衆議院

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第6号 平成29年3月17日(金曜日)

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平成二十九年三月十七日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 永岡 桂子君

   理事 上川 陽子君 理事 亀岡 偉民君

   理事 前田 一男君 理事 宮川 典子君

   理事 山本ともひろ君 理事 菊田真紀子君

   理事 長島 昭久君 理事 富田 茂之君

      あべ 俊子君    青山 周平君

      安藤  裕君    池田 佳隆君

      尾身 朝子君    大串 正樹君

      門山 宏哲君    神山 佐市君

      工藤 彰三君    小林 史明君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      田野瀬太道君    谷川 とむ君

      馳   浩君    福井  照君

      船田  元君    古田 圭一君

      松本 剛明君    宮崎 政久君

      村井 英樹君    太田 和美君

      坂本祐之輔君    高木 義明君

      玉木雄一郎君    平野 博文君

      牧  義夫君    笠  浩史君

      樋口 尚也君    吉田 宣弘君

      大平 喜信君    畑野 君枝君

      足立 康史君    伊東 信久君

      吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       松野 博一君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    田野瀬太道君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        藤原  豊君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   中尾  睦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房サイバーセキュリティ・政策評価審議官)        中川 健朗君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          藤原  誠君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         村田 善則君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官付参事官)         小川 良介君

   参考人

   (東京大学大学総合教育研究センター教授)     小林 雅之君

   参考人

   (公益財団法人あすのば理事)           久波 孝典君

   参考人

   (労働者福祉中央協議会事務局長)         花井 圭子君

   参考人

   (京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)    柴田  悠君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     村井 英樹君

  高木 義明君     玉木雄一郎君

  伊東 信久君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  村井 英樹君     宮崎 政久君

  玉木雄一郎君     高木 義明君

  足立 康史君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 政久君     小林 史明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)


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     ――――◇―――――

永岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学大学総合教育研究センター教授小林雅之君、公益財団法人あすのば理事久波孝典君、労働者福祉中央協議会事務局長花井圭子君及び京都大学大学院人間・環境学研究科准教授柴田悠君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと思います。審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず小林参考人にお願いいたします。

小林参考人 皆さん、おはようございます。

 きょうは、このような場で意見を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、給付型奨学金並びに新しい所得連動型返還制度について創設にかかわってまいりました、その立場から少し意見を述べたいと思っております。

 初めに、この二つの制度は、日本の奨学金制度の中で画期的な転換であるということを申したいと思います。その理由は後で申しますが、ただ、この二つの制度は目的が全く異なっております。対象も違います。給付型奨学金制度は、あくまで低所得層の進学を促進するため、背中を押すための制度です。それに対しまして新所得連動型返還制度は、中所得層の返還の負担を軽減するものであり、ローン回避と言われる現象を防止する、そういう目的を持っているものであります。ただ、この二つの制度は、創設にかかわった者としましてはちょっと手前みそになりますが、本当に画期的な制度だというふうに思っております。

 制度改革の背景なんですが、第一に申し上げたいのは、日本では長い間、教育費の負担は親の責任であるという考え方が非常に強く、このために、なかなかこういった公的負担という考え方が根づかなかった、そういうことがあるかと思います。これは、福祉国家的な考え方をするヨーロッパ、あるいは個人主義的なアングロサクソン系の国、アメリカとかイギリス、オーストラリアというような国とは全く異なっているということであります。

 そういった背景がありまして、授業料が非常に高騰いたしまして、これは委員の皆様よく御存じだと思いますので詳しくは申し述べませんが、国立大学の授業料は、私が入った一九七二年当時は一・二万円だったのですが、現在は五十四万円にまではね上がっているというようなことがございます。

 それから三番目に、有利子奨学金が爆発的に拡大しているということでありまして、これはグラフで示してありますように、一九九八年以降非常に、特に第二種奨学金が爆発的に拡大しているということがあります。現在、奨学金の受給率は、日本学生支援機構のものでは約四割というような状況になっております。

 それから、制度改革の背景として挙げなければいけないこととして、やはり大卒労働市場が非常に雇用が不安定になっているということ、大卒の三人に一人が三年以内に離職するというような状況になっているということが挙げられます。

 それから、返還の負担が非常に重くなっているということ、ローン回避の傾向が発生していることでありまして、これは私たちの調査ですが、次の二ページ目をごらんください。これはまだ確定値ではありませんで、現在行っている調査でありますけれども、それほど大きな傾向の違いはないと思いますが、所得の低い人ほど、将来返済できるかどうかが不安であるということ、それから、もう一つ問題だと思うのは、よく知らなかったという人が多いということでありまして、この点については後でまた触れます。

 それから、社会経済的な格差が拡大する中で、教育の格差も拡大しております。地域間につきましては、きょうは詳しくは申し上げられませんが、一番高い東京と低い鹿児島では四〇%もの大学進学率の格差があります。そして、男女間あるいは所得階層間の格差も非常に大きなものがあります。

 ここでは所得階層間格差だけ取り上げますが、二〇〇六年当時、左側の図三のように、私立大学については非常に大きな格差がありましたが、国公立大学についてはそれほど格差がありませんでした。ただ、私たちの最新の調査によりますと、やはり国公立大学で低所得層の進学率が低くなっている、そういう状況があります。

 それから、今までの日本の学生支援機構の奨学金というものは、教育的な配慮がついた学生ローンと言っていいかと思います。第一種は完全無利子で、これは国際的にも非常に珍しい制度ですし、十年間の返還猶予あるいは減額返還といった措置、それから国際的にも実は返還率はかなり高いものであります。ただ、こうした配慮がついていることが、逆に給付型奨学金の創設を残念ながらおくらせてきたという側面もあるのではないかというふうには考えております。

 ただ、今までの奨学金というのが非常に進学にとって役に立ってきたことは、図の五でお示ししましたように、奨学金なしでは進学が不可能だったという層が、所得が低い層でも六割、実は高い層でも四割近くいる。つまり、教育費の負担の軽減には非常に役に立っているということであります。

 給付奨学金の対象ですが、これは住民税非課税世帯ということで、一つの明確な基準であるというふうに考えております。私たちの調査でも、そこに図の六で示しましたように、経済的に困難な者で、給付奨学金があれば進学したいという者は大体二万人程度いるということがわかっておりますので、その数字から比べましても、一つの根拠になっているかと思います。

 ただ、個人的な意見といたしましては、将来についてはいろいろな課題があるというふうに思っております。

 まず、在学時の学生への支援であります。これは特に、家計急変と言われるように、親がリストラされたり病気になったりということで授業料が払えない、その結果、中退になるという学生がふえているということは、文部科学省の調査あるいは私たちの調査でもわかっております。こういった学生を救う公的な支援が現在乏しいということであります。

 それから、給付型奨学金の拡大ですけれども、私の個人的な考え方といたしましては、将来的には段階的な制度にするべきだと思っております。図の七をごらんください。諸外国の場合には、こうした段階的な制度をとっている国が多いわけでありまして、中には、連続的に奨学金の額が変わるというような制度をとっている国もあります。これに比べますと、日本の場合には、まだまだ、三段階でありますので、将来的には改善の余地があるかと思っております。

 それから、新所得連動型については有利子に拡大するということが必要でありますし、新所得連動型については機関保証のみでありますけれども、従来の定額返還型については人的保証と機関保証の両方がついております。ということは、学生にとっては、この三種類の中から選ばなければいけないという、非常に難しい選択を迫るということになります。

 そのためには、情報の周知、ガイダンスというものが絶対に必要であります。これについては、スカラシップアドバイザー制度という、仮称ですけれども、これを新設していくということで制度的な充実を図っていただけるというふうにお聞きしておりますが、このことはぜひ強調しておきたいと思います。

 これはいわゆる情報ギャップと言われる問題でありまして、知っている者と知らない者で非常に差がついてしまう、こういった問題が非常に大きくなっております。もっと広く言えば、金融リテラシー、金融教育というものが必要ではないかということであります。

 それから、これは残念ながら今回の制度では実現しなかったんですけれども、源泉徴収ということが国際的には広く行われておりまして、これができますと回収のコストが大幅に削減できる、あるいは延滞が防止できるということがございます。

 それから次に、教育のための寄附の増加策と教育費負担の再検討ということで、これは将来的な大きな課題であるというふうに思っておりまして、例えば、孫への教育資金に対する相続税の非課税というのは現在一兆円の市場規模になっているというふうに聞いております。そうしますと、この相続税、自分の孫のためでしたら節税したいということでありますけれども、これは先ほど申しました親の教育費負担主義ということと関係しておりますが、こういったものを少しでも公的なものに回していただければ、それだけで十分な財源ができるわけでありまして、〇・一%でも十億円、一%なら百億円ということになりますので、ぜひこういったことも考えていく必要があると思っております。

 それから、もっと大きな問題といたしましては、教育費の家族主義の転換、あるいは、教育費は公的に負担するということがどういう意味を持っているかということを改めて国民が問い直すことが必要であるというふうに思っております。

 これは、言いかえれば教育の公共性ということでありまして、例えば、大学は公的な補助を非常に受けているわけでありますから、公共性についても考えていく、あるいは社会的貢献を高めていくということは、これは大学にも求められている責務であるというふうに考えております。そのためには、大学は、アカウンタビリティーを果たす、あるいは説明責任を果たすということが必要であります。それから、情報公開も十分していかなければいけないというふうに考えております。

 私たちのところで、東京大学の学生に卒業時に調査をしているんですが、国立大学で税金で教育を受けたという意識があるという学生は、残念ながら、毎年行ってもちょうど半分ずつです。変わりません。学生に聞きますと、授業料が高いので税金で教育を受けているという意識が持てないということでありますけれども、こういったことは非常に問題ではないかというふうに思っております。

 以上、早口で恐縮ですが、私の意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

永岡委員長 大変ありがとうございました。

 次に、久波参考人にお願いいたします。

久波参考人 おはようございます。

 大変に緊張しておりまして、私の話は、客観的なデータ等ではなく、給付型奨学金を受けている一人として、その有効性といいますか、裏打ちの部分をお話しさせていただきたいと思いますので、ぜひ、資料を余り気にせず、お話を聞いていただければなというふうに思います。

 私ですけれども、東洋大学の夜間学部に通っている四年生になります。小学校五年生から高校三年生までを児童養護施設の方で過ごしました。現在は、民間の給付型奨学金のみで学費を納めておりまして、生活費の方は、昼のNPOでのインターンをしながら生活をしているというふうな実態になります。

 大学進学に対してなんですけれども、私は、高校が進学校だったことから、周りのみんなが進学するというのが当たり前という環境におりましたので、何となく大学進学を自分もするだろうというふうに考えていました。しかし、高校二年生以降、周りがオープンキャンパスですとかそういった機会にだんだんと身を投じていく中で、周りの友達の会話でだんだん経済的な話が出てくるんですね。入学金が幾らで、初年度に幾らかかって、そういった話が飛び交う中で、これはどうも自分には無理そうだぞというところをだんだんと認識してまいります。

 高校生、アルバイトができる年齢ではあると思うんですけれども、幾ら何でも、初年度百万円みたいな話をされたら、なかなかそれが実感として持てない、アルバイトでどうにかなるようなものではないというようなことを何となく思ってしまう人の方が圧倒的に多いのではないかと思います。

 高卒と大卒で生涯年収が大きく違うということはわかっていたんですけれども、それでも、私は、余り卒業後の歩みが想像できないことですとか、高校に通い続ける意味がわからなくなった。それはやはり、将来がイメージできないからというところですね。そこが理由となって、高校に通い続ける意味を見出せなくなってしまったりして、三年生は欠席がちだったり、卒業時の成績表は本当に真っ赤っかというような状態でもありました。

 先ほどお話ししたように、高卒と大卒で大きく立場が異なるということはすごくわかってはいるんですけれども、それが、経済的な壁によって、具体的な行動を起こすためのモチベーションに余りつながらなかったというところが、経済的な壁として物すごく子供たちが実感するところだと思います。

 学校に行くということは、夢や目標を持って、学校をある種一つの手段として考える、夢や目標達成のための手段として実行していく、そのために経済的なものがかかる、そういった構図があるかと思うんですけれども、僕の場合は、その行動を起こすまでの気になれなかった。それは、経済的なものが高過ぎて、イメージがつかなくて、そういったところで僕は挫折をしてしまいました。

 貸与型の奨学金があるじゃないかというふうにお話をされる方が何人かいらっしゃるんですけれども、これは、いずれ返さなければならないというもので、自分の借金、デメリットの部分をどんどんふやしていくという作業になってしまいますので、余り選びたくない、選ばざるを得ないような状態というのは正直フェアじゃないというふうに高校生ながらにも思っていた部分がありました。

 自分の場合は、いざというときの身寄りがない。養護施設に行っていた過去がありますので、親とも疎遠な環境ということで、身寄りがないというときに、自分が返せなくなった場合どうしたらいいのか、そこがはっきりしていないのに借りることに対して、ある意味無責任ではないかというようなことも考えたりはしました。

 そういうことを思ってしまうような制度状態にあるということだけ意識していただければと思います。

 貸与型の奨学金は厳しくて、借りてでも進学したいというふうに思っている気持ちを、拍車をかけて進学の後押しにならないというふうに僕は考えています。

 そんな僕が進学に至るまでなんですけれども、高校三年生のときに、養護施設の退所者向けに民間の給付型奨学金がありまして、そちらの方に応募していたんですね。

 ただ、そちらの方は、それぞれ審査があったり、額も、一括で、これさえ受かればというような状態ではなく、幾つかの支援をかき合わせてというような金額状況にありまして、数字的には月額で二万円から三万円程度のものが多くありまして、それを幾つも集めないと、進学という一つの目標を達成することは難しいというような状態にあります。目標の金額に届かなければ、それら幾つか受かった奨学金、そちらの方もある意味無駄になってしまう、進学を諦めざるを得ないというような、そういう構図も発生しております。

 これは、僕はもう一つフェアじゃないというふうに思っているのが、給付型奨学金の申請ですね。こちらの方に手間がかかる都合上、多くの受験生たちは受験勉強にだけ集中すればいいというような環境があるかと思いますが、そうではない学生たちにとっては、申請の手間もある、作文ですとか申請書、そういった課題もあるというような状態ができてしまっています。

 結局、自分は、高校三年生のときには、大学進学への意識は持ちながらも、進路未定のまま、自立援助ホームという新たな社会的養護の環境下に入りました。

 高校卒業後も進路を決めかねておりまして、進学には経済的な壁があることから、自分にはできないということを卒業後もずっと考えておりましたが、あるとき、社会起業家の方たちの、夢を語るイベントに出会いました。

 そこで、自分はできないという発想が頭にしみついていたんですね。制約が多い状況下にありますので、その制約ばかりを気にして、自分の現時点で選べる選択肢は何なんだろうという発想で、自分の将来設計ですとかそういった進路選択を決めていたんですけれども、それを一旦フラットにして、自分でやりたい目標を設定し、そこから起こる壁というものを一つの障害と考えて、障害が生まれた際にはそれに対する有効な手段をとっていこうというふうに発想を転換することができたために、進学できているという状況にあります。

 当たり前の話かもしれないんですけれども、競争に勝つというようなところは、信念というところはもちろんなんですけれども、経済状況ですとか文化資本とか社会階層とか、そういったところの差異から、生まれやすかったり、生まれにくかったりというようなところが存在しています。これが経済的なものであるならば、社会的なコンセンサスがとれてきてはおりますけれども、なかなかそこの理解を得られないというようなところがありますので、何とかしていただきたいというふうに思っています。

 ここから先の話は、別の添付の資料があると思いますけれども、法政大学の湯浅教授の方から、一度私を記事として取り上げていただいたことがありまして、そちらの方にも載っている話になるんですけれども、自分には努力するエンジンが備わっていないというふうに考えていました。

 人は、努力の対価として勝利ですとか何か努力が報われた経験というのがあって初めて、努力のサイクルというものに入っていけるんだと思うんですけれども、苦しい環境で生活する子供は、そういった困難な状況の中で、初めから、努力が報われるということを知らない、あるいは疲れ切ってしまっていてなかなかそこを踏み出せないというような人も中にはいます。そういった子供たちは、努力することを思いつきすらしない、そういった発想を持っています。

 頑張っている子のスタートラインをそろえるという意味でのコンセンサスは、先ほども言わせていただいたように、とれているかと思うんですけれども、進学したい、何かになりたい、あれをやりたいとか、そういう純粋な気持ち、意欲をそのまま子供たちが、障害を感じることなく、そのまま夢をかなえられるような社会になればいいなというふうに私は考えています。

 給付型奨学金等は、進学の経済的な壁というところだけでなく、意欲の壁というところも大きく取り払ってもらえるような措置だと思います。

 私の話は以上になります。ありがとうございました。(拍手)

永岡委員長 ありがとうございました。

 次に、花井参考人にお願いいたします。

花井参考人 おはようございます。中央労福協事務局長の花井と申します。

 本日は、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 中央労福協は、二〇一五年より、給付型奨学金制度の創設、奨学金制度の改善、学費を含む教育費負担の軽減に取り組んでまいりました。その立場から、今回の法案並びに関連する奨学金制度の課題について意見を述べさせていただきたいと思います。

 初めに、奨学金問題の基本的な認識についてお話ししたいと思います。

 この間の取り組みを通じて実感したことは、この問題が極めて深刻であり、もはや個人の努力の限界を超えて、社会の構造的な問題となっているということです。

 中央労福協では、奨学金の利用実態を把握するために、二〇一五年の七月から八月にアンケート調査を実施し、一万三千三百四十二名から回答を得ることができました。資料の「アンケートから見えてきた奨学金問題」というミニ冊子をごらんいただきたいと思います。

 表紙にありますが、奨学金の平均的な借入額が三百十二・九万円、毎月の返済額が一万七千二百六円、返還期間は十四・一年となっています。

 五ページ下のグラフで返済の負担感を見ると、苦しいが四割弱、非正規労働者では五六%に達しています。

 六ページをごらんください。奨学金返済は、結婚、出産、子育てなどにも大きく影響を及ぼしていることがわかります。

 授業料の高騰や家計収入の低下により、今や大学生の二人に一人以上が奨学金を利用しなければ進学できず、卒業後も不安定雇用や低賃金で返済に苦しんでいます。無理をして返している人も、結婚や出産にちゅうちょしてしまう。こうした事態を放置しておけば、貧困の連鎖や少子化をさらに加速し、日本社会自体が持続不可能となってしまいます。奨学金問題は、教育の機会均等確保の問題だけではなく、社会の存続にかかわる問題でもあるのです。

 こうした中で、給付型奨学金の創設や、奨学金制度の改善、教育費負担の軽減は、勤労者、国民の切実な願いとなっています。そのことは、約三百四万筆にも及ぶ署名や、お手元に配付しております大変分厚い冊子でございますが、アピールへの賛同がさまざまな分野を超えて共感を呼び、大きく広がったことにあらわれています。

 また、奨学金制度についてあなたの声を聞かせてくださいと呼びかけたところ、全国から千四通のメッセージが寄せられました。お手元の冊子にその一部を抜粋しておりますが、結婚、出産は無理、ブラックリストに載ってしまう、子供に借金を負わせたようなもの、このまま夢を諦めたくない、勉学よりもアルバイトに追われる毎日などなど、読むと本当に胸が痛みます。ぜひとも、こうした声を国会議員の先生の皆様たちに受けとめていただきたいと思います。

 本法案で、これまで貸与型しかなかった日本において給付型の奨学金ができることは大きな前進であり、評価をしております。とりわけ与野党の先生の皆様たちの御尽力に対しまして、心より感謝申し上げたいと思います。しかし、規模は余りにも小さく、対象者も限定的です。今回の制度創設はあくまでもスタートラインであって、将来に向けて拡充し、大きく育てていただきたいと思います。

 以下、法案の内容及び関連する課題について意見を申し上げます。

 第一に、給付対象者についてです。

 一学年二万人では、高等教育の進学者に対してわずか二・六%です。非課税世帯の進学者も三分の一しかカバーできていません。また、学費の高騰や家計収入の低下により、中間層を含む多くの世帯にとって、子供の学費を負担することが困難となっています。ごく一部の貧困層のみを救うという視点だけでは、現在の教育費問題を解決することはできません。当面は住民税非課税世帯の進学者六・一万人全員に対象を広げつつ、将来的には中間層にまで広げていただきたいと思います。

 第二に、給付額についてです。

 月額二万から四万円では、やはり不十分と言わざるを得ません。文部科学省の検討チームの試算でも、アルバイト、仕送り、その他の収入を見込んでも一万から二万円不足しており、その分の増額は必要であると思います。また、授業料減免と給付型奨学金を併用する場合、減額調整を行うと言われておりますが、再考をお願いいたします。進学を後押しするためには、学費の軽減と生活費の両面からの支援が必要です。

 第三に、学業成績不良の場合には、そこに至った事情を総合的に判断し、可能な限り学業を継続できるよう、支給打ち切りや返還については慎重な運用を行うべきです。月額二万から四万円では、依然としてアルバイトに追われ、学業に集中できません。個々の学生の抱える事情を把握して、丁寧な相談対応を行っていただきたいと思います。

 第四に、制度導入後も不断の検証と見直しが必要です。

 法案の附則で施行五年後の見直しが盛り込まれましたことは、大変評価しております。ただ、それ以前であっても、ニーズの充足状況の調査や運用に伴う問題点の実態把握を行って、必要な改善については早期に対応していただきたいと思います。また、実施状況や検証結果については、国会に定期的に報告すべきであると考えています。

 第五に、制度を円滑に運用するには実施体制の整備が不可欠です。

 四月から給付型奨学金や所得連動返還型奨学金がスタートし、日本学生支援機構の業務量も相当に増大します。現在でも、返済に関する相談や学校現場からの問い合わせの電話がなかなかつながらないと言われています。業務量に見合う十分な人員の確保や、制度の周知、広報体制の整備を国の責任で行っていただきたいと思います。

 第六に、無利子奨学金についてはここ数年拡充されてきておりますが、依然として、貸与奨学金の六割超が有利子です。将来は全て無利子にすることを目標に、少なくとも無利子が有利子を上回るよう拡充を図っていただきたいと思います。

 第七に、新たに給付や貸与を受ける人だけではなく、既存の返済者の負担軽減や救済制度の改善、拡充も忘れてはなりません。新所得連動返還型奨学金制度のさらなる改善、拡充とともに、猶予期間の延長、一定期間経過後の返還免除制度の導入、延滞金賦課率の引き下げについても早急に検討し、改善していただきますよう要請いたします。

 最後になりますが、奨学金制度の拡充や学費の引き下げは国民の関心が高いテーマです。しかし、文部科学省の検討過程が非公開とされ、国民的な議論ができなかったことは残念です。ぜひとも、奨学金や学費に関して検討を行う際には、情報の公開は言うまでもなく、検討過程に利用者、勤労者の代表や学校現場からの参画を図り、国民世論を味方につける形で進めていただきたいと思います。

 ぜひとも、この国会審議を通じて、有利子から無利子へ、貸与から給付への流れをより確かなものとし、将来に向けて拡充していく方向性を国会の意思として明らかにしていただくことを強く要望し、意見陳述とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

永岡委員長 ありがとうございました。

 次に、柴田参考人にお願いいたします。

柴田参考人 皆様、おはようございます。柴田でございます。

 先ほどの花井さんからの現場の話、そして久波さんからの当事者のお話、非常に重い話でして、特に久波さんからの当事者のお話、ぜひ重く受けとめていただければと思います。

 お手元に配付資料がございます、こういうA4のものですけれども、私はどういう立場で御発言するかと申しますと、データ分析をしてきた、とりわけ先進諸国のマクロデータを分析してきた立場からお話しさせていただきます。

 ただ、私の分析、まだまだ粗い分析でして、まだまだ改善の余地があります。ですので、結論としましては、ぜひこういったマクロデータの分析をもっと進めていただきたい、できれば、政府の研究機関だとか、あるいは民間の研究機関に委託するなりだとかいろいろな方法がありますので、そういったことをお願いしたいと思います。

 今回の私の分析の結論がタイトルになっておりますけれども、大学の学費の軽減は、出生率の上昇と労働生産性の上昇、この二つをもたらすのではないかという可能性が見えてきたというのが今回お話ししたいことでございます。

 細かく言いますと、ポイントというところにまとめているんですけれども、特に下線部を引いたところですね。大学の学費の軽減によって、希望出生率一・八だとか、あとは労働生産性の上昇によるGDP六百兆円といったものは実現できる可能性があるんじゃないかということです。

 もう少し細かく言いますと、大学学費軽減だけではなくて、労働時間の短縮、つまり働き方改革、あとは待機児童の解消といったものも必要かとは思うんですけれども、そういったものを組み合わせれば、今の政府が目標としている数値の実現が可能ではないかということが分析から多少見えてきたということでございます。

 ただ、先ほども申し上げましたように、まだ粗いところがありますので、ぜひとも今後、詳しく分析をさらにしていただきたいと思います。

 詳しくは、どういった分析をしたかというのを簡単に御説明いたしますと、三ページの下のところを見ていただけますでしょうか。三ページの下のところを見ていただきますと、分析の概要が載っております。下線を引いたところですけれども、私が行った分析は、先進諸国のデータを分析したということでございます。

 詳しく言いますと、先進二十八カ国の八〇年代から二〇〇〇年代のデータを分析したところ、どういった傾向が見られるのかというのを見出していきました。その結果、先進国の過去の傾向というのを今後の日本に当てはめて推計した結果が次のページに載っております。

 今回のこの委員会は給付型奨学金に関するものですが、私のお話は、もう少し大きな視野で、その後、さらにどういった形で、どこら辺まで教育への投資を広げていくべきか、それが社会にどういった影響をもたらすのかというところが主眼になっておりますので、その点は御了承ください。

 そして、四ページの上の方、下線を引いておりますけれども、先ほども言いましたように、あくまでこれは先進諸国の過去の傾向をそのまま今後の日本に当てはめて推計した、試算したということですので、その点は御了承ください。

 また、因果関係の細かいメカニズムも、まだ明らかになっていません。あくまで、こういった政策を組むとこういったアウトプットが出てきたという傾向にすぎませんので、ぜひとも今後、さまざまな検証、分析をいろいろなところでしていただければ、それを総合的に判断して政策に生かしていただければと思います。

 得られた結論がこの図に載っております。これは、先日、二月八日の日本経済新聞に「経済教室」という欄で載せた分析を若干さらに改定した数字になっております。

 ここの図を簡単に御説明しますと、まず、一番左上に書いてありますものが労働時間の短縮、これを週三時間短縮するという改革ができたと仮定します。これを今後、二〇一七年から二〇二五年までの八年間で実現するという前提を置きます。

 次に、大学の学費の軽減、これを国立大学相当分のみ、全ての大学生、専門学校生、短大生に国立大学授業相当分のみ学費を軽減する、方法は特には問いませんけれども、そういった大規模な学費軽減を行う、これは予算が一・七兆円ぐらい必要かと思うんですが、そういった設定をいたします。これも今後八年間で実施するという設定です。

 三つ目が待機児童の解消です。これは、保育士への給与改善も含めた数字になっているんですが、保育士の給与を大幅に改善した上に、さらに保育所あるいは保育ママを拡充するといった形で保育サービスを拡充するということに一・四兆円を投入する。これによって、恐らく待機児童はかなり大幅に減少するのではないかと見込んでおりますが、この一・四兆円という数字でインプットを設定しております。

 この三つのインプットを設定すると、先進諸国のこれまでの傾向から試算しますと、どういった変化が日本社会にもたらされるのかというのを推計したところ、まず、総合的に、結論、この三つの合計値が一番右のところに書いてあります。出生率がプラス〇・三六ほどということです。かなりこれは大きな数字なんですが、とりわけ働き方改革、つまり労働時間の週三時間短縮と大学学費の国立相当無償化によって、かなり大幅に出生率は上がるんじゃないか。これはもうわかりやすい話ですけれども、労働時間が短縮すれば、家庭の時間が持ちやすくなるわけです。子育てもしやすくなる。あと、学費が軽減されれば、子育てのコストが減るわけです。

 こういったところから、主にこの〇・三六一、あとは待機児童解消も少し出生率を上げる効果が見込まれるという結果になっております。この〇・三六一が、もしこの分引き上がるとしますと、直近の出生率は一・四五ですので、足し合わせると一・八、希望出生率一・八が実現できるんじゃないかという試算になります。

 逆を言いますと、このぐらい大胆な学費軽減や働き方改革、待機児童解消をしないと希望出生率一・八は実現できないんじゃないかというのが、現在のところ、私が持っている所感でございます。もちろん、検証は、まだまだ必要でございます。

 さらに、出生率の上昇だけではなく、労働生産性の上昇も、この分析から見られたということでございます。これは労働時間の短縮がとりわけ大きな効果をもたらしているんですが、この労働生産性というのは一時間当たりの生産性です。一時間当たりに生み出される実質GDPの上昇率が上がるということでございます。労働時間短縮と学費軽減と待機児童解消によって、合計、合わせて、年平均で一・一%ぐらい労働生産性の上昇率が引き上がるという結果になっております。

 さらに、待機児童の解消は、もう一つ、子供の貧困を減らすという効果も見込まれまして、これは、待機児童解消によって保育所を利用しやすくなるというところによって、まあ保育所が安くなるというところもありますけれども、それによってお母さんが働きやすくなるというところから、子供の貧困が二%ほど減るのではないかというふうに見込まれました。

 以上が私の見出した分析結果なんですが、もちろん、今後検証していただきたいと思います。

 最後に、労働生産性が一・一四、年平均で上がると、これは八年間続けて年平均ということなんですけれども、これをGDPに換算してみたところ、現在のGDPが五百兆円ぐらいと想定しまして、二〇二五年にGDPがどのぐらいになるのかというのを簡単に試算いたしました。

 これは、これまでの労働生産性の伸び率をそのままと仮定して、四ページの一番下に書いてあるところなんですが、就業人口は変わらないと仮定します。これは難しい仮定ですけれども、とりあえず仮定いたします。そうしますと、まず、この三つの改革をしなかった場合は、GDPは五百五十兆円という計算結果になります。これまでの成長率をそのまま当てはめますと五百五十兆円。この三つの改革をした場合、GDPはどのぐらいまでふえるかといいますと、単純計算しますと六百兆円ぐらいというふうになりました。

 ですので、GDP六百兆円という目標値で現在政府は取り組んでおられると思うんですけれども、その六百兆円を実現するためにいろいろな取り組みがあるかと思うんですが、一つにはこういった働き方改革はもちろんされておりますけれども、それだけじゃなくて、大学の学費の軽減によって家計が消費がしやすくなるわけですね。とりわけ、今消費が伸びていない子育て世代の消費が恐らく伸びるんじゃないか、それによってGDPはふえるんじゃないか、生産性もふえていくんじゃないかというふうに解釈しております。

 ただ、何度も申し上げておりますが、この推計はまだまだ粗いものでして、今後、ぜひとも政府系の研究機関だとかあるいは民間の研究機関に委託するだとかいった形で、より専門的に、より精緻な分析をしていただいて、教育の投資というのがマクロ経済やあるいは出生率にどういうプラスの影響を与えるのかというのを検討していただきたいと思います。

 一点だけ補足いたしますと、先日、三月十日の日本経済新聞の「経済教室」で、日本経済研究センターの主任研究員の河越正明さんが、教育の投資、子ども・子育てと教育に八兆円を投資するというふうにすると、実質GDPの成長率が、二〇二六年から二〇三〇年度にかけての年平均が、何もしなかった場合は〇・四%ですが、この改革、つまり八兆円を子ども・子育てと教育に投資すると二・〇%まで引き上がるというような推計も出されております。

 こういったいろいろな推計、民間でも推計されていますので、こういった推計を総合的に判断しながら、教育の投資のマクロ効果というのをぜひ積極的に検証していただきたいと思います。

 以上で参考人としての発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

永岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古田圭一君。

古田委員 自由民主党の古田圭一でございます。

 私は山口県で高等学校を設置しております学校法人の理事長も兼ねておりますので、奨学金については大変関心を持っております。

 先ほどは、四人の参考人の皆様、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。

 このたび給付型の奨学金制度が創設されるということで、これまで進学を諦めていた生徒たちが大学等への進学の夢がかなえられるということで、私も大変うれしく思っているところです。

 まず、小林参考人にお聞きしたいと思います。

 小林参考人におかれましては、文部科学省の給付型奨学金制度検討チームで構成員として議論の取りまとめで大変御尽力いただいたというふうに伺っておりますけれども、この制度創設に対する率直な所感をまずお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

小林参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど冒頭に申し上げましたように、日本の奨学金制度というのは戦後ほとんど変わってこなかったと言っていいかと思います。そういう意味で、先ほどほかの参考人も申しましたように、さまざまな問題点を持っていることも事実でございますので、今回の給付型奨学金制度というものは、そういう意味で画期的な制度になるかというふうに思っております。

 ただ、私がもう一つ強調したかったのは、既にできております新しい所得連動返還型奨学金制度、これとあわせて実施していくことによって、より一層奨学金制度の改革が進むのではないか、そういうふうに考えております。

古田委員 どうもありがとうございます。

 それでは、次に、四人の参考人の皆様全員にお伺いしたいというふうに思います。

 先ほどの小林参考人の資料にもありましたけれども、日本学生支援機構の奨学金を申請しない理由ということで、よく知らなかったからという割合がかなり高いというふうに感じました。

 このたびの奨学金制度の充実、すなわち、給付型奨学金制度の創設、それから所得連動返還型奨学金制度、低所得世帯への無利子奨学金の成績基準の実質的な撤廃というのがありますけれども、これらで奨学金のメニューが大変ふえまして、高校三年になってこのような制度があることを聞いたとしても、進学の心づもりができておらず、遅いのではないかというふうに感じてもおります。もっと早い段階から、小学校、中学校も含めて、生徒や保護者、教員等に対して奨学金の制度の周知を図るための取り組みも大変重要ではないかというふうに思っております。

 どのようにして周知を図って理解を深めてもらえばよいか、皆様方のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 それでは、小林参考人からよろしくお願いいたします。

小林参考人 これにつきましては、私、簡単にしか申し上げられなかったんですが、最後の課題のところに、金融リテラシーということを高めることが非常に重要であるということを申し上げました。

 これは、委員のおっしゃるように、もう高等教育に進学してからでは遅いわけでありまして、高校の段階、あるいは、高校に進学するということが、現在の日本ではどのような大学、専門学校に行くかということをかなり規定しておりますので、実は高校進学においても非常に重要な問題になりますので、そうしますと中学からということになりますが、その段階で十分な金融のための知識を設ける必要があるかと思います。

 現在、文部科学省の指導要領によりますと、高等学校の家庭科で消費者教育ということを行うことになっておりますけれども、これは、ローンの教育ということは行われているようでありますけれども、奨学金については特に項目としては入っていないというふうにお聞きしておりますので、そのあたりに、例えば奨学金について指導要領に入れていただくということも一つの案であるかというふうに思っております。

久波参考人 私の方からは、高校に入ってから奨学金の存在に気づくという状態は確かに遅いと思っておりまして、それを周知することに特化するのではなく、高校に入る以前ですとか在学中ですとか、そういったときに、自分がどんな将来を歩んでいくのかというイメージをつかむですとか、進学自体を手段と考えて、それに必要な奨学金も一つの手段としてあるんだよということだけ心の片隅に認知させておくようにしておけば、あとは、ほかは、やはりおのおのがどんな道を築くのかというところに特化した何かと、先ほど小林参考人の方からもおっしゃっていたお金に対する基礎知識、こういったところがセットで充実していけばいいのかなというふうに考えております。

花井参考人 ありがとうございます。

 二つあろうかと思いまして、一つは、私たちの先ほどお配りしております調査の中にありますように、猶予措置があるということを知らなかったという方が利用者の中で三割を超えております。さらに、延滞金が五%つくとか、さまざまなリスクに対する、あるいは猶予措置とかそういう制度に対する認知度が高くはない、どちらかというと、物によっては低いというような結果を得ておりますので、今後創設されるスカラシップアドバイザーの機能について大変期待をしております。現場の先生たちも、制度が頻繁に変わることによって、さらに利用者がふえていることによって、生徒にきちんと伝えることが難しくて、進路指導の先生たちの負担も大変大きくなっているというふうに伺っておりますので、ぜひその制度が機能することを期待したいと思います。

 それからもう一つは、やはり教育段階に応じまして、金融リテラシーも含めまして、税金とか社会保障とか、いわゆる社会の仕組みについてきちんと教育の中で教えていくことが必要なのかなというふうに考えております。

 ぜひとも、両面から御対応をこれからしていただけたら大変ありがたいなと思います。

 以上です。

柴田参考人 私からもほぼ同じことになってしまうかと思いますけれども、やはり小中のころから、義務教育のころから、社会保障の制度、あとはどんな福祉サービスを利用できる権利を持っているのか、あとは労働法、そういった働く上で基本的な法の知識や制度の知識、それが行く行くは投票行動にもつながると思うんです。財政についてもしっかり学ぶ必要があると思いますけれども、そういった点の教育を、奨学金だけに特化せずに、さらにそういう広い文脈で組み合わせてしていただくのがよいかと考えております。

古田委員 どうもありがとうございます。

 次も四人の参考人の皆さんにお聞きしたいというふうに思います。

 高等教育機関に対する公財政支出と私費負担の割合についてであります。

 衆議院調査局がまとめた資料によりますと、OECDインディケータ、二〇一六年版をもとに作成したものでありますけれども、高等教育機関に対する公財政支出について、OECDの各国の平均ではGDPの一・一%、一方、私費負担は〇・五%となっています。それに対して、日本の公財政支出はGDPの〇・六%で、逆に私費負担が一・〇ということで、OECD各国に比べまして、私費負担の割合が日本の場合は大幅に大きくなっております。

 そういう中で、公財政支出とそれから私費負担のバランスについてどうあるべきか、お聞きしたいと思いますけれども、先ほど、GDP六百兆円を超えるんじゃないかと推測された柴田参考人からまずお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

柴田参考人 そうですね、日本の高等教育の私費負担は非常に大き過ぎるところがありまして、それは公的負担が小さ過ぎるところがあるので、そういったところを変えていくには、やはり国民の理解が必要かと思います。

 公的負担がどういったメリットがあるのか。今大学に行く人は五割から六割ぐらいですから、全員が行くわけではないんですね。ですので、全員にとって、つまり大学に行かない人にとってもどういったメリットがあるのか、大学に投資することがどういったメリットがあるのかというのをしっかりとわかりやすく正確な推計で示す必要があるかと思います。

 それのヒントとなり得るのが、先ほどの出生率の改善。それは今後の財政の健全化にもつながってくるかと思いますし、あるいは労働生産性、あるいは労働者の生産性の全体的な上昇にもつながるかと思いますので、そういったところをわかりやすく推計し、有権者に伝えるというのはすごく重要かなとは思っております。

 ありがとうございます。

花井参考人 ありがとうございます。

 今回のこの奨学金改善あるいは給付型創設の運動に取り組みまして、本当に、実感したお話はさせていただきましたが、もう一つ驚いたことは、やはりさまざまな意見の中に、結婚とか出産とかは到底考えられない、とても子供を育てることができないという声が多かったということです。調査の中でも、予想以上にそこへの影響が大きかったということがあります。

 そういう意味で、今の日本の高等教育に対する公財政支出の低さをこのまま維持していくとすれば、日本社会全体の発展であるとか、それからさまざまな技術開発とか、そういうことに対する影響を及ぼしていくのではないかというふうに懸念しております。

 OECDの中でも日本の公財政支出が低いことはこの間ずっと指摘されておりますが、一気にはふえるとは思っておりませんので、せめてOECD平均の一・一まで、当面の目標として引き上げていくことが一番いいのかなというふうに思っております。

 以上です。

久波参考人 私の方からは、この国の中に諦め感というような言葉といいますか、そういった空気があるかと思うんですけれども、そこが何なのかというところを、つくづく、教育ですとかそういったところにかかるお金が原因なんじゃないかなということを何度も思うタイミングがあります。

 やはり家計で負担しなければならないというところは、ある意味でそれが自分の肩に背負わされているというようなところが認識としてありまして、それに追われてしまうという感覚から、自分のやりたいことですとかそういったところに余り気持ちが向かないのかな、そういったところからなるのではないかなというふうに思っておりまして、そこが改善できるのが、一つ何かきっかけにはなるのかなというふうに考えています。

小林参考人 この統計はよく使われるものでありますけれども、確かにGDP比で申しますと、日本はOECD加盟国中最低の水準にあるということはよく言われるわけでありますが、同じOECD統計を見ますと、家計負担の割合が日本はチリに次いで重たい国というふうになっておりまして、韓国あるいはアメリカのような国も相当重たいわけですけれども、それより重たい国になっているということであります。

 これは、先ほど申しました親負担主義、親が家族の教育に責任を持つという考え方に基づいているというふうに考えられますが、公的負担をふやすためにはやはりそういった考え方から少し転換していくことが必要だと思いますが、一朝一夕にできるものではないというふうにも考えております。

 私が先ほど申し上げたのは、一つは、相続に関して優遇税制があるわけですけれども、それを少し考えてみたらどうかということ。それからもう一つは、お話しする時間がなかったんですけれども、私的負担の中には、家計負担以外にも民間負担というものがございます。これについては、寄附をふやすなり、大学がみずから努力して奨学金を出しているという大学も現在たくさんございますので、そういった民間の努力を促すということも必要ではないかというふうに考えております。

 以上です。

古田委員 どうもありがとうございました。

 質疑時間が来ましたので、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

永岡委員長 次に、坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 民進党・無所属クラブの坂本祐之輔でございます。

 本日は、参考人の皆様におかれましては、本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。

 それでは、早速でございますけれども、質疑に入らせていただきます。

 まず初めに、全ての参考人の皆様方にお伺いをさせていただきます。

 今回の日本学生支援機構法一部改正法案について、新たに給付型奨学金が創設されたことを評価するものでございます。しかし、対象人数、金額ともに全くもって不十分であると考えております。今後、金額、支給者を大幅に拡大していくことは当然のこと、我が党といたしましては、教育の無償化を掲げておりますので、大学など高等教育機関で学びたいと希望する全ての子供たちに給付型奨学金の支給や学費の減免を行うことを目指して、党内議論を進めているところでございます。

 一方で、学びたいと希望する全ての子供たちに給付型奨学金の支給や学費の減免を行うには、およそ三兆円という莫大な財源が必要でございまして、我が国の厳しい財政状況を鑑みると、その実現には、税金を納めていただいている国民の皆様方の御理解が必要不可欠だと考えます。

 ここでお伺いいたしますけれども、今回の法案では、支給対象者は、特にすぐれた学生等であって経済的に極めて修学に困難があると認定された者とされておりますが、この支給条件につきましていかがお考えでしょうか。

 また、今後、支給対象を大幅に拡大する場合、さらには学びたいと希望する全ての子供たちを支給対象としたときには支給条件をどのようにしていくべきか、お考えをお伺いさせていただきます。

小林参考人 質問ありがとうございます。

 支給基準につきましてはさまざまな議論がありまして、一つはメリットベースと申しまして、学力とか業績とかそういったものをどのぐらい考慮するかということと、ニードベースと申しまして、必要性をどの程度見るかということでありまして、今回の給付型の目的はあくまで低所得層の進学を促すという目的でありますので、ニードベースということがまず第一の非常に大きな基準になっております。

 その上で、メリットベースの基準をどの程度考えるかということでありますけれども、これについてはさまざまな議論がございました。ただ、私個人の考え方といたしましては、ある程度のメリットベース基準も必要ではないかというふうに考えております。

 と申しますのは、奨学金をもらうことがある程度誇りになる、それによってまた社会に出てから貢献していただくということも必要であると考えておりますので、そのためには、やはり、全く所得基準だけで支給が決まるということでは、そういう考え方が余り育たないのではないかというふうに思っているということが一つでありますし、また、こういった所得の低い人たちは、学力が低いということがありますけれども、それなりに頑張っていただいている方も大勢いるわけですね。

 ですから、その中では、学力の高い人というのは一つの基準になるかと思います。ただ、これについては非常に多く意見がございまして、必ずしも、高校の評定平均値等だけで判断する、数字だけで判断するのは適当ではないということで、高校長推薦という形をとらせていただきました。

 ですから、これからガイドラインを文部科学省が作成して、それに従って各高校が判断していただくということで、メリットベースの方はそういう形で、高校にむしろお預けしているという形でやっておりますので、私は、それが現在ではベストの方法ではないかというふうに考えております。

 以上です。

久波参考人 私は、改正案の方の給付型奨学金、特に学ぶ意欲の高い者でありながら極めて経済的困難な環境下にというような表現を拝見させていただいたときに、果たしてこれに自分が該当するだろうかというところを、正直に申し上げますと、思いました。

 特に学ぶ意欲が高い、極めて経済的困難を抱えている、これはある意味、下には下がいる、上には上がいるというようなところを考えますと、それに対して自分が該当しているのかというところが余り認識として持てない、いい表現ではないというふうに思っています。

 そこに関しては、数値的な指標を入れるですとか、そういったところで御対応していただけるのかと思っておりますけれども、奨学金というものに対して貸与型というのが一般的というふうに議論としてなってきている、そういった風潮ができてしまっている中で、貸与型ではない給付型というものが、自分が該当できるのかどうかというところを意欲的に見られるかどうかというところが、一つ、使われるかどうかというところの鍵になってくるのかなというふうには思っています。

 いずれにしても、こういった給付型奨学金の話は広く伝える必要性が、子供だけでなく、親世代ですとかそういったところにも深く伝える必要性があるのではないかなというふうなところを一番に感じます。

花井参考人 お答えしたいと思います。

 今回の学校推薦に当たりまして、今後文科省でガイドラインが策定されるというふうに伺っております。

 文科省の検討チームの中で示された基準が二つありまして、一つは成績基準、もう一つは、教科以外の学校活動ですぐれた成果をおさめた者等々というふうに記載されております。

 成績基準につきましては、現在の無利子奨学金が三・五というふうになっております。その基準も、ことしの四月から非課税世帯のみに基準を撤廃するというふうになっているかと思います。それからすると、本来は給付型奨学金制度も成績基準は設けるべきではないとは思いますが、今回スタートするということで、少なくとも三・五、それ以上には引き上げないでいただきたいというふうに思っております。

 もう一つ、教科以外の学校活動等というところですが、非課税世帯の生徒の中には、教科以外の学校活動に参加できる時間的、経済的余裕のない生徒もたくさんいます。そういう生徒の中には、家計を助けるためにアルバイトをしている生徒がいます。そのような環境の中で、進学への意欲を失わないで頑張っている生徒もいると思います。教科以外の学校活動等というところでどういう基準が設けられるか、これから推移を見ていきたいと思いますが、ぜひとも、そんな形で頑張っている生徒も評価されるような、そんな基準にしていただきたいと思います。

 以上です。

柴田参考人 まず、対象に関しまして、私は、今回の給付型奨学金は、ひとまずのスタートとしてはすばらしいものであったと思っております。しかし、これからさらに拡充していく必要があると考えておりまして、どこまで拡充するかはもちろん国民で議論するところなんですが、私が提案したのは、国立大学に行った場合は無償になる、私立大学に行った場合は、国立分は無償になって、それ以外は自己負担になるというような提案をしております。その場合は一・七兆円ぐらいで予算は済むというふうに考えられます。これは、進学率が二%引き上がったという想定でお話ししております。さらに、例えば高校無償化と同様に九百十万円という所得制限を設ければ、その七割の予算で済むかと思います。ですので、一兆円ちょっとで、ある程度は無償化できるのかなと思っております。

 最後は、財源についてなんですけれども、やはり財源の問題が一番重要でして、私が考えているのは、相続税の課税ベースの拡大、ここの拡大分を例えば教育だけに使うという目的税化してそれを使うというふうにできれば、コンセンサスは得やすいんじゃないかというところと、あとは、今、子ども・子育て拠出金というのが事業者一〇〇%負担でございますけれども、これを一%引き上げれば一・五兆円分ぐらいの財源になる、これは内閣府の試算から出せる数字でございます。これは事業者負担一〇〇%ですので、企業の内部留保を活用する、社会にも恩恵をもたらす形で活用するという形でもいいんじゃないかというふうに考えております。

 ありがとうございます。

坂本(祐)委員 ありがとうございました。

 それでは、久波参考人にお伺いをいたします。

 給付型奨学金や学費の減免が、大幅にその拡大が実現をした場合に、経済的に修学困難な子供たちにいかにこの制度を利用していただくか、先ほどおっしゃっておられましたけれども、重要な課題になると思います。

 大学に進むためには、小学校、中学校、高等学校と、各段階で学業をしっかりと身につけなければなりません。しかしながら、今の現状では、貧困家庭の子供たちの中には学業の成績が低い子供たちも多く、最初から大学進学、あるいは、みずから夢を持つようなことも諦めてしまっている子供たちも多い状況です。

 貧困家庭の子供たちにも、頑張りさえすればお金の心配もなく大学まで行けるということを周知、そして理解していただいて、小学校段階からしっかりと勉強していただく、そして学校生活を頑張っていただく、そのことを私は望んでおりますが、それでは、私たち国会や政府は、それに対してどのような取り組みをさせていただいたらよいか、お考えをお伺いいたします。

久波参考人 すごく核心に迫る質問をありがとうございます。

 僕自身も、こうした立場にいながら申し上げるのは大変忍びないんですけれども、奨学金だけでは、そういった子供たちに対してそこがモチベーションになるということは、正直な話、非常に難しいというふうに考えております。おっしゃるとおりに、夢や目標等がなければ、やはり進学、ましてや奨学金すら知らないというようなところがある中で、一番僕自身が有効だと考えているのは、さまざまな大人がいるというところをまずは知る、そういったロールモデルの存在をいち早く、数多く知ることによって、大人の社会というところを早い段階から認識していく、どんなものなのかというイメージを膨らませていく。そうした未来に対する意欲というのが子供自身の中に芽生えてくると、必然的に、進学したい、あるいはこういった目標につくためにこういう努力を積み重ねたい、だから幾らかお金が必要なんだけれども、どんな手段があるのかなというところを、さまざまな知識のある大人が周りで、こんな手段があるんじゃないかというところの中に、一つ給付型奨学金というところが入ればいいのかなというふうな構図で考えております。

 議員の皆様方にお願いすることとしてはなかなか難しいものが多いのではないかというふうに思いますけれども、僕は、何度か社会階層の固定化みたいなところを思うことがありまして、例えば議員さんの存在ですとか、そういった人がこんな歩みをたどってきたというところは、ある意味、近しい方の息子さんですとか娘さんですとか、そういった親戚関係ですとかというところしか知らないみたいな、そういったところもあるかと思いまして、非常に国のために尽くしている仕事というところを胸を張って言っていただける、そういった機会がいろいろな子供たちに対してあれば、それもまたロールモデルの一つとして有効なものになるのではないかというふうに考えております。

坂本(祐)委員 ありがとうございました。

 それでは、もう一つ久波参考人にお伺いをさせていただきます。

 今回の法案の中には、給付型奨学金を受けている学生が、大学等入学後、学業が著しく不良となった等の場合には、給付金を一部または全額返還させることができるとあります。この仕組みについてどのようにお考えになるか、お伺いをさせていただきます。

久波参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、責任を果たすという面に関しては、そういった一文があることですとかは問題ないというふうに思うんですが、いかんせん額が小規模であることから、それ一つさえあれば学業に集中できる、そういった環境ではないということも事実ですし、奨学金という言葉柄を考えたときに、学費に充てることに対しては問題ないと思いますが、大学生活を送る上においては生活費もかかる、そういった側面があると思いまして、そこを補充する策も余り用意されていない、議論もされていない中で、一概に成績判断のみでばっさり切ってしまうということに対しての疑問は多少抱えております。

坂本(祐)委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、以上で質疑を終了させていただきます。

永岡委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 四人の参考人の皆さんには、貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 まず、小林参考人にお伺いいたしたいと思います。

 先生には、二月二十一日の予算委員会の公聴会にも御出席いただきまして、大変貴重な御意見をいただきました。その際も質問をさせていただきまして、質問ができなかった点についてちょっとお尋ねをしたいというふうに思います。

 今さまざまなお話がありましたけれども、奨学金の拡充に伴って、多額の奨学金返還債務に苦しむ学生がふえたということも事実であります。この点に関して、小林先生は、日本経済新聞のインタビューにこういうふうに答えられていました。

 どんな立派な制度でも、利用する学生に趣旨が周知徹底できなければ意味がない、授業料減免や奨学金返済猶予の対象になるのに、制度を知らずに苦労している人の事例を幾つも見てきた、必要な人に正確な情報を届けるために国や高校、大学が果たすべき責任は大きい、情報格差の解消も奨学金改革の大きな柱なのだというふうに言われていました。

 今回の奨学金の大幅な制度改正に伴って、先ほどから出ていますように、学生や保護者が奨学金を正しく理解して安心して利用できるように、スカラシップアドバイザーを派遣する、二十九年度の予算では二億七千二百五十万、延べ約二千六百人を予定しているというふうに文科省の方から伺っています。わかりやすい資料の作成、配付や、相談窓口の設置、制度の周知と、きめ細やかな学生サポートを行うことというふうにしております。

 これに加えて、減額返還制度について、現在の二分の一の減額に加えて、新たに三分の一に減額することを可能とする減額幅の拡充を行うとともに、適用期間を十年から十五年に延長することも検討しています。そして、新所得連動返還型奨学金の導入に伴って、機関保証制度の保証料率を一五%程度引き下げることも検討というふうに伺っております。

 このような体制整備、新たな対応について、さらに考慮すべき点はありますでしょうか。

小林参考人 質問ありがとうございました。

 情報の問題についてはこれまでも強調してまいったところなんですが、なぜスカラシップアドバイザー制度というような新しい制度をつくる必要があるかということを少しお話ししたいと思います。

 まず、これが、当然のことながら、こういった情報について十分周知するのは日本学生支援機構の責任であるというふうには一義的には思います。ただ、現在、日本学生支援機構は、独立行政法人として非常に運営費交付金が減らされているという中で、業務努力だけがふえているという非常に厳しい状況にあります。十分対応ができていないというのが現状でありまして、ここに問題が一つあるかというふうに思っております。そういう意味では、日本学生支援機構だけに頼るということは難しい。

 しかしながら、高校、大学の現場もまた非常に現在負担がふえておりまして、この上、新しい奨学金についてのガイダンス等を行う余力というのは、全ての大学、専門学校、あるいは高校が持っているというふうにも思えないという中で、一つの新しい制度としてスカラシップアドバイザー制度というのをつくることによって、この問題を少しでも改善したいというのが趣旨であります。

 それが一つの問題でありまして、ただ、先ほどの御質問にもありましたように、私はこれだけで十分だというふうには到底思っておりませんで、できましたら、もう小学校からこういった教育を行っていただくということも考えていただきたい。

 これは今回の中には盛り込まれなかったわけでありますけれども、現在でも奨学金制度というのはかなり複雑な仕組みになっています上に、選択という問題が非常に重要になってまいります。これは、最終的には、新所得連動型と定額返還型の選択というのは貸与終了時までできるわけでありますけれども、現実の問題としては保証料等がありますので、そういったことが難しくなっております。

 そうしますと、こういった点についても十分に周知しないと、後になって、そういったことがよく伝わらなかった、その結果さまざまなトラブルが起こることが想定されますので、こういった点につきましても、スカラシップアドバイザー制度だけで十分かどうかということは、これからも検討していただければというふうに思っております。

富田委員 今の先生のお話の中で、新所得連動返還型が導入されますと、かなり返済期間が長くなりますので、これまでの個人保証、連帯保証よりも、どうしても機関保証を選ばざるを得なくなっていくのではないか。

 そういう中で、去年もこの委員会で質問させてもらったんですが、都内で一人親世帯の私立大学四年生から私の事務所に手紙をいただきました。こういうふうに訴えられていました。

 機関保証を利用する人は、身近に保証人や連帯保証人になり得る人がいないので、やむを得ず機関保証を利用しているのです。にもかかわらず、現行の機関保証料は高く、その金額は毎月の奨学金から差し引かれます。私の場合、月額五万四千円の奨学金から毎月二千二百六十九円差し引かれています。たかが二千二百六十九円と感じるとは思いますが、学生が学生食堂で食事をすると考えた場合、一食三百二十円と仮定すると、約七食分の食事代を賄うことができます。このように、機関保証の利用者は、高過ぎる保証料によって学生生活が圧迫されてしまっているのです。機関保証の保証料の値下げを要望いたしますという要望をいただきました。

 文科省の方でもいろいろ検討していただきましたけれども、一五%の値下げでは学食一食分なんですね。これでは、今本当に懸命に勉強している学生たちにとっては全然変わらないんじゃないかというふうに思って、この前も本会議でも質問させてもらったんですけれども、機関保証料率のあり方については先生はどう思われますか。

小林参考人 機関保証料につきましては、比較的低く抑えられているというふうには考えております。と申しますのは、これは意外に思われるかもしれませんが、国際的に見るとかなり低い水準だというふうに考えております。

 これはどうしてかと申しますと、奨学金というものは担保がなくて貸すものでありますから、当然リスクプレミアムというものを考えなければいけないという性格を持っております。ですから、そういう面で見ますと、民間では奨学金事業を引き受けるということが非常に難しい。そこで、国の事業として行う意味があるわけであります。

 そういう意味で、保証率がそれほど国際的には高いものとは思いませんが、ただ、それでも、富田先生のおっしゃるように、学生から見れば非常に高いものになっているということは事実でありますので、これはぜひ改善していただきたい。

 これは、機関保証を選択する人が多くなるほど全体としてリスクを分散することができますので、そういう意味では、機関保証に加入する人が多くなればなるほど保証率は下げられる、そういうことがありますので、そのあたりの工夫をしていくことが非常に重要だろうというふうに思っております。

富田委員 ありがとうございました。

 次に、久波参考人にお伺いいたしたいと思います。

 実は、久波参考人には、昨年十一月の八日に、公明党給付型奨学金制度推進プロジェクトチームの会合で、御自身の体験を通した御提言をいただきました。大変参考になりました。久波参考人の意見をもとに、公明党の奨学金の制度設計をさせていただきました。

 そこで、社会的養護を必要とする学生への入学金二十四万円の追加給付についてお尋ねしたいと思います。

 文部科学省の検討チームや自由民主党の給付型奨学金の制度設計に関するプロジェクトチームとの協議の中で、我が党は、大学生や学生らからのヒアリングをもとに、支給額月額五万円を基準とすべきだというふうにずっと協議をしてきました。

 私立大学や専門学校の設置者から、年間の授業料約百二十万円の半額程度の六十万円、月五万円程度の給付がないと給付型奨学金支給のインセンティブが働かない、入学しようという思いがなかなか出ないだろうという御意見もありました。また、久波参考人からも生活がこういう状況だというお話も伺って五万円を基準にすべきだとやってきたんですが、残念ながら、財源の問題もあり、また、仮に月五万円給付すると住民税非課税世帯に近接している課税世帯の年収を上回ってしまうというような指摘もいただきました。

 こういう逆転現象を許していいのかという指摘もあったものですから、月五万円というところは断念したんですけれども、やはり社会的養護を必要とする学生に限っては特別な配慮をするべきだという主張をずっとしてまいりました。その上で、児童養護施設退所者等については、大学等への入学とともに自立する必要があり、生活の立ち上げのための資金に加えて入学金の負担が発生する。その際に御家族からの支援がないというのはもう明らかだから、ここはやはりきちんとすべきだと。

 また、進学率についても、二二・六%。一般の場合、平均で七三・二%なのに、進学率も低い。ぜひこういった方たちの後押しをしたいということで、特別な配慮を望んで、月額一万円のプラスを望んでいたんですが、それは断念して、児童養護施設出身者の学生さんの進学先を文科省の方で調査しましたら短期大学や専門学校が多いということで、二十四万円あれば入学金を賄える、二年間の修学期間で月一万円プラスした形になるということで、二十四万円の追加給付を決めていただきました。

 社会的養護を必要とする学生への追加給付について、久波参考人は御自分の立場からどのような評価をされるか、また、今後の課題について何か御意見があったら、お聞かせ願いたいと思います。

久波参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、二十四万円という額を見たときに、率直に申し上げますと、ありがたみ半分と、まだまだ訴える必要があるなというところを感じました。

 先ほど、二十四万円という金額のベースとなったものが短期大学ですとかの入学金相当であるというふうにお話がありましたが、現在においてはそれでいいというふうに考えております。

 しかし、これは感じ方次第なんですけれども、養護施設の子供たちがその額を見たときに、僕らは進学に対しての自由が短期大学等に対してのみ許されているのかというふうな思いを抱きかねないような制度である状態かなというふうには思います。ですので、そこの金額の引き上げはもちろん願ってもない状態でもあります。

 しかしながら、社会的養護の場合は、社会的に見ると、身寄りがないですとか、そういった構図が理解されやすい状況にありまして、民間での奨学金というところも広がりつつある。そこの広がりが一番ある層ではあるというふうに考えておりまして、ある意味で、そことの兼ね合いも図りながらという形が、一番子供たちにとっては望ましい形なのではないかなというふうに考えています。

富田委員 ありがとうございました。

 柴田参考人にちょっとお伺いしたいと思うんですが、きょうお配りいただきました資料の、ちょっとそこまでのお話がなかったんですが、七ページ以降に税制のことについてコメントがございました。

 自由民主党の方の会合でもお話をされたということで、その資料もいただいて事前に読んでいたものですから、この中で、七ページにあります相続税の拡大で二兆円の税収増、そして年金課税の累進化で一・二兆円の税収増、もう一つ、被扶養配偶者優遇制度の限定、一・五兆円の政府収入増、この三点を読ませていただいて、これはなかなか、実現性もあるし、いいお話じゃないかなと思いました。

 その中でも、相続税の拡大と配偶者優遇制度を限定的にする、この部分は、各党が合意できれば実現に向けて相当動き出せるのではないかと思うんですが、先生の、ここの部分のちょっと御説明をいただければと思います。

柴田参考人 御質問ありがとうございます。

 相続税のところはぜひとも御検討いただきたいところでして、なぜかといいますと、トマ・ピケティもずっと言っていますように、資産の格差というのがずっと継承されて、しかも拡大しているということです。それは、人生スタート時点での格差でして、それが結局は子供の学びのチャンスの不平等にもつながってしまっているわけですので、人生スタート時点での格差を縮小しながら、しかも財源を得られるというところで、相続税は物すごく大事なところかと思います。

 しかも、相続税が高まれば、恐らく、高齢者の消費を促すところもあるんじゃないかというようなところもありますので、もちろん、資産の捕捉が難しいだとか、いろいろなところがありますけれども、ぜひとも積極的に御検討していただきたく思いまして、ここで御提案しているのは、まず、課税ベースをかなり縮小するということでございます。ですので、より広く、平等に、皆さんが少しずつ負担するということです。

 今相続遺産は大体四十兆円以上毎年あるという推計がありますけれども、そのうち一・九兆円ぐらいしか税収として入ってきていませんので、少しその裾野を広げれば、一兆円あるいは二兆円ぐらいの財源になるんじゃないか。

 そのためには、少し裾野を広げると同時に、パーセンテージも数%上げる必要があるかと思いまして、そこをできれば目的税として、子供と教育のみにこれは使いますというふうに国民に約束していただければ、恐らく国民の、有権者の方々も共感ができるんじゃないかと私は思っておりました。ぜひ、そういったポジティブな御議論をしていただければと思っております。

 三の被扶養配偶者優遇制度の限定、これはもう既に政府が進めておるところでして、税収中立で進めておられるんですけれども、それを、財源を得るという視点からでも、女性の就労を促す、働きやすい環境を整えるという点からも、ぜひ御検討いただければと思います。

 ありがとうございます。

富田委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

永岡委員長 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 本日は、四人の参考人の皆様、大変貴重な御意見をいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

 早速質問をさせていただきます。

 まず、花井参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの意見陳述の中にもございましたが、給付対象者の拡充について、ごく一部の貧困層のみを救うという視点だけでなく、まずは住民税非課税世帯の進学者全員に広げつつ、将来的には中間層にまで広げていただきたいとの御意見でした。

 給付奨学金を中間層にまで広げなければならないその必要性、意義について、きょうは、こうした資料もお配りいただいておりますから、せっかくの機会ですので、学生、保護者の皆さんの実態などもよかったら御紹介いただきながら、御説明いただきたいと思います。

花井参考人 ありがとうございます。

 先ほどの意見の中で、将来的には中間層にもということをお話しさせていただきました。なぜなら、今、大学の授業料が非常に高騰してきているということは既に御承知かと思います。一九七九年のときに、国公立大学が九万六千円だった時代があります。現在は、五十三万五千八百円というふうに高騰しております。私立大学におきましては、文系が七十五万円、これは平均でございます、そして理系が百五万円。さらに、初年度はこれに入学金が加わるという、大変負担の重い学費というふうになっております。

 一方で、親あるいは保護者の世帯収入というのは、この二十年近くほとんど下がり続けてまいりました。ここ数年、賃上げもありまして、若干上向きになっておりますが、それでもピークの一九九八年にはいまだに到達しておりません。

 そのような中で、母子家庭は当然ですが、非課税世帯、それから多子世帯、子供が多い家庭にとっては、この学費の負担というのは大変重くなっております。昔は何とか家庭でさえ支えることができたんですが、今やそのこともできなくなり、そして、卒業した後に、その間のお金は全て子供が返済という形で負わなければいけないというふうになっております。

 このことは、決して貧しい層だけではなくて、中間層にとっても相当重い負担となっておりまして、ですから、多分、今回の私たちの運動の中でも多くの勤労者から共感を得たというのは、中間層のところが相当きつくなっているのではないかと思います。

 先ほど来、小林先生が家族が負担するのができなくなっているというお話をされたかと思いますが、本当にそのようなことが現実起こっていると思います。そのような意味で、基本的には進学したい子供全てというのが一番理想なんですが、やはり一気にはいかないと思いますので、順番を追って中間層まで拡大していくことが当面の目標かなというふうに考えております。

 以上です。

大平委員 ありがとうございます。

 続きまして、小林参考人と花井参考人にお伺いをいたします。

 給付額、特に減額調整の問題についてでございます。

 今度の制度設計では、せっかくこの給付型奨学金を受けられることになっても、国立大学に通い、授業料免除を受ける学生については給付額が減額されることとなっております。自宅生は二万円がゼロに、自宅外生は三万円が二万円となります。お二人ともその措置についての再考を求めておられるかというふうに思いますが、それはどういう理由からおっしゃっておられるか、御説明をいただければと思います。

小林参考人 質問ありがとうございます。

 この問題につきましては、実は、今回は給付型奨学金の創設ということがまず第一義的に非常に重要だということを繰り返して申し上げておりまして、この場でこういう形で議論していただいているわけでありますが、授業料減免というのは別の制度としてあります。

 今回は、その制度の両方を扱うということはできなくて、給付型奨学金についての創設というのをまず先行させたわけでありますけれども、私は、将来的な課題といたしましては、授業料減免もあわせて、給付型的な支援でありますから、これを何らかの形で統一するというようなことも考えていく必要があるかというふうには個人的には思っております。そういう意味で、今回の、授業料減免の額を減額するということについては、そういう点からいきましても少し考える必要があるのではないか。

 それからもう一つは、先ほど来、ほかの参考人からも出ておりますように、この金額だけで十分かと言われると、進学が特に厳しい人たちにとっては給付型奨学金だけでは学費あるいは生活費全てを賄うことができませんので、そういう意味からいっても考慮する余地があるのではないか、そういうふうに考えております。

花井参考人 お答えしたいと思います。

 私も、同じように考えております。

 一番心配しておりますのは、今回、給付型奨学金制度ができることによって、さまざま課題は残されておりますが、多くの学生生徒が期待をしているのではないかと思います。期待して何とかもらえるかなということになった途端に、その減額があることによってゼロとか一万しか残らないとかそういうことになると、そのことが学生生徒の失望に変わっていくのではないかということを危惧しております。できることなら併用できるような、そんな措置をぜひともとっていただきたいと思います。

大平委員 ありがとうございます。

 続きまして、小林参考人、久波参考人、花井参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの質問とちょっとかぶってしまうんですけれども、今度の法案では、学業成績が著しく不良な学生には、一旦給付された奨学金の返還を求めることができるとされております。

 小林先生には、御所見、特にお伺いしたいのは、海外の同様の制度でこうしたものがあるのかどうか、御存じであったらお聞かせいただきたいと思います。

 久波参考人、先ほどのとかぶりますけれども、まだ言い残したことなどがあれば、ぜひお伺いいたしたいと思います。

 花井参考人、それが果たして妥当なことなのか、学生、保護者の実態なども御紹介いただきながら御説明をいただけたらと思います。

小林参考人 今回の制度の一つの趣旨といたしましては、確かに返還を求めるということもあるわけでありますが、これは機械的に適用するということではなくて、あくまで大学側が、ある程度のガイドラインはありますけれども、それに基づいて自主的に判断するということがまず基本になっているというふうに考えます。

 その上で、先ほど来ありますように、成績のみあるいは単位のみというような形で判断するというのは間違いだというふうに私は個人的には思いますけれども、ただ、卒業できない人に対して公的な補助をするということがどの程度妥当かということは考えなければいけないというもう一つの問題があります。

 ですから、その場合、やはり、卒業の見込みがあるということは非常に重要ですので、それを毎学年チェックして、所定の単位数をとっているかというようなことをチェックしていくということは非常に重要なことであるというふうに思っております。

 その際、返還を求めるという事例についてお尋ねですけれども、これは、例えばイギリスの場合ですと、給付型奨学金を受給しておりましても、途中で退学した場合には、それがローンになって返還の義務があるというような例もあります。ですから、必ずしも日本だけのことではないというふうには了解しております。

久波参考人 先ほどもお話しさせていただきましたように、生活費がかかってくる中で、学業が、著しくではないかもしれないですけれども、やはりおろそかになってしまうようなタイミングというのは往々にして考えられると思っております。

 しかし、それに対して奨学金を出し続けるということに対しての疑念、そこに関しては十分に理解ができる範囲だと思いますので、やはり、返還の仕方の話を先ほど小林さんの方からしていたかと思いますが、一括でというのはなかなか難しい状況下にあると思いますので、そちらに対しては月々という形で返還の作業をしていく、そういった方法が一番いいのかなというふうに思います。

花井参考人 お答えしたいと思います。

 今、学生の状況を、生活実態などを伺いますと、生活費が足りないということで、アルバイトに追われる学生も多くなっております。昨今問題となっておりますように、ブラックバイトというのもありまして、試験の日さえ休ませてくれない、その中でなかなか単位が取れなくて困っている学生もいるということも事実でございます。私どもが希望するのは、そのような今の学生の生活実態を踏まえまして、丁寧な相談体制をとっていただきたいということでございます。打ち切りあるいは返済という手段に至る前に、やはりきちんと対応していただきたいと思います。

 そして、仮に返還させるのであっても、決して有利子ということがあってはならない、そこの返済の仕方も相談しながら、丁寧な対応を行っていただきたいということを切に要望したいと思います。

大平委員 ありがとうございます。

 私たちは、奨学金制度の改善、拡充とともに、世界から見ても高過ぎる授業料、学費の引き下げを行わなければ、若者たち、国民の教育を受ける権利を保障できないと考えております。

 文字どおりの教育費の無償化に向けて、まずは月三万円、七十万人の学生に給付奨学金を支給する計画と、それとセットで十年かけて全ての大学で学費を半減する、こうした提案をしております。

 花井参考人と柴田参考人にお伺いしたいと思います。それぞれのお立場から、この授業料、学費の引き下げの必要性について改めてお伺いいたしたいと思います。

花井参考人 お答えしたいと思います。

 私たち中央労福協も、学費を含む教育費負担の引き下げということをこの間ずっと求めてまいりました。その観点からいたしますと、授業料を引き下げていくという方向性は、ぜひとも実現していただきたいと思います。

 ただし、今議員がおっしゃられました具体的な数字につきましては、私ども、まだ検討しておりませんので、そこに対する評価については控えさせていただきたいと思います。

 学費を引き下げる方向性は同じだということだけ、お答えさせていただきたいと思います。

柴田参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、学費の引き下げは、長期的に見ると、恐らく出生率の上昇だとか、あとは生産性の上昇、消費の上昇につながるのではないかという点からも、非常に国民全体にとって重要な点かなと思っております。

 具体的にどういうふうに引き下げるか。半額という御提案を今されたわけですけれども、そういったやり方もあるでしょうし、あるいは、国公立に行った場合は無償、私立に行った場合はプラスアルファは自費負担というようなやり方もあるかと思いますし、世帯年収九百十万円で、そういう上限を設けるといいますか所得制限を設けるというやり方もありますので、いろいろなやり方をぜひ各党が提案していただいて、国民が議論した上で選択する、投票の上で選択するというところが国民の理解は得やすいかと思いますので、ぜひ、各党からさまざまな提案をしていただければ、財源とセットで提案していただければと思います。

 ありがとうございます。

大平委員 大変参考になりました。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

永岡委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 本日は、参考人の皆様、貴重な御意見、ありがとうございました。本当に勉強になりますし、今後の審議の参考にさせていただきたいと思います。

 その上で、いただいた資料の中から、いわゆるデータ、その解釈について、まずはちょっと柴田参考人の方にお尋ねしたいことがございます。

 柴田参考人におかれましては、大阪の施策におきましてもいろいろ参考にさせていただきまして、参考人の著書なりペーパーは読ませていただいているわけなんです。その中で、きょうのテーマでもあるわけなんですけれども、大きな意味での公的教育、公教育の拡充による出生率の上昇を研究されておられるようですが、その中で、公教育一つのファクターでは短期的に効果が見られないという検証があったということをおっしゃって、長期的なことは今後の課題と書いてあられたんです。

 その長期的な研究はやられたのかどうかということと、本日の資料の中で、そこに幾つかのファクターを組み合わされていまして、労働時間の短縮を入れると、一年では確かに見られなかったけれども、五年で見られたということは、こういった研究の延長なのかということと、あと、にもかかわらずという言い方も変なんですけれども、待機児童の解消だけ単独で出されて、子供の貧困が下がったということは、一つのファクターで下がったので、一つのファクターだけのデータを出されたのか、まずはちょっと解釈の意味でお教えいただければと思います。

柴田参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおりでして、私が著書で発表したものは、一年単位、二年単位の短期的な効果のみでした。著書の中で、五年以上の長期的な効果は今後の課題と申しておりました。日経新聞から、希望出生率を実現するための政策を分析していただきたいということで依頼を受けまして、五年単位のデータに平均化しまして、そういう五年単位という中期的な効果を新たに分析したということでございます。その結果を日経新聞で発表させていただいた、その改訂版がこちらになるということです。

 ですので、今回、四ページに載せました図の中で星印がついているところ、特に出生率のところがそうなんですけれども、それは、五年単位にデータを平均化しまして、五年ごとでのデータの変動を見ますと、労働時間の短縮と大学の学費軽減が出生率にプラスという効果が見られたということでございます。ですので、おっしゃるとおり、プラスアルファの新たな分析をしたということでございます。

 待機児童の解消をここに含めておりますのは、子供の貧困という問題に関しては待機児童の解消は効果がありましたので、これは著書で書いたことなんですけれども、載せております。

 ほかの面に関しましては、子供の貧困、きっと大学の学費軽減も長期的には子供のためになると思うんですね。貧困の子供のためになるんですが、今回、五年単位の分析ですので、その子が大学に行くまでという二十年ぐらいのスパンの分析はできておりませんので、子供の貧困に関しては分析結果を載せられなかった、分析ができなかったということでございます。

 ありがとうございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。また柴田先生には、後ほど、加えて御質問させていただきたいと思っております。

 次に、小林先生にお尋ねしたいんです。

 小林先生には、私も予算委員会の参考人のときに御質問させていただいたんですけれども、今回の資料の中で、本日の議論でもあるんですけれども、七十年以上、奨学金制度はほとんど改革がなかったにもかかわらず、授業料が高騰しているということで、一九七二年には一・二万円。私は三十九年生まれなんですけれども、私の世代のときは大体年間二十五万から三十万だったと思います、国立大の授業料というのは。

 そんな中で、今回の給付型奨学金の話になるんですけれども、我々維新の会は小学前から高等教育までの教育無償化を掲げていますので、奨学金というのは、ある程度のところでは、やはり金額が議論されているように、まずは授業料の、教育の無償化というところに、この貧困の連鎖を断ち切るためにも踏み込むべきだと考えていますけれども、小林先生の御見解を改めてお聞きしたいと思います。

小林参考人 御質問ありがとうございました。

 これは、先ほど申しました教育観の違いというものが非常に大きくありまして、例えばヨーロッパの福祉国家の場合ですとほとんど授業料は無償でありますし、スウェーデンに至っては私立大学まで無償というようなことで、全く完全無償制をとっております。ただ、日本がこういう形で一気に進めるかということになりますと、そこは非常に難しい問題があるかと思います。

 この場合、考えなければいけないことは二つありまして、一つは、進学率が普遍的に一〇〇%になる、これは高等教育全体という問題ですけれども、そこになれば、全ての人が同じ条件になりますので、無償ということは意味があるわけですけれども、進学しない人がいる以上は、進学しない人との不公平感をどういうふうにするか。特に、現在のところ、先ほどのデータでもお見せしましたように、大学については高所得層ほど多いわけでありますので、結果的には高所得層に対する所得の逆進的な分配になる、そういう問題があるわけですね。

 ただ、これは、先ほど柴田先生の方からも出ておりますように、もう一つ考えなければいけないのは、教育の外部効果ということで、社会全体にこれは正の効果をもたらしているわけでありますから、その二つを勘案して、どの程度授業料を下げられるか、あるいは、最終的に無償化に持っていけるかということは考えなければいけない。

 これは、国際人権規約を批准している以上、遠い目標としては考えなければいけない、そういうふうには思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 教育の効果というのはなかなか定量的に分析するのは非常に困難だということも捉えております。

 いわゆる高等教育の効能というのは今回のテーマでもあるんですけれども、あわせ持って、今国の方でも議論されているのが、実務の教育である、つまり社会性、社会での教育ということもあるわけなんですけれども、そういった観点からも、花井参考人にぜひ私の質問に反論していただきたいというのがあります。

 実は私、日本育英会の利子つきの二種の奨学金をもらっていまして、気がつけば、私は医学部卒業なので、六年間もらうとなかなかの額になりまして、大学院でも奨学金を実はいただいて、その奨学金でまた奨学金を補充するというちょっと悪循環にもなったことがあります。

 そんな中で、花井参考人は、学費の減免だけじゃなくてやはり生活費もあるんだよということをおっしゃっていただいて、であるのならば、やはり学費は教育の無償化にして、いわゆる奨学金を充実させるということが大事なんです。私、同時に、アルバイトをさせていただいて、医学部教育と関係ない、まずは家庭教師とか塾の先生をしていたんです。それ以外に、飲食店でアルバイトをしたり、あとは、いわゆる工事現場でもアルバイトをしたことがあるんです、ラグビーをやっていたので体が丈夫なもので。それがやはり私の今のアイデンティティーを築き上げているということです。

 アルバイトに対する負の要因もありますけれども、やはり、かなり学生生活におけるアルバイトのメリットも多いと私は考えるわけなんですけれども、そういったところに関して、花井参考人の御意見をお聞きしたいと思います。

花井参考人 反論できるかどうか、お答えさせていただきたいと思います。

 私も、先生と同じように、日本育英会の奨学金を受けて大学を卒業いたしました。その意味で、大変感謝してきてまいりました。

 確実に私の時代と今が違うのは、授業料が安かったということもありまして、何とか授業料は親が負担してくれたんですが、生活費はやはりアルバイトと奨学金で賄っていたということがあります。アルバイトも、私も先生と同じように、飲食店、カーテン屋さん、さまざまなところでアルバイトしてまいりました。ただ、卒業してから、自分が生涯、非正規で働くということは想定できない、しない時代でしたので、その意味からも、今の学生とは相当条件が違っているなというふうに思います。

 今の学生がアルバイトの中でさまざまなアイデンティティーをかち取ることができるかというと、そこは本当に厳しいのではないかと思います。

 さまざま報道されておりますが、先ほど、試験の日さえ休ませてくれないというお話をしましたが、それどころか、休んだら罰金を払えとか、遅刻をしたらお金を払えとか、そういうことが横行しております。

 これは、学生の労働法に対する知識、認識の足りなさということも一方であろうかと思いますが、昔はもっと学生アルバイトに対して周りが優しかったと思います。そういう状況じゃないということも、ぜひとも、先生、御理解いただけたらと思います。

 ありがとうございました。

伊東(信)委員 花井参考人、ありがとうございます。

 要は、私自身に常に言い聞かせているんですけれども、やはり自分のフィールドだけで物事を判断してはいけない、視野が狭くなってはいけないということを考えておりますので、非常に参考になりました。

 その意味でも、ぜひとも久波参考人にもお聞かせいただきたいんですけれども、夢や目標を達成する手段としての大学というのがあって、ところが、その大学に行くのに、経済的な壁が高過ぎて、進学するための具体的な行動に移せなかったというお話をお聞きしまして、努力することで報われると思わない学生さんもおられるというのは非常に、心痛な思いで聞かせていただきました。

 その意欲の壁を打ち破る際に、ある経営者の方々のお話を聞かせていただいたと思うんですけれども、そこがかなりのターニングポイントになると思うんです。聞くのは簡単なんですけれども、実際に我々がそれだけのことを今の若者たちに伝えられるかどうかというのは、甚だ簡単なことじゃないと思っていますので、もし、久波参考人の覚えている範囲で、何がその意欲の壁をぶち破ることができたか、どういったお話を聞かれてそういう気持ちになったかというのをもう少し詳しく聞かせていただければと思います。

久波参考人 ありがとうございます。

 私が進学をすることができたきっかけが、一つ、そこのイベントにあったというふうなお話をさせていただきました。

 先ほど軽くお話ししたとおりなんですけれども、私は、社会的養護の環境下におりまして、いろいろな制約にとらわれている身でもありました。

 例えば、夜のバイトは余り遅くなるとだめですとか、バイトをしないと携帯電話は持てないというようなことがありましたり、高校生になってからは僕はちょっと破る方の身ではあったんですけれども、門限が九時までとか。今の時代において、九時に帰ってきなさいという親御さんは少ない方ではあると思うんですけれども、そういった制約ですとか、養護施設を出る際の、例えば家の契約とかそういったところにも、保護者でないとなかなか難しい。施設長もできるんだけれども、養護施設にいるということが大家さんに知られてしまった段階で、家賃の支払いが滞ってしまったらどうすればいいんだろうというようなところに疑念を持たれてしまって頓挫する、そういったこともありましたし、携帯電話の契約に関しても、同様の事例があったりはしました。

 そういった制約から考えなければいけないというような、自分にはどの選択肢が許されているのかというような発想が生活の中でだんだんとすり込まれていく中で、自分は、そのイベントで、社会起業家の方たちが、自分で目標を決めて、これをやる、これをやるから、今はできていない理由はこれとこれとこれだと。その一の問題に対しては少しのお金があれば十分だ、二の課題に対しては、協賛企業の方たちがいらっしゃったりするんですが、そういったところにある技術力や商品で改善できる。そういった話をお聞きしたときに、自分にできないと言わずに、自分から、何をやりたいのかというところに課題設定を置いて、そこの構造に気づいたときに初めて、自分の頭の中に大学進学という選択肢が生まれてきたというような経緯になります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本来、柴田参考人にもう一問お聞きするところだったんですけれども、時間となりましたので、後の機会にお聞きしたいと思います。ありがとうございました。

永岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川であります。

 本日は、四人の参考人の皆さん、大変貴重な御意見、ありがとうございました。私が最後の質問者になりますので、あと十五分ほどおつき合いをいただければというふうに思います。

 まず、花井参考人にお聞きしたいと思います。

 今回、給付型の奨学金の制度の創設と並行いたしまして、四月から新たな所得連動型返還制度がスタートいたします。以前よりも使い勝手はよくなっているというふうに思いますけれども、返還期限猶予の制度を使わなければ、収入がゼロでも、最低返還月額が二千円に設定をされております。年収三百万円以下の利用者は経済困難として最長十年、返還が猶予されていることを考えれば、年収三百万円までは返済をスタートせずに済む、もちろん、これは本人の希望も含めてしっかり聞くということでありますけれども、そうしたことも検討すべきではないかと考えますけれども、この点、いかがでしょうか。

花井参考人 ありがとうございます。

 新所得連動返還型奨学金制度につきましては、この制度も給付型と両輪ということで大変期待した制度でございます。ただ、今先生が御指摘のとおり、年収が、収入がゼロでも二千円の返還を求めるということにつきましては、ぜひとも再検討をいただきたいと思います。

 二千円という額につきまして、例えば私どもの、知り合っているというか関係しているNPOの一人親世帯の方の話などを聞きますと、大体三日分ぐらいの食費に相当するというお話も出てまいります。したがいまして、二千円という額はそういう方たちにとってとても楽ではない額、そういう中で、やはり三百万以下の場合は、返還を求めるということは検討する必要があるのではないかということがあります。

 さらに、もう一つ、ぜひとも御検討いただきたいのは、今回のこの制度につきましては、無利子のみが対象となっております。ぜひとも、今後、有利子まで拡大するようなことをお願いしたいと思います。

 以上です。

吉川(元)委員 私も、今回は第一種のみ、第二種については検討課題というふうにされておりますけれども、先ほどのお話の中にも、半分以上が有利子という中にあってはこれはまだ制度が不十分だというふうに思いますので、そうした観点でまたこれからも取り組みを進めていきたいというふうに思います。

 続いて、久波参考人にお聞きをしたいというふうに思います。

 先ほどお話を聞いておりまして、私も三十年ちょっと前のことをまさに思い出しました。私も、高校二年のとき、何となく大学に行くんだろうなと思っていましたけれども、いざ大学に行くとなると、例えば私大はこのぐらいかかる、国立は今の大体半分ぐらいの授業料でしたけれども、こんなにお金がかかるんだということで、初めて、大きな経済的な、学生が頑張っても乗り越えられない壁というものに直面をいたしまして、それがきっかけになってこういう世界に足を踏み入れたというのも実はあるわけであります。

 ぜひちょっとお聞きをしたいのは、教育の機会の格差解消というのは貧困対策の最も重要な施策の一つというふうに考えられています。参考人はこの間、子供の貧困対策にも取り組まれてこられたということでありますので、その経験を通じて、高等教育のみならず今の教育政策全般にわたって、どういった点が不足をしているのかということを、もし何かあれば、御指摘いただければというふうに思います。

久波参考人 御質問ありがとうございます。

 私の方から申し上げられるのは、先ほどもお話ししたように、やはり、幼い段階において、自分が大人になるというところに対してのイメージを膨らませていく、その素材として、いろいろな一人一人の大人が、身近な子供たちに対して、あらゆる子供たちに対して自分という素材を見せる、そういったところが必要というようなお話をさせていただきました。

 加えて、養護施設ですとかそういったところに行っている、あるいは子供の貧困の当事者たる子供たちにある意味、特に一番必要だと考えているのが、私が進学できた経験が、自分の中での自分の限界を超えるといいますか、自分が自分自身で限界をつくっているというその構造に気づいたことが、一つ、進学のきっかけになったりもしました。そういう意味では、それが何を指すのかと言われればなかなか難しい部分でありますけれども、処世術とでもいいますか、そういった何か自分の発想を超えた、心理学的な話になるのかもしれませんが、そういった意味での話もある意味では有用なのかなというふうに考えております。

吉川(元)委員 次に、小林参考人、柴田参考人にそれぞれお伺いをしたいというふうに思います。

 今回の給付型の奨学金、大学生等に対して適用されますが、御両人はそれぞれ、東大、京大という日本を代表する大学で教鞭をとられておられる。恐らくそこでは、学部生のみならず院生についてもさまざまな御指導をされておられるんだろうというふうに思います。

 奨学金の問題でお話を伺うときに、もちろん学部生の方のお話も伺いますが、やはり院生の方のお話もたくさん伺います。先ほども少しお話がありましたけれども、博士課程修了まで貸与型の奨学金を利用すると、借り入れたお金が一千万円を超えるケースというのも存在するというふうにも聞いております。

 これだけではないと思いますけれども、今、修士までは行くけれども博士になかなか行かないというような問題も指摘されておりますし、また、今の大学の運営費交付金、これがずっと減額をされてきた中で、なかなか、博士を取得してもその後正規の職につけない、そういう問題もございます。

 もちろん、大学院生には、貸与者の三割を上限として優秀者への返還免除あるいは半額の減額制度があるということで、今回、給付型の奨学金というのは適用しないということを聞いておりますが、それはあくまで、大学院を、課程を終えるところで初めてそうなるということであって、まさに今から自分は研究者になっていこうという人たちにとって、ただし、将来どうなるかというのは誰もわからない、その時点で一千万円を超えるような借入金が発生をしてしまうというのは、これはやはり何らかの改善の手だてが必要なのではないか。まさに次代を担う研究者を育成していくためにも必要なことなのではないかというふうに思いますけれども、この大学院生の給付型の奨学金について、それぞれどのようにお考えでしょうか。

小林参考人 御質問ありがとうございます。

 これは非常に重要な問題だというふうに捉えております。

 と申しますのは、今委員御指摘のように、優秀者免除という形に変わりました。このときに、実は学部段階での奨学金の免除が廃止されてしまっておりますので、免除されるのは大学院のときの貸与奨学金だけでございまして、学部段階のものは免除されません。したがって、これは大学への進学に対してインセンティブを下げるものでありますので、そういう面ではまだ改善が必要だというふうに考えております。

 特に、人文社会系につきましては、最近進学者が減っておりますし、特に博士課程まで行くということになりますと、就職問題が一番大きな問題だとは思いますけれども、やはり経済的な負担ということが非常に大きな問題になっておりますので、これはぜひ改善していただきたいというふうに考えております。

柴田参考人 御質問ありがとうございました。

 非常に難しい問題でして、ぜひともそれは改善していただきたいとは思います。私自身が非常に苦労して、私も院のとき奨学金を借りておりました。数百万円借りましたけれども。ですので、小林先生がおっしゃられたように、学部のところも一部免除されるというふうになれば、確かにインセンティブになりますので、十分検討に値する御意見かなというふうに拝聴いたしました。

 あとは、院に進学しても、とりわけ文系の場合はなかなかポストがないというところもございます。ですので、院に進学することに関するもう少し教育といいますか、難しいですけれども、院に進学することに関してどう考えるかということも、学部のころからもう少し、ポジティブな面も含めて、こういった支援もあるという面も含めて、もっとアナウンスがあって、あとは、成功者、院に進学して社会で活躍している人たちの事例をもっと広く紹介するだとか、そういったことをしていかないと、ますます志望者も先細りして、日本のそういう知的な能力の衰退につながるおそれがありますので、経済的支援と同時に、そういったいろいろな事例の紹介だとか、幅広いそういうサポートが必要かなと思っております。

吉川(元)委員 次に、花井参考人にお伺いしたいと思います。

 これは恐らく中央労福協の調査だと思いますけれども、調査でも、延滞にも延滞金が賦課される、さらには、減額返還制度や返還期限猶予制度といった救済制度が存在することを知らない利用者が想像以上に多いというような結果が出ているというふうに思います。

 ちょっと私、驚いたんですけれども、日本学生支援機構が昨年、出身学校別の奨学金返済延滞率の公表を企画しているというようなお話が聞こえてまいりまして、これは非常に驚きました。奨学金の延滞について出身学校に責任があるとは言わないのかもわかりませんけれども、そういう数字というのは結局、その学校に責任があると思われるような、そういうことをやろうとすること自体、私はいかがなものかというふうにも思います。

 そういうことでいいますと、救済措置も含めた奨学金制度の周知、これは誰が責任を持って負うべきなのかということについてのお考えを伺いたいと思います。

花井参考人 お答えいたします。

 私も、その話は昨年聞いて、学校、大学名を公表すると聞いて、大変驚きました。大学の違う意味でのランクづけになるのではないかと思って、ぜひとも、こういう手段はとらないで、むしろその前に何ができるかということを考えていただきたいと思います。

 私どもの調査でも明らかになりましたが、本当に、猶予措置があることを知らない、延滞金が賦課されることも知らない、そういう方が大変多く、アンケートの数字には出てまいりました。

 この周知、広報ということにつきましても、今回の審議の中で、大変重要な課題であるということが先ほど来指摘されております。そういう意味で、私は、この周知、広報についての第一義的な責任は日本学生支援機構にあろうかと思います。

 ただし、独立行政法人であるということで、なかなか、現在、インターネットで見ますと、五百人ちょっとぐらいの職員の数というふうに出ております。もっとそこをふやしていく、そして利用者が電話で問い合わせをしたときに丁寧に答えられる、そういう体制をつくっていただきたいと思います。

 そして、大学側にも、奨学金を利用している生徒に対してきちんと説明する必要があろうと思います。

 それぞれ、高校の先生もなかなか苦労しておりますし、みんなが苦労しているということで、やはり、もっと財源をかけて周知、広報の体制を整えていただきたいと思います。その意味で、今回新しくできますスカラシップアドバイザーの役割に期待したいと思います。

吉川(元)委員 もう幾つか質問したかったんですが、時間が来てしまいましたので、これで質問を終わります。

 本日はありがとうございました。

永岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

永岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府地方創生推進事務局審議官藤原豊君、財務省理財局次長中尾睦君、文部科学省大臣官房サイバーセキュリティ・政策評価審議官中川健朗君、初等中等教育局長藤原誠君、高等教育局長常盤豊君、高等教育局私学部長村田善則君及び農林水産省政策統括官付参事官小川良介君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 民進党の玉木雄一郎です。よろしくお願いいたします。

 まず、給付型奨学金について伺います。

 画期的な第一歩だと評価をしております。

 まず、この対象人数と財源について伺いたいと思うんですが、本格実施するのが平成三十年だと思いますけれども、そのときに何人を対象にするのか。そして、高校の数は全国に公私合わせて五千ぐらいと思いますけれども、大体一クラス一人ぐらいが対象になるのか。このイメージをまず教えてほしいのと、そして、本格実施になったときの安定財源、恒久財源、これがどうなっているのか。毎年の予算編成の中でやりくりをして、それで見つけていくのか、何か明確な安定財源があってやるのか。この点、教えてください。

松野国務大臣 意欲と能力があるにもかかわらず、経済的な理由によって進学を断念せざるを得ない者への進学を後押しするため、我が国として初めて、学生向けの返還不要の給付型奨学金を創設することといたしました。

 平成三十年度以降の本格実施時の給付規模は、一学年約二万人であります。所要額は七十二億円とすることとしております。

 また、完成年度となる平成三十三年度の給付規模は六万人で、約二百二十億円を予定しており、財源については、学年の進行に合わせて段階的に確保することとしております。

 平成三十年度以降の財源は、既定経費の見直し、奨学金制度全体の見直し、教育・研究職返還免除枠の活用を見込んでおり、中期的かつ安定的に確保していくこととしております。

 奨学金制度全体として効果的に教育費の負担軽減がなされるよう、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

玉木委員 一学年二万人ぐらいですね。

 そうすると、これは文科省に数字をいただいたんですけれども、公立学校だけなんですが、高校というのは大体何クラスあるのと聞いたら、何クラスぐらいだと思いますか、皆さん。一年生、二年生、三年生、大体十五・七とか、それぐらいなんですよね。だから、もう今は一学年五、六クラスぐらいですか、それぐらいだと思うんです。

 そうすると、一学年五クラス、六クラスぐらいで、五千校あるとしたら、二万五千クラスとか二万六千クラスとか、それぐらいになるのかな。みんながみんな大学に行くわけじゃないので、そうすると、平成三十年以降、本格実施しても、一クラス一人ぐらいなのかなという感じです。私は、これは大きな一歩だと思うんですけれども、もっと踏み出してやったらいいと思います。

 財源の話なんですが、既定経費の見直し、これはあらゆる予算でよく使うんですよね、既定経費を見直してやっていきますと。でも、これは、裏から言うと、今の時点で当てがないということなんです。

 もちろん、いろいろなことをやめてやっていかなきゃいけないということではあるんですけれども、私、文部科学の予算というのは常にこういう状況だったと思うんです。何かでどこかが余ったら、あるいは出てきたら、その分だけ何かやりますという。もちろん、それは厳しい財政状況の中で仕方がないんですが、やはり未来への投資、人への投資ということであれば、ここは必要なことをしっかりやっていくということを私は大胆にやったらいいと思います。

 これは提案にとどめますけれども、私、子供国債ということを実は提案しているんですね。これは単に新しい借金をふやせということではなくて、例えば、育英会の出資金は、実は建設国債発行対象経費です。皆さん、御存じですかね。

 整理したらいいと思うんです。今、いわゆる特例債ではなくて、建設国債、財政法に規定された国債の中でも、施設費以外で、一部、文教関係に行っているものもある。一方で、建設国債という中で、私は予算委員会でもよく指摘をしましたが、三世代同居住宅をつくります、これは完全に個人の資産形成です。これにも今、実は建設国債発行対象経費になって、将来の人の負担も求めて、今の個人の資産をつくるところにも借金が使われているんです。

 そんなんだったら、まだ、きちんとした未来への、子供たちの、将来の人的資本の形成たる、特に高等教育におけるこういった支援策については一定の国債のカテゴリーをちゃんとつくって、何でもかんでも変なものが建設国債に入ってくることを分けて、これからのきちんとした安定的な文教予算の、それは借金は借金ですよ、ただ、しっかりとした理由づけをして、こういったことも教育の財源の多様化の中で議論を私はしていくべきだと思っているんです。

 今、与野党で教育財源確保に関する議連がそれぞれ、いろいろな動きが始まっていますけれども、大臣、ぜひ文科省としても、財務省は反対すると思いますけれども、きちんとした理論立てでやっていけば、一部の文教関係予算というのは国債発行対象経費にもなり得るし、その整理をどうやってきちんとやるか、国民の理解を得られるかということが大事だと私は思いますので、文科省としてもぜひ研究してください。

 いかがでしょう。

松野国務大臣 教育が未来への投資であるということに関しては私も全く同じ考えで、安定した財源を確保しつつ必要な施策を進めていかなければならないということも、委員と同じ思いであります。

 教育再生実行会議第八次提言で、まず、既存の施策の見直し、優先順位づけによる予算の質の向上、重点化、また、民間資金の効果的な活用に取り組んだ上で、十分な財源を確保できない場合には税制の見直しを検討するといったことが掲げられております。

 今委員の方から、委員が提唱されております子供国債にかかわる御提言をいただきました。

 まず、それぞれの財源確保は、これはもう国民負担に直結をする問題でございますので、広く国民の間で教育投資の効果や必要性について認識が共有されることが重要だと思います。そのためには、現在各党各派において教育財源の問題には活発な御議論をいただいているところでありますので、私たちとしても期待を申し上げているところでございます。(発言する者あり)

玉木委員 元大臣から応援のやじをいただきましたので、私も気持ちが大きくなりましたけれども。

 私は、単に借金をふやせと言っているんじゃなくて、例えば、高齢者向け福祉には多額の赤字国債が当たっています。これは申しわけないですけれども、やはり高齢者向け福祉のお金というのは、そこで費消されてしまって終わってしまいます。ただ、将来のある子供たち、あるいは子供をふやす、高等教育を施すような予算というのは、ある意味、ペイする出資、出費だと私は思っていまして、ワイズスペンディングという言葉がありますけれども、ワイズボローイングということも考えればいいと。

 だから、赤字国債の発行を抑制しながら、それでいて、やはりこういう次への投資にはそういった新しい国債の枠組みも、これから新しい時代、考えていく必要があるのではないかと思っていますので、与野党で議論を深めていきたいと思います。

 では、大臣、お気持ちだけでも。

松野国務大臣 文科省としては、必要な財源をしっかりと確保して施策を進めていくというスタンスでございますが、その財源の確保においては、先ほど申し上げましたとおり、既存の施策の見直しも含め、文科省としてまずやれることに取り組んでいかなければいけないと思います。

 その上で、教育国債、子供国債、それぞれ御議論があると承知をしておりますし、税制等に対するまた御意見もあるということも承知をしております。まず、そういった御議論を国会で活発にしていただくことによって国民の皆さんの理解を深めていただくことがこの教育財源確保に結びついていくと考えておりますので、ぜひ各党各会派の活発な御議論を期待し、また文科省としても財源確保に向けての検討を進めてまいりたいと考えております。

玉木委員 我々もしっかり議論を深めていきたいと思いますので、政府としてもよろしくお願いしたいと思います。

 次に、天下りの調査について伺います。

 これは一度、予算委員会あるいは分科会でも大臣とやりとりをさせていただいたと思いますが、その際指摘をしたのは、全省調査において、いろいろ報告をしてくれということで調査票を出しているんですが、その中に、他の職員がそういった違法行為、国家公務員法第百六条の二とか三の違反があった場合はその証明するものをつけて出せということが書いてあるので、こんなことでは誰も出しませんよということを指摘申し上げ、これは与党の先生からもそういう指摘があったと思いますが、それに基づいて調査を見直すということを断言されたんですが、ちょっとこの前、大臣の閣議後記者会見も聞いていてあれっと思ったんですが、それで確認したいんです。

 やり直しをすると言ったその調査の中で、引き続き、証明が必要だという記述が入ったままの調査票で再び調査をしているということを聞いたんですけれども、これは事実でしょうか。

松野国務大臣 まず、事実かどうかということであれば、事実でございます。

 二月六日付で実施をした全職員調査について、これは外部有識者の指導、判断のもとに実施しているところでありまして、調査内容等については適切なものであるというふうに考えております。

 しかしながら、調査の書面に、虚偽回答の場合には懲戒処分等の量定に影響が出る、証明ができるものが必要と記載した趣旨が職員に十分に伝わっていないではないかという御指摘もいただきました。また、回答者個人のプライバシーへの配慮が十分でない回収方法だったのではないか等の御指摘をいただいたところであります。

 調査の書面に、虚偽回答の場合には懲戒処分の量定に影響が出る可能性があると記載した趣旨は、これは第一義的に、この調査といいますのは、みずからのこれまでの行動の中において再就職等規制違反があるかないかということをしっかりと正直に答えてほしいという趣旨でございまして、それを促進する観点から記載したところであります。

 また、他の職員の再就職等規制違反行為について、証明できるものが必要と記載した趣旨は、これは実名を記載していただく調査でございますので、この情報提供によって懲戒処分につながる可能性があることから、調査の正確性を担保することが必要との観点から記載をしたものであって、これは、弁護士、またコンプライアンスの専門家の皆様からも適正であるという評価をいただいたところであります。

 委員御指摘の、もっと幅広くさまざまな情報収集に努める意味において、証拠を出せというのが制約要件になるのではないかという御指摘だと思いますが、そのための対応としては、本調査とあわせまして、文部科学職員みずからの行為や他の職員の行為について、再就職等規制に照らして疑わしい場合、匿名で、自分の名前を記さずに相談、通報できる窓口を設けさせていただきました。委員が懸念される、制約されることがなく、また、ここの時点においては、確実な証明がなくても、こういった行為があるという話を聞いた等のことを通報できる窓口として設けさせていただいておるところであります。

玉木委員 大臣、残念ですよ。こんなことを書いたら、出す人はいませんよ。だって、証明が必要ですといって、どうやって証明するんですか、これ。

 こういうことで、調査に対する抑制効果というか、やはり真実を明らかにするのが今回の調査の一番の目的だったはずですよ。もう二度とこういうことは起こさない、根絶するということでやったはずなのに、あれだけ委員会でお願いして、やり直しをすると言ったのに、やり直しした調査に、また、証明できるものがないと報告しちゃだめと書いてある。これは与党の議員からも指摘があったじゃないですか。私は、これは不十分だと思います。

 では、ちなみに聞きます。もう大体締め切って、来週にもこれは調査報告が出ると思いますが、ちゃんと証明できるものを添付するなりなんかして出してきた調査報告、現時点で幾ら出てきていますか。

松野国務大臣 まず、先ほど申し上げました、この調査は、まずはみずからの行為に関する記載ということで、実名の調査でございます。これはもうみずから語る場合は実名を書いていただくしかないわけでありますが、そのとき、他の人の行為に関して書くというのは、それは一定程度やはり制約がかかるというのはあると思います。

 その中において、お話をさせていただいたとおり、匿名の窓口を設けて、これは証明がなくても、他の人の行動に関して訴えることができるという窓口を設けさせていただいておりますので、その方法によって、委員の懸念は解決できるんだろうと思います。

 現在の、証拠を付して回答があったのは何件かということでございますけれども、全職員調査の回答結果について、今ちょうど調査を進めているところでございますので、現段階において、その内容、状況に関してお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

玉木委員 いや、大臣、それぐらい答えてくださいよ。ほとんどないでしょう、これ。だって、こんなことで証明をつけて出してくるような人はいませんよ。だから、やはり調査の本気度が問われているんです。

 役人は、こうやって、こういう形で大臣、やりましょうと出てきますよ。そういうときに大臣が、政治家が、いや、こんなことでは調査がちゃんとできないからこれはのけろというのを言わない限り、誰も言えませんよ。

 だから、そういう答えが出てこないのでもう答弁は求めませんけれども、ある程度まとまったら、この内訳をちゃんと委員会に報告してください。

 まさに、ちゃんと証明をつけて出せといった件数が一体幾らあったのかというのを、もちろん調査報告をオープンにするときに書くなら書いていただきたいんですけれども、もし書いていないとしたら、ちゃんと内訳も当委員会に報告することをぜひ求めたいと思います。

 委員長、よろしく取り計らいをお願いします。

永岡委員長 理事会にて審議をいたします。

玉木委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 森友学園の件について。

 これも、大臣、私は、虐待めいたことが行われている、森友学園の経営する塚本幼稚園というところであるということで指摘をして、保護者から直接話を聞いた二月二十一日の翌日、大臣に直接お願いをしました。

 それで、大阪府が基本的には権限を持っていますから、大阪府が調べて報告を受けるということで、私も報告書を三月七日の日に見せてもらいましたけれども、結局、大阪府が森友学園に聞いたらこう言っていますよということを羅列していて、結論から言うと、問題なし、あるいは訴訟中だからコメントできませんということが返ってきたのをそのまま文科省として見せてもらったんです。

 ただ、三月十五日に、元園児の保護者の皆さんが、提訴というか、大阪府の私学課に申し入れをしているんです。やはり虐待めいたこととかヘイトスピーチのようなことが行われているといって、大阪府教育庁私学課長宛てに塚本幼稚園退園者の会というのが申し入れをしているんですね。

 この中でいろいろ書かれています。私もこれを委員会で指摘しましたけれども、トイレに行く回数を限定されるのでどうしてもお漏らしをするとか、あるいは、ここに書いているのは、園側に苦情を申し入れたり、園側の意向に沿わない保護者を持つ児童に対し、副園長や教職員が弁当を捨てる、こういう嫌がらせをすると、これは文書で書かれています。

 私は、親御さんからこういうことを聞いたので、だから、やってくださいと言って、大阪府教育庁の私学課にも行きました、その足で。そうしたら、私学課も余り取り合ってくれないんです。

 私はなぜこれを文科大臣に言っているかというと、この申し入れ書にも、個別に大阪府教育庁私学課に対し苦情申し入れや実地調査の申し入れなどを行ってきました、しかし私学課からの満足ある回答は得られていません、こういう記述がありますね。また、我々は以前にもこうした事例を府にも相談してまいりましたが、府は一向に調査する姿勢を見せず、また指導することもありませんでした、こういうことが書かれていますね。

 府側の言い分は、私学なのでなかなか手が出せないということを言いながら調査をしなかった。文科省に言うと、これは国ではなくて都道府県の権限におりているのでやりませんと。誰も実は対応してこなかったんです、この保護者の声に。私は、この声にどこかの段階で府か国がもし耳を傾けていたら、今回大きな問題になっている設置認可の問題自体も、ああいう問題のある学校法人ならどうかなという、ある種、そういう目で、厳しく、もっと厳しくチェックが働いたのではないかと思うんです。

 ですから、大臣、これはもちろん府の所管であることも重々承知をしております。しかし、これだけ大きな問題になった以上、教育をつかさどる文科省としても、府やあるいは園側だけに話を聞くのではなくて、保護者や元保護者の皆さんの声にも耳を傾けながら、こうした問題の調査や解決にやはり尽力、努力すべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 一昨日、元園児の保護者から大阪府に対して、森友学園塚本幼稚園における不適切な指導などに関する調査や指導を求める申し入れ書が提出されたと聞いております。大阪府は、その内容も踏まえて、今後、事実関係を塚本幼稚園側に確認していくということを私たちは聞いております。

 この委員会においても、また、従前、委員からも御指摘をいただいた点も踏まえて、大阪府と情報を共有化できるように、まず今の段階においてはしっかりと進めてまいりたいと思いますし、文部科学省として、現段階においては、大阪府が保護者からの申し入れを踏まえて今後事実関係を確認して対応するということを聞いておりますので、まずは、所轄庁である大阪府が適切な対応をしていただけるものと考えております。

 そして、その上で、仮に、こんなことはあり得ないと思いますが、大阪府が放置をするようなことがあるとか、指導内容が著しく不適切だということがあれば、それは当然、文部科学省として対応させていただくということでございます。

玉木委員 まずは大阪府ということでずっとここまで来たんです。そろそろ、共同調査、こういったことも含めて、一義的には府がやりますけれども、そこに文科省の職員も一人ぐらい同行するとか、そういった中でもう少し国の関与を、もちろん、一義的には府だということは尊重しながら、そろそろ私はやるべき時期だと思いますので、大臣、これはぜひ検討をしてください。

 もう一つ、これはちょっと通告はないんですが、もうこれは多分、認可を取り下げていますから、あの学校は建たないですね。建たないんですけれども、今言われているのは、申請書類が三つ、異なる契約書があって、こっちには二十三億円、こっちには十五億円、こっちには七億円とやっているんです。

 これは伺いますが、大学の場合で結構です。設置申請をする申請書に虚偽があった場合にはその後しばらく認可申請ができない、平成十八年にたしかそういうルールを決めたはずですけれども、これはどうなっていますか。

 再チャレンジすると籠池理事長は言っているんですが、もし申請に虚偽があった場合は、少なくとも、高等教育、大学、文科省の所管の中ではできなくなっているはずなんですよ。これは小学校の場合ももしわかるのなら教えてほしいんですが、わからないなら、少なくとも大学に関してどうなっているか、教えてください。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 大学等の設置等に係る認可の基準というものがございまして、大学の場合ですと、大学等に関して、ちょっと途中省略いたしますけれども、「偽りその他不正の行為があったものであって、当該行為が判明した日から起算して五年以内で相当と認める期間を経過していないもの」については認可をしないということが基準の中で定められておりますが、小中学校については大阪府の方での考え方、基準ということになろうかと思っております。

玉木委員 少なくとも、大学で、申請に虚偽があった場合は五年間ぐらい申請ができないということですね。

 ですから、大阪についてはどうなっているかわからないということではありますけれども、同じように、やはりこれは、私は、もし虚偽が仮にあったとしたら、大学のそうしたルールに準じて五年間ぐらい申請できないというふうにするのが筋だとは思います。そういったことも含めて、大阪府とよく文科省もコミュニケーションをとってもらいたいというふうに思います。

 最後、残りの時間で、特区で愛媛県今治市に設置される獣医学部の件について伺いたいと思います。

 まず文科省に伺いたいのは、獣医学部の新設はできないという規定になっていますね。これは特区が認められた後も原則できないということなんですが、なぜできないとされているんですか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 獣医学部の新設につきましては、獣医師の需給等の観点から、昭和五十九年以降、医師などとともに抑制をしているという状況でございます。

玉木委員 需給関係からということは、つまり、獣医の数が不足していないという理解でよろしいですね。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 今の扱いについて、その経緯で申しますと、関連の情報をお答え申し上げますと、一つは、昭和五十四年の段階で獣医学教育についてのレポートがございまして、その中で、農水省さんの調査によれば、ちょっと途中は省略いたしますけれども、「現時点では少なくとも現在の定員規模の拡大を特に図る必要はないものと考えられる。」というレポートがございまして、五十九年には、大学設置関係におきまして、計画的な人材養成が必要とされる分野といたしまして獣医師が挙げられておりまして、おおむね必要とされる整備が達成されているので拡充は予定しないこととするというような関連のレポートがございます。

玉木委員 獣医師の数は不足していないんです。これはずっと文科省が言ってきたことです。そして、偏在はあります、地域偏在。それと、いわゆる大動物の獣医は少ないんだけれども小動物は多くて、分野間の偏りもあるし地域間もあるんだけれども、全体としては、足りていないというか、過不足なく、需給の関係でぴったり合っているから、不足しているから新たにふやす必要はないので、文科省はそういうことで、獣医学部、例えば歯医者さんもそうですよね、認めないということにしていますよね。

 では、何で特区だったら認められるんですか。

藤原(豊)政府参考人 お答え申し上げます。

 このたびの獣医学部の新設につきましては、「日本再興戦略」改訂二〇一五や平成二十八年十一月九日の諮問会議の取りまとめにもございますように、鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症が家畜等を通じて国際的に拡大していく中で、地域での水際対策の強化、また新薬の開発などの先端ライフサイエンス研究の推進など、獣医師が新たに取り組むべき分野の具体的需要が高まってきているという問題意識から新設に至ったということでございます。

 また、昨年十一月の特区諮問会議等におきまして、農水大臣の御発言にもあるとおり、感染症に対する水際対策を担う産業動物獣医師については、地域ごとの偏在があるという中で、四国地域など確保が困難なところもあるということを政府として確認させていただいた中で、これは告示にも明示的に書いてございますけれども、広域的に獣医学部が存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするという判断に至ったというものでございます。

玉木委員 それは間違っていますよ。

 では、伺います。平成十九年が最新だと思いますが、農水省は獣医師の需給についての調査をしていますね。調査しています。その中にもありますけれども、では産業動物で、二〇四〇年で最もそれが不足するという地域はどこですか。本当に四国ですか。

 とめてください。ちょっととめてください、調べるなら。

永岡委員長 とめてください。

    〔速記中止〕

永岡委員長 速記を起こしてください。

 農林水産省小川政策統括官付参事官。

小川政府参考人 お答え申し上げます。時間がかかりまして、申しわけありませんでした。

 平成十九年五月、獣医師の需給に関する検討会報告書の中で、申し上げますと、産業動物診療獣医師の地域別需給割合ということで、二〇四〇年を見た場合に、需給割合が一〇〇を切る、すなわち分母が必要獣医師数、分子が供給数ということで申し上げますと、一番少ない地域から申し上げますと、九州が六〇・六%、次が四国で六五・五%、大変申しわけありませんでした、それから東海も六〇%といった形で、下三つがそういった状況になってございます。

玉木委員 ちゃんと、これで一番少ないのはどこですか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本を九エリアに分けまして推計しておりますところ、一番低い数字ということで申し上げれば、東海の六〇・〇ということになります。

玉木委員 政府の答弁にうそがあるんですよ。

 将来の予測をしたときに、二〇四〇年、これは農水省のデータですよ、産業動物の地域需要の一番少なくなる、不足するのは東海が六〇・〇。では、次は四国がと思ったら、四国じゃありません、次は九州です、六〇・六。やっと三番目に四国が出てきて、六五・五なんです。

 四国が産業動物の獣医が少ないから四国に認める。今説明いただきましたけれども、間違っているのではないですか。明確にお答えください。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げた数字は、まさに需給割合を、この平成十九年の時点で二〇四〇年を見通した場合でございます。現実に近年起こっておりますことでございますと、地域によっては、産業動物獣医師を採用しようといたしましても応募者数が採用予定数に満たない場合などがあると聞いております。

 このような観点から、農林水産省は産業動物獣医師を志す獣医学生に関しまして修学資金を貸与する事業を行っております。これは、卒業後に当該県に産業動物獣医師として就業していただくということを条件としております。

 平成二十八年度のこの貸与計画について見ますと、例えば四国でも、愛媛、高知、徳島の三県から新たに貸与枠の申請があり、やはり産業動物獣医師の確保に苦労されているということが考えられると思います。

 以上でございます。

玉木委員 答えていないですよ。

 貸与して、何で産業動物の獣医が少ないかわかっているでしょう。公務員獣医になっても、お医者さんと比べて給与表で低いし、共済のお医者さんとかになっても、だんだん農家が少なくなってきたりとか、待遇が悪いから行かないんですよ。もしそれをふやしたいんだったら、農水省、責任を持って、そういった給与制度とか待遇改善の措置を講じたらいいじゃないですか。特区をつくることが解決策なんですか。しかも、四国につくることが解決策なんですか。全く意味がわかりませんよ。

 だって、十五回も構造改革特区、私も設立にも携わりましたからよくわかっているんですが、何度も何度もやってきて、今私が言っていることは全部政府側が言っていました、かつて。しかも、私、ずっとこれをフォローしてきたから、去年の今ごろぐらいまでは同じ答えを言ってきたんですが、ここ一年ぐらいで急に態度が変わって、急にスピーディーに物事が進んだんですよ。だから、物すごく不思議なんです、これは。

 人獣共通病、ワンヘルスということを獣医師会も言っています。こんなのは当たり前で、全部の獣医学部で今言っていますよ。新しく何か学校をつくらないと鳥フルとかそういったことに対応できないなんというのは、そんなばかな話はないんですよ。

 新規性が必要だ、ライフサイエンスのための獣医が必要だ、ネズミじゃなくて豚とか牛を動物実験に使う、だから獣医が必要だと。でも、一方で言われているのは、こんなことに動物を実験に使っちゃいけないという動物保護の観点もどんどん出てきているんですよ。そんなことを理由に、動物実験を強化するために特区をつくるんですか。全ての理由に理由がないんですよ。何でこんなことが急につくられたのか、極めて不可解です、これは。

 この学園の代表者の方と総理との関係が緊密だ、私、余りそういうことは言いたくないんだけれども、ただ……

永岡委員長 申し合わせの時間が来ております。手短に、御協力をお願いいたします。

玉木委員 はい。ずっとこの話を追ってきた立場としては極めて不可解だし、役所の、行政官としての皆さんの説明がなっていない。

 引き続きこれは取り上げたいと思いますけれども、少なくとも、今言ったような話は全く理由になっていないこと、このことを指摘申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

永岡委員長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 民進党の太田和美でございます。

 本日、質問の機会を賜りましたことに、まず感謝をいたします。

 本日は、独立行政法人日本学生支援機構法改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 我が国は、世界でも珍しい給付型奨学金がない国でありますけれども、本改正により、機構の業務に学資の支給が追加され、給付型奨学金制度が開始されます。今まで貸与型しかなく、まるで貸金業者との声もあった日本の奨学金制度でありますけれども、給付型の奨学金制度ができることは前進であると評価をさせていただきたいと思います。

 しかし、大臣、これはあくまでもスタートラインにすぎません。給付対象者や金額が余りにも小規模であり、貸与から給付への流れにはまだまだほど遠いということを御指摘させていただきたいと思います。

 政府は、実施のことしは、十五億円の予算で給付対象者を約二千八百人、本格実施の来年は、七十億円の基金を積んで対象者を約二万人としています。一学年二万人という対象者数は、これは二〇一五年のデータでありますけれども、大学、短大進学者の三・四%であり、専門学校進学者を加えますと全体のわずか二・六%にしかすぎません。

 これをほかの諸外国とちょっと比べてみますと、アメリカは、全学生数の三五%の八百二十万人が給付型奨学金受給者であります。ドイツでは、全学生数の二七%、六十七万人です。フランスでは、全学生数の三五%で、受給者は四十七万人です。また、韓国では、全学生数の三六%で、受給者数は百三十万人というふうにデータがございます。我が国は世界と比べて余りにも小規模で、グローバル基準と乖離しているのではないかと言えます。

 文部科学省の検討チームの議論のまとめには、給付規模については、経済的に困難な状況にある子供たちの進学を後押しするとの政策目標を実現するよう、十分な規模を確保する必要がある、このように指摘されております。

 そこで、大臣にお伺いをさせていただきたいんですけれども、大臣にとりまして、十分な規模とはどのぐらいの給付対象者とお考えなのでしょうか。お答えをいただけたらと思います。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 今、太田委員の方から御紹介をいただいたパーセンテージは、全進学者に対しての二万人という数字をお示しいただいたものと思います。

 今回のこの制度の設計に当たりましては、より経済的に厳しい世帯の生徒の進学を後押しする観点ということでございまして、この観点からいいますと、現在、小中高等学校で行われている給付型支援制度で基準として広く用いられている住民税非課税世帯を対象とすることとしたものであります。

 住民税非課税世帯の進学者数というのは、今約六・一万人というふうに承知をしております。その中において、学力、資質において給付型奨学金を支給するにふさわしい学生を対象とすることとして、二万人ということを対象にさせていただいたということでございます。

太田(和)委員 大臣、二万人が十分な数字というわけではないと思います。

 今大臣からお話がございましたように、この法案では、給付対象者を住民非課税世帯の生徒たちというふうにしています。

 文部科学省の推計では、住民非課税世帯の中で、大学等の進学者は年間約六・一万人いるとされています。内訳は、児童養護施設退所者や里親出身者が約二千人、生活保護世帯が約一・五万人、住民非課税世帯が約十四・二万人で、合計で高校生一学年当たり住民税非課税世帯の生徒数は約十五・九万人いるということです。そのうちの約六・一万人程度が大学等に今進学しているということでございました。

 しかし、国の調査では、内閣府の子供の貧困対策の実施状況という調査でありますけれども、高校生の大学、短大への進学率、現在は全体で五一・八%です。これが、生活保護世帯に属する子供の大学進学率で見ると、全体の半数以下の二〇%になります。専修学校についても、全体が二一・四%のところ、生活保護世帯に属する子供の場合は一三・五%です。また、二〇一四年の段階での児童養護施設出身者の大学進学率については、約二割の一一・一%、専修学校等については一二・二%というふうになっています。

 給付型奨学金制度が創設されることによって、経済的に苦しい家庭の子供たちの進学意欲が高まり、夢やチャンスをつかむきっかけとなることを期待していますけれども、まずは、給付対象者を、児童養護施設出身者、そして生活保護世帯と非課税世帯に属する子供たちの中で進学を希望する者全員に広げることが私は必要であるというふうに思っております。

 大臣、先ほど参考人の質疑、この委員会の中で行いましたけれども、お忙しくて、もしかしたら聞いていなかったと思いますが、久波さんという参考人の方が来られていてお話をしていましたけれども、その中にあったものでこういうのがありました。

 これは児童養護施設で過ごされた方のお話でありますけれども、「自分はそもそも「努力をする」というエンジンが備わっていない人間だと思いながら過ごしています。」と。こんな社会に、本当に日本に夢や希望があると言えるのか、私は、この文章を読みながら涙が出る思いになりました。

 この方は、努力の向こうに勝利や成功などの対価を得た経験があるから人間は努力をするのだというふうに言っていました。ただただ本当に助けてほしかったと。「本当は、同じ学校のクラスメイトのように、こうした社会問題の存在を意識せずに生活したかった。 「進学したい、何かになりたい、あれをやりたい」、そんな純粋な気持ちをまるっきりそのままだけで叶えられるような生活をしたかった。」というふうにあります。「初めから報われる可能性がないと思い込んでいるから、努力することを思いつきすらしないだけなんです。」というふうに言っているんです。

 こういうことを踏まえた中で、大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、給付型奨学金について、将来的には中間層も含めて対象を拡大していくことが必要であるというふうに私は思っていますが、まずは、少なくとも非課税世帯からの進学者、現在は推定約六・一万人を対象にスタートしていくべきであったというふうに考えますけれども、大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

松野国務大臣 経済的な理由によって、その生徒の高等教育を受ける機会、学ぶ機会が失われてはならない、このことは、委員と私も同じ共通見解であろうというふうに思います。

 そして、今回、給付型奨学金を新たに創設したわけでございますが、同時に、無利子奨学金の成績基準を実質的に撤廃いたしました。このことによって二万人の方が新たに無利子奨学金を利用することができるようになりますし、今まで残存適格者と言われていた皆さんも予算措置によって二・四万人、合わせて無利子奨学金で四・四万人、枠を広げるということになりました。

 そして、大学授業料の減額を進めておりますし、これは返還の仕方も、卒業した時点においての、そのときの所得に連関して返していくやり方、また、今の返す金額というものに関して、さらに減額の期間を設定できるような施策、こういったものを提案しておりまして、給付型奨学金とこれらの施策をあわせて総合的に利用していただくことによって、相当程度の効果が上げられるものと考えております。

 そして、給付型奨学金の将来に向けての拡充をという委員のお話でございますが、まずは、今回初めて制度化された給付型奨学金を着実に実行することによって、しっかりと進学の後押しの効果を実証しながら、文科省としては、財源をしっかりと確保しつつ、その施策について拡充を図ってまいりたいと考えております。

太田(和)委員 大臣がおっしゃるように、本当に少しずつでありますけれども、進歩はしていると思います。

 ただ、この給付額についてもですけれども、国立や私立、通学形態の違い、また対象とならない世帯との公平性等を考慮の上、今回、月額二万円から四万円という額を設定したというふうにあります。

 この間の委員会なんですけれども、三月十五日の本委員会において、政府参考人からこのような御答弁がございました。年収二百万未満の世帯の学生で、私立の自宅生であれば、平均毎月約十三万円の支出がある、その中から、家庭からの給付が平均約五万円、アルバイトの収入で約三万円、合計八万円の収入が見込まれる、この収入差額の残りの五万円を奨学金で賄うのであれば、給付型奨学金三万円と無利子奨学金の二万円で賄うことができると。

 さっき大臣がそこでお話をしていただいたようなことで、給付型と無利子のものをあわせてやればいいんじゃないかというお話だったんですけれども、ただ、よく考えてみると、経済的に苦しい御家庭が、年収二百万未満の御家庭が、どのように暮らしていけば、毎月五万円という支出を学費として出すことができるのかと、この試算については本当に大きな疑問が生じます。

 大臣にお伺いしたいんですが、経済的に苦しい家庭の子供が、毎月親から五万円の援助を期待するのでしょうか。このような状況に置かれた子供の多くは、進学したくても進学を諦めるという選択をする可能性の方が高いというふうに私は思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 まず、それぞれの、今、経済的に苦しい状況の中にあるお子さん方の勉学に対する意識をどう喚起し維持するかという委員の問題意識については、私も大変重要な問題意識だというふうに思います。

 これは単に高等教育に対しての負担を下げるということではなく、まさに幼児教育から高等学校までの間においても、経済的なさまざまな不安、学ぶに当たっての不安を取り除きながら、勉強できるという環境をつくっていかなければならないというふうに考えておりまして、文部科学省としても、幼児教育の段階的な無償化を推進しているところでありますし、高校生に対しての各種の奨学金等の充実等も図っているところでございます。

 こういった幼児期からの一貫した教育の家計費負担を低減させていくことをしっかりと進めながら、子供たちが経済的に大変厳しい状況の中にあってもしっかりと勉強し、そして能力と意思がある子に関しては高等教育で学ぶことができるような環境整備に今後もしっかりと努めてまいりたいと考えております。

太田(和)委員 東京大学の小林教授の資料によりますと、経済的に困難で、給付型奨学金があれば進学する生徒が約二万人いる、先ほどの参考人質疑でもこの資料の中で示されていましたけれども。しかし、現在考えられている給付型の奨学金で、果たしてこの二万人という数を減らすことができるのかというふうに思うんです。給付金額が十分でないため、進学を諦めるか、大学等に通いながらアルバイトに奔走するなどして本来の学業がおろそかになる可能性というのも懸念されます。

 昨年、日本生活協同組合連合会が行った教育費や奨学金制度に関するアンケートの結果を見ても、低所得者層ほどアルバイトに依存し、低成績であるというような分析もなされているわけであります。

 本当に、十分ではないんですけれども、この制度の創設を多くの国民が待ち望んでいます。そして、やっと実現するわけでありますから、経済的に困難な方たちを後押しするという政府の本来の目的を果たすことができない事態が起きないように、大臣におかれましては、このことをしっかりと受けとめて、財源の確保により一層努めていただければというふうに思っております。

 またさらに、給付額のことについて、もう一つちょっとお伺いをさせていただきたいんですけれども、無利子奨学金については、住民非課税家庭の子供たちに対しては成績基準が実質的に撤廃されると大臣の方からもお話がございましたけれども、給付型については、十分に満足できる高い学習成績をおさめている者、または、教科以外の学校活動等で大変すぐれた成果をおさめ、おおむね満足できる学習成績をおさめている者といった基準があります。

 この高い学習成績、そして、おおむね満足できる学習成績というのはどの程度を想定しているのでしょうか。高いとおおむね満足できるにはどの程度差があるのでしょうか。おおむね満足できるとは、例えば、撤廃されましたけれども、無利子の貸与型奨学金の基準であった評定三・五ぐらいを想定されているのでしょうか。また、教科以外の学習活動等とは、具体的にどのようなものを想定しているのでしょうか。

 本来であれば、こういった基準は法案を審議する段階である程度明確になっておかなければいけないというふうに思いますが、現段階で想定されている詳細についてお答えいただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの奨学金制度検討チームのまとめ、昨年十二月十九日に出させていただいておりますけれども、その中で、今お話がございましたように、対象者の選定に当たりましてのガイドラインの考え方として、今御指摘がございましたように、一つは、各学校の教育目標に照らして十分に満足できる高い学習成績をおさめている者、もう一つは、教科以外の学校活動等で大変すぐれた成果をおさめ、おおむね満足できる学習成果をおさめている者ということが示されております。

 そして、具体的にどういう水準かということでございますけれども、おおむね満足できる学習成績といたしましては、高等学校の段階で調査書というものを作成いたしますけれども、その中での学校成績の概評がおおむねBに該当する、A、B、C、DのBに該当する場合を想定してございます。

 これは、現在の無利子奨学金の基準と相当の水準だというふうに理解をしますが、その具体的な基準につきましては、今後、日本学生支援機構が示すガイドラインに基づき、各学校で定める取り扱いとすることになろうかというふうに思っております。

 それから、もう一点、お尋ねがございました、その際に、教科以外の学校活動等でどういうことをすぐれた成果として考えるのかということでございますけれども、その点については、例えば部活動やボランティア等において顕著な成果をおさめるというようなことを想定したものでございます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 結局は、規模が余りにも小さいため、本来の趣旨から離れた基準を設けているというふうに私は思います。

 今、B評定、無利子の貸与奨学金とほぼ同じ程度だというお話があったわけでございますけれども、給付型に対しては、貸与型奨学金対象者よりも経済的に厳しい状況にあるわけですから、基準はむしろ貸与型よりもっと緩やかであるべき、私はそう思っております。ぜひ、大臣におかれましては、そのことも踏まえてさらに努力をしていただければというふうに思っております。

 ちょっと時間がなくなってきてしまったので、もう一問お伺いをさせていただきたいんですが、次に、学業成績が著しく不良等の場合の返還についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 給付された学生の成績が著しく不良となった場合には、給付を廃止するだけではなく、給付した額の全部または一部を返還させることができるというふうにしておりますけれども、給付廃止はともかくとして、返還まで求めるのは、特に経済的に困難を抱えている家庭の学生に対しては厳し過ぎるのではないかなというふうに私は思いますけれども、大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

松野国務大臣 給付型奨学金制度は、頑張った者が報われる制度となるよう、学生等の努力を促す観点が重要であるとともに、貸与型奨学金以上に説明責任が問われるものであることから、学業に励まず学業成績が著しく不良となった者については返還を求めることができることとしています。

 具体的に返還が求められるような場合としては、例えば、正当な理由もなく、これは交通事故に巻き込まれてけがをして通えなかったとか御病気をされたとか、また家族の介護等に従事する必要があったとか、こういったような正当な理由もなく学業に励まなかった結果、標準的な修業期間で卒業が困難となることが確定した場合等を想定しているところであります。

 なお、学業成績が著しく不良となった場合にも、それに至った事情はさまざまであると考えられることから、返還を求めるかどうかの判断に当たっては、当該事情も十分に踏まえた上で、必要に応じて返還を求めるような運用が行われることが重要であると考えております。

太田(和)委員 機械的に給付の廃止や返還を迫るのではなくて、可能な限り学業が継続できるように、丁重な相談対応を行っていくことを機構にもしっかりと指導していただくように要望させていただきたいと思います。

 次に、最後になりますけれども、返還猶予制度があることを知らない生徒さんがかなりいると思います。

 返還猶予制度については最長十年までとなっていますけれども、私は、減額返還制度と同様に、期限を十五年に延長すべきというふうに考えております。給付型奨学金制度の導入や無利子奨学金の拡充など前進が図られつつあるのは事実でありますけれども、対象となるのはこれから進学する人たちであって、現に返済で苦しんでいる方々の負担が軽減されるわけではないと思います。

 この期限の猶予について、ちょっと報道ベースなのでありますけれども、まず事実かどうか、そして、今お話しさせていただいたように、事実であるとすれば、減額返還制度と同様に、延長すべきというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、減額返還制度についてでございますけれども、減額返還制度につきましては、経済的理由により返還が困難となっている者のうち、毎月の返還額を減額すれば返還可能となる者につきまして、一定期間、返還月額を二分の一に減額し、返還期間を延長することによりまして、返還者の負担軽減を図るというものでございます。

 この制度につきましては、返還月額を、現在二分の一でございますけれども、例えばそれを三分の一に減額する、そして、より長い期間をかけて返還できる制度へと拡充するということで検討をしているところでございます。

 また一方、返還猶予制度の関係でございますけれども、この返還猶予制度につきましては、卒業後の本人の年収が三百万円以下の場合、申請により返還を猶予しておりまして、猶予の年数制限を従来の五年から十年に延長するという制度の改正を平成二十六年度に行ったところでございます。

 また、このうち、奨学金申請時に家計支持者の年収が三百万円以下の学生に対しては、無期限に猶予を可能とするということとしております。

 今お話ございました制限年数の延長でございますけれども、まずは、平成二十六年度に猶予制限年数を十年にいたしましたので、その効果であるとか、あるいは来年度から導入をいたします所得連動返還型の奨学金制度の効果、さらには減額返還制度の拡充の効果、こういうことを十分に把握、検証してまいりたいというふうに考えております。

太田(和)委員 まだまだ聞きたいことがたくさんありますけれども、ちょっと時間がなくなってしまいましたので、本日はこれで質疑を終了させていただきたいというふうに思いますけれども、今回の施行後五年間を経過して見直すというふうになっております。この制度の実施状況や検証結果をぜひ大臣には定期的に国会に報告していただきたいということを要望させていただいて、質疑を終了させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

永岡委員長 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 午前中に引き続きまして、政府に質疑させていただきたいと思います。

 私は、本会議でも大臣に質問をさせていただきましたが、給付型奨学金の返還の問題についてきょうは伺いたいと思います。

 法案では、第十七条の三で、「機構は、学資支給金の支給を受けた者が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、文部科学省令で定めるところにより、その者から、その支給を受けた学資支給金の額に相当する金額の全部又は一部を返還させることができる。」としております。そして、その該当事項として、「一 学業成績が著しく不良となったと認められるとき。」「二 学生等たるにふさわしくない行為があったと認められるとき。」と定めております。

 まず、大臣に伺います。

 なぜ、学業成績の不良が返還要件に入っているんでしょうか。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 給付型奨学金制度については、意欲と能力がありながら、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しすることを目的としております。

 この制度は、学生等の努力を促す観点が重要であるとともに、貸与型奨学金以上に説明責任が問われるものであることから、学業に励まず学業成績が著しく不良となった者については返還を求めることができることとしているところであります。

大平委員 先ほども御紹介ありましたが、きょう午前中の参考人質疑で、久波参考人の方から、努力するエンジンを持ち合わせていない、こういうお話がありました。先ほど大臣の答弁にもありましたが、学業に励みたくても励めない実態があるということを、ぜひとも私はきょう大臣に知っていただきたいというふうに思います。

 ここに、私、調査室の資料の二〇一四年八月二十九日に発表された学生への経済的支援の在り方に関する検討会報告書を持っております。「第一章 学生等の置かれた経済的状況」の四番、「学生等の経済的状況から見る課題」には次のように書いております。「今日の学生等は、高等教育段階への進学時から在学中、卒業後を通じて、厳しい経済的状況に置かれる者も少なくない。特に、生活保護世帯やひとり親家庭世帯、児童養護施設入所者や退所者等、家計の特に厳しい者については、中退率が高く、また大学等への進学率も一般に比べ低い等の傾向がある。」このように定められております。

 まさに今度の給付型奨学金の支給対象となる、そういう方たちが、奨学金の支給を受けてもなお経済的困難が多く、家庭環境のさまざまな問題なども含めて、中途退学をせざるを得ない、あるいは大学への進学率も低い傾向にある、こういうことを示しております。

 文科省に改めてお伺いしたいんですが、こうした方たちの中退率の高さ、あるいは進学率の低さについて示す最新のデータがあれば御紹介いただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答えを申し上げます。

 大学等への進学率につきましては、全世帯の現役進学率が七三・二%であるのに対しまして、生活保護世帯の進学率は三一・七%、児童養護施設の退所者等の進学率は二二・六%となっております。

 また、中退率でございますが、文部科学省が行った調査では、平成二十四年度単年度、これは特定のカテゴリーということではなくて全学生でございますけれども、全学生数に占める中途退学者の割合は全世帯で二・六五%となっております。

 なお、民間による同じ年度の調査でございます。この調査では、児童養護施設の退所者について、大学等への進学後に、これは単年度でございませんで四年間でございますけれども、四年間で約三割が中途退学しているとの調査もあるというふうに承知をしております。

大平委員 進学率でいえば、全体が七割台なのに対して、生活保護世帯あるいは児童養護施設退所者等は二割から三割、こういう進学率であること、また中退率は、民間の調査で約三割が中退している、こういう数字もあるとのことでした。なぜ、中退をせざるを得ない、こういう方たちが多いのか。

 先ほど来からありますとおり、言うまでもなく、低所得世帯の学生さんほど、奨学金だけでは当然学費や生活費を賄うには足らない、アルバイトを二つ三つとかけ持ちしている場合が少なくありません。

 ことしの二月に発表された大学生協連が毎年行っております学生生活実態調査では、学生のバイト就労率は、データがある二〇〇八年以降最も多く、七一・九%に上る、週二十時間以上働いている学生が一三・九%、また、夜十時から朝の五時まで、深夜時間帯にバイトをしている学生が二〇・七%、こういう調査結果が出ております。

 中には、きょう午前中、花井参考人の方からもありましたが、いわゆるブラックバイト、こういうふうに言われる、学生であることを考慮されず、無理なシフトが組まれたり重い責任が課せられたりする学生も少なくありません。

 そうしたもとで、アルバイトのために大学の授業に出られない、試験を受けられない、こういう深刻な事態さえ起きている。結果として、単位が足らず留年をしたり、また体や心を壊したり、あるいは、それでもなお経済的な困難によって中退せざるを得ない学生が生まれてしまっているのであります。

 大臣にお尋ねいたします。

 学生たち、とりわけ低所得層のこうした学生たちがアルバイトに追われるような、こうした厳しい状況にあることをどのようにお感じですか。大臣もこうした実態をお認めになるかどうか、お答えください。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 アルバイトにより学業に支障が出るようなことは、望ましいことではないと考えております。文部科学省としては、引き続き、奨学金制度や授業料減免の充実を図ることで、学生が安心して学ぶことができる環境の整備に取り組んでまいりたいと考えております。

大平委員 私が伺ったのは、こうした厳しい状況に、今の貸与の奨学金を受けてもなおアルバイトを二つ三つとかけ持ちせざるを得ない、その中でまたブラックバイトという違法、無法さえ疑われるようなこうした深刻な実態がある、そうした中で単位を落とすとか、その結果留年せざるを得ない、こういう学生が生まれている、こういう実態があるということをお認めになりますか。もう一度お答えください。

松野国務大臣 日本学生支援機構の奨学金は、学生生活費の実態を踏まえて貸与額を設定し、学生の希望に応じて貸与を行っております。貸与制奨学金制度に関してはそういった制度になっておりますが、先ほど申し上げましたとおり、アルバイトにより学業に支障が出るというようなことは、これは望ましいことではないというのは当然のことでございますので、引き続き、学生が安心して学ぶことができる環境整備に取り組んでまいりたいということでございます。

大平委員 なかなか現状をお認めになっていただけないわけですが、また、午前中の参考人質疑の議事録もぜひとも大臣に読んでいただきたいというふうに思います。

 その上で、法文上の問題を具体的に伺っていきたいと思いますが、文科省に伺います。学業成績が著しく不良となったというのは、どういう状況のことを指しているんでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 成績が著しく不良という場合といたしましては、例えば、標準的な修業期間での卒業が困難となることが確定した場合や、当該年度における修得単位が著しく少ない場合、こうしたことを想定しております。

大平委員 卒業延期が確定をすれば返還が求められる、こういうことになるんでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 給付型奨学金制度の制度の運用に当たりましては、貸与型の奨学金で行っております適格認定制度というものがございます、この制度を活用いたしまして、毎年度、学業の状況等を確認して、支給の継続等について判定する仕組みとすることを予定しております。

 現在の貸与型奨学金の適格認定におきましては、学業状況や経済状況などを確認いたしまして、奨学金を受給する奨学生としてふさわしい適格性を有する学生であるかどうかを認定いたしております。その状況によりまして、継続、警告、停止、廃止のいずれかの処置となるわけでございます。

 お尋ねの卒業延期が確定した場合につきましては、現在の貸与型の奨学金の適格認定におきましては停止または廃止という処置になります。給付型奨学金の受給者の卒業延期が確定した場合につきましては、貸与より厳格な取り扱いとすることが原則と考えておりまして、返還を求める場合がございます。その一方で、そうした状況に至った事情はさまざまであると考えられますので、返還を求めるかどうかの判断に当たりましては、当該事情も十分に勘案した上で、必要に応じて返還を求めるような運用が行われることが重要であると考えております。

大平委員 卒業延期がそのままイコール返還になるということではないということが、今の局長の答弁だったというふうに思います。確認したいと思います。

 さらに伺います。

 給付型奨学金の支給を受けている学生が中途退学をした場合は、返還を求めることになるんでしょうか。いかがでしょうか。

常盤政府参考人 お答えいたします。

 意欲と能力のある学生等が経済的理由により修学を断念し、中途退学に陥ることのないよう、必要な経済的支援を行うということは重要なことであると考えております。

 このため、経済的に困難を抱える学生等が安心して学ぶことができるように、このたびの給付型奨学金制度の創設、あるいは無利子奨学金の充実、さらには所得連動返還型制度を新しく改善するということ、そして授業料減免の拡充、こうしたさまざまな経済的支援の充実を図ってきているところでございます。

 給付型奨学金の受給者が、正当な理由なく、著しい学業不振に陥り中退に至った場合は、返還を求めることが適当と考えております。ただ一方で、中退の理由といたしましては、経済的理由のほか、転学であるとか、あるいは就職であるとか、さまざまな事情があるというケースもあると考えられますので、一律に取り扱いを定めることは困難であると考えております。

 給付型奨学金の受給者が中退した場合に返還を求めるかどうかの判断に当たりましては、そうした状況に至った事情も十分に勘案した上で、必要に応じて返還を求めるような運用が行われることが重要であると考えております。

大平委員 きょう午前中の参考人質疑でも、小林参考人の方から、この制度にまさにかかわってこられた方ですけれども、この問題を伺いましたら、同じように、機械的に一律には判断するべきではない、こういう御回答があったというふうに思います。

 大臣、先ほど太田委員の質問にもありましたけれども、それで間違いないでしょうか。確認です。一律に機械的に判断をしないということで間違いありませんか。

松野国務大臣 先ほど政府参考人の方からもあったとおりでございますが、一律、機械的に判断ということではございません。

大平委員 改めて、この返還制度は、低所得世帯の学生ほどその利用を控えさせかねず、また、低所得者世帯ほど学業に励みたくても励めない困難な実態が多くある、そうしたもとで、学業不振を理由に返還を求めるようなこうしたやり方は、給付の停止、廃止にとどまらず、これまで給付したものを返せというのは余りにも冷たい、そもそもの趣旨とも矛盾するというふうに私は思います。私たちはこうしたやり方は反対だということを申し上げて、最後にもう一点、質問したいと思います。

 政府案では、国公立大学に通う自宅生は月額二万円、自宅外生は月額三万円支給するとしながら、国立大学で授業料免除を受けた学生は、自宅生はゼロ、自宅外生は二万円に減額されるとしています。

 政府、文科省は、理由を聞きますと、授業料減免制度も給付的措置であることと、国立大学の授業料減免は全額国費である、こんな説明を受けたわけですけれども、どこからお金が出ているかというのは政治の側の都合であり、学生たち自身にとっては、その生活実態が給付の必要性を訴えており、どこから出ているかというのは私は関係ないというふうに思うんです。

 先ほども述べたとおり、低所得世帯は、親からの仕送りも期待できず、生活費を何らかの方法で賄わなければ学生生活を送ることはできない。奨学金はその補填のために必要なのであり、たとえ授業料が免除されたとしても必要なのであります。

 さらに、国立大学の授業料減免は全額国費で出している、こういう理由でありますが、私は、それを言うなら、むしろ、もっと公立大学やあるいは私立大学にも国費を投入して、授業料減免の枠を拡大していくことこそ求められているというふうに感じます。

 大臣にお伺いしたいと思います。

 こうした授業料免除を受けた国立大生の減額措置、私はやめるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 高等教育における教育費負担の軽減については、従来から、奨学金制度のほか、授業料免除などの各種支援方策を組み合わせながら総合的に施策を講じてきたところであります。

 国立大学においては、国費によって授業料減免制度が整備をされており、授業料免除の対象となる学生に対しては既に給付的支援が行われております。このことから、私立大学に通う方との公平性の観点も踏まえ、国立大学において授業料免除を受けた学生については給付型奨学金の支給額を調整することを検討しています。

 その上で、給付型奨学金の対象者が国立大学に進学した場合には、授業料の全額免除を行う取り扱いとし、そのことが就学前の段階であらかじめ予見できるようにすることで進学の後押しを図ってまいりたいと考えております。

大平委員 結局、議論もありましたけれども、やはり全体の給与型奨学金の規模が少な過ぎる、狭過ぎる。規模が小さ過ぎるがために、私は、こうした困っている人同士がとり合わなければならないような状況になってしまっている、そういうさまざまな問題点が生まれてしまっているというふうに思わずにはおられません。

 規模もまた内容も大きく拡充をして、まさに文字どおりの本物の給付奨学金を創設すること、また世界から見ても高過ぎる学費を引き下げることとセットにして、この教育費の無償化に向けて引き続き取り組むことが必要だと訴えまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

永岡委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 ちょっと、きょうは飛び入りでお時間を頂戴しています。ありがとうございます。

 きょうは法案審議ということであります。給付型奨学金、党の手続はまだかもしれませんが、私は大賛成でありますが、ただ、これが最終形だと言われると、最終形というかこれで打ちどめだということになると、若干疑問符がつくんですね。

 御承知のとおり、私たち日本維新の会は、教育無償化、それも、民進党さんが法律でということをおっしゃっていますが、義務教育の無償化と同様に幼児教育や高等教育についても憲法上この無償化規定を入れた方がいい、こういう主張をしているわけであります。

 そうした立場からいえば、今回の法案はワンステップとしては評価できるが、もしこれがワンステップじゃなくて最終ステップだということだと、いろいろまた党内手続もややこしいな、こう思っておるわけでありますが、大臣、これはワンステップという捉え方でよろしいかどうか。よろしくお願いします。

松野国務大臣 お答えします。

 まず、委員とも繰り返し議論させていただいたことと思いますが、意欲と能力のある学生が、経済的な理由により進学を断念することなく、安心して学ぶことができる環境を準備する、学生等の経済的負担を軽減していく、このことが大変重要であるという認識は共通をしていることかと思います。

 そして、もう一点、この教育費負担の軽減に関しては、給付型奨学金の創設に加えて、無利子奨学金の対象者の拡充でありますとか卒業後の返還負担の軽減等もあわせて一体的に負担の軽減に努めてまいりたいということでございます。

 そして、この給付型奨学金でございますけれども、まずは、制度を安定的に運用して定着を図ることで進学の後押し効果を十分に発揮していく、このことが重要でございまして、引き続き、高等教育の負担の軽減を進めるべく、財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

足立委員 ぜひ、まず運用をしなければならない、これは御指摘のとおりでありますが、運用した上で、これは有効だということになればさらに財源を投入していただく。また、我が党が提案をしております教育無償化、憲法についても、ぜひ政府・与党におかれても、国会の仕事でありますが、また討論を活発にさせていただきたいと思います。

 さて、この教育無償化、我が党の発祥の地、大阪、今も本部は大阪にございますが、大阪府の教育無償化への取り組みは、これはもう時間がないので質問しませんが、全国的にも大変深掘りをした先進的な取り組みであった、こう自負を党としてもしております。

 特に今、高校無償化、高校については、公立は無償化されたんだけれども、私立まで含めて無償化を、それも大都市である大阪のような地域でこれに取り組んだことは、大変な財源も必要でしたから、橋下・松井改革の柱の一つということで認識をしていただいているものとは思いますが、一つ十分に御理解いただけていないかなと思う点が、大阪では、公立と私立、これが行政主体も別に見ていたし、それからこの割合、公立高校と私立高校の割合、これも何かルールがあったんだそうですよ。だから、ある種、既得権、既存の私立学校の方々と既存の公立の方々がすみ分けて、既得権を、教育サービスの供給側の都合でそれを固定的に運用してきたという歴史があったんです。

 これを橋下・松井改革で、教育無償化は単にお金をまけてあげるね、そういうものだけではなくて、そうすることによって公立と私立が切磋琢磨をする、競争する。線を引いて、ここは俺のショバ、ここは私たちのショバということではなくて、まさに、生徒、学生中心の発想で、サービスを受ける、教育を受ける方々中心の発想で教育サービスの市場をできるだけ活性化していこう、良質の教育にもっと参入してもらおう、こういうことでやってきたというその趣旨はなかなか知られていないというか、我々ももっともっと伝えていかなあかんと思っています。

 きょう、実は民進党さんの玉木委員が特区制度を何か非難されていましたね。私、大変違和感があります。何か、安倍総理の知り合いだからといってレッテル張りをして、だから特区はけしからぬと。何か、その既得権の人たちからお金をもらっているんじゃないか、こういう疑念、私はそう言いませんよ、そう言いませんが、そういうふうに言われても仕方がない、そういうそしりを受けることも免れないような主張をきょうこの委員会でされていました。びっくりしました。

 きょう、藤原審議官、地方創生の審議官、おいでをいただいています。さっきも御答弁されていました。私、ひどい言いがかりだと思っているんです。まさに岩盤規制を、安倍二次内閣でこれをやってきたんですよね。そのために頑張っている役人さんを呼び出して、おまえ何だと言うというのはどうかなと思うんですが、藤原審議官、ちょっと、そういうことではなくて、どういう思いでこの教育特区をやってこられているか、御答弁をいただければと思います。

藤原(豊)政府参考人 ただいま委員御指摘ございました国家戦略特区におきます特に教育分野の取り組みでございますけれども、象徴的な改革項目の一つに公設民営学校の設置という問題がございます。大阪府市からの御提案が契機となりまして、平成二十七年、一昨年の九月に制度の創設につながったところでございます。

 この公設民営学校につきましては、ことし四月から愛知県で一校目がスタートしますけれども、大阪府市につきましても、平成三十一年四月の開校を目指しまして、グローバル人材の育成を目指した中高一貫校の準備がただいま着々と進められているというふうに認識しております。

 私ども、この国家戦略特区の規制改革というのは、この公設民営学校に代表されるように、自治体を初めとします地元の具体的ニーズに沿った思い切った提案、これに基づき実現していくべきだというふうに考えてございます。もちろん、自治体は常にその分十分な管理責任を持って、また関係各所の同意もいただきながら適切に事業が運ばれるということが前提でございますけれども、今後とも、この大阪府市を含めました国家戦略特区におきまして、特に熱意ある自治体からの御提案に真摯に私どもも耳を傾けまして、政府として地元の具体的ニーズに基づく適切な事業、これを進めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

足立委員 ありがとうございます。

 藤原審議官、ぜひこれからもああいう野党の質問に、まあ私も野党ですが、ひるまずに、強力にこの規制改革、特区制度の運用も頑張っていただきたい、こう思います。

 きょうは法案審議でありますが、ちょっと大阪の話というか森友の話、もう早くけりをつけたいので、もうずっと引きずっていますから、ちょっと二、三、二、三といっても時間がないので、一、二質問させていただきたいと思います。

 これは大臣、大臣に一応通告させていただいていると思いますが、今さっき申し上げたように、橋下・松井改革というのは、とにかく切磋琢磨なんです。今既得権を持っている方々がそこに安住するのではなくて、新規に参入する方も含めて切磋琢磨して、よりいい方がサービスを提供していく、こういう切磋琢磨の思想なんですね。もちろん、競争する際には公正競争でいく。だから、我々は、競争政策、いわゆる公正取引委員会の仕事ですが、こういうものも大変力を入れてきたつもりであります。

 さて、そうした中で、平成二十四年四月に私立小学校の設置認可基準を大阪府は緩和しました。そのポイントを挙げると、まあ、もう皆さん、これはテレビでよく御存じのとおり、既に今小学校を持っているという既得権を持っている人だけで閉じるのではなくて、幼稚園のみを設置している学校法人についても、小学校を新たに設置する場合に、従来は認められていなかった借入金を認めることにした、これが今回の大阪府のいわゆる設置認可基準の改革だったわけです。

 これを、何か特別なことをしたんじゃないかといって、何かレッテルがそれこそ張られています。もうテレビもあかんですね、もう全然説明になっていません。ちょっとテレビ、きょうも来ていないな、ちゃんと放送してほしいんですけれどもね。

 これは大臣でいいですか、大臣でよければ。もしだめならどなたでも結構ですが、関西中心でも全国でも何でもいいですよ、近隣の府県と比べて、これは、もともと大阪がその既得権を守るような厳しい基準を持っていた、厳しい基準であったものを近隣の府県に合わせたものにすぎない。そういう極端な、何かいかがわしいことをやったんじゃない。もうはっきり言いたいわけですけれども、ちょっと、その周りの府県はどうなっているか、お願いできますか。

松野国務大臣 近畿地方の六府県の審査基準を確認したところ、大阪府を含めた四府県の審査基準において、幼稚園のみを設置する学校法人が小学校を設置する際に借入金を認めているところだと聞いております。

 いずれにしても、審査基準は、地域の実情等を勘案し、各都道府県の判断により適切に定めるべきものと考えております。

足立委員 ありがとうございます。

 もうこれは事実関係ですから、皆さん。四つとおっしゃったかな、周りの府県もやっていることを、大阪府は厳しかったんですよ。それは何で厳しかったか。既得権を守っていたんですよ。それを普通に競争してくれとした。幼稚園のみを持っている学校法人でもと普通の規定にしたら、そこに籠池理事長が入ってきたわけですね。それは大阪府の責任じゃないでしょう。もし籠池理事長の取り組みに、森友学園に問題があったら、何か問題がありますね、何か聞いていると、契約書が違う数字が三つあるとか、これはまた別途やったらいいと思いますが、そういう悪い人が、悪い人かどうか知りませんよ、そういうものが出てきたからといって、では規制改革をやめるのか。私は、仮に野党四党にいろいろ攻撃をされても、しっかりと切磋琢磨する、既得権が既得権で安住するのではない真っ当な社会をつくっていくために努力をしていくことをお誓い申し上げたいと思います。

 きょうは財務省に来ていただいています。要は、近財が特別なことをしたんじゃないか、こう言われていますが、もう時間がないので、大阪府に何回も通っていますよね。もう大阪府の人たちは、何か国が来たというのでびっくりしているわけですけれども、特別なことをしたんじゃないですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 国有地を公的な用途で処分する場合には、まずは事業の許認可主体の判断が示されることが前提でございます。したがいまして、学校法人や社会福祉法人等から公的な用途での国有地取得の要望があった場合、全国の財務局は、仮に国有地を処分する場合に、そこで実施される公的な事業の許認可主体である地元自治体に足を運び、自治体の意向を伺うことが通例でございます。

 なお、最近では、待機児童解消等の観点から、国有地を保育施設等として活用することに注力しておりますが、こうした場合でございましても、社会福祉法人から国有地購入の要望があった際、財務局は地元自治体に足を運び、事業の実現可能性や自治体の土地利用計画との関係等について確認を行っております。

 今回、私立小学校という公的な国有地の取得要望でございましたので、近畿財務局として、適宜のタイミングで何度か許認可主体である大阪府を訪問し、手続等の確認を行ったところでございます。

足立委員 もう時間が来ましたので終わりますが、結局、豊中の土地なんですよ。だから、大手前という官庁街からすると、豊中というのは北なんです。当時行かれた大阪府庁というのは、本庁は大手前なんですけれども、多分、咲洲庁舎というところに行かれたんです。これは南西の湾岸の方なんです。だから、大阪府からすれば、よく来たな、親切だな、国がこれだけ親切にするのもまあすごいなということで大阪は受けとめていたんだろうな、こう推測をします。

 いずれにせよ、委員長、終わります、いずれにせよ、行政が住民のため、事業者のため……

永岡委員長 申し合わせの時間が来ております。御協力をお願いいたします。

足立委員 はい。サービス競争をするのは私は当たり前だと思いますよ、サービス競争。それを国民は求めているんじゃないですか。ぜひ……

永岡委員長 御協力をお願いいたします。

足立委員 はい。そういうことで、言いたいことだけ言い残して終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

永岡委員長 次回は、来る二十二日水曜日午後二時四十分理事会、午後二時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十七分散会


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