衆議院

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第19号 平成29年5月12日(金曜日)

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平成二十九年五月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      青山 周平君    赤枝 恒雄君

      秋葉 賢也君    秋本 真利君

      穴見 陽一君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    木原 誠二君

      小松  裕君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      冨岡  勉君    豊田真由子君

      中川 郁子君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    鳩山 二郎君

      福山  守君    堀内 詔子君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      阿部 知子君    大西 健介君

      岡本 充功君    郡  和子君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      初鹿 明博君    水戸 将史君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   内閣府大臣政務官     田野瀬太道君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術・国際保健総括審議官)  福田 祐典君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  蒲原 基道君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           伊藤 明子君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           篠原 康弘君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           高野  滋君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     菅井 雅昭君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     青山 周平君

  務台 俊介君     鳩山 二郎君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     穴見 陽一君

  鳩山 二郎君     秋本 真利君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     務台 俊介君

    ―――――――――――――

五月十一日

 医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、医療法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 医療法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎国務大臣 おはようございます。

 ただいま議題となりました医療法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 近年、遺伝子情報を用いた治療など医療技術が進歩する一方で、高度な医療を提供する特定機能病院において医療安全に関する重大事案が相次ぐなど、医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、遺伝子情報を含めた検体検査の精度を確保するとともに、特定機能病院におけるガバナンス改革を含めた高度な医療安全管理体制を確立すること等により、安全で適切な医療を提供する体制を整備するため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、遺伝子情報を用いた医療の実用化等に向けて検体検査の精度を確保するため、医療機関の中で検体検査を行う施設に関する基準の創設、衛生検査所等において行われる検体検査の精度の確保に関する基準の明確化等を行います。

 第二に、特定機能病院におけるガバナンス体制を強化し、高度な医療安全管理体制を確立するため、特定機能病院が医療の高度の安全を確保する必要があることを法律上明記し、多職種で構成される合議体の決議に基づく管理運営の確保、管理者の選任方法の透明化とその権限の明確化の義務づけ等の措置を講じます。

 第三に、医療機関のウエブサイト等についても虚偽の広告等を禁止するなど、医療広告規制の見直しを行います。

 第四に、持ち分の定めのない医療法人への移行促進、法人経営の透明化等のため、移行計画の認定基準等の見直しを行うとともに、認定期限の延長を行うこととしています。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

丹羽委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房技術・国際保健総括審議官福田祐典君、医政局長神田裕二君、健康局長福島靖正君、医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長北島智子君、雇用均等・児童家庭局長吉田学君、社会・援護局長定塚由美子君、社会・援護局障害保健福祉部長堀江裕君、老健局長蒲原基道君、保険局長鈴木康裕君、国土交通省大臣官房審議官伊藤明子君、総合政策局次長篠原康弘君、航空局安全部長高野滋君、観光庁審議官菅井雅昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中英之君。

田中(英)委員 おはようございます。自由民主党の田中英之でございます。

 本日は、一般質問の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。

 かねてからいろいろと疑問に思っていたことやお聞きしたいことをきょうはお伺いさせていただけるということですので、少し準備をさせていただきました。

 それでは、早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 特殊出生率、希望出生率を一・八にするという目標は、数字で見るとそんなに大きくないんでしょうが、実際のところは、ここを達成するまでには、本当にいろいろなことをしていかなければできない、一つのことではなくして、いろいろな取り組みをしていかなければならないんだというふうに思っております。

 先般、我が党の一億総活躍推進本部の方でも、一億総活躍の構築に向けてどのようにしていくのかという提言をまとめ上げられました。その中にも、女性の方々の活躍や若い方々の就労、またシニア世代の方々の就労、こういったことも含めてでありますけれども、やはり医療に関しても、希望出生率一・八に向けていろいろな課題があるんだということで、こういった提言をまとめ上げられたというふうに、私自身も目を通させていただきました。

 そこで、そこに直接的に関係することではないわけでありますけれども、一・八という希望出生率に向けて、どのような形で取り組んでいくか、どんなことにいろいろな形で取り組んでいけばいいのかということを私なりに実は考えさせていただきました。

 実は、先般、地方創生特別委員会の方では、特区の関係で、小規模認定保育園、保育所の年齢制限の拡充というものが一つございました。そのときにも少し触れさせていただいたのは、保育園の、保育所の面積の最低基準のあり方についてお伺いをしてきました。

 そんな中で質疑をさせていただいたんですが、お聞きしたのは、面積基準というものを実際はどのような形で決められたのか、どんなことを参考にされたかということや、また、その基準というものを決められてから、この間、どんなタイミングで、いろいろと、新たな基準をつくったらどうだとかいう研究調査をされてきたのかということをお伺いしてまいりました。

 どんな基準でつくられたのかなということに関しては、昭和二十二年、ですから、ほぼほぼ今から七十年前近くになるんだというふうに思いますけれども、アメリカのワシントン州の遊戯場を基準にして、当時、幼児について三・二五平米、これを参考にして児童福祉施設の最低基準案というものをつくられました。

 ただ、翌年、実態を調査して、今の、例えば乳児室であれば、ゼロ歳から一歳児については一・六五という数字であったり、匍匐室に関しても、ゼロ歳から一歳児に関しては三・三平米、また、保育室については二歳から五歳は一・九八、この数字を実は決定されたわけであります。

 と考えましたときに、ほぼほぼ七十年近くなるものでありましたので、これに関して、時代の流れの中で、保育施設というものも安全面をいろいろと考えてきてつくっておられるでしょうし、この基準というものが果たして今の時代にしっかりとマッチしているのかということもお伺いしたところ、平成二十年に、独立行政法人福祉医療機構長寿・子育て・障害者基金の助成金事業を使って、実はこの最低基準のあり方について調査をされました。

 ただ、もともと基準をつくられたときの条件と、この調査をされたときの条件が若干違うという部分がございました。機能面であったり、保育所の環境、空間、こういったもの、例えば、保育士さんが子供と接するときに動く範囲であったり、また、子供たちが遊ぶだけじゃなくして食事をしたりということも含めて、どのぐらいのスペースがふさわしいんだろうということで調査をされたわけであります。

 そのときに、私自身は、条件が実はこれは二つ違うわけでありまして、ただ、現状は、昔に決めたこの最低基準を実際のところは使いながらやっているわけでありますけれども、新たに調査されたものを、今からもう九年ほど前になるんですけれども、実際のところはその調査を活用できていないわけでありますが、なぜ活用されないのかなというふうに考えておりました。

 ですから、現行の基準と調査をされたもの、こういったものをしっかりと検証いただいて、ともすれば、今の時代に合ったそういう保育所の面積の最低基準なんというものは再度考えていただくべきなんだというふうに思っています。

 そこで、質疑の途中であったので、改めてここはお聞きしたいんですが、現行の基準の部分と二十年に研究調査されたもの、若干、調査をした基準というのは違うんですけれども、果たして比較することができるのかできないのかということも含めて、御答弁をお願いしたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員もう御質問の中で詳しくお述べいただきましたように、現在の最低基準、これは経緯をさかのぼりますと、先ほど御指摘いただきましたように、昭和二十二年にさかのぼるところの当時からの記録、それを積み上げて今日まで来たという経緯がございます。

 また、御指摘いただきました、もう一つの全国社会福祉協議会の調査結果、これは二十年に行いまして、最終的にまとめたのは二十一年三月ではございますが、その調査報告によりましても、これまた委員御指摘いただきましたように、これは、観察調査により得られた食事の介助とか配膳など実際に行われている保育の行為とか活動範囲を踏まえて必要とされる環境あるいは設備について整理をした。

 そういう意味では、最低基準としての性格の現行基準と、それに対して必要とされるものという意味で、特に全社協の調査におきましては、私ども、詳細、中を把握いたしますと、必ずしも安全性だけじゃなくて、いろいろな面に配慮しての研究成果の整理ということでございますので、なかなか、両者の基準、数字だけを見てどっちがというのは、切り口も必ずしも同じではございませんので、難しいかなというふうに評価をしてございます。

田中(英)委員 今御答弁いただいて、比較して難しい部分があるということなんですけれども、せっかくこういった調査をされたわけでありますから、今までの持っている、古いといいますか、二十二年、二十三年度の基準と、そういう身動きをするようなところも新たに含めて出された必要な面積の調査というものを少しやはり検討していただきながら、新たなものを考えていっていただく、そんな時期でもあるのかなというふうに思ったりもします。

 確かに、その調査では、数字を見させていただくと、少し今の基準よりも広い方がいいんじゃないかなという調査結果が出ているのも事実であろうかと思います。ただ、結構古くからあるといいますか、既存の保育施設というのは、もともとの最低基準以上で実は設定、設置をしながらつくられているところもやはり多いんですよね。

 そういった意味では、対応可能な部分もあるかもわかりませんし、広いだけが安全が確保されるものであるというふうには思っておりませんけれども、そういったことも含めて、再度、やはり厚生労働省の方でこれは主体的にお考えをいただければなというふうに思っておりますので、その点についてはお願いをしておきたいなというふうに思います。

 ただ一方で、特例法、特例を使って、実は、待機児童が多い地域、また、例えば地価が高くてなかなか保育をする面積を確保できないようなところ、この条件をもって、待機児童が多いところはその面積基準を少し狭めてお子さんをお預かりすることが可能であるという、そんな法律もあるわけであります。これは、地方分権一括法の部分から、平成二十四年から取り組んでいただける自治体があるというふうに思っています。

 指定されているところは結構な数があるんですけれども、実態は、大阪市さんだけがそれを行っておられるというふうに聞いているわけであります。もともとの基準は少し広く持っておられますけれども、待機児童が百人を超えたような自治体でありますけれども、そのところは狭めて使うということを実は一方ではやっているんですよね。二十四年からされているということでありますので、そういった意味では、実績というのは恐らく大阪市の方ではもうあると思うんです。

 実態は、例えば、狭くなると質が落ちてけがをしてというようなことが起こり得るということから、最低基準を守らなければならないということ、これは常々から言われてきたことであろうかと思いますけれども、ただ、この特例によって、大阪市さんなんかがやっておられる部分で、この数年間これをやっておられるわけでありますから、仮にどのような問題があったかとか、またメリットとしてはどういったことがあったかとか、一定の結果が出ていると思いますけれども、そのことについて、わかる範囲でお教えいただきたい。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘いただきましたように、保育所の居室面積の特例につきましては、地域分権改革の流れの中で、まさに今まで、全国的には居室面積については国の基準と同じ内容でなければならないというのを原則としつつも、今御指摘いただきましたように、待機児童が多いとか土地価格が高いというようなところについては、その基準を、それぞれ定めていただく都道府県、指定都市、中核市において、国の基準をいわば標準として、合理的理由がある場合はそれよりも、異なる基準、実質的には緩和ができるという仕組みとして、二十四年度から、待機児童解消という流れの中で、三十一年度までの間の特例としてできるということにしてございます。

 対象地域としましては、全国四十八市区が基準には該当するのでございますけれども、質問の中でも御指摘いただきましたように、実際にこれを適用されているのは大阪市のみというふうに私ども把握しております。

 ということから、今般、御指摘もいただきまして、大阪市の担当部局の方に確認をさせていただきましたところ、大阪市におきましては、二十八年九月一日現在で、民間保育所につきましては、三百十八カ所のうち百五十八カ所がこの特例を適用している。具体的には、例えば、ゼロ歳児の匍匐室は三・三平米以上、あるいは一歳児の匍匐室は三・三平米以上、二歳児以上の保育室は一・九八平米以上ということになっております全国基準に比べまして、大阪市は、この特例を利用して全て一・六五平米以上で可能としているという形での適用が行われているということでございます。

 大阪市におきましては、この緩和に当たりまして、主として、例えば、利用申し込みが多くて、安全面や衛生面に配慮が可能、結果、保育に支障がない保育所であることを条件にされていましたり、あるいは、基準緩和を適用する保育所から、基準緩和はするんだけれども、衛生的かつ安全な保育環境を保つための特段の配慮ができるということを特に市のルールとして、面積基準の緩和適用届を提出していただいて確認するという措置も講じながらこの適用を緩和しているというふうに承知をしております。

 結果でございますけれども、今私ども、大阪市の担当部局から伺っている限りにおいては、この特例を適用している保育所での事故件数ということでは特に把握をしていないということではありますけれども、特段、大きな問題が生じたかどうかというところについては認識していないというような報告をいただいているところでございます。

田中(英)委員 大阪市自体が把握をしていないということで、だから、把握をしていないということは特段の問題がないということでありますけれども、一定、この特例というのは、やはり待機児童の多い、また地価の高いところなので新たにスペースがとれないというところなんですよね。となると、私自身が東京の状況を聞いたときというのは、私の京都なんかと比べると雲泥の差があって、ある意味では、もっと思い切っていろいろな取り組みをしていかないことには実は待機児童の解消というのはなかなか進んでいかないんだというふうに思います。

 確かに今、政府を挙げて、二十九年度末までに五十万人、新設、増設を含めていろいろなことをやっております。でも、これと、またいろいろなオプション、さまざまな取り組みをすることによってこういった解消を図っていかなければならないと思うと、やはり、せっかくやっていただいているような大阪市の事例というものをしっかりと把握もした上で、東京都なんか、また多いところで進めていただくということも一定必要なんじゃないかというふうに思います。

 そこで、では、なぜ大阪市だけなのかなという疑問が出てくるんですね。というのは、先ほどおっしゃっていただきましたとおり、東京都なんかは区や市でも対象市町村というふうになっております。だけれども、そこでは実際にはされていないということなんですけれども、それについてはなぜ実施をされていないのか、お伺いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、先ほどの特例の対象地域要件からいたしますと、全国四十八市区と申しましたが、特に都内では三十四の市区が対象になってございます。その結果、現在は適用していない、実際にはワークしていないということでございますが、これも東京都の担当部局の方に私ども確認をさせていただきましたところ、東京都のまず設置運営基準、これは都の条例でありますが、都の条例においては、国の仕組みを活用して特例を活用できるという形で都条例はなっているということではありますけれども、実際に保育の実施主体は市区町村ということになりますので、運営費を支払っている各市区が安全性を含めた保育の質の低下を懸念していることから、実際には特例基準で運営している保育所はないという状況だという認識で承知をしております。

田中(英)委員 都の方ではできるという形で、市区町村が踏み切れていないというようなことであろうかと思います。

 だからこそ、大阪で仮に問題がないというのであれば、しっかりとその情報をとって、なぜ面積が狭くなっても安全を保てているのかということは知っておく必要があると思うんです。それを知った上で、やはり待機児童の極めて多い東京都の市や区の中で実施をするということ、安全であるということが確認できるのであれば、こういったことも推進していく必要があるんだと思います。そのための特例措置だというふうに思うんですね。

 だから、そういう意味では、先ほどの大阪の部分なんかというのはしっかりと、これは大阪市さんにも把握をしていただくということ、そして、厚生労働省もこの部分を情報としてしっかりと握っていただいて、待機児童対策の一つの方法として特例法を生かしていくということ、このことを推進していただくことが待機児童解消のちょっとした手だてになるものだというふうに私は思っておりますので、安全であるということを大前提にしながら、大阪市さんが取り組んでおられるそのことの情報収集をしながら、推進を図っていけるかどうかも検討していただいて、この取り組みはしていただきたいなというふうに思っております。

 ひょっとしたら、質の低下の部分というのは、面積だけじゃなくして、保育士の確保も難しい部分がやはりあったりするのも事実だというふうに思っております。ただ、やはりそういった特例をやっていることは生かしていただきたいなというふうに思っておりますので、これは再度、しっかりと情報収集をしながら、そして、極めて待機児童の多い地域なんかでは、こういう状況であるからということを説明しながら推進を図っていただきたいと思います。

 いずれにしましても、この面積基準に関しては、今言ったように特例法で狭めることもできますよというのがあったり、また、調査をしていただいたものでは、少し広くとらなければなりませんよというようなことがあるわけでありますけれども、依然としてその基準は、やはり昭和二十二年、二十三年の基準でやっているということで、昔のままなんですよね。

 やはり、今の時代に合ったそういう最低基準というものを、七十年前のが本当に正しいのかどうなのかということもしっかりと検証いただいた上で、そして、特例法やまたその調査というものを生かしていただいて、厚生労働省が主体となってこの基準というものをつくっていただきたい、私自身はこのように思っておりますので、七十年前のこの基準というもの、安全な基準というふうに示しながらこれまでやっておりますけれども、この基準について、これから厚生労働省としてどのように考えて、そして、そこの基準を定めていこうとされるのかどうかも含めてでありますけれども、御答弁を願いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたように、地方分権改革として行っております居室の面積特例につきまして、待機児童が特に深刻な地域で地価が高いということで、地域を限り、期間も限って、あくまでも待機児童解消までの一時的な措置として今進めさせていただいておりますけれども、全体、全国として待機児童の解消を今しっかりと政府として進めさせていただく中では、保育の需要の増大というものに対応すると同時に、保育の質も確保するということを念頭に置いて取り組ませていただきたいというふうに思っております。

 そういう意味で、国の、御指摘の面積基準につきましては、子供の発達の援助、そして安全性の確保という観点から非常に重要な点だというふうに思っておりますので、利用者の方々あるいは保育サービス提供者の方々、さらには実施主体である市区町村など関係者の方々も、十分私ども踏まえさせていただきながら、慎重に考えるべきものであろうというふうに認識してございます。

田中(英)委員 当然ながら、これは慎重に考えていただくものだというふうには思っております。

 ただ、これは期間の限られた部分が特例の部分でありますので、では一体、かつての基準というものが本当に七十年もたっているわけでありますから、そのことをどう思っているかということだと思うんです。ともすれば広げなければならないということもあれば、いや、ともすれば狭くすることだって可能なのかもわからないです。狭くしても大丈夫だということになれば、今の定員の枠よりもふやすことができるわけですよね。ですから、今の時代に適正な数字というものを、やはりしっかりと厚生労働省が主体としてこれは考えていただきたい、このことは強く求めておきたいと思います。

 それでは、次に移らせていただきたいと思いますけれども、もう時間の方がございませんので、一・八という希望出生率に近づけるということに対して一つお伺いしたいと思います。

 不妊症に関しては、いろいろな取り組みをしていただく中で、数年前にも制度の改正があって、それまでやっておられた制度の中では、ある意味では有効に、実はその制度が、有効な部分がないところは修正しながら、さらに活用いただけるようにしていただいたものというふうに思っています。

 一方で、不育症のことでありますけれども、私の記憶が正しければ、今から七、八年前に公明党の先生方が国会で初めて取り上げていただいたという記憶をしております。

 不育症に関してなぜお伺いしたいかというと、これは単純に、妊娠はできるんですよね。でも、早い方では十一週、十二週で流産をしてしまう、もしくは二十二週目以降、死産という形になってしまったりして、実は、元気な子供を出産するというところに至らない症状であるということであります。

 これはよく考えると、しっかりと手だてができれば、私が聞くところによると、八割の方は出産に至るというふうに聞いております。と思えば、この部分で、実は、習慣性流産、不育症というものを女性の方はどのように感じておられるかというと、やはり流産を繰り返すと、もう子供いいわと思ってしまわれる方が多いんですよね。

 そこで、そういったことを思われる前にしっかりと対処をしていただかないといけないと思いますけれども、今やっていただいているのは、相談をしていただく業務という形がメーンであろうかと思います。

 ただ、ヘパリン注射の保険適用やいろいろな検査項目の保険適用というものは、この間やっていただいたと思います。どうしてもその原因がわからない部分があるので治療の方法が見つからないということでありますから、なかなかほかの治療の方法というのがないので、今、正直、足踏みをしているところだと思うんです。

 ただ、やはり、心的な部分がかなり多いというふうにも聞いておりますので、この相談業務体制を、六十一カ所というだけじゃなくして広げていただいたり、しっかりとした対処をとっていただきたいというふうに思いますけれども、このことにつきまして、やはり妊娠できて出産できた方が笑えますよね。妊娠できるんだけれども、流産してしまったら悲しいですよね。これは物すごく開きがあると思うんです。

 そういった意味では、やはり笑顔で出産をして、子供を産み育てられる環境にするために、厚生労働省として不育症というものに対してどのような支援をしていただけるのか、これからどのようにしていこうとされるのか、このことについて最後にお伺いして、終わりたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 お述べいただきましたように、妊娠には至ったけれども、流産、死産を繰り返すいわゆる不育症の方々、これは多くの方々が悩んでいて、原因がわからない場合も多いというふうに承知をしておりますので、私どもは大きく三つの柱で取り組ませていただいております。

 まさにそういう方々は精神的な負担も大きゅうございますので、その軽減をするということで相談支援体制を整備する。御指摘いただきました不妊専門相談センター、相談員は六十一カ所ですが、全国、二十八年度で六十五カ所設けてございますので、これは、二十四年度から順番に相談員の整備をし、またその相談員の配置日数をふやし、また土日にも対応できるようにし、受け付け期間を延長するということに取り組んでまいりましたけれども、このような形の体制の充実につきましては、現場の声やニーズも伺いながら引き続き取り組んでまいりたいと思います。

 二つ目に、治療につきましては、先ほど、ヘパリン注射の自己注射についての保険適用についてお触れいただきました。厚生労働科学研究を踏まえまして、どういう有効性、安全性ということについて治療方法の研究を進めてまいりたいと思います。

 そして最後に、何よりも、リスク要因の分析あるいはリスク因子の評価方法などなど、全体としての厚生労働科学研究を通じての取り組みをさせていただき、いずれにしても、こういう取り組み全体をもって、不育症で悩む夫婦の方々が一組でも少なくなるように私どもとしても取り組んでまいりたいと思っております。

田中(英)委員 本当に妊婦さんが最後まで笑顔で元気な子供が産めるように、その環境を不育症の方に対してもお願いしたいというふうに思いますし、希望出生率一・八、いろいろなことをやりながら実はやっていかなければならないと思います。その一つ一つのことを丁寧に厚生労働省として取り扱っていただくところはお願いして、質問を終えさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 よろしくお願いいたします。

 きょうは、一般質疑ということで、日ごろさまざま地元などでお伺いをするいろいろな声について質問をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず一つは、医療の分野でございます。特にICTの活用ということについて、一つ質問をさせていただきます。

 今、医療の分野でもいろいろなICTの活用ということが言われておりまして、限られた医療の資源がございますので、これはICTを活用して、しっかりと効率的にというか、必要なところに必要な医療というものが差し伸べられていく、これは非常に大事であろうというふうに思います。厚労省の方でも、さまざま先進的なことも含めて検討されておられると思うんですけれども、今地元でよく聞く話としては、このICTのネットワークを活用した取り組みというのをお伺いいたします。

 私のところでも、h―Anshinむこねっとというネットワークがございまして、いわゆる兵庫県の阪神地域を対象とした、さまざまな病院間の情報の共有を図るネットワークでございます。こうしたネットワークで情報共有を図ることによって、例えば救急救命のときとか、救急車を、ではどこの病院であれば、どういうところが受け入れられるのか、こういうところで情報が即座に共有をされるということで、これは非常によくわかる。その結果、たらい回しのようなこともなくなって、非常に効果的にできていますというふうなお声もいただきました。

 こうしたICTのネットワーク、各地で今取り組まれておると思うんですけれども、こうしたものについてさらに支援をしていく、あるいは、こういうものをもっと活用していく、こうした取り組みというのが非常に大事だというふうに思いますけれども、今後どのように進められていくのか、答弁いただきたいと思います。

神田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、医療連携によって効率的な医療提供を実現していくためには、ICTを活用して情報連携を図ることが大変重要であるというふうに考えております。これまで、医療情報連携ネットワークの構築につきましては、地域医療総合確保基金を活用して支援を行ってきているほか、平成二十八年度の診療報酬改定におきまして、ICTを活用して医療機関の間の情報連携を行った場合に、新たに評価を行ったところでございます。

 ただ一方で、地域のネットワークの数は今二百五十ぐらいと大変増加をしておりますけれども、連携の項目が異なっているということですとか、ネットワークの間での相互利用ができないことなどの課題もあるところでございます。

 このため、患者の保健医療情報を医療関係者が共有して患者に最適な診療を提供するために、全国的なネットワークを二〇二〇年度から本格稼働させることを目指しまして、現在、厚生労働大臣のもとにデータヘルス改革推進本部を設けまして検討を行っており、実現に向けた具体的な方策を検討していきたいというふうに考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 このICT分野の活用というのは、非常に医療分野においても今後大事であるというふうに思います。全国的なネットワーク整備ということも、先ほど答弁もいただきましたので、しっかり進めていっていただければというふうに思います。

 続きまして、障害者施策の関連で何点か御質問をさせていただきます。

 一つは、失語症に対する支援ということでございます。

 いわゆる聴覚・言語障害というか、なかなか失語症というのは見えない形の障害ということで、きちんと認知や理解がされていないんじゃないか、こういう御要望を伺いました。例えば、失語症の方というのは、物事を考えることはできても、なかなか言葉にすることができなくて、コミュニケーションの支援が必要だとか、そういう方もいらっしゃるんですけれども、実態が余り把握をされていなくて、認知症と間違われたりですとか、いろいろなケースを伺います。

 これに対応する職種の方というのは言語聴覚士という職種ですけれども、他のリハビリ職種に比べても数もまだまだ少ないということで、例えば理学療法士の方は今十三万人いらっしゃる、言語聴覚士の方は今まだ二万人ぐらいしかいらっしゃらないということでございます。

 こうした失語症、まず、この実態の把握というのをしっかりしないといけないと思いますし、これを支援する人材の育成というものをやはり進めていく必要があるというふうに思います。そしてその上で、リハビリの際あるいは介護の認定の際に、この人はこういう障害だからこうした支援が必要なんだということがしっかりと評価をされる仕組みをつくって、必要な支援が受けられる、こういうことについてしっかり目指していくべきである、このように思いますけれども、厚労省としてどう取り組まれるのか、答弁いただきたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 失語症は、脳梗塞や脳外傷などで脳の言語中枢が損傷されまして、物事を考える機能は保たれている一方で、自分の考えを言葉にすることに支障が生じまして、周囲とのコミュニケーション、意思疎通につきまして困難となります障害でございまして、当事者団体でございます日本失語症協議会の調べによりますと、全国に二十万から五十万人の方がおみえになっている。脳梗塞等ということでございますので、五十代以上の方が九割を占める、こういうことになってございます。

 厚生労働省は、以前は失語症に特化して意思疎通支援の施策というのは講じていなかったのでございますけれども、平成二十六年度から、障害者支援状況等調査研究事業におきまして、失語症者の方向けに意思疎通支援者の養成カリキュラムの作成に着手いたしまして、二十八年度に完成させてございます。

 これを受けまして、今年度は、完成した養成カリキュラムを用いまして、全国で研修を行う指導者となる人材の養成を行う予定としてございまして、カリキュラムの作成にも携わっていただいた日本言語聴覚士協会とも協力いたしまして、養成研修の実施に向けて今準備を進めているところでございます。

 あわせまして、平成二十八年の、昨年ですね、三月三十一日に通知改正をいたしました。それで、地域生活支援事業の意思疎通支援事業の対象に、聴覚障害者あるいは視覚障害者と並びまして、失語症者が含まれるということを明記いたしました。こうすることによりまして、全国の当事者の方、御家族の方、あるいは自治体に、失語症者が意思疎通支援事業の対象者である、利用できるんだということを周知させていただいたところでございます。

 失語症者がその障害の特性に応じた適切な支援が受けられますよう、今後とも必要な対応を検討してまいりたいと考えてございます。

中野委員 今、指導者の養成をまさにこれからやられるということでございますので、やはりこの人材育成を進めていただいて、そして、その先には、しっかりと実際の必要な支援が届く仕組みということも含めて、ぜひ検討していただければというふうに思います。

 障害者の関連でもう一つ、就労支援の関係でも質問をさせていただきます。

 これも、こうしたお声を実際に聞いたんですけれども、就労支援のB型の事業所、二十七年度の報酬改定で目標工賃達成加算というものが新設をされまして、これは、要は、前の工賃よりも高い実績を出したところが算定要件となっているというところでございまして、なるべくそうした高い工賃をしっかり確保する取り組みを後押ししていく、こういう加算であるというふうに承知をしておるんです。

 これは、前年度に比べて少しでも下がれば加算が得られないというふうな状況でございまして、頑張って高い水準の工賃を確保しているような事業所が、高い水準の工賃を一旦達成をすれば、やはり状況によって少し上下する場合もございますので、これは、必ずしも頑張っているところが本当に評価される仕組みなのかというふうな御指摘をいただきました。

 要は、本当は高い水準の工賃を確保できるのに、これでは、あえて徐々に上げていくような方向にインセンティブが働いていくんじゃないか、こういうふうな御指摘もいただいたわけでございまして、これはぜひ改善をしてほしい、こういうことを公明党の兵庫県本部の方で昨年も厚労省の方にお願いをさせていただいたところでございます。

 今後の制度の改正に向けて検討していくということで承知はしておるんですけれども、これは具体的にぜひ進めていただきたい、このように思いますけれども、現在どのように検討されているのか、答弁いただければというふうに思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 就労継続支援B型の事業所におきます目標工賃達成加算は、御指摘のとおり、事業者における工賃の向上に向けた取り組みを推進するために設けているものでございまして、平成二十七年度に、この目標工賃達成事業を、障害サービス等報酬改定におきまして、工賃の向上をより推進するために新たな加算区分を創設いたしまして、より高い報酬単位を設けるとともに、加算要件の見直しを図ったものでございます。

 その際、加算要件として、前年度の平均工賃がその前の年度の平均工賃より超えていることという要件を加えたものでございまして、できるだけ上げていく方にプッシュするような内容だったわけでございます。

 その結果、委員御指摘のとおり、既に十分高い工賃を実現している事業所の場合で、平均工賃がさらにふえた場合には従前より高い加算が受けられる一方、少しでも平均工賃額が減ってしまった場合に加算が全く受けられない、こういう仕組みになったということで、御指摘のとおり、目いっぱい高い工賃をお支払いいただいているような事業所が適切に評価されないという指摘が出ているところでございまして、平成二十七年の十二月に、社会保障審議会の障害者部会からも、就労継続支援B型につきまして、高い工賃を実現している事業所を適切に評価するなど、めり張りをつけるべきであるというふうに指摘を受けているところでございます。

 今後、平成三十年度に障害者福祉サービス等報酬改定がございます。そちらに向けまして、工賃の向上に熱心に取り組むB型事業所を応援できますよう、工賃の向上と高工賃の実現の双方が適切に評価できます仕組みが実現できますように、現場の意見をよくお聞きしながら検討を進めたいと考えてございます。

中野委員 三十年度の改定に向けてということで、やはり、頑張るところがしっかりと評価をされるような仕組みの実現というものをぜひ図っていただければというふうに思います。

 続きまして、生活困窮者自立支援事業についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 私は、党の方では、こちらの事業のプロジェクトチームの事務局長をやっておりまして、先日、荒川区の子供の学習支援事業、これについて視察にも行かせていただきました。

 生活困窮者自立支援事業、いろいろな事業がございまして、その中の一つとして学習支援というものを行うことができるというふうになっておりますけれども、こちらでお伺いをしたのは、主に中学生を対象に支援を行っているということでございまして、学習支援というと、何か、週一回ぐらい、実際に勉強を教えるようなイメージがあるかもしれませんけれども、こちらで、視察に行ったところでやっておられたのは、長いときには週六日ぐらいずっとあけている、夏休みとか長期休暇のときもやっていると。

 これはどちらかというと、子供たちにとって、やはり居場所の提供、こういうものも含めた形になっているなというのを非常に感じました。単に勉強を教えるだけではなくて、やはりそうしたところに来る子供たちというのは、家庭にさまざまな課題を抱えている、なかなか家庭に居場所がない、そういう子供たち。そこに対して居場所を提供して、どうしても自己肯定感が低いですとか、いろいろな子供たちがいるんですけれども、そうした子供たちに対して意欲を湧かせるような工夫、こういうものもしっかり行っている、こういうこともお話を伺った次第でございます。

 実際に平成二十七年度の実績をお伺いしたところ、これは、支援事業をやっておられる中学三年生の方が一〇〇%全員、高校に進学ができた、こういうこともお伺いをしまして、やはり貧困の連鎖というものを防いでいくためには、こうした子供の学習支援事業というのは非常に大事だなというふうに改めて感じた次第でございます。

 まず、厚労省の方に、この学習支援事業、今、実際どのような形でそれぞれの各自治体が取り組まれておられるのかという、現状の実施状況についてお伺いをしたいというふうに思います。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 生活困窮者自立支援制度の子供の学習支援事業でございますけれども、ただいま先生からも御紹介いただきましたとおり、学習支援を中心としながらも、居場所づくりであるとか日常生活の支援、さらには親の養育支援とか進学費用の相談とか、そういったものを組み合わせて、子供の進学や自立を支えるという事業を自治体で行っていただいております。高校進学などを初めとして、高い効果が確認できているところでございます。

 昨年度は四百二十三自治体、全体の約五割が実施していましたけれども、今年度は五百十自治体程度、約六割が実施予定ということで、着実に取り組みが広がりつつあるところでございます。

 また、平成二十七年度に全国で実施をした三百一自治体では、約二万人のお子さんが利用していたということでございまして、このうち中学三年生の高校進学率は全体で九八・二%でございました。

 また、民間団体の調査では、この事業を利用した約六割以上のお子さんが、勉強がわかるようになったなどの回答をいただいておりますし、そのほかにも、学校に行くのが嫌ではなくなったとか、学校の行事を楽しいと思うようになった、わからないことを教えてと言えるようになったというようなお子さんが過半数ということで、大変肯定的な変化が見られているという状況でございます。

中野委員 御報告をいただきまして、今、約六割の自治体で今年度は取り組まれているということでございます。

 こうした取り組みをしっかりと広げていけるように、また、それぞれの自治体でも、やり方は創意工夫があってしかるべきだとは思うんですけれども、いろいろな形で取り組まれておられるというふうに思いまして、どういうものが効果があるかとか、いろいろな事例の横展開も含めて、やはりこれはやっていただければと思いますし、子供の支援をしていく中で、実際に親への支援につながっていくようなケースも多いというふうにお伺いをしましたので、これはやはり、いろいろな意味で非常にプラスの効果があるというふうに感じた次第でございます。

 この学習支援事業の取り組みの強化について、今後どのように取り組んでいくのかということについて、最後、大臣の方にお伺いをしたいというふうに思います。ぜひよろしくお願いします。

塩崎国務大臣 今御質問いただいた子供の学習支援事業でございますけれども、先ほど御提起いただきましたように、貧困の連鎖を防いでいくためにも非常に大事だということで、学習にとどまらずということでございました。

 この子供の学習支援事業の今後のあり方については、ことしの三月に、生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会という、ちょっと長ったらしい名前の検討会で、検討すべき論点が既に示されているわけでございまして、今後は社会保障審議会の方に場を移して、そこで検討を深めていこうということで、さまざまな論点について社会保障審議会の方で今度は議論を深めて答えを出していこう、こういうふうに考えております。

 特に、学習支援の標準的な内容を定めるべきというような御指摘、あるいは学習支援にとどまらず、先ほど問題指摘をいただきました貧困の連鎖防止のための総合的な事業として、ではどういうことを織り込んでいったらいいのか、こういうことについても再構築をするようにという論点も挙げられておりまして、こういった指摘によく心を配りながら、しっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

中野委員 大変大事な事業だと思いますので、大臣、またぜひよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 改めまして、おはようございます。民進党の大西健介でございます。

 当初、児童福祉法の質問の準備をしておりましたら、今度は医療法だと言われて、また今度は一般だということで、ちょっと戸惑っておりますけれども、せっかくの一般質疑の機会をいただきましたので、いろいろなテーマについて聞いていきたいというふうに思います。

 まず、受動喫煙の問題についてお聞きをしたいというふうに思います。

 去る八日の日ですか、自民党の方で、喫煙とか分煙などの表示を義務づけた上で、小規模の飲食店では喫煙を認める方針をまとめられました。

 しかし、これに対しては、新聞記事もお配りしていますけれども、塩崎大臣が、職場の歓送迎会や会合、会食などで喫煙可能な店だったときには、事実上これを拒否できないので、望まない受動喫煙、嫌々受動喫煙、こういう事態を強いられることになる、また、大学生、高校生もいるアルバイトや従業員らの受動喫煙も妨げないと問題点を指摘されたということであります。

 一方では、自民党の二階幹事長は、自民党案でやってみたらいい、それで徹底しないようなら、さらにどうするかということになると述べて、自民党案を軸に最終案をまとめる考えを示されたということであります。

 自民党案を軸に最終案をまとめるということで、大臣、本当にいいのかどうか、率直なお考えをお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 先日、月曜日、党内の関係幹部議員の先生方がお集まりになられまして、そこで、受動喫煙防止対策について、望まない受動喫煙をなくすという考え方で一致をされたというふうにお聞きしております。それと同時に、党内でのこれまでの議論の整理あるいは確認を行われたというふうに聞いておりまして、改めて関係者の皆様方には、そういった議論を深めているということに関して感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 ただ、今御指摘をいただきましたように、その場で話題となったと言われております表示義務案につきましては、幾つかの問題点があるというふうに考えております。

 今、一つ目として挙げていただきましたが、職場の歓送迎会で、表示があったら、自分で選んで行くということを前提に考えていらっしゃるようでございますけれども、必ずしもみんなが自分の考えどおりで行っているわけではないというケースが多々あるわけであります。例えば、職場でまとまって行く場合には自分の選択肢、選択権というのはないわけであります、そういう場合、歓送迎会とかですね。それから、取引先との会合で誘われたときにはなかなか断れないということもあって、やはりおつき合いで行くというときの選択も自分ではできない。

 こういうことを考えると、意見の一致を見たと言われている、望まない受動喫煙はなくすということについて、なかなか、今申し上げたような、いわゆる望まない受動喫煙を受ける嫌々受動喫煙というのを強いられる事態や、あるいは、従業員やアルバイトはもういや応なく、高校生であろうと大学生であろうと、その場にいるわけでありますので、そうすると結局望まない受動喫煙をなくすことにならないことになるのではないかという指摘があるというのが第一点。

 第二点は、喫煙可能な飲食店につきまして、表示だけしていても、そうすると、例えば、妊娠をされている女性とか、子供さん、がん患者の方々、ぜんそく患者の方々、こういった方々には事実上、入店を拒んでいるようなものでありますから、ノーマライゼーションの考え方に反しているのではないか、行動の自由というのがむしろ逆に制限をされてしまうんじゃないかというのが、二点目で指摘を聞いているわけであります。

 三点目は、たばこフリー・オリンピック・パラリンピックの長い伝統でありまして、北京以降、北京、バンクーバー、ロンドン、ソチ、リオ、次の平昌、これらは全部罰則つきの法整備で、室内禁煙あるいは原則禁煙ということになっておりまして、このたばこフリーという長い伝統を初めて日本が破るということについてどう考えるか、こういうことについて表示義務案には問題点があるという指摘を受けているわけでございます。

 それで、私どもの方からお願いをして、田村政調会長代理がおいででありますが、厚生労働部会、これは部会長もおいでですから、関係者ばかりでありがたいことでありますけれども、十五日、来週の月曜日に厚生労働部会を開いていただきまして、自民党の厚労部会において、厚生労働省の「基本的な考え方の案」というのを初めて説明する機会を頂戴いたしました。しっかり御説明を申し上げて、議員の先生方に、オープンに幅広く議論していただきたいと思っています。

 部会で御説明をした後、協議をしようというお話を自民党の政務調査会の方から頂戴いたしておりますので、これは協議を、自民党と私ども厚生労働省との間でじっくり議論をして、成案を得て、今国会提出に向けて努力をしてまいりたいというふうに考えております。

大西(健)委員 お配りした新聞記事でも、今の、大臣が三点言われたうちの一点目と三点目が書かれた上で、「「受動喫煙をなくすことにはならない」と、譲歩しない姿勢を示した。」というふうに書かれておりますけれども、協議をされるということを今お聞きしました。

 あと、きのう、たまたまネットニュースを見ていると、これはフジテレビのニュースですけれども、ちょっとこれに関連してお聞きしたいんですけれども、小池知事は、分煙では不十分で屋内禁煙を原則にしていく、都民ファーストの会としての案は基本的に厚労省案に近いということを述べた、それから、七月の都議会議員選挙に向けて、都民ファーストの会の公約に盛り込む方針ということであります。

 協議をするということですけれども、もし自民党が、与党が屋内禁煙ということにならないような案にしても、東京都はもう屋内禁煙にするんだということを知事は言っておられるわけですけれども、この発言に対して大臣はどのように思われますでしょうか。

塩崎国務大臣 これは報道を通じてでございますけれども、小池都知事が、受動喫煙対策について、分煙では不十分で、いわば厚生労働省の案に近い受動喫煙防止対策をお考えであるということを報道で私は聞いているところでございます。

 もう一つ、公明党の東京都本部というところも屋内原則禁煙ということで、これもまた厚生労働省の案に近いお考えをお示しになられているというふうに伺っているわけであります。

 いずれにしても、いろいろな立場の方々が、国民の健康を守るという意味で、そしておもてなしの気持ちというのも大事なんだと思いますが、受動喫煙対策の徹底という施政方針演説で安倍総理が明確に打ち出したこの問題提起についての議論が深まりつつあるということは、大変私はありがたいことだと思っておりますし、その議論を深めることによって国民的な合意をつくっていって、最終的には受動喫煙対策の徹底が行われることを期待したいというふうに考えています。

 WHOとIOCの合意は決して開催地だけの問題ではなくて、この間のWHOのマーガレット・チャン事務局長の書簡には、明確に、全国で規制をきちっとしてくれという要請を正式に国際機関のトップから受けたところでございますので、重く受けとめながら、先ほどの自民党との協議をしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

大西(健)委員 繰り返しますけれども、小池さんは厚労省案に近いとの考え方、そして、オリンピックの開催に一義的に責任を負う東京都もたばこフリーの五輪をということを言っているわけですから、これはしっかり重く受けとめなければならないのではないかなというふうに思います。

 協議をするということですけれども、そこで、まずは重ねてちょっとお聞きをしたいんですけれども、では、与党と厚労省が折り合わない場合に、例えば安倍総理に裁定を請うようなことが考えられるのか否か、このことについて大臣にお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 これは、今申し上げたように、自民党と厚生労働省との間でしっかりと議論するということでございますので、自民党はいろいろな意見が出たとしても最後はまとまるということで、それを得意わざとしているわけでありますので、しっかりやっていきたいというふうに思っております。

大西(健)委員 大臣、きょうのお話を聞く限りは、二階幹事長が自民党案を軸にと言ってもしっかり信念を貫くということを私は感じさせていただきましたので、私個人は、ぜひ大臣に頑張っていただきたいというふうに思います。

 もう一つこれに関連して、最近は、フィリップ・モリスが出されているアイコスを初めとする煙や灰などが出ない加熱式の新型たばこ、これが流行していまして、議員の間でも愛用している人を見かけるようになりました。この加熱式新型たばこについては、路上喫煙や受動喫煙を禁じている自治体の間でも対応の仕方がまちまちのようであります。

 例えばですけれども、兵庫県神戸市、井坂さんの地元ですね、歩きたばこによるやけどやポイ捨ての防止が条例の目的なので、新型たばこはこの規制の対象外ということにされています。しかし一方で、兵庫県は、たばこ事業法では加熱式たばこも製造たばこに分類されるので、規制の対象とされている。同じ兵庫県でもこうやって扱いが違ってきているということであります。

 厚労省においては、加熱式の新型たばこを受動喫煙対策の中でどのように取り扱うかはまだ未定ということでありますけれども、現時点でどのような方針で臨むと考えているのか、考え方を教えていただきたいと思います。

古屋副大臣 厚生労働省がお示しをいたしました「基本的な考え方の案」では、紙巻きたばこや葉巻等の喫煙用の、燃焼により使用する製造たばこ、これは受動喫煙の健康影響が科学的に明らかであることから、規制対象とすることといたしております。

 一方、いわゆる加熱式たばこは、喫煙用の、燃焼以外の方法により使用する製造たばこであり、主流煙また副流煙に発がん性物質等の有害物質が含まれていることがわかっているが、受動喫煙の健康影響については、現時点では科学的知見が十分明らかではありません。

 このため、加熱式たばこの受動喫煙が及ぼす健康影響について引き続き研究を進めて、改正法が成立した暁には、法施行の時点までに、規制の対象とするかどうかを判断してまいりたいと考えております。

大西(健)委員 ちょっとまだ科学的なエビデンスというのがはっきりしないので今後検討するということでありますが、しっかりこれも整理をしていただきたいというふうに思います。

 あと、酒とたばこというのがよく対にして語られますけれども、お酒に関しましては、この四月から、厚労省にアルコール健康障害対策推進室が設置されました。これは三年前に施行されたアルコール健康障害対策基本法にのっとったものでありますけれども、この法律自体、私も多少かかわって、いい法律だというふうに思っています。

 ところが、ネット上ではちょっと過剰反応があって、たばこの次は酒か、日本版禁酒法かとか、飲み放題がなくなるとか、お花見がなくなるといった過剰反応が広がって、ちょっとネットは炎上ぎみになっているということであります。確かに日本では、酩酊して道端で寝ているような人もしばしば見かけるというふうに、欧米に比べると飲酒に対して寛容な文化というのが残っているわけでありますが。

 そこで、改めて、アルコール健康障害対策基本法によってお花見がなくなるとか、飲み放題がなくなるとか、こういうことが起こり得るのかどうなのか、大臣にお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 アルコール健康障害対策基本法についての、それに規定されております所管が内閣府から厚生労働省に四月から移った、こういうことでございます。

 この今の法律は、アルコール依存症その他の多量の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦の飲酒等の不適切な飲酒の影響による心身の健康障害とか、それに関連して生じる問題について、国が基本計画を策定することなどによって、対策を総合的かつ計画的に推進するものだということになっています。

 しかしながら、この法律には、アルコールの摂取や購買等を規制する規定はございません。また、同法に基づいて設置をされた専門家等から成る関係者会議におきましても、アルコール規制に関する検討は行われていないわけでございまして、そういうところから、今御懸念の、お花見がなくなるんじゃないか、あるいは飲み放題がなくなるんじゃないかといったような御心配は当たらないというふうに考えていただいて結構かと思います。

大西(健)委員 ちょっとこれは私も、ネットが過剰反応しているというふうに思いますので、はっきりとそこは、そういう懸念はないと言っていただきました。

 ちょっとまたネットに関連することなんですけれども、次に、足立区の生後六カ月の男児が、蜂蜜をまぜた離乳食を与えられて乳児ボツリヌス症で死亡したことに関連して質問したいというふうに思います。

 当時は厚生省ですけれども、一九八六年に千葉県で乳児ボツリヌス症が確認されたその翌年から、一歳未満の乳児に蜂蜜を与えないようにという通知を出して、注意喚起を続けてこられました。また、ちなみにでありますけれども、今回死亡された男児についても、食べた製品にはメーカーの注意書きはあったということであります。

 資料の二というのをごらんいただきたいんですけれども、このような形で、厚労省は今までも注意喚起してきているわけであります。そこには、お母さん、お父さんへというのと、食品事業者へと、それぞれ注意喚起がされております。

 ただ、私、今回すごく気になったのは、料理検索サイト大手のクックパッドには、蜂蜜を使う離乳食のレシピが何と約百四十件投稿されていた。今は対策がとられて、トップページに、一歳未満の乳児に蜂蜜を与えないでくださいと注意文が掲載されているということでありますが、インターネット上には、これはだめだとか、あれはいいとか、さまざまな育児情報が氾濫している。それに若いお母さんたちは振り回されていて、肝心の正しい情報がうまく伝わらないんじゃないか。

 先ほどもネットという話をしましたけれども、こういうネットに氾濫する情報に対して何らかの手を打たないと、親や食品事業者に注意喚起しただけでは、私はまた再び同じ悲劇が繰り返されるんじゃないか。

 ちょっと違う話ですけれども、少し前には、ディー・エヌ・エーが運営する健康情報サイトに不正確な情報やデマが載っていたということが問題になりました。こういう意味で、こういうネット上にあふれる間違った育児や健康に関する情報に対して厚労省はどのような対策をとられているのか、お伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 厚生労働省では、例えば御指摘の乳児ボツリヌス症の事案の際には、まず第一に、都道府県の食品衛生関係部局それから母子保健部局に対して、一歳未満の乳児には蜂蜜製品を与えないように消費者に対して注意喚起を行うように要請をしております。それから、関係省庁とも連携をしながら、ツイッター等を活用して広く国民に対して注意喚起は行っているわけであります。

 加えて、医薬品や医療機器に関しては、国や都道府県で、インターネットを含めて、虚偽や誇大な広告を確認した場合には事業者に対して改善をさせるなどの対応を常日ごろから行っておりまして、引き続き、こういった点については、関係省庁等と連携をしながら適切にしっかり対応していきたいと思っております。

 加えて、このような対応も含めて、健康や育児に関するさまざまな情報については正しい内容をより多くの方々に伝えることが重要であるというふうに思っておりまして、なかなかネットを一律に規制するというのは難しいわけでありますので、厚生労働省として、国民の生活習慣の改善を図るために、栄養やたばこなどの九分野につきまして、生活習慣病予防につなげる情報を提供するウエブサイト、これは名称はe―ヘルスネットといいますが、これを運営しておりまして、最近の科学的な知見に基づく正しい健康情報の発信を行うとともに、母子健康手帳やその副読本、ホームページなどによる情報発信、新生児訪問などさまざまな機会を捉えた情報提供を行うなどして国民の皆様に必要な情報を届けていって、先ほどのような、なくていい犠牲が決して発生をしないようにしてまいりたいというふうに思っております。

大西(健)委員 確かにネット全てを監視するわけにはいかないですけれども、本当に、若いお母さんとかはネットにこう書いてあったとすぐ信じてしまうところがありますので、これはぜひ、本当に、とんでもないことが書いてある場合には注意して削除依頼をするとか、チェックをしていただくということも私は必要ではないかなというふうに思います。

 次に、全く違う話ですけれども、資料の三という記事ですけれども、ごらんいただきたいというふうに思います。

 今、インバウンドに政府は力を入れているということでありますが、一割から三割の自己負担で医療を受けることができる日本の医療保険制度は世界に冠たるものですけれども、これが外国人に悪用されている事例が見受けられるのではないかという記事であります。

 留学や経営など、目的を偽ってビザを取得して、日本で国保に加入した後に高額な治療を受けて帰国するケースがあるといいます。前年度の収入もないということになれば保険料も安く済みますし、そして、かつ高額療養費の制度も使うことができるということであります。また、中小企業で働く中国人らが、まあ、中国人に限りませんけれども、故郷にいる親を扶養家族にして日本で治療させる例もあり、例えば、中国では親子の名字が異なることが多い上に、中国国内で親子関係を証明する書類を偽造することは容易だということも言われています。こうした悪用を指南するブローカーの存在もあるということであります。最近では、肝炎治療薬のハーボニーとか、がん治療薬のオプジーボなどの薬の高額化も進んでおりますので、こういうのを放置していると日本の医療保険制度の崩壊にもつながるおそれがあるというふうに思います。

 記事によれば厚労省もこういう事実は把握しているということでありますけれども、どのように把握して、どのように対応しようとしているのか、お伺いしたいと思います。

古屋副大臣 外国人に対する国民健康保険の適用につきましては、住民基本台帳の適用を受ける場合など一定の条件を満たす外国人については、適用対象としております。

 一方、入国当初から医療を受けることを目的として滞在する外国人につきましては、納付する保険料に比べて多額の保険給付を受けることが明らかであります。このため、医療を受けることを目的とした在留資格を有する外国人は、国民健康保険の適用対象としておりません。

 厚生労働省では、偽装滞在が疑われる高額医療を受ける外国人の有無の確認を目的といたしまして、昨年十二月から順次、外国人が多く居住する東京都等七つの都府県を対象に実態調査を行いましたけれども、疑わしい事例は把握をされませんでした。

 さらに、現在、全都道府県を対象に実態調査を追加的に行っているところでありまして、今後は、その結果も踏まえて、必要な場合には、保険者、関係省庁とも連携の上、実態に即した対策を検討してまいりたいと思います。

大西(健)委員 この記事にも書いてありますけれども、当然、医療目的で来日する場合には医療滞在ビザをとる必要がある、でも、先ほども言いましたように、留学とか経営とか、滞在目的を偽っている例があるんじゃないか。

 例えば、この記事の中では、ネットで、中国語で、肝炎、ハーボニー、日本などのキーワードを打ち込むと、安価で治療が受けられる医療機関を紹介するなどといったブローカーのサイトが幾つも出てくるということでありますから、今自治体の調査では疑わしい事例はなかったということですけれども、ブローカーの存在が、実際ネット上で検索するだけでも出てくるということですから、これはやはりもうちょっとしっかり実態把握をしていただく必要があるのではないかと思います。

 関連して、もう一つ、食い逃げならぬ、訪日外国人による医療費の踏み倒しの増加、こういう問題があります。

 これは次の資料の四という記事ですけれども、病院は、急患で搬送されてくると外国人であっても当然拒むことはできないということでありますけれども、未収金の回収、これには膨大な手間やコストがかかる。そもそも連絡がつかない、あるいは国際電話をかけなきゃいけない、大変な手間とコストがかかります。昨年は訪日外国人客が二千万人を超えて、国は東京五輪までに四千万人を目指していますけれども、これもまた、どんどん広がっていけば大変な、深刻な問題になるのではないかというふうに思っています。

 これについても厚労省は実態把握に乗り出したというふうに聞いていますけれども、この問題をどのように捉えて、どのように対応しようとしているのかについてもお聞きしたいというふうに思います。

古屋副大臣 医療機関における未収金の現状につきましては、平成二十七年度に実施をいたしました委託事業による調査結果によりますと、未収金額は一病院当たり約五千万円でありまして、医業収益に占める未収金額の割合は約一%となっております。

 なお、これは患者の生活困窮などの理由による未収金等を含む金額でありまして、訪日外国人患者に関する未収金額の詳細等は不明でございます。

 訪日外国人患者による未収金の状況については、平成二十一年度に実施をいたしました委託事業の調査結果によることになりますけれども、救急搬送された患者を含めた外国人患者一人当たり未収金額は一万七百三十三円、外国人患者における未収金発生割合は一二・三%となっております。

 現在、訪日外国人が増加をしている状況にある中で、訪日外国人患者に対する未収金の実態の把握に努めて、必要な対策を検討してまいりたいと思います。

大西(健)委員 これも、全国平均、ならしたらわずかなパーセントだとは思いますけれども、例えばこの新聞記事で取り上げている、りんくう総合医療センター、これは関空のすぐそばにあるということで、こういうところだと多分もっと大きいと思うんですね。ですから、やはりそういうことも含めて少し実態把握、あるいは、どうやってそういう踏み倒しというのを防ぐことができるのかということについても、もう少し具体的な対策をお願いしたいというふうに思います。

 時間がなくなってきたので、労働問題についてもちょっと聞きたいと思うんですが、以前、本委員会で私は、二〇一三年の改正労働契約法に定められたいわゆる無期転換ルールに関して、来年四月からこれが発動されるということで、それを前に、それを回避するための雇いどめが起きているんじゃないか、あるいはそれが起きないように対策をしてほしいということを申し上げました。

 ちょっとこれに関連してですけれども、資料の六という日経新聞の記事でありますけれども、人材サービス会社のアイデムが行った調査によると、何と、当事者である労働者の八割がこの無期転換ルールという制度の存在や内容を知らないことが明らかになっています。

 無期転換申し込みの制度というのは、民主党政権のときに法改正で入れたわけですけれども、私はこれは大変意義がある制度だというふうに思っています。しかし、労働者がみずから申し込みを行わないと、権利を行使することができません。この点を八割の人が知らないということであると、申し込みができないということでありますので、これはやはり、私は厚労省として周知、広報に努めるべきだというふうに思いますけれども、この点いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、民間業者が行った調査についての言及がございましたが、それによりますと、非正規で働く方の約八割が無期転換ルールを御存じではないという結果が出ているというふうに私どもも承知をしております。

 厚生労働省として、事業主だけではなくて、非正規で働く方々にも無期転換ルールについてはしっかりと理解をしていただくことが大変大事だというふうに考えております。

 これまでももちろん、私ども、ポータルサイトの開設とか全国セミナーを開催して周知啓発を行ってきているわけでありますけれども、それに加えて、無期転換の申し込みが本格的に始まるのは来年の四月でございます。これを踏まえて、事業主や非正規で働く方々を対象に、ことしの一月には、リーフレットを新たに作成してこの周知啓発を加速いたしております。そして、三月末には、都道府県労働局に対しまして、無期転換ルールの本格的な適用を前に、より一層の集中的な取り組みを行うように各労働局に指示をいたしたところでございます。

 御指摘のような調査結果もあるわけでございますので、無期転換ルールの内容が、事業主だけではなくて、非正規で働く方々にもしっかりと伝わるように努力をしてまいりたいと思っております。

大西(健)委員 これはぜひお願いしたいと思います。

 最後に、新聞記事、また最後につけましたけれども、これは東京新聞の記事ですけれども、いわゆるマージン率、この公開については、二〇一二年の派遣法改正で、事業所ごとのマージン率の平均値、この公開が義務づけられました。ただ、これは岡本委員なんかが指摘されていましたけれども、労働者が事業所に出向かないと確認できないケースが大半でありました。ただ、多くの社は、二〇一五年以降になってようやくホームページで広く公開するようになった。最大手のパソナがホームページ公開をしたのはことしに入ってからということであります。

 他方、個人のマージン率、これは法律で公開義務の対象になっていないということで、今回、東京新聞が大手九社に書面と聞き取りで調査したところ、六社は個別の労働者のマージン率を本人に教えていないということが明らかになりました。

 政府は、同一労働同一賃金を掲げて、非正規労働者の待遇改善を約束していますけれども、自分の労働に企業が幾ら払っているのかわからなければ、賃上げの要求すら難しい。

 このような情報公開に後ろ向きな業界の姿勢というのは、私は大変問題があるというふうに思いますけれども、大臣のお考えをお聞きしたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 これは派遣法の改正の際に岡本議員などから繰り返し指摘があって、附帯決議にも参議院になってから入ったものでございます。

 派遣で働く方々などが適切な派遣元事業主を選択できるようにすることなどを目的として、平成二十四年の労働者派遣法改正法、これによりまして、派遣元の事業主に対して、いわゆる事業所ごとのマージン率等を関係者に情報提供すること、そして派遣で働く方を雇い入れようとする場合などに、本人に関する派遣料金または事業所の派遣料金の平均額、このいずれかを本人に明示すること、これが義務づけられたわけであります。

 平成二十七年改正法の場合の附帯決議、参議院でありましたが、これを踏まえて、マージン率の情報提供に当たって、インターネットの利用というのも、広く提供することを原則とすることを派遣元指針に定めております。派遣元事業主に対して指導等を行うように、労働局にも指示をしているところであります。

 派遣で働く方に対して、本人のマージン率を個別に明示するということが今まで余り行われていないわけでありますが、情報提供のあり方、それから本人に明示することのあり方についても、法の施行状況等を勘案して検討をしてまいりたいと思っております。

大西(健)委員 これもぜひお願いしたいと思います。

 時間になりましたので終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。民進党の初鹿明博です。

 きょうは、一般質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。約一時間ということなので、ちょっと長くなりますが、おつき合いをいただきたいと思います。

 まず最初、先ほど大西議員からたばこの問題が質問に出ましたが、私も、この東京オリンピック・パラリンピックに向けて取り組みを進めておかなければならない問題について、まずは取り上げさせていただきたいと思います。

 たばこについては答弁を求めませんけれども、私は、厚生労働省案が最低ラインだというふうに思います。やはり、たばこフリーのオリンピックを国際的に求められている中で、そこを壊すような形の法改正だったらほとんど意味がないと思いますので、ぜひ、大臣、頑張って、党内いろいろあると思いますけれども、自民党の中でいろいろ反発があるかもしれませんが、踏ん張って厚生労働省案を通していただきたいというふうに思います。この点については、我々民進党も応援をする立場でいきたいというふうに思います。まあ、我々の党内もいろいろありますけれども、本当に世界に恥じない、たばこフリーのオリンピックを実現していただくようにまずお願いをさせていただいて、質問に入らせていただきます。

 きょうは、まず最初に、感染症対策についてお伺いをいたします。

 ことしもまた、はしかの流行が起こっているんですね。二枚めくっていただくと新聞の記事を載せているんですが、日本は、国内ではしかは撲滅をされたということでWHOからも認定を受けている国なんですが、海外から持ち込まれて、はしかが流行しているということです。去年も、関西空港を中心に流行が起こりました。そしてまた、ことしも起こっているんです。

 こういう状況で、二〇二〇年、オリンピックを迎える。訪日外国人、今大体二千五百万人ぐらいですか、これを二〇二〇年には四千万人にする、大体一・六倍ぐらいにふやすわけですよね。そうすると、当然、感染者が入国してくる可能性も高くなるわけであって、感染症対策、特に水際でどう防ぐかというのは非常に重要だというふうに思うんです。

 そして、オリンピック・パラリンピックの部局も、きちんと、感染症対策がオリンピック・パラリンピック対策で重要だ、必要だということを言っているんですよ。

 議事録をつけてありますが、前大臣の遠藤大臣は、二十八年の四月二十日、郡議員からの質問に対して、「委員御指摘のとおり、海外からの多数の関係者が来日する二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、感染症対策の強化は非常に重要でありますし、昨年十一月に閣議決定された、いわゆるオリパラ基本方針においても、感染症対策を推進することとされております。」と大臣は答えているんですね。

 もう一枚めくっていただいて、今度は今の丸川大臣、これは二十八年の十月二十一日の答弁です。線を引いているところを見ていただきたいんですが、「それから感染症対策ですね。これは厚生労働省の主たる所掌ではございますけれども、オリンピック・パラリンピックに備えて進めていくという面においては、私もかかわっていくことになります。」という答弁をしております。

 それで、伺いたいんですけれども、本当は大臣に来ていただきたいんですが、なかなか、所管委員会じゃないと大臣が来るルールになっていないということで、きょうは田野瀬大臣政務官にお越しいただいておりますが、この間、オリンピック・パラリンピックの担当部局として内閣府は感染症対策について何を取り組んできたのか、まずお答えいただきたいと思います。

田野瀬大臣政務官 御質問ありがとうございます。お答え申し上げさせていただきます。

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、感染症対策の強化は重要な課題の一つであると認識をいたしております。先ほど委員おっしゃっていただきました遠藤前大臣、丸川大臣もそのように答弁をさせていただいているところでございます。

 そのため、平成二十七年十一月に閣議決定をいたしましたオリパラ基本方針におきまして、感染症対策については、MERS等の海外の感染症発生動向を踏まえつつ、水際対策に万全を期すために必要な体制を整備するとともに、サーベイランスの強化などの国内の感染症対策を推進するとされているところでございます。

 具体的には、これまで、所掌は厚生労働省さんであるんですけれども、検疫所職員の増員など検疫体制の整備、二つ目が感染症に関する情報収集体制の強化、三つ目が結核、風疹等の対策の推進等につきまして取り組みが行われてきたものと承知をさせていただいているところでございます。

 引き続き、東京大会の円滑な準備、運営に資するよう、関係府省と連携をとりつつ、必要な調整を行ってまいりたい、そのように考えております。

初鹿委員 いろいろるる述べているんですが、何となく、今まで厚生労働省でやってきた延長でとどまっているように思えてならないんですよ。もっと具体的に、ここに手を差し伸べれば効果があるということをきちんとやっていく必要があるんじゃないかと思うんですね。

 今、MERSのお話がありましたが、感染症対策といったときに、いろいろな感染症があって、どうしても、海外から日本に持ち込まれるということになると、デング熱だとかマラリアとか、コレラやペストとか、あと新型インフルエンザとか、新興感染症だとかそういうことに目が行きがちなんですが、やはり私は、はしかとか、今まで日本であって、通常我々もよく知っているようなものでも簡単に持ち込まれているという現状があって、これに対しては、ワクチン接種をすれば相当数防げるし、国内で広まることも防いでいけるという具体的な処方箋というか具体的な対策も、ある程度見えているものはしっかりやっていく必要があると思うんですよ。

 そういう観点で、昨年、関西空港で大流行したときに質問主意書を出させていただきました。

 質問主意書で私が求めたのは何かといいますと、空港で、持ち込まれたわけですよ、そこで空港の職員がかかって、それで二次感染して広まりました。何でそうなるかといったら、空港の職員の方が恐らくワクチンの接種をしていなくて、抗体がなく、うつったんだと思うんですね。本当に、感染者が海外から来るわけですから、空港の職員がうつっちゃうと、人と接していて、またほかの人にうつすリスクは高いし、さらに、日本に来た人が戻るときに、感染させて帰してしまうリスクも出てくるわけですから、空港で働く人にはワクチン接種を義務づけた方がいいんじゃないか、そういう質問をしたんです。

 そうしたら、答弁で何と返ってきたかというと、まず、「お尋ねの「空港職員」の意味が必ずしも明らかではないが、」と、最近お得意の「意味が必ずしも明らかではないが、」毎日新聞でも書かれていましたけれども、まずこういう木で鼻をくくったようなことから始まって、簡単に言うと、対策を打たない、周知しますということしか言っていないんですよ。

 でも、やはり、対策ということを考えたら、具体的に何かしないといけないと思うんですよ、実際に起こったわけですから。

 私は、空港で働く人の中で不特定多数の人と接する機会の多い人たち、例えば、保安検査をする人は、体をさわったりするわけですから感染リスクは高いですよね。あと、航空会社のカウンターでやりとりする人も、面と向かって話をするわけだからこの人たちもそうだし、入管の業務をする方もそうだし、あと、お土産物屋さん、こういう人たちも、やはり人と会話をしますからうつるリスクは高いんですよ。

 では、マスクをしますか。お土産物屋さんがみんなマスクで対応しますか。空港のカウンターの人が全員マスクをしますか。海外から観光客が来て、空港に行って、お土産物屋さんが全員マスクをしている、カウンターの人が全部マスクをしている。感じ悪くないですか。これがおもてなしの日本なんですかね。

 そう考えると、私は、やはり、空港のこういう人と接するようなところで仕事をするような人は、ワクチンを接種して、感染防止をとっておく必要があるんじゃないかというふうに思います。

 日本は、はしかが撲滅された国なんですよ。それなのに、日本に持ち込まれて、その持ち込まれたはしかにかかった人が海外に、また国外に持ち出していって日本が輸出国になったら、これは恥ずかしいじゃないですか。だから私は、空港で働く人にはワクチン接種を義務づけた方がいいんじゃないか、そういう趣旨の質問をしたんですが、それに対して非常に冷たい答弁だったんですよ。これは考え直していただきたいと思います。

 きょうは国土交通省からも審議官が来ておりますが、どなたが答えるんですかね。国土交通省、見解を伺います。

高野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の昨年の関西空港のはしかに多数罹病した人が出た問題でありますけれども、具体的に、昨年の八月二十九日、関西空港におきまして、空港内の事業所に勤務する従業員の感染が判明をいたしました。関西空港を管理運営する関西エアポート株式会社という会社が、直ちに大阪府であるとか泉佐野保健所などに報告をしまして、その指導を受けながら対応を図ってまいりました。

 対応としては、一つは、空港内の従業員に対して、症状が見られる場合の勤務自粛であるとか、医療機関を受診する際の注意点について周知徹底するとともに、もう一つは、さらなる感染拡大の防止のために、自社や空港内のグループ会社の従業員に対して予防接種をさせたということでございまして、大阪府の発表によりますと、昨年、その後、九月一日以降、新たな患者が発生することなく終息に至ったということでございます。

 国土交通省といたしましては、この事案につきましては、関西エアポート株式会社から直ちに報告を受けまして、適切な対応に努めるように指導をしていたほか、この事案を受けまして、ほかの空港の設置管理者、空港ビル会社、航空事業者に対しまして、はしかの蔓延防止につきまして適切に対応するように注意喚起を行ってきております。

 国土交通省といたしましては、空港内の事業者などが、地方自治体であるとか保健所の指導を受けながら、関係者と緊密に情報共有、連携を図って、このような集団感染の予防に対応することが適切であると思っていまして、引き続き、厚生労働省とも適切に連携して、指導などをしてまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

初鹿委員 ちょっと伺いますけれども、通告していないので答えられるかどうかわかりませんが、では、各国際空港、国際便の離発着する空港で働く人たち、いろいろな人がいますよね。先ほども例に挙げましたお土産物屋さんから始まって、航空会社の職員から、また公務員として働いている人もいますよね。そういう方々の中で、予防接種、特にはしかの場合は二回接種が必要だと思うんですけれども、二回接種していない年齢層というのはある程度わかっているわけですよね。平成二年生まれから十二年生まれですかね。この対象で特別に接種をするということまでやったことがあるわけですが、それでも打ち漏れている人がいるかどうかということは具体的に調べたんですか。

高野政府参考人 お答えを申し上げます。

 そういった具体的に何人、二度接種を受けていない者がいるかということについては、例えば関西空港では、今回の事案を受けまして、はしかの罹患の経験のあるなしとか、予防接種を受けたことのあるなしというのはきちんと調べまして、それを受けて予防接種をさせておりますが、ほかの空港におきまして、そこまで調べてということは、私どもは把握しておりません。

 ただ、私どもが行った注意喚起を受けまして、一部の空港では、やはり予防接種を空港の負担で従業員に呼びかけているような空港もございまして、私どもでちょっと、把握しているのはそこら辺まででございます。

 ありがとうございます。

初鹿委員 それはやはり把握して、打ってもらうようにした方がいいと思うんですよ。

 今ちょっと答弁で、航空会社の負担で打つようにしていると言ったんですか。ちょっともう一回お答えをお願いします。

高野政府参考人 お答え申し上げます。

 関西空港の場合もそうでございましたが、一部の空港では、空港会社、空港の運営会社の負担で空港内に存在する事業所の職員に予防接種を呼びかけているというところがございます。

初鹿委員 空港を運営する会社の負担ということなんですが、これは全ての事業所が対象になっているのかどうかわかりませんが、国の対策として行うんだったら、やはり国がこの費用の負担をしてもいいんじゃないかというように思うんですよ。オリンピック・パラリンピックの対策としてやるんだということであれば、オリパラ予算の中に、空港で働く人たち、感染している人が日本に入ってきて、そこの人たちと接する可能性の高い人たちで、打っていない人たちに対して公費助成を私は考える必要があるんじゃないかというように思います。そんなに、人数じゃないと思いますよ。

 先ほども言いましたように、はしかを二回接種していなかった方々に対しては、五年ぐらいですか、経過措置で厚生労働省が定期接種化をして接種を勧めていきましたよね。それで打っていない方がまだいるんですよね。

 ちなみに、第三期、四期というんですか、この接種で接種率はどれぐらいですか。裏を返すと、打っていない人がどれぐらいいるのか、数字はわかりますか。

福島政府参考人 お答えいたします。

 平成二十年度から五年間を麻疹の排除のための対策期間と定めまして、麻疹、風疹の定期の予防接種の対象者に、中学一年生と高校三年生に相当する年齢の方を時限的に追加いたしました。

 その接種率につきましては、中学一年生相当で八五%から八八%、高校三年生相当で七七%から八三%でございまして、その結果、MRワクチンを二回接種した方の割合は大きく上昇しました。

 こういう取り組みの結果、時限的に二回接種の取り組みをした現在十代後半から二十代後半の世代におけます麻疹、風疹の抗体保有率は、いずれも九〇%以上となっておるところでございます。

初鹿委員 大体一割ぐらいはまだ打っていないということですよね、そうはいっても。やはり一期、二期の、今現状のお子さんたちの接種率を見ると多分、九五%とかそれぐらいになっているわけですから、それに比較すると、やはり若干打ち漏れている可能性が高いのかな。今、大体二十代後半ぐらいから三十代前半ぐらいまでの範囲の年齢の方ですから、比較的人と接する場にいる年齢層ではないかと思いますので、やはりこういう人たちに対して公費で負担をするということはあり得るんじゃないかと私は思いますが、その点について、国土交通省、いかがですか。

高野政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほどお答えいたしましたように、昨年八月の関西空港の事案につきましては、保健所などの指導によりまして、関西エアポート株式会社が従業員に案内を出して、同社の負担により予防接種が実施されたということでございますし、私どもが行った注意喚起の中で、積極的な予防接種、受診ということを呼びかけておりまして、それを受けまして、ほかの空港事業者の中にも、同様に、事業者の負担により予防接種を実施した例もあったということでございます。

 国土交通省といたしましては、平素より、厚生労働省からの情報提供などを受けまして、感染症及びそれらの予防に役立つ情報の提供であるとか、適切な対応を指導しておりまして、今後とも、そのような形、関係省庁と連携して適切に対応してまいりたいというふうに考えています。

初鹿委員 これは徹底してやってくださいね。なかなか公費負担、簡単に、はいと、ここの場で言えないかもしれませんけれども、関空はきちんとやりましたといっても、では成田や羽田がではそうなっているのかというと、私はいささか疑問を感じるので、ぜひ徹底していただきたいというふうに思います。

 次は、ことしの流行についてなんですけれども、新聞記事をもう一回見ていただきたいんですが、ことしはどういう流行の仕方をしたかというと、バリ島に旅行に行った人が帰国をしました。向こうで感染をしてきたんですね。その人が山形県の宿泊型の教習所に行って免許を取った。そうしたら、山形県で二次感染して、さらにその感染した人が広げて三次感染になって、山形で流行した。この方は横浜の人なんだけれども、自分が感染しちゃって、そのまま、うつっていることに気づかずに山形の教習所に行ったら、うつってしまったという例なんですよ。

 空港で働く人もそうなんですけれども、渡航する人も、やはり意識をきちんと持った方がいいんじゃないかというふうに思います。

 比較的、はしかとか、風疹もそうだと思いますが、何となく、よく耳にする感染症だから軽く考えちゃっているような方もいるんじゃないかと思うんですよ。でも、やはり風疹も重篤化すると大変なことになるし、特に妊婦さんがかかってしまうと子供にまで影響するわけですよね。特に風疹の場合は、成人男性の多くが打っていない可能性があるわけです。私も去年知り合いの小児科の先生に、風疹は打っていたっけといっていきなり打たれましたけれども、そうやってやはり、打っていない大人もたくさんいるから、MRワクチンをきちんと打った上で渡航するということを徹底した方がいいと思うんです。

 そこで、質問主意書を出したんですよ。渡航者に対して、旅行会社や航空会社に対して徹底して、私の気持ちからすると、打たないとツアーに参加できないぐらい厳しくしていいんじゃないかという気持ちなんですが、なかなかそこまでは言えないということですので、周知徹底するように、注意喚起するようにという質問主意書を出したら、けさ答弁が返ってきたんですが、相変わらず、何か、冷たい感じなんです。

 特に、ちょっと答弁を考えてもらいたいなと思うんですけれども、旅行に行く人のことを私は例に出して言っているのに、「麻しんに関する特定感染症予防指針においては、医療関係者、児童福祉施設等の職員及び学校等の児童生徒等や職員であって、麻しんに未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を二回接種していないものに対する予防接種を推奨しているところである。」関係ないじゃないですか、私の言ったことと。こういう答えを平気で返さないでもらいたいんですよね。

 私が言いたいのは、旅行会社とか、あと航空会社とか、そういうところへ申し込みに来るわけですよね。そうしたら、窓口で受ける人が口頭で、あなた、MRワクチンは二回打っていますか、打っていなかったら打って行ってくださいねと。特に、流行しているところがわかるわけですから、そういう情報もきちんと伝えているということですよね、厚生労働省から旅行の業界団体には。でも、私は、いろいろな旅行会社に行って、どこどこに行きたいといって話をしたことがありますけれども、はしかがはやっていますとかいうことを言われたことはないですからね。そこで、やはり、窓口で、今はやっていますからとか、そういうことをきちんと言ってもらう、特に二回打っているかどうかの確認をしてもらうように徹底した方がいいと思うんですよ。

 最近はネットでの申し込みも多くなっていますから、ネットで申し込む場合だったら、申し込みを押すとポップアップで画面が出てきて、MRワクチン二回接種していますか、イエスかノーみたいな画面を出して、それで、ノーと押したら、二回接種をすることが必要ですみたいなことを出すような、そこまで徹底をしないと持ち込みは防げないですよ。

 私は、それぐらい、厚労省と国交省が連携して事業者にきちんと働きかける必要があると思いますが、それぞれ、いかがですか。

馬場大臣政務官 お答えします。

 海外渡航者が海外渡航前に予防接種を含む予防対策を行えるようにするために、毎年、ゴールデンウイークや夏休みなど海外渡航者が増加する時期の前に、厚生労働省から国土交通省を通じて、旅行会社や航空会社に対し、感染症予防に関する情報を海外渡航者に広く周知していただくよう依頼をしているところであります。具体的には、麻疹については、予防接種を受けていない方に接種を勧めるなどの情報提供を行っておるところであります。

 引き続き、海外渡航者が、渡航する国や地域の感染症発生状況を認識し、適切な予防対策をとることができるよう、関係省庁と連携して取り組みを進めてまいりたいと存じます。

 また、海外渡航者に対して感染症に関する情報をダイレクトにお伝えする仕組みについては、厚生労働省としては、ホームページで海外の感染症情報を公開するとともに、SNS、ツイッター等を用いて、海外に渡航する前に適切な予防対策を行っていただくよう注意喚起を行うなどしておるところであります。

 海外渡航者がより一層海外で発生する感染症の情報を得やすくするために、厚生労働省のホームページのトップページにバナーを設けるなど、ホームページの充実を図っておるところでありますが、よりきめ細やかな情報発信ができるよう改善に努めてまいりたいと存じます。

菅井政府参考人 感染症につきましては、観光庁としましては、厚生労働省からの旅行者に対する感染症予防対策の周知依頼を受けまして、旅行業協会等を通じて感染症予防のための啓発を行っているところでございます。

 今後、厚生労働省から旅行者へのより徹底した情報提供の実施についての依頼があれば、観光庁としても必要な協力をしっかりと行ってまいりたいと考えております。

初鹿委員 ぜひ、マラリアとか、そういう日本にないような感染症に対する説明はたくさん旅行会社はすると思うんですが、やはり盲点になるのは、MRワクチンを打てば防げるようなものなのに、打っていないで行ってしまってかかってしまう、そういうこともあり得るんだということをきちんと伝えるように徹底していただきたいというふうに思います。

 あと、厚生労働省には、旅行に行く行かないに関係なく、一般的にまだ打っていない方に対しての推奨というのもあわせてやっていくことが感染の防止になると思うので、そこも徹底していただきたいということをお願いして、次に移ります。

 次は、もう一枚めくっていただいて、佐賀県が出している要望書の資料を一部つけさせていただきました。きょうは古川議員はいらっしゃらないんですが、自民党の古川議員が佐賀県知事時代に導入をしたパーキングパーミット制度というものについて質問をさせていただきます。

 パーキングパーミット制度というのは、スーパーとか、また高速道路のサービスエリアとか、そういうところの障害者用の駐車エリアにとめるための駐車票を対象者に配付して、その駐車票を持っていないと車はとめられない、そういうルールを自治体ごとにつくっているものなんですね。

 これは二〇〇八年か二〇〇七年に佐賀県で導入をされて、今では全国三十六府県二市で導入をされている。ところが、東京オリンピック・パラリンピックを前にして、東京はまだなんですね。

 実は私、都議会議員をしているとき、二〇〇八年に、この制度を佐賀県で導入してすぐに、東京でも導入するべきじゃないかと議会で質問したんですよ。そのとき東京都は非常に後ろ向きで、なぜ後ろ向きだったかというと、東京のような大都市は千葉や埼玉や神奈川やいろいろなところからたくさん人が来ます、そのときに、東京都民の人だけ駐車票があって車をとめられるけれども、他県から入ってきた障害を持っている人はそこにとめられないというのはいささか問題じゃないか、全国一斉にやるんだったらいいけれども、そうじゃないと、特に大都市の場合は難しいという否定的な意見だったんですね。これは東京じゃなくても、限らずに、一律同じだと思うんですよ。

 この要望にも書いてあるんですが、当制度への期待は高いが、制度がまだまだ全国に広がっておらず、導入している自治体でいまだに不適正駐車がなくならない、2、海外の多くの国で、当制度が国(州)の制度として実施されている、そして三番目は、オリパラで海外から多く来るから基盤を整備する必要があるということで、国の全国的な制度で導入してほしいという要望を出してきております。

 私は、住んでいるところによって対応が変わるというのはやはり好ましいことじゃないし、二〇二〇年にオリンピック・パラリンピックがあって、パラリンピックですから、海外からたくさんの障害を持っている方が来る。オリンピック・パラリンピック、パラリンピックだけを見て帰るんじゃなくて、日本全国いろいろなところへ旅行に行ってもらいたい。そのときに、公共交通機関も十分にバリアフリーになっているかというと、まだまだな部分もあるから、車で移動することも多い。そのときに、制度があるところは障害者用の駐車スペースに駐車票があればとめられるけれども、ないところはとめられないみたいなまちまちの対応だとやはり混乱をすると思うので、全国一律の制度にする必要があるというように思います。

 まず、障害者施策を担当している塩崎大臣、これは全国一律の制度にするべきだと思いますが、大臣はいかがですか。

塩崎国務大臣 一義的には多分、国土交通省の所管の問題なので、そちらから本当は、順番で答弁していただけるものだと思っておりましたら、先に来ちゃったものですからあれですけれども。

 パーキングパーミット制度について、既に多くの自治体で取り組まれているわけでありますが、各自治体によって制度利用対象者の範囲が異なって、ばらつきがあって、そういう実態があるということは御指摘のとおりだというふうに思っています。

 目的は全国共通の目的であるはずでございますが、恐らく、パーキングの、言ってみればスペースの需給の問題などもあって、いろいろ決めている基準が違ってくるというようなことが起きているんだろうなというふうに思っております。

 現在、国土交通省に設置をされた検討会がございまして、ここでパーキングパーミット制度の現状把握それから導入促進について議論が行われているわけでありまして、厚生労働省からもこの検討会には参加をしております。室長補佐クラスではございますけれども、参加をしておりますので、どういうような実態になっているのかということも踏まえながら、障害者施策との整合性を念頭に入れて、必要な協力を行ってまいりたいというふうに思っております。

初鹿委員 対象者がまちまちだというのは、お配りの資料のところに、ちょっと我々の事務所でつくりました一覧表をつけさせていただいておりますので、御参照いただきたいと思います。確かに対象も違うので、そこは合わせていく必要もあると思いますが、せっかくそうやって協議をする場をつくったわけですから、これは法整備をするということを前提にこれから進めていただきたいと思います。

 特にEUの国なんかは、それぞれの国同士で国をまたいで使えるようにしているということですので、パラリンピックで日本にたくさん来るということを考えたときに、ほかの国で使われている利用証も使えるような、そういう取り組みをすると、世界に対してもかなりのアピールになるんじゃないかというふうに思いますので、ぜひ前向きにこれは進めていただきたいと思いますので、国土交通省、来ていますよね、これは法整備も含めて検討するということをここでちょっとはっきり言ってください。

篠原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣からも御指摘をいただきましたけれども、今、厚生労働省と連携して検討会を立ち上げまして、検討を開始しております。

 その中で、委員からも御指摘あった、いろいろ、自治体によって制度設計が異なるというところもございますので、まず、本制度を導入している自治体においてはどういう制度内容になっていて、どういう運用上の課題があるのか、また、制度を導入していない自治体ではどのような対策をとっており、その課題は何か、加えて、御指摘のような外国の制度、こういったものをまず具体的に把握し、その上で検討を深めてまいりたい、こういうふうに考えてございます。

初鹿委員 二十三年にも一回調査していて報告書まで出しているんだから、改めて何度も何度も調査ばかりしていないで、やはり前向きに、つくるということで検討をぜひ進めていただくようにお願いをいたします。

 ちょっと時間がなくなってきたので、順番を変えて、生活保護の生活扶助の見直しについての質問に移らせていただきたいというふうに思います。

 何回かこちらの場で質問をさせていただいておりますが、前回の改定、これがそもそも削減ありきで行われたんじゃないか、三年間で六百七十億円の削減、六・五%減ということが先にあって、それに合わせるかのようにやられたんじゃないかという指摘がされていて、私もそうじゃないかという疑念を持っております。その点について具体的にきょうは問いただしていきたいというふうに思います。

 まず、四・七八%という大幅な削減なんですが、これまで生活保護の制度でマイナス改定したのが何回あって、その下げ幅というのはどれぐらいだったのか、お答えいただけますか。

定塚政府参考人 生活扶助基準の見直しでございますけれども、平成十五年度と十六年度、この二回に、改定をして、マイナス改定をしております。あと、御質問の前回の改定のときに行っているということでございます。(初鹿委員「下げ幅、下げた割合」と呼ぶ)下げた割合でございますが、平成十五年度につきましては対前年度比でマイナス〇・九%、十六年度でマイナス〇・二%の改定を行っております。

初鹿委員 〇・九%と〇・二%で、前回四・七八%ですから、前回の下げ幅がいかに大きかったかということなんですよ。今まで一%下げたこともなかったのに、約五%も下げた。これはやはり、二〇一二年の自民党の選挙公約の中で生活保護費を一割削減するということを掲げて戦って、その一割削減を実現するということに固執し過ぎた結果ではないかというふうに思います。

 そこで、まず、この統計データのもとになる数値について聞いていきたいんです。

 物価で比較をすることに初めてしたんですけれども、通常、物価の統計データというのは総務省統計局がつくっている消費者物価指数、CPIを使うのが、ほかの政策だと通例だと思うんですが、ここでは厚生労働省が独自につくった生活扶助相当CPIというものを使って、そして、四・七八%、二〇〇八年から二〇一一年で下落した、そういう結論になっているんですね。総務省のCPIの下落率で見ると二・三五%なんですよ。だから、二・五%ぐらい下落率が大きくなっているということなんですね。

 この点について今全国で訴訟が起こっていますが、物価自体を偽装してマイナス幅を大きくしたんじゃないかという指摘を受けているわけです。

 そもそも、通常使われて、国際的にも標準化されている消費者物価指数である総務省のCPIを使わずに、厚生労働省が独自でつくった生活扶助相当CPIというものを用いたのはなぜかをお答えください。

橋本副大臣 ちょっと個人的なことを申し上げれば、私の地元に岡山県早島町という町がございまして、「人間裁判」という碑が建っております。朝日訴訟という訴訟が昔ありまして、その原告の方の療養所があったのが私たちの地元、柚木議員も同じですけれども、地元ということで、ちょっと感慨深くこの質問に対応させていただいているところでございます。

 生活扶助相当CPIというものを採用した理由についてお尋ねをいただきました。

 平成二十五年八月に実施した生活扶助基準の見直しにつきましては、社会保障審議会生活保護基準部会におきまして、低所得世帯の消費実態と生活扶助基準のバランスが適切に図られているかという観点により検証を行いまして、両者の間に認められた乖離を是正するということを行った。これは、以前、それについて御質問いただいております。それと、もう一点ありまして、当時のデフレ傾向を踏まえ、物価の変動分も反映して見直しを行いました。これが、先ほど御指摘をいただいたマイナス四・七八%という数字になります。

 この物価の変動分の反映というものをするに当たっては、総務省が公表しております消費者物価指数、総合CPIと言いますけれども、そのデータを用いることとしたわけでございますけれども、この消費者物価指数そのものには、自動車関連経費だとか、あと医療費、住宅費、授業料など、生活扶助費を充てることが原則認められていない品目も含まれているのであります。

 したがいまして、生活扶助基準の見直しという目的に鑑みれば、そうした品目を除外して生活扶助から充てられる物価相当の生活扶助相当CPIというものを計算して適用するのが適当であろう、このように考えて、そうした厚生労働省として計算をした生活扶助相当CPIというものを採用したわけであります。

初鹿委員 生活保護世帯が支出をしない、そういう品目について抜いていくということ自体は私も否定はしないんですけれども、その上で行ったことが私は非常に疑問だなということをこれからちょっと質問していきたいと思います。

 こちらに総務省CPIの、毎年どうだったかという経年変化のグラフを出しました。

 今回の改正で、どこからどこまでの下落率を見たかということなんですが、平成二十年、二〇〇八年から二〇一一年の比較をしているんです。見てください、グラフを。一番高い、ぴょんとはね上がったところで比較をするんですよ。ここから二〇一一年ですから、平成二十年から二十三年までの間で比較するんです。でも、十九年とか十八年を見ると、全然高さが違うんですよね。

 前回の生活保護の見直しをしたときを考えると、十八年とか十七年とか十六年とか、それぐらいとの比較で見ないとおかしいんじゃないかなと思うんです。なぜ一番高いところをとるのか。

 前回改定をしたときに、その水準で生活扶助としては最低生活を賄える基準だとしていて、それで、二〇一〇年に、物価が上がっちゃったわけですから、本来、その時点でもらっている額は、物価から比べると少なくなっているというふうに考えるのが妥当なのに、その物価が上がったところと今下がったところで比較をするというのは、私は明らかにおかしいと思うんです。

 ここの二十年と二十三年で見れば下落率が大きくなるのは当たり前で、これが十八年と二十三年で見たら四・七八%なんという数字には絶対ならなかったと思うんですが、この一番高い山をとった理由は何でしょうか。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 平成二十五年に改定をする、二十四年度に検証の作業を行ったわけでありますけれども、その当時、生活扶助基準のデフレの調整分につきましては、当時の直近の二〇〇八年、平成二十年と、二〇一一年、平成二十三年の生活扶助相当CPIを比較してマイナス四・七八%と算出しております。これは御指摘のとおりでございます。

 では、その基準年をなぜ二〇一〇年にしたのかということをお尋ねいただいておりますが、総務省が公表しております総合CPI、消費者物価指数については、定期的に、五年ごとに品目や品目ごとの消費支出の割合、ウエートの見直しが行われております。検証作業を行った二〇一二年、平成二十四年当時の直近のデータ、ものが、二〇一〇年、平成二十二年の品目等だったということでございます。

 ですので、二〇一三年、平成二十五年の改定に際しましては、二〇一〇年、平成二十二年の総合CPIの品目等及びウエートにより、二〇〇八年、平成二十年の生活扶助相当CPIの算定をし直して、二〇一一年、平成二十三年までの生活扶助に相当する物価の変動の計算に用いたということでございまして、要は、改定をする、検証をしている時点での直近のデータを用いたということであります。

初鹿委員 二〇一〇年は基準年であって、比較しているのは二〇〇八と二〇一一なんですよ。二〇一〇年にウエートを変えた、それはそうだと思う。ウエートというのはどういうことかというと、消費者物価指数というのはいろいろな品目があって、それを一世帯でどういう割合でその品目を買うのかを五年ごとに見直すわけですね。それで、見直して新たに計算をするということをやっていて。

 このウエートを変えたときですが、総務省のやり方だと、ウエートを例えば二〇一〇年に変えます、そうすると、二〇〇五年から二〇〇九年までの間のウエートと違うので単純に比較できないから、接続係数という、二〇一〇年、前のウエートだった場合と新たなウエートの場合とを出して、そこでどれぐらいの割合で変わっているのかという数値を出して、その数値を、それまで、二〇〇五年から二〇〇九年、前のウエートでやったときのに割り返して、こうやって比較をするというやり方をするんですよ。これが総務省なんです。

 ところが、今回、厚生労働省がやったのはどういうやり方かというと、二〇一〇年に新たなウエートを決めたら、今度、二〇〇八年は、接続係数を使わないで、二〇一〇年のウエートで二〇〇八年を計算したわけですよ。二〇一〇年とその次の二〇一一年はいいですよ、新たなウエートですから。二〇〇八年、もう既に計算して、既にもう消費も終わっているような段階のところで別のウエートを使って出すというのは、やはりちょっといかがなものかなと思うんです。

 なぜ、総務省のように接続係数を使った割り返しの仕方をしないで、二〇一〇年を基点に右、左、こういうやり方をしたのか。この妥当性についてお答えください。

橋本副大臣 お問い合わせをいただいた、その方式の違いについてでございます。

 総務省の計算の仕方について厚生労働省で答弁をするのが、ちょっと、よいかどうかという問題はありますが、私の理解するところであれば、総務省さんは、総合的なCPI、物価指標としてお出しをしている。かつ、五年ごとに、CPIを出すときに品目等の入れかえもあるわけですね。けれども、それは、総合的な指標として、そうしたものも全部のみ込んで、どういうふうに差があるのかというのを接続係数という形で多分お示しになっているんだろうな、このように思うところであります。

 一方で、先ほど、厚生労働省として独自の指標をつくったというふうに申し上げました。それは、要するに、品目を選ぶためにそうしたことをしたということも答弁をしたとおりでございますから、逆に言うと、品目を合わせた形で比較をすべきだろうというふうに当時考えたということでございまして、それを二〇一〇年という検証当時の直近のデータに基づいて行ったので、二〇一〇年より前については同じ品目について割り戻しをする、その後については延長して掛けるという計算をしたということで結果としてなったということでございまして、私たちとしては、最新かつ同一の品目等を用いて指数を算定するということで、できる限り直近の消費実態を踏まえつつ、物価の変動の影響を反映することとしたものでございます。

初鹿委員 物価が、品目の価格が変わってきていてウエートが変わるわけですから、それを、今の時点で前のときの、まあ、物価、要は金額が違うところで今のウエートでやるというのは、私は不適切だと思うんですよ。

 裁判で指摘されている中で、具体的に地デジ対応の薄型テレビの例を出しているんですが、二〇一〇年を一〇〇とすると、二〇〇八年は二〇五・八と、倍以上高かったんですよ。何でかといったら、地デジ化が進んでいって、テレビの買いかえを進めていって、テレビが大幅に値段が下がりました。二〇一〇年にテレビを買う人がふえている、そのときの購買数と、倍高かったときの購買数、私は明らかに違うと思いますよ。それを、要は、半分になった下落率の多いものを、そもそも倍になるんだから、それを数字に入れるだけでも全体の下落率にも影響するのに、買っている数も絶対に少ないところに同じ割合で持っていくといったら、下がり幅が大きくなるに決まっているじゃないですか。

 こういうウエートのつくり方や個別の品目の選び方も恣意的にやられたんじゃないかという指摘があるわけですよ。

 その上で、ここでも書いてありますけれども、前を見ると、二〇一〇年から二〇〇八年はパーシェ式という計算式でやっていて、二〇一〇年から二〇一一年はラスパイレスでやっている。

 総務省のCPIは全部ラスパイレスでやっているんですよ。なぜ同じ方式で比較しないんですか。計算の仕方が変われば、私は、二〇〇八年から二〇一〇年までのこの数値と二〇一〇年から二〇一一年の数値は接続できないというふうに思うんですけれども、なぜここを変えているのかを合理的にちゃんと説明していただきたいんですが。

橋本副大臣 パーシェ式、ラスパイレス式についての御質問でございます。

 これはもう御承知の上でお話しになっているんだと思いますけれども、物価等を算定する方式は、比較する時点の品目等を用いて、それ以前の年次の物価を算定し直す方法をパーシェ式、品目を固定して、それ以後の物価を算定する方式をラスパイレス式というふうにいいます。

 私たちの基本的な考え方は、先ほども答弁をいたしましたが、最新かつ同一の品目等を用いて指数を算定するということで実態にできるだけ近いものを目指したということでございますが、結果として、それが二〇一〇年が統計上の最新のものがあるタイミングだったために、それ以前のものをするときには結果としてパーシェ式になっている、それ以降のものを見る、一年間ですけれども、はラスパイレス式になっているということなのであって、方式がどうこうというんじゃなくて、できるだけ直近のものを基準にしてその変動を見ようということを私たちとしては貫いた結果、方式が違うということに結果としてなったということでございます。

初鹿委員 そこはかなり私は疑わしく思っているんですけれどもね。

 まず、このグラフを見ていただきたいんですけれども、パーシェ式の方が物価は低く出てくる、ラスパイレス式だと高く出るということになるわけですよ。

 具体的にどういう計算の仕方になるかというのを、わかりやすくバナナとリンゴの絵で訴訟団の弁護士さんが説明してくれましたので、この図を見せますけれども、二〇〇五年のときにはバナナ二つ、リンゴ二つを買っていました。二〇一〇年になったらウエートが変わるんですね。バナナ一個でリンゴ三つになりました。なぜならば、リンゴの値段が下がったので、リンゴを多く買うことにしました。バナナが百円でリンゴが百二十円として、これで計算すると、ラスパイレス式だと下のようになります、パーシェ式だと下のようになります。ラスパイレス式だと一・〇九になって、パーシェ式だと〇・九一になるというように、パーシェだと低く出るんですよ。

 このことは私だけが言っているんじゃないんですよ。最後の資料を見てください。総務省の統計局が公式に、CPIの改定を行うたびに、パーシェチェックの結果というのを出しているんですよ。パーシェチェックの結果をすると、必ずラスパイレス指数よりもマイナスに、低く出ているんです。こういう結果が出ているんです。

 私は、これがわかった上で、こういう、先ほど言ったようなまぜこぜのようなやり方にしたんじゃないかという疑いを持っているわけです。

 そこで、まず聞きますけれども、パーシェ式だけで計算したり、ラスパイレス式だけで計算して比較をしたということはやられたのかどうかということをまずお伺いしたいと思います。

橋本副大臣 パーシェ式やラスパイレス式で計算をしたのかということでございます。

 どういう計算を実際したのかということはもう答弁をしたので繰り返しませんけれども、仮にラスパイレス方式により計算をするとした場合には、二〇一〇年というのは途中になりますので、その前、二〇〇五年の品目及びそのウエートを用いて二〇〇八年から二〇一一年の指数を算定するということになるということになります。

 これは、ラスパイレス式、パーシェ式、両方に当てはまるんじゃないかと個人的には思いますが、いずれの方式をとったとしても、そのぶれというのは、総務省が指摘をするように、品目等の動きがどうなるのかということですし、それは、年がたつにつれて、やはりぶれていくんだろう。ですから、できるだけ基準年と実際の比較をする年が離れないという方が、私は、より正しい、どちらの方式にしてもです、現実に近い推計になり得るのではないかというふうに思っております。

 そういう視点で言いますと、全てラスパイレス式で見た場合は、八年前の品目や品目別の消費支出の割合で比較をするということに、その最終年度をとればですね、なるということが果たして適当なのかという議論を呼ぶことになるということでありまして、実際、そうした手法での計算はいたしておりません。

 また、ではパーシェ式でどうなのかというと、それは、二〇一〇年が最新のデータで、二〇一四年に検証していますので、その後には二〇一五年に新しい総務省の資料では出ていますが、それは出ていないので、当時にはパーシェ方式での計算をすることそのものがまずできなかったということでございます。全てをですね、ごめんなさい。

初鹿委員 計算しなかった、比較はしていないということなので、そうなのかもしれませんけれども、私は、やはりパーシェ式を使えば下がるんだろうなという想定をしながらこういうやり方をしたんじゃないかと疑わざるを得ないなというふうに思います。

 やはり総務省がやっているように、こういう接続係数を使うようなやり方をした方が理解は得やすかったんじゃないかと思いますよ。多分、これで接続係数を使ってやっていたら、恐らく一%ぐらいマイナス幅は小さかったというふうに思います。

 ですので、ぜひ、今度改定がありますから、改定をするときは、疑われるような、厚生労働省の独自の試算みたいなことをやらずに、誰もが納得できるような、そういうものにしていただきたいということをお願いしまして、もう時間ですので答弁は求めませんので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

丹羽委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 本日は、いただきましたお時間を全部、待機児童問題にかけさせていただきたいと思います。

 私は現在、民進党の待機児童プロジェクトの座長を務めておりまして、きょうの冒頭の御質疑も子供の問題、待機児童の問題、自民党もお触れいただきましたが、今そこに生きる大事な子供たちに何がやれるかは、いつも申し上げますが、与党、野党を超えた、本当に、この国を将来担える人材をどうつくるかという問題ですので、私からも前向きに提案をさせていただきますので、ぜひ大臣にもお聞きをいただきたいと思います。

 待機児童問題は、平成二十五年、杉並区で、お母さんたちが子供を連れて、私の子供が保育園に入れないじゃないの、どうしてくれるのという直接行動を起こしたときから政治の中でも大きくクローズアップされるようになりました。

 もちろん、昨年ですか、保育園落ちた日本死ねもそうですけれども、とにかく、子供を抱えて、この子をどこに預けたらいいのか、仕事も続けられるのか、復帰できるのかと切実な思いが渦巻いておりまして、それに対して政府の方も呼応する形で、平成二十五年度から二十九年度末にかけての五年間で五十万人、本当は三十一年度まで四十万人だったのを前倒して、そして数もふやして、今お取り組み中であると思います。

 ところが、数の増加と質の担保というものがどうなっているのかということにおいて、私は先回、平塚での夜間の保育園での死亡事故を取り上げさせていただきましたが、今回は、特にいろいろな不祥事として新聞等でも取り上げられますさまざまな形態の保育園の問題をきょう共有したいと思います。

 大臣のお手元に資料を届けてございますので、ごらんいただきたいと思いますが、一枚目、ここには、厚生労働省からいただきました保育所の設置主体別認可状況というようなものが数値で上がってございます。

 認可をふやそうということもございますし、ここで、平成二十六年から平成二十八年、全体数は、例えば二万四千四百二十四から二万三千四百四十三とふえていないように見えます。だがしかし、実質には保育園の数はふえておりまして、また、この数値を見るだけでも、株式会社立はこの三年で約二倍、また、社会福祉法人は横ばいですが、大臣も御承知のように、一つの社福がたくさんの園を運営するというような形で、社会福祉法人の大規模化ということも進んでおります。

 この保育園について、実は、小泉政権下の二〇〇〇年から株式会社の参入ということをより容易にしようということもあって、右に書いてございますが、委託費、補助金の弾力運用というものもあわせ始まってございます。

 二〇〇〇年には、一応、この株式会社の参入とセットで行われた弾力運用として、人件費、管理費、事業費をそれぞれに融通し合えるという仕組みに変えました。それまでは、人件費は人件費、管理費は管理費、事業費は事業費という区分をとっておりましたが、ここで一段目の規制緩和がございました。

 そして、平成二十七年、ここは塩崎大臣のときですが、さらにこの規制を緩和して、同一法人が既に運営する施設で得た補助金をもとに二件目以降にもそれが使えるという形にして、賃貸料や土地の取得、整備を容易にする、これはふやしたいということでなさったことであります。

 さらに、ことし四月、この緩和は、保育園の補助金の三〇%以内を、保育ではなくて他の介護施設等にも、もし保育にかかわる部分が健全であればという前提ですが、回してよいと。いわゆる多角経営が可能になるような、また、理事長などの人件費も補助金から出してよいと。

 この規制緩和、私はちょっといかがかと思っておりますが、こうした大きな流れの背景を受けた中で、きょうは三つの案件を取り上げたいと思います。

 一つ目は、この委員会でも既にお取り上げがありました、わんずまざーの問題で、兵庫県姫路市にございます、設置主体は個人の私立こども園、県が独自に認定するこども園でございまして、これは大臣も既に御答弁でありますので重なる部分はなるべく避けて、こども園が始まって以来の初めての認定取り消しケースでありました。二〇一七年の三月末、ことし末に取り消されております。

 このわんずまざーは、一番有名になったのは、子供の給食の量をカットした、あるいは、働いている職員に遅刻したら一万円の罰金を取ったり、十日間ただで働くことを強要したり、とても労働基準法から見ても信じられないようなことをやっていた。そして、事業も、例えば、かけ持ちでシッターさんをやらせるとか学童の方にも派遣するとか、とにかく、あらゆる驚くような事態をやっていた。プラス、定員も四十六人のところ、七十人くらいを預かって完全に定員オーバーだ。もう目を覆うばかりの実態です。

 塩崎大臣に伺いますが、このわんずまざーの事態を受けて、県は取り消しましたが、厚労省としては、改めて何を改善すべきと思っておられるか、またどういう取り組みをされたか、一点目、伺います。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 このわんずまざー保育園のケースでありますけれども、認可外保育施設の一つであるわけでありますが、この認可外保育施設の指導監督基準、ここにおきましては、立入調査などを行った場合に、労働基準法に基づいて保存することとされております例えば労働者名簿とか賃金台帳、それから雇い入れ、そして賃金などの労働関係に関する書類を活用して、職員の状況を各自治体の指導監督において確認するということとしております。

 これは、わんずまざーが人件費の流用とかあるいは労働条件の違反というのを行っていたということがありました。今、食事の話もありましたけれども、それはそれとして、こういうことで確認をすることとしているわけでありますので、これは自治体がもちろん確認をするわけでありますので、こういった点についても、今回のようなケースがあるということで、適切な運用がなされるように指導をしていかなければならないということを改めて考えているところでございます。

阿部委員 私からは、この件に関しては二点、大臣にお願いがあります。

 この件は、県の独自の認定こども園ということで、約二年間にわたって毎年五千万円くらい県から補助で入ってございます。事態が発覚するまでに二年間ありました。そうすると、不適正な使用が二年間続く。この監査のいわゆる間隔があき過ぎている。せめて物事が始まって六カ月くらいしてから、開始される前の申請段階では書類審査いたしますが、やはりその事業が始まって、だって、子供の数が一・五倍もいれば、早い監査でわかったと思います。

 そうした、事業がスタートしてからの初回の監査のあり方と、あるいはまた第三者委員会等々をきちんと県なりに設けて、今大臣がおっしゃった賃金とかあるいは労働契約がどのように結ばれていたかとか、実はこの園は、もともと県の認定こども園とされる前から就業規則における問題を持っておりました、いわゆる遅刻したらただ働きしなさいというような。

 これはそもそもからわかっていたことだと思うのですが、これが県の認定を受けて、そしてこういう事態になっているということでありますので、やはり監査、特に自治体の監査、あるいは必要によれば第三者委員会などの設置を、これは有識者も勧めておられますので、大臣にはぜひ念頭に置いていただきたい。

 また、御質問ですが、例えば、今の労働条件その他をチェックされるときに、その保育園の人件費比率についてはチェックをなさっているんでしょうか。

 と申しますのも、規制緩和によって事業費、運営費、人件費は融通可能になりました。人件費比率がどのくらいかということは、この監査指導チェック項目に入っておりますでしょうか。それは自治体が行うもの、もし入っていなければ厚生労働省の方からも積極的にそういう働きかけをしていただきたいが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 人件費率自体は年齢構成とかいろいろなことで変わるので、人件費率自体が問題かどうかというのはケース・バイ・ケースになるので、それ自体を監査の指標として見るということはしていないわけで、むしろ、例えば加算をちゃんとやっているのかとか、そういうことは当然見るわけでありますけれども、人件費率自体が問題になるかどうかは必ずしも指標にならないわけでございますので、適正な給与かどうかというのは総合的に見ていかないといけないということでございまして、問題があるとすれば、総合的に見ているかどうか、何を見ているかということが問題になるんだろうというふうに思います。

阿部委員 私は、残念ながらその認識が、この労働集約型産業という保育を扱う分野においては、やはり失礼ながら甘いと思うんです。

 というのは、一定の人がいなければ成り立たない分野でありまして、それを人件費比率として外側からチェックをいたします。今のような御答弁ですと、大臣のお手元の、きょうの私の資料の終わりから二枚目ですけれども、ここには、株式会社立と社会福祉法人における人件費比率の差が、小さくですが載っております。

 株式会社立の場合は、人件費比率が一番多いのが四〇から五〇%、そして、社会福祉法人の場合は六〇から七〇あるいは七〇から八〇というところで、もちろん社福でも三〇%未満というようなところもありますが、しかし、私は、一定の数の人がいなければ成り立たない保育という仕事の重要性、人手にかかるということを共有するときの非常にわかりやすい指標だと思っております。

 これからもこの質問は続けますので、同じ質問が何回かあらゆる場面で出てまいりますので、ぜひ、大臣にはこの終わりから二枚目の人件費比率について試算されたものをまず念頭に置いていただいて、次の質問に移らせていただきます。

 次の不祥事は、夢工房という、これは兵庫県の芦屋市に本拠地を置く社会福祉法人であります。

 私の今の言葉を使えば、平均すれば株式会社よりは人件費比率を高く持ったところでありますが、しかし、この兵庫県芦屋市の社会福祉法人夢工房は、お手元にお示ししました資料のあけて二枚目を見ていただきますと、あらゆるタイプの不正をいたしております。

 法人の本部は兵庫県芦屋市にございまして、この本部扱いの中で、理事長及び親族に、簿外債務、記帳されていない債務、これを六千二百七十万円払っておりますし、あと、保育にはとても不必要と思われる洋服や家具などの物品の購入も、これは親族への供与ということで百八十七万円上がっております。

 同時に、県の管轄する中では姫路市で二つ、これは、労働実態のない理事長のお母さんが病気で御入院中に理事長給与を払うということで、タイムカードが押されていた。病院から出てきて押してきてもいいですが、やはりそれは仕事ができないでしょう。それだけでなくて、今度は勤務実態のない義理のお母さんを事務員として雇って五年間で一千万円、これも、全く架空の労働実態について一千万円が支給される。

 同じように、東京都目黒区、品川区、港区などでもございまして、品川区は、実はことしの三月にこの保育園は業務委託の停止を受けております。

 何だかんだで合算いたしますと、県並びに東京の区あるいは都などがこの法人に出したお金のうち、約一億八千五百四十四万円が不正に使われていたという事案でございます。

 これは、実は年度も二〇一〇年くらいからことしくらいまでで非常に長いですし、なぜその間発覚しなかったのか、非常に問題が大きいものと思いますが、大臣は、まずこれについての御認識。

 ちなみに、この社会福祉法人は七都道府県にまたがっております。なかなかチェックが突合されないということもあると思います。プラス、もしおわかりであれば、これは実務サイドで結構ですが、国からの補助金はこの夢工房に対して幾ら入っていたんだろうということを教えていただきたい。

 私は、新聞記事を一生懸命拾って、都や区が返還要求をしているお金をここに合算いたしました。まだ抜けもあると思います。これをつくるだけでも大変でした。でも、果たして国はここに補助金を入れていないんだろうかということについては、申しわけございませんが、雇児局長かな、どなたに答弁していただくのか、わかれば、わからなければ次で結構です。

定塚政府参考人 補助金については雇児局の所管でございますけれども、今確認もしましたところ、現時点で、国から出ている補助金について額は確認できていないということでございます。

阿部委員 では、大臣にお願いがありますが、宿題にいたしますので、国から補助金はどのくらい出ているのか、これは私も計算できませんので。

 と申しますのも、先ほどの新聞記事の、後ろから二枚目、また見ていただきますと、昨今のいろいろな社会福祉法人や株式会社の施設の現状を見ますと、大体一億七千百七十一万円規模の事業をやっておられるところで、補助金額というのは、国、県、市合わせて一億六百七十三万とか、これは東京なのでプラス東京都あるいは区の独自なものなどなど、結局、自前は四百四十七万くらいで事業ができる、大変いびつな形をとっております。

 それがまた私は非常にルーズな運営を可能にしているという懸念をいたしますので、大臣には、宿題のお願いは、夢工房にはどのくらいの補助金が国から入っているのか、そしてお尋ねは、なぜこんなことが約七年間も放置されてきたんだろうか、この二点、お願いいたします。

塩崎国務大臣 これは、社会福祉法人改革を先般やらせていただいて、本年四月から改正が施行になっているわけでありますけれども、その際に、評議員会を必置化するということ、それから法人に対する会計監査人の設置を義務づけるということをやるなど、組織のガバナンス強化を図って、自主性、自律性を高めるということをやりました。それから、定款あるいは会計書類等の公表や備え置きの義務づけ、そして、事業運営の透明性を確保するということをやってまいりましたけれども。

 それに対して、所管庁が行う法人監査について、今御指摘がありましたが、その実効性を高めるために、指導監査事項を詳細に定めるなどの見直しも行っています。ただ、監査の周期については、改正前は二年に一回だったのを、監査の実施時期を原則三年に一回というふうにいたしまして、運営等に問題がある場合には特別監査を随時行うということで重点化を図っているわけであります。

 社会福祉法人としては今のようなことでありますが、なぜ見つけられなかったのかということであれば、それは二つあって、一つは、みずからそれらを見つけ出すガバナンスが欠けていた、そしてもう一つは、この所管庁が行う監査でも見つからないということで、今申し上げたような指導監査事項を詳細に定めるなどの網の目を細かくするということをやっていますけれども、それがひっかからないような状態の監査であったということを反省しないといけないんだろうと思います。

 一方で、保育園の場合は、保育園としては毎年一回、これは実地の監査を行うということでありますが、保育園としての問題があるということであれば、今のは多分、社会福祉法人全体としての問題点を御指摘になっているんだろうと思いますが、保育園に関しては実地監査を毎年行っているわけでありますので、一回以上となっていますから、これで見つからないということであれば、これの問題点についてもしっかりとレビューをしていかなければいけないというふうに思っております。

阿部委員 まず、大臣のおっしゃった後者の御答弁から取り上げますと、実は、目黒区、港区、品川区などでも恐らく自治体の監査というのはあったと思うんですけれども、例えば施設長加算を本来そこにいない施設長に対して払われるとか、栄養士さんが非常勤なのに常勤に扱って補助金をとるとか、もろもろございます、実は運営上も。そして、これらはなかなか監査では浮かんできていないという実態があることは大臣も認識をしていただきたい。

 それは、私は自治体を責めたいから言っているのではなくて、自治体も急増する保育園の監査になかなか手が回らない。細かなところまで、名簿上見れば施設長はいることになっているけれども、実態はそこで働いていないなどはなかなか見抜けないのであります。私が人件費比率のことを申し上げますのは、ちゃんと給与として払われて、そこで労働実態があれば、それはそこの会計に出てくると思いますので、それも明示化できる指標だろうと思うものです。

 もう一つの法人監査について申しますれば、今、大臣がさきに御答弁されたのは、今年の四月から社福についての監査の二年を三年というお話でしたが、現状において、社会福祉法人にどのくらいの頻度で監査ができているかということも私は大変おぼつかないと思います。それをまたさらに二年を三年に延長していって、ざるの網目が大きくなる懸念がございます。

 プラス、大臣にぜひ知っていただきたいのは、今は社福は、この社福もそうですが、七都道府県にまたがって運営をされておりまして、これらを、本当にその情報を集めて、社会福祉法人としての経営的健全性、運営的健全性をチェックするのがなかなか大変になっております。もちろん、そこに監査法人を社福が設けて、それを信じてやるということもある方法かと思いますが、逆に、こうした事態が次々起こっている現状の中で、社会福祉法人監査は果たして有効に機能しているのか等々、ぜひ大臣には念頭に置いていただきたいと思います。

 加えて、子ども・子育て支援制度の中で、先ほど大臣もおっしゃいましたが、指導監査制度というのは、確かに通知をされております、平成二十七年十二月七日付で。そして、県と市町村が連携して、なるべく監査なども二重三重にならないように合理的にやりなさいということになっているんですけれども、幾つもの都道府県をまたぐような場合には、大変これは、本部のある法人の県とほかのところというふうに、もう股裂き状態になっているような社福の実態があるわけです。

 果たして平成二十七年の十二月のこの通知で十分であるのか、そういうことを想定していたのかと私は懸念がございますので、大臣については、いかがでしょうか。今の社福のありようというのは、今御紹介したのは七都道府県をまたぐ実態がございます。社福としてきちんと監査できる体制があるのかどうかであります。

定塚政府参考人 御指摘いただきましたとおり、社会福祉法人に対しての法人監査、それから、それぞれの施設に対しての、施設の運営についての監査ということと両方ございまして、これは相互に密接な関係にあるものですから、法人の監査を行うところと、法人の施設が所在する区域の行政庁が行う監査、両方の情報、資料提供、連携を十分にとっていくということが大変重要なわけでございます。

 これまでも双方から通知を出して、施設監査、法人監査、両面を行っている複数自治体間で連携をとるようにということを通知を行ってきているところでありますが、今回、法人改革も行い、四月から新しくスタートしたばかりでございますので、御指摘のようなことについてしっかり連携をとれるように、こうしたこれまでの通知の趣旨について徹底をしてまいりたいと考えております。

阿部委員 先ほど申し上げましたように、こういうものが七年間も放置されて、補助金が本当に生かされずに流用されているという実態が起きたという現状をもう少し私は緻密に検討していただきたい。先ほどの法人監査と施設監査で情報、資料提供をしていて、なおかつ起こっているんです。

 一カ所で発覚すると、あっ、うちにも夢工房がある、もしかして、どうかなと各自治体は考えるわけです。よもや、その一つの、例えばですよ、目黒区のその保育園が、うちの法人は七つをまたいだところにあるから、そのどこで何があるかなんということはふだんは気にもいたしません、毎日のことで忙しいです。その結果、でも、不祥事が出たら芋づるで、あっちもこっちも、そっちもどっちもというようなことは、日ごろの、やはり私は、監査、連携、そして何よりも国が、またがるものについてはそういう注意を払うくらいの気概がなければね。だって、七つの都道府県の知事とかが集まってやるというわけにいかないわけですよ。よくよく国の主導権が必要となると思いますので、大臣にはテークノートをしていただきたいと思います。

 引き続いて、まだまだありますので、次の問題に移らせていただきますが、お手持ち三ページ目を開いていただきます。

 ここには、どろんこ会と申します社会福祉法人について、これは、平成十九年三月九日の設立でありまして、現在、百カ所以上を運営しております。あるものは株式会社などの設置もあるようでありますが、ここでも、実は、東京都の労働委員会に持ち込まれたり、あるいは、ここの場合は、実は、社会福祉法人といっても、その社会福祉法人の理事長が他の株式会社の社長、代表取締役をやっている、さらに複雑な構造をとっております。

 夢工房の場合は、まだ社福は社福、単体でした。ところが、このどろんこ会というところは、社福プラス、その同じ方が社長を務める株式会社をお持ちであります。そして、百カ所と申しましたが、保育園が急増している中で、武蔵野市、西東京市の保育園の開設に当たっては、他の保育園で使っている備品を開設のときの審査のときだけ一時お借りして、転落防止柵なんですけれども、それを設置して、また終わったら戻しちゃう。では、これだったら、一体何を見ていけばいいのか。あるいは、社会福祉法人が株式会社から物品を購入して、これが随契であるとか。もうあらゆる問題が発生をいたしております。

 もちろん、この労働問題については目下係争中でありますので触れるつもりはないですけれども、大体起こるときはみんな同じです。働く現場での、非常に労働基準法に抵触するような現状、そして、保育の質を担保できない使い回しなど、プラス、これが今は社福と株式会社も持ってやっているケースも決して少なくない、それが同一理事長であると。

 そうすると、社福の場合、理事長報酬は大体一千万円くらいをめどとしても、ほかの株式会社で利潤を上げて自分に収入があれば、結局、その方は、収入はトータルで多くなるわけです。社福のところの規制でひっかかっても、ほかでお金が入ってくる構造になりかねないということで、大臣、今、累次にわたる規制緩和の結果、こういう事態も生じていて、その監視、監督がすごく難しい。

 だって、社福と株式会社の法人監査はおのおの別々に入るわけです。頻度も違います、何年に一回というような。それは当然名寄せできるでしょうか。あの人はここでももらっていた、ここでももらっていた、ここでももらっていた。名寄せなんというのは本当に技術を要するというか、高等な技術だと私は思います。

 まず、大臣、こういう実態について、今、社福が拡大をしている、そして多様な経営形態をとっている、これからは介護施設にも運営を広げるとなったら、本当にチェックし切れるのかと私は思いますが、大臣の御認識を伺います。

定塚政府参考人 今回の社会福祉法改正による四月から施行されております社会福祉法人改革におきましては、御承知のとおり、社会福祉法人のガバナンスの強化ということで、さまざまな規制の強化も行っているところでございます。

 先ほど御指摘をいただいたような、社会福祉法人の理事長が株式会社の代表取締役を兼務しているような場合には、こうした株式会社、関連企業との不適正な取引を禁止するという観点から、法律上、新しく、法人と理事との利益が相反する取引を行う場合に理事会の承認を得なければならないということ、また、法人が理事長やその親族などから、あるいはその経営する企業から不当に高い価格で物品を購入するなどの特別の利益の供与を禁止すること、これを新しく明文で法律上禁止しているというところでございます。

 また、会計監査人の設置を義務づけているなど、関係企業との取引状況を含めてチェックを行うということとしているほか、理事長や親族が議決権の過半数を有するなど、法人が一定の支配権を有する関連企業等と一定額を超える取引を行う場合には情報開示を義務づけるということなどしておりまして、こうしたことで、財務規律の強化、事業運営の透明化を図るための見直しを行っております。

 また、理事長の報酬につきましては、株式会社側の報酬というのはなかなか把握しがたいわけでございますけれども、社会福祉法人の理事長を含めた役員報酬等につきましては、これも、ことし四月からの改正施行によりまして、新しく民間事業所の役員報酬に準拠して、不当に高額なものとならないような支給基準を定めて、それを公表するということ、また、区分ごとの報酬総額を公表することなど明確にわかるようにしておりますので、こうしたことを通じて指導を徹底してまいりたいと考えております。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 社会・援護局長は、起きてしまったことに全く無関係に、こうやります、ああやりますと言って、私の一番聞いた、理事長の給与と株式会社の取締役の給与、これは名寄せできるんですかというところは、そこは答えないわけですよ。できないんですよ、今の仕組みでは。そういうことで、ざるがいっぱいあるでしょうと私は指摘したんです、大臣。

 今のなんか、御丁寧な御答弁ですけれども、答弁じゃないんですよ。そして、こういう事態が起きているということに自覚がない、夢工房についても、どろんこ会についても。もちろん、どろんこ会はまだ全貌がわかりません、決めつけるつもりもありません。でも、すごくチェックが難しいでしょうと私は申し上げているんです。だって、今までそんな監査人を置いていないかもしれない、議決権だってどうなっているかわからないでここまで来ちゃったんですよ。そういうことにしらっとして、こんないいことも計画中、こんないいこともって言わないでくださいな。最も肝になる、名寄せできるんですかといったら、できないと答えただけじゃない。私、そういうのは答弁と言わないと思います。

 大臣をかばおうとして手を挙げてくださったんでしょう。でも、私、これはちゃんと質問通告しているんです、三回にもわたって。こんなこと、わかりにくく、私だって、これを解明するまでに本当に大変でした。それだけ入り組んだ出入りがあるんですよ、人的にも金的にも。それがわからない形で進んでいくことを大変懸念しているので、きょう大臣に伺いました。

 問題意識を共有していただけるか否かについて御答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 今回の夢工房については、夢工房は収益が三十七億、年間ありまして、当然のことながら、今回初めて導入する会計監査を受けなければならないという対象に最初からかかるわけでありまして、それも、都道府県をまたがって活動しているという問題による公的な所管官庁による監査が難しいという御指摘をいただいて、その点についての連携が不足をしているということに関しては工夫をしていかなければならないと思っております。

 ただ、社会福祉法人としての適正性をどう確保するかということに関しては、ガバナンスの強化については私もとりわけ強くこれを進めることを推進してきたものでございますので、監査について随分後で抵抗がありましたが、やはり公的なものが、公的資金がたくさん入っているわけであります、社会福祉法人は。とりわけ老人福祉系は八割とかが公的資金であるわけでありますので、ますますもってガバナンスの強化をして、一つ一つが自律的に、やはり不正がないようにしていくようにしていかないと、全部公的なものだけで見ていくというのはなかなか人員的にも難しいわけでありますので、公的な所管部署の監督の強化と、また複数の都道府県にまたがる場合の連携と、そしてまさに自律的に不正をみずから暴くような仕組みを持つということが大事であって、だからこそ、評議員会もそうですし、将来、会計監査も導入するというのは、十億にまで下げていくということでやっているわけでありますので、とりわけ社会福祉法人に関しては公的な資金がたくさん入っているということも忘れてはならないと思っています。

 一方で、株式会社を持っていて、そこと同じ代表者が社長をやり、理事長も社会福祉法人でやっていることについての問題点でありますが、社福は社福で、やはり税に至るまでのいろいろな恩恵があって、そのかわり縛りがあって、みずから株式会社をぶら下げることはできない、社外流出は許されないということになっているわけですから、それはそれとしてやるべきであって、倫理的な問題で、社長を株式会社でやり、理事長でまた報酬をもらうということについてどう考えるのかということについては、また別のレベルで問われることはあるのかもわかりませんが、少なくとも、法律として、法律上の問題があるのかどうかということに関しては、それぞれの枠組みの中で徹底して不正がないようにしていくということを私どもは見ていかなければいけないと思いますし、ましてや、補助金等、公的な資金の扱いについては、これは一切不正があっていいわけがないわけでございます。

阿部委員 私も大臣のおっしゃるとおり思いますけれども、何度も申しますが、法人監査も、株式会社の監査と社会福祉法人の監査と突合はできないのですね。そうすると、なかなか情報は一つにはならない。もちろん、おのおのがちゃんとやっていればわかってくるものもあります。でも、わからないところもあるでしょうということをぜひ念頭に置いておいていただきたい。これからはこういう形態がふえると思います。というのは、厚生労働省側が随時規制緩和してきたからです。

 これからは、大臣がおっしゃったように、介護事業にも子供に対しての補助金の一部が使われます。私はやはり、今、介護事業はどちらかというとお金をみんな引き揚げています、かわってその穴を子供の補助金が埋めるのでは到底納得できないんです。

 本当に今充実させるべき子供たちのための保育の問題、でも、それを担保するのは、実は大臣、人件費なんです。ここの保育現場でどのくらいの人にどのくらいのお金が払われているか、これをベンチマークにするということを私はきょう提案しています。

 時間の区切りで最後になると思いますが、実は、こうした補助金のほかに、社会福祉医療機構というところが貸し付けをいたしております。

 これは、どろんこ会の例をとりましたが、大体、昨今の社会福祉法人は、こうやって二十カ所以上の保育園等々を担保にしながら総計三十何億とかの貸し付けをされている。社会福祉法人にとっては、補助金も入ってくるし、この貸し付けによって、実はこの貸し付けは初年度は利子だけ返せばいい、利子も自治体から補給されるので、非常に使い勝手がいいというか、手元にお金がある状態ができて、それが次の事業展開に役立てられているといえばそうですし、使われてしまうといえば、そういうことがございます。

 私は、社会福祉医療機構とこの間何回もお話を重ねて、では、社会福祉医療機構がお金を貸すときのベンチマークに人件費をきちんと見たらどうですかと御提案しました。理由は、社会福祉医療機構が人件費については、平成のこの三年間にわたって、だんだん減ってくるんですけれども、七二%くらいから今七〇%に、貸し出している相手先の人件費率をデータでとっておられたわけです。そうであれば、これをベンチマークにしていただけば、より健全なところにお金が回ると思いますが、この点について、最後、御答弁をお願いいたします。どなたでもいいです。

塩崎国務大臣 保育士の処遇改善が問題になって久しいわけでありますけれども、二十九年度の処遇改善については申し上げてきたとおりでございますけれども、今回、特に技能、経験に応じた処遇改善という新しい、四万円、五千円、それぞれ行うということをやるわけであります。

 一方で、御指摘のような、保育士の処遇改善が確実に行われるかどうかについて、人件費比率を福祉医療機構の融資条件とするという御提起をいただいているわけでありまして、一般的には、さっき申し上げたとおり、人件費率は組織の年齢構成とか人員の年齢構成などによって変わりますから、固定的に人件費率を、先ほどのいただいた資料でも、組織形態によって大分違うようでありますので、そういうことで、一律に比較するということはなかなか難しいのではないかというふうに思うわけであります。

 しかし、何らかの目安で、健全な経営を、何をしているのかということを見るには、当然、処遇が適正で、みんながやる気を持って、例えば保育園であれば、子供に伝播しますから、先生方がどうだということで。そのときにやはり希望を持って働いているということが大事なので、そのときに処遇についてどういう指標を見るのがいいのかということは考えていくべきではないのかということは私も考えます。

 人件費率だけということではなく、今申し上げたように、一番大事なのは、子供にとってどういういい影響が出るかということは職員の処遇がどうなっているのかで決まるという発想を持てば、何らかの形で、処遇を見る目安をどう考えるのか、それについては考えていくべきかなというふうに思います。

 融資の事前相談を受けた場合には、当然、個別に、今言ったようないろいろな要件を処遇改善を含めて確認する取り組みはさらにきめ細かくやっていかなきゃいけないというふうに思います。

阿部委員 では、引き続き前向きに、そして一つの大きな指標になるようにお願いいたします。

 終わらせていただきます。

丹羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。水戸将史君。

水戸委員 民進党の水戸将史でございます。

 前回に引き続きまして、子宮頸がんワクチンについて、若干触れさせていただきたいと思っております。

 もう御案内のとおり、厚生労働省研究班における疫学調査がされております。二回にわたってされているんですけれども、この調査は、御案内のとおり、平成二十八年一月から十一月における全国計一万八千三百二カ所の小児科や精神科などを対象に、平成二十七年七月から十二月に受診をした十二歳から十八歳の男女のうち、関節痛や歩行障害などの約二十の症状のうち、一つ以上が三カ月以上続いて、通学や就労に影響がある、そうした方を対象にしたものでございます。

 そこで、まず大臣、そもそも、大臣の御認識を承りたいんですけれども、この疫学調査の持つ本来的な目的、果たす意義というのはどういうものなんですか。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただきました疫学調査でございますけれども、これは、平成二十七年九月の審議会での議論を受けまして、HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告をされている症状と同様のいわゆる多様な症状を有する者が一定数存在するかどうかを確認することを目的といたしまして、厚生労働科学研究事業において実施をしたものでございます。

 HPVワクチンの接種については、接種との因果関係を否定できない広範な慢性の疼痛または運動障害を中心とする多様な症状が接種後見られるということが言われておりまして、この症状について、国民に対しまして適切な情報提供が可能となるまで、一時的に積極的な勧奨を差し控えているわけでありますが、本疫学調査につきましては、国民に対する適切な情報提供の一部として必要であるとされたものでございます。

水戸委員 大臣、資料一をごらんいただきたいんですけれども、この資料をごらんいただくと、先ほど申し上げましたとおり、一万八千三百二科をまず対象にしたんですね。これをずっと抽出していくと、最終的には、この上の表の一番下の三百二十四科に絞られてくるんですね。

 この三百二十四科の中の、この下の段でございますけれども、男子は別といたしまして、女子の方ですけれども、うち、多様な症状に相当するのは三百六十五人ということでございまして、そして、そのうちワクチン接種歴なしというのが百十、一番右です、(A)に書いてありますね。(C)、これはワクチン接種あり、百三なんですけれども、最初は一万八千三百二科を対象にしながら、最終的に百十と百三のサンプルしかないということで、随分とサンプルとしては不十分、そもそもこの調査は不十分じゃないかと私は思うんですけれども、大臣、どういう御認識ですか。

福島政府参考人 本調査は、今先生お示しの資料にありますように、一次調査、二次調査を経て、実際に患者の受診があった診療科の中で、五百八診療科のうちに三百二十四科の回答があった数でございますので、この数については、この期間の一定の症例定義に合う患者数として捕捉されたものでございますから、これは統計的な分析をするには十分であるというふうに私どもは認識をしております。

水戸委員 十分であるというのは聞いて驚くんですけれども。

 では、資料二ページもちょっとごらんいただきたいんですが、この資料は、そもそも、きょう用意させていただいた資料は、昨年の十二月二十六日に審議会に提示された研究班からの報告書なんですね。

 結論として、HPVワクチン、子宮頸がんワクチンの接種歴のない者でも、接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する者が一定以上存在したというふうに言っていますね。しかし、他方では、接種者は十代後半に偏っており、非接種者との年齢構成とかなり異なることから、結論から言って、研究班の代表者である祖父江先生みずからも、単純な比較はできないんだ、接種と症状との因果関係も言及をできないという形で、一応これを締めくくっているんですね。

 この資料二も、ちょっと私、ここで少し疑問に思うのは、この表の十二歳から十八歳、一応ここを囲っております。この女性の一番右側、接種率を見るとこれは明らかなんですけれども、もう既に勧奨接種はやめていますから、下に行けば行くほど接種率は低いんですね。しかし、ごらんのとおり、まだ十九歳、二十でも非常に接種率は高いんです。この接種率の高い人を、なぜあえて今回の研究の対象から外しているのか、これはどうですか。

福島政府参考人 この疫学調査でございますけれども、子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業、そして予防接種法による定期接種の対象者、この方たちが含まれる年齢層におけるHPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を有する方が一定数存在するかどうかを確認することを目的とするということで、まずその年齢層に、そのときの緊急接種事業であるとか定期接種の対象年齢と同様の年齢の方を対象としたものでございます。

 なお、十九歳以上について入れていないということについては、高校と大学において、教育を含めた生活環境がかなり異なることを勘案すべきということが、実際に患者さんを診ている専門家の御意見がございました、研究班におきまして。そういうことで、研究班において十八歳までということで決定したというふうに承知をしています。

水戸委員 非常にその説明もよくわからない説明でございますけれども、おっしゃったように、この疫学調査のそもそもは、いわゆる接種をした人の出る副反応の症状と、接種をしない人でも同じような症状が出るんじゃないか、この双方の比較ですよね。これをいかに客観的な視点から調査をしていこうという話でこの疫学調査をしているんですけれども、そもそも、多様な症状を呈する者に該当するか否かを判定する際にどのような症状がそろうことが必要なのか、その症状の内容に関する定義が全く行われていないんですよ。

 それで、いわゆる既存の疾病名では説明できないと評価されているだけで副反応と同様の多様な症状を呈するというふうに判断しているのは、余りにも私は飛躍をしていると思うんですが、これはどうですか。

福島政府参考人 この疫学調査におきましては、まずその一次調査として、今申し上げました十二歳から十八歳までの方で、疼痛、痛みや運動障害などの症状が少なくとも一つ以上あり、その症状が三カ月以上持続していて、その症状のために通学や就労に影響がある、この四つの基準を全て満たす、そういう患者さんが受診しているかどうかということについてまず報告をいただきました。

 その上で、この一次調査で、その四つの基準を全て満たす患者の受診があったと回答があった診療科に対して二次調査を行ったわけであります。二次調査では、HPVワクチン接種歴を含む個々の患者さんの臨床疫学特性について調査をお願いいたしまして、報告診療科で把握できている傷病名、そして、その傷病名で調査対象期間に認められた症状を説明できるか否か、こういうことについても回答をいただいております。

 二次調査票上で記載された傷病名、それから、その傷病名、病名でその症状が説明できるか否か、こういうことを勘案して多様な症状に相当するか否かの判断をしたものでございまして、これは、この研究班における議論の中で、こういう症例定義を使うということでございましたので、私どもとしては妥当であるというふうに考えております。

水戸委員 資料三を、これは大臣、よく見ていただきたいんですけれども、この資料三をごらんいただければ、上の表と下の表があるんですけれども、これは両方とも、いわゆるワクチン接種後に生じたとされている、ワクチン接種を打っている人と打っていない人の、こういうことを含めての表でございまして、下は接種歴がない方の十万人に換算した場合の推計値なんですけれども、そもそも、これは取り扱い1と取り扱い2という形で書いてあるんですね。取り扱い1、取り扱い2、上も右の方を見れば取り扱い1、取り扱い2、下の表を見ても取り扱い1、取り扱い2ですね。

 それで、この取り扱い1と取り扱い2の違いは、ここをちょっと囲んでおりますけれども、この「相当する」、「相当する」、「相当する」、「相当する」、「相当する」という形で書いていますけれども、この一つの枠が取り扱い2の方に含まれているというように見てとれるんですね。

 結局、取り扱い1と取り扱い2、これは接種をしていないですよ、ワクチン接種歴がない方の下の表を見ると、取り扱い1の場合は、十二歳から十八歳は二・八人、取り扱い2は二十・四人。非常に、取り扱いによってこれだけ、二・八人対二十・四人という差が出ているんですね。

 ここで私は疑問を呈するのは、先ほど言った、この上の表の「相当する」という部分、このうち一つだけは、この「相当する」の部分は取り扱い2には含まれているんですが、このいわゆる「相当する」という該当するこのエリアが、結局ここは、いわゆる多様な症状が生じたと言っているけれども、少なくとも一つ以上症状があらわれた場合、多様な症状と言っておきながら、一つ以上がある場合は全てこれは含まれているんですね。

 ですから、今言ったように、このような取り扱い1と取り扱い2の中において、これだけのいわゆる人数の差が出てきてしまう、いわゆる十万人に換算した場合、片や二・八人、片や二十・四人と。そもそも、一つ以上あることということを全て含めてしまったから、これだけの取り扱い1と取り扱い2の差異ができてしまっているんじゃないか、そういうふうに思わざるを得ないんですけれども、これはどうでしょうか。

福島政府参考人 この調査が、多様な症状に相当する症状があるかどうか、こういうことについて調べたものでございますけれども、二次調査における回答で、先ほど、取り扱い1では、今御紹介のように、記載の傷病名では症状を説明できないとした方、報告されたドクターの側がそういうふうに言った方、または、HPVワクチン接種による、またはHPVワクチン接種後と明示された傷病名で症状を説明できると判断した場合に多様な症状であると取り扱ったもので、多様な症状に相当すると考える対象については、かなり狭くとった取り扱いになります。

 取り扱い2につきましては、報告医が、機能性身体症状等の、HPVワクチン接種後に生じた症状と明らかに区別できる疾患ではない傷病名で症状を説明できるのではないか、こういう判断をされた場合も多様な症状であると取り扱ったものでございまして、これは広く扱った取り扱いでございます。

 二十九年四月の審議会でも、接種後に生じたとされる症状が機能性身体症状であるという見解が審議会において示されたことを受けまして、取り扱い2の結果が、つまり取り扱いの2の方がより適切であるということで示されたものでございます。

 もともとこの調査の目的が、先ほど申し上げておりますけれども、こういう多様な症状を持つ方の、接種がない方における発生頻度といいますか、を捕捉するということを目的にしておるものでございますから、この取り扱いは妥当であるというふうに考えております。

水戸委員 またこれにつきましては後ほど大臣の見識を問いただしていきたいと思いますが、大臣、資料四をごらんいただきたいんですけれども、これは、多様な症状の中の、いろいろな症状の実例が出ているんですね、関節痛から始まって、ずっと、けいれんとかしびれとかあるんです。これを、いわゆる(A)は接種歴なし、一番上の棒の数値は、接種歴なしの人が一番上、真ん中が接種歴あり、下が接種歴不明、この三段階を含めて棒グラフにあらわしているんですね。

 私が四角で囲んだところ、光に対する、音に対する過敏とか、脱力発作、月経異常、記銘力の低下、これは、いわゆるワクチン接種をされた方の、女子の特異な、ここで見られる特異な副反応症状なんですね。

 ですから、これを見ても、やはりグラフを見ればわかるとおり、明らかに、明らかに、この多様な症状の中において、いわゆるこのような症状が出るのは、副反応を示すのは、明らかにこの接種をしたという形でございますけれども、これに関しましても、結論的に言えば、バイアスがかかっているから、いわゆる接種と非接種の対照にはならないというふうに結論づけているんですね、この調査班の方は。ですから、これはちょっとおかしいんじゃないかと。大臣、これを見てどう思いますか。

塩崎国務大臣 御指摘の点につきましては、この疫学調査は、HPVワクチンの接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告をされている症状と同様の多様な症状を有する者が一定数存在するかどうかを確認することという目的をさっき申し上げましたけれども、そういうことで実施をされたものでございます。

 この調査につきましては、昨年の十二月に審議会において研究班から報告が行われました。さらに、委員からの要望を受けて、研究班において実施をした追加分析、この結果が本年の四月に審議会で報告をされましたけれども、今御指摘のありました、接種歴なしと接種歴ありの年齢分布が極端に異なること、それから、接種歴のある者ほど本人が症状を多く訴えやすく、医師が症状を多く把握しやすいといったバイアスが存在をすることから、HPVワクチン接種歴の有無別に、多様な症状の有訴率や内容、これは症状の種類とか症状の数でございますが、その内容を比較することは困難である、そういう前提と、HPVワクチン接種歴のない者におきましても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する者が一定数存在したという結論は変わらなかったわけでございます。

 このことから、本調査の結果からは、特定の症状は、HPVワクチン接種歴のある者において、接種歴のない者より多く発生していると評価することはできないというふうに考えているところでございます。

水戸委員 今提示した資料は、昨年十二月二十六日に示された資料、全てでありますが、これも続いてまた四月の十日、改めて追跡調査の結果を協議しているんですけれども、ことしの四月の十日に協議されたというのは、何の、こういうことをするための目的で、こういう協議会が開かれたんでしょうか。

福島政府参考人 追加分析でございますけれども、二十八年の十二月における副反応検討部会、審議会におきまして、二次調査の報告症例の特性であるとか、あるいは症状の層別分析、あるいは症状の数が十以上ある方の傷病名の分布、あるいは有訴率に影響し得る要因を考慮した分析、こういうものを追加分析することによって、十二月の段階で報告された報告に基づく結論についての妥当性について、さらに検討するためのこととして、追加調査がされたものというふうに承知をしております。

水戸委員 もうちょっとわかりやすく説明してもらいたいんですけれども、こういうことですよね。結局、一回目の十二月二十六日のときは、先ほど私が言ったように、多様な症状を、一種類以上でも多様な症状とみなしていたから、結構この分析結果は、結局これが随分とバイアスがかかるとか何とかという話になりまして、曖昧になってしまった。だからこそ、今回は改めて十種類以上、多様な症状を十種類ということ以上にやって、それで、では副反応と、いわゆる接種しない人に出る多様な症状とどういう形で類似性があるのかとか、そのような相似性があるかということを改めてやっているわけですね。

 しかし、そうは言うものの、やはり結局、この二回の追加分析を、では今回、二回目のこの追跡結果について、どのような形で評価されていますか。

福島政府参考人 二回目の結果、追跡分析をした結果につきましても、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、HPVワクチン接種歴の有無別に、多様な症状の有訴率あるいは内容を比較することは困難であるという前提、この結果の解釈における前提、そして、HPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する方が一定数存在した、この結論については変わらなかったということでございます。

水戸委員 大臣、そもそも、今までのやりとりをお聞きになってわかるとおり、結局、いわゆる接種したときに出る副反応の症状と、接種していない人に出る多様な症状の比較が同一線上にないからこそ、いろいろな形で、この結論も、二回目の分析結果の結論も、年齢構成が違い、データの偏りが大きくて比較できないと、結局、比較できていないという結論に達しちゃっているんですね。

 ですから、私に言わせれば、全くこんなのは評価に値しないと思っているんですけれども、この二回にわたる分析調査で何ら結論を導けるものではなかったというふうに評価していいと思うんですが、大臣はどう思いますか。

塩崎国務大臣 やや繰り返しにもなりますけれども、HPVワクチン接種後に生じたいわゆる多様な症状、有害事象でございますが、患者によって出現する症状の種類とか出現の仕方とかがやはりそれぞれでありまして、多様性がございます。症状の明確な基準を定めて報告を求めるということは、これは困難であります。

 そのために、今回の調査において、HPVワクチン接種後に生じたとされる症状についての診療実績が豊富な医師等に意見を聞いた上で調査票を作成するとともに、HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の症状が少なくとも一つ以上あるだけではなく、長く続き生活に支障のあるような症状、これを把握できるように、症状が三カ月以上持続し、かつ通勤や就労に支障が生じている、そういう方を報告基準としておりまして、多様な症状を有する者を把握する方法として適切であるというふうに考えているところでございます。

水戸委員 そもそも、この審議会、決してこれはうがった見方ではないと私は思っているんですけれども、今回、二回の追跡調査、分析調査からも見えるように、やはりどうしても勧奨接種を早期に行いたいという意図が非常に見えてきまして、結局、ワクチン接種と副反応には因果関係がないんだということを意図的に導くため、結論ありきで、先ほど言ったように、あえて数値の大きいものを、接種していない人に対しても、あえて数値が大きくなるものを採用して、それをいわゆる比較対照したということを、私は、そういうような誘導的なことをこの調査そのものがしているんじゃないか、そういう疑惑が持たれているんですけれども、大臣、どう思いますか。

福島政府参考人 HPVワクチンの接種につきまして、接種との因果関係を否定できない広範な慢性の疼痛あるいは運動障害、これを中心とする多様な症状が接種後に見られたことから、この症状について、国民の皆さんに対して適切な情報提供が可能となるまで、一時的に積極的な勧奨を差し控えておりまして、審議会におきまして、定期的に科学的な評価を行っておるものでございます。

 二十七年九月の審議会におきまして、日本では、ワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の症状が接種をしていない方でもどれくらい生じているか、接種していない状態でどれくらい生じているか、こういう疫学的データが不十分である、多様な症状の発生頻度に関する評価が困難であるという審議会での指摘があったことから、二十八年一月から疫学調査を実施して、昨年十二月と本年四月の審議会において、その結果を研究者から御報告いただいたものでございます。

 四月の審議会におきまして、さらに、接種歴のない方の有する多様な症状の実態について、実際に現場でそういう患者さんを診ているドクターからのヒアリングを行うことについても検討すべき、そういう提案もございました。

 そういう面で、私どもは、このHPVワクチンを接種していなくても、どれくらいそういう症状があるのかどうか、そして、接種をした場合に、それがどういうふうになるのかということについて、科学的な議論を審議会で積み重ねていただいておりまして、積極的勧奨を含めましたHPVワクチンの接種のあり方について、引き続きその審議会における科学的な議論を行った上で、総合的に判断をしてまいりたいと考えております。

水戸委員 もう時間もないので、最後の質問にします。

 大臣が前回、私の質問に対して答えたことでありますが、これは大臣、最後、答弁を求めたいと思いますが、前回、私の質問に対して大臣はこう言っているんですね。HPVワクチン接種後に起きた実例との因果関係は必ずしも明らかでない、因果関係は必ずしも明らかでないと指摘している。どう見ても、こうして今、非常に迷走しているような感じですね。勧奨接種すべきかどうなのかを含めて、ずっとこの四年間近く、こういう状態が続いていますよ。

 そもそも、こういう迷走をしているのは、やはり国が主体的にこの接種者に対して、HPVワクチン接種者に対しての副反応症状に十分なる調査分析を怠ってきたんじゃないか、これに起因しているのではないかと私は思っているんですね。

 ですから、大臣はこう言っていますね。有害事象によって長期に苦しんでいる方々に対して、しっかり寄り添いながら支援を行っていきたいというふうに大臣みずからおっしゃっていますけれども、そう言うのであれば、もっともっと精度の高い調査分析が不可欠だと思うんですよ。

 ですから、現時点で副反応疑いの報告、厚生労働省に対して上がっているものは、大体医療機関から、あとは製薬会社からのそういう報告がメーンなんですね。だからこそ、やはり多くの自治体は、被害者から訴えがあれば、自分たち自治体が独自に調査するんですね。健康調査を行っているのが今実情ですよ。

 ですから、やはりそういうことを含めて考えれば、先ほど私が申し上げましたとおり、十九歳以上のいわゆる接種率の高い女性を抜かしているというこの疫学調査も、これも論外ですけれども、やはりこの接種歴が長いというのは、これは任意接種の期間の方が長いわけでありますから、成人を超えた女性も含めて、全数的な調査がやはり私は必要だと思うんですよ。

 それを出して、実際にどうなっているのかについて厚生労働省が全体像を把握し、そして、そこにおいて、やはりもっともっと分析をしていった方がもっと精度が高まる、この因果関係が、ある程度追跡できるんじゃないかと私は思っているんですけれども、もう一度、大臣、こうした全数調査の必要性について、どう思っていますか。

塩崎国務大臣 これは、HPVワクチンの安全性については、疫学調査の結果報告、そしてまた当該調査の追加分析の結果報告を行った二回の審議会を含めて、これまでの審議会において、定期的に科学的な評価、大事なのは、科学をするということが大事であって、科学的な評価を行ってまいりました。

 本年四月十日の審議会におきまして、今後、HPVワクチン接種歴のない方の有する多様な症状の実態について、実際に現場で診療している医師からのヒアリングを行うことを検討するということとなっていることは、先ほど来、繰り返し申し上げているところでございます。

 したがって、現時点で、今のこの疫学調査に追加をして、全数調査の話が今出ましたが、そういう予定はございませんで、積極的勧奨を含めたHPVワクチンの接種のあり方については、引き続き、審議会における、さっきから申し上げておるように、科学をちゃんと、科学的な根拠のある議論、これを行った上で総合的に判断をしてまいりたいというふうに考えております。

水戸委員 時間が来ましたので、またこの問題は引き続きやりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 どうもありがとうございました。

丹羽委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文でございます。

 きょうは、大きく三点質問したいと思っています。

 熊本地震から一年余りがたちました。生活再建はまだまだこれからという状況だと思います。きょうの一点目は、被災した生活保護受給者にかかわる問題です。

 生活保護を受けておられる方が被災で失った家具、家電などの支給、これはどうなっているのかということをまずお答えいただきたいと思います。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護受給者の方も含め、被災者に対しては、災害直後から、災害救助法に基づきまして、日常生活を営むのに最小限必要な被服、寝具、その他生活必需品を速やかに支給されると承知をしております。

 生活保護制度につきましては、他法他施策が優先となっておりますので、災害救助法が発動されない場合に、生活保護費の一時扶助費として、最低生活に必要な家具什器の購入費用を支給できるという取り扱いとなっております。

 また、これらの措置での対応を超える家具等の購入費用につきましては、義援金や都道府県社会福祉協議会からの生活福祉資金の貸し付けを活用いただくことになりますが、生活保護制度におきましては、義援金が家具、家電の購入費用など生活の再建に充てられる場合、こうした場合は収入として認定せず、保護費に加えて手元に残る取り扱いとしております。

 また、生活福祉資金の貸し付けの償還の場合に、償還に充てる収入がある場合には、これを収入として認定せず、保護費が手元に残るようにしている、このような取り扱いでございます。

堀内(照)委員 熊本では一部損壊の方が非常に多かったわけであります。

 それで、今いろいろありましたが、家具什器費の問題を資料の一枚目でつけておきました。

 一枚目の右側、ちょっと下線を引いたんですが、災害に遭って、災害救助法が発動されない場合は支給される。だから、された場合は、この適用はされないんですよね。ただ、転居の場合というのがありまして、全半壊で仮設なんかに入る場合は転居に当たりますので支給されるんですが、今言いましたように、熊本は一部損壊が非常に多かったわけです。

 それから、今、義援金というお話もありました。熊本では、一部損壊の方々に義援金が配分されたのはことしの三月、三万円なんです。被災から十一カ月たって、ようやくでありました。一番必要だった被災直後には全くありませんでした。

 それで、さらには、今、生活福祉の貸し付けがあるんだということでありましたが、我が党に相談いただいた方も、そうやって行政からは案内されて貸し付けを受けているんですが、間もなく、借りてから一年になりますので、返済が迫ってきます。

 今、収入がある場合は、返済分は収入と認定しないということですが、保護費のみの場合は、毎月、生活保護の保護費から返済しなければならない。四、五千円ぐらいになると思うんです。少ない保護費の中から四、五千円となれば、一週間の食費にも匹敵しかねないんだと思います。

 最低限の生活を保障するこの保護費を減額すれば、これは最低保障にすらならないと思うんです。そうならないためにも、いつどれだけ配分されるのかわからない義援金に、もう実質上頼っていることになっていますので、そうではなくて、やはり生活保護での支給のあり方を見直すべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど局長から答弁をいたしましたが、被災者に対しては、災害救助法、これに基づく生活必需品の支給、それから生活保護制度による最低生活に必要な物品の購入に必要な費用に対する一時金の支給、これが行われるということが、優先するという話が先ほどあったと思います。

 こうした制度の対象にならないものの買いかえにかかる費用、これについて、毎月の生活扶助費とは別に、保護費から一時金として支給することについて、これについては、これらの需要は一般世帯においても発生をすることであります。そして、生活保護受給者にのみ、これらを仮に支給するとすれば、一般の低所得世帯との均衡の観点から、これは慎重な検討が必要になってくるというふうに考えています。

 一方で、災害救助法や生活保護制度の対象とならない家具などの購入費用については、義援金は遅いという話がありましたが、義援金や都道府県の社会福祉協議会からの生活福祉資金の貸し付け、これを活用いただくことになりますけれども、生活保護制度においては、義援金や生活福祉資金の貸し付けの償還に充てる収入がある場合は、原則としてこれを収入として認定しない、そして、保護費がその結果、手元に残るようにしておる扱いにしているわけでございます。

堀内(照)委員 それはもう今答弁いただいて、私が言ったとおりでありまして、保護費しか収入がない人にとったら減額になるんですよ。これは本当にそんなことでいいのかと思うんですね。これは生活保護の制度できちっとカバーすべきだ、この見直しを求めたいと思います。ありますか、一言。ぜひお願いします。

 続いて、大きな二つ目の問題で、医療機関などへの指導の問題についてであります。

 全国で、医療機関などへの厚生労働省からの指導について、非常に高圧的だという声を聞きます。指導をめぐって若い医師が自殺するということも何例か私も聞いております。この指導は、そもそも何のために行われるものなのかと思うんです。指導大綱というのがあると思うんですが、そこでは指導の方法についてどう定められているでしょうか。

鈴木政府参考人 保険医療機関等に対する個別指導についてお尋ねがございました。

 これにつきましては、保険診療や診療報酬請求に関するルールについて周知徹底することを主眼といたしまして、地方厚生局が、カルテなどに基づき、懇切丁寧に指導を行うということとしております。

 また、指導に当たりましては、学識経験者に現場での立ち会いをいただきまして、公正かつ適正な実施を図っているというところでございます。

堀内(照)委員 今もありましたように、診療の取り扱い、報酬請求などの周知徹底のためであって、もう一方、監査というのもあると思うんですが、いわゆる療養の給付や報酬の請求が適正であるかどうかを出頭命令や立入検査などを通じて確かめる、そういう監査とは違うんだということだと思います。

 現場からは、大変威圧的な態度だったとか、急に大声で威圧して机をたたくとか、カルテを見るや否や被指導者をどなったですとか、人格を否定される発言があったですとか、監査をちらつかせて恫喝するといった実態があると聞いています。

 監査であっても、もちろん恫喝などは許されないと私は思いますが、ましてや指導は、あくまで主眼は、今もありましたように、保険診療の取り扱いや報酬請求の周知徹底、そのために懇切丁寧に、教育的にいわば行うものだと思うんです。

 この点で一つ確認したいんですが、指導の内容をより理解するために、後で聞き直せるように、録音というのが認められていると思うんですが。

鈴木政府参考人 個別指導の録音についてお尋ねでございます。

 これは、御指摘のように、保険医等自身による確認を目的とする場合に限りまして、指導内容の録音を認めておりますが、録音をする際には、その録音内容に患者さんのプライバシーが入っていることがございますので、他人の方に聞かせる等、保険医等の守秘義務に反する目的では使用ができないというふうにお伝えをしております。

堀内(照)委員 それから、集団的個別指導の選定基準、高点数ということになっているんですが、高点数だから悪いのかと私は思うんです。必要な医療を提供した結果、高点数になるということはあり得るわけであって、高点数だから悪い、何かそんな認識なのかと思うわけですね。この高点数を選定基準にすることをやはりやめるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 集団的個別指導の選定基準についてお尋ねがございました。

 これにつきましては、対象となる保険医療機関の選定に当たって、中医協の議論を踏まえて、恣意的にならないように公平で客観的な指標として、診療報酬明細書、いわゆるレセプトの一件当たりの平均点数が高いことを基準にしております。

 ただし、その際、医療機関によって特性が異なりますので、例えば病院の種別、例えば一般病院、精神病院等々でございます、それから、診療所の診療科目、内科、外科、小児科等々でございますが、一定の類型区分ごとに選定をすることとしております。

 このような基準については、これまで関係団体等からさまざまな御指摘をいただいておりますので、今後丁寧な指導を実施するために、今後とも、さまざまな御意見を十分お聞きしながら、必要な見直しについて検討してまいりたいというふうに思います。

堀内(照)委員 恣意的にならないようにというんですが、診療内容に基づかない、高点数のみを理由にして選定するということは、やはり合理性はないと私は思うんです。これは萎縮診療につながるという指摘も現場であります。高点数にならないようにということで、必要な医療をむしろ抑制されるようなことがあってはならないと私は思うんです。改めて、これは今、今後の検討ということもありましたので、やめるべきだということを指摘しておきたいと思うんです。

 それから、指導にせよ監査にせよ、今も少しありました、学識経験者の立ち会いが認められていることになっています。それはどういう趣旨なのかということをお答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 指導、監査について、学識経験者の立ち会いについてお尋ねがございました。

 これは、保険医療機関等への個別指導、監査を実施する際に、健康保険法に基づきまして、診療または調剤に関する学識経験者が立ち会うということでございますけれども、この趣旨は、保険診療のルールや診療の実態を熟知した立場から、診療の実態に照らして、二つございますが、一つは、行政の指導が妥当、適切に実施されているか、つまり、行き過ぎた指導になっていないかということでございます。それから、保険医療機関の指導内容が医学的に適切であるか、こういう観点に基づいて発言をしていただきまして、指導の公平性を担保するということでございます。

堀内(照)委員 ですから、監査であっても立ち会いを認めて公平性の担保に努めようということになっているわけでありまして、改めて、監査とは違う指導ということであれば、なおさら教育的、丁寧でなければならないと思うんです。

 大臣に、この点、改めて確認したいと思います。

 監査と指導はやはりこういう点で違うんだ、指導というのは、あくまで保険診療や報酬請求についての周知徹底が主眼であって、懇切丁寧に行われるべきであるんだ、監査とは違うという、この点を確認していただきたいのと、先ほど録音ということを確認しましたが、現場では認められないという事例も聞いております。そういうことも含めて、指導はこうあるべきだ、懇切丁寧であるべきだという趣旨が現場に徹底されるように大臣に求めたいと思うんです。二点、お願いします。

塩崎国務大臣 先ほど来局長の方から、個別指導とは何たるかということを御答弁申し上げてまいっておりますけれども、繰り返すことになりますが、個別指導というのは、保険診療や診療報酬の請求に関するルールについて周知徹底をする、これが主眼であって、あくまでもこれは懇切丁寧に行わなければならないものだということでございます。

 また、個別指導を実施する際には、健康保険法に基づいて、診療または調剤に関する学識経験者が立ち会うこととし、指導の公平性を担保しているということでございます。

 録音については、先ほどお話し申し上げたとおり、指導内容の保険医等自身による確認を目的とする場合に限って許されるということで、もちろんプライバシーの問題には留意をしながら、こういうことでございました。

 ということで、これまでも公正公平かつ丁寧な指導を実施してきている、そういう姿勢でまいっておりますけれども、個別指導の趣旨などについて周知徹底を図りつつ、引き続き、原点に立ち返って、懇切丁寧な指導というものに努めていかなければならないというふうに思っております。

堀内(照)委員 さまざまな事例を聞いておりますので、ぜひ、この点、趣旨がきちんと貫かれるように徹底をお願いしたいと思っています。この問題は、今後も注視をしていきたいと思っております。

 きょう、三点目に伺いたいのは、医療機関の消費税の問題、医療機関側にとってはいわゆる損税になっているという問題であります。

 保険診療は非課税であり、医療機関での患者の支払いには消費税は含まれません。しかし、医療機関がさまざまに仕入れをする際などは消費税を負担しているわけであります。その部分は控除されず、医療機関の持ち出しになっています。

 まず、この点で国の対応を確認したいと思います。

鈴木政府参考人 医療機関における控除対象外消費税の扱いについて御質問ございました。

 御指摘のように、社会保険診療は非課税でございますので、課税仕入れが仕入れ税控除の対象とはならないということでございます。したがって、仕入れに係る消費税相当額を診療報酬に上乗せするという形で補填をしております。

 具体的には、過去の消費税を導入したとき、それから引き上げをした場合、医療機関の仕入れ費用の増加を勘案いたしまして、平成元年の三%への対応の場合には診療報酬を〇・七六%引き上げ、平成九年の五%への消費税の引き上げの場合には診療報酬を〇・七七%引き上げ、それから、平成二十六年の消費税八%への引き上げのときには診療報酬を一・三六%引き上げという対応をしております。

堀内(照)委員 この間、消費税の導入時にも、五%、八%へのそれぞれ引き上げのときにも、診療報酬に要は上乗せをするということだったと思います。

 しかし、ちょっと分けて考えたいと思うんです。導入時と五%のときの上乗せ、このときはそういう経緯がありましたけれども、その後の繰り返しの改定で、点数そのものが下げられたり、項目自体がなくなったり、あるいは包括化されたりということで、消費税分、必ずしも補填しているとは言えない現状があるんじゃないでしょうか。

鈴木政府参考人 消費税導入、それから五%引き上げ時の診療報酬の対応についてお尋ねがございました。

 御指摘がございましたように、この二つの機会の際には、消費税が主にかかると思われる項目に診療報酬を上乗せいたしました。その際、医療機関の仕入れ費用の増加等を勘案して引き上げを行っているということでございまして、それを踏まえて、中医協においての議論を踏まえて、適切に方式を算出していったということでございます。

 その後、累次の点数の新設、それから引き上げ、引き下げ等がございましたけれども、点数の包括化、統合等でなくなっている品目があるのではないかという御指摘でございますが、これは、全体として、仕入れに係る消費税を含めた費用を実態調査で把握した上で改定を行っておりますので、必要な報酬対応はしているのではないかというふうに考えております。

堀内(照)委員 資料の二枚目に、日本医師会の資料から私の事務所の方で作成した表、特に、平成元年、導入時、上乗せをした項目について、現在の点数がどうなっているのかということで比較をしております。

 包括化等々、いわば明確に区分はできなくなったけれども、全体としては入っているんだという答弁だったと思うんですが、血液化学検査、五項目以上七項目以下は、五点上乗せして百九十五点だったのが、今、九十三点です。同じく、その検査の八項目または九項目は、五点プラスして二百四十五点だったのが九十九点に下がっているわけです。以下以下、同じように五点プラスして三十五点になっているのが十五点。四十点、五十点になっているのが十六点ということで、明確に下がっているのもあるわけなんですよね。これを今全体としてはとおっしゃいましたけれども、補填されていないという実態もあるんじゃないですか。

鈴木政府参考人 お示ししていただいた資料でございますけれども、全体としては、やはり診療報酬の中で包括化が進んだり、改定ごとに報酬が下がっているものがございますので、全体として、きちっと高所大所から消費税が補填されているということであれば、個別の項目というよりも、むしろ全体として見るべきではないかというふうに考えております。

堀内(照)委員 私は、全体として含まれているというふうにはとても言えないんだと思うんですね。

 それは、今の分けてということは、導入時と五%のときの上乗せ分と、それから八%のときの上乗せとちょっと分けて議論したいと言ったのは、八%の増税の際、今、導入時と五%への対応の、項目ごとの上乗せと違ったやり方をしているんだと思うんです。そのとき、なぜ従来の項目に上乗せするやり方を変えたのか、どんな議論があったのか、ちょっと、それをぜひ、お答えいただきたいと思うんです。

鈴木政府参考人 御指摘のように、消費税導入時それから五%への引き上げ時と、それから八%への引き上げ時というのは、診療報酬への乗せ方が違っていたということでございます。

 これは、五%それから消費税導入のときには、先ほど申し上げたように、消費税が多くかかる項目に乗せておりましたし、八%のときには、基本診療料等に乗せております。

 これは、実は平成二十六年度の診療報酬改定につきましては、医療機関等における消費税負担に関する分科会というのを設置いたしまして、検討を行いました。その中での議論でございますけれども、平成元年、九年のような、限られた項目に配分する方法は透明性、公平性に欠けるのではないか、それからもう一つは、後の診療報酬改定でどこに補填したかが見えにくくなり、例えば基本診療料に加算として一括して補填するのが望ましいのではないかというような御意見がございましたので、こういう議論を踏まえまして、中医協において議論を行った結果、全ての方から納得が得られるような個別項目への上乗せというのは現実的になかなか難しい、それから、可能な限りわかりやすい形で上乗せすることを重視すべきであって、そのためには、基本診療料等に上乗せすることを中心に対応することが、現時点でとり得る、当時の時点でございますけれども、最善の策であるということでございましたので、方式を変えたということでございます。

堀内(照)委員 見えなくなっている、区別ができないという透明性ということだけではなくて、公平性にも欠けるという指摘がやはりあったわけなんですね。それで、八%への増税のときには、今ありましたように、従来の項目に乗せるのではなくて、基本診療のところに乗せていくというやり方に変えたわけであります。つまり、五%分までの対応というのは、そういう意味では、やはり適切に上乗せができていないということを厚労省自身が認めているんだと私は思うんです。

 その上で、三%分を乗せた八%への対応、その部分はどうなのかを見たいと思うんです。これは、厚労省自身が調査、把握をされていると思います。消費税率八%に引き上げに伴う補填状況の把握結果についてというのがあると思うんですが、そこで明らかにされています。

 幾つかちょっと伺いたいんですが、一つは全体の補填率、二つ目は病院で、病院のうち、一般病院及び特定機能病院の補填率、それから三点目には診療所で、診療所のうち、医療法人その他の補填率、それぞれお答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 消費税八%引き上げ時の診療報酬における補填率についてお尋ねがございました。

 平成二十七年十一月に行った調査によりますれば、今お尋ねの医療機関全体の補填率でございます、これが一〇二・〇七%。それから、そのうち一般病院につきましては一〇一・二五%。特定機能病院、これは大学病院等を中心にするものでございますが、これが九八・〇九%。最後に、医療法人立の診療所、これについては九四・七一%というふうになっております。

堀内(照)委員 今答えていただきました八%のときの補填、全体では一〇二・〇七%で、カバーされているように見えるんですが、これは資料の三枚目に、あとの二つ、今、二項目お答えいただいた、病院の問題と一般診療所の問題の表をつけておきましたが、病院の中でも、一般病院に比べて、特定機能病院になれば一〇〇%を割ってしまう、十分補填できていないという状況です。一般診療所で見れば、個人立よりも医療法人その他の方が、やはりなかなかしんどいということなんだと思います。つまり、規模が大きくなれば、それだけなかなか補填されないという実態なんだと思います。

 兵庫県の民間病院協会が、これはちょっと古いんですけれども、五%時に、二〇〇八年にアンケートを行っておりまして、それでは、一病院当たり年間三千万円もの消費税負担、年間一億円以上負担している医療機関が九件あったんだということであります。その後の八%への増税時の診療報酬での上乗せは、増税三%分への対応なわけでありますから、五%部分までのこうした負担の重さというのは、今も基本的には変わっていないんだと思います。

 八%への増税への対応も、今お示しいただきましたように、大きな病院であればあるほど補填率が低いということを考えれば、さらにこの負担が重たいものになっているということは容易に想像できるんだと思います。あるドクターにお話を伺いましたら、本当にこれが一〇%なんかになったら廃業せざるを得ない病院が出るんじゃないかという大変な懸念、危機感でありました。

 こうした問題は、与党税調でも、医療に係る消費税のあり方について、高額な設備投資にかかる負担が大きい、こういう指摘等も踏まえ、総合的に検討とされているように、必ずしも消費税の分は診療報酬で補填されていないという実態があるんだと思うんですが、大臣に伺いたいと思います。

 この診療報酬上乗せというやり方で、消費税分、十分補填されていないというこの現実、これ自体はお認めになられるでしょうか。

塩崎国務大臣 これは長い経緯のある話で、最初の選択がこういうことに、いろいろな御指摘をいただくようなことになっているわけでありますけれども、消費税の導入、税率引き上げ、これに際しては、医療機関の仕入れ費用の増加などを勘案して、それぞれの時点で適切と考えられる水準で診療報酬の引き上げによる対応を行ってきたということを先ほど来局長から答弁をしてまいりました。

 消費税導入時と五%引き上げ時における診療報酬による補填状況の把握は行っていないわけでありますけれども、八%へ消費税引き上げに伴う補填状況の把握を、今数字を申し上げたところでございますけれども、五%から八%への三%の増税分について、診療報酬改定による対応によって、ミクロについて今お話がありましたが、マクロではおおむね補填をされているということが確認をされているけれども、医療機関の類型に応じて補填状況にばらつきがあって、これをどう考えるのか、こういうことになっているわけでございます。

 医療に係る消費税の税制のあり方については、今、税制改正大綱を引用いただきましたけれども、まさに、消費税が一〇%に引き上げられるまでに、医療機関の仕入れ税額の負担及び患者等の負担に十分に配慮をし、関係者の負担の公平性、透明性、これを確保しつつ抜本的な解決に向けて適切な措置を講ずることができるよう、実態の正確な把握を行いつつ、医療保険制度における手当てのあり方の検討等にあわせて、医療関係者、保険者等の意見、特に、今御指摘をいただいたように、高額な設備投資にかかる負担が大きいとの指摘等も踏まえて総合的に検討し、結論を得ること、こういうことになっていまして、今、かなりいろいろ配慮事項が並んでいるわけでありまして、こういったことに十分留意をしながら答えを出していかなければならないということでございますし、よりよい方法は何なのかということを検討していかなければならないというふうに考えてございます。

堀内(照)委員 簡単に言えば、マクロでは大まかには補填されているけれども、ミクロで見ればいろいろ問題もあるんだと。ただ、私は、マクロで見ても、少なくとも五%部分までのところでは本当に補填されているのかな、こう言わなければならないと思うんです。そういう意味では、大臣自身も課題はあるという認識だということでいいですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、長い経緯があって課題があるから、経緯があっていろいろな議論がなされているわけで、なかなか一筋縄ではいかない問題だからこそ、今かなり長い引用を私の方からも大綱からいたしましたが、そこには、考慮しなきゃいけない事項がたくさん並んでいます。

 何が本当に医療機関にとっても、そして患者さんにとっても、そして、これは保険方式の助け合いの仕組みでございますので、それぞれ国民にとって何が本当に負担としてもいいのかということをよく考えながら、その課題を解決していかなければならないというふうに考えております。

堀内(照)委員 その負担のあり方なんですが、診療報酬へ上乗せするということは、私、別の意味でも問題だと思っています。

 医療が非課税なのは、所得の大小にかかわらず医療にかかる必要があるために、社会政策的な配慮から非課税になっているんだと承知しております。しかし、診療報酬に消費税分を上乗せすると、結局、患者への負担増になってしまう。これでは非課税にしている政策的な意味合いがなくなってしまうんだと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 診療報酬での対応をしてきたわけでございますけれども、これについては、診療報酬に対する定率の患者負担が発生をする、そういう意味で、この方式による国民負担というのがあるということであるわけでありますが、消費税分全てを患者負担とする場合と比べれば、診療報酬の財源は、定率の患者負担のほか、広く個人や企業が負担する税、そして保険料で賄われているわけでございますので、負担は軽減をされているとも考えられるわけであります。

 さらに、診療報酬による補填というのは、医療機関の負担する総費用のうち、人件費等の非課税仕入れを除いた課税仕入れ部分への対応にとどまるために、一般的な課税取引と比べれば、患者負担は軽減をされていると考えられるものだと思います。

堀内(照)委員 さまざまにおっしゃいましたけれども、しかし実際、上乗せをしているわけでありますから、これはもともと患者負担に乗せないために非課税にしているのに、その幾分かであっても患者負担にしているということでは、政策的な意味合いを、なくすとは言わないまでも、減らす、軽減する、その意味合いを減じてしまうようなものじゃないかと思うんですね。

 これらの矛盾を解決するには、仕入れにかかった消費税をきちんと還付する仕組みがやはり必要なんだと思います。そのためには、保険診療を消費税の課税対象にしてゼロ税率を適用する、これが一番すっきりするんじゃないかと思うんですが、大臣の所見を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 大綱でどう書かれているかは、もう先ほど申し上げたので、改めて申し上げませんけれども、最近とみに指摘をされているのは、特に高額な設備投資にかかる負担が大きい、そういう指摘が、特に病院の大きいところについてこの負担が重くなるということで、そういうことも踏まえながら、総合的に今検討して、結論を得るということになっているわけであります。

 仕入れ税額控除を可能とするために、医療を課税化した上でゼロ税率を適用してはどうかという提案でございます。これは、いろいろなところからも、他にももちろんこういう御主張をされる方がおられるわけでありまして、私どももそれは認識しているわけでありますが、それについては、まず第一に、消費税の軽減税率については極めて限定的な取り扱いとなっていること、それから、仮に行う場合には、国、地方にとって多額の税収減、これが発生をするということになりまして、医療を含む社会保障の必要財源の確保をでは一体どうするのかということについて考えなければいけない、こういったような課題があるわけでございます。

 提案としてはお聞きをするところでございますが、どうするかということは、先ほど申し上げたように、総合的に判断をしていかなければいけない、かなりいろいろな考慮要素のある問題であるというふうに思っておりますが、大事な問題であるということも、そのとおりでございます。

堀内(照)委員 財源をどこから引っ張ってくるのかというのは、もう言い出したら、立場が違うのであれですが、大企業、富裕層からもっと課税できるところがあるじゃないかとか、いろいろ私たちとしても意見はあるわけであります。事務負担の問題をどう考えるかとか、その合意をどう図るのかとか、また、医療界からも別の角度からの提案も出されているところだと思います。さまざまな議論や課題があると思います。

 いずれにしても、事実上の損税になるような現状をどう解決するのか。それは、診療報酬の世界で解決する限り、いろいろな矛盾がつきまといますので、やはり税の世界で解決を図るということが求められているんだと思います。そのことを求めて、少しありますけれども、質問を終わります。

 ありがとうございます。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美です。

 きょうは、一般質問ということで、かなり多岐にわたる質問になるかと思いますけれども、いろいろな分野から聞きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、アニサキスの問題について伺いたいと思います。

 アニサキスというと、私も医学生時代に寄生虫の実習でサバを解剖するという実習がありまして、こんなに寄生虫がたくさんいるんだといって、びっくりした思い出があります。

 最近、テレビタレントが相次いでアニサキス症を発症するなど、生の魚介類につく寄生虫アニサキスによる食中毒の報告がふえているという報道がありました。また、厚生労働省のホームページにも注意喚起がされていると思います。二〇〇七年には六件だった報告件数が昨年は百二十四件となっており、増加傾向が顕著であるように報じられております。

 なぜ急激に報告がふえているのか、急に生の魚を食べ始めたわけでもないと思いますので、報告だけがふえているものなのか、厚生労働省は増加した原因をどのように評価しているのか、受けとめとあわせてアニサキス症を抑えるための対策についてお示しをいただきたいと思います。

北島政府参考人 お答えいたします。

 アニサキスを原因とする食中毒につきましては、近年の報告数の増加傾向を踏まえまして、平成二十五年から食中毒統計において個別に集計をしております。平成二十五年以降の患者数は、平成二十五年が八十九名、二十六年が七十九名、二十七年が百三十三名、二十八年は百二十六名となっております。

 アニサキスは、サバ、イワシ、カツオなどの魚介類の内臓に寄生しており、鮮度が低下すると内臓から可食部の筋肉に移動いたしますが、冷凍や加熱により死滅することが知られております。このため、予防対策といたしましては、刺身など魚介類を食する場合には鮮度の高いものを使用し、調理の際には目視でアニサキス幼虫を除去すること、そして、必要に応じて冷凍や加熱をすることが重要であることとしております。

 厚生労働省では、保健所を通じまして、こうした魚介類の取り扱い等について注意喚起するとともに、ホームページ等により広く国民に周知を図っております。

 今後とも、アニサキスによる食中毒予防の観点から、さらなる関係者への情報提供に努めてまいります。

河野(正)委員 胃壁に食いつくとすごく痛いということで、内視鏡でつまめばいいわけでありますけれども、そういったものがふえているということで、しっかりと注意喚起も含めてしていただきたいなと思います。

 次に移りますが、午前中、大西委員も言われておりましたが、ちょっとしつこいようなんですが、受動喫煙対策について伺いたいなと思います。

 先日、ラグビーワールドカップ日本大会の組み合わせ抽せんが行われたと思います。塩崎大臣のおっしゃっておられた東京オリパラ、その前年のラグビーワールドカップ、もう足音が聞こえてきている状態じゃないのかなと思います。

 また、五月十日、日本医師会定例記者会見で、受動喫煙防止対策強化を実現するために署名活動を行うということがされました。私も医師会員ですので、早速その署名活動に協力せよというメールが届いておりまして、横倉医師会長のコメントでは、一番は世論喚起である、今から署名活動をやっても今国会中に提出することは難しいのかもしれないけれども、そういった意味で世論を喚起していきたいんだというようなコメントが報道されておりました。

 五月八日、受動喫煙防止対策について、自民党さんは党の方で、望まない受動喫煙を防止することで一致し、屋内禁煙を原則とするものの、小規模飲食店は喫煙や分煙といった表示をすれば喫煙を認める案をまとめたというふうに報道されております。

 厚労省、自民党ともに、望まない受動喫煙の防止、そのため、法案を今国会中に提出することで一致していると思われるものの、主に小規模飲食店に求める対策で意見が分かれている印象があります。

 私は、ドイツという、先にそういう基準がありますので、ドイツ基準の七十五平米以下とかそういった意味でやったらどうかな、坪単位の考え方の我が国において三十平米というのは十坪に満たないということで厳しいのかなとかねがね言わせていただいております。

 塩崎大臣は、記者会見などでも、飲食店で働く労働者や歓送迎会などの事例を挙げられ、自民党案では受動喫煙防止対策が不十分ではないかとの趣旨の発言をされていることと思います。

 確かに、自民党案では望まない受動喫煙を全て防止することができないようにも思えるところであります。例外なく建物内完全禁煙を罰則つきで措置してきた北京以降のオリンピック・パラリンピック開催地の取り組みを踏まえれば、自民党さんの案のように、表示すれば喫煙も認めるというのは、国際的にはいかがなものかなと感じるところであります。世界やIOC、WHOに対しても堂々と胸を張れる対策とは言いがたいのではないかと思うところであります。

 改めて、委員会の場で塩崎厚生労働大臣の見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 けさも少しお話し申し上げましたけれども、厚生労働省として、今回、健康増進法の改正をする中で、受動喫煙対策を徹底するという総理の施政方針演説の具体策をお示しするべく、三月一日に私どもの、今で言う「基本的な考え方の案」という健康増進法を改正することについての考え方の案をお示しさせていただきました。

 自民党側の理解もいただきまして、来週の十五日にとかしき部会長のもとで部会を開いていただいて、まずは厚生労働省の「基本的な考え方の案」を初めて説明させていただく機会をありがたくも頂戴いたす、こういうことになりました。そこで議論を国会議員の中でやっていただこう、オープンにやっていただこうというふうに思っております。

 私は、個人的には、一番敏感な方々の中で、今回いろいろな方々にお会いをしましたが、一番やはり敏感だし、こちらもそれを聞いて本当に切実だなと思ったのは、がんの患者の皆様方、ぜんそくの患者の皆様方、そういった受動喫煙を非常に恐れている人たちがいかに切実に考えているのかというのを私の想像した以上に感じたわけでございます。

 今お話がございましたが、この月曜日に自民党の関係者、幹部の皆さん方がお集まりをいただいて、望まない受動喫煙はなくすということでは立場を超えて一致をした、こういうふうに聞いているわけでございまして、これは実は、望まない受動喫煙をなくそうと言っているのは私ども厚生労働省も全く同じでございますので、たどり着く先は同じだ、こういうことが今共有されているのではないかというふうに思っているわけでございます。

 しかし、今我々として、部会で来週御議論いただいた後はこれは党側と協議をする、こういう段取りになっていますので、中身についてはそういうことでしっかりと議論をさせていただければというふうに考えているところでございます。

 ただ、今出ている、自民党案とおっしゃいましたが、これは自民党の幹部の先生方が集まって整理、確認をされたという論点だというふうに私は伝え聞いておるわけでございますが、いわば表示義務を課すという、これについては、けさ方も申し上げたとおり、幾つか問題点が指摘をされているので、それに留意をせざるを得ないなというふうに考えていて、一点目は、今御指摘をいただきましたように、職場の歓送迎会などで自分の意思ではなくお店に行かざるを得なくなる人がたくさんおられるということ、それから、いろいろなおつき合いで行くときもなかなかお断りするわけにはいかないような仕事であったり、いろいろなことで行く場合の、選択は自分でするわけではないままにそういった喫煙が可能な場所に行った場合、こういった場合にはどうしても、私どもの言う嫌々受動喫煙、先ほど意見は一致していると言っていた望まない受動喫煙はなくすということが守れないということでありますし、もちろん従業員の学生さん、高校生の皆さんを含めて煙にさらされる事態がどうしても起きてしまって望まない受動喫煙をなくすことにはならないだろう。

 それから、喫煙可能な飲食店に、提供される飲食をしたいと思う、その希望を持っていながら喫煙が可能なために行けないという、言ってみれば拒まれてしまうような、行動の自由が制限されることをどう考えるのか、ノーマライゼーションに反するのではないかというような指摘もいただいているわけでございます。

 それと、やはり、たばこフリー・オリンピック・パラリンピック、そして今ラグビーのワールドカップの話がございましたが、特にオリパラについては、これはIOCとWHOの合意が長い伝統となって北京以降のオリンピックの、夏も冬も合わせると次の平昌に至るまでは全て罰則つきの法整備が整っている中で、飲食店に例外をつくるということについては、たばこフリーという長い伝統を初めて日本が破る、それをどう考えるのかということも御議論いただかなければいけないな、そんなふうに思っておりますので、しっかりと議論をして、今国会への関連法案の提出に向けて、成案を得るべく協議をしっかり詰めてまいりたい、このように考えているところでございます。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

河野(正)委員 今国会も会期末まで約一カ月程度となりまして、もう短くなっております。

 事ここに及んでは、国会の外の国民に見えにくい形で与党である自民党と厚労省が交渉を重ねるというよりも、厚労省案と自民党案を並べるなどして、国民に開かれた国会の場で審議し、結論を得た方がよいのかなという意見もあります。

 こう言っておりますけれども、我が党としても、喫煙者はたくさんおりまして、賛成かどうかというのは微妙なところで、これから党内で議論をしなければいけないなと思っておりますが、先ほどお話ししたように、もうラグビーワールドカップ、抽せん会が行われて、いよいよ足音がかなり高まってきている状況だと思います。

 喫煙は、その本人だけではなく、副流煙による受動喫煙によって他者の健康をも害することから、その防止対策は喫緊の課題となってきたはずであります。

 厚生労働省が与党である自民党の理解を求めて努力を重ねること自体を否定するつもりはありませんけれども、もっと国民に対して、受動喫煙が私たちの健康を危険にさらし、疾患にかかるリスクを大きく高めること、受動喫煙に対する規制が海外と比べて極端におくれていることなどを積極的に広報し、知ってもらうよう力を入れるべきではないかというふうに思います。国民の関心が高まっている今だからこそ、国民の理解をより一層得られるチャンスと言えるはずだと思います。

 改めて、答弁者はどなたでも結構ですので、見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 受動喫煙対策の徹底についての厚生労働省としての決意を問われている御質問でございました。

 今申し上げたとおり、成案を得るべく、大車輪でこれから議論を深めて協議を党側としてまいりたいと思いますが、私ども、健康増進法の改正でございますので、これは、健康を確保して、命を守り、子供たちの未来を守るということが私たちの使命だろうというふうに思っています。

 やはり、社会的な機運向上のために、これまでももちろん、マスコミの皆さん方に対してを含めて、省を挙げて努力をしてまいりましたし、見ていただいたらわかるように、みんなこのバッジをつけています。受動喫煙のない社会を目指してというロゴマークでできたバッジでございまして、全員ついていますが、これは名前はけむいモンという名前であるそうでございますが、このバッジもつけながら、今、各方面の説得に回り、御説明に回っているわけでございます。

 いずれにしても、健康増進法で、実は努力目標として、建物の管理者に受動喫煙対策の義務を課したのは十四年前であります。それ以降、十分なことをやはり段取ってこなかったという厚生労働省も反省をしながら、今、ざんげの気持ちを込めながら、一生懸命回って、皆様方に御理解をいただくように努力をしているところでございますので、引き続き、さらに力を入れながら、受動喫煙対策の徹底に向けて、法案提出を目指して頑張っていきたいと思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 ひときわ大きなバッジをつけた健康局長が答弁されるかなと思ったんですが、大臣みずからお話しいただきましたので、強い決意を持って頑張っていただけるものと思っております。

 次に移りますが、アメリカ現地時間の五月三日水曜日、塩崎厚生労働大臣は、アメリカのプライス保健福祉長官と、日本国厚生労働省とアメリカ合衆国保健福祉省との間の協力覚書に署名をされたことと思います。

 お手元に資料を配付させていただいておりますので、御参照ください。

 この覚書では、グローバルな保健体制の強化、ヘルスセキュリティーへの対応、先端医療技術等の研究開発などの課題を列挙し、日米で協力を進めることが確認されたと認識をいたしております。

 こうした覚書を先進国と結ぶのは初めてとのことですが、日米間でこのような協力覚書を結ぼうという動きは、前のオバマ政権のころから始まった話であるのか、トランプ新政権になってからの話なのでしょうか。

 若干、唐突に出てきたなという話題かなというふうに思っているところですけれども、プライス長官が承認されたのが二月十日で、まだ三カ月ほどしかたっていない中でこうした協力覚書を結ぶことに至ったいきさつ、背景、問題意識など、あわせて伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 この間、ゴールデンウイークを利用しまして、初めてプライス保健福祉長官とお会いをする機会を頂戴いたしました。

 大変いい会談をさせていただきまして、いろいろトランプ政権についてはまだよく見えないところがあると言われていました。グローバルヘルスなどについてもそうでありますが、そういうような中で協力覚書が結ばれたわけでありますけれども、日米の間では、昭和四十年に当時の佐藤総理と米国のジョンソン大統領の合意に基づいて開始をされた日米医学協力計画を初めとして、保健医療分野でのさまざまな協力をこれまで二国間でやってまいったところでございます。

 また、昨年九月には、初めての日米韓保健大臣会合を行いました。これは、特に当時のバイデン副大統領が中心になって、ムーンショット計画というのをやっておりました。がんに終止符を打つための対策でありますけれども、協力を進めていくことになっておったわけであります。

 今般、G7としては初めて米国と、新政権発足後、議論を詰めまして、初めて、日米の連携を改めて確認、発展させるためのこの協力覚書というものを交わさせていただきました。

 ごらんのとおり、細かいことよりも、大きな、骨太の覚書になっておりまして、これまでの日米の保健分野の協力の歴史を踏まえて、これから改めて両国間で、両省間でしっかりと連携をしていこうということで協力覚書を交わしたところでございます。

河野(正)委員 確認ですけれども、これはトランプ政権になってから出てきた話でしょうか。

塩崎国務大臣 私のかわりに事務方にワシントンに行かせて議論を重ねてまいりまして、トランプ政権になってから、このようなことを具体的にやろうという話になったところでございます。

河野(正)委員 お手元にある協力覚書の仮訳を読みますと、ヘルスセキュリティーにとどまらない包括的な内容となっていることがわかります。先ほど大臣も骨太のということでおっしゃっていましたけれども、非常に多岐にわたることです。

 優先事項として挙げられている十一項目は見ていただいたとおりです。厚生労働省の仕事が数多く並んでいまして、非常に包括的な内容となっていると感じますが、なぜこのように広い範囲を対象とすることになったのか、日米どちらからの求めによるものなのか、その意図と、あわせてお示しいただきたいと思います。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

福田政府参考人 お答えいたします。

 日米は、グローバルヘルスの体制強化、公衆衛生危機への対応、医薬品、医療機器の規制調和など、保健医療に関しまして協力すべき共通の課題を多く抱えております。保健医療を担当する当局同士が意見交換を重ね、協調して対応していくことが重要と考えております。

 我が国の医薬品医療機器総合機構、PMDAや、それから日本医療研究開発機構、AMEDは、それぞれ米国の食品医薬品局、FDA、また国立衛生研究所、NIHとの間で覚書等を既に結んでおりますが、それらを束ねる当局間での覚書がなく、こういった既存の協力の関係も含めまして、さらに発展させるべく、包括的な覚書を締結することに至ったものでございます。

河野(正)委員 この協力覚書は、専ら公衆衛生上の危機への対応、グローバルヘルスの強化といったテーマが大きく取り上げられておりますけれども、優先事項を見てみますと、医療サービス及び財政という項目もあって、やや違和感も言われております。この医療サービス及び財政という優先事項は具体的にどのようなものを指しているのか、教えていただきたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 国民に対しまして良質な医療サービスを財政的に持続可能な形で提供していくことは、感染症や非感染症などの課題と並びまして、日米それぞれの国内課題ともなっておるところでございます。

 医療サービス及び財政の具体的な協力内容といたしましては、現時点では、例えばWHOやOECD等の場を通じましての情報交換などが想定されておりますけれども、具体的なことにつきましては今後検討していくことといたしております。

河野(正)委員 TPPの議論では、我が国の国民皆保険制度が脅かされるのではないかという懸念の声が大変多く聞こえておりました。アメリカがTPPからの離脱を表明し、日米の二国間での経済対話が始まる中で、医療サービス及び財政についての日米協力を進めることが我が国の公的医療保険の内容まで踏み込んでくるような動きになりはしないのか、懸念が全くないとは言えません。実際にそういったことを心配する声も聞こえているところであります。

 こうした懸念についてどのように応えるか、また、この協力覚書に基づいて今後どのような取り組みを進めようと考えているのか、今回のプライス長官との会談でこうした点について話題に上ったのかどうかとあわせて、塩崎大臣から伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今回のプライス長官との会談におきましては、国際保健における共通課題である健康危機管理自体は当然のことながら議論をいたしました。いわゆるグローバルヘルスの、特に危機の場合の扱いですね、ありましたが、それ以外にも広範に議論をいたしまして、例えば薬剤耐性問題などお話がありましたが、今御懸念をいただきました公的医療保険の問題については、これは御指摘のようなことは向こうからは話題としては出てまいりませんでした。

 また、今回署名した協力覚書の中で、「何ら国際法上又は当事者の法律上法的拘束力のある義務をも生じさせない。」ということが明記されておりまして、公的医療保険を含めて、我が国に特定の義務が生じることはないということであります。特に薬価問題などについて御懸念が多いわけでありますが、そういうような問題は提起もされず、義務が生じることもないということでございます。

 協力覚書に基づく今後の取り組みでございますけれども、各優先分野における情報交換とかあるいは人事交流、例えば米国保健福祉省への厚生労働省職員の派遣などを進めてまいりますけれども、具体的には今後大いに検討していこうということになっております。

 本覚書締結は、相互の信頼関係を形を持ってあらわすものということで、保健医療行政における日米協力関係の礎になるものであって、これを契機にさらに連携を深めてまいりたいと思っておりますし、会談の中でも、お互いの国について言うというよりは、一緒に何をするのかという話題の方が圧倒的に多かったということでございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 ぜひ一緒に、いいシステムになって、協力がうまくいけばいいなというふうに思います。

 介護保険法一部改正案の質問の際から、インセンティブについてお尋ねをしたいなというふうに思ってずっと積み残しをしてきたんですが、きょうも時間がなくなってしまいまして、保険局長、健康局長、老健局長に来ていただいていたんですけれども、また次回に回させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十九分散会


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