第22号 令和6年5月17日(金曜日)
令和六年五月十七日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 津島 淳君
理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君
理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君
理事 稲富 修二君 理事 櫻井 周君
理事 伊東 信久君 理事 稲津 久君
畦元 将吾君 石原 正敬君
上田 英俊君 英利アルフィヤ君
小田原 潔君 越智 隆雄君
大塚 拓君 大野敬太郎君
木原 誠二君 岸 信千世君
鈴木 隼人君 瀬戸 隆一君
中野 英幸君 中山 展宏君
根本 幸典君 藤丸 敏君
藤原 崇君 古川 禎久君
堀内 詔子君 宮下 一郎君
宗清 皇一君 山田 美樹君
江田 憲司君 小山 展弘君
階 猛君 末松 義規君
野田 佳彦君 馬場 雄基君
原口 一博君 沢田 良君
藤巻 健太君 掘井 健智君
中川 宏昌君 山崎 正恭君
田村 貴昭君 吉田 豊史君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 鈴木 俊一君
財務副大臣 赤澤 亮正君
内閣府大臣政務官 神田 潤一君
財務大臣政務官 瀬戸 隆一君
政府参考人
(金融庁企画市場局長) 井藤 英樹君
政府参考人
(金融庁監督局長) 伊藤 豊君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 鈴木 清君
参考人
(日本銀行総裁) 植田 和男君
財務金融委員会専門員 二階堂 豊君
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委員の異動
五月十七日
辞任 補欠選任
石原 正敬君 堀内 詔子君
大塚 拓君 上田 英俊君
木原 誠二君 畦元 将吾君
藤丸 敏君 中野 英幸君
竹内 譲君 山崎 正恭君
同日
辞任 補欠選任
畦元 将吾君 木原 誠二君
上田 英俊君 根本 幸典君
中野 英幸君 藤丸 敏君
堀内 詔子君 石原 正敬君
山崎 正恭君 竹内 譲君
同日
辞任 補欠選任
根本 幸典君 大塚 拓君
―――――――――――――
五月十五日
所得税法第五十六条の廃止に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三二六号)
納税者の権利擁護を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三八三号)
ガソリン税凍結、消費税減税、インボイス制度廃止に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三八四号)
消費税率を五%に引き下げ、複数税率・インボイス制度の即時廃止を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三八五号)
消費税率五%以下への引下げとインボイス制度の廃止に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三八六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
事業性融資の推進等に関する法律案(内閣提出第五七号)
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○津島委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、事業性融資の推進等に関する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁企画市場局長井藤英樹君、監督局長伊藤豊君、総務省大臣官房審議官鈴木清君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○津島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小田原潔君。
○小田原委員 自由民主党の小田原潔であります。
質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
法案審査の前で恐縮なんですけれども、総裁のお時間を勘案させていただきまして、一つお伺いをしたいことがございます。
今年の七月になりましょうか、日本銀行券が更新をされます。一万円札には渋沢栄一翁が登場するということであろうと思います。その渋沢栄一翁の五代目の子孫、渋沢健さん、もう随分な有名人になられていますけれども、お配りをいたしました資料の二枚目、おととしでありますけれども、政府の第十回の新しい資本主義実現会議の委員としてコメントをされています。
そのコメントの中に、当時は黒田総裁でありましたから、金融緩和を大胆にしていく、その継続の真っ最中でありましたから、深く取り上げられないと言うと不謹慎ですけれども、聞きおかれたというコメントになっていると思いますが、日銀が持っているETFについて、いつまでも持っているわけではないだろう、さはさりながら、今既に八十兆円ぐらいの時価になっているはずでありますので、そう簡単には、株式市場に影響を及ぼさない格好で売るというのは難しいであろうと。
したがって、これは出どころは別の方の発案なんですけれども、お互い意気投合してコメントを出されていると御本人から伺っています。スキームを御提案されています。それは、日銀が簿価で、政府のつくるいわば長期成長基金というようなものをつくり、それにETFを移換する。変動金利つきの永久債を政府から受け取る。これは直接日銀というわけにもいきませんから、現実的には民間の金融機関を経由してということになろうと思いますけれども、日銀の貸借対照表にはETFから永久債に置き換わるという取引であります。
基金は、これもカストディアン等を通じてETFを、株の現物化をして、配当金の半分を永久債の利払いの準備にし、また、残りの半分を成長資金、研究開発機関や大学に拠出する、こうやって新しい明るい未来をつくっていく財源にしようじゃないかというのが提案の骨子でありました。
面白い提案でありますし、また、新総裁になられて金融政策の正常化にかじを切られているということでありますので、一考に値する、すぐにできるとは私も思いませんけれども、一考に値すると思います。
そこで、ちょっと気になるのは、日銀は、持っている国債は持ち切りが前提ですから、時価評価をせず、簿価で評価をいたします。しかしながら、ETFを、現物が、元々は現物は株でありますし、価格変動をし、また持ち切りという世界でもありませんから、これを譲渡、移換する際に簿価で移換するということが現実的なのか、ちょっとたらればではありますけれども、事務方で結構でございますので、所見をいただきたいと思います。
○植田参考人 お答えいたします。
私ども、ETFの買入れにつきましては、日本銀行法第四十三条第一項の規定に基づきまして、主務大臣の認可を受けて行ってきたものでございます。その認可を受けます際に定めた実施要綱というものがありまして、そこでは、買い入れたETFの処分を行う際には、市場等の情勢を勘案しつつ、適正な対価によるものというふうにしております。
したがいまして、処分価格については、時価をベースにすることになるというふうに考えてございます。
○小田原委員 やはりそうであろうというふうに思います。
提案をしていただいた方、元々はアセットマネジメントのストラテジストの方でありました。また、渋沢さんも、ファンドマネジャーではありますけれども、こういった商品を作り上げる、業界ではストラクチャリングというような言い方をいたしますが、ストラクチャリングの経験がないということは御本人たちも認めていて、もし将来こういったスキームを考えていただけるのであれば、専門家の意見を大いに取り入れたいというお話でありました。
ただ、時価で譲り渡すと、原則は、これは政治の力が必要だと思いますけれども、政府が、日銀が享受するETFの含み益、多分四十兆円ぐらいになると思いますが、その分の含み損を覚悟の上で、長期成長基金のようなものをつくるんだという立法措置が必要になろうかと思います。
でも、それは、二つの事象の、問題のトレードオフ、どっちかを選ばなきゃいけないということでもあります。
それは、当時は、市場に潤沢な資金を供給するのが一番大事なことなんだということであったからETFを買い入れたというふうに思いますが、金融政策の正常化が進み、国債の買入れを鈍化する若しくは売却していくということになると、日銀の貸借対照表に占めるETFの比率がどんどん上がっていきます。これはさすがに、金融政策の正常化をするというのであれば、手をつける順番は考えなければいけないということになろうと思いますし、黒田総裁が就任される前の日銀による株式の売却のペースを、仮に同じペースで売ったとして、市場に影響を与えないように、そうすると、二百何十年かかる計算になってしまいます。
なので、原則は市場に悪影響を及ぼさないように上手に売っていくということしかお答えは今は出ないと思いますけれども、そう簡単には売れない。いつかは何か抜本的な対策を打たなければいけない。
同時に、配当利回りと、今のところ、原案というのは、受け取る配当の半分が研究開発に行き、半分は利払い変動の予備のお金にしておくということですが、その配当利回りが実際の国債の利払いの金利よりも足りなくなるかもしれないというリスクもあり、そんな莫大な金額の金利に、スワップのカウンターパートというのは、現実的には世の中に、まあ、いません。
そうすると、金利のリスクコントロールも同時に政府はしなければいけないし、含み損からスタートするということに対して国民に理解を求めなければならないということになろうかと思います。ただ、日銀にしては、永久債の金利が入ってきますし、悪い取引ではなかろうと思います。
さて、この項目の最後に、金融政策正常化の筋道の一環として、また、日本銀行の貸借対照表の健全性に責任を持つ日銀の総裁として、植田総裁に、ETFの今後の取扱いについて、御所見があれば頂戴したいと思います。
○植田参考人 私ども、保有するETFの処分でございますが、すぐに行うというふうには今のところ考えておりません。処分を含めまして、今後の取扱いについて、少し時間をかけて検討する必要があるというふうに思っております。
○小田原委員 ありがとうございます。
植田総裁、どうか、御退席いただいて結構であります。ありがとうございました。
○津島委員長 植田総裁、どうぞ御退席ください。
○小田原委員 それでは、法案に関する質問をさせていただきたいと思います。
事業性融資の推進等に関する法律案でありますが、私自身は大歓迎。もう今から三十八年前になりますが、富士銀行の江戸川橋支店に入行をしたとき、やはり、私の直接の取引先ではありませんけれども、取引先が資金繰りに詰まって夜逃げをされた事案がありました。誰だって夜逃げしたくて夜逃げしたわけではありませんし、その担当者は、それから一か月ぐらい、もう本当に大変な御苦労をされて、資金回収の手当てをしたり、その損金処理の手当てをしたりということでありました。そういったことは世の中からなくなってほしいと思う気持ちは、恐らく皆同じでありましょう。
ただ、当時から、代表取締役の個人保証をもらわなくても、また、お住まいの不動産を担保に取らなくても、できる融資はありました。僕たちが当時、融資の基本として一番初めに手をつけるのは、手形の割引、それから運転資金ですね、売掛金と在庫の金額を足して、買掛金の金額を差っ引いた、その金額までは無担保で貸してもいいだろうというイロハを学びました。
ただ、それは、企業価値というよりは、割引手形というのは、手形・小切手法上、裏書人に順次、不払いが起こったときに遡求ができるから、別のルールを盾に貸してもよかろう、したがって、裏書人が信用できそうなところかというところが手形割引の最大のポイントというか、基礎の基礎でありました。
同時に、当時はバブルの前夜であったこともあって、手形を持っているということは売上げがあったということでありますから、その売上金を銀行に差し上げたとしても、金利を差っ引かれたとしても、まだうまみがある、すなわち、商売の利ざやの幅が大きかった時代だからこそ、手形の割引ができた。今はもう約束手形そのものが消滅しますから、そういうことにはならないわけですけれども、いずれにせよ、手形割引も運転資金もキャッシュフローであって、企業価値とは関係ないところでありました。
ここ、一本目の布石なのであります。
それから二年後、三十六年前、私は、富士銀行の当時ワールド・トレード・センターにあったニューヨーク支店に赴任になりました。一九八九年の一月ですけれども、そのとき、金融界の一番大きな話題は、KKRによるRJRナビスコの買収でありました。そのつなぎ資金に、日本の銀行、当時は大手二十一行と言っていた頃でありますが、それぞれ数百億円ずつ融資をするという事案が一番ホットな話題で、事務方の、案件に関係ない先輩方も、LBOとは何ぞやということを語れないと格好悪いみたいな雰囲気がある頃でありました。
利ざやは二五〇ベーシスポイント、物すごくうまみのある貸出しでありましたが、その買収したお金の返済資金は何なんですかとアメリカ人の課長代理に聞いたら、彼女は、ゼイ・イシュー・ボンズと言ったんですね。債券を発行して返すんだと。要するに、今死語になりましたけれども、ジャンク債をSPCが発行して、それで日本の銀行につなぎ資金を返す。
これまた、当時入社二年目、三年目の若手行員でありました。融資の基本でやっちゃいけない三つのことのうちの一つが、ほかから借金して貸金を返済する、そういう客には貸してはいけませんというふうに習いました。それが、エリートたちが集まる国際金融の一番最高、富士銀行の中では最高峰のニューヨーク支店が扱う花形案件が、債券を発行して借金を返すということにも大変驚きました。当然、ノンリコースローン、担保はありません。
私は、不動産金融の係に回されました。隣にプロジェクトファイナンスの係がありました。二つともノンリコース、担保は取りません。しかし、両方とも、企業価値を計算したというよりは、キャッシュフローを計算して、返済能力があるというようなことをしていました。まだまだ、商業銀行という言い方が正しいかどうかは別として、銀行法上の銀行が企業価値を算定して、それに基づいて担保価値を設定して、その範囲内でお金を貸すという世界はありませんでした。
今般、よく目利き目利きというふうにおっしゃいますけれども、企業価値を算定して、その範囲内で担保を設定するということであります。大歓迎でありますが、果たしてそんなことをできる人がいるのかどうか。
僕は前職で、ちょっと職業替えをして、MAのアドバイザーをやったり、IPOをしたり、政府の持っている民営化の案件の引受けをしたりという仕事をして、そのときは確かに企業価値は算定しました。しかし、現実の銀行の支店や営業部の取引先の中で、例えばディスカウントキャッシュフローを計算する、モデルをつくるのはそんなに難しくありませんが、これから八年間一律で七%売上げが成長するなんというきれいな会社が世の中にあるか。また、そういったモデルを回したとして、判こを押す課長さんや融資担当の役員はそれを信じるかどうか。
さらには、例えばディスカウントキャッシュフローを回したとしても、その割引率が、大体、リスクフリーレートで国債にするわけですが、一%を切っているような割引率で割り引き返すと、ほんのちょっとだけ割引率を変更すると、価値がばんと上がったり、だんと下がったりします。したがって、割引率の恣意性みたいなのを、多分、担当者と上司が対立する現場があちこちで出ると思います。
事ほどさように、企業価値を融資する側が算定するというのは、実は余りインセンティブというか、よっぽど利ざやを稼げる案件でもない限りは難しいんじゃないか。そんなことをして銀行は何の得があるんだという話にはなりやしないかということが疑問なんでありますが、これもまた事務方で結構でありますので、そういう企業価値を算定する人材がどこにどれだけいるという前提なのか、教えてください。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
金融庁におきましては、約二十年前より、金融機関に対しまして、不動産担保や経営者保証に過度に依存するのではなく、事業者の実態や将来性を評価して融資を行うことを金融機関に促す様々な取組を進めてきております。
事業者の実態等に着目した融資につきましては、先生おっしゃるとおり、なかなか難しい面もあり、その浸透については道半ばというふうに考えてございまして、人材育成、確保が大きな課題となっているとは認識してございます。
これまで金融庁では、例えば二〇一九年十二月に監督指針を改正いたしまして、金融機関に対しまして人事ローテーションの確保を求めないこととしておりまして、これにより、金融機関の融資担当者が顧客企業との間で中長期的にわたる関係を構築し、顧客企業の事業への理解を深める取組を行うことは可能となってございます。
今般の法案では、まさに融資担当者などにおきまして事業を適切に評価するノウハウが重要となってくるわけですけれども、こうしたことは現在の金融機関に備わっていないんじゃないかということですけれども、そうしたことにも対応する観点から、金融機関や事業者に対して専門的な知見の提供等を行う支援機関の認定制度の創設も盛り込んでございます。
金融庁といたしましては、金融機関がそれぞれの実情に応じて必要な人材育成等に取り組むよう促すとともに、これを支援してまいりたいというふうに考えてございます。
○小田原委員 大いに励ましたいと思います。
しかしながら、直感は、そういう人材育成ができて、企業価値算定にたけた人が出てきたとすると、多分その仕事を辞めて、自分でお金を集めて投資する人になるんじゃないかと思います。
前回、馬渕参考人に階委員が少し疑問を呈したやり取りがありました。私も実は全く同感でありまして、MAをするときは、相手の会社が欲しいから、ただでくれとは言わないわけです。買手はできるだけ安く買おうとするし、売手のアドバイザーはできるだけ高く売ろうとするから、企業価値の算定のやり取りが生まれ、取引が成立するわけですけれども、融資をする人は余りそういうインセンティブはありません。買う人は、買った新しい会社が金を稼ぐから欲しいわけで、融資をする人は、そこが潰れなくて金利を払ってくるというかすかなうまみのために、こういった努力や才能を磨くということになります。
うまくいくといいなとしか言いようがないんですけれども、同時に、スタートアップの会社が特にそのメリットがあるというようなことが書いてありました。
スタートアップと一くくりにすることはできなくて、よく言う三段階、悪魔の川、これは研究開発がいつになったら結果が出るか、何とか細胞じゃないけれども、これは目利きというより度胸ですよね。
二つ目が、デスバレーと言われる、本当に製品化ができるか、本当に量産体制が整えられるか、事業にできるか。
今言った二つだけでも、目利きの能力とか専門性というのは全然違うはず。
三つ目の、ダーウィンの海と言われている、本当にそれが世の中の人みんなが使って、市場ができて、かつ、まねするやつがいっぱい出てくるのに、市場のシェアのトップが取れるかというような、そういったリスクを読み切ってお金を貸せる人なんというのが本当にいるのか。
エンジェル投資家という人は、多少すっても構わないから、大化けする人に期待をして投資をするわけで、これは本当に融資になじむのか、やってほしいんですよ、やってほしいけれども、言うはやすし、行うというか、その人を見つける、名伯楽というのはとても難しいと思います。
スタートアップは、ちょっと不謹慎になるのを覚悟して言いますけれども、例えば、大谷選手が大化けするかどうかというのをプロ入りのときに見定めるぐらい難しい。
あの頃、テレビを見ていた皆さんも覚えていると思いますけれども、日本のプロ野球で首位打者を何度も取った大御所が、テレビに出るたびに、二刀流なんか絶対やめろ、必ず故障して、打者でも投手でも何の記録も残せない選手にしかならないと、三、四年言っていらっしゃいましたかね、今テレビに出てこなくなりましたけれども、それぐらい難しいわけです。
それで、例えば、スタートアップ、株式会社オオタニにほれて、企業価値が一千億になりますよ、常務と言って、その常務の席にあの大御所が座っていたら、融資は成り立ちません。そういうものだと思うべきではないでしょうか。
もう一つ、それほど難しい案件で、例えば、日本の銀行というのは利ざやが大体いいときで一%ぐらい、優秀な銀行員が、スーパーマンで、一つの案件を一か月でやり遂げたとしましょう。それで、貸す。物すごくおいしい、金利、利ざや一%を抜けたとする。月給が額面百万円の人が、一%の利ざやの案件をつくって、本人一人分の給料を稼ぎ出すには、十二億円の貸出しがつくり上げられなければいけない。
さて、事業継承、シャッター商店街にしたらいけないというような、ショッピングモールに負けない小売店にするんだというようなところに、本当にこういった案件が当てはまるのか。事業継承だとか中小企業とおっしゃっておりますけれども、どれぐらいの案件を想定した制度なのか教えてください。
○井藤政府参考人 現在におきましてどれぐらいの案件にということは、具体的にお示しすることはなかなか難しい点がございますけれども、先生おっしゃるとおり、企業価値担保権の活用場面につきましては、御指摘のような、コスト、リターンといった収益上の課題もあるというふうには認識してございます。
したがいまして、例えば、本当に立ち上げ当初のスタートアップで、エクイティーリスクの方がふさわしいような企業とか、非常にちっちゃめの企業というものについては、なかなか難しい部分もある。したがいまして、法施行当初は、一定の規模の企業から徐々に始まるのではないかというふうに考えてございます。
その上で、金融庁といたしましては、金融機関におきます体制整備等の好事例の把握、公表などを行いまして、金融機関における人材育成等によるコストの低減なども通じまして、企業価値担保権を活用できる場面の裾野の拡大をしっかりと後押ししていければというふうに考えてございます。
○小田原委員 あくまでも応援をしております。そういう人材、なかなか難しいと思いますけれども、私も含めて、外資系の投資銀行というのは突然首になりますし、安定志向の強い優秀な方が育って、そういった目利きになってくれることを願ってやみません。
最後に、ちょっと時節柄ではありませんけれども、一つお聞きしたいというか、申し上げたいことがあります。
私は東京都民でありますし、東京都選出の国会議員であります。平成二十一年度から東京都は、今は制度が変わって、地方法人税の見直しの結果でありますけれども、年間一・三兆円、累計九・二兆円、都で上げた税収を国に差し上げてきております。地方法人税の税額が東京都は一番高いということは事実でありますが、東京都も一自治体であります。
東京都は要人警護に、ここ多分四十年間ぐらい、国から十五億円予算をいただいておりますが、東京都が支えている要人警護を含めた警察に対する予算というのは六千八百億円で、下水道は千七百億円、消防は二千八百億円、こういった、国を支える、消防、上下水道、警察に要する経費だけでも一・一兆円かかっております。
これを全部理不尽だとまでは申しませんし、首都機能を果たしているというおかげで税収が高いという側面もあろうかと思いますけれども、今後の見直しがもしあるとすれば、東京都の個別の事情、貢献度も勘案していただきたいと思いますが、事務方、そして最後に、地方のことではありますけれども、鈴木大臣から御所見があれば頂戴したいと思います。
○鈴木政府参考人 お答えいたします。
地方団体が地域の実情に応じた行政サービスを安定的に供給していくためには、その基盤として、地方税の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系を構築することが重要でございます。
そのため、地方法人課税につきまして、これまで、消費税率引上げに伴う地方消費税の充実に合わせ、地方団体間の財政力格差が拡大しないよう、法人住民税の一部を地方法人税として国税化し交付税原資とするほか、経済社会構造の変化等に伴って大都市部に税収が集中する構造的な課題に対処するため、特別法人事業税、譲与税制度を創設するなどの見直しを行ってまいりました。
今後の地方税体系の在り方につきましては、昨年六月の骨太の方針や、令和六年度与党税制改正大綱において「行政サービスの地域間格差が過度に生じないよう、地方公共団体間の税収の偏在状況や財政力格差の調整状況等を踏まえつつ、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組む。」とされていることから、総務省といたしましても、この方向性に沿って、引き続き偏在性の小さい地方税体系の構築に向けて取り組んでまいります。
○鈴木国務大臣 ただいま、総務省からの答弁とほとんど同じことになってしまいますので、今の仕組みは申し上げませんけれども、このことにつきましては、令和六年度の与党税制大綱におきまして、地方法人課税について、今お話がございましたが、地方団体間の税収の偏在状況や財政力格差の調整状況等を踏まえつつ、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に取り組むとされております。
地方法人税につきましても、こうした考え方も踏まえながら、引き続き適切に検討がなされることが重要であると考えております。
○小田原委員 終わります。ありがとうございました。
○津島委員長 これにて小田原君の質疑は終了いたしました。
次に、小山展弘君。
○小山委員 立憲民主党の小山展弘です。
私は二週間前にこの財務金融委員に就任させていただきましたが、今日はこのように質問の機会を与えていただきまして、二〇一一年以来の財務金融委員会での質問となりますけれども、機会を与えていただきまして、理事の皆様、委員の皆様、ありがとうございます。
では、早速質問させていただきたいと思いますが、よくこの財務金融委員会の中でも、これまで目利きという言葉が何回か使われて、また聞かれてまいりました。この目利きという言葉について、まさに言葉の定義、あるいは、どういう意味合いで金融庁は認識し、どういう意味で使っているんでしょうか。
○鈴木国務大臣 目利きという言葉につきまして、本委員会での質疑ではおおむね、事業者の事業の実態や成長可能性等を的確に把握、評価することを指して答弁をいたしております。
この目利きのために必要な能力、すなわち目利き力は、金融庁としては各金融機関の金融仲介機能の源泉と位置づけておりまして、企業価値担保権の活用に向けましても、それぞれの実情に即して、各金融機関において継続的な人材育成等を通じて養うべき重要な能力であると考えております。
○小山委員 確かに、その目利きという言葉の中で、今大臣がおっしゃったことは決して外れているわけではないと思うんですけれども、でも、私は、中心的なことがちょっと違和感を感じるんですね。
一番大事なことは、金融機関にとっては、それはいろいろな、ほかの方々はともかく、金融機関の職員にとっては、銀行員にとっては、貸した金が返ってくるかどうか、償還確実性を見抜く力というのが目利き力のやはり一番の目的になるんじゃないだろうか。そのために担保を取ったり、あるいは事業の将来性を見たり、企業の評価をするわけでありまして、貸した金が返ってくるかどうか。極端に言えば、企業の業況が悪くても、貸した金が必ず返ってくるだろうという見込みが立つ場合、これは例えば、その企業の、どういう資金使途で、どういった性質のお金であるかということが分かれば、これは貸したって私はいいと思うんですね。
そういうところが少し、私は今回ぼやけているんじゃないかということを思うんです。
それと、本当はもうちょっといろいろやり取りさせていただきたいんですけれども、今回のこの法案の目的というのは、事業性融資の推進ということが目的ですね。では、なぜ事業性融資というものが伸び悩んでいるのか。これは、担保の範囲内でしか融資が実行されないんじゃないか、こういう御懸念があるんじゃないかと思うんですけれども。
ちなみに、鈴木大臣は、協同組合金融、今、信金とか農協とか漁協さんとか、まさに水産協同組合法は鈴木善幸元総理が作られた法律ですけれども、どのようにこの協同組合金融が生まれたのかということを御存じでしょうか。
これは、よく農協は金融事業ばかりやっていると批判する人がいますけれども、実は、農協の前身である戦前の産業組合、これはドイツのライファイゼン協同組合に源流がありまして、この法律を日本でも施行したものだと。
この生産者協同組合であるライファイゼン協同組合はどうして設立されたのか。実は、当時の貧しい農家は担保がない、銀行から借りることができないわけですね。そこで、高利貸しから借りてしまうと金利が高くて、結局、せっかく利益を得ても高利貸しに取られてしまう。あるいは、僅かながらでも担保を出せば担保権を実行されてしまう。そういうことで、全然生産者が豊かになっていけないということで、実は、自分たちで貯金をして、その貯金を、資金が必要な人に必要な使途で融資をする、こういう相互金融というものが始まったわけで、実は、担保を提供したとしても無担保部分の多い、あるいは無担保でも必要な人に資金を貸し出すというのが協同組合金融の元々の源流、原点なんですね。
実際、その姿勢に忠実であれば、担保がなくても償還確実性があれば貸出しができるんですね。私自身も、金融検査マニュアル全盛の時代に、業況のよくない取引先に対して無担保部分の融資を実行した経験がございます。まさに、資産証明のときに、我々議員も貯金と預金というのを分けて書きますけれども、やはりここは違うんですね。どう違うかというと、預金というのは資金運用としての、資産運用としての預けるお金、貯金というのは何かあったときのために自分でためておく、備荒貯金と言われますけれども、ここは今ほとんど金利は変わりませんけれども、全く、目的というか、元々の意味合いが違うわけですね。
こういう中で、信金さんは地銀さんなんかに比べて、地方においては中小企業さんの業況が悪くても余り引き揚げたりしないということが、個別のケースはともかく、一般的には聞かれております。
まさに、こういった、信金さんというか、協同組合金融に残っている姿勢をもっと横展開していくことが、私は、事業性融資推進にとって最も今、資することになるんじゃないだろうかと。
こういう話をすると、信金さんというのは金額が少なくて、地銀さんの方が金額が多いから、だからそれは違うんだと言われるかもしれませんけれども、余り個別名を出すべきじゃないんですが、私が勤めていた農林中金でもこういった融資姿勢は残っておりまして、地銀さんよりも多分資金量は多いでしょうから、是非、ここは金額の問題ではない。
それと、もう一つここで申し上げたいのは、ライファイゼン協同組合のあるドイツ、クレディ・アグリコルのあるフランス、企業価値担保の制度はありません。ドイツ、フランスはないんですね。来年は国際協同組合年ですけれども、まさにこのような相互金融の融資姿勢こそ、横展開する、参考にしていくということが僕は必要だと思っております。
企業価値担保についてちょっと伺っていきたいんですが、企業価値が低下する事態というのもやはりあり得ると思うんですね。上場企業でも、粉飾決算、こういうような企業の信頼を損なう事態なんかも発生しております。そういった事態を予測もすれば、金融機関は、こういった企業価値担保の実質的保全額について、掛け目を用いて割り引くと考えられます。
その掛け目はどのぐらいになると金融庁は、個別によって違うかもしれませんけれども、大体どのぐらい掛け目を掛けるんだろうかと予想しているでしょうか。あるいは、金融機関が企業価値担保をどのぐらいの期間で洗い替えをすることが望ましいと考えていますでしょうか。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
金融庁におきましては、金融機関に対して、不動産担保等に過度に依存するのではなく、事業者の実態や将来性を評価して融資を行うことを促すため、令和元年十二月に金融検査マニュアルを廃止しておりまして、担保価値の評価やそれによる保全額を算定するため、掛け目をどのように活用するかについては、各金融機関の経営判断を尊重することとしてございます。
また、担保価値評価の洗い替えにつきましては、各金融機関における融資管理の中でどのような頻度で行うかが決められるものと承知してございます。もっとも、企業価値担保権は、担保価値が企業価値と連動することから、金融機関は、事業者の事業の状況について、通常の融資よりも深度あるモニタリングを行うことが望ましいと考えてございます。こうした融資管理の一環として、担保価値の洗い替えが検討、実施されていくものというふうに考えてございます。
いずれにいたしましても、そうしたことから、一律の、いわゆる掛け目の目線というのをこの場で申し上げることは控えたいというふうに考えてございますが、いずれにせよ、企業価値担保権の適切な活用を含め、事業性融資を推進していくためには、金融機関において、融資担当者がこうした企業価値の評価を適切に行うことができる能力を向上させる方策ですとか、そのための体制整備を行っていくことが重要であるというふうに考えてございまして、金融庁としては、こうした取組をしっかりと後押ししてまいりたいというふうに考えてございます。
○小山委員 いろいろ金融庁の方々とお話ししていますと、バブルの時代まではどんどん融資積極姿勢であったと。その後、不良債権処理から、金融検査マニュアルで金融機関の融資の状況がどうなっているかということをかなり管理するようになった。今度は行き過ぎて、担保がなければ貸さないというような状況になってきて、今度は、また積極的に融資していこうと。過去とは全く一緒というわけではないですけれども、どうも、あっちに行ったりこっちに行ったりしているところがあるような気がしまして、逆に、この後、既に金融検査マニュアルについて疑義が呈された頃から、またいろいろと不祥事案も既に幾つか起きていますけれども、また逆に、非常に曖昧、あやふやなところもある、評価する金融機関の担当者によって価値が大きく変わってくる可能性もあるかもしれない。そういう中で、また今度は、逆に、不良債権だとか不祥事案が出てこないようにもしていかなきゃいけない。
そういったことからしますと、私は、もう少し具体的なものが決まってから、本来、法案審査、出すべきではないだろうかと。あるいは、金融庁が金融機関の企業価値担保による保全状況をどう見るのかというような指針というのも、まだこれから考えるというようなことがちょっと多いのではないかなというふうにも感じております。
次に、スタートアップ企業に対して金融機関が企業価値担保を設定した場合、とりわけ、企業価値担保を提供しないと融資できないなどの要請をした場合に、他の金融機関は担保を取得しづらくなって、結局、その企業さんは他行から借りづらくなるんじゃないか、メインバンクというよりも、オンリーメインバンク化する可能性があるんじゃないだろうか。そういうような、金融機関の企業に対する関係性がより強い立場になるようなことも想定されるんですけれども、これについての金融庁の認識を伺いたいと思います。
○神田大臣政務官 お答えいたします。
今般の法案に盛り込まれています企業価値担保権につきましては、成長が見込まれるスタートアップ企業が追加の資金調達を行う場合などに事業者の資金調達ニーズを妨げないように、債務者がいつでも極度額を設定でき、また、担保権で保全される貸付金額を確定できることといたしております。
また、これによって、他の金融機関からの借入れに充当することができる担保価値を残しておくということができ、債務者が希望すれば、他の金融機関からの融資も受けやすくする枠組みとするといった工夫をしております。
他方、委員御指摘のとおり、金融機関による企業に対する支配性の点に関しましては、例えば、企業価値担保権が設定されている場合に限らず、顧客企業に対しまして、金融機関が取引上の優越的地位を不当に利用し、取引の条件又は実施について不利益を与えるような行為は、銀行法令等において禁止されております。
金融庁といたしましては、企業価値担保権を活用する金融機関が、こうした法令等を遵守しつつ、制度趣旨を踏まえて事業者の状況に応じた経営改善支援等を適切に行っていくよう、しっかりとモニタリングを行ってまいりたいと考えております。
○小山委員 極度額設定権とか元本確定請求をする段階というのは、多分、メインバンクと借り手企業との信頼関係が崩れたときである、これは金融庁さんもそのように認識されていらっしゃると思います。これは、そういう信頼関係が崩れたときに避難的に行うわけですけれども、それは、この法改正の趣旨とは異なる、伴走型支援とかメインによる関係性の強化と矛盾するような状況に至った事態ではないかと思いますし、相当、それは多分気まずい状況になっていると思うんですね。
そうならないように伴走支援を行っていくということでございますけれども、常にメインバンクと企業の経営方針が一致するというわけではないと思うんですね。あるいは、企業価値担保があるからメインバンクがメインの務めを常に果たすということもないと思います。大概はそうなってほしいと思いますし、そうなるとは思いますけれども、メインだって手を引くことだってあるかもしれない。
最初から他行との取引の余地のある現在までのやり方の方が、もちろん、今回、選択肢を一つ増やすということなので、今までのやり方ができなくなるわけではないんですけれども、私は、今までのやり方の方が、本来、中長期的にはやはり望ましい、選択肢もある、他行からも借入れがまだできやすいと。
だけれども、じゃ、こういう制度ができると、確かに選択肢の一つかもしれないけれども、企業価値担保を提供しないと金融機関は貸さないよというようなケースが最初から出てきた場合に、だんだんだんだん、日本の金融取引の慣行というものが、企業価値担保、英米系のこういうやり方に変わっていって、日本の金融自体の慣行というものが変わっていってしまうんじゃないだろうか。そういう長期的に考えたときに本当にこれがプラスかどうかというのは、私は少し疑問に思っているところがございます。
それと、もう一点伺いたいんですが、メインバンクといえども、今申し上げたとおり、融資先が業況悪化の際に逃げてはいけないという法律はないんですね。伴走型支援を放棄するリスクについて、金融庁はどのように考えておりますでしょうか。
○鈴木国務大臣 メインバンクか非メインバンクにかかわらず、地域金融機関には、地域経済を支える要として、地域企業の経営課題を的確に把握をし、適切な支援を提供することで、地域経済の成長に貢献していくことが求められていると考えております。
地域金融機関にとって、こうした支援を行うことは、顧客基盤の強化や地域経済の成長を通して、自身の持続可能なビジネスモデルの構築にもつながるものであり、地域金融機関自身にとっても、継続的に支援をすることには価値があると考えております。
こうした考え方の下、金融庁といたしましては、これまでも、顧客企業に対するコンサルティング機能の発揮の重要性について監督指針に明記をして、地域金融機関に支援体制の充実等を促してきたところでありまして、引き続き、事業者の実情に応じた適切な支援が行われますように、地域金融機関の取組をしっかりと促していきたいと考えております。
○小山委員 時間が来たので、これで終わりにさせていただきたいと思いますが、確かに、一般的には今大臣がおっしゃったとおりで、それが望ましいと思っておりますけれども、まさに住専問題のときには、メインバンクがメインとしての責任を負わせるというようなことがなく、貸し手責任という、しかも、この貸し手責任、レンダーライアビリティー、この意味も曲解をして、当時の大蔵省は、貸出金額に応じた配分ということにして、ここから住専問題というのが起こったわけですね。
まさに、このメインバンク制の崩壊というものを後押ししたのが当時の大蔵省の金融行政であったということも、是非、私は、そのことも振り返っていただきながら、今大臣のおっしゃったような伴走型支援ができる事業性金融が推進されていきますように、金融指導を行っていただきたいと思います。
以上で終わります。
○津島委員長 これにて小山君の質疑は終了いたしました。
次に、櫻井周君。
○櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。
先週に引き続きまして、質問させていただきます。持ち時間も短いものですから、早速質問に入らせていただきます。
先週に引き続いての質問ですので、先週の積み残しのことについて幾つかお尋ねをいたします。
まず、担保権実行時の労働組合等とのコミュニケーションについて、これは八十九条に関連するところでございますが、大臣にお尋ねをいたします。
やはり、できるだけ早い段階で丁寧な協議が重要と考えますが、いかがでしょうか。厚生労働省の事業譲渡等指針に示された留意事項では、事前の協議について、「事業譲渡に関する全体の状況、承継予定労働者が勤務することとなる譲受会社等の概要及び労働条件等について十分に説明し、承諾に向けた協議を行うことが適当であること。」というふうに書いてございます。本法案で創設される担保権についても、同様の内容をガイドライン等で示すことを提案申し上げますが、大臣、いかがでしょうか。
加えて、担保権実行前の労使協議の実効性を高める観点から、担保権者が実行手続開始決定の申立てを行う際の書式に、労働組合との協議状況を項目として盛り込むことを提案申し上げますが、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 三点についてお答えをさせていただきたいと思いますが、まず、担保権の実行時における、労働組合等とできるだけ早い段階で丁寧な協議が重要であるというお考えの点についてであります。それと、厚生労働省の事業譲渡等指針に示された事前の協議に関する注意事項と同様の内容をガイドライン等で示すことの御提案をまとめてお答えをいたしたいと思います。
まず、実行手続におけます管財人と労働組合等の協議の在り方に関しましては、管財人は労働組合法上の使用者に該当すると解されることから、その権限に関し、労働組合からの団体交渉に応じるなど、労働組合法上の義務を遵守する必要があります。そして、裁判所の監督の下で、管財人と労働組合等において適切な協議が行われるものと考えられます。
金融庁といたしましても、櫻井先生の御指摘のとおり、企業価値担保権の実行手続において、管財人と労働組合等の間で丁寧な協議が行われることが重要と考えておりまして、御指摘の厚生労働省が公表しております事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針なども参考にしながら、例えば、管財人が労働組合等に対して情報提供や協議を行う際に参考となるポイントなど、企業価値担保権の制度趣旨を踏まえた運用に関する考え方について、ガイドライン等の形で公表するといった対応を検討をしてまいります。
それから、担保権が実行手続開始申立てを行う際の書式に、労働組合との協議状況を項目として盛り込むことについて御提案がございました。担保権の実行後も事業の継続を目指すという企業価値担保権の趣旨に鑑みまして、労働者側に対して丁寧に理解を求めていく必要があると考えております。
今般の法案では、金融審議会の提言や他の担保法制とのバランスを踏まえまして、企業価値担保権の実行手続の開始前に労働者との協議をすることは義務づけておりませんが、手続開始申立て書にどのような記載事項を求めるか等については、法の趣旨等を踏まえ、裁判所において適切に検討されるべき事項であると考えているところです。
○櫻井委員 まず、ガイドラインで、前段の部分については検討いただくということで、是非盛り込んでいただきたいと思います。
それから、裁判所において適切にということなんですが、一応、大臣としては、やはりこれは必要なものだということを法案審査の中で明らかにしていただければこそ、裁判所も、それを必要だというふうなことで、実際、実務上盛り込んでいただけると思うので、ちょっとそこは重要なことだと一言、御答弁をお願いいたします。
○鈴木国務大臣 先ほども答弁させていただきましたが、担保権の実行後も事業の継続を目指すという企業価値担保権の趣旨に鑑みまして、労働者側に対して丁寧に理解を求めていく必要がある、これは重要な点だ、そのように認識しております。そのことは明確に申し上げたいと思います。
○櫻井委員 大臣から重要だという御答弁をいただきましたので、今後、裁判実務においても、その点を踏まえた対応をお願いしたいというふうに思います。
続きまして、個別財産の換価の場合における要件の追加について、これも百五十七条に関連する項目でございますが、大臣にまとめて質問させていただきます。
先週五月十日金曜日の本委員会において、馬場雄基委員の質問に対して、大臣は、今回の法律案では、個別財産の換価は例外、管財人が必要であると認める場合に裁判所の許可を得て実施、運用に関する考え方につきましては、法律が成立した後にガイドラインなどの形で明確化した上で公表すると答弁されました。例外である個別財産の換価、これは事業の一部譲渡も含めてのことですが、個別財産の換価が一般化することを抑止するために、例外の要件を明確にすることを提案申し上げますが、大臣、いかがでしょうか。
ということで、具体的にちょっと申し上げますと、管財人が裁判所の許可を得るに当たって、個別財産の換価とせざるを得ない理由、労働組合等の協議の状況などを記載事項として義務づけるというのはいかがでしょうかということ。
あとまた、管財人によるスポンサー選定について、ワーキンググループの報告書には、「事業譲渡の金額の多寡のみを問題にするのではなくて、雇用の維持や取引関係の維持、その他多様な事情を考慮して最も適切な承継先を選定することが求められる」とあります。この趣旨をガイドラインに記載することを提案申し上げますが、いかがでしょうか。
まとめて御答弁をお願いいたします。
○鈴木国務大臣 今般の法案では、換価の方法を定める第百五十七条において、個別換価が例外であることを明確にするために、第一項では、事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することを一般原則として、第二項において、前項の規定にかかわらずと規定をし、個別財産の換価は例外的に、管財人が必要があると認める場合に裁判所の許可を得て実施する旨が規定をされております。
このように、今御審議をいただいております法案では、個別案件に応じた適切な対応を確保しつつも、個別財産の換価が必要な場合に例外的に認められることを明確に規定していると考えております。
また、裁判所において、こうした制度の趣旨を踏まえて、個別財産の換価を許可すべきかを判断されることとなりますが、裁判所が当該判断をするに当たりましては、当該許可の申立て書にどのような記載事項を求めるかなどにつきましては、法の趣旨も踏まえて、裁判所において適切に検討されるべき事項だと考えております。
さらに、御指摘のとおり、昨年の二月の金融審の報告書では、「事業譲渡の金額の多寡のみを問題にするのではなくて、雇用の維持や取引関係の維持、その他多様な事情を考慮して最も適切な承継先を選定することが求められる」との提言をいただいております。こうした金融審の報告書の提言の内容につきましては、法案成立後に、御提案がありましたように、ガイドラインなどの形で明確化した上で公表することを検討しております。
○櫻井委員 裁判実務においてということで、裁判所の判断でというお話もございましたけれども、これも今大臣おっしゃられた、御答弁いただいたとおり、事業継続、しっかりと果たしていくための手続を、裁判実務においても、こちらも果たしていただくように、要望申し上げます。
続きまして、三点目の質問、労働者保護を可能とするカーブアウト部分の確保について、これは、八条、それから百二十九条から百三十一条等に関係する部分でございます。これは参考人でいいので、端的にお願いをいたします。
カーブアウト部分は、まず、管財人の報酬や労働債権などの財団債権に優先的に配分された上で、続いて、破産債権の順位に従って配分されるという理解でよろしいでしょうか。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
今般の法案におきましては、実行手続における労働債権の保護につきまして、例えば、給与債権につきましては、実行手続開始前六か月間の給与請求権及び実行手続後の給与請求権が共益債権として優先して随時弁済されるなどの規定により、保護が図られていると考えてございます。
そして、仮にこうした規定によっても弁済を受けられない場合には、債務者について行われる破産手続等におきまして弁済等を受けることとなり、具体的には、御指摘のとおり、カーブアウト額から、まず、破産管財人の報酬などの財団債権に対して優先的に配分された上で、続きまして、破産債権の順位に従って配分されることになります。
○櫻井委員 ちょっと、一番聞きたかった、労働債権も優先的に配分されるのでいいんですよね。
○井藤政府参考人 労働債権は、一般の先取特権ということで、その順位に従いまして配当がなされるというふうに考えてございます。
○櫻井委員 そこが大事なんですけれども。だから、労働債権は優先的に扱われるということでいいんですか。
○井藤政府参考人 繰り返しますが、まず、実行手続前六か月間の……(櫻井委員「そこはいいんです」と呼ぶ)共益債権にならない労働債権については、一般の先取特権として優先的に取り扱われる債権になるということでございます。
○櫻井委員 次に移らせていただきます。
八条二項一号ハにおいて、裁判所が特に必要と認める場合にあっては、カーブアウト部分に金額を追加できることになっていますが、具体的にはどのような場合において、どの程度の水準を想定しているのか、また、裁判所で追加できる水準についても政令等で規定するのでしょうか。この点についてもお願いいたします。
○井藤政府参考人 今般の法案では、おっしゃいますとおり、不特定被担保債権留保額につきましては、裁判所が清算手続又は破産手続の公正な実施に特に必要と認める場合には、政令で定めるところにより算定した額に裁判所の定める額を加えることとしてございます。
また、清算手続又は破産手続の公正な実施に特に必要か否かにつきましては、原則的な額を政令で定めることとしている条文の趣旨に鑑みまして、裁判所において適切に判断されるものと考えておりますが、例えば、政令で定める額では破産手続に必要な費用が支弁できない場合などが、特に必要と認める場合に典型的に該当するものというふうに考えてございます。
なお、清算手続又は破産手続の公正な実施に特に必要であるとして裁判所が定める額は、裁判所において適切に判断されるものと考えてございまして、その水準については政令等で規定することにはなじまないものというふうに考えてございます。
○櫻井委員 またここも裁判実務に委ねるということになっているんですが、ただ、ちょっと我々が気にしているところは、裁判所が特に必要と認める場合に金額が追加できるからといって、カーブアウトの水準をあらかじめ低めに設定するということがあってはならないというふうに考えるんですが、重要な点ですので、大臣、御見解をお願いいたします。
○鈴木国務大臣 今般の法案におきまして、カーブアウト、すなわち不特定被担保権留保額の水準につきましては、清算手続又は破産手続の公正な実施に要すると見込まれる額とされ、具体的な額は配当可能額に応じ政令で定めることとしているほか、裁判所が清算手続又は破産手続の公正な実施に特に必要と認める場合には、政令で定める額に裁判所が定める額を加えることとされております。
政令において定める清算手続又は破産手続の公正な実施に要すると見込まれる額につきましては、この規定の趣旨を踏まえると、裁判所が特に必要と認める場合に金額を追加できる規定となっていることを理由にして、カーブアウトの水準をあらかじめ低めに設定をするということは考えておりません。カーブアウトの具体的な金額につきましては、本法の施行までの間に検討してまいりたいと思っております。
○櫻井委員 大臣から、あらかじめ低めに設定することはないという御答弁をいただきましたので、一応ここは確認させていただきました。
時間になりましたのでこれで終わりにしますが、いずれにしても、法案の中身で結構大事なところが、政令とか、後で決めます、検討しますということであったり、あと裁判実務に委ねますということで、ちょっといろいろ、もっとそこを詰めてから法案を出してほしかったなということを、今更言ってもしようがないですけれども、申し上げて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○津島委員長 これにて櫻井君の質疑は終了いたしました。
次に、階猛君。
○階委員 立憲民主党の階猛です。
今の櫻井委員とのやり取りの中で、ちょっと気になったことを確認させていただきたいと思います。
櫻井さんの最初の方の質問で、担保権実行の申立て書にその直前の労働者側とのやり取りなどを記載するようにしてはどうかというお話があったんですが、私が倒産手続の実務に携わった経験から申し上げますと、倒産手続を申し立てるかどうか、今回の担保権実行もそれに類するものだと思っていますが、申し立てる前は隠密行動なんですよ。絶対の極秘事項で、社内の人にもまず知らせない。経営者と代理人の弁護士との間で周到に準備して、ある日突然申し立てるということをやらないと、一般債権者が、商事留置権だといって在庫商品などを全部持って帰るわけですよ。そうすると企業は立ち行かなくなる。これが我々の常識なんです。
本当に、さっき何か重要なことだとかおっしゃっていましたけれども、申立ての直前に従業員とのやり取りをするということが可能なんでしょうか。
これ、大臣、あるいは参考人でも結構です。そこを明確にお答えください。
○井藤政府参考人 お答え申します。
企業と雇用者の間のコミュニケーションの在り方は様々というふうに考えてございますが、今回の法案では、申立て……(階委員「実務上可能かと聞いているんだよ。知っているのか。知らないんだったら知らないでいいですよ。知っているのか。答えてください」と呼ぶ)
○津島委員長 発言がある場合は挙手を願います。
○井藤政府参考人 実務上可能であるかどうかというのは、まさに実務……(階委員「いやいや、そこを調べて出さないと駄目でしょう。ちょっと止めてくださいよ」と呼ぶ)
○津島委員長 階委員、もう一度質問してください。
○階委員 実務上、そういうことは可能なのか。それは当然、金融庁としては、この法案を出している以上、そういうことが可能かどうか調べているはずですよ。答えてください、明確に。
○津島委員長 井藤局長、明確にお答えを願います。
○井藤政府参考人 なかなか難しい局面があると思いますけれども、可能な場合がないとは言い切れないものだというふうに考えてございます。
○階委員 もう一回明確に答えてください。今、どっちつかずの答弁でしたよ。
私は弁護士として、倒産実務の常識としては、そんな緊急事態に、外部に情報を漏らすようなことは絶対ないと思っているんですよ。それが今、あり得るということをおっしゃったんですか。答えてください、明確に。
○井藤政府参考人 一般的にはなかなか難しい場合が多かろうと思いますが、守秘義務等を締結して、完全に信頼を置けるような場合においては、可能な場合がないとは完全には否定できないというふうに考えてございます。
○階委員 今、自分の頭の中で勝手に答えたでしょう。
現場の声を聞いていますか、お答えください。
○津島委員長 井藤局長、お答えを願います。
○井藤政府参考人 私どもといたしましては、可能な限りにおきまして……(階委員「私どもじゃなくて、現場の声を聞いているかと聞いているんだよ」と呼ぶ)現場の声も担当の方でしっかりと聞かせていただいております。
○階委員 ちゃんと答えてくださいね。
申立て直前に労働者側と協議をするということは実務上可能だということを現場からちゃんと確認して、今お答えになりましたか。それとも、今、あなたが、私から聞かれたので、急遽、考えてひねり出して答えたんですか。どちらですか、お答えください。
○井藤政府参考人 労働組合と使用者が協議するという場合はあり得るというふうに認識してございます。(階委員「ちょっと答えになっていない。止めてください」と呼ぶ)
○津島委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○津島委員長 速記を起こしてください。
階委員、もう一度質問を願います。その上で、井藤局長、明確に質問にお答えください。
○階委員 もう手が挙がっています。
○井藤政府参考人 担保権者が実行手続を申し立てるということでございますので、担保権者が自ら労働者側と協議するということは考えにくいというふうに考えてございます。(階委員「だから、あなたの意見じゃなくて、今の答弁が答えになっていないから」と呼ぶ)
○津島委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○津島委員長 速記を起こして。
現場の意見を聞いたかという点について、では、大臣がお答えになりますか。鈴木金融担当大臣。
○鈴木国務大臣 具体的に、項目ごとのことはちょっと私は把握しておりませんけれども、金融審議会におきましては、多くの方々から御意見を聞いておりまして、その中に、労働法制でありますとか倒産法制の弁護士の方などの専門家からの御意見を伺っておりまして、こうしたいろいろな立場からの御意見を踏まえて取りまとめられた金融審議会の報告書に基づいて、この法律案の検討を行ってきたところです。
○階委員 それは分かった上で聞いているんです。
ただ、今、櫻井さんが伺ったのは、肝腎なところは、実行手続前に、経営者と労働者側で、この手続をするかどうか、協議の場を設けて、そしてそれを申立て書に書いてほしいということを言ったことに対して、それは重要ですねということを大臣がおっしゃったので、本当にそんなことが実務上可能なのかと。可能だというのであれば、それは現場の声を聞いた上でそう言っているのかということを答えてもらいたかったんです。
現場の声を聞いた上で、そういうことが可能だ、可能性はあり得るというふうにおっしゃったんですか。井藤さん、お願いします。
○井藤政府参考人 その事前協議ということにつきましては、法案に盛り込んでいる事項でもございませんし、その点について、明確に論点を絞って現場の声を聞いたということは私の記憶にはございません。
○階委員 だから、甘いと思うんですよ。こんなことは倒産実務からするとできるわけがないんですよ、情報管理の観点から。そういうこともちゃんと調べないで、国会で、重要なことだから裁判所の判断でやり得るみたいなことを言ってごまかそうとするから、我々は、こうした法案について拙速に進めるべきではないということを申し上げているんです。
本当にいいかげんですよ、金融庁は。この間の法案もそうですけれども、法案を提出して採決することがありきで、中身を全然詰めていない。
いいですか、これは、物権法定主義という言葉、分かりますか。民法上の大原則ですよ。今回は、企業価値担保権という新しい物権を法律でつくるわけだから、取引の安全とか、そういうことに配慮しなくちゃいけないわけですよ。にもかかわらず、金融庁が単独で出している。法制審議会の答申も経ずに出している。そして、その結果、こんないいかげんな、ずさんな法案になっているわけですよ。
なぜ法制審議会の答申を経なかったのか、これは大臣からお願いします。
○鈴木国務大臣 法制審議会への諮問事項につきましては、対象となる法律の性質、検討すべき改正内容等を総合的に勘案して、法務省において判断する、そのように承知をいたしております。
今般の企業価値担保権につきましては、設定者となる債務者は株式会社等に限定され、担保権者も新たな信託業の免許を受けた者に限定されるほか、当該担保権者を金融庁が監督するといったように、一般的な担保権とは異なる特徴のある担保権であることから、法制審議会の諮問、答申は経てはおりません。
一方で、企業価値担保権につきましては、金融審議会において、計七回にわたり、民事法制の専門家も含めて検討が行われたことに加えまして、法制審議会におきましても、民事基本法制との整合性を確保する観点から、昨年末に、二回にわたりまして、企業価値担保権を含む制度の具体的な内容について議論がなされ、その内容について御理解をいただいたと考えております。
したがいまして、本改正案は法制審議会の答申を経たものではありません。
○階委員 今回の担保権は、借り手が限定されているとか、特殊な内容を含むものなので金融庁がやったといったようなことだったんですけれども、同じように特殊な担保権、企業価値担保権じゃなくて企業担保権というのは、企業担保法というもので定められているわけですよ。こちらは法制審議会の答申を経ておりまして、今回初めて、法制審議会を通さないで、物権である新たな担保権が法案として提出されてきた。
私は、本来これは法務委員会でやるべき話で、こんな重要なことを金融庁の所管でやるべきではないと思っていますよ。内閣として、法案の策定プロセス、あるいは国会への提出の仕方、審議の仕方、問題あると思いますけれども、大臣、その点についてはどうお考えになりますか。
○鈴木国務大臣 この法案につきましては、私が報告を受けている限りにおきましては、金融審議会において長きにわたりまして検討されてきたものでありまして、基本的に個人に保証を求めない、そういうような今までの融資慣行の変更でありますとか、スタートアップのように担保なるものがない方に対して、企業価値そのものを、全体を担保として資金を、融資を受ける、新しい選択肢を与える。また、事業承継につきましても、個人保証のために事業承継が進まないという現実もありますので、そういうものに対応するもの等々について、長い間、金融審議会で議論をしたという中で、金融庁が所管をして法律を取りまとめたという経緯であると理解をしております。
○階委員 民事法上の大原則である物権法定主義の観点からすると、この立法手続は極めていいかげんだ、ずさんだと言わざるを得ません。そして、現場の実務もよく分からないまま法案を提出しているということも、先ほどのやり取りで明らかになりました。
まず、そのことを指摘させていただいた上で、我々立憲民主党としては、やはり、この間の金商法の改正案でも申し上げたとおり、基本的な方向性として、公益資本主義なんですね。あらゆるステークホルダーにとってちゃんとメリットがあるか、あらゆるステークホルダーにとって不当な不利益が及ばないか、ここを重視しているわけです。
その観点から、以下では、ちょっと企業価値担保権付融資に関わる方々のメリットとデメリット、これについてお聞きしていきます。ここから先は、特に指定がない限り参考人の方からで結構ですので、大臣、お聞きになってください。
まず、債務者のメリット、これまでよりも資金調達が容易になるような話が出ていますけれども、確かに選択肢は増えるかもしれませんが、貸し手である金融機関、まともなところであればあるほど、企業価値担保権を利用すると、実質的にメインバンクとなるわけですね。ということは、責任も伴うわけですよ。ですから、与信判断を慎重に行うと思うんです。選択肢は増えるけれども、だからといって資金調達が容易になるわけではないと思うんですが、この点、どうでしょうか。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
事業者の資金調達は、現行制度におきましても様々な手法が存在いたします。一般に、事業者は、調達可能な金額などを踏まえて、個々の事案に応じ、適切な方法を選択しているものというふうに承知してございます。他方、依然として、事業者によっては、十分な担保がないですとか、そういう状況にあること等によりまして、十分な資金供給が行われていないのではないかとの指摘が存在しており、今回の法案による企業価値担保権の創設は、こうした指摘を踏まえて、資金調達の新たな選択肢を供給するものでございます。
したがいまして、今回の担保権の創設につきましては、こうした事業者に対して新しい資金調達の選択肢を増やすものとして、メリットがあるものというふうに考えてございます。
○階委員 質問が、私は選択肢が増えることは認めているわけですよ。今、選択肢が増えるという結論だけおっしゃいましたけれども、そこは議論になっていないんです。選択肢が増えたとしても、実際にそれが使われるかどうかは別問題じゃないですか。実際に使うためには、貸し手である金融機関が、それを使うためにちゃんと体制を整える必要があると思うんですよ。
ところが、この体制を整えるということでいうと、これを使うと、貸し手は、もうその企業の全部の価値を担保として押さえるわけですから、ほかの貸し手がなかなか現れにくくなるということは、この委員会でも再三指摘があったところだと思います。
そうなってくると、貸す側も相当の覚悟が求められる。実質的にメインバンクになるという覚悟が求められるわけで、単にお金を貸すだけではなくて、メインバンクになるだけの覚悟はあるかということまで問われる。そうなってくると、なかなか与信判断は慎重になるので、幾ら選択肢が増えても、実際に貸すところまでいくのは容易ではないんじゃないかということをさっき言いました。
さっきから、局長、私の質問、ちゃんと聞いていますか。ちゃんと聞いて答えてください。
○井藤政府参考人 先生の質問については一生懸命聞かせていただいてございますが、その上で、現在、スタートアップですとか、必ずしも十分な担保が備えられていない事業者について、実際には融資が難しい場合が多いというふうに承知してございまして、そういうところに対しまして、もちろん、先生おっしゃるとおり、金融機関側の体制整備等、様々な課題、今回の審議の中で指摘もされてございますけれども、金融機関がそういった課題を整備することと併せまして、新しい資金供給の道を開くものでありまして、そうした現在の融資慣行の中でなかなか融資を受けられなかった者に対する融資機会が増加するということで、明らかにメリットはあるというふうに考えてございます。
○階委員 これもやはり、本当に現場の声を聞いた上でそう言っているのかどうか、怪しいと思っていますけれどもね。
次の質問に移ります。
逆に、債務者のデメリットというのもあるんじゃないかと考えていますが、一ページ目、資料を御覧になってください。
先ほど小山委員が、米英型の全資産担保融資に日本も切り替わっていくんじゃないかということをおっしゃっていましたけれども、まさに米英型の全資産担保融資というのは、期限の利益喪失条項を幅広く定めて債務者をコントロールする。債務者がもし契約で定めた条項から逸脱すると、期限の利益喪失だということで、担保権実行できるわけですよ。そういうことで、非常に債務者に対するプレッシャーが高まるわけですね。
例えば、これは馬場さんが言っていたことに関係すると思うんですけれども、この一ページ目の一番上にキーパーソン条項というのがありまして、所定のキーパーソンを会社組織内の一定の役職に選任、維持するよう求めるということで、もし何らかの事情でそういう人が辞めた場合、その場合は期限の利益喪失事由になっちゃう。これは必ずしも経営者側がコントロールできないということは、この間、馬場さんの質疑の中で明らかになったところだと思います。
それ以外にも、担保目的物の処分、これが契約に反した場合には期限の利益喪失だとか、他の債務を負担することまで期限の利益喪失条項になっちゃうわけですよ。まさに、ほかに追加融資を別なところから受けるということ自体、制限される。これだと本当に企業価値担保権債権者の胸先三寸です、生殺与奪の権を握られちゃうわけですね、ほかから資金、調達できないわけだから。
というようなことで、非常に、この期限の利益喪失条項が拡大することによって経営の自由度が低下するというデメリットがあると思っていますが、この点についてはいかがですか。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
現在におきましても、期限の利益喪失事由につきましては、契約自由の原則に基づきまして、融資先の事業内容や借入条件などを考慮して、事案に応じて融資契約の中で定められているものというふうに承知してございます。
他方、期限の利益喪失事由は、一般に、取引先の信用度の著しい失墜を理由として債権の回収を認めているものと考えられているところ、我が国におきましては、学説上、その内容は無制限に定められるものではなく、債務者の信用の著しい低下を意味しないような事由を定めたとしても、その効果は生じないと考えるべきという解釈が有力だということも承知してございます。
金融庁といたしましては、こうしたことも踏まえながら、企業価値担保権の設定や、それに伴う融資契約により、金融機関が債務者の経営の自由を不当に制限することがないよう、適切にモニタリングしてまいりたいというふうに考えてございます。
○階委員 確かに、まともな金融機関であれば、これを振りかざして、すぐ、期限の利益喪失だと言うことはないと思いますよ。
ただ、今回の法案では、貸し手として、一般の金融機関だけではなくて、貸金業者等々、いろいろなところが含まれますよね。そういうところが、契約の自由だということで、期限の利益喪失事由を幅広く定めて、それに基づいて担保権を実行する。後から裁判所がそれは不当だと言っても、一旦、信用は失われますよ。そうすると、企業は、本来だったら存続できた事業も存続できなくなるかもしれません。そういったリスクについて考えていますか。お答えください。
○井藤政府参考人 今回の法制に当たりましては、期限の利益の喪失事由の条項自体は、いろいろな形で現在既にある担保権についても設定できるものだというふうに考えてございますけれども、そのようなリスクも踏まえまして、今回、担保権者を信託会社とするというようなことも制度として措置してございまして、そこの監督は金融庁がしっかりと行うことによって、一定程度の、そうした弊害の防止についても、しっかりと私どもはフォローできるようにしていきたいというふうに考えてございます。
○階委員 信託会社が担保権者になることが、果たして期限の利益喪失事由の発動を阻止する実効性があるのかということなんですが、確認しますけれども、貸し手が期限の利益喪失事由をありやなしや判断する、担保権者である信託会社は、その判断にはブレーキをかけることはできるんですか、制度上。
○井藤政府参考人 それは制度上できないというふうに考えますけれども、信託につきましては、そうした点も含めて、担保設定時に適切な説明が行われることが重要であるということを踏まえまして、説明義務等の必要な義務を当該信託を行う者に対して課しているということも措置してございます。
○階委員 一番肝腎な、期限の利益を喪失させて、そして担保権実行に移るところにブレーキがかけられなければ、その後、換価とかそういうところで適正にやるとか、あるいは配分を適正にやるとかと言っても、もう後の祭りなんですよ。その辺りも全然制度として甘い。債権回収をすることにばかり意識が行っていて、債務者の保護ということが全く考えられていないと思いますよ。我々は、あらゆるステークホルダーの利益を考えなくちゃいけないという観点から、非常にまずいと思います。
それで、私は、債権者と債務者がウィン・ウィンの関係になるためには、伴走型支援がずっと続いていくような、そういう制度設計の方がいいと思っていまして、なるべく債権回収に行かないで伴走型支援を続けていくというためには、二ページ目にあるとおり、株式担保の方がいいのではないか。
というのは、この間、参考人質疑でも井上参考人とやり取りしましたけれども、確かに、株式担保は債権回収の局面になったら優先権というのがないわけで、非常に回収の面では劣るわけです。しかしながら、伴走型支援という意味では、株式を担保に取ることによって、ちゃんと企業価値をウォッチすることができて、そして、最後まで伴走型支援をするインセンティブにもなるんじゃないかと思っております。
この点について、なぜ、株式担保より事業成長担保の方が伴走型支援という面で優れているのかということを教えてください。
○井藤政府参考人 伴走型支援としてどちらが優れているかというのは一概に言えない部分がありますけれども、これは全株式を担保に取るような場合ですけれども、株式担保は、不動産担保などと異なりまして、株主が相続等を通じて分散している場合、設定に係る調整コストが高いということもございます。また、仮に株式担保の設定を受けられたといたしましても、重要な事業の廉価売却などの債務者による担保価値の毀損行為に対する歯止めが株式の担保権者にはないこと等から、プロジェクトファイナンス等の一部の金融を除き、その利用は限定的であるというふうに承知してございます。
他方、企業価値担保権は、株式担保と異なりまして、設定は取締役会決議によることとしており、調整コストも比較的小さい。また、企業価値担保権の設定を受けられれば、通常の事業活動の範囲外の行為には担保権者の同意を要することとしているため、重要な事業の廉価売却などの債務者による担保価値の毀損行為に対する歯止めが備わっていること等からも、一般的な融資実務にも普及し得るものというふうに考えてございます。
○階委員 まず、借り手としては中小企業が想定されていて、株主というのはそんなに分散していないです。普通はオーナー一族だったり、特定少数ですよ。今の、株式担保は設定しにくいというのは、必ずしもそうではないということ。
それから、私は、伴走型支援という面では優れているんじゃないかと言っているわけで、回収の面で優れているとは一言も言っていないのに、回収の面で株式担保より企業価値担保の方が優れていると、これもまた質問をよく聞いていないんですよね。全くずれていますよ。
それで、債務者のデメリットとして、企業価値担保権付融資を受けても、既に他の債権者がいた場合に、そちらで経営者保証を提供していれば、経営者保証は外せないんじゃないか。何を言っているかというと、事業承継の場合に経営者保証があることがネックになると言っているんですが、これは、債権者が複数ある場合には、やはり企業価値担保権を設定してもこの問題は解消されないんじゃないかと思うんですが、この点はいかがですか。
○井藤政府参考人 既に他の経営者保証がある場合ですけれども、先ほどのメインバンクの議論にもありますけれども、そうした既存債務分を加えて融資を受けることによって、弁済することによって経営者保証を外していく、他の債権者に係るものですけれども、そういったことも考えられます。
また、いずれにしましても、企業価値担保権の創設は経営者保証改革プログラムに盛り込まれた施策でありまして、経営者保証に過度に依存せず、事業者の実態や将来性に着目した融資を行う際の新たな選択肢を提供するものでございまして、これにより、一層の経営者保証に依存しない融資慣行の確立に資するものだというふうに考えてございます。
○階委員 今の答弁でも明らかになったとおり、経営者保証改革プログラムというのは既にあって、そちらの方の効果として経営者保証が外れていくというのはあると思うんですが、この企業価値担保権があるからといって、必ずしも経営者保証が外れる、論理必然的に外れるという話ではないんですよ。ここも指摘させていただきます。
そして、今度は債権者側のメリット、デメリットについてお尋ねしていきたいんですが、これは、伴走型支援をしていって首尾よく企業価値を拡大したとしても、融資で得られる利益というのは利ざや収入ですね。先ほど小田原委員も説明されたとおり、一人の行員の年間の給料を稼ぐには十二億ぐらい事業承継融資をしなくちゃいけない、そんな話もありましたよ。それほどの収益機会は得られるんでしょうか、お答えください。
○井藤政府参考人 先ほど協同組織金融機関の例もありましたけれども、中小企業融資、私も具体的には地域金融関係の担当課長をしていたこともございますけれども、事業者とはなるべく頻度をかけて対応を行って、伴走支援を行うことが理想だというふうに考えてございます。
そういうことを考えますと、必ずしも今の状況に比べてめちゃくちゃ飛躍的なコスト、もちろん、体制整備のようなこと、あるいはそのノウハウの確立等々、様々な初期コスト等、これが広まっていく際においてはかかっていくという部分もあろうかと思いますけれども、その上で、金融機関が融資先企業の実情に合った伴走型の支援を行うことは、融資回収可能性も高まっていくということも考えられれば、与信費用の低減にもつながっていくことも期待できますし、また、伴走支援を通じて融資先との信頼関係が強化されることによって、成長を伴う新たな資金ニーズというものが発生した場合には融資の拡大等にもつながる、そういったことを複合的に考えてまいりますと、中長期的にも、金融機関の収益機会も拡大していき得るものだというふうに考えてございます。
○階委員 私も銀行員だったので自虐的な話になりますけれども、銀行というのは、天気がいいときは傘を貸すけれども、雨が降ったら傘を貸さないと昔から言われていますよね。
それで、伴走型支援で企業がよくなったら、要するに天気がよくなったら、貸すところはいっぱい出てきます。そういうときに、せっかく伴走型支援をして育ててきたメインバンク的な役割に取って代わろうというところが必ず出てきて、我々の方はよりよい条件で貸しますから、元本確定請求をして私どもの方に借換えしませんかということを持ちかけてくると思います。そういうリスクも当然企業価値担保権を有する債権者は考えながら、伴走型支援をやるかどうか考えると思うんですよ。
ということは、余り伴走型支援をやっても得られるものは少ないし、下手したら徒労に終わってしまうかもしれない、他の債権者に肩代わりされて。ということで、伴走型支援で収益機会拡大の恩恵がなければ、これは債権回収で大いなるメリットがあるかどうかということだけで企業価値担保権融資の判断をせざるを得なくなってくると思うんです。
従来の担保に比べて、債権回収の優先権は本当に高まっているのかどうか。これは非常に、先日の参考人質疑でも、穴があるということを井上参考人もおっしゃっていました。この穴の大きさがどうかによって企業価値担保権付融資が利用されるかどうかも変わってくるんですけれども、さっきのカーブアウト部分の話で、櫻井さんが労働債権がカーブアウト部分で保護されるのかということをお尋ねしたときに、一般の先取特権があるので保護されるというような話をされていましたよね、局長、していましたよね。
それで、一般の先取特権があるのは雇人の給料ということになりますから、もしその事業が切り売りされた場合に、廃止された事業で雇われていた人は退職金債権が発生しますけれども、その退職金債権は一般の先取特権で果たして保護されるんでしょうか、お答えください。
○井藤政府参考人 一般の先取特権に含まれているものと理解してございます。
○階委員 では、退職金債権も含めて、労働債権は全て担保権者よりも優先するということでよろしいですね。カーブアウト部分で全て保護されるということでよろしいですね。
○井藤政府参考人 まず、あくまでも、それは、カーブアウト部分の扱いにおきまして、それが破産手続等を行われる場合にどのように優先順位が付されるかというときのお話をさせていただいたわけでございまして、繰り返し……(階委員「カーブアウト部分で保護されるかと聞いている」と呼ぶ)はい。(階委員「質問に答えてください。共益債権とか聞いていませんよ」と呼ぶ)
カーブアウト部分につきましては、まず、一般の先取特権に優先する債権として租税債権等がございます。その上で、労働債権は優先順位が極めて高い、先取……(階委員「全て保護されるかと聞いている」と呼ぶ)全ては保護されるというふうには申し上げることは当然できません。
○階委員 そういうことを正直に答えてくださいよ。さっき何か、保護されると言っていましたから、一般の先取特権として保護される、そこで終わっていましたからね。保護されるわけないんですよ。保護されるんだったら、担保権者の取り分がなくなっちゃうじゃないですか。だから、担保権者が、一体この新しい担保権によってどれだけ手元に残るかというのがはっきりしないと、こんな融資できるわけありませんよ。
カーブアウト部分、ずっと我々聞いているんだけれども、どの程度確保するのか、留保するのか、この辺りが全く明らかでないので、これから明らかにするんじゃなくて、そもそも物権法定主義なんだから、今の段階で明らかにしないと取引の安全なんか守れるわけないじゃないですか。今の段階で、法定主義なんだから明らかにしてくださいよ。
どれぐらいカーブアウトを残すんですか。教えてください。
○井藤政府参考人 カーブアウトの水準でございますけれども、法律では、破産手続等を公正に実施するために必要な額ということを示した上で、その細則を政令に委任してございます。
これは、この必要な額が事案に応じて様々であり、個々の事例においてその保護に欠けることがないよう規定するために、法律において一概に基準を設けることをしなかったものであり、配当可能額に応じ必要な額を柔軟に算定できるよう、政令に委任したものでございます。
その上ででございますけれども、昨年の金融審議会の報告におきましては、その割合につきましては、企業価値担保権は、他の担保権と比べ、優先される債権の範囲が十分に広いことを踏まえ、現行制度との整合性に鑑み、財団組入れの実務における額よりも限定的であるべきと考えられる、上記のとおり、裁判所における現行の運用として、破産財団に属する別除権付不動産の任意売却に際しては、財団組入れの割合の下限を売却価格の三%とする例があるところ、具体的な割合については、こうした破産手続における実務の積み重ねや上記の観点を踏まえ、法定することが適切と考えられるとの提言をいただいてございます。
こうした提言を踏まえまして、その水準については比率等を検討してまいりたいというふうに考えてございます。
○階委員 三%という数字が出ました。
貸し手としては、実際に事業譲渡して対価を得た場合、そこから三%は引かれるけれども、残りは担保権を持っている債権者の取り分だというふうに理解しておけばいいんですか。お答えください。
○井藤政府参考人 もちろん、これ自身の、先ほど申し上げましたような労働債権で、六か月以内の労働債権ですとか三分の一までの退職給付債権等、共益債権として優先される部分がございますので、それをまず除いた上で、残りの部分につきましては、今回の、いわゆる担保権者の被担保の対象になってある債権の債権者に所属するというふうになりまして、カーブアウトを除いた部分ですけれども、そのようになるというふうに理解してございます。
○階委員 質問に答えてください。労働債権とかはカーブアウトの範囲で保護されるわけで、そのカーブアウトの範囲が換価した代金の三%ぐらいではないかとさっきおっしゃったので、三%がその労働債権とかに充てられるカーブアウト部分で、残り九七%は担保権を持っている債権者の取り分だということを確認させていただきたいんですが、明確にお答えいただけますか。
○井藤政府参考人 割合自体は今後政令で定めることになりますが、仮に三%だということでありましたら、残り九七%ということになります。
○階委員 ということで、圧倒的に、三%ということを前提とすると、債権者の方に対価は行くわけで、残りで果たして労働者が保護されるのかということだと思いますよ、三%しかないわけだから。幾ら一般の先取特権があるといったって、三%の範囲の話です。それしか分配原資がないということですから、これは非常に労働者の保護としては厳しいのではないかというふうに思います。
それから、時間がだんだんなくなってきたので先に進みますけれども、ステークホルダーという意味では、仕入れ先とか取引先もあるわけです。こちらの方のデメリットとして考えられるのは、今回、通常の事業活動の範囲で財産の処分は認められるけれども、これを超えると、担保権を持っている債権者の同意を得ないと、善意無重過失でない限り無効になってしまうんですよ。恐ろしくて取引になかなか入れないですよね。これは取引に支障が出るんじゃないんですか。お答えください。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、今般の法案では、借り手が事業価値を毀損するような行為等を防止するため、通常の事業活動の範囲を超える担保目的財産の処分等をする場合は担保権者の同意が必要となってくる、違反した場合には無効となるというような条件がついてございますけれども、ことになってございます。
これによりまして、取引先がリスクが多過ぎて取引は抑制されるのではないかということでございますけれども、私どもとしては、通常の事業範囲を超える処分等を例示することですとか、定款で定められた目的、取引等の社会通念に照らして通常の事業活動の範囲を超えるかどうかという判断基準を示すことなどを通じまして、可能な限り取引の安定に資するようにしてまいりたいというふうに考えてございます。
○階委員 可能な限りという曖昧な表現ですけれども、これは取引に支障を来すと思いますよ。通常の事業活動の範囲というのも不明確だし、善意無重過失の基準も不明確ですよ。こんなのだったら、なかなかちゃんとした取引はできませんよ。小規模な取引はするかもしれないけれども、大きな取引とかはできなくて、それこそ企業価値の向上の足かせとなる、そんな問題も出てくると思います。
やはり伴走型支援をちゃんとやっていくんだったら、それにふさわしいような金融機関等にこの制度の利用を認めるべきだというふうに普通は考えるんじゃないでしょうか。
そこで、大臣に、大きな質問四番目についてお尋ねしますけれども、もし企業価値担保権付融資をやるとしても、債権者の資格要件を定めるべきではないか。すなわち、今回、私の資料でいいますと五ページ目、さっきもちょっと出ましたけれども、信託会社というところにいろいろな業務をさせるわけですね。設定時に制度概要を説明させたり、一般債権者等のためにカーブアウト部分を確保したりということで、信託会社に免許を、新たな免許を創設してこういった業務を担わせるということなんですけれども、一方で、信託会社を利用しなくても、貸し手がこの業務を行うことも認めているわけですね、一定の要件を満たせば。
そこで、どうせそういうことも認めるんだったら、そもそも貸し手として、さっき言った貸金業とか、幅広く今回認めることにしていますけれども、いっそのこと、資格要件としては、ここに書いてあるような信託会社が行うべき業務を適切に行い得ること、これを資格要件に入れれば、伴走型支援に不向きな不適切な債権者を排除できて、信託会社に払う報酬も生じませんので、債務者の利益にもなると思います。なぜそうしないんでしょうか、お答えください。
○鈴木国務大臣 今般の法案では、債権者、これは金融機関のみならず、いろいろな債権者がいると思いますが、商社とかですね、債権者間の公平性を確保する観点から、例に挙げました商社などの一般事業会社のように金融庁の監督を受けない者につきましても、自身の債権に企業価値担保権の設定を受けることができる制度として、債権者に資格要件を求めるものとはしておりません。
一方で、企業価値担保権は、その実行時、原則として事業全体が新しいスポンサーに譲渡される制度であるため、借り手に対して、担保設定時に、現在の抵当権と異なる制度であること等について適切な説明が行われることが重要でありまして、そのための体制整備が必要になるところでございます。
例えば、先ほど申し上げました、金融庁の監督を受けない、例えば商社などの一般事業者が担保権を一回限りで利用するような場合が多いと思いますが、そうした場合まで体制整備を求めることは過剰な規制となりまして、実効的な監督の面からも現実的でないと考えられております。
このため、今般の法案では、こうした場合も含めまして、借り手に対して適切な説明が行われますように、企業価値担保権の設定は、反復継続的に企業価値担保権の設定を受け、担保権者となる者との信託契約によらなければならないこととし、新たにその信託に係る業務を金融庁の免許業種とした上で、説明義務等の必要な義務を設ける制度としているところであります。
○階委員 だから、そうであったら、逆に、すべからく信託会社を利用する方が、これは債権者間の公平にも資すると思うんですけれども。
そうじゃなくて、債権者が担保権者を兼ねる、信託会社の業務を併せて行うこともできるわけだから、そういうところに貸し手を絞れば、そうすると、伴走型支援で継続することも期待できるし、変なところで、期限の利益喪失したといって担保権を実行するということもないし、制度をより促進できると思いますが、そういうこともやられないということで、これはあくまで、貸し手を幅広くして、いろいろなところが貸して、そして回収しやすくなっているということで、これも様々なステークホルダーに配慮したものとは言えないという証左だと思っております。
そして、大臣にもう一つ、まとめて五番、六番を聞きますけれども、事業性融資推進支援機関なる新たな組織ができるようですけれども、既存の組織を活用するといっても、どのような組織を想定しているんでしょうか。また、財政支援の規模はどの程度か。
それから、事業性融資推進本部、政府にできるようですが、そのKPIはどうなのか。なるべく短くお願いします。
○鈴木国務大臣 認定事業性融資推進支援機構、これは企業価値担保権の活用に向け、課題を感じる金融機関でありますとか事業者に対して、専門的な知見の提供等の支援を行う機関であります。
この体制や規模につきましては、支援機関が金融機関や事業者に対して提供する具体的な支援の内容、また、支援を行うため必要な能力について、例えば全国銀行協会や日本商工会議所などの各種業界団体と相談し、共通認識を形成した上で、具体的な支援内容に応じて、担い手の候補となる関係者と丁寧に相談してまいりたいと思います。
そして、国の財政支援の規模でございますが、これは必要な財政上の措置を講ずる規定を設けているわけでありますけれども、支援機構に求められる体制や規模、担い手の経営体力など、個々の支援機関の実情を踏まえまして検討していく必要がある、そのように考えております。
そして、事業性融資推進本部の定量的な目標ということでございますが、これの目的は、基本方針の策定あるいは各行政機関の事務の調整等を行うことによりまして、事業に必要な資金の調達等の円滑化を図り、事業の継続及び成長発展を支えるという法の目的を達成するために、金融庁に設置をいたします。
まずは、不動産担保や経営者保証に依存した融資慣行の是正、事業に必要な資金調達等の円滑化に向けてしっかりと取り組んでいくことが重要と考えておりますが、定量的な目標ということでございますが、仮に一律に件数等の報告を求めるとすれば、かえって件数稼ぎの形式的な利用等を招き、事業者のニーズに応えた適切な利用の妨げになることが懸念されるため、現時点で事業性融資の件数や残高等の定量的な基準は設けていないところであります。
○階委員 時間が来たので終わりますけれども、この新しい組織も、規模も目標もはっきりしないままつくっていくというところも問題だと思います。
あと、時間がなくて今日入れなかったんですけれども、七ページは、四月二十六日の質疑を経て、今日理事会に提出されたもの、一部抜粋したものです。
これを見ますと、ETFの分配金収入、予算段階の財務省の見積りは、やはりここに来て非常に低く見積もられているということ。それから、外為関係損益は、円安でむしろプラスになることが普通だったら想定されるのに、どんどんどんどん赤字の幅を拡大して、予算段階では国庫納付金を非常に低く見積もって、決算段階でぼんと国庫納付金が膨らんで、それを防衛費に充てたり借金の返済をやったりしているということはよく分かりました。
この点については、またじっくり詰めさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○津島委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。
次に、伊東信久君。
○伊東(信)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久です。
本日は、事業性融資の推進等に関する法律案、引き続き質問させていただくわけなんですけれども、言うまでもなく新法でございまして、この法案に関する期待もあれば、やはり課題なり不安要素が、五月十日、及び五月十四日の参考人質疑で様々な質問があったわけですけれども、やはりこういった新法でえいやというところでやっていくのであれば、冒頭、しっかりと適切にモニタリングしていって、そして、内容に関しては速やかに報告するということが大事ではないかということ、これは最後にまた質問させていただきますけれども、そのことを前提にして質問させていただくわけなんですけれども。
先ほど、階議員の質問にもありましたように、いわゆる伴走型で、メインバンクになる覚悟を持って、金融機関も、新たなるスタートアップ企業であったりとか、新しい担保を設定して融資をしていく、それによって中小企業にとっては個人保証に依存しないというところなんですけれども、これもまた、先ほどの質疑で指摘がありましたけれども、既に令和四年十二月に経営者保証改革プログラムがありまして、ここで、経営者保証に依存しないというところなんですね。
本法案が施行されれば、企業価値の担保権の利用が進む、そうすると経営者保証が融資の条件とされるケースは更に減っていくと考えてよいのでしょうか。また、どの程度のスピード感で企業価値担保権が利用されていくのか、どのように期待されているのかをまず教えてください。
○鈴木国務大臣 今回御審議をお願いしております企業価値担保権を活用した融資によりまして、経営者保証の利用が制限されております、今回のこの融資におきましては。そうした中で、個々の事業者を取り巻く経営環境でありますとか、それに応じた資金調達ニーズによりまして、企業価値担保権が活用される場面は異なることから、本法案による効果を一概に、かつ定量的にお示しすることは困難でありますけれども、経営者保証に依存しない融資の増加に向けて一定の効果があるものと考えております。
そして、伊東先生からも御指摘ございましたが、金融庁では従来から、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて取り組んでおりまして、二〇二二年十二月には、本法案の早期実現も含めた経営者保証改革プログラムを公表したところであります。その効果もあって、新規融資に占めます経営者保証に依存しない融資の割合は、昨年度は三三・九%でありましたが、直近の二〇二三年度上期には四六・七%へと大幅に改善するなど、一定の伸展が見られているところであります。
今後も、本法案で創設されます企業価値担保権の活用でありますとか、経営者保証改革プログラムの推進を通じまして、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けまして取り組んでまいりたいと考えております。
○伊東(信)委員 ただいま大臣が答弁いただいた数字に関しては、平成二十七年度、一二・二%から、令和五年度には確かに四六・七%と増加が見られて、私が提出させていただいた資料の資料二に載っております。新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合の推移は増えておりまして、そもそもの経営者保証改革プログラムに関しては資料一にお示ししていきます。
やはり気がかりなのは、新たなる、恐らく野党側だけでもなく、今日の自民党の小田原議員の質問の中にもあったように、やはり、出すんだったら、本当に課題点はクリアにしていかなければいけないんですけれども、取りあえず法案ありきなところもやはり否めない気はするんですよ。
まずはポジティブに捉えます。日本の中で本当にユニコーン企業であるような企業をつくっていく、日本の中でもGAFAみたいな企業をつくっていく、そういう気概を、何となく、各省庁あるし、それぞれの部署があると思いますけれども、そういった経営全体というか経済全体は経産省のところで。金融庁としては、そこに対しての姿勢が、申し訳ないですけれども、やや、やはり弱いように感じるんですよ。
これだけ新たなる画期的な法案であるように感じているんですけれども、これは、こういった委員会での質問にふさわしいかどうか分からないんですけれども、そういった法案なのに、本当に個人的な感想として、メディアとか報道を見ていても全く取り上げられていないんですけれども、何か情報を抑えているとかそういう辺りじゃないですよね。
なぜこれだけの画期的な法案なのに取り上げられないんでしょうか。もしこれが本当に起爆剤になるのであれば、例えとして正しいかどうかは分からないですけれども、大谷翔平選手の話もされていましたけれども、やはり、大化けする可能性もあるんだったら、もっと報道の扱いがあってもいいとは思うんですけれども、鈴木大臣、どのようにお考えでしょうか。
○鈴木国務大臣 先生御指摘のとおり、新しい融資制度でございますので、これからしっかりと、この活用上のメリット、あるいは課題ということも含めまして、十分に周知をしていく必要があるんだ、そういうふうに思います。
金融庁といたしましては、何とか法律を通していただいた暁には、今後残されております、政令によるもの、あるいはガイドラインによるもの、また、今回いろいろ質疑を通じて御指摘された懸念、そういうようなものもモニタリングを通じて最小化するなどの努力をしながら、この新しい融資制度についてしっかりと広めていきたい、広報をしていきたい、そういうふうに思います。
○伊東(信)委員 財務大臣からモニタリングの必要性をおっしゃっていただいて、この辺りは最後の方の質問でさせていただきたいと思うんですけれども。
やはり、施行されましたと、施行までの期間が正しいか正しくないかはまた我が党の議員から後ほど質問があるかなと思うんですけれども、じゃ、何が不安かというのは、貸し手も不安、でも借り手も不安ということで、双方不安なわけで、やはり、貸し手側の銀行も目利き力が必要で、借り手側もやはり積極的な情報開示をしていかないけないということですね。
ただ、貸し手側の目利きといっても、なかなか一朝一夕には確立することはできません。この間の参考人質疑で、福留参考人からは、金融機関の中にも、まあ福留参考人はSMBCでしたけれども、金融機関の中にもそれぞれ、例えば半導体に詳しい者、ITに詳しい者、そして私がやっているような医療に詳しい者がいてるので、そういったところからというところで考えていくわけなんですけれども、そういったところでは、政府としてはどのように取り組んでいくのか。金融機関の目利き力に懸かっている、これを向上させて、事業価値の評価に基づく融資慣行、これを定着させるためには、まずは政府としてどのような取組を行っていくのでしょうか。これも大臣にお聞きします。
○鈴木国務大臣 地域経済や事業者の持続的な成長を支えるため、事業者の実態や将来性などを的確に把握、評価できる目利き力を養っていくことがますます重要になっておりまして、各金融機関において、それぞれの実情に即した継続的な人材育成等に取り組むことが重要であると考えます。
金融庁では、金融機関の人材育成等を後押しするため、例えば、融資先の経営改善を支援する際の着眼点を支援対象となる業種ごとに整理をした「業種別支援の着眼点」というものを公表をし、その研修を実施するなどの取組を二〇二三年から行ってまいりました。
また、今回の法案では、融資担当者等において事業を適切に評価するノウハウが十分でない場合などに備えまして、金融機関や事業者に対して専門的な知識の提供等の支援を行う機関の認定制度の創設も盛り込んでおります。
引き続きまして、金融機関がそれぞれの実情に応じて必要な人材育成等に取り組むように、それを通じて目利き力の向上が進みますように促してまいりたいと思います。
○伊東(信)委員 そういったところの研修とか相談というところで取り組んでいるのは分かっているんですけれども、とはいえども本当に大丈夫かなというところもあります。
それで、実際、本法案にはもう既に、既にというか、本法案には認定事業性融資推進支援機関が盛り込まれているんですけれども、今おっしゃった点について、この機関がどのような役割を果たすのか、これもお答えください。
○鈴木国務大臣 御指摘の認定事業性融資推進支援機関でありますが、これは、企業価値担保権の適切な活用に向けまして、融資担当者等において事業を適切に評価するノウハウが十分でない場合などに、金融機関に対して、事業者の経営資源や財務内容の分析を実施し、経営実態を把握する方法に関する助言などを行う機関であります。こうした専門的知見を提供する支援を通じまして、金融機関の目利き力の向上に資する役割を果たすと考えております。
金融庁として、金融機関に対しまして、こうした支援機関の活用の促進などを通じて、事業性融資の一層の推進に向けた取組を促してまいりたいと考えております。
○伊東(信)委員 確かに前回の参考人質疑の中でも、福留参考人もこういった支援機関に助言をいただきながらということをおっしゃっていたわけなんですけれども、何となく金融機関もまだまだ手探りな感があるし、金融機関自体もこの課題解決をしていかなければいけないんですけれども。
これは本当に金融庁の管轄だとは思うんですけれども、じゃ、金融庁としてというか、政府として、金融機関が取り組むべき課題、これはどのようなものだと考えておられるでしょうか。僕もイトウですけれども、参考人もお二人ともイトウですね。よろしくお願いします。
○伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。
委員御指摘のとおり、事業者の事業の実態、将来性等を的確に把握する目利き力につきましては、事業者の持続的な成長を支える上で極めて重要であるということでございますが、これも御指摘のように、なかなかこれは一朝一夕に身につくものではない、金融機関としても努力が必要だということでございまして、それぞれの金融機関のビジネスモデル、中小企業に貸すのか、大企業に貸すのか、どういう業種に貸すのかというようなことでございますけれども、このようなビジネスモデル、顧客属性などを踏まえながら、必要な人材育成や体制整備に継続的に取り組んでいく必要があると考えております。
この人材育成、体制整備の具体的な方策につきましては、これは金融機関ごとに異なるものであって、一概に申し上げることは困難ではございますけれども、目利きに必要な、財務に表れない事業者の強み、弱みを見極める力を組織全体として高めるために、例えば、金融機関内の研修機会の拡充ですとか、REVICなどの専門的な機関への出向を通じた知見、ノウハウの蓄積、それから、支援を専門とする部署を新設して支店との連携を強化するなどの体制整備などの取組が、金融機関においてこれは現に進められているものと承知をしております。
各金融機関においては、引き続き、こうした取組も含めて、それぞれが創意工夫を行いながら、職員の目利き力向上に向けて人材育成等に取り組んでいただきたいというふうに考えておりまして、金融庁といたしましても、先ほど大臣からも御答弁ございましたけれども、様々な施策を通じてこうした金融機関の取組を後押ししていきたいというふうに考えております。
○伊東(信)委員 今の答弁で、研修なり取組をやられているのはよく分かるんですね。ただ、やはり行き詰まるケースも想定しなければいけなくて、そもそも論としてやはり心配なのは、僕はポジティブに捉える質問を今回させてはいただいているんですが、そうでなかった場合のこともやはり立法機関としては想定しなければいけなくて、スポンサーを探したり、企業を再建したりするところでMAも使われたりもするわけなんですけれども、そういったところに、やはりアメリカとか海外とかのところにどんどんどんどん日本の可能性のあるところが吸収されていったら、本当にせっかくの今回の法案が本末転倒だと思うんですね。
そこでまた審査機能の話に戻りますけれども、審査機能のサポートとしても、前回の参考人質疑で馬渕参考人にもお聞きしたんですけれども、VCとか株式投資型のクラウドファンディングには本当に社内に審査機能があってノウハウが蓄積されているんですけれども、自社内で中小企業の方が、いわゆる借り手側が経営コンサルタントを使うことを選択する場合も出てくると思うんですけれども、やはり能力的な問題からも海外のコンサルが使われることも予測されますけれども、こういった目利きのための企業を日本の中でも育てていくことも必要だと思うんですけれども、政府の見解をお伺いします。
○伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。
目利きをする場合に、銀行の行員だけではなくて、外部の機関をどのように使っていくかというのは、そのケース、ケースによって判断をされるべきものであると思いますし、必ずしも外部の機関を使ってそういう目利きの助けにするということは悪いことではないとは思っておりますけれども、他方で、余りにも依存をし過ぎて、自分の銀行の中の目利き力が育たないというようなことでは、外の機関を使う場合にも使いこなせないということもございますし、外部の機関があらゆる取引先のビジネスに精通しているわけでもなくて、一番よく知っているのはその融資をしている金融機関であるというケースが多いと思いますので、やはり、先ほど御答弁申し上げたように、自らの目利き力を鍛えていくということが非常に重要ではないかというふうに思っております。
例えばスタートアップの企業のような、ビジネスモデルの詳細な分析や事業の成長可能性の見極めが容易でない企業を審査するというのは、なかなかまだ金融機関も得意な分野ではないというふうに私どもとしても思っておりまして、こうしたことに対応できる人材を育てるためには、例えばベンチャーキャピタルなどから専門人材を登用したり、職員を外部機関へ出向させて知見、ノウハウの習得、蓄積を図ったりと、いろいろな工夫が必要だというふうに思っておりまして、金融庁としてもこうした動きを後押ししたいというふうに考えているところでございます。
○伊東(信)委員 伊藤参考人の中の答弁で、私の趣旨として、誤解を招いてほしくないのは、第三者を使うのも使わないのもそれは自由というよりも、それぞれの金融機関でそういった専門家を育てていくのは、それは大事だと思うんですね。ただ、スタートしたときのしばらくの期間の中にもしそういったコンサルを使うのであれば、やはりそういったコンサルも日本の中での企業、それ自体の、今多分、伊藤参考人の中でも、VCの中から、ちょっとそこから講師を派遣するような形とかもおっしゃりましたけれども、本当に、テンポラリーでもいいので、そういったコンサル自体を自前で育てる、こういったのも新たなるスタートアップの一つのシードになるのではないかな、そういうことを言いたいわけです。
その中での金融機関が相談する事業性融資支援機関なんですけれども、やはり、そういったところで、今回、金融庁がいろいろな補助金とかも配慮して行っていくわけなんですけれども、既存の団体が認定を取っていく場合がほとんどで、法案で新たに創設されるのではない、一つでもないということなんですけれども、こういったところで、やはりひもづいた補助金とかもあるので、焼け太りしていくのではないか、若しくは、支援機関自体が新たな天下り先になることはないのか、こういったところの危惧があるんですけれども、これは金融担当大臣にお聞きします。
○鈴木国務大臣 御指摘の認定事業性融資推進支援機関でございますが、金融庁といたしましては、その機関が能力を最大限発揮できるようにしっかりと対応していく必要がある、サポートをしていきたいと思いますが、御指摘のように、支援機関の組織が不必要に肥大することなどがないよう、その必要性をしっかりと吟味した上で、効率的な支援を行っていくことが重要であると考えております。
財政支援も実施するわけでございますが、これが天下りにつながるということは想定しておらないところでありまして、支援機関が監督対象であることを踏まえまして、国家公務員の再就職等を規制する法令等の遵守を確保した上で、適切に対応してまいりたいと思います。
○伊東(信)委員 時間が迫ってきたので最後の質問にさせていただきたいと思うんですけれども、本当にモニタリングの重要性に関しては冒頭申し上げましたし、大臣からの御答弁もありました。ただ、このモニタリングの結果に関しましては、しっかりと国会に報告することが重要ではないかなと。国会がやはりその辺りのチェック機関ともなり得るんですけれども、モニタリングの結果に関しての速やかな国会報告に関しての必要性を、最後、鈴木大臣にお尋ねいたします。
○津島委員長 鈴木金融担当大臣、申合せの時間が経過しております。答弁は簡潔にお願いいたします。
○鈴木国務大臣 この法案では、施行後五年を経過した段階で、施行の状況等を踏まえて必要に応じた見直しを行うこととしておりまして、金融庁といたしましては、企業価値担保権の活用実態を把握することは重要である、そういうふうに思います。
具体的な活用事例、金融機関の対応状況を含めた実態把握の具体的な方法につきましては、今後適切に検討いたしまして、十分なモニタリングや実態把握ができるよう、しっかりと取り組んでまいります。
その上で、制度の利用状況の推移や利用時の課題等につきましては、実態把握の結果を踏まえて取りまとめ、広くお示しをしてまいりたいと思っております。
○伊東(信)委員 国会とおっしゃっていただけなかったんですけれども、続きは沢田議員がやります。
これで終わります。ありがとうございます。
○津島委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。
次に、沢田良君。
○沢田委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会、埼玉の沢田良です。
鈴木財務大臣、あと津島委員長、今日は早速、聞きたいこと盛りだくさんですので、質疑に入らせていただきます。
今回、事業者と金融機関の緊密な関係構築から、今まではロスしていた部分であったり、又は企業価値の最大化できていなかったこと、こういったことを高めていきたい、こういう本質の中で、不動産担保や経営者保証に過度に依存しない、事業者の実態や将来性を評価し融資を行う、いわゆる新しい当たり前をつくっていこうというのが、私はこの立法の一番大きな核になる部分だというふうに考えております。
まさに、参考人質疑でも、四人の参考人の皆様に来ていただいて、様々な角度でいろいろな御意見をいただきました。その中で、当然、労働の側から連合の方の御意見も伺わせていただいたり、そして、マクロ経済で、私たち日本維新の会で参考人で呼ばせてもらった馬渕さんからの御意見、それから、銀行業界からも福留頭取が来ていただいたり、井上参考人も来ていただいたりとあったんですけれども、やはり感じたのは、総体して、皆さん、この思いにおいては賛同していただいていて、期待をしていただいている。とても、目標として掲げている部分であったり問題意識の部分については、多くの方が同じ意見だというふうに感じたんですね。
ただ、ここの中で温度感というものはやはり感じました。正直、マクロ経済、要は、これからの世の中、どうやってもっと広げていこうかという、馬渕参考人からすれば、これをどんどんどんどん広げていってほしい、デフレ脱却した日本をどう広げていくのかという、これだけ大きな期待になったところと、あとは、福留参考人なんかは、やはり住友銀行の頭取ということもあって、私は正直消極的かなというふうに感じた部分が多くありました。
その中で、金融庁としても、これは問題意識を持って、二十年前からリレーションシップバンキングの推進であったり、金融検査マニュアルの廃止による企業実態に即した与信管理の尊重であったり、経営者保証改革プログラムなど、取組は問題意識を持ってやっているんですよね。ただ、経営者保証に依存しない融資の浸透は道半ばという前提だからこそ、今回新しい法律を作っていこうというところになったというのも答弁でいただいています。
ただ、私も、前回質問させていただいたときに、やはりずれを感じた部分もたくさんあるんですね。見ているものは、新しい当たり前をつくっていこう、これはまさに、私たちが考えている常識であったりとか、考えることもないようなことを壊して次のステージへ持っていこうという、これは物すごいパワーが必要になるわけですね。
そういう中でも、答弁いただいた中では、融資を受けられる道が開かれるのではないだろうかとか、資金調達手段を広げる一助になり得るとかですね。この程度のこと、この程度のパワーで、本当に今までの金融機関の新しい当たり前を切り開けるんだろうかと。
じゃ、それを切り開くために何をしなきゃいけないかとなると、さっき階委員からもありましたけれども、様々なステークホルダーとまさに細かい議論をして、どういう収益でいくのか、どこを守らなきゃいけないのか、そして、労働にしても、どういう人を守っていかなきゃいけないのかという、物すごい緻密な計算と大きな働きかけが私は重要だというふうに考えているんですね。
これは改めてなんですけれども、金融機関側の目利き力、これが私は一番重要だと思うんですけれども、これが整うまで想定される準備期間というのは、大臣、どのように考えられているんでしょうか。
○鈴木国務大臣 目利き力でありますけれども、現状において、金融機関ごとに知見、ノウハウの蓄積状況というのがまず違うと思います。また、将来にわたりまして、地域経済や貸出先の変化や技術の進歩等によって、目利きのための必要な能力自体が変化をしていくんだ、そういうふうに考えます。
そういうことを考えますと、金融機関において十分な目利き力が養われるまでの準備期間を一概にお示しすることは困難であるということ、これは御理解をいただければと思います。
その上で、目利き力向上のための体制整備には一定のコストもかかるわけでありますし、また、時間もかかるということが事実であると思います。
○沢田委員 御答弁としては理解できるんですけれども、これはやはり、相手にしているのが民間なんですね。大事なことは、時間をかけるということはそれだけのコストをかけていただくということになるんです。
福留参考人がこの前おっしゃっていた部分で、私の同僚の伊東委員から医療機関の支援についての話があったときに、今、三井住友では医療機関の専門家を入れて支援する体制があるというような答弁をもらったんですね。
要は、これから目利き力を育てていくということは、個々の金融機関にそれだけの投資をお願いする、その投資をお願いする期間、これは長く持てば持つほど大変大きな労力になりますし、それを想定して金融機関が目利き力に投資をするのかどうかというところが私は重要だというふうに考えるんです。
例えば、ここは皆さん政治家ばかりなんでありますけれども、皆さんの政治団体、この政治団体においてどこで口座が作れるかといったらば、ほぼりそなか郵便貯金のゆうちょだけなんですね。私、自分が政治家を目指そうと思ったときに政治団体をつくったときに、三菱UFJへ行ったら、一時間半ぐらい待たされて、よく分からないと言われたんですよ。
要は、何が言いたいかというと、投資しても効率が上がらないものに対して銀行は投資をしないんですよ。正直、多様性とか社会性とかを考えたら、我々、政治活動というものはまさに国民の皆様の足下にあるものですので、これは投資していただかなきゃいけない。今回、金融庁の方もおっしゃっている、まさにこれからの未来の在り方というのを考えたら、公共性であったり社会性であったり日本の企業の未来ということを考えたら、必要なのはもちろんみんな分かっているんです。
と考えたら、じゃ、そこまで考えないでおいて銀行が本当に投資をするのだろうかというところにおいては、やはり時間をどれぐらい設定するか。まさに、投資をしていただくのであれば、一気に投資をしていただく。そして、それに対して、どれだけ真剣にそこに対してのサポートが必要なのかということを動いていかないといけないと思うんですね。
じゃ、その投資をする時間であったりコスト、お金の部分ですよね、このコストを生み出すのは収益です。この収益の部分に関して、金融庁としては、今回のこの担保権を行使した収益というものはどういうふうに考えているんでしょうか。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、企業価値担保権を活用する場合には、事業者の実態把握や伴走支援などを行うことに伴いまして、金融機関側に一定のコストが発生し得るものだというふうに考えてございます。
このようなコストは、事業者に対する融資の金利等を算定する際にも反映されるものと考えられます。つまりは、事業者が支払う金利等には、金融機関から伴走支援というサービスの提供を受けるための対価が含まれたものでもございます。
ただ、こうした金利等といった収益のほかに、金融機関におきましては、企業価値担保権を活用することにより、例えば、従来は融資が困難であった有形資産に乏しいスタートアップ企業など、幅広い事業者との関係構築につながる、あるいは、事業者の実態や将来性等の的確な把握、評価を通じた取引先の経営改善支援が可能となるといったような効果を通じまして、中長期的にも金融機関の収益確保に資する要素があるというふうに考えてございます。
こうした様々な収益の確保の在り方も勘案して、金融機関においては、企業価値担保権の活用を検討いただくものだというふうに考えてございます。
○沢田委員 御答弁と理想は分かるんです。ただ、さっき階委員からもありましたけれども、要は、銀行というのは、雨が降っているときは貸さないということと一緒で、自分たちにとって都合がよくなれば、それは民間ですから当たり前なんですよ、リスクを背負って、株主を背負って、収益を出していかなきゃいけない。それには多くの稟議をこなして、絶対に勝てる戦いしか攻め込まないというようなことになったら、これは当然、おっしゃるように、伴走型の支援とかというのも理想としては分かるんですけれども、強烈な成功体験を一旦民間の方で取っていただくようなことをして、こっちの方がもうかるじゃんとか、こっちの方がうまくいくよねというところを僕らの方でビジョンを見せていかないと、箱だけ用意しました、そこで、じゃ、伴走型もそうだし、企業としてはこういう価値もありますよといっても、それで従業員を養うことはできないわけですよ。
となると、やはりこの伴走型支援というのは、銀行の今までの当たり前の延長で考えたら、起こり得るかといえば、それが収益として銀行がそこにしがみつくだけの力になるかといえば、私は、その新しい文化ができる前に投資が生まれないというふうに思う方が正しい認識だと思うんですね。
じゃ、今後投資をしていく、融資をしていくとなったときに、収益のモデルになるものはまさに金利の部分になるんですけれども、例えば、今、出資法の上限金利、二〇%なんですよ。百万円を超える上限金利は一五%。ソーシャルレンディングなんていって、クラウドファンディングみたいなものですね、お金を集めるようなサービス、これはいろいろなところでやっているんですけれども、これは五%から七%ぐらいで、これは結構個人の方が、五%から七%、銀行に預けるよりも、株を投資するよりも、そっちの方がいいかなと思って投資をする。これは不動産の担保が入っているものが結構多いんですけれども、そういった金利の価格でいうと、実際に、リスクを取って銀行側が金利を何%を設定してやるのか。そして、それだったらば、そもそも銀行ではなくて、ソーシャルレンディング、又は今まであったようなABLも含めて、新しく拡充して対応していくという方が現実的なんじゃないかというふうに思う部分があるんですね。
ここを是非考えていただきたいのは、この今のずれの部分を私たちが知るためには、やはり時間と、様々なテストケースをこれから物すごい勢いで集めていって、絶対にここは、大臣も含めて金融庁の皆さんもこれだけの御尽力をいただいて、今回この質疑も参考人質疑まで経ているんですね。今回の閣法の中では一番時間として私たち委員が時間を割いている、まさに重要法案だというふうに考えると、私は、施行と検証までの準備期間について改めて考えるべき必要があるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、金融庁、どう思いますか。
○井藤政府参考人 お答えを申し上げます。
今回の法案が施行までは二年半、これは登記システムの問題とか、いろいろそういったものに対応しなければいけないということでもございますけれども、当然、施行されるまでの間においては、担保権を活用した融資事例というものは出てこようがないということでありますが、その間におきましても、どのようなケースにおいてこういった担保権がステークホルダーの関係も含めましてより有効に活用できるのかということは、しっかりと金融機関側とも議論をして、有用なケース等はお示ししていきたいというふうに考えてございます。
そういった面では、施行までに至る間におきましても、事業性を評価する体制の強化については、金融機関におかれましても、これは金融庁は二十年来取り組んできているというふうに申し上げましたけれども、この担保権だけの問題ではございませんが、しっかりと施行までの間も体制強化に努めていただけるよう、しっかりと促してまいりたいというふうに考えてございます。
○沢田委員 是非、期間を私が言いたいのは、私は今四十四なんですね、昭和五十四年生まれで。私が高校一年のときにポケットベルというものが出てきました。そして、高校二年生のときにはPHSが出てきて、高校三年には携帯電話が出てきたんですよ。まさにスタートアップであったりそういったものを支援していこうといったときに、いわゆる金融機関が戦うべき相手というのは、まさにベンチャーキャピタルを含めて、要は、巨額に投資をして、リスクがあるのも含めて一か所から大量の収益を上げて、ここは駄目でもいいやと思うぐらい調査をしてリスクを張っている、まさに金融機関よりもリスクを張っている人たちとここを戦っていくわけですね。
そして、その中で両方、今までは取り切れなかったところをしっかりと更に広げていこうということと、さらに、金融機関が元々持っているそういったパワーを企業の方にも流していただいて、今まで最大化できなかったもの、又は今までのいわゆる経営者の方では潰してしまったものをより高みに上せていくというふうに考えたら、やはり五年の間の見直し期間というものが余りにも長過ぎると思うんですね。五年であったらば、いろいろな各企業がやっているAIの未来とかも考えると、金融関係の話になったらば、とてつもなく大きな変更が生まれてくる可能性もあるというふうに思っています。
是非その部分も、今回のやることに、大きさであったり、すごくいろいろなものに対する関わるという部分は分かっていても、この期間の部分、私は日本維新の会という党に所属しておりますけれども、デジタル関連に関しては、やはり見直し期間が長過ぎるもの、施行まで、公布までの期間が長過ぎるものについては、常にそれの修正や又は方向転換を求めてきたことがあるんですね。
やはり五年というのは、実際、今のデジタル化の中で、金融庁の方からで構わないんですけれども、これは十分妥当だと思われますか。
○井藤政府参考人 今回の法案につきましては、全く新しい担保制度の導入ということで、まず、金融機関の実務がそれに追いついていく必要がございますし、そのための体制の整備も必要だ、借り手側の理解も必要だということで、これが定着していく過程においては一定の時間が必要だというふうに考えてございます。
そうした面では、五年という期間が決して長過ぎるというふうには考えてございませんけれども、もちろん、先生がおっしゃるとおり、私どもも、活用状況の実態把握についてはしっかり努めていきたいというふうに考えてございます。その結果、施行後五年を待たずに真に見直しが必要な場合には、当然、所要の見直しを行うこともあり得るというふうに考えてございます。
○沢田委員 ありがとうございます。
私は、やはり、今の時代に合った、まさに、私たちが、国民の皆様であったり、日本で企業やまた事業を営んでいただける皆様が、可能性の部分、自分たちの力では伸び切らなかったものを最大化しよう、又は、伴走型にしても、やれることをやっていこう、金融機関も新しい成功体験を持って新しい当たり前に入っていこう、これは正直、一分一秒を争う支援が必要な分野だというふうに考えております。
まさに、問題意識があるというふうにおっしゃっていただけるのであれば、本当にこのずれの部分、私は自分がずっと民間にいたので、とにかくやはりこれを進めていくことで救われるもの、そして伸びていくもの、過分にあると思っておりますので、是非、期間についても、その期間に縛られずにどんどんどんどん動いていただければと思います。
モニタリングについてもなんですけれども、先ほど伊東委員の方からもありましたけれども、私は、やはり大事なことは、この法案において箱をつくっていくことと、まさに様々なステークホルダーの方々の御意見を現実的にお伺いして、それをどうやって今後支援していくのか、まさに数と事例を見て。今までであったらば、この法案の中でノルマをつけてしまうとか、過去の例が悪かったとかで、官僚の皆さんの無謬性な部分とか、出せないようなものがあったかもしれないんですけれども、是非、前向きに一つの方向性を徐々にアップデートしていって、使いやすくしていく。そして、最終的には、金融機関の側の皆さんの成功体験につなげて、日本の産業を盛り上げていこうというようなことが私は必要だと思うんですけれども、モニタリングに私はその視点を是非入れていただきたいと思います。金融庁、どうでしょうか。
○井藤政府参考人 当然、企業価値担保権につきましては、これによりまして、今までなかなか担保等がないために融資が受けられなかったような企業を中心に、是非活用が進めばというふうに考えられてございます。
そうした中で、そうした好循環が図られているかどうか、金融庁におきましても、モニタリングが本業みたいなところはございますので、しっかりと、具体的な活用事例ですとか、金融機関の対応状況を実態把握をしていきたいというふうに考えてございますし、そのモニタリングの状況を踏まえまして、適時適切にできる対応を行ってまいりたいというふうに考えてございます。
○沢田委員 どうもありがとうございます。
最後になるんですけれども、私は、時間の部分に結構こだわりがあって、これは何でかというと、やはり物価が上がっていることを含めて、人口、少子化も含めてです、我が国は、一年追えば追うほど、どんどんどんどん国民の皆様が貧しくなってしまっている、国の成長に伴っていない部分がたくさんあるというふうに思っています。私たちが一年何かを前倒しにすることで、一年、国民の皆様の笑顔が増えてくだされば、私たちがやっていることに大きな意味があるというふうに思っています。そういった部分を含めて、今回の可能性をできるだけ最大化していっていただきたい。
前回の参考人質疑で、住友銀行頭取の福留さんの反応、私は弱かったなと思っています。まさに、ああいったメガバンクが、もっとこれに投資をするんだ、動くんだというこの大きな動きを、私は、トップダウンで、まさに大臣の方からメガバンク全員の頭取と会って、どうやったらもっとここをメガバンクが取り入れてくれるかということも是非聞いた上で、件数もそうですし、これからの日本の未来、大臣の方として前に進めていっていただけないでしょうか。最後、お願いします。
○津島委員長 鈴木金融担当大臣、申合せの時間が経過しております。答弁は簡潔に願います。
○鈴木国務大臣 新しいこの融資制度、これを普及させていくということはとても大切だと思います。
法施行まで時間がありますので、その間においてしっかりとこれが前に進みますように、努力をさせていただきたいと思います。
○沢田委員 どうもありがとうございました。大臣、是非よろしくお願いいたします。
○津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。
次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
前回に引き続き、労働者保護の問題について質問します。
ワーキンググループの報告書には、実行時の労働契約について、事業を解体せず、雇用を維持しつつ継承することを原則とすると書かれています。なぜ、この制度では、事業を継承するとき、そして譲渡するとき、雇用契約を維持することを原則としているのでしょうか。法案の百五十七条と併せて説明をしてください。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
企業が事業の価値を高めていくためには、労働者からの労務提供が必要不可欠でございます。担保権の実行時においても、雇用がしっかり維持されていることが極めて重要だというふうに考えてございます。
こうした労働者の重要性を踏まえ、本法案におきましても、事業を解体せず、雇用を維持しつつ継承することを原則とし、個別財産の換価につきましては、事業の譲渡が困難である場合における例外とするため、事業を解体せず、雇用を維持しつつ承継する事業譲渡を一般原則とし、事業譲渡が困難である場合等の例外的な場合に個別財産の換価によることを定めてございます。
百五十七条ということでございますけれども、条文におきましても、一号におきまして事業譲渡を原則とする旨明らかにしてございまして、二号におきまして、例外的に、裁判所の許可を得て個別の財産の換価ができるというような例外的な措置も定めているので、そのことは条文上も明らかになっているというふうに考えてございます。
○田村(貴)委員 雇用維持ということが大前提というふうにずっとおっしゃるんですけれども、雇用が維持されないケース、これはもう絶対ないと言えるんでしょうか。今、二項の話も出たんですけれども、雇用が維持されないことがあるとするならば、それはどういうようなケースを想定しているんでしょうか。もう一度説明してください。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
これは、当然、一〇〇%どのような場合においても雇用が維持されるというふうに申し上げることはできません。企業価値担保権の実行が想定されるような場合、これは、なるべく実行に至る前の早い段階においてしっかりと当事者間で対応が行われていくことを期待しているわけですけれども、実行が想定されるような場合というのは、かなり苦境に陥っている場合だというふうに認識してございます。そうした場合の企業につきましては、むしろ企業価値担保権が存在しない現状におきまして、雇用の維持が困難となるケースも相応にあるというふうに考えてございます。
これに対しまして、企業価値担保権につきましては、昨年二月の金融審議会の報告書におきまして、企業価値担保権の実行時の換価に関する方法に関し、事業を解体せず、雇用を維持しつつ承継することを原則とするとの提言をいただいて、今回の法案、繰り返しになりますけれども、実行手続の管財人におきましては、労働者を含む利害関係人全員に対して善管注意義務を負うことを定めてございます。管財人におきましては、事業を解体せず、雇用を維持しつつ承継することを原則とするという制度趣旨に照らし、最大限の努力を尽くして雇用継続と全体としての事業譲渡のスポンサー探しを行うことになると考えてございまして……(田村(貴)委員「もういいです」と呼ぶ)はい。
○田村(貴)委員 最大限努力すると言いながら、努力義務の話ですよね。そして、今おっしゃったように、一〇〇%雇用が維持されることはないということがあるんですよ。
第四回のワーキンググループで、日本商工会議所の山内委員は次のように発言しています。解雇回避に向けた最大限の努力が要されることは当然です、しかしながら、窮地に立つ価値のある事業を毀損させずに継続させるということを第一に考えた場合には、全ての雇用継承となると、他の規定と比較してもいささか負担が重いのではないかと考えております、破産に至りますと、事業継続の可能性が絶たれます、結果として、多くの失業が発生し、雇用にとってのマイナスの可能性が懸念されます、このように述べています。これは、経営者や金融機関がリストラを進めるときによく使う理由であります。
結局、本制度においても、原則雇用維持というものの、実際には、解雇がやむを得ないといって強行されることもあるんですよね。法律にもその規定が設けられて、認めているということですよね。再度確認します。
○井藤政府参考人 これは、どのような制度でありましても、既存の担保権とかいろいろな状況の中で、労働者の雇用が一〇〇%守られないという事象というのは当然起き得る話であって、今回の担保制度に特有のものではないというようなことだと思います。
しかしながら、実際に実行手続に移行した場合に、管財人がスポンサー探しに努力を尽くしたものの適切なスポンサーが現れない場合等については、例外的に解雇というようなことも検討せざるを得ない場合はあると思います。
しかし、この場合にあっても、解雇権濫用の法理等の労働法制上のルールというものは適用されるわけでございまして、労働者の保護が図られるものというふうに考えてございます。
○田村(貴)委員 原則雇用維持といっても、例外が認められて、そして抜け道のように使われる、こういうことだということです。
伴走支援と雇用契約の影響についても伺います。
実際に担保権を実行する過程においては、いきなり実行の判断がされるものではありません。まずは、平時に経営悪化の兆候が見られて、対策が立てられ、それでも経営悪化が進めば、対策を取る中で、結果的に財務リストラや事業譲渡へと段階的に進んでいきます。
資料をお配りしています。先ほど階議員からもこの資料が配られましたけれども、左上の方に、米英の全資産担保融資実務のフロー図が載っています。これは左上の方なんですけれども、経営悪化の兆候としては、財務コベナンツの抵触や支払い遅延の懸念、事業キャッシュフローの懸念などとともに、経営陣の退任や、従業員、店舗数の大幅削減というのも挙げているんですね。当然、伴走支援をしている金融機関等は、このような状況をモニタリングして、そして、早期に経営者の相談を受けて協力することが求められます。
伴走支援の意義、目的、そして役割について、簡単に説明してもらえますか。
○井藤政府参考人 簡単にということでございますので、金融機関による経営改善支援につきましては、現行の監督指針におきまして、顧客企業の経営者が自らの経営の目標や課題を明確に定め、これを実現、解決するために主体的に取り組んでいくことが重要であり、金融機関には、顧客企業の自助努力を最大限支援していくことが求められている旨が明記されてございまして、伴走支援ということにつきましては、こうした指針の趣旨にのっとって行われることが期待されているというふうに考えてございます。
○田村(貴)委員 前回、私の質問に対して井藤局長は、今回の担保権において、労働契約上の使用者の地位が含まれるとしても、事業成長担保権者は、労働条件等について決定するなどの権限を有する者ではなく、事業成長担保権設定の目的は、事業成長担保権者が労働条件等に影響を及ぼすことではない点に留意する必要があるというふうに答弁されました。
そうでしょうか。伴走支援の意義、目的を考えると、やはり平時において金融機関等が、労働契約に影響する経営判断について知らないわけがないですよね、あり得ないし。そして、同意も求められず、関与もしないというのは考えられません。
金融機関等が、従業員の削減など、労働条件などに影響する経営方針に全く関与しないと言い切れるんですか。
○井藤政府参考人 言い切れるかどうかというのは、一〇〇%例外もなくという趣旨であれば、なかなか世の中、そのように言い切れるものは少ないような気もいたしますけれども、実際のところ、金融機関は、融資先の経営者に対して、リストラや賃下げを含めた特定の経営判断を強要する立場にはないというふうには考えてございます。
○田村(貴)委員 いや、それはないでしょう。伴走型支援で、口も出さず指示もしない、そんな何か慈善事業みたいな支援というのはあるんですか。お金の貸し借りというのは相当シビアな世界ですよ、先ほどから議論に出ていますけれども。答弁には現実味がない、そして説得力がありません。
法律案第二十条では、債務者は、企業価値担保権を設定した後でも、担保目的財産の使用、収益及び処分ができるとし、第二項で、通常の事業活動の範囲を超える場合は、全ての企業価値担保権者の同意を得なければならないと定めています。
同意を得なければならないという理由について説明してください。
○井藤政府参考人 今回の法案では、借り手が事業価値を毀損するような行為等を防止するため、通常の事業活動の範囲を超える処分等をする場合には担保権者の同意が必要であり、これに違反した場合には、その処分等は原則として無効となることを規定しているものでございます。
○田村(貴)委員 例えば、労働者の大幅削減が企業の価値、製品の製造に重大な影響を与え、企業価値を損なうということはあり得ます。また、その企業にとって欠かせない技術者などのキーパーソンなどが解雇されるとなれば、企業の担保価値を大きく毀損する可能性が出てきます。
経営者が従業員や店舗数の大幅削減をすることで、企業の担保価値に影響を与えると判断するならば、金融機関はそのような労働条件の変更に同意をしないのではないでしょうか。
つまり、労働条件に影響する事項であったとしても、通常の事業活動の範囲を超える場合に相当することもあり得る、担保権者である金融機関等の同意が必要なケースも出てくるのではないでしょうか。私はそう考えますけれども、いかがですか。
○井藤政府参考人 御指摘の論点につきましては、いわゆる通常の事業価値の範囲の解釈の問題かというふうに考えますが、条文の中では、借り手による事業譲渡、重要な財産の処分等、類型的に借り手の通常の事業活動の範囲を超える処分等を例示することや、定款で定められた目的及び取引上の社会通念に照らして通常の事業活動の範囲を超えるかどうかという判断基準を示すことを通じまして、取引の安定に資するようにしているわけでございますけれども、もちろんこれが、個別具体的な例に即しまして、おっしゃるような従業員や店舗の大幅削減をするときに、これに該当するかということでございます。
事業の全部の、又は重要な一部の譲渡に匹敵するような場合には、担保権者の同意が必要な場合があることはもちろんあるというふうに考えてございます。一方で、一般的な解雇については同意を要しないものというふうに考えてございます。
○田村(貴)委員 井藤局長が、事業成長担保権者は労働条件等について決定するなどの権限を有するものではない、そのように幾ら言われても、伴走支援する金融機関等にとっては、従業員との労働契約は経営にも影響する、そして事業の将来の成長にも欠かせない要因にもなるわけです。内容いかんでは、通常の事業活動の範囲を超える場合、法律上も金融機関の同意が必要と書いてあるじゃないですか。実際はむしろ、経営悪化の兆候があるときは、金融機関等による経営合理化等への支援、指導が継続的に行われることになります。
経営者が金融機関による経営合理化の指導を拒むことは考えがたく、結果として、労働者の人員削減、労働条件の不利益変更に大きな影響を与えることが考えられます。
もう一度聞きますね。本制度の導入によって伴走支援が求められれば、金融機関はますます経営合理化を指導することになるのではないでしょうか。
○井藤政府参考人 伴走型の経営支援というものについては、企業の発展ですとか事業継続、維持等を目的として行うものでございまして、これによりまして、殊更リストラですとか賃下げ等、特定の経営判断を金融機関が強要していくということについては、そのような立場に金融機関が立っているというふうにも考えてございませんし、一般には想定してございません。
○田村(貴)委員 キーパーソンの処遇とか従業員のリストラに関わる経営方針について、金融機関等の指導で事業者がリストラなどを進めていくのは自然な流れです。そして、これまでもそうでありました。
問題となるのは、労働組合法上の使用者性の認定です。
一般論として、金融機関等にも使用者性が認められたならば、銀行などは、労働組合が求める協議や交渉に応諾し、参加する必要性があります。しかしながら、現状では、使用者性が認められて、金融機関等が交渉の当事者となるということはまれとのことです。なぜなら、金融機関等と企業と経営者との間でどのような話がなされているのか、金融機関等の指導によりリストラを進めたかどうかということは、客観的に証明できないからであります。
お尋ねします。
企業価値担保権を保有する金融機関等に労働組合法上の使用者性があるかどうかの判断は、これは本法案によってどう変わっていくんでしょうか。
○井藤政府参考人 その点につきましては、本法案によって労働組合法上の使用者性の判断が異なるというふうには考えてございません。(田村(貴)委員「えっ、考えていない」と呼ぶ)
○津島委員長 はっきりと、明確に。
○井藤政府参考人 いわゆる最高裁の判例を踏まえますと、担保権者や与信者が、基本的な労働条件等につきまして、雇用者と部分的とはいえ同視できる程度に具体的かつ現実的に支配、決定することができる地位にある場合に、労働組合法上の使用者性を有する可能性があるというふうに認識してございまして、このような取扱いにつきましては、本法案によって何ら判断が異なるものというふうには考えてございません。
○田村(貴)委員 本法案でも労働組合上の使用者性の判断に変更がないとすれば、結局、金融機関等の使用者性等の問題は曖昧なままになってまいります。
本法案で、労働者保護と一体として事業性の評価をして金融機関等に伴走支援を求めるのであれば、使用者性の判断基準について明確にする必要があるのではないでしょうか。本制度の下で経営者がリストラなど労働契約の変更をする場合に、金融機関等の関与があったかどうかの判断はどのようになされるべきと考えていますか。
○井藤政府参考人 お答え申し上げます。
労働組合法上の使用者性の判断につきましては個別の事案に即して行われるものですが、一般には、担保権を設定すること又は与信を提供することのみをもって、直ちに労働組合法上の使用者に該当することとは言えないということでございます。
繰り返しになりますけれども、その判断基準は、最高裁の判例を踏まえ、担保権者や与信者が、基本的な労働条件等に雇用者と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合というふうに考えてございます。
金融庁といたしましては、金融機関が、監督指針におきましても、経営者の自主性を尊重しつつ、事業者の状況に応じた改善支援等を適切に行っていくよう記しているわけでございますが、そうした監督指針等を遵守しつつ、経営改善支援等を適切に行っていくよう、しっかりとモニタリングを行ってまいりたいというふうに考えてございます。
○津島委員長 田村君、時間が経過しております。
○田村(貴)委員 時間が来ました。経営悪化の兆候がある平時や、担保権を実行する場合においても、金融機関が全く知らずに労働者の人員削減、労働条件の不利益変更がなされるなど、これはもうあり得ないと思います。
以上のことを指摘して、質問を終わります。
○津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。
これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○津島委員長 これより討論に入ります。
討論の申出がありますので、順次これを許します。階猛君。
○階委員 立憲民主党会派を代表して、企業価値担保権を定める本法案に反対の立場から討論を行います。
理由を以下述べます。
第一に、企業価値担保権の実行に際し、従業員の手続保障や権利保護が不十分であること。
労働団体からは、担保権実行前の協議の場の設定や、担保権者に優先する配当原資である、いわゆるカーブアウト金額の十分な確保が求められてきました。しかしながら、政府の答弁は極めて不誠実であり、そうした答弁を繰り返した挙げ句、労働団体の希望には応えられるものになっていないということが明確になりました。
第二に、企業価値担保権つきの融資を行おうとする者は、伴走型支援より、債権回収に傾きがちな制度になっていること。
この融資の借入人はスタートアップや中小企業を想定していますが、伴走型支援で企業を育成しても、それに見合う収益を得られる保証はない。むしろ、債務者による極度額設定や元本確定請求により、他の貸出人によっていわゆるトンビに油揚げをさらわれる、そんなリスクもあります。
他方で、十分な債権回収のためには、事業譲渡の代金を極大化することが不可欠であります。そのための期限の利益喪失事由を自由に幅広く定めることや、経営の自由を奪って、早期に担保権実行に着手することが本法案で容認されています。
第三に、借主の取引に支障が生じかねないこと。
企業価値担保権を設定した借主の仕入れ先や取引先は、債権者の同意を得ずに、通常の事業活動の範囲を超えて取引を行った場合、善意無重過失でなければ取引が無効になるとされています。しかしながら、何が通常の事業活動の範囲か、いかなる場合に善意無重過失と言えるか、漠然かつ曖昧としており、取引が萎縮するリスクがあるのです。
第四に、企業価値担保権付融資のコストが高いという問題です。
担保権者となる信託会社への信託報酬を含め、担保権の設定や管理に、従来型の担保よりもコストが増大することは明らかです。このコストを回収するには、融資の利率を相当程度上げなくてはなりません。しかし、現在の超低金利の状況の下でそれを行えば、信用保証協会の保証付融資などに顧客が流れることは明らかであり、こうしたことからすると、事業性融資は、促進されるどころか、むしろ後退しかねません。
最後になりますが、我々立憲民主党は、事業性融資、すなわち、不動産担保や個人保証に頼らず、事業の信頼性や将来性に着目した融資を普及促進することには賛同しております。しかしながら、その手段として企業価値担保権を創設することについては、さきに述べたとおり、数々の問題があり、容認できません。
新しい物権を定めるには法律によらなければならず、人々が自由に創設することは許されないという民事法の大原則を物権法定主義といいます。その趣旨は、社会における人々の行動の自由と取引安全の保護であります。今のままの企業価値担保権が仮に利用されるようなことになれば、その趣旨に反することは明らかです。
法制審議会の答申を経ずに問題の多い法案を策定した金融庁には猛省を促し、私の反対討論を終わります。(拍手)
○津島委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、事業性融資の推進等に関する法律案に対して反対討論を行います。
本法案が目的とする不動産担保や経営者保証によらず企業価値を基準とする融資を推進することは、資産に乏しい新規企業の資金調達を円滑にするだけでなく、過度に資産の担保や経営者保証に依存するあしき融資慣行を改めるという点で評価します。
しかしながら、本法案は、労働契約上の地位も含む総資産に担保権を設定するにもかかわらず、労働者保護がなされていないという重大な問題が残されており、賛成できません。
例えば、本法案は、企業価値担保権を設定する際において、担保対象となる労働者に個別同意を求めていない上に、個別通知、労働組合等からの意見聴取等も義務づけていないため、労働者側に一切知らされずに担保権が設定されることになります。
また、企業価値担保権を有する金融機関等には、伴走型支援により経営に深く関わることが求められるため、事業者に対して極めて強い力を持つことになり、経営合理化等を強いることも想定されます。
にもかかわらず、労働組合の申入れによる協議、交渉に対する応諾義務を課すなど、担保権を持つ金融機関が経営側の一部として責務を果たすための保証が法律上盛り込まれていません。さらに、企業の譲渡のときには、原則、雇用は維持されると言いますが、雇用が守られないケースがあることも質疑で明らかになりました。
以上の理由から、本法案に反対し、討論とします。(拍手)
○津島委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○津島委員長 これより採決に入ります。
事業性融資の推進等に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○津島委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
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○津島委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、塚田一郎君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。櫻井周君。
○櫻井委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
事業性融資の推進等に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
一 企業価値担保権の設定は、企業価値担保権者や特定被担保債権者が債務者とその使用人との間の労働契約の締結・変更等に影響を及ぼす目的で行ってはならないことを監督指針等において明確にすること。また、企業価値担保権の担保目的財産となる会社の総財産の定義やその範囲を画定するための考え方、制度運用における留意点等を監督指針等において明確にするとともに、広く周知・広報を行うこと。
二 担保目的財産の換価の方法に関する裁判所の適切な判断に資するよう考え方を示すとともに、担保目的財産の換価に当たって、管財人は、事業譲渡の金額の多寡のみではなく、雇用の維持及び取引関係の維持、その他多様な事情を考慮した上で、承継先を決定することをガイドラインに明記し、広く周知・広報を行うこと。
三 一般債権者の保護をより強く図る目的で設けられる不特定被担保債権留保額の算定方法を政令で定めるに当たっては、具体的な算定根拠を明らかにしつつ、労働債権が労働者の生活の保持に不可欠であることに特段の配慮を行うこと。
四 企業価値担保権の活用における労働者保護のさらなる強化を図るため、担保権の設定時及び実行前後における労働組合等への通知、協議のあり方について、速やかに検討を開始すること。
五 「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」については、政府において、専門的な検討の場を設け、新たな企業価値担保権の創設を踏まえて必要な見直し等を行うこと。加えて、合併・事業譲渡をはじめ企業組織の再編に伴う労働者保護に関する諸問題については、その実態把握を行うとともに、速やかに検討を進め、結論を得た後、必要に応じて立法上の措置を講ずること。
六 企業価値担保権者や特定被担保債権者が、実態として、債務者の使用人の労働条件等の決定及び変更等に関与している場合は労働組合法上の使用者に該当し得ることをガイドラインで明らかにし、金融機関等に周知徹底を図ること。また、本法と労働関係法令との関係についての考え方を整理した上で、広く周知・広報を行うこと。
七 企業価値担保権という新たな制度を活用した融資スキームが可能となることに鑑み、本法施行後から五年を経過するまでの間、融資状況等について継続的にモニタリングを行い、制度の利用状況の推移や利用時の課題等について公表すること。
以上であります。
何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。
○津島委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○津島委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融担当大臣鈴木俊一君。
○鈴木国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○津島委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○津島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十六分散会