衆議院

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第10号 平成28年12月2日(金曜日)

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平成二十八年十二月二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      あべ 俊子君    赤枝 恒雄君

      秋葉 賢也君    江渡 聡徳君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      大西 英男君    大野敬太郎君

      木原 誠二君    木村 弥生君

      小松  裕君    今野 智博君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    豊田真由子君

      中川 郁子君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    福山  守君

      堀内 詔子君    宮川 典子君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      山下 貴司君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    長妻  昭君

      初鹿 明博君    水戸 将史君

      本村賢太郎君    伊佐 進一君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

      足立 康史君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   経済産業大臣政務官    中川 俊直君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局内閣審議官)         古澤 ゆり君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局次長)         中山 隆志君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          高原  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月二日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     今野 智博君

  高橋ひなこ君     大西 英男君

  豊田真由子君     宮川 典子君

  福山  守君     八木 哲也君

  中島 克仁君     本村賢太郎君

  河野 正美君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     高橋ひなこ君

  今野 智博君     白須賀貴樹君

  宮川 典子君     豊田真由子君

  八木 哲也君     大野敬太郎君

  本村賢太郎君     中島 克仁君

  足立 康史君     河野 正美君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     大串 正樹君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     福山  守君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、政府参考人として内閣官房内閣人事局内閣審議官古澤ゆり君、人事院事務総局職員福祉局次長中山隆志君、総務省自治行政局公務員部長高原剛君、厚生労働省大臣官房総括審議官宮川晃君、健康局長福島靖正君、労働基準局長山越敬一君、労働基準局安全衛生部長田中誠二君、保険局長鈴木康裕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長尾敬君。

長尾委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の長尾敬でございます。

 きょうは質問の機会を与えていただきましたことを、心から感謝を申し上げたいと思います。

 けさの新聞で、ことしの流行語大賞のトップテンに、厚生労働委員会のみならず多くの委員会で取り上げられた「保育園落ちた日本死ね」、これがトップテン入りをいたしました。「保育園落ちた」、これは、本当に我々政治家また行政がしっかりと受けとめて問題解決に取り組まなければならぬところ、「死ね」という言葉が流行語大賞ノミネート、トップテン入り、くれぐれもこの言葉が流行しないようにしていただきたいし、笑顔でこの結果をいっときたりとも過ごすようなことがあってはならないと思っております。非常に爽やかでない朝を迎えた中で、あえて質問をさせていただきたいと思います。

 職場で、お前死ねというようなパワハラを受けて、もしかすると過労自死をした方々、あるいは、これからそのようなことがないという気持ちも込め、過労死の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 許可を得ましたので。皆さん、これは先月事務所なりに張っていただいたでしょうか。「過労死ゼロを実現するために」ということで、厚生労働省がつくってくれたポスターであります。ここにたどり着くまで、家族の会が一九九一年に設立をされて以来、大変な血のにじむような努力があり、また議員先生初め行政の皆さんの尽力があって、たかがポスターですが、されどポスター、この意味合いを、せっかくなので、この場でかみしめさせていただきたいなと思っています。

 先月は、十一月、この月間でありますけれども、この過労死等防止啓発月間についてどのような取り組みをいただいたのか、厚生労働省から御答弁をいただきたいと思います。

山越政府参考人 お答えを申し上げます。

 過労死等防止啓発月間でございますけれども、今御指摘もございましたように、過労死等防止対策推進法第五条に基づきまして、国民の間に過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、関心と理解を深めるため、毎年十一月に実施しているものでございます。

 この月間におきましては、私ども、過重労働解消キャンペーンといたしまして、違法な長時間労働や悪質な賃金不払い残業などの撲滅に向けた重点的な監督指導や、過重労働に関する全国一斉の無料電話相談を実施しております。また、過労死等の防止に取り組む民間団体の皆様と連携をいたしまして、過労死等防止対策推進シンポジウムも開催をしております。

 これに加えまして、今お示しをいただきましたようなポスターの掲示でございますとか、パンフレット、インターネット広告など、いろいろな媒体を通じまして周知啓発を実施しているところでございます。

 その中で、過労死等防止対策推進シンポジウムでございますけれども、平成二十八年度は、全国四十二の都道府県、四十三の会場で実施をいたしまして、過労死の遺族の方の体験談にも耳を傾けていただいたところでございます。

長尾委員 施行されて三年目になりますけれども、私の記憶ですと、施行された十一月が、たしか衆議院の解散・総選挙で、なかなか政治の側が取り組めなかったというような記憶をしております。これからどんどんブラッシュアップしていくような取り組みをお願いしたいと思います。

 特に、家族の会やその関係支援団体のみならず、ここに企業関係者、そして労働組合を初めとするこういった団体、直接当事者の方々がさらにかかわれるような流れを、ぜひともつくっていただきたいなと思っております。

 それで、実は二〇一二年の三月に私が、

  大きくなったら、ぼくは博士になりたい。

  そしてドラえもんに出てくるような

  タイムマシーンを作る。

  ぼくはタイムマシーンにのって

  お父さんのしんでしまう前の日にいく

  そして「仕事に行ったらあかん」ていうんや

という、過労死の家族の会の方々がもう共通している、いわゆるマーくんの手紙というのを読ませていただきました。

 そのとき、ここにいる大西議員も僕の後ろにいらっしゃった記憶がありますけれども、今このマーくんも、タイムマシンをつくるのは諦めたらしいですけれども、理科系の大学に通っている、そろそろ成人をされると。いろいろな思いが、この過労死啓発月間には込められております。

 ちょうど、私の地元の冨原さんという女性の方から、実は息子の過労死の認定を今申請しているんだけれども、どうしたらいいだろうと。ただ、当時は、過労死問題というと、労災をどう認定してもらうかということが中心の時代だったんです。ただ、寺西さんとそのときに初めてお目にかかったんですけれども、私たちも、もう十年以上もそういうことばかりやっている、だんだんだんだんエネルギーの使い方が、ちょっと方向性は、正しい方向は違うんじゃないかと。そこで、防止をしていくというような概念を、政治家の皆さんや、また行政の皆さんと一緒にやっていきたいと。ただ単に過労死を防止したいという、言うはやすし、言葉の単純な問題ではなく、そういった家族の方々の思いもあるということで、ここはひとつ共有をさせていただきたいと思います。

 その後、超党派の議員連盟ができて、議員立法で、全会一致で成立した。私は、ちょうどそのとき落選中でございましたので、衆議院の本会議場傍聴席から、参議院の本会議場傍聴席から、この成立を見てまいりました。万感の思いでございました。

 ただ、これからちょっと議論を進めていきたいというふうに思うんですけれども、これから我々がやらなきゃいけないことと、あと、今もすぐにでもできること、その辺の区別というものは、くっきりはっきりと、めり張りをつけた議論をしていきたいなというふうに思っています。

 それと、もう釈迦に説法なんですけれども、やはり日本というのは、欧米に比べて労働生産効率が悪いというのは委員の皆さんも御承知のとおりであります。これは多分、日本流の働き方ということに問題が、よくも悪くもあると思っています。

 私も十七年サラリーマンをやりましたので、一生懸命残業をして働くということが、ある種の上司へのアピールであったり、本音を言うと、住宅のローンを組むときも、通常の給料では間に合わないので、残業代も含めてローンを組んだりや何か、現実にやっているんですね。これも議連で、経団連の方や、あと連合の方にも指摘事項として、やはり残業代を減らしていこうと言いながら、そういう部分も、労使ともに、ちょっと議論が、口で言っている割には乱暴じゃないかなというようなところがたくさんあります。

 ですから、こういった慣例、慣習とか、悪い意味での労働文化を変革していくというのは、やはり先ほども、シンポジウムなりにできるだけ企業経営者や労働団体関係も直接かかわれるようにしていただきたいというのは、そういう意味合いであります。

 あと、これも非常に素朴な疑問、質問ですけれども、結局、政府は働き方改革のためにどのような検討をしているのかということを、改めてこちらでお尋ねしたいと思います。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 私もサラリーマンをしていた時期がございますので、ちょっとしみじみと振り返りながらお話を伺っていたところでございますが、時間外労働について、どのようなことを検討しているのかというお尋ねでございます。

 御案内のとおり、時間外労働というものについては、現行制度上も限度なく認められているものではございません。労使で定めた三六協定の範囲内に限って行うことができるものでございます。

 まずは、こうしたルールを企業が遵守していただくことが必要でございまして、厚生労働省として、これまで企業に対する監督指導の強化に取り組んでまいりました。「かとく」の設置でありますとか、複数の事業場で違法な長時間労働を行う企業の名称を是正指導した段階で公表する仕組みの導入、あるいは監督指導の対象の拡大などなどでございます。

 また、現在、労働基準法の改正法案を提出しておりますが、その中で、企業に対し年五日の年次有給休暇の指定を義務づけること、あるいは中小企業への適用を猶予している月六十時間超の時間外労働への割り増し賃金率の適用など、働き過ぎを防止するための施策を盛り込んでいるところでございます。

 その上で、今御案内のとおり、働き方改革実現会議が開催されておりまして、九月二十七日の会議におきまして、総理より、時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正ということもテーマとして御発言があったところでございました。こちらの方で、働く方の立場や視点に立ってしっかりと議論し、実効性のある対策を取りまとめていこう、このような状況でございます。

長尾委員 今副大臣の御答弁にもありましたように、労使の協定、いわゆる三六協定というのが一番象徴的なわけでございますけれども、この運用に関しては、やはり私もいつも疑問に思っております。

 そこで、過労死ライン、いわゆる八十時間以上と言われていますけれども、八十時間以上、また百時間超の協定を結んでいる企業の事業所ベースでの割合と、あと、業種別の傾向について教えてください。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十五年の労働時間等総合実態調査によりますれば、全事業場のうち、特別条項つき三六協定を締結している事業場で、一カ月の特別延長時間が八十時間を超えている事業場の割合は四・八%となっております。百時間を超えている事業場の割合は一・二%でございます。

 また、業種別の傾向といたしまして、特別条項つきの三六協定を締結している事業場のうち、一カ月の特別延長時間が八十時間超えの事業場の割合は、全体では二一・五%でございますけれども、業種別に見ますと、運輸交通業、貨物取扱業、通信業などで三割を超えている状況でございます。

 なお、特別条項は緊急時に備えて締結する性格のものでございますので、一カ月の法定時間外労働が最も長かった労働者について、その実績を見てみますと、八十時間超えの者がいる事業場の割合は全事業場の一・九%、百時間超えの者がいる事業場の割合は全事業場の〇・八%となっているところでございます。

長尾委員 そこで、八十時間、百時間を超えているような三六協定の締結が労基署に提出された場合、労働基準監督署はどのような対応をとられているんでしょうか、御答弁ください。

山越政府参考人 労働基準監督署に三六協定が届けられた際でございますけれども、まず、法定の要件にその三六協定が適合しているかどうかを確認し、法定の要件を満たしていない場合には、これを返戻いたしまして、再提出を行うよう指導をしております。

 また、三六協定の内容についても確認をしておりまして、限度基準告示の延長時間の限度を超えているものである場合などにも、これを返戻いたしまして、労使間で再度検討していただきまして、労使協定を再度締結していただき、届け出るよう指導をしているところでございます。

 さらに、特別の事情が生じたときに限り限度時間を超えて延長できる時間を、これをできる限り最小限のものとするようにも指導をしているところでございます。

長尾委員 ただ単に受け取っているだけということではないけれども、事実上、今御答弁をいただいた対応、いろいろ抜け落ちていることはたくさんあるだろうなというふうに思うんですけれども。

 我々が、ちょっと勘違いしちゃいけないなと思うのは、仮に八十時間、百時間であったとしても、必ずしもその企業が、八十時間の残業をやっているとか百時間の残業をやっているというようなことではないということですね。一部には、特別条項についても、その上限が規定されていないから、運用上、実質的には無制限だというような指摘をすることはわからなくもないんですけれども、必ずしもそういう状況ではないということを、ちょっとここで共有させていただければなと思っています。

 そこで、その三六協定について、締結していない事業所の割合、あと、なぜ締結をしていないのか、その理由について御答弁ください。

山越政府参考人 労働基準監督署が事業場に対する監督指導を行った際に、三六協定を締結することなく時間外労働や休日労働が行われている状況が認められた場合には、労働基準法違反として是正指導をしているところでございます。

 また、三六協定の存在を知らないことを理由として三六協定を締結していない事業者が少なからず認められることから、従来のパンフレットに加えまして、この十一月一日から新たにポータルサイトを設けまして、これはスタートアップ労働条件というものでございますけれども、この中でも三六協定の周知を図っているところでございます。

 なお、御質問がありました、三六協定を締結していない事業場の割合でございますけれども、全体の四四・八%と承知をしております。

長尾委員 知らなかったという事業所もあれば、あるいは、そもそも残業そのものがないというようなことで、その辺も我々は、三六協定の運用について、丁寧に理解をしていく必要があると思っております。

 そこで、ちょっと余談というか、こういう質問もなんなんですけれども、国家公務員というのは労働基準法適用外ですよね。

 例えば、あしたいきなり質問ができた、それが夜九時だったと。いろいろな、委員長初め理事の皆さんも大変御苦労をされていらっしゃると思うんですが、それから質問通告をして、答弁書を書いて、深夜まで一生懸命電気をつけて仕事をして、こういうことはやはり考えていかなければいけないなと思っております、委員会の運営上。これは、我々全て含めて、国家公務員の皆さんには本当に心から日ごろ感謝しております。

 ちなみに、我が国の国家公務員の公務災害の補償状況というのは、どのぐらいなんでしょうか。

山越政府参考人 ことし十月に閣議決定をいたしました過労死等防止対策白書に、今御指摘の公務災害についての状況が記されているところでございます。

 これによりますと、国家公務員の平成二十七年度の脳・心臓疾患について、協議件数が二十六年度に比べて一件増加の七件、認定件数は二十六年度に比べて三件減少の一件となっております。

 また、精神疾患につきましては、協議件数が二十六年度に比べて一件増加の二十三件、認定件数が平成二十六年度に比べて一件減少の九件となっているところと承知をしております。

長尾委員 数が一桁だとか二桁だとか、そういう問題ではないと思っております。過労自死なり過労死が発生しているというその事態がやはり問題であって、やはりここの部分はしっかりと取り組んでいきたいなと思っています。

 そこで、できることは今厚生労働省も地味ながらもしっかりとやってくださっています。例えば、複数事業所で違法な長時間労働を行う企業に対しての指導、公表というのを運用上実施してくださっているようなので、この運用状況について、いわゆるスリーアウト制ですね、御答弁ください。

山越政府参考人 御指摘いただきました取り組みでございますけれども、厚生労働省といたしましては従来から、労働基準法等に違反する疑いで送検した事例については原則公表しておりましたけれども、これに加えまして、昨年五月から一歩踏み込みまして、複数の事業場で違法な長時間労働を行う、そして社会的に影響力の大きい企業につきましては、一定の是正指導を三回した段階で公表することとしております。現在までに、この取り組みにより公表した企業は一件となっております。

長尾委員 平成二十八年五月に千葉労働局で、小売店等の棚卸し請負業を含む企業の経営トップに対してということです。こういうことは今すぐできることですので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 あと、長時間労働の是正には企業全体で取り組んでいくことが重要、当たり前のことですが、そうした観点も含めて、企業名公表制度をより効果的なものにするべく検討すべきだと考えておりますけれども、その辺はいかがでしょうか。

橋本副大臣 委員御指摘のとおり、長時間労働を是正していくためには、もちろん労働者個々一人一人のことということもないわけではないと思いますが、やはり企業の経営トップがきちんとそういう率先をして、個々の事業場における問題の背景にある企業全体の労務管理あるいは企業風土をめぐる課題、そうしたものの是正に向けて取り組んでいただくことが重要だというふうに考えております。

 先ほど御指摘をいただきました企業名公表制度でございますけれども、現時点では、三回指導があった、いろいろ、幾つかの事業場で全国的に指導をしたものについて公表する、告発する前の段階で公表する、こういうような制度になっておりまして、今一件ということでございます。

 これが多いのか少ないのかというのは見方があって、ワンアウトとかツーアウトの時点で見直しをしてくれていればいいなという趣旨の制度ですから、その結果として一件しかスリーアウトに至っていないという考え方もあるし、あるいはまだまだ把握できていないからそのようになっている、あるいはもっと見直しをする余地というのもあるのかな、そういうことも、両方の見え方があるというふうに思っております。

 御指摘を踏まえて、今私も申しましたような問題意識はございますので、今後、企業名公表制度の拡充も含め、全社的な是正が図られるような仕組みについてしっかり検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

長尾委員 いろいろ労災適用の部分で、どう考えても実態的には適用になるはずだろうと思っていたけれどもならなかった多くの事例が、勤務時間のきっちりとした把握というのができていなかった。きょう、ちょっと質疑させていただいたことも取り組みとしては大切なんですけれども、労働時間の把握というものがどれだけきっちりとできているかというのが、私はこの過労死問題の一番のポイントだというふうに思います。どれだけいい法律があっても、労働時間の把握です。

 これから、多分、労基法の改正議論の中で、年金カット法案というようなレッテル張りもございましたが、残業代ゼロ法案というようなレッテル張りもございます。しかし、我々、与党も野党も、この過労死問題については、先ほど冒頭で紹介させていただいたような純粋な気持ちで、全会一致でやったことですので、いわゆるその気持ちに一点の曇りもなく取り組んでいただきたいと思いますし、お互いがそういう気持ちで取り組んでいるという前提で、来るべき労働基準法改正に向けて、私も一委員として取り組んでまいりたいと思っております。

 以上、質問を終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 今回、この委員会を開催させていただくことになりました一つのきっかけでありました電通事件。若い、とうとい命が失われてしまった。

 御遺族の方に、まず衷心より哀悼の意を表したいと思います。

 そのお母様がおっしゃっておられたのは、命より大切な仕事はありません、過労死を繰り返さないでと。愛する娘を亡くされたこのお母様の訴えというのは、決して無駄にしちゃいけないというふうに思っております。しっかりと議論させていただきたいと思います。

 先ほど、長尾委員の方から、労働時間の把握が大事なんだという指摘が最後にございました。引き続いて、ちょっとその点について伺いたいと思います。

 四六通達について、まず伺いたいと思います。

 十月に、過労死等防止対策白書というのが初めて出てまいりました。労災認定の目安になる月八十時間というのがございますが、この八十時間を超えて残業している企業というのが二三%ということになりました。これは、長時間労働の実態が可視化されたという点では一つ大きな前進だったというふうに思いますが、やはり問題は依然見えていない部分があるというふうに思っております。

 例えば、今回の件もそうでしたが、労働時間を自己申告する際に、過少評価、少なく自己申告させる。今回の電通の場合は、残業時間というのを、これはあなた、自己啓発でしょうといって、自己啓発の時間として過少報告をさせていたということがございました。過少報告させることによって、時間外労働が認められているぎりぎりの時間内におさめていったということがございました。

 労働時間の把握というのは、本来であれば、管理をして確認するというのは使用者側の責任です。ところが、さまざまな事情でやむを得ない場合のみ自己申告ということになっております。しかも、自己申告した際には、それが適正かどうかというところを使用者側が定期的に実態調査を行う、あるいは確認をするということになっております。これがちょっと曖昧なんじゃないか。つまり、このやむを得ない場合は自己申告、では、どういう場合やむを得ないのか。

 あるいは、さっきの自己啓発の話ですが、自己啓発の扱いというのをどうするか。電通事件のように、本当は残業なのに偽って自己啓発、これはもうもってのほかですが、では、本当に自己啓発である場合には、これは、仕事に必要なのであれば残業に本当は含めるべきなんじゃないかというような考え方もあります。

 また、調査をする、これは、調査はどういうふうにするのか、どういったときに調査するのか。こういうような基準というのが不明確なんじゃないかという指摘がございます。

 こうした勤務時間を例外的に自己申告で行うといった場合には、この基準の明確化というものが必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘いただきましたとおり、本来は労働時間とすべき時間について労働時間でないと申告させるといった、これは労働基準法違反を生じさせるわけでございますけれども、こういった自己申告制の不適正な運用については問題であるというふうに考えております。

 ただいまの御指摘も踏まえまして、自己申告制の不適正な運用と考えられる事例でございますとか、自己啓発などがどのような場合に労働時間に該当するかなどの点について、通達の解釈がより明確になりますよう検討してまいりたいと考えております。

伊佐委員 明確化に取り組むという答弁だったと思います。

 私、もう一つ大事だと思いますのは、やはり企業文化をどうやって変えるかということだと思います。規制をいろいろな形で適正化する、あるいは厳しい形にするというふうにしていったとしても、企業のマインドというものが変わらないと、どうしても、抜け穴といいますか、かいくぐってくるところも出てくるんじゃないか。

 だから、一方で必要なのは、例えば短時間労働、残業を減らすとか、時短であるとか、こういうようないろいろな取り組みをする企業、こういう企業をみんなで応援していく、政府が応援していくということが大事じゃないかというふうに思っております。

 例えば、いろいろな取り組み、一つは勤務間インターバル。これもずっと議論になっておりますが、勤務を終えてから次に仕事が始まるまでの時間、この間、一定の期間を置くというような考え方があります。例えばヨーロッパでは十一時間というような事例もございますが、これを日本でどう考えるかということもあります。

 いきなり規制になるのか、あるいは、少なくとも、自主的に頑張っている企業、労使で合意をして、検討して取り入れている企業、こういったものに対しての支援であるとか、こうしたさまざまな取り組みをしている企業に対して政府は支援をもうちょっと強化していくべきだというふうに思いますが、副大臣、いかがでしょう。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 過重労働を防止し、誰もがその能力を存分に発揮できる社会をつくるためには、時間外労働の抑制や勤務間インターバルの導入を促進するなどの働き方改革は非常に重要なことであるというふうに考えております。

 このため、厚生労働省としては、時間外労働の抑制や年次有給休暇の取得促進などに自主的に取り組む中小企業を対象とした職場意識改善助成金制度というものを設けておりまして、その促進のための支援を図っているところでございます。

 また、勤務間インターバルの導入につきましては、平成二十八年度第二次補正予算で措置をいたしました、インターバルを導入する中小企業への助成金の創設、あるいは好事例の周知などを通じまして自主的な取り組みを推進していくこととしておるところでございまして、委員御指摘をいただきましたように、まずはそうしたことにしっかり取り組む企業をちゃんと応援していくというようなことは、今後もやっていきたい、ぜひ取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

伊佐委員 今副大臣からお話しいただいた、勤務間インターバルや頑張っている企業に対する助成、これは二十八年度の補正から行われて、あくまで広報で最初始まっていますが、本当に、この企業に対しての助成というのを今、二十九年度予算で要求しているというふうに伺っておりまして、しっかり我々としてもここは後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

 この働き方改革、特に女性の働き方であったりとか、あるいは子育て世代の働き方という点で、もう少し掘り下げて、具体的な職種を取り上げて議論させていただきたいと思います。

 薬剤師の働き方なんです。

 かかりつけ医というのがあって、かかりつけ歯科医というのもございます。

 同時にまた、かかりつけ薬剤師というのもあって、これは政府が推奨しているものですが、患者さんの服薬状況というのをお一人お一人ちゃんと丁寧に把握する。薬剤師が患者さん一人一人に沿ってちゃんとアドバイスをしていくというこのかかりつけ薬剤師ですが、かかりつけ薬剤師になるための基準というのがございます。

 主に三つありまして、一つは、薬剤師として三年以上勤務しているというのが一点。三年以上の勤務経験。二点目が、その薬局に六カ月以上在籍している。六カ月以上の在籍、これが二点目。三点目が、週に三十二時間以上働いているというのがございます。

 一つ目はわかります、三年以上の勤務経験、一定のキャリアがしっかりあるということで。二点目は、六カ月以上その薬局にいる、これもわからなくもない、その地域に根差しているという意味で。もちろん、転勤があるところは一定の配慮が必要だと思いますが、まあ、わからなくもない。

 問題は、三点目、週三十二時間以上勤務しないとかかりつけ薬剤師になれない。

 子育てをされている薬剤師の皆さんというのは時短が許されないんです。時短を採用して三十二時間以下で仕事をしていると、かかりつけ薬剤師になれないという決まりになっております。

 まず伺いたいのは、では、このかかりつけ医、あるいは、かかりつけ歯科医というのはこういうような基準があるんでしょうか。

鈴木政府参考人 短時間勤務に配慮した診療報酬についてお尋ねがございました。

 かかりつけ薬剤師の場合には、御指摘のとおり、そういう条件がございますが、一方、かかりつけ医、かかりつけ歯科医師でございますけれども、この診療報酬においては、常勤の医師、歯科医師の配置は求めておりますけれども、勤務年数に関する要件を設けておりません。

 また、常勤の医師の考え方につきましては、平成二十八年の診療報酬改定で、短時間勤務の医療従事者にも配慮する観点から、常勤の医師が産前産後休業及び育児・介護休業を取得した場合に、複数の非常勤従事者の勤務時間を合計して常勤配置の要件を満たせるよう見直しをしたところでございます。

伊佐委員 そうなんです。かかりつけ医とかかりつけ歯科医師については、その人の働き方についての要件というのはない。こういう施設という要件はあります。さっき常勤というのもおっしゃいましたが、確かに御答弁いただいたとおりで、常勤というのもあくまで、例えば、育休を取得されれば、その間は非常勤の方を雇われて、合わせ一本でオーケーとするというようなルールになっております。

 ところが、その合わせ一本のルールもこの薬剤師にはないという現状です。だから、子育てしながら一生懸命頑張っていらっしゃる薬剤師の皆さんがかかりつけ薬剤師になりにくい。

 こういう制度について、子育て世代の働き方という点に関して何らかの配慮が必要なんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 御指摘のとおり、かかりつけ薬剤師については、三年以上、六カ月以上というような要件がございます。これは、原則、途切れなく勤務を継続することを求めておりますけれども、育児休暇の期間は除外して取り扱うことができるということにしておりまして、一定の子育て世代に対する配慮をしております。

 また、この拡大、かかりつけの薬剤師の指導料については、今後、その影響をさまざまな観点から調査、検証して、次期診療報酬改定に向けて、御指摘の点も踏まえて、しっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

伊佐委員 さっき局長がおっしゃったのは、二つ目の要件、六カ月以上在籍の場合。これについては、育休の間はちょっと免除するとか、一定の配慮はありますよ。

 やはり、一番大きなものはこの三十二時間だと思うんです。ここのところは検証して今後という話がありました。これは、私が聞いたら課長通知ですので、ここはしっかりと検証をぜひしていただいて、女性が働きやすい、また子育て世代が働きやすい社会を目指すという意味で、これは絶対必要だと私は思っておりますので、しっかりと検討いただきたいというふうに思います。

 もう一つ、薬剤師の働き方という観点で、今、国の目指している、厚労省の目指している大きな流れから見て、ちょっとこれも課題があるんじゃないかという点があります。

 それは何かというと、四月から診療報酬改定で調剤基本料の特例対象というのが拡大されました。これは何かというと、ある薬局が、処方箋受け付けの回数がたくさんある、一定の回数を超えている、しかも、ある特定の診療所、病院から集中している、こういうようなところについては調剤基本料が減額するという診療報酬改定がありました。それが拡大した。

 ところが、かかりつけ薬剤師として一生懸命頑張っていらっしゃるところもあるわけで、そういうところは頑張っているから集中しているというところもあると思います。そういう場合は、減額措置から、この特例対象から外しましょう、もう一回もとに戻してあげましょう、本来の調剤基本料に戻しましょう、こういうようなルールになっているわけです。

 では、どういう場合はかかりつけ薬局、かかりつけとして一生懸命頑張っているか、この基準がまたあります、これを満たせば本来の調剤基本料に戻しますという。

 これが例えばどういうことかというと、一つは、薬剤師の五割以上がかかりつけ薬剤師であること。これはわかります。

 二点目、かかりつけ薬剤師としての仕事が月百件以上。これは結構な数だと思うんです。月百件をかかりつけでやらなきゃいけない。さっき申し上げたように、時短で働いていらっしゃる子育て世代の薬剤師の皆さん、これは月百件を本当に超えられるのかというふうに思います。

 もう一つは、大きな流れと申し上げたのは、在宅。できるだけ在宅で、在宅訪問して薬剤師の皆様頑張ってくださいと言っている中で、在宅を頑張れば百件なんて超えられない、こういう状況になっている。だから、在宅を頑張れと言いながら、頑張れば診療報酬が結局少なくなってしまうので、それだったら在宅は頑張らないということになるわけです。

 この百件ということに対して何らかの配慮が必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 調剤基本料の特例対象からの除外要件についてお尋ねでございます。

 御指摘のように、かかりつけ薬剤師の業務を一定以上している場合には、かかりつけ機能を発揮している薬局であるとして、調剤基本料を引き下げないということにしております。

 一方で、在宅医療を進めていく上で、薬剤師による積極的な在宅訪問も大変重要でございまして、調剤報酬においても服薬指導を評価しているところでございます。

 地域包括ケアシステムを推進していく上で、薬局にはかかりつけ機能の発揮と在宅訪問の両方を実施していただきたいと考えておりますけれども、今御指摘の点については、先ほどと同様ではございますけれども、今後、かかりつけ薬剤師の指導料を初めとして、二十八年の調剤報酬の見直しの影響をしっかり調査して分析したいと思っておりますので、関係者の意見もよく伺いながら検討してまいりたいというふうに思っております。

伊佐委員 確かに、両面あるというふうにおっしゃいましたが、では、具体的に、これがことしから始まって、どれぐらい本当に薬剤師の皆さんは百件を超えてくるのかというのをしっかりと見ていただきたいというふうに思っております。

 時間がなくなってまいりましたので、ちょっと私、提案がございまして、何かというと、ことし、我々公明党の青年委員会でアンケートをとりました。全国で一千四万人の大規模なアンケート調査を行いました。そこで五つの項目を提示して、どれを一番実現させたいですかというのをやったんです。

 その五つの中に働き方というのが二つありました。一つは、非正規雇用の待遇改善、もう一つが、月曜午前中の半休取得を促進しよう、名づけてシャイニングマンデーという言い方をしましたけれども、実は、全国の百八十万人の若者がこれはいいというような回答でした。

 この結果を総理に申し入れたんです、ことしの五月。総理も、このシャイニングマンデーを捉えて、これはなかなか我々の世代では出てこないね、さすが青年委員会ですね、こういうような発言もしていただきました。

 これができれば大分働き方が変わると思うんです。よく、日曜日の夜、憂うつになる、サザエさんシンドロームと言われますが、あしたから仕事が始まる、午前中会議だ、その夜準備しなきゃいけない、そういうようなこともありますが、これは単に休みをふやすというものじゃないんです。一カ月の総労働時間の中で、その枠内で月曜午前中は積極的に有給休暇をとりましょうという話で、結局、月曜午前中といっても数時間ですから、これは全体の一週間の勤務時間で相当吸収できるんじゃないかというふうに思います。

 経済効果もいろいろ試算できるんじゃないかと思っていまして、例えば、日曜の夜というのは大体繁華街へ行くと閑散としています。これが、日曜の夜、もしかしたら盛り上がっていくかもしれない。あるいは旅行。月曜の午前中がもし休みであれば、日曜も一泊するんです。こういうところで経済効果もある。働き方という観点でも、通勤時間帯というのが、月曜の朝のラッシュじゃなくて、ちょっと通勤の時間帯が広がったりとか、いろいろあるんじゃないかと思います。

 国家公務員は、ゆう活というのを最近やられておりましたが、私も公務員でしたので、これは昔からありました、水曜日は定時退庁日といってやっていましたが、私はそれで何か早く帰れた記憶は余りありません。

 そういうのも考えると、この月曜午前中、半休取得というのは非常におもしろい取り組みなんじゃないかというのを我々青年委員会として提案させていただきました。

 最後、大臣に、こうした一例を示させていただきました。こういうのも含めて、年休を取得しやすくする取り組みをしっかりと進めていただきたいと思いますが、その決意を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 初めて私はシャイニングマンデーというのをお聞きいたしましたが、いずれにしても、それぞれ働き方が多様化をして、自分で選べるというのが大事であって、そして、結果としていい仕事ができるというのが一番大事なことなんだろうというふうに思います。

 その一つの考え方が、今の、月曜日の午前中、有休をとるというシャイニングマンデーなんだろうと思いますし、人によってはハッピーフライデーというのもあって、金曜日の午後は、もう自由に、途中で帰っちゃったりしていいとか、そういうのも、実際アメリカで私も、シリコンバレーで、金曜日の午後のあの地域の風景というのは全然日本と違うなということを感じてまいりましたが、そういうようなことを考えてみれば、やはり、それぞれの事情に応じて有休がとりやすく、そして、それぞれの働き方ができて、さらに、いい結果が出るということができるような、柔軟な働き方ができるような、そういう企業文化もつくっていかなきゃいけないんだなということは、御指摘のとおりだと思います。

 いずれにしても、年次有給休暇がなかなかとりづらいというこの文化を何としても打破して、とりやすくしていくということは大変大事であり、同時に、仕事の面でもいい結果がその結果出てくるということになるようにするのが一番いいのかなというふうに思います。

伊佐委員 時間が来たので終わりますが、このシャイニングマンデーというのは、ハッピーフライデーの話をされましたので、これは、一ついいのは、日本が一番東なんです、世界の中で。だから、まだ世界の市場があいていない月曜日の午前中、ほかはどこもあいていませんから、そういう考え方もあるのかなと。

 まさしく、日が上っていくシャイニングという意味も込めて提案させていただきました。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。初鹿明博君。

初鹿委員 お疲れさまです。民進党の初鹿です。

 午後のトップバッターを務めさせていただきます。

 きょうは、まず最初に、MRワクチンの不足の問題について質問をさせていただきます。

 九月に質問主意書を出させていただいたんですけれども、その際の答弁が、要約すると、供給量は十分足りているけれども地域による偏在がある、そういう答えだったんですよ。しかし、その後、私も、いろいろな小児科の方々等にお話をお伺いすると、やはり足りないと。MRワクチンだけじゃなく、今、日本脳炎とB型肝炎も足りない、そういう声が聞こえてくるんですが、きょうは、特にもう一回MRワクチンについて質問させていただきたいんです。

 ちょうどきのう、私の事務所に、東京保険医協会が来まして、アンケートをとったらしいんですよ。まだ十一月末現在の数字で一割程度の回収率なんで、全体の数字自体は少ないんです。

 お手元に資料を配らせていただいておりますが、見ていただければおわかりになるとおり、大体七割から六割の医療機関がMRワクチンは足りないという回答をしているんです。

 これは、保険医協会だけじゃなくて、日本外来小児科学会というところも今ちょうどアンケートを実施していて、十二月十日の締め切りで、今アンケートを求めているということです。

 ここで何と書いてあるかというと、「最近、MRワクチンの供給が滞り、診療に影響がでているという会員からの訴えがあります。厚生労働省は偏在しているだけで不足はないと言っておりますが、この状態が続けば、外来小児科の大切な業務である予防接種に支障が出て、定期接種の期間中に予防接種が受けられない子どもたちもでてきかねません。」こう言っているわけですよ。つまり、現場は全く足りていない、そういう状況なんだと思います。

 そこで、何点か質問させていただきますが、この東京保険医協会のアンケートの中でいろいろなコメントが記載されているんですが、その中にこういうことが書かれているんですよ。「卸会社のMRは事前に在庫が足りないことを分かっていたが、「厚労省の指導により予測はできても早めに知らせることができない」という。」そういうふうに言っているというアンケートでのお答えがあるんです。

 これは確認なんですけれども、厚労省は、卸売会社にこの在庫の状況を医療機関に伝えてはいけない、そういうことを指導しているんですか。

福島政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、ワクチンの地域的な偏在の懸念等によりまして不足がある場合に対しましては、今後の供給予定、こういうものを情報提供することが不足感の解消につながるものと考えています。

 MRワクチンの件に関しましては、私どもとしては、業者に対しまして、むしろ、今後の供給予定の情報を提供するように依頼をしておりまして、御指摘のような、今後のワクチンの供給予定を伝えないように指導したという事実はございません。

初鹿委員 伝えないように指導した……。ちょっと最後、もう一回。

福島政府参考人 私どもとしては、今後の供給予定を情報提供するように依頼を行っておりまして、御指摘のような、伝えないような指導、こういうものはしておりません。

初鹿委員 では、局長、逆だということですね。今後どういうスケジュールで来るのかというのを医療機関に提供するように伝えているということなんですね。でも、どうも現場はそうではないみたいなので、ちょっとそこは徹底していただきたいと思います。

 きのうもお話をした小児科の先生は、厚労省の担当者は一度電話番でもやってみてくれ、予約の電話がかかってきて、いつこのワクチンが入ってくるかわからないから断るんだけれども、では、いつごろですかと言われて、答えようがないと。みんな非常に戸惑っているということでありますので、ぜひお願いします。

 そこで、先ほどの外来小児科学会での指摘がされておりますが、今後のことを考えて何が一番心配かというと、定期接種の期間内、つまり三月までに打ち終わらないような場合が出てくるんじゃないか、子供さんが出てくるんじゃないか、そういう指摘がされているんです。

 ちょっとこちらの資料を二枚めくっていただいて、定期接種の期間内に打ち終わらない人が出る可能性ということで、約半数の医療機関が、あると答えているんですね。

 もう一枚めくっていただくと、東京の各自治体の状況が出てくるんですが、見てください。この赤いところが、医療機関、二つに一つは打ち終わらない人がいる、そういう指摘がされているところです。

 これは、恐らく十二月中に九月までの接種率の状況が出てくると思うんですが、それを見て、例えば、過去数年間と比べて一〇%以上接種率が落ちているような場合は、私は、この定期接種の期間を当面延長するような措置をとる必要があるんじゃないかと思います。東京の場合は、二十三区は今でも定期接種の期間を過ぎちゃった場合に接種料の助成をしている自治体があるんですよ。お金が払われるからいいじゃないかという考えの方もいるかもしれませんが、そうじゃないですよね。

 もう一枚めくってください。もう一枚めくっていただくと、副作用があったときの救済措置の比較表が出ております。

 予防接種の場合と普通の医薬品の場合で差があるんですよね。この一類疾病のところと一番右側のところを比較していただくと、障害年金だと年間で大体二百万ぐらいの差が出てしまうということなわけですよ。それぐらいに、予防接種は国が推奨して打たせているものであるから、副作用のときに手厚く補償していこうという考えに基づいているわけですね。これが定期接種から外れてしまうと、一般の医薬品と同じような扱いになってしまう。これはやはり注射を打つ親御さんたちは不安に思うと思うんです。

 ですので、十二月中にきっとこの接種率が出てくると思いますから、そこで明らかにワクチン不足が影響しているという数字になった場合は、三月以降も当面三カ月間とか定期接種の期間を延長する措置をとっていただきたいんですけれども、御見解をお伺いいたします。

古屋副大臣 麻疹、風疹対策としまして、特定感染症予防指針で九五%以上のワクチンの接種率を目標としております。感染の蔓延を防止するためにも、定期接種の接種率を高く維持することが大変重要であると考えております。

 そのためには、ワクチンメーカーの協力を得ながら、麻疹、風疹ワクチンの必要な供給量を確保して、予防接種を確実に実施していくことが重要であることから、ワクチンの需給状況を把握しながら、例えば前倒し出荷の要請など必要な対応を行っているところであります。

 厚生労働省としましては、定期の予防接種の実施主体である市町村と連携をして、予防接種率が著しく低いなど、接種率の動向が例年と大きく変化がないかを把握いたしまして、必要な対策にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

初鹿委員 今の段階では断定的なことが言えないからそういう御答弁だと思いますが、ぜひ、結果が出てきて、このままでは定期接種の期間内に打ち終わらない子供たちが大量に出てくる、それがほぼ見えてきた段階で期間の延長などにぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 それと、それでずれ込んでしまうと、来年度以降も今と同じような供給量だと足らなくなるんですよ、間違いなく。そして、やはり、はしかが大人で感染をしたこともあって、はしかの予防接種を打つ大人も多くなっていったり、風疹もそうだと思います、大人が今打てない状況でありますから、そういう大人の人たちのことを考えると、まずメーカーにやはりここは本当に協力を求めて、供給量をふやしてもらうように厚生労働省からも指導というか、していただきたいんですが、いかがですか。

古屋副大臣 委員御指摘のように、定期接種の適切な実施に必要なワクチンを必要量確保していくということが重要であります。

 今年度におきましては、麻疹の流行によるMRワクチンの地域的な偏在等が懸念をされていることから、平成二十八年九月にワクチン供給に関する事務連絡を発出し、各都道府県等に対して、供給不足が明らかになった場合は、その状況を報告するよう求めるとともに、メーカーなどからも需給状況の把握を行い、例えば前倒し出荷の要請など、ワクチンの必要量の確保に必要な対応を行っております。

 来年度につきましても、接種率の動向などを把握して、ワクチン需給状況に留意しながら、必要なワクチンが供給できるよう引き続きしっかりと努めてまいりたいと考えております。

初鹿委員 やはり今までよりもふやしていくことが私は必要だと思うんですよ。

 というのは、現状で、MRワクチンの二期目のお子さんたちに待ってもらっている状況だというぐらいに今不足をしているんですよ、医療機関では。つまり、大人は全く打てない。大人は断っているという医療機関が多いと聞きます。では、大人は打たないでいいのかということになるんですけれども、やはりそうじゃないですよね。

 特に私が懸念をするのは、子供を預かる保育園の保育士さんたちの、大体二十代半ばぐらいの年齢の方々は、風疹だと一回接種の世代なわけですよね。できればやはり二回接種をして抗体をきちんとつけて、子供からうつされて、またそれを子供にうつすようなことがないように、私は、保育士さんにはきちんとワクチンの接種を勧めていく必要があると思います。私はできれば義務づけをしてもいいのではないかと思いますが、その辺の御見解をお伺いいたしたいと思います。

古屋副大臣 風疹、麻疹につきましては、予防接種法に基づいて、一歳児と、それから五歳以上七歳未満であって小学校就学前の一年間の間にある者に対して定期の予防接種を行うこととしております。それにより、発生、蔓延の予防に努めております。

 一方、御指摘のように、保育所などの児童福祉施設の職員につきましては、麻しんに関する特定感染症予防指針や風しんに関する特定感染症予防指針において、罹患歴や予防接種歴を確認し、必要な者に対しては予防接種を受けることを推奨しております。

 これを踏まえて、保育所における感染症対策ガイドラインにおいて、保育士等につきましては、麻疹、風疹について、必要な予防接種を受けて自身を感染から守り、子供たちへの感染伝播を予防することが重要である旨記載するとともに、保育所が職員の予防接種状況を把握し、麻疹、風疹についてワクチン未接種で未罹患の職員がいる場合は、保育所から、必要回数の二回、予防接種を受けるよう説明することを求めております。

 本ガイドラインにつきましては、保育士を対象とした研修会等の場で配付や説明を行っておりまして、各自治体も、保育所における感染症対策等の衛生管理について指導監督を行っております。

 さらに、平成二十七年度からは、指定保育士養成施設で保育実習を受ける学生についても麻疹、風疹の予防接種を受けさせることを勧奨しておりまして、引き続き、より多くの保育士が必要な予防接種を受けるよう取り組んでまいります。

初鹿委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 それでは、過労死の問題に移らせていただきます。

 午前中も審議が進められて、二人の議員さんからも質問がありましたけれども、皆さんのお手元にお配りしていますとおり、電通の高橋まつりさんが過労自殺をして、これが労災認定をされたということで、非常に大きくニュースとして取り上げられました。

 お手元に資料を配らせていただいておりますが、ここで、電通は二度是正勧告を受けていた、そういう記事ですが、ほかの新聞記事を見ていくと、これ以外にも、二〇一〇年に名古屋北労働基準監督署から名古屋支社が勧告を受けていたという報道もあり、また、別のところでもう一回受けている、そういう報道もあるんです。きのう担当者の方に、では実際には何件受けているんだということを聞いたら、そういうことは明らかにできないということで教えていただけなかったんですが、繰り返し繰り返し労働基準監督署から勧告を受けていて、結局是正をされない間に不幸な過労自殺ということが起こってしまった。

 これは数年前にワタミでも同じようなことがありましたよね。皆様方と同じ党の参議院議員の渡邉美樹さんが会長を務めているワタミでも過労自殺がありました。そのときの裁判の記録によりますと、是正勧告二十四件、指導票十七件、それだけ受けていてずっと是正しない。その間にこういう悲惨な自殺が起こった。

 今回も同じような状況なわけですよ。是正勧告というのは、是正勧告を出しますよね、それを守って是正したかどうかというのは、まずはどういう確認の仕方をしているんでしょうか。

橋本副大臣 御案内のとおり、個別のケースについては申し上げられませんので一般論として申し上げますが、労働基準監督署が行う監督指導におきまして、労働基準法等の法違反が認められた場合には、その是正を厳しく指導しております。指導した事項に対しては、再び監督指導を行うこと、あるいは事業場から文書による報告を求めるなどにより是正状況を確認しているところでございます。

 また、法違反が是正されるまで粘り強く指導するというのが基本ではございますが、繰り返し是正の指導を行ったにもかかわらず法違反を是正しないなど、各種の事情を総合的に勘案し、これは重大だ、あるいはこれは悪質だ、こうした事案については刑事訴訟法に基づいて書類送検を行うこととしておるところでございます。

初鹿委員 ワタミの例でも今回の例でも、是正勧告を受けて、恐らく何度か確認に行かれていると思うんですが、それでも是正がされていない。または、是正したという報告をしていても、実際にはやっていない。こういう企業に対しては、私は本当に厳しくしていった方がいいと思うんですよ。

 書類送検をするということを言っておりますが、では、実際に今、是正勧告を出した事業所の中で書類送検まで至るケースというのは年間で何件、何割あるんですか。

橋本副大臣 ちょっと突然の御質問でございまして、手元に資料がございません。改めて御報告させていただきたいと思います。

初鹿委員 きのうやりとりしたときに話があったと思いますが、ちょっと改めてきちんと数字を出してください。私も正確な数字を確認しておりませんので。

 だから、余り書類送検まで至らないわけですよね。一体いつまでに是正すればいいのかという期限も決まっていないわけですよ。そうですよね。半年後に是正していればいいのか、一年後なのか、それが何回指導を受けたら書類送検のような悪質だという判断になるのか、この基準がないと思うんですよ。

 一体どういう状況になったら書類送検されるんですか。何回指導が入ったらされるんですか。

橋本副大臣 どのような違反をしているのか、あるいはどうした規模の会社なのかなどなどさまざまな状況があろうと思いますので、個別の状況に応じて、先ほどは各種の事情を総合的に勘案しというふうに申し上げましたけれども、もうこれは悪質だ、あるいはこれは重大だという判断をしたら書類送検を行うということにしております。

初鹿委員 いや、私は一定の何か基準はつくった方がいいと思うんですよ。それぞれの違反の類型ごとに、文書ですぐに是正ができるものとかそういうもの、または制度をつくらないといけないもの、そういうもので半年なり一年なり、やはりけつの期限は切った方がいいと思うんですよ。

 きのうやりとりしていたら、最終的な判断は誰がするんですかと伺ったところ、労働基準監督署の署長が書類送検するかどうか判断をするようなことをおっしゃっていましたが、仮にそうだとすると、全国でばらつきが出てきてしまって、公平だと思えないですよね。

 それで、特に、電通という企業は、自分のところの労働監督署の三田労働監督署、そこに付随している労働基準協会ですか、そこの理事とかをやっている企業ですよ。日常的に監督署の職員とつき合いをしている、そういうところだと甘くなることがあるとは思いませんが、そういうふうに疑われかねないわけですよ。

 ぜひきちんと基準を、全国どこでも同じように、書類送検なり、また企業名の公表も先ほど一件しかやっていないというお話がありましたが、公平になるように、ガイドラインみたいなものをつくっていただきたいんですが、いかがでしょうか。

橋本副大臣 確かに、ばらつきが出るのはどうか、そうした御意見というのは承るべきことだろうと思います。

 ただ、企業の大きさ、規模あるいは展開の仕方等にも差がございます。法違反の状況等にもさまざまなものがあると思います。また、ある一定の基準をこうだということでお示しすることで、では、そこまでだったらいいのかみたいな話になっても、それもよくないということもございますので、慎重に検討させていただきたいと思います。

初鹿委員 次の新聞記事を見ていただきたいんですが、今回、私が電通が非常に悪質だなと思うのは、労働時間の管理をしている中で、上司が命じて、労働時間の過少申告をさせていたことです。三六協定で七十時間という残業時間の上限を決めていて、ほとんど、六十九・五とか六十九・九とか、もう上限ぎりぎりにはまるように出勤、退勤の記録をつけていたということなんですよ。

 こういう虚偽の記載を命じて、させているということについて、私は明確にきちんと条文上も処罰の対象とするべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 罰則のお尋ねだったかと思いますが、今の労働基準法につきましては、使用者は、働く方一人一人の労働時間数を賃金台帳にみずから記入しなきゃいけない、それが、今御指摘がありましたが、そういうふうになっておりまして、虚偽の労働時間を賃金台帳に記載した場合には当然法律違反となるわけでありますから、これは罰則の対象になるということでございます。

 その上で、使用者に対して、客観的な方法によって労働時間を把握するように指導をしているというのが現状でございます。

初鹿委員 恐らく、虚偽の記載で罰則の対象になるということではなくて、過少申告をしていることによって未払い残業代があって、それで三十七条違反で罰則の対象になる、そういうことなんだと思います。

 だから、やはり上司が命じて、うその申告をさせるというのは相当悪質ですから、ここはきちんと条文上はっきりと明記をして、そして罰則を設けるということをしないと抑止効果がないと思いますので、ぜひその点は御検討いただきたいと思います。

 次のページに移っていただきたいんですが、これも報道されたので皆さんも御存じのとおり、電通は働きやすい事業所だということで、子育てサポート企業、くるみんというのに認定をされていた。この新聞記事によると、七年、一三年、一五年の三回認定されているということなんですが、その間にも何度も是正勧告を受けているんですよ。

 是正勧告を受けているような企業に、仮にそれが改善をされたというふうに判断をしているのかもしれませんが、私は、こういう認定をするのは不適切ではないかというふうに思います。せめて、是正勧告を受けてから三年なり五年なりは認定は行わない、そして、きちんと是正されていることが確認をされてからでないと認定できないようなルールに変更するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 このくるみん認定につきましては、いろいろな御指摘を頂戴いたしまして、今また初鹿委員からいただいたわけでありますけれども、重大な労働関係法令違反がないことなどが基準として現在定められています。

 具体的には、育児・介護休業法それから男女雇用機会均等法に違反して勧告を受けていないことというのがまず一つ、それから労働基準法に違反して送検をされていないということ、こういったことなどでございまして、これらに該当する場合は認定を受けることができないということになっていますが、電通につきましても、東京労働局において、認定の際に基準に適合していることを確認した上で認定したわけでございますが、今回のような事態になったわけでありますので、これは大変遺憾なことだと思います。

 今回は、電通から認定辞退が出されて、それで外れたわけでございますけれども、今後は、やはり本当の意味で子育てしやすい企業、名実ともにそうだという企業について認定が行われるように、認定の基準についてはより適切なものに見直していかなければならないというふうに考えております。

初鹿委員 ぜひ一定期間は認定しないような措置をとっていただきたいと思います。

 電通は、労災認定がおりて、全館十時で消灯ということを今決めて、そこで残業を十時以降はしないようにしているということなんです。これは一見いいように思えるんですが、業務の内容、業務の量が変わらなければ、結局は、自宅に持ち帰って仕事をするようになって、よりサービス残業が助長されることになるのではないかというふうに思うんですよ。

 私は、単に残業をさせないというだけじゃなくて、業務の中身まで改善をするようにしないと、逆効果というか悪影響を及ぼすというふうに思います。厚生労働大臣、その点について、ただ単に帰ればいいというだけで済ませて、実際には自宅で仕事をしているようなことは、厚生労働省として認められますか、それとも違いますか。

塩崎国務大臣 まず第一に、恐らくこれは初鹿委員も賛成していただけると思いますけれども、例えば、テレワークというのは、きちっとしたルールのもとで自宅で仕事をするということであれば、多様な生活環境にある一人一人のニーズに合った働き方ということで、それを選択できるのはいいことだと思います。

 一方で、労働時間というのは使用者の指揮命令下にある、そういう時間をいうわけでありますので、仕事を自宅で行う場合であっても指揮命令下にあるという場合には労働時間に当たるわけであります。

 したがって、長時間労働が発生しないようにルールにのっとってやらなければいけないので、ただ、おっしゃったように、帰って、後は、本当は命令下にあるにもかかわらずそれを労働時間とカウントしないというようなことはやはりあってはならないことだというふうに思いますので、きちっとしたルールがある中で、ニーズに合えば、テレワーク、自宅で仕事をするということもあるということだろうと思います。

初鹿委員 時間が来てしまったんですが、中川経済産業政務官に来ていただいていますが、最後のページに、経産省は今後国会の答弁づくりをテレワークで行うということなんですが、私は非常に懸念しています。

 国会のこの委員会の決まり、決め方が今のままでいってしまうと、自宅に帰っても、結局夜遅くまで答弁づくりをして、余計長時間労働を助長するようになるんじゃないか。これは、我々政治家側の問題でもあるけれども、私は、今のこの状況でこれをやると最悪じゃないかというふうに思うんですよ。

 それで、職員の皆さん、こうすると、夜中でも連絡をとらなきゃいけなかったり、答弁の修正を求められたりして、より疲弊すると思うんですが、いかがですか。大丈夫ですか。

中川大臣政務官 初鹿委員に御指摘いただいた件なんですけれども、世耕大臣なんですけれども、そもそもが、ITとかテレワークというのを利活用しながら、省庁職員に対して勤務時間削減というのを最大の目的として発言しているということは、ぜひ御承知おきをいただければと思っております。

 例えば、よく、質問通達等々がある間、ずっと省庁で待機をしなくてはいけない。そうではなくて、それが来るまでの間、自宅で子育てとか、また子供たちの宿題を見て、それで、質問通達が来たらそこでテレワークとかを利活用しながら答弁をつくっていくんだという旨で、そういった働き方改革の一環として次期通常国会から整備する旨を述べたということをぜひ御承知おきいただければと思います。

 決して間違ってもサービス残業というようなことにならないように、次期通常国会に向けて必要な措置を検討してまいりたいというふうに思っておりますので、また引き続きの御指導を賜りますようにお願いいたします。

初鹿委員 時間がないので、最後に指摘させていただきますけれども、本当にこれは間違えると大変なことになりますから、運用の仕方は十分に慎重にやるようにお願いをして、質問を終わらせていただきます。

丹羽委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 井坂信彦です。

 冒頭に、電通における長時間労働で亡くなられた被害者と御遺族に心よりお悔やみを申し上げます。

 我々は、既にさきの通常国会で、長時間労働規制法を議員立法で提出させていただいております。残業時間に法律で本当の上限を設け、また、夜、会社を出てから翌朝出社するまで、休息時間、インターバルを導入し、そして裁量労働制も含めて労働時間の把握を義務づけ、さらには罰則と公表を強化する内容の法律であります。

 午前中には自民党の委員の方からも、与野党関係なく過労死の問題には純粋な気持ちで取り組むべきだ、このような御発言もありました。ぜひ、我々の対案というか、過労死や長時間労働については、まだ政府側の案が示されておりませんので、原案と呼ぶか、長時間労働規制法について委員会の審議をお願いしたいというふうに思います。

 あわせて、電通や過労死遺族、また専門家を招いての参考人質疑も衆議院として今国会でぜひ行うべきだということを申し上げて、質問に入らせていただきます。

 まず、労働時間の虚偽記載についてであります。先ほど初鹿委員からもありましたように、今回、電通事件では、私ごとで会社に残るという意味の私事在館という制度が問題になりました。残業として申請した時間と実際に会社を出た時間に一時間以上の開きがある場合は、個人的な自己啓発とか、あるいは個人的な情報収集で残っていたんだということを会社に申請する仕組みであります。

 しかし、実際は、個人的な用事ではなく、会社の業務を深夜まで続けていたとされ、まさに会社ぐるみで長時間労働隠し、また、労働時間の虚偽申告が行われていた可能性が高いわけであります。会社や上司が労働時間の虚偽記載を推奨また黙認することに対して罰則が必要だというふうに考えます。

 資料の一なんですけれども、これは平成十二年、昔の議事録なんです。一番下に、「虚偽記載、これにうそを記載した、そのこと自身だけでは処罰の対象になりません」と。一方で、つい先日の参議院では、資料の二ですけれども、「賃金台帳に虚偽の労働時間を記載した場合は、この百八条に違反することになります。」こういうふうに書いてあるわけです。

 お伺いをいたします。これは、虚偽記載だけで違反、そして、さらには処罰の対象になるんでしょうか。

塩崎国務大臣 現在の労働基準法につきましては、先ほど初鹿議員にもお答えをいたしましたけれども、使用者は働く方一人一人の労働時間数を賃金台帳に記入をしなければならないというふうになっておりまして、虚偽の労働時間を賃金台帳に記載した場合には、法律違反になって罰則の対象になる。その上で、使用者に対して、客観的な方法によって労働時間を把握するように指導をしているということでございます。

 さらに、現在継続審議となっております労働基準法の改正とあわせて省令を改正し、裁量労働制や管理監督者を含めた全ての人の労働時間を、客観的な方法によって把握することを使用者に義務づけるという方針を私どもは持っているところでございます。

 こういった現在の法体系と、予定をしている省令改正のもとで厳正な監督指導を実施することで、労働時間の適正な把握がなされるように取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

井坂委員 労働時間の虚偽記載で本当に処罰の対象になるのかどうかというふうに思うんですが、実際、実績として、この百八条違反、労働時間の虚偽記載で処罰された件数は近年何件でしょうか。

塩崎国務大臣 虚偽記載での指導、処罰の件数ということでございますが、労働基準法の第百八条において、使用者が各事業場ごとに賃金台帳を調製して、労働時間数や賃金の額などを記入するということを決められているわけでありますが、平成二十七年に労働基準監督機関が労働基準法第百八条違反として指導を行った件数は九千五百二十七件、書類送検をその中で行った件数は二件でございます。

井坂委員 指導はされているものの、実際に処罰というか書類送検をされたのは、わずか二件ということであります。しかも、これは、賃金台帳がそもそもないとか、そういう場合も含まれる広い意味での百八条違反ですから、虚偽記載は、実際、多くて二件ということであります。

 私は、過労死の御遺族や、あるいは過労で重い障害を負われた方、そういった方々とお会いする機会が多いわけでありますけれども、お話を伺うと、ほぼ、ことごとく、こういう過労死を起こすような企業というのは、そもそも労働時間の記録というものが適正になされておりません。さっきの電通のような、短い時間を記録していたり、あるいは記録をなかったことにしてしまったり、こういう話ばかり聞くわけであります。

 この労働時間の記録、把握というものが大事だというのは、これは午前中、与党の委員の方もおっしゃっておられましたけれども、これがさらに裁量労働制ということになると、この労働時間の記録が、よりいいかげんになってくる仕組みになっております。

 先ほど、省令でこれからやっていくんだというお話がありましたけれども、これは省令でやったとしても、指導はできても、実際にそれで、省令に反して労働時間、特に裁量労働制の実労働時間の方の記載が会社ぐるみで虚偽、あるいはそういったことの黙認、今回の電通のようなことが行われたときに、処罰の対象にまでなるんでしょうか。

塩崎国務大臣 今、裁量労働制の場合という御質問だったと思いますが、罰則の対象になるかどうかということですが、この労働基準法の改正とあわせて、省令でやるということは先ほど申し上げたとおりで、これは労働時間を客観的な方法によって把握することを使用者に義務づけるということを省令に書くわけですけれども、省令上の義務でありますので、制度が無効になったり罰則をということにはならないということでございまして、厳正な監督指導を実施する、そして、労働時間の適正な把握がなされるように取り組んでいくための手だてとして、この省令を改正するということになるというふうに思います。

井坂委員 今回、電通の事件も踏まえて、私はやはり、今の政府は労働時間の把握、記録また虚偽記載ということについての認識が甘いというふうに言わざるを得ません。我々が議員立法で提出した長時間労働規制法は、これは裁量労働制も含めてきちんと実労働時間を把握、記録する、そこに当然虚偽記載も含めて、明確に罰則を設けております。省令で指導していくということでありますけれども、今回の事件を経てなおその程度というのは、私は、極めて甘いのではないかなというふうに思います。

 もう一点、処罰とは異なりますが、公表制度についてお伺いをいたします。

 昨年五月に、政府が一歩踏み込んで、この公表制度というものを強化したわけでありますが、午前中も質疑があったように、その結果、公表された企業はわずか一社ということであります。

 資料の三をごらんいただきたいんですが、参議院ではこんなふうに答弁をしておられます。少ないと言われるけれども、「是正勧告が一か所どこか出た段階でちゃんと直っているから、要するに複数是正勧告を受けて公表になるところに至る前に是正されているケースもあるのかもしれないという言い方もできる」、こういう答弁になっているわけであります。

 資料の四に、これは政府の資料ですけれども、この強化された公表制度もつけておりますが、右下にあるように、一年の間に三カ所以上の事業場でこういう違法な長時間労働が見つかった場合、これは即指導、そして即公表という仕組みになっております。

 そこでお伺いいたしますが、大企業が、ある事業場で違法な長時間労働をさせていて、そして厚生労働省がそれを指導した、あるいは是正勧告した場合、その企業のほかの事業場も同様のことがないのか、改善をされているのか、こういう調査はしておられますか。

塩崎国務大臣 現場のことでございますが、今のように指摘があった場合に、他の事業場についても調べることがあるのか、あるいは調べているのかという御質問ですが、基本的にそれは調べているということでございます。

井坂委員 きのう現場の方にお聞きした話では、そういう一つの事業場で見つかったら、ほかの事業場でも同じことをやっているかどうかということを調べていることはないというふうに伺っておりますが、本当に調べていたら、こんな一件という件数にはならないと思いますよ。

 むしろ、何かランダムにいろいろ調べている中で、たまたま、同じ会社、同じ大企業の地域の違う三つの事業場で一年以内に、ここでも違反が見つかった、ずっと回っていたら、この企業の例えば名古屋支店に行ったら見つかった、ここでも見つかったと。情報は共有しています、そういう情報は共有していますので、三つの地方で、三つの事業場で違反が見つかれば即座にわかる仕組みになっています、こういう説明を受けておりますが、そんなの、だって、一個の事業場で見つかって、ほかの事業場をすぐ調べていたら、こんな企業が一年間で一件などということは私はないと思いますけれども、後追いの調査は本当にやっていますか。

塩崎国務大臣 これは、どういうやり方をしているのかということを、言ってみれば、手のうちを明かすようなことになるので、全部を申し上げるわけにはいきませんけれども、ケースで、これは悪質ではないかというふうに思うようなときには、他のところにもあるのではないかという推測をして調べるということは当然あり得るということを申し上げているわけであります。

井坂委員 答弁が、あり得るというふうに変わったので、そちらが正確な答弁だというふうに思います。一つの事業場で見つかったから、ほかの支店を、ちゃんと狙いを定めて調べているということは、現状はないというふうに伺っております。

 なぜこういうことをお聞きするかというと、実は電通は、二〇一四年六月に関西支社が時間外労働で是正勧告を受けて、そして、二〇一五年の八月には東京本社がほぼ同じ違反で是正勧告を受けているわけであります。しかし、このケースでも、二〇一四年の六月と二〇一五年の八月ですから、この間に一年以上も間があいてしまっていますので、今回の公表制度の対象にはならないんです。

 これは、きちんと後追い、例えば、一つ関西で違反があれば、では電通の東京はどうなんだ、あるいは九州はどうなんだ、こういうところをちゃんと間をあけずに、まあ、企業に是正の時間は与えなければいけないですけれども、ちゃんと是正したのか、一年以内にほかの事業場も抜き打ちで検査をするということをやっていれば、恐らくこの関西と東京は同時に見つかったはずなんです。そして、これはもうたらればの話なんですけれども、その結果、これは今回の電通の過労死事件の前になりますから、そういうことはもしかしたら防げたのかもしれないとすら言えるわけであります。

 大臣にお伺いしますが、この公表制度、一件しか結局対象になっていないというのは、これは絞り込み方の問題というよりは、普通の発想でいえば、ある支社で、事業場で違法な長時間労働があって指導したら、当然、その大企業ですから、ほかの北海道やら東北やら、ほかのところも同じことをやっていないのか、ちゃんと直してくださいよ、一年以内にまた抜き打ちで見に行きますよ、そういうことをやって、しかも後追いでチェックをする、これは当たり前なんじゃないですか。なぜこういうことをしないんですか。

塩崎国務大臣 当然、我々は、今、電通問題を含めて、特に電通問題を受けて、これまでやってきた、今のお話のような、公開をする、公表するやり方にしても今御指摘がありましたが、そういうことを含めて、どういうふうにやることが有効なのかということは、当然我々も考えているわけでございますので、今御指摘になったように、必ずしもそれでは、今のままではそういうケースをすくい上げることができないじゃないかというお話でございますが、当然、私どもも同じような問題意識は持ちながら、どういうことがさらにできるのかということを、特に電通の場合には今調査中の案件でもありますから、いろいろなファクトファインディングも同時に進んでいますので、そういうことを踏まえて、今後のあるべき姿を出していこうということは考えているところでございます。

井坂委員 複数の事業場で、三カ所で見つかったら公表しますという制度をつくっているわけでありますから、では、複数の事業場でやっていないのかということをちゃんとチェックするのは私は当たり前だというふうに思いますから、これはぜひやっていただきたいというふうに思います。

 もう一点、公表制度に関して、是正に応じない、さっきおっしゃった悪質な企業、これは書類送検ということで、この書類送検をした企業は原則全件公表することになっております。

 ところが、公表の方法が、私、事前に担当の方にいろいろお聞きをしたんですが、いま一つ曖昧でよくわかりません。都道府県ごとに、地元のマスコミにどうも伝えているらしいんですが、何か記者クラブに紙を送っているんだとかファクスを送っているんだとか、いろいろやり方があるんだと思います。しかし、そうやったって、マスコミが報道しなければ、これはどこにも公表されないのではないかというふうにも思うわけであります。

 資料の五をごらんいただきたいんですけれども、では、自分のところのホームページにはこういう書類送検をした企業を載せているのかといえば、労働局がホームページに書類送検をして公表した企業を掲載しているのはわずか七府県、しかも、これは単にニュースリリースで、昨日この企業を書類送検しましたよと一時的にそういうのが出てくるだけのホームページであります。ある企業が書類送検された悪質な企業かどうか、国民の側が、我々の側が知る手段がもしないとすれば、これはそもそも公表と呼べるかどうか、あるいは、それによって企業の悪質な違反を抑止する効果があるかどうかも私は怪しいというふうに思います。

 そこでお伺いしますが、マスコミにリリースする、これはこれでやっていただいたらいいと思います。しかし、労働局は、例えば過去三年間、大体、今、年間一千件書類送検と聞いておりますから、一県当たりは、せいぜい年二、三十件だと思います。過去三年間の書類送検した企業をきちんとリストで載せる、地元の企業ないし地元の住民が、この企業は違反していないかな、そこを見ればちゃんと確認できる、これぐらいはやらないと、私は公表と呼べないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは民主党政権時代も含めての問題になると思うんですが、労働の現場の監督のあり方というのは、一つは労働局単位で見ているということ、もう一つは事業場単位で見ている、この二つが長い伝統でずっとやってきた。それは、恐らく政権時代にもお感じになったんだろうと思いますが、今回、改めて、今のような複数の場合にはというようなことを、私ども、二十七年にルール化をいたしましたけれども、そういうところでも、やはり同じ会社ならば同じような文化が全国であり得るというような発想ではなく、事業場で見、そして労働局単位で完結をするような格好で監督してきたということについては、私は、やはり見直すべきということを省内でも指摘しています。

 したがって、こういうようなばらばらな扱いできたというのが結果であって、こういうことは私は好ましくないと思いますので、全国統一の扱いを労働局がやり、そして事業場だけではなくて、会社という単位でも全国を見るということも大事でありますし、そして、地域の目ということを考えれば、今指摘をいただいたような、労働局ごとにリストを設けて、ここが書類送検をされた先だということが一目瞭然でわかるようにする。書類送検というのは、やはりそれなりのことですから、やはりそこはきっちり見せるということはあってしかるべきと私は思っておりますので、省内でもそのように指示をしてまいりたいというふうに思っております。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

井坂委員 これはぜひ、公表制度の本来の趣旨、目的に鑑みてやっていただきたいというふうに思います。

 最後に、裁量労働制、それから高度プロフェッショナル制度についてお伺いをいたします。

 今回の電通事件は裁量労働ではなかったわけでありますが、先ほど申し上げたように、裁量労働ないし高度プロフェッショナル制度というのは、これは長時間労働に歯どめがかからないという重大な弱点があるというふうに考えています。

 資料の六をごらんいただきたいんですが、これは厚生労働省の実態調査ですけれども、上から専門業務の裁量労働制、それから企画業務の裁量労働制、一番下が一般労働者。

 右側に点線で囲んだところが二カ所ありますが、これは、要は十二時間以上働いた人。この期間中で最長の人がどういう分布をしているかということで、一般労働者は、十二時間以上働いた、最長で働いた人が十二時間以上というような場所は二九%。そして、企画業務型裁量労働の場合は、十二時間以上働いたという人が四五%ということで、非常に長く働くというところに関して歯どめがかかっていないというのがよく見てとれるわけであります。

 一方で、左の方にある平均労働時間を見ると、これは裁量労働制の方がやや短くなっている。これは実際、八時間以下、七時間とか六時間で帰る人も裁量労働ではいるわけなので、平均値はやや下がることはある。ただ、長く働く人が延々長く働くことになるというのが、この厚労省の実態調査から見てとれる傾向だろうというふうに思います。

 きょう、大臣にお伺いしたいのは、裁量労働とか高度プロフェッショナルは長時間労働を助長するんじゃないか、こういう指摘があるわけでありますが、私は、もう一つ、今、日本経済のためにとても重要な生産性の面から見ても、これは本当にいいことなんだろうかということをお伺いしたいというふうに思います。

 裁量労働制や高度プロフェッショナルは効率よく働くようになるから生産性が上がるんだ、こういうふうに答弁が続いておりますが、私、実際はどうなのかなと思って計算をしてみました。それが配付資料の七であります。

 この平均時給というのは、これは毎月勤労統計調査で平均を出したもの、千七百九十五円。みなし労働時間、これは厚生労働省の実態調査で、専門業務型も企画業務型も八・五三時間、八・三二時間。一般労働者は、実際の労働時間の平均が九・六二時間。ただ、裁量労働の方は、ここに裁量手当というものが平均で月これだけつきますよと。これを日給で計算すると、大体一万七千円前後ということになるわけです。

 問題は、これを実労働時間で割るとどうなるのか。右から二列目なんですが、平均の実労働時間、これは当然、みなし労働時間よりは長い時間になるわけであります。専門業務型の裁量労働が九・三三時間、企画業務型の裁量労働は九・二七時間、一般労働者が九・六二時間。実際の日給を実際の労働時間で割ると、本当の時給が出てくる。本当の時給を出すと、そんなに大きな差は開いていないんですが、しかし、一般労働者より裁量労働者の方がむしろやや低いということになってしまうんですね。

 これは、別に時給が低いからどうだということではないのですが、しかし、時給が低いということは、要は、それだけ時間当たりの生産価値が少ないから時給が下がってしまっているのか、あるいは、価値あるものを出しているのに企業に安く使われてしまっているのかの、どちらかだというふうに思います。

 大臣は、むしろ生産性が高いんだとおっしゃっていますが、生産性が高いという根拠は何かあるんですか、裁量労働の方が生産性が高いという根拠は。

塩崎国務大臣 今、井坂委員ならではの試算をお示しいただいて、それを生産性というふうにカウントするかどうかというのはいろいろ評価があろうかと思うんですけれども、今私どもが提出をしている労働基準法改正案に盛り込んだ高度プロフェッショナル制度とか、あるいは裁量労働制の見直しというのは、自律的で創造的に働くことを可能とする制度であるわけであります。業務の執行手段とか時間配分をみずからの裁量で決定するという方を対象にしているというのがこの二つの制度であるわけで、とりわけ高度プロフェッショナル制度については時間ではなくて成果だ、それで評価をするということを申し上げているわけで、どういう成果を出すかということで生産性をはかられるんだろうというふうに思います。

 これらは、一定の処遇も担保しながら、効率的に仕事を進めることによって、長時間労働を抑制しながら生産性の向上を実現するというためのものだというふうに考えておりまして、また、これらの制度については、長時間労働を防止し、健康を確保するためのさまざまな措置も講じていくわけでございまして、長時間働かせるインセンティブが働いて必ずしも生産性が上がらないという今御指摘でありますけれども、必ずしもそういった御指摘は当たらないのではないかというふうに考えております。

井坂委員 御指摘が当たらないとおっしゃる根拠が全くわからないですが、また引き続き議論をしたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民進党の柚木道義でございます。

 質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

 塩崎大臣に通告を事前に申し上げております。きょう、その質問をさせていただくのですが、冒頭、きょうは、私は、もう長時間労働是正について持ち時間フルでお願いをしたいのですが、電通の今回の高橋まつりさんの事案でございます。これについて幾つか具体的に伺いたいので、ぜひ大臣、質問をしっかりお聞きいただければと思います。

 資料には、まさに今ちょうど日経新聞が連載をしていて、「電通事件の衝撃」ということで、今、シリーズで一、二というところまで出ていたと思いますが、勧告では済まさないという、まさに厚生労働省としてなのか政府としてなのか、そこは強い決意が示されておりますが、これは本当に大臣、私も、大臣が出席をされた十一月九日の、高橋まつりさんのお母様も発言をされたシンポジウムに出席をして、まつりさんのお母さんの話ももちろん最初から最後まで伺いました。この間の報道も全部改めて目を通しました、この事件に対して。

 先ほども与党の委員の方からもお触れをいただきました。

 命より大切な仕事はない、社員の命を犠牲にして業績を上げる企業が日本の発展をリードする優良企業と言えるのかと。命より大切な仕事はないと訴え、過労死や過労自殺は起こるべくして起こる、経営者は大切な人の命を預かっているという責任感を持ってほしい。さらに、残業時間の削減を指示するだけでなく、パワハラを許さない企業風土や業務の改善を進めてほしい。愛する娘を突然失った悲しみと絶望は失った者にしかわからない。

 年末には実家に帰るからねと口にしたまつりさんが亡くなったのは十二月二十五日、部署の忘年会の日で、クリスマスの日の朝であります。大好きで、大切なお母さん、さようなら、ありがとう、自分を責めないでね、最高のお母さんなんだからとのメールが最後だった。そのお母さんは、日々自分を責め続け、本当に日常生活にも支障を来しておられる状況。

 そして、この資料にもおつけをいたしましたが、まさに今、省を挙げて、異例のスピードと体制で、強制捜査にも十一月の七日に入って、捜索を進めておられると思います。

 塩崎大臣、先月十一月は過労死防止月間でした。私は、今回のこの捜査は、まさに厳正な対応、処罰が必要だと思います。しかし、まさにこのスピード感を持って、全国の今この瞬間も過重労働に苦しんでおられる方々を救う意味においても、なるべく早く捜査の結論を出して、そして厳正な対応をいただくことが必要だと思うんです。

 大臣に伺いたいのは、どういうスピード感、年内めどなのか、もっと時間をかけるのか、いつまでにこの捜査の結果を出すのか、今の大臣の中における一定の感覚で結構ですから、私は、なるべくスピーディーに今回の捜索を、きっちりと結果を出して、ぜひ社会に向けて政府としての対応を示すべきだと思いますが、いかがでしょうか。スピード感、スケジュール感について御答弁をいただければ。

塩崎国務大臣 今回の電通における高橋まつりさんが自殺に追いやられたケースというのは、極めて重大な問題であるということを私どもは感じて、それを肝に銘じながら、今、捜査、調査をやっているところでございます。

 タイミングなどにつきましては、捜査中の案件でございますので、申し上げるべきではないというふうに思います。

柚木委員 もちろん、捜査中の案件でありますから、どのタイミングでどうこうというのは御答弁をいただけないと思うんです。

 しかし、先月のまさに過労死防止月間の中であのような強制捜査も行われておるわけですから、これはなるべくスピーディーに、もちろん、厳正な捜査と対応をお願い申し上げておきたいと思います。

 そして、我が党は他の野党とも共同で、長時間労働規制法案、もともと提出したものをさらに罰則強化したものをこの国会で提出させていただいておるんです。

 それで、私は、二十七年度中の、送検した過労死、過労自殺事案についての処分事案を厚生労働省の方に全て確認をいただいたんですが、罰則強化について伺いたいんです。

 最も処分が重かった事例は、二十七年ですが、法人で罰金三十万、実行行為者で罰金三十万。つまり、現行法の中ではこれが最高なわけですね。しかし、私は、やはりこの現行の労基法上の罰則規定では不十分であると思います。電通においては、これまでにも同じようなことがあって、まさにもう今回で三回目。高橋まつりさんのような二十四歳の前途ある若者が、たび重なる違法長時間労働が常態化しているような状況で、この罰則規定では私は十分であるとは思えません。

 そして、資料にもおつけをしておりますが、四ページ目に、これは報道ですけれども、「残業規制で罰則強化検討=「働き方改革」の実効性確保」、これは政府の八日の会議を受けての報道で、最後の段落に、「労基法はこうした企業の違反行為への罰則として、「三十万円以下の罰金」を定めているが、再発防止の観点から厳罰化の方向で検討を進める。」という報道がございます。

 塩崎大臣、これはまさに、我々野党が今回、長時間労働規制法案で罰則強化を出しているのと同じ方向感の報道だと思われるんですが、厳罰化の方向で検討を進めておられるという理解でいいのかどうなのか、御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 今のは報道を引用されての御質問でございまして、私どもが公表したわけでも何でもないわけでございまして、今指摘のような記事について、政府でそのような方針を決定したというようなことはございません。

 御案内のように、今、働き方改革実現会議というのを開いて、鋭意、働き方についての議論を重ねております。今後、長時間労働についての議論というのも行われることになりますし、それから、省内、厚生労働省の中でも、三六協定のあり方、時間外規制のあり方についての検討を行っているわけでございまして、どのような結果になるかは、まだ定かに申し上げられるようなところまではいっていないということでございます。

柚木委員 省内における、あるいは政府内における検討状況は今わかりました。

 ただ、大臣、この報道はちょっとそういう意味では先走っているのかもしれませんが、これは、議論している、していないということではなくて、塩崎大臣御本人の認識をぜひ伺いたいんです。

 今回、電通において、この間の議論でもありましたが、もうたび重なる違法労働が常態化されたような企業ですよ。

 そして、私も資料にもおつけをしておきましたが、二ページ目、きょうも指摘がありました。主要本支社全て違法認定があって、九一年に、入社二年目、高橋まつりさんと同じ、当時二十四歳で過労自殺をしていた男性の事案以降、二〇一〇年には中部支社に是正勧告、そしてその三年後には、当時三十歳の男性が亡くなって過労死と認定をされ、さらにその翌年には関西支社に是正勧告、そしてその翌年には本社に是正勧告、二〇一五年。そのわずか四カ月後に新入社員の高橋まつりさんが飛びおり自殺をされています。

 残念ながら、電通におかれては、こうした違法長時間労働是正に全く誠実に向き合ってこなかったと言わざるを得ないような企業、事業者に対して、今の罰則規定が私はやはり十分とは言えないと思うんですね。

 ですから、塩崎大臣、これは大臣も本当に思いを持って、今、この問題、事案に当たられていると思います。政府の中での検討に具体的に今、罰則の強化というのはないとおっしゃいましたが、大臣御自身がまさにそこはリーダーシップを発揮して、この罰則はやはり十分とは言えないという御認識であるならば、強化の方向を検討いただきたいと思いますが、大臣の御認識をぜひお答えいただけますか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、これは一億総活躍の会議の方で明確に総理からも、三六協定のあり方、実効性のあり方についての検討を深めるようにということで指示をいただいて、我々厚労省の中で検討会をつくって重ねた議論を今やっていただいているわけでございます。

 それから、さっき申し上げたとおり、実現会議はこれから本格的に議論をするということになって、さまざまな御意見がきっと出ると思います。その中には、柚木委員のおっしゃるような御意見の方も当然おられると思いますので、私どもが予断を持って方向性を今言う立場ではございませんので、広く皆さん方の御意見をしっかりと聞いた上で、政府としては思いつきのように五月雨で申し上げられませんので、今しっかり議論していただいた上で、私どもとしても最後は決め込んでいくことになるんだろうというふうに思います。

柚木委員 私は、別に電通に対してということだけで申し上げているわけではありません。今回は、電通は本当に悪質だと思いますよ。だけれども、そのほかにもさまざま、この間、委員会でも指摘をいただいたような事案がございます。

 もちろん、罰則、ペナルティーだけで今言われるように実効性が十分に担保されるわけではないと思いますが、働き方改革の中身、それに加えて、やはり罰則の一つの抑止力というものも、大臣、ぜひそこは、この事案に対して思いを持って取り組んでおられるのであれば、この捜査の結果も踏まえて、私は、ぜひ罰則の厳罰化についても御検討いただきたいと、これは切にお願い申し上げます。

 それで、前回の参議院での六時間の審議も一通り質疑録を拝見しておりますので、その中で、私はぜひ見直していただきたいことがございます。

 これは、参議院で石橋議員が質問され、大臣も答弁されているんですね。十月二十五日。

 電通がこれまで厚生労働省と五年間で約十億円の契約実績があって、しかも直近三年間でふえている、過労死を出す企業については状況が改善するまで契約を見直すべきだと指摘をされていまして、大臣は、その石橋委員の提案を含めて、今後何が必要なのか考えたいと答弁されているんですね。

 ただ、少なくとも電通においては、別にこれが電通じゃなくても、同じ事案だって私は同じ対応をすべきだと思いますが、もう既にこうやって異例の体制の強制捜査が入って、過労死認定もされていて、そして是正勧告が何度も、こういう実効性のある対応もされていない中で、少なくとも、所管である厚生労働省については最低限、契約を今ストップして、状況が改善される、あるいは今後の捜査の見通しも含めて、今この瞬間、契約を見直すことが所管の大臣として必要な御判断ではないかと私は思いますよ。これは税金の使途としても不適格だと思います。

 大臣、ぜひ、少なくとも、今般のこういう事案がある中で、電通との厚生労働省における契約については現段階で見直す、そういうふうにここで明言いただけませんか。

塩崎国務大臣 石橋委員にもお答えを申し上げたとおりでありまして、いわゆる公共調達のルール、これについては、ひとり厚生労働省だけが政府の中で調達をしているわけではないわけであります。

 しかしながら、こういうような事態が起きて、どうするかということを今、御意見も頂戴をしているわけで、その御意見は御意見として、しっかりと私どもも受けとめていきたいと思っております。

 今の調達ルールでいきますと、契約対象となっている企業が起訴された場合など、これは一定期間指名停止を行うこととなっておりまして、今、石橋委員からの質問の際のことをお触れいただきましたけれども、そのとき申し上げたとおり、やはり、これは御提案を踏まえて、何をどこまで行うべきか、今後よく考えていきたいと思っているわけでございます。

柚木委員 起訴された場合、一定期間指名停止というのはもう当然だと思います。

 ただ、これまでの、過去の電通の経緯も大臣はどなたよりもよく御存じなわけですから、起訴される、されないによらず、まさに先ほど言われたように、私の今の提案も含めてお考えいただけると思いますが、私はやはり、こういう税金を使った形で、電通、今回のような事案、電通でなくてもそうだと思います、ぜひそこは、契約の見直しということを早期に御判断をいただきたいと思います。

 そして、まさに今大臣おっしゃったんですが、電通との契約というのは、私もこれは政府全体も込みということだと思いますが、ちょっと、調べたものでこういうものしか出てきませんでしたが、五ページ目に、官公庁、団体との契約、売上高の状況で、二〇一六年一―九、前年同期比で一三・六パーふえて五百五十二億七千万円。これも、確かに、政府全体として私は今回見直しをいただきたい。

 ですから、これは当然、安倍総理の御判断も必要かと思いますけれども、今般のまさにこの電通の事案、捜査の推移を含めて、政府全体としても見直していただくことを、ぜひ所管の厚生労働大臣として、これは総理に対しても具申をしていただけませんでしょうか。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、公共調達のルールは厚生労働省だけでは決められないということでありますが、一方で、この電通のケースはただいま捜査中の案件であるわけでありますので、そこから引き出される政策的な対応のあり方、これについては、全体像をしっかりと調査、捜査で押さえた上でやっていくというのが常識的なやり方であり、さまざまな意見をその間、当然、真摯に受けとめながら検討を進めていくというのがあるべき姿ではないかというふうに思います。

柚木委員 ぜひ、捜査の進展を踏まえつつ、これはやはり所管の大臣として、そこはリーダーシップを発揮いただきたいと思います。別に電通だからと言っているわけではありません。どの企業でもこういう状況だったら私はそうすべきだと思います。ぜひ、これは切に、大臣としてのリーダーシップの発揮をお願いします。

 なぜそこまで言うかというと、私は、先ほど井坂さんもおっしゃっていましたが、今回の高橋まつりさんの自死、自殺というのは、会社や国が本気でこれまでに対策を講じていれば防ぎ得た死ではなかったかという思いを、調べれば調べるほど強くしております。

 事実、官邸の働き方改革担当でもある岡崎淳一厚生労働審議官も、先月十四日の全国の労働局長会議で、各事業所に対して是正勧告してきたが、企業そのものが変わっていなかったということは我々自身が反省すべき課題だと。本当にこれは正直なお言葉だと思いますよ。誠実な方です。

 だから、私は、本当にこういう、同じようなことは電通の中で、九一年以降、もう三回目ですよ、全く誠実に対応しているとは思えない。だからこそ、働き方改革の中身も、この後申し上げますが、罰則強化も含めてのパッケージでの対応、いわゆる公契約に基づく受発注、これも、公表における社会的な制裁だけではなくて、売り上げにおいてですよ。はっきり言って、罰金三十万、五十万、大企業にとっては痛くもかゆくもないかもしれませんよ。それでも、せめて今の法規上の最大のペナルティーを法改正すべきだと私は思うんです。

 ですから、その罰則の強化と同時に、こういった公契約における見直しを私は早期に御判断をいただきたいと思いますので、これは強くお願いを申し上げておきます。

 その上で、今回、長時間労働是正の、一般ではありますが、ほぼこのテーマに沿っての集中審議的な時間をいただいております。

 私は、これは電通だからということで申し上げません。やはり、当該企業、そして当事者、関係者、こういう方々に実際にここにお越しをいただいて、そして、委員の皆さん、これは与野党関係ありません、参考人をお招きして、お話を伺って、大臣にもその声を聞いていただいて、過労死防止対策推進法が十分に機能し得ていない今の状況も含めて、政府、立法府挙げて対策を講じていくべきだと考えて、これは田村筆頭にも本当に御尽力いただいておりまして、委員長、何とかこの国会で参考人をお招きして、そして質疑を行っていただきたいんです。

 今、与野党、一生懸命調整していますので、委員長におかれましても、来週の日程、正直、やろうと思えばできるんです。ぜひ、与野党そうやって今努力していますので、参考人質疑を行って、そして大臣にもその声をお聞きいただいて、実のある審議ができることを委員長にお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。

丹羽委員長 ぜひ理事会でお諮りいただきたいと思います。

柚木委員 まさに今、そういった捜査案件ではあります。しかし、捜査案件ではあっても、これまで、国会に関係者をお呼びして審議をしていた事例は、この厚生労働委員会も含めて幾らもあることを私も全部確認いたしましたので、これは与党筆頭におかれても、今の委員長の御発言も踏まえて、ぜひ来週、水、金、あるいは予備日も含めてでも私はいいと思いますよ。実際の当事者の声を聞かずして対策なしだと思いますので、重ねて委員長にもお願いを申し上げます。

 そして、参考人質疑の必要性をなぜ私が申し上げているかといえば、世界で初のこの過労死防止白書を最後まで一通り目を通させていただきました。まさに過労死防止推進法のその中に、当事者の声をしっかりと踏まえた対策を講ずるということも明記されておりますので、そういう防止月間の中で、今このような事案が起こり、捜査も進められているということも踏まえて、委員長におかれては、ぜひ参考人の審議をお願い申し上げます。

 そして、大臣に引き続き伺いますが、私たちが、長時間労働規制法改正案、今の罰則強化も含めて、四党で提出をして、この国会での審議をお願いしているわけですが、この中で、きょう資料にもおつけしておりますけれども、先ほど紹介した報道の前のページ、三ページ目。安倍内閣総理大臣の御発言、第一回の働き方改革実現会議の中で、アンダーラインを引いておきました。「三番目に、時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正。」と、明確に「時間外労働の上限規制」というワードを明記して発言をされております。

 我々野党四党における提案も資料におつけをしております。最後の七ページ目、六ページ目。特に、七ページ目のところをごらんいただくと、政府法案との対比表にもなっております。上限規制のところ、下から四番目。

 政府における上限規制というのは、これは残念ながら不十分でありまして、我々は、上限を、具体的な時間は省令で決定と書いておりますが、法律に明記する、そして、青天井の今の時間外労働についてもしっかりとキャップをはめる。もちろん、業種、業態のさまざまな議論も踏まえてキャップをはめることが必要だと考えております。

 ぜひ、この総理発言も含めて、時間外労働の上限規制、しっかりと具体的な数字を明記する、検討すると大臣としての方向感をお示しください。

塩崎国務大臣 これは以前にもどこかの委員会で、どちらかの、衆議院か参議院かちょっと記憶を失念しておりますが、申し上げておりますけれども、三六協定の実効性が問われているということは私も申し上げたことがあるわけでございまして、そういう認識のもとで、総理からも、三六協定を含めた上限規制のあり方についてしっかりと議論しろ、こういう指示をいただいていて、厚生労働省の中で今、検討会を進めさせていただいているわけであります。

 さっき申し上げたように、実現会議の方でも議論が近々始まると思いますが、その際に、やはり今回の電通の問題ももちろん踏まえた上での議論ということになれば、いろいろな意見が出てまいりますので、私どもとしては、今、柚木委員からいただいた御意見も含めて、さまざまな御意見をしっかりと受けとめた上で、方向性はさっき申し上げたとおりでありますので、実効性のある上限規制のあり方が実現するようにしていくということだと思います。

柚木委員 時間でありますので最後にしますが、今の上限規制、そしてインターバル、そして時間管理、やはりこういったところが肝だと思いますし、裁量労働の野方図な拡大は、先ほどの生産性の視点も含めて、私は、働く方の視点に立っているかどうか、非常に論点のあるところだと思います。

 ぜひこれは、塩崎大臣、最後にコメントいただきたいのは、我々野党四党で、今のような視点で長時間労働規制法というものを今国会に提案し、そして、委員長にもこの国会における審議をお願いしております。

 これは本当に、与野党を問わず受け入れられる、あるいは歩み寄れる素地のある内容だと思うんですね。もちろん、政府の規制法には私たちも当然いろいろな意見はあります。ただ、野党が提出をしている長時間労働規制法案、少なくとも、与党の皆さん、あるいは政府の検討している方向感と合致する部分がある、その中身については何とか与野党で合意をして、議員立法はほかにもあと二件ほど案件があるんです、この長時間労働規制法も含めて、何とかこの国会での成立を我々は目指しております。

 私たちが提案をしているこの長時間労働規制法の方向感、インターバル規制、時間外の上限規制、あるいは時間管理、そういった点について、大臣、方向感は政府と全く違うんですか、ある程度同じ方向感を向いて議論ができると思われますか、御認識を最後にお答えください。

塩崎国務大臣 上限規制のあり方をしっかり議論するようにという御趣旨でありますが、やはり実効性をどう持たすのかということが大事だというふうに、先ほど申し上げたとおりであります。

 方向性がどうかというのは、いろいろ評価は人によってあろうかと思いますけれども、いずれにしても、みずからの意思で、働く時間も決め、働き方も決められる、そして選択ができる、そういう国にしていかなければならない、そういう経済社会にしていかなければならないし、働き方は暮らし方そのものでありますので、そういう重たい問題として、ここは、働き方改革ということで既に動き出しておりますけれども、しっかりとこの問題についても答えを出していきたいというふうに思っております。

柚木委員 ぜひ、この国会において、与党の先生方の御理解もいただいて、長時間労働規制法の審議をお願いし、残り、最後まで行かなかったこと、事務方の方、済みませんでした。おわびとお礼を申し上げて、質疑を終わります。

 どうもありがとうございました。

丹羽委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは、非常に重要な長時間労働是正の議論をする場でありますが、委員の人数が足りないんじゃないかと思うんですね。非常に少ないと思います。この状況で議論するんですか、委員長。

丹羽委員長 確認をお願いいたします。

 定足数は満たしております。

岡本(充)委員 いや、もう本当に、与党席、がらがらですよ。私は、こういう重要な話をする場でありますから、やはりきちっと、特に与党の議員に出席をお願いしたいと思います。

 その上で、きょうは、労働安全衛生の観点から質問をさせていただきます。

 大臣、そもそも、この労働安全衛生の観点で、労働者に心身の異常を来しているという可能性がある場合もしくは労働者の労務管理のあり方について、労働者側の立場に立って意見を会社に言うことができる人というのは、どういう人がいるのでしょうか。

塩崎国務大臣 企業で働く方々に、医学的見地からのアドバイス等々、指導ができるのは産業医ではないかというふうに思います。

岡本(充)委員 産業医という制度は、確かに会社に対して勧告をすることもできるという話になっていますが、そもそも、この産業医が、例えば長時間労働をしている労働者の労働時間の是正を求めた結果、長時間労働をしている労働者の労働時間が短縮されなかった場合、どういう行動がとれるんですか。

田中政府参考人 お答えいたします。

 産業医については、労働安全衛生法第十三条に基づいて、事業者が選任すべきものとされております。事業者に対して、産業医は、労働安全衛生法上の問題があった場合に必要な措置を勧告等することができるとされております。労働安全衛生法においては、事業者はその勧告等を尊重しなければならないというふうな形で法律上規定されているところでございます。

岡本(充)委員 部長、それは勧告等じゃないです。「勧告を」なんですよね。これは私の資料の十三条のところ、勧告等じゃないんです。勧告を行うんです。勧告を受けたときにはこれを尊重しなきゃいけないと書いているけれども、尊重しましたと言って長時間労働が是正されていなかった場合は、どういう措置がとれるんですか。

田中政府参考人 別途、労働基準法違反等の法違反の事実があれば、労働基準監督署からの是正指導等が行われると承知しております。

岡本(充)委員 違うんです。産業医がどういう行動がとれるのか。産業医の仕組みというのが、今大臣がおっしゃられた、唯一の、心身の異常を来している労働者を救う、勧告ができる者なんですよ。この者が、今言ったような、おかしいじゃないか、こうするべきじゃないかと勧告をした、したけれども、尊重しましたと言われたら、これ以上のことは産業医は何もできませんね。

田中政府参考人 産業医につきましては、労働安全衛生法上は事業主によって選任されているものでございます。したがいまして、産業医の立場については、事業主が労働安全衛生法上の責任を果たすための、ある意味、医学的な、専門的な立場からの補助者という位置づけでございますので、あくまで、最終的には事業主がその責任を持って判断をするということになります。

岡本(充)委員 そうすると、部長、責任は会社にあって、長時間労働をしている社員がいて、その者が心身に異常を来し、それを産業医が気づいて会社に勧告し、勧告をしたけれども会社が何もしなかった、そうすれば、会社の責任であって産業医はその責任を免れる、そういう理解でいいんですか。

田中政府参考人 労働安全衛生法第十三条において、事業主は、産業医を選任して、労働者の健康管理等を行わせる義務を負っております。

 産業医が事業場における安全衛生法上の問題を把握しながら適切な措置を講じなかったというような場合ですが、当該事業場において、労働安全衛生法上の違法の状態が放置されていることになります。その責任については、事業場における労働者の健康確保についての義務がある事業者が負うことになります。そうした違法状態を原因として労働者に損害が生じたような場合には、通常、事業主がその責めを負うというふうに考えられます。

岡本(充)委員 今回の電通の話でもそうですけれども、長時間労働している人がいて、これは本当に長時間働かせちゃまずいな、勧告をした、しかし、勧告をしても事業主が守らなかった、その場合に、労働安全衛生法上の違反はそこにはないわけですよね、ないんですね。

 尊重だけしましたけれども、結局、長時間労働させています、それは労働安全衛生法上の違反になるかならないか、それだけ教えてください。

田中政府参考人 明らかに労働基準法等の労働時間制限に違反している場合はともかくとして、それの以内でありますけれども、産業医が、健康の確保上、事業主に必要な措置を勧告することはできます。その場合に、事業主についてはそれを尊重するという義務が生じるということでございまして、その尊重するかどうか、何をするかどうかについての最終的な責任は事業主にあると承知しております。

岡本(充)委員 その話が大変驚きで、結局のところ、産業医が勧告をしても、それに対して一応尊重しましたと言えば、その後、長時間労働を是正しなくてもいいという今の答弁なんですよ、大臣。わかっていただけたと思います。

 一方で、産業医の巡視及び権限の付与、これは二ページですけれども、労働安全衛生規則の十五条に、こっちは、健康障害を防止するための必要な措置を講ずる義務を産業医に課しているんですね。「事業者は、産業医に対し、前条第一項に規定する事項をなし得る権限を与えなければならない。」と書いています。この場合は、産業医が措置をとるというふうになっているんです。

 では、この場合の責任は産業医にあるということですか。

田中政府参考人 安全衛生規則十五条においては、産業医は作業場を定期的に巡視することとされておりますけれども、その際に、作業方法や衛生状態に有害のおそれがあるときには、直ちに産業医自身が健康障害防止のための必要な措置を講じなければならないというふうにされております。

 これは例えば、事業場で粉じん作業をして、呼吸用保護具を着用しなければならないような労働者が着用していなかったことを現認したというような場合に、直ちに産業医が保護具の着用を指示するというような場面が典型的な例かと思います。その点について、産業医がその義務をしっかりと講じなかったということについては、一定の責任が生ずる可能性があると考えております。

岡本(充)委員 ただ、それは、マスクがあればいいんですけれども、マスクを買いなさいと言ったとき、買わない可能性があるんです。物がそこにあって、耳栓をしなさい、耳栓をしませんでしたじゃなくて、耳栓すらないところで買わなきゃいけない場合には、産業医が買うわけにはいかないですね。

 したがって、この書きぶりもおかしいんじゃないかと私は思うんですね。措置を講じなければならないとなったら、もしなければ、買うのも産業医ということになりませんか。

田中政府参考人 同じ労働安全衛生規則の十五条二項では、事業主は、産業医に対して、先ほど申し上げたような、直ちに措置をする権限を与えないといけないというふうに書かれております。

 その権限の範囲が、先生おっしゃるような、防護具を買うというようなところまで及ぶかどうかというところは、ちょっと個々の場合によるとは思いますけれども、必ずしも、そこまで産業医が権限があるというふうになっている場合ばかりでないというふうに思います。

 こうした場合、例えば、衛生委員会という組織がありまして、その衛生委員会の必須のメンバーとして産業医が法律上指定されております。

 したがって、直ちに措置ができないような場合は、それで手段がないということではなくて、産業医がその衛生委員会で必要な措置を求める意見を伝えていく。それで、事業主に予算的な措置等々を講じていただくという形になると考えております。

岡本(充)委員 大臣、これは性善説に立っているんですよ。なかなか法律も、そもそも「直ちに、」と規則には書いてあるけれども、今部長は、直ちにじゃなくてもいい、こういう答弁をするわけですね。だって、安全衛生委員会を直ちに開くんですか。違いますよね。

 これは、やはり実態と規則と法律が合っていないと思いますよ。結局のところ、誰が労働者の心身の障害に対して責任を負うのか。そしてまた、もっと言えば、規則できちっと産業医の役割と責任を明確にする整理がなされていない、こっちは産業医に一番の責任がある、こっちは産業医でない、事業主だと。

 これはいつの時代につくられたのか、ちょっと私も調べてきませんでしたけれども、きちっともう一回整理をするべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 産業医の問題については、参議院の厚生労働委員会でも取り上げられたことが何度かありまして、労働安全衛生法の改正によって昨年義務化された事業者によるストレスチェックの実施への関与など、その役割が、いずれにしても、質、量ともに、職場の環境変化あるいは働き方の環境変化によって増大をしているということは間違いないわけです。

 一方で、例えば、大きな病院の管理者という院長さんが、実は、事業場のトップである一方で、つまり、働くことを指示する立場でありながら産業医を兼ねているというような問題も指摘をされて、これについては直ちに、とりあえず直しているわけであります。

 そういうこともあって、産業医の効果的、効率的な活動のあり方について、現在、産業医制度の在り方に関する検討会というのを厚生労働省の中でスタートして、もう大分議論を重ねてまいりました。

 特に、過労死等の防止という観点から、産業医が長時間労働となっている方の労働時間の状況とか健康診断の状況などを的確に把握して、面接指導の実施やあるいは就業上の措置に関する助言とか、今の場合は勧告というのが最終的にありますけれども、適切に行っていくことが必要である一方で、事業者から産業医への必要な情報提供は義務づけられていなかったりするわけでありますので、そういうようなことで、この義務づけも改善の一つではないかということを考えております。

 したがって、今御指摘のように、かなり古い法律でありますこの産業医に関する法律を含めて、過労死等のリスクの高い方を見逃さない、あるいはメンタルに追い込まれるようなことにも適切に対応ができるように、この検討会での議論をさらに深めていきたいと私も考えております。

 事業者への指導、啓発も徹底をするとともに、産業医の機能強化、そして位置づけの明確化ということをしていかなければならないというふうに思っているところでございます。

岡本(充)委員 大臣、二ページの上のところですけれども、これは十四条の四ですけれども、「事業者は、産業医が法第十三条第三項の規定による勧告をしたこと又は前項の規定による勧告、指導若しくは助言をしたことを理由として、産業医に対し、解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」これは努力義務なんですよね。これはしてもいいんですよね。法律違反にならないんですよ。できちゃうんですよ。

 例えば、こういう意味でも、やはりこれが唯一の心身を健全に仕事をする上で必要な者であるとするのであれば、この人に対する権限が弱過ぎるんじゃないか。不利益取り扱い禁止と言っているけれども、これが努力義務にとどまっている。この条文も私は会社に対してしっかりとした助言ができない理由の一つだと思います。ここも含めてやはりしっかり見直すべきだと思いますが、どうですか。

 もう一度、先ほどの話で、責任の所在の明確化、それから制度のたてつけの整理、これは先ほどのメンタルヘルスもそうです。

 メンタルヘルスの方は四ページに図をつけていますけれども、このメンタルヘルスも、面接指導と書いていますが、面接指導をして、結果として必要に応じ就業上の措置の実施と書いていますが、実施の担保がないんですよ。これはもちろん法律上見直しの規定が入っていますから、間もなく見直しの議論が始まるんだと思います、もしくは始まっているのかもしれませんが、しかし、これは実効性が乏しいんじゃないか。

 こういうことも含めて、早急に法律改正、規則の改正、規則の改正は法律じゃありませんから省内でできるはずです。規則はもう直ちに、そして法律についてはできるだけ速やかに見直しの法律を出していく、その方向性の答弁だけでもいただけませんか。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、病院長が産業医にならないというのは省令で改正をいたしました。したがって、必要なものでやれることはやっていきたいというふうに思っております。

 一方で、全体の体系をつくり直す中で省令を変えていくような話になっていきますと、また全体の法体系をどうするのか、そして、今の産業医の独立性というか身分担保の問題、今御指摘をいただきましたが、これはちょうど会社の監査役などと同じような立場にあり得るわけで、会計監査の場合も同じですけれども、誰がどう選んで、誰がどういう報酬を、誰の決めによって支払うのかというのは、これはコーポレートガバナンスの中でも極めて大きな問題で、なかなかおさまっていない問題でもあります。それとやや似たようなところがありますので、今御指摘をいただいたことを含めて、しっかり議論していかなければならないというふうに思っております。

岡本(充)委員 大臣、これはお金の話じゃないんです。人の命がかかっていますからね。会計監査のお金の話よりも、私は労働者の命がかかっているという意味で大変重いと思いますから、例示として適切ではないと思いますよ。ぜひそこは取り組みをしていただきたいと思います。

 一方で、これは通告していませんから、聞いてみたいと思って大臣に聞くんですけれども、副大臣にも聞いてみたいんですが、自民党さんと公明党さんは、それぞれ党の職員が五十人を超えてみえるんじゃないかと思いますけれども、産業医はちゃんと選任されているんでしょうか。メンタルヘルスのチェックも職員にしている、そういう理解でよろしいんでしょうか。大臣、副大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 自民党の役員をやったことがないものですから、どういうガバナンスになっているのか私もよくわかりませんし、雇用形態がどうなっているのかもよくわかりませんので、答える立場にはないのかなというふうに思います。

古屋副大臣 済みません。確認をしてみませんと、今の時点でお答えできません。

岡本(充)委員 ぜひ確認をして、理事会に御報告をいただきたいと思います。

 委員長、よろしくお願いします。

丹羽委員長 理事会でお諮りをいたします。

岡本(充)委員 やはり、党の職員も労働者ですからね。だから、きちっとそこは選任してやってもらわないと困りますよ。

 その上で、厚生労働省の職員の長時間労働について質問したいと思います。

 厚生労働省の、まさに長時間労働の是正を含む労働基準法の遵守の担い手でもあります労働基準監督官の皆さん方、大変激務なんじゃないかと思っています。きょうは総括審議官にお越しいただいていると思いますけれども、どうでしょう、どのくらいこの皆さん方は残業されているものなんですか。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの労働基準監督官の勤務時間でございますけれども、勤務時間は都道府県労働局において管理しておるところでございまして、そのため、この勤務時間の状況につきましては、それぞれの都道府県労働局において把握しているという形でございますので、厚生労働本省において把握していないという形でございます。

 いずれにしましても、超過勤務が過大にならないような適切な対応を各労働局において行っているところでございます。

岡本(充)委員 これは、今すぐにとは言いませんけれども、どのくらい長時間労働しているか、一回調べて資料を提出していただきたいんですけれども、出せますか、めどを示して。

宮川政府参考人 労働基準監督官の勤務時間の状況の調査でございますけれども、その調査対象の範囲とか期間、あるいは調査方法をどうするかなどを含めまして、今後検討してまいりたいと思います。

岡本(充)委員 では、ぜひ検討した上で調べていただきたいと思います。

 続いて、地方公務員の勤務の状況はどうなのかというので、もしくは国家公務員、ほかの公務員も含めて、人事院と総務省に来てもらっています。

 資料におつけしているのは奈良県の時間外労働に関する協定ですけれども、県立病院のお医者さんの勤務、五ページの一番下のところですけれども、医師は所定労働時間七時間四十五分、一日に延長することができる時間十五時間。すごいですね、二十二時間四十五分働かせることができる。

 六ページを見てください。これは三六協定をして一年を通して延長することができる時間数、千六百八十時間。これだけ残業させることができるんです。こんな実態、許されるんでしょうか。どうなんですか。

 きょうは総務省と人事院にもお越しいただいていますが、公務員でもこういう勤務の状況は許される、もしくは総務省としてもこういう地方自治体の勤務の状況を許す、こういう形でよろしいでしょうか。

高原政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、地方公務員の時間外勤務の状況でございますが、地方公共団体が女性活躍推進法第十五条に基づき策定することとされている特定事業主行動計画において公表している団体、女性活躍推進法第十七条に基づき公表することとされている女性の職業選択に資する情報として公表している団体が、都道府県で二十八団体、政令指定都市で十六団体ございます。

 この公表されている都道府県及び政令指定都市における職員一人当たりの時間外勤務は、都道府県については、一月当たり六・三時間から二十・七時間、二十八団体の単純平均で十二・九時間、政令指定都市については、一月当たり七・七時間から十九・五時間、十六団体の単純平均で十三・三時間となっております。

 私ども、地方公務員の超過勤務の縮減について取り組んでおるところでございますが、先般の総務委員会でも議論になりまして、大臣から、もう少し実態を把握するようにという指示があっておりまして、今後調査に取りかかるという状況でございます。

 以上でございます。

中山政府参考人 人事院より、国家公務員についてお答え申し上げます。

 国家公務員の平均年間超過勤務時間数は、業務の繁閑等により年ごとに若干の増減があるところでございますけれども、平成二十八年国家公務員給与等実態調査によりますと、平成二十七年の実績は、平均で年間二百三十三時間、組織区分別に見ますと、本府省は三百六十三時間、本府省以外では二百六時間となっております。

 それから、人事院では、職員の健康維持や人材の確保等の観点から、これはあくまで目安ということでございますが、超過勤務の上限の目安時間を決めておりまして、年間三百六十時間、国会関係あるいは国際関係など他律的業務の比率の高い部署におきましては年間七百二十時間との上限時間の目安を定めておりまして、これを超えて超過勤務をさせることがないように各省各庁の長が努める旨の指針を定めているというところでございます。

岡本(充)委員 今の奈良県の事例、こんな時間勤務させているかどうか、しっかり確認して、もしくは、どういう対応をとるのかということを総務省にぜひお願いしたいと思います。

 それから、今の、厚生労働省でも、この三六協定、こんな協定でも受け取っちゃうというような話になったのでは、これは何のための三六協定かわからないですね。二十二時間四十五分働かせることができるんですよ、一日に。こんな話はあり得ないと思います。

 大臣、こういう三六協定のあり方、見直していくという議論をするんだと言っていますけれども、こういうとんでもない長時間労働の三六協定をしている事業所がほかにあるのかないのか、ぜひ確認をしてもらいたいと思います。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 三六協定の中身に関連しての受け取りをどうするか、受理するかどうかという問題かと思いますが、労働基準監督署に三六協定が届け出られた際には、法定の要件に適合しているか確認をするだけではなくて、協定の内容についても確認をして、例えば、特別条項による延長時間をできる限り最小限のものにするように指導をしております。

 法定の要件に適合している協定について受理しない取り扱いをすることは難しいと考えますけれども、引き続き、適正な三六協定が届け出られるように、届け出段階での確認や指導を徹底してまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 時間が来たから終わりますけれども、千六百八十時間はやはり適正じゃない、できるだけ短くさせるといって、二十二時間四十五分働かせるのは適正になっているのかと言われたら、大臣、とてもじゃないけれども、これはそんな答弁じゃ済まないですよ。もう一回ちゃんと答弁してください。こんな協定を受け付けているんでしょう。これじゃだめでしょう。こういう協定があるかないかをもう一回ちゃんと調べる、そして、なおかつ、こういう協定は受け付けないんだということをきちっとここで明言していただきたい。

 調べることと、こういう協定、できるだけ短くすることに取り組んでいないじゃないですか。もう一回、きちっと答弁してください。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、法令の要件に適合しているかどうかを確認するだけではない指導をしてはいるわけでございますので、できる限り、今のような延長時間が最小限になるように特別条項についてもやろうということで指導しているわけでございますが、それが十分ではないということがどの程度あるのかどうか、そういうところはさらによく見ていかなければならないというふうに思います。(岡本(充)委員「調べるかどうか、ちゃんと答えて」と呼ぶ)

丹羽委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 全てというわけには多分いかないでしょうけれども、何らかの形で、どういうふうな調査ができるか、前向きに考えたいと思います。

岡本(充)委員 では、理事会でぜひ諮ってください、委員長、よろしくお願いします。

 終わります。

丹羽委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介です。

 私、民進党の最後のバッターということで、ちょっと今までの質問と重なるところもありますので、その部分はこれまでの答弁ややりとりを踏まえて質問させていただきたいと思います。

 大臣、政治の役割は何か。いろいろな答え方があるというふうに思いますけれども、私は、世の中の理不尽を正すことというのが一つの政治の役割だと思っています。

 その点においては、過労死、これは理不尽のきわみだというふうに私は思うんですね。

 というのは、我々労働者は何のために働くかといったら、生きるために働く。生きるために働くのに、働いて死ななきゃいけない、こんな理不尽はないと私は思うんです。ですから、これは正していかなきゃいけない。

 また、先ほど来話が出ていますように、高橋まつりさんのお母さんも、命より大切な仕事はないとおっしゃっています。私も全くそのとおりだというふうに思っています。

 十二月になって、街にはクリスマスソングが響いていますけれども、まさにそのクリスマスの日、昨年のクリスマスの日に高橋まつりさんは過労自殺を図ったわけであります。

 私は、やはり、まずこのことで思うのは、これを何とか防ぐことはできなかったのかなということなんですね。その部分については、きょう、繰り返し同じ資料も使われていますけれども、私の資料の一枚目も全く同じものです。

 先ほども、たしか柚木議員からも指摘がありましたけれども、電通では、一九九一年に入社二年目の男性社員が過労自殺している。二〇一三年にも当時三十歳の男性社員が過労死している。是正勧告については、二〇一〇年の八月に中部支社、二〇一四年の六月に関西、二〇一五年の八月に本社と、繰り返し、違法な長時間労働が認定されて、是正勧告を受けている。

 私は、改めて、本当にシンプルに問いたいのは、何回もこうやって是正勧告があった、それから、過去にも過労死や過労自殺があった、でも、今回、高橋まつりさんの過労自殺を防げなかったことを大臣、政府はどう受けとめられているかということについてお答えをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、働き過ぎによって追い込まれ、命を失うというようなことは、本人はもちろんのことでございますけれども、御家族にとってもはかり知れない苦痛と悲しみであるわけでありますので、私どもとしても、同時に社会の大きな損失でもあるこういった過労死はなくしていくということを決意を持って臨まなければならないと思っております。

 厚労省として、これまで、長時間労働の是正を図るためにさまざまやってまいりました。過労死等に対する労災請求が行われた事業場に対する監督指導は当然のことながら、去年は、一月から、月百時間を超える残業を把握した全ての事業場に対する監督指導の徹底、それから四月に、いわゆる「かとく」、監督強化のためのスペシャリスト集団をつくる、それから五月に、是正指導段階での企業名公表制度の創設。

 こういった過重労働対策を強化してきたにもかかわらず、今回の事件が起きてしまった。このことは、本当に厳しく私どもも受けとめなければならないと思っていますし、その認識を刻みながら行政を進めているということでございます。

 ことしの四月からは、監督指導の対象を月八十時間に下げたわけでありますし、本省にも「かとく」を設置する、四十七労働局で過重労働特別監督監理官というのを任命するというようなことで執行強化を図ってまいりました。

 しかしながら、さっき申し上げたように、事業場単位で見るという習い性がずっと続いてきた、そしてまた、労働局単位で完結をしてしまうというようなことで、全国展開をしている企業についてしっかりと見るということが、連携をされて行政が進められるということが少なかったかもわからないという問題点も浮き彫りになってきているわけでありますので、こういったことを含めて、そしてまた電通の調査、捜査を含めた上で、実効性のある執行強化を検討して、実行していきたいというふうに思っております。

大西(健)委員 いろいろなことを厚労省としてもやってきた、それはわかります。

 ただ、今、事業場ごとの単位になっていたことの反省の弁もありましたけれども、やはり、中部、関西、本社と何度も是正勧告を受けているのに、これを見る限りは、残念ながら、電通は、是正勧告を受けても、へとも思っていない。結局、改善もなさらなかった、反省もなかったというのが残念ながら現実だと思いますので、言い方をかえれば、厚労省の是正勧告はなめられていると言っても仕方がないんだと私は思います。ここはやはり、防げなかったということを重く受けとめていただきたいと思います。

 その中で、今、是正勧告段階での企業名の公表という話がありました。これもきょうの質疑でも繰り返しほかの委員も指摘をしていますけれども、私は、やはり、企業名の公表というのは、実は罰則の強化よりもある意味では効果があるんじゃないかと思っているんですね。

 というのは、例えば、これもほかの委員からも指摘があったワタミ、これは世間からブラック企業という認定をされた結果、みなされた結果、二〇一四年度、新卒社員、計画の半分しか採用ができなかった、また、その結果、国内店舗の多くを閉鎖せざるを得なくなって赤字に転落した。

 やはり、そういうブラック企業という認定を受けるということは、これは今、会社の経営に直結する問題ですから、企業名が公表されるというのは痛いんです。ですから、やはりこれをもっと私は活用すべきだというふうに思っています。

 このことについて、先ほど井坂議員がお配りになった資料にあったように、昨年の五月から新基準というのを実施しています。ただ、これも午前中の答弁にもありましたけれども、新基準に基づく企業名の公表というのはたった一件しかない。私は、やはりこの一件というのは少な過ぎると思うんです。一罰百戒という効果も、たった一件ではやはり薄いというふうに思います。

 これについても、先ほど井坂さんは、他の事業所を調べていれば一件なんということではなかったんじゃないかという御指摘がありましたけれども、私は、やはりハードルもちょっと高過ぎると思うんですね。幾つかの要件がありますけれども、特に、これは対象が大企業になっている。

 日本の企業のうち、大企業は、言うまでもありませんけれども、法人数でいえば全体の約〇・三%と本当に一握りです。そして、従業員数で見ても、全体の約七割が我が国では中小企業にお勤めになっているということを考えると、そしてもう一つは、これはちょっと言い方は悪いんですけれども、一般的に中小企業の方が経営環境が厳しくて、なかなか法律を遵守したくてもできないというような状況もあるというような指摘もあります。そういう中で、大企業だけが対象になっているというのは、やはり私は効果が薄いんじゃないかと。

 そういうことも含めて、対象としている企業を大企業に絞っていることも含めて、この新基準の基準をさらに緩和する、こういうおつもりはありませんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 従来から、基準法違反の疑いがあるということで送検をした事案は原則公表してきた。そして、昨年五月から、一歩踏み込んで、複数の事業場で違法な長時間労働を行う社会的に影響力の大きい企業について、是正指導した段階で公表するというふうに変更したわけでありますけれども、残念ながら、公表した企業は一件ということでの今お尋ねでございました。

 この取り組みは、個別の事業場に対する監督指導の際に、違法な長時間労働になっている方の数が一定以上である場合に、是正勧告等の内容について本社に報告をするように求めて、本社において全社的な早期是正を行うよう促すものでありまして、これによって企業が自主的に長時間労働の是正に取り組むようになるということを期待しての行政の対応というふうに整理をしております。

 今後、現行の取り組みによる運用状況等、今、御指摘も先ほど来いただいておるわけでありますが、さらに検証して、そして、長時間労働の是正に実効あるものとしてこの制度が活用されるように、それによって長時間労働が是正されるように、何がどうあるべきかということを検討してまいりたいと考えております。

 中小企業の問題を含めるべきじゃないかというふうにおっしゃっているように聞こえますが、そのことも含めてでありますが、中小企業の場合の特徴というのもまたいろいろございますので、そういうことについても広く研究をし、そしてまた御意見を賜りながら対応してまいりたいというふうに思います。

大西(健)委員 今、答弁の中で、是正勧告というのは自主的に改善してもらうということを前提にしているというけれども、まさにこの電通の事件でいうと、中部、関西、本社、何回も是正勧告を受けているけれども、結局は、そんなことをへとも思っていなかったというのが現実なんです。

 だからこそ、先ほど井坂さんが言ったように、他の事業所についてもやはり調査に入るべきでしょうし、私は、大企業だけじゃなくて中小企業も含めて、そして罰則の強化という話も柚木議員からありましたけれども、むしろ、さっき言ったように、公表されるというのは、今、人手不足にもなっていますから、ブラック企業というようなことを世間から認定されたら人がとれなくなる、ですから、これは結構痛いんです。

 ですから、やはり企業名の公表というのをもっとうまく使うべきだと私は思いますので、いろいろな意味での基準の見直しというのをしていただきたいと思っています。

 次に、資料の二ページ目を見ていただきたいんですけれども、これは毎日新聞の記事ですけれども、左側の方に高橋まつりさんのSNSの書き込みの抜粋が整理をされています。これを見ると、「眠りたい以外の感情を失った」「もう四時だ 体が震えるよ…」「はたらきたくない 一日の睡眠時間二時間はレベル高すぎる」、こういう書き込みがあるんですね。

 ほかの書き込みを見ると確かにパワハラもあったのかなと思わせるような書き込みもありますが、まず気づくのは、やはり亡くなる直前はほとんど寝られていない。ですから、睡眠時間が極度に減って、まともな判断ができない状態になっていたのではないかなというふうに思われます。

 この点、次の三ページ目の資料の上段のグラフを見ていただきたいんですけれども、これは睡眠時間と抑うつ状態の関係を示したグラフです。睡眠時間が四・五時間未満になると抑うつ状態の指標がぐんとはね上がるんですね。やはり普通に考えても、四・五時間よりも短くなると確かに大分体力的にも厳しいなというのは想像がつくというふうに思います。

 そういう意味で、まず大臣に確認したいのは、一般論として、睡眠時間が極端に減ってくると抑うつ状態になりやすくなる、こういうことは間違いないでしょうか。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 一般的に、睡眠というのは、心も体も疲労するわけですけれども、その際の回復というのに大事な働きをする、人間の心身を健康な状態に保つためには、やはり睡眠時間の確保は非常に重要だということでございます。

 これまでの厚生労働科学研究においても、睡眠時間が短いと抑うつになりやすくなるという研究成果が報告をされています。

 厚生労働省では、平成二十六年三月、二年前でありますが、健康づくりのための睡眠指針二〇一四というのを策定いたしまして、よい睡眠をとることが心の健康づくりとして重要だということをお示ししてきたところでございます。

大西(健)委員 ありがとうございます。

 そのとおりなんです。だから、私は、一定時間以上の休息時間を与えるというインターバル規制というのが必要であって、我々は長時間労働規制法の中にもそのことを明確に書き入れていますし、それがあれば、こんな、二時間しか寝られないみたいなことで高橋まつりさんが亡くなることもなかったのではないかというふうに思っております。

 しかし、まだこれから議論するとは思いますけれども、現在のところ、政府は、業務インターバルについては、導入した企業に助成金を出すみたいなことを考えているようなことが聞こえてきます。

 そこで、同じ三ページの下の棒グラフを見ていただきたいんですけれども、これは過労死白書に載っていたものですけれども、今後インターバル規制の導入の意向がありますかというのを聞いたことに対して、残念ながら、約六割は「導入の是非を検討する予定はない」、約三割は「何れでもない」と答えている。

 幾ら助成金がもらえるのかにもよると思いますけれども、今後検討してみたいと答えていて助成金が出たら、それは背中を押すということにはなると思いますけれども、六割が残念ながら「是非を検討する予定はない」と言っているのでは、助成金ではインターバル規制の導入というのは進む見込みは残念ながら全然ないんじゃないかと私は思うんですけれども、この点、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 勤務間インターバルについては、いろいろな御意見を賜ってきているわけでありますが、勤務間インターバルを既に導入している企業というのがまだ極めてわずかであること、それから、企業の人員配置やシフトを根本的に見直す必要があるなど、事業運営に大きな影響を及ぼすことなどを踏まえると、これを直ちに義務化するということは難しいと考えておるわけでございます。

 しかしながら、勤務間インターバルは、働く方の生活時間とか、あるいは、今御指摘のあった睡眠時間を確保する、そして、その結果、健康な生活を送るための一つの大事な考え方というか、やるべきことであるわけでありますので、私どもとしては、まずは、インターバルを導入する中小企業への助成金の創設や好事例の周知を通じて企業の言ってみれば考え方に訴えかけをして、自主的な取り組みを推進していくことというふうにしたものでございます。

大西(健)委員 私は、やはり、やれるところはやりましょう、助成金を出しますじゃだめだと思うんです。一斉にやらなきゃ意味がないと思っているんです。

 それは、例えば、UAゼンセンの流通部門では、今春の春闘で、食品スーパー約四十組合が一斉にインターバル規制導入を要求した。結果、八組合で制度導入の回答を得て、二十を超える組合で継続協議になっています。

 きっかけは、昨年秋に大手二組合で会社側にインターバル規制の導入を求めたところ、経営側からは、何でうちだけがやらなきゃいけないのかという反応が返ってきたと。それは当たり前ですよね。正直者がばかを見る、やっているところが不利になるんじゃ意味がないから、みんなで一斉にやらなきゃこれは意味がないんですよ。ですから、一斉にやるべきだと私は思っています。

 それから、資料の四ページを見ていただきたいんですけれども、これはファザーリング・ジャパンのアンケートなんですけれども、九割以上の企業が、長時間労働の是正は社会全体でやってほしい、それから、国が旗振りをやってほしいと言っているんですよ。

 こういうことも考え合わせると、私は、繰り返して言いますけれども、一部導入できるところはやってください、助成金を出しますじゃなくて、やはり義務化して一斉に社会全体で取り組むべきだと思いますけれども、いま一度、大臣の御答弁をお願いします。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 今、一斉にやるべきだという御意見を頂戴し、このアンケート結果も、「社会全体で取り組めば、貴社も取り組みやすいと感じますか?」ということで、「はい」ということでありますが、恐らく、せえのでみんなでやればというふうに考えている人たちが多いというのが今お配りをいただいたものだろうと思います。

 したがって、一斉にやらなきゃ意味がないという考え方も一つの考え方だろうと思いますが、そうなると、やはり皆が合意を一度にするということをしていただかないとなかなか動かないということでありまして、労政審の中でも議論は深めていただいてきているわけで、そこの中での現状で今のような扱いになっているわけであります。

 このことについても、当然、長時間労働の問題について、実現会議の方でこれから本格的に議論が行われます。その中で、もう既に、何度となく、インターバル規制を導入すべしというふうに唱えていらっしゃる議員の方もおられて、繰り返しおっしゃっている方もおられます。

 したがって、それらを含めて広く御意見を承った上で、来年の三月にまとめる働き方改革の計画の中で、安倍内閣としてどういうふうな考え方でいくべきなのかということを決めていかなければならないというふうに考えております。

大西(健)委員 塩崎大臣は忙しくてDVDとかを見る機会は余りないかもしれないんですけれども、もし時間があればぜひ見ていただきたいのがあって、マイケル・ムーア監督の「世界侵略のススメ」という映画があるんですよ。

 私はこの間ちょっと見たんですけれども、これは、マイケル・ムーア氏が世界のさまざまな国に乗り込んでいって、アメリカではやっていないけれどもその国では常識になっていることを、これはいいことだといって奪い取ってくる、そういう映画なんですけれども、例えば、そこで出てくるのは、イタリアでは年間八週間、有給休暇があって、昼休みも二時間あるけれども、労働生産性が低くない、何でイタリアにできてアメリカにできないんだとか、あるいは、ドイツでは、休日に部下に連絡を、メールをすると法律違反になる、これはいい話だ、アメリカでもやれないのかというような、そんな話なんです。

 私は、やはり単純に思うのは、インターバル規制、EUでやっているんですよ。EUの中にはいろいろな、大きい国もあれば小さい国もあって、ドイツみたいに工業国で非常に高い生産性を保っている国もある。EUでできて何で日本でできないんでしょうかというのが私の単純な疑問なんですけれども、この点について、大臣、どうお答えになりますか。

塩崎国務大臣 これはEUでやっているということはもうよくわかっているわけで、これをなぜEUでできて日本でできないんだというふうに思いたくなるのはそのとおりだし、物によって私もそう思っているものも、この問題に限らずあるわけでありますけれども、やはり、与えられた条件が、そしてまたステークホルダーが合意をしないとなかなか政策としておさまらないということなんだろうと思うんです。

 長時間労働の是正については、やはり、我が国における問題の所在というのがどこにあるのかということをしっかりと見きわめて、総合的に判断をしていくということが大事なんだろうと思います。

 日本の企業の文化で、なかなか、中小企業も過当競争とよく言いますが、利益幅が非常に低い中で経済活動している、ほかの国に比べれば。大企業ももちろん利益率は全然比較にならないほど低いというのが日本の経営でありまして、これはなぜ直らないんだということにもつながってくるわけでありますので、やはり、文化の一つ一つ、なぜそうなっているのかということを見きわめた上で、しっかり、経済全体が発展する中でこういったあしき文化はなくしていくということを、根本的に解決していくということをやっていかなきゃいけないんだろうと思います。

 したがって、EUはやはり、それなりの、長い、それぞれの国の文化でも、もちろん、ドイツ、フランス、イギリスでみんな同じかと言ったら、必ずしもそうでもないので、それぞれ特徴がある動きをしていますが、そういうことについて、特に、例えば同一労働同一賃金のあり方についても、今、ドイツとイギリスとフランスでどう違うのか、その背景は何なのか、そんなことも含めてやっていただいています。

 結局、繰り返しになりますけれども、働き方改革実現会議の中で、しっかり、なぜEUでできてできないんだということを含めて、議論を深めていくべきではないのかなというふうに思います。

大西(健)委員 同一労働同一賃金は、職能給か職務給かとか、大分違いがあって難しい部分があると思うんですが、私は、インターバル規制の方は、これはやはり、EUでできて日本でできないのかという話が、よりこちらの方があり得る話ではないのかなと思います。

 ただ、今、企業文化という言葉が大臣の答弁で出てきました。私も文化とか人々の物の考え方というのは影響していると思うんですね。

 その点で一つお聞きしようと思うのは、例えば、日本社会は便利過ぎるんじゃないかと。最近は少し緩和されてきていると聞いていますけれども、例えばドイツでは、かつては、今も残っているんだと思うんですけれども、閉店法というのがあって、例えば日曜日とか、お店があいていないなんということは皆さんもお聞きになったことがあると思います。

 そこまでやるかは別にして、では、都会の真ん中だけじゃなくて、日本全国でコンビニが二十四時間営業していなきゃいけないのか、元旦からデパートが初売りしなきゃいけないのかというと、そうじゃないんじゃないかと思われる人もふえてきているんじゃないかと思います。

 最近、徐々にではありますけれども、この点について見直しの動きも出てきています。例えば、ファミリーレストランのロイヤルホスト、来年一月までに二十四時間営業を廃止することを決めました。また、三越伊勢丹では、一部店舗で元旦と二日を休みにした。飲食業界は慢性的な人手不足で、深夜の時間帯は客が少ない割に従業員には割り増し賃金も払わなければならないので、経営的にもコストパフォーマンスが悪い。また、デパート関係者は、拘束時間が長くなった販売職は雇用マーケットで敬遠され、結果として、百貨店の強みであった販売サービスの低下を招いた、正月をゆっくりすることで、お客様に質の高い、手厚い販売サービスを提供することができるのではないか、こういうふうに言われているんですね。

 私は、働く人に優しい社会にするためには、不便さを甘受する、こういうこともやっていかなきゃいけないと思うんですが、大臣、この点についていかがお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 正月営業に変化も出てきているじゃないか、こういうことでございました。

 やはり、さっき申し上げたように、激しい競争の中で企業がお互い競い合っている、それから、取引先あるいは一般消費者、こういったところの要望がどうなのかというようなことをよく考えて、それぞれの企業が判断して、こういうような問題、二十四時間営業あるいは正月営業、こういったことを決めておられるんだろうというふうに思います。

 デパート業界の話をいただきましたけれども、閉めて一年間の売り上げや利益を見て、休んだとしてもむしろ成績が上がるというようなこともあり得るんだろうと思いますから、それは、企業がそれぞれ選んでいただくことなんだろうというふうに思います。

 ちょっとこれは民間ではないかもわかりませんが、先ほど来ヨーロッパの話が出ていますけれども、例えばアメリカへ行きますと、大学の図書館というのは、二十四時間の図書館があるのは当たり前でありますが、日本ではまず余り見ないということを考えてみると、やはりこれは、大学のあり方としてそういうことをどう考えるのかということもあるんじゃないかなと思ったりもいたします。長時間労働といえば、そこで働く人は長時間労働でありますけれども、そういうこともある。

 私どもとしては、今お話があったように、ドイツでは休日に店を開いてはいけないというのがありますが、日本でそれをやろうと思ったら、多分、すぐにはやはりコンセンサスは得られないということでありますので、それぞれの文化的な背景を含めて大いに議論を尽くしてもらって、今回の働き方改革の中で答えが出せるものは答えを出していきたいというふうに思います。

大西(健)委員 時間になりましたので終わりますけれども、資料の五ページ目、それから六ページ目、できなかったんですけれども、五ページ目、先ほど井坂さんからもありましたけれども、例えば、裁量労働制とかみなし労働、時間管理なしという、時間管理が緩めば緩むほど長時間労働がふえる、こういう資料です。

 それから、最後の資料は、これは午前中にも与党の議員からも指摘がありましたけれども、三六協定を知らなかった経営者が約一六%。それは、知らないものを守れませんよね。ですから、私は、これはパンフレットとかポータルサイトなんて、そんな甘いことを言っていちゃいけないと思うんです。人を雇う人の責任というのは、こういうことは知っておいてもらわないと困ると思います。

 まだまだやらなきゃいけないことはいっぱいありますので、ぜひ来週も参考人を入れての質疑をしていただきたいということをお願いして、質問を終わります。

三ッ林委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 十月十二日の予算委員会で、電通の過労自死事件を初め、長時間労働について取り上げました。そのとき半分近く問いを残しまして、きょうは、パネルも使えなかったものを使って続きをやりたい、このように思っております。

 私は、その予算委員会のときに、同じ電通の二十四歳の青年の過労自死が認められた二〇〇〇年三月の最高裁判決から十六年たっても変わっていないではないか、厚労省は電通に対しどんな指導をしてきましたかと聞きました。そのときの大臣の答弁は、十月十一日、つまり質問の前の日、東京労働局長が企業の幹部を呼び出して指導を行ったと答えました。また、翌日、一斉に臨検に入り、さらに、その後は強制捜査にまで異例の早さで踏み切ったことは承知のとおりかと思います。

 しかし、本来答えるべきは、これから何をやるではなくて、何をやってきたのかと聞いたわけなんです。ですから、これまで、きょうの議論で何度も出されているように、二〇一〇年、中部支社、二〇一四年、関西支社、そして二〇一五年には本社が是正勧告を受けている。会社ぐるみで違法な労働をさせている、このことが指摘をされてきたのにそれが防げなかったということではないかと思います。まつりさんの自殺は、長時間労働について本社に是正勧告がされて四カ月後だったといいます。まさに全く効き目がなかったということになるわけです。

 そこで、昨年五月から、社会的に影響の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で行っている場合に公表するとしたわけですが、たった一社であるということ。私は、予算委員会でも指摘をしましたけれども、現実に亡くなってしまってから、あるいは長い時間をかけて裁判の勝訴をしてから、それでやっと企業名が公表されるでは全く遅いと思うんです。もっと早い段階、例えば、同じ企業が、たとえ支社が違ったとしても、二度目の勧告を受けた、こうしたときにはすぐ公表する、こういうふうに踏み切るべきではないでしょうか。

塩崎国務大臣 今御指摘の電通の高橋さんの案件を契機に、長時間労働に対しての監督の有効性についての御指摘が多く寄せられてきているわけであります。

 私どもの考え方は、先ほど申し上げたとおり、対応の強化をしてきたにもかかわらずこういうことが起きてしまっているということを重く受けとめて、そしてまた、電通の、今お取り上げをいただいている、かねてから同じような事案が出てきていたにもかかわらずまた起きたということについて、監督をする側として、監督の手だてが十分なのかどうかということ、そして体制が十分なのかどうか、あるいは考え方が十分かどうかということについて、先ほどの、事業場単位であったり労働局単位であったり、今までのやり方というものを含めて、やはり洗いざらい考え直して点検し直さなければいけないんじゃないかというふうに考えておるところでございます。

 いろいろな御意見があると思いますので、ぜひ、そういう御指摘には耳をしっかり傾けて、働き方改革実現会議でも取り上げて、答えを出していきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 この点は速やかな決断をお願いしたいと思います。

 先ほども紹介があったわけですが、十一月九日の厚労省主催の過労死シンポで、高橋まつりさんのお母様が挨拶をされました。

 娘は、日本のトップの企業で、国を動かすようなさまざまなコンテンツの作成にかかわっていきたい、自分の能力を発揮して社会に貢献したいと夢を語っていました、こう切り出して、希望を持って生き生きと働き始めたことが紹介されました。

 それなのに、十一月には、今紹介した最高裁の事案ですが、二十五年前の過労自殺の記事を持ってきて、こうなりそうと言ったこと、先輩に、死ぬのにちょうどよい歩道橋を探している自分に気がつきますとメールを送っていたことを紹介されました。自分の命よりも大切な愛する娘を突然亡くしてしまった悲しみと絶望は、失った者にしかわかりません、だから、同じことが繰り返されるのです、今この瞬間にも同じことが起きているかもしれません、娘のように苦しんでいる人がいるかもしれません、こう指摘をして、最後に、政府に対して、国民の命を犠牲にした経済成長第一主義ではなく、国民の大切な命を守る日本に変えてくれることを望みます、こう結んだ言葉を私たち国会も政府もしっかりと受けとめるべきだと思います。

 電通の捜査に全力を挙げ、働き方改革を行うと言っているのに、現在提出されている労基法改正案をなぜ取り上げないんでしょうか。この法案では、労働時間の把握が難しく、労災も証明しにくいと指摘されている裁量労働制の対象が課題解決型提案営業ということで拡大もされるわけです。

 インターネット広告を担当していた高橋まつりさんは、データの分析、報告書の作成、論文、企画書の作成も行っていたといいます。今回の法案で拡大される対象となるんでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一般論で申し上げれば、企画業務型の裁量労働制の適用でございますけれども、これは大臣告示で三年ないし五年程度の職務経験を経る必要があると定められておりますので、新入社員の方などは一般的には対象にならないというふうに考えております。

 また、御指摘の業務内容につきましても、これが企画業務型の裁量労働制の対象になり得るかどうかは、個別の事案でございますので個々にお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、御指摘のありました改正案の課題解決型提案営業の業務でございますけれども、これは法律と指針で要件を厳格に定めることとしておりますし、制度の導入に当たりましては、事業場において、労使同数の委員会におきまして、対象業務、それから対象労働者などを五分の四以上の多数で決議することが必要でございますので、一般には、対象となる方は極めて限られたものになるというふうに考えております。

高橋(千)委員 労使の合意があるから限られるだろうという答弁は、この間の、例えば派遣法の議論などを振り返ってみても、ちょっと説得力がないのではないかと思っております。

 三年から五年といっても、もう一年過ぎているわけですから、当然こうした働き方が対象になるであろう。

 電通の人事部長は、二〇〇二年の段階で、産総研の定期雑誌である「労務事情」の中に、企画業務型裁量労働制は当社の営業に直ちに適用することが難しいとして、法制度の改正が求められると訴えていたことももう知られている事実です。こうした、変えてくれ、対象にしてくれという側に立っていた電通である。そうした中でこのような働き方がされていたということを考えれば、やはりこれは対象を拡大するべきではないというふうに指摘をしたいと思っております。

 そこで、長時間労働が起こる原因は何かということなんですね。(パネルを示す)

 厚労省の委託研究で、みずほ情報総研がまとめた報告書の中にありますけれども、これは上の段は企業に聞いています。下の段はフルタイムの正社員である労働者に聞いているんですが、共通しているものがあるんですね。トップは、顧客からの不規則な要望、四四・五%。業務量が多い、四三・三%。仕事の繁閑の差、三九・六%。そして、人員不足が三〇・六%です。

 さっきペナルティーの話が出ましたけれども、電通と政府は契約する関係にあるわけですから、契約方の政府がこんな無理な要望をしていないのか、このことも当然問われなければならない。このことはみずからのこととして考えていただきたいと思います。

 それから、下の方は労働者の方なんですが、トップは、人員が足りない、これは括弧して、仕事量が多い、四一・三%、これは合わせているんですね。予定外の仕事、三二・二%。これはやはり共通していますよね。人員の割に業務量が多いということが明確なんです。

 安倍総理が、当初、自身のサラリーマン時代の経験に照らして、自分は八時に帰りたいけれども、なかなか周りの雰囲気がそう許さないということを述べていましたけれども、周りに遠慮して早く帰れないというのは、これは、この下の方にあるんですよ、五・四%。そんなのが理由ではないんです。消灯時間を早めればよいといった精神論では解決しない、このことは言えると思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 長時間労働の背景というのはさまざまなものがあるんだろうと思います。御指摘のように、業務量とか人員不足の問題とか、あるいは発注者とか取引先からの、今もお話が少し出ましたが、アンケートの中にも若干ありますけれども、急な要請とか納期への対応をしないといけないとか、長時間労働をよしとするような企業の業務プロセスあるいは人事評価、まあ人事評価というのは大きいと思いますね、さまざまな要因があるんだろうというふうに思います。

 こういうことでありますので、長時間労働の是正については、直接的には、三六協定の実効性をどう確保するのかということが大事でありますので、先ほども申し上げましたけれども、時間外労働規制のあり方、これを含めて総合的な見直しを行っていかなければならないのではないかというふうに考えております。

 やはり、先ほど来出ているように、文化のようなものの要因というのをしっかりと分析した上でそこにアドレスをちゃんとしないとなかなか変わらないのかなというふうに思っておりますので、しっかりやっていきたいと思っております。

高橋(千)委員 いろいろなことを言いましたが、精神論だけでは解決しないという点では一致していただけるでしょうか。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、さまざまな要因にさまざまにきちっと対応していくということですから、それは精神論ではないということだと思います。

高橋(千)委員 よろしいです。

 電通ショックで、いろいろな企業が消灯時間を早めたりとか、あるいは、社内メールを一定の時間の後はやめてくださいというふうなことをやっている。それも大事なことかもしれませんが、結局残業隠しになっている。これでは全然意味がないわけですから、なので、精神論ではないということを確認させていただきました。

 次に、連合総研の二〇一二年の調査で、残業手当が支給されない者の割合、つまり、支給される立場でない者、三三・一%、例えば管理職ですとか、あるいは、今の裁量労働制のような働き方というのがあると思うんですが、三分の一というのはとても多いと思いますよね。これをどう思いますかということと、今回の法案によって、そういう残業代が支給される立場、あるいは働き方ではない人がどのくらいになるとお考えでしょうか。

山越政府参考人 御指摘の連合総研の調査でございますけれども、これは労働者のアンケートで、残業手当が支給される立場か否か、そういう設問で、正社員につきましては支給される立場であるという者が六九・九%となっていることは承知をしております。

 このアンケートでございますけれども、これは、労働基準法上の割り増し賃金の規制が適用除外されております管理監督者が対象に含まれておりますし、また、残業が発生しない可能性のある方の取り扱いもはっきりしないということもございます。こういう点からすれば、数字だけを見て評価することは難しいのではないかというふうに考えております。

 それから、御質問のございました法案についてでございますけれども、現在提出をしております労働基準法改正案で創設する高度プロフェッショナル制度でございますけれども、これは、対象業務につきまして、まず高度の専門的知識等を要する、あるいは、従事した時間と成果との関連性が通常高くないといった考え方を定めますとともに、年収要件を定めることにしております。支払われることが確実に見込まれる賃金の額が平均給与額の三倍を相当程度上回ることを法律に規定いたしまして、具体的な年収額として一千七十五万円を参考に省令で規定することとしております。

 それから、裁量労働制の追加業務でございますけれども、これも法律と指針で要件を厳格に定めますとともに、制度の導入に当たりまして、労使同数の委員会で対象業務、対象労働者を決議するということにしておりますので、先ほど申しましたように、対象となる方々は極めて限られた者になるというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 資料の二枚目を見ていただきたいと思うんですね。

 数字が定かではないというような答弁をされました。これは、正社員の部分の今の内訳を書いたものであります。残業手当の受給資格の有無、これは、支給される立場である、六九・九%、立場である人の話ですよ、今度は。それで、実際に残業手当を申告しているかどうか。それが、申告しなかった時間があると答えた人が四一・五%いらっしゃいます。では、それがなぜなのかというときに、一番多い青の部分は七六・五%、申告する際、自分自身で調整したから、これがこんなに多いんですね。

 それは、さっき議論した高橋まつりさんのことも同じなんですね。過少申告していたのは、結局、三六協定の特別条項の上限七十時間に合わせてぎりぎりの時間を申告していた。だけれども、入退館ゲートのデータを調べたら、百三時間とか百時間を超える残業がいっぱいあったということがわかって認められたわけですけれども、結局、そういうことが自主申告という形で実際は抑制されているということも既に起こっているし、実際にこんなにあるわけですよね。

 だったら、このことにやはりきちんとメスを入れなければ、なぜこういうことが起こっているのか、メスを入れなければならないと思いますが、いかがでしょうか。

山越政府参考人 使用者が今御指摘のありました労働時間を適切に把握、管理することは非常に重要であるというふうに考えておりまして、こうした観点から、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準を定めているところでございます。

 これに基づきまして、労働基準監督署が行います監督指導におきましては、この基準に従いまして労働時間が適正に把握されているかの確認を行っておりまして、その際に、自己申告により把握された労働時間が実際の労働時間と合致しないのではないかと疑われるような場合には、使用者に対し実態調査を行うように指導しているところでございます。

高橋(千)委員 その具体的な要因をしっかりと調査していただきたい。

 先ほど、大西委員が数字の表を出されたんですが、それをグラフにしたものがこれなんですね。企画業務型裁量労働制の一日のみなし労働時間と実労働時間なわけです。

 これは、上がみなし労働時間で、平均時間は八時間十九分で、みなし時間というのは大体一日八時間の枠におさめるわけなんですけれども、実労働時間で見ると、平均すれば九時間十六分ですが、十時間超えが三一・七%、最長の者は、平均十一時間四十二分で、十時間超えが七五%にもなっている。

 だから、これが必ずしも裁量がきいている働き方なんだと言えない、労働時間が長く出ている、このことをしっかりと踏まえることが必要だと思います。

 時間の関係で次の問いを、続けて言いますけれども、大臣に伺います。

 例えば、外資系の企業で企画業務型裁量労働制で働く男性は、労働時間は自己申告なので少なく申請すると言っていました。なぜかと聞いたら、自分がプロジェクトマネジャーだからチームの成果に責任を持たされる、長く働くやつは仕事ができないやつ、そういうイメージになっちゃうから、自分で自分を管理する仕組みがつくられているんですね。先ほどのグラフの証明になると思うんです。また、同じ社で別の部署で働く男性は、裁量労働制ではないが、今度対象になるかもしれません、クレーム処理や外国との交渉など、二十四時間のべつ幕なし仕事をしている、まさに医師のオンコールに似ている状態なんですね。

 そういう仕事だとわかっているからこそ、労政審の建議でも、「労働基準法第三十八条の四第三項に基づく指針において、「当該事業場における所定労働時間をみなし時間として決議する一方、所定労働時間相当働いたとしても明らかに処理できない分量の業務を与えながら相応の処遇の担保策を講じない」」、つまり、労働時間におさまっているけれどもとても処理できない、だからサービス残業しなきゃいけない、そういうことはしないということですよね、指摘しているのは。「「制度の趣旨を没却するものであり、不適当であることに留意することが必要である」」と明記している。

 私は、長時間労働になり得るということがわかっているなら、担保云々の前に、広げる必要はないと思います。大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 裁量労働制の件でお尋ねでございますけれども、自律的で創造的に働くことを可能とするための制度ということで組み立てられているわけで、業務の遂行手段あるいは時間配分をみずからの裁量で決定するというのが本来の姿であるわけでございます。

 一方で、厚生労働省が実施をした実態調査、これは、企画業務型の裁量労働制で働く方の労働時間を見ますと、今お話がありましたけれども、平均的な方につきましては、みなし労働時間で働く方と大きく異ならない一方で、一部にみなし労働時間で働く方よりも長い傾向が見られるということは事実だと思います。

 みなし労働時間の設定につきましては、現在でも、業務の内容や裁量労働制の制度趣旨等を踏まえながら、労使同数の委員会でよく話し合った上で、五分の四以上の多数で決議をしていただくということになっておりますし、また、労使委員会が決議をしたみなし労働時間と実労働時間との間に乖離がある場合には、これは監督署が労使委員会に再考を促す指導を行っているという形になっております。

 さらに、現在提出している労働基準法改正案に合わせて、労働時間に関する働く方の裁量を損ねるような過大な業務が課されることのないように、法に基づく指針で措置をすることとしておりまして、これらによって、労使同数の労使委員会でみなし労働時間が適切に決定されるように周知、指導に努めてまいりたいと思います。

高橋(千)委員 みずからの裁量がほとんどないという実態だからこそ、今こういう議論を進めてきたと思っております。

 政府が年内にもまとめを出そうとしている働き方改革実現会議に資するためという厚労省の時間外労働規制に関する検討会、これは、実は議事録もないので中身がわからないんですね。その中で、十一月十五日に出された主な意見を見るだけでも、裁量労働制拡大の方向だというのが見てとれます。

 例えば、現場のマネジャーについては、仕事の進め方についてどう組み立てていくのかというマネジメントの訓練が必要だ、現場のマネジャーが現場を仕切れるかで組織全体の労働時間が変わる、今私が指摘したことと同じことじゃないですか。それをよくわかっていて、この有識者たちは言っているんですよ、マネジメントの訓練さえすればということを言っている。

 それとか、緊急事態等に対応する必要もあって、一カ月単位の規制が難しいのであれば、より長い期間での規制もあり得るということを言っている。先ほど言ったように、繁閑があると言っているわけですよね。繁閑に合わせて長いスパンで労働時間を守れと言ったら幾らでも守れちゃうんですよ。仕事が余りないときに、それを十分ならしていけばいいことだ、それでは解決にならないだろうということを議論してきました。

 長時間労働が常態化している職種にはそれぞれの課題があり、個々の課題を解決していかない限り、法的な上限規制をしても思うような効果を上げられないのではないか、こんなことを言っているんですね。有識者ばかりが集まって、あれこれ議論して、結局、法的規制をしない方がよいという結論になるのでは、何のための働き方改革かわかりません。大臣、そうではないと一言言ってください。

塩崎国務大臣 何度も申し上げておりますけれども、長時間労働の規制のあり方について議論をしていくことが大事であるということを申し上げて、規制をしていくという方向だけで、直接規制をしていくということで、あるいは一律規制をしていくということだけで話をまとめてくださいということをお願いしているわけではなく、長時間労働の規制がどう実効性を持って、それぞれの働く人たちの意思に基づいて働けるようになるのか、つまり、働く意欲を持っていない人が長時間働かされるということがあってはならないわけでありますので、そういう意に反する長時間労働が行われてしまわないようにするための規制のあり方について議論を賜るということが、いずれの場でも大事だというふうに考えております。

高橋(千)委員 今言ったことをしっかりと踏まえていただきたい。

 これは途中の経過だから、まだそういう議論、答えしかないと思うんですけれども、現実に起こっていることをしっかり踏まえて、せっかく、これまでにない調査を、この検討会をやることによっていろいろな調査ができました。裁量労働制の調査だって、今までなかったわけなんです。それをしっかりと生かしていかないと、結局規制は要らないよという話になったら意味がないわけですから、そこはしっかりとお願いしたい、このように思っております。もちろん、今の労基法ではなくという意味で言っております。

 そこで、残りの時間で、労災の問題でぜひ質問したいと思っています。

 最後の資料に過労死等の時間外労働時間数というのがあって、これは五年分をまとめたものなんですけれども、精神障害が八十時間以上の合計で八百七十五件あるんですね。その下の方には、八十時間未満というのが八百八十八件もあるということなんです。私、問題にしたいのは、これでもまだ実態の一部にすぎない。つまり、支給決定されない人、争っている人、入り口で断念した人など、さまざまいると思います。

 そこで、まず大臣に認識を伺います。

 長時間労働とパワハラ、セクハラなどの複合的な要因が労災申請の原因になっていると思うが、どうか。また、心を病んだ人が労災を申請し認定されるまでの道のりは、傷ついた要因を振り返ることでもあり、困難な道のりであります。それを理解した十分な対応ができていると思いますか、伺います。

塩崎国務大臣 御指摘のように、精神障害につきましては、長時間労働による心理的な負荷だけではなくて、仕事の失敗とか、あるいは過重な責任の発生とか、職場における役割や地位の変化、嫌がらせ、いじめ、セクハラなど心理的な負荷によって発病するものであって、これらを総合的に評価して労災認定を行っているところでございます。

 業務により精神障害を発病された方が労災請求をしやすくすること、また、審査を迅速にスピーディーに行っていくことは大変大事だというふうに思っております。

 こういうことで、平成二十三年十二月に心理的負荷による精神障害の認定基準というのを策定しておりまして、認定要件を明確にすることで、それまでより労災請求をしやすい、また、迅速に審査ができるようにということを、この基準の設定によってできるようになったのではないかというふうに思っております。

 引き続き、迅速かつ適正な労災認定を行っていかなければならないというふうに考えております。

高橋(千)委員 二〇〇九年、NTT西日本兵庫営業部課長代理の四十六歳の男性が強制わいせつ致傷と監禁容疑で逮捕、送検された事件がありました。取引先の営業担当だった二十歳代の女性をホテルに連れ込み、俺は仕事上で神様やなどとおどして、体をさわり、右足に軽傷を負わせた上、八時半ころまで監禁した疑い。これは新聞でも報道された事件なんですが、問題となったのは、会社側が、社員のプライベートのこととはいえとコメントしたこと、これは、社員の内々の話だというふうな意識を披瀝してしまったことで批判が集中したわけなんです。

 私は今、そっくりな案件で、NTT東日本に対して労災の再審査請求をしている女性の話を聞きました。

 電通以上に誰もが知っている大企業で、こうした案件を社員のプライベートの問題と片づけて自浄能力を果たせない、あの手この手で労災認定を阻止するようなことがあってはならないと思います。

 この当該女性が労働基準監督署長名で八月に受け取った不支給の決定通知書には、本請求にかかわる精神障害の発症については、精神障害の認定基準である発症前おおむね六カ月の間に発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷があったとは認められず、業務起因性が認められないためとありました。

 厚労省のパンフレットにも、これは必ず機械的に六カ月前ではなくて、その出来事がその前から起こっているけれども繰り返されている、そうしたことを評価するとちゃんと書いているわけなんです。

 大臣が言った基準が決められてから、昨年の十月にはもっと詳細な要綱が出されております。そうした被災者に寄り添ったことをやれと言っていながら現場ではこんな機械的な対応がされている、これは本当に直ちに是正をしていただきたいと思いますが、どのように対応していただけますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 心理的負荷による精神障害の認定基準におきましては、今御指摘のありましたように、発症前おおむね六カ月間に業務による強い心理的負荷が認められることを認定要件の一つとしているわけでございますが、いじめやセクハラのように行為が繰り返されるものにつきましては、発病の六カ月よりも前にそれが始まり、発病まで継続していることもあるわけでございまして、このような場合は、いじめなどが始まった時点から心理的負荷を評価することとしておりますので、引き続き適正な労災認定に努めるようにしてまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 また続きをやりたいと思います。これで終わります。

丹羽委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 田村先生、御無沙汰をしております。

 きょうは、河野委員にかわっていただきまして、質問のお時間を頂戴いたしました。

 きょうは長時間労働ということがテーマで、集中審議という言い方がいいのかわかりませんが、そういう趣旨で一般質疑の時間をいただいている、こう伺っていますので、労働時間の話を少しさせていただきたいと思います。

 衆議院のインターネットテレビとかニコ生とかを見ていらっしゃる方は、また足立が民進党の批判をするんじゃないかと楽しみにしている方もいらっしゃるかもしれませんが、きょうはちょっとしません。だから、そういう御期待のある方は、きょうはちょっと御容赦をいただきたい、こう思います。

 実は、労働時間については、私も大変苦しまされてきたテーマでありまして、かつて物議を醸した、自分の秘書から残業代請求訴訟を起こされたということをここで申し上げて、これは田村大臣の時期でしたが、皆様から、しようもないことを言うなということで大変お叱りをいただきました。

 これは実際に訴状が出されまして、またその訴状がリークをされまして、私のふだんの行いが悪いということで大変お騒がせをしたんですが、今でもネット上では、足立さん、早く残業代払ってやってください、こういうコメントが来ます。これはちゃんと和解をしまして、しかるべき、金額は本当は、実はその和解条項で、相手方の方は、もう何も言いません、ただ、足立さんの方は何でもしゃべっていいですよ、こういう契約になっているものですから、本当は金額とかを申し上げても和解条項には反しないということでありますが、ちょっと、結構巨額ですので、きょうは控えておきたい、こう思います。

 当時、私が申し上げたのは、秘書さんだったので労働時間規制の適用はないんじゃないかというようなことも含めて、最高裁まで争うということを申し上げました。ただ、これについては、私の後援会が、ちょっと勘弁してくれ、こんなの最高裁まで争われたらテレビカメラがずっと追いかけ回して、足立さんはもう将来はないよということで、支持者の皆さんが、頼むから和解してくれ、こういうことでしたので和解をしましたが、なぜ闘わないのかという批判もいただきました。

 私がそういう問題、私が経営者として、使用者というか、その雇用している秘書さんから残業代請求をされたということについて、実は全国からたくさんのメールをいただきました。いや、私たちも同じことで苦しんでいるんだと。そういう、言葉は悪いけれども、これは読まれたことがありますか。こういう本がいっぱいあるんですね。ちょっとお配りもしていないかな。お配りしていますね。

 とにかく、全国の経営者、特に中小零細、私の事務所も超零細企業です。これが、いわゆる、ここには「モンスター社員」と書いてありますけれども、ブラック社員という言い方をされるかもしれません。もちろん、経営側も、会社もブラック企業ということでいろいろ言われるわけですが、社員にもモンスターだとかブラックがある、こういう文脈で、会社が倒産しないようにちゃんと考えておいた方がいいよ、こういう本です。この黒い本の田岡さんというのは厚労省の職員だった方、これはここにあるんですけれども、よくできていますね。なかなかいい。これはちゃんと許可を得ていますから。御存じですか、田岡さんて……(発言する者あり)知らない。でも、よくできている本です。

 別に私は、経営者と労働者を、何かブラック企業とブラック社員が闘うみたいなことを決して望んでいるわけではありませんが、電通の問題もあって、ついつい、労働者をどう守るか、これはもちろん大事なんだけれども、私は、実はモンスター社員の訴え、あるいは弁護士さんも、最近は過払い金を取り戻す訴訟がもう大分一段落したので、今は弁護士さんも飯が食えないということで、残業代請求訴訟が一つのはやり、それは弁護士さんが飯を食っていくためにね。そういうところもあるという背景もあって、こういうものが比較的盛り上がって、少し前、盛り上がっていたところであります。

 私がきょう質問させていただくのは、労働者を守ることも大事なんだけれども、経営をしっかりと守っていくことも大事だということで、大きく二つの話をさせていただきます。

 順番を変えて、まず、ちょっとマニアックな方から行きますが、これは事務方でも結構です。労働基準法の四十一条二号、先ほど申し上げた、例えば私が採用している秘書さんたち、これは秘書ということで、特に二人ほどは、私が二十四時間、三百六十五日働くのは私の勝手ですけれども、そこにべたっと張りついて、夜中でも電話をする、どこかにちょっと車で合流してもらう、そういうことをお願いしている秘書さんが二人、三人います。

 こういう方には労働基準法四十一条二号の労働時間規制が適用除外されていると私は理解していますが、実は、夜の十時から朝の五時までの深夜割り増しは適用除外されていません。これは何でされていないのか、ちょっと教えていただけますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきました労働基準法第四十一条でございますが、お話にもございましたように、その業務の性質でございますとか態様が法定労働時間や週休制を適用するに適しない事業あるいは業務であることから、労働時間、休憩、それから休日に関する規定を適用しないこととしているわけでございますけれども、深夜割り増しについては適用除外となっていないところでございます。

 これは、労働基準法第三十七条、これが深夜割り増しの規定でございますけれども、深夜の労働につきまして、その労働の強度等に対する労働者への補償を定めたものでございます。これにつきましては、管理監督者も含めて適用除外とされていないというのが法律の定めでございます。

足立委員 大臣、これはもうなくしたらいいんじゃないかなと思うんですけれども。

 実は今、日本維新の会で百本の法案をつくっていますが、まだ二週間、まあ一週間あるということで、今もつくっています。その中に、私が一本、百本のうちの一本として、まだ決まっていませんが、秘書の深夜割り増し廃止法案。これは、ちょっと大臣、御検討の余地はありませんか。

塩崎国務大臣 御提案でございますが、そういうお考えも、もちろんあるのかなということもないことはないわけでありますけれども、一方で、何でこういう規制を労働基準法でそもそも、こういうというのは、労働時間の規制をなぜするのかというときの原点は、やはり健康を損なわないようにするということではないかというふうに思いますので、そこのところの問題をどうクリアするのかということで、高度プロフェッショナル制度も、これは別途、健康確保措置というものをしっかり設けて、罰則つきで、医師との面談をというような手だてを考えた上でこうやっているということでありまして、今の御提起について、にわかに私も答えを持ち合わせているわけではありませんけれども、健康が一番重要な問題になるのかなというふうに思っております。

足立委員 ちなみに、大臣の事務所は、深夜割り増しというのを従業員に払って、そういう払わなあかん方が、大臣なんか四国だし、十時以降もいろいろあると思うんですけれども、深夜割り増しは払っていらっしゃいますか。一応、ちょっと念のため。きょう、追及するつもりは全くありません。気楽に答えてください。

塩崎国務大臣 先ほど、秘書の扱いについて、「機密の事務を取り扱う者」には、労働時間等に関する規定については深夜業に限ってだけ課せられて、あとは課せられない、適用されない、こういうことでありまして、国会議員の秘書として、そういう「機密の事務を取り扱う者」に該当し得る。

 私の事務所も、もちろんそういう者もおるわけでございますので、私の事務所においては、この労働基準法に基づいて適切に対応しているということでございます。

足立委員 大臣、これは一応通告させていただいたので、深夜割り増し、塩崎大臣の地元事務所というか、東京もそうかもしれませんが、塩崎事務所で深夜割り増しの支払いがあるかないかだけは、お調べいただいていないかな。

塩崎国務大臣 これに関しては、私どもの事務所内部の問題でもございますので、個別の労働条件等について、つまびらかにお話をすることは差し控えたいというふうに思います。

足立委員 橋本副大臣、どうですか。

橋本副大臣 大臣政務官のときにも同じ問いをいただいた記憶がございますが、私の事務所におきましても、労働基準法にのっとって深夜勤務に関しても対応しているということで、つまびらかに、あるとかないとか、具体的にどうするということはお答えを差し控えたいと思いますが、法律にはのっとっているということは申し上げたいと思います。

足立委員 きょうは本当に、何といいますか、これでがたがたするつもりは全くないんですが、ぜひ大臣初め厚労省の皆様にも改めて認識いただきたいのは、少なくとも、余り私も適当なことを言うといけません、これは結構私の積年の課題でして、結構いろいろな議員に聞きます。国会議員ですよ。だから、それでまず知りません、みんな。まずこの規定を知りません。仕方ないですね。でも、事務所で一応そういうことを確認してもらったこともあるんですけれども、日本維新の会じゃないですよ、特に民進党の議員さんとかね、まあ、そんなことはないか。いろいろ聞きますと、大体、深夜割り増しを払っている議員さんというのはほとんどいないですね。

 では、国会議員の事務所で、夜の十時から朝の五時まで、夜の十時以降、スタッフとコミュニケーションをとっていない、あるいは仕事をお願いしていない、車でちょっと迎えに来てくださいということをやっていない事務所というのは余り、結構何かしんみりしていますね、みんな。国会議員、政治家の事務所は一切そういうことをやっていないか、やっている場合には深夜割り増しを払う、これが労働基準法の規定です。私も、実はこれを知らなかったんですね、二年前まで。二年前に、これを払うように今ちゃんと全部やっています。

 何でこういうことを申し上げるかというと、これは全然関係ない、おとついのNHKの、これは雇用じゃないですよ、これは車のスピードなんです。ちょうど私が秘書の残業代で、ここでいろいろお話しして、また足立さんは言い過ぎだといってえらい怒られたときに、何を言ったかというと、いや、私はそんな秘書の残業代は払っていませんよということを申し上げて、それは秘書として、労働基準法四十一条二号の適用除外だから払っていないわけですけれども、実は十時以降は払わなあかんということを知りませんでした。だから私は、それを知るまでは労働基準法に違反していたんですね。余り言っちゃいけないかな。違反していたんです。それはみずから是正をし、もう完璧にやっています。

 当時の私の事務所というのは、当選して一期目。ベンチャー企業も何も、もうぼろぼろのベンチャー企業です。だから、スタッフも皿回しのような状態でこうなっていたので、離職率は八割ぐらいでしたね。だから、一期目の私の事務所は離職率八割ですよ。でも、今二期目です。二期目の離職率はほぼゼロ。深夜割り増しも払う。離職率はほぼゼロ。みんな喜んで、足立議員の事務所はすばらしいということで……(発言する者あり)ああ、ではまた、本人を参考人招致したいと思いますが。

 まあ、それはいいんですが、おとついのNHKで、実は今、田舎の、これは北陸の道路なんです、対面車線で分離帯がない道で、今、正面衝突の事故がすごくふえているんです。それで、スピードをはかってみたら、七十キロ制限のところを、この黄色い点のようなスピードでみんな走っているというわけですよ。この道で七十キロのルールを守ったら事故りますよね。だって、みんな七十キロを超えて走っているんだから。

 こういう話をデータなしで私がこの場で言ったら、法令違反を認めるのかとかいってえらい怒られましたが、私が申し上げたいことは、道路交通法や労働基準法の一部は、こういう現状があると思うんですよ。

 橋本副大臣、これにお詳しいのでちょっと。こういう現状はいっぱいあり、労働基準法の世界でも、特に医療、運輸とかの分野で多いですね。お詳しいので、ちょっと副大臣にお願いします。

橋本副大臣 多い、少ないということを、今どうなのかということを申し上げる材料が今手元にあるわけではございませんが、仮にそういうものがあったとすれば、きちんと指導して直させていただくというのが私どもの立場であろうと思っております。

足立委員 局長、やはりそういう分野、医療とかトラックとか運輸、これはやはり労働基準法の問題になる事業所が多いと思いますが、どうですか。

山越政府参考人 平成二十七年に労働基準監督機関が労働基準法の労働時間の関係で是正勧告を行った件数でございますけれども、今御指摘のございました業種でいいますと、例えば、トラック運転者を使用する事業場は千七百二十九件、医療保健業は六百八件などとなっております。

 違反の状況でございますけれども……(足立委員「いや、局長、全体で幾らですか、数字は」と呼ぶ)全体は、監督実施事業場数が十三万件で、労働時間の違反は二万七千件余りでございます。

足立委員 すると、特に医療、トラックが多いわけじゃない、それぞれだということでいいですか。

山越政府参考人 今、労働時間の関係の違反を申し上げましたけれども、業種によって、例えば安全衛生の関係で違反が多い業種もございますし、労働時間の関係で違反が多い業種もございます。

 それから、監督は、労働基準法違反が疑われるような事業場を重点的に行うことになりますので、当然、一般的な違反の比率よりも高い割合になるということもあろうかと思います。

足立委員 きょうは、始まってから五月雨式に幾つか伺いましたが、私がきょう申し上げたいことは、電通の事件、これは本当にお悔やみも申し上げたいし、本当に悲しい出来事であったわけです。実は、きょうの集中審議も、恐らくそういうことを背景にこういう場が用意されているんだと思いますが、実は労働者も、本当にいろいろ制度整備をしていかなあかんのですが、それだけを見ていると、今度は経営者は大変な思いをしている。

 例えば、この「中小企業がユニオンに潰される日」という本なんかにいろいろ書いてあるのは、結局、例えば労働者が集団訴訟で残業代請求したら、潰れるベンチャー企業は山のようにあります。私がこの問題を以前提起したときも、全国の経営者からメールが来て、電話が来て、この問題をぜひひるまずにやり続けてほしいという要請のメールがたくさん来ました。

 だから私は、そもそも、労働時間規制自体が、今の新しい労働社会の実態からやはり乖離をしてきているんじゃないか。その中で、大臣も、あるいは厚労省も、高度プロフェッショナル制度とか、新しい働き方の制度をつくってきているんですね。でも、それらについては、きょうも、質問された何人かの民進党の方々から、残業代ゼロ法案だとか、あるいは解雇についても首切り法案だとか、いろいろレッテルを張られて、ある種の法案がやはり滞っているわけです。だから私は、厚労省、厚労大臣には、経営側、労働側、あるいは働き方だけじゃない、採用の問題とか、そういうさまざまな問題に目くばせをして、本当に会社も発展をする、労働者も幸せになれる、そういう労働社会をどうやってつくっていくかということをやはりしっかり検討いただきたい、こう思います。

 だから、まず、労働時間規制自体が、もう新しい今の社会、労働時間規制というのは、もともと工場のラインに一番ぴったりくるわけです。この乖離があるという認識は大臣におありですか。おありだと思いますけれども、その辺、ちょっとお願いします。

塩崎国務大臣 今、安倍内閣としては、一億総活躍社会をつくっていこうということで、それぞれがそれぞれの意に従って暮らしていくということで、労働時間に関する制度を社会の実態に合ったものにしていくということがそういう中にあって大事だというふうに考えていまして、このためには、働き過ぎの是正を図るということとともに、多様で柔軟な働き方ができるような、そういう社会づくりをしなきゃいけない。

 そういう観点からすると、長時間労働を防止するための労働時間規制というのは引き続き必要であるとともに、一方で、働く方々一人一人のニーズや実情に応じて、時間ではなくて成果で評価される働き方を希望する方には、それが可能となるような制度を整備するということも大事であって、多様で柔軟な働き方を可能とする仕組みも必要だというふうに考えております。

 つまり、みずからの意思でみずからの働き方を選べるということができる社会であってほしいな、同時に、健康はもちろん守っていかなければならないということではないかと思います。

足立委員 まさに今大臣がおっしゃったとおりで、それをしっかりやっていただく必要があるんだけれども、例えば、安倍内閣で働き方改革ということを今議論されていますが、この間も私、予算委員会か何かでやりましたが、安倍政権全体でやっているその働き方改革の中には、例えば今回継続審議になっている労働基準法とかは入っていないわけです。そのときに、何で入っていないんだという御質問をしましたが、恐らく、勝手なあれでおもんぱかると、民進党さんのレッテル張りに、それをそこに含めておくと、その働き方改革全体が、残業代ゼロ法案とか首切り法案とかのレッテルにまみれちゃって、なかなか足を引っ張られるので、そこだけは一応切り離してやっていらっしゃるのかなと、こう思い……。もう時間が来ていますか、時間が来ている。ごめんなさい、ちょっとわかっていなくて。終わらなければいけませんね。

 では、まあそういうことで、しっかりこの労働問題、きょうは不思議とこの厚生労働委員会が大変静かな環境でしたので、私も一応空気は読めますので、きょうは静かにやらせていただきました。

 大変にありがとうございました。済みません。

丹羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十九分散会


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