衆議院

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第21号 令和5年6月7日(水曜日)

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令和五年六月七日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      加藤 竜祥君    勝目  康君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    岸 信千世君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      坂井  学君    塩崎 彰久君

      津島  淳君    土田  慎君

      中山 展宏君    葉梨 康弘君

      藤原  崇君   山本ともひろ君

      若林 健太君    金子 恵美君

      階   猛君    野田 佳彦君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    米山 隆一君

      岩谷 良平君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    田中  健君

      前原 誠司君    田村 貴昭君

      吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   財務副大臣        井上 貴博君

   文部科学副大臣      簗  和生君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  栗田 照久君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  井藤 英樹君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   参考人

   (日本銀行総裁)     植田 和男君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月七日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     加藤 竜祥君

  岸 信千世君     勝目  康君

  高村 正大君     山本ともひろ君

  塩崎 彰久君     土田  慎君

  若林 健太君     坂井  学君

  藤岡 隆雄君     金子 恵美君

  藤巻 健太君     岩谷 良平君

  前原 誠司君     田中  健君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     神田 潤一君

  勝目  康君     岸 信千世君

  坂井  学君     若林 健太君

  土田  慎君     塩崎 彰久君

  山本ともひろ君    高村 正大君

  金子 恵美君     藤岡 隆雄君

  岩谷 良平君     藤巻 健太君

  田中  健君     前原 誠司君

    ―――――――――――――

六月五日

 消費税率五%への引下げに関する請願(田村貴昭君紹介)(第一四二一号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(新垣邦男君紹介)(第一五〇七号)

同月七日

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(近藤昭一君紹介)(第一六四七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一七一九号)

 同(大石あきこ君紹介)(第一七二〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一七二一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一七二二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一七二三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一七二四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一七二五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一七二六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一七二七号)

 同(宮本徹君紹介)(第一七二八号)

 同(本村伸子君紹介)(第一七二九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

 財政及び金融に関する件

 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総合政策局長栗田照久君、総合政策局審議官堀本善雄君、企画市場局長井藤英樹君、監督局長伊藤豊君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、文部科学省大臣官房審議官安彦広斉君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原委員 自由民主党の藤原崇でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 十五分と限られておりますので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の改正案においては、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律において、最善の利益を考えた業務運営の確保ということが文言として加えられます。

 今までも金融商品の世界には適合性原則など類似する考え方があったわけですが、これを今回あえて法定化をしたその趣旨について、大臣に伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 御指摘の適合性原則などの法令上の義務は、これは投資者保護のための最低基準を定めるものであります。

 これまで、金融庁におきましては、更に金融事業者がよりよい金融商品・サービスの提供を競い合うよう促していく観点から、金融事業者が顧客本位の業務運営におけるベストプラクティスを目指す上で有用と考えられる原則、顧客本位の業務運営の原則を定め、金融事業者の取組を後押ししてまいりました。

 これによりまして金融事業者の取組には一定の進展が見られますが、引き続き、商品選定や説明の在り方等に課題があると指摘をされているほか、資産形成において重要な役割を果たしている企業年金についても、運用の専門家の活用不足や運用機関の選定プロセス等に課題があると指摘をされており、更なる対応が必要と考えています。

 このため、本法案では、これまで金融事業者に促してきた顧客の最善の利益を図る取組について、法令上の義務とするとともに、企業年金関係者もその対象に加えることとし、金融事業者等に不適切で悪質な業務運営が認められる場合には、必要な行政対応を行うことができることとすることで、金融事業者等の取組の一層の定着、底上げを図っていきたいと考えているところであります。

藤原委員 ありがとうございました。

 今までも、ガイドラインとして取組を促して、成果はあったけれども、それを、まだ不十分なところがあるというところで、法定化をするという御趣旨だと思います。是非、金融庁には、法定化の趣旨をしっかり踏まえて執行していただきたいと思っております。

 ここで、顧客本位の業務実施と言われるわけでありますが、例えば金商法の関係なんかで書面、サインを書いたりするんですが、実際のところは非常に分かりづらい。そういう意味では、なかなか、顧客の立場に立って説明をしているというよりは、しっかり要件をちゃんと説明しましたという形をつくるようなところもございました。

 類似でいうと、携帯電話の加入の場合も、結構昔は複雑だったんですけれども、これは大分問題視されて、ここ二、三年で改善がされていまして、携帯電話の契約説明などは大分分かりやすくなってきております。

 もちろん、携帯電話の契約とかなりのお金を動かす金商法の世界は違うというのも分かるんですが、やはり、ただ説明をというよりも、ユーザーフレンドリーな取組をしっかりとしていく、そういう中身も踏まえて取組をする必要があると思いますが、いかがでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融商品の販売に当たりましては、各社において、顧客本位の業務運営の観点から、分かりやすく丁寧な説明が行われることが重要と考えてございます。

 このため、今回の法改正におきましては、金融商品取引業者などが契約締結前に顧客の知識や経験等に応じた契約内容の説明を行う義務を法定したところでございます。

 また、これまで書面で行われていた情報提供についても、分かりやすい情報提供を行うため、書面、デジタルのどちらで情報提供することも可能となるような見直しを行ったところでもございます。このため、デジタル手段による情報提供に当たっては、単に書面を電子化するのではなく、顧客が商品の比較分析を多様なデータを活用して容易に見やすい形にできるようにするなど、各社の創意工夫が発揮されることが期待されてございます。

 なお、金融庁といたしましては、各社が創意工夫をしながら顧客に対してより分かりやすい情報提供を行っていくことが重要と考えてございまして、これを促すため、商品性やリスクに関する情報を分かりやすく簡潔に提供するための重要情報シートの活用を促してきたところでございます。

 この中で、金融庁といたしましては、各社が重要情報シートを活用する際の手引を作成、公表するとともに、実際の情報提供や説明が適切なものとなっているかどうかにつきまして実態把握を行い、改善を促してきてございます。

 今般の法改正後におきましては、顧客の最善の利益を追求する提案、販売プロセスにおきまして、重要な情報について、創意工夫をしながら分かりやすく顧客に提供、説明することなどにつきまして、対話を通じて多くの金融機関の取組の向上を一層促していくほか、顧客への情報提供に関する取組の好事例を公表するなど、顧客の最善の利益の追求に資する分かりやすい説明、情報提供が行われるよう、引き続きしっかり取り組んでまいりたいと考えてございます。

藤原委員 大分長くお話をいただいたんですが、デジタルということ、やはりこれは、単にデジタルで、PDFでやるだけではなく、デジタルを使って更に分かりやすくというところ、そこを是非お願いしたいと思いますし、ワークシートというか、シートでのチェックポイント方式も非常にいい取組だなと思いますので、是非広げていただきたいと思います。

 次に、ちょっと各論に入るわけですが、例えば、対象になる業種のうち、損害保険会社を考えてみますと、実際に保険会社が顧客対応を行うのは、一義的には保険代理店ということになります。その意味では、保険代理店の経営体制に配慮を行うこと、これは顧客対応の品質向上の観点で必要と考えます。

 保険代理店の中には、やはり保険会社の取組の仕方に不信感を持っている方々もいらっしゃるわけでして、ポイント制度等の適正化など損保会社と保険代理店との間の規律、これを行う必要があると考えますが、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、保険代理店は、直接顧客と接し、顧客と損害保険会社をつなぐ重要な役割を担っていると考えております。

 御指摘の代理店手数料ポイント制度につきましては、損害保険会社と代理店との民民の契約に基づくものでございまして、その在り方につきましては、当事者間でよく話し合い、解決すべき事項であるとは考えておりますが、金融庁といたしましては、損害保険会社に対しまして、手数料ポイント制度の設計や適用の在り方が一方的な対応とならないよう、代理店の意見をしっかりとお聞きするなど、丁寧な対応に努めるよう促してきたところでございます。

 顧客本位の業務運営を更に推進する観点から、金融庁といたしましては、引き続き、損害保険会社と代理店の双方からよくお話を伺い、両者の円滑な連携を促してまいりたいというふうに考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 民民の契約ということですが、それは例えば、金融商品の取引も、これも民民でございますし、民民の取引を規制しているというのはたくさんあるわけでして、問題は、規制をする必要性があるかどうかというところでございます。

 ただ、もちろん、一足飛びにというよりは、やはり自主的に変えていただけるのであればそれにこしたことはないというのは、まさしくそのとおりだと思いますので、やはり幾ら立派な法律を作っても現場がしっかりしていなければこれは絵に描いた餅になるということで、是非その点は問題意識を持っていただきたいと思います。

 次に、今回の改正案において、金融経済教育、これについて、金融経済教育推進機構を設置するというふうになっております。国として、これをつくった上で、どうやって業務執行及び監督体制を整えていくのか、この点について伺わせていただきます。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 広く国民が適切な金融経済教育の機会を得られるよう、効果的な金融経済教育を戦略的に実施していくため、金融経済教育推進機構の設立を含め、必要な体制をしっかりと確保していくことが重要だというふうに考えてございます。

 このため、国といたしましては、金融経済教育推進機構に対する監督や、あるいは地方を含む国全体で金融経済教育を推進するための支援を行うために必要な監督体制、支援体制の整備をしっかりと図ってまいりたいと考えてございます。

藤原委員 ありがとうございます。是非とも、これをしっかりつくるということであれば、国民の皆さんにしっかり金融経済というものについて理解をしていただけるような中身にしていただくように国としても取組をお願いをしたいというふうに思っております。

 今回の法案の改正は、まさしく、今後この金融商品の分野をどういうふうに更に顧客の最善の利益を考えてやっていただくかということなんですが、その一方で、過去のお話ということもあるわけであります。

 最後に一問お聞きをしたいのは、いわゆるスルガ銀行のアパマン向け融資の問題でございます。

 この問題は何度かこちらの委員会でも取り上げられておりますけれども、現在、民事調停などの中において協議が行われているというふうに承知をしております。

 この問題については、これもやはり民民の取引、そして民民で今裁判、裁判ではないんですが、調停等でお互いに弁護士が入って話合いをしているという段階になっています。こうなってくるとなかなか、あとはお互いに話し合って解決策をということではあるんですが、この問題については、双方が知恵を出し合って、できるだけ早期にこれは問題の解決を図っていく必要があるというふうに考えるんですが、その点についての御見解をお聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 スルガ銀行のいわゆるアパマン向け融資問題に関しましては、民事調停等の中で銀行側の不法行為責任が認められる可能性が高いと考えられる事案を抽出して早期に和解を図る案や、司法手続の外で保有物件を任意売却して残債を弁済する案などについて協議、交渉が行われているものと承知をしております。

 個別具体的な解決方法につきましては、当事者間の協議、交渉に委ねられるべきものと考えておりますけれども、委員御指摘のように、多くの債務者にとって、可能な限り早期に問題解決が図られることが重要であるというふうに私どもとしても考えておりまして、引き続き同行に対しまして適切な対応を求めていきたいというふうに考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 今、参考人から御答弁があったとおり、民民の問題だということ、まさしくそのとおりだと思っております。

 しかしながら、私もいろいろお話を聞きますと、これはかなり件数も多いですし、個別事案が本当にばらばらになっておりまして、私が聞いても、一応ちょっと法律を勉強していたこともあったものであれですが、これはなかなか厳しいな、それは全部丸めて解決するには。

 裁判はやらない、それは一つ選択肢としてあるんだろう。裁判をやってしまうととんでもない時間がかかるということですね。

 じゃ、そういう中で、話合いの中でとなると、これはあくまで相互の互譲、お互いに話し合って譲り合って解決策を見つけていくということになります。そういうふうにして解決策が見つかるものもあると思うんですね、百件以上、何百件とありますので。

 ただ、やはり私が拝見した中で、なかなか、直ちに法的なところで、銀行としても、これは株主がいるわけですから、法的な責任がないものを認めてしまえば、それはそれで経営者として代表訴訟のリスクを負うという非常に難しい立場にあるなというのは感じるんですが、是非、その点については、金融庁としても、弁護団の方々あるいは銀行側、双方の言い分等あると思うのですが、しっかりお話を聞いて、互譲の体制を整えるように進めていただきたいということを一点お願いをしたいと思います。

 私の持ち時間はもうすぐ終わりでございます。今回のこの法案の改正をきっかけに、やはり、金商法の世界、非常にプロでも分かりづらい。やはり、これを、じゃ、本当に実効性があって、現場の方々、利用者の方が分かりやすいような制度にしていただきたいということ、そうしなければ意味がないということですので、是非その点をお願いをして、ちょうど紙が来ましたので、私の質問は終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

塚田委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 本日も質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思います。

 初めに、顧客への情報提供の充実についてお伺いします。

 本法律案では、金融事業者に、契約締結前の情報提供時に、顧客属性に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度により説明する義務が課されることとされていますが、これについては、課される義務の具体的な内容が分かりにくい部分があると思います。

 まず、顧客属性とは、法律案では、顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品取引契約を締結しようとする目的と定義されています。

 そこで疑問となるのは、日々変化する顧客の知識、経験等をどのようにして金融事業者が把握するのかです。また、顧客の知識、経験等が人によって異なるだけでなく、全く同じ説明を受けた場合であっても、人によって異なる受け取り方をすることも考えられます。本法律案が金融事業者に課す義務は説明する義務でありますが、一番大事なことは、顧客が理解することであると思います。

 そこで、顧客それぞれの知識、経験等に応じた分かりやすい説明を金融事業者が行っているのかについて、当局としてどのようにチェックしていき、金融事業者の説明の工夫による顧客の理解の深まりをどのように検証していくのか、政府の考え方をお伺いします。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 金融商品の販売に当たりましては、金融事業者によって顧客の資産状況、知識、経験、ニーズなどを適切に把握した上で、お客様の状況に応じて、分かりやすく丁寧な説明を行うことが重要でございます。

 このため、金融庁といたしましては、現在、金融事業者によりますリスク性金融商品の販売体制に関しましては、例えば、金融事業者がお客様に対してどのような資料を使って、どのような説明を行っているのか、あるいは、金融事業者の説明に対しましてお客様が理解できていないといった苦情が金融庁ですとか金融事業者に寄せられていないかといったようなことについて、実態把握を行っております。

 さらに、こうした実態把握等の結果を踏まえまして、金融事業者が創意工夫をしながら重要な情報を分かりやすくお客様に提供することなどについて、対話を通じて金融事業者の取組の向上を促しているところでございます。

 金融庁といたしましては、今般の法律改正も踏まえまして、現在の取組を更に充実させて、金融事業者において顧客の最善の利益の追求に資する販売管理体制が強化されるよう、引き続き、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。なかなか難しい部分であると思いますが、丁寧な御説明をお願いします。

 次に、この顧客への情報提供に関する罰則、行政処分等についてお伺いします。

 現行の金融商品取引法では、契約締結前などにおいて、顧客に対して情報提供をしない又は虚偽情報の提供をした場合には、六か月以下の懲役などの罰則が設けられています。このような場合には、当然、刑事罰の対象となると思いますが、このような場合にまで至らないような場合、例えば、契約締結前の説明が顧客の知識、経験等に応じたものとなっていなかったというような場合については、刑事罰の対象とならない可能性があります。

 先ほどの問いでも述べたように、その判断が難しいと思いますが、利用者被害の範囲や行為の悪質性、反復性などとともに、金融事業者の業務運営体制の適切性なども確認し、行政処分が決定されていくものと思われますが、利用者保護上問題のある顧客への情報提供、説明に関して、どのような不適切な業務運営体制が背景となって、どのような行為が行われていれば行政処分につながる可能性があるのか、政府の考え方をお伺いいたします。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の点になってしまいますが、なかなか個別の具体的な行為の形態を申し上げるのは難しゅうございますけれども、金融機関におきまして、この法令に違反する行為若しくはその疑いのあるような行為が行われた場合に、どのような観点から行政処分を検討するのかということでございますけれども、これは、問題となる行為の重大性、悪質性ということになりますが、具体的には、利用者被害の程度、それから行為の反復継続性、故意性、組織性といった点に加えまして、当該行為の背景となった経営管理体制、業務運営体制の適切性、さらには金融機関による自主的な改善対応の状況などを勘案した上で、公益又は投資者保護の観点から、行政処分の要否、その内容を判断することとしております。

 顧客への情報提供、説明体制に限って、行政処分に関する更に具体的な基準などをお示しすることは困難でございますけれども、仮に問題となる事案が認められた場合には、今申し上げましたような基本的な考え方を踏まえて対応してまいりたいというふうに考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 なかなか、本当に個別ごとに違うので難しいと思うんですけれども、悪質性、反復性などをしっかり見ていただきながら対応していただければと思います。

 次に、中学校の教員をしていた経験から、一点、要望も含めてお伺いしたいと思います。それは、金融経済教育のベースになる部分への動画教材の活用についてです。

 現在、金融経済教育を専門とした教育課程は存在しないため、全ての教員が直ちにプロフェッショナルな金融経済教育を行うことは、現実問題としては難しいと思われます。

 実は、今、学校現場では、一昔前になかった、例えば防災教育やがん教育など、様々学ばなければならない教育が増えています。その場合、今は少し違うかもしれませんが、私がやっていた頃は、例えば金融教育であれば、その教材となる資料を紙ベースでいただいて、それを忙しい業務の間に事前に学習して授業を行っていましたが、やはり、幾ら頑張っても、正直、素人が教える限界があり、また、教員間での授業の質のレベルもばらばらで、教師間での格差が出やすくなります。

 そこの部分、例えば授業のベースとなる部分を、金融経済に関わるプロの方々が監修してくださった動画教材などが活用でき、その上で、教員が目の前の子供たちの理解度に合わせた授業進行をしていけば、全国的に金融教育の質が上がり、かなりの部分までレベルがそろってくると思います。金融教育の授業の質が高いレベルでそろうことは、子供たちにとっては非常によいことでありますし、教員の教材研究の時間の削減等、教員の働き方改革の観点からも効果が大きいと思われます。

 金融経済教育のコンテンツ提供は現在も金融広報中央委員会などで行われていますが、本法律案によって、金融経済教育推進機構を設立し、今後、更に金融教育に力を入れて推進していこうということであると思います。

 そこで、学校教育における金融経済教育のこれからの方向性について、政府の認識をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 昨年四月から実施されました新しい高等学校の学習指導要領で、金融に関する内容の充実が図られるなど、学校教育における金融経済教育の重要性は高まっております。

 一方で、金融経済教育を授業で取り扱う際に、現場での負担に配慮すべきであるとの意見があるほか、多くの教職員が教える側の専門知識が不足していると感じているとの調査結果もございます。

 今後は、こうした意見や調査結果も受け止めつつ、官民の知見が集約する金融経済教育推進機構を中心に、学校や文部科学省と連携し、学校現場の負担にも配慮しながら、金融経済教育の円滑な実施を支援する取組を進めていくことが重要と考えております。

 具体的に申し上げますと、学校現場でそのまま活用できる教材、コンテンツの作成、充実のほか、金融経済教育の授業のための学校への教師派遣、ウェブサイト等を通じた学校教員向けの情報発信といった取組を通じて現場での負担をできるだけ軽減するよう努めながら、学校における金融経済教育が円滑に実施されますように取り組んでいきたいと考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございました。是非よろしくお願いいたします。

 次に、半期開示の見直しについてお伺いします。

 上場企業の四半期開示については、今般の改正で、法令上の四半期報告書が廃止され、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化されます。その上で、上場会社は、四半期報告書に代わって半期報告書の提出が義務づけられます。これにより、法令上の企業業績等の開示の頻度は現在の三か月ごとから六か月ごとに下げられることになります。

 そこで、コスト削減や開示の効率化につながる、意義のある措置であると認識しておりますが、他方で、投資家、特に海外の投資家から我が国の企業開示の後退として受け止められないようにすることが重要であると考えますが、政府の認識をお聞かせください。

井藤政府参考人 先生御指摘のとおり、今回の見直しの大きなポイントは、金融商品取引法上の四半期報告書を廃止いたしまして、取引所の規則によります四半期決算短信に一本化するということでございますが、一本化後の開示内容につきまして、例えばセグメント情報、キャッシュフローの情報など、これまでと同様に海外投資家を含む投資家にとって必要な情報が提供されるよう、今後、取引所において、投資家の意見も踏まえながら検討されることになります。

 あわせまして、取引所におきまして企業経営に重要な影響を及ぼす事項について速やかに開示を行うための適時開示につきましても、これまで以上に積極的な開示が行われるよう、その充実に向けた検討を行う予定でございます。

 金融庁といたしましても、取引所とよく連携し、一本化後の四半期決算短信によりまして投資家に必要な情報が提供され、我が国の企業開示の後退と受け止められないよう環境整備を進めていきたいというふうに考えてございます。

山崎(正)委員 最後に、四半期報告書のレビューの必要についてお伺いします。

 今般の見直しは、四半期報告書と四半期決算短信という一定の重複のある開示書類を一本化するものですが、その結果、開示の正確性や信頼性の確保のために四半期報告書に求められていた監査人によるレビューを要しないこととなりました。これは、四半期決算短信が有する速報性の高さや、投資家に幅広く活用、利用されている点を重視したのであろうと認識しております。

 先ほど述べたように、四半期決算短信にはレビューが義務づけられておらず、ディスクロージャーワーキング・グループの報告では、今後も一律には義務づけないとの考え方が示されています。投資家へのアンケート結果によると、レビューを重視する声と速報性を重視する声は半分半分といったところのようですが、四半期決算短信にレビューを義務づける必要はないのかという点について、政府の見解をお聞かせください。

 その上で、今後、四半期決算短信の正確性や信頼性の担保の観点から取引所に期待される役割と、取引所と金融庁との連携の在り方について、御認識をお聞かせください。

藤丸副大臣 一本化後の四半期決算短信については、速報性をより重視するということで、監査人によるレビューを一律には求めないということにしております。

 その上で、上場会社に対しては、四半期決算短信のレビューの有無について開示を行うことや、会計不正が起きた場合や企業の内部統制の不備が判明した場合に一定期間レビューを行う、そういう場合にはですね、取引所ルールで義務づけるよう今調整したいと考えております。

 取引所においては、これまでも開示内容における虚偽の有無などを審査し、不適正開示に適正な対応を行ってきております。一本化後も正確性や信頼性の担保のために適切な対応を図ってまいります。

 金融庁としては、こうした枠組みを通じて、取引所とよく連携し、正確性や信頼性のある情報が引き続き提供されるよう取り組んでいきたいと考えています。

山崎(正)委員 以上で質問を終わりたいと思います。大変にありがとうございました。

塚田委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 金商法改正案等について伺っていきます。

 さて、金融経済教育推進機構というものを新たに設立するということですけれども、これができることによって何のメリットがあるのかということで、金融庁に事前に資料を作っていただきました。これに沿って伺っていきます。

 一ページ目、御覧になってください。

 まず、一つ目の四角なんですけれども、これができることによって、「社会保障や税に関する制度に加え、家計管理や消費生活の基礎、金融トラブル防止等、広範な観点から偏りなく教育を提供することが可能。」というふうにあります。非常に幅が広い、そして深い話なわけですけれども、こうした教育を現場で行うのは一体誰なのかということをお尋ねしたいと思います。

鈴木国務大臣 金融経済教育推進機構は、その業務の一環といたしまして、学校や企業等を対象に出張授業やセミナーなどを幅広く実施する予定でございます。

 実際にこの教育を行う主体ということでありますが、その際、講師としては主に、機構が認定するアドバイザーを派遣することが想定されています。また、学校においては、学校現場の負担にも配慮しつつ、学校教員とも適切に連携していきたい、そのように考えているところでございます。

階委員 認定アドバイザーとか教員との連携ということでありましたけれども、このような、教育を施す主体の資質あるいは中立性、これはどのように担保するのでしょうか。また、そうした方々の報酬水準はどの程度で、その原資はどこから出てくるのかということもお尋ねします。

鈴木国務大臣 先ほどお答えいたしましたが、学校や企業への出張授業時において、機構から講師を派遣することが想定されているわけでありますが、その想定されている認定アドバイザーにつきましては、認定時の審査及びその後の機構による監督を通じて、適切な資質及び中立性が担保されるものと考えております。

 また、機構は関係団体からの資金の拠出をもって運営することを予定をしておりまして、その予算の中で基本的に機構が講師に対する報酬も支払うことを想定しておりますが、その報酬の水準につきましては、現在金融経済教育を実施している民間団体の例なども考慮しながら、機構において適切に設定されるものと考えております。

階委員 中立性を担保するのであれば、業界団体などからお金を非常に多くもらうということは難しいし、また、それを多くすればするほど中立性が疑わしくなる。他方で、国がその費用を負担するということになると、御案内のとおりの財政事情の中で、幅広く教育を施すことはできるんだろうかという懸念があるわけです。

 このペーパーの三つ目にありますとおり、教育が提供できている年代や地域等に偏りがあるというのが現在の金融経済教育の問題点として挙げられているわけですが、これが国が関与することによって改善されるというふうにも書いてはいますけれども、まず、現状について伺いたいんですが、今言った、年代や地域等に偏りがあるということですが、お配りしている資料の二ページ目。現在、金融広報中央委員会などが事務局となって、各年代に合わせた金融リテラシーを身につけてもらうための教育をしているわけですね。小学生、中学生、高校、大学、若年社会人、一般社会人、高齢者、事細かく、こういう教育をしましょうということがあるわけです。

 実際に、各年代ごとに実績として年間何人程度こうした教育を受講されているのか、あと、地域的な偏在状況ということも問題点として指摘されていますが、これはどういうふうになっているのかということを教えてください。

鈴木国務大臣 日本銀行が事務局を務めます金融広報中央委員会の中に設置されております金融経済教育推進会議の調査によりますと、二〇二〇年度に金融関係団体が実施した出張授業、セミナー等の受講者数の実績は、高校生以下で約十五万六千人、大学生で約九万七千人、社会人で約三十四万五千人でありました。

 同会議の調査では地域的な偏在の状況の正確な把握は困難とのことでありますが、地方におきましては、都道府県金融広報委員会等が地域の実情に応じて金融経済教育を推進していると承知をしているところでございます。

 いずれ、今後は、本法案により設立する金融経済教育推進機構を中心といたしまして、企業による社員への教育の充実や、地方自治体による金融経済教育の実施、広く国民に訴える広報戦略の展開、学校、企業向けの出張授業やシンポジウムの開催など、官民一体となった効率的、効果的な金融経済教育を幅広い年齢層に全国的に実施していきたい、そのように考えているところであります。

階委員 まず、現状どうなっているかというところが非常にあやふやなわけですね。

 地域的な偏りがあると言っておきながら、それがどういう実態なのか、明確なお答えはありませんでした。

 また、さっきの数字を伺っておりますと、高校生以下十五万、大学生が約十万、社会人が三十四万、合計六十万ぐらいだと思うんですね、年間に教育を受けているのが。これは、人口一億二千万人として、〇・五%にすぎないわけですよね。非常にこれは少ない数字であって、金融経済教育というのは、地域的にも年代的にも、全ての国民に提供されないと意味がないと私は思っています。

 そういう中で、今度新たな機構をつくってそこを改善するんだと言っていますけれども、具体的にどのような数値目標を掲げるのか。この法案ができる前に、金融審議会の顧客本位タスクフォースというところでも、機構をつくる際にKPIを定めるべきだ、数値目標を定めるべきだというふうに議論されていますよね。

 ですので、今言った数値目標について、明確にお答えいただけますか。

鈴木国務大臣 金融経済教育推進機構におきまして、広く国民の皆さんが金融経済教育の機会を得られるよう効果的に取り組んでいくためには、達成すべき目標やそれに向けた過程を明確にすることが必要である、そのように考えます。そうした観点から、機構において達成すべき目標やKPIが適切に設定されることが重要であると思います。

 現在、金融庁が金融経済教育の取組状況や効果の把握に努める際には、各関係団体による金融経済教育の活動実績、金融経済教育を受けた者の割合、金融知識水準に関する調査結果などを活用いたしております。機構におきましても、効果的な金融経済教育を実現していくためには、年代や地域の偏在にも考慮した新しい視点を含めて、適切な目標やKPIの設定について、深度ある検討をする必要があると思います。

 金融庁としても、機構と必要な対話を行いまして、適切な目標それからKPIの設定、それができるように、今現在はできておりませんが、それが設定されるように促してまいりたいと思っております。

階委員 大臣、今、目標ができていませんとさらっと言われましたけれども、それじゃ困るわけですよ。EBPMと皆さん言っていますよね、エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングだと。現状、地域的、年代的な偏りがあると言いながら、その実態がどうなっているか、数字もろくに示せない。そして、この機構ができたらこれをどのように改善していくのか、目標も示せない。これでは余りにも、この法案、審議するには時期尚早と言わざるを得ないですよ。

 ちゃんと目標を出してから議論すべきじゃないでしょうか。お答えいただけますか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、私どもといたしましても、適切な目標そしてKPIの設定、そうしたものの必要性というものは十分認識をいたしております。

 今現在できていないということにつきましては御批判をいただいているところでありますけれども、金融庁として、できます機構と必要な連携、対話をしながら、適切な目標、KPIが設定されるように、しっかりと金融庁としても取り組んでまいりたいと思います。

階委員 ちょっと、この段階で法案の審議は時期尚早だというふうに言わざるを得ません。

 そして、資料の三ページ目をちょっと御覧になっていただきたいんですが、これは、政府の資産所得倍増分科会、多分、大臣もお出になられたと思うんですが、その中で、大学生の方が参加されて、お手元資料でこれを配られたということなんですが、若年層、大学生のような若年層について何が課題かということなんですが、元手と知識が課題だというのがこの表の右上の方にありますね。元手と知識、知識は金融経済教育でこれから備えていけるとは思うんですが、元手がない問題、ここをどうやって解決するか。

 これは下の方に、親世代から資産の移転を進めるとあるんですが、親がお金がない人はどうするんですかね。こういったことについては、元手がない問題を解決せずに資産形成のための教育をしても意義が乏しいんじゃないかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 これから資産から投資へということでございますが、そのためにNISAの拡充等もしたところでございますが、特に若年層の方々について、今御指摘のとおり、投資するにも元手がないんだ、そういうような御指摘は、NISAの議論のときにもいただいたところでございます。

 金融資産が少ない若年層でありましても、生涯にわたって豊かな人生を送るためには、老後や人生の様々なステージで必要となる資金を確保するため、少額ずつでもこつこつと資産形成に取り組んでいくこと、これは重要なことであると考えております。

 金融経済教育は、そのための金融や経済に関する知識を養い、金融リテラシーを高めるものでありまして、若年層も含め、こうした基礎的な知識を学んでおくことは有益である、そのように考えております。

 また、若年層をめぐりましては、投資詐欺等の被害事案も引き続き散見されるほか、近時はSNSを通じた投資勧誘のトラブルも発生しております。

 このため、若年層に対しまして、資産形成に関する基礎的な知識を得るための教育、それにとどまらず、金融トラブルに遭わないための知識の普及も重要と考えておりまして、こうした面で、金融経済教育の意義、これは大きいものがある、そのように考えております。

階委員 今後段でおっしゃった金融経済教育は今までもやっていたわけですね。金融広報中央委員会の下でやっていたわけですよ。

 今回は新たに資産形成のための教育もするわけですけれども、この資産形成のための教育を元手がない人に授けて、生半可な知識を基に借金などをして投資などをして、それで損失を被ったら、目も当てられないですよ。

 だから、この投資教育、今までやってきた金融経済教育の意義は否定しませんけれども、投資教育をするのであれば、きちんと元手もある状況でやるのが私は正しい方向だと思います。

 そこで、どうしたら元手を若い人に授けられるのかということで、ちょっと私が考えていることをこれから日銀総裁と議論させていただきたいと思います。

 四月二十四日の私の質疑で、日銀が購入したETFをどのように処分していくかは大きな課題として認識しているというふうに植田総裁はおっしゃられました。先日、参議院の決算委員会では、このETFの処分価格は時価によることになるといった答弁もされていました。

 私が調べる限り、日銀保有ETFを市場外で簿価で政府に売却することは法令上は許されると思っておりますけれども、この点、総裁の見解をお願いします。

植田参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、ETFの買入れは続けてございますが、買入れを始めた際には、日本銀行法第四十三条第一項の規定に基づき、主務大臣の認可を受けて行い始めてございます。その際に定めた実施要綱で、買い入れたETFの処分を行う際は、ETFの市場等の情勢を勘案し、適正な対価によるものというふうに定めております。

 現時点で処分の具体的な方法に言及するのはまだ時期が早いと思いますけれども、いずれにせよ、処分価格については時価をベースにすることになるというふうに考えてございます。

階委員 確認ですけれども、それは総裁の見解であって、法令上の縛りはないですね。法令上は簿価で売却することも許容されているということでいいでしょうか。確認させてください。

植田参考人 先ほど申し上げましたのは、過去に定めました実施要綱に基づいて……(階委員「結論だけでいいです、結論だけで」と呼ぶ)日本銀行の現在の判断では、時価をベースとするものというふうに考えております。(階委員「判断じゃなくて、法令上と聞いているんです。許容されているかどうか。止めてください」と呼ぶ)

塚田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

塚田委員長 速記を起こしてください。

 植田総裁。

植田参考人 法令については、国会でお決めになることですので、日本銀行として具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。(階委員「現在の法令上と言っているんですよ、現在の法令上です」と呼ぶ)現在の法令上は特に規定がないというふうに承知しております。

階委員 つまり、現在の法令上は、時価で売らなくちゃいけないということはなくて、簿価でもいいわけですよ。

 という前提で伺います。もしそれが違うというのであれば、この後反論してくださいね。

 それで、四月二十四日の質疑では、日銀総裁は、金融政策を正常化していった場合に、日銀の財務に影響が及ぶのかというシミュレーションをしているということもおっしゃられていました。

 日銀保有ETFを処分して、今一兆円を上回る配当金を得ておりますけれども、こうした配当金が処分の結果得られなくなったとしても、日銀の財務は、金利上昇によって逆ざやが生じた場合の損失に耐えられるのかどうか。

 シミュレーションをしているということですので、今の点についてもお答え願えますか。

植田参考人 出口の際の日本銀行財務の姿でございますが、これは、その際の経済、物価情勢、あるいは金利環境、更に加えまして、日本銀行が出口でどのような手段をどのような順序で用いるかということによりまして様々でございます。

 いずれにせよ、日本銀行の財務の悪化が着目されて、金融政策の議論をめぐる無用の混乱が生じて、それが信認の低下につながるリスクを避けるために、財務の健全性にも留意しつつ、適切な政策運営に努めていきたいというふうに考えてございます。

階委員 いや、私がなぜこんなことを聞いているかというと、先日、日経新聞にも出ていましたけれども、今、日銀は、ETFだけではなくて、国債も大量に抱えているわけですね。

 今後、金融政策を正常化していくと、負債である当座預金の調達金利が上がってくる。資産である国債は今超低金利のものしか持っていない。当分の間は負債と資産の関係が逆ざやになってしまって損失が出てしまう。このときの損失に耐えるためには、ETFは持っておいて、そして、そこから上がってくる分配金でもって損失が生じた場合の埋め合わせに使わなくちゃいけないので、したがってETFは持ち続けなくてはならない。そんな見解が日銀のOBからも上がっているようなんですが、その関係で、日銀総裁は先日、私の質問では、ちゃんとシミュレーションを行っているともおっしゃっていましたし、また、つい先回のこの委員会での私の質問で、この引当金、損失引当金で逆ざやに耐えられるのかということについても、現時点では問題ないというふうに答えていたので、私は、そうであれば保有ETFは処分できるのではないか、持ち続ける必要がないのではないかということを言っているわけです。

 日銀の財務の関係で持ち続ける必要があるのか、それとも、日銀の財務を勘案しても持っている必要はないのか、この点、結論だけお答えください。

植田参考人 先ほど申し上げましたように、シミュレーションはいろいろなケースについて実行したり、これからもしてまいりますので、結論は振れますが、おっしゃいますように、株の、ETFの配当金がない場合は、その分収益は下がりますので、全体の姿はやや厳しめになります。

階委員 そうすると、ETFは持ち続けなくてはならないということになるんでしょうか。

 私がこの後お聞きしたかったのは、前回、損失引当金は十分積んでいるということでしたので、だとすれば、前回も申し上げましたけれども、少子化対策の財源として、ETFを政府が簿価で買い取って、その買い取ったETFの分配金を少子化対策の財源にする、あるいは、買い取ったETF、すぐには売却しないで、今生まれたお子さんたちが十八歳に達したときに、先ほど来議論になっている金融教育を受ける機会を設けつつですけれども、その教育を与えた上で、百万円相当のETFを現物で給付する。これをやると、若者の金融資産形成の支援にもなれば、また、少子化対策や、若者が経済的に力を持って結婚に踏み切る原動力にもなるのではないかと思っています。

 一兆円ぐらい一年間にETFの保有額が減少していく感じになるわけですけれども、現在、ETF、手をつけないまま、五十兆円ぐらい宝の持ち腐れになっているので、一兆円ずつ売却していっても五十年間はもつような計算になります。

 こういうことを一考する余地はあるのではないかというふうに考えますけれども、こちらは財務金融大臣にまずお尋ねしたいと思いますし、そして、いま一度ですけれども、日銀総裁にも、ETFを処分する必要がある、処分することは大問題であるということを言っていたわけですから、こういうことがもし政府から提案があれば協力する余地はあるといったことなのかどうか、このことについて、それぞれお尋ねします。

鈴木国務大臣 まず、日銀が保有するETF、これは日銀が物価安定目標を実現するための金融政策の一環として保有しているものと認識をいたします。

 したがいまして、ETFの売却を含めまして、その取扱いにつきましては、金融政策の一環として日銀において検討されるべき事項であって、日銀の独立性を尊重する観点から、政府としてコメントすることは控えるべきであると考えますが、あえて申し上げますと、例えば、これまでの日銀は、保有するETFの処分の方針を定める際には、市場等の状況を勘案し、適正な対価によることとする等を説明していると承知をいたしております。政府が財源確保目的でこれらを日銀の簿価で買い取るといったことが許容されるのかどうかといった点を含めまして、考えていかなければならないんだと思います。

 そしてまた、そのETFを、簿価で買ったものを、特に若年層の方々のいわば投資の原資にするようにしたらよいのではないかという御提案であった、そういうふうに思います。

 一般論、これも一般論でありますけれども、ETFをそうした若年層の方々に現物給付をするということに当たりましては、給付されたETFが売却されることによる株式市場への影響、証券口座非保有者への給付方法をどうするのか、少し、余りにも細かいことかもしれませんが、ほかにも様々論点があるのではないか、そういうふうに考えております。

植田参考人 ETFの処分等につきまして、具体的な戦略を論じるにはまだ早いというふうに、繰り返しでございますが、考えてございます。

 物価安定目標の実現が近づいてきましたら、その具体論について、金融政策決定会合で議論し、適切に情報発信していきたいというふうに考えております。

階委員 もう十年間ETFを持ち続け、そして膨らみ続け、莫大な金額が宝の持ち腐れになっているわけです。含み益をどういうふうに有効活用していくのか、分配金をどのように活用していくのか、もう考えるべき時期に来ているということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党・無所属の道下大樹です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速、金融商品取引法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 ちょっと順番を入れ替えて、三番目なんですけれども、今回の法改正の目的について伺います。

 岸田総理は、当初、新しい資本主義の中で、所得倍増と掲げながら、それをいつの間にか資産所得倍増にすり替えました。そして、今回の金融商品取引法等の一部を改正する法律案が出てきたという流れだと私は思います。ということを考えれば、今回の法改正の主目的は、国民のこれまでの貯蓄というマインドを投資へのマインドにシフトしていくということを加速させていくということが目的であるということでよろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 新しい資本主義の下で成長と分配の好循環を実現していくためには、まず、可処分所得を引き上げ、それが消費に回ることで次の成長を引き寄せ、そして次の分配につなげていく必要があると考えております。

 可処分所得を引き上げるためには、賃上げを通じた勤労所得の増加に加えまして、金融資産所得も増やしていくこと、これが重要だと思います。

 もちろん、将来への備えとして貯蓄というもの、これは大切だと思いますが、国民一人一人が生涯にわたって豊かな人生を送るために資産形成を行っていく上で、投資は有効な選択肢になるものと考えております。

 こうした視点から、本法案に盛り込まれた施策などを通じまして家計の安定的な資産形成を支援していきたい、そのように思っているところでございます。

道下委員 可処分所得向上と言っていますけれども、賃金は上がっても、それ以上に物価が上がっていますよね。

 そして、先ほど階議員からもお話がありました、若手の資産、投資に回すお金がないと。それは厚生労働省のデータでも分かっていると思いますし、さらには、卒業後、四割が非正規雇用だ、そして、なおかつ、大学に行っていても、返す必要のある奨学金を抱えて、卒業と同時に借金を背負っているという若者に対して、どのように私はこれを、貯蓄から投資へというふうに考え方をその人たちに向けても教育するのかというのを、非常にこれは、私はやるのは全くちょっと本末転倒ではないかなというふうに思います。

 今回、法案を出してきたことを議論している中で思い出すのが、いわゆる老後二千万円問題の報告書です。その中には、金融リテラシーの向上や金融広報中央委員会と日証協や全銀協との連携強化ということは指摘されていましたが、委員会などを認可法人に集約、整理することまでは記載されていませんでした。この間のいろいろなワーキンググループとかでの審議でそうした議論も、意見も出てきました。

 この老後二千万円問題についてですけれども、この報告書、選挙前であったため、当時の麻生太郎金融担当大臣が受取を拒否しましたね。

 金融庁が令和元年六月三日に公表したこの、いわゆる報告書、金融審議会市場ワーキング・グループ報告書、「高齢社会における資産形成・管理」について、金融庁として公文書として取り扱って、金融庁ホームページに今でも掲載しているということでよろしいでしょうか、端的にお答えください。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の市場ワーキング・グループ報告書、「高齢社会における資産形成・管理」については、金融庁のウェブサイトにおいて現在も公表してございます。

 また、当該報告書は公文書管理法に言います公文書等に該当いたします。

道下委員 この報告書の内容について、今の年金があっても、公的年金があっても、やはり老後、その世帯の状況だとか生活スタイルでいろいろありますけれども、老後二千万円は必要だというような認識を鈴木金融担当大臣もお持ちなのか、伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 御指摘のございました老後二千万円問題、これは、二〇一九年に金融審議会のワーキンググループが取りまとめた報告書におきまして、高齢世帯の収入、支出の平均値を用いた計算が、当時、あたかも公的年金だけでは生活費として老後三十年で二千万円不足をするといった国民の皆さんの誤解を招いてしまったことを受けまして、金融庁として、この報告書を、当時、正式な報告書として受け取らなかったこととしたものであると承知をいたしております。

 公的年金は、老後の生活を支える柱として、将来にわたり持続可能な制度を確保していると認識しており、報告書の表現に適切でない部分があったとの考えに変わりはありませんが、この報告書では、また、個々人がライフプランに応じた資産形成の検討を行うことの大切さ、それに対応した適切な金融サービスが提供されることの重要性、また、行政機関等において適切に環境整備を行っていく必要性を指摘をしておりまして、こうした点は一定の意義があったのではないか、そのように思っております。

道下委員 今答弁で、あたかも誤解を与えるような内容ということだったんですけれども、本当に優秀な有識者の方々がこのワーキンググループのメンバーとしてなられて、議論を重ねて、そしてまとめられた最終報告書ですよね。それを、あたかも誤解を招くようなものだった。金融庁の皆様も、中身を見ていて、これで出そうというふうにしたわけで、それを、麻生当時の金融担当大臣が受け取らなかったことを後ろで支えるために、あたかも誤解を与える内容だったと言うこと、私は、これは言い過ぎというか、それまた誤解を与えるというか、本来政府としてやるべきことを私は十分に果たしていないというふうに思います。

 何しろ、やはり公的年金だけでは足りないから、皆さんに貯蓄ではなくて投資をしてくださいというような、金融リテラシーの向上を含めて、多くのお金を持っている人を投資家に振り向けようとしているわけじゃないですか。そういうふうに考えれば、誤解を与えるような内容じゃなくて、私は、当時の報告書は的確な内容だというふうに思っております。

 そして、最近では、日経平均株価は、バブル崩壊以降、約三十三年ぶりの高値を更新しておりますけれども、この約十年間は、異次元の金融緩和政策で、マイナス金利政策で、貯蓄による資産形成ができなくなっていました。本当に、〇・〇〇何%という利子がついて、ATMの手数料の方がどおんと取られるというような内容で。最近になって、金融、投資による資産形成、投資促進というふうにかじを切ったのは、私は、政府の役割としてちょっといかがなものかというふうに思います。

 これまでのマイナス金利政策による貯蓄に対する負の影響について、鈴木大臣、どのようにお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 マイナス金利を含む金融政策、これは、物価安定目標の持続的、安定的な実現のために、日銀、日本銀行の判断により行われているものでありますけれども、マイナス金利の影響につきましては、低金利環境の長期化が、利子所得の下押しなどを通じて、家計部門に影響を及ぼしていると認識をされております。

 その一方で、金利水準の低下が、経済活動を刺激し、雇用・所得環境の改善、資産価値の上昇などを通じて、家計部門にプラスの影響を及ぼしているとの指摘もあるということも承知をしているところであります。

 貯蓄による資産形成と金融政策の関係について、一概に申し上げることは困難である、そういうふうに思います。

 いずれにいたしましても、個々人の暮らし方が多様化する中で、それぞれのライフプランに沿った資産形成に安心して取り組むことができる環境を整備していくことも政府の重要な役割である、そのように認識をいたします。

 我が国の二千兆円を超える家計金融資産の半分以上は現預金で保有されており、中間層でも気楽に投資できる環境が整備されているとされる米国や英国と比較して、家計金融資産の伸びが低い水準にとどまっていることも踏まえまして、引き続き貯蓄から投資へをしっかりと推進していきたい、そのように考えているところであります。

道下委員 今、国民が二千兆円の資産を、資金を持っているというふうに言っていますけれども、これは、平均値とかで出すとみんな持っていそうですけれども、中央値だとか、実際に若い人とか、年齢別に見ると、本当に若い人や、又は貯蓄を持っていない、預貯金ゼロという人もいるわけですね。そうした方々にしっかりと目を向けなきゃいけないですし、そうした方々が老後を迎えたときに、やはり安心できる老後を過ごせるような公的年金制度でなければ駄目だというふうに思うんですよ。

 今の自民党政権は、百年安心年金制度とずっとおっしゃっていますけれども、全然安心できる年金制度ではないじゃないですか。その責任を果たさずに、国民には老後は自己責任だと言わんばかりに、貯蓄から投資へというふうに、投資による資産形成を推奨するのは、政府が国民不安を更に広げるものだというふうに私は思っております。これは意見にとどめたいと思います。

 今回の法案の中身について伺いたいと思いますが、これまで、政府並びに日本銀行、その中の金融広報中央委員会の役割は、金融において、消費者保護を目的とした金融リテラシー向上のための広報、教育だったはずだと思います。それを、委員会を廃止して認可法人に移行して、そして、ほかの、全銀協や日証協だとか、そういったところと一緒にすることによって、消費者教育の基本理念が変えられるのではないか、投資促進のための教育、広報という傾向がなお一層強まるのではないか、そのように思うんですが、いかがでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者教育につきましては、消費者教育を総合的かつ一体的に推進し、国民の消費生活の安定及び向上に寄与することを目的に、平成二十四年に、議員立法によりまして、消費者教育の推進に関する法律が成立したものと承知してございます。

 政府といたしましては、この法律に基づきまして、消費者教育の推進に関する基本的な方針を閣議決定し、その中で、金融リテラシー向上を通じて、国民一人一人が経済的に自立し、よりよい暮らしを送ることが可能となるとの考え方を示し、金融広報中央委員会等の関係機関とも協力しつつ、金融経済教育と連携した消費者教育に取り組んでまいりました。

 今後、金融経済教育推進機構が金融経済教育を推進していくに当たりましても、こうした消費者教育の視点を重視する点につきまして、基本的な考え方に変わりはございません。

 具体的には、今後は、資産形成に関する教育にも力を入れていく一方で、家計管理や生活設計、詐欺的な投資勧誘等の金融トラブルに遭わないための教育等にもバランスよく取り組んでいくことが重要だというふうに考えてございます。

 こうした教育を適切に行っていくためにも、引き続き、消費者庁を始めとする関係機関とも緊密に連携していきたいというふうに考えてございます。

道下委員 金融広報中央委員会や消費者庁が連携をして、ちゃんと消費者保護に向けた金融リテラシー向上のための教育をやる、広報をやるということは、私はこれからも続ければいいと思います。委員会を廃止する必要はありません。なぜ全銀協や日証協などと一緒にする認可法人をつくらなきゃいけないのか。私は、それぞれ役割分担があると思うんですよ。それを一緒にやっちゃうと、ごっちゃになると思います。後で、広報とあと顧客だとか、そういったことについてお話をさせていただきたいと思います。

 今設立を目指している金融経済教育推進機構なんですけれども、事務局体制の人数や職員の派遣、出向元についてどのように想定しているのか、伺いたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融経済推進機構におきましては、金融庁にて所管することと法律上いたしてございます。

 また、今般、金融経済教育推進機構の設立に当たりましては、先生御指摘されていますとおり、日銀の金融広報中央委員会の機能を移管、承継するほか、全国銀行協会や日本証券業協会等の民間団体の活動内容を可能な限り集約することを想定してございます。

 これらの組織、団体におきましては、現在、数名から数十名規模で金融経済教育事業を行っているという状況でございます。

 今後、機構を設立するに当たりまして、具体的な職員の数や派遣、出向元の体制については、法案を審議いただき、成立、施行後に、発起人あるいは新経営陣の下で、関係団体とも協議しながら検討される事項でございますので、現時点で申し上げることは困難であるというふうに考えてございます。

 ただ、いずれにいたしましても、重複なく効率的な金融経済教育を戦略的に実施するために、金融や経済に関する豊富な見識や経験を有し、かつ、これまで金融経済教育に積極的に取り組んでこられた団体から出向いただくことなども含めまして、十分な体制を構築することが必要であるというふうに考えてございます。

道下委員 一つ伺いたいと思いますけれども、日本銀行の職員の方が出向なり、若しくは完全に退職してこの認可法人に移られるということもあり得ますか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 いずれにいたしましても、今、日本銀行におきましては、三十五人の体制におきまして金融広報中央委員会の事務局を運営されているわけでございますが、組織を、その機能を移管、承継ということでございます。

 具体的なやり方については、今後、法案成立後、日本銀行とよく相談したいというふうに考えてございますけれども、基本的には、そこで活躍されている方も、出向等の形も含めまして、新しい機構において従事していただくことは十分にあるというふうに考えてございます。

道下委員 条文案を見ますと、この機構というものは、民間の発起人が発意して政府に申請をする。発起人が誰になるのかとか、理事長が誰になるのか、まだ、これはまあ、発起人から理事長が選ばれるとか選ばれない、これは全く関係ない。

 理事長は内閣総理大臣が任命することになっています。そして、国の認可を受けて、理事長が理事や運営委員を決めるということになっています。そして、そこから職員も決まるということで、理事長が、民間人の発起人が、推薦というか、挙げた理事長、それを内閣総理大臣が任命して、その理事長がいろいろと決めるということになっていますよね。

 それで、もう一つは、今はちょっと人事のことなんですけれども、予算に関しては、先ほど答弁ありました、資金の確保、これも条文案で、百三十四条、民間からも出してもらうけれども、国からも出してもらうというようなことで、国も出すというふうに先ほど答弁されましたよね、大臣が。

 そうなると、この金融経済教育推進機構というものは、この機構の人事は国会は関与しないんですけれども、国が人事と予算の関与をしているんですよ。内閣総理大臣が理事長を任命するし、あとは、国からも機構に対する予算が出るということを考えると、やはり、最近いろいろ出てきます、関係省庁や日本銀行からの天下り先となる可能性があると想定されるんですけれども、鈴木金融担当大臣、その天下り先になるという可能性は完全に否定できますか。

鈴木国務大臣 金融経済教育推進機構でございますが、その機能を適切に発揮するためには、金融や経済などに関する知識、また経験がある人材、これを適材適所で配置する必要がある、そのように考えております。

 もとより、まだ人事については全くの未定であるわけでありますけれども、本法案では、先ほど道下先生がお述べになりましたとおり、機構の役員人事に関して、理事長及び監事は内閣総理大臣が任命し、その他の理事につきましても理事長が内閣総理大臣の認可を受けて任命をするということにいたしております。

 こうした総理大臣が関わる任命手続の中で、いわゆる天下りとの批判を受けることがないように、適切に対応していきたいと考えております。

道下委員 今、本当に天下り問題がいろいろとニュースになっています。是非ここで、金融担当大臣として、この金融経済教育推進機構、ここには、理事長とか理事には、金融庁だとか、財務省だとか、国の省庁だとか、日本銀行から、幾ら知識とか経験があるといったって、そこの役職に就いていた人を理事長とか理事にしない、天下り先にしないということを、しっかりと是非ここで言っていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、人事については全く今の段階では白紙であるわけでありますけれども、天下り先になるということは、これは世論も許さないことである、そういうふうに思っております。

 内閣総理大臣が理事長を任命するということもございます。そうした内閣総理大臣が関わりを持つという中で、先生の御懸念についても、しっかり、そういうことがないようにやっていきたい、やっていかなければならないと考えております。

道下委員 今、やっていきたいというお話はありましたけれども、完全に天下り先にすることはしないということは断言されませんでした。非常に残念でございます。

 本当に、今までの金融広報中央委員会の予算額だとか、あとは全銀協や日証協の、それを一緒にして大きくなって、そして、先ほどもお話がありました、外部に業務を委託する、そしてアドバイザーを認定して中立的な立場で様々教育に取り組んでもらうということになると、これは今まで以上に大きな組織になると私は思います、機構が。そうしたときに必ず、予算と人事、これで、大きな組織になると、天下り先ということで、そうした一つの組織になるわけでありますので、私は、この辺は十分に注視をするというか、天下り先にしないというふうに断言していただきたかったというふうに思います。

 もう一つ、委託先業者についてなんですけれども、この金融経済教育推進機構は、教材、コンテンツの作成、講座の展開、個別相談、環境整備等を外部業者に委託するとしておりますけれども、その委託先業者の中立性についてどのように担保する予定なのか、伺いたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 機構の業務の委託に関しましては、法案では、機構は、内閣総理大臣の認可を受けまして、業務の一部を委託することができるというふうにしてございます。

 いかなる業務を委託するかは機構において検討されるものでございますが、先生御指摘の委託業者の中立性というのは極めて重要なポイントであるというふうに考えてございます。

 この認可手続及び適切な業務運営を確保するための監督上の権限を通じまして、しっかりと担保してまいれればというふうに考えてございます。

道下委員 後で伺います認定アドバイザーの業務範囲については、これは、金融機関から報酬を得たりしていないというのがこの条件になっていますね。

 今ちょっと伺った委託先業者の中立性ということを考えたときに、そういう教材、コンテンツを作成したりする業者は、そういう金融機関だとかとの取引、これはないということでの中立性を担保するのか、それとも、金融機関との取引は、これは認めるというふうにされるのか、どのようにお考えなんでしょうか。

井藤政府参考人 その点は、まさに委託する業務の内容に応じて、機構において検討すべきことだというふうに考えてございます。

 例えば、委託の典型的な例として、パンフレットを印刷するというような業務があったとして、その印刷をしている、金融機関から別途印刷を委託されているからといって、その業者を使ってはいけないということに必ずしもなるのかというようなこともございますし、あくまでも、業務の性質等に応じて具体的に考えていくべき話だというふうに考えてございます。

道下委員 認定アドバイザー以外の委託先業者については個々に考える、判断するということですね。ちょっとこの点についても、中立性が確保できるのか、非常に不安な点があります。

 もう一つ、認定アドバイザーについてでありますが、個別相談に対応する認定アドバイザーは、相談者が求めた場合、ここの証券会社がいいですよとか、ここの証券会社のこの商品がいいですよとか、そういったことは紹介をできるんでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 新たに設立いたしますこの機構というものでございますが、ここにおきましては、各種セミナーでありますとか講師派遣事業を行うことに加えまして、個人に対する個別相談事業を行うことも予定しておりまして、その際、中立性でありますとか公正性を確保することが極めて重要だというふうに考えてございます。

 そのため、機構におきます個別相談事業においては、ライフプランの作成でありますとか、資産形成に資する税制優遇制度や年金の仕組みについてなど、一般的な質問に応じることを想定しており、個別の証券会社や金融商品の紹介を行うことは予定してございません。

 なお、こうした機構の中立性や公正性については、本法案では、国の監督上の権限を通じた関与により適切に担保してまいりたいというふうに考えてございます。

道下委員 このように、認定アドバイザーについて結構厳しく認定要件が示されている、どうしても中立性が求められるということなんですけれども、認定要件として、アドバイザーは、報酬を顧客からのみ得ていることが挙げられている。

 つまり、よく、こういうアドバイザーは、ファイナンシャルプランナーで、保険代理店だとか証券会社の保険外交員とかいろいろ、そういったことも兼職されている方も想定されるわけですね。

 証券会社など金融機関からの報酬が得られない、得られないというか、報酬をもらっていたらアドバイザーに認定されませんよということであれば、顧客からのみの報酬で生活せざるを得ないとなると、本当に、このアドバイザーになるかならないか、なれるかなれないか、この中立性の確保というものが大きな壁になるというふうに思うんです、先ほど階委員も質問されましたけれども。

 この点について、どのように認識されているんでしょうか。

井藤政府参考人 アドバイザーをめぐっては様々な論点が指摘されてございまして、特に、誰が本当に顧客の立場から見て信頼できるアドバイザーなのか分からない、あるいは、特定の金融事業者や金融商品・サービスに偏ったアドバイスが行われているケースがあるのではないかというような指摘がございます。

 このため、今後、新設する金融経済教育推進機構におきましては、顧客の立場に立つという観点から、一定の要件、販売業者等から報酬を得ないとか、こういったことも要件になろうかと思いますけれども、そうした要件を設定した上で、その要件を満たすアドバイザーをリスト化、公表していただくことを考えてございます。

 この点、中立性ということにつきましては、いずれの金融事業者の側に立つこともなく中立的であって、顧客の立場に立ってアドバイスを行うことを私どもは想定してございます。

 その上で、機構におきましては、金融リテラシーの向上を図るべく金融経済教育に注力していくこととしてございますが、個人が資産形成に取り組む場合であっても、そのニーズ等を踏まえまして適切なアドバイスが行えるよう支援していきたいというふうに考えてございます。

 なかなか、どこまで、販売業者等からの報酬を得ずビジネスモデルが成り立つのかというのは、論点としても挙げられているところではございますけれども、例えば、アドバイス費用だけではなく、企業が従業員に対する例えばセミナーを行う際には講師として派遣する、こういったようなことも考えられますし、私どもとしても、いろいろな面でそうした中立的なアドバイザーを支援してまいりたいというふうに考えてございます。

道下委員 今、ちょっと答弁を伺いますと、やはり、認定アドバイザーの中立性というのは、まだ本当に揺らぎますね。しっかりとした、本当に完全中立ということを求めると、それだけで経営できていくのかということを考えれば、認定アドバイザーに対する機構からの報酬を上げなきゃいけないですし、そうすると、予算が必要になってきますし、本当にこの辺は、目的、金融リテラシーの向上、個人相談に応じるということで投資促進を図ろうとしている中で、非常に重要なところですけれども、十分にこれが固まっていないということが今も答弁で分かりました。

 金融経済教育推進機構が認定したアドバイザーが個別相談に応じた相談者から、大損した、だまされたと苦情が出た場合の窓口はどこになるんでしょうか。また、裁判を起こされた場合、どこがというか、誰が被告人として対応することになるんでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な金融サービスの推奨等に関するトラブルに関しましては、銀行、保険、証券などの業態ごとに、全国銀行協会、生命保険協会や損害保険協会、証券・金融商品あっせん相談センターといった組織に相談窓口が置かれてございます。

 また、金融経済教育推進機構において行う個別相談におきましては、ライフプランの作成や資産形成に資する税制優遇制度や年金の仕組みについてなど、一般的……(道下委員「どこがというのだけでいいですから。窓口とか」と呼ぶ)分かりました。特に、一般的な質問に応じることを想定してございますので、個別の金融トラブルに、それ自体に関する窓口を設けることは想定してございません。

道下委員 今、政府が設立を目指している金融経済教育推進機構が紹介した認定アドバイザーの個別相談を受けて、それでいろいろと話を聞いて、投資してみたら大損したといったときには、機構は関係ないということだと思います。それで相談した人が納得するのかどうかは分かりません。

 もう一つ。これまで、金融審議会の顧客本位タスクフォース等における会議において、顧客の立場に立ったアドバイザーなど、顧客の立場を重視する意見が多く出されていると承知しています。この顧客の立場とか顧客本位とかというのと中立性との違いをどのように定義しているんでしょうか。

 二〇二二年十二月六日の金融審議会市場制度ワーキング・グループの議事録を拝見させていただくと、顧客の立場を優先するとすれば、しっかりとリスクを説明した上で、やはり投資を促す方向性で金融経済教育推進機構や委託業者、認定アドバイザーは活動を展開することになるんじゃないでしょうか。顧客ですから、お客さんですから、お客さんに対して、これは駄目ですよと言って、投資をやめた方がいいですと言うわけはないと思うんですよ。

 そうすると、いろいろと教えて、そして投資をするように促すということになりますから、それが顧客の立場だと思うんだけれども、でも、中立、これはやめた方がいいですよと、本当に言うべきことは言わなきゃいけないんだけれども、これが余りにも偏っていく、顧客ですから。投資、これだったらできますよとか、これはちょっとリスクがありますけれどもこれは投資した方がいいですよとか。本当にそういう中立的、つまり、やらない方がいいということを言わなくなってしまうんじゃないかというふうに思うんですが。議事録でも、顧客本位と中立性ということの定義をはっきりとした方がいいんじゃないかと出ていたんですけれども、この辺についてどのようにお考えですか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもが申し上げております中立性とは、いずれの金融事業者の側にも立つこともなく中立的であるということでございまして、顧客というワーディングが即時に業者の反対概念として想起されるというようなこともあろうかと思いますけれども、いわゆる家計であり買手であります顧客の立場に立ってアドバイスを行うということを意味してございます。

 したがいまして、顧客の立場に立ったアドバイザーないしは顧客本位のアドバイスを行うアドバイザーということと、私どもの念頭にあります中立的なアドバイザーということに違いはないというふうに私どもは考えてございます。

道下委員 顧客となったら、資産を持っている人しか相手になりませんし、資産を持っている人に、投資しない方がいいですよなんて言わないと思いますので、これはちょっと、顧客の立場と中立性の定義というのははっきり分けた上で、私はそもそも、中立的な立場に立った金融広報中央委員会をそのまま継続して、そして、金融機関がもっと頑張っていろいろな投資促進に向けたことをやればいいと思います。

 では、最後に伺います。

 金融経済教育推進機構の中立性などを点検、評価する制度、あるいはそうした第三者機関が必要と考えますが、金融担当大臣、伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 金融経済教育推進機構が国民の金融リテラシー向上に向けて効果的に金融経済教育を推進していくためには、先生御指摘のとおり、中立性を確保していくこと、これが重要と考えます。

 このため、本法案では、機構の体制について、金融庁において、役員選任、予算、事業計画、業務方法書の認可のほか、適切な業務運営を確保するための監督上の権限等を通じてガバナンスを確保するとともに、また、機構において、金融、経済等に専門的な知見を有する第三者である外部有識者を中心とした運営委員会を設置し、機構の運営における重要な事項の意思決定を行うこととしております。

 金融経済教育推進機構が中立性を確保して実効的な金融経済教育を推進していくことができますように、金融庁としてもしっかり監督してまいります。

道下委員 まだまだ不十分な内容だと思います。

 時間が来ましたので、これで質問を終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲民主党の米山です。会派を代表して御質問いたします。

 金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律についてお伺いいたします。

 この一条で「国民の安定的な資産形成及び適切な資産管理を促進する」とされておりますので、この資産形成についてお伺いしたいんですが、今度は第二条第六項におきましては、「この法律において「資産形成」とは、金銭、有価証券その他の金融資産の運用により、資産を形成することをいう。」とされております。

 この条文を見ますと、運用とあるわけですので、これは先ほど来お話しになっているのでそうなんだろうと思いますけれども、単に貯金をするということではなくて、積極的に金融資産を殖やすことを予定している、そういうことでよろしいでしょうか。

井藤政府参考人 条文上の定義の問題に関してですけれども、お尋ねの資産形成につきましては、御指摘のような金融商品の選択等に限らず、預金による運用も含むものと考えてございます。

 いずれにしても、自らのニーズやライフプランに合った適切な金融商品・サービスを選択し、最適な金融資産のポートフォリオが実現できることで安定的な資産形成が可能になるというふうに考えてございます。

米山委員 まあ、官僚御答弁で、結構でございます。

 結局、先ほどの道下委員からの質問にもありましたけれども、こちら、岸田政権の目玉であるところの新しい資本主義の、いつの間にか変わってしまった資産所得倍増の一環ということでよろしいでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 新しい資本主義の下で成長と分配の好循環を実現していくためには、先ほど大臣からも御答弁させていただきましたが、まず可処分所得を引き上げ、それが消費に回ることで次の成長を引き寄せ、そして次の分配につなげていく必要があるというふうに考えてございます。

 金融庁におきましては、賃上げを通じた家計の勤労所得だけではなく、金融資産所得も増やしていく観点から、少額ずつでも長期的、継続的に安心して投資を行うための環境整備に取り組んでございます。

 今般の法律案は、こうした環境整備の一環として、金融経済教育推進機構の設立を含め、国民の安定的な資産形成を支援するための内容も含まれてございます。

米山委員 物すごく長いんですけれども、別に、一環ですと答えてくれればそれでいいんですよ。結局、一環ですという答えだと思うので。

 以前、私、この財務金融委員会でこの資産所得倍増についてお聞きしたんです。一体全体、倍増すると言うからには、現在の現在値、知っているんですよねと。聞いたら、いや、現在値は知りませんということで、いや、現在値を知らないのに何で倍増が分かるんですかと思ったんですが。せめて、資産というと、それはいろいろありますから分からないというのもあり得るのかもしれませんが、金融資産は、これは分かるはずなんですよ。だって、いろいろな、課税とかでも分かりますから。

 現在、国民一人当たりの金融資産の平均値、中央値、最頻値、及び、金融資産ゼロの人の割合というのを教えてください。また、併せて、この金融資産から得ている金融資産所得の平均値、中央値、最頻値を教えてください。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねいただいた事項のうち、金融資産の平均値、中央値については、令和四年の、家計の金融行動に関する世論調査という金融広報中央委員会が実施しているものがございます。世帯当たりの金融資産保有額の平均値は千二百九十一万円、中央値は四百万円となっております。それから、御質問の、金融商品あるいはこれらの運用又は将来の備えのために預貯金を保有していないと回答した世帯の割合は、全体の二三・一%でございます。他方、実際に預貯金の残高がゼロと回答した世帯は、全体の二・六%でございます。

 御指摘の、国民一人当たりの金融資産の最頻値や、金融資産から得ている金融資産の所得の平均値、中央値、最頻値については、それらのデータを把握しておらず、お答えをすることが困難であることを御理解いただきたいと思います。

米山委員 貯金残高ゼロの人というのは、それはそもそも預金を使っていないみたいな人だと思うんですよね。大概、通帳があったら千円ぐらい入っているだろうということになりますから、その二・六%はほとんど意味がないということで。

 今ほどお伺いしただけでも、平均値千二百九十一万円、千二百万円ちょっと、千三百万円ぐらいですけれども、中央値が四百万円、最頻値になるとそれは全然分からないということで、実は金融資産というのは物すごいばらつきがあるわけなんですよ。

 ちなみに、これも通告しているんですけれども、十年ごと、まあ、さすがに十代のことはいいんですけれども、二十代、三十代、四十代、五十代、六十代で、それぞれ貯蓄ゼロの人、これは預金残高ゼロというんじゃなくて、先ほど言われた、二三%もいる、いわゆる貯金としての貯金がゼロの人の割合を教えてください。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどお答えしました数字のうち、金融商品等を保有していないと回答した世帯二三・一%についてでございますが、二十代でいきますと三五・七%、三十代で二三・九%、四十代で二六・一%、五十代で二四・四%、六十代で二〇・八%、七十代で一八・七%になっております。

米山委員 それで、この金融経済教育推進機構を設立して一生懸命教育すると、先ほど階議員の質問にもあった内容とかぶるんですけれども、このゼロの人たちってどうなるんですかというのと、逆に、千二百万持っている人というのは、わざわざ国からお金を払って教えてもらえるわけですよ。その人たちはどんどん投資が上手になっていくわけですね。一方、ゼロの人たちというのは、幾ら上手になったって、全くそれはどうにもならぬわけですよ。

 さらに、皆さんもよくよく御承知のこととは思いますけれども、皆さんお金持ちでしょうから、投資されているでしょうから。投資って、基本的にお金があった人が絶対有利なんです、それは。百円しか持っていない人と百万円持っている人だったら、百万円持っている人が有利に決まっているんです。

 そうしますと、この金融経済推進機構でわざわざ国のお金をかけてどんどん教育すると、これはどんどんと格差が開いていくと思うんですけれども、大臣の御所見を伺います。格差、これは開きますか、それとも縮みますか。

鈴木国務大臣 投資と格差の問題で申し上げますと、格差につきましては、一般に、投資を行う場合には、投資額が大きいほどリターンも大きくなると考えられることから、投資を通じた資産形成は必ずしもその格差が縮小するという方向には働かないもの、そのように認識をいたします。

米山委員 そうなんですよ。これは、国のお金をかけて格差をがんがん開きましょう、そういう政策なんです。それは是非御指摘させていただきたいと思います。

 次、金融経済教育推進機構の設立についてお伺いしたいんですが、この法律の八十六条で、適切な金融サービスの利用等に資する金融又は経済に関する知識を習得し、これを活用する能力の育成を図るための教授及び指導を推進するための金融経済推進機構を設立する、そう書いてあるんです。

 ちなみに、私、弁護士でもあるんですけれども、常々、まあ、一般の方々という言い方はなんですけれども、法曹でない方々というか、クライアントといいますか、見ておりますと、やはり最低限の法律知識があると生きやすさって全然違うのになと思うわけですよ。だって、ちょっとした契約だって、皆さん大体、雇用契約を結ぶわけですからね。そういうのがいろいろあるわけだから、法律知識があるといいのになと思うわけなんです。また、そもそも金融サービスだって、法律知識って非常に重要ですからね。

 ちょっと法務省の方にお伺いしたいんですけれども、法務省として、法律教育推進機構をつくる予定はございますでしょうか。

門山副大臣 法務省では、法教育推進協議会を設置し、現場の教員や教育学者だけでなく、法曹三者も委員として参画いただき、法教育を充実させる方策等を継続して検討しているところでございます。

 この協議会におきましては、充実した法教育が実践されるよう、これまで、法教育教材の作成、配布、法律専門家による出前授業の実施などの取組を進めてきました。

 法務省としては、現在のところ、米山委員御指摘のような機構を設立するということではなく、引き続き、法教育推進協議会における取組や関係機関との連携により、積極的に法教育の推進を図ってまいる所存でございます。

米山委員 つまり、法務省としては、協議会で十分だ、わざわざ民間から物すごい出資金を募って大々的に教育をする、そこまでは要らない、こういうお答えだったのかと思います。

 ちなみに、私、実は医者でもあるんですけれども、今回、コロナがありまして、いや、皆さん、これも思うわけですよ、患者さんを診ていて思うわけです、皆さん、最低限の医学の知識があると随分生きやすいだろうなと。やはり、コロナの話をするにせよ、お薬の話をするにせよ、皆さん、最低限の医学知識は必要、あったら全然生きやすさって違うなと思うわけです。

 また、金融サービスの中で、政府資料にもありましたけれども、大きな金融サービスは実は保険商品なわけですね。保険商品なんかも、それは疾病の発生率とか、一体全体、何というか、疾病になったらどうなるかと分かった方が絶対いいですので、これは必要だと思うんですよ。

 これは厚労省さんにお伺いしたいんですが、医学教育推進機構というのをつくる予定はありますでしょうか。つくる予定がないならばないで、その理由も併せてお示しください。

伊佐副大臣 国民の皆様がより長く健やかに生活できるように、予防、治療などの知識の普及啓発あるいは健康教育の取組を推進することが重要であるというふうに認識をしております。

 このため、まず、予防については、生活習慣病予防のための健康情報サイトでありますe―ヘルスネット、こういうものを通じまして国民への情報発信を行う。そしてまた、健康増進事業を通じて、自治体が行う健康教育の取組も支援してございます。また、疾病の治療に関しましては、関係学会、団体とも連携しながら、ホームページ等を通じた情報発信など、様々な普及啓発を行っております。

 委員御指摘のような医学教育推進機構をつくるということは予定してございませんが、引き続き、関係者と連携して、こうした取組を通じまして、疾病の予防、治療に関する普及啓発を進めてまいりたいというふうに思っております。

米山委員 そうなんですよ。これは実は、厚労省さんのホームページ、私なんかもよく参考にするといいますか、結構よくできていらっしゃるなというところがございまして、今どき、ホームページというものがございますので、情報発信はそこでやれば大概分かるわけなんです。

 そこで、財務大臣にお伺いしたいんですけれども、法務省さん、法律について、特段機構は要りませんとお答えです。厚労省さん、命に関わる健康教育について、いや、特に機構は要りませんね、ホームページがあれば大体何とかなっていますと。実際、医者の私から見ても、何とかなっていると思うんです。何で金融経済教育だけ、わざわざ国が、しかも、恐らくかなり多額の出資金をつくってつくらなければならないのか。その差異について、ちゃんと御説明いただければと思います。

鈴木国務大臣 現代社会では、米山先生が御指摘のとおりに、法律でありますとか医療でありますとか、その他科学など、学ぶべきことがたくさんあること、これは御指摘のとおりであると思いますが、その中で、日々の生活において、お金と申しますか金融との関わりを持つこと、これは避けられません。

 こうした中で、国民一人一人が経済的に自立し、よりよい暮らしを送るためには、家計管理、生活設計や金融商品の選択に関する基礎的な知識を含む金融リテラシーを身につける必要があると考えているところでございます。

 また、最近は投資詐欺等の被害事案も引き続き散見されるほか、近時はSNSを通じた投資勧誘のトラブルも発生しております。こうした投資被害やトラブルも抑止していく、そういうリテラシーも必要であると考えております。

 金融、経済以外にも、国民のリテラシーを高めるべき事項、これはたくさんあると思いますが、こうした今申し上げてきた事実に鑑みまして、官民一体となって金融経済教育を広範かつ効率的に実施するため、金融経済教育推進機構を設立いたしたい、そのように考えているところであります。

米山委員 今ほどの説明で分かった方はいないと思うんですよ。だって、人間、日々、健康のことは関わりますし、法律だって関わるわけですよ。なぜか金融ばかり、しかも国費を相当多額につぎ込んで、しかも民間からわざわざほぼ強制的に出資をさせて、何でそんなことをしなければならないのか。しかも、正直、金融というのは、私の感覚では、健康や法律よりは三番目、四番目じゃないですかねと思うんですが、本当に私はそこは合理性が分かりませんと申し上げさせていただきたいと思います。

 こちら、きっと分からないと答えてくると思うので、分からないんだったら分からないとすぱっと答えていただきたいんですけれども、第八十九条第一項で、機構の資本金は、その設立に際し、政府及び政府以外の者が出資する額の合計とするとあるんですが、さすがに、そうはいったって、六年までにつくると言っているんですから、概略が分かっていないと困ると思うんですよ。一千万なのか一億円なのか一兆円なのか分かっていないと困ると思うんですけれども、一体全体、その概略。そして出資者、これは政府はいいんですけれども、民間の出資者というのは、大体、大手銀行なのか、それとも、うちの実家みたいな小さな肉屋まで来るのか、その辺、ちゃんと概略を教えていただけますか。分からないなら分からないと一言だけ言ってください。

井藤政府参考人 現時点で詳細にお答え申し上げることは困難ですけれども、政府、日銀に加えまして、全国銀行協会、日本証券業協会等の民間団体から協力を得ることとされておりまして、こうした団体から明示的に賛同いただいているところでございます。

米山委員 まあ、じゃ、そこだけは分かった。業界団体の方は皆さんほぼ強制的に徴収される。しかしながら、金額に関しては全く分からない。六年ですよ、もう来年ですよ。それが全く規模も分からなくて、一体全体どうするのか。

 実は、本当は分かっているわけですね。そんな、分からないわけないですから。それを明示せずにこうやって審議される。これも、だって、基本的にそれは銀行の人が払うからいいと思うかもしれませんけれども、結局、それは消費者に転嫁されるわけですから、国民負担なんですよ。国民負担の総枠も示さずに、こうやって何でもかんでも通しちゃう。それはさすがにいかがなものかと思います。

 ちなみに、この法律第百十一条で、書いてあるとおり、役員等々、これは専業なんです。民間との、非常勤の人以外は兼業できません。そうすると、まず、役員だって相当程度の報酬は発生するはずなんですけれども、これはお幾らぐらいになるんですか。理事長、そして理事、監事、それぞれの大体の報酬を伺ってよろしいですか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 役員の報酬につきましては、他の認可法人の役員報酬の水準や業務の特性を考慮しながら、発起人あるいは今後選任される経営陣の下で適切な水準が設定されるべきであるというふうに考えてございます。

米山委員 他の認可法人ってどこですか。お願いします、一言で。

 止めていただいていいですか。

塚田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

塚田委員長 速記を起こしてください。

 井藤局長。

井藤政府参考人 お答え申します。

 例えば、いろいろな認可法人、性質がございますけれども、例えば、当庁所管でありますと預金保険機構等ございますけれども、理事長でいえば二千万円少々の給料を得ているというふうに承知してございます。

米山委員 つまり、預金保険機構ぐらいの理事長収入、機構の報酬としては預金保険機構ぐらい、二千万をいただき、そして他の職員も大体そのぐらいのレベルの給与をもらう、そういうことでよろしいですか。

井藤政府参考人 その点につきましては、全く決まっているものではございません。

米山委員 決まっていないと言いながら、今、ほぼほぼそうだと言ったに等しいと思いますので、要は、預金保険機構並みのものをつくられる、そういうことなんだろうと思われます。

 ちなみに、この機構、毎事業年度、予算及び事業計画を作成し、当該事業年度の開始時に認可を受ける等々、結構なことをやられるわけなんですけれども、予算規模もどうせ分からないと言うんでしょうけれども、予算規模をまず一つお伺いするのと、もう一つ、最初に出資金を得るのはいいとして、毎年出資金を得るとは書いていないので、毎年毎年ちゃんと事業をして、もうからない場合というのが出てくると思うんですよ。そのもうからない場合は一体全体どうするんですか。資本金欠損が出た場合には、それは再度また出資金を募るんですか。結局、これは営利事業をやるわけですから、営利事業をしてもうからなかった場合の御対応を教えてください。予算規模と一緒に教えてください。

井藤政府参考人 現時点で予算規模について端的にお答え申し上げるのは困難でございますけれども、この機構の設立に当たりましては、日銀の金融広報中央委員会の機能を移管、承継するほか、全国銀行協会や日本証券業協会等の民間団体の活動内容を可能な限り集約することを想定してございます。

 参考でございますけれども、これらの組織、団体が現在金融教育事業に費やしている事業費は、団体の規模等によって違いはあるものの、一億円から数億円程度であるというふうに承知してございます。

 さらに、機構の業務遂行に必要な収入が確保できず資本が欠損したらどうするのかというふうな、そのお答えでございますけれども、機構におきましては、関係団体から資金の拠出をもって運営することを中心に考えてございますけれども、機構が関係団体から十分な資金を確保できない場合には、直ちに増資を行うのではなく、まず機構において予算及び事業計画を見直すことで適切な事業運営が確保される必要があると考えてございます。

 その上で、どうしても欠損が生じて資本金を増加することが必要となった場合のお話でございますが、なかなか仮定のお話について具体的にお答えすることは困難でございますけれども、機構の経営陣はもとより関係団体とも連携し、機構の業務運営に支障がないよう適切に対応したいというふうに考えてございます。

米山委員 これは事実上、直ちに増資しなきゃ、結局増資すると言っているわけですよ。結局、これは赤字になったら、次々とまた予算をつぎ込み、次々と銀行協会なり証券業協会なりからお金を徴収する、そういう機構ができ上がるわけです。

 ちなみに、この機構の業務についてお伺いしますけれども、第百十九条の中で、コンテンツの作成とかと書いてあるわけですね。金融経済教育の教材、コンテンツの作成、学校や企業への講座の展開、個人に対する個別相談、資産形成に対する相談、助言を容易に受けられる環境整備と書いてあるんですけれども、今までの中で明らかなので質問を飛ばしますが、これらのサービスは、じゃ、一言だけ聞きますけれども、有償で提供されるということでよろしいですね。

井藤政府参考人 手短に申し上げます。

 機構は営利目的の法人ではございませんので、原則として、有償で提供することは考えてございませんが、例えば、企業等については一定の費用負担をお願いすることも考えられますので、今後しっかりと検討を、機構と連携して進めていければというふうに考えてございます。

米山委員 済みません、有償で提供しないということになりますと、一体全体どうやってお金を、ただただ資本金を食い潰すという意味ですか。

井藤政府参考人 多くの認可法人については、資本金をいわゆる毎年度の事業に充てているという例は余り多くなくて、基本的には毎年度の拠出金をもって事業に充てているということが中心になろうかというふうに考えてございます。

米山委員 じゃ、つまり、資本金じゃなくて、毎年毎年拠出金を得て、それをひたすら使い続ける、そういう趣旨でいいんですか。

井藤政府参考人 この御審議の中で言及されております、いわゆる全銀協でありますとか日本証券業協会、あるいは金融広報中央委員会等におきましては、毎年事業費をもちまして業務を運営しているということでございますので、そうした事業を集約するということを中心的な考え方としている次第でございます。

米山委員 整理しますと、これは多分、資本金の拠出が違うということですよね。資本金は資本金であった上で、結局、毎年毎年拠出金を得て運営していく、そういう趣旨ですね。うなずいているからもう聞かないんですけれども、それは何というか、ほうといいますか、ああ、そうですかと。

 じゃ、次、お手持ちの資料の一ページを見ていただきたいんですけれども、これは、あのアマゾン、世界最大の通販サイト、アマゾンで、金融教育というと、金融教育のコンテンツで既にこれだけ出てくるわけなんですよ。だから、もう民間でとっくに金融教育コンテンツなんというものは山のように作られているわけなんですけれども、一体全体、この機構ではどうやってこのコンテンツに勝るコンテンツを作られる予定なんですか。

 だって、皆さんが作られるんですかというか、さすがに、官僚の皆さんはそんな得意じゃないでしょう。こんな分かりやすそうな、例えば三番目にあるような、ちょっと犬の絵が描いてある、楽しいような、そんなものを一体誰が作るんですか。

井藤政府参考人 先生おっしゃるとおり、これまでも、官民多くの主体において様々なコンテンツが作成されてきてございます。

 ただ、一方、教育現場等からしてみれば、教材は非常にたくさんあって、じゃ、どれが本当にフィットした教材なのかがよく分からない、教材の内容も、本当にベーシックな内容なのか、それとも特定の分野に偏っているのではないか、こうした指摘も聞かれるところでございます。

 受験の教材を取りましても、本人に適した参考書を選ぶというのは極めて難しいことだというふうに考えてございますけれども、このため、機構におきましては、既存コンテンツの集約、整理を進めるとともに、学生、社会人、高齢者等の年齢層別に、資産形成ではなく、家計管理や生活設計等々幅広いテーマを取り上げたコンテンツ等を初心者でも分かりやすい形で作成していければというふうに考えてございます。

米山委員 全然質問に答えていないんですよね。

 それはだって、受験のときの参考書って、それは予備校の先生はそういうのを作るのが得意だから作っていいわけなんですけれども、文科省が作ったって、そんなの全然役に立たないわけですよ。でも、それは自分で作られると言っているわけです。

 しかも、本当にお伺いしたいんですけれども、それは、今ほど、本当にフィットするとか、本当にベーシックとか言いましたけれども、じゃ、国が本当にフィットするコンテンツを決めるんですね。国が最もベーシックな内容を決めるんですね。それは国家における金融教育の確定じゃないですか。それはもう何というか、国家指導金融ですね。

 更に申し上げたい。これは質問を一緒にしたいんですけれども、そうすると何が起こるかというと、みんな同じように行動するようになるわけです。だって、同じ教科書に従って、同じように投資行動するわけですから。そうすると、みんなが、例えば日経二二五を買うわけですよ。そうすると、日経二二五が暴落したら、みんな一斉に損をするわけです。

 ボラティリティーというのは、いろいろな人が別々の行動をすることが前提でできているんです。それを国が単一の方法をやってしまったら、国家としては全然ボラティリティーが高い、何かあったら一斉に動いて一斉に大損する国家になってしまう。それは国としてはむしろ物すごく危ういことをしていると思うんですけれども、併せてお伺いしてよろしいですか。まず第一は、じゃ、それは国が標準的なものを決めるんですか。第二は、そんなことをしたらかえって国家として危うくなりませんか。この二点についてお伺いします。

井藤政府参考人 コンテンツの内容につきましては、これまで金融経済教育に携わってきた各民間団体等が金融経済教育のコンテンツを作成してきた中で得られた知見を最大限に活用するとともに、役職員として登用する経済教育に知見を有する人材によるマネジメントの下で新たな工夫を凝らすことにより、金融経済教育に無関心である方にも興味を持っていただくような魅力ある教材を作っていくことが必要だというふうに考えてございます。

 また、こうした金融教育が国民の金融行動を単一にして、かえって国全体でボラティリティーを上げ、日本経済をリスクに弱い国にするのではないかというような御指摘ですけれども、この機構における金融教育は基礎的な知識の普及というものを考えてございまして、例えば、微分積分を理解したからといって研究者が同じ研究をするわけでもないように、個々人の取る金融行動は、その上で、価値観や置かれている環境、金融商品に対するリスク許容度にとって、異なります。

 このため、金融経済教育推進機構においても、国民の投資教育などを画一的なものとするような教育を行っていくことは想定しておらず、御指摘のようなことになるというふうには言えないのではないかというふうに考えてございます。

米山委員 次の資料、お手持ちの資料、次を見ていただいて、三ページのところ、この中身を見ていただくと、そんな基本的じゃないと思いますよ。だって、高校生のところとかを見ていただいたところで、「基本的な金融商品の特徴とリスク・リターンの関係について理解し自己責任で金融商品を選択する必要があることを理解するリスク管理の方法や定期的に貯蓄・運用し続けることの大切さを理解する」って、余り基本的じゃないと思うんです。

 逆に、本当に微分積分みたいな超基本的な、物事にはリスクとリターンがありますとか、複利計算がありますとか、そんなものを機構でやらなくたっていいでしょう、別に。何というか、別に学校で習えるわけですよ。わざわざ機構で何かやるんだから、それは一定程度、投資について教えるんでしょう。そうじゃなかったら、そもそも意味がないと思うんです。

 しかも、今ほど申し上げたみたいに、定期的に貯蓄、運用し続けることの大切さを理解するということは、もう定期的に貯蓄、運用しろと。貯蓄はまだ分かるとして、運用しろと言っているわけですよ、高校生に。定期的に運用しなさいと国が言うわけです。それは皆さん、高校生ですから、素直に、ああ、じゃ、運用しなくちゃと思うかもしれません。

 次、四ページを見ていただきますと、どんなことが起こるかといいますと、この方、運用したいと思ったんですよ、運用したいと思って百五十万円を借りて、暗号資産の運用をうたう投資に手を出して自殺された。二十二歳です、高校生じゃありません、二十二歳です。

 こう質問すると、きっと、いや、そういうことを防ぐためにこれは教えるんですとおっしゃるかと思いますけれども、じゃ、そういうことを防ぐためには、基本なことじゃ駄目ですよね。ちゃんと、暗号資産はどういうものか。暗号資産というのは教えるのは大変ですよ。だって、ブロックチェーンは何で、なぜそれはお金がついていて、なぜそれを有償で皆さんが取引するのか、そこまで教えなきゃいけないわけです。全然基本的じゃないですよ。逆に、それを教えないで中途半端にやったら、中途半端に高校生に運用することの大切さなんて教えちゃったら、こういうふうな悲劇が出ると思いませんか。

 無理やりな運用教育なんというものが悲劇を生むか生まないのか。これは生まないと思うんでしたら、その生まないという根拠というものを、これは大臣に伺います。

鈴木国務大臣 今ほど、暗号資産トラブルを抱えた女性が自殺したという報道があって、そのことについて、金融経済教育推進機構との関係で、先生が、多分こうお答えになるんじゃないかとおっしゃいましたわけでありますが、そのとおり考えているわけでありまして、私どもといたしましては、いろいろな詐欺的な投資勧誘等の金融トラブル、こうしたことが度々あって、こうしたような大変気の毒な状況も出ておりますので、そういうことに対して、トラブル防止のための知識、そういうものを知っていただくということ、これは重要なことであると思います。

 あわせて、暗号資産そのものを理解しなければ駄目ではないか、こういうことでありますが、これはこれで、また、暗号資産についての学びというのは、しかるべきところでしていただくということになるんだと思います。

米山委員 全然答えにはなっていませんけれども。

 ちなみに、これは高校生ですら運用の大切さを理解しろと言うんですけれども、大学生になりますと、これが、「様々な金融商品のリスクとリターンを理解し、自己責任の下で貯蓄・運用することができる 分散投資によりリスク軽減が図れることを理解している 長期運用には「時間分散」の効果があることを理解している」と書いてあるんですけれども、これをちゃんと理解するためには、御承知のとおり、金融工学でノーアービトラージの仮定、いわゆる無裁定仮定の仮定ですね。さらに、マルチンゲール。何を言っているんだと。ナイチンゲールじゃないですよ、マルチンゲール。リスク中立確率を用いた確率微分方程式というものを理解しないと、リスクとリターンの関係は出てきません。しかも、これを理解した上でも、それは非常に標準的な経済学のモデルにおける、一般均衡下における完備な市場においてのみ存在するのであって、実のところ、リスクとリターンの関係なんてものは、それは仮定のものなんです。

 どれほど分散投資をしようがどれほど長期投資をしようが、完全なリスク管理も完全なリスクヘッジもありません。不可能です。それをきちんと教えられるんですかと。そんなの教えられっこないでしょうと思うんです。

 私は、ですので、この無理やりな運用教育は、先ほど一番冒頭に申しましたように、非常に貧富の差というものを、格差というものを広げてしまうし、むしろ、よっぽど中途半端な教育で物すごい悲劇を生んでしまうし、若しくは、それを回避しようと思って本当に微分積分みたいな基礎的なことを教えてしまったら何の価値もなくなるか、どれかにしかならないと思います。ちゃんと興味のある方が興味のあるように教育を受ければいいんだと思います。

 最後に、質問じゃなくて、一言言わせていただきますけれども、ちなみに、何か皆さん、金融資産をみんなが持ったらみんな豊かになると思っていますけれども、それは幻想ですからね。

 例えば家賃、これは金融資産になりませんけれども、みんなが貸家を持ったら、誰一人借りる人がいなくなるから、誰も家賃収入はありません。お金というのは、持っている人がいて持っていない人がいるから、持っていない人が持っている人に借りて、利息を払うんです。みんながお金を持ったら、誰も借りる人がいないので、利息は払わないんです。

 株式も同じでして、これはみんなから集めたお金を少ない株主に配るから、それはもうかるんです。みんなが株主になったら、実は、千円払って、千円、配当幾らだけで、何ももうからないんです。

 だから、皆さん、金融資産を殖やしていけば、運用していけば全員がもうかるようになるという世界はないということを申し上げさせていただいて、しかも国がそんな幻想に浸っているのは非常に嘆かわしいと言わせていただいて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 本日は、金融商品取引法等の一部を改正する法律案と情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案に対する審議ということで質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、四半期報告書制度廃止についてお伺いいたします。

 今回の改正案において、上場企業の第一と第三・四半期については、金融商品取引法上の四半期報告書を廃止し、そして、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化することが定められております。

 四半期報告書と四半期決算短信には重複が見られ、民間の経済団体の方のお話を伺っても、非常に、この二つを出していくことが負担が大きく、業種によっては意味がないとのことですので、コスト削減や効率化の観点から、今回の見直しは妥当であると考えております。

 一方で、四半期開示自体、短期的志向を助長するという意見もあります。そうであるならば、このように投資家の短期的志向を助長する可能性のある四半期開示について金融庁はどのように考えているのか、御見解をお伺いいたします。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

藤丸副大臣 お答えいたします。

 四半期開示と短期主義の関係については、経営が短期主義につながるとの意見もありますが、中長期の経営戦略の進捗状況を確認する上でも、四半期開示が有用であるとの意見もあります。必ずしも関係者間で一致した見解があるわけではないと認識しています。

 金融庁としては、コーポレートガバナンス改革の実質化を推進し、短期的な視点にとらわれない企業の持続的な成長と中長期的な価値の向上を図ることが重要であると考えています。

 こうした観点から、サステーナビリティー情報等に関する開示を充実させるとともに、可能な範囲で企業開示を効率化する観点から、金商法の四半期報告書を廃止し、取引所の四半期決算短信に一本化するということにしています。

 四半期開示の在り方については、本法律案による見直し後の企業開示の状況等を見ながら、継続的に検討してまいります。

住吉委員 次に、四半期決算短信の任意化についてお尋ねしたいと思います。

 昨年十二月の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、当面は、四半期決算短信を一律義務づけるというふうに書かれております。当面はと文言が付されております。

 また、その議論の過程で示された事務局説明資料、将来的な方向性(案)において四半期開示の任意化についても触れられたことは、将来的な任意化を排除したものではないと捉えることもできます。四半期開示の任意化の検討を進めると、世界の投資家からも我が国開示制度が後退すると受け止められる懸念もありますが、企業側から非常に強いニーズがございます。

 そこで、四半期決算短信の任意化についてどのような検討がなされているのか、政府にお伺いしたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 四半期決算短信の在り方につきましては、四半期における開示は、中長期の経営戦略の進捗状況、すなわちマラソンでいえばラップタイムの確認としての意義があることや、企業経営に重要な影響を及ぼす事項について速やかに開示を行うための適時開示について必ずしも現状では積極的な開示がなされていないことなどに鑑みると、当面は一律に義務づけるというふうな結論になってございます。

 今後、取引所におきまして四半期開示の一本化のための実務的な検討が行われる予定ですが、その中で適時開示の充実についても検討が行われていくものと承知してございます。

 その上で、四半期決算短信の将来的な任意化についてでございますけれども、こうした適時開示を始めとした企業開示の充実の状況等を見ながら、幅広い観点から継続的に検討してまいります。

 金融庁といたしましても、取引所とよく連携を行いまして、四半期開示の見直しや適時開示の充実を進めるなど、投資家に十分な情報開示が行える環境整備を進めていきたいというふうに考えてございます。

住吉委員 四半期決算短信の開示内容についてお尋ねしたいと思います。

 四半期決算短信に一本化されることにより、廃止される四半期報告書でのみ開示が求められている事項が開示されないということになります。そのような事項のうち、セグメント情報、キャッシュフロー情報などについては投資家の強いニーズがあるとされております。

 また、レビューのない四半期決算の信頼性の確保の在り方は重要な課題でありますが、そのような情報を追加していくと企業の負担が増え、今回、四半期決算短信の方に一本化する趣旨を損なうおそれがあります。

 四半期決算短信は、取引所規則に基づく開示であるため、まずは取引所が主体となって、この規則の枠組みの中で検討されるでしょうが、一本化後の四半期決算短信の在り方が、これまでよりも情報の非対称性の拡大をもたらすことなく、企業の開示コストを可能な限り低減するためのバランスが取れるよう、金融庁にも取引所の監督官庁としての役割を果たすことが求められるでしょう。

 また、金融庁として、どのようにして取引所と連携し、投資家側、企業側双方の意見を探りながら規則の在り方について検討を行っていくのかは重要な課題です。

 四半期決算短信の開示内容の追加、これは今後検討されるのか、政府の見解をお伺いいたします。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の四半期開示の見直しは、四半期報告書を廃止して四半期決算短信へ一本化することにより、情報の重複を解消することで企業負担を軽減するということでございます。

 四半期決算短信の開示内容につきましては、先生既に御指摘いただいてございますけれども、例えばセグメント情報、キャッシュフローの情報等、これまでと同様に投資家にとっても必要な情報が提供されるよう、今後、取引所において、投資家の意見や企業の意見を踏まえながら検討されることとなります。

 金融庁といたしましては、取引所側ともよく連携し、一本化後の四半期決算短信により企業開示の効率化を図るということも当然でございますけれども、一方で、投資家に必要な情報が提供されるというような観点も踏まえまして、環境整備を進めていきたいというふうに考えてございます。

住吉委員 本当にバランスが難しいと思います。丁寧な情報を開示すると、当然、企業側にもコストが、手間がかかってしまう。そして、それを簡略化すると、逆に投資家サイドから必要な情報が手に入れられないというところもあります。

 今回、もちろん我々評価しているところでございますが、今回のこの改正、しっかりと今後も運用していきながら、検討されて、より双方にとってメリットのあるような形に進化といいますか、していただくことをお願い申し上げます。

 続きまして、金融経済教育推進機構についてお尋ねいたします。

 先ほどからも議論がありました。我々は、国民の金融リテラシーを向上すること、その目的については全く賛同しております。今回の改正案において、その金融リテラシーを向上していく手法の一つとして、金融経済教育推進機構を創設することと定められております。

 金融経済教育については、従来、任意団体である金融広報中央委員会が中心に行ってまいりましたが、今回の改正により、金融経済教育推進機構が認可法人とされることになりました。

 また、この金融経済教育推進機構の設立により国民の金融リテラシー向上を図るものと考えますが、まずは、今回新たに機構を設立する意義、そしてその役割、目的について、政府の見解をお尋ねいたします。

鈴木国務大臣 個人が自らのニーズでありますとかライフプランに合った適切な金融商品・サービスを選択をし、安定的な資産形成を実現するためには、国民の金融リテラシー向上に向けた取組を行うことが重要であると考えます。

 しかしながら、金融リテラシーの向上にとって不可欠な金融経済教育を受けたとの認識がある者は少数にとどまっており、金融経済教育が広く国民に行き届いていない状況にあります。

 金融経済教育が効果的に行われない原因といたしましては、例えば、政府や関係団体等による金融経済教育に関する取組が十分に調整されておらず非効率である、教育の実施主体ごとに教育内容に偏りがある、教育の実施主体が民間の金融関係団体や金融機関では、販売目的ではないかと疑われ、受け手に敬遠されるとの指摘がございます。

 こうしたことを踏まえまして、官民一体となって金融経済教育をより一層広範かつ効率的に実施するため、金融経済教育推進機構を設立することとしたところであります。

住吉委員 金融リテラシー向上のためにこういった機構を設立するとのことですが、これまで、政府であったり、金融広報中央委員会、また金融機関、団体、学校、職場等において、資産形成の啓発や教材の作成等、金融経済教育に関する取組が実施されております。

 日銀の統計を見れば、家計の金融資産構成に大きな変化は見られず、また、平成二十八年から始められた金融リテラシー調査の結果についても、例えば、令和四年の調査において、金融商品購入時にその商品性を理解せずに購入している人は二〇から三〇%程度も存在していることや、学校、勤務先で金融経済教育を受けたと認識している回答者は全体の七%にとどまることが明らかになっております。さらに、職域でも、確定拠出年金加入者への継続投資教育が不十分との指摘や、長期投資や分散投資等のリスク抑制効果を認知している人は約四割とのデータもございます。

 新しい機構を設立したとしても、内容が従来と変わらなければ、大きな効果は期待できないところでございます。

 今回の金融経済教育推進機構と、金融庁であったり、金融広報中央委員会、日本銀行もそうですが、また民間企業が行ってきたこれまでの取組との違いはあるのでしょうか。例えば、金融庁のホームページには、高校生向け授業動画で、高校生のための金融リテラシー講座という動画がございます。既に教材としては十分なコンテンツがございますが、これまでとの違いについて、政府の見解をお伺いいたします。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、これまでも、政府、日銀、金融広報中央委員会のほか、民間の金融関係団体や、また個別の金融機関におきましても、教材の作成や授業の実施など、様々な形で金融経済教育の取組を行ってきているところでございます。こうした取組にもかかわらず、金融経済教育を受けたとの認識がある者は少数にとどまっているということも御指摘のとおりでございます。

 金融経済教育が効果的に行われてきていない原因といたしましては、先ほど、大臣答弁とも重複するところがございますけれども、政府や関係団体等による金融経済教育に関する取組が十分に調整されておらず、必ずしも効率的に実施されていない、また、教育の実施主体ごとに教育の内容にも偏りがある、また、実施主体が民間の金融関係団体、金融機関では、結局のところ、金融商品の販売目的であるのではないかというふうに懸念されて受け手に敬遠されるといったような御指摘もあるところでございます。

 こうしたことを踏まえまして、新しく設立される金融経済教育推進機構におきましては、これまでの主体的な取組を尊重しつつも、金融教育を提供しなければならない国民というのは非常に多人数に及びますものですから、より一体的な形で効率的、効果的に実施することを戦略的に検討していきたいと。

 また、受け手に金融商品販売目的ではないかと忌避されているんじゃないかという点につきましては、国が関与を行うことで、金融トラブルの予防ですとか、年金等を含めました幅広い分野について中立的な立場から広く国民に行き届くよう金融経済教育を実施することが可能となるというふうにも考えてございます。こうした観点から金融経済教育を推進してまいりたいというふうに考えてございます。

住吉委員 ずっと先ほどから、いろいろな他の委員の、答弁も聞いておりました。民間企業が販売目的かもしれないとか、果たしてそうなのかなと感じるところもあります。というのも、中学校とかそういったところに行って、生命保険どうですかとか、そういったことはしていないと思うんですね。やはり、金融のリテラシーを向上させていこう、政府がしないのであれば我々がしなければならない、そういう使命感にあふれて、そういった民間の方々は、はっきり言って利益にはならないと思いますけれども、やっているんだと思います。

 逆に、そういったところではなくて、金融リテラシーがなかなか向上していかないその一番の要因はどこなのか、そして、それを解決するためにこの機構をつくらなければならない、そういったことを聞かせていただきたいんですが、その点、いかがでしょうか。

井藤政府参考人 先生がおっしゃっている点につきましても、非常に重要なポイントだというふうに考えてございます。

 金融経済教育がいま一つ効果的に浸透していかない理由、私どももいろいろ考えるところでありますけれども、新しい機構におきましては、そういったところの調査研究ということも必要になるかと思いますので、そういったことを機構と連携して、より効率的、効果的な金融経済教育の在り方というものを打ち立てていけるように私どもも努力してまいりたいというふうに考えてございます。

住吉委員 じゃ、例えば、通告もしておりませんが、先ほど私が述べた、金融庁のホームページの中に、高校生の金融リテラシー講座、私も見せていただきましたが、これはなかなかコンテンツとしてはすばらしいと思っております。

 じゃ、実際に、これの効果とかそういったところをしっかりと検証していく必要もあるのかなと思っております。これが実際にどういうふうに活用されて、そして、金融庁として、これは高校生のためのなので高校生に絞った形だと思いますけれども、どういう効果があったのか。それはいかがでしょうか。

井藤政府参考人 通告はいただいておりませんが、その教材はかつて私の部下だった者が作った教材でございまして、私自身は非常によい教材だと思ってございます。

 ただ、残念ながら、一定の御評価はいただいておるんですが、じゃ、それがどれだけの、今手元に数字はございませんが、方々に御覧になっていただけるかといいますと、例えば、高校生というのは一学年に少子化といえども百万人ぐらいいて、何百万人いらっしゃる中で、それを実際に御覧になられた回数というのは、それに比すと限られている。

 そうした中で、私どもといたしましては、こういった浸透度を上げるということについては、本当に戦略的に、かつ、関係者がてんでんばらばらにやるということではなくて、本当に戦略性を持って効率的に金融経済教育を展開しているというふうに考えてございまして、機構の方では、そういった浸透度向上の方策について、しっかりと戦略を練って金融経済教育を展開していただければというふうに考えている次第でございます。

住吉委員 何が言いたいかといいますと、しっかりと、この金融リテラシーがなかなか国民に浸透していないというか、そういったところの分析ができているのかという意味で質問させていただきました。

 そういった意味で、何か機構をつくれば解決できるのかではなくて、なぜ金融教育が進んでいないのか、その本質的なところをしっかり分析していかないと、結局、機構をつくっても同じような繰り返しになってしまうのではないかと、今の答弁を聞いて感じたところでございます。

 そして、ちょっと、次の質問は機構のKPIを定めているのかという質問でございましたが、これは先ほど、定めていないという答弁でした。これは、じゃ、我々はどう審議していけばいいのかというところなんですけれども、これはもう答弁は分かっておりますので、この質問は飛ばしますけれども、やはり指標を定めてその目的に向かっていく、税金なり出資金なりを募って、貴重なお金を、財源を使っていくわけですから、しっかりと効果検証できる仕組み、これは早急につくっていただきたいと思っております。

 そして、最後の質問も少し他の委員とも重複するところでございますが、この組織についてお尋ねしたいと思います。

 現時点で、金融経済教育推進機構に関しては、理事長一名、理事三名以内ということぐらいしか決まっておらず、詳しい情報は分かっておりません。例えば、理事長や理事、監事にはどのような人を選任するのか、その方たちの業務内容、また報酬、先ほど理事長は二千万円程度になるというような答弁もございましたが、どうなっているのか。また、機構の年間経費は幾らか。そもそも、各出資者からの資金拠出だけを想定しているのか、国の予算措置まで考えているのか。決めなければならないこと、開示しなければならない情報はたくさんあります。

 事前にも事後にも情報開示に消極的で、週に一回しか来ない理事が高額の報酬を得て、新聞を読んだら帰っていくという、いわゆる天下りの事例のニュースをよく見ます。単なる看板のつけ替え、組織の肥大化に伴う天下り先の確保といった批判を受けないためにも、積極的に情報開示していく必要があると思いますが、その点、いかがでしょうか。

井藤政府参考人 金融経済教育推進機構についての情報開示の点でございますけれども、いかなる事業活動をして、どのような報酬を出しているかという点につきましては、可能な限り適切に開示することは当然だというふうに考えてございます。

住吉委員 ずっと他の委員の、答弁も聞いておりましたが、なかなか、はっきりとしたことが分かっていない中でこれを審議していくというのは、難しいところがございます。

 一方で、金融リテラシーというのは非常に重要だと認識しております。私も、県会議員のときに、酪農家のところへ行くと、一円円安に行くと、その酪農家の規模ですと二百万円ぐらいの損失があるんだという話を聞いたときに、例えば、金融の知識があればヘッジとかもできるわけで、商社がやっていくべきところかもしれませんが、そういったことも可能になります。

 そういった意味で、全国民が正しい金融知識、そして不測の事態にも備えていくという意味で、この金融リテラシー向上については我々は賛同したいところではございますが、この機構の在り方については、今後もしっかりと議論をしていかなければならないと思っております。

 時間になりましたので、以上で終わります。

塚田委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 本法案の趣旨の一つに、金融リテラシーの向上、そして、金融経済教育を推進していくことがあります。今まで議論がありましたけれども。

 そこで、本日は、どうしたら国全体の金融リテラシーが向上していくのか、特に学校教育段階における金融経済教育の今後の在り方について議論させていただければと思っております。

 私も、やはり金融経済教育は非常に大事だ、重要であるというふうに考えております。豊富な資源があるわけでもなく、少子高齢化が進む我が国は、将来的に金融立国としてグローバル社会の中で生き抜いていかなければならない、そうも考えておりますし、そのためには、国全体の金融リテラシーの向上というのは必要不可欠であるというふうに考えております。

 個々人の金融リテラシーが低ければ、全体として経済は最適な形を取ることができませんし、強く正しい金融政策を掲げる政党を選挙で選ぶこともできません。もちろん、個人の観点から見ても、正しい金融経済の知識の下に資産運用管理していくことはとても重要でございます。金融リテラシーの向上は、今後の日本にとって必要不可欠と考えております。

 そして、金融リテラシーを向上させていくためには、時間はかかってしまうかもしれないんですけれども、教育しかないというふうに考えております。

 以上のような理由から金融経済教育は非常に重要だと思っておるんですけれども、改めまして、大臣のお考えをお聞かせいただければと思っております。

鈴木国務大臣 働き方を含めましてライフスタイルが多様化している中、個々人が生涯にわたって豊かな人生を送るためには、若いうちから、自らのライフプランを描いたり、人生の様々なステージで必要となる資金の確保に向けて、安定的な資産形成に取り組んでいくこと、このことが重要であると考えております。

 そのためには、個々人が自らのライフプランやニーズに合う金融サービスを適切に選択できるようにすることが重要であって、金融経済教育は、そのための知識や判断力を養い、金融リテラシーを向上させる上で必要不可欠なものであると認識をいたしております。

 金融庁では、これまでも、関係団体等と連携をし、学生や社会人向けに金融経済教育を実施してきましたが、本法案により金融経済教育推進機構を設立をして、官民一体となって金融経済教育を一層戦略的に推進していきたい、そのように考えているところであります。

藤巻委員 金融経済教育が大事というのは多くの人が共通する思いであるところではあると思うんですけれども、私個人としては、やはり、金融リテラシーの向上のためには、金融経済教育を根本的に抜本的に推進していくためには、中学、高校、そういった段階での学習カリキュラムに金融経済という科目をしっかりと組み込むことが必要かなというふうには考えております。

 今も、社会科だったり政治・経済だったり、そういう科目の中で、カリキュラムの中で、かいつまんではあるんですけれども、それでは不十分かなというふうに思っております。英語だったり数学だったり国語だったり日本史だったり、そういった科目と同じように金融経済というような科目をつくってカリキュラムの中にしっかりと組み込む、そうしないと、やはり、子供たちは、腰を据えて勉強してくれるということはなかなかないのではないでしょうかね。

 金融経済教育を本気で推進していくためには、やはり中学であったり高校であったり、そういった学習カリキュラムの中にしっかりと組み込んでいく必要はあると思うんですけれども、大臣はそういったことについてはどうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたとおりに、金融経済教育、金融に関する知識や判断力を養い、金融リテラシーの向上のために必要不可欠との認識を持っておりまして、これまでも金融庁では、文部科学省と連携をいたしまして、普及促進に取り組んでまいりました。

 具体的に申し上げますと、昨年四月から成年年齢が引き下げられ、また高等学校の新しい学習指導要領が実施されていることも踏まえまして、教員による出張授業や教員向け研修会を実施しているほか、文部科学省とも連携をしながら、高校向け指導教材を作成、周知するなど、様々な取組を行ってきております。

 今後も、それぞれの年齢に応じた金融リテラシーの習得に向けて、文部科学省を始めとする関係機関とも連携をしながら、学校における金融経済教育の一層の充実が図られますように取り組んでいきたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 教育というのは取捨選択だというふうに思います。学問に優劣というのはもちろんないんですけれども、それでも、私たち大人というのは、教育において学問の取捨選択をしています。中国語よりも英語を子供たちに教えよう、哲学よりも数学を教えよう、文化人類学よりも世界史を教えようと、子供たちに教える学問を取捨選択しているわけです。子供たちの学習時間は限られているわけですから、それは当然なんですけれども。

 この教育における学問の取捨選択というのは、時代に合わせて常に行っていかなければならないというふうに考えております。硬直化してはならないというふうにも思います。その観点から、現代においては、金融経済の勉強こそまさに時代に合致しているものかなというふうにも思うんです。

 ちょっと端的に大臣にお伺いいたしますけれども、古文、漢文と金融経済の勉強、未来を生きる子供たちにとってはどちらが必要な知識だと考えますか。どちらを学校で教えるべきかというふうに考えておられるでしょうか。

鈴木国務大臣 具体的な学校のカリキュラムにつきましては、これは文科省で決められるわけでありますし、その内容につきましては学習指導要領に基づいて行われる、こういうふうに思っております。

 古文、漢文と、それから金融経済教育、それぞれ重要なのではないか、なかなか、比較してどっちが重要でどっちがということは言いにくいと思っておりますが、金融経済教育、これの重要性は先ほど来指摘をさせていただいているところでございまして、文科省ともよく連携をしながら、学校教育現場においても、金融経済教育、しっかりと進めたいと思います。

藤巻委員 もちろん、古文、漢文も大事な学問だというのはあるんですけれども、先ほど言ったように、子供たちの勉強時間は限られているわけですから、金融経済教育をしっかりやりたいんだったら、何かを削減しなくちゃいけないというのも事実であると思います。金融経済教育を推進する大臣としては、古文、漢文よりも金融経済の方が大事だと言ってほしいところではあったんですけれども。

 もちろん、古文、漢文はすばらしい学問で、今使われている日本語の成り立ちを学ぶことはできるんですけれども、それでもやはり、金融経済の方が現代においては学ぶべき優先度は高いんじゃないかと。苦渋の決断で、やむを得ないけれども、学校教育においては古文、漢文の勉強を少し削って、その削った分を金融経済に充てるべきだ、これぐらいの強い意思を大臣が先頭に立って示していかないと、金融経済教育を本当の意味で推進することというのはなかなか難しいのかなというふうにも思っております。金融経済教育は大事だ大事だと言っているだけでは、なかなか前に進まないかなと。

 別の聞き方をしますと、先ほども言ったように、金融経済教育を本気で推進していくためには、やはりカリキュラムに今よりもしっかりと組み込むべきだと思っております。現在のカリキュラムの中から何かを削減しなくてはなりません。そうしないと、やはり組み込むことができない。今カリキュラムの中に組み込まれている学問、全て大事なのは間違いないんですけれども、子供たちの勉強時間は、何度も言うように、有限です。何かを組み込むためには何かを削減しなくちゃいけない。

 何かの科目を削減して金融経済をカリキュラムの中にしっかりと組み込む、そういったお考えはありますでしょうか。

簗副大臣 お答えいたします。

 議員御指摘のように、金融経済教育は重要でございますけれども、金融経済教育を始め、子供たちが将来に向けて身につけるべき教育内容は、現在、大変多岐に及んでいると考えております。

 こうした中で、学習指導要領の内容については、子供たちを取り巻く環境や各教科の専門性、発達の段階に応じた指導内容等について、科目等のバランスも全体的に勘案しながら、中央教育審議会において様々な分野の学識経験者の方々等により御議論をいただくものでありまして、こうした中で検討するものと考えております。

藤巻委員 もちろん、バランスを考えながらということはそのとおりだと思うんですけれども、では、副大臣は、金融経済と古文、漢文、どちらが大事だと思いますでしょうか。

簗副大臣 学習指導要領で指導する内容の個別の事項については、文部科学省としてどれがどれより優先するというようなことを定めているものではございません。いずれも重要な学習教科であるというように考えております。

藤巻委員 いずれも大事なのは分かるんですけれども、古文、漢文も本当に重要な学問であると思うんですけれども、やはり教育というのは取捨選択なわけですよ。

 現在の学校教育においては、古文、漢文の方が金融経済よりも重きが置かれていると思います。私自身、中学、高校のとき、古文、漢文をかなりやらされて、かなり苦労した覚えはあるんですけれども、金融経済教育の勉強というのはほとんどその機会がなかったというふうに記憶しております。

 もし同じぐらい重要だ、どちらが優劣とも言えないというのならば、なぜ古文、漢文に重きが置かれているんでしょうか。同じぐらい大事でしたら、同じぐらいの勉強時間が取れるような学習指導要領であったり、カリキュラムを組むべきではないでしょうか。客観的に見ると、現在の学校教育においては古文、漢文の方が金融経済よりも重きが置かれています。これはなぜでしょうか。

簗副大臣 お答えいたします。

 議員の御見解については私はちょっとコメントは控えたいと思いますけれども、先ほど申しましたように、文部科学省としては、どの科目が優越するとか、そういった観点で学習指導要領等を定めているということはございません。いずれも重要であるという認識の下で様々なものを定めているという状況にあります。

 その上でですけれども、金融に関する基本的な仕組みや考え方については全ての子供たちが学ぶものというふうにしているところでございまして、例えば、令和四年度から高等学校で全ての子供が学ぶ必履修科目として新たに始まっている公共では、金融の働きなどについて扱うことといたしております。また、同じく全ての生徒が学ぶ高等学校の家庭科では、新たに家計管理やリスク管理の考え方などを扱うこととしておりまして、こうした規定に基づいて各学校において全ての児童生徒に対して指導が行われているところでございます。

藤巻委員 ちょっと堂々巡りになってはしまうんですけれども、もちろん学問に優劣はないんですけれども、学校教育においては、この科目はより勉強すべきで、この科目は勉強しない、余り時間を割かないというのはやはり現実としてありますので、金融経済教育におけるウェートをもう少し増やすべきじゃないのかというのが私の意見ではあるんですけれども。

 学校で子供たちに何を教えるのか。まさに教育というのは、国の礎となる、最も重要なものだと思います。今回はこういったふうに金融経済教育の話をさせていただいたんですけれども、私が一番言いたいのは、学校で子供たちに何を教えるのか、これは常に議論を続けて、時代に見合った教育をしていくべきだと思っております。

 戦後、学校教育におけるカリキュラムというのは、マイナーチェンジこそしているとは思うんですけれども、基本的には、やはり大きく変わることなく硬直化していると思います。今の時代に子供たちに何を教え、何を伝え、どうやって生きていってほしいのか、これを常に考えて議論し、最適な教育を提供していくことこそが私たち大人の使命かと思います。長い間こういう教育をしてきたのだから、こういう勉強を教えてきたのだから、これからもそれを踏襲していこうと、変えることを恐れて思考を停止してはいけないというふうに考えております。

 こういったことに対して、文科省としてのお考えをお聞かせください。

簗副大臣 これからの変化の激しい社会に対応するために必要な資質、能力を子供たち一人一人に育成していくということは極めて重要であると考えております。

 この点、現行の学習指導要領においては、これからの時代に求められる教育を実現していくため、社会に開かれた教育課程の実現を目指し、子供たちに生きる力を育むことを目指しているところでございます。

 より具体的には、言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力といった、いつの時代にも必要な学習の基盤となる資質、能力の育成というものに加え、例えば、委員御指摘の金融教育や環境教育、主権者に関する教育など、様々な現代的な諸課題に子供が対応していくために必要な資質、能力を育成するための教育に取り組むこととしております。

 現行の学習指導要領は昨年度から全ての学校種において実施が始まったところでございまして、文部科学省としましては、御指摘の金融教育も含め、現代的な諸課題に対応する資質、能力を子供が身につけられるよう、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 少しちょっと目線は変わるんですけれども、中学校では二一年度から、高校では二二年度から始まった新学習指導要領では、AEDを使うなどとした救命処置の習得を指導することと定めています。これはあるべき姿で、むしろ定めるのが遅かったのではないかとすら思います。

 AEDの救命処置もそうなんですけれども、例えば、自分や家族にこういう症状が出たらこういう病気を疑えだとか、こういう症状は緊急性が高い可能性があるのですぐ病院に行くべきだ、あるいは、こういう習慣は将来的にこういう病気を引き起こすことがある、血液検査でこんな数字が出たら危険性が高い可能性があるようだとか、こういった命に直結する基礎的な医療や医学を教えることは、子供たちの人生にとって重要かと思います。基礎的な医療や医学を学校で学べば、その学んだ知識で自分や大切な人の命を救えるかもしれません。

 こういった医療や医学というのは、学校で学ぶ機会というのは今は余りないかと思います。一方で、古文、漢文は一生懸命学校で学んでおります。こういった基礎的な医療や医学と古文、漢文、学校で教える上でどちらが優先度が高いのでしょうか。

簗副大臣 先ほど来申しているように、特定の科目というものを取り上げて、どちらがどちらに優先するですとか、そういったことは学習指導要領等では定めておりません。いずれも重要な科目として定め、そして各現場で教育がなされているものと承知をしております。

藤巻委員 ちょっと、先ほどと同じ議論にはなってしまうんですけれども、やはり、どちらが大事ということは定めていないと建前では言っていても、結局、学校で学ぶ学問というのは限定されていて、私たち大人というのは、子供たちに何を教えるかということを、優劣をつけて選別して教えているわけです。

 やはり、何が重要で何が重要でないかというのは、これは大人の責任としてしっかりと峻別していく必要があると思いますので、何を子供たちに教えていくかというのは非常に大事なことだと思いますので、そこはできれば、一概に言えないだとか、優劣はないという建前論ではなくて、何が大事か、何を子供たちに教えていくべきか、何を次世代に教えていくべきか、これは我々大人の責任として、文科省だけではなく、官民一体となって、国全体で議論をしていくべきだと思っておりますので、そういった認識をしっかりと持っていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

 ちょっとまた視点を変えて、生成AIなどの進歩を見ていると、近い将来、ほぼ完璧な自動翻訳機のようなものができるのではないかというような未来を想像できます。

 これは、ほぼ完璧な自動翻訳機ができたとしても、英語教育というのは、今までの水準で、あるいは今まで以上にやるのでしょうか。文系の高校生だと、下手したら貴重な勉強時間の半分以上を英語の勉強時間に充てていると思います。

 もちろん、英語を一定のレベル以上で使えるようになるのは重要かと思うんですけれども、高水準の自動翻訳機ができて、それによって英語圏の国の人たちとの会話が滞りなくできるようになったり、英文が瞬時に日本語に訳せるようになっても、今までと同じような多大な英語学習を子供たちに課すのでしょうか。

 少し削減して、ほかの科目、あるいは、それこそ金融経済教育に充てるという選択肢もなきにしもあらずかなというふうに思うんですけれども、自動翻訳機ができるような、ある意味、英語教育における大きな時代の転換点が近くに来ている中で、今後の英語教育に関する方向性というのをどうお考えになられているでしょうか。

簗副大臣 お答えいたします。

 グローバル化が急速に進展をする中で、一部の業種や職種だけでなく、国内外の様々な場面で英語によるコミュニケーションが必要になっており、本年四月の教育未来創造会議第二次提言においても、グローバルに活躍できる人材の育成に向けて、英語教育を推進することの必要性が指摘されているところでございます。

 英語教育においては、現在、一人一台端末によって、常にネイティブ音声に触れながら子供たちが学習できるなど、ICT技術の進化に伴ってその充実が図られてきているところです。

 御指摘の自動翻訳機についてですけれども、年々技術的な精度を高めていると承知をしており、そうした技術を効果的に活用し、英語学習の充実につなげていくことは十分に考えられるものと思っております。

 現行の学習指導要領では、言語活動を通して、コミュニケーションを図る資質、能力を育成することを目標としています。こうした資質、能力を育成するためには、自動翻訳機を通じて単に日本語を英語に置き換えるのではなく、コミュニケーションを行う目的や場面、状況等を踏まえ、言語の背景にある文化やその言語を用いる相手への配慮もしながら、気持ちや考えを伝え合うという力や態度の育成が重要であると考えております。

 文部科学省としましては、今後とも、様々な技術を学習の場面に応じて適切に活用しつつ、子供たちのコミュニケーション力を伸ばしていけるよう、初等中等教育における英語教育をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

藤巻委員 英語によるコミュニケーション、確かに非常にビジネスの面でも大事だと思うんですけれども、そのコミュニケーションというのは自動翻訳機によってすることができる。

 英語を学ぶ背景というのはいろいろあって、もちろん、相手の気持ちを推し量るだとか、そういういろいろな要素があるんですけれども、私が言いたいのは、先ほども申し上げたとおり、文系の学生、私自身もそうだったんですけれども、文系の学生だと、特に私大を目指すような文系の学生だと、本当にもう英語ばっかり、半分以上本当に英語を勉強している、ひたすら英語の勉強をしているというような現状なんですけれども、それを変えるつもりはないというか、ほかの勉強に、先ほども申し上げたように、子供たちの勉強時間は有限ですので、果たして、自動翻訳機ができたとしても、全勉強時間の半分以上を英語に充てるような教育体制でよろしいのでしょうかという質問ですので。

 もちろん英語教育の重要性は分かっておりますと言った上で、そこについてのお考えをお聞かせください。

簗副大臣 委員の御指摘は今お伝えいただいたとおりだというふうに思いますけれども、現行の学習指導要領においては、現場での学習において適切な形で運用がなされるように、様々な教科について時間数等を設定がなされておりますので、英語についても、先ほど来私が答弁申し上げたとおり、これからの社会において、このコミュニケーションという観点から大変重要な語学になりますので、子供たちのコミュニケーション力を適切に伸ばしていけるように、初等中等教育における英語教育を引き続きしっかりと進めてまいりたいと考えております。

藤巻委員 分かりました。

 同じような観点からの質問なんですけれども、今、私たちのポケットの中には、スマホというある意味、百科事典以上のものが入っております。よく子供たちがやっている丸暗記というような行為にはもう意味がほとんどないというふうにも考えられます。私も、学生時代、例えば徳川十五代将軍を十五人全員丸暗記していましたけれども、そういったような丸暗記に意味はもう余りないというようなことも言えると思います。スマホで調べれば五秒で十五人全員出てくるわけですから、丸暗記という行為が意味を持たなくなった今こそ、教育を大きく変える、大きな時代の転換点かなと、大きな絶好の機会かなというふうにも考えるんですけれども、そこの部分に関して、文科省としての御見解をお聞かせください。

簗副大臣 お答えいたします。

 これからの時代を生きる子供たちには、予測困難な社会にあっても、変化を前向きに受け止め、社会や人生、生活をより豊かなものにするために必要となる資質、能力を育成することが重要であると考えております。

 このため、現行の学習指導要領では、これからの変化の激しい社会を生きていく子供たちに対して、資質、能力の三つの柱、すなわち、一つに、単なる暗記や知識の理解にとどまらない、実社会で生きて働く知識、技能の習得、二つ目に、未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力等の育成、そして三つ目に、学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性等の涵養といった、バランスの取れた資質、能力の育成を図ることとしております。

 また、こうした資質、能力の育成に当たっては、学ぶことに興味や関心を持ち、見通しを持って粘り強く取り組むような主体的な学び、また、生徒同士などによる対話を通して自己の考えを広げ深める対話的な学び、そして、学んだことを相互に関連づけて深く理解したり問題を見出して解決策を考えたりする深い学びといった、いわゆる主体的、対話的で、深い学びを重視することとしております。

 このような学習指導要領の着実な実施を通じて、子供たち一人一人が豊かな人生を切り開き、持続可能な社会のつくり手となることができるよう、引き続き学校教育活動の充実に努めてまいります。

藤巻委員 ありがとうございます。

 もうちょっとだけ時間があるので、少し変わった目線で話させていただくと、今、ブラック校則というものがございます。このブラック校則というのは、一般的な社会通念から見て明らかにおかしいような校則のことです。私の高校でも、髪の毛が耳に触っちゃいけないとか、黒や紺のカーディガンはいいが白のカーディガンは駄目だというようなものがありました。多様性を認めようという今の社会の流れからは完全に逆行するようなものだと思うんですけれども、文科省としては、ブラック校則についてはどう捉えられているでしょうか。

簗副大臣 お答えいたします。

 校則は、学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内で、校長により定められるものです。このため、文部科学省において、校則の見直しの必要性や、学校や教育委員会の見直しに関する取組事例などについて、都道府県教育委員会の生徒指導担当者などを対象とする研修会等で周知しているところでございます。

 また、昨年十二月に改訂した生徒指導提要において、校則の見直しを行う場合には、その過程で児童生徒自身や保護者等の学校関係者からの意見を聴取した上で定めていくことが望ましいこと、また、校則の内容を学校内外の者が参照できるよう学校のホームページに公開することや、校則を見直す際のプロセスを明確にするといった配慮が必要であること等の記載を盛り込んだところでございます。

 文部科学省としましては、校則が児童生徒のよりよい成長のための行動の指針として機能するよう、校則の意義や、絶えず見直すことの必要性などについて、引き続き周知徹底に努めてまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 時間も迫ってきましたので、最後に、文科省として、金融経済教育を進めていく上での今後の意気込みというか、その重要性、どう捉えておられるのでしょうか、お答えください。

簗副大臣 児童生徒がその発達の段階に応じて金融に関する基本的な仕組みや考え方を身につけることの重要性が高まっています。このため、今回の学習指導要領の改訂において、金融に関する内容を更に充実をしたところでございます。

 先ほども申し上げましたけれども、この学習指導要領における金融に関する内容は、義務教育段階はもちろん、高等学校においても、全ての子供たちが学ぶ必履修科目として公共などで位置づけているところでございます。

 また、指導を担う教員への支援として、金融庁と連携し、金融庁が作成した指導者向けの金融教育に関する教材等を各教育委員会等に対して紹介、周知を図ってきたことを始め、金融庁等において、金融経済教育に関する出張授業、教員向けセミナーや解説動画の情報発信などを実施するなど、関係省庁等とも連携して金融教育を推し進めているところでございます。

 文部科学省としましては、子供たちが将来の生活を主体的に営んでいくことができるためにも、引き続きしっかりと金融に関する教育を推進してまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 いずれにせよ、金融庁、文科省、連携して、金融経済教育をしっかりとカリキュラムに組み込んで、本気の本気で推進していっていただきたいと考えております。また、文科省においては、教育内容の不断の見直し、どうぞよろしくお願いいたします。

 これで私の質問を終わります。本日はどうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 金商法の改正案について質問をさせていただきたいと思いますが、まず、大臣、大前提の確認なんですけれども、この金商法の改正というのは、資産所得倍増、貯蓄から資産運用へという、そういった流れだという認識をしておりますけれども、全否定はしませんけれども、元々、岸田総理が総裁選挙に出られるときは所得倍増だったんですね。やはり、所得を上げるということが極めて大事であり、そして、それに加えて資産所得についても増やしていくということで、所得を増やすということを徹底的にやっていくんだということを、まず確認をさせていただきたいと思います。

鈴木国務大臣 現在におきましても、岸田内閣において、勤労所得を上げていくということ、まず大切だと思っておりまして、そのための構造的な賃上げ、これについてはこれからも取組をしていきたいと思います。

 こうした勤労所得に加えまして、金融所得も、これも上げていくということで、今御指摘がございましたように、投資への環境整備というものをやっていく、今回の法律改正もその環境整備の一環として提出されたものと理解しております。

前原委員 二千兆円を超える金融資産というものの大体八五%ぐらいが五十歳以上が持っているんですね。そして六十歳以上になると七割近くということで、先日発表されました合計特殊出生率一・二六、過去最低に並ぶということを考えると、やはり若い世代の所得をいかに上げていくのかといったことが大事なことでありまして、もちろん今から議論することについては否定はしませんけれども、是非、所得倍増、賃金を上げるということに力を入れてもらいたいということを、前もって、あらかじめお話をしたいというふうに思います。

 それでは、法案の中身について大臣に質問をさせていただきます。

 まず、本法律案では、顧客等の最善の利益を勘案した誠実公正義務が金融サービスの提供等に係る業務を行う者に対して横断的に課されることとされています。現在でも、金融事業者に対しては、二〇一七年に顧客本位の業務運営に関する原則という政策が導入されて、二〇二一年には同原則が改訂されましたけれども、道半ばという評価がされており、本法律案での法律による義務づけという踏み込んだ対応に至っているわけであります。

 では、まず、これは義務づけをする前に、顧客本位の業務運営に関する原則及び同改訂版が道半ばでとどまっている原因はどこにあると考えているのか、それが前提でなければ法律案は意味がないと思いますので、お答えをいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 前原先生から御指摘がありましたとおり、金融庁では、二〇一七年三月に顧客本位の業務運営に関する原則というものを公表いたしました。これは強制ではなくて、手挙げ方式で行ったものです。任意でこれをやっていただくという主体的な取組でございます。

 これによりまして金融事業者の取組には一定の進展が見られたわけでありますけれども、例えば、商品選定や説明の在り方に引き続き課題があると指摘がされたほか、資産形成において重要な役割を果たしている企業年金についても、運用の専門家の活用不足や運用機関の選定プロセス等に課題があるという指摘があった、こういうことでございます。

 先生から御指摘のとおり、改訂ということを経たわけでありますが、今なお、今申し上げたような課題があるということで、これをやはり、法制上、義務としてこうした課題をしっかり直していく、こういう必要性があるのではないかという判断であります。

前原委員 今大臣から御答弁がありましたように、法律による義務づけ、強制ではなく任意だったものを義務づけすることで顧客本位の業務運営になるということを、言い切っていただけますか、ここで。

鈴木国務大臣 成果につきましては、きちっと進むかどうか、不断のレビューが必要であると思います。

 しかし、今までのものよりも、任意のものよりも一歩前進したものという思いでございまして、これが徹底できますように、金融庁としてもしっかりフォローアップをしていきたいと思います。

前原委員 強制ではなくて任意だったものが義務づけということになると、これに対する責任は、行政府、金融庁に求められるわけですね。しっかりそこは、義務づけをしたという重さをしっかりと持って対応していただきたいと思います。

 その上で、幾つか確認をしていきたいと思います。

 本法律案では、顧客等の最善の利益を勘案した誠実公正義務が金融サービスの提供に係る業務を行う者に対して横断的に課されることになっています。

 この顧客等の最善の利益を勘案するという文言は、現行の金商法等の誠実公正義務には明示的に規定されておらず、本法律案によって追記される形になっています。

 顧客等の最善の利益の内容は、金融事業者や企業年金関係者が、その提供するサービスの範囲において、顧客にとって最もふさわしい商品、サービスの提供となるよう業務運営を行うことを求めていますが、このような業務運営の在り方は、金融事業者や企業年金関係者にとっては一律ではなく、まさに企業の業態やビジネスモデルによって異なるのは当たり前だと思います。

 では、今回義務として明記するに当たり、各事業者のそれぞれの顧客等の最善の利益を、業態やビジネスモデルが違うのにどうやって把握するのか、そしてまた、何をもって顧客等の最善の利益の追求という義務を果たしていると判断するのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に業務を遂行する義務でありますが、これは、金融事業者に対して、金融サービスの提供に当たり、顧客の属性、目的やサービスの特性を踏まえ、自らが提供できる金融サービスの中からその顧客に最も適したサービスを提供できるよう業務を遂行することを求めるものであります。

 今御指摘がございましたとおり、金融事業者それぞれにおいて、顧客の最善の利益を勘案した業務運営を行うためには、その提供する業務の内容でありますとか、顧客とのコミュニケーションに基づき把握した顧客の属性、意向等に対して、何が顧客のためになるのかを適切に検討する必要があると思います。金融業者の置かれた立場によって、そこはやはり、多少まちまちのところがあるんだと思います。

 そういう状況でありますが、金融庁といたしましては、関係省庁とも連携をいたしまして、ベストプラクティスの共有、普及を図ることなどによりまして、顧客の最善の利益の考え方について、金融事業者等の間で認識を共有してまいりたいと思っております。

 当初は、それぞれのビジネスモデルなどにおきまして、また顧客によりまして、多少ばらばらなところがあると思いますが、そういうベストプラクティスを共有することによって、だんだん共通したレベルを上げていきたい、そのように考えているところです。

前原委員 業態やビジネスモデルによって異なるのは当たり前であって、ベストプラクティスというものをしっかり把握をされる中で、最善の利益を勘案といったところが果たされるかどうかということを検証していく。こういう御答弁でよろしいんですね。はい。

 それでは、逆に、今度は、運用する側も金融リテラシーというものを上げていくということが、また後ほど質問させていただきますけれども、機構をつくったりして、金融経済教育推進の諸施策を行っていくわけですよね、金融リテラシーを上げるために。そうなると、例えば、こういった金融商品について余り詳しくなかった人が何か商品を買おうとする場合と、金融リテラシーが上がっていっていろいろな専門的な知識が出てきた場合と、言ってみれば、取り扱う金融商品というものは変わってくるのは当たり前ですよね。でも、その場合によっても、顧客等の最善の利益というものを業者側は提供しなきゃいけないわけですけれども、そこのリテラシーが上がっていった人に対してどうやって会社が呼応していくのかというところは、どういう判断に基づいて顧客等の最善の利益を勘案するというところの判断基準になるんでしょうか。

鈴木国務大臣 運用会社の方の立場に立ってでございますけれども、やはり御指摘のとおり、金融リテラシーの高い方とそうでない方というのはあるんだと思います。まさにそれは属性に関わるところでありまして、資産をどれぐらい持っているとか、あるいはリスクテイクをどれぐらい許容できるとか、その辺はばらばらでありまして、それは運用業者におきまして、十分相手を見ながら、勧めるべき商品等についてもよくよく顧客本位の立場に立ってしっかりと対応していく、そういうことが求められているのではないか、そういうふうに理解をしております。

前原委員 今おっしゃったように、金融サービスの提供者が、その時々の顧客の属性や資産形成の目的の変化を把握して、そして、顧客等の最善の利益を勘案した業務を遂行していくということでありますけれども、監督当局は、ですから、どのようにそれを継続的に判断していくのかといったことをお伺いしています。

鈴木国務大臣 金融庁といたしましては、庁内に設置しております利用者相談室というのがございますが、そこへ寄せられる相談、苦情等も最大限活用いたしまして、今回の法案を踏まえ、金融事業者において、顧客の最善の利益が勘案され、顧客本位の業務運営に向けた取組の一層の定着、底上げが図られているか、しっかりこれはモニタリングを常にしていきたいと思っております。

前原委員 運用する側もいろいろな人がいるわけです。先ほど大臣がおっしゃったように、専門的な知識が全くない、ほとんどない方もおられれば、プロのような様々な知識を持っている方々がおられるわけですよね。そういったところで、どのようにそれを、顧客等の最善の利益を勘案してというところで、サービス提供者が法律の趣旨を果たしていくのかということは極めて難しいことであるし、監督する官庁も継続的なモニタリングというのは本当に必要だというふうに思いますので、先ほどのベストプラクティスの話もそうでありますけれども、監督官庁、金融庁自身が経験則を積み重ねながら、そういったことがしっかりとフォローアップできるように御努力をいただきたいなと思います。

 私、この法案を金融庁から説明をもらったときに一番疑問に思ったのが、要は、顧客が希望する資産形成の方法と、金融サービス提供者が専門的な観点から最適解と導いた資産形成の方法との間に乖離とか相違、ギャップがあることも十分考えられるわけですね。つまり、顧客の希望と顧客の最善の利益との間に乖離、相違が生じている場合の誠実公正義務とは、どのような見解を監督官庁として持っておられますか。

鈴木国務大臣 今般の法案につきましては、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に業務を遂行すべきことを義務づけることとしております。これは、金融サービスの提供に当たりまして、顧客等の属性、目的やサービスの特性等を踏まえ、自ら提供できる金融サービスの中からその顧客等に最も適したサービスを提供できるよう業務を遂行することを求めるものであります。

 したがいまして、金融事業者は、顧客が希望する商品、サービスであったとしても、必ず提供しなければならないというわけではなく、顧客の意向のほか、属性を十分に確認をする、商品、サービスのリスクなどについて顧客が理解できるよう分かりやすく情報提供をするなど、顧客の利益を考えた業務運営を確保することで、顧客等の最善の利益を勘案する義務を履行することができると考えております。

 中には、極めてリスクが高いけれどもリターンが大きいので、どうしてもこの商品を欲しいという方があったとしても、そこはしっかりとした金融業者として最も最善を尽くしていく、顧客等の最善の利益を勘案するという観点から、それは売らないといいますか、そういうこともすべきだ、することができる、そういうふうになっております。

前原委員 金融商品というのは、元本割れのものもあるし、元本保証のものもあるでしょう。そして、今大臣がおっしゃったハイリスク・ハイリターンのものもあるし、ハイリスクの方になれば損をするということもありますけれども、それは個人の責任ではなくて、そういうものについて、サービス提供者は予見できるものであれば販売しないということを今御答弁されたということでよろしいんですか。

鈴木国務大臣 そのように答弁いたしました。

前原委員 買いたいものを売らないということもなかなかのものだと思うんですけれども、そういったところまで踏み込んで説明責任を負うんだ、それが今回法改正による義務なんだということで理解してよろしいですね。はい。

 その上で、顧客への最善の利益を勘案されなかったと認定された場合、監督上の指導や行政上の措置を講ずるだけであって、罰則は設けられていませんよね、今回。これはなぜ罰則が設けられていないんですか。

鈴木国務大臣 罰則ではございませんが、行政対応をするということで、いわゆる徴求、報告を求めるとかそういうことはできるということになっております。

前原委員 それで抑止力になるとお考えですか。

鈴木国務大臣 このことについては、従来なかったことでありますが、第一歩ということではないかと思います。

前原委員 今までいろいろなトラブルが起きていますよね。例えば、外貨建て一時払い保険とか、ファンドラップとか、仕組み債とか、毎月分配型投信といったサービスの提供では、一部不適切な販売が行われて問題になっているということが指摘をされているわけであります。

 では、今回の法律案で、これまでとは何が異なって、どのように顧客本位の業務運営が担保されていると考えるのか。そして、今回の法改正で、今まであった不適切な販売、先ほど申し上げた外貨建て一時払い保険とか仕組み債とか、こういった問題点はなくなるというふうに言い切れるかどうか。その点の答弁を求めます。

鈴木国務大臣 これまでのことを申し上げますと、これまで金融庁におきましては、金融事業者がよりよい金融商品・サービスの提供を競い合うよう促していく観点から、金融事業者が顧客本位の業務運営におけるベストプラクティスを目指す上で有用と考えられる原則、これは顧客本位の業務運営に関する原則、これは任意のものでありますが、これを定めて金融事業者の取組を後押ししてまいりました。これによりまして一定の進展が見られましたけれども、先ほど申し上げましたとおり、なお課題が指摘をされているところでございます。

 このため、この法律では、これまで金融事業者に促してきた顧客本位の最善の利益を図る取組について、法令上の義務とするとともに、企業年金関係者もその対象に加えることとし、金融事業者に不適切で悪質な業務運営が認められる場合には、必要な行政処分を行うことができることとすることで、金融事業者等の取組の一層の定着、底上げを図っていきたいと考えております。

 以上のようなことを踏まえまして、これからも、金融事業者等の販売管理体制が一段と顧客本位の業務運営の確保に沿ったものとなりますように、モニタリング、これにはしっかりと力を入れてまいります。こうしたことを通じて、これまでと異なった顧客本位の業務運営というものが担保されていくのではないか、そのように期待をしているところです。

前原委員 つまり、金融事業者の手数料収入優先の営業というものはなくなるということでよろしいんですか。

鈴木国務大臣 顧客本位の対応ということでありますから、そういうものは改善されていく、そういうふうに思います。

前原委員 しっかり、こういったものは根絶をしていくということで、取組をしていただきたいと思います。

 それでは、残りの時間で、金融経済教育推進機構についてお話を伺わせていただきたいと思います。

 まず、今まで日銀が事務局を担ってきた金融広報委員会が任意団体であるのに対し、本法律案では、金融経済教育機構が認可法人として法定化されました。任意団体から認可法人へと移行する意味、これによってなぜ国民の金融リテラシーが向上するとなるのか、具体的、また説得力のある御答弁をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 金融経済教育推進機構、これが金融リテラシーの向上とか資産所得倍増にどのように貢献するかということだと思います。

 個人が自らのニーズやライフプランに合った適切な金融商品・サービスを選択をし、安定的な資産形成を実現するためには、国民の金融リテラシー向上に向けた取組を行うことが重要であると考えております。しかしながら、金融リテラシーの向上にとって不可欠な金融経済教育が広く国民に行き届いていない状況にあるわけでございます。

 金融経済教育が効果的に行われていない原因といたしましては、政府や関係団体等による金融経済教育に関する取組が十分に調整されておらず非効率であること、実施主体ごとに教育内容に偏りがある、教育の実施主体が民間の金融関係団体や金融機関では、販売目的ではないかと疑われ、受け手に敬遠されるとの指摘がありました。

 金融経済教育推進機構を設立をして、国の一定のガバナンスの下で、官民一体となって金融経済教育を広範かつ効率的に実施することによりまして、国民の金融リテラシーの向上、それから資産所得の増加、この実現に結びつけていきたいと考えております。

前原委員 金融経済教育推進機構というものが設立されるわけでありますけれども、この手のものは、また金融庁やあるいは役人の天下り先になるんじゃないかといった批判は常にあると思うんですけれども、この点については大臣はどう答弁されますか。

鈴木国務大臣 天下りの問題につきましては、国民の皆さんからも大変厳しい目が向けられている、そういうふうに理解をしております。

 今度設立されます金融経済教育機構につきましては、理事長については内閣総理大臣が認め、そして、理事につきましては、その理事長が申し出た者を内閣総理大臣として認可するということでございますので、そうした内閣総理大臣が関わるという中において、国民からの批判の大きい天下りということが厳に起こらないように、しっかりそこで担保していきたいと思っております。

前原委員 私は役人の人が全て悪いと言うわけじゃないですけれども、第三者委員会みたいなものが客観的に判断して、この人は適切だという人をやはり選ぶということが大事で、そういうものがない中での天下りというものはやはり厳に慎まなきゃいけない、私はそう思っておりますので、是非その点は徹底していただきたいというふうに思っております。

 この教育推進機構には、国の予算措置はこれから行われる予定ですか。

鈴木国務大臣 機構に対する出資等についてでありますけれども、官民一体で金融経済教育を推進していくという機構の設立趣旨に照らして、民間団体のみならず、国としても資金面での一定のコミットメントを示すことが望ましいと考えております。

 このため、金融庁といたしましては、日本銀行や関係団体等の関係者による機構の事業や予算等の具体化と並行いたしまして、必要な国としての予算措置についても検討したいと考えております。

前原委員 それはワンショットですか。つまり、一回だけですか、機構をつくるときに。それとも、毎年予算措置を行うのですか。

鈴木国務大臣 実際に動き出してからという面もあると思いますが、毎年ということも想定されるのではないか、そういうふうに思います。

前原委員 どのぐらいの規模ですか。機構を設立するのに入れるお金と、毎年財政出動するのであれば、それは金額はどれぐらいですか。

鈴木国務大臣 先ほど来から同じ趣旨の御質問がございまして、そのときも答えておりますが、実際、具体的な、どれくらいかということについては今の段階でお答えをすることができない、こういうことでありますが、御理解をいただきたいと思います。

前原委員 これ、今日もう採決するということが理事会で確認されているわけでありますけれども、その中で、まだ金額が固まっていないというのは、私はいかがなものかと思いますよ。我々は賛成しますけれども、これについては。早急に、どれぐらいの財政規模を考えているのかということは明確にしていただきたいということは申し上げておきたいと思います。

 私は、先ほど、ハイリスク・ハイリターンあるいは元本割れの商品のところで大臣がおっしゃった答弁というのは、すごく前向きに捉えているんです。つまり、買いたいと言っても売らない場合がある、こういう御答弁でしたよね。

 やはり、こういう金融商品というのは、素人が手を出して、結局損をして、例えば、借金してそれをやっていて、更に借金が増えていくということになると、本当に悲惨な状況になるわけですね。そして、家庭にも大きな影響を及ぼし、あるいは自ら命を絶つというケースも多々あるわけですよね。そういうものを生じさせないということが第一義的に来なきゃいけないですし、そういう意味では、法律で義務づけするというのは消費者保護の観点なんだということ、これが徹底されるということが私は一番大事なことだと思いますが、消費者保護の観点から義務を法定化するんだということをもう一度しっかりと御答弁いただけませんか。

鈴木国務大臣 先生と同じ認識でおります。

前原委員 是非、一回しか質問ができずに、今日採決でございますけれども、先ほど指摘をしたことも含めて、しっかりと説明責任を果たしていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 金融商品取引法、社債、株式等振替法の両改正案について質問します。

 最初に、金融経済教育についてです。

 本法案による金融リテラシーの向上のための取組は、岸田政権の進める資産所得倍増プランの一環です。

 昨年六月に公表された骨太方針では、我が国の個人金融資産二千兆円のうち、その半分以上が預金、現金で保有されているとして、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設が掲げられました。そして、家計の安定的な資産形成に向けて、金融リテラシーの向上に取り組むとしています。金融リテラシーの向上の中には金融経済教育も含まれます。つまり、国が関わる公教育の中で投資への誘導を進めるということであります。

 このような方針に対して、長年、消費者問題、消費者教育に携わってきた専門家から懸念の声が上がっています。日弁連の消費者問題対策委員会消費者教育・ネットワーク部会の弁護士有志は、国家が貯蓄から投資へという政策を推奨し、投資のプラス面ばかりを強調することで、身の丈に合わない投資や投資被害の増大が強く懸念されると指摘して、意見書を出しています。また、消費者教育学会の有志も、政府の進める金融経済教育が資産形成分野に関わる内容や方向性に偏ることがないように求めるとの意見書を出しています。

 そこで、伺います。

 金融経済教育には長年の取組の実績があり、その内容も、家計管理や金融被害の防止など様々な要素があります。本案は、公教育の金融経済教育の中に投資の推奨という内容をつけ加えるものなんでしょうか。いかがですか。

井藤政府参考人 先生おっしゃるとおり、金融教育につきましては、まずもって、ライフプランが今後どうなるかということの認識、あるいは、資産形成といった側面ではなくて、詐欺的な投資勧誘等、金融トラブルに遭わないための教育などというのも、引き続き極めて重要なポイントだというふうに考えてございます。

 他方で、国民一人一人が生涯にわたって豊かな人生を送るためには、老後の人生の様々なステージとなる、必要な資金を確保するため少額ずつでもこつこつと資産形成に取り組んでいくことも、一方で重要な課題だというふうに考えてございます。

 御指摘のとおり、投資にはリスクを伴いますが、一般には、長期、積立て、分散投資によりリスクを軽減させることができるということもあろうと考えてございまして、資産形成を行う上で、そうした投資ということも有効な選択肢となるものと考えてございます。

 もちろん、それぞれの考え方やリスク許容度にとって、投資が最適ではないということもあろうか等ございますが、そうした判断を適切に行うためにも、資金面を含めたライフプランを描いたり金融リテラシーを高めていくことが極めて重要だというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 家計管理と生活設計、株や為替など金融市場の仕組みを学ぶこと、金融経済教育は私も重要だと考えています。今、インターネットを始めとして、投資を勧誘する情報があふれています。投資をしない判断力も含めた金融リテラシー、この向上が求められています。

 そして、言うまでもなく、公教育が個人に投資を推奨する立場となってはならないというふうに考えます。

 従来から、金融経済教育は、消費者教育の一環として、消費者庁を中心として、文部科学省、金融庁、日銀所管の金融広報中央委員会が進めてきました。今度の法改正で、金融庁の認可法人として金融経済教育推進機構がつくられ、金融経済教育の推進体制が変わってまいります。

 そこで、伺います。

 金融経済教育推進機構の構想が公表されたのはいつですか。あわせて、新設する金融経済教育推進機構について、消費者問題、消費者教育の関係者から意見は聴取してきたんですか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融経済教育推進機構の創設につきましては、昨年十一月二十五日の資産所得倍増分科会におきまして、鈴木大臣から、中立的な立場から金融経済教育を提供できるよう金融経済教育推進機構を設立することを申し上げ、資産所得倍増プランに盛り込まれたものというふうに承知してございます。

 また、消費者問題専門家の意見を聴取したかという点でございますけれども、金融経済教育推進機構の設立に関する検討の中では、消費者問題の専門家などが参加する会議において、機構の概要を説明する機会もいただいて、意見も頂戴してございます。

 具体的には、まず、本年二月に開催されました消費者委員会において、当庁の担当者から機構の設立趣旨などについて説明を行い、関係省庁間の密接な連携が必要である旨の御意見を頂戴してございます。

 また、日本銀行が事務局となってございます金融広報委員会には、消費者問題、消費者教育の専門家が委員として参加されているところでございますが、本年一月に臨時委員会が開催されてございまして、当庁の担当者から機構の設立を含む金融経済教育推進体制の見直しについて説明し、審議の上、承認いただいてございます。

 このほか、金融審議会顧客本位タスクフォースにおきましては、昨年九月上旬から十二月上旬まで五回にわたって開催されまして、この機構の設立を含む提言をいただいているわけでございますけれども、ここには消費者問題の専門家の委員も参加していらっしゃいました。

田村(貴)委員 二月に消費者委員会と言われました。法案の提出が三月ですから、消費者問題、教育の関係者から意見が反映されるとは十分思えないですよね。だから懸念の声が上がるんですよ。当然のことだと思います。

 一方、本案策定に当たってしっかり意見を聞いてきたのが金融業界、特に日本証券業協会ではありませんか。日本証券業協会は、岸田総理の資産所得倍増の方針を受けて、昨年七月、中間層の資産所得拡大に向けて、資産所得倍増プランへの提言を公表しました。

 資料一を御覧ください。日証協の具体的な施策の提言をお配りしています。

 1、「投資家の裾野の拡大 NISAの抜本的な拡充と実践的な投資教育の推進」、(1)に、NISA制度の改善、(2)には、実践的な投資教育を推進する官民の体制と施策を体系化し、NISA法と一体として法制化とし、さらに、基本方針、貯蓄も資産形成も国民皆積立て、国は、実践的な投資教育を実施する公的機関として、主として社会人向けの積立投資教育に特化した日本版MaPSを設置と書いてあります。

 このMaPSというのは、イギリスの金融に関わる教育、助言をするために省庁横断的に創設された公的機関だというふうに聞いています。

 資料二、裏面を御覧ください。日本証券業協会が描く日本版MaPSのイメージ図であります。金融庁が真ん中に据わっていますよね。財務局の下に置かれています。下の図は、金融庁の金融経済教育推進機構の説明資料です。

 二つを見比べますと、本当によく似ているんですよね。金融庁が中心であることは同じであります。例えば、上の図にある、日証協のセミナー、講師派遣の実施、個別相談員の配置というのは、下の金融庁、今度のスキームですけれども、学校や企業等への講座展開、個人に対する個別相談とスライドしています。本当によく似ています。

 お伺いします。

 証券業会の提言を丸のみして、今度、金融経済教育推進機構というのをつくるんですか。

井藤政府参考人 私どもといたしましては、日本証券業協会を始めとする様々な各所の御意見を聴取して、この金融経済教育推進機構の立案について検討をしてまいってございます。

 したがいまして、日本証券業協会の提案を丸のみするというような御指摘は当たらないものだというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 そう言いますけれども、この証券業会の提言には、一億総株主という言葉が出てきますよ。また、配付資料にあるように、貯蓄も資産形成も国民皆積立てが基本方針となっています。国民全てに投資させるという方針でありますよ。

 じゃ、こういう方針は政府は共有しないということですか、共有するということですか、一億総株主。

井藤政府参考人 私どもといたしまして、国民のよりよい資産形成のためには、先ほど申し上げましたような長期、積立て、分散投資といったようなことも極めて重要だというふうに考えてございます。

 ただ、私ども金融庁といたしまして、一億総株主といったようなことを公表等をしているというようなことはございません。

田村(貴)委員 なぜ現行の金融経済教育の推進体制を維持しないんですか。政府は機構は中立性が重要だとしていますけれども、金融庁は金融業を重要産業として育成する方針を掲げています。

 岸田政権は、内閣を挙げて、貯蓄から投資を呼びかけています。金融業界の育成を進める官庁が、投資を推奨する金融経済教育を推進するのは、中立性を損なうことになりはしませんか。政府の貯蓄から投資への方針を公教育に持ち込んではならないということを厳しく指摘しておきます。

 大臣にお伺いします。

 金融広報中央委員会の調査によりますと、単身世帯の三三%、そして二人以上世帯の二二%が、運用目的又は将来に備える金融資産を持っていません。貯蓄ゼロ世帯がたくさんあります。投資どころか貯蓄さえもできない、そういう人はたくさんおられるわけですよね。しかも、この状況は長年変わっていません。

 四月の毎月勤労統計調査では、物価変動を反映した実質賃金は前年同月比で三%減となった。十三か月連続で賃金が下がっています。電気料金もまたこれから上がっていきます。

 大臣、国がなすべきことは、賃金や年金を引き上げる、そして所得を増やす、最優先に、目に見える形で、急いでやらないといけないんじゃないですか。いかがですか。

鈴木国務大臣 先生のおっしゃいますとおりに、可処分所得を上げていく、これは賃上げ等を通して上げていくということも一つ重要なことである、こういうふうに思っております。

 岸田内閣の下におきましては、新しい資本主義の下で、まず可処分所得を引き上げる、それが消費に回ることで次の成長を引き寄せ、そして次の分配につなげていくということを考えているわけであります。

 可処分所得を引き上げるためには、賃上げを通じました勤労所得の増加、これに加えて金融資産所得も増やしていくこと、これも重要なことである、そういうふうに思っております。

 したがいまして、国民一人一人が生涯にわたって豊かな人生を送るために資産形成を行っていく上で、投資、これは有効な選択肢になるものと考えているところでありまして、本法案に盛り込まれた施策などを通じまして、家計の安定的な資産形成、これを支援していきたいと考えているところです。

田村(貴)委員 大臣、もう一回お伺いしますね。

 貯蓄から投資へという旗を掲げている中で、投資をする、それから、将来に備えて、ある金融資産を持たない、運用を目的とする資産がない、つまり貯蓄がない、こういう世帯がたくさんいるという中で、資産形成はできないんですよ。

 こういった方々に対して、こういった国民に対して、やはり所得を増やす、できるだけ貯蓄も増やしていく、そこが聞こえてこないんですよ、かけ声ばかりで。

 そうじゃない。それを目に見えて賃金を上げないと、そして所得を増やさないと、これは次の展開、言われるけれども、できないんじゃないですか。いかがなんですか。いつになったら賃金が上がるんですか。

鈴木国務大臣 したがいまして、先ほど御答弁をさせていただいたとおりでございます。

 可処分所得を上げていくために、これはまずは構造的な賃上げの実現であると思っております。岸田内閣におきましても、賃上げ税制の大幅な拡充を始めとして、賃上げの実現に最大限努力をしているわけでありまして、そういうことを通じて、まず所得を上げる、可処分所得を上げていくということであります。

 そして、勤労所得というものも家計において重要でありますけれども、あわせまして、金融所得、これも重要な柱であるわけでありまして、こうした金融所得を拡大していくということについて、今回法律を出させていただいているわけでありまして、これを通じて金融所得の増大にも寄与していきたいと考えているところです。

田村(貴)委員 顧客本位の業務運営について質問します。

 含み損が数千万円単位で発生して、金融庁にも苦情が寄せられているということであります。

 仕組み債について、これはどういうものなのか、簡単に説明していただけますか。

井藤政府参考人 仕組み債というもの、様々なタイプがございますが、一般的には、債券というふうに言っていますけれども、デリバティブ等の損益を組み合わせる形で、顧客に対する値上がり、値下がり等が帰属するような、やや複雑な商品であるというようなことでございます。

 個別の商品について御説明が必要であれば、また御説明いたします。

田村(貴)委員 よく分からないんですけれども、リスクは高いんですよね。

 昨年六月三十日に出された、金融庁の、投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果についてという文書があります。

 ここで金融庁は二点の問題を挙げています。第一に、仕組み債は商品性が極めて複雑であることから、他の金融商品と比べても特に充実した丁寧な説明が求められる。しかしながら、顧客からの苦情、相談から判断すると、商品性を十分理解しないままに仕組み債を購入している例が少なくないと考えられ、金融機関側の説明が不十分であるとうかがわれる。第二に、顧客の真のニーズに応じた販売が行われていない可能性が高い点であると。そうですよね。

 金融庁は、この仕組み債の問題、どのように認識されているのか。これは非常に危ないんですよね。本法案で具体的にこれが改善されるのかどうか。今の金融庁の、昨年六月三十日の問題点の指摘に併せて、どう考えているんですか。

鈴木国務大臣 田村先生が御指摘になりましたとおりに、仕組み債につきましては、商品性が複雑で、顧客によっては理解が困難であり、また、購入した顧客がリスクやコストに見合う利益が得られない場合があると考えています。

 金融庁といたしましては、金融機関における仕組み債の販売管理体制について、例えば、顧客の投資方針や投資経験等を適切に把握をして、それに見合った販売、勧誘を行っているのか、リスクやコストについて顧客に分かりやすく十分な説明を行っているのかといった点について、モニタリングを行っています。中にはこうした体制が不十分な事例も把握しておりまして、その場合には、経営陣と改善に向けた対話なども行っているところです。

 本法律案では、これまで金融事業者に促してまいりました顧客の最善の利益を図る取組につきまして、法令上の義務といたしまして、不適切で悪質な業務運営が認められる場合には、必要な行政対応を行うことができることといたしております。

 これにより、仕組み債の販売につきましても、知識や投資経験等に応じた適切な顧客への販売が行われることになり、また、顧客の最善の利益を図るため、金融機関から顧客に対しより分かりやすい情報が提供されるなど、金融事業者の対応の改善につながるものと考えているところです。

田村(貴)委員 その法律、法案のことなんですけれども、現在の金商法三十七条三では、契約締結前の書面交付において、変動リスクや元本を超える損失リスク、五号、六号ですね、この説明義務を対象としていましたけれども、改正案で除いたのはなぜですか。

井藤政府参考人 委員御指摘の点につきましては、金利、価格変動による元本損失リスクや元本を超える損失リスクについて、金融事業者が金融商品の販売等に関して適用を受ける金融サービスの提供に関する法律においてもその説明が義務づけられているという条項でございました。

 したがいまして、今般の改正におきましては、御指摘の金利、価格変動のリスク等の説明義務につきまして法律上重複するということになりませぬよう、法律間の調整を図って除いていったというものでございます。

田村(貴)委員 それは重複していて何か問題があるんですか。重複でいうならば、説明義務全体が金融サービス提供法と重複しているんじゃありませんか。今の説明、よく分かりませんね。

 先ほど、金融庁の文書の中で、仕組み債については極めて複雑である、たくさんの問題がある、十分な説明がされていない、トラブルに遭っていると大臣から説明がありましたよね。

 リスク、コスト、十分な説明が必要だと言われた。分かりやすい情報提供が必要だと言われた。だったら、この五号、六号、相場変動等において、あるいは保証金を上回る損失について、これは金商法でもしっかりと書面交付しておくべきじゃないんですか。ここを削除してしまったら、金融業界は、金商法上の説明義務が軽減された、そういうふうに受け止めてしまうのではないですか。いかがですか。

井藤政府参考人 御説明いたします。

 書面交付はきっちりとされるわけでございますが、いずれにしても、金融商品販売業者等におきましてそのような誤解が生じて説明義務を十分に果たさないということがないようしっかりと説明もしてまいりますし、私どもとしても、十分な説明がなされるよう、モニタリング等について十分に行っていきたいというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 だったら、金商法で、五号、六号、これをちゃんと継続したらどうなんですか。これは専門家からも指摘されていますよ。金融サービス提供法、金サ法、ここと重複している、それだけでしょう、理由が。これは重複していて今何が問題があるんですか。同じ法律の中で、ここを継承する、こういうことが大事だよと書くことによって、何か矛盾が起こるんですか。なぜ重複したらいけないんですか。答えてください。

井藤政府参考人 この点につきましては、法律的な観点から政府部内で十分に議論を尽くしまして、法律上の義務については、重複を排除した場合においても決して損なわれるものではないし、法律上の整合性という観点から、むしろ重複をなくすべきだというような指摘も踏まえて、このような形とさせていただいたものでございます。

田村(貴)委員 全然、今のは答弁になっていませんよね。合理性がない、説明されていない。やはりこの法律は問題があります。

 最後に、企業や公認会計士等への課徴金納付命令に係る審判手続デジタル化についても質問します。

 このデジタル化に当たって、どのような電子的な手段が用いられるんですか。その際、個人情報や企業機密などが証拠書類や意見陳述書に紛れ込む可能性があります。電子的な送達などデジタルの活用に際して、絶対、情報漏えいはあってはなりません。どのようなセキュリティー対策を考えていますか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁では、政府機関に求められる基準等に基づきまして、これまでも、取り扱う情報の重要度に応じたセキュリティー対策を適切に講じてきたところでございます。

 審判手続における送達や申立て資料等の授受やウェブ会議の方式による審判に関してどのような仕組みを採用するかは、今後具体的に検討を進めることとなりますが、前述の基準等も踏まえつつ、適切なセキュリティーが確保されるようにしてまいりたいというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 審判記録など、セキュリティーの高い手段で管理されるべきだと思います。このシステムというのは、サーバーは国内のものを使って運営していくんでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 政府機関におきましては、システム等の構築に当たり、求められている基準に基づき、取り扱う情報の重要度に応じて適切なセキュリティー対策を講じることとされてございます。

 審判手続におきまして、取得したデータをどのように保管するかは、今後具体的な検討を進めることになりますが、御指摘の審判記録等につきましては、国内でデータ保管することが望ましいと考えてございまして、御指摘のような点も踏まえつつ、適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 仮に情報漏えいなどが起こった場合、責任の所在はどこにあるんでしょうか。

井藤政府参考人 どのような形で情報漏えいが起こったというようなことを踏まえませんと、一概に申し上げることは困難かと思いますけれども、政府が保管しているデータにつきまして情報漏えい等が起こった場合には、一般的には、国としても責任があるものというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 直接面談して行う審判と同様に、公正な手続が必要です。陰で答弁を指南したり指南されること、それから脅迫すること、こうしたことも避けなければならないと思いますけれども、この点についてはどういう対応をしますか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ウェブ会議を使った手続に関しまして、民事訴訟法では、現在でも、民事裁判手続の争点整理をウェブ会議で実施することが認められてございます。その際、カメラを動かして室内を撮影するよう指示するなど、第三者がウェブ会議に不当に関与していないことを確認するといった運用がなされていると承知してございます。

 さらに、昨年の民事訴訟法改正により、ウェブ会議を利用できる場面が拡大されたことを踏まえまして、現在、裁判所におきまして、ウェブ会議時の第三者による不当な関与が生じないよう、適切な運営方法を検討していると承知してございます。

 本法案による審判手続のデジタル化は民事訴訟法の改正を参考にしたものでございまして、引き続き、裁判所による民事裁判手続のデジタル化に関する検討状況も参考にしながら、適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 最後に大臣、私はやはり、金融経済教育推進機構、この創設に相当違和感があります。なぜならば、今までの、現行の金融経済教育、これは消費者庁を中心にして、他の省庁も一緒に入って、日銀も入ってやってきた。これが金融庁が真ん中に据わる。金融庁は金融業界の育成を進めるし、投資を推奨する金融経済教育、ここが推進していくとなると、中立性が保てなくなるんじゃないか。政府自らが、貯蓄から投資、これを大きな旗頭にしているとなると、やはり、専門家が指摘するように、一面的になってしまうんじゃないか、方向性に偏りが出てくるんじゃないか、身の丈に合わない投資や投資被害の増大が強く懸念されていくんじゃないか。

 こうした方向にならないと言えますか、大臣。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 金融経済教育につきましては、今までも様々な主体によりまして行われてきたところでございます。しかし、それが必ずしも十分な成果を上げていなかった。それは、それぞれの主体において十分な調整がなされて効率的な取組がなされていなかったといったような弊害が指摘をされてきたところでございます。

 このほかにも、実施主体ごとに教育内容に隔たりがある、偏りがある、また、教育の実施主体が民間の金融機関や団体、金融機関では、何かその裏に商品を販売しようという目的が隠れているのではないか、そう疑われて受け手にも敬遠されるというような、今までもやってきたわけでありますけれども、そういうような指摘がございます。

 この度、金融経済教育推進機構を設立をして、国の一定のガバナンスの下で、官民一体となって金融経済教育を広範かつ効率的に実施することによりまして、国民の金融リテラシーの向上や資産所得の増加を実現したいと考えております。

 様々、先生からも懸念が示されたところでございますが、そういう懸念というものがきちっと払拭されますように、今後の運営につきましても万全を期していきたいと思います。

田村(貴)委員 時間が来ました。終わります。

塚田委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。道下大樹君。

道下委員 立憲民主党・無所属の道下大樹です。

 私は、会派を代表して、金融商品取引法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論いたします。

 本法案最大の問題点は、金融経済教育の在り方にあります。

 まず、この法案では、金融リテラシーの向上を目的とし、現行の金融広報中央委員会を廃止し、金融経済教育推進機構という新たな組織を創設することとされています。しかしながら、金融広報中央委員会は、戦後長きにわたり金融経済教育を担ってきた組織であり、わざわざこれを廃止して新組織を立ち上げる必要性、合理性について、政府から納得のいく説明がなされたとは言えません。金融リテラシーの向上どころか、新たな天下り先を設けるだけに終わる懸念さえあり、このような組織の新設は認められません。

 また、第八十六条に示された金融経済教育の定義を始め、本法案では、資産形成ばかりが強調されていると思います。当たり前のことですが、投資には元本割れなどのリスクが存在しますし、近年、投資詐欺による被害なども増加傾向にあります。金融経済教育を推進するのであれば、これらの負の側面についてもしっかりと伝えていく必要がありますし、被害防止策や救済策の整備も併せて展開していく必要があるはずですが、政府の対応は十分なものとは思えません。

 そもそも、本法案は、岸田政権の資産所得倍増プランに基づき、家計の安定的な資産形成を図ることを目的の一つとしていますが、岸田政権が当初掲げていたのは所得倍増であり、これがいつの間にか資産所得倍増に変貌してしまったことは、改めて指摘をしておかなければなりません。金融リテラシーの向上のための教育や、資産形成に対する支援自体を否定するものではありませんが、政治が第一に行うべきは、元本割れなどのリスクを伴う投資を促進することよりも、更なる賃上げや、真に今と将来安心できる年金制度など、普通に働けば普通の生活ができる社会、将来も安心できる社会をつくり上げていくことではないでしょうか。

 以上、本法案並びにそもそもの政府の基本姿勢に大きな問題があるということを申し上げ、私の反対討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 日本維新の会の住吉寛紀です。

 私は、会派を代表して、金融商品取引法等の一部を改正する法律案に反対の立場から、また、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の立場から討論いたします。

 今回提出された法案のうち、金商法の一部を改正する法律案については、顧客本位の業務運営の確保、国民の資産形成に関する金融リテラシーの向上、企業開示制度を見直し企業の負担軽減、効率化を図っていることや、デジタル化の進展に対応した顧客の利便性向上、保護に係る施策など、正しい金融知識をもって正しい判断で国民の資産形成に資することになると期待するところであり、我が党としても方向性としては賛同するところです。

 一方で、金融リテラシーの向上に関して、金融経済教育推進機構を創設し、金融経済教育の教材、コンテンツ作成、学校、企業等への講座の展開、個人に対する個別相談、資産形成等に係る相談、助言を容易に受けられる環境整備を主な業務としております。これらの業務内容は官民かかわらず既に実施されていることであり、わざわざ認可法人を設置し、運営方法や規模についても不透明、達成目標も設定されておらず、効果測定の手法も検討はこれからといった状況で、この機構が官僚の天下り先となり、国民の税金が正しく使われるのか不明であり、賛同することはできません。

 また、社債、株式等の振替法の一部を改正する法律案に関しては、デジタル化への対応やスタートアップ企業の上場日程の期間短縮など、必要な法改正であると認識しております。

 四月の実質賃金は前年同月比マイナス三・〇%と、十三か月連続マイナスと発表されました。物価の伸びに賃金上昇が追いついていない状況が長らく続いており、国民の生活は相対的に厳しい状況にあります。

 そのような中で、国民が納めていただいている大切な税金の使い道を国民目線で考え、国民の幸せのために尽力していくことをお誓い申し上げ、金商法改正案について反対、そして振替法改正法案について賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党を代表して、金融商品取引法等の改正案に反対の立場で討論を行います。

 まず、金融経済教育の内容の問題です。

 昨年十一月に打ち出した岸田政権の資産所得倍増プランは、国民に定着しない貯蓄から投資政策を進めるための手段として、金融経済教育を充実するとしました。そのプランに従う本改正案では、金融経済教育の目的に、金融知識を活用する能力の育成を図るための教授及び指導と定義されており、まさに国民に対して安定的な資産形成と称して金融投資を押しつけるものです。

 また、本改正案の金融経済教育では、公教育における教育、指導を重要視しており、未成年に対して投資の推奨が行われることは問題です。

 官民挙げて金融経済推進機構を創設するなど、国のお墨つきの下に、投資のプラス面ばかりが強調され、身の丈に合わない投資や投資被害を助長する懸念は拭えません。

 仕組み債を始め、投資に係るトラブルは後を絶ちません。業界の姿勢を厳しくただすとともに、従来の消費者教育の理念である消費者の自立支援、消費者市民社会の形成に寄与する力を育むことこそ徹底する必要があります。

 そもそも、本案の基本方針の作成や機構の原案は、日本証券業協会が昨年七月に公表した「中間層の資産所得拡大に向けて 資産所得倍増プランへの提言」をそのまま反映したものであります。本案がビジネスチャンスの拡大を狙う金融業界の要望に沿ったものであることは明らかであります。

 また、情報提供のデジタル化についても、電子的な手段が苦手な顧客が不利にならないような配慮義務が欠けている点が問題であり、運用上で改善が必要であることを指摘して、討論とします。

塚田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 これより採決に入ります。

 まず、金融商品取引法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塚田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、中西健治君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。米山隆一君。

米山委員 それでは、ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    金融商品取引法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 金融経済教育の意義・目的には、金融リテラシー(金融に関する知識・判断力)の向上を通じて、国民一人一人が、経済的に自立し、より良い暮らしを実現していくことを可能とすることがあることに鑑み、以下の事項に留意した金融経済教育を推進すること。

  1 金融商品取引を装った無登録営業、詐欺的な投資勧誘、脱法的なマルチ商法による被害が多数生じている現状を踏まえ、被害防止に必要な情報を適時適切に提供する仕組みを整えるとともに、批判的かつ多角的な判断力のかん養を支援すること。

  2 投資の必要性又は有益性のみを強調するのではなく、リスクの正しい理解の浸透にも努め、個人のライフプランを踏まえた資産形成における自由な意思決定による貯蓄と投資の組合せを尊重すること。

 二 金融経済教育推進機構の運営に当たっては、官僚の天下り先の確保や新たな資格認定を通じた利権の温床とならないよう人事情報や財務内容を積極的に開示するほか、以下の事項に留意すること。

  1 金融経済教育推進機構の目的は、「適切な金融サービスの利用等に資する金融又は経済に関する知識を習得し、これを活用する能力の育成を図るための教授及び指導を推進すること」であって、本法による改正後の金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律第八十二条第一項に基づく基本方針の内容に完全に含まれるものではないこと。

  2 1の「適切な金融サービスの利用等に資する金融又は経済に関する知識」には、資産形成だけではなく、金融広報中央委員会が従来扱ってきた家計管理・生活設計や消費者被害防止等も含まれ、その知識を習得し、「これを活用する能力の育成を図るための教授及び指導」は、金融経済教育推進会議作成の金融リテラシー・マップを基本としたものを通じて行われるものであること。

  3 政府・金融経済教育推進機構は、これまで金融広報中央委員会が実施してきた学校教育に向けた金融教育プログラムをはじめとした、金融教育教材作成、教員向けセミナー、作文・小論文コンクール等の活動、及び経年的に行ってきた「家計の金融行動に関する世論調査」や「金融リテラシー調査」等の基礎的な調査・報告等の意義・成果を踏まえながら、活動内容を充実させるとともに、金融経済教育が広く国民に提供されるよう取り組むこと。

 三 金融経済教育推進機構に対して国が行う監督の実効性を確保するため、及び、地方公共団体や民間事業者の取組に対する支援を全国において着実に実施するために必要な体制を整備すること。

 四 金融サービスの提供に当たり、「顧客等の最善の利益」を図るための取組が徹底されること。

 五 本法附則第六十九条の検討条項に関して、改正後の各法律の施行の状況等を勘案するに当たっては、金融サービスの顧客等の利便が向上し、かつ当該顧客等が保護されているかを十分に検証し、必要があると認めるときは、各法律に基づく制度の改善につなげるための検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

塚田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塚田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融担当大臣鈴木俊一君。

鈴木国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

塚田委員長 次に、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塚田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

塚田委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、坂井学君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおりの民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律の一部を改正する法律案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。坂井学君。

坂井委員 それでは、本起草案の趣旨及び主な内容につきまして、提出者を代表して御説明申し上げます。

 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律は、人口の減少、高齢化の進展等の経済社会情勢の急速な変化が見込まれる中、国及び地方公共団体が対応することが困難な社会の諸課題の解決のため、休眠預金等に係る資金を、預金者等の利益を保護しつつ、民間公益活動の促進に活用することにより、国民生活の安定向上及び社会福祉の増進に資することを目的とするものであります。本法律は、平成二十八年に議員立法により制定され、平成三十年の全面施行後、検討の目途として規定されている五年が経過したところであります。

 これまで、休眠預金等活用制度に関する取組は、全国各地において着実に進められ、コロナ禍や物価高といった社会経済の変化にも柔軟に対応し、社会課題の解決及びそれに向けた自律的かつ持続的な仕組みの構築に所期の成果を上げてまいりました。

 他方で、民間公益活動の担い手の組織基盤等の一層の強化が必要であることに加え、国内における外国人との共生社会実現等の促進や、社会的課題解決と経済成長の双方を追求する社会的起業家の支援等が求められているところであります。

 本起草案は、こうした状況に鑑み、民間公益活動を一層促進するため、目的規定等を改正するとともに、非資金的支援に関する規定の整備を行うほか、指定活用団体から資金分配団体への出資を可能とする等の措置を講じようとするものであります。

 次に、本起草案の主な内容について御説明いたします。

 第一に、目的規定に民間公益活動の自立した担い手の育成等を図ることを明記するとともに、休眠預金等交付金に係る資金の活用に関する基本理念の規定における経済社会情勢の急速な変化の例示として、国際化の進展を明記することとしております。

 第二に、資金分配団体の定義に、実行団体に対し助成等に付随する助言又は派遣を行うことを明記するとともに、指定活用団体から休眠預金等交付金に係る資金を原資とする助成等を受ける団体として、専ら助言又は派遣を行う活動支援団体を創設することとしております。

 第三に、指定活用団体の業務として、資金分配団体に対し出資を行うこと等を追加することとしております。

 第四に、指定活用団体が休眠預金等交付金を人件費その他の事務に要する経費に充てることができる特例措置の期限を、五年間延長することとしております。

 第五に、この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。また、この法律の施行後五年を目途として、改正後の法律の規定について、施行状況等を勘案をして検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられることとしております。

 以上が、本起草案の提案の趣旨及びその主な内容でございます。

 何とぞ御賛同いただきますようよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塚田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 本件について発言を求められておりますので、これを許します。田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 発議者に質問をします。

 我が党が本法案の成立に反対した理由の一つは、資金分配における利益相反を避ける仕組みがなかったためであります。その後、利益相反を避ける仕組みについては、指定活用団体、資金分配団体、実行団体、審議会と、それぞれどのような措置が取られてきたでしょうか。

金子(恵)委員 田村委員にお答えいたします。

 休眠預金の活用については、制度、運用の両面から利益相反が生じることがないよう十分配慮がなされてきたものと承知しております。

 制度面では、政府の基本方針において、利益相反の防止等の徹底を基本原則の一つとして、これに基づいて、必要な手続が講じられております。

 具体的には、指定活用団体及び資金分配団体による申請団体の審査は、第三者で構成される審査会議を設置してこれを行うこととし、その審査委員は利害関係者を選任しないなど、利益相反が生じないようにすること、助成団体を決定する際には、特別の利害関係にある理事等を除斥して理事会等でこれを行うことなどが義務づけられております。

 また、政府の休眠預金等活用審議会においても、委員、専門委員と指定活用団体等の役員等との兼業を禁止すること、利益相反等を生じるおそれがある審議、議決等から関係する委員、専門委員を除斥することとされております。

 さらに、本年三月には、資金分配団体と実行団体に申請する団体との役員の兼職を禁止する措置等を追加し、制度の厳格化が図られたところです。

 次に、運用面では、指定活用団体に公益通報窓口を設置し、利益相反が疑われる情報提供があったときには、機動的な実態把握と指導が行われてきたと承知しております。

 今後とも、こうした措置を徹底することにより利益相反の防止に努めるよう政府に求めてまいります。御理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

田村(貴)委員 続けて二問お伺いします。

 今回の法案改正事項の一つに、指定活用団体から資金分配団体に対して出資を可能とする措置があります。民間のファンド運営事業者が運営するファンドが資金分配団体となることが想定されます。資金分配団体となったファンド運営事業者が自社のファンドが出資する事業会社等に対して休眠預金の出資を行い、利益相反が生じる可能性はないでしょうか。それをさせない対策について伺います。

 もう一問。前回の審議の際に、我が党は、休眠預金になる前に預金者に払い戻す努力を従来の金融機関が行ってきた以上に行うべきだと提起しました。当時の法案提出者は、周知の努力をしたいと回答されました。預金者への返還は進み、そして休眠預金は減っているのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

山本(と)委員 御質問ありがとうございます。

 最初の質問について、お答えを申し上げたいと思います。

 委員御指摘の利益相反の防止という観点は、我々立法者も立法当初から問題意識を持っておりまして、本法の二十二条におきましては、公正に活用しなければならないとしっかり明記をさせていただいております。その意図をしっかり政府も酌み取っていただいて、基本方針の中でも、利益相反の防止の徹底ということが定められております。

 したがって、御指摘のような、ファンドが仮に資金分配団体になったとしても、実行団体を選ぶ際には公募をしなければいけないという義務づけもしております。したがって、ファンドが自身の出資先あるいは子会社等を恣意的に選ぶということはできないということになっております。

 また、この改正法案が成立いたしますと、政府が詳細な制度設計をつくっていくことになりますが、委員御指摘の利益相反防止ということは我々も考えておりますので、しっかり、その点は政府に強く求めていくということにしておりますので、引き続き、どうぞ御理解のほどをよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

稲津委員 田村議員にお答えいたします。

 預金者への返還及び休眠預金の状況についての御質問がありました。

 休眠預金等活用法では、仮に休眠預金等となって預金保険機構に移管された場合であっても、預金者が返還要求を行うこととされておりまして、この旨が周知されるよう、また、そもそも休眠預金等が発生しないよう、政府において広報活動が行われてきました。

 具体的には、十年以上取引のない預金は休眠預金等となることや、休眠預金等となった後も金融機関で払い戻せること等について、広く国民への周知及び理解促進を図るため、これまで政府広報等を通じて、テレビ、ラジオ広告、インターネット上でのバナー広告や動画広告等が実施されているものと承知をしております。

 その上で、これまでの各年度の休眠預金等の発生額は、二〇一九年度、一千四百五十七億円、二〇二〇年度、一千四百八億円、二〇二一年度、一千三百七十四億円、払戻し額は、二〇一九年度、四十五億円、二〇二〇年度、百八十八億円、二〇二一年度、二百五十二億円となっています。

 この実績をどのように捉えるかにつきましては、そもそも、休眠預金等の発生、払戻しが二〇一九年に開始されたものであり、現時点ではデータの蓄積が限られていること、それから、休眠預金等の発生、払戻しの規模は経済社会情勢等の様々な要因により変動すると考えられることといった理由から、一概に申し上げることは困難だと考えますが、いずれにしても、休眠預金等を元の預金者に払い戻すための努力を行うことは大変重要なことでございますので、休眠預金等が着実に払い戻されるよう、政府や金融機関においてしっかりと対応されるよう働きかけていきます。

田村(貴)委員 終わります。

塚田委員長 これにて発言は終わりました。

 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

塚田委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十七分散会


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