衆議院

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第6号 平成30年4月11日(水曜日)

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平成三十年四月十一日(水曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 安藤  裕君 理事 神山 佐市君

   理事 亀岡 偉民君 理事 工藤 彰三君

   理事 鈴木 淳司君 理事 川内 博史君

   理事 城井  崇君 理事 浮島 智子君

      安藤 高夫君    池田 佳隆君

      石川 昭政君    上杉謙太郎君

      尾身 朝子君    大見  正君

      木村 弥生君    小林 茂樹君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      鈴木 貴子君    田野瀬太道君

      高木  啓君    中曽根康隆君

      根本 幸典君    馳   浩君

      鳩山 二郎君    船田  元君

      古田 圭一君    松本 剛明君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    八木 哲也君

      櫻井  周君    日吉 雄太君

      山本和嘉子君    源馬謙太郎君

      長島 昭久君    西岡 秀子君

      太田 昌孝君    中野 洋昌君

      平野 博文君    畑野 君枝君

      串田 誠一君    吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       林  芳正君

   文部科学大臣政務官    宮川 典子君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 奈良 俊哉君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          高橋 道和君

   政府参考人

   (文化庁次長)      中岡  司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 保坂  伸君

   参考人

   (吉備国際大学大学院特任教授)

   (弁護士)        土肥 一史君

   参考人

   (一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム専務理事)         岸原 孝昌君

   参考人

   (社会福祉法人日本盲人会連合会長)        竹下 義樹君

   文部科学委員会専門員   鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     木村 弥生君

  船田  元君     中曽根康隆君

  宮路 拓馬君     鳩山 二郎君

  鰐淵 洋子君     太田 昌孝君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     安藤 高夫君

  中曽根康隆君     鈴木 貴子君

  鳩山 二郎君     宮路 拓馬君

  太田 昌孝君     鰐淵 洋子君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     尾身 朝子君

  鈴木 貴子君     船田  元君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、吉備国際大学大学院特任教授・弁護士土肥一史君、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム専務理事岸原孝昌君及び社会福祉法人日本盲人会連合会長竹下義樹君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず土肥参考人にお願いいたします。

土肥参考人 ただいま御紹介を頂戴いたしました土肥でございます。

 委員長から十分間、冒頭、意見を述べる機会をいただきましたこと、厚くお礼を申し上げたいと存じます。

 今回、皆様に御審議をいただいております著作権法等の一部を改正する法律案、これは大きく四つの柱から成っておるかと思います。柔軟な権利制限規定の導入、それから教育の情報化の推進、さらに障害者の方々の情報アクセスの改善、そして著作物のアーカイブの利活用の促進、こういう四つの柱かと思います。

 本日、私以外の参考人としてのお二方のお顔を拝見すると、恐らく、柔軟な権利制限規定と、それから障害者の方々の情報アクセスの改善、これについて集中的にお話しになるのではないかと思いますので、私はまず、教育の情報化と、それから著作物のアーカイブの利活用の促進、このあたりを中心にお話をして、そのほかの点は質疑の中でお答えさせていただければというふうに思っております。

 まず、教育の情報化についてでございます。

 今般、いわゆる三十五条の同時授業公衆送信に加えて、新たに、異時授業公衆送信という授業形態を権利制限の対象とするという提案がなされているように承知しております。

 この異時授業公衆送信という形態なんですけれども、同時授業公衆送信とは違って、補償金というものを組み合わせて設計されておるわけでございます。

 この点、教育という公益性の高い利益からいたしますと、若干、委員の先生方の中には違和感があるのではないかなというふうに拝察申し上げておるわけでございますけれども、例えば、教科書あるいは学校教育番組の放送、こういったものについては既に補償金の対象になっておるわけでございます。

 確かに、三十五条一項の複製のところ、それから同時授業公衆送信のところ、これは補償金はついておりません。おりませんけれども、先生方に思い出していただきたいんですけれども、現行法は昭和四十五年に生まれております。その当時、複製機器はどうであったか。

 ゼロックスの九一四、キヤノンの写真型のコピー機、こういったものがようやく出たころでございまして、当時の初等中等教育局長の通達によると、学校における複製機器というのは、ガリ版、こういうものが指定されておるわけでありまして、お若い方には全然この状況はちょっとわかりにくいかと思うんですけれども、私などは、そのガリ版で先生がコリコリ書かれておったのをよく承知しております。ですから、その当時の著作物の利用というのは、おのずからわかるわけでございます。

 ところが、いわゆる同時授業公衆送信は今から十五年前にできましたので、これは確かに、もうデジタルネットワーク環境は大きく変わっておりまして、現在に近いものがあったわけでございます。これが入るときに補償金はついておりません。

 これは何でついていないのかということなんですけれども、これは同時授業でございますので、要するに、教室で先生が授業をなさる、それを、例えば病気その他の理由で学校に行けない、病院のベッドの上でクラス仲間と一緒に授業を受けるという際に、先生が教室で紙媒体の資料を配ったりなさる、それをネットでも配信を受ける、こういうことを想定しておりましたので、三十五条一項と同様に、同時授業公衆送信については無償にその当時はなっているというふうに理解をしております。

 そもそもという話なんですけれども、現在、授業で先生方が教室で使われる例えばホワイトボードとかあるいはマジックインキとか、あるいはネット環境を整えるための機器であるとかプロバイダー契約とか、こういったものはみんな対価が必要なわけであります。

 さらに、先生方がお話しになる中では、当然クリエーティブな授業内容なんかをおやりになるんだろうと思いますけれども、そういうクリエーティブな授業内容なんかも考慮した上で俸給なんかは決まっていて、何がしかの部分はそういうものも見込まれているのではないかと私は思うんですね。しかし、なぜ著作物だけが無償なのかというと、これはよくわからないところでございます。

 審議会のレベルでの資料の中に外国の事情なんかも紹介されましたけれども、英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、あるいは隣の韓国なんかの状態を見ますと、いわゆる日本の三十五条の中の授業形態について、全部若しくは一部が補償金の対象になっております。

 そういう状況を踏まえますと、審議会の委員の中には、当然これは、複製を含めて、三十五条全体を補償金の対象にすべきではないかという意見が非常に強かったわけであります。

 しかし、結果として、異時授業公衆送信のみを補償金の対象にしたわけであります。これはなぜかといいますと、当然ヒアリングを受けるわけですけれども、関係団体の方に来ていただいて、委員会のときにいろいろな御意見を伺うんですが、言われたことは、先生方が今までやられていることを変えないでほしい、現場が混乱することだけはちょっとやめてくださいというようなことを切実に訴えられまして、それなら、新たに入るところの、いわゆる異時授業公衆送信のみを補償金の対象にするという案にまとめることで、いわゆる制度全体をソフトにテークオフさせるということを考えたわけでございます。

 補償金の制度そのものも、今現在、教育利用のための著作権管理準備協議会ですか、何かそういう管理準備協議会という場がございまして、そこの中で、先生方にもあるいは教育機関の設置者にも父兄の方にもなるほどと思っていただけるようなそういう補償金の制度、システムを策定していただいていると思いますので、そういうことも織り込んでいただいて、ぜひ今回の三十五条の法改正案に御承認といいますか賛成をいただきたいというふうに、まず一点、思っておるところでございます。

 私、三十五分から始めましたのであと三分ぐらいあると思っておるんですけれども、それで、二つ目に申し上げたいのは、著作物のアーカイブの利活用の促進なんですが、これは現在四十七条で、小冊子によって、作品の展示者は展示物の紹介、解説をすることができるということになっています。それを今度は、この時代に合わせて、デジタル端末でもってそれができるというふうにしているわけです。ここは普通のところでありますが、大事なところはこの後でありまして、いわゆる美術館や博物館及びこれに準ずる政令で指定するものは、所蔵する作品の所在を広く国内外に発信できるという規定になっております。

 これは文部科学委員会でございますので、ユーロピアーナの意味合いというのはよくお聞きのことだと思います。ヨーロッパには、加盟二十八カ国の芸術作品を統合して、そこのワンストップのポータルサイトに入っていけば何でもわかるというような仕組みができているやに聞いております。日本もこれができるわけです。

 つまり、国内外に日本の美術作品、写真作品、美術の範囲というのは非常に広うございますから、そういう広い日本の著作物、権利が切れたもの、権利がまだ残っているものもトータルにして発信をして、日本にはこういうすばらしいものがあるということを、例えば国もできるんですね、要するに政令で指定することによって。そうすることで、ぜひとも、近い将来、これがなるほど日本版ユーロピアーナだなと思っていただけるようなものを構築していただければと思っておるところでございます。

 ちょっと、もしかしたら時間が来ているんだろうと思いますので、以上で私の意見にかえさせていただければと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、岸原参考人にお願いいたします。

岸原参考人 このたび陳述の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。

 私の方からは、柔軟な規定の重要性と有益性について、イノベーション開発に有効なデザイン思考という考えが今あります。それと、法制面でのプリンシプルベースという考えから、実体験を交えて、これは反省も込めて御紹介をさせていただきたいというふうに思います。

 ちょっとしゃべっているだけだと退屈かと思いますので、懐かしいものを持ってまいりました。皆さん、これは御存じだと、これはアイポッドですね。これはiモード携帯、ガラ携と言われております。これは何かわかりますか。ソニーの新製品、まだ未発売と言っても信じるぐらいなんですが、実はこれは、アイポッドと同じ時期にソニーさんがつくったマジックゲートウォークマンというものになります。ただ、これは世の中にもほとんど知られていなくて、残ったのはこちらだけ。最終的には、これとこれをくっつけて、アップルさんはアイフォンをつくったという流れになっています。

 じゃ、何で負けたかということなんですが、実は、ここの重要なところが、ユーザー利便性と権利保護、これのバランスをとれたかどうかではないかなというふうに思っております。

 我々、iモード携帯あるいはこのマジックゲートウォークマン、これはすばらしい著作権保護機能がついています。複製をすると前のコンテンツが消えたりとか、複製を制限したり、あるいは、iモードで、私も権利者団体さんと交渉しましたが、ここから出ないような仕様にする、ありとあらゆる手段で保護するということをやってきました。

 これは、権利保護というところも重要だという観点に立って、一曲ごとに管理をするという形でやっていたんですが、スティーブ・ジョブズが何をやったかというと、我々は、こちらの方に入るのは二十曲だけだったんですね、要するにアルバムが入ればいいでしょうと。スティーブ・ジョブズは、ユーザーは千曲欲しい、要するに、ユーザー利便性も確保しましょう、一定のフェアプレーという著作権保護機能も入れましょうということで、ユーザーの利便性と権利保護のバランスをとって大成功した。

 じゃ、これを出したときに、スティーブ・ジョブズが、やった、これで勝ったと思ったかというと、すぐ日本が追いついてくると思っていたらしいんです。何でかというと、この中の製品はほとんど日本製です。一・八インチの東芝のハードディスク、今、会社自体は非常に困っていますが、当時は、この小さなハードディスクというのは、パソコンでは余りにも小さ過ぎて必要ないと言われて、ニーズがないと言われていた。一方で、ここに出すための電池、これのリチウムイオン電池はソニーさんが開発をして、これを利用する。要するに、中は全部日本製だったんですね。これでヒットすれば、すぐ日本が追いついて我々は負けるというので、日本の携帯をまねしてアイフォンをつくったということになっています。

 じゃ、我々も追いつけばよかったということなんですが、そのときの思考からすると、こんなことをやると著作権違反の幇助で逮捕されるんじゃないかと、個人的には非常に思考のフレームワーク自体を限定されてしまって、こういう発想ができなかったというのが一つの理由になっております。最終的には、我々自体は、iモード等のコンテンツ配信で、着うたコンテンツ、一千億マーケットまでつくりました。ただ、今本当、数十億ぐらいに限定してしまっているという状況になっております。

 こういったユーザーの課題とか要求に応えて、ユーザーにどれだけすてきな体験、ユーザーエクスペリエンスを提供できるかというのがデザイン思考という考え方で、これがイノベーションの今の肝になっています。今出ておりますウーバーとかエアビーアンドビー、そういったサービス、全てデザイン思考から来ております。要するに、ユーザー視点で物事を考えてくる。これは、皆様方が選挙民の方々のことも考えていることと多分一緒です。

 この法制度のとき、よく事業者対権利者という構図になりますが、最終的に考えなきゃいけないのはユーザーにどういったものを提供できるかといった観点で、法制度の中にもデザイン思考という考え方を、この中にぜひ入れていただきたいというふうに思っております。

 その中で、一方で柔軟な規定が必要な背景といったところについて、簡単に御説明をしたいと思います。

 御存じのように、今、テクノロジーの進化が非常に激しい時代で、不確実性が非常に高まっていると言われております。こういう状況の中では、未来を人間が予測するというのはもう不可能です。

 一方で、法制度は必ず現実からおくれるというローラグが発生するという考えがあります。今回の法案も、もう一年前の報告書をベースにしておりますので、施行するまで二年かかってしまう。そうしますと、どうしてもおくれてしまう。

 これは、慎重な審議という上では非常に重要なことにはなります。ただ、これをカバーするという上で、今回の柔軟な規定というのは非常に有効ではないかなというふうに思っております。

 ただ、今回考えられている、適切な明確性と柔軟性の度合いを検討する、こういったバランスをとる、明確性と柔軟性のバランスをとる、あるいは柔軟な規定のために抽象化するということが書かれておりますが、この明確性の対象というのは、硬直的な仕様ではなくて、原則、プリンシプルベースで考えるということではないかなというふうに思っております。今回の報告書の中に、そういった原則、プリンシプルという言葉がありません。ただ、これは明らかにプリンシプルベースでの法制度ではないかなというふうに思っています。

 大陸法の立法の中では、原則を発見して明文化するという手続が基本的なところではないかなと思っておりまして、直近ですと、大陸法の本家であるEUの方で、一般データ保護規則、GDPRは完全にプリンシプルベースでつくられております。ですので、細かい規定は一切入っておりません。今回の著作権法とほぼ同じです。

 一方で、日本でも銀行法や保険業法は既にもうプリンシプルベースでつくられておりまして、あと、建材の進化が激しい建築基準法では一九九八年に、これはルールベースですが、仕様規定から性能規定化といったものが今進んでいるということになっております。

 ですので、今回の柔軟な規定というのは、大陸法の中でも既に先例があるということではないかなというふうに思っております。

 一方で、この柔軟な規定、これは事業者とか利用者だけの利便性かというと、権利者にとっても二点において有益だと思っております。一つはグローバル化のジレンマ、もう一つは明確化のパラドックスという二つのポイントがあるかと思っております。

 簡単に御説明しますと、グローバル化のジレンマ、現在、日本の事業者は、こういったローラグが発生している中で、厳密に法制度を解釈しておりますので、なかなかイノベーションを起こせないという状況になっております。どうしても海外の後追いになってしまう。そうなりますと、日本の権利者の方たちは、海外で普及したモデルを、嫌々ながらというわけではないんですが、日本の現状に合わなくても受け入れざるを得ないということで、今の日本の法制度の中で実は海外事業者が得をしているという状況になっているのではないかなというふうに思っております。

 一方で、明確化のパラドックスというのは、仕様を細かく、要するに、明確化しようということで細かい規定までつくっていきますと、どんなにやっても絶対にグレーゾーンが出てきます。あるいは、先ほどのように、ローラグとして、時代の変化とともにそういったグレーゾーンというのは拡大をしていきます。

 そこで、通常、健全にやる事業者は別に権利者のことを思って対応しますが、悪意を持った事業者がこういったもののグレーゾーンを利用して、悪貨が良貨を駆逐するようなことが現在起きております。これは今、漫画とかを含めた形で起きておりますので御存じかと思うんですが、そういった状況の中で、未来が予想できない人間にとって全ての事象を事前に整理するというのは不可能だという状況の中では、細かい条文で仕様をどんなに明確にしてもグレーゾーンが残るという考え方からすると、こういうプリンシプルベースでの制度の発見といいますか、今回、皆さんの方で原則を、もう幾つか現在ありますが、この原則を発見されて法制化されるという手続をこれから踏むのではないかなというふうに考えておりますので、ぜひ先ほどのユーザー視点に立ったデザイン思考の考え方とプリンシプルベースでの法制度といったものを進めていただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、竹下参考人にお願いいたします。

竹下参考人 この証言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 日本盲人会連合の竹下といいます。よろしくお願いいたします。

 私は、十四歳で失明をして、その後、日本で初めて司法試験の点字受験を認めていただいたおかげで、現在、弁護士という仕事につけている人間であります。そういう意味では、点字あるいは音声訳というものが、視覚障害者の生きる上で、あるいは職業選択の上で極めて重要であるということを実感している当事者であります。

 きょうは、マラケシュ条約の批准と、それに伴う国内法の整備としての著作権法の改正を準備いただいたことに心からお礼申し上げます。ここでは、その関係で著作権法三十七条三項の改正が審議されていることを心から歓迎申し上げます。

 御存じのとおり、視覚障害者の場合には、情報を得るためには、点字化、音声化、そして弱視の方は拡大文字、この三つの方法が情報を得るための手段であります。

 日本においては、点字にせよ、録音にせよ、そして拡大文字の作成にせよ、全てはボランティアの方々によってその支援が行われております。その活動を支えているのが三十七条三項ということになるわけであります。

 今回のマラケシュ条約の批准に伴って、その受益者の範囲が、視覚障害者だけでなく、手が動かないためにページがめくれない、本が持てない寝たきりの人たち、あるいは、発達障害の人たちのように、出版物そのもののままでは内容を自分のものにできない人たちのために書き直しをする問題、そうした受益者の範囲を広げていただいたことは非常にありがたいと思っております。

 ただ、今回の三十七条三項の改正によって、そうした受益者の範囲が、出版物をそのままでは自分では利用できない人たちの全てに行き渡るのかどうか、ここが若干懸念しているところであります。

 もう一つは、冒頭に申し上げたように、日本では点字化も音訳化も拡大文字もボランティアの手によって担われているわけでありますが、そうしたボランティアの活動が、今回の三十七条三項によってどこまで自由に活動できるかということが問題になるわけでございます。

 すなわち、これまでは、文化庁の長官の認可を受けた団体、あるいは点字図書館といった政令で定められた団体、そういうところが音声訳をすることは権利制限として許されてきたわけでありますが、そのボランティア団体の人たちというのは、点字図書館をはるかに超える社会資源として支援をする人たちがおられて、その人たちの活動のおかげで我々は読書ができているわけです。そうしたボランティアの人たちの活動がどこまで自由にできるようになるか、このことが今回の三十七条三項改正と政令の制定によって大きく広がることを期待しているわけでありますが、この制限がどういう形でまた残るかが懸念しているところであります。

 最後に、三十七条三項の改正だけでは、情報障害を持っている私たちの仲間が全て救済されることにはならないということに目を向けていただきたいと思っております。

 例えば、この間の文科省の努力や議員の先生方の御理解で、検定教科書につきましては、発行元が電子データを提供することが義務づけられました。そのおかげで、検定教科書は、点字化するときも拡大文字をつくるときも非常にスムーズにできるようになりました。しかし、問題集であるとか副読本であるとか参考書であるとかそうしたものについては、いまだ出版元からデータが提供されないために、教育の場面においても十分な援助が受けられない現実があります。

 すなわち、今どきは、出版は、ほぼどの分野においてもというか、出版者においても電子データをお持ちなわけでありますが、その電子データを十分に、あるいは自由に利用できるという環境がないことであります。もちろん、著作権の問題があるわけでありますから、その利用には十分なルールが必要であることは承知しております。

 問題は、そういう出版者が、点字化するときや音声化するとき、拡大文字化するときにそうした道筋をつけていただけるかどうか。

 すなわち、電子データ、とりわけテキストデータを自動点訳にかければ、私がここで今読んでいる点字になるわけです。それから、テキストデータをスクリーンリーダーというソフトにかけると、全部音声で読み上げてくれるわけです。それから、拡大文字に関しましても、電子データだと、十八ポイントであろうが二十二ポイントであろうが、その障害者に合わせたポイントに自由に変換できるわけです。そうしたものが十分に制度的に保障されるようになることこそが、出版された図書の多くが、私たち障害を持った仲間の読書へのアクセスになることを御理解いただきたいと思っております。

 そして、国会図書館、公共図書館、点字図書館、それらの全ての、社会資源がお持ちの電子データをインターネットでつないでいただいて、ユーザーである障害者がそういうデータを利用できる環境をつくっていただく、ここまで発展させていただくことが今回マラケシュ条約が求めているものに近づくことをぜひ御理解いただき、私からの訴えにかえさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上杉謙太郎君。

上杉委員 自民党の上杉謙太郎でございます。

 委員始め理事の皆様、また委員の皆様、御質問の場をいただきまして、まことにありがとうございます。

 また、土肥先生、岸原先生、竹下先生、きょうは、お忙しい中、この衆議院の文科委員会にお越しいただきまして、また貴重な御知見を拝聴させていただきまして、ありがとうございます。

 十五分という時間の中でどれだけ御知見を御教示いただけるのか、許す限りちょっとお伺いしてみたいと思いますが、まず土肥先生にお伺いしたいんですけれども、先生今まで、分科会の方で本当にいろいろと御尽力されてこられたということで、その今までの長い期間、本当に敬意を表しております。

 先ほど、教育のお話ですとか具体的な話が多かったんですけれども、きょうトップバッターで最初の質問でありますので、この数年間、二十四年のときの改正のときですとか、先生の中では、もうちょっとこうだったらいい等々もあり、今回また、少し御希望に沿うような形での改正になったのかなというように、勝手に、資料を拝見させていただいて思ったところであります。

 ぜひ先生から、この長い間のさまざまな思いと、今回の改正の内容に対しての御所感を、また改めてちょっと御指導いただけたらありがたいと思います。

土肥参考人 ありがとうございます。

 そこまでおっしゃっていただくと思っていなかったんですけれども、御質問の、二十三、二十四年、いわゆる一般的な権利制限規定の導入の際との比較でございますけれども、あのときは、A類型、B類型、C類型というものが考えられまして、いわゆる写り込みのような軽微な著作物の利用の部分、それから、適法な利用の過程における著作物の使用、それから三つ目が、今回実質的には入ったわけですけれども、いわゆる著作物の表現を享受しない、そういう類型、これがC類型であったわけですけれども、結局、A類型、B類型は当時の法改正の中に入ったわけですけれども、C類型が基本的には残念ながら入りませんで、そのC類型としての、つまり著作物の表現を享受しない類型のうち幾つか入ったわけですけれども、そのときは、恐らくそういう限度が、いわば対社会との関係ではやむを得ない事情として妥当だったのではないかなと思います。

 なぜかといいますと、法改正をする場合は、外の状況と中の状況、そっ啄といいますか、一致しないと、やはり内側からこう変えていこう、こう変えていこうというふうに提案しても、社会の方がまだそういうふうになっていないとすれば、やはりなかなか実質的に法改正というふうにはつながらないものでございます。

 ですから、確かにその当時残念だというふうに思ってはおりましたけれども、今般、まさに内と外のそういう状況が一致して、こういう法案として、内閣提出法案として閣議決定をしていただいて今こうやって出ているということで、私としては、ありがたいといいますか、非常にうれしく思っているところでございます。

上杉委員 土肥先生、ありがとうございました。

 長きにわたって、各業界の方からも文化庁さんがヒアリングをしたりですとか、分科会でいろいろ議論をされて、最大公約数的にいいものを、また海外のものをしっかり参考にしながら、日本なりのものをつくったということなのだろうなというふうに思います。

 権利制限規定は、いろいろデジタル化の方も、教育また福祉の分野、図書館等のアーカイブ等、いろいろいい形で包括的に、これは施行された後に、想定していないようなものが出てきてもいいように包括的な条文にしたんだというところで、非常にいい法案なんだろうというふうに私は思っておりまして、ただ、これ、運用が始まった後と、あと、一般の広く国民の皆様という、ちょっと違う視点で岸原参考人の方にお伺いしたいんです。

 先ほど、アイポッドとか、私も持っておりましたが、ウエブ、デジタル、そういうところにお詳しいということで教えていただきたいんですけれども、恐らく、一般の広く国民の皆様が、私たちを含めて、著作権に対して意識が低いんじゃないかなと思うんですよね。我々政治家事務所で資料をつくるときも、役所の皆さんも資料をつくるときも、インターネット上で右クリックしてコピーして、パワーポイントに張りつけたら、もうコピーできてしまうわけですし、画像で検索して、上杉謙太郎と検索したらばっと出てきて、違う人が出てきて、それが著作権にかかわるものなのかどうかとか、何も考えないでコピーして使ったりもあると思うんです。

 そういう意味では、ウエブの中で、しっかりと、しかも来年の一月に施行されるとなると、広く国民の皆様に著作権に対しての意識づけですとか周知をするということ等、広く認知をするということが必要になってくるんだと思うんですけれども、その点、どういうふうにすべきなのか、岸原先生の御知見を御指導いただけたらありがたいと思います。

岸原参考人 そうですね、今回の改正自体は権利制限規定なので、著作権法全体の考え方という感じではないかなと思うんですが、おっしゃるように、一般の方たちに著作権法を説明するのはすごく難しいんですね。これは私も全部読んだことは実際はなくて、条文自体を読んでいても、途中でよくわからなくなるという、先ほどの、仕様の明確化のパラドックスに多分陥っているのではないかなと思うんですけれども、そういった意味では、今回の、土肥先生を始めとして御尽力された方たちの柔軟な規定というのは、これは一般の方たちにとってもわかりやすくなるのではないかなと。

 要するに、これからは、原則を教えて、それに基づいて運用していく。これまでは、箸の上げ下げまで、斜め四十五度まではオーケーだけれども、それ以上上げたら違反ですよと。これは多分わからないんですね。これはプロの方たちにとってももう既にわからないレベルになっているということでは、今回の改正というのは、著作権法自体を一般の方たちにより身近にするという点では、非常に有効な取組ではないかなというふうに思っています。

 ですので、できましたら、この流れを全体に広げていただいて、この条文といいますか、この考え方でいえば、下手したら著作権法を十分の一ぐらいにできるかもしれない、ちょっと言い過ぎかと思うんですが。

 そうすると何ができるかというと、著作権法というのは、これはプロだけの話ではなくて、まさしく、これから一般の人たちも全部が参加をするという世界の中では、国民みんなが理解しなきゃいけないものだと思うんですが、それが、一部、本当のプロしか理解できないというのは非常に不幸ではないかなというふうに思っていますので、できるだけこういった原則的な考え方、柔軟な規定といったものを進めていくことによって、より一般の方たちの理解というのも深まってくるのではないかなというふうに思っております。

上杉委員 ありがとうございました。

 広く国民の皆様に認知をしていくということで、もう一度土肥先生にお伺いしたいんです。

 我々大人でも余り著作権のことを考えていないと。先ほど先生の、教育の場での自動送信等々お話ありましたが、多分、小学校でも中学校でも、子供たちはより一層著作権って考えていないんだと思うんですね。

 先生たち、今回のこれで、教育現場でも権利制限規定等が整備されてよくなる。とはいっても、今度、子供たちにもしっかり、著作権というのがあるんだよ、勝手にコピーしちゃいけないよということを教えていかないといけないと思うんです。

 この点、これを今後施行された後に、私ども、また文科省さん、文化庁さんがやる取組としてはどういった取組をしていくべきか、御指導いただけたらありがたいと思います。

土肥参考人 非常に大事なところであろうと思います。

 私個人の経験でも、小学校のときの一年生、二年生のときの先生がおっしゃったことってまだ今でも覚えている。

 確かに、著作権に限らず、あらゆる教育は、生涯的に、生涯学習としてやっていくこと、これも必要なんだと思いますけれども、まずは、小学校の初めの学年というんですか、初期の学年において、これから、有体物に限らず無体物、中でもこういうコンテンツとか著作物、そういったものがますます今後重要性が高まっていきますので、そういう小学校の生徒さんあたりにも先生の授業を通して説明していただく。

 先生には、例えば、最近では、教員免許の更新なんかの際にはいろいろ講習とか何かがあるようでございますので、自動車の免許の更新でさえございますし、ああいうところであらゆる場面において、自動車の免許の更新の場合は安全運転ですけれども、小学校の先生方にはぜひとも、本来お持ちになる教科以外に、著作権に関するベーシックな重要性のところを講習の内容としていただいて、生徒さんにもあわせて教育の場でお伝えいただいて、将来の日本のコンテンツ社会にとって有用な人材を育てていただきたいな、こういうふうに思っております。

上杉委員 先生、ありがとうございました。

 ちょうど、小学校三年生以上が英語教育と情報化の教育が始まりますし、三年後ですか、文科省として、著作権を改正するだけでなくて、今度は著作権の教育ということもやっていかないといけないんだろうなというふうに感じているところであります。

 時間がなくなってまいりましたので、最後の質問にいたします。

 竹下先生にお伺いをしたいんですけれども、今回のこれで、点字ですとかまた音声によって書物なり動画なりを享受するときに、これができるようになるというこの先に、今度はもっと、利便性ですとか、いつでもそういった方々が希望したときに希望する書物を希望する形で、点字なのか音声で読み上げてくれるのか、そういうのをつくるべきだというふうに思っていまして、先ほどの先生のお話の中でそういうふうにすべきだというのがありました。

 これは国としていろいろと支援策というのを具体的に進めていくべきなんだろうなというふうに思っておりますが、踏み込んで、どういった形をとっていけばいいのか、先生の御知見を御教示いただけたらありがたいと思います。

竹下参考人 重要な御指摘をありがとうございました。

 二点だけ、答えさせていただきます。

 まず一点目は、点訳、音訳という言い方をしますけれども、点字化、音声化されるものは出版物の中で極めて一部でしかありません。それは、どうしてもボランティアの手をお願いするしかない、そういう現実があるわけですが、そうすると、そのボランティアの方々に頼るにしても、そのボランティアの方々を更に安定的に活動できるようにするときには、どれだけの条件がそこに用意されるかというのがあります。

 例えば、かつてのように、電子データが出る前の時代のように、点筆といいますけれども、一個ずつの点字を打ちながら点訳するのと違いまして、現在では、テキストデータを手に入れますと、それをコンピューターで、先ほど申し上げたように、いきなり点訳ソフトで点字化できます。それで、そのソフトが誤読した部分だけをボランティアの方がチェックして点字の本を完成させることができるわけです。

 それから、拡大文字も同じでして、電子データをボランティアの方々が、当の障害者の目の状態に合わせてポイント数を変更して、その変更したポイントで読みやすさを更にレイアウトしていくという形がとれるわけですから、非常にボランティア活動そのものがより活発になって、点字や録音、あるいは拡大文字がつくられるということがあります。

 もう一つの問題は、電子データが直接、視覚障害者でいいますと、例えば出版者から買えるとか、あるいは図書館から電子データのものを借りられる、その借りたあるいは購入した電子データが、電子録音の形式において点字化や音声化が非常にしやすい、そういうデータであることを我々は望んでおりまして、そういう形式で提供していただくと、直接出版者から購入したデータを自分で音声で直接聞けたり、あるいは図書館から電子データを借りてそのまま音声で読書ができるという環境をつくれるわけであります。そういう意味では、出版者の御理解で、データの形式を点字化や拡大文字にしやすい形式で提供していただく、そういう環境をつくっていただくことをお願いしたいというのが大きな一点目になります。

 もう一つは、今はいろいろなところが電子情報を持っているわけです。国会図書館も持つ。全国の点字図書館の一つのネットワーク化された図書館でも持っている。ところが、それらの電子情報が我々に自由に使える環境に今なっているか。全国にある公共図書館も含めて、その状況はまだでき上がっておりません。これをぜひ、どこにいても電子情報化されたものが利用できる、そういうインターネットの環境を整えていただくことを私たちは実現していただきたいと思っている次第であります。

 どうもありがとうございました。

上杉委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、質問を終了いたします。三人の先生方、本当にありがとうございました。

冨岡委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党・市民クラブの櫻井周と申します。

 参考人の先生方には初めてお会いすることになろうかと思います。昨年の十月初当選の議員でございます。フレッシュな質問をさせていただきたいと思います。

 まず、竹下先生にお伺いをします。

 先ほどもいろいろお話をいただきました。最初のお話の中で、ボランティア活動をいただいて、その協力でいろいろな、点字であるとか音声、読み上げというようなことをつくってもらっているけれども、そのボランティア活動が制限されるようなことになりはしないか、まだ不十分な可能性があるのではないか、そのような御懸念も示されていたように拝聴いたしました。

 もし御懸念の点、ここをこう改善してくれたらいいんだとか、ないしは運用の段階でこういうことに気をつけてほしいというものがありましたら、ぜひ教えていただきたいと思います。

竹下参考人 ありがとうございます。

 実は、これまでも、ボランティア団体が点訳や音声化、特に音声化が問題なんですけれども、音声化する場合に、文化庁の長官が定めた要件を具備したボランティアにつきましては、その活動において、一つ一つの著作物について認諾をとらなくても録音できたわけです。

 しかし、その要件が非常に厳しかったために、なかなかボランティアの方の活動が自由にできないという現実があるわけです。すなわち、その要件に当てはまらないボランティア団体の方々は、一個一個の著作物について著者の了解を得ないと録音できない、そういう状況があったわけです。

 今回の改正で、その部分が緩和されて、より幅広い形でボランティアの方々が活動できるようになるだろうと期待しているわけですが、そうであったとしても、誰でもがボランティアという名のもとに録音をできる、そういう無秩序なものでは多分あってはならないんだろうと思うんです。

 その点で、一定の、現実に具備が可能な要件を準備していただいて、そして、そのボランティア団体が、文化庁の定める、例えば登録機関に登録をすることによってボランティア活動ができるようになる、そしてそれによって自由に録音図書がつくれるようになるという環境を期待しているわけですが、今回、そのボランティアの活動が大きく拡大するような登録制になるかどうかというところが、まだ少し私の方は理解できていないので、懸念しているという状況でございます。

 以上でございます。

櫻井委員 それから、竹下先生に再度お尋ねをさせていただきます。

 先ほどのお話の中で、学校教育の現場で、検定の教科書については、デジタルの情報も提供されているから非常に利便性が高まっている、しかし課題は副教材、こちらについては、デジタルのものが提供されないので非常に困っているというお話もございました。また、そもそも、世の中、今どき出版される出版物というのは、ほとんどはもうデジタルベースでつくられている、そういったものにアクセスできるのであれば、非常に円滑に書籍を楽しむことができるというお話もいただきました。

 これは、もしかすると法律によってどうこうということの外枠になってしまうかもしれませんが、そうしたことも含めて、また出版業界のある種社会的な貢献という観点からも、御要望等ありましたら、ぜひこの機会を利用して御説明いただければと思います。

竹下参考人 ありがとうございます。

 まず一点目の、先生の御質問の教科書の関連の部分ですが、きょうはちょっと資料を確認してきませんでしたけれども、もう何年か前になるわけですが、統合教育を受けている人たち、すなわち、盲学校とか聾学校ではなくて地域の学校に就学している子供さんたちが、その学校で教科書を手に入れようと思うと、ボランティアの方々が、あるいは親御さんたちが紙媒体を、例えば教科書でいうと、五人で点訳するためには、それをちぎって五人で点訳をして、それを子供さんに提供するということをやっていたわけです。これではなかなか授業の進みぐあいに間に合わないという現実がありました。

 そういう中で、この間の当事者団体の働きかけや文科省の御理解をいただいて、そして教科書を出版していただいている方々の御理解をいただいて、検定教科書に関しましては、点字化とか拡大文字をつくっている、そういうボランティア団体や図書館などにデータ提供がされるようになったおかげで、地域の学校に通っている視覚障害者が非常に、教科書に関してはバリアフリー化されたというふうに理解しています。

 しかし、先ほども申し上げましたけれども、それが教科書に限定されておりまして、現実に学校で使うのは、副教材というんでしょうか、教科書以外の教材であったり問題集などにつきましてはそういう便宜が図られていないために、子供さんたちは非常に苦労しております。

 そういうところで、結局は、いまだ問題集や副教材につきましては出版者等からのデータ提供がないために、非常に自由にというか幅広くスピード感を持って点字化や拡大文字化できないという現実があるので、この部分を改善いただければと思っているわけでございます。

 二点目の部分は、実はこの一点目にもかぶってくるわけなんですけれども、社会にずっと出版される、年何万か正確にわかりませんが、そういう出版物の中で私たちが、どの出版者も持っているであろう電子データ、これの利用が、しかもそれが、デジタルの形式において一番我々がアクセスしやすいのはテキストデータなんだそうですけれども、そういう音声化したり、点訳したり、それから拡大するときに、非常に便利なテキストデータで利用できるようにしていただければと。

 これにつきましては、それを自由というのはあり得ないとは思っていまして、例えば、今でもそうなんですが、一部の出版者、あるいは、ごく例外的なまだ数ですけれども、作家の方々が、自分の本については、自分の会社については、視覚障害者が購入したときは、裏についているカードを出版社に送ると電子データをCDで送ってくれるわけです。ごく例外的ですけれども、そういう便宜を図ってくれている方々がおられるのを、もっと全ての出版物について、そういう形で、本を買った視覚障害者がデータも希望すればそれに添付してもらえる、こういう環境をつくっていただければ、先ほど申し上げた副教材等についてもあわせて解決できるのではないかなと思っている次第でございます。

 よろしくお願いいたします。

櫻井委員 御説明ありがとうございました。

 続きまして、岸原先生にお尋ねしたいと思います。

 先ほどのお話の中で、グローバル化のジレンマ、それから明確化のパラドックス、こういうお話をいただきました。これらは、ある種、法律、我が国の著作権法が障害となって起きているのか、それとも、若しくは、我が国の企業文化といいますか、リスクアバースとも考えられるような、そうした企業文化にあるのか、この点について御説明いただけますでしょうか。

岸原参考人 先ほどの部分に関しては、著作権法の例ということで御説明をさせていただきました。おっしゃるように、企業文化というか、日本人が持っているメンタリティーということが、当然のことながら、法制度というのは日本国民でつくったものでございますので、そこの関係性があるというところからすると、両方原因があるのではないかなというふうに思います。

 これは私見でございますけれども、日本の制度というのは、形式である程度事前に整理をした上で制度をつくる、あるいは、これは礼儀とかいうところも全部そうだと思うんですが、これのよさというのは、社会を安定化させるという部分ではすごく有効で、そういった点では、今、日本の社会ってすごく安定しているんだと思うんですが、一方で、これというのは形に依存してしまいますので、どうしても硬直化をするという弊害が多分あるのではないかなと思っております。

 ですので、先ほど言いましたグローバル化のところだったりとかあるいは明確化のパラドックス、要するに、法律をつくる上でも明確にしなきゃいけないということで、非常に考えられるだけのこと、私も法改正のたびにお役所から言われて、どんな場合が考えられるんですか、全部出してくださいと言われるんですが、いや、来年どうなっているかわかりませんという中で厳密化していかなきゃいけないというのは、事前にある程度決めてしまう、ただし、日本人としては、そういった形式の中で安定的に運用するというところは非常に落ちつきどころがいいというところがありますので、これは、我々からの反省でもあるんですが、役所が硬直的だというんですが、よくよく聞いてみると、民間から決めてくださいというパターンが結構多くて、そんな曖昧じゃ我々はどうしていいかわかりませんと。

 だから、最近、裏では言っているんですが、余り明確化を要望するのはやめましょう、ちゃんと自分で考えて自分の責任で行動していくと。ただし、法律の中で、原則は明確化していただくというのがいいのではないかなということかなというふうに思います。済みません。

櫻井委員 ありがとうございます。

 今のお話と、それから、先ほど御説明いただいていたプリンシプルベースにより重点を置くべきだというお話、プリンシプルをしっかりとした上で、あとは現場の方で実際の企業なり市民が考えて自分で行動するというお話だったかと思います。それに対応できるだけのデザイン思考の法律でなければいけないというお話もいただきましたので、その点、よく理解させていただきました。

 ただ、これらについて、まだ発展途上といいますか、課題があるのかなというふうにお話を聞いていて感じたんですけれども、更にデザイン思考ですとかプリンシプルベースを進めていくに当たり、そして、これをしっかりと進めていけば、著作権法、今みたいに長くなくてもっとコンパクトにできるのではないのか、そのようなお話もいただきましたが、その点についてもう少しお話しいただけますでしょうか。

岸原参考人 まずは、今回の改正なんですが、とてもイノベーティブだしデザイン思考で考えられた法改正だというふうに非常に評価をしております。

 ただ一方で、当然のことながら、現状どちらかというと、出ている事例から整理をしてそこから導き出すということでございますので、現段階では、報告書ができた去年、あるいは現在出ておりますさまざまな先進サービスを前提につくられているということが言えるのではないかなというふうに思います。

 そういった点では、やはり著作権法自体がそもそも何を守るべきで、ではがちがちに権利保護をすればこれがいいのかというと、一方で、社会の便益を提供する、社会の進化を提供していくというところが大きな法の趣旨ではないかなというふうに思っております。

 ですので、これも個人的な話になるんですが、最終的には立法趣旨、そこに多分もう多くのことが書いてあって、そこからさまざまな原則をまさしく国会で発見して、それをどんどん追加していく、その変えるところは立法趣旨ではないかな、そこに解はもう既に書いてあるのではないかなというふうに思っております。済みません、生意気言いまして。

櫻井委員 もう時間がほとんどなくなってまいりましたので、最後の質問にさせていただきます。

 土肥先生にお伺いをいたします。

 先ほど学校現場のお話もいただきました。ただ、学校と一言で言っても、大学もあれば、小学校、中学校、高校といろいろございます。学校の事務処理レベルというのも、能力も学校のレベルによって全然変わってくるのではなかろうかというふうにも思うんですが、今回の法改正によって、学校現場、特に小学校、中学校、先ほどまた竹下先生からもお話がありましたけれども、特にインクルーシブ教育をやっている方々に対して考えたときに、どこまでしっかりできるのかな、学校の負担にはなりはしないのかということもちょっと懸念をするんですが、その点についてどのようにお考えでしょうか。

土肥参考人 そこのところは非常に重要なところでございまして、先ほど少し申し上げましたが、いわゆる教育利用の準備協議会という場において補償金のシステムに関しては検討するわけですけれども、我々が期待しておりますのは、それは単に補償金の問題だけ扱うというわけではなくて、もっと幅広い、つまり教育に関するライセンス、そういったものの窓口、あるいは、教育という場面において先生方がお持ちになっているいろいろなノウハウは、これは資源でございますので、そういう質の高い教育資源を一人一人の先生あるいは一つの学校の中でとどめるよりも、例えば県全体でとかそういう共有の問題なんかも必要なんだと思います。

 ですから、そういうあらゆる問題を一つの窓口で処理できるようにして、小学校、中学校、高校、大学、いろいろあると思うんですけれども、そういういろいろな学校教育の先生方が迷わないで処理できるような仕組みが一つあるんだと思います。

 それからやはり、おっしゃるところは、大学のような場面においての著作物の利用と小学校一年生、二年生ぐらいのレベルにおける著作物の利用というのは恐らく違うんですよね。

 例えば、そこで同じ扱いにするというのは、これは逆に不平等ということになりますので、先生がおっしゃるような、学校ごとにまた考えていく、そういう仕組みを、あと三年ほどありますので、三年の中で、準備協議会の中できちんと策定していただきたいというふうに私は期待しているところでございます。

櫻井委員 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、長島昭久君。

長島委員 希望の党の長島昭久です。

 きょうは、参考人の先生方、大変お忙しい中お越しをいただきまして、それぞれ大変貴重な御所見を開陳いただきまして、本当にありがとうございます。

 冒頭に土肥先生が簡潔にまとめていただいた今回の改正の四つの柱、その中でも、今何度もお話が出ておりましたけれども、革新的ともいうべき改正点というのは、やはり権利制限規定、これを柔軟化したと。先ほど岸原参考人は、イノベーティブな改革だった、こう御評価をいただいたわけですけれども、これはずっと、この間十年ほど、もっとかもしれませんけれども、これはもう土肥先生が一番お詳しいと思いますが、議論の中で、例えばアメリカのようなフェアユースの考え方をそのまま取り入れたらどうかと。それは、具体的に言うと四つの要素で、それぞれは契約ベースでやるとして、そこからはみ出るようなものは、四つの基準に照らして、いいか悪いか。この方が、先ほど来話が出ているような、長文難解な著作権法というものではなくて、非常に簡潔にわかるということなんだろうと思うんですね。

 資料にあった、モバイル・コンテンツ・フォーラムの皆さんからの要望書にも、ずばりフェアユースという言葉は使っていませんでしたけれども、気持ちの中では限りなく、この方が、さっきもおっしゃっておられた思考のフレームワークが限定されることなく、本当にイノベーションにも貢献できる、事業者あるいは利用者サイドに立った改革が進んでいくんじゃないか、こういう私は印象を持ったんですが、改めて、岸原参考人に、その辺についての思いあるいは御提言があればお聞かせいただきたいと思います。

岸原参考人 一般的に、フェアユースというと、事業者が何でも好き勝手できるというイメージがあるんですが、逆に、現状ではまさしくどこまでがいいというのははっきりわかりませんので、これはある程度事業者もリスクをしょった上で対応しなければいけない。

 ただし、何がいいかということなんですが、先ほどアイポッドの例で、千曲複製できますと。当時、アメリカのレコード協会まで含めて、SDMIというセキュアな音楽の管理方式というのを世界的にやりましょうと。日本人は真面目ですから、それを受け入れて、一曲一曲管理をして、最大三曲まで複製とか、全部厳密にやっていたんですが、先ほどのように、スティーブ・ジョブズは、こんなんじゃユーザーは、アルバム一個しか持ち出せないの、それじゃつまらないでしょう、最低千曲、要するに十枚ぐらいのアルバムがないと俺は楽しめないよと。結局、ユーザーの支持を得てやったんですが、こういったものも含めて、新たな対応をしようといったときに、我々は社会に対して便益を提供するんだと。しかも、アップルがやっていることは、フェアプレーという形で一定のDRM機能はやっています。ただし、複製は自由にできたりと、これは日本人の感覚では信じられない。

 要するに、著作権法でいうと、どんな複製であっても全部許諾をとらなきゃいけないということになっていきますので、私的複製とか権利制限規定はいっぱいあるんですが、そのときに、事業者として我々は社会的な意義がある、対処もこうやっているというロジックを組む根拠になるというのが、フェアユースというか一般規定のよさではないかなと思っております。

 現状では、形式だけであれば、要するに手の上げ下げ、一度上げた段階で違法になる。でも、四十五度と四十六度、一緒でしょう。権利者も後から聞くと、まあ、それぐらいいいんじゃないのと言うんですが、形式的ならば、複製という権利を手放すことはできないということになると、一度上がっただけで全部違法。ユーザーにとっても権利者にとっても何の問題もないものも、何も踏み出せないという、そのところに、事業者とかがリスクをとった上で、社会に便益を提供する、一定の権利も保護するといったことを対処した上でトライすることができるといったのが一番有効な部分ではないかなというふうに思っています。

長島委員 岸原参考人、ありがとうございました。

 同じ観点から、土肥先生にぜひお伺いをしたいと思っているんですが、これも私どもがいただいた資料の中に、前回の改正についての御所見が開陳されている文章があって、最後に内閣法制局の壁に阻まれた、そういう趣旨の御発言があったんですけれども、先生は分科会長として、この間、本当に著作権法の累次にわたる改正議論をリードされてこられた、そういう立場で、本音ではフェアユースのような包括的な権利制限規定というものが日本にも必要ではないか、そういう思いがお強かったのではないか。

 しかし、なかなかそれが前に進まずに、今回の改正である程度は達成できたというふうに私どもも実感は持っているんですけれども、議論の経緯を踏まえて、まだこういうところが改善の余地があるぞというような、将来にわたっての課題など御示唆いただければと思います。

土肥参考人 御質問ありがとうございます。

 本音でも、今回の法改正というのは、近年にないほどよくできていると私は思っているんですね。それは、内容もそうなんですけれども、プロセスもそうなんですね。

 私、今も先生もおっしゃっていただいているように、割合長くこの著作権分科会にかかわらせていただいているんですが、今回非常に特色的なプロセスということでいうと、いわゆる市場環境調査といいますか、そういう実態調査をやっているんですよ。つまり、仮に、今御質問があったようなフェアユース、こういったものが入った場合に、市場のプレーヤーはどういうふうに行動するのかという影響効果、こういったものを広い視点で、ロー・アンド・エコノミー、ローエコの観点とかあるいは法社会学的な観点とか、そういういろいろな手法を使って調査を作業部会を通じてやっております。

 これは、恐らくこれまでにない手法でありまして、その中で、やはり、いわゆる先生おっしゃる四つのエレメントでフェアかアンフェアかを決める、そういう形だと事業者は安心して事業の開発等々に手を出せない、乗り出せないというような、そういう分析調査が出ております。

 先ほどから出ておりますように、明確性というのも非常に必要なことなんですね。要するに、それはバランスの問題でありまして、そういうバランスを見ていくというところで考えております。

 それと、一つは、ある程度、既に過去の裁判例その他で利用の実態というものがわかるような領域、例えば図書館の実務、学校教育の場面、あるいは引用の場面とか、いろいろ定型的にある程度予測がつく分野と、CPSのようなサイバーフィジカルシステムという部分、ヒアリングの際の説明をもってしても、なかなか難しいことをおっしゃっておられるし、御本人もよくわからないんだということを自白されるぐらいのところでございますので、そういう新しい分野については流動性を非常に高める。従来からわかっている部分については、ある程度、具体的な権利制限規定を使って権利制限を実現する。

 しかし、今回の場合は非常に、一言で言うのがいいかどうかわかりませんが、いわゆるそういうデジタルネットワーク技術の分野については、事実上フェアユースは入っています。つまり、それほど高い自由度を事業者の方に、バックヤードでの複製の問題、そして、それを表に出される、リアルワールドに出される場合についてのそういう場面、これは軽微性というところがあるんですけれども、そういうところからすると、実際には、そういう部分については非常に流動性を高めた権利制限規定を設けておりますので、先ほどから言っておりますように、プロセスもよかったし内容もよかった、そういう改正ではないかというふうに自負しております。

長島委員 午後の質疑がなかなかやりにくいような、今、参考人の先生の御発言だったと思うんですけれども、竹下参考人にお伺いをしたいと思っています。

 先生は、常々、法整備の前に環境整備を、こういうことをお訴えになられてこられたと思いますし、先ほど来のお話も大変興味深く拝聴させていただきましたけれども、テレビ放送について一点お伺いしたいんです。

 テレビというのは大変大事な情報源だというふうに思っておりますが、今でも一部の番組では音声解説というのが付されています。ただ、とても十分であるとは思えません。

 放送のバリアフリー化について、先生の御所見を承れればありがたいと思います。ちょっと抽象的な御質問で恐縮でございます。

竹下参考人 ありがとうございます。

 残念ながら、現時点では、NHKさんの場合で解説放送が可能な番組について音声化が一〇%の目標でやられていて、民間については五%という目標の中で進められているという現実があります。

 最も大事なのは、二つここで指摘したいのは、一つは、放送事業者みずからが音声解説をつけるということについては、もっともっと広げていっていただきたいわけです。その場合に問題となるのは、視覚障害者で申しますと、必要としている最も重要なものすらがまだ音声解説になっていないわけです。

 例えば、緊急放送、いつも字幕で出るかと思うんですけれども、最初のピンポンか何かそういう音しか鳴らなくて、あと、緊急放送の字幕が出てもそれは音声化されないんです、現時点でも。それから、例えば外国語のいろいろなインタビュー番組なんかでも、当然、文字解説で日本語が出るわけですが、それも音声化されません。そういう現実の中で、私たち視覚障害者は、テレビというものでなかなか十分な情報を得ることができないでいる。

 ちなみに、変な言い方かもしれません、我々目が見えない仲間はテレビなんか見ないのと違うのと言う人がいるんですけれども、そうではなくて、視覚障害者の八割ほどの人たちはテレビでたくさんの情報を得ているんです。それほど、ほとんどの視覚障害者はテレビを、我々は画面は見えませんから、音声だけを聞きながらテレビを見るという表現をしているくらいテレビに頼っているわけでございます。

 もう一つの問題は、じゃ、放送事業者自身が音声解説をつけられないのならば、音声解説を専門にやるサービス会社がそれを担おうじゃないかということを考えているシステムがあるわけですが、これについては、きょう議論になっている著作権法がまたひっかかってきて、そう自由に音声解説をつけたり番組内容にさわれないという現実があるために拡大できていないという状況がございます。この点をも、ぜひとも改善していただくことを私たちは強く願っている次第でございます。

 以上でございます。

長島委員 竹下先生、ありがとうございました。

 最後に、教育現場におけるICT活用の促進について土肥先生にお伺いしたいと思いますが、私、ちょっとこれは腑に落ちない。先ほどもお話でありましたが、有償のものと無償のものがある。ネット配信というのは非常に大事な私はこれからツールになっていくんだろうというふうに思います。

 そもそも、有償で教育現場に負担をさせることの是非については問われなきゃならないと思うんですが、その点について一言先生に御感想を伺いたいのと、あと、補償金の制度ですね、制度設計。これは指定管理団体ができるわけですけれども、まず、どういう団体であるべきで、そしてどのように徴収し、そしてどのようにそれをまた著作者に配分していくかという、この制度設計について御所見があれば承りたいと思います。

土肥参考人 御質問ありがとうございます。

 実は、非常にそこのところ、まだ流動的な部分もあるんですが、法律で決まっておりますところは、一元的な窓口をつくると。つまり、指定権利管理団体というもの、その一元的なものをつくりまして、その中に構成員として各著作物を管理する団体がメンバーとして入る。仕組みそのものは非常に、いわゆる透明性のある民主的なそういう構成にするわけでありますけれども、具体の姿形というのはやはりこれからなんですね。

 先ほどから出てくる準備協議会なるものは、まだ法律が成立しておりませんので、先走って恐らく余りできないんだろうと思います、つまり、法律がないので先にそういうものをつくるというのもなんなんですから。そこで、恐らく法律が成立いたしましたら進んでいくんだろうと思うんですけれども、言えますことは、従来ある録音、録画に関する補償金の指定管理団体、そういうものが参考になるんだろうと思います。そういうものを参考にしながら、合理性のある一元的な組織をどうやってつくっていくのかというのは、この三年の間に考えられていくんじゃないかなというふうに思っております。

 何分、私としては期待だけなんですけれども、いわゆる教育関係者、あるいは教育機関の設置者、あるいは父兄の方、そういったところの方々になるほどという合理性を感じてもらえるような、そういう内容にしてもらいたいというふうに期待をしております。

 あと、補償金を、異時授業公衆送信なんですけれども、確かに、これまで三十五条は無償でやってきておりますけれども、よく考えてみると、教育という場面においても、著作物に関する権利はやはり尊重される必要があるんじゃないかなというふうに思っています。

 教科書でそういうふうに尊重され、あるいは、ある場面においては試験問題なんかも営利団体のものについては補償金の対象になりますし、あるいは学校教育番組でもそうですし、国際的に見ても、大体、純粋に無償ということはまずないんですね。

 ですから、これから生涯学習ということで、いつでも、誰でも、自由な時間にどこからでもアクセスできる、そういう教育をやり、質を高めていくためには、ここでぜひとも補償金のついた異時授業公衆送信というものをお認めいただきたいなというふうに思っておるところでございます。

 よろしくお願いします。

長島委員 ありがとうございました。

 これで終わります。

冨岡委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 きょうは、三人の参考人の皆様に来ていただきました。土肥先生、岸原専務理事、また竹下会長、それぞれのお立場から大変に貴重な御所見、御意見をいただいておりまして、本当に感謝を申し上げます。

 今回の法改正、まず土肥先生にお伺いをしたいんですけれども、先ほど来お話聞いておりまして、非常に画期的な改正だというふうに私も思っておりまして、今まで、日本の著作権法の考え方、かなり個別具体的に規定をそれぞれ置いておったものが、非常に抽象度の高いそうした形にもう一度概念をくくり直したというか、そういう意味では私も本当に画期的な改正なんだというふうに思っております。

 この改正に当たりまして、さまざまの御苦労、御議論をいただいておりますことに改めて敬意を表させていただく次第でございます。

 先ほどかなりいろいろな論点が出てまいりましたので、私の方からは二点、土肥先生にお伺いをしたいと思っておりまして、一つは、今までもお話出ておりましたけれども、今回、A類型、B類型、C類型ということで、三つのカテゴリーにくくってということでやっておりますけれども、残念ながら、積み残しというか、C類型のところはなかなか権利の調整というか議論が進んでおらなくて、これからの検討課題だなというふうに思っております。

 このC類型の取扱いについて、今後どのようにやっていくのか、それがいいのかというのが一点。

 もう一つは、今回法律をつくりまして、確かに運用の部分で、例えばガイドラインをどういうふうにつくっていくかとか、事業者の皆さんからは、ある程度の考え方というものがないとわかりにくいという御意見もあったり、岸原専務理事の方から、そこはバランスというか、仕様を余り決め過ぎると、というよりは原則的なものをという御議論もございましたけれども、そういう意味では、今後の施行に向けての運用のあり方というのもかなり慎重にやらないといけないんだろうなとは思っておりますので、こうした実際に運用していく場面に当たって気をつけていくこととか、そうした御意見について、二点伺えればというふうに思います。よろしくお願いいたします。

土肥参考人 御質問、ありがとうございました。

 まず、今回の改正で、三つの層、第一層、第二層、第三層というふうに分けておるわけでございますけれども、いわゆるバックヤードでの著作物の利用というのは、著作物の本来的利用ではなくて、いわゆる著作物の表現の享受をしない、そういう使用類型、ここの部分が一つあるわけですね。

 それから二つ目に、同様に、著作物の本来的な利用ではないんだけれども、やはり、表現の一部を認識するような使われ方、例えば、検索エンジンとか、盗作、剽窃、そういう論文検索サービスといいますか、論文の中でこういう部分は無断引用した部分ではないかというようなことを調べる、そういうサービスなんかなんですけれども、そういう場面では、確かに、著作物の本来的な利用ではないんだけれども、表現の一部を認識する、そういう場面がございますので、そういうところを分け、かつ、先ほどから出てくる定型的なところ、この三層で考えておるわけであります。

 特に、第一層というんですか、いわゆるバックヤードの部分はほとんど、ここまでいいのかというぐらい高い自由度を事業者の方に提供しておりますし、第二層の表現の一部について利用するような場面についても、これも、少なくとも、現在の検索エンジンサービスなんかについては、より高い自由度を設けておるわけであります。

 事業者の方は、フェアユース、フェアユースというふうにすぐおっしゃるんですけれども、そういうふうなものをもし用意したらそれを利用していただけるかというと、なかなかそうではないのが日本の実態なんですね。大体、一年間に知的財産権侵害訴訟の受理件数が六百前後あるわけですけれども、著作権については百五十とか、そのあたりなんですね、一年間に。

 ですから、アメリカなんかに比べると非常に少ないし、また、制度も米国と日本の間では違います。現に、今度の改正法案のような内容であっても、本来は、自由度を高めたわけですから、あとは立法府から司法府に規範定立は移っていく、そういう運命にあるわけですけれども、事業者の方はガイドラインを構築してほしいというふうなことをおっしゃるわけですね。

 ガイドラインをつくるということについては、文化庁の方も前向きに対応するんだろうと思いますが、本来は、それは自分たちで、せっかくつくられた自由度の高い権利制限規定の領域なので、自分の力で努力してほしいなと私個人はそういうふうに思っております。

 ですが、さはさりながら、そうもいかないものですから、ガイドラインというようなものを使いながら、できるだけスムーズにこの新しい権利制限規定に事業者の方々が順応していただくということを期待しております。

中野委員 ありがとうございます。

 岸原専務理事にもぜひちょっとお伺いをしたいのが、私、今回の著作権法の改正を受けて、本当に、日本のコンテンツ産業というか、そういうものがより活性化していくような、そういうことをぜひ期待しておるんですけれども、最近のこの著作権法の改正の流れをずっと見ていますと、どうしてもデジタル化というかIT、そういう技術が進んでいく中で、なかなか権利の保護と実態が追いついていかないというか、ダウンロードを規制するとか、ああいう改正の話がございましたけれども、そういう意味では、こういうふうに非常に技術が進んでいく中で、権利をどう保護するかという議論も大事なんですけれども、技術が進む中で、コンテンツ産業がどうやって発展していくかという、ビジネスモデルというか、そういうのも非常に大事かなというふうに思っておりまして、こちらの議論だけをしていてもなかなか、今漫画の海賊版みたいな話もございますけれども、コンテンツ産業自体の活性化というところを何か、どういう形で後押ししていけるのかなというのが、私もこの議論にかかわってきまして、ちょっと非常に難しいなと思っているところなんです。

 そうした、コンテンツ産業の振興という意味で、著作権の問題というのもあるんですけれども、どういう形で国がそういうものを後押ししていけるのかということについて、何か意見というか、御示唆をぜひいただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

岸原参考人 そうですね、権利保護という観点は非常に重要で、これは権利が保護されていないとビジネスも立ち行かないし、逆にビジネスにならないと今度は著作権者の人たちも新しいコンテンツを生み出してこられない。いいループが回ってくるのが、利用者にとってもいいし、事業者にとってもいいし、権利者の方たちにとってもいい。

 そういった意味では、がちがちに管理をして、誰も複製させないようにするのは実はできるんですけれども、これをやると、権利者の方たちには何のフィードバックもない。そうすると、新しいコンテンツが生まれてこないという不幸なことになってきます。

 そのための、通常は悪い人を取っ捕まえてというのが一般的に考えられることなんですけれども、一方で、例えば今、音楽の配信で、先ほどアップルの例がありましたが、実は北欧で出てきたスポティファイというサービスが今一番伸びていて、これは、出てきたときに、違法対策でこのサービスを普及させますということだったんですよ。

 要するに、複製、ダウンロードではなく、ストリーム配信で多くの楽曲を利用できることによって、ユーザーをそちらの方に誘導していけば、自然と、わざわざ何かどこにあるかわからないようなサイトにアクセスして、ウイルスの危険性を冒しながらコンテンツを使うよりは、正当に利用する。そうすると、自然と違法コンテンツもなくなっていくんじゃないかと。

 見事にあれだけユーザーをふやしてやってきていますということからすると、権利保護の上でも、正当なビジネスが広く提供される、利用者にとって、利便性よく音楽とかコンテンツ、漫画というものが利用できるという環境をつくっていくというのが非常に重要で、逆にそれをやることによって、わざわざリスクを冒して、利用者も不正コンテンツに手を染めたりということがなくなってくるというのが、まさに実態例としてあるんではないかなというふうに思っております。

 先ほどの、まさしく法律ではこういう柔軟な規定ができたんですけれども、よくあるパターンで、政令、規則、ガイドラインとやっていくとだんだんもとに戻っちゃうという例が過去にあって、これは要するに、先ほどの反省も込めて言いますが、民間から決めてくださいと言うと、役所の人も真面目だからどんどん決めちゃう、そうするともとに戻っちゃうということなんです。

 そういった点で、これから、そういう明確とか、ガイドラインがないとわからないというときに、追加するのであれば、例示の追加。今回も、土肥先生を始めとして、法案の中にも入っておりますが、要するに、これじゃなきゃいけないというんではなく、これの説明としての例示はこれですよと。例示の場合であれば、それ以外のものも許容できるということになってきますので、ぜひ、先生方から、お役所の方たちが変な方向に行かないように、それを明確化するんだったら例示でいいんじゃないのというふうにやっていただけるといいんじゃないかなというふうに思います。

中野委員 ありがとうございます、貴重な御意見を頂戴いたしまして。

 時間も迫ってまいりましたので、竹下会長にもお伺いをしたいというふうに思います。

 今回、会長からも、教育の話のバリアフリー化というところでさまざま御指摘や御要望もいただいておりました。私ども公明党も、今までこうした教科書の問題、DAISY教科書等々を含め、本当にアクセスしやすい形でしっかりやっていきたいということでやってまいりまして、教科書についてはデータの提供がありましたけれども、参考書や副読本というふうな御指摘もございまして、いろんな御指摘を受けながら、しっかり私も頑張っていきたいというふうに思います。

 地元でも、障害者、特に視覚障害者の団体の方からも、私もいろいろ直接、先ほどテレビの関係でもお話がございましたけれども、御要望も伺ったことがございまして、確かに、緊急放送というのが、テレビをつけても、緊急放送だというのはわかってもその後がわからないということで、大変に御指摘もいただきまして、こうしたところも何とか対応していけるように、しっかりやっていきたいなというふうに思っております。

 さまざま御要望をいただいた中で、私ももっと活用していかないといけないなと思っておりますのが図書館、いろんな図書館のネットワーク化というふうなお話がございました。確かに、国会図書館、非常にいろんな電子データも持っておりますし、あらゆるところでそういうのが活用できるようになってくれば、非常にアクセスしやすくなるんだろうなというふうに思っております。

 こうした図書館のいろんなネットワークの活用、今後のあり方について、もしこうした点が更にということで、いろんな御指摘あるいは御要望等をいただければ。また、それに限らず、今まで出ていない論点で、こうしたところも大事なんだよということがもしあれば、補足してまた教えていただければと思いますので、会長、よろしくお願いいたします。

竹下参考人 重要な御質問をいただいて、ありがとうございます。

 例えば、今、視覚障害者に限りませんが、大学で学んでいる障害児が非常にたくさんふえております。そして、大学も、私なんかが修学した時代と違いまして、非常に大学自体も積極的にそういう障害を持った学生を支援しております。

 そうすると、各大学ごとに、一人の、例えば視覚障害者のために、教材であったり、さまざまな文献を録音したり、拡大文字化したり、データ化したものをたくさん持っております。ところが、その一人のためにつくったものが、それでとどまってしまっているわけです。

 それをインターネットで、全てのとは言いませんが、もっと幅広い形で利用できるようにできないんだろうか。すなわち、大学図書館が持っているそうしたデータも、公共図書館が持っているデータも、そして学校図書館も、全体もそうなんですけれども、そういうせっかくある電子媒体でのデータが、あるいは文献が、ほかの必要としている視覚障害者などに利用できない状態が続いているから非常にもったいないし、残念でなりません。

 こうした状態をなくしていくためには、先ほどちらっと申しましたように、国会図書館から全国の三千を超える公共図書館、これをたくさん持っておられる、八十を超える点字図書館、そして、大学の数まで知りませんが、大学図書館が持っている、そうした一人のためにつくられたデータがよりたくさんの人に利用できる環境をつくるというのは、今の技術の上ではネット化によって十分可能なので、そういう環境をつくる。

 しかも、そういう環境をつくるからには、それは一定のルールといいましょうか、乱用がされないような、そういうシステムも考えながらの環境づくりというものをやるには一定の立法化も必要なのかな、こう思っている次第でございます。

 ぜひ、そういう意味では、今は、一人のためにつくったものがたくさんの方に使えるという環境をつくり出せる時代ですので、そういうものを実現していただければと思っております。

 ありがとうございました。

中野委員 以上で質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、平野博文君。

平野委員 無所属の会の平野博文でございます。

 きょうは、著作権法の一部を改正する法律案として、三人の参考人の先生方に貴重な陳述を頂戴いたしました。改めて、しっかり聞かせていただきましたし、その上で少し御意見を拝聴したい、かように思っているところであります。

 まず、土肥先生にお聞きしたいと思うんですが、先生は、今回の法改正に当たって、文化審議会著作権部会の部会長をお務めいただいておりますし、平成二十三年のときにも、ちょうど私が文科大臣のときにも、この分野の専門家として、プロとして取りまとめをしていただいたと思っております。特に、法制問題の小委員会の主査をされておられる、こういうことでございました。

 二十三年のときにさかのぼって恐縮でございますが、いわゆる日本版のフェアユースについて議論されていたと思うんですが、その中身については、どういうことなのかということを簡潔にお聞きしたいと思いますが、その前に、先生、私、ずっと思うんですが、著作権という法体系、非常に難しいんですね。

 もう一つは、やはり、国民の多くが著作権ということについて意識がどのレベルまであるのかということと、非常にわかりにくい、こういうことが、私自身もそう思うんですが、そういう中での、先ほど私申し上げた点はどうなんでしょうか。

土肥参考人 二十三年当時の一般的な権利制限規定の導入の際、確かにいろいろ苦労させていただいたというか勉強させていただいたわけでございますけれども、あのときの法改正の内容は今回完全に盛り込まれておりますので、あのときの議論は実質的には非常に有益であったというふうに思っております。あれがあるからこそ、今回の法改正につながったのではないか。

 ただ、先ほどちょっと申し上げましたけれども、そのときの環境と今の環境、つまり、内外の、殻を破るときの、ひな鳥と親鳥の力関係がちょっと違っていたというふうに理解をしております。

 特に、あの時点で明確性ということが強く言われまして、この明確性に問題があるのではないかということがあったわけでございます。

 今回もいろいろなところで、例えば軽微あたりのところは、すごく、軽微とは何ぞやという形で御意見をいただいているわけでありますけれども、よくよく考えてみると、著作権法は、もともと軽微というものについては権利侵害としてこなかったんですね、歴史的に。今の権利制限規定というのは、スリーステップテストという、そういう条件のもとで各国は権利制限を定めることになっているわけですけれども、そういう基本的な原則の前は、つまり、スリーステップテストが入る前は、いわゆる軽微性の原則だけで権利制限していたんですね。

 要するに、デミニミスというラテン語を使いますけれども、軽微なものであれば、それは著作権侵害とはしないで、著作物を利用していい、そういう考え方でありますので、本来的には、著作権法が内包しているそういう概念が軽微性であり、それは権利侵害にはならないものだというふうに伝統的には考えられているんだろうと思います。

 難しいのは、ほかの知的財産法ではないんですが、著作権法だけは、制限又は例外となっていますよね、権利制限のところで。普通の知的財産法は、そんなことは全然ないんですよ。つまり、制限と見るのか例外と見るのか。

 つまり、コンチネンタル著作権法の考え方が一つ大きくあるのと、もう一つ、アングロアメリカン法系の考え方も一つあるわけでありますけれども、こういう大きな二つの流れの中で権利制限を、本来それは政策的に判断していい権利制限と見るのか、いや、これはあくまでも著作者の権利の例外として見るのかというスタートのところが、やはり大きく根本的にそれぞれ違うというところがあって、その上で議論させていただいたということでございます。

 よろしいでしょうか。ありがとうございました。

平野委員 今先生がいみじくも言われたんですが、私、あの当時、大臣として答弁した部分がございまして、そのときに先生が審議会で議論していただいたというところについての部分が的確に反映されていない、こういう、月報か何かで発言されているので、私も、非常に難しい権利体系にあると。

 こういう中で、その当時私はこういうふうに言いました。今先生はいみじくも言われましたが、やはり、アメリカの体系である判例主義と、我が国は、あの当時の私の答弁の言葉で言えば、実定法主義という表現をいたしましたでしょうか、その違いがあるんだということ。刑罰法規としてやはり明確性に欠けるんだ、こういうこと。やはり、居直り侵害というんでしょうか、そういうところを助長していったときは困るね等々、こういうことを、純粋にアメリカ型のフェアユースを持ち込むことについては困難性があるんですよということは言った。私、そういうのを国会で答弁したことは記憶にございます。

 しかし、一方では、我々が想定する以上に科学技術の進歩というのはあるわけでありますし、一番の問題は、やはり、アナログからデジタルに変わって、IT化に動いていっていると。

 今、いわんや、クラウドと言われるように、どこにそのメモリーがあるかわからない中で、それを本当に我が国の法体系の中で、著作権の権利制限をどうやってできるんだと。そのことによって、さらには新たな技術を開発していく、あるいはクリエーティブに物事を創造していく何らかの萎縮作業になりはしないか。こんなところが混在をして、あるものですから、何が一番正しい、著作権の権利者に対する権利保護と、あるいは先ほど言われましたように、利便性を高める、公益性を高めていく、このバランスが、どの時代でどういうふうにとっていったらいいのかということがなかなか不明確である、こういうことが、私、一つ言えると思うんですね。

 もう一つ、一方ではやはり、法体系というのは大体そうなんですが、物事の事象が起こってきたときに、後追いで法改正をして、それをつないでいっているという、こういうことなんですね。私は、改めて、この著作権なんて、時代が大きくこんなに変化していっている中でありますから、もう少し先を見た法体系でもってこの著作権というものを見ていくという発想になるべきなんだろうと。それがいわゆる判例主義だと私は言いませんが、その辺は、土肥先生、どうなんでしょうか。

土肥参考人 非常に鋭いといいますか、厳しい御質問でございますけれども、確かに、先を見る目というのは必要だと思います。

 少なくとも、今言われているCPSというんでしょうか、つまり、リアルワールドのものに、情報に限らずあらゆるものをコンピューターとつないで、それをAIで分析、検討をして、そしてその成果をリアルワールドに戻し、そしてまたそこで得られるものをまたサイバー空間の中で分析、検討し、それをまた戻すという、そういうループといいますか、そういう循環を効率的にやっていく、それが第四次産業革命で目指しているところだというふうに聞いておりますけれども、すごいことを考えているなと私も聞きながら思っておりました。

 今回申し上げたいのは、そういう中のCPSのそういうループを今回の著作権法は妨げていないというふうに考えています。

 問題は、要するに、そのバックヤードは自由にやってもらうということだし、分析、検討も自由にやっていただくということですし、それをリアルワールドに戻すときは、確かに軽微というのはあるんですけれども、何を軽微というかというのは確かにいろいろあるんだと思うんですけれども、そこが先生おっしゃった著作権者の利益というものも当然あるわけでありますから、著作権者の利益とそういうCPSなんかの活動を通じて事業者が業務を展開される、そのあたりのバランスなんですよね。バランスの結果が今回の法改正であり、かつまた、それは世界で一番進んでいるんじゃないかと思います、日本の今度の改正案は。

 フェアユースというのがいい、いいと皆さんおっしゃるんだけれども、解決のためにすごくコストと時間がかかりますので、今回の改正はできますと言っているんだから、これは。できますと言っているわけですから、これ以上事業者の方にとって便利な明確なものはないんじゃないかと、私はもう本当にそこは強く申し上げておきたいと思います。

 よろしくお願いします。

平野委員 ただ、権利者と使用する企業等々を含めて見ますと、企業側から見ると、やはり明確にしてもらわないと、これは本当に権利の侵害になるのかどうかというのが曖昧で、それはもう司法で争ってくださいよみたいなことでありますと、企業側から見ると非常に複雑な思いですよね。社会的にこんな権利に侵害しているじゃないかと後で言われると企業イメージも落ちるというところですから、企業側サイドはやはりどうしても明確化してほしいというのは、心情においてもそのとおりだと私は思いますね。

 一方、しかし、利用者側、あるいは新たなビジネスを起こそうとしている方にとっては、そのことだけがあったためにクリエーターとしてクリエーティブな創造が萎縮するということはあっちゃいけない、こういうふうに思うものですから、何としてもこれは、私の個人的見解からいえば、著作権法の改正、こうやってやっていっているんですが、何かパッチワークをしているような気がしてなりません。

 したがいまして、ぜひ審議会の中でも、将来をある意味見通した包括的な部分の問題というのは、科学技術というのはどんどん進歩していきますから、そういう視点での議論もぜひ先生にお願いをしておきたい、かように思うわけでございます。

 時間が来ますが、もう一点、竹下参考人にお聞きをしたいと思っています。

 このときにも、障害者の方々における情報格差の解消は極めて重要な問題だというのは、二十四年の当時、私は申し上げたわけであります。しかし、そのためには情報アクセス権の保障という、こういう観点からいったら、権利制限の拡大というこんなことよりもアクセスを容易にするためにと、先ほど来御議論ございました。このことはやはり非常に大事なんだ、こういうことでございます。

 特に今、点字図書、録音図書などの作成というのはボランティアだということも先生からもお聞きをいたしたのでありますが、そういう方に今依存をしている、御支援をいただいているという、こういう視点から見ると、今一番大事な、これはぜひしてほしいという御要望があればぜひ先生からお聞きしたいな、かように思っています。

竹下参考人 重要な御指摘、御質問ありがとうございます。

 二つここでやはり、二つというか両面を見る必要があるかと思っております。

 一つは、今度の三十七条三項の改正によって受益者の便宜を図っていただくというのはあるんだけれども、ボランティアの方々が出版されている仮にデータを利用するにしても、必ずボランティアの介在というものは、これがなくならないと思っています。

 例えば、先ほどから私の方が、読書バリアフリー法という我々は法律の仮称名で提案しておりますけれども、そういうものができたとしても、出版者が持っている電子データを音声化や自動点訳にかけるということを先ほどから申し上げているけれども、それだけでは絶対に全ては解決しないのであります。

 例えば、一番わかりやすい例は、理数系の文献であるとか、あるいは図形が入ってくるものを想像いただければわかるわけで、これを音声化するとか自動点訳というのは、ほぼ今でも不可能であります。こういうものについては、専門のトレーニングを受けたボランティアの方々がデータを画面で見ながら点字を打ち出したとき、あるいは音声で聞いたときに、障害者、視覚障害者がそれを理解できる内容で書きかえていったり置きかえていく必要があるわけでございます。

 そういうものを進めていくためには、そのボランティアの方々のトレーニングということが前提になるわけで、誰でもできるわけではございません。そういう意味では、ボランティアの方々という、そういう奉仕に一定頼るにしても、そういうボランティアの方々を、そういう専門の文献などを点訳、音訳、拡大化するときに、技術的にそれを可能にする訓練をする、そういう援助というものが前提になることが大きなポイントの一つとしてあるわけです。

 そして、その関係で申しますと、点訳、音訳、あるいは拡大文字もそうですけれども、ボランティアに頼っているというときに、そのボランティアの方々が、言葉が適切かどうかわかりませんが、片手間で現実にやるわけですから、それを職業としているわけではありませんから、そう安定的な供給は期待できないわけであります。せめて、我々障害者団体がお願いしているのは、そういう専門性の高い技術を持った点訳、音訳、あるいは拡大文字をつくる方については、一定の安定的な供給を確保するためにその方々への謝金を払えるような制度をつくることによって専門性の高いそういう支援者をつくっていただきたいということをお願いしていることが一つございます。

 さらに、電子化のところでは、私はコンピューターのことは全く門外漢なんですが、例えば、PDFファイルでも、その中にテキストデータを持っているものがあるんだそうで、そういうものを引き出して、それを図書館などに、あるいは視覚障害者に提供すると、普通のPDFのままでは全く音声化とかはできないんですね。ところが、その中から、形式としてテキストデータ化する技術、あるいはさらに、障害者用の形式でDAISY方式という電子システムがあるわけですが、テキストDAISYという、いわばマルチ化していけるデータをつくるというものも、一定の専門性のトレーニングを積んだ方しかつくれないんだそうです。

 そういう電子化の時代であれば、それにふさわしい、そういうテキストDAISYという、発達障害者の方も、さらには視覚障害者もみんなが利用できるデータづくりをつくる、そういう専門性を持った方の支援者も養成していただくことをお願いしたいと思っております。

 以上でございます。

平野委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。

 三人の参考人、ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 土肥一史参考人、岸原孝昌参考人、竹下義樹参考人にお越しいただきました。本日は、まことにありがとうございます。

 まず初めに、土肥参考人に伺います。

 二〇一二年十二月号の文化庁月報で述べられておられますが、「平成二十四年改正著作権法を振り返る」の中で、日本版フェアユース、権利制限の一般規定の導入が期待されたが、当初想定された趣旨から遠く離れた形のものとなっていると述べられておられます。

 それでは、今回の法案について、柔軟な権利制限規定というのは、二〇一二年当時に考えておられたものと、その具現化だというふうにお考えになられるのか、伺います。

土肥参考人 文化庁月報の記載がそこまで読んでいただいているとは思っていなかったんですけれども、ありがとうございます。

 確かに、おっしゃるように書きまして、当時は文化庁の中で大変な問題になったというふうに聞いております。物議を醸したらしいんですが、私としては、できるだけ抑えてあのときは書いたはずなんですけれども、申しわけございません。

 それで、確かに、あのとき、いわゆるC類型が実現化したらどうだったのかなというふうに思うところはあるわけです。確かに、情報検索サービスとか情報分析、解析とか、ああいうようなところで限定されてしまうと、なかなか、例えば送信可能化された著作物だけの限定というのでは、もうリアルワールドのいろんな著作物との関係ができませんので、確かに、あそこのときに改正案として成立したものは、やはり時間がたつと、御指摘のように、なかなか有用性といいますか、実効性といいますか、そういうものに欠けてくるところはございます。

 それはもうそうなんですが、そういう反省もあって、今回については非常に規定の中で例示を入れながら、その他これに準ずるとか、要するに例示として入っているんですけれども、その他これと同様なとか、要するに、しっかりそれぞれの場面において限定をしないで、例示をしつつ流動性を高めることができ、それがこうやって文部科学委員会の先生方にも御理解いただけるというのは、前のそういう経験が役立っているんだろうと私は思っておりますので、決して、今回のものの前にああいうことがあって書いたことというのはあるんですが、よい前提といいますか、基礎になったものというふうに承知をしております。

畑野委員 それで、利用者の側のニーズというのはすごく今回改正案に盛り込まれているというふうに思っているんですが、それでは、一方で、著作権の権利者の保護、この点について、参考人としてはどんなふうに対応をしていく必要があるというふうにお考えですか。土肥先生でお願いします。

土肥参考人 権利者としてどういうふうに対応するかということなんですけれども、確かに、今回の法改正で、権利者は、軽微な著作物の利用という部分については権利制限の対象に入っておりますので、その意味では一歩譲った結果になっているわけです。ですが、そういう部分を超える部分については、当然これはライセンスの対象になっていくわけでありますので、言ってみれば、そういう、所在を教えてくれたりいろいろな結果を通知してくれることを通じて、本体の著作物の本来的な利用の場面が広がっていくのではないか。

 例えば、先ほど音楽が出てきていますけれども、音楽をちょっと聞いてみたときに、ああ、これはなかなかいいフレーズだなと思ったら、やはりそういう全体の曲を買い求めていくようなインセンティブは働くだろうと思うんですよね。

 ですから、やはり、今回の著作物の利用で、軽微のところの利用というのはあれだけれども、本来的な全体の利用についてはいい刺激になっていくのではないかな、そういうふうに期待をし、考えております。

畑野委員 土肥先生から、ライセンスの問題についても触れていただきました。

 次に、岸原参考人に伺います。

 モバイル・コンテンツ・フォーラムの皆さんからは、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の資料を読ませていただきましたが、フェアユース導入に関する御意見を当時お寄せいただきまして、平成二十一年の文化審議会において、フェアユース規定導入に関する関係者ヒアリングを行った際、フェアユース規定は、著作物の利用実態に応じて柔軟に対応できる点で非常に有益である一方、一般規定のみの制度となり、多種多様の判断が生じて訴訟が乱立することは経済的に不利益なことであると意見発表したと紹介をされております。

 この訴訟の乱立、あるいは、そもそもそういう資力がないところについては泣き寝入りということも起こり得るというのを、私、懸念しているんですが、この問題を解決するという点で、先ほどの著作権の権利者の保護という点では何が必要とお考えになりますでしょうか。

岸原参考人 そうですね、今回の場合もある程度、私の方でプリンシプルと言いましたけれども、権利者の方たちも、事業者あるいは利用者も、このプリンシプル自体が何を指すかということを明確化するという作業をこれからやっていくべきだと思います。

 それと、ちょっと繰り返しになりますが、わかりやすいところでいうと、先ほど土肥先生がおっしゃっているように、例示、要するに、具体的にどういうことを指すかといったことを積み重ねていって、過去の法令というのは、この例示自体が義務規定、要するにそれしかいけないよという規定だったんですが、大もとの考え方が今回あってそれをあらわすものの実態はこれですよ、この例示をふやすことによって、権利者の方たちの、不正利用というか、曖昧なことによる訴訟の多発というのは防げるのではないかなというふうに思います。

 逆に、例示であれば、新たな取組、要するに、これも繰り返しになりますが、人間は全てのことを事前に予測することはできません。多分、そういったある程度譲歩したというか、ある程度自分たちのことを考えた上での取組というのを考えていかなきゃいけないかなと思うんですけれども、そういった点では、今回の規定というのはすごく有効なところがありますので、法制度の運用という面でいうと、プリンシプルなところの考え方といったものをさまざまな部分で深掘りしていく、プラス、具体的なところでいうと、例示をふやしていくことによって、よりわかりやすいことによって不要な訴訟とかを避けていく。これはコミュニケーションコストみたいなところにありますので、あうんの呼吸でわかるというのは日本人は得意なのでやりかねないんですが、議論を重ねていくというのがすごく重要で、済みません、何度も繰り返しになりますが、具体的な例をふやしていくというのがいいんじゃないかなというふうに思います。

畑野委員 議論を積み重ねるというお話がございました。

 最後に、竹下参考人に伺いたいと思います。

 日本盲人会連合の皆さんからは、いろいろと御意見、御要望をいただいております。マラケシュ条約が求めるように視覚障害者などがより多くの著作物にアクセスできるようになるには、いろいろな課題があるというふうに伺っております。

 例えば、第三十七条第三項には「政令で定める」ということがあるんですが、これをもっと具体的にやりやすくしてほしいという御要望をいただいております。この点について具体的にお話しいただけますでしょうか。

竹下参考人 ありがとうございます。

 御案内のとおり、著作権法の三十七条三項は、まさに著作者の権利制限でしかないわけです。すなわち、権利制限をしたことによって、先ほどから証言させていただきました、ボランティアの人たちや一定のそういう点字図書館などが、視覚障害者を始めとする情報障害を持った方々に図書等の情報提供をするというわけですから、権利制限をするだけでは私たちの情報は手に入らないわけであります。必ずそこに二つのことが必要だとやはり思うんです。

 一つは、私たちに情報提供がされるのは、単に恩恵であってはならないし、それでは前に進まないんだと思うんです。あくまでも、私たち視覚障害を始めとする情報障害を持っている障害者たちは、情報というものにアクセスできることが一つの人権でなければならないと思っております。まさに情報が民主主義の根幹であると同時に、人間が成長する上で、読書であったり、あるいは自己実現にとって学習というものがいかに重要であるか、私ごときが言葉を重ねなくてもいいわけですが、それらを保障するということでなければならない。

 したがって、こうした、私たちが読書バリアフリー法の提案をしているのも、あくまでも、そういう意味では、情報障害を持った障害者の基本的人権の保障、実現としての環境を整えていただきたいというのが強い願いであります。

 もう一つは、三十七条三項のところで、先ほどもこれも触れたかと思うんですけれども、権利制限をするだけではどうしてもまだ不十分だというのは、そうした、今度は、権利制限にプラスして、その三十七条三項を使って、ボランティアの方々を含めて、あるいは有償でもいいわけですが、そうした人たちが十分に活動ができて、情報を必要としている障害者、今回、受益者が大きく広がっていくわけですから、すなわち、視覚障害者だけだったらせいぜいが三十何万人ですけれども、そこに寝たきりの高齢者、あるいは上肢、手の方ですね、上肢障害者の方々、発達障害の方々も含めるわけですから、相当大きな範囲での情報提供をしていくのにふさわしい、そうした情報提供を担える人たちを時には養成する、時には一定の活動を保障する謝金的なもので支える、そうしたところまでいかないと、残念ながら、権利制限するだけでは私たちの情報保障が実現しないということを御理解いただければと思っております。

 以上でございます。

畑野委員 時間が参りました。

 三人の参考人の皆さんには、大変具体的にお話をいただきまして、ありがとうございます。今後の審議の参考にさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 きょうは、参考人の皆様、どうもありがとうございました。

 質問の前に、今竹下参考人がおっしゃられたのは、非常に私も胸に入ることがございまして、憲法第二十一条に表現の自由というのがありまして、そこに知る権利というのがあるわけですけれども、障害者の方が情報にアクセスをするというのも基本的人権だというのは非常にもっともだなと思いました。

 それでは、ちょっとこちらから質問させていただきますが、まず土肥先生に質問させていただこうと思うんですけれども、先ほど、紙ベースで複製をするということに対して、有償化ということに対しては、現場を変えないでほしいというようなことでございました。

 今回、拡大するというような、権利制限を設けることによって補償金制度を設けるわけですけれども、この補償金制度は制度設計が非常に難しいというのは、先ほどほかの委員の方からの質問がございました。準備協議会というのがまだ十分動いていないのもこれはもっともだと思うんですけれども、補償金の集め方というので二つほど大きく分けてあるのかな、ちょっとそんなこともお聞きをしているんですけれども、一つは、現場の先生方が利用するごとに、個別にそれを利用することを何らかの形で報告をしていくということと、もう一つは、生徒数の数に合わせて一つの丼勘定的に、学校制度としては年間幾らというようなことを設けて、各先生方が利用に関してはそれに対して報告をしない。

 これは一長一短があるんだと思うんですけれども、現場の先生からの御意見だとか方向性だとか、先生の方でお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。

土肥参考人 非常に重要なところの御質問をありがとうございます。

 そこは基本的にはこれからということになるんですけれども、やはり私の気持ちとしては、現場の先生方にロードがかからないように、できるだけロードがかからないで、基本的には教育の質を高めるような、そういう努力のために時間を集中していただきたいなというふうに思っています。

 したがって、例えば、自分がどれぐらいの著作物をどれぐらい利用したかというようなことを全部るる出していって、これをまとめて渡すようなことは、先走って言うのもなんなんですけれども、先生方の負担が非常に大きくなるのではないかなというふうに思っています。ですから、もう少し合理的で透明性のあるような、そういう補償金である方がいいんじゃないか。

 つまり、極端に言うと、現場の先生方にはロードがかからないように、設置者の方はもちろん、こういうものについて学校の設置者の方はきちんとやっていただく必要がありますけれども、気持ちとしては、個々の先生の教育の質を高める時間を奪わないような仕組みがいい、私はそういうふうに考えております。

串田委員 私も、そういうふうに実際にはなるのかなと思いつつ、逆に、著作権というのは、十七条でしたか、無指定方式で権利というのが発生するということでありますので、補償金を支払うといっても、例えば、普通の子供が自分で絵を描いて、ホームページにそれを載せたものを利用するということも、本来はこれは著作権侵害ということになるわけでしょうけれども、では、補償金がその子供に対して払われるかというと、これはちょっと現実的ではないのかなというような意味で、現在では個々にその利用については確認をとっているのが、これから、逆に言えば、補償金を受け取らないで著作権を侵害されてしまうというようなことも起きてしまうというようなこともあるのかなと思うんです。

 一方で、著作権というのは登録制度というのもございますので、そういう意味で、何らかの利用をする人は自主的に登録をするというような、そんなことも考えられるのかなと思うんですけれども、こんな点は、土肥先生、どうでしょうか。

土肥参考人 おっしゃるようなそういうシステムも十分考えられるんだろうと思うんですけれども、例えば、大学の先生がどういうものを使うのかという場面と、小学校の低学年の先生がどういう著作物を使うのかというのは、恐らく相当違いがあるんじゃないかなと思うんですね。

 そういう場面場面、利用の態様、著作物の種類あるいは著作物の量、そういうようなものをトータルで考えていくということで、そして、一番避けるべきは、一回一回についての補償金の支払いというのはもう絶対に考えられないと思いますので、一応こういう形で権利制限の対象になるということは、要するに、補償金を仮に払わない段階でも権利侵害じゃないですよね、まだ払わない段階でも権利侵害ではないので、あとは、もし払わない学校設置者の方がおられた場合は権利者団体から請求するということになるだけの話でありますので、学校の先生は非常にその点からすると自由に教育に専念できる、そういうことになるんじゃないかと思います。

串田委員 ありがとうございます。

 次に、岸原先生にちょっとお聞きをしたいんですが、的確な明確性と柔軟性という、非常に相反する、非常に難しいところがありまして、スティーブ・ジョブズの例というのは大変興味深く感じたわけでございます。

 特に、著作権の問題に限らず、日本企業の世界戦略ということともかかわり合いがあるのかなと思うんですけれども、ソニーが二十曲にした理由というのが、ちょっと私自身が、正確かどうかわかりませんし、勝手に考えたことなんですけれども、例えば、CDを回し使いをしていって、一人が持っていない他人のCDを借りては自分のところにどんどん入れてしまえばCDの売上げが下がるというような、そんなことがあって二十曲とかということに制限したのかな、これは勝手な想像なんですが。

 逆に言うと、アップル社の場合には、そういったようなことも当然予想されながらも、千曲を録音することができるような、そういう機器にしたというようなところが、これは、そういう意味では音楽界との間での駆け引きなんかもあったんだろうなとは思うんですけれども、そういう意味では、グレーゾーンをアメリカの場合にはむしろ積極的に利用し、日本の場合にはグレーゾーンに対しては非常に消極的に利用しているというような、そういう部分もあるのかなと思うんですけれども、現在、音楽教室とJASRACとの間で訴訟があって、そんなような部分もあるんですが、このスティーブ・ジョブズのあり方と今の著作権のあり方、先生はどのようにお考えになられているでしょうか。

岸原参考人 済みません、スティーブ・ジョブズと著作権というと、どこら辺を答えればいいですか。(串田委員「広く録音できるようにした機器という」と呼ぶ)はい。

 そうですね、ちょっと話がまた戻ってしまうんですが、我々は、当時は著作権保護というのが一番で、逆に日本の場合ですと、ユーザーにそれに合わせなさい、それが当たり前だというような発想があったと思います。それによって、我々は、明確にというか、きちんとしたサービスを提供している正当な事業者だという意識でやっていたんですが、いや、でも、ユーザーはそんなの求めていないよというのを、まさしくスティーブ・ジョブズとかアメリカの企業というのは、そこから発想した上で、じゃ、適正な著作権保護の考え方って何かというふうに、発想がまるっきり逆転していたんじゃないかなというのが多分一番大きな理由かなと思います。

 先ほど言いましたように、まずは著作権保護、一曲でも複製したらこれは違反だというところから、どう提供していくかという思考のフレームワークから考えていくと、絶対にこんなアイポッドみたいなサービスって思いつかないというか、社内で多分発想したとしても実現できないということがあるかなと思うんですね。

 ちょっと、これの例が正しいかというのはあるんですが、今回の報告書を拝見していて、検索エンジンの例が出ていたんですね。それは若干ちょっと近いかなと思うんですが、要するに、検索エンジン、日本の著作権法のせいで検索エンジンが普及しなかったわけじゃないということが書いてあって、まさしく著作権法だけの硬直的な規定がグーグルに勝てなかったという理由ではなかったというふうには思うんですが、その理由として、結局、グーグルとかが出てくる前段階で、もう既にロボット検索がありましたね、同じ時期に日米同じようにやっていましたねと。

 ただし、日本企業、先ほどのグローバル展開というところでいうと、発想とかアイデアというのは、多分、アメリカ人と同じ、あるいはそれ以上に日本人って結構多様性があって、そこは結構すぐれているんですね。じゃあ何で勝てないかというと、スケールすることができない。要するに、全体的に広げるというところでひっかかってくる。発想して、例えば研究段階、当時ロボット型のものって各大学とかでさまざま研究されて、それを一般の学術の方たちが使って、自然とちょっと広がってきて、それを企業さんが使っていましたと。

 ただ、グーグルさんみたいに、あの仕組みというのはページランクという考え方なんですね。要するに、URLのランクの重みづけをして、全ての、全文の中からユーザーの最適なものを提供しましょうというような仕組みを、じゃあ、ある程度利用されているものをこの後スケールするということになると、人、物、金と、要するに、資金調達します、これを銀行さんとか株式市場に持っていくんですね。著作権大丈夫ですかと当然言われます。人を集めようというと、社内で、新しいビジネスを立ち上げて、社員が何千人と必要ですよというと、社員を路頭に迷わすといけないので、法令はどうなんだと。

 そういったもので、よりスケールするという段階では、結構厳密に、コンプライアンスとかよく言われますけれども、物すごく法務の人が入ってきたりとかいうことになってくると、当初、ある程度ライトに始めたサービスというところでは、結構、日本もアメリカも余り変わらないと思うんですけれども、まさしくグーグルみたいに、まあ、グーグルさんももともとはベンチャーですから、セルゲイ・ブリンと二人で始めて、途中、もうお金がなくなって買収されそうになったのを、やはり俺たち頑張ろうといったら、資金調達ができて、あれだけ大きくなったと。まさしく、特有の、スタートアップ企業、あるいは新しいビジネスというのをスケールする上では、柔軟な規定というのがすごく重要で、ある程度そういった、自分たちでフレームワークをつくってくるという考え方は非常に重要かなと。

 最近、これもちょっと個人的な話になるんですが、多分、グローバル展開していくときに、日本みたいに、周りの人が、ここまでやっていいよとかこの中で頑張りなさいということは、日本以外ではほとんどなくて、そのときに企業はどうしているかというと、コンプライアンスって考え方は一緒なんですが、インテグリティーということがグローバル企業なんかで言われているんですね。これというのは、自分たちの持っている、要するに、自分たちの考え方に誠実に完璧に対応して、アカウンタビリティー、我々はどういう基準でこれをやるんだということを社会に説明した上で展開をしていくという、これは、ある程度、事業者自身がみずから倫理基準とかを考えた上で、それに合致をした上で展開していくという。これって、先ほど言いましたように、与えられて、それにコンプライアンス、法令遵守するという考え方ではなく、社会の倫理を自分たちで定める。

 シリコンバレー企業なんかは、会社に最初に入ると、まず、会社のミッションの教育を延々とやるらしいんですね。我々、何のためにビジネスをやっているんだと。逆に、日本で普及しているところだと、スターバックスとかも、ある程度ユーザーさんに有益だと思ったら、自由にコーヒー飲ませていいよというぐらい権限を与えられて、それは、企業としてのポリシーとかミッションみたいなのを明確にする。今回のことでいうと、ある程度、プリンシプルを明確にしていく、それによって、それに基づいて、我々はこれに合致した形で展開していくんだというのを説明しつつ展開していくというのが、グローバル展開するときには重要かなというふうに思っています。

 済みません、ちょっと話が広がってしまいました。

串田委員 最後に竹下参考人にお聞きしたいと思うんですが、データ化が、写真だとかグラフだとか、そういうふうに、翻訳というか、障害者の方にわかりにくいような部分もあるんですが、この点についてはどのようなことを御希望されていらっしゃるでしょうか。

竹下参考人 ありがとうございます。

 今先生御指摘のとおり、グラフであったり図形というものは、想像していただければわかるように、それを音声化するというのはまず考えられないわけです。

 その場合に二つありまして、一つは、今は、これもやはり技術的に私は自分でよう説明せぬのですが、グラフを触覚でわかるようにする、そういう今ソフトは出てきているし、それから、写真なんかですと、形を二つの方法で、触覚でわかるようにできるんです。一つは浮き出る、そういう、線でその図をあらわす、写真をあらわすという技術が出てきていますし、さらには3Dプリンターで、三次元で、まさに手でさわる、触覚で我々が物体を、あるいは、そういう二次元のぺったりのところではわからないものを変換できる技術が出てきているわけですから、そういう場面ごとで、今ある技術で、大きな、我々のアクセスが可能な技術を使って、可能な限りそういう情報も我々に伝えるようにしていただきたい。

 二つ目には、やはりそういう場合には音声で、写真の内容であったりそれから図の内容を言葉であらわすというやり方で、私たちは、特に私なんかはそういうやり方で学習してきました。そういう意味では、先ほどちらっと言いましたけれども、ボランティアの方々で、写真をどういうふうに説明すれば視覚障害者に伝わるのか、あるいは、図形で示したものを声で、音声でどうすれば視覚障害者が理解できるかということも、技術として身につけたボランティアによる音声化をしていただくという、この二つによって私たちはそういう情報にも接近可能になっていることを御理解いただければと思います。

 よろしくお願いいたします。

串田委員 時間になりました。

 できるだけ提供できるように尽力をしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

冨岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 きょうは、三人の参考人の方、本当に長時間にわたってありがとうございました。私が最後の質問者になりますので、もうしばらくおつき合いいただければというふうに思います。

 まず初めに、土肥参考人にお伺いをいたします。

 参考人は、二〇一四年の著作権法の改正の際にも参考人としてお話を伺っております。当時、著作権者の側と出版者の間で、電子書籍に対応した権利設定をどのように行うかについて少なからず意見の隔たりがございました。参考人は意見陳述でこの点に触れられまして、「これは、著作権者と出版者との間に成熟した契約慣行が十分に確立していないからではないか」という指摘をされ、法改正後に両者の間に「成熟した信頼関係が確立されることが重要」というふうに述べておられます。

 前回からもう既に四年が経過をしておりますが、現状について、参考人、どのように見ておられるのか、尋ねます。

土肥参考人 電子書籍の問題では大変お世話になりました。

 先生が今おっしゃるところは、どういうところに問題があったかと申しますと、要するに、電子書籍の出版権の構成として、複製権と公衆送信権とを一体的に構成するのか、分けるのかということであったわけですけれども、御存じかとは思いますが、一応条文上は一つの規定の中でつくり上げておりまして、ただ、クリエーターの先生、例えば作家の先生は、一体型にしてしまうともう自分たちの権利がなくなるので、それはちょっと考え直してほしいというようなこともあり、条文としてはそういう一体的な形で書いてはいますが、しかし、著作者の先生は、権利を自分のところに残しつつ、電子書籍の問題についても対応ができるようにしております。

 その後、出版者と先生方の間でどういうふうに信頼関係が構築されていったのかということは、申しわけないんですけれども、詳しくは承知しておりません。おりませんけれども、昨今言われるようなネット上の問題について両者で対応するべく、場合によっては軽微の問題として対応するようなことでおやりになっておられるようですので、いい方向に進んでいるのではないかなというふうに想像をしております。

吉川(元)委員 ありがとうございます。

 続きまして、岸原参考人にお尋ねをしたいというふうに思います。

 先ほどから訴訟リスクのお話もございました。今回、一般的、包括的な規定ではなく明確性と柔軟性ということで、そのバランスをとるということで、特に、先ほどの最初のお話を伺ったところでは、この明確性について、原則として考えていくんだということで、ロジックの基礎になるようなものとしての明確性というお話がございました。

 アメリカの場合でいいますと、かなり、訴訟も含めまして、司法の場で一定の積み重ねといいますか判例の蓄積があって、そういう意味でいうと、この場合はどうなのかという場合にも、ある程度の指針がある。先ほど、例示を今後ふやしていくことが大切だというふうにおっしゃられておられましたが、そもそも、今回の法改正、柔軟性と明確性のバランスということで、この明確性について、原則なんだというふうになっているのか、それとも、依然として個別的、具体的に規定をされている中身だというふうに見るべきなのか。

 そうなりますと、言葉の上では柔軟性と明確性のバランスというふうになるんですけれども、かなり水と油のようなものをひっつけてしまっているのではないかというふうにも感じるところもないわけではないんですが、このあたりについてどのようにお考えでしょうか。

岸原参考人 先ほどから御紹介いただいたように、前回の改正のとき、我々も結構、文化庁さんにいろいろな例も出して、ぜひ実現してくださいとやったんですが、なかなか、最後は大陸法だからできませんと言われて、今回の部分にはほとんど関与していないんですが、出てきたものを今回じっくり読ませていただくと、読めば読むほど、よくできているなというふうに思います。

 その中で、実は立法の経緯を、先ほどの土肥先生の話とか今回いただいた資料を拝見していくと、結構、現状の事例に基づいて、そこから普遍的な価値観といいますか原則を導き出して法制化しているという経緯をたどっておりまして、実は、これというのは、英米法で言う経験主義に基づいて、そこから普遍的なものを導き出すという手法を立法過程で踏んでいるんじゃないかなというふうに思います。

 そういった点では、既に、もとになった事例というのはある程度明確になっているので、そこから導き出された、今回、思想又は感情を享受することを目的としないとか、付随する利用である、軽微な利用であるといったものが何を指すかというのは、前回の報告書とか今回の資料を見ればおのずから明らかになっているんですね。

 一方で、ちょっと私も法学者とかではないので、余り言うと言い過ぎだとは思うんですが、私の理解でいうと、大陸法というのは、そういった経験とかは関係なく、著作権法とは何あるべきかといったような理念が最初にあって、それに基づいて法律をつくって、それで世の中を縛っていくというか法律をつくってくるということなので、実は、そこに関しては、その理念がどういうものを指すかというのは結構わかりづらい問題ではないかなと。

 ただし、今回は、本当に立法過程の中で、事例、いろいろなアンケートとか具体的な例から普遍化を導き出したということになりますので、この導き出されたものが不明確であれば、もとの事例のところに、どこから派生したものかということに戻っていただければ、ある程度、現在、今出ております三つの柔軟な規定というのは理解がしやすいのではないかなというふうに思います。

吉川(元)委員 ありがとうございました。

 次に、竹下参考人に尋ねたいというふうに思います。

 今回の改正、視覚障害者以外の方々、寝たきりの方やさまざまな本を持つことが困難な方々も受益者となる。これはマラケシュ条約と同じ対象なのかどうかということについては、午後に行われる対政府質疑の中でもしっかりと議論をしていきたいというふうに思います。

 ただ、例えば、寝たきりの方々が、テキストデータ、録音データ、あるいは点字図書館やサピエから取り寄せようとしても、なかなか簡単にアクセスできないというような実情も今存在をしているというふうにも聞いております。こうした方々のアクセスを充実させるためにどのような環境整備が必要なのか、もし何か御示唆があれば、お話しいただければと思います。

竹下参考人 ありがとうございます。

 実は、全国の点字図書館、八十館ほどあるんですが、それらが一つの組織をつくっておりまして、その各館が持っているデータというものを一つのサピエという名前で運用しております。

 ところが、せっかくそこに入っているデータ、点字の本のデータが十八万冊、録音データが七、八万冊あるんですけれども、これを利用するのには、現時点では一定の制限を加えております。例えば、会員図書館を通じなさいとか、あるいは、会員登録をしてからじゃないとそのデータは利用できませんよとか。その会員施設というのは、必ず負担金、正確じゃなかったけれども、たしか四万円だったと思うんですけれども、そういう負担金を払っていないと会員施設になれない、会員にもなれない場合があったりする。そうすると、せっかくのデータがあるにもかかわらず、自由に利用できないという現実がございます。

 そういう状況は、ある意味ではやむを得ない事情がありまして、サピエを運営している全国の組織が、運営費が捻出できないために、いわば会員であったりボランティアから逆にお金を取る。変な言い方かもしれませんが、本をつくって皆に提供すると思っている人がサピエにそのデータをオンしようと思うと会費を払ったりしなければならないという、非常に現実には考えにくいシステムになっておりまして、しかし、それをしないと組織が運営できないという状況があるからやむを得ないと率直に思うんですが、そうした環境を改善していくことも今後重要だろうと思っております。

 せっかくのそういうデータがもっと幅広く利用できるためには、その組織が持っている、サピエ図書館と我々は略して呼んでおりますけれども、それらのデータをもっと自由に利用できるとか、あるいは、国会図書館を利用している人が逆にサピエの図書も自由に利用できるような形にすればそういう弊害はなくなるわけでありますから、そういう環境をつくることを、費用の問題の壁もあるかもしれませんが、あわせて御検討いただくことをお願いしたいと思っております。

 以上でございます。

吉川(元)委員 もう一点だけ、竹下参考人にお尋ねをしたいと思います。

 きょうは、資料としても「私たちももっと本を読みたい!」として、読書バリアフリー法、仮称でありますが、この制定を目指していらっしゃいます。せっかくの機会ですので、この法律の趣旨あるいは必要性について御説明をいただければというふうに思います。

竹下参考人 ありがとうございます。

 我々は、読書バリアフリー法という名前を、仮称を勝手につけておりますが、この趣旨は、もう時間もあれでしょうから一言で申しますと、情報障害を持っている障害者、視覚障害であったり上肢障害者、中には、脳の障害のために、視力が一・〇あるんだけれどもまぶたを開いておれない、そういう障害を持った人もおられます。そういう人は手帳も持っておりません。したがって、障害者としての扱いを、扱いというんでしょうかね、障害者としての対象にはなっていないわけです。でも、そういう方でも、図書を読もうと思うと、音声にしていただかないと図書を読めないわけです。

 そういう意味では、受益者に当たる範囲の問題も含めて、本当に図書を必要とする人たちが自由に図書にアクセスできる環境を総合的に保障するための環境づくりをつくっていただくためにも、読書バリアフリー法の制定が必要不可欠だと思っております。

 そして、今回、この著作権法の改正を論議いただいているのは、まさに、三十七条三項の関係で申しますと、マラケシュ条約の批准に伴うわけでありますから、この条約が批准されてこの問題が頓挫するのではなくて、その機運というんでしょうか、それが十分にある間にそうした環境づくりの法律にまでたどり着くことを強くお願いして、私の提案にさせていただきます。

 よろしくお願いいたします。

吉川(元)委員 大変ありがとうございました。

 貴重な問題提起でありますし、我々も、今の提起をしっかりと受けとめて、これからまた立法に向けて頑張っていきたいというふうにも思っております。

 時間が参りましたので、これで終わります。

冨岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府知的財産戦略推進事務局長住田孝之君、警察庁長官官房審議官小田部耕治君、総務省大臣官房審議官奈良俊哉君、文部科学省生涯学習政策局長常盤豊君、初等中等教育局長高橋道和君、文化庁次長中岡司君及び資源エネルギー庁次長保坂伸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党・市民クラブの櫻井周です。

 午前中の参考人に対する質疑に引き続きまして質問をさせていただきます。

 本日は著作権法の改正案審議ということで、モリカケ問題については質問しないでおこうと思っておったんですが、月曜日は森友学園問題、火曜日は加計学園問題、次々とうそが発覚をしている。やはり、文部科学行政、大きくゆがめられていたのではないか、そのように受けとめざるを得ません。

 また、名古屋市教育委員会に対する不当介入問題では、これは担当部署が独自の判断でやっていたという御答弁でしたけれども、そうであるならば、もしかすると職員の根性もゆがんでいるのではないのか、そんなふうにも受けとめざるを得ません。

 このような状況で、一体、真っ当な教育が本当にできるのかどうか、まず大臣の御所見をお伺いいたします。

林国務大臣 文部省、文科行政に対する信頼回復をということは、私、就任以来申し上げてきたところでございますので、諸般の課題に真摯に対応していきながら、大事なことは、今、委員がおっしゃったように、教育現場でしっかりと子供たちが教育を受けていく、このことが教育分野では大事なことだと思っておりますので、そのためにしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

櫻井委員 森友学園、加計学園の問題、これの大半は林大臣が就任される前のことですので、ぜひとも大臣の手でしっかりと立て直していただきたい、このようにお願い申し上げます。

 それでは、著作権法の審議の方に入っていきたいと思います。

 いろいろな条文が変わっておりますけれども、少し細かいところを確認していきたいと思います。

 旧の四十七条、昔の四十七条、昔のといいますか改正前の四十七条の七から新しい三十条の四第二号へ条文が移動しておりますが、従前に実施できたことは改正後も全て実施可能という解釈でよろしいでしょうか。

 具体的に申し上げますと、条文移動に伴いまして、柱書きのところに享受という要件、それから著作者の利益を不当に害するという要件が追加されたようにも読めるわけでございますが、これは要件が追加されたというわけではない、このような解釈でよろしいでしょうか。

    〔委員長退席、鈴木(淳)委員長代理着席〕

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、享受を目的としないという要件の関係についてでございますけれども、現行の四十七条の七は、コンピューターによる情報解析を行うための複製等を認めるものでございまして、例えば、日本語の言葉の用いられ方が時代によってどのように変遷しているかといったことを調べるために、新聞とかあるいは書籍などの文字情報を大量にデータベースに蓄積して、そこに含まれている言葉につきまして解析を行うといったことが認められております。

 このように、大量の情報から特定の要素となる情報を抽出して統計的な解析を行う行為は、著作物の表現の享受を目的とするものではないということで、通常、著作権者の利益を害しないものとしてこれまで権利制限が認められてきたわけでございます。

 今般の新三十条の四でございますけれども、現行の四十七条の七のこのような享受を目的としない趣旨を法律上明記したものにすぎませんで、現行法上、当該規定のもとに許諾なく行える行為は、享受を目的としないとの要件を満たすものと考えております。

 また、ただし書きの件につきましても触れられました。そもそも、著作権法上の保護される権利を制限する場合に、国際条約上の義務といたしまして、著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とすることが求められております。我が国の著作権法は、この条約に適合する形で整備してまいったところでございます。

 現行四十七条の七は、コンピューターによる情報解析のために著作物を複製するという場面を想定した規定でございまして、規定が整備された時点におきまして、著作権者の利益を不当に害することとなる事態が生じることが通常想定されなかったことで、あえてそのようなただし書きを置くことはしておりませんでした。

 他方、新第三十条の四でございますけれども、「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」を幅広く権利制限の対象とするものでございまして、特定の利用場面を離れまして、非常に柔軟性の高い規定へと見直しを行ったものでございます。

 このような規定の大幅な柔軟化に伴いまして、現在想定できない行為も含めまして、さまざまな行為が本条の対象となることとなったことで、さきに御説明申し上げました条約上の要請を踏まえまして、本条では、権利者の正当な利益の適切な保護を図るためにただし書きをこの際書いたということでございます。

 もっとも、現行四十七条の七により適法に行うことが想定されていた行為につきましては、著作権者の利益を不当に害するものでないと考えておりまして、今回の改正後におきましても引き続き許諾なく行えるものと考えております。

 以上、御説明申し上げましたように、現行四十七条の七におきまして権利制限の対象として想定されていた行為につきましては、新三十条の四におきましても権利制限の対象となるものと考えております。

櫻井委員 実施者の側から立ちますと、これまでできたことができなくなるのではないのか、条文の文言が変わったので、そのような心配もされている向きがありましたが、今の答弁で、これまで実施できたことは全てできるということで、安心してこれまでどおりの業務を続けていただけるということで理解をさせていただきました。

 続きまして、現行法の四十七条の六から、新しい、改正後の条文、四十七条の五第一号へ条文は移動しておりますが、これも同様に、これまで実施できたことは改正後も全て実施できるという解釈でよろしいでしょうか。

 具体的には、今回も、軽微利用という要件が追加されたように見えますが、これも要件追加ではないというふうに解釈してよろしいでしょうか。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、軽微の要件との関係についてでございますけれども、御指摘の現行四十七条の六は、インターネット検索サービスを対象とした規定でございまして、URLの検索結果の提供のために必要と認められる限度で著作物の送信を認める旨が規定されております。

 この条は、当時、既に広く提供されておりました当該サービスにつきまして、当該サービスにおける著作物の利用の態様を踏まえ、その適法性を明確化するために制度の整備を行ったものでございます。

 具体的には、インターネット検索サービスにおきましては、検索結果として、ウエブサイトのタイトルやURLとともに、そのウエブサイト内の文章を数行程度、いわゆるスニペットでございますけれども、その表示をしたり、サムネイルと呼ばれる小さなサイズに縮小された画像を表示したりすることが、既に慣行として行われていたところでございます。

 現行の四十七条の六は、インターネット検索サービスの目的が、著作物の提供自体を目的とするものではなくて、利用者に著作物の所在情報を提供することによってオリジナルのウエブサイトへと誘導することを目的とするものであること、それから、さきに述べましたように、著作物の利用態様を踏まえますと、このサービスのために必要な限度で行われる著作物の表示は軽微なものにとどまるということから、著作権者の利益に悪影響を及ぼさないと判断をして権利制限を行ったものでございます。

 したがいまして、現行四十七条の六に規定いたしますインターネット検索サービスにおけるURLの検索結果の提供のために必要と認められる限度の利用は、新しい四十七条の五の軽微要件を満たすものと考えております。

 なお、新四十七条の五におきましては、インターネットにアップされている情報に限りませず、書籍、映画、あるいは音楽など幅広い種類の著作物の検索サービス等を新たに権利制限の対象とするものでございまして、必要と認められる限度と書いただけでは、サービスの慣行も存在しない中で、著作物の表示が軽微なものにとどまるということが担保されなくなってしまうということから、軽微という要件を明記することとしたものでございます。

 ただし書きの部分についてでございますけれども、現行法の四十七条の六になかった、著作権者の利益を不当に害する場合はこの限りでないとのただし書きにつきましての関係でございますけれども、そもそも、著作権法上保護される権利を制限する場合に、先ほど申し上げましたように、国際条約上の義務がございます。

 そして、現行四十七条の六は、立法当時、スニペットやサムネイル表示に関する慣行が存在しておりましたインターネット検索サービスのための著作物の利用を想定した規定でございまして、規定が整備された時点において、著作者の利益を不当に害することとなる事態が生じることは通常想定されないというのは、先ほどの条文と同様のことがございます。

 そういったことから、あえて、著作者の利益を不当に害する場合といいますものも、ただし書きとしては書いてなかったわけでございます。

 他方、今度は新しく四十七条の五を設けるわけでございますが、インターネット検索サービスに限りませず、広く所在検索サービスを権利制限の対象とするものでございまして、相当程度柔軟性のある規定へと見直しを行ったものでございます。

 このような新しい四十七条の五の規定の柔軟化に伴いまして、現在想定できない行為も含めて、さまざまな行為が本条の対象となることとなったので、さきに御説明いたしました条約上の要請といいますものも踏まえまして、この条では、権利者の正当な利益の適切な保護を図るため、ただし書きを置くこととしたものでございます。

 もっとも、現行四十七条の六により適法に行うことが想定されていた行為につきましては、著作権者の利益を不当に害するものではないと考えておりまして、今回の改正後におきましても、引き続き許諾なく行えるものと考えております。

櫻井委員 この軽微利用の要件についても、いろいろ条文上書いてございますけれども、ただ、その量とか割合とか精度とかいうようなところで、利用目的とかそのほかいろいろな要素があり得ると思うんですけれども、その他の要素ということで丸められて表現されておりまして、必ずしもここはちょっと明確でないのが心配だなという声もあったんですが、少なくとも、これまで実施できたことは全て実施できるということで、これまでの利用、実施形態を参酌しながらこの軽微利用というところも考えられていくのかなということで理解をさせていただきました。

 まだたくさん聞きたいことがあるので答弁も簡潔にお願いしたいんですが、次に、改正後の四十七条の五、一号は所在検索サービスについての条文だと思いますが、ロボット検索型というのと人力型の検索というのと大体大きく分けて二種類あるというのが現状でございますが、一号では両方含むと解釈してよろしいんでしょうか。

中岡政府参考人 そのように解釈していただいて結構でございます。

櫻井委員 簡潔な答弁、ありがとうございます。

 続きまして、新四十七条の五、二号、これは電子計算機を用いていればよいということでいいんでしょうか。つまり、人の知覚による認識を伴っていても、人の手が少々入っていても、電子計算機を使っていれば含まれる、こういう解釈でよろしいでしょうか。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 新四十七条の五の第一項第二号のお尋ねでございます。

 電子計算機における情報解析を行い、及びその結果を提供することについて規定してございますけれども、例えば、電子計算機による情報解析の対象とする著作物の選別などの過程で、人の知覚による認識が行える場合というのがございますけれども、電子計算機における情報解析を行うことを目的としている場合にはこの号には該当するものと考えておりまして、人の知覚による認識が行われたことをもって直ちに同号に当たらないということにはならないと考えております。

櫻井委員 ありがとうございます。

 この人の知覚による認識というのは、さきに議論させていただいた新しい三十条の四の三号に出てくる表現でございますので、本当に人の知覚が入っちゃいけないという場合にはこのような厳しい表現になるんだろうなということで、それ以外のところについては、主に電子計算機を使っているという場合であれば人の手が入っていても大丈夫、こういうことで理解をさせていただきました。

 次に、この四十七条の五では三号というのが設けられていて、これは包括的な条項になっておりますけれども、こういう包括的な条項が設けられると、具体的に示している一号、二号が狭く解釈されてしまうのではないか、こんな心配もするわけでございます。

 すなわち、三号がなければ、一号か二号か、当てはまるかな、少々グレーなところがあったとしても、入るんだということで一生懸命解釈しようとするんですけれども、三号で包括的な条項があると、いやいや、そういうグレーなところのために三号があるんだから三号で読みましょうよというふうに解釈されてしまうかもしれない。

 それで、三号ですんなりいければいいんですけれども、三号には政令で定めるというのがあるので、今度は、政令で定めてもらわないと前に進めないということになっていて、意外なところに大きなハードルがあるということになってしまいます。

 ですので、これは解釈の問題なんですけれども、運用のときには、三号を設けたからといって一号、二号が狭く解釈される、そんなことはないですよねということを確認させていただきます。

中岡政府参考人 このたび、新第四十七条の五に三号、政令で定める、今後のさまざまなニーズを受けとめる規定があるわけでございますけれども、この規定があることによりまして、一号及び二号の解釈が狭まるということはないと考えております。

櫻井委員 続きまして、この三号についてなんですが、「政令で定める」とありますが、これは、政令で定める際の審議の主体、機関、関係者の意見聴取など、どのような手続で行うのか、御説明いただけますでしょうか。

 これまでの審議会などでのヒアリングでは、ベンチャー企業が余り意見を聞いてもらえなかった、そんな声も聞いております。特に、こういうICTの分野はベンチャー企業が活躍する分野でございますし、新しいビジネスをどんどん開拓していくのもベンチャー企業が多いかと思います。ぜひとも、こうした意見も踏まえながら、かつ迅速にやっていただきたいと思うんですけれども、この点について御説明をお願いいたします。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 これも、午前中の参考人の御質疑の中ででも、この新たな規定の持つ意味につきましてるる御説明があったと思っておりますけれども、今回、政令の制定手続につきましては、関係者からのニーズを踏まえまして、関係する事業者、権利者等の意見を伺いながら文化審議会で迅速に検討を行って、検討が取りまとまったものから順次制定を行っていきたいと考えております。

 このため、今後、法案が成立した後に、速やかにIT関連産業を含む関係業界等からのニーズの募集を行いまして、政令制定に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。

 その際に、検討の過程で権利者及び利用者の意見がバランスのとれた形で適切に反映されるよう、検討体制についても工夫してまいりたいと考えておりますし、先ほど委員御懸念の、ベンチャー企業のニーズというものはきちっと入ってくるのかということでございますけれども、文化審議会の検討を経て制定する場面におきまして、関係者のニーズを踏まえていくわけでございますけれども、この意見聴取の中で、保護と利用のバランスのとれたものとならないようにするということで、意見を提出していただく対象といたしまして、ベンチャー企業もそういったところに入っていただくということも当然考えております。

櫻井委員 あと、この三号の政令の運用におきましては、特にベンチャー企業、もう生まれたてほやほやの会社などでありますと、なかなか、文化庁へどういうふうにアクセスしていいのかよくわからないということもあろうかと思います。そういったところにも、わかりやすくアクセスできるように、御案内など、それこそウエブサイトにここが連絡窓口ですよということを表示するなど、何か適切なといいますか丁寧な対応をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、新しい三十五条二項についてお尋ねをいたします。

 これは、先ほども参考人招致のところで議論ありましたが、学校教育関連のところでございますが、相当な額の補償額というのは、これはどの程度の金額を想定されているんでしょうか。また、いつまでに、誰が、どのように決定されますでしょうか。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 どの程度の額になるのか、いつまでに、誰が、どのようにというお尋ねでございますが、今般の補償金制度の導入を含みます権利制限規定の整備は、権利者の正当な利益の保護に留意しながら、学校等における著作物の公衆送信の円滑化を図るという法改正の趣旨を実現する観点から、制度の整備と運用を行っていくというのが大変大切な部分でございます。

 このため、制度的措置といたしましては、一つ目には、指定管理団体があらかじめ教育関係者の意見を聞いた上で補償金額を決定し、文化庁長官の認可を受ける必要がある、二つ目には、文化庁長官は、認可に当たって、非営利教育機関における著作物の利用円滑化を図るという第三十五条第一項の趣旨、公衆送信に係る通常の使用料の額その他の事情を考慮した適正な額であると認めるときでなければ認可をしてはならないということ、三つ目には、文化庁長官は、認可に当たって、文化審議会に諮問しなければならないことということで、制度的な措置をしておるわけでございます。

 この中で決定していくということになるわけでございますけれども、この補償金請求権は、私人、クリエーターですね、その財産的権利にかかわるものでありますことから、まずは、両当事者間の意見が補償金額の決定に反映されることを原則としながら、中立性、専門性を担保しつつ、一定の公的な関与を行うことによって、補償金額の適切な確保を図るということを考えております。

 具体的な額でございますけれども、これは、学校等において利用される著作物の種類だとか、あるいは量等のさまざまな要素を考慮して決定されるべきものでございまして、また、さきに述べました手続等を経て決定されておりますので、現段階でどの程度の額になるといったことについてお答えすることは困難ではございます。

 いつまでにというお尋ねでございますけれども、教育の情報化に対応した権利制限規定に係ります改正事項の施行日につきましては、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日としておりますけれども、教育関係者からの制度整備の要望もございますので、関係者への制度の周知や指定管理団体の準備が整いましたら、速やかに制度を実施したいと考えております。

櫻井委員 先ほどの参考人質疑の中でも、三年あるから丁寧に議論していただいて、使いやすいといいますか利用者の側に負担にならないように、又は権利者の権利が不当に侵害されることのないような制度設計をよろしくお願いします、こういう話もありましたので、ぜひお願いしたいと思います。

 大臣にもちょっとお伺いいたします。

 先ほどの参考人質疑でも、実は学校というふうに言っても、小学校、中学校、高校、大学、もう全然違うレベルのものがあるわけでございます。規模も違う、事務処理能力も大きな差がございます。

 特に、小学校、中学校というところはそこまで、著作権とか知的財産権について専門的に担当するような部署があるわけでもございません。また、働き方改革として、教員の負担軽減ということも言われているところでございます。

 そういうことからすると、私は、小学校、中学校については無償でもいいんじゃないのかというふうにも思うんですが、それはゆっくり検討いただくとして、少なくとも、簡素な手続で、学校、教員への負担軽減となるように、使いやすいような、そしてきちっと教育の質が担保できるようなものにするべきだと考えておりますが、大臣の御所見をお願いいたします。

林国務大臣 この補償金の料金体系が、利用実態にかかわらず定額を支払う包括徴収型が採用される場合は、権利者への補償金の分配の参考とするため、一部の教育機関に、例えばサンプリング調査を御協力ください、こういうようなことも想定されますが、そのために、一定の学校種に限って補償金の請求権自体をなくしてしまおうという議論は、教育現場の手続的な負担に配慮しつつ、権利者に適切な対価還元を行うというのが今般の制度改正の趣旨でございますので、なかなか難しいかなというふうに考えております。

 著作者に適切に対価が還元されて、将来にわたって良質な著作物が継続して生み出される環境を維持するということが、著作権法のそもそもの目的ということもあって、これがまた実は将来の教育活動を豊かにしていくということにもつながるのであろう、こういうふうに思っておりますので、今、委員からありましたように、なるべく現場における手続負担の軽減、これに留意をしながら、権利の適切な保護と著作物の利用円滑化のバランス、これに配慮して制度の整備や運用を行っていく、これが大事なことだというふうに思っております。

櫻井委員 大臣、それから次長の御答弁、ありがとうございました。

 法改正に関連するところについては一旦これで終わらせていただいて、引き続き、著作権法ではございますけれども、侵害事件についての新聞報道がありましたので、それについて質問させていただきます。

 先週の金曜日、四月六日、毎日新聞の報道によりますと、「政府は国内に拠点を置くインターネット接続業者(プロバイダー)に対し、ネット上で漫画や雑誌を無料で読めるようにしている海賊版サイトへの接続を遮断する措置(サイトブロッキング)を実施するよう要請する調整に入った。月内にも犯罪対策閣僚会議を開催し、正式決定する見通し。」このような新聞報道がございました。

 海賊版サイトによる著作権侵害によって、著作者に深刻な被害が発生しているというふうに認識をしております。ですので、海賊版サイトの取締り、これは急務だと考えております。

 これまで、こうした問題について国会で取り上げようかなというふうにも思っておったんですが、国会質問で取り上げることで広く知られることになると、そこへのアクセスもふえて、かえって宣伝してしまうことになる、著作者への被害が拡大することになってしまうということでちゅうちょをしておりました。事務方には内々に、こうした問題は何とかならないのかなということで指摘をさせていただいたところでございます。ただ、もう既に新聞に報道されているところですので、ちょっときょうは取り上げさせていただきました。

 一方で、憲法二十一条に規定する通信の自由との関連もございます。これとの比較考量も必要だろうと考えます。

 そこで、遮断対象のサイトの選定、接続業者への要請の法的根拠などいろいろ重要な点があろうかと思いますが、どのような手続で行う御予定でしょうか。

住田政府参考人 いろいろと御配慮ありがとうございます。

 報道にございましたとおり、漫画、アニメなどの違法コピーを掲載したインターネット上の海賊版サイトによる被害、昨今深刻化をしております。

 こうした認識に基づきまして、政府といたしましては、知的財産戦略本部のもとで、インターネット上の海賊版対策について検討を続けておるところでございます。

 その中では、もちろん、サイトの運営者に対する削除要請でございますとかあるいは広告の出稿規制、その他誘導サイトに対する対策といったようなものに加えまして、御指摘のございました接続遮断、サイトブロッキング、これも含めて、あらゆる方策の可能性について、今御指摘のございました点も含めた検討をしておるところでございます。

 我が国の漫画、アニメというのは、クールジャパンを代表する重要なコンテンツでございますので、引き続き、関係省庁連携のもとに検討を行いまして、早急に対策を講じてまいりたいというふうに考えてございます。

櫻井委員 ちょっと時間も押してまいりましたので、これで多分最後の質問になろうかと思います。

 先ほど申し上げた違法サイトですけれども、海賊版サイトですが、そのうちの一つは、先ほどちょっと試しにやってみたら、何かもうアクセスできなくなっていたので、もう既に対策を講じられたのかなとも思ったんですが、多分そうではなくて、サーバーの方がダウンしちゃったのか何だかちょっとよくわかりませんけれども、新聞報道にあってアクセスが集中してダウンしたのか、それは何が起きているのかはよくわかりませんが、現時点においては、そのうちの一つはアクセスできない状況にはなっております。

 こうした著作権の侵害に対して、著作権に限らず知的財産権の侵害に対して、なかなか我が国では厳しく対応できていないのではないのか、諸外国に比べてちょっと甘いのではないかと感じるところもございます。その点は、あした、科学技術・イノベーション特別委員会でまた御担当に質問させていただく予定でございます。

 一方で、著作権のちょっともう一つ難しいところは、特許とか商標であれば登録制になっていますから、侵害しているしていない、権利者が誰かというのが比較的わかりやすいんですけれども、ところが、著作権の場合には、同じ、非常に似たようなものがあったとしても、見て、まねをしていなければ、つまり独自に思いついていれば、必ずしも著作権の侵害にはならないということもございます。まねをしていなければ侵害にならないということで、外形的には侵害しているかしていないかわからないというようなところもございます。

 ですので、こうしたグレーのところも踏まえると、やはりちょっと慎重なやり口というか手続が必要なのではないかなというふうにも考えるところです。特に、先ほど申し上げた憲法二十一条の問題もございます。

 こうしたバランスを考えますと、やはり海賊版サイトのような著作権侵害による損害発生、大きい場合には取り締まるとか、どの程度をもって大きいとするのかというのもまたいろいろ議論のあるところですけれども、こうした全体のバランスをとりながら、しかし取り締まるべきはしっかりと取り締まる、また民事上の解決策もしっかりと講じられるような仕組みにしていくべきだというふうに考えますが、著作権法を所管されている文部科学大臣としてどのようにお考えでしょうか。御所見を最後にお願いいたします。

林国務大臣 大変大事な御指摘だと思っておりまして、この曲とあの曲、ちょっと似ているよねというのと、本当にまねしたというのの線はどこに引くのかというのは、大変難しいところがあるわけでございますし、パロディーなんかはどうするのか、それ自体が文化ではないかという説もあるわけでございます。

 先ほど、サイトブロッキングの話は知財本部からお話がありましたが、我々の方で、リーチサイトの対応、文化審議会で関係者の意見を聞きながら検討を進めているところですが、やはり文化審議会では、一方で、海賊版の拡散を助長する悪質なリーチサイトへの対応の必要性、これを指摘されております。

 しかし一方で、委員から両方今しゃべっていただきましたが、インターネットによる情報伝達においてやはり不可欠な役割を担うリンク情報を提供する行為、これに対する過度な規制となりますと、表現の自由への萎縮につながる、こういう意見も一方で出ておるところでございますので、対応すべき範囲については、双方のバランスをしっかりとる形で慎重に議論が行われていると承知しております。

 我々としても、この審議会の検討結果を踏まえて、適切にやってまいりたいと思っております。

櫻井委員 質問、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木(淳)委員長代理 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 希望の党の源馬謙太郎でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 著作権法の改正について質疑をさせていただきたいと思うんですが、それに入る前に一つ、通告していないんですけれども伺いたいことがございます。

 先ほど櫻井委員からもお話ありました。きょうのニュースで、海賊版サイトの一つである漫画村というサイトが閉鎖したんじゃないかというニュースがありました。

 先ほど櫻井委員から御指摘がありましたけれども、それに関する答弁はなかったと思うので、改めて伺いたいんですけれども、まだ政府がサイトブロッキングをしたというわけではないのか、何か政府の働きかけによって閉鎖をしたのか、そこら辺の事実関係は認識をされているのか、伺いたいと思います。

中岡政府参考人 サイトブロッキングを含めて、現在、政府全体として検討をしているという状況でございまして、まだ、そういったものが発動されたという事実は、私ども承知をしておりません。

源馬委員 ありがとうございます。

 私も、この海賊版サイトについては非常に強い懸念と本当に問題意識を持っているものですから、ぜひこれからも取り上げさせていただきながら、櫻井委員がおっしゃったような、取り上げることで逆効果がないように気をつけながらしっかりと取り上げていきたいと思います。

 本当にこれは、日本の文化を毀損する大変ゆゆしき問題だと思いますし、私も漫画家の方にもお話を伺いました。非常に困っていると。きょう閉鎖をされた一つのサイトだけでも、月間で九百万ユーザー以上アクセスがあると。しかも、ほとんど日本国内からという、やはりちょっと海外から見ても著作権についての意識が低いんじゃないかなと思えるような状況でもありますので、この件については、これからも取り上げさせていただきながら、ぜひ必要な対応をとっていただきたいなというふうに思います。

 改めまして、著作権法改正について伺ってまいりたいと思います。

 著作権というと、今、日本の意識が少し低いんじゃないかというお話をしましたが、やはりどこか、著作権というのはもちろんわかっているんだけれども、何をしたら本当にだめで、どこまでいいのかということがいまいち国民の理解が深まっていないというふうに感じています。この漫画ですとか雑誌の海賊版サイトもそうですし、あるいは音楽の違法ダウンロードもそうですけれども、何となくつい軽い気持ちで行ってしまう、著作権を侵害してしまうということがまだまだ国民の中にはあるのではないかなというふうに思います。

 こうしたインターネットの普及で技術が進化していくとともに、著作権法もそれに合わせて改正していかなきゃいけないという趣旨だと思いますので、それは非常に大きく共感をいたします。

 余り罪悪感を感じていない国民が多いという背景から、やはり子供のうちから著作権についてもう少し理解を深めてもらうということが必要ではないかというふうに思います。

 今、子供たちもスマホを普通に使いますし、そこでアクセスできるもの、どんなアクセスできるものがあるのかということも大人以上に詳しく知っているケースもありますし、また、学校の友達同士ではそういう情報もいろいろ共有しながら、ついつい、罪悪感なくそうした著作権を侵害してしまうということも非常に大きいというふうに思います。

 そこで、小学生であるとかあるいは中学生の段階から著作権という意識づけを教育していく、そういう必要があるのではないかと思いますが、まず、その点についての大臣の御所見を伺いたいと思います。

    〔鈴木(淳)委員長代理退席、委員長着席〕

林国務大臣 近年、インターネットの普及、今、委員がお触れになったように、情報化が急速に進展する中で、子供のころから、他人の創作行為を尊重して著作権を保護するというための知識と意識を醸成することが大変重要だというふうに考えておるところでございます。

 いいと思ってダウンロードしたりコピーしたら、一体どういうことが起こって、結果としてどうなるのか。結局、権利者、つくった人に正当な対価が払われずに、そういうところは萎縮するんだという、このつながるところというのを順々に教えていくということが大事だと思っておりまして、新しい小中学校の学習指導要領においては、社会科で、社会生活を営む上で大切な法や決まりについて扱うということをずっとちっちゃいころからやって、そして、音楽で、これは鑑賞のところなんかで著作者の創造性を尊重する意識を持てるようにするということをやっていきまして、また、技術・家庭の技術分野ですが、著作権を含めた知的財産権、技術・家庭ですから、ここには著作権以外のものも入ってくるということですが、これを新たに明記するということを入れておりまして、こういうふうに、順々に著作権等に関する教育の充実を図ったところでございます。

 また、学校向けの教育事業として、児童生徒が楽しみながら著作権について学べる学習ソフトの作成や提供、それから、学習教材で「はじめて学ぶ著作権」とか「マンガでわかる著作物の利用」、まさに著作物を使っているかもしれませんが、「マンガでわかる著作物の利用」という提供などを行っておりまして、更に効果的なこういった教材の開発普及を進めたい、こういうふうに思っておりまして、こうした取組を通じて、著作物に関する教育や普及啓発を一層充実してまいりたいと思っております。

源馬委員 まさに、大臣がおっしゃっていただいた点がすごく重要だと思います。著作権を侵害したらどうなってしまうのか、権利者にどう損失を与えるのかということとともに、やはり創作した人の創作意欲をそぐことがないように、それを尊重するような気持ちというのをやはり小さいころから教えていくというのは非常に大事だなというふうに思います。

 一方で、今、いろいろな教材もある、あるいはいろいろな科目の中で教えていくという御答弁がありましたけれども、これはやはり、学校の先生が全てを教えるというのはなかなか難しいかなというふうに思います。

 先ほど来、午前中の参考人質疑でもありましたけれども、著作権法というのはすごく難しくて、専門家の方ですら難しいというようにおっしゃる内容ですし、それをわかりやすく先生方が教えるというのはなかなか、しかも、年を追うごとに変化をしていくものであるということを考えると、これはやはり、学校の先生方にまた負担をちょっとかけてしまうのではないかなという懸念を持っています。

 教育現場においても著作権法の理解を深めていただくことが先ほどの御答弁のとおり大切だと思いますけれども、一方で、教員の多忙化が非常に深刻な問題になっているという現状において、どうそこのバランスをとられて、どう解決をされていくのか、大臣のお考えをもう一度お伺いしたいと思います。

林国務大臣 子供たちに著作権について正しく理解させるために指導を行うためには、やはり先生方が著作権に関する理解を深めることが重要である、こういうふうに考えております。

 ただ、小学生に、きょうここで御議論いただいているような、何条の何で、ただし書きはどうだと、ここまでやるわけでは多分ないだろうというふうに思いますので、先ほど私が申し上げたように、著作権というのはなぜ大事なんだという非常に基本的な部分、そういうところを中心にしっかりと教えていただくということだとは思いますが、やはり、教員の働き方改革というのも一方でテーマになっておりますので、なるべく教員が円滑かつ効果的に指導できるように、あらゆる教科の授業で活用できる手引書として、例えば「場面対応型指導事例集 著作権教育 五分間の使い方」、こういうようなものを手引書として作成、提供をしたり、それから、「学校における教育活動と著作権」ということを解説したパンフレットをつくったり、それから、これは年二回ですが、教職員向けの著作権講習会の開催、こういうのを行っておるところでございます。

 今後も、教員の皆さんの負担に配慮しながら、教育現場において著作権に関する理解が進むように施策の充実に努めてまいりたいと思っております。

源馬委員 ありがとうございます。ぜひそのようにしていただきたいというふうに思います。

 それでは、改正案のもう少し細かいところに入っていきたいと思いますが、本改正案、先ほどの参考人の方からも非常にいいというようなお話もありましたし、時宜に沿ったものだと思いますので、私も必要な改正であるなというふうに基本的に思います。しかし、やはり、先ほど来議論がありますとおり、海賊版のサイトもそうですけれども、難しい問題もたくさんはらんでいるというふうに思います。

 その中で、まず国民が子供のころからと先ほど質問させていただきましたけれども、大人の我々もやはりこの著作権についてもう少し理解を深めていくことが大事だというふうに考えています。

 特に、今回のこの改正案についても、どこがどう変わったのかということをきちんと、権利者や利用者はもちろんですけれども、一般の国民にもわかりやすく周知をしていくことが必要だと思います。

 先日の委員会でも、中岡次長から、法案の成立後にはしっかりと周知を努めることをまず努力していきたいという御発言もありました。今後、ますます複雑化していく可能性もあるこの著作権ですけれども、今回の改正案をどのように国民の皆さんに周知させていく方向性なのか、取組方を伺いたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正案の中身には幾つかの項目が入っておりますけれども、先ほど、法の明確性と柔軟性を確保しながらバランスのとれた権利制限規定をつくっていくということにつきましては、とりわけ利用者の方あるいは権利者の方にはしっかりと浸透させていかなきゃいけないわけでございますが、一方で、先ほど来学校教育の話が出ておりますけれども、学校教育の中では、教育の情報化に資する改正を今回行うわけでございます。それは各学校現場に全部届く話でございますので、しっかりと施行通知の中で明らかにしてまいりたいと思います。

 また、文化庁のウエブサイトがございまして、その中で改正の趣旨、概要等を説明するということ、さらには、著作権制度に関します知識の普及のために全国各地で開催しております講習会がございますが、その中で丁寧に解説に努めるということ等によりまして、今般の改正法の趣旨、立法趣旨及びその内容につきましてはしっかりと周知してまいりたいと考えております。

源馬委員 ぜひそのようにしていただきたいと思います。

 ウエブサイトは、なかなか文化庁のウエブサイトを見に来る一般の国民の人というのは少ないと思うので、そこに掲載するのはもちろん大事だと思いますが、もうちょっとプッシュの情報を発信していただければなと思います。

 特に、学校現場では、やはり小さなころから当たり前に著作権について大切にしていこうという意識が生まれることは大事だと思いますので、ぜひ推進をしていっていただきたいというふうに思います。

 そうした周知をしていく中で、もちろんわかりやすく御説明をしていただくと思うんですけれども、一方で、創作者側、権利者側にも実はまだまだわかりにくい部分というのがあるのではないかなというふうに思います。

 きょうお配りさせていただいた資料、これは前に委員会でもお配りいただいた資料、恐縮ですが、もう一回きょうお持ちさせていただいたんですけれども、例えば、この一枚目の資料の中に、権利制限規定に関する三つの層と柔軟な権利制限規定がカバーする範囲についてというのがありまして、この下部の図に、権利者の利益を不当に害する領域、ここについてはだめだよという説明がされているんだと思います。

 第一層や第二層では、権利者の利益を不当に害する領域というのは、少ないながらも若干あるという意味合いだと思うんですけれども、一体どういうものが権利者の利益を不当に害する領域に当たるのか、そういったものが利用者によりわかりやすいと、これまでもいろいろ議論が出てきました、ガイドラインが必要じゃないかという議論もありましたし、全てはやはりそういうところだと思うんです。何がいけないのか、そこを明確にしてもらいたいというところがあると思いますので、この図で言う権利者の利益を不当に害するに当たるもの、何か例示があれば教えていただきたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 この資料につきましては、できるだけわかりやすく、一層、二層、三層に分けて御説明申し上げているんですが、その中でも、やはり一般の方々にはわかりにくい部分があろうかと思います。

 先ほど委員御指摘のように、不当に害することになる場合ということに当たるか否かにつきましては、著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、あるいは将来における著作物の潜在的市場を阻害するかという観点から、最終的には司法の場で具体的に判断されるものと考えております。

 この資料を説明するときに、今回のことで不当に害する場合といったらどういったものがあるのかということで、一層、二層、三層に分けて例を挙げますならば、例えば第一層に関しまして、一番左の部分でございますが、新第三十条の四の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当すると考える場合といたしまして、自己が著作権を保有する大量の著作物を容易に情報解析できる形で整理したデータベースを著作権者が提供している場合に、当該データベースを情報解析を行う目的で著作権者に無断で複製をするという場合が例として挙げられるんじゃないかと思います。

 また、第二層に関しましては、例えば、新第四十七条の五の第一項の「不当に害することとなる場合」でございますけれども、例えば辞書でございますけれども、複数ある語義のうち、その一部のみを確認されることによりまして、当該著作物、辞書が実際売れなくなるというようなことがあるということがございますけれども、そういうような形で著作物の当該一部を利用する場合というのもこの不当な場合に当たってくるんだと考えております。

 さらに、三層でございます。これは一番、権利者に、利益を不当に害する領域がある意味広い部分でございますけれども、例えば、市販のワークブックやドリルといった教育の過程における利用を目的として作成された補助教材を一部購入いたしまして、それを生徒全員に複製して配付する場合というようなこと、これはまたそういったドリル自体が売れなくなりますので、そういったことが例として考えられるんじゃないかというふうに考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 やはり、そういった具体的な例を示していただけると非常にわかりやすいなと思いますので、もちろん、それが全てではありませんが、この前も議論に出てきましたガイドラインも含めて、運用の面で、利用者にも権利者にも、そして国民にもわかりやすいようにしていただきたいというふうに思います。

 続きまして、教育の情報化に対応した権利制限等の整備の中で、主に授業目的公衆送信補償金について質問させていただきたいと思います。

 著作権法において、著作物を複製やネット送信する場合、著作権者の許諾を得ることを原則としておりますけれども、学校の授業での、先ほどドリルの話もありましたが、紙でのコピー、それから視覚障害者のための点字複製など、公益性が高いケースについては許可を得ることなく利用することができるというふうに理解をしております。ただし、そのような場合においても、条文で個別に、具体的に、かなり細かく規定をされております。

 そうした中で、本改正によりまして、教師が予習、復習用に著作物を利用した電子データ教材を許可を得ることなくつくることができて、児童生徒に送信することが可能になったというふうに理解をしております。

 そこで、先ほどお配りした資料の二枚目なんですが、この二枚目の資料にあるように、電子データは無数に拡散してしまうというおそれがあるということで、教育委員会などが著作権者の団体に補償金を支払うことも同時に制度化をされたということでございます。

 この右下の図にあるように、教育機関が補償金を支払って、文化庁長官が指定する補償金徴収分配団体に支払って、その指定管理団体が権利者に補償金を分配するということになると理解をしておりますが、授業目的公衆送信補償金の権利者への分配について、分配は、どのような根拠というかどのようなやり方に基づいて行われるのか、教えていただきたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の補償金の徴収、分配業務を行う指定管理団体というものでございますけれども、補償金請求権の対象となる公衆送信が行われる著作物、実演、レコード、放送及び有線放送について、それぞれ権利者を構成する団体であって、当該権利者の利益を代表すると認められる者が構成員となっているものであること等の要件を満たした場合に、文化庁長官は指定を行うということとしております。

 このため、指定管理団体には、各権利者の意思の総体として、補償金の分配規程をつくっていくということになるわけでございますが、その規程に基づきまして正しく分配が行われるということが期待されるものでございます。これも法律の中に規定したものでございます。

 また、分配業務の適正性と透明性というのがこれまた大事な部分でございますので、制度設計におきましては、法律上、指定管理団体に、補償金の分配に関する事項を含む補償金関係業務の執行に関する規程の文化庁長官への届出義務を課すということ、さらに、指定管理団体の補償金関係業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、文化庁長官は指定管理団体に対して報告の徴収や改善のための勧告等を行うことができる旨を規定しているところでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 文化庁長官が行う監督についても御説明をいただきましたが、やはり、運用でどのように運用されていくかということが非常に重要になると思います。

 百四条の十五の三には、文化庁長官は、指定管理団体に対して、当該業務に関し監督上必要な命令をすることができるとされていて、今、それは御説明していただいたと思いますが、その補償金を分配する業務については恐らく一般社団法人になるのではないかという理解をしておりますけれども、この指定管理団体が最終的な責任者になるという理解でよろしいんでしょうか。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 補償金が権利者に対しまして適切に還元されることを始めといたしまして、補償金徴収、分配業務の適正性と透明性が確保されることは、教育関係者から御理解を得ながら補償金制度の信頼を維持していくためにも非常に重要であると考えております。

 補償金の分配につきましては、教育活動に著作物を利用する場合に権利者に正当な対価を還元するという今般の制度改正の趣旨を踏まえまして、当事者間において補償金制度が適切に運用がなされることを期待しておりますが、補償金の分配業務の最終的な責任者は、一義的には指定管理団体の代表者にあると考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 あわせて、この百四条の十三には補償金の額についてありまして、教育機関の設置者の意見を代表する団体から意見を聴取した上で、文化庁長官の認可を要することとし、認可に当たっては、文化審議会へ諮問すること、そして、権利制限の趣旨等を踏まえた適正な額であると評価できることが求められているというふうに示されております。

 やはり、この額を決める、これが非常に重要なところだと思いますが、教育機関の設置者の意見を代表する団体から意見を聴取する、あるいは、先ほどからお話がありますが、恐らく教育現場に何らかのデータを提供してもらうということもあると思いますが、先ほど大臣の御答弁でもありましたけれども、やはり、それが余りにも負担になってしまうと、またこれは教員の多忙化にもつながっていくという側面もあると思いますので、教育機関になるべく負担をかけないデータを収集するという工夫が必要だと思います。そのあたりについての御見解を伺いたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 補償金の料金体系が、利用実態にかかわらず定額を支払う包括徴収型が採用される場合には、権利者への補償金の分配の参考とするために一部の教育機関にサンプリング調査の協力が求められることも想定されますが、その具体的な方法につきましては、先ほども御指摘がございましたけれども、調査の負担が過大なものとならないよう、教育関係団体の意見をよく聞いて定められることとなると考えております。

 また、学校等におきます著作物利用に係ります補償金つき権利制限を導入している国等につきましては、補償金等の分配に当たりまして、ある意味先輩の国でございますけれども、利用実績のサンプリング調査を行っている実例がございます。

 例えば、イギリスにおきましては、各教育機関から抽出した学校を対象に著作物の利用状況のデータを収集しているとか、あるいは、オーストラリアにおきましては、公立学校への調査は毎年百校に対して行っておって、学校生徒数の二%に相当する、そういうような実例がございますので、そういったところを参考にしながら、先ほど申し上げましたように、教育関係機関の意見も十分聞いて対応していきたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 この制度設計あるいは運用は非常に難しいと思いますけれども、ぜひ、知恵を絞っていただいて、学校現場にも負担をかけないような調査をしながら、適正な仕組みにしていっていただきたいなと思います。

 事前にいろいろ御説明を受けているときにもちょっとお話がありましたけれども、細かい話をすると、例えばほんの数回しか使われていないようなものに対して補償金を支払う場合、仮に、例えば三十円の額だった、でも振り込みに百円の手数料がかかるというようなケースとかも発生するかもしれないというお話もありまして、まさに、こういった細かいところもこれから検討が必要になってくると思いますけれども、ぜひ、公平性を保って、適正な仕組みにしていっていただきたいというふうに思います。

 さらに、この補償金の分配についてもう少しお伺いしたいんですが、百四条の十五について、「指定管理団体は、授業目的公衆送信補償金の総額のうち、授業目的公衆送信による著作物等の利用状況、授業目的公衆送信補償金の分配に係る事務に要する費用その他の事情を勘案して政令で定めるところにより算出した額に相当する額を、著作権及び著作隣接権の保護に関する事業並びに著作物の創作の振興及び普及に資する事業のために支出しなければならない。」というふうにあります。

 先ほどお配りさせていただいた資料の二枚目の右下の、わかりやすく、簡素に書いていただいただけだと思いますけれども、これを見ると、利用者である学校側が補償金を支払って、そして分配団体が権利者にのみ補償金を分配するように見えますけれども、この百四条の十五にありますとおり、補償金を分配するだけではなくて、もちろん、それに当たっての費用ですとかコスト、こういったことにも支出をするということが想定をされているのではないかと、当然だと思うんですけれども、思います。

 この運用を公平性、透明性を持ってやらないと、やはり国民の側、利用者の側からも、また権利者の側からもわかりにくい部分が出てきてしまうと思いますので、具体的に、どういった事業に支出することを念頭に今置いているのか、そして、その選定の基準ですとか過程の適正性や透明性をどのように担保する方向性であるのか、また、それに関する情報公開をどのように行っていくのか、このあたりについての御見解を伺いたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 そういうような具体的な内容につきましては、指定管理団体、これから指定されていくということになるわけでございますけれども、その中で検討されるべきものでございまして、特定の事業内容を想定しているものではございませんが、例えば、共通目的事業に関しまして同様な制度が既にございまして、私的録音録画補償金制度というのがございます。

 その例でまいりますと、例えば著作権及び著作隣接権の保護に関する事業としては、例えば、著作権の普及啓発のための小冊子の作成、配布をしたり、あるいは、著作物の創作の振興及び普及に資する事業としては、音楽、芸術にかかわる創作活動及び創作環境の整備を目的とした活動に対する助成事業をしたようなことがございます。

 また、選定基準の設定とか選定につきましては、指定管理団体において行われることになるわけでございますが、制度に対する信頼性を維持するためには、先ほど御指摘のように、その適正性、透明性の確保及び情報の公開も大変重要になると考えております。

 例えば、共通目的事業に関しまして、既に、私的録音録画補償金制度におきましては、選定基準を定めて、これは公開をしているという取組をしております。

 今回の補償金制度の制度設計につきましては、法律上、業務の適正運営を確保するために、補償金関係業務の執行に関する規程の届出義務を課すということと、補償金関係業務の適正な運営を確保するための報告徴収等に加えて、特に、共通目的事業に関しては、必要な命令を行うことができるというふうにしております。

 文化庁といたしましては、これらの措置等を通じまして、業務の適正性、透明性の確保及び適切な情報の公開に努めてまいりたいと考えております。

源馬委員 以上で終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、平野博文君。

平野委員 無所属の平野博文でございます。

 先ほど同僚議員の方から少しありましたが、ちょっと気になるところがあったものですから、通告はしておりませんが、一般論で結構ですから教えていただきたいと思います。

 つい先日、官房長官の会見で、サイトブロッキングを検討する、こういうふうな会見があって、先ほど同僚議員からお話ございました。

 このことは、私はやはり、海賊版サイトを遮断する、こういうことについての必要性は認めるんですが、政府の要請によってそういうことをしていく、こういうことについてはいかがなものかと思っておるものですから、検討を今政府がしているということですが、どこで検討しているんですか、これは。

中岡政府参考人 先ほども話がございましたけれども、内閣府を始めといたします関係省庁と連携をして検討しているという状況でございまして、ある意味、事務局的な仕事をしているのが知財事務局ということでございます。

平野委員 では、その判断は政府がするということなんですか。ブロックするかしないかというのは政府がするということですか。

中岡政府参考人 まさにそこら辺の、あらゆる方策を講じるという場合におきましてどのようなことができるのかといったところにつきまして、まさに現在検討しているというところと承知しています。

平野委員 私はやはり、戦前戦中の検閲になる、したがって、これは、遮断できるような状態をつくっていくということは大事だと思うんですが、権限を持っている政府がこういうことをしていくということのあり方が本当にいいのかどうかというのは非常に疑問に思うものですから、そういう戦前の状態に、あるいは戦中の状態にならないようなことを考えていただきたいと私は思うんです。

 大臣、どうですか。検閲みたいになるんですね、これ。このことについては、大臣、どうですか。これはちょっと通告していませんが、一般論で結構です。

林国務大臣 このことにかかわらず、例えば青少年に対する有害図書の規制を検討したときも、いろいろなところでこの話は出てまいりまして、私の拙い記憶でも、似たようなケースが幾つかあったな、こういうふうに思っております。

 やはり一方で、先ほどどなたかの御質疑にあったように、憲法二十一条というのがあるわけでございますが、一方で、いろいろなところで、我々から見てもちょっとこれは目に余るなという被害も実際に生じているところもありますので、このバランスをとるということが非常に大事なことではないかというふうに思いますので、政府が直接判断をするというようなことがどうなるのか、では、そうでなければ一体どういうやり方があり得るのかというところを、これはもう委員もお詳しいところだと思いますが、そういうことを慎重に検討するということが一般論としては大事なことではないかと思っております。

平野委員 だから、海賊版サイトがビジネスとして成り立っていかないような仕掛けをやはりつくっていくことが大事だと思いますので、そういう視点を含めて、慎重に検討していただきたい。私も、遮断する、このことは大事だと思っておりますが、検閲的なことにならないようにぜひお願いをしておきたいと思います。

 それでは、これもそうなんですが、本題に入っていきたいと思います。

 この国会で、先ほど来ずっと言われていますが、働き方改革、森友、この文部科学委員会にかかわる事案では、二十三区の大学定員の問題についても私は申し上げました。きちっとした事実、立法事実に基づかない政策がいろいろ散見する、大変残念に思っているんですが、この点、今回の著作権法改正についても、文化審議会著作権分科会の議論において、一般規定の必要性や内容についてのニーズや事実関係の掌握が重要であるとの意見が出されて、ニーズを掌握した、多様な選択肢を検討したということで、午前中の参考人の方々についても、新たなやり方でやったんだ、こういう陳述がございました。

 その点について少し聞かせてもらいたいと思うんですが、文化審議会の著作権分科会では、ニーズの調査を行った、それに基づいて、フェアユースなどの一般規定を求める声は少なかったとしているわけであります。しかし、上場企業三千六百九十三社ですか、調査票が送付された、こういうことでありますが、ベンチャーや研究機関の、特に新たな技術、サービスのクリエート、創出にかかわる関係者のニーズはどの程度この中で把握されておられるんでしょうか。この点についてお聞きしたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど立法事実が非常に重要だということの中で、私ども、審議会の中におきまして、著作物の利用円滑化のニーズ募集ということをさせていただきました。それにおきましては、当然、大きな企業さんもあれば、非常にチャレンジングなことを志向していくベンチャー企業もいらっしゃると思います。そういったこともございますので、例えばJASDAQだとかあるいはマザーズの上場の企業さんとか、そういったところも含めて幅広くニーズ募集をさせていただいてございます。

平野委員 上場企業三千六百九十三社、これは間違いないですよね。

中岡政府参考人 そのとおりでございます。

平野委員 本来、上場企業云々ということもさることながら、やはり、イノベーションを生み出していく、非上場の中小でありますとかベンチャー企業の意見についてはどれだけ聞いているんですか。

中岡政府参考人 先ほど、柔軟な権利制限規定を設ける、その制度設計をするときのニーズ募集だけではなくて、別途、審議会の方でヒアリングを実施しておりますけれども、そういう中でも、そういうチャレンジングな取組をされているといったところもお話を聞いておるということでございます。

平野委員 次長、本当に聞いているの、これ。聞いていますか、本当に。何社に聞いているんですか。

中岡政府参考人 私ども、調査研究事業を並行してしておりましたけれども、そういう中で、新経済連盟の方々からも御意見を頂戴しているというところでございます。

平野委員 いや、だから、私、思うんですよ。この調査報告書では、フェアユースの一般規定を求める声は少なかったと導いているんですね。それは間違いないですか、この調査結果に基づいて。

中岡政府参考人 そのような理解で結構でございます。

平野委員 そこが私、疑問を持っている点であります。私、もう一回これは調査してもらいたいと思いますよ。

 先ほど、土肥先生も含めて、二十四年のときに、いろいろな審議会の答申を受けて、あの参考人は、もっとフェアユースの考え方を入れるべきだという答申をしたにもかかわらず、そのとき大臣ですから、私、責任がありますよ、ありますが、そういう結論を見出さなかったということで、文化庁の月報か何かに批判文章を書いているんですよ。

 あれからもう時代はこれだけ変わったわけですよ。それでも、やはりフェアユースの考え方というニーズが起こってこないんですか。そこの落差が余りにも大きいと思うんです。

中岡政府参考人 済みません、手元にアンケート調査の具体的な結果についての資料がなかったので、ちょっと補足させていただきたいと思います。

 権利制限規定の規定ぶりに応じました事業展開のしやすさに関する企業向けのアンケート調査によって、肯定的な評価をした企業の割合は以下のとおりということでございまして、その中で、考慮要素を示して公正な利用を適法と認めることを定めた抽象的な規定をする、そういったものにつきましては二割強であったということはございます。

 それで、先ほど平野先生がおっしゃいましたけれども、その当時は柔軟な権利制限規定を思考して議論をしてきたわけでございますけれども、その当時と現在の状況はかなりまた変わっておりまして、AIだとか、イノベーションの種となるようなさまざまな技術ができておりますので、そういったところも勘案をして、今回この規定の整備という、ある意味、先ほどの土肥先生のお話でございますけれども、環境が整ってきたというふうに理解しております。

平野委員 いや、ですから、二十四年のときから見たら、今の方が、より一般規定を求めている方が、科学技術のイノベーションを含めてそういう環境がより整ってきているのにもかかわらず、アンケート調査ではそういう一般規定を置くべきであるという声が、ニーズが少なかったというふうに受けとめるというのは、逆になっていませんか、時代の流れと。そこを言いたいわけですよ、答えにくかったらもう答えなくていいけれども。

中岡政府参考人 柔軟な権利制限規定を設けることによって、午前中の参考人の質疑の中でもあったと思いますけれども、リスクをとってチャレンジをしていくという企業の方々はそういったことを期待、大いにされているということでございましたが、私どもといたしましていろいろ聞いております中では、例えば経団連の御意見というようなことにおきましては、その抽象性はいいんですけれども、やはり明確性といいますものがないと。

 土肥先生のお話でもございましたけれども、例えば法社会学的な観点からいって、そういった柔軟な規定を置いたときに企業がどう行動するのかといったところも踏まえて整備をしなきゃいけないということがございまして、そういうことを踏まえますと、やはり、アメリカ型のフェアユースということではなくて、今回整備をいたしました、ある程度明確性も持った規定で対処したいということでございます。

平野委員 二十四年に国会で答弁したことを恥じているんですよ、僕。今次長が答弁したのは僕が答弁したのと一緒じゃないの。二十四年の改正のときに答弁した内容と一緒じゃないの。だから、時代が大きく変わっていっているでしょうと。

 したがって、言いたいことはあるんですけれども、私は朝も言ったんですけれども、著作権法の一般規定を検討する本来のやはり趣旨というのは、現在あるニーズではなくて、将来のニーズに対応でき得るように規定をどう設けるかというところに腐心をしなきゃいけない。こういう意味で、二十四年のときにはそうなっていなかった、また、なれなかった状況だったものですから、それは私、もっと踏み込んでおけばよかったな、そうすれば、土肥先生にああいう月報で書かれずに済んだのになというふうに自分では反省しているんです。

 また、一方では、明確性という言葉を使われました。調査の結果で、やはり大半の企業、団体というのは高い法令遵守をする、こういう意識を持っておるんですね。だから、柔軟な対応ということよりも、より明確性を重視している、このことも事実だと思いますよ。これは僕は否定しません。

 しかし、本件の調査の質問では、やはり日本企業はフェアユースを本当に望んでいないということが言い切れるのかどうかというところに、私は疑問を実は持っておるわけであります。

 例えば、こういう設問がありましたね、質問に。貴社は他社から訴訟の提起を受ける業務にためらいがあるか、こういう問合せに対しては、少なくとも大企業は、ためらいます、こういうふうに答えるんだろうと思いますよ。また、適法となるサービスの要件が具体的に示されているとの問いに対しては、象徴的に示されているとのもとで、どちらが仕事しやすいですか、こういう問いかけをしたら、具体的にというふうに当然答えが返ってくるんですよ。

 したがって、フェアユース規定があり、訴訟になれたアメリカという国で見ると、同じ調査をアメリカでやっても、私は、この傾向は変わらないんじゃないかなと。もっと単純に言えば、フェアユースの規定を置いているアメリカ等の中でも、こういう質問をしたときに、今、日本の大手が言っているような回答と同じようになると思うんですが、諸外国での調査との比較はありますか。

中岡政府参考人 諸外国の調査というのは、私ども、いたしておりません。

平野委員 だから、日本の中での調査結果だけで、一般規定を置かない、そういうニーズが少ないというふうに結論を導くのは少し違うのではないかなということは指摘をしておきたいと思います。したがって、結論ありきの調査の結果ではないか、きつい言葉で言えば、そういうふうに映るんだと思います。

 次に行きます。

 柔軟な権利制限規定について、こういうことでありますが、改正法案において第一層と位置づけられる内容について確認をしておきたいと思います。

 平成二十三年の分科会におきましては、いわゆる日本版フェアユースと呼ばれる権利制限の一般規定化が、検討したけれども、個別規定の整備にとどまったということは事実だと私は思っております。

 文科省によれば、今般の改正案として提出された内容のうち、第一層と位置づけられた三十条の四、あるいは四十七条の四、平成二十三年の分科会報告に言うA、B、Cの三分類を包括する、こういう説明を受けましたが、その理解でよろしいのかどうか、お答え願いたいと思います。

中岡政府参考人 平成二十四年の改正時におきましては、著作物を取り巻く環境の変化に対応するということで、権利者の利益を不当に害しない範囲で、それまでに整備してきた権利制限規定と比べて、一定程度包括的な要件を定める形で規定の整備をしたところでございます。

 具体的には、例えば、写真の背景に著作物が写り込むような場合に適用される規定、著作権者の許諾を得て利用しようとする場合等における、その検討の過程における利用に関する規定、そして、これがまさにC類型で、非享受というものに当たるものでございますけれども、三つ目といたしまして、著作物の利用にかかわる技術開発等の試験の用に供するための利用に関する規定、四つ目には、情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報の処理のための規定というものを整備したわけでございますけれども、この最後の三番、四番につきまして、まさにC類型というもので、ある意味、一般的なものを思考してやってきましたけれども、かなり具体的に規定をしましたということになります。

平野委員 次長、質問に答えてよ。

 三分類を包括するようなものであるというふうに理解してよろしいか。もう答弁は要りませんよ。それでよろしいか。答弁するの。

中岡政府参考人 今回の改正に絡めての話でございます。ちょっと説明が舌足らずで申しわけございません。

 著作物の利用に係る技術開発等の試験の用に供するための利用と、情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報提供のための利用というのを今回全部まとめて規定をしたというものでございます。

平野委員 いや、だから、もっと平たく言えば、なぜこれを一般規定と言わずに、柔軟性のある権利制限規定と呼んでいるじゃないですか。何でこれは一般規定と読み込めないの。読み込んだら、何か不都合が起こるわけ。なぜ柔軟性のある権利制限規定と呼んでいるのか、ここがわからない。

中岡政府参考人 呼び方の問題であろうかと思いますけれども、いわゆる、今回対応いたしました、著作物の利用に係る技術開発の試験の用に供するための利用と情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用といいますものを一般規定というふうに呼ぶこともありますけれども、これに限りませず、例えば、先ほど一番初めに申し上げました、写り込みのような付随対象著作物の利用だとか検討の過程における利用といいますものも、言いようによっては一般規定というふうに考えております。

平野委員 素直にそう言ってもらったらいいのよ。それを何かしゃくし定規に御説明いただくからいかぬのですわ。

 私は、この第一層と位置づけられた規定については、曲がりなりにも、著作権の一般規定化にやはり踏み込んでいる、こういうふうに私は認識しておって、一定の評価をしているわけですよ。だから、そこにちゃんとすとんと落ちるような答弁をいただいたらオーケーと言うのですが、何かよくわからない答弁をされるので、あれだったんですが。

 だけれども、本条項に含まれているという説明をしているわけですが、現行法で個別の条文でも確認されている内容、こういうことがちょっと混在をしているので、要は、権利制限の範囲が縮小されるということではないという理解でよろしいか。この点だけ、イエスかノーかで答えてください。

中岡政府参考人 狭まるということはございません。

平野委員 それでは、ちょっと時間がなくなってきたので、もっと言いたいことはあるんですが、私は、著作権法というのは、やはり権利を守るということが基本なんだと。本来、どこからかわかりませんが、権利侵害になるかを明確に定めることで円滑な利用促進される役割を果たすんだ、こういうことが基本にあるんだと思っています。

 しかし、近年のいろいろな科学技術の進歩、IT等々、いろいろな利用形態が生まれてきた、こういうことであります。

 したがって、我が国において、新たな利用方法、サービスの創出に、この法律があるために萎縮するということが生ずるということは、私は、将来に対して課題を残すことになるんだろうと思います。したがって、権利者の権利を不当に侵害しない範囲であれば、利用者の予測可能性を担保するために、逆に、明確に一般規定を置かれたらいかがなものか、こういうふうに実は私は考えておるわけであります。

 一方、今回の条文は、あくまでもニーズが顕在化するものをもって審議にかけて法令化しているものでありますが、こういう、私が今申し上げたような視点から見れば、チャレンジングしていく、新しいサービスに挑戦するベンチャーを生むようなものにはやはりまだほど遠いんだろう、こういうふうに思いますので、ノーアクションレター制度のように迅速に法令化の判断を下せる仕組みを考えたらどうだろうか、こういうふうに、大臣、思うんですが、どうでしょうか。ぜひ私は検討してもらいたい、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。

林国務大臣 大変大事な御指摘でございまして、何を一般というかという定義の問題もありますが、全部一般だというと、これは一層のところで、前回の先生が御苦労なさったところよりは少し一般的になってきたということは、もう御議論いただいたとおりでございまして、一般化がふえればふえるほど、新しいことをやろうとする人にとっては非常にチャレンジング、チャレンジができるようになるという一方で、権利者にとってはそれだけ守らなきゃいけないことが出てくるのかもしれないという懸念が出る、このバランスをどうとるか、こういうことではないか、こういうふうに思っております。

 やはり、この産業界、新しい産業界ですね、このニーズに可能な限り速やかに対応するということが重要だ、こういうふうに思っておりますので、政令等を制定していくに向けた検討に当たっては、現場の皆さん、事業者や権利者等の意見を伺いながら迅速に検討を行って、全部できるまで待っている、こういうことではなくて、検討が取りまとまったものからやっていく、こういう姿勢でやっていければと思っております。

平野委員 ありがとうございます。

 ぜひ、そういう前向きに、時代に合った対応をしていただきたいと思います。

 最後に、海賊版サイトの件ですが、先ほど来もありましたが、海賊版のコンテンツを扱うサイトが極めて問題になってきているわけであります。

 出版物を極めて大規模に違法配信し、権利者側からは深刻な懸念の声が表明されているわけであります。しかし、いわゆるリーチサイトであって、みずからアップロードしていない、あるいはサーバーを海外に置いているなどの主張に対して実効ある対応ができていないのが現実の今の姿だと私は認識をしております。

 これまでも国会で問題になってきていますが、本当にこれらの海賊版サイトは違法なんでしょうか。その見解を聞かせてください。イエス、ノーでいいですよ。

中岡政府参考人 海賊版サイトというのは、さまざまなものがあると思いますけれども、まさに今、昨今話題となっております例えば漫画村のサイトにつきましては、これは著作物を許諾なくアップロードしているものでございますので、そういったものにつきましては著作権法の違反の疑いがあるということでございます。

平野委員 いや、ですから、こういう海賊版サイトが、出版物を無断で取得し、何ら対価を支払っていない。しかし、このサイトを維持していくためには何らかのそれなりの費用が発生しているはずなんですね。先ほどのあれにもかかわってくるんですが、なぜこれは運営をすることができるんでしょうか。

 私、仄聞するに、海賊版サイトの主な収入源というのは広告収入なんだろう、こういうふうに思うものですから、実際、海賊版サイトにいろいろな広告が表示されているわけであります。比較的マイナーな企業が多いようですけれども、サイトには著名な企業の広告も表示されているところもあるわけであります。

 したがって、これは警察庁あるいは文化庁に問いたいわけですが、現状、こうした海賊版サイトにおいて広告を出す行為に何らかの違法性はあるのでしょうか、ないのでしょうか。私は、違法性があるんだろうと思いますから、これに何らかの対処をする方法を考えるべきだと考えますが、違法性、ないんですか、広告を出すということに。

中岡政府参考人 広告の関係でございますけれども、経済産業省の関係の仕事になると思いますけれども、実は、先ほど申し上げましたように、全体、こういった違法サイトの対策につきまして内閣府の方で検討しているということでございまして、その中で検討されているものでございます。

平野委員 ぜひ、先ほど言ったように、ブロッキングするということよりも、こういう海賊版の部分が発生しないようにするためには、その企業が、それが運営をしていくためのコストがかかるわけですから、コストをやはり遮断する。大半の収入は広告だとするならば、そういうところに広告を出すことに、法律的には違法であるということからすれば、おのずとこれはなくなっていくんだろうと思いますので、そういう視点のことも含めて、ぜひ御検討いただきたい、かように思います。

 時間が参りましたので、途中ですが、終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 まず初めに、そもそも、著作権法の意義について伺います。

 我が国の著作権法は、人格権を規定しております、著作者人格権。この意味についてどのようにお考えか、大臣の御認識を伺います。

林国務大臣 著作権法の第一条でございますが、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」、これを目的として定めておるところでございます。

 すなわち、人々の創作意欲や努力によってつくり出される文化的な創作物について、無断でこれを利用する行為や創作者の人格的な利益を害する行為が蔓延いたしますと、創作者の創作意欲を損なって、ひいては我が国全体の文化的な創作のサイクル全体を阻害してしまうということになるために、著作物等の公正な利用に留意しつつ、創作者に対してこれらの行為について一定のコントロールを行う権利を与えて、創作活動へのインセンティブを付与すること等によって、文化の発展に寄与しようということでございます。

 著作権法第一条に言う「著作者の権利」とは、財産的利益を保護するための著作権と、人格的利益を保護するための著作者人格権の両方を包含するものを指しておるところでございます。

 この著作者人格権については、著作物が著作者の人格が具現化したものであるということに鑑み、公表権、氏名表示権、同一性保持権、これをその内容として定めて、著作者の人格的利益を保護することとしております。

 こうした著作者の人格的利益の保護については、国際条約上の要請でもあるところでございます。

畑野委員 林大臣から詳しく御説明いただきました。

 それでは、今回の著作権法の一部改正案についてですが、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用などとして、これまでにない柔軟な権利制限規定を盛り込んでおります。その理由は何でしょうか。大臣に伺います。

林国務大臣 近年、デジタルネットワーク技術等の進展を踏まえまして、平成二十一年には、インターネット情報検索のための複製等、それから二十一年、同じときですが、電子計算機による情報解析のための複製、それから二十四年では、著作物利用に係る技術開発等の試験のための利用等について、権利保護と利用の円滑化とのバランスをとりつつ、必要な制度の見直しを行ってきたところでございます。

 一方で、IoT、ビッグデータ、人工知能、こういった情報通信技術のさらなる進展によりまして、第四次産業革命に関する技術を活用したイノベーションの創出というのが期待をされておりますが、現行法の権利制限規定には要件が一定程度具体的に定められているものがございまして、その要件から外れるような新たな利用方法が生まれた場合に、著作権侵害となってしまうというおそれが指摘をされてきたところでございます。

 こうした状況を受けまして、産業界等から、イノベーションの創出のために、こうした新しい技術を活用した新たな著作物の利用にも権利制限規定が柔軟に対応できるようにすることが求められてきたということで、今回の改正案にこの柔軟な権利制限規定を盛り込むことにしたところでございます。

畑野委員 そこで、続いて林大臣に伺いたいんですが、二〇〇九年の知的財産推進計画で、日本版フェアユースの導入が打ち出されました。

 今回の法改正の内容というのは、これまで言ってきた日本版フェアユースというものなのでしょうか。

林国務大臣 今般の改正に当たりましては、いわゆるフェアユースのような一般的、包括的な権利制限規定が我が国に適しているかというところも含めて、これは今、平野先生ともやらせていただきましたが、どの程度抽象的な権利制限規定を置くことが我が国において最も望ましいかについて検討してまいったところでございます。

 この点、文化審議会の検討の結果、我が国の企業等の大半は、高い法令遵守意識と訴訟への抵抗感、今余り言わなくなりましたが、訴訟沙汰、裁判沙汰という言葉がありますが、これは英語にはないそうでございまして、そういった抵抗感というのが一定程度ある。そういったことから、規定の柔軟性よりも明確性を重視している。それから、著作権に対する理解が国民に十分に浸透していないということなどから、権利制限規定の柔軟性を高めると、うっかり過失等によって権利侵害をしてしまう、こういうようなことが助長される可能性が高まる。それから、我が国では法定損害賠償制度等がないために、訴訟したとしても費用倒れになることが多い。こういう問題がある。

 こういうことから、いわゆるフェアユースのような一般的、包括的な権利制限規定の創設をしても著作物の公正な利用の促進効果はそれほど期待できない一方で、不公正な利用が助長されるという負の影響も予測される、こういう指摘があったところでございます。

 それから、我々のように法律で定めてきちっと全部やるのか、アメリカのように後で訴訟でちゃんと片をつけるというやり方がいいのかという、いわゆる立法府と司法府の間の役割分担のあり方、それから、罪刑法定主義というのがございますので、あらかじめやはり定めておかなければ、こういう要請があるわけでございますので、そういった関係からも、やはりフェアユースのような一般的、包括的な規定は望ましくない、こういうふうになったところでございます。

 少し長くなって恐縮ですが、以上のことから、文化審議会では、現在の我が国の諸状況を前提とすれば、フェアユースのような一般的、包括的な権利制限規定ではなくて、明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた複数の規定の組合せによる多層的な対応を行うことが最も望ましいとされたところでございます。

 今回の改正案では、こういった文化審議会の検討結果を踏まえまして、権利者に及び得る不利益の度合い等に応じて行為類型の分類を行った上で、そのうち、通常、権利者の利益を害することがない行為類型と、それから権利者の利益に与える影響が小さな行為類型につきまして、それぞれ適切な柔軟性を持たせた規定を整備することといたしまして、これにより利用と権利保護のバランスをとった形で規定を整備しております。

 先ほどの平野先生ともやりとりがございましたが、この規定のことを日本版フェアユースと呼ぶかどうかというのは各人の考え方によるところだ、こういうふうに思われますが、文科省としては、現在の我が国の諸状況を前提として、最も望ましい形で柔軟性のある権利制限規定を整備したもの、こういうふうに考えておるところでございます。

畑野委員 そうすると、林大臣としては、これは日本版フェアユースではないと。どちらですか。

林国務大臣 単なるフェアユースなら、先ほど申し上げたように、アメリカで使われているようなフェアユースではないということですが、日本版というのがつきますと難しくて、このことを日本版フェアユースと呼べばいいじゃないかと言われれば、まあまあおっしゃるとおりかもしれませんと申し上げなきゃいけなくなるかもしれませんが、私は、やはりフェアユースというのはアメリカであるようなものだということであれば、今回のものは、先ほどるる御説明いたしましたけれども、いわゆる日本版というのがつかないフェアユースではないということは申し上げておきたいと思います。

畑野委員 それで、昨年の二月に文化審議会著作権分科会の法制・基本問題小委員会が出した中間まとめ、これに対するパブリックコメントがいろいろと出されているんですが、柔軟な権利制限規定の立法事実について、余りに漠然とした理由だとの批判が寄せられておりました。つまり、産業界や利用者側のニーズだからといって権利制限規定がどんどん緩やかにされてしまっては、権利者の保護は大丈夫なのかという不安のあらわれだと思うんです。

 そこで、理由という点でも伺ったんですが、柔軟な権利制限規定を設けた立法事実、これは何でしょうか。林大臣、いかがですか。

林国務大臣 冒頭で申し上げたことと重なることもあるかもしれませんが、ビッグデータ、人工知能、こういったものが出てきて、第四次産業革命に関する技術を活用したイノベーションというのが期待されておりますが、現行の権利制限規定は、先ほど申し上げたように、一定程度具体的に定められておるものがあり、その要件から外れるような新たな利用方法が生まれた場合に、著作権侵害となるおそれがあるという指摘があったところでございまして、そういった状況を受けて、産業界等から、イノベーションの創出のために、新技術を活用した新たな著作物の利用にも権利制限規定が柔軟に対応できるようにすることが求められてきたところでございます。

 産業界等からは、ビッグデータや人工知能等を活用したイノベーションに係る著作物の利用ニーズを始めとして、先ほどちょっと平野先生ともありましたが、現在生じているニーズだけではなくて、将来生じ得るニーズも含めて、多くのニーズが文化庁に寄せられたところでございます。二十七年七月に文化庁が著作物等の利用円滑化のためのニーズ募集というのをやっておりますが、現在又は将来の著作物利用ニーズとして、合計百十四件のニーズが寄せられているというところでございます。

 今回の改正は、文化審議会の著作権分科会において優先的に検討すべきとされたニーズや、新技術を活用した新たな著作物の利用に権利制限規定が柔軟に利用できるようにするという社会の要請を一方で踏まえながら、権利保護と利用の円滑化のバランスをとるということで、先ほどフェアユースかどうかという話がありましたが、一定のカテゴリーといいますか範囲を決めて、そこの中で適切な抽象度を確保した柔軟性のある権利制限規定を整備することとしたということでございます。

畑野委員 将来のことが心配なんだという話が出てまいりましたけれども、それでは、この間のことでちょっと政府に聞きますが、例えば、法律が不備なために係争が続出した、そういうような立法事実はあったんですか。

中岡政府参考人 そういう事実は承知をしておりません。

畑野委員 そうですよね。

 それで、ニーズ調査やヒアリング、アンケート調査などをこの間やってこられたというふうに思います。例えば、柔軟な権利制限規定について、六割の企業、約六割の利用者団体が積極的に評価しているものの、五割弱の企業、約五割の利用者団体が適法性の判断が難しくなり利用が萎縮すると答えるなど、事前に行為の適法性についての有無を十分判断できるよう、法規範の明確性を重視しているんですね。また、企業の約三割、権利者団体の約七割、利用者団体の約四割、個人の約四割が故意、過失による著作権侵害の増加を懸念する、こういう結果が出ているんです。

 ですから、私は、この立法事実というのは本当によく検討していかなくてはならない、きちっとそれを示す必要があるというふうに思っております。

 そこで、具体的に伺いたいと思います。

 著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等に関する調査研究というのがございまして、これを分析した新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定のあり方に関する報告書によりますと、柔軟性のある権利制限規定を整備することについて、権利侵害を助長する可能性が相当程度あるものと考えられると指摘しております。法案は、こうした指摘にどのように対応されているのでしょうか。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 報告書の件に触れられました。

 報告書におきましては、柔軟性のある権利制限規定を整備することによりまして、少なくとも、著作権法に対する理解が十分でない者や適法性が不明な利用に対し積極的な者における過失等による権利侵害を助長する可能性が相当程度あるものと考えられると指摘しております。

 この報告書におきましては、この点に関しまして、過失等による権利侵害が助長される可能性は、どの程度の柔軟性を持った規定を整備するかによって異なる、例えば、利用目的や場面を限定せずに適用され得る一般的、包括的規定の場合はその可能性が高くなる一方で、権利制限規定の適用される場面等がある程度特定されている場合は相対的にはそういった可能性は低くなるものと考えられると指摘しております。

 この報告書におきましては、さらに、このような権利制限規定に柔軟性を持たせることのデメリットも踏まえまして、我が国において最も望ましい柔軟性のある権利制限規定の整備につきましては、明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた複数の規定の組合せによる多層的な対応を行うことが適当であると提言されました。

 今回の改正に当たりましては、この報告書を受けた文化審議会の検討結果を踏まえまして、権利者に及び得る不利益の度合い等に応じて行為類型の分類を行った上で、そのうち、通常権利者の利益を害さない行為類型、また権利者に与える不利益が軽微な行為類型について、それぞれ法の適用範囲の明確性と柔軟性のバランスに適切に配慮する形で制度設計を行うことといたしました。

 文部科学省といたしましては、今回の改正案では、著作物の公正な利用を促進することと権利者の利益を保護することとのバランスがとれたものとなっていると考えておりますが、これらの規定が立法趣旨に沿って適切に運用されるように、今般の改正法の立法趣旨及び内容についてしっかりと周知に努めてまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 中間まとめに対するパブリックコメントの中に今のお話がありましたし、資料もきょうつけさせていただきましたが、第一層から第三層の規定は個別の権利制限に比べて抽象的であることは否めず、なお権利侵害への懸念を抱かざるを得ないなどの意見も寄せられました。私は、こういう懸念は当然だと思うんですね。

 今回の法改正というのは、これまで限定列挙で行ってきた権利制限を柔軟な制限規定へと転換をしております。これは、先ほど大臣も述べられた人格権、いわば人権としての著作権という側面を弱めて、著作権の財産権としての側面を利用者側の要求に、ニーズに沿うように転換しようという中身だからです。

 これは、先ほどの参考人質問で、土肥参考人からも、日本版フェアユースをとおっしゃっていた方ですが、この土肥参考人も、私の質問に対して、権利者が一歩譲った結果だというふうに今回の改正案について述べられておられました。これは大事な指摘だというふうに思っております。

 そこで、具体的に伺います。

 林大臣、法案第三十条の四の「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」とは、具体的にどういうことですか。

林国務大臣 この三十条の四にある享受ということでございますが、一般的な語義としては、「精神的にすぐれたものや物質上の利益などを、受け入れ味わいたのしむこと。」これは広辞苑でございますが、そういうふうになっております。

 ある行為が新第三十条の四に規定する著作物に表現された思想又は感情の享受を目的とする行為に該当するか否かは、立法趣旨や、さきに述べました享受の一般的な語義を踏まえまして、著作物等の視聴等を通じて視聴者等の知的又は精神的な欲求を満たすという効用を得ることに向けられた行為であるか否かという観点から判断されることになると考えております。

 ちょっと難しげですが、音楽を、CDがあった場合に、聞けば、精神的、知的じゃないかもしれませんが、享受できるわけでございますが、ジャケットを見ただけではなかなかそういうわけにいかないとか、いろいろな言葉の意味としてはあると思いますが、平たく言うと、自分が享受をする、視聴者等の知的又は精神的欲求を満たすという効用を得ることに向けられた行為であるか否か、こういう観点から判断されることになると考えております。

 この「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」としては、例えば、録画技術の開発過程におきまして、録画が正確に行われているかということを確認するために放送番組をやってみるということで、放送番組を見て享受するということではない、こういうことであったり、それから、人工知能に読ませるための学習用データとして著作物を利用する行為、人工知能が読むわけでございますので、人間ではありませんから、そういう利用ということが想定をされるのではないか、こういうふうに思っております。

畑野委員 この問題はまだまだ議論したいんですが、次に行きます。

 改正案の第四十七条の五では軽微利用が規定されていますが、当該公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分を占める割合、量、表示の精度その他の要素というふうに法案では書かれております。

 具体的にどのような内容なんでしょうか。そして、軽微か否かというのを、一体誰が、どのように判断するのか、大臣に御説明を求めます。

林国務大臣 この新四十七条の五では、軽微であるかの判断に当たっての考慮要素として、「公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素」、こういうことを掲げております。

 公衆提供提示著作物のうちその利用に供される部分の占める割合というのは、先ほどちょっと音楽の話をいたしましたが、楽曲であれば、全体の演奏時間のうち何%に当たる時間が利用されているか、こういう意味であろうというふうに思っております。

 それから、その利用に供される部分の量は、例えば小説であれば、どの程度の文字数が利用されているかということを意味しておるわけでございます。

 また、その利用に供される際の表示の精度でございますが、例えば写真の画像データであれば、どの程度の画素数で利用されているかということになろうかと思います。

 また、その他の要素としては、例えば紙媒体での表示の大きさが想定されまして、例えば写真の紙面への掲載であれば、何平方センチメートルの大きさで利用されているのかということになろうかと思っております。

 軽微に当たるか否かについては、新四十七条の五の立法趣旨や、これまでに御説明した考慮要素等を踏まえて、最終的には司法の場で判断をされるものというふうに考えております。

畑野委員 司法の判断によるというふうになると、本当に困ってくると思うんですね。

 それで、ちょっと文化庁に伺います。幾つかちょっと法文上のことを聞きたいんです。

 今の条文で、所在検索サービスが無許諾で行えることになりますよね。例えに挙げられているのが書籍の所在検索サービスですが、これは紙の書籍を全文スキャンすることが前提だというふうに聞いております。

 全てスキャンされるのに対して無許諾で構わないというのは問題ではないか、軽微利用の程度の基準が明確でなければ、全文をそれぞれのところが分割してスキャンして、スキャンしたものをアップするということができるのではないかという疑念がありますが、いかがですか。

中岡政府参考人 軽微のものにつきましては第一項のところでございまして、スキャンの部分については第二項の適用になるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、軽微などの抽象度の高い要件につきましては法解釈の余地が高くなる、大きくなるということでございますので、この場合の解決方法の一つとして、ガイドラインの策定が有効な場面もあろうかと思います。

 ただ、ガイドラインは、法の画一的な運用を促し、法の柔軟な運用をかえって阻害するという場合もございますので、あえてこれを定めずに、裁判外紛争処理手続や司法手続における柔軟な解決を図る方がより望ましい結果を導く場合もあると考えております。

 したがいまして、例えばガイドラインの策定につきましては、法の成立後新設される規定を利用しようとする関係者のニーズ等に応じて、その要否だとか策定主体、策定プロセス、策定内容等について判断されることが望ましいと考えておりまして、文科省といたしましては、関係者のニーズや国に期待される役割等を踏まえて、ガイドラインの整備に向けて取り組むこととしたいと考えております。

畑野委員 それで、改正案の第四十七条の五の三は、前号に掲げるもの以外の行為について政令で定めるというふうにしておりますが、具体的にどのような手続を踏むんでしょうか。審議会で検討するということですか。

中岡政府参考人 政令の定めでございますけれども、これはある意味将来的に出てくるニーズでございますから、さまざま、ニーズ調査というものを踏まえまして、審議会で議論して制定をしていくということを考えておりますが、関係する事業者、権利者等の意見を伺いながら、保護と利用のバランスのとれたものとなるようにしたいというふうに考えております。

畑野委員 教育現場の問題ですけれども、改正案の第三十五条で、「相当な額の補償金」の額はどのように定めるのかということと、また、公衆送信された著作物の二次利用についてどのような対策を講じるのか伺います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の補償金制度の導入を含みます権利制限規定の整備でございますが、権利者の正当な利益の保護に留意しつつ、学校等における著作物の公衆送信の円滑化を図るという法改正の趣旨を実現する観点から、制度の整備と運用を行っていくことが重要だと考えております。

 このために制度的措置をしておりまして、まず、指定管理団体があらかじめ教育関係者の意見を聞いた上で補償金額を決定し、文化庁長官の認可を受けるという必要があるということと、文化庁長官は認可に当たりまして、非営利教育機関における著作物の利用円滑化を図るという法律第三十五条第一項の趣旨、公衆送信に係る通常の使用料の額その他の事情を考慮した適正な額であると認めるときでなければ認可をしてはならないこと、さらには、文化庁長官は認可に当たって文化審議会に諮問しなければならないことを定めることとしております。

 すなわち、補償金請求権は創作者でございます私人の財産的権利にかかわるものでございますので、まずは両当事者の意見が補償金額の決定に反映されることを原則としつつ、中立性、専門性を担保しながら一定の公的な関与を行うことによって補償金額の適正性の確保を図りたいと考えております。

 そして、二次利用のことにつきましての御質問でございます。

 今回の改正によりまして、非営利教育機関の授業の過程において、一定の補償金の支払いを条件に、権利者の許諾なく著作物を公衆送信することができるようになりますが、公衆送信された著作物を生徒が複製をして、授業や私的使用の目的を超えて利用する行為は、目的外の使用ということになってしまいます。そのような事態とならないように、教育機関において著作権法についての教育が行われることが必要と考えておるわけでございます。

 文化庁といたしましても、この法改正を機会に、教育機関に対して、著作権と今般の法改正の内容について丁寧に説明をしていきたいというふうに考えております。

畑野委員 続いて、障害者の図書利用促進について、今後必要なことについてどのように認識されているのか、伺います。

 午前中の参考人質疑で、竹下参考人からも、第三十七条第三項のこの政令を改正してほしいという御要望が出ておりました。そういうことも含めて御回答ください。

中岡政府参考人 午前中の質疑の中での要望の中で、第三十七条第三項の複製等を行うことができる主体の拡大につきましてお話がございました。

 これにつきましても、文化審議会の提言を踏まえて、関係者の御意見も聞きながら、具体的な制度設計の検討を進めて、速やかに制度の整備に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

畑野委員 時間が参りましたので、最後に林大臣に。

 加計学園の問題で、新たな文書が愛媛県の職員から出ました。これが確認できたのかということと、下村元文部科学大臣のことが出てまいりますが、その点、確認をして、御報告をいただきたいと思います。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

林国務大臣 報道があった件でございますが、昨日、杉田官房副長官から事務次官に対して、加計学園の獣医学部新設をめぐる愛媛県と関係府省との間のやりとりに関する文書を確認するようにと指示を受けておりますので、現在確認作業を行っておるところでございます。

 また、下村大臣の件につきましては、事実関係の有無も含めて承知をしておりませんので、私からお答えする立場ではないというふうに申し上げたいと思います。

畑野委員 終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 きょうは、午前中に参考人質疑をさせていただきまして、大変、人選もすばらしく、勉強になりました。そしてまた、お昼の時間も一緒にさせていただくというようなこともありまして、またいろいろなお話を伺うことができまして、このような機会を設けていただきました委員長に感謝を申し上げたいと思います。

 そのお昼の時間に大変貴重なお話もいただいたんですが、フェアユースというのが先ほどからほかの委員からもお話がありましたけれども、今後、いろいろな著作権に関して各国と戦っていかなければならない中で、フェアユースというものの導入も更に考えていかなければならない時期が来るのかもしれないんですが、その際、参考人の方々がおっしゃっていたのは、フェアユースに刑事罰がくっついているということは、大変その利用がはばかられるということで、ここはちょっと検討していかなければならないんじゃないかというようなお話でありました。

 現在、プロ野球におきましても、判定が非常に微妙な場合には、監督が二回ほどビデオ判定というのを行うことができるわけでございます。これが、もし失敗したら即座に退場ということになったら、これはビデオ判定をやらなくなるんじゃないでしょうか。

 フェアユースというのは、基本的には著作権を利用するということになるわけでございまして、ただ、そのときに、それがフェアであるかどうかということを判断してもらうという一つのチャレンジなわけでございます。

 その際には、岸原参考人もお話をされていましたが、場合によっては損害金を払うかもしれない、それを覚悟でチャレンジで行うというようなこともあるんだと。それで、場合によっては、権利者というのは損害があれば請求できるしというようなことで、最終的にはそういう調和を図ることもできるということなんですね。

 もしこれが、刑事罰がくっついていれば、社長が逮捕されるというような、そういうチャレンジは日本では行われないだろうというようなこともありますので、フェアユースを利用するときには刑事罰というものと分離していくということも必要なのかな、そんなような感想を持ったわけでございます。

 もう一つ、きょうはグーグルの件がございまして、検索過程に関して複製というものがかなり厳格になっていたわけでございますが、その点、今回の改正におきましては、三十条の四とか先ほどの四十七条の五でしょうか、こんなような規定で行うことができるようになるんだと思うんですけれども、そういう意味で、これから法律ができ上がったときには、それを利用する側というのは、なるべくこれを有効に活用するということで、本当に企業の中では法務部が真剣にこれを議論していくということになると思うんです。

 そこで、法律上のたてつけについて簡単にちょっと質問させていただきたいんですが、三十条の四は、「著作物は、」ということで主語が「著作物は、」になっているんですけれども、四十七条の五では、「行為を行う者は、」ということで、主体に人間を記載されているんですが、まあ法人も入るんでしょうけれども、たてつけがこのように異なっているというのは何か理由があるんでしょうか。

中岡政府参考人 三十条の四は主体を書いていないだけでございまして、対象著作物の問題であるということは同じでございます。

串田委員 幾つかの法律を見ているときに、同じことを言っているときに表現方法が形式的に異なっているというのはすごく違和感を感じるんですね。その点、理由があるのかな、ちょっとそんなふうに思ったんです。

 この三十条の四は、「著作物は、次に掲げる場合その他の」云々となっているんですけれども、このたてつけは、「次に掲げる場合」というのは一号、二号、三号をいうんだと思うんですが、「その他の」というのは、この一号、二号、三号以外のものという理解でよろしいんでしょうか。

中岡政府参考人 一号、二号、三号とございますけれども、その柱書きの部分については全部共通して満たさなきゃならない部分でございまして、その後の一号、二号、三号というのは例示ということになるわけでございます。

串田委員 では、そうすると、まとめますと、「次に掲げる場合」というのがまず一つ、一、二、三号があって、「その他の当該著作物に」云々という場合にはという、場合が二つ続いているわけですね、一つのフレーズに。これは、一つのことを言っているということなんでしょうか。「次に掲げる場合」というのは、これは一、二、三号とすぐわかるんですけれども、その他の場合というのは、この一号、二号、三号以外のものもあるというふうに読むことができるんじゃないかと思って質問させていただいているんですけれども、その点はどうでしょうか。

中岡政府参考人 委員御指摘のとおり、そのとおりでございます。

串田委員 ということは、「次に掲げる場合」という一、二、三号というのがあって、それ以外にも、一、二、三号以外にもあるということなんでしょうか。

 そうすると、この「その他の」という以降の中に「思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」というのが、二号もこれに該当しそうな気がするんですけれども、ちょっと条文上の例示としては余りよろしくないのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

中岡政府参考人 今回、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としないということで、非常に抽象的な規定になっているわけでございますけれども、この中身自体を、これまで各個別に条文で規定していたものを吸収しているわけでございますけれども、それをあくまでも例示という形で、一号、二号という形でくっつけたということでございます。

串田委員 もう少し分析しないとちょっとわからないんですが、例示として一、二、三号という挙げ方とこの表現の仕方というのはかなり条文運用上は曖昧かな、今後、ちょっとこの点について問題が発生する可能性はあるんじゃないかなというのを指摘しておきたいと思うんです。

 ちょっと質問をかえさせていただきたいと思うんですけれども、今回の学校教育に関する著作権の利用の仕方ということの中で、二つの考え方があるということを御指摘しておきたいと思うんです。

 というのは、うちの日本維新の会は、基本的には、憲法で教育の無償化というものを記載すべきではないかというようなことを打ち出していて、そういう意味では、今回、補償金というものが必要になるということに対しては、党内所属の議員もかなり抵抗があるという部分があるんですけれども、二つの考え方があるというのは、これまでの議論を聞いていると、著作権者の権利を守る中で、今回、利用方法が広がるんだから補償金を払うのは当たり前だという発想、これは私もわからなくはないんですね。

 もう一方、著作権というのは、原始時代の人間を考えていただければ、有体物の場合には自分で守ることができるわけで、これに対して、奪われたりする場合には警察権力なんかが必要ですから、その組織を使うために税金を払うというのはわかるんですけれども、一時的には自分でその財産物を保護することはできる。

 これに対して、著作権というのは無体財産権ですから、国や法律がなければ保護されない、もともとそういう国や法律に頼る権限であって、それに対して、今回も、いろいろな意味で、著作権に対してのいろいろなことの調査だとかそういったようなものを組織として国が予算立てしてつくり上げていって、その著作権者を守っていくわけですね。その守っていく組織を、支出を賄っているというのは国民なわけですよ。だから、国民は、自分たちで税金を納めて著作権者の利益を守っている、そういう側面があるわけです。

 そうだとするならば、著作権者も、国が必要とするような教育のそういう目的に関しては一歩譲歩して、そして無償で利用させるというような考えがあってもおかしくないんじゃないかと思うんですね。

 そういう意味では、著作権者に利用させてもらうんだから補償金を払うのは当たり前だという考え方と、著作権者は国に守られているんだから国が必要なときには譲歩しなさいという考え方と、この二つの考え方が私はあると思うんです。

 そういう意味では、教育に関して補償金というものが当然だというような発想というのは私もちょっと抵抗があるんですけれども、ちょっと通告もないんですが、大臣、この部分についての所感がもしあれば、難しければあれですけれども。

林国務大臣 急なお尋ねでございますが、まず、著作権は無体財産権でございますので、これを保護するためにというのはありますが、有体物であっても、やはり暴力的に奪取をされるような場合は、公権力があってそれを守るということで保護されているという部分があるので、無体と有体で必ずしも一〇〇、ゼロになるのかなということは感じておりましたのと、それから、そういう無体財産権を守ってもらうために、著作権の部分でというよりは、これはいろいろな税制がございまして、コストをいろいろな形で応分に負担していくことによって国というものができて、それが治安の維持ということを果たしているということであれば、著作権を守ってもらっているからといって、その対価として無償を受け入れるということはなかなかすっと入ってこないなというふうに聞いておりました。

 一方で、この無体財産権の中で享受を目的としない部分については、一定の権利制限をしようということは第一層でございますが、例えば教育のためということは、これは第三層という位置づけで、これは大変に大事なことであるのでということで、適切な調整を図った上でやっていこうというのが第三層でございますので、委員がおっしゃっているところは、むしろ、第三層のところをどうやって捉えていくかという議論になっていくのではないか、そういうふうに聞かせていただきました。

串田委員 きょうの参考人質疑の中でも、現場で今無償になっている、現実に配付するようなときには無償だという現場の今の状況は変えないでくれという教員の声があるということで、それは維持しましょうということだったようなことでございます。

 ただ、方向性として、著作権を利用するからには有償であるというような、そんな考え方の中で、そういう声があるから無償のままにする、そういうような流れとちょっと感じたものですから、それを強く意識してしまいますと、現場で配付するものもいつしか有償になっていくというようなことがちょっと感じられるわけでございますので、補償金を払うというのが著作権者としての権限として当たり前だというのが、果たしてそれが、私としては、そのままでいいのかどうかというのはやはり議論をしていかなければいけないことではないかなと思っているわけでございます。

 その部分の中で、例えば学校の中で、ある教材をコピーして配付する場合には無償だということなんですけれども、その配付するものが、教員がUSBだとかDVDに落とし込んで子供にそのものを渡すというようなことは、複製として無償であるという理解でよろしいでしょうか。

中岡政府参考人 例えば、デジタルデータをUSBメモリーに保存して、このUSBメモリーを教員から生徒に渡すような行為を考えてみた場合、文字や写真、美術の著作物のデジタルデータをUSBメモリーに保存する行為は、これは著作物の複製行為ということに当たり得るものと考えられます。

 したがって、教員等が学校その他の非営利教育機関において授業の過程で利用することを目的として著作物を複製する行為については、今般の改正の前後を問わず第三十五条の一項が適用されまして、無償で許諾なく行うことができるものと考えております。

串田委員 教員がUSBを各自につくる必要が仮になくて、例えば子供たちが自分のマイUSBというのを持っていて、例えば教室のところに一台パソコンがあって、そこで自分の時間にそこのUSBにインストールをして家に持ち帰る、これも複製としては許される、そして、家の中でそのUSBを例えば自分のパソコンで見たり、あるいは自分の家のプリンターで印刷をする、これも無償ということでよろしいでしょうか。

中岡政府参考人 御指摘のとおりでございます。

串田委員 一方で、学校の先生が自分のパソコンなり学校のパソコンで、ある教材を自分のパソコンにインストールをしてメールで送る場合、サーバーだとかクラウドがあるということなので、条文上の当てはめでいうと三十五条で、自分のパソコンにインストールするときには複製が行われ、そしてサーバーやクラウドを経由するときには四十七条の一号、二号によって、そして中継がなされ、そして子供たちのパソコンのメールにそれがダウンロードされるというようなことでありますけれども、USBで持ち帰ってパソコンにインストールする場合はこれは無償だったわけですけれども、メールで送った場合には有償になるという理解でよろしいでしょうか。

中岡政府参考人 その解釈で結構でございます。

串田委員 データがUSBから自分のパソコンにインストールされるのとメールでインストールされるのとでは、パソコンにインストールされたデータというのは全くこれは変わらないと思うんですけれども、有償と無償がそこで違ってくるというのはどうしてかというのは、何か、根拠的にはどう考えたらよろしいんでしょうか。

中岡政府参考人 委員御指摘の、いわゆる有償と無償が結果的に出てしまうということでございますけれども、今回の補償金の対象についての考え方でございますが、学校等の授業のための著作物の利用に関する権利制限規定の見直しに当たりまして、本法案では、現行法上無償で行える行為は引き続き無償を維持する、新たに無許諾で行えるようになる公衆送信は全て補償金の対象とする整理をしておりますが、文科省といたしましては、現行規定の制定時から今日に至るまでの複製機器の普及状況等を考えますと、現行法上も無償で行える行為も含めまして、学校等の授業の過程で行われる著作物の利用は、いずれも権利者に与え得る不利益は軽微と言いがたく、補償の必要性が認められると考えております。

 一方で、これもさまざま御議論ございますが、現在無償で行えることとなっている行為を補償金の対象とした場合に、これまで長期間にわたって社会に定着しておりました法規範に変更が加えられるということで、法的安定性が損なわれて、教育現場の混乱を招きかねないと考えております。

 さらにまた、教育関係団体からも、現在無償で行える行為は無償をぜひとも維持してほしいという要望もございました。

 このようなことを総合的に勘案いたしまして、今回の案のとおり、新たに権利制限の対象とする公衆送信についてのみ補償金請求権の対象としておりますが、結果的にそのような違いが出てきているということでございます。

串田委員 どうもその公衆送信というところがすごく意識があると思うんですが、いずれにしても、子供に対して、メールにしてもそこの管理さえしっかりしていれば個々との間の問題だと思うので、公衆という言葉があることだけで有償、無償ということになるというところが、一般国民なり父兄なり子供たちが納得できる話なのかなと。USBで持ってきたら無償なのに、メールでもらうと有償になるというのがどうなのかなというのがまず一つあるんです。

 例えば、今小中学校でパソコン教育が非常に導入されるようになって、個々のタブレットだとかパソコンが子供たちに一台一台あった場合に、いわゆるイントラネット、学校内で有線でつながっていたり、学校内で無線でつながったりしている場合には、ここで言う公衆送信に当たるんでしょうか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 公衆送信の範囲の考え方でございますけれども、先ほど学校内ということでございましたけれども、基本的な考え方といたしましては、同一校内ということになりますと、基本的にはこれは公衆送信というものには当たらないというふうに整理されるものでございます。

串田委員 事前にお伺いしたのとちょっと違う結論ではあるんですけれども、それでいいということですね。要するに、物理的にUSBだとかDVDの場合にはこれに当たらないけれども、イントラネットなどの場合には送信になるような、ちょっとそんなような回答もあったんですけれども、どちらであるかということは確定しておかなくていいですか。

中岡政府参考人 失礼いたしました。ちょっと説明が舌足らずで申しわけございません。

 このイントラネットの設備がどこにあるかといったところに着目しておりまして、同一校内の中にそういったイントラネットの設備があるということに着目しますと、その同一校内にあるという整理で、公衆送信に当たらないという整理でございます。

串田委員 そうしますと、パソコンのそういう教育が普及していて、各自一台ずつパソコンができていて、学校内で無線LANによってメールで子供たちに教材を送信したとしても、イントラネットの場合にはこれには当たらないという理解でいいですね。それでお聞きしておきました。

中岡政府参考人 基本的に、ネットでやりとりするということでございますので、サーバーを通じてやる場合が考えられるわけでございますけれども、そのサーバー自体が外にあるということになりますと、これは公衆送信の中に入ってくるという整理でございます。

串田委員 まさにそのとおりで、サーバーの位置によるという理解でいいのかなと。イントラネットの場合にはわざわざサーバーを利用しないでも十分に送信できますので、その場合には無償という、要するに学校内で外にサーバーというような形で経由しない限りは無償である、今までの複製という理解でいいというまとめでよろしいでしょうか。

中岡政府参考人 それで結構でございます。

串田委員 そうしますと、これから学校でパソコン教育というのが非常に普及していって、学校で子供たち、一台が利用できて、そこで無線でLANがつながっている場合には今回の補償金の問題が発生しないという点では、我が党としては安心したことになるわけでございます。

 仮に補償金という制度ができた場合に私が大変危惧しているのは、どういう制度にするのかということで、先ほど参考人がいらっしゃったときにも質問させていただいたんですけれども、その徴収の仕方として、学校の先生が一つ一つ利用するたびにそれを報告するというような方法と、そして、学校の生徒一人当たりに対して補償金を幾らというのを決めて、その間には利用はやりたい放題というようなことが考えられると思われるんです。

 参考人の意見もそうですし、事前にちょっといろいろ確認をさせていただいた中では、やはり学校の先生が利用するたびにそれを報告していくというのは大変であるということで、生徒一人当たり幾らかというような形で徴収をし、その間に行われる著作物の利用に関してはある程度やりたい放題でできるというような、そういうことであると思うんですけれども、基本的に著作権というのは著作権法十七条で何の制限もなくでき上がるわけで、今ここで皆さんが何かノートに書いたものも、これは全て著作権が発生するわけでございます。

 それに対して、例えば授業で利用した場合も当然その他人の著作権を利用するということになるわけですが、そういう意味では、全国民が著作権者であるとも言えなくはないわけで、現在、SNSとかホームページなどで各自が全部著作物を掲載しているわけですね。それを学校の先生が、小学校三年生の子供が太陽という題材でこんなすてきな絵を描いているよということで子供たちに授業で見せる、これもまた、本来であれば著作物の利用ということであります。

 それを、外部的な意味でメール、先ほどと違って外部のサーバーを使ってメールで送る場合に、本来はこれは補償金の対象になるわけでございますけれども、補償金を払うといっても、このように全国民が著作権者であるのにかかわらず補償金を払うというのは、これは物理的に果たしてできるんだろうか。

 恐らくそれはなかなか難しい中で、かなり著名な人たちが著作権者として登録をして、その中で、内部で分配をしてしまう、そういうことになってしまうのではないかという危惧があるんですけれども、この点についての制度設計についてはまだ十分ではないとは思うんですが、こういうような危惧というものは心配しないでよろしいんでしょうか。

中岡政府参考人 分配の仕方ということでございますけれども、この補償金の徴収、分配業務の適正性と透明性というのが非常に重要になるわけでございますけれども、権利者の得るべき利益を適切に還元していくということでございますし、また、教育の関係者についても新たな過度な負担が生じないようにするために、そういった教育関係者からの御理解も得ながら進めていくということが必要になると思いますが、今回は、その補償金の徴収分配団体につきまして法律の中で規定をしております。

 文化庁長官が指定を行う際の基準といたしまして、補償金請求権の対象となる公衆送信が行われる著作物、実演、レコード、放送及び有線放送につきまして、それぞれの権利者を構成員とする団体であって、当該権利者の利益を代表すると認められるものが構成員となっているもの、そういう要件を満たすものというふうに規定しておりますし、また、この指定管理団体につきましては、補償金の分配に関する事項を含む補償金関係業務の執行に関する規程を文化庁長官の方に届け出る、さらには、指定管理団体の補償金関係業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、文化庁長官は指定管理団体に対して報告の徴収や改善のための勧告等を行うというようなことについて規定をして、この管理運営の適正性を確保しようというふうに考えております。

串田委員 今まで個々の権利者に確認をしないと利用できないのが、今度は利用できるようになる。ただ、その補償金が、そういう団体と非常に強いつながりがあって、そして届出をしたところにしか分配金というのが払われないというようなことがあってしまえば、単純に、ただ単に権利者を保護しない外郭団体をまた一つつくるだけなんじゃないか、そんなような心配を私はしているので、そういうことがないように、ぜひ大臣、頑張ってそこら辺は規制していただきたいと思います。

 時間ですので、終わりにします。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日は著作権法の改正ということですが、まず冒頭、けさ、私、地元は大分なんですけれども、大分の中津市において山崩れが発生をいたしまして、そして、六名の方の安否が不明である、その後のニュースでは、一人の方が亡くなられたというような報道もされております。心から御冥福をお祈りしたいと思いますし、まだ捜索をずっと続けている市や県、関係機関、続けているということで、ぜひ政府の方も安否不明者の捜索に御尽力いただきたいということをまず最初にお願いしておきたいというふうに思います。

 それからあと、著作権法なんですが、前回、前々回の委員会で質問したことに関連してまず一点確認をさせていただきたいんですが、名古屋市の問題で、前回、四十八条一項に基づいて助言を行ったということを初中局長の方から答弁いただきました。その際に確認しておけばよかったんですが、私、全く想定していなかったもので聞き忘れていたので、その点を一点確認させてください。この助言というのはいつ行われたのか。よろしくお願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 この助言は、三月十五日の木曜日に、教育課程課長が名古屋市の教育長に対して、電話で初中局としての認識を伝えることによって行われております。

吉川(元)委員 わかりました。

 それともう一点、ちょっとこれも法案と直接関係ないことなんですが、実は、先週の金曜日、この法案で対政府質疑をやっていたそのときの朝刊で、ちょっと驚くような記事が各紙で出ておりました。昨年十月、北海道のニセコ町の町立ニセコ高校における公開授業、ここで、原発の問題に関して、原子力発電所の短所を指摘しようとした部分について、経産省の北海道経済産業局の方から、横やりといいますか、変更を求めることが行われたということが記事で出ておりました。

 そこで、きょうは少しだけですけれども、事実関係だけまずちょっと確認をさせていただきたいと思いますが、報道にあるように、十月十二日、北海道経済産業局の、名前はあえて言いませんが、部長と課長が、北海道大学大学院の助教授の研究室を訪れて、ニセコ高校で助教授が十月十六日に行うことになっていた、ニセコでエネルギーと環境を考えると題した公開授業について、その内容の変更を求めたということが報じられておりましたが、これはまず事実でしょうか。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 資源エネルギー庁では、小中高校生を対象に、多様なエネルギー源のメリットやデメリットなどエネルギーに関する課題や解決策を学び考えることに取り組む意欲的な学校を支援する委託事業として、エネルギー教育モデル事業を平成二十六年度以降実施してございます。

 この事業のモデル校になりましたニセコ高校が講演を行うに当たり、北海道経済産業局職員がエネルギー教育に関心の高いニセコ町やニセコ高校に対して、従来から授業についての情報提供などを行っていたことから、昨年十月十六日に開催されるニセコ高校での講演会の話をお伺いし、講演会に先立ちまして、十月十二日にニセコ高校から講演資料を事前に入手いたしました。

 同日、十月十二日に、この北海道経済産業局の職員が講師を務められる方を直接訪問し、エネルギー源のメリット、デメリットを公平に伝える観点から、原子力に関する論点について指摘を行ったと承知しているところでございます。

吉川(元)委員 できる限り端的に御答弁いただきたいと思います。

 あわせて、この助教授の研究室を訪れて働きかけを行ったということでありますが、同様のことはニセコ高校やあるいは教育委員会に対しては行ったのでしょうか。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 ニセコ高校や北海道ニセコ町の教育委員会に対しては指摘を行った事実はなかったというふうに報告を受けているところでございます。

吉川(元)委員 この助教授に対して行った要請というのか、何と言えばいいのでしょうか、わかりません、働きかけ、これは誰の指示、判断で行ったのでしょうか。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 北海道経済産業局の資源エネルギー環境部長の判断により、同部長自身及び同部の職員が講師の方を訪れ、指摘を行ったと報告を受けているところでございます。

吉川(元)委員 その際に、助教授側に対して、講演のために準備していた福島原発事故の写真やあるいは原発のコストについて、印象操作ではないか、特定の見方に偏っている、別の見方があるのではないか、リスクはどのエネルギーにもあると説明してほしい、このように経産局側が述べたと報じられておりますが、これは事実ですか。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 北海道経済産業局の資源エネルギー環境部長及び同部の職員に電話で確認したところでは、部長は、講師の方に対して、この支援事業が、学生を対象に、多様なエネルギー源のメリット、デメリットなどエネルギーに関する課題や解決策を学ぶ趣旨であることをお伝えした上で、原発の発電コストや福島第一原発事故の写真、原子力以外のエネルギーに関する安全上のリスクなどについて公平に伝えてほしいとの趣旨から指摘をしたということは確認しているところでございます。

吉川(元)委員 今言ったことを、印象操作ではないのか、あるいは特定の見方に偏っている、リスクはどのエネルギーにもあると説明してほしいというふうに言ったのか、言っていないのか、聞いているんです。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもでは、そういうことは確認はされておりません。

吉川(元)委員 それはどういう意味でしょうか。言っていないということなんですか。それとも、そのことについて、言ったのか、言っていないのか、確認していないということなんですか。どっちですか。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの確認の事項の中には、そういうことは入っていないということです。今、確認をしていないということでございます。

吉川(元)委員 昨日、通告の際に、こうしたことを言ったのかどうかの確認をしてほしいというふうに申し上げておりましたけれども、全くそれはやられていないということですね。

 それから、もう一点。その際に、原発を進めるという国の方針があるから指摘しているというふうにも述べたとも報じられておりますが、これは事実ですか。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 失礼いたしました。印象操作だということは確認をしましたが、そういうことは言っていないというふうに本人は答えております。(吉川(元)委員「今聞いたのは」と呼ぶ)

 あとは、リスクはどのエネルギーにも……

吉川(元)委員 ちゃんと聞いてください、人の質問を。

 原発を進めるという国の方針があるから指摘しているというふうに言ったのかどうかということを聞いているんです。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 失礼いたしました。北海道経済産業局の資源エネルギー環境部長及び同部の職員は、講師の方に対して、原発を進めるという国の方針があるから指摘しているという趣旨の発言を行ったという事実は確認できておりません。それは聞きましたけれども、そういうことではない、言っていないと言っています。

吉川(元)委員 先ほど、印象操作ではないというようなことは言っていないとか云々かんかん、今も、言ったというようなことはないというようなことを言われておりましたけれども、これはぜひ、御本人に来ていただいて、参考人でちょっと、これは非常に重要な問題ですから、確認をさせていただきたいと思います。理事会の方でお諮りください。

冨岡委員長 理事会にて諮ります。

吉川(元)委員 余り時間がないので。

 今回の訪問と要請は、法的根拠はあるんですか。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 地方経済産業局は経済産業省の所掌事務を分掌しておりまして、この中には、各種エネルギー政策に関する事務も含まれております。その事務の一環として、エネルギー政策に関する広報を行っております。

 今回、北海道経済産業局が資料内容に指摘を行ったのは、エネルギー源のメリット、デメリットを国民に公平に伝えるという広報事業の趣旨に照らして行ったものと考えております。

 ただ、講演資料を事前入手した上で、講師の方を直接訪問し、原子力の論点だけを取り上げて言及したことにつきましては、あたかも事業内容に介入しているかのような誤解や懸念を招く行為であったということで、遺憾であると考えております。

吉川(元)委員 誤解や懸念じゃなくて、これは介入でしょう、明らかに。何の法的権限で、根拠でもってこういうことをやられたのか。法的な根拠というのは存在しないはずですし、明らかにこれは教育基本法の十六条に違反をする行為であります。

 これに関して、このやりとり含めて、行政文書、存在しますか。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、本件にかかわる行政文書につきましては、丁寧に確認作業を進めているところでございます。

吉川(元)委員 これもまた、行政文書の存否、そして、存在した場合には当委員会に提出を求めたいと思います。委員長、お諮りください。

冨岡委員長 理事会に諮ります。

吉川(元)委員 ちょっと、ほかにもまだ聞きたいことがあるんですけれども、これは非常に重要な問題だというふうに思います。

 これは名古屋市の例の問題のずっとはるか以前に行われたことですけれども、明らかにこれは教育基本法の十六条の不当な支配に抵触をする行為を経産局が行った、若しくは憲法二十三条で保障された学問の自由、学問の自由の中には教授の自由、それから研究発表の自由がありますけれども、これに対して明らかに抵触をする行為を行ったと言わざるを得ません。

 これについては引き続き当委員会で、きょうはちょっと、もう時間がないので、文科省については次回の質疑の際に答弁を求めてまいりますけれども、大変重大な問題だということを指摘させていただいて、法案の方に移っていきたいというふうに思います。

 経産省の方はもう退席していただいて結構です。

 それでは、法案について何点かお聞きをしたいと思います。

 著作権については非常に難しい問題だと私自身も感じておりますし、今回の法改正とは直接関係ありませんけれども、日本音楽著作権協会と音楽教室の間で著作権料の徴収の是非をめぐって係争中であるというようなことも聞いております。権利者の保護と著作物の社会的利用との間のバランスをどのようにとっていくのか、これが常に問われることだろう。その一方で、急速に進む技術革新、その中で、インターネットを含めたデジタルネットワーク化の進展の中で、著作権がどうあるべきかという非常に重い課題が検討されております。

 最初にお聞きしたいのは、こうした環境の中で、今回、権利制限規定の見直しを行った目的について説明をお願いいたします。

林国務大臣 現在、我が国では、ビッグデータや人工知能等の第四次産業革命に関する技術を活用したイノベーションの創出が期待されておるところでございますが、現行法における権利制限規定には、要件が一定程度具体的に定められているものがございまして、その要件から外れるような新たな利用方法が生まれた場合に、著作権侵害となるおそれが指摘されてきたところでございます。

 こうした状況を受けまして、産業界等から、イノベーションの創出のために、新技術を活用した新たな著作物の利用にも権利制限規定が柔軟に対応できるようにすることが求められてきたところでございます。

 また、産業界等からは、ビッグデータや人工知能等を活用したイノベーションにかかわる著作物の利用ニーズを始めとして、現在生じているニーズだけではなくて、将来生じ得るニーズも含めて多くのニーズが文化庁に寄せられたところでございます。

 今般の改正は、文化審議会の著作権分科会におきまして優先的に検討すべきとされたニーズや、新技術を活用した新たな著作物の利用に権利制限規定が柔軟に対応できるようにするという社会の要請を踏まえつつ、この権利保護と利用の円滑化のバランスをとる観点から、適切な抽象度を確保した柔軟性のある権利制限規定を整備するということにしたところでございます。

吉川(元)委員 柔軟な権利制限規定を整備するということ、これが今回の大きな目玉の一つだというふうに思います。

 昨年四月に取りまとめられました著作権分科会報告では、この分科会の第一回の会議で、イノベーションのための柔軟な権利制限規定の整備について、これは他の委員も少し触れたかと思いますけれども、立法事実として茫漠としており、若干乱暴な議論、あるいは、情緒的、観念的な言葉が躍るが、ニーズ、立法事実がどこにあるのか明らかではない、こういう指摘が一方でされております。

 改めてお聞きしますが、今回の法改正の主要な目的、先ほど大臣もイノベーションという言葉を使われましたが、競争力強化に主眼を置いているのかどうかということ、それから、柔軟な権利制限規定を整備する立法事実、これはどこにあるのか教えてください。

中岡政府参考人 柔軟な権利制限規定を設けた立法事実のお尋ねでございますが、現在我が国では、ビッグデータや人工知能など第四次産業革命に関する技術を活用したイノベーションの創出が期待されておりまして、現行法の権利制限規定には要件が一定程度具体的に定められているものがございまして、その要件から外れるような新たな利用方法が生まれた場合に、著作権の侵害となるおそれが指摘されてきたところでございます。

 このような状況を受けまして、産業界等から、イノベーション創出のために新技術を活用した新たな著作物の利用にも権利制限規定が柔軟に対応できるようにすることが求められてまいりました。

 また、産業界等からは、いろいろなニーズ募集だとかヒアリングをしているわけでございますけれども、ビッグデータや人工知能等を活用したイノベーションにかかわる著作物の利用ニーズを始めといたしまして、現在生じているニーズだけじゃなくて、先ほど大臣から答弁いたしました、将来生じ得るニーズも含めて多くのニーズが文化庁に寄せられたというものでございます。

 今回の改正は、文化審議会の著作権分科会におきまして優先的に検討すべきとされたニーズや、新技術を活用した新たな著作物の利用に権利制限規定が柔軟に対応できるようにするという社会の要請を踏まえながら、権利保護と利用の円滑化のバランスをとる観点から、適切な抽象度を確保した柔軟性のある権利制限規定を整備することとしたものでございます。

吉川(元)委員 権利制限規定については、現行の日本の著作権法のように個別具体的に設定するものと、それから、これも当委員会、他の委員からもお話ありましたけれども、アメリカに代表されるようなフェアユースのようにあえて抽象的な規定を置くこと、それでもってさまざまな事態への対応を可能とする包括的なもの、二種類があるんだろうと。

 それぞれにメリット、デメリットあろうかというふうに思いますので、それについてどういう点がメリット、デメリットなのかということを教えていただきたいのと、あわせまして、今回、個別具体的な権利制限で明確性を維持しつつ包括的な規定を組み合わせるという、それによって柔軟性を盛り込んだというふうに理解をいたしますが、この組み合わせた理由もあわせて教えてください。

中岡政府参考人 委員御指摘のように、著作物の利用の目的や、場面ごとに一定程度具体的に権利制限の対象となる範囲を定める個別的な権利制限規定の場合、権利制限の対象となる行為が明確となるというメリットがある一方で、具体的に規定された要件から外れるような新たな利用方法が生まれた際に、著作権侵害となるおそれがあるというデメリットもあるということが指摘されております。

 他方、権利制限の対象となる範囲を抽象的な要件のみによって定める包括的な権利制限規定の場合、利用目的等の限定がなされていないために、法が想定していなかった新たな著作物の利用方法にも対応できるというメリットがある一方で、行為の適法性が司法判断によって初めて明らかになるということで、法規範の予測可能性が低下をして、法が想定いたします行動と個人が現実にとる行動との間に乖離が生じやすくなるというデメリットもあるという指摘がございました。

 柔軟性のある権利制限規定に関する審議会の検討の結果では、我が国は、企業等の大半が高い法令遵守意識と訴訟への抵抗感を有しておって、規定の柔軟性より明確性を重視しているということ、また、国民に著作権に対する理解が十分に浸透していないことなどから、柔軟性の高い権利制限規定を整備した場合に、過失等による権利侵害を助長する可能性が高まるということ、さらに、我が国では法定損害賠償制度等がないため、訴訟をいたしましても費用倒れになるということが多いという問題があることから、アメリカのフェアユースのような一般的、包括的な権利制限規定の創設をしても著作物の公正な利用の促進効果はそれほど期待できないという一方で、不公正な利用が助長されるという負の影響が予測されるということが指摘されました。

 また、立法府と司法府の役割分担のあり方や罪刑法定主義との関係からも、フェアユースのような一般的、包括的規定は望ましくないということとされております。

 今回の改正におきましては、フェアユースのような一般的、包括的な権利制限規定ではなく、明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた複数の規定の組合せによる多層的な対応を行うということといたしまして、権利者に及び得る不利益の度合い等に応じて分類をし、そのうち、通常、権利者の利益を害することがない行為類型及び権利者の利益に与える影響が小さな行為類型につきまして、それぞれ適切な柔軟性を持たせた規定を整備するという方法を採用いたしまして、今回の改正に至ったものでございます。

吉川(元)委員 今、メリット、デメリットを含めて、それから、今の日本の社会の現状を含めて、これを多層的な対応ということでおっしゃられましたけれども、非常に危惧するのは、両方のメリット、メリットが表に出てくるのであればいいんですけれども、両方のデメリットが出てくる可能性もやはり状況によってはあるのではないか。そうなれば、結局悪いところ取りになってしまう。そうならないように、しっかりと対応していただきたいというふうに思います。

 次に、これも他の委員が少し触れていたかと思うんですけれども、今回、著作権分科会の報告書において、著作物の本来的利用に該当せず、権利者に及び得る不利益が軽微な行為類型ということで、三層構造の第二層ということになると思いますけれども、具体的には所在検索サービスや情報分析サービス、これになるのかなというふうにも思います。

 法案の方を見ますと、四十七条の五にやはり軽微な利用というものがあります。ただ、この軽微な利用というのは非常に抽象的なものであって、どこら辺までが軽微なのかということについては、なかなか、こういう法文を読んだだけでは非常に理解しにくいんですが、これについてはどういうふうな基準といいますか、そういうものがあるのでしょうか。

中岡政府参考人 今回、四十七条の五の中に軽微という言葉を入れておりますけれども、これは、権利者の利益の適切な保護の観点から、軽微なものに著作物の利用の範囲を限定するという趣旨で入れておるわけでございます。

 この条におきましては、インターネットにアップされている情報のほかにも、書籍とか映画とか音楽など幅広い種類の著作物の所在検索サービスあるいは情報分析サービス等を新たに権利制限の対象とするものでございまして、著作物の種類等によって、どの範囲であれば軽微であるかが異なり得るものと考えております。例えば、一律に著作物の何%が出れば軽微を超えるんだというような一律の軽微の判断基準を定めることは妥当ではないのかなと考えております。

 そのために、公衆提供提示著作物のうち、その利用に供される部分の占める割合、さらに、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度などが軽微であるかの判断に当たっての考慮要素を示すにとどめておりまして、この新たな四十七条の五の立法趣旨は、これらの考慮要素等を踏まえまして、最終的には司法の場において軽微に当たるか否かが判断されるものと考えております。

吉川(元)委員 次に、今回の柱の一つである障害者のアクセス機会の拡大について、何点か確認をさせていただきたいと思います。

 マラケシュ条約、これでは、権利制限の受益者として、「盲人」「視覚障害又は知覚若しくは読字に関する障害のある者」さらに「身体的な障害により、書籍を持つこと若しくは取り扱うことができず、又は読むために通常受入れ可能な程度に目の焦点を合わせること若しくは目を動かすことができない者」、かなり広範に定義を置いております。

 一方、今回の著作権法改正では、「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」という現行の規定を、「視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」に変えるということになっております。

 条約の方とは書き方が少し違いますが、素直に読むと、この改正案というのは、マラケシュ条約の受益者全てが対象に網羅されているというふうにも読めるんですが、これについて、そのように理解してよろしいのでしょうか。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員がお触れになりましたマラケシュ条約の内容でございますけれども、三つございます。その中で、三つ目の「身体的な障害により、書籍を持つこと若しくは取り扱うことができず、又は読むために通常受入れ可能な程度に目の焦点を合わせること若しくは目を動かすことができない者」につきましての対応につきましては、現在の著作権法の中では対応できておりません。したがいまして、この三つ目に関しまして対応するために明確にするため、法的な措置を講ずるものでございます。

 これによりまして、「視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」と規定しております受益者につきまして、この対象となるものというふうに考えております。

吉川(元)委員 午前中の参考人の質疑でも、たしか竹下参考人からだったと思いますが、視力が一・〇あってもまぶたがあけられないというような障害を持っておられる方がいらっしゃる、そういう方も、今回、これによって対象になるというふうに理解をさせていただきたいというふうに思います。

 あわせまして、これも参考人の方に午前中聞いた話とも重なりますが、点字図書館やサピエからテキストデータ、録音データを取り寄せようとしても、なかなか容易にアクセスができない、また、会員にならなければ、かなり高額の会費を払わないと会員になれないというようなお話も出ております。これは、直接文化庁が所管をする話ではないのかもわかりませんが、ぜひ関係省庁ときちんと議論していただいて、制度があっても、実際にその利用が非常にいろいろな意味で障害があるということになると、これは本来の趣旨からは反することでありますので、ぜひ、そうした点について、この法案が成立した後、しっかりと対応をしていただきたいということを要望させていただきたいと思います。

 それから、あと、これも他の委員が少し触れておられましたが、複製を可能とする団体の拡大について、速やかに議論をして結論を出していきたいというようなお話、答弁が先ほどございました。ボランティア団体あるいは社会福祉協議会、障害者団体など、著作権、許諾の問題に合わせることなく複製に取り組めるような環境づくり、これは私も非常に重要だというふうに思います。そのための政令の変更、これが必要だというふうにも思っております。

 できるだけ速やかにということですが、大体いつぐらいをめどに実行していこうと考えておられるのか、御答弁いただければと思います。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 アクセシブルな書籍の作成を行う上で、こういったボランティア団体が現行制度よりも簡易な方法でこの主体になり得るというふうにするために、政令改正につきまして、先ほども御答弁いたしましたけれども、速やかな制度の整備に向けて取り組んでいきたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、さまざまな関係者につきまして、さまざま意見聴取をしながら、こういった政令の対応をしていかなきゃいけないものでございますから、いつまでにということは申し上げられませんけれども、速やかに取り組みたいと考えております。

吉川(元)委員 余りもう時間がありませんので、テレビ放送での音声解説に関して、ちょっと一点、総務省の方に確認させていただきたいんですが、現在、NHK、まあ民放は地方の民放もたくさんございますので東京のキー局ということで、それぞれについて、音声解説、音声ガイドの番組への付与率、どの程度に今なっているんでしょうか。

奈良政府参考人 お答えいたします。

 総務省では、解説放送の普及目標を指針として定めておりまして、各放送事業者は、この指針を踏まえて解説放送の普及に取り組んでいます。

 総務省が定めた指針の対象番組における解説放送の実績は、平成二十八年度で、NHK総合一二・七%、在京キー局五局の平均で一一・七%となっております。

吉川(元)委員 昨日、質問の通告の際にも、なかなかこれは、技術的な問題、時間的な問題で大変困難な部分があるんだというお話も伺いました。そういう中で、とりわけ災害に関しては、とにかく命にかかわる問題でもありますし、この部分についての対応、具体的にどの番組で何%という話は多分なかなかわからないと思いますけれども、付与率、とりわけ災害の情報についてはぜひ引き上げていただきたい。そのためにも、総務省それから関係省庁、御尽力いただきたいというふうに思います。

 質問時間が終わりに来ましたので、これで質問を終わります。

冨岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十三日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


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