衆議院

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第6号 平成28年11月4日(金曜日)

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平成二十八年十一月四日(金曜日)

    午後三時五分開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 桝屋 敬悟君

      あべ 俊子君    赤枝 恒雄君

      秋葉 賢也君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    木原 誠二君

      木村 弥生君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      中川 郁子君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    福山  守君

      藤原  崇君    堀内 詔子君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  鈴木 俊彦君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月四日

 辞任         補欠選任

  高橋ひなこ君     藤原  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  藤原  崇君     高橋ひなこ君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第五四号)


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。(発言する者あり)

 内閣提出、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、質疑の申し出がございますので、順次これを許します。(発言する者あり)御静粛にお願いいたします。山下貴司君。

山下委員 自由民主党の山下貴司です。

 本日、三笠宮崇仁親王殿下斂葬の儀がとり行われました。哀惜の念にたえず、改めて哀悼の意を表させていただきたいと思います。(発言する者あり)

丹羽委員長 質疑が始まっております。御静粛にお願いいたします。

山下委員 さて、本日、私は、年金改革法案について、自民党を代表して質問させていただきます。全世代にかかわりのある極めて重要な法案について質問の機会をいただき、光栄でございます。

 本法案の審議に際しては、一部の野党議員から、強行開会という意味不明の指摘がありましたが、衆議院規則及び委員会先例集によれば、委員会開会の日時は委員長がこれを決める、規則六十七、先例集三八、議題とすべき順序は委員長が定める、先例集七九、議案が委員会に付託されたときは、内閣提出議案について国務大臣等から議案の趣旨について説明を聞く、衆議院規則四十四などとあり、このようなルールに従って、国民の見ているこの委員会で議論を闘わせるのが民主主義のルールであります。

 私は、そのような思いを持って、議員としては、議場外でテレビに話すのではなく、この委員会で議論したい、その思いでこの重要な法案について審議させていただきたいと思います。

 さて、質問に入らせていただきます。

 今回の法案は、年金制度の持続可能性を図るための改正案であり、大きく五つに分かれております。このパネル一にありますけれども、配付をさせていただいております。この概要につきましては、まず、短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進、そして、一号被保険者の産前産後期間の保険料の免除、年金額の改定ルールの見直し、GPIFの組織等の見直し、その他ということが書かれてあります。お手元にパネルの写しをお配りしていただいております。

 そこで、まず、適用拡大、保険料免除関係について伺います。

 この一、被用者保険の適用拡大の促進については、五百人以下の企業も、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を可能とする、そして二つ目の、国民年金第一号被保険者の産前産後期間の保険料の免除ということが定められております。これはパネルではなくて配付資料の一と二、ちょっと細かくなりますので配付させていただきました、これをごらんいただきたいと思います。

 まず、この二つ、一ポツと二ポツの目的について、馬場政務官にお尋ねいたします。このような改正をする目的について、簡潔に御説明いただければと思います。

馬場大臣政務官 山下委員にお答え申し上げます。

 今回の年金改革法案は、働きたい人が働きやすい環境を整備する観点から、中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大、次世代育成支援の観点から、国民年金の産前産後期間の保険料免除などの施策を、今御紹介いただきましたとおり盛り込んでおります。

 こうした改革によって、中小企業で働く約五十万人の短時間労働者が労使合意に基づき厚生年金に加入できるようになります。これにより、将来の年金が増加し、また、より長く働いた場合には収入をふやすこともできると考えております。

 また、約二十万人の第一号被保険者の産前産後期間四カ月分の国民年金保険料が免除されるとともに、その期間の基礎年金が保障される。そのためにはまた、費用として保険料を月額百円引き上げさせていただきます。

 以上のように、本法案は、将来世代の給付水準を確保し、年金制度への信頼を高めるとともに、議員御指摘のとおり、誰もが輝ける社会の実現に資するものと考えております。

 以上です。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 改めて、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房年金管理審議官伊原和人君、年金局長鈴木俊彦君の出席を求め、説明を聴取したく存じますが、御異議ございませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 山下貴司君。

山下委員 馬場政務官、ありがとうございました。

 次に、こちらにあります四ポツの方から、GPIFの組織等の見直しについて伺います。

 配付資料の三に詳細な資料がございますが、これによりますと、合議制の経営委員会を設けて、重要な方針に係る意思決定を行うとともに、執行機関の業務執行に対する監督を行うほか、年金積立金の運用方法を追加するということをやっておりますが、具体的に何を目的としてどういった改正を行うのか、改めて橋本副大臣に御説明いただきたいと思います。

橋本副大臣 山下委員に御答弁を申し上げます。

 GPIFの組織見直しにつきましての御質問でありました。

 今回の法案は、GPIFのさらなるガバナンスの強化を図るため、これまで制度的には執行の責任者である理事長が一人で意思決定を行っていた仕組みであったところを改めまして、合議制の経営委員会を新たに設け、法人の重要な方針を決定するとともに、執行部がこの方針に基づいて適切に業務を行っているかを経営委員会が監督をすることなどの改革を盛り込んでいるところでございます。

 こうした改革によりまして、運用に対する国民の信頼を高めるということを期待するとともに、運用の多様化、高度化が進む中で適切にリスクを管理しながら機動的な対応が可能になっていくと考えるところでございます。

 以上でございます。

山下委員 ありがとうございました。

 次に、私が集中的に聞きたいのが、年金改定ルールの見直しでございます。このことについて詳しく伺いたいと思います。

 本法案のこの部分につきましては、配付資料の四にございます。これにあるように、制度の持続可能性を高めるために、まず一つ目、マクロ経済スライドによる調整のルール、そして二つ目、賃金・物価スライドの見直しを行うというものでございます。

 野党の皆様の中には、これは年金カット法案、こういうレッテル張りを行っておりますが、これは全世代にかかわる年金制度を維持する年金確保法案というべきものであります。

 そこで、パネルをつくってまいりましたけれども、これは年金カット法案ではなくて、カットではなくて確保であります。これは、やはり発音と発想がいずれも違うわけでございます。年金カット法案ではなくて年金確保法案なんです。将来世代の年金を確保する、年金制度への信頼を確保する、そして年金の原資である年金保険料の支払いを確保する、そういった確保法案であるというふうに考えておりますが、ここは年金局長に伺いたいんですが、全世代にわたる年金確保が本法案の目的及び効果であると考えるが、いかがでしょうか。

 先ほどお示しした配付資料の四にもございますけれども、今回の年金額の改定ルールの見直しについてわかりやすく説明していただければと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 年金額の改定でございますけれども、これは毎年、賃金、物価の動向に合わせて改定をするということと、これに加えまして、人口構造の高齢化に合わせまして長期間かけて給付水準を調整いたしますいわゆるマクロ経済スライドの調整がございます。これによりまして、限られた財源を適切に配分する世代間の分かち合いの仕組みとなっているわけでございます。

 そこで、まず、このマクロ経済スライドでございますけれども、今回の見直しの中では、デフレのもとでこの調整が発動できない結果、調整期間の長期化と将来の年金水準の低下をもたらしている、こういう状況がございました。

 そこで、先生御配付の資料四の1にございますように、この問題に対応いたしますために、マクロ経済スライドでは、年金額の実額は下げない、こういう範囲で調整する、いわゆる名目下限の措置を維持した上で、この1の図の真ん中にございますような状況で、いわば調整をし残した分、これを全くなしにしてしまうのではなくて、景気のよい時期に持ち越して、この図でいきますと一番右のような形で持ち越しまして調整する仕組み、いわゆるキャリーオーバーをとるようにさせていただきたい、これが一点でございます。

 もう一点は、この図の2にございますけれども、賃金が物価よりも下がる状況のもとで、年金額を賃金変動に合わせて改定することといたしたいというものでございます。

 先ほど先生のお話にもございました、年金は若い世代から高齢世代への仕送りの仕組みでございまして、こうした中で、賃金が名目でも実質でも下がるような状況、この一番下の図の真ん中あるいは右のような状況、こういう状況のもとで、年金額をこれまでは現役の負担能力に合わせて改定してきませんでしたために、いわゆる現役世代にとりましては、自分の賃金の低下、そして今後自分がもらう将来の年金水準も低下するといったような二重に厳しい状況が生じたわけでございます。

 今後、こうした望ましくない不測の経済状況が万一生じたような場合にも、やはり、年金を支える現役の負担能力に合わせて、年金額を賃金指標に合わせて改定する。これによりまして将来の年金水準が低下することを防止いたしたい、これがこの法案で盛り込んでいるルールの見直しでございます。

山下委員 ありがとうございました。

 先ほどお話しになったとおり、この年金確保法案の必要性については、仕送りのようなものだというふうなことがございました。この必要性について、やはり有権者の方から、地元の方からも聞かれます。そもそもの年金財政の仕組み、これを踏まえた上で、やはりしっかりと御説明する必要があるかと思います。

 そのことについて、ちょっと確認させていただきたいと思います。

 これは配付資料の五で書かせていただいているんですが、現在の年金財政は賦課方式でございます。基本的には、現役世代から支払われる保険料収入に、税金、国庫負担金、過去の積立金の運用利益を加えて原資としている。そういった意味で、現役世代から年金受給世代への仕送りということで例えさせていただいたわけです。

 先ほどの資料五にもございますように、その支え手が、今の年金受給世代が三十代や四十代、働き盛りの現役世代であった一九八〇年代、これは六・六人でお一人を支えるという、胴上げ型と書かせていただいておりますけれども、そういった支える状態であった。ところが、あと四年後であります、推計ではございますが、二〇二〇年にはその三分の一以下の一・九人になるというふうに考えられております。

 この推計値につきまして、ちょっと私が調べたところではあるんですけれども、年金局長、こういうふうな推計、今配付資料の五で指摘させていただいておりますが、大体こういうふうな考えで間違いないでしょうかね。

鈴木政府参考人 年金制度における支え合いの仕組み、その状況でございますけれども、先生御提示の資料五のような状況で間違いないというふうに承知をいたしております。

山下委員 ありがとうございます。

 その年金の財政ということでございますが、これについてもやはり具体的に御説明をさせていただきたいと思います。

 パネル三でございますけれども、これは年金制度における財政の仕組みを図示したものでございます。年金財政においても、入るをはかりて出るをなすというのが鉄則であります。そして、年金の財源というのは、保険料収入、国庫負担金、そして積立金の運用益、そういったものしかないわけでございます。これで、てんびんの右側の年金給付費総額を賄っているということでございます。収支が均衡するためには、左右の面積が同じでなければならないというふうに考えます。それでよろしいですね。年金局長にうなずいていただきました。

 このうち、我々、政権交代後、国庫負担の部分については、三党合意に基づく三%の消費税増税によって、国庫負担分の二分の一、これを、引き上げを実現したんです。この実現がやはり大変だったわけでございます。そのための環境整備にアベノミクスの実施が大いに貢献したということでございます。

 また、ここの積立金、これについても、アベノミクスの成功によって、政権交代後、二十七兆円の運用益が上がっているということで、これも年金財政の健全化に大いに寄与しているわけであります。

 しかし、このように国庫負担を確保しても、積立金の運用益を我々は必死の努力で上げているんですが、やはり核となるのは保険料収入であろうと思います。

 年金局長にちょっとテクニカルな話を聞きたいんですけれども、年金の支払い財源である保険料収入、国庫負担、それと積立金、直近のデータで結構なので、ざっくりで結構ですから、それぞれの割合はいかがでしょうか。

鈴木政府参考人 平成二十六年の実績でお答え申し上げます。

 年金給付費が約五十兆円でございまして、この給付を賄うための収入の額と全体の割合を申し上げますと、保険料収入が約三十三兆円で約七割、国庫負担等が約十二兆円で約二割、積立金の運用収入が約五兆円で約一割となっている状況でございます。

山下委員 先ほども局長がお話しになったように、この財源の七割を占める保険料収入が少子高齢化の影響を受けているわけでございます。具体的には、少子化に伴う労働人口の減少がある。そして、その給付費総額に影響を与える平均余命の延びによる年金支給総額の増大、これがあるわけでございます。

 このパネルの下側をごらんいただきたいんですけれども、保険料収入というのは、ざっくり言えば、平均賃金と労働力人口を掛け合わせたものということになります。保険料率は固定になっておりますけれども、これで計算、掛けているものであります。ですから、一人当たりの賃金が上がっても、それを上回る速度で労働力人口の減少があれば、保険料率を上げない限りは総額としてのこの部分、保険料収入が減ってしまう、年金の財源が減ってしまうというふうに考えられます。

 一方で、年金支給額については、年金受給者数掛ける一人当たりの年金額になります。ですから、単純計算で、年金受給者数がふえれば、年金の財源が増加しない限り一人当たりの年金額が減ってしまうということに計算上なってしまいます。

 これをそのままほっておけば、将来の給付水準がどんどん減ってしまうということになると思います。

 マクロ経済スライドとは、平たく言えば、将来の給付水準、これはモデルケースで、所得代替率五〇%ということでございますが、これを確保したい、そのために、労働力人口の減少と年金受給者の増加とのバランスも考えて、年金額の改定に当たって、単に賃金、物価の変動分をそのまま引き写すのではなくて、労働力人口の減少と年金受給者の増加を踏まえた一定の圧縮を一定期間行って、将来の給付水準を確保するものだと私なりに理解しているんですが、これは、年金局長、今の理解でよろしいですか。

鈴木政府参考人 マクロ経済スライドの仕組みでございますけれども、平均余命の延びでございますとかあるいは労働力人口の変化に基づきまして年金水準を長期間かけて徐々に調整する仕組みでございまして、具体的には、今先生から御説明のあったとおりで間違いございません。

山下委員 ありがとうございます。

 こうしたことでマクロ経済スライドというのが発動されるわけですが、ただ、将来の所得代替率を確保するためにマクロ経済スライドなどをどのように実施していくかについては、考えていかなければならない問題がございます。

 それは、これまでのデフレ下において、まず一つ目は、マクロ経済スライドが発動されなかった時期があったということ、そして二つ目は、足元の所得代替率が上昇したということでございます。

 それをモデル的に示したのが、今委員の皆様のお手元に配付資料六としてやっているものでございます。この配付資料も使いながらお伺いいたしますが、橋本副大臣にお伺いします。

 今回行われる改定ルールの見直し、これは、過去のデフレ下において、先ほど私が御指摘申し上げた、マクロ経済スライドが発動されなかったことに加えて、足元の所得代替率が上昇したことも背景になっているというふうに理解しております。このロジックについて、わかりやすいように御説明をいただければ幸いでございます。

橋本副大臣 わかりやすいようにということで、できるだけ努力をしたいと思いますけれども。

 まず、そもそも、所得代替率とはどういうものなのかというところから少しお話をしたいと思います。

 年金の給付水準をどういうふうにはかるかということで、年金法上では、所得代替率と呼ばれる指標、物差しではかることということになっておるわけでございます。これはどういうものかと申しますと、具体的には、現役世代の収入から税、社会保険料を控除した、いわゆる現役世代の手取りの収入に対して、サラリーマンOB夫婦二人のモデル世帯の名目の基礎年金と厚生年金の合計額、要するに年金の受給額の比をとったものが所得代替率ということになります。ですから、現役世代の可処分所得分に対して年金の水準が、さっき申しましたモデル世帯の年金額が幾らになるか、こういうことをはかる指標が所得代替率ということになるわけでございます。

 これは、法律上、五割以上を保つように運用すること、こういうことになっているわけでございますが、五年に一度、年金財政の健康診断に当たる財政検証を行ってその健全性というのを確認することとしておりまして、平成二十六年、直近の財政検証では、経済再生と労働参加が進めば、いわばアベノミクスが進むということで進めば、将来にわたって所得代替率が五〇%を超えるということが確認をされている、こういう状況でございます。

 ただ、細かく見ていきますと、平成二十六年財政検証時の六十五歳に到達した方が受給する年金のうち基礎年金部分の所得代替率は、平成十六年の財政再計算時、十年前の計算時と比較をして約一割上昇しております一方、若い世代が将来受給する年金のうち基礎年金部分の所得代替率が約一割低下しているということが確認をされたということでございます。

 これはどういうことかといいますと、足元の、要するに、今現在のというか、その計算時点での基礎年金部分の所得代替率が上昇したというのは、不況、デフレが長引いておりました、リーマン・ショックの影響というものもございました、そうした中で現役世代の可処分所得が下がってしまったんですね。それによって、先ほどの分母、分子で言うところの分母の方が小さくなってしまった。

 そして、基礎年金の方の水準ですけれども、特例水準というものもあったり、これも解消していくことはしたわけでございますけれども、賃金ほどには年金の水準というのは下がらなかったということで、分母が小さくなって分子が大きくなったということで、所得代替率は、見かけ上上がるということになってしまったわけでございます。

 こうしますと、マクロ経済スライドの調整というのが、これは大体一定の率でしか割引がかかりませんので、その期間が長くなってしまい、その分、将来世代がもらえる基礎年金の水準が下がっていってしまうことになってしまう、こういうことになってしまったということでございます。

 御理解いただけるように説明したつもりでございますが、よろしくお願いいたします。

山下委員 副大臣、御懇切な御説明、ありがとうございました。よくわかりました。

 ちょっと私なりの理解を申し上げると、マクロ経済スライドというのがデフレの影響で大体発動が八年間おくれた、それでようやく去年から発動されたということで、おくれた分、適切に発動された場合よりも年金支給額というのが膨らんだのではないか、それで年金財政が悪化したということだろうというふうに考えております。

 これが、先ほどの資料六の上側、「マクロ経済スライド」と書かれている部分の網かけ部分の1、これはモデル的に考えておりますけれども。それを取り戻すために、マクロ経済スライド発動による圧縮を余儀なくされる調整期間が長期化する。そうなると、ずうっと調整で圧縮、圧縮、圧縮を重ねていくわけで、その期間が長くなればなるほど最終的な給付水準も低下するということになるんだろうというふうに理解いたしました。

 また、所得代替率は、橋本副大臣がおっしゃるように、デフレの影響における賃金低下で、平たく言えば、現役世代の所得が減る中でも年金は維持されたということで、結局、先ほどおっしゃるように、比の部分で、所得代替率がモデル世帯で、この図表では、これは厚労省提出資料でございますが、今六二・七%にもなっているということでございます。いわば、所得代替率を均衡させるためには五〇%を目指すということになるんですが、ある意味、発射台が高くなってしまったということで、その期間、やはり調整期間が長くなってしまうということであるというふうに理解しております。

 この資料六でもわかるように、調整期間が長引けば、それだけ、将来世代が得る、最終的な着地点である給付水準が低下することになるというふうに考えられます。したがって、適正な給付水準とするためには、調整期間が短くなるように、マクロスライドの適切な発動、そしてデフレ下でも所得代替率が上昇することを可能な限り避けるということが必要なんだろうというふうに理解しております。

 このために、この改正で、先ほど副大臣あるいは局長がおっしゃった、マクロ経済スライドによる調整ルールの見直しをして、例えばキャリーオーバーであるとか、キャリーオーバーを解消するために未調整分の調整も計算に加える、このことによって、マクロ経済スライドを機械的にやってどんどんどんどん掘り下げていくのではなくて、名目は下げませんよというところは維持できるのであろうというふうに思っております。

 そして、年金が世代間の仕送りであるということも考えて、年金の支給額の原資となる現役世代の負担能力が低下しているとき、賃金が低下したときということになるんですが、このときには賃金下落を年金額改定に反映することを許してもらいたい、そういうふうな改正だというふうに思っております。

 ただ、橋本副大臣にまた伺いたいんですけれども、先ほどの後半部分、今回の年金額改定ルールの改正は、万が一賃金が下がるような状況になったときに賃金に見合った改定を行うようになっているということで、こういう仕組みになっていることについて、なぜなのか、あるいはその思想について政府から御説明をいただきたいと思います。

 というのは、一部野党が年金カット法案ということを喧伝していることもあって、やはり地元でも、これは年金カットであって年金受給者いじめじゃないかというようなことを言われることもあるんです。そこの点について心配を払拭するようにお願いいたします。

橋本副大臣 もちろん私も地元に帰ればいろいろなお声を聞くわけでございまして、そのときにいろいろ御説明を申し上げるわけでございますけれども。

 今回の改正の思いというものをまず申し上げますと、先ほど来御議論いただいておりますように、我が国の年金制度というのは賦課方式ということになっておりまして、現役世代が負担をする保険料、税などによって高齢者世代を支える、こういう仕組みになっているわけでございますから、これがきちんと継続をしていくためには、現役世代がその負担に耐えられる範囲で給付をしていくということになっていないと、そのうち無理がどこかに生ずるということになってしまうわけで、平成十六年改正の際に、マクロ経済スライド等々の導入等によって大まかにそういうような仕組みになったというふうに思っております。

 ただ、その際に、平成十六年改正の際には、デフレがこのように長期化するという見通しを持てていなかったということもこれあり、賃金が物価よりも下がっていってしまうという場合には、その時々の高齢者の生活も考えなければならないだろうということで、そのルールを徹底していなかったということがございました。ただ、結果としてデフレが長期化をしてしまったために、先ほど申し上げましたように、現役世代の賃金が下がっていく、その中で今の高齢者が受け取る年金の所得代替率が基礎年金については一割上がってしまって、その分、将来若者が受け取る年金については一割下がる、こういうことになってしまったわけでございます。

 ここのところをやはりさらに、もちろん政府としてはデフレをもうこれ以上起こさない、アベノミクスでいい方向に経済を持っていくのだということで取り組まなければならないわけでありますが、ただ、万が一デフレという状況が起きないとも限らないわけでございますから、そうした賃金が下がったときに賃金に合わせて年金額を改正させていただくということにより、若い世代の将来受け取る基礎年金の水準がこれ以上下がることがないようにということで改定ルールを見直すものでございます。

 いわば、賃金が下がってしまうということは、若い世代も生活が苦しくなるわけでございますね。年金水準を下げるということが高齢者の方の生活にやはりよくない影響を与えるということはもちろん私たちも心苦しいことだというふうに思っておりますが、先ほど申し上げましたように、若者世代からの支え合いによってこの制度が運営をされているということも頭に置いていただいて、御理解をいただければありがたい、このように思っているところでございます。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

山下委員 ありがとうございました。今の副大臣の御説明は本当にごもっともだと思います。

 ここで、公的年金制度における世代間の給付と負担の関係、これはパネル四としてお配りしているわけでございますが、ここについてもぜひ指摘をさせていただきたいと思います。

 これによれば、これは七十歳ということでございますが、七十歳の方では、みずから支払った年金保険料総額と年金を将来給付されるであろう総額の倍率、給付負担倍率は五倍以上ということになっております。つまり、支払った保険料を超える例えば四倍の部分ということの大半は、現役世代が支払う保険料が原資となるというわけでございます。

 もちろん、これは我々年金制度でお約束したことでございます。全力を挙げてこれを守っていきたいということはございます。しかしながら、現役世代の賃金が下がって、負担能力も下がってしまった場合、その場合に、将来世代あるいは現役世代の将来の給付水準をこれ以上下げない、年金制度を維持するそのためにも、賃金が下がった場合に分かち合っていただけないかというものでございます。私は、それが世代間の不公平感を防ぎ、年金財源である年金保険料の確保にもつながるというふうに考えております。

 そして、この点について、野党の一部の方、失礼、今のは撤回します、すぐにでも年金カットだというふうに誤解されている向きもあろうかと思いますが、これは違うということははっきり申し上げなきゃなりません。

 年金局長に伺いますが、そもそもいつから年金調整が発動されるのか、発動された場合の緩和策としてどのようなものを検討しているのかについて、簡単に教えていただければと思います。

鈴木政府参考人 今回の見直しのルールの施行時期でございますけれども、マクロ経済スライドの見直しにつきましては、平成三十年四月から実施をすることといたしております。

 また、今お話のありました、賃金に合わせて年金額を改定するルールの見直しでございますが、これは平成三十三年四月から実施されるものでございまして、その際、消費税一〇%の平成三十一年十月までに、低所得、低年金の方の高齢者に配慮いたしまして年最大六万円の福祉的な給付を実施することとされておりますので、その実施を見た上で、平成三十三年四月からルールの適用ということになるわけでございます。

山下委員 ありがとうございました。

 ここでちょっとパネル五を見ていただきたいんですが、必ずこれは年金カットになるのかというと、それは違います。新ルールが発動されるのは、このパネルにございます4と5のときのみであります。つまり、実質賃金がプラスであったり、賃金が上がる場合には発動されないということでございます。我々はこういう経済状態をつくってきましたし、これからもつくっていくということを皆様にお約束しているわけでございます。

 これは配付資料七を見ていただければわかるんですが、過去賃金変動率が大きく下がったのは、リーマン・ショックと、それに引き続く民主党政権という、我々からすればダブルパンチがあった時期なんですね。我々としては、そういった事態にならないようにアベノミクスや一億総活躍などの政策を総動員していく。しかし、万が一の場合でも年金制度に信頼を持ってもらう措置を講ずる、それが本改正だというふうに理解しております。

 そして、では、このような改正が民主党案と違うのかということでございます。民主党政権下でも同じようなものが議論されていたのではないかということでございます。

 ここでパネルの六を見ていただきたいんですが、このパネルにありますように、民主党政権時でもデフレ経済下で対策をする必要性は認識されていたわけでございます。

 社会保障・税一体改革大綱、これは二十四年二月でございますが、これについても、「世代間公平の確保及び年金財政の安定化の観点から、デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討する。」二十四年五月に、社会保障特命委員会における岡田副総理当時の答弁は、「マクロ経済スライドをどうするか。」「世代間で言えば、先の世代ほど負担が重くなるわけですから、やはり物価が下落しているときでも同様の考え方を可能なようにするというのが私は正しい方向だというふうに思っております。」というふうに述べておられます。

 そういうところではあるんですけれども、今の、例えばその社会保障・税一体改革大綱というところで、「マクロ経済スライドの在り方について見直し」ということが書いてあります。この見直しには賃金変動率という言葉は書いていないんですけれども、今回のその年金額の改定ルールの二番目の部分、賃金変動率という要素、これは、このマクロ経済スライドのあり方についての見直しということについて全く考慮する余地がないのかということについて、これは当局に、答えられる範囲でお答えいただければと思います。

鈴木政府参考人 今回の年金額改定ルールの見直しの背景でございますけれども、先ほどから先生御指摘ございますように、過去に賃金がマイナスとなった際に、これに合わせて年金額改定が行われず年金水準が維持された、この結果、現在の高齢者の年金水準を示します所得代替率が上昇しまして、その分マクロ経済スライドによる調整期間が長期化いたしまして、その結果、若い世代が将来受給する基礎年金の水準が低下した、こういった状況でございます。

 この状況は、実は既に平成二十一年の財政検証で確認をされておりまして、これを受けて、平成二十四年二月に閣議決定をされました社会保障・税一体改革大綱におきまして、今御指摘のように、デフレ経済下におけるマクロ経済スライドのあり方を検討するというふうにされているわけでございまして、こういった問題意識に通じているものでございます。

 今回の法案はこれを解決するものであるということで、これは従来、大臣からも御答弁申し上げているとおりでございます。

山下委員 ありがとうございます。

 私も、その賃金変動率の中身、これはもう当然前提として含まれていると思うんですね。

 ちなみに、このパネルの下の部分を見ていただければ、民主党当時のホームページには、所得比例年金額のスライド基準として、賃金変動率に加え、これは恐らくマクロ経済スライド的な調整だと思われますが、運用利回りを決める案が公表されておりました。これは田村委員御指摘のとおりでございます。これは、賃金変動率がマイナスになった場合は、当然、利回りはマイナスで支給額は減額されるんだろうというふうに思います。こんな賃金スライドを民主党さんも考えていたからホームページで公表したんだろうと私は考えております。

 ただ、公平を期して言えば、民主党さんは、これに加えて最低保障年金も提唱されておられましたが、残念ながら最低保障年金については財源が見当たらず、仮に消費税で賄おうとするのであればさらに一〇%の消費税の引き上げも必要ではないかという試算もあるということでございまして、結局、財源を含めた具体的な対案としては御提示いただいておりません。

 抜本改革ということをおっしゃるのであれば、財源も含めて提示していただきたい。今出席はされておられませんけれども、恐らくインターネット、録画であるとか議事録をごらんになると思いますから、民進党の皆様にはぜひ御検討あるいは提示をしていただきたいと思います。

 なお、これに関連して、配付資料八で配らせていただきました。最近、民進党の政調会長が、予算委員会において、年金は既に破綻している、今の年金がほぼ破綻状態だということ、これを認めない限りは国民の信頼は戻ってこないなどと言っています。彼は学生時代の同期であって、人格、識見ともにすぐれた政治家と私は個人的には敬意を持っています。しかし、これだけは受け入れられない。民主党政権時には、この下にありますように、当時の総理、副総理、すなわち現在の民進党の幹事長や前の代表が、そのようなことはない、制度が破綻している、あるいは将来破綻するということはございません、そういうことを断言しているわけでございます。

 この点、民進党さんの見解は変わったかどうかも、この委員会に出てきていただいて正々堂々と主張していただきたい、このように思います。

 なお、配付資料として、東洋経済オンラインの記事、「民進党の「年金カット法案批判」は見当違いだ」という記事をつけております。委員各位には御参考にしていただき、民進党の委員の皆様には反論があればこの委員会で堂々と主張していただければと思います。

 これまで見てきたように、本改正案は、年金を確保するための現役世代、将来世代、そして年金受給世代のための法律でございます。年金受給世代ばかりに負担を押しつけるものではありません。今の年金受給世代は所得代替率が六割を超える一方で、現役、将来世代、例えば、今三十五歳の世代は、将来、所得代替率は五割であります。その中で、将来の年金水準がこれ以上下がらないようにすることがこの法案の狙いでございます。

 年金受給世代の皆様は、戦後の灰の中から日本を再生させ、そして私たち現役世代を育て、第二、第三の経済大国日本をつくり上げました。だからこそ今の現役世代があります。その恩返しはしなければなりません。しかしながら、配付資料五にあるように、現役世代もその恩返しをすべく、例えば、二人でお一人の年金受給世代を支える、あるいは将来の所得代替率の低下、これも甘んじて受ける、そういったことも受け入れておるわけでございます。そのことを前提に、どうか年金受給世代の皆様にも今回の法案の趣旨を御理解いただきたいと思います。

 時間が参りましたので、最後に大臣にお伺いいたします。

 まさに年金こそ世代間の助け合い、分かち合いである、そういう発想で、全世代が協力し合って乗り越えていくものであると思います。その点について、今回の法案にかける大臣の思いを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先ほど来、山下委員の方から、この年金の今回の改正法につきまして、本質的な議論をしていただいて、御質問いただきまして、ありがとうございました。

 何度も出ておりますけれども、これは、旧民主党時代にも既にデフレ経済下における将来年金の確保について議論があって、世代間の公平の確保、そして年金財政の安定化の観点から、デフレ経済下におけるマクロ経済スライドのあり方について見直しを検討するという宿題が、彼らの閣議決定の中にも入っているわけで、我々は、それを、言ってみれば引き継ぐ形で答えを出しているということだというふうに思います。

 年金は、先ほど来繰り返し出ておるように、将来年金を受給する現在の若い人たちが現在年金を受給している高齢世代へ仕送りを行うという助け合いの仕組みで、賦課方式といいますが、保険料や税などの限られた財源を長期にわたって適切に配分するという世代間の分かち合いの仕組みとなっています。

 現在の年金額改定ルールでは、仮に現在の若い人たちの賃金が下がった場合には、現在年金を受給している高齢世代の年金水準は、現在の若い人たちの将来受け取るはずの年金額の一部を財源として維持をされるという一方で、現在の若い人たちは、賃金も下がり、さらに将来受け取る年金水準も下がってしまうという二重の苦しみになるということを先ほど局長からも答弁申し上げました。

 今回、政府から提案している法案は、マクロ経済スライドによる調整をできるだけ先送りせずに、また、仮に現在の若い人たちの賃金が下がるような経済状況が起きた場合は、現在の年金額も若い人たちの賃金の変化に合わせて改定をするということで、若い人たちが将来受給する基礎年金の水準が低下することを防止するというものであります。

 世代間の公平を確保し将来世代の給付水準を確保する、こうした改革によって若い世代の年金制度への信頼が高まることで、安心をしていただきながら今の高齢者の年金を支えるという、今やるべき役割を果たしていただくということで、年金制度を維持できるように、その可能性も高まるというふうに思いますし、物価そして賃金が上がるように経済政策をしっかりと運営するということが大前提で年金制度の安定というのが進むだろうというふうに思います。

山下委員 ありがとうございました。

 この法案が、現役世代、年金受給世代、そして将来世代が心を合わせて国難とも言える少子高齢化時代を乗り越えるための法律であることを御理解いただくということを国民の皆様にお願いして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

高鳥委員長代理 次に、村井英樹君。

村井委員 自由民主党の村井英樹です。

 山下貴司議員の熱のこもった質問に続きまして、年金改革法案について質問をさせていただきます。

 そしてまた、まず冒頭、三笠宮崇仁親王殿下が去る十月二十七日御薨去され、本日、斂葬の儀が営まれました。改めまして、謹んで哀悼の誠をささげさせていただきます。

 さて、今般の年金改革法案ですが、年金額の改定ルールの見直しのみならず、短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進、そしてまたGPIFの組織等の見直しについて幾つかの項目が対象となっております。こうした点について、時間の許す限り質問をさせていただきます。

 まずは、GPIFのガバナンス改革について伺います。

 このGPIFにつきましては、塩崎大臣が党にまだいらっしゃったときから、ともにさまざまな改革に取り組ませていただいて、私自身としても大変思い入れのあるテーマでございますけれども、このGPIF、百三十兆円の積立金を擁しておりまして、年金積立金を運用する機関としては世界最大規模でございます。特に、積立金運用については、リスクは抑えながらリターンは上げていく、そのために運用の多様化、高度化を進めているところでございますが、カリフォルニアのカルパースだとか、カナダのCPPIBなどのような、海外の同種の年金基金と比較しても遜色のないガバナンス体制を構築していかなくてはなりません。

 今回の法案においては、理事長の独任制を改め、外部の有識者から成る合議制の経営委員会を導入するとされておりますけれども、橋本副大臣に伺いますが、海外の年金基金のガバナンス体制との比較も含めて、山下委員も同趣旨の質問をしておりましたけれども、改めてこの改正の意義、目的を伺います。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 GPIFのガバナンスの強化につきましての御質問でございましたけれども、今回の法改正で提案をさせていただいておりますGPIFのガバナンスの強化は、運用に対する国民の皆様の信頼をより高めるとともに、運用の多様化、高度化が進む中で、適切にリスクを管理しながら、機動的な対応を可能にするために大変重要な課題である、このように思っております。

 今回の法案では、さらなるガバナンスの強化を図るということで、これまでは、制度的には執行の責任者である理事長が一人で意思決定を行うということになっておりました。この仕組みを改めまして、合議制の経営委員会を新たに設け、法人の重要な方針を決定するとともに、執行部がこの方針に基づいて適切に業務を行っているかを経営委員会が監督する、このような仕組みを導入することにしたわけでございます。

 村井委員から、カルパース、カリフォルニア州職員退職制度でありますとか、CPPIB、カナダ年金プラン投資理事会、こうした例を挙げていただきましたけれども、今の二つなどのような海外の主要な年金基金では、合議制の機関が重要な方針を決定するとともに、執行部による業務執行を監督する形態が一般的と承知をしておりまして、これにのっとるような形で今回改正をさせていただくということを考えているものでございます。

 そうしたことを通じて、国民から一層信頼される組織体制の確立を図るために、今回の法案、大変重要なものだと考えているところでございます。

村井委員 副大臣、ありがとうございます。

 次に、GPIFの組織体制に加えて、運用の方、こちらについても海外との比較で伺わせていただきます。

 海外の主要な公的年金基金では、積極的にインハウスの運用を行って成果を上げていると聞いております。一方、GPIFでは、債券ではインハウス運用が認められておりますが、株式については認められていないということでございます。

 今回の法案の検討過程では、党内でもさまざまな議論がありましたけれども、株式のインハウス運用についても議論があったと承知をしております。特に、GPIFの運用機関としての性格に鑑みれば、その手足を過度に縛るような制限を法律で設けることは適当ではないというようなアクティブ運用全部を認める意見や、アクティブ運用については、個別株式銘柄の選択を行う以上、市場や企業経営に与える影響への懸念を払拭することが困難なことから、容認することは適当ではないけれども、個別株式の銘柄の選択を行わないパッシブ運用については、市場に与える影響も小さく、議決権行使を外部委任することを前提にすれば容認する余地があるといった意見があったと承知をしております。

 今回の法案に、こうしたパッシブも含めて、株式のインハウス運用について盛り込まれなかった理由を伺いたいと思いますし、この点を含めて、運用改革全体について今後どのように取り組んでいかれるお考えなのか、橋本副大臣に改めて伺いたいと思います。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 GPIFの運用の見直しにつきましてでございますけれども、先ほど申し上げましたガバナンスの改革とあわせて、社会保障審議会年金部会や、また与党の中でも御議論いただきまして、村井先生にもたくさん御意見をいただいたものと承知をしております。

 この中で、先ほどお話しいただいたような論点が幾つか挙げられました。あるいは、御意見をたくさんいただいたところでございます。株式のインハウス運用について、積極的な立場、先ほどの、アクティブまでいいんだ、あるいはパッシブだったらいいんだろう、そうしたような御意見もありましたし、やはり慎重な立場の御意見ということもあったということでございます。ただ、全て拝見をした中で、労使を含めて、今回の改正案では株式のインハウス運用まで踏み込まないという意見が多かったものというふうに承知をしておりまして、こうした御議論を踏まえますと、今回の改正案には、株式のインハウス運用は盛り込まなかったということでございます。

 ただし、そうした御議論をたくさんいただいたということは踏まえなければならないというふうに思っておりまして、株式のインハウス運用を含めた運用のあり方については、今回の法案の附則を設けておりまして、こちらで、施行の状況、国民の意識、スチュワードシップ責任をめぐる動向等を勘案し、GPIFの運用が市場や民間活動に与える影響を踏まえつつ検討を加え、必要があると認めるときは施行後三年を目途に必要な措置を講ずるということとされているところでございます。

村井委員 ありがとうございます。

 何はともあれ、このGPIF、百三十兆円の巨額の年金基金を預かっているということでございますので、あるべき運用、またガバナンスのあり方を検討し続けて、改善すべきところがあれば改善していくといったような視点で取り組んでいただけたらと思っております。

 続きまして、年金制度全体について質問をさせていただきます。

 今の年金制度は、財政面を見れば持続可能な制度であります。それに対して、根拠なく破綻すると言うことは無責任だと私は思いますし、破綻すると言うのであれば、その明確な根拠と同時に対応策を示していくべきだと思います。対策なき批判は国民にとっても利益がないわけでありまして、山下委員からも厳しく意見がありましたが、野党の皆さんもぜひ一緒になって考えていただきたいと思っております。

 ただ、一点申し上げるとすれば、やはり年金制度は複雑なんですね。複雑でありまして、これをしっかりと説明をする責任、これが政府にも政治の側にもあると思います。特に最近、この年金制度というのが余り理解されていないなと感じる機会が多くあります。それは特に若手と話すときなんですね。

 去年、自民党の中の十八歳選挙権対策部長というのを仰せつかって、大学生初め若手の皆さん方と結構話をしました。そうすると、多くの若者が、どうせ俺らは将来、年金もらえないよと言うわけであります。中には、だから国民年金の保険料を納めるよりも、民間の生命保険会社がやっているような年金に入った方がいいよねというようなことを言う人までおりました。

 そこで、私が、国民年金というのは税が半分投入されているわけで、こんなにお得な商品は世の中にはないわけでありますし、さらには、カバーされる保険の範囲、これも広いというようなことをお話しさせていただくと、初めて、そうなんですかといったような反応がかなりあるわけであります。

 多くの若者がこうしたような認識を持っているという現状も踏まえつつ、やはりまずは、何といってもこの年金財政が基本的には持続可能である、大丈夫なんだということをわかりやすく説明する必要があると思いますが、ぜひその説明を馬場大臣政務官にお願いを申し上げたいと思います。

馬場大臣政務官 村井委員にお答え申し上げます。

 日本の年金制度は、平成十六年改正において、今お話しいただきましたように、若い世代の負担が重くなり過ぎないように、将来の保険料の上限を固定し、その範囲内で年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入いたしました。このマクロ経済スライドを着実に実施することなどにより、将来にわたって給付水準を確保する仕組みとし、制度を持続可能なものとしております。

 その上で、少なくとも五年に一度、人口や経済の長期の前提に基づき、おおむね百年間という長期的な給付と負担の均衡を図るために、財政検証を行っております。平成二十六年の財政検証においては、日本経済が再生し、高齢者や女性の労働参加が進めば、将来の所得代替率は五〇%を上回ることが確認されております。

 政府としては、まさにデフレ脱却、賃金上昇を含む経済の再生や一億総活躍社会の実現に向けて、これからも全力で取り組んでまいります。

村井委員 馬場大臣政務官、ありがとうございました。

 我々も、しっかりわかりやすく、この年金の仕組みを、若者を含めて国民の皆さんに伝えていくという努力をやっていきたいと思っております。

 続きまして、被用者保険の拡大といったようなテーマで質問をさせていただきますが、年金制度は、老後だけではなくて、ライフスタイル全体にかかわってくるものでございます。

 先日も、塩崎大臣のところにも御報告に行きましたけれども、小泉進次郎議員がトップを務めております党の二〇二〇年以降の経済財政構想小委員会というものの中で、人生百年時代の社会保障へといったような提言を出させていただきました。

 その中に書かれていることでありますけれども、二〇二〇年以降、グローバル化、IoT化、高齢化の進展で、世界的に所得の二極化が進行していく。人工知能やロボットなどの技術革新が急速に進んで、機械と人間が協同して仕事をする時代となって、働き手の知識やスキルも常に更新することが求められるようになる。さまざまな企業が次々に生まれ、転職も当たり前になる。こうした変化の激しい時代に、国民の安心の基盤を確保するためには、雇用を守るのではなく、人を守る発想への転換が必要で、社会保障においても、終身雇用を前提とした仕組みから、新しいライフスタイル、多様な働き方を前提とした見直しが必要である。

 例えば、今、企業の社会保険は正規雇用の方のみを基本的に対象にしていて、一定の所得、勤務時間に満たない勤労者、また非適用事業所で働いている勤労者は、企業の厚生年金等に加入できず、十分なセーフティーネットの対象になっていない。こうしたことを踏まえると、いかなる雇用形態でも、企業で働く方は全員、社会保険に加入できるようにすることが大切であり、その小委員会では、長期的な将来像としては、いわゆる勤労者皆社会保険制度を実現していくべきだと提言もさせていただいたところです。将来の不安を解消することでチャレンジに取り組む人もふえ、社会が活性化し、保険料の未納も自然と抑えられるのではないかといったようなことも盛り込ませていただいております。

 このような観点から、今般の法改正におきましても、短時間労働者の被用者保険の適用拡大の促進、選択制になっておりますけれども、こういったようなことが盛り込まれております。こういったような世の中の変化も捉えながら、また、自民党の中でも若手の提言も出ているといったようなことも踏まえながら、この適用拡大の今後の方向性について馬場大臣政務官から伺えればと存じます。

馬場大臣政務官 小委員会の中で重要な役割を果たしていただいております村井先生には、御提言いただいておりますことに、まずもって感謝を申し上げさせていただきます。

 短時間労働者の就業調整を防ぎ、労働参加を支援するとともに、所得や年金を確保していくためには、被用者保険の適用拡大を着実に進めていくことが重要であります。

 この十月から、大企業で働く約二十五万人の短時間労働者を対象に被用者保険が適用されており、さらに、今回提出している法案は、中小企業などで働く約五十万人の短時間労働者についても適用拡大の道を開くものであります。

 さらなる適用拡大については、この十月の施行から三年以内に検討することが法律で定められており、適用拡大の施行状況、個人の就労実態や企業に与える影響などを見ながら、また、議員御提案の勤労者皆社会保険制度についても参考にさせていただきながら、引き続き取り組んでいきたいと存じます。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

村井委員 馬場大臣政務官、前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 次に、年金額の改定ルールの見直しの部分について質問をさせていただければと思いますが、この法案は、世代間の公平性を確保するとともに、将来世代の年金水準を確保するために不可欠な法案と言えます。その一方、野党は、年金カット法案というレッテルを張って批判を行っています。

 これに対してマスコミがどのように見ているのかというと、これは意外なんですけれども、意外と言っていいのかわかりませんが、朝日新聞の社説、十月三十一日、その中には、「国民に受けのよい話だけを進め、厳しい改革から逃げるような姿勢は、責任ある政治の姿とは言いがたい。将来世代にも目を向け、審議を進めてほしい。」

 毎日新聞社説、十月三十一日、「デフレで物価や賃金が下がったとき、それを年金に反映させなければ、給付額は高水準のままとなり、将来の財源が苦しくなる。長期的に年金を持続可能にすることを考えると、改革案は必要な措置ではある。」

 そしてさらに、山下委員も紹介をしていただきましたが、東洋経済の十月二十七日付の記事、「民進党の「悪癖」が再び顔をもたげている。今臨時国会で審議中の年金制度改革法案について、同党の玉木雄一郎幹事長代理や山井和則国会対策委員長らが「年金カット法案」と強硬な批判を展開している。しかし、その内容は制度に対する誤解を含め、まるで見当違いの主張だ。有権者を混乱させるという意味では、かつて民主党政権が「嘘つきマニフェスト」と呼ばれた時代に逆戻りしつつある。」といった反応でございます。

 大臣は、本法案を将来の年金水準確保法案とおっしゃいましたが、まさにそのとおりであり、本法案が将来世代にとってどのように年金を確保するのか、こういったような記事が出ているということも含めながら、改めて御教示いただければと思います。

塩崎国務大臣 何度も申し上げておりますが、いないところで言うのもなんですけれども、民進党の綱領には未来への責任と書いてあり、また、改革を先送らないということも明確に書いておられて、大変結構な綱領だというふうに思うわけでありますが、言っていることとやっていることが全然違う方向を向いているというのがちょっと残念なところかなというふうに思って、今お話があったとおりのような評価がなされているのかなというふうに思います。

 さっきも山下議員にお答え申し上げたように、このデフレ状況というのを余り想定していなかった、かつては。それがだんだん、平成二十一年だったでしょうか、財政検証で、さまざまな問題があるというようなことを受けて、民主党政権ができて、二十四年に閣議決定があって、社会保障・税の一体改革大綱というのが決められたわけでありまして、その中に、マクロ経済スライドに関して、そのあり方をデフレ経済下においてどうするのかということで、その際のポイントは、世代間の公平の担保、それから年金財政の安定性の観点、この二つからこのことを考えているわけで、今回の額改定ルールの部分は、まさにそれの大前提になる毎年の額改定、スライドをどうするのかということで、先ほど山下委員からお話がありましたように、これまで想定していなかった、物価は上がるけれども賃金が下がるケースと、物価も賃金も下がるケース、このケースについて、賃金の下げを反映しないで維持をするという形にしてみました。

 誰の、どこの財源で、それを維持するということでとどめてきたのかということを考えてみれば、それは現在の若い人たち、つまり、今の年金をもらっていらっしゃる方々に仕送りをしている格好の賦課方式で、その若い人たちが将来受け取るはずの年金額の一部を財源として、下げないということで維持をするということを今まではルールとして持っていたわけでありますが、それではうまくいかないということを民主党政権も気がついて、これはやらなきゃいけないということで宿題になっていた。

 それを、答えを出していこうというのが、今回私どもがやること、やろうとしている、この御提案申し上げている賃金スライドの二つのケースを、ちゃんと賃金の下げ幅に合わせて、現在年金をもらっていらっしゃる方々に少し我慢していただこう、それは、将来の若い人たち、今高齢世代を助けている皆さん方の将来の年金を確保するためだということで、今回このようなことをやらせていただいているわけです。

 さっきも申し上げたとおり、これは経済政策と全く無縁ではなくて、物価と賃金がしっかり健全に上がっていくという経済を実現しさえすれば、そんなことは心配することがない、賃金の引き下げ分に合わせてやるだのというようなことはやらなくてよくなるわけでありますから、我々は、社会保障制度もきっちりする、あらゆるケースに対応できるように補強をする、強化する、そして同時に、経済政策でそのような事態が起きないように万全の経済政策を打っていくということがセットで初めて、今の年金を受け取る方々の年金も、そして将来の年金も守っていくということができるのではないかというふうに考えております。

村井委員 塩崎厚生労働大臣、本当に熱のこもった答弁、ありがとうございます。本当に、未来への責任、改革を先送らない、これを私も肝に銘じて頑張っていきたい、このように思うわけでございます。

 最後になりますけれども、山下委員も質問をされたんですが、大切な点なので、再度、橋本副大臣に質問をして終わりたいと思います。

 野党の方の中には、これまでの議論の中で、今回の改革を実施すると年金額が年最大四万円下がると言っているんですね。

 ですが、これは、何も今回の法案を実施すると自動的にそうなるということではなくて、大臣が先ほどもおっしゃいましたけれども、経済の状態によるわけですね。経済は無論、生き物でありますので、我々が望む方向性に一〇〇%なるかどうかはわかりませんけれども、我々政府・与党としては、年金額が下がらないような経済状況をつくり出していく必要があるわけで、野党の方がおっしゃるように、年金がすぐに下がるかのような言い方は、いたずらに国民の皆さんの不安をあおっているのではないかと、私自身、非常に危惧をしております。

 大切なことは何度言っても言い過ぎることはないということで、改めて橋本副大臣に伺いますが、この法案によって年金はすぐに下がることはないという理解でよろしいでしょうか。

橋本副大臣 今の御質問ですけれども、今すぐこの法案の御成立をお許しいただいたからといって、年金が例えば来年から下がりますとか、そんなことはございません。

 と申しますのは、そもそも、経済の状態がよくて賃金と物価が上がっている状態であれば、仮にこの法律の成立がお許しをいただいて施行されているとしても、その新しいルールというのは適用されませんので、それによって下がるということにはなりませんし、むしろ、賃金、物価が上昇している場合では年金が上がることだってある。それは直近にも、この法案とは関係ありませんけれども、平成二十七年度の改定では、特例水準の解消とマクロ経済スライドというものを入れても、まだ〇・九%プラスということだってあったわけでございますから、そうした経済をちゃんとつくっていくということが、デフレ脱却あるいは賃金の上昇、そうしたものにしっかり取り組んでいくということがまずは何より大事でございますし、そうであれば、それがそのように順調であればこのルールが適用されることはないということ、そうなることを私たちも願っているし、そういう目標で頑張るということでございます。

 ただ、将来、例えばリーマン・ショックのようなことが起こるということが全くあり得ないかといえば、起こってしまったことですから、そうしたことも頭に置いておかなければなりません。そうした備えとして、将来の基礎年金の水準がこれ以上低下することのないように今回改定ルールを見直させていただく、こういうことでございます。

 なお、この年金額の改定ルールの見直しでございますけれども、現在の低年金の高齢世代の方々にも十分配慮をするということで、低年金、低所得の方に対する年最大六万円の福祉的な給付、その給付が施行された後の平成三十三年度から実施をすることとしておりまして、そうした方々にも配慮をしているということでございます。

 重ねてになりますが、前、民進党の大串政調会長と、ちょっとあるテレビで御一緒したときに、民進党さんは、これからはもうデフレ経済が続くんですというようなことを大串政調会長がおっしゃいました。確かに、そういうことがあれば、このルールがということになるわけですが、その場合は年金だけじゃなくて財政そのものだってどういうことになるのかよくわからないし、民進党さんがそのあたりの見通しをどのように持っておられるのかわかりませんが、抜本改革と言われるのであれば、そうしたこともあわせて、どうぞ御議論いただければありがたいなと。

 安倍政権としては、しっかりアベノミクスを進めていって、デフレからの脱却、ちゃんと進めていくんだということをしっかりとやっていきたいと思っているところでございます。

村井委員 ありがとうございました。

 今回の年金改革法案をめぐるやりとり、若手議員にも幾つかのことを教えてくれたと思います。

 まずは、この年金というものをやはり政争の具にしてはいけないということですね。世の中への反響が本当に大きくて、地元に帰ってもいろいろなことを言われます。ただ、そうはいいながらも、年金というものは、テーマの俎上に上げた瞬間に全ての国民がかかわるものでもありますので、政争の具になりやすいということもやはり肝に銘じておかなくてはならないなと思いました。

 これから、長い目で見れば、また年金改革ということもやってくると思いますけれども、しっかり取り組んでまいりたいと思いますし、また、もう一つ重要な点は、この年金の話というのが経済と無関係ではないということだと思います。あるべき経済環境の実現に向けて、成長戦略を含めてしっかり行っていくということが、ひいては、将来も含めてでありますけれども、年金受給者の方々のためになるという思いを持って、しっかり総合的に政策を推進していきたいと感じた次第でございます。

 以上、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 本日、質問の機会をいただきましたこと、まず感謝を申し上げます。

 冒頭、本日、三笠宮崇仁親王殿下の斂葬の儀がとり行われました。深く哀悼の誠をささげさせていただきたいと思います。

 今回、質問するに当たって事前に注文させていただいたことは一点だけです。国民に対してわかりやすいように御答弁をいただきたいと。したがって、わかりやすくお話しできる方に御答弁をいただきたいということでお願いをいたしましたので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、そもそも年金は誰のための制度かといえば、現在年金を受給している方はもちろんのこと、将来年金を受け取ることになる現役世代、さらにはこれからこの国に生まれてくる世代も含め、何世代にもわたる多くの人々の生活の糧を確保することを目指した制度であって、したがいまして、何世代にもわたって安定した持続可能な制度でなければなりません。

 と同時に、制度を持続する上で、全ての国民、年金受給者、年金保険料を負担する現役、双方に納得してもらえる制度でなければなりません。

 その一方で、未来を正確に知るということ、未来がどのようになるかは、これは人知の限界の外にあります。百年先はもとより、数年先に年金財政の見通しの前提に置いた数字がどうなっているのか、そうしたことも正確に見通すことすらできません。年金制度を議論する際には、こうした限界をわきまえた上での冷静かつ謙虚な議論が何よりも求められると思っております。

 法案の中身に入る前に、まず、これまでの年金制度の運用についてお伺いしたいと思います。

 二〇〇四年、平成十六年に年金制度が改正される以前は、国勢調査の人口などに基づき、五年に一度ごとの財政再計算によって、負担と給付、保険料と年金額の水準、この両面をにらみながらの調整を図ってきました。それが、二〇〇四年の改正で、負担面の保険料については、これ以上上がりませんという上限を設けて、毎年一定の料率あるいは金額を引き上げていき、最終的には、厚生年金で一八・三〇%、国民年金、平成十六年度価格で一万六千九百円、これは一号被保険者の産前産後の保険料免除ということが成立しますと百円ほど上乗せになるということですけれども、固定をすることとした。

 収入を将来にわたって確定させる一方で、支出の部分の給付については、将来の社会の構成の変化によって変動する収入に見合った給付に自動的に調整するためのマクロ経済スライドという安定装置を組み込んだわけですが、そもそも年金制度についてなぜこのような制度改正を行ったのかについて、まずわかりやすく御説明いただければと思います。

橋本副大臣 わかりやすく答弁をする人として御指名をいただきましたことを光栄に感じるところでございますが、できるだけそのように答弁したいと思います。

 平成十六年改正の意図ということで御質問いただいたと思っておりますが、平成十六年改正以前は何だったのか、どういうことだったのかというところから申しますと、まず先に、目標とする年金水準、このぐらいお支払いをしたいですね、給付をしたいですねということを決めて、では、それに必要な保険料は幾らか、こういうような考え方で運用しておりました。その保険料を若い世代に御負担をいただくということにしていたわけでございます。

 ただ、御案内のように、世界でも類を見ないような急速な少子高齢化というのが日本では進んでおります。そうしますと、将来年金を受け取る現役世代の負担というものがどんどん上昇をしていってしまって、そうすると、若者の方々の、現役世代の保険料の負担がすごく大きくなってしまって、そんな負担はできなくなってしまうような事態になってしまうのではないか、そうしたことで、将来の年金への不信、不安というものが広がっていったというものがその背景にあったというふうに理解をしております。

 そこで、平成十六年の改正のときに考えを改めまして、先ほどお話をいただきましたように、保険料を最高で一八・三%、これは来年度そうなりますけれども、もうそれ以上上げませんということに設定をしました。そして、将来的に年金給付に使える財源が、今申し上げました保険料と、それから国庫負担と積立金ということになりますが、これの見通しが立ちます、大体このぐらいの保険料収入などなどがあると。その限られた財源の範囲内に給付水準を落ちつかせよう、こういうような形で、その考え方を、負担できるような水準の年金給付をしていく、そして、将来の世代にもきちんと給付ができるように、所得代替率五〇%という基準を設けて、その範囲内で給付を調整させていく、そういうような仕組みとしてマクロ経済スライドというものを導入することで、まさに少子高齢化という人口構造の変化を年金の仕組みの中にビルトインして安定をさせていく、そうしたような形に変更させていただいた、改正をさせていただいたということでございます。

角田委員 改正の趣旨としては、少子化、高齢化による年金に対する国民、これは現役、年金受給者、双方の抱く将来に対する不安というものを払拭する、それによって制度の持続可能性を高めるということが大きな眼目であったかというふうに思います。

 さて、この法律案では、年金給付額調整のルール、マクロ経済スライドについてはキャリーオーバーというルールを追加する、これは賃金、物価が上がっている局面の調整方法の見直しの話ですが、もう一つは、賃金が下がっている局面での年金額の調整ルールの見直しを行おうとしておりますが、ここでは、賃金が下がるという局面での調整ルールの見直しについてお伺いをいたします。

 これまでは、物価も下がり、それを上回って現役世代の賃金が下がったという場合、年金額の調整は物価の下落分だけ、また、物価は上がっているけれども現役世代の賃金は下がってしまっている場合も年金額は下げないというルールのもとで年金額の調整が行われていたものを、現役の賃金が下がっているケースにおいては、いずれも賃金の方に合わせて、その下落分だけ年金額を調整するという新たなルールをつくろうとするものですが、このルールは、あくまでもこれからそういったケースが出現すれば適用されるということであります。

 まだ決まってもいない改定のルールを仮に過去において適用した場合どうなっていたのかという試算に対して議論がありましたが、そもそも新たな改定ルールが適用になるのは平成三十三年度からです。これまでの経験を踏まえて、デフレ下における給付額の調整ルールを新たに定めるこの法案が成立したからといって、直ちに受け取る年金が減るわけでも何でもない。減ると決まったわけでもないのに、この法案が成立すれば直ちに年金がカットされるといったふうに誤解されている方もなぜか多い。

 年金受給者の中に不安を抱いている方が多いので、この点については、この法案が成立をすれば本当に年金がカットされるのか否かという点について、明確にしておく必要があろうと思います。

 年金がカットされるという主張の中で、三%だとか五%だという具体的な数字がこの委員会でも出ておりますが、では、この法案の新しいルールが適用となるような場合、将来、社会がどのような状況になったのならば三%も、あるいは五%も年金額が引き下げられるようになるのか、わかりやすくお示しいただければと思います。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 確かに、委員御指摘のように、三%だとか五%だとか、そういう数字をこの委員会でもるる御議論をいただきました。これは、過去十年さかのぼってこの新しいルールが適用された場合どうなのかということで、私どもとしては、機械的な試算をした結果、三%、民進党さんは五%、ちょっと考えの違いがありましてそうなっているわけですが、そういうような試算というのは出ています。

 先ほど申しましたように、これは、過去十年といえば過去十年かと思うんですが、リーマン・ショックとかもあった過去十年でございます。したがいまして、今回の法案の成立をお許しいただいたとしても、まずは、年金額の改定ルールの見直しは、低年金、低所得の方への年最大六万円の福祉的給付、これは平成三十一年十月までにスタートさせるということにしておりますが、その後の平成三十三年度に導入をする予定でございますので、それ以降の話でございます。

 ですから、それ以降、平成三十三年度以降に、例えばリーマン・ショックのようなことが万が一起こってしまって、賃金も物すごく下がってしまうというようなことになったときに、初めてこのルールが適用になる、こういうことになるわけでございます。

 政府といたしましては、しっかり強い経済をつくっていくということで、過去のデフレから脱却をし、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組む、これがやはり何よりも重要であるというふうに考えておりまして、アベノミクスを成功させていくために、政府・与党が一体となって、公明党の皆様にもしっかり御指導いただきながら取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

角田委員 今御説明があったとおり、新ルールが適用されるという事態はあってはならないケースだと思いますし、こうした事態に陥らないようにすること、そのために汗を流すことが政治の仕事だろうと考えます。

 確かに、リーマン・ショック後の世界経済の停滞、長期間にわたるデフレ経済のもとでは、賃金が物価水準よりも下がるという状態が長期にわたって出現し、現役世代の賃金に合わせて調整をしなかったために、賃金に合わせて調整したとした場合に比べ、マクロ経済スライドの調整期間が長期化し、結果として将来の年金の所得代替率の低下を招いたのは事実であります。

 ただ、新たな改定ルールが適用される平成三十三年度以降も過去十年ほどの経済状態が続けば、これはもう年金カットどころの話ではなく、国民生活そのものが破綻の危機に瀕するほどの事態であり、そんな事態に陥らないように政府も経済再生に今全力を傾けているわけですが、将来も好ましくない経済状況が続きそうだから制度を見直すのではないか、結局のところ、この見直しによって年金は下がってしまうのではないかという声も聞かれますので、この点についてもわかりやすく御答弁いただきたいと思うのです。

 なぜ今このルールを見直すのか、改正の必要性について御説明をいただきたいと思います。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、先ほど、リーマン・ショックのようなことが起こった場合ということを申しましたが、そういうことはあるべきではないのであって、そうならないように全力を尽くすというのがまず大前提であろうというふうに思っているわけでございます。

 ただ、過去あったわけですから、もちろん、今後、いかに頑張ったとしても、起きないという保証もないわけでございまして、そうした場合にもやはり備えておかなければいけない、こういう問題意識によるものだというふうに御理解いただければありがたいと思っております。

 もう少し具体的に申しますと、先ほど来御議論がありましたように、今の年金制度というのは賦課方式でありまして、現役世代の保険料で今受給されている高齢者の方の年金に充てるという支え合いの、仕送りのような仕組みということになっているわけでございますけれども、過去の十六年度改定の際、賃金がマイナスになった場合、マクロ経済スライドによる調整が行われなかった、あるいは、特例水準等があって年金水準が維持をされてきた、こういう経緯によって、現役世代の賃金に対する年金受給世代の受取額の割合であるところの所得代替率が相対的に上昇してしまった、その分、マクロ経済スライドによる調整期間が長期化をすることになってしまう、そして、それが続くと将来世代の基礎年金の水準が低下をしてしまう、こういうようなことになってしまったということがあるわけでございまして、この傾向をこれ以上続けてはいかぬということでございます。

 したがいまして、今回は、マクロ経済スライドのキャリーオーバーというものもあるわけですが、その未調整分を先送りせずに、できる限り早期に調整をするということ、それから、賃金に合わせた年金額の改定により、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付にする、こういう方向性での見直しを行うということにしたものでございます。

角田委員 ありがとうございました。

 今、一億総活躍社会というものの実現に向け、希望出生率一・八の実現が掲げられ、少子化対策により出生率が改善した場合の年金財政への影響について、ちょっとお伺いしたいと思うんです。

 合計特殊出生率が一・五を下回った国が短期間にこの低出生状態から脱出できない場合、再びそれ以上の水準を回復する可能性は極めて少ないと言われております。今、政府が掲げるところの希望出生率一・八への取り組みは、ある意味、歴史的な挑戦であると言ってもよいのではないかと思っております。

 そして、この希望出生率一・八への取り組みは年金財政にも好ましい影響をもたらすことになると思っているのですが、この点、出生率が改善しても年金財政にプラスにはならないという主張もあります。希望する出生率の実現は年金にとっても重要だということを国民にも正しく理解していただくことも極めて大事なことだと思いますので、出生率回復による年金財政への影響についても御説明をいただければと思います。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 今の公的年金制度は、繰り返しになりますけれども、現役世代が負担する保険料や税によって高齢者世代を支えるという助け合いの仕組み、いわゆる賦課方式ということになっておるわけでございます。したがいまして、出生率が改善をして将来の年金の支え手が増加をするということになりますと、将来の給付水準の確保につながる、これはもう、そういう仕組みということになっているわけでございます。

 具体的に申しますと、平成二十六年の財政検証のときに、合計特殊出生率が二〇六〇年に一・六〇となる高位推計の場合、高い推計の場合と、一・三五という出生率、中位推計の場合、これを比較しますと、マクロ経済スライドの調整期間が、高位推計の場合、出生率がよかった場合の方が五年から九年短縮をする、そして、その結果、将来の所得代替率がおおむね三%から五%上昇する、こういう形で、出生率が違うとそのぐらい将来の所得代替率が違ってくる、こういうような計算になっているわけでございます。

 このように、賦課方式を基本とする年金制度においては、出生率が年金財政に与える影響は大変大きゅうございまして、ですから、政府として、一億総活躍社会だ、あるいは、今後、働き方改革ということも進めて、しっかりとお子様を産み育てやすい環境を整える、こういうことに全力で取り組むこととしているわけでございます。

角田委員 ありがとうございます。

 ここまで話を伺ってきまして、将来にわたって年金制度を持続させていく、そのためには、全ての世代に制度に対する信頼感を持ってもらうことが何よりも重要なことであり、不測の事態が起きても現役世代の年金の水準が著しく低下しないよう、これはあくまでも現に年金を受給している方々の理解と納得を得られる範囲でということになろうかと思いますが、不測の事態への備えとして調整ルールの見直しを行うことも必要だろうと思います。

 そして、何よりも肝心なことは、そうした不測の事態に立ち至らないために、いたずらに将来に対する不安をあおるのではなくて、経済再生への歩みを強く進めること、少子化対策を含め、国民生活の向上、よりよい未来とするために汗をかくこと、それこそが政治のやるべき仕事であるとの思いを強くいたしております。

 いかに制度に対する信頼を醸成していくのかという観点から質問を続けさせていただきます。

 公的年金の給付水準は、今後、長期にわたって右肩下がりで低下し続ける局面にあって、したがって、若い世代ほど自助努力というものが求められることになります。

 年金に限らず、社会保障制度は、国民、とりわけ現役世代の理解の上に成り立つものであるということを考え合わせると、理解を得るための取り組みというものがこれからますます重要になってくる。そして、私自身は、これが最も肝心なところだとも考えております。

 そうした意味で、一昨年、「社会保障を教える際に重点とすべき学習項目の具体的内容」という高校生向けの教材をまとめられました。

 こうした教材が教育の現場で積極的に活用されるべきだとの観点から、昨年もこの厚生労働委員会で、どの程度活用されているのか、実態を伺わせていただきましたが、その際は、全国の五千の全ての高校に配付をし、また、教え方について研修、研究をやっていて、こちらの研修参加者も既に一千人を超えている、さらに、今年度からは中学校を対象に拡大をしていく方針ということでありましたが、学校現場で社会保障というものを理解してもらう取り組みはどの程度進んでいるのか、現状についてお伺いしたいと思います。

馬場大臣政務官 角田委員にお答え申し上げます。

 公的年金を含めた社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくことは重要な政策課題であり、将来の社会を担う若い世代に社会保障の意義を正しく理解いただき、当事者意識を持って考えてもらうことは大変重要なことであります。先生にはいつもそのことで御指導いただいていると伺っております。

 厚生労働省としては、委員今御指摘のあったとおり、高校生向けに作成した参加型の授業に資するワークシートや映像教材を全国五千の全ての高校に配付するとともに、各地の教育委員会等の場において、それらの教材の活用方法について、これも御紹介いただきましたけれども、累計一千人以上に対しての研修を実施してきたところであります。引き続き、作成した教材の活用方法について研修を実施してまいりたいと存じます。

 さらに、高校の教育現場において教材を活用した授業がより行いやすくなるよう、授業の補助となる資料等の作成について検討するとともに、中学生を対象とした社会保障教育を行う際の課題や必要な対応について、現役の教職員の方々の御意見をいただきながら検討を進めてまいりたいというふうに存じます。

 引き続き、文部科学省との連携のもと、さまざまな機会を捉えて、教育現場において社会保障教育が正しく教えられる環境づくりに取り組んでまいりたいと存じます。

角田委員 この教材の中でも、年金保険を含む社会保険は、病気、障害、失業、死亡などのさまざまなリスクに対する防貧の働きをしているとした上で、公的年金の意義として、「日本の公的年金制度は、現役世代全員で拠出した保険料を仕送りのようにそのときの高齢者などに給付する仕組みであり、」「予測できないリスクに対して世代を超えた社会全体で事前に備えるものである。」と記述をされております。

 翻って、昨年も、企業年金加入者をふやそうと、現在働く人全体の二五%からさらに引き上げていこうと、老後に向けた個人の自助努力を支援する環境づくりの一環として、中小企業向けの簡易型DCの創設であるとか個人型DCの対象の拡大、年金資産の持ち運びの拡充などを図る法律も成立をしましたが、公的年金の給付水準が今後徐々に低下していく見通しの中で、老後の生活を支えるための自助努力を支援するということが徐々に前面に出てきているわけですが、例えば、その途上で重度の障害を負ったような場合、そのようなリスクに実際に直面した場合の防貧の働きをこの先どのように確保していこうとお考えなのかということについてもお伺いしておきたいと思います。

 公的年金の給付水準の低下に伴って、障害者の年金についても当然に給付の水準というものが低下していくわけですが、自助努力を後押ししようという一方で、リスクに対する防貧ということをいかに確保していくのか。現在の仕組みのままで確保できるとお考えなのか、それとも、将来的には新たな仕組みが必要なのか、この点について御見解を伺っておきたいと思います。

馬場大臣政務官 お答えします。

 公的年金制度は、老齢、障害、死亡によって生活の安定が損なわれることの防止を主たる目的としており、被保険者期間中に傷病を負い、一定程度の障害の状態に該当した場合には、障害基礎年金や障害厚生年金が支給されております。

 加えて、障害基礎年金を受給している方に対しては、今後予定しております年金生活者支援給付金により、障害一級の方は年七万五千円、障害二級の方は年六万円が年金と同時に支給され、年金と相まって、今まで以上に障害のある方の生活を支えることになると考えております。

 さらに、重度の障害を有し日常生活において常時特別の介護を必要とする方を対象とした特別障害者手当などもあり、年金関連の給付とともに、障害のある方の生活を支えているところであります。

角田委員 次に、これは衆議院はもう通過しましたけれども、年金機能強化法、受給資格期間を二十五年から十年に短縮する法律が成立をした後の対応について確認をさせていただきたいと思います。

 無年金の解消のためにも、新たに受給資格を得られた方、対象は六十四万人と見込まれておりますが、この方々が漏れなく請求の手続をしていただくために万全の体制を整えることが何よりも重要だろうと思っております。特に、施行後最初の請求手続が円滑に進められること、ここが極めて大事だと考えておりますので、その観点からお伺いをいたしたいと思います。

 六十四万人と見込まれる対象者のうち、最高齢の方は一体何歳になるのか。また、年代別の割合についてもお示しいただければと思います。

馬場大臣政務官 お答え申し上げます。

 今お尋ねのありました年齢別の推計につきましては、まだ出ておりませんので、大変申しわけありませんが、お答えすることができません。

角田委員 万全の準備を、対応するためには、そうしたことも早急にやはり把握しておく必要があろうかと思います。

 対象者は必ずしも一致しませんが、平成二十六年四月からの消費税率の引き上げによる影響を緩和するために実施をされた臨時福祉給付金、この給付金の場合は、申請手続は、市町村から送られてきた案内に同封されている書類、申請書に必要事項を記入して、判こを押して、郵送で送り返せば基本的に手続が完了するというものですが、案内を送付した方のうち、申請した人の割合は、地元にも確認したところ、八割程度だったということであります。

 翻って、新たに年金を受け取るためには、記録確認の必要があるとのことで、書類を郵送でやりとりするのではなく、年金事務所まで出向く必要があります。特に、地方の小規模な市町村にお住まいの方は、年金事務所に出向くのも一苦労だという方、あるいは、そもそもどこにあるのかすらわからない方も多いのではないでしょうか。請求手続の代行を社会保険労務士等に依頼するにしても、手数料は数万円程度が相場だと言われております。十年保険料を払って、受け取る年金額が月額一万六千円という方にとっては、こうしたこともかなりの負担になるのではないかと思います。

 そうした、特に高齢で窓口まで出向くことも困難という方への対応も含めて、準備に万全を期すためには、市町村の協力を仰ぐことも必要ではないかと思っております。そのためには、それぞれの市町村に対象者、対象となる方がどれだけいるのかといった情報の提供であるとか、例えば、市町村の出張所など相談窓口の体制強化のために、人員配置等に対する財政的な措置も含めて考えるべきではないかと思っておりますが、そうしたことまで現状お考えなのかどうか、御見解をお伺いしたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 来年、受給資格期間の短縮に当たっては、高齢者の方々に丁寧に対応していかなきゃいけないと思っておりまして、市町村との連携に関しましても、やはり、請求書を受け取られた方の中には、年金事務所の場所がわからないといったことで市町村に来られる方もいらっしゃるのではないかと思っております。そういう意味で、ちゃんと適切に対応できますように、市町村と年金事務所の連携をしっかりと強化しながら、あるいは、連絡の仕方とかも含めてきめ細かく対応してまいりたい、このように考えております。

角田委員 このことについては、ぜひ万全の対応を進められることを要望させていただければと思います。

 時間が少しありますので、後回しにさせていただいた質問をあと一つだけさせていただければと思います。

 短時間労働者への被用者保険の適用拡大に関して、厚生年金に加入すべきであるにもかかわらず国民年金加入者となっている労働者の適用の促進が、これから公平性確保の観点からもますます重要になってくると考えておりますが、現状の実態の把握、また、適用の促進に向けて、今後どのように取り組んでいくお考えなのか、お伺いをしたいと思います。

馬場大臣政務官 お答えします。

 厚生年金の未加入事業所に対する適用促進については、従来から重要な課題と考え、これまでも懸命に取り組んできたところであります。しかし、一方で、これまでの加入指導は、雇用保険や法人登記簿の事業所情報を活用したものでありまして、休眠法人の情報が混在するなど、精度が低くて、効果的とは言えない状況でありました。

 平成二十七年度からは、国税庁の協力を得て、法人情報の提供を受け、未加入の可能性の高い事業所を把握し、これを加入指導に活用しております。この結果、平成二十七年度は約九万三千件の事業所を適用し、平成二十二年度と比べて約十九倍の加入実績を上げております。今年度に入っても、八月末までの五カ月間で既に約五万件の事業所を適用し、取り組みが加速している状況にあります。

 さらに、現時点で厚生年金の未加入事業所として把握している約六十二万事業所に調査票を順次送付し、その実態の調査を行い、今後、年度内に、その結果を踏まえつつ、さらなる具体的な対策をまとめ、関係機関とも連携し、取り組んでまいりたいと存じます。

角田委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 本日、野党では唯一の質疑者でございますので、よろしくお願いいたします。(発言する者あり)ありがとうございます。

 野党席に誰もいない中で質疑するというのは、私も、あちこちの委員会で発言させていただきましたが、初めての経験でございまして、なかなか、緊張しておりますが、よろしくお願いいたします。

 最初に、冒頭、一言お話ししたいのが、やはり委員長、与党、野党の筆頭理事がおられませんけれども、本当に……(発言する者あり)与党筆頭理事はおられますが、野党の方はおられません。前日の本当に五時とか六時になってようやく委員会がセットされると。きのうは祝日でございましたので、きょうの設定はおととい決まったわけですけれども、おとといもたしか五時ぐらいになって、さらに野党の方々は持ち帰って検討するというような発言もございました。

 そういったことから、野党では私だけがきょう立たせていただくことになったのかなと思いますが、通告するタイミングというのが非常に遅くなってしまいますので、委員会運営に関しては御配慮いただけたらと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、質問に入ります。

 私たち日本維新の会は、社会保障制度について、政府の過剰な関与を見直し、自助、共助、公助の範囲とその役割を明確にすること、受益と負担の公平を確保すること、世代間の協力と信頼の関係を再構築することを基本方針に掲げております。

 現在の年金制度に対しては、結党以来、賦課方式の問題点、年金財政の持続可能性を懸念し、積立方式への移行という抜本的な年金制度改革を提案してまいりました。

 ことし七月に行われた参議院選挙において、例えば毎日新聞の調査では、重視する政策として、年金、医療を挙げた方が二七%と最も多く、次いで、憲法改正一三%などが続いております。

 それ以前、例えば平成二十年八月に内閣府が実施した社会保障制度に関する特別世論調査では、社会保障制度に対して不満、やや不満と答えた方は実に七五・七%に及び、どの制度に対して満足していないのかとの問いに対して、年金制度を挙げた方がほぼ七割に上っております。

 国民にとって、年金制度は、老後の生活を支える仕組みとして定着しているものの、制度に対する不満やその行く先が注目され続けていると言えるのだと思います。

 厚生労働委員会での年金制度改革法案の質疑入りに当たって、国民が不安や不満を感じていることを私たちなりに受けとめた上で、日本維新の会としての提案や考え方をお示ししながら、わかりやすい質疑を心がけてまいりたいというふうに考えております。

 繰り返しになりますが、本日は、去る十一月一日の衆議院本会議にて代表質問した内容と、その答弁を受けて、さらに見解や認識を伺いたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、世代間格差等についてですが、年金制度では、積立金と国庫負担金、納められた保険料と給付債務を見ていくことが必要であり、年金のバランスシートによってその持続可能性が確保できているかどうかを検証することも重要となります。

 平成十六年の年金制度改正により、厚生年金のバランスシート上は資産と負債が全体として均衡することとなりました。それまで過去の拠出に対応する部分について給付債務が超過していましたが、将来の拠出に対応する部分について資産の超過を生み出すことにより均衡させる形となっています。このことは、言い方をかえれば、将来世代の負担を約四百兆円ふやすことで資産の超過を生み出し、それで現役、引退世代の約四百兆円の債務の超過分を賄ったと言うことができます。

 この点、例えば一橋大学の高山憲之名誉教授が、平成十六年制度改正当時や、平成二十二年、民主党政権時に内閣官房国家戦略室に設けた新年金制度に関する実務者検討チームのヒアリングにおいて指摘をされています。将来世代の資産超過が意味することは、払う保険料よりもらう給付が少ないということであり、そういう制度は不信感を増幅させかねないので、中高年層も痛みを分け合うべきというふうに主張されております。

 こうした主張について、厚生労働省の認識を伺いたいと思います。

橋本副大臣 今お尋ねをいただきました件でございますけれども、私たちは賦課方式ということで今の年金制度を運用しているというのは、るるこれまでも御答弁を申し上げてきたところでございます。

 その前に、まず、委員御指摘のように、この年金の問題というのは大変国民の皆様の関心が高いものだと思っておりますし、そうしたものだからこそ、こうした機会で御審議をいただけること、また、河野委員に御質問いただけることは大変ありがたいことだというふうに思っておりますので、そのことをまず感謝申し上げたいと思います。

 その上で、賦課方式ということで考えておりまして、先ほど委員がお示しをいただきました、要するにバランスシート的な考え方というものは、私たちの立場から申し上げると、賦課方式から積立方式に切りかえる場合を考えた場合、若い世代を含む全世代が自分の積み立てに加えて現在の高齢者の給付を賄うことになる、いわゆる二重の負担ということに当たるのではないか、このように受けとめております。

 御案内のとおり、今の公的年金制度は、現役世代が負担をする保険料や税によって高齢者世代を支えるという助け合いの仕組み、いわゆる賦課方式を基本としているものでございまして、この方式では、いわゆる二重の負担に相当する過去期間分の給付は、将来納付される保険料収入等で賄われる仕組みということになっているわけでございまして、二〇〇四年の制度改正等もあったわけでございますが、この仕組みでずっと維持をしてやっている、こういうふうなことでございます。

河野(正)委員 このように、現行の年金制度は、もともと、将来世代の犠牲の上で現役、引退世代の債務超過を穴埋めしたものであると言えるのではないかということであります。

 バランスシート上では、平成十六年の年金制度改正によって、それまでに保険料を拠出した世代とそうでない世代の格差が広がったのではないでしょうか。政府の見解を伺いたいと思います。

橋本副大臣 議論のよって立つところが私どもは賦課方式でということでありますので、ちょっと御指摘どおりの方の回答になっているかどうかと思いますが、二〇〇四年の改正、平成十六年改正では、マクロ経済スライドの導入等を行うことで給付について調整を行っていくという仕組みを導入しております。そういう意味でいえば、むしろ、給付水準を将来に向けて確保するという言い方をして、世代間の公平性を保つとともに、制度を持続可能なものとすることを目的とした改正でございまして、委員からは、世代間の格差が広がったのではないかという御指摘でございましたが、私どもとしては、給付の調整というのを入れることによって、むしろ世代間の格差を縮小させているのではないかというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 根本的に我が党の主張と違っているところがございますので、その辺は難しい議論になるのかなと思います。

 次に、積立金の役割と枯渇の現実性について伺いたいと思います。

 年金財政は、保険料収入よりも年金給付の方が大きいという基本的な構造は変わっておりません。平成二十六年財政検証のシナリオのうち最も経済成長率の低いシナリオでは、積立金が枯渇するというふうにされております。

 政府は賦課方式を現役世代と高齢者世代の助け合いの仕組みと言われますが、積立金が枯渇して完全な賦課方式に移行したのでは、現行の年金制度が維持できなくなるのではないでしょうか。

橋本副大臣 今、積立金についての御質問でございましたが、積立金とその運用収入は、主に、少子高齢化が進行した将来の給付水準を確保するために重要な役割を果たしているものと考えております。

 そもそもの仕組みを申し上げますと、現在の年金制度は、将来の保険料水準を固定した上で、積立金の活用を含め、その固定された財源の範囲内で長期的な給付と負担の均衡を図る仕組みとなっております。政府は五年に一度財政検証を行い、年金財政の健全性を検証することとされておりまして、この仕組みによって、一定の積立金を保有しながら財政均衡を保つことができるように取り組んでいるところでございます。

 委員御指摘のとおり、平成二十六年財政検証におきまして八通りの想定をしたわけでございますが、そのケースのうち最も低い成長のケース、これは、例えば実質経済成長率がずっとマイナス〇・四%、マイナスでずっと経済成長がいくとどうなるかみたいな想定だったりするわけでございますが、そのケースにおいては、将来的に積立金がなくなり完全な賦課方式に移行する見通しということになっております。そういうケースを試算した場合ということです。

 ただ、私たち政府としては、積立金が枯渇するような、ケースHのような経済状態に陥らないように、デフレから脱却し、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでいるわけでございます。

河野(正)委員 積立金の枯渇について、本会議での答弁では、枯渇するような経済状態に陥らないよう、経済の再生に全力で取り組むというふうにお答えいただいておりますが、今の答弁にも若干ありましたけれども、政府はあり得ないことと考えておられるのかどうか、改めて政府の見解をお示しいただきたいと思います。

橋本副大臣 将来の見通し、それは、将来起こることを、どのように、確実に予見するというのはなかなか困難、誰であろうと困難であろうと思っております。

 ただ、まさに年金の将来にわたる持続性というものに御心配をいただいている。ですから、いろいろなケースについて試算をお示しし、八通りについてということですね、そして、一番経済の成長が悪い、もうマイナス成長が続くような場合においては、さっき委員御指摘のような、積立金が枯渇をするというような状況も確かに試算としてはあるねということはお示しをしております。

 ただ、やはりそうしたことが起きないように全力で取り組むというのが政府の姿勢でございますので、どうぞ御理解賜りますように、よろしくお願いいたします。

河野(正)委員 あり得ないようにするということだと思います。

 三つ目の質問に行きます。

 今回の年金額改定ルールが年金の純受取額に与える影響についてお尋ねしたいと思います。

 本会議におきまして、今回の年金額改定ルールの導入によって、各世代の年金の純受取額、給付から保険料を引いたものがどのようになるのか、それによって世代間格差がどの程度是正されるのかを質問いたしました。

 数字について答弁がありませんでしたので、改めて政府の見解をお示しいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 数字というふうに今ございましたが、まず、考え方として、今回のいわゆる賃金スライドルールの見直しにつきましては、賃金が物価よりも低下をするという望ましくない経済状態となった場合でも、所得代替率が上昇しないように備えて、将来世代の年金水準をしっかり確保するために行うものでありまして、今回の見直しは、世代間の公平を確保し、世代間格差がこれ以上広がらないようにしていくための必要な措置であるわけで、それは、とりもなおさず、デフレのもとでのルールの改定、こうなるわけであります。

 世代ごとの給付と負担の関係を考える際には、例えば、家庭内での扶養から年金制度を通じた社会的な扶養への移行という時代の変化などを考慮することが必要であって、そもそも、保険料負担と受け取る年金額の対比のみで世代間の公平性を論じることは必ずしも適切ではないのではないかというふうに考えております。

 きょう山下委員の配られた、これはパネルにもなっていましたが、自分が掛けた保険料の何倍もらえるかというのが配られておりましたが、今の七十歳代で五・二倍もらえて、今の二十歳代だと二・三倍になる、こういうのがありますが、七十歳代の方々は、あるいはそれより上の人たちというのは、言ってみれば、倍率が高いんだろうと思いますけれども、それは、仕送りなどを一方でしていた世代の人たちがそういう倍率を受け取るということが起きていて、今の二十歳代は二・三倍とか、三十でも二・三倍ですけれども、こういう世代は、社会的に年金制度が充実をしていることによって、みずから仕送りをするということは私的にはなくなっている。

 こういうこともありますので、割得、割損、いろいろ言い方はありますが、ここはやはりトータルで考えていかなければいけませんし、何よりも大事なのは、世代間の公平を確保して、格差がこれ以上広がらないようにする、それが今回のスライドによる是正ということで、お互いの分かち合いという考え方をさらに徹底しよう、こういうことだというふうに思います。

河野(正)委員 もう一問予定しておりましたけれども、時間が来ましたし、今のお答えの中に一部入っていたと思いますので、これで質問を終わりたいと思います。

 また、改めまして、次の機会に年金問題を国民の皆さんにわかりやすいように議論してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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