衆議院

メインへスキップ



第11号 平成30年5月16日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十年五月十六日(水曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 安藤  裕君 理事 神山 佐市君

   理事 亀岡 偉民君 理事 工藤 彰三君

   理事 鈴木 淳司君 理事 川内 博史君

   理事 城井  崇君 理事 浮島 智子君

      池田 佳隆君    石川 昭政君

      石崎  徹君    上杉謙太郎君

      尾身 朝子君    大岡 敏孝君

      大見  正君    金子 俊平君

      金子万寿夫君    木村 弥生君

      小林 茂樹君    斎藤 洋明君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      田野瀬太道君    高木  啓君

      冨樫 博之君    根本 幸典君

      馳   浩君    船田  元君

      船橋 利実君    古田 圭一君

      星野 剛士君    松本 剛明君

      宮内 秀樹君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    櫻井  周君

      日吉 雄太君    山本和嘉子君

      西岡 秀子君    平野 博文君

      中野 洋昌君    鰐淵 洋子君

      金子 恵美君    畑野 君枝君

      串田 誠一君    吉川  元君

      笠  浩史君

    …………………………………

   文部科学大臣       林  芳正君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        村上 敬亮君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          高橋 道和君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            義本 博司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         村田 善則君

   政府参考人

   (スポーツ庁次長)    今里  讓君

   政府参考人

   (文化庁次長)      中岡  司君

   文部科学委員会専門員   鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     金子 俊平君

  宮内 秀樹君     金子万寿夫君

  宮川 典子君     石崎  徹君

  宮路 拓馬君     木村 弥生君

  八木 哲也君     冨樫 博之君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     斎藤 洋明君

  金子 俊平君     上杉謙太郎君

  金子万寿夫君     大岡 敏孝君

  木村 弥生君     宮路 拓馬君

  冨樫 博之君     八木 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     星野 剛士君

  斎藤 洋明君     船橋 利実君

同日

 辞任         補欠選任

  船橋 利実君     宮川 典子君

  星野 剛士君     宮内 秀樹君

    ―――――――――――――

五月十五日

 文部科学省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

同日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(伊藤渉君紹介)(第一〇九四号)

 同(大見正君紹介)(第一〇九五号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一〇九六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一〇九七号)

 同(八木哲也君紹介)(第一〇九八号)

 同(熊田裕通君紹介)(第一一〇三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一一〇四号)

 同(鈴木淳司君紹介)(第一一一一号)

 同(松田功君紹介)(第一一一二号)

 同(左藤章君紹介)(第一一五八号)

 同(古川元久君紹介)(第一一五九号)

 同(工藤彰三君紹介)(第一一六五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一七六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一七七号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第一二〇八号)

 同(大塚高司君紹介)(第一二一六号)

 同(武村展英君紹介)(第一二一七号)

 同(山尾志桜里君紹介)(第一二一八号)

 同(根本幸典君紹介)(第一二五二号)

 同(伊藤俊輔君紹介)(第一二六〇号)

 同(生方幸夫君紹介)(第一二六一号)

 同(吉田統彦君紹介)(第一二六二号)

 同(神田憲次君紹介)(第一二七二号)

 障害児学校の設置基準策定に関する請願(田村貴昭君紹介)(第一一一三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一七八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一七九号)

 同(日吉雄太君紹介)(第一二三七号)

 七十万人の給付制奨学金と学費値下げに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一一七四号)

 専任・専門・正規の学校司書の配置に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一一七五号)

 学費負担の大幅軽減と私大助成の増額に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一一八〇号)

 同(日吉雄太君紹介)(第一二四〇号)

 私立幼稚園の充実と発展に関する請願(吉川元君紹介)(第一二〇九号)

 同(日吉雄太君紹介)(第一二六三号)

 国の責任による三十五人学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善を求めることに関する請願(牧義夫君紹介)(第一二二六号)

 学校現業職員の法的位置づけに関する請願(日吉雄太君紹介)(第一二三八号)

 国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善に関する請願(日吉雄太君紹介)(第一二三九号)

 同(金子恵美君紹介)(第一二七三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府地方創生推進事務局審議官村上敬亮君、文部科学省生涯学習政策局長常盤豊君、初等中等教育局長高橋道和君、高等教育局長義本博司君、高等教育局私学部長村田善則君、スポーツ庁次長今里讓君及び文化庁次長中岡司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。尾身朝子君。

尾身委員 自由民主党、群馬一区選出の尾身朝子です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。

 近年、過疎化や少子高齢化などを背景に、文化財の滅失や散逸などの防止、また無形文化財などの担い手不足への対応が緊急の課題となっております。我が国の文化財について適切な保存、活用を図り、次世代に確実に継承していくことは大変重要であり、今回の法改正もそのための一つのステップだと考えております。

 そこでまず、法案の全体について御質問いたします。

 今回の法改正に当たっての背景、問題意識、そして改正の趣旨はどういったものなのか、林文部科学大臣にお伺いいたします。

林国務大臣 我が国には、地域の風土や生活、他国の文化との交流等を通じて育まれ、守り伝えられてきた多様な文化財が数多く存在をしております。

 これらは、我が国の文化的な発展や地域のきずなの維持などにおいてなくてはならない国民の宝ですが、近年、過疎化や少子高齢化などを背景に、文化財の滅失や散逸、担い手不足への対応が喫緊の課題となっております。

 その一方で、文化財を町づくりの核に据えてその活用を図ったり、いまだ価値づけのされていない地域の文化財を掘り起こしたりすることによって、地域活性化を進めたいとのニーズも多く見られるところでございます。

 このため、今回の改正は、地域における文化財の計画的な保存、活用の促進や、地方における文化財保護行政の推進力の強化を図り、未指定を含めた地域のさまざまな文化財を町づくり等に生かしつつ、次世代に確実に継承することができるよう、地域社会総がかりで取り組んでいくことを広く推進することを目指すものでございます。

尾身委員 大臣、大変心強いお言葉、ありがとうございました。

 法改正の趣旨について大臣より御説明いただきましたけれども、その趣旨の実現を図るために具体的にはどのような制度改革を行っていくのか、文化庁より御説明いただければと思います。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正の内容は、大きく三つございます。

 第一には、地域における文化財の総合的な保存と活用を図るため、都道府県は総合的な施策の大綱を、市町村はその大綱を勘案した地域計画を作成できることといたします。地域計画につきまして国の認定を受けた市町村は、国指定等文化財の現状変更等の許可など、文化庁長官の権限に属する事務の一部をみずから行うことを可能とするなど、計画の円滑な実施を促進することといたします。

 また、地域計画の作成や実施に当たりましては、地域のさまざまな関係者で構成される協議会を組織できることといたしまして、当該市町村や都道府県だけではなく、文化財の所有者や学識経験者、商工関係団体や観光関係団体など、民間も含めた幅広い主体の協力を得ながら進めることを可能といたします。

 第二に、個々の文化財の確実な継承のために、文化財の所有者等は個々の文化財の保存、活用のための計画を作成することができることといたしまして、作成した計画につきまして国の認定を得た場合には、国指定等文化財の現状変更等を行う際に、通常はその都度必要とされる許可や事前の届出が事後の届出となるなど、手続の弾力化を図ることといたします。

 第三に、地方の文化財保護行政に関しまして、現在教育委員会が所管することとしております地方教育行政の組織及び運営に関する法律を見直し、地方文化財保護審議会を必置とすることを条件に、条例により地方公共団体の長が所管することができることといたします。

尾身委員 詳細にわたる御説明、ありがとうございました。

 地域計画の作成に当たりましては、市町村が地域の文化財を総合的に把握調査する必要があります。しかし、小規模な市町村では、専門的な人材が不足しているなど、なかなか体制が十分ではなく、この計画を作成すること自体が困難なところも多いと聞いております。

 そこで、何らかの支援が必要だと思います。国としてどのようなことを検討しておられますでしょうか。御説明ください。

中岡政府参考人 委員御指摘のように、規模の小さい市町村に対しましては、国としても技術的な助言を行うこととするほか、都道府県におきましては、大綱の中で小規模市町村への対応を明示したり、協議会への参加を通じて当該市町村への助言を行ったりするなど、積極的な支援が行われることが期待されるところでございます。

 このために、こうした支援が適切に行われるように、今後国が策定する指針におきましてその旨を明示し、小規模市町村においても文化財の保存、活用のための取組が促進されますよう、国、都道府県、市町村で連携して取組を進めてまいりたいと考えております。

尾身委員 ありがとうございました。

 市町村はまさに専門的な助言を求めていると思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 美術工芸品についても、維持管理に向けた早急な取組が必要です。現状では、重要文化財として指定されている美術工芸品が高額の場合には、その相続に際して発生する相続税も高額となります。そのため、泣く泣く手放さなければならないようなケースがあるとも聞いております。

 そうした点などにも勘案し、今回の法改正では、文化財の所有者などが保存活用計画を作成し、国の認定を受けることで、相続税の納税猶予などの措置が講じられることになります。

 今回の法改正により、美術工芸品の継承や公開がどのように確保されるとお考えでしょうか。政府の見解をお聞かせください。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 保存活用計画の作成による効果といたしましては、当該文化財の保存、活用の考え方や、厳密に保存すべき箇所と改変が許容される部分、程度などが明確化され、所有者等がみずからの判断に基づき迅速に修理や活用を行うことができることや、保存、管理の的確性が向上し、特定の行為を行う場合に必要な許可や届出など、文化財保護法に基づく手続等がわかりやすくなること、また、保存、活用のために必要な事項等が地域、行政によっても目に見える形となりまして、所有者等だけでは対応し切れない部分への支援強化が期待できることなどの効果が期待されます。

 美術工芸品は、脆弱な材質によって構成されているものも多うございます。その種類や性質などに応じまして、適切な環境を維持しながら保管する必要がございます。今後、地域の美術館、博物館、自治体、文化庁の専門家などの支援を得ながら、保存活用計画を作成することにより、保存、活用の充実が図られることとなります。

 また、美術工芸品につきましては、保存活用計画の認定を受けた個人の所有者が当該美術工芸品を美術館に長期寄託し公開した場合、当該美術工芸品に係る相続税の納税の一部を猶予されることになります。

 これらを通じまして、国指定文化財を次世代へ確実に継承するとともに、公開などの活用が確保されるよう進めてまいりたいと考えております。

尾身委員 ありがとうございました。

 次に、無形文化財の継承についてお伺いいたします。

 伝統的なお祭りや神楽、農村歌舞伎など、各地域で受け継がれてきた無形の文化財が、伝承者の高齢化、担い手である子供たちの減少などに伴って消滅の危機に瀕しており、早急な対策が必要です。

 そこで、御質問いたします。

 まず、地域のお祭りや神楽などの無形文化財の継承のために、国としてはこれまでどのような保護措置を講じてきたのか、御説明願います。また、今回制度化される地域計画や個別の保存活用計画は、こうした無形の文化財の継承にどのように生かされるのか、あわせて御説明ください。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 無形の文化財につきましての御質問でございます。

 地域の祭りや神楽を始めといたしました無形の民俗文化財は、日本の歴史、風土の中で生まれ、世代から世代へと繰り返し受け継がれてきました貴重な地域の財産でございます。

 国といたしましては、現在、これらの無形の民俗文化財のうち、特に重要なものを重要無形民俗文化財に指定し、その伝承、活用を図るため、行事等に用いられる用具の修理、新調、伝承者養成等への補助を行ってございます。

 また、重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財のうち特に必要のあるものを、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として選択して、記録作成等への補助も行っております。

 未指定の無形民俗文化財につきましても、地域活性化を支える伝統文化の継承基盤整備を行うという観点で、地域文化遺産活性化事業を通じまして、用具の修理、新調、あるいは伝承者養成、記録の作成等への補助も実施してございます。

 しかし、このような無形の文化財の保護につきましては、これまで、わざの保持者個人や保存団体の自主的な取組を頼みにしてきたという問題がございました。

 そこで、今回の制度改正によりまして、都道府県の大綱や市町村の地域計画におきまして、文化財としての価値や伝承者の養成など保護のための取組を明確に位置づけることで、地域住民や関係者等に当該文化財の価値が再認識をされて、地域全体でその継承に取り組んでいくことが可能となると考えてございます。

 また、個別の保存活用計画を作成いたしますと、計画の作成過程で、保持者、保持団体、地方公共団体等の関係者等がその継承に向けた課題の共通認識を図るということができること、また、関係者がどのような活動を行っていくのかが見える化されることや、国の認定を受けることによりまして、行政や民間団体からの支援が得やすくなるという効果が期待されるということ、さらには、従来、主に対象としておりましたわざの直接の後継者の養成だけではなくて、一般への普及啓発、発信等の取組が保存活用計画に位置づけられますことによりまして、より幅広い人々に対して文化財の価値を伝えていくことが期待されるといった効果がございまして、その継承に大いに資するものとなると考えております。

尾身委員 ありがとうございました。

 私の地元、群馬県利根沼田地区においても、利根沼田伝承古典芸能祭が毎年開催されるなど、地域の伝統文化の維持活用に向けてさまざまな取組が行われています。祭りばやし、太々神楽や獅子舞など地元に脈々と伝わる文化伝統は、少子高齢化で担い手不足の中、ごく一部の関係者の方々の懸命でひたむきな努力によって辛うじて受け継がれているというのが現状です。

 形ある文化財に比べて無形文化財の維持活用は難しく、一たび失われてしまうと復活ができないということを危惧する声も地元でもよく耳にします。映像で記録を保存するなどの取組も大切だと考えておりますので、先ほどの回答は大変心強いものと受けとめさせていただきました。

 今回の法改正は、そうした地域の関係者の方々の取組に対して光を当てる希望の法案だと考えており、ぜひとも地域の文化財の保存、活用へとつながっていくよう、政府の取組を力強く進めていただきたいというふうに思います。

 続いて、地方公共団体に対する財政措置についてお伺いいたします。

 今回の法改正により、都道府県では総合的な施策の大綱を策定できるようになり、市町村では、文化財の保存、活用に関する総合的な計画を作成し、国に認定を申請することができるようになります。こうした計画の作成、実施において、特に市町村に対する財政上の支援が不可欠であると考えますが、政府としてはどのような支援措置を講ずる方針なのか、お答えください。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正に伴う、特に市町村に対する財政上の支援ということでございますが、まず、地域計画につきまして、今回の改正法案の施行は平成三十一年度からでございまして、法案が成立した際には、改正法を踏まえました平成三十一年度予算のあり方につきまして、概算要求に向けて検討を進めていきたいと考えております。

 また、平成三十年度の予算におきましても、市町村が準備を進めることができますように、先行いたしまして、地域計画の作成に対して必要経費を支援する予算を盛り込んでいるところでございます。

 さらに、個々の保存活用計画につきましても、先行的に実施している建造物とかあるいは史跡名勝天然記念物に関しましては、平成三十年度予算におきまして、計画作成への補助を行う予算を盛り込んでいるところでございまして、他の文化財類型につきましても、法案が成立した際には、平成三十一年度概算要求に向けて必要な検討を進めていきたいと考えております。

 さらに、保存活用計画に基づき地方公共団体が行います案内板の多言語化や、情報発信、普及啓発などのソフト事業にかかわります経費の一部につきましては、平成三十年度から先行的に特別交付税措置が創設されております。

尾身委員 ありがとうございました。

 今回の法改正は、昨年改正された新たな文化芸術基本法に基づいて、我が国として文化施策をより一層重視していくという大きな流れの中に位置づけられるものと考えています。

 一方、我が国の国家予算に占める文化予算の割合は、諸外国に比べて極めて不十分と言わざるを得ません。文化大国であるフランスと比較しますと、国家予算に占める我が国の文化関連予算は約八分の一しかないというのが残念ながら現状でございます。今後、文化財を含む文化予算の一層の充実が図られるべきだと強く考えております。

 昨年六月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針二〇一七、いわゆる骨太方針でも、文化芸術立国の実現に向けた取組が盛り込まれておりますが、林文部科学大臣のこの点につきましての御決意をお伺いいたします。

林国務大臣 平成二十九年の六月に成立した文化芸術基本法に基づきまして、文部科学省では、観光や町づくり、国際交流、福祉、教育、産業等、関係府省庁の文化芸術関連施策も盛り込まれた文化芸術推進基本計画をことし三月に策定したところでございます。

 今、委員からお話がありましたように、我が国においても、観光インバウンド、増加しておりますし、文化や文化財の活用が求められております。

 また、この文化芸術基本法の成立により文化の対象範囲が広がりまして、従来の文化振興にとどまらず、観光や町づくり、こういったほかの分野との連携が求められているということでございまして、こうした動向をしっかり踏まえて対応できますように、必要な予算の確保に今後とも努めてまいりたいというふうに思っております。

 そして、確保に努めながら、この文化芸術推進基本計画に盛り込まれた各取組を関係府省庁と連携して着実に実施いたしまして、文化芸術立国の実現に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

尾身委員 大臣、大変心強い、力強いお言葉、ありがとうございました。

 今回、私が質問に立たせていただくに当たりまして、地元の皆様方にこの法案につきましての意義などもお伺いして、さまざまな意見を伺ってまいりました。

 その際に皆様方から伺いましたことは、例えば、町内ごとにお祭りの山車と、それから祭りばやしが全部違う音楽だ、それが、その音楽を奏でることのできる人が高齢化してしまって、この方がいなくなってしまったらもう二度と復活ができないというようなこと、またさらに、文化庁からもお話がございましたけれども、太々神楽や農村歌舞伎などの用具や衣装なども老朽化してしまったり、それを保存するに当たっても保存する場所がない、それから修理をしなければ伝えていけない、そのようなときに、お金がなくて地元ではどうすることもできないというような切実な声をさまざま聞かせていただきました。またさらに、それにおきまして、本当に細々と保存会の方たちが頑張ってくださっているけれども、それにも限界があるというようなお話も聞いてございます。

 そのような中で、今回の法改正によりまして、我が国の文化財の保存、活用が進み、先祖代々続く文化、伝統が確実に継承されていくということが本当に希望が持てるということで、非常に心強く思っております。

 また、地域独特の文化財の価値がこれを契機に見直され、また一般の皆様方にも広く周知されることによって積極的に地域で活用されていくということを強く願っております。

 先ほど大臣がおっしゃりましたとおり、文化という幅が広がり、それが町づくり、地域おこし、またさらには、インバウンドで日本を訪れてくださる外国の皆様方にとっても、日本のよさを認識していただく契機になればというふうに心より思っております。

 林大臣からお話をいただきましたけれども、我が国が目指す文化芸術立国の実現のためには、フランスのような大幅な予算の拡充も必要だというふうに考えております。本改正案は、地域の文化財の保存、活用へと光を当てる本当に希望の光であるとともに、文化芸術立国の実現への一つのステップでもあります。地域の皆様方の期待も大変強いものでございますので、今後の、今年度もそうですけれども、次年度以降の予算措置などもしっかりと講じていただければというふうに考えております。

 本改正案の成立を契機に新たに発見されたものもたくさんあると思います。新たに発見された個別の文化財の指定、保存、活用のための財政措置など、具体的な取組が更に前進し進展することを期待申し上げまして、私からの質問を終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、浮島智子君。

浮島委員 公明党の浮島智子でございます。

 本日は、文化財保護法等の改正案についての質問をさせていただけますこと、心より感謝を申し上げます。大変にありがとうございます。

 私は、これまで、文化財、美術工芸品修理の現場や博物館を視察させていただいてまいりました。多くの現場の方からお声をいただきまして、本日は、これまでいただいた現場のお声、これを、視察等で得た観点も踏まえまして、質問をさせていただきたいと思います。

 先日ですけれども、五月の七日の月曜日、和歌山県の県立博物館、教育委員会、また和歌山県立工業高校、盲学校、そして大学、市町村関係者が地域の総がかりで文化財を保存そして活用するという仕組みを視察してまいりました。

 そこで、学芸員の方、そして工業高校の教員の指導のもとで生徒さんたちが中心となって、3Dのプリンターを使いまして、最新の技術を活用して、さわって鑑賞できる文化財、レプリカを作製し、盲学校との連携による図録を作成しているといった、きょうは皆様のところに資料とともに図録を、ちょっとさわっていただこうと思って配付させていただいているところでございますけれども、このさわって見れる、学べる図録を使って障害者の方々が鑑賞できる事業、あるいは中学校の総合学習において、南海トラフ地震が想定されている県内地域においての過去に津波の被害があった文化財の現地調査による防災教育など、地域の文化財の防犯、防災対策にも有効な取組を行っており、大変感銘を受けました。

 本日は、その概要を配付して、今さわっていただいておりますけれども、ぜひお手にとっていただいたら、文字のところだけではなくて、仏像とかいろいろな絵があるんですけれども、そこも全部点字でわかるようになっております。

 これは学芸員の方が、盲学校の生徒さんが博物館に視察に来られた、そして皆さんガラスケースの前に立ったときに、どうぞ説明をしてくださいと学芸員の方が言われ、急に頭が真っ白になったと。なぜかというと、盲学校の生徒さんたちはケースの中のものを見ることもできない、またさわることもできないので、どうやって説明をしていいかわからない、本当にその場から逃げ出したくなったというふうに学芸員の方がおっしゃっておりました。そこで、生徒さんたちといろいろ相談して、これをつくろうということで決められたということでございました。

 この3Dプリンターでつくった仏像、そしてこの本を読みながら、まず第一に、視覚障害を持った方がその本をさわってその仏像を手にしたとき、私たちだったら普通に手にこうやってしますけれども、手にしたときにこうやって抱え込んだ。そして、心でこれを感じ取ることができたというふうにおっしゃったということで、健常者の人と一緒に楽しむことができたとおっしゃって、学芸員の方が本当に熱く、もうこんなにうれしいことはないと語っていたのを本当に今でも思い出します。

 そんな中、一方で、我が国において引き継がれてきた多様な文化財については、大臣の提案趣旨のところにもありましたけれども、担い手不足への対応が喫緊の課題となっている、また、地域総がかりで取り組むことが必要であるともおっしゃっておりましたけれども、そのとおりで、少子高齢化や生活様式の変化などの社会状況の急速な変化の中で、継承の危機に今立たされています。

 視察先で拝見したようなこの取組は、まだ国内外でも実施がされておりません。大変すばらしい取組がこれから全国に展開され、多くの地域でさまざまな創意工夫ある取組が広がっていくということが私は望まれると思っております。

 文化財保護法の今回の改正案では、文化財を、子供たちの教育や町づくりにも生かしつつ、地域社会総がかりで次世代へ確実に引き継いでいくことを目指しているということでございますけれども、現場の方々が置かれている状況は本当に大変に厳しく、人員や資金、それが不足する中、日々懸命な努力がなされていると私は思っております。

 本日は、今回の改正案によって各地域や我が国全体としてどのように変わっていくことができるのかについて、より具体的に考えるという観点から質問をさせていただきたいと思います。

 初めに、改正案の全体について、経緯や目指すべき方向性を確認させていただきたいと思います。

 まず、今回の改正案の課題認識や改正により目指そうとしている方向性、また今回の改正の理念について、大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

林国務大臣 我が国には、地域の風土や生活、他国の文化との交流等を通じて育まれ、守り伝えられてきた多様な文化財が数多く存在しております。これらは、我が国の文化的な発展や地域のきずなの維持などにおいてなくてはならない国民の宝ですが、近年、過疎化や少子高齢化などを背景に、文化財の滅失や散逸、担い手不足への対応が喫緊の課題となっております。

 その一方で、文化財を町づくりの核に据えてその活用を図ったり、いまだ価値づけのされていない地域の文化財を掘り起こしたりすることによって地域活性化を進めたいとのニーズも多く見られるところでございます。

 このため、今回の改正は、地域における文化財の計画的な保存、活用の推進や地方における文化財保護行政の推進力の強化、これを図りまして、未指定を含めた地域のさまざまな文化財を町づくり等に生かしつつ、次世代に確実に継承することができるよう、地域社会総がかりで取り組んでいくことを広く推進することを目指すものでございます。

浮島委員 高齢化や過疎化の急激な進展の中で、文化財の保存、活用のための取組の強化は本当に待ったなしの状況だと思っておりますので、直ちにしっかりと取り組んでいただけるよう強く要請をさせていただきたいと思います。

 また次に、今回の改正案の内容について、まず、地域における文化財の総合的な保存、活用の観点についてでございますけれども、文化財の活用については、教育や観光分野における期待が大きくなる一方で、地方の文化財行政については、職員の数が足りないなど体制が脆弱である場合も多く、その中で、予算、人員の確保にも困難があると伺っています。

 地域の文化財を継承していくため、このような現場の課題を踏まえた、今、大臣もおっしゃりましたけれども、地域総がかりで文化財の保存、活用に取り組む体制を構築し、具体的な、また長期的な観点に立つ視点が重要であると私は考えております。

 この改正案に盛り込まれている都道府県の大綱や市町村の地域計画について、どのようなことを盛り込むことを想定し、また、大綱や市町村の地域計画を策定することによって地域がどのように変わるとお考えか、大臣の見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 今回の法改正では、文化財の継続的、計画的な保存、活用を図るため、都道府県が大綱、市町村が地域計画を作成できることとしております。

 まず、大綱についてですが、都道府県が、域内の市町村を包括する立場から、複数の市町村にまたがる広域的な取組や、また災害発生時の対応、小規模市町村への支援など、あらかじめ当該都道府県における文化財の保存、活用に係る取組の方向性を記載することを考えております。

 また、地域計画の方ですが、市町村が、文化財やそれを支える地域住民に最も身近な基礎自治体としての立場から、域内の文化財に関する現状把握、これを行った上で、当該市町村における文化財の保存、活用に関しまして、基本的な方針、そして市町村が講ずる措置の内容、さらには文化財を把握するための調査に関する事項などを記載することを考えております。

 このうち、市町村が講ずる措置の内容については、文化財の修理や整備、それから防災対策などのほか、地域住民や子供たちへの文化財の普及啓発、景観、観光、町づくり部局などとも連携した地域振興方策、保存技術や原材料確保に向けた措置なども盛り込むことを想定しております。

 こうした仕組みによりまして、地域で守るべき文化財の掘り起こしや後継者の確保などに向けた課題の洗い出しができ、地域の現状を踏まえて、今後どのような文化財の保存、活用方策を計画的に講じていくのかを明確化する、そして、地方公共団体や民間団体との役割分担、これも見える化をされ、関係者間の連携をより活性化できるなど、先ほど申しましたような、地域社会総がかりとなって取組を進められるようになる効果を期待しておるところでございます。

 なお、大綱や地域計画の具体的な記載内容については、今回の改正法案を国会でお認めいただければ、文化審議会等で議論いただいた上で、国として運用指針を作成して、わかりやすく示していきたいと考えているところでございます。

浮島委員 ぜひとも、多くの地域において計画作成が進むよう、文化庁としても、大臣としても、この計画の作成の推進に対して強力に支援をしていただけるようお願いをさせていただきたいと思います。

 また次に、もう一つの柱であります、個別の文化財について所有者が保存活用計画を作成し、国が計画を認定するという仕組みについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 我が国の文化を次世代に確実に継承するためには、観光のみならず、今も大臣もおっしゃっておりましたけれども、地域住民や子供たちがその価値に触れられる教育、防災活動など、地域の活性化などの具体的な活動においての活用を進めるとともに、文化財の状態に応じた修理による保存に取り組むことが不可欠だと私は思っております。

 私は、これまで、京都や奈良、そして装こう師連盟の坂田理事長がされている滋賀、ここの美術工芸品の修理の現場を視察させていただきました。一つの文化財を次世代に継承していくためには、適切な周期での修理、そして日常的な管理が必要であり、所有者や修理技術者の関係者にとって非常に大きな労力が必要であるということを痛感いたしました。

 この改正案の個々の保存活用計画は、その保存、活用のために必要ないわゆる人の健康診断の問診票のようなものとして、確実に効果を上げられるように、現場の方々へのサポートもしっかりと対応していただきたいと思っているところでございます。

 また一方で、実際に治療が必要な国の美術工芸品の修理の支援は十分とは言えません。修理の材料となるものが足りない、また、手すき和紙なども後継者の確保が大変難しい、厳しいという現場のお声もたくさんいただいているところでもございます。

 そこで、我が国の文化を次世代に確実に継承するために、保存と、文化財を教育や町づくりに生かす活用を進めるため、保存活用計画の作成を進めるとともに、全国国宝、重要文化財なる美術工芸品について、適切な周期による修理、そして修理に必要な原材料、用具の確保への支援、これを一層充実すべきと考えますけれども、大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 文化財の次世代への確実な継承を図っていく上で、個別文化財の保存活用計画の作成は非常に有意義なことであるわけでございます。

 これまでも、重要文化財建造物や史跡名勝天然記念物については、予算事業としてその推進を図っているところですが、個人所有の場合が多い美術工芸品など、ある文化財類型については、これまで計画作成を推進していない状況でした。

 今回の法改正では、美術工芸品を含む幅広い文化財類型につきまして保存活用計画の作成を制度化することとしており、今後、文化庁としても、所有者等に対してその作成を積極的に促していくこととしております。これによりまして、御指摘の適切な周期での修理や、そのために必要な原材料、用具に関する事項も見える化されまして、その確実な継承に資することとなると考えております。

 また、美術工芸品に係る平成三十年度予算においては、外観を健全で美しい状態に回復、美装化と申しますが、回復する事業を開始するとともに、美術工芸品の修理を支援する経費として、対前年度比二億円増の約八億円を計上しているところですが、さらに今後とも、今回の法改正を踏まえ、必要な財政的支援に努めてまいります。

 また、美術工芸品等の修理に必要な文化財保存技術の保持団体等に対する原材料、用具の確保への支援についても取り組んでまいりたいと思っております。

浮島委員 ありがとうございます。

 文化財の確実な継承のために一番大切なのは、計画的に取り組んでいく、推進をしていくこと、また、国が必要な予算を安定的に、そして計画的な修理がしっかりと行えるよう、そこが私は重要だと思っておりますので、しっかりと安定的にこの財源を確保して、そして計画的に修理ができるようお願いをさせていただきたいと思います。

 また次に、文化財や文化の振興について、改正文化芸術基本法の観点も含めてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回の和歌山県の例のように、子供たちが文化財の将来の担い手としてさまざまな活動に参画できるような取組、また、博物館、美術館と学校、文化財、防災対策など、多様な分野と連携した具体的な取組が推進されることは非常に重要だと私は考えております。

 一方で、二〇二〇年には小中学校の新学習指導要領がスタートしますが、美術、社会科、総合的な学習の時間などにおける、美術館、博物館との連携による授業づくりのモデルが少ないと私は思っております。現場の方にお伺いをすると、現場では、どうしていいのかわからない、でもやっていきたいという声が多数あります。

 昨年度は、議員立法によりまして、文化芸術基本法が改正されたところでございますけれども、子供、若者、障害者、高齢者の全ての方がユニバーサルな環境の中で、誰もが豊かな人間性、創造力、感性を育み、文化的な豊かさを享受できるような環境を整えることが重要であると思います。

 そこで、文化芸術基本法の理念である児童生徒への教育、観光、町づくり、国際交流、福祉、産業などの分野との連携を実現していくために、和歌山の県立工業高校の皆さんが作製しているレプリカ、さわって読む図録などの教育事業のような、地域総がかりで行う具体的な取組を含めてどのように今後取り組んでいくか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 今、浮島先生がおっしゃったとおりでございまして、平成二十九年六月に成立した文化芸術基本法におきまして、今後の文化芸術に関する施策の推進に当たっては、児童生徒等に対する文化芸術に関する教育の重要性に鑑み、学校や地域等における活動の連携や、観光、町づくり、国際交流、福祉、教育、産業等の関連分野との有機的な連携、これが求められておるところでございます。

 具体的な取組の一例として、和歌山県立博物館が文化財の寄託を受けて、地元の工業高校や盲学校等の生徒がその文化財の複製、レプリカを製作して地元へ提供し、先ほども見せていただきましたけれども、これは大変喜ばれているというふうに伺っております。

 このような取組は、やはり地域における文化財の活用と保存、それから高校生らの文化芸術に関する教育や地域貢献活動、若手芸術家の育成、福祉活動等の観点からも大変に意義が高く、文化活動としても非常に興味深いものであり、文化を核とした関連分野との連携実現の好事例というふうに考えております。

 文部科学省としては、今国会に提出しております文部科学省設置法の一部を改正する法律案の成立を機に、こうした新しい切り口からの文化振興を、各府省庁、各地方の文化関連施策と連携を一層深めながら、よりよい事例が次々と生まれるように取り組んでまいりたいと思っております。

浮島委員 ありがとうございます。

 私は、この和歌山の取組を今回見せていただいて、本当の心のバリアフリーであり、またソサエティー五・〇社会に対応した教育のあり方にも資すると思っているところでございます。なので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 また、最後になりますけれども、国際博物館会議、ICOMについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これは、平成二十年、今からちょうど十年前の六月の三日でございましたけれども、私が参議院のときに委員会で質問をさせていただきました。この国際博物館会議というのは、一九四六年に創設された、世界の博物館の関係者、ミュージアムの関係者等が集う会議でございますけれども、一度も日本で開かれたことがない、これをしっかりと日本に誘致して開くべきだということで質問をさせていただきました。

 十年かかりましたけれども、やっと来年、二〇一九年九月一日から七日、京都で開催が決まりました。これは、世界の約百四十カ国と、あと約三千人のミュージアムの専門家が集まる大会でございます。

 そこで、このような大型の国際会議が開かれる今こそ、日本の文化に対して世界の注目が集まると私は思っております。まだ国内外でも実施されていない今回の取組のようなものを子供たちからプレゼンテーションしたり、また、日本の美術に関心の高い海外の博物館関係者がエクスカーションとしていろいろなところに行かれますけれども、ルーブル美術館の文化財の修復にも使用されている福井の越前和紙の工房を見学するなど、積極的に打ち出すことが必要であると思います。国として博物館会議を支援していくべきだと私は思いますけれども、大臣の見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 二〇一九年に開催される国際博物館会議、ICOM京都大会は、世界各国から三千人規模の博物館関係者が一堂に会する世界大会で、我が国で初めて開催されるものでございます。

 京都大会では、今、先生から御紹介いただいた和歌山県のような取組など、我が国の博物館の取組やプレゼンスを大いにアピールしたいと思っておりますし、世界各地の博物館関係者が我が国の文化や伝統に触れるまたとない機会ともなり得るものと考えております。

 このため、文科省としては、主催者であるICOM本部や大会組織委員会等と緊密に連携協力しながら、大会の成功に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

浮島委員 ぜひとも、この大会が大成功するように力をかしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

冨岡委員長 次に、山本和嘉子君。

山本(和)委員 立憲民主党・市民クラブの山本和嘉子でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 五月六日、大学アメリカンフットボールの名門であります日本大学と関西学院の定期戦で、日本大学の選手が相手のクオーターバックの選手に悪質なタックルをして、明らかな反則行為をしたという件でございますけれども、どういった経緯で選手がこういう違反行為をしなくてはならなかったのか、監督の指示という報道もございますけれども、この選手は退部する方向という報道もけさありました。将来ある大学生がいきなりの反則行為で重症を負うなんということになれば、その人の人生が狂いかねないと思います。監督の指示だったということであれば、加害選手も同じくそうだと思いますけれども、けさの報道によりますと、被害選手は靱帯の損傷ということでございまして、一歩間違えれば、選手生命はおろか、命を奪いかねない危険な行為であると思います。

 関東学生連盟は、規律委員会を設置して調査を行うということでございますけれども、今後、こういったことに対して、スポーツ庁としてどのように対応していかれるのか。

 また、今年度中に、大学スポーツの振興を目的とした日本版NCAAというようなものをスポーツ庁が中心となって設立するというふうにもお伺いをしております。設立に当たって、危険行為に対する、特に悪質な行為に対しまして、罰則を含めた大学スポーツのあり方、そういったものを議論すべきだと思いますけれども、そのあたりの御見解をお伺いいたします。

今里政府参考人 お答えいたします。

 先生今御指摘の、六日のアメリカンフットボールの試合におきまして負傷退場したという件でございます。これについては、重大事故につながる非常に危険な行為であったというふうに認識をしているところでございます。

 昨日、日本アメリカンフットボール協会から、事案の内容、それから、今、先生御指摘ございました、なぜこのようなことが起きたという経緯についても、我々、聴取しようと思いまして、報告を求めたところでございます。その中では、今も先生お話ございましたように、関東学生アメリカンフットボール連盟が規律委員会を設置して、そこで調査、そして最終的な対応を決定するということでございました。

 また、再発防止策につきまして、既に日本アメリカンフットボール協会から、危険プレー防止の徹底について周知をしたということでございましたけれども、これに加えて、研修などを実施するような追加の再発防止策ということをこちらから申し上げたところでございます。

 この事案の、今お話のございました責任の問題も含めまして、関東学生アメリカンフットボール連盟からの調査結果を速やかに聴取して、私どもとしても対応していきたいというのが一点でございます。

 そして、今お話ございました、私どもスポーツ庁におきましては、大学スポーツにおける大学横断的かつ競技横断的統括組織、いわゆる日本版NCAAと呼ばれているものでございますけれども、これの今年度中の創設を目指しているところでございます。

 この組織では、当初から取り組むべき課題の一つとして、安全、安心な環境で学生が競技を行えるようにということでございまして、その中で、暴力等に対する相談対応体制の構築、指導者の意識向上ということについて、取り組んでいく課題として取り上げているところでございます。

 今回の事態につきましては、個別の競技や大学に限った課題ではなくて、大学スポーツ全体の課題として捉え、安全、安心な大学スポーツ環境の整備に向けて取り組んでまいります。

 以上でございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 今、再発防止策を御検討されるということでございますけれども、そういったことの原因がわからないのにもかかわらず、その再発防止策というのはいかがなものかなとは思うんです。

 原因をお聞きしたいところではございますけれども、アメフトは危険なスポーツであると思われても仕方がないと思います。こういったことが繰り返されるということは、今後、アメフトの発展、競技のあり方等々にもかかわってくるのではないかなと思います。徹底した調査をお願いしたいと思いますけれども、そのあたり、お願いいたします。

今里政府参考人 その原因につきましても、関東学生アメリカンフットボール連盟が規律委員会を設置して今詳細な調査を行っている、選手や関係者などからの聞き取りをしているというふうに聞いているところでございます。

 したがって、詳細な部分までの原因ということは今まだはっきり解明されていないという状態でございますので、この報告を速やかに私どもとしても受けまして、今後の対応に努めてまいりたいと思います。

 以上でございます。

山本(和)委員 ぜひ調査結果の方も委員会の方で御報告をお願いしたいと思います。

 委員長も、ぜひそのあたり、お願い申し上げたいと思います。

冨岡委員長 この件については、理事会で昨日話しまして、原因をしっかり究明し、理事会若しくは委員会に報告するようにしかと厳命しております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 そんな危険行為をしてまで勝たなければならなかったのかということも思いますし、今、親世代としては、子供にもうアメリカンフットボールなんてさせたくないと思っている方もいらっしゃるのではないかと思います。政府として、徹底した調査、検証をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 引き続きまして、文化財保護についての質問をさせていただきたいと思います。

 総理が今国会の施政方針演説でも文化財保護について述べておられまして、しっかり大切さを理解してもらうことで後世に引き渡していくということもおっしゃっておられます。その際、重要文化財、旧奈良監獄の例を挙げられまして、ホテルに生まれ変わるということでございます。

 私の出身地であります京都でも、大正時代の建造物で京都市指定文化財の旧京都中央電話局が、その外観をそのままにして、二〇〇一年、新風館という商業施設に生まれ変わりました。その新風館が二〇一六年に閉館しまして、二〇一九年にホテルに生まれ変わるということでございます。もちろん外観はそのままに生かした、まさに文化財の価値を生かしつつ活用する例というのに当てはまるものではないかなと思います。

 日本を訪れた観光客は昨年約二千九百万人と、五年連続で過去最高を更新しているということでございます。文化財を町づくりに生かして地域社会全体で継承していくことが必要とありますけれども、地方への観光増加は地方創生にもつながるということで大変重要なことでもあると思います。

 本法案の背景は、主に二つあると思います。

 一つは、文化財を継承して守ってきた地域コミュニティーが過疎や少子高齢化の進行によって急速に弱体化して、多くの文化財が守り切れなくなっているということ、もう一つは、政府が進める観光立国の中の大きな資源として文化財に着目して、これを活用しようという流れでございます。つまり、急速に衰退する地域を活性化する資源として文化財を活用するという考え方だと思います。

 文化財を守るために、その価値に着目し活用すること自体は大切なことだと考えますけれども、一方で、文化財は、それが壊れてしまった場合、二度と回復することができないというものでありまして、慎重な姿勢も大切であると思います。

 先ほど尾身先生の質疑にもありましたけれども、日本はフランスに比べて、国家予算の中での文化に対する予算が八分の一程度でございます。そうした中でも本法律が効果を上げるためには、さまざまな工夫や細心の注意が必要だと思いますけれども、文化財の保存と活用につきまして、基本的な考え方を大臣の方からお聞きしたいと思います。

林国務大臣 文化庁予算につきましては、これまで着実にふえてきておりまして、平成三十年度予算においては過去最高の総額千七十七億円を確保したところでございます。また、このうち、文化財を次世代に確実に継承するため、適切な保存修理や、防災、防犯対策等を支援するための経費について、対前年度比十億円増の三百七十六億円を計上するなど、文化財の保存のための取組の充実を図っているところでございます。

 とりわけ、保存が十分でない文化財はそもそも活用することが困難であるため、これまでも文化財の指定や修理に対する支援を行ってきたところであります。

 また、先人から受け継いだ文化財を後世に適切に引き継いでいくためには、文化財の活用を通じて、その大切さを多くの人々に理解してもらうということが不可欠であると考えております。

 今回の法改正によりまして、地域社会総がかりで文化財の保存、活用を総合的、計画的に進める仕組みが整備されることとなりますが、文化財を次世代に確実に継承していくことは大変重要であり、引き続き、必要な予算を確保するように取り組んでまいりたいと思っております。

山本(和)委員 わかりました。ありがとうございます。

 実際の文化財の保護や修復に関しましても、重要文化財はある意味順番待ちの状況でありまして、人材も予算も全く足りていない状況だというふうにも聞いております。計画策定が間に合わない中で、稼げる文化財の利用ばかりが進んでしまって、文化財の保護がおろそかにされてしまうおそれがあるのではないかなという懸念も考えられると思います。

 国宝や重要文化財の仏像を幾つか保有する寺院にお聞きしたんですけれども、重要文化財の収蔵庫を建てかえる場合、厳しい建築の規制や予算がおりない、拝観料を取っているところへは予算が余りつかないのではないかというふうに思わせるほど厳しいのが現状というふうにもお聞きしております。一方で、保存、活用を担う学芸員の人材育成や修復技術の継承、材料の確保とかいうのも課題になってくるのではないかなと思います。

 そういった保護と活用のバランスについてどのようにお考えになっているのか、大臣、お聞きしたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 国民共通の貴重な財産でございます文化財を次世代に確実に継承するために、文化庁におきましては、文化財の所有者や地方公共団体等が行う文化財の保存修理や活用、整備に係る経費に対して補助を行っております。

 平成三十年度におきましては、文化財保護の充実を図る予算といたしまして、対前年度比七億円増の約四百七十六億円を計上しているところでございますが、適切な周期で確実に修理を実施するためにも、十分な予算確保は重要な課題と認識してございます。また、文化財の保存技術を選定してその保存を図るなど、修理技術の継承にもあわせて取り組んでいるところでございます。

 保存が十分でない文化財はそもそも活用することは困難でございまして、また、文化財の後世への継承につきましては、文化財の活用を通じてその大切さを多くの人々に御理解いただくことが不可欠であるということで、今、委員御指摘のとおり、文化財の保存と活用のバランスというのが非常に重要だというふうに考えております。この文化財保護法には、その目的規定におきまして、保存と活用を文化財保護の重要な柱と捉えているところでございます。

 文化庁といたしましては、文化財を次世代に確実に継承していくために、今回の法改正を踏まえまして、必要な予算の確保を図り、文化財の保存、活用の両面から適切に取り組みたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 現場の状況などをしっかり把握していただいて、更に取り組んでいただくことを期待したいと思います。

 引き続きまして、文化財は、先ほど申し上げました京都や奈良のように集中的に文化財が存在している場所と、余り多くない場所とで格差が生まれるのも事実だと思います。また、建築物のように観光客を寄せられる文化財と、古文書のような地味な文化財との格差もあるのではないか。いわゆる観光としてもうけられる文化財に注目が集まって、そうでない文化財が顧みられないという状況になっては、この保護の目的自体がどうか問われることになってしまうのではないかなという懸念もございますが、そのあたりのお考えをお聞きしたいと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、文化財は多種多様でございまして、また、地域における所在件数やその保存状況、これまたさまざまでございます。こういったことを十分認識した上で、文化庁は、観光資源となり得るかどうかにはかかわらず、文化財の適切な保存、活用を図っていくことが大変重要だと考えております。

 今回の改正におきましては、市町村における地域計画の作成を制度化しておりますが、計画の作成に当たりましては、未指定の文化財の掘り起こしを行った上で、各地域の実情を踏まえて、中長期的な視点から文化財の保存、活用にかかわる具体的な取組をどのように進めていくのかなどにつきまして、地域社会で議論をしていただいて記載していくということになろうかと思います。これによりまして、市町村ごとの個性あふれる地域計画が作成され、文化財の保存、活用にかかわる総合的、計画的な取組が行われることになるものでございます。

 文化財の次世代への確実な継承が図られますよう、国といたしましても適切に助言をしたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 未指定なものもいろいろ掘り起こしということ、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 引き続きまして、この法律案につきまして、地域における文化財の総合的な保存、活用のために、都道府県においては文化財保存活用大綱、市町村においては地域計画を作成することができるというふうになっております。これは、文化財の管理を各地域が主体的に行うことを促して、地方に委ねていこうというふうに思います。

 しかしながら、文化財の保護や活用を進めていくためには、単に地方公共団体に判断を委ねるだけではなくて、保護、活用にあっての方向性や具体的な指針、若しくはガイドラインのようなものを国が示して、地方自治体が動きやすい状態をつくる、そういうことをフォローしていく必要があると思いますが、そのあたり、いかがでしょうか。

 また、加えまして、観光庁の明日の日本を支える観光ビジョンを踏まえた文化財活用・理解促進戦略プログラム二〇二〇が、二〇二〇年までに、支援などの千事業の実施や、文化財を中核とした観光拠点を全国二百拠点整備、実施するというふうにもしておられるようですが、このような計画との関連についてもあわせてお聞きしたいと思います。

中岡政府参考人 大綱あるいは地域計画の作成に当たりまして、国の方でガイドラインを示すべきじゃないかということと、観光ビジョンの対応といたしまして、二百拠点の整備との関係性についての御質問だと思います。

 御指摘のとおり、都道府県の文化財保存活用大綱や市町村の文化財保存活用地域計画を策定する際には、やはりよりどころとなるものが必要でございまして、留意事項等を示した国による指針につきましては、今後、文化審議会で検討していただきまして、その結論を踏まえ、今回の改正案の施行までにはお示ししたいと考えておるわけでございます。

 先ほどの、全国に整備しています二百拠点のお話でございますけれども、この中の要素といたしましては、大きくは、日本遺産と、もう一つは歴史文化基本構想という事業がございます。

 こういったものを合わせまして二百拠点ということでございますけれども、こういった取組につきまして、例えば地域計画の中できちっとうたっていただきますれば、私ども文化庁といたしましては、そういった日本遺産あるいは歴史文化基本構想のフォローアップにつきましても、さまざま専門的な御支援等もできるんじゃないかというふうに思っておりますので、そういった関係におきましては非常に密接に関係してくるものと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 さまざまな方向性、いろいろ具体的に地域の方にお示しをいただけるということでございますので、ぜひ、そのあたりもよろしくお願いしたいところでございます。

 引き続きまして、管理責任者の件につきまして御質問させていただきます。

 本法案では、重要文化財の保存活用計画の作成と国による認定を規定しておりますけれども、個別計画の作成は原則所有者となっておりまして、作成には恐らく専門的な知見も必要になってくるのではないかなと思います。所有者にとって、作成は恐らく負担となると思います。

 一方で、所有者にかわって文化財を保存、活用できる管理責任者を選任できる要件を拡大するというふうにもお聞きをしております。管理責任者に関しては、その能力や資格、責任の所在が明確ではないのかなというのもちょっと法案を見て思ったんですけれども、先日、東京大学の中央食堂に展示されていた宇佐美圭司さんによる巨大絵画の「きずな」という絵でございますけれども、誤った認識のもとで廃棄されてしまったということでございます。とても価値のある作品だというふうにも聞いておりますし、美術史上にも残るべき作品であって、それの廃棄は非常に残念なことであると思います。

 東京大学中央食堂の工事監修である大学側は、作品を保存するべきだというふうに決めていたようなんですが、工事をする大学生協の方は廃棄をしてしまった、連絡の不行き届きだったということが報道されておりましたけれども、これを、所有者は大学生協だったようなんですが、所有者にかわって管理責任者という立場があれば、しっかり管理していれば、こういうことにはならなかったのかなというふうにも感じます。

 この法案におきまして、管理責任者について想定している人材や組織像など、従来との違いも含めてちょっと教えていただければと思います。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 管理責任者につきましては、既に制度としてはございますけれども、先ほど委員御指摘のように、これまでは特別な事情があるときというようなことで大変限定的な解釈をされて、必ずしも十分に活用されていないという現状がございましたけれども、今回、管理責任者の選任要件を拡大して、より使いやすくしていくということでございます。

 こういった管理責任者の方につきましては、やはり文化財の価値の理解というのをきちっと持っていただく必要がございますが、現在、文化財の公開を支援しているNPO団体とか歴史的建造物の保存、活用の知識を持つ建築士さん、学芸員さん、大学教授や教員OB、あるいは文化財の保護指導委員といった方々が、こういった管理責任者としてついておられる例があるわけでございます。

 今度、この管理責任者制度が使いやすくなりました以降におきましても、こういった方々の資質につきましては大変重要なところでございます。

 先ほどお話がございましたけれども、所有者と管理責任者との意思疎通がうまくいかないというようなことがあってはならないわけでございますので、そういったものをきちっと、この文化財についてはどういう保存の仕方をするかとか、きちっと意思疎通をしていくというのが非常に重要になるというふうに思っております。

 文化庁といたしましては、管理責任者制度を使いやすくということと、実効性ある制度ということをつくり上げていくという観点で、文化庁といたしましても引き続き支援をしてまいりたいというふうに考えております。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。

冨岡委員長 次に、日吉雄太君。

日吉委員 立憲民主党・市民クラブの日吉雄太です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。時間も限られておりますので、早速、本日の法案審議に関連しまして質問をさせていただきます。

 現在も使用されている文化財家屋について、まずお伺いします。

 くぎ一本打つにも国の許可が要るとよく言われますが、実際にその家屋に居住している場合の保存のあり方、状況等、今の現状についてお伺いいたします。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 実際に文化財の家屋に居住している方がどういうように管理をしていくのかという御質問でございますけれども、文化財建造物の修理や現状変更等が必要になった際には、その都度、所有者又は管理団体が、文化財の類型ごとに定められた規定に基づきまして、必要な手続を実施していただいておるところでございます。

 今回の法改正によりまして、個別の保存活用計画というようなことで策定をしていくということになりますと、どこを厳密に保存していくべきかや、どのような現状変更が許容され得るか等について一定の整理がされるということでございます。

 必ずしも、居住者の方というのは、文化財の専門家ではございませんし、保存科学について知識があるわけではございませんので、文化財の専門家ではなくても、こういった計画を参照することによりまして文化財の適切な取扱いがわかりやすくなる、このため、所有者等が主体的に管理を行う範囲もあらかじめ明確になるものと考えております。

日吉委員 ありがとうございます。

 次に、地域計画の認定を受けた市町村の教育委員会等は、地域の文化財を国の登録文化財として登録するよう提案することができる旨の規定を設けることとしており、これにより国の登録文化財として登録される件数がふえることが想定されますが、政府として今後、登録文化財をふやす方向でいるのかどうか、これについてお伺いいたします。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正におきましては、市町村による地域計画の記載事項として、域内の文化財の調査、把握を位置づけることとともに、当該市町村は、把握した文化財について、国に対する登録を提案することができることを制度化しているわけでございます。

 この制度を利用いたしまして、各市町村におきましては、積極的に地域の文化財の潜在的価値を掘り起こして、多くの提案がなされることにより、登録件数が増加することが期待されるところでございます。

 これによりまして、新たに把握された文化財の速やかな保護を図るということができるわけでございますので、文化財を地域の活性化や町づくり等に生かす機運が更に醸成される効果も出てまいるというふうに考えております。

日吉委員 そうしますと、登録文化財がふえていく、こういうことになるんですけれども、その場合に、現在の少子高齢化社会において、文化財の担い手不足に対する取組について、所有者にかわり文化財の保存、活用に当たることのできる人材というのはそう簡単には確保できるものではない、このようにも考えられるんですが、人材の確保という観点から、これについての政府のお考えをお教えください。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 人材の確保というのは非常に重要なものでございますけれども、例えば、地域計画を策定していくということにつきましては、なかなか自治体に専門的な知見を有する職員が少ないということも言われるわけでございますけれども、こういった人材は不可欠という観点で、国におきましては、これまでも地方公共団体の職員や学芸員等の専門性向上のためのさまざまな研修を実施してきておりますが、これらを更に充実させていきたいと思います。

 新たに平成三十年度からは、この法改正の動きと合わせました地方財政措置の充実ということで、保存活用計画に基づき、専門的知識を持つ外部人材の活用等のソフト事業を行った場合における特別交付税の措置や、地方公共団体や美術館等からの文化財活用にかかわる相談に一元的に対応できるセンター機能の整備といいますものも進めたいというふうに考えております。

日吉委員 文化財の保存、活用ということで、人材の確保、これは非常に重要になると思いますので、しっかりと対応をしていただけるようにお願いを申し上げたいと思います。

 続きまして、加計学園の件について少しお伺いをさせていただきます。

 以前、本委員会におきまして、加計学園の理事長夫人が役員を務められている加計学園グループの会社、SID創研について御質問をさせていただきました。その際、加計学園が支払った設計監理料は約四億三千万円というお答えをいただいたところでございます。その際の見積書を御提出いただけないかなというところが一点。

 また、今治市から、補助金の妥当性をめぐり、第三者機関が設けられ、検証が行われたところでございます。文部科学省も、認可に当たり、資料に基づいて建物の基準を審査しておりますが、建築全般に係る仕様書や図面、見積書につきましても、あわせて御提出いただきたいと思いますが、その点についてお伺いいたします。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのございました校舎建築の場合の契約の相手方につきましては、これは民間法人間の契約でございまして、例えば、私学法に定める学校法人と利益相反になるようなケースを除きまして、特段の制限はされておらず、当該学校法人の責任において適切に決定すべきものと考えております。

 その上で、今具体的なお尋ねがございました校舎建築に当たりましての見積書でございますとか仕様書等、公開すべきではないかという話でございまして、これにつきましては、設置認可申請に当たって添付書類として求めているわけでございますけれども、これについては、情報公開のルールに従って対応しているところでございます。

 契約書や見積書につきましては、これは民間法人間の取引情報、それから内部情報に該当して秘匿すべき情報に当たるということで、これは公にすることによって法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、開示をしていないというところでございます。

 情報公開のルールに従いまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

日吉委員 SID創研と加計学園、ある意味利害関係のある中での取引ということがございます。そういったところで、より透明な状況を把握したいと国民の皆様が考えている。そういった意味でも資料の御提出をお願いしたいというところと、あと、建築費全体につきましても、それが妥当なのかということがしばしば問題になっているところでございます。

 そういった意味でも、国会でしっかりと検討することも必要となると思いますので、この点、できる範囲で御提出を御検討いただきたいというふうに思っているので、委員長のお取り計らいをお願いいたします。

冨岡委員長 理事会に諮りたいと思います。

日吉委員 ありがとうございます。

 続きまして、内閣府の方にお尋ねをいたします。

 国家戦略特別区域諮問会議におきまして加計学園の獣医学部新設が認定されましたが、この認定に当たっては、諮問会議のメンバーと加計学園との間に利害関係が存在することで公正な判断が阻害されるようなことがあってはなりません。そのため、一定の利害関係が存在する場合には、規制の対象として、利害関係のある諮問会議メンバーは認定の判断過程に加わることができないものと考えられます。

 ここで、仮の話ですが、例えば安倍総理が理事長を務めているような学校法人の学部新設をもし申請して、安倍総理が、自身がそれを判断するということは不適切である、これは一目瞭然だと思います。

 そこで、事業者の認定に当たり、どのような利害関係が規制の対象になっているのか、御説明いただけますでしょうか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 国家戦略特区基本方針閣議決定文の中に、直接の利害関係を有する議員を審議及び議決に参加させないことができるというふうにしてございます。直接の利害関係といいますのは、これまでも累次答弁させていただいてございますが、みずからが経営したり役員となっている会社が特区の事業認定を受けている場合などを想定しているものでございます。

 ただ、直接の利害関係を有するか否かは、審議事項の内容でございますとか、個々の事業と議員との関係などから個別具体的に判断すべき面もあるというふうに考えておりまして、一概にこうならばということを申し上げるのは難しいかというふうに考え、制度を運用してございます。

日吉委員 そうしますと、例えば諮問会議のメンバーの配偶者ないし親族の方が加計学園の役員等に就任しているケース、これは、一義的には利害関係に該当するということでよろしいでしょうか。

村上政府参考人 お答えをさせていただきます。

 個別具体的に見ないとわかりませんので、この場において仮定のケースということでのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

日吉委員 一般論として、諮問会議のメンバーの配偶者、親類、こういった人は利害関係者に該当するというのが、まあ通常、利害関係者に該当すると思うんですけれども、一般論としていかがでしょうか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論としてのお尋ねということではございますが、これにつきましては、やはり個別の事業でありますとか個々の関係によって、外形的には同じような関係でございましても判断が違うケースもあろうかと思います。そういったことから、仮定の話についてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

日吉委員 実質的に家族の方がかかわっているような場合、個別具体的といいますよりも、一般的にはとりあえず利害関係者には該当すると思うんですけれども、もう一度答弁いただけますでしょうか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 趣旨繰り返しになってしまいまして大変恐縮でございますが、例えば利害関係人の範囲について、その他の審議会、その他等々の事例を見ましても、担当する政策分野や事業によりまして、本人が、事案申請者の当事者本人でありますとか、若しくは株式を一定数所有している場合でありますとか、それから経営者や役員自身である場合でありますとか、やはり、そのケース、ケースに応じていろいろな判断が霞が関の中のいろいろな審議会の中でもあるようでございます。

 私どもも、それぞれのケースに応じて適切に判断することが必要というふうに考えてございますので、大変恐縮でございますが、仮定の話に対してはお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

日吉委員 今回のケースで、総理の奥様が加計学園が運営する御影インターナショナルこども園の名誉園長に就任されていたということでございますけれども、この件につきまして、審議会において、この利害関係につきまして適切に判断を行ったのかどうか、お答えいただけますでしょうか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 規定上は、まず第一に、直接の利害関係を有する議員を審議及び議決に参加させないことができるという規定でございます。

 その中で、まず第一に話題になりました総理御自身に友人関係があるという点につきましては、これまでも御答弁申し上げてきておりますとおり、友人関係があることのみをもって直ちに利害関係に当たるというふうには考えていないということでございます。

 お尋ねの件の部分につきましては、当時問題ないというふうに判断をして議決に参加しているというふうに理解をしてございますけれども、改めてその点につきましても整理をしてみたいというふうに思います。

日吉委員 直接質問にお答えいただきたいんですけれども、総理夫人が名誉園長に就任しているこの件について、利害関係があるかどうか、この点について諮問会議で検討をされたのかどうか、お答えいただけますでしょうか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 個々に参加するかどうかにつきまして、その場その場の諮問会議の中で検討するということは、その他の件についてもしてございません。例えば、先日、ある議員が、自分自身が役員を務めている会社の事案が直接その事業ごとかかわった件につきましては、委員御自身が決議に参加しないということを申し上げて、辞退をされたといったようなケースがございます。

 規定上は、繰り返しでございますが、参加させないことができるという規定でございます。当日の議事の中で、明示的に、それについての参加、不参加についてその場で議論したという事実関係はございません。

日吉委員 今、そういった検討を行わなかったという御答弁をいただいたと思います。

 ということは、この認定の手続に当たって十分な手続が、適切な手続が行われていなかったのではないか、このように考えられるんですけれども、その点、いかがでしょうか。

村上政府参考人 お答えを申し上げます。

 利害関係を、申しわけございませんが、法律上、制度では、参加させないことができるということで規定がございます。

 最終的には、委員、メンバー全体の総意の中で決めていくということであると思いますが、そうした点も含めて、委員全体が結論として異論なく了承しているということでありまして、このプロセス自体は適法に行われているものというふうに承知をしてございます。

日吉委員 今、検討をしていないとおっしゃられていたのに、適切なプロセスをとったというのは、ちょっと矛盾していると思います。

 その検討していないことについては、改めて調査をするというふうにおっしゃっていただいていたんですけれども、その点につきまして、利害関係があったのかなかったのか、この点につきまして改めて調査していただくことに同意いただくことを確認させてください。

村上政府参考人 申しわけございません、御通告をいただきましたのは、基準に照らして判断しているかということでございましたので、今のような答弁をさせていただきました。

 御指摘につきましては、持ち帰って検討させていただければというふうに思います。

日吉委員 そうしましたら、検討していただいて、利害関係があるかないか、明確にお答えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 委員長、お取り計らいのほど、よろしくお願いいたします。

冨岡委員長 今の回答のとおり、後で報告すると思います。

日吉委員 時間もなくなってきましたが、最後に、同僚の山本議員が先ほどお尋ねさせていただきましたけれども、アメリカンフットボール選手による悪質な反則行為につきまして、スポーツ庁の長官も、ルールにのっとってプレーすることが重要である、こういったことを会見で述べられているところでございますが、これはルール以前の問題だと考えますが、林大臣、通告しておりませんけれども、大臣の御見解をちょっとお伺いさせていただければと思います。

林国務大臣 これは、負傷退場したということでございますから、重大事故につながる非常に危険な行為であったというふうに認識をしておるところでございます。

 今の現状等々については、先ほどスポーツ庁から御答弁差し上げたとおりでございますが、やはり、暴力等に対する相談対応体制の構築をやってまいりました。また、指導者の意識向上、こういうことも掲げてきております。

 今回の事態については、個別の競技や大学に限った課題ということではなくて、やはり大学スポーツ全体の課題として捉えて、安全、安心な大学スポーツ環境の整備に向けて取り組まなければならないと思っております。

日吉委員 ありがとうございます。

 私も映像をニュースでも見ましたが、あんな悪質な行為はあってはならないと思います。

 文部科学省としましても、プレーする学生の安全面からも、原因究明を含め、厳しい御指導のほどお願いをいたします。

 それでは、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 国民民主党、西岡秀子でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 先ほどから議論があっておりまして、若干、再度お尋ねする部分もあろうかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回、文化財保護法の改正の背景となっておりますのは、私は、その大きな背景としては、やはり、少子高齢化のもとで文化財の保護、継承していく体制や人材の不足が深刻になっている、特に地方においてその状況が深刻になっているということが背景に挙げられるというふうに思っております。

 今回の大きな柱としましては、地域における文化財の総合的な保存と活用、また、個々の文化財の確実な継承に向けた保存活用制度の見直し、そして地方における文化財保護行政に係る制度の見直し、そして罰則の見直しとなっております。

 今回の改正によって現状と何が大きく変わるのか、この法案の基本的な趣旨につきまして改めてお尋ねをいたします。

林国務大臣 今回の法改正によりまして、市町村による文化財保存活用地域計画や個別の文化財の保存活用計画を通じた総合的、計画的な取組の推進、それから所有者、地方公共団体などの関係者間の保存、活用に係る役割分担の明確化、そしてさらに、市町村への協議会の設置や市町村による文化財保存活用支援団体の指定を通じた文化財継承の担い手の確保や行政と民間の連携促進、こういったことが図られることとなります。

 また、今回法定化する計画について国が認定した場合は、国の権限に属する事務の一部を地域計画の認定を受けた市町村が処理することができる特例、また、個々の文化財の保存活用計画に記載された行為のうち、許可を要する行為を届出とするなど、現状変更等の手続の弾力化などの効果が生ずることとなります。

 加えて、文化行政や景観町づくり行政等との一体的な施策推進を図るため、地方公共団体の判断によりまして、文化財保護行政の所管を教育委員会から首長へ移管することを可能としております。

 これらの措置により、文化財の保存、活用のために必要な措置の見える化を図り、中長期的な計画のもとで、多様な人材の参画を得ながら、地域社会総がかりで文化財の次世代への継承に取り組むことが可能になる、こういうふうに考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 文化財の保護というのを考えるときに、やはり保護と活用というものが車の両輪としてバランスよく推進をされなければいけないと思っておりますけれども、この保護と活用のバランス、今後どのような保護、活用というものをバランスをとりながら進めていかれるのか、そのことについてお尋ねいたします。

林国務大臣 文化財保護法は、その目的を「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」と規定しておりまして、まさに保存と活用は、先生おっしゃるように、文化財保護の重要な柱と我々も捉えておるところでございます。

 文科省としては、文化財を次世代に確実に継承していくため、今回の法改正を機に、改めて文化財の保存、活用の両面から適切に取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 文化財につきましては、従来、保存を中心に政策を推進してきたというふうに思いますけれども、近年、地域の観光振興の資産として、地域の活性化、また経済の活性化のために生かそうという流れが大変強くなってきております。

 例えば世界遺産でございますけれども、私の地元長崎県におきまして、平成二十七年七月に、全国八県十一市の二十三の構成遺産である明治日本の産業革命遺産が世界遺産として登録をされました。また、先日、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産がイコモスより適当であるという評価をいただきまして、この夏の正式な登録が大変期待されるところでございます。

 このように、文化財が、地域による、地域の活性化、観光の振興の面からも、その保存、活用というものが大変重要なものとなってきております。

 一方でまた、地方において、県、市、またその他の指定がある文化財につきまして、なかなか地方によって十分な管理、活用がされていないケースというものが私は大変多く見受けられるというふうに思っております。

 また、さまざまな法的な指定がないものであっても、大変地域にとって大切な歴史であり、文化的な価値のある建造物や文化的資産というものが私はたくさん地方にはあると思っております。

 この大切な文化的な資産が、今、全国におきまして崩されていっているということも、一方では、特に建造物の場合あるというふうに思っておりまして、私の地元においても、歴史的な建造物を保存したいという住民運動等が起こっておりましたけれども、なかなか、法的な価値がない、価値が認められていないという中で、大変その保存というものも難しいというものも現実として私はあるというふうに思っております。

 文化財保護法の今回の一部改正によりまして、一つは、今埋もれている文化財を発掘していくということもこの法案の大切な趣旨であるというふうに思いますけれども、この改正によって、今埋もれている文化的な資産を発掘するということをどのように推進していかれるのか、このことについてお尋ねをいたします。

林国務大臣 我が国には全国各地にさまざまな文化財があるわけですが、社会状況の変化に伴って、その滅失、散逸等が進んでいる地域がある一方で、今先生からもお話がありましたように、文化財を町づくりの核に据えまして活用を図ったり、また、地域の知られざる文化財の潜在的価値を掘り起こしたりすることによって地域活性化を進めたい、こういうニーズも多く見られるところでございます。

 今回制度化する地域計画の策定に当たっては、市町村において、未指定のものを含めた域内の文化財の総合的な調査、把握を行っていただくこととしておりまして、このことによって地域の文化財の掘り起こしが進むことを期待しておるところでございます。

 また、地域計画の認定を受けた市町村は、把握した未指定の文化財について国の登録文化財への登録を提案できることとしておりまして、滅失の危機にある文化財について速やかな保護措置を講ずることが可能となる、こういうことになっております。

西岡委員 今回の改正で、本当に大切な地域の資産というものが保護をされていく方向にぜひ推進をしていただきたいというふうに思っております。

 文化財保護法の今回の一部改正によりまして、市町村が、総合的な計画を策定して、国へその物件の登録の申請ができる、また、協議会を組織して、また、文化財保護活用支援団体の指定ができるようになるということが今回の改正でうたわれております。そのことによって、何が一番メリットとして効果があるのかということを一つお尋ねいたします。

 また、大変小さな規模の自治体におきましては、その計画を策定するということが大変難しい自治体もあるというふうに思いますけれども、このことについての国としての支援の体制についてお尋ねをいたします。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、登録の申請ができるとか、協議会の組織化を図るとか、文化財保存活用支援団体の指定等ができるようになるというようなことが制度化するわけでございますけれども、全体的に見れば、先ほど大臣からも答弁いたしましたように、社会総がかりで取り組む体制を構築するということに資するわけでございます。

 ちょっと個別に御説明申し上げますと、まず、地域計画を作成いたしまして長官の認定を受けた市町村は、調査により把握した未指定の文化財について、国の登録文化財として登録をするよう国への提案が可能となる。これによりまして、地域で新たに掘り起こした未指定の文化財の速やかな保護措置、すなわち、登録文化財でございますから保護措置の中に、傘に入ってくるわけでございますので、そういったことが可能になるわけでございます。

 また、市町村は、地域計画の作成、変更や計画実施にかかわります連絡調整を行うに際して、地域のさまざまな関係者で構成される協議会を組織できるとしておりますが、これによりまして、さまざまな方々が関係してくるわけでございますけれども、関係者間での文化財にかかわる各種の課題の共有が行える。あるいは、共有された課題を踏まえまして、文化財の保存、活用の総合的な推進に向けた合意形成が促進されるということがございまして、そういったことによりまして、まさに地域社会総がかりで取り組む機運が醸成されて、地域計画の実効性が向上していくというようなことがございます。

 また、市町村は、区域内にある文化財の保存及び活用に関する業務等を適正かつ確実に行うことができると認める団体を、その申請によりまして、文化財保存活用支援団体として指定するということができるとしております。

 地域で活動する民間の団体の取組を積極的に活用して、文化財の保存、活用の担い手として制度上に位置づける。これまでは制度的には位置づけがなかったわけであります。制度的に位置づけることによりまして、所有者、行政、民間団体等の関係者がより連携をして文化財の保存、活用に取り組むことが可能となるわけでございます。

 委員御指摘のように、小規模市町村が地域計画を作成する場合には、なかなか人材不足というようなところも課題としてあるわけでございますけれども、国といたしましても、求めに応じて文化財調査官を派遣するなどして技術的な助言を行うほかに、都道府県におきましては、大綱を作成するという立場にあるわけでございますけれども、この大綱の中で小規模市町村への対応を明示したり、あるいは、その協議会の中に、これも法定しておりますけれども、都道府県が参加をするということになりまして、そういったことを通じまして、当該市町村への助言を行ったりするなどの積極的な支援を行って、小規模市町村においても文化財の保存、活用のための取組が促進されるようにしていきたいというふうに考えてございます。

西岡委員 具体的にちょっと通告はしておりませんでしたけれども、この協議会の構成員の組織、また、この文化財保護活用支援団体というものはどういう団体を想定されているのか、あわせてお尋ねいたします。

中岡政府参考人 この協議会の組織でございますけれども、それは地域によってさまざまな構成員になると思いますけれども、例えば、市町村だとか都道府県が入られて、そのほかに文化財の所有者、あるいは、文化財保存活用支援団体のほかに、学識経験者とか商工会だとか観光関係団体などの必要な者で構成をしていくということになろうかと思います。

 この中で、文化財保存活用支援団体といいますものが、どういう者が入ってくるかということでございますけれども、これは、既に地域で文化財の保存、活用に関しまして活動しておる者が多々ございます。例えば、NPO法人で町全体を博物館にしようというような取組をしているような団体もございますし、株式会社でいろいろな宿泊施設を用意しているような団体もございます。

 さまざまな団体の形態はございますけれども、こういったような指定を通じまして、より公的な立場でこういった保存、活用に携わっていけるということで、より保存、活用が進んでいくんじゃないかというふうに考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 もう一点お尋ねいたします。

 従来からある歴史まちづくり法ですとか、歴史や文化を生かした町づくりを推進していくための施策というものが既に今あるというふうに思いますけれども、今まで実行されておりました施策との関連について、また、どのような形で運用されていくのか、今ある法律との関係についても御説明をお願いいたします。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、歴史、文化を生かした町づくり推進に係る施策といたしましては、地域に存在する文化財を指定、未指定にかかわらず幅広く捉えまして、的確に把握し、文化財をその周辺環境まで含めて総合的に保存、活用していくための市町村の構想でございます歴史文化基本構想のほかにも、歴史まちづくり法に基づく歴史的風致維持向上計画等が挙げられるものと考えております。

 今回の改正における文化財保存活用地域計画につきましては、この歴史文化基本構想を、文化財の保存、活用に係る具体的なアクションまで盛り込んだ実効性のあるマスタープランとして発展させたものでございまして、その重要性に鑑み、今回、法律上の根拠を置くということとしたわけでございます。

 また、御指摘のような、歴史まちづくり法に基づきます歴史的風致維持向上計画といいますものがございます。これは、ある意味、今回の地域計画のモデルになったような先行事例ではございますけれども、この計画につきましては、有形無形の文化財のある地域におきまして、国指定文化財周辺の市街地の良好な環境を維持向上させる事業計画の一つでございまして、計画で策定されます重点区域の核といたしまして、重要文化財、建造物等を位置づけるということが要件になっているというものでございます。

 したがいまして、今後策定されます地域計画と歴史的風致維持向上計画の整合を図って、連動させて取り組むことは大変大きな効果が期待されることもございまして、今回の改正法案におきましても、両者の内容に調和が保たれますように、注意喚起の規定を法律の中に設けたところでございまして、より関係部局の連携を促したいというふうに考えております。

西岡委員 本当に、今おっしゃられたような形で、一層、今まであった流れというもの、もっとこの流れが加速していくことを心からお願い申し上げます。

 あと一点申し上げます。

 先ほどからもあっております、地方における文化財保護行政を進めていくに当たって、やはり高度な専門性を持った人材というものが大変必要であると思いますけれども、この人材の確保、また今後の育成につきましてお尋ねをいたします。

中岡政府参考人 委員御指摘のとおり、文化財を適切に保存、活用し、次世代に確実に継承していくためには、文化財に関する専門的人材の確保というのは不可欠でございます。

 このため、文化庁におきましては、これまでも、地方公共団体の職員や学芸員等の専門性のさらなる向上のためのさまざまな研修を実施しておりますが、これらを更に充実させるほかに、新たに、平成三十年度からは、法改正とあわせました地方財政措置の充実ということで、保存活用計画に基づくソフト事業への特別交付税措置や、地方公共団体や美術館等からの文化財活用に係る相談に一元的にワンストップで対応できますようなセンター機能の整備を進めたいというふうに考えております。

 また、専門的な人材の養成ということになりますと、やはり大学とか博物館等との連携も重要になってくるわけでございまして、文化庁といたしまして、今後、関係機関との連携体制を確保し、今般の改正法案の趣旨も踏まえながら、必要となる人材の養成が進みますように、連携協力体制を更に強化したいというふうに考えております。

西岡委員 時間となりましたけれども、あと一点、ちょっと申し上げさせていただきます。

 東日本大震災を始めとしまして、今、大変いろいろな自然災害が多発しておりまして、大型台風、風水害も含めまして、文化財が大変被害を受けるという例が本当に多く見受けられるというふうに思いますので、この文化財の保護という中で、災害で被害を受けた文化財についてのより一層の取組というものをお願いさせていただきまして、私の質問を終わります。

 本当にありがとうございます。

冨岡委員長 次に、城井崇君。

城井委員 国民民主党の城井崇です。

 私からも、文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について御質問申し上げたいと思います。

 質疑に入ります前に、一点、私からも、去る五月六日のアメリカンフットボールの日本大学選手による危険タックルの問題についてお伺いしたいというふうに思います。経緯は先ほど同僚委員からもございましたので、それを踏まえて一点お伺いしたいと思います。

 今回の件は、一選手や一事例ということにとどまらず、日常から指導者そして組織ぐるみの動きがあった、こうした報道もございます。勝負を優先し過ぎまして、大学スポーツの本分から外れる状況になっているというふうに思っております。大臣からも先ほどございましたが、重大事故につながる危険な行為だということは言うまでもないことだというふうに思っています。

 先ほどの調査中の話あるいは再発防止策の話もございましたけれども、報道等の過熱もありますので冷静な対応をお願いしたいと思いますが、一点御提案申し上げたいのは、文部科学省、スポーツ庁、あるいは第三者の視点を入れながらということでの調査の徹底をお願いしたいというふうに思いますが、大臣、この点いかがでしょうか。

林国務大臣 この六日に行われました関西学院大学と日本大学とのアメリカンフットボール定期戦において、関西学院大学の選手が相手守備選手からのタックルを受け負傷退場した件については、今お話しいただきましたように、重大事故につながる非常に危険な行為だったと認識しております。

 現在、日本大学が所属をしている関東学生アメリカンフットボール連盟が規律委員会を設置し、調査を行っているというふうに聞いております。この調査の報告を受けて、このような事態が二度と起こらないように、文科省としても必要な対応をしてまいりたいと思っております。

城井委員 文部科学省におかれましても、公正な調査となりますように、そして徹底した再発防止策をお願い申し上げて質問に入りたいというふうに思います。

 まず、地域における文化財の総合的な保存、活用のため、今回の法律案では、都道府県においては文化財保存活用大綱の策定、そして市町村においては文化財保存活用地域計画の作成、これがそれぞれできることとなっております。

 大綱に何を書くかというのは、この法律案の中では特に規定がありません。今後の国の指針を踏まえてこれを作成していくという理解でよろしいでしょうか。

林国務大臣 御指摘のとおり、都道府県が作成する文化財保存活用大綱の記載事項や留意事項等については、今後、法案が成立した後、国会における御審議の中で御指摘いただいた点等も踏まえて文化審議会において検討いただきまして、法律の施行までに国としての指針を作成し、各都道府県等に示していきたいと考えております。

 都道府県におかれては、この指針で示された事項に留意しつつ、大綱の作成を行うということになるわけでございます。

城井委員 今、指針のお話をいただきました。都道府県ごとに大綱に記載する内容が異なることで文化財の保存と活用のバランスに偏りが生じてしまわないように、この指針においても、文化財の保存、活用に係る国としての基本的な指針として記載すべき内容というものを明確にすべきだというふうに考えますけれども、この指針の策定に係る政府の基本的な考え方をお示しいただけますか。

林国務大臣 御指摘のとおり、大綱に記載する事項は、今後国が作成する指針において具体例を示すことを考えておりまして、例えば、域内の文化財の保存、活用に関する取組の方針や必要な措置、それから、これは大綱でございますので、複数の市町村にまたがる広域的な取組、災害発生時の対応、小規模市町村への支援の方針、こういったことなどについて盛り込むことが考えられるところだと思っております。

城井委員 次に、活用と保存のバランスについて、私からもお伺いしたいというふうに思います。

 活用が進むことを特に地域でも歓迎する声がある一方で、文化財の保存が活用に優先する形になるかということ、メディアや研究者、関係者から懸念の声もございます。この点について、改めて国の見解をお聞かせいただきたいと思いますが、お願いします。

林国務大臣 今回の改正法案の内容について答申を出した文化審議会では、検討の過程で広く一般の意見を聞くため、昨年の九月に、中間まとめを取りまとめた段階でパブリックコメントを行っております。

 その中では、次世代へ継承するための車の両輪として保存と活用を考えていくべきといった御意見がある一方で、観光での活用に対する保存上の懸念や首長部局への事務の移管への慎重な御意見等も寄せられたところでございます。

 こうした御意見も踏まえて、昨年十二月の文化審議会第一次答申においては、文化財の保存に悪影響を及ぼすような活用はあってはならない、また、目先の利益は本質ではなく、文化財とそれを育んだ地域の持続的な発展のために、文化財の保存と活用そして担い手の拡充を考えていくべきである、こういう提言をされているところでございます。

 文化庁においては、今回の法改正に当たって十分にその趣旨を踏まえたものとしたところでございまして、文化財の次の世代への確実な継承に向けて、保存と活用の両面から計画的に取り組んでいくことが重要と考えております。

城井委員 続いて、専門家のかかわりについても確認をさせていただきたいと思います。

 国の認定を前提に、市町村に現状変更の権限が移譲されます。ただ、その肝心の市町村に文化財の専門家がどのくらいいるかということを、ルール変更に当たって国として把握されているのかという点が大変心配でございます。十分な人数を確保できておらず、適切な判断が困難である、こうした指摘もあります。

 国として、足りない専門家をどのように補っていくかということをぜひお伺いしたいというふうに思います。大臣、お願いします。

林国務大臣 文化庁では、今回の法改正に先立って、地方公共団体に対して調査を行いまして、文化財保護に携わる職員の配置状況について把握をしたところでございます。

 この調査結果によりますと、都道府県には約四十五人、指定都市には約二十六人、一般市には約七人、町村には約二人となっておりますが、全体的に言える傾向としては、記念物や埋蔵文化財の専門家が多い一方、やはり無形文化財の方の専門家が少ない、こういう状況があるわけでございます。

 文化財の適切な保存、活用には専門的人材の確保が不可欠でございますので、これまでも文化庁では職員等の専門性向上のためのさまざまな研修を実施しておりますが、新たに平成三十年度から、法改正とあわせた地方財政措置の充実、これは、保存活用計画に基づく専門的知見を持つ外部人材の活用等のソフト事業への特別交付税措置でございますが、それからもう一つ、地方公共団体等からの相談に一元的に対応するセンター機能の整備、これを進めることとしておりまして、今回の法改正の趣旨を踏まえつつ、必要な人材の確保に対する支援に努めてまいりたいと思っております。

城井委員 専門家の数が少ない、裏を返せば、それだけ専門性が高い方をなかなか確保しにくいという状況はこれからも続くというふうに思います。

 その意味で、先ほどの大臣からお話ございました研修も重要でございますし、また、特別交付税措置での後押しということも重要だと思いますが、私、今回の地域社会の総がかりをしていくときに、その裏側で、これまでがどうだったかと見ましたときに、特に関心が高くて専門性が高い個人に押しつけ過ぎてきたんではないか、このように考えております。

 その意味では、その専門家、専門家を支えていく地域にいる人材ということでいうと、学芸員の存在は大変大きいというふうに思っています。単にこれまでの博物館業務ということだけではなくて、文化財を地域全体で保存して活用していくその重要なつなぎ役となるし、また専門家の一人でもあるというふうに思います。

 この学芸員の取組をぜひ国としても後押しをしていただきたいというふうに思いますが、大臣、この点、いかがでしょうか。

林国務大臣 キュレーター、専門家というような方がやはりしっかりおられて、保護そして活用両面でしっかりと現場で活躍をしてもらう、こういうことが大事だ、こういうふうに思っておりますので、先ほど申し上げた専門家を育成する中で、そういう観点をしっかりと頭に入れてやってまいりたいというふうに思っております。

城井委員 しっかりと学芸員の皆さんの後押しもお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、地域計画の策定に向けて設置される協議会についてでございますが、文化財保護の観点がどこまで重視をされるか、また、先ほども議論のございました、いわゆるできる規定による措置が多くて、その実施が地方公共団体の判断に委ねられているために、規定の実効性がやや明確になっていないという状況があります。

 これらの観点からも、地域でまちまちの対応になるということへの懸念がございます。文化財保護行政における国の方向性、先ほどの議論からで申しますと、登録はふやす方向だというのが一つ方向性かと思いますが、これをしっかりと示していただく、この必要性も含めて、国としてどうお考えでしょうか。

林国務大臣 まず、協議会についてですが、市町村の教育委員会は、地域計画の作成、変更や計画実施に係る協議や連絡調整を行うための協議会を組織できるということにしておりますが、これは、関係者間で文化財に係る各種の課題を共有する、また、その共有された課題を踏まえて、文化財の保存、活用の総合的な推進をする、これに向けた合意形成を促進する、こういうこと等を図るものでございます。

 協議会の構成員である市町村や都道府県、また文化財の所有者等は、この文化財の保存、活用の双方の視点を持って協議会に参画するものと考えておりますが、地域計画の作成には、地方文化財保護審議会への意見聴取も必須としておりまして、例えば保存状態に懸念のある文化財の公開の可否などのような専門的、技術的判断を伴う事項については、やはり文化財についてすぐれた識見を有する者で構成する地方文化財保護審議会における審議を期待しておるところでございます。

 また、地域でまちまちの対応となる懸念につきましてでございますが、文化財保存活用大綱や文化財保存活用地域計画は、できる規定による措置であり、地方公共団体の主体的な取組を期待するというものでございますが、計画に盛り込むべき事項などについて、各地域における検討の参考となるように、国としても今後指針等を作成して方向性は明確に示したいと考えておるところでございます。

城井委員 続いて、地域の首長との関係についてお伺いしたいと思います。

 本法律案では、地方文化財保護審議会の設置等、条例制定を条件として、文化財保護の事務を、首長から独立した教育委員会から首長部局に移管できるということになります。首長からの活用意欲、場合によっては圧力ということになるかもしれません。文化財保護の観点がなおざりにならないかという懸念についての国の見解をお示しいただきたいと思います。

 地方自治法第百八十条の七に基づく、教育委員会の所管事務の一部を首長部局に委任させることができるという規定と同様の運用になるかなというふうに想像いたしますが、この点いかがでしょうか。

林国務大臣 文化財保護に求められる専門的、技術的判断の確保や開発行為との均衡、これを担保するために、首長部局において事務を所管する場合には、地方文化財保護審議会の必置を制度化するとともに、専門的知見を持つ職員の配置の促進や、情報公開など文化財行政に係る透明性の向上など、各地方公共団体に対して適切な対応を求めていきたいと考えております。

 また、今回の改正案では、仮に首長部局に移管する場合は、地域計画等による計画行政の導入や地域の関係者が参画する協議会の設置等を進めることによって、文化財を次世代に確実に継承していくための取組が適切に進められると考えております。

 また、地方自治法の関連ですが、地方自治法第百八十条の七に基づく事務委任や補助執行により、現在でも文化財保護に関する事務の一部を首長部局において行うことが可能でございます。しかしながら、事務委任、補助執行は首長の補助機関の職員等を対象にしたものであり、首長自身にこの事務を委任したり補助執行させたりすることはできず、また、文化財保護に係る重要事項を事務委任、補助執行させることは法の趣旨に反すると解されております。

 このため、現行では、首長部局に事務委任、補助執行させたとしても、本来の職務権限者である教育委員会には一定の権限が残る、こういうことになっておりますが、今回の改正による特例は、職務権限そのものを首長に移すというものでございまして、地方公共団体の長自身が、文化財の保護に係る事務の全体について、他の関連行政とあわせて、その権限と責任において一元的に担当することを可能とするものでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 通告を一つ飛ばしまして、次の質問をさせていただきたいと思います。小規模の市町村との関係でございます。

 小規模の市町村では、地域計画の作成に当たる人員や予算の制約が大きくなるというふうに想定をされます。先ほども同僚議員から質問がございました技術的助言でありますとか都道府県の助言ということでございましたが、この小規模市町村の負担の軽減に国が主体的に直接的に支援するべきだというふうに考えますけれども、この点、大臣、見解はいかがでしょうか。

林国務大臣 市町村に対しては、国として、地域計画の作成に係る経費への補助や文化財調査官の派遣等による技術的な助言などの支援を行っていくこととするほか、都道府県においても、大綱の中で小規模市町村への対応を明示したり、協議会への参加を通じて当該市町村への助言を行ったりするなど、積極的な支援が行えることが期待をされるところでございます。

 こうした支援が適切に行われるように、法案が成立した際には国が策定する指針においてその旨を明示いたしまして、小規模市町村においても文化財の保存、活用のための取組が促進されますように、国、都道府県、市町村で連携して取組を進めていきたいと考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 続いて、一つまた飛ばさせていただいて、個々の文化財の確実な継承についてお伺いいたします。

 旧何々邸のような個々の文化財の保存、活用については、計画の作成と国の認定が規定をされます。計画の作成は原則所有者でございます。文化庁による計画の認定を受けると、相続税の猶予が認められます。

 一方、納税の猶予が認められる文化財の類型は、租税特別措置法上、重要文化財と一部の登録有形文化財に限られます。重要有形民俗文化財などのほかの有形文化財については納税猶予が認められておりません。

 この猶予対象が絞られているのはなぜか。そして、個々の文化財の保存活用計画の作成、認可申請を促進するならば、計画認定を受けた全ての有形文化財についてこの相続税の納税猶予を認めるべきではないかというふうに考えますけれども、大臣、この点、いかがでしょうか。

林国務大臣 美術工芸品であります文化財につきまして、相続税の負担を理由に貴重な美術工芸品の散失、流出が懸念をされていることを踏まえまして、今回の改正により、個人所有者の負担軽減を図るとともに、美術品の計画的な保存とともに展示などの活用を促進する必要があると考えております。

 このため、今回の改正によりまして、保存活用計画を作成して国の認定を受け、かつ、美術館等への寄託公開を継続的に行う美術工芸品について、課税価格の八割に対応する相続税の納税猶予の仕組みを設けることとしております。

 今回の措置は重要文化財等である美術工芸品のみを対象としたものですが、重要文化財等である建造物の家屋、土地に関しては、既に相続税等に係る財産評価額について七割控除されるなどの措置が講じられておるところでございます。

 また、重要有形民俗文化財については、相続税の対象となる個人所有のものが十数件ということで非常に少ないことに加えまして、地域に伝わる民具、衣服などの民俗文化財はおおむね評価額が高価になることというのは余りないわけでございますので、税負担軽減のニーズが相対的に低いということで、今回は措置の対象とはしていないところでございます。

 いずれにしても、文化庁としては、保存活用計画の作成、また、この計画に基づく取組の推進について、文化財所有者等への指導、助言等を行うなどの措置とあわせて、税財政上の措置等の充実も図りながら、計画的な取組を推進してまいりたいと考えております。

城井委員 時間が参りました。終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 無所属の会の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 初めて文部科学委員会に所属させていただきまして、そして初めての質問となりますので、よろしくお願い申し上げます。

 冒頭、加計問題にせよ、今回の指摘がありましたアメフトの問題にせよ、文部科学省として、誠意ある御対応をいただきまして、そして真実が何かということをしっかりと究明していただく、そういう姿勢をぜひお見せいただきたいということを申し上げます。よろしくお願いいたします。

 私の地元福島県においても、すばらしい多くの文化財がございます。東日本大震災、そして原発事故発災時、多くの文化財が被災いたしまして、例えば警戒区域等からの文化財のレスキュー活動や復旧復興等において多くの努力が必要となった時期がございました。

 またさらに、今、少子高齢化や過疎化が進展する中、地域の祭礼や行事なども含めた有形無形の多様な文化財をどのように次世代へ残していくかということが、当然のことながら喫緊の課題となっているところであります。

 文化財は、それが形成された時代の人々の営みを反映しているものであります。周囲の自然環境や地域のアイデンティティーを示す貴重な宝、財産であります。それを守ることができないかもしれない、そういう困難な地域を持つ福島県の県民の立場からも、震災、原発事故から得た教訓を発信してまいりたい、そのように考えております。

 その上で、多面的な価値を有する文化財について、繰り返し申し上げますけれども、次世代へどのように継承していくのかということが大変重要でありまして、本日、そのような観点からも質問させていただきたいというふうに思っております。

 先ほど来お話があるんですけれども、保存と活用のバランスというようなことのお話がありました。

 文化財保護法第一条では、文化財を保存し、かつ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進展に貢献することを目的とするということです。

 保存も活用も文化財保護の重要な柱でありますけれども、一歩間違えれば、つまり活用だけが優先されていけば、保存というものが取り残されて、実際に大切な我が国の財産、地域の財産というものが失われていくということに陥っていくということになります。ですので、とてもこのバランスということは重要なことなんだと思います。

 実際に、先ほどもお話があったというふうに思いますけれども、文化審議会で昨年の十二月に、約半年間のスピード議論で出した答申の中では、「文化財の確実な継承に向けたこれからの時代にふさわしい保存と活用の在り方について」の中でありますけれども、文化財に関するさまざまな規制を緩めて、そして地域おこしなどにも活用できるように促すということでありますから、やはり保存から活用への重点転換というものがなされているというように見受けられます。

 この通常国会での安倍総理の施政方針演説の中でも、文化財保護法を改正し、日本が誇る全国各地の文化財の活用を促進しますと述べられている。さらには、観光立国は地方創生の起爆剤ですというふうに述べられているわけですけれども、観光立国のためならば目先の利益ではないというふうにおっしゃっていたようでありますけれども、でも、万が一、目先の利益のために、保存に関するさまざまな問題点や課題について、それを乗り越えることなく、実際に、保存のビジョンというものもなく、活用だけが進められるということになってはいけないということだというふうに思います。やはり保存のビジョンというのは、百年後、二百年後、そのような単位でしっかりと考えていかなくてはいけないということだというふうに思います。

 そこで、大臣にお伺いしたいと思うんですが、改めて、活用に重点が置かれることになって、保存というものがなおざりになってしまうのではないかという懸念があります。保存が軽視されると、結果として文化財の毀損等につながる可能性が高いと思われますけれども、このような取り返しのつかない事態になる前にしっかりとした対応が必要になってくるということで、見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 今、金子先生から御紹介いただきましたように、文化財保護法では、その目的を、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」、こう規定しておりまして、昨年の十二月の文化審議会答申においても、文化財の保存に悪影響を及ぼす活用はあってはならない、そういうふうにされておるところでございます。

 今回の改正案は、以上のような考え方や答申を踏まえまして、個々の文化財に係る現行の規制等の仕組みを維持した上で、計画的な取組の制度化により、中長期的にどのように取り組むかについて見える化を図ること、住民やNPO団体、文化財保護指導委員など多様な人材の参画を得た取組の推進により、地域社会全体で文化財を毀損等から守る監視の目を強化すること、文化財の毀損等の場合の罰金刑を引き上げることなどを盛り込んでおります。

 今回の改正は、文化財の毀損の可能性を高めるものではなく、従来の仕組みに加えて新たに措置を講じることによって保存、活用の取組強化を図るものでございまして、文化財の次世代への確実な継承に向けてしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 活用ということに前向きになっていくことが全て悪いわけではもちろんないということですけれども、それでも、保存をしっかりとやっていかなくてはいけない。今まさに、地域の歴史や文化、伝統的な暮らし方への関心というのが、私は、高まってきている時期に来ているというふうに思うんですけれども、文化財が地域の方々に開かれ、身近なものになって、そしてその上で、保存への関心というものも高まっていくという結果になっていくということが大変望ましいことだというふうにも思っています。ですから、今、大臣もおっしゃっていただきましたけれども、いろいろな人材を活用していくということは大切なことであります。

 しかし、やはり我が国の文化財の多くはもろく劣化しやすいとも言われているところでありまして、ぜひ、活用とそして保存のバランスというものを理解している本当の専門家、そういう方々を育てていかなくてはいけないというふうに思いますし、そういう方々を地域の中でしっかりと登用していく、地方自治体でも登用していくような仕組みあるいは支援というものはやっていかなくてはいけないというふうに思っております。

 ちょうど振り返っていきますと、昨年の四月だったと思いますけれども、当時の安倍内閣の地方創生担当大臣が、一番のガンは学芸員という発言をしたと。それで、観光マインドが全くないこの連中を一掃しないといけない、そういう発言を当時されましたね。

 まさか、今の段階でも内閣の中にこのような考えを持っていらっしゃる方がいるとは思えませんけれども、こういう状況であれば保存ということを考えにくいわけです。大変懸念しています。

 大臣、一言何かありますか。

林国務大臣 たしか、今のお話は報道でちょっと聞いた記憶がございますが、ちょっとどういう、その前後の文脈とか必ずしも定かではありませんが、やはり学芸員、キュレーターという方が、先ほどの御質問にもあったようにしっかりおられて、そして、そういう方が詳しくいろいろなことを把握して、保存と活用の、今、先生からもお話がありましたように、しっかりとした両輪としてやっていくということが大事なことではないかというふうに考えております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、人材を大切にしていく、そのような形での文化財保護を進めていっていただきたいというふうに思っています。

 そこで、今回の改正では、大きな柱となるのが市町村が作成する文化財保存活用地域計画というものでありますけれども、歴史文化を生かした町づくりを推進する施策としては、歴史まちづくり法に基づく歴史的風致維持向上計画などがあるということであります。私の地元の福島県伊達地方でも、桑折町というところであったり国見町というところで、もう既にこの計画を策定し認定されているわけです。

 このような計画と、そして今回、文化財保護法改正によって地域計画というものが策定されるということでありますけれども、具体的に、これまでの施策と今回の進めようとしている内容とどのように連携をとっていくのかということについて、見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 歴史まちづくり法に基づく歴史的風致維持向上計画は、有形無形の文化財のある地域におきまして、市街地の良好な環境を維持向上させる事業計画でございまして、主務大臣の認定を受けますと、文化財の周辺環境の整備が、歴史まちづくり法に基づく特例措置、都道府県の都市公園の管理を認定市町村が行うことができる特例等でございますが、こうした特例措置や交付金による支援などによって進めることが可能となる、こういう仕組みでございます。

 一方、今回法定化させていただきます文化財保存活用地域計画は、当該市町村内の文化財の保存、活用について総合的に整理をしたいわばマスタープランでございまして、文化財周辺の環境整備に関する計画である歴史的風致維持向上計画との整合を図って、連動させて取り組むことによって大きな効果が期待されると考えております。

 このため、文化財部局と景観町づくり部局が適切に連携しながら取り組んでいくことができるように、今回の改正法案におきましても、百八十三条の三第四項ということで、両者の内容に調和が保たれるように注意喚起の規定を設けているところでございます。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 新たな計画をつくるということで、やはり自治体の負担というものも考えていかなくてはいけないわけで、それをいかに軽減していくかということを国がしっかりと支えていく形でやっていくべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 改正案におきまして、市町村は文化財保護活用地域計画を作成し、文化庁の長官の認定を申請することができるということとしておりますが、これは、市町村に作成が義務づけられるものではなくて、あくまでも、積極的、自律的に文化財の保存、活用に取り組むことができるようにするものでございます。

 また、文化庁が実施したアンケート調査によりますと、約二百程度の市町村において今後の地域計画の策定の意向があるということを承知いたしております。

金子(恵)委員 できる規定なんですね。だから、どこまで本気で進めようとしているのかというのはちょっとわかりにくいところがあります。

 でも、今のアンケート調査で手を挙げている方々、自治体をしっかりと支えるということでよろしいですね。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 文化庁といたしまして、文化財保護活用地域計画の作成が市町村に対して過大な負担とならないように、書類の提出の例えば厳選や簡素化や様式の工夫等を行うとともに、今後作成する指針において、計画作成に当たっての基本的な考え方、留意事項等について情報提供するとともに、予算措置につきましては、現在、この法改正は三十一年度からを予定いたしておりますが、地域計画の作成に関する支援経費につきましては、平成三十年度に適切に盛り込んでおくようにいたしております。

金子(恵)委員 もうこれで終わりにしたいというふうに思いますけれども、文化財保存活用地域計画、これをもし活用する、しっかりと取り組んでいただきたいということであれば、私は、大規模災害発生時に対応できるような、そういう効果を持つような、そういう計画にもしていただきたいというふうに思います。

 東日本大震災においては、国指定等の文化財の被災件数七百四十四件、熊本の震災でも本当にまたこれも大変多くの被災件数があったということで、それぞれの震災のたびに多くの被害が出ているということです。

 この計画はそのように使われるということでいいのかということを最後にお伺いして、終わります。

林国務大臣 御指摘のとおり、災害発生時の対応や文化財の防災対策につきましては、平時から事前の備えが大変大事でございまして、今回の地域計画に記載する事項の主眼の一つであると考えております。

 市町村は、今回制度化する文化財保存活用地域計画の作成を通じまして、未指定を含む地域全体の文化財の調査を行うことになりますが、このことによって、平常時から未指定を含めた地域の文化財の所在や現状について的確に把握して整理しておくということが可能になりまして、災害時における文化財の滅失、散逸等の危機への緊急対応にも資するものと考えております。

 今回の法改正についての御提言をいただいた文化審議会答申においても、地域計画への記載事項として、災害発生時の対応方針についても例示されているところでございまして、今後、国において策定予定の地域計画等の運用指針等の中でも、その重要性について周知し、記載を促してまいりたいと思っております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 終わります。

冨岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、林芳正文部科学大臣に質問いたします。

 まず、現行の文化財保護法の目的、そして政府と地方公共団体の責務の規定は、どのような趣旨から定められたものでしょうか。また、本改正案の趣旨は何かを伺います。

林国務大臣 文化財保護は、我が国の貴重な文化的所産を将来に向かって確実に保存するとともに、これを我が国及び世界の文化的向上、発展のために適切に活用することでございまして、このような文化財保護の取組は、国や地方公共団体を始め関係者の密接な連携協力のもとで進められる必要があると考えております。

 このため、文化財保護法では、その目的として、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」を規定するとともに、政府及び地方公共団体は、周到の注意をもって法律の趣旨の徹底に努めることとされているところでありまして、このような規定や趣旨は、今回の改正により何ら変更を加えるものではございません。

 一方で、近年、過疎化や少子高齢化などを背景とする文化財の滅失や散逸、担い手不足への対応が喫緊の課題となっており、未指定を含めた地域のさまざまな文化財を町づくり等に生かしつつ、次世代に確実に継承することができるよう、地域社会総がかりで取り組むことが必要となってきております。

 今回の改正は、こうした社会状況の変化を踏まえまして、個々の文化財に係るこれまでの仕組みを維持した上で、新たに、地域における文化財の計画的な保存、活用の促進や地方文化保護行政の推進力の強化を図るものでございます。

畑野委員 文化財保護法の解説をされた椎名慎太郎氏の本を私も読ませていただきました。戦前の反省のもとに、日本国憲法に基づいて現行の文化財保護法はつくられてきたという経緯であったと思います。

 これまで、文化庁は、重要文化財保存活用計画や歴史文化基本構想など、所有者や地方自治体が任意に計画を策定し、文化財の保存、活用を図る取組を推進してまいりました。

 改正案は、こうした計画を法律に基づく計画として位置づけて、文化財保護行政に計画行政を導入しようというものです。

 改正案にある文化財保存活用地域計画は、都道府県教育委員会が定める大綱を勘案して策定されるとしております。また、大綱策定に当たって国が指針を示すと聞いております。それぞれ、どのような内容になるのでしょうか。

林国務大臣 文化財行政においては、都道府県は、都道府県としての文化財の指定等を行い、その保存、活用のための取組をみずから進めているほか、市町村に対し、広域的な観点から、当該市町村の実情に応じて指導、助言、援助を行っております。

 このような都道府県の持つ重要な役割を踏まえまして、都道府県においては、域内の市町村を包括指導する立場から、文化財の保存、活用に係る総合的な施策の大綱を策定できることとするものでございまして、域内の文化財の総合的な保存、活用に関する取組の方針や、複数の市町村にまたがる広域的な取組、災害対応、それから小規模市町村への支援、都道府県の関連部局との連携体制などについて盛り込むことを想定しております。

 この具体的な内容については、今後、文化審議会において検討していただく予定でございまして、その結論を待ちまして、国として、大綱策定に当たり参考となる指針等をお示ししまして、大綱に盛り込むことが考えられる事項について丁寧に解説をするなど、各都道府県の主体的な取組を促してまいりたいと考えております。

畑野委員 大臣に確認なんですけれども、懸念があるんですよね。

 文化庁は、観光庁の明日の日本を支える観光ビジョンを受けて、二〇一六年四月二十六日に文化財活用・理解促進戦略プログラム二〇二〇を発表しております。

 この中で、観光資源としての文化財に対する戦略的投資と観光体験の質の向上による観光収入増を実現し、文化財のコストセンターからプロフィットセンターへの転換を打ち出しました。つまり、利益を生まない部門から利益を生み出す部門への展開だということです。二〇二〇年までに、文化財を核とする観光拠点を全国で二百整備すると言っております。

 また、経済財政運営と改革の基本方針二〇一七、いわゆる骨太方針に基づく文化経済戦略では、文化に対する投資が経済成長の起爆剤であると言われております。

 こういう考えのもとでいいますと、都道府県教育委員会のつくる大綱や市町村の計画にこういう考えが押しつけられてしまうのではないか、こういう懸念があるんですが、確認です、大臣。こんなことはないということでいいんでしょうか。

林国務大臣 今おっしゃられました平成二十八年の三月三十日に策定されました明日の日本を支える観光ビジョンにおきましては、文化財の観光資源としての開花がうたわれ、また、平成二十九年十二月二十七日に策定されました文化経済戦略等においては、文化財保護制度の見直しなどについて言及されておるところでございます。

 今回の法改正によりまして、保存と活用の両面から文化財の確実な継承を図ることによって、結果として、観光振興や地域振興に寄与するということになると考えております。

 文化経済戦略で言うところの、新たな価値が文化に再投資され持続的な発展につながる好循環の構築という言い方がございますが、これは、文化芸術基本法改正の趣旨であります、文化芸術により生み出されるさまざまな価値の文化芸術の継承、発展及び創造への活用、これと同趣旨のものだ、こういうふうに考えております。

畑野委員 大臣が、結果としてというふうにおっしゃいました。

 それでは、地教行法の改正について更に伺ってまいりたいと思います。

 文化審議会文化財分科会企画調査会が二〇一三年十二月にまとめた「今後の文化財保護行政の在り方について」、この中では、文化財保護行政上の四つの要請を掲げております。専門的、技術的判断の確保、政治的中立性、継続性、安定性の確保、開発行為との均衡、学校教育や社会教育との連携が示され、こうした要請に応えるために教育委員会が文化財保護行政を担うことについて肯定的な意見が多数を占めたとされております。

 改正案では、文化財保護行政を首長部局に移管できるというふうにしておりますが、既に述べた四つの要請についてどのような検討がなされたのでしょうか。

林国務大臣 地方における文化財保護の所管につきましては、今御紹介いただきましたように、平成二十五年の文化審議会の検討におきまして、どのような部署が所管するとしても、文化財保護に求められる専門的、技術的判断の確保等の留意事項、いわゆる四つの要請に対応できるような仕組みが必要であるとされたところでございます。

 一方で、近年の地方公共団体における、景観、町づくりや観光など、他の行政との一体的な施策推進の必要性や地方公共団体からの要望等を踏まえ、文化審議会及び中教審において専門的な見地から検討が行われました。

 審議会においては、地域資源を活用して地方創生に取り組むなど地方の状況は変化しており、地方の判断により事務を選択制とすることに賛成であるといった意見や、開発行為と文化財保護はこれまでの調整の歴史も長く、開発関係者にも一定の理解が得られてきているといった意見がございました。また、審議会における地方公共団体のヒアリングにおいても、地方の判断により選択的に実施することを可能としてほしいという意見がございました。このほか、地方公共団体に対する調査において、政治的中立性、継続性、安定性の確保がどのようにして図られるのか不安であるといった意見もあったところでございます。

 この結果、昨年の文化審議会第一次答申及び中教審の地方文化財行政に関する特別部会報告におきまして、文化財保護に関する事務を首長部局に移管する場合には、現在任意設置とされている地方文化財保護審議会を必置とするとともに、地域の実情に応じて、専門的知見を持つ職員の配置促進や研修等の充実、情報公開など文化財行政の透明性の向上、さらには、学校教育、社会教育との協力関係の構築などに総合的に取り組むことによって、四つの要請に対応できるような環境の整備を図ることが必要である旨が提言されたところでございます。

 今後、国において、このような趣旨を各地方公共団体に周知し、適切な対応が図られるよう指導、助言に努めてまいりたいと思っております。

畑野委員 先ほど御紹介した四つの要請を踏まえれば、私は、文化財保護行政は教育委員会が担うのが最もふさわしいというふうに思います。

 一方で、文化経済戦略は、「文化・観光・産業等を一体として捉えた新たな政策を一層展開しやすくするため、現在、教育委員会所管と定められている地方における文化財保護に関する事務について、各地方公共団体の選択により首長部局も担当できる仕組みを導入する。」というふうに言ったわけですね。要するに、文化審議会の結論より、内閣官房と文化庁がつくった文化経済戦略に沿って法改正を進めていこう、こういうことになるんじゃないでしょうか。

 伺いますが、現行の文化財保護法に規定されている地方文化財保護審議会は、教育委員会の附属機関です。その委員は教育委員会が任命することになっておりますが、改正案で必置とされている地方文化財保護審議会の委員は誰が選ぶことになっていますか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 文化財保護に関する事務が首長部局において担当される場合には、地方文化財保護審議会は首長が設置するものとなり、任命権者も首長となります。

畑野委員 首長部局は開発部局ですよね。そこから独立した教育委員会という組織だからこそ、保護と開発という対立する施策の間に緊張関係が生まれて開発にブレーキがかかる。今回の改正案では、この仕組みが壊されてしまうというふうに思います。

 日本歴史学協会など二十八団体が、昨年十月、「文化財保護法の改定に対し、より慎重な議論を求める声明」を発表しました。文化財保護法や文化芸術基本法の理念と乖離するものだ、こういう批判をしております。これはぜひしっかりと聞くべきだというふうに思いますが、大臣、一言、どうですか、こういう声について。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、いろいろな御意見が検討する間でもあったところでございますので、やはりしっかりと保存と活用が車の両輪で、文化財保護法に目的として記載されておりますように法案もつくったつもりでございますし、この法案が通った暁での運用もそういうことを基本にしっかりとやってまいりたいと思っております。

畑野委員 最後に、先ほどの委員会の中でも議論になっておりますアメリカンフットボールの試合で、日本大学の選手が極めて危険かつ悪質なタックルをして関西学院大学の選手を負傷させた問題について伺いたいと思います。

 事実の調査という点でいえば、この間の経緯をしっかり調査する、そして、文科省、スポーツ庁として、深い解明を行って対策を立てていくべきだと思いますが、林大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 六日に行われた関西学院大学と日本大学とのアメリカンフットボール定期戦において、関西学院大学の選手が相手守備選手からのタックルを受け負傷退場した件については、重大事故につながる非常に危険な行為であったと認識しております。

 現在、日本大学が所属している関東学生アメリカンフットボール連盟が規律委員会を設置いたしまして調査を行っていると聞いております。この調査の報告を受けまして、このような事態が二度と起こらないよう、文部科学省としても必要な対応をしてまいりたいと思っております。

畑野委員 やはり、相手がルールを守ってくれるという信頼関係の上に成り立つわけですね。それが成り立たなかったら、もうスポーツできないわけです。フェアプレーの精神を含めてしっかりと対応していただきたい、このことを求めて、質問を終わります。

冨岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 他の同僚議員からも御質問がありました、私もやはり保護と活用の関係について、今回の法改正、大変心配をしております。

 文化審議会が昨年十二月に取りまとめた保存と活用のあり方についての第一次答申を見ますと、ここでは、文化財の保護と活用は、互いに効果を及ぼし合い文化財の継承につなげるべきもので、単純な二項対立ではない、このように記されております。私もそのとおりだというふうにも思いますし、文化財を始めとした有形無形の歴史的な財産の活用によってその存在を含めた価値について広く理解を得られますし、また、それが継承、保護にもつながっていく、こういう側面も確かにあるんだろうというふうに思います。

 ただ、今回の法改正、またそこに至る経緯を見ておりますと、どうもそうではないのではないか。どちらかにバランスが偏ってしまったのではないか、とりわけ活用の方にバランスが偏ってしまったのではないかという危惧を持たざるを得ません。

 文化財保護法は一九五〇年にできておりますが、その前年には法隆寺の金堂壁画が焼けて損傷を受けるという、こういうことがあった上での文化財保護、そこに力点を置いた法制度、法だったというふうに思います。

 実は、先ほど他の同僚議員も指摘されておられましたけれども、一月の総理の施政方針演説、またもう一回読み上げますと、我が国には十分活用されていない観光資源が数多く存在をします、文化財保護法を改正し日本が誇る各地の文化財の活用を促進します、こう述べておられます。ちなみに、この引用部分、これは地方創生という項目の中の観光立国という箇所の中での言及であります。

 これは素直に読みますと、文化財保護法というのはこれまで保護の方に重きを置いていて、その結果として活用が進まなかった、だから、この文化財保護法を改正し、さまざまな文化財について観光資源として活用していくんだ、そのように普通は読み取れるわけです。

 そうなりますと、先ほどの文化審議会の答申、保護と活用の二項対立ではない、あるいは、先ほど文科大臣が答弁されておりましたけれども、車の両輪だというふうにおっしゃっておられましたが、少なくとも、総理のこの施政方針演説を聞くと、どうも車の両輪というよりは、保護から活用の方に大きくかじを切るための今回の法改正ではないのかというふうに感じざるを得ないんですが、この点、重複する部分もあると思いますけれども、大臣、もう一回答弁をお願いいたします。

林国務大臣 文化財保護法は、その目的を、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」と規定しておりまして、保存と活用は文化財保護の重要な柱だと捉えております。

 保存が十分でない文化財はそもそも活用することが困難でございまして、また、文化財の後世への継承には、文化財の活用を通じてその大切さを多くの人々に理解いただくことが不可欠であるなど、文化財の保存と活用の関係は単純な二項対立ではない、先ほど委員からも御紹介していただいたとおりでございます。

 文化庁としては、文化財を次世代に確実に継承していくために、文化財の保存、活用の両面から適切に取り組んでまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 今大臣の答弁、まさにそうなんだと思いますけれども、ただ、総理の施政方針を聞いておりますと、これは言葉が不足してこうなったのかどうかわかりませんが、あくまで言葉どおりに読んでいきますと、これまでの文化財保護法では活用ができない、だからこれを変えるんだという趣旨の中での発言だというふうに思わざるを得ません。

 実際に、例えば、明日の日本を支える観光ビジョンでありますとか、あるいは骨太方針の二〇一七等々、あるいは未来投資戦略、この中でも、文化財が観光資源というふうな位置づけにされております。こうしたものが出てくる、まあ官邸の中にあるいろいろな何とか会議というのはいっぱいあって、私も全部、もう最近はわからなくなっていますけれども、いっぱいありますけれども、そこで省庁の頭を飛び越えてさまざまなことが決められております。

 そこに参加している方々、その名前を見ますと、必ずしも、例えば今回でいいますと、文化財の分野の専門家という方ではなくて、どちらかというと経済学者やあるいは産業界の代表、経済成長の観点からのみ議論をしているのではないか。そういう中で、例えば、先ほどもこれも紹介がありましたけれども、前の地方創生担当大臣の発言、一番のガンは学芸員、こういう発言がいみじくも出てきてしまったのではないかというふうにも思います。

 ちょっと、直接関係ないんですけれども、一点、文化庁に伺いますが、最近、新聞紙上で、参観ブームなのに楽にならぬ台所、世界遺産の寺社、拝観料続々値上げ、こういう記事を目にいたしました。国指定の文化財に限られているわけではありませんが、関西の世界遺産に登録されている寺社では、ここ数年で九カ所が拝観料の値上げに踏み切ったというふうにも報じられております。全国的にこれはどういった傾向にあるのか。

 また、この新聞を見る限りは、かなり値上げ、高いところは大人が一回入ると千五百円取る。家族で行くと五千円近く恐らくかかるような、そういう値段になっているところもあるやに聞いておりますが、なぜそういうふうな傾向、値上げの傾向になっているのか。その原因について、文化庁、どのように考えておられますか。

中岡政府参考人 委員お尋ねの件でございますけれども、文化庁では、そのような報道があったことは承知してございますけれども、全国の社寺におけます拝観料については、私どもは承知はしておりません。

 理由ということでございますけれども、この新聞記事を読む中では、例えば修理費の確保のためとか、さまざまなことが言われているわけでございますけれども、文化庁といたしましては、国指定等文化財等につきましては、修理や整備などを行う所有者また管理団体に対しまして、補助金交付を行ったり、種々の税制上の優遇措置を講じたりするなどして支援しておるわけでございますが、所有者等への支援の一層の充実を図っていきたいというふうに考えております。

吉川(元)委員 私もその記事を読みましたけれども、史跡整備費あるいは修繕費、耐震化や防犯設備の充実、そのためにお金が必要、一方で、少子化の中で修学旅行生の数がずっと減ってきた、そういう中で値上げをせざるを得ないということが指摘をされております。

 一昨年の熊本、大分地震、熊本城の修復には二十年間で六百億円という非常に大変な金額がかかるというふうにも言われております。毎年のように起きる大規模災害の備えも必要だということで、こうした拝観料の値上げが進んでいるんだろうと。

 一方で、本来、歴史的な資産については広く、特に若い世代、子供たちも含めて認知をしてもらうためには、拝観料というのはできる限り低廉な方がいいわけで、そういう意味でいうと、非常に今矛盾をした事態に陥っている。

 先ほど、活用を通じて保護していくと。ところが、保護をするために、やはりこの拝観料は上げなければいけない、そうなると、今度はこれは活用に結びつかない、そういう大きな矛盾を今抱えているのではないかというふうに私は思います。

 そこで、関連してお聞きいたしますけれども、国指定文化財の場合、修繕費の半額以上を国が補助できる仕組みが今あると思いますが、この予算、どのように今なっているでしょうか。

中岡政府参考人 お答え申し上げます。

 国民共通の貴重な財産でございます文化財を確実に次世代へ継承するために、平成三十年度の予算につきましては、文化財の保存修理や、防災、防犯対策等を支援する経費といたしまして、三百七十六億円を計上しております。これは五年前より二十五億円の増、対前年度比では十億円増となっているなど、その充実を図ってきているところでございます。

吉川(元)委員 これは予算措置でありますから、予算がなくなれば翌年に繰り越していく。聞くところでは、これは順番待ちになっているというふうなお話も聞きました。

 先ほど、保護と活用、バランスをとっていくんだと。これまで以上に活用をしていくんだということになれば、当然、それに影響して、保護もより強く保護をしていく。活用していくのであれば、それに合わせた形で、車の右側が回れば左側も回さなきゃいけないのと同じことだと思いますけれども、そういう面でいいますと、これは施行が来年の四月一日だということであります。今年度ではなくて来年度になるわけですが、当然、来年度以降、この修繕費については予算の拡充を図っていく、これは通告しておりませんが、当然それが必要だというふうに考えますが、どのようにお考えでしょうか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 文化庁といたしましては、今回の法改正を踏まえまして、引き続き、文化財を次世代に継承していく上で必要な予算の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 必要な額が今確保できていないんですよ、順番待ちなんですから。今年度はもう予算がいっぱいです、だから来年度またお越しくださいというような状態に今なっているわけです。

 今でさえ不足をしているという中で、活用を進めていった結果として、修繕費含めてもっとお金がかかっていくとなったときには、これは大幅な予算の拡充がなければ、結局バランスがとれないのではないか。そういう認識を文化庁はお持ちでしょうか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 委員、今、順番待ちということを御指摘いただきました。実は、寺社仏閣などの文化財を修繕いたしますときには、例えば、都道府県としても随伴補助という形で補助しているケースもございます。こういったことにつきましては、それぞれの都道府県におきまして計画的に推進をしているというふうに私どもも認識しておりますので、それに応じまして、必要な予算がどれくらい必要なのかといったところにつきましては、事前に調査を行った上で概算要求をしているというのが現在の状況でございます。

吉川(元)委員 今の答弁だと、まるで、順番待ちしているのは、自治体の方が、自分のところが間に合わないからちょっと待っているんだというような言い方ですけれども。

 私は、先ほど熊本城のお話をさせていただきました。二十年間で六百億、単純に割りますと毎年三十億、実際にはもうちょっといろいろでこぼこあると思いますけれども、かかっていくというわけです。それに比べて、修繕費の伸び、これは全く不足をしているのではないかというふうにも思わざるを得ませんし、そういう意味でいいますと、来年度予算、夏から秋にかけて編成になると思いますけれども、そういうふうに活用にかじを切ったというのであれば、活用ということを強めるというのであれば、それに合わせた保護の体制をしっかり文化庁として取り組んでいただきたい、そのための予算をしっかり確保していただきたいというふうに思います。

 次に、関連して、国指針に基づいて、都道府県が文化財保存活用大綱、市町村がその計画を策定することができ、国の認定を受ければ、登録文化財の提案や現状変更の権限を得ることができるというふうになっております。

 地域計画に記載すべき事項というのをちょっと見せていただいたんですけれども、非常に多岐にわたって、なおかつ専門的な知識あるいは専門的な技能が必要な、そういうものが答申の中では触れられております。

 一方で、先ほど、どなたか他の委員が質問をされておられましたけれども、それに対応する人員が、今、自治体には十分に確保できていない。例えば、建造物についての専門的な知識を持って配置をされている職員の数、〇・一人、つまり十市に一人しかそういう人がいないというわけであります。

 こうした人たちを、まずきちんと人員を確保しないと、これはそもそもその計画自体が絵に描いた餅、若しくは非常にずさんな計画になってしまって、結果として文化財の保護に支障を来すのではないかというふうに思いますけれども、この点、いかがお考えでしょうか。

林国務大臣 文化財を適切に保存、活用し、次世代へ確実に継承していくためには、今先生がおっしゃったように、文化財に関する専門的人材の確保が不可欠でございます。

 このため、国においては、これまでも地方公共団体の職員や学芸員等の専門性向上のためのさまざまな研修を実施してきておりますが、これらを更に充実させるほか、新たに平成三十年度からは、法改正と合わせた地方財政措置の充実、これは保存活用計画に基づいて、専門的知見を持つ外部人材の活用等のソフト事業を行った場合における特別交付税の措置でございますが、それから、地方公共団体や美術館等からの文化財活用に係る相談に一元的に対応するセンター機能の整備、これを進めることとしております。

 また、人材養成に当たっては、大学や博物館等との連携が重要でございますので、文化庁としても、今後、関係機関との連携体制を確保して、今般の改正法案の趣旨も踏まえながら、必要となる人材の養成が進むよう、連携協力体制を強化してまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 時間が来ましたので、終わります。

冨岡委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 何人かの方から恐らくアメフトのお話もあったかと思うんですけれども、相手方のチームのけがをされた方も、またチームも非常にお気の毒であるとは思うんですが、それ以外に気の毒だと思うのは、やはり、ことし日本大学に入学をした学生さんたちじゃないかなと思います。大変名誉ある、そして格式のある大学の学生さんが、いろいろな形で名前が出るということは、大変心を痛めているのではないかと思いますので、真相を究明していただいて、このようなことが二度と起きないような形にして、また名誉を取り戻していただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 まず最初に、文化財保護に関してですが、私の選挙区の神奈川県におきまして、富士屋ホテルというのがありまして、ついこの前、テレビでニュースがあったわけですが、二年間の改修工事に入るということでございます。皇族の方も泊まられたり、ヘレン・ケラーやチャップリンなどが泊まられた大変由緒あるホテルでございますが、そのときに文化財の法律がちょうど一緒に紹介をされていたわけでございまして、ああ、これと関連するんだなという、そういうような法律を今こうやって質疑をさせていただいているということに大変感謝をさせていただきます。

 ところで、文化財ということになりますと、一般的には、くぎ一本打てないんじゃないかとか、そんないろいろなことがあったかとは思うんですけれども、今回の改正で、かいつまんで、どんなところが変わるのか、概要をまず説明していただきたいと思います。

林国務大臣 我が国には、地域の風土、生活、他国の文化との交流等を通じて育まれて、守り伝えられてきた多様な文化財がたくさんあるわけでございます。これらは、我が国の文化的な発展や地域のきずなの維持などにおいてなくてはならない国民の宝ですが、近年、やはりどうしても過疎化や少子高齢化、こういったことを背景に、文化財の滅失、散逸、さらには担い手不足への対応、こういうのが喫緊の課題となっております。

 その一方で、文化財を町づくりの核に据えてその活用を図ったり、いまだ価値づけのされていない地域の文化財を掘り起こしたりすることによって地域活性化を進めたい、こういうニーズも多く見られるところでございますので、今回の改正で、文化財の計画的な保存、活用の促進をする、それから地方における文化財保護行政の推進力の強化を図る、そのことによって、未指定を含めた地域のさまざまな文化財を町づくり等に生かしながら次世代に確実に継承する、こういうことができるように地域社会が総がかりで取り組んでいく、こういうことを広く推進する、これを目指していきたいと思っております。

 今後は、地方公共団体や所有者等が計画をつくるわけですが、これを推進して、多様な取組が全国で展開をされますように、改正法についての情報の提供、普及啓発、各種支援、助言の充実を図るなどして、文化財の次世代への継承に向けた取組の活性化を促してまいりたいと思っております。

串田委員 時代のそういう変化というものに対応した法改正ということで、高く評価をしたいと思います。

 非常にちょっと細かな規定、今のような促進ということの中で法改正がなされていくんだと思いますので、それについて、具体的な条文について説明をしていただければなと思うんです。

 三十一条に、以前は「特別の事情があるときは、」という、かなり厳しい条件のような気がするんですけれども、選任をするときに、「特別の事情があるときは、」というのが削除されたということでございますので、具体的にはどんなような形で内容が変わったのかという説明をお願いしたいと思います。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 三十一条の管理責任者につきましての御質問でございます。

 管理責任者制度は、文化財の所有者が文化財の管理の責めに任ずべき者を選任できる仕組みでございます。所有者は、特別な事情があるときに管理責任者を選任できるものでございますが、みずから海外渡航中で不在であるなどの極めて限定された場面でのみ利用されてきたものでございまして、必ずしも十分に活用されておらないというのが現状でございます。

 このため、今回の管理責任者の選任要件を、当該文化財の適切な管理のため必要があるときという形で拡大をいたしまして、従来のように不在としている場合のみならず、所有者が大変忙しいということで管理まで手が回らない場合や、所有者よりも文化財についての知見を有する者に管理を代行させたい場合などにも選任できるようにするものでございます。

 この制度を使いやすく実効性のある制度として見直すことを通じまして、所有者をサポートする機能をより発揮できるようにできるものと考えております。

串田委員 まさに、みずから管理をしなきゃいけないというのは大変だなという思いを持っている人がいたんだと思うんです。そういう意味では、別の方を選任できるというのは大変促進になるのかなと思うんです。

 一方で、五十三条の三には、「所有者又は管理団体は、」という規定があるわけです。管理をすることを依頼する相手方というのは団体だけではないと思うんですね。所有者が海外にという例を今挙げていただいたわけですが、例えば別の個人がかわってやってあげるよというようなことがあるかと思うんですけれども、条文上は個人ではなくて管理団体となっているんですけれども、これは個人に依頼をすることも可能なんでしょうか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 五十三条の三の規定の御質問でございます。

 この五十三条の三におきましては、所有者又は管理団体は、国の認定を受けた重要文化財保存活用計画について変更しようとするときは、文化庁長官の認定を受けなければならないということとされてございます。この計画変更の主体は、計画についての認定を受けた所有者又は管理団体を想定してございます。

 ここで言う管理団体とは、現行法上の仕組みでございまして、所有者が判明しない場合とか、所有者等の管理が著しく困難、不適当であると明らかに認められる場合に、文化庁長官が適当な地方公共団体その他の法人を指定して文化財の管理等を行わせることができるものでございまして、この指定対象には個人は含まれておりません。

 このようなことから、所有者以外の個人が計画を変更して文化庁長官に認定を申請するということは想定をいたしておらないわけでございます。

串田委員 指定がかなり限られているということは今わかりました。法人等の団体でないと指定しないということだと思います。

 一方、ちょっと気になる規定があります。五十三条の七で「五十三条の二第四項各号のいずれかに適合しなくなつたと認めるときは、」ということで、認めることがなくなったときというのは認定を取り消さなければいけないようにも思うんですけれども、「取り消すことができる。」という規定の仕方になっているわけですが、これは取り消さないまま、このような該当しない場合でも認定を、そのまま指定されたということでよろしいんでしょうか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 五十三条の七の規定の御質問でございます。

 改正法案におきましては、計画の認定については、その計画が認定基準に適合するときはその認定をするものとするとしている一方で、認定の取消しにつきましては、認定基準のいずれかに適合しなくなったときは取り消すことができるという規定になってございます。

 これは、一時的に計画の認定基準に適合しないという状況が生じたといたしましても、文化庁長官等の指導等によりまして是正される場合があり得るにもかかわらず、一時的な不適合状態をもって直ちに計画の認定が取り消されることになってしまいますと、計画的、安定的な保存活用事業ということでございますので、そういったものの実施に支障が生じる場合もあることから、認定の取消しはできるということとしているものでございます。

串田委員 一時的なときにいきなり取り消すということになると不適合になる、そういう趣旨だったのかなと思うんですが、そうなりますと、助言とか指導というのが非常に重要なことになるのかなと思うんです。

 五十三条の八によりますと、「実施に関し必要な指導又は助言」というのは、「求めに応じ、」というふうになっているんですが、求められていない限りは助言や指導ができないというふうにも読めるんですけれども、これはいかがでしょうか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 保存活用計画は、所有者の意思によってつくり上げていくということで、そういう主体性が非常に重要視された制度になるわけでございますけれども、個々の文化財への保存活用計画には、文化財の特性を踏まえた適切な管理や修理のあり方など専門的、技術的な判断を行う内容が含まれておりまして、所有者だけでは策定が困難な場合も想定されるということで、国のみならず、所有者に近い立場にある都道府県、市町村が、個々の計画作成に係る指導、助言等の支援を行うことができるようにする規定がございます。

 当該規定につきましては、重要文化財の所有者又は管理団体の求めに応じ、計画の作成及び認定計画の円滑かつ確実な実施に関して指導、助言することができるということとしてございまして、委員御指摘のとおり、所有者等の求めを前提とした規定としておるところでございます。

串田委員 時間の関係でほかの質問をさせていただきたいんですが、文化財というものに指定されると非常に面倒だというような形の中で、導入部分というのはかなりしやすくなっていったのかなとは思うんですが、一方、こういったようなものを保存するということは荷が重い、もう重要文化財の所有者にはなりたくない、取りやめてもらいたい、こういったようなことが許されるのか、もし許されるとしたらどういう手続をとることになるのかということをお願いいたします。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 重要文化財の所有者は、所有権に基づきまして当該重要文化財を処分することはできますが、文化財保護法の所要の手続を経る必要がございます。

 例えば、重要文化財、主に美術工芸品を有償で譲渡しようとする場合には、国に優先的な買取りの権利、先買い権が認められておりまして、まず国に対する売渡しの申出をしなければならないというふうにされてございます。また、重要文化財の所在の変更が仮に生じた場合には、事前の届出をしたり、あるいは、所有者の変更が生じた場合には事後の届出がそれぞれ必要になるということでございまして、実際には、所有者にこういったような意向がある場合には、あらかじめ所有者や地方公共団体から文化庁に適宜御相談いただいているというような現状でございます。

串田委員 そういう部分も、取りやめるときには、比較的に、そんなに難しくないような手続の方が、むしろ、文化財の指定を歓迎するというようなこともあるのかなと思うんです。

 文化財が例えば損壊を受けた、最近、落書きなどもよく例になっていると思うんですが、こういったようなものの修理というものの費用あるいはその手続というのは、どのようになっていますでしょうか。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 仮に損壊したというようなときに、重要文化財等の修理は、所有者、管理団体が行いまして、その費用もこれらの者が負担することになるわけでございます。したがいまして、重要文化財等に損壊等が生じた場合におきましては、加害者の有無等にかかわらず、所有者、管理団体が修理を行いまして費用を負担する。しかしながら、重要文化財の修理というのは大変費用を要するものでございますので、所有者、管理団体に対しましては、原則として、修理費用の五〇%を国庫補助するというようなことになっているということでございます。

串田委員 損傷が起きたときに放置をしていていいのかとか、いろいろな質問もちょっとしたかったんですが、時間の関係でまたの機会にしたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.