衆議院

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第4号 平成31年3月20日(水曜日)

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平成三十一年三月二十日(水曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 亀岡 偉民君

   理事 神山 佐市君 理事 馳   浩君

   理事 宮川 典子君 理事 村井 英樹君

   理事 義家 弘介君 理事 菊田真紀子君

   理事 城井  崇君 理事 鰐淵 洋子君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      今枝宗一郎君    上杉謙太郎君

      小此木八郎君    尾身 朝子君

      大串 正樹君    大塚  拓君

      大西 宏幸君    小林 茂樹君

      下村 博文君    白須賀貴樹君

      高木  啓君    高橋ひなこ君

      津島  淳君    中村 裕之君

      西田 昭二君    根本 幸典君

      百武 公親君    福井  照君

      船田  元君    古田 圭一君

      宮内 秀樹君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    八木 哲也君

      川内 博史君    中川 正春君

      初鹿 明博君    村上 史好君

      吉良 州司君    牧  義夫君

      稲津  久君    中野 洋昌君

      畑野 君枝君    杉本 和巳君

      吉川  元君    笠  浩史君

    …………………………………

   文部科学大臣       柴山 昌彦君

   文部科学大臣政務官    中村 裕之君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    白須賀貴樹君

   参考人

   (国立大学法人東京工業大学名誉教授・前学長)   三島 良直君

   参考人

   (東京大学大学総合教育研究センター教授)     小林 雅之君

   参考人

   (労働者福祉中央協議会事務局長)         花井 圭子君

   参考人

   (筑波大学長)

   (中央教育審議会大学分科会長)          永田 恭介君

   参考人

   (東京大学大学院教育学研究科准教授)       両角亜希子君

   参考人

   (名古屋大学総長)    松尾 清一君

   文部科学委員会専門員   吉田 郁子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     西田 昭二君

  中村 裕之君     高橋ひなこ君

  根本 幸典君     宮澤 博行君

  船田  元君     津島  淳君

  宮路 拓馬君     大西 宏幸君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     宮路 拓馬君

  高橋ひなこ君     中村 裕之君

  津島  淳君     船田  元君

  西田 昭二君     高木  啓君

  宮澤 博行君     百武 公親君

同日

 辞任         補欠選任

  百武 公親君     今枝宗一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     根本 幸典君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 大学等における修学の支援に関する法律案(内閣提出第二一号)

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

亀岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、大学等における修学の支援に関する法律案及び学校教育法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。柴山文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 大学等における修学の支援に関する法律案

 学校教育法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柴山国務大臣 このたび政府から提出いたしました大学等における修学の支援に関する法律案及び学校教育法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、大学等における修学の支援に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国においては急速に少子化が進展しており、これに対処していくことが喫緊の課題となっております。このような状況において、子供を安心して生み育てることができる環境の整備を図っていくことが極めて重要なこととなっております。

 この法律案は、このような観点から、真に支援が必要な低所得者世帯の者に対し、社会で自立し活躍することができる豊かな人間性を備えた創造的な人材を育成するために必要な質の高い教育を実施する大学等における修学の支援を行い、その修学に係る経済的負担を軽減するための所要の措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、大学等における修学の支援は、学資支給及び授業料等減免により行うこととします。これらの支援は、文部科学大臣等の確認を受けた大学、高等専門学校及び専門学校に在学する学生等に対して行うこととしております。

 第二に、学資支給は、独立行政法人日本学生支援機構法の定めるところにより、独立行政法人日本学生支援機構が学生等に対して行う学資支給金の支給とし、これに要する費用は政府が補助することとしております。

 第三に、授業料等減免は、この法律に定めるところにより、大学等の設置者が学生等に対して行う授業料及び入学金の減免とし、授業料等減免に要する費用は、国及び地方公共団体が支弁することとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 次に、学校教育法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 社会構造の変化やグローバル化が急速に進み、社会が抱える課題も複雑化している今日において、多様な教育、研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより社会の発展に寄与するものとされている大学に求められる役割は、より一層大きいものとなっております。

 この法律案は、このような観点から、大学等の管理運営の改善等を図るため、大学等の教育、研究等の状況を評価する認証評価において、当該教育、研究等の状況が大学評価基準に適合しているか否かの認定を行うこととするとともに、国立大学法人が設置する国立大学の学校教育法上の学長の職務を行う大学総括理事の新設、学校法人の役員の職務及び責任に関する規定の整備等の措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、大学等の教育、研究等の状況を評価する認証評価において、当該教育、研究等の状況が大学評価基準に適合しているか否かの認定を行うことを認証評価機関に義務づけるとともに、適合している旨の認定を受けられなかった大学等に対して、文部科学大臣が報告又は資料の提出を求めることとしております。

 第二に、国立大学法人岐阜大学を国立大学法人名古屋大学に統合し、岐阜大学及び名古屋大学を設置する国立大学法人東海国立大学機構とするとともに、国立大学法人が二以上の国立大学を設置する場合その他、その管理運営体制の強化を図る特別の事情がある場合に、その設置する国立大学に係る学校教育法上の学長の職務を行う大学総括理事を置くことができることとする規定を整備することとしております。

 第三に、学校法人における役員の職務及び責任並びに財務書類の公表等に係る規定を整備することとしております。

 第四に、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構において、国立大学法人等の運営基盤の強化を図るための情報収集、分析等を業務として追加することとしております。

 以上が、これらの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

亀岡委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

亀岡委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日午前、大学等における修学の支援に関する法律案審査のため、国立大学法人東京工業大学名誉教授・前学長三島良直君、東京大学大学総合教育研究センター教授小林雅之君、労働者福祉中央協議会事務局長花井圭子君、及び、本日午後、学校教育法等の一部を改正する法律案審査のため、筑波大学長・中央教育審議会大学分科会長永田恭介君、東京大学大学院教育学研究科准教授両角亜希子君、名古屋大学総長松尾清一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

亀岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

亀岡委員長 これより質疑に入ります。

 ただいま議題となっております両案中、まず、内閣提出、大学等における修学の支援に関する法律案について議事を進めます。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず三島参考人にお願いいたします。

三島参考人 おはようございます。

 本日は、この大学等における修学の支援に関する法律案に対する御審議に際して、参考人として意見を述べる機会をいただいたことに、まずは感謝申し上げたいと思います。

 昨年の三月まで東京工業大学の学長をしてございまして、科学技術系の国立大学として、教育の質の向上、あるいは研究力の向上ということで、大きな改革を在任中にしたわけでございますけれども、今、順調に滑り出したというような状況でございます。

 そして、まず、大学の役割といいますか、そういったところからの観点から三点ほどお話をできればというふうに思うところでございます。

 一点目でございますが、まず、将来のよりよいグローバル社会の形成における我が国の役割、それから、その中でのソサエティー五・〇あるいはSDGsへの対応ということで、最も重要と思われるこれからの時代を背負う若者の、高等教育を受ける機会を望みましてこれに貢献しようという志を持つ人たちが家庭の経済的な理由によってその機会を失うことがないように、現在の仕組みに欠けている施策を国策として立ち上げようとする本案に、基本的に大きな賛同を申し上げたいというふうに思います。

 二点目でございますが、本日、現法律案の成立、実行に対して、その政策としての妥当性そして公平性を主としたさまざまな危惧が提唱されることは、本件についての一連の有識者会議の主査を務めてきた私にとりましては、よく理解しているというふうに思うところでございます。それらの点につきましては、ここで与野党の議員の皆様方から御質問、御意見をいただけるものと思います。しかし、ここまでの有識者会議の議論については、現段階における最善の方針を立ててきたと私は思ってございますので、それらの御懸念については私の考えを述べさせていただければというふうに思うところでございます。

 それから、三点目でございますけれども、何より、まず、高等教育の役目というのは、初等中等教育を受けた若者たちの未来に向けた志を育てるためにあるということでございまして、専門知識を単なる大学における単位の取得という形で義務化するということだけではなく、東京工業大学で例えて申しませば、さまざまな科学技術分野の中で、将来、自分がよりよい社会を築くための貢献を果たすための学びはもとより、将来、人から尊敬される人格を形成するためのさまざまな教養、あるいは多様な人々と触れ合う経験を提供する場でありたいというふうに常に思っているところでございます。そのような場としての大学に志、気概を持つ若者であれば、たとえ経済的に貧しい環境にあっても、できる限りの援助をして迎え入れ、立派な社会人に育てたいと思うところでございます。

 国立大学の改革が叫ばれてもうかなりの時間がたってございます。ただ、やはり、国立大学としての使命をしっかりと果たすべく、最もその中で重要なものが教育の質の改善でございますので、その点を十分にわきまえた体制を東工大はつくるとともに、そこに、本当にこれからの世の中をしょって立つぞという気概を持つ学生を受け入れることが非常に重要だと考えますと、今回の法案は非常に重要な意味を持っているというふうに思う次第でございます。

 何とぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

亀岡委員長 ありがとうございました。

 次に、小林参考人にお願いいたします。

小林参考人 おはようございます。

 私は奨学金の研究をずっとしておりまして、二つの新しい制度の設計にかかわってまいりまして、三年ほど前にもこの場で奨学金の制度改革について意見を述べさせてもらいました。今回は給付型の大幅な拡大ということでございまして、こういう機会を与えていただいたことについて、まず感謝申し上げたいと思います。

 以下、資料に基づいて意見を述べたいと思いますが、私が知り得た限りの資料というのは公表されたものだけであります。新しい経済政策パッケージ、あるいは三島先生がやられた専門家会議、それから骨太の方針、関係閣僚会議の了承事項ということ、それからもちろんこの法律案ということになります。その後に変更とか、あるいは私の誤解があればお許し願いたいと思います。

 今申し上げた二つの制度と申しますのは、一つは給付型奨学金でありまして、これは、目的は、非常に厳しい状態にある所得の低い層の進学を促進することが大きな目的であります。これは、日本では初めての公的な制度です。それに対しまして、もう一つの制度は新所得連動型返還制度でありまして、これは目的は、中低所得層の教育費負担の軽減あるいはローン回避と言われる現象を防止するものでありまして、目的も対象も異なる、ただ、二つで大きく日本の奨学制度をカバーするというふうに考えることができると思います。

 今般の新制度ですけれども、これは給付型の拡大ということになりますけれども、その特徴といたしましては、まず第一に、何といっても、非常に規模が大きいということであります。

 二〇一七年に創設されました給付型奨学金は年額で二十四から四十八万円でしたけれども、今回は、初年度の最高で、授業料と入学金を合わせると約九十六万円、それから給付型奨学金は九十一万円というふうにされておりますので、百八十七万円と極めて大きなものになります。それから、対象者も、現行では住民税非課税世帯なんですけれども、これを年収約三百八十万未満の世帯まで拡大するということでありまして、非常に大きな制度になっております。

 それから、授業料減免に関して申し上げますと、現在は制度が、国立大学、公立大学、私立大学、全て異なっております。それから専門学校については、公的支援に関しては、北海道と高知県しかありません。こういう中で、非常に制度を拡大するということは望ましいことであることは言うまでもありません。

 それから、これまで公的支援に乏しかった入学金の問題、それから家計急変、これは例えば保護者がリストラされたとか、あるいは離死別で急に家計が苦しくなったような場合ですけれども、こういったものにも対応するということになっておりまして、そういう意味で、進学の促進あるいは中退の防止に役立つというふうに考えられます。

 こういう形で給付額及び対象を拡大したという点では、非常にこの新制度は評価できるというふうに考えております。

 ただ、幾つか懸念がないわけではございません。

 一つは、崖効果と言われる問題でありまして、これは、授業料減免、給付型奨学金とも、制度的に三段階というふうになっております。こういう場合には、崖効果と言われる問題が生じます。これは、受給者と非受給者、あるいは受給者間で格差が大きくなるという問題で、その結果として、モラルハザードが起きるおそれがあります。

 高校の就学支援金についても三段階で行われておりますけれども、今度の給付型奨学金あるいは授業料減免は格段に給付額が大きいわけですから、こういったことで、受給者と非受給者、あるいは受給者間でも不公平感、不満感が残るのではないかという懸念があります。

 資料を見ていただきたいんですが、資料の二ページ目に各国の制度を示しました。これは文部科学省がつくった制度でありますけれども、フランスでは八段階、アメリカとかドイツでは直線になっておりまして、こういった問題をできるだけ起こさないような制度設計になっております。この辺について、三段階ということは若干懸念があります。

 それから、確認要件の問題点です。

 これは、高等教育機関、学生は、公的補助、すなわち税金を使うことに対する責任があると考えますが、このため、一定の資格要件や機関の説明責任を果たすということが非常に重要です。

 例えば、アメリカでは、アクレディテーションを受けた団体、高等教育機関のみが連邦奨学金の受給資格を持っています。確認要件のうち、大学の情報公開と厳格な成績評価というのは、現在の大学改革でも非常に重要な施策になっております。

 ただ、外部理事については、複数任命するということになっております。それから、実務経験のある教員について標準単位数の一割以上配置されているということになっておりまして、これについては、この理由として、大学等の勉学が職業に結びつくことにより格差の固定化を防ぎ、支援を受けた学生が大学等でしっかり学んだ上で、社会で自立し活躍できるようになるように、対象学問追求と実践的教育のバランスがとれている大学等とするため、大学等に一定の要件を求める、こういうような説明がなされているわけです。

 国民の税を投入する以上、一定の水準の教育機関でなければならないというのは理解できます。しかし、果たしてこれらの要件が本当に適切かどうか、また、設定されたこれらの数値目標がどのような基準と根拠を持っているのか、十分な説明がなされていないというふうに考えています。

 さらに、重要な問題といたしまして、こうした教育機関の選別というのは、生徒の教育機関の選択を制約することになるおそれがあります。奨学金は個人への補助でありますから、個人の選択を基本的には尊重すべきです。現行の給付型奨学金にはこういった確認要件はございません。奨学生を獲得するために、高等機関の間の切磋琢磨が生じるということはあるかもしれませんけれども、最初から高等教育機関を選別するということは疑問です。高校生の進路希望に影響する可能性は非常に強いと思いますし、確認大学等でないことを知らないで進学した場合に、受給することができない、結果として低所得層を排除するということにもなりかねないということがあります。こうした可能性について特に説明がないので、どこまで検討したのかよくわかりません。

 さらに、専門家会議では定員充足率などについて新たな条件が定められておりまして、三年連続して八割未満の場合には要件を満たさないということになっております。しかし、現在、介護福祉士の専攻というのはおおむね定員充足率が八割未満という状況になっておりまして、非常に厳しい状況にあります。こういう形で、地域とか、あるいは専攻について考慮せずに一定の基準を課すということは疑問が残ります。

 それから、奨学生になった場合には、現行の給付型の場合には、学業成績の著しい不振等が明らかになった場合だけです。これは、卒業してもらうことが大前提ですから、それに対して、成績等が不振の場合には廃止あるいは支給した額について返還を求めるということになっているわけですが、今回は、成績が下位四分の一に属する場合というふうにされておりまして、これは数値による非常に相対的な評価ですから、本人の成績のいかんにかかわらずこういう問題が起こります。こういった奨学生というのは、経済的に非常に困難な学生でありますから、支給打切りになりますと、そのまま休学とか中退につながるおそれがあります。そういう意味で、こういった形式的な要件を定めることがいいのかどうかということも検討する余地があるかと思います。

 それから、なぜこういったことになったかということなんですけれども、これは政策決定過程の問題であるというふうに考えています。

 パッケージで、まず、二〇一七年の十二月ですけれども、極めて詳細な確認要件が閣議決定されております。これに対して、さまざまな団体が反対論とか批判をしております。これに対して、閣議決定であるために変更ができないということで、その後の制度設計に大きな制約を課したというふうに考えております。

 それから、時間的な検討の期間というのもあります。

 今までやってきたものについては、一年以上、あるいは、少なくとも十カ月、八カ月の検討を経ているわけですけれども、今回のパッケージについては、四カ月程度しか検討の期間がありません。スピード感を持ってが拙速にならないかどうか。閣議決定は大枠のみで、詳細な検討というのはやはり専門的に行うべきだというふうに考えております。

 それから、最後に、もう一つ大きな問題として申し上げたいのは、情報ギャップの拡大ということです。

 これは、情報を持っている者と持っていない者の格差が生じるという問題でありまして、例えば、高校の奨学給付金については、受給資格がありながら申請しない保護者が約二万人程度、もう少し少ないという推計もありますが、いずれにいたしましても、かなりの数の人が申請しないでいるという問題があります。

 それから、日本学生支援機構の奨学金についても、返還することを、しなければいけないということをそもそも知らなかったという者が、延滞者の場合には半数を超えているという問題があります。これは図の二のところに示したとおりです。

 それから、私たちの行った全国調査というのがございますけれども、これによりますと、高校の奨学金の担当者、あるいはそれに最も詳しい方ということで回答していただいたんですけれども、奨学金についての保護者の理解が得にくい、あるいは、家庭の経済的状況を把握するのが難しいという意見が非常に多く出ております。

 私が申し上げたいのは、状況が非常に変わってきているということです。

 日本では、奨学金の事務というのは、教育機関が厚生補導の一環として行うということが当然視されてきたわけであります。教職員が親身になって、その生徒の家庭の状況に応じて、経済的な支援の情報を提供したり、あるいは奨学金を勧めたりというようなことが行われてきたわけです。しかし、今日では状況は全く異なります。プライバシーの尊重ということから、生徒の家庭の状況を把握するというのは非常に難しくなっております。むしろ、そういうことは避けたいというのが高校の多くの教員の見方です。それなのに、事務的な負担は非常に重たい。そういうことで、詳しくは時間の関係で申し上げませんが、図の四にあるような大きな問題が次々に連鎖しているというふうに考えております。

 今後の課題ですけれども、幾つか挙げておりますが、時間の関係で、とにかく強調したいことは、今非常に関係者が努力しているわけでありますけれども、まだ情報が十分に周知されておりません。ですから、このままでいきますと、非常に、少なくても初年度に関しては大きな混乱が起こることが考えられますので、この点に対して予算措置を含む十分な対応をとっていただきたいということであります。高校の場合には、例えば、高校の職員に対する事務の加配というようなことで対応が出されておりますけれども、そういった対応もとらないと、高等教育機関あるいは高校は、非常に事務負担だけ重くなって大変なことになるということになります。

 それから、日本学生支援機構に関しましても、独立行政法人でありまして、毎年、運営費交付金が減らされているという状況ですので、これに対しても十分な予算措置が必要だというふうに考えております。

 最後に、最初からこの制度というのは完璧なものを求めるというのは非常に難しいと思います。初めての制度でありますので、むしろ制度の見直しということを最初から盛り込んで、絶えず小規模の手直しをするということです。そのためには、奨学金がどのような効果を持っているか、ポジティブ、ネガティブを含めて検証していくということも求められるというふうに思います。

 私の意見陳述は以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

亀岡委員長 ありがとうございました。

 次に、花井参考人にお願いいたします。

花井参考人 おはようございます。労働者福祉中央協議会、中央労福協事務局長の花井と申します。

 本日は、このような機会をいただき、まことにありがとうございます。

 中央労福協は、二〇一五年より、給付型奨学金制度の創設、奨学金制度の改善、教育費負担の軽減に取り組んでまいりました。その立場から、今回の法案と、昨年末に関係閣僚で合意されました高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針について、意見を述べさせていただきたいと思います。

 また、中央労福協は、昨年、奨学金や教育費負担についてアンケート調査を実施し、一万六千五百八十八名から回答を得ることができました。本日、机上に配付させていただいております。本日は、その中から参考になると思われる点も御紹介をしたいと思います。

 まず、昨年末の政府方針で、二〇二〇年度より、低所得者層に対して給付型奨学金制度を対象、金額ともに拡充し、大学等の授業料減免についても拡充すること、また、在学中の家計急変時への支援が盛り込まれたことは、前進であり、評価したいと思います。

 ただし、法案や制度の詳細については、問題点や明らかにすべき点、さらには、高等教育の負担を軽減するため欠かせない課題で、触れられていない点もあるのではないかと思っております。

 第一に、対象を真に支援が必要な低所得者世帯の者に限定していることです。これが高等教育の無償化と言えるでしょうか。

 資料図一は日本学生支援機構のデータですが、奨学金を利用している学生の四分の三は、家庭の年収が四百万円以上となっています。つまり、中間層にまで支援を広げない限り、奨学金に頼らないと進学できない状況は依然続くことになります。

 図二以降は私たちのアンケートですが、四十歳以上の年収四百万から八百万円の中間層でも、七割前後が子供の教育費に負担感があると回答しています。

 図三は、どこまで高等教育の無償化をすべきかを尋ねたところ、年収で限定せず全世帯を対象とすべきを含め、低所得者だけではなく中間層まで無償化すべきとの回答が四割強を占めています。図四の、これから大学等に進学する子供のいる中間層に絞ると、三人に二人が中間層にも広げてほしいと回答しています。

 対象者を真に支援が必要な低所得世帯の者と法律で限定することで、低所得者層と中間層の分断や、支援を受ける方へのバッシングやスティグマを生まないか、非常に心配があります。ぜひとも、将来的に支援の対象を中間層に広げていく道筋を明らかにしていただきたいと思います。

 また、授業料減免に関しては、現在でも、予算の範囲内ということではありますが、国立大学の場合は、大学院生や年収七百から八百万円の中間層であっても、成績がよければ減免を受けることができます。新たな制度創設で、大学院生や中間層への授業料減免が打ち切られたり、あるいは後退することがあってはならないと思います。この点は、国会審議の中で明確にしていただきたいと思います。

 第二に、大学等の機関要件により、進学する大学によっては授業料減免や給付型奨学金制度の支援が受けられないことです。

 支援の目的として、大学等での勉学が職業に結びつくとされていますが、本来学びたい学問が制約されないか。また、志望する学校が対象から外れれば、進路にも影響が出ます。教育の質の確保、情報開示の必要性や、経営に問題がある大学等の救済にならないようにということは理解できますが、それは大学等の認可や助成等に当たっての問題であり、それを学生支援の条件とするのは筋が違うのではないかと思います。

 機関要件については、学生の選択肢を狭めたり、大学の自治や学問の自由を侵害しないよう、その必要性も含めて十分議論いただき、慎重な運用をお願いいたします。

 第三に、支援対象者の個人要件については、高校からの推薦基準や、大学等で学業成績が不良な場合の取扱いがどうなるのか。

 特に、成績が下位四分の一に属した場合、そのような場合、支援が打ち切られたり、あるいは既支給額の返還は、学生が進学をちゅうちょしたり、選択肢を狭めることにもつながりかねないため、慎重な対応をお願いしたいと思います。

 第四に、授業料引下げの方向性が打ち出されていないことです。

 図五は、高等教育関連の負担に関して何を優先的に実現してほしいかを尋ねたものですが、大学などの授業料の引下げが最多となっています。ぜひとも、こうした声を受けとめ、高過ぎる学費を引き下げ、中間層を含めた全体的な学費軽減の方向性を示していただきたいと思います。

 第五に、奨学金を返済している方の負担軽減についてです。

 私どものアンケートからも、図六から八で明らかなように、奨学金返済の負担に苦しみ、本人も親も返済への不安を抱えながら暮らしています。図九から十にありますように、奨学金返済は、結婚、出産、子育て、仕事の選択など、若者の生活設計にも大きな影響を及ぼしています。これを放置すれば、少子化をより加速することになりかねません。

 返済困難者に対する喫緊の対策として、本年四月以降に返済猶予の時期が切れることに対応した猶予期間の延長や、民法改正に合わせた延滞金賦課率の引下げ、保証のあり方について見直しを早急に行うことが必要ではないかと思います。

 第六に、消費税増収分の使途についてです。

 今回の支援対象者数は七十五万人程度、所要額は約七千六百億円と試算されています。これは低所得者世帯の高等教育進学率が全世帯平均の八割まで上昇するという想定ですが、目標達成までの間、試算所要額との差額はどのように使われるのか、明らかにしていただくようお願いいたします。

 最後に、二〇一七年の日本学生支援機構法改正の附帯決議は、貸与型奨学金制度は無利子であるべきことや、所得連動返還型奨学金制度の適用対象の拡大の検討、日本学生支援機構の体制整備などが盛り込まれましたが、残念ながら進展してはおりません。国会として、附帯決議の進捗状況を点検し、一歩でも前進させていただくとともに、施行四年後の見直し時期以前であっても、必要な改善は行っていただきますようお願いいたします。

 国会審議を通じて、本法案の懸念が払拭され、学費の引下げや中間層を含めた支援策の拡充、奨学金返済者の負担軽減への展望が見えるような方向性を国会の意思として明らかにしていただきますよう強く要望し、意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

亀岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

亀岡委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。

 参考人の方には、御礼申し上げたいと思います。

 自己紹介から始めますが、この給付型奨学金制度、高等教育において絶対に必要だという確信的な考えのもとに、当時、大臣時代にいろいろ答弁をさせていただきました。あの当時を思うと、一歩、二歩先に進んだかなと思いますが、百歩進まなければいけないことを考えると、まだ二歩目だなというのが率直な私の感想であります。

 したがいまして、お三方からいただいた御意見はもっともだなと思いながらも、また、そうはいっても、公的資金を使うわけでありますから、国民に対する説明責任を果たしながら、また、高校関係者、大学関係者にも理解を求める作業として、私は、この参考人質疑や委員会質疑を重要な場として有効に活用させていただきたい、こういう観点で、幾つか参考人の御意見に質問させていただきたいと思います。

 実は、私が大臣答弁のときに給付型奨学金制度創設の話をするたびに、私の耳元で麻生財務大臣が、財源、財源と、百回ぐらい、私が答弁しようとすると、財源とつぶやくんですよ。その威圧的な言葉に私もちょっと気が引けそうになりながらも、しかしながら、この四ポイントについては常に答弁をさせていただいたと思っています、財源のあり方、それから対象、それから規模をどうするか、そして社会的な評価。この四点について議論を煮詰めながらも、給付型奨学金制度としては必要だと。

 実は当時、二〇一五年から一六年にかけては、いわゆる児童養護施設にいるお子さんたちの修学の支援として、わずか五年間の時限制度として給付型奨学金制度があったわけでありますけれども、到底それでは本来の趣旨には合わないということで、制度にすべきだということで、とりわけ三島先生にはお世話になったと御礼申し上げます。

 そこで、おっしゃったとおりに、妥当性と公平性の議論、この創設に当たって、逆に私はここで終わってはいけないと思っていて、更に中間所得層まで拡充していくべきだ。将来的には、私はJ―HECSの提唱者でありますから、そのことも今後質疑では大臣ともやりとりしたいと思いますが、中間所得層までという一歩手前のこの今の段階において、この制度の妥当性や公平性について、どういうふうにちゃんと国民に理解を求める説明をすべきか、この論点をちょっとお示しをいただければと思います。

三島参考人 ありがとうございます。

 この制度につきましては、先ほど小林先生からも御説明ございましたが、給付型の、今回の、今議論をしている法律案については、確かに時間的に十分な時間をかけたかというところ、ここは一つ、やはり進め方の中で難しいところであったというふうに思います。そういうことで、今の、どの範囲までやるか、それから対象とする者をどのぐらいにするか、それから額はどうするか、その他さまざまなことについて、十分な議論を詰めた上での結論になっているとは私も思わないところがございます。

 ただ、とにかく理念として一番重要なところが、勉強をちゃんとしたい、社会で活躍をしたいと思うけれども、経済的な理由で高等教育を受けられない人たちをどうやって救うかということ、これは間違いなく非常に重要なことであり、もしできることなら、できるだけ早くそういったシステムを動かしていくということ、これに関しては余り反対はなかったというふうに思うところでございます。

 ですので、制度的な論点は、今もう既に申し上げたとおり、それから小林先生、花井先生が言われたとおりの論点についてさまざまな意見を交わしましたけれども、まず最低限、ここの、これだけのところからスタートしましょうということに関しては、委員の中では了解を得たということでございますので。

 私も、この制度は、とにかく動かしつつ、そして検証しつつ、効果に対する評価をしつつ、それから、大学の資格であるとか、あるいは、給付型の奨学金を受けた学生の勉強に対する成果、例えば成績がどうだとかいうようなことも、いろいろな御指摘がございますが、そういったものが、より明快であり、国民の皆様方にとっても理解できるものにしていくのにこれから時間がかかることではないかというふうに思うところでございます。

 法律の中にも、四年後には一度大きく見直すんだ、大きく見直すかどうかわかりませんが、見直しをしてよりよい制度にしていくんだという考え方があるために、ここでスタートするという形をとるのでいいだろうというのが私の主査としての考え方でございました。

 ということで、問題点につきましてはもうお二人の参考人の方からいろいろ挙げていただいておりましたが、その点につきましても決して検討をしなかったわけではなくて、その点についての進め方ということで御了解を得たので、今回はこれでスタートしたい、私の意見はそういうふうに思ってございます。

 よろしいでしょうか。

馳委員 恐らく、給付型奨学金制度の拡充案を更に拡充させるためにスタートさせるということにはそんなに異論はないと思うんですが、やはり妥当性と公平性と規模については、まだまだ、実は提唱していた私ですら物足りないという気持ちがあるというのは、一つ率直に表明しておきたいと思います。

 したがって、評価は、法律上は四年後、つまり一ラウンド、一年生から四年生まで回った後まず評価をするというのが妥当だとは思いますが、私は大規模な見直しが必要であるという認識をまず持っているということを申し上げた上で、四年後以降のことも見通しながら、この財源について、実は我が党内におきましても、厚生労働族議員の皆さんから随分反対というか批判を受けたんですよ、何で消費税の増税で使うんだと。逆に、私たち文教族議員は、うるさい、財源論というのは言い始めたら切りがないんだ、切りがない。

 したがって、私たちは、むしろ、次の消費税増税のときには教育目的の消費税にすべきだという議論まで闘わせながら今回は落ちついた、こういったところでありまして、お互いに、厚生労働族議員からも文教族議員からも、みんながみんな納得したわけではなかったんです。だけれども、財源を一定程度確保してスタートして拡充しないと、これは人生百年時代における我が国の将来にとって禍根を残すことになるから、まずはスタートさせようという政治的な判断だったと私は思っています。

 そこでなんですが、この財源についてもいろいろな議論があったんですよ。どういう議論があったかというと、教育に対する投資は乗数効果が高いので、投資と考えれば、教育国債として交付国債のような形で出せばいいじゃないかという議論が実は主流でありました。税でいえば、消費税を教育目的にするかという部分と、今回のような選択肢、あるいは相続税、贈与税などを減免して教育に回すかという案、さらには、隣にいる村井さんが提唱していたこども保険というふうな議論もあったんですよ。

 財源論については一年間かけて大変な議論をした後、最終的には総理の判断で消費税ということに落ちつきましたが、私は、財源論についても今後とも議論は深めていかないと、そのことが国民に対しての説明責任、妥当性、公平性、これに答えを出していけないと思っておりますが、この財源論について、もっといい財源があるじゃないか、あるいは消費税、今回の増税にあわせて落ちついたということについて、御意見があれば、三島参考人にお願いしたいと思います。

三島参考人 財源の話はとても難しいところでございまして、誰もが納得するやり方になったかどうかというのは甚だ疑わしいところもあるかと思います。ただ、大学の人間として思うことは、やはり若い人たちの教育、人材育成、初等中等教育も含めて、これは我が国にとって最優先にやるべきことである。

 したがって、その中の、教育をよくしていく、人材育成に必要な資源をどういうふうに投入するかというところは、やはりこれは政府の決断だろうというふうに思いますので、消費税からやるのがいいのかどうかというような議論はあるとしても、私がやってまいりましたこの件に関する有識者会議の中では、これはむしろ政府マターであろうというふうなことでございまして、どの部分からこれだけの七千億円以上のものを捻出するかというのは、今の我が国の財政の中で、非常に難しい。これだけの額を、特に血税から支出ということになりますけれども。

 ただ、やはり最初に申し上げたように、人材を育成していくということに対する投資として、それに対して今度の消費税からこれを充てるというふうな決断を首相始め政府がなさったということに関しては、納得ができることだと私は思ってございます。ほかの参考人の御意見もまた伺えればと思います。

馳委員 財源論のことだけでも百時間ぐらい使いたいぐらいなんですが、大変限られた時間ですから。

 ただ、小林参考人も花井参考人も、財源論のことについては、多分この制度はそもそもは賛成しておられると思いますけれども、まだまだ不十分だという認識はよくわかりました。

 その理解は私も理解した上で、財源論について御意見があれば、小林参考人や花井参考人からもお願いしたいと思います。

小林参考人 今御議論がありましたように、財源論というのは非常に難しいということはもう重々承知しておりますが、一つだけ提案させていただきますと、きょうは時間の関係で、五ページ目のところにあります、今後の課題の五番目のところで、教育のための寄附の増加策、これは必要だと思います。アメリカの場合、奨学金というのはかなりの部分が寄附から成り立っているということは御存じだと思いますけれども、まずこういったものを促進していくということは一つの方策だろうというふうに思っております。

 それからもう一つは、孫への教育費について、教育資金に充てる場合には相続税を非課税にするというようなことで、これが現在一兆円以上の規模になっています。こういうことでいいのかということなんですね。つまり、一兆円ということになりますと、これが一%課税されても百億の財源があるわけですから。これについてもいろいろな意見があると思います。むしろこういうことの方が望ましいんだという考え方もあるとは思いますが、そういうことを含めまして、教育費の負担をどうするかということは、もう少し再検討する必要があるのではないかというふうに考えております。

 ありがとうございました。

花井参考人 ありがとうございます。

 私ども、今回のアンケートの調査で、財源をどうするかということについても聞いております。その結果、一位は、やはり今の政府の予算を見直しをしながら、そこから財源を捻出してほしいというのが一番多くて、次に多いのが、法人税等の引上げによって財源を捻出すべきであるということで、消費税とか所得税の引上げということで財源を確保してほしいという声は少数だったわけです。

 その意味でいうと、今回は消費税を活用してということになっておりますので、それはそれで政府の選択なんだろうというふうに思います。ただし、どういう税を使うかということが、対象者及び制度の大きさによると思いますけれども、消費税を活用するということであれば、先生がおっしゃいました中間層まで拡大してほしいということですので、そこを展望したものとして活用していただければというふうに思います。

 お答えになっていないかと思いますが、そのことをお願いしておきたいと思います。

馳委員 花井参考人の思いはよくわかりました。ありがとうございます。

 私は、今回で終わりだと全く思っていませんから。今後のこの給付型奨学金制度の拡充に向けて、あらゆる各界各層から、財源論も、公平性も妥当性も、評価のあり方もいただく必要があると思っていますし、大学側には、社会に対するいわゆる透明性、公表の義務があるというふうには私は認識しております。

 最後になりますが、大学の評価のあり方について、入ってくる学生の一つの絞り込みはやむを得ないとしても、入った大学が本当に社会貢献しているのか、いわゆる経営悪化した大学の温存策になるんじゃないかという批判には応えなければいけません。

 ちょっと時間がなくなりましたが、大学の評価のあり方について、実はオーストラリアにはQILTという評価基準があって、公表されています、国民に。私はそういう制度にしていくべきと個人的には思っておりますが、三島参考人から評価のあり方についてお伺いして、終わりたいと思います。

三島参考人 現在の国立大学を始めとする大学にとって、しっかりとした評価を受けるべきであるということには間違いがないと思います。

 私も、そういう意味で、学長時代には、東京工業大学の教育が、果たして質として、どれだけ国民の皆さんあるいは学生から見てすばらしいものかということをどうやって担保するのか。

 今の日本の大学というのは、入学試験というところで入り口保証みたいなことをしているわけですけれども、その後の四年間、あるいは大学院まで行くと六年、九年ということの間に、彼らがどういうふうな勉強をして、どんなことを身につけて、そして社会へ出ていくかというところの評価が非常に甘いところがございました。

 これが恐らく、大学が変われと言われた一番の原因だと思いますので、やはり、どういう教育をしているかということをいろいろな形で社会に対して示すという手段が必要だろうというふうに思います。

 いろいろなやり方があると思いますけれども、例えば、海外のトップ大学ですと、ホームページというかウエブサイトでそういったデータをしっかりと出して、そして、どういうところへ就職していったか、今卒業生がどう活躍しているかというようなことをきちっと外へ出していくということがあると思いますので、それも一つかと思います。

 ただ、何より重要だと私が思いますのは教員の意識でございまして、教員の一人一人が学生一人一人をどこまで、専門性みたいなものもそうですけれども、先ほど冒頭でも申しましたように、もう少し、若いときの大学での生活でどれだけの知識なり教養なりといった人間としての幅をつけていくかというようなことも含めて、学生たちを育てるんだという意識をもっともっと持たないといけないなというふうに思っております。

 それをどういうふうに担保して、どういうふうなルールで評価していくかというのは、今、教員評価というのが非常に重要になっておりますので、各大学がしっかりとやるべきでございますし、今回の案の中でも、大学に対する評価の上で給付型を受けられる大学というのを審査すべきであろうと私は思いますけれども、単なる数値的に今何かを設定するのではなくて、恐らく、大学をつくるときの設置審のような形のものが、できた大学の数年後にもまた評価をしていく、そういったような仕組みを、特に教育の質についてやっていくべきだろうというふうに思ってございます。

 よろしいでしょうか。

馳委員 終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの菊田真紀子です。

 まず、三名の参考人の皆様には、本日、御多用の中、こうして本委員会にお越しをいただきまして、貴重な御意見を賜りました。まずもって御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 私は、今の安倍政権の大学改革の方針というのは、一貫して産業界のニーズに応えることではないかというふうに感じています。本法案でも、実践的教育が行われるよう実務家教員を配置することが大学等に求められています。

 国は、大学が、教育や自由な学術研究、学問追求の場ではなく、企業が求める即戦力の人材を育成する機関だと位置づけているように思えてならないのですが、参考人の皆様の御意見をお聞かせいただきたいと思います。三名の方、お答えいただきたいと思います。

三島参考人 それでは、まず私から意見を述べさせていただきます。

 大学改革の中で産業界との結びつきを重要視するというのは、これは、特に私がおりました東京工業大学のようなところは、やはり、教育、研究というものにプラスして、大きな大学の使命として社会貢献というのがございます。例えば、日本の科学技術あるいは我が国の産業の国際競争力を高める、そういったことに資する人材を輩出するというのは、やはり大学の中にも一つの大きな使命としてございます。

 ですから、産業界が求める人材というよりは、むしろ、学生たちが大学に入ったことで満足するのではなくて、自分が将来どんな形で社会に貢献するのか。これは、アカデミアでノーベル賞を目指してというような人たちもいますけれども、やはり産業界で就職をして日本の産業力を強くしていこうというふうに思う学生もいる。

 そういった志であるとか気概、キャリアパスを彼らが考えながら学ぶところというふうにして捉えれば、実業界の方、例えば産業界の方に講義をしていただく、あるいは、カリキュラムの一つとして、産業界に半年とかいうような形で、企業がどんなような研究をしているかを見てくるとかいうようなことも必要だと思いますので、必ずしも今の政策が、そういう、ただ産業界で必要とする人材を育てようとしているのではなくて、我が国を強くしていくために、教育面とそれから研究面においてどれだけ大学として学生たちを強くしていくかという全般の中のことだと思いますので、格別、産業界に偏った教育をしろというふうには私は受けとめておりません。

小林参考人 質問ありがとうございます。

 私は、中央教育審議会の大学分科会の委員も務めておりまして、ここでもこういったことについてはいろいろ議論されております。

 基本的には、大学人としての立場で申し上げますと、大学は社会に対して説明責任を果たさなければいけない。これは先ほども出てまいりましたけれども、現在、大学の社会からの信頼というのがかなり落ちているというふうに考えております。これは大学の側にもかなり責任があるというふうに考えておりまして、その中の一つに、やはり産業界のニーズに応えていないということもあるかと思います。

 ただ、これは全ての大学が、あるいは高等教育機関がそれに応えるということとはまた別の問題だというふうに考えています。例えば、東京工業大学のように、非常に産業界と密接に関連して教育を行っている大学もあれば、そことは全く関係のないような、学問の追求をしているような大学もあるわけでありまして、そういった多様性こそが、大学の、中世から数百年間続いてきた理由の一つであるわけでありまして、そういうふうなことは大事にしなければいけないと思います。

 私は、特に、最近の官邸あるいは内閣府等で出されているさまざまな会議の報告書等を読んでおりますけれども、そこで社会のニーズ、産業のニーズという言い方はかなりされます。ただ、それが具体的に何を指しているかということになりますと、かなり曖昧で、よくわからないんですね。

 例えば中教審の方でも、企業の方に来ていただいて、あるいは企業の委員の方からそういうことを言われるんですけれども、そうしますと、ではどういう学生が望ましいんですかというと、協調性があるとかバイタリティーがあるとか、そういう話しか出てこなくて、実際にどういう学生が社会のニーズに合っているか、産業界のニーズに合っているかということについては、実はよくわかっていないわけです。

 ですから、そういう段階で、今回のことに関して申し上げますと、確認要件という形でこういうものがついた、それが社会のニーズ、産業のニーズに合っているというふうなものだというふうに言われると、それはちょっと議論の余地があるのではないかというふうに考えております。

花井参考人 お答えいたします。

 私ども中央労福協は、この間、先ほどの意見でも述べましたように、給付型奨学金制度の創設、奨学金制度の改善、そして教育費負担の軽減ということで取り組んでまいりました。その立場からすると、大学改革がどうあるべきか、そのあたりについては検討していないということで、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただし、今回の機関要件に見られるように、実務経験のある教員による単位数、標準単位百二十四の一割をとらなければいけないとか、理事に産業界の方を入れなければいけないといった形で産業界のニーズを非常に受け入れるというか、その姿が見えてきているのではないかということで、若干の懸念はしております。

 以上でございます。

菊田委員 ありがとうございました。

 私ども立憲民主党の部会でも今いろいろな議論をさせていただいておりますけれども、本法案は、使途が社会保障関係費に限定されている消費税を財源とした社会保障政策であり、これまで進めてきた高等教育の漸進的無償化の流れとは異なります。私は、これをもって高等教育無償化と政府が説明するのはおかしいと思うんですが、参考人はどうお考えでしょうか。小林参考人と花井参考人にお答えいただきたいと思います。

小林参考人 これにつきましては、私は、きょうの資料の後ろに、二つほど最近論文を書いておりまして、無償化というものをどういうふうに考えたらいいかということについての議論をまとめております。

 本来の無償化というものは、あくまで全ての者を対象にするというふうに考えておりまして、その意味で、非常に限定的な無償化であると言わざるを得ないと思っております。例えば、今議員の方からありました、国際人権規約等ではそういうような解釈をしているわけでありますけれども、それに比べますと、今回の無償化というのは非常に限られている。

 それから、もう一つの問題点といたしましては、やはり何といっても、先ほどから議論がありましたけれども、財源が非常に限定されたものになっているために、使途が非常に制限されている。

 そういうことを含めましても、本来の意味の無償化とはかなり違う議論になっているのではないかというふうに私自身は考えております。

花井参考人 お答えいたします。

 先ほどの意見で冒頭述べさせていただきましたように、今回、非常に限定されているという意味で、これが無償化と言えるんだろうかという大きな疑問があります。真に支援が必要な低所得世帯の層というところで限定したということが大きな要因かと思います。「真に」という言葉によって更に対象者を限定しているのではないかというふうに考えます。

 少子化対策ということが言われて、「目的」の中にも入っておりますが、少子化対策というのであれば、私どものアンケートに示されたように、結婚、出産、妊娠に影響を与えているわけです。資料の中に二〇一五年の調査との比較を掲載しておりますが、わずかでもありますが、その影響がふえてきております。

 そうであるならば、全ての低所得者層であろうと消費税は払っているわけですから、それを財源とするということであれば、何といっても、中間層に広げていくという道筋を明確にすることと、総合的な少子化対策を行うというのであれば、それを活用して、もう少し、返済に苦しんでいる今の若い人たちへの支援なども検討すべきではないかというふうに考えております。更に広げていくことを強く要望したいと思います。

 以上です。

菊田委員 ありがとうございました。

 先ほど、花井参考人から、消費税の増収分の使途について、低所得者の進学率が八割に達するまでの間、財源がどのように使われるか明らかにしてほしい、そういう発言がございました。この点について、もう少し具体的に説明をしていただけますか。

 また、この制度で、政府は、進学率が八割まで上昇するという考えを示しておりますけれども、本当に進学率が八割まで上昇するのかどうか。この点については、三人の参考人の方にもお伺いしたいと思います。

花井参考人 お答えしたいと思います。

 今回の法案によって、七十五万人、所要額七千六百億円という数字が示されております。現在の低所得世帯の四割の進学率を全世帯平均の八割まで引き上げるという、その到達した目標数字、所要財源という形で示されております。

 しかし、そこで非常に疑問が出てきますのは、消費税が毎年入ってくる、その財源を七千億とるのかどうなのか、そこがなかなかわからないということがありますが、初年度から一気に七十五万人にふえるとは到底思えません。

 低所得世帯の子供たちは、家計を支えるためにアルバイトをしたり、あるいは、進学したくてもできなくて働かざるを得ないといった、そういう環境に置かれている子供たちも多くいらっしゃいます。そういう中で、勉学ができるような環境もなかなかない、そして進学意欲も少ない、そういう状況も低所得世帯の中には見られるわけです。

 そういう中で、一気に七十五万人になるわけではないとすれば、では、七千六百億円というお金、それだけ初年度必要なのか、あるいは何年間その財源が必要なのか、なかなか今の段階で見えてきておりません。

 そうしますと、七千六百億円とったとしても、その財源というのは差が出てくると思うんです、実際必要なお金と。その差額をどんなふうに使うのかというのが疑問として出てまいります。

 その差額を活用するとすれば、まさに少子化対策であるとか、先ほども述べさせていただきましたように、返済に苦しんでいる若者支援として、有利子を無利子にするとか、猶予期間を延長するとか、そのような見える形での、若者が安心するような施策、あるいは、所得連動返還型奨学金制度の有利子を無利子に広げるとか、そのような施策を講じることも可能ではないかと思います。

 大きな疑問としては、その七千六百億円がどのように使われるのかということが大きな疑問としてあるということでございます。

 以上です。

小林参考人 進学率についてですが、これは少し専門的になるかもしれませんが、いろいろな定義がございます。例えば浪人が入るかどうかとか、中卒者に対する進学率というものもありますし、どういうふうに考えるかということはいろいろな議論がありますけれども、一つ指摘したいと思いますのは、確かに、全体としては、専門学校まで入れますと、現在、高等教育の進学率というのは、全国ではもう八割に近いものになっております。

 ただ、都道府県によって著しい格差があることも事実でありまして、東京都の場合には大学だけで七割に達しておりますけれども、鹿児島とか沖縄ですとまだ四割程度なんですね。ですから、日本の中でもこういったさまざまな格差がある。それから、男子と女子でも差があります。

 きょう問題になっているのは所得による格差ですけれども、こういった格差が複合的に生じているということが問題でありまして、一番そういう意味でこの給付奨学金の対象になると考えられるのは、女性で、地方に住んでいる方、非常に所得の低い方ということになるわけですね。

 ですから、進学率をただ単にどの程度に設定するかということはそれほど重要なことではないと考えておりまして、むしろそういった進学率の格差を是正することの方が重要だというふうに私は考えております。

三島参考人 私は、花井さんの分析が正しいと思っております。いわゆる、こういう制度ができたから大学へ行きたいという人がどのぐらいいるかということに、簡単に言えばそういうことになると思いますので、進学意欲といったようなものが、今の家庭の中での自分の役割、例えばアルバイトをしているとか、高校を出たらもう就職しなきゃとかいうような方たちもいるわけですので。

 ですから、これこそやはり時間をかけて、この制度がどういうふうにそういう層にプラスになっていくのかということを検証しながらやらなきゃいけないと思いますので、いきなり八割がそうなるかというふうには、私はすぐには思えないと思っております。

菊田委員 時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

亀岡委員長 次に、牧義夫君。

牧委員 国民民主党の牧義夫と申します。

 参考人のお三方におかれましては、本当に御多忙中、お出かけをいただきまして、貴重な御意見を賜りましたことに、私からも感謝を申し上げたいと思います。

 私は大学では哲学を専攻しておりましたので、産業界からは一番必要とされない人間なのかもしれませんけれども、将来世代のために質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 冒頭、馳委員からも、高等教育無償化に向けて一歩、二歩前進かな、そういうお話がありましたけれども、私の率直な感想からすれば、まだ一歩にも至らないんじゃないかな、半歩というか、やっと入り口のところに入ったのかなという感がございます。

 そしてまた、財源論のお話も出て、これは非常に有意義なお話だと思いますので、そういうところをこれからもしっかり追及していかなければいけないなと改めて思いました。

 なぜそれを言うかというと、やはりこの財源というのは公金ですので、納税者の理解というものも一方では必要であろうと思います。

 私どもは、民主党時代から常に高等教育無償化を訴えてまいったんですが、そのときに、やはり、後ろ向きの意見をおっしゃる方たちの意見を聞いていると、例えば、中学、高校を卒業して社会に出て働いて納税している人もいるんだ、そういう人たちと、一方では給付を受ける人たち、この負担と給付のバランスから考えて、余り次から次へと給付ばかり求めるのはバランスを欠くんじゃないか、こういうお話もありました。それも一方では、私、理解のできるところでございますので、やはりどこに財源を求めるかということを含めて、これからしっかり議論をしていかなければいけないなと思います。

 また、これは文科省の所管じゃないんですけれども、例えば、私の私見で言えば、未成年で働く人たちは所得税は減免するとか、そういう何か手当ての仕方も一方ではあるかもしれない。また、数年後にもう一回学び直しをしたいという方たちに対する手当てというのも、今回、本来同時にやはり議論されるべきであったなというふうに思うんですけれども、お三方からそれぞれ、そういう観点からのお話をお聞かせいただければ。

 というのは、やはり、今回、国としての若者に対する投資であると同時に、給付を受ける人たちというのは、高等教育というのは自分に対する投資でもあると思うんですね。経済的に言うと、例えばアメリカなんかですと、大学まで進学すると、生涯賃金で言うと、年率計算すると一〇%ぐらいの利益がある。日本でも六%から九%というようなお話もあります。そうやって考えると、自分に対する投資でもある。

 そういう観点からすると、どの辺が妥当な着地点なのか、そういうことも含めて、負担と給付の関係で、それぞれ御意見をお聞かせいただきたいと思います。

三島参考人 ありがとうございます。

 見通しという意味では、非常に難しい問題かというふうに思います。

 今回の、きょうのこれまでのいろいろな御意見につきましても、基本的に、まず半歩なのか一歩なのか二歩なのかよくわかりませんけれども、こういう給付型の、世界的に給付型の奨学金というのがいろいろな形であるわけですが、日本ではきちっとしたものはなかったという中で今回この仕組みが動き出すというわけでございますので、先ほどの公平性とかそれから妥当性とかというような議論は、これから進めながら、しっかりと見ながら、計画をよりよいものにしていくということがやはり重要かな、私はそう思います。

 いろいろな今御提示いただいたような課題について継続して考えながら、このシステムをよくしていくということが必要であることには全く疑いを持たないところでございます。

小林参考人 二つ御質問に答えたいと思います。

 まず第一に、進学者と非進学者の問題であります。これはこの問題に関しましてはずっと議論になっている点でありまして、アメリカでは一九六〇年代からずっとこの問題についてはさまざまな議論が重ねられておりまして、税の負担の仕方、あるいは投資の効果というようなことで、なかなか決着を見ないような問題です。

 ただ、一つ御紹介したいのは、もう二年ほど前になりますけれども、フランスの国民教育省に参りまして、日本ではこういう問題がある、進学する人と進学しない人の間でこういった税の使い方について格差があるというのは望ましくないという議論があるということを申し上げましたところ、国民教育省の担当者の方は、フランスの場合には、全て教育は無償、高等教育を含めて無償ということになっておりますけれども、それは決して非進学者のことを考えていないわけではない、もう一つの、教育だけではなくて、社会保障の方の充実ということもあわせてあるんだ、例えば、若者に対する十分な手当、住居手当でありますとかそういったものを出しているので、教育というのはその中の一つにすぎないんだ、それくらい社会保障が充実しているから、教育についてもそういうことは問題にならないということをお聞きしまして、非常に、何というか、違い過ぎるというのが実感でありまして、日本がそういうようなところまでいけるというのは本当にいつになるのかなというような気がいたします。

 ただ、これが、半歩か一歩かわかりませんけれども、その方向の一つであるというふうに考えております。

 それから、もう一つの問題といたしましては、先ほど委員がおっしゃったのは、収益率というのは確かに高いんですけれども、これは個人に対する効果であります。投資の効果としてもう一つ大きな、やはり社会に対してどの程度の効果があるかということなんですけれども、これについては、実は経済学の間でも、日本では投資効果ということの計測が余り行われていません。ですから、税金を使う以上、社会全体にどのような効果があったかということを示していくことがこれから非常に重要な作業になってくると思いまして、これは私たち研究者の責任でもあるというふうに考えております。

 以上です。

花井参考人 お答えしたいと思います。

 この議論は本当にずっとありまして、教育分野だけではなくてさまざまな分野で起こっている問題かと思います。

 少し古くなりますが、これは二〇一〇年ですが、文科省が民間研究機関に委託した調査がありまして、それをもとに国立教育政策研究所が試算したものとしまして、投資と効果ということで、一人当たり二百五十四万円の投資をすると六百八万円の、経済成長と社会に対して貢献するという試算結果が出ております。

 その意味でいいますと、高等教育を受けることへの投資というのは、社会に影響、あるいは経済成長にも貢献するんだという一つの材料かなと思ってずっと見てきておりますが、そういうことがあるので、大学、高等教育を受けることに対する税の投入というのは、社会全般での共有するものとしてあるのではないかと思います。その意味で、教育は社会的共通資本というふうに言われるんだろうというふうに思います。

 それからもう一つは、小林先生がおっしゃいましたように、教育だけで公平か不公平かといった議論をすることに対して違和感を持っております。

 日本の場合は、若者あるいは中間層に対する目に見える具体的な施策が感じられません。ヨーロッパに行きますと、若者への住宅の援助ですとか、さまざまな形での制度が享受できるということが実感できるわけです。それがあれば、教育という一つの分野だけでこのような議論は起こらないのではないかと思います。さらに、今回の法案で示されたように、低所得者と中間層というふうに線が入ってくることによって、更にその議論が出てくるのではないかということを懸念しております。

 やはり、多くの人がこの制度を享受できる、そういう状態をつくらなければその議論というのは続くのではないかと思いますので、ぜひともそういうことが払拭できるような道筋をつけていただけたらというふうに思います。

 以上です。

牧委員 ありがとうございました。

 幾つもあったんですけれども、時間が余りないのではしょります。

 今回の議論、これは給付型で、新しい制度の創設なわけですけれども、この間、貸与型の、特に有利子の人たちについての議論が置いてきぼりにならないかという懸念を私自身持っております。

 今、ゼロ金利、マイナス金利と言われる時代に、いまだに教育ローンみたいな形で、これは民間がやっていることならともかく、その債権の回収も含めて、私、前国会でもちょっと指摘をしたんですけれども、分別の利益を説明しないまま保証人から全額取ったり、そういうことも起こる。

 そしてまた、この債務の返済に苦しむ人たち、苦しむと言うと大げさかもしれませんけれども、少なからず家計に影響をするわけで、そういう中で、そういう債務を背負っている人たちは、結婚もできない、結婚できても子供もつくれば負担が重いということで、逆にこれは少子化を進めているんじゃないかと思わざるを得ないような状況の中で、やはり、今回のこの議論を端緒にして貸与型の方も大幅に見直す必要が私はあると思うんですけれども、ちょっとお三方それぞれ御意見をお聞かせいただきたいと思います。

三島参考人 貸与型の奨学金、確かに大きな問題が残っていると思います。そして、返済で非常に苦しむ人たちが、まあ、アメリカのようなすごい授業料の高さではないので、まだそれと比較すると低い方かと思いますけれども。ただ、そこの部分は、有利子の奨学金、無利子のもの、それから給付型といういろいろなメニューがある中で、今、給付型ができた以上は、やはりそこの、特に有利子の奨学金のものについてはまた大きく考えを改める必要があるというふうには私も思います。

小林参考人 冒頭申し上げましたように、所得連動型という新しい制度もつくりまして、これがまだ無利子奨学金のみになっておりますので、オーストラリアとかイギリスのように全学生がこの制度を採用するべきだというふうに私は考えておりまして、それによりまして、かなり経済的な負担は減るのではないかと思います。ただ、残念ながら、現在のところはそこまでは進んでいないということであります。

 自民党で提案されているJ―HECSというのもありますけれども、それは選択制ですので、私は若干、それは全員選択制にすべきだという意見はありますけれども、いずれにしても、こういった新しいことを考えていく必要はあるかというふうに思います。

 もう一点は、確かにこういった問題がたくさんあることは事実です。ただ、最後に申し上げましたように、日本学生支援機構自体は独立行政法人で、業務だけは物すごく膨らんでおりまして、それに対して十分な手当てがなされないままに来ているためにこういった問題がますます拡大している、そういう面もあるわけですね。ですから、ここでは、そういったことで十分な対策をとっていただきたい、そういうことを議論していただければというふうに思います。

花井参考人 お答えしたいと思います。

 先ほど意見で述べさせていただきましたように、前回の日本学生支援機構法改正時につけていただきました附帯決議の中に、本来、奨学金は無利子であるべきことというふうに記載されております。一刻も早く有利子をなくし、全て無利子化するようにお願いしたいと思います。さらに、延滞金、これも、今、ゼロ金利の時代に五%という延滞率をつけていることに対しても、早急の検討が必要かと思います。

 そして、先生が触れられました保証人の問題につきましても、本来であれば半額返済で済むはずが全額返済を求めていたということは、これは日本学生支援機構、公的機関に対する国民の信頼を失うものではないかというふうに思っております。

 そういう意味でいいますと、もっともっと同時に改善すべきことがあるのではないかと思います。ぜひとも、今、返済している若者に対する、非常に負担感を持ちながら生活しているということに対して耳を傾けていただきたい。そして、一刻も早く制度を改善していただきたいと思います。

 以上です。

牧委員 ちょっと時間が中途半端になってしまいましたので、ここで終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 きょうは三人の参考人の皆様、三島様、また小林様、そして花井様、本当に貴重な御意見を頂戴いたしまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 私ども公明党も、やはり経済的な理由で学ぶことを諦めるような社会というのはあってはいけないという強い思いで、奨学金の政策というのが非常に大事だろうということで常々訴えてまいりました。

 昔を振り返りますれば、奨学金というものは、もともと成績要件とかいろいろなものがあって、なかなか、希望する人がみんな借りられるというふうなことではなかった時代もございました。しかし、そこから、やはり意欲のある人はしっかり借りられるようにしようということでやらせていただいたり。ただ、その後、奨学金を借りてそして返還をしていくということで、非常に負担が大きいという中で、奨学金の返還の負担を何とか減らしていけないか、こういうことで、私も初当選以来もう六年少しでございますけれども、この間、奨学金に関して一連のさまざまな改善というものがなされてきたというふうに思います。

 有利子をやはり無利子に転換していくという大きな流れもございましたし、所得に連動して返還ができる、返還の負担というものを軽減する所得連動返還型というものも導入をさせていただくことができました。そして、給付型の奨学金というものもいよいよスタートいたしまして、そして今回、金額的にも、そして規模としてもそれを非常に大きく引き上げていくということで、そういう意味では、非常に大きな改革を進めていく。先ほど来、ここから更にまた進めないといけないという皆様の御意見があって、それは私も、もちろん今後更に進めていくということで、更にその決意をしております。

 少し重複する部分もあるかもしれないんですけれども、冒頭、三人の参考人の皆様に、ここ数年の一連の奨学金制度に関してさまざま改革をしてまいりました、それにつきましての全体的な評価と、やはり今後、重点的に更に進めていくためにはどういうところを重点的に考えていかないといけないのか、これについて御意見、また御示唆、御指導を頂戴いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

三島参考人 ありがとうございます。

 今回の給付型の奨学金がスタートをするというところ、これは非常に大きな転換期だと思います。

 そして、今までにあった、給付型ではない貸与型のさまざまな奨学金制度、あるいは、大学自体がまた学生にいろいろな形の援助をしたりというようなことのメニューがたくさんございまして、その中で、非常に大きな新しい仕組みが今度の給付型だというふうに思いますので、その全体を見渡しながら、今まであったものを見直していくというのは、当然、給付型が始まったことであるわけでございますので、そういう意味では、非常に広い視野で、奨学金というか、学生たちの教育への援助、支援という形が本来どこまでどうあるべきかということについて、これからまさに検討していく段階であろうというふうに思ってございます。

小林参考人 冒頭申し上げましたように、二つ新しい制度が入って、今委員の御指摘のとおりなんですけれども、これらは全て、残念ながら、さまざまな妥協の産物と言わざるを得ないと思っております。

 その中で大きいのはやはり財政的な制約でありまして、例えばオーストラリアとかイギリスの場合ですと、所得連動型でも一定の所得以下の人は全く猶予になるわけですけれども、日本の場合は二千円を取る。十年間の猶予というのはありますけれども、そういうような形で、非常に中途半端な制度になってしまったということは残念ながら事実だろうというふうに思います。

 ですから、そういった点を含めまして、今、三島先生からもございましたように、さまざまな点について手直しをしていく、これが一つ重要なことだろうというふうに思います。

 それからもう一つ、先ほど申し上げましたとおり、所得の問題だけではなくて、地域の問題というのがやはり日本でもかなり大きな問題でありますので、これは大きな問題になりますけれども、東京の一極集中、大学についてもそれがありますし、そういったことをどう考えるかということもあわせて考えなければいけない。そういう総合的な施策が求められているというふうに思います。

 ただ、これはもう何年来ずっと議論されているんですけれども、なかなか本質的な解決策が見出されていないということで、繰り返し繰り返し議論されているというようなところがあって残念なんですけれども、やはり、それでもずっとやっていかざるを得ないというふうに思っております。

 そういう意味では非常に歯がゆいんですけれども、なかなか、高等教育政策というのは少しずつしか動かないというふうに考えておりますので、そういう意味では、今回のものはやはり日本の中では大きな前進だと思っていますので、その手直しをぜひ考えていきたいというふうに思っております。

花井参考人 お答えいたします。

 二年前に給付型奨学金制度ができたことで、大きな前進が図られたと思っております。対象者数は今後拡大されていくということもありますので、そういう意味では、この間、一歩ずつ前進してきているかなというふうには思います。

 ただ、先ほど来から述べさせていただきましたように、やはり、今回の制度、対象も額も、それから授業料減免も大幅に拡充されるということは大きな前進ではあると思いますが、一方で、ずっと指摘されてきております、今返済している方の生活における大変さとか、そういうことに対してはほとんど光が当たっていないということについて大変懸念をしております。

 新しい制度、そして対象者を拡大していくという方向性とあわせて、今返済で苦しんでいる若者への救済策、そのことを制度の改善によって示すことで、若者が、社会に対する信頼ですとか意欲とか、そういうものが持ち得るのではないかというふうに思いますので、ぜひとも、そういうこともあわせて改革を進めていただきたいと思います。

中野委員 ありがとうございます。

 三人の皆様から、今回の制度で前進をする、しかし、さまざま更に改善をしてほしい点、そして制度を、支援を更に深めていただきたい点、いろいろ御要望もいただきました。

 私も、今回の制度の導入で、これで終わりというふうには決して思っておりませんでして、やはりさらなる高等教育に対する支援、そしてまた改善、こういうものをしっかりこれからまた議論してまいりたいというふうに思います。

 先ほど三島先生からも小林先生からもございましたけれども、今回、四年後の見直し規定というふうなものもございまして、これをすることによって学生をどのくらい実際に後押しすることができるのかということはしっかり見ていかないといけないというふうに思っております。

 今回、特に経済的な理由で、本来、意欲はあるけれども高等教育への進学を断念をするような学生をしっかり後押ししないといけない、こういうところが大きな焦点というか目的の一つであったかというふうに思います。ですので、この制度を導入して、具体的に、では、そういった学生をどのくらい本当に後押しをできているのかということは、私は非常に、検証していく中で一つ大事な点だろうというふうに思っております。

 なかなか、この文部科学委員会以外でも、こうした所得の低いところ、あるいは社会的にさまざまな困難を抱えている、例えば養護施設のようなところへ行かれているお子さんが非常に進学率が低いという話であったり、あるいは生活保護を受給されている中で、大学への進学というものにさまざま、いろいろなハードルというか、進学をして世帯を分離していくと生活保護そのものの受給額が下がるであるとか、いろいろ複合的な要因もあろうかというふうには思いますけれども、実際に、この制度を導入して具体的にどのように後押しをしていけるのかということをしっかりと見ていく必要があるというふうに思います。

 そこで、三島先生と小林先生に、この見直しを今後検証しながら進めていく中で、具体的にどのような点に気をつけて検証を進めていくべきか、あるいはどのような点を、小林先生の方からは既にさまざま、こういうところを気をつけて今後検討していくべきだということで御指摘もいただいておりますけれども、今後、これから制度を動かしていくに当たってしっかりと留意していくべき点というのはどういうものがあるのかということにつきまして、お二人の参考人から御意見をいただければと思います。

三島参考人 それでは、お答えいたします。

 きょう冒頭の参考人からの意見等を伺っておりましても、やはりかなり大きいのは、所得の制限というんですかね、それが、中間層まで持っていくのかどうか、そこはやはり非常に大きな問題だろうというふうに思います。ただ、これはさらなる財源ということを伴うことなので難しいとは思いますけれども、そこの傾斜といいますか、そういったものをどうするのが一番いいのかということは重要ポイントの一つだと思います。

 それからもう一つは、やはり学生の学ぶ意欲をどうやってはかるかというところで、先ほども、成績が四分の一以下が何年か続くと打ち切るとかいうような、いわゆる制限の方、そのあり方がどうなのか。

 それから、大学の機関に何を求めるのかというふうなこと、これは今、もうスタートする時点でのやり方をやはり検証していかなきゃいけないということで、最初の四年間というのは、今の三点ですかね、学生の問題、大学の問題、そして所得の傾斜に対する支援というようなところ、そのあたりが一番、緊急には考えていかなきゃいけないんじゃないかと思います。

小林参考人 三点お答えしたいと思います。

 第一点目といたしましては、先ほど御説明いたしましたように、現在、三段階にしかなっていないというのはかなり問題だというふうに考えておりまして、これはアメリカとかドイツのように、やはり連続型になるというのが一番望ましいというふうに考えております。その辺はこれから検討していただきたいと思います。

 それからもう一つは、進路の問題ですけれども、確かに進学は後押しするという効果はあると思いますけれども、もう一つ考えなければいけないのは、例えば、自宅から自宅外への、通学が可能になったというようなこともあるかと思います。これも、進学はできるけれども、一つの制約になっているということはあるかと思います。自分の希望しているようなところが自宅外にしかなくて、経済的な条件で進学ができないという方はかなりいらっしゃいますので。そういうことで、ただ単に進学か非進学かではなくて、もう少し細かく見る必要があるかというふうに思っております。これは大学と短大と専門学校、あるいは高専の選択についても同じことが言えると思います。これが第二点目です。

 それから三つ目は、検証しなければいけない問題として、家計急変に対する対応ということが今回盛り込まれましたので、これによって休学とか中退がどの程度防止できたのかということです。

 これはなかなか難しい問題でありまして、中退というのも、必ずしもネガティブなものだけではなくて、就職ができたとか、あるいはほかの進路に変わったというようなポジティブな場合もありますので、純粋に経済的な理由だけで中退してしまった、これは支援があれば避けられるわけでありますから、そういったものがどの程度効果があった、こういうことは検証していく必要があるのではないかというふうに考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 さまざま御示唆をいただきまして、しっかりと受けとめまして、やはりこれからの制度を議論する上で必要であるというふうに思いますので、いただいた御意見をしっかり受けとめながら議論を進めてまいりたい、このように思っております。

 先ほど来お話が出ておりますけれども、私どもも、今回、こうした給付型の奨学金ということで、あるいは授業料の減免ということで大きく導入ができたと思っておるんですけれども、やはり子育て世帯全体で見ますと、もう少し、中間層の世帯あるいは多子世帯のようなところも非常に負担感が大きいということで、少子化対策という意味では、こういうところもしっかり、もっと力を入れていかないといけないとも思っております。

 また、私も委員会などでも訴えておったんですけれども、やはり、今既に卒業してしまった、既卒者の方の返還の負担が非常に大きいというのも課題であろう、これを軽減していかないといけないんじゃないかということで、例えば返還の猶予の期間を延ばしてもらったりとか、そういう取組というのはさせていただいております。

 こうした中間層に対する支援のあり方、あるいは既卒者に対する返還の負担の軽減のあり方、もちろん、財源がどれだけ、どのような形で確保できるかによってどういう支援ができるのかというのは全く異なってはくるんですけれども、どういうふうなことが支援のあり方として考えられるのか。

 時間も少し迫っておりますので、簡単に、もし三人の御参考人の皆様から御示唆いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

三島参考人 恐らく、今の、現在もう卒業して奨学金を返還している人たちへの手というのは非常にある意味難しくて、今までずっと返還していた人が急に返還が軽くなるというようなことに対する理解を得るということも難しいとは思いますけれども、むしろ、今議員がおっしゃった延滞の期間であるとかそういったものの猶予、それからいわゆる所得に連動した形の返し方の制度、そういったところが、つくりつつあると思いますけれども、それがちゃんと、しっかりと動くことが重要かなというふうに思います。

小林参考人 ここ数年間の間に日本学生支援機構の奨学金というのはかなり大きく変更がありまして、猶予期間が五年から十年になったとか、延滞料が一〇%を五%にしたとか、あるいは減額返還というもので二分の一あるいは三分の一にするというような、さまざまな改革が進められてきております。

 ただ、それにもかかわらず、やはり本当に返還できないという方がいるということも事実でありますので、そのあたりの方に対してどういう、もう少しきめの細かい対応ができるかということは、これからぜひ検討していただければというふうに思います。

花井参考人 お答えいたします。

 まず、有利子を無利子にしていただきたいということと、猶予措置がことしの三月で切れてしまうということで、十五年への延長、延滞率の三%への引下げ、それから所得連動返還型奨学金制度の有利子への拡大をぜひ検討していただきたいと思います。

 そしてもう一つ、保証人のあり方としまして、奨学金を返済している人の負担、これは親も含めてですが、保証人を抱えているということが大きな負担になっているということもありますので、ぜひとも、私どもは機関保証一本にすべきだというふうに主張しておりますので、そのことも含めて検討をお願いしたいと思います。

 以上です。

中野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 本日は、三島良直参考人、小林雅之参考人、花井圭子参考人にお越しいただきまして、貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 幾つかの点について質問をさせていただきます。

 まず、国際人権規約に基づく高等教育の漸進的無償化について、今回の法案とのかかわりについて伺いたいと思います。

 国際人権規約の第十三条では、一項で「この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。」と述べております。そして、その二項の(c)は、二〇一二年に留保を政府は撤回いたしました。そこでは次のように述べられております。「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」と述べております。既に認められてきたものに(e)というのがありまして、そこでは「適当な奨学金制度を設立し」云々と書かれているので、これは、奨学金制度というのはもう既に政府はやるべきものというふうに言われてきたというふうに理解をしております。

 それで、まず三島参考人に伺いたいんですが、高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議の座長をされておられました。それで、二〇一四年に、今の給付奨学金を議論した専門家会議というのがありまして、そこでは、この国際人権規約に基づく高等教育の漸進的無償化ということを念頭に置いて議論をされたというふうに思います。

 今回の専門家会議では、人権規約との関連というのは当然議論されていると思うのですが、議事録を見てもその辺がよくわかりませんので、その点について伺えますでしょうか。

三島参考人 今回の専門家会議というのは、直近の、私が座長をしたところだと思いますが、その件は、前提としてそういうお話があるのはもちろん承知しておりましたけれども、給付型の奨学金というのをどの範囲までやるかということは、かなり、もっと具体的なことになりますと財源の問題とかそういうことがすぐに出てまいりますので、本来、そういったようなルールに対してどこまでやれるかという話でしかなく、ですから、そのことに全面的に対応しようとかいうようなことの議論はできない状況だったかと思います。

 それで、どの範囲からまず始めるのか、そして、その前にございました、スタートしたときの給付型の、二〇一六年ぐらいですかね、最初に立ち上がった部分でございますよね、それをまずスタートさせた後に、じゃ、どこまでいけるかということの議論を今回して、ここに至っているわけなので、そういう意味では、前提としては、恐らくどこまでいくのが理想かというのはわかっているわけなんだけれども、それに対してどれだけの財源をどれだけの期間に用意をしてスタートできるかというところでは今回の結論になったというのが正直なところかと思います。

畑野委員 ですから、政府は高等教育の無償化というふうにおっしゃるんですけれども、高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議の第一回の議事要旨を見ても、政府の方からは、「真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を実現し、」というので、これはちょっと変なんですよね。それについて特に議論はなかったというお話でした。

 国際人権規約の高等教育の漸進的無償化の内容は何かというと、一番大きいのは授業料、入学金の問題なんですね。ですから、私は、当然、漸進的無償化というのならば、学費を引き下げていく、これが政府の方針としてあるべきではないかというふうに思うんです。

 それで、その点について、高等教育の漸進的無償化のこの人権規約と、学費の値下げの問題について、三人の参考人の方にお伺いしたいと思います。

三島参考人 その点こそが私が先ほど申し上げたところで、全面的な高等教育の無償化という、本当の意味の、授業料であるとか入学金、もう全部撤廃するような、撤廃というか、それを支援するというようなところまでの議論はできない、財源のこともございましてできないということで、とにかく、本当に必要な人に限ってというのがどこまでかというような議論はさんざんやってございますけれども、今できる範囲でどこまでを援助するかという議論をずっとしてきて、こういう状況だということでございます。

小林参考人 委員のおっしゃるとおり、国際人権規約は漸進的な高等教育の無償化ということを定めておりますので、これは政府としては努力義務だというふうに考えております。

 その上の前提なんですけれども、先ほど議論がありました進学者と非進学者の問題というのがございますので、そのあたりをどういうふうに考えるかということを議論する必要もあるかと思います。

 もちろん理想的には、全て無償であるということが望ましいわけでありますけれども、現実の問題としてはなかなかそこまではいけない。まだ半歩か一歩かわかりませんけれども、そこに踏み出したというのが、残念ながら、日本の状況だろうと思います。

 ただ、指摘しておきたいと思いますのは、この問題というのは、今回、給付型奨学金と授業料減免がセットになったというのは初めてのことでありまして、奨学金は奨学金、授業料問題は授業料問題としてばらばらに今まで議論されてきたことが多いと思いますけれども、今回初めて、これをセットにして考えるという考え方が出てきまして、これは教育費の負担をどういうふうに考えるかという問題につながるわけでありますから、あわせて授業料をどうするかという問題も議論しなければいけない。

 いきなり無償にするというのは難しいかと思いますけれども、じゃ、どの程度の授業料水準がいいのかということについても改めて議論する必要はあろうかと思います。

花井参考人 お答えします。

 国際人権規約との関連については、今、直接は意見を述べることはなかなか私としても難しいと思っておりまして、漸進的無償化を目指していく、日本が留保を撤回したということは承知しておりますが、その方向に向かって進めていただきたいということは、願いとして強く持っております。

 先ほど来主張してきましたように、日本の学費、やはり余りにも高過ぎて、家計の上昇を更に上回る勢いで学費が伸びているということについて、そこをもっと下げるべきだというふうには考えておりますが、どの程度下げていくか、国立、私立をどうしていくのかというのは大きな問題だろうというふうに考えております。ただ、早急にそこの検討にも着手していただきたいと思います。今の学費が値上がっていくその状態をそのまま放置した形でのさまざまな支援策というのは、車の両輪からすれば違うのではないだろうかというふうに思っておりますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

畑野委員 花井参考人がおっしゃったことにかかわって、三島参考人に伺いたいんですけれども。

 先生が学長をされていた東京工業大学で、学費を値上げするということなんですね。しかし、今度の制度で、例えば非課税世帯、モデルケースでいうと二百七十万円は全額ということの支援なんですが、例えば東京大学では既に、モデルケースで、自宅通学生は収入四百七十万円以下で学費全額免除になっているんですよね。だから、こういうこととの整合性はどうなのかということも出てくると思いますし、花井参考人もおっしゃったけれども、授業料引下げ、国立も私立も含めてですが、公立も含めてですが、そういうふうにしていくような議論を進める際に、大学としてはやはり、運営費交付金の問題ですとか、もっともっと支援が必要だったのではないかというふうに私は思うんですが、率直なところ、いかがですか。

三島参考人 ありがとうございます。

 東工大の授業料の値上げについては御質問が出るだろうなというふうには思っておりましたけれども。

 授業料の値上げは、基本的に、今この制度とのかかわりからちょっと離れますと、国立大学法人になって以降、プラマイ二〇%、授業料は大学の権限で変えられるということがございました。そして、一方で、今御指摘のあった運営費交付金がもうこれ以上上がっていくということもないでしょうという中で、大学の中の運営の中で、どうやって東京工業大学の研究力と教育の質の改善をしていくかということに私が学長になってから真剣に取り組んだ結果、大きな教育改革、研究改革をいたしました。

 それで、それによって、今までの国立大学でないぐらいの非常にしっかりしたガバナンスのもとで、いろいろな新しいタイプの教育の仕方、そして、先生方が何を教えたいかじゃなくて、学生が何を身につけたいと思うかというようなことを重視した教育制度にしたことが、一つ、東工大にとりましてはよりよい教育改革をスタートさせたということから、授業料を上げてもいいのではないかという議論をずっとしてまいったところでございます。それは、授業料を上げることによって大学の財政的な基盤を強くし、そして、それによって更に教育や研究に投資していく、資源を投入していくという考え方からやろうということにしたわけですけれども。

 ただし、同時に、やはり家庭の経済的なものが弱いところの学生たちには、本学、大学自体が、例えば産学連携で入ってくる自己収入、そういったものから大学独自の奨学金をつくって、そして、値上げ分については、非常に厳しい学生についてはきちっとそれを配慮するという、独自の奨学金の制度との両輪でもって発表をしているというふうに思います。

 ですから、授業料の値上げというのは、大学を運営し、東工大がより教育、研究面で世界に伍してやっていく大学となるために必要な経費の一部として授業料の値上げをするけれども、学生たちがその分が厳しいという状況であれば大学として支援をする、そういうセットでやりましたということ。

 それでよろしいでしょうか、お答えは。

畑野委員 二〇%上げることもあるけれども、二〇%下げることもできる、だけれどもその財源がない、運営費交付金も上がる見込みがないというふうにおっしゃった。そこをやはり変えていくことが必要ですし、やはり国際的に見たら、人権規約で漸進的無償化に行こうというときに、先ほど花井参考人からもあったように、値上げが行くというのはこれでいいのか、そういう議論をやはり本当にやっていく必要があるというふうに私は思います。

 残る時間で二点伺いたいと思うんですが、まず、大学の機関要件で小林参考人に伺いたいというふうに思います。

 実務経験のある教員による指導科目が標準単位数の一割以上、あるいは、法人の理事に産業界等の外部人材を複数任命している、この点について、先ほどおっしゃっていただきましたが、加えて言っていただくことがあればお願いいたします。

小林参考人 初めに御指摘したいと思いますのは、実務経験のある教員というのはこのパッケージで初めて出てきた概念でありまして、現在、専門職大学院については実務家教員という言葉がありまして、これとよく誤解されるんですけれども、これは全く違うものであるということはまず押さえておく必要があるかと思います。

 それで、実際どういうようなものが実務経験のある教員に当たるかということについては三島先生のところで議論されたと思うんですけれども、そういうことで新しい概念を持ち込んだんですけれども、そこが曖昧なまま入ってきてしまったので、そこで非常に、実務経験のある教員というのは何かということから、さらに、では、産業界とつながっているということならインターンシップをやっているのでもいいのではないかとか、いろいろな派生的なことが起きているわけです。

 ですから、そういう意味で、最初に、パッケージのときに非常に厳密に実務経験のある教員という言い方をしてしまったということが私は問題の一つではないかというふうに思っております。

畑野委員 三島参考人、その点ではどうなんでしょうか。これは先生に言うのもなんですが、もう経済パッケージで決まっているものを、先生の、座長としておやりになったということなんじゃないかと。上から言われたのをそのまま具体化したという専門家会議だったのではないかと思いますが、その点、いかがですか。

三島参考人 今の、大学に、機関に対して要求されることというのは、確かに案として当初出てきております。ただ、それを大学として受けられるかというのは国大協でも、国立大学協会ですね、議論いたしましたし、それで、例えば理事の数であるとか、それから実務経験のある人というものの定義がはっきりしないので、そこをちゃんとしなきゃいけないということの議論は盛んにやりましたので。

 例えば理事というのは、国立大学はもう数が大学によって決まっていますので、それを更に、実務、学外の方を入れるというようなことに関しては、理事の定員の問題と絡む問題ですので、そこのところは、非常勤でいいからというような形で、理事が一人ふえるという意味ではアクセプタブルかなというようなこと。

 それから、実務経験がある人というのは必ずしも産業界とは限らないですし、特に東京工業大学のような大学は、もう本当に産業界と結びついているので、別に新しいことではないということもございます。その辺は大学によって事情はございますけれども、実務経験がある人を入れるという意味は、必ずしも産業界の方を大学の中にどんどんふやして入れろという意味ではないというふうに、専門委員会では、概念としては了承したということでございます。

畑野委員 最後に、花井参考人に伺います。

 財源として消費税を挙げる人は少なかったというお話がございましたけれども、生活実感として、消費税に対する勤労者世帯あるいは学生の思いで何か聞いていらっしゃることがあるか、あるいは感じていらっしゃることがあれば、最後に伺って、質問を終わります。

花井参考人 お答えします。

 大変難しい質問をいただいたと思っております。

 消費税の引上げで賄うという、実現してほしいことというのは、財源のあり方としては今の政府予算を見直すということ、そして、消費税を引き上げることに対する要望は少なかったということは先ほど述べさせていただきました。

 ただ、今回の法案はそのことが前提になっているということで、消費税の賛否であるとか、あるいは学生がどのように考えているかということについては、中央労福協として検討しておりませんので、そこは控えさせていただきたいと思います。

 ただ、一つだけどうしても言わせていただきたいのは、消費税を使うのであれば、そこは全ての人に還元されるべきではないかということだけ述べさせていただきたいと思います。

 以上です。

畑野委員 ありがとうございました。終わります。

亀岡委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳と申します。よろしくお願いします。

 本日は、三島先生、小林先生、花井局長、お運びありがとうございます。御意見を拝聴して、大変参考になりました。

 それで、私は、まずお三方に早速質問させていただきたいんですけれども、よく今、日本国は、価値観を共有する国々という言い方をして、価値観ということを一つの外交のスタンスのメルクマールにしているわけでありますけれども、その意味で、教育の機会均等あるいは学問の独立とか、こういった点をちょっと、基本的な考え方をお伺いしておきたいなと思っております。

 ちなみに、ウプサラ大学というのがスウェーデンにあって、ストックホルムの数十キロ北にあって、スウェーデンで一番古い大学です。スウェーデンの方に三十年前に伺ったら、三十年前の段階で、スウェーデンという国は大学に進学する人はみんな授業料はただですよというお話を、三十年前に聞きました。ようやっと日本国も、高等教育も無償化が、一部ではありますけれども、始まるということは大変ありがたいことで、いいことだと思っております。

 今、大学の進学率というのをちょっと緊急で調べましたが、スウェーデンの場合は六三・五五、ちょっと参考として、ドイツが六八・三三、フランスが六四・四四、英国が五九・四一、これが、ユネスコの二〇一七年ベースの、発表が二〇一八年十二月という数字でございます。

 一方で、もう一つだけ申し上げますと、イギリスの古い大学、有名な大学は、大学の休日が国家の休日と違っていて、御案内だと思いますけれども、大学の休みの日は国家はやっていて、国家が休みの日は大学が授業をするというぐらいの学の独立の意識が私はあると思っております。

 そういったものをひとつひもときながら、高等教育の機会均等、私はもう一つだけ言わなければいけないんだ、ちょっと私の党は、この国は実は大ピンチだと思っていますので。いつもこの部屋というのは、実は、三島先生がお座りの席は麻生さんがいつも座って、私は、麻生元総理というか副総理には、いつもこう言うんですね。プライマリーバランス黒字化が必要だと言うんですけれども、いや、プライマリーは除いてください、バランスの黒字化ないし均衡が必要だということをいつも確認させていただくんですけれども、そういった意味で、財源の制約があります。

 しかし、馳元大臣が言われたとおり、日本を救えるのは子供たちでしかなくて、若い人たちでしかなくて、まだ十年、二十年かかるかもしれませんけれども、本当に我々の大ピンチを救ってくれるのは、財政的なピンチも含めて、子供たちしかないと私は思っていますので、この部分は手厚くしていく必要が正直あると思っていて、その意味からも、我が党としては、憲法についてもタブー視せずにしっかり議論をして、完全無償化をしていくことを明記するべきだということを言わせていただいております。

 ちょっと前振りが長くなりましたけれども、その前提のもとに、高等教育の無償化の進展について、教育の、特に高等教育の機会均等という点について、先生方の価値観というかを改めて確認させていただきたいと思います。順次、三島先生からお願いいたします。

三島参考人 高等教育の真の意味の無償化ということ、それから機会均等、この二つとも、私は、やはり我が国の理想として目指すべきであろうというふうに思ってございます。

小林参考人 私も、ウプサラ大学は数年前に訪れたことがありまして、そのときに、先ほどフランスの話をしましたが、スウェーデンも非常に恵まれておりまして、私立大学も授業料は無償です、それくらいに福祉を充実させているわけであります。

 ただ、少し指摘したいのは、進学率に関して申しますと、スウェーデンは成人学生がかなり多いので。日本の場合、進学率となると、少し専門的な議論になりますけれども、フローの概念で十八歳の人がどれぐらい進学しているかという形でやりますけれども、ストックで見るわけではありますが、そこで若干違いがあります。

 ですから、スウェーデンの場合、リカレント教育ということで成人学生が大学に戻ってくるというところがありますので、その辺で六割ぐらいになっているというふうに考えていいかと思います。

 それから、学問の自立といいますか、大学の自治というのは大学の存立基盤でありまして、ですから、ウプサラ大学のような数百年続く大学がそれで生き延びてきたということがあるかと思います。

 御質問の、教育の機会均等ですが、私も、理想としては、全ての方が無償で教育を受けられるということが望ましいと思っていますが、ただ、現実には、世論の調査をいろいろ見てみますと、大体無償化自体には賛成はするんですけれども、税金を使うということになると途端に反対が多くなるんですね。さまざまな調査の結果を見ますと、大体三割程度しか賛成がないわけです。ですから、これは憲法審査会でも申し上げましたけれども、このままいきますと国民が支持しないということになりかねませんから、そこを、スウェーデンのような、無償化に賛成しているというような状態に国民がなれば別ですけれども、現在ではそこはかなり難しいのではないかというふうに思っています。

花井参考人 お答えいたします。

 私も、機会均等は保障されるべきであり、望む方全てが無償で高等教育を受けられるようになることが理想かというふうに考えております。それが基本的な考え方です。

 以上です。

杉本委員 ありがとうございます。

 その上でなんですけれども、既に畑野先生が三島先生に質問をされましたけれども、教育の質というところは大変大きなテーマであって、私も、さきの質疑だったか、教員のエバリュエーションというか評価というのがかなり、日本でも定着しつつあるのかもしれないんですけれども、それこそ三十年前の世界でそういったことを、私は授業について評価をさせていただいた記憶があるんですけれども。

 そんな意味で、今、授業料が高い、安いという議論もありましたけれども、高等教育において先生の質の確保、そして授業の質の確保、いろいろ工夫をされておられるとは伺ったんですけれども、そことのバランスでいくところの教員の給料、先生方の給料、あるいは授業料の水準観。これはまた財源の話があるんですけれども、財源の話をちょっと横に置いていただく中で、いかに先生の質、授業の質を確保するべきなのか、それにはお金の裏づけが要るのか、いや、むしろ、それと違うようなソフトの面だとかが何かあるのかということをお伺いしたいと思います。

 正直申し上げて、私も銀行に二十二年ぐらいおって、仲間たちが、それこそリカレント教育を受けられるような学校の先生に。社会人を経験しつつも本当に教養が深くて、欧米の古典の話とかいろいろ私もよく聞かされて、皆さんに逆に例示することが結構、この間は、きのうの質疑では「レ・ミゼラブル」の話を実は申し上げて、日本は暴動が起きるリスクがあるというようなことを申し上げたんですけれども。

 そんな意味での教員の質の確保、ちょっと長くなりましたけれども、またその点について、三人の参考人の、先生方、局長さんの方から伺えればと思います。

三島参考人 今の御質問は議論すべきことが非常に大きいところでございまして、大学を運営していく中で教員の質をいかに高めるかということは大問題でございます。

 基本的には、給与体系の問題も、それにもやはり絡むことがございまして、教員の評価というのをどうするか、これはいつも大学の会議では問題になり、評価という言葉が出た途端に教員の人たちがぴくっと、目が、どきっとするような感じになるんですけれども。でも、その評価をしっかり行わなければ絶対にいけない、しかし、その評価を行ったものがどう、例えば給与に反映されるのかというようなところは、今の大学、国立大学の給与体系ではなかなか難しいということでございます。

 それよりも、めり張りをつけようということをどこの学長もいろいろお考えになって、特に、基本給にはさわれないけれども期末手当のところで大きく差をつけるというようなことはやっているわけでございますけれども。何より教育の質ということに限って言いますと、やはり先生が教育にどれだけの熱意を持つかということなので、これをはかるのは非常に難しゅうございます。

 ただ、学生からの教員の評価であるとか、そういったものを見ることと、それから、逆に、今度は執行部として、教員がどういう教育のやり方をしているかという、いわゆるFD研修的なもので、学生たちにどういうふうに接しているかというようなことを見ることもある程度可能でございますので、そういうようなものから、大学としての教育に非常に熱意を持っている人に教育賞みたいなものを出すとか、そういうことはいたしますし、それから、世界からトップを、研究、教育に携わっているような方をお呼びして、講義を例えば半年持っていただくとかいうようなことも、どこの大学も今一生懸命やっていると思います。

 本当に、研究もそうなんですけれども、やはりどれだけ教育、研究に熱意を持った人を大学の中に呼び込めるかというのが、各大学の競争になるかというふうに思います。

小林参考人 これも本当に議論したら切りがないくらい大きな問題だと思いますが、大きな流れといたしましては、教育の質とか教員の質というものをどういうふうに担保するかということについて言いますと、従来は、大学設置基準で、非常に厳しく入り口でコントロールしたわけですけれども、これを次第に、評価によって出口でチェックするというような形で政策としては動いていると思います。

 ただ、私の見るところでは、これは現在過渡期でありまして、どちらにもなっていない。ただ、設置基準自体による規制というのもある程度は必要でありまして、やはり不良品を世の中に出すわけにはいかないわけでありますから、そういう意味では入り口のコントロールというのも要ると思いますけれども、ただ、それに対して、やはり出口のチェックというのはまだまだ不十分だというふうに考えております。

 これについては中教審でもいろいろ議論しているわけでありますが、もう一つ指摘したいのは、現在、大学院への進学者というのがかなり減少してきています。

 これは、一番の原因はやはり就職問題で、これから大学が減っていくわけですので、就職が難しいということがあるんですけれども、二番目に重要なのは経済的な問題です。

 特に、アメリカのように、就職の良好なところは、ローンを出して進学させて、後から返してもらうという方式ですけれども、基礎的な分野については、それほど就職もよくないし給与もよくないですから、そこに対しては連邦政府がすごく力を入れてやっているわけですね。そういうようなめり張りが必要ではないかというふうに考えています。

花井参考人 お答えいたします。

 先生、私、大学の関係者じゃなくて、教員の質の確保であるとか給与体系等々について全く知識がございませんので、お答えは控えさせていただきたいと思います。申しわけありません。

杉本委員 ありがとうございます。

 ちょっと的外れな質問をした部分もあって、御無礼お許しください。

 次に、もう時間がほぼなくなってきたかもしれないのですが、小林先生にちょっと、細かく先生の資料の点で伺っていきたいなと思うんですけれども。

 崖効果のところの、一ページ目のところの最後の行で、より精緻な給付額の設定が求められると。日本は三段階で、フランスは八段階だとか、アメリカ、ドイツは直線だという御指摘がございましたけれども。では、日本は、いや、三段階じゃなくて、今後、今回四年後見直しということになりつつありますけれども、先の話をして恐縮ですけれども、どのくらいの精緻さがよろしいのかという一つの提言をいただければありがたいと思います。

小林参考人 この問題は所得をどのように把握するかということが非常に重要でありまして、日本の場合には、マイナンバー制が入って、これで所得の把握というのができますので、これによって、どの程度の給付額が的確かというのが計算でできるということになります。

 今までは段階にしておりましたが、やはり計算が難しい、所得に応じて細かくやるということができなかったわけでありますけれども、マイナンバーで電子的にできるようになりますので、その辺については、将来的にはかなり、アメリカ型、ドイツ型のような、連続的に変化していくような形になるのが望ましいのではないかというふうに考えております。

杉本委員 私ども維新は、マイナンバーの普及にすごく力を入れておりまして、外国人の就労の問題でも、修正は、そのマイナンバーのことを端緒をつけるというようなことをさせていただき、ちょっと話がそれて恐縮ですけれども、選挙の方も、もしマイナンバーが入れば、私は、コンビニ投票ができるようになって、日本の政治地図も大きく変わる可能性を秘めているのではないかと思っていますので、マイナンバーの普及について私どもも力を入れて頑張っていきたいと思っております。

 次に、また小林先生に伺って恐縮なんですが、三ページ目の情報ギャップの問題で、やはり一人親家庭とかそういうような事情のお子さんが、なかなか情報に接せられない。いや、政府は、ホームページに出しています、こういう言い方をするんですけれども。学校の先生に余り依存しても、先ほど、プライバシーの問題があるんだということを先生は御指摘されましたけれども、特に低所得者の世帯、一人親の世帯とかをイメージしつつなんですけれども、この情報ギャップを少しでも埋めるには具体的にどうしたらよろしいか、提案をいただければありがたいんですけれども。

小林参考人 先ほど申し上げましたのは、高校の就学支援金については、高校の方に加配という制度がありまして、事務の負担を軽減するように、特別にそのときだけ担当の方をつけるというような制度があります。

 ところが、今回そういうようなことが考えられているかどうか私はわかりませんけれども、私の知る限りではそういうことは特に考えられていないようでありますので、これだけいろいろなことが起きて、新しい制度ができるという場合には、なかなかその周知というのは問題ですので、そのあたり、高等教育機関あるいは高校等にそういった措置をしていただくということが一つあるかと思います。

 それから、もう一つ申し上げたいのは、最近、SNS等でかなり間違った情報が奨学金あるいは大学について拡散しております。

 これについては、なかなか難しいと思いますけれども、どういう形で正しい情報を伝えるかということの裏側に間違った情報の拡散という問題がありますので、それはぜひ御検討いただければというふうに思います。

杉本委員 ありがとうございます。

 与野党を超えて、本当にこの制度、まだ法案の審議があるわけですけれども、もしできた場合に、きちっと子供たちに伝わるように総力を挙げて我々も考えていきたいと思っていますので、また引き続き御指導をお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 まず、三人の参考人の皆さんに、貴重な御意見をいただいたこと、心より感謝を申し上げたいというふうに思います。

 私からも三人の参考人の方に何点かお聞きをしたいことがありますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 まず、先ほど、国連人権規約との関係で少しお話がございました。

 これは三人の方にお聞きしたいんですけれども、気になるのが、二〇一七年十二月、新しい政策パッケージ、それから二〇一八年十二月、制度の具体化に向けた方針を見ておりますと、高等教育の無償化という文言がずっと入っていたんですね。

 その上で、この法案第一条の「目的」のところに高等教育の無償化という言葉が見つからない。「急速な少子化の進展への対処に寄与すること」ということで、少子化対策がかなり強調されているように私自身は受けとめています。

 人権規約の方で見ますと、教育を受ける権利、あるいは教育の機会均等といった文脈で無償化が言及をされておりまして、権利規定なんですけれども、今回の法案の第一条は、この権利規定というものが見当たらない。

 なおかつ、今回の財源というのは消費税ということですから、消費税というのは、全世代型の社会保障という新たな、私はよくわからないんですが、全世代型の社会保障という形で使途を変更するんだと。

 そうなりますと、今回の修学支援に関する法律なんですけれども、これは高等教育の漸進的な無償化の一歩というふうに捉えていいものなのかどうなのか、この点、御意見をいただければと思います。

三島参考人 確かに、無償化という言葉がだんだんトーンダウンをした形で、できるだけ支援をしようという形になってきたわけでございますけれども。

 やはり高等教育の無償化は、先ほど来御質問があって、私も申し上げましたし、ほかの参考人の方も、高等教育の無償化であるとか機会均等ということが理想であることは、これはもう間違いのないことかと思います。

 しかし、それに向かうについて、今すぐに何ができるかという形の議論にやはりなっておりまして、どのぐらいの財源があったらどこまで支援をできるかということの議論が始まって、そして、今、七千六百億円というような額までを一応視野に入れたわけでございますけれども、当然、高等教育の無償化を本格的にやる場合はこんなものでは絶対済まないわけですので、先ほど来あるように、まず一歩、一歩、二歩、そして、それをやってみた結果、実際に支援をしっかり受けていく学生たちがどのぐらいいるのかとかいうようなものを見ながら、理想に向かって少しずつ進んでいくというような道のりだろうというふうに私は理解してございます。

    〔委員長退席、義家委員長代理着席〕

小林参考人 これも先ほど来申し上げているとおり、これは無償化と申しましてもかなり限定的な無償化でありまして、そういう意味では、国際人権規約等に定めている無償化とはかなり性格が異なるものであるというふうには理解しております。

 ただし、では、これが無償化に向けた、今回の法律がそれに当たらないかと言われますと、やはり、形は違いますけれども、一歩前進、まあ、一歩か半歩かというのは議論がありましたけれども、どの程度かはともかく、無償化に向かっている、ただし、その無償化に向かい方が少しいろいろな懸念があるというのが私の理解です。

花井参考人 お答えいたします。

 冒頭に、この今回の法案は、これで無償化と言えるのかということを述べさせていただきましたが、確かに、一歩前進であることは間違いないと思います。ただし、第一条のところかと思うんですが、真に支援が必要な低所得世帯の者という限定をしたことによって、無償化の道が遠のいたのではないかという感さえしております。

 そういう意味でいうと、無償化への道筋を明確にすることによって、この法律の性格も変わってくると思っておりますので、ぜひともそこは御尽力をいただきたいというふうに思います。

 以上です。

吉川(元)委員 ありがとうございます。

 それでは、次に、三島参考人に少しお聞きをしたいんですが、今、花井参考人からも、「真に支援が必要な」という文言が一条のところにあるということでございました。

 先ほど、これは今後の検討課題だということをおっしゃられたんですけれども、今回、相対評価で、下位四分の一、これは、一生懸命やったとしても、絶対評価であれば別ですけれども、相対評価というのは必ず四分の一が生まれてしまうんですよね。そこで支援が打切り、しかも、対象は、まさに、真に支援が必要な低所得者ということになると、この支援打切りが、同時に大学をやめなければいけないというものに直結をしてしまうのではないか。そう考えますと、少しちょっとこれはハードルが高過ぎるのではないかというふうにも思うんですけれども、この点はいかがお考えでしょうか。

三島参考人 そこの部分でございますが、いろいろな制限のようなものがある中で、成績が四分の一以下というのは確かに相対的なもので、どんなにできても四分の一以下にはなる可能性があるわけですけれども。そこは大学によって、ある程度、このケースはそれに当たらない、あるいは、絶対的な評価で成績が十分だということを大学が判断できるようになっていると思いましたけれども、違いますでしょうか、規定の中で。

 ですから、そういうことをできるだけ丁寧に、学生の、一番大事なのはやる気でございますので、勉強する気がどのぐらいあるかということですので、それがなくて成績が悪い場合というのが恐らく今の相対的な評価の意味でございますので、しっかりやっていてそれなりの成績を上げているけれども四分の一以下だという場合には、ちゃんと救える規定になっていると私は理解しておりますけれども。

吉川(元)委員 それでは、花井参考人に少し伺いたいと思います。

 今、真に必要なということで限定することで、遠のいたのではないかというお話がございました。この限定することで、バッシングやスティグマが生まれないかというような指摘もありました。これは具体的にどういうことなのかということ。

 それから、現在、給付型奨学金でも、二年目からだと思うんですが、資産の調査というのが入ってくる。家計支持者二人で二千万、一人の場合一千五百万の基準を上限ということなんですが、恐らく、一千五百万あるいは二千万が多いか少ないかは議論があると思いますけれども、非常に今、将来不安、自分の老後の不安も増大している中で、老後の生活のためにこつこつとお金をためていくということもこれは当然あるわけで、そういう給付型奨学金の支給対象者とこの資産の調査、これを行うことについてはどのように考えていらっしゃるでしょうか。

花井参考人 お答えいたします。

 給付型奨学金制度が二〇一七年に法定化されまして、二〇一八年から本格実施ということだったわけですが、既に給付型奨学金制度に資産調査が含まれているということで、そのことが今回も踏襲されるというふうに伺っております。

 資産調査というと、やはり生活保護をすぐ想定いたしまして、生活保護受給者に対するバッシングあるいは受給している方のスティグマがずっと問題になっております。それを、家庭の経済的困難であるがゆえに、この奨学金、今回は給付型奨学金と授業料減免を申請する子供たちがそのスティグマを持たないだろうかという不安があります。

 資産調査を、全て預金通帳のコピーまで提出させることを、果たしてする必要があるんだろうかという大きな疑問があります。それも、結局は真に支援が必要な低所得者層ということで限定している、そこに対しての税金の使われ方を国民に説明しなければいけないということでさまざまな条件がつけられているのだろうということは推測できますが、それにしても、高校生が進学しようとするときに、そこまでする必要があるのかという懸念は拭い切れません。

 そういうスティグマあるいはバッシングが起こらないような運用をしていただきたいと思いますし、結局は、その限定していることからくるとすれば、何回も主張しておりますように、更に対象者を拡大していくということが最大の解決策かというふうに考えております。

 以上です。

吉川(元)委員 ありがとうございます。

 それでは、小林参考人に少しお聞きしたいと思います。

 教育基本法、そして学校教育法を見ますと、大学というのは学術の中心であって、深く真理を探究して新たな知見を創造し、そういうことが「目的」として書かれております。

 「目的」はそれぞれ小学校、中学校、高校、ございまして、小学校であれば、心身の発達に応じ普通教育をというような、こういう目的があるんですけれども、小中高は、この「目的」に続いて、この目的を実現するために「目標」ということで、小学校は全部で八つかな、中学校は三つ、高校も三つなんです。

 大学は、「目的」は、今言ったような、学術の中心、真理を探求するということを目的とはしていますけれども、その後、具体的にこれを実現するための目標というようなものは、実は、大学は大学の自治、学問の自由ですから掲げられていない。

 今回、法案で目的とまでは書かれていないかもわからないんですけれども、閣僚会議の機関要件の中で、大学等での勉学が職業に結びつくことになるよう、途中省きますが、今回の支援措置の目的を踏まえというふうに、職業に結びつくことを目的とされていて、ちょっとこれは私自身は少し違和感を、実務経験をした教員云々ということはもちろんあるとしても、それ以上に、この記述というのは、教育基本法あるいは学校教育法に掲げる大学の目的とどのように整合しているのか、あるいは整合しないのか、この点について少しお話を伺えればと思います。

小林参考人 法律の専門家ではないので法律的な議論はできませんが、率直に言わせていただきますと、やはり私も違和感はございます。

 それは先ほど来申し上げているとおりなんですが、例えば、今回、授業料減免が大幅に拡充されたことは非常に望ましいとは思いますが、今まで授業料減免については、先ほど説明いたしましたように、国立、公立、私立あるいは高専、専門学校、短大、全て制度が違っています。それは統一することはいいかもしれませんけれども、逆に言うと、大学の方で決めるという裁量権がなくなってしまっているわけですね。

 委員御指摘のように、なぜ学校教育法で細かく大学のことを決めないかというと、やはりそれは、大学は大学で自分たちで決めるというのが、大学という、中世以来続いているところの伝統ですので、それを失うと大学とは言えないわけでありますので、そういう意味でいいますと、今回のは授業料減免を一律にしたというのは、制度が違っているという意味では改正として意味があるかもしれませんけれども、大学の裁量権をなくしたという意味では問題があるのではないか、これは一つの例として挙げられると思います。

吉川(元)委員 同じことで、花井参考人、何か御意見あれば。

花井参考人 お答えいたします。

 先生の質問の中にありました、職業に結びつくということが盛んに強調されているのではないかという印象がありますが、この検討がされました専門家会議では、夢が持てるようなことであるとか、それから、すぐに就職しないで研究職につく方、そんなことがあってもいいのではないか、出口をもっと柔軟にすべきではないかという議論があったというふうに伺っております。

 そういう意味で、高等教育、職業に結びつくだけが役割ではないと思います。

 とりわけ、今後、基礎研究の人材を育成するということは我が国にとって非常に重要なことであると思いますので、そういう方を育てていくという意味でも、余り職業に結びつくことを強調しない方がいいのではないかというふうに考えております。

 以上です。

吉川(元)委員 それでは、小林参考人にもう一点伺いたいというふうに思います。

 今、大学独自で減免制度を設けられているところがあるというふうに聞いております。今回、新たな減免制度がこういう形で入ってくるといった場合に、お金の出どころは、片方は消費税で、片方はそうじゃないということで、出どころは違うわけですけれども、今、大学独自で行われている授業料減免制度に今回の修学の支援のこの制度が入ってきたときに、どういった影響というのがあるのか、あるいは、それはそれで全く関係ないというふうに考えていいのか、その点いかがでしょうか。

    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

小林参考人 細かく議論すると切りがないと思いますので、例示として挙げたいと思いますが、国立大学について申しますと、現在、授業料減免相当額として三百五十億円くらい、かなりこれは大きな金額なんですが、残念ながら制度が余りよく知られていない。それから、大学によってやり方が若干は変わりますけれども、ほとんど一律の基準で行われているということがあります。

 それに対して私立大学の場合は、二分の一の補助でしかありませんので、大学自体が財源を持っていれば別ですけれども、そうでないとなかなかこの制度に乗りにくいという問題があります。

 ですから、そういう点で申しますと、今回の制度改正によって、大学の方が独自の奨学金をつくるというのはそれとは別にできるわけですから、財源に余裕のあるところはそういった大学独自奨学金というものをつくることができる、それは非常に期待したいというふうに思っております。

吉川(元)委員 ちょうど時間が参りました。

 もう少しお聞きしたいこともあったんですけれども、これで終わりたいと思います。

亀岡委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 未来日本の笠でございます。

 きょうは、朝から三人の参考人の方々には本当に貴重な御意見をいただいておりますことに、私からも感謝を申し上げ、最後でございますので重複をする部分もあるかもしれませんけれども、少し確認をさせていただきたいと思います。

 先ほど来、国際人権規約、私も、二〇〇三年十一月に初めて国会に参りまして、ずっと文部科学委員会にほとんど所属をして、この十三条の二項、なぜ、批准をしているにもかかわらず留保をしているんだということは、これは国会でも何度も取り上げてまいりました。

 たしか、マダガスカルとルワンダと日本だけでした、留保していたのが。二〇〇八年にルワンダが撤回をして、もういよいよマダガスカルと日本だけじゃないかということで、私どもも、この撤回へ向けて、高等学校の授業料の無償化の制度を導入し、中等教育、さらには、その後はやはり高等教育の無償化だということで、これは自民党政権になってもその流れが引き継がれ、まさに今無償化というものが大きな、これはもう党派を超えた我々の目標になったということは非常に意義深いことだと思います。

 先ほど、三名の方々が、やはり財源の、ここから逃げるわけにはいきません。しかしながら、本来であれば、やはり私どもは、この留保を撤回をした段階で、高等教育をいずれは無償化をしていくという義務を我々政治は負ったのではないかというふうに、私は認識をしております。

 そういった前提で、その思いというのは恐らく三名の方々一緒だと思いますので、そのことを前提に御質問したいんです。

 先ほど来、特に小林参考人の方から、無償化へ向けて、高等教育の無償化をやるとなると、もっとやはり大きな財源が必要になってくる、そのときに、なかなか、税を投入するということについてはまだ国民の理解というものが得られていない、三割ぐらいじゃないかという話がありました。

 やはりその理解を得るような、その財源を消費税に求めるのか、どこに求めるのか、これはいろいろな議論が必要だと思います。しかしながら、やはり私は税に頼らざるを得ないと思っておりますので、その理解を得るために何が必要なのか、今の大学教育あるいは大学そのもの。その点を三名の方にお伺いをしたいと思います。

三島参考人 大変大きな、非常に難しい御質問かなというふうに思います。

 やはり大学としては、今の日本の若者の教育を、非常に質のいい教育を学生に与えて、そしてそれを、世界を舞台に活躍するような気概であるとかいったものを育てるような、いい大学になっていくということしか具体的にはできないところかなというふうに思います。

 そういう意味で、国立大学八十六校、私立は七百校以上あると思いますけれども、それぞれの大学がそれぞれの特色を発揮した、高い教育の質のもとで若者を育てていくということと、それから、それと初等中等教育がきちっと連携するような教育のシステムをつくっていくということが我々には課されている問題であって、それで、先ほどの理想的な無償化あるいは機会均等というようなことに向かっていくためには、まずそれが必要ではないかなというような考え方を私は持ってございます。

小林参考人 今、三島先生が申し上げたとおりだと思うんですけれども。

 私、先ほど申しましたように、大学が社会の信頼を失っているのではないかということが問題だろうというふうに考えております。ですから、大学は、社会の信頼を得るためにしっかり学生を育てている、あるいは社会に貢献しているんだということを示すということは、大学の説明責任として非常に大きいのではないかと思っています。

 ただ、一つ申し上げたいのは、現在はかなり大学はそういうことは努力をしておりまして、学生はよく授業には出席しますし、それから休講も許されないというようなことがあります。一つの例として申し上げますと、必ず十五回授業をやって、それとは別に試験もやるというようなことになっておりまして、先ほど少しお話がありましたけれども、休日でも今授業をやっているような大学というのはかなり多くなっております。そういうような形で大学も努力しておりますので。

 ただ、その基準が余りにも外形的といいますか、数値目標だけになってしまっていて、そこを達成すればいい、それだけやっておけばいいんだというようなことになっているというのが今の問題だというふうに思っております。

花井参考人 お答えいたします。

 私は大学の関係者ではないので、一市民というか、違う立場になろうかと思いますが、日本の場合は、教育というのが、社会づくり、今も未来に向かってもそのための教育が必要でありそのための公的支出が必要だということの合意がまだまだ足りないのではないかというふうに考えております。

 そして、それと同時に、自己責任論が非常に強い社会ではないかとも思っておりまして、どのような教育を受けるかはあくまでも個人が選択、それはそのとおりなんですが、そこに対して、負担まで個人が負うべきであり、そのことで苦しむのは本人の勝手だみたいな、そういった風潮が強くあるような気がしております。

 その意味で、もう少し、教育とは何なのかという社会的な合意を得る必要があるのではないかということを感じております。その上で議論すれば、財源のあり方も、どのような財源かというのはあろうかと思いますが、議論しやすくなるのではないだろうかというふうに考えております。

 以上です。

笠委員 ありがとうございます。

 それと、先ほど来、多分共通されているのは、まずは第一歩である。限られた財源の中でスタートして、そして、私、これをやはり大きな第一歩にして、次につなげていくということが大事だというふうに思います。

 そのときに、次のそのステップとして、例えば、経済的な理由を含めいろいろな形でこれまで学ぶことができなかった、そういう人たちの学び直しの機会というものを、このリカレント教育、こういったものを充実をさせていく。あるいは、現在奨学金の返済に実際に苦しんでいる人たちがいる、そういう人たちの支援。あるいは、この中間層を、もっと厚みをもって支援対象を広げていく。

 恐らく、次のステップへ向けて課題は幾つかあるかと思うんですけれども、その辺の優先順位というか、次のステップでまずはここからだというものが、複数でも結構なんですけれども、お考えがあれば、それぞれお聞かせをいただきたいと思います。

三島参考人 今委員からおっしゃられた幾つかの要素、これに尽きると思いますけれども、どこがその中で優先順位かなといいますと、やはり支援をする幅でしょうかね、所得層の。

 そういうところをもう少し広げられないかというのはやはり、どこかで最終的には切ってしまうわけですから、そこのところに対する何かモラルハザードみたいなことも起こり得ると思いますので、そこが私は優先順位としては高いのではないかというふうに思います。

小林参考人 本日の議論でもさまざまな将来課題が出てきたと思いますけれども、一つは、やはり強調したいのは、情報ギャップの問題ということをどういうふうに考えるかということだと思います。

 今回の制度でかなりの部分は、教育費の負担を含めて、二つの制度、更に給付型奨学金の大幅な拡充によってかなり改善されたとは思いますけれども、実は、そこの土台に乗らない人たちというのはもともと対象にならないということがあります。情報ギャップのために、そういうことを知らない、申請もできないというような人たちが必ず出てきますので、そういった人たちをどういうふうに救うかということは大きな課題だと思います。

 さらに、言ってしまえば、進学することの意味がわからない、あるいは意欲がない、そういう人たちもいるわけでありまして、こういった人たちをどういうふうな形で学習するように持っていくか。そういうことを考えていかないと、結果として、そういう人たちは進学することに意味も見出せないし、大学教育にも意味を見出せないわけでありますから、そういう人たちが今度は納税者になって、次の世代を背負っていくことになります。

 そうすると、先ほど言いました不公平の問題というのも当然起きてきますので、そういったことまで考えますと、やはり教育というものが非常に価値があるんだということを、ほかの全ての国民にわかるようなことを考えていただきたいということで、そのための仕組みづくりをぜひ考えていただきたいと思います。

花井参考人 お答えいたします。

 先ほど、今回の法律で教育の無償化が遠のいたのではないかということを発言いたしましたが、遠のかせないためにも、本当に、「目的」にある「真に」という言葉が法律に規定されるのがいいのかどうなのかということをぜひ再考いただきたい。その上で、一刻も早く中間層まで拡大していただきたいと思います。

 そして同時に、やはり、無利子化を加速させる、それから延滞金の利率を下げる、猶予期間を延長する。現在、返済で困難な状態に陥っている人の救済策をぜひとも見える形で示すことが喫緊の課題かというふうに考えております。

 以上です。

笠委員 ありがとうございます。

 そして、今回の制度で、先ほど来幾つかの指摘がございましたけれども、新たにこの対象となる大学等の確認要件というものが課せられることになり、その点について、先ほど小林参考人の方からは、やはり、その辺がどの程度検討をされたのかというところ、余りにも短い期間だったので、その辺についてのちょっと疑問が呈されたというふうに思っておりますけれども。

 三島参考人にお伺いしたいんですが、専門家会議の座長として取りまとめに当たられ、本当に感謝を申し上げたいんですけれども、その点、やはりこの制度が始まるときに、最初からなかなかこの確認要件を満たさないような大学あるいは専門学校等々が出てくる可能性、危険性というのはあるのか。その辺、どういった議論があったのかをちょっと簡単に御紹介いただきたいと思います。

三島参考人 そこの大学が果たして、簡単に言うと、きちっとした教育をちゃんとして、そういう勉強意欲、学業の意欲がある人にちゃんとした力をつけられるかをどうやって判断するんだという議論は随分いたしました。

 それは、やはり、大学一つ一つにそういった意味での教育の質の担保ができるかというと、これはできないわけですね。それで、何かの仕組みをつくって、先ほどもちょっと私言いましたけれども、大学の設置のときではなく、今動いている中での認証評価みたいなところで、そういう視点で大学がきちっとした教育をしているかというのを何らかの方法でチェックをしていくということをこの仕組みの中に入れていくしかなくて、今、外形的なことで、この大学はだめだというようなことは言えないというのが基本的な結論でございます。

 ただ、そういった教育の質の担保というのは、今回のこれだけの財源をつぎ込む、若者の教育に関することですので、そこは非常に重要なところであるということには違いがないというふうに思います。

笠委員 ちょっと今のに関連してあわせてお伺いしたいんですが、まだ大学の方は、比較的、今いろいろなガバナンス等々も含めて、情報公開を含めて議論になってきているわけですけれども、専門学校なんかは、設置形態もそれぞれやはり異なっておりますし、なかなかその辺が、規模もさまざまですし難しいんじゃないかと思うんですが、そういったところで、今後、当然ながら文科省の中でも検討されていくわけですけれども、何かアドバイスというか、こういったところにやはり注意すべきだというようなものがあれば、三島参考人、あるいは、もしあれば小林参考人にもお伺いをしたいと思います。

三島参考人 専門学校は、確かに設置形態も違いますし、それから、定員の充足率みたいなものでもちょっと規定がございまして、定員割れがどのぐらいあるかというようなものが入っているかと思うんです。ですから、その辺のところへの配慮がやはり必要なのと、それから、そういう配慮が必要な理由は、経済的な理由で大学へ進学できないということだけではなくて、自分に専門性を持とうというような、違う意味の目的には専門学校も重要でございますし、短期大学なんかも含めて、彼らにチョイスがある方がいいという意味では、やはりそこまで入れましょうということでございます。

 ただ、学校の、特に専門学校については、そういう現状での評価が難しいのと、あと、外形的な数字、定員不足だとかそういうようなものに関する配慮というのは必要かなというふうに思ってございます。

小林参考人 専門学校につきましては、先ほど申しましたように、授業料減免は公的な制度といたしましては北海道と高知県しかないというような状況でしたので、これが全国に適用されるという意味では非常に大きな前進だというふうに思います。

 ただ、逆に申しますと、専門学校は都道府県の所管でありますので、非常に、今、三島先生からもありましたように、設置形態に応じて規模もガバナンスもさまざまでありますので、そのあたりをどういうふうに考えていくかということは、相当、都道府県の方でも考えていただかなきゃいけないわけですけれども。

 そのあたりをどのように考えていくかということは、私はこの議論には参加していませんのでわかりませんけれども、例えば、法人立でないものもありますので、財務諸表の公表をどうするかとか、具体的な問題はさまざま残っておると思いますので、その辺のことは非常に気をつけてこれからやっていかなければならないというふうに考えていますので、ぜひ、そのあたりのことは、大きな方針を議論していただければというふうに思います。

笠委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。どうも、改めてありがとうございました。

亀岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

亀岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 本日は、本案審査のため、参考人として、筑波大学長・中央教育審議会大学分科会長永田恭介君、東京大学大学院教育学研究科准教授両角亜希子君及び名古屋大学総長松尾清一君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず永田参考人にお願いいたします。

永田参考人 御紹介いただきました筑波大学長の永田です。

 しかし、本日ここに登壇しておりますのは、中央教育審議会にて、二〇四〇年に向けた高等教育のグランドデザインをまとめさせていただいた立場からだと認識をしております。

 我が国の現在の状況は、少子高齢化や経済格差等の問題以上に、前向きに考えても、ソサエティー五・〇の実現、あるいは百年時代到来に向けた、それのポジティブな面の後ろ押し、加えて地方創生など、我が国固有の課題もあります。こういう課題に向けて、大学の果たす役割は大変大きいと考えております。なぜならば、膨大な知識の蓄積と、それから新しい知を生むその能力を持っているというふうに考えております。一方、今現在の大学の状況については社会からは厳しい目が向けられている、そういう認識も大学は持っているところであります。

 大学の基本的な教育、研究、社会貢献においてその向上を図るとともに、それ以上に個々の大学の機能強化を図る、それを支える経済基盤も整える、このような問題が蓄積していることも認識している。その中で、今回の、高等教育の二〇四〇年像というものを中教審にてまとめたところであります。

 この新しい学校教育法等の一部を改正する法律案群は、一定のその答申の内容を踏まえたものであるという認識を持っており、高く評価をするものであります。

 その法律案の概要を大きく、私なりに二点で捉えておりまして、一つは大学の質の維持と質の保証、もう一点は機能強化という、この二つになるかと存じます。

 前半につきましては、法案の中では、認証評価についての法案がそれに当たると考えられます。

 大学は、大学の設置を許された後に、アフターケアというプロセスを経て大学固有の活動をしてまいりますが、現在の法律では、七年に一度、大学がその固有の機能を果たし得る状況であるかどうかについて認証を受けた団体が評価をする、これが認証評価ということになっておりまして、それについて、今回の法案では、もう一歩その機能を高める点に言及しているということで、評価をしております。

 もう一点は、我々の大学が機能をより高いレベルで発揮するための努力、これをどういう形で実現するかという点にかかわっています。

 先ほど申したように、さまざまな課題のほかに、大学自体は、それ自体が進化を続けなければなりません。その中には、例えば、AIが発展する社会の中で、本当に人がなすべきこと、人がかかわるべきこと、これを学生たちに教えていかなければなりません。そのためには、広い視野と深い専門力を育てるという、言い古されてはいても当然のことを大学は続けていかなければなりません。

 その中で、機能強化の一端として、一つの大学ではなし得ないようなことを幾つかの大学が協力して行う、そのためにそれを支援する法案がここに出ていると考えておりますし、また、それを支えるためのガバナンスや経済基盤確立のための一助となるものというふうに認識をしております。

 午前中には高等教育の負担軽減についての議論もされたことと思いますが、それらと同時に、大学側の改革というものも今申し上げた視点で続けていかなければならない、そういう認識であります。

 本案が可決されることを実に望んでおりますけれども、大学自身は、質の向上と経営基盤の強化に向けて更に努力を続けなければいけませんし、今般の案だけでは十分ではなく、更に大学の改革を進めるためのさまざまな検討がなされることを希望しております。

 大学は教職員だけのものではなくて、大学が大学であるというのは、学生がいるからです。その学生が十分満足のいく教育を受けられるように、また、大学は新しい知の創出を目指して一層研究が進むように、ぜひとも法案の審議の方をよろしくお願い申し上げます。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

亀岡委員長 ありがとうございました。

 次に、両角参考人にお願いいたします。

両角参考人 東京大学の両角と申します。

 このように意見表明をさせていただく機会をいただき、ありがとうございます。

 今回はたくさんの法令改正が一度に行われるということで、それぞれの法律、学校教育法、国立大学法人法、私立学校法の、それぞれどのような意図で、何が改正されようとしているのか、それに対する私の意見というものを順に述べさせていただこうかと思います。

 まず、学校教育法の改正については、認証評価制度の改正ということになります。

 大学は、大学を設置するときには、設置基準という最低基準を満たしているかというところで審査を受けるんですが、その後、認証評価といって、その後の活動の中できちんと質を保っているのかというのを七年に一度審査することになっています。

 ただ、その審査を受けることは義務づけられているんですが、その結果の取扱いについては何の制度的な保障もありませんでした。例えば、専任教員が基準の数に足りていないという学校がありまして、不適合というふうに判定されても何のペナルティーもないという、普通の社会の常識からするとちょっと考えられないような状況でありました。

 それを、ちゃんと適合しているかどうかというのを判断した上で、状況が一定のものに達していないところについて文部科学大臣が報告あるいは資料の提出を要求できるというふうに、不適合のまま放置するのではなく、何らかの手段を持ったというところが大きなポイントかなと思います。それによって、今まで不適合と出ても、教育、研究の自主的な改善につながりにくかったものを、確実な改善につなげていくというのがポイントではないかと思っております。

 それで、国立大学法人法のところでも認証評価の言及がありますが、大学はそういったいろいろな評価を受けていて、評価の負担の重さというのもあります。教員は、教育、研究、あるいは管理運営などをしながら、こういった評価が、国立大学法人の場合だと国立大学法人評価とかいろいろあるので、それをより効率的、効果的に行われるようにというのが国立大学法人法の改正の趣旨ではないかと思います。

 また、私立大学では、中長期計画の策定が義務づけられたというのが今回の大きな変化だと思っております。

 現時点で、私立大学の定員割れは三六%、二〇四〇年の十八歳人口というのは八十八万人と現在の七割にまで達するということで、どう考えても今後の経営環境が厳しくなることが予想されます。

 しかしながら、特に小規模、短期大学などでは、いわゆる中長期計画の策定率が六割程度にとどまっております。規模によって、どのような形で中長期計画を備えるかというのはいろいろあってよいと思うのですが、将来を見据えた計画をつくっていないというのはちょっと問題ではないかということで、中長期計画の義務づけには私は基本的に賛成しております。

 ただ、認証評価というのは最低基準をクリアしているかチェックするものですので、それを踏まえてというところには若干疑問を感じております。

 二つ目の私立学校法の改正について、次に述べさせていただきます。

 経営環境がこのように厳しさを増す中で、経営機能を強化していくためのガバナンス改革が求められています。

 私も見ていますと、多くの学校法人は健全な経営をしているんですが、昨年も経営陣による不祥事を起こした学校法人が幾つか出てくるなど、経営陣に対するチェック機能の強化というのが大きな課題になっております。

 私立大学というのは、建学の理念とか伝統とかいろいろなものが多様で、ガバナンスのあり方も極めて多様なんですが、そういった自主性を担保しつつ、公共性を高める必要が生まれてきたということで、今回の改正につながっております。

 具体的には、監事の牽制の強化ですとか、役員の職務、責任に対する規定、評議員の機能の充実などの規定改正が行われるという案なんですが、一定の意義があるだろうというふうに評価はしています。

 ただ、不十分な点も残されているというのが私の意見です。

 例えば、監事の牽制機能を強化して、もしまずい理事長が出てきたときに、牽制するといっても、監事というのは、評議員会の同意が必要であるものの、理事長が選びます。選んだ本人をどこまで厳しく見られるのかとか、そういった点で、監事の牽制機能の強化がどこまで効果があるのかなということには多少の疑問は感じております。

 また、制度改正だけでは不十分で、実際に理事や監事が、どのような人がなって、どう育成するのかといった問題もセットで議論しなければ、絵に描いた餅に終わるのではないかと感じています。

 また、ガバナンスを強化するという意味で、今回の法改正の案で情報公開をより進めていこうという点についてとても評価しているんですが、言われたから最低限やるというだけではなく、私立大学というのは、社会の理解と支援を得るために、それぞれのステークホルダーにわかりやすく、情報公開を積極的に行っていくんだということが必要であると思いますし、そうしたことが、不正を防ぐとともに、私立大学に対する社会からの信頼を得るために不可欠だと考えております。

 最後、国立大学のガバナンスについては、多分、この後の松尾参考人の方からあると思うので、簡単に触れたいと思うんですが、公立大学、私立大学と異なり、国立大学の場合は制度的に一法人一大学しか認められていなかったものをほかの選択肢もふやした、それに伴うさまざまの改正が今回の案だというふうに私は理解しております。

 ただ、現在統合が検討されているいろいろな事例を見る限り、この制度改正をしなければできないような連携の内容には思えません。

 ただ、大学というのは、なかなか自前主義が強いというか、ほっておけば自分の大学の中、あるいは極端に言うと自分の学部の中でいろいろな物事を完結して行動を行いがちなので、こういった制度改正があることが一つの契機となって、より大学が連携して、大学のそれぞれの機能を強化するとか、あるいは経営の効率を図るというようなところにつながる、一定の意味はあるかなというふうには理解をしております。

 簡単ではありますが、三つの法律についての改正について、私の方での意見を述べさせていただきました。

 どうもありがとうございました。(拍手)

亀岡委員長 ありがとうございました。

 次に、松尾参考人にお願いいたします。

松尾参考人 名古屋大学総長の松尾清一でございます。

 本日、私からは、現在準備を進めております名古屋大学と岐阜大学の法人統合によります東海国立大学機構のビジョン、あるいはその概要と、それから準備状況を説明いたしますとともに、東海国立大学機構の実現には国立大学法人法の一部改正が必要でありますので、主としてこれに関する意見を述べさせていただきます。

 なお、本日の意見陳述に当たりましては、統合協議を進めております岐阜大学とも内容を共有しておりまして、また、本日、岐阜大学の森脇学長にはこの委員会に御同行いただいておりますことを申し上げておきます。

 さて、法人統合を両大学で合意するに至った背景を説明いたしたいと思います。

 お手元の資料の一ページをごらんください。一枚めくっていただきますと一ページがございます。

 両大学が位置しております東海地方は、これまで製造業の世界的集積地として繁栄をしてまいりました。この地域に位置する企業は、規模の大小を問わず、世界を舞台とする企業が大変多いわけでございます。この地域の製造品出荷額は日本全体の二〇%を占めており、毎年膨大な貿易黒字を上げています。そして、日本経済にももちろん大きな貢献をしているわけです。

 しかしながら、先生方も御存じのように、今世界はデジタルトランスフォーメーションないし第四次産業革命と呼ばれる時代に入っておりまして、社会、産業構造の変化が急速かつ広範囲に起こっております。また、我が国では、これらに加えて、深刻な少子高齢化が進んでいます。日本が今後も持続的に発展し、国際的にも、人類社会の幸福、そしてまた持続的発展に一層大きく貢献できるためには、国立大学の果たす役割は大変大きいものと考えております。

 特に東海地方におきましては、大学総体として、地域創生への貢献と国際競争力の強化は大学にとって必須の課題であると考えております。そして、社会が急速に変化する時代にあって、諸課題の解決のために、アカデミア、産業界、国、自治体が組織的、戦略的に連携することは不可欠であります。

 産業のネットワークは、県という単位を超えて、地域全体で密接に関連し合っています。一方で、この地域は既に県境を越えて大学間連携が盛んに行われておりますが、未来に向けた地域創生にしっかりと貢献できるためには、より踏み込んだ組織的、戦略的な連携が必要です。すなわち、個々の大学単位ではなく、ビジョンを同じくする一つの組織体として戦略的に大学が関与することが必要であります。

 それによりまして、国、自治体、産業界との連携がもっと広範に、かつ深くなって、公的機関や民間からの支援も受けやすくなります。そして、その結果、資金の好循環が期待でき、教育・研究機能の一層の強化、そしてまた国際的な競争力の強化につながるものというふうに思っております。これはまた、未来社会に必要な人材育成や人材確保、その力を強化することにもつながります。

 次のページをめくっていただきますと、名古屋大学が構想したマルチキャンパスシステムによる東海国立大学機構のイメージを示しております。

 機構を構成する大学の自律性や強みを尊重しながらも、大学間の壁を取り払い、個々の大学の持つリソースを共有しながら、教育・研究機能の強化を図り、県を超えたより広い地域を対象にして、資金の好循環、それから教育・研究機能及び国際競争力の強化を目指そうとするものであります。

 この構想は、二年前の二〇一七年春に名古屋大学が指定国立大学法人に応募するときに着想いたしまして、構想に積極的に賛同していただきました岐阜大学とともに文部科学省に提案をしたものです。

 この図にありますように、我々としては、まず岐阜大学との間で法人統合を行いまして、マルチキャンパスのプロトタイプをつくり上げ、そして、これに賛同する大学には門戸を広げて機構の拡大を図りたい、そういうふうに考えております。

 次のページをごらんください。この三ページのポンチ絵は、岐阜大学森脇学長と私が共同で作成したものでございます。現在から未来に向かって東海機構を進めていくイメージをあらわしております。

 東海国立大学機構では、地方創生への貢献、次世代型教育、産業界等との連携、世界的研究拠点形成などに両大学が力を合わせて積極的に取り組み、未来社会の創造に貢献する大学の新しいモデルをこの東海地域からつくっていくということで合意をしております。

 次の四ページでございますが、これはあくまで一法人複数大学を可能にする法案の改正を前提として、国立大学の第四期中期目標計画期間、次期の期間ですが、これを合わせると今から九年間ございますが、この九年間の大まかな工程を示しております。

 昨年十二月には両大学の間で法人統合に関する基本合意が成立しましたが、このときには、地元産業界から中部経済連合会会長や、愛知県、岐阜県両県の副知事にも御出席をいただきまして、大いに激励をいただきました。

 次のページをごらんください。五ページですけれども、法人統合の管理運営に関する検討体制です。

 両大学では、昨年四月より、法人統合に向けまして、両大学幹部から成る設立検討協議会を設置し、そのもとに、具体的な管理運営体制を整備するための設立準備室、そしてまた各部署ごとにワーキンググループを置いて、今、積極的に検討を進めております。そして、昨年十二月の基本合意以降は、一層この協議を加速しております。

 次の六ページでございます。

 教育、研究に関しましては、両大学の学長をトップとする協議会において、現在、新法人全体の観点から、法人として取り組むべき重要事項について協議をしながら進めていく体制をつくりました。事業ごとの進捗状況を定期的に協議会にて検討する体制をつくっておりますが、この機能は、新法人が設立された後は、法人の長をトップとする法人理事会若しくは役員会に引き継がれることを想定しております。これらの検討の進捗状況は、全く同じ情報を両大学で共有しながら、構成員の合意を得て進めております。

 さて、資料はここまでなんですが、学校教育法の一部を改正する法律案、特に国立大学法人法改正に関しまして、私の意見を申し述べます。

 文部科学省が設置いたしました一法人複数大学に関する調査検討会議におきましては、さまざまな観点からそのあり方が検討され、私どももヒアリングを受けて意見を具申いたしました。今回の改正案には、おおむねその意見が取り入れられていると考えております。

 国立大学全体の立場から申し上げますと、今回の法改正により、今後、さまざまな連携、統合の形が検討されると思います。その際には、各大学の置かれた地域の産業や歴史、また存在する大学群の状況など、さまざまに異なるところがありますので、それぞれの大学の創意工夫により全国各地で多様な大学改革が可能になるような柔軟な制度設計に御配慮いただければ大変幸いでございます。

 また、一法人複数大学におけるガバナンスの体制に関しましても、大学の健全な発展のためには、経営と教学の密接なかかわりとともに、両者のチェック・アンド・バランスの機能も重要であることから、こちらも、大学における創意工夫が生きるような制度設計としていただければ幸いです。

 最後になりましたけれども、名古屋大学と岐阜大学は県をまたいだ国立大学同士の法人統合を目指しており、これは我が国初の試みでございます。試行錯誤の部分は多々ありますけれども、総体としては、地域創生への貢献と国際競争力の強化、この二兎を統合によってあえて追うという試みでもあります。したがいまして、今後さまざまな課題が浮上すると思いますけれども、その折には適宜修正を加えながら、この試みを成功させたいと思います。

 その観点から、今回の法改正につきまして、国会におきまして十分かつ円滑な議論をお願い申し上げます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

亀岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

亀岡委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。青山周平君。

青山(周)委員 本日は、学校教育法等の一部を改正する法律案に関しまして、三名の参考人の皆様方、本当に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。

 実は私、こちらに戻ってきてまだ一カ月しかたちませんで、当選後一カ月ということで、文科委員会の中では初めての質問をさせていただきます。

 午前中、大学等の修学の支援に関する法律案の参考人の皆様方からの御意見をいただきました。この二つをあわせて、今回、関連性を持たせながら、機会を確保するので大学もしっかり改革をしていく、そういうことでありました。

 実は、前回、一年四カ月ぐらいこの国会にいなかったんですが、午前中の審議の中で、修学の支援に関する法律の方で、何か、大きな一歩とか、小さな一歩とか、余り大きくないとかという議論があったんですが、私がいなかった時期を考えますと、本当に大きな一歩だと思うんです。馳先生からお話がありましたが、財源の問題で、どうしても幼児教育また高等教育の負担軽減がなかなか進まなかった中で、戻ってきたらもう一斉に進んでいる、本当にびっくりしたぐらいでありましたので。

 そこを進めるとともに、大学のガバナンス改革、改革をしっかりとして、また、大学の教育で有為な人材をつくっていく。非常に重要な法案だというふうに思っておりますので、ぜひ皆様方から御意見をいただきたいと思っております。

 まず初めに、認証評価の取扱いの厳格化ということで、今回変わったことが、先ほど両角参考人からは、不適合と判定されても何のペナルティーもなかったと。平成十六年から、もう第三クールに入っているということなんですが、今まで認証評価があったわけで、これを今回厳格化させるということで、これによって今までとどういうところが具体的に変わっていく期待が持てるのか。そんなところを、まずは永田参考人、両角参考人からお伺いできればと思います。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 今の御質問、もともと認証評価という仕組みは、基本的に、大学が目指す教育、研究ができるかどうか、その準備が整っているかどうか、これを最低限見るものであります。

 しかし、それで不適合、つまり十分ではないという評価を受けた上でもその大学は現在存続し得るという状況にある中、今般初めて、不適合になったものが、その理由を述べながら、文部科学大臣に報告及び資料を提出する義務が生まれます。これに基づきまして、もともとの大学設置の法案の方では、究極の場合、その大学を存続させ得ない判断もとり得るということでございますから、かなり緊張感を持った報告になるというふうに考えております。

 不適合になる前に、適合の状態を続ける努力、ぜひとも努力の大まかをそこに向けていただきたいと思っている次第です。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 今、永田参考人がお答えしたのとほとんど同じなんですが、これまでも、不適合と出ても、それがウエブサイトで公表はされてはいたんですけれども、ほとんどの方がそれを見ていないので、大学としては、出ない方が望ましいんですけれども、出てしまうということに、やや、やはり意識が甘いところがあったと思うんです。

 それに対して何らか文科省からの統制が入り得るということで、不適合が常に出ないように、設置基準というのは最低の基準ですので、そこをクリアして、よりよい教育、研究をしていくための努力につながるのではないかなと期待しております。

青山(周)委員 ありがとうございます。

 不適合が出た後に、文部科学大臣に対して、資料の要求をされて提出をする、そこで一定、不適合と出ないような努力は今もしていると思うんですが、その上で言ってみればペナルティーが科せられるということだと思うんです。

 私も余り見たことがなかったんですが、認証評価で不適合を受けたところはどれぐらいあるのかなと調べてみると、ほとんどないんでしょうか、保留だとかそういったところはあるんですが。その評価自体が機能していかないと、そういう義務づけをしたとしても余り有効的に動いていかないのかなというふうに思うんですが、その点に関してはいかがでしょうか、永田参考人。

永田参考人 もともと認証評価においては、その基盤は一九四七年の、大学同士が大学をチェックするというシステムに起因をしております。

 最も新しい例を述べさせていただければ、例えば入試で問題が起こった大学等が今般ございますけれども、それについては厳しい評価を下していく方針の中に現在ございます。

 こういったように、ある一定の限界を超えたものについては、厳しく評価が下されているという現状だと思っております。

青山(周)委員 両角参考人にも、同じ質問で恐縮でございますが、評価の仕組み自体が、結果を見てみても、不適合というところはほとんど出ない状況なので、評価の中でどのように大学の改革に資することができるのか、そこについてお伺いをしたいということです。

両角参考人 不適合というのは本当に最低基準のところですので、そこで不適合が出るということ自体が本当はやはりあり得ないことだと思うので。

 認証評価ももちろんそうなんですけれども、より情報をきちんと出していく、それを皆が評価していくということが、認証評価の結果ももちろん大事で、それだけでうまくいっている、いっていないということだけではなく、大学自身が、よりちゃんとやっていますよということを示していくということが大事なのかなというふうには思っております。

青山(周)委員 ありがとうございます。

 今回の学校教育法等の改正の一番にまたこれが出てきますので、スタートとしてまずお伺いをさせていただきました。

 次に、お伺いをさせていただきます。

 せっかく松尾参考人にお越しをいただいております。私も愛知県の出身でございます。本当に産業が強い、製造品出荷額、四十年を超えてずっと一番の地域。ここで名古屋大学、もともと地域を牽引していただいていたというふうに思っております。

 先ほどの参考人のお話の中で、もう既に他大学との連携というのはこの法律ができる前から進んでいた、結構先進的に進んでいたというお話をいただきました。

 その連携は進んでいたんですが、今回の法律の改正によって一法人複数大学制ができ上がるということで、この法律ができないと、一法人複数大学でないとできなかったことというのがあるとするならば、なければ今回法律になっていないと思うんですが、そこのメリットというか、今回の法改正によって今までの連携以上に進んでいくという部分はどのあたりにあるのか、お話をお伺いしたいと思います。

松尾参考人 ありがとうございます。

 先ほどビジョンのところでも申し述べましたように、これからの社会というのは、我々が想像する以上の規模とスピードで急激に変化していくというふうに考えられます。

 今、確かに連携はたくさん行っておりますけれども、今の連携は大学が外に出すのが可能なところで行っているということで、必ずしも、組織的、かつ、かなり広範にやっているわけではありませんので、これからの社会変革といいますか、それを相当の規模とスピードでやっていこうと思うと、どうしても、ビジョンを共有し、そして資源を、出せる範囲じゃなくて積極的に持ち寄っていくというような体制が必要で、そのためには一定のガバナンスも必要なので、これは法人統合をしないとできないというふうに岐阜大学の森脇学長と判断をいたしまして、実際問題として、これを決断してから、学内でさまざまな話が進んでおります。

青山(周)委員 ありがとうございます。

 今、ワーキンググループ、ずっと検討の最中だと思います。この法律案を通して、本当に東海地方を牽引していただけるようなしっかりとした機構になっていただけるように、本当に期待をいたしております。

 次に、お伺いをさせていただきます。

 今回の国立大学の、一法人多大学もできるんですが、一法人の中で経営と教学とを分離することもできるということになりました。これに関して、ここもメリットが私はあると思うんですね。経営と教育、全て学長が担っていたところを、今回の法改正によって、そこをばらばらにすることができる。ここのメリットに関してちょっとお伺いをしたいというふうに思います。永田参考人からお願いをいたします。

永田参考人 お答えをしたいと思います。

 この法律の応用版といたしまして、一法人が、現在の国立大学法人法、学長が経営と教学両方に責任を負うという体制から、お二方にその責務を分けることが可能となるというわけであります。

 これは、大学の規模や大学が設置されている環境に依存すると思いますが、何でもかんでも分けていけばいいわけではなくて、やはりそこの規模等によると思います。

 しかし、両者がお互いの能力を、例えば学長が理事長の役目をやはり理解しなければいけないし、理事長は大学の教学についても理解をしなければいけない。そういう理解が進んだ段階で、ほぼほぼ、経営を担う方と教学の責任を担う方、これが分離することは、ある大学においては非常に有効であろうというふうに考えております。

 ただし、全ての大学に応用されるべきものかどうかは、個々の大学の自由に任せるべきだと思っております。

青山(周)委員 確かに、することができる規定ですので、各大学の状況に応じてというのはそのとおりだと思いますし、教学と経営を分離することができるというところで伸びていくところもあるとお伺いをさせていただき、ありがとうございます。

 それでは、ちょっと私学法の改正について、両角参考人にお伺いしたいと思います。

 お話の中では、私学法の改正については不十分なところが多いというお話を先ほど多くいただいたように感じております。一定の評価はあるというお話もされておられましたが、役員の責任の明確化ですとか情報公開の推進が図られることによって学校法人の役員の意識改革を図っていく、そこが肝だと思うんですが、大学改革を進める上で、各大学における意識改革を図るために、不十分なところも含めてどのようなことが必要であるか、お話をいただければと思います。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 一定の評価はもちろんしているんですが、不十分なところは確かにあると思っています。というのは、私立大学のガバナンスが余りに多様なので、なかなか一つの解決策を法律の中に盛り込めなかったということで、どうしても不十分さは残らざるを得ないのかなと思っています。

 そこから考えますのは、先ほども申しましたが、理事ですとか監事になっていく人たちが実際にこの責務をどれぐらいきちんと果たせるかというところでして、制度だけきちんとつくりましても、それをなかなか理解していないとか、それを担える人材がいないというところが問題なのではないかなと。

 例えばアメリカですと、いわゆる私立学校法なんという法律なんてないんですが、理事はこういう仕事をするものだとかそういうことが普通に浸透しているんですね。それはなぜかというと、理事の大学団体というのがあって、新しく理事になった人たちはいろいろな訓練を受けたりとか横のつながりがあって、その人たちの職務を向上できる機会があるんですが、日本はまだそこが不十分で、ないので、そういったものがやはり必要なのではないかなと思っております。

青山(周)委員 ありがとうございます。

 私立大学に関しては、本当に大きなところから小さなところまでさまざまあるので、私も、一律に法律で決めるというところで、大きいところと小さいところではできることが全く違ってきますので、そういうところがあったのかなということは感じておりました。御意見をいただき、ありがとうございます。

 最後に質問させていただきます。

 永田参考人に。先ほど、今回の法改正はまずは一歩であるというお話をされました。今後に関して、中教審の方も含めて、この先どのように競争力の高い大学にしていくのか、そんなお話をいただければと思います。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 今回、質保証の部分で十分でないと思っていることの一つは、認証評価団体というのは幾つかございます、この認証評価団体は、第三者評価も受けるように努力をしておりますけれども、評価団体同士の間での評価の水準というものをまずそろえないといけないだろうということが一つあります。

 それから、国立大学法人法に関しては、今回大きな変化をしておりますけれども、今後必要だと思われるものは、法人を支える経営基盤を確固たるものとするような法的な規制緩和等が必要だと思っております。

 今現在、限られた法律の中で最大限の努力をどの大学もしているはずではありますけれども、今の状況で、例えば、去年、おととし、国会で審議いただいて、みなし所得の部分が所得税がかからなくなったというような大きな税制改正があって、これが大学に寄附を呼び込む呼び水になったように、そういった規制についても重々御議論いただいて、緩和、あるいは、より持っている資源を活用できるような方策を更に御検討いただきたいということでございます。

 私立大学においては、一番大切なのは、やはり財務状況を学生さんたちに知らせるという段階で、財務状況は、現在は、閲覧したいところに、利害関係者に見せることができるというところが、今回の法律で新たに、公表するということに変わりますので、そこは一歩図られたと思いますけれども、やはり財源の多様化等を考えると、国公私立どの大学に対しても、より経営基盤を強化できるような内容についての御議論を続けて、ぜひとも先生方にお願いできればと思っております。

 ありがとうございます。

青山(周)委員 ありがとうございました。終わります。

亀岡委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 立憲民主党・無所属フォーラムの菊田真紀子です。

 私からも、三名の参考人の皆様に、貴重なお話をいただきましたこと、また、御多用の中、こうしてお時間をいただきましたこと、心より感謝を申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず初めに、大学に対する財政的支援のあり方について御意見を伺いたいと思います。

 先週、衆参両院におきまして、昨年ノーベル賞を受賞されました本庶佑先生に対する表祝行事が開催されました。本庶先生は、御挨拶の中で、若い研究者が次々と生まれるよう日本の基礎研究を今後も一層支援していただきたいと述べられたんですが、私は、若手研究者や研究を支える基盤経費が足りないという現状に対して危機感を示されたのではないかなというふうに受けとめさせていただきました。

 国立大学の運営費交付金の削減と重点支援評価の拡大、さらには競争的研究資金の増額により、大学経営の自律性が損なわれ、その結果、大学の教育や研究が衰退し、科学技術研究のレベルは低下したのではないか、こういう指摘もありますが、大学に対する財政的支援のあり方について、まずは三名の参考人の方に御見解をお伺いいたします。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 国立大学においては、今現在、各大学の努力によって、少ないところでは運営費交付金依存率が四〇%程度、多いところでもようやく六〇%程度、そのほかは自助努力によって賄っております。

 しかし、最も重要なのは、運営費交付金のほとんどが基幹的な経費、つまり教員の人件費と光熱水料等のそういう基幹的な部分に充てられております。この部分が安定的に確保されない場合には、計画等が練れません。

 そういう意味合いで、運営費交付金、最初の第三期中期目標期間に入ったときに、いわゆる目的的に評価を受けて、それが返還されてきて運営費交付金として使える仕組みであったんですが、これが一番困りまして、つまり、自由に使えるミシン目が入ったものとして来ておりました。これが、今般、今度は全体的に傾斜配分額をふやしながら、しかし、全部基幹経費として使えるようになった。片方よくなったら片方がうまくなくなった、こういう状況なので、やはり基幹的な経費というものについては、安定的な措置がぜひとも必要だと思っております。

 大学の立場からいえば、当然のことながら、教育、研究に資する基幹経費は増額をお願いしたいところでありますが、我々も日本国民でありますから、それは当然ながら、社会福祉等とのバランスの中で一番いいところをぜひとも見つけていただきたい。我々としては、基幹経費の安定的措置、これを切に願っているところであります。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、この基盤経費についてはとても深刻に受けとめていまして、競争的な資金ですとか重点的な資金配分というのももちろん必要なんですが、それは一定程度の基盤経費、生活費のようなところが保障された上でということではないかと思います。

 今、そこが足りないところに競争的資金とかだけがふえてきていますので、結局、同じ金額が大学に入ってきたとしても、競争的資金をとるために大学とか教員がしなければいけない努力ですとか、あるいは、視野がどうしても成果の出やすいものになってしまって、とにかく競争的資金を獲得しなければというふうに、必ずしもよい方向につながっているとは思っておりません。そういう意味では、基盤経費の充実が、なかなか難しいと思いますが必要だと思います。

 それを訴えていくためにも、大学というのは、基盤的な経費、税金を使ってどういう成果を上げているのか、研究もそうですし、学生たちに、どういう学習の成果を身につけられたのか、大学に行って何がよかったのか、大学にお金を出してどうよかったのかということをもう少し見えるように説明していく必要があるのではないかなと思っております。

松尾参考人 基盤的経費につきましては、先ほども永田参考人からもお話がありましたが、私としても、一定期間やはり安定した交付をする、その一定期間が終わったときに評価によってまた額を変えるというのはいいと思うんですけれども、毎年変わるようなことでは大学の経営が非常にやりにくくなりますので、そういった、今の永田参考人のお言葉で言えば安定的な、一定期間安定した交付の方式をやっていただきたいというふうに思います。

 一方で、いただいたお金をどういうふうに使って、それがどういう成果を上げているのかということについては、これはまた大学の側のマネジメントの問題になります。ですから、交付する側とそして交付を受ける大学、この二つの非常に密接な関係でもって効果が最大限になるような、そういう適切なシステムの構築が絶対に必要だというふうに考えております。

菊田委員 ありがとうございました。

 先ほど、両角参考人は、一法人複数大学は法改正しなくてもできるのではないかというようなお話がありましたので、もう少し子細にお話をいただけますでしょうか。その上で、松尾参考人の御意見も伺いたいと思います。

両角参考人 名古屋と岐阜の例について詳細に、どこまで把握しているかというのはなかなか難しいんですが、例えば事務的なところの経営統合であったりですとか、あるいは教育の面での連携ですとか、それは別に、何の法律的なものもなく、やろうと思えばできる、制度は十分整っているという面で、必ずしも法改正がなくてもできるのではないかという話をしました。

 また、一法人複数大学になったから自動的に連携が進むかというとそうではないというのも、私学でそういう学校を見ていますので、私立大学の場合は一法人で複数大学を持っているところもありますが、うまく連携して効率化を図れている学校ばかりではないので、それが全ての解決ではないというふうに考えます。

 ただ、やはりなかなか、連携しようといっても、現場は皆さん、大体、連携すると面倒くさいですし、やりたくないので、こういう法律があることで一つそういう議論を進めるきっかけにはなるのかなという、そこは評価をしております。

松尾参考人 先ほどの資料を見ていただきたいんですが、七ページとか八ページとか、あるいはその次のページを見ていただきたいんですが、この法人統合によって、ある意味では、最も大きく変わるところは何かといいますと、これは大学構成員のマインドセットの変化です。一つの大学の枠の中で物事を考えていく、地域のことも一つの大学の中で考えていく、連携についてはやれるところだけやる、これでは本格的にアカデミアが地域創生に本気でかかわることはできないというふうに私は考えていまして、そのためには組織改革は絶対に必要であります。

 ここで、我々の東海大学機構で今考えていることは、事務は機構のもとに一元化いたします。それから人事評価システムも、これは岐阜大学さんが非常にいい、関門評価という教員の評価システムを持っておりますので、名古屋大学に同じものを取り入れて教員の評価、あるいは処遇はそれぞれの大学でミッションも違うので違ってくると思うんですが、少なくともそういう骨格的なところは一緒にする。こういう取組というのは、法人統合を前提にしないとそもそも出てこない話なんですね、クロスアポイントとかそういった程度で済まされるんですが、組織的、戦略的に進めようと思ったらこれはできないところだと私は思います。

 ちょっと戻るんですけれども、先ほどのマインドセットの変化でいいますと、当初我々が想定していました幾つかの共同事業があるんですが、それを超えて、今、積極的な両者の話合いがいろいろなところで起こっている。これはまさに、ある一定のくびきから解き放たれて、少し発想が自由になっていろいろなことができ始めているいい面かなというふうに思います。

 ただし、今まで別々にやってきた大学が突然一緒にやるというのは非常に難しいことで、法人統合したからといって自然に何かできるものではなくて、かなり血のにじむような努力がこれから続いていくというふうに思っています。

 以上です。

菊田委員 ありがとうございました。

 続きまして、認証評価制度についてお伺いしたいと思います。

 この認証評価制度によって、大学などは公的な第三者評価機関によって評価をされ、その結果が公表されることで、大学などが社会による評価を受けることが目的の一つとされています。

 しかし、実際にこの制度による評価が学生や保護者、企業などに認知をされ、参考にされているとは言いがたい状況ではないかと思っています。いまだに偏差値や大学ランキングが重視をされておりまして、ほとんどの学生がそれを基準にして進学先を決めているのではないでしょうか。

 今回の改正案によって、評価制度は学生たちが大学を判断したり選択をする指標になり得るものに改善されるとお考えでしょうか。三人の参考人にお聞きをいたします。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 委員御指摘の部分はこれまでありました。これを、今回の中で法律として文部科学大臣に不適合等を報告するというプロセスは、大分の改善だと思っております。

 具体的に、我が国ではこのアクレディテーションというシステムの認知度が低いのは、これは認証評価にかかわる団体の努力も少ないということもあるかもしれませんが、外国留学において、多くの場合、相手の大学から例えば認証評価団体に、ここはちゃんと適合しているかというような問合せは頻繁に起こります。適合していないと留学できないというようなことは実は実際には起こっておりまして、これは大学に入っていよいよ外国に留学してみようというときにならないとわからないということでは、やはりよろしくない。

 ですから、認証評価の持っているそういう国内外に及ぼす影響をもう少し広く示していかなきゃいけませんが、今回の法律案でかなりインパクトの強い不適合の措置になると思いますので、これを契機に、認証評価団体にも認証評価の意味とそれからその結果を広く社会に知らせる努力をいただきたい、そういうふうに考えております。

両角参考人 なかなか今まで学生や保護者に認知されていなくて、偏差値とか大学ランキングで進学先を選ぶということが今回の認証評価の制度改正でどう変わるかということについては、それほど、そこに対しては大きく変わらないのではないかなというような個人的な感触は持っています。

 それこそ、留学するとか、ほかの国から留学生が来るときに、日本の聞いたこともない大学だけれども大丈夫かしらというときに認証評価を見ていただくという面ではとても重要だと思いますけれども、実際に学生が大学を進学先として選ぶときは、認証評価はあくまでも最低基準ですので、学生が選ぶときというのは、もっとその大学の長所とか強みとか個性といったところで選ぶのではないかと思うので。

 認証評価の結果の、長所というところはあるんですが、それだけというよりは、大学みずからが、自分の大学に来ることでこんなにいいことがあるよとか、そこをアピールしていくことの方が、むしろ進路選択での選択基準というところでは大きな影響を与えていくのではないかなと思っています。

松尾参考人 私も、認証評価は大学の最低基準であり、生徒が大学を選ぶときの基準には今は全くなっていないというのが現状だと思うんです。

 その上で、これからは、私は、大学の教育の質や研究、それから社会貢献、こういった中身について、もっともっと、認証評価はもちろんなんですけれども、そういったものがどれぐらいの高みでできているか、こういったことをもう少し社会に正確に知られるような、そういった広報活動といいますか情報提供活動をしっかりやった上で個々の生徒が大学を選べるような、そういうシステムをやはり確立すべきだというふうに思っております。

菊田委員 ありがとうございました。

 それでは、最後の質問です。

 私立大学、特に地方の中小規模の私立大学の未来について、両角参考人にお伺いいたします。

 十八歳人口の減少の影響を受けて、経営が成り立たなくなる大学が今後ふえていくのではないかというふうに見込まれるわけですが、とりわけ地方の中小規模の私立大学は大きな影響を受けるのではないかと思います。

 私の地元新潟でも、県内の各大学等が生き残りをかけて、それぞれの特色を打ち出して、学生の確保を図ろうということで努力をしていますけれども、今後、地方の私大に待ち受ける未来はどのようなイメージになるのか、お聞きしたいと思います。

 また、午前中の参考人質疑の中で、参考人の方から、大学等への進学率は地域間格差が都道府県によって依然として大きいという指摘がありましたが、こうした地域間格差を解消するためにはどんな対策が考えられるか、御見解をお聞かせください。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 私、今のままでは地方の特に中小規模大学の経営が厳しくなるというのは、同様の危機感を感じております。大学の進学率の地域間格差も、極めて今も大きいです。

 もともと私立大学というのは、やはり一定のマーケットがないと経営が成り立たないようなもので、戦前にしても都市部中心に発展してきました。

 今、地方でなぜこれだけ小さい私立大学がたくさんあるかというと、いっとき、例えば公私協力方式などで、最初の設置費用は出してあげるからその後は頑張って運営してくださいというような、そういう方式でふえてきたんですが、それは、学生がふえていた時期はそれで来る学生がいたんですが、今は学生自体、十八歳人口自体が減少しているので、もうその方式ではなかなか成り立たないのではないかと思っています。

 どうしたらいいのかということについては、私は、地方の地域間格差、教育格差を是正するということを本当に重視するのであれば、そういった大学に対する補助というものをやはり手厚くしていく以外ないと思っております。私立大学で定員割れをしていたところでも、公立大学化して授業料が安くなっただけで学生が集まっているという現状を見ましても、地域には一定のニーズがあると思うんです。ただ、やはり授業料が高くて通えないという層がそれなりにたくさんいるので。かといって、東京に進学しろというのも、乱暴というか、それなりにコストもかかります。

 やはり、それぞれ生まれた地域で差が出ないように、機会均等がちゃんと成り立つようにするためには、そういう私学に対して、また、中小のところが多いので、そこに手厚く補助を出すといってもそれほど財政的な負担が大きくふえるというものではないと思いますので、きちんと補助をしていく、手厚く補助をして授業料を下げてあげるというようなことをしていくことが必要なのではないかなと思っています。

菊田委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、牧義夫君。

牧委員 国民民主党の牧義夫でございます。

 三名の参考人の先生方には、御多用の中お越しいただきまして、本当にありがとうございます。また、貴重な御意見を拝聴させていただきました。ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思いますけれども、冒頭、永田先生から中教審のお話もいただきました。そもそも、四〇年の高等教育のグランドデザインということで、大学の進学者が現在の六十三万人が五十一万人になる、そういう中で連携推進の法人をつくっていくんだということですけれども、ちょっと私の読み方が表層的過ぎるのかもしれませんが、つまりは、少子化の中で大学が生き残りをしていくためにはいろいろ経費の節減も必要であろうという読み方を私はさせていただきました。

 これまで、例えば独立行政法人等も、類似の目的を持ったものが統合したり、共通の事務の部分を省略することによって経費の節減をしてきたということですけれども、今回のこの立法事実というか、私はその部分ぐらいしか読めなかったんですけれども、今回の立法によって、もっと、私が今申し上げたこと以上のメリットがあれば、それをちょっとわかりやすく教えていただけると。それぞれもし御意見があれば、三名の先生方に教えていただければと思います。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 今委員御指摘の部分は、最終的に、結論としてそういうガバナンスや経営基盤の強化ということになればよろしいんですが、今回の答申の基本的な考え方の一番大きなところは、やはりこの次の時代の教育を担う体制を強化するというところにあります。

 わかりやすい例で申し上げると、余り固有名詞を挙げたくありませんが、例えば工学系の小さな単科大学があったときに、そこで一般教養や人文・社会科学を教えるといっても限界があります。こういう際に、今はお互いに先生を貸し借りしながら何とかやっている現状の中で、最初に冒頭陳述で申し上げたように、幅広く、しかし専門も深くという状況の中で、大学がその機能を発揮するためにどうしたらいいか。その一つとして、あくまでも大学の機能強化という視点を第一に置いて、連携、統合が可能になるものを御用意いただいているという認識であります。

 結局は、大きなところが何かをするとか、壊れそうになっているものを何とかする、その発想は基本的にはなくて、それぞれの大学がよりよい教育を施せるようなシステムを相互補完的につくっていく、この点に一番重きを置いて、ぜひとも御審議の方をお願いしたいと思っております。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 もちろん、経費の削減ですとか経営の効率化をしていくということが一つの目的ではあると思いますが、それだけではなく、今、永田参考人もおっしゃったように、やはり機能強化だと思います。

 やはり、特に規模の小さい大学では、必要な分野ですとか全部を押さえるということはなかなか経営のことを考えても難しいわけで、ただ、ほかの大学と協力すればいろいろなプログラムだって組めますし、あるいは、今いろいろなICTとかも発展してきていますので、例えば土地が離れていようが、共同の教育プログラムをつくることも可能になるかと思います。

 そういうふうに、それぞれの強みを持ちながら、足りない部分についてはほかの強みを持ったところと補い合うことでより魅力的な大学になるという、そちらの方の意義の方がより大きいのではないかなというふうに私は感じております。

松尾参考人 中教審の答申はそういうふうに読めるかもしれないんですが、私は、子供が減るので大学縮小、数も減らす、これでは全くのデフレスパイラルでありますので、あそこに書いてあることは、非常に厳しい状況の中でも、どうやって大学の教育や研究の機能強化を果たして、そして地域にも貢献でき、国際競争力もつけていくのかという大きな観点で書かれているものだと思います。

 私どもがやっております東海国立大学機構も、メディアには生き残りのために統合するんだというように随分書かれているんですが、決して我々の志はそういう低いところにはなくて、やはりもっと世界に雄飛する、それから地域にももっともっと貢献できる、そのためにはどういう方法がいいのかというのを考えてやっています。

 恐らく、中教審の答申の精神にもそんなにたがえてはいないのではないかなというふうに私は思っております。

牧委員 ありがとうございます。

 三名の先生方の御趣旨には全く賛同するものですけれども、機能強化ということと経営基盤が強化されるということ、これは、ある部分はイコール、そうじゃない部分もあろうかと思います。

 その中で、今、永田先生のお話の中に先生の貸し借りという表現もあったんですけれども、ちょっと気になったのが、やはり平成十二年からずっと、任期制の研究者が物すごくふえ続けている中で、もう少し落ちついた環境で学術研究ができる、そういう状況をよりつくっていくべきだと私は思うんですけれども、今回の機能強化あるいは経営基盤の強化の中でそういうことに果たして結びついていくんでしょうか、ちょっと教えていただきたいと思います。

永田参考人 ちょっと言葉が一般名詞になり過ぎたかもしれません。

 実際には、例えば名古屋とでも、我々筑波大学もいろいろと共同で教育をやっております。そういう意味合いでの貸し借りと申し上げました。

 それ以上に今御指摘の部分は大変重要な問題を含んでおりまして、安定的に広い分野、専門力を鍛える、そのためには、当然ながら、安定的な先生の確保というのは大変重要な問題だと思います。しかし、我が国は、潤沢に何でもあるという国では今ない。

 そういう状況を考えたときに、二つの大学の例えば英語の先生が片方に十人、十五人ずついても、それを一つに統合することで二十五人になるのではなくて、やはり二十人、つまり、片方十で片方十五で足せば二十五ですが、二十人という増員をしつつ、しかし、五人の新しい枠をまたより一層違う分野に使っていくこともできるであろう。多分、名古屋、岐阜の中でもそういうことが考えられていると思います。

 何せ、アカデミアの分野も年々歳々いろいろ多様性に満ちてきており、我々としては、いろいろな方面の先生たちの協力を得て教育を進めたい、そういう意味合いで、そこではある意味では節約をするけれども、その部分をラグジャスに違う分野に使っていく、こういう発想もあると思っております。

牧委員 ありがとうございます。

 松尾先生にちょっとお聞きしたいんですけれども、今回、全国で初のケースということで、これがうまくいけば次へ次へとまた発展していくんだと思うんですけれども、御説明では、産学連携にかなり重点を置かれているなという印象を受けました。確かに、私も名古屋ですけれども、中部地区というのは産業の集積地でもあり、そういった期待に応える、そういう学校であるべきである、そういう使命感がかなり強いんだろうと思うんですけれども、必ずしも、全国初とはいえ、そういう意味で、これが一つのモデルケースとは言えないんじゃないかなと思うんですよね。

 これは名大と岐阜大の関係において特殊な事例であるというふうに私は認識しておりますけれども、いや、そうじゃないんだ、それ以上のものがあるんだというお話があれば、お聞かせいただければと思います。

松尾参考人 御質問ありがとうございます。

 私どもの考え方は、これまでの経過を見ておりますと、今のまま真っすぐ行ったのでは、なかなか大学の発展もないし、地域の発展により深くコミットするということには限界があるというふうに考えております。

 その上で、私が最初の御説明の中でもお話ししましたように、各大学の置かれている状況は、その地域の産業立地や、あるいは歴史、文化、それからその地域にある大学群、こういったものによって全部違いますので、大事なことは、それぞれの大学あるいは大学群が、自分たちは将来、どうやって地域、国、産業界、自治体と一緒になって発展していけるのかというのをそれぞれの立場で考えて、それに果敢に挑戦するということが大事だと思っています。ですから、ほかの大学の法人統合があったとして、これは名古屋と岐阜がやるのと同じような形でいくとは全く思っておりません。

 大事なことは、そういう百家争鳴的な議論が全国各地で巻き起こって、それで大学改革に一層拍車がかかる、それを国、産業界あるいは自治体が応援する、そしてそのリターンはまた地域や産業界がとるというふうなことが、それぞれの地域においていろいろなことが出てくることが大事で、我々はちょっとそれに火をつけるためのファーストペンギンかもしれませんが、勇気を持ってまず進めた、こういうことでございます。

牧委員 ありがとうございます。

 冒頭、永田先生のお話にもありましたように、中教審の答申というのは今回の法改正につながっているというお話ですけれども、今の松尾先生のお話にもありましたように、これからまたいろいろなケースというものがあろうかと思います。そのとき、どんなケースをほかに想定されて、今後どういう連携というのがあり得るのかという、もしイメージがあれば教えていただきたいと思います。

 それと、今回の名古屋大学、岐阜大学の話というのは、上から降ってきた話なのか、もともと名古屋大学と岐阜大学の間でそういう話が、下から持ち上がった話なのか。実際のところ、どこからこの話が起こったんですか。

 素朴に思うんですよね。例えば、では三重大学は一緒になれなかったのかとか、あるいは、今回の法律の仕組みでいうと私学だって別に一緒にできるわけで、今まで、例えば単位の互換ですとか、学位プログラムまで行っているかどうかわかりませんが、いろいろ連携もあろうと思うんですね。そういうところも視野に入っていたのか、入っていないのか。ちょっとその辺の、実際の話を聞かせていただければありがたいと思います。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 実は、今般の法律の中ではできないことで、ぜひともこれからお考えをいただきたいのは、国公私立の枠組みを超えた連携の推進というか支援ということができるかどうかという問題です。

 それぞれの地域に行った場合に、それぞれミッションの違う国公私立が、しかし共同してできることと、それぞれを生かしていく道はあると思いますが、今回の法律改正ではそこまでは踏み込んでいないと思います。

 先ほども御質問がございましたけれども、地域という観点から見たときに、その設置者が国公私立であることが問題ではなくて、それらが総合して何ができるかという観点だと思っております。そういう意味合いでは、今回はそこは踏み込んでおりませんけれども、更に、我々としては、この国の高等教育の高度化に向けてぜひとも御議論をいただきたいと思っております。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

松尾参考人 簡潔にお答えします。

 これは我々が自発的に提案をして進めてきたものです。何回か議論をするうちに話はどんどん先に進んで、一法人複数大学が非常に妥当であろうということで、むしろ、先ほども言いましたように、指定国立大学法人の構想を出すときに我々の方から積極的に提案をさせていただいた、こういう経緯でございます。

 それから、ほかの大学なんですが、そういう経緯でございますので、個別の大学の判断がございます、まだ時期が早いとかございますので。そのときに、よし、やるぞと言っていただいたのが岐阜大学ですね。その後、非常に順調に進んでおります。

 ですから、自発的なものでございます。

牧委員 ありがとうございます。

 自発的ということですけれども、中には、岐阜大学が名古屋大学に吸収されちゃうんじゃないかみたいな懸念をする声も、ちょっとちらっと聞こえたんですが、多分、松尾先生もそういうことに配慮されて、きょうも岐阜大学も一緒に来られているという発言があったんだと思います。

 情報を共有することは大変いいことだと思うんですけれども、余り気にし過ぎると意思決定がスムーズにいきませんので、そこは柔軟に考えていただいてよろしいかと思います。

 その上で、そうすると、今のお話からすると、更に他の大学との連携もこれから発展的に進めていくという理解でよろしいんでしょうか、松尾先生。

松尾参考人 おっしゃるとおりでございます。

 そのためにも、今、岐阜大学と進めております一大学複数法人のマルチキャンパスによる東海国立大学機構をぜひ成功例としてつくり上げたいというふうに思っております。そのことによって、ほかの大学がこれに参加するハードルが随分下がると思います。

 それによって、名古屋大学も岐阜大学もともに発展する、これが見えれば、より拡大ができていくのではないかというふうに思っております。

牧委員 時間になりましたので、終了いたします。

 ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 本日は、永田先生、また両角先生、松尾先生、三人の参考人の皆様、お越しをいただきまして、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 午前中は修学支援ということで、給付型奨学金や授業料減免、そういう支援につきまして議論をしてまいりました。午後は学校教育法等の一部を改正する法律案ということで、お三方より御意見を頂戴したところでございます。

 今回、法律の改正、何本か柱があるということで、一つは、質の維持であるとか質の保証というところで柱がございました。もう一つは国立大学法人法の一部改正ということで、一法人複数大学、これの導入ということでございますので、ちょっとこれに関連をしまして、永田参考人、そして松尾参考人のお二方にお伺いをしたいんです。

 先ほど来さまざまな議論が既になされておりますので、一部重複はするかもしれませんけれども、永田参考人の方からも、今回、これは幾つかの大学が協力をして、しっかり機能強化を図るというふうな御説明もあったかというふうに思います。ともすれば、少子高齢化で学生の数も減っていくので、先ほど松尾参考人からも、生き残りをかけた統廃合とかそうではなくて、しっかりと更に高いレベルのものを目指していくというふうな趣旨のお話もあったかというふうに思いますけれども。私も、必ずしも、子供がどんどん減っていくから、じゃ、縮小していく中で大学の数を減らしていくみたいな議論をしていくと、なかなか日本のこれからの高等教育というのは非常に難しいのではないかというふうに思っておりまして、そんな中でも、しっかりとした高等教育、何を目指していくのかということが大事かというふうに思っております。

 そういう観点から、お二人の参考人に、今回、一法人の複数大学ということで新しい制度が導入をされるわけでございますので、こうした制度の改正の意義や狙いといったものについて、もう一度また御説明をいただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、先生がおっしゃるところの、十八歳人口が減少するから大学数が減ればいい、それは必ずしも正しくないだろう、全く賛成するところであります。我々が考えなければいけないのは、これからの将来に一体どれだけの知識集約型社会を支える人が必要かという議論であって、それは人口が減ったから減るものではないというふうに考えています。

 そういう観点からいくと、次にやらなきゃいけないのは、やはり個々人、学生たちの能力をより高めていくことというのが非常に重要な観点になります。

 一般的に共同研究などという言葉が出ておりますけれども、旧来のモデルというのは、一つの専門家がもう一つ違う専門を持った人と共同研究をする、これが一般的な共同研究の方策です。

 しかし、最もイノベーティブな今考え方は、少なくとも複数の専門分野を持った方が複数の専門分野を持った方と共同するというのが標準化されていこうとしています。足し算ではなくてこれは掛け算ですから、一気に四倍にふえるということです。

 ということは、これからの学生教育において、一つの専門だけを深く教えるだけでは済まない。少なくとも、複数にわたる領域にその深い教養と専門性を持たせなければいけない。

 この際、これが、単科大学を例にとればはっきりわかると思いますけれども、本当にそういう教育を施すことができるかどうか。というのは、今の現状の中では、できる大学もあるし、できない大学もあるということになると思います。

 そこで、大学間、特徴を持ったものがお互いにコラボレーションをするというのが、今私が申し上げたように、今現在ですらトレンドになって、この先どうなるかわからない、より複数の専門性を求められる時代が来るときに何が必要かという論点からいくと、当然ながら、複数の分野を専門として教えられるような、そういうつくりを何かの形でつくっていかなきゃいけないだろう。その一助として今回の法律はあるというふうに考えています。

松尾参考人 先ほどの資料の七ページをごらんいただきますと、これは両大学で進めようとしている教育の中身なんです。

 アドミッション部門というのは入試なんですが、リベラル・アーツ、それから数理・データ科学、それから、国際化ということで英語教育ですね、これらは社会から共通して求められています。これはどこの大学もしっかりやりたいんです。ところが、なかなか、規模の問題だとかいろいろあって、できないということ。

 これを、今後、教育の方法、オンライン教育とかあるいはバーチャルリアリティー等々も入ってきますが、そういったものをより広範にやらないと意味がないですね。これは名古屋大学でもしできたとしても、数は限られていますから、これをどんどん地域あるいは全国ネットで結んで、全国に広げていくということが必要です。

 そのために、アカデミックセントラル構想というのは、そういったいろいろ考えている中の一つなんですが、こういうヘッドクオーターを新しくできる法人の中につくって、これを複数の大学に広げていく。あるいは、日本ではSINETという強力な情報通信網がありますから、ああいったものを通じて、例えば北海道ブロックとか九州ブロックでつなげば、物すごくいい教育コンテンツがいながらにしてできるというような時代が恐らく来るだろうということで、その先駆けをとるために、我々、この東海国立大学機構ではこういったことを共同してぜひやりたい。

 今、それをやると、二大学でやるのと一大学でやるのとでは、それに必要なリソースだとかあるいは学生の数だとか、これは当然拡大しますから、その効果も大きいし節約もできるということでございます。

中野委員 ありがとうございます。大変に参考になりました。

 もう一点、私、十八歳人口が減っていく中で、これから大学の中で大事になる役割として、リカレント教育というのがやはり大学の中で非常にこれからの大きな役割を果たしていかないといけない分野なのではないかというふうに思っております。ですので、できれば三人の参考人の皆様にお伺いをしたいんですけれども。

 ただ、私も地元でこのリカレント教育を大学がやっている事例などもお伺いをしますと、まだまだ、やらないといけない、あるいはやっていきたいという思いはありながらも、やや手探りなところもあり、また、国の方からの支援という形でも、なかなか、直接それに対して何か大きな支援があるかというと、それもまだまだこれからだという状況でもあるというふうに思います。

 ですので、各大学、これからまさに検討されているところなのだろうとは思うんですけれども、今後のリカレント教育の進め方ということで、どういった形の後押しというものが必要となってくるか、あるいは、どういう分野のどういうところにおいてやっていく、進めていくことがいいのであるかなどにつきまして、ぜひ御意見をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 十八歳人口の減少に伴いながらも国力を失いたくない、そのときに頼るもの、それの中には、理系でいえば女性たちももちろんこれからふやしていかなきゃいけませんし、外国人の優秀な方を借りることもある、その一つとして、社会人リカレント教育というものを捉えていかなければいけないであろうというふうに考えております。

 このリカレント教育のニーズは大変高いと考えております。少なくとも、具体的な一事例として、本学が社会人だけの修士課程の大学院を持っておりますけれども、普通の大学院の競争率のずっと上、つまり八倍、十倍ぐらいの競争率があります。非常に熱心に学問に向かっていっていただいている、そういう現状があります。

 その中で、大きな問題は、その修学支援として、それは社会人だから十八歳の学生さんとそんなに、それほどの支援をしなくてもいいのではないかというのはやはり間違いで、学業を積んでいる間というのはそれなりに収入も減る可能性もある。

 それから、主に産業界の方々にぜひともお願いをしたいのは、そういうリカレントの教育を受けている間にそれなりの措置をぜひともいただけないかということでありまして、まさか有給休暇とまでは申しませんが、無給であったとしても、それは単なる休職ではないという観点が必要かなと思っております。

 そういったものが、これまでにない新たな分野にもう一度社会人が転身をしてこの国を支えるということにつながるのではないかと思っております。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 本当におっしゃるように、リカレント教育は私も非常に重要だと思っています。ただ、やはり、現状を調べてみますと、思うように進んでいないというふうに私は評価しています。

 では、今後の進め方として何が必要かということについては、それぞれあると思います。

 一つは、学ぶ社会人の側でして、やはり、今永田参考人もおっしゃったように、負担がそれなりに大きいので、社会人が学ぶといったときにも何らかの支援が得られる必要があるのではないかなと思っています。個人にメリットがあるだけではなく、企業ですとか社会にとってもメリットがあるということで、そういう議論をしていただきたいということ。

 もう一つは、やはり企業側ということで、我々が以前行った調査ですと、そもそも自分のところの社員が学び直しすることを原則認めていないというふうに回答した企業が非常に多くて、私も、実は学生さんの多くは社会人なんですが、皆さんかなり苦労して、上司の許可がないので入学できないというケースも毎年発生したりするというふうに、送り出してくれる企業側の意識改革と行動改革が何らか必要ではないかなと思っています。

 もう一つは大学側でして、大学側もさまざまなプログラムをつくっていますけれども、形だけつくっていて、中身、全然学生が集まっていないプログラムも正直多いかと思います。十八歳を対象にするものと社会人を対象にするものというのは、教える内容も教える人もスケジュールとかいろいろなものが違って、大学も手探りかと思うんですが、そこに対する努力はもう少しすべきだと思いますし、また、社会人が一年とか二年とか学ぶということはやはりそれなりに負担が高いので、より短期の学びを少しずつやることで、それが積み上がっていくと例えば修士になっていくとか、短いところから少しステップアップして学べるような機会というのを大学側はもっとつくった方がいいと思いますし、そういったことに対する制度的なサポートも進みつつあると思いますが、もう一歩進んで行っていくべきだと思っています。

 ありがとうございます。

松尾参考人 今お話しのとおりだと思います。

 学び直しのニーズと大学が提供するプログラム、これはまだ十分、筑波大学の例のようにうまくいっている例もありますけれども、うまくいっていないことが多いので、これをしっかりマッチングさせるということと、人生百年時代で、これから非常に長い間働かないといけない時代が来ますので、こういった中でシステマチックにどういうふうに学び直しのシステムをつくるか、それを支援するのか。この方たちも大変大事な、言い方は悪いですけれども、労働力になりますので、これを国全体で支援するということは極めて重要かというふうに思っております。

 ですから、大学、国、それから企業、これが連携してやることが重要だと思っております。

中野委員 ありがとうございます。

 もう一つ、地方創生という観点からの大学への支援のあり方というものをお伺いしたいというふうに思っております。

 兵庫県、私の地元なんですけれども、ここ五年ぐらいで、もう大学が三つ閉鎖いたしました。そういう意味では、もともと大学の数が多かったのかもしれないんですけれども、やはり、経営が非常に厳しくなってきている。しかも、規模の少し小さい私立大学というか、そういうところもあって、経営が厳しいところというのはどんどん撤退をするという現実も少し目の当たりにいたしまして。ただ、地方の自治体からすると、進学するときと就職するときに県外に人口が流出するということもありますので、やはり、大学というのは地方の創生という意味でも非常に残っていただきたいというふうなこともありつつ、なかなか、効果的な支援のあり方というのが非常に難しいのかなというふうに感じております。

 最後に、永田参考人と両角参考人に、地方創生という観点から、今後の大学への支援のあり方というものにつきまして、こういう方向性がいいんじゃないかという、何か御意見をちょっと、ぜひ頂戴できればと思いますので、よろしくお願いいたします。

永田参考人 ありがとうございます。

 地方創生の中の基盤は、やはり文化を背負う大学、それから産業、この二つだと思います。

 一例、おもしろい例としては、米国の大手の企業の本社というのをグーグルで探っていただきますと、ほぼ八割方、地域に今現在散らばっています。それによって、地域での大学が実はやはり活性化をしているということでございます。

 日本は東京一極集中が非常に進んでしまっているので、やはり、一つの考え方としては、産業のその場での育成ということが非常に重要で、その産業を高度化するために大学が何ができるかということも考えなきゃいけないだろうというふうに考えているところです。

 地域の活性化、これからソサエティー五・〇、デジタルサイエンスが進む中では、地方と都市というのは差がもうなくなるはずでありますから、そのときになってから考えては遅いわけでありまして、そういうデジタルサイエンスが進んだ未来の中で、本当にそれぞれの現業の場所が次の産業を生む場所になるという認識を持った中で、大学は、教育、それから地元の産業との共同、これを進めることによって、学生の定着を進めていったらどうかと思っております。

両角参考人 地域創生ということで、大学については、地域創生を進めるために、東京一極集中が激しいということで、二十三区内の大学の定員増を禁止するという形で基本的には政策が行われていますけれども、やはりそれだけでは不十分というか、それがどこまで効果があるのかも私は疑問には思っているんですが、地方の大学自体に対する支援というものもやはり必要になっていくのではないかと思います。

 先ほども申しましたが、規模の小さい私立大学というのが、小さいけれども一定のニーズがあるのであれば、その経営が成り立つような支援をしていく。あるいは、場合によっては規制を緩和していく。大学の設置基準などで必要な教職員数をそろえるのもやはりそれなりに大変だと思うんですが、そこは、例えば地域で連携して、教養教育のようなものは地元の国公立大学とうまく連携していって、専門の分野でその大学の特徴を生かした学びができるとか、そういう、少し、支援すると同時に規制を緩和して、連携することで補い合って強くなっていくというのも一つのあり方ではないかなと思っています。

中野委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 永田恭介参考人、両角亜希子参考人、松尾清一参考人の皆様には、大変貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 二月十三日に文部科学省内で記者会見をされた「大学の危機をのりこえ、明日を拓くフォーラム」の皆さんの記事が載りました。ノーベル賞受賞者の梶田隆章、白川英樹両氏を始め五十一人の大学人の呼びかけだということで、私も読ませていただきました。

 「いま、大学はさまざまな危機に直面しています」ということで、「第一の危機は、学術研究や高等教育の基盤を支える教育研究費が年々削減され、教育・研究をこれまでの水準で続けることさえ困難になっていることです。」「第二の危機は、不断に「改革」を求めるかけ声のもとで、「大学ガバナンス」改革と称して大学にはふさわしくないトップダウン型大学運営が強化され、結果として大学全体が疲弊するに至っていることです。」

 それではどうしたらいいのかということが次に書かれておりまして、「第一に、以上のような「改革」が推し進められている背景には、まがりなりにも中長期的な広い視野から大学政策を立案する役割を担ってきた文部科学省と中央教育審議会の地位が低下し、首相官邸に政策形成に中心が移っているという事情があります。そのため、「科学技術イノベーション」の拠点、あるいは「地方創生」の拠点として大学を位置づけるというように、経済政策的視点に傾斜した大学政策が次々に打ち出されてきました。その結果、大学間格差が広がり、広がった格差は国立大学でも私立大学でも大学の事実上の「類型化」として固定化されようとしています。それぞれの大学が自らの判断で特色を打ち出すことは必要です。しかし、政策によって鋳型にはめようとすることは、大学のもつべき多様な役割、それぞれの個性を軽視することにつながりかねません。」、こういう御意見なんですね。

 私は、今回の学校教育法等改正案について、こういう視点でちょっと伺いたいと思っております。

 大学関係の皆様にいろいろお話を伺わせていただきました。例えば、認証評価機関の問題です。

 文部科学省が介入しないという目的のために、この間、文科省とは別の機関として設立されてまいりました。そこには各大学が人を出して、自主的な評価機関として出発をしております。つまり、大学が自主的に、また大学総体として自主的に評価をするというものです。それに対して文科省が何かをするということは、制度の根幹を百八十度変えることになるのではないかという意見を伺ってまいりました。

 加えて、何を評価項目にすべきかという、認証評価機関でそのことを議論してきたわけです。その際、その項目を決める議論は大学関係者が行ってきた。ですから、学問の自由や発展を阻害するようなものは入り込めない。認証を受ける過程で評価機関と大学との間でさまざまなやりとりがあって、その過程でも大学も自主的に取組を行っている。また、認証で不適格になっても、その課題とされた点を翌年以降、自主的に是正するという取組がなされている。ですから、この評価というのは、やや厳しい、つまり、文科省の介入がないですから、厳しいものになっている。もし文科省が介入することになると、こうした自主的な取組が崩れることになるのではないかという意見がございます。

 加えて、今の認証というのは、最低限守るべき点を見ることになっている。建学の精神に基づいて私学は多様なあり方を持っております。その多様性を保障するのが大切なのでありまして、認証評価のあり方を変えて一つの基準で、つまり文部科学省が望む基準で、しかも改革を義務づけるように文科省がかかわるようになると、この多様性が失われてしまうのではないか、そういう御意見を伺っておりますが、永田参考人、いかがでしょうか。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 委員が今おっしゃっているのは、本当に認証評価の基本的なコンセプトそのままでございまして、私、実は、大学基準協会の会長でございまして、六百幾つかの大学の認証評価にあずかっております。

 その中で我々が一番困っているのは、つまり、このそれぞれの大学の建学の精神やそれぞれを見ながら、本当にこれができるかどうかの本当に最低基準については見ていて、できる限り、是正勧告ではなくて、よりよくなるための勧告を付して戻しております。大体はうまく戻ってくるんですが、中にはどうしても改善ができないというものもあります。その際、唯一問題は、我々が指摘をしている内容を御理解は多分いただいているんでしょうけれども、それが迅速に改善に結びつかないということであります。

 その中で大きな問題は、やはり教育のための最低条件、例えば何人の学生に何人で教えるかみたいなところは早々に改善をいただかないと、そこの大学生だけが不利をこうむるということなので、そういう指摘事項。あるいは財政的にどう見ても続け得ないというような問題も解消していただきたい。こういったものが、多くの場合、決定的な不適合事項として通達されます。

 ここで、基準協会の中でこれをレビューしているのは全部大学人ですから、大学人の中から、文部科学省の介入云々の問題はもうさておき、もともと出自が、大学人がつくったものですから、これは守るとして、しかし、この不適合を何とか直してほしいんだけれども、これを戻す場所がありません。

 そこで、これが文部科学大臣に戻った後のことについては、詳細の議論をまだされていないと思いますけれども、もう一度また大学人が検討する何かのシステムを通って改善を促す、こういうものにつながるといいなというふうに思っています。

 少なくとも、先ほど最初に申し上げましたが、不適合であるということを言いたいのではなくて、不適合にならないようにしていただきたい、その歯どめとして考えているということでございます。

畑野委員 ですから、法律としていいのかということが問われてくるというふうに思うんですね。

 ですから、国による介入を招かない、つまり、大学の自治、学問の自由を保障するということで、第三者である認証評価機関として評価をしてきたということですから、それを、今度の改正案のように、第三者評価を文科省が利用して大学にペナルティーを与える、そういう制度に変えてしまえば、結局、国による介入の道を招くおそれがあるというふうに私は思っております。

 次に、国立大学法人の長と学長の分離を可能にして、複数の外部理事を義務づけるという、国立大学法人法改正案についてです。

 文科大臣が任命する法人の長が経営の最終決定を行い、学長は外部理事と同等の発言権しか持たないというふうになりますと、大学の意思決定が経営優先で行われる危険が出てくるのではないかと思います。

 それから、私立学校法改正案ですが、この間、私立学校の不祥事の主な要因として、学校法人、理事会による学園支配、教学への介入、また、専断的な大学運営の問題が指摘されておりました。

 これは、改正案で、学校法人、理事会の権限を強化するとともに、学校法人に中期計画の作成を義務づけている。すると、理事会が中期目標の作成を口実に教学事項の全般にわたって決定権限を行使するなどの、理事会による専断的な運営を助長しかねないのではないかという危惧の声もございます。

 両角参考人、このガバナンス問題について何か御意見ございますでしょうか。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 御指摘のように、最近の私学の経営の不祥事というのはほとんどが経営サイドが起こしているというのは、もう御指摘のとおりだと思います。

 改正案が理事会の権限強化案なのかなというのは、私はそうは見ていなくて、むしろ、そこをもうちょっとチェックをしたいというところをしようとしている案だというふうな理解をしています。

 また、学校法人に対して中長期計画を義務づけるということで、学校法人が不当に大学の教育、研究に介入しないかということにつきましては、そうならないようにしていく必要があるし、そうなってしまっては大学の経営としてうまい方にいかないというふうには個人的には思っています。

 実際に学校法人が中長期計画をつくっている学校もたくさんありますけれども、学校法人が勝手につくったところで、大学の中長期計画というのは、中の教職員がきちんと参加してつくって理解して共感していなければ、誰も実行しなくてそのままになってしまうものですので、そこを経営陣が理解していくということも必要なのではないかなというふうに思っています。

畑野委員 両角参考人にあわせて伺いたいんですけれども、以前、先生が、意思決定における学内構成員の参加の意義を見直すことが必要だというふうにおっしゃっていただいたことがあります。一五年の学校教育法改正で教授会は学長の諮問機関の位置づけになったというふうに指摘をされていらっしゃるんですね。

 やはり教職員の参加というのは本当に大事だと思うので、その担保という点ではどうなのでしょうか。

両角参考人 ありがとうございます。

 日本の場合ですと、国立も私立もですけれども、教職員が直接理事になって経営に参画するとか、ほかの諸外国ではないような形で、教員の参加がすごく強いあり方をしています。

 私は、そのよしあしはともかくとして、それ自体がやはり、いろいろな不祥事とかを防いだり牽制するという機能は持っているんじゃないか、教職員の意思決定への参加ということ自体は非常に重要なことだと思っています。

 教授会が学長の諮問機関になったということで、じゃ、何も学長に言われなければ何も言わなくてもいいのかというと、それはそれで問題なのではないかなと思っています。

 うまくいっている学校も多いですけれども、一部では、学長が権限が強くなって、学長の責任なんでしょうからもう教授会は知りませんというような、そういう発言をする大学人がいるということも聞いて、とてもびっくりしたんですが、そういうことでは教育、研究ってよくならないのではないかと思っていまして、教職員が責任を持って、教育、研究に対して、また意思決定に参加していくという、そのあり方は、必ずしも、教授会の参加とか理事になるとか、それだけではなく、さまざまな形で教職員が参加していくということは重要だと思います。

 そのためにも、教職員がいろいろな情報がきちんとわかるような状況にしておくということも大事で、情報公開についても、外部の方が見るというだけではなくて、学内者がきちんと自分の大学でどういうことが行われているのかということを知るということも、とても大事なんじゃないかなと思っています。

畑野委員 松尾参考人に伺いたいと思います。

 岐阜大学法人を解散して、東海国立大学機構に引き継ぐということですね。

 新しい法人に引き継がれない岐阜大学の資産というのは、どのようになるのでしょうか。

松尾参考人 名古屋大学を引き継いだ新しい法人に移管をされ、そして、東海国立大学機構という法人に移されるということですね。その時点では、新しい機構長、それからガバナンスのシステムは、今とは全く一新されます。名古屋大学の執行部がそのままやるというわけではございません。

畑野委員 そうしますと、資産はどういうふうになるのですか。

松尾参考人 話がややこしいんですが、名古屋大学という法人は、東海国立大学機構というのに引き継がれます。岐阜大学の資産は、その東海国立大学機構の方に移る、こういうわけですね。

 その時期が同時に来るということでございます。

畑野委員 私が何でそういうことを聞いたのかというと、附則の中に、「岐阜大学法人は、この法律の施行の時において解散するものとし、次項の規定により国が承継する資産を除き、その一切の権利及び義務は、その時において東海国立大学機構が承継する。」というふうにありまして、「名古屋大学法人は、この法律の施行の時において、東海国立大学機構となるものとする。」というふうに書いていたので、その附則のところについてちょっと確認をさせていただいたということです。

 それで、私は、ですから、岐阜大学法人が解散をする、それで、名古屋大学法人は別に解散すると書いていないので、これは対等の関係なのかどうなのかなということを伺いたいのですが。

松尾参考人 これは、両大学でその点については随分議論をしてきまして、例えば、両大学法人が同時に解散をして新しいのをつくるとか、今のように、名古屋大学が継承されて岐阜大学は解散して贈るというふうな、いろいろな形がありましたけれども、両方解散をして新しいのをつくる場合には、名古屋大学の資産も全部移すということになって、これには相当の費用がかかります。

 御懸念のように、今のような形になったときに、言い方は悪いんですけれども、名古屋大学が全ての権限を持っていて、いわゆる吸収合併みたいになるのではないかということを心配された方ももちろんいらっしゃいましたけれども、これはそうはしない形で、例えば機構長の選考にしてもその後の理事の選び方とか、これは法律でどう定められるかまだわかりませんけれども、少なくとも今のところ、両大学の間では今の形で問題はなし、岐阜大学の森脇学長もこういう形で学内にお話をしていただいて、両大学の構成員納得の上で、こういうふうになります。

 もう少し言いますと、恐らく、地元にもこの話は森脇学長からしていただきまして、今のところ、これについて地元から大きな反対はないというような現状のところでございます。

畑野委員 いろいろな難しい問題があるということがわかりました。ありがとうございました。

 終わります。

亀岡委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 委員長、ありがとうございます。

 維新の杉本和巳と申します。どうぞよろしくお願いします。

 まず、永田先生、両角先生、松尾先生、そして岐阜大学森脇学長先生、お運びいただき、私は、名古屋と岐阜のちょうど真ん中の一宮を選挙区にしておりまして、率直に申し上げて、やはり、お言葉で、大学生き残りとかいう言葉もありましたけれども、前向きに取り組んでいただくことが、グローバル人材でありグローバルな世界に通じる大学ということになるのかなというふうに思っています。

 大上段から、それこそオーソリティーというか、権威の先生方のお立場は十分わかっているんですけれども、あえて、答えにくいかもしれないんですけれども、大上段の質問をさせていただきたく存じます。

 日本の大学は多過ぎないかということを率直に言っていただきたいなと思っていて、いや、逆に、いいんですよ、ちょうどいいんだということであればそういうお答えで結構なんですけれども。七百六十八大学あって、このうち八割が私立であり、五百八十九大学、国立大学八十二校、公立大学九十校、これは若干データが古いかもしれませんが、こういった大学の数であります。

 また、定員についても確認してみますと、定員のあり方もちょっと御答弁いただければと思いますけれども、昨今いろいろ話題になりました日大が七万六百七十七、早稲田五万四百三十九、立命館三万五千五百二十九、これは二〇一六年五月時点の雑誌の数字なので、正確かどうかはわかりませんけれども、この定員数という大きな枠組みがあります。

 一方で、きのう地方創生で片山大臣と質疑させていただいたんですけれども、一つの例として私は挙げたんですけれども、静岡県の川根本町というところでインドのIT企業がサテライトの会社をつくりまして、地元の高校生をインドのいわゆる職業大学というか、その企業が持っている大学に留学させて、そしてITのプログラマー的なところを勉強してもらって静岡に帰ってきてもらって地元に就職してもらう、こういう流れが一つ逆に起きてきていて、私はいい意味のインバウンドというか、そういうことで、ただ、全体で見ると、日本における大学のあり方と対峙するような立ち位置のお話かとも思っていますが。

 そんな意味で、ちょっと大上段のところなんですが、逆にオーソリティーの先生方だからこそ伺いたいんですが、大学の数、定員、この点について、それぞれの先生から御答弁をいただければありがたいんですが。

永田参考人 御質問ありがとうございます。まさに大上段なんですが、私見も交えてお答えをさせていただきます。

 我が国の高等教育を受ける学生の現在数、これが、五〇%超は大学が面倒を見、二〇%超を専門学校が見ている、こういう状況の中で、今、これを収容するだけの数はあります。これがこのままの形でいくのか、あるいはこれ以上にニーズがふえるのかという問題はありますけれども、今現在の、全部、七百超の大学の総収容定員数を考えれば、それはそれなりに目的を達しているではないかというふうには思います。

 ところが、個々の大学の定員というのは、多くの場合、諸外国の大手の大学に比べると少ないというのが現状です。これがタイムズ・ハイアー・エデュケーション等で出てくるときに一つの問題になりますけれども、本邦における大学の規模が非常に小さいというのは一つの問題です。小さいとやれる幅が逆に小さくなって、大くくりの方がいろいろなことにチャレンジできるというメリットは会社なんかでもあるとおりです。

 一方、特徴を持った大学で小さな大学ももちろん生存をしているわけであります。ICUもそうですし、秋田の教養大学もそうです。これは、小さくても特徴を持った大学として生き残っているというふうに考えております。

 したがいまして、今の大学の数というよりは、我々が議論しなきゃいけないのは、この国の総高等教育での収容数、これをとにかく議論しない前に個々の大学の数とかそういう議論をするのは、私自身は乱暴だと思っております。

 それから、入学定員については、歴史的経緯がたくさんあります。ややもすると国の批判になって聞こえては困りますけれども、ベビーブームのころには当然ながら入学定員の増加がありました。これは受皿として当然のことだと思いますし、教育関係、特にそのころふえました。昭和の右肩上がりの景気のときには、基本的には教育行政は理工系重視になりました。これは、そのときの産業界を支えるための人材を供給するため。高専も、そういうときに多く立ち上がってきたということがございます。

 そういう経緯の中で、現在、我々のこの国の将来を考えたときに、どこまで、数じゃなくて、総収容定員を維持するかという議論をやはりしなきゃいけないだろうと思っていて、例えば物すごく具体的な例を述べますと、これは経産省調べだと思いますけれども、デジタルサイエンスにコミットできる人材、天才は五人か十人なんでしょう、それを支えるための高いレベルの研究レベルの方は百人、二百人。それを支えるための本当にITの汎用性を追求する方はやはりそのまた十倍、百倍、つまり一万人。これは万人という単位で必要だ。

 こういう試算を、これからの未来について、それぞれの分野でやっていかないことには、大学数の問題であるのではなくて、我々が育てなきゃいけない高等教育を受ける総人数というものを議論をやはり先にして、その後で、設置形態別に、どのようにそれをしていくかという問題になるんだというふうに認識をしています。

 それで、お答えを、大上段で言えば、少し大学がみんな小型過ぎるかなという気はします。その分、それぞれ経営が苦しくなっていくであろうということで、どんな小さい組織でも大きい組織でも、基本的に、それをガバナンスする人数というのは、切片は決まっていますから、その切片に近ければ近いほどダイバースはするけれども経営上は苦しくなるということもあるので、それは私見としてはそうは思っております。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 大学の数が多過ぎないかということで、大学の数ではなく収容数だというのは、まさに同じことを思うんですが、個人的には多過ぎないというふうには考えています。大学の数というか、例えば、大学の進学率といったものを考えたときも、日本は必ずしも高い水準ではなく、大学があり余っている状況ではないというふうに、高等教育の研究者としては思っています。

 ただ、なぜ、大学の数が多過ぎるというような、皆さん口には出さないけれども、そう思っていらっしゃる方はいっぱいいるというのはすごく感触でわかるんですが、やはり、よくわからない、この学校は聞いたこともないけれども本当にちゃんとした教育をしているんだろうかとか、そこに対する社会からの不信のあらわれなんじゃないかなという気がしています。そこをきちんと、卒業生を出して、これだけの成果を身につけて出していますということを大学は言っていく必要もあると思います。

 では、大手の名の知れた学校がすごくいい教育をしているかというと、必ずしもそうではなくて、意外に、一般の方は聞いたこともない大学名かもしれないけれどもすごくいい教育をしている地方の小さい学校というのもありますので、そのあたりを、自分たちがちゃんとやっているんだということを示していくことで、大学というのが多過ぎるんじゃないかという批判を打ち破っていけるきっかけになるのかなと思っています。

 定員のあり方についてはなかなか難しくて、今は、大学定員といったものを基本に大学の制度というものが全部決められています。

 御承知のように、大学設置基準で、大学、これだけの学生を教育するのであればこれだけの教員が必要であろうし、これだけの面積が要るだろうという、全ての基準になっているというところで、なかなかそこをいじるというのは難しいんですが、定員というものの枠組みがかなりかた過ぎるというところが、この先の将来を考えていくと問題になるのではないかなというふうに、私は個人的には思っています。

 定員を減らすことに対して教員が反対するのは、学生定員を減らせば教員数を減らされるという、それに直結する制度になっているから、先生たちは学生定員は絶対に減らしたくない、そういうところにつながっているのではないかと思います。

 また、学生定員といったときに、やはり、十八歳で四年間学ぶ、そういう伝統的なタイプの学生だけを念頭に置いて、いろいろな大学の仕組みがつくられていますけれども、社会人は必ずしも四年間来てずっと学ぶわけではなく、短いスパンで学ぶとか、留学生もそうだと思うんですが、そういうふうに、学生の定員の方の考え方も、その頭数ではなく、少し、フルタイム換算というか、実質どれぐらいなのかというところの考え方をしないと、これからについてはちょっともう議論ができなくなってくるんじゃないかなと。大きな、大きな改正になりますけれども、近い将来、議論をする必要があるというふうに感じています。

松尾参考人 大学の数は多いか少ないか、これはなかなか難しいところなんですけれども、一つ考えたいことは、今、日本で起こっていることは、労働生産年齢人口が減って、極端な人不足ですね。きのうかおとといの新聞を見ましても、大学生の就職内定率は今九二%とかすごい数で、国立大学の学生に来てもらいたいと思っても来てもらえない中小企業が、今、たくさんあるんですね。

 そういう状況を考えて、一方で、世界では毎年五%ずつ大学生の数がふえています。日本だけですね。ただし、学生は非常に多様で、今もお話がありましたように、十八歳で入る人だけではなくて、リカレントで入ってくる人もたくさんいますし、留学生もどんどんふえている。こういう中で、全体でどういう人材、どういうレアの人材をどれぐらい日本が育てれば、あるいはどういう領域の人材をどれぐらい育てれば、我が国が発展して世界に貢献できる国になれるのか、こういうグランドデザインがまずあって、定員、それから大学の数を考えないといけないというふうに私は思っています。

 結論的に言いますと、質の高い教育を行いしっかりとやっている大学の定員は削るべきではないというふうに思っています。そういう大学は、海外からの留学生の競争率というか、学生獲得の競争率も非常に高い状況でございます。

杉本委員 大変重たい御意見をどうもありがとうございました。参考になりました。

 次に、海外からの学生を受け入れるということで、またこれも大上段で恐縮かもしれないんですが、語学の壁というのがあって、将来は自動翻訳機みたいのができて、先生の言葉が翻訳機を耳につければそのまま聞けるようなことになれば、日本の大学にも学生がまた来てくださるという形にはなると思うんですが、現実は、英語をしゃべる先生と聞ける生徒というようなことがないと進んでいかないなというふうに感じていますので、ちょっとそこは意見だけ言わせていただきます。

 次に、名古屋大学と岐阜大学が一緒になられる関係で、あえて伺っておきたいのは、今も、規模が小さいという先生の御指摘がありましたけれども、むしろマネジメント全体として大きくしていくために、具体的な例として、北海道で今言われている北見工業大学、小樽商大、帯広畜産大というところは、物理的には離れていると思うんですけれども、私は、経営的に言うと、地方銀行の合併みたいな話と頭がダブってしまうんですけれども、ほくほくフィナンシャルグループというのがあって、北陸の銀行と北海道の銀行が一つの持ち株会社でという形をとったりしております。

 遠隔地のところで、なかなか顔と顔は合わないんですけれども、SNSの発達したIT社会では、先生同士がテレビ電話で話もできるし、生徒も遠隔地で授業が受けられるし、チュートリアルの授業も受けられるかもしれないんですけれども、そういった遠隔地の学校の連携の可能性みたいなところを、ちょっと時間がなくなってまいりましたので短目に、それぞれ先生方から一言ずつか二言ずつぐらいお願いします。

永田参考人 事例だけお話をしますが、今、距離はもう問題ではないと思います。我々、フランス、オーストラリア、同時でレクチャーがもう可能な状態になっていますので、距離ではなくて、教育、研究のコンセプトが共有できるかどうかという問題だと思っております。

両角参考人 私も、技術的には可能となっていますので、遠隔地の大学連携の可能性は非常に大きいのではないかなと思います。世界では、例えば今ミネルバ大学とかもすごく注目を集めているかと思うんですけれども、学生も教員もどこにいようが教育することはできる。重要なのはコンテンツの方ではないかなと思います。

松尾参考人 私も、将来は大学の教育のあり方は一変するというふうに思っておりまして、単に地理的に近いから連携とか統合とかという形はすごく変わるのではないかなと。ただ、現時点においては、そういった近くの大学をコアにして、そして教育連携機能を強くしていく、日本じゅう、世界じゅうとつながっていく、現時点ではそういう路線が一番現実的ではないかというふうに考えています。

杉本委員 ちょっと時間がなくなりましたので、最後、大学の経営ということで、監査、あるいは監査を具体的にやるかどうかみたいなところで、内部統制みたいなところが非常に大事だと思って、総論のところは両角先生の書面を拝見したんですが、逆に、具体のところで、筑波大学と名古屋大学では効果のあることができているのかどうか。その例を一言ずつまた賜れればありがたいんですが。

永田参考人 当然ながら、内部統制も含めて、コンプライアンスも含めて機能は持たせておりますが、一番重要なのは監事の存在です。

 監事というのは、国立大学においては、学長と監事だけが文部科学大臣任命になっております。したがいまして、監事がこうしろ、ここがよくないと言うのは非常に重い文言というふうに捉えていて、そういう意味合いでは、監事と学長は常にいろいろと意見交換をすべきというふうに思っております。

松尾参考人 まず、監事に学内の重要な会議、特に幹部会も含めて全て出ていただいて、中をしっかり見ていただくということと、二つ目に大事なことは、監事の機能をしっかり支える監査室、これをしっかり大学で充実させる。この二つがないと監事は活躍できないと思いますので、そのところを留意してやっております。

杉本委員 もう終わりますけれども、国立大学は大丈夫なのかなという認識をいたしましたけれども、私立の方がやはりちょっと心配かなという気も持ちましたので、その辺はまたお役所と質疑したいと思います。

 どうもありがとうございました。

亀岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 三人の参考人の皆様には、大変貴重な御意見をいただいたこと、まず感謝を申し上げたいというふうに思います。

 私からも何点かお聞きをしたいというふうに思います。

 本日の参考人の皆さんのお名前をいただいたときに、たまたまなのか、期せずしてなのか、国立大学法人の方。今回、私立学校法もやりますので、私大の方もいらっしゃるかなというふうに思ったんですが、たまたま今回は国立大学法人の方なので、あえて質問させていただきたいというふうに思います。

 二〇〇四年に国立大学が法人化をされて、はや十五年余り経過しようとしております。法人化に伴って、国立大学がみずからの責任において自律的な運営を行う、これは、建前というとおかしいですけれども、いい側面なんだろうと思いますが、他方で、実際には、六年間の中期目標期間が設定をされて法人評価を受ける。

 さらに、この間でいいますと、法人化前に比べると、運営費交付金が一千四百億円減らされて、なお、更に運営費交付金の、これは財政審の建議ですけれども、一〇%程度、約一千億ですけれども、評価に基づいて配分すべしと。これは先ほど、経営の予見性を含めて大変疑義があるというようなお話もございましたが。

 まず、率直に三人の皆さんにお聞きしたいんですけれども、国立大学の法人化、これはメリット、デメリット、やはり両方あったのではないかというふうに思います。法人化についてどのような評価をされているのか、簡単にお聞かせいただければと思います。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 法人化の成功、不成功かという前に、法人化はある一定の意味での必然性があったというふうに考えています。

 その上で、国立大学法人法ができたときの附帯決議の部分が守られていないかなというのが一番大きな要点であります。これが一点。

 もう一個は、この法人法自体が、もともとは独立行政法人をもとにつくられておりまして、本当に大学に全てフィットしている形かどうかというのは若干問題が残っているのではないかというふうに思います。もし、法人法の精神そのものが一〇〇%生かされる形でいれば、これは一つの成功に近い形になるだろう。まだその途上だと思います。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、法人化という、大学として独立の法人格を持つというその変化というのは、もう必然的なことだったと思いますし、二〇〇四年の法人化のときの議論自体というのは一定の論理性があったものではないかなというふうに評価しています。

 ただ、やはりその後、運営費交付金が減少されていくというのも一つ典型的にわかりやすいことですけれども、当時の議論された法人化の制度設計といったものと随分実態が変わってきているんじゃないかなという印象を受けていまして、例えば、六年間の活動は保障してそこで評価をして、それを次期の中期計画に、財政配分に結びつけるというのも、第一期でそれが意外にうまく機能しなかったためか、違う形で文部科学省が重点的にお金を出すというので、むしろ、そちらで、あれやれこれやれというふうに飛びついてしまっているような、運営費交付金が減らされるので仕方なく飛びついているんだと思うんですけれども。

 そういう意味で、自立性の向上を目指して行われたはずの改革で、にもかかわらず、自立性が本当に高まったかというと、疑問を感じているというところはあります。

 ただ、メリットとしては、法人として一つの形態としてやらなければならないんだという意識ですとか、あるいは学長の意識とか、学長がいろいろな影響力を与えていくということについては、この十何年間かですごく大きな変化が起きてきていて、途上だと思いますが、いい変化が起きている面もあるのではないかなと評価しています。

松尾参考人 私は法人化のときに附属病院におりまして、このとき、医療の経営の問題で随分大きな問題があったわけですが、私の印象では、経営に関しては随分自由化されたと思っております。

 それで、いろいろと危機があったんですけれども乗り切れたと思っているんですが、その反面、全学の方に来てみますと、まだ法人化以前の古い、これは大学が悪いところもあるし国の責任もあるんですが、そういった残骸がまだ残っていて引き継がれているので、今後一層のやはり改革が必要で、まだその途上にあるのではないかなというふうに考えています。

吉川(元)委員 大学の法人化、そこで描かれた理想の形と、またなかなか現実がそうなっていない、特に永田参考人の、附帯決議がきちんと守られていないというのは、これは我々の責任でもありますし、非常に重く受けとめなければいけないというふうに思います。

 そこで、ちょっとまた、法案とは直接関係ないんですが、少し資料を見せていただきますと、永田参考人が、これは日経のインタビュー記事ですけれども、博士課程進学者の減少が非常に深刻だと。これは別の、ノーベル賞を受賞された方も同じようなことを以前お聞きしたことがあるんですけれども、時間もお金もない若手が安心してじっくり研究できるように国も支えてほしい、こういうふうに述べておられるんですが、この博士課程の問題、もう少し具体的に、どういうところが課題になっているのか、教えていただければと思います。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 これは、ネガティブに考えて、我が国固有に博士の進学率が伸びていないという問題があります。

 いろいろな理由がありますけれども、まず学生側から考えれば、修士、博士合わせて五年間、学費を払いつつ、同級生は社会で給料を得ている、こういう状況の中で学問を続けているというこの苦しさはあると思います。翻って欧米諸国では、基本的に博士課程の学生は給与が出ます。この差はかなり大きいであろうと。

 第二に、修士課程、博士課程を出た学生の能力に対する正しい評価が十分行われていない可能性がある。これは二つありまして、大学側が、修士、博士を出た学生にそれだけのコンピテンシーをちゃんと持たせているかどうかを明確に述べ得ていないというのが一つ。他方、社会は本当に修士や博士の学生の能力を評価できているかというのがもう一つの問題点です。給与だけ見てみますと、去年あたりからようやく博士課程で就職した方の給与が、平均値ですが、やや高目に設定されてきたという状況にはあります。

 したがいまして、学生側の問題と、それからそこを出た者を雇用する側の両方にまだ問題が残っていて、これから知識集約型社会になるときに、どうしても必要な人材はやはり大学院からも出てくると思いますので、ぜひともそのあたりの御議論を続けてお願いしたいと思います。

吉川(元)委員 ありがとうございます。

 次に、両角参考人にお聞きしたいと思います。

 二〇一四年の学教法改正で、学長の権限が強化される一方、教授会からは決定権剥奪という言い方がいいかどうかわかりませんけれども、諮問機関という形に位置づけられるようになりました。例えば学生の入学に際しても、教授会は学長から意見を聞かれる立場になってしまい、この間の不正入試も含めまして、仮にそうした決定事項に教授会がかかわれる、あるいは関与できる立場であれば防げた案件ではないか、あるいは内部からそうした不正が排除できる、そういう構図を持つことはできたのではないかというふうにも思います。

 私自身は、この教授会の諮問機関化というのは、大学のガバナンスに余りいい影響を与えていないのではないかと思いますけれども、このあたりはどのようにお考えでしょうか。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 いろいろな不正入試の実際の事件で、教授会がどこまで内部からできたかということについては、それについての情報を知らないので何ともお答えできなくて申しわけないのですが、教授会の諮問機関化というものがいい影響が出ていないんじゃないかということについては、結構大学によりけりの面もあるような気がしていまして、そこについての、例えば学長がどう考えるかとか、あるいは教授会側も、学長から諮問されていなければ本当に何も意見を言わないとかでいいのかという、そういう問題ではやはりなくて、教育、研究の責任を負っている主体として、学長が全部決めて、教授会は諮問されたことだけというところ、そこまで極端なものではないものを一部に拡大解釈しておかしくなっているところがあるのではないかなというような気はしています。

 なので、いいかどうかというとなかなか一言では難しいんですけれども、そのことだけが原因でいろいろな問題が起きているわけではないのではないかというふうに私個人は考えています。

吉川(元)委員 実は、当委員会でも、私、以前、学校教育法の改正、二〇一四年の問題に関して一度聞いたことがあるんですが、この後に、翌年だったと思うんですけれども、文部科学省が施行通知を出しておりまして、これは法改正とは全然関係のないものがこの施行通知の中に盛り込まれていたのではないか。とりわけ、理事会がいろいろなことの最終決定権者である、教務も含めてというような、そういうような感じの施行通知だったというふうに私自身は記憶しているんですが、ちょっと正確な記憶はないんですけれども。

 そういう中で、先ほどもどなたかが尋ねておられましたけれども、この間の不正というのはやはり非常にトップダウンであるがゆえに起こってしまった、例えば、日大のアメフトの問題でありますとかあるいは東京医科大の不正入試問題、そういう意味でいうと、私立大学のあり方を考えさせられるような不祥事が相次いで起こっております。

 やはり、先ほどは教授会という話だったんですけれども、今度は理事会あるいは理事長に非常に強い権限、これは学長もそうですけれども、権限強化が行われた結果として、逆にガバナンスがきかなくなっているという側面があらわれているのではないかというふうに思います。その点については、両角参考人の御意見を伺いたいと思います。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 理事長については、二〇〇四年の改正を理事長とか理事会の権限強化だというふうにおっしゃる方もいるんですが、法律を正しく読むと必ずしも権限強化ではないんですが、それを理事長が都合よく解釈されて、自分の権限が強化されたというふうにおっしゃっている方が結構多いので、何というか、法律の問題だけじゃなく、その理解が足りていないというところの問題も一つ大きいのではないかなと思っています。

 ただ、そういったやはり誤解が生じて、いろいろな問題が特にここ一、二年たくさん出てきたということで、今回の私学法の改正で、監事の牽制機能を強化するとか、そういったことが今回の法律に盛り込まれたというふうに思っております。

 もちろん、もっと理事長とかの権限を制約していこうというふうに、やろうと思えばできるかもしれないんですが、私立大学は多様なガバナンス形態を認めておりますので、そこを認めている以上は、なかなかこれ以上法律的に何かをいじるというのが難しい面があるのかなというように個人的には感じており、法律だけではなく、理事長ですとか理事の人たちに対する教育ですとか訓練といったものを、当たり前なんですけれどもあわせて行っていかないと、こういう不祥事はなくなっていかないのではないかなというふうに考えています。

吉川(元)委員 おっしゃるとおりで、二〇一四年の改正というのは、別に理事長の権限あるいは理事会の権限を強めたものではないんですけれども、理事長、理事会が勘違いをしてしまったという部分は一部あるかもわかりませんが、実はその裏で文科省がそれを後押しするような施行通知を実は出していたということがありまして、そうではないというふうに文科省は質疑の際には言うんですけれども、ちょっとやはり、私は、これはもちろん参考人どうこうという話ではなくて、これは対政府質疑、文科省に対する質疑の中でもう一回、今まさに両角参考人が言われたことも踏まえて質問していかなければいけないと思います。

 今、監事のお話が少し出ました。

 先ほど、最初のところで、十分か不十分かというのは、まだまだどうかなと。私自身も全く同感でありまして、監事の権限が強化されるということはいいんですけれども、その方は評議会の同意を得て理事長が選任する。チェックする側をチェックされる側が選ぶということで、果たしてどこまでそれが実効性が担保できるのか。まさに両角参考人が言われていたことを私自身も危惧をしているんですが。

 これは、先ほど言ったとおり、私学ということは、建学の精神もありますし独立をしているという中にあって、この強化される監事制度がより機能していくためにどういったことが必要だというふうに考えておられるか、両角参考人に伺います。

両角参考人 そうですね、やはり、理事長側、理事、監事といったものがその職務をきちんと理解していくということ。あとは、研修という意味と、それは、自分たちが何をすべきかとか監事の仕事はどういうことかを正確に理解するということと同時に、横のつながりをつくっていくということも大事じゃないかなと思います。

 やはり、それぞれの大学に置かれている監事の数はかなり少数ですので、何かあったときに誰かに、学外の方にそうぺらぺらと話せるようなものでもないんですが、監事としてこう対応すべきだとか、例えば過去のことであれば、大学でこういうことがあったというようなこと、そのときにどう監事は対応すべきだったかということをみんなで議論をしておくとか、そういう場が必要なのではないかなと思っています。

 なかなか、非常勤の監事の方も多くて、監事の牽制機能だけでどこまでというのは、本当に疑問があるところはあるんですけれども、それを一歩ずつやっていくしかないのかなと、現実的には思っております。

吉川(元)委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 未来日本の笠でございます。

 きょうは本当に、三人の参考人の方、ありがとうございます。最後でございますので、よろしくお願いいたします。

 まず、松尾参考人にお伺いをしたいんですけれども。

 今回、本当に初めて、二つの大学が国立大学の機構をつくってやるという取組になっておるわけでございますけれども、先ほど来話がありましたように、さまざまいろいろな資金を呼び込むこともできるし、また、これを機会に多くの役割というものが期待をされているわけです。

 改めてちょっとお伺いをしたいんですけれども、これから第一段階、第二段階、そして第三段階ということで、機構のいろいろな評価というもの、あるいはさまざまな成果というものを、これからまたその段階、段階で、恐らくは発信もされていく、あるいはその都度の評価というものもあろうかと思いますけれども。

 今回の大きなこの改革、二つの大学が一緒になっていくという中で、特にこういったことを目指していくんだ、あるいはこういう大学の姿が変わっていくんだというような思いがある点を、ぜひ最初にお述べいただきたいと思います。

松尾参考人 御存じのように、岐阜大学は大学の類型でいうと一類型ということで、これは地方に貢献する大学ということ、名古屋大学は第三類型、これは国際的に競争力のある大学を目指すということなんですが、実際は、名古屋大学も地方創生には相当貢献していますし、岐阜大学も、この資料でいいますと八ページですか、相当国際的にやっています。

 これは、台形であらわしますと、名古屋大学は国際が強くて地域貢献はこう、岐阜大学はその逆の台形ということで、二つ合わせますと地域創生とそれから国際競争力、両方すごく強い大学になるわけでございまして、我々が目指しているのは、そういうかなり広い範囲で機能強化できた大学は、地方創生の社会の発展や変革に非常に大きな貢献ができる、こういう大学を目指す。これこそが未来の新しい大学像ではないか。その典型を示すということは、一つの大きな目的であります。

笠委員 法律を改正してまでということで、単なる今までの過去の連携あるいは協力のあり方ではなくて、そしてまた、これから後に続く動きもあるわけで、やはりこの統合が一足す一が二じゃ困るわけで、それが二・五なのか三かわかりませんけれども、いろいろな付加価値も生んでいくような形で、その成果というものを私もしっかりと期待をしたいというふうに思っておりますし、この先駆けてやる取組が、後に続く動きについても、いろいろとやはりうまくいく点と、やや予定どおりにいかない部分も出てくるかもしれませんけれども、そういった評価というものもしっかりと次に残していきたいというふうに思いますので、きょうは両学長おられますけれども、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 さて、きょう三人の方に、先ほど来さまざま、大学のガバナンスということについてもいろいろなお話を伺ってきておるわけですけれども、やはり今、きょう午前中、高等教育の無償化へ向けた議論という中で、私なんかはもちろんこの無償化を本当に、本当の意味での無償化を進めていくべきだと。恐らくこの委員の中でも大多数だと思います。

 ただ、そういった中で、財源の問題を考えるときに、どうしても大学の、高等教育の無償化へ向けて、それが税金なのか、税なのか、いろいろな資金を投入する中で、国民の皆さんのやはり理解をまだまだ得られていないんじゃないかというような議論もちょっとございました。そういった中で、やはり今大学に求められている機能というもの、あるいはその役割というものが、今まで以上に非常に多様になっておりますし、その期待も高いものがあるというふうに思っております。

 そういう中で、やはり大学の経営というもの、非常にこれは難しいんじゃないか。単に学生たちを指導する、もちろん大学は研究もあればそういったやはり教育の場でもあるということですけれども、一方で、求められる役割が大きくなればなるほど、私は、やはり理事長なりあるいは学長なりのリーダーシップやあるいはそこに求められる資質というものが非常に今までよりもかなり高いレベルのもの、あるいは役割分担も含めてどういうふうにあるべきかということをしっかり考えていかなければならないんじゃないかと思いますけれども、そういった意味での、学長なりあるいは理事長なりに、ちょっと私学の場合、これが一緒になっていたりばらばらであったりということがありますけれども、そういった、大学を経営していくという感覚でのリーダーシップというもの、何が求められるのかということを、それぞれお伺いをしたいと思います。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 理事長、大学長、今の現在の国立大学長というふうにまずは考えて、これが理事長と総括理事ということになったとしても、変わらないのは、やはりトップに立つ者は、少なくとも、あらゆるサイエンスの、少なくとも自分の大学が抱えているサイエンスの詳細を語れる人じゃないと、まずだめです。それが、経営ができてもだめです。その上で、明らかにそういうものを基礎、応用、開発研究にわたって見渡せる能力が必要です。

 基礎研究は投資対象にはなりません。基礎研究にお金を使ったら何日後にどう戻ってくるかという議論ではなくて、その先のどれだけの応用や開発研究につながるかという議論をしなくちゃいけない。基礎や応用の研究を理解した上で、それが今度は、出口の見えた開発研究にいかにつなげていくのか。

 大学の長たる者、それを、世界や日本や、あるいは社会のニーズを的確につかまえて、その部分で経営的に進めていくというのが大変重要なことだと思っております。

 産学連携、喧伝されておりますけれども、一番重要なのは、やはり、新しいものを大学が生み出していく、それが社会にとっての財産、そういう感覚で進めていくべきだと思っております。それが、一人であれ二人であれ、両者ともに、あるいは、一人であれば一人はその両方を確実に認識できる、それが学長だと思います。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 私学の場合だと、理事長と学長と別人の場合もいるので、なかなか複雑なのですが、学長のリーダーシップに何が求められるのかということについて、まずお話ししたいと思います。

 私が、この先生、優秀だなと思う学長先生は何人もいらっしゃるんですけれども、そのうちの何人かにインタビューしてきたところ、やはり、学長のリーダーシップって幾つか共通要素があるなということがわかってきました。

 一つは、やはり、ビジョンを描く力というか、自分の大学の状況、日本とか国際的な状況といったものを理解した上で、自分の大学は五年後、十年後どういうふうにあるべきかというような、そこをちゃんと語れる方、そこのビジョンを持った方というのが、やはり一番大事な資質なのではないかなと思います。

 それを実現するために、もう一つの資質としては、調整能力というか、自分に足りない部分については誰かほかの人を置くとか、役割分担をしたりとか、また、大学の教育、研究というのは学長一人でやれるわけではもちろんなくて、教育、研究の最前線に立っているのは教員で、その人たちが同じ価値観と方向性を向かないと誰も動かないという組織でありますので、そういったところで、そういうビジョンについての理解を得て協力を引き出していく、そういう調整能力という、その二つが必要なのではないかなというふうに思っています。

 ただ、最近、それこそ、補助金をとるときに、あれやれこれやれという条件が詳細についてくることもあって、意外にビジョンを描かない学長が出てきてしまっているというか、どう調整してできるかということのみに関心を寄せる方もいないことはなく、大学がもっと個性を強めていくためには、やはりビジョンをどう描くか、そのためには、自分の大学のいろいろなことを分析できる能力とかが必要になってくるのではないかなというふうに思っています。

 そのためには、学校に、先生によりけりなんですけれども、ある日突然、選挙で選ばれたというのではやはりだめで、少しずつ大学の管理者としての教育訓練といったものを、学内役職を経験するだけではなく、必要な知識を得たり訓練を得ていくということが今後必要になってくると思っています。

 理事長と学長が別人の場合、私学の場合多いんですけれども、なかなか、理事長は経営担当で学長は教学担当だというふうにきれいに分かれることというのは、やはり大学というのはなくて、例えば、どういう先生を何人採るか、どういう学生を何人採るかとか、全部、教育にも経営にもかかわる事項になっています。

 そういう意味では、理事長と学長のリーダーシップって、それぞれあることはあるんですが、理事長と学長が協力をして一つの目的に向かってやっていくということが必要なのかなと思っています。

松尾参考人 大学の経営と教学、これを分離するのかしないのか、一緒にやるのかという議論はあるんですけれども、これは、経営をやるにしろ教学をやるにしろ、学問の価値とか、そういった大学の仕組みだとか、これをしっかりわかってやらないと、本当の意味で経営にはならないので、先ほどもちょっと両角委員おっしゃったように、経営する方と、もし分離をしていたとしても、ビジョンをまず共有をして、その上で役割をしっかり分ける、こういうことができる方がやはり大学のトップに立つべきであるというふうに思っております。

 それから、ビジョンをしっかり持って、みんなを引っ張っていける人ですね。

 この二つが大事だと思います。

笠委員 加えて、そのガバナンスの強化について、先ほど両角参考人の方は、監事の牽制機能の強化、これは理事長が選ぶわけですから、なかなか、制度を変えても本当にどこまで機能するのかという点の疑問も呈しておられましたし、あと、今度、理事についても、外部の理事も登用していくということになるわけですけれども、果たして、こういう理事とか監事の、先ほどおっしゃっていた担い手というのをどうやって見つけていくのか、あるいはどういうふうにその人材を育成していくのかというのは、本当にこれは大きな課題だと思うんですね。

 制度をつくっても、そこにきちっと担い得る人材がいなければ、これは何の意味もないわけで、そういった点についての問題点あるいは対策というものはどういうふうに我々は考えていくべきかという点を、またそれぞれちょっとお伺いできればと思います。

永田参考人 ありがとうございます。

 全く御指摘のとおりで、会社のトップの経営者がいきなり大学に行って経営できるものでもありませんし、大学の研究室に閉じこもっていた方がいきなりガバナンスができるわけでもありません。

 実際に、国立大学協会なんかで、私学の話はちょっと飛ばさせていただきますが、その点大変苦慮していまして、松尾副会長を中心に、そういうガバナンスやマネジメントができるための予備軍団を教育するということを始めています。その蓄積からいろいろな方々が生まれてきて、それを大学間でシェアできるようなふうにでもしていかないと、絶対数も足りませんし、プロフェッショナリティーを持った方も少ないというこの現状を打破できません。

 やはり、大学もそういう努力をしますし、そこに参画していただく大学外のいろいろな業界の方々に期待をしたいと思っております。

両角参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに、そういった経営人材の担い手をどう見つけて育成するかというのは非常に大きな課題だと思っています。

 教員出身でこういうところに入っている方については、それこそ何の訓練もなかったということで、今、永田参考人がおっしゃったように、大学団体等でもそういった取組も始まっていますし、そういう議論自体は起こりつつあります。何らかの訓練をした上で、教員出身の管理職になっていく。

 私は、それに加えて、さらに、アメリカ型というか、ある時点で少し、キャリアとして大学の管理職としてやっていくんだというようなルートがもうちょっと出ていってもいいのかなというふうには思っております。

 もう一つは、やはり、大学の職員というのが、大学のいろいろな、事務ですとかいろいろな仕事を支えている人たちなんですが、その人たちの能力を上げて、その人たちが経営の担い手になっていくという、実際にあるんですが、そのルートをもっと強化するというのは非常に可能性の高いことだと思っております。

 学外の方については、それこそ企業で経営した方が突然大学の理事長になったり、あるいは理事になって何か的を得たことをおっしゃるかというと、意外にそうではなかったりとか、例えば理事会の場でも、日本の理事会の場合だと学外者の理事と学内の理事というのが両方まざっていますので、やはり、学内者の方は、情報がすごくたくさんある中でここが課題だとわかっているんですけれども、学外の方がぱっと見て大学の課題を理解するとかというのはなかなか難しくて、せっかく優秀な方を、外部理事であったり、あるいは経営協議会とかに入ってもらっていても、十分に活用し切れていない例も多いんじゃないかなというふうに思っています。

 そこについては、外部の理事なら外部の理事の方から、自分たちが説明をして意見を求めるんだとか、学内理事と同じような立場に並べて、さあ意見を言えというそのやり方ではなく、もう少し丁寧なやり方をして理解を深めていただく、あるいは、外部理事の方から言われたことについて学内の理事の人も考えるというふうに、少し工夫をしていくことで、随分、今携わっていらっしゃる方ももっともっと能力を発揮できる機会につながるのではないかなというふうに思っています。

松尾参考人 日本では、学長、特に国立大学の学長をやりますと大体それで終わり、時々、私学の方の学長になって移っていくことはあるんですが、ずっと同じ大学で育って同じ大学で学長をやって、上がり、こういうことなんですけれども、アメリカあたりでは、結構若いときに学長になって、非常に業績を上げるとまた次のところに移って、どんどんステップアップするというふうなのがあって、かなり膨大な人材のプールがあるんですね。

 ですから、例えば、今すごく経営が悪いというときに経営の得意な学長を持ってくるとか、研究を伸ばしたいときには研究の得意な学長を持ってくるとか、そういうかなり広い選択肢があるということで、日本では残念ながらそういうシステムはまだありませんけれども、先ほど出ましたように、徐々にそういう人材をつくっていく。

 それから、今、経済界から学長を持ってきたらどうだ、経営ができるじゃないかということなんですが、この方たちについても、大学のやはり教学といいますか、学問やこういったことを深く理解している人じゃないと結局うまくいかないと思いますので、そういう方も含めて、これは将来の話になりますけれども、大きなプールをつくって、そういう中から理事や学長を選んでいくというふうにするといいのではないかなと思います。

笠委員 時間が参りましたので、終わります。

 どうもありがとうございました。

亀岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございます。(拍手)

 次回は、来る二十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十六分散会


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