衆議院

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第9号 令和7年4月18日(金曜日)

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令和七年四月十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中村 裕之君

   理事 今枝宗一郎君 理事 小林 茂樹君

   理事 永岡 桂子君 理事 青山 大人君

   理事 亀井亜紀子君 理事 坂本祐之輔君

   理事 高橋 英明君 理事 日野紗里亜君

      遠藤 利明君    小渕 優子君

      木原  稔君    柴山 昌彦君

      鈴木 貴子君    渡海紀三朗君

      萩生田光一君    船田  元君

      松野 博一君    三谷 英弘君

      簗  和生君    山本 大地君

      阿部祐美子君   安藤じゅん子君

      五十嵐えり君    小山 千帆君

      佐々木ナオミ君    高橋  永君

      竹内 千春君    辻  英之君

      波多野 翼君    眞野  哲君

      吉川  元君    うるま譲司君

      前原 誠司君    美延 映夫君

      西岡 義高君    浮島 智子君

      金城 泰邦君    大石あきこ君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官    金城 泰邦君

   参考人

   (国立大学法人千葉大学副学長・教育学部教授)   貞広 斎子君

   参考人

   (慶應義塾大学教職課程センター教授)       佐久間亜紀君

   参考人

   (東北大学大学院教育学研究科教授)        青木 栄一君

   参考人

   (日本大学文理学部教授) 末冨  芳君

   文部科学委員会専門員   藤井  晃君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――

中村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、国立大学法人千葉大学副学長、教育学部教授貞広斎子君、慶應義塾大学教職課程センター教授佐久間亜紀君、東北大学大学院教育学研究科教授青木栄一君、日本大学文理学部教授末冨芳君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。本案につきましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願い申し上げます。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず貞広参考人にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

貞広参考人 皆様、おはようございます。千葉大学の貞広と申します。

 本日は、このような時間をいただきまして、どうもありがとうございます。

 本日、今回の政府提出法案の基となりました中央教育審議会答申、令和六年八月に取りまとめられました「「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」に関わる経緯や議論等を踏まえつつ、意見の陳述をさせていただきます。

 まず、答申に至る経緯でございます。

 令和四年に勤務実態調査が実施され、令和五年四月にその速報値が公表、同年五月に文部科学大臣から中央教育審議会に諮問がなされ、中教審に特別部会が設置されました。私はその特別部会の部会長を拝命し、議論を進めてまいりました。

 特別部会では、給特法等の法制的な枠組みを含め、教師を取り巻く環境整備につきまして、多様な専門性をお持ちの委員の方々に御参画いただき、一年以上にわたり総合的な審議を行ってまいりました。

 議論で強く意識され、そこに通底していたのは、日本の先生方の善意と頑張りに敬意を表すること、さらに、それにお応えできるように、安定的かつ地域の財政力によらず、リソースを最大化、最大限活用し、お支えしたいという点でした。そして、その先により質の高い公教育の実現を見据えるということでもございました。

 また、答申に至る過程では、教職員団体を含む関係団体からの意見書も踏まえて審議を行うとともに、国民の皆様からの意見募集の機会も設け、様々な御意見もいただきながら慎重に審議を重ねてまいりました。

 次に、教師を取り巻く環境整備の目的を申し上げます。

 日本の学校教育で知徳体にわたる全人的な質の高い教育を提供していることは国際的にも高く評価されています。これは、全国の優れた先生方の善意と献身的な努力に支えられた成果です。子供の学びを支える教師は公教育の要です。

 一方、学校が対応する課題が複雑化、困難化する中、保護者や地域の方々からの御期待も高いことから、その結果として学校や教師の負担が増大してきたという実態もございます。したがって、長時間勤務の是正を図る必要がございます。

 ただし、働き方改革の唯一の到達点は、いわゆる時短ではございません。長時間勤務の是正によって教師の健康を守ることは当然です。ただ、それらに加えまして、日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで教師のウェルビーイングや自らの人間性、創造性を高めること、学びの時間の確保により自らの授業等を磨くこと、そしてこれらの実現によって子供たちへのよりよい教育を実現すること、これを目的といたします。

 教師の質や数、心や体のありようや学ぶ時間の確保は、子供たちへの教育の質に直結します。これらのことから、審議会では、教師を取り巻く環境整備が我が国の未来を左右する重要な課題であるとの認識で議論が進められました。

 今後、学校は、働きやすさと働きがいの両立がなされた職場となり、その中で教師が生き生きと活躍し、さらに、教職生涯を通じて学び続け、持続的に成長できる環境であり続けることが必要です。そうした環境は、それ自体が学校教育を充実させるために重要なだけでなく、教師を志す多くの学生にとっても非常に重要なことだと考えます。

 次に、答申のポイントについて申し上げます。

 答申では、教師を学びの専門職と位置づけ、働きやすさと働きがいの両立に向けて、三つの柱、一つ目が、働き方改革の更なる加速化、二つ目が、学校の指導、運営体制の充実、そして三つ目が、教師の処遇改善、こちらを一体的、総合的に推進することを求めています。

 その際、とりわけ給特法の法制的な在り方については、会議内外にも様々な御意見や評価があることにも鑑み、慎重に検討を重ねてまいりました。

 学びの専門職たる教師は、日々変化する目の前の子供たちに寄り添い、思いも寄らない事態に臨機応変に対応してくれています。

 そのため、会議では、どのような業務をどのように、どの程度まで行うのかについて、都度都度、管理職の職務命令を求めるのではなく、一人一人の子供たちへの教育的な見地から、教師自身の自発性、創造性に委ねる部分が大きいという御意見を多くいただきました。そして、そうした教師の職務等の特殊性を踏まえれば、勤務時間の内外を包括的に評価すること、そして、その処遇として教職調整額を本給相当として支給するという仕組みがふさわしいと整理いたしました。

 ただし、現行の勤務状況が給特法の本来の趣旨、すなわち抑制的で許容範囲の時間外在校等時間に見合っているか否かについては、課題もあると考えます。そのため、働き方改革の推進のための仕組みづくりや教員定数の改善等によって、教師の時間外在校等時間の縮減を行い続けることが必須であるとも強調させていただいております。

 次に、今回の法改正等について意見を申し上げます。

 答申を踏まえまして、令和七年度予算には、教職調整額の引上げ等、教師の処遇改善に要する経費や、小学校教科担任制の拡充、中学校における生徒指導担当教師の配置拡充等に要する経費、教員業務支援員や副校長・教頭マネジメント支援員の配置拡充等、指導、運営体制の充実に係る経費を盛り込んでいただきました。

 こうした予算措置に加えまして、今回の給特法改正案では、中教審答申の三つの柱に基づく重要な法制上の措置が盛り込まれています。

 一つ目が、働き方改革のPDCAサイクルを構築するために、教育委員会に対して、教員の働き方や業務の現状と進捗状況を公開することと併せて、業務量の適切な管理と健康、福祉を確保するための実施計画の策定を義務づけることです。

 学校における働き方改革は、令和元年の給特法改正以降、着実に進みつつある一方で、教育委員会や学校における取組状況に差が見られることがこれまでも課題となってまいりました。今回の措置により、教育委員会ごとの働き方改革の取組状況が可視化されるとともに、首長部局や保護者、地域が一体となって取組を推進していくことが可能になると考えております。

 なお、この法律が成立した際には、計画の策定等に伴う業務自体が働き方改革の妨げになることがないよう、文部科学省において計画のひな形を適切な時期にお示しいただく必要がある旨も付言させていただきます。

 二点目が、主務教諭の職の創設です。

 中教審における議論でも、学校の組織的、機動的なマネジメント体制の構築に向けて、若手教師へのサポート機能の強化、子供の抱える課題への対応、学校横断的な取組への対応について、学校内外との連絡調整機能を充実させる必要、つまりマネジメント機能を充実させる必要が議論されました。主務教諭の職と新たな俸給表を創設することで、これらの学校の機能を充実させることが可能になると考えます。

 三点目です。教職調整額の率の引上げと、義務教育等教員特別手当の学級担任への加算を可能とするための仕組みづくりです。

 教師は、子供の人格の完成と我が国の未来を切り開く人材を育成するという極めて複雑、困難、そして崇高な職務を担っており、専門的な知識や技能が求められる高度専門職です。また、社会の変化に伴い、教師の業務の複雑性、困難性も増大しています。

 こうした教師の職務の重要性と職責の高まりに応じた処遇とする必要がありますが、人確法に基づく一般行政職の公務員と比較した教師の給与優遇分は、現在では僅かとなっております。

 給与改善だけでなく、働き方改革を徹底し、働きやすい勤務環境を整えていく必要があるのはもちろん当然ですけれども、民間企業の給与が上昇していく中、給与の改善というのも必要不可欠です。

 また、教職調整額の引上げは、教師の給与のベースアップであり、人格の完成を目指して一人一人の子供たちの可能性を引き出し、成長を促すという深遠な営みを行う教職に対する社会からの尊敬と敬意の表現形でもあると考えられます。

 給特法改正以来、約五十年ぶりの教職調整額の率の引上げと、働き方改革や指導、運営体制の充実を進める今回の一体改革は、今の学校現場の状況を鑑みるに、確実に実現するべき施策だと考えております。

 教師を取り巻く環境整備は、国、都道府県、市町村、学校が、それぞれの権限と責任に基づき取組を進めるとともに、保護者や地域等、教育に関わる関係者がそれぞれ自分事として、社会全体で学校や教師を支えていく、こうした循環が必要だと考えます。

 この法案が成立した際には、それぞれの仕組みを最大限有効活用していただき、教師が働きやすく、より働きがいのある職となり、子供たち一人一人がよりよい社会と幸福な人生のつくり手となっていく、そうした質の高い学校教育の実現を進めていただきたい、それを強く祈念いたしまして、私の意見陳述とさせていただきます。

 以上、整いませんが、陳述は以上とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

中村委員長 ありがとうございました。

 次に、佐久間参考人にお願いいたします。

佐久間参考人 皆様、おはようございます。慶應義塾大学の佐久間と申します。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、この三十年間、教員養成の研究をしてまいりました。そして、実際に教員養成に携わり、多くの教え子を教員として学校現場に送り出してまいりました。その立場から、本日は、本法案についての意見を述べさせていただきます。

 まず、私は、本法案の趣旨、特に、優れた人材を確保するために教師の処遇の改善を図るという趣旨につきましては、大変意義あるものと考えます。また、今、国が学校教員の必死の努力に少しでも報いようと具体的な財政措置を取ってくださることは、国が学校教員を大切にしていますよというメッセージを発信することにつながり、非常に重要なことだと思います。

 その上で、一方、しかし、大きな課題が二つあると拝見いたしました。

 一つは、教職調整額が一〇%に増やされただけでは、今学校現場が置かれている厳しい状況を抜本的に改善する効果が生まれるとは考えにくいというふうに言わざるを得ないということです。

 今、学校現場は、もう待ったなしの厳しい状況にあります。多くの学校教員たちは、したがいまして、先生、給料や手当を増やしてもらうのはありがたいけれども、それよりも、まず、何とかこの仕事の量を減らしてもらえないかというふうに言っています。つまり、長時間労働への手当をどうするかという問題よりも先に、長時間労働そのものをどうしたら抜本的に減らせるか、そのリーダーシップをこそ国に取っていただきたいというのが現場の声ではないかと思われます。

 もう一つの課題は、したがいまして、本法案には、国が教員の長時間労働を改善するためにどのようなリーダーシップを発揮してくださるのかということがどう書かれているのかに着目して拝読したのですけれども、具体的な国の役割というのは多く示されていませんでした。

 したがいまして、本日は、教員の長時間労働を抜本的に改善するためには教員一人当たりの持ち授業数を減らさなければならないということ、そして、そのためには国が教職員定数改善計画を再開していただく必要があるという、この二点に絞りまして、以下、私見を述べさせていただきます。

 まず、なぜそもそも、これだけ教員の長時間労働が悪化してしまったのでしょうか。

 結論を先に申し上げますと、二〇〇一年以降、教員の人手がどんどん減らされ続けたのに仕事は増やされ続けた、つまり一人当たりの仕事量が増やされてしまった、その必然的な結果としての長時間労働であるということが言えます。しかも、教員不足も深刻化し、私どもの研究室の調査では、二〇一八年頃から教員不足が本当に深刻な状況になってきましたので、この七年間以上は、しんどい状況が続いています。

 特に、欠員の先生、いない先生の授業や仕事の分までを、今いる先生方が分担してカバーしなければならなくなっています。そのため、更に長時間労働が悪化しているという全体像が、以下、二種類のデータから読み取れます。

 一つ目は、文部科学省が行ってくださいました、令和四年度の教員勤務実態調査です。この調査を見ますと、教員の在校等時間は、平日、休日共に、以前の調査よりも減少していました。しかし、私が注目したいのは、それにもかかわらず勤務時間が増加している業務があったことであり、それがまさに授業だったということです。授業と、学習指導の時間と、朝の業務というのが増えているということがデータから明らかになっています。教員の中核的な仕事、外注したりアウトソーシングできない、そういう仕事そのものが増えてしまっているというのは非常に重要だと思います。

 具体的な数値を見ますと、教員の一週間当たりの平均担当授業時数は、小学校で二十三・九こま、中学校では十八・一こまです。一日に換算しますと、小学校で約五こま、中学校で約四こまの授業を平均的な先生方は行っているということになります。つまり、授業を実施するだけで勤務時間の大半が過ぎてしまう状況であり、空きこまがないので、授業の準備や成績処理、特別な支援を必要とする子供への関わりや保護者対応、学校行事の準備や事務作業、さらには教員研修など、そのほかの仕事を勤務時間内に全て終えることはもはや物理的に不可能になっているという実態が読み取れます。この実態は、つまり、もはや教員の働き方の効率性の問題ではなく、仕事の量の問題であると思われます。

 しかし、今回の学習指導要領の改訂に当たりまして、総授業時数は減らさないということを前提にした諮問が行われています。この問題をどうしたらよろしいでしょうか。

 また、もう一つ御覧いただきたいデータがございます。資料のシート七の図を御覧いただけますでしょうか。この図になります。

 これは、私の研究室が調査した、ある県の二〇二一年五月一日時点での公立小中学校における教員配置状況です。この調査から、教員不足には四段階あること、そして、最終の四段階目、つまり、教員不足によって授業が実施できなくなることを防ぐために、各学校の教員が自己犠牲的に、不足している教員分の授業をカバーして実施せざるを得ない状況に追い込まれているという実態が明らかになりました。

 すなわち、このデータを見ていただきますと、この県では、この年度の五月一日時点で、正規雇用教員が千九百七十一人も欠員でした。担任の先生が千九百七十一人、この県でいなかったとお考えください。そこで、県教委は、常勤の臨時的任用教員を千八百二十一人も探して配置しました。しかし、それでも、まだ百五十人不足していました。そこで、仕事の一部を補う常勤的に働いてくださる非常勤講師を百二十二人も探して配置しましたが、なお二十八人分の穴を補う教員は全く見つかりませんでした。この段階で教育委員会にはもうなすすべがなく、あとは学校で何とかしてくださいというふうなことになるのだそうです。したがいまして、最終的には、この二十八人分の授業を各学校の先生方が自分の労働量を増やしてカバーしていたのです。この結果、この県では、授業が実施できなかったという事例は一例も報告されていませんでした。

 ちなみに、いない先生の分の授業をかぶって授業した先生方は、その給料が増えるどころか、早く帰りなさい、働き方改革に逆行すると言われて、学校にいられないという状況にあります。褒められるどころか、叱られるという状況が生まれているということです。

 私の教え子は、休職した二人分の同僚の仕事も併せてやれと言われ、約三人分の仕事をこなさなければならず、今日がまだ木曜日であることに絶望していますというLINEを私に送ってまいりました。このように、不足教員分の授業を今いる先生に上乗せして実施させているという、この構造的な問題が解消されない限り、教員が担当する授業数はどんどん増えてしまい、在校等時間を減らせる可能性はどんどん低くなってしまいます。

 それでは、なぜこれほど深刻な教員不足が起きてしまったのでしょうか。

 この私たちの調査で、四月に配置されているべき正規雇用の教員が、この県だけで千九百七十一人も欠員になっていたと今申し上げました。一方で、この県のこの年度にどれだけの臨時的任用教員や非正規雇用教員の需要が生じたのか、当該年度末までの産育休と病休の取得状況を調べましたところ、産育休は八百六十七人、病休は八十七人で、合計九百五十四人でした。つまり、この県は五月に非正規雇用教員を千八百二十一人も配置できていたのですから、もし、きちっと四月に担任の先生が正規雇用で配置されていれば、必要だった臨時的雇用教員九百五十四人の二倍近くも供給があったということが確認できました。

 もう一度申し上げますが、もしも四月に義務標準法が定めた標準数の分だけきちんと正規雇用教員が配置されていれば、産育休や病休の代替教員はしっかり配置することができます。そして、教員不足は起きていないはずなのです。つまり、教員不足の原因は、非正規雇用教員のなり手が減ったことではなく、正規雇用が減らされ過ぎ、非正規の需要が増やされ過ぎていたということの方だったのです。

 では、一体、なぜ四月にいるべき担任の先生がこれほど欠員の状態になっているのでしょうか。

 この背景には、二〇〇〇年代に本格化した国の行財政改革がありました。国は、悪化した財政状況を改善するため、教育分野においては、国立大学の独立行政法人化と義務教育費国庫負担の削減を推進しました。さらに、教職員定数改善についても、第七次計画で中止にしてしまったのです。

 それゆえ、地方自治体は、国が教員定数を絶対に改善しないということを前提にして長期的な教員採用計画を立てなければならなくなりました。四十人学級のままだとすれば、少子化が進行した後で教員が余ってしまうことになります。そのため、今は必要な教員をあえて雇用できず、非正規雇用で耐え忍ぶ政策を推進せざるを得なくなったということなのです。

 しかも、国は、さらに、二〇〇七年に教育職員免許法を改正し、教員免許取得に必要な科目数を増やして免許を取りにくくするとともに、教員免許更新制も導入しました。これについては廃止していただいたところですけれども。つまり、地方自治体がどんどん非正規教員に依存するようになったのに、国は非正規教員の供給を減らす改革を同時に行っていたということがポイントです。その結果、二〇一〇年代からは非正規の先生になり得る人々が枯渇し、ついに全国で教員不足が深刻化するに至りました。

 皮肉なことに、そんな中でも教育改革は精力的に続けられ、教員の仕事はどんどん増やされました。二〇〇三年のいわゆるPISAショックを契機として、二十一世紀型学力の育成がうたわれ、一斉教授方式からの転換が求められました。また、二〇〇八年の学習指導要領の改訂によって新教科が設立され、授業時数も増やされました。したがいまして、先生方の仕事が大変増えたということです。

 こんな状態が二十年以上続いてきたのですから、余りに過酷な状況を見て、教員採用試験の応募者が減るのは、むしろ自然なことではないかとさえ思われます。今では、正規雇用教員の採用を増やしたくても応募者が少な過ぎて採用を増やせないという教育委員会も増えてしまいました。

 以上の経緯から分かりますのは、教員の長時間労働は、現場の自助努力だけではもう改善されるような単純な問題ではなくなっているということです。教員の長時間労働は、国の財政改革を背景にした教員の雇い控えと非正規依存、その結果としての非正規の枯渇、さらには、教員不足に起因する長時間労働の結果としての病気休業の増加、あるいは産育休の長期化といった、現在の教職をめぐる一連の問題の一環として生じているということを是非御理解いただきたいと思います。

 したがいまして、教員の長時間労働を是正するためには、国が教員一人当たりの仕事量を適正化するための根本的な対策を打っていただきたいと切望しております。

 具体的には、まず、教員一人当たりの担当授業時数に上限を設ける必要があります。この国のリーダーシップがなければ、教員が効率的に頑張って仕事をすれば定時に帰れる、そういう仕事量へと抜本的に改善することは不可能です。

 そのためには、授業を担当できる教員を増やすこと、教員定数を改善することが必要になります。ところが、ここまで教職をめぐる悪循環が進んだ今となっては、志願者が減り過ぎて、すぐに採用数を増やすことさえ困難になっています。

 したがいまして、教員数を何年かけてどの程度改善できるのか、国が教職員定数改善計画をきちっと立てて、長期的な財政支援の見通しを地方自治体に示すことこそが、四月の雇用控えを少しずつ減らしていける、今最も喫緊の政策課題であるというのが私自身の見解でございます。

 なお、日本は、昭和三十四年の教職員定数改善計画、第一次からずっと、財政状況が悪いときでさえ、少しずつでも継続的に教員数を改善する努力を続けてきていました。子供の数が減るから教員を雇い控えするという政策は、過去の日本の教員政策の歴史におきましても、あるいは諸外国の一般的な教員政策を見ましても、むしろ異例のものでありまして、子供の数が減る今の時期こそ、子供一人当たりの教員の数を増やすには、むしろチャンスなのだということを力説したいと思います。

 今現場に必要なのは、希望の光です。少しずつでも現場の人手が増えていくという明るい未来が示されれば、教員志願者を増やし、悪循環を好循環にする効果が期待できます。そのためにも、教員不足の実態と少子化の進行に関する綿密な調査を行い、第八次の教員定数改善計画を再開していただきたく、ここに強く要望いたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

中村委員長 ありがとうございました。

 次に、青木参考人にお願いいたします。

青木参考人 おはようございます。東北大学大学院教育学研究科教授、青木と申します。教育行政学を専門分野としております。

 本日は、意見を陳述する機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、第二次ベビーブーム世代ど真ん中でして、千葉県の小さな町で生まれ育ちました。小中学校、高校と地元の公立学校で学んだ後、大学、そして大学院まで進学することができました。その過程で、いつからか、世界的に見てもすばらしい日本の公教育システムの中で毎日懸命に教育に従事しておられる全ての先生方が働きやすさと働きがいを持てるようにしたい、そういう思いを持ってまいりました。これは、文部科学委員会の先生方と思いを同じくしていると感じます。

 それでは、意見に入ります。

 意見の冒頭ではありますが、今回の法案について、私の基本的な評価を僭越ながら申し上げます。

 本法案が対象とする制度は、長年にわたり様々な批判と再検討の声にさらされており、このテーマは大変重く、慎重な議論と着実な制度設計が求められます。私は、全体として本法案を前向きに評価いたしますが、それはあくまで、過去の問題を直視しつつ、未来への一歩を丁寧に踏み出そうという意思が感じられるからです。

 といいますのも、この法案には、政策の総動員と言えるような姿勢がはっきり見えており、教員の多忙、学校の働き方改革という課題に対して、動員可能な政策手段をしっかり整備して対応しようという意思が感じられるからです。

 貞広部会長の下、私も中教審特別部会の議論に参画いたしました。その議論を振り返ってみましても、そこでの議論は妥当な方向性だったと認識しています。つまり、精神論や理想論を語って終わったり、絶望にさいなまれて既存の政策を全否定するのではなく、現実の制度の機能を直視し、どう改善を図っていくのかという現実論、手段論のところがしっかりしていたと思います。これは非常に重要なポイントであると感じました。

 また、注目すべき点として、国としての制度設計の議論の場として、どこまでが国の責任で、どこからが地方や学校、校長の責任かという線引きもかなり明確に意識されていました。この仕分があることで、それぞれのレベルでの責任の所在がぼやけることなく、適切に政策を実施できるような提言に結びついたと考えています。

 ここからは、私なりに三つの観点から法案を評価していきます。

 第一に、私の専門であります政府間関係論という観点からです。

 政府間関係、言い換えれば、国と地方の関係の観点から見ますと、今回の法案は極めて前向きに捉えられます。といいますのも、ある意味で、教育行政の地方自治の原則を踏まえつつも、踏み込んだ規定を打ち出しているように思えるからです。通常であれば、公立学校の設置者である自治体に相当程度任せるべきところを、あえて国がリーダーシップを取っています。今回の法案は、地方自治の尊重と中央の責任、そのぎりぎりの接点を巧みについた、覚悟を持った制度設計だと評価します。

 例えば、改正案では、教育委員会に対して、教員の業務量の適切な管理と健康、福祉を確保するための実施計画の策定、公表を義務づけるだけではなく、計画の実施状況の公表も市町村単位で義務づけています。さらに、この一連の対応を、教育行政に閉じることなく、総合教育会議への報告を義務づけることによって、首長を始めとする多様なステークホルダーとの連携、協働も教育委員会に求めています。

 加えて、給特法と関連する法律の改正を通じて、学校単位の動きにまで義務づけを含む強い規制を二つかけます。一つ目は、公立学校が、学校評価の結果に基づき講ずる学校の運営の改善を図るための措置が、先ほど触れました実施計画に適合するものとなることを義務づけます。二つ目は、公立学校の校長が学校運営協議会の承認を得ることとなっている学校運営に関する基本的な方針に、業務量管理・健康確保措置の実施に関する内容を含めることとします。

 これらの改正案は、いずれも、教育行政の地方自治原則からすれば、教育委員会の行動を強く枠づけるものであると言えます。しかし、教育行政の地方自治原則のぎりぎりの範囲内で、緊急事態とも言える現在の教員の働き方を改善するという強い意志の表れと肯定的に評価しています。

 この国の強い方針に対して、教育委員会や学校が適切に制度を運用することが鍵になります。これを教育ガバナンスの観点から見ますと、例えば、既に触れましたが、総合教育会議や学校運営協議会といった仕組みは、教育委員会に加えて、首長、保護者、地域住民といった幅広いステークホルダーを巻き込むものです。教育委員会が単独で抱え込む時代から、教育行政の外部主体と連携して進める開かれた教育行政への転換点に立つものと言えましょう。

 こうした既存の制度を給特法とうまく組み合わせることで、教育委員会や学校が教員の業務量の適切な管理と健康、福祉を確保するための措置の実効性を主体的に高める狙いを持つこの法案を積極的に評価します。

 第二に、個々の学校に目を向けたとき、特に注目されるべきなのが学校マネジメントです。その中でも、いわゆるミドルマネジャーあるいはプレーイングマネジャーと呼ばれる存在の重要性が今日増してきています。

 例えば、学年主任や教科主任といった立場の人たちが、自らの授業に加えて、チームメンバーの相談を受け、成長を促すことが求められています。これまでの学校では、いわゆる鍋蓋型組織と呼ばれる構造が根強く、マネジメントが機能しにくい状況でした。マネジメントが機能しなければ、業務の割り振りや適切な分担も期待できません。

 教員の自発性に委ねるべきものは教育活動であり、働き方に関してはマネジメントをしっかり機能させる必要があり、働き過ぎの教員に対しては管理職がちゅうちょなく介入し、速やかに働き過ぎの状態から脱出させるべきです。

 今回の改正案では、主務教諭を置くことができるという任意設置規定ではありますが、これは学校組織の中にマネジメント体制を制度的に整備していくものであり、まずは、これまでの鍋蓋型組織の課題を克服する突破口となると期待しております。教員の働きやすさと働きがいは、学校にマネジメントの風が吹くことで初めて達成され、守られるものと考えます。

 もちろん、マネジメントを機能させる前提条件としての教職員の定数改善は必要不可欠と考えます。

 第三に、教員の処遇改善です。

 教職調整額が、教員の業務が教員自身の自発性、創造性に委ねられる部分が大きいことから、勤務時間の内外を包括的に評価し、本給相当として支給されるものという整理はさきの中教審答申でも改めてなされましたが、私もその考えに賛同いたしました。

 確かに、今後は、働き方改革を着実に推進し、教員の長時間労働が常態化している現状を是正していくことが不可欠です。こうした前提を踏まえることは重要ですが、むしろ、働き方改革が実現された後の姿を見据えることで、教職調整額の制度も、ようやく、その制定当初に期待されていたとおり、教員にとって望ましい形で機能し得ると考えられます。

 改正案では、教職調整額の率を四%から一〇%に引き上げることとされています。法案の目的である教員に優れた人材を確保するためにも、給特法制定時と同様の一般行政職に対する優遇措置の回復、また、直近の民間セクターの給与水準の上昇を踏まえた人材確保策の観点からも、教員の処遇改善となる教職調整額の引上げは妥当と評価いたします。

 なお、今回の法案の実効性確保については、教員の人事評価制度や育成のための指標といった制度、さらには研修制度とも関連づける必要があり、これらは現在中教審で審議していますが、不断の制度改革が求められると考えています。

 最後に、給特法そのものに対する評価を述べたいと思います。

 給特法の成立過程を振り返りますと、当時の文部省の担当局長が次のように給特法成立後のスタンスを述べています。国会の会議録に記録されていますその発言の一部を読み上げます。「超勤命令をしなければならないときには、健康や福祉を害しないように、ほんとうに教師の立場になって校長が考えていくとか、そういう点については今後行政指導において十分、命令権者の校長に、法の運用を誤らないようにという指導をしていくべきものと心得ておりますし、そのようにいたしたいと存じております。」。

 その後の展開を見ますと、教員の勤務実態の把握やそれに基づいた措置について、文部省、文部科学省や教育委員会の対応には問題が全くなかったとは言えない面がありました。給特法は、制度の理念と現実の運用に乖離があったことも事実であり、その課題をどう乗り越えていくかが今回の法案に問われていると感じます。ただし、それは運用のスタンスにとどまるものではなく、給特法そのものに関する実効性の確保の問題でもあります。給特法というのは、教員の給与体系や勤務時間の扱いなどに深く関わっている法律ですが、単体で十分機能するものではありません。

 今回の法案は、この給特法についての実効性をどう担保するのかという点を意識した内容となっています。中教審で抜本的な議論を行い、制度の根幹は維持しつつも、長年指摘されてきた課題を克服するために、国と地方の関係では踏み込んだ制度改革を盛り込み、さらに、関連制度との組合せで制度の実効性を担保するための改正だと捉えています。つまり、給特法単体では期待できない学校の働き方改革の推進を、関連する制度を活用しながら実現していくことが期待できます。

 給特法成立時点では、欠けたピースが数多くあったのではないでしょうか。今回の法案には、まさにこの欠けたピースを埋めるような内容が盛り込まれています。これは非常に重要な進展でして、制度全体の整合性を取る上でも、教員の働き方改革を本気で進めていくためにも必要不可欠と思います。

 この度の改革は、一つの法改正にとどまらず、日本の学校文化を問い直す挑戦でもあります。私自身は制度設計や教育行政の分析を専門とする研究者ですが、今この瞬間も教室で奮闘する先生方、そして未来を切り開く子供たちの姿を思えば、この法案が持つ意味は決して小さくありません。

 議員の皆様におかれましては、是非この挑戦の意義を御理解いただきまして、教育の現場を支える力強い一歩として御検討いただければと存じます。

 私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

中村委員長 ありがとうございました。

 次に、末冨参考人にお願いいたします。

末冨参考人 皆さん、おはようございます。日本大学の末冨でございます。

 「学校における働き方改革を強力に進めるために」というスライドを使って説明をさせていただきます。

 私は、日本大学で勤務をしておりますが、教員不足をなくそう緊急アクションの呼びかけ人としても活動しております。

 次のスライドを御覧ください。

 教員不足をなくそう緊急アクションは、教員不足の実態に一番困るのは子供たちであるということで、子供たちが安心して学び、育つ日本の学校であり続けるために、国、自治体、学校現場のあらゆる関係者を応援し、保護者、住民からの理解やサポートも広げるために、二〇二二年から活動しております。

 こちらの会場にいらっしゃる国会議員の皆様にも、折々にかなりむちゃなお願いもしてまいりましたけれども、しかし、子供たちのために共に様々な改革を進めてきてくださいましたこと、改めて御礼を申し上げます。

 次のスライドに参ります。

 私自身はヤフーで記事を発信するエキスパートというお役目もしておりますけれども、この間、ヤフーで発信してまいりましたのは、今次法改正の三本柱改革というものが全て共に進むことが非常に重要であるということ、そして、昨年末の文科大臣、財務大臣の大臣合意の中で、学校現場の期待が高い、頑張る先生たちの期待が最も高いのが、学校における働き方改革を強力に進めるということで、これを社会としても後押ししなければならないことも発信してまいりました。

 次のスライドに進んでください。

 こちらは、私が整理しました、なぜ教員不足が起きるのかということですけれども、ごく簡単に申し上げると、左側、教員免許状保有者の供給が停滞していること、志願者が減っていること。そして、右側、一方で教員の需要は増加しております。しかしながら、先ほど佐久間参考人もおっしゃられましたように、正規教員の採用控え、そして非正規教員や臨採も払底している、そこの全てに作用しているのが教員の長時間労働であるということで、この構造の下で教員不足は加速をしてまいりました。

 次のスライドに進みます。

 こうした現状に対し、今次改正の意義というのは、学校における働き方改革を一層推進すること、そして、組織的な学校運営及び指導の促進をする、教職員体制も拡充するということで、教員の長時間勤務にダイレクトに働きかけられるものであること、あわせまして、教員の処遇改善は、若い大学生たちにとって、教員になろうかなと迷ったときに、それを後押しする非常に重要な改革であるとともに、今、学校現場で、一回退職したけれども、あるいは定年を迎えたけれども、非正規教員として頑張っている、再任用として頑張っている先生方の処遇も改善することで、子供を支える大人たちを支えるということが可能になるという意味があります。

 次のスライドに進みます。

 これらの改革を進める上で、やはり学校における働き方改革を強力に進めるということが中核に位置づけられなければなりません。

 今次の法改正の中で一番重要なものの一つが、業務量管理、そして健康管理措置実施計画を市町村の教育委員会が定めるということにあります。

 これを実効性のある改革として機能させるためには、市町村教育委員会の計画策定に際し、国による、教員が担うべきではない業務の明確化、そして、国による、教員の業務量管理のルール整備が必須です。全国同じルールで測定しなければなりません。自宅からのテレワーク、こちらは、把握できない持ち帰り仕事ではなく、きちんと把握できる、記録が残る形でのテレワーク、そして、勤務時間内の補教による超過負担等も含め、時間外等在校時間の総量把握のルールが必要です。

 そして、業務量管理計画の策定とその実施状況につきましては、教員志望者の出願、教員の異動希望、教員公募の参考にできるよう、国、都道府県が各教育委員会の実施状況を公表する必要があります。徹底した見える化をお願いしたく存じます。

 あわせまして、この計画がしっかりと軌道に乗りつつあるときに、国による教員勤務実態調査ももう一度実施していただいて、この市町村と都道府県が進めている業務管理計画というのは確かに学校現場の実態と合っているよというオーソライズをすることで、社会全体に、ああ、きちんと各教育委員会が取組を進めているのだなという納得が広がっていくと存じます。

 次のページに参ります。

 あわせまして、今次法改正の中では、総合教育会議や学校運営協議会も業務量管理を後押しすることとなっております。

 こちらにつきましては、国による教員の業務量管理のルール整備を前提に、個人を特定しない形での業務量管理の実態を校長から学校運営協議会に、教育長から総合教育会議に情報開示を必ず行うということが法改正の趣旨を実現するために必須です。小規模校の情報開示については、総合教育会議での開示とするなどの措置も必要かと考えられます。

 この際に、学校運営協議会は現在以上に大きな責務を負うことになります。必置化を進めるとともに、学校運営の支援機能向上、委員の研修改善や処遇改善も必須であると考えております。

 ここからは後半の内容に参ります。

 教員不足をなくそう緊急アクションでは、重要政策提言を公表し、関係の皆様にお願いをしております。

 大きく分けて御覧いただいた五つの柱がありますが、今日はその中で、特に今次改正案と関連ある四つの項目、すなわち、教員が担うべきではない業務の明確化、市町村の働き方改革に教員の声を反映する仕組みを、首長部局、常勤専門職、支援員配置で学校を支えるチーム学校二・〇、児童生徒と教職員のウェルビーイング重視の管理職選考、校長評価の大幅な改善という四点についてお願いをいたします。

 それでは、次のスライドに参ります。

 教員が担うべきではない業務の明確化が必要です。現在の、文部科学省が教師の仕事を三分類していただいていますが、学校の働き方改革を強力に進めるという改革に際しては、教員が担うべきではない業務を明確化する必要があります。

 このスライドに書いてあるような業務がそれに該当すると私たちは判断しておりますけれども、私自身は、およそ二十年にわたって教員に徴収金業務をさせないでくださいという提言と活動もしてきたんですが、いまだにそれをさせている学校があるという信じ難い実態があります。これを、この際、教師が担うべきではない仕事として学校事務職員等がしっかりと分担していくというような職務分担の明確化も必要です。

 あわせまして、教員が担うべきではない業務を明確化することで、都道府県や政令市の任命権者に相談窓口を設置し、市町村に改善指導ができる。これは、今次改正の趣旨と照らし合わせても大変整合する改革ではないかというふうに考えております。

 次のスライドに参ります。

 市町村の働き方改革に教員の声を反映する仕組みをということをお願いいたしたく存じます。今の日本の学校現場の先生たちは、余りにも自分たちに関わることに対して声が上げられない存在なんですよね。だからこそ、働き方改革に際しては、先生たちが困っていることに寄り添っていただきたいということです。

 こちらのスライドは、私がこの年末年始に頑張る先生たちのネットワークで拡散していただいたアンケートの結果になりますが、頑張る先生方のネットワークですら、働き方改革が効果を上げているとお答えの方は二割しかいらっしゃいません。厳しい実態がございます。

 しかしながら、次のスライドに進みますけれども、学校現場から、こういう働き方改革がしてほしいという提案が幾つかにまとめられたという意義もありました。例えば、授業時数や持ちこま数、小学校専科が最も多いですが、サポートスタッフや業務委託に関する提案。そして、書類、書式、DX化というものをもっと現場の使いでのいいものにしてほしい、これはきっとすぐできる改革の一つだと思いますけれども、頑張る先生たちは、どのような場面であっても前向きに物事を考えて提案できます。だからこそ、このような声を一つ一つの市町で酌み上げていただき、できることをどんどん取り組んでいけば、働き方改革は進むはずです。

 次のスライドに参りますが、特に要望が強かったのは保護者対応ですね。非常に苦しんでおられます。もう一つが、やはり授業時数がというお声もありますけれども、保護者対応に関連させて、次のスライドに参ります。

 首長部局、常勤専門職、支援員配置で学校を支えるチーム学校二・〇ということで、現在進んでおりますのは、都道府県や政令市、市町村の首長部局や子供の権利擁護機関で、子供のための問題解決を学校、園と連携しながら共に進んでいくというタイプの改革がだんだん広がりつつあります。

 例えば、熊本市のこどもの権利サポートセンターでは、子供や保護者だけでなく、教員の相談も受け付けながら、特に事例が多いわけではありませんが、一部の非常に現場を疲弊させる保護者がいたときに、子供の最善の利益を優先にしながら、共に問題解決を図っていきましょうという取組もされておられます。

 熊本市の場合、スクールローヤーは地元に信頼できる弁護士さんがおられますけれども、教員だけではない、あるいは非常勤の市の職員だけではなく、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーといった専門職の常勤配置によって、より問題解決能力を上げていくところが課題であるというふうにも、熊本市の教育行政審議会の答申では指摘をされています。このような改革も是非国として後押しをしていただき、共に子供を支える首長部局の役割、それを支える常勤専門職や支援員配置の拡充をお願いいたしたく存じます。

 次のスライドに参ります。

 「児童生徒と教職員のウェルビーイング重視の管理職選考・校長評価の大幅な改善」と書いてありますが、学校現場の先生たちからは、校長先生が働き方改革に際してボトルネックとなっているという端的な指摘がございます。例えば、十四ページのスライドでは、校長が教員のことは二の次という発言をしていて、そのとおりの学校運営で、教員がどんどん体調を崩している。そして、次のスライドに進んでいただくと、十五枚目、市の校長会の同調圧力が強いのか、全く自校から変えていこうという校長の意識が感じられないと、非常にお困りです。

 しかしながら、次のスライドに進んでいただいてよろしいでしょうか、十六ページ目ですけれども。こちら、大阪市の学校の改革ですが、オセロの四つの角のようにと、複数担当、チーム担当、全学年教科担当、四十分授業午前五時間制の四つを同時に行ったことで、大きく働き方がいい方向に変わった。これは何のためにしているかというと、ただ時短じゃない、これは貞広参考人もおっしゃいましたけれども、ただ時短を今している学校が多い中で、大人が生き生きと変われば、子供の学びも生き生きとなるでしょうという前向きな改革をしておられるんですね。こうした校長先生がいる学校では、必ずいい方向での働き方改革が進みます。

 では、なぜ働き方改革に取り組まない校長がいるのか。それは、現在の管理職選考と校長評価の仕組みが、校長がつくりたい学校をつくって、それを評価するという大きな特徴を持っているからです。ここに働き方改革ですとか、子供たち、教職員のウェルビーイングというのが考慮されづらい仕組みになっている。この点を地方自治体とともに変えていただきたいと存じます。

 それでは、次のスライドに参ります。

 今次改正に関して直接関連する提言は以上となりますが、最後に、現在進行中の学習指導要領の見直しと先生の働き方に対してのお願いがございます。三つございます。

 まず、持ちこま数上限を設け、教員の勤務時間内で授業準備を終えられる学校にしていっていただきたいということ。もう一つが、そのためにも、標準授業時数の大胆な運用改善、学習内容の精選が必須であるということ。そして、個々の児童生徒に着目した教育課程というものを教育課程特別部会でも今検討してくださっており、私たちも大変すばらしい改革だと思っておりますが、だとすれば、それに対応できる定数改善が必要であるということです。

 現在、学校内に不登校の子供たちもいつでも来れる校内教育支援センターを設置する動きが広がっており、大変望ましいことですが、そこに学校の先生が配置されていない、支援員やボランティアだけで成り立っている校内教育支援センターの方が恐らく現状多いはずです。そうではなく、どの子にも専門職であり子供への理解が深い先生方が接することができる、そのような体制をつくっていただきたいと思います。

 あわせまして、既に教育課程特別部会でもお取り組みですけれども、子供の声を聞く、そして学校現場の先生の声を聞く、併せて子供の実態を丁寧に把握しながらの学習指導要領のプロセスも大切にしていただきたく存じます。

 次のスライドに参ります。ちょっとレーダーチャートで字が小さくて恐縮ですけれども、大事な部分を大きくしてあります。

 これは、私が昨年度公表しました、中高生にどんな学校に通ってみたいかと聞いた結果ですけれども、一週間にある授業の数が今より少ない学校がいいと。実は、学校で分からないこととか苦手が解消できていない子が多いんですね。これは、カリキュラムオーバーロードを生徒の側の意識から見るとこういうことになるのだろうと思っております。子供たちにとっても、今の授業というのは分かる授業でもない、それから自分の苦手が解決できるような学校の体制でもない。あわせて、やはり朝から晩まで詰め込まれ過ぎていて、何を学んだのか覚え切れない、定着し切れていないという実態があるということです。このような実態にも寄り添いながら、学習指導要領の面からも、先生たちと子供たちがよりよい学びができる体制のお取組を引き続きお願いいたします。

 それでは、最後のスライドに参りますけれども、私たち、教員不足をなくそう緊急アクションは、子供たちのために頑張ってくださる大人の皆さんも応援しますということで、ここからも、あらゆるお立場の皆様方とともに、子供たちのために、教員不足が起きない学校、そのための働き方改革を強力に進める応援団として、引き続き活動してまいりたいと思います。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

中村委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中村委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。永岡桂子君。

永岡委員 おはようございます。自由民主党の永岡桂子でございます。

 本日は、参考人質疑の機会を賜りまして、大変ありがたく思っております。

 参考人の皆様方におかれましては、日頃よりお世話になっております貞広先生、青木先生には、私が文部科学大臣当時に中教審に諮問をいたしました内容に基づきまして、昨年、答申を作っていただきました。まずは御礼を申し上げます。私、盛山大臣、そして、あべ大臣の手を経まして、こうした形で法案の形になりまして、今、審議のさなかだということを大変感慨深く思っているところでございます。また、佐久間先生には、教員不足の問題につきまして様々御検討をいただいておりますこと、感謝申し上げます。それから、末冨先生には、実は、相当個人的にも、子供の貧困問題で大変お世話になっておりますけれども、学校や教育に関しましてもいろいろと意見を交換させていただいておりますこと、やはり心から感謝を申し上げる次第でございます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 今、いろいろお話を伺いまして、貞広先生からは、やはり、働き方改革、それから学校の指導、運営体制、そして処遇の改善と、一体改革が重要であるというお話。また、佐久間先生からは、一人当たりの担当の授業の持ちこま数、これは大変厳しいものがあるというお話をいただきましたし、また、青木先生には、給特法の成立時の理念でありますことが、今回の法律の改正によって実効性が担保されるための法律改正であるというお話もいただきました。また、末冨先生におかれましては、先生の働き方改革に本当に並々ならぬ御意見をいただきました。全て私もふむふむと言いながら納得していたわけですけれども、校長先生のよしあしも大変重要だというお話もありましたし、また、今やっておりますスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、スクールローヤー等の話、そしてDXの推進までお話しいただきましたことを感謝申し上げます。

 今回の法案が成立いたしました場合には、現職の教師であるとか、また、教職を希望している学生さんに対し、どのようなメッセージになるとお思いでしょうか。教職の人気回復につながると私は考えているわけでございますが、貞広先生、それから、あと全ての先生にこれをお聞かせいただきたいと思います。

貞広参考人 貞広です。御質問いただきまして、ありがとうございます。

 私、教員養成課程に身を置いておりまして、日々教員を目指している学生と過ごしております。非常に、今、搾取される労働者のように教員を描くような報道も一部あります、かなりありますけれども、やはり高度な学びの専門職としての姿というのも学生は見据えています。

 そのときに、今回法案が改正をされて、スイッチが切り替わるように世界も切り替わって、全ての学生がやはり教員ってすばらしいというふうになるかというと、それは、訴求力としてそこまでの力は、もしかしたら一時的にはないかもしれません。

 ただ、これだけの先生方が、現場の先生方をいかに支えられるかということを、知恵を絞ってくださって、法案の成立ということを考えてくださっているということ自体が、非常に学生たちにとってもメッセージになりますので、それはじわりじわりと訴求力を持つものであると信じて考えております。

 以上でございます。

佐久間参考人 御質問賜りまして、ありがとうございます。

 今の貞広参考人のお考えに、私も賛同いたします。やはり、すぐに大きな影響があるかというと、なかなか急激な人気回復にはつながりにくいかというふうに思います。今、教員志望の学生たちと話していて、やはり彼らが一番心配しているのは、自分に勤まるだろうか、体力がもつだろうか、過労死するんじゃないだろうか、そういう心配の方です。

 教員になりたいというふうに強く思うような、子供が好きな学生たちは、お金よりもむしろ、子供たちとちゃんと関わって、やりがいのある働きができるだろうかという、そこにむしろ興味があるのでということだと思います。

 しかし、一方で、慶應義塾大学の学生たちの分類を見ますと、自分は私立の学校一本です、公立は考えませんという人がとても多いです。なぜなら、待遇がずっといいからです。なので、やはり、これからの公立の学校の魅力を維持するためには、ほかの仕事との競争力をつける。若年労働力の奪い合いということにこれから人口減少に伴ってなっていきますので、教職の魅力を高める、あるいは、私立の学校教員との待遇の格差を縮めるという意味でも、教職調整額等、処遇改善につきましては、大変ありがたいことと考えております。

 以上です。

青木参考人 お答え申し上げます。

 法案が、働き方改革、処遇改善、それからマネジメント体制という三本柱になっていますので、どれか一つをやるということではなく、やはり学生さん等に対しても、この三つが同時に進みます、地道に一歩一歩ずつではありながら、変化をもたらすものだということを訴えかけるのがまず必要かと思います。

 また、具体的に一点だけ申し上げますと、教育実習がやはりポイントになってくるのではないかなと思います。企業では、やはりリクルートの場というのは、非常にコストもかけ丁寧なリクルートをするわけですので、教育実習の場がまさにリクルートの場としてしっかり機能するような、そういった手だてを今後講じる必要があろうかと思います。

 以上でございます。

末冨参考人 若い学生にとりましては、やはり自分が安心して働ける職場であるかと、特に教師を目指す若者たちというのは、自分が教師としてしっかり成長していきたい、子供たちに関わるからこそ、自分のしっかり成長できる場で学校があるかという点が非常に不安なんですよね。

 そういう意味でいいますと、学校の体制の強化、特に主務教諭は様々な議論がありますが、若手の育成を担当する人が特に重点校にはいるということになれば、それは少し安心かなと思うということです。

 そして、先ほど佐久間参考人もおっしゃいましたけれども、率直に申し上げて、お金の問題は非常に重要です。私立だけではなく、他の職種と迷うぐらい、優秀な学生が今増えています。今の教員免許の下では、非常に優秀な学生しか教員免許が取れない仕組みですので、民間企業も現在の人手不足の中で、かなり優秀な企業さんからの内定をいただいているんですよね。

 そのときに、やはり初任給を見比べます。そして、昇給の速度を見比べます。雇用の安定性という点では公立学校教員は抜群なんですけれども、お金として見返りがあるものなのかどうかといったときに、やはり処遇改善があることによって、このぐらいなら教員を選んでも大丈夫かなと思える非常に重要な材料になりますので、三本柱の改革というのは確実に学生たちに安心をもたらす。

 ただ、教職担当の先生方の知識がまだアップデートされていない場合が多くて、悲観論をおっしゃる方がすごく多いんですよね。私の講義を聞いて、先生の講義を聞いて安心したので教員になろうと思いますと言ってきた学生が何人かいまして、是非とも、改革が進んでいるよというメッセージは広く教職を担当する先生方にも共有いただけるといいかなと思います。

 以上です。

永岡委員 先生方、ありがとうございます。

 教員の皆さん、それから教職を目指す学生の皆さん、じわりじわりとではあるけれども、国も教師の皆さん方を応援していますということをじわりじわりと、じわりじわりとじゃ駄目ですね、早急にお伝えしなければいけないというふうに思いまして、やはり早期の衆議院の通過というのも重要かなというふうには思った次第でございます。

 それでは、次の質問に行きます。

 貞広先生、佐久間先生にお伺いしたいと思います。

 中教審の答申では、教職員定数の改善の必要性も提言されております。令和七年度の政府予算では小学校におけます教科担任制の拡大等が盛り込まれましたけれども、更なる改善に向けた期待や要望を聞かせていただけますでしょうか。

貞広参考人 お答え申し上げます。

 現場では、佐久間参考人のお話にもありましたけれども、本当に人が足りない、人が欲しい、もう猫の手もかりたいと先生方おっしゃるぐらいで、人を増やしていただくということは、予算制約もあると思いますけれども、是非お願いをしたいというところです。

 直近では、こちら、検討俎上にのっているかと思いますけれども、小学校に引き続き中学校の三十五人学級の実現というのがまずお願いしたいところになろうかと思います。

 以上でございます。

佐久間参考人 お尋ねありがとうございます。

 教科担任制を進めるということの前提に、定数改善、これは是非とも実現していただきたいというところです。財政状況が厳しい中、今回教職調整額にも取り組んでいただいていますけれども、是非定数改善をお願いします。

 これは、根本的な問題解決、全ての問題解決につながっていきます。特に教科担任制との絡みで言いますと、少人数学級化によって基礎定数を増やすだけではなくて、私の資料にも出しましたけれども、級外の先生を増やすための乗じる数という部分がございます。つまり、学級担任は持たないんだけれども、例えば小学校などでは専科の先生を増やしたりするために非常に重要な係数になります。この乗じる数の改善によって専科の先生を増やしていただくということは、今の小学校の厳しい状況をすぐに改善する効果があると思います。

 というのは、専科の先生が今教員不足でいなくなってしまうと、例えば、音楽や図工や体育といったそれまで専科の先生が担っていてくださった授業を担任の先生がやらなければならなくなるんですね。そうすると、授業の準備だけではなくて、ほかの教科の授業の準備をする時間もなくなってしまう、空きこまがなくなってしまうということなので、この級外の先生の数を是非増やすということを先生方に是非とも御検討いただきたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

永岡委員 ちょっと時間がなくなりましたので、最後の質問になると思います。青木先生に二問続けて質問させていただきます。

 組織的な学校マネジメント体制の確立に向けまして、主務教諭がどのような役割を果たすことが期待されているかということ、そしてもう一つ、よい教師が、全てのよい教師が全てのよい管理職になるとは限りません、そういうことがありますので、管理職研修などの充実が必要であると考えますが、今、二点ですね、主務教諭と管理職の研修と、二点のことについてお聞きいたします。

青木参考人 お答え申し上げます。

 主務教諭に関しましては、これは法案では総合調整という言葉が入っていますが、それをもう少し具体化してお答えするというお尋ねではないかと理解いたしました。

 先ほども申し上げました、プレーイングマネジャー、ミドルマネジャーとしての機能が期待されていると思います。授業を受け持ちながらというプレーヤーの感覚を保ちながら、若手の授業や他の業務についての日々の相談を日常的に受け、成長を支援するという役割が主務教諭には求められていると理解しています。また、そういった悩み事等々を必要に応じて管理職や主幹教諭につなぐという役割、文字どおりミドルリーダーとしての役割が期待されているかと思いますし、プラスしまして、小さな単位のチームやグループのリーダーとして学校内外の連絡調整を担う、そして更なる御自身のマネジメントスキルの向上を期待されている方々だと理解しております。

 また、二つ目、管理職研修についてのお尋ねがございました。

 これにつきましては、私も毎年、合わせて今千人ぐらいだと思うんですけれども、いろいろな自治体で管理職研修をしております。その中で、特に強調して、そして特に校長先生等々にお伝えできているなと思うのは、御自身の状況と若手の先生との違いを理解していただきたいというところでした。

 具体的に申しますと、研究上分かったのは、ストレス耐性が管理職の方には非常に備わっていて、一般の先生方は必ずしもそうでない先生方が含まれている。そのことをお伝えするだけでも、そんなことは知らなかったと校長先生方から御意見をいただくことがございます。

 まずは、職員室にはいろいろなタイプの先生がいらっしゃるということを理解して、そういったいろいろなタイプに応じてマネジメントをしっかりしてやっていただきたいということをお伝えしていますし、今後もそれがより必要になってくるのではないかと思います。

 お答えは以上でございます。

永岡委員 どうもありがとうございました。

 終わります。

中村委員長 次に、亀井亜紀子君。

亀井委員 おはようございます。立憲民主党の亀井亜紀子でございます。

 今日は、四人の先生方、専門家として様々な御見解を伺いまして、本当にありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思いますが、中央教育審議会に参加をしておられた先生とそうでない先生と、分けて質問をさせてください。

 今回、この給特法の審議、先週、本会議で総理入りの質疑があって、そして今週、委員会で一回質疑をしているんですけれども、給特法という仕組みについて、創設時と今、現実はその理念からかけ離れているということは間違いがないわけですが、その中で給特法をこのまま残したままの改革で大丈夫なのだろうかといういろいろな質問が委員会の中でもございました。

 同じようなことが中教審の中でも様々な見地から述べられたんだと思いますが、最終的にこの給特法という仕組みを残した中での改革に至った経緯と、あと、この給特法を逆に廃止してしまったときにどんな問題が起こり得るのかということも含めて、貞広参考人、それから青木参考人にまずお伺いいたします。

貞広参考人 お答え申し上げます。御質問いただきまして、ありがとうございます。

 先ほど、私の意見陳述の中でも申し上げましたとおり、この問題に関しては、会議内外にも様々な御意見があり、様々な御意見を出していただきながら審議をいたしました。その中で、これも先ほど申し上げた形で重ねて恐縮ですけれども、日々子供に向き合って、思いもよらない事態に対応している先生方のお仕事というのは、都度都度、これをやりなさい、このようにやりなさい、この程度やりなさいと校長先生に命令をされるのではなく、自主的、創造的に行うものであるということを考えると、時間的な管理ということが、外形的な管理ということを想定する、いわゆる勤務時間外手当という形よりも、やはりこの給特法という仕組みの方が適合的であろうというような結論に至ったわけです。

 ただし、給特法の本来の趣旨を機能させるような状況にはないということも併せてしっかりと検討されていて、しっかりと機能させるためには、今回、この三本柱で先生方の学校の環境を改善する必要があるということになったわけです。

 とりわけ、時間外勤務の許容性を限定する、つまり、しっかりと本当に勤務時間以外のものを限定、業務を限定するということや、あと、抑制的で許容範囲の時間外勤務に見合った調整額にする、これが重要であるということで、今回、答申を出させていただいたところでございます。

 もし給特法という仕組みを違う仕組みにしたときにどういうことが起きるかという想定ですけれども、これは若干私見になりますけれども、私は、安定的、安定性、必ず出していただけるという安定性と、地域の財政力によらず、しっかりと国の仕組みで先生方の処遇を満たしていくということの重要性を鑑みて、やはり非常に時間外勤務手当という形には不安があるということでございます。

 国のルールに書いてしまえば、お金を出す側を、こういう言い方は申し訳ありませんが、縛ることができます。残業代という形で制度化をしますと、その原資や、どこまでを支払うのかということを地方に委ねることにもなります。地方の財政力が違うことを鑑みまして、これは実行面の面で不安があるというのが私なりの見解でございます。

 以上、お答えとさせていただきます。

青木参考人 お答え申し上げます。

 まず、教職調整額の必要性ということでありますが、貞広参考人のお答えに私なりにつけ加えさせていただきます。

 貞広参考人のお話しされた内容については、私も違和感なく受け止めています。

 まず、教員業務の特性ということは中教審でも議論されましたが、これを私なりに二つに分けてお答えしたいと思います。

 基底部分にある、底にある、第一層と言っていいと思うんですが、そこには、教員業務の第一層には専門性というものがあると考えています。こちらは自発性や創造性という言葉で表現されているものでありまして、昭和四十一年の勤務状況調査の項目を見ますと、授業準備という項目がありまして、全体の業務の中で、こちらの業務が比較的多くカウントされていました。

 他方、第二層に当たる部分、こちらが公共性と呼ばれるものと私は理解しております。第一層が専門職性、教員の専門職的なモデル観というのがあるわけですが、これに対して、第二層は、どちらかといいますと、聖職者モデルに近いものではないかと考えています。熱血教師モデルですね。こちらは、給特法成立時には相対的には余り意識されていなかったところでありまして、国立大学法人化で国立学校が給特法の対象から外れて、より意識されるようになってきた。つまり、公立学校というのはユニバーサルなサービスを提供しなければいけないので、いろいろな児童生徒を対応しなければいけないので、教員の業務も多様で、困難度が増しているということであります。

 実は、昭和四十一年の勤務状況調査の項目でも、緊急の校外補導というような項目がありましたので、当時から、やはり、この第一層の専門性、第二層の公共性、両方が含み込まれた制度設計だったと思います。

 もちろん、御案内のとおり、この専門性が現在はなかなか十分発揮できないということが問題になっているわけですが、今般の働き方改革、この第一層に向かってアプローチするものと理解していまして、じっくり授業準備や教材研究ができるようになれば、給特法本来の機能が発現するというふうに理解しております。

 また、時間外勤務手当になった場合というふうにお尋ねを理解しましたが、仮にそうなったとしましたら、やはりタイムマネジメントが制約条件といいますか、課題になろうかと思います。

 実は、前回の給特法改正のときに導入された変形労働時間制というのが、一年間の変形労働時間制に関しては消極的な御意見が様々ありましたが、私の理解では、その根底には、タイムマネジメントが十分各学校で機能していないのではないかなという疑念があったのではないかと思っております。

 現在、例えば在校等時間の把握等々は進んではいますけれども、やはり必ずしもタイムマネジメントが十分ではないということであれば、やはり、時間外労働、残業手当化した場合には、各学校でのそのタイムマネジメントのよしあしというのが如実に表れてしまうのではないかという懸念を持っております。

 以上でございます。

亀井委員 ありがとうございます。

 それでは、給特法の仕組みを維持した中でも、とにかく先生、教員の仕事量を減らしていかなければいけないというのは、これは共通の認識です。

 どのように減らすかということなんですが、事前に私、佐久間先生、それから以前、末冨先生ともお話をさせていただいたことがあるんですが、お二人の注目されている点がちょっと違ったんですね。つまり、佐久間先生の方は、教員の中核的な仕事がとにかく増えているので、ここを減らさなければどうにもならないと。

 実は、私たち、党内の会議で財務省と話したときに、財務省は、文科省が、三分類、仕事を分けておきながら、何も業務削減していないじゃないか、何も起きていないじゃないかということに対していら立ちを覚えていたんですね。それで、教員が担うべきではない仕事について、例えば、文科省が、これはやってはいけませんというふうに通達を出したら、現場の先生も断りやすくなるんじゃないだろうかという発言があって、ああ、なるほどなと思ったりしたんですけれども、そのことについて佐久間参考人は、いやいや、違うと。もうとにかく教員がやらなければいけない仕事が増え過ぎているので、ここを減らさないとどうにもならないというようなことをおっしゃっていたんですね。

 となると、学習指導要領を、やはり中身を縮減するしかないのではないかなと思うわけなんですが、どうやって教員の仕事を削減していくべきなのか、佐久間参考人と末冨参考人にお伺いをいたします。

佐久間参考人 大事な御質問ありがとうございます。

 教員の中核的な仕事、つまり、授業や子供に関わる仕事が今増えているということ、この現状を、私の先ほどの陳述でも二つの段階に整理して述べさせていただきました。

 まず、現状では、いるはずの先生がいないという実態があります。ここに手を打っていただかなければ、学習指導要領の時間をこなすという以前に、そもそも一人だけの仕事では済まなくて、いない分の先生の仕事をかぶらなければいけない。

 私どもの調査では、ある県の欠員分の人数を学校の数で、小中の数で割ると、一校平均約四人の先生がいないという計算になっています。ですので、その分の仕事を皆さんが自己犠牲的にかぶることで今必死に支えているという現状があります。このことを改善することなしに長時間労働改善というのはなかなか難しいというのが一段階目です。

 その上で、教員がちゃんとそろった後の話ですけれども、そうしましたとしても、今まで、この衆議院の委員会でもずっと議論していただいているところなんですけれども、教員持ち時間というのが多過ぎるということがあります。一時間の授業をするのに一体どれだけの時間が必要かということです。今の文科省の解釈では、例えば四十五分の授業をする場合には、四十五分の事前準備が必要だということになっています。

 さらに、当時なかった探求的な授業というのが今求められています。総合的な学習の時間であるとか、高校ですと探究の時間。

 つまり、先生が、トーク・アンド・チョークといって、黒板の前でしゃべり続けて生徒に説明するような授業でしたら、そんなに準備が、四十五分で、いや、五十分で済むかもしれないんですけれども、さあ、課題を出して、子供たちに議論させて、その子供たちの探求を、一人一人寄り添っていくというような、そういう授業を準備しようとすると、五十分の授業に五十分では到底準備時間が足りないということになります。

 ですので、例えば、学習指導要領の時間を一方で減らす、そして、それは子供の勉強時間を減らすということになるんですけれども、同時に、先生の授業時間に対する準備時間も考慮に入れた負担こま数というのを考えていただきたい。例えば、総合的な時間でしたら、一こまの授業をするのに二時間分の、二こま分の準備時間が必要だとか、そういう組合せで、教員の負担が一定になるように縮減していただきたいというふうに思っています。

 もう一つ申し上げたかったのは、先生が担うべきではない仕事というのをもし決めていただいたとして、学校の先生方が断れるようになるというのは、教員の労働の観点からすればいいことかもしれません。しかし、一方で、断られた子供や困っている保護者は一体どうなるのかという問題がございます。

 ですので、教員が担わなくていい、あるいは担うべきではない仕事というのを決める際には、是非、それを担う別の人材が確実に学校に配当されて、そして、子供や保護者の皆さんがこれ以上困ることのないようにお考えをいただきたい、そのための予算措置も講じていただきたいというふうに考えます。

 以上です。ありがとうございます。

末冨参考人 まず、現場の先生たちが授業や授業準備の部分で多忙化しているというのは確かです。あわせまして、特に新人の先生たちに聞くと、通知表の所見欄がすごく大変だということで、実は、観点別評価ですとか、あるいは通知表をつけるといった評価のコストもかなり高くなっているんですよね。そうしたところはできるだけ簡素化した方がいいと。

 ただ、保護者自身は子供の学びを知りたいので、その部分は学校のDXを利用して、子供の学習の記録を子供の合意を得て保護者が見られるようにしたら、うちの子、結構頑張っているなというのが分かると思いますので、無理に通知表に依存しなくてもいいんじゃないかとは思っております。

 しかしながら、多忙の実態というのは、本務もそうなんですが、本務ではない事務的な手続も含めて、数が絞られている、非正規教員ではない正規の先生方が全部担わなきゃいけないというような実態もありまして、だからこそ、私、教員不足をなくそう緊急アクションでは、本務の部分も、持ちこま数、やはり上限を決めていただきたいという提案をしておりますが、それ以外の業務については、自治体がしっかりと学校に投資してくださって、子供と先生を応援するように、教師が担うべきではない業務を決めるときに、業務量改善計画を策定するというのが今次改正のポイントで、そこで、要するに、何に幾ら投資すればいいというのが分かるはずだという考え方なんですよね。

 だからこそ、教師が担うべきではない業務を決めることで業務量改善計画は機能するはずだという考え方を取っているということです。というか、そのようにしなければ、先生たちが今抱え込み過ぎている本務以外の部分の業務は、ちゃんと分担できないというふうに捉えています。

 以上です。

亀井委員 まだまだ質問したいところですけれども、時間が参りましたので終わります。

 ありがとうございました。

中村委員長 次に、うるま譲司君。

うるま委員 日本維新の会のうるまと申します。

 参考人の皆様、本日はありがとうございます。

 まず、全ての参考人の方にお伺いしたいと思っております。

 これは先ほど永岡委員の方からもあった質疑と同じなんですけれども、大臣合意に基づいた教員定数の改善ですね。これは、小学校三十五人学級の推進に加えて、小学校教科担任制の第四学年への拡大、新任教員の支援や中学校の生徒指導、生活指導の教師の配置拡充などに、過去二十年で最大の五千八百二十七人改善ということであります。また、中学校三十五人学級への定数改善ということで、これは三年間でやっていくということで、かなりすごい数なのかなとは思っておりますけれども。

 これについての評価ですね、先ほど佐久間参考人から、本質が、これはやはり先生の数が根本的に足りないというところがあったので、貞広参考人と佐久間参考人、同じ質問になってしまいますけれども、追加でもしありましたら是非いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

貞広参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。お答え申し上げます。

 先ほども申し上げたとおり、もう本当に現場は人を増やしてほしい、人が欲しいということですので、今回の定数改善も現場の先生方はとても歓迎をして、ちゃんと国が支えてくれるんだという評価もしています。ただ、その一方で、それぞれの定数の改善、一校当たりで割り算してしまうと結構、全ての学校に行き渡らなかったり、それだけなのかというようなところで、そういう評価も一方であるところです。

 本当に、予算制約がありますので、全てというわけにはいきませんけれども、先生方のお気持ちとしては、一人でも多くの人材が学校に配置をされるということを望んでいらっしゃると思います。

 また、そのときにどういう形で算定するかということには検討が必要だと思いますけれども、私も佐久間参考人と同様に、遊軍的な先生がいらっしゃる学校というのはすごく大事な視点だと思います。

 何度も申し上げて申し訳ありませんけれども、本当に子供は日々変化をしていて、思ってもみなかったようなことが毎日起こって、それに先生方は対応していらっしゃるんですね。そうすると、ぱつんぱつんに配置をされた担任の先生だけではとても対応できない事態が日々起こっているわけです。それによって、専門性の高い先生方で構成をされているチームでも課題解決力が落ちてしまうという可能性もあります。

 是非、チーム力を高めるという意味でも、遊軍的な先生の配置ということを今後見据えていっていただければと考えているところでございます。

 以上でございます。

佐久間参考人 御質問ありがとうございます。

 定数改善について、小学校に続いて中学校も三十五人学級へと基礎定数を増やしていただいたということは高く評価したいと思います。

 その上で、二つ申し上げたいことがございます。

 一つは、高校の三十五人学級、まだなんです。そして今、高校生、大変な状況です。ですので、今、例えば不登校の高校生が増えてしまっていたり、高校は義務教育ではありませんので、一定期間休むと退学にされてしまうんですね。ですので、通信制高校ですとか、通う生徒さんたちが大変増えています。

 ですので、子供たちの学びを止めないためには、是非高校でも退学しなくて済むような手厚い指導をあらかじめしていただきたい。ですので、高校の三十五人学級化というのも是非進めていただきたいということ。

 それから、幼稚園の先生方の労働環境、また処遇につきましても、是非、別途御検討いただきたいというふうに強く要望いたします。

 というのは、今回、教職調整額の一〇%引上げの対象からは幼稚園の教諭は外されています。その点につきましても、幼保一元化のメリットと同時にデメリットもあって、幼稚園の先生方が、例えば、保育園というような、こども園の方に行くと、職員として扱われて、教職調整額が払われていない自治体もあるという実態があるそうです。岡山などの自治体の中では、幼稚園教諭、職員扱いで教職調整額がない自治体もあるというふうに伺っています。このような実態では、幼稚園教育の質を高めていくということは難しいと思われますので、是非、高校、幼稚園の処遇に関しましても御検討いただきたい。

 それから、二つ目は、急についたんです、今回。小学校も突然の大臣合意でみんな大変喜びました。中学校も今回来年度からということで、すごく期待を持っているという声を聞きます。ところが、小学校も事前の計画なく急に決まったので、それがしかも大臣合意は秋だったと思うんですけれども、そうすると、教員採用は終わってしまっているんです。

 そうすると何が起こるかというと、必要な学級数が増え、その学級に結局先生が見つからないということで、前回、小学校三十五人化のときには、例えば石川県ですとか、先生が見つからなくて大変だったと。結局、二クラス分一緒に合わせて合同で七十人分の子供の授業をしなければならなくなった先生の話ですとか、非正規の先生をもう誰でもいいから見つけてきてといって、教員免許、眠っていたんだけれども、何にも準備ができていないという方が担任に来られて、かえって子供たちが大変な思いをしたというようなお話を別の県で聞きました。

 ですので、先ほど来計画を立てていただきたいと言うのはそういうことなんですね。事前の準備が必要です。急に基礎定数が増えるというのは大変、教育委員会、現場としては困るということです。

 それから、加配定数を増やしていただくということをこの間ずっと財務省は措置していただいてきてくださっていて、ないよりはずっといいんですけれども、加配定数というのは一年予算です。ですので、現場に下りてくると一体どうなるかというと、非正規雇用教員しか雇えないわけです。加配が一回ついても、来年度同じ加配数がつくとは限らないので、自治体としては、実際的に考えますと、一年任期のフルタイムの先生を雇うほかないということになります。

 ですが、加配教員は、もちろん現場の戦力にはなるんですけれども、一年任期ですと、長期的な専門職としての研修を受けていく機会を制限されていたり、あるいは、来年自分に職があるかどうか分からないという不安の中で子供たちと接しなければならないという状況になります。

 ですので、是非とも、基礎定数の手当てを、大きくなくていいので、ゆっくりでいいので、しかし着実に基礎定数が改善されていくという未来が保障されることが、地方自治体にとっては、終身雇用の先生方を専門職としてきちっと雇用していくということにつながるという点をお願いしたいと思います。

 以上です。

青木参考人 お答え申し上げます。

 定数改善、今回の定数改善の評価からですけれども、やはり、過去、近年最大の規模ということで、肯定的に評価をしております。

 中学校の三十五人学級化というのも非常にすばらしいことでありますが、小学校と比較しまして留意点が一つ、私から申し上げたいと思います。それは、免許のことであります。教科別に中学校は採用されていますので、三十五人学級化した場合に、免許の種類によっては、もしかしたら各学校の配置に支障が生じるかもしれない。これは小学校よりもそういった課題があろうかと思っております。

 また、基礎定数に関してのコメントですけれども、義務標準法の哲学といいますのは、生徒数から、児童生徒数から教員数を割り出すという哲学でありますので、これに乗ずる数というのがあるということは理解はしていますが、乗ずる数はほぼ全ての学校にインパクトがあるということですので、財政制約ということを考慮した場合の議論としましては、規模別に少し分けて、学校の規模別に分けて、一定の規模からは遊軍的な先生をプラスするというような、義務標準法の哲学に少しつけ加えるというようなことはあろうかと思います。

 以上でございます。

末冨参考人 教職員定数の拡充というのは、私も大変歓迎しておりますけれども、やはり、採用する側の自治体にとっては、計画採用でないと、まず、財源が安定的に長期に見込まれるかというところで採用数を決めますから、佐久間参考人がおっしゃるような、計画を国として策定していき、任命権者の後押しをするということが必須であるというふうに考えます。

 あわせまして、教職員定数の考え方につきましては、先ほども申し上げましたように、現在見直しが進んでいる学習指導要領の進行とともに、一人一人に合わせた教育課程を編成していく際の教職員定数の配置の考え方というものをしっかり組み立てていただいて、現在予算措置されているのは校内支援センターの支援員なんですよね。支援員だけでいいですかということになると、学びの保障という観点から、そこに教員も配置できる形に是非していただきたいですし、定数改善を待たずとも、可能な自治体から挑戦していただきたいなというふうにも考えております。

 以上です。

うるま委員 ありがとうございます。

 続きまして、業務管理についてお伺いしたいと思います。

 今回、法案では、教育委員会ごとであったり学校ごとであったりの業務管理をやっていこうということになっておりますけれども、一昨日の委員会では、これまで国が行ってきた勤務実態調査と比べると、例えば、教育委員会の業務管理というのは全然いけてないといいますか、しっかりと調査できていないというような御意見もあったりとかするところなんですけれども、この業務管理でしっかりと、先生のこれまで把握されていなかった、委員会では、補教だったり部活だったり、そういったところもしっかり管理されていくのかどうか、それが法で今回しっかり担保されているのかどうかについて、ちょっと時間がありませんので、末冨参考人と貞広参考人にお伺いしたいと思います。済みません。

末冨参考人 今次法改正では、業務量管理の計画を策定していく、それを学校運営協議会や総合教育会議も関わって、進行を確認していくということになっておりますけれども、私が先ほど申し上げたように、業務量管理なるものの定義と、どこを、何をどのように測るのかのルール、これをまだしっかり作り込めていない。なので、ここから、いかにそこを作り込むかだと思っております。

 ちなみに、補教の部分も、今までは、とにかく学校を回すということで、実際には教務主任とかがカウントしていらっしゃるんですけれども、それが、例えば、私は学校運営協議会委員ですが、数値として学校運営協議会に出てくることはないんですよね。この学校の先生はどれぐらいきついんですかみたいなときに、それを判断する材料がないということですので、もちろん、勤務時間内の補教の部分ですとか、あるいは、勤務時間外に著しく長い保護者対応や生徒指導対応をしているケースもあるんですね。そうしたことも含めて、しっかりと業務量の全体像を把握すべきであるということです。

 あわせて、部活動の地域移行に際しまして、兼職発令をした上で校長先生が総時間管理をしない限り、物すごい負担が部活動にも頑張ってくださる先生方にも増えてきますので、ここは是非、文部科学省とスポーツ庁との連携で、業務量管理の中に含めて考えるというルールを作っていただいて、例えば、土日に大会に行ったら、二日ちゃんと休まないと、体って回復しないはずじゃないですか。そうやって命を縮めてこられた先生方がいる日本なので、そこを抜本的に改めるということを考える際に、業務量管理の中には、地域移行する部活動への兼職部分を含み込むというルールもしっかり確立していただけると実効力ある改革になりますし、先生方が守られる改革になるというふうに判断しております。

 御質問ありがとうございます。

貞広参考人 お答え申し上げます。

 それで大丈夫なのか、いけてないんじゃないかというお話でございますけれども、いかに魂を入れて、いけてるものにするかということが、まさに求められているところなのだと思います。

 確かに、学校現場には、過去よりはずっと変化してきていますけれども、時間ということを一種の資源だと思ってマネジメントするという観念が余りありません。子供のためというマジックワードで先生方はすごく頑張ってしまいますので、むしろ、かなりない職場なんだと思うんですね。学校文化を変えるということを青木参考人がおっしゃっていましたけれども、まさに、今回は、その学校文化を変えて、有限なリソースをいかに最大化して有効に使うのかという形にするかという挑戦なんだと思います。

 ですから、今の時点で、じゃ、ちゃんといけてるものになるのかどうかと言われると、いけてますとはお答えし難い部分がありますけれども、いかに全ての者が主体者になって、それに魂を入れて実効化していくかということがまさに求められているというふうに考えます。

 以上でございます。

うるま委員 ありがとうございました。

 終わります。

中村委員長 次に、日野紗里亜君。

日野委員 国民民主党の日野紗里亜です。

 本日は、参考人の皆様、誠にありがとうございます。

 早速ではございますが、まずは、末冨先生に御質問させていただきたいと思います。

 私の友人に現役の教員をしている者がおります。その友人から、新卒の初任教員が五月の時点で離職してしまうケース、これが決して珍しいことではないというふうに聞きました。

 私、学校の先生というものは、本当に小さい頃からの憧れの夢であり、高い志と強い信念、これを持って選んだ道だと思っています。その夢が、たった僅か一月ほどで断たれてしまう、この事実を、非常に重たく、そして残念に思っています。

 また、そうした早期離職のケース、これが例外ではなく、よくあることだとするのであれば、それこそ、若い方々が教員になろうという、そういったこと自体が減ってしまうのではないかと危惧しております。

 そこで、お伺いさせていただきます。

 新卒の初任教員が入職後、僅か数週間で離職してしまう、この背景には何があるのか、理想と現実、また、教員志望の若者が学校現場の働き方をどのように不安に思っているのか、是非お聞かせください。お願いします。

末冨参考人 ありがとうございます。

 若い教員の早期離職というものは、どの学校段階でも起きていることでございます。

 その背景には、大きく分けて二つあると考えております。

 一つは、新卒教員、新任の教員に見合わない過重な負担の学級を割り当てられている、特にこれは小学校で起きます。もう一つが、そのような場合であっても同僚の先生方がしっかりとサポートができる学校であれば辞めなくて済むんですけれども、教員の多忙化や学校文化における同僚性の欠如が相まって若い教員を孤立させてしまう場合も、辞めてしまうというか、心身がへとへとになって、とにかく辞めないと自分の命が守れないという状態まで落ち込んでしまうんですよね。というようなことがあるということです。

 それぐらい深刻だということですけれども、文部科学省の皆様頑張ってくださって、今、新人の先生たちはなるべく担任を持たなくて済むようにという改革も進めてくださろうとはしておりますけれども、主務教諭の配置と併せて、是非、若手の教員は、まず一年目は何をすべきかということになりますと、学習指導要領に沿って、その学校の自分の受け持つ学級の子供たちとしっかり学んでいき、しっかり評価をしていく、対話をする、目と目を合わせて話をするという時間がしっかり必要なんですね。そこにまず教師としての一年目の成長のポイントを置けるような現場になっていただきたいというふうに思っております。

 御質問大変ありがとうございます。

日野委員 御回答ありがとうございます。

 続きましての質問です。

 教員の業務の中でも、近年特に精神的な負担として挙げられるのが保護者対応だと思っております。

 先ほど末冨先生の資料の中に保護者対応のことがありましたので、続きましても末冨先生にお伺いさせていただきたいと思います。

 いわゆるモンスターペアレンツという言葉がありますが、私は、この言葉がどうしても独り歩きをしてしまって、そこの背景にある保護者の不満とか不安とか、そういった事情や社会構造が見落としされてしまっている、そんな現実も感じています。むしろ、最初からモンスターだったわけではなく、信頼関係が築けないまま次第にこじれてしまっていく、そうした過程が多くの現場で起きているのではないでしょうか。

 現在では、保護者対応に当たる中で、こじれた後、事後的にスクールローヤーが対応する、こういったことはあるかと思いますが、最初から対立構造にしない、保護者をモンスター化させないために実際に行われている工夫や効果的だった取組があれば、是非お伺いさせていただきたいと思います。

 教員と保護者が対立する存在となってしまう、これは、制度の不備や支援体制の脆弱さ、こんなものもあると思っています。教員個人の努力に頼るだけでなく、学校として、あるいは自治体として、そして国としてどういった体制整備が必要だということも併せてお聞かせいただければと思います。お願いします。

末冨参考人 ありがとうございます。

 私のスライドの十三枚目と関連することであると思いますけれども、やはり、モンスターペアレントというのは急にそうなるわけではなくて、実は、学校の初動が少しかみ合わないためにどんどんこじれていくという案件が私が関わっている中でも大半でございます。

 そうしたときに、なぜ私が常勤のスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーにこだわるかと申しますと、教員とは違う専門性を持ちながら保護者や子供を支えていくという専門職がいる方が、様々な角度から問題解決というのが可能なんですよね。

 例えばですけれども、保護者が目の前の教員に当たるのは、その教員じゃなくて、自分の家族に潜んでいるストレスをそのままぶつけているだけのパターンもあります。そうすると、もう学校には解決できません。そこにアプローチするのはスクールソーシャルワーカーです。

 あるいは、お子さんの心理的支援というのは、やはり、スクールカウンセラーが非常に活躍してくださっていますが、多職種で子供を支えるということについてもう一歩進めていただきたい。チーム学校二・〇と申し上げているのはそのことです。

 あわせまして、教育委員会だけの努力では駄目で、なぜここで首長部局のモデルを出しているかと申しますと、教育委員会だけだと、隠蔽しているんじゃないかという疑惑をお持ちの保護者さんが一定数いらっしゃる。それはちょっと、必ずしも学校や教育委員会のせいじゃないんですが、やはり制度上、教育委員会とは違う首長部局がしっかりと関わりながら、例えばいじめ後の再登校について学校と調整して支えますよという方が安心感があるということです。

 あわせまして、率直に申し上げると、人員の確保の都合上、教育委員会の予算にも限りがあります。首長部局として後押しをしていただく方が、子供を支える大人の層が分厚くなるというふうにも判断しているということです。

 御質問ありがとうございます。

日野委員 御回答ありがとうございます。大変参考になります。

 続きましての質問、これは先生方四人皆様にお伺いさせていただきたいと思います。

 制度的な議論、これは本当に進んでいると思います。今日も、解決のための具体的な提案、先生方から多くいただきました。ありがとうございます。

 また、そうしたことを実際に実行していく、実際に現場を変えていくためには、やはり私は財源が鍵だと感じています。

 教職員定数の改善を始め、持ちこま数、これの削減、小学校への教科担任制の推進、更なる少人数学級、そして、今お話にもありました、スクールローヤーですとかスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、スクールサポートスタッフといった支援の人材拡充、やるべき方向性、これは見えているんだけれども、やはり、それを実行に移すには持続可能な予算措置が不可欠だと思っております。

 そこで、お伺いします。

 教育現場の改善に必要な施策を実行していくためには、どのような財源を充てるのが現実的だとお考えでしょうか。私たち国民民主党におきましては教育国債の発行を提案していますが、是非御意見をお伺いさせていただきたいと思います。

 また、文部科学省、こちらの予算の中で、既存事業の見直しや削減とか再分配によって捻出できる部分、ここは優先順位を下げてもいいだろうというようなことがありましたら、率直に御意見をいただきたいと思います。お願いします。

貞広参考人 御質問ありがとうございます。

 大変難しい御質問で、ちょっとにわかに、どのようにお答えするかという考えがまとまらないところでございます。

 教育国債ということに関しては、今の現状の財政力で公教育を支えていくというのではなく、その先の財源で支えていくという考え方にもなります。これは、これだけ少子高齢化が進んでいる中で、それで社会的な国民の納得性、政治的な納得性というのを得られるのかという部分については慎重な議論が必要であると思います。

 また、二つ目の御質問ですけれども、優先順位の低いものがあるかどうかということですけれども、これも私見でございます。

 産業界と教育という営みの大きな違いというのは、産業界は、自分の利潤を最大化するために選択と集中を行って、最も利益の出やすいところに資源を集中して投下をして利潤の最大化をするということができます。一方、教育というのは一人一人の子供を対象としているもので、一人一人の子供、それぞれかけがえのない存在です。

 どこかに選択と集中をして資源を集中的に投下し、優先順位を上げたり下げたりするという思考自体が教育という営為になじまないというふうに私は考えますので、どれが優先順位を低くできるということではそもそもないものではないかと考えております。

 以上でございます。

佐久間参考人 御質問ありがとうございます。

 私の資料の二十一ページを御覧いただければと思うんですけれども、今、定数改善をこれから行っていただくときに、イメージとすれば、予算が増える、必要だということになろうかと思います。

 しかし、幸か不幸か、少子化が大変な勢いで進んでいます。私が調査した自治体では、今後二十年間で三割減を見込んでいました。つまり、子供の数が減れば、今の義務標準法のたてつけそのままでも、必要な先生の数は、その自治体だったら三割減るということになります。国家全体でも同じです。

 ですので、その自然減分の先生方の減り方を少し緩やかにしていただく、そういうイメージであれば、必要な総財政量は変わらない。あるいは、むしろ財政量を減らしながら、しかし、その急激な減り具合を改善することによって、一人当たりの子供により手厚い財源配分ができる、そういうイメージを持っていただくのがより現実に近いのではないかというふうに考えます。

 ですので、是非、教員を増やすといったときに、教員定数改善といったときに、教員の総実数の増加というイメージは間違いであるということを御理解いただければと思います。

 以上です。

青木参考人 お答え申し上げます。

 教育費、公立学校の教育費ということで考えますと、御案内のとおり、税で行うという原則がございますが、他のセクターを見ますと、例えば福祉では保険が適用されているわけでありまして、その意味におきまして、政策論議としましては国債というものを財源として期待するという議論もあり得ると思いますが、その際には、やはり、将来世代が償還する場合にどのような問題があるのかということを議論する必要があろうかと思います。

 また、もう一つ、財源として期待できるものとしては、寄附と思われます。

 日本では寄附文化が必ずしも十分根づいていませんので、この寄附というものを公教育の財源としてどのように埋め込むかという議論は、是非、国の場でも御議論いただければと思います。例えば、ある学校を応援したいんだけれども、自分の住所地では税額控除の対象にならないというようなことがあったとすれば、それを解消していただくことが必要ではないかなと思います。

 また、優先順位のお話でございますが、これは大変お答えにくいことではありますが、例えば、相対的に見れば縮小している教育というセクターと他のセクターとうまく組み合わせて、例えばハード面でいえば、学校施設の有効活用というようなことを含めて、公共サービスをどう総合的に提供するかという議論の中で、優先順位といいますか、全てを幅広く、うまく地域住民に公共サービスとしての教育をほかのサービスと総合的に考えながら提供できる仕組みづくり、こういった議論は必要ではないかなと思っております。

 以上でございます。

末冨参考人 まず、私自身、若者がどう考えているかということについて最近調査をして三月に公表したところですけれども、若者自身は、限りある政府の財源は、まず子供、若者に使ってほしいという人が多数派です。それとともに、税負担をどうしますかといったときに、やはり税負担に転嫁されるのは、それはちょっと消極的な考え方を持つ若者が多数派であるということも分かっています。

 教育国債という考え方は、確かに今の時点に投資をする財源としては重要だけれども、将来的にどのように償還する、自分たちの負担になりませんかということについて、しっかりと説明をし納得を得られるのであれば、若い世代こそ支持するだろうと思っております。多分、その辺りの具体の、あなたたちの、今教育国債を使ってこうなると将来的にこのように償還していくよというビジョンが共有されることが最も重要かなと思っております。

 ただ、若者はやはり自分たちにこそ投資してほしいという願いを強く持っておりますので、義務教育への投資を含めて拡充をしていただきたいというのは、私も願いを同じにしております。

 以上です。ありがとうございます。

日野委員 最後の質問を佐久間先生にさせていただきたいと思います。

 今、学校現場では、発達障害や特性のある子供への適切な支援、これも大きな課題になっていると思います。多くの先生が理解と対応に日々頭を悩ませている、そんな現実があると思います。

 そのような中で想定される対応とすれば、保護者と綿密なコミュニケーションを行うことですとか、特別支援教育の知識を持つ専門職から具体的なアドバイスをいただくですとか、あとはそういったスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールサポートスタッフが日常的に教室に入ることで伴走支援していく、こういった体制が重要な視点だと思いますが、実際に現場ではどういった支援が最も助かるというふうに先生方は思っていらっしゃいますでしょうか、お願いします。

佐久間参考人 重要な御質問ありがとうございます。

 やはり、今、特別な支援を必要とする子供たちが増えています。そうでなくても、少子化に伴って、昔は兄弟が五人、六人いた時代もあったんだと思うんですけれども、今は一人のお子さん、二人のお子さんがいますので、子供一人にかける保護者の思いというのが以前と比べればずっと厚くなっているという状況があります。

 ですので、どの子もそれぞれ特別な支援が必要だというお子さんだというふうに私は認識していますが、中でもやはり生まれたときの障害やいろいろな特性で手厚い支援が必要なお子さんたちについては、とにかく人手が必要だというのが現場の声だと思います。

 教員を増やすことが難しければ一緒に誰かがいてくれるだけでもいいということで、学校現場では、地元の大学の学生たちを連携して連れてきてマンツーマンでついてもらうとか、地域のPTAや地域の人たちに声をかけて誰か一緒にいてもらうというような必死の努力が続けられているという状態だと思います。

 ですので、主には学習指導員という制度がありまして、予算がつけばそういう方たちに有給で来ていただけるということがあるので、是非その分の手当ても拡充していただきたいというふうに思っています。

 ただ、先生方、皆様には申し上げるまでもなく、誰でも連れてくればいいというわけではないんですね。やはり子供が安心して一緒にいられる人、そして信頼関係を育める人、そういうふうに長期的な見通しを持ってその子供と関わってくれる大人というのを見つけるというのはそう簡単なことではありません。ですので、学習支援員一つに取りましても、そういう方たちを育てていくという発想で国が計画を長期的に支援していただきたいというふうに希望しております。

 以上です。

日野委員 終わります。どうもありがとうございました。

中村委員長 次に、浮島智子君。

浮島委員 公明党の浮島智子です。

 本日は、四人の参考人の皆様には、貴重なお時間をいただき、また貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 我々公明党も、この給特法の改正案につきましては、様々現場の皆様からお声をいただいてまいりました。そして、党内の議論でも相当数の日程を議論させていただいたところでもございます。

 そして、我々は、この教職調整額の引上げだけではなくて、重要なのは、引上げとともに、しっかりと働き方改革をしていかなければならない、これは車の両輪であるということで、十二月の二十三日でしたけれども、あべ大臣に提言を出させていただきました。

 その提言では、子供たちを取り巻く状況は複雑化、困難化しており、学校や教職員の使命感だけでは対応できないと指摘させていただいた上で、本法案が定めるとおり、教職調整額の引上げは必要不可欠であることを前提とした上で、働き方に応じためり張りのある給与体系の構築を提唱して、学級担任や生徒会担任といった職責を正しく評価するため、新たな役職、級の創設、そして、勤務時間内で業務を終えられる環境整備を前提として、やむを得ず勤務時間外に業務を行うことについて新たな手当の創設、これを提案させていただきました。また、国や地方自治体、地域の社会を挙げて取り組む緊急改革期間、この設定とともに、勤務間インターバルの導入、そして支援人材の更なる配置、そして教科担任制の拡大、教職員定数の改善、これを求めてきたところでもあります。

 そこで、まず、貞広委員と青木委員にお伺いさせていただきたいと思いますけれども、私立学校や法人化後の国立大学附属学校は、労働基準法が適用されておって時間外勤務手当が支給されているのだから、公立学校についても同様にすべき、又は、時間外勤務手当を支給した方が勤務時間縮減になるという指摘がありますけれども、地域の全ての子供たちを受け入れて学びの地域のセンターとなっている公立学校には固有の役割と特性があるのも事実であります。そこで、公立学校について教職調整額という仕組みが必要な理由について、教えていただきたい。

 また、教職員の業務削減を徹底的に進めつつ、主任そして主事、学年そして教科の取りまとめ役などとして学校を支えている中核、そして若手の先生方に対してはめり張りのある処遇を行い、これらの先生方がきちんと自分はしっかりと評価されていると実感できるように、今後更に新たな役職、級の創設、また新たな手当を検討する必要があると思うんですけれども、まず、貞広先生と青木先生にお伺いをさせていただきたいと思います。

貞広参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 審議会では、やはり、特に公立学校の多面的、多様な社会的な役割ということを考えると、より自発的、創造的な先生方の役割が重要であるという観点から、特に公立学校に関しては給特法の枠組みということが必須であるという結論を得たところでございます。

 実際に、私立の学校の中にも、実際には、いわゆる残業代という形で出すということではなく、給特法と同様の仕組みを導入している学校も少なからずあるというふうに伺っています。これはまさに、教育という営為がこうした仕組みとの連動性ということを促しているというふうに考えますので、今回は、公立学校では、給特法の仕組みをベースに正しい処遇改善を行い、働き方改革と指導、運営体制の充実も一体的に進めるという結論を答申には書かせていただいたところでございます。

 更なる手当という御質問でございますけれども、今回、主務教諭というものが導入をされることになりますと、恐らく、かなり学校のマネジメント体制も変わります。まさに、チームで課題に対応し、面でいろいろな子供たちの学びを支えていくということになっていくかと思いますけれども、その効果を見極めた上で、更にどのような役職、役割などが考えられるのかということを継続的に考えていく必要があるというふうに考えております。

 以上でございます。

青木参考人 お答え申し上げます。

 まず、給特法、教職調整額が公立に適用される意味合いでございますが、先ほどもお答えした教職調整額の背景にある教員のモデルを考えますと、第一層にある専門性というのは、これは実は、国立、私立、公立共通してあるのではないかと思います。給特法が成立したときに国立が含まれていたこと、また、貞広参考人もおっしゃったように、私立学校でも現時点で教職調整額類似の仕組みが適用されているケースがあるということからも理解ができるかと思います。

 ただし、第二層に当たる公共性を担う役割というのが公立学校の先生方には多うございますので、その点からしまして、教職調整額が公立学校の先生方に適用されるということの背景になり得ると考えております。

 また、新たな役職、級についてのお尋ねでございましたが、まずは主務教諭の効果検証を経て、更なる役職の検討に進めていく必要があろうかと思います。その理由は、やはり、意見陳述で申し上げましたように、マネジメント体制の整備というのが大事と考えております。やはり、学校の内なる働き方改革はマネジメント体制の整備から実現すると考えております。

 また、新たな手当についてのお尋ねでございました。

 手当に近い政策手段として、いわゆるボーナスということも考えられるかと思いますが、先ほど来お答えの根拠としています、校長のマネジメントスキルが非常にまちまちだということを考えますと、ボーナスというのはかなり振れ幅が大きいということも考えられますので、制度的にしっかり、頑張っている先生に行き届いた経済的な報奨といいますか、そういったものを処遇するという点では、手当という政策手段は十分あり得ることと思います。

 その際に、今般導入されることが提案されている学級担任手当の検証を踏まえた上で、教員特殊業務手当等の現状を踏まえながら、新たな手当の検討というのは十分あり得ることかと思っております。

 以上でございます。

浮島委員 ありがとうございます。

 続きまして、末冨参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 学校の働き方改革の目的は、学校の業務の三分類、これを徹底すること、そして、教師が教師でなければできない業務に集中できるようにする、また、教材研究、研修等に取り組む余白を確保することが大切であると私は思います。

 子供たちの特性や関心に応じた教育の充実を図ることが極めて重要で必要であると思っておりますけれども、このような個々の子供たちの特性や関心に応じた学びを実現するに当たって重要な施策は何か、教えていただければと思います。

末冨参考人 子供たち一人一人に寄り添うということは、今まさにこの瞬間も学校現場の先生たちが頑張ってくださっておりますけれども、私自身は、先ほどの意見陳述の中で申し上げましたけれども、特に、今、新しい指導要領の中で検討されている一人一人の子供の特性に寄り添った教育課程の編成というものに、いかに専門性が高い教員を配置していくということがとても急がれますし、かつ、丁寧に行われるべきだというふうにも考えております。

 単純に配置すればよいのではなく、研修等の機会がより充実して専門性を高めるということが非常に重要かと考えておりますので、教員定数とともに、研修の質ですね、もちろんオンライン等も活用してですが、学び続ける教員を支える仕組みをつくっていただきたく存じます。

 重要な御質問、大変ありがとうございます。

浮島委員 ありがとうございます。

 四人の参考人の皆様にそれぞれお伺いをさせていただきたいんですけれども、私も学校現場に様々行かせていただいておりますけれども、教師の皆様は、余りの過重負担で大変だと思っているんですけれども、子供たちのため、学校のためということですごく頑張ってしまいます。そして、制度的には、都道府県の人事委員会が企業における労働基準監督署のような役割を果たすことになっているんですけれども、現実には十分機能していないと私は思っております。

 そこで、私は、学校や教育委員会のみの閉じた仕組みだけではなくて、社会労務士や、あと法律家などの専門家の目を活用することが効果的だと考えているところでございますけれども、それぞれのお考えを教えていただきたいと思います。

貞広参考人 ありがとうございます。

 今お示しの専門的な知見を外から入れるということですけれども、私としても大賛成でございます。

 先ほど、学校の中も多職種にするということで、新しい課題解決能力や、又は、その専門性の対話によって新しいブレークスルーも生まれるということも起こっています。それは学校の外についても同様のことが言えますので、御提案というのは非常に重要な選択肢の一つであろうと考えます。

 以上でございます。

佐久間参考人 御質問ありがとうございます。

 私は労働の専門家ではないので制度についてよく承知しているところではないんですけれども、校内だけで閉じて、管理職だけが教員の働き方を監督するという体制はやはり無理があるということには賛同いたします。

 ですので、外部の専門的な知見をきちっと入れて評価するという点には賛同いたしたいと思います。よろしくお願いします。

青木参考人 御質問ありがとうございました。

 おっしゃるとおり、外部の目、外部の専門家の目を教員の労働のために、教員の勤務管理のために活用するという視点は極めて重要だと思っております。

 また、その機能を、労基署的な機能あるいは人事委員会的な機能を担うという点では非常に魅力的でありまして、更に議論するとしましたら、その受皿となる場はどういうふうにつくればいいのかという点だと思っております。

 これは制度設計ですので、特に実現可能性がどうかは別ですけれども、一番国がグリップをするのであれば、文部科学省の地方支分部局をつくるということがあり得ると思います。それは、百万人の先生方、高校を含めますと三万五千校ぐらいだと思いますが、この事業所単位のものをどうチェックするかというのは非常に大変なボリュームの仕事になりますので、支分部局レベルの議論が本来必要なんだと思います。

 とはいいましても、これは現実的ではないということもあり得ますので、学校単位の学校運営協議会に、浮島委員おっしゃったような専門家をうまく組み合わせて、期待される機能を発揮してもらうということも十分あり得るかと思っております。

 以上でございます。

末冨参考人 まず、人事委員会等の外部機関のチェックというのは非常に重要かと思います。

 実は、私が勤務する日本大学は、附属校も含めて、労働基準監督署の監査というものを複数回受けております。

 これが大変重要なのは、ちょっと今まだ御迷惑をおかけしていて申し訳ないんですが、日本大学は、時間外勤務手当ですとか、諸手当をちゃんと払う大学なんです。労働基準監督署は何をおっしゃるかというと、ワーク・ライフ・バランスをちゃんと実現しなさいと。職員が十分な休養時間を取れるように、裁量労働制の私たち教員も十分な休養時間を取れるようにということで、単に手当を払えというよりは、ライフ・ワーク・バランスをとにかく大事にしてくださいねという御指導の下で、より働きやすい職場に進化してまいりました。

 逆に言えば、このような存在が公立学校にあることが、恐らく、外から言われて、手当を出すことも大事だけれども、それ以上に働く人の心身の健康や生活を大事にすることが職場全体のためなのであるという本当に専門的な助言をいただくことによって、学校の文化が変わっていく大きなきっかけともなろうかと思います。

 ありがとうございます。

浮島委員 ありがとうございます。

 先ほども青木参考人の方から学校の文化というお話もございましたけれども、私も平成二十七年にこの文科の委員会派遣で欧州に行かせていただきました。

 様々な学校に行かせていただいたんですけれども、その中でちょっと自分的にショックを受けたのは、そのときも働き方改革でいろいろ議論をさせていただいていたんですけれども、授業を見ているときに、先生が教室に入ってこられて、生徒が机に座られます。そして、先生の方から見て番号が見えるように書いてあるんですね。そして、授業が始まったら、生徒がはいと手を挙げると、先生が、はい五番、はい十番と番号で呼ばれているんです。その子たちは自分の座った机の番号が呼ばれたら答えているんですけれども、私、終わった後に、先生に、生徒さんのお名前は覚えられないんですかとちょっと質問させていただいたら、先生の方が、えっ、私たちが生徒の名前を覚えなきゃいけないんですかと逆に驚かれまして、日本はどうなんですかと言われたので、いや、日本は学校のみんな生徒の名前を覚えて、そして朝とか学校で声をかけたときに、ああ元気だな、大丈夫だなとか、ちょっと元気がないな、大丈夫かな、そういうコミュニケーションを図っているんですとお話ししたら、いやあ、日本の学校の先生は大変ですね、我々は教育の中身を教える者なので、別にその子たちのことを考える必要はありませんと言われて、私はショックを受けたんですけれども。

 この日本のいい学校の文化というのもしっかり残しつつ、また処遇改善、そして働き方改革等をやっていかなければいけないと思いますので、これからも現場のお声をいただきながら邁進してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

中村委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 参考人の皆様には、どうもありがとうございます。

 参考人の青木先生の方からも、働き過ぎの脱却なんだ、そして長時間労働への対応が必要なんだというお言葉をいただいて、恐らくここにいる委員の皆様も、そして先生方も同じ思いなんだと思います。私もです。

 質問は、中央教育審議会にも参画して議論を進めてくださった青木先生と貞広先生に、まずお伺いします。青木先生からお伺いします。

 冒頭申し上げました、青木先生、今日の発言でも、働き過ぎの脱却、長時間労働への対応という、長時間労働というお言葉を出してお話をいただきました。やはり、鍵となるのは時間外在校等時間になると思うんです。そこもタイムマネジメントが必要なんだということで、中教審でも議論を進めてくださったものと思います。

 この時間外在校等時間というのをどう考えたらいいのかなというのが、なかなか曖昧なものがあると思うんですね。やはり、自発的なというところなんですけれども、先ほども委員からもありましたけれども、日本では特にかもしれませんけれども、学校の先生は非常に自発的で、これは自発性も求められる職場でもあるわけなんですけれども、そうすると、学校の先生も、自分が時間外に在校していて、時間外在校等時間ですね、これはどう考えたらいいのか、社会的にもどう位置づけられるのかというところが悩ましいものだと思います。

 それで、青木先生にお伺いしたいんですけれども、この時間外在校等時間に関しては、これは先生は、労働していると考えたらいいんでしょうか。あるいは、労働していないと考えたらいいんでしょうか。又は、何かそれ以外のものなんでしょうか。青木先生の御見解をお伺いします。

青木参考人 御質問ありがとうございます。

 時間外在校等時間につきましては、労働をしている時間と考えることができると思います。ただし、委員がおっしゃった自発的、創造的という点につきましては、先ほど別の委員にお答えしましたように、元々、給特法が考えられたときには、制定されたときには、第一層の専門性に注目して、自発的、創造的な時間だというふうに位置づけていた傾向が強いと思いますが、現在はやはり第二層のところでありまして、これが自発的、創造的かというと、やはり非常に大きな、いろいろな議論があると思います。

 ただし、先ほど来申し上げましたように、本来は第一層の自発的、創造的なものを念頭に置いて制度設計されたのが教職調整額だというふうに理解しております。

 以上です。

大石委員 青木先生、ありがとうございます。

 貞広先生にもお伺いしたくて、貞広先生にお伺いしたいのは、今の私の最初の質問ですね、同じことを貞広先生にもお伺いしたいです。時間外在校等時間は、これは労働している時間なのか、労働していない時間なのか、それ以外なのかという今の同じ質問が一点。

 そして、貞広先生にはそれに加えて、貞広先生が今日の御説明の中で、時間外勤務に見合った調整額をというふうにおっしゃっていました。そのおっしゃっているところの時間外勤務というのは、例えばこういうものは含まれているのか。授業準備ですとか部活動とか保護者への対応ですね、結構これに追われる時間が多いと聞いているんですけれども、そういったものも念頭に置かれていますか。この二点、お答えください。

貞広参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 まず、青木参考人と重複をする形で御質問いただいた時間外在校等時間が労働なのかということですけれども、私も労働時間であると考えます。ただ、そのときに、いわゆる括弧つきの労働者の労働時間という解釈が成り立つのかというと、審議会ではそういう審議はしていなかったやに記憶しています。

 と申しますのは、労働者かそれとも無尽蔵に自己犠牲をしてしまう聖職者かという区分ではなく、むしろ、学びの専門職としての先生方の働き方ということを考えたのが審議会の審議でしたので、いわゆる括弧つきで労働をしていますという時間とも違う労働というお答えをさせていただきたいと思います。

 ただ、そのときに、先ほど青木参考人が専門性の発揮か公共性への寄与かというお話をされていましたけれども、例えば、すごく専門性の発揮に軸足を置いて自発的、創造的な活動をしているときもあるでしょうし、社会的ニーズに対応して非常に公共性に軸足を置いてということもあろうかと思います。

 二つ目の御質問です。

 授業準備、部活動、これらは勤務に入るのかということでしたでしょうか。(大石委員「時間外勤務とおっしゃった、それはそういった時間を念頭に置かれているでしょうか」と呼ぶ)

 そうですね、授業準備というのはまさに先生方のコアになるところだと思います。ただこれを、授業準備をやっていたら命令された勤務なのかそうじゃないのかということではなく、本当にこの授業をよくしたいのでということで、すごく時間をかけて授業準備をするというのもあるでしょうし、これは私はとても得意な分野で、本当に短い時間でも、研究しなくても十分今までの研究でできるのでという授業準備の時間と、同じ授業準備といってもその性質が異なるということが想定されると思いますので、一なのかゼロなのかというお答えはなかなかしにくいのではないか、実態としてしにくいのではないかと思います。

 ちょっと御質問いただいたこととそれてしまうんですけれども、先生方に授業準備の時間をしっかり確保するということは本当に大事なことだと私は思います。先生方は授業をよくしたいと強く思っていらして、やはり授業をよくするためにはしっかりと準備をして教材研究をする、それでいい授業をして子供が分かったと喜んでくれることに働きがいを一番感じるんですよね。今、この授業準備の時間というのが十分に確保できていません。

 例えばイギリスなどでは、週の中で必ず何時間、子供ともほかの職員とも保護者とも対応しない、静ひつな環境で授業準備をする時間をちゃんと校長が全ての教員に確保しなければいけないということが義務づけられているんですね。実際には突然の保護者対応が出たりとか、突然子供が何かやったりしてその時間が十分に確保できないというところがあるようですけれども、学びの専門職としての先生方の専門性の発揮ということも考えて、まさにこういう自発的な授業準備の時間が確保できるということは非常に重要なことだと思います。

 以上です。

大石委員 御丁寧にどうもありがとうございます。

 ちょっと念のために再確認したいんですけれども、貞広先生が今日、時間外勤務に見合った教職調整額とおっしゃっていたので、その時間外勤務というのに今おっしゃったような授業準備、これは幅広いものだと思います。やっても切りがないものもあるかもしれませんが、ただ、一かゼロではないとおっしゃったように、ですので、やはり、教職調整額に見合った時間外勤務というところの時間外勤務には、そういった授業準備も念頭に置かれているということでいいんですよね。端的に。

貞広参考人 はい、念頭に置いております。

 以上です。

大石委員 ありがとうございます。

 続きまして、佐久間先生にお伺いします。

 佐久間先生の、乗ずる数を変えて根本的に学校の先生を増やしていって、それで長時間労働を解消していく、定時に帰れるような環境を具体的につくり出していくというお話、非常に共感いたしました。

 私はそういうことに共感している立場ということを表明しまして、佐久間先生にお伺いしたいのは、今回の給特法の改正に入れられている主務教諭に関してなんですけれども、主務教諭に関してお伺いしたいんです。

 といいますのも、少し私は懐疑的に思っていまして、本当に長時間労働が解消するのかな、あるいは労働環境、お給料が本当に上がるのかなという懐疑的になっていまして、佐久間先生、お詳しければお伺いしたいんですね。

 といいますのも、私は元々、大阪府の公務員をやっていたんですけれども、大阪市では二〇一八年に主務教諭という制度を導入されまして、聞くと、主務教諭というのを導入されたらお給料が上がるんじゃないかというふうに思いたくなるんですけれども、実情はというと、給料表が、教諭と同じ二級の給料表に入ったんですよ。その差別化のために、主務教諭になれない平の人はその給料表の七十四号でストップするという、ちょっとマニアックな話なんですけれども、お給料が下がっちゃったんですね。

 そういう新たな職種を入れても、結局は、上がるように見えて下がっているじゃないか、特に平教諭も下がるし、場合によっては主務教諭さえ打ち止めになるじゃないかという実際の制度もありましたので、ちょっと懐疑的になっていまして。

 今回導入するという主務教諭が、主任教諭という東京都の先んじたその制度がモデルになっていると聞いているんですけれども。佐久間先生も卒業生の中に東京都で働いている職員の方もおられると思うんですけれども、東京で全国に先駆けて主任教諭を導入した、その働いておられる教諭は、ほかの自治体で働いている教員よりもよい労働環境に果たしてなったのでしょうかというところで、もし実情、あるいは今回の制度の主務教諭で考えるところがあれば教えてください。

佐久間参考人 重要な御質問、ありがとうございます。

 確かに、様々な自治体によって、主務教諭とか、前回主幹教諭という制度が導入されたときも同じだったんですけれども、給料が上がるかと思ったら、俸給表全体が改定になって、基礎が下がることで結局上がっていない、あるいはむしろ切下げになっていたというような事例も幾つもの自治体で聞きました。ですので、総財政量が変わらない中で階層を幾つつくっても、なかなか末端の教員に処遇改善が及んでいるかどうかということは難しいところかもしれません。

 ですので、教員の人件費、三分の一は国庫負担で国が出してくださいますけれども、三分の二は各自治体が手当てしなければなりませんので、最終的にどのような効果があったのかということを是非、もし導入された暁には、国も責任を持って処遇改善になっているかというところを調査していただきたいというふうに希望しています。

 それぞれの都道府県によって財政状況が大きく異なっています。ですので、今問題になっているのは教員給与や処遇の都道府県格差です。ですので、東京都の場合は、全国の都道府県の中で唯一、義務標準法で定められた標準の数よりも多いフルタイムの先生が正規雇用として雇われている。逆に言えば、ほとんどの自治体では義務標準法で定められた標準の数以下の先生しかいないということになっています。その分何があるかというと、非正規雇用の先生方を賄っている。つまり、教諭の先生方の、正規雇用の先生方の給与を切り下げることで財源を捻出して、加配分でついた非正規雇用の先生の給与の財源に回すというようなことも行われています。

 ですので、主務教諭については、本当に処遇改善につながるかどうかは都道府県によるというところは是非この委員会でも御確認いただいて、最後まで処遇改善につなげていただきたいというふうに希望いたします。

 以上です。

大石委員 ありがとうございます。

 場合によってはお給料が下がってしまう、めり張りをつけて配分といったときに、物すごく一生懸命働いている先生でも逆に給料が下がってしまうという可能性もあるということを御指摘いただいたかなと思います。

 まだ少し時間があるようですが、私が質問したいことはこれで以上ですので、終わります。

 ありがとうございました。

中村委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の皆様には、大変貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございます。委員会を代表して、心から厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。(拍手)

 次回は、来る二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十分散会


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