衆議院

メインへスキップ



第12号 平成31年4月24日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十一年四月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 亀岡 偉民君

   理事 大塚  拓君 理事 神山 佐市君

   理事 馳   浩君 理事 村井 英樹君

   理事 義家 弘介君 理事 菊田真紀子君

   理事 城井  崇君 理事 鰐淵 洋子君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      上杉謙太郎君    小此木八郎君

      尾身 朝子君    大串 正樹君

      岡下 昌平君    金子 俊平君

      木村 弥生君    小寺 裕雄君

      小林 茂樹君    佐々木 紀君

      下村 博文君    白須賀貴樹君

      高木  啓君    谷川 とむ君

      中曽根康隆君    中村 裕之君

      根本 幸典君    鳩山 二郎君

      船田  元君    古田 圭一君

      細田 健一君    宮内 秀樹君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      簗  和生君    和田 義明君

      川内 博史君    黒岩 宇洋君

      中川 正春君    初鹿 明博君

      村上 史好君    吉良 州司君

      牧  義夫君    伊藤  渉君

      中野 洋昌君    畑野 君枝君

      串田 誠一君    吉川  元君

      笠  浩史君

    …………………………………

   議員           階   猛君

   文部科学大臣       柴山 昌彦君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   文部科学大臣政務官    中村 裕之君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    白須賀貴樹君

   最高裁判所事務総局総務局長            村田 斉志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       西山 卓爾君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小出 邦夫君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            伯井 美徳君

   文部科学委員会専門員   吉田 郁子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     細田 健一君

  白須賀貴樹君     佐々木 紀君

  根本 幸典君     簗  和生君

  福井  照君     小寺 裕雄君

  古田 圭一君     谷川 とむ君

  宮川 典子君     和田 義明君

  宮路 拓馬君     木村 弥生君

  八木 哲也君     宮崎 政久君

  初鹿 明博君     黒岩 宇洋君

  稲津  久君     伊藤  渉君

  杉本 和巳君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     鳩山 二郎君

  小寺 裕雄君     岡下 昌平君

  佐々木 紀君     白須賀貴樹君

  谷川 とむ君     古田 圭一君

  細田 健一君     青山 周平君

  宮崎 政久君     八木 哲也君

  簗  和生君     根本 幸典君

  和田 義明君     宮川 典子君

  黒岩 宇洋君     初鹿 明博君

  伊藤  渉君     稲津  久君

  串田 誠一君     杉本 和巳君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     福井  照君

  鳩山 二郎君     金子 俊平君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     中曽根康隆君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     宮路 拓馬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)

 司法試験法等の一部を改正する等の法律案(階猛君外二名提出、衆法第五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

亀岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案及び階猛君外二名提出、司法試験法等の一部を改正する等の法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾君、大臣官房司法法制部長小出邦夫君及び文部科学省高等教育局長伯井美徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

亀岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

亀岡委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長村田斉志君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

亀岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

亀岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎委員 自由民主党の宮崎政久です。

 きのうに続きまして質疑の機会をいただきましたこと、心から感謝を申し上げまして、質問に入らせていただきたいと思っております。

 この法曹の養成の制度、法曹養成制度改革、私は、二十年、沖縄で現場の弁護士として仕事をして、その後、国会に送っていただきました。法曹の一員として国政に身を置くことになりましたので、司法、法曹の世界に置かれている問題を解決をして、改善をして、力強い司法がこの国の未来を切り開くという理念で政治に取り組んでおります。

 法曹養成制度で解決すべき課題、私は実は自分で一人で勝手に三部作というふうに呼んでおりまして、法曹人口の問題を解決しなければいけない、経済的な問題を解決しなければいけない、そして制度論をしっかり整えないといけないと思っています。

 三千人を一度撤回させていただいて、司法試験の合格者千五百人というところをまとめさせていただきました。また、司法修習生に対する経済的な支援、給費制の制度に関しても、新しい制度をつくって、今運用していただいております。もちろん、これで終わりではないわけでありますけれども、この三つの大きな課題、今回は、法科大学院制度を中核とするプロセスとしての法曹養成を踏まえた法曹養成制度改革をしっかりと、ここで改革の実を上げないといけないと思っておりますので、どうか、委員の先生方のお力をかりて、今回の法案を御了承賜りたいと思っている立場でございます。

 過日、保岡興治先生が御逝去をされまして、本日、鹿児島の地で告別式がとり行われます。保岡先生は、平成十三年六月十二日の司法制度改革審議会の意見書の取りまとめに大変な御尽力をされ、今日に至るまで我が国の司法制度改革を始めとする数多くの分野で多大な貢献をいただいた先生でいらっしゃいます。私も、議員になった平成二十四年当初から御指導をいただいております。今回、この法案として掲げようとしている法科大学院制度を始めとする司法制度改革というのは、この平成十三年の改革意見書から始まったものです。

 先生の御著書を読みますと、こういった記しがありました。

 制度を幾ら美しくつくっても、それを運用するのは人です。統治三権の一翼を担う司法においても、運用する人材によって、制度が的確に機能し、国民の期待に応えることができるかどうかで決まります。国内外の状況の目まぐるしい変化と複雑多様化する社会に対応する法曹を養成するには、これまでの一点突破主義的な司法試験ではなく、教育と試験と修習を有機的に関連づけたプロセス教育を充実することにより、幅広い教養と専門知識を備えた多様な人材を育てなければなりません。

 こんなお言葉があります。

 今回の法案を提出させていただくに先立っても、自民党の中で勉強会を立ち上げ、与党でPTをつくって議論を重ねるなどしてまいりましたが、その先鞭をつけてこられたのは、いつも保岡興治先生でありました。柴山文科大臣も、いつもこの会議に御一緒をされて、研さんと勉強と法案の作成に向けての御尽力を一番先頭に立ってやっておられた方であります。

 そこで、柴山大臣にお伺いいたします。

 今回の法改正に至るまでの経緯なども交えて、今回の提出法案の趣旨について御説明をお願いいたします。

    〔委員長退席、義家委員長代理着席〕

柴山国務大臣 冒頭、宮崎委員のこれまでの本当に長きにわたる法曹養成を始めとした司法制度改革に対する御尽力に、心から敬意を表したいと思います。

 その上で、保岡興治先生の思い出も披露してくださったわけなんですけれども、まさしく私も、平成十六年初当選直後以来、弁護士の出身ということもありまして、保岡先生に絶大な御指導をいただいた一人であります。とにかく、今御紹介をいただいたとおり、ノズルを絞り過ぎた法曹の質と量の拡大、しかも、法曹養成に当たってはプロセス教育ということを大変強い思いを持って主張されておりまして、私も、保岡先生とともに実際の法学教育の現場を視察させていただくなどして思いを共有させていただいておりました。

 今回も、そういったこともしっかりと踏まえて、改正案において、法科大学院教育の充実、3+2と在学中受験の導入による時間的、経済的負担の軽減、そして法務省と文科省による定員管理を通じた予見可能性の担保、こういった事柄が図られ、プロセス教育へのさらなる充実ということが図られていると思います。

 しっかりと、これらによって法科大学院への信頼を確保するとともに、法曹志望者の増加を図ってまいりたいと考えております。

宮崎委員 柴山大臣、ありがとうございました。

 今大臣から御説明があった法案の骨格、趣旨について、私、きょうは法案審査のトップバッターを務めさせていただいておりますので、資料も用意してまいりましたので、委員の先生方と一緒に、この法案がどうして必要であるかということについての御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、資料の一をごらんください。

 この資料一は、平成元年以降の旧司法試験、今行われているものを新司法試験と呼ぶとして、新司法試験の受験者数などの推移をまとめたものでございます。

 私が司法試験に臨んでいたのは平成の最初のころなんですけれども、このころを見ていただきますと、左側、出願者数、その隣、受験者数、二万人を超える人たちが法曹を目指して司法試験を受験していました。二万人を超える人たちから大体五、六百人の合格者が出る、こういった仕組みであったわけであります。

 しかし、近年、法曹の世界を若い人が目指さなくなってしまいました。真ん中あたりに太い線が引いてあって、平成十六年、法科大学院設置と書いてありますけれども、法科大学院が平成十六年に始まりまして、旧司法試験を終えた平成二十三年には八千七百六十五人の受験者、二十三年の欄の二つ目の受験者数です、八千七百六十五人の受験者がいましたが、平成三十年では五千二百三十八人しか受験してくれる人がいない試験になっている。これが、現在の三権の一翼を担う司法の世界の最大の課題であります。

 資料の二をごらんください。

 これは、現在のプロセス養成ということで法科大学院が始まりましたので、平成十六年以降の法科大学院の志願者数、入学者数などの数を表にしてみました。

 志願者数でありますけれども、平成十六年は七万二千八百人、法科大学院を志願してくれていましたけれども、一番下の欄、平成三十年には八千五十八人しか法科大学院を志願する人がおりません。

 法科大学院に入学をしてくれる人の数も、一番多いのが平成十八年の五千七百八十四人。もちろん、さまざまな事情があり、学校の統廃合、定員管理などもしているからではありますけれども、入学者数は、平成三十年では千六百二十一人。これは一番多いときの二八%というような状況になっているわけであります。

 資料三をごらんください。

 これは、文部科学省と法務省が平成三十年に行ったアンケートの調査結果をまとめた資料であります。法曹を志望、選択肢の一つとしている学生の不安や迷いの原因を聞いてみたものに対する答えであります。

 上の方にある、司法試験に合格できる自信がないとか、適性、進路に魅力がというところは、これはある意味主観的な事情とも言えるわけでありまして、こういった主観的なものを除きますと、ロースクール修了までの経済的な負担が大きい、二六・五%、ロースクール修了までの時間的な負担が大きい、二三・二%ということで、この経済的、時間的な負担の大きさが、学生の不安や迷い、ひいては、先ほど言ったような、要するに若い人が志望、志願しなくなっている大きな原因だと見られます。

 そして、この経済的な負担であるとか時間的な負担というのは、本人の努力では克服のしようがないわけであります。

 ですから、この若い人たちの声に応えて、法曹の世界を目指す若者をふやすためには、制度として、今のこのような形での時間的、経済的負担がかかるものから今回改革を図っていかないといけないという、いわゆる社会の声がここにあると私は思っています。

 資料の四をごらんください。

 これは、法曹資格まで要する期間を横に並べてみました。

 上が現在の制度であります。

 これを高校生の立場でちょっと考えてみていただきたいんです、自分が高校生だと。将来、進路を考えている高校生の立場から見ると、現行の制度は、これから大学生活を四年間まずやって、その後に試験を受けた上で法科大学院に入る。そこで二年か三年学ぶわけであります。そして、卒業した後で初めて司法試験を受けることができて、合格の保証は定かではないわけでありますけれども、仮に、この上の既修者コースを受けて、更に司法試験に一年目で受かったとしたとしても、その次の年に司法修習を一年強ほど受けて、更にここにはまた試験があります。二回試験と通称呼んでいますけれども、この司法修習終了の試験に合格をした場合には、一番早くて八年たったときに、自分が目指している法曹の資格を取得できるというわけであります。

 法律家になって、弁護士や裁判官や検事になって活躍をしたいと思う十八歳の若者が、八年後です、十八歳の若者が二十六歳にならないとその世界の入り口にたどり着けないという制度になっているわけであります。

 多様な人材が司法の世界、法曹人材で供給をされることは、もちろんこれは大切なことであります。しかし、ここに一番の人材供給源というのは、この世界で活躍をしたいと思う若者であります。この若者がここを志望しなければ、必然的にこの世界にはもう人が来ないということになってしまうわけであります。そこで、この法曹になりたい、司法の世界で活躍をしたいという若者に対して、標準的にはこれだけの期間で法曹になれるということを示してあげることが今回の改革の眼目であると思います。それが、法科大学院教育の充実を図りつつ時間的、経済的な負担を軽減する、いわゆる3+2、法学部を三年、そして法科大学院を二年という制度であります。

 いわゆる、医師になりたいと思った若い人が、六年間の医学部教育を受けて、国家試験を受けて合格をして、高校卒業から六年目に医者としてのスタートを切れると同じように、弁護士になりたいと誓った若者が、裁判官や検事になりたいと誓った若者が、六年のプロセスの教育を経て高校卒業から二十四歳になってスタートを切れる、法曹としてのスタートを切れる制度を制度として社会に示していく、こういうことが一番重要であり、このための改革が今行われるべき喫緊の課題だと私は思っています。

 資料五をごらんください。

 これは、今回の改正の前提となる平成二十七年六月の法曹養成制度の改革推進会議決定の文書を抜粋したものであります。

 これは、今より前の平成二十七年の時点で、赤く囲んだ部分の二行目からでありますけれども、新しい制度が始まって約十年が経過した今、法科大学院全体としての司法試験合格率や、弁護士を含む法曹有資格者の活動の場の広がりなどが、制度創設時に期待した状況と異なるものとなり、法曹志望者の減少を招来する事態に陥っている、これに対して改革を行う必要があるというふうに書いているわけであります。

 そして、そのための法科大学院の改革が必要だということで、裏面を見ていただきますと、また同じく赤で囲っておりますけれども、法科大学院改革に関しては、平成二十七年度から平成三十年度までの期間を法科大学院集中改革期間と位置づけ、法科大学院の抜本的な組織見直し及び教育の質の向上を図るということにしているわけであります。

 そこで、文部科学省に質問をいたします。

 そうなってまいりますと、教育の質の向上というところが非常に重要なポイントになってきます。3+2を導入して、そして、私はこれが標準化してくることが重要だと思っています。そのための法科大学院教育の充実についてどのような点を検討しているのか、御説明をお願いします。

伯井政府参考人 お答え申し上げます。

 法科大学院教育の充実につきましては、今回の改正案におきまして、大学の責務に係る規定の改正といたしまして、司法試験で共通して問われる学識とその応用能力、司法試験の選択科目として問われる専門的な法律の分野に関する学識とその応用能力などを、涵養すべき学識等として規定したところでございます。

 また、法科大学院の教育課程や成績評価、修了認定の基準、実施状況等の公表を義務づけることによりその教育の充実を図るという観点から、今回の改正案にそのことも盛り込んだところでございます。

 カリキュラムの見直しは、法科大学院における十分な検討が必要でございます。司法試験との有機的な連携も求められるものであることから、司法試験のあり方の検討状況を注視しつつ、関係者の理解を得ながら、段階的かつ体系的なカリキュラムのあり方について、中教審の法科大学院等特別委員会等におきまして具体の検討を進めていきたいと考えています。

 これらによりまして法科大学院教育の充実を図り、制度が安定的に運用されるに従って、御指摘いただきました、多くの学生が3+2の対象となって、さらに在学中受験を行うということを標準的運用というふうにしていきたいと考えております。

宮崎委員 ありがとうございます。

 先ほど資料四で示したとおり、このコースは、3+2と呼ぶぐらいですから、法学部の法曹コースの学部教育三年と法科大学院の二年、これの連携をした上で、単純に横並びしても、教育の、要するに質は向上しないわけであります。ですから、この二つの連携をどうするかということも大変重要な課題になります。この点についてはどのようになっていますでしょうか。

伯井政府参考人 法学部の連携法曹基礎課程、法曹コースに在籍する学生は、学部段階から法曹となる高い意欲を有しているということから、その意欲に応じた学修機会を確保していくということが重要であるというふうに考えております。

 本年一月に中教審の法科大学院等特別委員会で取りまとめた考え方におきましても、法曹コースの教育課程に関して、共同開講科目の開設、あるいは科目等履修の活用など、協定先の法科大学院既修者コースとの円滑な接続を図るための措置が講じられていることが、法曹養成連携協定の文科大臣認定において必要であるということが示されております。

 文科省としては、この法案が成立した際には、こうした議論を踏まえまして、大学の認定要件を定める省令におきまして、法科大学院との共同開講科目の開設、科目等履修の活用など、法科大学院の既修者が学修する内容についても履修することができるよう、科目の開設や履修において適切に配慮することなどを規定することを予定しておりまして、法曹コースと法科大学院が円滑に接続するよう、必要な規定の整備を図ってまいりたいと考えております。

宮崎委員 ありがとうございます。

 これは、決して並列的に置いてほしくないんです。つまり、普通に考えれば、意欲に燃えた若者が、例えば、体力と時間を使って熱心に勉強するということは普通にあることです。昔だって、例えば私なんかでも、あの先生の講義はいいぞなんというふうに言うと、ほかの大学に潜り込んでいって話を聞いたりするなんということもあったり、予備校の評価は今ここではしませんけれども、例えば大学生活を送りながら予備校で勉強をするという若者もたくさんいるわけでありますので、学部教育と連携をして同じ時期に法科大学院、ロースクールの授業を受けることができて、有機的に連関をして、しかも、若い人たちの思いであったりとかそういったものに応えていくということは、制度としてぜひ応援をしてもらいたいと思っておりますので、学部だから、ローだからというふうな形で分けないような、しっかりとした連携した運用をしてもらいたいと思っております。

 資料の六をごらんいただきたいと思います。

 3+2を標準化するためには、大学三年次が終わった時点で卒業できるようにしていただきたいわけであります。

 卒業扱いにできる早期卒業はよろしいんですが、飛び入学は中途、中退になってしまいます。ですから、この資料六に見るように、実は、現在は、これは文科省の資料で、赤文字で、八十七名が早期卒業、飛び入学を活用して既修者コースへ入学しているというけれども、わずか八十七人しか使っていないという現実があるんですね。

 今回、法案の中で、学校教育法百二条の改正が入っています。これは飛び入学にする制度でありますけれども、やはり、飛び入学だと学士の資格を得られないという問題がありますので、私は、早期卒業を原則の形としていくようにしてもらいたいと思っています。

 そこで、資料七を見ていただきたいんですけれども、資料七で、この真ん中で赤く囲んだ部分、「学校教育法等の一部を改正する法律等の施行について」ということで、早期卒業に関して次官通知が出ています。

 この次官通知のラインを引いたところを見ていただきますと、この早期卒業の制度は、例外的な措置であることに留意して、そして、安易な運用により大学教育の質の低下を招かないよう早期卒業の適正な運用の確保に努められたいとなっているわけであります。

 一般的にはこれでいいかもしれない。だけれども、今回、3+2をやっていくということになりますと、これは例外的な措置ではなくて、しっかりとした、これを標準化していく制度としてつくっていくということになるわけでありますので、この通知を超えるようなものをしっかり出してもらわないと困ると思っています。この点についての文科省の見解を聞きたいと思います。

    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

伯井政府参考人 ただいま御紹介いただきましたように、早期卒業に関しましては、平成十一年の文科省の事務次官通知におきまして、安易な運用により大学教育の質の低下を招かないよう早期卒業の適正な運用の確保というのを求めてきたところでございまして、その趣旨は、早期卒業が、原則とされる四年での学部卒業の例外であるということから厳格な運用を求めてきたものでございます。

 一方で、御指摘を今まさにいただきましたように、法科大学院につきましては、あるいは3+2のコースにつきましては、本年一月に中央教育審議会の法科大学院等特別委員会で取りまとめた考え方におきましても、法曹養成基礎課程、法曹コースにおいては、早期卒業制度を活用することが期待されることから、大学が、学部三年終了時までに必要な学識等を修得させることが可能となる教育課程を編成すること、法曹コースにおいては、当該コースの学生が法学部三年次終了時に早期卒業等により法科大学院既修者コースへ入学できるよう、早期卒業制度を適切に運用することということが示されたところでございます。

 文部科学省といたしましても、この中教審での議論を踏まえまして、早期卒業を前提とした教育課程において、法科大学院との連携のもと、充実した教育が行われる、こういう措置であるということをしっかり周知徹底してまいりたいと考えております。

宮崎委員 ありがとうございます。

 その周知徹底する方、しっかり通知を出して周知していただきたいと思います。

 資料八をごらんください。

 いわゆるギャップタームと言われる問題についての御説明であります。

 上が現行の制度。司法試験を受験するためには、この修了というのは法科大学院の終わりの修了という意味でありますけれども、法科大学院を修了しなければいけませんので、司法試験を受けて合格ができたとしても、修習の開始まで約八カ月間の期間を避けることができないということであります。

 今回の改正は、修了、最終年度のところで司法試験を受験できるようにして、その後、スムーズに司法修習に入れるようにしてギャップタームを解消しようということであります。

 そこで、下の方に、新制度の私案ですけれども、採点の時間が必要になってきますので、三月に法科大学院を修了して、四月から司法修習を始めてもらうためには、やはり試験は夏ぐらいにやらないと採点が間に合わないという事情があるかと思います。

 司法試験の受験時期について、私は夏ぐらいにやるべきだと思ってこの図をつくりましたけれども、法務省はどういう考えでいらっしゃるのか、お考えをお聞かせください。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの司法試験の実施時期でございますが、これは法令で規定する事項ではございませんで、最終的には司法試験委員会の決定事項でございまして、現時点で方針は決定していないところでございます。

 もっとも、今回の制度改革による新しい司法試験の実施時期につきましては、法曹志望者や法学教育関係者にとって非常に関心が高い事項であるということは認識しておりまして、法案成立後に設置する予定にしております関係省庁、教育関係者、法曹実務家等を構成員とする会議体において検討することとしておりますが、今回の法改正の立案を担当する立場といたしましては、法科大学院における教育の実施を阻害せず、法科大学院教育と司法試験との有機的な連携を図るなどの観点から、一つの選択肢として、現状の五月の実施を後ろに倒しまして、先生御指摘のとおり、夏ごろの実施とすることを想定しているところでございます。

宮崎委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間の関係で一方的に意見だけ申し上げますけれども、今の資料八のように試験の時期を夏にしていったとしても、司法修習が今の十一月とかから始まると、またそこにブランクが生じてしまいますので、司法修習の開始時期は春、四月からしっかり始まるようにしてもらいたいと思います。法科大学院を卒業したら司法修習が始まるという仕組みにしてもらいたい。これは最高裁の方で決めていく修習に関する事項ですから、こういう点はしっかり協議をして、ギャップターム解消という趣旨に沿うような形で決めてもらいたいと意見を申し上げておきたいと思います。

 そして、もう一つ、法改正をされた後、運用の問題として、法科大学院教育と連携をした司法試験のあり方を議論していく必要があります。この議論の場が必要になるわけでありまして、さらに、そこの会議体に授権する項目というのもきっちり考えて、何でもかんでもそこで、会議体で話し合ってもらったらいいというわけじゃありませんので、この運用をする枠組みとしてどういったもの、会議体みたいなもの、どういったものを想定しているのか、法務省から説明してもらいたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正によります司法試験の在学中受験を認めるに当たりましては、法学部との連携を含む法科大学院における教育課程の見直しに加えまして、法科大学院教育課程と司法試験との適切な連携が必要と考えているところでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、法案成立後に設置することを検討しております会議体におきまして、司法試験が裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識、能力を判定するものであるという位置づけに変更がないことを前提としつつ、法科大学院教育と連携した司法試験のあり方について、先ほど申し上げました、関係省庁のほか、大学関係者や法曹実務家等を構成員とする会議体において検討が行われるものと考えているところでございます。

 また、この会議体につきまして、今回の連携法改正により新たに規定します、法務大臣及び文部科学大臣は、法曹の養成に関する事項について、相互に協議を求め、又は大学その他の法曹の養成に関係する機関の意見を聞くことができるといった連携法の十三条の規定や、あるいは司法試験委員会に委員を補佐する幹事を置くことができるとする司法試験委員会令六条等がこういった会議体の法令上の設置根拠になるというふうに考えているところでございます。

宮崎委員 ありがとうございました。

 ちょっと予備試験等も触れたかったんですが、時間の関係で最後にしたいと思います。

 この改正は、法科大学院の集中改革期間の最終年度に行うものでありまして、必ずなし遂げて、必ず成果を上げないといけないと思っています。その成果というのは、この世界に若い人たちの志望者が戻ってくるということが成果であります。そして、その先に、やはり、今、法曹をつくるというのが法科大学院の一階部分であるとすれば、世界に冠たる、要するにリーガルアカデミーとして二階部分をつくっていくぐらいのもので法科大学院を大きく上げていくのが、私は、この国の司法の力で我が国を大きく切り開いていくために大切なことだと思っております。

 そこで、最後に、今回の法曹養成制度改革を推進していただく平口法務副大臣、そして柴山大臣からこの決意を伺いたいと思います。

平口副大臣 お答えをいたします。

 今回の法案は、近年、法曹志望者数が大幅に減少している中、質、量ともに豊かな法曹を輩出するための改革を進めることが喫緊の課題となっている現状を踏まえ、法曹養成の中核的な教育機関である法科大学院教育の充実を図り、高度の専門的な能力及びすぐれた資質を有する法曹となる人材の確保を推進することを目的とするものでございます。

 法務省といたしましては、まずは、今般の法案により法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度改革をしっかりと進めることが最優先であると考えております。法案成立後においても、法律の施行に向けて、引き続き、文部科学省や最高裁判所はもちろん、日弁連や法科大学院協会といった関係機関とも緊密な連携をとりながら、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 また、平成二十七年六月の法曹育成制度改革推進会議決定では、法曹志望者数の回復に向けて、法科大学院改革のほか、法曹有資格者の活動領域の拡大、法曹人口のあり方、司法試験のあり方の検討等を進めるとされております。

 法務省といたしましては、関係機関と連携しつつ、法曹有資格者の活動領域の拡大に向けた取組など、法曹志望者の回復に向けて必要な取組を引き続きしっかりと進めていきたいと考えております。

亀岡委員長 柴山文科大臣、時間が過ぎていますので、簡潔にお願いいたします。

柴山国務大臣 はい。

 今、平口副大臣からお話があったとおり、プロセスとしての法曹養成の中核となるのが法科大学院制度でありますが、これをしっかりと信頼できるものにしていくということと、あわせて、そこを卒業した方の実務力や実践力、これが極めて重要だと思っておりますので、今の二階部分ということでいえば。その確保を通じてさまざまな領域で活躍する人材をしっかりと育てていきたいと考えております。

宮崎委員 ありがとうございました。

 貴重な改革の第一歩でありますので、どうぞよろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして質問をさせていただきます。

 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案ということで、昨日も参考人の質疑をさせていただきました。

 法科大学院制度は、平成十六年から、司法試験制度改革という大きな議論がありまして、従来型の司法試験の試験、一つの試験というもので法曹の質というかそうしたものをつくっていくという形よりも、やはり、プロセスとして、ロースクールという中でしっかりと法曹養成をしていくんだ、こういう当初の理念のもとにスタートした制度だというふうには承知をしております。

 きのうの質疑でも少しお話もしたんですけれども、私の同世代は、やはり、ロースクール制度開設当初の世代でもございまして、初めてできたロースクール一期生ということで、そうした中で法曹資格を目指していった、こういう同世代の人たちも数多く知っております。しかし、現実、最近になりまして、若い世代、例えば学生の皆さんら、こうした方と話をする機会もございますのでお話を聞きますと、やはり法学部に行かれている学生さんも非常に悩んでいると。ロースクールに進学をして法曹資格を目指しても、目指したいという気持ちはあるんだけれども、果たしてロースクールに行って大丈夫なんですかね、こういうお声。本当に、この制度そのものに対する、今現在、不信感というものもあるのではないかということも感じております。

 やはり、私の同じぐらいの世代の法曹で活動している皆さんは、司法試験の合格者数というのも多く拡充をしていった、そういう時期でございますので、仕事の環境もかなり激変をしていって、法曹の仕事としての魅力というのも下がってしまったんじゃないか、こういうことをおっしゃる方もいらっしゃいます。

 やはり、これでは、法曹の人材を育成していく、こういう制度そのものへの信頼が揺らいでいるわけでございまして、これは改革をしていかないといけない、こういう強い思いを持って今回、法改正の質問に取り組ませていただきました。

 平成十六年にロースクールを志願した方の数というのは七万二千八百人ということでございますけれども、志願者、平成三十年には約八千人まで下がってしまった、こういう大変に厳しい現状であるというふうに思います。

 まず、議論の出発点としてこの現状の認識についてお伺いをしたいというふうに思いますけれども、文部科学省として、なぜこの志願者が激減をしたのか、この理由についてどのように分析をしているのか、これについてまず冒頭お伺いをしたいというふうに思います。

伯井政府参考人 お答えいたします。

 法科大学院制度は、当初は、司法試験合格者三千人を目指し、法科大学院修了者の七割、八割が合格できる教育を行うこととされておりました。しかしながら、今御指摘いただいたような、志願者が激減しているという状況になっておるわけでございます。

 司法試験合格者数は、その三千人の数値目標は撤回され、現在、当面、千五百人程度は輩出されるよう必要な取組を進めることとされているところではございますが、このように法科大学院志望者の激減を招いた原因といたしましては、法科大学院修了者の司法試験合格率が二から三割というふうに低迷をしていったこと、平成三十年度に実施した法学部学生に対するアンケート調査結果におきましても、法曹資格取得までの時間的、経済的負担がかかること、そういったことが法曹を志望する上での大きな不安や迷いの一つということとなり、こうした激減を招いていることというふうに分析、認識しております。

中野委員 そうしますと、そうした現状の分析に基づきまして改革をしていくということになろうかと思うんですけれども、もう一つ、本法案の審議におきましてやはり問われないといけないと思いますのが、プロセスによる法曹養成、ロースクールを導入したことによってプロセスによる法曹養成をしていくという大きな目的があったわけでございますけれども、それが果たして現在図られているという状況になっているのか、これについてもやはり総括をしていかないといけないんだろうというふうに思っております。

 これは大臣の方にお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、ロースクールによっては、先ほどあった、合格率も低い、定員割れも起こしたり、撤退していったり、そういう状況もあったわけでございます。果たしてこのロースクール制度そのものがうまく機能したというふうに評価をされておられるのか、法科大学院制度導入の総括また評価についてどう考えられているのかということを大臣の方にお伺いをしたいというふうに思います。

柴山国務大臣 今御紹介をいただいたとおり、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度は、平成十六年度に、質、量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹の養成を目指して導入をされ、その後、十五年が経過した今、プラスの側面としては、幅広い分野や司法過疎地域で活躍する弁護士等が増加するなど、一定の成果を上げてきたという部分がございます。

 しかし、今御指摘になられたとおり、制度発足時に法科大学院の参入をすごく広く認めたことから、数多くの法科大学院が設置されて過大な定員規模となり、司法試験合格者数についても当初の目標が実現できない中で、結局、法科大学院修了者の合格率が、七、八割どころか二、三割と、全体として低迷する事態となってしまいました。また、法曹を目指す多くの学生が、時間的、経済的負担が大きいと感じるようになってしまいました。こういった中で大幅な志望者減を招く状況となったことから、平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議の決定において、法科大学院教育の向上等について、平成三十年度までを集中改革期間として定めて、文部科学省として取り組んできたところであります。

 率直に、当初の見込みとは、この法科大学院制度、異なる状況を生み出したということは認めざるを得ません。こうした課題を解消するために、プロセスとしての法曹養成制度は引き続き重要であるという認識に立ちつつ、その改善、充実に取り組んでいきたいと考えております。

中野委員 先ほど大臣からも御認識を答弁していただきました。確かに、定員の規模というか、参入規模として過大だったのではないかということはあるんだと思うんです。他方で、法曹の、司法試験の合格者数というものは、当初の三千人という話もあったんですけれども、これについては現実的にはかなり絞ってきているという現状があり、そして、ロースクール側としても定員割れ等を起こしていく中で撤退をしてきたということもあり、そして、規模の問題に関しては、そういう意味では、ある意味、今の状況が適正なのかどうかという認識はまた別途あろうかとは思いますけれども、ひとつ落ちついてきているのかなというふうには思っておるんです。

 他方で、時間的な負担や経済的な負担ということも認識の一つとして先ほど答弁もいただきました。昨日の参考人質疑でも、ここの部分はかなり議論になったところだというふうに思っております。

 すなわち、法学部、学部については三年で卒業ができるようになる、ロースクールに入学をして二年、その二年目に、在学中に司法試験の受験を可能にする。三プラス二年、最後の学年で受験をする。すなわち、できるだけ短い期間で司法試験に合格できるようにする。ギャップタームを解消するということでずっとうたわれておりましたので、そういう制度にしようということでございますけれども、そういう中で、そういうことをしても、今例えば予備試験という形で受験をされて目指される方もいる、そういう方たちが本当にそれでロースクールに来る形に果たしてなるんでしょうか、こういうふうな問いかけもあったやに記憶をしております。

 やはり、プロセスとして法曹養成をしていくというのが当初の目的でございますので、ロースクールそのもの、このプロセスそのものが信頼される過程に、魅力のあるものになっていかないと、法科大学院制度というものの信頼を回復していく、そして、多くの方が法曹を志願していくという形に私はなっていかないんじゃないか、そういう思いをきのうの質疑でも感じながらやっておりました。

 大臣の方にもう一つお伺いをしたいのが、現在のロースクール制度への信頼の回復というものをしっかりやる、そういうしっかりした制度改革を今回行っていく必要があるというふうに思っております。その方策についてどうお考えかということをお伺いしたいというふうに思います。

柴山国務大臣 まず、委員が御指摘の予備試験の問題については、今後、法務省の方で中心的にそのあり方について検討していただくことになろうかと思います。

 我々としては、今、プロセス教育としての中核を担っている法科大学院、これが本当に重要なんだということを多くの方々がきちんと実感をしていただくことが何よりも重要だと思っておりまして、そのためには、まさしく、このプロセス教育によって法科大学院教育の充実が図られるんだ、また、今委員が御紹介していただいたように、最短六年間で法曹資格を取得することができるということで時間的、経済的負担も軽減される、そして、法科大学院の定員管理によって予測可能性の高い法曹養成制度を実現するということも可能になる、こういったこと。それからあと、やはり、修了した方が社会で、このプロセス教育というものを生かして未知の領域についてしっかりと活躍していく、こういうことを示していくことによって、法曹志望者、法科大学院の志望者というものが着実にふえていくのかなというふうに考えております。

    〔委員長退席、義家委員長代理着席〕

中野委員 ありがとうございます。

 そのためにまさに今回の制度改正を行うということであると承知をしておりますので、本当に重要な改革であるというふうに思います。大臣には、引き続き、この改革につきまして尽力をしていただきたいと改めてお願いを申し上げます。

 続きまして、少し通告とは順番は変わりますけれども、今後の法科大学院のカリキュラムあるいは司法試験の中身そのもの、これについてお伺いをしたいというふうに思います。

 これは、もともとの議論の出発点が、やはり、一発合格というか、一回の試験、司法試験というものではなくて、プロセスによってしっかり法曹を養成していく制度にしていきましょうというのがロースクール制度の導入の出発点でございます。

 ただ、現在、時間的、経済的な負担が、学生がある、だから目指さなくなってきている。ですから、カリキュラムを、学部が三年、ロースクール二年、3+2のカリキュラムに短くする、かつ、在学中も受験をできるようにするという形にしていくんですけれども、それが、もともとロースクールで時間をかけてそのプロセスでしっかり養成をしていこうということと、ある意味、私は矛盾する中身なんじゃないかというふうな、ある意味そういう側面もあるんじゃないかというふうに思います。しっかり時間をかけるからこそプロセスで養成ができる、しかし、時間がかかると負担で目指さなくなるのでそれを短くしようという、単に短くしようということでは、やはり質というものが担保できなくなるのではないかというふうに思います。

 参考人の質疑の際にも、カリキュラムを圧縮すると学生の負担が大きくなり過ぎるんじゃないか、こういうふうな指摘もございましたし、もともとロースクールというのは、司法試験予備校ではない、プロセスで実務的な、あるいはいろいろな側面から教育をしていくんだという当初の目的とかなりずれてくるんじゃないかというふうな、いろいろな指摘もあったところでございます。

 カリキュラムの問題については、これは司法試験の中身そのものでありますけれども、選択科目の取扱いというのも従来議論になっておりまして、これは試験ではなくて法科大学院で勉強するという形にしてもいいんじゃないか、こういう議論もあったわけでございますけれども、現在は、そういう形ではなくて、やはり試験の方でしっかりやろうということで最終的には落ちついているわけでございます。

 カリキュラムをどうするのか、試験の中身をどうするのか、これをやはりセットで議論をしていかないと、学生の負担が極めて重くなっていくのではないか、あるいは、単に短くしてしまうと質が確保できなくなっていくんじゃないか、こういう中身が一番大事なのではないかというふうに感じておる次第でございます。

 こうした司法試験のあり方も含めて、今後の法科大学院のカリキュラム、これをどういう形にしていくのか、あるいは司法試験の内容そのもの、時期という議論も先ほど来あったわけでございますけれども、これについてはどういう形のものにしていくのか、これについて、まず文部科学省の方、そしてその後、法務省、両者から考えを伺いたいというふうに思います。

伯井政府参考人 司法試験を在学中受験で受験しようとする者は、法科大学院の最終年次における受験の前までに、司法試験で課される法律基本科目あるいは選択科目など法務省令で定める科目について一定の単位修得をする必要があるということで、とりわけその選択科目に相当する科目についてでございますが、法科大学院における現在の開設状況を見てみますと、選択科目で問われる全八分野について、既修一年次、未修者でいうと二年次から履修が可能となっている例が一部にある一方で、やはり多くの大学はカリキュラムの見直しということが求められるわけでございます。そうすると、在学中受験までに必要な単位を修得できるカリキュラム編成ということですけれども、この見直しによってそれをやってもらう必要があるということでございます。

 このカリキュラムの編成というのは、法科大学院における十分な検討が必要でございます。司法試験との有機的な連携も求められるものでございます。したがって、司法試験のあり方の検討状況を注視しつつ、関係者の理解というのもしっかり得ながら、選択科目の履修のあり方、科目数であったり単位数などにつきまして、中教審の法科大学院等特別委員会において具体の検討を進め、対応していきたいというふうに考えております。

小出政府参考人 お答えいたします。

 まず、前提として、司法試験の実施につきましては、司法試験委員会に委ねられているということでございます。

 ただ、今回の制度改革によります新しい司法試験では在学中の受験資格を新たに導入することとしておりまして、司法試験の実施時期の点、あるいは、先ほど御指摘ございました、今回の法案が司法試験の論文式試験につきまして選択科目を引き続き存置することとしていることとも関連いたしまして、法科大学院教育課程と連携できるのか、あるいは法科大学院生の学修到達度は確保されるのかといった課題が指摘されているところでございます。

 そこで、法務省といたしましても、この改正法案が成立した場合には、法科大学院教育と連携した司法試験のあり方につきまして、司法試験委員会とも連携したしかるべき会議体を速やかに設置して検討を進めていくことを予定しております。

 その会議体におきましては、法科大学院の新たな教育課程の内容やカリキュラム編成、また学生の学修到達度などの議論と並行して、関係者の協議により、司法試験の実施時期も含めまして、司法試験のあり方について必要な検討が行われるものと考えているところでございます。

中野委員 法務省から答弁がありました、しかるべき会議体を設置するということで答弁をされました。やはり、ここでの検討の中身というのが私は非常に大事になってくるというふうに思います。やはり、この会議体におきましていろいろな関係者の意見もしっかり聞く必要があるというふうに思うんですね。ロースクールの関係者もそうでありますし、弁護士であるとかさまざまな法曹の関係者の皆様の意見も聞く必要がございますし。

 これについて、時期のお話もありましたけれども、カリキュラムとの連携、時期、あるいは試験の内容というか、どういう有機的な連携になって、カリキュラムとの連携になっていくのか等々も含めて、ここの中身をこの会議体でぜひ、議論をしっかりしていく必要があるというふうに思います。この検討会の設置、そして設置をした上でそういうことをしっかりと議論をしていく必要性があるというふうに思います。これにつきましてもう少し具体的に法務省の方から答弁をいただきたいというふうに思います。

    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

小出政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の会議体でございますが、関係省庁のほか、教育関係者、法曹実務家等を構成員として検討を進めていくことを予定しております。

 検討する事項といたしましては、例えば、法科大学院の教育現場あるいはカリキュラムの現状、法曹となろうとする者に必要とされる学識、能力などを踏まえた新たなカリキュラム編成の内容等の事項も含めまして、関係者の意見を十分に聞いた上で、在学中受験の実施を念頭に置いた、法科大学院の教育と連携した司法試験のあり方について検討がされていくものと考えているところでございます。

中野委員 しっかりといろいろな関係者の意見をぜひ踏まえた上での議論にしていただきたいというふうに思うんですね。この制度改革、三年プラス二年、そして在学中受験と大きく制度は変わっていくわけでございますので、ここの中身の部分というのが非常に大事だというふうに思います。しっかりとした検討をぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 続きまして、法科大学院制度の導入のもう一つの目的というか、やはり、多様な人材を確保するということがあったかというふうに思います。ですので、例えば法学の未修者あるいは社会人、法曹課程でこうした人材もしっかり受け入れていく、あるいは合格できるようにしていく、これが非常に大事なのではないかなというふうに思います。

 しかし、私自身も、法学部ではなかったんですけれども、法律職の公務員試験を受けるときに法律を、要は法学未修者から勉強したという経験も私もあるんですけれども、学部が三年、そうしてロースクール二年というのは、基本的には、やはり、法学部のカリキュラムが三年になり、そして、その上にロースクールが二年乗ってくるという形だと思うんですね。基本的に、他学部から3+2という形でやってくるというふうなことは、そういう連携したプログラムを組むというのが余り想定されないのではないかなと。未修者なので二年ではなくロースクールがそもそも三年なんでしょうけれども、法学部生を前提とした制度になってくるのかなというふうなことも感じておりまして、そうすると、他学部から法科大学院の方に進学をするというのはよりハードルが上がるのではないか、こういうふうな思いも持っております。

 また、在学中受験ということでございますけれども、未修者のコースというのは、現在のロースクールでも、カリキュラム的にかなり詰めてしっかり勉強されているというふうにも聞いておりまして、これはカリキュラム的にも非常に厳しくなってくるのではないかというふうな不安の声も聞いたことがございます。

 そうすると、法曹人材の多様性を確保していくという当初の目的と少しずれてくるのではないかというふうにも感じておりまして、やはり、こういう未修者あるいは社会人、こうした方がしっかりと法曹のところに、いろいろな多様な人材を集める、法曹の人材として活躍をしていただく、こういうことについてしっかり取組をしていかないとなかなかそういう人たちが来なくなるのではないか、こういう危惧も持っております。これについて、どう文部科学省として対応していくのかということをお伺いをしたいというふうに思います。

伯井政府参考人 御指摘のように、今後とも、法科大学院において、未修者あるいは社会人など多様な人材を法曹として養成するという役割は重要であるというふうに考えております。

 このため、今回の法改正におきましても、未修者とか社会人の入学者選抜における配慮義務を規定しておりますし、また、その法改正とあわせた改革として、未修者教育、社会人教育への支援を含むめり張りある予算配分の継続であったり、あるいは法科大学院が共通して客観的に進級判定に活用する共通到達度確認試験の実施といったことの取組を推進するとともに、今御指摘いただきました、未修者コースで在学中受験を希望する学生が在学中受験ができるような教育課程を組んでいくということにもしっかり対応していく必要がございますので、こうした点も含めて、未修者教育の改善方策につきましても、中教審の法科大学院等特別委員会において御議論いただきたいというふうに考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 この点もあわせて、カリキュラム全体そのものが今回大きく変わっていくと思いますので、そこも必要だというふうに思いますし、未修者のコースのものについては、もともとかなりカリキュラム的に詰めているというふうにも感じておりますので、やはり、ここの部分も含めてしっかりと対応していただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 もう一つお伺いをしたいのが、地方の学生の受験の機会ということでございます。

 私が党で学生局長という役職をやっておりましたときに、全国いろいろなところでお話を伺わせていただきましたけれども、そもそもロースクールの数が当初よりも大分減ってきたということもございまして、そうすると、法学部、学部を三年で卒業してロースクールを二年で出ますよというのは、ある意味、大学の中で連携したカリキュラムなんだろうなというふうに思うんですね。ロースクールがない大学で単に三年で卒業できますというふうなカリキュラムを果たして組まれるのかということも思いますので、学部と法科大学院の結びつきというのが非常に強くなる制度なんだろうというふうに思います。そうするとやはり、法科大学院のない地域の大学については、これは、より法科大学院を目指しにくいという形になるのではないかなというふうに思います。

 地域によってかなり偏在もしておりますし、もともと法曹人口を拡大していこうとしていた趣旨も、それぞれの地域の中でしっかり、法曹人口、例えば弁護士であるとかいろいろな方がそれぞれの地域でやはり一定数必要だ、こういうふうなこともあったかというふうに思います。ですので、単に三年プラス二年という制度だけを導入すると、法曹人口の地域格差の是正というところにもマイナスに働くということもあるのではないか、こういう懸念も持っております。

 ですので、地方の学生の受験機会の拡大というものについてやはり特段の配慮をしていかなければならない、こう思いますけれども、これについても文部科学省の答弁をいただきたいというふうに思います。

伯井政府参考人 今回、法学部三年の法曹コースと法科大学院二年をプロセスとする養成の制度改正を行うということでございますが、この場合、法科大学院を設置していない大学との連携ということも期待されております。

 特に、今御指摘いただきました、地方の法科大学院の募集停止が相次ぐ中で、法科大学院が存在しない地域との、大学との連携というのは、地方における法科大学院への進学機会の確保という観点から必要性が高いというふうに認識しております。

 既に大学間で計十四のそうした協議が開始されておりまして、例えば神戸大学の法科大学院につきましては、複数の地方大学が接続する法曹コースの設置を目指して検討しておるということでございます。

 文科省といたしましては、今後とも、こうした法科大学を設置していない地方大学においても、法学部に法曹コースを設置する検討の取組というのを促進してまいりたいというふうに考えております。

中野委員 もう時間が来たようでございますので質問は以上にさせていただきますけれども、この制度を改革することによってロースクール制度の信頼を取り戻していく、そのためには、ロースクール、プロセスによる養成というものがしっかりと結果を出せる質の高い教育を行っていく必要がやはり一番肝要なんだろうというふうに思います。そうした中身の検討というのもしっかりとしていただきまして、しっかりと、多くの方が法曹を目指せるような仕組みをぜひ構築をしていく必要がある、これを最後に訴えさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 立憲民主党・無所属フォーラムの黒岩宇洋でございます。

 早速、柴山大臣にお聞きしますけれども、ロースクールが導入されて十五年たちました。現時点で、このロースクール制度、ロースクールを中核とした法曹養成制度について成功しているとお考えなのか、今時点での大臣の率直な御見解をお聞かせください。

柴山国務大臣 先ほどの質問にもあったんですけれども、プロセス教育をしっかりと重視をしようというこの法科大学院制度、ロースクール制度は、その理念としては大変重要な理念があったかと思いますけれども、卒業生の七割から八割が合格をするというような当初のもくろみが大分違う方向に行ってしまったということは率直に言って認めざるを得ないというように考えます。

 こういった現状をしっかりと改革して、法科大学院教育を抜本的に質を改善させていくとともに、学生にとって魅力のある制度としていけるように改革を進めていきたいというように考えております。

黒岩委員 大臣の現状認識、今お聞きしましたが、でも、私は壊滅的な状況だと思っていますね。これほど法曹志願者が少なくなって、法曹離れどころか法学部離れも起こしているわけですから、これをある意味逆流させるというのは大変なことだと思いますよ。

 大臣がいみじくもおっしゃった、これは抜本的な改革ですよね。私、きょう、そういう認識、現状認識は、大臣ですから失敗だとは言えないかもしれないけれども、現状認識というのはやはりなるべく合わせておくべきですよ。ある意味、文科省も主導してきたこの制度改革だったわけですから、それを甘目に自己採点すると、ろくなことにならないですよ。

 これはよく抜本的改革とか根本的改革というのがありますけれども、根本的というのは、根が傷んでも、まだ根が残っているから根を治そうという改革ですよ。抜本的というのは、もう根も傷んじゃっている、だから、抜いて新しい木を植えかえようという改革なんですよ。

 それで、今回の3+2がそこまでの改革になるかということを検証したいんですが、その前に、そもそもこの法科大学院を中核とする法曹養成、これ自体の、今申し上げた、少なくとも大臣も、成功はしていない、そしてもくろみは外れたと言う限りにおいては、これが現状認識なわけですから、では、これについての原因は何だったのか。これは、文科省、法務省の説明でも、現時点でのふぐあいについては幾つも書いてありますよ、合格率が低いだとか法曹志願者の数が少ないとか。ただ、やはり原因というものがしっかり追求されていない。これは私は大きな問題だと思っているんですよ。

 質問通告を少し飛ばしながら質問しますけれども、これは文科省にお聞きします。

 法科大学院を導入した理由、これを端的にお答えください。

伯井政府参考人 法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度を導入するということで、質、量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹養成を目指して導入されたというものでございます。

黒岩委員 そうですね。点からプロセスへ、質と量を豊かにする。

 更に聞きますけれども、司法制度改革審議会の意見書で、法科大学院をなぜ導入するかということについて最もうたわれている点がありますよね。そのくくりが、今おっしゃった質と量の確保なんですけれども、では、なぜその質と量を確保するためにロースクールが必要なのか。ロースクールを導入する前の時点で、やはりその養成制度に問題があった、問題があったから、新たな制度を導入し、改善していくんだ、こういう考え方が当たり前なんですが、一体何が問題だったと捉えていたのか。この点についても端的にお答えください。

伯井政府参考人 新しい法曹養成制度、平成十六年度以前のものが、かつての法曹養成制度、いわば、点、試験のみによる選抜であったものを、十六年度以降は、法科大学院、それから司法試験、司法修習というプロセスによる養成に変えていこうということで新制度へ移行されたというふうに認識しております。

黒岩委員 局長、申しわけないですけれども、それだとさっきの答弁の繰り返しですよ。意見書をもうちょっとよく読んでください。法科大学院をなぜ導入するのか。

 そこでは、やはり殊さら強調されているのが、当時の受験生が受験技術優先に走り過ぎているとうたわれていましたね。そして、大学だけの教育では事足りず、ダブルスクール化が進んでいるということで、こういった技術的なことを優先している、現実に、カードの論点整理とか、こういったような勉強に走っていたことも事実だと思いますけれども、このことを特段に打ち出しているわけですよ。

 これは皆さん、受験が激化しているとか、そして技術優先だというと、何かまずいなというのは一般的な耳当たりとしてはそうだと思うんですよ。でも、もうちょっと精緻に、これは法務省に聞くことになりますけれども、では仮に、受験技術が優先されたとして、ダブルスクール化が進んだとして、実際に、法曹の現場、実務上に何か弊害があったんですか。これは重要なんです。これについてお答えください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の司法制度改革審議会意見書におきましては、旧制度下における司法試験という点による選抜の方法について問題点が指摘されていたということで、それは委員御指摘のとおり、受験競争が厳しい状態にあって、受験者の受験技術優先の傾向が顕著でありますとか、学生が受験予備校に大幅に……(黒岩委員「部長、繰り返さなくていいので。実際の弊害を」と呼ぶ)はい。

 受験技術の優先の傾向あるいはダブルスクール化といった問題点が指摘されていたところでございまして、そのために、質、量ともに豊かな法曹を輩出するために、点による選抜ではなく、プロセスによる法曹養成制度が導入されたものと理解しております。

 こういった問題点が指摘されていたのは事実でございますけれども、旧制度のもとで司法試験に合格し、司法修習を経て輩出された実務法曹家の能力や質そのものが問題とされたわけではなく、その点が法曹養成制度導入の直接の理由とされたものではないというふうに理解しているところでございます。

黒岩委員 では聞きますけれども、今回、法曹養成制度のプロセスというのは、あくまでも、学部、試験、修習所、その学部と試験の間にロースクールを入れたわけですよね。プロセスです。でも、修習所を出た後の法曹の質にも何にも問題がないといったら、改革する必要がなかったんじゃありませんか。

 部長、これは大事な点ですから、お答えください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 新しい制度のもとでのプロセス、法科大学院を中核とする法曹養成制度が導入された後は、法曹有資格者の活動領域の拡大に向けた取組によりまして、裁判実務に限られない国内外の幅広い分野で活躍する弁護士等が増加したことや、いわゆる司法過疎地と呼ばれる地域の大幅な減少による国民の法律サービスへのアクセスの向上といった点におきまして大きな成果が上がっているものと認識しております。

 したがいまして、旧制度下で指摘された問題点は先ほど申し上げたとおりでございますが、新しい制度のもとで輩出された法曹につきましては、活動領域の拡大あるいは法律サービスへの国民のアクセスの向上といった大きな成果を上げているものと思っておりまして、制度改革を行った意味はあったのではないかというふうに考えているところでございます。

黒岩委員 部長、申しわけないけれども、それは論理のすりかえですよ。だって、意見書の中には、そんなことは何にも書いてないですよ。書いてないですよね。

 法科大学院の設置について、法曹の活動領域を広げることが目的なんて、何にも書いてないですよ。むしろ、現状の、ネガティブな、消極要因を挙げている。それは、先ほど申し上げた、大学、学部においての受験勉強の仕方という。ただ、受験勉強の仕方がどんなに問題があろうが、質が落ちていなければ、これ自体は法曹の実務においては何ら差しさわりがないと申し上げている。この認識は間違っていないですよね。

 では、念押しで聞きますけれども、これは大事なんですよ。私の言っているのは、実務の弊害というのは、本当に受験勉強で、皆さん、多分、耳当たりでいうと、何か技術だけやっているからコミュニケーション能力が低いとか、例えば被害者の喜びだとか悲しみだとかの理解が乏しいんじゃないかと。こういうことがあるなら、これは検証しやすいんですよ。では、ロースクールを導入したからこの弊害がなくなったかという。まさにKPIだ、事後検証が可能になる。そのことによって、例えば、予備試験を導入して、このことが問題なのか、これも検証可能になる。でも、今言った原因分析ができていなかったら、何か制度を入れたときに、ではこれが正しかったのか、それとも正しくなかったのか、このことが確認できないわけです。

 そこで、部長、とにかく質が落ちているという認識は全くなかったということでいいのかというのと、あともう一つ、ロースクールの出身者と予備試験の出身者、これは全くプロセスが違いますよ、予備試験出身者はロースクールを経ていないわけだから。ともすると、先ほど申し上げた、受験勉強の技術的な部分が優先されているかもしれない人たち、二点目ですけれども、この法曹に現場実務として優劣はないですね。これは確認ですからお答えください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、旧制度のもとで司法試験に合格し、司法修習を経て法曹実務家になった法曹につきまして、司法制度改革意見書の中に、その法曹実務家についての質を問題にする記載はないというふうに考えております。

 それから、法科大学院を中核とする法曹養成制度を導入後、法曹の能力の質がどうなったのかというような観点でございますけれども、なかなか制度導入の前後で法曹の能力や質そのものを相対として比較することにつきましては……(黒岩委員「違う違う、LS組と予備試験組との比較です」と呼ぶ)

 プロセス教育としての法科大学院の修了というものと同等の能力、学識を有しているかを見るのが予備試験でございますので、予備試験に合格した者が司法試験に合格し、その後司法修習を経て法曹実務家になった場合、法科大学院を卒業した実務法曹家、それから、予備試験を経て司法試験に合格して、司法修習を経て実務家になった者、能力の相対の比較というのはこれもまた難しいものでございますけれども、それは、実務家になってからの自己研さんでありますとか仕事の取組方、あるいは何を専門分野として仕事をしてきたかというのにもかかわりますので、一概に比較することは難しいと思いますけれども、予備試験合格資格を基礎として司法試験に合格し、その後実務家になったということにつきまして、それについて劣るというようなことはないのであろうというふうに考えております。

黒岩委員 答弁が苦しくなるのはわかるんですよ。

 これはちょっと、今、この流れの本質とはそれたところなんですけれども、やはり予備試験というものを入れたときで既に自己矛盾が存在しちゃったんですよね。だって、今までプロセスプロセスといって、あくまでも、学部、ロースクール、そして試験、司法修習、これがプロセスだといったときに、このプロセスをすぽっと抜けるショートカットの道をつくっちゃったわけだから。でも、今さらそのショートカットの道を誤ったとは言えないし、だから同等だと言うわけだけれども、でも、あくまでも、二年ないし三年ロースクールにいるのと予備試験組とでは、やはりプロセスに決定的な違いがあるわけですよ。

 済みません、これも重要なことなんだけれども、これは小出部長はわかっているから、答えとしてはそういう答えになっちゃうんですよ。うなずいていらっしゃいますけれども。

 これは、本当に、このロースクールというのは、出だしが失敗したものだから、その後、接ぎ木接ぎ木接ぎ木で、矛盾矛盾を繰り返している。柴山大臣も法曹だからよくわかっているし、法務委員会でもこれを議論してきたわけですから。早目に結論を言っておきますけれども、今回の3+2というのは更にそこに接ぎ木しようという話だから、僕は大問題だと思っています。

 そこで、私は、今の議論で明らかになったのは二つ。一つは、受験技術優先だった、平成の半ばまで。でも、かといって、そのことと、法曹実務での弊害がある、ないしは質が落ちるということに相当なる因果関係はないということがわかったと思います。

 裏を返せば、少なくとも司法制度改革審議会の意見書で最もロースクールを必要だと言っていた論拠があるわけだけれども、これはあくまでも受験までの、まさに縦割りですけれども、受験前までは文科省マターだ、受験後は法務省マターだ、これが連携していないものだから、あの意見書も変な意見書になっちゃうんだけれども、変だと言ったら怒られちゃうけれども、それは今言った受験までの問題点しか指摘していない。重要なことは、実際に法曹がどういう質のものが確保されているかということが重要なんだけれども、このことと今言った受験前の技術優先ということは因果関係がないということが、私は相当多くの方が理解できたと思います。

 そこで、私は、さっき質が落ちていないという話がありますけれども、これは、法曹現場の人から、ちょっと皮肉な言い方をしますけれども、やはり質が落ちたという声は、平成の十年ぐらいから聞こえてきていたんですよ。仮に落ちていたとしたら、これは私の仮説ですけれども、原因は、私は司法試験の評価方法にあると思っています。

 そこで、法務省、小出部長にお聞きしますが、司法試験というのは絶対評価ですか、相対評価ですか。オルタナティブで答えてください。

西山政府参考人 委員御指摘の絶対評価、相対評価の御趣旨について必ずしも明らかではないと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、司法試験は、法曹になろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定するものでございまして、あらかじめ決められた一定数を合格させるといった試験ではないということは承知しております。

黒岩委員 一定数を入学させることではないと。要は、定員を設定して、質は高かろうが低かろうが、その定員枠まで入れていくというような試験ではないということですよね。それは、いわゆる相対評価ではないと。裏を返せば、これは絶対評価なんですよ。まあいいんですよ、絶対評価と言いづらいのはわかるから。少なくとも相対評価じゃない。

 相対評価じゃないということは、これは改めてきちんとお答えいただきたいんですけれども、では、定数管理はしないということですね。司法試験は定数管理はしない、できないということでいいですね。

西山政府参考人 先ほど御答弁申し上げたとおり、判定はあくまで、法曹になろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうか、これを判定することに尽きるというふうに……(黒岩委員「だから、定数管理はしないんですね」と呼ぶ)その定数管理という御趣旨が、済みません……(黒岩委員「定数管理はしないんですね」と呼ぶ)はい、決められた一定数を合格させるという試験ではないということは申し上げられます。

黒岩委員 そこで、ちょっと矛盾をお聞きしたいんですけれども、平成十四年の閣議決定、この司法制度改革推進計画で、司法試験の合格者数を平成十四年に千二百人程度、十六年に千五百人程度に増加させるとし、この後お聞きしますよ、所要の措置を講ずるとしたんですよ。所要の措置というのは何ですか。

西山政府参考人 当時でございますと司法試験管理委員会でございますけれども、司法試験管理委員会において、適切に司法試験を実施するため、考査委員や試験場といった試験の実施体制を整備するほか、考査委員が適切な合格判断等を行い得るよう、考査委員に対する情報提供として閣議決定の内容等をお伝えするなど、司法試験管理委員会の庶務を適切に行うことが想定されていたものと承知いたしております。

 その上で、考査委員におかれましては、これらを踏まえて、実際の試験の結果に基づき、法曹になろうとする者に必要な学識及びその応用能力の有無の観点から合格者の判定を行っているものと承知しております。

黒岩委員 ですから、肝の部分は、この閣議決定、十四年には千二百人だ、そして十六年には千五百人だという、この目標を伝えるということですよね。そういうことなんですよ。

 大体、合否の判断というのは、考査委員が採点して、考査委員の合議で、最後は、当時は司法試験管理委員会と協議して決めるとあるわけですから、これは、いい意味でも若干悪い意味でも、ブラックボックスですから、わからぬわけですよ。だって、絶対基準だったら、何点ぐらいだということが示されて、そこにばあっと点数をつけていって、そこに入っているか入っていないかというような試験の採点方法をしているかどうかというのは、これは我々にはわからない、わかりようもない。

 そんな中で、今、千五百人とか千二百人と伝えたと。このことによって、合格の基準は低くなる、緩くなるということはあるんですか。

西山政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、法曹になろうとする者に必要な学識及びその能力の有無の観点から、考査委員におかれて合格者の判定を行っているということ以上に、どのような要素に基づいて合格を判定しているのかにつきましては、一つは、考査委員の合議によって判定するという決まりになっていること、それから、そもそもその合議については非公開とされていることから、私の方で御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

黒岩委員 答弁はそうなるしかないと思います。

 これはもう答弁を求めませんけれども、では、結果どうなったかといえば、見事に、平成十四年千百八十三人。前年九百九十人ですよ。約三百人アップだ、過去最大のアップですよ。平成十六年に関しては千四百八十三人、前年が千百七十人ですから、三百人以上、これもまた過去最大にアップで、千五百人程度をクリアしている。

 これは情況証拠でしかないけれども、これを見る限りは、まず目標を設定する、そして所要の措置をとると閣議決定している。この時点で多くの人は、定数管理できるんだな、定数管理ということは、すなわち相対評価もあるんだなと思うわけですよ。

 その前、平成元年に、そのころも、五百人合格と言われた時代から、これはちょうど平成十一年、千人合格しますけれども、わずか十年の間に、志願者数は約二万人から二万九千人、一・五倍しかふえていませんけれども、合格者数は二倍にふえている。すなわち、倍率が二倍ぐらいになっている。

 これは、その当時の学生もみんな知っていましたよ、近々二千人体制になる、どんどん司法試験に合格しやすくなると。そして、現場の実務では、千人ぐらいになったときから、どうも新卒の法曹資格者の質が落ちているという声が聞こえてきた。

 現実に、平成十六年から大阪圏内では、いわゆる軒弁、そして即独、法曹関係者ならよくわかりますよね、基本的にはいそ弁、居候弁護士で、その弁護士事務所から給料をもらって自分が鍛錬するというのが今までの形態だったけれども、結局、法律事務所に就職できないから、そこのデスクだけ借りて、自分で客をとってくる、これが軒弁ですよね。それすらできないから、自分のアパートに電話だけ引いて、即独立する即独、今までそんな言葉はなかったですよ、平成の半ばまで。平成十六年から大阪圏で、軒弁、即独がどんどんどんどん出てきた。東京は、おくれること平成十八年ぐらいから出てくるわけですよ。

 このころからベテラン弁護士事務所は、顧客に、弁護士を頼むときに、いそ弁の経験はありますかとまず聞きなさいと。なぜならば、いそ弁の経験があるということは法律事務所に採用された経験がある、経験がないということは法律事務所に採用すらされなかった、ここでその弁護士の能力をはかりなさい、こういう時代に入っちゃったんですよ、平成の半ばから。そういう意味で、私は、結果的に粗製乱造の時代だったと思いますよ。

 申し上げたいのは、今言った千人、千五百人体制、ロースクールが導入されてから二千人体制になった。その間、結果的に、軒弁、即独がどんとふえたわけですよ。先ほどから絶対評価かと聞いているのは、絶対評価で質が落ちていなければ、私は、こういう現象は非常に起こりづらいと思いますよ。断言はしませんけれどもね。でも、こういう現象が起きている限りは、そこからたどれば、やはり質が落ちてきたのではないか。この質が落ちたということに関しては、先ほど申し上げた、受験技術優先だということの因果関係は乏しいと言った。

 それで、結論ですけれども、結局は、そのときの粗製乱造が質を落としちゃったんですよ。だから、これが問題だと当時の司法制度改革審議会で捉えていたならば、受験までのインプットにロースクールを持ってくるという改革ではなくて、アウトプット、すなわち、司法試験の合格時点で絶対評価を徹底化させる、これでよかったんですよ。というのが私の今の論理立ての考えです。

 そう考えると、結局は、LSというのは何のためにあったんだということになっちゃいますけれどもね。完全にLSを否定はしませんよ。ただ、こういう流れであるということはしっかりと文科省も法務省も捉まえていただきたいと思います。それ抜きに、大臣、待ってください、指名しますから。

 では、済みません、時間がなくなってきたので、3+2の方に入りますよ。こういう問題があって、この3+2で一体何が起こるんだと。

 文科省にお聞きしますけれども、3+2の目的は三つですよね。ロースクールの教育の充実、そして経済的負担の軽減、時間短縮。二番、三番はともかく、教育の充実、これは具体的には何を指しますか。

伯井政府参考人 今回の3+2は、法学部教育における早期卒業を前提とした三年の法曹コースと……(黒岩委員「いいんです、そういうのは。教育の充実は一体何を指しますか」と呼ぶ)

 これは、従来どおり、プロセス養成を核とした教育の充実を図っていくということで、今回の法律案においても、法科大学院教育の体系的な実施などの教育の充実を求めているところでございます。

黒岩委員 済みません、改正連携法の四条、五条でしょう、局長。四条、五条ですよね。

伯井政府参考人 そのとおりでございまして、四条、五条で教育の充実を図るという規定を設けております。

黒岩委員 その四条ですと、学識の段階的、体系的に涵養すべきことをロースクールに義務づけますとあります。そして、五条では、教育課程や成績評価、修了認定の基準等々の、これは基準及び実施ですね、基準及び実施の公表を義務づけとあります。

 ではお聞きしますけれども、義務づけたといいますが、今までこれはやっていなかったんですか、ロースクールはこの二つを。

伯井政府参考人 もとより教育の充実、情報公表というのは行っておりましたけれども、そういう実施状況までを義務づけるというのは今回の法改正によるものでございます。

黒岩委員 だから、局長、私の聞いたことに答えてください。

 四条で言うところの、この段階的、体系的に涵養すべきことを、これは現状で義務づけたとはいえ、今時点までにこれはやっていたんですか、やっていなかったんですか。そして、修了認定の基準や実施を公表はしていなかったんですかと聞いているんですよ。

伯井政府参考人 まず、今回の立法事実として、先ほど来、合格率の低迷ということがございますので、司法試験で求められる資質、能力を確実に身につけられる教育を行うという意味で、公表を行っていた大学院もございますし、行っていなかったところもあるということで、今回義務づけを実施するというものでございます。

黒岩委員 これは、先ほどの、少なくとも、学術カリキュラム、四条の部分はどこもこんなものは実施していますよ。だって、これをやっていなかったら補助金対象から外されますもの。そして、修了認定の基準なんかどこも公表していますよ。強いて言うと、実施を公表していないぐらい。

 私の申し上げたいのは、皆さんお聞きになっておわかりだと思う、今までやってきたことを単に法律で義務づけただけですよ。今回の改正で、ロースクールの教育が何か新しく具体的に目覚ましく変わることなんかないですよ。これははっきり言っておきます。

 経済的な負担は、これは変わりません、二年間のロースクールですから。時間的短縮は、学部が三年になれば一年ある。私の言いたいのは、これは、制度の目的といいますか、制度の必要性という意味では、私は時間の短縮程度かなと思っております。

 本当は、教育の充実をあれだけ打ち出しているんだけれども、何度も言いますが、これは今までやってきただけのこと。それを法律に義務化として書いただけのこと。現実は何も変わらない。

 そこで、ではこの制度の妥当性についてどう考えるか。

 私、これは文科省に端的に聞きますけれども、このLC、ローコースができますよ、法曹コースが。では、この学部は人気が高まると思いますか。ニアリーイコールですけれども、偏差値が高くなると思いますか。

 あわせて聞きますけれども、これは予測でいいですよ、あわせて聞きますが、ここの卒業生は企業就職においては有利になると思いますか。すなわち、企業から、この三年制学部を出た人間は非常に必要とされると思いますか。

 この二点、お聞かせください。

伯井政府参考人 今回の法改正の目的は、3+2の標準的養成プロセスの導入と法科大学院教育の充実でございますので、今御指摘のようなことがかなうように取り組んでいきたいというふうに考えております。

 今御指摘された企業の評価あるいは法科大学院のさらなる入学充足状況の確保などにかなうように取り組んでいきたいというふうに……(黒岩委員「法科大学院の確保じゃなくて、学部自体の人気は高まりますかと聞いているんです」と呼ぶ)

 法学部自体は法曹養成課程のみとは限りませんので、それは一概には申し上げられませんが、この法曹養成コースの人気というのは高めていくよう取り組んでいく必要があると考えております。

黒岩委員 高まりますよ、間違いなく。これは皆さん、覚えておいてくださいね。

 三年で学士になれるんですよ。ましてや、司法試験に多く合格者を出している有名大学だったら、何々大学のLCコースといったら、これからもうブランド学部になりますからね。

 なおかつ、今言ったように、問題はこの次なんですよ。企業も見逃しませんよ。三年で卒業になるとなったら、今、経団連の自主規制がどうなっているかはともかくとして、本来だったら卒業の前年度、ともすればこのLC、ローコースの人は二年の終わりぐらいから企業が手をかけてきますからね。そうしたら、外資系なんかが、物すごい給料が高い。今、ロースクールを出た法曹資格者の一年目の平均年収は三百二十万ですから、これをはるかに、倍も三倍も出せる企業が手をつけたら、私は、このブランド学部を出た人間が、残念ながら、LSの特別選抜に行かずに、もう三年で、だって若いんですよ、二十一で就職できるんだから、企業はほっておかないですよ。私、こういう可能性もあると思っています、一つの可能性として。

 そうすると、本来は四年制である大学の例外をここまで認めたにもかかわらず、本来の法曹養成プロセスの本旨とは別の形が出てくるんじゃないかということが一点。

 逆に、これは文科省とかに聞いても、そのおそれはないんじゃないかという。おそれがない場合でもいいですよ。その場合は、今、この法曹コース、定員は千百人アルファですね。というのは、今、ロースクールの定員が二千三百人ですから、この約半分、千百人はこの特別選抜で入れましょうとなるわけだけれども、では、このスーパーエリート学部を出た人間が、ほとんど特別選抜に行きましたとしましょう。そうなると何が起こるか。

 今、既修コースで一年目の合格率、約五〇パーですよ。そうすると、今の既修コースよりもはるかに優秀な学生が集まる。さっき局長もおっしゃいましたね。人気が高くなるということは偏差値も高くなるんだから、人間性はともかく、学力水準の高い人がこのスーパーエリート学部に集まるわけですよ。この人がそのまま特別選抜に行ったら、千百人行ったら、七割ぐらい受かるでしょう、楽々。そうすると、千百人の七割ですから、約八百人、この枠で受かっちゃうんですよ。

 今、予備試験組が三百三十六人ですね。これはどんどん上がりますから、あと二、三年もすれば五百人になる。

 今、今回の3+2でも合格者は約千五百人と見ているわけだから、予備試験組で五百人通った、そして特別選抜枠、すなわちこのスーパーエリート法曹コースで八百人受かった、そうすると、他の一般選抜だと二百人になっちゃうんですよ。

 それで、問題は、今回の改革でも、未修者、多様な人材を採ろうと言うけれども、二百人のうち、どんなに多く見たって、半分は未修者は受かりませんからね。去年だけ見ても、未修者は三百五十人受かっている。これが仮に五十人、六十人になったら、未修者、そして一般選抜、誰も受けませんよ。こういう現象になるんじゃないですか。

 仮に千百人が今言った法曹コースの人間で埋まったとすれば、一般選抜、ましてや未修者の枠なんて、それならもう司法試験受からないよ、そんな苦労して金かけて法科大学院に行こうと思う人は、どんどん減ると思いませんか、局長。

伯井政府参考人 今、法科大学院の入学者選抜枠のお話をしていただきましたが、当然のことながら、未修者を対象とした開放性の枠というのも一定程度残し、また、未修者教育の充実ということにも意を用いてまいりたいというふうに考えております。

黒岩委員 司法試験の合格に未修者枠なんてないんですよ。ロースクールの合格には未修者枠があるけれども、でも、そこに入ったからといって、今の千五百人構想だったら、学識が優秀な人たちがみんな特別選抜に行っちゃうわけだから、しかも千百人という枠まであるわけだから、これは、三、四百人の枠なら、一般にもまだ回ってきますよ、司法試験の合格という枠が。

 さっきあえて確認したのは、ロースクールが物すごく教育が充実して、一般選抜でも未修者でもロースクールで物すごく学力が上がるというなら合格率も高まるかもしれない。でも、その可能性が低いという指摘をあえてしたのは、結局、ロースクールに入るときの学力の高い人間がばんばん司法試験に受かっちゃう、こういう可能性の高いシステムなんですよ。そうなると、どういうことが起こるかというと、今言った、一般の選抜を受けなくなる、未修者なんて寄りつかなくなる。そして、見えるのは、司法試験に受かるのは予備試験組と、この法曹コース組。どうですか。

 これは皮肉なことに、先ほど言った、受験の技術化を問題視しているけれども、予備試験組というのは、ともすると受験技術優先でやってきた可能性が高い。そして、スーパーエリート、何々学部LC出というのは、それも物すごい受験勉強をして学部に入って、三年間で詰め込んで、そしてLSでも司法試験科目以外のものをばあっと一年半で学んで、ともすれば夏に司法試験を受けるわけでしょう、在学中に。そうしたら、スーパー受験専門家ばかりが司法試験に受かる、こんな制度になりそうなんですよ。

 大臣、こんな制度の接ぎ木でよろしいと思いますか。

柴山国務大臣 まず、ずっと黒岩さん、いろんなことをおっしゃっているんだけれども、私自身のことについてまず言うと、もし旧司法試験がこのままずっと維持されていて、私、苦労して、何度も何度も実は受験して、ようやく司法試験に受かった人間なんですけれども、仮に私が旧制度だけでずっと、人数はもしかすると広がっていたかもしれませんけれども、それだけだったら、恐らくこの法曹資格というのは手に入れられなかったと思います。

 点だけのプロセスで選ぶということは、今おっしゃったように、受験テクニックに走る人たちがいるということのほかに、やはり問題が変われば合格者のメンバー、顔ぶれが大幅に違ってくる、当たり外れのある試験だということも一つの弊害として指摘されているということをまず申し上げたいというように思います。

 その上で、今おっしゃった未修者、あるいは社会的に恵まれない人、あるいは社会人のキャリアパスをどうやって法曹にうまくつなげていくかということは、これはおっしゃるとおり大変重要な課題でありまして、では予備試験というのは今のままでいいかということが、まさしく今委員の御指摘のとおり、非常に重要なこれからの検討課題になってくると思います。

 予備試験がこのままだったら、おっしゃるように、では何のために未修者コースにわざわざ行くんだという議論が当然出てくると思いますので、この予備試験の要件設定ですとかあるべき姿というのは、これは法務省がこれからメーンになって議論をするべきというふうに承知をしておりますけれども、しっかり、今委員から御指摘になられたことも含めて議論をしてほしいというふうに思います。

黒岩委員 最後に御指摘して終わりますけれども、私は、本当の抜本改革というんだったら、その前に、この3+2は、今言ったようなかなりいびつな形、ましてや文科行政を所管している大臣からすると、やはり大学が四年というのは意味があるんですよ、時間的に。これを、今例外で、飛び入学、それと早期卒業というのは年間百人ですよ。これが、今言ったように千百人規模になる。大学の本旨を曲げてまでこの制度は必要なのかということは考えていただきたい。私は反対です。

 そして、法曹養成制度の改革だったら……

亀岡委員長 質疑時間が終わっておりますので、簡潔にお願いします。

黒岩委員 私は、ロースクールの教育に自信があるんだったら、だったらもうロースクールに一本化、予備試験をなくすか、次には、もうロースクールをなくして、司法試験の受験資格を撤廃、ロースクールも廃止、この二つに一つぐらいの思い切った改革も考えていただきたい。このことを指摘して、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

亀岡委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの村上史好でございます。

 まず、法案の質疑に入る前に、今も、柴山大臣、お話しいただきましたが、大臣は弁護士でいらっしゃる。社会に出られてから弁護士になられたというふうに聞いておりますが、一九九〇年から司法制度改革がスタートをしまして、二〇〇四年には法科大学院が創設をされた、そして二〇〇六年には新しい司法制度が、改革、制度としてスタートをした、また二〇一一年には予備試験が導入されたという一連の司法制度改革について、大臣としてというよりも法曹人のお一人として、御見解を伺いたいと思います。

柴山国務大臣 あくまでみずからの経験ということも踏まえて申し上げさせていただくとすると、やはり旧司法試験時代に、本当にさまざまな弊害が山積をしておりました。先ほど申し上げたように、受験技術の、テクニック勉強、あるいは予備校のばっこ、こういうことが指摘をされておりましたし、また、先ほど申し上げたように、点での選抜ということになるものですから、かなり当たり外れというものも指摘をされておりました。

 こういうことから、プロセスでの選抜ということを司法制度改革の中でずっと進めてきたんですけれども、ただ、その過程において、将来の法律家に対する需要の見きわめというものが必ずしもうまくできていなかった。そして、ロースクール全体の負担も非常に大きいものになってしまった。

 こういうことから、当初予定していた状態とは違う状態が起きてしまったということについては真摯に反省をしなければいけない、このように考えております。

村上(史)委員 司法制度改革を評価しながらも、問題点もあるという御認識と受けとめまして、法案の質疑に入りたいと思いますが、その前に、この法律の目的は、何といっても、優秀な人材、有能な人材を法曹界に輩出をしていく、確保していく、これが大きな目的だと思うんです。ただ、法曹養成制度というのは、法科大学院だけが担っているわけではなくて、当然ですけれども、司法試験、司法修習というカテゴリーで、トータルとして法曹人を育成をしていくということになると思うんですけれども、ただ、法科大学は文科省、司法試験は法務省、司法修習は最高裁という形で、ばらばらになっております。

 その上で、今回のさまざまな問題を、法案の質疑を通して問題点を明らかにしていくためには、この委員会だけではとても議論を深めていくことはできないんじゃないか。再三、法務委員会との連合審査を要請をしております。なかなか開催をしていただけないんですけれども、ここは、委員長、ぜひ、この法案の中身、また充実した審議を確保するためにも、連合審査を開催することを強くお願いしたいと思います。

亀岡委員長 意見として伺っておきます。

村上(史)委員 十分受けとめていただきたいと思います。

 それでは、本案の質疑に入らせていただきたいと思いますけれども、今申し上げましたように、法科大学院の改革だけで諸問題が解決するというわけではないということを踏まえながら、まず、この法案の改正の目的がどのように達成をされていくのか、また法科大学院がどう変わっていくのか、そしてそれが司法改革にどのような影響を与えていくのか、その辺の見解を伺いたいと思います。

柴山国務大臣 法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念は堅持しつつ、今回の改正案においては、まず、法科大学院において涵養すべき学識等を具体的に規定するということに加えまして、先ほど来議論になっているように、法学部三年と法科大学院二年のルート、3+2を制度化するとともに、在学中の受験資格による司法試験受験を可能とすること、そして法務大臣と文部科学大臣の相互協議の規定も新設をいたしまして、法科大学院の定員管理の仕組みも設けることとしております。

 これによって法科大学院教育の充実も図られますし、3+2のプロセスが標準的に運用されることによって、在学中受験を行って、時間的、経済的負担も軽減をされ、そして合格に向けての予測可能性の高い法曹養成制度が実現するということになるかというように思います。

 これらによって一人でも多くの有為な若者が司法制度を支える法曹を目指すということにつながっていければというふうに思います。

村上(史)委員 今までも議論になったことを今大臣の方からお述べいただいたんですけれども、ただ、先ほどもいみじくも言われたように、法科大学院だけの問題ではない、さまざまな問題がございます。そういう問題を置き去りにしてこの法案だけを持ってきても、実のある対策にはならないんじゃないか、そういうように私は思っております。

 しかし、文科省として、この法案がどのような形で改善効果が期待されるのか、そして、法曹の総数、また司法試験合格者数や合格率の数値的な目標はあるのかどうか、その点について伺いたいと思います。

伯井政府参考人 まず、改善への期待でございます。

 法科大学院教育の充実につきましては、司法試験で問われる科目を、これは法律基本科目あるいは選択科目でございますが、司法試験に先立って学び、在学中に司法試験に合格できるような環境をしっかり整備していくということ、また、それとともに、より実務に即した、自身の関心に沿った内容の科目、展開・先端科目を学ぶということで、学生のニーズに基づき、多様な学修を可能としたいというふうに考えております。

 また、法務省と連携して、法科大学院の定員を管理していく、あるいは法科大学院教育と連携した司法試験のあり方についても、しっかりと、大学関係者、法曹実務家等を構成員とする会議体におきまして必要な検討がなされるというふうに考えております。

 数値目標でございますが、平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきまして、累積の合格率、法科大学院卒業生の累積合格率が、おおむね七割以上合格できるよう充実した教育を目指すということとされております。

 文部科学省において、法科大学院教育の充実を目指しながら、法科大学院への入学者数であったり、あるいは司法試験合格率といった数値目標をしっかり設定して、継続的に把握、検証を行っていきたいというふうに考えております。

村上(史)委員 これから数値目標は考えるということですか。

伯井政府参考人 現在も、今言った累積合格率おおむね七割以上という数値目標がございます。さらに、今回の法改正をお認めいただいて、法科大学院教育の充実を図るということを踏まえまして、今後、中教審において、更に数値目標を設定し、検証していきたいというふうに考えております。

村上(史)委員 そういう具体の目標がなければ、教育内容、あるいは定員、定数ということも算出できないんじゃないですか。

伯井政府参考人 法科大学院における教育につきましては、やはり司法試験のあり方とも密接に連携いたしますので、先ほど申しました、大学関係者や法曹実務家で構成する合議体において、法科大学院の定員管理のあり方も含めて必要な検討を行うということとしておりますし、また、そうした司法試験の合格を目指すという合格率の設定につきましても、新しい仕組みのもと、しっかりと数値目標を設定し、検証していくということでございます。

 それについては、やはり中教審等で、関係者も踏まえながら教育的な観点からもしっかり検討していきたいと考えております。

村上(史)委員 全く私の意図する答えではありませんけれども、それでは、今の法科大学院の現状について何点かお伺いをしたいと思います。

 御承知のとおり、平成十六年にこの制度を創設をされました。平成十七年度までに七十四校が開設をされ、当時、定員合計五千八百二十五名ということでありました。また、司法試験合格率七割から八割を想定ということでありましたけれども、今現在、五割にも満たない。二十八年度については二〇・六八%まで低下をしてきている。また、定員割れも常態化をしているという状況でございます。

 そういう面で、まず、現状の認識と分析をして対策を立てていかなければならないと思いますけれども、平成三十一年度の募集状況、定員、実入学者はどのようになっているのか、お尋ねします。

伯井政府参考人 平成三十一年度の法科大学院全体の入学定員は二千二百五十三人、実入学者数は一千八百六十二人、定員充足率は八二・六%となっております。

村上(史)委員 それでは、平成三十年の法科大学院からの司法試験合格者数並びに合格率は幾らですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 平成三十年の司法試験におきまして、法科大学院課程修了の資格に基づく受験者のうち、合格者数は千百八十九人、合格率は二四・七五%でございます。

村上(史)委員 本当にまだ二〇%台という状況が続いているわけであります。

 こういう状況の中で、やはり学生とすれば、当然、本来七割から八割合格するんだ、そういう夢を持って法科大学院に入った方が当時大変多かったと思いますが、その実態がそうではないというところから、定員が減少し、学生も減ってきたというふうに分析すべきだと思いますが、その点、見解はいかがですか。

伯井政府参考人 そこは御指摘のとおりでございまして、三十一年度の募集継続をしている法科大学院三十六校のうち約八割の二十九校が入学定員を充足していないという状況でございます。

 この定員割れを招いた原因としては、今まさに御指摘いただいた、法科大学院修了者の司法試験合格率が低迷しているということがございます。また、法学部学生に対するアンケート調査結果におきましては、法曹資格取得までに時間的、経済的負担がかかるということが法曹を志望する上での大きな不安、迷いの一つというふうに挙げられておりまして、これらの状況が解決すべき大きな課題であるというふうに認識し、今回の法制度改革を行うというものでございます。

村上(史)委員 ですから、そういう認識はもうちゃんとおありなんだから、それに対する対策というのは、まさに、教育の内容を充実をさせるとともに、合格率をいかに上げていくかということがやはり必要なんですよね。

 余りきれいな言葉ばかりじゃなくて、私は、法科大学院は存続してやるべきだと思っております。法曹人材を担うプロセス教育の中で重要な位置を占めているということを前提にお話をさせていただいています。だからこそ、この中身についてもっと真剣に考えていく必要があるんじゃないか、問題点はどんどん明らかにしていくべきではないか、そのことを強く申し上げたいと思います。

 そういう中で、一つ大きな問題点として、法科大学院、発足をして十五年ほどになりますけれども、この間に法科大学院の間の格差がどんどん大きくなってきている、こういう認識はあるでしょうか。

柴山国務大臣 はい、おっしゃるとおりでございます。

 例えば、平成三十年度の合格率、平成三十一年度募集継続校三十六校に限って言うと、最高で一橋大学が六〇%の合格率、最低は金沢大学で四%ということになっております。

 つまり、各法科大学院において、今おっしゃったように、修了者が七割から八割司法試験に合格できるような教育をしっかりと行うということが大事であることから、定員管理あるいはカリキュラムの見直しなどを行って、予測可能性の高い法曹養成制度をどの法科大学院でも実現するということが重要であると考えております。

村上(史)委員 なかなか、こういう問題、一長一短で、これが問題だから、これがこれによって解決するという類いの問題ではありませんけれども、しかし、さまざまな問題点が背景にあると思います。

 先ほども議論で出ておりましたけれども、法科大学院の偏在という問題もあります。それはなぜかといえば、平成二十四年度から、補助金について、司法試験合格状況を勘案する、あるいは定員充足率を勘案する、また、平成二十七年度からは加算プログラムが実施をされて、なかなか補助金が受けられない大学が続出したということで、平成二十八年度には学生募集停止の表明が相次いできた。

 こういう状況を文部科学省としてはどのようにお考えですか。

柴山国務大臣 御指摘のとおり、制度発足時に、当初は、やはり法曹というのは大変注目をされる職業でもありましたし、新しい制度の発足ということもありましたので、たくさんの法科大学院の設置希望があり、そしてその参入を本当に広く認めた結果によって、数多くの法科大学院が乱立をし、過大な定員規模となり、そして、司法試験合格者数についても、全体としての法曹への需要が当初見込んでいたほどのものではなかったということもあって、その結果、法科大学院修了者の合格率が全体として低迷するということになってしまったかと思います。

 そのような中で、今御指摘のような法科大学院ごとの合格率の格差というものが行われてきている中で、文部科学省として、そこに対するやはり支援のあり方ということを、今後またしっかりと検討し直すということになろうかというように思います。

 現時点においては、おっしゃるように、引き続き法曹養成を担うことが困難であるという自主的な判断が行われて、学生募集停止を幾つか決定をされてしまっている、そういうことも踏まえて、きちんと支援のあり方について今後検討しなくてはいけないということだと思います。

村上(史)委員 大臣、率直に、見込みを間違えたということ、そういう答弁だと理解してよろしいんですね。

 今も、そういう認識のもとに検討を今後重ねていくということですけれども、だったらこの法案は一体どういうものなんだということになりませんか。そういう具体的なこれからの対策は今後考えます、法案だけは先に出します、これでは主客転倒じゃないですか。

柴山国務大臣 今おっしゃるとおり、今回の法案だけで全ての今我々が直面をしている法曹養成についての課題が解決できるということは思ってはおりません。

 ただ、先ほど来お話があるとおり、結局、時間的あるいは費用的な負担が極めて大きいということから法科大学院が敬遠されがちだということは、これはやはり何としても改善しなければいけないという認識のもと、それからまた、今後の法務省と文部科学省との必要な検討をしっかりと連携をとってやっていくという観点から、今必要とされる改革はここでしっかりと行っていかなければいけないということだと思います。

村上(史)委員 時間の方も迫ってまいりましたので、次の問題に移りたいと思います。

 先ほど黒岩議員も再三指摘をされておられましたけれども、予備試験の問題、これは当然問われなければならないと思います。

 この予備試験を導入した経緯というのは、法科大学院に行かない方でも、他学部あるいは社会人の方でも司法試験が受けられるようにということが眼目だったと思いますけれども、それと同時に、平成十八年の司法制度審議会の意見書にも述べられておりますけれども、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねることのないよう配慮しつつというふうに指摘をされております。

 しかし、現実には、予備試験で合格される方が一番多いという状況になっておりますし、また、法科大学院から受験をして、予備試験を受けて合格をされる方もふえている。そういうことになりますと、本来の法科大学院の趣旨からは大きく乖離した現状が見えてくるのではないでしょうか。その点についての見解を伺いたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、予備試験は、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由によりまして、法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための道を確保するものでございます。

 この予備試験制度につきましては、平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきまして、出願時の申告によれば、毎年の予備試験の受験者の過半数を占める無職、会社員、公務員等といった者については法科大学院に進学できない者あるいは法科大学院を経由しない者である可能性が認められ、予備試験がこれらの者に法曹資格取得のための道を確保するという本来の制度趣旨に沿った機能を果たしていると考えられるという記載もございます一方、予備試験受験者の半数近くを法科大学院や大学生が占める上、予備試験合格者の多くが法科大学院在学中の者であるなど、予備試験の制度創設の趣旨と現在の利用状況は乖離しているという指摘もなされているところでございます。

村上(史)委員 この現状について文科省はどういう見解ですか。

柴山国務大臣 今、法務省からございましたとおり、本来であれば、社会的事情や実社会で十分な経験を積んでいるということの理由によって法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための機会を確保するということが本来の趣旨であったにもかかわらず、この予備試験合格者のうち、出願時に大学学部又は法科大学院に在学中の者が七割以上であるということで、これは、法科大学院改革はもちろんしっかりと進めることが最優先ですけれども、この予備試験のあり方をしっかりと見直していくということが、法務省において必要な検討が行われるべきと考えますけれども、極めて重要なポイントであるというふうに考えます。

村上(史)委員 まさに、おっしゃるとおり、これは大変重要なポイントでありまして、ですからこそ連合審査を要求していたわけですよ。

 法務省にお伺いをいたします。

 今の予備試験のあり方について改革の必要性を感じておられるのか、その点について伺います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきましては、予備試験のあり方につきまして、「平成三十年度までに行われる法科大学院の集中的改革の進捗状況に合わせて、法務省において、予備試験の本来の趣旨に沿った者の受験を制約することなく、かつ、予備試験が法曹養成制度の理念を阻害することがないよう、必要な制度的措置を講ずることを検討する。」とされております。

 法務省といたしましては、喫緊の課題でございます法曹志願者の回復に向けて、まずは、法科大学院改革を中心とする今般の法曹養成制度改革をしっかりと進めることが最優先であるというふうに考えておりますが、予備試験のあり方については、今般のこの制度改革の実施状況等を踏まえて、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

村上(史)委員 必要な検討という、具体的なめどは立てておられるんですか、将来的にどういう形に持っていきたいと。その趣旨を大事にするというのは当たり前のことなんですけれども、現実に、法科大学院との、競合と言ったらおかしいですけれども、それぞれが牽制をし合っているようなところも見受けられます。法科大学院の本来のあり方を追求するためにも、予備試験のあり方というのは根本的に問い直さなければならないと思いますけれども、その見解を伺いたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 現時点におきまして、先ほど申し上げました予備試験のあり方についての検討の方向性のようなものをお示しすることは困難でございます。

 今般の法科大学院改革を中心とする法曹養成制度改革をしっかりと進め、その制度改革の実施状況等を十分に配慮し、それを踏まえた形でどのような検討が必要になってくるのか、検討してまいりたいというふうに考えております。

村上(史)委員 時間も参りましたので、最後に、私の言いたいことを述べさせていただきたいと思いますが、現状の予備試験が、やはり法科大学院の存在意義を脅かしていると思います。また、骨抜きにしているのではないか、そういう危惧を持っております。ですから、今のこの法案の中身ではとても、改革、今問題となっている人材の確保、また、知見を持った、教養を持った人材を輩出する、そして法曹界にどんどん優秀な人材を送り出していくという法科大学の本来の姿に戻すためにも、やはり今申し上げた予備試験のあり方というのは根本的に問い直すべきだ、そのことを強く訴えまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、中川正春君。

中川委員 引き続き議論をしていきたいというふうに思います。

 十五年ほど前ですか、この議論が始まって、法科大学院、これを設置していくということになったわけですけれども、それ以降、これだけ混乱をして、かつ、最終的に出口が見えないというか、今回もこうした改正をしたいということなんですが、これがうまくいくかどうかということについてなかなかはっきりとした展望が出てこないということ、なぜこんなことになってきたのかということを一つは振り返って考えてみたいと思うんです。

 それは、私から見れば、文科省がしっかり腹を据えてロースクールというのをどう位置づけるかということをちゃんと主張していないからだというふうに思うんです。言いかえれば、法務省のサイド、特に司法試験を中心にした法曹人材をつくっていく過程のあり方というものに対して、いわゆる議論が巻き込まれているというか、その都度その都度、向こうの都合のいいように持っていかれてしまって、教育そのもののあり方、あるいは人材を育てていくということについてのあり方そのものが崩されたまま、中途半端にここまで来てしまったということ、ここに原因があるんだというふうに私は見ています。

 その上で、では、最終的に文科省がどこで頑張ってどのようなシステムをつくっていったらいいのかということ、これが問われるんですけれども、それを聞きたくてそれぞれ質問をするたびに、これから議論をしていきます、これからいろいろなことを考えていきますということしか出てこない。これももう一つ問題なんですよ。この機会に、やはり、最終的に文科省としてはどういう形でロースクールを位置づけていくかということについては、しっかり展望を持って議論をしないと、いつまでたってもこの状況は続いていくんだろうというふうに思います。

 最終的な結論から言うとこういうことなんですが、その上で、私なりにどのように位置づけていくかということ、まずそこから先にお話をしたいと思うんです。

 法曹界の人材の量と質、これをしっかり教育という分野の中で確立をしていくということであるとすれば、まず、量については、司法試験の合格者に絞り込むのではなくて、法科大学院の定員とそれから合格者数、これを勘案して、今、法曹界の必要とする人材量というのが現状千五百人を展望しているのであれば、一〇〇%に限りなく法科大学院の定員を近づけていくということ。だから、司法試験で絞るんじゃなくて、法科大学院というものの入り口で、ここで絞るということが大事なんだろうというふうに思います。

 それから、その前提は何かといったら、さっきから話が出ています、予備試験は廃止、司法試験の受験資格というのを、JD、法曹博士ですか、ロースクールの卒業資格の取得者としていくということ。ここもはっきりしていかなきゃいけないんだというふうに思うんです。

 それから三番目は、法科大学院の授業料の無償化を目指さなきゃいけないというふうに思います。時間的にロスがあるとか、あるいはそこにコストがかかるとかというのが大きな理由として今回の改正の中に挙げてありましたけれども、それを短くするというんじゃなくて、その質を保証しながら、時間的にも保証しながら、そこにコストがかからない形の一つの、いわば目標を立てていくということが必要なんだろうと。授業料無償化を目指した上で、奨学金というのは、法科大学院協会の方から出ている数字でいきますと、五年後には、弁護士、弁護士というか法曹界の平均の所得というのは一千万を超えてくるというような形で発表されているんです。だからこそ、これは学資ローンでいいんだと。いわゆる所得連動型の奨学金とすれば、それでリカレントも含めて将来の展望が立ってくる、そういうことなんだと思うんです。

 四番目には、法学部の未修者であるとかあるいはリカレント、これに対してしっかり窓口をつくっておくということ。その窓口をつくるということの中には、さっき申し上げたような形のもの、いわゆるコスト的にも我々が社会全体でこの人材をつくっていくよという体制を文科省としてつくるよという意思を持つということ、これが必要だと思うんです。

 時間的な経過については、時間がロスだというのはこれまでいろいろなアンケートの中で大きく出ていた。いわゆる時間がかかるということについては出ていたということなんですが。それはどういう心理かというと、時間をかけて確実に司法試験が通るんだったらいいけれども、時間をかけたあげく、それが通らないということになると、この時間というのは何なんだろう、余りにも長過ぎるじゃないかというその心理が、この時間的な経過を言っているんですよ。

 だけれども、法科大学院で一つぴしっとそこのところの選択肢をつくって、二年なり三年なりという形で勝負していって、その合格率は確実に一〇〇%に近い形のものになる、そういうモデルへ向かっていくということ。これを文科省の意思として示せば、そこの中にこの時間軸の受けとめ方というのも違ったイメージが出てくるんだろうというふうに思います。

 ということをまず冒頭申し上げたいんですけれども、どうですか、大臣、そんなチャレンジはしませんか。

柴山国務大臣 かつて旧司法試験改革を行うときに、まさしく今、中川委員が御指摘になられたような、端的に言うと、アメリカでやっているようなロースクールの導入によって、要するに、アメリカには予備試験なんて制度はありませんから、司法試験を廃止して、アメリカのようなロースクールを導入して、だけれども費用負担というものを減らそうという議論はなされたんですけれども、ただ、まず日本において、アメリカのようにロースクールを卒業したら誰でも弁護士になれるという仕組みをつくっていいのか。

 さっき御指摘になられたように、例えば今、司法試験を受けて、一橋大学のロースクールの合格者が六〇%合格、だけれども金沢大学は残念なことに今四%しか合格していない。しかし、全国各地で乱立というか、どこでもできたロースクールで、標準カリキュラムをつくるにしても、いろいろな、キックオフをするに当たって格差が生まれて、いや、資格は取らせて、あとはもう自由競争の世界だよ、質は自由競争、淘汰の中で確保されればいいんだよというようなそういう仕組みが果たしてたえられるのかということを、今の我々の日本における法曹あるいは裁判官に対する信頼ということも踏まえて考えた場合に、そこはやはりきちんとしたセーフティーネットとしての二段階における質の確保というものが必要なんじゃないかという法務省の指摘は、これはこれでやはり、少なくとも制度のキックオフとしては、私は十分に理屈のあるものではなかったのかなというようにも考えておりました。

 その過程の中から、両者のハイブリッドとして、二階建てというような意見もありましたけれども、新しくできる法科大学院においては、厳格な修了認定をきちんと行った上で、卒業生の七割から八割が合格できる仕組みをつくる、あくまでも予備試験というのは、先ほど来お話があったように、そこに行くだけの時間的、費用的な負担ができない方々の救済策だという当初の制度設計として船出したわけなんですけれども、その後、先ほど来質疑があるように、そういった当初の目的や理念というものが実際にそういう形で展開してこなかったということについては真摯に反省をし、ただ、プロセスとしての法曹養成ということはきちんと維持しつつ改革を行うというのが今回の改革であるということは御理解をいただきたいと思います。

中川委員 そのときに議論が抜けているのは、予備試験というのはどのような準備形態をもって受けられるのかということですよね。

 例えば、大学在学中、大学の授業だけで予備試験が受かるということでもないんだろうし、あるいは、未修の人たちあるいは社会に一旦出た人たちも、働きながら塗炭の苦しみの中でというか、塗炭の勉学の中でやっているんだけれども、それを支えているのは予備校なんです。予備校で人材を養成して、それで、この試験に合格をした人たちが法曹界へ入っていく。そういう意味では、実は、ロースクールと予備校というのは競合関係にあるんじゃないか。恐らく、ロースクールに入った人たちも、この予備校にダブルスクールで通いながら行っている。

 だから、考え方として整理しなきゃいけないのは、司法試験を通るということと、学校でもって、いわゆるロースクールでもって人材を鍛えるということ、これは違うんだということなんです。

 そういうふうに教育の分野として捉えないと、学校で鍛えたということが前提になって法曹人材になっていくんだ、この鍛えがない中で、いわゆるロースクールのかわりに予備校がそれを担って、そして今、司法試験に入っていくというこのシステムに対して、やはり、大臣、文科大臣としてはしっかり物を言わなきゃいけないでしょう。そこが全く文部科学省の方から出てこないからこんな話になってしまうということなんですよ。それを、いや、法務省の言うことも一理あるのでこの予備校もいいんじゃないと言っているのと一緒ですよ、今の話は。ということになりませんか。

柴山国務大臣 大変重い御指摘だというように思います。

 ただ、予備試験は予備試験で、今委員が御指摘のような問題点がある一方で、ロースクール、法科大学院は法科大学院で、先ほど来いろいろ御指摘いただいているような質、負担、それから期間、それぞれ問題がいろいろと出てきているのも事実なわけですから、我々でできる改革、つまり、法科大学院を中心とした、プロセスの、要は中核となるべき法科大学院の改革はここでしっかりと、この集中検討期間の最終年であることしできちんと決着をつける。

 そして、今委員がまさしく御指摘があったような、当初からすると極めておかしな制度設計になってしまっている予備試験のあり方をどうするかということについては、これはもちろん我々としてもしっかり関心を持って注視をしていきたいと思いますけれども、法務省を中心として、しっかりとそこは迅速に決着をしてほしいというふうに思います。

中川委員 だから、何回も言うようですけれども、文科省の中で解決できる話じゃないんですよね。法務省のつくったシステムに文科省はかき回されているんです、これは。だから、そこに対してちゃんと、大臣なりのビジョンと、それから、我々はこうした教育システムをつくっていきたいんだから逆に法務省の方でやり方を考えろというような話を持っていかないと、いつまでたってもこれは続くというふうに私は思います。そこのところを、実態として、文科省、これはあらゆる分野、この分野だけじゃないんです。特区で問題になったあの獣医科の部分でもそうです。あれも、文科省がしっかり議論を通していけばあんなことにはならなかったというふうに思うんですが、そういうあらゆる分野で教育としての主張というのが足りないというか、腹が据わっていないというか、そんなふうに感じますので、そこのところを改めて指摘をしておきたいと思うんです。

 大臣、どうですか。文科省として、いわゆる司法試験の模擬試験、こんな制度はやめようと……(発言する者あり)予備試験。予備試験はやめようというふうな形の意思表示といいますか、文科省としてはそういうふうに考えているというふうなことを大臣として発出しませんか。

柴山国務大臣 決して法務省の言いなりになろうなどとは思っていないわけであります。ただ、予備試験は、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由によって、法科大学院を経由しない方であっても法曹資格取得のための道を確保するという制度でありまして、そういった趣旨を踏まえれば、制度自体不必要だとは私は言えないというように考えております。

 いずれにいたしましても、文科省として今回の法科大学院改革をしっかりと進めていけば、今御指摘になったような、予備校に行って予備試験だという、一部は、予備試験は模擬試験だ、そう言う人も、さっき委員も言い間違えておられましたけれども、実際にそういうようなこともやゆされるのも事実でありますので、その実施状況を踏まえてしっかりと注視をしていきたいというように考えます。

中川委員 くどいようですけれども、予備試験、ふえているんですよね、割合が。かつ、法科大学院で予備試験合格というのが二二%に今なっているということですよね。大学レベルでも、いわゆるもとに戻ってきているというか、そういう傾向があるだけに、そんな曖昧なことを言っているときではないというふうに思います。今回こうして期限を縮めても、恐らく同じような傾向というのは続くんだろうというふうに思いますし、またもとに戻っていって、結局は予備校という形態の司法試験ということにまた戻っていってしまうということになるんじゃないかという懸念を改めて言っておきたいというふうに思います。

 あと、経済的な部分なんですが、さっき私が申し上げたとおり、いろいろな工夫が必要なんだろうというふうに思うんですよ。

 司法修習生については、二年前から、月額十三・五万円、プラス住宅給付ですか、これは三・五万円ということになりました。

 もう一回言いますけれども、授業料の無償化と、それからもう一つは、これは今貸与じゃなくて給付型の奨学金も入っていますけれども、その部分、ひっくり返したら、授業料の無償化にそれを持っていって、かつ、給付をやめて、貸与型の、いわゆる所得連動型へ向いて制度を組みかえていくことによって、リカレントに対してもそれなりの対応ができるというふうに私は考えるんですけれども、そんなふうな持っていき方というのは、文科省のこれからの想定の中にはありませんか。

柴山国務大臣 先ほどから、給付型奨学金、授業料減免というお話をいただいております。

 ちなみに、今法案の御審議をいただいている大学等修学支援法については、これは大学院は対象となっておりませんので、今回議論する給付型奨学金や授業料減免というのは、これはそういう制度とは別の、日本学生支援機構の貸与型奨学金等の経済的支援だというふうに思います。

 直近の平成二十九年度のデータによりますと、法科大学院在籍者四千七百五十五人のうち四八・五%、実に半数近くに当たる二千三百五人が、日本学生支援機構の貸与型奨学金ですとか、あるいは大学が独自に実施する給付型奨学金や授業料減免、こういった経済的支援を受けている。そしてまた、このうち全体の三四・一%に当たる千六百二十人が、返還が不要の給付型奨学金や授業料減免を受けているということですので、確かに委員おっしゃるとおり、そこは非常に重たいのかなというようには思いますが、今お話があったような、その後の修習生の給費制も復活をさせていただきましたし、また、貸与型奨学金を受けていた学生のうち二百四十三人が、この日本学生支援機構の返還免除の、これは全額と半額ありますけれども、対象ともなっております。

 このように、法科大学院においては現在でもやはりある程度しっかりとした経済的支援のメニューが用意をされておりまして、また、ほかの大学院と比較をいたしましても、例えば修士課程の無利子奨学金貸与率、一般の修士三〇・五%に対して法科大学院は三二・五%というように、多くの学生が支援の対象というようになっているということでありますので。

 ただ、今後とも、そういったことは踏まえつつ、授業料減免や奨学金の充実ということにはしっかりと努めてまいりたいというように考えます。

中川委員 先ほども議論が出ていましたけれども、ロースクールについて選択肢の一つとしている人たちの不安や迷いというのでアンケートが出ていまして、その中に、二つの要因ですよと、皆さんも、文科省のサイドもそういう見方をして、ロースクールについて時間を短縮したいという理由にしているんですが、そのうちの一つが経済的な負担が大きいということ、ここなんですよね。だから、幾らそういう形で対策を考えているといっても、依然として、ここについての経済的な負担というのはどっしりと皆の心の中にあるということだと思うんです。

 恐らく法曹界もそうした意味合いでの問題点というのはしっかり持っていると思うので、と同時に、さっき申し上げたように、法科大学院協会の方で出してきた、ネットの、この協会の会長挨拶の中に出てきているんですけれども、弁護士五年目の年収が一千八十一万円ということなんですね。それから、恐らくそうした意味での経済的なチャンスというのがこの世界には広がっているということもあるんだろうと思う。それだけに、その分野から文科省としてファンドを募って、奨学金の、いわゆる形成というか、ファンド形成を持っていくことが、私はできるんじゃないのか、やるべきなんじゃないのかと。これから人材を育てていくということであるとすれば、そうした意気込みというのがやはり業界の中にもあるんだと私は信じたいんですよ。

 そういうことをそれぞれが努力をして、そして、全体のシステムを組み立てていく。そういうプロセスというのが大事だというんだったら、そうした意味でのプロセスというのを、しっかり文科省が企画をして、それを組み立てるということ、そんな発想が必要だと思うんです。どうでしょうか。

柴山国務大臣 貴重な御指摘ですので、よく検討させていただきたいと思います。

中川委員 いろいろ言いましたけれども、まず、文科省としての意思というか、私たちはこうしていきたいんだ、将来このシステムをこういうふうに組んでいきたいんだということを早いところ出してもらわないと、そのまま進んでいけば、また混乱が続き、そして中途半端が続き、この業界についても本来の意味の人が育っていくということにならない、そういう懸念を持っています。そのことを指摘させていただいて、質問を終わります。

亀岡委員長 次に、城井崇君。

城井委員 国民民主党の城井崇です。

 本日も、閣法並びに国民民主党提出の対案について質問をさせていただく機会をいただきました。まことにありがとうございます。

 きょうは、閣法については、そして対案についても、文部科学大臣と、そして法務副大臣にお越しいただきました。よろしくお願いいたします。提出者の階議員もよろしくお願いいたします。

 まず、このたび国民民主党から提出をさせていただきました対案につきまして、提出者に、その趣旨を含めて何点か確認からというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 まず、この国民民主党提出の法律案の提出の趣旨そして背景について御説明願いたいと思います。

階議員 提出者からお答えいたします。

 現行の司法試験は、受験資格を法科大学院修了者及び司法試験予備試験合格者に限定しているために、法曹資格を得るまでの時間的、経済的負担が大きくなっています。その結果、法曹志願者がずっと減少してきておりまして、ひところの十分の一ということになっております。

 かつ、量の減少とともに質の低下ということも言われておりまして、きのうも申し上げましたけれども、上位のロースクール校でも質の低下が著しい、また、弁護士になった方の質の低下ということも私は伺っております。

 そういう、すぐれた資質等を有する法曹の確保が困難となっている中で、これまで、平成三十年度までの間は集中改革期間ということで政府も取り組んできたわけですけれども、なお法曹志願者数の減少という傾向には歯どめがかかっておりません。ついに、ことしは司法試験の受験者が五千人を切っているといったような状況でございます。

 本法案は、司法試験を広く受験しやすいものとすることによって、法曹の量的、質的拡大、これを図るということで、司法試験の受験資格、方法及び試験科目並びに司法修習の期間の見直しや弁護士への研修機会の提供等の措置を講じようとするものであります。

 以上です。

城井委員 現場の声を踏まえて、具体的な改善提案ということでございました。

 続いて、法案の中身についてお伺いしたいと思います。

 まず、司法試験法の一部改正についての提案を今回対案の中では述べているわけでありますが、この試験制度全体の部分について、現行の司法試験制度については、まず、どのように評価をしているのか。そして、それを踏まえて、今回の国民民主党提出の対案、この本法案によりまして司法試験制度はどのように変わっていくのか、提出者に伺います。

階議員 現行の司法試験制度ですけれども、まず、受験資格の制限ということは先ほど申し上げましたとおりです。それに加えまして、受験期間の制限というのもあります。法科大学院の修了又は司法試験予備試験の合格から五年間に限って受験を認めるというものであります。こうした制約を撤廃しようというのが、我々の提案している法案の眼目でございます。

 また、これに伴いまして、当然のことながら、受験資格を与えるための司法試験の予備試験は必要がないということで、廃止することができます。

 また、司法試験と法科大学院の教育等との有機的連携に関する規定につきましても、これは、法科大学院に司法試験の受験資格を与えることを前提とするものなので、これも削除することができるということになります。

 また、試験方法ということでいえば、今現在の司法試験には、口述試験、これは昔はあったわけですけれども、口述試験がございません。それを復活しまして、筆記試験の合格者については、公法系、民事系、刑事系の三科目から成る口述試験で、口頭での応用力あるいは知識の程度、こういったものもしっかり検証できるようにしております。

 さらに、筆記試験についても、今の筆記試験の科目を変更しております。短答試験については、幅広く基本的な知識が身についているかを見るということで、現行の憲法、民法、刑法の三科目のほか、行政法、商法、民事訴訟法及び刑事訴訟法の四科目を加えた七科目とするということ、それから論文式試験については、現行が、公法系、民事系、刑事系及び選択科目の四科目であるのを変更して、短答式試験と同じ七科目に法律実務基礎科目を加えた計八科目としつつ、法科大学院修了者については、法律実務基礎科目については身についているだろうということで、法律実務基礎科目については免除することとしております。

 このほか、論文式試験は、短答式試験の合格者について行うこと、あるいは筆記試験の合格者は、その申請により次回の司法試験の筆記試験を免除することも定めております。

 以上です。

城井委員 今、答弁の中でも言及をいただきましたが、きょうの法案質疑でも焦点の一つになっておりますのが、いわゆる司法試験の予備試験であります。

 この国民民主党提出の対案の中では、司法試験予備試験を廃止するということを盛り込んでおるということが先ほどの答弁でもございましたけれども、これを廃止することとしているのはなぜかという点をお答えいただけますでしょうか。

階議員 司法試験の予備試験が法曹志願者の裾野を広げる上で果たしてきた役割というのは、私は大きかったと思います。法科大学院の志願者がどんどん減る中で、かわりに予備試験を受ける人はふえてきたといった傾向もあったと思います。

 それはなぜかといえば、やはり、自分の都合で、経済的なあるいは時間的な都合で法科大学院には行けないけれども法曹を目指したいという方にとって、この予備試験というのが機能してきたということであります。

 ただ、この予備試験というのは、受験資格を得ることが目的だったわけでして、私どもの案ですと、予備試験を経ずとも自由に司法試験を受けられるということですから、この予備試験を廃止して、そして幅広い方々に司法試験を受けていただこうということで、今回の提案に至りました。

城井委員 多様性の確保を別の形でという提案だったかと思います。

 続いて、司法修習についても言及がございます。その点についてお伺いしたいと思います。

 この対案、本法案によりまして司法修習制度はどのように変わっていくか、また、この制度の変更に当たって、現行の司法修習制度についてどのように評価をしているか、この二点についてお答えいただけますでしょうか。

階議員 司法修習については、現状は一年間で行われておりますが、私どもの提案では、これを二カ月延長しましょうということで、一年二カ月間に期間を延ばすということにしております。

 その趣旨でございますけれども、プロセスとしての法曹養成と言われておりますが、やはりなかなか一年で実務に必要な能力を身につけるということが実際には難しいということが出てきたわけです。これは、本来であれば法科大学院段階で身につけるべき実務の教育が、実際には法科大学院がそれに値するような教育がなかなかできにくかったということで、司法修習にしわ寄せといいますか、司法修習の方でよりしっかりとした教育を受けさせないと、実務家として必要な知識や能力が身につかないということなんだと思います。

 そこで、我々は、そのような実態に鑑みて、司法修習の期間を二カ月間延ばしてしっかりと学んでいただこう、また、これをすることによって、これは法律事項ではありませんが、就職の時期についても、今は一月ぐらいに弁護士になっているわけですけれども、二カ月延ばすことによって、一般の社会人と同じように四月に就職ができるということになりますと、採用側の会社あるいは組織、そうしたところも採用がしやすくなるのではないかということで、このような変更を加えているものでございます。

城井委員 あと二点お伺いしたいと思います。

 今回のこの対案によりますと、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、今回も法案質疑にかかっている閣法の改正案もございますが、この法律を廃止するという趣旨になっているかと思います。この趣旨を御説明いただけますでしょうか。

階議員 先ほども少し申し上げましたが、本法案では、法科大学院修了者及び司法試験予備試験合格者のみに受験を認めるという現行の受験資格の制限を撤廃することとしているわけでありまして、これによって、現行のように、法科大学院の教育を司法試験の受験の前提と位置づける必要がなくなりますので、本法案ではいわゆる法科大学院司法試験連携法を廃止することとしております。

 ただ、そうだからといって、法科大学院で司法試験のための勉強をするということを禁止しているわけでもございません。個人の自由な選択によって、受験前から法科大学院に通ってそして準備をする、こういう選択肢も認められているわけでございまして、あくまでも司法試験の受験の前提であった法科大学院の教育ということを見直すことによって、この連携法というのは論理的に必要がなくなったので廃止しましょうということであります。

城井委員 提出者に最後にお伺いします。

 この法案によりまして、法科大学院のあり方、役割も大きく変えていく形を想定しての提案になっているかというふうに思いますが、具体的にどのように変わるのか、御説明いただけますか。

階議員 先ほども少し申し上げましたが、本法案によって、法科大学院は司法試験の受験を考える者が任意で進学する、受験を考える者が選択肢の一つとして法科大学院に通うということになるわけであります。そういう役割の変更がまず一つ。

 それから、司法修習の期間を延ばしますけれども、その修習の一層の充実を図るため、司法修習期間中に、司法修習生が法科大学院が提供する独自のプログラムを受講して、法律に関する理論や実務に関する理解をより深化させることが期待されるわけであります。

 例えば、私も司法修習を受けたことはありますが、なかなか国際法とか条約といったことについては学ぶ機会がありませんでした。こうした分野については、やはり専門家が多くそろっている法科大学院でぜひ学びの機会を提供していただきたいということを提出者としては期待するものであります。

 さらに、弁護士を始めとした法曹実務家を対象に法科大学院がリカレント教育を提供するということも我々は考えております。

 最新の法律に関する知識、理解を身につけることを支援したり、普通の会社に勤めている方でも国際法の知識あるいは条約の知識などは重要でございますので、こういったことを専門性を高めるために支援したりということも考えております。

 リカレント教育というのは、そういう意味で、法曹向けのリカレント教育、それと社会人の一般的な法律の知識としてのリカレント教育、この両面においてリカレント教育を実施することによって、法科大学院はむしろ今まで以上に社会の幅広い分野において貢献できるのではないかと考えております。

 以上です。

城井委員 ここまで、提出者に、今回の国民民主党提出の対案の概要、狙いについて説明いただきました。

 この内容につきまして、文部科学大臣そして法務副大臣に、それぞれ受けとめをお伺いしたいというふうに思います。まず文部科学大臣からお願いします。

柴山国務大臣 国民民主党提出の対案についてでありますけれども、二十一世紀の司法を支える質、量ともに豊かな法曹を輩出するために、やはり私は、この法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度が必要であるという認識でおります。したがって、法科大学院の修了等を司法試験の受験資格とする現行制度が創設されたその当時と認識が変わっていないわけであります。

 対案は、法科大学院の修了を司法試験の受験資格としないということとしておりまして、法学教育、司法試験、司法修習の有機的な連携のもとで多様な人材を法曹として養成するというプロセス養成の趣旨が維持できないのではないかというふうに考えております。

 なお、司法制度改革審議会意見書では、点のみの選抜である旧司法試験について、受験者の受験技術優先の傾向が顕著であるという指摘がなされ、司法が二十一世紀の我が国社会において期待される役割を十全に果たすための人的基盤を確立するためには、やはりプロセスとしての法曹養成制度を新たに整備することが不可欠であるというふうにされていることを申し上げたいというように思います。

 司法試験、旧来型の司法試験となる懸念、それから、予備校が法科大学院にかわって受験テクニックを教える主要な存在としてまた大手を振ってしまうのではないかということも懸念していることをつけ加えさせていただきます。

平口副大臣 法務省からお答えをいたします。

 国民民主党が提出された司法試験等の一部を改正する等の法律案は、司法試験の受験資格を法科大学院修了者と予備試験合格者に限定する制度等を廃止するなどの、受験資格の制限等の廃止、司法試験に短答式及び論文式の筆記試験に加え口述試験を設けるなどの、司法試験の方法、試験科目の見直しなどを内容としているものと承知をいたしております。

 旧制度下における司法試験という、点による選抜の方法については、平成十三年六月の司法制度改革審議会意見書において、受験競争が厳しい状況にあり受験者の受験技術優先の傾向が顕著であるとか、学生が受験予備校に大量に依存する傾向が著しくなりダブルスクール化、大学離れの状況を招き、法曹となるべき者の資質の確保に重大な影響を及ぼすに至っているなどと、問題が指摘されていたわけでございます。

 こうした状況下において、二十一世紀の司法を支える質、量ともに豊かな法曹を輩出するために必要となる大規模な司法試験合格者数増を、その質を維持しつつ図ることは、点による選抜では困難を伴うことから、新たに法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度が導入されたものと理解しており、この認識は現在も変わっていないところであります。

 国民民主党が提出された法案については、法科大学院の修了を司法試験の受験資格としないこととしていることから、法学教育、司法試験、司法修習の有機的な連携のもとで多様な人材を法曹として養成するというプロセス養成の趣旨が維持されず、有為な人材が予測可能性が高い状況で安心して法曹を目指すことができなくなるおそれがあるものと考えております。

 以上でございます。

城井委員 間もなく前半の時間が終わりそうでありますので、一言申し上げて、まずは前半戦の質問を終わりたいと思いますが、今ほどの国民民主党対案に対しての受けとめを聞いておりまして、この法科大学院の改善、改革は十五年やってきているはずだ、しかも、そのスタートもプロセスによる教育、法曹養成だったはずでありまして、少しずつ手を加えながら進めてきた十五年だったけれども、その結果が今だというところを踏まえた受けとめに本当になっているのかというところが、今ほどの受けとめを聞きながら大変危惧をするところであります。

 そうした、理念はわかる、でももくろみが外れた、ならばどこをいじって改善していくかというところを、我々からも少し、大胆かなと思いながら、でも法科大学院は残すというふうなことにしていますので、中途半端だという野党の御意見もちょっといただいたりしながらというのはあるんですが、そうした具体的な提案も照らしながら午後の質疑をさせていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 まずは、終わります。

亀岡委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

亀岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。城井崇君。

城井委員 午前中に引き続きまして、法科大学院と司法試験の連携の閣法の法案について質問を続けたいと思います。よろしくお願いします。

 さて、午前中の他の委員の質疑、答弁も含めて確認をしてきたところですが、文部科学大臣からもお話がありましたように、今回のこの法科大学院にこれまで込めてきた理念というものは大切な部分があるなというふうに感ずると。

 この十五年にわたる改善のきっかけは、試験に偏重してしまうでありますとか、本来のプロセスによる教育を重視するというところを踏まえてというのが取組であったということでありますが、まず、そうしたこれまでの政策の効果について、文部科学大臣に確認をしたいというふうに思います。

 これまでの法科大学院の改善と充実策への評価ということであります。

 きょうの午前中の質疑でも明らかになりましたのは、やはり数をつくり過ぎたというところがある、そして、そうはいっても統廃合は促してきた経緯があった、でも、実際に育成できた方々のレベルは下がっているというのが各所から聞こえてくる声だというのが大きなところかと思います。その意味では、理念はよかったけれどももくろみは外れているというふうに言わざるを得ないと思っています。

 ただ、私自身も、民主党政権時に担当の政務官としてこの議論とそして政策の立案、決定にも加わってきた身としては、その当時からの部分で改善できたところもあったというふうに思っています。

 例えば、国立大学の運営費交付金やあるいは私学助成などによって法科大学院の充実を図っていく一方で、学生数が少な過ぎたり、学生の多い少ないとは関係なく合格率が低かったりするような、つまり、つくり過ぎて、本来目指した役割が果たせていない法科大学院が相当数あるところを、直接やめろとは言えないけれども、促すための基準をつくり、そして統廃合を促してきたという経緯は、これは一定役割を果たしてきたのではないかというふうに評価をしているところであります。

 そうしたこれまでの取組も含めて、この法科大学院の改善と充実策への評価を、まず大臣に伺いたいと思います。

柴山国務大臣 ありがとうございます。

 今、城井委員がまさしくおっしゃったとおりでございます。

 理念はプロセスによる選抜というところだったんですけれども、特に法曹の将来にわたる需要の見込みが当初と違っていたということも含めて、さまざまな改革が必要になってきたところでございます。

 そして、平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議の決定では、平成二十七年度から平成三十年度までの期間を法科大学院の集中改革期間と位置づけて、今委員が御指摘になったこれまでの改革に加えて、時間的、経済的負担の軽減や教育の質の向上のための方策として、先導的な取組の支援等を行うというふうにされました。

 文部科学省では、学部の早期卒業、飛び入学の推進、リカレント教育、未修者教育の充実、こういった事柄を推進すべく、これらの取組を進める大学に対して、法科大学院間でのめり張りある予算配分の中で支援を行ってきたところであります。

 さらに、平成三十年三月に中教審法科大学院等特別委員会で取りまとめられた、さらなる抜本的な改革の基本的な方向性を踏まえて、今国会に法科大学院教育の充実のための法案を出させていただいたということで、若干遅まきではありますけれども、徐々にやるべきことはやってきているのかなというふうに考えます。

城井委員 大臣、十五年ですので、なかなか長い期間でありまして、その期間での取組を踏まえても、今回のように、これまでの道のマイナーチェンジに本当に手が届くかというところが心配という部分がありましたので、我々からは、具体的な、大きな改善を促すような提案を出しているということであります。

 そこで、少し本音の議論をと思いますが、今回の政府案、先日の参考人質疑でも、それぞれの参考人から受けとめも伺いました。例えば、伊藤参考人からは、法科大学院の生き残りのため学生を取り戻そうとしている、まあ、あの方は塾の方なので、予備校関係者だとそうは言うかなというふうには思うところもありますけれども、学生を法科大学院に取り戻そうとしているというのが目的の本音ではないかという御指摘もありました。

 また、須網参考人からは、この法案によって結局、もともと心配していた、試験に偏る、司法試験信仰に回帰する、こういう指摘もあったわけで、ここも当たっているところはあるんじゃないかと思うわけですが、こうした本法案の狙いに対して厳しい声が立場が違うところからも上がっているというところを踏まえて、大臣の見解を聞かせていただきたいと思います。

柴山国務大臣 法科大学院の生き残り策でないかという御指摘に関しては、そもそも誰のための法改正なのかということが極めて重要だと思っております。

 確かに、御指摘のとおり、今回の改革によって、学生がより安んじて法科大学院を選びやすくなるということは事実だと思いますけれども、それは何も法科大学院とか文部科学省の延命策とか既得権の維持のためにやっているわけではなくて、それをすることによって、受験偏重と言われるような教育、それから点の教育じゃなくて、あるべきプロセス教育、しかも質の高いプロセス教育を法科大学院で受けていただく方が、学生ひいては我々日本にとってのプラスになるという目的で改革をしているということは、ぜひ御理解をいただきたいというように思います。

 だからこそ、今回、時間的負担、経済的負担の軽減、それから、法科大学院教育そのものもきちんとカリキュラムを含めて充実をさせていく。それから、やはり過去の読み違いを繰り返さないように、法科大学院の定員管理による予測可能性の高い法曹養成制度の実現ということも可能にさせていただいたということでございます。

城井委員 大臣、まさにおっしゃるとおりでして、目的を間違えてはいけない。私が一番大切だと思って今回の審議に臨んでおりますのは、人生をかけて法曹という職種を選んでいくときに、この道が、その人生をかけるのにそれだけの重みや価値があるかというふうなところが最も問われている、つまり、これから担おうとする若い世代に選ばれる職場になるかどうか、ここが大事だというふうに思っています。その意味では、これまでの十五年の努力では、その努力が残念ながらしぼんでしまってきているという部分はやはり踏まえなきゃいけないというふうに思います。

 その一つが法曹志願者の数への影響ということかと思います。今回の法改正で、すぐれた法科大学院の志願者をどれぐらい、あえて呼び戻すという言い方をしますけれども、想定できるか。特に、予備試験に流れている層を法科大学院に誘導できるかというところ、今回狙いにあるかと思いますけれども、その根拠をどこに見るかという点。

 予備試験がある限りはいつでも受けられるという意味では、プロセス養成を仮にこれからも継続しても、その途中でも飛び込んでいける別のチャンスがあったならば、そっちに結局流れてしまうのではないかというのが世の道理かと思いますけれども、このあたりの部分も踏まえて、大臣、呼び戻せるめど、そしてその根拠、お聞かせいただけますか。

柴山国務大臣 これも、実は委員御指摘のとおりだと思っています。要は、予備試験のこれからのあり方次第によってどれだけ法科大学院志願者がふえてくれるのかということは、なかなか一概には申し上げられない部分があると思います。

 ただ、今回、学部の早期卒業を前提として3+2を制度化することによって、志願者減の大きな要因となっている時間的、経済的負担の軽減を図ることとしていること、それからまた、中央教育審議会の審議状況を踏まえて、昨年十二月に文部科学省において、法学部を有する七十二大学において行った調査においては、四十四大学が、この法曹養成基礎課程いわゆる法曹コースを開設予定だという回答があったということを踏まえると、やはり、すぐれた法科大学院志願者をこの法曹コースを経由して養成しようという、呼び戻すことに一定の効果があるということは間違いなく言えるのではないかというように考えております。

城井委員 その一定の効果がどれぐらいかというところが問われている部分だというふうに思うんです。

 法曹志願者が約五万人から、最新数字でも五千人ぐらいということで、相当に激減してきた期間というのは、とても残念なんですけれども、法科大学院ができてからの時期と重なっております。参考人質疑でも、伊藤参考人からは、法科大学院ができてから減った、法科大学院を除去すればよいという、かなり手厳しい意見もあったところであります。

 プロセスによる教育といっても、もう十五年試みてきたわけで、それが現在の状況を導いてしまっているわけであります。

 法科大学院が志願者激減の引き金になっているとの指摘について、大臣、いかがお考えですか。

柴山国務大臣 法科大学院については、再三申し上げているとおり、修了者の司法試験合格率の低迷。当初は、修了すれば七割から八割司法試験に受かるという制度設計だったはずなんですけれども、先ほど御紹介いただいたとおり、実は二割から三割と。もちろん、大学によってかなり幅がありますけれども、そういう実態がある。それがやはり、志願者や入学者が減少しているという大きな原因ではないかというように思います。

 それはやはり、法科大学院の制度創設時において、入学定員の総数の上限を定めずに、設置基準が満たされているからということで一律に認可して過大な定員規模となったことがそもそもの大きな問題であったのかなというように認識をしております。

 こうした状況を改善して、一人でも多くの有為な若者が安心して法科大学院に進学して、自信を持って法曹を目指すことができるようにするためには、さっきも申し上げたとおり、まず教育のさらなる充実をすること、それから厳格な成績評価、修了認定をすることを当然の前提として、法科大学院の課程を修了すれば司法試験に合格できるという予測可能性を高めて維持するためにも、一定の定員管理というものが必要になってくるというように考えます。

城井委員 今の御答弁で少し確認ですが、法科大学院自体の絞り込みは今後も統廃合を促すという形でやっていくということ、そしてハードルを高くして人材の質を上げていこう、その法科大学院の中でハードルを上げて、レベルを上げていこうということ、そして、定員の管理はするんですね。この三つを改めて確認させてください。

柴山国務大臣 先ほど質問に答えたとおり、さまざまな地域の法科大学院において、引き続き、法科大学院としてしっかりと役割を果たすことができるようなさまざまな支援をもちろんさせてはいただきますけれども、ただ、新規募集を停止しているところも当然あるわけですから、そういうことも踏まえて、例えば経済的な、法科大学院に対する支援のあり方をしっかりとめり張りをつけていく、それがまず一番目に対するお答えです。

 それから、二番目に対するお答えについては、厳格な成績評価、修了認定、こういうことによって法科大学院そのものの卒業をやはり厳しくして、法科大学院のレベルアップをそれによって図っていかなければいけない、そういうことは間違いないのであろうというように思います。

 それと、最後に、ちょっと、一番最初、黒岩委員から、定員管理をするのかしないのかということでいろいろと議論がありましたけれども、いわゆる、法科大学院の課程を修了すれば司法試験に合格することが一定程度期待できるという意味での、文科省と法務省が連携しての定員の枠づけというものは、やはり私は必要になってくると。だって、そうしなければ、トータルとしての七割から八割の合格率というものはやはり実現できないというふうに考えております。そこは整理させていただきます。

城井委員 最後の点はおっしゃるとおりで、人数が確定しないと、ハード面やソフト面など含めて応援していくメニューや準備というものは計算が立たないというふうに思うので、そこはおっしゃるとおりだと思います。

 そうやって、中でも努力をしていただくというところとともに、出口の部分での予見可能性を高めていくという意味では、その出口でどんな仕事をやってもらえるかというときに、国民民主党でもあらかじめ政府から部会に来ていただいて御説明を伺って、ここは法務副大臣にお伺いしようというふうに思いますが、そのときに、多くが大手の法律事務所に行ってしまいまして判事や判事補、検察官は選んでもらえないんですと、下を向きながらおっしゃる法務省の担当の方の姿がここにあり、今まで何をやっていたんだ、ちゃんと仕事の重要性は伝えているのかというふうなことで野党議員からは当然声がかかるわけですが、確保が実際に難しいことになっている、その現状についての認識と、それをどう対応していこうか、対策していこうかというところについて、副大臣にお願いしたいと思います。

平口副大臣 お答えをいたします。

 検察官については、必ずしも採用、確保が困難な状況にはございません。

 しかし、裁判官については、最高裁判所において、近年、その採用、確保が厳しい状況にあるようだというふうに承知しております。

 原因として、渉外事務所等を中心とする法律事務所の大規模化に伴う弁護士の採用増を理由とする採用における競合の激化などがあると聞いております。また、裁判官の場合は、全国的に均質な司法サービスを提供するなどのため、全国的な異動が不可避であるということなども考えられるところでございます。

 これに対する対応策でございますが、最高裁においては、司法修習生に対して、裁判官の職業としての魅力を伝えるとともに、裁判官の異動の実情等について正確な情報を伝えるよう努めるなど、必要な取組を進めておられるものと承知をいたしております。

城井委員 副大臣、今の現場でとっていただいている方法で、実際にふえていくきっかけがつくれる、他の職種にもまして裁判官の仕事を選んでいただけるという部分、具体的にどれぐらいふやしていけるというふうに見込めますか。

平口副大臣 具体的に数字を言えと言われるとちょっと難しいんですけれども、このような方針に沿って全力を尽くしてまいりたいと考えております。

城井委員 例年の予算要求の段階で、判事や判事補の確保についていつも示す定数はあるけれども、実際に採用できた数はそこに追いつかないものがもう何年続いているかというのが実態のはずなんです。そうすると、せめて、要求している定数のところまでは、必要でもあるし、予算の確保もしているということならば、そこに手が届かないというのはそのやり方が足りないということかと思うんですけれども、副大臣、ここは当然、定数を満たすところまで持っていくということでよろしいんでしょうか。

平口副大臣 裁判官の採用方針については最高裁のやっているところですけれども、伝え聞くところによると、総数としては足りている、しかし、裁判官の適格性というふうなことについて絞りをかけると、今言ったような定員増になるということでございます。

 したがいまして、今後、できる限り裁判官としての的確な人員が確保されるように努力していきたい、このように思っております。

城井委員 ということは、副大臣、これまでの定数要求は少し過大であった、今の人数で足りている、こういうお話だったかと思うんですが、今の理解でよろしいですか。

平口副大臣 要求が過大であったということでもございませんで、そこのところは不足部分を補いながらやっているところでございます。御理解をお願いしたいと思います。

城井委員 厳格な定数でのお取組をぜひお願いしたいというふうに思います。

 もう定数と実際の配置の数が間があいている状況はこの一、二年ではありませんので、そこはぜひ最高裁判所などとも連携しながら取組を続けていただければと思います。

 続いて、法学部への影響についてお伺いしたいというふうに思います。法学部自体の志望者が減っている点をどう考えるかということであります。

 法学部のあり方については、これまでも、中教審の答申、平成十四年八月五日の「法科大学院の設置基準等について」というものによりますと、法科大学院導入後、法的素養を中心とした教養教育への重点シフト、副専攻制度など、複数の学部・学科の専門科目を同時に履修できるようなカリキュラムの工夫などなど、多様な教育プログラムの展開が想定されておりました。

 あれから十五年余りであります。どれぐらい実現できてきたかという点。やってきたけれども、結局法曹志望者は減っているという点からすると、さあ、どうか。この点、大臣、いかがでしょうか。

亀岡委員長 柴山文科大臣。時間が来ているので、簡素に答弁をお願いします。

柴山国務大臣 はい。

 おっしゃるとおり、今御指摘になったプログラムによって、進路希望に応じて多様な進路が選べるような形にはなっております。また、大学の自主的な取組によって、法学部における法曹志望用のプログラムとして、平成三十年度の法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムで採択されたものも、十九大学に達しております。

 いずれにいたしましても、法科大学院そのものが非常に敬遠されているということから法学部自体の志願者数は減っておりますけれども、この法科大学院の改革とともに、各法学部における一層の工夫、改善を図っていただきたいと考えております。

城井委員 時間が参りましたので、きょうは、ここで終わりたいと思います。

 残余の質問は次回に譲りたいと思いますが、委員長、きょうの午後にかけての質疑でも、論点がまだまだ尽くされていない状況が相当数ございますので、質疑時間の十分な確保と、そして司法試験や司法修習を所管する法務委員会との連合審査、ぜひに実現いただきたいということで、理事会でしっかりと具体的にこの二点について協議をいただきたいと思いますが、お願いできますでしょうか。

亀岡委員長 意見として伺っておきます。

城井委員 終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 国民民主党の吉良州司でございます。

 午前中から質疑を聞いておりまして一つ思うことは、質疑者も法律のプロというか、法曹三者の出身者も多くて、プロとしてのもろもろの見方、見解があると思っておりますけれども、私はきょうは素人の代表として、一般の社会の人々の感覚と多少違う部分もあるのかな、そういう思いを持っておりますので、素人の代表として質問したいと思います。

 その上で、実は私自身は、恥ずかしながら、最終学歴は法学部卒業ということになっています。法学士です。ただ、そう言うのが恥ずかしいんですが……(発言する者あり)いや、政治コースという学科みたいなものがあって、法と名がつくものは憲法と民法しか勉強しておりませんで、卒業のための必修科目は、法と名のつくものはそれ二つ。あとは、例えば政治学であったり、政治過程論、ヨーロッパ政治史、日本政治外交史だったり、近代経済学だったりと、まさに政治経済系の科目が卒業のための必修科目ということでありますので、法のことをほとんど知らない法学士という立場でも質問しようかと思っています。

 ただ、唯一、時代は古くはなるんですけれども、仲間、同級生、それから先輩、後輩、中には一生懸命法曹三者を目指すんだということで頑張っていた仲間もおりますので、その辺の人たちの、古い時代ではありますけれども、気持ちはわかっているつもりでおります。

 それと、もう一つの立場は、法学部を出て法科大学院というようなことをずっと議論していますけれども、今言ったようなこともあって、私は法学部に入るときに、法律の専門家になろうというのは一ミリたりとも思ったことがありませんでした。

 その私が、社会に出てビジネスの世界に入ったら、商社だったので、まず会社派遣の海外留学、また、駐在員として海外に赴く。このときには試験がありまして、商社ですから、例えば貿易実務だったりロジスティックだったり、そういう勉強、それから財務、経理、それから英語というのがあるんですが、それに加えて法律というのもありまして、やはり法律の知識なくしてビジネスはできないということで、法律を好きでもなかった新入社員たちが、一生懸命法律の勉強をせざるを得ない。

 加えて、自分が実際にビジネスの現場に出てみると、いろいろな交渉はするけれども、交渉の結果をまとめるのはほとんど契約書。もちろん日本語の契約書。それで、商社でしたから、英文による契約書。そういう意味では、ビジネスの世界に入ってからというものは、もうほとんど法律漬けになると言っていいぐらいの世界でありました。

 そういう感覚も持った上で、きょうは、先ほどから言っています、素人の代表として質問させていただきたいと思っています。

 午前中の質問とちょっとかぶって恐縮なんですけれども、いま一度、大事な点なのでお聞きします。

 法科大学院への志願者が激減している、その真の理由は何だと認識しておられますか。

柴山国務大臣 ありがとうございます。

 かつて、おっしゃるとおり、東京大学法学部の第三類と言われるいわゆる政治学科は、法学部といいながら、実質的に法律専門科目の枠は大変少のうございまして、ただ、卒業されている方は吉良委員を始め大変多士済々でありまして、また、今おっしゃったように、卒業後、やはりしっかりと法律を学んで、その方面についても大変お詳しい方がたくさんいるということを、名誉のためにちょっと申し上げさせていただきたいというように思います。

 その上でなんですけれども、法科大学院志願者の激減を招いた原因としては、法科大学院修了者の司法試験合格率が二割から三割、当初の我々の制度設計ですと七割から八割ということだったんですけれども、現実には低迷してしまったということ、それから、平成三十年度に実施した法学部学生に対するアンケート調査結果でもわかるように、法曹資格取得までに時間的、経済的負担がかかるということが、法曹を志望する上での大きな不安や迷いの一つとされていることなどが挙げられると考えます。

吉良委員 その答弁は、きょうの質疑でも何回か聞いております。

 では、その上であえて聞きますけれども、法科大学院制度そのものが、残念ながら、当初の目的とは乖離して、失敗だったと認識されていますでしょうか。

柴山国務大臣 失敗だとは考えておりません。

 別に、一度つくったものを否定したくないからということではなくて、まさしく平成十六年四月にこの法曹養成制度を導入するに当たって、やはりプロセスとしての法曹養成制度が重要であるという理念のもとで導入をさせていただいたということもありますし、また、実際に、裁判実務以外の幅広い分野で活躍する弁護士が増加するきっかけにもなっておりますし、また、いわゆる司法過疎地と呼ばれる地域が大幅に減少して、国民の法律サービスへのアクセス向上につながるなど、一定の成果も上がっております。

 今申し上げたような、非常に志願者、入学者が減ったという負の面もありますけれども、我々といたしましては、そういった当初の理念をしっかりと大切にし、また改革をしていくことによって、法曹養成制度を再構築することが必要であると考えております。

吉良委員 大臣の方から一度つくったものを否定したくないからではないという話がありましたけれども、正直言って、私はそのように見えてしまいます。

 やはり今、日本の社会で一番問題だと思うのは、一度つくった制度、そして一度つくった組織、必ずしも当初の理念なり目的を達成していなかったとしても、一度つくったからということで、制度の維持、組織の維持そのものが目的化していくということがよくあります。

 なぜ私が、失敗ではないかと言うかというと、これを民間企業の経営に置きかえてみてください。ある意味、司法試験の合格者を、五百人時代から比べれば六倍にしようとしたこともあった。少なくとも倍、三倍にはしようとしている。新しい経営者が出て、新経営者に基づく何とかビジョンというのを掲げて、このビジョンに基づいて経営をやっていきます、売上げを三倍にしますと言ってトップになったリーダーが、何年かたったときに、売上げが十分の一になりました、これで責任を問われない民間企業なんてあると思いますか。

 私は今、柴山大臣のときにつくったわけでもないし、責任をとれとか云々とかいうことを言うつもりはありません。ただし、今言ったように、民間企業の経営の例に当てはめてみた場合に、明らかに失敗である、失敗であると認めてから、ではどうすればいいのかということが、認識を共有して新たな方向性を打ち出せるのであって、それがない中で、成功したのか失敗したのかあやふやな中で改革とか改正案とかを出してきても、それはきのうの伊藤真参考人が言っていたように、まさに法科大学院制度を守ること自体が自己目的化していると言わざるを得ないと思っています。

 いま一度お聞きします。

 今私が申し上げた民間の経営、このような例を出した上でも、まだ失敗ではないと思われますか。

柴山国務大臣 大変重い御指摘でもありますし、私も民間出身の端くれでありますので、おっしゃることはよく理解できます。

 ただ、問題は、やはり物事をやってみて、何がうまくいったのか、どういう部分がうまくいかなかったのかということを適時適切にきちんと評価し、そしてそれを次なる改革につなげていく、その適切なPDCAのサイクルを適切なタイミングで回していくということが重要なのであって、私といたしましては、うまくいかなかった部分が多々あったということは率直に認めつつも、当初の理念が間違っていたということを法務省も言っていないわけですし、また、実際に法科大学院を卒業してさまざまな場面で活躍されている方々がいらっしゃるということも鑑みれば、やはりそのよさをきちんと残しつつ必要な改革を行っていくことが大事だというように考えております。

吉良委員 私がその部分にこだわるのは、ずっと議論を聞いていて、プロセスが大事なんだ、その気持ちはわかります。

 その中で、法科大学院における理想の教育像があって、その理想の教育像の中で勉強し修得していくという学生に対する一つの期待感、理想としての期待感がある。だから、どうしても、法科大学院における教育とはこうあるべきだ、そこで学ぶ学生はこういう資質を持ってほしいという思いが強く出ている。それはわからぬでもありません。

 では一方、法科大学院に行こうとする学生がそういう意識を果たして持っているのかというところに、私自身は大きな疑問を持っています。

 ちょっと抽象的になって恐縮なんですけれども、社会の底層、根底を形づくっているという意味での底層ですけれども、底層を貫くのは、哲学用語でよく、ザイン、ゾルレン、ザインというのはかくある、自然のままにかくある、存在というような訳し方をされますけれども、ゾルレンというのは、かくあるべし、当為という言い方をされますけれども、世の中の底層は、ザイン、ゾルレン、かくある、かくあるべし、どちらが強く流れている、どちらが強く出ていると思われますか。

柴山国務大臣 物事を改革しようというときには、当然、今のお話、用語をかりれば、ゾルレン、こうあるべきだという当為の側面があるかと思いますが、ただ、それを支えるのは立法事実でありますので、それはやはり一定の実体、ザインというものが基礎になって、それに従ってあるべき改革の方向性、ゾルレンによる制度設計というものがなされていくのではないかと考えます。

吉良委員 ちょっと抽象的になりましたので、もっと具体的にわかりやすく聞かせてもらいます。

 法科大学院を受けよう、また、そこで勉強しようと思っている人の中で、司法試験を受けたり、その先にある法曹三者になろうとは思っていないけれども、幅広く法律を勉強して、ある種法律のプロになりたい、けれども、司法試験を受けたり合格したりするつもりはないと思っている学生はどれぐらいの比率でいますか。

柴山国務大臣 少なくとも、法科大学院に進む人たちのほとんど全ては、やはり法曹資格を持ちたいという希望を持ってその門をたたいているのではないかというように考えます。

吉良委員 今、大臣、物すごく正直に答弁いただいたというふうに思っています。

 そうすると、きのう伊藤真参考人もおっしゃっていましたけれども、また、午前中の議論でも、点による選抜は困難を伴うという副大臣の答弁もあり、大臣からだったですかね、点のみの旧司法試験制度には問題があったという答弁をされています。

 けれども、今言ったように、法科大学院を目指す学生はほとんど、その先にある司法試験を突破したい。だからこそ、法科大学院でその通るための勉強が十分できるんだったらいいけれども、そう思わなければ、きのうの伊藤先生の塾じゃないですけれども、塾に行ったり、場合によっては法科大学院に籍だけ残して、でも実際は通わずに独自の勉強をして予備試験を受けて、そこから通る。

 ですから、私自身が乖離を感じるのは、一方では、さっき言った、法科大学院というのはこうあるべきだ、ただ単に司法試験に受かればいいというものではないんだ、もっと幅広く勉強して真の法律実務家を、法律のプロをつくりたいんだというかくあるべしという思いと、法科大学院に行こうという学生は、そんな理想論とかそんなきれいごとよりも、自分はとにかく、どんな方法でもいいけれども、どんな方法というか道でもいいけれども、できるだけ早く司法試験を受けて合格したい、こう思っているんじゃないですか。とすれば、法科大学院かくあるべしということに基づいた改革というのはそもそも自己矛盾しているんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

柴山国務大臣 極めて重要な御指摘をいただいたと思います。

 だからこそ、我々は、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成が必要である、今のお言葉をかりれば、理想であるという認識だけではなくて、やはりそこを修了した方が司法試験の受験資格としてふさわしく、また、そこをきちんと学んで卒業した人が司法試験に受かるという、受験生のしっかりとしたニーズにマッチした形のものであるように改革をする。また、予備試験を受けてすぐに資格を得るということに流れないように、経済的なあるいは時間的な負担を軽減させていくということによって、まさしく法学教育、司法試験、司法修習の有機的な連携のもとでの多様な人材を確保するという我々の理念も満たす。これを両方、両立させていくという努力が必要になってくるのかなというように思っております。

吉良委員 では、もうちょっと突っ込んでお聞きします。

 今、大臣みずから、時間的、また経済的負担があるというふうにおっしゃいました。

 であるならば、きのう伊藤真参考人も提案していましたし、何よりも私ども国民民主党が、それならば、もう司法試験受験資格制度そのものを撤廃して、誰でもいつでも受けられるようにすればいいんじゃないか。そうすれば、人によっては時間も経済的コストもかけて受ける人もいるでしょうし、今言った時間的、経済的コストをかけずに受けるという道も開ける。そういう意味では、今の制度の中での受験資格そのものを撤廃するのが一番理にかなっているんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

柴山国務大臣 先ほどの答弁でも申し上げたところなんですけれども、やはり、点のみの選抜である司法試験、新しくバージョンアップするといえども、点の選抜であるということになってしまうかというように思います。そうした場合に、受験者の受験技術優先の傾向がまた復活してくるという指摘がなされております。

 司法が二十一世紀の我が国社会において期待される役割を十全に果たすための人的基盤を確立するためには、やはりプロセスとしての法曹養成制度を整備するということが不可欠であると考えております。

吉良委員 またしても点のみによる試験の弊害が語られました。その点について、午前中の議論とも重複しますが、幾つか指摘したいと思っています。

 一つは、では旧制度で一発試験で通った人たちは問題がある人が多かったんでしょうか。これが一つ。

 それから、きのう伊藤真参考人からもありました。一発勝負というのは本当にどの世界でもあって、きのうでいえば、では東京オリンピックに出る、その資格を得るためにはこの大会で優勝しなきゃいけないとか、これかこれかこの大会でどれぐらいの成績、記録を出さなければ、そして何位以内であればというような、一発というのはどの世界にもあることじゃないですか。一発だからこそ、どんな状況にあっても一発で通るために、人並み以上に、オリンピックの選手でいえば練習をするし、この司法試験制度でいえば勉強するんじゃないんでしょうか。

 一発合格を目指してやる人たちに何か問題があるのか。旧試験制度で通った人たち、先ほど来出ているように、新しい制度になってかえって質が落ちたと言われている中で、言いかえれば、旧制度の人たちは優秀だったと言っているのに等しいわけですよね。それでも一点の弊害をまだ論じられますか。

柴山国務大臣 幾つか今御指摘になったので、ちょっと論点を整理させていただきたいと思います。

 まず、オリンピックの例えば選考会などで一発勝負ということはあるじゃないかという御指摘なんですけれども、例えばアメリカなどでマラソンなんかの選考をするときに、このレースで選考するんだというふうに決めれば、いかにその当該選考レースのときに体調が悪くても、それはもう本当に厳格なんです。過去においてどれだけ実績があって、そのレースだけ要するに調子が悪かったということも、やはりあの国はフェアな国ですから、そういうことを一切度外視して、もうそのレースだけで機械的に選んでしまう。

 ただ、ではその方が実際本番で力を出せるかというと、幾つか段階的なプロセスを経て、過去の実績とかも見て選んだ人の方が結局は高いパフォーマンスを得られる可能性があるということも事実であります。

 ただ、そういうことを想定して、そういうことというか、要するに、フェアネスを考えれば一発勝負だというのは、それはそれで一つの考え方なんですけれども、事我々の法曹養成ということを考えると、やはり、旧制度のもとで実際に輩出された法曹の能力や質に一律に問題がないから、ではプロセス選抜が不要かというとそうではなくて、さっき自分の例で言いましたけれども、私、ある科目で優秀だったときには、私はちょっと原田雅彦さんみたいなところがあって、結構失敗するときもあるんですよ。だから、前の年にはいい成績をとったんだけれども、次の年はたまたま悪い成績だったというのもあったりしまして、それは自分が悪いんですけれども。

 事ほどさように、ある程度プロセスを経て、ではその人が本当に持てる資質というものをどうやってはかるのかということを、もう少し時間をかけて選ばないと、本当にその当該試験だけだと、特に合格率が極めて厳しい試験の場合には、半分ぐらい入れかわっちゃって、本当に受かってほしい人が何年かたたないと受からないという事実がある。

 実際に、吉良委員が学生時代、例えば法学部の第一類の司法試験コースは、大学卒業生を見ると、ほとんどの人が就職先が決まっていないんですよ。昭和三十年とか四十年生まれの東京大学法学部第一類の卒業生は、みんな留年して司法試験を受ける。あれだけ優秀な人たちがいても、結構当たり外れが極めて大きかった、そういう実態があるわけです。それが大変大きな問題となっていたというのも、平成十六年当時、議論されていたことでもあるんですね。それから、先ほど申し上げたように、やはり受験技術偏重の傾向というものが非常に大きく指摘をされてきた、こういうことも事実であります。

 ですから、そういったことがやはり弊害であるという理解のもとで、点による選抜ではなくプロセスとしての選抜で、しかも間口もある程度広げるということを我々は制度設計としてきたわけでありまして、そういうことをぜひ御理解いただきたいというように思います。

吉良委員 今の答弁に対していろいろまた言いたいことはあるんですが、時間も過ぎてきたので、それに対する私の再質問はちょっとおかせていただきます。

 私自身は、豊かな社会とはどんな社会なんだと仮に聞かれたら、選択肢が多い社会が豊かだと答えたいと思っているんですが、そういう意味では、現時点では、法科大学院を出る、予備試験を受かる、その人たちにしか基本的に司法試験受験資格がない。これは、一般の人たち、きのうからずっと出ています、他学部からももちろん法科大学院に入れるわけですけれども、基本的には一年余分に勉強しなきゃいけない。社会人はどうするんだ、いろいろな立場の人がいる。いろいろな立場の人に選択肢を提供できる、受験チャンスを与えられるという意味では、もうその受験資格そのものを私は撤廃すべきだというふうに思っています。

 それと、先ほど大臣も言ったし私も言及しましたが、経済的、時間的に負担が大きい。これは前回、この衆議院は通過しましたけれども、住民税非課税世帯の子供たちの高等教育、できるだけ希望をかなえて、経済的負担がないように高等教育を受けてもらおうということで議論をして、法案が通りましたよね。今言った経済的に極めて厳しい家庭の子供たちが今の制度の中で法のプロになっていく、これが可能な制度になっているんですか。いかがですか、大臣。

柴山国務大臣 まず、先ほど御紹介をいただいた法科大学院の学生に対する経済的支援の状況でありますけれども、最新の実績値である平成二十九年度のデータでは、法科大学院在籍者四千七百五十五名のうち、給付型奨学金や授業料減免のみを受けていた学生が一八・八%に当たる八百九十五人、そして、今申し上げた給付型奨学金や授業料減免と貸与型奨学金を併用していた学生は一五・三%に当たる七百二十五人、貸与型奨学金のみを受けていた学生が一四・四%に当たる六百八十五人いらっしゃるということでありました。そういう面からすれば、これら全て合計をした場合には、半数近くの方がやはりそういった支援が必要だったということは言えるかと思います。

 貸与型奨学金を受けていた千四百十名のうち、さっきの合計ですけれども、千三百五十一名は日本学生支援機構の制度を利用していたけれども、その大半である千二百六十八人は無利子奨学金を受給していたし、二百四十三人は返還免除の対象となっていたというところであります。

 こういったことをしっかりと受けとめつつ、今回の修学支援法については大学院生は対象とはなりませんけれども、それ以外の部分で、今申し上げた負担軽減ということは、しっかりとまた拡大のための努力はしていきたいというふうに思います。

吉良委員 これも、法科大学院に行けば、もともと理想だった七、八割は司法試験に合格できるということであれば、時間も。今言った給付型というのは限られた人で、貸与なんですから返さなきゃいけない。となってくると、本当に貧困家庭の子供たちは、それだけ時間をかけて、お金は借りられて行けたけれども、司法試験に合格できなくて、その先どこに就職できるかという不安を持ちながら、結果的には志願者の減少につながっているんじゃないですか。

 ただ、もうこれは答弁を求めると時間がなくなってしまうので、そういうこともあるということは指摘させていただきたいと思います。

 先ほど、冒頭に、私は、民間企業で働いた中での法律との関係ということも話をしました。実際、当初この法科大学院制度ができたときの一つの目的としては、法のプロを質、量ともにふやしていくということが目的だったと思うんです。その背景には、そういう法のプロを必要とするという社会のニーズがあるんだと思います。

 実際、社会における法曹ニーズというのはどのあたりにあるというふうに理解されていますか。

平口副大臣 社会における法曹ニーズですけれども、高度な法律的知識はもとより、創造的な思考力、法的な分析能力を備え、また、先端的な法領域の理解や幅広い教養と豊かな人間性を基調に、十分な職業倫理を身につけているというふうなことだろうと思います。

吉良委員 すごい美辞麗句が並んで、そのこと自体には反論しようがないんですが、申しわけないですけれども、説得力がないですよね。

 何で私がこのような質問をしたかといいますと、私は商社に勤めていましたので、先ほど言いましたように、本当に法律とは背中合わせの世界に常にいるんですね。ですから、法務部門というのがあって、法務部、そこと常に相談しながらやっている。

 最近の詳しい状況は残念ながら知りませんけれども、私の同僚というか同期、それから御党というか自民党の中にも、具体名を出していいと思います、悪いことではないので。参議院議員で阿達雅志さん、私のクラブの後輩なんですが、彼も商社の法務部門にいて、ニューヨークに駐在しているときにニューヨーク州の弁護士資格を取って、ですから、日本の弁護士資格を持っていないんですよ。けれども、国際ビジネスについては、ニューヨーク法というか、ニューヨークという最もビジネス上重視される法を理解しているということで、十分法律の専門家としての役割を果たしていたと思っています。そういう意味で、私どもは、先ほど来言っていますように、国民民主党としては、司法試験受験資格そのものを撤廃せよということを言っています。そして、法科大学院の姿が今のままでいいとは思っていない。

 ですから、きょう、階提案者からもありました、一度法曹界、プロになった人たちがもう一回学べるという場にする、そして、それにかかわらず、リカレント、特に法を意識したリカレント教育を実施する場という位置づけにすればいいという話がありました。

 私が思うのは、社会における法のプロのニーズは、私の言葉で言うとフルスペックの法曹人材、例えば刑事訴訟法、民事訴訟法、刑法、少なくとも、例えば商社の法務部門にいる人たちは、刑法とか刑事訴訟法とか全然関係ないですよ、相続だとか家族法も。仮に何かトラブルがあって、社員が刑事事件に巻き込まれたとかいうときは、会社自体がまさにプロの顧問弁護士を雇っていて、その人たちに相談をする、アドバイスをもらう。日ごろのビジネスについては、主に経済系の法に通じていれば、十分その役割を果たせるわけです。

 ですから、法科大学院、これは何でこういう話をするかというと、もう失敗していると私自身は見ているからなんです。では、完全になくせばいいということなのか。

 そうではなくて、社会には、プロ中のプロの法律家、プロ中のプロまでいかないけれどもかなり詳しい、ある種、法のプロ、準プロを欲しがっているところは山のようにあります。だから、そのニーズに応えるという、この大学のこの法科大学院は、例えば国際ビジネスについてはあの法科大学院、あそこの卒業生を採れば国際ビジネスについてはもう即戦力中の即戦力だ、こういう位置づけで評価をされる。仮に弁護士を目指していたとしても、弁護士というか司法試験合格を目指していたとしても、そこの法科大学院に行けば、今言った、この分野では日本ナンバーワンなんだということで、就職には困らない、食うに困らないという道をつかめると思っているんですね。

 だから、そういう意味で、私どもが提案している、繰り返しますけれども、司法試験資格の撤廃、そして法科大学院のあり方の見直し、私が今言ったようなことも含んでいると理解いただいて、その辺について、私がそう提案することについての御見解をお聞きしたいと思います。

平口副大臣 司法試験を合格していない人もそういう分野で活躍されるということはあり得ると思いますけれども、経済社会のグローバル化が進む中で、国際取引業務等に精通した法曹を養成していくことは重要なことであると考えております。

 このような観点から、法科大学院においては、国際的な案件や知財紛争への対応を行う実務的科目が開講されているというふうに承知しております。また、司法試験においても、論文試験として、知的財産法や国際関係法を選択科目として設けているということでございます。

 そして、このような国際取引業務に従事する法曹人材についても、裁判等の紛争に発展した場合の解決方法をも見据えつつ企業法務実務に従事する等、法曹としての高度の法的知識を前提としつつ、先端的な法領域についての理解や幅広い教養等を身につけて活躍されることが期待されていると考えております。

 法務省としては、このような分野を、多様かつ有為な法曹人材が国際取引実務の分野を含む幅広い分野でその能力を生かして活躍することができるよう、引き続き、法曹有資格者の活動領域の拡大を始め、必要な取組を進めてまいりたいというふうに考えております。法曹資格を持っていない人もこれに準じてやっていければというふうに思います。

吉良委員 もう時間がなくなってまいりましたので。

 最近の大学生、卒業前の大学生、私は、前回の質問のときに、学力というか偏差値的に優秀な者が人間力にすぐれて社会で必要とされるとは限らないという話をさせてもらいました。その思いは物すごく強く持っているんですけれども、一方で、これまでの議論であったように、かなり能力の高い人は、余計なプロセスを踏まずに、予備試験を受けて合格して、すぐに司法試験を受けて合格するという人が多くなっている、そういう人の奪い合いではないかという議論も、きのうの参考人の質疑でも出てきました。最近は、例えば東大の医学部だとか京大の医学部を出た人たちが、医学の道に進まず、ゴールドマン・サックスに行ったりとかマッキンゼーに行ったりとか、そういうようなケースが本当に頻繁に出てきています。

 だから、そういう意味で、先ほど言いました、法律の専門家は必要なんだけれども、繰り返しますけれども、フルスペックの、法曹三者になる人たちだけが社会のニーズとしてあるわけではなくて、今の時代であれば、もっと経済系であったり、例えば、最近の児童虐待を見れば、児童相談所に勤務する法律の専門家だったり、そういうニーズがふえてきているので、無理にフルスペックの法曹養成、育成をするのではなくて、幅広く社会のニーズに合った法律のプロを育てていくということを真剣に考えていくべきだ、その一つの場として法科大学院を考えるべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部改正案について伺います。

 二〇〇一年の司法制度改革審議会意見書は、新たな法曹養成制度について、司法試験という点のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を整備し、その中核として、法曹養成に特化した教育を行う教育機関として法科大学院を位置づけるとしていました。

 柴山昌彦文部科学大臣に伺いますが、この考え方は今も変わらないのでしょうか。

柴山国務大臣 今回の改正案は、プロセスとしての法曹養成の理念を堅持しつつ、法科大学院教育の抜本的な充実、時間的、経済的負担の軽減、予測可能性の高い法曹養成制度の実現といった必要な改革を加えるものでありますので、同意見書の考え方を変更するものではありません。

畑野委員 大臣がそうおっしゃいましたので、続いて法務省に伺います。

 法科大学院が創設されて十五年となりました。当時掲げられていました、よく言われたのは、法科大学院を卒業すれば七、八割が司法試験に合格できる、あるいは、年間三千人の司法試験合格者を輩出するということが言われてまいりました。

 当時、どのような根拠をもとに打ち出されたのか、また、これはトータルとして今どうなっているのでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 まず、司法試験合格者の三千人の目標につきましては、司法制度改革審議会の意見書におきまして、専門的知見を要する法的紛争の増加や弁護士人口の地域的偏在の是正の必要性などによる法曹需要の増大への対応のために、法曹人口の大幅な増加を図ることが喫緊の課題であることなどから、年間三千人程度の新規法曹の確保を目指す必要があるとされたところでございます。

 また、あわせまして、二十一世紀を支える質、量ともに豊かな法曹を養成するため、プロセスとしての法曹養成制度を新たに整備し、厳格な成績評価及び修了認定を前提とした上で、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度、例えば七割から八割の者が司法試験に合格することができるよう充実した教育を行うこととされていたところでございます。

 もっとも、これらの目標につきましては、平成二十二年以降も司法試験合格者数が二千人から二千百人程度にとどまっていたことや、司法修習終了者の法律事務所への就職が困難な状況が生じていたことなどから、平成二十五年七月の法曹養成制度関係閣僚会議において、これは現実性を欠くものとして事実上撤回されております。

 その後の平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定では、法曹人口のあり方につきまして、新たな法曹を年間千五百人程度は輩出できるよう必要な取組を進めるなどとされたところでございます。

畑野委員 その七、八割が合格できるという点についてはどうなったのですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました平成二十七年の法曹養成制度改革推進会議決定では、法科大学院全体としての司法試験合格率などが制度創設当初に期待されていた状況と異なり、法曹志望者の減少を招来する事態に陥っているとされまして、法科大学院改革により、各年度の修了者に係る司法試験の累積合格率として、おおむね七割以上が司法試験に合格できるよう充実した教育が行われることを目指すとされたところでございます。

畑野委員 そうしますと、確認ですけれども、二〇〇一年の当時、七、八割が合格できるというのは、今おっしゃった、二〇一五年、累積合格率七割と言っているんですが、二〇〇一年当時も累積合格率ということのお考えだったんですか。

小出政府参考人 失礼いたしました。

 司法制度改革審議会意見書において、先ほど申し上げましたとおり、七割から八割の者が司法試験に合格することができるよう充実した教育を行うという記載がございますが、これにつきましては、二十七年度の推進会議決定のような累積合格率というような表現は用いていないということでございます。

畑野委員 そこは言っていなかった。ただ、二〇一五年になって、大体千五百人ぐらいが見込まれ、累積合格率七割にする、七割以上と。

 そうしますと、今、実際、累積合格率というふうにおっしゃっているんですが、到達はどうなっていますか。

伯井政府参考人 直近の修了年度別司法試験累積合格率でございますが、法学既修コースの修了者で、修了後三年目で累積合格率は約七割、未修コースの修了者で、こちらは修了後五年目で累積しておりますが、累積合格率が約五割となっております。

畑野委員 資料をつけさせていただきました。

 直近の修了年度別司法試験累積合格率です。文部科学省からいただきましたが、法学既修コース修了者は、修了後三年目で累積合格率約七割、法学未修コース修了者は、修了後五年目で累積合格率約五割。

 そうしますと、先ほど法務省から御答弁いただきましたが、二〇一五年で見直しをして、千五百人の新規法曹資格取得者、そして累積合格率は七割という見直しに対して、法学既修コースは約七割ですから、達成しているということになるんですか。

伯井政府参考人 今の目標を前提としますと、既修コースは一定程度達成している、累積でございますけれども。一方、法学未修コースは達成はしていないというところでございます。

畑野委員 そうすると、おかしなことになってくるんですよ。つまり、二〇一五年に見直しました、千五百人と七割というふうに言って。今御答弁で、既修コースはほぼいっていますと。では、いっていない目標、二〇一五年に比べて何が欠けているかといったら、未修者だと。だから、当然、その帰結は、では未修者の教育をもっと充実しましょうねということになるわけですよね。

 ところが、文部科学省は何をこの間されてきたのか。多様なバックグラウンドを持つ方々を多数法曹に受け入れるために、法学部以外の学部の出身者や社会人等を一定割合以上入学させるべきだとされてきた。専門職大学院に関し必要な事項について定める件の一部を改正する告示では、「法科大学院は、入学者のうちに法学を履修する課程以外の課程を履修した者又は実務等の経験を有する者の占める割合が三割以上となるよう努めるものとする。」とされてきました。

 ところが、二〇一八年の告示改正でこの規定は削除されたんですね。未修者を応援しようと言っていて、三割以上になろうというのは削除してしまった。その理由は何ですか。法科大学院の役割や未修者の司法試験合格率の状況から見れば、未修者への支援を強めるということになるのではないですか。

伯井政府参考人 御指摘の、法学部以外の出身者等の割合を三割以上とする努力義務を課す告示につきましては、当時、入学者の質の確保の観点から適当でない、あるいは、法科大学院において受験者の適性を的確かつ客観的に判定するための入学者選抜を厳格に実施し、質の高い多様な者を入学させて法曹として輩出することを促すということで、平成三十年三月に、多様な知識経験を有する者を入学させるという努力義務は堅持しつつ、数値基準については、御指摘のとおり設定しないということとしたものでございます。

畑野委員 そもそも、二〇〇一年のときに、標準修業年限は三年とし、短縮型として二年での修了を認めるというふうに言われ、そして、専門職大学院、法科大学院は専門職大学院ですから、その専門職大学院設置基準の第十八条では、法科大学院の課程の標準修業年限は三年とする、あえて、法科大学院については三年とするというふうに明記してきたわけですよね。

 今回の法改正では、法学部と法科大学院の連携を強化し、五年一貫教育の法曹コースを導入するとしています。向かう方向が違うんじゃないですか。先ほどからも、朝から議論になっています。本当に重要な議論だし重大な問題をはらんでいると、私は改めて認識を深めました、各委員の御議論で。何を急ぐのですかと思うわけです。

 そもそも法科大学院は、設立当初、学部教育とは独立した、法曹養成に特化した教育機関だとされていたはずですが、その理由は何ですか。

伯井政府参考人 司法制度改革審議会意見書では、法学部教育を法曹養成に資するよう抜本的に改善することは現実的妥当性に乏しいというふうにされまして、法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナルスクールである法科大学院の創設が提言されたところでございます。

 その上で、法科大学院を含む専門職大学院全般について教育の質を保証する観点から、教育組織について、学部や他の研究科から一定の独立性が求められるということで、特に法科大学院については、入学者選抜の公平性、開放性、多様性の確保の観点から、学部から独立を意識されてきたものというふうに認識しているものでございます。

畑野委員 ですから、二〇〇一年の司法制度改革審議会意見書でも、大学の法学部は、法曹となる者をはるかに超える数の入学者を受け入れており、法的素養を備えた多数の人材を社会の多様な分野に送り出すという独自の意義と機能を担っている、そのため、法曹養成を目的とする法科大学院は学部教育と区別された教育機関として設立する、こういうふうに言われてきたわけですね。

 では、法曹養成を目的としない法学部の教育と、そして専門職大学院としての法科大学院というのは、おのずと教育の質が異なってくるわけです。学部では、基本的な法学教育を通じて法的素養を備えることはもちろんですが、一般教養などを幅広く学ぶわけですね。ところが、文部科学省は、二〇一五年に法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムというのを始めまして、これは法曹養成制度改革推進会議に決定されて、そして、早期卒業、飛び入学制度を活用する法科大学院の公的支援の加算を行ってきましたね。

 結局、文部科学省は、五年一貫教育の法曹コースを法曹養成の中心的な流れにしようという考えなんですか。

柴山国務大臣 今の御指摘ですけれども、法学部三年と法科大学院二年のいわゆる3+2につきましては、平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議の決定において、その仕組みの確立及び充実を推進するということとされました。各法科大学院に対するめり張りある、今御指摘のあった予算配分を通じて支援を行ってきたところであり、平成三十一年度にこの3+2のルートで進学した者は八十七名となってきているところであります。

 では、そこが中心的な流れなのかという御指摘なんですけれども、今回の改正案においては、やはり、学部の早期卒業を前提とした3+2のルートを制度化することによって、学生の費用、そして時間の負担を軽減するコースをしっかりとつくるということが大きなニーズになっていることに対応するものでありまして、今後はこのルートを、中心的な流れかどうかはともかく、いわば標準的な運用として、在学中受験を含めて、その負担の軽減を図っていきたいというように考えております。

畑野委員 今、大臣から大変な答弁がありましたよ。これを標準的なものにしていくと。何ですか。

 二〇〇一年に、国民的な議論を通じて、きのうも参考人の皆さんからいろいろな意見があったけれども、それは、プロセスとしての法曹養成は大事だ、いろいろな意見はあってもそこでまとまって、しかし、やはり規制緩和路線はちょっと行き過ぎだったということでいろいろな見直しもあって、しかも、私、きょうは言いませんけれども、いろいろな手を使って文部科学省は法科大学院を整理していくということをやってきたわけじゃないですか。どれだけの学生が苦しんだか、どれだけの大学人が苦労したか。

 最初、二〇〇二年の、この法案のもと法案が議論されたときに、我が党の木島日出夫議員も、法務委員会が議論でしたから、制度設計はどうなんですか、どういうふうにやるんですかと言っても、それは各大学院御自由にという当時の文部科学大臣の御答弁でしたよ。そういう具体的なことも示さないで、うまくいかなかった、それを全部国民にツケ回しするんですか。

 同時に、国民みんなが一応納得したプロセスとしての法曹養成、その中核として法科大学院、その基本は三年だと言ってきたわけでしょう。それが学部にも大きな影響を与える。参考人の皆さんからも、法学部全体の教育がどうなるのか、その中で三年コースというのが出てきたらどうするのかと。

 二〇〇一年の司法制度改革審議会の意見書には、早期卒業なんて出てきませんよ。そこで一旦断ち切る、接続することを前提とはするけれども断ち切る、三年で卒業できる。そして、そういう人たちがどんどんと司法試験を受けていくとどうなるのか。多様な人材で、国民のいろいろな苦しみや状況に即してできる法曹養成をしようとしたんじゃなかったのかということですよ。それを標準にする、何ですか、この法案は。

 最初に言ったように、到達は七割と、合格は。既修コースは七割、ほぼできていますと国は認めたんでしょう、累計合格率ではありますが。足りていないのは未修生だというのだったら、そこをやるんだったらあれだけれども、全く逆のベクトルで、まるで予備試験にとられないようにと。審議会の議論を読みましたよ。そんなことで右往左往してどうするんですかというふうに私は申し上げなくてはならないと思います。

 結局、どこから出ているんですかと法務省に伺います。

 更に大きな問題として、法科大学院在学中に司法試験の受験を認めるということが出ているんです。どのような経過から、どのような目的のために盛り込まれているんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 現行の司法試験法では、司法試験を受験できることができる者としては、法科大学院を修了した者あるいは予備試験に合格した者の二種類が司法試験の受験資格として定められているところでございます。

 今回の改正法案におきましては、連携法の改正によりまして法科大学院教育の充実が図られることに伴い、法科大学院在学中であっても司法試験受験にふさわしい一定のレベルの者が養成されることを前提にいたしまして、さらなる時間的、経済的負担の軽減を図るため、法科大学院課程の修了を待たずして早期の司法試験受験を可能とする法科大学院在学中受験資格を新たな司法試験受験資格として認めることとしております。

 これによりまして、現行では、法科大学院修了後に司法試験を受験し、合格した場合であっても、司法修習開始まで約八カ月の無職の空白期間が生じますが、この期間が短縮又は解消されることになります。

 法科大学院在学中受験資格の内容でございますが、この在学中受験資格を取得するためには、法科大学院在学中の者であって、所定の科目単位を修得し、かつ一年以内に法科大学院課程の修了見込みがあることにつきまして、当該大学の学長の認定を受けることが必要であるとされております。

 今回の法案が成立した場合に、今後見直しが行われる新たな法科大学院教育課程に沿って着実に学修した者であれば、法科大学院最終年次に受験資格を取得することができることになるような運用を想定しているところでございます。

畑野委員 これは突然出てきたということで、関係者の皆さんは本当に知らなかったという声が出ているんですが、皆さんのどういう意見を法務省は聞かれたんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 今回の司法試験制度の見直しでございますが、昨年七月の与党の文科・法務合同部会におきまして、法科大学院改革を前提として、法科大学院在学中受験の実現を含む司法試験制度の見直しを早期に行うべきという指摘がなされたことを受けまして、法務省として、文部科学省と連携しつつ、制度設計に関する検討を進めてきたものでございます。

 検討の過程におきましては、文部科学省による法科大学院改革に関する検討に協力しつつ、あわせて、司法試験制度の見直しについて、文部科学省はもちろん、日本弁護士連合会や法科大学院協会などと必要な意見交換を行うなどしながら、制度見直しの是非やその方向性を決めるための検討を行った上で、具体的な制度設計の詳細を詰めてきたところでございます。

 今後も、今般の制度改革の着実な実施に向けまして、文部科学省とも十分に連携をとり、関係者の意見にもしっかりと耳を傾けて進めてまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 驚く答弁です。報道ではされていましたけれども、明確に、与党の中での議論だったというふうにおっしゃいました。

 与党の一方的な議論でこんな大事なことを。司法制度改革にかかわる問題ですよ。いいんですか。おかしいじゃありませんか。

 委員長、ですから、野党みんな求めているように、法務委員会との連合審査を含めて、これは与党の側からも話をどこかで聞かなくちゃいけませんけれども、しっかりした議論をするように、法務委員長とも連携をとってやっていただけますか。

亀岡委員長 意見として承っておきます。

畑野委員 あわせて法務省に聞きますけれども、法科大学院やあるいは大学の法学部、法学部教育にまで手をつけるということですよ、これは。そこには手をつけないという話だったものを標準にしていくというんですよ。

 私、そもそも、議論にもなっていますけれども、司法試験の問題、期日だけじゃなくて内容とか、それから司法修習の日程とか含めて全体的にやらなかったら、プロセスとして成り立たないと思うんですね。そういうものの日程だとか内容だとかは今後変更されていくんですか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 司法試験の実施時期につきましては、これは法令で規定する事項ではなく、最終的には司法試験委員会の決定事項でございまして、現時点で方針は決定しておりません。

 もっとも、今回の制度改革による新しい司法試験の実施時期は、法曹志望者や法学教育関係者にとって非常に関心が高い事項であることは認識しておりまして、本案成立後に設置する予定の関係省庁、教育関係者、法曹実務家等を構成員とする会議体において検討することとしております。

 司法修習の時期につきまして、今回の法案による法改正後の司法修習の開始時期等の日程につきましては、これは最終的には最高裁判所において定められるべき事項でございまして、その前提となる新たな司法試験の実施時期についても、今申し上げましたように、現時点では決まっていないということでございます。

 ただ、先ほども申し上げましたとおり、現行制度におきましては、法科大学院修了受験資格の場合、法科大学院を修了した者が司法修習を開始するまでに無職の空白期間が生ずるということでございまして、今回、在学中受験資格の導入により、法科大学院を経由して司法試験を受験しようとする者の時間的、経済的な負担の軽減を図るという観点からは、在学中受験資格で司法試験を受験し合格した者が、法科大学院修了後、現行制度よりも早い期間内に修習を開始できるようにすることが必要であろうかと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、法務省といたしましては、司法試験の実施時期や司法修習の開始時期など、法改正が実現した後の新たな法曹養成制度の運用につきましては、文部科学省、最高裁判所などの関係機関や教育関係者等とも十分に協議して対応してまいりたいと考えております。

畑野委員 だめですよね。今後のことはわからない状況で、幾つか先ほど答弁していましたけれども、そういうものを全部載っけないと。法科大学院だけの問題じゃないじゃないですか。入り口から始まって出口まで、プロセスなんだから。

 法科大学院は標準は三年だと言ってきたわけでしょう。法曹コース、3+2、学部三年で卒業できて、そして二年間法科大学院に来るんだけれども、だから、短い方の既修コースですよね。だけれども、その二年とて、一年と数カ月で試験が受けられないかと。

 法科大学院でつくった制度、そこでしっかりと学んだら七割、八割合格ねという制度設計をしたはずなんですね。それを短くしたら、本当にはかれるんですか。試験が終わったら後は適当にとは言わないかもしれないけれども、残った部分はやってね、そんなもので、試験を受けるときに、この人はちゃんとした、七割、八割受かるような人ですよと認められるんですか。結局、試験科目で通る中身をやっていればその他はいいですよねということになるじゃありませんか。こんなひどい提案はないですよ。

 法科大学院を中核にするというところに、司法試験の日程を変えて、法務省が手を入れてきて、文科省がそれに唯々諾々と、はい、そうですかとなったのか、その辺の経緯もちゃんと聞かなくちゃいけないじゃないですか。私はもう本当に怒り心頭です、御答弁を聞いて。

 いろいろと質問しようと思っていたんですけれども、時間が来てしまいました。大臣にもまだ聞かなくちゃいけないことがあるんですが、続きは、また時間があるということですので。

 このような、みずからが言われたんですよ、法律をつくったんですよ。みずからつくったことを、途中手直ししたけれども、それすら貫こうとできない。大失敗だったということですか。そうなりますよ、こんないいかげんな提案をしていたのでは。

 だから、今やるべきことは、法科大学院を中核とした法曹養成制度が掲げた理念と現実との乖離があるんだったらそれを明らかにして、やるべきことをやらないで言ったって、言っているようなものは何の説得力もないですよ、そして、目指すべき法曹養成のあり方の原点に立ち返って、国民的な議論をしたんだから、もう一回し直す。それぐらいの覚悟でやってもらわないと、司法制度の未来は明るいものにできないと思いますよ。

 法曹養成の理念を放棄し、法科大学院のあり方を大きく変えるような法改正はやるべきではないし、拙速に進めるべきではないということを申し上げて、質問を終わります。

亀岡委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 昨日は、参考人質疑という大変貴重な時間をつくっていただきまして、まずは委員長に感謝を申し上げたいと思います。非常に参考になりました。そして、一方では大変不安にも実はなったわけでございます。

 その一つとしては、四人の参考人の方の中で一番この法改正に乗り気の法科大学院の教授の方が、これで悪循環を断ち切るという、悪循環とおっしゃっていたんですね。ほかの参考人の方も、今回の法科大学院というのは、この改正の前ですけれども、失敗だったというようなことを異口同音おっしゃっていたような印象でございました。一番賛成された方が悪循環とおっしゃっていたわけですし、まさに、これまでの改正がよくなかったから今回の改正をするんだろうということですので、ほぼそれは間違いないと思うんです。

 ただ、その悪循環を起こすことになったきっかけというのはあると思うんですね。これは立法事実だと思うんですが、旧司法試験制度からこの新たな制度、それが悪循環という表現になってしまっているんですけれども、旧司法試験制度においてはどのような弊害があったので、その当時、法科大学院を導入することになったのか、それまでの弊害というものはどういうような形で指摘されたのかをまず明らかにしていただきたいと思います。

伯井政府参考人 お答えいたします。

 旧制度の問題点として、平成十三年六月の司法制度改革審議会意見書におきましては、質的な問題といたしまして、司法試験の競争激化のため受験予備校への依存が顕著になり、法曹の資質確保に重大な影響を与えるようになったということから、専門的な法知識を確実に修得させ、それを批判的に検討し発展させていく創造的な思考力、法的分析能力や法的議論の能力等を育成するにはやはり大学院においてプロセスによる養成を行うことが必要であるという観点から、先ほど来申し上げています、試験のみによる選抜からプロセスによる養成に改革すべきだということが指摘されたものでございます。

串田委員 参考人質疑の中でも、長年ずっと受験をし続ける、そういう、人生を棒に振ってしまうのではないかというような指摘がありました。

 今の答弁の中では競争激化というふうな話がありましたが、この競争激化というのは、倍率が非常に、例えば二%とか三%というような、この倍率がそういう数字になってしまったことが問題だ、そういう御指摘なんでしょうか。

伯井政府参考人 倍率というよりは、いわゆる受験予備校への依存とか、そういう選抜のあり方と、さらには、やはり、そういう養成ではなくて、もう少し時間をかけてプロセスによる養成で法曹を育成すべきだという議論であると思います。

串田委員 その件に関してもきのうの参考人質疑で私も質問させてもらったんですが、試験がある、その試験に対して傾向と対策というのが予備校としては行われて、ある問題が出たらこういう解答をしましょう、そういう教え方をしているということが紋切り型であったというような否定的な意見もありました。

 しかし、今回、やはり同じように、五年後、法学部三年、大学院二年、そのときに在学中受験をすることができる。そのときの試験というのは、やはり試験なんですよ。その試験がどんな試験であるのかが分析されれば、やはり予備校的な受験テクニックというものが当然出てくるだろうし、旧試験のときに弊害であったということを今回の改正で違うと言うのは、どういうことから指摘できるんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 まず、司法試験のあり方につきましては、前提問題といたしまして司法試験委員会に委ねられているというところでございますけれども、特に今回の制度改革による新しい司法試験では、委員御指摘のとおり、在学中の受験資格を新たに導入することとしておりまして、司法試験の実施時期の点や、今回の法案で論文式試験の選択科目を引き続き存置しているということとも関連しまして、法科大学院教育課程との連携、あるいは法科大学院生の学修到達度の確保、これを確認できるかといった課題が指摘されているところでございます。

 したがいまして、法務省といたしましても、この法案成立後に、法科大学院教育と連携した司法試験のあり方について、また司法試験委員会とも連携したしかるべき会議体を速やかに設置して検討を進めていくことを予定しております。

 この会議体におきましては、法科大学院の新たな教育課程の内容やカリキュラム編成、学生の学修到達度等の議論と並行して、関係者の協議により、司法試験のあり方について必要な検討が行われていくものと考えているところでございます。

串田委員 平成三十年度そして平成二十九年度の合格平均年齢は二十八・八歳。たまたま小数点以下も同じでした。これは旧司法試験のときの合格年齢とほぼ変わらないんですね。ですから、受験者数は減って十分の一ぐらいにはなっているわけですけれども、合格平均年齢は一向に変わっていないんです。

 今回、大学法学部が三年で、法科大学院が二年加わった。しかし、この平均年齢を考えれば、やはり卒業してから受験する人がずっと続くだろう。その際には、合格をするがためのテクニックというものがやはり必要になってきて、予備校に通うだろうと私は思うんですよ。ある問題が出たらこういうふうに答えるというのが合格の早道だということで予備校が行われていく。これは公認会計士も一緒ですよ。司法試験も一緒です。

 どこを変えていけば、先ほどの弊害、例えば創造性を豊かにするような者を選抜できるという、試験問題にどういう工夫がなされるとそういう理想的な人だけを選ぶことができるんでしょうか。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、創造性に欠けるというような、旧試験のときの答案について指摘があったということでございますが、これは旧制度における司法試験がやはり点のみによる選抜だったということで、先ほど来話が出ておりますとおり、受験競争が激化して予備校に依存する傾向が高まっていったということでございまして、その中で、司法試験の答案につきましては、委員御指摘のような意見、創造性に欠けるというような答案がふえてきているというような意見も聞かれたというふうに承知しているところでございます。

 今回の法曹養成制度の改革ですが、こういったさまざまな問題点を克服するために、新たに法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度が導入され、高度の専門的な法律知識を有することはもとより、創造的な思考力あるいは法的分析力を有し、幅広い教養と豊かな人間性を基礎に十分な職業倫理を身につけ、社会のさまざまな分野において活躍する法曹を確保するということが目指されたものと理解しております。

 今回の法改正でございますが、こういった法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度が十分に機能するものとなることに向けての必要な改革を実施するものでございまして、法務省といたしましては、法科大学院の集中改革の取組を進める文部科学省等と連携いたしまして、法曹養成制度の趣旨を踏まえた必要な取組、司法試験制度の改革につきましても、しっかりと進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

串田委員 結局は試験制度をどうするかというところに尽きるような感じでしたよ、きのうの参考人質疑においても。

 創造性豊かな人を育てるのはいいんだけれども、最後は試験を受けてもらわなきゃいけないわけですから、それはある意味で、紙に書かれた問題文を解くわけですから、そこの中でどうやって創造性豊かな人間だけが選抜できるのかというのは極めて難しいわけで、それができるんだったら、旧司法試験のときでも問題文をそうすればよかっただけなんです。それを、法科大学院などを入れたことによって悪循環が発生したという、きのうの参考人の答えになっていくのではないかなと。

 だから、今回の改正がこの悪循環の続きなのか、悪循環を断ち切れるのかというところをやはりもうちょっと吟味しなければいけないんですけれども、どうもそこが曖昧であるという意味では、悪循環の続きという不安は払拭できないというふうにほかの委員の方も質問されているんじゃないかなと思うんですけれども。

 一つ、この新しい制度によって、予期しない、要するに想定していなかったことが起きているのではないかなと思うんですが、この新制度を導入したときの一つの理由として、これによって国内の事件数がふえるんだ、事件数がふえるから合格者もふえるんだ、合格者がふえることによって事件数もふえるんだ、そういうような指摘があったんですけれども、現実には国内での訴訟件数等はどういう推移をたどっているんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度が導入された平成十六年四月以降における裁判事件数の動向を見ますと、民事事件の第一審通常訴訟事件は、地裁、簡裁ともに、平成二十一年までおおむね増加傾向でございましたが、同年を最高値として減少している状況でございます。

 もっとも、民事事件につきましては、平成十八年ごろからの過払い金返還請求事件の影響がございますので、それを除けば減少の程度はわずかであり、ほぼ横ばい状況にあるというふうに見ております。

串田委員 今お答えのように、当初の立法事実としての前提として、訴訟件数がふえるというような前提自体が実は予想外だったというのがまず一つですね。

 もう一つは、受験者数が激減した。この受験者数の激減というのは当初予想されていたものだったんでしょうか、お願いいたします。

伯井政府参考人 私どもの法科大学院の志願者数という立場でいいますと、当初の七万二千八百人から、直近では九千百十七人と激減をしております。

 これは、当初、司法試験合格者三千人を目指して、先ほど来ありますが、法科大学院修了者の七割から八割が合格できる教育を行うということとしていたものでございますけれども、やはり、その三千人の数値目標が撤回されたこと、あるいは、実際の合格率が低迷したということでございますので、そういう減少でございます。

串田委員 もう一つ、改正をする一つの理由として、地域の弁護士の偏在化というものを是正することができるんだ、そういうことがうたわれていたんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 現行の法曹養成制度が導入された後、法曹有資格者の活動領域は着実に広がっておりまして、裁判実務に限られない国内外の幅広い分野で活躍する弁護士等が増加しているというふうに考えております。

 また、御指摘の弁護士の偏在、すなわち司法過疎問題につきましては、全国の地方・家庭裁判所支部管轄区域を単位といたしまして、登録弁護士が全くいない弁護士ゼロ支部につきましては、平成十六年十月時点で十六カ所でございましたが、平成二十二年十月以降は解消されております。

 また、弁護士が一人しかいない弁護士ワン支部につきましても、平成十六年十月時点で三十五カ所であったものが、平成二十五年十月以降は一カ所となっておりまして、いわゆる司法過疎地と呼ばれる地域は大きく減少したものと考えているところでございます。

 このように、法科大学院を中核とする現行の法曹養成制度が導入された後、法曹有資格者がその専門性を社会の幅広い分野で発揮して、多様な法律サービスを提供する環境が定着しつつある上、司法過疎地の減少によりまして、あまねく全国での国民の法律サービスへのアクセスも大幅に改善されてきたものと評価しているところでございます。

串田委員 偏在化に関しては、おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、それは、例えば、旧試験の場合には合格者が五百人だった、それを二千人ぐらいにふやしたわけですよ。先ほどの答えのように、国内での事件数というのは横ばいで、事件数が変わらないにもかかわらず、合格者の数は四倍ぐらいにふえている。そうすると、都市部での要するに訴訟というものには限界があるので、当然地方へと職場を広げていく。ですから、法科大学院ができたから偏在化が解消されたのではなくて、ただ単に、合格者がふえただけで偏在化の解消がなされたのではないか。

 何が言いたいかといえば、旧司法試験のときには受験者が非常に多かった。それが、受験激化ということがあったのかもしれませんけれども、ある意味ではそれは悪いことじゃないですよね、優秀な人間が選ばれるという意味ですから。今のようにどんどんどんどん減少していって、これじゃもう、受験すれば合格するぐらいな数になってしまっていいんだろうか、そういう状況にまでなりつつある、それよりは競争していた方がいいんじゃないかなと私は思うんですけれども。

 そういう意味で、法科大学院ができたから地方の偏在化が解消されていったというふうにお思いになられているのか、その原因をお示しいただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、弁護士の偏在あるいは司法過疎の解消といった問題、これは、法曹の輩出規模、要するに、合格者数が拡大したことに主たる原因があるのではないかというような御指摘だと思いますけれども、そういった部分もあると思いますけれども、それにとどまらず、法科大学院等におきまして、例えば、公益活動の担い手を育成するためのコースを設けたり、渉外法務等で活躍できる法曹の養成を目的とする専攻を設けたりするなど、社会のさまざまなニーズに対応して、幅広い分野で活躍できる法曹を輩出するための各種の教育プログラムを設ける取組がされてきたところでございまして、こういった取組も含めて、全体として、多様な法曹が社会のさまざまな場面で広く活躍している現在の状況につながっているものというふうに考えているところでございます。

串田委員 そういうような教育は司法研修所ですればよかったと思うんですよね。昔の司法研修所は期間が二年間だったのが、今、一年になって、二分の一になってしまった。そして、法科大学院というのが入って、非常に、今や卒業した時点で、平均して大体八百万円ぐらいの借金を負いながら卒業しているというふうにも言われています。ただ単に、経済的に裕福な人間しか受験ができなくなってしまったので、受験者数が、志望者数が少なくなったんじゃないかという指摘もあるわけでございます。

 そういう意味では、研修所を二分の一にしてしまったというのが大変私としては残念なのかな、そこの部分を充実をさせていけばよかったんじゃないかなと思うんですけれども。

 先ほど、競争激化ということがあった、極端な志望者数が減ったということであります。これに対する何らかの解消をしなきゃいけないというのも、恐らく今度の改正においての目標値だと思うんですけれども。

 それでは、適正な倍率というのはどの程度のことを想定しているのかをお聞きしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の倍率、司法試験の合格率につきましては、毎年の司法試験の出願者と合格者数の関係により定まるものでございますが、司法試験における合格者の判定は、実際の試験の結果に基づいて、法曹となろうとする者に必要な学識及びその応用能力の有無の観点から、司法試験考査委員の合議によって行われ、この判定に基づいて司法試験委員会において合格者が決定されているものと承知しております。

 したがいまして、法務省といたしまして、司法試験合格率の適正な倍率につきましてちょっとお答えすることは困難でございます。

串田委員 ただ、ある程度の想定をしないと、やはり悪循環になってしまうんじゃないかなと。その悪循環という参考人の発言というのは、ここの委員会の方も皆さん聞いていたと思うんですけれども、何をもって悪循環と言っているのかという話にはなると思うんです。その方は、法科大学院の教授でありましたし、豊かな法曹養成においては法科大学院は必要だったとおっしゃっていて、要するに、法科大学院の存在意義というものを一番に力説をされていた方です。その方が悪循環とおっしゃるところは、じゃ、一体何だろうかといえば、やはり受験者数の激減というところが一番かな、志望者数の激減というのが一番かなと思いますので、今回の改正で、これが改善されるかどうかということの想定がなかったら、これは改正する必要がないんじゃないかと思うんですけれども。

 志望者数がふえるとは思っていない改正なんでしょうか、それとも、志望者数がふえると思われている改正なんでしょうか。

伯井政府参考人 今回の改正は、法科大学院教育の充実を図るとともに、法曹志願者の時間的、経済的負担の軽減のために、法学部三年プラス法科大学院二年の標準的養成プロセスの見直しということを行うわけでございますが、このことによって、法科大学院の志願者、ひいては法曹志願者の増をもたらすよう努力してまいりたいと考えております。

串田委員 結局、その法科大学院というのをずっとおっしゃっておられるんですけれども、その在学中に受験をすることができるということになると、法学部の三年次においては法科大学院の受験勉強を行う、そして、入った途端に翌年の司法試験の勉強を始めるという。きのうの参考人の話によれば、あるおかずを六十センチの皿に載せていたのを、お皿を四十センチにすれば、おかずははみ出ますよねという、参考人がお答えになっていましたけれども、豊かな法曹を育てようとしている受験制度が、法学部の三年の時点では法科大学院の受験を目指し、入った途端に翌年の司法試験の勉強を始めると。これで豊かな法曹を養成できるというふうにお考えになっている根拠を示していただきたいと思います。

伯井政府参考人 今回の法学部三年と法科大学院二年の3+2のルートにつきましては、法科大学院への入学者選抜については、特別枠の設定など、今言ったような御懸念がないような取組というのも行っていく考えでございます。

 一方で、今回の改革案においても、法学部は法的思考や政治学的識見の基礎を身につけた人材の養成など幅広い目的を有する一方、法科大学院は多様な人材を法曹として養成するという基本理念のもと実務能力、多様な法分野を含めてしっかり学修する場であり、この3+2は、両者が連携してより効果的な教育を行うということでございますので、法曹を志望する学生が法学部の在学段階から幅広い学修を行いつつ法科大学院と一貫した教育を受けるということの、カリキュラム編成上の工夫というのもしっかり行ってまいりたいと考えております。

串田委員 昨日の参考人質疑においては、今回の改正というのは、結局、法学部を五年にするだけではないか、そして、その中で、人気がない法科大学院を何とか救うために、法学部は三年に短くして、中に入れ込んで五年にしただけじゃないかと。これは、入学金もかかれば、ほかの費用もかかる。今までは四年の学部で卒業できたのを、わざわざ学部は三年にして法科大学院を無理やりくっつけて、結局は五年で受験できるようにしただけじゃないか、そういうやりとりが昨日行われていましたが、大臣、このやりとりに関してはどのような感想でしょうか。

柴山国務大臣 それは当たりません。

 先ほど畑野委員からも問題意識を提示していただきましたけれども、あくまでも法科大学院というのは、さっき3+2を標準的な運用にすると言いましたし、今、伯井局長からは法学部での学修とそれから法科大学院の履修との連携ということも答えさせていただきましたけれども、これは決して、法学未修者を含む多様な人材を法曹として養成するという基本理念に変更を迫ることを意味するものではありません。

 連携をするというコースももちろん大切ですけれども、あくまでも法科大学院は法学部とは違う性質を持つものであって、実務能力や多様な法分野を含めて、少人数によるディスカッションなどのさまざまな工夫をしながらその実務能力を高める場でありまして、そういう過程を大切にするがゆえに、従来の予備校、マスプロの授業などでは代替できない能力、資質というものを伸ばしていくというプロセスであるということをぜひ御理解いただきたいというように思います。

串田委員 大臣のおっしゃられる内容もわからなくはないんですけれども、要するに、悪循環が始まったのは法科大学院が入ったからだということは言えると思うんですよ。その制度の仕方がもしかしたら失敗して、法科大学院の入れ方がもう少しうまければ悪循環と言われないで済んだのかもしれませんが、少なくとも、悪循環という言葉はきのう出たわけです。

 そして、きのうすごく残念だったのは、未修生というものを非常に能力の低いような、大変なんだ、合格まで上げるのは大変なんだというような、そんなようなニュアンスであったんですけれども、かつての司法試験の場合には、法学部以外の学部から司法試験を受験しまた合格をしている人というのは、法学部から見ると天才というふうに思っていたんですよ。

 例えば、理工学部を出たのに司法試験に合格した、文学部を出たのに司法試験に合格した、医療系を出たのに司法試験に合格した、今や、著作権だとかプログラムだとか知的財産権、こういったようなことは、やはり理工系を卒業した人が司法試験に合格した方がはるかに活躍もできるでしょうし、文学部でいろいろな言語を勉強した人の方が、国際的なやりとりをする国際的なそういう訴訟にも秀でているでしょうし、医療系であれば医療訴訟の医療過誤にも発揮できるし、裁判官もしっかりと医療の解決をしていくことができる。

 ところが、今のこの制度は、法学部に法科大学院をくっつけてしまっているから、他学部の出身者がなかなか入り込めないんですよ。そして、未修生というような形で追いやられて、一年では追いつけないねなんというような話になってしまっているんですね。

 きのうの参考人質疑の中では、外国もそうしているんだから日本ができないわけはないと言っていますけれども、むしろここでは、他学部を卒業したのに司法試験に合格をして、いろいろな専門的な、プロフェッショナルな部分にそういう法曹界の人間が送り込める日本独自の制度を確立するチャンスでもあったと思うんですよね。諸外国に合わせればいいというものではないと思うんですが、大臣、最後、答弁をお願いいたします。

柴山国務大臣 おっしゃるとおりです。

 多様なバックグラウンドを有する者が法律に関係する分野でその知見を生かせるようにする、未修者であっても、他学部卒業者であっても、そういうやはりチャンスを開くということは極めて重要だと考えております。

 現に、法学部以外を卒業した人が、法科大学院を修了して司法試験に合格し、社会のさまざまな分野で活躍しているという事例も少なくありません。

 したがって、今後とも、法科大学院において法学未修者を含む多様な人材を法曹として養成するという基本理念に、先ほど申し上げたように変更はありませんし、そのための制度的な後押しというのを、じゃ、どうするかということなんですけれども、その多様性の確保を一層促進するために、例えば、入学者選抜の時期、方法などについて、休日受験など工夫するとか、あるいは、社会人に対する配慮をする方法などについて規定するということを法改正においてうたっております。

 さらに、法改正とあわせた改革の中では、未修者教育、社会人教育への支援を含むめり張りある予算配分の継続、各法科大学院が共通して客観的に進級判定に活用する共通到達度確認試験の本年度からの本格実施といった取組も推進してまいります。

 それ以外の部分についても、引き続き、中教審法科大学院等特別委員会等において未修者教育の改善方策について具体的に議論をいただくなど、法曹となる者の多様性の確保に努めていきたいと考えております。

串田委員 時間になりましたが、他学部を卒業して司法試験に受かっている人というのはやはりすぐれているんですよ。その人たちをわざわざまた法科大学院に入れる必要はないんだと思います。そういうようなことは余分だということで魅力がなくなっていくんだと思います。

 終わります。ありがとうございました。

亀岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 昨日の参考人質疑、意見陳述した山本参考人は、中教審の特別委員会の座長代理を務めてきましたが、二〇一七年二月十三日の委員会で、今回の改正が法科大学院制度を抜本的に立て直すための最後のチャンスと述べておられます。先ほど悪循環というお話もありましたが、この特別委員会の中では最後の、ラストチャンスだと。それだけ危機感が伝わってまいりますし、実際に法科大学院制度というのは危機的な状況に置かれているということだというふうに私自身は思います。

 司法制度改革の出発点、二〇〇一年六月に取りまとめられた司法制度改革審議会の意見書では、司法制度改革について、その成功なくして二十一世紀社会の展望を切り開くことが困難であると、その重要性を指摘しております。とりわけ、法曹は国民の社会生活上の医師だとして、質、量ともに拡充していくといたしました。

 その法曹養成の中核に位置づけられたのが法科大学院ですが、司法制度改革という大きな枠組みの中で法曹養成の現状をどのように評価されているでしょうか。

柴山国務大臣 法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度は、平成十六年度、質、量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹の養成を目指して導入され、その後、十五年が経過した今、幅広い分野や司法過疎地で活躍する弁護士が増加するなど、一定の成果を上げてきたというように思います。

 ただ、制度発足時に法科大学院の参入を広く認めた結果、数多くの法科大学院が設置をされてしまって過大な定員規模となって、司法試験合格者数についても当初の目標が実現できない中、合格率が全体として低迷する事態となっております。また、法曹を目指す多くの学生も、時間的、経済的負担が大きいと感じるようになっている、こうした中で法曹志望者が大幅な減少を招く状況となってしまったことは、真摯に受けとめなければいけないというように思っております。

 こうした課題を解消するため、プロセスとしての法曹養成制度は引き続き重要であるという認識には立ちつつ、一人でも多くの有為な若者が自信を持って法曹を目指すことができるような改革が必要であると考えております。

吉川(元)委員 今大臣も言われましたが、法科大学院修了者の司法試験合格率の低迷、あるいは法科大学院志願者数の激減と大学院数の半減、この事実を見ただけでも、法科大学院制度が当初目指していたとおり進んでいないというのはもう一目瞭然だろうというふうに思います。昨日の参考人質疑でも、司法制度の理念は崇高で今も正しいが現状は失敗だという、大変厳しい指摘もございました。

 司法制度改革審議会の意見書では、小泉構造改革、当時は規制緩和、何でもかんでも規制緩和と、最近は少しそれは軌道修正をされておりますが、そういう時代背景のもとで、過度の事前規制・調整型社会から事後監視・救済型社会への転換を図る、そのために法曹の質、量を大幅に拡充することは不可欠、こういうふうに位置づけられておりました。

 問題は、この見通し、いわば司法制度改革の大前提自体が正しかったのかどうか、そういうことだろうというふうに思います。

 事前規制は今でも大変私は重要だというふうに思います。そして必要なものだというふうにも思います。働き方改革一つとっても、法制度による規制なくして働く者を保護することはできない、そういう中で、初めて法定して上限を規制する、こういうことも行われたわけで、そういうことを見れば一目瞭然だろう。事後監視・救済型社会に転換したというふうに私は思えませんし、実態はそうではないだろう。加えて、法曹の質は別にして、その量に関しては、社会全体が差し迫って大幅な供給を必要としているというふうにも思えません。

 法科大学院設置の前提となった司法制度改革そのものについて、その成否も含めて真剣に検証、総括をする必要性があると思いますが、この点はいかがですか。法務省。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 法曹人口の増大の必要性が指摘されておりました平成十三年六月の司法制度改革審議会意見書でございますが、これは、国民生活のさまざまな場面における法曹需要が増大することが予想され、その対応のためにも法曹人口増大の必要性が指摘されておりまして、平成十四年三月の閣議決定において、平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることが目標とされたわけでございます。

 ところが、司法試験の合格者数は平成二十二年以降も二千人程度にとどまり年間合格者数三千人の目標が未達成であったことや、法曹有資格者の活動領域拡大がいまだ限定的であり、司法修習終了直後の弁護士未登録者数が増加傾向にあり、また法律事務所への就職が困難な状況がうかがわれたということから、平成二十五年七月の法曹養成制度関係閣僚会議決定におきまして、司法試験の年間合格者数を三千人程度とする目標は、現実性を欠くものとして事実上撤回されております。

 また、現在の法曹養成制度につきましては、平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきまして、「法科大学院全体としての司法試験合格率や、弁護士を含む法曹有資格者の活動の場の拡がりなどが、制度創設当初に期待されていた状況と異なるものとなり、法曹志望者の減少を招来する事態に陥っている。」とされております。

 このように、司法試験の合格者数や弁護士の活動の場の広がりなどが、結果として当初想定されていた状況と異なるものとなったことは、法務省としても残念に思っているところでございます。

 法務省といたしましては、この法曹養成制度改革推進会議決定の内容を踏まえまして、関係機関等と連携しつつ、法曹有資格者の活動領域の拡大に向けた取組など、法曹志望者の回復に向けて必要な取組を引き続きしっかり進めていきたいと考えているところでございます。

吉川(元)委員 ちょっと、今長々と答弁されましたが、三千人を目指したけれども三千人に届かない、だから問題が発生したんだというような言い方をされていますけれども、その当時、司法制度改革、その出発点にあった、そういう社会状況と今の社会状況が違うからこそ、法科大学院は課題を抱えているんじゃないんですか。何か今の話だと、三千人を目指したけれども二千人程度しかいかなかったから問題が発生した、それは原因と結果を逆に言っているとしか思えないんですけれども、もう一度答弁をお願いします。

小出政府参考人 お答えいたします。

 申しわけございません、繰り返しになってしまうかもしれませんけれども……(吉川(元)委員「繰り返しだったらいいですよ」と呼ぶ)二十二年以降も合格者が二千人程度にとどまったことや、有資格者の活動領域がいまだ限定的であったこと、あるいは弁護士未登録者数が増加傾向にあったというようなことが、二十五年七月の法曹養成関係閣僚会議決定においてうたわれているところでございます。

柴山国務大臣 ちょっといいですか。

 原因と結果が違うんじゃないか、全くそのとおりです。

 私は司法制度改革を、要するに、議員になりたてのころ、真剣に心血注いでやってきたつもりであります。その当時においては、結局、物事を解決するのに、弱い者は泣き寝入りをする、何か、政治家とかあるいは反社会的勢力はもめごとのトラブルシューターをやっている、そういったことで、結局、日本全国津々浦々にきちんと法律とそれから適正手続によって物事を解決する仕組みが行き渡っていない、これを何とかして解決するためには、やはりあまねく、過疎地も含めて、法曹資格を持っている者がこれからどんどんどんどん必要になってくるだろう、また事件数もやはりふえてくるだろう、そういう見通しだったんです。

 ところが、おっしゃるように、なかなかそういった社会になっていかなかった。ただ、それは今おっしゃるように、では、事前規制型から事後規制に移るのが本当によい社会のプロセスだったかというと、確かにおっしゃるとおり、今の先進国、アメリカなどの状況を見ていると、それが一〇〇%よかったとは思いません。ですので、見違いがあったということは、御指摘のとおり、事実であります。

 でも、その上で、やはりそういった今の日本型の社会においても、事前予防的なプロセスを担える法律実務家、資格を持っている方をきちんと配置をしていくということの大切さを我々としてはしっかりと進めていきたいというふうに考えております。

吉川(元)委員 それでは、もう次の質問に。大臣がおっしゃることの方が、まだきちんと私の質問に答えた答弁だというふうに思います。

 やはり、今おっしゃったとおり、法務大臣に来ていただいて話を聞かないと。聞いたことにちゃんと答えられない。これは通告しているんですよ、きちんと、きのう。それなのにああいういいかげんな答弁をされるということであれば、私は連合審査をずっと求めていますけれども、やはり必要だというふうに思いますし、ぜひ法務大臣のお話も聞かせていただかないと。

 これはやはり見通しが甘かった、大きな失敗が生まれて、結果としてこうなっている。それを手直しするときにまた失敗する可能性がありますよ。しっかりとした議論をしないと、しかも、法務大臣も入れて議論しないと、私は結果的にまた禍根を残すことにつながってしまうと思いますので、ぜひ連合審査を前向きに検討いただきたいと思います。委員長。

亀岡委員長 意見として承りました。

吉川(元)委員 それでは、もう少し具体的にお聞きしたいと思います。

 今お話しあったとおり、司法試験合格者三千人、そして、法科大学院修了者の七割、八割が合格できる教育を行うことが目標とされておりました。しかし、単年度の合格率、昨年度は全体で二九・一%、法科大学院修了者で見ると二四・八%にとどまっております。

 当初の目標から大きく遠ざかっている合格率ですが、これは一体どこにその原因があるのか。法科大学院の教育内容に課題があるのか、あるいは優秀な人が集まらなかったのか、それとも司法試験そのものが問題があったのか。あるいは、先ほど言いましたけれども、司法制度改革当時の見込みが崩れて、法曹人材の供給過多を懸念し、合格率をあえて低目に厳しく設定しているのか。一体、原因はどこにあったとお考えでしょうか。

伯井政府参考人 まず一点目は、先ほどのまさに御指摘のとおり、制度発足当時、いわば事前規制から事後チェックの流れの中で法科大学院の参入を広く認めた結果、過大な定員規模となり、法科大学院修了者の合格率が全体として低迷するということとなったと分析しております。

 また、やはりそれも踏まえ、それだけでなく、司法試験で求められる資質、能力を確実に身につけられる教育を法科大学院全体として十分に提供できていなかったのではないかというような現状も直視しなければならないというふうに考えております。

 こうした現状をしっかり踏まえまして、今回の法案におきましては、法科大学院教育を抜本的に充実するということとともに、文科大臣と法務大臣による法科大学院の定員管理を導入するということで、しっかりそこの定員は上限を設けてチェックしていくというような仕組みをつくるということでございます。

吉川(元)委員 関連してお聞きしますが、法科大学院への志望者数自体、先ほど、その定員を絞る、きちんとチェックしていくというお話でしたけれども、志望者数自体がそもそも大幅に減少して、二〇〇四年から比べますと二〇一八年は十分の一程度に減少を、まあ、激減ですよね、してしまっていると。

 これはもう、私が感じるのは、ほかの委員も質問されていましたけれども、法科大学院に行っても、七割、八割は合格しない。非常に合格率が低くて、そしてお金もかかる。そういうことでいいのか。原因をどう把握していますか。

伯井政府参考人 これも先ほど来お答え申し上げております。

 当初は司法試験合格者三千人を目指して法科大学院修了者の七割から八割が合格できる教育を行うということとされてスタートをしたわけでございますが、しかし、当初の見込みと異なる状況になりました。司法試験合格者数は三千人の目標は撤回されて、現在は当面千五百人程度輩出とされているところでございます。

 そういう意味におきまして、法科大学院志望者の激減などを招いた原因としては、司法試験合格率、法科大学院修了者の合格率が二から三割と低迷していること、さらには、平成三十年度に実施した法学部学生に対するアンケート調査結果でもわかりますように、法曹資格取得までに時間的、経済的負担がかかるといったことが法曹を志望する学生の不安、迷いにつながっていることがこの激減の原因かなというふうに考えております。

吉川(元)委員 現在、司法試験の受験資格を得るには、法科大学院を修了するか、あるいは予備試験に合格するしか道がない。法科大学院への入学者は減少してきたわけですから、司法試験受験者も減少するのはごく自然なんだろう。今年度の司法試験の出願者数、先ごろ公表されましたけれども、ついに五千人を切るところまで来てしまっていて、司法試験の受験者はかつては五万人近かったというふうに思いますが、これもやはり十分の一に激減をしてしまっています。

 もちろん、実際に司法試験に合格をして、そしてそこをクリアして法曹界に入っていくという人たち、この人たちも必要ですが、簡単に言うと、かつて法律を真剣に勉強して、何とか法曹界に入ろう、そのために恐らく寝る間も惜しんで勉強して、そして試験を受けて、低い合格率ですから、結果的に残念ながら法曹界に入れなかった人たちもいます。だけれども、その人たちも法律を懸命に勉強したわけですよ。ところが、その人の数が十分の一に減ってしまった。真剣に法律を勉強し、司法試験を受けようという人たちの数が十分の一になったというのは、これは非常に深刻な事態なんじゃないかというふうに思います。

 昨日の参考人質疑でも、伊藤参考人だったと思いますけれども、この司法制度改革で司法試験の受験資格を設けたことを最大の原因として、法曹への間口が閉ざされてしまった、こういう指摘がありましたけれども、この点についてどのようにお考えですか。

小出政府参考人 現行司法試験におきましては、司法試験受験資格が法科大学院課程を修了した者、それから予備試験に合格した者に与えられるということになっております。司法試験受験者数が減少しているというのも委員御指摘のとおりでございまして、平成十五年の四万五千三百七十人をピークに、現行司法試験の受験者につきましても、一昨年は五千九百六十七人、昨年は五千二百三十八人と、七百二十九人減少しているところでございます。

 この減少の理由につきましてもさまざまな要因が考えられますけれども、やはり法科大学院入学者数が減少して、それに伴いまして法科大学院の修了者数が減少しているというのが大きく影響しているものというふうに考えているところでございます。

 司法試験の受験資格をこういう形で法科大学院課程の修了及び予備試験に合格した者ということで定めている結果、法曹志望者の減少ということを招いているというのも一つそういう要因があるのかもしれませんが、いずれにしても、この法曹志望者の大幅な減少は深刻な事態でありまして、多くの有為な人材が法曹を志望し、質の高い法曹が活躍できるようになることが重要であるというふうに考えておりまして、法務省といたしましても、法科大学院改革のほか、法曹有資格者の活動領域の拡大、また、法曹人口のあり方、司法試験のあり方等の検討の取組を進めていきたいというふうに考えておりまして、引き続き法曹志望者の回復に向けて取組をしっかり進めていきたいというふうに考えているところでございます。

吉川(元)委員 私はこれは本当に深刻だというふうに思いますね。三千人なのか千五百人なのか、それはいろいろあると思います。ただ、法律家になろう、法曹に行こうという人たちそのものの数が減ってしまったというのは、私はこれは社会にとっては非常に大きな損失だというふうに言わざるを得ないと思います。

 先ほども少しありましたけれども、二〇一五年六月の法曹養成制度改革推進会議の決定、新たな法曹を年間千五百人程度輩出することを目標としておりました。これは、三千人の半分ですから、このところだけとっても、やはり司法制度改革自体を検証、見直しすべきと考えます。

 それはとりあえずこの場は置いておいて、千五百人の根拠、これはどこにあるのでしょうか。当時三千人と言ったときには、今から日本社会はこうなっていく、先ほど大臣が答弁されたように、弱い者が泣き寝入りをすることなく、きちんと権利を守られる、そのためにはこれだけの法曹人口が必要だということで三千人というものを出したと思うんです。今回の千五百人というのは、これはどういう理由で、根拠で出された数字なんでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきまして千五百人という数字が示されているわけでございますが、この推進会議決定では、平成二十七年四月の法曹人口調査の結果を踏まえた上で出されているものでございます。この法曹人口調査というものは、法曹需要あるいは法曹の供給状況、法曹の養成課程等の現状等を、非常に、アンケート等いろいろな形で調査した上で出されたものでございまして、その法曹人口調査の結果を踏まえまして、推進会議決定におきましては、現行の法曹養成制度のもとでこれまで千八百人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても千五百人程度を輩出されるよう必要な取組を進め、さらにはこれにとどまることなく、関係者おのおのが最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され活躍する状況になることを目指すべきであるとされているものでございます。(発言する者あり)

吉川(元)委員 今上がりましたけれども、私も全く同じ思いです、三千人は一体何だったのかと。恐らく、さきに大臣と少しやらせていただきましたけれども、その予想が外れていたと。

 今、答弁したときに、法曹需要含めていろいろ検討して、しかも、それとあわせて、最近の合格者数が大体千八百前後、千五百を少し超えるぐらいということを言われるわけです。そうすると、どうしても思うのは、今の現状に合わせているだけなんじゃないか、本当にきちんと社会のありようを含めて考えた上での数字なのかというふうに思わざるを得ません。

 同じようなことが、実は法科大学院の定員についても言えます。

 今回、二千三百人程度を上回らない規模とする告示を出すことになっています。これは、今年度の定員は二千二百五十三人。これも、現実、今現状がこうなっているからこれを基準にしようという、その意味でいうと、泥縄というか、本当に現状を追認するだけの数字になってしまっているんじゃないのかというふうに思います。

 そういう意味でいうと、司法試験合格率の低迷、あるいは法科大学院入学者の激減、その原因を詳細に検証、総括することなく、定員については今に合わせよう、そういうふうになってしまいますと、私はそうは信じたくないんですけれども、昨日伊藤参考人が、今回の法改正が法科大学院の生き残り策と言われてもこれは仕方がないんじゃないかと、このことについては指摘だけさせていただきたいと思います。

 次に、昨年度の法科大学院への入学状況についてお聞きします。

 志願者数八千五十八人に対して、合格者数は三千五百二十一人、しかしながら入学者数は千六百二十一人にとどまって、入学定員二千三百三十人に対して充足率は〇・七にとどまっております。

 合格者数に対して入学者数が半数以下にとどまったということは、これは一体どういうところに原因があるのでしょうか。

伯井政府参考人 入学者数が合格者数の半分程度となっておりますのは、複数の法科大学院を受験し合格した上で、一つの法科大学院を進学先として選択した人がいるということ、あるいは、法科大学院に合格したものの、就職など別の進路を選択した者がいるといった理由が考えられるところでございます。

吉川(元)委員 思われますじゃなくて。しかも、二つ今言われました。複数受けて、普通の大学入試もそうだと思います、幾つかの大学を受けて、その中で希望する大学に合格すればそこに行くということだと思います。もう一つは、合格したけれども、就職をしたから。

 原因がどこにあるのかというのは、と思いますだとか、と推測されますではなくて、実態はどうなっているのか。主観的なことではなくて、実態として調査されているんですか。

    〔委員長退席、義家委員長代理着席〕

伯井政府参考人 現状においては今申し上げましたような理由が考えられるということで、詳細な調査は今後に考えたいと思っております。

吉川(元)委員 法案を出しているんでしょう。法案を出しているということは、そういうこともきちんと調べた上で、例えば、上限二千三百人程度を上回らない規模とする。何でこの充足率が〇・七なのかということをきちんと調べないまま、こんなことをやっているんですか。ちょっと私は理解ができないといいますか、結局、現状追認以上のものではないんじゃないかと言わざるを得ません。

 当然、複数法科大学院を受けて、一番希望するところ、恐らく教育内容あるいは司法試験の合格率、こういうのを見て学生も法科大学院を選んでいるんだろうというふうに思います。今回の法改正で、大学の法学部と法科大学院との間で法曹養成の連携がスタートします。となりますと、学生によって選択される法科大学院がますます絞られていって、大きく定員割れをするような法科大学院が今後も出てくる可能性は非常に高いんじゃないか。

 文科省としては、今後も既存の法科大学院の撤退や淘汰が続く、そのように予想され、またそれを是とされているのか、教えてください。

伯井政府参考人 先ほどよく調べろという御指摘がございましたが、複数の法科大学院に合格した者が進学先を選ぶ観点としては、司法試験合格率であったりカリキュラムの内容であったり、あるいは学費の額、奨学金制度、そういったさまざまなものが想定されるところでございます。

 私どもといたしましては、各法科大学院において、法学部との連携の有無にかかわらず、教育内容の充実に努めていただきたい、さらに、法科大学院志願者の進路選択に資するよう情報を積極的に公表していただきたいということで、撤退、淘汰を進めるということではなく、むしろ、多くの有為な志願者の確保に向けて、そういういい意味の競争をしていただきたいというふうに考えております。そのため、今回の改正案におきましても、法科大学院の教育課程等の公表に係る規定を新設し、正確な情報を提供するよう求めていくところでございます。

吉川(元)委員 いや、結果として淘汰が進むんじゃないんですか。そうならないというふうに考えているんですか。そうならないようにしたいと言うのは、それは結構ですけれども、結果としてそうなるんじゃないんですかと聞いているんです。

伯井政府参考人 まずは、定員充足率をしっかり満たしていただくよう、多くの有為の志願者の確保につなげるような教育の充実、あるいは積極的な情報公表を求めていきたいというものでございます。

吉川(元)委員 ちょっと、ほかにもいっぱい質問しなきゃいけないものがありますので、次の質問に移りますけれども。

 いろいろ聞けば聞くほど、例えば、この制度改革をなぜするのか、こういう理由がある、こういう原因がある、だからこういう制度改革をしました、その制度改革をした結果としてどんなことが起こるのか、それは非常にシビアなことが起こる可能性だってあるわけです、そういうことも含めて全て考えた上でつくられているのか。今聞いていると、そうならないように頑張ります、そうならないようにやってもらいますと。それじゃ全然だめだというふうに私は思いますよ。

 次に、今回の法学部と法科大学院の連携に関連してお聞きしますけれども、学部を三年で早期卒業あるいは法科大学院に飛び入学できるよう学部に法曹コースを設けるよう、これは奨励することとしております。さらに、法科大学院在学中の司法試験受験資格も認めることで、現在より、最も早ければ二年短縮で五年間で受験資格を得ることができるようになる。

 最初に、五年一貫型、いわゆる3+2についてお聞きしますけれども、法曹コース新設に伴う法科大学院入学者選抜のイメージ図を見せていただきましたが、それによると、この法曹コースを選択した学部生のうち、五年一貫型、いわゆる3+2の枠を最大六百人程度としております。この六百人の数字の根拠を教えてください。

伯井政府参考人 中教審で連携法曹基礎課程、法曹コースの制度設計を御議論いただく中で、法曹コースから法科大学院への接続を確保するため、法曹コース修了予定者を対象とする選抜枠の設定を認めるべきであるという御議論があった一方で、その中で、特に法曹コースの成績をもって法科大学院既修者コースの入学者選抜に完全に代替させる五年一貫型選抜枠については、入学者の質の確保の観点から、制度が安定するまでは入学定員の四分の一を上限とすべきだと。これは、ほかのルートで入ってくる人にも道を確保するべきだということもございます。

 といった、全体の四分の一を上限とすべきだという意見を踏まえまして、現状の定員規模を踏まえると、五年一貫型特別選抜枠の上限は六百人程度となるわけでございます。

    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

吉川(元)委員 なぜ四分の一なのかを含めてよくわからないので、また次の機会に聞きたいというふうに思います。

 以上で終わります。

亀岡委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 未来日本の笠でございます。

 私、きょう午前中、他委員会で質問していたので、ちょっと審議を聞いていませんので、若干かぶるところがあったらお許しをいただきたいというふうに思っております。

 それで、まず、ちょっと法務省の方にお伺いをしたいというふうに思っておりますけれども、今回、先ほどもかなり議論がございましたけれども、過去、かつて政府は、二〇一三年に三千人計画というものを撤回して、二〇一五年に千五百人以上に下方修正をしたということで、先ほど少し議論になっていましたけれども、本当に今後の法曹需要というものがどういうふうになっていくというふうに今政府として考えているのか、もう一度改めてお伺いします。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 今後のあるべき法曹の姿として、社会の法的需要に応え、高度の法的知識はもとより、幅広い教養と豊かな人間性を基礎に十分な職業倫理を身につけた法曹が社会のさまざまな分野において広く活躍することが期待されていると認識しているわけでございます。

 そして、この法曹需要を踏まえた適正な法曹人口のあり方についてはさまざまな意見があると承知しておりますが、政府の法曹養成制度改革推進会議決定では、法曹人口のあり方について、法曹需要を含めた法曹人口調査の結果等を踏まえた上で、新たな法曹を年間千五百人程度は輩出できるよう必要な取組を進め、さらには、これにとどまることなく、社会の法的需要に応えるため、より多くの質の高い法曹が輩出される状況を目指すべきだとされているわけです。

 法務省といたしましては、この推進会議決定を踏まえ、関係機関、団体の協力を得ながら、裁判事件数の推移、国の機関や地方公共団体に在籍する弁護士数の推移、企業内弁護士数の推移など、法曹需要を踏まえた法曹人口のあり方に関する必要なデータ集積を継続して行っているところでございます。

 現時点において今後の法曹需要の見込みについて具体的なことを申し上げることは困難ではございますが、法務省としては、今後、必要なデータの一定の集積や法科大学院改革の成果等を踏まえた上で、高い質を有し、かつ国民の法的需要に十分応えることができる法曹の輩出規模について必要な検討を行ってまいります。

笠委員 さっき役所が言っていたのと同じなんだけれども。

 要するに、二〇〇二年の、司法試験の合格者数を二〇一〇年ごろに年間三千人計画ということで閣議決定したものを、その半分まで減らして、今、千五百人程度というか、そういうふうにしているわけですよ。

 しかし、そもそもが本当にどれぐらいの需要があるのか。そもそも、だって、そこの読み間違いから始まってきているわけでしょう。先ほどそれは文科大臣も認めておられた。仕方ないんです、誤ったことは。であるならば、今度、大改革をするというんだったら、同じことを繰り返すと、法科大学院なんかなくなっちゃいますよ、間違いなく。

 だから、もっと真剣に、例えば、では法曹をもっとふやしていくという政策もあっていいんですよ。例えば、先ほどもありましたけれども、やはり法律をいろいろと学んだ人材がいろいろな場面で活躍をしていく機会というのは、大きなグローバル化であるとかデジタル化であるとか、さまざま本当に人材というのは必要になってくるわけだから。

 だから、その辺を、やはりこれは政府としてもう一度しっかりと検討して、そして、これぐらいの人数はしっかりと確保していくんだという目標を明確に掲げていただけませんか。時間をしっかり、何というか、あした決めろとかそういうことじゃないんですけれども。そうしないと、例えば、この後質問しますけれども、法科大学院の定員をどうしていくのかというようなことも含めて、全て私はそこに影響が出てくると思うんですけれども。改めて、政務官、よろしくお願いします。

門山大臣政務官 当面は千五百人程度というふうにしているわけでございますけれども、やはりデータ集積を継続して行い、しっかりと必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

笠委員 ぜひそこは本当にやっていただきたいというふうに思います。それは答弁は要らないですけれども、柴山大臣も法曹でもありますから、よろしくお願いをいたします。

 そして、法務省の方に引き続きちょっと伺いたいんですけれども、今現在、法曹養成の流れの中で、法科大学院を経て、そして司法試験、もう一つは予備試験というような形で二つのコースがあるわけですけれども、どちらのコースをたどるにしても、これはちょっと後で聞きますけれども、いずれにしても、先ほど来あるような、これからのあるべき人材、法曹養成における求められる人材をきちっと育成をしていく、養成をしていくためには、私は、司法試験をきちっと見直していかなければ、試験を受けなくてもいいようなシステムにするんだったら別だけれども、必ず司法試験というものを全員が受けなければならないのであれば、やはりここの中身を変えていくということによって、それが法科大学院にしろ、あるいは予備試験の試験の科目であったとしても、内容であったとしても、それに合わせて変えていくしかないと思うんですね。

 ただ、その姿というものが今見えてこないんですけれども、この際、やはりしっかりと司法試験というものを根本的に、この中身というものを見直していく、検討していくお考えがあるのかを門山政務官にお伺いしたいと思います。(発言する者あり)

亀岡委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

亀岡委員長 では、速記を起こしてください。

 門山政務官。

門山大臣政務官 今回も司法試験法の改正は一部やるわけでございますけれども、その運用も見ながら、しっかりと、根本的なという意味はいろいろあると思いますけれども、それについても、司法試験の内容とかになればやはり委員会の方でやることになると思いますけれども、しっかりとそれはそこでやっていただくことになると思います。

笠委員 きのう、参考人の方からも、まさにこの法科大学院の責任者の方からも、司法試験については、問題の作成の体制を含めて、内容については早急に見直ししないと、この法案は通ったけれども司法試験はそのままということであれば、それは確かに数年後には法科大学院はないということになるかもしれないというような、非常に危機感を持っておられました。

 だから、政務官、どういう方向にしろとまで今言っていないんですよ。きちんとした形で、やはり試験というものを変えることで全部変わってくるんですよ、大学入試も同じですよ。だから、やはりそのことを早急に検討していくということをぜひお約束していただけますか。

小出政府参考人 まず事務方から答弁させていただきます。

 まず、司法試験における具体的な問題の作成は司法試験考査委員会に委ねられておりますし、司法試験の実施につきましては司法試験委員会に委ねられているところでございます。

 ただ、今回、御指摘ございましたように、制度改正、制度改革による新しい司法試験では在学中受験の資格を新たに導入することとしておりまして、司法試験の実施時期の点、あるいは、選択科目を引き続き存置することとしていることとも関連しまして、法科大学院の教育課程と連携できるか、また、法科大学院生の学修到達度が確保されるかといった課題が指摘されているところでございますので、先ほど来御答弁させていただいておりますが、改正法案が成立しました場合には、司法試験のあり方につきまして、司法試験委員会とも連携した会議体を設置いたしまして、関係者間でしっかり協議していきたい、こういうふうに考えております。

笠委員 私が言っているのは、司法試験委員会、委員会というけれども、中身はそこでやればいいんだけれども、そういう問題意識を持っているのかということなんです。法曹養成をしっかりとしていく、これからの、どういう人材が必要なのかということを考えたときには、本来であればそれもセットでやらないといけないんです。しかし、今回は順番が逆になっている。

 だから、私からも、本当だったらやはりこれは法務大臣も交えて一回やっておかなきゃいけない、そのことは委員長にお取り計らいをお願いしたいと思います。

 柴山大臣、いかがですか、今の問題意識。

柴山国務大臣 実は、先ほど串田委員からも同じ御指摘をいただきました。

 要は、法科大学院のあり方を、プロセス重視、それからマスプロじゃない形で、しっかりと社会の実践でたえ得る人材を育成する。これをやるんだけれども、その人たちも含めて全員司法試験を受けるわけですから、だから、結局、司法試験のあり方ということが重要だと思っていますし、では法科大学院を通らない予備試験というのをどうするんだということも極めて重要なわけですから、そこは全く委員の皆様御指摘のとおりですので、今の質疑も踏まえて、法務省にしっかりと検討してほしいというように思います。

笠委員 本当にそういう話だと思いますよ。

 ただ、今、私は大臣の答弁を評価します。ですから、これはやはり政府としてしっかりと、文科省だけじゃない、文科省と法務省、本当に政府として、これは大事なことだから、早急にその検討に入っていただきたいというふうに思います。そうしないと、また見直さないといけなくなってしまいますし、各法科大学院だって、どういうことを、カリキュラムを見直していけばいいのか、そのことだって現場は混乱をしていくことになるわけだし、本当に、順番が逆になっているということは極めて遺憾だということは申し上げておきたいと思います。

 それと、今おっしゃっていた予備試験のことなんですけれども、まず、では局長にちょっと聞きますかね。今回の改正をもって、法科大学院の志願者数というのはふえていくというふうにお考えでしょうか。文科大臣でも事務方でも結構です。

伯井政府参考人 今回の改正は、法科大学院教育の充実ということとともに、学部の早期卒業を念頭に置いた3+2の制度化を行い、また、在学中受験資格による司法試験受験を可能とするということ、さらには、法科大学院の定員管理というものも新たに仕組みを設けるという内容になっておりまして、これらによりまして、法科大学院への信頼が回復し、志願者増につながるというふうに我々としては考えております。

笠委員 私はつながらないと思っているんですよ。

 やはり、先ほど言った、これからの法曹人口をどういうふうにしていくのか、そのことによって、当然ながら、司法試験における合格率、あるいはどれぐらいの人たちが合格していくのかというようなこともいろいろと改善をしていかなければ、なかなか、まず第一に、司法試験を目指そうという人たちが本当にふえていくのかということがあります。

 それと、司法試験を受けるに当たって、今、法科大学院と予備試験という二つの道があるわけですけれども、間口を広げるということでは、この予備試験、きのう参考人の方からも評価するお考えもありました。しかし、やはり本来の趣旨からすれば、この予備試験というのは例外的な措置。なかなかお金がなくて財政的に厳しいという人たちが司法試験を受けられないということになってはならないので、法科大学院を出なければならないというところに加えて、この予備試験というものを例外的に本来はつくったはずなんだけれども。

 今は、優秀な学生は、むしろ予備試験。たしかアンケートの中でもございました、これは文科省がやっていたものですよね。予備試験を目指す学生のアンケートでも、何で予備試験なのかというと、少しでも早く法曹資格を得たいからが六〇・三%で、断トツでトップなんですよね。経済的な余裕がなく法科大学院に進学できないからは一五%にとどまっているんです。

 ということは、当初はこの経済的な理由等々が理由で例外的な制度として導入されたものが、では今度、しかも、これは問題があるけれども、在学中に試験を受けられるわけでしょう。そのこと自体もきのう多くの議論がありました、これに対しては本当に厳しい声ばかりでした。でも、もしその制度を創設するとしたら、予備試験自体が本当に必要なのかということにもなってくるんですね、予備試験が一方で間口を広げる意味を持っているのとあわせて。

 だから、私、ちょっとこれは法務省の方にも伺いたいんだけれども、では、法曹養成というのは、やはりもとの形で、法科大学院を経て司法試験を受けるということが本来は望ましいとお考えなのか。それをちょっと法務省、それと柴山大臣にもお伺いしたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 予備試験というのは、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により、法科大学院を経由しない者にも法曹資格のための道を確保するためのものと位置づけられているものでございます。

 そうでありますならば、予備試験制度は必ずしも経済的事情のみに着目したものではございませんので、また、実社会での経験等により、法科大学院における教育に対置し得る資質、能力が備わっているからという観点からも、経済的事情以外の社会における経験、経歴等も考慮に入れて設けられているものと理解しております。

 また、法科大学院における奨学金制度等が適切に運用されるとしても、少なくとも、この二年ないし三年の教育課程に相当する相応的な時間も負担するということも不可避であるということでございますので、予備試験制度を残しておくというのは引き続き合理性があると一応考えているところでございます。

柴山国務大臣 文部科学省といたしましては、少なくとも、法曹を志望する有為な若者が安心して法科大学院に進学することができる環境を整えるために、必要とされる学識や能力を培うための教育も含め、そしてまた、今般の改革を通じて、今お話があったような、例えば資金的な問題あるいは時間的な問題も含め、まずは法科大学院教育の充実をしっかりと図ることが最優先でありまして、それによっておのずと今の予備試験がどのような変革が迫られるかということについては、それを見据えて、ぜひ法務省にも真摯に検討してほしいというように思っております。

笠委員 私は、予備試験がいい悪いというのは、これをなくせとかそういうことを言っているわけじゃないんです。

 やはり、これは一番大事なんだけれども、そもそも、司法制度改革の目玉として法科大学院制度が当初導入されたときには想定していないんですよね、平成十六年から。それで、経済的な理由等々で、臨時的な措置として平成二十三年からこの予備試験という道が開かれた。

 本来だったらそのときに、法科大学院に通う学生たちの、奨学金であっても何でもいいですよ、そういったことできちっと手当てをして、こういう別の道をつくるんじゃなくて、本当にこの法科大学院というものを法曹養成の唯一の、点ではなく線でというものの目玉としてきちっと位置づけていくんだったら、その道を私はやはりとるべきだったんじゃないか。予備試験というものが、そのときに臨時の措置として、例外的な措置としてつくったものが、今は逆転しちゃっているわけですよね。だから、それぐらい、今、確かにこの制度自体が揺らいでいるんじゃないか。

 だから、この際、そういったことも視野に入れながら、本当にこの予備試験というものもこれから、恐らくやるにしても、これもやはり中身を見直していかないと、さっきの司法試験の部分があるわけですから。

 では、これから法科大学院のカリキュラム等々も変わってくるわけですよね。それに合わせるような形で、そことの一つの整合性がつくような形で、これから求められる人材育成に資する、そこに短答式、論文式、口述とありますけれども、予備試験の中身もやはり見直していく必要があるというふうに思っておりますけれども、その点、政務官はいかがですか。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 予備試験のあり方については、やはり、必要な制度的措置を講ずることを検討するということは、法曹養成制度改革推進会議決定でも言われているところでございます。

 法務省といたしましては、喫緊の課題である志望者数の回復に向けて、まずは今回の、法科大学院改革を中心とする今般の法曹養成制度改革をしっかりと進めることを考えておりますけれども、その改革の実施状況を踏まえ、予備試験のあり方についても必要な検討を行ってまいります。

笠委員 これもしっかりと進めていただきたいと思います。

 それで、文科委員会ですから、特にこれから、では今の法科大学院がどういうふうになっていくのかということで、先ほど吉川委員の方からもありましたけれども、今、七十四校からもう既に三十五校が廃校になって三十九校となっているわけですけれども、まず、なぜこんなに激減しているのかということを端的に、事務方でいいのでお答えください。

伯井政府参考人 一つは司法試験合格率の低迷ということ、あるいは時間的、経済的負担の大きさということから、当初の見込みと異なる状況になったというふうに認識しております。

笠委員 それで、この三十九校ですけれども、私は、恐らく今のままにしておいたら、どんどんこれは、まだある程度、かなり減っていく可能性はあるんじゃないかなと思います。

 文部科学省としては、仕方ない、これはもう自然淘汰、要するに、あとはもうそれぞれの大学院の判断だから。そこは現状なかなか、やはり人気のあるところには集中していきますよ。しかし、厳しい今の状況、定員割れがもうずっと続いているようなところは、なぜかというと、どう考えても、今回の改革で志願者がふえていくというようなことは私はちょっと考えられないんです。皆さんが自信を持って、いや、志願者がふえていくから各大学院とも必ず定員もきちっと満たしていくような状況になっていく、志願者の数もどんどんふえていく、そういう見通しを持ってこれからの法科大学院のあり方を我々は考えているんだということであれば、それをおっしゃっていただければいいんだけれども。

 例えば、今もう既に困難な状況に陥っているようなところも、数字を見れば明らかなんですよね、データを見れば。そういったところを何かてこ入れして、救済をするような形で、例えば地域の拠点にしていくとかいろいろな形のことを考えながら、できれば今の法科大学院はなるべく維持をしていこうという立場に立っているのか、それとも、そこはある程度まだ、もう自然淘汰に任せていくのか、その辺をどういうふうに基本的に考えておられるのかをお聞かせください。

柴山国務大臣 そういう実態があるということは認識をしております。

 これまでも、各法科大学院において、法曹を目指す有為な人材を入学者として確保するために、いかに魅力ある教育課程の提供を図るかということに努めてまいりました。文部科学省としても、法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムを通じて、そうした大学のニーズに応える支援を行ってまいりました。今後も、各法科大学院が魅力のあるものとして評価されるように、それぞれの教育の改善、充実に努めることを後押しして、創意工夫ある取組を支援していきたいというように思っております。

 今委員が、地域にある大学との連携ということは、これは極めて重要な視点であるというように思っておりまして、法学部を設置する大学が自分の大学又は他の大学が設置する法科大学院と連携して、地方の大学であっても円滑に教育課程を編成するということができるようにすることが重要だというように思っております。

 特に、地方の法科大学院の募集停止が相次ぐ中で、法科大学院が存在しない地域の大学との連携、これは非常に必要性が高いというように認識をしており、そういった法学部に法曹コースを設置する検討が進められているということから、先ほどのプログラムにおいて大学間連携に関する取組をしっかりと評価、応援をしていきたいというように思いますし、例えば、地方における法科大学院で合格率が低いというところに、他の法科大学院からの遠隔教育プログラムなどをしっかりと充実させていくということも一つ工夫をさせていただいているところでもあります。

笠委員 私、今度、法科大学院と法学部が連携するというのも一つの大きな、これは複数の、例えば法科大学院を持っていない大学の法学部がどこかの別の法科大学院と連携することができますよね。しかしながら、そのときに、私がもしその大学の学長だったら、やはり連携先は合格率が高くて人気のあるところと、特に今、ICTを含めて遠隔教育、遠隔学習ができるわけだから、そういうところとやはり組みたいですよね。そうすると、今現在、合格率も低くてなかなか厳しいようなところというのは、やはり退場させられることになるんじゃないかと思うんです。

 そうしないと、法学部を預かる立場からすれば、まあ、それがどこどこでもいいでしょう、上位のどこどこの法科大学院と連携をして、そして司法試験にうちの法学部出身者が何人通りましたということをやはり宣伝できるわけだから、実績として示していくことができるわけだから、合格率の低いところと連携なんかしませんよ、普通。

 そうすると、そういったところでどんどん退場をする可能性があるようなところに、そうさせない、そうしないようなための支援まで考えて現在の法科大学院を支援をしていくお気持ちというのが、あるいは、何か政策的にきちっとそういったところをどうすればいいのかということを考えていくような、そういうような姿勢で臨んでいかれるのかをお伺いしたいと思います。

柴山国務大臣 私が今の答弁で最後に申し上げたとおり、例えば金沢大学は、法科大学院で司法試験合格率が四%とかなり厳しい状況にありますけれども、千葉大学法学院とまさにオンラインで結んでプログラムの強化というものを図っている、取組が現になされているというように承知をしております。

 このように、今、募集定員が特に地方の大学でたくさんふえているということをただ是とするのではなくて、そういうところがきちんと魅力のあるプログラム、それから、法科大学院の、もちろん司法試験の合格率もそうですけれども、例えば多様なリカレントとか実務教育に資するような、そういうプログラムをきちんと整備するという取組も後押しをしていきたいというように考えております。

笠委員 今大臣が最後おっしゃったことが大事なんですよ。きょう、先ほど吉良委員もおっしゃっていた。もちろん、司法試験を目指す人たちがとにかく中心になって法科大学院に戻ってくる、あるいは法科大学院に今まで以上に入ってもらうということも大事なんだけれども、それは限界があるんですよ、限度が。

 やはり今の学校数で、そしてある程度の学生を集めようと思ったら、司法試験を受けないかもしれない、あるいは司法試験に合格できないかもしれない、しかし、法科大学院で学ぶことが、その後、社会に出た後に非常にプラスになる、評価をされる、そういうような、魅力のあるカリキュラムを含めて、中身にしていくということをもっと文科省は考えるべきだと私は思うんです。そうしないと、やはり学生はどんどん減っていきますよ。あとは、もう学生が減れば自然淘汰で、今度は法科大学院の数が減っていくということで調整していくしかないわけですよね、自然淘汰されるしか。

 だから、大臣、その辺をやはりもう少しきちんと打ち出していくべきだと思うんですけれども、その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

柴山国務大臣 日ごろ、笠委員からそういった問題意識を多々いただいております。しっかりと今の御指摘も踏まえて、検討させていただきたいと思います。

笠委員 法曹養成を全体として流れの中でどういうふうに線としてやっていくのかということは、これは法務省は法務省の考えもあるでしょう。しかしながら、やはり我々は、少なくとも文科行政に責任を持つという立場の大臣は、この機会に、今までの法科大学院というものが、ある意味では、本当にこのままいくと、法科大学院というものがどんどんどんどん減っていって、こういう改革はしたけれどもいずれはなくなってしまうんじゃないかという、きのうの参考人の本当に危機感を、実は共有しています。

 ですから、この際、そういったことも含めてしっかりとやっていただきたいし、今のリカレント教育にもつながるわけですけれども、社会人経験者あるいは法学未修者をどうやってふやしていくのか。これはちょっとまた次回に質問させていただきたいと思いますけれども、その中身の充実というものをこれからもしっかりとまた議論をさせていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

亀岡委員長 次回は、来る二十六日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.