第17号 令和7年6月18日(水曜日)
令和七年六月十八日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 中村 裕之君
理事 今枝宗一郎君 理事 小林 茂樹君
理事 永岡 桂子君 理事 青山 大人君
理事 亀井亜紀子君 理事 坂本祐之輔君
理事 高橋 英明君 理事 日野紗里亜君
遠藤 利明君 小渕 優子君
木原 稔君 国光あやの君
小池 正昭君 柴山 昌彦君
島田 智明君 鈴木 貴子君
渡海紀三朗君 福原 淳嗣君
船田 元君 松島みどり君
松野 博一君 三谷 英弘君
簗 和生君 山本 大地君
阿部祐美子君 安藤じゅん子君
五十嵐えり君 小山 千帆君
齋藤 裕喜君 佐々木ナオミ君
高橋 永君 竹内 千春君
辻 英之君 波多野 翼君
眞野 哲君 山 登志浩君
うるま譲司君 前原 誠司君
美延 映夫君 西岡 義高君
浮島 智子君 金城 泰邦君
大石あきこ君
…………………………………
文部科学大臣 あべ 俊子君
内閣府副大臣 鳩山 二郎君
総務副大臣 冨樫 博之君
文部科学大臣政務官 金城 泰邦君
政府参考人
(内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局審議官) 北尾 昌也君
政府参考人
(内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官) 徳増 伸二君
政府参考人
(総務省自治行政局公務員部長) 小池 信之君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 松井 信憲君
政府参考人
(文部科学省大臣官房総括審議官) 淵上 孝君
政府参考人
(文部科学省大臣官房学習基盤審議官) 日向 信和君
政府参考人
(文部科学省総合教育政策局長) 茂里 毅君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 望月 禎君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 伊藤 学司君
政府参考人
(スポーツ庁次長) 寺門 成真君
政府参考人
(文化庁次長) 合田 哲雄君
文部科学委員会専門員 藤井 晃君
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委員の異動
六月十八日
辞任 補欠選任
遠藤 利明君 国光あやの君
木原 稔君 島田 智明君
萩生田光一君 福原 淳嗣君
松野 博一君 小池 正昭君
三谷 英弘君 松島みどり君
竹内 千春君 齋藤 裕喜君
吉川 元君 山 登志浩君
同日
辞任 補欠選任
国光あやの君 遠藤 利明君
小池 正昭君 松野 博一君
島田 智明君 木原 稔君
福原 淳嗣君 萩生田光一君
松島みどり君 三谷 英弘君
齋藤 裕喜君 竹内 千春君
山 登志浩君 吉川 元君
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六月十六日
豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(伊藤俊輔君紹介)(第三〇三二号)
同(堤かなめ君紹介)(第三二二〇号)
国際基準の給付奨学金・無償教育の実現に関する請願(佐々木ナオミ君紹介)(第三〇三三号)
てんかんのある人とその家族の生活を支える教育に関する請願(青山大人君紹介)(第三〇三四号)
同(阿部祐美子君紹介)(第三〇三五号)
同(大石あきこ君紹介)(第三〇三六号)
同(佐々木ナオミ君紹介)(第三〇三七号)
同(吉川元君紹介)(第三〇三八号)
同(西岡義高君紹介)(第三二二六号)
同(眞野哲君紹介)(第三二二七号)
民間委託を推進するような積算単価を見直すとともに、学校現業職員の法的位置づけを求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第三二一七号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(小川淳也君紹介)(第三二一八号)
同(本村伸子君紹介)(第三二一九号)
同(奥下剛光君紹介)(第三三八一号)
同(辻英之君紹介)(第三三八二号)
同(本村伸子君紹介)(第三三八三号)
同(山崎正恭君紹介)(第三三八四号)
同(菊池大二郎君紹介)(第三四六五号)
同(福田徹君紹介)(第三四六六号)
設置基準を生かし特別支援学校の教室不足解消を求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第三二二一号)
同(辰巳孝太郎君紹介)(第三三八七号)
学費負担の大幅軽減と私大助成の増額に関する請願(荒井優君紹介)(第三二二二号)
同(安藤じゅん子君紹介)(第三二二三号)
同(大石あきこ君紹介)(第三二二四号)
同(眞野哲君紹介)(第三二二五号)
同(阿部知子君紹介)(第三三八九号)
同(齋藤裕喜君紹介)(第三三九〇号)
同(下野幸助君紹介)(第三四六七号)
高等教育無償化を求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第三三八五号)
国の責任による二十人学級を展望した少人数学級の前進、教職員定数増、教育無償化、教育条件の改善に関する請願(本村伸子君紹介)(第三三八六号)
全ての私立学校に正規の養護教諭を配置し、子供の命と健康が守られる教育条件を求めることに関する請願(辰巳孝太郎君紹介)(第三三八八号)
国の責任で学校給食費無償化の実施を求めることに関する請願(小山千帆君紹介)(第三四六〇号)
同(西川厚志君紹介)(第三四六一号)
同(藤原規眞君紹介)(第三四六二号)
同(牧義夫君紹介)(第三四六三号)
同(本村伸子君紹介)(第三四六四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
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○中村委員長 これより会議を開きます。
文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局審議官北尾昌也君、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官徳増伸二君、総務省自治行政局公務員部長小池信之君、法務省大臣官房司法法制部長松井信憲君、文部科学省大臣官房総括審議官淵上孝君、大臣官房学習基盤審議官日向信和君、総合教育政策局長茂里毅君、初等中等教育局長望月禎君、高等教育局長伊藤学司君、スポーツ庁次長寺門成真君、文化庁次長合田哲雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○中村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。
○松島委員 自民党の松島みどりです。
今日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。日頃、芸術などについて考えていること、特に、先週十三日に閣議決定しましたいわゆる骨太にも書き込まれたことをどのように実現していくかなどについて伺いたいと思います。
第一に、舞台芸術による地方創生についてです。
東京文化会館、神奈川県民ホールなど、首都圏でバレエ、オペラなどの公演を行えるホールが、今年又は来年から数年間にわたって改修工事に入ります。このままでは、日本のバレエダンサーやオーケストラの演奏家、オペラの歌手などは、数年間仕事が激減し、転職せざるを得ない状況が起こってきます。一方、地方には二千人収容のホールがかなりあるんですが、十分に活用されていないケースもございます。これをうまく組み合わせて、芸術団体のホーム、いわば活動の拠点として地方の劇場を充て、それによって地方創生に役立てることはできないでしょうか。
例えば、バレエファンが地方都市の公演に出かけ、一泊か二泊して、その地の温泉や郷土料理など、観光を楽しむこともあると思います。ただ、芸術団体にとりまして、地方公演は旅費や宿泊費が相当かさみ、資金的な負担がとても重いので、国の一層の支援が求められます。また、自治体が所有する劇場などは、プロデュース人材に欠けることもありますし、町おこしの仕掛け人も必要だと考えます。
コロナ期間中の文化庁の事業、アートキャラバンで、プロのバレエを初めて見た中国地方の小学生が書いた感想文に、舞台がきらきら輝いて、踊りも衣装もすてきで、夢の世界に出会った、そういうのがありました。東京などに公演を見に行けなかった人たち、もちろん大人にとっても、こういうわくわく、どきどきの経験はとても大切なことだと思います。首都圏のホールが使えないことを逆手に取って、地方展開を図るのはいかがでしょうか。
また、プロの芸術団体が拠点を置くことで、例えば、地方のバレエ教室の子供たちを舞台に登場させたり、オーケストラが中高生にクラシック楽曲の指導を行うこともできます。私の地元墨田区のすみだトリフォニーホールを新日本フィルハーモニー交響楽団が拠点としています。指揮者の佐渡裕さんが、区内の全ての中学校の吹奏楽部を舞台に集めて指導するイベントがありました。六十分の間に見る見るいい音色になっていたのを目の当たりにして、全国のいろいろな都市でもこういうことが行われてほしいと思います。
これらに関し、今回の骨太にも、首都圏の劇場不足に対応した全国各地の劇場、音楽堂の活用、連携を含む舞台芸術の振興という言葉が盛り込まれました。文部科学省と内閣府地方創生本部に取組を質問いたします。
○あべ国務大臣 舞台芸術に造詣の深い松島委員にお答えさせていただきます。
御指摘のとおりでございまして、地方の芸術、音楽堂等におきまして、優れた実演芸術団体、この公演を鑑賞する機会が充実すること、まさに地方創生の観点からも大変重要であると私も考えております。
文科省としても、御指摘の骨太の方針を踏まえまして、一流の実演の芸術団体が、地方の劇場、音楽堂等を拠点といたしまして、中長期にわたりまして継続的に公演を行う体制づくりを支援することをまさに検討しているところでございます。
こうした取組につきましては、各地方自治体における首長のリーダーシップがまさに重要でございまして、地方自治体が劇場、音楽堂等の環境整備を行う際に新地方創生交付金の活用、これが可能であることを私どもも周知をしていきながら、その取組を促しているところでございます。
文科省におきましては、地方における芸術鑑賞機会の充実に向け、引き続きしっかりと、委員の御指導も賜りながら、検討を進めてまいります。
○鳩山副大臣 御質問ありがとうございます。御質問にお答えをいたします。
地域において十分に活用されていない施設の新たな利活用、観光資源と組み合わせた人の流れの創出、そのための人材育成については、地方創生を進めるための重要な取組であると私どもも認識をいたしております。
舞台芸術に関する取組についても、これまで舞台芸術を核とした交流の拠点づくりなどに地方創生の交付金を御活用いただいている事例もございます。地方創生交付金は、自治体の自主性と創意工夫に基づく、多様な主体の参画を通じた地域独自の取組を後押しするものであり、地域の実情に応じて活用いただけるよう、伴走型の相談対応に努めてまいりたいと考えております。
○松島委員 力強い答弁、ありがとうございました。共に頑張っていきたいと思います。
次に、スクールカウンセラー、いわゆるSC、そして図書館司書、学芸員など、教育文化関係の高学歴で資格を持った専門職のほとんどが自治体の会計年度任用職員である問題について、SCを中心に質問させていただきます。つまり、会計年度任用職員というのは、一年ごとに更新し、五年間で一旦途切れる、そういうような不安定な職場なのです。
SCは、公認心理師又は臨床心理士の資格が必要で、いずれも心理系の修士の取得が条件となっています。ある有名私大の大学院で心理学を教える教授によりますと、自分の教え子でこれらの資格を取って常勤採用されるケースは皆無に等しい、自治体の会計年度任用ばかりと嘆きます。
五年で一旦辞めなければならず収入が不安定な上、産休、育休が取れないケースが多いので子供を持てない。もし子供を持っても、非常勤だと保育園入園の順位も不利になる。少子化対策と言いながらこのような状況。少子化対策やあるいは働き方改革というのが、フルタイムのというか、正規の職員だけに当たっているというのは、本当におかしいことだと私、思います。
東京都内で会計年度任用職員のSCを長く続けている四十代の女性から話を聞きました。今は東京都と市のSCや大学の非常勤講師をかけ持ちして働くというこの女性は、育休がなく、次男が生まれる三日前まで働き、生まれて八週間後に復帰した。勤務日をやりくりして調整したが、体が本当にきつかったと話しました。また、彼女は、子供たちの立場で考えても、五年ずつぶつ切りになるのは問題です、小学校のうちはいじめの問題などで相談に来るのは親が中心、中学では生徒本人が来ますが、いずれも信頼関係を築いてからでないと本音を語ってくれません、来年いなくなるというような状況でそういう話ができるわけがありません、一つの学校に根を下ろして働くことが重要ですと語ります。そのとおりだと思います。
心理職ユニオンが二〇二一年に都内の小中高のスクールカウンセラーを対象に行った調査では、七割の方が雇用が不安定であることを不安に感じ、例えば、年度途中で理由も分からないまま配置校数を三校から一校に減らされ収入が激減したとか、次の年度の収入のめどが新年度直前まで分からないとか、週三日勤務しても社会保障がない、ストレスも大きい仕事なのに病気になって働けなくなると無収入になってしまうという悲鳴が寄せられています。女性が八割と圧倒的に多い職場だからこそ、こんな処遇が続いているように思えてなりません。
いじめ問題が起きた際など、私たち国会議員は、私もそうですが、スクールカウンセラーを全校に配置せよ、数を増やせ、そのように主張します。しかし、その結果、非正規の、しかも、一校につき週に一回だけ配置といった職場を増やしているのが本当に悲しくなってしまいます。不登校の数が過去最高に上る今、その重要性は増しています。また、生徒や親からすると、週一というのも相談しにくい状況だと思います。
今回の骨太には、「地方公共団体における国家資格を持つ等専門分野に従事する者を含め会計年度任用職員の処遇改善や能力実証を経た常勤化」という文言が入っています。総務省が音頭を取って、専門職の地方公務員の常勤化に向け、自治体に対し指導及び財政支援を行ってほしいと思います。
文科省と総務省に簡潔に答弁をお願いします。
○あべ国務大臣 委員にお答えします。
スクールカウンセラーの任用につきましては、各教育委員会等の権限と責任の下に適切に判断されるべきものと承知しているところでございますが、一方、スクールカウンセラーが果たす役割は大変重要でございまして、一校当たりの配置時間が長くなるにつれて、課題が改善した児童生徒数も増加するという成果も実は確認ができているところでございます。
この適切な対応が実施されるように、私ども、体制づくりに取り組む必要があるというふうに思っておりまして、文科省としては、令和七年度予算におきましては、スクールカウンセラーの配置のために約六十二億円計上しておりまして、全公立小中学校の基礎配置に加えまして、いじめ、不登校の課題に応じて追加配置するための重点配置が可能となるように予算を確保しているところでございます。
また、スクールカウンセラーが常勤の職として求められる職責、また、担うべき職務の在り方等の検討に関する調査研究にもまさに今取り組んでいるところでございまして、引き続き、学校における教育相談体制の構築のため、必要な支援をしっかりと努めてまいります。
○冨樫副大臣 複雑化、多様化する行政需要に対応するため、常勤職員に加え、非常勤職員も地方行政の重要な担い手となっていると認識をしております。
このため、会計年度任用職員については、制度創設時から期末手当の支給を可能とし、勤勉手当についても、令和六年度から支給できるように法改正を行いました。
加えて、給与改定について、改定の実施時期を含め、常勤職員の取扱いに準じて改定することが基本である旨助言するなど、適正な処遇の確保、改善に取り組んできました。また、これらに伴う所要額についても、適切に地方財政措置を行ってきたところであります。
会計年度任用職員を含む地方公務員が十分力を発揮できるよう、適正な処遇の確保、改善や、職務経験等を考慮した適切な給与水準の決定を図るよう促すとともに、能力実証を経た常勤化に資する事例として、会計年度任用職員の職務経験を有する者が受験可能な中途採用試験を実施する取組の普及を図るなど、総務省としても、環境、制度の整備に取り組んでまいります。
以上です。
○松島委員 今おっしゃった総務省の財政支援及び能力のある人、資格を持った人を中途採用という形で入れるというそのお考え、是非、各自治体及び教育委員会にも行き渡るようによろしくお願いいたします。
最後に、簡潔に、メディア芸術ナショナルセンターの整備が始まり、この六月、相模原市に設置する収蔵庫の基本設計のプロポーザルが始まりました。収集や保存、さらに、補修、維持はどんな人材が担うのか。既にかなりのコレクションを持っているのか。収蔵庫の完成に先立ち、収集のための予算が必要なのではないか。
また、かつて、手塚治虫氏の「鉄腕アトム」の原画一枚がパリの競売で三千五百万円で落札されたことがあります。最近、日本の漫画やアニメの隆盛期の基礎をつくられた方々、先輩方の訃報に接するたびに、こんなことが起こるのではないか、今もどこかで貴重な原画、セル画が海外に流出しようとしているのかもしれないと思うと、心配になります。
これから人材育成といっても間に合うのか、国内の民間の漫画関連のミュージアムからヘッドハンティングするとか、コンテンツに造詣の深い、いわばオタクと言われる人たちを専門人材として公募するのか、そういったことを質問したい。そして、国内外の様々なミュージアムで展示されて初めて意味があるのですが、期待値が高まる中、その展示までいく時期やめどはいかがでしょうか。文化庁に伺います。
○合田政府参考人 簡潔にお答え申し上げます。
先ほど先生から御指摘をいただいた収蔵施設、これは進んでいるところでございますが、昨年度からは、ちばてつや先生の原稿等を一部お預かりをし、中間生成物等の保存、活用に関する調査研究を実施するとともに、全国各地の漫画ミュージアム等とのネットワークの構築に取り組んでございます。
御指摘をいただいた人材育成につきましては、今年度から、国立美術館において漫画及びアニメ分野のキュレーターなど専門人材を七名配置をしてございます。そのうち、法人内配置換えの一名を除く六名が公募で採用され、いずれも大学院でコンテンツを専門的に学び、海外の大学院で学んだ方も二名いらっしゃるところでございます。
今後とも、国立美術館全体の機能を再編、強化しつつ、メディア芸術ナショナルセンターの整備にしっかりと取り組んでまいりたいと存じております。
○松島委員 ありがとうございました。
三点とも明るさが見えてきました。どうぞ、実現に向けてよろしくお願いいたします。
○中村委員長 次に、辻英之君。
○辻(英)委員 立憲民主党の辻英之です。
今国会、文科委員会の四回目の質問となります。大変ありがとうございます。
最後の質問となる今回は、小学校から大学まで多岐にわたる質問をしたいと思います。前半は、社会に開かれた学び、ちょっとわくわくする話をしたいと思っています。
まず、資料一を御覧ください。
五月三十一日にNHKで放映された「新プロジェクトX」です。タイトル「廃校寸前からの逆転劇 高校生と熱血先生の宇宙食開発」。ちょっと、そのまま読みます。「廃校の危機にあった福井県小浜市の水産高校。高校生たちが宇宙食開発に挑み始めた。地域から愛され、学校の誇りである生徒手作りの「サバ缶」を宇宙に飛ばしたい。食品メーカーでも難しい宇宙食開発は、高校生が作るのは世界初。夢は、先輩から後輩へと託され、十五年。ついに「宇宙食サバ缶」を成し遂げる。教師と生徒、そして地域の絆が生んだ青春の物語。」です。
これは、私の地元福井県小浜市にある若狭高校の物語です。これ、本にもなっているんですね、ちょっと今持ってきましたが。大変活発な学びを展開している高校です。
まず、小さな町の高校生が起こした奇跡について、是非、大臣の所感と高校生たちへのエールをお願いしたいと思います。
○あべ国務大臣 辻委員にお答えします。
御指摘の福井県立の若狭高校の取組、専門高校生の地元特産品を生かした食品加工の取組が宇宙食の開発という形で結実しまして、さらに、地域住民、地元の産業界も巻き込んだ、この地域の活性化につながるという、大変意義深く、夢のある取組と私は認識しておりまして、実は、先日、サバ街道に行きましたときに購入させていただきまして、しばらく飾っておりましたが、実は、私、サバ缶大好きでございまして、ありがとうございます。
それでまた、教師が生徒の可能性を信じていきながら、主体性を重んじまして伴走し続けることに大変感銘を私も受けさせていただきました。
文科省では、こうした好事例を参考とさせていただきながら、特に産業界等の伴走支援、この実践的な専門高校運営モデルの構築、さらには、地方創生支援、地域人材の育成を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○辻(英)委員 ありがとうございました。大変、高校生にとっての励みになったと思います。
この番組で紹介された若狭高校なんですが、地域社会、世界と密接につながりながら学びをつくる探求の学校とも言われています。ほかにも様々な探求学習が行われています。ここでは一々紹介はしません。
また、文科省が進めるSSH、スーパーサイエンスハイスクールの指定校でもあります。そして、マイスター・ハイスクール指定校でもあります。SSHやマイスターについては、今後、またちょっと別の機会で質問をしたいと思います。
現行の学習指導要領でも、この探求はきちんと位置づけられておることは承知しています。次期の学習指導要領改訂に向けて、この探求というのをどのように位置づけているかについて、文科省の見解をいただきたいと思います。
○望月政府参考人 お答えいたします。
御指摘の探求的な学びは、現行の学習指導要領では、小中学校の総合的な学習の時間、あるいは、委員御指摘の高校の総合的な探究の時間、そして、各教科、理科や社会あるいは道徳、各教科でも実践されているところでございます。
中央教育審議会、新しい学習指導要領を検討する今の中教審におきましては、質の高い探究的な学びの実現を議題といたしまして、総合的な学習の時間と、まさに各教科等との連携を強化するとともに、デジタル学習基盤を探求的な学びを支える基盤としても十分に機能させること、その際には、リアルな身体性を大切にしながら探求のプロセスを自ら駆動できるようにすることなどを御議論いただいているところでございます。
今後、専門のワーキンググループも中教審の中では具体的に議論を始めることになりますけれども、質の高い探究的な学びの実現に向けまして、丁寧な検討を進めてまいります。
○辻(英)委員 ありがとうございました。
資料二を皆さん、見てください。
いわゆる主体的な学び、対話的で深い学び、探求というのはこれにまさに位置づくなと思っております。そして、高校生だけじゃなくて、中学校への展開、そして小学校にもつなげていくべきだと思っています。なぜなら、探求はまさに学習指導要領で重要視されている、今答弁がありましたが、主体的、対話的で深い学びだからだと思います。
そして、小学校においては、主体的、対話的で深い学びはまさに体験活動、さっき、リアルな身体性を伴った活動と申し上げていただきましたが、そうではないかと思っています。
主体的な学び、自分から参画していく、対話的な学び、周りと協調していく、深い学び、課題解決の姿勢、こういうことだと思います。
また、以前の質問でも伝えた自然体験活動の効果、資料三ですね、一ページめくっていただいて。これはよく文科省が使う資料でありますが、自然体験を多く行った者ほど、自己肯定感、自律性、協調性、積極性などの非認知能力が高くなるという傾向が見られる。これを見ると、まさに自然体験活動は、主体的、対話的な深い学び、学び方ということだろうと思います。
学習指導要領は十年に一度の改訂を迎えております。時数の問題やカリキュラムオーバーロードがクローズアップされておりますし、給特法に引き続いて教員の負担を減らすことも焦点になっています。しかし、子供たちにそもそもどんなことを学んでもらうのか、どのように学ぶのか、学び方です、こういう議論ももっと進めるべきだと思っております。
ところが、長らく子供たちの自然体験キャンプを三十年間やってきましたが、子供や若者がこんな感じになってきたんですね。ちょっと今日はグッズを持ってきました。
皆さん、ちょっとイメージしてほしいんですけれども、キャンプをやっているんですけれども、野外教育の。御飯を起こすときに火をおこしますね。ある学生が、ほとんどの学生と言ってもいいんですが、こういうふうに新聞を、これは福井の新聞ですが、束のこのまま、こう置くんですね。その上に、これぐらいの丸太、丸太というか木を置くんです、こうやって。こうやって置くんですよ。これに、マッチなりライターなりチャッカマンでつけるんです。
これは、どうでしょう、皆さん、燃えると思いますか。燃えると思う人。いやいや、燃えるわけないですよね。あれっと言っているわけです、学生さんが。これは、紙を丸めて、小さな木くずでやって、徐々に太くしていくんですよね。これは、我々の世代なら分かりますよね。でも、あれっと言っているんです、学生が。
これは、つまり、紙は燃える、木は燃えるという知識はあるんですね。だけれども、どうやったら燃えるかが分かっていないわけです。なぜなら、体験したことがないからですよね。
こういう子供もいます。もはや、IHが普及したからなのか、オール電化で、火を見たことがない。えっと思うんですが。燃えている炎に、キャンプで、本当に熱いのと手を入れようとするんです。これは、リスクマネジメントとしても違うフェーズに入ったな思うんですが、もはや子供と若者の直接体験不足というのは危機的だと思っています。災害級。
そこで、伺います。
学習指導要領の次期改訂に向けて、自然体験活動をどのように位置づけるかについて、今の、現行にも記載はされているんですが、次に向けてどう位置づけるか、文科省の見解を伺います。
○望月政府参考人 自然体験活動、自分自身で実際にやってみて初めて実感をする、デジタル社会が進展する中でも、主体的な学びにも通じるものと考えてございます。豊かな人間性や社会性、主体性を育む上で大変重要なことから、現行の学習指導要領でも、様々な教科、総合的な学習の時間も中心として、活動を計画的に実施しているところでございます。
現在検討しております中教審におきましては、まさに教育内容の充実とそして教師の負担の観点の双方を考慮しながら、こうしたリアルな学びあるいは体験的な活動というものを取り入れて子供たちの主体性を育むという観点からの検討が、今も行われますし、今後も行われる予定でございます。
○辻(英)委員 しっかりと進めていただきたいと本当に思っています。
私、もう一つ話をしたいんですけれども、三十年間、山村留学という形で一年間子供を預かって、自然と向き合う暮らしの営みを教育材として、まさに暮らしの自然体験をしてきました。
例えば、まき割り。まきでお風呂をたいて、五右衛門風呂でたいていたんですが、一年間、ストーブも。子供たち、一年間暮らすと、一日でどれぐらいのまきを使うか分かるわけですよね。どれぐらいでお風呂がたけるのと聞けば、これくらいと。大体一か月だとどれぐらいですかといったら、この壁に並んでいるまきの積んでいる量です。これ、一か月にすればどれくらいというのは分かりますよね。
その次の問いは、じゃ、これは立っている木だったら何本ぐらいになるんだろうねという話をすると、まきを割っているから分かるんですよね、長さ何メートルの、樹齢何年で、どれぐらいのまきが出てくるか。そうすると、その立ち木が、例えば百本としましょうか、その百本は、私は間伐もしているので、どれぐらいの山に生えているのかということも分かるわけですね。例えば、二ヘクタール。例えばですよ、今の話は。そうすると、一年間、私たちはこれくらいの山の間伐をすれば暮らしていけるんだねということが分かります。そして、三十年間植林をすれば、持続可能な暮らしができる、エネルギーにおいてはできるということも分かります。
お米の話もそうですね。私、三反、三十アール作っていたんですが、中山間地の条件不利な地域で、うまくいっても二十俵から二十五俵です。千二百キロぐらい。
同じことですよね。一日で食べるお米の量、一か月の量、一年の量が分かれば、そうなると一年分の消費量のどれぐらいを自給しているかが分かります。逆に言えば、一年間自分たちで自給する場合にはどれぐらいの田んぼを耕せばいいのかというのが分かってきますね。
これは、算数とか環境、まあ理科、社会、体を動かしますから体育、家庭科、食育も含めて、暮らしを通して自然体験というまさに主体的、対話的な深い学び方で教科を学んでいる。これはわくわくしませんか、皆さん。ここで培われる学力、こういう話をするとちょっと長くなるので、今度どこかでまた質問しますが。
では、伺います。
学習指導要領改訂の議論で、柔軟な、弾力的な教育課程編成によって裁量的な時間を生み出すと、仮ですが、しています。まさにこの裁量的な時間にこういった自然体験活動などを導入してはどうかと考えますが、いかがでしょうか。
○望月政府参考人 次期学習指導要領におきましては、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂し、一人一人の意欲を高め、可能性を開花させる教育を実現するために、まさに柔軟な教育課程の編成を、各学校や教育委員会の創意工夫を最大限生かす、そうした仕組みを検討しているところでございます。
こうした観点から、一定の要件の下で、国への申請を不要として、各学校や教育委員会の判断で各教科の標準授業時数を別の教科や裁量的な時間に充当可能とすることや、この裁量的な時間を、まさに児童生徒の多様な個性、特性、あるいは実態に応じた、まさに体験的活動も含めた教育活動や、指導の改善につながる組織的な研究活動に充てることなどの適否も検討いただいているところでございます。
全体的にこうした仕組みが教師と子供の双方に余白を生み出し、全体として教育の質の向上につながるよう、引き続き丁寧な審議を中教審で進めてまいります。
○辻(英)委員 ありがとうございます。
しっかりと位置づけていければと思いますので、是非ともまた私たちも提案していきたいと思っています。裁量の捉え方というよりも、学校の中だけにとらわれない、社会に開かれた教育課程というのであれば、その視点も必要だなと思っております。
例えば、小学校六年生に燃焼という単元がありますね。燃えるもの、酸素、熱があれば燃えるんですが、これを教室で学びます。その日の放課後に例えば学童保育で、あるいは週末に地域の自然学校で、実際に火を使った、扱った体験活動をします、学校で学んできたんでしょうと、地域の人が。翌週の授業でこれを教員がまたフォローします、週末か放課後かにやってきたんでしょうといってね。
こういうのもわくわくすると思うんです。こういったことを既に実践している地域もたくさんあります。学校の中だけであれこれ時数をやりくりするだけじゃなくて、思い切って地域や自然を舞台に裁量を考えていく、これこそ柔軟で弾力的な考えではないかと思います。
学習要領改訂の議論、狭い議論に終わらずに、是非とも広い視点で検討していただくことを強くお願いしたいと思います。
先々週、自然体験活動の議員連盟も再開されました。委員である松野先生に会長となってもらって、たくさんの議員が参加しました。今後は、たくさんまた議員を募って、立法府としても、政府と力を合わせて体験活動推進に努めてまいりたいと思います。
次に、養護教諭、保健室の先生についての質問をしていきたいと思います。
誰もがお世話になったと思う保健室の先生ですね。ところが、多くの場合、各学校に一人しか配置されない、いわゆる一人職です。これは栄養教諭とか事務職員も一緒ですね。
先般審議された給特法や働き方改革についても、福井県の学校現場を徹底的に歩いて聞き取りをすると、一人職教員の負担が極めて大きい、こういう悲鳴を聞きました。
そして、実は、私の方の女子大でも養護教諭養成の授業を三こま、十五年間受け持ってきましたので、五十人ほど、現職の教え子も養護教諭でいます。彼らにも聞いてきました。
資料四を見てください。
養護の先生の仕事ですね。健康の相談や診断、救急処置などはもちろんですけれども、最近は、不登校やいじめ、虐待など心のケアの問題、LGBTQや発達障害など個別の問題、近年は、感染症への対応など、養護教諭の役割が増大して、先生の方が病んでしまう、これに対応する養護教諭も多いというふうに聞いております。
学校において、たった一人でこれらの業務を担当している。どう考えても大変なのではないかと思います。この養護教諭が置かれている業務過多、多過ぎ、これについてどのような見解を持っているか、大臣の見解を求めます。
○日向政府参考人 お答えいたします。
日本学校保健会が実施している保健室利用状況に関する調査などによると、例えば、小中高等学校における、養護教諭が心身の健康問題で継続支援した児童生徒数、個別の保健指導を要する児童生徒の割合は、平成二十八年度と令和四年度を比較すると、いずれも増加が見られるところです。
一方、スクールサポートスタッフやICTの活用などにより事務的な負担の軽減も図っており、令和四年度の教員勤務実態調査の結果においては、時間外在校等時間が減少するなどの状況も見られるところです。
養護教諭を始め、学校における働き方改革は喫緊の課題であり、養護教諭の業務負担の軽減と時間外在校等時間の縮減を通じて、児童生徒に対するよりきめ細やかな支援の充実を図ることが重要であると認識をしております。
○辻(英)委員 ありがとうございました。
私が聞き取りをした福井県の学校現場からは、こういった声を聞きました。子供に丁寧に対応してあげたいが、一人職ゆえに業務量が多く、一人一人に十分な時間をかけてあげられない状況だと聞きました。もちろん少々改善されているということは分かりますが、これは抜本的な改善も必要ではないかというふうに捉えています。
例えば、集団フッ化物洗口、これは福井県ではかなり行われているんですけれども、フッ化物を使って口をゆすぐ、虫歯予防ということで学校で行われているものです。令和五年五月二十三日、参院の文教委員会で古賀議員、令和六年四月三日に衆議院厚労委員会で堤議員、令和六年十二月十九日に参院の文教委員会でまた水岡議員が質問をしていますように、何度も国会でもその必要性の疑義、とりわけ、フッ化物洗口に係る教員の負担が大きいということが指摘されています。
とりわけ、令和五年五月二十三日の古賀議員の質問で、ここにもおられますが、当時、永岡大臣ですけれども、永岡大臣が認めている、教職員がその業務を担う場合には少なからず負担が生じると述べております。
資料五を見ていただけるといいかなと思うんですが、保護者から教員、そして児童までの説明会、する子、しない子の振り分け、中毒症対策、練習スライド作成、薬剤注文などなど、これだけ事前にしなければならない。当日、口をゆすぐときは、当然、担任の先生への負担も大変大きいとなります。これ、少なからずじゃないですよね。
これは、給特法の審議でも取り上げられました教員の働き方改革に真正面から逆行するものじゃないかと捉えています。しかも、そもそもこれは、学校の業務、教員の職務だという法的根拠がない。学校保健安全法にも位置づけがありません。法的根拠を問うた令和六年十二月十九日の水岡議員にあべ大臣も答弁しています。
改めて、学校においてフッ化物洗口を実施する法的根拠と、それは教員の職務に当たるのか、伺いたいと思います。
○あべ国務大臣 辻委員にお答えいたします。
フッ化物洗口でございますが、齲蝕の予防対策といたしまして効果的であるというふうに考えられますことから、各学校におきましては、地域の実情に応じてでございますが、学校保健安全法に基づく保健管理計画に位置づけるなど、また、学習指導要領などを踏まえて実施しているものと承知しているところでございますが、このフッ化物洗口を、学習指導要領に基づいて、体育科における口腔の衛生を保つこと、また、特別活動の心身の健康の保持増進に関する指導として実施する場合等におきましては教育活動として位置づけられまして、また、教員の職務になるものと私ども考えております。
○辻(英)委員 ありがとうございました。
水岡議員の質問に対する答弁と同じなんですけれども。
でも、しかし、学校現場、福井県の学校現場に聞きますと、学習指導要領に基づいて、体育科における口腔の衛生を保つ、あるいは特別活動の心身の健康の保持増進に関する指導と言うんですが、そんな位置づけをしている教員はいません。むしろ、不可能だという声の方が多かったですね。これは福井県内の学校ほぼ全ての養護教諭の声でした。
これは、文科省の、大臣の答弁と学校教育に強烈な乖離があるということなんじゃないでしょうか。
この点、どう考えておりますでしょうか。
○あべ国務大臣 委員にお答えいたします。
文部科学省の考え方は先ほど申し上げたとおりでございますが、地域の実情に応じてこのフッ化物洗口を実施する場合でございましても、可能な限り教職員の負担、これを軽減した形で実施することはまさに重要であると私どもも考えております。
学校におきましてこのフッ化物洗口を実施するに当たりましては、関係者間で特に適切な役割分担を検討していただいて、また、教職員の負担軽減に配慮するよう、都道府県教育委員会等に対し依頼をしているところでございまして、引き続き周知に努めてまいりたいというふうに思います。
○辻(英)委員 自治体の判断、学校の判断というふうに伺っておりますが、そう言いつつも、今大臣おっしゃったように、フッ化物洗口を実施する場合の配慮の文書をやはり自治体に出すわけで、先週、参考人質疑でも通知が話題になりましたが、通知とは違うことは承知しておりますけれども、実質的に現場にとっては指示に近くなる、こういうふうに捉えています。
養護教諭の業務過多を助長することに鑑みて、フッ化物洗口は学校ではなく、希望する保護者管理の下、個別に行うものとすべきと考えますが、見解を伺います。
○日向政府参考人 お答えいたします。
学校におけるフッ化物洗口は、個人の環境によらず齲蝕予防効果が得られ、齲蝕に関する健康格差の縮小につながることが期待されることから、各自治体において地域の実情に応じて実施されるものと承知をしております。
このため、学校において集団フッ化物洗口を行うことについては、各自治体において判断される事柄であると考えておりますが、文部科学省としては、学校において実施する場合には、関係者間での適切な役割分担を検討し、教職員の負担軽減に配慮するよう引き続き促してまいります。
○辻(英)委員 フッ化物洗口の是非につきましては、ちょっと今回、これはまたやり始めると長くなっちゃうので今後にしたいかなと思っておるんですが、養護教諭が置かれている業務過多につきましての認識を是非とも持っていただきたいと思っています。
資料六をちょっと見てください。この棒グラフなんですけれども。分かると思うんですが、全体の教員採用の倍率は年々減っている。これは給特法のところでも度々指摘されました。ですが、一人職の倍率は、これは養護教諭だけなんですが、増加の一途をたどっているんですね。ここの資料だけを取ると、令和元年は六・三倍でしたが、令和六年度は八・二倍になっております。栄養教諭等も同じ傾向が見られています。
これは、潜在的な養護教諭が多いということを示しているんじゃないかと考えます。免許はあるけれども、採用されずに諦めている人が多い。倍率が高いから。そして、定年退職された人などなど。
伺います。
このような潜在的な養護教諭をもっと活用すべきではないか、見解を伺います。
○日向政府参考人 お答えいたします。
児童生徒が抱える現代的な健康課題が複雑化、多様化する中で、養護教諭を支援する体制を強化することが重要と考えております。
このため、文部科学省では、令和五年度から、養護教諭の経験者や有資格者を派遣し、大規模校のうち、養護教諭の配置が一人の学校の養護教諭の業務負担を軽減するなどの事業を実施しており、令和五年度は二十六の自治体、令和六年度は二十八の自治体で活用いただき、年々活用自治体を増やしているところです。
本事業を通じて、各学校における養護教諭の業務支援の体制強化を図り、児童生徒に対して、よりきめ細やかな支援が実施されるよう取り組んでまいります。
○辻(英)委員 ありがとうございます。
活用の事業が行われていることは承知しております。ただ、この進捗率の低いこともまた私も承知しておりますので、是非とも、潜在的な養護教諭の活用につきまして推進していただければと思います。
そして、すべきことは一つなんじゃないかと思っております。配置基準を引き下げて、複数配置の基準ですね、養護教諭の採用を増やすことなんじゃないかなと思います。
現在は、複数配置は、小学校八百五十一人以上、中学校八百一人以上です。これでやっと二人になる、養護教諭が。ところが、だから、七百人くらいだと、やはり一人で対応せざるを得ないということですよね。これまで指摘したように、やはり一人じゃなかなか大変だ。中教審でも、複数配置基準の引下げを検討することが必要であると指摘されています。
そこで、伺います。
養護教諭の複数配置基準を引き下げて、養護教諭の採用を増やすべきだと考えますが、大臣の見解を伺います。
○あべ国務大臣 委員にお答えさせていただきます。
児童生徒の心身の健康課題が多様化また複雑化する中にございまして、教師等とも連携しながらきめ細かく支援する養護教諭の重要性、まさに増加をしているところでございまして、配置の充実は重要でございます。
このため、養護教諭の教職員定数につきましては、これまでも計画的に改善を図ってきたほかに、近年では、いじめ、また保健室の登校など、心身の健康の対応のために加配の定数を充実させているところでございまして、令和七年度予算におきましても、養護教諭の加配定数の改善を計上させていただいているところでございます。
文科省としては、中央教育審議会の答申も踏まえながら、養護教諭を含めた学校の指導、運営体制の充実にしっかりと取り組んでまいります。
○辻(英)委員 ありがとうございます。
現場の、福井県の養護教諭からは、県独自の配置基準をという声がやはり上がるんですね。例えば長野県だと、七百人以下は複数にするとかいう独自の基準を設けています。
ただ、そうなると、結局は自治体の財政状況に左右されますし、地域格差が出ることは否めません。是非とも、国の方で主導をいただきたいと思っています。
そして、複数配置基準の見直しは、もう二十四年間行われていないわけですよね。二〇〇一年ですよ。二十四年間、だから増やされることはなかったということです。今、大臣がおっしゃいましたように、計画的に定数改善を図るというふうに答弁いただきました。是非とも、養護教諭につきましても計画的な改善計画を立てていただければと思います。
最後です。残った時間を使って、国立大学法人のことに質問をします。
地元の福井大学と、私、母校が北海道大学なんですが、行ってまいって、ヒアリングをしました。そして、国大協などにも、国立大学協会ですね、ヒアリングをしました。いずれも、涙ぐましい努力を続けて、なお厳しい状況にあることをお聞きしました。
資料をちょっと一個飛ばして九番、これも有名ですけれども、令和六年六月七日の国立大学協会の声明です。ちょっと読み上げますね。この黄色の囲ったところですね。
国家予算が厳しさを増すにつれ、国立大学の活動を支える基盤経費(運営費交付金)は減額されたままです。加えて、社会保険などの経費の上昇、近年の物価高騰、円安などにより基盤経費を圧迫し、実質的に予算が目減りし続けています。また、働き方改革の実現のため、大学教職員、学校教員や医師を確保する必要も出てきました。その中にあっても質の高い教育研究活動を維持・向上していくために、寄付金などの外部資金や自ら収入を増やす努力も進めています。そうして、我が国の課題、また地球規模の課題の解決に、教育と研究を通じて全力で取り組んできました。
しかし、もう限界です。
これ、衝撃的ですよね、最後の一言。この切実な声に国は一体どう応えていくのか、これが問われていると思っています。
資料の八及び十を見ていただければと思うんですけれども、運営費交付金は少しずつ減らされて、近年維持されているというふうに言われていますが、とはいえ、資料十で言うように、一番大事な基盤経費というのがなかなか確保されにくい状況だとも伺っております。
若者の育成、研究者の養成、そして地方創生のためにも、やはり国は腹をくくるべきだと思います。運営費交付金は、額はこの数年維持されていますが、ミッション実現加速化経費だけじゃなくて、それと特殊経費を除いた基幹経費を増額しないと、大学がもたないと捉えています。
伺います。
運営費交付金の増額、とりわけミッション実現加速化経費と特殊要因経費を除いた基幹経費の抜本的増額をすべきと考えますが、見解を伺います。
○あべ国務大臣 委員にお答えさせていただきます。
まさに、大学教員が研究と教育に本当に必死で頑張ってくださっていることは、本当に様々な方からお聞きをしているところでございまして、委員御指摘のこの基幹経費を含めまして、国立大学法人運営費の交付金でございますが、大学が安定的、さらには継続的に教育研究活動を実施するために、まさに重要な経費であると私どもも認識をしているところでございます。
特に、近年の人件費、また物価の高騰によりまして、各大学、国立大学におきましては、大変御苦労されながら運営しているという声は本当に聞いているところでございまして、文科省といたしましても、令和七年度当初予算及び令和六年度の補正予算におきましても、必要な予算を確保し、両方合わせて支援に努めているところでございます。
また、先週閣議決定をいたしました骨太方針におきましては、物価上昇等も踏まえつつ運営費交付金等の基盤的経費を確保することとしておりまして、引き続き、運営費交付金の確保に全力で取り組んでまいります。
○辻(英)委員 ありがとうございました。
今日は時間がありませんが、大学教育に身を置いた者としても、今後も機会があれば質問したいと思います。
今国会、五回の質問機会をいただきまして、感謝申し上げます。答弁いただいた大臣始め、政府関係者にも感謝したいと思います。
質問を終わります。
○中村委員長 辻委員に申し上げます。
委員会における書籍やまきなどの物品の提示は、事前に許可を得ることとなっておりますので、以後はそのようにお願いしたいと思います。
○辻(英)委員 申し訳ありませんでした。
○中村委員長 次に、青山大人君。
○青山委員 立憲民主党の青山大人でございます。
あべ大臣、本当にこの一年間、大変お疲れさまでございました。恐らく、多分、最後の委員会だと思いますし、もしかして、文部科学大臣としての御答弁も今日が最後かもしれません。是非、思う存分、答弁をしてもらいたいと思います。
まず、最初の質問でございます。
給特法の見直しがございました。いろいろな議論がされました。私もそのとき話したんですけれども、やはり、教職調整額の段階的一〇%への引上げに合わせて、特別支援教育に従事する教員へ支給してきた給料の調整額を令和八年度から二年間で三%から一・五%へ半減する方針、これについては何かもう既定事実のようになっていますが、私はやはりこの見直しは撤回してほしいと思いますけれども、大臣、もうこれは既定路線ということで、こうなってしまうんでしょうか。
○あべ国務大臣 青山委員にお答えさせていただきます。
特別支援教育でございますが、障害のある子供の自立と社会参画を見据えながら、一人一人の教育的ニーズに応えるための指導、支援を行うものでございまして、まさに専門性を必要とするものと私どもも認識しているところでございまして、今般の処遇改善におきましては、特別支援教育を含む教師の高度専門職としての職務の重要性を踏まえまして、教職調整額を引き上げることとしているところでございます。
一方、給料の調整額でございますが、勤労条件等の面でほかの職員と比較いたしまして著しい特殊性を有する場合に措置するものでございますが、一般の教師との特殊性の差が相対的に縮まったことを勘案いたしまして見直すこととしたものでございます。これは、特別支援教育の重要性が低下しているということではございません。
なお、特別支援関係に携わっている教師の、通常の学級の担任と比較いたしまして、引き続き高い処遇が保たれることになっております。
○青山委員 通常学級の教員にもインクルーシブの対応が求められるといった理由で給与の格差を縮小させるからというような御答弁があったんですけれども、やはり専門性がより高い業務に従事する教員の処遇引下げは、私は、逆の意味に、逆の逆転現象になってしまうのではないかというふうに思いますし、現場から不公平感も指摘されております。
また、政府もインクルーシブ教育の推進という方針を掲げていますし、そんな中、この専門の教員の処遇引下げの整合性をどう説明するのか。現場からも、見直しを求める声、署名も上がっているというふうにも聞いております。ここは、今後の運用については、よりいろいろ柔軟性を求めるものでございますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○あべ国務大臣 委員にお答えいたします。
給与の調整額でございますが、特別支援学校、特別支援学級及び通級の指導に関わっている教師に支給されるものではございますが、小中学校の通常の学級にも特別支援教育の対象となる児童生徒が増加しているところでございまして、全ての教師が特別支援教育に関わることがまさに今必要となっているところでございまして、こうした背景を踏まえまして、中教審の答申におきましても、負担と処遇のバランスに配慮した見直しの検討が提言されたところでございまして、このために、教師の給与全体を検討する中におきまして、教職調整額の一〇%への引上げ等を踏まえつつ、引き続きほかの教師と比較しながら一定の特殊性を有していることから、廃止ではなく半減することにしたところでございます。
○青山委員 今後、私は引き続き見直しの撤回を強く求めるところでございますけれども、この質問はこれで終わりにいたします。
次の質問に行きます。
来年から全国の小学校で給食の無償化というような方針が決まったんですけれども、自治体の首長さんからは、本当に国の方で来年の四月からやるんですか、そういったちょっと不安の声も聞かれています。
これはもうイエスかノーで結構ですので、来年度から全国小学校の給食無償化は国の方で実施するということでよろしいでしょうか。
○あべ国務大臣 委員にお答えいたします。
先週の十三日に閣議決定いたしました骨太の二〇二五で、いわゆる給食の無償化につきましては、無償化に関する課題の整理に基づき具体化を行って、八年度予算の編成過程において成案を得て実現することとされておりまして、まずは、三党合意におきまして、小学校を念頭に、地方の実情を踏まえまして令和八年度に実現するとされるとともに、国と地方の関係を始めとした様々な検討のいわゆる論点が示されているところでございまして、安定的な財源の確保と併せて、しっかりとこの給食無償化が意義あるものになるように取り組んでまいります。
○青山委員 いろいろな課題とか制度設計はこれからだと思うんですけれども、取りあえず、来年四月からやるということで、そこは、大臣、よろしいんですよね。
○あべ国務大臣 繰り返しになりますが、いわゆる給食無償化につきましては、三党合意におきまして、国と地方の関係を始めとした様々な検討すべき論点が示されているところでございまして、今後、十分な検討を行いまして、いわゆる給食無償化が意義があるものになるように取り組んでまいりますが、現時点で申し上げられることはこのようなことになるということを是非御理解いただければと思います。
○青山委員 まさに同じ繰り返しの答弁なんですけれども、もう今日最後ですから、大臣、やるならやると。でも、多分、答弁を聞くと、やるというような認識だというふうに私は解釈させていただきますけれども。
是非、物価も高騰していますし、食材費がしっかり確保できるのかとか、そういった声もございますし、また、自治体で、今現在も無償化している自治体なんかもございますし、そういった自治体にとっては早めに国の方で方針を示してほしいとかもありましたし、場合によっては法改正が必要かもしれません。そういったスケジュール感、どのように見込んでいるのか、今現在で、もし先ほどの繰り返しの答弁以外に何かあれば答弁してほしいんですけれども、もしなければ結構です。では、参考人の方からお願いいたします。
○日向政府参考人 お答えいたします。
今大臣が御答弁申し上げたことに尽きるわけでございますが、まず、文部科学省としては、先週十三日に閣議決定された骨太方針二〇二五、これに基づいて、令和八年度予算の編成過程において成案を得て実現することとされておりますので、この閣議決定に基づき、今後検討を進めさせていただくということでございます。
○青山委員 分かりました。いずれにしましても、現場の方で混乱が起こらないように、早め早めの設計の方をお願いいたします。
次の質問に行きます。選択理論心理学を活用した教育の実践について伺います。
先ほども、ほかの委員からもございましたように、子供の数は減っているけれども、不登校の数は増えている。また、これはもうずっとここ数年ですけれども、十代の死因の一番は自殺である、そういった悲しい現実がございます。
そういう中で、選択理論心理学、この理論は、ウィリアム・グラッサー博士が提唱したもので、児童生徒の自己決定力を育み、人間関係の質を高めるということで、学校経営や不登校対応など、教育現場における様々な課題の解決に資する実践理論というふうにされております。
子供たちのウェルビーイングの向上という観点から、文科省としても、こういった理論の導入に向けて検討することも必要でないかと私は思いますが、まずはいかがでしょうか。
○あべ国務大臣 青山委員にお答えさせていただきます。
御指摘の選択理論心理学につきましては、いわゆる詳細は承知していないところでございますが、文部科学省として、特定の理論に関する見解をお示しすることは差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、一般論として申し上げれば、様々な心理学の知見を活用すること、まさに、児童心理の、心情の理解、また働きかけ等に有用な場合もございまして、委員御指摘の、児童生徒が主体的に選択、判断する力の向上、また教職員と児童生徒間の信頼関係の醸成などにも寄与するものというふうに私どもも考えているところでございます。
○青山委員 実際、岐阜県の岐阜市では、福祉や教育部門の職員に対して、この選択理論心理学の研修を導入して、対人支援の質が向上したという報告をされております。さらに、その岐阜市にある特別支援校である草潤中学校では、不登校経験者への支援教育に選択理論を取り入れた結果、出席率や進学率が改善したという成果が上げられているようです。
このような実際に自治体でやっているような事例を文部科学省としても私は実際把握してもらって、そういったものがどう評価できるのか、また、今後の調査研究やモデル事業として展開することも場合によっては必要かなというふうに考えますが、そういった自治体の事例についてどのように考えるか、お伺いいたします。
○望月政府参考人 今、青山委員から御紹介いただきました岐阜市の、これは学びの多様化学校でもかなり先駆的に不登校支援に取り組んでいる学校、岐阜市立の草潤中学校におきましては、生徒が登校時間や時間割りを選ぶ、あるいは学校の規則を作ったりするような、生徒が主体となる学校づくりを行う、その際に、御指摘の選択理論心理学なども教員の研修に取り入れているということを把握してございます。
今回御提案をいただきまして、私も改めてこの選択理論心理学というものを拝見をしましたけれども、生徒が自ら主体的に選んでいく、選択していく、学んでいくという取組の一つの参考になるんじゃないかなというふうに考えてございます。
元々、市の方が取り入れたきっかけは、二〇一九年七月に起こりました、いじめによる中学校の自殺をきっかけとして、首長部局の管理職、あるいは子供政策担当部局の職員を対象とした研修にこの理論を取り入れたわけでございますけれども、私どもとしては、不登校支援に当たりまして、いろいろなそうした実践やお考えがあると思います、不登校のきっかけや継続理由に関し、その環境づくりのために適切な支援や働きかけを行うことができるよう、こうした学びの多様化学校の事例の周知、あるいは収集を含めまして、引き続き、子供一人一人に応じた支援の充実ということに努力してまいりたいと考えてございます。
○青山委員 詳細な御答弁をありがとうございました。
国会が終わったら、この岐阜市の事例ですとか、草潤中学校の現場とか、是非、大臣、もしお時間があったら現場に視察をしてもらえればというふうに思いますので、ここは別に答弁は結構ですので、要望ということでさせていただきますし、是非、担当の皆さんたちも、より岐阜市の事例なんかを調べてもらえればというふうに思っております。
続きまして、この選択理論心理学を教育課程で活用できないかということで、道徳教育とか特別活動、学級経営といった部分において選択理論的な考え方を取り入れることは、非認知能力の育成や関係性の質の向上に有効と考えます。
教育課程の中でこのような教育実践の導入や普及を促進していくことについてどのように考えるか、お伺いいたします。
○望月政府参考人 文部科学省といたしましては、特定の理論に関する見解をお示しすることは控えさせていただきますけれども、学習指導要領の改訂を控えまして、これまでのいろいろな学校の実践、あるいは教育委員会でのそうした取組、そしてこうした有識者の知見というものも参考にしながら、生徒が主体となって考え、そして判断する力を育む、そうした教育活動を通じた児童生徒のウェルビーイングの向上を図ることは大事であると考えてございますので、御指摘いただいた観点なども踏まえながら、いろいろなことを参考にして検討したいと思ってございます。
○青山委員 そして、これに関する質問で最後の質問ですけれども、子供たちの教育課程にこういったものを導入できないかというのと同時に、今度は、教える側、教職員の研修とか、場合によっては教材開発でこういったものが活用できないかということで、教職員自身が選択理論心理学の基本的な考え方を理解して実践できるようになることも、児童生徒のウェルビーイングの向上には欠かせないのかなというふうに思います。
その観点から、教員研修の中に選択理論を取り入れたプログラムを導入、検証していくこと、また教材開発への応用について検討することもいいのかなと思いますけれども、文科省の見解を伺います。
○茂里政府参考人 お答え申し上げます。
教員研修の視点からのお尋ねでございました。
様々な心理学の知見、これは児童生徒の心情理解や働きかけ等に大変有用であり、特に、不登校支援や生徒指導に関する教員研修におきましては、様々な心理学的知見が活用されていると承知しているところでございます。
例えば、独立行政法人教職員支援機構において実施している生徒指導基幹研修というものがございまして、この中では、児童生徒理解の観点から、選択理論心理学の知見も紹介しているところでございます。
文科省といたしましては、様々な心理学の知見を含め、学術的知見を参照しながら、引き続き、教員研修、あるいは教材開発の在り方をしっかりと検討してまいりたいと思います。
○青山委員 これまでのやり取りを踏まえて、最後、大臣にちょっと一言だけですけれども。
こういったやり取りを踏まえまして、選択理論心理学を活用した教育の実践についてどういった御感想を持たれたか、大臣の御見解をお伺いいたします。
○あべ国務大臣 委員にお答えします。
委員御指摘の、児童生徒がまさに主体的に選択、判断する力の向上、また教職員と児童生徒間の信頼関係の醸成にも寄与するものと私も考えております。
○青山委員 是非、よりちょっと調べてほしいなと思います。
最後の質問に行きます。
学習指導要領の改訂の方向性についてお伺いします。
まずは、今、授業数のいろいろな議論もされていますけれども、その授業数の議論の前に、教員の負担軽減が不可欠、これはもう給特法のときもずっといろいろな議論があったんですけれども、その中で、特に、保護者対応に割かれる時間が大きな課題とも現場では伺っております。
各学校に保護者対応といっても、誰か単純に人を置くだけで解決するわけではありません。やはり経験がある、例えば教員のOBなどを配置して保護者対応を支援するような体制をつくっていくこと、これは私は必要なことだなと思っています。
そういった仕組みづくり、予算措置について、現時点で何かお考えがあれば、お伺いいたします。
○あべ国務大臣 青山委員にお答えいたします。
委員御指摘のとおり、保護者から、特に、過剰な苦情とか、また不当な要求などの対応につきましては、教師にとって大変負担の大きい業務になっているところというふうに私どもも認識しておりまして、文科省としては、こうした事案に対しまして、教育委員会が保護者などから直接相談を受け付けたり、また学校関係者が専門家に相談できる体制構築を支援するためのモデル事業を実施しているところでございまして、また、スクールローヤーの配置充実にも向けまして、法務相談体制の構築に向けた手引の作成も今取り組んでいるところでございます。
文科省としては、保護者対応に関する学校における業務運営の改善に向けて、しっかりと取組を進めてまいりたいと思います。
○青山委員 是非そういったところに人を配置するような予算の検討なんかは今後される予定はあるのでしょうか。
○望月政府参考人 保護者からの過剰な苦情、あるいは困難な要求、これは学校だけではなかなか対応し切れないものがあるという観点から、行政がその前面に立ちながら学校あるいは教員の支援をするという仕組みと、それに関係する私ども今モデル事業をやってございますけれども、それをもう少し全国的にしっかり自治体の意見も聞きながら広めていきたいというふうに考えてございますので。
二年前に、教員業務支援員で、この委員会でもかなり青山先生から御議論いただきました。今、教員業務支援員が各学校におかげさまで多く配置されてございます。
保護者からのそうした不当な要求等に対応できるような、そうした行政の対応というものについても、我々としても検討をしっかりしてまいりたいと思ってございます。
○青山委員 ちょっと今、教員業務支援員という言葉が出てきたので。
これは、この前も言った要望ですけれども、やはり都道府県によってはなかなかそれを負担してくれない県もあるので、そこはやはり文科省としても、全国の公立の学校で一校一名配置という方針があるので、都道府県にちゃんと負担するようにということは改めてしっかり徹底の方をお願いいたします。
それで、学習指導要領の改訂の次の質問に行きますけれども、改訂方針では、中核概念に基づく構造化ですとか単元ベースの学びなど、レス・イズ・モアの理念が掲げられていますが、現場の先生からは、依然として教科書が網羅的で、全て教えなければいけないというプレッシャーがあるとの声も上がっています。
教科書の分量や記述内容に重点化、標準化の指標を設けることにより、理念を教材面でも実現していくべきと考えますが、文部科学省の方針を伺います。
また、単元評価や探求的評価の導入を推進するならば、高校入試の出題内容との連動する改革が必要ではないでしょうか。改革のロードマップについてお考えをお伺いします。
○望月政府参考人 次期学習指導要領に向けました中教審の検討におきましては、各教科の中核的な概念、要すれば、どんなことを身につけるかということを中心に、それを子供たちが把握、つかみやすくするための構造化の議論が行われてございますけれども、これによりまして、単なる一こま一こまの授業の積み重ねではなくて、ある一定の単元のまとまりを重視した質の高い授業づくりが一層できるように検討しているところでございます。
こうした質の高い授業づくりのためには、学習指導要領や解説に加えまして、教科書の内容や分量の精選、あるいは高校入試の在り方、教師用指導書の改善なども含めまして、多角的な議論が必要かというふうに考えてございます。
教師や子供の余白の創出の観点を含めまして、全体として教育の質の向上につながり、教師や子供が質の高い授業というものに向き合うことができるように議論を進めていきたいと考えているところでございます。
○青山委員 質問時間が終わりましたので、最後、大臣、一言で結構です。学習指導要領改訂についてどのような方針で臨んでいくのか、最後に大臣のお考えをお願いいたします。
○あべ国務大臣 委員にお答えいたします。
やはり地域間格差、この拡大をしっかり防ぎつつ、各自治体また学校の創意工夫をしっかり引き出していくことを両立できるような、そういうことをしっかりと丁寧に議論して、検討してまいりたいというふうに思います。
○青山委員 ありがとうございました。大臣、これからも頑張ってください。
以上です。
○中村委員長 次に、亀井亜紀子君。
○亀井委員 おはようございます。
今日は、学習指導要領と、あと最後、主権者教育について質問をいたします。
まず初めに、学習指導要領についてですが、先週の参考人質疑で立派な参考人の先生が四人来られて、皆さんの質問も含めて、大変勉強になりました。
その上で、幾つか質問させていただきたいんですが、まず、学習指導要領の位置づけについてです。
我が党の荒井委員が、学習指導要領を英訳するとナショナル・カリキュラム・スタンダーズになる、つまり、指導という言葉は入っていない、なので、学習指導要領が余りにも厳格に現場で捉えられ過ぎていることが問題ではないかという指摘がありました。
また、大石委員も、学習指導要領の起こりについて指摘をされて、一九四七年の学習指導要領の起こりのところでは、あくまでも手引として示されているので、そんなに厳格なものではないと。
そこで、大臣に確認をいたしますけれども、学習指導要領というのは、そもそもの起こりから考えても、手引であって、厳格でなければならないというものではないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○あべ国務大臣 亀井委員にお答えさせていただきます。
学習指導要領でございますが、学校の教育法等の法令の規定に基づいた、全国的に一定の教育水準を確保するとともに、実質的な教育の機会均等を保障するため、文部科学大臣が定める教育課程の大綱的な基準でございます。
各学校におきましては、大綱的な基準といたしましての学校指導要領の規定に基づいた上で、児童生徒の心身の発達の段階や特性、また学校や地域の実態、これを十分考慮していきながら、創意工夫を凝らした教育課程を編成いただきたいというふうに私ども考えているところでございまして、現に、全国各地におきましては様々な柔軟な教育課程が編成されておりまして、文部科学省としては、そうした取組が一層展開しやすくなる方向で次期学習指導要領を検討させていただいているところでございます。
○亀井委員 大綱的な基準であって、裁量の余地があるということですよね。
では次に、今度、二〇〇三年の文科通知のことなんですけれども、現在、時数がどんどん積み増しになっている、それを助長する要因となっているのは二〇〇三年の文科通知ではないか、そこに「標準を上回る適切な指導時間を確保」という文言があって、それが標準の解釈を実質的に変更してきた、つまり、下回ってはいけないというふうに現場で捉えられていることがそもそも標準時数が膨らんでいる原因であると参考人による指摘がありましたので、お伺いいたします。
この二〇〇三年の文科通知について、文科省は正しくもう一度通知する必要があるのではないでしょうか。大臣にお伺いいたします。
○あべ国務大臣 委員にお答えいたします。
御指摘の通知及び現行の学習指導要領の解説におきましては、計画段階から標準授業時数を下回ることがないよう求めるとともに、指導内容の確実な定着を図るため必要がある場合には、標準を上回る適切な指導時間を確保する配慮というふうに要請しているところでございます。
これらは、児童生徒の学力低下に関わる懸念が社会全体に広がる中にありまして、標準時数を大きく下回る事例も指摘されていました当時、当時でございますが、その状況を踏まえまして、標準時数の運用の在り方に対する指導助言の一環として示させていただいたものでございます。
一方、標準時数を大幅に上回る学校が相当数あるという実態の改善も今課題となっている中、過度な負担を解消する観点から、指導体制に見合った計画に改善を促すとともに、また、不測の事態で標準を下回っても、そのことのみをもってして法令に違反するものではない旨を通知等によりまして周知しているところでございまして、引き続き、必要な時間は確保しつつ、指導体制に見合った適切な教育課程となるようにしっかり取組を進めてまいりたいと思います。
○亀井委員 この問題についても事前に文科省の担当の方とお話もしましたが、文科省として問題にしているのは、下回っているところはそんなにないので、大幅に上回っているところをどうするかということがかなり問題であるということですので、そうであるならば、下回っても構わないわけですけれども、それよりも、大幅に上回ってはいけないというぐらいの通知を出した方がよいのかなという気もいたしますし、標準時数の捉え方についても通知を出し直した方が私はいいと思います。学習指導要領の中身云々以前に、やはり現場で文科省の通知が厳格に捉えられ過ぎているということが大きな要因であるというふうに感じております。
次に、教科書のページ数についてなんですけれども、これはやはりページ数を削減する必要はあると思うんですが、文科省としても、内容は削減したくない、どこを削るかというのも難しい、だけれども分量が多いのは分かっているということであるならば、今の教科書というのはQRコードがついていると聞いております。そうであるなら、やはり紙で書かれている記述の部分はシンプルにして、その先はQRコードの中に入れてしまうというふうにして、教科書、今、重くなっているというのも問題になっていますから、ページ制限ぐらい設けてもいいんじゃないでしょうか。
その中で教科書の各会社が工夫をして、記述の骨の部分とQRコードに含める部分とを作ればいいんじゃないかな、あるいは別冊でも構わないと思いますけれども、そういう内容の仕分をすることによって教科書を薄くするというのはいかがでしょうか。政府参考人にお伺いいたします。
○望月政府参考人 教科書につきましては、学習指導要領を踏まえまして、民間の教科書発行者の創意工夫の下で作成されるものでございますので、本来的に、分量を含めまして、どのような形で学習指導要領に基づいて記載するかということについては発行者に委ねられているわけでございます。
一方で、先ほどから議論になってございます、子供たち、あるいは教員に余白を生み出していくという観点から、近年非常に教科書の分量が多くなっているということにつきましては、いろいろな形でお声を聞くところでございます。今回の指導要領の検討の中におきましても、教科書の内容や分量の精選につきましても併せて一体的に検討、議論を進められているところでございまして、このような議論を踏まえながら検討をしっかり行っていきたいと思ってございます。
また、QRコード、二次元コードについても御質問ございました。現行制度上は、学習上の参考に供するために真に必要である場合には、教科書に二次元コード等を掲載することができることになってございますけれども、これも発行者がそれぞれの主体性に基づいて、数も含めて、つけてきているという状況でございます。この場合、その二次元コードからアクセスするウェブページは教材となっておりまして、教科書の内容は紙に記述される必要がございます。
一方、デジタル媒体による教科書の在り方についても、これも引き続き中教審のワーキンググループで検討してございますので、全体の教育課程の検討、そしてデジタル教科書の在り方の検討、こういう中におきましても、引き続き、御指摘のような観点も含めまして、我々としては総合的に検討したいと考えてございます。
○亀井委員 現場のお話を伺っていますと、どうも教科書が参考書化しているんじゃないか、そんな感じがしますので、やはり、内容を整理する。そして、もしタブレットを自宅に持ち帰ったりしているのであれば、教科書が分厚くてタブレットも持って帰ると大変な重さになると思いますので、やはり、参考書化している部分をもっとスリムにする、別冊にするか、QRコードという便利なものがあるので、そうした方が合理的だと私は考えますので、話し合っていただくと大変うれしく思います。
次、今度、教科書の位置づけなんですけれども、教科書の内容というのは網羅的に教えなければいけないものなのでしょうか。恐らく、これはそうではないということをおっしゃると思います。前に大臣、そのような御答弁がありましたので、必ずしも網羅的に教えなくてもいいのだと思いますが、ただ、なぜ教師が教科書を全部カバーしよう、網羅的に教えようとするかといえば、それは、書かれている部分は入試に出る可能性がある、そういうふうに想定されるので、教えなかったじゃないかと言われるのがやはり嫌で、とにかく網羅的にカバーするということなんだそうです。
そこでお伺いいたしますけれども、教科書に書かれていることは、やはり基本的に全部入試に含まれると考えるべきでしょうか。
○あべ国務大臣 委員にお答えいたします。
結論から申し上げますと、教科書を網羅的に指導する必要はあるものではないというふうに考えておりますが、学校で教えなければならない内容に関しましては、この教育課程の基準でございます学校指導要領に定めているところでございまして、その上で、教科書には、児童生徒の興味、関心に応じて参照される情報、また発展的な学習内容も含まれているところでございまして、教科書を網羅的に指導する必要があるものではないというふうに考えております。
他方、次期学習指導要領に向けた中教審の検討におきましては、委員がおっしゃるように、入試を背景にした保護者の懸念、また要望等も背景となりまして、教科書の内容を網羅的に指導する必要があるとの認識を強めているという御指摘も受けているところでございます。
また、現在、中教審におきましては、学習指導要領、解説に加えまして、教科書の内容、分量の精選、また、さらには高校入試の改善なども含めた形で、過度な負担、また負担感が生じにくい在り方について議論されているところでございまして、そうした議論を踏まえさせていただきながら、教科書、また入試の在り方につきましても、引き続きしっかりと検討してまいりたいと思います。
○亀井委員 先ほどの青山委員の質問でも、入試と一体的な改革が必要ではないかという指摘がありました。先ほど私が提案しましたように、教科書もシンプルにして、記述された部分は今よりも少なくして、そこは網羅的に教えて、入試にも含まれますよというような、そういうシンプルな基準というのが、私は、やはり現場は助かるのではないかなというふうに感じております。
次は、分かりやすい時間割りについてなんですけれども、先週、やはり参考人の方から、教科、領域の時数を三十五の倍数にすると、年時数で示される標準時数は、三十五で割ることで週時間が求められ、分かりやすい時間割りになるとの指摘がありました。私が育った時代というのはこういう時代だったんだなというふうに私も認識しましたし、今の子供たちの時間割りが、とても複雑な、覚えにくいものになっているということを初めて知りました。
この分かりやすさって、すごく私は大事だと思います。例えば、国語、算数、理科、社会というのが主要教科だとして、ある日の時間割りが国語、算数、音楽、体育だったら、私の捉え方としては、ああ、午後は楽だな、午前中ちょっと頑張れば、給食の後は頭は使わないで済むわ、そういう、机に座っての勉強ではないので、午前だけ頑張ればいいやというふうに捉えるわけです。そういうやはり捉え方、それがまた、毎週同じ時間割りであれば、一週間の中で、何曜日はちょっと大変で、何曜日は午後楽でというルーティンができるわけで、そのルーティンってやはり大事だと思うんですよね。なので、時間割りをやはり分かりやすくしていくというのは、私は大事だと思いました。
私たちも、文科の定例日は水、金だとか、火、木は本会議が定例であるとか、その時間割りに従って動いているわけですから、小学生、毎日学校に行っている子供たちが、その時間割りが分かりにくいものだと負担になると思いますので、やはり、昔のその合理的な三十五で割り切れるシステムになるべく戻していくということは大事ではないかなと思うんですけれども、これについては政府参考人にお伺いいたします。
○望月政府参考人 お答えいたします。
先般の参考人質疑におきまして、亀井委員おっしゃるとおり、一委員から、教科等の教育活動は、最低年間三十五週以上にわたって行うこととされているので、三十五の倍数で各教科等の時数を設定することによって、時間割りが一本となり、分かりやすくなる、そうした御指摘があったことと存じております。
一方、実態としましては、全国の平均年間授業週数は四十週程度でございまして、その中で各教科のほか学校行事などの時数も設定しているので、仮に各教科の時数を三十五の倍数で設定しましても、必ずしも年間を通じて単一の時間割りが実現できるわけではないところでございます。
また、一人一人の子供たちの個別最適な学びというのを実現していく上においては、自らが主体的に学んでいく、そういった主体性のある学びというのを実現していくためには、必ずしも、同じ時間割りを同じようにという形でやっていくのが、本当に子供たちにとって、画一的で、それがいいのかということもあるかもしれません。
中教審では、年間最低三十五週以上で教育課程を編成するという規定自体、四十週程度という実態と乖離があることに加えまして、標準授業時数を三十五で割って、週当たり二十九こま実施すべきとの認識を招く一因ともなっているんじゃないかと。だから、この規定自体を見直すべきとの指摘も出ているわけでございます。
年間を通じて変化する子供たちの実態、あるいは地域の状況、教育課程の実施状況に応じて、学校はいろいろな創意工夫をしてございます。年度途中に柔軟に時程を調整することも、これは必要になる場合もございます。子供たちが、卒業後に想定される柔軟なスケジュールに適応できるというふうにするという、そうした観点からも、年間を通じまして単一の時間割りで教育課程を実施することが必ずしも望ましいわけではないというふうに考えているところでございます。
○亀井委員 三十五の倍数にすべきかというのは、私も専門家じゃないので、議論をしていただければいいと思いますけれども、要点はシンプルであることなんですよね。やはり、子供の予定が立てやすい、心の準備がしやすいということは大事だと思いまして。研究開発学校の取組というのも文科省の方から伺いましたけれども、それはそれで、各学校、有効な時間を生み出しているのかもしれませんが、ただ、子供から見たときに、その時間割りも分かりにくいですよね、十分切り出して、ここにくっつけてというようなものは。分かりにくいので、そこまでしなくても、なるべくシンプルな時間割りができないものかなというふうに感じておりますので、是非、中教審で分かりやすい時間割りに向けて議論をしていただきたく、これはお願いを申し上げます。
では、最後に主権者教育について質問というか、ちょっと御紹介をします。
今日、配付資料、二つ、上下ありますけれども、最初の方は子供投票なんですね。島根大学の行政学ゼミというのがありまして、このゼミ生がまず周りの人に子供連れで投票に行くように呼びかけました。なぜかといいますと、よく、投票に行くとき、子供はうるさいから家に置いていくという方、あると思うんですけれども、子供の手を引いて投票に行ったときに、その子の記憶の中に親が投票していたなというのが残るので、だから是非小さい子供を連れて投票所に行ってくださいということを呼びかけています。
その上で、松江市内の二つの小学校で子供投票というのを行いました。つまり、親に連れられて、ただ来るだけじゃつまらないから、本物の投票箱を選管から借りてきて、それを置いて、そして、今回立候補している人はこの人とこの人ですよ、子供用に大学生が政策を分かりやすく何とか何とかするよみたいに書いて、それで誰に投票しますかという子供投票を実施しました。その投票用紙にはメッセージを書いていいんですね。それで、その子たちが書いたメッセージ、投票箱に入れたメッセージというのを私はここに今日持ってきております。この新聞記事にあるとおり、受け取ったメッセージです。
こういう取組はすごく私は大事だなと思っていまして、全国にもう少し広がればいいと評価しております。
そしてもう一つ、島根県隠岐の島の海士町の取組、これはもっと歴史があるんですけれども、子供議会をしております。年に一度、議会に子供たちがやってきて、町長さんに直接質問をいたします。これは平成十六年度から始まり、今年で二十二回目を迎えます。海士小学校、福井小学校、両校の六年生が、総合的な学習の時間で、地域のよさや課題について述べて質問をする。これまで三百五十七の提案が発表されて、町で実行又は実行中のものが百八十六個あって、全体の五二%が何らかの形で町に反映されています。
その事例として今日は写真をつけてあるんですけれども、あるときは、アカデガニというのがあって、そのアカデガニが産卵で道路を渡る、それが車にひかれてしまうので、どうにかしてほしいという議会での要望で、それに対して、じゃ、看板を設置して信号をつけましょうという対応になりました。その子供たちが書いた看板の写真がこれでございます。
こうやって議会で提案したことがやはり形になっていくというのが、子供の体験としても非常に大事だと思っていまして、こういう主権者教育は是非広げていただきたいと思います。
その上で、何とか教育を追加しろというのが学習指導要領が膨らんできた要因であるという指摘もあったので、先週の参考人質疑なども聞いて取り入れたらよいかと思ったのが、ダブルカウントですね。選択制というのもありましたけれども、例えばダブルカウント、この主権者教育であったら、社会の授業にダブルカウントしますよとか、あるいは探求的な学習の時間にそれをカウントしますよというふうに、新しくこうやって何とか教育というのを仕分をして、ここで入れてもダブルカウントできますよというふうにして整理をしたらいかがかと思いますけれども、これを政府参考人に伺います。
○望月政府参考人 亀井委員の方から、島根大学の子供投票、あるいは海士町の子供議会の取組を御紹介いただきました。
主権者教育は、現行の学習指導要領でもかなり重視をしている分野でございまして、社会あるいは身の回りの生活のことを自ら考えていくきっかけにもなる、あるいは、主体的に社会参画をする力を育むという観点からも大事であると思ってございまして、現在検討しております学習指導要領の、中教審においても、そうした様々な事例も含めまして、今後の主権者教育についても検討を進めているところでございます。
その上で、標準授業時数につきましては、学習指導要領に基づく各教科等の内容を指導するために必要な時間として定めてございまして、教育の質を量的に支えるものとして重要でございます。教科として主権者教育あるいは主権科みたいなのがあるわけではございません。特別活動や社会科あるいは道徳、あるいは総合的な学習の時間の中で、それぞれの地域の状況も踏まえまして、各学校でその授業づくりを創意工夫する中で、身近なものとしての主権者教育というのを実現しているというわけでございます。
授業時数を二重に計上することにつきましては、それぞれの教科等の内容を扱うのに実質的に必要な時間を量的に確保するという観点から、質の高い指導が困難になるおそれもあることから、慎重に検討すべきものと考えてございます。
様々な現代的諸課題に対応するための指導に当たりましては、複数の教科を関連づけて学ぶということは、これは一方で大事でございますので、子供たちが教科横断的に学ぶということも含めまして、質の高い教育につながるように取組や検討を進めてまいります。
○亀井委員 参考人質疑でかなり建設的な提案もありましたので、是非、皆様で審議を深めていただければと思います。
質問を終わります。ありがとうございました。
○中村委員長 次に、うるま譲司君。
○うるま委員 日本維新の会のうるまと申します。
今まさに開催中の大阪・関西万博についてお伺いしたいと思います。
大阪・関西万博は、未来社会の実験場であり、人類の課題に対する解決策を示す教育的な場とされております。この理念に対して、文科省として、どのような基本的姿勢、役割意識を持って取り組んでいるか。これは、各省庁の取組、万博における取組として万博アクションプランにもまとめられているところでもございますが、改めて、基本姿勢、お伺いさせていただきます。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマの下、展示を見るだけでなく、世界の人々がアイデアを交換し、未来社会を共創するとともに、人類共通の課題解決に向け、先端技術など世界の英知を集め、新たなアイデアを創造、発信する場になることを目指しているというふうに承知をしております。
文部科学省としましては、大阪・関西万博において、科学技術分野の最先端技術や成果、我が国の文化芸術の魅力、先端技術の活用など、スポーツの新たな可能性等、様々な展示の充実を通じて、世界とともに、我が国がこれからの時代に求められる社会像を提示していく一翼を担いたいというふうに考えております。
引き続き、関係省庁とも連携協力しながら、万博の成功に向け、様々な取組を進めてまいります。
○うるま委員 今、万博は、パビリオン、すごい盛り上がっておりますけれども、やはり、こういう人類の課題解決に取り組む場でもあるということでありますので、先ほどおっしゃっていただいたスポーツだったり科学技術だったり、そういったことの展示を通じて、しっかり皆さんが人類の課題解決に理解を深められるような取組をよろしくお願いしたいと思います。
その上で、万博が四月から開催されて約二か月がたっておりますけれども、これまでの手応え、実際、いろいろと展示だとかそういったものを通じてどういった手応えを感じておられるか、お伺いいたします。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
文部科学省の取組といたしましては、大阪・関西万博の会期中を通じまして、自律型誘導ロボットでありますAIスーツケースの実証ですとか、あるいはフュージョンエネルギーや宇宙に関する展示を行っておりますほか、これまでの開催期間中に、自律学習ロボットとの対話体験展示や、日本博に関する取組、日本の食文化の発信に関する催事などを開催してきております。
それぞれの催事等に多数の来場者にお越しいただいているというふうに聞いているところでございます。
○うるま委員 多数来場者、来ているということなんですけれども、どんな様子なのか、もうちょっと詳しくお答えいただけますか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
様々な展示におきましては、単にそれを見るというだけではなくて、いろんな体験型の展示なども通じて行っておりますので、そうした取組を通じて、それぞれに参加をいただいた方々が、実体験を通じてこれからの社会の在り方を見たり考えたりするきっかけになっているというふうに承知をしております。
○うるま委員 実際の、二か月開催して、どういうふうな反応があったとか、そういう生々しい声を実はお伺いしたかったんですけれども、審議官はそういったところは御存じないでしょうか。もし、あれでしたら。実際、あと、現場にも行かれたりはしましたでしょうか。お伺いします。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
私は、個人といたしましては、テストランのときに一回、それから、もう一度、ナショナルデーの関係で、二回、大阪・関西万博を訪問させていただきまして、幾つかのパビリオンも見させていただいております。
そういう中で、やはりこれからの社会のありよう、あるいは日本の文化のこれまでの状況などが様々な形で見たり体験できたりする、これが、日本の子供たちも含め、また海外の方々も含めて貴重な体験になっておりまして、それがこれからの社会を考えていく大きなきっかけになっているというふうに私自身も感じたところでございます。
○うるま委員 是非、これからまだあと四か月ぐらいありますので、現地の子供たちだったり、外国の方だったり、もちろん日本人の方が、どんなふうに文科省がやっている取組に感じたり、考えたりとか楽しんだりしているのか、よく確認して、それを生かしていただきたいと思います。
今後も、また、あと四か月ぐらいあるんですけれども、どんな取組をされるのかということと、あわせて、大切なのは、万博後に、この万博で行ったことをしっかりと日本の成長だったり世界の課題解決に生かしていくということが大切かと思うんですけれども、その展望についてお伺いさせていただきます。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
今後の会期中の展開につきましては、先ほど申し上げた、会期中を通じて開催される実証や展示に加えまして、日本の建築文化に関する展示ですとか、あるいはスポーツの多様な価値や新たな可能性を国内外に発信する催事、あるいは産学官連携施策の成果や活動を国内外に広く発信する催事などを開催していく予定でございます。
万博後の今後の展望につきましては、今回の万博における取組を一過性のものとすることなく、この万博を通して得られた様々な知見や成果を今後の文部科学省における施策の推進に生かしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○うるま委員 万博後、どうやって生かすかということに関しましては、やはりその会場で皆さんがどう感じて、どんなことを言われていたかとか、そういったことを把握しておくことがすごい重要かと思いますので、そういったところをしっかり把握していただいて、審議官自身も感じていただいて、今後生かしていただきたいな、万博後に生かしていただきたいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
これから四か月あるんですけれども、大臣は、恐らく開会式だとかは行かれたと思うんですけれども、まだ期間が始まってからそんなに会場には行っていないのかなというふうに思っておるんですけれども、是非、大臣も会場に行って万博を盛り上げてアピールしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○あべ国務大臣 委員にお答えさせていただきます。
先ほど政府参考人からも申し上げましたが、文科省といたしましては、大阪・関西万博におきまして、会期中様々な取組を実施しております。
私といたしましても、開会式に出席をし、その後のいわゆる閣議後記者会見で万博の意義、また文科省としての取組の方向性は発信させていただいているところでございます。
更なる現地訪問に向けましては、機会がございましたらまた前向きに検討をさせていただきたいと思います。
○うるま委員 物すごく物すごく前向きに検討していただきたいと思います。そして、文科省の取組をしっかりアピールをしていただいて、それを万博後にも生かしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
続きまして、先週、六月十三日にございました参考人質疑についてお伺いしたいと思います。
参考人質疑では、堀田参考人から、国がつくったGIGA端末更新の支援のための基金が都道府県を通じて市町村に流れて、今市町村におけるGIGA端末の更新、これが進んでいるといったようなお話もございましたが、一方で、地元のそういう、自治体もそうなんですけれども、通信費だとか教育用端末、あと、教室にある大きなパネルですね、掲示装置だったり、ICT支援員の配置、さらには、そういうデジタルコンテンツの著作権保障など、教育ICTに必要な要素は多岐にわたります。
こういった教育ICT全体を持続可能に支えるための国の制度的、財政的対応が重要かと思いますけれども、こういったことを文科省は今後どのように進めていくのか、お伺いさせていただきます。
○日向政府参考人 お答えいたします。
現在、GIGAスクール構想により整備された一人一台端末の活用が本格化しており、子供たちの学びの充実のためには学校のICT環境の整備は重要です。
御指摘いただいたとおり、一人一台端末の更新に当たっては、都道府県に基金を造成し、計画的に端末更新を進めることとしております。
また、学校の通信費、教員用端末や大型提示装置の整備、ICT支援員の配置等については、令和七年度から令和九年度までの学校のICT環境整備三か年計画を策定しており、この計画に基づき、必要な経費等について所要の地方財政措置が講じられております。さらに、授業目的公衆送信補償金制度の利用に当たり、自治体など学校設置者が負担する補償金経費については、地方財政措置などの財政支援が講じられているところです。
こうした取組を通じて、学校のICT環境の充実のための支援を行ってまいります。
○うるま委員 これは、堀田参考人が学校におけるICT整備については地域間でかなり格差があるということも参考人質疑の中でおっしゃっておりましたので、そういったICT環境整備における全体をしっかり国でサポートできるように、地域間格差がないようにお願いしたいと思っております。
続きまして、同じく堀田参考人が重要なお話をされておりました。我が党の高橋委員が質疑の際に、我が国の目指す社会像についてどう考えるかといったようなことの質疑において、堀田参考人は、人口減少社会において、教育とテクノロジーの共存は不可欠というかなり重い言葉をおっしゃっておられました。
これを基に、文科省の御認識をお伺いしたいと思います。これは、ICT活用の話にとどまらず、教育全体に言える話だと思うんですけれども、是非御認識をお願いいたします。
○日向政府参考人 お答えいたします。
これからの変化の激しい社会を生きていく子供たちのために、デジタル技術を活用していくことは重要です。文部科学省においては、一人一台端末や高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するGIGAスクール構想を推進していますが、これにより、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実や、不登校や特別な支援を要する児童生徒の学びの保障といった成果が出てきております。
今後も、デジタルかリアルか、デジタルか紙かといった二項対立に陥らず、デジタルの力でリアルな学びを支えるとの基本的な考え方に立ち、発達の段階や学習場面等により、それぞれのよさを組み合わせていくことが重要であると考えております。
○うるま委員 デジタルとの共存は不可欠だということで、学校でもGIGAスクール構想だとか、いろいろ変革といいますか、そういったものを進めているところなんですけれども、一方で、現場の先生は忙し過ぎていろいろなことができないといったようなお話も参考人質疑でございました。
特に、澤田参考人の意見陳述の中でありました御意見として、教育課程に関する裁量は一応現場に与えられてはいるが、教員が多忙過ぎて、実際にはそういった裁量を全然使える状態にはないという御指摘がございました。
文科省はこの、裁量があっても使えない、教員が多忙過ぎて全然使えないという現状をどう受け止めておられるか、お伺いいたします。
○望月政府参考人 うるま委員御指摘のとおり、参考人質疑におきまして、澤田委員の方から、中央教育審議会で議論されている、裁量的な時間を始めとして、学校現場の裁量を高めていく、そうした柔軟な教育課程の提案というのは有意義とはしつつ、裁量の余地が多忙な学校現場では十分に活用されにくいんじゃないか、あるいは、されるためには学校現場のサポート体制も同時に議論すべきではないかとの御提案をいただいたと認識してございます。
どの地域でもこうした教育課程の柔軟性を使うことができるように、また適切な運用ができるようにする観点から、給特法の議論もございましたけれども、教員、教師を取り巻く、あるいは学校を取り巻く環境整備を進めるという観点は大事であると考えてございます。
また、柔軟な教育課程編成に関わる国としての伴走支援、あるいは指導主事が配置されていないような基礎自治体に対する都道府県の支援、それが学校現場でのいろいろなサポート体制につながるといった、そういった自治体の状況もよく勘案しながら取組を進めていく必要があるかなというふうに考えているところでございます。
先ほどからも議論がございましたけれども、現在の中教審におきましては、学習指導要領や解説に加えまして、教科書の観点、あるいは高校入試の観点、教師用指導書の改善も含めた多角的な議論が行われているところでございまして、柔軟な教育課程の仕組みを学校ができる限り活用できるように、教育の質の向上につなぐことができるように検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○うるま委員 澤田参考人がまさにおっしゃって、先ほど答弁にもございましたけれども、現場に選択の余地だけあっても意味がなくて、裁量を本当に使えるようにするための支援の仕組み、これをセットで制度設計をすべきだと思いますので、是非その点もよろしくお願いしたいと思います。
同じく澤田参考人から、制度設計が研究指定校を前提にし過ぎており、一般校との、現場とのギャップがあるということを指摘されておりました。その上で、審議会で指定校以外の現場教員の声も聞く仕組みを設けるべきだという御提案をしておりましたが、この提案を文科省はどう受け止めておられるでしょうか。
○望月政府参考人 今回の中教審の教育課程企画特別部会におきましても、多様な学校現場の実践について、あるいは実態について知見を有する委員に多く参画いただいていますけれども、研究開発学校のようなかなり体制が進んでいるところだけではなくて、そうではないところの学校の実践。具体的には、私どもの方も、余り新聞等には紹介されていないような学校も含めて、現在は、事例ばかり発表していただいているわけじゃないんですけれども、六校の学校の方からいろんな事例を発表してもらいまして、質疑応答にも御丁寧に御対応いただいているというところでございます。
中教審では、一部の優れた実践を行っている学校のみではなく、全ての学校が、それぞれの地域あるいはそれぞれの学校の状況、体制の状況なども含めての議論を行ってございますけれども、適切なタイミングでは、いろいろな関係の団体、教職員の関係の団体も含めまして、いろんな現場の声を踏まえた審議を進めたいと考えているところでございます。
○うるま委員 是非、様々なところから声を聞いていただくように、研究指定校だけではなく、そういったところ、よろしくお願いしたいと思います。
あとは文科省の二〇〇三年通知の見直しについてお伺いしたいんですけれども、これも大森参考人や澤田参考人が、二〇〇三年の文科省通知によって標準時間を上回ることが望ましいという解釈がなされ、現場に実質的な上限がなくなっているような状態であるという指摘がございました。標準とは、本来、上回っても下回ってもよいというものではあると思っておりますので、通知を見直す考えはあるのかお伺いしたいと思います。
○望月政府参考人 御指摘の二〇〇三年の文部科学省通知でございますけれども、これは計画段階から標準授業時数を下回ることがないよう教育の質の確保の観点から求めるとともに、指導内容の確実な定着を図るために必要がある場合には標準を上回る適切な指導時間を確保する、そうした配慮を要請しているところでございます。
児童生徒の学力低下に関わる懸念が、当時、大臣からもさっき御答弁させていただきましたけれども、社会全体に広がる中におきまして、標準時数を大きく下回る事例も指摘されていた、そうしたことも踏まえまして、標準時数の運用の在り方につきまして指導助言の一環として発出をしたものでございますが、現行の学習指導要領の解説でも同趣旨が記載されてございます。
一方で、現在では、過度な負担を解消するという観点から、標準を大きく上回る学校が相当数あるという実態も課題となる中で、指導体制に見合った計画に改善を促すとともに、不測の事態で標準を下回っても、そのことのみをもって法令に違反するものではないと周知をしてきたところでございます。
今後、学習指導要領の検討が進み、そして、各学校がそれぞれの主体性を発揮しながら、子供たちの指導に対する必要な時間を確保しながら、指導体制に見合った適切な教育課程になるよう引き続き取組を進めてまいりますが、こうした通知に関するところについては、我々としても、これまでの経緯も踏まえまして、しっかり検討をしてまいりたいと考えているところでございます。
○うるま委員 検討してまいるということでありますが、あと、下回っても法令違反ではないということもおっしゃっておられるということでありますので、それであっても、やはり明確にリセットすることも必要なのかなとは思っております。
続きまして、小中学校における一日当たりの授業時間の上限設定なんですけれども、大森参考人の意見の中に、教育課程の肥大化を抑制するために、小学校では一日五時間まで、中学校でも六時間は週二回までに制限すべきという御提案がございました。この上限設定について、文科省の御見解をお伺いいたします。
○望月政府参考人 先般の参考人質疑で大森参考人の方からそうした御提案があったということを承知してございます。
参考人の御提案のように、一日当たりの授業時数に一律の上限を設けるということになりますと、地域や学校の創意工夫の余地を狭めるというだけではなく、望ましい資質、能力の向上、育成に必要な学習時間が確保できない、あるいは学校外での学習機会に恵まれた子供とそうでない子供の間に大きな教育格差が広がるおそれもあるなどの観点も含めて、慎重に検討すべきじゃないかと考えてございます。
一単位時間、小学校では四十五分、中学校では五十分という、そうしたもの、一単位時間の扱いなども、各学校の工夫により、今、研究開発校の仕組みですけれども、これを、時間を生み出すために四十分あるいは四十五分にしている、そういう取組も進んでいますけれども、そうした全体の教育課程の編成に当たりましては、学校の創意工夫というものを、地域の状況も踏まえて、学校の状況も踏まえて、尊重しなきゃいけない部分もあるかと思っています。
上限設定ということが、一律に行うということが必ずしも子供のために、あるいは学校のためによいかどうかというのは、慎重に検討すべきだと考えてございます。
一方で、過度な負担を軽減する観点からは、各学校の授業時数の見直しや週当たりのこま数の平準化の促進、あるいは一定の要件の下で各教科の標準授業時数を裁量的な時間に充てられるようにするといったことも議論を行ってございますので、全体として教育の質の向上につながるように、引き続き丁寧な議論を進めてまいります。
○うるま委員 大森参考人が参考人質疑の際に、子供たちにすごく過度な負担がある、教員ももちろんですけれども、何かそういった事例も大森参考人が参考人の意見陳述のときにおっしゃっておられましたので、そういった過度な負担を解消する方法というのは様々あると思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
最後に、これはこれまでもそうなんですけれども、亀井委員も先ほど御質問されていたところなんですけれども、標準時間数がそのままでも総授業時間を減らせる方法として、澤田参考人より、ダブルカウントの提案がございました。一時間の活動の中に道徳の目的も特別活動の目的も十分成立しているなら、その一時間を両方にカウントする、これを現場裁量でできるようにするというものでありますが、この提案について御見解をお伺いいたします。
○望月政府参考人 標準授業時数につきましては、学習指導要領に基づく各教科等の内容を指導するために必要な時間として定めているものでございまして、教育の質を量的に支えるものとして重要であると考えてございます。
その上で、実際の指導に当たりましては、複数の教科の内容を関連づけた活動を行う、あるいは合科指導を行うといったようなことによって、子供たちの学びが豊かになる、あるいは教科横断的に学ぶことが有効な資質、能力を育成する手段になるということもあると考えてございます。
一方で、こうした活用に当たりまして、参考人が御提案のように授業時数を二重に計上することで、本来学ぶべき学習時間が半分になるという場合には、それぞれの教科等での関連の中で行っていることも併せてどのように行うかということも考えなきゃいけないということ、あるいは、それぞれの教科等の内容を扱うのに実質的に必要な時間を量的に確保できないということなど、質の高い指導が困難になるおそれもあることから、慎重に検討すべきものというふうに考えているところでございます。
○うるま委員 先ほど御答弁ありましたとおり、慎重に検討ということでありますけれども、給特法の議論でもございましたが、とにかく教員の負担が物すごいある、子供たちも負担があるということですので、教員の負担に関しては、給特法の議論の中で、教員もこれからどんどん増やしていくということで議論もございましたので、そういったところもしっかりしていただきたいと思います。
私からの質問は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
○中村委員長 次に、西岡義高君。
○西岡(義)委員 国民民主党の西岡義高でございます。
昨年の初当選から多くの質問の機会をいただき、ありがとうございます。次もここの場所に戻ってこれる保証のない身分ですので、毎回、これが最後かもしれないという思いで質問させていただいております。ほかの委員会も含めて数えてみたら、今日で十八回目の質問となりました。今日もしっかりと気持ちを込めて、子供たちの将来のために質問していきたいと思います。
まず最初に、以前も取り上げさせていただきましたけれども、性教育に関する質問をさせていただきます。
現行の学習指導要領には、小学校五年生の理科、こちらには、人の受精に至る過程は取り扱わないものとする、また、中学校の保健では、妊娠の過程は取り扱わない、いわゆる歯止め規定があることによって、そもそもの性交が何なのかということを教えずに性犯罪、性暴力、性感染症、こういったことについて教育するというような、いびつな教育体系になっている状況でございます。そのために、障害を持つ子供などにも多いんですが、自分が何をされているのか正しく理解できないまま性被害に遭ってしまう、そういったような児童生徒も存在しております。
文科省でも、子供たちを性暴力の加害者、被害者、傍観者にしないための生命(いのち)の安全教育、これを推進しているかと思います。しかし、この歯止め規定があるために、学校の現場では、しっかりとした性教育に取り組めない、また、ちゅうちょしてしまうというような現状もございます。この歯止め規定をなくして、学校の現場できちんと性教育を行える環境を整えていく必要があると考えますけれども、御見解はいかがでしょうか。
○あべ国務大臣 西岡委員にお答えさせていただきます。
御指摘の学習指導要領の規定でございますが、当該事項を教えてはならないという趣旨ではございませんでして、性に関しては、児童生徒間で発達の段階の差異が大きいこと、また、保護者の理解を得ながら実施する必要があることなどを踏まえまして、個々の児童生徒の状況等に応じた個別指導により対応するという趣旨のものでございます。
全ての児童生徒に共通に指導する内容といたしましては妊娠の経過等は取り扱わないこととしているところでございますが、子供たちが性に関して正しく理解をして、また、適切な行動が取れるよう、児童生徒一人一人の状況等に応じた指導を通じまして着実な指導にしっかり努めてまいりたいと思います。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
やってはならない規定ではないということでしたけれども、やはりこれがあることで学校の先生たちは一歩踏み込めないというような声もいただいております。また、個別に指導されていくということですけれども、これは地域によってとか学校によって、先生によって、きちんと教えてもらえる子、教えてもらえない子というような差も生まれてしまいます。知識のない子が狙われて性犯罪に遭う、性被害に遭う、そういった状況を防ぐためにも、やはり一律でしっかりと学校教育の中で性教育をしていく必要性は私はあると思います。
また、先日の参考人質疑の中でも、ネットには不適切な画像もたくさんある、SNSを通して間違っているかもしれない半端な知識を得ているというような御指摘がございました。そのような状況の中で、無藤参考人からは、正しく、倫理的、道徳的にまともな知見というものを伝える方法、また在り方を是非中教審でも御論議いただきたいと願っておりますという御意見がございました。
また、先日、子供に対する暴力担当国連事務総長特別代表のナジャット・マーラ・ムジート氏から直接御意見を伺う機会がございました。ナジャット氏も、インターネットを通じて有害なハードポルノに簡単にアクセスできてしまう、そのようなのを見ることで、より暴力的な感覚にもなるというような御指摘がありました。だからこそ、年齢に応じた適切な性教育の必要性をおっしゃっておりました。さらには、そのような状況の中で子供たち自身が信じられる情報が欲しいんだと訴えているというようなお話もございました。
このように、インターネットを通じて簡単に不適切なエロ動画、エロ画像にアクセスできてしまう。さらには、エロ広告によって自分が意図しなくてもハードポルノを目にしてしまうような現実があるわけです。そういった状況の中において、私は性教育をしっかりと行う必要があると思いますけれども、このような状況に対して、性教育の必要性について見解を伺いたいと思います。
○あべ国務大臣 西岡委員にお答えいたします。
まさに学校における性に関する指導に関してでございますが、発達段階を踏まえつつでございますが、児童生徒が性に関して正しく理解をして適切な行動が取れるように取り組んでいくことがまさに必要であると私ども考えておりまして。
このため、各学校におきましては、学習指導要領に基づいた中で、児童生徒の発達段階に応じまして、具体的には、例えば異性を尊重していくこと、やはり自分を大切にすること、相手を大切にすること、さらには性情報への対処などの、性に関する適切な態度、行動の選択などの学習が行われているところでございまして。
文部科学省といたしましては、引き続き、児童生徒が性に関して正しく理解し、適切な行動を取っていくことができるよう、学習指導要領に基づく着実な指導に努めてまいりたいというふうに思います。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。その必要性というのは大臣も感じられているということかと思います。
しかし、歯止め規定、これがあることで現場が、先生方の話を聞いていても、やはり踏み込めないという状況がありますので、そういった、してはならない規定ではないということであったりの周知も当然のことながら、やはり歯止め規定は削除して、是非、中教審の審議の中でも、削除しない理由を探すのではなくて、子供のために本当に必要なのは何なのか、どういった情報が必要なのか、教育が必要なのかという観点で御論議していっていただければと思います。
では、次の質問に入りたいと思います。
先日、全国高校生未来会議の政策立案コンテストで優勝したメンバーの高校生と懇談する機会がございました。その政策立案コンテストで優勝した政策というのが、教育の中に日本学というものを取り入れるという内容の政策立案でした。
彼ら彼女らの主張は、グローバルな人間を形成するためには、まずはローカル、すなわち自国のことをよく知る必要がある、自国の文化を知り、誇りを持てるような教育を取り入れてほしいという意見がございました。特に留学を経験した子や帰国子女の方などは、外に、外国に行ったときに、自国のことについて誇りを持って語れない、また、そういう教育を受けてきていないということに気づいて、そういった思いがより強くなるようであります。愛国心であったりとか政治の話がタブー視されて、日の丸を掲げない、君が代を歌わないような学校があるというような教育に疑問を持っているというようなことでございます。彼らは、日本人を形成する上での基礎的な教養を育み、座学だけでなく実際の体験を通して多面的に学ぶ機会が欲しいということを言っておりました。
先日の大森参考人の意見の中でも、子供たちを科学の世界にいざなっていく上でも、国家とは何であるかということに関してしっかりとした認識を形成していくことが大切だとおっしゃっておりました。
私は、昨今の行き過ぎた個人主義というような状況に危惧を抱いているわけですけれども、現役の高校生がこのような考えを持って、その考えに多くの賛同がありこの政策が優勝したということが非常に重要なことじゃないかなと思っております。
今、多様性という言葉がよく言われておりますけれども、日本の歴史を振り返れば、明治維新までは神仏習合、神様、仏様は一緒に祭られていた。また、古く振り返れば、大陸文化だけではなくミクロネシアなどの海洋文化、これらの影響も受けながら、それで様々な文化、宗教を取り入れて独自の文化に昇華させてきたのが日本人であると私は思うわけですね。ですので、日本人が日本人としてグローバル社会を生き抜くためにも、いま一度、日本の伝統は何なのか、その精神性を含めてしっかりと学ぶ必要があるのではないかと私は思っています。
この愛国心であったり日本の伝統的な文化や精神性をしっかりと歴史や道徳の中でより深く学んでいく必要があると考えておりますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。
○あべ国務大臣 西岡委員にお答えさせていただきます。
まさに、私ども、自国の歴史をちゃんと学んで、自分の国をしっかり誇りと思っていることは、重要だというふうに思っています。今、いわゆる世界中が大変困難な時期にある中で、国を持っているということが言えない人たちも、また家もないという子供たちも増えている中にあって、私たちは、やはり、自国の歴史をしっかりと知っていくということはまさに重要だと思います。
そうした中で、教育基本法におけます教育の目標に規定されているとおりでございますが、子供たちが伝統と文化を尊重しながら我が国と郷土を愛する態度、それをしっかりと養っていくこと、また国際社会において日本人としての誇りを持って生きられるようにすることは、まさに委員がおっしゃるように極めて重要なことでございます。
学校教育におきましては、学習指導要領に基づきまして、例えば、社会科におきまして、地域社会に対する誇りと愛情、また我が国の歴史に対する愛情などを養うこと、また、道徳科におきましては、我が国の郷土の伝統と文化を大切にしながら国や郷土を愛する心を持つことなどの学習が行われているところでございます。
現在、中央教育審議会におきまして次期の学習指導要領の在り方を議論しているところでございますが、御指摘の社会科また道徳科を含めまして、各教科の学習内容に関しましては、今後、専門の部会を設置いたしまして、教育内容の充実と教師の負担の観点の双方を考慮しながらしっかりと検討を進めてまいりたいと思います。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
まず国がしっかりとあって、その上で命も財産も人権も守られると思います。日本人が日本人として世界で打って出られるよう、誇りを持って打って出られるよう、しっかりとした教育をお願いしたいと思います。
また、今の答弁の中にもありましたけれども、伝統工芸品であったりとか建築物などの技術の継承をして形あるものを残していくこと、これも日本人としての精神性をつないでいくためには必要だと思いますので、地域に根差した伝統技術を持つ職人さんたちと一緒に学ぶ機会とか、こういったのも積極的に設けていっていただけたらと思います。
それでは、次の質問に入らせていただきます。
カリキュラムオーバーロードと言われる現状について伺いたいと思います。
現在、状況を考えますと、週六学校へ行っていた時代と同等の授業時間数で、教科書のページ数がどんどん増えているというような状況かと思います。不登校の増加との相関関係からいっても、現状のカリキュラムは子供に対して過度な負担がかかっているという状況だということを言わざるを得ないと思っております。
私は、時数も内容もスリム化して子供への負担を減らしていくべきだと考えておりますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○あべ国務大臣 西岡委員にお答えさせていただきます。
現行の学習指導要領に基づく学習量、また授業時間についての受け止めは子供によって様々でございますが、次期の学習指導要領の検討に当たりましては、これからの時代に必要な資質さらには能力、育成することを目指していきながら、しかしながら過度な負担が生じにくい在り方を検討することがまさに重要だというふうに私どもも考えております。
これまで、中教審の検討におきましては、標準総授業時数につきまして現在以上に増加させないことを前提とさせていただきながら、一定の要件の下での各教科の標準授業時数の弾力化と、また、学習指導要領の複雑で冗長な記載のスリム化、さらには、各教科等の本質的理解に重点を置いた内容の一層の構造化と必要に応じた精選、これらの授業時間数、学習内容の在り方を踏まえまして、教科書の内容、分量の精選も行った方策の在り方について議論も行っているところでございます。
詳細は更に検討してまいりますが、教師と子供の双方に余白を生み出していきながら、全体として教育の質の向上につながるよう、引き続き、中教審において丁寧に審議を進めてまいりたいと思います。
○西岡(義)委員 ある調査では、四割の子供が授業時間が多い、負担が多いというような回答をしているというものがございます。この四割を多いと見るか少ないと見るかなんですけれども、私は、この四割の子が負担を感じているのは、やはり過度な負担がかかっている状況だと考えます。教科書の内容も、教科によって重複している部分の見直しですとか、また、先ほどからもお話に出ていますダブルカウントであったりとか、様々見直せる部分がありますので、今、毎日のように六時間授業がある小学生はやはり非常に負担が大きいと思いますので、是非負担軽減をしっかり議論していっていただきたいと思います。
学習指導要領の改訂に当たって、こういった子供たちの意見を取り入れていくことは重要なことだと思いますけれども、子供は、ただ、今ある学習指導要領、一つしか経験していないので、学習指導要領の内容については、これが適正なのかどうかというのは比較、判断ができないと思います。
その上で、やはり同時に、子供の意見も聞きつつ、しっかりと複数の学習指導要領での指導経験をして、今も現場の教壇に立っている、今の子供たちの現状を見ている、そういった現役の教職員の方々の意見も入れて、しっかり学習指導要領の改訂、議論をしていく必要があるかと思いますけれども、お考えはいかがでしょうか。
○あべ国務大臣 現在、改訂の大きな方向性につきましては、審議している教育課程と、企画特別部会におきましては、複数の学習指導要領を経験していらっしゃる現職の教育長、また校長のいわゆる参画を得ているところでございます。
また、そのほかにも、学校現場におきまして実際に指導に当たっていらっしゃる教諭の方々にも実践事例を発表していただいているところでございまして、質疑応答にも丁寧に御対応いただいているところでございます。
今後設置する各教科等の専門部会におきましても、現職の教諭を含めまして幅広い委員に御参加いただいて、多角的な議論をしっかり進めてまいりたいというふうに思っております。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。学校の先生自身も負担はすごく大きいですし、子供たちも負担がかかっている。しっかりと現場の声を今後も取り入れていただきたいと思います。
それでは、次のテーマに移らせていただきます。
生成AIに関する質問をさせていただきます。
写真をジブリ風な画像に変更するというのが一時期はやっておりました。そういった画像を作る際にAIに学習させる元の絵の著作権について話題になったり問題になったりとしておりましたけれども、現状に対して、文化庁さんの方でどのように認識されているのか、お聞かせください。
○合田政府参考人 お答え申し上げます。
AIの開発、学習段階における著作物の利用につきましては、著作権法第三十条の四におきまして、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、著作権者の許諾なく利用可能とされてございます。
ただし、この場合の著作物の利用に当たりましては、例えば創作的表現が共通したものを生成させる目的での学習や、販売されているデータベースの著作物への学習への無許諾での利用など、享受の目的が併存する場合には、著作権者の利益を不当に害する場合には同条が適用されず、原則どおり著作権者の許諾を得る必要がございます。こうしたことも含めて、私ども、これまでもるるお示しをしているところでございます。
また、AIによる生成、利用段階につきましては、AIを用いるか否かにかかわらず同様でございますけれども、著作権法は、著作物の定義として、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定して、これを保護してございます。
このため、創作的な表現に至らない作風、いわゆるアイデアを保護するものではないために、単に作風、アイデアが類似しているのみであれば著作権侵害には当たりません。
このことを前提といたしまして、個々の生成物が既存の著作物の著作権侵害に当たるか否かにつきましては、最終的には個別の具体的事例に即して司法の場で判断されることになりますが、AIにより生成されたコンテンツに既存の著作物との類似性及び依拠性が認められれば、著作権侵害となり得るというものでございます。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
現状、そういった、著作権に触れるのではないかというような判断基準であったりですとか、また、これが使われているということを、逆に、その権利者、要はクリエーターの側が自分から発見して、自分から削除要請など、問題を提起していかなければならないというような状況です。なので、権利者側がそういった、探して発見するのも、また削除要請していくというのも大変な労力となるわけです。
クリエーターの側から、自分たちの著作物に対する権利の保護の観点から、その権利者に対して、AIに学習させる場合は事前に許可を取るような方式にするべきだという意見も出ているんですけれども、それに対してのお考えはどのようにお考えでしょうか。
○合田政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御答弁申し上げました著作権法の三十条の四でございますが、IoT、ビッグデータ、人工知能等の情報通信技術の進展により生じる新たな著作物の利用ニーズにも柔軟に対応していくため、著作物を含む大量の情報の利用等の円滑化を図るべく規定されたものでございます。
立法府におきまして同条に係る法改正が行われたのは、こうした著作物の利用につきましては、契約により対応することは困難と考えられ、権利者の利益を通常害しないと評価されるものについてはその権利を制限を行うこととするというものであると認識をしてございます。
もとより、この場合の著作物の利用につきましては、先ほど御答弁申し上げたとおり、享受の目的が併存する場合等につきましては同条が適用されず、原則どおり、あらかじめ著作権者の許諾を得る必要がございます。
このような、著作権者の許諾を得る必要があるにもかかわらず著作権者の許諾なく著作物を利用した場合には、損害賠償請求や差止め請求が可能になるほか、刑事罰の対象となり得るところでございます。
こうした点も含めまして、文化審議会の小委員会で議論を行いまして、令和六年三月にまとめたAIと著作権に関する考え方におきましてこれらの考え方を明示をしてございますが、同年七月には、文化庁において、AIと著作権に関するチェックリストアンドガイドラインを作成をいたしまして、学習データの内容についてはAI利用者等への情報提供に努めること等も含めて、関係当事者に向けた分かりやすい形での周知啓発を行ってございまして、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと存じております。
○西岡(義)委員 しっかりとクリエーター側の権利を守っていくということも重要だと思いますので、この点、問題提起はさせていただきたいと思います。
次に、生成AIについては、ディープフェイクによる偽情報、誤情報の生成、拡散といった、このような問題がございます。
AIによる生成物については、そのことを表示する、要は、これは生成AIで作りましたというようなことを表示することを法的に義務づけていく必要があるかと思いますけれども、この点、見解はいかがでしょうか。
○徳増政府参考人 お答えいたします。
内閣府としては、ディープフェイクを含めた偽・誤情報についての対策を講じていくことは重要と考えております。
そうした中、先月末に成立したAI法では、第十三条において、国が国際的な規範の趣旨に即した指針を整備することとしております。
指針の詳細は検討中ではあるものの、偽・誤情報対策に関係するものとしては、例えば、AI開発者や事業者による電子透かしや来歴管理等を導入することや、AI活用者による法令遵守を徹底すること等を指針に明記することを想定しているところであります。
また、AI法に基づき立ち上げられるAI戦略本部の下、関係省庁とも連携をし、既存の法令やガイドラインの遵守徹底、AI研究開発者、活用者等による自主的取組の促進、新たな技術の開発導入など、総合的に対策を進めてまいりたく存じます。
○西岡(義)委員 今伺ったお話はあくまでもガイドラインの範疇であると私は思います。
今後、学校教育の中でも生成AIは取り入れられていくと思いますし、既に大学生は生成AIでレポートを書いているというような話もございます。
例えば自動車でいいますと、道路交通法や道路運送車両法など、法規制の中でみんなが共通のルールをしっかり認識し、遵守することで自動車というのは発展してきた。生成AIも、今後、健全な発展と適切な教育、そういったことを行うためにも、ガイドラインではなくてしっかりとした法規制、ルール作り、みんなが遵守できるルールを作っていく、こういった必要があるかと思いますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。
○あべ国務大臣 西岡委員にお答えさせていただきます。
生成AIの有する様々なリスク、また懸念を踏まえながら、教育現場におきましては、生成AIの適切な利活用を実現していくことは、まさに委員御指摘のように重要であると私ども考えております。
初等中等教育段階におきましては、学校現場における生成AIの適切な利活用に向けた参考資料となりますよう、この利活用に当たっての基本的な考え方と押さえるべきポイントをまとめましたガイドライン、昨年十二月にいわゆる策定いたしまして公表したところでございます。
また、高等教育段階におきましても、各大学等におけるこの生成AIの取扱いの参考となるように、利活用が想定される場合、場面、また留意すべき観点等を取りまとめまして、令和五年七月に各大学に周知をしたところでございまして。
文科省としては、まずは研修等の機会を通じましてガイドラインを周知しながら、また、生成AIのリスク、懸念を踏まえた、学校現場における生成AIの適切な利活用に向けた取組を進めてまいりたいと思います。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
AI新法もできたばかりで、まだまだ手探りな状況かと思います。だからこそ、あえて問題提起をさせていただきました。
時間となりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
○中村委員長 次に、浮島智子君。
○浮島委員 公明党の浮島智子でございます。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は、まず大学等の高等教育の無償化についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
令和七年度の税制改正において、いわゆる百三万円の壁の対応として、十九歳から二十二歳までの学生について新たな控除である特定親族特別控除というのが創設されました。収入が百五十万までであれば、その保護者が特定扶養控除と同額の控除が受けられることとなりました。
このことに関して、本年の三月の二十一日そして二十四日に我が党の高橋次郎、杉久武参議院議員からも指摘をし、私からも四月の二日の今委員会で指摘をさせていただきましたけれども、二〇二五年度から開始した多子世帯への無償化における子供の数のカウントは、地方税法上、扶養親族であるかによって行うものとされておりますけれども、この新しい控除を受ける方は、地方税法上、扶養でないという取扱いとなるため、現状の取扱いのままでは、多子世帯における子供の数としてカウントされず、無償化の対象にならないという課題があります。
この問題についてあべ大臣からは、「委員から御指摘をいただいた点は本当に大切なことだと私どもも考えておりまして、新しい制度実施後の利用状況やほかの制度の整合性もしっかり踏まえていきながら、今後総合的に検討してまいりたい」という御答弁をいただいたところでもありました。
そこで、大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、四月の二日のこの委員会で私から指摘させていただいたとおり、学生や保護者は、百五十万円まではアルバイトができると認識をし、期待をされております。そのような学生が多子世帯の無償化を受けられないということがないように、特定親族特別控除の対象となる学生についても扶養する子供の数に含めるべきと考えますけれども、その後の検討状況や今後の対応についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
○あべ国務大臣 浮島委員にお答えさせていただきます。
委員御指摘のとおり、学生等がアルバイトをするに当たりまして、一定の額までは親の所得控除額が変わらないように、市町村民税におきまして令和八年から新たに特定親族特別控除が創設されるところでございますが、この控除の対象となる特定親族は地方税法上の扶養ではなくて、現状の取扱いのままでは高等教育の修学支援新制度の多子世帯支援の対象とはなりません。
しかしながら、過日、委員から御指摘いただきまして、踏まえまして、文科省といたしまして、このような方についても多子世帯支援における子供の数にカウントできるように検討を進めているところでございます。
今般の税制改正が多子世帯の無償化における判定に反映されるのは令和八年度からとなるところでございますが、市町村民税は今年の一月から十二月までの収入を基に判定をするため、学生の皆様に令和七年における収入の見通しを立てていただけるよう早急に対応しながら、本年の夏に必要な制度改正を行えるよう今検討を進めているところでございます。
必要な制度改正等を実施した後には、学生等に混乱が生じないように文部科学省としてしっかりと周知を行ってまいります。
○浮島委員 ありがとうございます。
是非現場が混乱しないように必要な制度をしっかりと行うように再度要望させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
先般、本委員会でも徹底した議論を行いましたこの給特法ですけれども、成立がいたしました。政府においては、法案審議において指摘された点を踏まえて、しっかりと学校における働き方改革を進めていかなければならない。そして、法案の審議においては大臣からも、公明党が提案した学校、教師が担う業務に係る三分類について給特法に基づく指針に位置づけて、業務の見直しを加速させていくと明確に御答弁をいただいたところであります。
大臣の指針において示すに当たっては、学校以外が担うべき業務、また、教師が担う必要のない業務、また、負担軽減をしながら教師が担う業務という三分類の趣旨をより明確に学校現場に伝わるように示す必要があると思います。
この三分類に関しては、平成三十一年度以降、文科省から十四の具体的な業務が示されております。取組が進められてきたところでありますけれども、それから六年余りが経過しております。この働き方改革はよりよい教育を実現するために行うものであり、今日の学校現場において教師の方々がどのような業務に負担を感じ、どのような業務に働きがいを感じておられるのか、また、文部科学省は、学校現場の声をよく聞いて、この間の社会の現状等の変化を踏まえて、その内容をしっかりアップデートすることも大切であると思います。
そこで、この三分類を文科大臣の指針に位置づけるに当たっては、以上のような観点を検討して、しっかりと必要なことを行っていくべきだと思いますけれども、大臣の見解をお伺いさせていただきたいと思います。
○あべ国務大臣 浮島委員にお答えいたします。
御党から御提案をいただきました学校、教師が担う業務に関わる三分類に基づく業務の精選に関しましては、全体的に各教育委員会における取組が今、進捗をしてきているところではございます。
そうした中、今回の給特法改正を踏まえまして、地域住民、また首長部局などと更なる連携と協力を推進していき、取組を加速させていただくことがまさに重要だと思っております。
このため、委員御指摘のように、三分類を文部科学大臣の指針に位置づけるに当たりましては、三分類の基本的な枠組みは維持した上で、それぞれの分類の趣旨をより明確化すること、また、今日の学校や教師を取り巻く状況、教師の負担、働き方の、働きがいの観点を踏まえまして、内容のアップデートを行うことが必要であると私どもも考えているところでございます。
今後、できるだけ早く、中教審におきまして学校関係者などの有識者の意見を伺いながら、また、指針の改定と併せて、三分類のアップデートにしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○浮島委員 ありがとうございます。
この指針に位置づけるに当たって、しっかりとした、現場の声を聞きながら、アップデートしていただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。
次に、伝統的な文化芸術に関する教育について伺わせていただきます。
前回の一般質疑において、私の方から、コンテンツ振興、特にロケ誘致について質問させていただきました。このロケ誘致については、本委員会の萩生田委員も内閣官房副長官のときに熱心に取り組み、今ここまで進んできたと私は感謝をさせていただきたいと思います。
私も、現場の監督の様々な方からいろいろな問題点を伺いました。
先週十三日に閣議決定された骨太方針二〇二五においても、長期にわたる作品の制作及び海外からのロケ誘致を支援するとともに、ロケ撮影に関わる許可の手続を円滑化、迅速化すると明記することができました。引き続き政府と一体となって取り組んでいきたいと思っているところでございます。
世界中の人の心に刺さっているこのコンテンツは、日本の伝統的な文化芸術を離れて突然生み出されたわけではございません。
例えば、ボカロ楽曲の歌い手として世界で注目を集めているAdoさんは、大阪万博のオープニングのスペシャルライブで熱唱し、会場を大いに盛り上げてくれました。このAdoの名前の由来は、彼女が小学校のときに国語の授業で学んだ狂言のシテとアドから来ているとお聞きしています。アドの響きに憧れ、また狂言でシテを支える脇役のアドの意味から、Adoさん自身の歌で聞いてくれる人の人生を支える脇役になりたいという思いが込められているということです。
また、ボカロの文化そのものが、お面をかぶり、キャラクターに余白を持たせる能楽を土台としていると指摘する研究者もいらっしゃいます。
この能楽や狂言といった舞台芸術、箏や琴、太鼓、笛、笙といった和楽器があってこそ、現在のコンテンツが成り立っていると私は思っております。
そこで、文化庁にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、箏や琴、太鼓、笛、笙といった和楽器、能楽や狂言といった日本独自の舞台芸術について、現在の学校においてどのように学ばれているのか、また、それを教える専門家の確保や教員への研修についてはどのような状況か、教えてください。
○合田政府参考人 お答え申し上げます。
和楽器の指導につきましては、現行学習指導要領では、中学校音楽科におきまして、三学年間を通じて一種類以上の和楽器を用いた表現活動を必修といたしてございます。また、小学校の音楽科におきましても、表現活動や鑑賞活動において和楽器を選択して扱うことができるとなってございます。
平成二十九年の学習指導要領改訂におきまして、楽器選定の観点として従来の小学校五、六学年に加えまして三、四学年にも和楽器を規定するなど、充実を図っているところでございます。
能楽や狂言などの舞台芸術につきましては、実際、教科書によっては、例えば、小学校では歌舞伎、雅楽、能、狂言、組踊、文楽などが、中学校ではこれらについてより詳しく、能のシテとワキ、謡、伝統音楽の表現の特徴やよさ、郷土の祭りや芸能、日本と西洋の音楽種の比較などが記載されているなどの中で、指導の充実が図られているところでございます。
また、専門家の確保につきましては、文化庁におきまして事業を実施してございまして、一流の文化芸術団体や芸術家を小中学校等に派遣をいたしまして、児童生徒に質の高い文化芸術を鑑賞、体験する機会を提供してございますが、その中で、令和六年度には和楽器や能、狂言、邦楽などを子供たちに体験させる文化芸術団体が四百校を超える学校を訪問したところでございます。
教員の研修に関しましては、毎年、文化庁において東京芸術大学と連携をいたしまして、箏曲、尺八、長唄三味線などの実技コースを研修内容に含む伝統音楽指導者研修会を実施をいたしまして、令和六年度には百五十五名の参加者があったところでございます。
今後とも、各般の施策にしっかり取り組んでまいりたいと存じております。
○浮島委員 小さいときからやはり日本の伝統文化、芸術に触れることは非常に重要であると思っておりますので、どうかしっかりと進めていただけるようにお願いをさせていただきます。
また、あべ大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、アメリカで御留学の経験をお持ちである大臣も海外でお感じになられたことが多くあると思いますけれども、私も単身、香港とアメリカで約十四年暮らしてまいりまして思ったのは、私たち日本人が日本の伝統的な文化芸術を知っていることがどれだけ重要であるかということでございます。痛感いたしました。
次の学習指導要領の改訂を見据えて、伝統的な文化芸術に関する学びの充実について、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○あべ国務大臣 浮島委員にお答えいたします。
日本の伝統的な文化芸術に関する教育、まさに重要だというふうに私どもも考えておりまして、特に次期の学習指導要領におきましては、文化芸術教育の在り方について、昨年十二月、文化庁の有識者会議におきまして、文化芸術教育の充実の方向性といたしまして、伝統芸能またさらには伝統音楽などを継承いたしまして新たな価値、文化を積極的に創造していく意識づけが重要という提案をいただいたところでございます。
こうした中、学習指導要領の改訂につきまして、現在、中教審におきまして、教育課程全体を通じた総括的事項を今議論しているところでございまして、各教科等の学習内容につきましては、今後、専門的な審議組織を設置をいたしまして、教育内容の充実と教師の負担の観点の双方を考慮しながら検討を行う予定でございますが、この伝統的な文化芸術に関する教育につきましても、しっかりと検討を行うとともに、学校における文化芸術鑑賞また体験の機会の推進を通じまして、この学びの充実、しっかりと努めてまいりたいというふうに思います。
○浮島委員 ありがとうございます。
しっかり進めていただけるということで少し安心はいたしましたけれども、なぜこれをずっと私が訴えさせていただいているかといいますと、二〇〇八年、私が文科政務官をさせていただいたときに、フランスのサルコジ大統領が大統領になられてからまず打ち出されたのが、フランスの伝統文化、芸術、これを子供たちに教科化をしたということでございました。そして、私もそのことが知りたかったので連絡をさせていただき、様々お伺いをさせていただきました。
そのときに、なぜフランスの伝統文化、芸術を教科化したかというと、子供たちはこれからどんどんSNS等々とかで海外のことを学べる、だから、自分の、フランスにはすばらしい自国の伝統文化、芸術がある、これを知った上で海外のものを学んでいくのは大いに賛成であるけれども、自国のすばらしさを知らずして、海外のものだけを学んでいくのはいかがなものかということで、小さいときからしっかりと自国の伝統文化、芸術を教えるということで教科化されたとおっしゃっておりました。
私は、この考えは本当にすばらしいなと思って、そのとき文科省に、日本でも伝統文化、芸術を教科化しましょうという話をしたら、いや、そんなことはできません、教える人がまずいませんと言われて、様々いろいろ議論をさせていただきましたけれども、なかなか子供たちに日本のすばらしい伝統文化、芸術を教える機会が少なかったということもありますので、どうかここのところをしっかりと進めていただきたいとお願いをさせていただき、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○中村委員長 次に、大石あきこ君。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
学校現場で学習指導要領が、守らなければ死ぬみたいな罰ゲームになっているというところの、この世界観を崩したいと考えています。それで、先週も参考人質疑をやりましたけれども、やはりそのような罰ゲームとして機能しているなというのは痛感いたしました。柔軟性が課題だというお話をしていましても、その柔軟性の議論自体がもうがっちがちで、これのどこが柔軟性なんだという思いをいたしました。それを崩したいなと。
これはもう文科省の洗脳に近いなと考えておりますので、これを解くにはどうしたらいいかというのは、やはり大事なことは原点ですね。そのルールだったり法規性の考え方、また法的性質というのをちゃんと確認して、その趣旨を踏まえて学校現場でも行動していく、そして文科省は、そのようなところの逸脱した、洗脳のようなことはやってはいけないよということを明らかにしていきたいと思います。
まず、法務省にお伺いします。
学習指導要領に関する判決がありますので、まず、判決の在り方というか、判断の在り方について問います。法務省に問いますが、最高裁判所の大法廷で示された判断、その判断が示された後に、最高裁判所の小法廷がその判断内容に反する判断をすることはできますか。
○松井政府参考人 お答え申し上げます。
裁判所法第十条第三号によれば、憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するときは、小法廷では裁判をすることができないとされているものと承知しております。
○大石委員 今のは裁判所法第十条第三号のほぼ読み上げでありました。小法廷ではそのような裁判をすることができないと法文に明記されています。
それで、北海道で旭川学テ事件という、最高裁判決、大法廷での判決があって、これは学習指導要領に係るものなんですけれども、この旭川学テ事件の最高裁判決、一九七六年ですが、このときに概要が次のように判示されています。
憲法上、親は一定範囲においてその子女の教育の自由を持ち、また、私学教育の自由及び教師の教授の自由も限られた範囲において認められるが、それ以外の領域においては、国は、子供自身の利益の擁護のため、又は子供の成長に対する社会公共の利益と関心に応えるため、必要かつ相当と認められる範囲において、子供の教育内容を決定する権能を有するという判示なんですけれども。
概要が示された上で、また、次のような判示もあります。教育内容に関する国家的介入についても判示されているんですけれども、私の方が言いますね。問い二で問うていたんですけれども、私の方から言います、時間の都合で。この大法廷判決において、このような判示をされている。
党派的、政治的観念や利害によって支配されるべきではない教育にそのような政治的影響が深く入り込む危険があることを考えるときは、教育内容に対する右のごとく国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請されるというふうにこの大法廷で判示されていまして、国家的介入に対してできるだけ抑制的であることということが示されています。
また、憲法二十六条、十三条、子供の教育を受ける権利ですとか、個人が尊重される規定というところからでも判示があります。このようなものです。「例えば、誤つた知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法二六条、一三条の規定上からも許されないと解することができるけれども、これらのことは、前述のような子どもの教育内容に対する国の正当な理由に基づく合理的な決定権能を否定する理由となるものではない」、このような判示なんです。
この内容には、そういった憲法二十六条、十三条の規定は守らなければいけないよということを、学習指導要領に関して前提に置いた判示となっています。
そこで、あべ文科大臣に伺います。問い三です。
この旭川学テ事件の最高裁判決は、当時の学習指導要領の法的性質について、このような判示をしています。
全体としてはなお全国的な大綱的基準としての性格を持つものと認められるし、また、その内容においても、教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような点は全く含まれていないのである、それゆえ、上記指導要領は、全体として見た場合、教育政策の当否はともかくとして、少なくとも法的見地からは、教育の機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準の設定として是認することができるという判示でした。
あべ文科大臣にお伺いしますが、この判示内容を踏まえて学習指導要領を告示していますか。
○あべ国務大臣 大石委員にお答えさせていただきます。
学習指導要領でございますが、学校教育法等の法令の規定に基づきまして、教育の機会均等と全国的な一定水準の維持のために文部科学大臣が定める教育課程の大綱的な基準でございまして、この法規としての性質を有するものでございます。
こうした学習指導要領の在り方ですが、最高裁の判決の判示内容と整合したものであるというふうに考えております。
○大石委員 答弁の最後の、旭川学テ事件の最高裁判決、大法廷判決の判示内容と整合したものだという大臣の答弁でした。非常に重要なことだと考えています。
問い四です。あべ大臣、引き続き伺います。
小法廷でも学習指導要領の判決があったんですよね。伝習館高校事件の最高裁判決というのが、その大法廷判決の時系列的には後になりますが、一九九〇年に小法廷で判決がありました。文科省は結構この判決を多用しているように伺っています。
この小法廷判決で、最高裁は以下のように、次のように判示しています。高等学校学習指導要領は法規としての性質を有するとした原審の判断は、正当として是認することができると。
この大法廷と小法廷の関係性というのを、今、質疑で、御説明、答弁などで明らかにしてきましたが、旭川学テ事件最高裁大法廷判決は、学習指導要領について、全国的な大綱的基準としての性格を持つとしています。先ほどあべ大臣御自身のお言葉でもおっしゃっておられました。
この大法廷の判決、小法廷の判決、両判決を整合的に理解しますと、適法な学習指導要領としては、法規性を有するのは大綱的基準の部分のみと考えてよろしいですか。
○あべ国務大臣 大石委員にお答えさせていただきます。
先ほども答弁させていただきましたが、学習指導要領は、学校教育法の法令の規定に基づいておりまして、教育の機会均等と全国的な教育水準の維持のために文部科学大臣が定める教育課程の大綱的な基準でございまして、全体としてこの法規としての性質を有するものでございまして、この点は過去の最高裁判決におきましても示されているものと認識をしているところでございます。
○大石委員 今の文科省の説明部分が、間違っていることによって、全体として法規性を有すると解してやってしまうことによって、学習指導要領への逸脱行為、そしてこの大法廷での判決を逸脱するような文科省の在り方が起きていると私は考えるんですね。だから、そのような説明というのはやってはいけなくて、実際に大法廷判決の中でも、細部にわたる内容についての法規性はない、そのような内容で判決は示されているんですけれども。
これも伺っておきましょうかね。文科省も、細部にわたる内容についてまでの法規性はないと、同じ考えでよろしいですか。
○望月政府参考人 大臣から先ほど御答弁申し上げましたけれども、学習指導要領はその全てが大綱的基準でございまして、全体として法規としての性質を有するものでございます。
その上で、具体的な項目によっては、もとより学校や教師の判断や裁量を広く想定しているというものもあるところであり、どこまで学校や教師の裁量が認められるかにつきましては、学校や教育委員会の個別の具体の判断にされるものと考えてございます。
○大石委員 全てにおいて大綱的基準で法的性質を有するというのは、大法廷判決に反する見解ですので、よく読んでください。
ちょっと時間がないので、問い六、伺いますね。
学習指導要領の大綱的基準以外の部分について、学校ごとに教育課程編成権があり、各学校がそれぞれの判断で決定できる裁量があると考えていいですか。シンプルにお答えください。
○あべ国務大臣 大石委員にお答えいたします。
先ほど答弁いたしましたが、そのとおり、学習指導要領に関しましては、全体として法規としての性質を有するものではございますが、詳細に教育活動の具体を規定する記載はなされていないところでございまして、全体として学校や教師の判断、裁量を広く想定しているものとなっているところでございまして、各学校におきましては、大綱的基準としての学習指導要領の規定に基づいた上で、児童の心身の発達の段階、特性及び学校や地域の実態を十分考慮して創意工夫を凝らした教育課程を編成いただきたいと考えておりますし、文部科学省としても、そうした取組を積極的に支援してまいります。
○大石委員 文科省のこういう見解の問題につきましてはまた引き続き扱っていきますが、時間がないので、問い七、お聞きしますね。
学習指導要領に係る標準授業時間、標準授業時数ですね、これは文科省省令である学校教育法施行規則によって定められておりますが、あくまで標準であり、この時間を下回ったからといって直ちに法令違反となるものではないですけれども、間違いないですか。
○あべ国務大臣 大石委員にお答えさせていただきます。
標準授業時数でございますが、教育課程の基準でございますこの学習指導要領に定めました内容を指導するために必要な時間として示したものでございまして、計画段階からこれを下回って教育課程を編成することは適当でないというふうに考えています。
一方、災害や感染症等の不測の事態により標準を下回った場合、そのことのみをもってして法令に違反するものではない旨併せて周知をしているところでございまして、このように、法令でございます学校教育法施行規則で定めている各教科、各学年の標準授業時数に関しては、それらを標準として各学校が教育課程に編成しなければならないという意味におきまして各学校を法的に拘束するものですが、標準を下回った場合に不適当であるかどうかは個別具体に判断すべき性質のものだというふうに考えております。
○大石委員 ほかの委員の答弁ではもう少しシンプルでしたし、私に来た答弁ラインもシンプルでしたので、こういう文科省の見解だよということは今読み上げておきますね。
不測の事態により下回った場合、そのことのみをもって法令に違反するものではないというのが文科省の見解です。
不測の事態というのは今ですよね。文科省によって学校の先生が確保できていない、このような過労状態に置かれていて、時間外在校等時間という不当なサービス残業をさせられていて過労死が発生しているという不測の事態が今起きているわけで、それを下回ることは法令に違反するものではなく、やはり二〇〇三年の、先ほどの委員でも、指導的助言とか言っている通知ですよね、それがクソバイスであったということで、この助言の出し直し、このような下回ってはならないというようなものは撤回して、新たに通知を出し直すということが求められている。まあ、検討されると言っていたので、早くやってください。
それから、問い九もお聞きしておきます。
二つの事実を既に文科省にお示ししました。簡単に言えば、学校現場で休憩時間を取らせていないことによって、労基法違反が明らかになっているという事実を二つ示しました。
一つは、去年の二〇二四年十二月九日に、土佐町の議会でこのようなやり取りが行われたんですね。ある議員が、鈴木議員という土佐町の議員ですけれども、教員の勤務時間内に法定の休み時間四十五分を取れているか。教育長がこのように答えています。勤務時間中の法定の休み時間の確保についても、四教育長さんもやはり確保できていないという認識でそれぞれ確認をしました。重ねて教育長が、言ってしまえば、そういうことになろうかと思います、労働基準法違反ですよねと言われれば、そうですとしか言えません、これは四町村の教育長も同じ認識であると同時に、恐らく、全国的にもそういったことが起きているということは事実でございます。これは五月に報道されました。
もう一つ。今年、二〇二五年三月に高松地方裁判所で、生徒の合宿に関してなんですけれども、校長が、勤務時間が大幅に増えると認識しながら別日への割り振りを怠ったほか、休憩時間を与えなかったと認定して、労基法に基づく義務を果たさなかった結果、肉体的、精神的苦痛を与えたと、労基法違反による損害賠償が地方裁判所で認定されました。
このような形で、休憩時間を取らせていないということで、校長がですね、労基法違反になっているという指摘が事実として二つ挙がっています。
もう時間がないのでこの記事を知っていますかという質問ははしょりまして、このようなことが起きて、文科省の答弁ラインとしても、違反になる、労基法三十四条違反にもなり得るという認識はあるようですから、これについて、直ちに校長に周知すべきではないですか、割り振りをちゃんとするようにという周知をするべきではないですか。
○望月政府参考人 勤務時間の割り振りによりまして労働基準法三十四条に規定する休憩時間を与えられていないというような場合には、労働基準法、これはもう違反になるということでございます。
我々としては、教師の休憩時間の確保につきましても、引き続き各教育委員会の指導助言を徹底したいと考えてございます。
○大石委員 周知をやるというふうに受け止めますので、さっさとやってくださいね。
文科省の役割というのは教育環境の整備でして、間違ったクソバイス的な助言で現場を苦しめることではないですし、それは法を逸脱しておりますので、教育環境の整備、これは人ですね、学校の先生を増やす、そして、子供たちの教育を受ける権利ですとか個人の自由を尊重するということを教基法に基づいて徹底するということが求められます。
時間が来たので終わりますが、引き続き扱います。
終わります。
○中村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二分散会