衆議院

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第3号 令和5年11月17日(金曜日)

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令和五年十一月十七日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 津島  淳君

   理事 井上 貴博君 理事 大野敬太郎君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 宗清 皇一君

   理事 山田 美樹君 理事 櫻井  周君

   理事 末松 義規君 理事 伊東 信久君

   理事 稲津  久君

      石原 正敬君  英利アルフィヤ君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大塚  拓君    鬼木  誠君

      金子 俊平君    木原 誠二君

      岸 信千世君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    塚田 一郎君

      中川 郁子君    中山 展宏君

      仁木 博文君    西野 太亮君

      藤丸  敏君    藤原  崇君

      古川 禎久君    若林 健太君

      階   猛君    野田 佳彦君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    米山 隆一君

      小野 泰輔君    沢田  良君

      掘井 健智君    伊藤  渉君

      竹内  譲君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       井林 辰憲君

   財務副大臣        赤澤 亮正君

   内閣府大臣政務官     神田 潤一君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 上野 有子君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  油布 志行君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局政策立案総括審議官)      堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (財務省大臣官房長)   宇波 弘貴君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    江島 一彦君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官)     青山 桂子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   参考人

   (日本銀行総裁)     植田 和男君

   参考人

   (日本銀行理事)     高口 博英君

   参考人

   (日本銀行理事)     加藤  毅君

   参考人

   (日本銀行理事)     清水 誠一君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  前原 誠司君     鈴木  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木  敦君     前原 誠司君

同月十七日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     仁木 博文君

  鬼木  誠君     中川 郁子君

  木原 誠二君     西野 太亮君

  掘井 健智君     小野 泰輔君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     鬼木  誠君

  仁木 博文君     小田原 潔君

  西野 太亮君     木原 誠二君

  小野 泰輔君     掘井 健智君

同日

 理事井上貴博君同日理事辞任につき、その補欠として大野敬太郎君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十一月十七日

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会閣法第五六号)(参議院送付)

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会閣法第五七号)(参議院送付)

同月十四日

 消費税インボイス制度の中止に関する請願(菊田真紀子君紹介)(第二九号)

 消費税率五%への引下げに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一三八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第一四一号)

 同(本村伸子君紹介)(第一四二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会閣法第五六号)(参議院送付)

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(第二百十一回国会閣法第五七号)(参議院送付)

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

津島委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事井上貴博君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に大野敬太郎君を指名いたします。

     ――――◇―――――

津島委員長 この際、赤澤財務副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。財務副大臣赤澤亮正君。

赤澤副大臣 おはようございます。この度、財務副大臣を拝命いたしました赤澤亮正でございます。

 財務副大臣としての職責を果たすべく、鈴木大臣の御指示を仰ぎつつ、矢倉副大臣とともに、職務の遂行に全力を傾注する所存でございます。

 津島委員長を始め委員の皆様の御指導をよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

津島委員長 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君、理事高口博英君、理事加藤毅君、理事清水誠一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津島委員長 去る令和四年十二月十六日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁植田和男君。

植田参考人 私ども日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。

 まず最初の、最近の経済金融情勢について御説明いたします。

 我が国経済は、緩やかに回復しています。輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっております。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は緩やかに改善しています。こうした下で、設備投資は緩やかに増加しています。雇用・所得環境は緩やかに改善しています。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加しています。先行きは、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果などにも支えられて、緩やかな回復を続けると見ています。

 物価面を見ると、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、一頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足下は二%台後半となっています。先行きについては、来年度にかけて二%を上回る水準で推移した後、二〇二五年度にはプラス幅が縮小すると見ています。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、二〇二五年度にかけて、二%の物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくと見ています。

 先行きのリスク要因を見ますと、海外の経済、物価動向、資源価格の動向、企業の賃金、価格設定行動など、我が国経済、物価をめぐる不確実性は極めて高い状況です。その下で、金融為替市場の動向や、その我が国経済、物価への影響を十分注視する必要があると考えています。この間、我が国の金融システムは、全体として安定性を維持しています。先行き、グローバルな金融環境のタイト化の影響などには注意が必要ですが、内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、我が国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有しています。より長期的な金融面のリスクとしては、金融機関収益への下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうおそれがある一方、利回り追求行動などから、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあります。現時点ではこれらのリスクは大きくないと判断していますが、先行きの動向を注視する必要があります。

 次に、金融政策運営について御説明申し上げます。

 日本銀行としては、現時点では、物価安定の目標の持続的、安定的な実現を十分な確度を持って見通せる状況にはなお至っておらず、今後、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要と考えています。こうした中、長短金利操作付量的・質的金融緩和の下で粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針です。

 また、日本銀行は、十月に、長短金利操作の運用において、柔軟性を高めておくことが適当であるとの判断に基づき、長期金利の上限のめどを一・〇%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うことを決定しました。

 日本銀行としては、賃金の上昇を伴う形で二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現することを目指して金融政策を運営してまいります。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

津島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 目下、物価高を上回る賃上げを伴う経済の好循環、これを生み出すための正念場にあるという認識の下で、金融政策について、まず幾つか基本的なポイントを改めて確認をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、総裁にお伺いしますが、我が国では物価高が継続をしており、本年の春闘においては三十年ぶりの賃上げ率を達成したものの、賃金の上昇はいまだ物価高に追いついておらず、家計の負担は増しております。

 また、先行きにつきましても、十月三十一日に公表された日本銀行の展望レポートを見ると、生鮮食料品を除く消費者物価指数の前年比は、二〇二三年度と二〇二四年度は共にプラス二・八%となっており、物価高が当面継続する見通しとなっています。御存じのとおり、実質賃金も対前年マイナス傾向が続いております。

 そこで、最初に総裁にお伺いしますけれども、こうした物価見通しの下で、日本銀行の金融政策運営の基本的な考え方、これをまず披瀝いただきたい。

 そしてもう一つは、今般政府がデフレ完全脱却のための総合経済対策を決定したところで、来週から補正予算の審議に入ってまいりますけれども、この政府の経済対策と日銀の金融政策の考え方がどのように整合的か、これについてもできるだけ分かりやすく御答弁をお願いしたいと思います。

植田参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、今回の私どもの展望レポートでは、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、来年度にかけて二%を上回る水準で推移するという見通しを示してございます。

 こうした高めの物価上昇率が当面続く背景として、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響がやや長引いていることや、このところの原油価格の上昇がございます。

 ただし、こうしたコストプッシュによる物価上昇圧力は、起点となる輸入物価の前年比が本年春頃からマイナスとなっているということも踏まえますと、時間を要するものの、次第に和らいでいくと考えております。

 この間、コストプッシュ圧力の影響などを除いて見た消費者物価の基調的な上昇率は、二五年度にかけて、二%の物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくと見ていますが、その際には、賃金と物価の好循環が強まっていく必要があると考えております。

 我が国では、賃金、物価が上がりにくいとの考え方や慣行が社会に根づいてきたことも踏まえますと、好循環が強まっていくかどうかに関する不確実性は大きく、現時点では、物価安定目標の持続的、安定的な実現を十分な確度を持って見通せる状況にはなお至っていないというふうに判断しております。

 こうした判断の下、日本銀行としては、イールドカーブコントロールの枠組みの下で粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針でございます。

 政府におかれましては、総合経済対策において、現状をコストカット型経済から三十年ぶりの変革を果たすチャンスと捉えた上で、足下の物価高から国民生活、事業活動を守る対策に万全を期すとともに、賃上げのモメンタムの維持拡大、生産性向上を含む供給力強化等を図るとされています。

 政府と日本銀行との間で、物価情勢に対する基本的な見方について違いはないほか、目指している方向性も一致していると認識しております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 どこまでいっても、一般の方からすると、物価上昇というよりも、やはり賃金が上がる、これを大変期待をされているわけで、総裁におかれましても、賃金を上げていくということを折に触れて訴えていただきたいというふうに思いますけれども、これを実現するために、今粘り強く金融緩和を継続いただいております。

 そして、今答弁の中にも出てまいりましたけれども、コストプッシュからディマンドプルにどう変えていけるか、非常に重要な局面ですけれども、何といっても、こういう経済状況が長いものですから、それ以前のディマンドプルのような状況を知っている人がどんどん世の中から減っておりますし、これを打開していくのはそう簡単なことではない。だからこそ、政府と日銀、粘り強く日銀においては金融政策で取組を進めていただいているわけですが。

 その中で、この十月、金融政策決定会合で、イールドカーブコントロールの運用を変更されております。これについても総裁にお伺いします。

 一つは、運用を変更した背景はどういうものなのか。そして、もう一つは、今回の措置を受けて長期金利が上昇する可能性があります。これは、普通の人の暮らしからいきますと、住宅ローン金利が上がるのではないか、あるいは、特に中小・小規模企業の事業者の経営者から見ると、企業向けの貸出金利に影響が及んでくるのではないか。こうした点についても総裁の見解をお伺いしたいと思います。

植田参考人 御指摘いただきましたように、日本銀行としては、イールドカーブコントロールの枠組みの下で、粘り強く金融緩和を維持する方針でございます。

 そのイールドカーブコントロールですが、具体的な運用については、これまでも、効果と副作用のバランスを勘案して随時見直してまいりました。

 十月の私どもの会合では、従来は厳格に適用してきた一%の上限を、長期金利、十年国債の金利ですが、一%の上限をめどとし、その下で大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うことにいたしました。

 この背景としましては、内外の経済や金融市場をめぐる不確実性が極めて高い現在の状況において、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなり得ると判断したことでございます。

 なお、長期金利の厳格な上限は設定しませんが、こうした調節運営の下で、長期金利に上昇圧力がかかる場合でも、一%を大幅に上回るとは見ておりません。

 その上で、住宅ローンへの影響ですが、大半を占める変動金利型については、短期の政策金利を現状維持としてございますので、影響はないというふうに考えております。

 新規の固定金利型住宅ローン金利については、長期金利とある程度連動する面がありますので、昨年来の長期金利上昇を受けて、若干上昇してきております。

 企業向けの貸出金利ですが、約半分を占める変動金利型については、やはり短期政策金利を現状維持としていることから、影響はないと見られます。

 新規の固定金利型の貸出金利ですが、中長期の金利とある程度連動する面がございます。ただし、固定金利型の貸出しについても、金利の更改、新たな期間に入るまでの期間が短いものが多いということから、これまでのところ、長期の新規約定平均金利の上昇幅は比較的小幅にとどまっていますが、住宅ローン金利、企業向け貸出金利の動向については、引き続き丹念に点検してまいりたいと思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 物価高で家庭も企業もコストが増大をする中で、大変苦しい状況に陥っている方もみえる。そこにおいて、今回の金融政策の変更が新たなコストとしてのしかからないように、慎重にマーケットの状況を見ながら、引き続き、金融政策のかじ取りをお願いをしたいというふうに思います。

 次に、多角的レビューについて、これも担当の理事にお伺いします。

 日銀は、今年四月に、一年から一年半程度時間をかけて金融政策運営の多角的レビューを行うと発表されておりますが、現時点での進捗状況について御教示をいただきたいと思います。

清水参考人 お答え申し上げます。

 金融政策運営の多角的レビューでは、過去二十五年間に実施してきました各種の非伝統的金融政策手段の効果について、それぞれの時点における経済、物価情勢との相互関係の中で理解するとともに、副作用を含めて金融市場や金融システムに及ぼした影響も分析する方針としてございます。

 現在、その方針に沿いまして、日本銀行内部での分析に加え、日本銀行以外の方々との意見交換も進めているところでございます。

 内部での分析につきましては、日本銀行内の関係部署が分析を進めておりまして、その分析の一部については、学界や専門家の方々との議論を開始したところでございます。

 一例を申し上げますと、今週開催された東京大学との共催コンファレンスでは、多角的レビューの視点を意識し、国際経済環境の変化の日本経済への影響について討議を行いました。

 また、来月には、非伝統的金融政策の効果と副作用をテーマとしたワークショップを開催し、日本銀行のスタッフの報告について、専門家、学者の方々から意見をいただくこととしてございます。

 このほか、日本銀行の本支店のネットワークを生かす形で、企業や金融機関の方々との意見交換も進めております。

 各地で実施しております金融経済懇談会では、日本銀行の政策委員自ら、地域経済を代表する方々と意見交換を行っております。

 また、この冬には、幅広い業種、規模の企業の皆様を対象に、一九九〇年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査を実施することとしておりまして、この間の企業行動の変化や金融緩和の効果、副作用などについて、御意見を頂戴できればと考えております。

 多角的レビューにつきましては、様々な取組を通じまして、多様な知見を取り入れつつ進めてまいりたいと考えてございます。

 以上です。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 今の金融政策の取組は、将来においてきちんと検証しておくことが、今後の日銀の金融政策運営においても非常に重要な内容だと思います。丁寧な検証を重ねて、記録をしっかり残していっていただきたいというふうに思います。

 残り時間僅かになりましたので、中央銀行のデジタル通貨について二問ほどお伺いしようとしておりましたが、総裁にお伺いして終わりにしたいと思います。

 このデジタル通貨、欧州など海外先進国で検討が進んでいるという報道がございます。中央銀行にとって、通貨の安定供給、これは重要な責務でございます。そのため、デジタルな形態での通貨供給についてお伺いをします。

 総裁には、この海外での検討を理事にちょっと答弁いただこうと思っていたんですが、時間の関係でそれを省きまして、様々な海外での検討を踏まえて、日本銀行での現在の検討状況、また今後の展望を御答弁いただいて、私の質問を終えたいと思います。

植田参考人 委員おっしゃいましたように、ヨーロッパ中央銀行が少しこの分野では先に進んでおりますが、私ども日本銀行では、今年の三月までに技術的な検証の基礎的な部分をかなり終えております。その中身としましては、CBDCの発行、還収などの基礎的な機能、それから、予約送金などのユーザーの利便性を考慮した様々な周辺機能、あるいは保有額への上限設定などの検討でございます。

 また、こうした検討の進捗を踏まえまして、四月から、次のステップとしてパイロット実験へ移行してございます。民間事業者の有用な技術や知見を活用するために設置しましたCBDCについても、第一回目の会合を開催したところでございます。

 その上で、今後、我が国でCBDCを導入するかどうかでございますが、これは、内外の情勢も踏まえ、今後の国民的な議論の中で決まってくるものと考えてございます。日本銀行としては、その前提となるものとしまして、CBDCに関する技術面及び制度面の検討を引き続きしっかりと進めてまいりたいと思っております。

伊藤(渉)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

津島委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 皆さん、おはようございます。立憲民主党の野田佳彦でございます。

 今日は、植田総裁に主に金融政策のお尋ねをしようと思っていたんですけれども、この委員会の冒頭に新しい財務副大臣の御発言がございましたので、これはやはりどうしても触れなきゃいけないだろうと思って、急遽質問をさせていただくことになりました。

 適材適所という言葉がこれほどおとしめられた事態はないと思っておりまして、一々申し上げませんけれども、文科大臣政務官、そして法務副大臣に続いて、前任の財務副大臣が事実上更迭をされるという事態になりました。しかも、まさかと思いましたけれども、税理士資格を持ちながら、税金滞納と差押えの常習犯だったということでありますので、この事態が明らかになった時点で、本来はすぐ辞めさせるべきだったんだろうと思うんです。

 先週の週刊誌のゲラが出た段階は、まだ週半ばだったじゃないですか。機敏に対応していればよかったのに、十一月十一日から今日まで、税を考える週間ですよ、しゃれにならないんですよ。まさに国民の皆様に税の意義を啓発をして集中的に広報広聴をやっているときの月曜日に財務副大臣が替わる事態というのは物すごく重く受け止めなければいけないし、その信頼の回復は大変だと思うんです。

 という中で、先ほどの御挨拶、御発言の中にはその辺の含みがなかったんですけれども、これを引き受けるということは相当重大な覚悟と決意を持って臨まれていると私は思うんですが、まず、その点をお尋ねをしたいというふうに思います。

赤澤副大臣 神田前副大臣の辞任、そしてただいまの野田委員の御指摘も含めまして、様々な御指摘や御批判があることは承知をしております。今般、財務副大臣を拝命することとなりましたが、私としても、本当に身の引き締まる思いで重責をお受けした次第です。

 私自身、これまで与党の立場から、足下の物価高から国民の暮らしを守り、賃上げや国内投資を後押しするための今般のデフレ完全脱却のための総合経済対策の策定や、税制の議論などに参画をしてまいりました。

 今般、鈴木大臣から、予算編成、財政投融資、国債、国有財産、金融政策関係の担当との御指示をいただきましたので、こうした分野を通じて信頼回復を図る、そしてまた課題の解決を図る、そのことで国民経済や国民生活に明るさと自信を取り戻し、国民の皆様が安全、安心と思えるように全力を尽くすことにより、信頼の回復、重ねて申し上げますけれども、鈴木大臣の御指示を仰ぎつつ、しっかり職責を果たしてまいりたいというふうに考えてございます。

野田(佳)委員 適材適所というのは本当に、よく私も使った言葉ですけれども、言うはやすく行うは難しであるということは私もいろいろ経験して承知しているんですけれども、今回の場合は余りにも真逆だったので、本当に、どん底に落ちた信頼を回復するというのは大変だろうと私は思います。

 私も財務副大臣経験者なんです。担当も今初めて聞きましたけれども、主計局と、そして理財と官房を担当していました。というように、副大臣も役割分担しながらやりましたけれども、私のときは、リーマン・ショックの直後で税収が九兆円も落ち込んでしまって、やりくりが物すごい大変なときでしたので、予算の査定も、本当に親しい友達をどんどん失っていくような厳しい環境で仕事をさせていただきました。

 財務副大臣は私はとてもやりがいがあると思うんですが、ただ、一言、せっかく来たから申し上げたいんですが、さっき、税を考える週間でこういう副大臣交代でしょう。最近、税について深い洞察もなく物事を決めている傾向が強いと思うんです。防衛費がいきなり二倍だといって増税といって、じゃ、いつ決めるのかと思ったら、いつまでも決まらない。国民はお品書きが時価しか書いていないようなそんな怖い店に入った感覚のときに、今度は急に減税という話が出てくる。

 減税も、この間、階委員とのやり取りで、財務大臣が、財源論としては還元ではないということを認めたじゃないですか。自民党の税調会長も同じようなことを言っていますよね。税を決めるときに、党の責任ある立場の人と政府の責任ある立場の人とキーワードのすり合わせもできないで税を語るなんてことは考えられないと私は思うんですよ。税は国家なりです。

 その辺のちょっと自覚が欠けているような中で政務三役のお一人が替わるわけですから、その空気を是非変えていただきたいと思います。いかがですか。

赤澤副大臣 大変な知識と御経験をお持ちの野田委員の御指摘ですので、今日いただいたお話は私自身重く受け止めたいと思っています。

 その上で、実は、私自身、先ほど申し上げたように、税の直接の担当ではございませんので、その範囲で言えることだけ申し上げるということでありますけれども、今般の定額減税については、総理もいつもおっしゃっているように、三十年来続いてきたデフレ脱却の千載一遇のチャンスである、絶対にデフレに後戻りさせないための一時的な措置として行うということや、また、賃金上昇が物価高に追いつかないということで収入の上昇を実感できない国民の御負担を緩和する、さらには、経済全体のデフレマインドからの転換を図り、物価上昇を乗り越える構造的な賃上げ、消費と投資の力強い循環という大きな経済の流れをつくっていこうということでやったものでございます。

 また、防衛力強化の財源確保についても御指摘いただきましたが、私自身、税調の幹事として昨年の与党税制調査会の議論に参加をしておりました。我が国を取り巻く安全保障環境が非常に厳しさを増す中で、防衛関係費という継続的に必要となる経費の増加に充てるため安定的な財源を確保する、また、行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない部分について対応をお願いするということであり、所得税について実質的に負担増にならないようにするなど、家計や企業への影響に最大限配慮していることも、御案内のとおりでございます。

 これらの諸施策はいずれも、それぞれの目的に沿って、様々な観点から与党において行われた議論、検討を踏まえて、政府としての方針をお示ししているものでございます。引き続き、与党と緊密に連携しつつ、制度の詳細について検討を深め、国民の皆様の御理解をいただけるよう、丁寧な説明に努めてまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 これ以上、もう副大臣にお尋ねはいたしません。要は、適材かどうかが今問われているのは任命権者である総理御自身じゃないかと私は思いますので、機会があったら総理にそういうお尋ねをしたいというふうに思います。

 今日はこれで結構でございます。ありがとうございました。

津島委員長 どうぞ退室なさってください。

野田(佳)委員 それでは、植田総裁にお尋ねをしたいというふうに思います。

 先ほどの通貨及び金融の調節に関する報告書の中で、経済金融情勢について、個人消費は物価上昇の影響を受けつつも緩やかなペースで着実に増加をしていますという表現をされていましたけれども、一方で、おととい内閣府が発表した七―九のGDPの速報値を見ると、前期比で〇・五%減、年率で二・一%減ということなんですが、これはどう見ても、物価高による節約志向が強まって個人消費が不振である、インバウンドなどは回復してきたけれども個人消費は思った以上に不振であるということが原因と明らかに思われるんですよね。

 通常国会は六月二十一日に閉じられて、今七―九の速報値の話をしましたけれども、七、八、九と国会は長い夏休みだったんです。このときに、物価高に対して危機感を持って、すぐに内閣改造を行って、国会を召集して議論していればもっと対応が早かったはずなのに、七―九のこういう状況を生んでいるときには、国会は長い夏休みで議論すら行っていなかった。

 そして十月には、これは帝国データバンクの数字ですけれども、四千六百三十四品目、飲物、食べ物などの値上げが行われた。今年中に三万一千品目になるだろうというように、何でもかんでも値段が上がっているときに、遅ればせながら二十日から、経済対策の裏づけとなる補正予算の審議が国会では始まるんですよね。物価高対策と、ようやく対策に対して重い腰を上げてきた。

 一方で、先ほど伊藤委員が質問されたとおり、これは整合的かどうか、日銀の政策と。日銀は依然として金融緩和を続けると言っている。緩和というのは物価を上げることじゃないですか。政府がばらまきと言われるぐらいの対策を講じようというときに、一方で、緩和を続けて物価を上げる。これは国民にとっては、何でもかんでも値上がりの状態を経験している人たちにとっては不思議なことなんですよ。ちぐはぐ感は否めないんです。

 先ほどの伊藤さんに対する御答弁では物すごく、まだまだ分かりにくいと思いました。もっと分かりやすく説明してもらえませんか。

植田参考人 お答えいたします。

 私ども、最近の物価上昇は大まかに二つの部分から成っていると考えております。一つは、輸入物価上昇を起点として、それが国内物価に価格転嫁されていくという動きでございます。もう一つは、少しずつ動きが出ているところですけれども、ある程度の内需の支えがある中で、国内の賃金と物価が少しずつ好循環で回っていくという部分でございます。

 その上で、これまでの物価上昇は、そのうちの一番目の部分、すなわち、輸入物価上昇を起点とした価格転嫁によるところが大きいというふうに考えております。言い換えればコストプッシュによる物価上昇でございますが、これが実質所得や収益の下押しという形で家計や中小企業等に負担をもたらしていることは十分認識しております。

 ただし、こうしたコストプッシュの圧力は、輸入物価の前年比が本年春ぐらいからマイナスとなっているということを踏まえますと、時間を要するものの、次第に和らいでいくというふうに見ております。

 こうした下で、今、今年の春闘の賃上げの動きにもありますように、二番目の動きについて、よい芽が出始めてございます。これが続くためには、総需要面からの支持も必要ですので、そこを何とかサポートを続けるためにも、金融緩和を、現状、イールドカーブコントロールの枠組みの下で粘り強く続けているということでございます。

野田(佳)委員 物価の見通しを外し続けていることについては階さんがこの間御指摘したので、私はそれ以上加えませんけれども、そういう今の御説明の前提でありながらも、十月の金融政策決定会合では出口を意識した発言が幾つも出てきたように思うんです。

 前総裁の黒田さんのときは出口論というのは封印をされていたと思いましたけれども、ようやく金融政策の正常化に向けた議論が行われつつあるということは、これは、私は遅過ぎるとは思っているんですけれども、一定の前進だと思うんですけれども、この出口の議論をごまかしたりとか外したりしないで、むしろ、きちんとその手順を説明をし、その影響も国民に説明をしながら、粛々と正常化を進めるというのが正しい姿だと私は思うんです。

 その点についての総裁のお考えをお伺いしたいと思います。

植田参考人 私ども、二%のインフレ目標が持続的、安定的に実現されるという見通しが立つ状況に至れば、マイナス金利の解除やイールドカーブコントロールの撤廃を検討していくことになるというふうに考えてございますし、その点は発表してございます。

 ただし、そういう事態になった場合にどの部分をどういう順序で動かしていくかという点につきましては、その時点での経済、物価、金融情勢次第であるというふうに考えてございます。

 現在、前もってある状況を前提にしてこうやるというふうに強く発言してしまうことは、マーケットに不測の影響を与えるというリスクもございます。したがいまして、経済、物価情勢を綿密に検討しつつ、今後、情報発信を適切にしてまいりたいというふうに考えてございます。

野田(佳)委員 私は、何か決め打ちをしてこうしろという話ではなくて、今おっしゃったように、いろいろなことが考えられる、その想定の中で、こういうときにはこうするというような議論を大いにやっておいて、突然政策修正したらみんなにとっては余りにもサプライズだったというやり方ではなくて、ああ、こういう議論がたしかあったねと、やはり織り込み済みで、納得ずくでみんなもついてくるような状況を生み出すのがあるべき姿だということを申し上げたいということでございます。

 その中で、イールドカーブコントロールのお話も今されましたけれども、七月、十月と、メディアなどは、イールドカーブコントロールを修正だとか柔軟化とかという表現をされているわけですよね。私は本当にそうなのかなと思うんです。

 例えば、誘導目標がゼロ%なのに、一%が上限目標、厳格な目標というよりもめどになったということは、一でもいいということじゃないですか。ゼロと一というのは決定的に私は違うと思うんですよ。金利がつかない社会か金利がつく社会かというのは決定的な違いです。

 負債を持っている人たち、あるいは国も含めて、じゃ、利払いのことを本当に真剣に考えなければいけない、向き合っていかなければいけない。ずっと金利がつかないでお金をためてきた人たちも、金利で、お金がお金を稼げる状況が始まるということ、これも大きな変化で、私は、大衆収奪の金融政策から少し変わるんだと思うんですね。劇的な変化ですよ、ゼロと一というのは。ある意味では、柔軟化よりも、イールドカーブをもうコントロールしなくなったという事実上の撤廃ではないかと私は思っているんです。

 本来は、植田総裁は、元々学者の頃は、イールドカーブコントロールの微調整というのは向かないんだ、撤廃すべきだというお考えだったと私は思っていました。いろいろ、現実、政策遂行する上では気を遣わなければいけないところなどもいっぱいあるから柔軟化という言葉を使っているんだとおもんぱかってはいるんですけれども、その辺の基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。

植田参考人 お答えいたします。

 野田委員がおっしゃいましたように、イールドカーブコントロールですが、特に長期金利のコントロールのところですが、その上限を非常に硬直的に運用している場合は、市場での長期金利の先高感が非常に強く強まってくるというふうになりますと、なかなか微調整で対応することは困難というふうに考えます。

 取りあえず、ある種の十年物国債の金利を例えば一%で頑張るということはできるわけですが、その他の長期金利、中期金利との差が非常に拡大する等の副作用が出てきて、あるいは高まってなかなか厳しい状態になるというようなことが起こりがちであります。そうした例は、戦争直後のアメリカあるいは最近のオーストラリア等に見られます。

 こういうこともありますので、私ども、七月と十月には、この枠組みの効果と副作用のバランスをよく考えまして、若干の見直しを施させていただきました。要するに、将来に向けて経済や金融情勢の不確実性は極めて高いということを踏まえまして、やや先んじて、十年金利の動かし方の柔軟性を高めたというつもりでございます。

野田(佳)委員 イールドカーブコントロールを導入したのは二〇一六年の九月じゃないですか。元々、短期金利は中央銀行が決めて、長期金利はマーケットが決めるというのが、ある種の国際社会の鉄則みたいなルールであって、イールドカーブコントロールなんというのは難しいんだと。オーストラリアが試したことがあったけれども、すぐ撤退している。アメリカも検討したけれども、これは難しそうだといってやめている。それに挑んできて、修正、修正と、いろいろ維持しようとされているけれども、もうこの異例の措置が七年なんですね。

 この七年間の総括をもうそろそろきちっとしていかなければいけないのではないかと私は思うんですけれども、総裁のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。

植田参考人 今申し上げましたように、運用面では、この間、イールドカーブコントロールが経済を刺激する効果と市場機能等に及ぼす副作用のバランスを勘案して、随時、柔軟化する等の見直しをしてきたところでございます。

 その上で、全体としてどういう効果を発揮してきたか、あるいはどういうふうに評価しているかという御質問でございますが、金利全般を低位で安定するようにコントロールしてきたということは、やはり、緩和的な金融環境を持続することを通じて総需要、雇用等を刺激するという観点から大きな効果を発揮してきたというふうに認識してございます。

野田(佳)委員 大きな効果があったかどうかというのは私は極めて疑問なんですけれども。

 加えて、七年間も経済の体温計が機能しない状態にしてきた。コントロールするということはそういうことじゃないですか。経済の体温計を機能させないで来たことの副作用ということは、もっとしっかりと総括すべきだと私は思いますね。

 出口の話、もっといろいろ頭の体操を含めてやりたいと思っているから、もう一つのテーマに移りますけれども、もう一つというのは、イールドカーブコントロールよりも先に導入した、二〇一六年一月に導入したマイナス金利についてであります。

 二〇一六年一月当時に日本がマイナス金利を導入をしたときには、EUもスウェーデンもデンマークもスイスもマイナス金利。ほかの国もあったんです。でも、今なおマイナス金利をずっと導入したままというのは、ついに日本だけなんです。イールドカーブコントロールという世界で唯一の試みも行い、加えて、マイナス金利もついには日本だけ。日本の金融政策は完全にガラパゴスに陥っていると私は思うんですけれども。

 しかも、どこかで、出口のときにはマイナス金利を解除するということの判断をしなければいけないんだと思うんですが、そのときに、要は利上げになるわけですよね。

 アメリカが、今ずっと利上げ、利上げで来たけれども、小休止になり、やがて利下げという局面に入ったときは、日本は周回遅れで単独で利上げできるようなことが本当にできるのかどうか。要は、物価と賃金の好循環を見定めてからいろいろ判断をしようということなんだろうけれども、その周回遅れで単独利上げなんという環境が本当に整うのかどうか。その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

植田参考人 まず、基本的な認識として、私どもは、各国の金融政策は自国の経済、物価の安定を目指して行うべきものであるというふうに考えてございます。

 外国の例として例えばアメリカを取りますと、今回のコロナ禍に入る前の段階で、私どもがよく使っております基調的なインフレ率というような表現で申し上げれば、もう既に、ほぼ二%くらいの、目標のインフレ率に近いところにあったという中で、コロナ禍も伴って高いインフレ率になった、多少遅れましたが強い引締めを発動したということでございます。これはインフレ率を下げるために引締めが行われたわけで、徐々に引締めが効いてくれば、おっしゃるように、金利引下げのフェーズにどこかで入るということだと思います。

 そのときに、まだ基調的なインフレ率がもう少し二%には満たないということで金融緩和を続けている私どもにどういう影響があるかという御質問だと思いますが、もちろん、海外経済動向次第でいろいろなことが日本経済に起こり得るわけですけれども、仮に米国が利下げに転じたとしましても、これが、米国のインフレ率が首尾よく低下していくということを受けたもの、すなわち、ある種のソフト・ランディング・シナリオに沿ったものということでありましたら、米国経済も堅調に推移し、そうしたことの好影響が日本にも及ぶということも考えられるというふうに思っております。

 こうした点も含めて、今後の金融政策運営を適切に判断してまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 次は本当は日銀の財務の話の質問を用意していたんですけれども、時間があればまた最後に戻したいと思うんですけれども、いわゆるイールドカーブコントロール、そして、今質問をしていたマイナス金利、もう一つ、日本の独特の金融政策というのはETFを購入することじゃないですか。先にこちらのテーマの質問をさせていただきたいと思うんです。

 十月四日に、植田総裁が総裁になってから初めてETFの購入をされました。十月四日、七百一億円を買い入れています。これは御説明によると、TOPIXの下落率が二%を超えたからという、いわゆる二%ルールの下で、いつもどおりに、近年買っている額である七百一億円買ったということなんですよね。

 私は、初めてETFが導入された二〇一〇年、白川総裁のときの記者会見を、私は財務大臣だったものですから比較的よく覚えているんですけれども、臨時、異例という言葉を盛んに使いながら、苦渋の決断だったような表情で会見をされていたことを覚えているんです。まさに苦渋の、非伝統的金融政策の一つとして取り入れたETFの誕生の瞬間を見たときは、まさに苦渋の決断で取り入れたと思うんですけれども、その後、黒田総裁になってから、これは市場の正常化を促すというよりも、金融緩和の強化策の一環としてどんどんどんどんと取り入れて、あるいは買い入れてということになってきたと思うんです。

 白川総裁の頃の株価と今の株価は全然違って、三万円を超えているときに、まだ二%ルールで漫然と買い続ける意味というのがあるのかどうか。私はこの意味がもう分からなくなっているんです。機械的になぜ二%ルールで七百一億円を、これからも続けるのかどうか。いわゆるPKO、株価維持政策みたいなことをあえて日銀がまだやる必要があるのかどうか。この点についての総裁のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

植田参考人 私ども、最近のことで申し上げますと、二〇二一年に点検と呼んでおるものを日本銀行で実施しまして、そのとき、ETFの買入れについて、今後市場が大きく不安定化したときに大規模な買入れを行うということが効果的だ、そういう分析結果を踏まえて、今後はめり張りをつけて実施するということに基づいて実施してございます。委員おっしゃいますように、市場の情勢がかなり安定化の方向に向かっておりますので、四月以降、買い入れた実績は一回だけでございます。

 今後どうするかということでございますが、これは、先ほど来申し上げております物価安定目標の実現が近づいてくれば、このETF買入れも含めまして、出口に向けた戦略や方針について金融政策決定会合で議論し、適切に情報発信をしていきたいというふうに考えてございます。

野田(佳)委員 物価安定の目標が近づいたらじゃなくて、この株価のときに、こういうときにはもうやめた方がいいんじゃないですか。買う必要はもうないんじゃないかと思いますので、いろいろ出口の議論の中で、私は真っ先に御判断すべきことではないのかなと改めて思うんです。

 買うときのルールは、いわゆる二%ルールとなっているじゃないですか、TOPIXの下落があった場合。必ず今までもそうやって対応してきていますけれども、国債と違って、ETFというのは満期がないですよね。満期が訪れたら対応するというのが国債かもしれないけれども、ETFの場合は、今買い込んできて、この間、前原委員とのやり取りの中で、簿価で三十七兆、時価で六十一兆円という数字をお示しになっていましたね。これだけのものを持っていて、恐らく今、株式市場の、実質的に七%ぐらい日銀が保有している。国債市場ではまさにマンモスのような存在ですけれども、株式市場でも極めて大きな存在になっているんです。

 ということは、買うときのルールは、今現実、それがいいかどうかは別として、ある。売るときのルールというのも明示しなきゃいけないんじゃないですか。どこかでは売るということだってあるわけじゃないですか。やはり、このままBSが、バランスシートが膨らんでいいということではないと思いますので、ずっと持ちっ放しということもないとするならば、買うときのルールがあるんだったら、どういうときに売るのか。筆頭株主になっているケースもありますよね、日銀が。これはもろもろ、いろいろな影響があると思うんですが、売るときにはどういう留意をしてETFを売るのか、現時点でお考えがあれば教えていただきたいと思います。

植田参考人 具体的な売却方針等をまだ決めてございませんけれども、将来、私どもが保有しますETFの処分を行っていく場合には、二つの原則を重視したいと思っております。一つは日本銀行の損失発生を極力回避するということ、もう一つは市場等に攪乱的な影響を与えることをやはり極力回避するという二つの点を特に考慮しつつ、出口に向かう場合には、処分の方法を考えていきたいと思ってございます。

野田(佳)委員 二つの基本的な柱について御説明いただきました。これからまた、その辺についても詰めたお話をしていきたいと思います。

 日銀に損失が発生しないようにという関連で、元々用意していた質問をもう一問させていただきたいと思います。

 国債についてですが、国債は金利が上昇すると価格は下落をするということでありますけれども、日銀が保有している国債が本当に巨額であるという状況の中で、いわゆる金融政策の正常化の局面で、金利が上がっていく局面というのは、これは当然のことながら、日銀の財務は悪化をしていくということになると思うんですね。去年の決算でも評価損が出ていましたように、状況によっては財務が悪化をして、債務超過みたいな話にも陥りかねないし、世界の中央銀行もそういうことがあって乗り越えてきているわけです。

 この金利上昇時における日銀の財務悪化のリスクについて総裁はどのような御認識を持っていらっしゃるか、最後にお尋ねをしたいというふうに思います。

植田参考人 委員御指摘のように、金利が上昇しますと、私どもが保有いたします国債に評価損が発生する、金利の上昇幅によっては大きな評価損が発生するということになります。ただし、私ども、国債の評価方法として会計的には償却原価法を採用していますので、評価損が発生したとしても、決算上の期間損益には影響が出ません。

 その上で、一般論としてですけれども、中央銀行には通貨発行益がずっと続いて出てくるということ、それから、自分自身で支払い決済手段を提供できるということですので、一時的に財務が悪化しても、政策運営能力に支障を生じることはないというふうに考えてございます。

 ただし、中央銀行の財務リスクが着目されて政策をめぐる無用の混乱が生じる場合、信認の低下等につながるリスクもあるため、財務の健全性には十分な注意を払って進んでいきたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 財務の健全性に注意ということは、本当にそれは緊張感を持って対応していただきたいと思うんです。会計の方式とかは私も承知をしているつもりでありますけれども、要は、どういう反応を例えばマーケットがするか。金利とか為替に悪影響が出る可能性もあるわけですので、その点は十分に留意をされていくことを望んで、時間が来ましたので、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。

 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会の埼玉の沢田良です。

 本日午前中は日本銀行に対する質疑ということで、初めて植田総裁ともお話をさせていただきます。今日は、委員長、理事ほか皆様含めて、よろしくお願いいたします。

 今日は、植田総裁とちょっとお話ができるということで、情報についていろいろと、私から二点お伺いしたいなというふうに思っているんですけれども。

 本当に安倍前総理の功績というか、やはり経済政策というものに、経済金融政策について、いろいろなメッセージが国民の皆様にも身近になった。例えば、デフレという言葉がすごく身近になって、ただ、私も今、町を歩くと、デフレの意味を知っているという方は国民の皆様でも本当に少ないなということを感じている中でも、今またインフレになっているということで、ただ、実感としては、頭の中ではまだ安く買いたいという雰囲気は持ちつつも、どんどんインフレになっていって、物の値段は上がっていく。

 私もこの前、サービスエリアに行ったら、やはり、使っているものが、六百円ぐらいじゃないかなと思っていたものがもう千円を超えているという状況になって、だからこそ、先ほど野田委員の方からもありました、まさに今の消費が落ち込んでしまっているというのは、国民の皆様がまだデフレの状況の頭、いわゆるデフレマインドのまま、ただ、現状としてインフレが高まっているということを考えたときに、やはり、インフレというものは一体どういう状況で、どう抑えていけるのかということを私なりにもずっと調べてきた中で、やはり、利上げだけすればインフレが止まるわけでもないとか、やはりいろいろな条件と、世界の情勢も含めて、経済は生き物ですので、いろいろな状況が変わってくるというところを知っていると、最近、アメリカがある程度物価が安定し始めたのではないのかという兆候が出たということで、日経平均も三万三千円を超えるような、いい動きにつながっているということがあると思います。

 なので、私自身も、アメリカの政策をずっとつぶさに見てきて、それをまた、アメリカ経済含めて、マーケットがどういう反応をするのかであったり、そういったことを見てきたわけなんですけれども、その中で、最近の状況で、今、アメリカとしては、今後利上げが止まるのではないのかというようなほど、ちょっとポジティブな感じになっている状況があると思うんですけれども、ここについて、総裁、どのように感じているのか、分析があったら教えてほしいです。

    〔委員長退席、大野委員長代理着席〕

植田参考人 お答えいたします。

 アメリカの中央銀行、FRBですけれども、新型コロナウイルス感染症の流行時に発生しました供給制約等によってインフレが上昇したということに対応するため、昨年の三月から、累計五%以上の利上げを実施してまいりました。インフレ率は、昨年六月に約九%まで上昇したわけですが、利上げの影響もありまして、今年の十月には三%台前半まで低下してきております。

 今後の政策運営について、FRBは、金融引締めの累積効果や政策が経済活動やインフレに効果を及ぼすまでのラグ、経済や金融動向などの情勢を見極めながら判断するとしてございます。

 海外中銀の政策運営について、事細かに私の立場からコメントすることは差し控えるべきだと思っておりますが、FRBは、今後も二%のインフレ目標達成の観点から、適切に金融政策を運営していくと考えております。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 まさに、我が国としては、いい効果を結果として見ているという形になると思うんですね。まさに、アメリカの方がうまくいっているということが、実験とは言いませんけれども、我々が見た中で、今後どのような対策が、より経済に、実態、影響を与えるのかということを考えると、私は、アメリカが先行していってくれているところに、日本は、今すぐにということではないですけれども、今後やはりインフレ率が高まり過ぎた場合に、どのような対応が必要なのかというところは見えてくると思うんですけれども。

 実際、物価のもちろん安定というものが日銀のいわゆる目的という中ですと、やはり日本銀行の皆様が一番そういうものには注視しているとは思うんですね。こういったものを常に分析をしているという状況の中で、今のアメリカの動き、これについては、ある種、総裁としては、安心して見ていられるというか、うまくいっていると考えるのか、そこら辺はどういうふうに感じるんですか。

植田参考人 インフレ率がいっとき一〇%近くまで上がったということは心配いたしましたが、その後、先ほど申し上げましたように、急速に、適切に利上げを行って、その結果も、先ほどやはり申し上げましたように、三%台へのインフレ率の低下ということで着実に表れてきていると思います。

 ただし、目標は二%のインフレ率ですので、本当にそこまでスムーズに着地していくかどうか、まだ見極めが必要だというふうには考えております。

    〔大野委員長代理退席、委員長着席〕

沢田委員 どうもありがとうございます。

 日本銀行の方とお話しすると、やはり、いろいろな制約であったり各国とのやり取りも含めて、話せないような、返答できないようなことも多いと。当然、マーケットとの対話というところでも、今の日本銀行からの発信も、どうしても、こうです、ああです、何%とか言い切れないということが生じるのは、もう重々分かっております。なので、やはり対話という意味では、すごく複雑なコミュニケーションを取っていただいているところはあると思うんですけれども。

 ただ、一つこちらからお願いしたいなと思うことでいうと、やはり、日本銀行からの発信というところ、ここについては、より丁寧に、国民の皆様にもついていけるレベル、具体性とかではなくて、例えば何かカラフルなものを使うとか、そういったことでも私は違うのではないのかなというふうに思っていて。それが、やはり今の政府の動きとしても、金融投資をしていきましょうよというところの流れ、NISAの拡大も含めていろいろ動いているという中で、やはり日本銀行のいろいろな発信がかなりマーケットに影響を与えるということは、これは、市場参加を一度でもしたことがある方からすれば、興味があるところでもあると思うんですね。

 それにすると、やはり、今みたいに説明が分かりづらいというか、曖昧な形、言葉、それを続けていくと、今ちょっと起こっていることでいえば、各社新聞社さんも捉え方がやはり違う。又は、最近は変わった経済学者みたいな方も増えていて、陰謀論も増えていて、本当にそこの情報の取捨選択を間違えた人が全く違った解釈をして取り上げていくということも起こってしまっている中で、やはり物価の分析、それから物価の今後についての意気込みであったり思いというところが、常にやはり日本銀行を先頭に、発信を見たときに、国民の皆様でも、ああ、なるほどね、今このような雰囲気でいるんだなということが分かるような発信にしていただけると、私は、より国民生活に近づいていくことと、あとは、今回の物価が上がっていってしまっているという状況に対しても安心感を持ってもらえるんじゃないかなというふうに思いますので、そこは個人的にお願いしたいと思います。

 続きまして、情報というところで続いて言わせていただきたいのが、金融政策決定会合の情報の管理の在り方についてなんですね。

 黒田総裁が、この十年ほど総裁任期があったんですけれども、要は、黒田バズーカなんて言葉が残っているとおり、いわゆる日銀政策決定会合の内容はほぼほぼ漏れない、だからこそ、その当日の動きが強烈にマーケットに影響を及ぼすということが何度もありました。例えば、十一時ぐらいに発表になるというときに、発表がちょっとでも遅れると、何かあるんじゃないのかということで強烈な上下を起こすような、ボラティリティーが急激に上がるようなことすらもあったというふうに記憶しているんですけれども。

 ここ最近、二回ほど日経新聞さんにリークされている。その内容が実行されるものとほぼ同じということで、当日、事実、発表されたときにはもうマーケットは織り込み済みというふうなことで、ある種、ランディングとしては、私は一つやり方かなというふうに思いますし、結果としては、余り強烈なボラティリティーにはならないということを考えると、いろいろなやり方があるのではないのかなというふうに思う部分もあるんですけれども。ただ、それが市場の公平性をゆがめているという見方は私は強いというところも思っておりまして、それが起こっていたら、やはり市場参加者に不利が起こってしまうということも十分に考えていかなきゃいけないと思うんですね。

 まずは、金融政策決定会合の情報管理がどのように行われているのか、また、情報漏えいがあった場合の罰則やペナルティー、これをちょっと教えていただきたいんですけれども。

加藤参考人 お答えいたします。

 まず、先生の今御質問のところにあるルールと、それから、あと、運用に変更は特にこの間もなくて、金融政策決定会合の情報管理につきましては、日銀法が改正された後から、かなり昔から政策委員会が決定しておりまして、各金融政策決定会合の二営業日前から、それから会合終了当日の記者会見終了時刻までの期間、これは国会での発言を除きまして、金融政策とか金融経済情勢に関して外部に対して発言しないというルールにしておりますので、この間においては当然マスコミの取材も受けないというような形になっております。

 それから、その前の間においても、例えばマスコミや市場関係者と接触する場合には、それはしっかりと複数名で対応するというような管理をしているところでございます。

 なお、これに違反した場合というか、この場合には、日銀法の中でも、二十九条ですけれども、役職員に対しては、その職務上の知ることができた秘密を漏らしたり、盗用してはならないと決まっておりまして、さらには、六十三条で、これは一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金というような形も定まっているところでございます。

 以上でございます。

津島委員長 時間が来ておりますので。

沢田委員 済みません、時間がないので、すぐまとめます。

 今説明いただかなかったんですけれども、日銀政策決定会合の間、その会議中はスマートフォン等の使用は禁止されている話は聞いているんですけれども、それが終わった後は自由なんですよね。

 例えば、これは競馬の騎手さんとかだと、スマートフォンの利用とかの禁止であったり、その間、期間中の禁止も全部明記されていて、競馬だと、昨年一番売上げがあったもので、有馬記念で売上げ五百二十一億円なんですよ。けれども、日経平均だけでいうと、これは平均売買代金は三・八兆円もあるんです、一日に。

 どれだけそのインパクトが違うかというのを考えたときに、私は、本当に今までと同じような運用でいいのかというふうに考えたらば、最低限、競馬とは二桁も違うような状況で情報を扱っているんだという認識の中で、厳しくやっていただきたい。

 これは最後のお願いで、これで終了させていただきます。では、よろしくお願いします。

津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。

 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 植田総裁に、前回の委員会に続いて質問させていただきたいと思います。

 前回の委員会で、金融緩和の効果、特に賃金への影響について質問をいたしました。日本銀行からは、マクロ経済モデルを用いて、量的・質的金融緩和導入後の金融緩和が経済、物価に与えた影響分析を示していただきました。

 二〇二一年三月に示された点検においては、実質GDPの水準は〇・九から一・三%程度のプラス、生鮮食品やエネルギーを除いたCPIは前年比〇・六から〇・七程度のプラスという説明を受けました。経済自身が、実質GDPが伸びているというのは、コロナ禍を除いて確かにこのとおりなんだろうというふうに思います。

 問題は、実質GDPが増えても、それが本当に賃金の上昇につながるのかということについて、しっかりと議論をしていきたいというふうに思っています。

 お配りをしている資料の一枚目を御覧いただきたいと思います。

 これは、何度も使わせていただいている資料をアップデートしたものでございますけれども、二〇一二年第四・四半期を一〇〇として、経済指標がどう変化をしたかというものを表したものでございます。経済は成長している、経常利益は増えた、ただし、やはり内部留保にほとんど回り、そして利益以上に配当金が増えている、そして人件費は微増で、名目ですね、実質賃金はマイナスだということであります。

 これを見て、まず簡潔にお答えいただきたいんですが、金融緩和によって、いわゆるトリクルダウンは起きていない、そして国民の生活は苦しくなっている、そのことを総裁はお認めになられますか。

植田参考人 実質賃金低下の部分でございますが、これは先ほど野田委員の御質問にお答えする際にもちょっと触れさせていただきましたが、足下のインフレーションが、海外の原燃料の上昇を通じたコストプッシュによる部分と、それから国内での賃金、物価の好循環の芽が育ちつつあるという両方の部分から成っておると考えています。

 そのうち、ここまでのところは、一番目の方の寄与が非常に大きくて、これが元で実質賃金が、名目賃金が上がっているにもかかわらず、なかなか上昇しないという状態が続いていると思います。

 ただし、金融緩和の方は、二番目の賃金、物価の好循環のところに作用することを狙って続けているものでございます。

前原委員 経済が、実質GDPは成長しているということは認めた上で、トリクルダウンは起きていない、そして実質賃金が下がっていることによって国民の生活は苦しくなっている、そのことについて認められますかという質問をしております。

植田参考人 経済、賃金周り、労働者周りということでいえば、雇用者所得は着実に少しずつ上昇しているということかと思います。その背景には金融緩和の効果も出ているというふうに思っております。

 ただし、繰り返しになりますが、コストプッシュ圧力で、足下、一時的に実質賃金が伸び悩んでいるということも事実かと思います。

前原委員 雇用者所得は着実に増えているとおっしゃいましたけれども、事実ですか。事実じゃないですよね。

 二枚目の私が用意したものを御覧いただきたいと思います。これは日銀からいただいた資料でありますけれども。

 右側を御覧いただきますと、実線が実質雇用者所得なんですよ。つまりは、プラスのときもありますよ、しかし、マイナスのときもこの十年余りで半分以上あるわけじゃないですか。コロナを除いたら半分近くあるということであれば、雇用者所得が着実に増えてきているというのは違うんじゃないですか。

 そして、時間を省略するために併せて質問いたしますと、なぜこの雇用者所得が下がっているのかということについて言うと、これは野田委員の御質問にも答えられ、今も御答弁されましたけれども、輸入物価の上昇によって、コストプッシュによって、いわゆる実質賃金が下がっていると同時に実質雇用者所得まで下がっているということが原因ではないですか。つまりは、ずっと上がっているということは訂正していただきたいし、輸入物価が上昇していることによって実質雇用者所得も減っているということはきちんと認めてもらわなければなりません。いかがですか。

植田参考人 委員おっしゃいますように、名目賃金だけでなくて雇用者所得もコストプッシュインフレーションで実質値が、足下、低下しているということは事実でございます。

前原委員 さて、四枚目を御覧いただきたいと思います。

 これも前回の委員会で示した資料でありますけれども、じゃ、輸入物価が上がっている原因は何なのかということでありますけれども、右側を、輸入物価の推移を見ていただきますと、赤の折れ線が円ベース総平均、そして緑の折れ線グラフが契約通貨ベース総平均というものでございまして、この円ベースは為替変動の影響を含むもの、そして契約通貨ベースは為替変動の影響を含まないもの、つまりは、円ベースから契約ベースを差し引いた分が為替変動の影響ですよね。これについてはお認めになられますか。

植田参考人 委員御指摘のとおりでございます。

前原委員 ということは、金融緩和による、そしてまた、それが他国の中央銀行の金融政策との違いによって円安が進み、そしてコストプッシュインフレを起こし、実質賃金、実質雇用者所得を下げている。つまりは、国民にとっては金融緩和がマイナスになっているということもお認めになられますか。

植田参考人 まず、円安が何を原因として起こっているかということについては諸説あるかと思います。もちろん、内外金利差に依存するという見方が多いということはそのとおりでございますが、その場合も米国の金利引上げ傾向の影響が強いということは、多くの方が指摘されているとおりかと思います。

 その上で、円安の経済への影響でございますけれども、おっしゃるように、輸入物価の国内物価への上昇のところを一段と大きくするというマイナスの効果は確かにあると思います。これに対しまして、それだけではなくて、インバウンド消費を含む輸出の増加要因となったり、グローバル企業を中心に企業収益に好影響を及ぼすという面もございますので、一概に足下の円安が経済にマイナスというふうに言い切ることもできないかと思います。

前原委員 いや、全体の経済のマイナスということを、まあGDPの速報値はマイナスですから、足下は、そういう意味においてはマイナスではあるんですけれども、私は何も、経済全体に対してマイナス要因を金融緩和が与えているとは言っていないわけです。今お話をしているのは、この円安要因によって実質賃金、実質雇用者所得が下がっていますねということをしっかり認めた上で、そして、誰のための金融緩和なのかという議論をさせてもらいたいんですよ。ですから、円安の要因を聞いているんじゃないんです。円安が実質賃金や実質雇用者所得を下げているということはお認めになられますね。

植田参考人 そこは複数のメカニズムがありますので、必ずしも言い切ることはできないかと思います。

 もちろん、委員のおっしゃいますように、円安を通じて国内物価が上がるということが、実質賃金を、実質雇用者所得を下げるという効果はございます。ただし一方で、円安の影響に限りますと、これが、先ほど申し上げましたように、グローバル企業あるいはインバウンドに関連する中小企業等の収益あるいは雇用を引き上げて、雇用者所得にプラスに影響するという効果もあり得るというふうに考えております。

前原委員 いや、実質雇用者所得はマイナスになっているじゃないですか。全体の経済がプラスに仮になったとしても、実質雇用者所得はマイナスになって、実質賃金は下がり続けているじゃないですか。

 そして、足下の急速な円安というものが、この四ページ、四枚目の資料の右側を見ていただくと、円ベース総平均というもの、契約通貨ベースという為替に関わりないものからすると、輸入物価の半分以上は円安要因でしょう。それがコストプッシュということは、先ほど認められたわけじゃないですか。

 つまりは、金融緩和というものが、まあ、それだけが原因じゃないかもしれないけれども、円安が結局国民の生活を苦しくしていて、先ほど野田委員がおっしゃったように七―九の、三ページに資料は載せておりますけれども、これは七―九だけじゃないんですよ、四―六も個人消費はマイナスなんですよ。

 つまりは、金融緩和というものが円安を生み、そして円安が実質賃金、実質雇用者所得を下げているということは、これは率直に認められた方がいいんじゃないですか。ほかのことはプラスですということを聞いていないんです、私。実質賃金、実質雇用者所得にマイナスになっていますねということをしっかり認めてもらわないと。その議論をしているんです。

植田参考人 実質所得が下落している大きな要因がインフレが進行していることであって、そのまた一因に円安が効いているということは事実でございます。ただし、足下の実質所得の低下、そのほとんどの部分が円安の影響であるということではないと思います。

 円安だけに限りましても、先ほど申し上げたような実質所得へのプラスの影響もございますので、これがこのまま続くということでは必ずしもないかなと思っております。

前原委員 この質問にちょっとお答えください。何のために金融緩和をしているんですか。経済のためですか、株主のためですか、国民のためですか。

 私は、国民のために我々は政治をやっていると思っているんですよ。経済がプラスになっても国民の生活が苦しくなっていたら、その金融緩和は、経済がプラスで、株主にはプラスで、国民にとってはマイナスだったら、それはプラスにならないんじゃないですか。誰のための金融緩和ですか、端的にお答えください。

植田参考人 金融緩和を通じて、賃金、物価の好循環を強め、インフレ目標の持続的、安定的達成を目指すということのためでございます。

前原委員 一ページのグラフを見ていただいたら、ずっと金融緩和をしていて実質賃金は下がり続けているじゃないですか。十数年たって、できていないじゃないですか。

 ですから、そういう意味においては、私は、植田総裁、しっかりと、誰のためなのか、経済がプラスになればいいんじゃない、GDPがプラスになればいいんじゃないんです、国民の生活が豊かになるかどうかが大切なんだと。

 つまりは、経済がプラスになっても、この一ページにあるように、利益以上に配当に回っているじゃないですか。格差が広がっていて、持てる人はより豊かになり、一般の国民は貧しくなっているのが金融緩和の今の現状じゃないですか。誰のための金融緩和かということをいま一度考えてやっていただかないと、実質賃金も下がり、実質雇用者所得も下がり、そして円安がコストプッシュを生んでいる。そこはやはりしっかりと私は受け止めていただかなきゃいけないと思いますよ。

 さて、それに関して、違う観点から二つ質問したいと思います。

 五枚目の資料を御覧いただきたいと思います。円の実質実効為替レート。

 一九七〇年以来、今の実質実効レートは最低であります。一番高かった一九九五年四月と比べると、六三%の価値が下がっている。

 この実質実効為替レートというのは、日本の対外的な価格競争力、購買力を示す指標なんです。対外的な価格競争力、購買力を示す指標なんです。下がり続けてもいいんですか、お答えください。

植田参考人 実質為替レートは、様々な要因で上下に動くものであると認識しております。

前原委員 質問は、下がり続けていいんですか、対外的な価格競争力、購買力が下がり続けていいんですかと聞いています。

植田参考人 これは、下がるということは、輸出企業の競争力は上がるという方向の動きでございます。

 ただし、その上で、どうしてこういうふうになっているかということについて一言申し上げますと、実質為替レートですけれども、これは、名目為替レートの動きだけでなくて、貿易相手国との物価上昇率の違いも反映した、それを考慮に入れて割り算した指標になっております。したがいまして、長い目で見て内外の物価上昇率を比較したときに、日本の物価上昇率の方が貿易相手国よりも長期にわたって低いということがございまして、これが影響して実質為替レートが趨勢的に低下しているということでございます。それに加えて、ここ二年くらい、特に対ドルでの名目の為替レートの低下が影響したということかと思っております。

前原委員 私の質問に直接答えられていないんです。

 二〇一五年六月十日に同じ質問を黒田総裁にしたときに、これ以上下がることはおかしいということをおっしゃっています。そのときは百二十五円ですよ。百二十五円の壁と言われるのは、そのときにおっしゃったことなんですよ。

 つまりは、この対外的な価格競争力、購買力、輸出企業がプラスになるといって、輸出が伸びていますか、そんなに。伸びていないでしょう、この下落以上には。インバウンドは増えているかもしれない。だけれども、輸出がそんなに伸びているとは私は思いませんよ。

 もう一度伺います。下がり続けていいんですか、これについては。

植田参考人 実質も含めまして、為替相場の水準やその評価について具体的にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

前原委員 いや、今の為替レートを聞いているんです。実質実効為替レートが下がり続けていいんですかと聞いているんです。

植田参考人 実質、名目含めまして、それがどういう水準であって、あるいは、過去と比べてどうであるかということについての具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

前原委員 最後も、短い時間ですので同じ形での質問を行いますけれども。

 六枚目の資料を御覧いただきたいんですけれども、去年は九・二兆円の為替介入を行っているんですね。そして、七ページを御覧いただくと、どうなったかということであります。

 財務副大臣に伺います。これだけ円安が進んでいて、なぜ今年は為替介入をしていないのかということであります。そのことを端的にお答えください。

赤澤副大臣 円安介入の目的ということでありますけれども、特定の水準を念頭に置いて介入をしているということではございませんで、為替介入はあくまでも為替相場の過度な変動に対応するものでありますので、必ずしも円安が進んでいるから介入をするという立場を私どもは取っていないという点について、御理解いただきたいと思います。

前原委員 それはそのとおりです。

 八ページは、これは財務省からいただいた資料でありまして、為替レートは市場において決定されることがベースなんですね。今、副大臣が御答弁されたように、一番下、このときだけ、例外的にしてもいいですよということでありますけれども、七ページを御覧いただくと、為替介入しても余り効果がないんですよ。つまりは、為替介入しても、短期的には効果があるけれども、中長期的には全く効果がないと言っても過言ではありません。

 日銀総裁に伺いたいと思います。

 やはり、為替というものは、介入というものについては短期的な影響しかない、中長期的には日本のファンダメンタルズが、もちろん金融政策もしかりでありますけれども、ファンダメンタルズが影響するというふうに考えますが、その二点についてお答えください。

津島委員長 植田日本銀行総裁、申合せの時間が来ておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

植田参考人 為替はファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが望ましいと考えております。

 介入の効果についてはコメントを差し控えさせていただければと思います。

前原委員 時間が来ましたので終わりますが、為替介入をやっても結局短期的な影響しかないということですし、ファンダメンタルズをしっかりと高めない限りは、先ほど明確に御答弁されなかったんですけれども、どんどんどんどん私はこの為替というものはもっと悪くなっていくというふうに思います。それはしっかりと日本の体質改善というものが必要だということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 日銀報告について質問します。

 日銀の展望レポート十月号では、個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、賃金上昇率の高まりなどを背景としたマインドの改善などに支えられて緩やかな増加を続けると見られる、このように書かれています。先ほどの総裁の報告の中でも、さきの説明でも、緩やかな回復を続けると言われました。

 しかし、日銀の生活意識調査で、暮らし向き判断DIは、リーマン・ショック後ぐらいの悪い状況となっています。約六割の人が、暮らし向きにゆとりがなくなってきたと回答しています。

 十五日発表の七月から九月期の国内総生産速報値は、三四半期ぶりのマイナス成長です。個人消費と設備投資が弱含みとなっています。

 植田総裁にお伺いします。どうして個人消費が緩やかな増加を続けると言えるのでしょうか。

植田参考人 確かに、足下のGDPにおける消費のデータはやや弱めになってございます。ただ、様々な消費に関してはデータが出てまいりますので、これを丹念に見極めながら、消費が緩やかな回復基調にあるかどうかということをやはり見極めていきたいと思っています。

 GDP以外の統計を含め、個人消費をめぐる状況を確認させていただきますと、サービス消費はペントアップ需要の顕在化などから増加基調にありますが、コストプッシュによる物価上昇が続く下で、価格上昇幅が特に大きい食料品や日用品などについては、やや弱めの動きがうかがわれております。先行きの個人消費については、賃上げの動きが今後も続き、所得面から個人消費を支えていけるかどうかがポイントになると考えてございます。

田村(貴)委員 総裁は記者会見で、来年の名目賃金が引き続き上昇するかどうかということは大きなポイントと述べました。

 展望レポートでも書かれているように、二〇二一年以降、この二年間は名目賃金が上昇しています。一方で、同じ時期に暮らし向きDIは悪化し続けています。名目賃金が上昇しても、暮らし向きは、よくなるどころか悪化しています。

 当然のことですけれども、実質賃金が上昇しない限り、国民の暮らし向きというのは改善しないのではないでしょうか。お答えください。

植田参考人 委員おっしゃいますように、確かに、名目賃金が上がっても、実質賃金が上がらないとなかなか苦しいというのは、おっしゃるとおりでございます。

 ただ、先ほどもちょっと申し上げましたが、足下の実質賃金の下落が、もちろん物価の上昇からきている。ただ、その物価の上昇のかなりの部分が輸入価格の国内価格への転嫁によるコストプッシュ型のものであるというふうに認識しております。輸入価格自体が下がり始めている、少なくともインフレ率では低下の方向に行っているということから考えまして、この面からのインフレは徐々に収まっていくというふうに考えております。その中で、名目賃金の上昇が来年度続いていくということがあれば、実質賃金に対してよい影響をもたらしていくというふうに思っております。

田村(貴)委員 実質賃金が長期にわたって連続で下がっている。それから、国民の暮らし向きの意識も悪くなっていると言っていますよね。そんな中で、どうして個人の消費が増加をしていくというふうに判断されるのか、ちょっと理解できません。

 二〇二一年九月の生活意識調査では、三六・三%の人が、ゆとりがなくなってきたと回答していました。二年間で、半分を超える五七・四%の人が、ゆとりがないと今回答する。急速に暮らしは悪化しています。にもかかわらず、政府の月例報告も、二年前から、個人の消費の基調は、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」。「緩やかに持ち直している」と「持ち直している」、ずっとこの表記ですよ。

 植田総裁は、個人消費についてそんなに悪くないというふうに判断していると記者会見でも述べておられますけれども、相当、国民の意識と乖離があるのではないでしょうか。

 政府も日銀も、物価上昇や個人消費への評価を誤り続けているために、正しい政策運営ができていないのではありませんか。いかがでしょうか。

植田参考人 最近のインフレ、特に食料品、日用品等が大きく、エネルギーも含めてですが、値上がりする中で、所得が相対的に低い層の方々に非常につらい状況になっているということは、そのとおりであるかと思います。

 したがいまして、消費全体として見れば、緩やかな増加基調にあるということが正しいとしても、二極化といいますか、ばらつきがすごくあるということは事実だと思いますし、それに注意をしつつ政策運営をしていかないといけないということかと思っております。

田村(貴)委員 岸田総理は、突然、縮小均衡のコストカット型の経済の悪循環を一掃しなければ日本経済が再び成長することはできないとおっしゃって、来年六月に一人四万円の一度限りの定額減税を実施する説明をしています。

 しかしながら、岸田内閣は、今年度の当初予算で、軍事費倍増のための、毎年度一兆円に相当する増税を盛り込んでいます。毎年度三兆五千億円必要とされる異次元の少子化、子育て対策も決めました。償還財源として、国民の利用者負担が予想されるGX債二十兆円の発行も始めました。十年で償還するとなると、毎年二兆円の負担増であります。

 将来的に発生する毎年約六兆五千億円の国民負担増を決めておきながら、一年限りの所得税減税を実施したとしても、消費マインドは改善しません。結局、個人消費というのは増やす方向にならないのではないでしょうか。いかがでしょうか。

植田参考人 先ほど申し上げたことと少し重なりますけれども、現在の高いインフレ率は、原燃料、食品等の輸入物価の上昇に起因している部分が大きいというふうに考えております。これが現地通貨ベース等では落ち着いてきておりますので、そう長く続くものではないというふうに見ております。

 したがいまして、そのインフレが続いている間、一時的に企業や家計のインフレによる負担を和らげるという政策は、消費等の下支えになるという効果は十分見込めるというふうに見ております。

田村(貴)委員 最後に、総裁、インボイス導入について伺います。

 十月一日から実施されました消費税インボイス制度は、どちらにせよ可処分所得が減ります。免税業者にとってみたら、課税業者への転換を迫る形になるし、取引がなくなる、そうした選択を迫るものになってまいります。財務省の試算では、百六十一万業者が課税業者への転換を決断するとされていますけれども、フリーランスや副業がかなり広がっています。実際に影響を受けるのは一千万者に近いとも言われています。

 免税業者と取引がある課税業者にとっても、苦渋の選択が迫られます。例えば、一人親方をたくさん抱える工務店、職人が支える伝統工芸産業、アニメーションや漫画などのエンタメ産業、末端の貨物の配送を行う配送業、これらの免税業者が廃業しますと、インボイス登録を要請しても、できません。消費税の負担を被ることになります。事業者の税負担が所得の大幅な削減を引き起こすことになってまいります。

 今回のチャンスを逃せばデフレ脱却が難しくなると言いつつ、インボイス制度を導入して、零細企業や個人事業主、フリーランスの可処分所得を引き下げて、消費の足を引っ張っています。これからもっと引っ張ることになります。

 インボイス制度が既に個人消費のマイナスの要因となっていることを植田総裁は認識されているでしょうか。

津島委員長 植田日本銀行総裁、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

植田参考人 はい。

 インボイス制度ですが、消費税制度の円滑な運営にとっては必要な制度かと思います。ただし、その導入の際に様々な事務的なコストの上昇が見込まれますので、この点に配慮して実行していただくということが重要だと思っております。

田村(貴)委員 明快な回答はなかったですけれども、時間が来ましたので、終わります。

津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

津島委員長 次に、去る六月二十七日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣鈴木俊一君。

鈴木(俊)国務大臣 令和五年六月二十七日に、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出いたしました。

 報告対象期間は、令和四年十月一日以降令和五年三月三十一日までとなっております。

 御審議に先立ちまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、今回の報告対象期間中に、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は行われておりません。

 次に、預金保険機構による資金援助のうち、救済金融機関等に対する金銭の贈与は、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で十九兆三百十九億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関等からの資産の買取りは、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆五千百九十二億円となっております。

 なお、預金保険機構の政府保証付借入れ等の残高は、令和五年三月三十一日現在、各勘定合計で一兆八百六十億円となっております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。

 金融庁といたしましては、今後とも、各金融機関の健全性にも配慮しつつ、金融システムの安定確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

津島委員長 これにて概要の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

津島委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官上野有子君、金融庁総合政策局長油布志行君、総合政策局政策立案総括審議官堀本善雄君、監督局長伊藤豊君、財務省大臣官房長宇波弘貴君、関税局長江島一彦君、国税庁次長星屋和彦君、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官青山桂子君、大臣官房審議官宮本悦子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山田美樹君。

山田(美)委員 自由民主党の山田美樹です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 限られた時間ですので、早速始めさせていただきます。

 最初に、資産運用立国と金融リテラシーの向上についてお伺いいたします。

 国民の資産形成は、老後資金の確保など、将来の生活を守る上で大変重要です。また、貯蓄から投資への大きな流れをつくって、我が国の資本市場を活性化する必要もあります。

 政府は、昨年十一月に決定した資産所得倍増プランの下でその取組を進めようとしています。また、今年八月に金融庁から公表された金融行政方針では、資産運用立国の実現と資産所得倍増プランの推進と銘打って、年内に具体的なプランを策定するとしています。

 そこで、お伺いいたしますが、資産所得倍増プランを推進するに当たって、政策プランの策定の進捗状況について教えてください。

油布政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の家計金融資産の半分以上を占めております現預金が投資に向かい、投資先企業の企業価値向上の恩恵が家計に還元される、それが更に次なる投資や消費につながっていく、こういう成長と分配の好循環を実現していくことが重要であると考えてございます。

 そのためには、いわゆるインベストメントチェーンの各主体に対して働きかけを行っていくことが重要と考えております。例えば、昨年十一月に取りまとめられました資産所得倍増プランにおきましては、NISAの抜本的拡充、恒久化が図られましたけれども、その普及や金融経済教育の充実など、家計の安定的な資産形成を支援するための取組を推進してまいりたいと思っております。それから、金融機関におけます顧客本位の業務運営を確保すること、あるいは、企業の持続的成長に向けたコーポレートガバナンス改革の実質化にも取り組んでまいります。

 そして、こうした取組に続きまして、いわば残された最後のピースとしまして、家計金融資産等の運用を担う資産運用業あるいはアセットオーナーシップの改革を行う、その運用力の向上、体制の強化等に取り組んでまいりたいと思っております。

 現在、そのための政策プランを年内に策定すべく、新しい資本主義実現会議の下に設置されました資産運用立国分科会等におきまして、有識者や関係省庁と連携いたしまして、具体的な施策の検討を進めております。

 金融庁といたしましては、こうした取組を通じ、資産運用立国による成長と分配の好循環を実現し、我が国経済の成長と国民の資産所得の増加につなげてまいりたいと考えております。

山田(美)委員 是非、着実にこの政策プランの策定と進捗を進めていくことをお願いいたします。

 国民が安心して将来資産を確保していくためには、金融詐欺の防止などを企図して金融リテラシーを向上させていくことが重要であろうかと思います。金融教育については、現在審議が行われている法案の中で金融経済教育推進機構の創設が盛り込まれています。

 そこで、お伺いします。

 新たに創設される金融経済教育推進機構における組織体系、取組方針、民間との共同の在り方などについて、政府の見解を御教示いただければと思います。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 政府が目指します成長と分配の好循環、これを実現するためには、国民の皆様に金融トラブルに巻き込まれることなく適切な投資判断をしていただく、このための金融リテラシーを身につけていただくことが重要だということは、委員御指摘のとおりでございます。

 このため、金融経済教育推進機構が行います金融経済教育については、資産形成の意義、方法のみならず、家計管理や消費生活の基礎、あるいは、社会保障、税制度、金融トラブル等、金融経済に関わる幅広い観点を取り入れる方針でございます。

 同時に、こうした幅広い教育を、官民のノウハウやネットワークを集結いたしまして国全体として中立的な立場から推進する、こうした体制を整備することも重要だというふうに考えております。このため、金融広報中央委員会の機能を移管、承継するほか、全国銀行協会や日本証券業協会、投資信託協会の民間団体の活動内容を可能な限り集約することで、これらの団体が培ってきた知識やネットワークを生かす体制を整備していきたい、このように考えております。

 こうした組織体系や取組方針の下で、幅広く民間団体と連携を図りながら、金融経済教育の充実を図ってまいりたいと考えております。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 恐らく、公的な機構でもって官民で連携して取り組んでいくということが求められるのだろうと思います。

 このときに、資産所得倍増プランが、どちらかといえば資産運用の攻めの側面を持つと思います。これに対して、金融経済教育推進機構が取り組む金融リテラシーの向上は、国民の大切な資産を詐欺被害や金融トラブルなどから守っていくという守りの側面を持つものであろうかと思います。

 政府の取組における攻めと守りの両方のバランスをどのように確保されていくのか、御見解と今後の取組方針をお伺いいたします。

鈴木(俊)国務大臣 岸田内閣が目指します成長と分配の好循環を実現していくためには、家計、企業、金融機関といったインベストメントチェーンを構成する各主体それぞれに働きかけを行っていくことが重要と考えます。

 こうした観点から、昨年取りまとめた資産所得倍増プラン、及び、年内の政策プランの取りまとめに向けて検討を進めています資産運用立国実現プランに沿って取組を進めておりますが、その際、家計の資産所得の増加に向けた環境整備とともに、国民の金融リテラシーの向上に向けた取組を併せて進めることといたしております。

 具体的に申し上げますと、家計の資産所得の増加に向けた環境整備として、NISAの抜本的拡充、恒久化、金融機関における顧客本位の業務運営の確保、コーポレートガバナンス改革の実質化、資産運用業の高度化やアセットオーナーシップ改革に取り組んでおります。

 また、国民の金融リテラシーの向上に向けた取組として、金融経済教育推進機構を設立をいたしまして、国全体として、中立的な立場から、幅広い観点から金融経済教育を推進してまいりたいと考えております。

 政府としては、このように、山田先生御指摘の攻めと守りのバランスを取りながら取組を進めることによりまして、成長と分配の好循環を実現させたいと考えております。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 国民の安心、安全を守りながら貯蓄から投資への大きな流れをつくっていく、その流れを是非進めていただければと思います。

 次に、もう一つのテーマであります金融システムのレジリエンスについてお伺いをいたします。

 本年は一九二三年に発生した関東大震災から百年目の節目の年でもあることから、政府における事業継続計画、BCPの取組について質問いたします。

 我が国には、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの地震による災害のほか、台風や豪雨による風水害、火山の噴火など、様々な自然災害のリスクがございます。特に近年では、首都直下地震や南海トラフ地震など、首都圏含め甚大な被害を及ぼすと考えられる大地震が三十年以内に約七〇%の確率で発生すると指摘をされていますし、異常気象に伴う水害、土砂災害の発生が続くなど、自然災害の激甚化、頻発化が進んでおります。

 こうした我が国が取り組む環境の変化を踏まえますと、重要な社会インフラの一つである金融システムについても、災害発生への備えを一段と整備、強化していくことが必要だと考えます。

 そこで、お伺いいたしますが、政府では、大規模災害などの発生時に我が国の金融システムを維持するとともに、被災した預金者や事業者などを支援する観点からどのような取組を行っているか、教えてください。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁におきましては、我が国の金融システム、金融資本市場の機能維持等の観点から、銀行や証券会社、保険会社等の金融庁所管事業者に対しまして、災害時に備え、平時より危機管理体制を構築し、危機管理マニュアル及びBCP、事業継続計画を策定することを求めるとともに、定期的なアンケートの実施等により、その運用状況をフォローしているところでございます。

 金融庁といたしましては、災害等の危機発生時においても我が国の金融システム、金融資本市場の機能が維持されるよう、これにはお客様への対応ももちろん含まれますけれども、日頃から取り組むことが重要であるというふうに考えておりまして、本年も九月一日に当庁のBCPに基づく訓練を行っておりますけれども、その際には、関係業界団体との連絡体制も確認をしているところでございます。

 引き続き、金融機関等において災害時にも適切な対応が取られるようフォローをしてまいりたいというふうに考えております。

山田(美)委員 ありがとうございます。是非、万全の備えをお願いいたします。

 続いてですけれども、近年、自然災害の頻発、激甚化によって、保険料支払いの増加が著しいというふうに言われております。これまで政府は、損害保険会社の異常危険準備金の無税枠の拡充などを行っておりますけれども、これを継続、拡充することはもちろんですが、加えて、より根本的な視点から、保険会社の持続的なビジネスモデルの構築が必須だと考えております。

 そこで、お伺いいたしますが、保険会社の持続的なビジネスモデル構築の観点から、国際的な議論への参画も含めて、政府の取組方針について教えていただければと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、近年の自然災害の頻発、激甚化に伴いまして火災保険の収支が悪化している中、各損害保険会社におきましては、中長期的な事業環境や顧客ニーズの変化を見据え、持続可能なビジネスモデルを構築していくことが重要な課題であるというふうに私どもとしても考えているところでございます。

 これを踏まえまして、金融庁におきましては、損害保険会社が自然災害に対する備えとしての機能をより適切に発揮していくために、統合リスク管理の高度化、顧客ニーズやリスク実態等を踏まえた補償内容、保険料の見直し、防災・減災のサポートに向けた対応などを促しているところでございます。

 また、各国の保険監督当局で構成されます保険監督者国際機構、IAISと呼んでおりますけれども、ここにおきましても、先般東京にて開催された年次総会に際して、自然災害に係る保険でカバーされない損害、プロテクションギャップと呼んでおりますけれども、このプロテクションギャップに関する報告書を公表し、議論が行われております。この報告書におきましては、リスク低減へのインセンティブづけや様々な関係主体間での連携などを含む、関係当局が果たし得る役割が論じられているところでございます。

 金融庁といたしましては、こうした国際的な議論も踏まえつつ、各損害保険会社における持続的なビジネスモデルの構築に向けた対応について、しっかりとしたモニタリングを行ってまいりたいと考えているところでございます。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 本来でしたら、もう一問、民間金融機関のサイバーセキュリティー強化への政府の取組についてお伺いをしたいところですが、時間が迫っておりますので、これはもう私の方からの意見といたしまして、質問とはせずに、お話をさせていただければと思います。

 つい最近も、フィナンシャル・タイムズの電子版で、中国の大手銀行がサイバー攻撃を受けたために米国債の取引に影響が出たという報道がございました。サイバー犯罪が日々巧妙化する中で、国内の金融機関においても、サイバーセキュリティーのための計画を策定して着実に実行していくことの重要性が一段と増しているかと思います。政府におかれましても、こうした取組をしっかり進めてくださいますようお願い申し上げます。

 以上をもちまして質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

津島委員長 これにて山田君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子俊平君。

金子(俊)委員 自由民主党の金子俊平でございます。

 第十五委員室のマイクは少し高く設定できるので私にとっては非常に助かるんですけれども、どうぞほかの委員室も高いマイクをまた導入していただけるとありがたいなと思いながら、質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、鈴木大臣、ちょうど四百日でありましたけれども、井上理事とともに大臣にお仕えできたこと、また共に汗をかけたこと、本当に光栄に思いますし、どうぞ引き続き御健闘していただくよう、またお願いを申し上げます。

 それでは、その関係で私に御下命を賜ったんだろうというふうに思いますけれども、ビッグモーター並びにFRCの件に関して御質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、ビッグモーターに関して。

 先般、大臣の方から、ビッグモーター社に対して、保険業法に基づいて、十一月三十日をもって損害保険代理店の登録を取り消す方針を固めたとの御発言がありました。そもそも、顧客の見えないところで車に傷をつけたり不適切な修理を行うなど悪質な行為が横行していたというふうにテレビ報道では流れておりましたけれども、金融庁は、国民の目線に立って、ビッグモーター社に対してどのような処分を行い、またどのような追及をするお考えがあるのか、御答弁をお願いいたします。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁といたしましては、損害保険代理店としてのビッグモーター社に対して、本年九月四日から十一月十日まで立入検査を実施をいたしました。損害保険代理店は保険契約者等の利益を害することがないよう適正な保険募集管理体制を確立する必要があると考えておりまして、当該立入検査を通じて、ビッグモーター社においてガバナンス上の不備、顧客保護に欠ける悪質な行為が広がっている実態などがあったかどうか、重点的に検証してきたところでございます。

 その結果、同社におきましては、会社法上求められる経営管理体制が構築されておらず、適正な保険募集を確保するための体制整備も行われていないということが確認をされました。また、今後、保険会社との代理店委託契約が全て解約となる予定でございまして、保険会社からの再建に向けた支援も期待できないという判断をいたしました。

 こうした状況に鑑みまして、金融庁といたしましては、保険業法に基づき、今月三十日をもって損害保険代理店の登録を取り消す方針を固めておりまして、今後速やかに処分に向けた行政上の手続を進めてまいりたいと考えております。

金子(俊)委員 さらに、本事案に関しまして、損害保険会社がビッグモーター社の不正行為を知りながら過大な保険金請求に目をつぶっていたというのであれば、極めて問題であるというふうに考えております。特に、保険会社にとっては、最も重要な取引先というのはビッグモーター社ではなくて顧客であるわけでありまして、金融機関が顧客の利益を第一とする中で、金融行政のそれが柱だというふうに思っておりますけれども、こうした考えを踏まえて、金融庁としては、損害保険会社に対してどのような責任を考えておられますでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、顧客本位の業務運営は、金融行政にとって極めて重要なものであるというふうに考えているところでございます。

 一方、今回の事案におきましては、社外調査委員会からも、損害保険ジャパンにおいて、大口取引先であるビッグモーター社からの利益を優先する余り顧客目線の考え方が欠落していた旨の指摘がなされているところでございます。

 金融庁といたしましては、現在、損害保険ジャパンへ立入検査を行っているところでございまして、当社の経営管理体制や内部管理体制上の課題にも踏み込んだ上で、問題の根本原因を特定すべく、深度ある実態把握を進めているところでございます。

 また、先日、親会社であるSOMPOホールディングスに対しましても、子会社である損害保険ジャパンの経営管理を適切に行っていたかを検証するために立入検査を開始したところでございます。

 金融庁といたしましては、両社への立入検査を通じ、委員御指摘の顧客本位の業務運営がしっかりと行われていたかどうかも含めて、よく検証してまいりたいと考えているところでございます。

金子(俊)委員 是非、よろしくどうぞお願いいたします。

 ビッグモーター社に限らず、ほかの中古自動車販売業者においても類似の疑義があると複数のマスコミから報道されておりますが、ビッグモーター社との間で起こった個別の事案や対策にとどまらず、より大きな視野で今後対策に取り組む必要があるんだろうというふうに思います。

 こうした不正行為が二度と起こらないように、また、今回の事案を学びとして、不正行為の温床となっている問題の根本原因の解明やまた再発防止策について、制度的な対応も視野に入れてしっかりと取り組んでいただきたいと思いますけれども、どのようなことをお考えになられていますでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁といたしましては、先ほど申し上げましたように、ビッグモーター社、損害保険ジャパン、SOMPOホールディングスに対する立入検査などを通じまして、今回の保険金不正請求事案について実態把握を進めているところでございます。徹底的な真因分析を行い、各社において実効的な再発防止策を策定することが重要であると考えております。

 一方、委員御指摘のとおり、こうした問題が二度と起こらないようにするためには、個社の対応のみならず、より包括的な業界全体の対応も必要と考えておりまして、既に、損害保険協会におきましても、業界全体の取組として、被害者救済や再発防止のための施策を検討してございます。

 金融庁としましても、今後、一連の行政対応を通じて、不正行為の温床となるような構造上の問題があると認められた場合には、関係者とも議論をしながら、制度や監督の在り方を含め、適切な対応を検討してまいりたいと考えているところでございます。

金子(俊)委員 ありがとうございました。

 国民の関心の大きなテーマでありますので、是非また金融庁にもしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 そして、今日、FRCについて報告がございましたので、その関係で、地域金融機関の経営について御質問をしたいというふうに思います。

 地域金融機関は、事業者への支援を通じた地域経済の活性化など、経済において重要な役割を担っております。特に、私の地元もそうでありますけれども、人口減少や低金利環境が継続してきたことなどで非常に厳しい経営環境にあるというふうに認識しております。

 当委員会の中で、鈴木大臣の所信表明において、地域金融機関が地域経済の回復、成長に一層貢献できるように、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取組を促すと心強いお言葉を賜りました。

 こうした大臣のお言葉も踏まえて、地域経済の活性化に積極的に貢献しようとする地域金融機関をどのように後押ししていくのか、時間的に最後の質問になろうかというふうに思いますけれども、金融庁にお伺いをさせていただきます。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 地域金融機関におきましては、地域経済を支える要として、自身の金融仲介機能を強化し、資金供給にとどまらない支援を通じた地域企業の企業価値向上等を図ることにより、地域経済の回復、成長に一層貢献していくことが期待されると考えております。こうした役割を適切に果たせるよう、地域金融機関においては、低金利環境や人口減少など厳しい経営環境が続く中でも、将来を見据えた経営改革を着実に進め、経営基盤の強化に取り組むことが重要であると考えております。

 こうした地域金融機関の取組を支援する観点から、政府といたしましては、合併、経営統合を含む経営基盤の強化の取組を支援するための資金交付制度の創設、デジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築に幅広く貢献できるようにするための業務範囲規制や出資規制の抜本的な見直しなど、様々な環境整備を行ってまいりました。

 また、金融機関の事業者支援能力の向上を後押しするため、事業者支援の際の着眼点を業種別に整理する取組や、人材面の支援ニーズへの対応を促進する取組なども進めているところでございます。

 地域金融機関には、こうしたことも活用しながら、経営基盤の強化や金融仲介機能の発揮に向けた取組を進めていただきたいと考えておりまして、金融庁といたしましても、各地域金融機関の取組を引き続き後押ししてまいりたいと考えております。

金子(俊)委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、終わらせていただきます。

津島委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 今ほど伺いました、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告について御質問いたします。

 先ほど御説明いただきましたけれども、基本的には、今回の報告、新たなものはない、何にもありませんという報告だったとは思うんですけれども、ちょっとこの内容について、そうですかというところがあるので伺いたいと思います。

 資料一ページを御覧ください。

 先ほど配られた資料の六ページに当たるところなんですけれども、ここで、SBI新生銀行、これが報告されているのは、バブル崩壊後、二〇〇〇年代前半までに公的資金が注入された銀行で今なお公的資金が残っている唯一の銀行だということで、今なお報告されているということだと思います。

 ここの下の方、公的資金残高として、参考ということで二千五百億円と記載されております。一方ということなんですが、SBI新生銀行、これは二〇二一年九月にSBIホールディングスがTOBを発表しまして、それが成立して、そして二〇二三年九月一日、つい直近ですけれども、臨時株主総会とその後の手続を経て、九月二十八日にはもう上場廃止されております。

 これに先立つ五月十二日に、預金保険機構とSBI新生銀行は、公的資金の取扱いに関する契約というものを交わしておりまして、これは公表されております。資料二にあります。

 これによりますと、要回収額は三千五百億円になっているわけですよ。これは預金保険機構とSBI新生銀行が合意しているわけですから、本来、ここには三千五百億円と書くべきだと思うんですが、何でこの一千億円ものそごがあるのか、御説明をお願いいたします。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 SBI新生銀行、旧長銀でございますけれども、に対しましては、旧金融安定化法に基づく千三百億円と、早期健全化法に基づく二千四百億円、計三千七百億円の公的資金が注入されておりますけれども、このうち、注入額ベース、簿価ベースで千二百億円が返済をされておりますので、注入額ベース、簿価ベースの公的資金残高は二千五百億円ということで、このFRC報告に記載をしております。

 委員御指摘の公的資金の取扱いに関する契約書、ここに三千五百億円、約三千五百億円と記載しておりますけれども、これは長銀が特別公的管理から脱するときに、その時点の注入額は三千七百億円なんですけれども、そのときの様々な含み益なども考慮いたしまして、この時点で五千億円は公的資金として返却をするという合意をした上で、特別公的管理から出ております。

 その後、先ほど申し上げた千二百億円、簿価ベース千二百億円の返済が行われましたけれども、この際にも、これは千五百億円、約千五百億円の実際の金額が返済をされておりますので、この五千億円から千五百億円を引きまして、三千五百億円ということで、今回の契約においては、確認の意味でこの金額を明示いたしまして合意をしたということでございます。

 この三千五百億円を、簿価ベースですと先ほど申し上げたように二千五百億円ですけれども、三千五百億円を、金融庁としては、返還を求めるために今後取り組んでいくということでございます。

米山委員 結局、簿価と時価の違いみたいな話だとは思うんですけれども、これは、何せ、この三千五百億円を返すまでは、今ほどの金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づいて、報告義務があるわけですね。だから、結局、これは、三千五百億円をちゃんと返してもらうまではそれは報告してくださいという話なんだから、やはりここには三千五百億と書くのが正直だと思いますよ。何かそこで、いやいや、簿価で二千五百だからそれでいいんですと、一千億円をまるでなかったように言うというのは、それはちょっと報告として、そういうことをちゃんと国民がみんな見て、それをチェックするための報告じゃないですか。

 その報告に低い方の数字を言う、実際は三千五百億円返さなきゃいけないのに、それは本来あるべき状況ではないと思いますので、是非、次回からは、実際に返すべき金額を書いていただくということでよろしいですか。次回もまた二千五百と書くんですか。御返答をお願いいたします。

伊藤政府参考人 この御提出を申し上げていますFRC報告におきまして二千五百億円という記載をしておりますのは、先ほど来申し上げているとおりでございますけれども、委員の御指摘も踏まえまして、これまでの整合性、ほかの記載との整合性なども踏まえますけれども、よりよい、分かりやすい記載方法はどうあるべきかということは、引き続き検討してまいりたいと考えております。

米山委員 それは結構な御答弁で、是非そうしていただければと思います。

 ちなみに、そうした上で、そうすると一層明らかになるんですけれども、これは、一九九八年に旧長銀が公的資金を投入されてから既に二十五年、四半世紀がたっているわけなんですが、なお三千五百億円残っている。

 SBI新生銀行の業務純益ですけれども、これは三百七十億円程度しかないわけなんです。四半世紀たって、なお三千五百億円残っているんですが、これは一体全体、いつまでに、どういうふうに返済する予定なのか、それをやはり書かなきゃいけないんじゃないですか。それを全く言わずに、漠然と、記載は二千五百億円しか書いてないですけれども、漠然と、そう残っていますというだけじゃなくて、今後、一体全体、これをどう返すつもりなのか。その御予定、今は書いてないですけれども、その御予定を伺わせていただきます。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、現在のSBI新生銀行の公的資金の返済に関しましては、預金保険機構等の関係者間で締結されました、先ほど委員の資料にもございましたけれども、公的資金の取扱いに関する契約書の中におきまして、二〇二五年三月までに返済スケジュールを含めた返済に向けた具体的な仕組みが提案をされ、協議の上、同年六月までに合意するということで契約を結んでいるところでございます。

 したがいまして、現時点で返済スケジュールや返済方法はお示しできませんけれども、金融庁としては、同行が収益や企業価値の更なる向上を実現し、可能な限り早期の公的資金の返済につながるよう、引き続き求めてまいりたいと考えております。

米山委員 これはもう質問にはせずに、意見ですけれども、遅過ぎるわけです。だって、何せ、先ほども申しましたとおり、もう四半世紀たっているわけですよ。四半世紀たって、今年の六月にこの契約を結んでおきながら、なお、二〇二五年になってやっと返済計画ができる。それはもう、回収する気あるんですかと言われてもやむを得ないといいますか、もっと早くできるでしょう、来年できるでしょうと通常思うと思うんですよ。だって一年あるんですから、来年で一年後ですからね。それをこれだけの猶予を与えてしまうというのは、ちょっとそれは金融行政を監督するところとしていかがなものかと思います。

 次の質問に移りますけれども、次はちょっと技術的な質問なんですが、併せて、預金保険機構、これを調べてみますと、預金保険機構の資金調達法である預金保険機構債、これはずっと実は〇・〇%で調達できているんですけれども、一体全体、何でこれができているのか、その理由を、これはちょっと技術的な話ですが、お伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 政府保証つきの預金保険機構債は、競争入札によって、政府保証債市場の市場利回りを反映した発行利回りで証券会社に落札をされております。政府保証債市場の市場実勢利回りは、おおむね同じ期間の国債の利回りと同水準かそれ以上であり、御指摘のとおり、近年では〇・〇%あるいはそれを下回る水準となっているところでございます。

 こうした水準であっても預金保険機構債が購入される理由としては、様々考えられるところでございますが、例えば、金融機関が日々の資金繰りなどで使う取引の担保として活用することや、日銀に資金を預ける際の金利よりマイナスの程度が小さければ購入のメリットがあると、理由が考えられると思っております。

 なお、今後、金利が上昇していった場合には、それを反映して預金保険機構債の利回りも上昇していくものと考えているところでございます。

米山委員 これはもう質問じゃなくて意見なんですけれども、そうなんですよね。今は、ずっとマイナス金利が続いてきたから、預金保険機構の方も何とゼロ%で調達できていた。ところが、これからは金利が上がるわけですよ。調達のコストも上がる。そして、そもそも、今まではいろいろな状況で、担保に使うからみたいなぼやっとした理由で買ってもらえたのが、これからは、ちゃんと金利で選別されるようになっていっちゃうわけなんです。

 先ほどの話に戻りますけれども、何と、もう二十五年前のバブル破綻の処理がまだ終わっていないという状況で、我々は、次の金利高騰といいますか、金融のショックというものを、絶対に起こるかどうか分かりませんけれども、もはや見据えなきゃならない状態なわけです。

 そうしますと、預金保険機構の方もそれはよくよく注意していただいて、そして、なるべく早期にこのSBI新生銀行の破綻処理というものを、だって、今は終わっていないという状況ですからね、公的資金を回収していないんですから、進めていただけますようにお願いしたいと思います。

 次に、神田元副大臣の件について御質問いたします。

 まず、神田元副大臣は、十一月九日の参議院財政金融委員会、十一月十日の衆議院内閣委員会で、いろいろな質問に対して、精査中です、精査中ですと連発されました。ところが、その精査した内容を一切説明することなく、十一月十三日に辞表を提出し、大臣はそれを唯々諾々と受理してしまいました。

 十四日にはこの衆議院財務金融委員会が予定されていたんですから、幾ら辞表が出されたって、それは保留した上で、きちんと精査した内容をこの委員会で説明させて、それから解任といいますか、辞表を受理すべきだったと思いますけれども、一体全体、何でそんなふうに、神田財務副大臣の、まるで神田財務副大臣を隠すかのように辞表を受理してしまったのか、御所見をお伺いいたします。

鈴木(俊)国務大臣 まず、この度、神田前副大臣が辞任に至ったということ、大変遺憾でありまして、このことを重く受け止めているところであります。国民の皆様方の信頼を回復できますように、足下の課題に全力で取り組んでいかなければならないと考えているところであります。

 まず、辞任に至るまでの経緯を、事実関係としてお話をさせていただきたいと思います。

 先週来、本件について報道等がなされる中で、神田前財務副大臣には、しっかりと説明責任を果たすよう指示をし、国会の場で説明をさせてきたところでございます。

 土日を挟みました十三日に、月曜日、神田前財務副大臣から私に対しまして、国民生活に影響のある補正予算、そして金融庁の法案の審議を控える中で、これ以上国会審議に迷惑をおかけすることはできないため、職を辞したいとの申出がありまして、内閣としてもこれを了承したところでございます。

 神田前財務副大臣の辞職につきましては、様々な御意見を頂戴しているところでございます。例えば、御党の泉代表からは遅過ぎるとの御指摘を受けておりますし、また、ただいまは、辞表を受理せず、国会において説明責任を果たすべきとの御意見も頂戴しております。

 これらのそれぞれの御意見、いずれも根拠のある御意見だと思っておりまして、重く受け止めているところでございます。

 重要なことは、神田前財務副大臣が政治家としての説明責任を果たすことだと考えます。この点、神田代議士も、今後とも政治家として説明責任を果たしていきたい旨を述べておられる、そういうふうに承知をいたしております。

 財務副大臣をお辞めになって、私が指示するというような立場は変わったわけでありますけれども、神田代議士が政治家としてそうした説明もしっかりしていただくこと、それに期待をしているところであります。

米山委員 いや、大臣、今ほど大臣は、説明責任を果たすようにと指示したとおっしゃいましたよね、その在任中。それは、政治家としての説明責任じゃなくて、大臣が指示しているわけですから、副大臣としての説明責任ですよね。国会の場で神田元副大臣は説明していないんですよ。全部、精査中、精査中、精査中と言って、何も答えていないわけです。それに対して、大臣がちゃんと説明責任を果たせと言ったんだから。

 あと、辞任を早くしろと、早く決めるのは、それはいいんですよ。辞任は決めた上で、別に、十四日、ちゃんと場があったんだから、十四日のこの財務金融委員会で説明させたらいいじゃないですか。だって、それが大臣の今ほど言ったことでしょう。

 今のお話をそのまま受け取るなら、大臣、自分で説明しろと言っておきながら、自分で説明の場を奪ったんです。それでいいんですか。これからも大臣はそういうふうに、部下が何かしたときに、説明しろと言っておきながら、そのときには、これから精査して、精査してから答えますと言わせておいて、その精査の結果が出る前に全部辞表を受理する、今後もそういう対応をするということでよろしいですか。

鈴木(俊)国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、今回の辞任に至る経過がございました。そして、結果として辞表を受け取ったわけでございまして、それに対しましては、今、米山先生が御指摘になられましたようないろいろな御批判、御意見があるということ、これは承知をいたしたところでございます。

 いずれにいたしましても、副大臣という立場を離れたといたしましても、政治家として、これからも持たれた疑念に対しましてしっかりと応えていただくことが重要である、そういうふうに思っておりまして、そのことを強く期待をしているところであります。

米山委員 では、神田副大臣の個人の責任はまた別として、今度は徴税というのは、これも財務大臣の職責だと思うんですけれども、これに関して御質問させていただきたいと思います。

 神田元副大臣が代表を務める政党支部、自由民主党愛知県第五選挙区支部の二〇二一年の収支報告書によりますと、同支部は神田議員から二千八百五十万円の借金がある。同じく副大臣が代表の政治団体、神友会では神田氏から千八百八十四万円の借入金があり、合計すると、副大臣は支部と政治団体に合計四千七百三十四万円を貸し付けていると報告している。これはちゃんと公式に報告しているわけですね。

 ところが、一方、副大臣は、同年の資産公開法に基づく所得報告で、自身の貸付金は二百十万円と報告しており、差額四千五百二十四万円のそごがあるということになります。

 これは、まずもって、どっちかが、それは間違い若しくは虚偽なわけです。政治資金収支報告書が虚偽であるならば、それはもう政治資金規正法第二十五条第一項三号の虚偽記載罪で五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金になります。いや、違います、そっちじゃなくて、資産公開の方は罰則がありませんから、いやいや、資産公開が間違えましたとおっしゃられるのかなとは想像するんですけれども、では、何でそもそも神田元副大臣はこんなことをしたのか。それは徴税を免れるためではありませんか。だって、もうビルを差押えされているわけですよ。

 市の徴税当局からしたら、神田元副大臣が政治団体に対して持っている四千五百万円もの債権、これを差し押さえればいいわけです。差し押さえて、何なら転付命令を受けて、もう徴税当局が、それこそそうした支部からお金を取っちゃえばいいわけです、その政治資金から。それをごまかすために、それをそうされないために二百十万円と言ったんじゃありませんか。差押えされる前には財産調査等があるはずなので、その財産調査等で、そういう、私、四千五百万円も債権を持っているんですということをちゃんと言わなかった。もしそうだとすると、それは地方税法第三百七十五条第一項一号の虚偽陳述罪に当たるわけなんですよ。

 だから、これは単に神田元副大臣の政治家としての説明責任みたいな話じゃなくて、徴税当局としてきちんとそれは調べなきゃいけないと思うんですけれども、それはお調べになったんですか。神田元副大臣に対して、おまえ、自分の支部に四千五百万円の債権があることをちゃんと申告したのか。それをお調べになったかどうか、お答えください。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 委員今お尋ねの件につきましては、神田前財務副大臣の政治資金に関することでございますので、恐れ入りますが、財務省としてお答えを申し上げる立場にございません。御理解のほどお願いします。

米山委員 いや、僕は政治資金のことは聞いていないですよ。それは、財務省は徴税当局でしょう、ちゃんと徴税しなきゃいけないわけでしょう、国民からはばんばん徴税しているわけでしょう。徴税していて、しかも別に、どこが相手だろうが、それは日本国が相手だろうが、政治団体が相手だろうが、債権を持っているなら、それを差し押さえたらいいでしょう。

 今ほどのお答えを聞くと、どうやら財務省の方は、政治団体に対して持っている債権を差し押さえないという理解でいいんですね。それは大変ありがたいことで、我々政治家は、全部、自分の政治団体にお金を預けて、お金を貸しておけば、どんなに滞納しても差し押さえられない、そういうふうにお答えになったんですね。確認させてください。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御質問のあったこの内容は、政治資金収支報告書あるいは所得報告書に記載の事項に基づくものでございますので、今申し上げたように、政治資金に関することでございますので、財務省としてお答え申し上げる立場にございません。

米山委員 では、やりたい放題なんですかね。だって、別に、どこに対するものだろうが財産でしょう。債権は財産ですからね。その財産をちゃんと調査するわけですよ。地方税法にも書いてありますよ。財産調査するんですよ。財産調査する税務当局は、財産調査に当たっていろいろな資料を見るわけでしょう。それは、もちろん登記だって見るでしょうけれども、その中で、政治家だったら、わざわざ報告してくれているんだから、公開されているんだから、それを見たらいいじゃないですか。それは、そのぐらいのシビアさがなくていいんですか。

 今ほどのお話ですと、全然いいんですね。では、これから我々みんな、政治団体にお金を預けて、その債権を持って、そして税金滞納していいんですか。もう一回、聞かせていただけますか。

宇波政府参考人 再度のお答えになりますけれども、委員の御質問は、政治資金収支報告書と所得報告書に書いてあることについての週刊誌の報道に基づきまして、徴税職員に対して隠蔽する意図があったのではないか、それを確認したのかという御質問でございましたので、ただいま申し上げたように、政治資金に関することであり、財務省としてお答え申し上げる立場にございませんというふうに申し上げたところであります。

 一般論としての徴税の在り方については、国税庁の方から答弁を申し上げるかと思います。

米山委員 もう押し問答ですから。

 では、次は大臣にお聞きしますけれども、週刊誌の報道と言いましたけれども、週刊誌が報道しようがしまいが、それは公的な文書として出されている財産の所在ですから。ちゃんと財産があったのに払わなかったわけですよ。それをそういうふうに、不問に付しますみたいなことは、それはいかぬと思うわけですよ。財務大臣、こういう徴税行政でいいんですか、御所見を伺います。

鈴木(俊)国務大臣 政治家の活動に関する政治資金報告書のことでございまして、それはやはり、神田さん本人が一番、提出者であり、それに何か疑念を持たれたときにはしっかりと説明をしなければいけないんだ、そういうふうに思います。そういう説明の中で何か違法性というものがあるのではないかということが明らかになれば、それは、そうした行政的な対応に次の段階で進んでいくんだ、そういうふうに思います。

米山委員 結構驚いたんですが、では、政治家は、自分が説明するまでは、徴税当局から何か調べるのを猶予してもらえるんですね。いや、びっくりしました。だって、ほかのところはそうじゃないわけでしょう。政治家だけは猶予されるんですか。御所見を伺います。

鈴木(俊)国務大臣 いや、猶予をするとは言っておりません。今回の場合は週刊誌でそういう問題点が指摘をされたわけでございますが、私も政治資金収支報告書を出しておりますけれども、それについては間違いがないようにきちっとやっているつもりでございます。全ての政治家が、米山先生も含めてそういう対応をされていると思います。

 しかしながら、何か外部から問題点があるんじゃないか、これは脱法的なことをしているのではないかというようなことの指摘を受けましたら、これはしっかりと説明しなければいけない、こういうことで、きちっとしたものを出しているという思いの者が、何か言われるまでは説明しなければならないとかなんとか、そういう話ではないんだと思います。

米山委員 もう押し問答ですからこれで終わりにしますけれども、そういう話をしているんじゃなくて、政治資金は政治資金で、政治責任は政治責任で、それは説明したらいいですよ。でも、そうじゃなくて、徴税当局としては、そんなことは無関係に、財産があるなら調べて取りに行かなきゃいけないでしょうと言っているんです。

 それに対して、政治資金だから猶予される、猶予じゃないのかもしれませんけれども、政治資金だから答弁しないみたいな、それはおかしいですよということを言っていますので、それは是非、きちんと御対応いただければと思います。

 次、同じ、やはり神田元副大臣の件で御質問いたしますけれども、資料三を御覧ください。

 神田元副大臣は税理士であったと言われているんですけれども、実は、この税理士資格を調べてみますと、一九八七年に中京大学法学研究科修士を受け取り、八九年に愛知学院大学商学研究科修士を取られ、そして一九九一年に税理士登録をしているんですけれども、どうやらこれは、税理士法改正前の試験免除規定により、法学、財政学の修士を得たことで税法に関する科目も免除され、商学の修士を得たことで会計学に関する科目を免除され、要するに、全科目免除で税理士を取得したということでよろしいですか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の修士の学位等の取得による税理士試験の免除につきましては、平成十三年の税理士法改正前は、法律学又は財政学の研究により修士の学位を取得し、更に商学の研究により修士の学位を取得した場合には、税理士試験を受験せずに税理士資格を取得することができるものとされておりました。

 なお、こうした税理士試験の免除者につきましては、税理士法施行規則の規定によりまして、該当者の氏名を官報をもって公告してございます。その上で、委員お尋ねの神田前財務副大臣につきましては、平成四年四月の官報におきまして、税理士試験の全部科目免除者として公告されていると承知をしております。

米山委員 そうなんですよ。しかも、修士論文といいますけれども、これは法学、商学、財政学ですから、ほとんど徴税実務は関係ないみたいな、要するに、修士さえ取れば税理士になれたという時代だったわけなんですよ。

 ちなみに、今、なれたといいますけれども、これは法改正後の今なお、平成十三年だから二〇〇一年ですね、二〇〇一年の改正ですから、もう二十数年たって、何と、平成十四年三月三十一日以前に大学院に進学した者に関しては同じようにこの制度が適用されて、二十五年遡って、俺は二十五年前に修士を取ったから税理士になれる、全科目免除で税理士にならせてくださいというのは、なれちゃうんだと思われる、というか、なれるんですけれども、これはこのままでいいんですかね。

 もうこの制度は廃止して、さすがに、昔々に修士を取った人が全科目免除で税理士になれるなんて制度はやめるべきだと思いますけれども、大臣の御所見を伺います。

鈴木(俊)国務大臣 税理士試験の科目免除制度につきましては、平成十三年度税制改正におきまして、税理士制度の信頼性の向上を図る観点から、修士等の学位取得に係る学問領域を試験科目に相応するものに限定するとともに、試験科目の分野ごとに一科目について試験合格をしていることを条件とするといった改正が行われているところであります。

 この改正後の制度は、米山先生御指摘のとおり、平成十四年四月一日以後に大学院等に進学する方について適用することとされていますが、これは、改正前の制度を念頭に置いて大学院等に進学している方も存在することに配慮したものであると聞いているところであります。

 税理士試験の在り方を検討するに当たりましては、現行の制度により課題が生じているか、制度の改正によってどのような影響が生じるかなどを踏まえた検討が必要である、そのように考えております。

米山委員 結局お答えいただけなかったんですけれども、だって、この制度で現に問題が生じたじゃないですか。神田前副大臣というとんでもない税理士さんが滞納されたわけですよ。そういう問題を今なお、二十五年たってまだ今後発生し得る、そういう制度を残しておく意味はないでしょう。

 大学院に進学したのは、それはそう思って大学院に進学した人だっているかもしれませんけれども、だからって、それは別に法的に保護されるような既得権益じゃなくて、いや、そんなもの、制度が変わりましたからもう取れませんでいいじゃないですか。しかも、二十五年前ですからね。それはもうちゃんと制度としての整合性といいますか、そんな、全く徴税実務を知らないような、個別の税法の情報を何も知らないような人が税理士になったって困るわけですから、現に困ったわけでしょう、今。現に困ったことが起こったんですから、それは変えていただけることを強く要望させていただきます。

 次の質問に移ります。

 次の質問、資料八を御覧ください。これは、青いラインがインフレ率、赤いラインが名目賃金上昇率、グレーのラインが実質賃金上昇率。どう見ても、大臣、インフレ率に対して名目賃金上昇率はほぼほぼ常に追いついていないですよ。

 これはもう政府を挙げて、資料六、七とかに書いてありますけれども、物価と賃金の好循環、物価と賃金の好循環と、ずっとお題目のようにおっしゃられている。

 鈴木大臣も本年三月十五日の財務金融委員会において、「まずは物価上昇を超える賃上げの実現を目指すとともに、賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、それが更なる賃上げを生むという好循環をつくり上げる、」と。

 大臣も物価と賃金の好循環とおっしゃられているわけなんですけれども、そもそも好循環って何という話で、それは、好循環というのは多分、ポジティブフィードバックのことだと思うんです、英語の。物価が上がったらそれ以上に賃金が上がって、賃金が上がったらそれ以上に物価が上がって、そういう、次々と連鎖が起こって、より上がっていくということが起こらないと、好循環にならないわけです。

 ところが、実際に見てみると、常に名目賃金の上昇というのは物価上昇より低いわけです。そうしたら、まさに今ほど起こったみたいに実質賃金が下がるので、むしろ、それは今度は景気を冷やすわけです。実際下がったわけですよね。実際、GDPは下がっちゃったわけです。そうしたら、今度はもう賃金は上がらなくなっていくわけです。

 だから、物価が上がったって、全然好循環なんか起こらないんです。元々、起こるという論理もない。論理もないし、ここ、令和四年の一月以降ですから、もう一年半ほど全然起こっていないということも証明されちゃったわけです。それでなお、何で物価と賃金の好循環と言い続けるのか、その理由を教えていただけますか。

鈴木(俊)国務大臣 一般論として、その前に、物価と賃金の好循環を目指して、どのような経済財政運営を行っているのかという御質問も含まれていたと思いますが、政府といたしましては、骨太方針二〇二三にありますとおり、賃金上昇やコストの適切な価格転嫁を伴う賃金と物価の好循環の実現を目指しているところであります。

 そのため、賃金と物価の好循環の鍵となる持続的な賃上げの実現に向けて、今般の経済対策におきましても、賃上げ促進税制の強化のほか、価格転嫁対策の強化、生産性向上の支援などを盛り込んでいるところであります。

米山委員 いや、回答になっていないんですけれども。賃上げ税制はいいんですよ。今ほど大臣も実は回答の中でおっしゃられたと思うんですけれども、対策として行っていることは賃上げだけなんです。それでいいんです。賃上げさえすれば、だって、賃金が上がったら、それはやがては、経営者だって、賃金が上がっているのに全く製品価格を上げないわけにはいかないでしょう。賃金さえ上げれば別に物価は、しかも、賃金に対して、全ての製品は全部が賃金じゃないですから、賃金を上げれば、それは物価は賃金以下の上昇をするわけなんです。だから別に、賃上げさえしていれば、何も物価なんて上げようとする必要はないんですよ。

 わざわざ物価を上げようとするから、まあ、それは日銀がやっているので俺は知らぬと言うのかもしれませんけれども、わざわざ物価を上げようとし続けているから、こういうふうに物価に対して賃金が追いつかなくて、実質賃金が下がって、そしてGDPが下がっちゃっているんです。ばかばかしいじゃないですか。

 もう物価と賃金の好循環なんて言葉はやめて、賃金を上げますだけ言って、そして、ほっておけば、賃金が上がれば、それは物価は付随的にそれよりも低い水準ですが上がるんだから、それが上がり過ぎないようにだけすればいいんです。

 大臣、もう物価と賃金の好循環はやめる、そう言っていただけますか。

鈴木(俊)国務大臣 米山先生の今の御質問の御主張でありますが、賃上げが物価高を追い越し、物価と賃金の好循環となるようなことはあり得ないと思うということであった、こういうふうに思います。(米山委員「そうじゃないですけれども」と呼ぶ)えっ、そうじゃない。

 一般論として申し上げますと、一人当たり名目賃金、これは物価上昇率と労働生産性の伸びに見合って上昇していくこと、これが想定をされるために、生産性が向上する場合には、やや長い目で見れば、一人当たりの名目賃金上昇率が物価上昇率を上回るものと考えます。

 実際、時間当たり名目賃金とコアの消費者物価指数を比較いたしますと、一九七〇年代から一九九〇年代半ばや、二〇一〇年代半ばから二〇二〇年頃までにおきましては、名目賃金上昇率が物価上昇率を上回っていたものと承知をいたしております。

 他方で、足下では、輸入物価の上昇を起点とする物価高が生じる中で、中小企業を始め、十分に価格転嫁ができていないことなどにより賃上げする余裕がない企業もあったことも、物価上昇に賃上げが追いついていない原因の一つであると認識をいたします。

 政府といたしましては、今般の経済対策なども通じまして、生産性向上を促すとともに、価格転嫁対策の強化などによりまして賃上げの目詰まりの解消に努めまして、賃上げと物価の好循環の実現を目指しているところでございます。

 御指摘のとおり、賃上げはとりわけ重要な課題でありまして、政府としても、賃上げ促進税制の強化、最低賃金の引上げ、価格転嫁対策の強化など、様々な政策を動員して、物価上昇を上回る賃上げの実現を目指してまいりたいと考えております。

米山委員 時間がもう過ぎているので一言だけ言わせていただきますけれども、この資料八で、既に名目賃金が物価を、上がっているところがあるんですよ。令和四年一月から四月ぐらいですか。だから、別にそれをないなんて言っているんじゃなくて、でも、このとき、インフレ率は低いでしょう。だから、インフレ率は低いままでいいんです。インフレ率は低いままで、別に賃金が上がることだけ目指せばいいですよねと言っているので、是非そういうふうに、わざわざ物価を上げるというネガティブなことをしない政策に転換していただけますことを御期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて米山君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。道下大樹君。

道下委員 お疲れさまでございます。立憲民主党・無所属の道下大樹でございます。

 今日は、質問の機会をいただきまして、皆様に心から感謝を申し上げます。また、日銀の植田総裁には、午前中の報告と、そして質疑、答弁の後、また午後にも御出席いただきまして、感謝申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、まず植田総裁に伺いたいというふうに思います。

 今月十五日に内閣府が公表しました七―九月期のGDP速報値は、物価変動を除く実質で前期比〇・五%減、年率換算は二・一%減、二〇二二年十月―十二月期以来、三四半期ぶりのマイナス成長となりました。物価高を受けた個人消費の不振に加えまして、企業の設備投資も落ち込み、新型コロナウイルス禍からの景気回復に急ブレーキがかかったというふうに専門家の方からはお話が出ております。二〇二三年一―三月期と四―六月期は年率換算で三・七%の増そして四・五%の増と、高成長が続いていたわけであります。

 日本銀行が掲げる二%の物価安定の目標を超える物価上昇は、これは消費者物価指数ですけれども、二〇二二年四月以降十八か月連続で二%を超え、三%以上の物価上昇は八月まで十二か月連続でした。九月の分は、これは三%を割り込んだわけでありますが、それでも、生鮮食料品やガソリン等エネルギーを除いたら、まだ四%だとかが続いているわけであります。

 先日、岸田総理はスーパーを視察されましたけれども、どのような認識を持たれたのか新聞記事などには載っていますけれども、今日は、もっと私たち一般庶民の立場に立って、そうしたところからちょっと質問をさせていただきたい。

 私もスーパーに行きます。それは見るだけじゃなくて、自分自身も、東京では宿舎に住み、そして、単身赴任ですから、自分でスーパーに行って買物して、宿舎では料理して食べます。自炊しています。地元に帰れば家族がいるんですけれども、妻と手分けして買物をしたりして、一円でもより安いものを買ったりするわけであります。やはり、エネルギー価格の高騰や気候の変動もありまして、野菜の値段が上がるだとか、肉類が上がるだとか、少しでも安いものを買いたいというふうに私は思いながら買物をしているわけであります。そうした中で、そうした消費者という目線でも、結構今、物価は上がっているなというふうに非常に感じているわけです。

 先日、地元のスーパーを幾つか視察させていただいたり、経営者側そして労働者側からもいろいろとお話を伺いました。そこのスーパーでは、総合スーパーというか、複合施設にある総合スーパーで、結構、よりよい品がなかなかの値段で販売しているところと、あと普通のスーパーと、もう一つは安いものが大量に販売されているというスーパー、この三つの種類のスーパーを展開しているところなんですけれども、前年同月比で、それぞれのスーパーは前年よりも売上げは上がっている。複合施設にある総合スーパーは一〇三%とか、中くらいのスーパーでも一〇五%なんですけれども、安い品物が大量に販売されている、種類はそんなにないというところの売上げが前年同月比と比べると一一三%になっているんです。

 だから、そう考えると、消費購買が上がってきたとかいう話はありますけれども、実は、消費者は今、また安いものを買う傾向、私は、生活防衛という言葉もありますけれども、消費者は非常に節約をしなければならないというような状況に今置かれているというふうに思います。

 また、これは別のスーパーの経営者の話を伺いますと、一人のお客様のスーパーで一月平均で買う回数が減ってきているというんですよ。買う値段は変わらないんですよ。だから、週に三回ぐらい行っていたお客さんが週に二回とか週に一回で、それもそんなに買わないようにしている。週一回だったら一週間分大量に買おうということで、価格というか、支払い額は増えるんですけれども、でも、そんなに支払い額は変わらないというんですよ。その一方で、スーパーに通う回数が減ってきている。こういういわゆる行動変容というんでしょうか、そういったところをスーパーの経営者側も非常に痛感をしているんですよね。

 そこで、本当に、こういった形で、まず、消費者は、今日の午前中の話もありましたけれども、実はやはり今の物価高で非常に苦しんでいるというふうに私は思いますし、それに対して経営者側は、今政府は物価と賃金の好循環ということで物価を上げようとしていますけれども、新聞記事にありましたのは、今値下げセールをやっているスーパーがあちこちに見受けられます。先ほども、九月、十月になって様々な食料品や日用品の価格が上がったということなんですけれども、しかし、上げてもお客さんが来ない、やはりここは価格を下げなきゃいけないという状況になっているというふうに思うんです。

 ということは、日銀や政府が目指している方向、それを目指して行っている政策と消費者や実際の企業はちょっと乖離してきているんじゃないかなというふうに思うんですよね。だから、国民は物価高に耐え切れなくなってきているし、企業も、そうした国民、特に消費者の動きにしっかりと機敏に対応しているのではないかというふうに思います。

 私はもう日銀は二%物価安定目標達成に固執しなくてもいいのではないかというふうに思うんですが、総裁の御意見を伺いたいと思います。

植田参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、第三・四半期の実質GDPが、まず、個人消費や企業の設備投資の減少から、それまでの高めの成長の期と比べますと、三四半期ぶりのマイナス成長となったわけでございます。

 今後明らかになってきますいろいろなデータを丹念に見ていく必要があるとは思いますけれども、私どもとしては、我が国経済が緩やかに回復しているという姿はまだ継続しているというふうに考えております。

 その上で、物価情勢ですけれども、午前中も少しお話ししましたが、足下の物価高あるいはインフレーションには二つの部分があるというふうに考えております。一つは、輸入物価上昇が国内の物価に転嫁されてくるというコストプッシュ型の部分、それからもう一つは、国内の総需要にも支えられて、賃金と物価の好循環が少しずつ回り始めているという部分かと思います。

 これまでのところを見ますと、物価上昇は、その第一の部分、コストプッシュによる部分が非常に大きな割合を占めているというふうに思います。それが人々の実質所得や収益への下押しという形で家計や中小企業等に負担感をもたらしていることは十分認識してございますし、消費の一部に委員がおっしゃいましたような生活防衛的な動きが出てきているということも認識しております。ただ、こうしたコストプッシュ圧力部分は、輸入物価の前年比が今年の春ぐらいからマイナスに転じているということも踏まえますと、徐々に和らいでいくというふうに見ています。

 これに対して、第二のコンポーネント、賃金と物価の好循環の部分については、まだまだ、よい芽が出てきていますが、もう少し強くなっていかないといけないというふうに考えてございまして、これを支えるために、日本銀行としましては、粘り強く金融緩和を継続しているところでございます。

道下委員 先ほどもちょっと話が出ましたけれども、物価と賃金の好循環というのは、私は、政府は両方一緒にやるべきではないと思うんですよね。物価よりも賃金が上回ればある程度生活にゆとりができるかもしれませんが、今このような外的要因、つまり、為替相場、これは為替に関しては金融緩和政策もあるんですが、外国の、外国というかエネルギー価格の高騰というものがあって、それで輸入物価指数が上がってきている、それが国内の物価も押し上げているということであれば、それを更に円安という輸入物価指数を上げるようなことを日銀はしなくてもいい、しなくても自然と物価は上がるというふうに私は思うんですよね。

 今ちょっと話が出ました円安なんですけれども、為替相場の方で今円安傾向がやはりじわりじわりと進んでおりまして、今日時点では百五十円台半ばで推移をしております。これまでは日米の金利差によるところが大きいというふうによく言われておりますけれども、私は、今後は金利差のみならず国の経済力の差による円安の影響が出てくるのではないか。よく言われているのは、年末に、GDPに関しては日本はドイツに抜かれて四位になるというふうに言われております。

 経済同友会の新浪代表幹事は今月十四日の記者会見で、日銀の金融緩和政策について、国民経済に与えている影響が圧倒的に大きくなっているのではないかと思う、そろそろ今の金融政策というのは終えんさせていかないといけないと発言されたり、また、イールドカーブコントロールについては、相当な意味で崩れている、世界の市場は不自然なコントロールをする者に対して厳しいと分析し、日本の経済力からすると一ドル百五十一円は円安過ぎる、適度なら百十円ぐらいと具体的な為替水準まで提言されました。

 私の地元北海道発祥の家具小売の国内最大手ニトリは、想定を上回る円安で、中間決算は二百五十億円近い減益となりました。以前、あるセミナーで似鳥会長の講演を伺ったことがありますが、そのときには、非常にこの過度の円安に懸念を表明されていました。それでも、今は百五十円や百五十五円という為替相場を想定しつつ、経営の方向性をまた修正をされているということで、非常に努力をされているなというふうに思うんです。

 こうした異次元の金融緩和政策による過度の円安、悪い円安が国内経済に悪い影響を与え続けていると私は思いますが、こうした状況はいつまで日銀として続けるのでしょうか。

植田参考人 為替相場の水準等について具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが、為替相場は様々な要因によって変動いたします。このところ、市場では、米国で金融引締めが長期化するとの見通しの下で、内外金利差に着目する声が多いというふうに認識してございます。

 先ほどの繰り返しになりますが、円安の影響も含めた輸入物価上昇を起点とした物価上昇が家計や中小企業等に負担をもたらしていることは十分認識してございます。

 ただ、これも先ほど申し上げましたように、中小企業にも収益が広がり、賃上げの動きが広がっていくという状況を支えるために、粘り強く金融緩和を継続してございます。

 その上で、こうした金融緩和の継続をどういう状態になれば修正するか、修正することができるかということにつきましては、二%のインフレ目標の持続的、安定的な実現が見通せるようになればということで内外に表明させていただいておりますが、その時期について現時点で確定的なことを申し上げることはできないというふうに考えております。

道下委員 その物価目標二%ということと、先ほどからおっしゃられている賃金、これはやはり、持続的な賃上げが当初の目標どおり行われているかどうかということが見通せるというか判断できるのは、やはり来年の六月、夏ぐらいですよね、二〇二四年度の春闘の状況によると思うんですが、その間ずっとこのような物価高の上昇。

 ただ、それに見合った賃上げはやはり行われていないというか、実質賃金がずっとマイナスという状況では、本当に、疲弊するのは国民なんですよ。特にそれは、資産を持たない大多数の一般庶民なんですよ。そうしたところがどんどんどんどん、このタイムラグの間、ずっと自分たちが節約して努力して、貯金を減らしながら、預貯金がない人は大変な思いをしているわけですけれども、こうした状況をいつまで続けるのかということが、国民からは本当に多くの声を伺います。

 政府と日銀が進める異次元の金融緩和政策、これが私は円安基調を生んでいると思いますけれども、それを止めたら物価と賃金の好循環は止まってしまうんですか。私はそもそも物価よりも賃上げを先にすべきだと思うんですが、異次元の金融緩和政策を止めたら賃上げは止まってしまうんですか。ちょっとその辺について御説明をいただきたいと思います。

植田参考人 これは仮定での話でございますが、金融政策が正常化されて金利が大幅に上がっていくということになりますと、金利敏感的な需要項目は下押し圧力を受けるということになります。それは、そういうセクターの需要の減少、そして雇用の減少にもつながりますので、賃金にもマイナスの圧力がかかるということになると思います。

道下委員 でも、そういう説明をしていて、ずっと金融緩和政策を続けていて、でも低賃金が続いていてということですよね。ちょっと私は順番が違うんじゃないかなというふうに思います。

 以前も私が申し上げたのは、これは私はしっかりと勉強したわけではないんですけれども、いろいろと読んでみますと、イギリスのブレア政権のときに、経済成長が低迷している中で、先に賃上げを政府が企業に要望した。やはりそのときには経営者は反対します、売上げが上がっていないのに、利益が上がっていないのに何で賃上げをするんだと。ただ、政府は、政府系金融機関などから無利子や低利子で貸付けをして、そして、まず賃上げをしてほしいという要望をして、それで渋々経営者が賃上げをしてみた。そうすると、所得が増えたサラリーマンなどは、おいしいものを食べようか、すてきな洋服を買おうか、車を買おうかといったことで個人消費が増えていった。そうすると、企業が売上げが上がって、じゃ、更に設備投資や従業員を増やしたり賃金を上げようかということの好循環が生まれたということを私は学んだわけでありまして、私は、これと逆のことを今、これまで二〇一二年以降、二〇一三年というか、安倍政権以降やってしまっているんじゃないかというふうに思います。

 それで、政府と日銀はデフレ脱却とずっと言っていますけれども、つまり、物価を上昇させるデフレ政策として金融緩和政策をずっと継続してやっていますが、一方で物価高対策、つまり、今回でいえば四万円減税や給付金制度、そしてエネルギーですね、電力、ガス、そしてガソリンなどのエネルギーの価格を抑制する制度などを両方一遍にやっているんですよね。

 これは政策として私は矛盾しているんじゃないかと思いますが、この点について、日銀総裁として御回答いただきたいと思います。

植田参考人 先ほど申し上げましたけれども、足下の物価高、インフレーションの中に、コストプッシュ型で進んでいる部分と、まだ芽が出てだんだん育っていくというところでありますが、国内の賃金と物価の好循環の部分、双方がございます。

 政府は、今回の総合経済対策において、まずコストプッシュ型の部分から、国民生活、事業活動を守るという対策として手を打たれているということと、それから、国内の物価、賃金の好循環を促進するという部分についても、賃上げのモメンタムの維持拡大を図る施策を含めていただいているという面で、両方のインフレーションに、片方はその弊害を小さくする、片方は好循環を育てていくという両面に目配りされている政策だと思いますし、日本銀行も、後者の賃金と物価の好循環をサポートしていくために金融緩和を続けているということでございます。

道下委員 なかなかちょっと分からない説明ですね。しかも、その説明が正しければ、もう既に、このような今の物価高、それに伴った賃上げにはなっていないとか、そういう状況が本当は改善されているはずなんですよね。それが改善されていないものをずっと今も続けているということは、私はもう政策の失敗でないかなというふうに思うんです。

 是非、数字だとかももちろん大事なんですけれども、一般庶民の生活の大変さとかそういったところも十分肌で感じていただきながら重要な金融政策などを決定していただきたいとお願い申し上げまして、総裁、ここで御退席していただいて結構です。どうもありがとうございました。

津島委員長 どうぞ退席してください。

道下委員 次に、国内の状況、税収について、特に消費税について伺いたいと思います。

 今年の七月三日に財務省が発表した二〇二二年度の国の一般会計の税収は、約七十一兆一千三百七十三億円ということで、過去最高を更新したということでございます。そのうち消費税については、二十三兆七百九十二億円ということで、三年連続で所得税収入を上回った、最大の税目となった。だから、消費税、そしてその次が二十二兆円台で所得税、そして十五兆円でしたっけ、法人税ということでございます。

 このように、ここ数年、ここ数年というか今年、消費税収が二十三兆円と増加になった要因について、財務大臣としてどのように分析しているのでしょうか、伺いたいと思います。

鈴木(俊)国務大臣 道下先生今御指摘になられましたとおりに、令和四年度、二〇二二年度の消費税収は二十三・一兆円でございます。これは対前年度比で一・二兆円の増加となっております。

 その背景でございますが、要因でありますが、これは、円安、資源高騰により、輸入取引に係る消費税収の増加によりまして二・二兆円増加した一方、減少要因といたしましては、売上税額の増加に比して仕入れ税額の増加が多かったことなどによりまして消費税の還付が一・二兆円増加したことなどから、その他もございますが、差引きいたしまして一・二兆円の増加となったものであります。

 そして、この消費税収の増加の一定程度は輸入物価を含む物価上昇による影響を受けたものであると考えられますが、そのほかにも、消費量、価格転嫁の度合いなど様々な要因が複雑に影響していると思います。

 したがいまして、実際に物価上昇がどの程度影響を与えるかについて具体的、定量的に申し上げることは困難である、そのように考えております。

道下委員 今御答弁いただきましたが、消費税収の要因について、輸入物価上昇だとかいろいろとお話がありました。ちょっと複雑でなかなか説明しづらいというお答えだったんですけれども、私は、でも、様々な物価が上昇して、それに転嫁される消費税も上がるわけですから、最終的に払うのは国民というか消費者なんですよね。そう考えると、結局、政府は消費税収増だけれども、でも国民の方の負担は増えたということにはなりませんでしょうか。

 簡単に考えて、今までスーパーで百円で売られたものに対して、それに消費税一〇%といったら十円ですね。でも、それが価格が一割上がった、百十円に上がったといったら、百二十一円で、消費税収は十一円ということで。ただ、消費税で税額で考えると、十円が十一円になって、一割上がったんですよね。

 だから、国民負担も、物価が上がれば消費税負担もその分上がるということで、そう考えれば、最終的には、消費税収が増えて政府としてはよかったよかった、そういうふうに思うんじゃなくて、僕は、一方で国民の負担は増えたんだよということをしっかりと政府として認識しなきゃいけないのではないかと思いますが、財務大臣としてどのようにお考えでしょうか。

鈴木(俊)国務大臣 道下先生おっしゃるとおりに、物価が上昇して価格が高騰する、それによって消費者の払う消費税が増えるということ、これは事実であると思います。また、一方において、物価が上がることによって消費が抑えられるということ、これは先ほど冒頭にスーパーマーケットの例でお話をいただいたところでございますが、そういうことも一つの考えるべき点ではあると思います。

 いずれにいたしましても、賃金を上昇させる、そういうことがやはり今の局面においては大変重要なことの一つであると考えています。

道下委員 最後の賃金を上げるというところは一致するんですけれども、ちょっとその前がなかなか一致しないということで、この点はまだまだ議論が必要だなというふうに思います。

 そうした状況の中で、政府は、先ほど申し上げましたけれども、物価高対策として所得税、住民税の四万円減税をやるということで、来週から補正予算案について、それも含めてですけれども、更に議論が進みますけれども、NHKが今月十日から十二日に実施した世論調査によりますと、この所得税、住民税の四万円減税について、大いに評価するが五%、ある程度評価するが三一%であるのに対し、余り評価しないが三四%、全く評価しないが二五%ということで、評価しない世論が五九%もあるんですね。先日、時事通信も同様の世論調査を行って、こちらも、評価しないが五一%でした。他の報道機関も同様の結果が出ております。

 こうした結果は、もしかしたら、先日の本委員会での財務大臣の、こうした所得税、住民税四万円減税の原資はないというふうに答弁された影響もあるのではないか。つまり、国民は、政府からお金をもらったとか減税してもらってよかったよかったとか、そういうことじゃなくて、財政が厳しいのに、今一回限りでもらっても、自分たちで喜んでいただくことはできないというか、余り効果が薄いというふうに実感をしているんじゃないでしょうか。さらには、そのときは、年内の解散・総選挙があるかもしれないということで、選挙前のばらまきだということも国民は見透かしていたのではないでしょうか。

 この国民の意見をどのように財務大臣として受け止めておられるんでしょうか。

鈴木(俊)国務大臣 先般の当委員会での階先生との答弁のやり取りの中で、私は原資はないという言葉は使っていないんですけれども、何かSNSのニュースの見出しにはそういうふうに書かれておりました。

 各社が出されております世論調査の結果について逐一コメントすることはいたしませんが、また、私のそうした委員会の答弁が影響しているかどうか、それも分かりませんけれども、その上であえて申し上げれば、今般の所得税、住民税の減税措置を含む経済対策について必ずしも国民の皆様に十分にその趣旨が浸透していないことも、要因の一つとして世論調査の結果にも表れているものと考えています。

 今回の措置は、賃金上昇が物価高に追いつかず収入の上昇を実感できなかった賃金労働者を始めとする国民の御負担を緩和するために、コロナ禍という苦しい期間、すなわち令和二年度から令和三年度及び令和三年度から令和四年度の二か年における所得税、住民税の増加分である、増分である三・五兆円に見合う規模で、分かりやすく国民の皆さんに税の形で直接お返しし、もって長年しみついたデフレマインドを払拭するという観点から実施するものであるわけでありまして、総理も述べておりますように、こうした経済対策の趣旨をこれからも丁寧に説明していくことが重要であると考えております。

道下委員 ちょっとその御説明では国民は納得しないのではないか、私が納得していませんので、国民の皆さんも納得しないのではないかというふうに思っています。私は、それが世論調査に、影響を受け、今答弁を聞いても、国民の皆様は、じゃ、評価するよということにはならないというふうに思います。

 ここで、井林内閣府副大臣にもお越しいただいていますので、物価高騰対策だったりとかそういったものが盛り込まれているデフレ完全脱却のための総合経済対策について、ちょっと伺いたいと思います。

 この名称、岸田内閣が十一月二日に閣議決定したデフレ完全脱却のための総合経済対策。デフレは脱却したんですか。政府として、デフレは脱却したけれども、完全に脱却していないという。私はちょっとまだデフレ脱却とデフレ完全脱却との違いが分かっていないんですけれども、この点について、ちょっと説明していただきたい。岸田内閣としては、デフレ脱却がどういうふうになってデフレ脱却で、これからどういう状況になればデフレ完全脱却を達成したと判断するのか伺いたいと思います。

井林副大臣 お答え申し上げます。

 デフレ脱却と完全脱却ということでお伺いだというふうに思います。

 まず、デフレ脱却でございますが、政府といたしましては、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないことと定義をしてございます。

 デフレ脱却の判断に当たりましては、物価の基調や背景を総合的に考慮して慎重的に判断する必要がありまして、例えばでございますが、消費者物価、GDPデフレーター、GDPギャップ、ユニット・レーバー・コストといった指標の動向に加えまして、賃金上昇の持続性があるか、適切な価格転嫁が行われるかなど様々な角度から総合的に判断する必要があるというふうに思っています。

 その上で、我が国経済は、三十年ぶりの三・五八%の賃上げですとか、過去最大規模の名目百兆円を超える見込みの設備投資や、五十兆円を超える負のGDPギャップが解消されつつあることなど前向きな動きが見られ、デフレ脱却の千載一遇のチャンスを迎えているというふうに考えております。

 しかし、現時点では、賃金上昇が物価高に追いついておらず、また消費は力強さを欠く状況でございまして、これを放置すれば再びデフレに戻りかねず、現時点では、デフレから脱却したとは言えないというふうに考えてございます。

 ただ、この千載一遇のチャンスを逃すことなく、デフレから完全に脱却するために、今般の総合経済対策では、一時的な措置としての、国民の可処分所得の下支え、価格転嫁対策の強化や、賃上げ促進税制の拡充、中堅・中小企業の省人化、省力化投資などの支援など、賃上げの勢いを止めない、こうしたモメンタムの維持拡大、そして、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化する、供給力の強化を進めることとしております。

 本経済対策を進めることによりまして、日本経済を一段高い成長経路に乗せ、賃金と物価の好循環の下で消費と投資が力強く拡大する、熱量あふれる新たなステージへの移行を実現してまいりたいと思っております。

 なお、デフレ脱却と完全脱却の違いでは、完全脱却との言葉を用いることで、デフレからの脱却だけではなくて、三十年ぶりに新たな経済ステージへの移行を実現するという政府の強い決意を示しているものと御理解をいただければというふうに思っております。

道下委員 今答弁を聞いていると、実はデフレ脱却はまだしていないということなんですね。答弁では聞いたんですよ、まだそこまで行き着いていない、またデフレに戻るかもしれないと。ただ、この今の勢いを増すために、デフレ完全脱却という、何か決意というか、意欲だけなんですね。

 今までのデフレ脱却のためにやってきたこととデフレ完全脱却のためにやることとは私は変わらないと思うんですが、どうでしょうか。

井林副大臣 デフレ脱却というのは、物価が持続的に下落する状況を脱して、再びそういう状況にならないようにするということでございますので、そういう、再びそうした状況に戻る見込みがないことを目指して、今、総合経済対策を取り組まさせていただいておりますし、完全脱却という言葉で強い決意を示しているものだというふうに御理解を賜ればというふうに思っております。

道下委員 私、財務省の方や日銀の方に聞いたら、デフレに戻らないようにすることがデフレ完全脱却というふうに説明したので、定義の違いがあるのかなというふうにちょっと思いますが、余りデフレ脱却とデフレ完全脱却というのは大きな意味はないんじゃないかなと、私は今、御答弁で受け止めました。

 ちょっと時間があれなので、もしかしたら最後になるかもしれませんが、私は、総合経済対策の中で、最初の文章、低物価、低賃金、低成長に象徴されるコストカット型経済から三十年ぶりの変化を果たすまたとないチャンスを迎えているというふうに記載されていますが、これはきちんと分析する必要があるんですよね。なぜ低物価になったのか、なぜ低賃金になっているのか、なぜ低成長なのか。しかし、それが、八十ページにも及ぶ今回出された総合経済対策の文書の中には私は十分に読み取れませんでした。きちんと分析する必要があると思います。

 まず、政府はどのようなコストをカットしてきた経済だから問題だと定義しているのか、井林副大臣に伺いたいと思います。

井林副大臣 お答え申し上げます。

 我が国の経済が、一九九〇年代のバブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景に、企業は、足下の収益確保のために、原材料等の投入コストのみならず、賃金や成長の源泉である投資までも抑制せざるを得ず、結果として、消費の停滞や、経済の体温とも言える物価の低迷、さらには成長の抑制をもたらした。コストカット型経済というのは、こうした一連の現象を述べたものでございます。

 他方で、アベノミクスによりまして、デフレでない状況をつくり、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加につながってまいりました。

 こうした成果の上に、岸田内閣の新しい資本主義の二年間の取組が、先ほど申し上げました、三十年ぶりの三・五八%の賃上げや、過去最大規模の名目百兆円の設備投資、五十兆円ものGDPギャップの解消の進展などにつながったものと認識をしております。

 今回の総合経済対策によりまして、コストカット型経済という悪循環から抜け出しまして、消費と投資が力強く拡大する、熱量あふれる新たなステージへの移行を実現してまいりたいと考えております。

道下委員 もう時間がないのでこの後の質問は後日させていただきたいと思いますが、今日お配りしました、G7各国の賃金の推移なんですね。本当に、この三十年間で、ほかの国々は名目賃金も実質賃金も、まあ、実質賃金はイタリアを除いてなんですけれども、全部上がってきているんですよ。日本は、バブル崩壊はありましたけれども、それ以外には、各国共に、リーマン・ショック、それからコロナ、いろいろあって、経済が落ち込むとかいろいろあったんですけれども、ずっと名目賃金も実質賃金も上がっているんですよ。こういう、海外で、G7各国は名目、実質賃金それぞれが上がっていて、なぜ日本でできないのか。私は、低物価とか低成長よりも、なぜ低賃金が続いているのかということをしっかりと分析しないと、先ほどから、賃金を上げる、賃上げすると言っていても、結局、今まで賃上げできなかったことを分析しないままでいろいろなことをやったって、私は賃上げには結びつかないというふうに思います。

 そういう思いを込めてこの後も質問しようと思って厚生労働省の皆様にも来ていただいたのに、申し訳ございません、時間が来まして。この辺で質問を終わらせていただきます。どうも済みません。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて道下君の質疑は終了いたしました。

 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会、小野泰輔でございます。

 今日は、私は、よそから参りましたということで、委員長、そして理事の皆様、そして同僚の伊東信久理事始め同僚議員の皆様にも、機会をお与えいただいたことを御礼申し上げたいと思います。

 なるべく時間を返せるように、ちょっと簡潔にやりたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 先ほど、道下委員から大所高所の話がありましたが、私はもうちょっと、生活者の皆さんが本当に日々直面している問題をお尋ねしたいと思うんです。

 そういう中で、私もいろいろと自分の地元を歩いていますと、いろいろな御意見をいただくんですが、今日は、国際機関とか海外企業にお勤めの皆さんが、海外で運用していた年金を国内に帰国してから引き出して生活をしていらっしゃる、そういうことについて、納税をしているのかどうかという問題についてお伺いをしたいと思います。

 まず、お尋ねしたいんですけれども、国際機関とか、あと海外企業にお勤めをされていた方が、海外の年金を勤務しているときに運用されていて、退職されたときに、それを国内で生活して引き出して使う場合に課税されるのかされないのか、ここについてお伺いしたいと思います。その根拠と、併せて例外があるのかということもお尋ねしたいと思います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、国際機関や海外企業から支給を受ける年金を含めまして、過去の海外における勤務に基づき支給を受ける年金につきましては、我が国の所得税法におきましては、日本国内に住所を有しているなど日本の居住者に該当する場合には、国内における勤務に起因して支払いを受けるものに限らず、国外における勤務に起因して支払いを受ける給与や年金に係る所得などのいわゆる国外源泉所得につきましても我が国において課税することとされておりまして、租税条約の規定により、その勤務が行われた国においてのみ課税できることとされているものを除きまして、原則として公的年金等に係る雑所得として課税対象となるということでございます。

 その上で、国際機関から支給を受ける年金につきましては、その国際機関に係る特権及び免除に関する条約や協定などによりまして非課税とされている場合があればこの限りではございませんが、現状、主要な国際機関において、支給する年金を非課税としている例は把握されていないということでございます。

小野委員 条約で免除されているとかいうことで、海外の年金を国内で引き出したとき、課税されないという方もいらっしゃるんですけれども、私が聞いている範囲だと、大部分のケースでは課税されるということになっています。

 そういう状況なんですけれども、現実を見てみますと、これは年金に限らないんですけれども、海外の口座にあるお金を国内で引き出した場合、送金がなされた場合に、百万円以上の場合には金融機関は税務署にその旨を通知しなければいけない。国外送金等調書というものがありまして、それで税務署に情報が行くようになっているんですが、百万円未満の場合ですと、そういった情報が税務署に行かないということになっているんですね。

 そういったことを知っていらっしゃる方が海外の年金を国内で引き出すときに、本来は確定申告をしなければいけないんですが、申告をしていないという方が結構いらっしゃるんじゃないかというようなお声を私は聞いています。この百万円未満の送金について、調書の提出を今免除しているわけですが、これはいろいろと、執行可能性の面とかもあると思うんですが、財務省から是非、その理由、政策的な理由もあると思いますが、それをお聞かせいただきたいと思います。

赤澤副大臣 適正な課税の確保を図るためには、海外の支払い者から受け取る年金も含め、海外取引に係る収入金額も適切に把握することが必要ということについては、委員と全く認識を共有いたします。

 この観点から、まさに委員御指摘のとおり、金融機関は、取り扱った顧客の国外送金などの金額が一回当たり百万円を超えるものについて、その顧客の氏名、送金金額などを記載した委員御指摘の国外送金等調書、これを税務署長に提出しなければならないこととされております。この金額基準については、金融機関の事務負担などにも配慮して設定しているものでございます。

 なお、この基準は、平成二十年度税制改正以前は二百万円としておりましたが、この調書の提出の対象から外れるために送金金額を分割している事例があったことなどを受けて、平成二十年度の税制改正において、引き続き、金融機関の事務負担などにも配慮しつつ、適正な課税の確保を図る観点から、百万円超に引き下げる改正を実施したところでございます。

小野委員 ありがとうございます。

 過去の経緯も御説明をいただきましたが、二百万円以上だった国外送金調書の提出のボーダーラインを百万円に引き下げたというようなことがあって、より課税の適正化を図ろうという姿勢は分かるんですが、ただ、結構百万円も大きいとは思うんですよね。そういうようなことで、そのことを御存じの方が、実際には引き出したんですけれども確定申告をしていないというようなことがあるというようなことを聞いているんです。

 私も、自分の地元のところでそういうお話をお伺いして、その方は真面目に納税者としての義務を果たしているということなんですが、OB同士で集まると、いやいや、俺は別に払っていないけどねみたいな会話がなされるということなんですね。ただ、その方も当然、その人、払っていませんよというふうに言うのは、これはやはり友好関係もありますし、何かそんなことをやるのははばかられるんだけれども、やはりこの制度が、正直者がばかを見るようなことがないようにしなきゃいけないんじゃないですかというふうに私のところにも言ってきたということですので、今日は、その方も見ていらっしゃいますが、質問をさせていただいているんですね。

 そこで、私は、じゃ、どうすればこういった正直者がばかを見るようなことが防げるのかということも自分なりに考えてみたんですが、何分、私も、税務行政、現場を知っているわけではありませんので、様々、今日私がいろいろなアイデアを出す中で、国税局の方、金融庁にも考えていただきたいなというふうに思っているんですね。

 例えば、海外の年金を国内で得ている人の納税の状況を把握するために、国際機関とか海外企業に過去に勤めていた人のリストを税務署が把握できるようなことがあれば、ある程度その人は海外の年金で暮らしているなということが推認できるので、そういう方に対して、一体、確定申告の状況はどうなっているのかなということが見えるというふうに思うんですが、そういったことは国税庁でやっているんでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 金銭等の支払いを行う第三者が取引の内容、支払い金額等を記載して国税当局に提出する仕組みとしましては、各種の法定調書がございますが、現行法上、我が国で海外の年金を得ている居住者に関する情報を提出する法定調書は存在していないということでございます。

 いずれにいたしましても、国税当局におきましては、あらゆる機会を通じまして、課税上有効な各種資料情報の収集に努めてございまして、課税上問題があると認められる場合には、税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めてまいりたいと考えております。

小野委員 一般的な税務調査のやり方だと思いますけれども、ある程度、Gメンの感覚で、やはり、この人、ちょっと、税金を払っていないじゃないかというところに対して、個別に税務調査する権限を与えられているので、そういったことでやっていくということなんですけれども、ただ、やはりシステマチックにちゃんとやるということをもうちょっとやらなきゃいけない。

 もちろん、国税が何でも過去のいろいろな人の勤務したデータを全部持っているということ自体がいいのかどうかという議論もしなければいけないとは思うんですが、ただ、やはりバランスだと思うんですね。ちゃんと税金を払わなければいけない方々がしっかり払えるような、そしてそれにちゃんとチェックが行き届いているようなことをするということが、まず増税するよりも大事なんじゃないかというふうにも思いますので、そういった仕組みをいろいろ考える必要があるかと思います。

 確かに、これはちょっと私も伝聞だけなので根拠は全然示すことはできませんが、ただ、国税の方が、例えば国際機関、日本政府が出資しているような機関に対して、そこの勤務者リストをちょっと下さいよみたいなことを言っても、それを断られたなんという話も耳にしたことがあるんです。なかなか限界はあると思うんですね。ただ、何がしかの納税を適正化するための仕組みづくりというのは、やはりもっと努力するべきだろうと思います。

 そこで、私は、もう一つ、これはできるのかできないのかというのもありますが、マイナンバーですね、マイナンバーと銀行口座がひもづけられているということは、これはDXを進める上で、ほかの国でも結構一般的にはなっていると思いますけれども、仮に将来、我が国において銀行口座とマイナンバーのひもづけができた場合には、税務当局は、今直面している百万円以下の送金に関して、税務当局としてその情報をちゃんと把握できる、そしてそれが、例えば名寄せによって結構な金額になっている場合には、ちゃんと確定申告が出ているのかなということも、それをチェックすることができるのかどうか。

 これはもちろん仮の話なので難しいかもしれませんが、ただ、理屈としてはできるのかできないのかということもちょっとお聞きしたいと思います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、仮に全ての銀行口座にマイナンバーが付番されたといたしましても、法令上の根拠がなければ、その取引情報等が国税当局に自動的又は網羅的に提供されるものではございません。そのため、国税当局におきましては、税務調査等で必要がある場合に、金融機関等に預貯金者の情報等の照会を実施しているところでございます。

 なお、税務調査を実施する上では、銀行口座へのマイナンバーの付番が進めば、金融機関等への照会の際に、照会対象者の住所、氏名等に加えましてマイナンバーを利用することで、銀行口座の特定が迅速、確実になるなど、税務調査の効率化に資するものであるとは考えてございます。

小野委員 もちろん、マイナンバーによって全てが政府に捕捉されてしまうという世の中がいいのかどうかということは考えなければいけないと思うんですね。ですから、税務当局がマイナンバーと銀行口座のひもづけによってそれが全部できるかどうかというと、私も、そんな社会がいいのかどうかというのは、もちろん、そこはみんなで、国民で議論していかなければいけないことだというふうに思うんです。

 ただ、やはり、これからデジタル化を進めていって、そして、ちゃんとルールを守って納税している人とそうじゃない人がいつまでたっても生じているという状況は解消していく必要があるというふうに思います。

 今日は金融庁に質問する予定だったんですが、答えられませんということなのでちょっと来ていただくのはやめたんですが、私、でも、答えられませんという答弁を引き出すために、やはりいてもらった方がいいかなというふうに思ったんです、それも結構重要なので。

 こういう質問を考えていたんです。金融庁として、百万円未満の海外からの送金、それから百万円以上の送金というものの件数と、そして金額のシェアというのをちょっと聞きたかったんです。それによって、この制度によって、百万円以下の送金がやたら件数があって、そして金額もそれなりにあるぞということであれば、政策的に、やはりそこの捕捉をした方がいいんじゃないのということも判断できる、議論もできるというふうに思うんですね。

 今日は金融庁、そこは答えられません、そういうデータはありませんということだったので、私も、じゃ、来なくていいですよというふうに申し上げたんですが、でも、分からないというふうに言ってもらうことも大事だというふうに、ちょっと今日、朝、後悔いたしまして、後でちょっと金融庁を呼んで、また、こういうことだったので、是非何かいろいろと頭の体操をしてくれというふうにはお伝えしたいと思いますけれども。

 ただ、我々は、やはり何を目指したいのかというと、公正な社会だと思うんですね。先ほど私に相談があった方も、とにかく、何かOBで集まってゴルフをしていて、それで、俺、払っていないよ、おまえ、払っていないのかみたいな、そういう会話があること自体が、私はすごく残念だなと。本当に真面目に働いて、そして税金を納めている人、それはもう、国税だって当然そういう社会にしたいと思っているわけですね。

 だから、やはりそういうことをもっともっと政策的にみんなで課題意識を持って、ちゃんと世の中が、真っ当な人がちゃんと納得いくような世の中にするということが、非常に政府の信頼としても大事なんじゃないのかなと思っています。

 先週から今週にかけて、この財務金融委員会でもいろいろ、財務省でいろいろあって、私もこの質問をずっと用意していたんですが、税金をちゃんとやはり払っているという前提で、そういう環境でないとやはり質問しづらいなと思っていたんですが、今日、副大臣もお越しいただきましたが、そういうことで、これからの税務行政をどうやって納得いくものにしていくのかということ。

 そして、今回私が質問させていただいた海外の年金を受給していらっしゃる方々、これは結構難しくて、いろいろ調べていると、海外に勤めていた方々、これは国際機関で、条約でどうこうというんじゃなくて、相手国との租税条約においても課税されるのかどうかということが結構いろいろ複雑になっているので、全員が悪意を持って税金を払っていないということでもないんですね。実は、本当は課税されるんですけれども、自分は課税されないんだよというふうに思っている人もいるということも聞いていますし、逆に、それを本当に悪意でやっている人もいるということで、結構難しい問題があります。

 周知の問題も大事だと思っていますが、そういうことも含めて、私が今日指摘した課題について、鈴木財務大臣、どのように取り組んでいかれるか、最後にお聞かせいただきたいと思います。

鈴木(俊)国務大臣 今日の御質問で小野先生から御指摘がございましたのは、海外から国内居住者になられた場合の様々な課税の問題であるというふうに思っております。

 今御指摘の年金の課税関係につきましては、納税者の方々に適正に申告納税していただくこと、これが基本であり、重要であると考えます。このため、国税庁におきましては、手引書やQアンドAを作成、公表するなど、必要な情報の提供を行い、周知、広報等に努めてきたところでございます。

 加えまして、国際的な課税の問題に適切に対応する観点から、国税庁において、法定調書や租税条約等に基づく情報交換といった資料情報を分析し活用するほか、体制面でも、国際課税に係る調査等を専門的に担当する職員を増員するなど、積極的に取り組んでいると承知をしております。

 今後とも、海外の年金を受給している国内居住者への対応を含めまして、公正そして適正な課税の実現に向けて取組を進めてまいりたいと考えております。

小野委員 税務行政の更なる信頼向上のために頑張っていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて小野君の質疑は終了いたしました。

 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 午前中に引き続きまして、財務省に対する質疑をさせていただきます。財務大臣、そして委員長を含めて、理事の皆さん、委員の皆様も是非よろしくお願いいたします。

 十月の訪日外国人の数が二百五十万人と、コロナ前の状態に戻りつつあるという、すごくいい情報が出てきました。その中でも、やはりこれから、万博含めて、どうやってインバウンドを増やしていくのか。そして、日本の観光資源、今すごく見直されている部分がたくさんございまして、本当に、今、この円安の状況、そして世界各国に比べるとインフレがどちらかというとマイルドに進んでいるという部分も含めると、日本はかなり、いろいろな意味で物が安く、そして付加価値が高い、そういう国だというふうに私は見られているというふうに思っております。なので、今までのインバウンドの予想値よりも、やはりもう少し、一〇パーでも二〇%でも上振れて、外国の方が日本に来たいと思えるような環境が私は整っているというふうに考えております。

 私も商売をずっとやってきておりまして、どちらかというと、一般的なものをより多くの方に使っていただきたいというような商売をしていたんですけれども、今、やはり世界全般で考えたときにしっかりと生き残る産業とは一体何なのかというと、しっかりとした付加価値を持っている産業だというふうに私は思っております。安いものを広く売っていくのではなく、しっかりと、この日本の観光資源を高く、そして満足度を持って売っていくということが私はとても大事だなというふうに思っていて、この視点で私は常に今後の質問もさせていただきたいなと思うんです。

 続きまして、この話に続くんですけれども、今年五月の報道によると、いわゆる免税店などで免税品を購入した訪日外国人の方に対して、税関当局が免税要件を満たしていないとして約二十二億円の徴収決定をしながら、そのうち二十一億円が未徴収になっているというような記事が上がっておりました。

 二〇二〇年度から免税手続の電子化というものが始まったことで、免税品を実際に持ち出すかどうかのチェックが強化されたということは、今までの制度を運用していく上では大変いい動きだというふうには思うんですけれども。二十二億円という数字も、全体的な大きなお金で見れば大した金額ではないというふうに言っている方も当然いるんですけれども、やはり今、国民の税金が負担も含めて高まっている。インフレの状況もまだのみ込み切れなくて、やはりいろいろな負担が増えているという中で、一部の外国人の方が、不正というよりかは、払わなきゃいけないものも払わないで国外に出ていってしまっている。この二十一億円を高いと取るか安いと取るかは、私はやはりしっかりやっていかなきゃいけないことだというふうに思っています。

 まずは財務省にお伺いしたいんですけれども、免税品を購入した訪日外国人について、令和四年度における徴収決定額、又は未徴収額などの実績、教えていただきたいです。

江島政府参考人 お答え申し上げます。

 税関におきましては、空港等において免税購入者が免税購入品を輸出しないことを確認した場合、消費税法の規定に基づき、その免除された消費税相当額の賦課決定を行っております。

 令和四年度に税関において消費税の賦課決定を行った実績は、三百六十七件、約二十二億円となっておりまして、そのうち滞納となっているものは、百五十三件、約二十一・三億円となっております。

沢田委員 報道とほぼ同じという数字になるんですけれども、御存じの方もいらっしゃると思うんですけれども、日本では、町中にも多数ある免税店において、その場でパスポートの提示などによって免税が受けられるという仕組みを取り入れております。これは、購入する訪日外国人にとってはすごく利便性が高い。

 以前もいろいろな委員が御質問をしているときに、国交の委員でも、そして、私たち日本維新の会でも、財務金融委員会の方でも三月にいろいろ質疑をしているんですけれども、今のこの日本の制度というのは、できる限り外国の方が日本に来やすく、そして利便性を高めていく、ある種手厚い、そういう仕組みなのであるという説明があるんです。また、改めてなんですけれども、今、現状としても同じような運用で続いているのか、また、どういった流れで今の方式を取り入れたのかというのを教えてほしいです。

赤澤副大臣 免税店における外国人旅行者への販売は、その旅行者が出国の際に国外へ持ち出すことを前提としている、外国で消費されるものには消費税が免税される、輸出取引と実質的に変わらないという考え方で、所定の手続を行って販売される一定の物品については消費税が免除される仕組みとなっております。

 委員がまさに御指摘のとおり、これは外国人旅行者の利便性の向上といったこと、そして、それの結果としてインバウンド消費の拡大、地方の活性化といった目的から、これまで免税対象物品の拡大などの制度の見直しを行い、現行のような制度に至っております。

 他方で、これもまさに委員御指摘のとおり、免税購入品の転売や、税関で賦課決定を行っても滞納となる事例があるなど、制度の不正利用が多く起こっていることは承知をしております。

 不正対策の観点からも、免税購入対象者の見直しや、即時徴収の対象者の拡大といった制度の見直しをこれまで行ってきたところでもあります。

 引き続き、足下の不正の状況も踏まえて、適正な制度の在り方について検討してまいりたいと思っております。

沢田委員 副大臣、ありがとうございます。

 今ちょっと副大臣の方からも言われたんですけれども、やはり、今、時代がどんどんよくなっているのと同時に、いろいろなものが、個人の売買というものが物すごくしやすくなってきている現状があるというふうに考えています。

 例えば、メルカリというサービスで、自分自身は使わなくても人に売ることができる。ヤフーオークションという形で、自分では必要ないけれども人に売ったりすることができる。

 私が小さい頃であったらば、何か自分が買ったものを転売するということは簡単にはできない時代だったというふうに思っています。けれども、今、私の息子も小学校三年生なんですけれども、例えば、ポケモンカードを買って、いいやつが出ると、簡単に、これはメルカリで幾らなのというふうに聞くんですね。

 そうすると、なぜかそういうふうなものをやはりできてしまうということを考えてしまうと、私たちは今起こっていることがスタート地点で考えていかなきゃいけないのかなというふうに思っていて、というのは、やはり、今までは二十一億円ぐらいのものだったものが、そういった販売の利便性であったりコミュニティーを広げていく手段というものが増えていく中で、よりそういったものがどんどん増えていってしまうということも想定しなければいけないというふうに思うんです。

 特に、この日本においてインバウンドの需要を高めていきたい、そのためにも、今回の万博も含めて、観光戦略も日本は徐々に高めていっているものだというふうに思っています。さらに、この状態で追い風で円安がある、そしてインフレも弱いというふうに考えてくると、物すごい、日本に対して来たいと思える人を、きっかけさえつくっていけば、私は幾らでも呼び込める素地が出てくると思うんですね。

 ただ、大事なことは、やはりもっと大きな意味での観光戦略と、そういった方々が来てくださったときに、しっかりと国内で、そういったものの需要と、あと、そのバランスを受け入れられる素地があるかということであったり、その体制があるかということだというふうに考えております。

 なので、スタートというふうに考えたときに、このリファンド方式という、いわゆる空港内の、出国時に税還付を受けるというリファンド方式というものが海外の方では一般的になっているという中で、私はこの方法を、以前、我が党の岬麻紀議員も、三月頃ですけれども、鈴木財務大臣にリファンド方式の採用に当たって様々な課題があるという御答弁をいただいているんですけれども、ただ、そこをやはり一歩踏み込んでいただいて、更にスタートだからこそ私は考えていただきたいなというふうに思うんですね。

 なので、財務大臣にちょっと前向きに御答弁いただきたいんですけれども、このリファンド方式、これからの観光戦略の中で、私は、やはりそういう体制を整えて、今は二十一億円かもしれない、だけれども、もしかすると、このインバウンドの方が二百五十万人、戻ってきている、更に増やしていこうとなると、桁が一つ、二つ、三つと上がることも想定されることを考えていればこそ、これはちょっとどこか見直すためのきっかけというものは、私、この今のタイミング、三月ではなく今のタイミングであるならば、大変長くあるように感じるんですけれども、大臣、どうでしょうか、ちょっと考えていただくきっかけとして。

鈴木(俊)国務大臣 EU加盟国などの諸外国におけます免税制度、これは、出国時において免税品として購入した物品が確実に国外へ持ち出されているか否かを確認した上で還付を行う方式が採用されている、そのように承知をしております。

 一方において、現在の我が国の免税制度、これは購入時点において免税とするため、免税制度利用者にとって利便性が高い一方で、沢田先生御指摘のように、当局が不正利用を検知したにもかかわらず、支払われるべき消費税を徴収できていない事例が指摘されている、これは事実でございます。

 そして、これをどうするかということでありますが、令和五年度の与党税制改正大綱においては、「外国人旅行者の利便性や免税店の事務負担等を踏まえつつ、引き続き効果的な不正対策を検討していく。」とされているところでございまして、出国時に還付する制度を含む諸外国の制度や、その効果等も踏まえながら、適切な外国人向け旅行者免税制度の在り方について、関係省庁として検討してまいりたいと考えております。

沢田委員 大臣、前向きな御答弁ありがとうございます。

 私は、本当にこの日本はすてきな国で、世界全部の方がこの日本に来ていただいて、高くても満足していただけるような日本にしていきたいなというふうに思っておりますので、是非大臣、その未来のために、まだまだいけるということで、積極的に動いていただければと思います。

 今日はありがとうございました。

津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。

 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会、兵庫十区の掘井健智でございます。

 それでは、早速質問いたします。銀行の融資状況についてであります。

 今日も金融緩和の効きが悪いとかいう話がありましたけれども、資金供給量を増加しているにもかかわらず、経済になかなか効いてこないという現状があります。その理由の一つに、金融機関の貸出しが増えていないのではないか、こう思うことから、質問します。

 まず、配付資料がございまして、一を御覧ください。このグラフは、銀行が集めた預金をどれくらいの割合で貸出しに回しているのかを示す預貸率の推移を見たものであります。この預貸率は、銀行が預金で調達した資金と貸出しで運用した資金の量を対比した指標です。

 日銀は、金融緩和によって、お金、マネーの供給量を増やすとともに、この低金利の状況をつくっております。供給されたマネーの一部は貸出しに回って、同額の企業の預金がまた増え、その一部がまた貸出しに回るということを繰り返して、いわゆる信用創造によって日銀が供給した以上の預金量の増加を今起こしておる最中でありますけれども、このように、預金量が増加すれば、預貸率が一定であっても貸出残高は増えることになるために、銀行の貸出残高は基本的には増えているんです。

 しかし、預貸率が上がっていかないというこの状態は、銀行の資金運用の方向性として、より貸出しを優先するという形になかなかなっていないのではないのかなと。そういう側面を映し出している状況であるとも理解しているんです。

 資料の表では、業態によって多少違っておりますけれども、全体像は、全国銀行、上から三番目の真ん中の青いやつなんですけれども、これも下がっております。信用金庫、都市銀行の預貸率は、横ばいか低下傾向にあります。また、コロナ禍以降であれば、地元の中小企業との取引も多い地方銀行、これは預貸率が低下している状況が見られるんです。こういった状況です。

 銀行は、まず融資をすることが一番大事な業務であると言えます。可能な限り融資を積極的に行っていくというこの銀行側の姿勢、マインドは非常に大事であると思っております。大臣の御所見を伺いたいと思います。

鈴木(俊)国務大臣 金融機関の預金に対する貸出しの比率であります預貸率の傾向でありますが、これは、大企業向け貸出しが中心の大手銀行と、また中小企業向け貸出しが中心の地域金融機関など、金融機関の規模でありますとか特性によって異なりますけれども、全体として見てみますと、預金の伸びがある、その預金の伸びに比べまして貸出しの伸びが小さいために、直近十年間は低下傾向にある、そのように理解をいたしております。

 一方で、御指摘もございました金融機関の貸出残高でありますが、この十年間で二割から四割程度増加をし、特に、直近では、コロナ禍における政策対応やその後の運転資金需要などもあって、貸出残高は大きく伸びていると承知をしております。

 しかしながら、物価高騰や人手不足の影響などが見られる中、依然として厳しい状況の中で資金繰りに苦労している事業者も多いわけでございます。

 こうしたことを踏まえまして、金融庁としては、金融機関が事業者の置かれた状況や課題を把握し、その実情に応じて資金繰り支援を含む必要な支援に適切に取り組むよう、促してまいります。

掘井委員 最近、報道で銀行の増収増益が書かれておりますけれども、銀行が、余り貸出ししていないにもかかわらず、株式、債券などの運用を選択している、こういう話も聞くんですけれども、そんなことがあれば、何のための金融緩和なのかな、こう思うところであります。

 金融機関のこういう姿勢について、大臣は把握されておられますか。また、実際にそういう指導があったことはあるのかどうか、お伺いします。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣からも御答弁申し上げましたように、金融機関に対しましては、資金繰りへの対応も含めて、金融の円滑化に向けてきっちりと対応するようにということで、金融庁としてはこれまでも促しているところでございますけれども、委員御指摘のとおり、マクロ環境なども影響して、それほどの預貸率の増加になっていないということは承知をしておりまして、これからも引き続き、厳しい環境にある事業者への支援を促してまいりたいというふうに考えております。

掘井委員 銀行さんが今増益されておりますけれども、それは実は、通常の業務で貸して利益を生んでいるんじゃなしに、国債であるとか外投であるとか、こういったものを運用して稼いでいる。すなわち、本業から外れているんじゃないのかな。こういう傾向があるのかどうか、お聞きします。

鈴木(俊)国務大臣 そういう傾向があるかどうかについて、ちょっと事前に調べてまいりませんでしたので具体的にお答えできませんが、銀行の業務というのは、やはり先生御指摘のとおり、普通は、基本は預金そして貸出しであると思います。しかし、いろいろ経営も金融機関として大切でありますから、そういう中で、おっしゃった債券が、債券の購入に充てて運用するということは十分に考えられることでありまして、そうしたことが、先生の御指摘にある、増えているのではないかという御指摘につながるのではないかと思います。

掘井委員 また時間がなくなってきたんですけれども、次に、中小零細企業への融資対策についてお伺いしたいと思うんです。

 やはり、何度でもチャレンジできる社会、そして、失敗してもやり直せる社会を目指していく必要があると思うんですね。中小零細企業の資金繰りを支えるということは、日本経済の需要の拡大に大きく貢献するものだと思っております。

 これも配付資料があります。配付資料の二番ですね、中小企業の金融環境のグラフであります。赤線、これは銀行の貸出態度から銀行の資金繰りを引いたもので、資金繰りの企業のニーズに銀行がどれくらい応えているかを示しております。コロナ禍の例外として二〇二〇年から二一年にかけての一部に大きな山がありますけれども、金融緩和以前と以後では大きな変化がないわけであります。

 銀行融資は、中小企業の業績を見ながら淡々と融資の可否を判断するということでありますけれども、そういった傾向は、たとえ金融緩和をしておる状態でも大きく変わるものではないと、このグラフから読み取ることができるわけであります。

 金融機関がどんどん貸せる、中小零細企業が借りることができるためにいろいろな環境整備が必要であると考えるが、大臣、御所見を伺いたいと思います。

鈴木(俊)国務大臣 政府といたしましては、経済環境の変化を踏まえました適時適切な資金繰り支援、それから、金融機関が挑戦意欲がある中小企業の経営改善や再生支援の強化を図ること、こういうことが重要であると考えているところであります。

 先般、八月三十日でありますが、財務省、金融庁、経済産業省の連名で、経営者による再チャレンジを支援する施策などを盛り込みました、挑戦する中小企業応援パッケージというものを公表いたしました。また、このほかにも、事業者の立場に立った最大限柔軟な資金繰り支援を行うよう、金融機関に対しまして累次にわたって要請を行っているところであります。

 加えまして、金融庁では、金融機関が企業の事業性を評価して、不動産担保でありますとか個人保証に安易に依存しない融資慣行を確立していくため、昨年十二月に経営者保証改革プログラムを公表いたしまして、全国各地の金融機関の現場向けの説明会を開催するなど、要請だけではなく実際に施策を行き渡らせる対応を行い、実行を推進しているところです。

 金融庁としては、関係省庁と連携をしてこれらの施策を着実に実施することで、資金繰りも含めた事業者支援の徹底を金融機関に促してまいりたいと考えております。

掘井委員 よろしくお願いしたいと思います。

 経営者保証ガイドラインというものができております。これは、個人保証が保証人の経済的破綻とか自殺の要因になっていることに鑑みて二〇一三年に制定されたということであります。特にこの経営者の個人保証は、スタートアップと廃業もちゅうちょさせて、やはり経済成長率の大きな阻害の要因になっていると思うんです。

 このガイドライン、制定されている意義は大きいんですけれども、実際に経営者保証に依存しない融資の割合は三〇%前後だと聞きます。これ、浸透をどう図っていくか、課題であると思うんですけれども、大臣、御所見をお願いします。

鈴木(俊)国務大臣 この前の御質問でも一部お答えをいたしましたが、政府といたしましては、金融機関が企業の事業性を評価して、個人保証や不動産担保に安易に依存しない融資を推進していくことで、中小零細企業の持続的な成長を後押ししているところであります。

 金融機関のこうした取組を促すため、先ほど申し上げましたが、金融庁は、関係省庁と連携をいたしまして昨年十二月に経営者保証改革プログラムを取りまとめまして、金融機関が個人保証を求める場合には保証契約の必要性等を保証人に説明するよう、金融庁の監督指針を改正し、手続を厳格化し、併せて、経営者保証に依存しない新たな融資慣行の確立に向けた意識改革の促進を行いました。その結果、原則経営者保証を求めないことを新たに表明した金融機関も出てきているところであります。

 また、金融機関が不動産担保や個人保証に安易に依存せずに、企業の事業性に着目した融資に取り組みやすくするための新たな制度として、事業全体を担保目的財産とする事業成長担保権の創設に向けた検討も進めているところであります。

 金融庁としては、こうした取組を進め、金融機関による個人保証に安易に依存しない融資慣行を確立させていきたいと考えているところであります。

掘井委員 これは法的な拘束はないんですけれども、やはりそういうものを浸透させて、広げていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

津島委員長 これにて掘井君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、鈴木大臣にお伺いします。

 神田副大臣が今週、先日、辞任しました。岸田内閣の任命責任が厳しく問われます。大臣、辞任に至る経過は先ほど聞きました。そこは要りません。多種多額の税金滞納を繰り返してきた人が財務副大臣の職に就いていたことを鈴木大臣はどう受け止めておられますか。責任を感じておられますか。

鈴木(俊)国務大臣 神田前副大臣が滞納を四回繰り返していたということは、私は報道に接するまで全く存じ上げないことでございます。税金を納めていただく、それをお願いする立場の財務省として、神田さんがそのような行為をしながら財務副大臣の職にあったということは大変遺憾なことでありまして、私も上司として深く反省をしたいと思います。

田村(貴)委員 今の大臣の言葉をこの委員会開会の冒頭で言っていただきたかったと思います。

 インボイスについてお伺いします。

 コンビニのレシートにある登録番号を国税庁の事業者公表サイトで検索をかけると全く別名の事業者が出てくる、このことを先週質問しました。大変大きな反響がありました。国税庁次長の答弁では、インボイスと公表サイトで異なる氏名が表示されることもあるので、有効性が確認できれば、つまり番号が確認できれば、一義的には正しいインボイスとして扱っていいとのことでありました。

 しかし、消費税法五十七条四には、適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号をインボイスに記載すると規定されています。国税庁のQアンドAでは、登録事業者を特定できれば屋号や省略した名称などの記載でも構わないと書かれているだけであります。

 そこで、お伺いしますけれども、コンビニのインボイス番号を検索すると建設会社の名前が出てきたとの情報も寄せられました。フランチャイズのコンビニの名前が屋号や省略した名称と解釈するには余りにも無理があります。当然、インボイスの氏名に書かれる名前が何でもいいということにはなりません。インボイスに記載される氏名又は名称について、誰もが分かる基準を示すべきではありませんか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 仕入れ税額控除の適用を受けるために保存する請求書等に記載される氏名等につきましては、商慣習上、多くの請求書等は屋号等が記載されて交付されているとの実態も踏まえまして、屋号や省略した名称による記載で差し支えないとしているところでございます。

 このインボイスに記載する屋号等につきましては、一般論で申し上げますと、例えば、店舗名や取引先との間でお互いに認識の一致が図られている名称等であれば、これに含まれるものと解されると考えてございます。

田村(貴)委員 国税庁の事業者公表サイトというのは、正しいインボイスかどうかを確認するためのものであります。

 こういうケースはどうでしょうか。番号が確認できました、正しいインボイスとして取引したケースで、確定申告後に、インボイスに記載した事業者と公表サイトの事業者が違う業者であることが判明しました、つまり正しくないインボイスであると判明した場合に、仕入れ税額控除は否認されるのか、それとも認められるのか。

 私は、インボイスを入手した事業者に瑕疵がないケースにおいては、仕入れ税額控除は認められるべきだと思います。認められる場合に、消費税法のどの条文が根拠となるのかも含めてお答えください。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス制度の下で仕入れ税額控除の適用を受けるためには、原則として、課税仕入れに係る帳簿及びインボイス発行事業者から交付されたインボイスの保存が必要となります。そのため、買手の行った課税仕入れについて適正なインボイスの保存がない場合、原則として仕入れ税額控除の適用を受けることはできないということでございます。

 他方、例えば、実際に取引が行われており、誤ったインボイスを受領、保存したことにつき、社会通念上相当と認められる注意を払っていたことについて買手である事業者が証明したような場合には、消費税法第三十条第七項ただし書の規定に基づきまして、正しいインボイスを保存できていなかったことにつき、やむを得ない事情があるものとして、仕入れ税額控除が適用される場合があるものと考えてございます。

 いずれにいたしましても、個々の事実関係に基づいて、法令等に照らして適切に取り扱うこととしております。

田村(貴)委員 消費税法第三十条の七、やむを得ない事情によって、こうしたケースは仕入れ税額控除が認められると判断するということを確認しました。今の国税庁の答弁を聞いていると、やはり正しいインボイスを見分けるのはなかなか難しいのではないでしょうか。

 大臣、ちょっと聞いていただきたいんですけれども、例えば、欧州では偽インボイスが相当広がっています。偽インボイスを使った脱税が深刻な問題となっています。今年三月の欧州議会の報告によれば、EU域内の消費税徴収漏れ金額は、二〇二〇年、九百三十億ユーロ、約十四兆二千四百六十七億円にも上るとのことであります。本来徴収できた税額の約九%を、偽インボイスで、こうした結果になるそうであります。単なる偽インボイスではなくて、組織的犯罪者集団がインボイス工場で大量製造しているとも言われています。

 こうした例があることを、大臣、御存じですか。

鈴木(俊)国務大臣 存じ上げておりませんでした。

田村(貴)委員 是非知ってください。

 インボイスが世界の国々で導入されてきたからと言ってきましたけれども、EUにおいては、徴収できた税額の九%、これが取ることができなかったというんですよ、しかも偽造によって。

 インボイスの導入について、政府は複数税率の下で課税の適正性を確保することと説明されてきました。しかし、欧州ではインボイスの導入が適正性の確保につながっていないわけであります。偽インボイスはいろいろなことが考えられるんですけれども、今日は時間が限られていますので、次の機会にしたいと思います。

 さらに、現在の公表サイトには、ペンネームの芸能人、小説家などの本名がばれるという問題もあります。芸名を記載した場合、インボイス番号を使って国税庁の公表サイトで検索すれば、本名がばれてしまいます。つまり、現在のシステムならば、インターネットなどでインボイスが一旦公表されてしまったら、プライバシーの被害あるいはストーカー被害などが発生する可能性が出てまいります。

 どうしますか。インボイス制度を廃止するのが一番であります。しかし、今少なくとも運用されているのであれば、インボイスと公表サイトで名前が異なることを認めているんですから、公表サイトで氏名でなくていいのではないですか。お答えいただきたいと思います。

鈴木(俊)国務大臣 国税庁の公表サイトは、買手の事業者が受け取ったインボイスに記載された登録番号の有効性を簡便に確認できるよう設置しているものであります。個人事業者の場合、プライバシーに配慮し、氏名、登録番号、登録年月日という法令に定められた必要最低限の事項を公表しているところであります。

 加えまして、プライバシー等の観点から懸念の声があったことも踏まえまして、公表情報を一括ダウンロードする場合、データから氏名等の情報が自動的に削除される仕組みとしたほか、プログラムを活用し、公表サイトから大量の情報を自動的に取得する行為に対して対策を講じるなど、必要な対応を行ってきたと承知をしております。

 公表サイトは事業者間でインボイスの有効性を確認するために重要なツールであると考えておりますが、今後とも、個人情報保護等の観点も踏まえつつ、適切に運営をしてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 大臣、そう言われますけれども、ある芸名、あるペンネーム、インボイス番号と一緒に知ることができたとしましょう。そして、登録サイトで検索したら本名が出てきた。本名から追いかけますよ、悪いことをしようとしたら。そして、つきまとい、あるいは家まで探してしまう。こういうことが想定されるから、ペンネームでやらせてくださいと言っておられる方が現にいるんですよ。だって、屋号でいいと言っているわけですから。それだったら、これも認めるべきじゃないですか。

 時間が来ました。今日はここで質問を終わります。

津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

津島委員長 次に、本日付託になりました第二百十一回国会、内閣提出、参議院送付、金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 両案は、前国会で本院において議決の上参議院に送付したものを、参議院において継続審査に付し、今国会、いずれも原案のとおり可決の上本院に送付されたものであります。

 したがいまして、その趣旨につきましては既に御承知のことと存じますので、この際、趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

津島委員長 両案につきましては、質疑、討論共に申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、金融商品取引法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

津島委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

津島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

津島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十六分散会


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