に提供するためということですけれども、少子化が進み、長寿化が進んでいる中で、賦課方式の年金というものについては、やはりしっかりと運用を私は高める必要があるというふうに思いますので、是非、政府としてはこの年金の運用をまずは大学ファンドと同じような目標に上げて、しっかりと安定財源にされることを問題提起して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 インボイスについて質問します。

 配付資料一を御覧ください。公正取引委員会が五月に公表した「インボイス制度の実施に関連した注意事例について」であります。

 公正取引委員会は、以下の発注事業者に対して、独占禁止法違反行為の未然防止の観点から注意を行いましたとして、イラスト制作業者、農産物加工品製造販売業者、ハンドメイドショップ運営事業者、人材派遣業者、電子漫画配信取次ぎサービス業者の五つの事業者を挙げています。

 公正取引委員会に伺います。注意した事業者はこれだけですか。公正取引委員会が行った調査の結果、その他の業態に独禁法違反のおそれや疑いがある業者は本当にいなかったんでしょうか。

田辺政府参考人 お答えいたします。

 公正取引委員会におきましては、日々様々な情報が寄せられておりまして、その中で、情報を精査、分析し、独占禁止法違反の疑いがある、そういったものについては、必要な調査を行っているところでございます。

 今回の注意の事例につきましては、一定程度注意すべき事例が見つかったということで公表したことでございますけれども、その他の個別の事案につきましては、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

田村(貴)委員 これも個別の事案じゃないですか。

 資料二を御覧ください。公正取引委員会が注意の根拠としている資料です。

 発注事業者、課税事業者が、経過措置により一定の範囲で仕入れ税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合に、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通知することは、独占禁止法上又は下請法上問題となるおそれがありますとしていますよね。

 それで、この五つ注意をした、一人の電子漫画配信サービス業者の方は、既に公正取引委員会から独禁法違反の疑いで調査を受けた、注意を受けたというふうにして、公表しています。

 この業者の方は、取引のある数百名の作家に対して、インボイス発行事業者登録番号の取得状況を確認しました。そこで、登録予定のない作家には、制度開始の十月以降、今までロイヤルティーに消費税相当分一〇%を加算していた金額をお支払いしていたものから、消費税相当分一〇%を加算しない金額をお支払いするといった形に変更させていただきたい、そういうふうに説明したから公取から注意を受けたということなんですよね。だったら、こんな事例というのは山ほどあるんじゃないですか。独占禁止法違反の疑いというのはほかにないと言うんですか。

 私、二月十七日の本委員会の質疑で、大手飲料メーカー、誰もが知っている大手飲料メーカーの事例を取り上げました。この大手飲料メーカーは、業務委託契約の販売員に対して、課税業者になればこれまでと同等の条件を維持、免税事業者のままだと従来の販売手数料から益税、消費税相当分を差し引いた金額に設定、販売手数料の減額と一方的に説明しているんですよ。私は、国会の公式の場でこういうことを挙げて、そして、こういうところはやはり独禁法違反になるんじゃないか、調査したのか、注意しているのかということを確かめているんですけれども、そのことについて確かめたいと思います。この事例はどうなんですか。

田辺政府参考人 今回公表した事例につきましては、先生御指摘のとおり、発注者が、経過措置により一定の範囲で仕入れ税額控除が認められているにもかかわらず、免税事業者に対して、インボイス制度の実施後も課税業者に転換せず、免税業者を選択するという場合には、消費税相当額を取引価格から……(田村(貴)委員「それは分かっています」と呼ぶ)そういう問題について注意を行ったということでございまして、公正取引委員会としましては、本件、公表した事例も含めまして、関係省庁とも連携しながら、インボイスについて周知、広報を行うとともに、独占禁止法違反行為があれば、これは厳正に対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。

田村(貴)委員 ちゃんと答えていませんよね。

 この注意された五つの業態の方々、見たら、全部個人事業者ばかりですよ。私がこの委員会で指摘した大手飲料メーカーの事例は全く一緒じゃないですか。

 先ほど、いっぱい私たちの方にも情報が寄せられていると。私の事務所にも来ていますよ。だからこうやって、これは本当にいけぬな、駄目だなと思うことについては告発もしています、お知らせもしています。調べないでしょう。そのことについて何にも言わないじゃないですか。

 なぜ、個人事業者ばかりは見せしめと言わんばかりにこうやって公表し、大手企業については調査もしない、結果も知らせない。こんなんでいいんですか。何か言うことありますか。

田辺政府参考人 繰り返しになってしまいますけれども、大企業、中小企業、そういったことにかかわらず、独占禁止法違反ということがあれば、そこは厳正に対処していくということでございまして、今回、公表資料については、一定の行為について、独占禁止法違反につながるおそれのある行為が複数見られたので、それをまとめて公表したということでございます。

田村(貴)委員 資料一枚目のところに、以下の発注事業者に対してと。等という言葉もないんですよ。こうやって挙げている。明らかにおかしいと思います。

 鈴木大臣、お伺いします。

 インボイス導入をめぐって、まさに、もうこの瞬間もですよ、経済社会が混乱に陥っています。免税事業者は取引先から、課税業者になるか、取引額から消費税の差引きを告げられているんですよ。そのときに、八割控除とか五割控除とかあるんだけれども、こんなことはもう説明しない。とにかく消費税分は引きますよと。だから、独禁法違反になるので、公正取引委員会がこういう注意をしている。注意の仕方も問題があるんだけれども。

 それもこれも、大臣、全てインボイスのせいじゃないですか。仕入れ税額控除に関わるこうした問題があるから、毎日問題が生じているんですよ。周知、広報に徹する、理解を深める、そういうふうにずっと言われ続けてきて、まだこうした問題がある。インボイス制度は思い切って中止をする、実行を延期する。決断すべきじゃないですか。

鈴木国務大臣 政府といたしましては、インボイス制度、複数税率の下で適正な税制をしっかりと前に進めていくために必要なものであるということで、法律で定められておりますが、本年十月からの導入ということが決まっているわけであります。

 政府として、法律で決められているこの方針を今変えるということは考えておりません。

田村(貴)委員 方針を変えないから、日々こうした問題が起こってくるわけですよ。

 財務省は、制度説明を尽くしていく、理解を求めていくということなんですけれども、それが行われていない事例について今日はまた質問したいと思います。

 日本たばこ産業株式会社、JTが全国の葉たばこ農家に対して、インボイス実施後の契約金額などの説明を各地の組合を通じて行っています。これはある県の農家の話です、葉たばこ農家の話です。葉たばこ代の支払いに当たり、従来は免税農家には消費税額分相当を上乗せした税込み価格で支払ってきたが、二〇二三年からはインボイス登録をしない免税農家には消費税額分は除いた税抜き価格で支払うと説明してきているそうであります。

 大臣、また出てきたじゃないですか、こうやって。これ、同じ説明をJTは今もしているんでしょうか。

齋藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 JTの葉たばこ農家に対するインボイス制度の実施に関連した説明について、私どもがJTから聴取した内容は以下のとおりでございます。

 昨年の八月段階でございますけれども、JTから全国たばこ耕作組合中央会に対して、本年の十月一日以降、すなわちインボイスの実施以降ということでございますが、その葉たばこ耕作者とのお取引について、免税事業者に対しては、JTとして消費税相当額を支払わない対応とする旨、一旦説明をいたしております。

 その後、インボイス制度導入時の影響緩和に係る社会的な動向を踏まえ、免税事業者とのお取引に関して、仕入れ税額控除の経過措置等を考慮した消費税相当額の支払いに係る対応というものを改めて検討を行った、具体的には、JTは、免税事業者である葉たばこ耕作者に対して、本年十月一日から令和八年九月三十日までの三年間においては、消費税の八〇%相当額を支払う、また、令和八年十月一日から令和十一年九月三十日までの次の三年間でございますけれども、消費税の五〇%相当額を支払うということとし、先日、五月三十一日でございますが、全国たばこ耕作組合中央会と協議の上、各たばこ耕作組合に周知をした、このように聞いているところでございます。

田村(貴)委員 五月三十一日に周知ですか。こういうテンポですよ、大臣。だから、誤ったメッセージが伝わるわけですよ。消費税額分は除いた税抜き価格で行いますと。

 農家はびっくりしますよね、葉たばこ農家。だから、この誤った説明のせいで、多くの葉たばこ農家がインボイス登録をしてしまったんですよ。課税登録してしまったんですよ。経過措置の話が出てきて、八割控除、五割控除はあるので、じゃ、その分については控除額に応じて支払う、これが今の説明ですよ。だったら、この控除期間中は免税業者でありたいと思うのは当たり前じゃないですか。だから、慌てて、その登録取消しの書類も持って、また説明に伺っているという状況なんです。

 大臣、これを混乱と言わず何と言いますか。JTというのは、政府が一番の株主でしょう。そして、JTは財務省の監督下にあるわけでしょう。インボイス、そしてこの控除期間の問題、全然周知徹底されていないじゃないですか。それで、農家の方は、いや、本当に困っていますよ。私は、誤ったメッセージでこの混乱を招いていることについて、財務省、これ、何の責任も感じていないんですか。いかがですか。

鈴木国務大臣 財務省としては、十月からのインボイス導入、これを何とか、ソフトランディングといいますか、なだらかにきちっと導入をしていきたいということで、先生御承知のとおりの様々な周知徹底をいたしましたり、経過措置を取りましたり、様々な予算的な措置を取りましたりしているところでございます。

 そういう財務省の立場からして、今御指摘のような、そういうような、JTのことを例に挙げられましたけれども……(田村(貴)委員「たばこ農家とJT」と呼ぶ)ええ。そういう例が先生からありましたけれども、こうしたことがあるということは、これは遺憾なことである、こういうふうに思います。

 いずれにいたしましても、財務省としてもいろいろなこの緩和策をやっていくわけで、やっているわけでありますので、その周知徹底を更にしっかりやっていかなければいけない、そう思います。

田村(貴)委員 遺憾なこととおっしゃいましたけれども、インボイス自体が遺憾なんですよ、いかぬことなんです。

 JTの説明によれば、経過措置の期間が終われば、免税葉たばこ農家への支払いは、消費税を除いた税抜き価格となります。これでは、免税葉たばこ農家が経費として支払った消費税分が転嫁できなくなってしまいます。免税葉たばこ農家が負担した仕入れ税額、免税農家が負担した仕入れに係る消費税分、これはJTが払うことになるんでしょうか。この先、どうなるんですか。そういうことを考えていますか。どうですか。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の措置につきましても、先ほど御説明をさせていただきましたとおり、JTと全国たばこ耕作組合中央会との協議の上で、昨年の夏、一旦説明したものを改めたということでございます。今後の買取りについても、JTとそれからたばこ耕作組合との間でしっかりと相談をした上で、問題が生じないようにしていってもらいたい、そのように考えております。

田村(貴)委員 いずれにしても、たばこ農家とJTとの間におけるインボイスをめぐる大きな混乱と、そして深刻な不安をもたらしているのは事実なんです。

 要望しておきます。財務省もJTも、こうした葉たばこ農家からの要求、そして不安、耳を傾けるべきじゃないですか。それだけ答えてください。大臣でも。

鈴木国務大臣 インボイスにつきましては、いろいろな団体、それから事業者の組織からも、様々な不安でありますとか要望が寄せられているところであります。そういう意味におきまして、葉たばこ耕作組合からも、こうした要望があれば、それは他の団体からの御要請と同じように、しっかり受け止めさせていただきます。

田村(貴)委員 時間が来ました。終わります。

     ――――◇―――――

塚田委員長 次に、内閣提出、金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣鈴木俊一君。

    ―――――――――――――

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木国務大臣 ただいま議題となりました金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、金融商品取引法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 成長と資産所得の好循環を生み出し、国民の安定的な資産形成を実現するため、我が国の金融及び資本市場をめぐる環境変化に対応して、金融サービスの顧客等の利便の向上及び保護を図ることが、喫緊の課題となっております。このような状況を踏まえ、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、金融サービスの提供等に係る業務を行う者に対し、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に業務を遂行すべき義務の規定を整備することといたします。

 第二に、国民の安定的な資産形成の支援に関する施策を総合的に推進するため、基本方針を策定することといたします。また、国民の金融リテラシー向上等に向けた金融経済教育推進機構を創設することといたします。

 第三に、契約締結前等における顧客等への情報提供について、デジタル技術の活用や、顧客の知識経験等に応じた説明義務に関する規定を整備することといたします。

 第四に、企業開示制度について、法令上の四半期報告書制度を廃止することといたします。

 その他、関連する規定の整備等を行うこととしております。

 次に、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 近年の情報通信技術の進展及び投資者の多様化を始めとする資本市場を取り巻く環境の変化に対応して、資本市場の効率化及び活性化を図ることが、喫緊の課題となっております。このような状況を踏まえ、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、特別法人出資証券をデジタル化するための振替制度の整備を行うことといたします。

 第二に、スタートアップ企業等の上場日程の期間短縮を図るため、振替制度における手続期間の見直しを行うことといたします。

 その他、関連する規定の整備等を行うこととしております。

 以上が、金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

塚田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る七日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十一分散会


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