衆議院

メインへスキップ



第6号 令和4年4月1日(金曜日)

会議録本文へ
令和四年四月一日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 義家 弘介君

   理事 橘 慶一郎君 理事 根本 幸典君

   理事 宮内 秀樹君 理事 山本ともひろ君

   理事 菊田真紀子君 理事 牧  義夫君

   理事 三木 圭恵君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    尾身 朝子君

      神田 憲次君    木原  稔君

      国定 勇人君    国光あやの君

      小林 茂樹君    塩崎 彰久君

      柴山 昌彦君    下村 博文君

      田野瀬太道君    谷川 弥一君

      丹羽 秀樹君    藤丸  敏君

      松本 剛明君    三谷 英弘君

      山口  晋君    荒井  優君

      近藤 和也君    坂本祐之輔君

      吉川  元君    吉田はるみ君

      笠  浩史君    早坂  敦君

      掘井 健智君    岬  麻紀君

      山崎 正恭君    鰐淵 洋子君

      西岡 秀子君    宮本 岳志君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   参考人

   (兵庫教育大学長)    加治佐哲也君

   参考人

   (日本教職員組合中央執行委員長)         瀧本  司君

   参考人

   (慶應義塾大学教職課程センター教授)       佐久間亜紀君

   文部科学委員会専門員   但野  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     国定 勇人君

  船田  元君     藤丸  敏君

  古川 直季君     塩崎 彰久君

  白石 洋一君     近藤 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  国定 勇人君     勝目  康君

  塩崎 彰久君     五十嵐 清君

  藤丸  敏君     船田  元君

  近藤 和也君     白石 洋一君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     古川 直季君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

義家委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、兵庫教育大学長加治佐哲也君、日本教職員組合中央執行委員長瀧本司君及び慶應義塾大学教職課程センター教授佐久間亜紀君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず加治佐参考人にお願いいたします。

加治佐参考人 どうも皆様、おはようございます。兵庫教育大学学長、加治佐哲也です。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、二点お話しさせていただきたいと思います。一つは、本法案の背景になった中教審における審議のあらまし、もう一つは、それを基にして本法案ができていると思いますが、法案に対する私の意見を申し述べさせていただきます。

 まず、この法案の背景となった中央教育審議会における審議のあらましについて説明をさせていただきます。

 私は、中央教育審議会において、教員養成部会長及び「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会の副部会長を務めさせていただきました。また、教員免許更新制の発展的解消について審議を行う、特別部会の下に置かれた教員免許更新制小委員会の主査も務めました。

 中教審におきましては、令和三年三月十二日の文部科学大臣の諮問を受けまして、特別部会において鋭意審議を進めてきているところでございます。

 教員免許更新制の見直しにつきましては、諮問の中で、先行して結論を得ることを求められたところであり、特別部会、小委員会では、更新制導入後の大きな社会的変化を踏まえて、教師の学びについてどのような在り方が望ましいのかという基本的なところまで遡って審議を行いました。

 審議の中では、教師として必要な資質、能力が保持されるよう、最新の知識、技能をたゆみなく修得することが重要であることを確認した上で、次の三点について一致を見たところです。

 一つは、教師の主体的な姿勢を重視しながら、個別最適な学びと協働的な学びを教師の学びにおいても取り入れていくこと。二つ目は、教師と管理職が積極的な対話を行い、具体的な目標などを共有した上で、体系的、計画的な学びを進めていくこと。三つ目は、質の高い有意義な学習コンテンツを整備することなどを通じて令和の日本型学校教育を担う教師にふさわしい新たな教師の学びの姿を確立していく重要性ということであります。

 この教師の新たな学びの姿は、高度な専門職である教師にふさわしい主体的な姿勢の尊重、教師のニーズに応じた広範、多様な学びの内容、そして校内研修など現場の経験を重視した学びなど、スタイルの多様性がポイントであると思っております。

 昨年十一月に決定されました審議まとめでは、こうした姿を支える観点から、公立学校の教師について、研修受講履歴の記録や、履歴を活用した受講の奨励などの制度改正を行うことや、現職研修の更なる充実に向けた国による指針の改正を行うことを求めたところであります。

 また、更なる高度化に向けて、研修履歴の記録システムや一元的なプラットフォームなど、新たなシステムを構築していくことを盛り込んだところです。

 一方で、教員免許更新制につきましては、教師の学びの拡大、教師の資質、能力の向上に対する大学の関与の拡大、良質な学習コンテンツの形成など、一定の成果を上げてきたと私自身は思っております。また、審議のまとめでもそのようになっております。

 しかしながら、十年に一度、特定の期間に免許状更新講習を受講することが、教師が常に最新の知識、技能を学び続けていくという必要性と整合的とは言えないなど、新たな姿の阻害要因になることを否定できないため、大学等のこれまでの成果を生かしながら発展的に解消することが適当とされたところでございます。

 中教審における審議のあらましについては、以上にさせていただきます。

 続きまして、今回提出された法案につきまして意見を申し上げます。

 今回の法案の内容については、全体として中央教育審議会の審議まとめを的確に反映していただいているものと考えております。

 まず、任命権者による教員ごとの研修等に関する記録の作成については、学びを振り返りつつ、適切な目標の設定と現状の把握を行うために必要不可欠なものであります。すなわち、自律的、体系的、計画的な学びを実現する上でのベースになるものと言えます。

 記録の範囲につきまして、多様な内容、スタイルの学びが教師の資質、能力の向上に不可欠なものであることに鑑みれば、市町村教育委員会の行う研修や学校における研修、授業研究なども含め、多様な学びの履歴等も含むことができるような仕組みとされることが望ましいと思っております。

 次に、教育委員会、具体的には校長による教員に対する相談対応、情報提供、指導助言、いわゆる対話と奨励の仕組みについては、教師のキャリアアップの段階を適切に踏まえつつ、教師本人のモチベーションとなるような形で、一人一人に最適な研修を奨励することが可能となり、教師の資質の向上に関する中核的な仕組みとなることを望んでおります。

 一方で、こうした研修履歴等の記録や、対話と奨励を実効的に機能させるためには、こうしたプロセスが関係者にとって過度な負担とならないように留意することが重要でございます。

 また、校長が、教師が研修に参加しやすくなるような環境整備、協働的な職場づくりを積極的に行うことが必要であるとともに、教師の学びが画一的、規格的なものに陥らないよう、奨励の候補となる研修自体の多様化、例えば地域や学校現場の課題の解決を通した学びなどです、を図ることが必要と考えております。

 法案が成立した場合、校長、市町村教育委員会、都道府県教育委員会、国のそれぞれが、このような点についても留意して制度を運用していくことが求められます。

 文部科学省や独立行政法人教職員支援機構においては、できるだけ速やかに、研修履歴の全国的な記録システムや、全国の教育委員会や大学の優れたコンテンツが集約された一元的なプラットフォームの構築に努めていただきたいと思っております。

 教員免許更新制につきましては、今回、制度としては廃止ということになると思いますが、教員免許更新制は、教師の学びの機会の拡大、大学による教師の資質、能力の向上に対する関与の拡大に貢献するとともに、良質な学習コンテンツの形成、免許状更新講習の経験を生かした養成段階の教育の充実など、一定の成果を上げてきました。教育委員会と大学との関係が深化したことも重要な成果でございます。

 教員免許更新制の下で生み出されたこうした成果については、新たな教師の学びの姿を構築する上で、発展的に継承していくためにも、先ほど申し上げたプラットフォームの構築が重要であると思っております。

 最後に、審議のまとめの重要なメッセージの一つは、学びに専念する時間を確保した一人一人の教師が、自らの専門職性を高めていく営みであると自覚しながら、誇りを持って主体的に研修に打ち込むことができるという姿の実現を目指していくというものであります。こうした姿を実現するために、学校における働き方改革を進めていくことが重要であると思っております。

 以上でございます。(拍手)

義家委員長 ありがとうございました。

 次に、瀧本参考人にお願いいたします。

瀧本参考人 おはようございます。日本教職員組合の執行委員長をしております瀧本です。

 今日、このような機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 それでは、私の方から、学校現場で今回の法案がどういうふうに見えているのかという観点で意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 お手元に資料をお配りしているというふうに思います。めくっていただきまして、まず、この法案に対する日本教職員組合としての基本的な考え方について述べたいというふうに思っています。

 まず、教員免許更新制の発展的解消。現場においては、やはり、十年に一度とはいえ、免許更新制に関わって、長期休業中を含めて時間を割いて、そして金銭的な負担もありますので、非常に、早急に廃止してほしい、そういう声が多かったです。そういった意味では、今回のこの発展的解消ということで、免許更新制が制度的になくなるということについては歓迎をしたいというふうに思っております。

 一方、教育職員特例法の改正もあります。これについては、四点にわたって、やはり国会の中でしっかりとその方向性について明らかにしていただきたいというふうに思っています。一つは、これは審議のまとめの中にもありましたけれども、期待する水準の研修とは何か。それともう一点は、研修受講履歴に一体どんな研修が記録されるのか。三点目は、研修受講履歴ということで、生涯にわたってどんな研修を受けたかということが記録される制度の導入がうたわれていますが、それが教員の人事評価とどういうふうに関係してくるのか。今の学校で本当に教員は望んでいても学び続けることが可能なのか。この四点について明らかにしていただきたいというふうに思っています。

 めくっていただきまして、次のページですが、教員は十分に研修を受けているというふうなことです。

 私の体験から申し上げても、やはり、授業をするときに、又は授業だけではなく子供たちの前に立つときに、教員というのは、どんな発言をしようか、どういうふうに語りかけようか、そういうところから考えるものだと思っています。そういった意味で、常日頃から、その問いを述べるために、やはり学んでいくということを続けていると思います。

 それを実質的に担保しているのが、この教特法の第二十一条だと思っています。地方公務員法とは違って、やはり教特法の中では幅広い、例えば、教科とか専門性だけではなく、人間性も含めて幅広い研修を求めているんだろうというふうに思っています。二点目は、その研修をやはり教員自ら自主的に行うようにというのを求めているんだろうと思っています。そういった意味で、今回の審議のまとめの中に自律的とかそういった言葉が述べられているということは、この教特法の精神にも全く合致しているだろうというふうに思っています。

 一方で、じゃ、学校現場の研修がどういうふうに行われているか。一つは、外で、官製研修もそうなんですが、教育委員会が実施する研修もそうなんですが、校外研修というのがあります。また、それぞれ、年度を通して、校内研修という学校で組織的に行っている研修もあります。あわせて、先ほども言いました、自分の興味があること、自分の教科に関わること、そういうことも含めて自己研修というのを行っています。この三点を行っているんですね。

 先ほども申し上げたとおり、あしたの授業をどうするのか、子供たちに、分かったよ、そういうふうに笑顔でうなずいてもらうためにどうするか、そういうことを積極的にやっているというのが自己研修だと私は思っています。

 そういった意味で、私、審議のまとめを何回も読み返していますが、「期待する水準の研修を受けているとは到底認められない」、これは一体何を指しているのかなというのが正直私は分かりませんでした。これだけやっているのに、まだ期待されなければいけないのかというふうに思っております。

 めくっていただいて、今回の改正教特法の二十二条の五、いわゆる研修履歴に関わっての記録のところです。

 二十二条の五の二項の後に、四つにわたって、どういう記録をするのかというのが明記されています。法律ですから、一つは、教特法に記載されている研修をそれぞれ記録すれというのが一から三までです。四点目のところで、当該任命権者が必要と認めるものということが記載されています。では、この当該任命権者が必要と認めるもの、これが、どういうものが今回対象となるのか。これについて明らかにしていただきたいというふうに思っています。

 次のページをめくっていただいて、研修の種類と実施者というのを明記させていただいています。一から八まで記載されています。

 一から六までは、実を言うと、今回の法令の中で明記するように義務づけられているというふうに私は解しています。一方、七と八、いわゆる職専免研修と自主研修という二つがあります。

 職専免研修というのは、例えば、大学もそうですね、学会もそうですね。各種、それぞれ教員が都道府県ごとに研究団体をつくっています。私の経験でいくと、私、最初の初任は小学校だったんですが、小学校のときに、先生たちでつくっている美術の研究団体に、当時の教頭先生に言われて、ちょっと来いと言われて、日曜日に研修に行ったことがあります。そこで何をやったか。小学校の初任ですから、何から何まで分かっているわけではない。そのときに、じゃ、子供たちの絵がずっと飾られているときに何をポイントにそれを評価していくのか、そういうことをずっと教えていただきました。実践的な研修です。そういうことが行われているわけです。そういう研修をどうやって認めていくか。それが多分、先生たちのニーズに基づいて、本当に役に立つんだろうというふうに思っています。

 職専免研修というのは勤務時間中に行われる研修ですから、職務専念義務を免除するということですから、これは課業日の研修です。一方、自主研修は、同じ研究団体が行ったとしても、勤務時間じゃありませんから、職専免研修というふうにはなりません。いわゆる自主研修というふうにまとめられます。そういった研修も是非認めていただきたいというふうに思っています。

 めくっていただいて、次、二十二条の六に関わって、いわゆる指導助言の部分でございます。

 今回の研修履歴に関わって、この研修履歴、どういった活用のされ方をするのかということなんだろうというふうに思っています。

 今回の二十二条の六を見ますと、いわゆる、都道府県教育委員会が策定する指標、そして教員研修計画を踏まえ、今までどんな研修を行ってきたのかという履歴を活用しながら指導助言するというふうになっております。

 じゃ、今度、指導助言というものがどうなのかということで、めくっていただいて、二〇一六年の第百九十二回の臨時会において先生方にいろいろ御議論をいただいた、そのときの話をここに記載をさせていただいています。

 当時、松野文科大臣でございました。松野文科大臣は、一つは、指標と人事評価というのは目的も趣旨も異なるというふうになっています。

 私の方で、この間、各県でどんな人事評価、どんな項目で行われているかというのも確認をさせていただいています。どの都道府県もと言っていいんでしょう、研修を受けたか受けないかが評価項目にはなっていません。ただ、備考として、どんな研修を受けたという記載をする県もないわけではないですが、研修を受けること自体が評価の対象にはなっていません。それはそうなんだろうと思います。

 人事評価というのは、やはり、一年間の中でその教員がどれだけの能力を発揮できたか、それを評価するものだと思います。一方、研修というのは、何を自分で学ぼうとしたか、それを記録するものなので、まさしく、やはり、今回の受講履歴を記載したとしても、それは目的が違うんだろうというふうに思います。

 そういった意味で、是非とも、履歴を残すことと評価というものは、改めて、趣旨が違うんだということを明確にしていただければというふうに思います。

 次の次を行っていただいて、資質向上に関する指導助言、ここに関しては、中教審の審議のまとめの中で、積極的に対話をするようにということを求めています。まさしくそうなんだろうというふうに思っています。

 管理職として、校長先生、どうやってマネジメントしていくかというときに、やはり、こういう研修があるから受けてみたらどうだろうかということをお話しいただくということは当然あるんだろうと思っています。当然、教員の側からも、自分は今年こういうことに取り組んでみたい、こういう研修を受けてみたい、そういうふうに思って、自分から調べることもあります。それとは違って、また校長先生の立場で、幅広い視点で、こういうのがあるからどうなんだろう、そういうお声がけをいただくということはすごく大事なんだろうと思っています。

 そういった意味で、単に、この研修を受けなければいけないとかそういう話ではなくて、是非、積極的なアドバイスをいただくような、そういう対話を心がけていただきたいというふうに思っております。

 最後になりますが、じゃ、実際、学校で本当に研修を受ける、そんな余裕があるのかということです。

 これは、実質的にちゃんとした資料が残っているのが、文科省が二〇一六年に行いました勤務実態調査、これが詳細な記録を取っておりますので、それを例示して、最後にお話をさせていただきたいと思います。

 昨年十二月に、文科省も働き方改革の進捗状況について公表しています。四十五時間以内の時間外勤務の割合は、若干減ったとはいうふうになっていますが、大方の傾向は変わらないと思っています。まだまだ、四十五時間以上、八十時間ぐらい長時間労働を行っている、そういう実態がある中で、じゃ、何の勤務をしているのかというのが、次のページで「研修の時間すらない」ということで、これは文科省が調べたやつです。

 それぞれ、授業がやはり非常に大きなウェートを占めていて、見ていくと、「o」になります、「校内研修」というのは、実質は十五分しか時間を取られていないわけです。「校務としての研修」、これは外でやることだと思いますが、これは十三分です。

 全然、十一時間以上長時間労働していても、研修に費やせる時間はこれしかないんです。この中で新たに学び続けるということが可能なんでしょうか。やはり、先生たちが、研修をしたい、自分たちで学びたいという余裕を是非つくってもらいたいと思います。研修の側面からも、どんな制度をつくっていただいても、その時間の余裕がないというのは非常に致命的だと思います。是非ともここの部分については御検討いただきたいと思います。

 最後。今、学校現場、例えば、GIGAスクール構想でICTが入ってきました。現場からは、その対応で大変だという悲鳴の声を聞いております。また、業務量に対しても、教員の数は絶対的に不足していると思います。

 さらには、これも昨年十二月に、教師不足の調査が出ました。四月、五月の調査結果でしたけれども、学校現場は慢性的に人が足りない。今どうにか、例えば教頭先生にお願いして担任をしていただいているとか、そういった中でどうにか、どうにかやっていっているという状況です。

 是非とも、今回のこの法改正に合わせて、教職員の定数改善と業務の削減と、それと給特法の抜本的見直しということにも取組をしていただけたらというふうに思っております。

 以上、ありがとうございました。(拍手)

義家委員長 ありがとうございました。

 次に、佐久間参考人にお願いいたします。

佐久間参考人 皆様、おはようございます。慶應義塾大学の佐久間でございます。

 本日は、このような機会を与えていただき、本当にありがとうございます。

 私は、教員政策に関する国際比較研究を専門にしておりまして、その立場から、大学で教員養成に取り組み、多くの教え子を教員として学校現場に送り出してきました。その立場から、本日は、以下四点について意見を述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず一点目は、教員免許更新制に関する規定の削除についてです。

 これについては、多くの教え子たちから、もう待ちに待っていました、やっとですかという声が聞かれました。私としても高く評価させていただきたいと思っております。むしろ、ここ数年の教え子たちの疲弊ぶり、あるいは学校現場の実態を見てきた立場からすれば、もっと早くに廃止していただきたかったとすら考える次第です。

 以下、それがなぜかを申し上げたいと思います。

 そもそも、なぜ更新制が導入されたのでしょうか。当初は、不適格な教員を排除するということを目的として導入が検討され始めていました。しかし、それには問題が多過ぎるため、結局のところは、教員の質を向上させることを目的とした制度、新たな研修制度として導入されたという経緯がございました。

 現在の状況を見ますと、当初の目的だった不適格教員の排除につきましては、昨年、多くの議員の先生方の御協力を得て議員立法で成立した、いわゆるわいせつ教員対策法のように、改善が進んでおります。

 一方、教員の資質向上につきましても、日本は、巨大な予算を使って、世界でも類例を見ないほど多種多様な教員研修をもう十分に整備しています。これは、国際比較の立場からも明らかです。むしろ、更新制導入の前からあった十年者研修、二十年者研修と更新講習との重複が、重い負担としても、費用対効果としても問題になっていました。

 したがいまして、更新制度につきましては、ただ削除し、すっきりと廃止にするべきと私としては考えます。発展的解消として、別の何かをつけ加える必要はありません。今回は、教育職員免許法の改正だけにすることが学校や教員を励ますことになるのであって、教育公務員特例法の改正は必要ないというのが私自身の見解でございます。

 ところが、今回は、更新制度の発展的解消として、新たに教育公務員特例法の改正も提案され、新たな学びの姿を実現するために、研修記録の義務化が提案されています。

 中央教育審議会答申でまとめられている、教員が探究心を持って自律的に学ぶ研修が望ましいという理念には大変賛同いたします。もしも、一人一人の先生が、自分が学びたいことを学べるチャンスをきちんと与えられ、そして、自分が何をどのように学んだかを子供のために振り返り、そして記録し、次の研修に効果的に活用していくのなら、その記録は大変有意義だろうと思います。

 しかし、この法案を拝読しますと、いきなり研修記録の義務化というのが登場してきます。一体誰のための、何のための記録なのか、そして、なぜ記録が義務づけられなければならないのかが分かりません。

 したがいまして、どうしても、もしも発展的解消として研修記録を義務化するというのでしたら、以下二点が重要だと考えます。

 まず一点目といたしまして、中教審答申及び文部科学大臣の御提案理由に書かれた本法案改正の目的を法文の中に明記する必要があると考えます。具体的には、第二十二条の五に目的条項を加えるか、目的を示す文言を挿入していただきたいのです。

 研修記録を義務づける目的は、大臣の御説明の中でも、あるいは中教審答申でも、教員自らが主体的、自律的に、継続的に学び続けられるようにするためであると、繰り返し繰り返し述べられています。

 つまり、教員を管理、統制するために記録を義務化させるのではなくて、先生方が、教員が主体的、自律的に学ぶ機会を保障するための記録なんだという目的を明確にしていただくことが、今後の本法の安定的運用のために極めて重要になると考えます。

 二点目といたしまして、中教審答申に書かれていますとおり、教員が勤務時間内に研修できるように、具体的な措置を急いで講じる必要があると考えます。是非、この具体的に政策を急ぐべきだということを附帯決議なりに明記していただきますよう要望いたします。

 先ほどの参考人の御意見にもありましたが、今、小学校教員の三割、中学校教員の六割が過労死寸前の状態です。私自身、多くの教え子が、子供のためにと一生懸命働く余り、病気になったり、心を病んだり、家庭を壊したりして退職に追い込まれるのを本当につらい思いで見てきました。

 教員が心に余裕を持って子供に関われるようにすること、子供の学びを本当の意味で充実させていくためにも、教員自身が人間らしい生活を送れるようにすることが必要です。そのためにも、研修が勤務時間内に行われるようになることが必要不可欠です。

 そのためには、資料にデータでお示ししてありますとおり、教員一人当たりの担当授業時間数を現行の三分の二以下に減らしていかなければなりません。

 二〇一六年に、まさにこの衆議院文部科学委員会でも、一時間の授業を行うためには一時間の準備時間が必要だという前提が確認されていることが議事録からもうかがえます。しかし、二〇〇六年の調査の時点で既に、小学校の先生は十四分、中学校では二十分しか実際の授業を準備する時間がありません。事務的な準備をする時間すらないのです。

 じっくり探究的に学び、研修する時間をどのように捻出したらよいのでしょうか。それほど、教員の仕事が増やされ過ぎ、教職員数が減らされ過ぎているという実態があります。この実態を放置したまま教員にもっと学べと要求するのは、余りにも理不尽です。

 教員に研修せよと求めるなら、その前提として、教員一人当たりの担当持ちこま数を減らす必要があります。そのためには、人手を増やさなければなりません。是非ともそのための予算措置を講じていただけるよう、国会で決議していただきたいと強く強く要望いたします。

 三つ目に、なぜ更新制を発展的解消ではなく、ただ廃止にするべきなのかということにつきまして、更新制が教育現場また社会全体に対して、直接間接にどのような影響を与えてきたのかを、四点に絞り、申し述べます。

 まず、更新制の導入によって、十年に一度、学校教員は失職する可能性が生じました。身分の保障が大きく損なわれてしまったのです。実際に、子供に一生懸命向き合う中で、自分自身の身を守るために教員免許更新手続を、うっかり忘れて、すばらしい先生なのに急に教壇に立てなくなってしまったという事例が相次ぎました。

 二つ目に、生涯有効だったはずの教員免許が期限付になり、その価値がいわば下げられてしまいました。これは、意図せざる結果として、社会全体に対して国が、教員は前よりも信頼できなくなったんですよという負のメッセージを発信する結果になったと言えます。保護者たちからは学校へのクレームが増え、学校が保護者の信頼を得ることが難しくなっている時代に、ますます状況を難しくする影響をもたらしたと考えられます。

 三つ目に、教員の多忙化に拍車をかけました。

 それから四つ目に、ここは大変強調したいところなんですけれども、免許の失効によって、特に非常勤講師の人材源が失われ、教員不足を深刻化させているということが今大きな問題になっています。

 資料の六ページの図を是非御覧いただきたいと思います。

 これが、ある自治体の小中学校の非常勤講師の任用状況になります。文字が小さくて大変恐縮なのですが、左から二十代、三十代、四十代、五十代、六十代、七十代というふうに、棒グラフになっています。見ていただければお分かりのとおり、右から二番目の三つの棒、つまり六十代の先生方、そして七十代の先生方が、今、非常勤講師の主力になっているということでございます。

 ところが、この先生方は既に退職しておられて、そして免許の更新期限が切れてしまいます。そうすると何とおっしゃるか、いや、もういいですよ、三万円以上お金を払って更新するのはちょっと勘弁していただきたいということで、ますます非常勤講師の人材源になる人たちが失われているという状態です。教育委員会の皆さん、大変苦慮なさっておられます。

 要するに、更新制を廃止しなければ授業が成り立たない、学校を運営できないところまでその影響が出てしまっているということが申し上げられます。

 一体なぜ、六十代や七十代の高齢の皆さんに頼らなければ学校現場が回らない状況になってしまったのでしょうか。

 そこで、四つ目の意見といたしまして、これまでの日本の教員政策を振り返り、今、日本の教員政策には何が必要かについて、私の考えを述べさせていただきたいと思います。

 私、先月、スタンフォード大学の客員研究員の任期を終えまして、帰国してきたところなんですけれども、諸外国の教員政策と比較すれば、今、日本の教員政策に足りないのは、多くの心ある教員を励ます政策、つまり教員の身分や待遇を改善するための具体的な政策であり、予算措置であると言えます。

 OECD参加国の多くは、教員の資質や専門性を向上させるために積極的な財政出動を行っています。教員の質を上げたいなら、待遇も上げなければならないというのが、世界で今一般的な教育政策の方向性となっています。なぜなら、子供たちのために、優秀な志願者を教職に、特に公立学校の教職に引きつけなければならないからです。

 二〇一九年発表のOECDの調査を見ましても、実際に、二〇〇五年から二〇一八年では、参加国の教員給与の平均は大きく上昇しています。この点につきましても、資料の八ページにグラフを載せてございますので、是非御高覧いただきたいと思います。

 この間に教員給与を下げた国は僅かしかないと書かれています。ところが、何と日本はその例外的な国の一つなのです。世界最悪の下落幅だったのは財政破綻したギリシャで、二五%以上下落させています。次に下げ幅が大きかったのは連合王国の中のイングランドと日本のみで、最低でも一〇%の下げ幅だというふうに指摘されています。

 それもそのはずで、日本では、二〇〇五年どころか一九七〇年代以来、教員の待遇を改善する政策は凍結されてきています。

 昭和四十年代には、当時の自民党の西岡武夫先生ら、主に自民党の文教部会の諸先生方の尽力で、給特法やいわゆる人材確保法が制定されていました。

 これら一連の政策は、あめを与える代わりに、例えば教員組合の分裂を促すなど、いわばむちの面も伴っていました。しかし、確かにあめはあったのです、教員の給与の上昇と残業代の支給は実現していました。何よりも、学校教員は一般の地方公務員よりも優遇される大事な存在なんだというメッセージがこのとき国民に発せられたことは、大きな意味を持っていたと言えます。

 ところが、昭和四十九年以降、教員の待遇改善は一切据置きとなっています。給特法の四%もその後時代に合わせて改善されることなく、現在では、実態にそぐわないまま放置されて、今大きな問題になっています。

 要するに、世界的に見ましても、日本は教員に冷たく当たり過ぎだと考えます。あめばかりももちろんよくありませんが、むち打つばかりでの政策では、もう教員も学校も壊れてしまいます。

 今、日本に最も必要な政策は、研修の記録を義務化するといった政策ではなく、教員の努力を認め、励まし、せめてOECD平均並みの、平均給与の水準を取り戻す政策だということは、諸外国の状況から見ても明らかだと考えます。そうでなければ、幾ら民間からの人材活用といっても、優秀な人が今ある自分の仕事を辞めて教職に就きたいと思ってくれるはずがありません。

 大規模な財政出動が難しいというのであれば、まずは教員免許更新制度をすっきりと廃止するだけで、教員の負担感を解消し、学校現場を励ます効果が期待できます。これ以上むちを打ち、代わりの負担を強いる政策は必要ありません。世界の流れに逆行し、子供たちに悪影響をもたらす、逆効果をもたらすだけになると考えます。

 もしも、どうしても新たに負担を要求する、例えば、教員研修の記録を義務化するというのなら、それは教員が児童生徒のために学びたいことを主体的に学ぶ機会を保障するための政策なんだということがはっきり分かるようにしていただきたい。そうすれば、先生方にも一定のメッセージが伝わると思います。

 そして、その前提として、勤務時間内に研修が終わるよう、教員一人当たりの担当授業時間を減らすこと、そのためにも教職員定数を増やす措置を講じていただきたいと、強く強く要望いたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

義家委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

義家委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。

神田(憲)委員 おはようございます。自由民主党、神田憲次でございます。

 今日は、参考人への質疑ということで、お三方、佐久間様、瀧本様、加治佐様、本当に御苦労さまでございます。ありがとうございます。

 持ち時間十五分ということですので、早速質疑に入らせていただきますのですが、まず、平成二十一年四月に導入をされました十年という有期の教員の免許更新制度ですが、この制度について、末松文科大臣もいろいろなところでお考えを述べていらっしゃるわけですが、教師は今大変多忙で疲れていらっしゃる、疲弊していると。

 こうした中で、この有期の十年の制度、これまでの制度にどういった点、課題があったとお考えか、加治佐参考人にお伺いしたいと存じます。

加治佐参考人 教員免許更新制、私も大学人の一人ですので、やってまいりました。実際に私も、学長になる前は担当いたしました。

 文科省の調査、あるいは中教審の中で、いろいろ関係団体の方からヒアリングいたしました。正直申し上げて、ここまで評判が悪いとは思っていなかったです。

 我々は、当然一生懸命やっておりますし、更新講習後はちゃんとアンケートを取ります。それはおおむね評価が高い。とりわけ少人数で双方向型の研修というものは非常に高いです。最近はオンラインも導入しておりますので、それも、移動しなくていい、先ほど先生方は忙しいということがありましたけれども、移動しないというのは非常にメリットが大きいので、よろしいと思います。

 それで、ただ、今、佐久間先生あるいは瀧本先生、お話があったように、ああいうお話がやはり私もリアリティーを持って受け止めました。大学人から見たらそんなに評判が悪いと思っていなかったんだけれども、忙しいのにこれだけコストをかけているんだ、そのコストのかけ具合からすると物足りないという意見じゃないかと私は思っております。

 それともう一つは、大学では、要するに、必ずしもすぐに役立つものを教えようとはしているんじゃなくて、教師の在り方そのものとか、教育の在り方そのものを考えさせよう、子供の変化を十分に考えさせようとか、そういうことを分かってもらうような内容もたくさんありますので、即役立つものでは必ずしもないというものもあるわけですね。ところが、忙しい先生からすると、即役立たないと意味がないということにはなるということもよく理解はできます。

 それで、更新制そのものが、そういう多忙化に比してその効果があるとは思えないというのも理解しました。と同時に、やはり、十年に一遍最新のものを学ぶんだといっても、これだけ変化が激しければ、とてもじゃないが無理というのもよく分かります。

 さらに、やはり、佐久間先生のお話があったように、当初のときと違って、やはり教師には心理的安定性が必要だと思うんですね。やはり身分の保障というのは要ると思います。そういう点からしても、少ないとは思うんですけれども、大方の方は大丈夫なんですが、ちょっとやはり、そういうこともありますので、そういう課題を解消して、教師の全体としての質を担保するために新しい学びの姿をつくったということだと思います。

 課題については以上のようなことで。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 教師から教えられる側、生徒の側は、やはり、国際水準で見ると学力の低下ということが言われて久しいわけです。やはり、魅力的な先生というのが、私も今抽象的に述べていると思うんですが、望まれるところだと思うんですよね。

 そうした意味から、加治佐参考人が考える理想的な教師というのは、中教審でも、学び続ける教師とか、こういった点が言われておりますし、会社の経営なんかに置き換えると、やはりトップの出来が会社の成長を左右する。そういった意味で、戦略、戦術にたけた経営者であるとか、さらには、迅速な判断力を持っているとか、将来ビジョンが明確に描けていることが必要であるとか、それから、目的に向けた逆算の経営ができる経営者は有能であるとか、こんなようなことを言われるわけですが、私見で結構なんですが、理想的な教師とはどうあるべきだというふうにお考えですか。

加治佐参考人 学び続けるということは、教師に求められる資質の基本中の基本ではあると思います。教師のあるべき姿には、その教師としての使命感、倫理性、学び続ける、素養がまず基盤として必要だ。それから、当然ながら学習指導ができるということ、それから生徒指導ですね。最近は、特別支援教育が理解できないと生徒指導も学習指導もできないと思います。そういう状況になってきている。さらには、科学技術の発達によるICTあるいはAI、データサイエンス、そういうものも必須になってきております。

 ですから、そういうものを身につけているということが一つの目指す姿にはなりますが、ただ、やはり私自身が思う理想の今の教師の姿というのは、同じものがあり続けないんですね。学習指導要領は十年に一遍ですけれども、もっと、私は、この変化の期間というのは短くなるというふうに思っています。そうすると、この変化に対して、いかに前向きに捉えて、主体的に学んで、それを子供たちに還元するという姿勢がいかにあるかということがやはり最も重要だろうというふうに思います。

 長いこと教員養成と現職研修に携わってきましたので、そういう先生はたくさん見てまいりました。とりわけ、大学院に学びに来るような先生方というのは、学びに対して非常に貪欲で意欲的です。そういう先生からは常にそういうのを感じ取っておりましたので、世間一般で言われるほどには、私は、教員というのはそんなに疲弊はしていないし、皆さん元気であるという見方は持ってはおります。全然希望は捨てておりません。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 やはり、人間、当然年を取っていくものですから、そうした中で、先ほど申し上げた学び続ける教師、広範な知識、それから、それが趣味であってもいいと思うんですし、自らが成長するという、それから視野が広がるとか、そういった実体験があってこそ、そういった小さなエレメントを教育に生かせるということがあるんだと思います。

 そういった観点から、今回は、先ほど加治佐参考人もおっしゃいましたけれども、教職員支援機構なんかからオンラインによる講座受講もできると。この研修受講履歴の管理システムを導入するというふうにあるわけなんですが、評価するのは、やはり教育委員会、つまり任命権者であったり、学校の管理職の方々で、一方で、受講された先生方との対話を通じてというような表記になっております。

 この辺が、やはり人と人ですから、非常にこの評価システムというのは私は難しいというふうに考えておりまして、数値に置き換えられるような定量的な分析、それから評価、こういった方法が可能であれば非常に分かりやすいものになるでしょうしというふうに考えるわけなんですが、その辺については、加治佐参考人、どうお考えになりますか。

加治佐参考人 まず申し上げたいのは、校長等と対話をして研修を奨励するということになっています。それが人事評価とつながるんじゃないかというお話があるわけですね。

 そのことについてまず述べたいと思うんですが、基本的にやはり別物だと思います。ただ、人事評価も元々何のためかといったら、もちろん最終的には評価はしますけれども、結局、校長が教員をなぜ人事評価するかといったら、教師の成長を促すためなんですよね、ということがあると思います。

 ですから、もちろん法的には明確に区別されなければいけませんが、実際上は、研修の奨励を通して教師の成長を促すということになっていくんだと思います。校長のそのための力量と意識の変化というのは十分に図られなければいけないと思います。

 しかも、これは、先ほど多忙のお話もありますけれども、今人事評価でやっている期首面談とか、あるいは期末の面談とか、そういう場を活用せずにまた新たなものをつくるとなると、もっと負担が増えることになりますので、そこを活用せざるを得ないということはあると思います。それから、そこをうまく活用していただいて、先生方にこれは人事評価だと思われないようにすることがもう絶対的に大事だと思いますね。

 研修をたくさん受けたから評価されるんじゃ絶対ないです。むしろ、研修を受けて、それがその先生の成長につながっているとか、あるいは学校の改善につながっている、例えば、子供たちがよくなったとか、学力が上がったとか、ほかの先生にその先生がいい影響を与えたとか、そういうものを見て校長が人事評価するんだと思います。そうならないといけない。そこは大丈夫と思います。

 それから、もう一点、履歴システムのことなんですけれども、是非これはつくっていただきたいし、大いに期待しています。

 当初は各都道府県ごとのものになると思いますが、最終的には、できれば教職員支援機構が中心になって、全国的なシステムをつくっていただきたいですね。非常に利便性の高いものにしていただいて、そこでやはり、自分がどういうものを受けてきて、今後どういうふうにしていけばいいかというのが、学習科学みたいな、子供たちには学習科学というのがあるんですよね、学びの学問という。先生の学びの学問とかそういうのを入れていただいて、こういうものを学んだら次にこういうのを学んだらいいというのがそういうものから分かるようなもの、システムから分かるようになると、校長も指導しやすいんじゃないかというふうに思っております。ここは是非力を入れていただきたいと思います。

 以上です。

神田(憲)委員 確かに、全国的なシステム、必ずしも人事評価につながるものではない、それで、個々の評価ではなくて、あくまでも教員の成長を促す、この成長を促すために今回の法改正が必要であるということですから、やはりその成長を促すためのカリキュラムとかが大変重要な要素になっていくと私は考えておるわけです。

 先生が成長してこそ、やはり現場でその教えを受ける子供たちは学びに興味を持てるということになりますでしょうから、そうした意味では、この改正が、多面的に今後の日本の学力水準を上げるという観点からも大いに機能することを期待をいたしまして、私からの質問を終わらせていただきたいと存じます。

 本日はありがとうございました。

義家委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。立憲民主党の菊田真紀子でございます。

 今日は、三人の参考人の先生方から、それぞれの立場で貴重な御意見をお伺いすることができました。大変ありがとうございます。

 また、瀧本参考人におかれましては、本日、日本教職員組合の中央執行委員長に御就任をされたということで、おめでとうございます。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 まず、今回の改正案で廃止されることになる教員免許更新制について伺います。

 この制度は、平成二十一年度に導入をされました。しかしながら、制度の導入当初から、教員の負担が更に増すのではないかというような否定的な声も多く取り上げられていました。平成二十八年度には、法改正を行い、制度の見直しを行いましたが、教員や管理職の負担が増え、教員確保への影響、そして、先ほどもお話がございましたうっかり失効といった制度の不備の点から問題が大変多く、今回の改正案で教員免許更新制に関する規定は削除されることになりました。

 僅か十年余りで教員免許更新制は幕を閉じることになりましたが、この間、現場にどのような影響をもたらしたのか。先ほど加治佐参考人は、こんなに評判が悪いとは正直思わなかったという御発言がありましたけれども、一番現場の実情をよく分かっていらっしゃるでありましょう瀧本参考人と、それから佐久間参考人にも御意見を伺いたいと思います。

瀧本参考人 ありがとうございます。

 現場にとって教員免許更新制がどうであったかという御質問だというふうに思っております。

 いろいろな見方があるので、例えば加治佐参考人は、大学側から見たら非常に評判がよかったというお話がありました。ただ、教員側から見たら、まず手続上の煩雑さがありました。例えば、自分が受けたい講座というのがあります。ただ、その講座は、実を言うと早い者勝ちなんですね。受けられる人数が限られていますから、例えば、免許更新に当たったときに、その受付の時間を待ってコンピューターとか電話で申し込むんですけれども、いや、外れたとか。そうすると、自分が受けたいものだけが受けれるというわけではないわけですよ。そういったときに、じゃ、この免許更新制って何なのか。負担感しかないわけですね。また、正直、金銭的な負担もありました。

 そういったことを踏まえると、やはり現場としては、ふだんから研修しているわけですから、何であえて十年ごとにしなきゃいけないのか、そういう思いが非常に強かったというふうに思っております。

 以上です。

佐久間参考人 御質問ありがとうございます。

 今の瀧本参考人の御意見に加えまして、私としては、この教員免許更新制の影響というのは、もう少し大きな視点からも見なければならないというふうに考えています。

 つまり、この制度がどういう状況の中で成立したのかというのを振り返ってみますと、そもそも、当時は、二〇〇一年の義務標準法の改正以降、急激な財政改革が進んでいる時代でした。人手が減らされました。義務教育費国庫負担制度が二分の一から三分の一になって、各自治体では多くの教員の給与が下げられたという状況でした。そんな中で、PISAの学力競争の結果が出たりして、そして教育改革、学校に対する期待はますます高まっていった、そういう時代だったわけです。

 ですから、例えば、教科が増やされましたし、持ち授業時間数が増やされたということです。ですので、本来なら、学校にこれもやってくれ、これもやってくれと言うのですから、もっとリソースを割いて学校や教員を応援しなければならなかった。そのときに、逆に、人手を減らし、給与を下げ、そして教員免許の更新制が導入されて身分が不安定になったということだったと思います。

 ですので、学校の先生方がやる気を失ってしまった、士気が下がった、あるいは、こんなに頑張っているのにどうして評価されないんだというふうな思いを抱く影響があったというふうに考えます。

 以上です。

菊田委員 ありがとうございました。

 続きまして、研修に関する質問に移りたいと思います。

 先ほど瀧本参考人は、教員は十分に研修を受けている、このように発言をされました。また、佐久間参考人は、私は教員免許更新制度は廃止すべきであり、代替措置は全く不要だと考える、このようにお述べになっておられますけれども、まず、そもそも教員にとって研修とはどのような意義があるのか、瀧本参考人と佐久間参考人のお考えを伺いたいと思います。

 また、今回の改正によりまして、研修受講履歴を整備するに当たってどのようなことが懸念されるか、この点についても併せてお二方にお伺いいたします。

瀧本参考人 教員にとって研修が何かというお話だというふうに思うんですが、中教審でもそうですけれども、教員は学び続ける姿が大事だ、こうあるべきだというお話が非常にあります。

 ただ、私の実感としては、実を言うと、教員は何で研修を受けるか、その動機というかモチベーションがすごく大事だと思っています。教員が何で研修を、学び続けるのか。それはやはり、目の前にいる子供たちが、本当に笑顔で、分かったよと、うんとうなずいてくれる、そういう姿を見たいからです。実際授業をしていたら、全ての子供たちがうんうんとうなずくなんてことはないわけで、首をひねって、うんっとかという表情をすることもあるわけですよ。そのときに、じゃ、何につまずいて何が駄目だったのか、そういうことをすごく思い浮かべるんですね。そこが、やはり教員が研修する一番のモチベーションだと思っています。それがない中で研修だけというのは、これをやれ、あれをやれというのはなかなか難しいんじゃないか。

 そういった意味で、教員にとって研修の何が一番大事かというと、自分が本当に学び続けたい、そのテーマをどう研修できるかということだと思います。その意味で、受講履歴に関して、例えば、先生方はこの研修やらなきゃ駄目ですね、これやりなさいだけじゃ駄目なんだと思いますね。過去からずっと研修が記録されている中で、あなた、この研修を受けてないじゃないか、だからこれ受けなさい、そういった使われ方はされないように是非ともお願いしたいというふうに思っています。

 以上です。

佐久間参考人 懸念についてなんですけれども、三つぐらいの大きな懸念があるかなというふうに思っています。

 問題は、二十二条五の四にあると思います。一と二と三は、何を記録しなければならないのかが明示されていますが、四については、当該任命権者が必要と認めるものというふうに規定されています。真面目な自治体さんは、教育委員会の皆さん、本当に皆さん真面目で誠実で粛々と仕事をなさるので、これを全部記録しなさいということになると、事務作業量が多くなり過ぎるおそれがあります。先生方は、研修に出るのはいいんだけれども、その後の報告書を書くのがすごく大変だというふうにおっしゃいます。これを全部記録していたら、それこそ子供に向き合う時間がなくなってしまいます。

 じゃ、この研修は記録するけれどもこの研修は記録しないというような選別が始まると、今度は研修の多様さが保障されなくなるおそれがあります。あるいは、公平性が担保されなくなるおそれがあります。この研修は記録してあげるけれどもこの研修は記録してあげないというふうになる、その選別をどうするのか、公平な選別をすること自体がほぼ困難ではないかと思われます。ですので、多様な研修を保障するということができなくなるおそれがあるのではないか。

 また、その記録する研修に関しては、三つ目といたしまして、質の保証をしなきゃいけないということになると、どういう内容の研修をするんですか、あらかじめ出しなさいですとか、あるいは、私ども、大学でたくさん学校教員の先生方向けに研究会や研修会を主催しておりますけれども、事前に、こういう研修はいいけれどもこういう研修は駄目というようなことがもしも起こってくるとすると、大学での思想信条の自由を侵害されるおそれ等も懸念されます。

 こういったことを杞憂に終わらせるためにも、何のために記録するのかという目的条項を設置することが大事だというふうに先ほど申し上げた次第です。

 以上です。

菊田委員 ありがとうございました。

 今御指摘がありました御懸念が払拭されるように、今後の委員会での審議や附帯決議を通して、私たちもしっかり努力をしていきたいというふうに思っております。

 記録される研修受講履歴をより効果的に活用するためには、教員自身が、教員本人がこの研修受講履歴にアクセスできるようにして、自らの資質をより向上させることにつなげられるようにすることも必要ではないかというふうに考えますが、瀧本参考人はどのように考えておられるでしょうか。

瀧本参考人 今回の法案の中では、受講履歴を記載するということが明記されています。その受講履歴を何に使うのかというのは、結果として、管理職との対話、指導助言に活用するというふうになっています。

 とするならば、当然、本人がどんな記録がされているのか分からないと、それが次のどんな研修をしていこうかということの資料にならないわけですね。当然、どんな記録がされているかというのが教員が自らアクセスできるというのは、当たり前のことだというふうに思っています。

菊田委員 ありがとうございました。

 先ほど、それぞれの意見陳述の中で、教員の働き方についても触れられておりました。教員免許更新制を廃止したとしても、教員の負担が非常に大きいということからすると、まだまだ改善していかなければいけない点がたくさんあります。この教員にかかる大き過ぎる負担は、ここ十年、二十年にわたってずっと指摘をされてきました。教師が疲弊し切っている状況が続いています。

 一体どのような経緯でこうなってしまったのか、御自身の実体験で感じていることを是非お聞かせいただきたいと思います。どうしたらもっと教職員の負担を減らせることができるのか、瀧本参考人にお答えいただきたいと思います。

瀧本参考人 先ほど私の資料の中で二〇一六年の文科省の勤務実態調査を記載させていただきましたけれども、それの中に免許更新制というのは入ってきていないんですね、通常の、平日の勤務の話ですから。ということは、じゃ、そこで何が一番ウェートが大きいかというと、授業、それと授業準備なんです。

 私の体験からいくと、ちょうど二〇〇二年、完全学校五日制が始まったとき、当時、学習指導要領が改訂されて、ゆとり批判というのがあったかというふうに思っています。それを踏まえて、当時の遠山文科大臣が、二〇〇三年に学習指導要領の一部改正をしました。いわゆる発展的な授業ができるようになったわけですね。

 その以前は、実を言うと、学習指導要領の位置づけというのは大綱的基準でした。ところが、二〇〇三年以降は最低基準になって、それ以上どんどんやってもいいよという位置づけに変わった。その結果、学校はより多く授業をするということにシフトしていきました。そして、その後、二回、学習指導要領が改訂され、一番直近でいうと、小学校の高学年の標準授業時数は、学校五日制前、六日でやっていたときと同じ授業時数になっているわけですよ。いわゆる、過去には六日でやっていたことを、今、五日でやれという話になっているんですね。当然、忙しくなるのは当たり前なんです。

 決して授業を少なくすれという意味ではないです、一定の質の保証というのは必要だというのは十分承知しています。ただ、時間数だけで追っていくというのは、もう多分限界なんだと思います。私の経験からも、朝、行って、勤務時間中はほとんど授業と、あと生徒指導、これに費やされていて、ほかのことができない状況です。それをやはり抜本的に改正する、そういった意味では、先ほど佐久間参考人もおっしゃっていましたけれども、教員の持ち授業時数、これにやはり上限をかけていくということが求められるんだろうというふうに思っています。

 以上です。

菊田委員 ありがとうございました。

 最後の質問となります。

 今回の改正には、教職特別課程における修業年限の弾力化が盛り込まれています。教師不足の実情から、文科省としても何とか工夫しようということであると思うんですけれども、弾力化を図ったとしてもなかなか大幅に増えるとまでは恐らくいかないと思います。

 一方、教員不足に対応するために、臨時免許によって欠員を補う、こういうケースが大変増えていると伺っております。臨時免許による対応が余りに多くなり過ぎることについて何か懸念等があれば、瀧本参考人から御意見を伺いたいと思います。

瀧本参考人 臨時免許を出すということ自体を否定するわけではないんですけれども、ただ、やはり免許制度の根幹に関わるというふうに思っています。

 どんな免許でも、その免許を取得する要件ってあるわけなんですよね。それが、一時的にでも免許を交付して、取りあえず教壇に立ってもらう、それが本当に、それこそここで、中教審でも質の話をされていますけれども、そこを本当に確保できるのかという問題はあるんだろうというふうに思っています。

 むしろ、今回の教員免許更新制で、例えば、教壇に立とうと思っても、免許が失効している若しくは休眠している、そういう方々がたくさんいるはずです。そういう人たちが改めて現場に戻ってこられるということになると思っていますので、そういった意味で免許更新制が廃止されるということの意義というのは大きい、それがやはり学校現場の教師不足解消の一つの手段になるんだろうというふうに思っています。

 以上です。

菊田委員 私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

義家委員長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。

 本日は、参考人質疑に、加治佐先生、瀧本委員長、佐久間先生、御出席くださいまして、御意見陳述をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず最初に、今回の免許制度は発展的解消ということなんですけれども、元々、この制度がつくられたということは、教員の方々に何らかの研修を受けていただき、子供たちによりよい教育を受けてもらう、また、子供たちにとってよりよい学校生活の環境を整えるために必要と判断されたからなのだろうと推測をしているわけでございますけれども、本当に必要な研修を教員の方々に受けていただけたのかというと、結果は、更新のために受けざるを得なかった、教員の方の休暇がなくなった、現場で役立つものはなかったという側面もあったのだろうということを、今日の先生方の御意見を聞いていて、非常に強く感じたところでございます。

 そこで、今回の更新制度の発展的解消と新たな学びの姿ということに関しまして質問をさせていただきたいと思います。

 まず、加治佐先生に御質問させていただきたいと思います。

 今後、研修を教員の方が受けられて、更新免許制度がされる前もずっと教師の方々は研修を受けておられたと思うんですけれども、結局、私の受け止めとしては、今まで、更新免許制度が導入される前までにいろいろな、校内研修であったり、校外研修であったり、受けてこられたもの、そういったものの制度に、逆に言うと、戻すというか、元のところに戻っていって、それは記録集積していくんだというように受け止めさせていただいているんですけれども。

 それが、記録を集積しなければならなくなったということで、新たな仕組みづくりが今回の法案なのかなというふうに理解をしているんですが、その新たな仕組みが新たな負担につながってしまうのではないのかなという懸念を少ししているんですけれども、加治佐先生の方は、そちらに関してはどのようにお考えでしょうか。御意見をお伺いしたいと思います。

加治佐参考人 免許更新制は、当初は指導力不足教員対応とかいうことのみがクローズアップされましたけれども、そういうことだけではなくて、やはり教職の質保証であると。つまり、免許の質を保証するんだと。免許が永遠に有効である、そうではなくて、十年に一遍、更新講習によってリニューアルすることによって、質というものを社会的に証明するんだ、そういう側面があったんだと思うんですね。

 だから、今回、その部分がなくなるわけですね。なくなりますが、ただ、なくなるからこそ、この新しい仕組み、新しい学びの姿をつくろうという面でもあるわけですね。つまり、教職全体として、国民に対して、日本の教員というのは一定の質があるんだということをやはり見せなければいけない、証明しなければいけないということだと思うんですね。それが新しい学びの姿の基本中の基本であるということだと思います。

 負担の問題ですけれども、私自身も、お二人が御指摘されたように、やはり、負担というかな、働き方改革は絶対必要だと思っています。増やせるものなら、もう是非教員を増やしていただきたい。給特法を廃止して、残業手当をちゃんと出していただきたい。附属学校をやっておりますが、附属学校は給特法が適用されませんので、毎日冷や冷やしています、正直申して。だから、そういう状況で、マスコミでも報道されましたように。だから、我々は払います。払いますが、ただ、業務量も同時に削減しなきゃいけません。そういうことを努めています。

 いずれにしろ、とにかく教員の待遇と量的拡大は私も切にお願いはしたいと思います。

 そういうことができれば一番いいんですが、ただ、当面の負担ということからいうと、研修は、基本中の基本が、自ら学ぶものですので、教師は専門職ですので、自ら学ばないといけない。やらされるものではないということですね。そのやらされるというのが、更新講習はちょっとそういう側面が強かったということで、なくなったということは、これはいいことなわけですよね。

 それで、あえて申し上げますけれども、やりたい先生にとってはそんなに苦痛じゃないですよ。忙しくても勉強します。間違いないです、これは。皆さんもそうだと思うんですけれども。

 結局、全体の質保証をしなければいけないから、新しい学びの姿という仕組みをつくらなきゃいけないわけで、その中で、研修を受けていない方には、要するに、期待する水準にない方にはちゃんとそれなりの、ある意味、強制力を持たせるとか、そういうことをしなきゃいけないということになってくるんだということになります。

 だから、負担ということについては、まずは自らが学ぶんだと思っている人にとってどうかということを考えないといけないということだと思います。

 それともう一つは、オンライン等によるものが増えますので、移動の必要がなくなります。オンラインのスキルは大学なんかではかなり上がっています、オンラインの授業のスキルは。ですから、結構、そんなにストレスを感じずにオンラインで受けるということが出てきますので、負担の問題はありますけれども、そういう改善も図られるということはあり得るというふうに思っております。

三木委員 ありがとうございます。

 もう一点、加治佐先生にお伺いしたいと思います。

 先ほど神田委員の御質問の中で、加治佐先生がおっしゃっていた履歴システム、こういったものを全国的なものに是非プラットフォームを整えていくべきだという御意見をお伺いいたしました。

 この履歴システムにつきまして、それはどの範囲で見えるようにするべきなのか。学校の先生方だけで共有するものなのか、それとも、一般人の私のような人間が履歴システムにアクセスをして、誰でもが見れるようにするべきものなのか。加治佐先生の御意見をお伺いしたいと思います。

加治佐参考人 履歴システムを参照できる者の範囲ということだと思いますが、これは当然、ある意味、やはり秘密条項でもあるし、一般的に公開されるべきものじゃないと思います。

 IDが付与されるんじゃないかと思っています。審議のまとめの中では、ID、パスワードは、どの範囲になるかはこれから教職員支援機構、文科省で詰められると思いますが、教育委員会の担当者とか校長、あるいは当人ですね、そういう範囲でアクセスできるというものになるんだろうと思います。セキュリティーはしっかりやらなきゃいけないんだと思います。

三木委員 ありがとうございます。参考にさせていただきます。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 次の質問は、瀧本参考人に御質問させていただきたいと思います。

 研修を受けたから資質が向上する、それはイコールではない、時間的余裕もございませんし、研修を受けることが評価につながるものではないという御意見をお伺いをいたしました。

 一生懸命されている先生、もちろん大多数の先生がそうだと思うのですけれども、こういった制度が導入された背景には、やはり一部、先生として適性があるのかどうなのかということが疑われるような先生がいらっしゃったということが背景にあったのかなと私は想像しているんですけれども。

 教員の評価というものは、研修イコール評価にならない、教頭先生、校長先生が人事評価をされているわけでございますけれども、誰がどのように、人事評価だけでは足りないということで免許更新制度になったと思っていますが、この教員の評価というものは物すごく難しいものだと思うんですけれども、これは見える化というのは何か方法で可能だと思われていらっしゃいますか。

瀧本参考人 私は、一点、例えば、私の意見陳述の中でも言わせていただきましたけれども、基本、教員って、日常的に研修をするような仕組みになっていると思います。それは、例えば校内研修というのがあります。校内研修を、そうしたら、誰がやらないという話にはならないんですよね。校内研修のテーマもその年ごとに様々、例えば教科指導に関わること、新しい学習指導要領のトピックに関わること、そういうのを様々学校でテーマとして掲げて、それを全体の教員で研修に取り組むということを考えたときに、研修を受けたがらないということがシステム的にほとんどないんだろうというふうに思います。そういった意味で、日常的に教員は研修を受けているというふうに意見を言わせていただいたつもりです。

 また一方で、資質としてどうなんだろうかというお話ですが、それは、制度的に指導改善研修というのがもう法律の中に組み込まれているわけですね。だから、それがあるにもかかわらず、あえて免許更新制でその質をということについては、私はなかなか理解し難いと思っています。

 さらには、免許更新制が導入される前に、既に教特法が改正されて十年目研修が入っていたわけです。十年たった段階でそれぞれ研修を受けなさいと。それが入った上で、更に屋上屋のように教員免許更新制が入ったというふうに現場は受け止めています。

 そういったことを考えると、まず免許更新制が廃止されるのは当然のことであろうと。

 また、人事評価とこの免許の更新とか研修というのは、先ほども言いましたけれども、そもそも目的が違うんだろうと思っています。研修はそれぞれ自分の専門性をより伸ばすためにやることですし、評価というのはこの一年間の中でどれだけ自分が努力して実績をしてきたかということをするものです。人事評価自体も、そもそも、年度当初に管理職と面談をしながら、今年どんな目標を、どんなことをやりたいかということで目標を立て、一年がたった段階でそれがどこまで達成されたか、そういうことで評価がされるので、全くシステムも目的も違うので、そこは誤解をされないようにしていただけたらというふうに思います。

 以上です。

三木委員 済みません、私の質問の仕方が悪かったのかなと思います。研修イコール評価ではないということが、今、瀧本参考人の方から意見陳述の方でも出てきたので、それだったら、研修以外で何か見える化ということができるのか、何かそういう点がありますでしょうかという質問だったので。済みません。でも、人事評価の中で、そういった教頭先生、校長先生が人事評価をしていくという今までのシステムと変わらないシステムの中でしかやはり人事評価というのは行われないものなのだというふうに理解をさせていただきました。ありがとうございます。

 それでは、佐久間先生にお伺いをさせていただきたいと思います。

 教員の名誉というか誇りというか、そういったものをやはりつくっていかなければいけない、それを支えていかなければならないという御意見で、非常に参考にさせていただけたんですけれども。

 まず、待遇を上げることということで、免許更新制度も廃止してほしいということがあったと思うんですが、それでも、やはり、よい先生と、この先生は不適格じゃないかと思われるような先生が出てくる場合ということもあると思うんですね。そういった場合に、佐久間先生の方で、言葉は悪いんですけれども、見分けるというか、それも先ほどの瀧本参考人にお伺いしたこととかぶる内容でございますけれども、そういった一生懸命ではない先生という方も出てこられる可能性も、それは否定できないと思うので、それをどういうふうに見分けたらいいかというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

佐久間参考人 御質問ありがとうございます。

 教員の質を向上させるための研修システムの問題と、それから、仕事上何らかの問題を起こしたりして処分の対象になる先生の問題とは、分けて考えるべきだというのが私の考えでございます。つまり研修制度と処分制度は別であって、特に今回の教員免許更新制度は、免許制度によって処分しようという、そもそもその発想自体が不適切だったというのが私の意見でございます。

 ですので、今回の廃止によってすっきりと、免許制度、質を認定する制度と、それとは別に、処分をするべき先生には厳正に処分をしていただく、わいせつ行為を働く先生なんて教壇に立っていてもらっては、私も子供を持つ親なんですけれども、本当に困りますので、そういった先生方には厳しく対処する、その別の処分制度を別途つくるべきだというふうに考えます。

 ですので、先ほど来出ていますような人事評価の問題と、先生方が主体的、意欲的に学ぶための研修を支援する問題とは、分けて考えるというのが私の考えになります。

 済みません、以上です。

三木委員 お三方の参考人の先生方にいろいろと御意見を賜り、非常に参考になりました。今後の質疑に励んでまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

義家委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭でございます。

 私も中学校の教育現場に二十四年間立っておりましたので、まさにこの教員免許制の中を駆け抜けてきた教員でございます。

 今日はたくさん聞きたいことがありますので、どんどんと聞かせていただきたいと思います。

 先ほど来この免許更新制のことについていろいろな議論がされていますが、端的にいくと、やはり教員が教職の専門性を高め、社会の信頼を得るためには、どんな学びをこれから重ねていくのか、そういったことが問われることになってくると思います。

 そこで、やはり今後、教員にとってどんな学びや経験が重要なのか。これは、それぞれのお立場で、加治佐先生には、教職大学院としてどんな学びや経験が必要なのか、また、瀧本参考人には、職員団体は、教員にとって身近な存在として、やはり立場や主張を離れて、教員が教職としての専門性を高めるためにどんな学びや経験が重要かを発信する役割もあるのではないかなというふうに思います。それぞれのお立場から、どんな学びや経験が重要か、お願いしたいと思います。よろしくお願いします。

加治佐参考人 教師に求められる力というのは様々あるわけですね、先ほども申し上げましたけれども、先生も御存じのとおりだと思いますが。やはり、教職を高度化していくことが基本的に必要だと思っています。学校が直面する課題というのは、ますます高度化し、複雑化しております、御存じのとおりだと思いますが。そういう高度な教員を養成するために教職大学院というのが制度化されて、もう十年ぐらいたっております、私どもやっておりますが。

 一つは、大きな、学びというのが、子供たちの学びが転換期になっていまして、いわゆる探究型の学びをしなきゃいけないということになりました。一斉指導ではなくて、課題を発掘し、課題を解決するためにみんなが調べ、ICTも活用して調べて、一定の現実的な解決策を出していく、そういう学びを指導できるということが先生に必要。それから、先ほどの働き方改革にも関わりますけれども、時間をマネジメントする能力がないと先生はこれから務まらないわけで、タイムマネジメントです。

 結局、真面目な先生、一生懸命な先生が本当に日本の先生は多いと思う、すばらしいです。先ほど附属学校のお話をしましたけれども、なぜ冷や冷やしているかといったら、ほっておいたら働き過ぎるわけです、簡単に言うと。校長は抑えよう抑えようとするわけです。だけれども、どんどん働いてしまいます。そうすると結局、校長が知らないうちに働き過ぎてしまって、それが、時間外が長くなって夜遅くまでいるということになってしまいます。

 だから、そういう、非常に先生方は意欲はあるんですが、やはり時間内で切り上げるとか、仕組みをつくるのも大事なんですけれども、意識そのものを変えないと駄目だということで、これは難しいんですね、実は。子供のためといったら何でも通用しますから。これをやはり変えないといけないということで、これは本当に難しい。そういうこともやはり高度な能力だと思っています。そういうことですね。

 ですから、要するに新しい能力を求める、例えば探究型だと、一斉型の学びじゃなくて、ファシリテーションをする能力とか、タイムマネジメントを始めとしたマネジメントをする、時間という資源の有効活用、そういうことが今求められている。そういうことをお話ししたいと思います。

瀧本参考人 教職員団体としてというお話もあったので、それも踏まえてちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 私、繰り返し発言をさせていただいているんですが、目の前にいる子供たちをどう捉えるかというのがやはり教員にすごく求められているんだろうというふうに思っています。そう考えると、やはり今子供たちに、それぞれ地域によって、学年によっても違います、家庭状況によっても違います、それをどう受け止めて、どういう教育が一番ふさわしいのか。そこを考えていくというのが一番求められると思っていますし、そういう研修、研究というものがやはり教員には必要なんだろうと思っています。

 あと、例えば教育委員会なり大学が用意される研修もあります。それに対しては、私は、学校はそれを受ける余裕がないんですよ。誰かが例えば研修に行っちゃったらそのカバーはどうしますかという話が、学校は今本当に大変なんです。そういった余裕がない。時間的余裕がない。人の余裕もない。だから、学び続ける姿というふうにおっしゃっていただいていますが、それができる体制を是非ともつくってもらいたい。だからこそ、働き方改革の話をさせていただいています。

 そういった条件整備を是非ともしていただきたいということをお願いし、あと、研修というのは様々用意されていますけれども、やはり子供たちの状況がどうか、そういうことを交流し合うという場を設けていくということも大事なんだろうというふうに思っています。

 以上です。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 今日、瀧本委員長の話の中で、本当に研修するための時間がないという実際の数字も出てきました。実は働き方改革のことを聞きたかったんですけれども、お二人が結構先ほど言ってくれましたので、ちょっと時間の関係上、次に行きたいと思います。

 中教審の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会と教員免許更新制の小委員会、先ほど先生からもお話があったんですけれども、その中で、キャリアチェンジというお考え方が出てきました。

 多くの人は、一度教員になってしまったらもうほかの仕事に就けないと思っている。そう見えていると、優秀な能力の高い人材は教職を選ばない。多様な働き方、人材の流動化が特別なことではなくなってきている中で、教員のキャリアチェンジの在り方ができてくると、意欲や能力の高い様々な人が教員にチャレンジするようになり、教職の魅力が高まる。これはなかなか私たちの発想にはなかったんですけれども、本当にそういったことが重要なのかなというふうに思います。

 このことは現在の教員不足を補う意味でも非常に重要だと思うんですけれども、これについても、加治佐参考人、瀧本参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

加治佐参考人 教師不足を補うためにも、教員免許を持っていて教職以外に就いておられる方、民間企業等に勤めておられる方、あるいは教員免許は持っていないけれどもこれから教員になりたいと思うような方、やはりそういう方を増やさなければいけないということは基本的に大事なことだと思います。

 今中教審で議論している中のキーワードの一つは、多様な背景を持った質の高い教職員集団にするということです。これだけ変化の激しい時代ですと、単一的な同質的な集団でやると、なかなか変化に対応できない。いろいろな専門性やいろいろな特色を持った方から構成されるべきだということなんですね。

 そうすると、今いる先生方は、私自身は、新しい学びの姿によって、プラットフォームで本当に多様な内容のものが提供されて、そこで、基盤になるものをやらされるというだけじゃなくて、自分の得意分野を伸ばすというものが提供されなきゃいけないと思うんですよ。そのことによって、例えば特別支援教育であるとか、ICTであるとか、社会福祉であるとか、社会教育、地域との関係、何でもいいんですけれども、そういうところに強みを持った先生を育成するということがまず大事だと思いますね。そのためにもこの新しい仕組みが機能することを期待しています。

 それともう一つ、外部の方を入れなきゃいけない、これを今議論しているんですけれども、そのためには、一つは、本当は一番いいのは、教職を魅力化することです。もうこれに尽きます。基本的には給料だと思いますが、なかなかこれはそう簡単にいかないというのは分かっていますので。

 やはり、能力の高い方、意欲の高い方というのは、クリエーティブな仕事じゃないと就きませんので。教職が、やらされるんだとか、長時間労働で、保護者対応で大変なんだとか、そういうイメージじゃなくて、やはり子供を成長させるためには教師の一人一人の学びがあって、その学びを基にした授業づくりとか、先生方と共同して新しい学校の集団活動をつくるとか、とにかく、新しいものを吸収していって新しいものをつくる、創造的な仕事なんだというイメージを社会にやはり持たせなきゃいけないんだと思うんですね。それに待遇が伴うのが一番いいんですけれども。

 是非そういうイメージづくりもお願いしたいと思います。法案の中でそういうのが出るのであれば、是非していただきたいと思います。

 いずれにしろ、免許制度の改革も含めて、外部にいる方を教職に入れるということは今やろうとしています。

瀧本参考人 今ほど加治佐参考人がおっしゃったのに加えて、私も本当にそのとおりだと思いまして、学校現場に多様な人材が必要だというのは、そのとおりなんですね。やはり子供はそれぞれ違いますから、一人の、だから同じ、同質の先生たちだけで対応するというのはやはりむちゃがあるんだろうというふうに思います。

 そういった意味で、子供たちの興味や関心や、そういうのを高めていくには、本当に多様な人がいるという学校現場というのは理想的だと思っています。そういった意味で、専門的なことに特化した、そういう方々が学校に入っていただくということの意義というのは非常に高いんだろうと思います。

 ただ一方で、やはり免許の話になりますけれども、教員免許というのは、専門性の話と教職の話というのがあるわけですよね。教職課程の部分をちゃんと担保していただかないと、何らかの分野に特化しただけの人がいわゆる先生にふさわしいんですかというようなところが出てくると思うので、そこを一体どうしていくかというのは必要だと思います。

 一方で、教職を離れた人がもう一回教職に戻ってこれる、こういう制度は是非ともつくっていただきたいと思います。特に、私どもの調査でも出てきていますけれども、介護などの関係で早期退職される方が非常に多いです。そういった方々がやはりもう一回現場に戻ってこれる、そういうようなシステムというのは是非ともつくっていただきたいですし、将来的には、育児で一旦離れるという方もいるかもしれません、そういう人たちも是非戻ってこれる、そういう人材、一回経験されていますから、そういう人たちが学校にもう一回、再度アクセスできる、そういうようなシステムというのは、現場としても非常に待望しているというふうに思っています。

山崎(正)委員 済みません、最後に一点聞きたいです。

 今日、様々な議論の中で、やはり教員の主体的な学びということがテーマになってきたと思います。私は、そういう意味で、教職大学院は、やはり教員の再教育の場、学び直しの場、資質を向上していく場として非常に重要だと思います。文科省も力を入れてきまして、今、全国で五十四大学まで増えましたが、定員は合計で二千四百五十三名であり、全国の小中高の正教員の数は百三万二千七百二人です。これは定員の、一%にも満たない、〇・〇〇二%なんです。

 私は、しっかりとこういったところで教員の質を上げていくには、今回の改正に伴い、こういったところの充実も必要だとありますが、これはやはり加治佐参考人の方から御意見をいただきたいと思います。お願いします。

加治佐参考人 私、実は日本教職大学院協会の会長もしております。教職大学院に現職の先生を送っていただくような方策を是非お願いしたいと思います。

 なかなか、実は定員を充足するのに苦戦しております。一%しか定員はないというお話なので、まだまだ行きたい方はたくさんおられますので、そういうことを是非お願いしたいと思います。教育委員会との連携とか、そういうものをやっておりますし、教職大学院でのものがこの新しい学びの姿においても生かされると確信しています。

 例えば、教職大学院では、在学している学生向けだけじゃなくて、現職の先生向けの短期の履修プログラムとか、例えば特別支援教育とかICTとか一週間のプログラムとか、そういうのを提供していて、それを評価して、そこの証明書を出す、そういう仕組みをつくっています。そういうものを、ラーニングポイント制というんですけれども、それを単位にして、その後、教職大学院に入学したら教職大学院の単位になる、そういう仕組みを取っているところがあります。ですから、教職大学院の在学期間が短くて済むようになるわけですね。

 ですから、新しい学びの姿でそういう短期のプログラムを受けていただいて、それをもってまた教職大学院に入っていただいて更に力を高める、そういう循環ができればいいかなと思っております。よろしくお願いします。

山崎(正)委員 ありがとうございました。今日いただいた御意見を基にしっかり審議して、いいものをつくっていきたいと思います。

 ありがとうございました。以上で終わりたいと思います。

義家委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、加治佐参考人、瀧本参考人、佐久間参考人におかれましては、大変お忙しい中おいでいただき、貴重な様々な御示唆をいただいておりますことに、まず心から感謝を申し上げ、そして私の質問に移らせていただきます。

 先ほどからも、菊田委員からも議論がございましたけれども、教員免許法が成立をした経過、そして、この十年余り、この免許更新制の下で運用されてきたわけでございますけれども、このことが、お話を聞いておりますと、教育現場の先生方や様々教育の関係者の方の御意見が十分反映されない中で政策が決定をされたということを、やはりいま一度、ここをしっかり検証するというか、そのようなことをする中で、この免許、廃止をした、新しい研修制度をしっかり構築していく上では、やはりここをしっかり押さえていくことは、私は、大変重要な観点ではないかと思っております。

 当時は、教育再生会議含めて、様々、総理の諮問機関や、その中でも様々な御議論があった中で政策が決定をされたわけでございますけれども、教育現場が望むものと違う形でこの十年間、免許制度が運営をされていったわけでございますけれども、これまでの議論でもございましたけれども、この制度の根本的に何が問題であったのか、また、どうしてこのような形の改正に至ったのかということについて、三名の参考人の先生方から御意見いただきたいと思います。

加治佐参考人 更新制が、当初予定しておらなかった問題が起こってきまして、それに対応できなかったということがやはり一番大きいんだと思います。

 その最大のものは、やはり教師の勤務環境が変わったということだろうと思います。多忙化に一層拍車をかけているということもありますし、ただ、そうはいっても、これは十年に一遍、三十時間ですから、量的にはそんなではないんですよ。ただ、もっと深刻なのは、佐久間先生がおっしゃったように、人手不足を招いたということ。特に臨採が、高齢の方に頼らざるを得なくなっている状況の中で、やはり三十時間三万円で受けるんだったらもう辞めようという方がいて、これはもう学校現場が成り立たないことになりますので、ここがやはり一番大きい課題だというふうに思っております。

 一方で、そういう現実的な問題はあるんですが、ただ、やはり、更新制ではなかなか、先生方がこれからこの新しい時代において学ぼうとするときに、ちょっと都合が悪い。もうこれはお分かりのように、十年に一遍学ぶだけで新しいものが吸収できるかというと、そんなことはないわけですよね。

 さらに、研修自体が充実してきたという背景があります。先ほどからお話がありましたように、教員育成指標ができまして、都道府県の任命権者はみんな、教員育成計画を作っているわけです。だから、そういうこともあって、研修がかなり体系化し、充実してきています。それもあります。先ほど言いました教職大学院もできていますし、いろいろな学びの場というのは、結構、実は増えてきたんだということですね。

 それと、もう一つは、先ほどから言いましたが、ICTとかが発達してきて、オンラインによる研修というのが増えてきています。やはり、そういう新しいものを取り入れるといったときには、別にそんなのは十年に一遍やる必要ないわけで、日常的にオンラインで研修を提供できますので、そういう状況にも対応できないんだと、これは。そういうことがあったんだろうと思っております。

瀧本参考人 やはり、免許を、十年ごとに研修を受けるから質が保証されるということ自体が幻想だったんだと私は思っています。日常的にどんな研修をしていくかというのはやはり求められるでしょうし、今お話があった人手不足というのはもう明らかに、明確に出てきていますから、そういった意味では難しい。

 あと、もう一点。実を言うと、ただ、研修を、先ほど教職大学院の話もありましたけれども、実際、定員の話以上に、現場でそれを受けるということが本当に可能なのかというのも問題があると思うんですよね。

 教員の数は定数管理されております。法律で定数上は決まっております。じゃ、教育委員会として、例えば大学院に派遣する人数も、実を言うと、枠というのはすごく狭い、非常に決められているわけです。そういった中で、全ての教員が、望むからといって、そういったところにアクセスして本当に研修ができるかというと、そういう実態には現場はありません。

 そういったこともやはりちゃんと環境整備していかない限り、どんなコンテンツを用意したとしても、なかなかそこにアクセスできないというのが実態なんだろうというふうに思っています。ましてや十年に一回やればいい、そういったものではないというのは当たり前だというふうに思っております。

佐久間参考人 大変重要な御指摘だったと思います。

 残念ながら、教員免許更新制度は、十年足らずで廃止に、あるいは発展的解消になるということになりました。なぜそんな短い期間でこのようなことになったのかということについては、きちっと国会で検証していただきたいというふうに私も考えます。

 何が問題だったのかというと、そもそも制度設計に無理がありました。先ほども申し上げましたとおり、不適格教員を排除するのでしたら、それは処分制度を新たにつくる、あるいは、既存にたくさん処分制度がもうあったわけですから、その運用面を改善することで対応すべき問題でした。それを免許制度を通して処分をするというふうなことが企画されたこと自体に無理があったということです。例えば、不適格な先生がもしいたとしたら、十年待っていたら問題ですよね。即刻退場していただかないと困る。なので、免許の更新を待つまでもなく、不適格な先生がいたらすぐに対応してもらわなければ困る、それが処分制度です。

 一方で、免許制度というのは、その方が何を学んだのか、その一定の目的をしていただくために、例えば狩猟免許とかいろいろな免許がありますけれども、その人がその目的を安全に達成するために何を学んだのかというのを証明するための制度でした。

 そこを混同して議論が出発し、そして最終的には新しい研修を増やすという制度として終わってしまったというところにそもそも問題の錯綜があったというふうに理解いたします。ですので、今回、そこのねじれをすっきりしていただくということは大きな前進になると考えます。

 以上です。

西岡委員 ありがとうございます。

 様々、これまでのいろいろな政策についての検証というのは大変必要なことだと思っております。

 これから新しい形の研修制度設計が求められていくわけでございますけれども、先ほど瀧本参考人の方からも、現場重視の研修の在り方ということについても言及がございましたけれども、今後、新しい研修制度に求められる具体的な、こういうことが必要だというようなことがございましたら、瀧本参考人、佐久間参考人から御意見いただきたいと思います。

瀧本参考人 今回の審議のまとめの中に、教職員支援機構についての記載している場面があります。

 私、思うんですけれども、学校で校内研修を進めていくというときに、例えば教科研修とかというのはなかなか、ノウハウがあるので、それは一定、しっかりとした研修ができるんだろうと思っています。

 一方、様々、そのときそのときでトピック的に行わなければいけない研修等もあると思います。民法が改正されて、今年の、ちょうど今日からですよね、成人年齢が十八歳からになりました。だから、消費者トラブルがあるから、そういうのを学校でもちゃんと消費者教育していこうよ、そういう話があります。そういう新たな対応についてはなかなか、じゃ、すぐ学校で研修しなさいよといっても難しいところがあります。実際、学校に予算等もないので、誰か講師に来ていただいて研修をするというのもなかなか難しい状況があります。

 そういったことを考えたときに、戻りますけれども、教職員支援機構で、オンデマンドでそういう講座を作っていただくというのは、現場としては非常に助かるんだろうと思っています。

 様々、教科研究じゃない、本当に新たなトピックに対応するような、そういったオンデマンドの講座等を作っていただくことが、ある意味、学校現場で新しいことに研修として取り組む、そのきっかけになるだろうし、その研修自体を充実させることにもつながるんだろうというふうに思っていますので、そういった意味では、私の立場としても、教職員支援機構がどういった講座を用意してもらえるのかといったことについては期待をしているというところです。

佐久間参考人 ありがとうございます。

 大きく分けると、必要な研修は二つに分類できると思うんですね。

 一つは、その先生が学びたいか学びたくないかにかかわらず、学んでいただかなければ困る、そういう内容がたくさんございます。子供の命を守るですとか、自然災害に備えるですとか、子供に危害を与えないようにするというようなことはしっかり学んでいただく。この点に関しましては、各自治体、教育委員会さんが多種多様にしっかりと研修を、メニューを用意してくださっています。私も幾つかの自治体からお招きいただいて、たくさん講師もさせていただいています。ですので、こちら側から学んでいただきたいことはしっかり学んでいただくという分類の研修が一つ必要です。

 一方で、それぞれの先生方、現場は多様です。それぞれの実情に応じて、こんなことを学びたいな、これを学ばないとやっていけないなということを持っておいでです。教員と一口に言いましても、幼稚園の教諭から高校の、進学校の教諭まで本当に多様です。それぞれの先生方が多様なニーズを持っておられます。

 例えば、高校の先生方でしたら、教科の内容の専門性を高めるために、例えば、地学の先生でしたら、全国にフィールドワークに行って、実際に地層の断面の写真を撮ったり、そうやって自分で、足で歩いて学んできた、写真を撮って、ビデオを撮って、それを子供に教材として見せる、そういうことで子供たちの意欲や関心を育てたいというふうに思っている、そんなフィールドワークも研修として認めてもらいたいというような声も多く聞きます。

 つまり、二つ目の分類の方は、先生方が学びたいことをしっかり学べるように保障するための研修ということが、先生方の意欲を伸ばすためにも必要かなというふうに思います。是非、研修の多様性について認められるような研修の分類も保障していただきたいというふうに希望いたします。

 以上です。

西岡委員 ありがとうございます。貴重な御意見をいただいたと思っております。

 続きまして、先ほど瀧本参考人、佐久間参考人からもございましたけれども、やはり今の学校の状況で十分な研修を先生方が実際に受けられるのかという先生方の働き方改革、また、先生にとっての自由になる時間がほとんどないという今の学校現場の状況というのがやはり改善されなければ、新しい研修制度がいかにすばらしいものであったとしても、先生方の自律的な学びというものが保障されないという現実がございます。

 今、その中で、こま数の上限を決めていく方向や、そのようなことを是非取り組んでいかなければいけないと思っておりますけれども、様々な、教員を増やしていくことというのがすぐになかなかできることではないという状況の中で、その中で、先ほど佐久間参考人からも、勤務時間中に研修を受けるということを徹底してほしいというような御意見がございましたけれども、今の学校現場の中で、できるだけ先生方が、その中で自由に、自律的に研修を受けられる体制というもの、もしつくっていく、参考人の方々からのヒントというようなものがございましたら、瀧本参考人、佐久間参考人からお聞かせをいただきたいと思います。

瀧本参考人 ありがとうございます。

 研修を勤務時間内で行うということは当然だと思っています。

 一方で、今、ICTとかが発達して、オンデマンドでビデオ視聴とかできるといったことがある場合、それが勤務時間外に、それぞれ個別ですから、行われるということが実態としてあるというふうに聞いています。そういったことはやはり避けていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 繰り返しになると思いますけれども、やはり持ち授業時数の上限をどうしていくか、今一番そこが手つかずのところが小学校の中学年だというふうに思っています。低学年、一定、授業時数が少ない中で、高学年については、教科担任制が今回は導入されています。ただ、中学年はそのまま、何もない状況なんですね。そこをどうしていくのか、中学校、高校の部活をどうしていくのか、そういったことにやはり早急にメスを入れていただかない限り、現場の余裕、研修に向かっていこう、そういう余裕がなかなか生まれないんだろうというふうに思っています。

 以上です。

佐久間参考人 どのようにしたら先生方の自由な研修を保障できるかということだったんですけれども、まずは、やはり先生方が学びたいときに学校を離れられる、あるいはその時間が確保される体制をつくるということが何よりも大事です。今、学びたい思いを持っておられる先生方はたくさんいるんですけれども、研修に出たくても、その間学校が留守になってしまいますので、人手不足の学校から離れさせてもらえない、あるいは、疲れ切ってしまっていて、学ぶ意欲はあるんだけれども、そういう研究会や学会の場に出てくる時間、もう体力的余裕がないというふうにおっしゃいます。

 まずは、やはり働き方改革をしていただく。そのためにも、何とか人手を、学校に人手を増やす措置を取っていただきたいというふうに思います。それが一点です。

 あともう一つ、先ほど来話題になっていますけれども、各国の政策では、今まで、先生方の、国民の信頼を高めるのに、学んでいただくのにどうしたらいいのかということで取られていた政策があります。それは、先生方にたくさん研修を求めて、そして質を向上していく。要するに、お尻をたたいて、しっかり勉強させる政策をしていけば、おのずと、結果として教員の質が上がり、社会からの信頼が高まるだろうという、そのAならばBという、たくさん研修を受けさせれば、結局社会からの信頼も上がって、社会的地位も上がり、おのずと給料も上がっていくだろうという、そういう前提で政策が行われていました。

 ところが、エビデンスでこれが否定されました。なぜなら、そんな厳しいことを要求されるクリエーティブでない職場には優秀な人が離れてしまう。先ほど参考人からも、加治佐先生からもお話がありましたけれども、そういう実態がある。

 なので、教員の質保証をする、つまり、教員にたくさん研修をさせるのだったら、同時に身分を保障し、それなりの待遇を準備する。このAとBを両方車の両輪としてセットすることで初めて、教員の社会的地位が上がっていく、国民からの信頼を確保できる。この両輪を政策として準備するというふうに各国転換してきております。是非、日本もそのように政策を転換していただきたいと思います。

 以上です。

西岡委員 時間となりました。

 大変示唆に富んだ御指摘をいただきました。しっかりまた質疑を通してそこを明らかにしていきたいというふうに思います。

 本日はありがとうございました。

義家委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 三名の参考人の先生方、ありがとうございます。

 私の方からも質問させていただきたいと思います。

 我が党は、そもそも教員免許更新制を導入した二〇〇七年の教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案に対しまして、一つ、教職における身分保障は教育のために不可欠なものであり、あくまでも保護されるべきとする教員の地位に関する勧告に反すること、二つ目に、免許更新制は、先進国の中ではアメリカの一部の州で実施されているのみだ、こういうことも指摘しまして、反対という立場を取りました。

 そこで、まず、アメリカの教育にも詳しい佐久間参考人にお伺いするんですけれども、この教員免許更新制、私たちはこういう判断をしたわけですけれども、諸外国の事例や国際的な動向に照らしてどのようにお考えか、お聞かせいただけますか。

佐久間参考人 この教員免許更新制は、アメリカの制度を参考にしてつくられたわけです。そして、二〇〇七年当時、教員免許を更新制にしているのは、世界先進国の中でもアメリカだけでした。

 それはなぜかというと、アメリカは地方分権が徹底しているんですね。そして、教員免許を出しているのは州ということになります。国が教育に口を出すことは憲法で禁じられていますので、各州が責任を持っています。州が教員免許を出していますが、教員研修は、カウンティーといって、もっと下の各地方自治体が行います。実際に教員研修を実施するのは各学校で、校長ということになります。予算が要るんですね。なぜなら、アメリカの学校の先生たちの仕事は基本的に授業のみです。ですので、これこれを勉強してくださいといって、更に仕事を増やし、時間を拘束するためには、その分のエキストラペイを払わなければなりません。つまり、残業代を払わないと研修が受けさせられないんです。ですので、アメリカの学校の場合、教員を研修させたいと思ったら、校長先生はまず、予算を確保するために奔走しなければなりません。

 というわけで、アメリカの場合は、裕福な財政事情があってきちっとした地域に住んでいる学校の先生たちはいっぱい研修を受けている、ところが、そうでない貧困な地域の先生方は研修を全く受けられないという状況がありました。

 そんなことがあっては子供たちに対して不利益ですので、それを何とかカバーするために州が知恵を絞り、教員はこれこれの研修を受けないと免許を更新できませんよというふうにして、免許制度を介して研修のチャンスを保障する、そういう制度として成立していたのがアメリカの制度でした。

 ですから、目的は不適格な先生を排除することでは全くなくて、教員の免許の質を保証するための制度としてアメリカではあったというわけです。それが日本に導入されてくるときにはねじれてしまって、先ほども申しましたように、不適格な先生を排除するために教員免許更新制を使いましょうということになったので、そもそも問題が生じたというふうに考えております。

 このような情報でよろしいでしょうか。

宮本(岳)委員 やはり私たちは、この制度自身が、もうとても続けられない形で今回やめざるを得なくなったというのは、そもそものこの制度に問題があったというふうに考えます。

 そこで、私、加治佐参考人にお伺いしたいんですけれども、大学で免許更新の研修をやってこられて、大学ではうまくいっていると思っていたんだけれども、現場の声を聞いてみたら、これほど評判が悪いとは思わなかったという率直な御意見もございました。なぜこれほど評判が悪い結果になったのか、これについてお考えをお聞かせいただけますか。

加治佐参考人 調査結果というのは、これはアンケートですので、個別の事情はほぼ出ないわけですね。ですから、いいものもたくさんあったと思います、先ほども申し上げましたように。

 結構、本学は元々現職の先生がたくさん来る大学ですから、現職の先生方とのおつき合いというのは、本学の大学教員にとってはそんなに違和感はないんですが、ただ、多くの教員養成をやっている大学というのは、養成はしますけれども、つまり、教員になる学生の指導はしますけれども、なった方に接するということが余りなかったわけですね。そういう機会が得られました。多くの大学の先生にとっては現職の先生は初めてなので、だから、そういう点での、現職の先生からすると、現場を知らないよとか、何か役に立たないよねとか、多分そういう意見はあったんだと思いますね。

 ただ、文科省はずっとアンケート調査していますので、そこの中で見ると、改善はされてきたと思うんですね、先ほど言いましたような少人数にするとか、いろいろな工夫はしてきたので、と思います。

 ただ、結局は、要するに、先ほど申し上げたとおりなんですけれども、時間的にも金銭的にも余裕があって受けるのと、余裕がない、忙しくて、そういう状況にある、それで、お金ももったいないとか、まあいろいろある、そういう状況で受けるのでは違うということですね。

 しかも、本当は、更新講習も、すぐに役立つものだけじゃなくて、本当に今の教育というのはどうなっているんだとか、子供たちはどう変化しているんだとか、国の政策はどうなっているんだとか、やはり、そういう大局的なものも教えるべきだと思うんですよね。

 それでやはり新しい教職観なりを得ていくということが大事なんですけれども、そういうものを大学側は提供しようとしたと思うんですけれども、ただ、現場の先生にそこまでのゆとりがなかった、まあ全部じゃないんですけれども、そういうこともあって、やはりこういう厳しい評価になったんだというふうには思っているところです。

 ただ、大学は、先ほど言いましたように、かなり学びましたので、これで、現職の先生と接するとか、プログラムもいいものをいっぱい作りましたので、それを次の新しい学びの姿に生かしていく、こういうことになるんだと思います。

宮本(岳)委員 ありがとうございます。

 私たちも、教特法第二十一条第一項では、「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」、こういう定めにあるように、子供の教育に責任を有する教員が研修を行うことは当然のことだとは考えております。その際に、やはり、自主的、自律的な研修が保障されなければならないということだと思うんですね。先ほどから先生方口々に、やはり、多様な研修、多様な中身を先生方の中にしっかり培っていくということが大事だ、これは論をまたないと思います。

 その点で、今回の法改正に含まれておりますけれども、要するに、研修記録の作成を任命権者に義務づけ、そして対話と奨励によるということでありますけれども、やはり、先生方にとっては、教育委員会、管理職の意に沿う研修をやらなければならぬのではないかという圧迫感、義務感、こういうものがあるんじゃないか、こういう心配が現場からは出されるわけでございます。

 このことについて、是非、現場の先生の団体であります瀧本参考人、そしてもう一度、佐久間参考人から御意見をお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。

瀧本参考人 研修受講履歴で一つ懸念があるとするならば、今御指摘があった、どんな研修を記載するか、記載するに当たって、その成果は何かということを求め始めると、研修自体が非常に負担になってくるだろうというふうに思っています。

 実際に、例えば教育委員会が実施する研修等も、決してその成果を求めたりはしていません。ところが、受講履歴に載せるから、どんな成果があったのかを提出しなさいというようなことになったら、更に働き方に逆行し、負担感が増えるんだろうというふうに思っています。そこが一番懸念しています。

 また、もう一方で、研修履歴に記載するに値する研修というふうなことで、研修自体の中身をこうあるべきだ、そういった話が出てくると、それはある意味、現場実態とかけ離れた研修になってくるんだろうというふうに思っていますので、そういったことが今回の法改正でなされないような担保をしていただくということが非常に重要なことだというふうに思っています。

佐久間参考人 今、瀧本参考人がおっしゃったことに加えて、やはり、私、問題は、二十二条の五の四をどのように扱うのかというところが焦点になろうかというふうに思います。当該任命権者が必要と認めるものというのが、一体何の基準にするのか、そこに公平性や公正性が担保されるのかということが懸念されますので、この研修は記録してもいいけれども、この研修は記録したら駄目だとか、そういう線引きは事実上不可能だと思うのですね。

 ですので、この辺りについて、私としては、この四号については削除するのがこの法案の安定的な運用に資するのではないかというふうに考えていますけれども、是非とも、この点、御議論いただきたいというふうに思います。

宮本(岳)委員 実は、審議まとめを見ますと、必ずしも主体性を有しない教員に対する対応として、職務命令に基づく研修の受講、場合によっては懲戒処分を講じることも出てくるわけです。

 大臣は、会見で問われて、そんな何でもかんでも懲戒というのは、そんなことは考えていない、こういうふうにもおっしゃったみたいなんですけれども、私は、こういう形で、職務命令、懲戒というものについての不安というのは、現場に非常に多いと思うんですね。

 これはひとつ、加治佐先生に、そういうことを別に、いわば、言葉は悪いですが、脅して進めようというわけじゃないという辺りのことはどうお考えか、お聞かせいただけますか。

加治佐参考人 だから、数的にそんなに多くはないと思うんですよ。どういう人が対象になるか、これは、これから文科省がガイドラインを作りますので明らかにされると思いますが。

 先ほど佐久間先生も、教員としてやらなければいけない研修があると。安全に関わるとか、命に関わるとか、学習指導要領のことであるとか、これは最低、誰でもやらなきゃならない。こういうのはほぼ全てが、教育委員会が職務の研修としてやられているわけです。

 例えば、そういうものを受けない人、あるいは、そういうものを受けた結果が、全然結果が出ない人、つまり、学んだ形跡がないというふうな人。だから、それが結局、校長と対話をすることによって明らかになりますので、そこで校長は、まずはしっかり指導するということになると思うんです。過去の、今までの、どういう学びをしているか、この先生はどういうところに課題があるかとかですね。この先生が学ぶようになるためにはどうしたらいいか、意欲を持たせる、やはりそれは校長の役割だと思うんですよ。そういうことをやっていって、それでも駄目だという場合ですね。

 だから、これは、先ほども出ていますけれども、法的に、教師は研修を受ける権利と義務がありますので、研修を受けることは義務でもありますので、その義務が、要するに、義務の最低限の内容が職務研修だと思うんですね。それを学んでいないということになると、これは先生としては役割を果たしていない。かつ、それが少数だとは思いますけれども、それでも、全体として見たときに、やはり教職の質ということを保証しているのかということになるんだと思うんですよね。そこで、やはりそういう措置を講ずる必要があるということになると思います。

宮本(岳)委員 若干時間が残りますので、是非、瀧本参考人から同じ点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。

瀧本参考人 私の資料の中でも、研修、そして実施者、その根拠法というのを記載させていただいています。初任者研修、中堅教諭等資質向上研修、また、先ほど来言われております、例えば児童生徒の安全に関わる研修、そういうのは多分、地教行法に基づいてそれぞれの教育委員会が実施する、そういうことに関しては、当然、受けるということはなければいけないんだろうというふうに思っています。

 ただ、それ以外に関しては、それぞれ、じゃ、それ以外の研修で何をもって水準とするかというのは、なかなか理解、今の段階で私はちょっとできないということです。

 例えば、初任者研修、それと中堅教諭等資質向上研修、それと教育委員会が実施する研修、これを受けることで水準が確保されるというのなら、そういうふうに言っていただきたいですし、それ以外に、例えば何をもって水準をと。これは非常に現場としてはなかなか判断に困るところなんだろうな、これは受ける教員の立場もそうですし、多分、管理職、校長先生も、そこら辺の判断が非常に迷われるんじゃないかなというふうに思っております。

 今後、文科省の方でも、その基準等については明らかにするという話がなされています。是非とも、審議の中でその部分も明らかにするようなことをお願いしたいというふうに思っております。

宮本(岳)委員 三人の参考人の先生方、ありがとうございました。

 私も、佐久間参考人がおっしゃるとおり、すっきり、教員免許更新制の廃止のみをすべきだと思っております。今、野党内でもそういう議論を是非進めたい、このことを申し上げて、今日の参考人質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

義家委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 本日はありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る六日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.