第13号 令和7年4月2日(水曜日)
令和七年四月二日(水曜日)午前九時三十分開議
出席委員
委員長 井林 辰憲君
理事 大野敬太郎君 理事 国光あやの君
理事 小林 鷹之君 理事 阿久津幸彦君
理事 稲富 修二君 理事 櫻井 周君
理事 斎藤アレックス君 理事 田中 健君
東 国幹君 石田 真敏君
伊藤 達也君 上田 英俊君
鬼木 誠君 田中 和徳君
土田 慎君 中西 健治君
根本 幸典君 福原 淳嗣君
古川 禎久君 牧島かれん君
松島みどり君 松本 剛明君
若山 慎司君 江田 憲司君
岡田 悟君 海江田万里君
川内 博史君 階 猛君
下野 幸助君 末松 義規君
長谷川嘉一君 原口 一博君
水沼 秀幸君 三角 創太君
矢崎堅太郎君 金村 龍那君
萩原 佳君 村上 智信君
岸田 光広君 中川 宏昌君
山口 良治君 高井 崇志君
田村 智子君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 加藤 勝信君
法務副大臣 高村 正大君
財務副大臣 斎藤 洋明君
外務大臣政務官 英利アルフィヤ君
財務大臣政務官 東 国幹君
財務大臣政務官 土田 慎君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 小林 出君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 今西 靖治君
政府参考人
(財務省主計局次長) 吉野維一郎君
政府参考人
(財務省国際局長) 土谷 晃浩君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 小見山康二君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 依田 学君
参考人
(日本銀行総裁) 植田 和男君
参考人
(独立行政法人国際協力機構副理事長) 宮崎 桂君
財務金融委員会専門員 二階堂 豊君
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委員の異動
四月二日
辞任 補欠選任
長島 昭久君 松島みどり君
根本 幸典君 鬼木 誠君
福原 淳嗣君 若山 慎司君
階 猛君 下野 幸助君
村上 智信君 金村 龍那君
同日
辞任 補欠選任
鬼木 誠君 根本 幸典君
松島みどり君 長島 昭久君
若山 慎司君 福原 淳嗣君
下野 幸助君 階 猛君
金村 龍那君 村上 智信君
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四月二日
消費税率五%以下への引下げとインボイス制度の廃止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七六八号)
同(志位和夫君紹介)(第七六九号)
同(塩川鉄也君紹介)(第七七〇号)
同(高松智之君紹介)(第七七一号)
同(辰巳孝太郎君紹介)(第七七二号)
同(田村貴昭君紹介)(第七七三号)
同(田村智子君紹介)(第七七四号)
同(堀川あきこ君紹介)(第七七五号)
同(本村伸子君紹介)(第七七六号)
同(青山大人君紹介)(第八一二号)
同(屋良朝博君紹介)(第八一三号)
同(神谷裕君紹介)(第八三一号)
同(篠原豪君紹介)(第八三二号)
ガソリン税凍結、消費税減税、インボイス制度廃止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八〇四号)
同(志位和夫君紹介)(第八〇五号)
同(塩川鉄也君紹介)(第八〇六号)
同(辰巳孝太郎君紹介)(第八〇七号)
同(田村貴昭君紹介)(第八〇八号)
同(田村智子君紹介)(第八〇九号)
同(堀川あきこ君紹介)(第八一〇号)
同(本村伸子君紹介)(第八一一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)
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○井林委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君、独立行政法人国際協力機構副理事長宮崎桂君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官小林出君、大臣官房参事官今西靖治君、財務省主計局次長吉野維一郎君、国際局長土谷晃浩君、経済産業省大臣官房審議官小見山康二君、大臣官房審議官依田学君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井林委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。小林鷹之君。
○小林(鷹)委員 おはようございます。自由民主党の小林鷹之です。
今日はIDA法の審議でございますが、我が国を取り巻く国際情勢が非常に流動的になっておりますので、まずその点から伺ってまいります。
正直、今、足下の国際秩序が大きく揺らいでいます。ウクライナ、ガザでの紛争は続いておりますし、覇権主義的な動きも見られる。そして、相互に通商政策の応酬が始まっている。そういう状況の中で、とりわけ日本がアメリカに輸出している自動車ですけれども、これに対しても明日から二五%の追加関税がかかっていく。年間、日本からアメリカには約百五十万台輸出されていて、日本からアメリカへの輸出総額の約三割を占めるということで、相応のインパクトがあろうかと思います。そして、日本製鉄とUSスチールの案件もある。
こうした中で大臣に伺います。
関税問題に限らず日米関係全般をいかにして今後維持そして強化していくべきなのか、政治家としての加藤大臣の見解を伺います。
○加藤国務大臣 御指摘のように、米国は、日本にとって、経済のみならず安全保障また人的交流含めて様々な分野において最も重要なパートナーであり、まさにそうした位置づけをしているものと認識をしております。
そうした中で、世界情勢も複雑化していく、こうした中で、国際社会においては様々な問題が更にいろいろ発生をしてきております。こうしたことに対応していくためにも日米両国協力して対応していくことが必要であり、そういった面においても日米関係を更に強化していく、こうした努力が必要だと考えております。
経済面について見れば、御承知のように、米国は日本にとって重要な貿易相手国であり、米国に対して最大の投資国であるなど、両国の中においては極めて緊密な結びつきが更に強まっていると思っております。
米政権において様々な政策の方向性が今出され、先ほどあった関税の話もそうでありますけれども、こうしたことが見えつつある中において、政府としては必要な対応を取っていく、これは我が国の国益を守るために当然だと思いますが。
あわせて、両国の国益を相乗的に高めるためにも両国が世界経済の安定に貢献していくことが重要であり、そのために日米両国が一層緊密に連携していく、また、特に日米の経済関係の強化、これに向けて様々なチャンネルを通じて、まあ先般、総理とトランプ大統領の間の首脳会談もありました。また、財務大臣間、あるいは各大臣間、あるいはそれぞれの事務局の間、あるいは民間も含めて、様々なチャンネルを通じて相互理解を深めて、より一層の連携強化を図っていく、この取組が我が国の国益のためにも必要だと考えております。
○小林(鷹)委員 今、加藤大臣からは、主に経済面を中心に日米関係の強化についての御見解をいただきました。それとともに、我が国の外交、安全保障政策の基軸というのは、言うまでもなく日米同盟であるわけです。その日米同盟につきまして、先日、トランプ大統領から、片務的だというような発言があったと。この発言に対しまして、石破総理は、過去にもトランプ大統領が同じような趣旨の発言をされていること、それを取り上げて、冷静に受け止めるべきだということをおっしゃっておられます。私もそのとおりだと思っているんです。思うんですけれども、ただ、私たち日本人が正面から向き合うべきメッセージがそこにあるんじゃないかというふうにも実は思います。
当然、日米安保条約というのは、第五条と第六条があって、日米両国がお互いに義務を負っている、いわば双務的だというような形になっています。しかしながら、日米安保条約が締結され、改定された当時と比べると、日本を取り巻く、あるいはアメリカを取り巻く安全保障環境というのは、大きく変わっています。冷戦は終わり、唯一のライバルとアメリカがみなす中国の台頭があって、今、アメリカは、世界最強のパワーではありますけれども、その相対的な国力というのは落ちてきている。そういう状況の中で、アメリカにとっての負担あるいは負担感が増してきている。それは、トランプ大統領のみならず、もしかすると、アメリカ国民の一定の割合の方がそう思っているのではないか、あるいは将来的にそう思うのではないか、その点について私たちは冷静にこれから見極めていく必要があると私は思っています。
なので、今我が国に問われているのは、アメリカにとっての日米同盟の価値をいかにして日本自身の努力によって高めていくのかということだと思っています。
大きく三点あると思っていまして、一つは、自分の国は自分の意思と能力で守る、そういう国になっていくということ、二つ目としては、アメリカあるいは世界から必要とされる日本になるということ、そして三つ目としては、これまで以上に国際社会に対して、あるいは国際秩序に対して主体的に働きかけていく、関与していく国になるということだと考えています。
今回この法改正の対象となっているIDAの増資というのは、今私が最後に述べた三点目に関わってくる話だと思っていまして、斎藤副大臣に伺いたいと思います。
トランプ政権下のアメリカが内向きになって既存の国際秩序に揺らぎが見える中で、今年、TICADの日本開催も見据えて、今こそ日本が途上国支援のリーダーシップを取っていくべきだと考えています。このことは、ほかの覇権主義国に主導権を取られないためにも重要だと思っています。日本としてIDAへの貢献の意義をどのように捉えているのか。そして、トランプ第一次政権ではIDAへのプレッジを減額修正したことがあるわけですけれども、今回、アメリカのプレッジをいかにして確たるものにしていくのか、そのための日本としてどう働きかけをしていくのか。この点について考えをお聞かせいただければと思います。
○斎藤副大臣 お答えいたします。
まず、IDAへの貢献の意義でございますが、IDAは、アフリカやアジアを中心とする所得水準が特に低い開発途上国に対する世界最大規模の支援機関であり、その動向は国際社会全体の開発政策の方向性に大きな影響を及ぼします。御指摘のとおり、米国は内向きとなり、その間隙をついて権威主義国の台頭を許した場合、既存の国際経済秩序が大きく揺さぶられることになりかねません。このような国際環境において、途上国が重きを置くIDAに対して日本が主要なドナーとして貢献し、リーダーシップを発揮することは、日本の国際社会における存在感を高めるとともに、国際保健、防災、債務問題等、日本が重視する開発課題をIDAの下で国際的に推進することにつながると考えております。
アメリカへの働きかけでございますが、米国のIDAに対する対応につきましては、米国は現在、大統領令に基づき、IDA第二十一次増資を含む国際機関に対する拠出をレビュー中であると承知をしております。我が国といたしましては、米国がIDAに貢献することは、これまでG7を中心とする同志国が築き上げてきた世界銀行も、その基盤とする国際経済秩序を維持していく観点から重要であると考えております。他のG7諸国等とも連携しつつ、マルチの国際会議や様々なレベルの米国とのバイの機会を活用し、米国のIDAを含む多国間の枠組みへの継続的な関与、中でも米国によるIDAへの貢献を促してまいりたいと考えております。
以上です。
○小林(鷹)委員 ありがとうございます。
世銀グループには西尾昭彦副総裁もいらっしゃいますので、是非、そうした中で日本のプレゼンス、リーダーシップを発揮していただきたいと思います。
そして、今御回答あったように、アメリカが内向きになっていく、そして仮に国際社会から引いていくことがあるとすると、そこには当然、真空空間が生まれていくわけです。その空間を誰が、どの国が埋めていくのかというところが今問われていると思います。
多国間主義、これはきれいなメッセージ、ナラティブですけれども、多国間主義、みんなで世界の平和をつくっていこうよ、そういうメッセージを出しながら空白を埋めようとする国もあるけれども、そのメッセージの裏には、米国一強の否定というものもあるわけです。そうしたことを意識しながら、やはり、我が国にとって極めて重要な、例えば東南アジアですとか太平洋島嶼国、そこに空白が生まれるとすると、他国がその空白を埋めるということを指をくわえて黙って見ているのじゃなくて、やはり日本は、相応の、世界にも誇る経済力がありますから、主体的にその空白を埋めていく、そういう積極的な外交を展開していく必要があると思っています。
ちょっと、時間の関係もありますので、順序を逆転させていただきますけれども、今回のIDAを通じた支援というのは、あくまであまたある途上国支援のツールの一つであるわけです。そもそも、途上国支援全般について、いかなる戦略あるいは大きな方針の下で関係省庁が連携、協働していくのかというのが重要だと思っています。
本来、我が国の外交戦略上は、全ての国が同等の重要性を持っているわけでは、私はないと思っています。そこには当然差異があるわけであって、例えば、今発言力が、存在感が増しているグローバルサウス、これを見ても、日本から見たときにサプライチェーン上重要な国もあれば、市場として重要な国もあるし、地政学上重要な国もある。当然、我が国から見たときにその国々にとっての重要性というものは異なってくるわけです。
そこで、伺います。
こうした複眼的な視点から、特に我が国にとって重要な国や地域については優先順位を高くして支援する必要がある。こうした優先順位は当然対外的に言う必要は全くないわけでありますけれども、ただ、こうした大きな方針があってこそ、バイやマルチのそれぞれの支援のツールをより効果的に生かすことができると考えています。こうした大方針は、私は、国家安全保障会議、いわゆるNSCのような政治的なハイレベルでしっかりと決定をした上で臨んでいく必要があると思いますが、政府の見解を伺います。
○加藤国務大臣 いわゆる開発支援ないし開発協力というものは外交の最も重要なツールの一つであるという認識、それは委員と全く一緒でございまして、まさにそれを戦略的、効果的にどうそれぞれのケースの中で展開していくのか。
我が国の開発協力政策の基本方針を示す開発協力大綱、二〇二三年六月、閣議決定をされました。有識者の議論を踏まえて行われたわけであります。その中においては、一つとしては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の下、平和で安定し、繁栄した国際社会の形成に一層積極的に貢献するということと、同時に、我が国及び世界にとって望ましい国際環境を創出し、信頼に基づく対外関係の維持、強化を図りつつ、我が国と国民の平和と安全を確保し、経済成長を通じて更なる繁栄を実現するといった我が国の国益の実現に貢献するという目的が掲げられております。
こうした基本方針の下で、支援対象国、地域の優先度を検討するに当たっては、その多様性をしっかり認識をした上で、実情に応じたテーラーメイドなアプローチで進めることが重要であると考えております。
これまでも、外務省を中心に関係省庁間で連携して、我が国全体として一層効果的な支援に取り組んでいく必要があると考えておりますし、その中においては、総理のリーダーシップというものも当然発揮されているところであります。また、省庁間連携の中で、MDBsやJICAといったマルチとバイのツール、これも効果的に組み合わせて、そうした開発協力を支援、その政策の展開、これをしっかり図ってまいりたいと考えております。
○小林(鷹)委員 ありがとうございます。
まさに今大臣がおっしゃったように、テーラーメイドなアプローチが私も大切だと思っていまして、先ほど、優先順位をつけることが必要だというふうに申し上げましたが、これを例えば外務省とかに言うと、いや、全ての国が大切なんですと。私もそう思うけれども、でもやはりしっかりと戦略的な優先順位はつけるべきだし、順位だけではなくて、一つ一つの国が本当に求めているものは何なのか、それに応えるツールを日本は持っているのか、持っていないとするとどういう国と連携していくのか、そうした大きなピクチャーというものを描いていく必要があると思っています。
これは財務省の枠を超えた話かもしれませんが、やはり日本政府として今こうした大方針が、確たるものがあるようにはちょっと見えていないので、この点について指摘をさせていただきました。
もう時間が参りましたので、済みません、ちょっともう質問は割愛させていただきますけれども、一点気になっていることは、報道によると、中国が途上国へのバイの融資の中で、中国自身に有利な返済条件となる秘密条項などを入れているという報道もありますので、是非、債務再編に当たっては、特定国が有利になるんじゃなくて、透明性と公平性を担保する形で進めていただきたいと思います。
最後に、この四月、恐らくワシントンに大臣は行かれると思いますので、日本のプレゼンスまた日米関係を更に強固なものにしていただくことを期待をして、質問を終えさせていただきます。
どうもありがとうございます。
○井林委員長 次に、萩原佳君。
○萩原委員 おはようございます。日本維新の会の萩原でございます。
まず、ちょっといきなりではあるんですけれども、質問通告なしにはなるんですが、トランプ関税について少しお聞きしたいなと思っております。
トランプさんの関税が日本時間の四月三日の午前五時に公表される予定となっています。世界全体で百十兆円を超える国内総生産が消失するという試算や、相互関税でGDPが押し下げられるという報道もあります。そのGDPの押し下げも、試算の範囲にもよりますけれども、〇・二四%であるとか〇・四%、物によっては三・六%みたいな形でかなり様々な試算があり、日本企業、日本経済、ひいては世界経済に与える影響というのは甚大かなと思っております。
このトランプ関税に関する評価ですね、現状、加藤大臣はどのように考えられているのか。そして、現状で予定しているアクション、財務省としての具体的なアクションみたいなものがあるのであればお示しいただければなと思います。
○加藤国務大臣 米国における関税を中心とした政策、だんだんだんだん中身が見えてきているというところでありますし、日本時間でいうとあしたの早朝になるんでしょうか、相互関税の中身も見えてくると承知をしておりますけれども、そうした措置が、やはり我が国経済また世界経済に対して御指摘のような様々な影響を与えかねないという懸念を私も持っているところであります。
その上で、日本政府としては、従前から申し上げておりますように、米国の関税措置、これまでも、鉄鋼、アルミ、そして今、自動車関税も取られてまいりましたけれども、その都度都度に、日本が対象となるべきではない旨申入れを行い、また、石破総理からも、あらゆる選択肢が検討の対象との発言がなされているところであります。
財務省としても、今後明らかになる措置を含め、米国の関税措置の詳細、またそれに伴う影響、これを十分精査した上で、関係省庁と連携しながら必要な対応を取っていきたいというふうに考えております。
○萩原委員 ありがとうございます。
もう一点だけ、ちょっとこれも通告なしなんですけれども、このトランプ関税によって、逆に日本としてもインフレのリスクというのもあるかなと思いますが、報復関税の措置を行う可能性というのはあるのでしょうか。
先月の三十一日、レビット報道官が日本は米の関税を七〇〇%かけているとか、また、トランプ大統領自身も、友の方が敵よりもたちが悪いというような発言があったというような報道もございますが、トランプ大統領が取引を迫るのであれば、報復関税、これを辞さずという方向もあり得るのかなというのを、他国、ブラジル等もそういう話が報道でありますけれども、その点についてはどのように考えられているのか、現時点での考えをお示しください。
○加藤国務大臣 アメリカ政府の中から様々な、今の米に対する発言等ございます。その中には必ずしも事実認識と異なるものもあるわけでありますから、そうしたことは一つ一つきちんと説明していく必要があるんだろうと思っております。
その上で、WTOとの関係では、我が国としては、WTO協定との整合性には懸念を有しているというところであります。その上で、具体的な検討状況、今、政府内でもいろいろさせていただいておりますけれども、それを今申し上げるのは差し控えていかなきゃならないと思っておりますけれども、総理の指示を踏まえて、関係省庁とも協力、連携の上、米国による関税措置の内容や我が国への影響を十分精査しつつ、引き続き米国に対して措置の対象から我が国の除外を強く求めていくという、こうした姿勢であります。
我が国の関税制度においては、関税定率法にWTO協定に基づく報復関税制度やセーフガード対抗措置が規定はされているというところではあります。これまでにおいて、セーフガード対抗措置については、第一次トランプ政権のときに各国が措置をしているところでありますが、我が国も、この発動の権利を留保する旨、WTOに対して通報を行ったという過去の経緯はございます。
○萩原委員 過去の経緯も、ありがとうございます。
本当に、これに対してどう対応していくのかというのはかなり影響が大きいところだと思っております。是非政府として、向こうの誤った発言に対してはきちんと訂正を求めること、また、報復関税等についても、余り受け身にならず、しっかりと対等な立場で対応を取っていただくことをお願いして、発言通告の内容に従って質疑させていただきたいと思います。
IDAと、あとIIC増資の意義についてお伺いいたします。
社会保険料や税負担の世代間の不均衡による現役世代の負担増に対する不満や批判、そして、いつまでたっても廃止されないガソリン等に対する当分の間税率、そして、インフレの進展等によって、国民の皆さんの生活は苦しくなっている状況にあります。また、財務省の皆様がおっしゃるとおり、国債債務残高、残高ベースでは年度末には一千百兆円を超えてG7での最悪の状態にあって、財政状態が依然として厳しい状況は理解しております。そうした中で、自国のために資金を使うことよりも海外のために資金を使うことに対しての批判、これもかつてないほど高まっているのではないかと考えています。
まずは、先ほどにもありましたけれども、このような中でも、今回の法案、IDA及びIICへの増資の対応がどのように日本の国益につながっていくのかについて説明することが求められるようになっていると思いますが、改めて、追加出資の意義、そして効果について御説明ください。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
IDAは、先ほど副大臣からも御答弁させていただいたとおりでございますが、アフリカ、アジアを中心とする所得水準が大変低い開発途上国に対する世界最大規模の支援機関となっておりまして、その影響は非常に大きいものがあると考えてございます。これをしっかり日本として支援していくということは、国際社会における日本に対する途上国の見方、これを良好なものにするということでございますので、我々としては、大変重要、意義深いものと考えているところでございます。
○萩原委員 意義深いというところと、効果というのは、済みません、各国に対してそういういい影響が出る、そういう効果ですかね。ちょっと聞き逃しもあったかもしれませんが、了解いたしました。
今回の出資予定額、拠出予定額、IDAとIIC合わせて約四千八百億円超というので、かなり巨額になっていて、慎重な判断が求められていると思っております。そういう点から、少しちょっと深掘りで聞かせていただきたいんですけれども、まずIDAの方ですね。
前回の第二十次のIDA増資に関しては、ワクチンの確保や医療体制の整備など途上国による新型コロナ対応、これを積極的に支援する中で、資金不足、これが懸念されたので、日本がリーダーシップを持って一年間前倒しで実行したものと理解しておりますが、かかるIDA20、結果としてどのような活動が生まれて、その活動に対する政府の評価、どのような指標に基づいて評価されているのか、具体的に御説明いただければなと思います。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
IDA第二十増資におきましては、PDCAサイクル、これに基づきまして、事前に定量的な目標を設定した上で、中間評価を通じて達成状況の検証を行い、その後のIDAの運用に活用する、こういう仕組みで回してございます。
具体的に、IDA20におきましては、国際保健、債務、インフラ、これらの各分野につきまして、具体的な取組、支援国数から成る四十一個の政策目標を設定しております。二〇二三年十二月に行われた中間評価におきましては、このうち三十八個の政策目標が順調に進んでいる、残る三個の政策目標につきましては、想定よりも遅れているものの進捗していると評価されています。その上で、これら遅れていると評価された政策目標につきましては、支援対象国との政策対話を強化するなどの取組をいたしまして、進捗を促進する対応策を即時に講じているところでございます。
中間評価の時点における成果でございますけれども、先生から御指摘のありましたコロナに関していきますと、二億一千二百万回の新型コロナワクチン接種を実施するとともに、約八千七百万人がIDAによる保健、栄養、人口サービスの恩恵を受け、四十八か国が防災を国家の優先事項に制定するなど、短期間ではございますけれども大きな成果を上げたことを確認しておるところでございます。
このような中間評価の結果を踏まえますと、我々政府といたしましても、IDA第二十増資については着実な進捗があった、こういうふうに考えているところでございます。
○萩原委員 ありがとうございます。
四十一の項目があって、三十八が達成、三つが不達成というか進捗がいまいちだというところですが、この手のPDCAサイクルは、どうしても公官庁がする評価というのは割と甘いなというのがあると思っておりますので、是非、達成可能なものを設定するのではなくて、予算、企業とかでもそうですけれども、少しハードルを上に上げるように、ちょっと具体の内容を聞いていないのであれですけれども、置きにいくような評価ではなくて、そういうふうな形で、少し無理をしているような評価というところを全て置かないと、こういう資金、PDCAサイクルというのはうまく回っていかないと思っておりますので、その評価についてはまた別の機会でお聞きできればとは思っております。評価について、PDCAサイクルを回していることに関しては了解いたしました。
次に、前回の決議、附帯決議が四つほどついていたと思います。このうち、全て聞くのもあれなので、二点、情報公開と日本人職員の登用機会に関してお聞きいたします。
まず、広報活動、二つ目のところの附帯決議であったと思いますけれども、広報活動や情報公開、そして国民への理解の努力については、先ほど私が最初にIDA及びIICへの出資の意義について改めてお聞きしているというところが証左だとは思うんですけれども、その手の広報活動、とてもじゃないですけれども余りうまくいっているようには見えない。国民に大して理解されていないように思いますが、具体的に、この前回以降の三年間、何をしてどのような効果を得られたと考えられているのか、お示しください。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
前回増資の際の附帯決議に付されました広報活動及び情報公開の充実につきましては、世銀グループを通じた開発援助活動及び我が国の貢献に対する国民の理解を得る上で大変重要だと考えてございまして、その後もその充実に取り組んできたところでございます。
具体的には、財務省におきましては、世銀グループを始めとする各国際金融機関への資金協力の意義や成果について、国民の理解を得られるよう、今回のIDA増資につきましても、財務大臣からの談話の発表でございますとか、様々な大臣級の会合、世銀・IMF合同開発委員会等ございますが、その際の財務大臣からの発信、あるいは、IDAを含む国際開発金融機関、これを説明をするパンフレットを作成いたしまして、各種会合で、財務省職員が伺う際にそのパンフレットを利用したりしまして、国際金融機関の活動について説明を積極的に行っているところでございます。あるいは、当然でございますが、財務省ホームページ、こういったものも活用した発信も行っているところでございます。
また、世銀におきましては、世銀は東京に事務所を設置してございまして、そこを拠点にいたしまして、日本国内においても様々な活動をしているところでございます。例えば、私どもから、ワシントンDCにある世銀の本部でございますが、そこの幹部職員には積極的な来日を求めておりまして、来日した際には、その世銀幹部職員による講演会の開催でございますとか、先ほど申し上げました東京事務所からは、SNSあるいはホームページ、ニューズレター、こういったメディアを活用いたしまして、積極的にその活動を発信しているところでございます。
今回のIDA二十一増資につきましては、それに加えまして、なるべく動画をということでございまして、日本の貢献あるいはIDAの意義、こういうものを説明をした数分程度の動画でございますけれども、これを新たに作成をいたしまして、それをホームページに掲載したりする新たな取組を行っているところでございます。
○萩原委員 ありがとうございます。
るる説明いただきました。動画等、あとSNS等だと思いますけれども、そこの活動に注力されるというのはよろしいかなと思いますが、なかなか、ホームページとかは興味がない人はそもそも見ないというところがあると思いますので、そこの効果というのはどれほどあるのかなというのは少々疑問に思っております。また、先ほどパンフレットを作っているというところだと思うんですけれども、何万部印刷したのか分からないですけれども、なかなか、パンフレットというのも一般の方がどれだけ見ているのかなというところは少々思いますので、是非、より部数とかも多い形で、そして目につく場所に置くとか、配るだけ、説明で使うだけではなくて、一般の方が駅頭でも取りやすいようにとか、いろいろあるとは思いますので、是非、そういう対応で、IDAに対する出資理解というのが進むような努力を続けていただければなと思っております。
次に、三つ目の日本人職員の登用機会に関する活動についてお伺いします。
前回は、二〇二一年十二月、世界銀行グループの日本人職員は二百十八人いて、二〇一六年と比較して二六%増加しているという過去の答弁があったかと思いますが、今回、二〇二四年六月末時点で二百五十六名となっており、割合でいうと一七%の増加と、その伸びは緩やかになっているようにも思えます。かかる事実に関する評価と、この三年間、また申し訳ないですけれども、具体的にどのような活動をしたのか、その活動をお示しください。また、今後、IDA21の期間中、新たな人員拡大のための施策を考えているのであれば、その施策もお示しください。短めでお願いします。
○土谷政府参考人 日本人職員数につきましてでございますが、前回、三年前の増資以降、三年経過してございますが、その間に絶対数としては十六名増加したところでございますが、全体の世銀の職員数が増加したことに伴いまして、割合としては議員御指摘のとおり幾分低下したところでございます。
この間何をしていたということでございますけれども、私どもといたしましては、世銀幹部との面会の機会などを捉え、日本人職員の積極的な採用、昇進、これを要請するとともに、世銀幹部の来日時、これを含めまして、リクルートミッションの実施、あるいはキャリアセミナーの実施、こういった地道な取組をしてございます。あるいは、世界銀行内では既にいる日本人職員もございますので、その方々の昇進、こういったことも目指しまして、日本理事室が主導いたしまして、いろいろな、様々な中堅、若手職員のコーチング、こういった地道な取組も行っているところでございます。
これらの取組の一つの成果としてでございますが、実は、昨年秋に再度リクルートミッションというものを行いまして、そこでは新たに十二名の採用が決定されているところでございます。この増加は、恐らく今年の中頃にまたまとめられます日本人職員数の総数、これの増加に寄与するものとは思ってございますが、いずれにせよ、日本人の職員数の増加及びその昇進、これは大変重要な課題と我々受け止めておりますので、引き続き、地道ではございますけれども、活動を続けてまいりたいというふうに思っております。
○萩原委員 今のをお聞きすると、おっしゃるとおりすごく地道というか、特効薬はないのかなというような形の活動をされているかと思います。IDAに対する国別の出資でいうと、日本はかなり大きいというか、二位のところだと思いますので、大口の出資者として、より多くの日本人職員を、送り込むという言い方はあれかもしれませんが、送り込んで、我々が考える各活動の、あるべき活動というものを、人がいないとできないと思いますので、是非その努力も尽力も続けていただければと思っておりますので、よろしくお願いします。
済みません、ちょっと時間がないので、いろいろ聞こうと思っていたんですけれども、IICに関してお聞きいたします。
今回のIICについては、第三次増資の割当額が約一・三億ドルの百九十三億円ということであり、今回はIDAと違ってドル建ての出資国債となっております。
ここでお伺いいたしますが、IDAの出資国債は円建てベース、IICの出資国債はドル建てベースということで、ある意味、予算の安定性という意味では、ドルか円かというところの為替リスクを考えると明らかに円建てベースの方がよいようにも思えるんですが、なぜIDAとの間で、使用通貨、これが異なっているのでしょうか。どのような経緯で出資の差異が生じたのか、御説明ください。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の様々な国際開発金融機関、これはIDAもあればIICもあるわけでございますけれども、その出資の払込方法につきましては、各機関の加盟国の代表から成る総務会の増資決議で定められているところでございます。
IDAを含めた多くの国際開発金融機関につきましては円建て国債による出資が認められている一方、IICにつきましては米ドル建て国債のみを認めることが今般の増資に当たっての総務会の決議で決定されているところでございます。
その理由でございますけれども、IDAを含む他の機関が主に政府を対象に融資を行うのに対しまして、IICにつきましては、民間企業を対象に、かつ、相対的にリスクが高く、少額で短期の融資や出資を行うことから、資本の質でございますけれども、これを高める必要性がございます。そのため、より流動性の高い米ドル建て国債が求められているということで、米ドル建てのみというふうになっているものでございます。
○萩原委員 流動性が高いとはおっしゃいますけれども、結局向こうの為替リスクをこっちが負っているだけじゃないのかなという気もしていて、今の、総務会の理由で引き受けたということで、仕方がないとは思いますけれども、その判断、唯々諾々と聞いていていいのかなという気はしております。
あと、ちょっと話をIICから広げてお聞きいたしますけれども、結局、現時点で我が国が発行しているドル建ての出資国債は何ドル分あるのでしょうか。また、令和七年度におけるIICに係る出資国債の償還見込額は幾らになるのでしょうか。また、直近年度の支出官レート、今年でいうと百五十円だと思いますけれども、それと、償還時の実際の為替レートにより生じた為替差損益というのはトータルで直近でいうと幾らぐらいになっているのか、お示しください。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
現在、我が国が発行しております外貨建ての出資国債は、今回、今審議いただいてございますIICについて予定しているものだけでございまして、これがお認めいただければ、この金額が一・三億ドルということでございます。まだ発行されているわけではもちろんございません。
本年度予算におけるその償還見込額につきましては、千八百万ドルというふうになってございます。これを令和七年度予算の支出官レート、一ドル百五十円でございますけれども、これで換算いたしますと、発行見込額が約百九十三億円、令和七年度予算に計上された償還見込額が約二十八億円、こういうふうになっているところでございます。
○萩原委員 今の御回答の中で、為替差損益の額というのはないというので、今発行しているやつがないから直近でいうとないという理解でいいですか。
○土谷政府参考人 まさに御理解のとおりでございまして、今発行されている外貨建て出資国債というものはございませんので、その部分、償還差損、差益、そういったものは発生する状況にはございません。
○萩原委員 ありがとうございます。
そういう意味では、外貨建ての出資国債というのは余り発行していないということだと思います。そういう意味で、総務会で決められたから今回のやつを発行するという対応というのは、為替リスクを負うという意味では少しどうなのかなという気がしております。
海外取引を行う民間企業は、そういう為替変動のリスク管理をするために先物為替予約を取ったりとか、一定、為替リスクを抑えるような対応を取られています。皆さんにとっては釈迦に説法かもしれませんけれども、為替リスクは、管理可能なエクスポージャーと管理不能なボラティリティーに分けることができる。その管理可能なエクスポージャーをどう一定額以下に抑えていくのかというのが非常に大事だと考えておりますけれども、今お聞きしたら、現在、出資国債に関しての為替リスク、さらされている部分は一・三億ドル程度ということで、今の時点では多くないとは思っておりますが、これは国全体で考えるとかなりの額になるのかなと思っております。
そういう意味では、ちょっとボラティリティーの範囲が民間とは国は違うとは思っておりますけれども、こういうエクスポージャーをベースにした為替リスクの対応はどのように大臣として考えられているのか、お示しください。
○加藤国務大臣 おっしゃるように、為替リスクを負わずに済むという意味においては、可能な限り円建てを志向していくということは一つの方向だと思っておりますし、現に多くの国際開発機関に対しては円建て出資で行っているところでございます。
今、ドル建てでなければならないのは、今回お諮りをしておりますIICと、国際金融公社、IFCがドル建てということになっておりますけれども、これは、政府部門を対象とする業務に比べるとリスクの高い民間企業を対象とする業務を行っているとの性格上、米ドルでの流動性をそれぞれの機関が重視するという観点から、米ドル建てでまずコミットメントが行われ、そして、その結果として米ドル建てでの出資を行うということになっております。
当然、委員御指摘のように、その場合には日本政府が一定の為替リスクを負うわけでありますから、IICとの間では次回の増資における円建て出資の可能性についても議論を行っていきたいと考えております。
○萩原委員 リスクの高いところに対する出資だからこそドルだというのが大本だと思いますので、そのリスクをより広げるようなことがないように、是非、出資を行う場合でも慎重に行っていただければなというところで、時間が過ぎておりますので、私の質問は以上とさせていただきます。
ありがとうございました。
○井林委員長 次に、櫻井周君。
○櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。
本日は五十分時間をいただきまして、誠にありがとうございます。また、直前になりまして順番の変更をいただきまして、御協力いただいた皆様、誠にありがとうございます。
それでは、質問に入る前に一言、今回の法案審査の前提の話をさせていただきます。
先ほど小林委員からもお話ございました、まさに今、国際協調といいますか、その枠組みが大きく揺らいでいるところでございます。
二度の世界大戦の反省を踏まえて、ブレトンウッズ協定に基づいてIMFと世界銀行は創設されたはずでございます。そして、そのときには、自由貿易の振興による共存共栄で世界の平和を実現していこう、こういうビジョンが掲げられておりました。一九七一年のニクソン・ショックでアメリカ・ドルを基軸とする固定相場制は崩れて、ブレトンウッズ体制は終わりを迎えたというふうには言われておりますが、ただ、世界銀行とそれからIMFは、その後も、世界の通貨と金融の安定、そして開発途上国支援、貧困撲滅という分野で大きな役割を果たしてきております。ところが、こうした流れが今、戦後八十年の積み上げが崩れかけようとしているところです。
トランプ大統領は四月二日が解放の日というふうにおっしゃっておられますが、この解放というのが、人類の更なる繁栄への扉が開かれる、そういう意味での解放なのか、それとも地獄への扉が開かれてしまう解放の日なのか、これは今後次第だ、我々次第だというふうにも思います。
萩原委員から先ほど、トランプ関税についての質問がございましたが、答弁としては、現時点で差し控えるという御答弁でございました。
という前提を置いた上で、皆さんおそろいですので、質問の方に入らせていただきます。
本日で、アメリカの自動車追加関税、二五%追加で、従来の二・五%に加えて二五%ですから二七・五%。鉄鋼、アルミについては既に先月から二五%の関税が始まっているという中で、世界の経済が漂流し始めているというふうに感じております。
日本銀行の植田総裁は、再来週、アメリカ・ワシントンDCで開催されます世界銀行、IMFスプリングミーティングスに、まあ過去、これまでは出席をされてきたというふうに承知をしております。今年についてはどうされるのか、先ほど与党の小林筆頭からは行かれる方向みたいな発言もございましたけれども、私も行っていただいた方がいいのかなというふうには思っております。そして、ワシントンDCに行けば、G7とG20の財務大臣・中央銀行総裁会合等も開催されるものと承知をしておりますので、そこでアメリカのベッセント財務長官、FRBパウエル議長とも意見交換する、そういった機会があろうかと思います。是非、今こうした世界が直面する課題についても、大臣、それから総裁、しっかり議論していただきたい、そして道を切り開いていただきたいというふうに思います。
それでは、先に日本銀行総裁にお尋ねをさせていただきます。
アメリカのトランプ政権の関税政策によって、アメリカでは輸入物価は上昇し、物価を押し上げるというふうに予想されています。そうすると、政策金利は高い水準でとどまるというふうにも予想されますが、総裁はアメリカの物価と金利をどのように見通しておられるのか。そのほかあと二点まとめてお尋ねしますので、まとめてお答えいただければと思います。
それから、アメリカの物価高で消費が冷え込むと、アメリカの経済は後退するというふうにも考えられます。かつて、アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪を引くというふうにも言われたことがございます。これは日本に限ったことではなく、やはり世界の経済が景気後退リスクということにさらされるというふうにも考えますが、総裁は世界経済の見通しをどのようにお考えなのか、これも教えていただければというふうに思います。
そして、アメリカの金利が高いと世界の金利も高止まりするということになります。世界的に高い金利水準と世界経済の景気後退によって、開発途上国の債務危機の発生リスクというのが高まってしまうのではないのか、こんなふうにも懸念をするところですが、総裁はどのように見通しておられるのか、分析されているのか。
この三点、まとめて御答弁をよろしくお願いいたします。
○植田参考人 お答えいたします。
まず、トランプ政権の関税政策でございますが、委員御指摘のように、今晩これからアナウンスされるというふうに予想されているものもありますので、全容はまだ不透明な状況が続いております。
その上で、アメリカの物価への影響ですけれども、まず短期的には、輸入物価が上昇しますので、押し上げに利くという見方が支配的かと思います。ただ、やや長い目で見ますと、関税の導入等が、この後も触れますが、経済活動を抑制し、物価に下押し圧力を発生させるという経路も考えられますので、不確実性は大きいと見ております。
その上で、FEDの政策に具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが、こうした関税政策を含む各種の政策の経済、物価への影響を見極めつつ、金融政策を適切に運営していくものというふうに考えてございます。
関税の世界経済への影響ですけれども、不確実性が高いということを申し上げた上で、関税の範囲、規模次第では、各国の貿易活動に大きな影響が及ぶ可能性がありますし、また、家計や企業のマインドにどういう影響があり、それが支出全体にどういう影響があるかという点も大きいかと思います。
さらに、トランプ政権は、関税政策以外に、移民政策、財政政策、規制緩和など様々な政策を今後打ち出す、あるいはより具体化していくということが予想されますので、こうした影響も含めて、アメリカ経済、アメリカの新政権の政策の影響が世界経済、我が国経済に及ぶ影響を総合的に見ていくことが重要であると考えています。
まだ残念ながら不確実性が高い状況ですので、今後の政策の展開を見極めつつ、経済への影響をより正確に見ていきたいと思っております。
それから、新興国でございますが、総じて見ますと、緩やかな経済の改善が続いております。また、インフレ率が一頃よりも低下してきている中で、金利も、全体として見れば低下してきております。
ただし、中には債務残高が増加傾向にある国も見られていますので、景気の下振れに伴う財政収支の悪化や金利の大幅な上昇が見られる場合には、新興国債務への懸念がマーケットで高まるリスクもあると認識しております。こうした点については、私どもも注意深く見てまいりたいと思っております。
以上でございます。
○櫻井委員 御説明ありがとうございました。大変勉強になりました。
ただ、最後の開発途上国の債務の話については、債務の残高は一定であったとしても、金利が、以前、一頃に比べて途上国では下がっているとおっしゃいましたけれども、ただ、外貨建て、ドル建てで借りているものについては、コロナ前に比べて随分高い数字になっているわけですから、そうすると、利払い費というのはもしかしたら増えている部分も出てきているのではないのか、この利払い費の負担というのも注目していかなければいけない、このようにも考えます。
また、アメリカの経済の見通しについても御説明いただきまして、ありがとうございます。
FRBのパウエル議長も、三月のFOMCの後の記者会見でこのような発言もされております。新政権は四つの分野で重大な政策変更を実施するということで、四つというのはトレード、イミグレーション、フィスカルポリシー、レギュレーションということで、四つ挙げておられるわけですが、そのうちトレード、これはまさに関税政策で、これは短期的には物価を押し上げる効果があるという御説明でした。
それから、イミグレーションについても、移民排斥とも取れるような政策を今やっておるわけで、そうすると、人件費上昇を通じて物価上昇というのもあるのかな、こんなふうにも見通し、考えます。
それから、フィスカルポリシーについては、大規模減税を予定している、こんな報道もあって、そうすると、市中に資金があふれることで物価高を引き起こすのではないのか、こんなふうにも考えられます。
いずれも物価高の要因になるのではないのかというふうにも考えるものですから、これらも含めて、まさにG7、G20の財務大臣・中央銀行総裁会議でしっかりと議論して、世界の経済の安定のために力を尽くしていただきたいというふうに考えるんですが、これはまだ決まってはいないでしょうけれども、ワシントンDCへの出張について、総裁の抱負といいますか、意気込みを是非お聞かせいただければというふうに思います。
○植田参考人 今月下旬にワシントンで開かれる会議でございますので、そのときまでには、今日この時点よりは関税政策等を含めましてもう少し情報が増えていると思いますし、その影響の分析も各国がしていると思います。これらを持ち寄って、私どもも持っていき、政策担当者の間で真剣な議論を行っていきたいというふうに思っております。
○櫻井委員 植田総裁、ありがとうございました。
総裁への質問はここまでですので、退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。
○井林委員長 植田総裁、御退席ください。
○櫻井委員 続きまして、今回、法案のメインのテーマになっております、IDA、国際開発協会への増資についてお尋ねをいたします。
三年前のIDA20では、各国、どのようなプロジェクトに支援をして、どのような成果が上がっているのか、局長からでよいので御説明をよろしくお願いいたします。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
IDA二十次増資における成果を分かりやすく説明するという観点から、私の方からは、個々のプロジェクトベースでのお話をさせていただいた方がよろしいかなと思ってございまして、今回はパキスタンの事例を一つ紹介させていただきたいと思ってございます。
パキスタンは、全体でいいますと直近でIDA第四位の受益国でございますので、極めてパキスタンにとってIDAは重要ということでございます。
その上でですが、二〇二二年夏にパキスタンは国土の三分の一が水没するという大洪水に見舞われました。IDAは、ここにおきまして、洪水により被害を受けた住居を、単に水害だけではなく地震等の様々な災害に対して強靱性かつ安全性を有する住宅として再建することを、これは現在進行中でございますが、支援しているところでございます。
その成果ということでございますけれども、IDAの支援で再建中又は今後再建予定の住宅数は四十万戸に上りまして、百四十万人の住民、世銀の計算によりますと、うち半数が女性ではないかということですが、が恩恵を受ける見込みとなってございます。
また、この案件と連携する形で、世界銀行東京事務所に設置された東京防災ハブやこれを運営する日本の信託基金を活用いたしまして、日本の、ビルド・バック・ベター、この考え方を生かす形で、環境に優しく、気候災害に強い学校再建を同じ地域で行っているところでございます。こうしたことにより、日本の防災の知見と経験を生かした、日本の顔が見える支援、こういうものをパキスタンにおいて行えているというふうに考えてございます。
今後とも、こうした日本の優先課題に合致し、日本の知見を生かした有意義な事例を幅広く展開できるよう、IDAとよく連携し、また、IDAを活用していきたい、そういうふうに考えているところでございます。
○櫻井委員 分かりやすい説明をありがとうございます。
まさに災害が起きたときに学校施設が日本においては避難所になるわけなんですが、こうした考え方、よりしっかりとしたものを、災害に耐え得るものをということで、日本のODAでもそうした考え方でやってきたところ、過去には、災害が起きたときに、ほかの建物は結構崩れちゃったけれども、日本の援助でできた学校の建物はしっかり残っていた、そこが避難所として大変役に立ったというような話、もちろん、教育施設としても役に立っているわけなんですけれども、プラスアルファの効果もあったというような話を私も聞いたことがございます。パキスタンにおいても、そうした成果を上げつつあるということで、よく分かりました。
こうした国際機関への協力ということについては、今回も五千億円弱の大変巨額の資金を拠出する、貢献するということなのでありますから、国民への説明、国民への理解というのが大変重要だというふうに思っております。そういった意味で、分かりやすい説明、そして、本当に日本のこうした貢献が世界の人々の福祉、人類の福祉の向上、ひいては世界平和につながっているんだということをしっかりと説明、引き続きお願いいたします。
資料一には、IDAの活動について数字で並べてあったもの、これは世界銀行のアニュアルレポートにこうした形でIDAの部分だけ取り出してまとめてありましたので、つけさせていただいております。こうした全体像を示しつつ、しかし、この全体像では個別にどんなふうに役に立っているのか、ナラティブというのがなかなか見えてこないものですから、そうしたところを、個別の、先ほどの御説明のような形で補っていただければというふうに思います。
続いて、日本の貢献への認知ということなんですが、国際機関を通じての援助というふうになってくると、なかなか日本の顔が見えにくいというところはあろうかと思います。
資料二におつけしておりますのは、私が去年ジャカルタに行ったときに撮った写真なんですけれども、ジャカルタでは今現在、地下鉄が建設中でございまして、南北線の整備、入口のところにこうした写真があって、日本の援助でできましたよということは書いてあるわけなんですが、ただ、国際機関がやった支援ですと、そこに一定割合日本の貢献が入っていたとしても、なかなか日本の日の丸だけぺたっとつけるわけにもいかないということもございます。
IDAを通じた日本の貢献というのは被援助国にどのように認識されるのか。顔の見える援助にはなかなかしにくいとは思いますが、どういうふうにしてそこを、日本の貢献というのが伝わっていくように努力されているのかについてもお願いいたします。
○加藤国務大臣 御指摘のように、バイと比べるとマルチの援助というのはなかなか日本の顔が見えにくいというところは確かにあるんだろうと思います。
その上で、IDA増資においては、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、自然災害に対する強靱性の強化、質の高いインフラ投資の推進といった、バイの支援でも日本が進めておりますそうした施策を提起することによって日本との結びつけをしっかりとしていく、そしてまた、今申し上げた課題をIDAの重点政策等に位置づけてきているところであります。
大臣級会合である世銀・IMF合同開発委員会や支援対象国の代表者の出席するIDA増資会合においても、そうした点も含めて日本の貢献をアピールしているところでございます。
今後とも、支援対象国との間でのバイの面会、あるいは本年八月に横浜で開催されるTICAD等の機会も活用しつつ、対外的なコミュニケーションを強化し、そうした日本のプレゼンスというものに対する理解を深めていくとともに、IDA案件におけるJICA等日本のバイの支援との連携なども通じて、日本の知見、経験も生かしたそうした開発協力を進めていく、また、その中を通じて日本の顔がしっかり見えていけるように努力をしていきたいと考えております。
○櫻井委員 ちょっと、通告した質問を一つ飛ばして、次の質問に移らせていただきます。
今回のIDA増資への貢献比率ですけれども、前回に比べて、IDA20に比べて低下しておりますけれども、これは何で低下してしまったんでしょうか。資料三にはその推移をつけておりますけれども、これについて御説明をお願いいたします。
○加藤国務大臣 御指摘のとおり、今回のIDAに対する貢献シェアは、ドル建てでは前回の一三・八%から一〇・五%と低下をしているところでありますが、ドナー国としては二番目という位置はキープをしているところであります。
このシェアの低下は、明らかに、前回の増資と比べて対ドルレートが大きく円安となっているということでございますので、その中でもできるだけこうした支援をしていくということで、厳しい財政事情の中でありますが、努力をした結果、円建てでの支援額で見ると、前回三千七百六十七億を今回は四千二百五十七億円と増加をさせていく中で、引き続き、低所得国に対する日本の貢献努力、支援体制、これは変わらないということを示すことができたと考えております。
○櫻井委員 まさに円安、私は行き過ぎた円安だというふうに思っておりますけれども、それゆえに日本の世界経済におけるプレゼンスが大きく低下してしまっていることがこういったところにも表れてしまっているのかなというふうには思います。
続きまして、世界銀行、IMFのスプリングミーティングスについてお尋ねをいたします。
この中で、グローバル・パーリアメンタリアン・フォーラムというのが開催されているというふうに承知をしております。その会議の様子について、もし、局長、分かれば御説明いただけますでしょうか。あわせて、日本の国会議員がこうしたグローバル・パーリアメンタリアン・フォーラムに参加する意義があるのかどうかについても併せて教えていただければというふうに思います。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
グローバル・パーラメンタリアン・フォーラム、これは、百四十か国以上の国の国会議員が加盟する世銀、IMFの議員連盟、すなわち、世界銀行とIMFが共催で、これら両機関の役割やその中での国会議員の役割について議論する場であるというふうに承知しております。
このフォーラムは、各国の議員が世界銀行とIMFの取組に対する理解を深めるとともに、各国の議員からは両機関に対し各国議会の優先課題を伝える、そういうことができる、いわば双方向のコミュニケーション強化に役立つ重要な場だというふうに聞いているところでございます。
このように日本を含む各国の国会議員の方々が同フォーラムに参加をされ、世銀とIMFについて理解を深めることは、世銀、IMF、いずれの両機関にとっても大いに歓迎するものだというふうに考えてございます。
○櫻井委員 どういった国が実際に参加されているのか、例えば、G7の国でどこが参加しているのか、もし分かれば教えていただけますか。
○土谷政府参考人 申し訳ございません、ちょっと、つぶさな、会合自体の中身についてまでは把握してございませんが、百四十か国ということでございまして、世界銀行は特にでございますけれども、各国の国会議員との連携を大変重視してございます。これは日本とも同じでございまして、日本にも世界銀行の議員連盟というものができているところでございまして、我々が把握しているところでは、先進国、当然G7、更に言えば、特にヨーロッパはやはり熱心だというふうに聞いておりますので、かなりヨーロッパの国会議員の先生の方々は熱心に参加している場ではないかというふうに考えてございます。
○櫻井委員 行政府だけでなく、この世界銀行、IMFのスプリングミーティングスでは立法府もプレゼンスを示している、こういうことかと思います。
今日は、たまたまだと思いますが、世界銀行の議員連盟の松本会長も席にいらっしゃいますし、高村事務局長は答弁席にいらっしゃるということで、議員連盟のメンバーの派遣について検討したらどうですかということを答弁を求めたいなという誘惑には駆られているんですが、今日は法務副大臣としての御出席ですので、そこまでは求めないということでございますが、是非議連でも検討していただければというふうに思います。
続きまして、アフリカ支援についてもお尋ねをいたします。
IDA融資の七割はアフリカ向けというふうに承知をしております。我が国がアフリカ諸国を支援する意義についても、改めて御説明をお願いいたします。
○加藤国務大臣 アフリカ諸国、ちょっと私、最近は行けていないんですけれども、コロナの前にも何回かアフリカにも訪問いたしました。本当に若い方が多い。そして、一方で、豊富な天然資源にも恵まれている国もある。大変ダイナミックな経済成長あるいは社会の活動を感じたところであります。
IDAは、支援対象国の過半、支援額の七割をアフリカが占めております。IDAは、その豊富な知見やネットワークを生かして、JICAなどバイの援助機関では必ずしも手の届きにくい国や地域に対しても追加的な支援を行うことが可能であります。そのためにも、IDAを主要なドナー国として支えることは、今後大きな成長が見込まれるアフリカとの協力を一層強化するとともに、日本の開発優先課題を推し進めていく上でも極めて重要と認識をしております。
○櫻井委員 今おっしゃられたとおり、アフリカ諸国は人口増加率も非常に大きくて、今、現時点において世界の人口の五分の一弱ぐらいはアフリカだったというふうに記憶をしておりますし、今後の、この増加率でいえば、十年後、二十年後にはアフリカが世界の人口の四分の一とかを占めるということにもなろうかと思います。国の数も、世界約二百か国ある中でアフリカは五十か国以上ということで、四分の一を占める、いわゆる国連の総会での議席数でいえば四分の一を占めるということで、国際的にもそれなりの発言力のある地域だというふうに承知をしております。
そういったところとしっかりと関係を結んでいくことは私も大事だと思いますが、一方で、大臣も今お話しされたとおり、日本からアフリカに行くというのは、結構遠くて、直行便もないということですから、なかなか支援の中でも手が届きにくい部分はある。そういうところを、国際機関と連携することによって更に進めていけるというふうにも承知をしております。
今年八月に横浜で開催されるTICAD、トーキョー・インターナショナル・カンファレンス・オン・アフリカン・ディベロップメント、東京と名前がついているけれども今回は横浜で開催されるという第九回アフリカ開発会議でございますが、これとのシナジーといいますか、どういうふうに効果を発揮させていくのか、この点についても御答弁をお願いいたします。
○加藤国務大臣 まず、世銀自体が様々なアフリカ支援を実施しておりますし、このTICADの共催のメンバーでもあります。IDA増資とTICAD9とのシナジーを図っていくことは大変重要と考えております。
財務省として、この夏のTICADに向け、IDA増資を活用することによるシナジーを念頭に置きつつ、世界銀行、アフリカ開発銀行等の国際開発金融機関やJBIC、JICAの機能の活用などを通じて、民間主導の経済成長の後押し、債務問題の対応を含む財政の健全性の確保、食料、栄養、保健等の社会的基盤の強化、サプライチェーンの強靱化や税関、関税分野における支援等の取組をTICADで打ち出すべく、現在検討しているところでございます。
こうした取組によって、アフリカにおける安定的で持続的な経済成長が実現されていく、また、日本との、その中で連携がしっかり強化されていく、そういった形での貢献を図ってまいりたいと考えております。
○櫻井委員 続きまして、次、日本人職員の比率についての質問もさせていただきます。
先ほど萩原委員からも質問ございました。総括的な質問は先ほど御答弁いただいているので、ちょっと割愛をさせていただいて、より具体的に、じゃどうしたらいいのかということについて踏み込んで質問させていただきたいと思いますが、その前に、今日はせっかくJICAから副理事長も来ていただいているので、ちょっと、通告していないですが、お尋ねをさせていただきます。
結局、世界銀行とかで日本人職員を増やそうと思っても、英語とか、それから、そもそも世界銀行はある種特殊な業界だと思うんですね。そうすると、職歴といいますか、職務経験を積み上げるのはなかなか難しいんですが、そういった意味では、JICAはまさに同じような仕事をしている同業者同士でありますので、転職するには、JICAから世界銀行とか国際機関に転職するというのは、一つのルートとして日本人にとっては非常に有効なルートなのではないのかというふうにも思うんですが、どうでしょうか。結構、JICA出身で国際機関で活躍されている方はたくさんいらっしゃると思いますけれども、こういったルートとしてJICAを活用していく、つまり、JICAが人材の供給源にもなっていくんだ、こういうお考えはいかがでしょうか。
○宮崎参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、私どもJICAの職員で、まず世界銀行を始めといたしまして、アジア開発銀行あるいは米州開発銀行等、出向者を出させていただいております。また、JICAを経ましてそういった開発金融機関に転職している者も何人か出ていることは確かでございまして、私どもJICAの経験がそういった世界銀行ほかの開発銀行で大変有効に活用されておりまして、活躍しているということは事実でございます。
そういったことはございますけれども、私どもといたしまして、JICAでもそういったノウハウを持っている人材は非常に確保しておきたいという事情もございますので、私どもの経験をルートとしてそのまま世界銀行等に行っていただくのがよろしいかどうか、なかなか私もお答えしにくいところでございますけれども、実際、ノウハウを活用いただけるということは事実でございます。
○櫻井委員 副理事長が率先して、辞めて出ていけとは言えないというのはよく分かりますけれども、ただ、出し惜しみをするのではなくて、むしろJICAのネットワークが世界に広がるんだというような大きな気持ちで捉えていただければというふうに思います。出向で行かれてそのまま帰ってこないということについて恨みつらみを言うのではなく、むしろ、よくやったねと言って、また次の人を快く送り出していくような、そんな寛容さをお願いしたいというふうに思います。
似たようなことは国土交通省でも聞きまして、世界銀行やアジア開発銀行に出向させたらなかなか帰ってこないというか、行ったら終わり、出向のつもりで行かせたのに帰ってこないということで、ぼやきとも取れるようなことをお伺いをしたことがございます。
ただ、そうやって日本の人材が世界で活躍するというのも一つ大事なことだと思いますので、もちろん財務省からも出向されている方はたくさんいらっしゃると思いますので、そういった方も大いに送り出して、頑張っていただければというふうに思います。
続きまして、日本人の採用に当たってよく言われるのは、語学力とかあと学位、学位も、日本だと大卒で働くというのが一般的ですけれども、こうした国際機関においては修士とか博士を持っているのが前提となっていることが多いということで、なかなかこうしたところで不足をしている、それから、先ほど申し上げた職務経験不足というのが障害になっているというふうな話も聞くところです。加えて、日本人女性で結婚されている方については、名字の問題というのが障害になっている、こういう話も併せて聞きます。
まずちょっと事実関係をお尋ねしますが、世界銀行においては、結婚前の姓である通称というのは使えるのかどうなのか。いかがでしょう、御存じでしょうか。一応、通告のときにちらっと申し上げたんですけれども。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
先生の御質問を受けまして、私どもの方で世界銀行の方に照会をいたしました。御指摘の旧姓の使用につきましては、世界銀行におきましては旧姓使用も一般的に行われており、特に旧姓使用が採用面での障害とはなっていない、そういう回答が返ってきたところでございます。
○櫻井委員 禁止はされていなくても、ただ、パスポートと名字が違うと、それを証明するためにいろいろな書類を追加的に出せ出せと言われてえらい苦労しているという話はあちこちから聞いております。これは、世界銀行に限らず、国連機関においても同様の話を聞いております。
例えばメールアドレスとかも大体名前になっていて、それが、ふだん通称で仕事をしていると、そして業績も通称で積み上がっていると、それを戸籍名にした途端、あなた誰というふうになっちゃうわけなんですよね。ですから、やはり、これまでの実績を的確に評価してもらおうと思えば通称を利用する必要がある、でも、通称を使えば、いろいろな追加的な手続があって、ポストが替わったりするとその都度手続が必要になって、それで、えらい、一週間、二週間、一か月、二か月かかってしまって仕事にならないというような話も聞きます。
この問題についてどういうふうに把握をされているのか。さっきの答弁だったら、別に問題ないという話なんですが、私は現場から、大変問題だというふうに聞いておるものですから、どういうふうに事実関係を把握されているのか、御答弁いただけますか。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
議員御指摘いただいたような個々の事例におきまして、どの点でどうお困りになっているかということを私どもとしてつぶさに、率直に申し上げて、把握しているわけではございません。
昨日、世界銀行に問合せいたしましたのは、採用面のお話というふうに承ってございましたので、世銀に採用されるに当たってその辺りが障害となっているかというような文脈で聞いたところ、先ほどお答えしたとおりでございますが、特に旧姓使用が採用上の障害になっているわけではないという回答を頂戴したというのが正確な事実関係でございます。
○櫻井委員 多分、採用されて、その後、職に就いていろいろな申請手続をするに当たって、例えばIDカードを作る、IDカードの名前をどうするのかということで、パスポートと違う名前を記載することで、それはおかしいだろうと言われて、パスポートの名前にしろと言われてみたりとか、そうすると、あなた誰状態になってしまうというようなことで困るとか、それから先ほど申し上げたメールアドレスとかいろいろなところでひっかかってくるわけなんですよね。だから、採用の時点ではもしかしたら問題ないのかもしれないですけれども、採用された後が結構大変だという話も聞きます。
是非その点、状況を的確に把握をいただいて、現時点においては、ちゃんとそれでなるべく困らないようにサポートをお願いしますとしか言えないんですが、今日、法務副大臣にも来ていただいているのはまさにこの問題でございまして、何でこんな問題が起きるかというと、同姓を、結婚したら名字を一緒にしなさいということを強制する、名前を変えることを強制している国がほかにないから、通称を使っているという国はほかにないから、国際機関等に行けば、何それということになってしまうわけなんですね。
別に別姓を強制しろという話ではないので、別姓を選択したいという方がそれを選択するだけなんだから、別にそれぐらいいいじゃないですか。法務省でも、審議会でも二十年以上前に答申を出しているんですから、是非やっていただきたいと思うんですが、いかがですか。
○高村副大臣 お答え申し上げます。
今、僕も、土谷国際局長の、世界銀行の採用で通称がオーケーと聞いたのは初めて伺って、ちょっとびっくりしたところであります。
そして、選択的夫婦別氏を望まれる方々から、国際機関で働く場合に公的な氏名での登録が求められるため、姓が変わると別人格とみなされ、キャリアの分断や不利益が生じる、今まさに先生がおっしゃったような点とか、あるいは、通称使用は日本独自の制度であることから、海外ではなかなか理解されづらく、ダブルネームとして不正を疑われるなどの御意見があることは、我々としてもよく承知しているところであります。
一方で、現行制度の維持や旧姓の通称使用の法制化を希望される方々は、家族の一体感や子供への影響などの観点から家族の間で氏が異なり得る制度には懸念を持たれている、こういう立場の方もいらっしゃるということを承知しております。
法務省といたしましては、先生の御指摘も含め、様々な御意見、御懸念を考慮の上、国会において建設的な議論が行われ、より幅広い国民の理解が形成されることが重要であると考えております。
そのために法務省としては、国民の間はもちろん、国民の代表である国会議員の間でもしっかりと議論していただき、より幅広い理解をいただくため、引き続き積極的に情報の提供を行ってまいりたい、このように考えているところであります。
○櫻井委員 法務副大臣、ありがとうございました。
質問はここまでですので、御退席いただいて大丈夫です。
○井林委員長 高村副大臣、御退席ください。
○櫻井委員 先ほど来申し上げたとおり、日本人職員の比率を増やしていこうというふうに附帯決議でも何度もやっているわけなんですけれども、ただ、日本人職員の半分はというか、日本人の半分は女性なわけでして、その女性がいろいろな足かせがあって、採用のときには大丈夫だったとしても、その後、キャリアを続けていく、それで、別に世界銀行はずっと同じポストにいるんじゃなくて、組織内で次のポストを自分で探してこなきゃいけないわけです。異動するたびにまた面倒くさい手続をやらないといけないというふうになると、もう面倒くさくて辞めるか、中には、日本人であるから面倒くさいんだと、日本人をやめちゃうという人までいるというふうにも聞いております。ということは、日本人職員比率は下がっちゃうわけですよね。
ですから、ここは同僚議員の皆さんも是非しっかりと受け止めていただいて、選択できるようにするだけですから、こうした制度を日本でも取り入れていくということを進めていただきたいというふうにお願い申し上げます。
続きまして、次のテーマに移らせていただきます。アメリカの開発協力の政策についてお伺いをいたします。
USAIDが実質的に廃止をされてしまうといいますか、名前も多分なくなって、国務省の中に吸収される、仕事の八割以上がカットされてしまう、こんなふうにも報道で聞いております。今日、外務省にも来ていただいておりますけれども、このUSAIDの実質的な廃止が世界の国際協力に及ぼす悪影響をどのように把握をされているのか、御説明をお願いいたします。
○今西政府参考人 お答えいたします。
現在、アメリカ政府は対外援助と外交政策の整合性につき評価中と承知しておりまして、その影響について予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、委員御指摘のUSAIDによる支援の停止は、各国の支援活動を含む世界全体に影響をもたらす可能性があるというふうに考えております。
我が国といたしましては、今般のUSAIDをめぐる動きが国際的にもたらす影響につきまして情報収集それから分析に努めるとともに、アメリカを含む各国との間で意思疎通を図りながら、引き続き開発協力分野において積極的な役割を果たしてまいりたい、このように考えております。
○櫻井委員 今、外務省に御答弁いただきましたけれども、要すれば、よく分からないということですよね。大幅カットだから大変な影響は出るだろうけれども、よく分からないから情報収集、こういう話でございました。
ちょっと、今日はJICAの副理事長にも来ていただいているので、お尋ねをいたします。
JICAは、開発援助のまさに現場で、JICAの職員とそれからUSAIDの職員が一緒に連携をしたり、ないしは、連携まではしていなくても情報交換をしながらいろいろなプロジェクト、プログラムを進めているものと承知をしておりますが、USAIDが撤退して現場ではどのような悪影響が出ているのか、現場の様子を教えていただけますでしょうか。
○宮崎参考人 お答えいたします。
私どもJICAとUSAIDは、これまで、両機関の関心の一致する分野あるいは地域、国におきまして緩やかに連携してまいりました。例えばガーナにおきましては、地方部における保健医療サービスの質の向上に向けまして、情報共有や対外発信において連携しております。
USAIDの撤退に伴う現場でのJICA事業への影響につきましては、USAIDは主に、委員御指摘もございましたけれども、NGO等を通じて行政サービスの提供を支援する一方、私どもJICAは主に政府機関に対する能力強化やインフラ整備を支援するなど、協力の手法が異なっておりまして、事業自体はそれぞれが実施しておりますので、現時点では、JICAが実施しております事業に大きな影響は生じておりません。
一方で、USAIDによる支援の凍結というものは、今後、世界全体に多大な影響をもたらす可能性があることは認識しておりますので、JICAといたしましても影響を大変注視しているところでございます。
○櫻井委員 まさに、JICAとUSAID、ある意味役割分担といいますか、JICAはどちらかというと政府ルートを得意としていて、そちら中心でやっている、USAIDはNGOとかそういった民間団体を通じて支援をするというところに力を入れてきた、こういう歴史的背景もある。
例えばミャンマーは、今地震があって大変ですけれども、その前からクーデターがあって大変な状況にあって、そこを支援するときに、日本みたいに政府を通じてということになると、じゃ、クーデターを起こした軍事政権を支援するのかという話になって、これはなかなかやりにくいわけですよね。しかし、ミャンマーの国民の多くが困っている状況の中で、じゃどうやって支援をするかといったときに、NGOを通じて支援をするというようなUSAIDの手法というのは非常に有効だと私も思いますし、ただ、そういったところから予算が八割カットでごそっといなくなってしまう、じゃどうなってしまうのか、こういうことで大変困っている現場もあろうかと思います。
そこについては、是非、今日も外務省に来ていただいておりますし、JICAも来ていただいているので、困っている人たちを助けていくということで、これまでの手法にこだわらずに、そこは、全部を肩代わりすることはできないにしても、何とか一部でも支援を続けていくようなことを御検討いただければというふうに思います。
そして、先ほど斎藤副大臣からも御答弁いただいておりますけれども、アメリカのIDA増資の履行についてでございます。
IDA18のときには、オバマ政権の十二月にプレッジをしていた、ところが、その後、トランプ政権に交代をして、翌年、だから二〇一七年四月の会合のときには、減額して、履行されている、こういう過去の事例がございます。そして、IDA19では、トランプ政権下でIDAへのアメリカの貢献というのは大分減っていた状態です。その後、バイデン政権になって、IDA20になると、アメリカの貢献は大分増えてきたわけなんですけれども、今回も、昨年十二月にバイデン政権下でプレッジした額、これがトランプ政権に交代してちゃんと全額履行されるのかどうかというのが大変心配されるところなんですけれども、これをどういうふうに見ているのかということと、アメリカ政府として約束したことについてちゃんと完全に履行されていくためにどのように働きかけをするのか、ちょっと大臣から是非御答弁いただきたいと思います。
○加藤国務大臣 先ほど斎藤副大臣からもお話をさせていただきましたけれども、他国における今後の国内承認手続について見通しを我が国が述べるというのは差し控えているわけでありますけれども、現在、米国は、大統領令に基づき、IDA第二十一増資を含む国際機関に対する拠出全体についてレビューを行っていると承知をしております。
日本としては、他のG7諸国や同志国とも連携しつつ、米国によるIDAへの出資、これをしっかり促していきたいと考えています。
○櫻井委員 次に、世界経済情勢と開発途上国支援について質問させていただきます。
ちょっと時間が迫ってきているので、順番を入れ替えて、四つ目の質問になるかな、環境社会配慮についてお尋ねをいたします。
世界銀行は、過去には、インドのナルマダ渓谷開発事業など、巨大なダム建設事業に融資をしたんですけれども、移転を余儀なくされる住民がたくさんいたり、一万人以上いたのではなかろうかと思いますが、こうしたことがあって、住民とそれから開発を進めようとするインド政府が対立をしたというようなことがあって、住民福祉を犠牲にした巨大開発はおかしいじゃないか、こんなこともあったわけなんです。そうした様々な失敗と反省を通じて、世界銀行においては、環境配慮、社会配慮、それから汚職防止などのルールを積み上げてきたというふうに承知をしております。
OECD加盟国においては、DAC、ディベロップメント・アシスタンス・コミッティー、開発援助委員会を通じてルールをいろいろ設けて、それを守るようにしている中で、一方で、OECDに加盟していない国、例えば中国やインドから開発途上国への資金供給が増加する中で、こうした環境社会配慮、それから汚職防止などのDACのルールが必ずしも適用されていないといいますか、全然真逆のことが行われているのではないのか、こういうところもあるわけなんです。
こうした開発途上国支援において、やはり環境とか社会配慮とか汚職防止、こうしたことは重要だと思うんですが、これを日本として、中国とかインドとかOECDに加盟していない国をどうやって巻き込んでいくのか、そういったことがちゃんと住民福祉につながっていくようなプロジェクトにしていくためにどういうリーダーシップを発揮するのか、是非、大臣、御答弁をお願いいたします。
○加藤国務大臣 新たなドナー国、いわゆる新興ドナー国から途上国への資金提供というのは、途上国における資金ニーズを満たしていく、補完をするという役割等ありますが、一方で、債務持続可能性への配慮が十分でない貸付け等により一部の国で債務問題が発生するなど、途上国の自立的、持続的成長につながらないものも見られるという指摘があることは承知をしております。
こうした課題に対処するため、OECDの非加盟国を含め、主要な新興ドナー国も巻き込んだ取組が極めて重要であります。
例えば、G20に基づくルール整備が対応案として考えられるところでありまして、具体的には、日本が議長を務めた二〇一九年のG20大阪サミットで合意した、質の高いインフラ投資に関するG20原則において、インフラ投資に当たっての社会包摂や環境面への配慮、腐敗防止といった点を明記しており、日本は、他のG7を含む同志国とともに、同原則の普及に継続的に取り組んでいるところでございます。
G20の中には、OECDに入っていないメンバーも当然入っているわけであります。引き続き、OECD非加盟国を含めた、環境社会配慮を含む開発効果の確保、また腐敗防止を含むガバナンスの確保に向けて、様々な機会を活用して取り組んでまいります。
○櫻井委員 まさに環境配慮とか社会配慮とか汚職防止のために、例えば競争入札をちゃんとやりましょうというふうにすると、手続が面倒くさいわけですよね。面倒くさい、何か一々うるさいことを言われるような世界銀行とか、日本の円借款もそうですけれども、そういうところじゃなくて別のところから資金提供してもらおうというふうになってしまうと、むしろ悪い方向に流れてしまう、そういう可能性があるものですから、そうはならないように、ちゃんと、こういう手続も含めてきちっとやっていく、行政能力を高めていく、事務能力を高めていくことこそが経済発展の道なんだということをしっかり世界に広めていただきたいというふうにも思います。
今日はほかに債務再編の話とかもさせていただきたいというふうに思っておりましたが、時間が来ましたので、これで終了とさせていただきます。
本日は、どうもありがとうございました。
○井林委員長 次に、田中健君。
○田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いします。
国際開発協会、IDAについて伺います。
世界銀行は、昨年の十月に世界の貧困削減に関する報告書を発表しています。この報告書によれば、世界の貧困層の約四〇%を占める最貧国の二十六か国は二〇〇六年以来最大の債務を抱えているということです。他国がコロナを乗り越えて成長を回復させている一方で、これらの貧困国はコロナ禍前よりも更に貧しくなっています。
最貧国の多くはサハラ砂漠以南のアフリカ地域の国々であり、公的債務のほとんどはドル建て、ユーロ建ての外貨建てであり、対ドルでの自国通貨安で返済負担も大幅に膨らんでいるという状況です。さらに、為替市場においてはドル高が進み、ドルの金利上昇は最貧国の債務状況を更に悪化させているということです。そのような世界情勢の中、最貧国の支援や、また国際開発支援の重要性が高まっていると思っています。
その中での、今回、IDAの第二十一次の増資でありますけれども、まずその前に、前回の、IDAの第二十次の増資について伺いたいと思います。
こちらは、三年に一度行われる増資が、今回歴史上初めて一年の前倒しとして実現をされて、日本が重要な役割を果たしたと聞いています。第二十次の増資及びその後の三年間のIDAの活動やその成果、先ほどはパキスタンの事例も挙げていただきましたが、政府はその結果をどのように評価しているのか伺いたいと思いますし、また、あわせて、前回の増資の際には債務データの透明性や持続可能性の確保が課題として挙げられていましたが、債務の透明性の向上は進んできたのか、進捗とその評価も併せて大臣に伺いたいと思います。
○加藤国務大臣 IDA第二十次増資は、今委員御指摘いただきましたように、コロナ禍の中、日本が主導して、一年前倒しで開始をいたしました。その後、三年間において、日本の優先開発課題でもあるパンデミックを含む保健危機への備え、防止、対応能力の強化、また、防災の主流化、債務の透明性の向上などを目的とした支援にも積極的に取り組んできたところであります。
この結果、二〇二二年七月からの一年間である二〇二三年世銀年度においては、二億一千二百万回の新型コロナワクチン接種の実施、約八千七百万人がIDAによる保健、栄養等のサービスの恩恵を受けること、四十八か国が防災を国家の優先事項に制定をすること、債務の透明性の観点から三十五か国が公的債務に関する年次報告書を公表するなど、短期間ではありますけれども、大きな成果が上げられたものと評価をしております。
それから、透明性等の話でございます。
債務の透明性の向上は引き続き重要な課題であり、IDAを通じて取り組んでまいりました。IDAでは、従前より、債務脆弱性が高い途上国に対し、債務の透明性や持続可能性の向上に関する取組目標を設定し、未達成の場合には支援額を減少させる措置を講じているところであります。
加えて、前回増資では、二〇二五年六月までに五十か国において包括的な公的債務等に係る報告書の公表を支援する等の政策目標を掲げ、中間評価では、二〇二三年六月末時点で三十五か国でその実施が確認されるなど、目標達成に向けて順調に進捗していると考えております。
さらに、今回の第二十一次増資では、こうした経験も踏まえつつ、より多くの国で債務透明性の向上に向けた取組を実施するため、この支援対象の国の範囲を拡大し、五十九か国において、技術支援、知見共有及びファイナンスを通じて債務透明性及び持続可能性の向上を支援する等の政策目標に合意をしたところであります。
日本としては、IDAを通じて、途上国による債務透明性の向上に向けた取組を後押しをしてまいります。
○田中(健)委員 ありがとうございます。
まさに第二十次のときはパンデミックでありましたし、その後、各国、世界中で起こる防災に対して、防災優先ということが実現をしているということをお聞きをしました。その必要性は大変、今のお話を聞いて分かるんですけれども、今回の第二十一次の増資における日本の出資額は、前回の三千七百六十七億円を上回り、過去最大となる約四千六百四十二億円となります。先ほど来もありましたが、日本でも、手取りが上がらない、大変に物価高と厳しい中、国際機関に多額の資金を拠出するということは、やはり国民からも厳しい目が注がれているのも事実だろうと思っています。
改めて、この三年間でのパンデミックや防災の話を聞きましたけれども、今回の出資額を増やしたことも踏まえて、出資の必要性や額の根拠、そして、これまで長きにわたりIDAに日本は関わってまいりましたが、その実績等を国民に十分に説明していく必要というのが政府にはあるかと考えておりますが、見解を大臣に伺います。
○加藤国務大臣 IDAへの出資を含めて、途上国に対する開発協力等について、原資はもちろん税金でありますから、国民に対して説明責任をしっかり果たしていくということは大変大事であります。
先ほどからもありますが、IDAは、アフリカ、アジアを中心とする所得水準が特に低い開発途上国に対する世界最大規模の支援機関であり、その動向は、国際社会全体の開発政策の方向性にも大きな影響を及ぼすわけであります。
こうした重要な役割を果たすIDAに対して、日本は近年、一貫して、主要なドナー国、ドナーとして貢献をしております。そして、そうした支援を通じて、先ほど申し上げた国際保健や防災等、日本が重視し、知見と経験を有する分野、開発課題をIDAの重点政策に据えて国際的に推進するということも可能になっております。
今回のIDA二十一次増資においては、日本が重視する開発課題がIDA21の重点政策に反映されたことを踏まえて、厳しい財政状況ではありますけれども、低所得国に対する日本の変わらぬ支援の姿勢を示す観点から、一〇%のシェアを下回らぬよう、四千二百五十七億円を追加的に出資をするということにしたところであります。
まさに、こうしたマルチの支援、そして、一方でバイの支援、これも組み合わせながら、そうした国に対する日本の支援、そしてそのプレゼンス、それをしっかり示していくということが、ひいては日本の国益にもつながっているというふうに考えております。
○田中(健)委員 今答弁の中にありました金額、シェアと、また、今、バイとの関係という二点について、更に聞きたいと思いますけれども。
アメリカ以外の多くのドナー国は、財政又は自国通貨安の問題を抱えています。日本も通貨安がハードルになっていると思いまして、前回の増資の円・ドルのレートは一ドル約百十円でありましたので、増資額は三十四億ドルに当たりますが、今回かなり増やしたとはいえ、一ドル百五十円としますと約三十一億ドルになってしまいまして、ドル換算での拠出額というのは低くなってしまいます。これが今回のシェアにもつながってきたかと思いますけれども、この通貨安というのはどのように考えているのかということをお聞きしたいと思います。
昨年、外務省が、予算案で、同年の支払いが特に国連などの拠出金で足りなくなってしまったということがありました。これは義務的拠出金でしたので、もう決まった額だったので、円で足りなかったんですけれども。そういうこととは違うかとは思いますけれども、このままこの円安が続きますと、大変シェアを確保するのが難しいなと思っているんですけれども、この点についても大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○加藤国務大臣 まさに、この間のドル建て、IDA20のときには百九・五六円、今回は百五十三・五六円、二八・七%円安となっているわけであります。結果として、IDAに対する貢献シェアも、ドル建てで、前回の一三・八%から一〇・五%への低下となっています。
円建ての支援額については、厳しい財政事情ではありましたけれども、主要ドナーとしての立場を維持するということで、円建ての支援額は今回四千二百五十七億円と、前回に比べて一三%の増額も図ったところでございます。
なかなか、円安ということになると、今御指摘のようなところは確かにありますけれども、しかし、そうした中においても、日本として、こうした低所得国に対する支援を含めて国際貢献をしていくということは、非常に大事な、国益にもつながることだというふうに我々は認識をしておりまして、引き続きこうした努力を重ねていきたいと考えております。
○田中(健)委員 今、お話を聞きますと、IDAの重点政策には日本の意向もかなり反映されているということでありますし、主要ドナー国だからこそできることもあるかと思います。この立場を厳しいながらもしっかりと維持をして、低所得国支援のリーダーシップを取って、今大臣から日本の国益とありましたけれども、日本の国益にしっかり寄与するような支援につなげていただきたいと思います。
さらに、その支援の内容について、先ほどバイとの話がありましたけれども、IDAは多国間援助であります。一方、政府開発援助には、今、ODAのような特定の開発途上国に直接支援を行う二国間の援助もあります。IDAの融資額の七割がアフリカ諸国向けであり、貢献シェアはアメリカに次いで二位であるということを今述べてまいりましたけれども、このODAに関しては、アフリカ諸国を見ますと、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスに次いで五位となっています。
この二国間の援助、また多国間の援助の役割分担や、また資金の振り分けというのは、どのような考えの下行われているのか、伺いたいと思います。
○加藤国務大臣 多国間援助と二国間援助、それぞれ強みといいますか役割というのがありまして、それを踏まえて資金の振り分けを行っていくということ、また役割分担を行っていくということが大事だと思います。
IDAを始めとした国際開発金融機関の強みを挙げれば、保健や防災、インフラなど、各セクターに専門的な知識を有する豊富な人材をそれぞれの各機関が有しているということ、また、国際開発金融機関はトリプルAの格付を有しており、その信用力の高さから民間資金を動員する呼び水効果の発揮が期待できるということ、それから、三点目として、支援対象国の現地にそれぞれ事務所を持っており、途上国政府や民間企業を含む幅広いネットワークを有していることなどが挙げられると思います。
他方で、二国間援助は、日本と被援助国との二国間の関係がより明らかに見えるわけでありますから、その強化につながるということで、また、日本が重視する開発課題に対して、優先的に、よりきめ細やかな支援が行われるというメリットがあると考えております。
日本は、そうしたそれぞれの強みを有するマルチの支援とバイの支援、これを効果的に組み合わせることによって、途上国が直面する諸課題の解決に向けて国際社会で果たすべき役割を担っているとともに、あわせて、日本のプレゼンスというものもしっかり示していくことができると考えています。
○田中(健)委員 二国間援助においては、中国などはかなり絞って援助をしているということで、厳しい状況の中、多国間援助というのは大変日本が得意とし、また、これまで実績があるということですので、是非、今回のIDAの二十一次の増資でその力を発揮してもらえればと思っています。
引き続きまして、米州開発銀行、IDBについてもお聞かせいただきたいと思います。
中南米・カリブ海諸国の発展を目的として一九五九年に設立をされましたのが、この米州の開発銀行です。設立以降、中南米・カリブ地域における開発資金の最大供給者としての役割を担っておりまして、日本も、大変古く、一九七六年にアジアで初めて加盟をしています。
まず、この中南米・カリブ諸国への投資に対して日本の姿勢というのはどのようなものなのか、伺います。
○英利大臣政務官 田中委員、御質問ありがとうございます。
カリブを含む中南米地域は、約六億六千万人の人口を有する巨大市場、重要な資源、食料の供給拠点として、我が国経済における重要性が増している地域であります。
同時に、同地域は、所得格差や気候変動に対する脆弱性等の様々な社会課題を抱えており、持続的で包摂的な経済成長の実現に向け、官民による課題解決の取組が一層重要となっている地域でもあります。
このような観点から、我が国は、例えば地域最大の開発金融機関である米州開発銀行、IDBグループとJICAの協調融資、COREや、JICAによるIDBグループ傘下の米州投資公社、IDBインベストが運用する信託基金、TADACへの出資を通じまして、民間企業による取組も活用しつつ、地域の持続的な経済社会開発を後押ししてきています。
引き続き、地域の持続的で包摂的な経済成長を支援し、我が国と中南米諸国の互恵的な繁栄に向け、取り組んでまいります。
ありがとうございます。
○田中(健)委員 確かに巨大市場でありまして、官民の取組が必要ではあるんですけれども、実際、日本の民間企業による中南米・カリブ地域への投資というのは比較的低水準だということを聞いています。これはどうしてなのか、その原因はどのように捉えているか、お聞きします。
○依田政府参考人 お答えします。
財務省の国際収支統計に基づく日本企業の対中南米地域投資額は、二〇二三年の実績で一・八兆円でありまして、これは対全世界の二十五・九兆円の七%となっております。この水準は、アフリカ、中東と比較すれば高い水準にはございますが、委員御指摘のように、ASEANやEUと比較すると必ずしも高い水準ではない。
この理由でございますけれども、例えばASEAN地域などと比較して投資水準が低い理由としては、一般論になって恐縮ですけれども、やはり日本から地理的に離れていることなどが起因しているのではないかと考えております。
他方で、昨年度の通商政策白書におきまして、中南米地域につきましては、世界情勢の不安定化による資源・食料安全保障やサプライチェーンの強靱化の重要性の認識を背景に、中長期的な視点に立って、重要鉱物、水素、アンモニア、バイオ燃料及び合成燃料、いわゆるe―フュエルなど、資源、エネルギー分野における新たな投資行動や企業活動が見受けられるほか、第三国・地域とのFTA締結の推進など、より対外的な経済拡大を目指す動きが見受けられることから、中南米地域につきましては、ここにおける新たなビジネス機会はこれまで以上に拡大余地があるという状況にあるというふうに分析してございます。
○田中(健)委員 今、一兆円強と言いましたけれども、ほとんど自動車なんですね。ですから、まだまだ民間の投資は少ないという中で、さらに、トランプ政権の誕生によって、メキシコへの関税の引上げやパナマ運河の奪還などということも言っていますけれども、中南米・カリブ地域というのは不安定要因を大変抱えているところです。この地域による、今、かなり、これから期待を持てると言ったんですけれども、投資リスクというのは逆に高まっていると考えられますが、この認識は、政府、いかがでしょうか。
○英利大臣政務官 中南米地域は、先ほど申し上げましたとおり、約六億六千万人の人口と約六・二五兆ドルの域内総生産を抱えるなど、大きな経済的潜在力を有しております。また、重要な鉱物資源やエネルギー、食料資源を豊富に有し、日本を含む国際社会のサプライチェーン強靱化や経済安全保障の観点からも重要性が増している地域であります。こうした背景から、我が国企業は中南米諸国に多くの投資を行い、三千を超える拠点を置くことでサプライチェーンを構築してきています。
御指摘のような中南米地域の投資環境をめぐる状況も踏まえつつ、こうした我が国企業の投資を保護し、その活動を支援する観点から、あらゆる措置の中で何が最も効果的なのかを考えながら取り組んでまいりたいと思います。
ありがとうございます。
○田中(健)委員 ありがとうございます。
最後に大臣にお聞かせいただきたいと思いますが、これもIDAのときにもお聞きをしましたけれども、やはり今国内も大変経済が厳しい中、このように国際金融機関にお金を出資する、出していくということが、大変に国民に理解を得るのも難しく、また、更なる丁寧な説明が必要だと思っています。
同時に、今回のIDAを含め、アジア向けの開発金融機関でも、ADB、アジア開発銀行への出資もしておりますし、様々な国際金融機関に出資をしている中で、このIDBに出資をする意義というものを大臣の口からしっかり説明をまたいただければと思いますが、お願いいたします。
○加藤国務大臣 IICを含むIDBグループが支援する中南米・カリブ地域、今までも説明ありましたけれども、中所得国が多く、安定的な人口増加を背景とした消費需要の拡大が見込まれる有望な市場である、また、銅やリチウムといった重要鉱物資源にも恵まれた、まさに我が国にとっても重要な地域と考えております。
IDBグループは、同地域の幅広い開発課題に関する専門的な知見、ネットワークを有するとともに、加盟国からの出資を元に市場から資金を効率的に動員できるという強みも備えています。IICを含むIDBグループへの出資を通じて、同地域の開発課題の解決に貢献するとともに、日系企業の同地域への進出を日本として後押しをしてまいりました。さらに、JICA、JBICといったIICとの協調融資を含む連携の一層の強化、IDBグループによる日本企業向け情報提供の要請などについても積極的に進め、IDBグループへの出資の効果を高めるべく取り組んでまいりましたし、これからもまいりたいと考えております。
このように、IICを含むIDBグループへの増資に応じることは、同地域における日本企業の活動を後押しし、ひいては日本と同地域との関係強化という観点からも重要であります。出資の意義については、先ほどの件も含めて国民の皆さんにしっかりと説明し、理解を求めるべく、引き続き努力をしてまいります。
○田中(健)委員 大臣、有望な地域というのは分かるんですけれども、やはり、出資の意義はもっともっと国民に分かりやすく、また実績を含めお示しをいただきますことを要望しまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○井林委員長 次に、山口良治君。
○山口(良)委員 公明党の山口良治でございます。
本日は、質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。
今回、審議をされておりますこの法律案、国際開発協会、IDA及び米州投資公社、IICへの増資に関するものでございますが、我が国は、世界銀行グループを構成する各機関におきまして米国に次ぐ第二位の出資国であることから、現在の不安定な国際社会におきまして、国際協調主義の観点からも、日本が更に強い責任を果たしていく上で、極めて重要な法案であると考えております。その一方で、四千億円を大きく超す増資をしていく以上は、その成果と果実を確実に得ていくことも重要であります。これらを前提に、幾つか御質問をさせていただきたいというふうに思います。
まず、財務大臣にお伺いできればと思います。
今回のこのIDAへの増資は、現在の国際社会が直面をしている諸課題、特に最貧国における貧困削減や持続可能な開発のためにどのような意義を持つのでしょうか。また、日本がこの増資に応じることによって、我が国にとってどのような外交的、経済的意義があるのか、さらに、今回の増資によって、日本の国際社会における発言力、プレゼンスはどのように変化をすると見込まれていらっしゃるか、お伺いいたします。
○加藤国務大臣 IDAは、所得水準が特に低い開発途上国に対する世界最大規模の支援機関であり、今般の第二十一次増資では、全体で三年間で一千億ドル、約十五兆円の支援規模とすることが合意されております。IDAは、引き続きアジアやアフリカを始めとする低所得国の貧困削減、経済成長に大きく貢献することが期待されるとともに、その資金規模の大きさから、国際社会全体の開発政策の方向性に大きな影響を与える国際機関と言えます。
このような重要な役割を果たすIDAに対し、日本が主要なドナーとして貢献することによって、国際保健や防災等、日本が重視し、知見と経験を有する分野、開発課題をIDAの重点政策に据えて国際的に推進することも可能となるところであります。また、IDAへの貢献は、世界の開発政策をリードする機関である世界銀行グループ内での日本の存在感を高めることにもなり、また、日本人が国際的に活躍しやすい、あるいは日本の企業等が活躍しやすい環境をつくり出すことにもなると考えております。
○山口(良)委員 ありがとうございます。
先ほど櫻井委員からもありましたけれども、今、米国が自国優先の方向に進み、USAIDの解体の動きがあるという中で、国際金融支援という形ではございますが、対外支援に対する、やはり出資国二位の日本の存在感、注目されておりますし、そこに対してどうやって日本が関わっていくのか、非常に重要であると思います。財務省、日本銀行また外務省としっかり連携を取りながら取り組んでいっていただきたいと思います。
次に、IDAとIICという性格の異なる国際機関への出資の戦略についてお伺いいたします。
アフリカやアジアの最貧国支援を主眼とするIDAと、主に中南米地域の中小企業支援を行うIICでは、その目的や支援地域が大きく異なります。我が国の限られた財源の中で、これら性格の異なる国際機関への拠出について、どのような優先順位、また戦略的判断に基づいて決定をされているのでしょうか。今回の両機関への増資が並行して行われる、進められる政策的意義も含めて、御説明をお願いいたします。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
IDAとIICは、幅広い開発課題に対応するための専門的な知見やネットワークを有し、加盟国からの出資を元に市場から資金を効率的に動員できるという国際開発金融機関ならではの強みを共に持つ一方で、委員御指摘のとおり、それぞれ異なる役割を果たしているところでございます。
具体的に申し上げますと、IDAにつきましては、全世界の低所得政府に対する融資や贈与を通じまして、インフラ整備や保健、教育等の社会セクター支援等を行い、低所得国の多様な開発課題、これに対応しているところでございます。IICにつきましては、中南米・カリブ地域の民間企業に対する出融資を通じまして、民間のプロジェクトを後押しし、中南米・カリブ地域の民間主導の経済成長を支えていると考えております。
このように、両機関は、それぞれが特徴を有する国際開発金融機関として途上国の発展に貢献しておりますが、我が国としては、まさに厳しい財政状況ではございますけれども、IDAを活用してグローバルに低所得国の底上げを図りつつ、比較的所得水準の高い中南米・カリブ地域においてはIICを通じて民間主導の経済成長も促していく、こういった考え方の下、両機関に対する支援、関与を行っていくことが重要と考えております。
○山口(良)委員 続きまして、関連しまして米州投資公社の増資による具体的な効果をお伺いいたします。
IICは、中南米地域の中小企業支援を通じて地域経済の発展に貢献をするという機関であると先ほども伺いました。日本企業の中南米市場への進出支援という観点からも大変重要であるというふうに認識をしております。
今回の増資によりまして、IICはどのような支援能力を強化することになるのでしょうか。また、その結果として日本企業の中南米市場への展開にどのような波及効果をもたらすと期待をされているのか、具体的にお聞かせください。お願いします。
○土谷政府参考人 お答え申し上げます。
IICにつきましては、今回の増資によって得られます三十五億ドル、これを元にいたしまして、貸付債権の証券化を含め、効果的な民間資金動員を図ることによりまして、二〇三三年までにこの地域で全体として千二十億ドルのプロジェクトを実施する予定としております。
IICは、この資金を、エネルギー、デジタル、農業といった分野に優先的に投融資しまして、ビジネスの発展を支援するとともに、女性、貧困、脆弱層といった分野への支援も行い、社会的課題への解決にも取り組むこととしております。
このように、今後IICが支援分野や規模を拡充し、中南米・カリブ地域で更に重要な役割を果たしていくことが見込まれる中、政府としましても、日本企業とIICの連携を強化することによりまして、日本企業の同地域へのビジネス展開の支援につなげていくことが重要と考えております。
IICも、同様の考えから、IDBグループがアジアで唯一東京に事務所を設置してございまして、そこを活用して、日本企業とのマッチングを行うセミナー、これを随時開催してございまして、日本企業との関係性を更に強化する観点から、IICの専任スタッフを新たに東京事務所に設置したところでございます。また、本年二月にIDB総裁が来日した際には、総裁が出席の下、中南米事業に関心を持つ日本企業を招きましてビジネスセミナーも開催いたしました。
さらに、日本企業にとってなじみの深いJBICに加えまして、今般、JICAとIICとの間で民間協調融資の新たな融資枠組みを設けることによりまして、JICAやJBICを通じまして日本企業とIICとの結びつきを強める、こうした取組も実施しているところでございます。
こうした取組を通じまして、今後、日本企業が、拡充するIICを活用して、中南米・カリブ地域への進出や業務拡大を進める機会が増えることを期待しているところでございます。
○山口(良)委員 具体的な御答弁、ありがとうございます。
先ほど田中委員の方からも、この中南米地域への投資額が比較的少ないのではないかという御指摘がありましたけれども、一方で、私、ジェトロが発表しておりました昨年の海外進出日系企業実態調査中南米編ということで読ませていただきましたところ、おおむねかなり、日系の企業が、黒字が七割に到達をして、また、過去最高の、ブラジルでは黒字企業の割合が増えているという調査結果が出ておりまして、人口がかなり市場規模として大きい、また、自動車産業におきまして非常に重要な部分を担うこの中南米が、日本企業にとって更に大きな市場として役割を果たしていかなきゃならないということを認識しております。
続きまして、拠出金の使途と成果に関する検証体制についてお伺いします。
国民の税金を用いて国際機関に拠出をしていく以上、その使途や成果について適切に検証し、しっかり国民の皆様に説明をしていく意味でも、公表することが不可欠であります。IDA及びIICに対する日本のモニタリング体制、これはどのようになっているのでしょうか。また、これらの機関による支援の成果をどのように評価をし、その結果をどのように国民に対して説明をしているのか、またいくのか。現在の取組と今後の方針についてお伺いいたします。
○土谷政府参考人 まさに委員の御指摘のとおり、IDA等の国際開発金融機関が日本を含むドナー国の資金を活用して支援を行う以上、PDCAサイクルを回しまして、その使途や成果に関する検証を行い、これを公表することは極めて重要であるというふうに考えてございます。
IDA及びIICの今回の増資に際しては、PDCAサイクルに基づきまして、事前に定量的な目標を設定した上で、中間評価等を通じて定期的に達成状況の検証を行い、その検証結果を公表するとともに、その後の業務の運営に活用することとしてございます。
具体的にIDA二十一次増資について申し上げますと、国際保健、債務、インフラを始めとする各分野につきまして、具体的な取組や支援国数から成る二十五個の政策目標を設定しておりまして、これを、二〇二六年十二月に行われる中間評価におきまして、各目標の達成に向けた進捗状況を確認し、その結果を公表するとともに、次回の増資のまた目標設定に反映させる、そういった形でPDCAサイクルを回すこととしてございます。
日本としても、こうしたプロセスを通じまして、引き続き、IDA及びIIC両機関の資金の使途や成果をモニタリングしてまいりたいというふうに考えてございます。
○山口(良)委員 ありがとうございます。
先ほども他の委員からもありましたけれども、大きな拠出金になりますので、その使途、また成果、こういったものが、決してお手盛りではなく、厳しい目でチェックをしていくことも非常に大事かというふうに思います。先ほどのジェトロの調査におきましても、進出された日本企業の中で、様々ある投資環境のメリット、デメリットということで、デメリットにつきましては、やはり中南米地域の政治、社会情勢が非常に厳しい環境にあるということで、様々挙げられております。投資国の様々な政治状況も踏まえて、有効に活用されていることをしっかりとチェックをして、国民の皆様に説明をお願いできればというふうに思います。
時間も限られております。最後に財務大臣にお伺いいたします。
このODA予算、制約が続く中で、IDAまたIICへの拠出は我が国の援助政策の中でどのように位置づけられているのでしょうか。また、近年の国際情勢の不安定化、気候変動、パンデミックなど、国際社会の課題が多様化、複雑化をする中で、我が国はどのようなビジョンと責任感を持ってこれらの国際機関を通じた国際貢献に関与、取り組んでいかれる考えか、今回の増資を契機に、日本の国際協力の在り方について、財務大臣の御見解をお聞かせください。
○加藤国務大臣 世界各国に広がる貧困、紛争、感染症、気候変動等、国際社会が直面する課題が多様化、複雑化しておりますし、しかし、だからといって、こういった問題にひるむことなく、日本としてもしっかりと様々な国々と連携して対応していくことが必要であります。
IDAやIICといった国際開発金融機関では、こうした課題に対応するに当たり、バイの支援では時に困難である課題への対応が可能となる面があります。例えば、保健、防災、インフラなどの各セクターに専門的な知識を有する豊富な人材を持っておられること、また、国際開発金融機関ではトリプルAの格付を有し、その信用力の高さから民間資金を動員する呼び水効果を発揮できること、さらには、支援対象国の現地に事務所を持ち、途上国政府や民間企業を含む幅広いネットワークを持つ、こういった強みを有しているわけであります。具体的に、新型コロナ禍において、IDAはこうした強みを生かし、アフリカにおけるワクチンや医療提供体制の支援などにおいて重要な役割を果たしてきたところであります。
日本では、こうした強みを有する国際開発金融機関を通じたマルチの支援と、また、日本とそれぞれの国のバイの支援、これを適切に組み合わせることによって、途上国が直面する諸課題の効果的な開発に努め、国際社会で果たすべき役割を担い、また日本のプレゼンスというものをしっかりと高め、維持していきたいと考えています。
○山口(良)委員 若干時間が残ってしまいましたが、以上で質問を終わります。
ありがとうございました。
○井林委員長 次に、高井崇志君。
○高井委員 れいわ新選組の高井崇志でございます。
今日はIDA法改正ということで、IDA、それからIICへ国債での出資を可能とするという改正でありますが、我々れいわ新選組は、国債は大いに発行すべきだ、まだまだ発行できるという立場でありますので、特に問題はございません。むしろ、予算委員会などの議論を聞いていると、国債発行は悪だ、これは政府もあるいは与野党共にそういう考え方で、国債発行するな競争のような議論が行われてきた。これは本当に残念な、誤った議論であると思いますので、今日は、この国債というものについて財務省の考えをお聞きしたいと思います。
まず、財務省がいろいろ国会で財政状況なんかを説明する際に、私は、債務残高の話しか、国債発行残高がとにかく一千兆円を超えて世界最悪の水準だ、GDPと比べた債務残高対GDP比は世界最悪の水準だという話しか聞いたことがないんですね。
資料でおつけしましたけれども、これは予算委員会でも同じ資料を見せたんですけれども、国債の信認を測る指標というのは、この政府債務残高だけじゃなくて、ほかの指標もたくさんあるわけです。政府純利払い費とか、あるいは対外純資産のGDP比も大変重要な指標であるけれども、こういったものの説明が財務省からされたのを私はちょっと聞いたことがないんですね。プライマリーバランスの話か債務残高の話しか聞いたことがありませんけれども。
これは事務方で結構ですが、財務省が財政状況を説明する際に、この債務残高対GDP比やプライマリーバランス以外の指標を使って説明したことはこれまでありますか。あるなら、いつ、何回ぐらいあるか、お答えください。
○吉野政府参考人 お答え申し上げます。
財政状況の説明に当たりまして債務残高対GDP比やプライマリーバランス以外の指標をこれまで何回用いたかとのお尋ねについて、網羅的にお答えすることは困難でございますけれども、例えば、今通常国会におきまして、純債務残高対GDP比や利払い費といった指標を用いて財務省から我が国の財政状況について説明した実績は現にございます。
網羅的にお答えすることは、繰り返しで申し訳ありません、困難でございますけれども、純債務残高対GDP比については少なくとも一回、利払い費については少なくとも二回、言及していると認識しております。
○高井委員 今日は時間がないので、どんな説明だったかまた今度聞きたいと思いますが、恐らく、私の記憶している限りでは、質問に答える形で、例えば政府純利払い費の対GDP比の数字は先進国で比べれば何位ですとか、そういう何か事実の説明であって、この指標を基に、財政状況がだからどうなんだというような説明を私はしていないんじゃないかと思いますので、これは、後でまた議事録を調べて、事務方に聞いて、また次の機会に質問したいと思います。
これは財務大臣にお聞きしますが、この資料にもつけたように、確かに、債務残高対GDP比を比べれば、G7の中では七位、一番下なんですね。しかし、ほかの指標を見れば一位か二位か三位で、特に重要な政府純利払い費は三位と書いていますが、最新の数字では、これは吉野次長が二位だというふうに答弁しているのを私は見ました。なので、最新の数字は二位なんですよ。つまり一位か二位。つまり、G7の中でも非常に優等生である、ほかの指標を見ればということを、もっと財務省はきちんと公平に説明をすべきではないかと思いますが、財務大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 今お話があった債務残高GDP比を用いたり、あるいはプライマリーバランスを用いて財政経済運営というものを見てきている、それは、実際これまでも、そういった指標をもって見ていくということが決められているわけでありますから、我々はそれに沿ってお示しをさせていただいているということであります。
その上で、委員がお示しをされた指標というのも確かに指標としてはあろうと思いますけれども、それぞれが、前回も説明しましたので一個一個申し上げませんけれども、例えば、それが国ではなくて民間部門の話であったり、海外の動向等と国内の動向等によって大きく変わるものであったりということでありまして、そういった意味において、どういった指標をもって我が国の財政状況を考えていくべきなのか、そういったこれまでの議論の中で、私どもとしては、債務残高対GDP比又はプライマリーバランス、これを見ながら経済財政運営を行い、また、それを説明させていただいている、こういう経緯であります。
○高井委員 この二つ、債務残高とプライマリーバランスに私は本当に一方的に偏っていると思いますし、それはやはり、財務省として、財政再建をとにかく進めたい、国債をこれ以上発行させたくないということで、自分たちに都合のいい指標を声高に主張しているんだと私は考えますので、ここはまた議論をしていきたいと思います。
次に、資料二ですが、これも予算委員会で示した資料なんですが、確かに、国、地方の債務残高を見れば一千二百八十兆円と多いんですけれども、これは江田委員もよく使われている数字ですけれども、国の金融資産を見れば九千八百九十五兆円、それから個人の金融資産は二千百七十九兆円等々、こういった、つまり資産があるということをやはり見て、見比べるべきであると。
これは、ちょっと分かりやすい例で言うと、企業もそうですよね、借金している企業というのは、じゃ、それは危ない企業なのかといえば、決してそうではない。例えば、有利子負債の上位五社はどこかというと、一位トヨタ自動車、二位ソフトバンク、三位NTT、四位本田技研、五位三菱キャピタルですよ。トヨタなんかは二十九兆円、ソフトバンクも十九兆円、有利子負債があります。そして、上位二十社のうち六割は年商以上の負債がありますけれども、全く問題がない。それはやはり、それだけの資産あるいは企業としての価値、能力があるから借金できるわけですから、これは、私は、日本が負債残高が多いからといってそれが直ちに問題だということにならない一つの例だと。
もちろん、企業と政府は違うし、むしろ、でも、政府の方が通貨を発行できるんだから、より企業よりも考えなくてもいいことであるにもかかわらず、債務残高が多いということを財務大臣は声高に言われますけれども、今の私の考え、財政破綻する心配なんか、日本はこういった試算の数字を見ればないのではないですか。いかがですか。
○加藤国務大臣 必ずしも企業と国家というのは、いろいろな意味で、今委員の言われたことも含めて、単純に比較はできないんだろうと思いますし、企業においても、有利子負債が多ければいいというわけではなくて、それがきちんとした収益につながってきているということ、こういったことが大事なんだろうと思います。
国においては、先ほど申し上げたように、債務残高ということも含めて例えばGDP比で見る、こういったところで我々判断をしてきているところでございますので、引き続き、大事なことは、やはり市場における信認ということだと思います。現時点ではこれだけの国債残高を持ちながら、そしてこれだけの国債を発行しながらも、それが円滑に消化できてきているというのには、一つは、例えば家計の金融資産などが豊富にあるといったことも指摘をされていると承知をしておりますが、引き続き、市場での信認を得るべくやはり努力をしていかなければ、一たびそれが崩れますと、金利の急上昇や過度なインフレが生じ、日本経済、社会に多大な影響を与える可能性も否定できないわけでありますので。
我々としては、そういったことを念頭に置きながら、しかし他方で、財政に求められる役割は状況状況によっていろいろあります、それにもしっかり当然応えていくという中で、現時点においては、経済再生と財政の健全化、この両立を図るべく努力をさせていただいているところでございます。
○高井委員 今大臣がおっしゃったように、市場における信認が大事なわけですけれども、市場における信認が十分あるんじゃないかということを今申し上げ、大臣も、個人の金融資産が多いということがその一因になっていると。だから、私が申し上げているのは、過度に恐れ過ぎなんじゃないですか、心配だ心配だと言ってあおって、もう国債をこれ以上発行できないんだというようなことを言い過ぎるのはよくないと申し上げています。
客観的な市場の信認というのが出ているのが、その次の資料です。資料三、CDS、クレジット・デフォルト・スワップから算出した五年以内の国債デフォルト確率、これも江田委員がよく取り上げていますけれども、これは、G7で比べただけでも、日本はドイツに次いで二番目にいい。〇・三三%ですよ。限りなくゼロに近い。イタリアは二・四だし、例えばトルコとかブラジルなんかは、もう一〇を超えている国もあるわけですよ。
こういった市場がまさに判断した数字が日本はこれだけいいわけですけれども、じゃ、大臣、何で日本はこんなに低い、〇・三三%という低い比率なのか、その理由はどう考えていますか。
○加藤国務大臣 このお示しをされた数字は、ちょっと小さい字で見えないんですけれども、第一生命経済研究所ですか、ここが試算された数字ということで、ちょっとこれに対して政府としてコメントするというのは控えたいと思いますが、ただ、この背景にあるのはCDSだろうというふうに思います、一つの要素だと思います。
CDSというのは、御承知のとおり、買手が売手に対して保証料を支払う代わりに、国がデフォルトしたときに損失の補償を受けるものであり、いわば損失保証料率ということを認識をしているところでございます。
そうした損失保証料率が低いという背景としては、潤沢な家計金融資産や経常収支の黒字等を背景に、先ほど申し上げたように、国債が国内で安定的に消化されるという状況の中で、財務健全化目標を掲げ、その取組を進めてきたことによって市場からの信認を維持してきた、こういったことがあると考えておりますので、引き続きそうした信認が得られるように努力をしていきたいと思っております。
なお、CDSの分析に当たっては、CDSそのものの取引量が少なく取引主体が限られている、こういった点にも留意する必要があるという指摘があるということも認識をしているところでございます。
○高井委員 これは経団連のシンクタンクのレポートでもありますし、江田委員もこの数字を出していますので、是非これは加味していただきたい。
それから、最後に質問します。
国債償還費、これが財政を圧迫していること、水増ししている原因だと何度も主張していますが、これをなぜ計上しているのか。それから、これは世界各国と同じように、国債償還費を計上するのはやめるべきじゃないですか。二問まとめて、最後に財務大臣、お答えください。
○井林委員長 申合せの時間が経過しました。簡潔にお願いいたします。
○加藤国務大臣 債務償還費は、国債の償還財源を確実に確保しつつ、償還のための財政負担を平準化するという観点から、六十年償還ルールの下で、法律の規定に基づいて計上しているものでありまして、このルールそのものは財政健全化の精神を体現するものとして定着していること、また、多くの国民の方々に負担していただいている税金等で成り立つ一般会計において債務返済の負担の具体的な額を明らかにすることは、債務の負担の見える化の意味でも有意義だと考えております。
確かに、こうした計上を行っているというのは、先進国の中でというか、日本だけという御指摘は確かにありますが、しかし、他国において、六十年償還ルールのような償還財源の確保に関して毎年度適用される特別の制度はないものの、財政規律維持に関する基準等を法律において規定をしており、また、実際の債務残高対GDP比も日本よりはるかに低い水準にあるものと承知をしておりまして、こうした財政規律維持に関する枠組み全体や債務残高GDP比の動向も見て検討する必要があろうと考えております。
○高井委員 終わりますが、引き続きこの話は議論していきたいと思います。
ありがとうございます。
○井林委員長 次に、田村智子君。
○田村(智)委員 日本共産党の田村智子です。
国際開発協会、IDAへの追加出資、米州投資公社、IICへの国債による出資、どちらも国際的な格差と貧困の解決を目的としており、我が党も賛成です。
IDAへの出資割合は、アメリカがトップで、今後、約一五%と見込まれています。しかし、トランプ大統領は対外援助を一時停止する大統領令を発出しており、ガーナやケニアではマラリア対策のプログラムが一時停止、ハイチではエイズ治療が中断など、深刻な事態が報じられています。
加藤大臣にまず二点お聞きします。
一つは、IDAへのアメリカの追加出資はどうなるのか、何か情報を得ているのかどうか。そして、二つに、こうした米国の対外支援の一時停止は人道上も大きな問題があって、先進国としての責務をふさわしく果たすべきだと私は考えます。日本政府としてそうした見解を発することが必要ではないのかと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 まず、アメリカの動向でありますけれども、米国は、現在、大統領令に基づき、IDA第二十一次増資及びIIC増資を含む国際機関に対する拠出についてレビューを行っているというふうに承知をしており、具体的な国内の承認手続の米国における動向について、日本政府として予断を持ってお答えするということは差し控えさせていただいているところでございます。
他方で、世界各国に広がる貧困や紛争等の課題に直面する途上国を支援する重要性は高まっており、特にIDAやIICといった国際開発金融機関は、こうした課題を対応するに当たって様々な利点、強みを持っているわけであります。
日本としては、こうした強みを有する国際開発金融機関を通じた支援とJICA等のバイの支援を効果的に取り組むことによって、途上国が直面する諸課題の解決に取り組んでいくとともに、G7各国を含めて、こうしたIDA等に対する支援、これの必要性、これをしっかりと働きかけていきたいと考えています。
○田村(智)委員 私、今日は、米国トランプ大統領の言動にどう日本政府は対応していくのかというところで質問していきたいんですけれども、ガザをアメリカが所有するという発言やパリ協定からの離脱など、トランプ大統領の言動は、国連憲章、国際法に基づく平和秩序あるいは人類社会にとっての緊急課題への国際協調、これを壊すものです。貿易、経済においても、米国第一どころか、自分第一、トランプ・ファーストとも言える立場だと言わざるを得ません。世界各国から厳しい批判の声が上がっていて、米国の孤立が深まっていくだろうというふうに私は考えています。
三月十四日の本委員会で、自動車あるいは自動車部品に対して一方的に二五%の追加関税を課すというのは日米貿易協定違反ではないのかと質問をいたしました。経産省からは、追加関税を課さないということは日米首脳の明確な確認だという答弁がありました。
それでは、日本政府は、協定違反だということをアメリカ政府に対して伝えているのでしょうか。
○小見山政府参考人 お答えいたします。
米国政府とは様々なレベルで意思疎通を行い、我が国が関税の対象となるべきではないということを申し上げているところでございます。その際に、日米貿易協定に関する我が国の理解についても申し上げているところでございます。
○田村(智)委員 協定違反だということを明確に伝えるべきですよね。
そして、トランプ大統領は、自由貿易によってアメリカが被害を受けてきたというふうに主張するんですけれども、これは認識が逆立ちしていると思うんです。
アメリカは、グローバル企業の利益追求のため新自由主義経済を進め、人、物、金を世界で自由に回すということを積極的に求めてきました。
トランプ大統領が最もやり玉に上げているのはメキシコ、カナダからの自動車の輸入ですけれども、そもそも、NAFTA、北米貿易協定によってメキシコ、カナダとの自由貿易を推進したのは当のアメリカです。その背景には、安い労働力を求めたアメリカの自動車メーカー、ビッグスリーの強い要求があったということも明らかです。
日米の自動車貿易摩擦は、日本の自動車メーカーが賃上げをまともに行わず、取引先企業に乾いたタオルを絞らせるコストカットを押しつけて自動車価格を抑えてきたという日本経済の重大問題はありますが、自動車関税に差があるわけではありません。日本でのアメリカ車の需要がなく、アメリカでは日本車の需要があった。まさに米国が求めたグローバル企業の自由競争、自由貿易がもたらした結果にほかなりません。
そうしますと、今起きていることは、アメリカ主導で作られてきた自由貿易のルールをアメリカ自身が壊しにかかっている、新自由主義に基づく貿易ルールが今完全に行き詰まっているということだと思うんです。
石破政権として、こうした歴史的経緯を捉えて事に臨むということが必要だというふうに私は思いますが、加藤大臣の認識を伺いたいと思います。
○加藤国務大臣 今お話がありました、そのことをどう評価するかというところがまさに違うんだろうなというふうに思って、アメリカのトランプ大統領と違うんだろうなという意味で、聞かせていただきました。
我々としては、日本の国益あるいは日本の経済発展等含めて、自由貿易体制、自由で開かれた体制をしっかり維持していくということが大事であり、それは日本の国益のみならず世界経済の発展にも大事だというのは、これは我が国の基本的な姿勢であります。
他方で、今、トランプ大統領が立て続けに様々な関税措置の発表をしていることについては、まさに、米国政府による広範な貿易制限措置は日米両国の経済関係、ひいては世界経済や多国的な貿易体制全体に大きな影響を及ぼしかねないということを我々も認識をしているところでありまして、その上で、米国の関税措置については日本を対象にすべきではないという申入れを数度にわたって行い、また、石破総理からも、あらゆる選択肢が検討の対象との発言があったところでありますので、財務省としては、今後明らかになる措置を含めて、米国の関税措置の詳細、影響について十分精査しながら、関係省庁とも連携を取りながら必要な対応を図っていきたいというふうに考えています。
○田村(智)委員 今の御答弁にあった、石破首相が、あらゆる手だてを尽くす、日本だけ除外してもらうためにと。このことについてちょっと懸念があるんです。
日米自動車摩擦の犠牲にされてきたのは、日本の農業です。自動車輸出を守るために、自動車メーカーを守るために、牛肉、オレンジに始まり、果汁、果実、豚肉、ついに主食の米まで米国に差し出した。食料自給率が下がり続けようが、日本の農業に大打撃を与えようが、農作物の輸入自由化へとひた走ってきたわけです。さらに、非関税障壁の撤廃も求められて、郵政民営化、かんぽはがん保険を販売できず、郵便局でアフラックのがん保険をあっせんするということにまでなったわけですよね。
そうすると、日本だけ除外してもらうためあらゆる手だてを尽くすと。一体今度は何を取引材料にしようとしているのか。これ以上、国民の暮らしや日本の産業を犠牲にして、あるいは、LNGガスの更なる輸入など、気候変動対策に逆行するアメリカとの取引を進める、こういうようなことは許されないというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
具体的な検討状況をつまびらかにすることは差し控えさせていただきますが、今般の米側からの発表を受けまして、総理の御指示を踏まえて、関係省庁とも協力、連携の上で、米国による関税措置の内容そして我が国への影響を十分に精査しつつ、引き続き、米国に対して、措置の対象から我が国の除外を強く求めていくところでございます。
○田村(智)委員 本当に、どういう姿勢、どういう立場で臨むのかが問われているんですよ。冒頭で、日米協定違反という強い態度で臨むべきだというふうに私は思っているんですね。
トランプ大統領のこの関税ディールは、米国第一でも保護主義でも何でもないですよ。事実、自動車・自動車部品二五%関税の大統領令によって、アメリカの自動車メーカーの株価が下落しています。アメリカ国内に更なるインフレが引き起こされるということも強く懸念されているわけですね。決して、トランプ大統領の自分ファースト、これで世界が動くということにはならないはずなんですよ。むしろ、経済においても、世界の中だけでアメリカの孤立が避けられなくなっていくだろう。そのときに、日本だけが除外してほしいと、日本だけだと言って、トランプ大統領の顔色をうかがうような取引に終始をしていたら、これは日本もアメリカと一緒に世界で孤立することになりかねません。
今、新自由主義の貿易ルールが深刻な行き詰まりを迎えている下で、必要なことは、各国の経済主権、食料主権、これを土台とした新たな貿易ルール、これを構築していくことだと思います。自動車関税への対応という狭い、視野を狭くした対応ではなくて、公正な貿易ルールとはどういうものなのか、真剣に日本政府としても検討して、世界各国への働きかけをしていく、そういう大局的な検討が求められていると思います。
加藤大臣、最後に認識をお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 我が国を外してくれというのは、我が国に対して様々な関税率の引上げが提示をされている、したがって我が国としてそれを外してくれということをまず言っているわけであります。
その上で、日本としては、先ほど申し上げましたように、自由で開かれたこうした貿易体制、国際経済体制、こういった中で我が国の国益をこれまでも維持をしてきたところであります。引き続き、こうした体制を状況の変化の中においてしっかりと構築すべく、日本は日本として努力していく、これは当然のことだと思っております。
○田村(智)委員 私の問題提起は、自由で開かれたという米国がまさに主導してきた貿易ルールというのが実はグローバル企業の利益にとって自由で開かれたというものでしかなかった、それはアメリカの国内においても大きな打撃を与えた、だから公正な貿易ルールというのが今求められているんだという問題提起です。是非そうした大局的な立場に立った対応を重ねて求めまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○井林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○井林委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。
国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井林委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○井林委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、大野敬太郎君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。水沼秀幸君。
○水沼委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
一 国際開発協会を含む国際機関への資金拠出を行うに当たっては、多額の資金を拠出することに鑑み、我が国の国際貢献として効果的かつ戦略的な資金拠出となるよう、然るべき国際機関の計画・方策に反映させるべく努め、国際社会における我が国の評価を高めるよう最大限尽力し、計画的に取り組むこと。また、国際機関の運営等に関して、主要出資国としてふさわしいリーダーシップを発揮するなど、我が国の国際的プレゼンスの向上に努めること。
二 国際機関の活動や我が国の貢献について一層の広報活動及び情報公開を行い、当該資金拠出に関し国民の理解を得るよう努めること。
三 我が国の国際貢献の機会を拡大する観点から、国際機関において日本人職員の登用機会を更に広げる活動を推進し、有能な人材が円滑に採用されるよう支援に努めるとともに、出資に見合う枢要なポストの獲得に尽力すること。
四 開発途上国の抱える債務問題が深刻化する中、国際開発協会など世界銀行グループを通じて債務国における借入先や借入額等の債務データを的確に把握することが重要であることから、債権国間による当該債務データの共有を促進するとともに、債務国が適切な債務管理を行い、返済能力に応じた借入れが実施されて債務の持続可能性が確保できるよう、各加盟国に対し積極的に働きかけること。
五 世界情勢が大きく変化する中、あらゆる人々が恐怖と欠乏から解放されるような社会づくりである「人間の安全保障」を実現していくことは重要であることから、「人間の安全保障」の視点に立った国際支援を実施するよう努めるとともに、諸外国に対し開発援助による国際協力を安定的かつ持続的に取り組む必要性を強く呼びかけること。
以上であります。
何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。
○井林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井林委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣加藤勝信君。
○加藤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○井林委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○井林委員長 次回は、来る四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十分散会