衆議院

メインへスキップ



第7号 平成28年11月16日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十八年十一月十六日(水曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      あべ 俊子君    赤枝 恒雄君

      秋葉 賢也君    岩田 和親君

      江渡 聡徳君    大隈 和英君

      鬼木  誠君    木原 誠二君

      木村 弥生君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      瀬戸 隆一君    田中 英之君

      田畑 裕明君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    豊田真由子君

      中川 郁子君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    福山  守君

      藤原  崇君    堀内 詔子君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      和田 義明君    阿部 知子君

      大串 博志君    大西 健介君

      岡本 充功君    郡  和子君

      玉木雄一郎君    中島 克仁君

      長妻  昭君    初鹿 明博君

      牧  義夫君    水戸 将史君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   財務副大臣        大塚  拓君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   総務大臣政務官      島田 三郎君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  鈴木 俊彦君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     鬼木  誠君

  豊田真由子君     和田 義明君

  村井 英樹君     岩田 和親君

  岡本 充功君     玉木雄一郎君

  中島 克仁君     大串 博志君

  初鹿 明博君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     村井 英樹君

  鬼木  誠君     田畑 裕明君

  和田 義明君     藤原  崇君

  大串 博志君     中島 克仁君

  玉木雄一郎君     岡本 充功君

  牧  義夫君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  藤原  崇君     瀬戸 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     豊田真由子君

    ―――――――――――――

十一月十六日

 労働基準法の一部を改正する法律案(井坂信彦君外六名提出、第百九十回国会衆法第二七号)

は委員会の許可を得て撤回された。

同月十四日

 さらなる患者負担増計画の中止に関する請願(古本伸一郎君紹介)(第四一四号)

 同(大西健介君紹介)(第四五九号)

 同(岸本周平君紹介)(第四六〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四六五号)

 同(古川元久君紹介)(第四六六号)

 同(吉川元君紹介)(第四六七号)

 同(大平喜信君紹介)(第四七〇号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第四七一号)

 同(福島伸享君紹介)(第四七五号)

 同(堀内照文君紹介)(第四八一号)

 同(小沢一郎君紹介)(第五一九号)

 じん肺とアスベスト被害根絶を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四一六号)

 同(池内さおり君紹介)(第四一七号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第四一八号)

 同(大平喜信君紹介)(第四一九号)

 同(笠井亮君紹介)(第四二〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四二一号)

 同(斉藤和子君紹介)(第四二二号)

 同(志位和夫君紹介)(第四二三号)

 同(清水忠史君紹介)(第四二四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四二五号)

 同(島津幸広君紹介)(第四二六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第四二七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四二八号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第四二九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四三〇号)

 同(畠山和也君紹介)(第四三一号)

 同(藤野保史君紹介)(第四三二号)

 同(堀内照文君紹介)(第四三三号)

 同(真島省三君紹介)(第四三四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四三五号)

 同(宮本徹君紹介)(第四三六号)

 同(本村伸子君紹介)(第四三七号)

 同(吉川元君紹介)(第四六八号)

 安心・安全の医療・介護に関する請願(赤松広隆君紹介)(第五二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第五四号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(井坂信彦君外六名提出、第百九十回国会衆法第二七号)の撤回許可に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言申し上げます。

 去る十一月四日の当委員会の運営につきまして、円満なる運営ができなかったことに対し、まことに遺憾に存じます。

     ――――◇―――――

丹羽委員長 第百九十回国会、内閣提出、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房年金管理審議官伊原和人君、労働基準局長山越敬一君、年金局長鈴木俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時十五分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井坂信彦君。

 この際、井坂君に申し上げます。

 井坂君の配付資料につきましては、一部につき理事会での合意が得られておりませんが、委員長の判断により、特別に許可いたしました。今後、資料の扱いにつきましては、引き続き理事会で御協議をお願いしたく存じます。

 なお、資料の御使用に当たっては、国民に誤解を与えぬよう御留意されることを望みます。

 井坂信彦君。

井坂委員 冒頭、ここまで委員会の開催がおくれました、そして今、委員長から、資料が一部、出すべきではない、こういう話があったんですけれども、この資料なんですが、(パネルを示す)このパネル、このパネルの……(発言する者あり)いや、理事会の議論で、一体このパネルを理事会で何で出したらだめになったのか。配付は、資料はしていただいているんですよ。配付は、資料はしていただいているんですけれども、この……

丹羽委員長 井坂委員に申し上げます。

 合意できていないパネルはしまってください。

井坂委員 このパネル、特にこの、所得代替率が三割マクロ経済スライドで下がりますと。それに対して、基礎年金が五万円、基礎年金が五万円で、これが……

丹羽委員長 再度、井坂委員に申し上げます。

 理事会で合意ができていないパネル資料については御提示を許可できませんので、おおさめいただきますようお願いいたします。

井坂委員 この資料を出させていただいて、議論をさせていただきたいんですよ。(発言する者あり)

丹羽委員長 井坂委員に申し上げます。

 理事会で合意ができていないパネル資料の掲示につきましては御許可できません。(発言する者あり)

井坂委員 うそ、うそではないですよ。

 この件は、もともときょうのメーンでありますから、また後ほど配付資料に基づいて議論させていただきたいというふうに思います。

 本日、冒頭、理事会が非常に時間がかかりましたのは、この件も大きかったんですけれども、ほかにも三点、与野党の合意がとれずに、また本委員会が委員長の職権で開催をされたわけであります。そのことについては、やはり強く抗議をさせていただきたいというふうに思います。

 理由は、大きく三つです。

 一つは、年金カット法案が発動したら、高齢者と、それから将来世代にどのような影響があるのか、本日に至るまで基本的な試算がなされていないということであります。

 二つ目に、電通過労死事件で問題となった長時間労働に関する集中審議が、参議院ではあすの定例日で開かれるのに対して、衆議院ではいまだに日程の確約が得られない。理事会の中では、もうこの年金カット法案の議論が終わるまでは、電通過労死事件の集中審議、長時間労働の審議はしない、こういうことであります。

 三点目には、委員長から冒頭御発言がありましたけれども、本会議の開催を議運が調整している最中に、委員長が野党の反対を押し切って職権で四日に強行開催をした。この委員会についての御認識。また、冒頭は、何と、けさに至るまで議運委員長に事実確認もされていなかったということで、理事会が途中で休憩をされて、そして、ここに至っているわけであります。

 本日も極めて遺憾な委員会でありますけれども、私にとっては法案審議の初日ということでありますから、年金カット法案で、きょうは将来世代の年金額がどうなるのかというテーマで質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 まず一点目に、試算の出し直しについて伺います。

 本法案は、パートへの雇用保険の適用拡大や、産前産後の国民年金保険料免除、また、GPIFの組織見直しや年金機構の不要財産処分など、さまざまな内容が含まれる大規模な法案であります。

 その中に、物価・賃金スライドの見直しという項目があり、どうも年金額が今より減るらしい。当然の疑問として、今よりどれだけ減るのか、厚労省に尋ねても答えがなかったので自分で手を動かして試算をしたのがこちらです。これは、既に予算委員会初めさまざまな委員会で何度も出させていただいているパネルであります。これは、政府側が、今回年金カット法案で減るとしたらどれだけ減るんですかと、全く明確なお答えが事前になかったので、ちょっと自分で手を動かして計算をいたしました。

 過去十年と同様の物価・賃金改定率のもとでは、年金カット法案があるときとないときで五・二%も差が開く、こういう計算結果になりました。そして、これを見て二週間後に政府が出してこられたのが、政府試算、高齢者の年金カットは三%、そして将来世代は七%ふえる、こういう試算を出してこられたわけであります。

 高齢者の年金が過去十年の物価・賃金改定率でどれだけ減るのか、差が開くのか、ここについて、私は五・二%減るんじゃないか、そして政府側は、いやいや、年金が減るのは三%なんだ、こういう数字の開きはあったわけであります。

 しかし、この間委員会で議論を詰めた結果、政府の試算でも、途中までは私と同じ、当然、同じ計算をしているわけですから、途中までは五・二%という数字が計算過程で出ており、そして、政府の試算は、最後に、可処分所得割合の減少分、こういうものを二%つけ加えて、その差がもろに、こちらの五・二%とそちらの三%、三・一%かもしれませんが、そういう差につながっているということで、見解の相違ということに今はなっております。

 私は、二つのものを比べるときに前提条件をそろえるのはもう基本中の基本であり、政府試算のように片方だけ二%のげたを履かせるということはあり得ないと思いますが、しかし、私の、この年金カット法案で五・二%減るんじゃないか、一方、政府試算では、年金カット法案で三%減るんじゃないか、この差というのは、単純にそこだけの違いでありました。

 一方で、将来世代の年金が七%もふえるという政府試算については、これは年金カット法案と全く関係のない試算であるということを強く申し上げたいと思います。

 配付資料の四をごらんいただきたいと思います。上が政府の将来試算、そして下が我々が求める法案審議の前提とすべき基本的な将来試算であります。

 政府の将来試算というのは、これは、二〇〇五年から長期にわたりカットを継続しましたよという前提。そして、二〇〇五年から特例水準もなくしましたよという前提。そして、試算の方だけ可処分所得割合減少分をなしにしている。そしてさらには、ここがポイントですけれども、二〇一六年以降、年金カット法案の発動は二一一〇年まで一切なし、こういう前提で政府試算を出されております。年金カット法案、年金カットは起こらないからということで年金カット法案とは関係のない試算になってしまっている。

 一方で、我々が求める将来試算、これはもう極めて素朴で基本的な試算であります。年金カット法案が発動したら高齢世代と将来世代がどうなるんでしょうか、この試算を出してください、このことをもう一月前から繰り返し繰り返し要求をしています。当然、年金カット法案の発動後の試算でありますから、早くとも二〇二一年、平成三十三年の法施行後にカットが始まったとすればという一定の前提を置いて試算をすることになろうかというふうに思います。

 まず、大臣にお伺いをしたいんですけれども、この資料四の上の政府の将来試算、これはそもそも年金カット法案の試算ですらない。これは私は、速やかに撤回をしていただいて、そして我々が求める、法案審議の本当に前提となるべき素朴な基本的な試算を求めています。

 年金カット法案が二〇二一年以降に発動したらどうなるのか、この大前提となる試算を改めて提出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 将来年金確保法案についてのお尋ねだと思いますが、もともと、この試算を出せと言われたのは、井坂委員がおつくりになられたものについて政府はどうなのかということでありますから平成十七年からの試算をお出しした、こういうことでありますので、何らおかしなことをやっているわけでは全くないということでございます。

 そもそも、今回の額の改定ルールの見直しは、賃金が物価よりも低下するという望ましくない経済状態となった場合でも、所得代替率が上昇しないように備えるとともに、将来世代の年金水準をしっかりと確保するというために行うものでございます。

 そもそも、政府としては、物価、賃金がともにプラスとなる経済をしっかりとつくっていくということを想定しているわけでありますので、御指摘のように、今回の改定ルールが将来発動するような経済前提を置いた試算を行う考えはございません。

 なお、仮に議員御指摘のような試算を行う場合でも、基礎年金が三%低下する時期がいつになるかなどの前提条件の置き方次第では結果がどうにでも変わってしまいますので、一概に将来何%改善するかは申し上げられないということは何度も申し上げてきたところでありまして、足元の給付水準が上昇すれば将来の給付水準は低下するという構造に変わりはございません。

 また、今回の改定ルールが早期に適用された場合の方が将来の年金額の上昇幅は大きくなって、早期にこの改定ルールを導入した方が将来世代の年金額の確保につながるものと考えております。

 今回の改正はあらゆる事態に備えて見直しを行うものでございますが、政府としては、何よりも重要なことは強い経済をつくること、繰り返してまいりましたが、強い経済をつくっていくことが大事でありまして、そのため、デフレから脱却をし、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでいるところでございます。

井坂委員 この配付資料の四の上と下のグラフを比較していただければと思うんですけれども、上の政府試算の方は、やはり二〇〇五年から二〇四〇年あたりまでずっとカットが続くという前提になっているんですね。当然、これだけの面積、カットが続いたら、それがさらに運用利回り四・二%という中で長期にわたって複利運用されて物すごく膨らむ、それが右側の政府が言うところの、何か七%上がるんだ、こういうところにつながっているんだろうというふうに思うんですけれども、ただ、これは、繰り返しますけれども、そもそも年金カット法案が一度も発動しないという前提での試算。

 やはり、我々が求めているのは、二〇二一年以降に、一定の前提は置いて、年金カットが発動したら、それに見合って将来世代の年金はどれだけ影響を受けるのか、こういうことなので、明らかにこれは、上の政府試算に比べてこの年金カット法案がもし発動したらという試算をすれば、どういう前提を置いても、この上と下の左半分の面積を比べていただければ一目瞭然でありますが、カットの総量は少なくなる、当然、将来の世代に与える影響も少なくなるということだろうというふうに思います。

 このことは、実は大臣も既に委員会で認めておられる話でありまして、資料五のところに、十月二十一日の厚生労働委員会の議事録をつけさせていただきました。

 今と同じような話です。政府試算は二〇〇七年、まあ二〇〇五年からすごい長い間カットしてようやくそうなる話だ、一方で、実際、この年金カット法案でどうなるかというと、最速でも二〇二一年からカットが始まったってせいぜいこの程度じゃないですかと私がお尋ねをして、ちょっといろいろと答弁の調整の時間があって、速記をとめてくださいということになって、塩崎大臣がまた再開後に答弁をされたのが、これは傍線を引いてありますが、平成十七年、二〇〇五年からルールを当てはめたらということで計算をして、それに見合う将来世代の代替率アップがどうなるのかといえば七%だということを申し上げたわけで、今御指摘の、二〇二一年、平成三十三年、このときからやったときは、調整期間が短くなるという意味において、この上がり幅、いわゆる将来世代の上がり幅が小さくなるということは、それはそのとおりだというふうに思いますと答弁をされています。これは、私も至極そのとおりだと思う納得のできる答弁であります。

 要は、政府試算と比べて、本当に真面目に、カット法案、二〇二一年以降に発動したらどうなるのかという試算をやれば、当然七%アップなどにはならずに、非常に小さな影響にならざるを得ないということだと思います。

 では、本日、私、この法案審議の初日でありますけれども、ここに至るまで政府側から将来試算が出していただけませんでした。これは大変遺憾に思いますが、しかし、では一体将来世代にはどれだけ影響があるのかということで私がまた試算をしてまいりました。これは年度ごとに試算をしてまいりました。それが次の配付資料の六番です。

 エクセルで百五年分の計算ですので、非常に字が小さくなってしまって、きつい方にはきつい、大変申しわけないんですけれども、これは、一番上の段が結論です。左半分は政府試算、そして右半分は井坂試算と書いてありますが、私の試算であります。

 政府試算はどういう前提かというと、二〇〇五年から特例水準なし、そしてカット法案あり、こういう前提で、三%カットだと将来は四・九%アップ、これは七%と書きたかったところなんですが、これはマクロ経済スライドで、後ほどやりますけれども、所得代替率が三〇%減った後の残りの七〇%に対する七%ですから、実際は上がり幅としては四・九%ということになってしまうんですが、政府試算では三%カットで四・九%。私の試算では、これは二〇二一年から十年かけて三%カットに至るという前提を置いたときは、三%カットで将来世代が上がるのはちょうど二%アップだ、こういう試算結果であります。

 政府試算と私の試算の最大の違いは、この資料六の点線で囲んでいるところ、要は、どれだけ長い期間カットをしているかというのが最大の違いであります。政府試算はこの左側の点線で囲んだ長いところ、二〇〇五年以降、ずっとカットをしている。上の方の数字がいろいろばらつきがあるのは、これは、次の資料七のところで、実際、厚生労働省年金局から数字をいただいて、それを当てはめております。

 一方、私の試算の方は、右側の縦の点線、これは政府試算の半分ぐらいの期間しかそもそもカットをしていない。当然、二〇二一年以降の話でありますから、最速でカットを始めても、こういうことになる。

 ここが最大の違いになって、それが、カットの総額が、スプレッドの利率一・七%で五十年、五十五年と複利運用された結果、右辺の、右側のアップ累計になる。この両者を比較して数字をやると、私の試算では、年金カット法案で仮に三%カットというような事態が起こったとしても、将来世代のアップ率は二%程度だということであります。

 ちなみに、これはちゃんと高齢者の人数、老齢基礎年金の受給者数も年度単位できっちりと定めて、これは政府資料をもとに、政府資料の数字がない五年、十年のあきの時間は、これは順番に案分をして、老齢基礎年金の受給者もしっかり掛け算をして出した数字であります。スプレッドの利率も、そしてその運用の期間もきちんと反映をさせて行った試算であります。

 このように、私なりに試算をさせていただきました。バックデータも全てこれはお渡しをして、また世間にも公開をした上で、大臣に通告どおりお伺いをいたします。

 年金カット法案が二〇二一年以降に発動して、基礎年金が三%、これは所得代替率にして一・一%カットされた場合、マクロ経済スライド終了後の現役世代、将来世代の基礎年金は、現状より二%、所得代替率にして〇・七%しか改善しないのではないでしょうか。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げるわけでありますけれども、我々のこの将来年金確保法案で意図しているところは先ほど申し上げたとおりであって、もともと、平成十七年からの試算を政府で試算し直せというから、平成十七年からの前提を置いた試算をやっているわけでありまして、それでいけば将来世代は七%アップするということ、御指示どおりやった結果が七%だったということは繰り返し申し上げておきたいというふうに思います。

 私どもとして、先ほど申し上げたとおり、もともと、賃金、物価が両方上がることで毎年のスライドもプラスでいけるということをやはり目指しているわけですし、そういうことを想定しているわけでありますので、今回御提起申し上げている万が一のときのケース、デフレのとき、これは、民主党政権時代に、マクロ経済スライド発動のためにも、デフレ下のルールの適用のあり方について宿題として残っていた。

 このことについて私どもは答えを出しているわけで、平成二十一年の財政検証で既にデフレにおける問題点というのが指摘をされて、当時、まだ自民党のときに出てきた検証の結果でありましたけれども、それを受けて民主党政権がお考えをいただいて、一体改革としてその中に、この宿題としてデフレのもとでのルールのあり方ということを御提起いただいて、私どもも三党合意の中でこれも受け継いでやって、今回の直近の財政検証でも、やはりデフレの問題については、きちっとルールを定めることによって、代替率が上がってしまって、マクロ経済スライド調整期間が長期化をし、なおかつ基礎年金の代替率が下がってしまうということを避けるためのルールとして、今回、将来年金を確保するという、まさに未来への責任のために私どもが御提起を申し上げているということであります。

 いずれにしても、今回、今御自身でいろいろな前提を多分お置きになって試算をされたんだろうと思うので、これはこれで議論のもととして多とするところでございますけれども、私どもは、将来、今回の改定ルールを発動するような経済前提を置いた試算を行う考えはないというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。

井坂委員 いや、政府がやっていただけないということなので、私がもう本当に全部、計算過程も含めてお示しをしているわけですから、再度お答えいただきたいんですが、要は、年金カット法案で三%カットということが仮に起こっても、私は、絶対起こるとか、起こってほしいと言っているんじゃなくて、これは試算ですから、仮に起こっても将来世代に対する影響はせいぜい二%ですねと。これは御答弁いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますし、きょう引用していただいた私の議事録も同様のことを申し上げているわけでありますが、どういう前提を置くかによって数字は変わるのでございますので、二%、七%、どうのこうのという数字を具体的に申し上げるようなことはできないということだと思います。

井坂委員 どういう前提を置くかということで、まさに先ほど配付資料の六でも御説明しました。配付資料の四でも御説明をしましたけれども、政府試算は、二〇〇五年から、私はそんな要望を出したつもりはないんですけれども、二〇〇五年から長期にわたってカットしたら、それは将来世代には大きな影響がありますよと。ただ、実際この年金カット法案は早くて二〇二一年でありますから、それも初年度にいきなりカットがあるわけでも本当はないんでしょうけれども、それは最速でカットがあったとしても、将来世代へ与える影響はせいぜい二%だ。これは十月二十一日の大臣の議事録でも、数字はおっしゃらないですけれども、まさにその構造は答弁でお認めのとおりであります。

 この件は、大臣は将来年金確保法案という名前を今広めようと努めておられるんだというふうに思いますけれども、将来年金の確保とおっしゃるけれども、しかし、この年金カット法案は実は将来世代に与える影響というのはせいぜい二%、所得代替率にして〇・七%。しかも、当の大臣がそもそもこれは発動しませんとおっしゃっているんで、発動しない限りは将来世代への影響は、極論すればゼロだということでもあります。

 マクロ経済スライドとの関係についてお伺いをしたいんですけれども、このパネル資料の二と書いてある資料を、配付はしております、このパネル資料の配付資料をごらんいただきたいというふうに思います。

 将来世代の基礎年金は三割カットされるわけであります。これはどういう計算かといえば、基礎年金の所得代替率、現状、このパネル資料二と書いてあるものですね。この基礎年金の所得代替率は、現状三六・八から二六・〇まで下がる。これがちょうど三割に当たるわけで、これが青いグラフで示されて、マクロ経済スライドで基礎年金の所得代替率が三割下がりますよという図であります。三割、三〇%、これに対して、年金カット法案の将来世代への影響はわずか二%ということであります。

 所得代替率が三割減るというのがどういうことなのか、この点で、これは現在の所得水準に置きかえれば、まさに、基礎年金、今、平均月五万円ですけれども、この平均月五万円の基礎年金が平均月三万五千円にまで落ち込む。今の所得水準に合わせれば、まさに五万円が三万五千円になるということそのものであります。

 事前に理事会でこの点、田村筆頭理事と大分激論を交わしたわけでありますけれども、恐らく政府が答弁でおっしゃるのは、何か、物価で割り戻したらそんなに減っていませんよという答弁だというふうに思います。その図は、また資料の八の方でおつけはしております。

 現状の基礎年金の平均月額五万円が、これが所得代替率、マクロ経済スライドで三割カットされてしまうと、基礎年金平均月額三万五千円しかもらえなくなるのと同じだ。これは私は大問題だというふうに思います。年金カット法案の効果は、せいぜい将来世代の基礎年金が三二%カットが三〇%になりますよという程度の話でありますから、まさにこのマクロ経済スライドの破壊力の前では焼け石に水だというふうに思うわけであります。

 大臣にお伺いいたしますが、マクロ経済スライド終了後の現役世代、将来世代の基礎年金は現在の所得代替率三六・八から二六・〇へ三割も減ってしまいますが、年金カット法案はこの問題の解決には全く役に立たないのではないですか。

塩崎国務大臣 恐らく井坂議員はよくわかった上でおっしゃっているんだろうと思うんですが、名目下限というのがあることを申し上げておかないといけないというふうに思います。

 この法案は、将来の年金水準を確保するという法案でありますので、中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大、あるいは国民年金の産前産後期間の保険料免除、年金額改定ルールの見直しなど、今回一度に提案をしているわけでありますけれども、これらはいずれも若い世代が将来高齢期となったときに受け取る年金の水準の確保を図るというものであります。

 その中で、今お取り上げをいただいている年金額の改定ルールの見直しについては、平成二十六年度までは本来よりも高い水準の年金が支給をされていた中で、マクロ経済スライドが発動されずに、さらに、現役世代の賃金が下がったときに負担能力に合わせて年金額を下げるということをしなかった、このことによって、今の高齢者の基礎年金の給付水準が約一割上昇をし、その分マクロ経済スライド調整の終了期間が先ほど申し上げたようにおくれて、さらに将来の基礎年金の給付水準が約一割低下したことを背景とするものであります。

 今回の見直しによって、若い世代の方々が受け取られる年金の水準が御指摘の水準よりさらに下がることを未然に防止し、未然に防止するということが大事でありますが、世代間の公平性が確保されることになるわけであります。だからこそ、将来年金確保法案、こう申し上げているわけであります。

 なお、平成十六年改正で導入をされたマクロ経済スライドは、一・二人で一人の高齢者を支えることになりますが、二〇五〇年、平成六十二年においても年金制度を次世代に引き継いでいくために必要な仕組みと考えているわけでありますので、それが今いろいろ下がってしまうというお話を強調されておりますけれども、もし対案があるのであるならば、ぜひ財源も含めて御提案の上で議論を深めるということが建設的かつ有意義ではないかというふうに思います。

井坂委員 ちょっと答弁がいま一つはっきりしませんが、マクロ経済スライド、三割カットされるわけですよ、この青い線で書いてありますけれども、三割カットされるのに対して、この点線が、まさにこの年金カット法案が発動しなかったときのルートを書いています。

 年金カット法案が発動しなければこの点線のようになって、それは本当にわずかの差は将来世代には与えるんだと思いますが、しかし、先ほど私が資料も含めて全部データもお示ししたように、ここの差というのはせいぜい二%ですよ。それに対して、マクロ経済スライドで所得代替率が落ち込むのは三〇%落ち込むんですよ。ですから、このマクロ経済スライドで将来世代の基礎年金が三割減るという大問題に対して、この年金カット法案はまさに焼け石に水、ほとんど役に立たないのではないですかというふうに伺っています。まして、大臣は発動すらしないとおっしゃっているんですから、役に立たないんじゃないですか。

塩崎国務大臣 先ほども申し上げたと思いますが、三割減るということをおっしゃっている、強調して、不正確であるがゆえに配ることが、配るというかパネルとしては使うなという委員長のお裁きを受けているところに書いてある、絶対水準としての金額ベースでお書きになっているところがありますが、それはやはり意味が違うというふうに考えなければならないというのは、先ほど名目下限の問題を申し上げたわけでありますが、公的年金制度は、年金制度を支える現役世代の負担が重くなり過ぎないように、保険料収入には既に上限が一八・三ということで固定をされています。

 その限られた財源をマクロ経済スライドによって現在と将来の受給世代の間で適切に配分をする、いわば世代間の分かち合いということで、その数字がどうなるか。何%、何というか、削られた面積と、こっちの左側の面積と右側の面積がイコールになるということはそのとおりでありますし、それがゆえに将来の年金を確保するということにつながるわけでありますけれども、その数字が今、三とか二とか七とか五とか、いろいろ出ていますが、それは、どういう前提を置くか、そしてまた実際に何が起きるかということによって決まってくるわけで、そもそも今回のルール自体が、物価も賃金も上がっていけば発動はされないルールでありますから、だから、年金だけで全てを解決しようと言っていらっしゃる今の御主張でいくと、それはやはり政治にはなかなかなりづらいというふうに思います。

 やはり政治は、経済政策も含めて、そしてまた社会保障政策全体でいろいろな立場の方々にしっかりと手を差し伸べていくということが大事でありますので、そのような包括的な、やはり全体の政策をきっちりとやっていくというのが責任ある政治のあるべき姿だというふうに思っております。

井坂委員 将来世代の年金額、年金の給付水準を真面目に考えるときに、この年金カット法案の影響というのは、まさに誤差の範囲としか言いようがない小さな影響であります。政府は発動しないとおっしゃっているのだから、なおさら影響は小さいわけでありますが、一方で、このマクロ経済スライドの影響、将来世代に対する影響というのは、これは金額に直せば本当に甚大であります。

 このパネル資料の三をごらんいただきたいんですけれども、私の問題提起は、将来世代の老後生活は今の仕組みをそのまま続けて本当に成り立つんでしょうかというこの一点であります。

 現在四十代以下の現役世代、将来世代は、老後の厚生年金が二割カット、そして基礎年金は三割カットをされる。

 これは、今の所得水準に直せば、モデル世帯は、二十二・一万円が十七・七万円ですから、まあ何とかなるだろうというふうに思います。ところが、厚生年金は、平均支給額というのは非常に低くなっておりまして、今十四・五万円、それが二割減ると十一・六万円になってしまう。

 国民年金は、三割、マクロ経済スライドで、将来世代、減るわけでありますから、これは満額受け取っておられる方々でも、六・五万円が、今の所得水準に直せば、まさに所得代替率が三割減るわけですから四・五万円。そして、国民年金も、実際の平均支給額はもう今わずか五万円にまで落ち込んでいますから、平均五万円の国民年金がマクロ経済スライドで将来世代は三・五万円まで下がってしまう。これは、まさに今の所得水準に置きかえた正しい生活実感だというふうに思います。

 大臣にお伺いいたしますが、基礎年金の平均支給額、今でさえ五万円しかないのに、これがマクロ経済スライドで将来世代は三割カットされたら、これはさすがに、将来世代の老後生活は基礎年金ではもう成り立たないのではないですか。

塩崎国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、マクロ経済スライドというのは、時間をかけて年金水準を徐々に調整するということで分かち合いを成り立たせているわけでありまして、現在の受給者に配慮をし、マクロ経済スライドによって名目の年金額を下げることはしないという名目下限の仕組みを導入しているので、これ自体は適切なものだと思います。先ほど来、この名目下限を無視した御議論をされているように聞こえますが。

 平成二十六年の財政検証のケースEというのがあります。物価で平成二十六年に割り戻したモデル年金の年金額は、二〇一四年の二十一・八万円に対して、マクロ経済スライドの調整が終了する二〇四三年度は二十四・四万円と増加をしておりまして、それから、基礎年金を夫婦二人で見てみますと、二〇一四年度の十二・八万円に対して二〇四三年度は十二・五万円とほぼ横ばいというふうになっているわけであります。

 その上で、現に低所得や低年金の高齢者への対策、今低年金の方々についての言及がございましたけれども、これはもう社会保障・税一体改革において、参議院の方で先ほど可決をしていただきました、年金の受給資格期間の短縮、それから年金生活者支援給付金の創設、これは平成三十一年の十月、消費税の引き上げと同時にスタートするわけであります、それから医療、介護の保険料の負担の軽減などに取り組むと。特に、年金生活者支援給付金は、保険料納付期間の長短によらずに、受け取る年金額の約八%に相当をいたします、年金と相まって高齢者の生活を支えることになるわけでございます。

 加えて、低所得の方へのきめ細やかな支援としては、生活困窮者自立支援制度というのもスタートしているわけであって、高齢者も含めて、生活保護に至る前の段階にある生活困窮者への相談、就労支援など、包括的な支援を実施しているわけでございまして、年金のみならず、社会保障全体で総合的な対策を打っていく。

 そして、原点は、強い経済をつくっていくことによって、今回、万が一のためのルールを御用意しようということでありますけれども、それが発動しないように、むしろ年金がスライドで上がっていくように、物価、賃金が上昇するような経済政策をとることが最も大事だというふうに思います。

井坂委員 基礎年金の所得代替率は三割減ってしまうという状態で、これがなぜ将来年金確保法案だと大臣は強弁をされるんですか。最後にその一点だけお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 三割、三割というのは、これは代替率の話であるということをもう一つはっきりさせておきたいというふうに思っております。

 マクロ経済スライド自体は、名目下限を前提にして調整が行われることになりますので、単純に、この代替率が三割下がるから年金額も三割下がるというようなことを言っていただくのは不正確ではないかというふうに思います。

井坂委員 予定していた質疑の三分の一ぐらいしかきょうはできませんでしたので、また引き続きしっかりさせていただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございます。

丹羽委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民進党の柚木道義でございます。

 大臣、きょうもよろしくお願いいたします。

 先ほどの井坂委員の、まさに最後の、年金カット法案で三割減額、そして将来は七%増額、こういう試算を出されて、そして、これは安倍総理大臣も、これは発動しない試算だと明確に十一月一日の私の代表質問への答弁で認められている中で、我々が、まさに政府が出されている、これは井坂さんの、これは紙でしか出されませんでしたけれども、所得代替率ベースで三割カットだと。(発言する者あり)いや、井坂さんの資料、いいじゃないですか、何でだめなんですか。

 いやいや、私も、ボードも含めて、(パネルを示す)これは何でだめなんですか、大臣。大臣、何でだめなんですか、これ。(発言する者あり)いやいや、三割、三割カット……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 理事会で合意ができていないパネル資料の掲示を御許可はできませんので、おおさめください。

柚木委員 将来年金カット法案じゃないですか。何でだめなんですか、塩崎大臣。紙で出させていただいて、ボードで出させていただけないというのは前代未聞ですよ。

 安倍総理が、あるいは政府が、七%、五千円、年額で六万円上がるということは発動しないと答弁されましたよ。あり得ない試算を出しておいて、起こり得る将来試算を……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 パネルを掲示するのをやめてください。

柚木委員 きょうまでに出してください、出してくださいということをお願いしたにもかかわらず、政府側は試算を出さずに、なぜ我々が、政府が出している所得代替率ベースで、それぞれ政府が出している所得代替率、平均五万円の基礎年金月額が、将来、私たちの将来世代が受給するころには三割カットで約三万五千円になってしまう。

 何でこの資料を出してはいけないのか。これは委員長に抗議しているんですよ、委員長に抗議しているんです。

 塩崎大臣、なぜこの資料を委員長は出していただけないのか。大臣、おかしいと思いませんか。大臣の見解を教えてください。何でだめなんですか、これを委員会に出しては。

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 理事会で合意ができていない資料のパネルの掲示については御許可できませんので、おおさめください。

柚木委員 いやいや、これは紙はあるじゃないですか。何で紙はよくてフリップは出せないのか。大臣の見解を答えてくださいよ。委員会でなぜこれが認められないと思いますか。大臣の見解……(発言する者あり)いやいや、なぜ認められないと思うかということを大臣に聞いているんですよ。

 私たちは委員会で抗議をさせていただきました。この資料を紙で出させていただけても、ボードでは出させていただけないということについて抗議をしたんです。

 そして、なぜこれを、五万円の基礎年金月額が、将来、我々が受給世代になるころに三万五千円に所得代替率ベースで減るということをなぜボードで出させていただけないかということを、なぜ委員長がそういう判断をされたかということを大臣がどう思われますかということを質問しているんですよ、質問を。

塩崎国務大臣 私の二十三年の国会経験からいきますと、委員会というのは委員長がこれを総理するということでございますので、委員長の御采配に従うというのが普通でありますし、柚木先生、御自身のホームページで「ゆずれない政治姿勢」「与野党批判合戦から与野党対話の政治へ」、こう書いてあります。ぜひこれを地でいっていただくと、いい議論ができるのではないかというふうに思います。

柚木委員 お許しをいただいている私の資料一の、これはボードもお許しをいただいているわけですけれども、安倍総理が、三%、月額二千円、足元では減る、しかし将来は七%、五千円、年額六万円上がるという試算に対して、まさにこの財政検証ケースEに基づく試算でありますが、これは実際には起こり得ませんと。

 起こり得ませんという試算を安倍政権が出してきて、しかも総理が認められて、起こり得る将来試算をきょうまでに出してくださいと言って、出されなかった結果、(パネルを示す)私たちがこの試算を出したら、何で、起こり得ない試算は、つまり、三%下がるけれども将来は七%、五千円、年間六万円上がるということを、まさにこれを国民の皆さんに誤解を与えるから出さないでほしいと与党の方は言われますが、三パー減って七%、月額五千円、年間六万円上がるという誤解がまさに今国民の皆様に広がっていることは訂正も謝罪もされずに、私たちが政府の所得代替率の数値に基づいて、基礎年金、老後の、高齢者の六割の方が年金だけを頼りに暮らしていらっしゃって……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 理事会で合意ができていない資料の掲示については御許可できません。

柚木委員 そのうち四人に一人は基礎年金だけで、国民年金だけで暮らしておられるんですよ。その平均月額を政府の試算に基づいて出したら、何でこっちはだめで、こっちは許されるんですか。

塩崎国務大臣 今回の提案をしている将来年金確保法案、これについての、今回のスライドルールについての政府の試算をということは井坂議員からもお話があって、お答えを申し上げたところでございます。

 今回の額改定ルールの見直しは、賃金が物価よりも低下をするという望ましくない経済状態になってしまった場合も、所得代替率が上昇しないように備えるとともに、将来世代の年金水準をしっかりと確保していくために行うものであります。それが微々たるものだから意味がないかのような御指摘が井坂議員からありましたけれども、それは極めて未来への責任の欠けた政治姿勢だと私は思います。

 どんなに微々たるものであっても、本来下がるべきものでないものを下げるというのは将来への責任を果たすことにはならないというふうに思いますので、二であろうと三であろうと五であろうと七であろうと、将来の年金は確保するというのが私どもの考え方でありますので、ぜひこの法案には、少なくとも未来への責任を唱える政党であれば賛成をしていただきたいというふうに思います。

 そもそも政府としては、さっき申し上げたとおり、物価、賃金ともにプラスとなる経済を想定し、またその努力を重ねているわけでありますので、お求めのように、今回の改定ルールが将来発動するような経済前提を置いた試算を行うつもりはないことは申し上げてきたとおりでございます。

 しかし、足元の給付水準が上昇すれば将来の給付水準は低下する、そういう構造であるわけでありますので、この改定ルールを早期に導入することが将来世代の年金額の確保につながるということでございます。

 今回の改正は、あらゆる事態に備えて見直しを行うというもので、民主党政権時代からの宿題を粛々と果たしつつあるということでありますので、政府としては、何よりも重要なことは強い経済をつくっていくこと、繰り返し申し上げますが、そのため、デフレからの脱却、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでまいりたいと思います。

柚木委員 なぜ、発動するケース試算を行うつもりはないという答弁をされて、それが将来への責任を果たすことになるんですか。起こり得ないケースEの試算を出しておいて、なおかつ、起こり得る発動するケース試算を行うつもりはないというのは、到底未来への責任を果たし得る態度だと言えないと思いますよ。

 これはちなみに、ケースAからHまでの中でも、例えばケースHでも出してくださいよ、政府試算ですから、財政検証の。ケースHは、これは政府の財政検証のバリエーションですから、Hだったら出せるでしょう、大臣。出してください。物価上昇を賃金上昇の方が上回るケースじゃないと出さないと答弁しているじゃないですか、安倍総理が。だったら出してください。ケースH、該当しますよ。

塩崎国務大臣 まず第一に、今回申し上げている新たなルールは、変更するルールといいましょうか、それは、物価が上がり賃金が下がるケース、それと、物価も賃金も下がって賃金の方が大幅に下がるケース、こういうケースについて十分な将来年金への反映ができてこなかった、つまり、そのスライドに十分さが欠けていたのではないか、これが民主党政権時代の一体改革の中でお示しをいただいた、デフレ経済下における手だてということで宿題としてお示しをいただいたわけでありますので、今回それを新たに御提案申し上げて、万が一に備えて将来世代の年金を確保しよう、未来への責任を果たそうという法案でございます。

 今、ケースHについてのお話でありますが、これについても、物価、賃金ともにプラスを前提にしているわけであります。

柚木委員 まさに、大臣が言われるように、物価上昇率〇・六%、賃金上昇率〇・七%、これは上回っているケースですから、これはケースHだと、例えば、ある試算によれば、現在の夫婦年金額、これはモデル世帯二十一万八千円が、二〇三六年度には二十万円、二〇五五年度には十七万八千円、現在の所得代替率六二・七%が二〇三〇年度には五〇パー、二〇五五年には三九パーというような試算もあります。

 ぜひ私は、大臣が本当に将来への責任ある試算をと言われるのであれば、ケースAからHの、物価上昇率よりも賃金上昇率が上回る、こういう試算ももちろん出されたらいいですよ、目指すというのであれば。しかし、今や日銀も物価上昇二%を黒田総裁のもとで諦めて、そして十年中過去六年はまさに年金カット法案が発動されるような状況になっている。安倍政権の、今回の新たに総理になられて以降でも、四年のうち二回は発動されるケースになっているんですから、ぜひ、逆に実際の起こり得る悪い場合の想定も、現実から目をそらさずに、賃金上昇の方が物価上昇よりも下回る場合も含めて、これはオプション試算も活用いただいてケースAからHの中でも出されればいいし、それだったらHでも出してください。

 そして、私たちは、やはり不都合な現実からも目を背けずに、物価上昇よりも賃金上昇が下回ったケースでも、念のためにということで制度をつくるのであれば、このカット法案を強行するのであれば、せめてそのバリエーションの試算も出してください、大臣。

塩崎国務大臣 これはもう何度も申し上げているとおり、物価、賃金ともにプラスとなる経済を想定して、そのように運営をしているわけでございますので、お求めのように、今回の改定ルールが将来発動するような経済前提をあえて置いた試算を行う考え方はないということを申し上げてきたところでございます。

柚木委員 ですから、そういうお考えが本当に未来への責任を果たすことにならないんじゃないんですかと。希望する、まさに賃金上昇の方が物価上昇より上回った方がいいに決まっていますよ。しかし、今や日銀も物価上昇二パーすら諦めて、賃金上昇も上回っていない中で、起こり得る不都合な現実にも目を背けずに、そのようなバリエーションの経済前提で試算も出していただきたいんです。

 その上で、私、資料の二枚目にもつけておきましたけれども、(パネルを示す)(発言する者あり)いや、これが誤解を招くというので出すなというのであれば、二枚目の、現役世代の将来水準が現在より七%上がる、五千円、一人当たり年額六万円上がる、この間違った、国民が誤解をしている年金のアップ率、アップ額、これについても訂正をして、ちゃんとした試算を出し直してください。

塩崎国務大臣 これは、井坂議員のお求めに応じて、計算をあえてしろということなのでしたわけでございますので、三%下がって七%上がるということは、これは計算上そうなるわけでありますから、その数字についていろいろ言われても、私どもとしては非常に困るわけで、出せと言われたから出したということでございます。

柚木委員 減額の三%、二千円と政府は出されましたけれども、井坂委員は、その減額について五・二%、月額何千円だったかな、その五・二%の減額について試算を出しました。ですから、政府が減額の三%、二千円のダウンについて、それは井坂さんの試算を使って、別に求めていませんよ、それで出されたということだと思いますが、増額の七%、五千円の試算まで、そういう前提に基づいて出せとは一言も言っていないんですよ。

 ですから、ぜひ塩崎大臣、安倍総理も十一月一日の私の代表質問への答弁で、将来にわたり今回のまさに財政検証に基づく年金新カットルールが発動されることはあり得ませんと答弁されているんですから、あり得ない試算を出しておきながら、これは全国に、全てのテレビ、新聞、報道されているんですよ、将来七%、一人当たり五千円、年間六万円上がると。これはあり得ない試算だと安倍総理大臣が認めたんですから、こういう、三%、二千円下がるけれども、将来、年間七%、五千円、六万円上がるということは起こり得ないということは、ここで明確に認めてください。そうでないと、総理大臣の答弁と違うことになりますよ。

塩崎国務大臣 今の御発言、失礼ですが、やはり、マクロ経済スライドを含めて、今の平成十六年の法改正に基づく年金制度の仕組みというものを御理解いただいていないか、あるいは、今回我々が、万が一のときのルールをつくっている、そのことの、言ってみれば減る方だけのことを言って、実際これは何のためにやるかというと、分かち合いのためにやっているわけですから、分かち合いのためにできている仕組みでありますので、当然、所得代替率が上がってしまったことによって将来世代が失うものについて、きちっと整理をつけてお示しをするのは未来に対する責任であるわけで、これはもう年金制度の基本であります。

 したがって、先ほど井坂議員がお示しをいただいたように、代替率が上がった分を修正する部分の面積と、将来の年金の受け取るところに本来のレベルまで戻すというところの面積は同じになるわけでありますから、減った分は将来世代の年金を確保するということになるわけですから、当然、セットで出さなければ何の意味もないということだと思います。

柚木委員 総理大臣の答弁を否定されるんですか。もちろん、さっき井坂さんとの議論でも、将来、所得代替率三割カットでせいぜい二%程度の改善という議論はあるけれども、七%、五千円、将来上がるんですかと聞いているんですよ。安倍総理大臣は、そういうことは起こり得ないと答えているんですよ。塩崎大臣、認めないんですか。

 七%、五千円のケースは起こり得ないと安倍総理が、隣に座っていらっしゃいましたよね、塩崎大臣、起こり得ないと答弁したんですよ。七%、五千円、将来上がるんですか、上がらないんですか、ちゃんと答えてください。そうじゃないと、国民が誤解しているところを、そのまま誤解をさせておいた方がいいと思っていることになりますよ。

塩崎国務大臣 総理が申し上げたのは、平成十七年からの試算をいきなりお出しになった井坂試算に対して申し上げていることであって、私どもも、平成十七年から試算をしろということであるから三%だということを申し上げただけのことであって、言われたことをやって怒られる理由は余りないような気がいたします。

柚木委員 いや、それは不誠実な答弁ですよ。全国に向けてわざわざ記者会見まで行って、三%、二千円月額下がっても、将来は七%、月額五千円、年間六万円上がると全国に向かって、全てのテレビや新聞で報道させておいて、誤解を流布させておいて、その誤解については正さずに、そのままの方がいいという答弁は余りに不誠実ですよ。

 これは、七%、五千円、現実に上がるんですか、塩崎大臣。安倍総理は、こういうことは起こり得ないと代表質問で答弁されていますよ。起こり得ないということは、上がらないということではないんですか。

塩崎国務大臣 もともと平成三十三年から導入するもので、そのときの物価、賃金がどうなるかも全くわからないし、そもそも、責任ある政府は、少なくとも我々安倍内閣は責任ある政権だと思っておりますから、その場合には、まず物価、賃金が上がるようにしていくというのが基本であります。

 そもそも、三%、七%は井坂議員からのお求めによって計算をしたので、平成十七年からやった場合の三%に対して将来はどうなるのかということを、受給者の人数が減ることを加味した上できちっと示せば七%になりますねという仮定計算をしろと言われたのでやったのであります。

柚木委員 野党や井坂さんのせいにばかりするのは本当にやめていただけませんか、そろそろ。私たちは、そういう前提で試算を出せとは一言も言っていません。

 だから、これだって、私だって、だめと拒否されたんですよ。(パネルを示す)だからこういうものを出さざるを得ないんじゃないんですか。だからこそ我々は、そちらがあり得ない試算を出すから……

丹羽委員長 直ちに資料の提示をやめてください。

柚木委員 起こり得る試算を、月額の五万円を、これは政府試算ですよ、政府の所得代替率によって、五万から四万八千、四万三千、三万五千と下がる。これを使わせてもらえないんですよ。(発言する者あり)

 どっちがひきょうなんですか。試算を出さない方がひきょうなんですか。これを紙で出させていただいて、ボードでは出させていただけない。なぜなんですか。

 なぜ、あり得ない試算だと答弁をされておいて、私たちは、政府が、これは井坂さんの資料の八ページにもついている、起こり得るこの財政検証ケースEの所得代替率、下に所得代替率がそれぞれ書いてありますよ、この所得代替率に従ってこれを出しているんですよ。政府の数字に基づいて出した試算を、政府の数字に基づいているんです、私たちが勝手に出しているんじゃないですよ。政府の数字に従って、所得代替率で、基礎年金の平均月額ベースで出した試算を、何で提出させていただけないんですか。額が出るのが、そんなに政府にとって不都合な現実なんですか。(発言する者あり)誤解を与えているのは政府の方じゃないですか。

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 ただいまの御質問でございますが、理事会で合意ができていない資料でございますので、あくまでも理事会で合意ができた資料を提示していただきますようにお願いいたします。

柚木委員 では、試算を出してくださいよ、起こり得る試算を。答弁お願いします。

塩崎国務大臣 政府は名目下限を前提にしてマクロ経済スライドを発動するということをお忘れにならない方がいいと思います。

 それから、代替率の低下の問題を言っておられますが、そもそも、私どものこの今回提案をしているのは、代替率が上がって、実際の基礎年金の将来の代替率が下がってしまわないようにするために導入しようというルールであるわけでございます。そういうことをよくお考えいただきたいということ。

 それから、何で三だけ示して七を一緒に示しちゃうんだみたいなことをおっしゃったような気がしますが、実はこれは、井坂議員は十月三日の予算委員会でこうおっしゃっています。私とのやりとりの中で、「一方で、将来もおっしゃったので、将来世代の方も試算をやはりしていただきたい、そして公表していただきたいというふうに思います。」こういうふうに明言をされているわけでありますので、だから、三%、七%というのを示したわけで、何ら、私どもは言われたとおりやっているので、何で七を出したんだと言われても、それは言われたとおりやったんですと言うしか言いようがないということであります。

柚木委員 これは本当に不誠実な御答弁ですよ、塩崎大臣。

 私はね、そこに数理課長もお座りですけれども、井坂さんとのやりとりも横で聞いていましたよ。現場レベルでは本当に誠実なやりとりをしていましたよ。塩崎大臣、現場レベルでまさにリアル試算の話をしているのに、何で起こり得ない七%という数字を出させたんですか。何で出させたんですか、七%という数字を。最初はそんな数字を出していなかったと聞いていますよ。塩崎大臣が、七%、五千円上がるという起こり得ない試算を出させたんですか。

塩崎国務大臣 これは井坂議員の方から、平成三十三年から導入をするルールを、平成十七年から当てはめてみたケースを試算せいということでありましたし、将来世代についての試算も出せということでありますから、マイナス三、プラス七というのが出てくるわけで、これは誰が計算してもそうなるのでございます。

柚木委員 ですから、将来世代に起こり得る試算を出してくださいということを井坂さんも言っているし、私も、その後、何度も何度も何度も年金課の方、あるいは安倍総理にも、この間、代表質問で再質問、再々質問までして、将来起こり得る試算を出してくださいと言ったんですよ。ですから、まさに将来世代の試算を、井坂さんのを別に前提でやれなんて一言も言っていないんですよ。ちゃんと将来に向かって起こり得る試算を出してくださいと言っているんですから、出してくださいよ。

塩崎国務大臣 総理は衆議院の本会議でこう言っています。「今回の改正は、あらゆる事態に備えて見直しを行うものであります。安倍政権としては、」……(柚木委員「早くお願いします、聞いていますから、聞こえていますから」と呼び、その他発言する者あり)申し上げますが、「安倍政権としては、何よりも重要なことは、強い経済をつくっていくことであり、そのため、デフレから脱却をし、賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組んでおります。お尋ねのような、賃金が物価よりも低下する状況を前提とした基礎年金と厚生年金の計算を行うことは考えておりません。」ということを申し上げたところでございます。

 先ほど私が繰り返し申し上げてきたことと全く変わらないことを言っているので、総理と異なることを言ったというようなことを御指摘いただきましたが、全く当たっていないというふうに思います。

柚木委員 いや、総理は否定をされたんですよ。七%、五千円上がる、そういうことの試算を、起こり得ない、つまり、上がらないと否定をされたんですよ、明確に。しかも、あらゆる事態に備えてと言われるんだったら、まさに不都合な現実が起こった場合の試算もやってください。

 しかも、強い経済という精神論じゃないですね、安倍総理の口癖は結果でしょう。過去十年で六回発動しているんですよ。その結果を、ちゃんと現実を見据えて、不都合な現実が起こったときのケースもちゃんと想定して試算をすることの方が、よほど未来への責任を果たすことになるんじゃないですか、違いますか。

 目指してくれたらいいですよ。過去十年、六回年金カットルールが発動されている。そういうことも、将来も、では一度も起こり得ないんですか。起こり得ないんじゃないんでしょう。起こり得るから、念のためにと今何遍もおっしゃっているじゃないですか。そうしたら、念のためにカットルールを強行するんじゃなしに、ちゃんと試算もしてください。それが未来への責任ですよ、大臣。

塩崎国務大臣 もともと井坂議員がマイナス五・二%という、根拠が少し私ども最初はよくわからないような試算を出してきて、これと同じようなものを政府としてやってみい、こういうことでありましたから、あえてやってみたのを、機械的に当てはめたものをお示しして、マイナス三%、プラス七%という誰がやっても同じ答えになる数字をお示ししただけで、政策論としては、私どもは政府として、物価、賃金はプラスにしていくということを、その経済を想定しているわけでありますので、今おっしゃっているような、今回の改定ルールが将来発動するような経済前提を置いた試算を行う考えはないということを申し上げているところでございます。

柚木委員 そういう、本当に将来に対して無責任な、試算も出さないようなままにカットルールを強行するとどういうことになるんですか、将来。

 これは、貧困高齢者比率の将来見通し、稲垣教授、これは元厚労省の年金基金の室長ですよ。この方が、数理室長、マクロ経済スライドを適用しない場合とする場合で、まさに私たちが受給するスライド調整期間終了時に六ポイントも貧困率が変わってくるんですよ。しかも、プラス、年金カットルールが発動されるわけですから、貧困高齢者の比率が、今回のマクロスライド、そして新カットルールが適用されたら、どれだけ貧困高齢者比率がふえるのか、ちゃんと試算してください。通告していますよ。

塩崎国務大臣 そもそも、経済の状態がよく、物価と賃金が上がっている状況では、年金額が下がることはございません。むしろ、賃金と物価が上昇している場合は年金が上がるということがあり得るわけであります。

 もとより、安倍政権はデフレ脱却や賃金の上昇に全力で取り組んでいくわけでありますが、将来、例えばリーマン・ショックのような不測の事態が起きた場合に、そういう経済状況が起きて賃金が下がることがないとはもちろん言えないわけでありますから、そうしたときにも、将来の基礎年金の水準がこれ以上低下することのないように改定ルールを今回見直そうという御提起を申し上げている、民主党政権時代からの宿題のお答えを出しているわけでございます。

 また、この見直しは、基礎年金のみ受給する低所得の方に最大年六万円の福祉的な給付を平成三十一年十月までにスタートをさせた後の平成三十三年度からの導入ということとしているわけでありますので、このように、今回の改定ルールの見直しについては、現在の低年金の高齢者には十分配慮しているというふうに思っているところでございます。

柚木委員 いや、今の、そもそも六万円の年金生活者支援給付金というのは、消費税が上がった場合の逆進性対策であって、この年金のカットルールが適用された場合の最低保障機能の強化とは全く別枠ですよ。実際に、三党合意、あるいは社会保障の、あの一体改革の推進法やプログラム法の議論、国民会議の議論を見ても、長妻議員がこの後丁寧にされると思いますけれども、この六万円の生活者支援給付金以外に、抜本的な最低保障機能の強化を行うべきと明記されているんですよ。それをちゃんとやらずして、しかも、この六万円をやるかどうか、まだ全く決まっていないんですよ。先食いでカットルールだけ発動するかもしれないんですよ。

 おまけに、これを見てください。これは立命館大学の唐鎌教授が、年収百六十万円以下の高齢者が直近五年で百六十万人増加、高齢者の四人に一人が貧困、前回の五年前のデータから試算して、七百三十五万四千人から、百五十八万人も上回る、こういう状況が今既にトレンドとしてあって、そして私、昨日、うちの調査チームで、「下流老人」というベストセラーになった藤田さんのお話も、厚労省の皆さんとも一緒に聞きました。

 藤田さんが言っていたのは、年金カット法案は、これが発動すれば下流老人急増法案だ、ぜひこれは何としても成立させないでほしい。しかも、この藤田さんがせめてお願いだと言っているのは、まさにここに、安倍政権が検討を進めている医療・介護の負担増メニュー、しかも、けさの朝刊によれば、来年度は医療・介護負担増、現役並み収入七十歳以上などは、これまでの外来の、これは年収三百七十万から七百七十万円で、月百万円の場合、月四万四千円が八万七千円に倍増する。さらに、七十五歳になる人の保険料の軽減特例を廃止。さらには、介護についても、一般的な収入の人の毎月の自己負担額を引き上げ、三万七千円から四万四千円に、これは課税所得百四十五万未満で市区町村税の課税世帯、約三万七千円が四万四千円に、七千円もアップする。

 負担増メニューオンパレードで、せめてこういう医療、介護の負担増や、低所得者ほど高い家賃、住宅の負担、住宅改修費の負担、税、保険料の過重な負担、あるいは、高齢者、女性の方は軽自動車に乗っていますよ、軽自動車増税もありました。維持費の負担、交通費の負担増、電気、ガス、水道代の負担などの負担増を何とか抑えてほしいと。そうでないと、下流老人、貧困高齢者の方が急増をして、藤田さんはそういう方々と日々接していて、こういう年金カットルールが強行されれば本当に自殺とか無理心中とか殺人とかいうようなことが急増する。本当に心配をされているんですよ。

 塩崎大臣、安倍政権が検討を進めているこの医療・介護の負担増メニュー、私は、年金カットルールを強行して、この負担増メニューまで強行するべきじゃないと思いますが、仮にこういうことも検討されるのであれば、年金の負担増、減額による負担増だけじゃなくて、こういった負担増もパッケージでアメリカのように試算をして、そして最低保障機能の強化、六万円以外の抜本的な最低保障機能の強化を行うべきだと考えますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、平成二十一年の財政検証で、マクロ経済がデフレでいく可能性があるということをまず考え、その中において年金制度のあり方についての問題点が指摘をされました。特に、所得代替率が上昇するということについての問題点でありまして、今回のはまさに、それをどう解消して将来年金が減らないようにするかという、未来への責任を果たすということであります。

 そのことをも含めて、民主党政権でも、一体改革の議論の際に、当時の岡田副総理が、「今後ともデフレということは長いスパンをとれば起こり得るわけですから、そのときに、マクロ経済スライド的な考え方が、今の制度であれ新しい年金制度であれ、発動できないということではいけませんので、それはそれで何らかの改革が必要だというふうに思います。」と。

 このときは、民主党政権下では、名目下限を突破する、つまり、名目額を年金額も減らしていこうという意見があったやに聞いておりますが、そういう中で、社会保障・税一体改革について、低所得、低年金、今先生御指摘の御懸念の点でありますけれども、支援策として、今回の二十五年、十年の受給資格期間の短縮、それから年金生活者支援給付金の創設、さらには医療、介護の保険料の負担の軽減と、社会保障制度全体で総合的に対策を打っていこうということが一体改革で行われて、その後の、先ほどお触れをいただきました国民会議でも、やはりこういったことで、「どのような制度体系を目指そうとも必要となる課題の解決を進め、」つまり、今提起をしているように、十分ではない部分について、現行制度については改善、提案を絶えずしていくということが大事だということであり、「将来の制度体系については引き続き議論するという二段階のアプローチを採ることが必要。」だと。

 その一段階目がまだ完成をしていない今の段階でこの今回の法律を通さないということは未来への責任を果たさないということになるのであり、参考までに申し上げれば、主要紙は全て、社説などで、この法案は通すべき、賛成ということを明確にされています。

柚木委員 私たちは、まさにこういった医療・介護の負担増メニューオンパレード、そのまま放置するようなことはやっていなかったんですよ。総合合算制度という、医療、介護、保育、障害、収入の例えば一割を超えればそれは無料化する負担上限制度、四千億円の財源もきっちりと一体改革の中で明記をしてつくったのを、やめたのは自民党政権じゃないですか。

 具体的に、先ほど言われた六万円の給付金は枠外ですし、それ以外に、今言われたようなことでも不十分ですよ。(資料を示す)井坂さんの、この五万円から三万五千円に月額で一万五千円、年間幾らになるんですか。全く……(発言する者あり)これは紙ですよ。紙はいいと認められたじゃないですか。これだけを見ても、今の対策では不十分ですよ。ですから……(発言する者あり)いや、認めていますよ。認めていますよ。

 これは、長妻さんが以前試算をされたものをもとに、六十五歳以上の年金受給者、これは高齢者ほど経済格差、健康格差が大きくなるわけです。世代間格差の是正ももちろん必要。だから私たち、未来への責任、将来世代カット法案だから責任を果たせないということを申し上げていますが、世代内格差の是正も必要で、七倍の賃金格差、おまけに医療・介護の負担増メニューオンパレードだから、総合合算制度も含めて、私たちは抜本的な最低保障機能の強化を申し上げておりますが、加えて、財源も提案、提案とおっしゃるから、私たちに言われるんだったら、そちらがそういう最低保障機能の具体的な強化策メニューを、こういうことが起こっても対応できるものを出した上でおっしゃるべきだと思いますが、私たちは今議論していますよ、ちゃんと。

 今回は、例えば、質問通告もしておりますけれども、高額年金所得者の方々、例えばそれは、還付をいただくクローバック制度であったり、さらには、財務副大臣にもお越しいただいておりますが、高所得年金者の公的年金控除の見直し、あるいは所得税や相続税の累進化の強化策、そういったことで、まさに世代間、世代内の格差同時是正を図りながら、制度と生活の両立を私たちは果たしていこうとしているんです。

 塩崎大臣、伺いますが、真の抜本改革というのは、まさにそういったことも含めての全体像をお示しすることだと思います。これは、社保・税一体改革の中でも抜本改革をすべきということは明記をされているわけで、この間、それを怠ってきたのは、申しわけないですけれども、自民党政権ですよ。

 ぜひ、真の抜本改革に取り組む決意がおありか、そして、今申し上げた、これは所管でいえば厚労省、クローバック制度、こういったことも当然導入を進めることも含めて、真の抜本改革を行う決意があるかどうか、大臣、お答えください。

塩崎国務大臣 先ほどの御質問の中にも、マクロ経済スライドが発動されることによって年金が随分下がるというお話でありましたが、それは、マクロ経済スライドそのものに反対という意味なのかなというふうにとらざるを得ないと思いますが。

 私どもは、先ほど申し上げたとおり、社会保障制度改革国民会議でも二段階アプローチということを申し上げているように、我々としては、やはり今の制度ですぐにやらなきゃいけないことについてやっていこう、これは一体改革の考え方がそういう考え方でありますから、そういう意味で、今やるべきことはやっていくということで今回提起をしているわけでありますし、受給資格期間の短縮についても同様であります。

 そういう意味で、抜本改革とおっしゃることについては二段階目のアプローチとして考えるということなんだろうと思うので、我々は、今の制度体系をどのようにしていくかということ以前に、まずやらなきゃいけない、必要となる課題解決をやるということがまず第一だというふうに思っております。

 先ほど、負担の話でお答えをしなかったので申し上げれば、いろいろ介護等々で負担増があるじゃないか、オンパレードだというお話がありましたが、これは議論を今しているところでありまして、それらはどういう答えになるかは、またこれからの与党との議論も含めて、議論を深めて答えが出ることでございますので、あれもこれも何か全部一遍に来るようなことを不正確におっしゃるのは、ぜひ再考を願いたいというふうに思うところでございます。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

柚木委員 大臣、答弁漏れなんですけれども、クローバック制度の導入をするお考えがあるんですか、ないんですか。

塩崎国務大臣 クローバックについてのお尋ねがありまして、答弁漏れがあって申しわけございません。

 今回の年金改革法案は、クローバックを含む社会保障制度改革プログラム法に規定をされた四つの課題、マクロ経済スライドのあり方、被用者保険の適用拡大、それから支給開始年齢など高齢期の多様な年金受給のあり方、そして四番目にクローバックや年金課税の見直し、この四つの課題を中心に、平成二十六年から二十七年にかけて社会保障審議会年金部会で議論をして、一定の結論を得たものを法案化したものでございます。

 年金部会におきまして、クローバックに関しては、年金課税などの関係も含めて、引き続き幅広い議論が必要というふうに整理をされたところでございます。このため、今回の年金改革法案において、クローバックを含む高所得者の年金給付のあり方については、法律の施行後速やかに検討する旨の検討規定を盛り込んでいるところであります。

 また、昨年末に策定をいたしました経済・財政再生計画の改革工程表にも検討課題として盛り込まれておりますので、クローバックを無視しているようなことでは全くないということを御理解いただきたいと思います。

柚木委員 公的年金控除の見直し、所得税と相続税の累進化を進めるお考えは、所管の副大臣としてありますか。

大塚副大臣 いろいろな前提に立って質疑をされていると思いますが、一つだけ所管のところで気になりましたのは、日銀が二%の物価上昇を諦めたというふうに、さらっとさっきおっしゃっていましたけれども、そういう事実はないと思いますので、それは御指摘を申し上げた上で、公的年金控除、ある意味、負担能力に応じてしっかり負担をしていただくべきだという御提案だというふうに受けとめておりますけれども、一つの御見識だろうというふうに思っておりますので、よく御議論を国会の方でもいただければと思っております。

 一方で、高額の年金を受給している方を公的年金控除の対象から外すということについては、公的年金等控除は経済的稼得力が減退する局面にある方の生計手段とするため、公的な社会保険制度から給付される年金に対する配慮として設けられているということとの関係、あるいはどのような範囲の方にどの程度税負担をお願いするべきか、あるいは見直しによる税負担の増が対象者にどのような影響を及ぼすかといった論点があるものというふうに考えておりますので、こういったことも含めてしっかり議論を詰めていく必要があろうというふうに思っております。

 いずれにしても、年金課税については、税制抜本改革法や社会保障制度改革プログラム法の趣旨に沿って、世代間及び世代内の公平性を確保する観点から、今後の年金制度改革の方向性をも踏まえつつ、検討を行ってまいりたいと考えております。

柚木委員 終わりますが、よくわかりました。塩崎大臣も財務副大臣も、お金持ちには優しいんですね。これから検討、クローバックも累進化も。年金カットルールだけは先行して発動。こんなことでは、年金制度も年金生活も、どちらも守れませんよ。

 今と将来の年金生活者、このままではどちらも守れないということを私は非常に懸念を表明して、まだまだGPIF初め、幾らでも論点はありますから、次回以降、しっかりと質疑をさせていただきます。

 以上で終わります。

高鳥委員長代理 次に、長妻昭君。

長妻委員 長妻でございます。

 質疑を聞いておりますと、塩崎大臣は行政府でありまして、この委員会に閣法としてこの法律を審議いただきたいということで出されている当事者なわけでありますので、どんな嫌な質問にもできるだけちゃんと質問の趣旨に沿った答弁をしていただかないと、これはまだ、GPIFから適用拡大から、いっぱい項目があるわけで、もう本当にセット販売で出てきているわけですから、ぜひそれをお願いいたします。

 私どもが本当に申し上げたいのは、やはり、どんどんどんどんカットしていくと本当に年金としての役割が果たせなくなってしまうんじゃないのか、大丈夫なのか、これが根源的な問題の一つなんですね。

 私自身も体感していますのは、御高齢の方からいろいろな御相談を受けるときに、とみに最近、今若い人、子供、給付型奨学金とか、いろいろ言われている、それももちろん必要なんだけれども、何か長生きするとお荷物になる、そんなような風潮が今感じられて、私なんかもう早く死んだ方がいいのかしら、こういうようなことをおっしゃる高齢者が非常にふえているというふうに実感しております。

 何人かの方にお話を聞くと、私は、消極的自殺という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、そんな感じを持つのは、やはり、お金がないので病院に行かずに、多分かなり重い病気なんだけれども、行かないで、死ぬのなら死んでいい、そんなようなひとり暮らしの高齢者が相当おられる、私も何人か相談を受けましたけれども、そういう実感を持っております。

 今、御存じのように、先ほど柚木議員も紹介しましたけれども、「下流老人」という本、あるいはNHKスペシャルの本、「老後破産」、「老後親子破産」、「脱・貧困老後」、こういう本がもうベストセラーに次々になっている。

 そして、その書籍には、一日に一度しか食事できない、生活の苦しさから万引き、医療費が払えないために病院に行けない。つまり、生活保護を受けていない、かつ、相当困窮されている方がふえている。あるいは、七十四歳の男性の例も出ていますけれども、月約九万円の年金から四万五千円のアパートの家賃と水光熱費を払うと、一回の食事にかけられる費用は二百円から三百円、三カ月前に前立腺がんとわかったのですが、治療する金がない、そもそも入院するには保証人が必要で、身寄りがないため無理。この保証人が必要というのは、相当高いハードルにもなっているわけであります。

 そして、「下流老人」の著者、藤田さんは、独自の試算で、生活保護基準相当で暮らす高齢者及びそのおそれのある高齢者は推定六百万人から七百万人おられるのではないか、こんなような推定も出されているところでありまして、持ち家がない方がどんどん今ふえているんですけれども、もう、賃貸で、今の年金水準で、よほどもらっている方以外は、大変苦しいという現状があります。

 将来世代、将来世代のためという議論を政府はよくおっしゃいますけれども、現在の世代が本当にバラ色の年金をもらっているのであればそういう議論もあるかもしれませんが、もう今の年金でも大変不十分な中、将来世代、将来世代。しかも、その将来世代というふうにおっしゃっている将来世代の年金も、本当に確かなものなのか。将来世代と言っているのは、若い人たちは自分のことだと思いきや、もっと先の将来世代。将来世代、将来世代と言って、逃げ水のようにずっと先の将来世代になる。こんなような、将来世代をも巻き込んだ、年金の非常に大きな問題がここでやはり議論されてしかるべきだというふうに思うわけであります。

 まず、基礎年金の水準の考え方について、これは前回も大西議員が資料を配付したと思いますけれども、配付資料の一枚目に、かつて基礎年金ができたときの吉原年金局長の答弁があるんですね。当時は五万円ということでありましたけれども、この答弁は、何で五万円なんだという質問に対して、「基礎年金でもって老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準にしよう」と。保障する、これが基本的な考え方なのであります。

 当時は、下の図を見ていただきますと、「六十五歳以上の単身・無職世帯の衣食住に係る支出と基礎年金額」ということなんですが、昭和五十四年、平均支出、月額四万六百八十五円。ただ、この吉原局長は、物価にスライドさせてこの金額を、直近が五十四年の調査でありましたので、この答弁は五十九年でありますから、この五年間に物価が上がったので、それをこの後段の答弁で「衣食住を中心にした基礎的な消費額というのが四万七千六百円という数字が現実に出ているわけでございます。」と。この四万七千六百円というのは、四万六百八十五円を物価で割り戻して四万七千六百円。そして、基礎年金額、決めた五万円、この五万円の範疇におさまっている、こういう考え方で、当時、基礎年金というのは定義された。

 一番直近の、同じ平仄を合わせるデータでいうと、一番近いものでは、今や単身でいうと七万四千四百六十四円になっている。そして、基礎年金の満額が六万四千四百円。これは一万円も差がある。賄い切れない。そして、しかもこれは満額なんですね。これだけ未納がふえると当時予想していたかどうかということもあるんですが、全体でいうと、平均額が五万四千四百九十七円なんですね、月額、基礎年金。これは二階建て部分の一階の基礎年金も入れた平均でありますが、では、基礎のみ、国民年金のみの平均でいうと五万四十円。これは、到底、生活を保障する、そういう年金とはほど遠くなっている。

 これはもう、年金の抜本改革を今する時期に来ているんじゃないでしょうか。いかがですか。

塩崎国務大臣 この問題については、もう長妻委員から何度か御指摘をいただいておりまして、もちろん、私どもも絶えずあらゆる立場の方々に目配りをきちっとした上で政策対応をしていくということが大事であり、基本的には、社会保障政策、経済政策全体で見ていくというのは当然大事なことだというふうに思っております。

 今、年金局長の昭和五十九年当時の答弁についてお触れをいただきました。

 昭和六十年の導入当時の基礎年金水準は、基礎的消費支出のほかに、現役世代が負担可能な保険料の水準などを勘案して設定されたものだというふうに理解をしています。

 今のこの局長の答弁の中にも、今このことだけお取り上げをいただいていますけれども、ほかの部分では保険料負担との兼ね合いについて触れているところがしっかりあるわけでございまして、当然、保険方式の年金制度は負担と給付というもので成り立っているということでありますから、給付をふやそうということであれば負担もふえるということは、基本中の基本でございます。

 平成十六年の改正に向けた議論の中でも、少子高齢化の一層の進行などを背景に、当時の制度のままでは保険料が大幅に上昇してしまって、将来年金を受け取る現役世代の負担が過重なものになるおそれがある、そういう課題が明らかになって、示されておりました。

 そのために、平成十六年改正で、現役世代の保険料負担を過重なものとしないように上限を固定するとともに、その範囲内で給付水準を調整する仕組み、すなわちマクロ経済スライドを導入することとして、高齢期の生活の状況等を参考にしながら給付水準の下限を定めることとした経緯がございます。

 基礎年金水準を考える上で、保険料の水準をより考慮するようになったのは事実だというふうに思います。

 こうした中で、年金の支給額はどこまで賄えるかということについては、基礎年金で全てを賄うことは難しく、ある程度の蓄えはやはりお願いをせざるを得ないというふうに考えております。お配りをいただいている前原議員とのやりとりの中でもお示しをいたしました。

 現在の基礎年金の額も、高齢無職世帯の支出との比較で見ますと、先ほどいろいろ数字を御説明いただきましたが、夫婦世帯では、基礎年金額十三万十六円が衣食住といった基礎的消費支出十一万五千九百三十三円をカバーしておりまして、一方で、単身世帯では、基礎年金額六万五千八円が基礎的消費支出七万二千百九円をおおむねカバーしているということを申し上げてまいりました。

 これに加えて、基礎年金のみの方など、低年金、低所得の方への対策については、平成三十一年十月までに施行される年金生活者支援給付金、これに加えて、医療、介護の保険料の負担の軽減など、年金のみならず社会保障制度全体で総合的に講ずるということでありますので、まずはこれらにしっかりと取り組んで、今回の提案もその一つでございますけれども、年金制度の現段階での機能強化をしっかり図っていきたいというふうに思います。

長妻委員 長々御答弁されましたけれども、非常に苦しいというか、お答えになっておられないんですね。私も、生活を丸ごと全部できるんですかなんて聞いていないわけで、貯金とかそういうことでないと丸ごとの生活はできない。

 私が聞いていますのは、では、今ここに、答弁にある、「基礎年金でもって老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準」では、今、基礎年金は、ないということなんですか。

塩崎国務大臣 これは先ほど申し上げたとおりで、単身世帯でも基礎的消費支出をおおむねカバーしているということを申し上げてきたところでございます。

長妻委員 ここはちょっと重要な論点なんですけれども、そうすると、今の御答弁というのは、今現在も吉原局長の答弁は守られていると。つまり、「基礎年金でもって老後生活の基礎的な部分というものを保障できる」、今こういう状況になっているということでよろしいんですね。

塩崎国務大臣 給付と負担とを片一方だけ見ていたのでは制度として成り立たないわけでありまして、さっき申し上げたとおり、負担の部分も含めて給付の水準というものを決めているわけであります。

 さっき申し上げたとおり、消費支出そのものはもっと多いわけでありますけれども、やはり、暮らしていくために必要な基礎的な消費支出についておおむねカバーはできているという水準は維持をしているというふうに理解をしておりますし、この点は同様にやはり考えていかなければいけないというふうに思いますし、また、先ほど来議論になって、資料もお配りをいただいている、将来の代替率にあっても、あのグラフにあっても、実際の実質価値でいけば、ほぼ横ばいで将来もいけるということが今確認を、今回の財政検証でもできているということだと思います。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

長妻委員 これも御答弁されておられないんですね。

 おおむね賄えるかどうかということを聞いているのではなくて、これは非常に年金の根幹にかかわる重要なことなんでありまして、これはぜひちゃんと答弁いただきたい。簡単な質問なんです。

 もう一回言いますと、この吉原局長がおっしゃっているように、「基礎年金でもって老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準」、これが今も守られているということでよろしいということですね。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、この吉原局長も同じ答弁の中でこう言っています。

 「もう一つ、やはりこれからの年金の水準の額を決めるに当たりましては、保険料負担との関連というものを考えないわけにはまいりません。現在の保険料負担そのままですと、将来は一万九千円にもなるということになっておるわけでございまして、そういった将来の保険料負担というものを、被保険者の方々が十分負担できるという範囲内におさめるということも考え合わせまして、四十年で月額五万円という基礎年金の額を決めたわけでございます。」こう言っているわけでございます。

 給付が大事であることはそのとおりでありますけれども、同時に、それを成り立たせている負担の部分についても配慮をして、バランスの中で決めるということを言っているのがこの吉原局長の答弁の全体像でございます。(長妻委員「答えていません。何度も言っているんだ。一回とめてください、時計。もう何回も質問しているから」と呼ぶ)

丹羽委員長 長妻昭君。(長妻委員「これは別に、易しいというか、ちゃんとした質問をしていますから。一回時計をとめてください。丹羽委員長、時計をとめてください」と呼ぶ)

 長妻委員に申し上げます。答弁はいたしておりますので、質問を続けてください。(長妻委員「していないって。委員長、おかしいですよ。一回とめてください。今ここで協議しているんだから」と呼び、その他発言する者あり)

 長妻委員、再度、質問をお願いいたします。

長妻委員 これは、委員長もやはり質疑をちゃんと聞いていただいて。答弁ありませんから。

 おおむね賄えるということはおっしゃいました。私が聞いているのは、基礎年金が老後生活の基礎的な部分というものを保障できる水準なのかと。保障という言葉を使っているんです。それを聞いているわけです。

塩崎国務大臣 吉原局長は、今お配りをいただいたような、「基礎年金でもって老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準にしようということを考えたわけでございます。」ということで、そしてまた、今お配りをいただいている終わりの方に、「基礎年金として保障すべきでないか」という考え方を示しています。

 しかし、一方で、さっき申し上げたとおり、負担の部分、つまり、「年金の水準の額を決めるに当たりましては、保険料負担との関連というものを考えないわけにはまいりません。」というふうに言っているわけで、現在の保険料負担そのままですと将来は一万九千円にもなってしまうということで、保険料負担というものを同時に考えなきゃいけないということもこのときに言っているわけであって、基本的には、先ほど申し上げたように、基礎的な支出について、夫婦であればカバーしているけれども、単身世帯の場合にはおおむねカバーをしているということを言っているので、そこのところは何ら違うことを言っているわけではないというふうに思います。

長妻委員 では、もう一回だけ質問しますけれども、ということは、「基礎年金でもって老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準」ではないということですね、今は。

橋本副大臣 重ねての問いでございますが、当時の吉原委員の発言について補足をさせていただきたいと思います。

 全部読むと長くなりますので、かいつまみたいと思いますが、まず、「五万円の考え方の基礎でございますが、」というところで、「基本的な考え方が、老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にある」、これは御指摘のとおりでございます。そして、その続きがございまして、その同じ答弁の中で、もう一つが、まずは「生活保護の水準といたしまして、一体老人の単身者世帯の生活扶助の基準がどのくらいだろうか」ということも触れています。そして、その先にもう一つ、大臣が繰り返し答弁しておりますとおり、保険料負担との関連というものを考えなければならないということも言っておりまして、吉原委員の答弁は、その三つをトータルで勘案して五万円にしたということを申し上げているわけでございますから、今、私たち、大臣が答弁をしているのは、その三つの考え方をセットで踏襲しているということを申し上げているのでございます。(長妻委員「だめだめ。今保障されているのかと聞いているんです。一回とめてください。委員長、おかしいよ。こんないいかげんな答弁ないよ。今、理事が話し合っているんだから。何でとめないの。異常だよ」と呼び、その他発言する者あり)

丹羽委員長 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 今、橋本副大臣からもお答えを申し上げましたけれども、吉原局長も、「五万円の考え方の基礎でございますが、基本的な考え方が、老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にあるわけでございます。」と言っております。その上で、先ほど申し上げたように、保険料負担との関連というものを考えないわけにはいきません、こういうことが書いてあって、私が申し上げているのは、おおむねカバーをしているということを言っているので、吉原局長が、そのような「保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にあるわけでございます。」という表現をとっているわけでございます。

 したがって、もちろん、給付をふやすということであれば負担をふやすということをやっていくわけですから、ぜひそのやり方について一緒に御提起をいただければありがたいと思います。

長妻委員 塩崎大臣、基本的な答弁はちゃんとしていただかないと議論が進んでいかないんですよ。

 では、今は保障されていないということですね、そうしたら。

塩崎国務大臣 何度も申し上げているように、おおむねカバーをしているということを申し上げ、また長妻委員も、全てをカバーするわけにはいかない、貯蓄も必要だということをおっしゃったわけでございますので、余り考え方に相違はないのではないかというふうに思っております。

長妻委員 これは相当問題ですよ。塩崎大臣の答弁は本当に不誠実だと思いますよ。

 私が申し上げたのは、全ての生活のことをさっきの話は申し上げたので、ここに書いてあるように、「基礎的な部分」、「老後生活の基礎的な部分というもの」ということで限定して聞いているわけで、何でお答えにならないんですか。おおむね賄えるということと保障ということは意味が違うということですか。

塩崎国務大臣 吉原局長も、一〇〇%保障をいつも、ずっと将来的にもするというようなことを言っているわけでもないし、もともとこれを言ったときに、先ほど申し上げたとおり、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にある」わけであって、我々も、基本的な考え方は、基礎的な生活についておおむねカバーをするということを今申し上げておりますけれども、基礎的なところについておおむねカバーできるということが大事で、一〇〇%保障ということをこの吉原局長も言っているわけでもないし、やはり実質的に保障しているということが外れてしまうわけにはいかないだろうということを言っておられるんだろうと思いますし、私どもも同じように考えているところでございます。

長妻委員 本当に、何で答えないんですかね。

 結局、この五十九年の答弁でも、実際には五万円の根拠を聞いているわけですね。それで吉原局長が答えて。ですから、そういう意味では、基礎的な部分というのは四万七千六百円だということで、保障できるような水準というふうに考えて御答弁をされている。それで、最後には「基礎年金として保障すべきでないかということで、五万円というものを考えたわけでございます。」と。

 だから、私が聞いている質問はシンプルなんですよ。当時は保障できていたという金額の水準だけれども、では、基礎年金で老後生活の基礎的な部分というものが保障できるような水準では今はないということでよろしいんですね。それは、だから、おおむね賄うことができるのと保障というのは意味が違うということでよろしいんですね。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、吉原局長が答弁の中で言ったことは、基本的な考え方を述べているわけでありまして、私どももそれと大きく外れているわけではないし、また、先ほど申し上げたように、おおむねカバーをしているということを繰り返し申し上げているわけでございますので、同じことを申し上げているというふうに理解をしております。(長妻委員「答えていない。委員長、これはだめです。一回とめてください」と呼ぶ)

丹羽委員長 長妻昭君。(長妻委員「こんなの異常だよ。おかしいよ。こんなの厚労委員会で今までないよ。委員長、何でとめないんですか。一回とめてください」と呼び、その他発言する者あり)再度、長妻昭君に質問を求めます。

長妻委員 これは、先ほど田村筆頭理事が、保障できていませんと明確におっしゃったんですけれども、やじで。ですから、私も、保障できないのであれば、今できていないのであれば、それを正直におっしゃっていただければ別にいいんですよ、それは。

 つまり、おおむね賄えているということは、これは「老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準」とは違うことであるということをおっしゃっていただければいいんです。

塩崎国務大臣 繰り返し答弁をいたしますが、例えば、基礎年金が、平成十二年、西暦二〇〇〇年、六万七千十七円のときに、家計調査で見る単身無職の方は六万九千四十六円ということで、六万七千円でおおむねカバーをしているという形は、もう既に平成に入ってからも起きているわけでございます。

 今の、一〇〇%保障かどうかというような御指摘でありますけれども、先ほどの吉原局長の答弁、これは、橋本副大臣から答弁したように、まず第一に、この基本的な考え方は、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にあるわけでございます。」と言い、そして、実際の食費とか光熱費とか基礎的な部分について、額についての考え方を述べて、「大体五万円という金額を考えた」わけだということを言い、そして、単身者世帯の生活扶助、生活保護の場合ですね、これについても、全国いろいろあって、「級地によって、それから世帯の構成によって、それから年齢によっていろいろ差があるわけでございますが、大体、」と言って、「五万円前後の金額になっておりますので、そういったものも十分見て五万円という金額に基礎年金の水準を決めたわけでございます。」と言って、その後に、先ほど申し上げたように、「もう一つ、やはりこれからの年金の水準の額を決めるに当たりましては、保険料負担との関連というものを考えないわけにはまいりません。」ということで、「被保険者の方々が十分負担できるという範囲内におさめるということも考え合わせまして、四十年で月額五万円という基礎年金の額を決めた」ということが語られているわけでありまして、これで保障ということを言って、今、保障しているのか、していないのかという話でありますけれども、今の、この吉原局長がこのとき述べられたような考え方に照らしてみても、今私が申し上げてきたおおむねカバーをしているということは、同じことを言っているというふうに思います。

長妻委員 おおむねカバーしているのと「老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準」というのは同じことを言っているというふうにおっしゃいましたけれども、本当にそうなのかということなんですね。(塩崎国務大臣「そうじゃないよ」と呼ぶ)違うんですか。今おっしゃった、議事録、訂正するんですか。

 さっぱりわからない答弁が続いていて、私自身は、これは保障する水準じゃないと思いますよ、今、到底。

 だから、そこから始まって、そして、では、基礎年金はどういう考え方でやらなきゃいけないのかという議論をしないと、塩崎大臣は、さっき、保障できているというような趣旨の答弁をしたかと思いきや、今は、自分の席で違うとおっしゃる。ちゃんと現状を認めていかないと、これは議論が進まないわけであります。

 これは、委員長、先ほど理事がそこの委員長席の周りで協議しているときに時間がとまっていないわけで、その時間は必ず後日、その時間、同じ時間を私の質疑に充てていただきたいということ、これは強く要請をしてまいります。

 今回、塩崎大臣の答弁がないので、一時これは保留いたしますけれども、時間の関係で、では次に行きますけれども、次回は、ちゃんと答弁、統一見解を出していただきたいというのを委員長にお願いします。理事会で議論してください。

丹羽委員長 質問につきましては、理事会の方でしっかり議論してまいります。

長妻委員 統一見解を出していただけるということで、私は、保障できていない、しかも、おおむね賄うこともできていないんじゃないかということをお伺いしたいというふうに思います。

 もう既に、この時点でも、単身で一万円赤字、基礎的な部分というものが賄えていない、平成二十六年でございます。

 きょうは、総務省にも来ていただいているんですけれども、持ち家についてなんですが、配付資料三ページなんですけれども、持ち家以外比率と単身者の六十五歳以上に占める比率の推移と、その理由について、御答弁いただけますか。

島田大臣政務官 お答え申し上げます。

 長妻委員の御指摘のとおり、住宅・土地統計調査における六十五歳以上単身世帯の持ち家以外の世帯の数は、平成五年の六十三万九千七百世帯から、平成二十五年には百八十七万三千七百世帯と増加をしております。

 我が国において、高齢者数は、御承知のように、年々増加しており、住宅・土地統計調査における六十五歳以上の単身世帯総数についても、平成五年の百八十一万七千八百世帯から、平成二十五年には五百五十一万七千四百世帯と増加をしております。

 六十五歳以上単身世帯の持ち家以外の世帯の数の増加は、六十五歳以上の単身世帯総数の増加に起因するものと考えております。

 以上でございます。

長妻委員 これを見ていただきますと、私もびっくりしたんですが、単身世帯、六十五歳以上で、平成五年から見ると、平成五年は一〇・二%だったんですが、一八・四%。二倍近くなっている。高齢者の二人以上世帯、六十五歳以上で見ますと、平成五年は六・一%のものが、平成二十五年は一五・七%と急増をしている。

 家賃についても、これは五ページ目に、総務省に調べていただいたんですけれども、例えば六十五歳以上の単身でいいますと、平成五年は二万八千三百八十円だった。それが、平成二十五年には四万一千五百六十二円。当然、物価どころか、相当な勢いで上昇している。六十五歳以上の夫婦世帯でいっても、賃貸、一カ月の平均家賃ですけれども、平成五年が三万六千百四十四円、これが平成二十五年には四万九千百八十五円になっているということで、これは、前回、塩崎大臣から御答弁があったように、おおむね賄えるという計算に使った住居費というのは一万三千九百四十四円なんですよ。

 つまり、相当の方が持ち家なので、それを平均した金額だと思いますが、賃貸の方は、これはもう全然賄えないんです。賃貸と持ち家、これが劇的にその人の収支を悪化させる大きな要因でありまして、それは今はもう賄えていない、基礎年金が、大きな塊の階層の方々に対しては。そういう現実をもって、もう抜本改革に移っていかなきゃいけないんじゃないのか。

 ひとり暮らしもどんどんふえておりまして、四ページ、改めてこれは総務省に、ひとり暮らしの比率を、六十五歳以上、各都道府県、つくっていただいたら、東京は、何と、六十五歳以上の方の四人に一人が今ひとり暮らしです。どんどん比率が高まっております。全国平均だと六人に一人。一番ひとり暮らし比率が低いのが山形県、高いのが東京都ということで、全都道府県、これは並べております。

 そして、改めて塩崎大臣にお伺いしたいんですが、六十五歳以上の方の人口に占める生活保護の率、これが私は大変気になっているわけでございますが、これは事前に申し上げておりましたので、どんな推移でございましょうか。

塩崎国務大臣 先ほどお尋ねが来たようでございますが、今この数値を見ますと、平成十八年、二・二%、これが平成二十七年に二・九%となっておるところでございます。

長妻委員 例えば、一応さかのぼっていただいて、平成七年は何パーですか。

塩崎国務大臣 平成七年は、一・五五、四捨五入すれば一・六ということであります。

長妻委員 これは、改めて今お伺いして、私も非常に考えさせられるのでございますが、よくこういうふうに言うんですよ、役所なんかに聞くと。今、生活保護が六十五歳以上はどんどんふえている、これは年金が脆弱なんじゃないのかと聞くと、いやいや、高齢者の数が、絶対値がふえているからそれはふえるんです、年金とは関係ありません、あるいは、年金との関係は確認できません、こういうふうにおっしゃるんです。これが今の日本の現状把握なんです。

 ただ、今のこの数字を見ますと、六十五歳以上の人口当たりの生活保護を受給されている方々が、平成七年には一・五五%だったものが、今、平成二十七年は二・八九%、約二・九%、三%近くまで上がっている。つまり、倍ですよ、平成七年から、率でいうと。これは、当然、人口の影響じゃないと思いますよ、当たり前ですが、率ですから。

 これは、塩崎大臣、生活保護の増加が年金の脆弱性に大いにかかわっているんじゃないのかと。当然、年金の脆弱性だけじゃないですよ。だけじゃないけれども、年金が脆弱であるということが非常に大きな要因の一つではないかと私は思うんですが、いかがでございますか。

塩崎国務大臣 生活保護を受けている高齢者世帯の増加についてのお尋ねでありますけれども、生活保護を受給している高齢者世帯の増加というのは、いろいろな原因があると思います。

 生活保護の受給状況は、高齢者の世帯構成の変化とか、経済情勢、あるいは資産をどういうような形でお持ちなのかとか、さまざまな要素の影響を受けるものでありますので、その要因について、年金だけの脆弱性を御指摘になるのは、なかなかそれだけで説明をするのは難しいというふうに考えております。

長妻委員 ですから、塩崎大臣、これは建設的にぜひ議論をしていただきたいんですね。私も、年金だけが影響ですかと聞いてはいないわけで、そういう、非常に、よくわからない、何にも進まない答弁というのは。

 これは、我々も国を思って質問しているわけですよ。塩崎大臣だって国を思って答弁されているわけでありましょうから、年金の脆弱性も一つの大きな要因である、これはお認めになった方がいいと思うんです。

塩崎国務大臣 ここで一足飛びに脆弱性と、これは、長妻大臣も責任を持っていた時期があるこの年金制度でありますが、そこに一足飛びに行く前に、なぜ、どういう形で高齢者の方が生活保護になっているのか、無年金なのか、低年金なのか、納付率はどうだったのか、なぜ払ってこなかったのか、やはりそういうことをさまざま考えていかなきゃいけないので、問題から目をそらすということは、あり得ない、いけないことだと思います。

 それは、そういったところに問題が今、生活保護の高齢者のひとり住まいの方がふえているとか、こういうことは、長妻委員御指摘のとおり、当然、注視をして、いつも考えていなきゃいけないということは、私もそのとおりだというふうに思います。

 一方で、これが制度の脆弱性だけで説明できるかという……(長妻委員「だけとは言ってないじゃないですか。それが一つか」と呼ぶ)だったらば、もう少し立体的な分析をお互いしていくことが大事なのではないかというふうに思いますので、否定するわけではもちろんないわけでありますが、やはり、そこのところはよく、複合的に考えていくことが大事だろうというふうに思います。

長妻委員 年金との関係を否定するわけじゃないというふうにおっしゃいましたので、立体的に何か提案しろと言って、我々も、分析するにも、それは人、物、金が少ないわけで、これは政府でやりますから、ぜひ分析していただきたい。

 先ほど、いやいや、民主党政権のときも同じじゃないかのような、制度がこれじゃないかのような趣旨がありましたが、我々のときは、制度をやはり変える必要がある、こういう立場でずっと政権運営をしてきて、そして、それが結実したのが、先ほど柚木議員も質問いたしました、三党協議に基づいて社会保障制度改革国民会議というのができたわけです、これは法律に基づいたもので。

 これは、三党合意が今ある、ないにかかわらず、法律に基づいた報告、これを守らなきゃいけないということで、抜本改革については、「将来の制度体系については引き続き議論する」、これが入っているわけです、三年前の報告書で。我々は、この言葉をこの報告書の中に入れていただいたわけですよ。だから、抜本的に改革をするという意思は続いて、政府も引き継いでいるはずなんです。

 私も、その国民会議の先生方と意見交換しました。この議論というのは、新しく国民会議をつくることもありましょうけれども、官邸というか政府の中の国民会議的な協議体できちっと政府が責任を持って議論する、こういう思いだったというふうにおっしゃっておられるわけでありまして、何か、国会で勝手に議論してくださいとか、民進党が出さないと僕たちは出さないとか、そういうことでなくて、これは政府の中で責任を持って議論するというのが三年前に出ているわけです、法律に基づいて。

 だから、これをサボっちゃって、削るところはどんどこどんどこ削って、そして将来世代のためだと。将来世代といったって、いつの将来世代なんだと。自分が将来世代だと思ったら、その先の将来世代。どんどん逃げ水みたいに逃げていく。本当にこういう年金でいいのかということを真面目に、塩崎大臣、笑っていますけれども、生活保護の比率がこれだけ、倍になっているんですよ、平成七年から。これはちゃんと分析をして、何か、立体的に分析しなきゃいけませんねなんと言って、評論家じゃないわけですから。大変な危機を、高齢者の皆さん、現場現場に行って見てください、ゴルフばっかりやっている方ばかりじゃないですよ、世の中、当たり前ですけれども。

 ぜひきちっと議論を、真面目に答えていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。

丹羽委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田畑裕明君。

田畑(裕)委員 自民党の田畑裕明でございます。

 この公的年金の抜本改革の法案、十一月二日から衆議院の委員会でスタート、審議が開始されたわけでありますが、きょう、久方、約二週間ぶりにこうして審議が再開をされたわけであります。理事各位の先生方の御尽力にも心から敬意を表させていただきたいと思いますし、実りのある議論をしっかり行ってまいりたいと思います。

 午前中の質疑の中で、今大臣いらっしゃいませんが、将来への責任をしっかり果たすために、この法案はしっかり皆さんにお願いをして通させていただきたいという旨の御発言があり、種々大変丁寧な答弁があったのではなかろうかと私は感じているところでございます。

 この年金については、もちろん国民の皆さんも大いに御関心があり、そしてまた、それぞれ我が事のように御不安のことが我々にもよく突きつけられているところであります。これはやはりつまびらかに、丁寧に我々も説明もしていかなければいけないと思いますが、この質疑を通して、政府側の答弁も大変丁寧に行っていただきたいということを、まずお伝えさせていただきたいと思います。

 そもそも、この年金についても、それこそ、長妻先生いらっしゃいませんが、三党合意を踏まえて、そして社会保障制度改革推進法が制定をされ、さらに、社会保障に関する国民会議、そうした中での議論を踏まえ報告書が提出をされ、いわゆるプログラム法が制定をされたわけであります。そして、プログラム法で示された課題等についていろいろ審議を尽くし、このたび、法案として提出をされているというふうに認識をしております。

 もちろん、それで、全てこの法案で解決されたわけではなく、質問の中でも出ておるとおり、積み残されている部分もあろうかと思いますが、まずはできることをしっかり改革をしていって、この年金の議論を前に進めなければいけないと思いますし、何よりも、国民の皆さんにこの年金制度をより信頼していただき、そしてまた、これからも我々が進める方式にのっとって進めていくための一助、そしてまた推進をしっかりしていかなければいけないと思っております。

 特に、今申しましたプログラム法に規定された公的年金の検討課題、これに基づいて、年金制度を支える経済社会の発展に資するよう、年金制度として、特に女性や高齢者の労働参画を促進する観点や、制度の持続可能性、これが本当に肝だと思いますが、その強化とセーフティーネットの機能を強化する観点、このことが今回議題になっている改正法に深く盛り込まれ、そしてまた根底として流れている考えではないのかなというふうに認識をしております。

 それでは、質問の方に入っていきたいと思いますが、今回の改正法で五点の改正概要があって、その中で大きくは四点ほどが議論の中心でなかろうかと思いますが、まず最初に、短時間労働者の被用者保険の適用拡大について質問をさせていただきたいと思います。

 短時間労働者への被用者保険の適用拡大が、本年の十月から、五百一名以上の企業を対象にスタートしているわけであります。また、今回の改革法案には、適用拡大の道を中小企業に広げる改革が含まれているわけであります。働いた分だけしっかり将来の給付に反映していくということは当然大切なことであろうかと思いますし、この方向性、中小企業の方にもしっかり広げていくということ、非常に評価を私はいたしております。

 一方、地域でも、私はいろいろな企業の皆さんとの懇談も通じて、同じ企業グループの中の企業であるにもかかわらず、いわゆる従業員の数、五百一名以上の企業なので短時間労働者に被用者保険が適用されるが、同じグループ内でも別の会社であれば、五百人以下の場合なので短時間労働者は厚生年金に入れない等の不公平ということが指摘をされたり、そうした声を耳にするわけであります。

 速やかに中小企業にも被用者保険の適用拡大の道を開くべきであろうと思いますが、まず、本年十月から、被用者保険の適用拡大によって、今、百六万円というのが一つのバーということになろうかと思いますが、短時間労働者の働き方にどのような変化が起きてきているのでありましょうか。働きたい方が働きやすい環境に近づいているのか、実態とそこから見える課題等について、御認識をまずお聞きをしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただきましたように、この十月から、大企業で働く二十五万人の短時間労働者を対象といたしまして、被用者保険が適用されているわけでございます。

 私ども、この施行に先立ちまして、企業の方々へのヒアリングとか、あるいは労使団体にも御参画をいただいて協議会を開催いたしました。そこで情報の把握、意見交換を行ってきたわけでございますけれども、その結果、幾つかのことがわかってまいりました。

 個別の企業あるいは業界によって多少違いがございますけれども、まず第一に、やはり短時間労働者の方々の中には就労時間を短くする方がおられるのは事実でございますが、今その理由として主として挙げられるものが、夫の扶養から外れるので会社から支給される配偶者手当がなくなるのが困るというような声が多いということが一つわかってまいりました。

 もう一方で、この対象になります短時間労働者の方々にも、より長く働きたいという方が相当数いらっしゃって、私どもがお聞きした限りでは、おおむね三割程度は、この機会により長く働きたいという希望を持っておられることもわかってまいりました。また、企業の方でも、より多くの企業では、できるだけ長く働いていただいて労働力を確保したいというお考えが多いということも承知をいたしております。

 こうしたことを受けまして、私ども厚生労働省といたしまして、キャリアアップ助成金の拡充を図りまして、御本人の希望を踏まえまして、働く時間を延ばすことで人材確保を進める、こういった事業主の後押しをしたいということ。そして、働く方々に対しましては、将来の年金額がふえて、医療保険の給付も充実する、こういった被用者保険のメリット、これをリーフレットなどでわかりやすく周知、広報を行う。これによりまして、働く方が働きやすい環境の整備に努力をしてまいりたい、こういった状況でございます。

田畑(裕)委員 答弁ありがとうございます。

 今回、中小企業と大企業、二段階に分けての推進というか進行ということになるわけでありますが、特に、中小企業で働く皆さん方の声をしっかり、事業主も、また労働者の皆さんの声も聞き取りをしてきたということでありますが、その中でやはり、特に労働時間を延ばすといったことについても、今御答弁もありましたが、当然本人の希望を踏まえてというのは大前提であろうかと思います。事業主の都合ということで、やみくもに労働時間を延ばすということは当然あってはならないと思います。

 本人の希望を踏まえ、短時間労働者の方が収入がふえるということ、もちろん、それが企業収益や企業の生産性を高めるということにもつなげていただきたいと思いますし、働く方の所得が、収入がふえるということは、当然将来の年金の額も増加するということにもちろん直結をしていくのではなかろうかなと思っています。

 くまなく、またいろいろな声をしっかりお聞き取りをしていただきたいと思いますし、キャリアアップ助成金の制度をしっかり利活用するということ、これもまた、いろいろな制度が氾濫しておるといいますか、いろいろ情報過多の時代でありますが、丁寧に説明を、説明といいますか周知徹底を図っていただきたいと思いますし、そうすることによって、中小企業のしっかりとした経営の下支え、そしてまたそれが有益な人材の育成につながる、そういうサイクルをぜひ実現していただきたいと思います。

 それでは、年金改定のルール見直し等についての質問をさせていただきたいと思います。

 これに至るまで種々の議論があるわけでありますが、この法案の改定ルールの際の、主要五紙を含めたマスコミの論調、少し御紹介をしたいと思います。

 十月末近くの報道でありますが、主要五紙の中でも、「年金法案審議 政治の責任を果たせ」、「国民に受けのよい話だけを進め、厳しい改革から逃げるような姿勢は、責任ある政治の姿とは言いがたい。将来世代にも目を向け、審議を進めてほしい。」また、もう一方の、別の紙でありますが、年金改革法案、持続可能にする議論をしっかり行うこと。また、政争の具にせず建設的な議論を。また、孫の世代を考えた年金改革が必要だ。また、社会保障論戦、負担の議論も一体的に行うべきだ等々。また、将来につなぐ給付抑制についても逃げずに議論すべきだというのが、主要五紙の主なこの法案に対する論調であります。

 至極もっともだと思うわけでありまして、やみくもに政争の具そしてまた不安をあおることなく、事実やそしてまた痛みについても当然説明をしながら、しかし、その痛みに対してはしっかりとしたセーフティーネットがあるということ、そうしたことをしっかりこの論戦を通じても国民の皆さんに御理解をいただける、そうした議論を行わせていただきたいと思います。

 また、我々、有権者の皆さんと本当に身近に接する政治家として、この年金の事柄、多くの皆さんは残念ながら信頼をしていなく、今の受給をされている年代の方、また、将来受給をされるであろう今は勤労世代の皆さん、どの世代と話をしても、残念ながら大きな信頼を得ていないというのが実態でなかろうかと思います。

 特に、年齢が若くなればなるほど、将来の自分の年金がしっかり受給できることに対する憂いの声ということを非常に多く感じます。ややもすれば、保険料の納付についての疑義も感じている国民もいらっしゃるのではなかろうかと思うわけでありますが、もちろん、これまでもこうした論戦を通じて丁寧な説明をお聞きしているわけでありますが、まだまだ国民の耳には届いていないということ、ぜひまた御認識の上に取り組んでいただきたいと思います。

 そこで、まず一問目の質問に入りたいと思います。

 少なからず、今言いましたように、多くの不安やまた不満があるわけでありますが、特に、今受給をされている方々にとっても、御自身が受け取っている年金そのものが、自分がかつて支払った保険料が運用されて自分に戻ってきているといいますか、自分が払った分がそのまま自分の給付に入っているという積立方式のように思っていらっしゃる方も多いのではなかろうかと思いますが、御承知のとおり賦課方式ということでありますから、今の若い世代が払っている保険料が高齢者の、今受給されている方々の給付金に充てられているわけであります。こういった仕組みだからこそ、人口構造が変化をして、支え手である若い世代が減った場合には、制度の持続可能性を高める工夫というのはやはりしっかり行っていかなければならないわけであります。

 それを踏まえ、これまでも幾たびの改革が行われてきたわけでありますが、昨今では、平成十六年の改革というのが百年安心年金という仕組みの構築のための大変抜本的な大きな改革であったわけであろうかと思いますが、まずは確認として、その抜本改革の一助でありました平成十六年の改革の以前と、そしてまたそれ以降の大きく変わった点について、まず御説明をいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘ございましたように、我が国の公的年金制度はいわゆる賦課方式でございまして、現役世代が負担する保険料、税によって高齢世代が支えられている、こういう仕組みでございます。したがいまして、この機能を適切に果たしていく年金制度という観点からは、現役世代の負担能力の範囲内の給付としていく、こういった視点が欠かせないところでございます。

 その中で、今御指摘ございました平成十六年の改正というのが非常に大きな画期をつくっておりまして、具体的に申し上げますと、まず、平成十六年の改正以前は、まず目標といたします年金水準を定めて、それに必要な保険料負担を若い世代に求めるということにいたしておりました。そういたしますと、世界のどの国も経験したことのない急速な少子高齢化がこれから進んでいくわけでございますけれども、将来年金を受け取る現役世代の負担が上昇し続けて背負い切れなくなるのではないか、その結果、勢い若者の年金不信も高まる、こういった課題に平成十六年当時直面をしていたわけでございます。

 そこで、平成十六年改正におきましては、現役世代の負担が過重なものにならないように保険料に上限を設けまして、そういたしますと、将来的に年金給付に使える財源が決まってまいります。具体的に、保険料、国庫負担、積立金の総額というものが決まってまいりますので、それを見通した上で、そうした限られた財源の範囲内で給付水準を調整する、そういった形で世代間の分かち合いをつくる、こういった仕組みといたしまして、あわせてマクロ経済スライドが導入された。

 平成十六年の改正の前後の状況を申し上げますと、以上でございます。

田畑(裕)委員 ありがとうございます。

 まさに、今現在は、保険料の上限を定めて、その枠内の中で給付を動かしていくという仕組みになっているわけでありますが、そこ自身も、やはり、大多数とは申しませんが、多くの国民の皆さんからは、そうした制度に変わってきており、しっかり安心されることができるんだよということも、まだまだメッセージが弱いのではなかろうかと思います。もちろん、なるべく安易な言葉を使っての御説明ということになろうかと思いますが、そもそもマクロ経済スライドという単語自身も、やはりいろいろな意味で工夫をした見せ方や聞かせ方ということを、よりまた引き続き御一考していただきたいと思います。

 今回の改定ルールの中では、大きく二点、一つはいわゆるキャリーオーバーということと、賃金・物価スライドの導入ということに相なるわけでありますが、そのうちの、この改定ルールの中で、賃金に見合った年金額の改定について、民進党さんは特に、年四万の年金カットであるという年金カット法案というようなレッテル張りをしているわけであります。それは私はもちろん正しくないと思いますし、総理や大臣も事あるごとにしっかり御説明として使っている言葉としては、いわゆる年金水準の確保法案であるということ、このことは決して私も譲れることではなく、あくまでも将来の世代の皆さんに対する水準を確保するんだということを強く認識したいと思っております。

 過去にいわゆる特例水準というものが存在をしていたわけでありますが、その解消については、将来世代の給付水準の確保をするために、現在受給している方の年金額を計画的に引き下げてその解消を図ることを、これは当時の民主党政権が決めて、その後の政権交代により、自民党政権において実施をしたわけであります。それによって、もちろんこれは痛みということも言えるのではなかろうかと思いますが、当然、収支における一定の改善が図られたわけでありますが、なお残る課題の解決を図ろうというのが今回の改定ということになるのではなかろうかと思います。法案ということになろうかと思います。

 国民から見て特にわかりにくいのは、なぜ今の高齢者が年金額で少し譲ると申しますか、減額の要素が盛り込まれることが若い人たちの将来の年金が改善をすることにつながるのかというメカニズムがまだまだやはり難しく、理解が乏しいのではなかろうかと思いますが、改めて、この高齢者の痛み、そしてまた、次世代、将来年金をもらう世代のメリットについての連動やメカニズムをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げましたように、我が国の年金制度は、保険料の上限を固定いたしましたので、将来的に年金給付に使える財源の総額が決まってまいります。これを見通した上で、世代間の適切な配分ということで、マクロ経済スライドの仕組みを通じて長期間かけて徐々に調整をしていく、それによって世代間の適切な分かち合いを実現するという仕組みでございます。

 したがいまして、こうした総額というものが決まっている仕組みのもとでは、現在年金を受給しておられる高齢世代により多くの財源が配分されるということになりますと、その分、将来年金を受給する現役世代が配分される財源、これが減少してまいります。そうしますと、当然、将来受け取る年金額が低下をするということになります。したがいまして、一方で、高齢世代に年金を少しずつ譲っていただいて財源に余裕が生じた場合には、その分、現役世代に配分できる財源が増加いたしますので、当然、将来、現役世代が受け取る年金額が改善することになる、こういった構造にあるわけでございます。

 そういう中で、今回の年金額改定ルールの見直しでございますけれども、不測の経済状況になったといたしましても、将来世代の年金水準がこれ以上下がることを防止するためのルールであるということを御理解賜りたいと思います。

田畑(裕)委員 ありがとうございます。

 今このような制度改革をすることによって、改善することによって、まさに将来世代の年金の受給額、改善の方向に向かうためのその措置をしっかりとるんだということが含まれているというふうに理解をしたいと思います。

 事の本質的には、やはり、現在の年金を受給されている、給付を受けている世代が我慢をすれば将来の年金世代が年金が上がるというか、そういうような単純な構図、構造ではなくて、このまま制度改正をせずに放置した場合は、不測の経済情勢、それこそリーマン・ショックというような事態に陥ったときには、より将来の基礎年金の給付水準が今よりもさらに大幅に下がるということがやはり心配されるわけでありますから、それに対する備えというふうに理解をしたいと思います。

 若い世代が将来受給する基礎年金の水準が下がらないようにする、これが今回の改定ルールの本質ではなかろうかと思いますが、副大臣に改めてその見解をお聞かせいただきたいと思います。

橋本副大臣 田畑委員から大変本質をついた御質問をいただいたというふうに思っております。

 今の改定ルールでしたら、仮に現在の若い人たちの賃金が下がってしまう、それはリーマン・ショック等、不測の事態ということだと思いますが、そうした場合には、現在年金を受給している高齢世代の年金水準というのは賃金・物価スライドでは下がらないというルールになっていますので、ですから、そうしますと、そのことが、現在の若い人たちが将来受け取るはずの年金額の一部を財源として維持されるということになってしまいますので、今の若者世代からすると、そもそも、賃金が下がってしまうような、生活が苦しくなるような状況になってしまう上に、将来受け取る年金水準も低くなってしまうという、これは二重の苦しみという言い方をしますけれども、そういうふうになる可能性があったということでございます。

 これを今回、そのルール改正をさせていただくということで、マクロ経済スライドによる調整をできるだけ先送りしない、また、仮に現在の若い人たちの賃金が下がるような経済状態が起きた場合は、現在の年金額も若い人たちの賃金の変化に合わせて改定をすることで、若い人たちが将来受給する基礎年金の水準がこれ以上低下することを防止するためのものでございまして、いわば、若い世代の二重の苦しみを世代間で分かち合うためのものというふうに御理解いただければありがたいと思います。

 そもそも、安倍政権といたしましては、デフレ脱却をし、アベノミクス、一億総活躍、働き方改革等々のことでもって経済をやはりよくしていこうということで、こうしたルールが発動する、要するに、賃金が下がっていくような局面をつくらないでいくということにまず私たちは全力で取り組んでいる。ただ、このルール改正は、その万一のときの転ばぬ先のつえのようなものだというふうに御理解いただければありがたいと思います。

田畑(裕)委員 副大臣、ありがとうございます。

 本当に、アベノミクスをしっかり推進させて、物価も賃金も両方しっかり上げていくということ、これにもちろん全力を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

 しかし、万が一のための備えのつえということであろうかと思いますが、今、この法案の中では、名目や実質、両方低下をするような事態が起きた場合でも、三十一年十月からの実施となる年金生活者支援給付金、これは、基礎年金のみの低所得者の方であれば、年間六万円という厚みのある給付をしっかり行ってカバーするということであります。

 これは、私は、支えとしての枠内であるとは思うわけでありますが、やはり不測の経済情勢にも十分対応できるだけのしっかりしたものではなかろうかと思うわけでありますが、今回の法案で、年金額の改定ルールを見直すに際して、年金受給者である高齢者に対する配慮措置、これを改めて御答弁いただきたいと思います。

馬場大臣政務官 田畑委員にお答えします。

 そもそも経済の状態がよく、賃金と物価が上がっている状況では、基本的には年金額は上がり、マクロ経済スライドによる調整があったとしても年金額がマイナスになることはありません。

 もとより安倍政権は、デフレ脱却や賃金の上昇に全力で取り組んでいきますが、将来、例えばリーマン・ショックのようなことが起きて賃金が下がることがないとは限りません。そうしたときも、将来の基礎年金の水準がこれ以上低下することのないよう、年金額の改定ルールを見直すものであります。

 この改定ルールの見直しについては、マクロ経済スライドの未調整分について景気のよい時期に持ち越して調整する仕組みと、賃金の低下に合わせて年金額を改定する仕組みという二つの仕組みを導入いたすわけでありますが、この導入に当たっては現在の受給者の方にも配慮して、一点目は、マクロ経済スライドの新たな仕組みについては、賃金や物価がプラスのときに発動し、前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮措置を維持します。二点目の、賃金の低下に合わせて年金額を改定する仕組みについては、低所得、低年金の方に最大年六万円、先ほど御紹介もありましたが、福祉的給付を平成三十一年十月までにスタートさせた後の平成三十三年度から導入することといたしております。

 もとより、政府としては、賃金上昇を含む経済再生に全力で取り組んでまいる所存でございます。

田畑(裕)委員 御丁寧な答弁、ありがとうございます。

 経済情勢の向上に向けて全力で取り組んでいただきたいと思います。

 もう時間がございませんが、GPIFの質問を準備しておったんですけれども、ちょっとできないことをおわび申し上げたいと思いますが、一点、いわゆるGPIFのディスクロ誌、これが今年から改訂をされて非常に見やすい形になっていると思います。今回、ガバナンスの強化であったりですとか、さまざまな運用のボードメンバーのしっかりとした規定も盛り込まれているわけでありますので、特に運用基金も、運用の額が百三十四兆円以上にも上る大変大きな、世界一の年金の運用基金でありますから、それをしっかり堅持しながら、国民の年金のしっかりとした給付の一助になる、そうしたGPIF改革、そこをなし遂げていただきたいと思います。

 特に答弁は求めませんので、以上で質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 よろしくお願いいたします。

 まず冒頭、法案審議に入る前に、ちょっと一点、どうしても申し上げたいことがございます。

 先週、十一月十一日、社会保障審議会の障害者部会で、会場がバリアフリーになっていなくて車椅子の委員の方が会場に入れなかった、こういうことがあったというふうに伺いました。過去にこのビルを使ったときはバリアフリーだったので、それは単純なミスだった、こういうことも伺ったんですけれども、まさに、障害者差別の解消法が全面的に施行される、今後いろいろなところで合理的配慮をしていかないといけない、こういう時代であります。こういうときに障害者の行政を行う厚生労働省がこのような失敗をした。これは、私は、言語道断であって、猛省をしていただきたい、このように考えております。

 障害者の政策というのは、ぜひ障害者の皆様のお気持ちに寄り添って進めていただきたいというふうに思っております。こうしたミスがあれば、厚生労働省が、一番大事な、根本的な姿勢の部分で何か大きく欠けているんじゃないか、このように思われても私は仕方がないというふうに思います。

 今後、二度とこのようなことがないようにしていただきたいと思いますけれども、答弁をお願いします。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

橋本副大臣 お尋ねの件でございますけれども、今月十一日に開催した社会保障審議会障害者部会におきまして、外部の会場を利用したわけでございますが、会議室に入るまでに階段を上らなければならない構造となっておりました。そのことを先に会場に到着した車椅子を使用している委員一名の介助者の方が発見をされ、委員本人に連絡をされ、審議会にその委員の方は出席を断念されるということになったということがございました。

 これは、なぜそのようなことになったかと申し上げますと、厚生労働省の事務局におきまして、事前にその会場施設がバリアフリーとなっているかの現場確認を怠っていたということが原因でございます。

 委員御指摘のとおり、この四月に障害者差別解消法が施行された中、まさにその障害者施策を議論する審議会においてこのような事態を招いてしまったということは、極めて不適切としか言いようがございませんし、まさに障害者行政を所管している身としても恥ずべき、まさに猛省をしなければならないことだと考えております。

 この委員の方には、即日、担当者より謝罪を申し上げましたし、また、私も、まことに申しわけなかったこととおわびを申し上げなければならない、こう思っておりますけれども、それとともに、二度と繰り返してはならない、再発防止を徹底しなければならないというふうにも考えているところでございます。

 このため、昨日付で官房長名の通知を厚生労働省内の全部局長宛てに発出をしております。障害のある方等が支障なく会議に参加、傍聴できるように対応を徹底するように指示をしたところでございまして、例えば、会議室を選定するに当たり、予約時の確認や現地確認などをきちんと行う。

 こうしたことを起こしてしまったということを忘れぬようにし、鑑み、今後、同様のことが二度と発生しないようにしっかり努めてまいりたい、このように考えております。

 まことに申しわけありませんでした。

中野委員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 では、年金改革の質問に入らせていただきます。

 皆様御承知のとおり、また、先ほど来お話が出ているとおり、年金というのは賦課方式の制度であります。現役世代の支払う保険料で年金の支払いをするという世代間の支え合いでございます。全ての世代の方々にとって納得のいく制度でなければならない、このように考えております。

 ずっと議論になっておりまして、私が非常に違和感を感じておりますのが、今回、賃金スライドの部分だけ非常に着目されて議論が進んでおります。国民の皆様も、ここの部分だけ非常に何か注目をして、何か起こるのかなという感覚を持たれるんじゃないかと思います。

 ではなくて、年金の制度というのはいろいろな改革をしておりまして、特に、低年金の対策、年金受給資格の短縮、あるいは、先ほど来、福祉的給付金の話も出ております。低年金の方には年金の充実をしっかりしていくんだ、こういう制度改革もあわせて並行して進んでおり、そして被用者保険の拡大の話もあり、そして今回の、将来の年金確保のための制度改正もあり、こういう、年金についてどうなるのかというところをやはり総合的に見ていく必要があると思います。

 そういう意味で、年金制度改革の全体像について、改めて御説明をいただければというふうに思います。

馬場大臣政務官 中野委員にお答えします。

 改めまして、今回の年金改革法案は、中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大、国民年金の産前産後期間の保険料免除、そして年金額改定ルールの見直しなどを内容としております。

 今回の改革により、中小企業で働く約五十万人の短時間労働者が、労使合意に基づき、厚生年金に加入できるようになります。これにより、将来の年金が増加し、また、より長く働いた場合には収入をふやすこともできると考えております。

 また、約二十万人の第一号被保険者の産前産後期間四カ月分の国民年金保険料が免除されるとともに、その期間の基礎年金が保障されます。その費用として、保険料を月額百円引き上げさせていただくこともあわせて御提案しております。

 また、マクロ経済スライドについては、前年度より年金額を下げない名目下限措置を維持しながら、未調整分の先送りを防ぐことで、現在二十歳の人が六十五歳になって受け取る基礎年金は、夫婦で月額二千円程度改善すると見込まれております。

 さらに、仮に、将来、名目賃金も実質賃金も低下するような不測の経済状態になった場合には、賃金に合わせた年金額の改定を行うことにより、若い世代の基礎年金水準の低下を防止することができると考えております。

 以上のように、本法案は将来世代の給付水準を確保するものであり、こうした改革により、若い世代の年金制度への信頼が高まると考えております。

 また、法案のうち、年金額改定ルールの見直しについては、マクロ経済スライドは、賃金や物価がプラス時のみ発動し、前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮措置を維持し、賃金が下がったときに賃金に合わせて年金額を改正する見直しについては、低所得、低年金の方に最大年六万円の福祉的給付を平成三十一年十月までにスタートさせた上で導入するといった十分な配慮も行うこととしております。

 一方で、無年金の問題は、かねてより年金制度の課題の一つとして指摘され、社会保障・税一体改革において、無年金者をできるだけ救済すると同時に、納付した年金保険料を極力給付に結びつける観点から、受給資格期間を短縮することとしたものであります。

 今回の改革により、新たに約六十四万人の方が年金受給権を得ると見込まれており、高齢期の所得や消費の底上げが期待されるとともに、納付した年金保険料を極力給付に結びつけることで、国民の年金制度に対する信頼が高まると考えております。

 こうした改革により、若い世代の納付意欲を高めるとともに、安心して今の高齢者の年金を支えていただくことにより、年金制度の持続可能性も高まると考えております。

中野委員 網羅的に御説明をいただきました。

 低年金、無年金対策も含めて、やはりそういうものも充実をさせる措置というのもしっかり講じながら、またあわせて、将来世代の年金の水準を確保するという措置も行っていく、こういう総合的な見方をしていく必要があるのではなかろうかと思います。

 その上で、今回問題となっている賃金スライドのケースでございますけれども、これをどのように捉えるのかということでございます。

 まず、これがどの程度起きるのかということがやはりこの委員会でも議論になっております。過去の経済状況もさまざま見させていただきました。デフレ経済のもとにおいてこういった事案が一定程度起こっているんじゃないか、こういう御指摘が確かにあるところでございます。

 しかし、他方で、私ども自公政権がまずやっていこうとしているのは、デフレを脱却しようということを一丁目一番地として掲げているわけでございまして、そのための金融政策、経済政策というものを行っている、そして今後も行っていくわけでございます。

 そうして、デフレではない経済状況の中で見たときに、今回の賃金スライドが起こるようなケースというのは、ほかの時期のものを見ましても、かなり例外的なケースなのではないのか、このように私は感じた次第でございます。

 デフレ脱却が図られれば今回のケースというのはかなり例外的なものなのではないか、こういう認識についてどのように考えているのか、答弁をいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、政府は、賃金上昇を含みます経済再生に全力で取り組んでおりまして、デフレから脱却して物価、賃金ともにプラスとなる、こういった経済のもとでは、今回の見直しによります額改定ルールが発動されることはないというふうに認識をいたしております。

 そこで、今回の法案でございますけれども、将来、万が一、不測の経済状況が生じまして、名目でも実質でも賃金が下がる、こういったような状況になった場合に、将来の基礎年金の水準がこれ以上下がることがないように改定ルールを見直すものでございます。

 こういったように、年金制度が万が一の事態にも対処できるように備えることによりまして、若い世代の制度への信頼感が高まりまして、今の高齢者の方々の年金を支えていただけることになりますので、制度の持続可能性も高まる、こういったように考えているところでございます。

中野委員 明確な御答弁であったと思います。

 であるからこそ、やはりデフレ脱却の道をより確かなものにしていくということが非常に重要になってまいります。

 その鍵を握るのは、私は、賃金がこれから継続的に上昇していけるのかどうか、これが非常に大事だというふうに考えておりまして、そのために、厚労省としても、最低賃金の引き上げ等々も含め、賃金を上昇させていくためのさまざまな取り組みというのをぜひ進めていっていただきたい。

 今後の取り組みの方針について、これも答弁をいただければと思います。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の賃上げにつきましては、中小企業を含めまして、今世紀に入りまして最も高い水準の引き上げが三年連続で実現をしておるところでございます。

 持続的な賃金の引き上げのためには、企業の競争力を高めることが重要でありますし、そのためにも、生産性の向上を図りながら、人材育成の充実にも取り組むことが必要だと考えております。

 厚生労働省といたしましても、現在開催をされております働き方改革実現会議の議論を踏まえつつ、持続的な賃上げができる環境の整備について検討してまいります。

中野委員 まさに今、検討が進んでいるところであると承知をしておりまして、より実効的な取り組みというのを厚労省としてもぜひ進めていっていただきたいというふうに思います。

 本法案について、この新しい賃金スライドの部分を捉えて、年金カットというレッテルを張られる方もいらっしゃいます。私たちは、そうではない、将来年金の水準を確保するための法案である、このように考えております。

 改めて御説明をいただきたいんですけれども、若い世代、将来世代にとって、もし仮に今回の法改正が行われないとすれば、将来世代のもらう年金、これに対してどのような影響が及び得るのか、これについても説明をしていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 まず、今回の改正の背景になった事情でございますけれども、過去に賃金がマイナスになった際に、これに合わせて年金額の改定が行われませんでしたために、現役世代の賃金が低下するといった状況の中で、逆に高齢者の年金の所得代替率が上昇いたしまして、その分、マクロ経済スライドの調整期間が長期化し、その結果、若い世代が将来受給する基礎年金の水準が低下した、こういったことが実際に起こったわけでございます。

 このため、これを踏まえて、今回の改正におきましては、仮に、万一、賃金が下がるような状況が生じたときにも、賃金に合わせて年金額を改定することによりまして、若い世代が将来受け取る基礎年金の水準がこれ以上下がることがないように改定ルールを見直すものでございます。

 したがいまして、お尋ねのように、今回の改正を行わなければ、今後、望ましくない不測の経済状況が万一生じたような場合に、将来の基礎年金の給付水準が一層低下するといったようなことにもなりますので、これを防ぐための改正であるということに御理解を賜りたいと思います。

中野委員 今回の法改正を行わなければ、仮に不測の事態の経済状況が生じたときに、将来の世代がもらう年金水準に影響がある、これがより下がってくる、こういう答弁であったというふうに思います。

 いろいろな議論が確かにございますけれども、将来のための措置というのは、年金カットという極めて一面的な見方をするのではなくて、これは世代間の分かち合いであるというふうに私は思います。しかも、それが必ず起こる、直ちに起こる、こういうことではなくて、しっかりと万が一の備えをそのためにしていくんだ、こういうことであります。

 将来世代の年金水準が下がらないような万が一の備えをしっかりとしていく、こういう政策を行っていくことによって、年金制度の信頼性そのものが向上をしていく、このように私は感じております。

 今回、七月に参院選もありまして、十八歳選挙権ということもございましたので、かなり若い世代の方と意見交換をする機会というのがすごく多くて、その中で、私が非常に痛感をいたしますのは、将来の年金制度に対して非常に不信感を持っている、あるいは、将来の年金、これが、払っても、もらえないんじゃないかとか、払い損になるんじゃないかとか、この制度そのものに対するいろいろな御意見というのを大変にいただいているところでございます。

 年金制度そのものが少し複雑なこともございまして、なかなか簡単に、一言でこうだということで説明をしにくいというのも確かにあるんですけれども、若い世代の国民年金の納付率というのは、ほかの世代に比べて低いという事実もございます。平成二十七年度ですと、二十歳から二十四歳は五八%、二十五歳から二十九歳で五三%、こういうことでございますし、もちろん経済的な問題で支払えないという方も多いんですけれども、年金制度そのものに不安を感じているであるとか、あるいは、厚労省、社保庁、こういった組織が信用できないであるとか、こういう理由で払っていない、こういう方もかなりいらっしゃるわけでございます。

 年金制度についての理解を深める取り組みというのをやはり強化していかなければならないというふうに思います。特に、将来の年金のもらえる水準がどんどん下がってくるんじゃないか、こういう指摘がなされている中で、国民年金は、支払っても、結局、自分にとって払い損だから、払わなくてもいいんじゃないか、こういうお声もございます。

 こうした声に対して、国民年金あるいは年金制度そのものの理解を深める、そうした取り組みについて、もっともっと政府としても進めていくべきではないか、このように考えますけれども、これについても答弁をいただければと思います。

馬場大臣政務官 とても大切な質問をありがとうございます。

 公的年金制度には、将来起きるかもしれないもしものときに備えて、安心を得られるという大きなメリットがあります。具体的には、高齢になったときに、どれだけ長生きしても一生涯受け取れる老齢年金、将来、賃金や物価が上昇すれば、それに応じて年金もふえる実質価値の保障、思いがけない事故や病気で障害を負ってしまったときに受け取れる障害年金、一家の大黒柱が亡くなってしまったときに受け取れる遺族年金があり、人生のさまざまなリスクに備えるものであります。きちんと保険料を納めていただければ、このもしものときにこうした年金を受け取ることができます。また、現役世代は、公的年金があることによって、親の扶養などを心配しないで生活できるというメリットもあります。

 いずれにしろ、納めた保険料の何倍の年金が受け取れるのかという数字だけを見て損か得かを考えられるものではありません。あえて一定の前提を置いた上で、納める保険料と受け取る年金額を計算して比較しても、平均余命まで生きた場合には、保険料として納めた額以上の年金を受け取ることができます。

 加えて申し上げると、今回の額改定ルールの見直しは、賃金が物価より低下するという望ましくない経済状態となった場合でも、所得代替率が上昇しないように備えるとともに、将来世代の年金水準をしっかりと確保していくために行うものであり、若い世代のために重要なものであると考えております。

 また今後も理解を深めるよう努力してまいります。

中野委員 国民年金、確かに、先ほど御説明いただいたような保険的な側面というのもありまして、もらえる期待値がどのくらい高いから得だとか、期待値がどのくらい低いから損だとか、実は必ずしもそういうものじゃないというところも含めて、なかなか理解されていないようなケースというのもかなりございます。

 国民年金、年金そのものが、支払いが半分、税の方で負担をしているということももちろんございますので、全体的に見ると非常にメリットがあるということは私は明らかであるというふうには思うんですけれども、それに加えても、こうした今回の法案のような、将来の年金の水準が不測の事態に下がってしまわないような取り組み、こういうこともあわせてすることによって、年金制度の信頼性そのものが向上していくんじゃないか。そういう意味でも、本法案の成立というのは非常に大事なのではないか、私はこのように感じております。

 本法案では、短時間労働者への被用者保険の適用拡大、これについても内容が含まれておりまして、ことしの十月から、五百一人以上の企業ということで適用が拡大をされたところでございます。今回、五百人以下の企業でも労使合意に基づいて適用拡大を可能とする、こういう制度が盛り込まれておりまして、これについても、将来もらえる年金というのがこれでしっかり確保される、こういう中身でございます。

 ただ、十月一日以降、この適用拡大に関連をして、何か負担がふえる制度改正なんですかといった、実はこういった御意見も現場でいただくこともかなりございまして、この被用者保険の適用拡大についてのメリット、こういう部分をやはりもっと丁寧に説明をしていかないといけないな、もっと周知をしていかないといけないな、私自身もこのように非常に感じたわけでございます。

 政府の方でも、この被用者保険の適用拡大について、実際に働く皆さんにどういうメリットがあるのかということについて、よりわかりやすく、しっかりと周知をしていただきたい、このように思いますけれども、これについても答弁をいただければと思います。

鈴木政府参考人 今般の被用者保険の適用拡大でございますけれども、特にサラリーマンに扶養されている配偶者の方々を中心といたしまして、こういった方々の保険料は今は厚生年金制度全体で負担をいたしておりますので、個々の方々には保険料の負担が生じていない、支払いが生じていないという状況でございます。

 したがいまして、今回、働き方に合わせて厚生年金を適用拡大いたしますと、社会保険料の負担というものが生じますので、その面を捉えまして、ちょっと負担がふえるというような御心配をいただいております。

 ただ、先生御指摘のように、一方で、これは負担だけをとるものではありませんで、それによって将来の厚生年金の年金額が非常にふえる、それから、健康保険が適用されれば医療保険の給付も充実するというようなさまざまなメリットがございますので、今回の適用拡大を機に、私ども、リーフレットなどを活用して丁寧に周知、広報を行っております。

 そういったことで、働きたい方が働きやすい環境の整備、これに引き続き努力をしてまいりたいというふうに考えております。

    〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕

中野委員 ありがとうございます。

 最後に、この被用者保険の適用拡大、五百人以下の企業であれば労使合意に基づいて拡大をするということで、これは必ずやるということではございませんので、こうした中小零細企業、社会保険料の負担もございますので、すぐにこれをやっていこうというふうになる企業と、そうではない企業も出てくるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、働く方の処遇というのをしっかりと改善していく、こういうものもしっかり取り入れていこう、こういう前向きな企業というのを政府の方でもぜひ後押しをしていただいて、少しでも多くの企業にこうした改革に前向きに取り組んでいただきたい、そのための応援をしっかりしていただきたい、このように思うんですけれども、最後にこれについて答弁いただければと思います。

鈴木政府参考人 今御指摘いただきましたように、今回の法案で、中小企業で働きます約五十万人の短時間労働者の方々につきましても、被用者保険の適用拡大の道を開いているところでございます。

 その中で、中小企業でもこの適用拡大が進みますように、短時間労働者の方々の賃金の引き上げ、それから、御本人の希望を踏まえて働く時間を延ばす、こういったことで人材確保を図る意欲的な企業が実際にいらっしゃいます。こういった企業を私どもは全力で後押しをしたいと考えておりまして、例えば、キャリアアップ助成金の拡充、こういったことなども通じまして、積極的な支援の展開を図ってまいりたい、こういうふうに考えてございます。

中野委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民進党の大串でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 年金の法案ですけれども、私たちは、年金カット法というふうに思っています、言っているし、思っています。これに関して議論を進めさせていただきますが、まず、その前に、この法案に関して、近日、自民党さんの方で、議員さん、そしてネットにも出ていますけれども、今回の法律に関する説明というのが出ているようですね。それを見て、これは極めてゆゆしき答えだなというふうに思われる点がありますものですから、御指摘をさせていただき、政府の方には確認もさせていただきたいと思います。

 「年金改革法案に関するQ&A」、これはネットにも出ていますね、自民党さんの。この中で、とんでもない間違い、これはわかってやっているとすると、うそですね。こんなことを書かれているので、ぜひ是正をしてほしい、これは公の場で、私は政調会長として申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 一つには、この自民党さんがつくられた「年金改革法案に関するQ&A」の「Q10 今回の改定ルール見直しは突然出てきた話ですか?」、今回のこの改定ルール、私たちがまさに問題としている賃金スライド、これも含んでいる書きぶりになっていますね。「今回の改定ルール見直しは突然出てきた話ですか?」この問いに対して、「いいえ、突然出てきた話ではありません。」「民主党政権下で閣議決定された「社会保障と税の一体改革大綱」(平成二十四年二月十七日)に「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討」と盛り込まれていました。」こういうふうに書かれていますね。

 塩崎大臣にお尋ねしますけれども、このときの閣議決定、二十四年二月十七日、「「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討」と盛り込まれていました。」と、自民党の皆様が、私たちがこれを検討していたかのごとく書いているここに、このときに、賃金に合わせて、物価がどうであろうと賃金が下がれば年金を切るようなことを考えていたという一項目が入っているという証拠がありますか。

塩崎国務大臣 大串先生は、多分、全ておわかりの上で御質問いただいているんだろうと思いますが、自民党のこれは、今私は初めて見ましたが、「今回の改定ルール見直しは突然出てきた話ですか?」という質問です。「いいえ、突然出てきた話ではありません。」と。その一つポチを飛ばして、「今回の見直しは、民主党政権時からの課題に対して、具体的な解決策を講ずるものです。」こう書いてあります。ここまでは多分先生も認められることで、もっとも、先生がテレビで突然出てきた話だと明快におっしゃっておるのを私も聞いてびっくりいたしました。

 それはなぜかというと、先ほど何度も答弁申し上げたとおり、平成二十一年の財政検証、この中で、デフレ下におけるマクロ経済スライドを含めてどういう調整をしていくべきなのかということに問題点、指摘がございました。その上で、民主党政権で、この「マクロ経済スライドの検討」ということで、「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討する。」というこの一文が入っている閣議決定の一体改革大綱というのがございますが、ここで自民党が書いているものにも、今回の賃金スライドについて一体改革の大綱の中に入っているというふうには、見る限りは書いていないと思います。

 ここで書いているのは、民主党政権下で閣議決定された社会保障と税の一体改革大綱に「「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討」と盛り込まれていました。」こう書いてありまして、これは、先生も多分お認めになると思うんです。

 そうすると、ポチが三つありますけれども、全てこれは先生がお認めになることだと思います。

 今申し上げているのは、デフレの中で年金というのはどういうふうに調整をしていくことが持続性にとって大事なのかということを申し上げて、それが大事なことであって……(大串(博)委員「質問と関係ないことを答えているので、委員長、切ってください。証拠を聞いているんですよ、当時の証拠」と呼ぶ)多分、察するに、これは自民党に聞いていただかないと、私がかわって答える立場では全くありませんので……(大串(博)委員「いやいや、政府が答えられることを聞いているんだから。委員長、ちょっと注意してください」と呼ぶ)聞いていただけますか。(大串(博)委員「聞いていますよ。聞きながらしゃべれるんです。どうぞ」と呼ぶ)自分の声まで聞こえなくなっちゃうものですから。

 そういうことで、いかにデフレのもとでの調整が大事かということで、マクロ経済スライドの効果を十分に発揮していく、このためには、今回の賃金スライド、これを、徹底を含む年金額の改定ルールは、言ってみれば前提条件であって、一体改革大綱に書かれている問題を解決する上で必然的に行わないといけない改正だというふうに私たちは思っていて、それは何かというと、やはりこういうルールがなければ、万が一、賃金が下がった、物価以上に下がったときとか、物価が上がって賃金が下がったときの調整が不十分であれば、代替率が上がってしまって、マクロ経済スライドの期間が長くなり、そして基礎年金の代替率が悪化をする、このことを避けなければいけないということでありますので、大串委員の御質問に答えておりますので、ぜひお聞き及びをいただきたいというふうに思います。

大串(博)委員 先ほど来、長妻さんのときにもありました。全く質問に答えないで、自分のしゃべりたいことだけべらべらしゃべる。こんなもんじゃ、審議は詰まりませんよ。

 私はもう一回更問いします。

 先ほど私が聞いたのは、民主党政権下で閣議決定された社会保障・税一体改革大綱の中で、二十四年二月十七日、「「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討」と盛り込まれていました。」それは事実ですよ。この中で、物価が上がっているにもかかわらず賃金が下がれば、それに合わせて年金を切るというようなことが検討された事実関係がありますか、証拠を示してください。事実に関する客観的な、イエスかノーかの答えだけ求めているんですよ。

 この問いを発しますので、その前に、委員長にお願いします。大臣にこの場で端的に質問されたことにだけ答えるように、まず指示していただけますか。

丹羽委員長 大臣におかれましては簡潔に御答弁をお願いいたします。

 大串博志君。

大串(博)委員 大臣、大臣の明晰な頭ですから、お間違えないように。この二番目に書かれている、私たちの政権時の閣議決定に書かれた「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討」、このときに、物価が上がっても賃金が下がれば年金を切りますというようなことが検討された証拠があるかないか、そのことだけ、ここで答えてください。

塩崎国務大臣 我々野党でありましたから、何を議論されたかは私たちはわかりません。

大串(博)委員 野党であったと言われますけれども、政府機構は、大臣の後ろにたくさん役人さんがいるじゃないですか。私は皆さんの顔も覚えていますけれども、当時、私たち与党として年金の話を皆さんといろいろしたんですよ。覚えていらっしゃるはずですよ。後ろに座っていらっしゃる年金局の皆さんも覚えていらっしゃるはずですよ。にもかかわらず、役人の皆さんは貝のように口を閉ざしている。一体どういうことなのかなと私は思いますけれども。

 大臣、私は当時、担当の政務官だったんですよ。担当の政務官だから明確に覚えていますけれども、当時、物価が上がっても賃金が下がったら年金を切るような検討をしたこと、これっぽっちもないんですよ。頭の片隅にもなかったんですよ。これは事実。だから、大臣がありましたという証拠を示せないのは当然なんですね。

 もう一つ言いますよ。

 その何ページか前の、年金改革法案、受給資格期間短縮法案についてというこの紙の中で、これも自民党さんの紙です。この中の、この紙の中で黒塗りで書かれている、「民主党政権時でも、見直しの必要性が認識されていました!」民主党の年金制度案においても、賃金が下がった場合には年金額も下がります、こう決めつけのように書かれていますけれども、私たち、これは決めたことは一度もありませんから。

 いろいろなシミュレーションをやりました。田村憲久筆頭理事と私、NHKの「日曜討論」に出たときも、これは事実ではありません、決めたことありませんというふうなことを言いました。はあ、わかりましたというような顔を田村さんはされていたので、理解していただいたかなと私は思いましたけれども、それを知った上で書かれているんだったら、これはうそですね、虚偽。こういうふうな虚偽のことを言われては困ります。

 私たち、民主党政権のときに決めた内容は、読み上げますよ、私たちが民主党政権のときに決めた内容は極めてシンプルで、「納付した保険料を記録上積み上げ、仮想の利回りを付し、その合計額を年金支給開始時の平均余命などで割って、毎年の年金額を算出。」と。

 ここまでだけなんですよ。これ以上のことは何ら決めていないんです。賃金によってスライドするとかなんとか、何も決めていないんです。いろいろな試算はしました。表に出した以外の試算もいろいろしました。しかし、決めているのはこれだけなんです。

 委員長にお願いがあるんですけれども、これは議論の土台です。議論の土台で、与党の資料の中にこのような、知ってやっているとするとうそ、知らないでやっているとすると出任せ、このようなことが書かれている状況で審議をやると、私、非常に気持ちもよくないし、なかなか、質問時間もこうやってとられるので、よくないことだなと思いますので、理事会の場で、与党の皆さんに対して、こういう指摘は、真実じゃないものは削除してくださいと理事会で取り扱ってください。お願いします。

丹羽委員長 政党間の話でございますので、政党間で対応していただきたいと思います。

大串(博)委員 委員長、取り扱ってくれないんですか、これ。

 理事会で、与党の皆さんに、こういうふうな指摘は間違っているという指摘が委員会の中であったので、どういうことか確認して、間違っているんだったら落としなさいというだけの話なんです。委員長として公正な委員会運営をするんだったら、そのぐらいのことをすべきだと思いますけれども、どうですか。理事会で取り扱ってください。(発言する者あり)

 土台ですよ、委員会の。委員会の土台ですよ。理事会でこのぐらい取り合わなきゃ……

丹羽委員長 大串委員に申し上げます。(発言する者あり)

 ちょっと御着席ください。今お答えいたしますので、御着席ください。(大串(博)委員「ちょっと、理事が出ているんだから、時計をとめてくださいよ。時計をとめてくださいよ。わかった上でやっているんだから。理事会で取り扱うというだけの話ですよ。そのくらい公正にやってください。理事会の場で公党間でやりましょうよ」と呼び、その他発言する者あり)

 質疑に戻ります。

 大串博志君。

大串(博)委員 これは大きな問題なんです。これは我々、また問題にしますよ。こんなうそ、虚偽のことを公党の資料に書かれる、これはあってはならぬことだ。

 つまり、何でこれを指摘するかというと、政府・与党の年金に対する極めて不誠実な説明のあり方が通底していると思っているから、私、言っているんです。なぜなら、今回の年金カット法案、大臣は将来の年金を確保するための法案だとおっしゃっていますね。私は、とんでもないミスリードな説明だと思いますよ。

 一つ、大臣、お尋ねしますけれども、今の年金、二年前の年金財政検証で確認をされましたけれども、年金法改正に基づく百年間安定的な制度になっている年金と、前回、二年前の財政検証のときに認定されましたか。

塩崎国務大臣 百年安心についてお尋ねをいただきました。

 我が国の年金制度は、言うまでもなく、将来年金を受給する現在の若い人たちが、現在年金を受給している世代へ仕送りを行うという助け合いの仕組み、賦課方式でございます。

 今御指摘の平成十六年改正において、年金制度の持続可能性を高めて次世代に引き継いでいくために、現役世代の負担が過重なものにならないように保険料に上限を設けて、将来的に年金給付に使える財源を見通した上で、その限られた財源の範囲内で給付水準を調整する仕組みとしてマクロ経済スライドを導入したわけでございます。

 その上で、少なくとも五年に一度、人口や経済の長期の前提に基づき、おおむね百年という長期的な給付と負担の均衡の見通しに関する財政検証を行っているわけでございます。平成二十六年の財政検証においては、日本経済が再生をし、高齢者や女性の労働参加が進めば将来の所得代替率は五〇%を上回るということが確認されているということでございまして、政府として百年安心という表現を使っているわけではございません。

大串(博)委員 百年安心という言葉を使っているか使っていないかじゃなくて、百年間安定的になるような仕組みとしていますというふうなことを今まで言われているし、総理も、この間予算委員会で私が質問したときに、前回検証においても百年間安定的になっていますということをお認めになりましたし、田村前大臣も、国会で何度も質問されて、前回の財政検証に関して、百年間、ケースEのもとに安定的だというふうに言われています。

 それに対して、資料一を見ていただきますと、これはこの間の予算委員会でも指摘したんですけれども、二十六年の財政検証、一番下のコラムです。名目賃金上昇率をずっと見ていただくと、二〇一四年一%、二〇一五年二・五%、二〇一六年二・五%、一七年三・六%、三・七、三・八、三・九、三・九、四・二、四・一、二・五、二・五、ずっと賃金上昇率はかなり高いプラスの領域を見込んだ上で所得代替率五割を維持する、よって百年安定的になっていますというふうに答弁されているんですね。

 ところが一方で、デフレになるかもしれない、賃金が下がることもあるかもしれない、念のための転ばぬ先のつえだということで今回年金カット法案を出していらっしゃる。一体どっちが、政府が、将来こういう世の中になるだろうなと考えている世の中なのかわからないんですよ。

 国民の皆様にしてみると、賃金が三%、四%伸びる経済を前提に、百年安心ですよと政府から言われて、ああそうなのかなと思っていると、いきなり突然、その二年後には、いや、ごめんなさい、賃金がマイナスになることもあるかもしれない、だから、そのときには年金をカットさせる、そういうふうな法案を通してくださいと。混乱するのは当たり前ですよ。

 大臣にお尋ねしますけれども、この間の総理の答弁でも、これからリーマン・ショックみたいなこともあるかもしれないから、賃金がマイナスになることもあるかもしれない、よって、それに対する転ばぬ先のつえという意味でこういうものを入れたい、こういうふうにおっしゃいました。そういうことってどのくらい起きるんですか。よく起きるんですか、それとも起きないんですか。起きるときには、一時的に起こるんですか、それとも長く起きるんですか。

 与党の皆さん、笑っていらっしゃいますけれども、国民に言わせると死活問題ですよ。わかるわけないじゃないかなんてやじが飛びましたけれども、そんなことで年金をカットする法案を通されたらたまったものじゃないですよ。

 大臣、お答えください。賃金がマイナスになるということは、今後どのくらいの確度で起こるんですか。よく起こるんですか、余り起こらないんですか。起こるときには、一時的なんですか、それとも長い期間起こるんですか。お答えください、担当大臣ですから。

塩崎国務大臣 まず第一に、二十六年の財政検証における経済前提というのがありますが、もうこれは先生よく御存じのように、平成三十五年度までは、内閣府が行った中長期の経済財政に関する試算に準拠して設定をしております。今お示しをいただいた数字の比較的高い部分については、その内閣府の試算でございます。

 三十六年度以降は、内閣府試算を参考にしながら、経済、金融の専門家による検討を経て、中長期的な視点に立って置かれている前提でございまして、これらは御案内のように、年金部会のもとに設置をした専門委員会で客観的な議論を行って、この前提が、今非現実的という御批判があったようにお聞きをいたしましたけれども、必ずしもそれは当たらないと思っております。

 大事なことは、先ほど大串委員もお認めのように、これは五年に一遍、百年先まで見通すという中で、特に所得代替率が五〇%を切らないかみたいなことをちゃんと確認しないといかぬという発想から、五年に一度の財政検証をやっているわけでございます。

 基本的な経済政策は、何度も午前中申し上げたとおり、物価、賃金が両方健全な上昇を見るような経済政策をちゃんとやるということが一番大事なことで、アベノミクスはまさにそのために今必死でやっているわけでございます。

 したがって、どういう頻度で、どの程度、どういう継続性を持ってと言われても、予測することはなかなか難しいのであって、我々は、転ばぬ先のつえというのは、どういう頻度で、いつ起きるかということはわからないままに、しかし何があってもいいようにしていこうと。

 何があってもというのは何かというと、これはまさに、平成二十一年の財政検証、そしてまた民主党政権下の一体改革の大綱、この中でも、先ほどお触れをいただいたデフレ経済下におけるマクロ経済スライドのあり方をどうしていくのかということで、やはり、所得代替率が上がってしまって、将来的に調整が長引いて、そして代替率が悪化をするということを避けるということを図るために行うわけでございます。

 したがって、私どもは、どういう頻度でとかいうようなことを予想しているわけではなくて、万が一のときはこういうルールをきちっとやることで年金の将来の受け取りが守られる、そのことを大事にしながら、みんなで分かち合っていける制度として、持続性を図るものとして今回また、これは民主党政権下の宿題だと申し上げているのは、さっきお触れをいただいた閣議決定の大綱に入っているデフレ下でのルールをきちっとすることで、年金をさらに安定的なものにしようという発想からでございます。

大串(博)委員 この論点は極めて重要な論点で、すなわち、今、百年安定的に続く年金だという説明をずっと政府はしてこられたわけですね。それを担保する節目が五年ごとに来る。前回は二年前であった。二年前も財政検証されて、ケースEという前提で、平成五十五年度には所得代替率五〇・六、これで安定するので、百年安定的に先を見通せますということを政府として国民に約束されているわけですね。国民の皆さんは、そうかというふうに、多分、政府の皆さんは、それを聞いて安心してくださいということをずっとおっしゃっているんですね。

 そのときの経済前提が、この資料一の一番下に書いた経済前提なんですね。先ほど申しましたように、名目賃金上昇率が二%から三%、四%、二%、これはずっと続くという前提なんです。

 大臣もよく御存じのように、年金制度において、財政が安定するかどうか、賃金上昇率は根幹の数字ですよ。物価は両様に働きますね。物価が上がっても下がっても年金財政には両様に働きます。しかし、賃金上昇率は、これが上がれば上がるほど年金財政にはプラスに働くんです。だから、根幹の数字なんですね。

 これを前提に、当時、田村大臣を初め政府から、私たちは、このケースEの状況であれば百年安心ですと、百年安心ですという言葉は使わないと言われましたので、百年間安定的に推移するということになっていますというふうに言われました。その説明に対して、大臣、今提案していらっしゃる法律は、賃金がマイナスになることを前提とした法律ですよ。

 国民にしてみると、一体どっちに行くのか。それは転ばぬ先のつえだということで、時々起こるかもしれないからそれに対して策をとりますというふうに言われますけれども、そういうふうに言われると、普通の国民からすると、二年前にこの数字を前提に安心してくださいと言われました、賃金がずっと上がるという前提で安心してくださいと言われました、ところが、二年後のきょうになってみると、賃金が下がることになるかもしれないから、そのときには削らせてくださいと言われました。

 普通の人であれば、では、それというのはどのくらい起こるんですか、たくさん起こることなんですか、少ししか起こらないんですか、必ず聞きますよ。これに関する説明がちゃんとできないままで、この法案は、国民に対して誠実な説明にはなりませんよ。

 大臣、ここは、さっきの逃げたような答弁じゃなくて、もう少しはっきり答弁できませんか。

塩崎国務大臣 新規裁定と既裁定者に対する賃金・物価スライドのルールは、先生御案内のように、今回提起しているのは、何度も申し上げますけれども、物価がプラスで賃金はマイナスの場合は、既裁定者も新規裁定者もいずれもゼロということで、どっちにも行かないということでやっていました。それから、物価がマイナス、賃金もマイナスで、賃金が物価の下げ幅よりも大きいとき、そのときは物価の下げ幅まで賃金を下げる形で新規裁定者について決めていたし、既裁定者は物価の下げ幅まで、こういうことでやってきたわけで、これで代替率の上昇が起きてしまって、将来の本来もらえる年金よりも代替率が下がってしまう、また期間も遅くなる。

 先ほど、午前中の質問では、上がり幅は微々たるもののときもあるという話がありましたが、微々たるものであっても本来あるべき水準には達していないわけでありますから、このことについて、やはりお互いの分かち合いがフェアに行われるようにルールにのっとっていくべきで、ここのところはやはり賃金の動きに合わせていくということが将来の年金を確保する、そのことにつながるということで、今回、先ほど来申し上げているように、民主党政権のときにも、デフレのもとで、何らかのことをやらなければいけないということにお気づきをいただいて宿題として残されていた、それに私どもなりの答えとして出しているわけです。

 たしか、これは岡田副総理が、先ほどもちょっと答弁で言いましたけれども、デフレということは今後とも長いスパンをとれば起こり得るわけですから、マクロ経済スライドが発動できないということではいけませんので、それはそれで何らかの改革が必要だというふうに思いますということをしっかり御指摘いただいています。

 さっき申し上げたように、何らかの改革というのは一体何を指すのか、これについてははっきりしないところで、我々、野党でありますし、彼らに聞いても、まだ聞いていませんが、一説には、名目下限を突破するという案も議論はされたというふうに聞いているわけで、そうなると、私たちよりももっと厳しい案を御検討なさったんだなということに感服しながら、私も事務方からお話を聞いたところでございます。

 いずれにしても、デフレがこれだけ予想以上に長続きをしてしまって、年金の持続性に大きな影響を与える中で、どうやったらこの制度が長もちして、みんなが分かち合い、助け合いの仕組みの中でお互いに納得がいく形になるのかということに私たちは思いをいたさなきゃいけないので、閣議決定をされた皆さん方の問題意識をしっかりと受けとめながら、今回の法律を未来への責任として出している、こういうことでございます。

大串(博)委員 私たちが議論したのは、マクロ経済スライドのあり方なんです、デフレ下における。賃金スライドか物価スライド、そこのことは一切考えていませんでしたよ。これは、私、担当政務官だったから言いますけれども、そこは間違えないように御理解ください。

 それで、もう一回言いますけれども、大臣、大臣は、国民の皆さんに安心してくださいと二年前に言った立場に、田村さんと一緒にあられるんですね。それは、先ほど申しましたように、高い賃金上昇率が今後続くという前提で安心してくださいと言われているわけです。ところが、今回、賃金が下がるかもしれないという前提でこういう法律を出されているわけですね。

 それで、私は、政府の本音は別のところにあるんじゃないかなと思っているんです。資料の二枚目を見てください。

 資料の二枚目、大臣、見ていただきますと、最近の賃金上昇率がどうなっているか。最近だけじゃなくて、長い過去も含めた日本の賃金上昇率はどうなっているかと見てみると、御案内のように、このコラムの左側、これは、高度成長期も含めた日本のある意味よき時代だったですね。賃金上昇率が非常に高い時期もありました。しかし、右側のコラムを見てください。昭和五十九年以降の現代、平成の初めぐらいにバブルがはじけて以降は、ずっと賃金上昇率は一%台あるいはゼロあるいはマイナスなんですね。こういう時代に、ずっとこの二十数年入っている。

 この現状をもとに、私は、政府の皆さんは、この一枚目に書いたような、二年前の財政検証のときに前提にされたような、二%、三%、四%、こういったような高い賃金上昇率はなかなか望めないだろうということを皆さんはわかっていらっしゃるんじゃないかと思うんですよ。

 わかっていて、でも、財政検証のときには、国民の皆さんの目をくらまさなきゃならないから、あえて賃金上昇率の高い数字を並べて百年安心だよと言い募り、過去の数字を見てみると、十年前の財政再計算、五年前の財政検証、田村さん、やじじゃなくても、ちょっとやかましいので、ちょっと静かにしてください。過去の財政検証を見ると、賃金上昇率の見通しは、ずっと上に上に上がってきているんですよね。デフレが続いているにもかかわらず、五年ごとに、賃金上昇率の見通しは毎回毎回上に楽観的に上がってきているんですよ。

 つまり、毎回毎回、賃金上昇率の見通しを楽観的にすることで、ああ、今回も百年大丈夫です、ああ、今回も百年大丈夫ですと言って、本当に必要な改革を先送りしている、現状に目を閉じさせているのが現在の政府のあり方だ。

 将来の世代のことを考えて今回のことをやっているとおっしゃいますけれども、本当に将来のことを、将来世代のことを考えるのであれば、この財政検証、私は、うそと虚飾にまみれたようなこの財政検証を改めて、二枚目にあるような現在の賃金上昇率、この流れ、これを虚心坦懐に受けとめて、本当に年金のあるべき姿はどういうふうにあるべきかというふうに真正面から問うのが、本当に将来世代のことを考えたときのあるべき姿だと思いますよ。

 そこで、大臣、考えると、今回のこの法案の年金カット部分が発動するのは平成三十三年度からですよね。まだ時間があります。年金財政検証は、もうすぐまたあります。二年後ですよ、二年後。二年後に、これは提案ですけれども、本当に賃金上昇率の見通しが、前回見通したように、二%、三%、四%、二%、これでいいのかということも含めて、しっかり検証し直して、その結果、今大臣が言われたように、いや、賃金がマイナスのこともあり得るという判断ならば、そういった見通しも加味して、賃金は伸びないんですよという見通しも加味していただいて、その上で、抜本的、包括的な年金のあり方を、こういうふうにしたらいいじゃないですか、どうですかと、そのときに、この法案で考えられたことも含めて再検討されて、二年後の財政検証のときに、あわせて提案され直されたらどうですか。御提案です、どうでしょうか。

塩崎国務大臣 大串委員とは長いおつき合いをいただいて、大変いい人間関係だと思っておりますが、しかしながら、今の御提案は、私は、典型的な改革先送りだと思います。

 民進党の綱領に、「未来への責任 改革を先送りしない」、こう書いてあります。ぜひ、そういうことで、果敢に、やはり将来を切り開く、そういう経済政策のもとで、社会保障についても安定したものにぜひ御一緒にしていただきたいなというふうに思っていて、確かに、失われた二十年間と言われるぐらいですから、賃金も物価も余り上がってこなかったのは、今お配りをいただいたとおりであります。だからこそ、二十一年の財政検証で出てきた数字、まあ、すぐ我々は下野しましたが、民主党政権ができて、そこをしっかりと踏まえた上で、デフレ下における年金制度のあり方について、大綱を閣議決定までしていただいたわけであります。

 そういうことでありまして、私どもとしては、何しろ強い経済をつくって賃金も物価もプラスにしていくということが大事なのであって、全力で取り組んでおりますし、足元、名目賃金は平成二十六年の春以降増加傾向でございますし、また実質賃金も昨年七月以降増加傾向にあって、ことし二月以降、八カ月連続でプラスというふうになっているところでございます。

 今、次期財政検証のときに議論をすればいいじゃないか、こういう御提案をいただきましたが、現役世代の賃金の低下に合わせた年金額の改定を行わなかったために、今の高齢者の所得代替率が上昇する一方で、将来の基礎年金の給付水準が下がってしまったということは、やはり、さっき申し上げたとおり、二十一年の財政検証で確認したとおりでありますし、それから、二十四年二月の、今の閣議決定された一体改革大綱でも認められていることであり、先ほど自民党の方で引かれていたあの引用部分が記載をされて、問題意識をしっかり押さえておられたわけであります。それで、二十六年の財政検証でも再確認されて、御安心くださいと言ったのは、将来、代替率が五〇%を切らないということを確認できたという意味で御安心をいただきたいということが主なメッセージだったというふうに思います。

 二十六年八月から年金部会でずっと議論をしてきて、与党でも議論を重ねて、そして今回の法案になったわけでございますので、もし延ばすということであれば、またこの二年間、言ってみれば無為にこのままいくということであれば、やはり私は無責任ではないかというふうに思いますので、ここはぜひ果敢に取り組んで、御一緒にこの案に御賛成をいただければありがたいなというふうに思います。

大串(博)委員 ちょっと驚きましたね。自分が出された法案の重要な部分、年金カットの部分の法律が実際動き出すのが平成三十三年度だから私は申し上げているんですよ。実際にこれがワークし出すのは三十三年度だから、その前に財政検証は来るから、改革先送りしようなんて一言も言っていないんです。三十三年度というのはわかった上で言っているんです。

 その前に、本当に改革をしようと思ったら、大臣、この財政検証のときに書かれている極めて楽観的な賃金上昇率の見通し、これが将来世代の皆さんに大丈夫ですよという誤ったメッセージを送ってしまっているがゆえに、逆に改革を先送っていないかということを虚心坦懐に見詰めて、今こそ、では、二年後の財政検証のときに合わせて正直にやっていきましょうということを、しかも、年金改革は難しいです。難しいですから、与野党でやりましょう、与野党で。

 最後のページ、資料を見てください。

 私たち、年金のあるべき像ということで、これは私、この間、予算委員会でも配らせていただきました。例えば、将来の数字のあり方に関しても、正直にいきましょう。これがあるからこそ、年金に関する信頼が生まれるんだと思います。逆に言うと、正直な経済前提を置かないと、大丈夫かな、信頼は生まれないと思うんですよね。さらには、長らく議論もありました最低保障機能、これを強化する、これはもう急務です、急務。さらには世代間の公平、将来の皆さんにツケを回さない。それから働き方に中立、世の中は変わってきています、適用拡大の問題も含めて、働き方に中立。そして安全な運用、GPIFの問題等々もあります、国民の皆さんに不安感もある。

 こういったことも含めて、改革先送りじゃなくて、まさにこの二年間、次の財政検証まで向けて一緒に与野党で議論しましょう。何も、三十三年度の時期をおくらせてくださいなんて言っていないんです。きちんと議論しましょう、正直に議論しましょう、それが本当に将来世代に対して考える責任ある立場じゃないか、一方的にこの年金カット法案だけ場当たり的に出されているのが、よほど将来世代に対して不誠実じゃないかと申し上げているんです。抜本改革、与野党でしましょうよ。どうですか、大臣。

塩崎国務大臣 今、「あるべき年金像」という資料をお配りいただきましたが、まさに今回我々が提案しているのはこのことでございまして、我々の答えはこれであります。

 先ほど申し上げたように、朝日、読売、毎日、日経、共同通信、皆この案に賛成をいただいております。問題を先送りするなというのが全ての社説の論調でございます。

 そういうことで正直に今の問題点に答えを出すということであり、また、最低保障機能を強化するという意味においても将来の世代の年金を確保する、これもそのとおりでありますし、世代間の公平もしかり、働き方に中立、これも適用拡大をと御提案を申し上げて、中小企業にも拡大をしていこうということであり、安全な運用についてはGPIFのガバナンスについてしっかりと提案をしているわけであります。

 全て、このあるべき年金像についての私どもとしての答えを御提示申し上げていますので、二年先まで先送ることなく、今はっきり、どうなるということを見せることが実は国民にとっては大事な安心のもとになるわけでありますから、これまた次の財政検証までに何がどうなるのかわからないままに行くなんということはあり得ないというふうに思います。

大串(博)委員 終わりますけれども、大臣の先ほどの発言は、私の提案の中の一番大事な、正直イコール信頼、ここの土台を大きく欠いているがゆえに将来世代を傷めている、このことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 引き続き、年金の質問をしたいと思います。

 いろいろなことをこの間議論してまいりましたけれども、世代間の公平を図っていこうというのは、これは別に与野党を超えて共通だと思います。ただ、私は二つ問題があると思うので、冒頭申し上げたいと思います。

 それは、前も申し上げましたけれども、我が国の賦課方式をベースとする年金制度は、一つのようかんをどの世代で分け合っていくのかということなんだと思います。

 その中においてまず一つ目の問題は、制度が予定していた以上にもらう世代があると、制度が予定していた以上にもらえない人が出てきて、この辺のバランスをとりましょうということで今回の法案の提案もあるんだと思います。そのときの問題は、一体どれぐらいのようかんが削られて、ではその分、どれぐらい次の世代が食べられるようかんがふえるのかという具体的な、特に年金額に落とし込んできたインパクトの分析がないので、もう少し試算をきちんと出してやってほしいというのが一点なんです。

 なぜかというと、年金財政はこれで均衡するかもしれません。しかし、その結果、年金の額が生活を支えるに足る額に満たない、あるいは満たないような人たちの比率がふえた場合には社会全体に対する影響が大きいので、やはり制度を変えていく。少なくともこれは年金の給付を抑制する法案であることは間違いありませんから、その意味では、そういった影響を受ける方に対してきちんと、それこそ誠実に示していくことが大事だということで、我々は資料が余りありませんから、過去に適用したらどうだということで我々なりの試算を出してきて、それについて政府からのある種の反論、再反論をしてきたということが一つですね。ですから、具体的な、どのような金額ベースのインパクトがあるのかが必ずしも明白じゃない。

 総理も本会議では、ケースEに基づけば常に賃金上昇、物価上昇しますから、発動されることはないんですよ。ないんですね。ないから試算ができないというのはそのとおりかもしれませんが、ただ、万が一に備えて用意するということであれば、その万が一のケースをオプション試算のような形で示して、やはりこういう場合にはこういう影響がありますよということを示すのが、私はまず誠実な姿なんだと思います。

 二つ目です。

 二つ目は、これも前回指摘をしましたが、どの世代でどれだけようかんを切り分けて食べるのか、それがよくわからないということに加えて、そもそも、みんなで分け合うようかんの総体積が予定した分本当にあるのかないのか、このことが実は私の問題意識の一番の根源であります。

 これは、民主党時代からも非常に悩んできた部分の一つでありまして、ちょっと先に行きますけれども、資料四を見ていただければ、あえてこれは非常に簡略化してようかんを描きましたけれども、年金というようかんは三つの原材料でできています。一つは、基礎年金部分に半分入っている税金ですね、国庫負担分、これが一番下に描いてあって、あとはGPIFの運用の利回りと取り崩しの分、これが二つ目の原材料。一番大きい原材料の三つ目が、まさに賃金に連動して決まる保険料収入ですね。このことが、将来の分も含めた、どれだけ賃金上昇に伴って保険料が入ってくるのか、これが、ある種のみんなで分け合うべき年金ようかんの総体積を決めているんだということなんだと思います。

 この体積を決めるのに、五年ごとの財政検証の中で、では、その原材料のもとになる、例えば保険料のもとになる賃金。では、賃金上昇はどれだけあるのか、賃金上昇のもとになる経済成長はどうなるのか、経済成長のもとになる生産性の向上、とりわけトータル・ファクター・プロダクティビティー、TFPという指標がどうなるのかということで分析をして、まあまあ将来これぐらいのようかんがみんなで食べられるかなということがこの間の財政検証、そして年金の問題を考えるときの非常に重要なまず基盤だったと私は思います。

 繰り返しになりますけれども、どの世代でどれだけようかんが具体的に食べられるのかどうか、そもそもみんなで食べ合うようかんの総体積が一体幾らあるのか、このことについて確信が持てないので、多分いろいろな方向からいろいろな議論が出てきているんだというふうに思います。

 そこで伺います。

 まず、前回のちょっとおさらいになりますけれども、我々、過去十年に適用したときに、結構、正直インパクトがあるなと思ったのが、一番最初に井坂委員が示した五・二%の減少の試算でありました。これに対して、政府は三%の減少ですということでいろいろなやりとりがあったんですが、私が前回、塩崎大臣とやらせていただいて、非常にここは明確になってよかったなと思うのは、基本的な考え方は政府の三%の試算も我々の五・二%の試算も実は全く同じだということがわかったのは非常に成果でありました。

 そこで伺います。

 三%と我々の五・二%減、具体的な額に直すと、国民年金でいうと年間四万円ぐらい、厚生年金でいうと十四万円ぐらいのインパクトのある我々の五・二%の計算と政府のおっしゃる三%の違いは、いわゆる保険料がこの間、過去十年上昇してきたことに伴う可処分所得の減少を加味するかしないのか、このことだけが違いだということでよろしいですか。確認したいと思います。

塩崎国務大臣 今回の試算は、民進党のお求めに応じて、仮に今回の額改定ルールの見直しが平成十七年度から実施されていた場合の仮定の試算だということでございます。

 繰り返し答弁をしてまいりましたけれども、そもそも、民主党政権時代も含めて、平成二十六年度までは本来よりも高い特例水準の年金額が支給されていた。これが解消されない限り、仮に今回の改定ルール見直しが実施されたとしても年金額が減ることはない。その上で、機械的な仮定を置いて計算したものが、政府としてお示しをした試算結果でございます。

 今回の額改定ルールの見直しは平成三十三年度から施行されるものでございますので、その際には、今御指摘をいただいた可処分所得割合の減少分、これは年〇・二%減ということでありますが、この影響は生じないことから、この影響を織り込まないことが適当であるということで、結果、井坂議員が示された試算結果と二%の差が生じているということでございます。

玉木委員 では、それ以外にはないという理解でよろしいですね。

 そこで、一つだけ、これも再度確認なんですが、過去十年のうち、我々の計算だと六回、新ルールが適用されるんですね。これはこの前答弁もいただきました。政府は五回ですね。平成二十八年度は〇・二のかさ上げがありますから、旧ルールでも適用可能だということになるので、我々は六回、政府は五回ということになりました。

 その中で、平成二十一年度は、我々の計算も政府の計算も新ルールが適用されない年であります。その年も、〇・二%プラスで過去十年間に当てはめた場合の計算をしているんですが、新ルールが適用されない二十一年度になぜプラス〇・二の数字を当てはめるのか、お答えください。

橋本副大臣 先ほど大臣から、可処分所得変化率について、含まない方が適当だということで御答弁を申し上げました。

 その可処分所得変化率については、結局、年金の改定を考えるときに、まず賃金と物価の変化率を見て、その丈比べをして、それからマクロ経済スライドという決め方をします。

 その丈比べをするときに、マイナス〇・二%を賃金の方から割り引くということになっておりましたが、それは、毎年それをやってきたわけですね。それが、平成三十三年度の、今回御提案をしている新ルールが導入をされ、施行された後にはないわけですから、常にないものとして考えた方がよかろうという考え方に立って、要するに、新ルールがこのときに適用されたらという前提ですけれども、そのときに新ルールになるのか、別のルール、今あるルールが適用になるのかということを含めて、少なくとも可処分所得変化率を見るということは不適当であろう。要するに、タイミング的に違うので、そういうふうなことを考えているということで御理解いただければと思います。

玉木委員 平成二十一年度には、政府も、明確に可処分所得の減少を加味して計算をしていました。過去にさかのぼって仮に適用したとするということを求めた以上、そこはやはり〇・二%の可処分所得の減は入れて計算するのが、もし仮に過去に当てはめられたとしたらということでは、私はより正確な数字だと思います。ここは最後まで見解が分かれると思いますが。

 ただ、確認したかったのは、我々が計算したやり方も、これはあながち間違ってはいないし、私が言いたいのは、冒頭申し上げたように、やはり、今回、結構インパクトのある改正なんだなということが、これは正直申し上げて、私自身もちょっと驚きました。

 それで、万が一と言いますね。万が一というのは、文字どおり読むと一万回に一回だと思いますが、過去十年を振り返ったときに六回適用されているのは、一万分の一よりは確率がかなり高いかなと。しかも、それがかなりインパクトがある年金の減少につながるのであれば、このルールが適用されたとしたらどのような影響があるのか、これはプラス、マイナス両方ですけれども、やはりきちんとお示しをするべきだということを申し上げたいと思います。

 その上で、過去についてはこうしてお示しをいただいたので、我々も検証はできました。なので、もう一つお願いしたいのは、将来、皆さんは、七%、その分増加するということをおっしゃっているんですが、そのバックデータと計算の式とか根拠を示していただかないと我々も検証ができないので、これはいい議論をしたいと思っていますから、それは、バックデータと計算式、これを委員会に提出していただくように、委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

高鳥委員長代理 後ほど理事会で協議いたします。

玉木委員 それで、もう一つ、先ほど大串委員が言っていましたが、自民党さんが反論のペーパーをつくられていて、私も読んでみたんですが、まあ、ちょっと都合のいいことだけ書いているなという感じは正直しましたけれども。

 一つだけ、これも先ほど大串委員が問いの十で言っていましたけれども、私は、この括弧の中の、これは二ページ目かな、問いの二のところで、民主党政権の年金制度案(注二)、(注二)って何だろうなと思ったら、「平成二十四年二月十日に民主党「社会保障と税の一体改革調査会総会」に提出された新制度案」「においても、年金額改定ルールは賃金への連動を基本としており、物価と関係なく、賃金が下がった際には、年金額も下がります。」と書いていますが、「物価と関係なく、賃金が下がった際には、年金額も下がります。」なんて記述は、どこにあるんでしょうか。

塩崎国務大臣 ぜひ自民党に聞いてください。

玉木委員 こういう記述は一切ないので、塩崎大臣も自民党所属の議員だと思いますので、ちょっとここは直していただいた方が建設的な議論につながるのかなと。年金制度で、こういう、あんたが言った、私が言ったみたいな話は余り生産的じゃないなと思いますので、ちょっとここは修正、削除をお願いしたいと思います。

 次に、先ほどの話の続きに行きますけれども、きょう井坂委員が資料で、何かパネルを出しちゃだめといって、資料で、所得代替率で三割、将来世代の年金が三割減るというようなことを出したら、どうも、パネルは出しちゃだめだと。何か、テレビに映るからだめだというふうに私は伺ったんですが、所得代替率が三割下がるのは、これは間違いないですね。ただ、賃金上昇を伴うので、年金額自体が単純に三割下がるわけじゃないので、だから、ちょっとこういう数字はどうかというのが……(発言する者あり)いやいや、与党が大きくうなずいていただいていますけれども。

 そういう考えもわかりますよ。ただ、あらゆる試算は全て、どういう前提を置くかによって決まるので、政府は政府、与党は与党、我々は我々で、ある種の前提を置きながら計算するので、その一つの前提を置いて計算したものを、何か、これはテレビに映しちゃだめだというのは、ちょっと言論の府としてはいかがなものかなと思うんです。

 私、これは一定程度、所得代替率が三割下がったときに年金額は三割下がらないだろうというのは、そうかなとも思うんですが、ただ、賃金上昇が例えば二〇四〇、二十年なかったとしたら、所得代替率が三割カットということは、その実額としての年金額も三割カットになりますよね。それはそうですよ。それで、過去二十年間、どれぐらいの賃金が、これは物価で割り戻していますからね。賃金との関係でいうと、賃金が二十年間ほとんど変わらないなんていうのは、アベノミクスががんがんうまくいったらあり得ないだろうと思うという、まあ、そういう答えなんでしょうけれども。

 これは厚生労働省の毎月勤労統計で出してもらったんですが、私もちょっとびっくりしましたけれども、平成元年の男子の現金給与総額、三十九万六千円です。昨年、平成二十七年の同じ男子の現金給与総額が四十万一千円。二十六年間たって三十九万六千円から四十万一千円ですね。四捨五入すると、ともに四十万ということなので、ある種、二十年間あるいは四半世紀、賃金の水準、よくAケース、Bケース、Cケースとか出すときの、賃金に対してどれだけ年金があるかというところの、ピンク色でよく書きますけれども、賃金が、高さが変わらないで二十年、三十年推移することは結構あり得るんだと。少なくとも過去の実績からするとそういうこともあり得るので、井坂委員が示した、所得代替率が三割落ちる、年金額も同じだけ落ちるようなのはおかしいじゃないかと言うのもおかしいと私は思うので、やはりこういう議論は、もう少しさまざまな前提を置きながら建設的な議論を私はしたらいいと思います。(発言する者あり)

 田村委員、ちょっと静かにしていただけませんか。理事なので、お願いします。私は建設的な議論をしているつもりなんです。(発言する者あり)いや、叫んでないですけれども、つぶやいていますよ、田村議員。私、そんなに、別に声を荒立てて議論しているわけではありませんし、建設的議論をしようとしているのに、与党の筆頭理事がずっとやじを飛ばされているのは、私はやめていただきたいと思います、本当に。お願いをいたします。良識にお任せをいたします。

 前提がそれぞれさまざまになるので、あえて私は政府の数字を使って質問をしたいと思うんですね。

 冒頭申し上げたように、私の問題意識は、ようかんの総体積が、ちょっと膨らませ過ぎているんじゃないのかということです。ですから、そこでマクロスライドを適用していって、将来の年金受給者、今例えば二十代の方、こういった方々が年金受給をされるような四十年後とかになったときに、その額が、つまり、所得代替率五〇%とかというような額が、一体いかなる額で、それが生活を支えるに足り得る額なのかどうかが知りたいんです。国民もそうなんだと思うんです。所得代替率五〇%とか五五とか四五とか言われても、それが結局幾らなのということがわからないので、私は、結構、これはリアルな議論がなかなかしにくいんだと思う。

 これはもう一回、ちょっと整理で、資料五を見てください。

 二〇一四年、平成二十六年度の財政検証のときの、いわゆるケースAからケースHということでずらずらと書いていますが、大きく二つに分かれて、二〇二三年までは、内閣府がつくっている経済成長モデルと、ノーマルというか参考ケースという、この二つのケースで行って、そこからまたさらに幾つか枝分かれして、全部で、A、B、C、D、E、F、G、Hと八つのケースに分かれるということですね。一番大きい差は、ここにも書いてあるように、成長性の一つの大きな要素である生産性の向上で幾つかのパターンに分けているんですね。

 今政府が使っているEケースというのは、参考ケースのところをずっと行って、ずっと一%ぐらいの生産性の向上だということでやっているんですが、塩崎大臣、ここ直近十年間の生産性の向上、TFPというのはどれぐらいだか御存じですか。わかりませんか。時間がかかるので申し上げますが、平均すると〇・六八です。なので、〇・七ぐらいかなということでいうと、ケースGに非常に近いんですね、過去十年間のTFP。そうすると、政府はケースEを使っていますけれども、私はあえてケースGでちょっと質問をこれからしたいと思うんですが、資料の七を見ていただけますか。これがケースGです。

 直近十年間ぐらいの経済成長、生産性の向上を前提に、でも、これは左のところにちょっとパターンを書いていますが、結構いい前提なんですよ。物価上昇が〇・九で一%ぐらいあって、実質の賃金上昇が一・〇、名目でいうと一・九ぐらいですね、二%近い賃金上昇。運用利回りも二・二となっていますが、対物価ですから、名目でいうと三・一ぐらいなのかな。実質の経済成長がマイナス〇・二ですけれども、物価が〇・九ですから、名目〇・七ぐらいの成長。かなりいい感じなんですよ。というか、今に結構近いか、今よりちょっといいぐらいの感じですかね、ここ数年の。ですから、このケースGというのはかなり、私、ケースEよりも現実的だと思うんです。現実的だと思うんです。

 そこで質問なんですが、今二十三歳の若者が六十五歳になる四十二年後、二〇五八年ですね、まさに我々は若者世代の年金の受給を考えなければいけませんから、社会に出て働き始めたような二十三歳のケースを考えましょう。今二十三歳の若者が六十五歳になるころ、二〇五八年に、ケースGにおいては、年金財政をこの時点で均衡させることができると書いていますね。二〇五八年、平成七十年度ですね。このときの所得代替率は四二%、今が六二・七なので、今に比べて、所得代替率でいうと三三%下落をします。先ほど井坂委員が言った約三割、これも比較的、Gのケースも、年金財政が均衡するところまで所得代替率を下げていった場合には大体三割強下がるということです。

 問題は、ここからがお互い分かれたところです。所得代替率が約三割下がるのは、お互い、まあまあ、そうかなと。厚生労働省の資料にもあるからね。ただ、その実額において、減らないだろう、同じぐらいだろうと言っていたんですが、ここには政府も出していただいている実額があるので、あえて質問をいたします。

 この表を見ると、二〇一四年の国民年金は夫婦二人で十二万八千円。一人当たりにならすと六万四千円ですね。これは満額です。今実際に、現に受け取っている人はもう五万円ぐらいで、これより少ないですけれども、一応満額もらったということでやりましょう。六万四千円が、年金財政が均衡するケースGの場合において、二〇五八年、繰り返しになりますが、今二十三歳の若者が六十五歳になって年金の受給を行うようなときには十万四千円、一人当たりに直すと五万二千円になる。約二割減少する。この数字は正しいですか。

塩崎国務大臣 今の数字が正しいかどうかということですが、これはこちらからお示しをしている数字でございますので、そのとおりですが、そもそも、そのために、別にケースEで決まっているわけでは全くなくて、八通りのケースをお示ししているということでございまして、同時に、それには条件が幾つかついています。

 特にはっきり書いているのは、将来の経済状況の仮定の中で、今御指摘のTFP、全要素生産性の伸びによって場合分けをしていますが、もう一つ場合分けをしているのがあって、それは労働力率でありまして、ケースEまでは労働市場への参加が進むケース、そしてケースF、G、Hは労働市場への参加が進まないケース。つまり、女性あるいは高齢者、そういった方々の労働力率が高まっていく場合と高まらない場合というふうにも分けているわけでございます。

 我々としては、こういう八つのケースを示すことによって、できる限り、より望ましいパターンに持っていくための経済運営、そして、今特に安倍内閣で力を入れている働き方改革、つまり労働力率をどう高めていくかということを含めたもの、こういったことをしっかりやっていかないといけないわけで、我々は常に、先ほど申し上げたように、二十六年の財政検証でも、御安心くださいというのは、主に、代替率が五〇%を切るということがないということが確認できたというところが一番の皆様方にお伝えをしたいということで、これは五年に一遍のローリングで見直していくわけでありますので、そのときそのときに、当然、改めて推計をし直して、百年程度の安定的な運営というものができるようにしていくというのが我々の責務だというふうに思います。

玉木委員 合っているんですね、これ。

 私、ちょっとここは、我々与党のときもなかなか、与党になるというか政府になると、やはり今の現状を追認的にどの政権もやらざるを得ないのは、我々も経験したからよくわかります。

 ただ、私も、やはりそうはいっても、これは本当に大丈夫なのかなと思うのは、所得代替率五〇%が達成できましたから安心してくださいではなくて、所得代替率五〇%を達成できる経済前提を選んでいくんですよ。

 例えば、一つ言います。ケースEのケースですね。これはさっきちょっと言い間違えましたけれども、ケースEは、足元、オリンピックが終わって二年後、三年後ぐらいまでは、内閣府の試算である経済再生ケースをぐっと行って一・八ぐらいまで上がって、そこからちょっと、一・〇ぐらいに長期に落ちついていくというケースです。

 資料六を見てください。これも、前もお示ししましたが、TFPが、生産性の向上が、内閣府が試算する経済再生ケースの場合はどのようなパスをたどるのかということをプロットしてみました。赤い線が経済再生ケース、青い線が、二〇一六年以降は、三角のところは参考ケースの試算ですね。左側は全部実績です。

 これを見ていただいたらわかるんですが、ケースEの前提になっている生産性の向上は、この赤のところで、もう倒れそうになるぐらいグラフが持ち上がっています。こんなのはどう考えても私は非現実的だと思うんです。しかし、安心してくださいと言っているケースEは、まさにこのような生産性の向上を前提に置かないと達成できないケースなんですよ。これをもっと、長期なので保守的に、コンサーバティブに現実的な前提の中で出していって、つまり、さっきお示しした資料の四のようかんをちょっと見ていただきたいんです、もう一回。

 三つの原材料で成り立っていますという話をしましたが、税と年金の積み立てのところは、実は余り変わらないんですね。やはり経済前提、つまり賃金の上昇によって保険料という原材料の量は随分変わるわけです。

 いずれにせよ、マクロ経済スライドを入れたり、今回の賃金スライドの徹底を入れると、右と左の収入、財源と給付は、ある意味では均衡していきますよ。これは我々にとってみんな、やはり年金財政は均衡しなきゃいけない。

 ただ、均衡の度合いです。これぐらいようかんがたくさん、大きなようかんで分け合ったら、その均衡したときのようかんの一切れは生活を支える一切れかもしれない。ただ、経済成長が思ったより成り立たないときには、この右側の方の均衡の姿になってしまっていて、分け与えられたようかんが、そのようかんでは生活が成り立たないという可能性があるのではないんですか。だから試算をきちんと出して、これは長妻委員も質問しました、生活に必要な基礎的消費支出、高齢世帯の基礎的消費支出との関係で、それをおおむね賄うような状況が保てるのか保てないのか。あるいは、生活保護の水準と比べて、過大にというか、過剰に少なくなり過ぎていて、相対的に生活保護が有利になって、みんなそちらに流れ込むようなことにならないのかということを心配しているわけであります。

 ケースGに戻ります。

 もう一度、資料の七を見ていただきたいんですが、先ほどお認めになりましたケースG、過去十年間ぐらいの成長率と同じぐらいの生産性の向上があった場合の、ケースGと政府がお示ししているものでは、今の二十三歳の若者が六十五歳になるころの基礎年金額というのは月々五万二千円、今から比べると一万二千円も減るということなんですけれども、この五万二千円で、大臣、これは平成二十八年十一月二日に年金局年金課からのクレジットの資料によると、高齢世帯の基礎的消費支出というのは、単身世帯で今七万二千円かかるとされているんですね。これは厚生労働省の資料です。

 七万二千円、高齢の単身者が生きていくときに必要なときに、実額で五万二千円まで。これは物価でちゃんと割り戻した額で、二十六年の物価で割り戻して、二十六年水準でいったときの五万二千円というのは、この二十七年として七万二千円必要になったこの額からはるかに少ないんですけれども、現在二十三歳の若者が六十五歳になったときの生活をこれで賄い切れますか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げているように、これはケースを示しているわけで、そのケースを見ながら百年を展望してどうするかということを決めて、今回お出ししている法律もそういう意味で出しているわけですね、将来の年金を確保するために。つまり、今、もし仮に賃金が下がっても今の年金額を下げないということになれば、将来年金をもらう人の財源を今先に使っちゃうということになるということであります。

 今お示しをいただいたこの資料七、これを見ますと、平成五十年度に五〇・〇%という所得代替率になるようになっています。法律は、もう先生御存じのように、国民年金法に、仮に、五年に一度の財政検証の結果、次の財政検証までの間に所得代替率が五〇%を下回ることが見込まれる場合には、マクロ経済スライドによる調整の終了や給付と負担のあり方について検討を行って、必要な措置を講ずることを法律が定めてあります。したがって、今、それを通り越して四二というのになるというところをお指しになって、五・二万円で食っていけるか、こういうお話でありました。

 そういうふうになる前にどうするか。つまり、保険料を、一八・三をやめてぼんと上げるか、あるいは給付を減らすのか、そういったことを含めて、マクロ経済スライドの調整を、もう終わっているはずでございますから、またやるのかとか、いろいろなことをそこで決めるということになりますので、これは責任を持って将来を見通すということを、五年に一遍やり直すというのはそういうところに意味があるわけで、今、六〇%を超えている代替率ですから、次、五年にどうのこうのという話は全くありませんけれども、仮にそういうことがある場合には、法律にはそのように書いてあって、そういうことにならないようにどうするかというのが政権の大きな責任だということで、今、アベノミクスもそこに力を入れて、賃金と物価が健全な形で上がっていくようにしていくことが年金にとってもプラスだということだったと思います。

玉木委員 改革派の塩崎大臣らしくない答弁ですね。将来がもしこういうふうになっているとしたら、今の法律上は、次の年金の再計算、今言った財政検証のときに下回る場合には改革を講じるということになっていますね。ただ、私は、それは先送りだと思うんですよね。

 過去十年間の生産性の向上とほぼ同じようなケースGのパターンにおいて、今二十三歳の人が六十五歳になったときには生活を支えられないような額になることがもう今の時点で見えているのであれば、私は、早目に対策を、まさに抜本対策を打つのが政治の責任、それを与党と野党できちんと議論していくのが政治の役割だし、社会保障を考えていくときの王道だと私は考えるんですけれども、大臣には御理解いただけないかなと、残念だと思っております。

 もう一つ、ケースのHをちょっと見てください。これは余り世の中にも知られていないので、与党の先生方は御存じの方は多いかもしれませんが、実は、さっき、ずっと私がこだわっている生産性の向上、TFPなんですが、アベノミクスでどんどんふやすと言うんですが、これは申し上げます。二〇一二年、安倍政権ができてからのTFPの上昇率、これは内閣府からもらいました。二〇一二年〇・九、二〇一三年〇・七、二〇一四年〇・四、二〇一五年〇・三。ずっと減り続けているんです、これは。いろいろな理由が考えられるでしょう。金融緩和し過ぎていて、社会全体の生産性が高まっていないということかもしれません。新陳代謝が進まないということかもしれませんが、実は落ちているんですね。

 そうなると、実はケースGでもまだ甘くて、このケースH、〇・五、これでも、現在もっと下になっていますから、ケースHにした場合にどうなるかというと、これは若干衝撃的なんですが、今度は、現在二十六歳の若者が六十五歳になる三十九年後の二〇五五年、何と、国民年金のところで積立金が枯渇をします。その後は、積立金がないので完全賦課方式になって、税金と保険料だけで回していって、所得代替率は三五%から三七%程度になるんですよ。アベノミクスが始まってぐらいからの生産性の向上が仮に続くとしたら、何と、百年安心とあんなにうたっていたのに、あと三十九年間で積立金が枯渇すると政府が出しているんです、ケースH。

 ケースHが極めてあり得ない前提かと思ったら、今に一番近いんじゃないですか、これは。もちろん、いろいろな政策を講じてやっていくということはいろいろおっしゃいますが、今に一番近いケースHで、何と、百年間ずっと積み立てを取り崩して、最後の一年に一回分払いを残すというこの百年安心プラン、今のような経済状態だと、少なくとも、今二十六歳の若者が六十五歳になる三十九年後には、積立金がなくなり完全な賦課方式に移行すると書いていますが、これは大臣、事実でしょうか。

塩崎国務大臣 さっきから申し上げているとおり、いろいろなケースをお示しして、正しき道を行こう、よりよい道を行こうということでお示しをしているわけで、今のケースHというのは、最もTFPが低い場合のケースということであります。

 先ほど、改革派にしては遅いじゃないか、こういうふうに言われましたが、法律にそう書いてあると言っているので、どうするかというのは別でありまして、よもやこの五年先に明らかに五〇を切るぞというところまでほったらかしておくような政権は、私ども安倍内閣は少なくともやらないわけであります。

 もっとも、今はそんな状態ではないので、それよりも今やるべきことは、今回お出しをしている賃金スライドの新たなルールを含めて、さまざまなことをお出しして、これは大串委員がお示しをいただいた基本的な考え方にのっとった提案を私たちはしているわけであります。

 したがって、このケースHになるようなことには絶対にならないようにするというのが政権に課せられた使命でありますから、それを早目早目にやる。そういう意味で、次の財政検証まで賃金が下がったときのルールの改定を先送るだのような国民に対して無責任なことは、私たちはいたしません。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

玉木委員 余り正面からお答えいただいていないんですが、いずれにしても、私は、このケースG、ケースHというのは、これから注意深く、これはむしろフォローしていくべきケースではないかなと思っているんです。

 実際、ケースHであっても、実は物価以上に賃金が上昇することになっています。このケースがない限り、実は年金財政は安定しません。私は、Hでさえ、現状から比べるとかなり楽観的ではないかなと思うぐらいの要は前提だと思いますよ。実際、見てください、過去のケースと比べて。その場合には、何と今から四十年後には積立金が枯渇してしまうということが、これは政府の一つの数字として出ているということは、重く受けとめるべきだと思いますね。

 そこで伺います。

 私は、高所得な高齢者については、ある程度、少し将来世代のことを考えて年金給付を抑制していくということも、これはよくわかります。ただ、問題は、先ほどから何度も申し上げているように、今でもかなり生活するぎりぎりの中で年金で暮らしておられるような方々に対しては、きめ細かな手当てが必要だし、むしろ将来世代の方が、先ほど申し上げたように、ある経済前提というか、最近のような経済前提のもとでは、むしろ、所得代替率もそうですけれども、実額としてもかなり減ってしまって、それが生活を支えるに足る基礎的消費支出を賄えないというような額になる可能性が、政府の試算からも出ているわけですね。

 そこで伺います。

 現時点において、そして、これは政府ケースEでも結構です、年金財政が調整が終わったときで結構なんですが、生活保護の水準と比べて、生活保護以下の水準の年金しかもらっていない方が一体幾らいて、総年金受給者のうち、その方は今幾らぐらいいらっしゃって、それは過去、十年前と比べてどのようにふえてきて、そして例えば、それぞれのケースでいいですけれども、調整が終わったときにはそれがどれぐらいまでに広がるのか広がらないのか、その数字をお示しいただけますか。これは通告しています。

塩崎国務大臣 これは長妻委員からも御指摘が数々これまでもあって、私も、いろいろきめ細かく見ていくことは大事だということを長妻委員にもお答え申し上げているわけでありますが、生活保護の適用に当たりましては、その利用し得る資産、能力その他、あらゆるものを活用するということが前提になっているわけです。つまり、資産をどういうふうに見るかとか、いろいろな難しい問題もあるわけですが、既存の統計データのみで、保有する資産の評価額とか、あるいは親族からの扶養や稼働能力の有無などが把握できていないことから、生活保護基準未満の低所得世帯の推計には一定の限界があるという問題点もあるというふうに認識をしております。

 過去に生活保護基準未満の低所得世帯数について推計を行った際も、二種類のデータに基づく推計、これは長妻厚労大臣時代におやりになったと聞いておりますが、結果に大きな違いが生ずるなど、正確さに問題、疑問がある結果となったことを踏まえますと、生活保護基準未満の年金受給世帯の数を正確に示すことは、そう簡単なことではないと思っております。

 しかし、そういう中でいろいろ、今手だては、福祉的給付などなど社会保障全体で低所得者を支えるということをやっているわけでありますが、同時に、きょうも長妻委員からお話がありましたが、低所得の高齢者の生活状況、あるいは国民生活基礎調査や被保護者の調査などの統計データの活用によって、私からも申し上げたように、立体的に見ていく、多角的な実態把握はやはり必要だろうというふうに思います。

 したがって、世帯にしても、単身の場合でも、いろいろなケースをよく見ていくということが大事でございますので、どこまでできるのか、検討してみたいというふうに思います。

玉木委員 大臣、ぜひ検討してみてください。やはりこれは、ケース、きょうはGとHを示しましたけれども、今の現在価値でいっても二割も年金が減る将来世代が出てくるということは、大きな生活へのインパクトがあると思いますから、特に生活保護との関係で、生活保護未満の人が相対的にふえるのであれば、これはやはりみんな生活保護に行こうと。あるいはもっと言うと、だったら、四十年もかけて年金に入るよりも、いざ困ったら生活保護でいいじゃないかという若者がふえてもいけない、年金制度に対する信頼性を維持しなければいけないという観点からも、やはりこういったきちんとした分析をして、必要であれば、私は、申し上げているように、高額年金受給者に対して入っているような基礎年金部分の税財源は低所得者に回すような、これは本当に抜本改革になりますけれども、こういったことを与野党でしっかりやりながら、本当に安心できる、信頼できる年金制度をつくっていくのが責任だというふうに思っております。

 今のままでは、将来世代年金確保法ではなくて、単なる年金財政健全性確保法になってしまって、生活を支える将来世代の年金確保法にはなっていない、ならない可能性が高いということを指摘申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 初鹿明博です。

 民進党最後のバッターになりました。もう大臣もお疲れのようですが、どうぞよろしくお願いいたします。

 最後なので、今まで玉木議員や長妻議員、また大串議員が質問したことで疑問に思ったことや、また不十分だったことなども含めながら、少し質問していきたいと思います。

 その前に、委員長に一言申し上げさせていただきたいんですけれども、この間、ずっとこの委員会は職権で立てられ続けていて、十分に与野党の間での議論がまとまらない中で委員会が開かれているということは、非常に私は遺憾に思っております。

 そして、我々は年金カット法案と言っておりますけれども、この年金の法案、マクロ経済スライドや賃金スライドの部分だけではなくて、例えば厚生年金の適用拡大の問題、これは非常に重要な課題であるんですよ。政府も、これでみんな、五百人以下の企業で働いていても厚生年金に入れると言う。まあ、それは事実なんですけれども、では実際にその人たちが全員入れるかというと、労使の合意がなければ難しかったりとか、そういうことがあると、私は入れるんだと思っても、意外と入れない人が多くなったりということで、必ずしも期待をしているとおりにいかないんじゃないか、そういう課題があるわけです。

 また、GPIFの問題についても、運用のあり方をどう考えていくかとか、また、経営委員会が指名した監査委員が監査をするということが、果たして適正な監査が行えるのかどうか。また、今回は見送られておりますけれども、検討事項の中にインハウス運用やオルタナティブ投資のようなリスクの高い投資のことも言及がされているというように、非常に問題点が多いわけです。

 また、我々がかねてから言ってきておりますけれども、年金宿舎の問題。今回、やっと国庫に返納できるようになっておりますが、この条文等、また政府が出している資料を見ますと、入居者がいて、今後、必要があるようなところで耐用年数を超えるようなところはこれからも使っていくような書き方をしておりまして、それは建てかえを考えているのか、または新規でつくろうとしているのか、そういうこともにおわせているような書き方になっておりまして、非常に、まだまだ議論しなければならないと思うんですね。

 それぞれ違う事柄なので、やはりそれぞれ切り分けて、きちんと時間をとって、本当は、大体、年金の賃スラの問題、厚生年金の適用拡大の問題、GPIFの問題、年金宿舎の問題、大きく四つあると思うんですが、それぞれ一日ずつ審議をするぐらい丁寧にやってもいい内容の法案なんですよ、ボリュームが多くて。

 そして、国民も、年金制度については非常に関心が高いです。地元の会合などを回っていると、やはり皆さん、TPPじゃなくて年金のことを言いますよ。私は東京ですからね。私は東京なので、都市部なので、年金のことをやはり皆さん気にして、年金、下げられるんだってということを言われます。

 ですから、ぜひ、拙速な審議をするのではなくて、きちんと審議時間をとって、もう審議に入る前から出口をにおわすようなことはやめていただきたいと思いますので、委員長、慎重な審議をお願いいたします。

丹羽委員長 初鹿委員に申し上げます。

 私自身はまだ出口をにおわすような発言はいたしておりませんので、御理解いただきたいと思います。

初鹿委員 きちんと審議時間は確保していただきたいと思います。

 午前中も、長妻委員の質問で随分とまっていましたからね。そういうときは、きちんと時計をとめて、質疑時間をそのとまっている間使うようなことがないように、きちんとした運営を行っていただきたいと思います、中立的な。お願いをいたします。

 質問に入っていきますけれども、先ほどの玉木議員の質問や、また、これまでの井坂議員初め、柚木議員の質問などを聞いていて、私もずっと思うんですけれども、何で我々と皆さん方がこう議論がかみ合わないのかというと、一番の大前提は、物価が上がっても、賃金が下がったときに、それに合わせて下げるというこの新たな賃金スライド、これが、今回、法律でルールを決めるのに、現在の財政検証だと今後一切起こらないという検証に基づいてずっと皆さん方は議論をしてきている。我々は、いや、起こった場合にどういう影響があるのかを示さないと国民の皆さんが納得できないんじゃないか、どういうふうになるのかわからないんじゃないか、それをきちんと示せということを言ってずっとすれ違いになっているわけですよね。

 先ほども玉木議員が示しましたけれども、ケースEの場合での議論だけが今されていますが、では、GやHとか、経済が思うようにいかなかった場合はかなり深刻になってくるわけです。そういうさまざまなパターンもやはり考えていかないといけないというふうに思うんですよ。

 先ほど大串議員から、今回のこの賃金スライドは平成三十三年からの発動であるから、その前に三十一年に財政検証があるんだから、この三十一年の財政検証できちんと、景気のむらをつくったようなシミュレーションはできると思うんですよ、ずっと賃金が上がり続ける、物価が上がり続けるというシミュレーションじゃなくて、景気の波をつくって、上がったり下がったりというのをつくりながらだんだん右肩上がりになっていく、そういうシミュレーションをして、下がる場合も考えて、その影響をきちんと示した、そういう結果を出して、その上でこの法案を再提出していくのが私は一番国民に対して誠実だというふうに思うんです。

 先ほど大串議員が三十一年の検証を待ってからやったらどうかと言ったら、改革の先送りだと言いましたけれども、では、ここで通したって、三十一年の財政検証の前に、仮に物価が上がっても賃金が下がることが来年とか再来年に起こっても、やらないんですよね、法律は三十三年からだから。結局、改革の先送りと言っているんだったら、先送りしているんじゃないですかと言わざるを得ないですよ、こっちも。

 三十三年からやるんだったら、今ここで、国民の皆さんがいまいち不安に思うというか納得できないような試算だけを示して、それで法案を通すのではなくて、やはりきちんと、将来この賃金スライドが発動されるような、そういう事態をつくった、その検証を三十一年にやってみて、これぐらいの影響がありますよということを示して、それで三十一年以降にもう一回法案を提出すればいいんじゃないかと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 もう先ほどるる申し上げましたので、余り繰り返すことは避けたいと思いますが、何度も申し上げるように、民主党政権時代の平成二十四年二月の一体改革のときに、もう既に、デフレというものがいかに長続きをする可能性があるということに気づかれたがゆえに、マクロ経済スライドの発動について、このあり方を、デフレ下で、考えなければいけないということをあの閣議決定の中で、大綱でおっしゃっているわけであります。

 それからもうはや四年たっているわけです。何にも答えがなかったということではなく、我々は、年金部会でずっと、この二十六年の財政検証以降、議論をした結果、これに至ったわけであって、もう既に四年たった、この問題の指摘があって。

 そういうことを踏まえてみれば、次の財政検証まで待ったところで何か事態が変わるかといえば、特に変わるわけではないのであって、今問題視されているようなことはいつでも想定はし得るわけでありますから、いかなる場合でもちゃんと長もちする制度にできる仕組みというものをつくっていくということが我々に課せられた使命でありますので、これを先送るのは私としては賢明ではないと思います。

 何らかの改革が必要だということを、デフレのもとでマクロ経済スライドが発動できないという、言ってみれば、今回、その前提となるスライド制について答えを出しているわけでありますので、岡田副総理が何らかの改革が必要だということをおっしゃっているのが四年前でありますので、今さらにまた先送るということは、国民に対しても、絵を見せないという意味において、改革先送りは変わらないというふうに思います。

初鹿委員 何か言っていることが矛盾しているような感じがするのは、デフレが長期に続いてきたという、その前提で、そういう事態が起こり得るかもしれないから、それに対しての対処方法を考えなければいけないということを言っておきながら、今皆さん方が使っている試算は、デフレじゃなくて、永久に賃金も物価も下がらない、ずっと右肩上がりでいくような試算をもとにやっている、そこが我々からすると不誠実に感じるんですよ。だから、やはりきちんと、デフレの可能性もあるというんだったら、それに見合った試算を出して、それで議論を進めていただくのが私は一番国民に対して誠実な姿じゃないかなというふうに思います。

 それと、きちんとした絵を見せなければいけないという言い方をしていますが、そうであるならば、やはり、我々がもらえる年金が幾らになるのかという具体的な金額を示すというのは、非常に重要だと思うんですよ。先ほど、午前中に井坂議員が示した資料、三・五万円になるんでしたか、今、基礎年金で大体五万円もらっているものが、二割から三割下がると三・五万円になる、そういう資料を出して、玉木さんは、それこそ厚生労働省の資料をもとに、今の六万四千円が五・二万円になるという資料を出しました。

 国民は、所得代替率がどうだと言われてもイメージがさっぱりわからなくて、自分が一体幾らの年金になっていくのか、ふえるのか、減るのか、減る場合にはどれぐらい減るのかということにやはり一番関心が行くし、それがイメージが湧くことだと思うんですよ。ですから、先ほど玉木議員が示した、また井坂議員が示した、年金額、所得代替率でどうなっていくのか、現在価値に換算してどうなるのかというのをきちんとやはり示していただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 これは何人かの民進党の皆さん方からお配りをいただいている資料もあるぐらいでございますが、今お話しいただいた、実質価格で基礎年金そして厚生年金がどうなるのかというのは、明確にケースごとに御提示をして、さっきの玉木委員の資料にもそのように入っておりました。

 例えば、ケースEであれば、二〇四三年、よく指摘をされる基礎年金の代替率が二六になるというときの、このときの物価で平成二十六年度に割り戻した額として、基礎年金であれば十二・五、これはもとは十二・八ですけれども、ほぼ横ばいということになっているので、そういう形でお示しをしているので、代替率が三割下がったからといって、では本来の水準であるものがどういうふうになるのかということについては、この金額ベースで示した実質の価格の額を見ていただければよくわかっていただけるわけでございますので、そういう意味でちゃんとお示しをしているということでございます。

初鹿委員 実は、多分そうはならないんじゃないかということをこれから少しお話をさせていただきたいと思うんです。

 先日、我々の国対のヒアリングに、NPOほっとプラスの藤田孝典さんという、「下流老人」という著書を書いた方に来ていただいて、お話を聞きました。政府のさまざまな審議会の委員等もやられているので御存じだと思いますが、彼のお話を聞いていて、今の低所得の高齢者の実態というのが今の年金制度の改革の中でどれだけ考えられているのかということを私も非常に考えさせられましたよ。

 彼も言っていましたけれども、やはり今、基礎年金を満額もらえていないような、そういう高齢者は多くて、年金の穴埋めで働いている人は非常に多い。ちょっと何か支出があったりするだけで、もう生活保護基準以下に落ちかねない、そういう生活をしている人が多いんですよ。

 私も、実感で、随分この数年間で変わったなと思うことがあるんです。

 たまに、朝、駅に始発から立って駅頭活動をするんですよ。十年前と今とで大きく違うところが一つあるんです。何かというと、朝、始発前にシャッターの前に並んであくのを待っている人が結構いるんですよね、最近。以前よりも多くなりました。朝の六時台よりも五時台の方が人が多かったりするんです。どういう人がいるかわかりますか。明らかに年金をもらっている年代の方々がたくさん朝、通勤しているんですよ、始発で。それで、七時ぐらいにおりて戻ってくるんです。

 何人かの人に話しかけてみたんですよ。そうしたら、何と言ったかというと、年金が少ないから働かなきゃならないんだ、ただ、仕事なんてそんなにあるものじゃないから、朝、ビルの掃除に行くんだという人が物すごく多いんですよ、高齢者で。それが実態で、やはり年金だけで暮らせない人が非常に今ふえているんだと思います。

 そこで、お示しをした資料をちょっと見ていただきたいんですが、先ほどの年金と生活保護の役割のところを、もう一回、長妻議員に次いでおさらいしていきたいと思います。四枚目を見てください。

 これは厚生労働省が審議会で出している資料なんですけれども、「生活保護と公的年金の役割の違い」ということで、塩崎大臣、基礎年金が最低生活を保障するものであるかないかということで、おおむね基礎的な消費支出を賄っている、そういう言い方をしてきましたが、保障できていないということはまだお認めになられていないんですよ。

 ただ、この厚生労働省が出している資料にははっきり書いてあるんですよ。生活保護のところは、「基準」のところで「最低生活を保障する水準として設定。この水準で生活を営むことを想定。」と書いてあるんですよ。

 でも、年金のところは、まず矢印があって、「高齢による稼得能力の減退を補てんし、老後生活の安定を図るもの」。「補てん」という単語はどういう意味かといったら、辞書で調べたら、足りない部分を補って埋めること。補って埋めることですから、年金以外に何かがあって、それを補うものだという意味ですよね。

 それで、「水準」は、「現役時代の収入の一定割合を保障するとともに、」だから、収入の一定割合を保障しているだけであって、これで全ての生活保障をしているわけじゃない。「老後生活の基礎的な費用に対応すること」としており、対応することですよ、おおむね賄うじゃなくて、対応すること。これはどういう意味か、どういう日本語なのかなということを聞きたいですけれども。それで、「現役時代に構築した生活基盤や老後の備えと合わせて自立した生活を可能とする」。

 ここではっきりと書いてあるとおり、もう基礎年金は最低生活を保障するものではなくなっていますということをまず明確にしましょうよ。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほどの年金局長の答弁で御説明を明確にいたしましたように、それは一〇〇%基礎的な支出を保障するというようなことを局長は決して言っているわけではなくて、基本的な考え方を保障という言葉で言っているということを申し上げました。それは絶えず負担とのセットであるということも同時に言っているわけでございまして、保障をもともとするということが年金の制度として組み込まれていたということでもないんだろうというふうに思います。

 したがって、今お配りをいただいている資料にあるような表現であるのが生活保護との違いとしての年金の姿というふうに考えるべきだろうというふうに思いますので、基礎的な支出についてはおおむねカバーしているということを申し上げているのと、局長が保障するというのを基本とすると言うことと、大きな違いはないというふうに考えております。

初鹿委員 おおむねカバーしていると言っておりますが、先ほど長妻議員の質問のときに示したとおり、住宅費を加味してしまうと、持ち家じゃない人は途端に生活保護基準以下に陥ってしまう、そういう状態になっているということをまず指摘させていただいて、お配りをしている、一枚つけている資料を見ていただきたいんですが、平成十六年、二十一年、二十六年の年金の月額階級別受給権者数という資料をお示しさせていただきました。

 こちらを見ていただくとわかるんですけれども、これは、年金額が五万円までの人と、五万円から十万円、十万から十五万、十五万から二十万、三十万以上というふうに、五万円刻みで人数を書いている資料なんですが、これを見ると、十六年から二十一年、二十六年と、年々、年金額の月額の低い人の割合が高まっているんですよ。

 十万円未満の人で考えると、十六年は一八・五%ぐらいなんです。それが二十一年度になると二三・三%になって、二十六年度は二五・五%になってくるんですね、厚生年金でですよ。

 皆さん、基礎年金だけだと生活保護基準を下回ってしまっているじゃないかということは大体イメージとして持っているんですが、実は、厚生年金を受給している人の中でも、もう既に、現在もらっている人で生活保護基準を下回っている、そういう人が結構いるんですよ。

 それで、こちらの一ページ目の資料を見ていただきたいんですが、これは一万円刻みになっております。一万円刻みになっている資料を見ていただきたいんですけれども、八万―九万、九万―十万ぐらいのところでかなりボリュームがあるんですよね。年金が十万円前後ぐらいの人が一番多いんです。

 それで、一枚めくっていただいて、今度は生活保護の基準というのはどれぐらいなのかなという資料を示させていただきました。

 御存じだと思いますが、生活保護は六等級あるので、下から二番目を選びました、ちょっと厳し目にですね。

 三級地の一、これで基準額の一類と二類を足すんですけれども、六十から六十九歳で、基準額1と2があって、2で考えると三万二千八百九十円なんですね。第二類というのは世帯人員ごとのなので、これは三万四千円加えると大体六万六千円か六万七千円ぐらいなんですよ、生活保護の生活扶助基準は。でも、ここには住宅扶助が入っていなくて、三級地の一でいくと、地域によってばらつきはあるんですが、大体、住宅扶助の上限で三万円ぐらいになるので、やはり十万円ぐらいなんですよ、生活保護の基準が。

 そうなると、年金額が十万円以下の人たちは、場合によっては生活保護になるような金額になっているということなんですよね。

 これは、計算するとどれぐらいになっているかというと、何人いるかと全部足し合わせると、四百万人ぐらいいるんですよ。三百九十九万人ぐらいなんですかね。九から十万円まで四百万人ぐらいですね。

 一万円上がるごとに大体百万人ずつふえていくわけですから、本当に、この人たちの年金額が一万円下がったりするだけで、みんな一気に生活保護の方に行ってしまうようなランクの人というのはたくさんいるんです。

 ただ、前提が、これは厚生年金をもらっている一人当たりですから、全ての人がこれだけで生活しているわけではないですよね。働いている人もいるし、また、夫婦でいて、奥さんの方も厚生年金をもらっていたらそれに上乗せがあるから、必ずしも全員が対象にならないんですけれども。

 二枚めくっていただいて、今度、こちらは六十五歳以上の者のいる世帯の中での世帯数の割合というのを示しましたが、単独世帯だと二五・三%、大体四分の一ぐらいが単独世帯だということになるわけです。

 つまり、単独世帯で十万円ぐらいだと、ほぼほぼ生活保護水準になるんですよね。なるんですよ。これは間違いないですよね。大臣、いいんですよね。ひとり暮らしで、資産と、あと、ほかの収入がないという前提で考えれば、この年金額だけだったら生活保護になりますよね。

塩崎国務大臣 資産が全くないという前提ですか。(初鹿委員「はい、そうです」と呼ぶ)

 御指摘のように、老齢厚生年金の受給権者のうちで月額十万円未満の方が占める割合というのは、約二五%おられます。これらの方の多くは、定額部分のない報酬比例部分のみの年金が支給をされている六十五歳未満の方ではないかというふうに考えられておりまして、こうした報酬比例部分のみの年金を受給されている方々は、六十五歳になりますと基礎年金も含めた厚生年金を受給できるということになって、受給額も当然増加をするわけであります。

 したがって、一人一人、それぞれ異なるケースではないかというふうに思います。

初鹿委員 なかなか推計を出すのは難しいんですよね。

 それで、これが将来どうなっていくのかというのも非常に難しいんですけれども、やはりマクロ経済スライドを入れて、少なくとも年金額は下がっていくわけですよね、もらう方は。そのときに、何千円かでも下がったことによって生活保護基準にどれぐらいの人が行くのかというようなシミュレーションというのを私はやはり丁寧にした方がいいんじゃないかと思うんですよ。

 その上で、次のページを見ていただきたいんですけれども、「年齢階級別 非正規の職員・従業員数及び割合」という資料を出させていただきました。

 私は何が言いたいかというと、年金の計算上、これから賃金は上がっていく、物価は上がっていく、そういうシミュレーションを立てているけれども、では、働いている人の賃金が一人一人で見たときに本当に上がっていくようになるのかなという指摘をしたいんです。

 というのは、これを見ていただきたいんですけれども、結構、私はこの数字を見てびっくりしたんですけれども、十五から二十四歳で二百三十一万人なんですね、非正規雇用者が。働いている中での割合が四八・三%、正規、非正規合わせた労働者の中の割合は四八・三%。若い世代だからそれは多いのは当たり前なのかなと思うんですが。三十五から四十四歳は二九・六%、四十五から五十四歳になると三二・六、五十五から六十四歳で四七・四で、六十五歳以上、七四・二となるんですが、ずっと上がっていくんですけれども、意外だなと思ったのは、四十五から五十四歳が三二・六で、それよりも若い世代よりも多い。つまり、非正規のままでずっといく人に加えて、途中で離職なりリストラになったりして非正規に移っている人もたくさんいるんじゃないかと思うわけですね、推測ですが。

 問題は、もともと二十歳、二十三歳ぐらいで働き始めて非正規のままずっといくような人が今後どれぐらいいるのかということで、それによって年金の受け取る金額というのも変わってくるんですよね。そしてまた、一人当たりの年金で考えていかないと、今みたいなモデル世帯で夫婦二人みたいなことで示していても、結婚できない割合がふえていったら意味がないわけですよ、一人ずつで見ていかないと。

 非正規でずっといってしまう人数の見込みというのは、厚生労働省でしたことはあるんですか。

塩崎国務大臣 非正規のままでずっといく人数がわかるかという御質問ですか。(初鹿委員「それを推計したことはあるか」と呼ぶ)ありませんが、まず第一に、最近、非正規で働く人たちがふえている、この増加は何かというのは、もう御存じかもわかりませんが、この十年間で約三百五十万人ぐらいふえていますけれども、そのうちの七〇%強が六十歳以上の方々です。ですから、高齢者の方々が再雇用で非正規になっていくという方がこのところ約七割強であって、あと、女性が二割五分ぐらいで、それで合計するともう九割の後半までいくぐらいでございまして、今、非正規の方々のふえ方というのは、高齢者が七割、女性が二割五分。

 今の問題で、ずっと非正規のままでいく人がどれだけいるのかということについては、私ども、まだ統計的に把握をしておりませんので、何ができるかは考えたいと思いますけれども、時間がかかるのではないかというふうに思います。

初鹿委員 何でそんなことを聞いているかというと、やはり給料がずっと右肩上がりで上がり続ける人ばかりじゃなくなっているというか、むしろ、給料がずっと上がらないままの人が多くなっている、そういう前提も今後考えていかないといけないんじゃないかと思うんですよ。

 私の周りも、二十代のときからずっと給料が上がらないで四十七歳になっている友達はたくさんいますよ、本当に。本当にたくさんいますよ。中学校のクラスの半分ぐらいはそれに近いんじゃないかと思います。

 もう一枚めくっていただいて。これは、厚労省に無理を言ってシミュレーションしてもらいました。仮に四十年間同じ報酬月額でずっと保険料を納めたときに、厚生年金が一体、月に幾らもらえるようになるのかという試算を出してもらったんです。

 そうすると、十八万円ぐらいのところ、第十二級あたりを見てもらいたいんですが、入ったときに、入社して十八万ぐらいだとしますよね、それでずっと四十年間、十八万ぐらいでいくと、四十年間納めても三万九千四百六十三円なんですよ。多分、これに六万幾ら基礎年金を加えて十万ぐらいなんですね。十万ぐらいなんですよ。

 年金額の低い人というのは、やはりなかなか貯金もできない。ということは、資産もない可能性が高いわけですね。十万ぐらいで、持ち家も買える可能性はないですよね、なかなか給料が上がる見込みがない働き方をしていたら。そうなると、この人たちは、仕事ができなくなったりしたらたちまちに生活保護に陥る水準ぎりぎりになるんですよね。だから、非正規のままずっといくような人がどれぐらいいるのかとか、そういうことも、きちんと将来の見込みを考えた方がいいんじゃないかということを言っているんです。

 今の年金の考え方というのは、夫婦二人だったら成り立ちますよねというのが基本じゃないですか、基礎年金、二人で何とか十万を超えるという。ところが、そうではない、単身のまま一生いくという人がふえていくときに、これは非常に問題なんですよ。

 現在単身の高齢者の人が二五%いますというのと、結婚しないまま単身になった人がふえて二五%になっているというのでは全然違いますからね。何でかといったら、今単身の人は、どこかに家族がいて、その家族が生活費をある程度補填したりとか支えたりすることが可能なわけですよ、子供がいたりすると。それが、一回も結婚したことがないと、自分より若い親族がいないと、結局、年金か、あとは自分で働くか以外に、もう生活保護になる以外の選択肢がなくなるわけですよ。そういう人もこれからふえていく可能性があるということをぜひ考えていただきたいと思います。

 それで、次の資料、今度は未婚率の資料を出しました。見てください。かなり急激な角度で未婚率はふえているんですね。男性の三十から三十四歳で、二〇一〇年だと四七・三%、女性でも三四・五%の未婚率なんですよ。でも、この人たちはいずれ結婚するでしょうというふうに思いますよね。

 一枚めくっていただくと、今度は生涯未婚率というのがあるんです。生涯未婚率というのは、五十歳の段階で一回も結婚していない、そういう率なんですが、見てください。これは上のグラフが男性なんですが、平成十七年、一六%だったのが、二十二年、二〇%になるわけですよ。女性は、七・三が一〇・六%。

 では、二〇一〇年のときの四七・三%の結婚していない男の人が、五十歳のときにどれぐらい結婚していないのかというのをちょっと推計してみました。次のページを出してください。

 私なりに計算して、確実にこれが合っているかどうかわかりません。わかりませんけれども、二〇〇五年の段階で生涯未婚率一六%、十五年ぐらい前の一九九〇年のときの三十から三十四歳の未婚率が三二・八%というのを比較してみると、一六・八%ぐらいが結婚して抜けていっているんだなと。次の層で見ると、二〇一〇年で五十歳の人は、大体、この場合も、一七・二%だから、一七%ぐらいは結婚するんじゃないかという仮定を置いて考えると、二〇一〇年、四七・三%、未婚だった人は、生涯未婚になる可能性は三〇%ぐらいなわけですよ。

 ここに、先ほどの、非正規のままずっといくのかどうかとか、そういうことも加味していくと、この先、三〇%以上の人は、男性で、生涯未婚になる可能性があると。

 自分の周りを見ていても、そうかもしれないなと、橋本副大臣、思いませんか。思いますよね。

橋本副大臣 将来の予測についてどうのこうのというのは言いにくいですが、ただ、例えば私の同年代でも、未婚の人がそれなりの割合いるなということは感じることはございます。

初鹿委員 今でさえそうなんですから、これから先のことを考えると、生涯結婚していない単身の人がたくさんふえていくということを想定した年金制度にしていかないと、年金の財政がもつかどうかということを考えても、一人一人がもらう年金額が、それで、六万円です、七万円です、生活保護基準と変わりませんということになったら、みんな、では、四十年真面目に働いて保険料を納めるよりかは、このまま保険料の分は現金で使って、いざとなったら生活保護になった方がいいんじゃないかというようなことになりかねないと思うんですよ。違いますかね、大臣。

 私は、だから、きちんとこういうシミュレーションもしてもらいたいなというふうに思います。

 この未婚率について、将来の推計を出してみようということ、検討しませんかね。いかがですか。

塩崎国務大臣 単身のままいった場合の年金で、どのように、どういう環境に置かれるかということで、悲観ケースというのがあることはそのとおりだと思いますが、財政検証の際に御提示をしているものがケース別でありますが、夫のみの就労世帯、夫婦共稼ぎ世帯、単身世帯、こういったものについて、それぞれどの程度の年金月額、それから代替率になっているのか、そういうケースをいつもお出ししています。

 一方で、今、初鹿委員が試算をされた生涯未婚の方々の率があって、その方が特にまた非正規でずっといっちゃったりする場合の年金はどうなのか、こういうことだろうと思いますが、まず第一に、さっき非正規のこの十年間の増加がどういうところで増加をしているのかというのを申し上げましたが、ストックで、輪切りで見てみると、実は、女性が五六%、高齢者が二五%、男性の十五歳から五十九歳というのが一九%、こういうウエートづけだということです。

 今、私ども、同一労働同一賃金をやっているのは、特に正規と非正規の格差を縮めようということで働き方改革でやっています。これは、主に女性の部分に一番きいてくるわけですけれども、二割に近い男性の部分、現役の、まだ働いていらっしゃる方々の中でいるわけですから、そういうところについてもしっかりやっていかなきゃいけないと思っております。

 同時に、今進めているのは、適用拡大も進めているわけですので、いろいろな生き方があるので、私たちはそれを、どういう生き方であってもそこそこの暮らしがちゃんとできるようにしていかなきゃいけませんので、おっしゃるとおり、かなり低年金で御苦労されるようなケースというものも想定できますから、そういう意味でも、いろいろなケースをよく注意して見てデータをとるということは極めて大事なことだというふうに思います。

初鹿委員 時間が来たので、最後まとめますけれども、何が言いたかったかというと、要は、今の現行制度をいじるだけだと低年金の方々の暮らしを支えられる年金制度を維持するのは非常に難しいということだと思うんですよ。やはり、基礎年金にまでマクロ経済スライドをかけていくということもちょっと考えた方がいいし、先ほど玉木委員が指摘したと思いますが、年金額の高い人の基礎年金部分を低所得者に回すとか、そもそも年金制度とは別に最低保障機能を考えるとか、そういう抜本改革をそろそろきちんと検討しないと、年金制度だけではもうもたないんじゃないかということを指摘させていただいて、終わらせていただきます。

丹羽委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本委員会の所信質疑から、あるいは前回の救済法案まで、さまざまな機会で我々がカット法案と呼ぶ法案が議論をされてきました。ですが、委員会の質疑は私にとってはこれが初めてでございます。これまで、法案のときは法案の議論をしていましたし、一般のときは一般の議論をしておりましたので、もう答えたなどということは言わないでいただきたい。きょうの議論を通していて一部ダブるところもあり、また今の初鹿委員のところと重なる部分もあるなと思いますけれども、やはり私は、正直言って、税と社会保障の一体改革のときからずっと一貫して野党だったわけでありますので、そういう意味でも言いたいことがございます。ですので、そこをぜひ踏まえていただきたいということを最初に言っておきたいと思います。

 それで、まず、今年度の新規裁定者、初めてもらう方の年金額は、老齢基礎年金の満額では六万五千八円、妻が専業主婦で夫が厚生年金かつ四十年間加入したといういわゆるモデル世帯では二十二万一千五百四円となっております。これはほぼ昨年と同水準でありますけれども、当然、みんながこんなにもらっているわけではありません。基礎年金が基礎的消費支出を補えないではないかという、きょうも随分議論がありましたけれども、私自身も前回も指摘をしたところでありますし、これは見ればわかる話なんですね。

 でも、やはりそれだけではないということで、まず資料の1のグラフ、これは厚生年金保険の男女別年金月額の分布を示したグラフであります。

 一目瞭然だと思うんですが、総数の山があるのは九万から十万のところであります。そして、女性が圧倒的に手前に山がある。つまり、低年金だということであります。男性の方がわずかに右に山があるわけですけれども、だからといって決して高いわけではありません。

 内訳は二枚目、これは今、初鹿委員が出されたものと同じものであります。

 平成二十六年度末現在、二〇一四年度末現在で、厚生年金の受給者は千五百四十二万二千十四人です。平均月額は十四万四千八百八十六円。でも、最も多い階層、つまり一番もらっている人が多いのは幾らかというと、今言った月額九万から十万なんですよね。そうすると、七・三%である。そして、一目瞭然のように十万円以下の方も非常に多い、一万円未満という方もいらっしゃるわけですが、これが二五%を超えています。三十万円を超える方が二万六千百六十三人もいる一方で、基礎年金よりも少ない六万円以下の方が六十六万八千九百五十人もいらっしゃいます。この実態をやはりしっかりと見るべきだと思うんですね。

 前回、年金期間短縮法案のときに、基礎的消費支出に比べて単身世帯ではそもそも足りていないことや、年金生活者の深刻な生活実態の声、一部ですが紹介をいたしました。しかし、大事なことは、年金がこれ以上減ると暮らせないという声は決して一部のもの、レアケースではなくて、むしろ大部分の声だということなんです。

 しかし、カット法案は、まさにここから下がる一方、あるいは、ほとんど横ばいになるんじゃないか、こういうことを私たちは危惧しているわけです。

 まず大臣に、この年金生活者の現状について、今私が指摘をしたことについては、きょう認識はほぼ一致できると思うんですけれども、その点で伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先ほど初鹿委員からも少しお話がございましたけれども、今の御指摘のとおり、老齢厚生年金の受給権者のうちで月額十万円未満の方が占める割合は約二五%となっておりまして、これらの方の多くは定額部分のない報酬比例部分のみの年金が支給されている六十五歳未満の方々だというふうに考えられます。

 こうした報酬比例部分のみの年金を受給されている方は、六十五歳になりますと基礎年金も含めた厚生年金を受給されることになりますので、その時点で受給額も増加をするというふうに考えられます。

 一方で、御指摘の女性の年金額につきましては、平均して月額約十万円でございまして、男性の約十六万五千円に比べると低額になっております。これは、男性に比べて女性の方が年金額の算定の基礎となります標準報酬月額が低いということ、それに加えて加入期間が短いといったことが影響しているものではないかというふうに思われるところでございます。

高橋(千)委員 例えば、今もあるいはきょう朝からも、生活保護世帯と比べた議論がありました。ただ、六十五歳以上の生活保護受給者の中で、既に五割近くの方は年金をもらっています。逆に言うと、五二%が無年金であるというのが厚労省の調べですよね。

 私も、本当に、ワーキングプアという言葉がテレビで話題になったときに、そのテレビに出た方に直接お会いしたことがありましたけれども、四十年間ばりばり働いているんです、正社員です、そして名立たる大企業です。だけれども、一人では到底暮らしていけない、もう先立たれてお一人でしたから。それで、生活保護を一部受給しています。ですから、生活保護を受給していることが、何か満額で、そして年金よりもえらい高いという議論もありますけれども、そうじゃないんです。あくまでも不足した部分ですから、一万か二万だけの方もいらっしゃいます。

 そういうことも、全体を踏まえて、やはり公的年金の役割を、ちゃんと働いて、頑張って納めて、頑張って暮らせるようにする水準にしていくことが実は前向きな議論なんじゃないか、私はこのように思います。最初にそのことを指摘させていただきたい、こう思います。

 スライドの話をする前に、年金支給額のもととなっている標準報酬月額がどうなっているのか。これも少し議論がありましたけれども、非常に差があるわけですよね。やはり男性と女性でも差がある。

 ここ数年、若干伸びているわけですけれども、いわゆる百年安心と言われた二〇〇四年から十年間で見るとどうなっているのか。つまり、二〇〇四年と二〇一四年の比較を男女でお答えください。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 年金額の算定の基礎となる標準報酬月額につきまして、平成十六年度末における平均額は、男子が三十五万八千六百七円、女子が二十二万五千六百六十三円となっております。一方、平成二十六年度末における標準報酬月額の平均につきましては、男子が三十四万九千七百三十五円、女子が二十三万五千七百六十三円となっております。

高橋(千)委員 今お答えいただいたように、男子は実は減っていまして、女子はふえている。ですが、その額は余りにも男子と比べると少ないということが耳で聞いてもおわかりいただけたと思うんです。

 資料の3に、これをグラフにしてみました。やはり女子は若干右肩上がりになっている。だけれども、比較するとまるで少ない、六割、七割の水準であるということ。それから男子の方は、若干上がってきてはいるんですけれども、二〇〇〇年の水準、三十六万五千円を超えている、この水準にまだまるで戻っていないというのが実態であるかと思います。

 先ほど来議論があったように、物価上昇率は〇・二%前後ですので、ゼロ近傍、だからほとんど物価を加味しなくてもいいような、そういう実態だ、横ばいになっている、こういうことが言えるのではないかと思うんですね。

 そこで、実は、二〇〇四年の改革のときは、参議院の厚労委員会の質問で、当時の坂口厚労大臣は、現在、現役男子の手取り賃金が三十九万ぐらいである、それが二〇一七年ごろには五十万ぐらいに上がる、あるいは二七年ですと六十三万円と答えています。その時点で既に、毎年二%以上のプラスを期待していたと思うんですね。現実が全く違っていたのは、もう既に御存じのとおりです。だから、これから先が急にそうなるはずがないという議論がるるされてきたのかなと思っております。

 そこで、やはりこのグラフの意味をよく考えてみたいと思うんです。

 大企業の内部留保は、これだけゼロ近傍で横ばいだと私は言いました、デフレの中でも最高水準までためてきているわけですよね。二〇〇〇年との比較では一・七四倍、三百兆円近くをためています。なのに、標準報酬は減っている。おかしいじゃないか。結局、正規が減って非正規雇用に置きかわっていること、男女の賃金格差が依然として大きいこと、あれこれではなく、ここを解決する以外にないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 二〇〇四年以降の経済の伸びあるいは実質賃金の動きについては、リーマン・ショックの発生、それから、長続きするデフレからの脱却に向かう過程での物価上昇など、さまざまな要因が影響していると考えられます。

 御指摘のうちで、まず、正規、非正規の動きにつきましては、足元の数値では、働き盛りの五十五歳未満では、二〇一三年から十五四半期連続で、非正規から正規に移動する方が正規から非正規になる方を上回ってきております。それから、二〇一五年につきましては、正規雇用労働者が、第一次安倍内閣以来八年ぶりに前年比でプラスに転じて、二十六万人増加をいたしました。こういったことで着実に改善を見ているわけであります。

 正社員を希望する方々の正社員転換、この推進は重要でありまして、本年一月に策定をした正社員転換・待遇改善実現プランに基づいて、非正規から正社員への転換などを行う事業主を支援するキャリアアップ助成金の活用促進などに取り組んでまいっております。

 男女間の賃金格差についてでありますが、これを平成十七年で見てみますと、男性を一〇〇とした場合、女性が六五・九でございましたけれども、平成二十七年、昨年では七二・二となっておりまして、縮小傾向にございます。しかし、依然として格差は大きいわけでありますので、本年四月に施行された女性活躍推進法に基づいて企業に行動計画の策定を促すなどの取り組みを進めております。

 非正規雇用の方の正社員転換や男女間の賃金格差の解消は安倍内閣にとっても極めて重要な課題でございまして、働き方改革を含め、今後とも全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 女性活躍推進法は、内閣委員会に私も出張っていって質問しましたけれども、賃金格差を指標に入れておりませんので、やはりこういうところが問題である。

 平成十七年からの比較でおっしゃいましたけれども、一定は縮まってきているということは確かです。しかし、欧米から比べるとまだまだ低いということがはっきりしているし、また、働き盛りの、非正規から正規にふえたというのも、総理がよく予算委員会で答弁されていたのを脇で聞いておりました。

 団塊世代が一定リタイアをして、あるいは底を打ったという中で今労働力が不足しているわけですから、正社員が一定ふえる展開になるというのは自然の数字であろう。ですから、アベノミクスが貢献したわけでは決してないわけで、やはりここは、本当にこれからの本格的な議論が必要ではないかと思っております。ただ、やり方についてはまた今後議論するわけですけれども、問題意識は基本的には一致しているのではないかというふうに思いたいなと思っております。

 そこで、二〇一四年の財政検証、これも先ほど議論があったわけですけれども、これは、私もこのときにも既に質問しておりますけれども、昨年一月二十一日の社保審の年金部会の整理でいいますと、一つは、日本経済の再生と労働市場参加の促進が進めば、現行の制度のもとで、将来的に所得代替率五割を確保できる。二つ目は、低成長が続いた場合、五割を割り込む。三つ目は、オプション試算によって、三類型いずれもが持続の可能性を高め、給付水準を確保する上でプラスになるということだったと思います。

 ですから、この財政検証は、はっきり言って、今のままでは破綻するということを明確に認めたものだと思うんですね。その上で、今までずっと横ばいだったけれども、経済が再生し、かつ、労働市場参加が促進して初めて五割を確保できるというのを言ったものであろうということで、かなりこれは、正直、安心ではなくなったという財政検証そのものだったのではないかなというふうに思っております。

 そのことをお認めいただきたいのと、その上で、そのときにオプションを言ったわけですけれども、その中の一つが、さっきから話題になっている、デフレ下でもマクロ経済スライドをフル発動するというものが入っておりました。こうしたことが議論されたわけですが、採用しなかった理由は何でしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年の財政検証でございますけれども、これは、必ずしも現行のままいきますと制度が破綻するといったことを前提とするというよりは、経済が健全に機能していけば所得代替率五〇%が確保できるということが確認をされた財政検証であるというふうに思っております。

 その上で、今お尋ねございましたオプション試算でございますけれども、これは三つの事項についてやっております。

 一つは、今御紹介のございましたマクロ経済スライドの見直し、すなわち、デフレ下でもフル発動した場合どうなるか。それから被用者年金の適用拡大、これは、この十月から二十五万人の適用拡大をやっておりますけれども、これを思い切って拡大して二百二十万人にしたらどうなるか、さらに拡大して一千二百万人にしたらどうなるかという計算でございます。三点目が保険料拠出期間の延長ということで、今現在、二十から六十歳までが基本的な拠出期間でございますけれども、平均寿命の伸長等もございますので、これを四十五年まで拠出できるというふうにしたらどうなるかなど、一定のオプション試算を行ったわけでございます。

 このオプション試算自体は、御案内のように、社会保障制度改革国民会議の報告書、そして、これを受けて成立いたしました社会保障制度改革プログラム法、この中で、年金制度の課題ということで、今御紹介した三項目も含めて課題が提示されておりまして、こういった課題の解決に資するような、そういったオプション試算をするべきであるということが国民会議の報告書でも位置づけられて、その結果、オプション試算をしたものでございます。

 そこで、今お尋ねございました、マクロ経済スライドの例えばフル発動をなぜ今回やらなかったかということでございます。

 当然、このオプション試算自体はアイデアでございますので、これをやれば所得代替率の大きな改善につながるということは間違いございませんけれども、これらを具体的に制度化するに当たりましては、やはりフィージビリティーというものを考えて、さまざまな検討が必要になってまいります。

 今具体的に御指摘のございましたフル発動ということでいきますと、これは従来から御議論に出ております、いわゆる名目下限措置を廃止して、実際マクロ経済スライドだけで年金の実額を下げる、こういったことを前提とするわけでございますけれども、これも従来から御答弁申し上げておりますように、マクロ経済スライド自体は、経済の動きそのものと直接関係があるわけではない、人口構造の調整を長期間かけて行う制度でございますので、今般の改革におきましては、そういった趣旨に鑑みて、名目下限の廃止まではせず、これを、しかも、片づかなかった未調整部分をそのまま放置するのではなく、景気がよくなった段階で解決するという、いわゆるキャリーオーバーということで御提案を申し上げた、こういった考え方と経緯でございます。

高橋(千)委員 まず、前段のところは、必ずしも破綻なわけではないとおっしゃいましたが、それを言っちゃったらもうおしまいでしょうから、そういう答弁になるのは当たり前ですが、それは、あくまでも経済の再生と、プラス労働市場参加が進めば、つまり、一億総活躍がうまくいけばという大前提でありますから、それを二つともかなえなきゃいけないという点ではかなり厳しい、裏を返せば、それができなきゃ破綻するよという試算であることの指摘は間違っていないと思うんですね。

 それから、誤解のないように言っておきますが、私が今なぜかと聞いたのは、デフレ下でもマクロ経済スライドをフル発動せよという立場で聞いたのではございませんで、答弁が今大事なところでありまして、やはり名目下限措置を維持するということ、基本はやはり前の年金を減らすんじゃないんだということ、ましてそれは経済とは無縁のものであるから、乱暴なことはやっちゃいけないという意味だったのではないかなと。そこはとても大事な答弁ではなかったかなと思うのであります。それと今度のカット法案は、実は非常に考え方が近いものがあるかなという心配をしております。

 そこで、話を進めますけれども、資料の4で今の財政検証の資料を幾つかつけておきましたけれども、労働力人口が六千万人前後を二〇三〇年まで維持できるというのが大前提になっているということ。それから、めくっていただきまして、資料の5を見ると、AからEのケースでは、今年度、二〇一六年度までは実質賃金にマイナスが立っているわけですけれども、来年度からは、物価上昇率二・二%、実質賃金一・四%というように、ずっと成長が続く前提となっている。

 そうすると、この財政検証AからEのとおりであれば、絶えず物価上昇を賃金上昇率が上回っている、だから無理だという議論をさっきからされていると思うんですが、しかし、本法案で言う賃金スライドはその場合は発生しないということを確認したいのと、だとすれば、なぜこの法案が必要か、伺います。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 二十六年の財政検証で、デフレから脱却、それから長期的に物価、賃金ともにプラスとなる経済を想定しておりまして、経済再生ケース、いわゆるAからEにおいて賃金がマイナスになるということは想定をしていないということでございます。

 安倍政権としては賃金上昇を含む経済再生に全力で取り組むわけでありまして、今回の法案は、将来、不測の経済状況が生じて、名目でも実質でも賃金が下がったときに、将来の基礎年金の水準がこれ以上下がることがないように改定ルールの見直しを行うということでございます。

 この見直しによって、制度がさまざまな事態に対処できるようにすることで、若い世代の年金制度への信頼が高まって、安心して今の高齢者の年金を支えていただくということとなりまして、年金の持続可能性にもプラスだということだと思います。

高橋(千)委員 賃金がマイナスは想定していない、想定していないから本来は必要ないはずだけれども、万が一ということがこの間ずっと議論されてきたのかなと思っております。ただ、万が一ではないだろうというのが、ずっととは、もちろん私たちも言いませんが、そうではないだろうということを言いたいわけなんですね。

 それで、最も現実的な試算と言われている資料5の下にあるケースEの場合、これは私、実際は、この間ケースEを言ってきたけれども、今の現状はHだなというのは皆さんと同じ認識であるわけですけれども、物価上昇率が一・二%、賃金は二・五%がずっと続くという場合になっております。

 これは、現行ルールのままなら、厚生年金の調整が終了するのは二〇二〇年度、この表にあるとおりです。基礎年金の調整が終了するのは二〇四三年度。この場合のマクロ経済スライド調整率は一・二%、この理解でよろしいでしょうか。

鈴木政府参考人 今御指摘のございました平成二十六年の財政検証のケースEでございますけれども、マクロ経済スライドによる調整率でございますが、二〇一五年から二〇四〇年までの平均でいきますと、今お示しのとおり一・二%となっております。

高橋(千)委員 そこで、平成三十年、二〇一八年から、まずキャリーオーバー制度が導入されるわけです。資料の6を見ていただきたいと思います。

 マクロ経済スライドの名目下限維持の原則は変わらないわけですよね。つまり、前年度の水準は維持することに変わりがないので、物価、賃金がプラス一%であれば、調整率一・二%だと全部引けないわけです。そうすると、残り〇・二%は翌年度以降に繰り越されることになります。マイナスだった場合は、一・二%が丸々翌年以降に繰り越されることになります。

 それが二回以上続いた場合、足し算で、一・二が二・四、三・六というようにたまっていくわけですよね。これは一体最大何年繰り越すんでしょうか。

鈴木政府参考人 御指摘のマクロ経済スライドの調整でございますけれども、これは言うまでもなく世代間の分かち合いの仕組みでございまして、早く終了することができれば、その分終了後の所得代替率がより高い水準で安定する、これが基本でございます。

 その中で、今回の法案に盛り込まれましたキャリーオーバーの仕組みでございますけれども、これは、マクロ経済スライドの調整をできるだけ先送りしないで、若い人たちが将来受給する基礎年金の水準が低下することを防止する、こういうものでございます。

 こうした趣旨を踏まえますと、繰り越しに期限を設けることなく、より早期に調整を終了させることが世代間の公平を図ることにつながるものと考えております。

高橋(千)委員 これはなかなかすごい話だと思うんですよね。

 さっき言ったように二〇四三年まで終了年度があるわけで、そうすると、始まる年度が一八年だから、あと二十五年ですか、ずっと繰り越すと。でも、ずっと成長しない場合のケースであると、最大で二〇七二年が終了というのもあります。そうすると、そこまでもずっと足していく。これは、期限がないと言ったんですから、そういう意味ですよね。

鈴木政府参考人 繰り越しがずっと生ずるようなそういった経済が続くということでありますと今先生の御指摘のとおりでございますが、一方で、キャリーオーバーの仕組みといいますのは、先ほど来申し上げておりますように、現在の受給者の方々に配慮して、前年度よりも年金の名目額を下げない、いわゆる名目下限措置と裏腹の問題でございます。

 したがいまして、この調整期間、繰り越しの期間に終わりがないということで、これが難しいということですと、逆に、平成十六年に設けました財政スキームのもとでは、これはもとに戻りますけれども、それではデフレ下でもマクロ経済スライドをフル発動するという選択肢しかないわけでございまして、これは、現在の与えられた状況の中で一番最適な選択肢ではないだろうかというふうに考えてございます。

高橋(千)委員 そういう答弁で、結局、さっき私が言ったように、デフレ下でのフル発動と根っこは同じ考え方だと思うんですね。二〇七二年まで繰り越す場合もあるというわけです。だけれども、肝心なことは、キャリーオーバー制度、そんなに繰り越すのか。いやいや、そんなはずはない、上がるときもあるんだと皆さんはおっしゃっているわけなんですが、これが二〇二一年度、平成三十三年度には賃金スライドが施行となる。これが合わせわざになったらどうなるのかということを考えてみたいわけですね。

 資料の7に六つのパターンがあるんだということで、上が現行制度であります。下がこれからの新しい改定ルールであります。

 これは、比べると、実は、六つと言いましたが、新しい制度はそのうち二つを変えるだけだということです。

 まず、今の考え方というのは、既裁定者、既に年金をもらっている方は購買力維持のために物価に合わせる。新規裁定者、初めて年金をもらう方は賃金に合わせるのが基本というのが今までのルールだったと思います。

 そこで、Dを、上と下を比べていただきたいと思うんですが、既裁定者にとって物価が一%上がっているけれども、新規の人は賃金に合わせるとマイナスになってしまう。これは、両方を鑑みてゼロスライドであるというのが今の状況であります。ところが、新しくなりますと、一%物価が上がっているにもかかわらず既裁定者は新規裁定者と合わせてマイナス一・〇%、賃金スライド、こういうことになるわけであります。

 また、Eのケース、上の方を見ていただきますと、これは、物価はマイナス一%だけれども賃金はマイナス二%である。今までは、既裁定者は一%マイナスで、新規の人も一%に合わせていた。余りにも二%減らすのは酷であるということです。ところが、今回は、逆に引く方に合わせてどっちもマイナス二%、賃金スライド、こういう形になると思うわけです。

 そうすると、問題は、マクロ経済スライドが発動するのは調整率一・二%以上に賃金がアップするときのみなんですね。

 賃金スライドが採用されると、現行でも、物価が二%上がったとしても、賃金が一%なら、ほぼ年金はゼロ増なわけですよね。キャリーオーバーで積み越された調整率があれば、これは当然二%以上なければ、また引き切れずに繰り越されるということで、つまり、一度でもマイナスの年があれば、ずっととは言いません、一度でも二度でもマイナスの年があれば、この繰り越しが来て、そして、やっとちょっと上がった、物価も賃金もやっと上がったというところをばっさりいかれる。そうすると、結果として際限のない引き下げの道になりませんか。

鈴木政府参考人 今御質問がございましたけれども、そもそも、経済の状態がよくて賃金と物価が上がる、こういう状況のもとでは年金額が下がることはないわけでございまして、むしろ、こういう状況のもとでは年金が上がることも当然あり得るわけでございます。

 したがいまして、今の政府といたしましては、このデフレ脱却、それから賃金の上昇に全力で取り組んでいく、これが、年金制度以前といいますか、年金制度の大前提となっています経済政策の姿勢でございます。

 しかしながら、従来から申し上げておりますように、万が一、例えばリーマン・ショックのようなことが起きて賃金が下がるというようなことが起きたときにも、これは転ばぬ先のつえということで、将来の基礎年金の水準がこれ以上低下することのないように改定ルールを見直したということでございまして、前提の置き方次第でございますけれども、あわせまして、例えば、六万円の福祉的給付の措置、これをスタートさせた後の三十三年度から新ルールを導入するということもございますし、先ほど来申し上げておりますように、名目下限の措置というものもきちんとつけておりますので、際限のない引き下げが行われるというような御指摘は当たらないのではないかというふうに考えております。

高橋(千)委員 名目下限をつけていても、やっと上がったときにはばっさりいかれる、賃金が下がれば引かれる、結局どういうときに上がるのかなと。一年でも二年でもこれがマイナス改定になってしまえば、それがずっと響くんだよということで、キャリーオーバーに制限がない。さっきお答えになりました、二〇四三年度まであるいは二〇七二年度まで行った場合でも制限がないと。この制度設計は非常に危険ではないでしょうか。

鈴木政府参考人 もとより、年金制度は、経済が健全に機能して、年金制度以前の、あるいは年金の基盤になります社会経済がきちんとその役割を果たしているということが前提での制度でございますので、その中で年金制度が持続可能性を維持して、将来の若者たちにもしっかりした年金水準を確保しよう、そういうことからいたしますと、今回御提案申し上げておりますマクロ経済スライドのキャリーオーバー、そして年金額改定ルールの見直しというものはやはりどうしても必要な措置でございますので、御理解を賜りたいと思います。

高橋(千)委員 二〇一四年度の財政検証では、先ほど来言っているように、アベノミクスの成功と一億総活躍で百年安心、大丈夫だということを描いて、内実はもしかしたら破綻する可能性があるということを見越して、賃金スライドとキャリーオーバーを入れ込み、転ばぬ先のつえだと言っている。私は本当に、今にも折れそうなつえか、あるいは既に骨折しているんじゃないか、そういうことを見て見ぬふりをしていることを指摘しなければならないと思います。

 それで、ずっと答弁されているんですけれども、スライド調整が早く終われば将来世代にプラスになるという表現をされています。これは総理も何度も答えているんですが、そのイメージ図が資料の10でありますけれども、これは上の方は年度が全然入っていないんですが、さくさくとマクロ経済スライド調整ができずに、なだらかな線になった場合に、この調整期間が長期化して給付水準が低下するという意味であります。

 ということで、改めて伺いますけれども、このマクロ経済スライドの調整期間の終了というのはどういう意味なんでしょうか。何をもって終了と判断するのか。

鈴木政府参考人 マクロ経済スライドの調整でございますけれども、これは法律にルールが決められておりまして、具体的には、年金財政の均衡が見込まれて調整を行う必要がなくなったと認められるときに終了するということになっております。

 具体的にはどういうことかと申しますと、このマクロ経済スライドによる調整を進めていく中で、当然、財政検証をやっていくわけでございますけれども、財政検証の年からおおむね百年後に給付費の一年分程度の積立金を保有する状態で年金財政の収支が均衡するという見通しが立った時点、この時点で終了することとなっております。

高橋(千)委員 済みません。後で追加したので、この資料の一番下に入っているかもしれません。申しわけありません。

 この10の下の図が今言ったことをあらわしていると思うんですが、確かに、入りと出が一緒で、決まっている中で、調整をしていくということの中で、一年分の積立金が残っているというところになったときに終了するというお話だったんですが、ただ、これは、二〇〇四年のときは二十年で終了する予定だった。そうすると、あと八十年安心だと言っているわけですね。

 これはちょっと想像しがたいわけで、今は、二〇一四年のケースでいいますと、三十年間に延びちゃったということで、皆さんが言っているのは、そのために、スライドがきかなかったから所得代替率が上がってしまったんだと、とても悪いことのようにおっしゃるわけです。

 それで、最初は五九・三%だったものが六二・七%にまでなってしまったんだということを指摘しているわけですが、括弧して書いていますように、そうはいっても、実質の手取り収入でいいますと、三十九万三千円、後の方が三十四万八千円と減っているわけなんです。ですから、代替率が高くても、もらえる年金額は逆に減っているということをまず指摘しておかなければならないわけですね。だから、多分その逆もあるんだと思う。所得代替率が下がっても年金水準は上がる場合がある。これは物価以上にスライドをきかせていくので実質価値は上がるんだという説明をしていたと思うんです。

 では一体、この賃金スライドとキャリーオーバー制度を導入すれば、マクロ経済スライドの調整期間がどれだけ早まって、何%寄与するんでしょうか。

鈴木政府参考人 まず、賃金スライドの方でございますけれども、二十六年の財政検証では、先ほど来申し上げておりますように、デフレから脱却をいたしまして、長期的に物価、賃金ともプラスになる経済を想定しておりますので、今回の賃金変動に合わせた年金額の改定ルールの見直しが発動するということは、この中で想定されていないわけでございます。

 ただ、今先生お示しのこの十ページの資料でございますけれども、まさに、当初二十年間でもくろんでおりましたマクロ経済スライドの調整期間が三十年間に延びてしまった。その原因の一つが、この賃金スライドの徹底をしていなかったことによって、足元の代替率が、現役の賃金が下がっているにもかかわらず、年金の水準が、五九・三から六二・七に上昇してしまった。その結果、マクロ経済スライドの調整期間が長期化してしまったということでございますので、逆に申し上げれば、今回の賃金スライドのルールの徹底をするということは、こうしたマクロ経済スライドの長期化が防がれる効果があるというふうに御理解を賜ればと思います。

 一方で、キャリーオーバー制度でございますけれども、二十六年の財政検証ケースEで申し上げますと、現行制度と比べまして、マクロ経済スライドによります給付水準の調整終了年度が一年短縮して、調整期間の終了後の所得代替率が〇・三%、夫婦で申しますと月額二千円程度上昇するものと見込んでおります。

高橋(千)委員 ということなんですよね。

 何が言いたいかというと、いろいろ言うけれども、マクロ経済スライドの調整が一年早まるだけだ、しかも、その寄与度は〇・三%だと。それにしては、余りにも長い間、年金が減っていく、あるいはふえない状況に耐えなければならないということを言いたいなと。それから先はずっと同じ年金で安心ですと言われても、到底そんなふうには言えないだろう、これが多くの皆さんの思いじゃないかということを指摘したいと思います。

 それで、改めて、資料の8になりますけれども、百年安心のときの坂口試案という骨子がございます。私たちは、当然、このときの制度自体にも反対をしているわけですけれども、ただ、その出発点の思想、これはとても大事なものがあるのではないかと思うんですね。「給付と負担の具体的見直しに当たっての基本方針」「公的年金制度の堅持」、アンダーラインのところを読みます。「公的年金は、高齢者の生活のため不可欠なものであり、高齢期の親の生活の安定を通じ、現役世代も安心して社会で能力を発揮できる。」

 私がこれをなぜ紹介したかというと、今、高齢者がちょっと我慢すれば将来世代につながるんだという話をるるされるわけですけれども、この出発点は、やはり今の高齢者、親の世代の安定こそが現役世代の安定にもつながる、そこから出発したのではなかったのかということが言いたいわけなんです。

 その次の9のところで、これは、骨子を受けて、社保審の年金部会が年金制度改正に関する意見というのを出しています。長いものですが、最初のところだけ紹介したいと思います。

  公的年金は、いまや、高齢期の生活の基本的な部分を支えるものとして国民生活に不可欠の存在となっている。

  高齢者世帯の所得のうち公的年金が占める割合は約七割に達しており、公的年金を高齢期の生活設計の中心と考えている人の割合も七割を超えている。

  また、公的年金は、現在年金を受けている高齢者世代はもとより、若い世代にとっても、親の高齢期の生活費についての心配や自分自身の高齢期の心配を取り払う役割を果たしており、ひいては個々人の自立や経済・社会の発展にもつながっている。

これはとても大事な思想だと私は思うんです。

 大臣に伺いたい。

 本当に今政府がさんざん言っていることは、高齢者が我慢しなければ将来世代にツケが回る、そればかりです。あるいは、今の年金だけで暮らしていけると思うな、蓄えや私的年金で補え、こんなことばかり言っている。この出発点の立場は忘れたんでしょうか。国民年金法の第一条、私は何度も言いますが、憲法二十五条が書かれています。これはもう空文になっちゃったんでしょうか。

塩崎国務大臣 今回御議論いただいております法案は、マクロ経済スライドによる調整をできるだけ先送りせずに、また、仮に現在の若い人たちの賃金が下がるような経済状況が起きた場合は、現在の年金額も若い人たちの賃金の変化に合わせて改定をすることで、若い人たちが将来受給する基礎年金の水準が低下することを防止するものというふうに思っております。

 世代間の公平を確保し、そして将来世代の給付水準を確保する、こうした改革によって若い世代の年金制度への信頼感というものが高まることで、安心して今の高齢者の年金を支えていただけることになって、年金制度の持続可能性も高まると考えているところでございます。

 こうした不断の改革に取り組むことによって、将来にわたり年金がその役割や法律に規定をされた目的を果たすことができるようになるというふうに考えております。

高橋(千)委員 信頼感という言葉がありましたけれども、もう一度大臣に伺いますが、今紹介した出発点、高齢者の、今の世代の安心が現役世代の、これからの世代の安心にもつながるんだという思想、だって、そうじゃないですか、親の年金が余りにも少なくて現役世代が補っている、その逆もありますし、そのことを考えたときに、決して対立だけではないんだという立場は共有していただけるでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど坂口試案をお取り上げいただきましたけれども、ここにも「親の生活の安定を通じ、現役世代も安心して社会で能力を発揮できる。」というような表現がありますけれども、やはり、現役で働いている世代、すなわち、今の高齢者に言ってみれば仕送りをしているという方々の世代間の助け合い、そして、その方々が今度は将来年金をもらう立場になるわけでありますので、時間を経ても、この分かち合いというものもしっかりとやっていくということが両方成り立たないといけないのではないかというふうに思いますので、どちらかだけを助ける、どちらかが助けてどちらかが助けられるというようなことではないんではないかというふうに思っているところでございます。

高橋(千)委員 私はもちろん両方の立場で言っていますので、政府がどちらかというと片方だけの話をしているんじゃないかということで指摘をさせていただきました。

 あとは、要望だけを言いたいと思います。

 改めて原点に立ち返って、どうしたら安心の年金制度をつくれるかを考えるときだと思うんです。私は、政府がやる気になれば、できることはいっぱいあると思うんです。

 例えば、五千三百万人に減るだろうという労働者を六千万人に維持しなければいけないと言っている。そのときに、六百万人いるパート労働者のうち、今回最大で五十万人なんです、十月から始まった方を入れても七十五万人にしかなりません。そのときに、百三万、百三十万の壁と言われます。だけれども、そもそも、最低賃金が一律千円以上になる、あるいは均等待遇がきちんとルール化されれば、壁を越えてもメリットがある水準になれるはずなんです。

 男女の賃金格差が将来の年金格差になっています。これも、男女雇用機会均等法の間接差別の定義とか、さっき指摘をしました女性活躍推進法にきちんと位置づける、そうしたことを国が正面から取り組むことによって大きな改善が見られるはずなんです。

 国が補助金で誘導したりお願いベースではなくて、ルールに定めることで改善できることがあるはずだ、私はそういうことを提案して、減らさないで、最低保障年金制度創設へ重ねて検討を求めて、きょうの質問は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 本日最後の質疑者ということで、私は、この委員会で、この法案、二回目の質問に立たせていただきます。

 厚生労働委員会、いつセットされるか、非常に微妙な状況でございましたので、たくさん質問を用意しておりました。そういった関係から、きょうは行けるところまで、途中で終わるかもしれませんが、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 先ほど午前中の議論の中で、長妻委員の方から、当時の吉原年金局長の発言をめぐって、五万円がどうのこうのという話があったかと思います。これを、ちょっとさっき、興味があったので議事録を取り寄せて見ておりましたら、その前段階が、政府の立場もありましょうが、五万円ということで、はい、そうでございますかと言うわけにはいかないということから質問が始まっているんですけれども、質問者を見たら「河野(正)委員」と書いてありまして、私の父親でございます。

 それについて先ほど議論があったということで、実は父親が死んでもう九年たつんですけれども、十年ぐらいたって、まさかその身内がこういった議論を目にするとは多分思っていなかったと思いますので、そういうことを考えますと、我々の今の議論も、先生方、ここにおられる方皆さん、死んで十年ぐらいたってから身内の方が見られるかもしれないので、きちんとそれは心して質問をしていかなければいけないし、答弁もしっかりお願いしたいなと思った次第でございます。

 それでは、早速質問に入りたいと思います。

 今から十二年前の平成十六年、二〇〇四年、年金制度改革法案は国会で大きな議論となりました。現在のマクロ経済スライドによる給付水準調整など、今回提出された法案につながる年金制度の基本的な仕組みは、そのときに築かれたものであるというふうに思います。

 その際には、先ほど来出ておりますが、百年安心というキーワードが国民に示されたわけですが、その後も、年金記録の不整合問題や個人情報漏えいなど、年金制度の信頼を根本から損なうような出来事が相次いでおります。

 まず冒頭に、大臣にお聞きしたいと思いますが、年金制度が国民から信頼を獲得するためには何が重要と考えられておられるか、大臣の基本的な考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 国民年金被保険者実態調査というのがありますが、これを見ますと、年金を納付しない理由の中で、掛金ですね、保険料、年金を当てにしていない、あるいは制度の将来が不安といった回答は減少してきているところでございます。

 このため、年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するということ、これを通じて、若い世代が年金制度を信頼し、制度に参加した上で、今の高齢者もしっかり支えていただくということが重要だというふうに思っております。

 あわせて、年金教育や広報を通じて、年金の仕組みや障害年金も含めた役割について周知することや、日本年金機構など年金業務に携わる者の業務の質を高めていくことが、信頼を高めるために重要というふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 今の答弁の中にも若干ありましたが、国民が年金についてどのように考えているのか、まずは若い世代の考えとして、新成人を対象とした調査をもとにお話をしますが、株式会社マクロミルというところが実施した二〇一五年に成人になった方々への調査、「二〇一五年 新成人に関する調査」によれば、「将来、自分がもらえるか不安」と感じる人が九一%いる一方で、「国民年金は、必要な制度だと思う」と考える方が八二・四%おられます。けれども、「国民年金は、持続可能な制度だと思う」と答えた方が三七%にとどまっていることから、国民年金は必要だが、持続可能性に疑問があり、自分がもらえるか不安というふうに、先ほど大臣もおっしゃったように考えているというふうに思います。

 また、国民年金をどの程度信頼しているかという問いに対しては、「信頼できない」、「どちらかといえば、信頼できない」と答えた方が六九・八%と約七割に上っています。

 つまり、年金は必要な制度だとは思っているけれども、持続可能だとは思っておらず、自分がもらえるのかも不安である、信頼できないという考えが強いのではないかなと、この結果から思われます。

 持続可能性、もらえない不安というのが鍵になってくると思いますが、今回の法改正は、将来年金確保とおっしゃるように、その点に焦点を当てたものであるはずであります。

 こうした調査結果や国民年金に加わったばかりの二十歳前半の方々の考えについて、どのように受けとめられているか、若い世代に伝わるような、議事録を見てもすぐわかるような言葉でお答えいただけたらと思います。

塩崎国務大臣 御指摘のマクロミルによる調査でございますけれども、これはサンプル調査でありますので、調査の母体とか調査人数などによっても結果が影響を受けることに留意をしなければいけないのかなというふうに思いながら、年金に関する項目についてはしっかりと拝見をさせていただいたところでございます。

 その中で、御指摘のように、将来、自分が年金をもらえるか不安であると回答をされた新成人が九割を超えると同時に、国民年金は必要な制度だと思うと回答された新成人も八割以上おられるわけでございます。

 公的年金制度においては、まさにこの調査に示されているように、給付の十分性と持続可能性の両方を成り立たせていくということが重要な課題だと思います。

 御指摘の調査の中で、年金を信頼できない理由といたしまして、「少子高齢化社会が進んでいるから」と挙げられているわけでございまして、まさに、年金制度を持続可能にし、そして、しっかりと将来に引き継いでいくために不断の見直しが必要ではないかというふうに思うわけでございますので、今回御審議をいただいている年金改革法案も、世代間の公平を確保して、将来の年金水準を確保するために必要なものではないかというふうに思っております。

河野(正)委員 やはり若い方たちに不安を及ぼさないようにしていかなければいけないなというふうに思います。

 このような新成人の意識を踏まえれば、これから国民年金保険料を払い続ける彼ら、彼女らに対して、国民年金制度が持っている役割をきちんと伝えて、この制度は頼りになると信頼を得るための努力をしていかなければならないと思います。

 次に、二十歳代の国民年金保険料の納付率がどのようになっているかを調べますと、二十から二十四歳は五〇%台後半、平成二十七年度では五九・二七、二十六年度五八・九四、平成二十五年度では五六・三二%、下がっています。二十五から二十九歳の方々は五〇%台前半で、五三・四七、五二・九八、四九・八八というふうになっております。

 二十歳代前半から後半にかけて納付率が大きく低下、約七%低下しておりますが、この理由はどのような点にあると考えられているでしょうか。また、二十歳代の納付率の低さが、さきに見てきたような年金への信頼の低さによってもたらされているのではないかとも思えますが、あわせて政府の見解を伺いたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたように、二十歳前半から二十歳後半にかけて納付率が低下しているのではないか、その理由は何かということでございます。

 詳細な分析を行ったことはないんですけれども、二十歳代前半の方の場合は、相当数が学生であると思われまして、その場合は、その一部は、本人にかわって親御さんが国民年金保険料を納付しているというケースが想定されます。したがいまして、二十歳代半ば以降と比べると高い率が出るという可能性がございます。

 他方、二十歳代後半の方の場合は、親元から自立したものの、所得水準が余り高くない、また老後生活が縁遠いこともありまして、納付意欲が他の年齢層に比べて低いといったことが、こうした背景にあるのではないかと考えられます。

 ただ、幸いにしまして、近年、若い層の納付率は改善してきておりまして、例えば、最も低いとされる二十五歳から二十九歳で見ますと、平成二十二年度には四六・六%でありましたものが、二十七年度には五三・五%と、七ポイント、伸び率にして一・一五倍と上昇してきております。

 こうした若年者に対する納付率の向上は非常に大事なテーマだと思っておりまして、我々といたしましては、まず、納付しやすい環境を整えていくということで、コンビニエンスストアでの納付とかクレジットカード納付などを進めるとともに、経済的に保険料納付の難しい方には、免除や納付猶予というものの勧奨を進めているところでございます。

 さらに、年金に関する知識を広めていただく上で、各種年金セミナーなどを大学などで実施していく、こういうことに努めて納付率の向上に努めていきたい、このように考えております。

河野(正)委員 済みません。先ほど私は新しい方から言っていったので、若干上がってきているということですね。引き続き、しっかりと、若い世代が自分たちで働き始めても納付をしようというように思っていただかなければならないと思います。

 三十歳代前半も、おおむね二十歳代後半と同水準で、三十歳代後半から次第に上昇していく傾向となっています。全世代平均の納付率である六三・三九%に届くのは、五十歳代に入ってからというふうになっています。二十代から四十代にかけての納付率の低さが、全体の納付率を押し下げてしまっていると言えるのかもしれません。このような年齢階級別の納付率の傾向について、どのように分析、評価されていて、納付率の向上に向けていかなる対策をとっておられるのかを伺いたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、二十七年度の国民年金保険料の納付率を見ますと、全体では六三・四%でございますが、年齢階級別に見ますと、最も高いのが五十四歳から五十九歳で七四・九%となっておりますが、最も低いのが、先ほども御答弁申し上げましたが、二十五歳から二十九歳で五三・五%となっておりまして、やはり若年層の納付率が低い状況にございます。

 したがいまして、繰り返しになりますけれども、やはりこの層を中心に納付率を高めていくということが非常に大事だと思っておりまして、やはり若年者の収納対策に力を入れる、さらには、被保険者になる前、あるいは、なっている直後の高校や大学時代に年金制度についての御理解を深めていくといったことが大切だと思っておりまして、そこに力を尽くしていきたい、このように考えております。

河野(正)委員 では、五十歳以降の中高年齢層は年金についてどのように考えているのかという調査があります。中高年者の生活実態に関する全国調査というのがありますが、これによりますと、公的年金制度を信頼すると答えた人は一七・六%にとどまっています。この調査は、今のが二〇一〇年で、その次も二〇一二年、二〇一四年と継続されていますが、これも七・八%、一三・一%と、おおむね低い水準にとどまっております。

 五十歳を超える中高年齢層でも低い信頼しか得られていないというのはなぜでしょうか。実際に年金を生活の糧にしている世代にとっても、きょうずっと議論がありますが、年金だけでは暮らしていけない、頼りにならないといったような感覚が強いのかもしれません。この点について、政府の受けとめをお聞かせください。

鈴木政府参考人 ただいま御指摘ございました中高年者の生活実態に関する継続調査、これは東京大学の大学院人文社会系研究科が実施をされているものでございますけれども、これにつきまして、年金に関する項目を拝見いたしました。この調査は、一定のサンプルに対する継続した聞き取り調査だということで承知をしておりますけれども、回答につきまして、その理由についての調査項目といったことが、拝見した限りでちょっと見当たりませんので、今の御質問に対して、なかなか評価、分析しづらいところがあることは事実でございます。

 しかしながら、いずれにしましても、年金制度は世代間の信頼と分かち合いによって成り立つ制度でございますので、御指摘のように、やはり一定程度、信頼できない方がいらっしゃるということについては、真摯に受けとめて、対応を考えてまいらなければならないと考えております。

 そういった点で申しますと、先ほど来大臣からもお答え申し上げておりますように、年金教育、広報といったものを、これは年代を問わずきちんとやっていくということとか、あるいは、年金機構を初めといたします年金業務に携わる者の質を高めていく、それによって信頼を高めるということも必要だろうと思っております。

 また、そうした中で、本日成立をさせていただきました年金の受給資格期間の短縮措置でございますけれども、これによりますと、例えば五十代の方でも、これまでは年金が受給できないと思っていらした方もいらっしゃるかもしれませんけれども、受給の可能性というものが生ずることになりますので、必ず保険料を納めれば給付に結びつくということで、年金制度への信頼がさらに高まるのではないか。

 こんなようないろいろな手だてを尽くして、世代間の支え合いであります年金制度についての信頼性を高めていく必要がある、改めてこういうふうに感じている次第でございます。

河野(正)委員 次に、年金の役割について伺いたいと思います。

 こうして見ていきますと、年金制度に対する信頼感の低さは、特定の年齢層だけの問題というよりも、国民全般にわたって共通する感覚と言えるのかもしれません。なぜこれほど信頼が得られないのかということです。国民が年金制度に期待し望んでいることと、実際に年金が提供しているものとが、ずれているのかもしれません。

 厚生労働省のホームページでは、公的年金制度について、予測できない将来のリスクに対して、社会全体であらかじめ備え、生涯を通じた保障を実現するために必要なものというふうに説明されております。

 改めて、年金の役割はどういうところにあり、国民は何を年金に期待していると考えているのか、厚生労働省の見解を確認させていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 年金制度というのは、老齢、障害、そして死亡によって生活の安定が損なわれる、その防止を主たる目的としているわけでございます。また、老齢年金は、終身で受給できるということが大きな特徴でございまして、老後の生活を生涯にわたって支えるものというふうに考えております。

 国民の中には、年金だけで全て賄えるようにしたいという御希望をお持ちの方がいらっしゃると思うわけでありますが、公的年金は高齢者世帯の収入の七割を占めるなど、老後の生活の柱となっているわけではございますけれども、年金だけで全てを賄うということは難しいものと見ております。

 今後も年金が老後の生活の柱としての役割を果たしていくためには、年金は長く保険料を納めれば受給額もふえるということから、保険料を納付しやすい環境の整備、保険料免除制度の活用、被用者保険の段階的な適用拡大、こういったことなどを進めることが重要だと考えております。

 また、現に低所得、低年金の方には、年金生活者支援給付金や生活困窮者支援制度を初め、年金のみならず、社会保障制度全体で支えていくということが重要なことは、繰り返し述べさせていただいているところでございます。

河野(正)委員 時間がもうあとありませんので、先に行かせていただきます。

 年金が老後の支えになるものと考えれば、納付しようという国民の意欲を高めることにつながると思いますが、きょうずっと議論されておりますが、年金だけで生活するのは難しい状況を目の当たりにすると、納付しようという意欲をそがれてしまう者もあるかもしれません。今回の国会の議論におきましても、安倍総理などから、国民年金で全てを補うことはできないので、ある程度の蓄えはお願いせざるを得ないとの発言もあったと思います。

 国民からすれば、国民年金を納めても老後の生活の頼りにならないのであれば、払っても当てにならないから払わない、あるいは最低限の納付だけにして、残りは自分のためだけの私的な年金や保険に振り分け、自己防衛をしよう、それに徹しようという考えを持つ人が出てくることも想像でき得ます。

 本日、参議院の方で成立したと思いますが、年金の受給資格の短縮ということが決まりました。受給資格の短縮というのが、こういった傾向を後押ししてしまう可能性も危惧されるところであります。

 こうした国民の考え方や不安に政府はどのように応えていくのか、年金保険料の納付を求めていくために政府はどのように訴えかけていくか、改めて伺いたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたように、国民皆年金というものを堅持していく上で、公的年金制度に対する信頼を確保するということは非常に大事でございますし、特にそういう意味から申しますと、保険料の納付義務について御理解いただいて、しっかりと納めていただくということはとても重要な課題だと考えております。

 そういう意味におきましては、年金は保険料を長く納めれば受給額もしっかりふえていくんだとか、あるいは、保険料を納付いただくことで、万が一の場合でも障害年金あるいは遺族年金を受け取ることができ、低年金とか無年金の防止につながる、こういったことについてよく御理解いただく必要があると思っております。それを、さまざまな場面で国民の皆様に御理解いただくよう、例えば、ねんきん定期便というのは現役の方々に毎年お送りしておりますが、こうしたものを通じて周知、広報に努めてまいりたいと思います。

 あわせて、収納対策に関しましても、納めやすい環境を整えていく、あるいは滞納処分もしっかりやっていく、そうした国民年金保険料の収納対策についてもしっかりと取り組んでいくことが必要だ、このように考えております。

河野(正)委員 しっかりと周知、広報していただかないと、年金カット法案ということで誤った考えも広まってしまうかもしれませんので、しっかりとその辺は広報していただきたいと思います。

 それでは、時間が来ましたので、また次回に持ち越したいと思います。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 この際、本案に対し、とかしきなおみ君外三名から、自由民主党・無所属の会、公明党及び日本維新の会の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。とかしきなおみ君。

    ―――――――――――――

 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

とかしき委員 ただいま議題となりました公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・無所属の会、公明党及び日本維新の会を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の趣旨は、短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進に関する規定の施行期日を「公布の日」から「平成二十九年四月一日」に改めることであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

丹羽委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

丹羽委員長 この際、お諮りいたします。

 第百九十回国会、井坂信彦君外六名提出、労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.