第10号 令和7年3月12日(水曜日)
令和七年三月十二日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 井林 辰憲君
理事 大野敬太郎君 理事 国光あやの君
理事 小林 鷹之君 理事 阿久津幸彦君
理事 稲富 修二君 理事 櫻井 周君
理事 斎藤アレックス君 理事 田中 健君
東 国幹君 石田 真敏君
伊藤 達也君 岩田 和親君
尾崎 正直君 田中 和徳君
土田 慎君 長島 昭久君
中西 健治君 西野 太亮君
古川 禎久君 牧島かれん君
松本 剛明君 荒井 優君
岡田 悟君 海江田万里君
川内 博史君 階 猛君
末松 義規君 高松 智之君
長谷川嘉一君 水沼 秀幸君
三角 創太君 矢崎堅太郎君
萩原 佳君 村上 智信君
岸田 光広君 中川 宏昌君
山口 良治君 高井 崇志君
田村 智子君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 加藤 勝信君
財務副大臣 斎藤 洋明君
財務大臣政務官 東 国幹君
財務大臣政務官 土田 慎君
政府参考人
(財務省関税局長) 高村 泰夫君
参考人
(日本銀行総裁) 植田 和男君
財務金融委員会専門員 二階堂 豊君
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委員の異動
三月十二日
辞任 補欠選任
上田 英俊君 尾崎 正直君
根本 幸典君 岩田 和親君
福原 淳嗣君 西野 太亮君
江田 憲司君 荒井 優君
原口 一博君 高松 智之君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 根本 幸典君
尾崎 正直君 上田 英俊君
西野 太亮君 福原 淳嗣君
荒井 優君 江田 憲司君
高松 智之君 原口 一博君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)
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○井林委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省関税局長高村泰夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井林委員長 質疑の申出がありますので、これを許します。階猛君。
○階委員 おはようございます。立憲民主党の階猛です。
昨日は、震災から十四年の節目ということで、私も地元岩手県の大船渡市に行ってまいりました。皆さんのお手元に、大船渡、今般火災があったわけですけれども、現地の写真をつけさせていただいております。山火事だったわけですけれども、それが燃え広がって、住居などにも甚大な被害が及んでいるということであります。後ほど関連する質問も行いますけれども、まずもって、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
そしてまた、震災から十四年ということで、改めて、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表しますとともに、震災から立ち直る皆様に対し、これからも寄り添って、全力で復興に努めていくことをお誓い申し上げたいと思います。
それでは、質問に移ってまいります。
今日は日銀総裁にお越しいただいております。私、二月二十一日にも予算委員会で総裁に長期金利の上昇傾向に関して質問させていただきました。その後、更に長期金利は上昇しておりまして、今、一・五%を上回る水準で推移しているわけです。当時、二十一日でしたけれども、総裁の答弁で、長期金利の上昇について、注意深くモニターしていきたいという答弁でした。
現在の市場動向、これは日銀として想定の範囲内と見ているかどうか、まずお答えください。
○植田参考人 お答えいたします。
長期金利は市場で自由に形成されることが基本であるというふうに考えておりますので、その水準や先行きについて細かく具体的にコメントすることは差し控えさせていただいております。
ただ、昨年来、上昇傾向が続いていることも事実でありまして、これについて、市場においては、経済、物価情勢に対する見方、あるいは海外金利の変化等を反映したものと見ているというふうに理解しております。
○階委員 ということは、結論としては、今の長期金利の水準は想定の範囲内ということでよろしいですか。
○植田参考人 先ほど申し上げました市場の見方と私どもの見方の間に大きなそごはないというふうに考えております。
○階委員 今のところは想定の範囲内ということでお聞きします。
それで、日銀は今、長期の金利のコントロールはやめられていますね。市場に委ねるということで、じゃ、今までは何だったのかという気もするんですが、いずれにしても、今、短期の金利をコントロールしております。
短期の政策金利については、かねがね総裁からは、中立金利をかなり下回っているといった趣旨のことを言われておりまして、多少金利を引き上げても金融緩和の状況に変わりがないんだといったようなこともおっしゃられたと思います。
これから政策金利を中立金利に近づけるべく徐々に引き上げていくとすると、これは当然、長期金利も通常上昇すると思われるわけですけれども、このような政策金利をこれから引き上げていくことに伴う長期金利の上昇は市場の通常の動きだということで、今までのような長期金利のコントロールはこれからも行わないということでよろしいですか。
○植田参考人 長期金利は様々な要因によって決定されますが、その最大の決定要因の一つが、将来の短期金利に関する市場が持っている予想でございます。したがいまして、それを反映して長期金利が動くということは自然な姿であるというふうに思います。
私どもの観点で大事なことは、将来の短期金利を決定する際に、どういう考え方で決定していくのかということをこれまでも申し上げてきましたが、市場に対して明快な形で、市場に対して分かりやすく発信し続けるということだと思います。
○階委員 要するに、短期金利を反映して長期金利は決まるわけだから、短期金利を引き上げていった結果、長期金利が上がることは、これは当然のことであるということをおっしゃられているというふうに理解してよろしいですか。うなずかれておりますけれども、そういうことでよろしいですか。どうぞ。
○植田参考人 委員のおっしゃるとおりでございます。
○階委員 そういう中で、これから金利を正常化していくということなんですが、そうすると、長期金利もそれにつれて上がってくるということになります。これは日銀にとっても財務内容が厳しくなるということなんですけれども、政府にとっても、国債による調達金利が上がっていって、財政運営上非常に厳しくなるということなんですね。
今、予算案の審議が行われていますけれども、どうも、基金のブタ積みで金利を垂れ流しているといったようなところを見ると、これから長期金利が上がっていくことに対する警戒感のようなものが足りないと思うんですが、この点について、総裁から何かコメントはありますか。
○植田参考人 長期金利上昇の財政への効果という点の御質問だと思いますが、そこに関しては、政府、国会の方で財政の持続可能性等を配慮して決めていかれるものと了解しております。
○階委員 アコードの中で、日銀と政府との間では、政府は財政健全化に努力していくといったような文言も入っていたと思うんですね。そのアコードを結んだ当事者として、今の政府の財政運営に対して、何かおっしゃりたいことはありませんか。
○植田参考人 短期的な財政運営については私どもが申し上げてはいけないことだというふうには理解しておりますが、中長期の持続可能性について常に配慮をしていただきたいというふうには思ってございます。
○階委員 中長期の財政運営に常に配慮していただきたいという日銀総裁のお言葉でした。
財務大臣、今のお言葉を受けて、通告はしてはおりませんが、何か返す言葉はないでしょうか。
○加藤国務大臣 返す言葉ではございませんが。
これまで、私ども、経済あっての財政という中で、経済の成長、再生、これをしっかり図りながら財政の健全化に取り組む、経済再生と財政の健全化の両立を図るということでこれまでも取り組んでまいりましたし、引き続きこうした思いで取り組んでいきたいと思いますし、また、今委員御指摘のように、これから長期金利が上がれば、当然、利払い費に対する影響、こういったこともしっかり考慮しながら、また、同時に、ここでも議論させていただきましたけれども、いわゆる機会費用の件、これに対しては大変私は大事な論点だと思っております。
○階委員 長期金利がこれから上がっていくだろうという中で、来年度の予算の想定金利は二%なんですが、私はこの二%も上回ってくる可能性は十分あると思っております。財政運営については本当に危機感を持って取り組むべきだということを強く申し上げたいと思います。
日銀総裁、ここまでで結構ですので、どうぞ御退席なさってください。
○井林委員長 御退席ください。
○階委員 さて、その上で、先ほど、冒頭申し上げました災害に関することです。
災害損失控除という新たな所得控除の仕組みを設けるべきだということで、我々、この場でも提案させていただいております。これに関して、十日の参議院の予算委員会、同僚の奥村議員から質問があって、大臣の方から答弁がされました。それを二ページ目につけておりますけれども。
要は、災害損失控除というものを設けて、人的控除の後に控除するということをやるべきだということを言っているわけですね。人的控除の後に控除すると何が助かるかといいますと、普通、収入があって、必要経費を差し引いて、そして、それによって出てくる所得から様々な所得控除を引いて、最後、税率を掛けるベースの金額が出てくるわけですけれども、この災害損失控除というのは、今の制度だと、雑損控除の一部ということで、必要経費と同じような取扱いがされているわけですね。ということは、雑損控除、とりわけ災害に関わる雑損控除が大きくなり過ぎると、その下の所得控除ができなくなってくる。必要経費を差し引いたところで赤字になると、それ以上差し引くものはないですから、それで人的控除が受けられないということなんですね。
そもそもその取扱いがいいのかどうかということでお聞きしたいんですが、三つ、大臣がこの答弁でポイントを言っていると思います。
一つは、必要経費に類似した性質を持つということを言っています。雑損控除ないし災害損失控除というのは必要経費に類似した性質を持つということを言っています。しかし、事業用の資産だったらともかく、事業とは関係ない、いわば生活資産である住居などが災害によって損失を被った場合、これを必要経費に類似した性質を持つと言っていいのかどうかというのが一つ目の論点です。
二つ目は、ふるさと納税を含む政策的に認められている所得控除もある中で、その適用の有無によって雑損失の繰越額が異なると公平性に疑念が生じるみたいなことを言っていますね。政策的な控除は、当然、ふるさと納税が多ければ多いほど多くなるわけで、そうすると、災害損失控除は、先にふるさと納税の控除をした後にやるとなると、差し引く額が小さくなる。小さくなると、繰越し、繰越しということになっていきますから、そういった方の方が繰越しが大きくなるということが公平に反するというようなことをおっしゃっているわけですが、果たしてそうなんだろうかと。
むしろ、ふるさと納税の限度額がないことの方が問題であって、ふるさと納税が多ければ多いほど災害損失控除で得をするから災害損失控除の控除の順番は見直すべきでないというのは、私は本末転倒だと。むしろ、見直すべきは、ふるさと納税のような政策的な控除の方だと私は思います。
それから、損失の繰越期間を三年から五年にするなど必要な見直しを行ったということも言われていますけれども、まさにこれは必要な見直しだったと思いますけれども、せっかく五年に延長しても、繰越額が小さければ、その五年のメリットを生かし切れないわけですね。今行われている雑損控除のやり方だと、災害損失を、早めに繰越しを終わらせようというようなことになりますから、三年から五年に延長したメリットを生かせないということになってしまうと思うんですね。
以上三点について、私は大臣の答弁はちょっと間違っているんじゃないかと思っておりまして、是非これは、我々が提案している災害損失控除、そして人的控除の後に控除をするという制度改正をやるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 委員の提出というかお示しいただいた資料の二ページに私の答弁の中身を書いていただいておりますけれども、まさにここにあるように、必要経費に類似した性質を有するものとしてこれまで取扱いをしているということで、そういう整理の下で今のような運用がなされているということを説明をさせていただいたということであります。
それから、先ほど委員がおっしゃったように、災害に伴う様々な被害額はいわゆる雑損控除として一括して取り扱われているわけでありますから、その雑損控除の扱いについて、人的控除や他の所得控除の後に行うとした場合には、例えばふるさと納税等々でかなり変動し得るということを申し上げたことであって、委員の、ふるさと納税をどうするかというのは、これはまた別の議論として議論をさせていただくべきものと考えております。
その上で、三年から五年など延長する必要な見直し、これは評価をいただき、ただ、三年から五年に見直しても繰り越すものがなければ三年でも五年でも同じじゃないか、これはおっしゃるとおりだと思います。そこは、繰越しができることを前提につくられている条文というか制度だということであります。
その上で、令和七年の三月四日の衆議院の財金委における附帯決議において、たしかこれは、下に書いていただいていますけれども、決議がございます。そこにおいて、個人の有する住宅、家財等につき、災害による損失を当該個人の所得から人的控除の後に控除することができる独立した所得控除の制度の創設等の対応を含め、必要な対応を行い、その実現に努めることという決議を頂戴をしているわけでありますので、政府としては、御趣旨を踏まえて配意をしてまいりたいということを申し上げているわけでありますので、そうした姿勢に立って今後議論していきたいというふうに考えています。
○階委員 本当に、私も大船渡に行ってまいりまして、津波で被害を受けられた方が高台に移転したらまたそこも火事になったということで、大変な状況なわけですよ。そうした方々が、今の雑損控除の中で災害損失を勘案するというやり方では、到底必要な救済が得られないのではないかと思っております。この災害損失控除というのは日本税理士連合会からもずっと提案がされていますけれども、まさに、最近の、二重被害というか二重災害が各地で起き得る中で、こうした税制の見直しは一刻も早く行っていくべきだと思います。
改めて、全会一致で我々が決議したこの決議内容に従って、政府としても全力でこの見直しをしていくということを御表明いただきたいのですが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 申し上げましたように、政府といたしましても、御趣旨を踏まえて配意してまいりたいということを申し上げているところでございますので、そうした申し上げたことをしっかり実行していきたいと思っております。
○階委員 どうもありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。
関税定率法等の改正案について質問を移していきたいと思います。
今回、四百十一品目の暫定税率について一年間期限を延長するということなんですが、なかなか関税の暫定税率というのはぴんとこないと思うんですね。ガソリンの暫定税率はさんざん議論してきました。あれは本来の税率に上乗せするという話なんですが、関税の方の暫定税率は、むしろ軽減する方なんですね。四百十一品目、毎年毎年、品目数は多少変動するとはいっても、一年ごとにここで法律を作って期限を延長している、そんなことを行っているわけですね。
これは、四百十一品目、本当に必要があって延長しているのかどうかということを我々の仲間で確認しました。それで出てきたのが三ページ目の資料なんですが、冒頭、関税局は、四百十一品目の全てについて、個別品目を一品目ごとに、物資所管省庁に対して要望理由のヒアリングを実施し検討を行っておりますというふうに立派な態度を示しています。
ただ、じゃ、検討状況はどうなっているんだと聞きますと、この下に表がありますね。ここでは、十品目について表はあったんですが、ページの関係で三品目めまでにしております、上位三品目に絞っております。なんですけれども、結局、ここに書いてあることは、ここに書いている三つの中でも、同じことしか書いていません。ヒアリングにより、業界の状況や国際市況等について確認し、国内産業保護、消費者等の利益確保、国際交渉の状況等の観点を多角的に検討した結果、政策上の必要性が認められ、現行の暫定税率の水準が適正であるとの結論に至りましたということが、ここに書いている三つだけではなくて、十個全てについて書いているわけなんですね。これで果たしてちゃんと検討を行ったと言えるのかどうかということをしっかり検証していきたいという趣旨で質問します。
まず、国内産業保護の観点から検討したというふうに書かれておりますけれども、例えばこの第一項目、トウモロコシ、コーンスターチ用のものというのは、ほぼ全て輸入によって賄われているというふうに書かれております。ほぼ全て輸入によって賄われているのに、国内産業の保護というのを検討する必要があるんですか。お答えください。
○高村政府参考人 お答え申し上げます。
コーンスターチ用のトウモロコシにつきましては、委員御指摘のとおり、国内生産はほぼないと考えられますが、ただ、このコーンスターチ用トウモロコシはでん粉を生産するために輸入しております。そして、国内には、国産のでん粉原料用芋生産が行われております。
したがいまして、このコーンスターチ用トウモロコシと国産でん粉原料用芋というものが競合すると考えられますので、そういう観点から、芋生産者を保護するという観点から検討を行った次第です。
○階委員 直接この品目の生産者はいなくても、関連する芋生産者の保護を図る必要があるから関税は必要だという趣旨の答弁でした。
では、その保護すべき芋生産業者がいる中で、暫定税率であえて税率をゼロにするわけですけれども、これによって消費者等の利益確保を図る観点があるようなんですが、六百九十億円程度関税が減るわけですけれども、六百九十億関税が減ることによって消費者にはどの程度メリットはあるのか、定量的なことが把握されているのかどうか、お答えください。
○高村政府参考人 まず、国内のでん粉需要を賄うためには、国産でん粉芋生産者を保護するとともに、こういう形でコーンスターチ用のトウモロコシの輸入の確保を図る必要もございます。そして、このコーンスターチ用トウモロコシは、糖化製品やビール、段ボール等の原料に幅広く使われております。仮に、暫定税率を停止して基本税率に戻すとなった場合には、こういう、今申し上げたような糖化製品、ビールや段ボール等の原料に価格転嫁が生じることによって国民生活に悪影響が生じかねないというふうに考えております。
○階委員 本当にこれ、六百九十億円という減収を生じさせていますね。そして、芋業者には、関税を設けることによって、保護するという利益が失われているわけです、芋業者の方の利益は。利益は失われており、そして税収は六百九十億円減っている。そういう中で、それを補うほどの消費者側への利益というのは生まれているのかどうかということを教えてください。明確にお答えください。その点についてだけお答えください。
○高村政府参考人 暫定税率を通じてコーンスターチ用のトウモロコシが無税で輸入できることによって、先ほど申し上げたような糖化製品やビール、段ボール等の原料を低価格で調達できますので、その点で国民生活の利益は確保されていると考えております。
○階委員 輸入業者が低価格で調達できるというのは、それは当然のことですよ。ただ、問題は、低価格で調達できることによって、先ほど来おっしゃっている芋業者に悪影響が及んでいないのか、そして低価格で調達したものがちゃんと消費者価格にも反映されているのか、このような利益衡量を図った上で、最終的に基本税率を、暫定税率ゼロにするかどうか検討すべきだと思っていますけれども、そうした検討はちゃんとされているんですか。
○高村政府参考人 コーンスターチ用のトウモロコシの所管は農林水産省でございます。農林水産省から我々はヒアリングをして、委員御指摘のとおり、国内産業の保護の観点からの議論、それから消費者等の利益の確保の観点からの議論、それからまた、このコーンスターチ用トウモロコシは、国際交渉によって、一定の関税の譲許のですね、一定の国際約束をしておりますので、そのことも勘案して、延長が妥当であるという結論に至ったものでございます。
○階委員 とても精緻な検討を行っているとは思えないわけですよね。
皆さんが検討しているというふうにおっしゃっているから聞いているわけですよ。ちゃんと各方面の利益を比較衡量して結論を出しているかということを聞いているんだけれども、漠然とした答えしかないじゃないですか。挙げ句の果てには、農林水産省からヒアリングしたということで、責任転嫁しているじゃないですか。これで本当に、暫定税率、四百十一品目一つずつ検討していると言えるんでしょうかね。
もう一つ言いますけれども、国際交渉の状況等の観点、これも検討していると言っています。
昨日もここで議論になっていますけれども、トランプ関税に対して、経産大臣がアメリカに行って日本への適用は除外してくれというお願いをしたけれども言質は得られなかったということなんですが、やはり、そのときに、お願いしに行くときに、交渉カードを持っていくべきだと思うわけですよ。例えば、この第一項目のコーンスターチ用のトウモロコシについては、主な輸入相手、トップが米国となっていますよね。そうしたことについて、我々は暫定税率を適用していますけれども、もしアメリカが関税を引き上げてくると、こうしたところに影響が出てくるかもしれませんよといった交渉カードを持つべきだと思うんですけれども。
まともに検討していればそういう議論もできると思うんですが、交渉カードに資するような検討というのはされているんですか。交渉カードに生かすような検討というのはされているんですか。
○高村政府参考人 お答え申し上げます。
まず、ただいま議論されているコーンスターチ用トウモロコシにつきましては、これはガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の結果として設定されたものでございます。仮に、現行の税率を引き上げる場合には、国際交渉を行う必要が出てくるものでございます。
他方、米国の措置でございますが、これにつきましては、政府として米国政府に申入れ等を行っているところであり、今後とも、米国による措置の内容を踏まえて、関係省庁と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。
○階委員 一般論としてお聞きしたいんですけれども、国際交渉のカードとするために、暫定税率をもしなくせば相手国に対してどのような影響が及ぶのかということをちゃんと調べ上げているのかということを聞いているわけですよ。
今ちょっとお聞きしていて疑問に思ったんですけれども、暫定税率というのは我が国だけでは決められないんですか。基本税率は決められないと思うんですけれども、暫定税率の方も自国では決められないということでいいんですか。そこは関税自主権の対象ではないということでいいんですか。二点お伺いします。
○高村政府参考人 現在暫定税率を設定している四百十一品目でございますが、この中には、先ほど申し上げたようにガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉の結果として設定されたものが大半でございますが、そのほかにも、産業政策上の要請から、基本税率等を下回る税率を設定するものもございます。
○階委員 まず、交渉カードとするために、相手国への影響などはちゃんと調べ上げていますかということを聞いています、暫定税率を維持することによって。
○高村政府参考人 お答え申し上げます。
暫定税率になっているかどうかはともかく、我々、一般論として、どういう形で対抗措置があるのかということについては当然検討をしております。
一般論を申し上げますと、我が国の関税制度においては、関税定率法に、WTO協定に基づいて、WTOの承認を得た上で措置可能な報復関税制度、あるいは、WTO協定に基づき、相手国の措置がセーフガード措置とみなせる場合は、相手国の措置と実質的に同価値の対抗措置を講じることができる、いわゆるリバランス措置が規定されているところでございます。
○階委員 トランプ関税が実際に行われた場合の対抗措置を今お話しになられたと思うんですけれども、そうさせないようにするための交渉カードとして、暫定税率の適用がどうなっていて、相手国についてどういう影響があるのかというのをちゃんと調べ上げていますかということを聞いているわけですよ。
○高村政府参考人 お答え申し上げます。
物資所管省庁で、関税の措置を調整した場合の影響につきましては様々な議論を行っているところでございます。
○階委員 ここから財務大臣に伺いますけれども、やはり、私は、この四百十一品目、一つ一つ検討しているという割には、抽象的な漠然とした答えしか返ってきていないと思うんですね。四百十一品目トータルで、関税の減収額が千四百億円にも上っているわけですよ。やはり、それだけの税収減を生じさせるのであれば、ちゃんと消費者にその恩恵があるのかどうか、競合する業界などへの悪影響がないのかどうか、そして、輸入業者は暫定税率によって利益が得られているわけですけれども、その利益が及ぶところに利権的なものが発生していないのかどうか、こういったことをちゃんとチェックしていくべきだというふうに思うわけですが、財務大臣のお考えをお聞かせください。
○加藤国務大臣 まさに、関税は主として国内産業保護等のためと説明させていただきました。国内産業また消費者等の利益の確保、これを踏まえながら、政策上の必要性、そして、適用期限を定めて基本税率を暫定的に修正するということでありますので、暫定税率が引き続き政策上の必要性が認められるかどうかについては常に精査をしていく必要があるというふうに考えておりますし、また、今おっしゃった、暫定税率をした、消費者の利益の確保、したものがしっかり転嫁されているかどうか、これはちょっと私どもだけでは分かりませんけれども、所掌する省庁等とも、その辺も含めて議論を重ねていく必要があるというふうに思います。
○階委員 租税特別措置のときは、企業・団体献金によって政策がゆがめられているかどうかをチェックするために適用社名を公表すべきだということを我々は提案しました。この暫定税率についても、金額の大きなものはそういった観点からもチェックする必要があると思っております。
昨日も提案がありましたけれども、暫定税率でどういったところに大きな適用額があるのかといったことは開示すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 租税特別措置は、これまでも申し上げていますが、公平、中立、簡素という租税原則の例外として特定の政策目的を実現するためのものでありますし、特定の者の税負担を軽減するという形を取っているわけであります。有効な政策手法となり得る一方で、税負担のゆがみを生じさせる面があることから、租特透明化法に基づき、その適用実態調査の結果を国会に報告をさせていただいております。
一方で、関税は、物品、物に着目し、その輸入に際して、輸入者にかかわらず一律に税を徴収する制度であります。また、多国間の国際交渉の状況を始めとする国際的枠組みの中で税率の水準が規定されているものであります。
透明性を議論するにおいても、こうした内国税と関税の性質の違い、これに留意する必要があると思っております。
また、関税の暫定税率については、政府として、関税・外国為替等審議会関税分科会に具体的項目とともにお示しをし、外部の有識者に幅広い観点から御議論いただいており、その資料や議論を公表することで、政策決定に関する透明性の確保に努めているところであります。
また、先ほど申し上げた暫定税率については、国内産業保護の観点から実施をしているわけでありますけれども、常にその在り方を見直していく必要があるというふうに考えており、また、税率の水準も、まさに毎年、一年間の延長でありますから、毎年国会での御議論もいただいているところでございます。
○階委員 是非、関税の暫定税率の適用状況に関する資料、それから延長する場合の意思決定に関わる資料、これは国会に開示していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、外国為替等審議会における議論については、その資料また議論は公表させていただいているところでございます。
その上で、先般も、たしか御党からの御要求に応じてかな、資料を提出させていただいたと思います。また、そうした御要望も踏まえながら、しっかり対応させていただきたいと思います。
○階委員 是非よろしくお願いします。
今回の改正の中で、LDC卒業国に対する特恵関税の適用期間、これは従来一年間だったものを三年間に延長するということが定められることになっていますが、これを一年から三年にすることで、通常であれば、年間六百億から八百億ぐらい税収が、一年たてば得られるところが、三年になることによって、掛ける二、千二百から千六百億ぐらい、これぐらい関税の収入が落ち込むわけですね。
これから、カンボジアとかバングラデシュという我々が特恵を与えている国々の中でも特に大きい国々がその卒業国になってくるということも聞いておりまして、カンボジアなんというのは、やはり、内政の状況あるいは人権の状況などを考えると、これほど優遇する必要があるのかどうか。我々の関税の収入もそれだけ失われるわけですから、ここは慎重に検討すべきではないかと考えております。
この点については、時間もありませんので、大臣から、どのように考えるか、教えてください。
○加藤国務大臣 今般の改正で、LDC卒業国への特恵関税の適用期限を現行の一年から三年に延長するわけであります。
現在のLDC諸国に対して恒久的に新たな関税引下げを行うものではなく、諸外国の措置内容も踏まえて、これは、ドイツ、フランス、イタリア、英国、カナダも三年の延長措置を既に導入済みと承知をしておりますが、そうした状況も踏まえ、追加的に現行の一年を三年間にする、いわゆる二年間、追加的に二年間という期間に限って関税引下げの延長をするというものであり、減収の影響はある意味では限定的だというふうに考えております。
また、この措置は、二〇二三年のWTO理事会決定で、LDC卒業国の円滑かつ持続可能な移行期間の提供を奨励することが求められたことを受けたものであり、開発途上国との連携強化を図る上で重要と考えており、我が国もその理事会での決定に賛同したところであります。
また、G7広島サミット等で開発途上国との連携の重要性を訴えてきた我が国としても、こうした対応は早急に実施することが適当と考え、今回の令和七年度改正の措置内容として盛り込ませていただいたところでございます。
○階委員 やはり、相手国の状況を見ながらきめ細かい対応をするべきだと。
それから、ちなみになんですが、今、国際的な背景をおっしゃられましたけれども、アメリカは、第一次トランプ政権のときにLDC卒業国以外の国に対しても特恵関税制度を廃止したりしていますね。そういうことで、自国ファーストというようなアメリカに対して、もし国際的な途上国支援が大事だというのであれば、そこも物を申していただきたいと思っております。
最後になりますけれども、関税局で不祥事がありました。重要な公文書が漏えいして、これは、これから薬物の密輸などに対する取締りの実効性にも影響を与える非常にゆゆしき問題だと思っております。
不祥事を起こした当事者の処分は行われたようでありますけれども、幹部の処分は行われていません。この点についてはやはりしっかりとした厳しい処分が必要だと思いますが、最後にその点について確認させてください。
○加藤国務大臣 関税局の職員が、密輸入事犯の犯則嫌疑者を含む個人情報が記載された行政文書を保持した状態で帰宅しようとし、また、途中で飲食の上、当該文書を紛失するに至ったこと、これは誠に遺憾であります。税関行政に対する国民の信頼を大きく損なったことに対して、まずおわびを申し上げます。
今回の文書を紛失した関税局職員に対しては厳正な処分を行ったところでございますし、また、当該文書を紛失した直前の飲酒を伴う会合に参加した職員についても、文書を紛失した職員本人に当該文書を渡した者であるため、この職員についても厳正に対処いたしました。
監督者については、平素から必要な注意喚起を行うなど、職務上の義務違反は認められませんでしたが、改めて、適正な業務運営の監督を求めるため、私から関税局長に対しては注意、指導を行ったところでございます。
今回の事態、極めて重く受け止めております。今後このようなことが起きないよう、再発防止に向けた徹底を指示したところでありますし、また、指示がしっかりと徹底し得るように、これからもしっかりフォローアップをし、国民の皆さんからの信頼回復、信頼を得られるように努力をしてまいります。
○階委員 終わります。ありがとうございました。
○井林委員長 次回は、来る十四日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前九時四十一分散会