衆議院

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第12号 平成29年4月21日(金曜日)

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平成二十九年四月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 永岡 桂子君

   理事 上川 陽子君 理事 亀岡 偉民君

   理事 前田 一男君 理事 宮川 典子君

   理事 山本ともひろ君 理事 菊田真紀子君

   理事 坂本祐之輔君 理事 富田 茂之君

      あべ 俊子君    青山 周平君

      安藤  裕君    尾身 朝子君

      岡下 昌平君    門山 宏哲君

      神山 佐市君    工藤 彰三君

      小林 史明君    國場幸之助君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      田野瀬太道君    田畑 裕明君

      中山 展宏君    馳   浩君

      鳩山 二郎君    福井  照君

      福山  守君    船田  元君

      古田 圭一君    松本 剛明君

      太田 和美君    高木 義明君

      牧  義夫君    笠  浩史君

      樋口 尚也君    吉田 宣弘君

      大平 喜信君    畑野 君枝君

      伊東 信久君    吉川  元君

      長島 昭久君

    …………………………………

   文部科学大臣       松野 博一君

   文部科学副大臣      義家 弘介君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    田野瀬太道君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         村田 善則君

   参考人

   (筑波大学長)      永田 恭介君

   参考人

   (日本私立大学団体連合会事務局長)        小出 秀文君

   参考人

   (東京大学大学院教育学研究科教授)        本田 由紀君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     中山 展宏君

  谷川 とむ君     岡下 昌平君

  古田 圭一君     福山  守君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     谷川 とむ君

  中山 展宏君     鳩山 二郎君

  福山  守君     古田 圭一君

同日

 辞任         補欠選任

  鳩山 二郎君     國場幸之助君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     池田 佳隆君

    ―――――――――――――

四月二十一日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(堀内照文君紹介)(第七八一号)

 同(吉川元君紹介)(第八一一号)

 同(秋本真利君紹介)(第八二六号)

 同(中野洋昌君紹介)(第八二七号)

 同(北村誠吾君紹介)(第八四六号)

 同(今枝宗一郎君紹介)(第八八四号)

 同(高井崇志君紹介)(第八八五号)

 同(西村康稔君紹介)(第八八六号)

 同(郡和子君紹介)(第九〇〇号)

 同(河野正美君紹介)(第九〇五号)

 同(赤松広隆君紹介)(第九〇九号)

 同(伊藤渉君紹介)(第九一〇号)

 同(池田佳隆君紹介)(第九一一号)

 同(大見正君紹介)(第九一二号)

 同(重徳和彦君紹介)(第九一三号)

 同(大西健介君紹介)(第九一四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第九一五号)

 同(左藤章君紹介)(第九一六号)

 同(島津幸広君紹介)(第九一七号)

 同(鈴木淳司君紹介)(第九一八号)

 同(八木哲也君紹介)(第九一九号)

 同(原田義昭君紹介)(第九三二号)

 同(大塚高司君紹介)(第九三七号)

 同(工藤彰三君紹介)(第九三八号)

 同(熊田裕通君紹介)(第九三九号)

 同(伴野豊君紹介)(第九四〇号)

 同(古川元久君紹介)(第九四一号)

 同(宮本徹君紹介)(第九五〇号)

 同(初鹿明博君紹介)(第九九三号)

 給付制奨学金の創設と学費負担軽減に関する請願(畑野君枝君紹介)(第八一〇号)

 専任・専門・正規の学校司書の配置に関する請願(小宮山泰子君紹介)(第八四五号)

 国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善に関する請願(阿部知子君紹介)(第八四七号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第八四八号)

 同(河野正美君紹介)(第九〇六号)

 同(金子恵美君紹介)(第九二〇号)

 同(原田義昭君紹介)(第九二一号)

 私立幼稚園の充実と発展に関する請願(畑野君枝君紹介)(第九四九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)


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     ――――◇―――――

永岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、筑波大学長永田恭介君、日本私立大学団体連合会事務局長小出秀文君及び東京大学大学院教育学研究科教授本田由紀君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず永田参考人にお願いいたします。

永田参考人 今御紹介いただきました筑波大学長の永田と申します。

 このような意見を述べさせていただく機会をいただきまして、大変感謝を申し上げております。

 私、筑波大学長でありますけれども、この案件に関しましては、中央教育審議会のこの案件の部会長及び大学分科会長を務めておりました。その関係で、本日、最初には、この案件の概要について述べさせていただこうと考えています。昨年三月に審議経過報告を出させていただき、昨年五月に答申の取りまとめに当たった際の部会長ということでございます。

 そもそも、この案件は、教育再生実行会議の第五次、第六次の提言を受けて、平成二十七年四月、当時の下村文部科学大臣から中教審に対して諮問がなされた内容のものであります。

 中教審では、特別部会を設置して、大学はもとより、短期大学、専門学校、産業界、高校関係者、そのほか有識者から幅広い意見をお聞きして審議を進めました。都合、一年にわたり、十七回の会議、それから十五団体からのヒアリングを含めた審議で内容を深めていったものであります。

 さて、この概要ですが、専門職大学の意義といった観点から、二、三述べさせていただきたいと思います。

 まず、現在の産業構造の変化、あるいはこれからの社会の産業構造の変化及び就業構造の変化という観点から、今一番何が求められる人材であるかという議論の中で、現在の大学が育てる人材は有為な人材として必要であるということはもちろんでありますけれども、加えて、新しいこうした変化に対応する人材を育てていくというのは極めて重要なことである。もう一度申し上げますが、産業構造や就業構造の変化というものに対応する人材を育てるということは非常に重要であろうということを考えていたわけであります。

 もちろん、一番の現場で手を動かす方もいらっしゃいますが、この専門職大学で考えているのは、現場レベルでの問題を解決する、あるいは新しい考え方や手法を取り込んで革新的にそういった問題を進めていく、そういうことを先導できる人材の育成というものが重要であるという認識を持っていたわけであります。

 そうした構造の中で、もう一つ大切な問題は、社会人の学び直しという観点であります。

 これは、ここにいらっしゃる方々もそうですが、多分ITのプログラミングができる方はそうはいらっしゃらないと思いますが、これからの社会は、人文・社会科学を習った者ですらそういったプログラミングの初歩等ができなければいけない、そういう時代に変わっていきます。そういう中で、社会人がそれぞれの仕事の中で、今のは例えですけれども、そうしたニーズに合わせた教育をもう一度受けたいといったものに対応できるような形も考えていかなければいけないだろうというふうに考えていました。

 それがありまして、実は議論の当初から、四年制ではあるけれども、前期と後期の課程に分けて考えていこう、前期に相当することを既に学んだ社会人に対しては、後期でより専門的なことを学んで、現場にスピード感を持って回帰するというようなことを考えていたわけであります。

 現在、御存じのとおり、我が国は、二十五歳以上の大学で学ぶ学生の数を考えたときに、OECDの平均一八%に比べて、十分の一とは言いませんが、二%という非常に少ない数であるということは、これからの産業構造、就業構造を考えたときに、極めて憂慮すべき問題の一つであるというふうに考えていたわけであります。

 第二点は、国際的な通用性を持った職業人あるいは技能を持った方というのを育成していく必要性であります。

 本邦は、さきの大戦の終わった後に一旦、単線化した形の高等教育が始まったわけでありますけれども、歴史的に見れば、明治の時代から非常に、いわゆる複線型というよりは分岐型、フォーク型と呼ばれている複線型の教育体制をとっていたわけであります。

 諸外国については、複線型、つまり教養やアカデミズムを目指すような高等教育機関と、それから技能や技術に集中するようなボケーショナルな高等教育機関、こういったものが並立をしていて、御存じのとおり、イギリスあるいはフランス、ドイツ、オーストラリア等々でこうした学びの複線化、複線化というのは時々誤解されますので、あえて正確に申し上げれば分岐型の、途中から選ぶことができる、そういう分岐型の教育のシステムが動いているわけであります。

 我が国も、当然ながら、四年制大学ができた後に短期大学や高専といったものが措置されて、こういったものに対応してきたわけでありますが、まだ、高等教育機関としてのこうしたボケーショナルなものを見詰めた制度というものがなかったという点があります。

 そうした中で、学んだ学生たちは世界に出ていくわけでありますが、その学びの内容が、世界に通用するようなものである、あるいは世界基準である、もう少し言えば、世界と互換的なそういう教育を受けていないということについては、その若者たちにとっては、今度の新しいシステムというのはかなり魅力のあるものであろうというふうに考えております。

 中教審ではいろいろな意見がございました。もちろん、各種の団体からは、産業構造にもっと密着した考え方を入れてくれ、それからいろいろな大学からは、独自性をしっかり出せるようなシステムにしてくれというような御意見もあり、我々の中で、先ほど申し上げました、一年にわたり十七回の議論の中でその意見を取り入れながら、現在の答申という形でまとめ、今、国会でこのように議論をいただいているというふうに考えております。

 ただ、今後大切な問題は、制度の運用という面に関しましては、まだその概要について今議論しているわけでありまして、制度設計の詳細については設置基準等で深く議論をさらに重ねて、我々が考えている学びの仕方が実現できる制度設計をつくっていかなければいけないだろうというふうに考えております。

 また、御質問をいただいたときにいろいろと回答させていただこうと思いますので、私の陳述はまずはここまでとさせていただきます。

 どうもありがとうございます。(拍手)

永岡委員長 ありがとうございました。

 次に、小出参考人にお願いいたします。

小出参考人 日本私立大学団体連合会の事務局長を仰せつかっております小出でございます。

 本来なら、役員の先生方が参りまして、親しく先生方に御説明を申し上げ、お願いを申すべきところかと存じまするが、本日、所用のために参れませんので、私の方から、この問題に関する私学の現状につきましての御報告をさせていただきまして、御理解とさらなる御審議、御尽力を頂戴いたしたい、こう念願してございます。

 私はきょう、話すべきレジュメと、それから、いま一つ、先ごろこの団体連合会で取りまとめました、今、日本には六百からの私立大学がありますが、そのうちの百五十校ほどをノミネートいたしまして、それらがどのような大学教育の現状にあるか、取り組みをしておるかというものを冊子としてまとめました。実は、この取り組みの状況、事情というものが、きょうお話をさせていただくこの専門職大学と若干かぶるものでありますから、そのことの参考資料としてこの資料を持参させていただいてございます。

 さて、早速でございますので、レジュメに沿いながらお話をさせていただこうと存じます。

 この間、この専門職大学の問題に関しましては、四年制の私立大学、二年制の短期大学ともどもに、深い関心を持ちながら御議論等に参画をしてまいったところでございます。

 しかし、結論から申し上げて、ただいま、まだこの専門職大学の基本的な枠組みというべき設置基準が明確に定められていない、公表されてございません状況下にございますので、専門職大学の実態、実情に関しましてはいささか不透明なところ、曖昧なところがあるものでありますから、これに対して賛成であるとか反対であるとかというお話については控えさせていただこうと思っております。

 いずれにいたしましても、六百の四年制の大学の現状、現実を聞いてみますというと、高等教育機関への新しいアクセスについて、これが複数存在してくることは望ましいことではないかという、いわば制度創設に賛成とする御意見がある一方で、いま一つ、これは結構、半数以上のところから寄せられている御意見ではありますが、この専門職大学については、全体像はわからないけれども、果たして一体どのような教育内容を考えておるのか、カリキュラムになっておるのか、あるいはまさに基本的な枠組みをどのように設計しておられるのか、その辺が不透明である、したがって、すこぶる不安であると同時に、どのような対応、判断を考えていったらよろしいか、すこぶる懸念があるといったお声も結構強く寄せられておるところであります。

 いずれにいたしましても、状況を、今後の設置基準の枠組みをよろしく見た上で、またさまざまな御意見も申し上げたいと思うし、恐らく各私学は、その設置基準を拝見いたしながら、制度設計の様子を見ながら対応を決めていかれることになるのではないかと思います。まず、この点をお話しさせていただきます。

 具体的にお話を申し上げますが、専門職業人材が必要とされる分野は那辺にあるのか、あるいは養成すべき人材像というものについてどのようにお考えになっておられるか、育成すべきボリューム、人数をどの程度考えておられるのか、この新たな高等教育機関の設置の前提となるべきところをより明確にしていただきたいというお話が一点でございます。

 二つ目でありますが、ここ十数年来、大学の設置認可にかかわりましては、大半が看護系あるいは医療系、資格取得系の学部・学科になっておることは御承知のとおりでございまして、これとの絡みで、このほど創設されようとする専門職大学の違いが一体那辺にあるのか、どのような目標、目的になってくるのか、ここのところがどうも明確になっていない。したがって、私立大学、短期大学の現場では混乱が生じておるところがございます。

 この点は、やはり明確にしていただきたいものだ。国会の場における御審議において、この点を明確にしていただけるとありがたい。それは、大学が困るのみならず、そこに学ぶ若者、学生の混乱あるいはステークホルダーの混乱を回避するものであるというように考えてございます。

 三点目でありますが、新たな高等教育機関の制度設計と産学連携の問題であります。

 実務家の教員、研究能力をあわせ有する実務家教員の割合に関する基準、これを除きますれば、まだ全容がはっきりしてございません。これらに関しての特性をやはり明確にしていただきたいと念願をいたすものであります。諸外国の例を軽々に持ち出すつもりはありませんが、産学連携との絡みでは、このあたりのところが十分な制度設計が必要だと存じております。

 それから、続いて四点目でありますけれども、これは当初から私学団体がお願いをしておる話であります。新たな高等機関に対する財政措置の問題でございますが、国策として推進をいただかれる新たな新規の政策でございますから、これの創設にかかわっての国の支援、助成に関しましては、現行の私学助成とは別枠にて、ぜひとも御考慮をいただく上でお考えをいただきたい、こう思ってございます。

 それから、これはまとめのお話として申し上げたいところでありますが、大学の歴史、ボローニャに始まるところの一千年からの歴史、それから今日の我が国の大学の進学率が六〇%になんなんとする状況下の中で、改めてかような専門職業大学の制度を開設することになることについては、歴史の中にたえ得るような専門職業大学をつくっていただきたい。

 大学の類型の中でこれをつくるというお話になりますというと、学位が世界共通のものでなければならないわけであります。細部にわたるところの詰めの段階で、このあたりをしっかりとお願い申し上げたいものだと思っておるところであります。

 ちょうど時間でございますので、この辺で失礼をいたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

永岡委員長 ありがとうございました。

 次に、本田参考人にお願いいたします。

本田参考人 東京大学の本田由紀と申します。教育社会学を専門としております。

 きょうは、このような場で意見を表明する機会を与えてくださいまして、本当にありがとうございます。

 これから申し上げます私の意見は、お手元にあります配付資料にまとめてあります。特に冒頭には、囲みの中にその要点を箇条書きにしてあります。

 見ていただければおわかりのように、意見の内容は小出参考人の御意見と重複する点もありますけれども、私の言葉で以下御説明を差し上げたいと思います。

 まず第一点目ですけれども、今回の法改正の趣旨、背景についてです。

 日本では教育機関の職業スキルの形成ということが国際的に見ても非常に弱体であり、専門職業人材の育成を目的とした教育訓練機関が拡充されることそのものは非常に重要であると考えております。

 この職業スキル形成の弱体性については、これまで私は、さまざまな書籍であるとか論文であるとか、あるいは発言を行ってまいりました。その一部を、別紙一であるとか、あるいは、ほかの方々の分析も含めて、この配付資料の三から六ページの参考資料一、二に幾つかのデータをつけてあります。

 このような状態に鑑みますと、専門職大学、専門職短期大学の創設と学校教育法内への位置づけというのは評価できる面があると考えております。

 特に、私が従来から気にしておりましたのは、日本では、高等学校段階における専門教育、専門学科ですけれども、の規模が小さく、非常に社会的評価が不当に低いということが国際的に見ても大きな問題であると考えておりますけれども、その重要な原因は、専門学科からの大学進学の機会が制約されているということにあります。同じ高校卒であっても、専門学科は専門科目の比重が高いがゆえに、入試において非常に不利な立場に置かれており、AO入試や推薦入試を通じて辛うじて進学している、そういう状態にあります。

 このような状態の中で、専門職大学、専門職短期大学の創設により、高校専門学科からの進学機会がこれまでよりも拡大されるということには期待を持っております。

 ただしかし、これは、専門学科から進学先として専門職大学、専門職短期大学のみを想定するというわけではなく、一般の大学への進学機会の確保ということは引き続き取り組みが必要だと考えております。これが第一点目です。

 第二点目ですけれども、この改正法案に対する危惧と言えるものですけれども、今回の法案においては、大学での修業年限が六年とされている医学、歯学、薬学の三分野のみが専門職大学に課程を置くことができないというふうに明記されております。これは、この三分野以外の分野に関しては、既存の大学における専門職養成と新しい専門職大学との関係が極めて不分明な状態のままであるということです。

 大学には、教員免許を初め、多数の専門職業資格を取得できる課程が存在します。このような従来の大学における専門職養成と新たな専門職大学との関係をどのようにお考えになっていらっしゃるのか、整理していらっしゃるのかということが、少なくとも、本法案あるいはこれまでの中教審などにおける議論からは、十分に読み取ることができないというふうに考えております。

 むしろ、上記三分野のみが明記されていることにより、従来の大学におけるさまざまな専門職養成が今後専門職大学へと、時には強引な形で転換を迫られるのではないかという印象を一般社会あるいは一般の大学の教職員及び学生は抱くおそれがあります。そのような印象は、国公立であれ私学であれ、従来の大学の運営にとって多大な混乱を招くおそれがあると考えています。

 既存の大学における専門職養成は、教育課程全体の中に深く埋め込まれた形で実施されておりますので、それを無理やりに切り出すような改革が仮に行われたりすれば、これは従来の大学全体に対して大きなダメージを波及させる、そういうおそれがあります。それゆえ、本法案がそうしたことを意図しているのではないということが何らかの形で明示されることが望ましいと考えます。

 同様の危惧は、昨年十一月に開催された全国知事会議における一つの資料においても表明されています。これは、本資料の六ページの参考資料三につけてあります。

 近年、特に地方国立大学において予算の削減が著しく、非常に苦しい中で地方国立大学は運営されておりますけれども、一方で、地方国立大学はこれまで長きにわたり地域社会において非常に重要な役割を果たし、今回の全国知事会議の発言からもわかるように、高い評価も得ております。そうであるからには、専門職大学への急激な転換の要請などは行われるべきではないと考えております。

 なお、付言すれば、一般の大学や短期大学における学問分野の職業的意義を高める努力については、私は、引き続き必要であり、今回の専門職大学、専門職短期大学の創設をもって一般の大学がそうした取り組みから免責されるということも、他方でこれは問題があるというふうに考えております。

 第三に、法改正に伴って、設置基準などにおいて盛り込まれるような形で整備されるべき不可欠の条件について、二点申し上げます。

 まず第一に、専門職大学、専門職短期大学の教育課程についてですけれども、これまでの資料で見る限り、これらの大学、短期大学においては、実習の強化や実務家教員の積極的任用ということが非常に強調されております。

 しかし、変化の激しい職業世界の中で、真に実践力を発揮し得る職業人を育成するためには、目の前の実践的なスキルの養成にとどまらず、それぞれの分野及び関連する隣接諸分野の歴史や現状あるいは将来について俯瞰的、大局的な認識、理解を得ることができるような、そういう教育課程を整備し、非常に柔軟に、状況が変わっても対処し、その分野そのものの問題点を変革していくことができるような職業人の養成ということが必要であると考えております。

 こうしたことが保証されない限り、今回の新しい教育機関の意義というのは非常に疑わしい面を持つのではないかというふうに考えております。

 第二点が、専門職大学、専門職短期大学の修了者の労働市場での処遇についてです。

 今回の法改正によって専門職大学、専門職短期大学が開設され、非常に充実した教育が仮に行われたとしても、そこで習得した専門性が発揮できるような労働市場と適正な労働条件の確保がなされない限り、その有効性は何ら発揮されません。

 御存じのとおり、既に、日本の労働市場におきましては、専門的な訓練を受けたとしても、それがまるでなかったことかのように扱われ、あるいは非常に低く不安定な処遇でもって扱われるということが多々発生しております。学芸員など必要ないといったような発言まで起きるほど、日本では専門的な職業に対して大変低い見方がなされております、あるいは労働市場での処遇がなされております。

 ここを改善しない限り、幾ら教育機関の方を拡充させたとしても、その社会的な意義というのは何ら確保されないと思っております。

 既に有識者会議における審議のまとめにも記されてはおりますけれども、今後設置される専門職大学、専門職短期大学の各分野と密接に関連するような業界団体や労働組合、あるいは学協会及び省庁は、卒業生の採用や採用された後の処遇のあり方について指針や例えば職種別の最低賃金などを定めることにより、また企業を超えた労働移動を促進するようなサービスを充実させることにより、ここで形成された専門的スキルが十全に発揮されるような労働市場環境を整える責任と義務を担っている。

 創設したからには、そのような環境を整備しない限り、いわば詐欺のような形になってしまうというふうに考えておりますので、このような方向での整備が別途、何らかの法制化の方向性も含めて、設置基準はもとよりですけれども、明確に規定される必要があるというふうに考えております。

 以上です。(拍手)

永岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神山佐市君。

神山(佐)委員 おはようございます。

 参考人の皆さんにおかれましては、大変貴重な陳述をいただきましたことに心より感謝申し上げる次第であります。

 新しい専門職大学及び専門職短期大学につきましては、大学の新しい類型については、一九六四年の短期大学の創設以来、五十五年になるということのようであります。

 まず、永田参考人にお伺いするわけでありますけれども、今回の部分については、社会人の学び直し、そして、観光分野、農業分野、情報分野等々について実行力があり、即戦力になるというふうなことが大きく求められているんだというふうに考えているわけであります。

 今、日本の人口が減少してきている、少子高齢化社会を迎えてきているわけでありますけれども、その中で、外国人の観光客をふやすインバウンド、そして、これからの輸出をふやしていく、また、農業の取り組みをしっかりしていかなきゃいけないということでもあるわけであります。

 日本の経済を成長させるために、これからしっかり学校として、大学としても取り組んでいかなきゃいけないということで、新たな部分の取り組みになるんだというふうに認識しているわけであります。

 その中において、中教審の中で、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会では、十七回その審議がされたということであります。また、専門職大学及び専門職短期大学の制度化につきましては、さまざまな御意見があったというふうに推察するわけでありますけれども、有識者会議も十二回行われたということでお伺いしているわけでありますが、その中で、海外との比較、賛成、反対の立場の御意見等もあったんだというふうに思われますけれども、このことにつきまして、提案等、そして賛成、反対につきまして御紹介をいただければ、お願いいたします。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 主に最後の部分だと思いますが、御報告を申し上げます。

 もちろん、こういう審議会の中では賛否両論というのは当然のことでありますが、最終的には、答申という形で、一定のコンセンサスは得られたと考えます。その過程の中で、当然ながら、新しいこういう機関を設ける必要性に関して、大きく分けて二つの賛否があったと考えます。

 もちろん、賛成の側は、当然ながら、今現在の大学が、ここで目指している実践的な職業に特化したような、あるいはそれを焦点に定めたような教育ができるかどうか、できる可能性の枠組みではあるけれども、現況、一般の大学にそれが本当に可能であるかという点。

 もう少し平たく申し上げれば、主に教養やアカデミックな方向に偏りがち、ある意味では偏らなければいけないような部分も高等教育にはあるわけでありまして、そういった大学がこのような実践的な職業人を育てる機関になり得るかという問題に関しては懐疑的であるということであります。

 したがって、新たに新しい機関を新しい理念のもとに立ち上げるということが重要であろうということであります。

 今申し上げた意見の中で、反対は、それでは既存の大学はこれが本当にできないのかという問題であります。

 御指摘が先ほど本田参考人の方からもありましたが、例えば医学や薬学といった領域においては、当然のことながら、その一つの役割であるところの医師や薬剤師といったものを育てているわけでありまして、必ずしもできないというわけではありません。

 ただし、一方で、医学や薬学の領域では、研究の機能が非常に重要視されている部分もあり、必ずしも現場に出るようなカリキュラムになっていない、そういう大学も多々見られるわけであります。その是非を言っているわけではなくて、そういう現状に鑑みたときに、現在の大学がこういう実践的な職業人を育てることに転換可能かという問題については、全体的にはそう容易ではないということになったわけであります。

 先ほどの御質問の中でございましたけれども、何百年も大学が存続している。多分、この社会の中で、大学という、組織体として存在しているものというのはなかなかほかにはそうはなくて、政治体制もいろいろ変わる中で、多分、大学は、その時代時代にフレキシブルに対応してきたからこそ、今も大学という形で残っているのであろうと思っているわけであります。

 そうした観点からは、今現在はもとより、これからの社会のあり方を考えて、この機関というものを新たに考えていく必要性にたどり着いたということになります。

 この内容ですけれども、何か実際にすぐサービスをするとかそういう問題ではなくて、やはり大学として設置するわけでありますから、研究、教育、社会貢献という教育基本法に書かれている大学の役目は当然ながら負うものというわけでありまして、その研究の内容については、より深い、単なる専門のスキルを教えるだけではない内容になるであろうというふうに考えております。

 したがいまして、大学という枠組みの中で、新たなこういう機関の制度を考えているということでございます。

神山(佐)委員 ありがとうございました。

 これからの教育の質の確保ということについては、しっかり考えていかなきゃいけないということであるわけであります。

 そして、企業勤務者の実務家教員の確保も必要だというふうに認識しているわけでありますけれども、これから、企業内実習や演習、この辺については、二年間で三百時間以上の履修が必要であって、四年間で六百時間以上というふうなことが考えられているということであるわけでありますけれども、今回の提出の法案では、設置基準等詳細な制度設計についてはまだ検討中であるということであります。

 この制度設計いかんによって、新しい職業教育における高等教育機関の価値を高めていけるかというふうなことが必要だと思っているわけでありますけれども、永田参考人の御所見、そして優先順位として重要と思われる課題などにつきまして御指摘をいただければというふうに思います。

永田参考人 それでは、考え方を述べさせていただきます。

 もちろん、先ほどから指摘があるように、設置基準の詳細については、こうした議論の上にさらに議論を重ねて、いろいろな方々からの意見を参考につくっていくものでありますが、今委員が御指摘のように、基本的に大変重要なのは、インターンシップ等の現場での実習ということであります。

 一般的に、理工系の研究大学であっても、三年次、四年次というのは、ほとんどが実験、実習というものでありまして、この場合はアカデミックな観点でのそういう現場での学びということを続けているわけでありまして、ましてや、実践的な職業教育に向かうということに当たっては、現場での学びというものが著しく重要であるというふうに認識をしています。また、それがない限りは、決して満足のいく学びが完成するとは考えていません。

 以上です。

神山(佐)委員 ありがとうございました。

 今、これからの部分で、専門学校から組織を改組するというふうなこと、そして大学からの併設が見込まれていくということでありますけれども、この辺について、校地それから校舎の面積等々、専門学校、そして大学からその併設をするということについては、考え方があろうと思うんですけれども、この辺について、永田参考人とそれから小出参考人にお伺いできればと思います。

永田参考人 専門学校と大学との違いがもともとの御質問の中にはあると思いますが、それが、具体的に今求められた御質問は、実際に大学相当として機能し得る場合にどの程度の外形として必要かということかと思います。

 この大学、そこの答申の中にも書きましたが、校地、校舎についてはいろいろな条件に鑑みて今後詳細を決めるということにしております。それは、先ほど申し上げましたように、国全体の中で新しい産業構造、就業構造を考えていくという立場がそこにあるからであります。

 東京の中であるいは地方で、新たな産業種によっては非常に広い校地、校舎が必要である場合もありますが、逆に、ある地域やある都市においては、そういう広い校地、校舎が必要なくとも目的を達成し得る可能性のある分野もあります。したがいまして、それらについては、重々に考えて、設置の基準を定めていかなければいけないと考えております。

 もちろん、私が自分でまとめている中で危惧したのは、実践的な教育をするんだから、社会人もいるだろうし、学生としてどうするんだという中で、やはり、学生の生活を保証できるようなものとして、校地、校舎の限定のほかに、そういうような変わり得るものも置くということがわかるような書き方に最後なっていると思います。

 したがいまして、各種の分野における教育に支障のない限りの校地、校舎、それから学生にとっての学生生活が送れるだけの保証、それは必要であるというふうに考えています。

小出参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、少し別な角度からこのお話をさせていただきます。

 先ほどの意見陳述の中では、大学としての新しい形をここに開いていくものであると、大学類型としての専門職業大学をつくる、こういう方向でございます。

 そのことに関して申し上げれば、教育機関はすべからく永続性が担保されていなければなりません。その意味から、校地、校舎基準、現在は、大学の場合は学生一人当たり十平米と基準上定められてあったと思います。それはさまざまな学問分野によって異なるのでありましょうが、教育の質を高め、内容を永続的に実現していく意味合いから、校地、校舎に関しても既存の大学との兼ね合いの中でしっかりと手当てされるべきものである。ただ、画一的である必要はなかろうと思います。

 先ほど永田先生がおっしゃったような方向での、分野によっての違いも出てくると思いますが、この点については大切な教育環境条件だと心得ております。よろしくお願いいたします。

神山(佐)委員 ありがとうございました。

 次に、小出参考人にお尋ねいたします。

 参考資料として、日本私立大学連合会からの意見をいただいているわけでありますけれども、専門職業人を養成しても需要が不透明なことや、専門職大学を大学体系の一部として制度化しなければならない説明に説得力がないというふうなことであるようでありますけれども、産学連携についての方策について具体性がなく曖昧との主張もされておるわけでありますけれども、加えて、財政措置について、別建てにての考えで……

永岡委員長 申し合わせの時間が来ておりますので、手短にお願いいたします。

神山(佐)委員 はい。譲れないということであるようでありますけれども、先ほど、私学の助成金をさらにふやしていただきたいというふうなこともあったと思うんですが、この辺についてよろしくお願いいたします。

小出参考人 まず、財政の問題からお話をさせていただきますが、これは、別仕立てで財源措置をおとりいただき、小さく産んで大きく育てていくような手法をおとりいただく、こういうことが望ましいだろうということを、私ども一貫してお話をさせていただいているところであります。

 この点は、昭和五十年の、自由民主党の若手の文教の先生方が議員立法でおつくりをいただいた私学振興助成法の精神にもかなうお話だと思ってございますので、その観点から別仕立てでよろしくお願いしたいと思ってございます。

 それから、産業界からの人材要請、それのお声がけというところでありますが、諸外国の例も見ながら、やはり産業界の、いかなる業種、いかなる世界がどのような人材をどの程度要求しているのかというあたりのところを試算いたす中で数値的にも示していただけることが、制度の健全育成のために必要になってくるだろう、こう思っております。

 以上です。

神山(佐)委員 どうもありがとうございました。終わります。

永岡委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 民進党の菊田真紀子でございます。

 きょうは、お三方の参考人におかれましては、大変お忙しい中、こうやって御出席をいただきまして、それぞれの立場で御意見をお述べいただきましたことを心から感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、私の方から質問をさせていただきたいというふうに思いますけれども、まず、永田参考人と本田参考人に御意見を伺いたいと思います。

 先ほど小出参考人の方から御発言がございまして、現在の大学、短期大学、それから実学を標榜する学部、学科においては、既に実務家教員を採用して専門職業人の育成を行っている、あるいはまた、社会人の学び直しにも対応できるように、多くの大学で教学上の配慮が行われている、こういうようなお話がありました。

 今回、五十五年ぶりの制度改正ということで、学校教育の永続性が重要であるという観点からしてみても、今なぜここで制度改正をする必要があるのかということを明確にしていく必要があるというふうに思います。

 例えば、看護系であるとか医療系であるとか、そういう既に設置されている大学もあるわけでありますけれども、そことの違いをどういうふうにつくっていくのか、これは大変重要な観点だというふうに思いますので、先ほどの小出参考人の発言に対して、永田参考人、本田参考人、どのような御意見をお持ちか、お伺いしたいと思います。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど来から、ほぼ同じような部分が一番重要なので、皆さん繰り返し議論になっているわけでありますが、今、なぜこうした実践的な職業教育の大学が必要かということでありますが、逆に言うと、今現在、実践的な教育を行う高等教育機関というものがどれだけ実行力を持って動いているかということになるかと思います。

 先ほど冒頭で述べさせていただきましたけれども、諸外国、我が国も過去を振り返れば、実はいつもボケーショナルなものとアカデミックなものが複線化した中で、学生たちはその中を、分岐型と申し上げたのは、ニーズに応じてそれぞれに動いていくという形で育ってきました。そうした中で今一番欠けているのが、実践的な職業教育を大学の基準の中でやる、つまり、高いレベルの研究とそれから人材養成目的を持って社会にも貢献するという教育基本法の大学の役割の中に配置するということの重要性があるというふうに考えています。つまり、大学が、高等教育機関としての研究能力をそこに付与していく必要があるであろう。

 もちろん、暗黒物質やクオークを見つけるような、そういういわゆるアカデミックな研究がある一方で、しかし、おすしは何でおすし屋さんが握るとおいしいのか、そういう研究が当然あってもいいわけでありますけれども、我々が暗黙知として知っているようなことが科学的に本当にディスクリプションできるかどうかということに関しては、相当高いレベルの研究が必要である。そうなれば、誰でもそのメカニズムがわかればおいしいおすしが握れる、そういうことになるわけですが、これは、大変申しわけない、低いレベルの例え話ですけれども。

 つまり、そういうふうに、ここが大学であるというのは、研究機能を持つということが後ろ側にあるということであります。四年生大学としての研究機能を持つということであります。

 それをもとに、つまり、実践教育に役に立つというのは、先ほども、永続性を持たなきゃいけないというのは、ある職種だけに役立つことをもちろん規範に教えていくわけですけれども、なぜそういう職業でこれが必要かという原理を教えるのが大切なわけであります。したがって、違う職業にかわったとしても、物の考え方というものは既に身についているような教育を展開していくというふうに考えるわけです。

 そのためには、既存のテキストブックを読んでいるだけではだめで、実践教育を行う大学そのものが新たな発見や発明を見出して、それを付加して学生に教育をしていくという立場が必要であろうというふうに考えています。あくまでも一条校、教育基本法の大学というところに位置づけるのであれば、そういった観点が必要であるというふうに考えています。

本田参考人 今御質問いただいたことに関しては、私自身、危惧を抱いております。

 もう少し詳しく、どういう危惧かということを申し上げますと、既存の大学と新しい専門職大学とが全く別の分野をそれぞれ担うようになるということが一番問題が少ないケースです。これまでの大学にはなかったような新しい分野に対応するために専門職大学が設けられる、開設されるということは、共存が大変スムーズに可能だと思います。

 問題は、同じような職業分野、かぶるような専門職の養成に関して新しく専門職大学というものが立ち上がってきたことが従来の大学にとっていかなる意味を持つかということについて、まだ非常に不明確であり、そこはもう少し御説明が必要なところだと考えております。

 例えば、どういうことが危惧されるかといいますと、教員養成において、従来の大学でも可能だし、新しい専門職大学でも可能だけれども、採用等において新しい専門職大学の方がさまざまな面で優遇されるといったようなことが仮に発生した場合、そもそも教員養成というのが非常に実践的な発想だけで成り立つものかといったようなことにも吟味が必要ですし、それによって、従来の大学の教員養成に注力してきた教員などは膨大な数存在しているわけで、そこがこうむるダメージということははかり知れないものがある。

 複数のルートがあって、いずれも同等に評価されるというのではありませんけれども、新しい大学の方に高い価値が置かれたりした場合の既存の大学の立場を考えていただきたいということです。

 中には、既存の大学に同じような専門職養成の分野があるのであれば、それは徐々に実践的な専門職大学の方に転換していけばいいのではないか、そういうお考えをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。これが自然に起きる、例えば、定員割れしているような私立大学などで新しく定員をきちんと確保するためには、これこれの分野における専門職大学へと生まれ変わろうというような選択をその大学の判断でされる場合には構わないのですけれども、あり得ると思うんですが、新しい教育機関の枠組みができたからには従来の大学もそこに移れといったような、かなり強硬な指導というか政策的な圧力がかかった場合に、これもやはり既存の大学にとってはモチベーションが失われることになりかねない。

 そういう非常にハードランディングな改革というものが、いろいろ批判もありながらも非常に多くの者の努力で成り立ってきている既存の大学というものを踏みにじるようなことにはしないでいただきたいというのが、私の非常に心配しているところです。

 以上です。

菊田委員 ありがとうございます。

 小出参考人にお伺いいたします。

 全国で私大は六百校ですか、現状あるというお話でありましたけれども、この私大を取り巻く経営環境の現状について、少しお聞かせをいただきたいというふうに思います。

 また、先ほど、お話の中で、現場からはすこぶる不安があるという声も聞こえてくるというお話がありましたが、今回の制度化に関しまして御懸念があるとすれば具体的にどのようなことであるのか、御指摘をいただきたいと思います。

小出参考人 お答えを申し上げたいと存じます。

 大学の数はたしか六百五とか六百四とか言われますが、募集停止をしている学校などもございますので、六百と私は今申し上げました。正確な数値に関しましてはまた確認をせにゃならぬと思いますが、六百という理解で私はつくっております。

 経営環境についてはどうか、こういうお話でございます。

 我が国の高等教育は設置形態ごとに、国が設置する国立大学、それから自治体が設置する公立大学、学校法人が設置する私立大学とございます。事私立大学にかかわってのお話と理解をいたしますと、経営組織体の私立大学にとりましては、今、都市部の大学の問題とそれから地方部の大学の問題、ここに、大きな格差といいますか、大きな差異が生じているというのが現実であろうかと思います。その状況から見ますと、地方部の私立大学は規模が比較的小さいわけであります。

 経営の安定を確保するためには、定員が大体四千人を超えておらぬことには、スケールメリットからいっても経営の安定が確保できないといったようなトレンドもあるやに聞いておるのでありますけれども、四千人以下の私立大学がすこぶる地方には多い。その地方の私立大学にとっては、少子化の社会の中で、従来からの十八歳人口だけを頼っている体系の中では定員未充足といった事情が、今、定員未充足の大学の割合は全国平均では半数以上に上っているのではないか。それは全国平均でありますから、各地方地方によってかなり事情はもっと深刻度を増してきている、こういう状況下にあろうと思います。

 しかし、いずれにしても、そういう経営問題を抱える私立大学が、今度新たに専門職大学の提案にかかわりまして不安としておっしゃっておられるところは、先ほどからの議論の中にも出ているお話のとおりでありますけれども、私どもが今養成を行っている看護人材にしても、あるいは放射線を取り扱う技術責任者のような養成にしても、そのようなものが今度の新しくできる大学との関係で一体どんな位置になってしまうのか、それをどう学生に説明したらいいのか、ステークホルダーの親御さんたちにどう説明したらいいのかというところで大変な困惑がおありになるということがございます。

 私立大学、経営組織体でございますから、そのあたりをどう判断していくかという意味合いから、しっかりとしたデータをお示しいただき、そして懇切な方向に関する説明をお願いしなければならぬだろう、こんなふうに考えてございます。

 回答になりましたでしょうか。

菊田委員 ありがとうございました。

 もう時間ですので、最後に一問、三名の参考人にそれぞれお答えいただきたいと思います。

 設置基準が非常に大事だということでありますが、専門学校のそれよりもかなり厳しくなるということが想定されますが、ハードルが高ければ専門学校からの参入というのは限られてくるでしょうし、逆に、設置基準のハードルを低くすれば、今度は質の確保という観点から問題が出てくるというふうに思います。こうしたことについてどのような御意見をお持ちか、お聞かせください。

永田参考人 簡単にお答えします。

 最終的に、国際的に通用する学位というものに相当できる人材養成ができるように仕組むべきであって、そのために逆算すると、カリキュラムやアドミッション、あるいは校地、校舎も決まってくるであろうというふうに考えています。

小出参考人 教育事業体は失敗は許されない、一生一度の教育を預かる場所でございますから。その意味から、まだイメージのはっきりしないものについては小さく産んで大きく育てていく、そのような方式が必要だろうと思います。

 したがって、この基準に関しましても、専門職大学にふさわしい基準というものが一体どのようなものなのか、これも懇切に説明をしていただきたいものだ、そのように念願をいたします。

本田参考人 一定の規模、ボリュームを確保するためにハードルを下げるということは、あってはならないことと考えます。

 今、小出参考人もおっしゃったように、新しい機関を創設するということの責任を担っているわけで、そこを通過して将来社会に出ていく学生あるいは保護者の立場に立った質の保証ということは、どうしても必要だというふうに考えます。

菊田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

永岡委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 三人の参考人の皆さん方、貴重な御意見をありがとうございました。

 先ほど永田参考人の方から本案の成立の経過について御説明いただきましたが、実は私、教育再生実行会議にオブザーバーとしてずっと参加させていただいておりまして、今回のこの職業教育の点も、ずっと委員の皆さんの意見を聞いておりました。

 第五次提言で、こんなふうに提言をさせていただきました。

 社会、経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い職業人を育成するとともに、専門高校卒業者の進学機会や社会人の学び直しの機会の拡大に資するため、国は、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を制度化する。これによって、学校教育において多様なキャリア形成を図ることができるようにし、高等教育における職業教育の体系を確立する。具体化に当たっては、社会人の学び直しの必要や産業界の人材需要、所要の財源の確保等を勘案して検討するというふうに提言させていただいて、中教審でいろいろ審議をしていただきました。

 私、今回のこの法案は、実は、平成二十八年六月二日に閣議決定されました「日本再興戦略二〇一六 第四次産業革命に向けて」の中にも指摘がございまして、こんなふうに書かれております。

 実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関について、専門性に富み、従来の大学卒業生と同等以上の賃金、学位を得て、世界の産業革命をリードするような現場レベルの革新を牽引し得る高度職業人材を輩出する教育実施体制を整え、我が国の人材力を抜本的に強化する今までにない職業プロ養成機関として創設する。

 このとおりだと思うんですが、今もさまざま三人の先生方から御意見をいただいて、実は、日本私大教連中央執行委員会、私立大学の先生方の連合会ですか、こちらから四月十日付で、「「学校教育法の一部を改正する法律案」の審議にあたっての要望」というのをいただきました。

 ちょっと読んでいてどうなのかなと思ったんですが、これは永田先生に、ちょっとその審議の経過について、こういう疑問もあるので、ここの場で明らかにしていただいた方がいいんじゃないかと思うんです。

 この中で、二〇一六年、平成二十八年四月十一日の第十四回特別部会で行われた審議経過報告に対するヒアリングでも、意見表明した関係七団体のうち、新たな職業教育機関を大学型として設置することに積極的な賛意を示したのは全国専修学校各種学校総連合会のみでした。日本私立大学連合会、日本私立短期大学協会など六団体は、いずれも懸念や危惧、反対の意を表明しています。日本経済団体連合会も、どのような職業分野で当該教育機関へのニーズがあるかが不明確、経団連として、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を創設することを要望したことはない等、疑義を唱えましたというふうにここには書かれております。しかし、特別部会は、こうした論点について審議せず、表明された懸念や異論に対する明確な回答も提示しないまま終息しましたということで、ちょっと批判的に言われているんです。

 実際、先ほど先生は、いろいろな異論もあったけれども、最終的には中教審の中でこう取りまとめたというふうにおっしゃって、そういう経過をたどったんだと思うんですが、こういう批判に対しては、先生はどう思われますか。

永田参考人 批判というか、それはある一定の方向からの意見の取りまとめになっていると思います。

 確かに、いろいろな御指摘がありました。産業界からは、当初は産業界で必要な人材育成に向けてくれという話もございましたけれども、議論が進む中で、これが大学体系の中に入るということを重々理解いただいた上で、産業界に、いわゆる当初考えられていた形とは違う高度職業人になるという御理解に最後はたどり着いています。

 それから、先ほども御意見があったと思いますが、国立大学は、一定の基準の中で一定の規模を持ったものができていますが、私立大学に関しては、さまざまな形態の状態となっています。そういう意味合いの中で、幾つかの観点からいえば、この新しい高等教育機関がもしできた場合に、これが従来の私立大学の教えているゾーンに食い込んでくる可能性も当然あるわけで、それについてはある程度の、先ほどもございましたが、両者が並んで成立するような環境をつくらないといけないという意味で、そういうことは現在の段階で別にどこにも保証されていないので、そういう御批判もありました。

 ただ、大学設置というものに関しては、設置者が希望して建てるものでありまして、誰かが命令して建てさせるものでも何でもありません。したがいまして、こういうものが大切と考える設置者が建てていくという観点から、実は、私立大学の方により自由度が高いというふうに考えられます。設置基準の詳細が決まらない点は、先ほど小出参考人からもありましたが、不安を持って迎えられている部分であろうというふうに考えております。

 つけ加えて、どうしても申し上げておきたいことは、これは産業界もわかっていただけると思いますが、いわゆる本当の意味での学歴社会をこういうものを通じてつくっていきたいということに関しては、皆さんは賛同されていると思います。

 ボリュームゾーンとして出てくる人たちが高等教育の学びを経て、本当に大学が改革をしながら求められる学びを供給できる状況になったときに、それはおのずと本当の意味での学歴社会、つまり、工業学校を出ようが農業学校を出ようが、それが次のレベルのものを学んでその先に進んでいく、その価値を社会が認めて就業人口として使っていく、そういう観点では、基本的には了解は得られているというふうに考えています。

富田委員 今の私学連合会からの指摘に対して、今先生の方でお答えいただいたとおりだと思うんですが、実は教育再生実行会議で議論していたときも、産業界出身の方が議論のスタートを切ったんですね。やはり今のままの大学教育を卒業した学生を引き受けても役に立たない、自分たちのところで再教育しなきゃならないから、まずそこを考えてもらいたいというようなところから議論が始まりましたので、今先生がおっしゃったとおりの経過をたどったんだと思います。

 ただ、今回のこの法案を読んでいて、実務教育の時間がかなり必要ですよね。実務教育をできる教員の採用というのも問題になってくる。これからどうやってそういう方たちを見つけて、なおかつ、順繰りに新しくなっていったときに教員をかえていかなきゃいけないというような指摘もありますので、そういった実務教員の方をどうやって探して大学にマッチングしていくのか、そういったところがちょっとわからない部分もあります。

 もう一つ、新しい大学ができたときの、事務職員が専門性を持っていないと、今回問題になっております文部科学省からの天下りの問題とか、結局、頼るべきところに行ってしまうというような問題もあると思うんですね。

 どういうふうに実務教員を採用していくのか、見つけていくのか、また事務職員の専門性をどう高めていくのか、その点について永田参考人と、そして、小出参考人は、私、ちょっと御経歴を見ていまして、文科省のもしかしたら天下りなのかなと思っていたんですが、プロパーでずっとやられていたということから見まして、ぜひ、各大学で専門性を持った職員を育てていくにはどうしたらいいか、このお二人からお聞きしたいと思います。

永田参考人 事務職員の話が主体でしたが、教員について簡単にお答えいたします。

 今回の高等教育機関では実務能力を持つ研究力を持った方ということになっていまして、大変リクルートするのは難しい、そんなに簡単に見つかる人材ではないと思います。したがって、それをもってして、簡単に幾つもの大学がぽこぽことできてくるようなことにはならないと思います。我々が期待しているのは、いろいろな産業現場で、いろいろな問題や少し上の開発レベルで問題を解決していきながらみずから研究力を持っているという方を考えていますので、そう容易ではないと思います。

 事務職につきましては、中央教育審議会で既に何度も議論をしてきて、ようやく一部、設置基準の中に四月一日から盛り込まれておりますけれども、事務職はいろいろな決まったことを処理するという文言が、遂行するという文言に喫緊変わりました。つまり、我々も今悩んでいるところですが、以前のように何か流れてきたものを横に少し処理しておいていけばいいのではなくて、教員と同等に教育研究に参画できる人でなければいけないというわけであります。

 その観点で、ぜひとも私も先生方にお願いをしたいのは、教員ではなくて職員ではない第三の職、つまり、本当に専門に特化した方を新しいそういう職に位置づけていただくような考え方を、こちらから実はお願いしたいと思います。

 給与表も、一般的には教員職と事務職の給与表しかない。その中で、将来教授にもならない、部長にもならない新しい職種の方は、自分のキャリアパスを見つけることができません。したがって、今の御質問に返してしまいますが、そういった新しい専門職が事務方として育つような、事務と教員の間のような、ぜひともお考えいただけるとありがたいと思います。

小出参考人 御質問ありがとうございます。

 教員をどのように探してまいるかというところは、私も同様に疑問を持っているところでございます。何らかのシステムづくりがやはり必要なんだろうな、こう思ってございます。

 今は、科学技術の進歩、あるいは職業世界のグローバルな展開の中での変化はすこぶる激しいものがあります。そこで、これは不易と流行の話があります。今すぐに役立つものはじきに役立たなくなるというあの状況があるわけでございますね。だから、そういう意味から考えると、これは何らかの仕組み、仕掛けづくりをちょっと工夫していかなくちゃならないだろう、こういうように思っております。同感であります。

 それから、いま一つ、職員のお話。私は持論として、職員の養成の話もそうでありますが、あるいは教員の養成の話もそうでありますが、私学の場合は、建学の理想を実現するためにその組織体が存在するわけでありまして、ボードの役員の方々は、その学園をどの方向に持っていこうかということでのボードの責任があります、理事長、理事の方々の責任があります。それから、ファカルティーの方々は、これはやはり教育の土俵の上で重要な責任を果たしておられる。

 同様に、職員の方々は、それをプロモートしている、運営管理をしている立場でありますから、私学の場合の職員の養成の問題は、他の教育機関とは違って、ボードもファカルティーも、それから職員の三位一体での推進が必要になってくる、そういう持論をかねて持っております。したがいまして、単独で職員だけの養成が図られるものではない。教員と一緒になって、ボードと一緒になって、そしてカレッジ、ユニバーシティーのディベロップメントが図られるべきだろう、そういうような考えを持っております。

 しかし、方向としては、職員の方々のこれまでの立ち位置から考えて、さらに一層の飛躍が全体の目指す方向の中で強化されていくべきだろうという持論を持ってございます。

 以上です。

富田委員 もう時間ですので、最後に本田参考人にお尋ねしたいんです。

 ちょっと調査室の方からいろいろ資料をいただいた中に、週刊東洋経済二〇一五年一月三十一日号に、先生の、教育、私はこう考えるという文章が載っておりました。この中で、赤ちゃん受け渡しモデル、今の大学生が就職する際、そのまま渡して、産業界の方で教育していくんだみたいな、今は、その先を行って、就職できない子たちが出てきて、放り出されている、こういったことを変えていかなきゃいけないというふうに御指摘をされていました。

 先ほど、今回の法案は、専門職大学や専門職短期大学の創設により、高校専門学科からの進学機会が確保される、これは期待していいというふうに御指摘されていました。ここに学ぶ子たちが専門職大学や専門職短期大学に行って、さらにスキルアップしようというふうに、そういうインセンティブを与えるために何かできることがありますでしょうか、この法案を改正していくことによって。先生の方で何か御意見があればと思います。

本田参考人 言及ありがとうございます。

 赤ちゃん受け渡しモデルというのは、ちょっと変な言葉ですけれども、私が使った言葉で、職業人としては非常に未熟である若者を企業が受け取って、はいはいと赤ちゃんから育てていく、企業の中で育てていくというようなこれまでのやり方では日本社会はもうもたない、ちゃんとした職業スキルをつけるということが必要だ、企業を超えた流動ということも確保することが必要だということをずっと言ってまいりました。

 特に、高校について、日本の高校は、国際比較で見ても、先進国の中で非常に普通科が多くて、専門科が少ないという偏った教育をやっていると思います。専門学科が少ない上に、位置づけは低く見られている。

 ということで、専門学科に行ってしまうとやはり非常に進学に苦労しますし、かといって、今、高校を出てすぐ就職してもなかなか将来的に、高校卒という学歴が日本では相対的に低学歴になってしまっておりますので、苦しい面がある。ですから、専門学科の高校生であっても進学したいという気持ちを持っている子は多いわけです。

 それに対して、今まで高校で学んだことをさらに伸ばすことができる、そういう教育機関がつくられて、自分たちが高校で専門学科の生徒として過ごしたこともちゃんと高く評価してもらえるということは非常に望ましいことだと思います。

 ただ一方で、高校で学んだ専門分野から直接に関連するような専門職大学にしか行けないような、非常に狭い、ここしか行けないというような進路の設計になってしまっては、これはむしろ、インセンティブとして、彼らにとってよいことになるかどうかわからないと思います。

 そういうルートはもちろんいいんだけれども、例えばほかの分野を経験するとか転換するといったようなことも含めて柔軟な進路選択が可能であるように、高校段階とそれ以降の中等後教育機関との間の接続を考えていただきたいというふうに考えております。

 以上です。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

永岡委員長 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 三人の参考人の皆様、貴重な御意見、心から感謝申し上げたいと思います。

 まず、本田参考人にお伺いをいたします。

 本田先生の御著書を読ませていただきました。先ほどの趣旨なのかもしれませんが、教育の職業的意義という言葉を先生は使っておられます。この教育の職業的意義といわゆる職業教育というのは、先生の御説明で同じものなのか違うものなのか、御説明いただけたらというふうに思います。

本田参考人 それをお話しし始めると、私、三時間ほどしゃべりそうなので、今どうしようかと思っているんですけれども。

 職業教育という言葉は古くからある言葉でして、しかも、先ほど来申しておりますように、何となくその位置づけが日本では低くなってしまっているところがあります。そこを発想をほぐしたい、あるいは、職業教育というと、それにぴったり対応したような、特定の分野の狭い教育ということが考えられがちなんですけれども、今の変化が速くなっているような職業世界に対応した教育というのは、これを学んだらこの職業がすぐできますとか、一生それで食べていけますとかいったような、そういうものではなくなっている。

 ですから、もっと柔軟で弾力性もはらんではいるけれども、しかし職業世界に意義があるような教育というものを、過去よりも難しくなっていると思いますけれども、教育機関は考える必要があるということを何とか表現したくて、職業教育という古い言葉を改めて使うのは人々に誤った連想を与えかねないので、新しく、職業的意義ということを言っております。

 それは、直接の対応をも含んでおりますけれども、間接的な連関であったりということまで含めて、教育内容、方法ということを考え直す必要があるということを表現しようとしました。

 以上です。

大平委員 ありがとうございます。

 その上で、さらにお伺いします。

 今回提出されている法案は、深く専門の学芸を教授研究し、専門職を担うための実践的かつ応用的な能力を育成、展開する、こういう目標、目的を掲げておりますが、私、法案に至るまでの議論の経過を見ていますと、かなり産業側からの、産業側から見た職業教育という面が強いのではないかというふうに感じております。

 本田参考人は、御著書の中で、働く若者たちの立場からの、先ほど概観の説明がありました、教育の職業的意義について述べておられます。今、雇用の不安定化ですとか非正規雇用の拡大という中で、教育全体を通して、学生、若者に必要な、彼らが求めている職業的意義のある教育とは一体どういうものなのか、また、その観点から、本法案が目指している教育というのをどう考えておられるか、本田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

本田参考人 先ほど申し上げたことを補足しますと、教育の職業的意義には二つの側面があるというふうにずっと考えておりまして、産業界からの要請に適応するような人材、適応力が高いような人材を育成するという面と、今、実のところ労働市場は非常に荒れておりますので、それに対してきちんとノーを言う、違法な処遇などを是正していくことができる抵抗ですね、不当な状況に対してきちんと正当な抵抗を行っていくことができる力をつける。この両輪がないと教育の職業的意義は成り立たないということをずっと申しておりました。

 そういう意味では、今回の専門職大学あるいは短期大学においては、どちらかというと適応力がある人材の育成ということに重きが置かれているということは確かです。

 ただ、個人的に、そこにこれから設置基準などで盛り込んでもらいたいのは、今回のレジュメではちょっと曖昧な書き方になってしまっておりますけれども、今の各産業分野というのは、いい面ばかりでは全くないわけですね。農業分野であれ、観光分野であれ、情報分野であれ、非常にブラックな職場というのはあふれているわけですし、例えば農業分野では、GAP認証もないがゆえに輸出ができないような状況ということがあるわけです。そういう今の悪い状況というものをきちんと是正していくこと、ノーを言っていく、労働条件も含めて、そういう変革力を含めた教育課程というものをつくっていく必要があるのであり、産業界の要請、一方的に都合がいいような人材を育成されてしまっては、これは日本社会をむしろ疲弊させる、衰退させる方向に向かうだけではないかと考えております。

 以上です。

大平委員 ありがとうございます。

 続きまして、小出参考人にお伺いをいたします。

 私大連合会は、先ほど来あります中教審のヒアリングの中で、中教審の中間報告で言われている新たな高等教育機関が行おうとしていることは、既に現在の大学や短期大学でも実施されている、なぜ新たな高等教育機関を大学体系の一部として制度化しなければならないのか、説得力のある説明がなされていないと述べておられます。

 冒頭の意見陳述の中でも、レジュメの二にもかかわるところかというふうに思いますが、改めて、具体的に、現在の私立大学でどのような職業教育が行われているのか教えていただきたいということと、あわせて、大事な論点ですので、若干重複をしますが、永田参考人、本田参考人にも、この法案で行おうとしていることは既存の大学ではできないのかどうか、御意見をいただけたらというふうに思います。

小出参考人 キャリア教育と言われる言葉が昨今盛んでございますが、私立大学の中では、そのような教育をカリキュラムの中に埋め込んで、そして、大学四カ年の学業、人材養成、人間形成、そうしたものから社会へのアクセスをきちっとなそうとしている大学の、これは通常の形であると存じますけれども、これがなされていることは間違いございません。

 私は、西の方の、広島・呉にございますある大学に見学に参りました。そこで展開されておる様子は、西日本の中で唯一、大変高価な機械を導入して、そして、西日本におけるところの放射線技師をそこで養成しているんですと。しからば、その機器に関しては国の支援はございましたか、そんな立派な人材養成をしているんだからというお話を伺いましたが、そこそこの御支援はいただいているお話を聞いておりました。

 そのような医学の進歩にかかわるお話もございましょうし、昨今のAIにかかわる研究活動などについても、同様に、各私立大学の中では、それぞれの分野分野に応じて、多様な分野分野に応じてさまざまな展開をしておられる、それが、私立大学が養成してきている分厚い人材層、分厚い中間層の養成へと直結しているんだ、であるからして、今日、我が国は成熟化し、高度化した社会になっているんだろう、そんな自負を私立大学の連合の立場からは持っておるところであります。

永田参考人 今の観点でございますけれども、一番わかりやすい説明の仕方はわかりませんけれども、現在の大学で目指している人材養成目的というものは、もちろん私学はそれぞれの建学の理念にのっとっているわけであります。その大学が機関として、こういう職業教育を主体としたものに切りかわるということは、ある分野がこれに転換していくということになります。

 我々にとっては、いろいろなことが勉強できる環境を整えることが非常に重要であって、しかも、実践的な職業分野に特化した大学をつくるとすれば、教員等も全てかえていかないとできません。ここでは機関を設置する制度化の法律の議論になっているわけでありますから、我々としては、複線化をそういう形で進めるというのではなくて、覚悟を持った大学が機関としてこういうものをやっていく。

 現在の機関がこれができるか。それは先生を全部かえないとできない。実務家教員にかえて、それから職員も先ほど言われたようにかえて、それは、もともと大学が思っている、目指していた人材養成の一部を捨てていくことになります。

 ですから、ここで明確に、これこれの要件でこういう人を育てましょうということが制度化されることが重要であって、それを取り入れるか入れないかは、あくまでも設置者や社会のニーズであって、その可能性を今回制度化という形でとっていただくというのは、我々にとってはフェアなやり方だと思っております。

本田参考人 分野という面では、今、既存の大学でも非常にさまざまな学科などが創設されておりまして、観光であったり、あるいは冠婚葬祭であったりとか、アニメであるとか、そのような学科も既に存在します。ただ、分野という点では既存の大学でも既に存在するけれども、そこでの実践性が十分かどうかという観点からすると、まだ不十分であるといったような評価がもしかしたらなされてしまうようなケースもあるかもしれません。

 しかし、このように、既存の大学でもかなり取り組みはなされているのであって、そこに新しい今回の専門職大学が出てきたときに、やはりその間のフリクションということが非常に問題になってくるわけです。それをできるだけ避けて、かつ新しい教育機関を開設するとすれば、やはり、既存の大学にほぼないような、例えば手わざの熟練なども非常に重要になってくるような、理美容であるとか、あるいは高度なシェフとかパティシエ、ソムリエといったような、そういう事柄に関しては、既にあるのかもしれませんけれども、まだ既存の大学の中ではほぼない分野かと思いますので、そういう手わざの熟練なども伴いつつ、歴史などについても深い教養や知識を与えるような教育機関として新しく専門職大学ができれば、これは非常に平和的な共存というものは可能だと思います。

 そこで食い合ったりとか、侵入してくるとか、戦ったりというようなことが始まった場合に、両者にとってよい結果をもたらさないのではないかということを大変危惧しております。

大平委員 ありがとうございます。

 私は、今職業教育を行っている機関への支援の充実こそ必要ではないかというふうに考えております。少なくない私立大学が定員割れを起こしている、こういうことも伺っております。その点で、やはり高等教育への国の予算が少ないということが何よりも問題だ、運営費交付金や私学助成の抜本的増加が不可欠だというふうに思います。

 小出参考人に改めてお伺いしたいと思います。

 今度の専門職大学を制度化することとの関係においてということも含めて、既存の大学も含めた財政支援のあり方やその額などについてどのようにお考えでしょうか、お伺いいたしたいと思います。

小出参考人 ありがとうございます。

 先ほど来、このお話については、新しい大学の種別をつくられるときには別途の予算措置をもって支援をしていただきたいというお話を申し上げました。これは一貫してお願いをしておる話でございます。

 翻って、現在の私ども、最大の懸念を持っておりまする話は、私立大学の基盤的な経費と言われる経常費補助金につきましては、二十七年度決算の数値によりますというと、総経常経費の九・九%という状況下に置かれてございます。当初、昭和五十年の私学振興助成法で目標とされていたあの当時のことを思い出しますというと、二分の一をしっかりと確保した上で私学への役割、期待を申し上げていくというお話だったと存じます。ところが、現実はさような状況下にある。

 これは、今議員御指摘のとおり、この国の高等教育への公財政支出がすこぶる貧弱である、かてて加えて、国立大学と私立大学との間にあるファンディング格差というものが大きな問題になっているんだということを、私ども、強く思っているところであります。

 数値で申し上げるならば、学生一人当たりのこの国のファンディング格差の問題、国立大学生一人当たりには二百十七万円、私立大学生一人当たりには十七万円、そこに十三倍の格差が存在している。ともどもに大学を卒業したならば、この国を支え、この国の発展を力強く進めていく次世代のホープ、リーダーでございますので、この点については、格差是正の観点、そしてその前提となるところには、高等教育費を家計負担から脱皮いたしながら大いに支援をしていくことが、日本社会が今後大いに発展していく上の原動力になる環境整備であろう、このように思っておるところでございます。

 ありがとうございました。

大平委員 ありがとうございました。終わります。

永岡委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 お三人の参考人の皆様には、貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 さて、いわゆる専門職教育というところの観点でいいますと、私自身が受けた大学教育というのは、一種、クローズというか、どちらかというと専門職という形だとは思うんですけれども、実は私、神戸大学の医学部医学科卒業で医師免許を持っているんですけれども、そのときを思うに、五回生までずっと医療をやっていくわけです。二年間、一般教養で全く医学と関係ないことをやって、三回生にいきなり解剖実習が始まりまして、臨床が四回生ぐらいから基礎医学とハイブリッドで始まって、五回生でぴたっと終わりまして、六回生からポリクリといいます実習が始まるわけです。

 私、神戸大学医学部を卒業したときに、自分が行きたい科がなかったので、大阪市立大学に移りました。大阪市立大学に入局したわけですけれども、そこから二年間、研修を受けました。大学病院というのは、医師法の関係上というよりも大学病院の決まりがあって、看護師さんが採血をしたり点滴をしてはいけないということでして、我々研修医がやりました。ところが、民間病院に行きますと、看護師さんが採血も点滴もするわけです。つまり、卒業してからそういった医者としての実務のスキル、基本的なスキルにそういったところで差ができるわけです。

 今、医学部の教育も変わってきて、五回生から大学病院で研修して、六回生から外の病院で研修をする。にもかかわらず、スーパーローテートという仕組みができまして、つまり、昔のインターン制度が復活しまして、二年間、全ての科を回ってもう一回実習し直すんです。では、大学の実習は一体何なんだと常々思っているきょうこのごろなんですけれども。

 大学の教育で私自身が受けたのは、各科、我々医者は、内科も外科も産婦人科も小児科も整形外科も脳外科も精神科も、全ての知識を得なければいけないんですけれども、各大学の教授が自分の研究分野をテストに出して、卒業する間際まで我々の大学ではそういった研究分野に対する知識を得る、そういった場だと思って、全く実践的なところというのは、わずか一年間で全ての科を回るというのはどうなんだと。そういう意味では、職業教育というか実践的な教育というのは医学の世界でも本当にアンバランスかなと思っていたんですね。社会に出て、いろいろな職業の方がおられますから、私の狭い世界の中でも、そういった職業教育というのは本当に大事ではないかなと思います。

 そういったことを鑑みて、まずは本田参考人にお聞きしたいんです。

 本田参考人が先ほどからの質疑の中で三時間は必要だとおっしゃっていたので、十分お話しいただきたいと思うんですけれども、文科省が我々にこの法案の説明をするときに、職業教育がやはり普通教育よりも一段低く見られている社会風潮をこの法律で打破したいといって説明に来たわけなんですけれども、率直なところ、本当にこの法律で打破できるとお考えでしょうか。

本田参考人 これだけで打破できるとは思っておりません。しかし、一つの切り口というか切れ目を入れていただける一要素にはなるかもしれないというふうに考えています、ぐらいです。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当にいろいろな職業があると思うんですね。

 これもまた文科省からの最初の法案の説明のときにあった話なんですけれども、高校専門学科からの高等教育の進学先を想定して、この法案では、主に専修学校専門課程、専門学校を念頭に入れていると思うんですけれども、ただ、進学先として専門学校を中心としているので、それが専門職大学という名前に変わってそういった位置づけになっても、本当に、同じ人間が服だけをかえたみたいな感じで、今までとはちょっと違いが私自身は感じられないような気がします。

 そういった観点で、要は、中身はこれから検討して変わっていくであろうというお話はいただいているんですけれども、本当にうまいこといくのかどうか。そういったことも含めて、専門学校中心という形では、専門職大学という位置づけになっても、今までとの違いが感じられないと思うんですけれども、この点を三人の参考人の皆さんにお聞きしたいと思うんです。

 永田参考人からお願いいたします。

永田参考人 専門学校とどう違うかというような部分かと思います。

 それよりも問題は、今、現在の設置基準の中で、大学に、先ほど詳細が出ていましたが、三百時間、四百時間のインターンシップや、あるいは実務家教員で研究力を持った人を何%以上というのは、当然ながらとれません。ですから制度化が必要なわけであって、我々に任せておくというか大学側に任せれば、自分たちにとっては、ある自分たちの基準の中での実践教育をしようとします。しかし、実践教育というのは一体何なのか、それは何が必要なのかというその基準にのっとって新しい機関をつくらないと、それは委員が御心配の段にあるように、何も変わらない可能性があります。

 ですから、まず、委員の中から既存の大学のあり方を消し去っていただいて、一番実践教育に向く高等教育とは何かという形でつくるとしたらどうなるかという議論をこれから中央教育審議会でもしますし、もちろんこの国会の中でも進めていただきたいと思います。

 ちょっと誤解を招いてしまうかもしれませんが、先ほど言った工業高校、農業高校の人たちも社会に出る、世界に出ていくわけでありまして、その世界基準の中に付加価値を、つまり本当の学習歴というものを意味する学歴を持って出ていってほしいというふうに考えているわけであります。

 したがって、本当に個々の大学が、ある一定の基準の中で、特色を持ったカリキュラムやインターンシップを考えるべきであるというふうに考えています。

小出参考人 専修学校、専門学校のレベルが、今たしか、文部科学大臣のもとに登録をいたすというと、実践職業養成課程とかいいましたかな、そういうような課程認定の仕組みがスタートしておるはずでございまして、そのあたりのところの現状を私はよろしく見ていただいた上で、そうして、今度つくられる大学類型の中の専門職大学については、それとこれと、やはり基本は学位の、学位授与にかかわる案件になっていくと思うけれども、そのあたりのところの比較考察をしながら、よろしい形のものをつくり上げていくことが大事であろうと思っております。

 それから、関連しての話になりますが、やはりロースクールも、鳴り物入りで箱物がつくられてきたわけだが、その後の実態を考えてみると、必ずしもよろしい、想定した形にはなっていなかった。

 これからの社会をどう見るのか、より慎重な考察の上に、この専門職業大学も、考え、組み立てられるべきだろう、こう思っているところであります。よろしくお願いをいたします。

本田参考人 専門、専修学校等が専門職大学に変わっても大して変化はないのではないかという御意見がありましたけれども、しかし、結構変化はあると思います。

 従来の学位と同等の学位が授けられる。専門職という名前はつくけれども、同じディグニティーを持つ教育機関という位置づけを与えられるということは、これまでいわゆる職業教育にかかわってきた者たちからすれば、ある種悲願のようなものでもありましたし、あるいは、保護者や学生たちの立場に立ちましても、自分がこんなに一生懸命学んでいることをちゃんと認識してもらえるという点では、それほど私は価値がないものではないと思っています。結構それなりの意味はあると思っています。

 もう一つ申し上げますと、今、先進諸国を中心として、百五十を超える国々で、ナショナル・クオリフィケーション・フレームワーク、NQFというものが既につくられています。このNQFというのは、アカデミックな学問分野であれ、職業的な学問分野であれ、同等のものとして数段階に位置づけていく。これこれこういう基準を満たしたら、あなたは段階五ですね、あなたは段階六ですね、同じ価値を持つ教育訓練を受けた人ですねということをちゃんとクオリファイして労働市場に出していくという試みがなされています。

 もうそれはどんどん動いているんですけれども、日本は非常にガラパゴス的に、そういう一般のアカデミックな教育と職業教育とを位置づけていこうとするような動きから取り残されています。そういう点でも、今回の新しい教育機関の設置そのものは私は評価できる面があるということは、最初の意見陳述でも申し上げました。あとは、その内容をどう実質化していくということの問題です。

 これは、今後の設置基準の具体化を待つ必要がありますが、それとともに、従来の大学の問題点ということは放置してはならないということも、もうちょっと申し上げますと、先ほど医学のことを言及されました。残念ながら、医学部は今回の専門職大学の対象にはなっていないので、そういう問題ある状況というのは放置されてしまうわけなんですけれども、医学だけでなくて、今の大学の中では、それぞれの分野分野でそれなりの、小出参考人がおっしゃったようないろいろな試みがなされていたり、いなかったりします。どこも、それぞれの大学や学科や学問分野の枠の中でいろいろなことをやったり、やらなかったり、サボったり、頑張ったりということが非常にむらむらに起きています。

 その中で、一体どのように教育内容や方法を変えていけば、これが真に学生の将来にとって、卒業後の将来にとってよいことなのかというエビデンスに基づいた吟味ということが非常に欠けています。それがないままに、例えば一昨年に話題になった、人文・社会科学は社会的要請に応えていないので云々といったような議論が沸き上がってしまうわけですね。

 要請に応えているのかいないのか、応えさせるためには一体何をどう変えていけばいいのかということについての大きなデータに基づいた検討がないままに、水かけ論のようなことが起きている。これは非常に不幸なことであり、私は、既存の大学、あるいは新しい専門職大学も含めて、ちゃんとデータをとって、実際に有益なのかそうではないのかということの吟味をずっと継続的にやるということが不可欠だと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 やはり私自身も、理科系で研究をやるときに、そういった定量的なエビデンスというのは非常に大事にしていますので、NQFも含めて、非常に参考になったと思います。

 時間になりましたので、最後に一問だけ。

 社会人で働いている人が、みずから、もう一回、企業などの後押しで、専門職を身につけるためにまた学業に戻ることも想定されるわけなんですけれども、その専門職大学などがそういった社会人の学生を受け入れやすい仕組みづくりというところで、実際実務をやられておられます小出参考人に、最後、お聞きしたいと思うんですけれども。

小出参考人 社会人の受け入れの形でございましょうか。

 これまで、日本の大学、特に私立大学の場合には、十八歳人口、十八歳の若者を受け入れて、そしてそれを一定程度、四年間の中で育てて社会に送り出していく、こういう形であったけれども、社会人の受け入れについても、これは先ほど来教員養成のお話があったりなどしておりましたけれども、これから確実にこの世界はふえていく、この分野はふえていくだろうと思います。

 ただ、これは教育の制度だけの問題ではなくて、社会全体が、例えば産業界は横断的な労働市場が形成されているかどうか、そのあたりのところ等、社会の構造全体にかかわって、単に教育界だけにこれを求められてもできるものではない。私学の現場の中でもそういうような傾向がありますが、よほど熱心な方が、社会人として大学へ戻って学び直しをしてくるという傾向ではないかと思います。

 全体としての改革、検討、システムづくりをぜひ御期待申し上げたいものだ、こういうふうに思ってございます。

 以上です。

伊東(信)委員 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

永岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 三人の参考人の方、貴重な御意見、まことにありがとうございます。

 私が最後の質問者になりますので、あと十五分間、おつき合いいただければと思います。

 最初に、永田参考人にお伺いをしたいと思います。

 三人の参考人の方のお話を聞いておりますと、専門職業人材の育成そのものについては、積極的に充実させていかなければいけないということについては、恐らく異論は余りないんだろうと思います。ただ、それがなぜ、専門職大学あるいは短期大学という形でやらなければいけないのかということがどうしてもやはり、私も、聞いておりましても、なかなか判然としないといいますか、ということがございます。

 これはそもそも産業分野からこうした要請があったのかなというふうに思いましたら、先ほど富田委員からも少し紹介がありましたけれども、第十四回の特別部会の中で、日本経団連の方から、現時点でどのような職業分野で新たな高等教育機関へのニーズがあるのかは不明確、あと、一番いい形は、既存の大学で今の人材需要に対応した教育ができれば一番いいというようなお話も産業界の方からは出ていたというふうにも聞いております。まあ、最終的には産業界も理解をした上でということではありますけれども。

 ただ、私、非常に心配をいたしますのは、先ほど本田参考人が意見陳述の際に、卒業生の採用と処遇のあり方等々についてきちんとやっていかないととんでもないことになるという御指摘もありました。

 そういう面でいいますと、この専門職大学ができた後、例えば四年間で卒業していったその卒業生がどういう形で就職をしていくのか。それは当然、産業界が受け入れていくわけですから、この議論を聞いていると、まあ、やりたいんだったらやればという程度にしか聞こえないんですけれども、そのあたり、座長ですか、長として特別部会もやられた永田参考人、産業界の受けとめ、本当のところの受けとめというのはどういうふうになっているのか、お聞かせください。

永田参考人 お答えをいたします。

 産業界の方も千差万別の意見があるのは確かだと思います。もちろん、産業界の本音としては産業界で役立つ人材が欲しい、これはもう当たり前のことだと思います。一方、経団連から出ていたように、我々として単なる即戦力は要らない、これもまた事実だと思います。

 問題は、ですから、この実践的な職業教育を行う大学が、育つものは一体何者かということになるわけですが、何度も申し上げておりますけれども、産業界、今ある産業に資する人が必要なのではなくて、これから我々が、アカデミアでは暗黒物質をやっていてもいいけれども、実社会の中で新しい産業を創出する基盤になるような人になっていってほしいわけです。その本当のサイエンティフィックな基盤というのは、もちろんアカデミックな研究や教育が必要であります。しかし、それをもって産業の現場に行ってそれを使える人というのは、一体誰がつくるのかということになります。

 そういう意味合いで、もちろん、現存の大学の中でもそういう意識を持った大学が、一定の自分の満足の範囲で職業教育と称してすることはできます。しかし、ここに制度化されるということは、一定の基準がこれからできていくわけでありますから、その基準を満たすもの、では本当に現在あるかというと、インターンシップ数百時間、実務者能力を持った教員何%以上、それはないと思います。それが必要であるという認識のもとに外形を今決めていますけれども、詳しい、詳細な設置基準というのはこれから考えるべきだというふうに考えています。

吉川(元)委員 詳細な設置基準がなかなかまだ姿が見えないという中で、いろいろな不安もあるかというふうに思いますし、小津安二郎監督の映画じゃないですけれども、職業大学は出たけれど、そういう事態にならないように私はしなければいけないというふうにも思っております。

 次に、財政措置について伺います。

 小出参考人からは、もう既に、他の委員の質疑の中でも、今の私大助成等々とは別枠でというお話を伺っておりますが、これに関して、永田参考人、本田参考人、この財政措置についてはどのように考えておられるのか。あるいは、こういう形がいいのではないかということがあれば、教えていただければと思います。

永田参考人 現在の法整備の中身を見ていただくと、項目の次に第二項として、この新しい大学を考える項目が法制上はできているかと思います。だとすれば、やはり、既存の大学とは違う範疇の財政支援が私は必要だと思います。

 極論をしてしまえば、高等教育も無償化していただければ、それにこしたことはありません。しかし、我が国の財政状況を考えたときに、それはひとえに、わがままであろうとは思います。しかし、精神は、この国の人々がそれなりに興味の湧く高等教育を経て、職業人としても、国民としても、あるいは市民としても、十分に高いレベルに育っていくということをぜひとも実現していただきたい。この新しい制度でもし大学ができるのであれば、ぜひとも財政措置については考えていただきたい、そう考えております。

本田参考人 日本は、高等教育に係る費用に占める公的な負担の割合というのが先進国の中で見ても異常に低い、よくこれで成り立っているなと思われるぐらい異常に低い国です。それをさらに削って新しい機関に振り分けるようなことになれば、これは本当に、むしろやらない方がいいということですから、別途の財政措置というのが絶対に必要です。

 以上です。

吉川(元)委員 私も全く同じ意見であります。

 次に、小出参考人に伺いたいというふうに思います。

 今回の法改正で、専門職大学は、専門性が求められる職業に関連する事業を行う者等の協力を得て教育課程を編成、実施し、及び教員の資質向上を図る旨の規定が条文化をされております。

 中教審の答申を見ますと、もっと過激といいますか、もっと強烈でありまして、「新たな高等教育機関は、産業界等のニーズに即応した教育を行う機関であり、教育課程の編成からその実施、評価に至るまでを産業界等の参画の下に行い、」こういう文言が入っております。

 私、非常にえっというふうに疑問に感じるのは、教育基本法七条二項では、「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。」というふうにされているわけで、わけても、教育課程の編成というのは大学の自主性、自律性を体現する重要な項目だというふうに私は思っております。もちろん、第三者の意見を聞くということは当然あってしかるべきことだろうというふうに思いますが、実際にどのように教育課程を編成していくかについては、まさに自主的、自律的に編成していくというのが教育基本法の中の大学ということの条件だろうというふうに思うんです。

 そうなった場合に、確かに今回の法案ではかなり丸めてはいるんですけれども、中教審答申のような、こういう編成、実施、評価まで参画させるというふうになると、教育基本法の七条との関係は一体どうなるのかというのが非常に疑問に感じるんですけれども、このあたり、どのようにお考えでしょうか。

小出参考人 御懸念のお話は当然出てくるお話で、学問の自由、大学の自治との関連など、全く新しい発想で、そのあたりがどう説明されていくのか、私どもも関心を払っている問題でございます。

 産業界の御要請というもの、社会の要請、時代の要請、いろいろなものがあると思うのでありますが、この要請に関して大学がどう応えていくかというのは、あくまでも大学の自主性の範囲の中において考慮されるべきものであろう。これにも新しい何か仕組みが必要のような感じがいたします。

 古い頭で物を見ているから、私、ちょっと、今の議員御指摘の問題点に関して御同意の思いをすると同時に、どのようなイメージをこれからつくり上げていくのか、関心を持っているところであります。

 そんなところで御回答にさせてください。

吉川(元)委員 次に、本田参考人に少し伺いたいと思います。

 本田参考人もキャリア教育についても研究をされているというふうにお聞きをしております。今回の専門職大学の意義の一つとして、社会人が学びやすい仕組みというのが挙げられております。そのために、課程を前期、後期に分け、あるいは、どのように行うかはまだちょっと判然とはしないんですが、実務経験を勘案して、一定期間の修業年限を換算するスキームなんかも組み込まれているようであります。

 ただし、社会人の学び直しといった場合に、大学の教育のあり方全体の問題であって、今回設置をしようとしている職業専門大学、これができれば、私は、解決をするようなものではないんじゃないかと。社会人が必要とする教育内容が今度つくられる新しい大学種とマッチをしていなければ、どんなに履修環境がいいからといっても専門職大学を選択するわけではありませんし、それから、やはり働きながら学ぶ環境、言ってみれば就業条件、労働条件が変わっていかないと、幾らそういうものができたとしても、それはなかなか学び直しというふうになっていかないんじゃないか。

 そういう点で、社会人の高等教育機関での学び直しに何が今不足をしていて、何が必要なのか、あるいは、今回の専門職大学で想定されるスキーム、これで十分それに対応できるものになっているのか。もし御意見があれば、いただきたいと思います。

本田参考人 社会人の学び直しは、専門職大学だけの問題ではなく、従来の大学にとっても重要だということは、もうおっしゃるとおりです。

 学び直しのために必要なのは、例えば、夜間の授業であるとかパートタイムで修学できる制度であるとか教育機関側の制度の拡充整備ということももっと必要ですし、できる事柄はあると思いますので、それは従来の大学、新しい専門職大学の両者に関して進めるべきだと思いますが、おっしゃいましたとおり、就労環境、働く職場の問題というのは非常に大きいことであります。

 私はかつて社会人大学生、大学院生についての調査もやったことがありますけれども、彼らは何を一番苦しんでいるかというと、学んだ結果、成果というものが職場においてほぼ一切評価されない。ただ遊んでいるにすぎない、道楽だというような形で、そこで幾ら仕事に関連があるような、例えば経営学とかいうことを学んできても、それが全く認めてもらえない。

 つまり、これは、日本企業においては、大学であれ、ほかの教育機関であれ、これまで学んできたものをちゃんと尊重して、それに合致した仕事につけたり、賃金面で優遇したりするような、そういう風土が全般に欠けています、非常にガラパゴス的なことなんですけれども。それで、フリーハンドで、やりたいように従業員を扱うというようなやり方を続けている限り、どんな教育機関をつくろうと、それはなかったことにされてしまうんです、今のままだと。そこを私は一番危惧しています。

吉川(元)委員 ありがとうございます。的確なお話だというふうに思いますし、私も非常に同感をいたします。

 最後に、小出参考人に伺いたいと思います。

 先ほど、少しロースクールのお話がございました。私も同様の、法科大学院、華々しく登場したんですけれども、今、大変混乱を来しております。最後に被害というか悪い影響を受けるのは、これは大学もそうですけれども、学生が一番被害をこうむるわけで、その観点からして、今回の専門職大学、短期大学、将来の青写真あるいは見通しは果たして鮮明になっているというふうに言えるのかどうなのか。この点についての御意見、御感想があれば、出していただければと思います。

小出参考人 ロースクールの問題、確かに、私も、その議論、注目をしておりました。そのときに心配をした話は、これから日本社会がアメリカのような訴訟社会になっていってしまうのか、そのためのロースクールなのか、そんな心配をした日のことを今思い出しておるのであります。

 しかし、現実問題としましては、そのような社会の創成にかかわる現実よりも先に、需要と供給との関係で、ロースクールの問題は、ある意味、一頓挫というか方向転換を余儀なくされてきているのではないか、そんなように総括をして見ておるところであります。御努力をいただかれた先生方、大変な御様子も承知をする中では、そのような思いを持っておるのでございます。

 さて、今回の専門職業大学が社会との接点の中で現実的にどのような受けとめ方をされていくのか。それを修了いたした段階で、社会とアクセスするときに、どのような生涯設計、キャリア設計に結びついていくのか。

 このあたりのところは、実験的にという言葉は使いたくないんだが、先ほど来から申し上げているように、小さく産んで大きく育てるような形で、これはこの国の誇るべき制度としてお考えいただくような方向というのが一番およろしいのではないかといった感じを持ってございます。

 回答にならぬかもしれぬが、お許しをいただきたいと思います。

吉川(元)委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、終わります。

永岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございます。(拍手)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

永岡委員長 速記を起こしてください。

    ―――――――――――――

永岡委員長 引き続き、内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省高等教育局長常盤豊君及び高等教育局私学部長村田善則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青山周平君。

青山委員 自由民主党の青山周平です。

 本日は、先ほど参考人質疑、参考人の意見陳述もございましたが、学校教育法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 このたびの法改正に向けては、中教審初め教育再生実行会議など、さまざまな会議で議論がなされてまいりました。自民党においても、それに並行しながら、プロジェクトチームを立ち上げて活発な議論をしてきたところであります。

 よく言われることでありますが、新たな産業が次々と生まれて、今ある仕事が多く新しい職業に変わっていく。産業も高度化、複雑化して、職業人材に求められる能力も高度化、多様化する。そんな産業の変化のスピードが増す時代の中で、職業人のキャリアアップやキャリア変更が求められている。そのような状況の中で、今回、高等教育にも変革が求められ、法改正に至ったと認識をいたしております。

 私は、この法改正によって新たに専門職大学、短期大学が設置されることによって、高度な専門性と実践力を備えた人材を育成すること、これによって、今、日本で叫ばれている、例えば生産性を向上するだとか、日本の成長を支える人材をつくる、職業人材をつくっていく原動力となると思っております。大いに期待をしているところであります。

 まず初めに、この専門職大学の必要性について、文科省にお尋ねをしたいと思います。

    〔委員長退席、山本(と)委員長代理着席〕

松野国務大臣 青山先生にお答えをいたします。

 産業構造が急激に変化する中、それぞれの職業分野で業務の改善、革新や新規分野の開拓が求められており、より高度な実践力と新たな物やサービスをつくり出す創造力を有する人材の育成が喫緊の課題であることは、先生の御指摘のとおりであるかと思います。

 専門職大学は、大学制度の中に実践的な職業教育に重点を置いた仕組みとして制度化するものであり、産業界との密接な連携により、専門職業人材の養成、強化を図るとともに、大学への進学を希望する者にとっても選択肢が広がるものであると考えております。

青山委員 ありがとうございます。

 非常に重要で、これからの日本の社会に必要な制度となっていかなきゃいけない、大臣の決意をお聞かせいただきました。

 次に、想定される分野というところで質問させていただきたいと思うんですが、教育再生実行会議のみならず、平成二十八年六月に閣議決定された日本再興戦略二〇一六の中には、新たな有望成長市場の創出、ローカルアベノミクスの深化と題して、観光立国の実現のために新たに講ずべき具体的施策として、産業界のニーズを踏まえた観光経営人材の育成強化とあったり、また、イノベーション、ベンチャー創出力の強化、チャレンジ精神にあふれる人材の創出として、実践的な職業教育を行う新たな高等機関の創設が求められているところであります。

 法改正による制度設計に当たって、具体的にどのような分野においてこの専門職大学を設置することを想定しているのか、お伺いをいたします。

義家副大臣 青山委員におかれましては、実際に幼児教育の現場で子供たちと対峙しながら、変化の激しいこの時代の中で、我々が果たさなければならない強い使命、責任感をいつも持たれ、御指導いただいていることに感謝をいたします。

 この専門職大学院は、制度上といたしましては、対象の職業分野は限定しておりません。ただし、基本的な制度設計として、産業界との密接な連携を必須の要件としているものであることから、おのずから実践的かつ創造的な人材へのニーズの拡大が見込まれ、その分野の人材の育成が強く求められる、いわゆる成長分野が中心になると想定しております。

 具体的には、例えば観光、食と農業、ITコンテンツ等の分野が考えられます。

青山委員 ありがとうございます。

 限定をされないという前提の中で、成長する分野、また目まぐるしく変化していく分野、そこを想定しているということで承りました。

 この制度、まだ設置基準などが明らかになっていない中でありますが、イメージとして、一つ、農林水産業、さっき食と農業というお話がありましたが、農林水産業・地域の活力創造プランの中に、これは平成二十八年十一月二十九日に地域の活力創造本部から出されているものでありますが、「農業大学校の実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関への転換、農業高校と農業大学校等との連携促進等による農業教育の充実・強化」ということが書かれておりますが、具体的に、農業大学校で例えてみると、その農業大学校が専門職大学になったときに、今ある既存のものとどのような違いがあって、そしてまた競争力を高めることができるのか、具体的にお伺いできればと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 専門職大学におきましては、長期の企業内実習などを含め、教育課程の開発等を産業界と連携して行いまして、より実践的な教育を行う仕組みでございます。

 また一方で、こうした専門分野での即戦力としての実践的な教育に加えまして、基礎教育や関連分野での教育を通じ、新たな物やサービスをつくり出せる創造力を有する人材育成を目的とするというような特徴を有しておりまして、高等教育機関としての新たな選択肢を提供するということでございます。

 今御指摘をいただきました農業分野でございますけれども、専門学校では、例えば多くの県で、これも今御指摘がございましたが、農業大学校が専門学校としての認可も受け、農業後継者となる人材等に必要な農業生産技術等の教育を行っております。また他方で、大学、短期大学でも、例えば農学部でも、生物関係、環境資源など多様な専門分野を擁しております。ただ、ここの大学、短期大学においては、やはり主に、卒業生は、農業後継者に限らず、幅広い分野でのさまざまな業務に従事をしているという実態がございます。

 こういう中で、専門職大学において、農業分野について申しますと、農業生産者としてすぐれた産品を生産するための技術等に加えまして、第二次産業でもある加工の分野、あるいは第三次産業である流通に関する分野の知識なども含めて関連分野の教育を総合的に行うことで、例えば地域の農業の第六次産業化を担えるような人材を養成するということが期待されているということでございます。

青山委員 ありがとうございます。

 アカデミックに農業を勉強する人たち、また実践的に勉強する人たち、それをマッチングしながら、新たに産業を創出できるような農業者を育てるということだと思います。

 先ほど、参考人の意見陳述の中でもずっと語られてきたんですが、結局、この制度、法律が改正された上で、設置基準がどうなるかということが何よりも重要であるということを先ほど来お話がされてきたわけであります。自民党のPTの中でも、この設置基準に関しては多くの議論がありました。それについて、設置基準についてお伺いしたいと思います。

 どのような設置基準になるかによって、先ほどちょっと質問でもありましたが、本当に、設置基準が甘くなれば、質が確保できるのかどうかというのがわからない。でも、高くし過ぎれば、入り込んでこられない。これは非常に難しいところだと思います。

 それとともに、本法案が成立した後、これは施行が平成三十一年四月ということになっております。大学の設置認可のスケジュールと見合わせると、ことしの秋には申請が始まってくると思うんですね。今もう四月でありますので、すごくスピード感を持って、この設置基準をしっかりとしたものをつくり上げ、そして募集をかけなければいけない、そんなふうに思っております。

 そのような状況の中で、文科省として、専門職大学の設置基準をどんな考えに基づいて今進められているのか、お伺いをいたします。

義家副大臣 お答えいたします。

 専門職大学院の設置基準につきましては、まず前提として、国際通用性を求められる大学の枠組みの中で位置づけられる機関としてふさわしい教育研究水準を担保する必要がございます。同時に、専門職大学院は、産業界と密接に連携した実践的職業教育に重点を置く、社会人の受け入れも主要な機能とするなどの特性を有しており、こうした特性を踏まえた設置基準とすることも求められております。

 教育課程、教員、施設設備等に関する基準の具体的内容については、このような考え方のもとで、これまでの中央教育審議会等を踏まえつつ、またさまざまな議論を踏まえつつ、スピード感を持って適切な内容を定めることとしたいと考えております。

青山委員 どういうふうになっているかというのは基準ができるまで言えないということですので、何しろ、先ほどのお話も通しながら、質をしっかりと確保しながら、日本の成長に資する専門職大学ができるような、そんな設置基準にしながら、また、しかし成長産業の分野がしっかりと入り込めるような、そんな基準を期待しております。よろしくお願いいたします。

 先ほどのお話の中で、産業界との密接な関係、これがないとできない、非常に重要だというお話をいただきましたが、先ほど来、出口のことも言われております。大学を卒業したけれども受け手がいないというんじゃ意味がない。社会から必要とされるということが何よりも重要だと思います。

 それだけに、関係業界、関係府省、また地域、連携は非常に重要だというふうに思っております。高度な実践力と新たな物づくり、物やサービスをつくり出すことのできる創造力を有する人材を育成するには、教育課程と実務家教員などについて、産業界と連携協力が必要不可欠であります。どのようにこの連携を進めていくのか、お伺いをいたします。

    〔山本(と)委員長代理退席、委員長着席〕

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 専門職大学等が質の高い教育を行うためには、これを担う教員が非常に重要だと考えてございます。とりわけ、企業等の現場の生きた知識、技能等を指導できる教員や、理論と実践の橋渡しを担う教員を確保していく必要があるということでございます。

 この点について、中央教育審議会答申でも、専任の実務家教員や研究能力をあわせ持つ実務家教員を一定数以上配置することが必要であるとしているところでございます。

 文部科学省といたしましては、現在、各省の連携での人材育成に関する検討の場もございますので、関係の業界団体や関係省庁等に対し、実務家教員の確保を含め、専門職大学への連携協力を積極的に働きかけてまいりたいというふうに考えてございます。

青山委員 これは本当にしっかりと連携をとりながら、産業界に必要とされる、日本にとって必要な人材をつくらなきゃいけないという前提では、確実に連携を図りながら、意見をしっかり受けながらこの制度をつくっていただきたい、認可基準もつくっていただきたい、そんなふうに思っております。

 関連でありますが、企業内で受け入れる時間が二年間で三百時間、四年間で六百時間ということで、大変多くの時間を企業の中で学生が学ぶということが答申で出されているわけでありますが、受けていただける企業を整えるという体制も非常に重要になってくると思います。

 それと、企業の中のことでありますが、例えばインターンシップのように、見学をするだとか、座学で学ぶだとか、そういったことに関しては報酬は生じてこないと思うんですが、三百時間、六百時間、企業内で実習するときには、当然、実務の中で、例えばラインに入って仕事をするだとか、仕事をしながらOJTで学ぶだとか、そういうことが出てくると思います。そういったときには、当然、実習中の学生に報酬が生じてくると思います。そんなときに、報酬や労働基準法の適用のあり方についてどのような対応をしていくのか、お教えいただきたいと思います。

常盤政府参考人 専門職大学では、長期の企業内実習を必修とするということを予定しております。

 企業内実習の実施に当たりまして、まず第一点、労働関係法令の適用でございますけれども、この点につきましては、その実施方法等、個々の実態に即して、実習先企業と学生との間に使用従属関係が認められるか否かによって判断をされるというふうに承知をしてございます。

 また、有給でのインターンシップを行う場合の報酬でございますけれども、この点につきましては、報酬の額、費用負担等について、受け入れ先企業等と大学との間で事前に協議をして決定するということとなるというふうに承知をしております。

 これらの点を含めまして、企業内実習が適切に実施されるよう、厚生労働省とも連携をしながら、各大学等に対し、必要な情報提供や指導等を行ってまいりたいと考えております。

青山委員 この点は本当に、学生を守っていくとかそういう部分でも重要になると思いますので、ぜひしっかりとした通知をしながら、これは認可のときに、契約だとかそういったところがしっかりなされていないといけないというふうに思いますので、しっかり進めていただきたいと思っております。

 少し変わりまして、新たな専門職大学の制度が有効に活用されるためには、産業界だけでなく、入ってくる高校生、保護者、また進路指導に当たる教員、学校の関係者も、この専門職大学というものの意義を周知して理解を深めていかなきゃいけないというふうに思っております。

 先ほどもお話ししましたが、三十一年度から新しい専門職大学、短期大学ができるということは、もう来年から手を挙げる学生が出てくるということになるわけでありますので、結構時間がないと思うんです。そんな限られた時間の中で、文科省として関係者への周知をどのように図っていくのか、お伺いをいたします。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでも、専門職大学等に係る検討の過程におきまして、教育や産業界等の関係団体等への説明や意見交換、あるいは文部科学省の広報誌も含めまして教育関係者向けの刊行物等への寄稿、各シンポジウム等を通じての情報発信を行ってきたところでございます。

 専門職大学等は、高校生にとっても、進路の新たな選択肢となります。したがいまして、制度化をお認めいただきましたら、高校生や保護者、進路指導に当たる教員、教育委員会関係者等に対し、その特徴等を十分周知し、理解を深める必要がございます。このため、より具体的でわかりやすい資料等によりまして、メディアなども活用しながら、丁寧な説明、情報発信に努めていきたいと考えております。

青山委員 ありがとうございます。

 まず、こういう制度ができているということ、要するに、職業人材の課程の中で学位の認定が取れる大学の制度だということをしっかりと周知した上で、それぞれ特色ある学校ができてくるわけでありますので、そういったところにしっかりとアクセスできるような、そんな体制をこの一年間ぐらいで整えて、そしてスタートしていかなければ、スタートでつまずいてしまってはいけないというふうに思いますので、しっかりとした周知をお願いしたいというふうに思っております。

 次に、専門職大学校設置による地方創生の効果についてお伺いをいたします。

 教育再生実行会議の「「学び続ける」社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について(第六次提言)」がまとめられておりますが、「教育がエンジンとなって「地方創生」を」と題して、新たな高等教育機関が地域の職業人材育成に大きな効果をもたらすことが期待をされております。

 少子化の進行により、今後、生産年齢人口は減少していきます。またさらに、高校卒業後、多くの学生が東京ですとか大都市にある高等教育機関に就学する、それで地方の人が減っていく、こんなこともずっと言われてきたわけであります。

 そこで、この専門職大学を設置することによってどのように地方創生に資することができるのか、文部科学省としてお考えがあれば、教えていただきたいと思います。

義家副大臣 先ほど答弁の中で、専門職大学のことを専門職大学院というふうに表現してしまいました。訂正いたします。

 この専門職大学は、産業界や地元企業等と密接に連携して実践的な職業教育を行うところに特徴がございまして、地域産業の活性化や地域で活躍する人材の育成など、地方創生にも大きく資するものと考えております。

 平成二十七年十二月に閣議決定された、まち・ひと・しごと創生総合戦略においても、地域を担う専門職業人材育成の観点から、新たな教育機関の制度化について所要の措置を講ずることが盛り込まれたところでございます。

 その後、昨年五月、中央教育審議会答申において、専門職大学の制度設計として、教育課程の編成、実施や企業内実習について地域と連携して行うことなど、提言いただきました。

 このような特色を生かすことにより、専門職大学が地域の活性化に貢献することを期待しております。

青山委員 ありがとうございます。

 ぜひ、地域を支えるというところで、生まれた子供たちがその地域で、遠くに行かなくてもそこでしっかりと学んで仕事までついていく、これによって人口が流出していかない、そんなところにも大きな期待を寄せておりますので、そんな制度設計を期待いたします。

 一つちょっと飛ばしまして、予算の確保についてお伺いをいたします。

 先ほど来、特に多くの時間が予算の確保という部分で語られてまいりました。専門職大学の制度を充実したものとするためには、財政的な支援がなくてはならないものだと思っております。

 先ほど来お話ありますとおり、諸外国に比べて、高等教育に対する公的財政支出は少ないということはもう周知の事実でございます。高等教育全体に係る予算の充実を図りつつ、新設される専門職大学への財政措置についても、そのための追加的財政需要に見合った財源の確保が必要だと考えておりますが、財源の確保について、大臣の御決意をお教えいただきたいと思います。

松野国務大臣 専門職大学は大学制度の中に位置づけられるものでありますから、学校法人が設置する場合は、現行制度上、いわゆる私学助成の対象となります。

 専門職大学に対する財政措置につきましては、中央教育審議会の答申において、必要な財源の確保を図り、改革に積極的に取り組む既存の高等教育機関への支援が維持、充実されるようにしていくとともに、新たに制度化される機関に対して、実践的な職業を担い、専門職業人の養成を担う高等教育機関としてふさわしい支援を行っていくことが必要であるとされております。また、産業界や地域と緊密に連携した実践的な教育を行う機関であることから、民間資金の活用が重要であり、地方公共団体等からの多様な資金を導入していくとされています。

 今後、中央教育審議会の答申も踏まえ、必要な財源の確保を含め、新たな機関にふさわしい支援に努めてまいります。

青山委員 ありがとうございました。

 財源については、特に私立の大学、短期大学、私学助成の中にこの制度が食い込んでしまって、そのせいで、ただでさえ少ない私学助成の予算がさらに少なくなっていく、この懸念が多くあるわけであります。先ほど参考人の話の中には、特に別枠で、専門職大学には別枠でというお話もありましたが、それも含めて、しっかりと財源の確保をしていただきたいと思っております。

 ここで、財源の見込みについてなんですが、お答えいただけることであればお答えいただきたいと思うんですけれども、大学が学部を設置して、現行の大学が職業専門大学をつくるときには、現行の私学助成で既にもう私学助成を受けているわけですので大きな予算が生じないとは思うんですけれども、専門学校から大学に移る場合には、それまで補助金がないわけでありますので、ここに新たな財源が生まれるというふうに思っております。

 特に、新たな専門職大学に移行する専門学校がどれだけあって、何人の子たちがそこで学ぶかということによって、獲得すべき予算が、措置すべき予算が決まってくるというふうに思うんです。その見込み、大体、何年までにどれだけの学校をつくり、どれぐらいの生徒がここで学ぶという見込みというのは、予算がその分必要になってくるわけでありますので、そういう見込みがあるのかないのか、教えていただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 専門職大学の開設数でございますけれども、これはあらかじめ想定することは非常に難しいところでございます。

 実際に設置するためには、教育内容の開発、編成、教員の確保や施設設備等の教育条件の整備、産業界との連携など、設置基準で定める要件を満たす必要がございますので、相応の準備を要します。したがいまして、少なくとも制度発足当初においては限定的な数になるのではないかと考えております。

 当面は、既に専門職大学に求められる水準に比較的近い条件を備え、教育課程の開発等においても実績を有する専門学校等が専門職大学を目指すことなどが想定されているというのが現状でございます。

青山委員 ありがとうございます。

 小さく産んで大きく育てるという御答弁だったのかというふうに思いますが、予算を別枠でとってもらって、そこに何人来るかというのは、この後の職業人材育成の体系の中で、職業大学校がどれだけできるかというのは大きなキーになってくると思うんです。ですので、将来的にしっかりとそこのところを、どれぐらいの数が適正なのかというのも考えていく必要があるんじゃないかというふうに私は思っておりますので、御検討いただければというふうに思います。

 それとともに、財政措置は基本的には卒業生を送り出した後ということでありますので、最も早くても平成三十三年からの予算措置ということでありますので、設置の認可の状況を見ながら、しっかりとした予算の確保をお願いしたいというふうに思います。

 最後に御質問いたします。

 先ほども少し触れましたが、高等教育機関、今まで大学、短期大学と高等専門学校、また専門学校など、既存の機関がもうあるわけでありますが、この専門職大学ができることによって、高等教育全体のあり方を再度検討する必要が生じてくると考えておりますが、文部科学省の見解をお伺いいたしたいと思います。

義家副大臣 極めて重要な御指摘でございます。

 第四次産業革命の進展や本格的な人口減少社会の到来の中で、一人一人の実りある生涯と我が国社会の持続的な成長、発展を実現するためには、人材育成とイノベーション創出の中核である高等教育の役割が一層重要となってまいります。

 このため、文部科学省では、今回法案審議をお願いしている専門職大学を含め、高等教育が真に求められる機能を果たすために必要な方策を検討するため、本年三月、中央教育審議会に対して、我が国の高等教育に関する将来構想について諮問を行ったところでございます。

 この中で、まず、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校それぞれの強みを生かして機能強化を図るために早急に取り組むべき方策、二つ目として、各高等教育機関における学修の質の向上に向けた制度の改善方策、三つ目として、基盤的経費や競争的資金の充実や配分のあり方など、総合的、抜本的な検討を進めているところでございます。

 このような検討も踏まえながら、引き続き、各高等教育機関における教育研究の振興にしっかりと取り組んでまいりたいと決意しております。

青山委員 ありがとうございます。本当にしっかりとした決意をいただきました。

 この高等教育、専門職大学の設置に当たって、職業人材の地位向上が私は図られると思っておりますし、また、今本当に必要なことだというふうに痛感をいたしております。

 ただ、大臣初め副大臣、文科省の皆様方、非常にタイトなスケジュールの中で、確実なものをつくっていくということは大変なことだというふうに思いますが、これを成功させるかどうかは日本の成長に大きくかかわると確信をいたしておりますので、どうか、しっかりと制度設計をいただいて、すばらしい職業専門大学、また職業専門短期大学をつくっていただければというふうに思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

永岡委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘です。

 本日も、この文部科学委員会においてこのように質問の機会を賜りましたこと、委員長、また理事の皆様、委員各位に心から感謝を申し上げて、質問に入らせていただきます。

 日本を取り巻く状況、これはIoTやビッグデータの技術の発展、普及、それらを駆使したグローバル企業の台頭、そのような状況の中、今国際競争は激化しているというふうに承知をしております。このような中、職業の盛衰サイクルの短期化や予測がなかなか難しいというふうな状況の中、産業構造も急激に転換をしていっている、そういった状況にあるかと思います。

 このような状況において、やはり日本の産業、国力、これを上昇させるためにも、すぐれた専門技能をもって変化に即応した新たな価値を創造することができる専門人材の育成というものは、これは急務な課題であろうというふうに私は承知をしております。

 そのために求められる人材像というのは、理論にも裏づけられた高度な実践力を強みとして、専門業務を牽引できる人材、かつ変化に対応しつつ新たな物やサービスをつくり出す人材であるとお聞きをしているところでございます。

 では、このような高度な実践力と豊かな創造力、これをあわせ持つ人材の育成を行うに当たって、この法律ができる以前、今、既存の大学制度、広く既存の高等教育体制ではどのような課題があると認識をされているのか、文部科学大臣に御認識を伺いたいと思います。

松野国務大臣 吉田先生にお答えをいたします。

 既存の高等教育機関においても職業教育が行われており、大学、短大は、専門教育と教養教育や学術研究をあわせて行うという機関の性格から、比較的学問的色彩の強い教育が行われる傾向がある一方、専門学校は、特定の職業実務での即戦力として、直接必要な実践的知識、技能の育成を主に行っております。

 議員御指摘のとおり、近年産業構造の急速な転換が進んでおり、高度で実践的かつ創造的な職業教育の充実が喫緊の課題となっていることから、これまでの大学、短大の強みと、専門学校の強みの双方をあわせ持った新しい職業教育の枠組みが求められているところであります。

 こうした要請を踏まえ、大学制度の中に位置づけられ、実践的な職業教育に重点を置いた仕組みとして、今回、専門職大学の制度を新たに創設することとしたものであります。

吉田(宣)委員 大臣、ありがとうございます。

 まさに今、大臣、御答弁いただいた中に、本法のいわゆる立法目的、趣旨というものが凝縮をされているというふうに承知をいたしました。高度人材育成を目指す本法律案を、そういった意味からして、私は高く評価をしたいと思います。

 また、そのような人材に対する民間事業者の即戦力としての期待も、これも大きいものだと私は推察をしております。

 本法案について、これまで中教審において民間事業者からの意見もさまざま提示をされたかと思われますけれども、どのような御意見が提示されたか、お聞かせください。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 中央教育審議会での審議に当たりましては、専門職大学に対するニーズ等について、経済団体等からのヒアリングを行ったところでございます。

 各団体からは、例えば、新たな人材養成に関するニーズに関しましては、ただいまもございました産業構造の急速な変化を踏まえて、より実務に即した教育や社会人の学び直し、高度な革新技術を身につける教育がますます必要になっているとか、あるいは、産業の競争力を高める上で、課題解決に必要な教養、知識、技術、スキルを育成する中核機関としての大学が必要というような意見がございました。

 また、養成すべき人材像に関しましては、ビジネスマインドと実践力を備えて自律的に活躍できる人材であるとか、あるいは、地域の独自資源を活用して新たな事業変革を起こしていける若手人材、ITによる企業の経営革新に貢献する人材、中核的、専門的な国際人材等々の意見がございました。

 教育システムに関しましても、カリキュラムづくりを含め、企業、社会と連携した実践的な教育を行うことや、インターンシップの充実強化が重要という意見もございました。

 こうした御意見も踏まえながら、制度設計についての検討を行ってきたところでございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 そのような御意見を受けて、さまざま検討された結果の成果が本法律案であるというふうに承知をしております。

 済みません、ちょっと次の三番目の質問については、通告しておりましたが、少し割愛をさせていただいて。

 この法律のたてつけ、民間事業者も積極的に専門職大学に携わるというふうに承知をしておりますけれども、専門職大学に民間の事業者からしっかり御協力をいただかなければいけないわけでございますが、民間事業者の協力というものについて文部科学省としてどのように携わっていくのか、お聞かせいただければと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 専門職大学制度の創設に向けましては、文部科学省といたしましても、関係の産業界等に対し、専門職大学等を開設しようとする設置主体への教育課程の編成、実務家教員の確保、実習の実施、卒業生の進路の開拓、学生支援などの資金協力等について連携協力を働きかけていきたいと考えております。また、社会人が働きながら学ぶ場としての活用、そのための環境整備についても協力を求めていきたいということでございます。

 さらに、この点につきまして、今、政府の中で各省連携によります人材養成に関する検討の場もございますので、成長分野の各産業を所管する関係省庁とも連携をして協力を得ていきたいと考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 通告していました五番目の問いも、申しわけありません、少し飛ばさせていただきたいと思います。

 次に、六番目の問いに移らせていただきますが、専門職大学の設置、これは、即戦力の人材を輩出するという意味で、投資としての性質がより強いと私は考えております。そのためにも適切に予算措置が施されなければならないと私は考えておりますが、文部科学大臣、この予算措置についてのお受けとめをお聞かせください。

松野国務大臣 専門職大学は、大学制度の中に位置づけられるものであることから、学校法人が設置する場合は、現行制度上、いわゆる私学助成の対象となります。

 専門職大学に対する財政措置については、中央教育審議会の答申において、必要な財源の確保を図り、改革に積極的に取り組む既存の高等教育機関への支援が維持、充実されるようにしていくとともに、新たに制度化される機関に対して、実践的な職業教育を担い、専門職業人の養成を担う高等教育機関としてふさわしい支援を行っていくことが必要であるとされています。また、産業界や地域と緊密に連携した実践的な教育を行う機関であることから、民間資金の活用が重要であり、地方公共団体等からの多様な資金の導入をしていくとされています。

 今後、中央教育審議会の答申も踏まえ、必要な財源の確保を含め、新たな機関にふさわしい支援に努めてまいります。

吉田(宣)委員 私、この法律は、すばらしい法律だというふうに承知をしております。ただ、財源の面ではさまざまあろうかと思います。民間資金、また地方自治体の協力、これが不可欠であろうかと思いますので、しっかり文科省としても、この点、配慮をしていただき、この大学の設置によってよもや他の文部科学省予算が削減されることがないようにぜひ努めていただきたいと思います。

 済みません、七番の通告の質問も少し割愛をさせていただいて、私が一番聞きたかったお話にちょっと移らせていただきます。

 この専門職大学、私立大学も設置をできるというふうにお聞きをしております。この点、皆様のお手元に資料を配付させていただきました。これは、私立大学等における経常的経費と経常費補助金額の推移というものでございます。

 見ていただきたいのは、上の表の一番下の段にある補助割合というところです。これを見ると、いわゆる補助の割合がどんどんどんどん平成二十七年度まで低下をしていっているところが見てとれます。このことは何を意味するか。すなわち、いわゆる私立大学に通っている大学生及びその御家庭の負担が、この割合の分だけふえていっているということを意味しているんだろうと私は承知をしております。

 そこで、まず、この傾向、私は問題だと思っておりますが、なぜこのように減少をし続けてきたのか。ただ、幸いなこと、この三年、総額と真ん中の方に書いてありますけれども、変わっていないという状況については、これは私は非常に喜ばしく思っておりますが、まず、この減少傾向が続いたことの要因について政府から説明を求めたいと思います。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 私立大学等の経常費の補助金につきましては、現在の厳しい財政状況のもとでございますけれども、二十九年度予算におきましては前年同額の三千百五十三億円を計上するなど、私学助成の確保に努めてきているところでございます。

 一方で、近年、私立大学等において、特色ある教育研究活動が進展していることに伴いまして、教育ニーズの多様化に対応するために人件費が増加をしているということがございます。それからさらに、教育研究活動の発展や多様化に対応するために、教育研究経費や管理、設備関係経費が増加していることなどによりまして、経常的経費が増加傾向にあるものでございます。

 この結果といたしまして、先ほど先生からデータでお示しをいただきましたように、私立大学等全体の経常経費に対する国からの補助割合は年々低下傾向となっておりまして、学生一人当たりに換算した補助金額も低下している状況でございます。

吉田(宣)委員 この点、かつては、この補助の割合を五〇%を目標にするというふうな時代もあったというふうにお聞きをしております。そのことからすれば、さまざま歴史的な経緯があろうかと思いますが、近年まで続いたこの減少は私は問題であろうかと思っておりますし、やはり、私立大学に通う学生さんというのは全部の大学生の七割ぐらいを占めているというふうなこともお聞きをしておりますので、この点については、私は、さまざま分析を続け、しっかりとした予算確保に努めていかなければならないというふうに感じております。

 そして、この減少傾向がまた始まってしまえば、せっかくいい専門職大学という制度が私立大学ではなかなか実施が難しくなるんじゃなかろうかというふうな私は心配があります。私学にも積極的に専門職大学というものを実施していただくためにも、私は、この減少傾向、二度と起こしてはならないというふうに思っておるわけでございますが、文部科学大臣の受けとめをお聞かせいただければと思います。

松野国務大臣 御指摘の私学助成について、文部科学省としては、先ほど吉田先生から御指摘があったとおり、我が国の約七割を超える学生が私立大学で学んでおります。私立大学等の果たす重要な役割に鑑みまして、私立大学等が社会や時代のニーズを踏まえた特色ある教育研究や学生の負担軽減を行えるよう、引き続き、私学助成の確保に努めてまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 やはり私立大学は、私は国立大学の出身ですけれども、国立大学にはないようなさまざまな個性豊かな大学の特色、教育というものが実施されている大切な機関であろうかと思っております。もちろん、国立大学と私立大学、学費が随分違うわけでございますけれども、今大臣からもお話がありましたとおり、七割ぐらいの大学生さんは私立大学に通っているということも考えれば、しっかりここに関する財政的な手当て、これは今後も絶対に必要になってくると私は感じております。

 済みません。質問を飛ばした関係で少し時間が余っておるようでございますけれども、最後の質問になります。本法を離れて、私、高等専門学校について少しお聞かせいただきたいと思います。

 私が中学校を卒業する当時というのは、高等専門学校というのは物すごく難しいところでした。狭き門で、本当に成績がいい生徒じゃないとなかなか合格しないという状況で、私も実は、熊本の生まれ育ちなんですけれども、熊本に国立の電波高等専門学校というところがございまして、非常に難しいところだったんですけれども志して受験しましたが、あえなく落とされてしまいました。もし合格していたら、私は、この場所でこういうふうなお話をしていないのかなというふうな思いもありますけれども。

 直近の中教審の審議においても高等学校全体のあり方というのがしっかり議論をされたというふうにお聞きをしているところでございますけれども、忘れてはならないのが、この高専と言われるものでございます。

 もう少しお話しすれば、私の実家というのは熊本の荒尾市というところにあるんですけれども、有明高等専門学校というところもありまして、非常にすぐれた生徒さんが卒業して、さまざま、地域の中で中小企業の技術的な側面であったりとか、そういったものをしっかり担って大活躍をしているというふうに承知をしております。

 松野大臣、高専の振興策について大臣の力強い御答弁をいただければと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 高等専門学校は、中学校卒業後の生徒を受け入れ、中等教育段階から高等教育段階にかけて工学分野を中心に五年一貫教育を行う学校として、卒業生の求人倍率や就職率も高く、これまで産業界から高い評価を得ているものであります。

 国立高等専門学校については、新産業を牽引する人材育成、地域への貢献、国際化の加速、推進の三つを軸に、各学校における機能強化の取り組みを推進するため、今年度の運営費交付金を増額したところであります。

 現在、中央教育審議会において高等教育に関する将来構想の議論も進めており、こうした高等専門学校の実績等も踏まえ、高等専門学校のさらなる振興を含め、高等教育の充実と改革を進めてまいります。

吉田(宣)委員 大臣、本当にありがとうございます。

 高専の存在を決して忘れてはなりませんし、高専もしっかり財政的な支援を行って、より高い能力を持った人材がどんどん輩出していける、そのような教育環境の整備に努めていただければと私は思います。

 質問をする内容が終わりましたので、ここで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

永岡委員長 次回は、来る二十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十三分散会


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