衆議院

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第25号 平成29年5月31日(水曜日)

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平成二十九年五月三十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      青山 周平君    赤枝 恒雄君

      秋葉 賢也君    穴見 陽一君

      岩田 和親君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    鬼木  誠君

      金子万寿夫君    神谷  昇君

      木原 誠二君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    高橋ひなこ君

      武部  新君    谷川 とむ君

      冨岡  勉君    豊田真由子君

      中川 郁子君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    野中  厚君

      鳩山 二郎君    福山  守君

      堀内 詔子君    宮路 拓馬君

      務台 俊介君    村井 英樹君

      山下 貴司君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    中島 克仁君

      長妻  昭君    初鹿 明博君

      水戸 将史君    村岡 敏英君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   最高裁判所事務総局家庭局長            村田 斉志君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 加藤 俊治君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           白間竜一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    堀江  裕君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     鳩山 二郎君

  大隈 和英君     神谷  昇君

  田中 英之君     武部  新君

  丹羽 雄哉君     鬼木  誠君

  福山  守君     金子万寿夫君

  村井 英樹君     宮路 拓馬君

  初鹿 明博君     村岡 敏英君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     丹羽 雄哉君

  金子万寿夫君     野中  厚君

  神谷  昇君     大隈 和英君

  武部  新君     田中 英之君

  鳩山 二郎君     穴見 陽一君

  宮路 拓馬君     村井 英樹君

  村岡 敏英君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  野中  厚君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     福山  守君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官小田部耕治君、法務省大臣官房審議官金子修君、大臣官房審議官加藤俊治君、文部科学省大臣官房審議官白間竜一郎君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長吉田学君、社会・援護局障害保健福祉部長堀江裕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長村田斉志君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中島克仁君。

中島委員 おはようございます。民進党の中島克仁です。

 本日は、児童福祉法及び児童虐待防止法改正案の質疑でございまして、時間をいただきましたので、質問させていただきます。

 朝一番、トップバッター、余りないことなんですが、せっかくなので、ちょっと通告していないんですが、大臣に一点お尋ねをしたいと思います。いや、これはもう当然御承知のことだと思いますので、せっかくなので。

 きょうは何の日でしょうか。大臣、よろしくお願いします。

塩崎国務大臣 たしか、三十回目の世界禁煙デーだと思います。

中島委員 当然御承知だということでお尋ねをいたしました。

 きょうは世界禁煙デー、そして一週間、禁煙週間ということで、各自治体、ポスターも、レスリングの吉田沙保里さんのポスターがあるということであるんですが、いま一つ、その周知というか、徹底されていない感もございます。

 大臣も、受動喫煙防止法、対策、これで大変御苦労されておると思いますけれども、禁煙デー、禁煙週間、これは非喫煙者にとっては余り興味のない話であって、喫煙者に届かなければ意味がないということで、さまざま取り組まれておると思いますが、受動喫煙に対して、今こういう時期でもございます。ぜひ、一週間ありますので、さまざまなところで大臣からもアピールをしていただくということは必要ではないかなと。せっかくなので、冒頭、御質問させていただきました。

 それでは、児童福祉法及び児童虐待防止法等の改正案について質問させていただきたいと思います。

 児童虐待への対応については、これまでも制度的な充実が図られながらも、痛ましい児童虐待事件は後を絶たない、昨今でもそのような事件が続いておるということであります。この問題においては、社会全体で子供を守り育てていく、そういった社会をつくるんだと広く国民が共有しなければならないことだと私も強く思います。

 昨日の参考人質疑、その中で、子ども虐待防止ネットワーク・みやぎの事務局長鈴木俊博参考人から、虐待問題は見えない社会問題であって、児相の体制強化など、現行の制度、システムの範囲内ではなかなか難しい、限界があるのではないか、虐待対応のあり方について、抜本的な見直し、さらには大胆な政策転換も必要ではないかというお話があり、大変興味深いものでもありました。

 さらに、先週一回目の質疑、そして私も、週末、地元の関係者の方にもいろいろ御意見を聞きました。当初、この法案、昨年の法改正の検討事項ということで、ある程度現場の方にもコンセンサスがとれていて、多くは司法の関与、特に司法の関与の強化については御理解があるものだというふうに私は勝手に認識していたんですが、実は先週、関係者の方に話を聞くと、本当に御意見はさまざま、ちょっとびっくりいたしました。

 そして、昨日の参考人質疑も、駿河台大学学長の吉田参考人、この意見聴取も、本当に細かく丁寧に御説明をしていただいて、私もそれはそれで納得をしたり、一方で、先ほどの鈴木参考人の話は、また現場サイドの話として、本当にいろいろな問題を現場では抱えていて、本当に百八十度、意見が違う。どちらが正しいということではないのかもしれませんが、それだけ今、虐待に対する問題についてはさまざまな課題が渦巻いているんだなということを認識した次第であります。

 先週の質疑の答弁、また、参考人の意見の内容、そして、私も関係者から話を聞いてきましたので、そのようなことを踏まえて、御質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、子供虐待の全体的な社会背景についてお尋ねをしていきたいと思いますが、資料の一枚目、児童虐待相談の対応件数の推移に関してですが、対応件数の推移は右肩上がりで増加しています。平成二十七年における児童相談所での虐待対応数は十万三千二百八十六件、市町村での九万三千四百五十八件も、どんどん右肩上がりで上がっていて、過去最高という数字です。特に児相の件数は、児童虐待防止法が施行される、平成十一年に比べると、八・九倍となっています。

 相談内容については、一枚目の資料にもございますが、心理的虐待が四七%、十年前に比べると約二・五倍。全体がふえている、その中でも心理的虐待の割合がふえている現状については、先日の厚生労働省答弁において、面前DVが認知され、通報がふえたり、相談ダイヤルなどの周知によって、初期段階での通報がふえた結果だというふうに答弁もされておりました。全体の通報件数がふえている現状は、私もそのようなことが理由と理解はできます。

 一方で、虐待相談の経路別件数を見てみますと、警察がここ十年間かでぐっとふえている。さらに、近隣知人、家族というふうになっているわけですが、資料の二枚目、ここ十年間の経路別の推移を見ていきますと、私の感覚ですが、子供の変化に気がつきやすい場所、学校であったりとか医療機関からの通告。直近では、医療機関の通告が約三%、十年前とほぼ横ばい、学校は全体の八%で、十年前に比べると、割合からすると半分になっている。もちろん全体の増加数、警察からの通告がぐっとふえている中でということで、実数はふえているわけですが、全体の割合としてはむしろ減っているとも見える。

 そこでお尋ねをしたいんですが、医療機関では子供の身体的変化、学校現場では子供の心理的変化に最も直面していて、気がつきやすい場所とも言えます。早期にそのような子供の変化に気づきやすい場所、この割合が少ない現状を厚労省としてどのように分析をされているのか、お尋ねをしたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員お示しいただきました資料にも明らかなように、児童相談所で対応しております虐待の相談対応件数の中で、今まさに御質問の中にもございましたように、また、資料の二枚目にございますように、割合という意味でいうと、警察等の割合が増加しているということで、お手元の資料にもありますように、二十七年度で三七%。それに比べて、医療機関の三%、あるいは学校等の八%ということになってございます。

 もちろん、警察等がふえている点につきましては、児童相談所と警察の連携体制を強化するという大きな流れの中で、特に平成二十四年の四月、警察庁におかれて、都道府県県警に対して、危険度とか緊急度の判断を的確に行って、児相への通告を迅速にしてほしいという通知をされたということ、あるいは、今、面前DVなど、警察からの通告が増加したというふうに私ども分析をしてございますので、警察が実数としてふえた分、学校あるいは医療機関のところの割合がという御指摘かと思います。

 ただ、これもまた御案内のように、二枚目の先生お示しの資料にもございますように、実数でいえば、この間において、医療機関についても平成十八年度の千五百余から三千件余、学校等についても五千六百件余から八千件余ということで、ふえてございますので、こういう、今御指摘いただきましたように、身近なところで虐待あるいは虐待の端緒に触れることが多いという関係者からの通告、またいろいろな形で私ども督励させていただきたいし、関係者の方々の御協力を求めてまいりたいと思っております。

中島委員 先日も、各機関との連携を深めていくということで、他の委員の御質問にも答えておられましたが、私、小児の死因究明、この後、質問していきますけれども、結果をしっかり調査していくのも非常に大事だと思いますし、やはり本当に、虐待事案、早期発見、これは何事でも早期発見というのは非常に第一歩として大事だと。

 そういう意味からいくと、私も医師であって、もちろん小児科の先生が子供さんと触れ合う機会は多いわけですが、地方に行きますと、私は別に小児科の医者ではないんですけれども、一般の診療所としても、子供を診るケースは非常に多いです。

 さらに、学校現場ということになると、学校の先生たちはもちろんでありますが、学校健診、そういった場面で診察をする。そのときに身体的変化を、やはりそういう観点で見ていくということは非常に大事なことだ、未然に防いでいく上で大変重要なところだなということは、本法案を再度見ていても、重要だなということはよくわかります。

 私も医者になって二十年たちます。実は私も、診ていた患者さん、お子さんが、二名ほどですが、一時保護を受けられた。そして、全く気がつかなかったかなと。後で思い起こすと、例えば、わきの下がにおいがしたりとか、汚れがあったりとかですね。

 そういったことは、今、医療費とかが無料の自治体が多いです。これは子供貧困のときもそうなんですが、そういう意味で、もちろん、大きな病院というよりは、もっと前面にいる診療所の医師であり、学校健診をする医師会の先生方、そういう方々に、今も周知、連携をとろうということは厚労省はされておると思いますが、改めてそういった観点で、ふだん接しやすい、さらには変化に気がつきやすい部署と、さらなる連携の強化を図るべきだというふうに思います。

 改めて、虐待に関連する重大事件を未然に防ぐ観点から、医療機関、一般診療所、医師会への要請であったりとか、学校健診も関連すると思います。早期発見、早期対応のあり方をどのように今後進めていくか、具体的なことがございましたら、お答えをいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まさに委員御指摘のように、虐待の端緒あるいは虐待そのものに触れることの多い身近な医療機関あるいは学校関係者の方々につきましては、児童虐待防止法という法律の五条におきまして、虐待を発見しやすい立場にあることを自覚していただいて、その早期発見に努めていただくということになっておりました。さらに加えて、昨年の児童福祉法の改正におきまして、医療機関あるいは学校の方々に、虐待に至る前に、支援が必要な段階で市町村へ情報提供していただくように努めていただくということも明記をさせていただきました。

 それから、現場においては、市町村に設置されています要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協という会議体におきまして、関係者の方々に御参加いただいて、虐待を受けたお子さんなど、要保護児童の早期発見とか適切な保護について、関係者の方々の連携協力体制をとるということになっておりまして、それに、病院、医療関係者、あるいは学校の方々も、非常に高い割合で地域においては参加をいただいております。

 私どもとしましては、こういう取り組みを通じて、それぞれの現場現場、地域地域、市町村における連携を通じた早期発見、早期対応が適切に図られるように取り組んでまいりたいと思いますし、全国レベルにおきましても、虐待の関係者の方々から成る協議会で、我々はいろいろな意見を交換してございます。そういう機会においても、今先生御指摘のような点については、重ねてお願いしてまいりたいと思っております。

中島委員 ぜひ、実効性のあるような取り組み、関係機関との連携をさらに強めていただきたいというふうにも思います。

 続いて、先週の質疑でも取り上げておられましたが、子供虐待に対する調査、実態は十分に把握されておるかどうかについて質問をさせていただきたいと思います。

 資料の四枚目、これは先週も大西委員が提出した資料でもございますが、厚労省は、重大事例に関する検証委員会を設置し、毎年、虐待死亡例に関する結果を公表しています。第十二次報告が昨年発表されましたが、小児科学会が東京など四つの自治体に調査した結果では、厚労省の発表よりも三倍から五倍以上の子供が毎年虐待で亡くなっている可能性があることを示されました。

 また、厚労省の研究班は、全国の医療機関を対象に調査を行い、虐待で死亡した可能性があると医師が判断し、その後、警察や児相に通告した事例の約九〇%について、警察による立件や児相による調査が行われていなかったことを明らかといたしました。この結果は大変重要だと思いますし、医療現場で、虐待によって死亡した可能性があると指摘をされながらも、その後、司法や福祉の現場ではその可能性が無視されたということにもつながります。

 大変衝撃的なことだと私自身も受けとめておりますが、小児科学会の調査結果、厚労省研究班の調査結果について、これは先週金曜日の答弁では、内閣府の方から答弁をいただいて、私も拝聴しておりましたが、改めて、この調査結果についての大臣の受けとめ、実態把握のための具体的施策のあり方、欧米諸国で実施されているチャイルド・デス・レビュー制度の導入の必要性について、大臣の見解をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 平成二十八年九月に公表されました厚生労働省調べの、子供の虐待による死亡事例等の検証結果、これは第十二次報告でございますが、これにおいて、児童虐待の死亡事例は七十一名と報告されています。一方で、今お触れになられた日本小児科学会、この発表では約三百五十名ということで、桁が一つ違う、こういう試算が示されているわけであります。

 この違いについてのお尋ねでございますけれども、細かなところは、よくまだ私どもではわからない部分もありますけれども、厚生労働省の数値は、虐待死として自治体が判断したものでございます。これに対して、小児科学会の三百五十名というのは、虐待による死亡と判断される事例だけではなくて、幅広く、事故死の可能性もあるけれども虐待死の可能性も臨床的に拭い切れない、こういう事例を含んでいるということだと理解をしております。

 もう一つ、四地域、東京都、群馬県、それから京都府、北九州市、これにおける限られた死亡事例をもとにいたしまして全国に推計をしているという格好になっているということで、少し幅があるというふうに考えられると思います。

 いずれにしても、亡くなった子供さんの死をしっかりと検証して、それを踏まえて、予防可能な死亡から子供を守れるように、実態を把握して再発防止策を検討するということは、これはまた大変に、非常に重要であるわけでありますので、今お話のございましたチャイルド・デス・レビュー制度については私どもも検討を行っているわけでございまして、まずは、医療分野における情報収集のやり方、あるいはその進め方、こういったことについて、平成二十八年度から三カ年の調査研究、厚生労働科学研究を実施中でございまして、まずはこの取り組みの中でしっかりとファクトファインディングをして、その上で、どのような対応を今後は子供たちの死について行うかということを決めていきたいというふうに思います。

中島委員 先日、内閣府の方からも、それぞれ、内閣府の方は平成二十六年の六月、死因究明等推進計画が閣議決定をされ、さらに消費者庁においては誤飲であり転落、そして厚労省でモデル事業ということでやられておるということはお答えいただいておりますが、検討すると言いながら、なかなか、誰が音頭をとって、どこが主軸になってやるのかということは、先日の答弁からも余り明確に捉えられなかった。

 このチャイルド・デス・レビューに関しては、全ての子供の死亡に関して、医療だけではなくて、保健、福祉、心理といった各領域の専門家がチームを組んで子供が死に至る経過を分析するもので、虐待死を的確に把握するためには必須の制度と私は言えるというふうに思います。

 今回も、児童虐待防止に関する対策の強化ということでありますが、先ほど、差が多少あるという話ですが、小児科学会との差であれば非常に大きいわけでありまして、まず対策を打つに当たって、これは子供貧困のときもそうなんですが、まず実態を把握しなければ、対策の成果、政策効果がどこにあるのかということが全く見えなくなってしまうし、判断もつかない。

 そういう意味からいくと、これは政府として、期限を決めるというのはなかなか難しいかもしれませんが、具体的にいつまでにこれをやるんだ、そしてそのときにやはり、本法案もそうでありますが、子供の虐待、子供を守るんだという観点から、ぜひ厚生労働省が主軸に、そして音頭をとって、各関係省庁と連携を強めていただきたいと要請をさせていただきたいと思います。

 子供貧困のときにも言いましたが、子供貧困も、やはり具体的な数値、実態把握がなかなかできていない。厚労省の調査によれば、相対的貧困率が一五・一、総務省のデータだとまたそこにも乖離があったり、それができていないがためになかなか数値目標が設定されない。きょうも新聞の一面に出ておりますが、待機児童はゼロ、さらに介護離職はゼロと掲げるということであれば、子供貧困はゼロ、さらには子供虐待はゼロと、明確に政府からそういう目標を設定していただきたいと要請をさせていただきます。

 次に、虐待の相談、通告窓口に関しての質問をさせていただきます。

 現状の制度では、通告者に、児相と市町村の窓口、いずれかを選択することということを求めています。

 相談ダイヤル一八九は、各県の児童相談所に通報する仕組みになっております。直近の相談対応件数は、先ほども言ったように、児相への相談が十万三千二百八十六件、市町村への相談が九万三千四百五十八件となっていて、どちらも増加傾向。これはよい方に考えると、児童虐待に関して、通報するフォーマルな社会資源が複数あるということになりますが、現状は二元制であって、法制度と相談窓口、通報システムの整合性が十分にとれていないという現状であるとも言えます。

 法との関係、市町村と児相との関係を考えると、通報、通告窓口は、私はですが、将来的には市町村に統一する方がよいようにも思います。必要に応じて市町村の要保護児童対策地域協議会から児相へ通告、送致の手続を行うのが私は適当かと思います。すぐにというのはなかなか難しいとは思いますが、窓口が混乱しないように、さらには役割分担を明確にしていくためにも、将来的にはそのような体制を整える必要があると思いますが、大臣の見解を求めたいと思います。

塩崎国務大臣 今、通報窓口をどうするかということで、トリアージ機能を持たすべきじゃないかという議論もありましたが、今回はとりあえずそこには踏み込まずに、将来課題として今検討していただいています。

 早期発見と迅速な対応というのがもちろん児童虐待は大事でありますから、相談、通報窓口は、通告する側にとってわかりやすくて、そして相談しやすいというのが一番大事であるわけであります。もちろん、かけた相手が何を言っているかわからないのでは困るので、わかる人でないといけないということも同時にあるわけで、学校とか保育園であれば、ふだんから市町村と非常に密接な関係にありますから、そこに通告をする傾向が強いと思います。

 一方で、近隣の住民でありますと、これは一八九というのが、一応これはどこからでも最寄りの児童相談所にかかるという全国共通ダイヤルがありますので、ここに電話をされるかもわからないということで、通告者によって利用しやすい窓口は現状では異なっているということで、そこを何とかした方がいいんじゃないかというのが御提案だと思うんですね。

 その上で、より専門的、広域的な対応が必要なケースというのは児童相談所で、身近な場所における支援が必要なケースは市町村という、ケースに応じて適切な機関がかかわっていくことが、結果としては、対応する場合には必要になるわけであります。

 こういうことで、昨年の児童福祉法改正によって、これまでの市町村から児童相談所への事案の送致に加えて、今度は逆に児童相談所から市町村に事案の送致をする、こういう道も開いて、市町村に頑張ってもらうということももちろん、支援の役割をやっていただくことにしているわけであります。

 厚労省としては、通告する側にとっても通告しやすいことと、ケースに応じて適切な機関が対応すること、電話を受けただけで、それでどういうふうに振り分けたらいいのかというのがわかるような、そういうことを両立することが重要だと思っておりまして、要保護児童の通告のあり方については、昨年の七月から、子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループというこのワーキンググループで、先ほど申し上げたトリアージ機能をどこに持たせるのかということなどを含めて議論を進めていただいておりまして、必要な対応策を御提供いただきたいということでやっているところでございます。

中島委員 これも、先週末、児相に行って、市町村の方とも話をしたんですが、やはり、もちろん、専門性の部分と気軽に相談しやすい部分、どちらがというのは受ける方が決めるわけではないとは思います。

 しかし、これだけ件数がふえて、やはり適切に、迅速にという観点からいくと、実際はそういう窓口は一本化して、そこには市町村の人員体制であったり専門性の問題もありますが、今すぐというのは私もなかなか難しいとは思います。これも、将来的にそういう市町村の体制整備も含めて構築をしていく必要性があると御指摘、御意見をいただきましたので、質問させていただきました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続いて、児童相談所のそもそもの役割について質問をさせていただきます。

 児童相談所が虐待の事実を認識しながらも、子供が死亡する事件もたびたび起こっています。こうした事態を生む一因として、親と対立して、子供の保護をする役割と、親と家族を継続的に支援するという、相矛盾する二つの役割を児童相談所という同一の機関が担うという大変難しい課題があると思います。この状態は、我が国の子供家庭福祉制度の構造的な課題でもあるというふうに思います。

 児相の役割の二元性、分離介入と支援、日本の社会福祉の構造的な問題について、これも実は児相の関係者の方から、そもそもの話として御意見があったことであります。この状況について、大臣の御認識、御見解をお尋ねします。

塩崎国務大臣 御指摘いただいた問題も、去年の児童福祉法改正の際に随分議論をして、児相の方々からお話を聞いても、親子分離をした人が今度は再統合することをやっても、人間関係が崩れちゃっていると。したがって、それでも仕事でやらなきゃいけないのでありますが、やはり心理的にも非常に児相の職員の皆さんは御苦労される、こういうことを聞いておりますし、識者のお話を聞いても、これはもう二つに分けた方がいい、事務所も分けた方がいいということをおっしゃるぐらいの方もおられました。

 そういうような大変大事な問題を今御指摘いただいているわけでありまして、親子分離そして再統合、この両面の機能をどうしていくのかということを本当に考えなければいけないと思っております。分離後の保護者との関係への懸念などが生じて、同一の者が担っていると、児童の迅速な保護とか支援に支障が生じているという指摘すらあるわけであります。

 他方、これを是正するために児童相談所の機能や組織を完全分化するというような考え方については、これまたやり方にもよるんでしょうけれども、児童相談所の機能のみならず組織も分けるということになりますと、支援の流れが複数の組織に分断されて、そのすき間におっこってしまうケースが出てきてしまう、そういう問題が懸念される。それから、独立しておのおのの機能を実現する上で必要となる専門人材とか標準的な業務内容等について、整理が不十分であったり曖昧だったりする、こういうこともあるわけでありまして、実態は、児童相談所の約四割では、既に介入と支援について、事実上役割分担を分けているというふうになっているとも聞いております。

 御指摘の点につきましては、まずは児童相談所の機能や組織を含めた業務のあり方を議論して整理をする必要があると考えておりまして、厚労省としては、子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ、先ほどのワーキンググループですが、ここでの議論をしっかりとやっていただいて、人員体制の充実、そして研修体制の確立、さらには通報の仕分けの仕方などについて、しっかりとした提言をおまとめいただければというふうに思っております。

中島委員 今もお話があったように、完全にその役割を分離した方がいいんじゃないかという御意見があるのも承知しております。

 しかし、これも御意見はさまざまで、今大臣がお答えいただいたように、完全分離してしまうと、一方は、本当に強制的な分離をすることにいって、福祉的観点から外れてしまう可能性もある。さらには、そういうことが実際可能かどうかということもあって、現状で対応していくためには、一部の児相でそういう取り組みが行われておると今答弁がございましたが、やはり同じ組織内の中で情報を共有しながら、その役割を明文化、明確化していく、それぞれが連携をして、状況を把握して取り組んでいくということが現状では望ましいのかなと。

 そうなってくると、今はもう質問にはしませんが、そもそもの人員体制であったり、ソーシャルワーク実践能力を持つ福祉司さんとか、そういった人材の確保がやはり重点的に行われなければ、なかなかその体制自体も難しいということになるというふうに思います。児相の体制強化、さきの法改正でもうたわれておるわけでありますが、現状に沿った、一歩、二歩でも構いませんので、そういう方向性を示していただければというふうに思います。

 次に、改正案の中身について質問していきたいというふうに思いますが、今回の改正案、昨年の児童福祉法改正で検討規定となっておりました、要保護児童のより適切な保護措置のため、司法の関与が強化される児童福祉法の改正と、接近禁止命令の範囲を拡大する内容の児童虐待防止法、その改正であります。

 主に児童福祉法改正に関して質問を続けさせていただきたいと思いますが、今回の司法強化のポイントは、児童福祉の専門機関である児童相談所と、司法機関である家庭裁判所の機能分担をどのように調整するかだと思いますし、それによって家庭裁判所を多用することになる。それぞれ、児相、家庭裁判所、双方の事務量の増加、負担増をどう検討していくか、これが大きなポイントだというふうに改めて思います。

 二十八条四項関係について質問しますが、第四項の改正内容は、児童相談所が親権者の意に反して家庭裁判所に里親委託、施設入所等の措置の承認を求めた際に、家庭裁判所が保護者に対して指導措置の勧告ができるようになるものです。また、その際、指導措置の報告、家庭裁判所からの意見を求めることができるとされています。

 現状では、児童相談所は、二十八条の措置承認の申し立てを活用する前の段階で、保護者への支援、指導を繰り返し行っておる。その場合にあっても十分な効果がなかった児童を保護者のもとで監護させることが不適当とした場合に二十八条を活用するのが今の現状だと思います。

 そのような、要するに、やれることを全てやった後に二十八条を要請していくというのが実情なわけですが、資料の三枚目にもお示ししましたが、今回のスキームでいくと、二十八条を要請して、その後に家庭裁判所から勧告がされる。具体的に、この家庭裁判所からの勧告、指導というのはどういったものを想定しておるのか、お尋ねをしたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 家庭裁判所の勧告の内容、ケースによりましてさまざまだとは思いますが、現行の施設入所等の承認の審判の際の勧告、これを例に想定いたしますと、例えば、お子さんとの信頼関係の構築、その他適切な指導の措置をとることを勧告するといった、非常に抽象的な勧告も考えられますし、一方で、個々、指導の内容について具体的に記載される勧告もあり得るだろうというふうに思っております。

 これはまさに家庭裁判所の御判断ということではありますが、私ども児童福祉の立場から申し上げますと、保護者に対する指導の実効性を高めるということが今回この改正の趣旨でもございますので、指導の内容については、可能な限り具体的にいただけると現場において非常に動きやすいし、その次の実効性が高まるというふうに思っております。

 そのためには、児童相談所側も、必要と考えられる指導の内容について、家庭裁判所に対して、申請の際の上申書というような形で、具体的に説明をするという形での対応も必要であろうというふうに考えているところでございます。

中島委員 これも児相の関係者の方から話を聞いたんです。先ほど言ったように、二十八条の措置承認を申し立てるときには、もう精いっぱい、ぎりぎりまでやった後に家裁への要請をする。その上で、改めて勧告が、どういった内容のものが、今さまざまだとおっしゃいましたが、ということであれば、この二十八条の前段である二十七条の一項の二号でしたか、要するに、前段階のやれるべきこと、児童家庭支援センターへの委託であったり、そういったことをする前に二十八条をしていくのか。そもそも、勧告が来るのであれば、そういったことも前処置としてやらなくていいのか。そういったことを非常に懸念されておられました。

 端的にお聞きしますが、今回のこのスキームが法律で制定した場合、家裁へ、二十八条が承認され、申請するケースが、現状よりもふえると想定しているんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正内容につきましては、今御指摘の、二十八条の措置の要件自体を変更するものではございませんので、全体としては今のスキームを維持しながらということではございますが、委員御指摘もいただきましたように、今回のこの新たな勧告が導入されるということになれば、従来ならば二十八条相当と思われるけれども審判まではなと、ちゅうちょするケースが例えば仮にあったとすれば、そういうケースも必要に応じて申し立てを行って、勧告につなげていただくという活用の仕方もあるというふうに考えております。

 このあたり、現場の声もいろいろ聞きながらでございますけれども、私どもとしては、ある程度そういうことが動けば、実効性のある保護者指導に向けて申し立て件数というのもふえる可能性はあるのかなということを、担当者としては念頭に置いて検討させていただきました。

中島委員 先ほども言ったように、困難事例に対して、ぎりぎりまで対応した結果、二十八条の承認の審判申し立てをするというのが現状であって、その先に、どういった、それ以上の勧告があり得るのか。ちょっと私は具体性に欠けるんじゃないかなと。

 さまざまな例とは言いましたが、もちろん困難事例のことを想定しているんだと思いますから、なかなか具体的にはということにはなると思いますけれども、これも確認ですけれども、この家裁からの勧告、これには法的拘束力があるんでしょうか、ないんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 家裁からの指導措置をとるべき旨の勧告というのは、都道府県に対して、法律に基づいて行われるものということではございますけれども、これ自身をもって、都道府県等に保護者指導を義務づけるという意味での法的拘束力というものはないというふうに思っております。

 ただ、結果、都道府県等がこの勧告を、都道府県にとってみれば受けますと、それを踏まえて、保護者に対する指導措置を適切に実施につなげていくということが、私どもとしては想定しております。

中島委員 法的拘束力はないということで、家裁からの勧告、やはり、いわゆる権威づけということになるのかなというふうに思います。そうであれば、先ほど言ったように、ゼロとは言わないんですが、当該家庭や保護者への効果がどこまであるのかというのは、少し抽象的過ぎるかなというふうに思います。

 また、このスキームでいくと、新設された二の勧告、保護者指導勧告がされるわけですが、この勧告による指導期間はどの程度が適切だと考えているのか、もしくは、結果的にこのことが保護期間の長期化に結びつかないかどうか、その辺に関してはどのように考えておられるんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 指導期間につきましても、最終的な勧告というものについては、家庭裁判所が行うという点ではございますので、一概に決めるというわけにはいきません、事案の内容とか指導によろうと思いますので。

 一方で、先ほどと同じように、私ども児童相談所のサイドからすれば、家裁が適切に判断いただけるように、必要とされる指導の期間、内容について、上申書等などで具体的に十分説明をさせていただくことが必要だというふうに思っております。

 また、先ほどの御質問あるいは御意見の中で、今回のスキームの抽象性についてのお尋ねがありました。確かに、御質問をいただきました先ほどの、最終的に出てくる勧告の内容でございますとか、今御質問いただきました期間というものについて、ケースによろうかと思いますけれども、具体的な事例を積み上げ、また、現場における児童相談所や司法関係者の方々の御意見も、法制度をつくっていく上できちっと丁寧にフォローさせていただきながら、全体として今回の改正趣旨が実行できるように取り組ませていただきたいと思っております。

中島委員 さまざまな症例というか事例を蓄積させて、今後、検討事項として、また見直しも図られると思います。

 これも今、実際、現場の方からの懸念を御質問させていただいたわけでありますので、その点については、運用していくに当たって、十分配慮、また今後の改善、もしくは、よりわかりやすい、明確なものを示していただきたいと思います。

 続いて、第三十三条関係、一時保護について質問をさせていただきます。

 今回の改正、家庭裁判所による一時保護の延長の審査を導入するものでありますが、一時保護は、児童福祉法で最も強権的な規定であって、全てが職権によって保護されるものです。であるから、児童相談所所長の判断に委ねられておる。

 今回、一時保護期間が二カ月を超える場合、裁判所の承認を得ることとしていますが、私はこの場合にも、私はですね、従来どおり、児童福祉の専門委員会である各県の児童福祉審議会に判断を任せるのがやはり妥当ではないのかなと。これもさまざまな意見があったんですが、私もそれぞれの意見を聞いていて、現状ではその方がより専門性は高いのではないかなというふうに考えます。

 今回、司法関与、この一時保護に関しても許可されることの経緯、理由について、御説明願いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 一時保護、委員も御指摘いただきましたように、迅速にお子さんの安全を確保する、あるいはアセスメントをするとはいえ、やはり、親権者の意に反している場合であっても行政の判断で行うという行為でございます。

 そういう意味で、暫定的とはいえ、強制的な親子分離ということを考えますと、あるいはまた、残念ながら長期化しているという実態もあることを考えますと、手続の適正性というのはやはり非常に重要であろうというのが、今回改正の我々の一つのスタンスでございまして、それを踏まえて司法の関与、昨年の法改正も含め、またそれに至る議論の中でも関係者の方々の御指摘をいただきましたので、それを踏まえて対応させていただいたというふうに思います。

 確かに、現状は、都道府県の児童福祉審議会の意見を聴取するという形になってございますけれども、私ども、今回の改正検討に当たりまして、全国の児童相談所にいろいろと調査をさせていただきました。限られた期間あるいは対象かもしれませんけれども、延長を認める上で、今の現実では、二カ月超えに意見を付された事案はあるものの、延長そのものが認められなかったという御判断をされた児童福祉審議会はないという現場からの実態も伺っております。

 こういうことも含めて、手続の適正性、あるいは、そういう形を通じたお子さんの権利擁護ということを考えた際に、今回は、現行の児童福祉審議会意見聴取にかえて、家裁による審査を導入させていただきたいということを御提案させていただいております。

中島委員 今御答弁いただいたように、調査した結果を私も見たんですが、ここも賛否両論があって、先ほど言ったように、地域の審議会には弁護士さんがいたり司法の関係者も入っているケースも非常に多くて、それよりも裁判所の方が専門性が高いということは一概には言えないし、かえって事務作業の煩雑さにもつながる。

 二カ月という期間を考えると、もう既に一カ月近くたったら、もう二カ月の延長の手続に入らなきゃいけない。そういったことになると、実際に本来必要な調整であったりとか調査、本来の、延長が必要なのかどうかの期間が逆に狭まってしまって、そして延長ありきで、二カ月間のうち一カ月は、そこの手続に走らなきゃいけない。

 結果的に、このことによって、保護期間が延長してしまうんじゃないかということも危惧されるということで、これも恐らく、さまざまな事例を蓄積して運用を高めていくんだということだと思いますけれども、これもまた現場で懸念されておるということで、御指摘をさせていただきます。

 同様に、家裁の方の話になりますが、少年審判を専門にする裁判官は別としても、地方の家庭裁判所の多くは、地方裁判所との兼務ということです。裁判官また調査官の業務量の増加につながると考えますが、裁判所の業務量の増加にはどのように対応されるのか。そもそも、今回、一時保護に司法が関与するに当たり、家庭裁判所は対応する体制が具体的にとれるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 家庭裁判所では、家事事件の事件数が増加傾向にございまして、特に成年後見関係事件の申し立てが増加しているというような状況にあることも踏まえまして、これまでにも、家事事件への対応を充実強化するため、事件処理にたけた判事や家事事件を担当する裁判所書記官を相当数増員するといった必要な人的体制の整備を図ってきたところでございます。

 委員から御指摘のございました、今回、一時保護の審査に家庭裁判所が関与するということになりました場合には、それによる業務量の増加につきまして、もちろん、国会での御審議の結果を踏まえまして、どの程度増加するか、そして、その増加にどのように対応していくかということについて検討してまいりたいと考えておりますが、まずは、今申し上げましたように、これまで増員をしてきておりますので、これによる現有人員の有効活用を図りつつ、新たに導入されることになる制度が円滑に運用されるよう、必要な人的体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

中島委員 これはもう先ほども言ったように、一時保護に関しても前段のことに関しても、司法の強化ということで、実際の児相と受ける側の裁判所、こちらが両方伴わなければ、このまま、さっき言ったように、余計保護期間が延びてしまう、これを放置すればそういうことになってしまうわけで、これは法務省としても、成年後見制度で大変だという話もございましたが、これは同時進行で、車の両輪でやらなければ全く意味がないということになりますので、ぜひ、体制、迅速にしていただきたいというふうに思います。

 時間もないので、最後、ちょっと飛ばして、今回、司法の強化ということで、きのうの鈴木参考人、冒頭にも言いましたが、大変印象深いお話がございました。今回、司法の関与を強化する目的、さまざまな困難事例がある、それに関して司法の権威づけも必要だろう、そして実効性を高める上でもということでありますし、一方では、親御さん、家族、人権問題でもある、そういうことであれば司法の関与が必要じゃないかということもありますが、きのうの鈴木参考人の話の中で、虐待というのは力関係、圧倒的に強い力を持った人から弱い立場の人への虐待、子供虐待の話であれば、圧倒的に弱い立場である子供、この人権をやはり大前提に考えるべきではないかと。

 今回、家庭裁判所、司法の関与ということでありますが、鈴木参考人がおっしゃっていたのが、子供の虐待は絶対にあってはならないんだという観点からいけば、人権問題とも関連するのであれば、子供裁判所、専門機関をやはりつくるべきではないかという御意見が、きのう鈴木参考人の方から話がございました。

 この御意見に対して大臣に御見解をいただいて、質問を終わりたいと思います。

吉田政府参考人 大臣からお答えいただく前に、昨日の参考人での質疑、私も聞かせていただきました。

 鈴木参考人の方からは、これは御質問にお答えするような形だったかとは思いますけれども、参考人が御主張いただきました、今回の虐待の問題、非常に取り組むべしという中で、現在の家庭裁判所の体制整備を踏まえた上で、子供裁判所とかあるいは子供オンブズマンという子供に着目した司法体系をという御質問に対して、そういうものをつくる、あるいはそういうことが中心となって専門的な対応をしていく仕組みが必要ではないかという御意見があったというふうに思っております。

 私どももなかなか、子供裁判所、こういう御提案について具体的に、まだまだ私ども、いろいろなところで御意見をいただいておりますので、伺って勉強させていただいている段階ではありますが、ここの中に込められた心として、今の仕組みの中においても専門性を高めて、子供の人権あるいは子供のためにきちっとした手続を確保した上で、実効性を上げた保護をしていくということについての問題提起と受けとめさせていただきましたので、その心の部分を受けとめて、今回の改正法案を実施に向けて準備させていただきたいと思っております。

塩崎国務大臣 鈴木参考人が、子供裁判所のような存在についての御提起がございましたが、これは、アメリカでもイギリスでも、子供専用の裁判所というか、そういう形になって、例えば養子縁組なども裁判所で行われるのが、日本でももちろんそうですが、全然数が違うということで、きょう中島委員からの御質問にもありましたように、やはり専門性が大事だというのは、これは児相においても家裁においても、いずれも言えることであって、子供の機微な問題について、親権と子供の権利との間でどう考えるのか。

 しかし、一方で、愛着形成の必要な期間を考えると、やはり早期の判断というものがどうしても大事だというふうなことを考えると、私は、どちらかというと、本当に専門性のあるところが育っていくということが大事で、それを組織的にどうするのかということは、これはいろいろな議論があろうと思いますが、少なくとも、子供の問題は日本の将来の問題でもある、子供の未来というのはやはり日本の未来でもあるので、そこのところは最優先課題の一つとして取り組むという意味においては、専門的な場所がどこかにあって、そこが強力に子供の未来のために早期の決断を迅速に行うということができるような体制がある方がいいだろうなということで、引き続き、海外の例も参考にしながら考えていきたいと思っております。

中島委員 質問を終わります。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、中川郁子君。

中川(郁)委員 自由民主党の中川郁子でございます。

 質問の機会をいただきましたこと、まことにありがとうございます。

 ただいま中島議員から、鈴木参考人の御意見のお話がありました。そして、大臣から力強い答弁をいただきましたこと、大変心強く思います。そして、私も、鈴木参考人からお示しをいただいた虐待の悪循環の図、大変参考になったところでございます。

 愛着不安、愛着障害を持った子供たちがその不安を異性で埋める。そして望まない妊娠へとつながっていく。愛着不安を抱えた親が育児をする。そして貧困、家族機能の低下、コミュニティーの機能の低下を引き起こしていく。また、発達障害などを持ったお子さんたちの親御さん、大変不安感を持ってお育てになっているというふうに思いますけれども、SOSを出すことのできない親御さんが孤立化をしていく。さらに虐待という事案になってしまう。この悪循環の連鎖を断ち切らなければいけない、このように思います。

 そういった状況を改善するために今回も改正案があるのだというふうに思いますけれども、国民の児童虐待への関心が高まったと言えるというふうに思います。しかしながら、死に至る最悪のケースは後を絶たず、二十七年度には対応件数が十万件を超えたということであります。

 そこで、吉田参考人も最後の課題として挙げておられた児童相談所の質的、量的強化について、第一問目、お尋ねをしたいというふうに思います。

 実は、私の知人にも、児童福祉司として十年目、児童相談所で頑張っている女性がいます。二人目の子供を出産したばかりという三十代でありますけれども、実は一年ぐらいは育児休暇をとってというふうに考えていたところ、ストレスから体調不良で退職をした同僚、その同僚のことをカバーするために五カ月で仕事に復帰をした。最初は時短勤務を希望していたわけでありますけれども、仕事の性質上、そういうわけにもいかず、しかも、結局は保育所へのお迎えがおくれること週四日というような状況にあり、彼女自身も今精神的不安感と闘っているということであります。自分自身の子育てについても、自分の子供の変化を見逃しているのではないかと問い続けている毎日で、本当に仕事をやめようか、そのようなことを考えているということでありました。

 彼女を私は高校生のときから知っているんですけれども、恵まれない子供たち、弱い立場の子供たちのために心理学を学びたいと言っていた高校生の時代、そして今も、自分自身が子育てをしている最中であるからこそ、自分だからできる仕事があるということで、使命感を持って頑張っている、そういう職員の皆さんがたくさんいらっしゃる、このように思います。

 このように、児童相談所職員は日夜全力で子供の福祉のために戦っている、働いているというふうに思いますが、これら第一線にある職員がやはり余裕を持って働くことができ、かつ児童相談所として期待される役割を果たしていけるよう、その体制強化や専門性の向上をどのように進めていくのか、教えていただきたいというふうに思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 増加します児童虐待相談に対応していただく児童相談所の現場ということでは、子供さん、お子さんの安全確保を迅速に行うという意味で、今御指摘いただきましたように、体制を強化する、専門性を高めるということが必要だというふうに、私ども全くそのとおり思っております。

 昨年の児童福祉法の改正におきまして、児童心理司、今御指摘のありました心理の方ですとか弁護士さんなど専門職の方の配置を法律に位置づけさせていただくという改正をいたしましたし、こういう児童福祉司の方々の職員などに対する専門的な研修も義務づけることにさせていただきました。

 これは、法律に合わせまして政令改正をいたしまして、こういう人の配置基準につきましても、人口当たりの数である程度比例してということにしておりましたけれども、人口当たりの数をふやすとともに、人口だけではなくて業務量も考慮して配置をしていただくような基準に見直すということもさせていただきました。

 体制としましては、昨年の四月に児童相談所強化プランというものを設けまして、児童福祉司さん、あるいは心理を御担当いただく児童心理司さんなど専門職の方々を平成三十一年度までの四年間で千百二十人の増員という計画を立てて、それぞれ必要な地方交付税措置を講じていただくような形で進めさせていただくということで承知をしております。

 児童福祉司さんについて言えば、この間、標準団体当たりの増員も行っておりますけれども、今御指摘いただきましたように、御担当いただいている方々の業務量も考えてきちっとした体制を組む、あるいは専門性を高めるような研修も充実するという形で取り組ませていただきたいと思っております。

中川(郁)委員 強化プログラムを実施してくださるという力強い御答弁、ありがとうございました。やはり、若い職員の皆さんがキャリアを積んでいくことのできるような、そういう体制をぜひお願いしたいというふうに思います。

 そして次に、北海道の広域性についてお伺いしたいというふうに思います。

 私が住んでいる地域は北海道十勝ということでありますが、北海道は、現在、九カ所の児童相談所があります。稚内分室を入れて九カ所ということでありますが。人口割というお話が先ほどあったところでありますが、地域によって管轄する面積に差がございます。私の住んでいる十勝管内はまだ動きやすい、アクセスしやすい地域でありますが、例えば室蘭児童相談所は、胆振だけではなく、日高、えりも町まで管轄をしています。室蘭からえりも町まで、恐らく四時間ぐらいはかかるというふうに思います。ノンストップで、法定速度を守って四時間ということでありますし、旭川児童相談所は、上川、留萌、宗谷を管轄している。

 私が伺った所長さんにお話を聞いたところ、釧路の児童相談所に勤務をしていたところ、羅臼まで走ったことがあるというふうに聞きました。恐らく、往復するだけで十時間ぐらいであったのではないかというふうに思います。その親御さん、子供さんに会うための移動時間が多大で、不思議なことに、一つ事案が起きれば続けて別の事案も起こる、人手と時間がとられてしまう、そういうお話があったところであります。

 先ほどからいろいろなお話がありますけれども、児童虐待に面前DVが対象になってから件数もふえているということから、それほど深刻でないケースにあっても、市町村でなく児童相談所へ通告されているという現状で、まずは受け皿となる市町村の体制を強化する必要があるのではないかという点についてお尋ねをいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待への対応につきましては、地方自治体と一口に申しましても、市町村と児童相談所、都道府県という間において、市町村はやはり身近な場所における支援、それから、児童相談所はより専門的、広域的な業務という形の役割分担のもとで、それぞれ協働して進めていただいているのが基本でございますが、今御指摘いただきました北海道の例のように、やはり地域によってそれぞれの事情もございます。それの中では、この基本とする市町村と児童相談所の役割分担の中でもまたいろいろな工夫も必要かというふうに思っております。

 特に、御指摘いただきました市町村の体制強化という意味では、昨年の法改正におきまして、市町村における子供たちに対する必要な支援を行うための拠点を設置するということを努力義務にしていただくとともに、市町村の要保護児童対策地域協議会、要対協の調整機関に専門職を配置義務にするというような形、あるいは、その方には研修の受講も受けていただくということで、総じて、市町村の専門性あるいは体制を強めるという方向でかじを切らせていただきましたし、それに基づきまして、今年度の二十九年度予算におきましても必要な補助を設けさせていただいております。

 先ほどもございましたように、児童相談所と市町村の間で事案を、ケースをどういう形で送致し合うかというようなところも工夫をさせていただく中で、それぞれが協力をして地域実情に応じてやれるように、また、地域の現場のお話も伺いながら、私ども、きめ細かく対応させていただきたいと思っております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。いろいろと工夫をして対応していただいているということ、心強く思うところであります。

 そして、四十八時間以内の安全確認には、第三者、役場、保育所、学校等の協力を得て行っているというふうに聞いていますが、金曜日から始まる週末、そして夏休み、冬休み、春休みなどでは児童相談所員が駆けつけなければいけないという現状がありますので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 児童虐待に面前DVが対象になってから、警察から通告がふえた。一方で、それほど深刻なケースでなくても、警察は、市町村ではなく、一律に児童相談所に通告してくる。先ほどとちょっとかぶる部分はありますけれども、以前は、児童相談所に連絡するまでもないというふうに警察が判断していたようだと児童相談所の方から伺ったのでありますけれども、それほど深刻でないケースについては、警察からの通告先を市町村にすることというのはできるのでしょうか。

小田部政府参考人 近年、児童相談所への通告件数が増加し、その業務負担が増大している状況から、危険性が低いと判断される事案については市町村への通告を行うべきではないかといったような意見があることについては承知しているところでございます。

 しかしながら、警察で取り扱います児童虐待事案の中には、認知した段階では危険性が低いと判断される場合でありましても、事態が急展開して重大事件に発展するおそれが高いものも含まれていること等から、一時保護や臨検、捜索などによる迅速な安全確保措置を行える児童相談所に対して通告をすることとしているところでございます。

 また、市町村を通告先として追加する場合には、市町村におきまして、通告後の児童の安全確保等の所要の措置を行うのに十分な体制が整備されている必要があると考えているところでございます。

 この点、本年四月一日から市町村の体制強化に係る取り組みが開始されたことについては承知しているところでございますけれども、市町村の規模や体制もさまざまであるところ、今後の体制整備状況等を慎重に見きわめながら検討すべき課題であると考えているところでございます。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 そして、今回の法案についてのお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 対応困難な状況が深刻化している。また、保護者と児相との対立を軽減しなければいけないということで今回の法律の改正があるのだというふうに思いますけれども、指導に大変苦労しておられる児童相談所の職員の皆様であります。

 今回の改正により、保護者に対する指導への家庭裁判所の関与が導入される一方、児童虐待の態様はケースによりさまざまであるというふうに思います。今回、導入する家庭裁判所による保護者指導に関する勧告について、積極的な活用を想定しているケースはどのようなものか、教えていただきたいというふうに思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 審判前に家庭裁判所が行う勧告の活用を期待されている事例といたしましては、例えばでございますけれども、保護者の方によるネグレクトが長期化しているという形で、必ずしも緊急性は高くないものの、お子さんにとって不適切な養育が続いているといったような事案で、家庭裁判所の関与のもとで実効性のある保護者指導が行われれば、引き続き家庭養育が可能だというようなケースもあろうかと思います。そういうのを想定させていただいているというところでございます。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 家庭裁判所による保護者指導に関する勧告が活用されるためには、その活用の好事例を収集して、全国の児童相談所に周知して、いい事例を横展開すべきではないかと考えますが、政府からの答弁をお願いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正案により新たに設ける仕組みにつきましては、その施行状況をまずしっかりと把握させていただいた上で、今御指摘のように、勧告の仕組みが活用された好事例につきましては、私ども、積極的に収集をして、全国の関係の課長が集まる会議あるいは児童相談所の方々が集まる会議など、さまざまな機会を通じて横展開させていただきたいと思っております。

中川(郁)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 次の質問です。

 昨年の児童福祉法等の改正によりまして、家庭における養育環境と同様の養育環境における養育を優先することが位置づけられました。里親支援や養子縁組に関する相談支援をどのようにして進めていくのか、答弁をよろしくお願いいたします。

古屋副大臣 お答えいたします。

 社会的養育が必要な子供につきましては、温かく安定した家庭の中で養育されることが望ましいと考えておりまして、特別養子縁組や里親への委託を進める必要がございます。

 このため、昨年の児童福祉法の改正によりまして、家庭における養育が困難または適当でない場合には、まずは養子縁組や里親等への委託を進めることを原則とするとともに、特別養子縁組に関する相談支援や、里親の開拓から子供の自立支援までの一貫した里親支援を都道府県の業務として位置づけました。

 こうした業務が確実に行われるよう、児童相談所強化プランにおきまして、児童福祉司等の専門職の配置の充実や資質の向上を図ることなどを盛り込むとともに、平成二十九年度予算におきましては、里親手当を引き上げて、また、里親支援のための事業について、新たに、心理面からの訪問支援担当職員の配置、養子縁組に関する相談支援を行うことといたしております。

 これらの取り組みを進めるとともに、特別養子縁組に関心を持つ方が児童相談所につながるよう、特別養子縁組制度等の広報を強力に進めて、里親支援や養子縁組に関する相談支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 家庭養育の必要性、よくわかりました。

 ただ、促進していくということとしても、里親不調などのケースも起こり得る、相性が悪かったなどの事例もあることから、そうなったときに、子供さんたちは、また捨てられてしまったと感じる場合もあるのではないかと危惧をいたしております。そういう観点から、依然として児童福祉施設の役割は重要であると考えています。

 これらの施設では、子供にとってもできるだけ良好な養育環境を確保するため、小規模化また地域分散化を進めつつあります。ただ、地元では職員の確保に大変な苦労をしているというのも事実でありまして、また、意欲を持って施設に就職しても、ハードな勤務であるので燃え尽きてしまう、そういう職員もいらっしゃいます。職員の勤務は八時間であったとしても、子供は二十四時間施設を利用するわけでありますので、仕事は終わらない。こういう状況であるというふうに思います。

 ですので、児童養護施設についても、人員配置を手厚くするとともに、優秀な人材がキャリアを継続していくことができるよう、処遇改善を進めていく必要があるというふうに思いますが、政府としてどのように取り組んでいるのか教えていただきたいというふうに思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のように、児童養護施設につきましても、小規模なケア単位で養育をしていただくとか、あるいは施設機能の地域分散化を推進するという方向は大事だというふうに思っております。

 そのため、人員配置の改善をするというのが一点ございます。これは、平成二十七年度の予算におきまして、小規模化等に対した職員体制の充実を図るというために、施設における直接処遇職員などの職員配置を引き上げ、その場合には加算するという仕組みを入れさせていただきました。

 また、もう一点、今御指摘ありましたように、職員の方々の処遇を改善するということ、これにつきましては、平成二十九年度、今年度の予算におきまして、民間の児童養護施設等の業務の困難さを踏まえまして、その人材の確保、これは大変でございますので、人材の確保と育成を図るということを目的として、全ての職員の方々について給与の二%相当の処遇改善を行う。それから、これに加えて、虐待や障害等のある子供への、夜間を含む業務内容を勘案させていただいた上乗せをする。さらには、キャリアアップの仕組みを構築して、一定の研修を修了した職務分野別のリーダー的な職員の方々や支援部門を統括する職員の方々についての上乗せをするなどなど、全体としての処遇改善を強力に図らせていただいたというところでございます。

 細部については、きょうは答弁申し上げませんが、その内容については、きちっと確実に実施されるように、都道府県でありますとかあるいは施設関係者の方々に周知、御理解をいただくとともに、現場の実態も伺いながら、施設等における家庭的な養育環境が確保されるように引き続き取り組んでまいりたいと思っております。

中川(郁)委員 ぜひよろしくお願いします。

 より家庭的な環境を確保するというお話でありますけれども、既存の児童養護施設を小規模化するための改修が必要となってくるというふうに思います。このための費用について、厚生労働省において支援が行われているのか、教えていただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 施設の小規模化における取り組みのハード面につきましては、一つは、次世代育成支援対策施設整備交付金というものによりまして、建てかえあるいは増築等の施設整備に要する費用を補助させていただいております。それからまた、児童虐待・DV対策等総合支援事業費補助金という補助金によりまして、施設整備には至らない模様がえなどの簡易な内部改修についても補助をさせていただいているという形になってございます。

 これらの補助金につきましては、必要な小規模化等の取り組みに対応できるようにさせていただいておりますけれども、平成二十九年度におきましては、予算編成に当たりまして、要望に対して十分な予算を確保させていただいているというふうに私どもとしては思っておりますので、引き続き、施設の小規模化等に向けた現場における取り組みをしっかりと支援してまいりたいと思っております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。ぜひ予算の確保をよろしくお願いしたい、このように思います。

 児童養護施設におきましてはショートステイも行われているというふうに聞いています。突発的に利用希望が発生するケースがあるということです。例えば、一人親家庭で、お母さんが入院や出産をする、その兄弟を一時的に預からなければいけない。突発的なケースでありますので、そのための人員をふだんから確保しているというのはなかなか厳しい現状があります。

 こんなことから、地元の児童養護施設の職員の方からの御提案でありますけれども、地域の施設として、本当にそれはお応えしたいんだけれどもということで、突発的な需要に応えるため、里親制度の登録者を、非常勤のアルバイトとして施設に来ていただいて応援をしてもらえないか、雇えないかというお尋ねがございましたけれども、答弁をお願いいたします。

吉田政府参考人 突発的なニーズなどに対応する事業、私どもショートステイなどを考えておりますけれども、住民の皆さんに身近なところにあって適切に保護ができるという意味では、児童養護施設が考えられるというふうに思っております。

 しかしながら、今おっしゃっていただいたように、施設にもいろいろな事情がございます。そういう場合には、私ども、まず一義的には、養護施設等があらかじめ登録していただいている保育士さんとか里親さんに委託をするという形でこのショートステイニーズに応えていただくという仕組みを従来から可能とさせていただいておりまして、このために、突発的な利用希望で職員の確保が困難な場合には、このような、あらかじめ登録した里親さん等に委託するという仕組みを対応いただけるかなというふうに思っております。

 これはなかなか現場において十分御認識いただけない部分もあるのかもしれませんので、これについては、事業実施主体である市町村あるいは施設関係者の方々に周知をさせていただきたいですし、先ほど御提案のありました、逆に施設の方に外から来ていただくという場合にどういう形で対応できるか、ちょっと私ども精査をさせていただいて、また引き続きいろいろな形で現場ともコミュニケーションをとらせていただきたいと思います。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 来ていただいて雇用する、来ていただいて応援をしていただくということに関して、強い、地元からの切実な要望がありますので、ぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 それから、さまざま参考資料をつけさせていただいたわけでありますが、最後に新聞の記事をつけさせていただいたわけであります。

 というのは、私、いろいろな方にヒアリングをさせていただいたところ、二十二歳年度末までの援助事業である自立生活援助事業について、まず冒頭にそのことを高く評価するというお話、どの方からもいただきました。児童相談所でも養護施設でも、本当にさまざまな関係者の皆さんが、そういうお話をいただいたところであります。

 不幸にして虐待を受けて児童養護施設あるいは里親に育てられた、そういうお子さんたちにしっかりと資格を取っていただく、そのためには、いろいろな、さまざまな支援があるものの、やはり初期費用がかかるんだということでありました。通学費、教科書代、学校の施設費などで百五十万はかかり、アルバイト代などで賄っているということであり、そういう措置費も対象にできないかなど、さまざまな御意見が寄せられたところでありましたけれども。

 一方で、この新聞記事でありますが、施設を退所した子供たちが、出身施設との連絡が途絶えるケースが多いということでありました。便りのないのはもしかしたらいい便りなのかもしれないという希望というか、そういうふうに感じつつも、どのようなアフターケアをしておられるのか、進めていくべきなのか、政府の見解を聞かせていただきたいというふうに思います。

吉田政府参考人 施設に入所されておられましたお子さんが退所後に社会生活を円滑に行っていただくという意味では、入所中から退所後の生活を念頭に置いたきめ細かな支援が必要だというふうに私ども考えております。

 従来から、まず、入所中に、地域生活を始める上での必要な知識ですとか社会常識を学ぶ、金銭管理も含めて、そういう生活技能を習得するための支援を行いましたり、退所後の生活あるいは就労に関する相談あるいは意見交換をする場の場づくりのようなものを活動として支援をさせていただいて、そういう事業に取り組んでいただく都道府県も現実ふえております。二十八年度では三十三自治体というふうに見込んでおります。

 また、今御紹介いただきました、二十九年度から事業も拡大してございますけれども、措置解除後の原則として二十二年の年度末という期間の方々に対して、支援コーディネーターが自立に向けた支援を行うための継続支援計画をまずつくっていただいて、その上で、お住まいが必要な方の場合には、里親さんのお住まい、居宅ですとか施設等において引き続き場を提供して、そこで必要に応じて一定額の生活費も支給するということにさせていただいております。

 いずれにいたしましても、施設から退所されたお子さんが継続的に自立支援、そして自立していただけるような形で私どもとしても取り組ませていただきたいと思っております。

中川(郁)委員 丁寧な答弁をありがとうございました。

 私、地元の児童相談所に実際行ってきたところ、ネグレクトにより一度も学校に行ったことがないお子さんがいらっしゃり、また、基本的な生活である食事のマナー、御飯のいただき方も知らない子供さんがいらっしゃり、また、夜遅い時間にテレビを見ることを日常化しているようなお子さんがいらっしゃったということで、本当に大変大きなショックを受けたところであります。

 やはり、虐待を受けた児童の皆さんには自己肯定感をしっかりと持って主体的に人生を歩めるように社会全体で支援をする、そして子育てに優しい社会、虐待のない社会になるようにということで、吉田参考人がおまとめをいただいた、そういう社会の実現のために、今後も関係各位で御努力をいただきたい。私も、ずっと問題意識を持って生活してまいりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時二十四分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時十七分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。水戸将史君。

水戸委員 民進党の水戸将史でございます。

 大臣におかれましては、本当に移動で大変お疲れのところ恐縮でありますけれども、きょうは大臣中心に質疑をさせていただきますので、真摯な御答弁のほど、よろしくお願いしたいと思っております。

 先ほども、我が党の中島委員からも貴重な資料、非常に見やすい資料なものですから、これも引用させていただきますが、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数、中島議員の資料の一ページ目にもありましたけれども、児童虐待防止法施行前の平成十一年に比べて、平成二十七年度においては何と八・九倍まで増加しております。

 そもそも、御案内のとおり、児童虐待というのは、核家族化とか地域のつながりの希薄化による子育て世帯の孤立化、家庭の経済的な状況、保護者の心身の問題、児童の障害、疾病等、さまざま要因が絡み合って起こるものと認識しております。

 児童虐待相談件数が増加している要因につきましては、他方では、児童相談所全国共通ダイヤル三桁化、一八九です、「いちはやく」、取り扱う報道の増加、広報の強化等によって、児童虐待の一層の顕在化も、これがあるからこそ件数もふえているのかなという気がするんです。

 そもそも、大臣、御認識をお聞かせいただきたいんですが、厚労省といたしましては、児童虐待そのものが増加していっているのか、それとも、今まで潜在化してなかなか顕在化していないものが表面化してきた、表に出てきただけで、児童虐待の数そのものはそれほど増加していないんじゃないか、どちらなんでしょうか。大臣はどういう御認識でしょうか。

塩崎国務大臣 児童相談所における児童虐待相談対応件数、これは対応しているもので、対応できていないものはまだいっぱいあるわけでございまして、近年増加を続けて、直近の平成二十七年度においては、初めて十万件を超える、そういう水準まで達したわけでございます。過去最多となっています。

 児童虐待につきましては、平成十六年の児童虐待防止法の改正によりまして、心理的虐待に面前DV、夫婦間の面前DVを含むようにいたしました。そして、平成二十五年八月に、「子ども虐待対応の手引き」において、兄弟への虐待を当該児童に対する心理的虐待ということの例示としてお示ししたところでございます。平成二十七年七月に、児童相談所全国共通ダイヤルの三桁化、今お触れいただきましたが、一八九、これを行って、かけやすくなっているということ、こういったことなど、定義の拡大、通告を行いやすい環境の整備、こういったことをやってきたところでございます、背景として。

 こういうことから、児童相談所における児童虐待相談対応件数の増加全てが児童虐待そのものの増加によるものとは限らないわけでございますけれども、児童虐待が顕在化しやすくなったとは言えるんだろうなというふうに考えているわけでございます。

 いずれにしても、児童虐待については、子供の命が失われる痛ましい事件が後を絶たないなど、社会全体で取り組むべき重要な課題であるということについては変わらぬ認識ではなかろうかというふうに思っております。

水戸委員 数が多いか少ないか、そういう問題ではありません。これからの対応として、顕在化して、それに対してどのように対応していくかが、これは必要なことでありますから、もっともっと真摯に取り組む必要性があると思っております。

 それでは、一時保護委託について若干質問させていただきたいと思います。

 先ほど中島委員からもお話がありました、また以前の質疑でもございましたけれども、一時保護につきましては、一日当たりの保護人員及び平均在所日数が増加傾向にあることは御案内のとおりであります。特に都市部において、一時保護所の定員超過や混合処遇、あるいは一時保護の長期化の問題が指摘されていますよね。

 一時保護はあくまでも一時的な措置でありますから、その後、家庭に戻るにしろ、施設へ入所するにしろ、不安定な状況は早急に、私は解決されるべきだと思っておりますけれども、今後、やはりこういういろいろな問題がありますから、一時保護期間の長期化の抑制とか期間の短縮化のために、現状で何が課題となっているのか、厚労省はどういう御認識でありましょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所による一時保護は、虐待等を受けたお子さんについて、迅速に安全を確保するということ、あるいは支援につなげるためにアセスメントを行うというのがまず機能でございます。その期間につきましても、児童福祉法におきましては原則二カ月を超えてはならないということになってございますけれども、ケースによっては、今御指摘いただきましたように、残念ながら長期にも及ぶものがあるということでございます。

 この要因ということで、私どもも現場からいろいろと話を伺っております中には、適当な入所先あるいは里親さんが見つからないということ、あるいは、保護者の同意に非常に時間を要する、同意をいただくのに時間を要するということ、あるいは、家庭環境の調整に時間を要するというようなことがいろいろとこの長期化の背景にあるというような声も承知をしております。

 なお、今申し上げましたように、里親あるいは児童養護施設等の受け皿をつくっていくということにつきましては、各都道府県等において、児童相談所における相談対応件数でございますとか、一時保護児童数の伸び率などを踏まえて、必要な供給量をそれぞれ見込んで、それに基づいて整備をしていただくということを考えているところでございますけれども、私ども厚生労働省としましては、引き続き、このような取り組みについて、ハード、ソフト両面における支援を行わせていただきたいというふうに思っております。

 また、今回、今御審議いただいております法案によりまして、一時保護の手続に家庭裁判所の審査を導入するということでございますので、手続を適正にすると同時に、一時保護の長期化の抑制にもつながる。そういう意味では、私ども、今後も引き続き、法律、予算、運用、あらゆる面で一時保護の長期化の抑制に向けて取り組ませていただきたいと思っております。

水戸委員 今の御説明、御説ごもっともでございますけれども、一時保護の長期化を、いかにこの問題を解消していくのかは、今でも古くて新しい問題だと思っているんですね。

 実際、大臣も、今の御説明もございましたが、やはり、一時保護の長期化を抑制するためには、一時保護が解除された後の児童の行き先、要は、調整する児童相談所の体制整備とか、一時保護が解除された後に家庭に戻れない児童の受け皿の整備が必要となると思っておりますけれども、どっちも、残念ながら短期間で実行するのは難しいと考えております。

 しかし、さはさりながらも、過去、少なくてもこの七、八年、もっと前からかもしれませんが、児童虐待を理由とする一時保護の中で、やはり一時保護委託の活用が当然求められてくるんですけれども、児童養護施設や里親等に一時保護を委託した割合が、まだまだ全体の三分の一で推移しているんですね。なかなかそれが、ふえないのか、ふやさないのかよくわかりませんけれども、この割合、三分の一でずっとこれは推移しているんです。私は、もっともっとこの一時保護委託ということを推進していくべきではないかとは思うんですけれども、これについて大臣はどのような御見解でありましょうか。

塩崎国務大臣 児童相談所によります一時保護についての御指摘をいただいております。

 虐待などを受けた子供さんにつきまして、迅速に安全を確保するとともに、支援につなげるためのアセスメントを行うという機能を果たす、これが一時保護の大事な機能だというふうに考えておりますが、子供や家庭の状況等も勘案をいたしまして、一時保護所のほかに、必要に応じて里親あるいは児童養護施設などに一時保護委託を行っているところでございます。議員御指摘のとおり、里親に一時保護を委託した割合につきましては、おおよそ三五%となっているところでございます。

 昨年の児童福祉法改正におきましては、保護者による虐待が行われているなど家庭で適切な養育を受けられない場合には、家庭と同様の養育環境において養育されることが原則であることを明記したところでございますけれども、一時保護についても、里親のような家庭に近い環境や児童養護施設等で保護することは重要であるというふうに考えております。

 このような考え方のもとで、厚生労働省では、一時保護中の子供がより適切な環境で生活できるように、一時保護委託の一層の推進に向けて必要な支援を行ってまいりたいと思っております。

 具体的には、平成二十八年度から、里親に一時保護委託をした場合の手当、これにつきましては日額二千三百六十円から日額四千四十円に引き上げたところでございまして、昨年の児童福祉法改正によって、都道府県の業務として、また、里親の開拓から子供の自立支援までの一貫した里親支援、これを位置づけたことを踏まえて、一時保護委託を受ける里親の開拓にも取り組んでいるところでございます。

 また、平成二十八年度から、児童養護施設等が一時保護委託児童を一定数受け入れることができる専用の居室などを設けている場合には、その運営費に対する補助の加算も行ってきているところでございます。

水戸委員 いろいろと、児童相談所の役割というのは、虐待防止に対しては非常に大きな大きな柱となるんですけれども、児童相談所の調査権限、現状については、地方公共団体の機関、病院、児童福祉施設の職員、学校の教職員等は、児童相談所長から児童虐待に係る児童等に関する資料または情報の提供を求められたときは提供できるという旨の規定、できる規定なんですね。

 実際に児童虐待の通告を受けた際に児童相談所は、どのように対応するか適切に判断するためには、やはり児童の置かれている状況を正確に把握する必要があります。なおかつ、今回の法改正も、司法関与は強化するということでありますが、二カ月を超えて一時保護審査に当たっても、家庭裁判所が納得するような、そうした情報提供を児童相談所が上げていかなきゃいけませんが、やはり、こういうことを考えた場合、さらにさらに児童相談所の調査権限を強化する必要性があるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、これはいかがでしょうか。

塩崎国務大臣 児童相談所に対する関係機関からの資料あるいは情報の提供に関しては、昨年の児童福祉法等の改正によりまして、民間の、例えば医療機関あるいは児童福祉施設あるいは学校等々につきましても、地方公共団体と同様に、児童相談所長などから児童虐待の防止等に関する資料または情報の提供を求められたときには、これを提供するということができるようにしたところでございます。

 これによりまして、原則として、個人情報保護法あるいは守秘義務に違反することなく情報を提供できることを明確化いたしたところでございます。

 また、この改正を踏まえて、例えばコンビニであったり不動産事業者であったり、そういった民間の事業者からの資料または情報の提供、これにつきましても、個人情報保護法や守秘義務との関係につきまして整理をいたしまして、必要な場合にはちゅうちょなく資料または情報の提供を依頼するように、都道府県等に通知を既に発出いたしまして、周知を行ってきているところでございます。

 引き続いて、民間事業者を含めた関係機関から必要な資料や情報の提供が受けられるように、こうした規定や通知について周知を行ってまいりたいと考えております。

水戸委員 次の質問に答えてしまいましたけれども、まさに資料一の内容ですよね。ぜひ、これは、個人情報保護のある程度例外規定で、民間レベルにおきましても、積極的に、児童相談所に求められる、そうした情報の提供を促していく、それを厚労省からも積極的に働きかけていくことを強く要望していきたいと思っております。

 もう一つ、児童相談所の機能に関しまして、これは、支援と介入という両面を持ち合わせているんですね。当然、虐待とおぼしき保護者に対しては、児童を引き離すということに介入しています。しかし、片や、いろいろな相談に乗ってあげて、いろいろな形でしっかりとした親子関係を築くことができるようなこともしなきゃいけませんが、一度引き離された子供に対して、やはり親も感情的に、児童相談所に対しても、ある意味その対立があることは容易に予想されますから、やはり児童相談所のそもそもの機能を、二つの、今言った支援と介入の機能を分離する、役割分担をしっかり果たす必要があると思うんですね。この機能分化についてどう思うのか。

 また、大臣も、これにつきましては、モデル事業をやっていくんだということも以前の答弁でもお答えになっておりますけれども、このモデル事業というのは実際にやっているのか、どのような形で推移をしているのか。

 この二つの点、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど中島委員の方からもこの問題については御指摘を頂戴いたしまして、大事な問題だと思います。

 児童相談所は、児童虐待への対応に当たって、問題の程度とかあるいは緊急度に応じて、親子の分離、これは介入ですが、それから再統合支援、これを両面で、機能を担っているわけでございます。これらを同一の担当者が担っているということから、分離後の保護者との関係への懸念等が生じまして、児童の迅速な保護や支援に支障が生じているという指摘があることは我々も直接、児童相談所にお勤めの方からも聞いているわけでございまして、まさに、家に乗り込んでいって分離をするという同じ方が再統合するというときに、なかなか、人間関係がもう既に難しくなっている、こういうことだと思います。

 他方、これを是正するために児童相談所の機能や組織を分化するという考え方について、我々も議論をいたしました。

 その実施のやり方などにもよりますけれども、児童相談所の機能のみならず組織も分けるということになりますと、支援の流れが複数の組織に分断をされるということになって、かえって、はざまに落ちてしまってケアがなされない問題が残ってしまうというおそれを感じるわけであります。そして、独立しておのおのの機能を、この二つの機能を実現する上で必要となる専門人材、標準的な業務内容等について、整理が不十分かつ曖昧ということで、どういう資質を持っている方がどちらの担当になるべきなのかというようなことでありますけれども、共通することもたくさんあるわけでございまして、そういうことで、なかなか一概には、どちらがいいということは言いづらいところがまだあるんだろうということで、今ワーキンググループで御検討をいただいているわけであります。

 モデル事業をどんな形で進めていくかについて検討するに当たりまして、これは昨年の法改正のときに答弁をしたことについてお触れをいただきましたが、業務のあり方を議論、整理する必要があるということがまず第一でありますので、先ほど申し上げた、子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ、この議論も踏まえた上で具体的な検討に入ってまいりたいと考えております。

 こういうことから、ワーキンググループでの議論を今まで以上に加速していただきまして、少しでも早く着手ができるように、モデル事業につきまして早くスタートできるようにいたしたいと考えております。

水戸委員 議論、検討は必要ですけれども、やはり実践が何よりでありますから、速やかにモデル事業に着手することを強く求めたいと思います。

 続きまして、児童虐待の発生防止といたしまして、やはり行政や地域との接点を持たない親に対してのアプローチが必要だということはもう言をまたないことなんですね。

 確かに、厚労省もさまざまな形で取り組んでおります。妊婦期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供する子育て世代包括支援センター、この全国展開を今試みているわけでありますし、これ、推移していますよね。非常に私は、これはいいことだと思っております。

 しかし、さはさりながらも、やはり国は、当面は相談窓口、相談することはいいことなんですよ、それを受けることはいいことなんですが、強化に重点を置くような施策を中心にこれはやっていらっしゃるようでありますけれども、例えばフィンランドに行くと、もう既に、母子支援サービスの一環といたしまして、健診を中心に展開していると聞いております。妊娠中から産後まで十数回にわたって受診することによって、お互いの子供の成長を確認し合える場が提供されますし、また、こういうことによって、さまざまな問題点や悩みというのも、きめ細かなサービスをそれに対して展開できると思います。

 やはり、相談という体制もいいんですけれども、これから一歩、より進めて、健診ということも含めて、それを中心的な形で展開することもこれからのあり方だなと思うんです。これについて大臣はどのような御見識でありましょうか。

塩崎国務大臣 フィンランドの例をお取り上げいただいておりますが、フィンランドでは、妊娠、出産から就学前までの健康診査、あるいは予防接種、保健指導、こういったことのサービスをネウボラという機関でワンストップで行っている、これが有名なネウボラでございます。

 我が国においてはサービスの専門分化が進んでおりまして、妊娠健康診査、これは産科医療機関で担われたり、乳幼児健診や予防接種は小児科の医療機関で担われるというように、複数の機関によって縦割りでサービス提供がなされているというのがこれまでの実情でありました。

 それで、フィンランドのネウボラの取り組みも大いに参考にさせていただきながら、子育て世代包括支援センターを制度化してまいりまして、ニッポン一億総活躍プランでは、平成三十二年度末までに全国展開をするということにいたしたところでございます。これによって、妊産婦や乳幼児等に対して切れ目のない支援ができる限りワンストップで行われるように、体制整備を進めているわけであります。

 我が国の現状を考えますと、妊婦健診やそれから乳幼児健診、この各種サービスを一カ所の機関に集約してワンストップで提供することはなかなか難しいのではないかというふうにも思えるわけでございまして、子育て世代包括支援センターが関係機関の連絡調整等のマネジメントを行うということで、可能な限り縦割りを打破して、妊産婦や乳幼児に寄り添ってふさわしいサービスが提供できるように努めてまいりたいというふうに考えております。

水戸委員 これからの展開も期待しますけれども、どっちかというと、我が国日本の支援というのは、まだ、困ったら来てください的な、そういうところがありますから、なかなか、それにちゅうちょしてしまうという親も多くいらっしゃると伺っておりますし、また、虐待したり、虐待の一歩手前で、本当に支援を必要としている家庭なんというのは、行政と地域のつながりも非常に希薄であるということはよく伺うことであります。

 このため、行政の支援があることを知らない親とか、虐待を知られることを恐れて行政の訪問を拒む、そういうような親に対する新たなアプローチもやはり必要だと思うんですね。

 特に若い世代の親に対しましては、行政の支援についての広報にSNSを活用したりとか、行政機関よりも気軽に相談できるNPO法人等に相談などの支援を委託するとか、新たな、先ほど、縦割り組織の弊害を打破していくんだ、そういう話もありましたけれども、やはり別な視点から、こういうアプローチも必要ではないかと思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりに、若い世代の親御さんあるいは若い世代の男女に関しましては、そもそも広報の仕組みとして、従来の媒体だけではなくて、SNSの活用も含めましたいろいろな媒体あるいは機会を通じてやるということで、従来の行政情報の提供の仕方につきましても、一部の自治体が既に先行して取り組んでおられますけれども、そういうSNSの活用というのが今後、課題であろうというふうに思っております。

 例えば、産後ケア事業あるいは産前・産後サポート事業をNPOあるいは研修を受けた市民ボランティアの方々を活用して実施している、広報と同時にその手法も工夫されているというふうに私ども承知をしておりますので、今御指摘いただきましたように、若い子育て世代に合わせた新しいアプローチをこれから工夫させていただいて、効果的に事業が実施できるように進めていきたいというふうに考えております。

水戸委員 ぜひ実効性の高いような形で、悩んで、なかなか、どこに相談したらいいかわからないとか、また、ある程度やましいことをしているとなかなか、それを表面化されたくないという形で拒む、そういう家庭に対して日が当たるような、そうした施策の展開を強く強く期待、また要望させていただきたいと思います。

 次の話題に行きます。

 赤ちゃんポストというものがございます。御案内のとおり、この赤ちゃんポストというのは、二〇〇七年、今からちょうど十年前になるんですけれども、熊本市の慈恵病院で、日本で初めてのシステムというか、こういうものを導入した経過がございました。

 「こうのとりのゆりかご」という形で、これは資料二でごらんいただけるように、これは毎日新聞の記事、抜粋したものでありますけれども、本当に生まれたばかりの赤ん坊を親が匿名で慈恵病院の箱に置いていくわけですね。預けられた新生児は、親が名乗り出ない場合には、戸籍法上の棄児、捨て子ということですね、となりまして、二十四時間以内に児童相談所や警察署に連絡され、二週間以内に市長が名前をつけて戸籍が形成されます。そして、乳児院で、この二ページの資料をごらんいただければわかるように、左側でありますけれども、二、三歳まで保護されまして、その後は児童養護施設とか里親に引き継がれるというような仕組みになっております。

 開設されてからはや十年を迎えまして、この十年間で百三十名の子供が預けられております。大半は生後一カ月未満の新生児でありまして、預ける理由で多いのは、御案内のとおり、生活困窮、未婚、戸籍に入れたくないと、いろいろな理由があります。

 子供を匿名で預かる赤ちゃんポストに対しましては、子供の命を守るための緊急避難先として確かに一定の役割を果たしてきたというものの、やはりいろいろな問題点もあります。育児放棄を助長するのかという話もありますし、捨て子の将来が心配である、また、子供の出自を知る権利の確保など、いろいろな批判とか課題があるんですね。大臣は、このような問題点につきましてどのような御見識でありますでしょうか。

古屋副大臣 お答えいたします。

 「こうのとりのゆりかご」に預けられた子供の人数は、運用開始から十年で計百三十人になったと承知をいたしております。この一件一件が預けざるを得なかったケースであり、この事実を重く受けとめております。

 さまざまな事情で子供を育てることが難しいケースもありますが、どんな事情であったとしても、子供の命は社会全体で救わなくてはならないと考えているところでございます。

 匿名で子供を預かる窓口、いわゆる赤ちゃんポストにつきましては、安易に預け入れることを助長するおそれがある一方、預けることによりまして、虐待や死に至るようなケースを救うことができる、大変難しい課題であると認識をいたしております。

 厚生労働省といたしましては、いわゆる赤ちゃんポストに預けなければいけないような状況になる前に、社会で子供たちの命を守る仕組みをしっかりと整えていかなければならないと考えているところでございます。

水戸委員 この赤ちゃんポストは古い歴史があるというふうに承っていますが、現代版としては二〇〇〇年、ドイツのNPO法人からスタートしたということを聞いております。それを日本版として、二〇〇七年からということで、慈恵病院がやろうということになりましたが、当然、持ちかけられた熊本市は、今まで前例がなかったものですから、これにどういう形で連携をとったらいいかということで、さまざまな形で模索をしたということが、経緯としても拝見させていただきました。

 そもそも、やはりこんなことをやっちゃうと法令違反に当たるのではないかということで、熊本市も、国に対してもいろいろな相談を持ちかけた、書面による回答も求めましたけれども、残念ながら、国から書面による回答はなかったということでありました。

 そういう形で、そもそも、親が新生児をポストに預けること自体、本当にこれは児童虐待に当たるんじゃないかというような懸念とか、また、母子保健法上の妊婦の届け出義務を怠るということにもなるんじゃないかという形で、こういうことについて厚労省はどのような御見解でしょうか。

吉田政府参考人 いわゆる赤ちゃんポストにお子さんを預ける行為が、二つ御指摘をいただきました、まず、虐待ではないかという御指摘であります。

 確かに、事実として、児童の遺棄ということには当たるというふうに思っておりますけれども、同時に、私ども承知をしている限りでは、このポストが設置されている場所は病院内でありますし、そこに預けられた子供は生命身体の危険が生じることがないようにそれぞれ措置されているということからすると、赤ちゃんポストにお子さんを預けられたこと自体が、児童虐待防止法が想定するようないわゆる虐待、子供の心身の正常な発達を妨げるという行為ではないのかなというふうに考えております。

 また、母子保健法の手続違反のことにつきましては、そこは、事実行為として、法律に対しての十分な、必要な、義務化されている届け出がなされていないということは言えるかというふうに思っております。

水戸委員 熊本市もいろいろな形で模索をしてゴーサインを出したということでありまして、国も、なかなかこの問題というのは、やはり、想定外といえば想定外でもありましたから、なかなか判断もしづらかったというそのときの時代背景はあると思うんですね。

 きょうは法務省からも来ていただいていますので、あえてお尋ねいたしますけれども、このような赤ちゃんポストに預ける行為そのものについて、民法上の親族の監護義務や、また刑法上の保護責任者遺棄罪に抵触するのではないですかというようなことも熊本市からも問い合わせをしていますが、これについて改めて、法務省はどのような御見解でしょうか。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、民法上、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」とされております。ここでの監護義務は、子を適切に監督、保護するというような義務をいうものと解されるわけでございます。

 さて、民法は、親権者は、このような保護、監督義務を免れる手段として、やむを得ない事由がある場合に限って、家庭裁判所の許可を得て、親権を辞することができる、こういう制度を用意しております。こういうことを考えますと、このような手続を経ることなく、一方的に法律上の、先ほど申し上げたような義務をみずからの意思のみで免れたり放棄するということは認められていないのではないかということになると考えられます。

 御指摘の赤ちゃんポストにつきましては、その詳細について必ずしも十分に把握していないため、明確なお答えをすることは困難ですが、以上のような法的な枠組みを前提に、一般論として申し上げれば、赤ちゃんポストにおいて子の安全に一定の配慮がされているとしましても、親権者が子供を赤ちゃんポストに預け、親権者が自己の監督義務の及ばない状況に置くということは、親権者が本来負っている保護、監護の義務に違反することになるのではないかというふうに考えられます。

水戸委員 なかなか法的な、かっきりしたような御答弁ができないことは重々私も承知しておりますけれども、違法性がないという形で、何かぎりぎりな、ちょっとファジーな話ですよね。ですから、やはりこの問題は、これからの大きな課題として、厚労省も法務省も、この対処の仕方をもうちょっと詰めていっていただきたいことを強く要望しておきたいと思っています。

 そもそも、なぜこういう赤ちゃんポストの必要性が出てくるかということは、当然、望まない妊娠と出産に直面する女性がいるということであります。そうした妊婦を支えるには、相談ということだけではなくて、やはり、周囲に知られたくないという妊婦を支援する仕組みが必要じゃないか、そういう必要性のことも指摘がされております。また他方では、匿名で預けることのできる仕組みが、逆の意味で医療機関にかからない危険な出産を誘発しているのではないかというような指摘もございます。

 この赤ちゃんポストを先駆的に始めた、先ほど言ったドイツ、二〇〇〇年からスタートしているんですが、もう既にこの制度は廃止が勧告されております。しかし、勧告されているだけでありまして、まだ続けている部分もありますけれども、そのかわりに、二〇一四年から内密出産制度がスタートしております。母親の匿名性を担保しながら、医療機関で安全に出産できる仕組みです。妊娠を誰にも言えない女性を支援するシステムという形で、こういうものでありますけれども、先ほど言ったようにいろいろな、ある意味悲惨なケースですよね、望まない妊娠、出産でありますから。こうした内密出産の制度についてはどのような、国としては御見識をお持ちでしょうか。

古屋副大臣 ドイツの制度に関する御質問をいただきました。

 ドイツでは、妊婦が匿名での出産を希望する場合に安全に出産できるよう、その身元を記録した出自証明書を妊娠相談所が発行した上で、医療機関において匿名で出産できる内密出産制度が、平成二十六年五月から施行されていると承知をいたしております。

 匿名出産につきましては、子供の出自を知る権利をどう考えるか、また戸籍上の取り扱いをどうするかなど多岐にわたる論点がありまして、幅広い議論が必要な課題であると考えておりまして、ドイツでの制度の評価を注視していきたいと考えております。

 厚生労働省としては、妊娠に悩む妊婦を早期に把握して、必要な支援につなげることが重要だと考えておりまして、女性健康支援センターにおいて匿名での相談を受け付けるとともに、子育て世代包括支援センターにおいて妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援を行っているところでございます。引き続き、こうした相談体制の整備や周知に取り組んでまいりたいと思います。

水戸委員 しっかりこの制度の推移を見きわめていっていただきたいと思います。

 赤ちゃんポストに預けられた子供のうち、その後、親の居住地が判明したものの居住地を見てみますと、もちろん、熊本にありますから九州は四割を占めているものの、関東が二割、中部が一割、近畿が一割となっておりまして、やはり赤ちゃんポストに対するニーズが全国的にあるのかな、広がっているのかなということがよくわかります。

 今後、熊本以外に神戸の方でも、助産院が赤ちゃんポストを設置すべく検討を進めておりましたけれども、常勤医師の確保が非常に難しいということで、赤ちゃんポストの設置を断念しております。そのかわり、妊娠、出産に悩む人からの相談を二十四時間受ける窓口を設置すべく準備を進めていると報道されております。

 本来であれば、私も思いますけれども、こんな赤ちゃんポストのような施設はない方がいい、いろいろな問題点がありますから、ない方がいいなと私も考えておりますが、しかし、そうはいうものの、赤ちゃんポストには今言ったような一定のニーズもある、結果的に子供の命を守る役割も果たしております。

 慈恵病院の理事長さんは、距離的な問題で熊本までたどり着けずに断念したケースもあるとして、できれば各都道府県に一カ所、施設が設置されることが望ましいという考え方もお示しになっています。

 そういう中において、救える子供の命を守り、また養子縁組の推進とか児童虐待を防ぐという観点から、赤ちゃんポストを複数設置すべきという提案にも一理あるのかなと。できれば、先ほど言ったように、こういうものの存在がない方がいいということもありますけれども、やはりこういう提案も一理あるかと思いますが、大臣として、厚労省として、赤ちゃんポストの設置、運営に関する支援を行う考え、有無を含めて、赤ちゃんポストの設置の是非、大臣はどのような御見識でありますでしょうか。

古屋副大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、いわゆる赤ちゃんポストに預けなければならないような状況になる前に、社会で子供たちの命を守る仕組みをしっかりと整えていかなければならないと考えております。

 このような問題意識のもとで、子供を育てるのが難しいケースを含めて、子供が適切な養育を受け、健やかに育つことができるよう、昨年の児童福祉法改正において、子供を権利の主体として位置づけ、家庭養育優先の理念を明確化して、実親による養育が困難であれば特別養子縁組や里親による養育を推進することを明確にいたしました。

 具体的には、子供の遺棄、置き去りを未然に防止するために、匿名で電話相談を受けられる児童相談所全国共通ダイヤル一八九の周知、特別養子縁組や里親委託の選択肢があることの周知、また、子育て世代包括支援センターによる妊娠期からの切れ目ない支援や、自治体の保健所等で実施している相談窓口の周知、これらを通じまして、子育て世代や予期せぬ妊娠に悩む方が早目に相談をできるような体制づくりなど、きめ細かな支援を進めていきたいと考えております。

水戸委員 今の、ちょっと釈然としないのは、では、改めて大臣に聞きますけれども、やはりこの問題というのは、十年、いろいろな論争がありました。この設置の是非をめぐりましても、いろいろな方々がいろいろな形で答えていまして、確かに課題も多いんですね。しかし、課題は多いけれども、問題もある、できればない方がいいという意見も私も述べましたけれども、しかし、そうはいうものの、やはりこのニーズがあり、また子供の命を守るとか虐待を防ぐという観点からも、この存在の意義というのはあるのではないかということなんですね。

 では、これを今後ふやすべきなのか、これを促していくべきなのかどうかについて、大局的な視点から、やはり大臣の御見識を問いたいと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。もう一回、大臣からちょっと答えてください。

塩崎国務大臣 先ほど、赤ちゃんポストが児童虐待に当たるか当たらないかという問題について、法務省は、どちらかというと虐待に当たるかなというふうにも聞こえるような説明で、むしろ厚労省の方は、当たらないという感じの、まあ限定的ではありましたが、そういう答弁を申し上げたところでありますが、私はもともと、官房長官のときに赤ちゃんポストが始まって、そのときに私はどちらかというと慎重な考えでございました。今もそれは余り変わっていません。それはやはり、みずからの親としての義務を果たしていない状態に子供を置くということですから、これはネグレクトと同じようなものであって、虐待に限りなく近いと私は思っています。

 しかし一方で、この十年間で百三十件ある、こういう事実もあるわけでありまして、先ほど古屋副大臣から答弁申し上げたとおり、こういうことに至らないようにさまざまなことをやるということは、それはもう当然のことでありまして、それを考えて、いろいろ、去年の法改正でも、これまでにない深掘りをして、そして子供の権利というものを位置づける中で、子供が健全な養育を受ける権利を、まあ実現できるようにしていくために、社会がしっかりと体制を組んでやっていく。

 その一つは、やはり特別養子縁組をやったり、あるいは里親、何にしろ、家庭が中心、これが基本で、もともとの生みの親と一緒に暮らしていけるということが一番幸せではありますが、それがかなわない場合には、そうじゃない、それに近い状況の中で子供たちが一日も早く愛着形成ができるようにしていくということが大事なので、そういう意味では、まあ、ドイツが廃止勧告をしたというのは政府の中での話かどうか、私もちょっとつぶさにまだわかっておりませんが、方向としては、あるべきものではないんだろうというふうに思います。

 しかし、このような、実際に百三十件あるということは、我々としては厳然たる事実として受けとめながら、こういうことが起きないようにするために、一日も早く、我々が去年通した法律の哲学、それから今回お願いしていること、そして、来年の通常国会に向けて、特別養子縁組についても直すべきところを直して、できれば通常国会までには結論を出して法案を出していきたいというふうに私は個人的に考えて、今、法務省、裁判所ともいろいろ議論をしているところでありまして、そういう形で、何とか自然な形で子供たちが育っていく、健全な養育を受けることで真っすぐな子供たちが未来に向かって育っていくということが大事だというふうに思っているわけでございます。

水戸委員 これに対してのいろいろな賛否両論はあると思うんですけれども、現状、本当に我々の想像を超えるような悲惨な状況もあるんですね。死亡した子供の年齢、虐待死ですよ、ゼロ歳児が六一・四%と最も多いんですね。そのゼロ歳児のうちでもやはり月齢ゼロカ月が、半分以上は生まれたばかりで殺してしまう、自分の、十カ月腹を痛めた子供を殺してしまうという虐待死がございます。

 当然これは、先ほど言ったように、望まない妊娠、出産、そういうケースも多いと容易に察せられるわけでありまして、やはりこういうことを含めて考えると、もちろん、安易な性交渉とかレイプとかそういうこともあるかもしれません、女性の置かれているいろいろな生活環境がありますから。そういう中でも、本当に、おろしたくてもおろせなかった、気がついたらもうおろす期間も過ぎてしまった、お金がないとか、いろいろとあると思うんですよ。しかし、いずれにいたしましても、最後のとりでという形で、この赤ちゃんポストという存在もやはり一つあるのかなということもあります。

 最後の質問になりましたけれども、いろいろな、今回の法改正もそうなんですけれども、司法関与を強化する、虐待を受けている児童を保護する上で一定の効果は期待できるかもしれません。しかし、あくまでもこれは対症療法でありまして、根本治療ではないんですね。こういう問題は、本当に古くて新しい問題です。

 やはり、冒頭申し上げましたとおり、児童虐待はさまざまな要因が絡み合って起こっているものでありまして、子育て世帯の孤立化、家庭の経済状況等だけでなく、例えば、父親の長時間労働で、母親が全て育児を自分で担わなきゃならないと精神的に追い詰められて、そして虐待してしまうケースも少なくなく、これは働き方改革とかそういうものにも関係してくると思うんですね。だから、将来、虐待をすることにならないように、やはり学校教育段階から子育てに対する知識を付与していくことも必要だと思います。

 大臣、今後、本当にこれは一口で言える話じゃないかもしれませんが、大臣のお気持ち、決意として、こうした起きてしまった虐待に対応するだけでなく、幅広く予防支援について努めるべきである、積極的に取り組むべきであると思いますけれども、大臣、これについての御決意をよろしくお願いしたいと思います。

塩崎国務大臣 私、これまでも、児童虐待というのは、言ってみれば、社会が抱えている大きな問題が氷山の一角として子供に不幸にしてあらわれてしまっている問題で、社会の病そのものを治していかないとなかなか児童虐待はおさまらない。これは、社会というよりは、家庭でどういう育ちをしてくるのか、しつけを受けているのかとか、そういうようなことも含めて、子供を育てる用意がないままに子供が生まれてしまって、そのまま、育てようにも育てられないままに虐待をするというようなことがしばしば、これは男性も女性もあるわけで、予期せぬ妊娠の場合には特にそうでありますが、それをどうやって社会的に命を守り、子供の命を守りながら、もちろん、親も真っすぐに生きていけるようにするサポートは、全体として当然必要であるわけでございます。

 去年の児童福祉法の改正の際にも、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を実施する、先ほど来出ております子育て世代包括支援センター、これを法律に初めて位置づけるということをいたしました。これを全国展開しているわけであります。

 それから、市町村においても、生後四カ月までの乳児のいる全ての家庭を訪問して養育環境等の把握を行う乳児家庭全戸訪問事業、いわゆるこんにちは赤ちゃん事業と前は言っておりましたが、その中で、養育支援が特に必要な家庭への養育支援訪問事業というのがありますが、これを実施して、孤立しがちな子育て家庭をこっちから出向いていって探し出して、不幸な結果がもたらされないようにしていくというアウトリーチ型の支援を取り組んできているわけでございます。

 また、児童虐待による死亡事例等について、国の専門委員会におきまして、これは児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会というのが社会保障審議会の中にはございますけれども、そこで毎年度分析、検証して、その検証結果を踏まえて対策の改善につなげているわけであります。

 今御指摘のように、根本的な問題にどう対処するかということについては、これは、学校教育あるいは家庭教育も含めて、そういったことからしっかりやっていかなければいけませんし、また、やはり、社会の助け合いの仕組みそのものを今回、我が事・丸ごとでいろいろ御議論いただきましたけれども、新しい形の地域での助け合いの仕組みの中でどういう支え合いをしていくのかということで、たまたま予期せぬ妊娠をしたとしても、社会がそれを一緒に支えていけるような、そういう社会づくりも同時にやらなければいけないということで、全て関連をした問題としてこれから総合的に取り組んでいかなければならないのではないかというふうに思います。

 いずれにしても、児童虐待の発生予防をしっかりやりながら、虐待のない社会を実現することについては、これはひとり厚労省だけでやれることでは決してないわけで、働き方改革についても御指摘をいただきました、そのとおりだと思っておりますので、そういったことを総合的にやっていきたいと思いますし、他の省庁ともしっかり連携をしてまいりたいと思います。

水戸委員 時間が来ましたので、終わります。どうもありがとうございました。失礼します。

丹羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。柚木道義君。

柚木委員 民進党の柚木道義でございます。

 大臣初め皆さん、午後からもよろしくお願いいたします。

 児童福祉法、児童虐待防止法の改正案の質疑なんですが、ちょうど私、実は、最後の質問に通告していた部分と、先ほどの水戸委員の赤ちゃんポストの関係、ちょっと私の中で問題意識が重複することがあるものですから、大臣の御答弁について少し、これは私はどっちがいいとかいう立場で申しませんので、ぜひちょっと確認をさせていただきたいとまず思うんですね。

 それは、赤ちゃんポストの是非、あるいは今後ふやす、そうでない、いろいろなお立場、お考え、多分委員の先生の中にもあると思います。私が大臣の御答弁の中で感じたのは、どちらかというと、官房長官時代から、肯定か否定かというと否定的、慎重というお言葉を使われたと思いますね。それはそれで一つのお考えだと思うんです。

 ということは、今後、諸外国等を見ると、非常にたくさん設置をしているような国もあれば、我が国のような状況もあるとは思うんですが、神戸の事例も含めて、先ほどやりとりがありましたが、赤ちゃんポスト、熊本設置後十年たって、こういった受け皿をふやすべきというふうなお考えか、それともふやすべきではないというお考えか、一応確認をさせてください。後者だと私は認識しましたが、御答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、児童虐待に当たるか当たらないかという意味で、私は当たるんじゃないかというふうに思いますので、ふやした方がいいということにはなかなかいかないというふうに思いますし、一方で、命を救わなきゃいけない、それはそれでそのとおりですが、それを赤ちゃんポストで救えと言う、積極的に言うかというと、私はそういうことは申し上げたいとは思わないということです。

柚木委員 御見識だと思うんですね。確かに両面、常にこの議論というのはあるように私も認識をいたします。

 したがって、水戸委員も、できればそういったものが余りない、なくても要は赤ちゃんが無事成長していけるような社会であることが望ましいという趣旨で、そういったものは余りない方がいいというふうに述べられたと私は理解しましたし、大臣も今、そういう意味では、基本的にはネグレクト、虐待に限りなく近いという認識を、先ほども述べられましたし、今も重ねてそこをおっしゃったんだと思うんですね。

 今まさに大事なことをおっしゃったと思うのは、同時に、やはり生まれてきた赤ちゃんが、これは全国から、むしろ九州以外のところからたくさん行かれている部分も含めて、しかも、非常に、どちらかというと十全な準備ができていない若い女性の方がそういった状況で行かれていることも含めて、その方がそのままどこかに遺棄されてしまうとか赤ちゃんの命が失われるということが低減をされているという見方をすれば、やはりそういったことも考えなきゃいけないと今述べられました。両面あると思うんです。

 私が伺いたいのは、大臣が否定的な、どちらかというと慎重なお立場であることは今わかったんですが、そのときに、まさに亡くなるようなリスクを低減させる効果があるということを認められた部分がちょっと私の中でこの質問とリンクするので、私の認識を申し上げると、赤ちゃんポストという機能、受け皿が仮に余り望ましくないという否定的な立場に立ったときに、そうすると、実際に準備不足で生まれてきたお子さんがそのまま親御さんのもとで育てられていく過程の中で、これはもちろん決めつけはできないわけですが、やはりいろんな、つまり経済的にも苦しい環境、場合によっては一人親でなかなか養育に十分なエネルギーを注げない、そういうことも含めて、ともすれば虐待等も含めて受けるリスク、これはやはり想定し得ると思うんです。ですから、まさに、そういう赤ちゃんポスト的なものがない方が望ましいという立場に立つときに、逆に、では、やはり親御さんの責任、そしてそれを社会全体でサポートする責任も問われてくる、こういうふうに考えます。

 そうしたときに、私が実は最後の質問で通告させていただいておりましたのは、これは、親業というとちょっと語弊があるかもしれませんが、親になるための準備、訓練といいますか、そういったことを教育段階からいろいろな場面を通じて学べるような、そして、もっと言うと、結婚、妊娠あるいは出産前後、そういった、これは資料の、きょう、私の最後のページに、厚生労働省の母子保健対策の現状ということで、両親学級を初めとして、こういった取り組みがあるということをおつけしておいたんですが、そういった母子保健対策の一環はもとより、それ以外にも社会人教育とかさまざまな場面、私は会社の研修とかであってもいいと思うんです。最近は、まさに男性の育児、家事参加についても、私も妻の会社の研修に呼ばれて、何があるか知らずに行ったらそういう研修だったんですよ。要はイクメンをふやそうという研修だったんですね、女性の多い職場で。そういうことも含めて、もうあらゆる段階、チャンネル、フェーズを通じて、例えば、児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議なども含めて、そういった親になるための準備、訓練、教育、啓発活動などを、ぜひ検討、実施いただきたい。

 こういう趣旨の質問を実は昨日通告しておったものですから、その背景には、こういった、やはり、できれば赤ちゃんポスト等にお子さんを委ねなくても、自分たちの手でしっかりとお子さんを養育していける。しかも、虐待等、そういったことがない環境で育てていける。その受け皿整備として、私は、今の親になるための準備、訓練、教育、啓発活動の必要性について通告をさせていただいておりましたので、ぜひ大臣、これは、最後に持ってきていたということは、あらゆることを最後、包括して聞こうと思っていたんですが、先ほどの赤ちゃんポストの御認識についてもお答えをいただいたことも含めて、ぜひ、こういった児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議なども含めて、まさに関係省庁連携をして、包括的に教育、啓発活動の御検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど、赤ちゃんポストの是非についてのお話をする際にやや長い答弁をした中で、親になる用意がないままに予期せぬ妊娠をして、そのまま、だから、カップルの両サイドとも準備ができていないままに子供を持つということの中で虐待が起きているケースもしばしば聞くわけでありまして、それは、たまたま私の妻が女子大の学長なんかをやっておりまして、いろいろなケースを聞いておりますけれども、やはり、結婚していろいろな悩みを抱えながら、子育てを一人で孤独で苦労して、かなり肉体的にも厳しく、精神的にも厳しい状況に追い込まれるというケースも間々あると。

 昔は兄弟がたくさんいたりして、みずから自分の家庭の中で子育てを学んだり、いろいろな形で、それをまた近所が助けてくれたり、いろいろなことがありましたが、それができなくなっている分、社会的に、そういった、かつてはコミュニティーで学んでいたことを学べなくなっている分を補っていくという意味においては、今おっしゃっている教育、啓発が大事だというのは私も全く賛成でありまして、結婚することの意味、子供をつくることの意味、親になることの意味、そして責任、義務、そういったことを普通は大人になるまでに学んできたわけですけれども、それをどう補っていくかということは、先ほど申し上げたとおり、厚労省だけでやれることでは決してないわけで、文科省もそうですし、いろいろな地域づくりの中でやっていくという意味では、ほかのいろいろな役所がかかわっていただくことも大事だろうと思うので、おっしゃるとおり、いろいろなことを、厚労省としてももちろん、日本版ネウボラとか、あるいは両親学級とか、それから乳児家庭全戸訪問事業、先ほど申し上げましたが、こんにちは赤ちゃん事業で、こちらから出向いて、問題があるところを探し出して、未然に問題が顕在化するのを防ぐというようなことも、もちろん私どもがやれることは全てやっていかなきゃいけないと思っていますけれども、それだけではいけないので、虐待等に関する関係省庁連絡会議というのがございますし、そういうようなものを通じて、関係省庁や自治体にも協力を改めてお願いをする、働きかけるということは、大変意味があることではないかというふうに思うところでございます。

柚木委員 ぜひ前向きに御検討いただけるというふうに私は受けとめました。

 確かに、本当にこれは省庁連携してやらないと、母子保健対策での、先ほどまさに述べられた両親学級について、私自身も二度、最初の子供のときに行きまして、それと、実は妻の出産に立ち会う機会をたまたま得たものですから、そういった中で、あと自分自身の子育て等の経験も通じて、実は今、与党筆頭である田村前大臣にもお願いをして、公明党の谷合先生にもお願いをして、イクメン議連を立ち上げるという流れになったので、まさにそういう機会を、ある意味、そういう我々のような立場の者ほど、経験をすることで、それを行政の皆さんとも連携をして、さまざまな施策に落とし込んでいくことにもつながると思いますので、これをぜひ、本当に省庁連携して、そういったまさに親になるための準備、訓練といいますか、教育、啓発活動、これはぜひ本当に、この虐待対策に、私、本当に大きなこれは効果につながり得ると思います。ぜひお願いを申し上げておきたいと思います。

 それで、通告順序に基本的には沿ってまいります。

 今回のこの法案審議の、前回、参考人の質疑の中でも、さまざまな、それぞれ、五人の参考人の皆様からのやりとりも踏まえて伺いますが、いわゆる児童福祉法、児童虐待防止法も含めた、さまざまなそういう虐待防止の既存の制度では、なかなか受け入れられない、こういった事例、ケースが、昨日もお話の中でございまして、そういったケースへの受け入れ、相談支援体制の整備拡充について、これは個別具体的に伺ってまいりたいと思うんですね。

 また同時に、昨日もあったんですけれども、民間団体との継続的な協働、連携ですね。特に相談等を受けるときの相談時、それは民間の団体が児相も含めて連携してやりとりをする場合もございますし、また、それがどうなったか、結局またもとどおり帰ってきちゃうみたいなことも含めて指摘があって、一時保護なり、あるいは施設に行っても、結局また同じように、もっと状況が悪化して、同じようなことが繰り返される。

 そういった意味では、相談後のフォローアップ体制、こういったことについて、民間団体との継続的な協働、そしてまた、民間団体への委託や補助などにも関連して、ぜひこれは、既存の制度では受け入れられないケースへの受け入れ、相談支援体制の整備拡充という観点からも、厚生労働省としてのお取り組みをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 参考人のお話の中にもあったようでございますけれども、特に若い女性につきまして、悩みを一人で抱え込んで、問題がどうしても表に出てこない、人にお話をされないような中で、公的な支援に、そうなると全くつながらないということが間々あるわけでありまして、そういう事態をどう早期に把握して支援につなげていくかということを制度化していくというのは大変大事ではないかというふうに思います。

 厚労省としては、今年度実施をいたします調査研究事業の中で、性暴力被害を受けた若年女性の実態把握を行うこととしております。

 また、公的機関と民間の支援団体が密接に連携をいたしまして、アウトリーチによる相談支援や居場所の確保などを行うモデル事業についても、今検討を進めておりまして、具体的な内容につきましては、自治体とか、あるいは、もう既に一歩先んじて、そういった活動で頑張っておられる民間のNPOなど関係者の御意見をよく聞きながら、私どものやる事業としての、漏らしてはいけない要素など、しっかりと聞いてまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 ありがとうございます。大変重要かつ有効な今取り組みを前向きにいただけるという御答弁だったと思うので、これはぜひ、昨日、そういう意味では、BONDという団体の橘さん、まさに先んじてという意味ではそういったところのお取り組みも御紹介をいただきました。

 ぜひ、性被害等の実態把握、そしてアウトリーチモデル事業、自治体とも連携をして、そして、そういった民間機関とも連携をしての委託なり補助なり、方法についてはそれも御検討いただければと思いますので、把握した上でなんですけれども、もう間もなく概算要求の時期になってきますが、ぜひこれは来年度の施策に反映をさせていただきたいというのが私のお願いなんですが、何とかこれは来年度に一歩でも二歩でも、芽を出していただくべく対応をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 民間との連携とかそういうことについてのお尋ねというふうに理解しましたが、当然、今仕込み中でありますので、来年度に向けて、そういったことを含めた事業を実現してまいりたいというふうに考えます。

柚木委員 ありがとうございます。

 大変、そういう意味では、今まさに全国で、BONDさんはもとより、さまざまな活動をされておられる、私の地元にもそういったシェルター的な活動をされているところもありますし、東京のそういったところにも私も伺ったことがありますし、ぜひそういった皆さん、昨日のBONDさんの資料にもありましたけれども、行政だけでは担うことができない活動をしている民間団体等の資金確保、きのうもお話があったんですけれども、一生懸命やればやるほどやはり資金確保の問題に直面をして、当然、人手の確保、回らなくなる。まさに経営のこと、財政のことの質問があったとき、そういうのはもう考えたくないぐらいのやりとりがありました。

 ぜひ、もちろん、そういった民間団体さんの、当然、一生懸命頑張っていると同時に、ちゃんと質が確保されていることも重要だと思いますから、そういったことも含めた上で、やはりいわゆる経営支援、資金支援、そういった点も含めて、先ほどの御答弁の中でお願い申し上げたいと思います。

 それで、そういう意味では、さらに関連して伺いますが、既存のそういうハードといいますか受け皿としての児童相談所あるいは児童養護施設、自立支援ホーム、まさにシェルターなども含まれるそういった自立支援ホーム、そして婦人保護施設などももちろんそうなんですが、加えまして、多様なそういう意味での相談支援体制の整備が必要だという観点から、この間指摘をこの質疑でもされてまいりましたのは、施設入所なり一時保護なり、長期化をすることによる弊害というか、それこそ学校に行きたいけれども行けなくなるとか、さまざまなそういったメリット、デメリットがあるわけでございます。

 そのデメリットをなるべく最小化するということを考えたときに、これは日常生活の継続性も踏まえて、在宅における親子への相談支援体制の整備について、今まさにそういった取り組みもあると思うんですが、在宅においての取り組みというのはなかなか、児相さん、私も伺いましたけれども、現状抱えている事案も含めて、人員体制あるいは専門員等の配置も含めて、なかなか十全な体制にまだなり得ていない部分もあるんですが、しかし、やはり日常生活の継続性も踏まえると、在宅における親子支援、相談支援体制の整備が非常に重要だと思うわけですが、この点について、大臣、今後の方向性も含めてお答えをいただけますでしょうか。

塩崎国務大臣 そもそも、これからは、去年の児童福祉法の改正によって、施設中心ではなくて、まさに家庭中心でいくべき、いくべしということを前面に出したのが去年の法改正の特徴であったわけでありますので、イギリスのシングルトン卿という、こうした問題の政府のアドバイザーをずっとやっておられた、みずからも施設をやっていて、その施設をやめて家庭中心の養育を強力に進めてこられた方のお話を聞いてみましたら、二十年前はイギリスもやはり日本と同じように施設中心だったけれども、二十年前にその方針を変えて、何をやったかというと、入所を全部とめたというんですね。

 ですから、本当は我々、乳児院も、そして児童養護施設も、これは基本的には預けないという、実はドイツは、就学前は施設に入れないというのが原則になっています。イギリスは、小学校の間までも入れないということですから、十二歳ぐらいまでは入れない。入る場合は、よほど難しいケースの場合に、専門的なスタッフがそろっている施設で、それこそ今四対一になっていますけれども、まさに一対二ぐらいの、職員の方が多いというぐらいのケアをしっかりとやっているというふうに聞いています。

 したがって、理想的にはそっちの方向に行かなきゃいけませんが、そうはいっても、いきなりそうなるわけでもないので、今お話しのように、在宅での相談にどう応えられる体制をつくれるのかというお話を今頂戴いたしました。

 児童虐待は、発生を予防する、あるいは早期に発見する、早期に対応するというのは、当然それは、家庭段階、在宅段階でどう見出してくるか、見つけ出してくるかということでありますから、子供や保護者などの身近な場所で、きめ細かく子育ての不安やあるいは孤立、こういったことを、子育てで一人で悩んで、不幸なことが起きる寸前まで行っているような人をどう探し出してサポートしていくかということをやることがとても大事で、そうなると、去年の法改正で、市町村の役割というものをクローズアップして、支援の役割というものをお願いすることにいたしました。

 したがって、地域子育て支援拠点の設置を市町村において促進し、それから、多種多様な課題や悩みを抱える子育て家庭に相談、助言などを行う利用者支援事業というのがありますが、これも行う。これは今、三十一年度末までに千八百カ所の利用者支援事業、今の地域子育て支援拠点は三十一年度末までに八千カ所を目指すということにしています。それから、放課後児童クラブなどの終了後に、悩み相談とか居場所の提供を行う子どもの生活・学習支援事業、これも可能な限り早期に年間延べ五十万人分を提供できるようにということで、二十八年度創設の中で今数字を集めているところでございます。

 こういうようなことを計画的に進めているわけで、引き続き、こうした取り組みで、今おっしゃったように、地域で、住んでいらっしゃる方々が虐待に至らずに、その手前でしっかりと支援が受けられるようにしてまいりたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 重要な取り組みですし、今おっしゃっていただいたさまざまな施策の実効性あるいは進捗の評価、検証もいただきながら、しっかりお取り組みをお願い申し上げたいと思います。

 続いて、そういった在宅におけるもちろんサポート体制も重要なんですが、そうはいっても、家に来てもらうことへの、来てもらう方の側の話も聞くと、なかなか来てもらうのはちょっと逆に抵抗があるとかいろいろな話もある中で、では逆に、児相も含めて出かけていくということを考えたときに、なかなか、私も先日も地元の児童相談所に行って、ちょうど何人か親子でいらっしゃっていましたが、やはりそれは当然、プライバシーですから余り人目に触れないところで、受付のところも含めて、やはりそういう環境があった方が望ましいんだろうなというふうに、私もちょっと出入りするときに感じた部分もありますし、正直やはり、ちょっと敷居が高いというか、そういうふうに思われる親御さんあるいは親子もおられると思います。

 そういった中で、例えば、私、通告のときには親子相談支援カフェというような言い方をさせていただいたんですが、これは、それこそ昨日のBONDの橘さんの話の中でも、同様の、資料の中に出張面談、カフェ型移動相談とかいう事例も紹介されていましたが、そういう意味で、敷居が余り高くなくて、ちょっとカフェに行くぐらいの、ある意味、例えとして、そういう感覚で、それこそ介護相談支援カフェ、私も何度かそういったところにも伺ったり、お話も聞いたりしたこともございますし、そういった皆さんと一緒にシンポジウムをしたこともあるんですけれども、介護分野におけるそういったカフェなども参考に、これはぜひ、親子相談支援カフェというような、物理的にもあるいは精神的にも金銭的にもアクセスしやすいそういった受け皿整備も私は有効かつ必要と考えるわけですが、これは大臣、こういった取り組みを、もうされている事例もあるかもしれませんが、ぜひ今後拡大をいただきたいと思うわけですが、御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 カフェのように気楽に相談に乗ってもらえるような場所という意味で、地域で相談体制が整っているということが大事だという御指摘じゃないかというふうに思いました。

 さっき申し上げましたけれども、地域子育て支援拠点というのが、市町村で子育て中の親子が気軽に集まって、相談も、お互いに共通の悩みをシェアするというか、そういうようなこと、あるいは、仲よしになって相互交流を深めるという中で、自分だけが悩んでいるんじゃないんだなということをわかることがとても大事だと。

 特に専業主婦の、昼間、一人で子育てをしている方々がメンタルに参るというのが多いということを聞いておりますが、そういった方々を、ネットワークをつくっていくことの支援をする、そういうような場として、今申し上げた、三十一年度末までに八千カ所設置をしようということで、今、二十七年度は六千八百十八カ所設けているわけでありますが、八千カ所を目指して今、あと二年かけて拡大していこうということで、できる限りきめ細かく、そういった拠点があるということ、それで、家庭に閉じこもらないで出てくるという中で、気分が大分明るくなり、なおかつ、お互いから学び合うことによって、虐待に至るような、追い込まれるようなことを回避することができるのではないかというふうに思います。

柚木委員 ぜひ、お取り組みをよろしくお願いいたします。

 資料の三ページ目にも、「子どもの生活・学習支援事業(居場所づくり)」ということで、これは子供というよりは、親子という視点も含めてだというふうに説明をいただいたわけでございますが、こういったいろいろな実施場所も含めて、これは工夫はいただけると思います、児童館、公民館、民家等となっていますが。カフェの、そういった意味では、ビルの中にあるところにも伺ったことがありますし、なるべくやはりアクセスしやすいことと、他方で、一定のプライバシーが確保されるという、両立がなかなか難しい面はありますが、ぜひ、こういった事業も含めてお取り組みをお願い申し上げておきたいと思うんです。

 それで、これは、けさの報道を見て、通告はしていないんですが、ちょっと関連をして、可能な範囲で結構ですから、お答えをいただければと思うんです。

 毎日新聞のけさの朝刊に、これは、認知症の当事者の方がみずから、同じ認知症の人や家族の相談に応じる窓口が六月から月一回、名古屋市西区役所でスタートというふうな報道を私はけさ見まして、これは私も本当に大変すばらしい取り組みだなと思うんです。区の地域包括ケア推進会議が、山田さんを相談員とする事業の実施を決めたということでありまして、厚生労働省によると、全国でも珍しい取り組みで、初めてではないかというコメントが載っております。おれんじドアということで、これは仙台市でもやっている部分を、名前も同じにしている、参考にしてということであります。

 ぜひ大臣、これは、まさに今大臣が答弁いただいたように、介護も育児も、我が家もはっきり言って、子育て、本当に、私はどちらかというと、妻がふだん頑張っていただいているんですが、悩みながらやっています。いろいろなところに相談に行くことがあります。やはり同じ悩みを共有して、分かち合って、そういうことが前に進んでいく勇気と元気を与えてくれる、そのとおりです。

 ですから、これは、認知症における取り組み、まさに当事者が、みずから窓口でそういった相談に乗るというのは非常に画期的だと思うんです。つまり、私は、受け入れ体制の整備ということを述べた中で、その多様な受け入れ体制、受け皿という意味においては、役所の窓口というのも非常に、当然皆さん行かれるところなんです。

 ですから、この記事を見ての感想的なことでも含めて結構なので、これはぜひ、認知症対策だけじゃなくて、こういった虐待や子育て支援にかかわる相談支援機能についても、ちょっとぜひ、そういった事例があるのかないのか。あるのであれば、ぜひ、窓口において当事者が相談に乗っていただくような、しかも、もちろんバックエリアには専門家が控えているわけですから、そこの連携もできるということで一石二鳥であると思いますので、役所における窓口で、いわゆる子育て支援、つまり虐待にかかわる相談支援機能を担っていただく、当事者によって。

 そういう事例、私、ちょっと、ごめんなさい、けさの報道を見たばかりなので承知はしていないんですが、全国でどうなのか。それも含めて把握の上、そういったことがぜひ可能であれば御検討いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これはまさに、我が事・丸ごとの典型みたいなもので、支える人が一方的にいつも支えられ、支える人がいつも一方的に支えるだけ、そういうことではないんじゃないかということを申し上げましたが、まさに認知症の方が、例えば、くわを持って畑に出ると、しゃきっとして全然問題ないみたいなこともあるという話を、実際に丸ごとでやっていらっしゃるNPOの方から聞いたことがありますが。今の認知症の、特にそれは若年の認知症の方のケースではないかと思いますが、多分、おととしに、認知症サミットの後継イベントを秋にやりまして、そのときに総理から新オレンジプランをつくれという指示をいただいたわけでありますが、その際に私はお目にかかったような記憶がございます。

 いずれにしても、仕事をしながら、しかし、他の方々の、認知症の方のサポートもされるということが行われているんだということだろうと思うんですが、そういうようなことを、まさにこれからいろいろなケースを考えてやれるようにしていくことが大事で、全国的にどうなっているのかということを今即座に把握しているというわけではございませんが、むしろ、我が事・丸ごとの意味では、認知症の方はサポートされるだけということではなくて、認知症の方の持てる能力の範囲内でやはりそれを活用してもらって他の方のサポートもしていただけるようにする、その枠組みをやりやすいようにしていくというのが我々の仕事ではないかと……(柚木委員「虐待相談支援を同じようにという趣旨」と呼ぶ)

 虐待についてももちろん、虐待を実際不本意にされた経験のある方が、これからいろいろな問題を抱えるであろう若い人たちにまたいろいろ伝授をしてもらって一緒にシェアしていく、そういうことは大変大事だというふうに思います。

柚木委員 これは、今お答えいただいた最後の部分、ぜひお願いしたいと思うんです。

 私自身も、私も一緒に妻と行くこともありますが、どちらかというと妻の方がいろいろなところで相談に行ったときに、これはもちろんファミサポだったり医療機関だったり、もっと専門のところだったり、あるわけですが、これは多分相性もあるかもしれませんが、なかなか、正直、共有をいただけることが、相談している側からしたときに、必ずしもそうでないケースというのは間々あるわけです。ですから、やはり専門家であってもなかなか、そういう経験を御自身がされたことがある、ないも含めて、これは本当にマッチングといいますか相性といいますか、そこはあるわけでございます。

 そういう意味では、その経験者の方が、それを乗り越えて、まさにもう全く同じ目線でこの間経験してきたという方が対応いただけるということに私は一つ意味があると思いますので、そこはぜひ、また役所の方に、実情、実例があるのかどうなのか、後で結構ですので、調べて教えていただければ私自身も大変参考になりますので、できるお手伝い、私たちもしたいと思いますので、お願いを申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間がないので一個飛ばして、時間があればやります。きょう、ここはちょっとやっておきますね、児童相談所の体制強化。

 これは中川委員が資料をつけておられたんですが、多分時間の関係で細かいところまで確認をされなかったと思うので、私の方から、五ページ目、児童相談所強化プランで、これは二十七年度実績については触れられています。これは、二十八年度、直近の最新の実績について、ちょっとまだ出ていないみたいなのでお願いをしておったと思いますので、これをちょっとまずお答えいただいた上で、今後の取り組みについて、仮に方向性も御答弁いただけるようだったらお願いをできますでしょうか。

 大臣、数字だけで結構ですよ、事務方から行っていると思うので。

 委員長、時間が。

丹羽委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 では、起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 二十八年度の実績を申し上げますと、例えば児童福祉司、これは三千三十人ということでプラス九十六人、スーパーバイザーで五百十一人で、これはプラス四十二人、児童心理司で千三百二十九人でプラス四十四人、保健師で百一人でプラス十五人ということで実績が出ているところでございまして、前年度から約百名、児童福祉司はふえているということで、一番現場で頑張らなきゃいけないのは児童福祉司でしょうから、そういうような格好になっているというのが現状でございます。

柚木委員 初年度ですから、今後もっとペースアップをしていくということでお取り組みいただけると思いますが、若干、ちょっと計算が、こっちの計算と違うんですが、いずれにしても、今答えていただいた実数についてはそのように私も承知をしますので、もちろん児童福祉司が一番多いわけですが、全体でいうと、私の計算では進捗一七%。これを四年間でやったとして七〇%弱のペースでスタートアップしているわけですから、もうちょっとペースアップをして、ぜひ、この評価、検証を行いながら、これは、やはり現場の職員の方々、確かにこういう対応をいただいているんですが、まだまだ十全ではないということも聞いておりますので、やはり受け皿の実効性を高めるという意味においてもお取り組みをしっかりとお願いしておきたいと思います。

 それで、最高裁からきょう来ていただいているんですが、ちょっと、最高裁に個別に三つ四つ伺うところは後にして、厚生労働大臣と、それぞれ伺う項目についてまず伺いたいと思います。

 前回も我が党の初鹿委員が、きょうもされるのかもしれませんが、これは、伊丹市の四十歳のお父さんが四歳のお嬢ちゃんと心中してしまったと。「面会交流に盲点」ということで、きょうも初鹿委員がやられる予定があるかもしれませんが、これは、この面会交流のあり方を今後検討する上でも、もちろん、裁判官の独立等についてはあるわけです。他方で、やはりこれは、厚生労働省としては、今回、面会交流のあり方、今後、仮に家裁が一定の要件の中で推進をしていくという立場であったとしても、それはそれとして、きょう資料にもおつけしておきましたけれども、六ページ目で、これは東京新聞の最近の記事ですけれども、「別居親との面会 法制定の動き」「子の利益「慎重に判断を」」「相次ぐ事件 義務化案に懸念」ということで、アメリカで面会交流中に子供が殺される事件が年平均約七十件起きている、そういう意味では、離婚の時点で面会交流の有無を硬直的に判断せず、子供の気持ちや成長に沿って柔軟に対応するシステムが必要、離婚前後の気持ちも生活も落ちついていない時期に面会交流を行うことにはリスクが伴う、面会交流が決まった後も専門家と家裁が協力してフォローする体制が必要だとあるわけですが、今回起こったこの伊丹市の事案については、報道によれば、実際に神戸家裁伊丹支部が養育費請求調停中に面会交流についても話し合ったというような報道もありますので、実際、面会交流のあり方を今後検討する上でも、本事案について、ぜひ、これは厚生労働省としてはしっかり調査、検証をいただくことが必要ではないかと思うわけでありまして、厚生労働大臣の御見解をお述べいただけますか。

塩崎国務大臣 伊丹市で起きました、面会交流中に心中が発生してしまったという大変残念な事件でありますけれども、厚生労働省としては、心中事案を含めて、児童虐待による死亡事例については、自治体からの報告を受けて、関係省庁を交えた国の専門委員会で毎年度、その養育環境とか関係機関の関与の状況等についての分析、検証を行って、こういった虐待死の防止のための取り組みにつなげていかなければならないと考えております。

 面会交流中に心中に至った事案についても、捜査の状況とか自治体における対応を待つ必要がもちろんありますけれども、この国の専門委員会での検証の対象となり得ると考えておりまして、いかに、子供のためにも、恐らく子供を中心に考えるべきなんだろうと思いますが、この国の専門委員会での検証を深めてもらって、その結果を踏まえて、どうやったら面会交流が安全で、そして親子のためにプラスになる形でちゃんと行われるようになるかということで、再発防止の仕組みを私どもとしても考えていきたいというふうに思います。

柚木委員 ぜひその方向でお願いをいたします。

 最高裁にお尋ねしたいのは、同じような質問をするとなかなか答えづらいと思うので、今のような御答弁があったわけで、私は非常に、当然、国の専門委の対象として検証いただきたいんですが、実際に、報道によれば、母親が神戸の家裁伊丹支部に、養育費請求調停を申し立てて、その中で面会交流についても話し合ったということでございますから、その事実関係だけは御確認をいただいて、その議論等は、それは最高裁でやるということにはなり得ないというふうに、きのうのやりとりの中では承知しましたが、事実関係だけはそこはちゃんと整理をしておいていただくことがまさに先ほどの答弁に資すると思いますので、そこだけちょっと御答弁いただけますか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 個別の事件について、事務方でありますところの最高裁事務総局が個別の事件の進め方や判断について当否を検証しているというような形には問題があるかと思いますので、そういうことにならないところで外形的な事実の確認等ができるかどうかということについては検討していきたいというふうに思います。

柚木委員 前提条件をつけていただいて結構ですから、今おっしゃった最後の、外形的事実確認だけはお願いをしておきたいと思います。今そのように御答弁をいただいたのは重要だと思います。

 あと、時間がないので、ちょっとごめんなさい、まとめて伺いますので、まとめて御答弁いただければと思います。

 この面会交流について、今それぞれ、厚生労働大臣からも御答弁がありましたし、子供の安全などの、いわば面会リスクと言うと言葉が過ぎるかもしれませんが、そういうことへの配慮、そうする場合には、やはり、必要に応じて面会場所や、あるいは第三者が何らかの形でそばにいる形、これは工夫ができると思うんです。そういう意味での面会の工夫のあり方、これをぜひ御検討いただきたいというのが一つあります。

 それから、これも必要に応じてで結構ですけれども、今回については、心中されたお父さんが会社に行っていなくて、精神科を受診されていてというような状況の情報共有もお母様側にできていなかったということでございますから、やはりそれは、当然、保護者の心身の状況把握など、情報共有も含めて、これは家裁だけではなくて、場合によっては、児相その他、いろいろな多職種の、専門職なども含めて、必要に応じて、場合によっては、よく医療なんかでチームカンファレンスとかいう言い方をしますけれども、そういったものも、必要に応じてで結構ですから、面会交流の協議の際に開いていただくことも私は一案だと思います。

 もう一点は、これは、まさに今回も、個別の事案ということで、お答えいただかなくて結構なんですが、今後、私は、こういった類似の事案、まさに防がなきゃいけないというお話があったわけですが、離婚調停の中で面会交流の話が出てきたような場合には、その協議の中身を家裁も共有をして、そして保護者の心身の状況共有や面会交流のあり方を、家裁として協議そして共有、検討して、もう一方の保護者や、あるいは児相などに行っているようなら児相などとも相談、共有できるような体制整備を行っていただくことが非常に重要ではないかと思うわけですが、大変恐縮ですが、まとめて御答弁をお願いいたします。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず初めに、当事者に精神的な問題がうかがわれるような事案への対応でございますけれども、そのような場合においては、当事者同士だけで面会交流を認めることが難しい、こういうふうに考えられる事案もございます。そういう場合の面会交流の具体的なあり方について配慮が必要になるという場合もあるかと認識しております。

 このような事案におきましては、委員の御指摘にありましたような、適切な第三者の立ち会いを面会交流の内容としたり、あるいは、面会交流の際の付き添いや受け渡しの援助といった面会交流の支援を行う第三者機関を利用したりということも考えられるかと思います。

 もっとも、第三者の立ち会いにつきましては、知人ですとか御親族の中に必ずしも適切な第三者がいる事案ばかりではないというところも承知をしておりますし、第三者機関の利用につきましては、調停でこれを利用するということになれば、当事者間の合意が必要であるということのほか、第三者機関の利用には費用がかかる場合があるということも考慮いたしますと、そういう問題がありそうな事案であっても、全てそういった利用を必須とするのはなかなか難しい面もあるかと思っております。

 いずれにしましても、個別の事案ごとに事情を総合的に考慮して適切な判断に努めているものと承知をしております。

 それから、例えば通院歴等についていろいろな情報の収集、共有をという点でございますけれども、まずは、子の利益にかなう面会交流のあり方を検討するためには、家庭裁判所調査官という者がおりますので、心理学、教育学等の行動科学の専門的知見や技法を用いてこの家庭裁判所調査官が行う事実の調査、これを活用しているというふうに承知をしております。

 裁判官ですとか調停委員会は、このような事実の調査の一環として、事案に応じて家庭裁判所調査官が、子供のふだんの様子を見ている保育所や学校、それから委員の御指摘にありましたような児童相談所の職員、さらには親族等から陳述を聴取したりということを通じて、子供を取り巻く事情を十分に把握するように努めております。

 また、そうした中で、当事者に通院歴があるというようなことが把握された場合には、必要に応じて家裁調査官がその内容も聴取して、親の精神状態等の十分な把握に努めて、その報告を受けた裁判官、調停委員会において、状況を十分に踏まえた、子の利益にかなう面会交流のあり方が検討されているというふうに承知をしております。

 今申し上げましたようなことは、面会交流の申し立てがあった事件はもちろんでございますけれども、委員の御指摘にありましたような離婚調停ですとか、ほかの形の申し立てが行われて裁判所で調停等が行われている場合で、その中でも、これは面会交流についても問題になり得るなというようなことがうかがわれる場合には、調停委員会において当事者に対して必要に応じて面会交流調停の申し立てを促すといったことも含めまして、面会交流に関する適切な対応に努めているというふうに認識をしております。

 その中で、やはり精神状態に問題があるなということになれば、先ほど申し上げたような対応を工夫しているというところもあるかと思っておりますので、当事者から事情を十分に聴取した上で面会交流への適切な対応が行われるよう、家裁の取り組みを支援してまいりたいと考えております。

柚木委員 時間が来たので、残りの通告がありますが、終わります。

 きょう、たまたま認知症の例と、まさに虐待対策を含めた親子支援についてお尋ねしましたが、それぞれが本当に今後重要なテーマで、連動もして取り組んでいくことが大事だと思いますので、ぜひそれぞれの所管省庁連携をしてのお取り組みをお願いして、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 本日は、児童福祉法並びに児童虐待防止法の改正につきまして、昨年に行われました、子供の権利ということを正面にうたった児童福祉法の改正に次ぐ改正として御質問をしたいと思います。

 そもそも、児童の権利に関する条約第九条一項には、「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として」云々と続いて、「児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、」という、この取り決めにのっとって、今回の親子分離、二十八条であったり、二カ月以上の一時保護の場合の司法の関与ということが取り入れられたんだと思います。

 少し児童福祉法の改正の歴史を振り返ってみますと、実は平成二十三年、民主党政権の折にも、この児童福祉法の改正に司法関与が検討されましたが、見送られた経緯があるかと思います。このときの答弁等々やりとりを見ておりますと、当時、江田法務大臣でしたが、司法が関与するには、家裁の側の人員体制並びに全体の子供をサポートする体制、それがまだ整ってはおらない段階であろうということで、そのときは児童福祉審議会が、例えば二カ月を超えた一時保護などについては、児童相談所の判断をチェックするという方式を取り入れました。

 それから五年たったわけですが、果たして、この児童福祉審議会の機能、この間の果たした役割、そして今回なぜ再度司法の関与というふうにかじを切られたのか、これについて塩崎大臣からまず冒頭お伺いいたします。

塩崎国務大臣 江田法務大臣時代のお話も含めてお話を頂戴いたしましたが、この児童福祉審議会の意見聴取、これが行われてきたわけでありますが、一時保護が強い権限であって、人権制限をするわけでありますから、それを考慮いたしまして、平成二十三年の法改正によって、手続の適正性を担保するために、この意見聴取というのは導入をされた仕組みであるわけであります。

 今回、全国の児童相談所に対して実施をいたしました調査によりますと、調査対象期間の四カ月間で、都道府県児童福祉審議会が延長を認める際に、意見が付された事実があるものの、一時保護の延長を認めなかった事案はないというような結果でございました。そういう事実がございます。

 一時保護につきまして、都道府県児童福祉審議会の意見聴取と、そして家庭裁判所による審査は、ともに手続の適正性を担保しようというものであるわけでありますけれども、今般、こうした経緯や調査結果も踏まえて検討を行った結果、手続の適正性をより一層担保するという観点から、同じ行政機関に属する都道府県児童福祉審議会の意見聴取にかえて、家庭裁判所による審査を導入することとしたものでございます。

阿部委員 私が自分の身近で、実際に児童相談所などにも伺ってこの児童福祉審議会の役割等々をヒアリングし、並びに、この児童福祉審議会が、そもそもが子供の権利擁護ということにのっとった専門家を集めたものであって、ここで児童相談所の判断と異なるものはゼロ件だったということのみをもって、私は、機能を家裁に移すというような総括の仕方は、実は現実をより深く掘り下げていないかなというふうに思います。

 一つは、例えば、私は神奈川県ですけれども、神奈川県などは比較的しっかりと児童福祉審議会がワークしているようでありまして、一方、そうした機能が十分に発揮できていないところもあるでしょうし、実は、本来の子供の権利ということにのっとった観点から、なぜ家裁なのかということをもう一度見ると同時に、児童福祉審議会にしても、あるいは児童相談所にしても、特に児童相談所では、やはり現実の虐待を起こした親御さんにかかわるマンパワーを含めて圧倒的に不足しておることなどから考えて、ここはより深く、何を変えていくべきかを、私は、もう一度大臣には点検していただきたい。

 四カ月の調査で、五年間やってきたことの全貌が出るかなということと、全国均てん化をすべきでないかなと。まずこの点については私の見解をお伝えして、そして、大筋の司法の関与ということは、流れとして私は了としておりますし、それを現実可能とするような体制ができてきているかどうかという観点から、またお尋ねをしたいと思います。

 二点目の質問は、司法が関与するのであれば、例えば、一時保護で二カ月を経てから、親の同意のない一時保護、二カ月を経てからというふうに今回規定されましたが、それも恐らく、この児童福祉審議会等々のデータや、あるいは一時保護の親の同意のない件数などにものっとって規定されたものかなと思いますが、本来的な大臣の考えとしては、より早期の司法介入、すなわち、親子を分離するということについて、行政だけでなく司法がきちんとそのことを担保していくということは、より早期であっても実は望ましいとお考えなのか。現状のいろいろな、はっきり言えばマンパワーです、家裁の側も含めて、あるいは児童相談所の側も含めて。そこからして二カ月のところに置かれたのか、基本的なお考えを教えてください。

塩崎国務大臣 恐らく、きのうの参考人でも出たのではないかと記憶をしますが、いろいろな議論がありました、この法改正に至るまでにですね。

 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会というワーキンググループをつくっていたわけでありますが、そこで議論が百出しまして、一時保護を開始する際には、その必要性を審査するために、家庭裁判所による一定期間内の速やかな審査や事前審査の導入を目指すべきであるという提案があった一方で、緊急時の対応に支障が生じたり、児童相談所が必要な一時保護をためらったりすることがないようにすべきであるというような指摘もなされまして、第一段階として、一時保護の期間二カ月を考慮して、一時保護が一定期間を超える場合に司法審査を導入するということが考えられるという対応案として、提案がこの検討会から出てきたところでございまして、その中では、短いものも大事だという意見もあったように私は理解をしております。

 今回の改正法案では、この検討会における取りまとめを踏まえて、親権者などの意に反して二カ月を超えて行う一時保護に司法審査を導入するということで今回法改正をお願いしようということにまとまったわけでございますが、子供の安全確保を図る観点からは、全ての一時保護、これでいきますと年間三万件余りあるようでございますが、ここへの司法審査を導入することは数の上からいってもなかなか現実的ではないのではないかと考えるわけで、さらなる審査対象の拡大については、今回の改正法案の附則の検討規定に基づいて、施行の状況や児童相談所の体制整備、こういった状況などもよく勘案しながら今後検討をしていくべきではないのかというふうに考えております。

阿部委員 私のお尋ねは、全ての一時保護ではなくて親の同意のない一時保護ということで、これはなぜこういう言い方を申しましたかというと、先ほどの児童の権利条約の九条一項との関係であります。

 そして、親にとっても、十分な意見表明ができる場の確保がないと、結局、子供が分離されるということに対しての抵抗や、あるいは理不尽だと思う気持ちを持ちながら、では、もし再統合が現実にできる場面になったとしても、なかなかうまく運ばないと思います。

 その点で、私は、今回の改正はなぜ二カ月なのかというのは、二カ月超えのものからやっていくということで、先ほど申し上げたようなマンパワーが規定しているのかなと思いますが、そうであるならば、ここをちょっと注意していただきたいという点についてお話をしたいと思います。

 そもそも、二十八条の措置の承認に際する部分について先に申し上げれば、これは、二十八条の措置の承認の審判の申し立てがあった場合に、家庭裁判所が、一度は親御さんの在宅での子供を手元に置いた指導に戻して、ある意味、審判を先送りする仕組みであります。

 先送りすることのメリットとデメリット、両方あるように思います。この送られた時間の中で子供に不測の事態が起こることもあるでしょうし、それから、親の意見表明という点においては、家裁での審判となりますれば、必ず親は意見を聴取される権利があるわけですが、この家庭裁判所の勧告のもとでの保護者指導といった場合には、親の意見聴取を法的に担保するものはないと思います。

 今回の法改正がなされ、時間が先送りされますが、その中で親御さんの意見聴取を法的に担保するものがない、このことは私はやはり大きな問題になると思いますので、ここを、今回法改正にそれがないとしても、せめて、どうよりよいものにしていくのか等々でお考えを伺いたいと思います。

 これは大臣でしたか、どなたでしたか。

塩崎国務大臣 絶えずよりよいものにしていかなきゃいけないというのは、そのとおりでございます。

 今回、保護者の陳述の聴取が勧告の前後のいずれのタイミングでなされるのかということにつきましては、これは個々の裁判官の判断に委ねられているわけでありますけれども、二十八条審判に当たっては、保護者の陳述の聴取を行わなければ審判自体は起きないということになっているわけでございまして、強制的な処分としての里親委託とか施設入所などの措置が決定される前には、当然、保護者の陳述の聴取機会が確保されているところでございます。

 一方で、厚生労働省としては、保護者の意向も聞いた上で勧告が行われることは保護者の権利保障の観点からも望ましいのではないかと考えておりまして、施行に当たっては、運用上の工夫のあり方について、法務省やあるいは最高裁、特に家庭裁判所ですが、ともよく相談をしながら検討していかなければならないのではないかというふうに考えております。

阿部委員 申しわけありませんが、もしかして定員割れであれば、御確認をいただきたいと思います。

丹羽委員長 では、委員部、定数を確認してください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 では、速記を起こしてください。

 阿部知子君。

阿部委員 この間の厚生労働委員会の審議は、正直言って少し過密ダイヤで、十分な審議にならない、そして定員割れを起こす。私は、実は先々回もそうでありましたので、これはやはり本当に大事な問題ですので、こういう委員会で、定員割れで人を集めねばならないというような形にならないような運営を、ぜひ委員長にもお取り計らい願いたいと思います。よろしくお願いします。

 ちょっと中断された形ですが、今の大臣の御答弁を取りまとめると、今回の法改正においては、いわゆる二十八条の家裁による審判ではないので、親御さんの意見表明権を法的に担保するものはないということであります。

 もちろん、多くの虐待事案は、子供さんがもう本当に緊急に保護されねば命が危ないのような状態もございますが、同時に、親にとってもそれが納得できないというようなこともこれは同時に起こるわけで、そこに窓口がないということを厚生労働省としては十分認識した上で、家裁の判断にかかわる皆さんと十分な意見交換をされたり、あるいは親御さんにとっての意見窓口を開くような御努力をぜひいただきたいと思います。

 その上で、では、これにかかわる家庭裁判所はどうかということで、私は、せんだっての質疑で、共産党の委員の質問と、それに対する家裁の御答弁の中で、いかがなものかなと思いました。

 実は、その平成二十三年の折にも、家裁の関与が先送りされたときには、家裁の体制、人員等々の充実ということがまだ伴っておらないというのも判断の一つで、しかし、平成二十三年から今に至るまで、家裁の調停委員は増員が全くありません。

 実は、増員されたのは、御答弁にありましたが、平成十二年から十八年の家事事件対応で六十八人増員、平成二十一年の少年事件被害者配慮制度への対応で五人。それで、平成二十三年度に司法関与のことが話題になりながら体制準備はなされず、今回、司法関与ということになっていて一番懸念するのは、先ほど申しました、子供の権利にのっとった、児童福祉審議会から家裁にこのことが投げられた場合に、本当に子供の権利ということが擁護されていくような体制になるだろうかということでございます。

 増員のない点は、この前の委員会でそのような御答弁でありましたけれども、私は、なお、この間、この法律が成立したならば、増員をきちんと求めていっていただきたい。

 と申しますのも、実は、児童相談所などでも、従来の業務の中で虐待対応にかかる労力というか、それは、従来、例えば障害のあるお子さんの支援にかかわる労力を一とすると、虐待対応は業務量十三という、こんなに大きな違いが出てきます。虐待対応事案に対処していくには、エネルギーも人員も非常に要るということであります。

 今の家裁の体制が、いろいろな教育をしておるといっても、果たして研修内容が十分なのか、あるいは、もろもろの、子供の権利擁護にかかわる民間団体との意見交換は担保されておるのかなど、大きな懸念が残ります。

 人員は、この法律の施行後、非行の事件から家事事件や子供のことに移していくんだというのは、先ほど申しました業務量比較をしていただくと、ちょっと違うと思います、それを数値化して見れば。ですから、人員を単に右から左だけでなく、質も量も上げていく必要があると思いますし、それがよりよい司法関与になると思いますが、いかがでしょう。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、体制、量の点でございますけれども、家庭裁判所では、家事事件の事件数が増加傾向にあるということも踏まえまして、対応の充実強化のために、判事あるいは書記官を相当数増員するということは、ここ数年続けてきております。

 家庭裁判所調査官については、委員御指摘のとおり、増員はしておりませんけれども、これについては、委員の御指摘の中にもまさにございましたとおり、少年事件の事件数が十年前と比較しても三分の一に近い数字まで落ち込んでいるといったこととの総合考慮をしているところでございます。

 ただ、いずれにしましても、体制につきましては、新たな家事事件類型ができるということも踏まえまして、その後の事件数の動向等を踏まえて、必要な体制は整備をしてまいりたいというふうに考えております。

 それから、質の点についてもお尋ねがございました。

 特に質の点で重要になりますのは、家庭裁判所調査官の調査を充実させるという点かと思いますが、家庭裁判所調査官につきましては、まず、その調査官を養成するための研修におきまして、発達心理学や社会福祉学などの行動科学の理論ですとか、子供の虐待に関する専門知識を習得させるということのほか、子供の状況や意思の把握のあり方、さらには児童相談所との連携といった調査実務に必要な知見などに関して、外部講師による講義も含めて、充実した研修を行っております。

 また、家裁調査官に任官した後におきましても、各種の研修やOJTを通じて専門的な知識や調査技法の習熟を図ってきているところでございまして、任官後の研修におきましても、外部の専門的な方の講師をお呼びして、講演をいただいたり意見交換をしたりということも行っているところでございます。

 このように、今後も家庭裁判所の適正な判断に資するよう、裁判所の外部から専門的知見を有する方を招いて御講演いただくといったことも含めまして、家庭裁判所調査官の専門性向上のための研修は行っていきたいというふうに考えております。

阿部委員 お手元の二ページ目には、家裁の調査官の研修課程が書いてございます。そして、私はさらに詳しいものも見せていただきまして、確かに児童虐待あるいはいろいろなソーシャルワークについての研修も中には入ってございますが、大体全体の四分の一くらいでありました。

 もちろん、それで十分とせずに、今の御答弁のように、さらに強化していくとともに、やはり、きのうの参考人招致でもそうでしたが、実は児童相談所が抱え込めるというか、かかわれる範疇というのは本当に氷山の一角で、広範な、海のような、今、社会的に虐待、家庭崩壊が起きておりますので、そこにかかわる民間の支援団体もたくさんございます。そういうところとも、これまで役所と、公と民というのは分けられておりましたけれども、特にこの児童虐待問題は、そうした分野との交流ということを熱心に行っていただきまして、子供の気持ちを知るということです。

 性暴力、性被害などは、自分から言い出すこともできませんし、言い出すことに対して親への贖罪を感じてしまったり、むしろ自己否定してリストカットしたり自殺したりして、子供は自分を消してしまいたいと思うような事態に立ち至りますから、やはり、そういう状況を多く知っていただきまして、この家裁の機能を子供に寄り添うものにしていっていただきたいと思います。

 これは、先ほど塩崎大臣も御答弁でありましたが、きのうの参考人の御指摘に子供裁判所というふうな指摘があって、私が取り上げさせていただきましたが、大臣もよく御存じのように、アメリカなどでは、子供の非行とか特別養子縁組とか虐待にかかわる専門の裁判所という仕組みをつくって、子供の権利擁護のために社会がみんなで力を合わせる。子供裁判所は、いわゆる子供の権利擁護のとりでであるというふうな位置づけであります。

 もちろん、各国、法体系が違って、日本は特にドイツの法体系と近似していると思いますので、ドイツの場合は、家裁はむしろジャッジメントで、児童相談所が行政的な支援の役割ということをやっておりますが、それでもなお、ドイツにおいても、この子供事案については、よりよい家裁のいわば伴走型支援、寄り添って支援するという考え方をとっているように、私はこの間調べて思いました。

 大臣は、子供の虐待に非常に力を入れてくださっているので、ぜひ、子供の意見表明権も含めて、今後どういう形で家裁の中で充実させていくのか、御意見等あったら賜りたいと思います。

塩崎国務大臣 今回、こういう形で、在宅で支援をする際に、家裁による勧告に基づく家庭での支援をどうやっていくかということについての司法関与を深めていただく、こういうことになっているわけでありまして、それは、審判で施設に行く、あるいは措置で里親に出す、そういうようなことを決めない場合に家庭で支援をしていくということになるわけでありますけれども、ここに児相だけではなくて、そこに家庭裁判所が関与していただくことによって、もちろん前線は児童相談所であり、そしてそこからの委託を受けて、市町村が今回は支援をしていくという際の後ろ盾というか、そのような気持ちで裁判所にも親の権利と子供の権利の間の調整としての方向性を出していただいて、子供が何よりも健全に育っていくようにするためのウオッチをしていくという際に、司法も今までにはない形で一枚かんでいただく、こういうことだと思います。

 先ほど、アメリカやイギリス、ドイツの話が出ましたが、いずれも、最終的に親権をどうするかということについては、日本も大枠はそうですけれども、裁判所が関与していますけれども、どのタイミングでどういうふうにやるのかというのは、まだまだいろいろあると思います。

 私は、何よりも、やはり早いタイミングで、施設ではなく家庭ないしは家庭と同様の環境の中で子供が育っていくということが大事なので、そこに裁判所も一緒に関与できる形が、どういう形だったらあるのかということは引き続き考えてまいりたいと思いますし、先ほど申し上げたように、施設に基本的には入れないというドイツやイギリスの、一定の年齢に達するまで入れない、そういうときに、ではどういう形でやるのかというときに、やはり司法が関与しているということは非常に強いバックアップになるのではないかと私は思っておりますので、引き続き、今回の、一歩前進していきたいと思いますが、さらなる前進も考えていきたいというふうに思います。

阿部委員 私が先ほど御紹介したアメリカの子供裁判所、ジューベナイルコートと申しますが、そういう裁判所では、大臣が今おっしゃったように、あらゆる場面に関与しながら、特別養子縁組もそうです、でも、その裁判所自身の中に子供の権利ということが十分行き渡り、人材的にも教育面でも成り立って初めてこれはうまくいくことですので、ぜひ、今回の立法を契機に、厚労省側と家庭裁判所側と密な連携をお願いしたいと思います。

 そして、その上で、また一枚目に戻っていただきますと、家庭裁判所の勧告のもとでの保護者指導ということが、二十八条審判をおくらせる間行われるわけですが、これについて、先日来のこの委員会の質問を聞いておりますと、親が、自分が虐待しているということに気づかないで、例えばネグレクトをしているんだけれども、それがネグレクトであると気づかないでいるようなケースについて、その気づきを助けたりというような事例がございましたが、現場はそんな単純な事案ではなく、本当に複雑で、入り組んで、力ずくでもというような、非常に修羅場でございます。二十八条で引き分けなきゃいけないというようなものについては、そのような、単にネグレクトというようなものではない。私は、きのうかおとといの御答弁を聞いていて、そういう事案はそもそも児相でも十分できるんだと。そうでなくて、ここに持ってこられるような事案について、家裁が関与することで保護者指導が強化されるというのは本当だろうかと、私はちょっと疑ってしまいました。

 本当に、なぜ家裁が関与すると指導が強化されるんでしょうか。保護者指導を行うのは児童相談所であり、家裁はせいぜい、児相によるプログラムを点検、チェックして、ここをもうちょっとやってはどうでしょうくらいはおっしゃるかもしれませんが、私は、この点は非常に懸念を持っております。

 もう時間の関係で御答弁は求めませんが、せんだっての御答弁を聞いていて思ったということを伝えさせていただいて、次に、大臣並びに厚生労働省側にお尋ねをいたします。

 きょうも何件か出ておりましたが、結局、児童相談所の機能の中で、介入、分離に当たるパートと、親子の統合支援に当たるパートを分離していく、分けていくということは、やはり、特に、こういうところで今後始まる家裁の勧告のもとでの保護者指導などにおいては必要不可欠になると思います。

 なぜならば、ここにもたらされる前に、このソーシャルワーカーは自分と子供を分離したんだ、分けたんだと思っているわけです。その人がもう一回ここで、幾ら家裁のお墨つきがあったからといって保護者指導にかかわっても、実は残念ながら、本当に実が上がりません。これは、その方の能力いかんじゃなくて、物事の経緯であります。

 そこで、お手元の資料三枚目、児童相談所における介入機能と支援機能の分離について、これは何名かの方がお聞きになりましたが、私が厚労省にいただいたデータでは、介入機能と支援機能を同じ担当者が行っているところが現在でも六割以上、介入と支援機能で担当を分けている、すなわち人格、人をかえているというところが三五・九%でした。

 私は神奈川県ですので、実は、いずれの児相も、親子支援チームというのを別途持ちまして、これは、分離介入にかかわる方とは別に、児童心理司さんとソーシャルワーカーさんがペアを組んで、そして弁護士さんとかのアドバイスも受けながら親子支援にかかわっております。神奈川県下では、ことしからほぼ全部の児相がその体制をとっているようで、私も伺っていて、やはりそうでなければ児相も十分に機能しないだろうなと思いました。

 きょうの御答弁、聞いておりますと、まだモデル事業的にやっているということですが、一方で、こういう仕組みが家裁に投げられて戻ってくるわけで、とても今のモデル事業では間に合いません、正直言って。今すぐこれは必要で、同じ児相の中で、要するに、人格的に分け、部署も分け、これは十分可能な対応と思います。もちろん人の少ない児相もあります。

 大臣にあっては、のんきなことを言わないで、これをきちんと担保していただくようにプッシュしていただきたいが、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 これは、先ほど申し上げたとおり、いろいろ議論がこの法改正の前にございまして、おっしゃるとおり、分けた方がいいということをおっしゃる方も強くありましたし、私も、なかなか人間関係で、分離をした人が、もう一回再統合してくださいと親御さんたちに言ってもなかなか説得力がなくて、人間関係がもう壊れちゃってうまくいかないという、その悩みをむしろ児童相談所の職員の方から聞いた、そういうことがございました。

 ただ、では完全分離するほど人がいるかというと、これがまた十分ではなく、一つこなすだけで、先ほど、虐待事案の場合には、普通の事案に比べたら、はるかにワークロードが重いということをおっしゃっていただきましたが、そのことでまさに燃え尽き症候群化しているというのが正直なところでありました。したがって、今の現状の人数で、県庁の人事のやり方の中で、分離していって本当にできるのかというような意見も出ました。

 そういうことで、おっしゃっておられることは筋論として私も賛成でございますけれども、そして、人間としてやはり、もう一回再統合をしようというときに、一回力ずくで引き離した、そういう人が言っても説得力がないというのもよくわかるのではございますが、そこのところは、結論として分けようということには至らなかったということでございまして、問題意識は十分受けとめている、そういうことでございます。

阿部委員 子供のための予算をとってくるのも大臣の役割ですので、私どもは全力を挙げて応援をいたしますし、特に今、児童虐待が十万件以上というこの日本の社会は病んでいると思います。どこから治療していくかということに際して、未来ある子供たち、そして大事な親子ということですので、ぜひここは大臣に頑張っていただきたい。

 ちなみに、この間の計画で、二十七年の四千三百十人の児童福祉司から、児童相談所強化プランによって五千四百三十人に増員なさるということでありますから、でも、大臣もおっしゃるように、これでもなおなお足りません。日本の児童福祉司さんの抱えているケースの数は、欧米の三倍、四倍になっておりますので、ぜひここには本当に予算をつけて、人材を育てていただきたいと思います。

 そして、そうやって統合を努力しても、なお子供にとって危険が去らない、あるいは、家庭という受け皿ができない場合の里親や特別養子縁組の取り組みについては、大臣もこれを推進するとおっしゃっていただきましたので、あえて質問をいたしません。

 さて、今大変な膨大な数ふえてしまった児童虐待ということに関して、児童相談所並びにさまざまな支援機関は、どちらかというと、警察も含めてですが、事態が発生してからの事後対処に追われる。そもそも、事前にそういう虐待というところにはまり込まなくていいようなサポートを国はしていくべきだという考えを、昨年の児童福祉法の改正でもやっていただけたと思いますが、その中の一つで、ぜひ前向きに取り組んでいただきたい事業がございます。

 母子保健の医療対策総合支援事業というのがございまして、そのメニューの一つに産後ケア事業というのがあります。出産して三日、四日すると病院から退院されて、普通は御実家があったりして、そこで御自分のお母さんなどのケアで出産後の自分の体をいとい、なれない赤ちゃんに、泣き声を聞いてどうしていっていいのかをお母さんたちも体得していくのですが、今は実家のない、むしろある方が二割、実家とは遠く離れ、あるいは実家に期待できないという方が八割ということで、この産後ケアというのも、社会が受け皿をつくってサポートしなければならないということになってきたかと思います。

 町中の実家と言ってもいいですし、自分の町の実家でもいいと思います。そういう機能の一つとしてこの産後ケア事業というのがあって、大体一週間くらい、産褥期を安心して過ごせるような心身のケアや育児のサポートを提供する。特に、ハイリスクな妊娠、分娩等々、あるいは育児、最初でわからないというような方には大変役に立つだろうということでやられているのですが、実は、この産後ケアセンターというのは、医療法上にも取り決めがなく、児童福祉法にも決められておらず、もろもろ、どんな施設としてこれを位置づけるのかという法的なバックがありません。

 もっと言えば、これは単に旅館業法で、お産された方が泊まっている旅館だというふうな扱いを受けたり、もし児童福祉法上に位置づけば、建築基準法上のいろいろな規制で、緩和される部分も立地などであるのですが、これもない。法的根拠がないがゆえに、大変に普及に、もっと爆発的であってもいいのに、まだ百七十九くらい。本当に望まれている施設ですけれども、産後ケアセンターが、なかなかハードルが高くなってしまっている。

 ぜひ大臣には、根拠法、何でも構いませんと言うと変ですが、児童福祉法でも母子保健法でも医療法でも、そういう産後のケアにその場所があるんだということをきちんと法づけていただきたいですが、いかがでしょう。大臣に伺います。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 産後ケアセンターの前に、先ほどの介入機能と支援機能の分離を進めることについて、私ども、去年の法律の中で、中核市が五年以内に児相をつくっていただきたいという気持ちを込めて、政府が支援をするので五年以内にできるようにということを書かせていただきました。

 これは、児相をふやすということがやはり大事だ。例えば、今、中核市では金沢市と横須賀市、この二つだけでございますが、私の松山市なんかは中核市ですけれども、愛媛県には三つ、児童相談所があります。もし松山市がつくってくれれば四つになるわけで、そうすると松山市の分は松山市がやりますから、その他の分を三つのところがやる。人口三分の一強ですので、三分の二弱のところを三つで見られるということになれば、こういった介入機能と支援機能を分離するということが、よりやりやすくなるということでありますので、中核市にはぜひ児童相談所をつくっていただく。

 そして、特別区もそうですが、特別区はやりたいというところもたくさんあったので、そういうことで、ぜひ先生方の御地元で中核市があったら、ぜひつくるように声がけをしてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。

 産後ケアセンターのことについてですが、産後ケア事業については、退院直後の母子に対して心身のケアとか育児サポートなどを行って、産後も安心して子育てができる支援体制の構築を目的と、こういうことでつくられているわけでありますが、平成二十六年度にモデル事業として一部開始をし、平成二十七年度以降、予算事業化しているわけであります。

 この事業の中で、一部の自治体では、産後ケアセンター等の名称を用いて、休養などのための宿泊の機会を提供している独立した施設もあるわけでございますけれども、御指摘の、旅館業法などの他の法律との関係で、この事業のガイドラインを作成して、可能な限り整理をすることとしておりまして、現在、事業を実施している市町村を含めた関係者と調整をしております。

 法律的に新たな枠組みを設けるということは、直ちに実現することはなかなか簡単ではないわけでありますけれども、この事業の将来的な課題の一つであると認識をしておりますので、今後の事業の実施状況等を踏まえて考えてまいりたいと思っております。

 いずれにしても、旅館業法が隘路となってこの産後ケアセンターの機能が発揮しづらいというのは避けていかなきゃいけないんじゃないか、こう思っております。

阿部委員 ぜひ岩盤の規制を突破していただいて、だって、幾ら何でも旅館業法じゃないですよね。私は、産後ケアセンターが旅館業法だと言われたら、びっくりしてしまいます。ぜひよろしくお願いします。

 あと二問残してしまいました。でも、時間ですので、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

三ッ林委員長代理 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 お疲れさまです。民進党の初鹿明博です。

 済みません。ちょっと風邪声でお聞き苦しいかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。

 金曜日に質問をかなり残してしまいましたので、まずはその続きからさせていただきたいと思います。

 先ほど柚木議員からも、資料でお配りをしております、伊丹市で起こりました、面会交流の初日に父親が四歳の娘を殺し、そして自殺をするという事件、この件について、金曜日も質問させていただきましたが、その続きをさせていただきたいんです。

 まず、金曜日の質疑が終わった後、ちょっと吉田局長と立ち話で話をしていて、ほかの方の質問で出てきたことで、児童相談所への、面前DVが心理的虐待だということでの通報が急激に伸びている、これは警察からの通知があったことが影響しているんだというような雑談をさせていただいていて、やはり警察の方は、その通知があって、それでかなり、DVがあったらこれは虐待だということで児童相談所に通報するということがふえているんだということなんだと思います。

 では、一方、裁判所の方でそれがうまくいくのかというと、それぞれ裁判官は独立をして判断する立場であるから、最高裁で、面前DVは虐待だからというような通知を出しても、なかなかそれが浸透しているかどうかは難しい面もあるのかもしれないんですけれども、やはり先ほどの柚木議員のやりとりの答弁を聞いていても感じるのは、調停委員の方やまた最終的に審判を下す家裁の裁判官の方々がきちんと、虐待とはどういうものなのかということを認識しているかどうかで随分変わってくるんじゃないかと思います。

 この伊丹市の事件は、養育費の問題では、これは調停になっていたんですけれども、面会交流は自分たちで取り決めた、でも家裁の調停委員も入って、面会をしたりとかそういうこともやったりしていたということなんですよね。ですから、そのときに何らかのアドバイスがあったりしていたら少しは違っていたんじゃないかなというふうに思うんです。

 そこで、まず最高裁にお伺いしますけれども、やはり家裁の裁判官やまた調停委員などに、面前DVは子供にとってみれば心理的な虐待に当たるんだ、こういうことをしっかりと認識するような研修等を行うことが重要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、面前DVに関してでございますけれども、面会交流につきましては、民法七百六十六条で「子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」とされておりまして、面前DVがあるような事案でありますと、面会交流を認めることがかえって子の利益に反するという事案も、もちろんあろうかと思います。

 特に、子の面前におけるDVが行われたような事案について、そのようなDVによって子が精神的ダメージを受けて、その回復ができていないという場合など、DVを行った親と子を面会させることが子の利益に反するというふうに認められる場合には、家庭裁判所において、面会交流を行わない方向での審判や調停が行われることになるものというふうに、基本的には認識をしております。

 そういったところも含めまして、研修等で、裁判官同士あるいは職員同士の考え方を確かめ合っていくということは非常に重要なことかと思われますので、児童虐待の専門家、研究者の方、実務家の方なども研修にお呼びして御講演いただいたり意見交換をしたりということも含めまして、そういった考え方を確認していくということは、今までも行ってまいりましたが、これからも行ってまいりたいというふうに考えております。

初鹿委員 ぜひ、ここは徹底していただきたいと思います。

 きょうは、こちらに、「わが子に会えない」という、離婚をして子供を連れ去られて、子供たちと会えなくなっている、そういう親御さんたちの何人かの方の手記というか、インタビュー記事を載せた本を持ってきているんですが、この本を読んでいて共通するのは、最初の面会交流の取り決めで、ここで面会交流をきちんと約束できないともう子供と一生会えなくなるんじゃないか、そういう恐れを持っていて、そこですごく必死になっているように感じるんですね。

 ただ、子供の気持ちを考えると、そのとき子供は会いたくないと思っても、成長するにつれて気持ちは変わってくるんじゃないかと思います。これは、父親にとっても母親にとってもそうじゃないかと思うんですよ。

 お互いに、離婚で両方かっとなっているときには、会いたい、会わせたくない、この気持ちがぶつかり合ってなかなかおさまりがつかないわけですが、一回離れて何年間か暮らしていくうちに、子供も成長してくるし、親も成長してきて考え方が変わってくるということもあるんじゃないかと思います。また、面会交流をしていた子供も、一定年齢が来るともう会いたくないということになるかもしれないし、また逆の場合もあるし、会いたいと言っていた父親も、自分の家庭環境が変わって、再婚して別の子供ができたりすると、また会いたくないということになるかもしれないし、そこで、会いたくないから急にぽんと会わなくなるというのもやはり問題だと思いますしね。

 私は、やはり、取り決めをしても、一定期間たったらこれを見直しするような、そういうことをした方がいいんじゃないかと。特に、会わない、面会交流しないという取り決めをした場合でも、これは、何年後かにもう一回、会うか会わないかということ、面会交流をやるかやらないかということをやってもいいんじゃないかと思うんですね。

 ただ、その場合に、DVの被害に遭って逃げていった母親からすると、いつまでも加害者である元夫とかかわり続けなければならないということに対して非常に抵抗もあると思いますので、やはり大前提としては、父親が、本人が当時はDVを否定していたとしても、DVの更生プログラムとか、支援をするようなそういう団体とかにつながって、みずからの考えが変わっていって、それで、将来、何年後かに、そういう今までの自分をある程度見詰め直して冷静になって、話し合いができるようになっているということになれば、ここでもう一回話し合いをして面会交流をやり始めるということもあるんじゃないかと思うんですね。

 こういうように、一回決めたらそれっきりにするのではなくて、何年間かにもう一回見直しをするということを、仮に面会交流をしないという判断をしたとしても、できるような仕組みをつくっていただきたいと思いますが、最高裁、いかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 調停や審判の内容は、個別の事案における具体的な事情に基づいて決められるものでありますけれども、一般的なものとして申し上げますと、調停委員会あるいは裁判官の判断によって、子の利益の観点から、面会交流の内容を、例えば段階的に設定するというようなものもございまして、例えば、最初は手紙等の間接的な面会交流からスタートして、後に直接面会交流に進むというようなことを決める場合もございますし、それから、一定の事情が生じた場合には面会交流の内容等を見直すといった条項を設けることも、一般論としてはあり得るかなというふうには思われます。

 ただ、もっとも、一般的には、一度裁判所において当事者の合意あるいは裁判所の判断によって定められた事項については、事情の変更というのがない限りにおいては、これに沿って履行されるということが期待をされるところであります。

 加えて申し上げますと、面会交流に関する定めにつきましては、民法の七百六十六条三項におきまして、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、これを変更することができると定められておりますので、御指摘のような一定期間ごとの見直しといった条項が仮にない場合であっても、当事者において面会交流の定めを一旦定めたらそのとおり履行するということでは、必ずしも相当でないという事情が生じた場合には、その内容を変更することを求めて、改めて調停や審判の申し立てをすることもできるということになっております。

 こうした点からしますと、調停や審判の内容として、定期的に面会交流の内容等を見直す旨の条項を入れることが、常に適切というところまではなかなか言いにくいのかなというふうに思われます。

 今後も、当事者から事情を十分に聴取した上で、事案に応じて適切な面会交流の審理が行われるよう、各家裁の取り組みを支援してまいりたいと考えております。

初鹿委員 本人から申し入れがあれば取り決めを変えられるということなんですが、なかなか、本人から申し入れをすると言われても、一回、もう面会交流しないとなってしまうと、そこから言い出すのは難しいのかなということを感じるんですね。

 それと、今答弁で、事情の変更がない限りはそのまま履行するということでありましたけれども、子供は成長するんです。小学校に上がり、中学校に上がり、高校に上がり、そして大人になる。事情の変更が数年ごとに起こっているんです。これはもう明らかに事情の変更なんですよ。つまり、数年ごとに見直すべきものなんだというふうに私は思います。

 でも、そのことをきちんとやるためには、やはり、何らかの支援をするようなところにつながっていないと難しいんじゃないかと思うんですね。さすがに裁判所も、調停で決めた後までずっとその家族のことを見続けるわけにもいかないと思いますので、そこで、やはり私は、加害者である、加害者とされていると言った方がいいかもしれませんが、父親に対しては、きちんと、DVだということであれば、更生プログラムを受けるようにつなげていく、そういう仕組みを設ける必要があるんだと思います。

 皆さんのお手元にお配りした資料の二を見ていただきたいんですが、これは「わが子に会えない」という、会いたい父親が書いた手記なんですけれども、これを読みますと、この人は、奥さんの実家に婿養子で入っていました、そうしたら、その奥さんが子供を連れて実家から逃げてしまった、それで離婚の調停になった、そういう事案なんです。

 この人は、探偵事務所のアドバイスを受けて、自分はDVをしていない証拠集めをし始める。DV夫なんてぬれぎぬだと本気で思っていた。こんなことも言っているんですよ。妻側の弁護士をどんな手段を使ってでも陥れてやろう、個人的なスキャンダルでも何でも利用できるものを利用してやろう、何かそういうことが最近あったような気もしますが、何かそんなことまで言っているわけです。

 もう一枚、裏をめくってみると、右側のページの真ん中ぐらいに、実際に妻と子を殺しに行ったかもしれません、探偵ややくざに頼んだり、義母の車にGPSの発信機をこっそりつけて居場所を特定した上で実行しようと本気で考えていたと言うわけですよ。ところが、更生プログラムを受けたら、自分の考えがいかにゆがんでいるのか、連れ去られた直後は全く気づかなかったんです、そういうふうに答えているわけですね。

 また二の方に戻っていただきたいんですが、この本を書いているようなところに集まってくる、連れ去りの被害者たちの集会というところに出たときに、この人が、今言ったようなことを言うんですよ。相手側についた弁護士の個人的なスキャンダルでも何でも利用できるものを利用して闘っていかなきゃ、そう表明したら、出席者五十人以上が、そうだ、そうだと言って同意してくれたと。

 これに対して、更生プログラムを受けた後、この人はどういう感想を持ったかというと、あの場にいた父親たちの大部分が、私同様に妻や子供を力によって支配していたんでしょう、パワーコントロールですね、でも、それじゃ相手方にDVだと言われて会えなくなっても仕方がない部分がありますよね。こうやって考え方が改まっていくんです。

 恐らく、DVをしていて、そうじゃないと主張する方、特に、直接な暴力ではなくて、モラルハザード、モラハラと言われるような心理的な圧力をかけていることでDVという評価をされているような、認定をされているような方々は、なかなか受け入れがたい。でもそれは、実は相手方がどういう心理状態に陥っているのかということをきちんと、こういう更生プログラムを受けて理解をすることによって変わってくるんじゃないかというふうに思うんですね。

 三番目の、資料の二の最後を見ていただきたいんですけれども、その結果、この方はどういう判断をしたかというと、親同士が対立している中で、父親が会わせろと言い続けることが本当に子供のためになるのか、それは単なる親のエゴではないのか、調停で私の言い分が思い切り否定されて調停が終わるんであれば、それはそれで妻さんの気持ちが晴れるだろうしとか、そんなことを思ったからですと言って、調停を取り下げをしました。

 この方の発言が全てみんなに共通するとは思いませんけれども、私はやはり、DVの加害者となった方は、こういう更生プログラムを受けて、考え方を変えるきっかけをつくった方がいいのではないかと思います。仮に、こういうプログラムを受けないで再婚をしたり、またほかの女性とつき合ったりしたら、また同じことを繰り返すことになるんじゃないかと思いますので、そういうことを考えても、DVの加害者を更生プログラムにつなげる、そういう仕組みをきちんとつくる必要があると思いますが、いかがでしょうか。

堀内大臣政務官 児童相談所においては、いわゆる面前DVを含めて虐待を行った保護者に対し、児童虐待の再発を防止し、親子関係が安定して再構築されるよう、保護者指導プログラムなどを活用しながら指導を、実感しているところであります。

 子供を家庭復帰させるに当たりましては、子供の状況、そしてそれまでに行われた保護者指導の効果、保護者の現状、復帰する家庭の環境、地域における援助体制、機能などをしっかりと確認した上で、総合的に判断する必要があると考えており、一律に保護者指導プログラムの受講修了を家庭復帰の条件とすることにはなっておりませんが、しっかりとした家庭復帰のためのさまざまな指導をさきの通常国会で成立した児童福祉法等の改正法に盛り込ませていただいております。

 例えば、市町村の相談支援と要保護児童対策地域協議会の機能の強化、児童相談所の体制強化、専門性向上による保護者に対する継続的な指導などを実施したり、親子関係再構築プログラムのさらなる開発を含めた国の調査研究の推進をしたり、また施設入所等措置の解除後の関係機関による在宅支援、安全確認による再発の防止など、それらを総合的に実施して、保護者への指導、支援を強力に推進してまいりたいと思っております。

初鹿委員 政務官、質問をちゃんと聞いてください。

 今の答弁は、この後にする、一時保護を解除したときに、家庭に戻す前に、ちゃんと保護者支援のプログラムを受けさせた方がいいんじゃないかという質問に対する答弁ですので。私が言ったのは、DVの加害者にきちんと更生プログラムを行うようにつなげる仕組みをつくった方がいいんじゃないか、そういうことです。

堀内大臣政務官 済みません。実は、ただいま、先ほどいただいた資料の神保さんの記述についてちょっと読み込み過ぎておりまして、それで答えるべき諸事項を間違えて答えさせていただいてしまいました。

 児童相談所において、いわゆる面前DVを含め虐待を行った保護者に対しては、児童虐待の再発を防止し、親子関係が安定して再構築されるように、保護者指導プログラムを活用しながら指導を実施させていただいております。

 子供を家庭復帰させるに当たっては、子供の状況、それまでに行われた保護者指導の効果、保護者の現状、復帰する家庭の環境、地域における援助体制、機能などを十分と確認した上で……(初鹿委員「ちょっと、局長」と呼ぶ)申しわけありません。

吉田政府参考人 政務官の御答弁は、私、伺っていまして、全体をまず答弁されていますので、全然間違っていると思っておりませんが、きっと質問者からの御指示は、まず、政務官が答弁申し上げていることの前提として、基本的には、まず、今、DVの加害者の方に対しては、例えばそれが、お子さんがいれば面前DVということになりますので心理的虐待に当たるということでございましょうし、お子さんがいない場合であっても、先ほど来おっしゃっておられるように、DVということが及ぼす影響についてのいろいろな点をまず明確に伝えるということが必要でございます。

 また、私ども、これまでも児童相談所におきましては、お子さんのいる場合の虐待事例として、またお子さんがいない場合のDV事例としても、きちっと、加害の親の方、加害者である、大体男性が多いんですけれども、そういう方に対しては、今申し上げたように、加害者であるということをまず御理解いただくためのプログラム、そしてその後の更生プログラムというのを適用してございまして、その上で、先ほど来政務官が申し上げているような形につなげているというのが実態でございます。

初鹿委員 これは前回の積み残しの質問なので、きのう通告したのとは違いますからね。

 では、ちょっと話を別の視点にそらせまして、今、面前DVは子供にとっては虐待だということで、ここは共通認識を持っていると思うんですね。であるならば、DVで、例えばシェルターや婦人保護施設などに子供を連れて逃げていった場合に、母親に焦点を当てるとDVの被害者として逃げているんですが、一緒に行った子供に焦点を当てると虐待の被害者なんですね。こう考えると、被害に遭った、虐待の被害者である子供の居場所であるシェルターなり保護施設なりを、一時保護の先として一時保護委託をするということはできないんだろうかということを私は考えております。

 こういうことができるようになると、民間のシェルターはどこも財政的に厳しい中で、母親も支援しなきゃいけない、子供も支援しなきゃいけないという苦労をされていますので、子供に対するケアもきちんとできるようになっていくんじゃないかと思いますが、一時保護委託の先として、こういうDVで逃げてきた先を対象とすることはできないんだろうかということをお答えいただきたいと思います。

堀内大臣政務官 婦人相談所が一時保護を行うに当たりましては、被害者の状況、同伴する家族の有無などを勘案し、婦人相談所がみずから行うほか、婦人保護施設、母子生活支援施設、民間シェルター等、状況に応じ適切な一時保護委託先で保護することとしています。このうち、民間シェルターなどに母子ともに一時保護委託する場合については、子供に係る費用を加算して委託費を代弁させていただいております。

 例えば、こうしたケースでは、入所者に対し、食事や入浴、被服を提供したり、入所者が行政機関を訪問する際に同行したりするなどの適切な支援や、心理的ケアが必要な場合には、一時保護所の心理療法担当職員が委託先を訪問し、本人や同伴児童への支援を行うほか、同伴児童の保育や学習支援などを行っており、これら子供のケアに係る費用について加算させているところでもあります。

 なお、児童相談所による一時保護委託であれ、婦人相談所による一時保護委託であれ、いずれも実施主体は都道府県でありまして、児童相談所による一時保護委託という形をとらなくても、婦人相談所において適切に対応できるものと考えておりまして、しっかりとしたケアをさせていただいているつもりでございます。

初鹿委員 問題は、きちんと児童相談所がかかわりを持っているかどうかなんだというふうに思います。明らかに子供に対しても暴力を振るっているような場合だったら、恐らく今のような対応になっているんじゃないかと思いますが、そうじゃない、単純にDVだという認定だけで、子供に対して手を上げていない場合だと、必ずしもそうはなっていないんじゃないかと思うんですね。私は、そうであっても、やはり児童相談所もかかわって子供のケアを進めていくことが必要じゃないかという意味でそういう指摘をさせていただきましたので、そういう面では、婦人相談所にDVだといって相談に来たら、児童相談所にもつないでいくという仕組みをつくっていただきたいと思います。

 それでは、資料の七を見てください。

 過去、虐待死した事例で、児相がかかわりを持ったことがあったのに死に至った件数というものを厚生労働省に集計していただいて、出してもらいました。

 皆さん、これを見て、どう思いますか。

 大体、心中以外の虐待死だと三割ぐらいなんですよ。心中だと一五%ぐらいですね。過去三年足してみると、二十四、二十五、二十六年の三年足すと、百二十八件、心中以外の虐待死があるんですが、そのうち、児相のかかわりがあったのが三十九件。また、このうち、一時保護の経験があったものも十二件あるんですよ。

 誰もが、虐待、これはなくしていきたい、特に虐待死はなくしていきたい、この場にいる方皆さん思っていると思います。そうであるのに、児童相談所がかかわりを持ちながら命を落としている子供たちがこれだけいるということ、私は、改めて数字を見て、ショックでした。そして、政治の世界にいて、これまで虐待をなくさなければいけないだ何だ言ってきたことを、やはり不明を恥じなければいけないなというふうに思いました。本気で取り組まなきゃいけないと思うんですよ。

 大臣、この数字を見て、率直にどう思いましたか。御感想をお願いいたします。

塩崎国務大臣 児童相談所がかかわりを持っていながら死亡に至る例がこれだけある、こういう数字を今お配りいただいているわけであります。

 これは、先ほど阿部先生との議論の中でも出ていたように、児相の方々がもう本当にいっぱいいっぱいで、フォローが十分行き届かないままに在宅に戻すというケースがたくさんあって、おまけに十万件を超えたと言っている、児童虐待対応件数ですから、対応できていないのがたくさん、それ以外にあるわけですね。そういうように、やはり起きていることに対する人員的な対応のキャパを超えているのではないかというのはもう前から感じておりまして、先ほども申し上げているように、燃え尽き症候群のように、もう必死になって次から次へ虐待対応して、措置で施設に入れたら、その後フォローをすることも本当はやらなきゃいけないけれども、もう次の子供が待っていますから、そちらに行っちゃって。

 だから、そういう施設に入れないで家庭に戻した中でいろいろな問題が起きる、その際の手当てとして今回、まあ、在宅措置と我々は呼びたいと僕はずっと言っているんですが、在宅だけれども児相が措置をするようにして、そこを、支援は市町村がやる、しかしその後ろ盾は、裁判所が勧告をしていただく、こういう守りで、市町村でもっときめ細かくやるためにやっていかないと、児相だけで関与しているから全部大丈夫であるべきだといっても、あるべきなんですが、それで済ませるだけの簡単な話ではないというふうに私は思っています。

 ですから、こういうことは非常に残念な状態で、反省しないといけないと思いますが、ただ、これで予算をつければいいかといっても、やはり人材もまた育てないといけない、そういうこともありますので、ですから、私どもとしては、まず、一人一人、かかわる人たちの専門性を上げて、そして児相も、中核市、二十三区、こういったところにもぜひつくってもらって、そして全体の今ある児相が、手が少し、丁寧に対応するように、可能になるような、そういう状況を早くつくっていかないといけないんじゃないか。

 当然、これは、政府が支援をするというのは、財政的にも、それから人員、人の面でもしっかり手当てをしないといけないので、横須賀にしても金沢にしても、非常に御苦労されながら中核市で頑張っていますから、そういうような対応をいろいろなところでできるようにすることで、こういうような残念なケースが少なくなるようにしていかなきゃいけないというふうに思います。

初鹿委員 私は、もう大臣がおっしゃるとおり、人が足りないというのもあるし、在宅の支援をどうやってきちんとやっていくかということもあると思うんですが、まず、これは誤解をされるのを承知で言いますけれども、批判されるのを承知で言いますけれども、今まで、親子再統合をするということを前提に進めてきていたと思います。だから一時保護も、延長という形なんですが、私は、むしろ、親子分離をきちんと徹底的にやることを進めた方が、児相の職員にもいいし、子供の利益にもかなうんじゃないかというふうに思うんです。今は、明らかに微妙な場合でも戻しているんじゃないかと思うんですね。

 資料の八を見ていただきたいんですが、一時保護を解除した後の子供の行き先の、帰宅というところを見ていただきたいんですが、五三・八%、半分、帰宅なんですよ。では、このうち虐待を受けている人はどうなのかということを聞いたら、虐待を受けている場合でも九千四百七十六件で、虐待を受けている子供の場合でも五三%台と、ほぼ同じなんですね。つまり、虐待があっても結局、戻している。

 そこで先ほどの答弁になるんですが、先ほど答えていただいたので省きますけれども、私は、家に戻すというのを慎重にするべきだというふうに思います。

 そこで、ちょっときょう御紹介したいのが、この本なんですけれども、「「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち」という、石井光太さんというノンフィクションライターが書いた本です。先日、我が党の部門会議に来ていただいて、ヒアリングを行いました。この書いてある、三つの事件が書いてあるんですが、新聞記事を載せさせていただきました。

 一つは、厚木で起こったんですが、子供が衰弱して死んでいたのに七年間発覚しなかった、これで、居所不明児という問題が世の中にクローズアップされた事件です。そしてもう一つは、下田で、天井裏と押し入れに子供を二人、死体を入れたままにしていて、発覚をしたという事件。そしてもう一つは、足立区の事件ですが、三歳の次男をウサギ小屋のケージの中に入れて、そして衰弱死をさせたという事件。

 どの事件を見ても、とんでもない親だ、そういうふうに皆さんは思うと思います。しかし、石井光太さんはこう言っているんです。どの親も、口をそろえて、子供のことを本当に愛していた、宝だと思っていた。では、宝なのに何でウサギのケージにつなぐのか。ウサギを飼っている方はウサギをかわいいと思いますよね。宝物のようにかわいがっていると思います。でも、いろいろなところでふんをしたら困るから、ケージの中に入れます。かわいがっているんですよ、その人も。それと同じ感覚なんだということです。我々普通の人とは価値観が全然違う、そういう方、そういう人が親になってしまっている。そこの親たちの考え方を変えるというのはなかなか容易じゃない。

 そして、どうしてそういう考えに至ったかというと、やはり生育環境に依存しているところが大きいわけですね。

 よく、虐待の連鎖をなくさなければいけないとか、貧困の連鎖をなくさなければいけないということを我々は言うんですけれども、本気で今までそういうことをやってこられたのかというのは、私はこの本を見て改めて反省しました。

 まず、厚木のケース。

 父親は、児童養護施設の出身です。母親が、小学校六年生のときに、重度の精神障害、精神疾患に罹患をして、自分に火をつけて入院をしたこともあります。父親は、仕事が忙しいということでほとんど家に帰ってこないし、母親のフォローもしない。そういう中で、自分の弟たちを守るために、その父親が頑張っていた。

 母親は、老舗の旅館のお嬢さんです。この旅館の、その母親にとってのおじいさんはかなり奔放な人で、奥さんに二人の子供がいて、仲居さんにも子供がいた、そういう人がおじいさんで、そこの次男の子供なんですけれども、母親がスパルタ教育で、そのスパルタ教育に応えられなかった母ということで、もう高校生のころから学校に行かなくなり、この父親と知り合う、そういう家庭環境です。

 もう一人、下田の事件。

 まず、下田の事件の母親は、高校二年のときに最初の妊娠が発覚するんですが、十年間で八回妊娠をしております。生きている子供は三人だけです。この母親の祖母は七人のシングルマザー、貧困状態、ひどかったそうです。そして、祖母の子供、つまり、母親の母親は、当時五十一歳。まず、最初のお父さんに三人の子供ができます。別れて、この母親が中学二年のときに二人の子供ができます。そういう中で、自分が妊娠をして、なかなか言い出せないということで、結局、産むことになるということなんですが、この母親も大変な方です。かなり奔放でした。

 この子供の母親はどうしていたかというと、子供ができて、おばのうちに身を寄せるんですが、おばさんにはフリーターの成人した息子がいました。そういう中ですから、経済的な負担をかけられないということで、ほとんど児童手当等のお金はそのおばさんにとられていた。そういう環境の中で育って、二人の子供を殺すことになりました。

 足立の事件です。

 足立の事件は、まず、父親は、児童養護施設の出身ですね。この父親の母親も、五人の子供をつくっていて、その五人全員、児童養護施設に預けております。風俗で働いております。そして、児童養護施設ではモンスターと呼ばれるような大変な母親でした。

 そして、母親の方はどうかというと、母親の方のその親も、ホストに入れ上げている母親で、子供を何人もつくっております。父親が逮捕されたこともありました。母親が連れていったホストクラブで、このケージに閉じ込める旦那と知り合って結婚をするということなんですね。

 何が言いたいかというと、相当にそれぞれの生育歴がひどいんですね。そして、子供ができて家庭を持った後も、親に相当振り回されて生きているんです。要は、子供にとってみれば、祖父母にですね。ですので、児童相談所が一時保護をして、解除をする、また、その後どういう処遇にするかということを考えるときに、親だけを見るのではなくて、その親の親や、さらにその親、祖父母まで含めて、どういう生育環境だったということまでしっかり見きわめないといけないんじゃないかと思うんですよ。

 例えば、親戚のおばさんがいるから、また、母親がいて子供の面倒を見てくれるから大丈夫だろうと思って帰したら、その母親の方がとんでもなくて、子供の児童手当や児童扶養手当を当てにして生活をするようになっている。まさに、下田の事件のおばさんはそうなんですよ。そういうことがあったら、さらに虐待の根は深くなってしまうと思いますので。

 ですので、これから、こういう非常に複雑な問題を抱えている場合は、親だけじゃなくて、その親や祖父母のそういう状況まできちんと把握をした上で、別居しているか同居しているかに限らずですね、一時保護の延長をするのか、それともそれ以外の対応になるのかということも考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員いろいろとお述べいただいた個別の案件あるいは全体のコメントについては、私はちょっとここにおいてコメントを差し控えさせていただきたいというふうに思いますが、御指摘いただきました最後のところ、つまり、児童相談所がいろいろと今後、子供のために、そのあるべき措置を考える際に、祖父母の方々など広く親族の方々の状況をも視野に入れて判断すべきではないかという御指摘の部分に限って御答弁申し上げれば、私ども、児童相談所の現場の実務におきまして、そういうお子さんの家庭復帰をいろいろ考える際には、私ども国からも示しておりますチェックリストというのがございまして、それまでに行われた保護者の指導の効果でありますとか、お子さんの意思、保護者の現状、あるいは復帰する家庭の環境ということを確認して、客観的また総合的に判断することにしてございます。

 そのチェックリストの中における保護者という中には、私ども、直接の親御さんだけではなく、祖父母の方など、お子さんを取り巻く親族の方の関係についてもチェックをさせていただいているということでございますので、そういうことを含めて、現場において、お子さんを中心に、何がいいのかということを客観的、総合的に判断できるように、これからも取り組ませていただきたいと思います。

初鹿委員 済みません。時間がなくなってきたんですが、文科省の白間審議官に来ていただいたので、最後に文科省に質問いたします。

 この下田の事件、高校二年生で妊娠しちゃったんですよ。このとき、高校の教師からこう言われているんです。出産すれば学校は休まなければならないし、赤ちゃんの世話だってどうするつもりだ、ひとまず高校を中退しなさい、そして余裕ができたら改めて高校の定時制に編入すればいいと。

 妊娠をしたことによって退学をさせられる、そういうことが多く起こっているということが言われております。韓国では、妊娠によって退学させることは、人権委員会が、これは人権侵害だ、学習権の侵害だということで勧告をして、それをやらないということになったということであります。文科省が調べたところだと、校則でそうなっているところはないということなんですが、実際には自主退学を促して、そしてデータで上がってくるのは、妊娠したからではなくて、進路の変更だとか経済的な理由だとかということで、隠されてしまっているんですよ。

 そこで、お願いですけれども、まず、こういう妊娠したことによって自主退学をさせられている、そういう実態をぜひ調べていただきたいと思います。そして、その上で、各高校に対して、妊娠したからやめさせるということではなくて、学業を継続できるような方法を関係者としっかり話し合って、そしてきちんと学業を継続できるように支える体制をつくってもらいたいと思うんです。

 貧困の連鎖はいけないだとかそういうことを言いながら、高校を中退して、仮に相手が結婚してくれればまだいいかもしれないけれども、ぽんと放り出されてシングルマザーになった母親がその後どういう人生を送っていくかなんというのは、おおよそ予想がついてしまうわけですよ。本当に必死で頑張ってはい上がってこられる人、またはもともと家が豊かだったという人は何とかなるかもしれないけれども、より深刻になっていくのは明らかなわけですから、ぜひ、妊娠中退の問題、これはやらせないようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

白間政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のありましたように、私ども文部科学省としても、学校において、女子生徒が妊娠した場合に、関係者間で十分に話し合って、そして母体の保護を最優先としつつも教育上必要な配慮を行うべきである、このように考えております。

 この旨を、私どもも教育委員会に対して、こういった教育的配慮を行うようにということでこれまで周知をしているところでございますけれども、さらに、今後、こういった学校における対応状況、または退学に係る支援の内容、こういったこともヒアリング等を通して実態を踏まえまして、さらにこういった指導を徹底してまいりたいと思っております。

初鹿委員 ぜひ通知を出していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 かなり質問を残してしまいましたが、これで終わらせていただきます。ありがとうございます。

丹羽委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本です。

 前回に引き続いて質問をさせていただこうと思います。

 きょうは、ほかの同僚議員もいろいろ取り上げておりましたけれども、確認をしておきたいのは、今回の法改正の一つの目玉である、いわゆる虐待を受けている児童等の保護者に対する指導に司法が関与することが果たしてどういう効果を生むのか、そして、もちろん、仕組みがどうなっているのかということについて、事実関係も確認をしていきたいと思います。

 その前に、家庭裁判所にこうした新たな役割を担っていただく、その前線に立つのは調査官だと思います。この調査官の方が今どんな働き方をしているんですかという話を、きのう、少し長い時間、教えていただきました。

 話を聞いていると、基本的に休日出勤や緊急時の対応といったようなことはない、こういうお話も聞いていますし、また、先ほど阿部委員が質問されましたように、人員について今足りていないという認識を持っていない、こういうような話を伺いましたが、これは事実ということでいいですか。端的に、事実かどうかだけ、お答えください。

村田最高裁判所長官代理者 休日出勤ですとか夜間遅くまで業務をしてということが常態化しているようなことはないというふうに考えております。増員につきましても、御指摘のとおりでございます。

岡本(充)委員 実際どうなんでしょう。残業時間等はどんな程度になっているのか。休日出勤というのは余りないということですけれども、そういったことは最高裁としては当然把握をしている、そういったことでよろしいですか。どの程度であるのか、お答えいただきたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 なかなか数字でつまびらかにするのは難しいところがございますけれども、基本的に、確かに調査官は、裁判所において当事者と面接するほか、家庭を訪問したり、関係機関を訪れたりして調査をするというようなこともございます。それであっても、就業時間内に調査を終了できるよう事前に開始時刻を調整したりするというようなことで、基本的には夜間ですとか休日に調査を行う必要がないように行っているものと認識をしております。

 もちろん、面接のほかに、報告書をまとめたり、審判、調停に立ち会うといったようなこともございますので、そういう業務が重なった場合あるいは緊急を要する事件を担当した場合には、一時的に就業時間を超えるということもあり得るとは認識しておりますけれども、これが常態化するようなことがないように、必要に応じて他の家裁調査官と事務を分担するというようなことは、これは当たり前にやっておるところでございますので、これまでも事件動向等に応じて各所に適切に人員を配置しているところでもございますので、一部の家裁調査官の負担が過重になっているというようなことはないと認識しております。

岡本(充)委員 当然、家裁の調査官は、時間管理をされて働く一般職の公務員、こういう理解でよろしいですよね。そうですね。うなずかれています。

 それで、ちょっとイメージとして、今のは一ページ目じゃないです、二ページ目の話ですけれども、例えば、親権者等の意に反して二カ月を超えて一時保護を行う場合には家庭裁判所の承認を得なければならない、こういう改正案になっています。

 例えば、これをイメージとして考えると、一時保護をして、いきなり二カ月を想定して家裁に承認をもらいに行くというイメージじゃないと思うんですよね。大体どの段階、つまり、想定をされるのは、どのくらいの段階で家裁に承認を求めに行くのか。一カ月がたったぐらいか、もう本当に最後の一週間ぐらいなのか、どんなイメージを政府側では想定していますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 一時保護の機能といたしましては、お子さんを緊急一時的に安全を確保するという場合と、そのお子さんをアセスメントするという機能が大きくあります。

 その中で、それぞれの事案によって、安全を確保するという意味では、その先がどうなるか、なぜ長期になるかという御質問をいただいたときにも申し上げましたが、その先の受け皿ですとか、その事案により、また、アセスメントという機能においては、そのお子さんがどういう問題を抱えておられるかということによって、一時保護を決定した時点において、どれぐらいの期間がその時点において必要かということ、あるいは、一時保護を続けている中で、まだまだ安全保護についてはもう少し必要だ、あるいはアセスメントにはもう少し必要だというのが、個々見えてくるかと思います。

 そのような現場においては、実務を意識しながら、二カ月というのが先に見えますので、そこから逆算をして、これは二カ月を超えるかなというのがある程度明らかになったときには申請の準備をするということもありましょうし、ある程度、いけるという言い方がいいのか、二カ月以内で終わると思ってきたけれども、最後、残念ながらというような場合には、ばたばたっとその期限内において必要な書類申請を行うということ、いろいろあろうかと思いますので、それについては、これから、事案それぞれフォローをしてまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 まさに、そのぱたぱたっと用意しなきゃいけないということが想定されるんです。

 家庭裁判所というのは、これまでいろいろな審判で、こういう、時間に制約を持って、局長はぱたぱたっとという表現をされましたけれども、申請をしてきたものを、この二カ月を法文上若干超えてもいいことにはなっていますけれども、やはりこれは早急に判断を下す、こういう審判のやり方は、これまでやってこなかったんじゃないんですか。やはり、じっくり時間をかけて、そして話を聞いて、こういうようなイメージなんじゃないんでしょうか。

 他の審判等で、このような時間制約を課しているものはありますか。

村田最高裁判所長官代理者 明確な時間の制約が法令等で定まっているものがあるかというのは、今ちょっと手元に資料がございませんので詳細なお答えはできかねますが、ただ、事件類型の中には仮処分のような形で、家事事件におきましても仮の処分を定めるようなものがございまして、これは最終的な審判の判断の前に、急いで、とりあえずの措置をとらなければいけない、こういう事件類型、一定のものが家事事件手続法上もございます。こういったものについては、一週間、あるいは、例えば急ぐものでいえば本当に三日、そういったところで判断に至っているというようなケースも実際上多々あるというふうに認識しております。

岡本(充)委員 今回、こうした仕組みを導入するのに、同様に、本当に急いでやらなきゃいけないという話になる場合に、先ほどの話です、家裁の調査官は本当に親の話を聞きに行けるのか。親の話を聞かずして、一時保護を親の意に反して行うということはなかなか決めづらいと思うんですね。

 例えば、親が、今週だけは大変忙しい、来週であれば、もしくは、今月は決算だから決算月だけ超えてくれれば、私の意見を言いたいけれども言えないんだといったときに、土日に来てくれ、夜に来てくれという対応をせざるを得なくなるんじゃないかと思うんですね。

 そういった意味で、先ほどの、仮に何らかの決定をしましょうというときに、それぞれ当事者の協力が得やすい環境と、今の話で、意見が対立しているものの場合には、必ずしもそうでない場合もあると思います。したがって、先ほどの話、家裁の調査官が緊急的に土日、夜に聴取に行かざるを得ない、こういうケースが出てくるのではないかということもありますから、やはり運用を見ながら、家裁の調査官の過度な負担にならないような運用をしていく努力をする必要があると思いますので、その点は指摘をし、対応を求めたいと思います。局長、いかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 この新しい制度が検討されておりますところの引き続いての一時保護は、委員御指摘のとおり、一時保護が二カ月を超えて行われるたびごとに申し立てられるものですので、一層迅速に審理が行われる必要があるというふうには考えております。

 ただ、保護者の陳述の聴取に関しましては、同様のような家事事件手続法、あるいはその他の法令でも、陳述を聞かなければいけないとされているものについては、解釈上、陳述の機会を与えればよいというふうに理解されているのが一般的かと思いますので、一定の期日を定めて、陳述を聞くための日について呼び出しをしたけれども、結果的には出頭がされなかったという場合には、そういった事情も踏まえた判断がされるものというように考えております。

 なお、その家裁調査官の体制、業務負担ということに関しましては、新しい制度ができました際には、事件動向も踏まえて、過重な負担にならないような十分な体制がとれているかということについては常に注視をして、必要な体制をとっていきたいと考えております。

岡本(充)委員 期日を設定したから、その日に来なかったから、では、まあ聞かずに、親の意に反する判断をしましょうと。いや、向こうはこの日ならと言っている話だったら、やはりそこは家庭裁判所の特徴として、それはできるだけ聞きに行こうという姿勢が僕は望まれると思いますよ。そうでなければ、今からお話をする家裁の勧告が、まさに当事者、保護者からすれば、事務的に見えるだけの話になってくるんじゃないかと思うんですね。

 それで、一ページ目に戻りますけれども、では今回のスキーム、二十八条の措置の承認の審判申し立てを児童相談所がします。家庭裁判所がそれを受けて、保護者の指導について勧告をする。勧告というのは、どんなイメージなんでしょうか。具体的に、保護者の指導に資するような勧告というのはどのようなものが想定をされるのか、お答えをいただきたいと思います。

吉田政府参考人 裁判所サイドにおける勧告の内容でございますので、必要に応じて最高裁判所の方からお答えいただくのかと思いますが、私どもとしては、この勧告、事案によって、非常に幅の大きい、つまり非常に抽象的な勧告である場合や、個々具体的な保護者に対する指導というものが出るような場合、それぞれ幅のあるものだと思います。

 私ども、児童相談所、子供の福祉を考える立場から申し上げると、ここでいただく勧告が、次に実際の保護者指導、在宅におけるお子さんの適切な養育につながるという意味では、できるだけ具体的に勧告をいただくということが現場においては望ましいというふうに思っておりますので、それにつながるためには、勧告が具体的にいただけるように、そこの承認を申請するに当たっての、児童相談所から、上申書のような形で、いろいろなケースをなるべく正しく、細かく、細かくといいましょうか、具体的に御報告を申し上げて、家庭裁判所のいただく御判断、勧告に資するように協力する必要がある、そのような形で、児童相談所サイドについても、これから取り組むよう考えてまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 それで、報告が行きます。その場合、では、想定としては、これは、家庭裁判所は再度勧告することがあり得る、ぐるぐる回ることがあり得るのか。報告を受けて、また再勧告、そしてさらにもう一回報告を受けて、また再勧告、こういうようなことも想定をこの法律はしているのか、お答えいただきたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 新しい制度ができた場合に、運用する立場からの考えとして御答弁させていただきますが、審判前の勧告は、養育環境の改善が見込めないと言えるかどうかが家庭裁判所の判断の分かれ目となるような事案について、養育態度の改善に向けた指導を行うように勧告するというふうに理解をしておりますので、そうしますと、通常は、勧告に基づく指導措置の結果を踏まえて、施設入所等を承認するかどうかということが判断されるというふうに考えられます。したがって、基本的な想定としては、勧告は一度というふうに考えられるかと思います。

 もっとも、一度の勧告による指導措置では十分には改善が見られなかったという事案においても、異なる観点からのまた改めての勧告等によりまして、養育環境の改善がなお見込まれるというふうに考えられる事案の場合には、再度の勧告をすることも否定はされないというふうに認識をしております。

 効果的な指導措置の勧告をするためには、先ほど厚生労働省からも御答弁ございましたけれども、児童相談所から十分必要な資料が提出されるということが重要と認識をしておりますので、その資料を踏まえまして、保護者の陳述の聴取等も行った上で、家庭裁判所で勧告の適否を適切に判断していくことになろうかと考えております。

岡本(充)委員 そうしまして、では、今、勧告、報告が行くこの流れの中で、保護者のもとには勧告した旨を通知するというたてつけになっています。

 この通知というのは、勧告をしたという事実だけを通知するのか、勧告の内容、場合によっては、児童相談所とのやりとりなども含めた、より詳細なものが保護者に行くことになるのか、それはどのようなイメージを想定されていますか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 通知の方法及び内容は、個別の裁判所において判断されるべき事項ではございますが、一般的なイメージで申し上げますと、書面で都道府県等に対して勧告を行った事実と、それに加えて、勧告の内容そのものを通知する方法が想定されるかと思っております。

 また、事案に応じて、書面でそういった通知をするほかにも、裁判所で行われる審問期日において保護者においでいただいて、裁判所から保護者に書面での通知とあわせて口頭でお伝えするということも考えられるかと思っております。

岡本(充)委員 その際には、あくまで伝えるだけであり、家庭裁判所から何らかの指導がある、こういうことではないという理解ですね。

村田最高裁判所長官代理者 法律上求められておる通知としては、勧告を行った旨とその内容をお伝えするということになろうかと思いますが、先ほど申し上げたような、審問期日においでいただいてということであれば、どうしてそういうことになるかという経過につきましては、事実をお尋ねするという中で、場合によっては、一定の働きかけがあるということもあろうかと思います。

岡本(充)委員 もう一つ重要なのは、こういうスキームを新しくつくりました、内容、解釈を今ここで明らかにしてもらいました、これを恐らく裁判官の皆さんは読まれて、こういう解釈でやるんだなということで、個々の裁判体で判断をする、こういう話でありましょうけれども、これは結局、自分が出した勧告が最終的にどういう効果をもたらしたかということを裁判官が後から追う仕組みはありませんよね。ないですよね、そこの確認。

村田最高裁判所長官代理者 勧告の結果については、これは報告を受けて、それを判断の材料として審判をさせていただくことになっておりますので、勧告の結果がどうなったかというのは、そういう形で把握をすることになろうかと思います。

岡本(充)委員 いや、違うんですよ。これは結局、家庭裁判所の勧告のもとで、引き続き保護者指導が続くんです、審判が終わった後も。ところが、審判で終わりなんですよ、家庭裁判所の関与が。

 したがって、その後、その勧告のもとで保護者指導は続くと厚生労働省は想定しているわけです。にもかかわらず、そこの勧告がどういう効果を生んだのか、もしくは、どういう点をより勧告に生かしていくべきか、つまり、追っていくツールがないんじゃないか。

 例えば、その一つとして、家庭裁判所の審判で、いわゆる二十八条の措置の承認の件数が、割合が少なくなってきました、却下することが多くなりましたというのは、一つの、勧告を受けた結果での反映だと思います。

 裁判所としては、基本的に、きのうも大分議論しましたけれども、私も疎いものですから、裁判所の仕組みはそういう仕組みかと改めて思ったんですけれども、裁判が終わってしまえばそれまでよ、要するに、審判してしまえばそれまでよ、そこから先は、私たち、調べるツールもありませんし、調べるものでもない、そういう介入をするつもりもないというようなことを言われると、結局、自分たちが出した勧告が、そのもとでずっとこれからも保護者指導が続くということを想定している厚生労働省、そしてまた、これから我々が立法者の意思として示す中で、裁判所はそこでおしまいですよ、審判を出したら、はい終了、これはやはりどうかということも含めて、何ができるかをお考えいただきながら、やはりフォローアップをしていく、調査統計をとっていく、そういう必要もあるんじゃないかと思います。

 どういうことができるかを含めて、せめて検討するぐらいのことは最高裁からもお答えいただけるものか、聞きたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、事件として判断をすることによって終わってしまった場合には、その後、さらに裁判所として、その個別の事件をフォローしていくというのは、これはなかなか仕組み的に難しいところがあろうかと思っております。

 他方、委員御指摘の、統計といった観点からしますと、これまでも二十八条審判につきましては、どういう終局結果に終わったかということも含めまして統計を取得しておりますところ、この法案が成立した場合には、引き続き必要な統計の取得に努めるとともに、その結果、裁判所でとれる統計と、それから、関係省庁においていろいろ調査研究されるところもあろうかと思いますので、必要に応じて、そういった調査研究に協力するなどの形で検討してまいりたいというふうに考えます。

岡本(充)委員 家庭裁判所の審判は公開じゃないから、やはりなかなか、学術団体、例えば大学の先生が個別に調べるといっても限界がありますよ。したがって、やはりそれができるのは、勧告の内容、そしてその報告を受けてどうなったかということを知り得る立場にあるのは、当事者と、そして家庭裁判所、もしくは児相、こういった関係者に限られるわけですから、厚生労働省ともよく相談をしながら、やはりどういう勧告のあり方がより効果的だったかということについては、これからも検討を重ねていってもらいたいというふうに思います。

 さて、その上で、大臣、お待たせしました。笑われていますけれども、何を聞くかはもうおわかりだと思いますが、私、午前中の質疑を聞いていて、ああ、そうかと思って、きょう、追加で法務省に急に来てもらいました。もう一回確認したいんです。

 熊本の赤ちゃんポストで行われている乳幼児の保護というのは、親の側から見ると、保護責任者としての責任の放棄に当たり、場合によっては遺棄に当たり、また、民法上の親が子供を監護する義務に反する、そうした行為に当たり得る、こういう見解だということを午前中答弁された、そういうことでよろしいんでしょうか。

金子政府参考人 私の方から民事の責任について午前中も御答弁申し上げましたので、もう一度御説明いたします。

 子の親、法律上の親、親権者は、子を監護、教育する義務を負っています。赤ちゃんポストに預けるということをもってこの義務を履行したことになるのかというと、これはそうとは言い切れないという趣旨で申し上げたものです。みずから監護する義務という法的な義務、身分上の法律関係に基づいて民法上規定している義務を果たしたことにはならないのではないかという趣旨で申し上げたものでございます。

加藤政府参考人 刑事局でございますが、午前中は答弁の機会がございませんでしたので、改めてお答えを申し上げます。

 刑法の二百十八条に定めております保護責任者遺棄罪というのは、幼年者を保護する責任のある者が、その者を遺棄した場合などに成立をいたします。

 「こうのとりのゆりかご」については、その具体的な仕組みや実際の運用については詳細に把握しておりませんので、あくまで一般論として申し上げるものでございますが、およそ、その生命身体に危険を生じさせるおそれがないといった措置がとられている場合には、保護責任者遺棄罪の成立は認められにくいのではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、具体的な犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき、個別に判断されるべき事柄でございますので、これ以上のお答えは差し控えさせていただきます。

岡本(充)委員 民法上は監護の義務を果たしたことにならない可能性が否定できないという話でした。

 では、赤ちゃんポストを設置している病院は、教唆とは言いませんけれども、その共犯みたいな話になるんですか。そういうことですか。要するに、民法上の違法行為に対して加担をしている、こういう理解でいいんですか。

金子政府参考人 監護、養育する義務を負っている親が赤ちゃんポストに預けることが法的に許されるのかどうかということで、それは許されないと言ったところで問題は解決しないというのはそのとおりなんですが、しかし、この一連の問題の出発点は、そうはできない親をどうするのかということから出発しているのであって、赤ちゃんポストに預ければ義務は果たしている、それでいいんだというわけではないというのが出発点だと私は理解しておりました。

 それから、しかし、どうにもならない方のために病院がこういう施設を設けたということが、何か悪いことに加担しているんじゃないかという評価は、これはまた別の問題ではないかというふうに私は思います。

岡本(充)委員 いや、それは論理がおかしいよ。だって、先ほどは、疑いが残る、要するに親の監護の義務を果たしていない疑いが残るんだと言っているわけですから、それは違法行為ですよ。違法行為に対して教唆、もしくは唆してはいないかもしれないけれども、共同正犯になるかどうかは別として、これは何らかやはりその違法行為に関与しているわけですから、そうしたら、これは法律違反の疑いがある。いや、これははっきりさせないと、こうした事業をやっている人たちがやはり萎縮する話になるよ。

 もし、本当にそうだとするならば、これは立法措置が必要になると思いますよ。もう一回、ちょっと整理をして、御答弁いただきたいと思います。

金子政府参考人 何といいますか、場面にもよるかもしれませんが、他方で命を救うという面があるわけですよね。親の方は、これしか手段がないという状況なのかどうかということにもよるかもしれませんが、一般的に言えば、自分の例えば身分を明かさない、あるいは預けられた施設の側から自分の方に連絡するすべもないというような形で、ある種、育児放棄のような形をすることが、それが法律上許されたというものだということは、申し上げることは非常にちゅうちょを覚えるわけであります。

 他方、そういうぎりぎりの状況の場合に、命を守りたいという趣旨で施設を設置している側に何か責任が問えるかというと、これは別個の配慮になるんじゃないかということだと思います。必ずしも、それで責任を問われるとか加担したという評価は当たらないのではないかというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、それはやはり整理してもらわなきゃいけない。違法行為をしていることに対して、それに対して、その施設がなければその違法行為が行われないわけですから。したがって、であれば、そこは、その行為に対して加担をしているという評価になるんじゃないか。

 これは、次回またちょっと確認しますが、しっかり整理してほしいし、大臣、もう時間がなくなりましたから、私、もう少し一般質問か何かのときにこれを議論したいと思いますけれども、大臣がこの赤ちゃんポストに否定的だということはわかりました。

 私は、万やむを得ない方がやはりいるんじゃないかという意味の中で、こうした取り組みが、匿名性がいいのかどうかというのは議論があると思います、それは確かに。したがって、匿名性を排除した形でこうした施設を運営するなり、もしくは工夫をした上で、こうした困っている女性の皆さん方に救いの場をつくるということをしていくことは、あり得る政策判断じゃないかと思っています。

 十年たってもこの判断をしてこなかった厚生労働省でありますが、そろそろ、どういう仕組みがいいのか。今のこの赤ちゃんポストのやり方に対して大臣が否定的だというのはわかったけれども、どこかを修正すれば、これは全国展開するべき、ある意味の、一種のサービスになり得るんじゃないかという観点で、これは大臣、少し考える余地はあるんじゃないですか。一概にばさっと捨てる話じゃないんじゃないかと思うんです。

 最後に、そこの、検討の余地があるのかどうか。検討の余地もないというぐらいだったら、もう一回また、それはそれでまた話をさせてもらいます。

塩崎国務大臣 否定的というふうに言っていただきましたが、私は別に、これを、存在を否定して、やめるべきだと言っているわけでは全くなくて、先ほど申し上げたように、これがなければ失われる命があるということも事実でありますから、そういう意味で、私は、やめるべきだということを言っているわけでは全くなく、このことによって助かる命があるというポジティブな評価ももちろんしているわけであります。

 ただ、今回、今御議論いただいている、去年の改正をされた児童福祉法では、第一条に子供が権利の主体として書かれており、健全な育成を受ける権利があるという主体としての子供に対して、親が監護の義務を負っていながら、ここで置いていくことが、本当に、では、その監護を、虐待の定義を見ると、これは児童虐待防止等に関する法律の中でありまして、その中に、「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。」こういうのが虐待ということに定義をされているのが現状であります。

 十年前に厚生労働省として、さっき、児童虐待防止法が想定するような、子供の心身の正常な発達を妨げるような児童虐待には当たらないというふうに言っておりますけれども、これは十年前の児童虐待に対する社会の認識などをバックにした考え方でありますから、改めてこれは精査したいと私は思っておりますが、赤ちゃんポストそのもの自体は、私はない方がいいと思っていますが、今すぐなくした方がいいということを言っているわけでは全くなくて、このことによって助かっている命がたくさんあるということは評価をしなければいけないというふうに思っております。

 したがって、どういうふうに、今、刑法と民法との間での整合性などについての議論が行われましたが、私どもとしても、児童福祉法を預かる立場として、考え方を整理したいというふうに思います。

岡本(充)委員 考え方も整理だし、今の話で、本当に助かっている命があるのか。ドイツの場合、いわゆる虐待死が減っていないんじゃないかという議論もあったと聞いていますから、これが日本の児童、特に新生児の死亡事案を減らしていくこと、虐待を減らしていくことにどういう効果があったかという事実もやはり検証するべきだと思います。

 そういう意味で、法的整理と、そしてこの十年間の取り組みの整理、あわせてやっていただきたい、それをお願い申し上げて、いいですか、答弁される。それだったら一言だけでも。もう時間が来ていますから。

丹羽委員長 時間が迫っていますので。

塩崎国務大臣 両方やりたいと思いますが、特に、ゼロ日目に亡くなっている子供さんたちがたくさんいるということを考えてみれば、この赤ちゃんポストが一定の効果があったことは間違いないわけであって、ただ、それがどういうふうに位置づけられるべきかということは整理をしていこう、こういうことを申し上げているわけであります。

岡本(充)委員 では、また次回以降、議論させてもらいます。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 井坂信彦です。

 昨日の参考人質疑では、さまざまな立場の参考人が口をそろえて、今後の課題は人手の確保、人員の確保である、こういうお話でありました。しかし、本日の答弁をずっと聞いておりましても、やはり児童相談所の人員をすぐに大幅にふやすということはなかなか簡単ではありません。

 一方で、先月、私は一般質疑で、児童相談所と関係機関の情報共有、データベース上での情報共有のことを質疑させていただきました。その際、先月の答弁ではこういうふうにおっしゃっています。警察だけじゃなく、関係機関が広く情報共有をするという取り組みをそれぞれの地域で進めていきたい、一部の市区町村における先進事例についてはいろいろな機会に周知をしてまいりたい、また、専門委員会から地域での情報共有に役立つデータベース構築の提言を受けたので必要な調査研究を行う、こういうラインの答弁をいただいております。

 児童相談所は、その少ない体制、また、夜間も土日も基本的には対応できないという体制からして、児童相談所だけで、危険な家庭で日夜どういうことが起こっているかという情報収集は到底できません。

 一方で、例えば警察などは、二十四時間三百六十五日、地域に密着した活動を行っており、一一〇番通報だけでなくて、交番への相談であったり、あるいは迷子の保護等により、虐待家庭や虐待児の対応を図らずも行うことが多く、その際に、児童相談所から情報提供を受けていれば、ああ、この子は虐待児だとわかって、それを踏まえた適切な対応が可能になってくるわけであります。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、警察や自治体など、あるいは医療機関など、地域を巡回してさまざまな家庭と接点を持っている人的資源を最大限活用するために、児童相談所がかかわっている家庭の情報を、データベース形式などはこれから調査研究するにしても、警察や自治体、医療機関などと全件共有すると明確に答弁をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 児童虐待が疑われるケースなどにおける家庭への支援ということにつきましては、児童相談所とそれから市町村、これを中心として、その他、警察あるいは医療機関、福祉機関等々、関係機関が緊密に連携をしながら、子供の安全を第一に対応することが重要だというふうに思っております。具体的には、市町村の要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協、ここを活用して連携を図ってきているわけでございまして、ほぼ全ての市町村で要対協が立ち上がっているわけでございます。

 なお、一部の市町村では、この要対協の仕組みを活用して、市町村や児童相談所が把握した児童虐待の全ての通告、相談ケースを情報共有するなど、独自の工夫をされて、関係機関と積極的な情報共有を推進しているというところが既にございます。こうした情報共有の方法について、引き続き、全国の児童福祉主管課長会議、定期的に行われておりますが、ここでの議論、そしてまた、そういった中で決められることによって、どういうことをさらにやっていただくかということについて、通知において周知をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

井坂委員 大臣、再質問いたしますが、一部の自治体が先進的に全件共有しているというだけでは私はだめだというふうに思います。

 例えば、先ほどもある委員が例に出しました、ウサギのケージに子供を入れて虐待死をさせた件なども、児童相談所は当初、重篤なケースとはそもそも考えていなかった。事ほどさように、やはり最初の段階で、これは警察あるいはいろいろな関係機関と共有すべき重篤なケースだといって表に出すか、情報を共有するかしないかという判断は、私は事実上無理だというふうに思います。それは過去の例から見ても明らかだと。

 最初から、確かに厚労省の通知では、重篤なケースはちゃんと共有しなさいよという通知はしているんですけれども、そもそも、初期の段階でそういう仕分けはできない。また、まさにこういう足立区のウサギケージの事件のようなことが実際にあるわけであります。

 また、別の例では、児童相談所が把握している家庭について実際に一一〇番が寄せられた、ところが、児童相談所がそのことを警察には情報提供していなかったがために、駆けつけた警察官が虐待のことはわからずに帰ってしまって、まさに警察が行ったその五日後に子供が殺されてしまった。こういう東京都葛飾区の二〇一四年の事件などは、児童相談所が情報を抱え込んでいたら、こういう問題の再発防止はできないと私は思うんです。

 今、十万件年間通報があるうちの六万件は児童相談所、そして四万件は警察に通報が行っています。警察に行った情報は、これは全件、児童相談所に情報が共有をされていて、ところが、児童相談所に来た六万件の情報は、これは全件、警察には共有をされていない、こういう関係になっている。

 これは大臣、地方では既にやっているところが出始めておりますけれども、そういう進んだ地方はそれはそれでいいんです。ただ、私は、やはり、過去のいろいろな、児童相談所がかかわっても、結局はマンパワー不足、あるいは初期の判断がし切れなくて虐待死を防げなかったケースがずっとこの間積み重なっているわけですから、全件共有をする。別に警察の積極介入を言っているわけじゃなくて、警察の方が児童相談所より地域を回っているわけですから、その警察が知らずに地域を回っているのと、知っていて地域を回るだけで格段に違うでしょう、こういう趣旨でありますから、大臣、ここはぜひ、先月の答弁のラインをもう一歩超えてお答えいただきたいというふうに思います。

丹羽委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 今、警察情報が全部児相に行っているかどうかちょっと確認していたものですから、ちょっと遅くなって申しわけありません。

 全件、児相が持っている情報を警察に提供すべきだ……(井坂委員「警察だけではないですけれども、関係機関に」と呼ぶ)関係機関に出せ。主に警察が多いんだろうと思いますが。

 正直言って、今までいろいろな不幸なケースが起きている場合に、警察は知っているけれども児相は知らないというのもあったし、それから、市役所が知っていて、保健師さんが行っていて、しかし、児相が知らなかったケースとか、いろいろなケースがあって、てんでんばらばらであるということが明らかで、これを何とかせないかぬということで今議論していただいていますが、そういう点で情報の統一化したらどうだという、その問題意識は、考え方はよく理解をするところでございます。

 ただ、今、全件、児童相談所が持っている情報を警察などに回すべきかどうかということについては、必ずしも、児相にそういった形で上がってくるケースの関係者、当事者などの中で、情報提供を受けた警察が保護者、家族などに事情聴取を行うなどによって児童相談所と保護者等との関係に影響を及ぼして、その後の支援に支障が生じるおそれがあると判断をしている児相もあるというふうに聞いております。それから、警察に相談内容を知られてしまうことに抵抗のある保護者、関係機関等が通告、相談を控えてしまうおそれがあるということ。それから、情報提供に係る事務量の増大に対応できないということ。

 一方で、当然、当事者で警察に知られたくないというのは、自分が虐待をしているから知られたくないと思っているというケースももちろんあるはずでありますから、考え方を少し整理して、方向としてはできる限りの共有はしないといけないというふうに思っていますし、先ほど申し上げたとおり、共有の仕方がばらばらであるがゆえにきちっとした対応ができずに不幸な結果がもたらされているというケースが、大体、不幸な結果になっているケースはどこかでリンクが切れているというのが私は原因になっていることが多いんだろうというふうに思いますから。

 方向としては、今、井坂委員がおっしゃっている方向だと思いますが、一〇〇%全部共有することについてどういう整理をつけるべきかということは考えないといけないのかなというふうに思っています。

井坂委員 大臣、先月の答弁のラインを超えて誠意ある答弁をいただいたというふうに思っておりますが、ちょっともう一歩踏み込んで考えていただきたいんです。

 私も、この話を厚労省の方にすると、やはり同じような、こういう理由でできないんだという、今大臣がまさに、多分紙に書いてあったんだと思うんですけれども、警察がかかわるデメリットというようなことを言われるわけであります。

 しかし、デメリットが本当にゼロかどうかは私もわかりませんけれども、ただ、問題の根本は、これだけ虐待案件が物すごい勢いでふえている中で、圧倒的に今、人手が足りないんです、児童相談所は。そして、全件共有はというふうに、なかなかとおっしゃいますけれども、しかし、では、どういう案件を、これは警察初め関連機関に情報を出す、これは出さない、まず、その合理的な、正しい判断ができるかといったら、私はこれは不可能だというふうに思います。また、その中身の仕分けなんかをし出す、あるいは、逆に、警察とか医療機関から問い合わせがあったら、それを一々、これは出していい案件、これは出しちゃいけない案件、こういうことをやるマンパワーが今そもそも児童相談所にないというふうに思います。

 ですから、私は、先月、御提案したのは、とにかく、児童相談所であっても、あるいは警察であっても、医療機関であっても、同じ共有のデータベースに情報をどんどんどんどん更新して上げていく、情報をチェックしたければ、別に児童相談所に問い合わせるのではなくて、自分でそこをぱっと見に行って、ここはこういう家庭なんだな、それをわかった上で対処しよう、こういう形にしない限り、今どこも、そんな横の情報提供をやったり、定期的に会議で何か同じケースについて議論したりとかいう時間すら私はとれないような、状況は逼迫しているというふうに思いますから、大臣、ぜひ、さっき誠意を持って答弁していただいたというふうに思いますけれども、やはりもう全件情報共有をする、むしろ、本当に児童相談所以外がかかわることに懸念があるんだったら、情報共有をした上で、児童相談所以外のところがやっていいこと、悪いこと、それはルールをしっかり決めるべきだというふうに思います。

 ぜひ大臣、デメリットの部分にとらわれ過ぎずに、やはり虚心坦懐にこの人手不足の問題を考えていただいたら、それは、アウトリーチとか今回の新しい法対応なんか、ますますできなくなると思いますよ。もう一度、最後に御答弁いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 警察がどういう情報を持つべきなのかということについてはいろいろ議論があって、精神保健福祉法の議論のときには、警察が個人情報を持つことについての大変な反対論があって、いろいろ議論があったわけでありますが。

 一方で、約八割の児童相談所が今反対というふうに、全ての情報共有に関して言っているということなので、どういう反対なのかということは、私も、直接、生の声で聞いているわけではないので、聞いてみたいと思っておりますが、八割の児童相談所の方々が、持っている情報について、必ずしも全件共有について賛成をしていないというのは、それはそれで事実の、現状でございますので、そこのことも踏まえた上で、今の御意見を受けてどういうふうに対処することが、何しろ不幸なことが起きないようにすることが大事で、子供たちがすくすくと、健全な養育を受けながら育っていくということ、これが大事なので、その観点を忘れずに検討してまいりたいというふうに思います。

井坂委員 現場の声は私ももちろん大事だと思いますけれども、最後に大臣がおっしゃった一言に尽きるというふうに思います。どういうやり方が本当に一人でも多く虐待児、虐待死を減らすことができるのか、どういう仕組みをつくることが本当にそこに近づくことになるのか、今のもう逼迫した人手の問題から、しっかり答えを導き出していただきたいというふうにお願いをいたします。

 続きまして、昨日の参考人質疑で、家に帰れない虐待少女の話をたくさん伺ってまいりました。

 このNPO団体は、昨年の一年間で、一万二千件のメール、それから二千件の電話を受けて、そして千三百件の面談を行って、千百件保護して、四百件はほかの機関につないだ、こういう物すごい数の少女たちを一生懸命救っているNPOでありました。

 家で虐待を受けたり、家でほったらかしにされたりして、もう家には戻れないので繁華街で夜を明かす。それで、NPOから児童相談所に連絡をしても、もうすぐその子は十八歳になるんですよねといって断られてしまった話もありました。

 また、そういった女の子が性被害を相談しても、本人に非があるような説教を受けることが多いんだ、こういうお話もありました。

 生活保護を受けようとしても、学生だからだめと。保護をされてしまうと、今度、学校に行けなくなったり、施設に入ると携帯電話が使えなくなったりするので、結局、何も受けずに、今もずっとネットカフェで暮らしている、こういう女の子の話もありました。

 ほかの参考人の方で、子ども虐待防止ネットワーク・みやぎの事務局長の方が大変わかりやすい悪循環の図というものを示していただきました。

 家庭の非常に悪い環境。そして、親が窓口にSOSを出して窓口に行ける家庭はまだいいんですけれども、親がもう孤立してしまって、孤立した中で子供にきつく当たる。子供は愛着障害というような状況に陥って、居場所がないから家を出る。愛着不安を異性で埋めてしまう、あるいは、望まない妊娠を、こうした家出少女のようなパターンでしてしまう。それがやがて愛着不安を持った若い親による育児につながって、そしてまた次の世代の虐待につながっていくんだ。こういう悪循環、連鎖の図であります。

 この連鎖の図のまさに左半分が、こうした、もう家に居場所がなくなって、夜な夜な外で夜を明かすしかない十代の女の子、そして、泊まる場所もないから、知らない男の人の家に転がり込む、そこで性被害に遭って、望まない子供を持つ、こういう構図になっているわけであります。

 きょう問題となっている赤ちゃんポスト。大臣の答弁では、赤ちゃんポストがなくて済むような状況をつくっていくことが大事なんだ、こういう御答弁でもありましたが、まさにそういう観点からしても、この十代の少女の問題というのは、これは通常の児童虐待とはまた少し異なる政策が必要なのではないかなと、私、きのうの参考人のいろいろなやりとりを聞いていて強く思ったわけでありますけれども、この点について大臣の見解を伺います。

塩崎国務大臣 話には聞いておりますけれども、実際に最近繁華街は行かないものですから拝見をしておりませんが、虐待によって家出をしている十代の若い女性について、児童相談所が本来適切に保護していくということが児童である限りは必要なことということであるわけでありますけれども、みずから問題を抱え込んでいて、なかなか公的なものに接するということが多分ないんだろうと思うし、学校もちゃんと行っているか行っていないかよくわからないような状態だとするならば、ますますもって、公的ネットワークの網にかかるというのでセーフティーネットにかかるということがないんだろうと思うので、これは、参考人の方々がおっしゃっているようにアウトリーチか、あるいは、向こうから電話でアプローチしてもらってこっちからアウトリーチするというような形で問題の核心に触れていくということをやらなければいけないという、確かに、今までの児相ではやっていない、むしろ明らかな虐待事例で忙殺されているという現状であります。

 こういうことについて、私どもとしては、児童相談所で扱うべき案件として、若年女性の実態を把握するということが大事だということで、今年度実施をいたします調査研究事業において、性暴力被害を受けた若年女性の実態把握、今おっしゃったようなことで家にも帰れないということになっているような、そういうような調査をまず行って、その結果を踏まえた上で、若年女性の生きづらさに即した必要な方策を、児童相談所を中心に、どういうことを今やらなければいけないのか、あるいは、今あるものでは欠けている、漏れてしまう、そういうことの実態についてしっかり見てまいりたいというふうに思います。

井坂委員 時間が参りましたので終わりますが、最後に大臣おっしゃったのは、性暴力被害に遭った若年女性というくくりももちろん大事なんですけれども、きょう、せっかく児童虐待の議論でありますから、やはり、別に性暴力被害にまだ遭っていない子ばかりなんです、ただ、ほっておくとそういうおそれはもちろんある、居場所もない、また適切な保護のルートもいま一つ曖昧ではっきりしない、こういう新しいカテゴリーだというふうに思いますから、ぜひ御対応いただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

丹羽委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 十九日の本委員会で、私、医療法の質疑ではありましたけれども、助産師と医師の連携について取り上げました。最後のところが、本当は問いだったんですけれども、言い切りになったので、きょうは続きからやってみたいなと思います。産後ケアに助産師の活用が児童虐待防止にもつながるのではないか、そういう提起だったと思います。

 それで、まず伺いたいのは、昨年九月の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」第十二次報告、先ほど来議論になっておりまして、実態からは少ないんじゃないかということもございますが、そうはいっても、心中以外の四十四人の死亡事例のうち、ゼロ歳が二十七人、六一・四%、しかも月齢ゼロカ月が五五・六%と圧倒的に多いという、まずその要因をどう考えているのか、お伺いいたします。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の虐待による子供の死亡事例、この第十二次報告でございますけれども、ゼロ歳児の死亡事例がこの年、例年以上に高い割合を占めておりました。背景ということでございますが、検証していただいた議論などを踏まえますと、予期しない妊娠あるいは若年の妊娠など、特に支援が必要な妊婦さんが増大しているということが考えられるのではないかというふうに受けとめております。

 それは、データといたしましては、ゼロ歳児の死亡事例が、十二次において、今引用いただきましたように六一・四だったんですが、その前の年、十一次では四四・四%だったとか、あるいは予期しない妊娠が、ちょっと逆になりますが、十一次で二二・二で、十二次だと五四・五に上がっている。あるいは、若年の妊娠ケースが、十一次では一六・七だったものが、十二次では二〇・五%に上がっているというデータも先ほど申し上げたような評価の後ろにございます。

 一方で、妊娠届の提出がなくて母子健康手帳が未交付であるケースというものもございますし、妊婦健診が未受診というケースも全体としてふえているということから、特に支援が必要な妊婦さんにつきましては、市町村で状況を把握することができずに、母子ともに危険な状態にありながら、なかなか支援が行き届かない場合があるということも言われております。

 こういう状況を踏まえまして、私ども、昨年の児童福祉法の改正では、支援を要する妊婦等に日ごろから接する機会の多い医療機関ですとか学校等が支援を要する妊婦等を把握した場合には、その情報を市町村に提供するよう努めるということを規定として入れさせていただきました。

 引き続き、この支援を要するような妊婦等に適切な支援が行われるようなことを取り組んで、今回の十二次報告でもあらわれたようなゼロ歳児の死亡について、適切に対応させていただきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 例年以上に高くなっているということ、また、望まない妊娠が五四・五%、母子手帳の未発行が二九・五%ということで、極めて深刻な事態だと思います。まずそこから手当てをしていくということが非常に求められていると思うんですけれども、昨年六月の母子保健法改正で、虐待の予防及び早期発見に資するとして、母子保健の役割が明記されました。また、児童福祉法の改正においても、特定妊婦も要支援に位置づけられました。

 それで、前回の続きというところなんですけれども、助産師は、助産院として接するときはもちろんですけれども、産科医院に勤務する場合でも、妊娠期から出産後も相談に乗り、また妊産婦に安心感を与えられる、あるいは、産後ケアを通して、心身の癒やしだけでなく健全な親子関係にもつながるということが言われております。産後うつや孤独の子育てからお母さんを守ることが虐待防止にもつながると思うんですけれども、まず、この点で、大臣、認識を共有できるか伺います。

塩崎国務大臣 助産師の役割についての御指摘をいただきました。

 家族から十分な支援が受けられない方がふえているという指摘がある中で、安心して出産、子育てができる支援体制を構築するというのが、我々にとってもこれは大事な政策課題だと思っております。

 このため、子育て世代包括支援センターあるいは産後ケア事業などによりまして、妊娠期から出産後にかけての相談支援に今努めつつあるわけでございまして、このような妊産婦などに対する支援を行っていく上で、助産師の皆さん方の出産、育児等に関する幅広い専門的な知見は大変重要であるというふうに考えておりますので、行政ともっとしっかりと連携を図りながら、大いに活躍していただければというふうに期待をさせていただいております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 それで、資料の一枚目を見ていただきたいと思うんですけれども、妊娠、出産、子育てと現行のサービス、支援ということで、下はこの間の母子保健と子育て支援の変遷ということの資料なんですが、この資料は大阪府立母子保健総合医療センター長の佐藤拓代氏によるものなんですけれども、政府の新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の委員でもあるかと思います。大変わかりやすいかなと思うんですよね。

 下の方にあるんですけれども、母子保健のところを見ますと、二五%ほどの低い新生児訪問率、四カ月健診までサービスがない、つまり、生まれてから四カ月健診にたどり着くまでの間にエアポケットがあるというところからスタートをして、全戸訪問事業があったり、そして今の産後ケアなどがあったりということで、包括支援センターというような全体的な発展をしてきたという図になっております。

 それから、上のところなんですけれども、これは、妊娠から始まって、妊娠の届け出、母子健康手帳交付、妊婦健診、訪問、出産、産婦訪問ということで、右側に率が書いてあるわけですよね。

 これはどういうふうに見るかといいますと、例えば、乳幼児健診受診率は九〇%以上と大変高い。ですが、支援を要する親子に対する家庭訪問は、出生数当たりの妊婦訪問率が二・七%でしかない。つまり、この図の黒いところが、言ってみればすき間なんですね。率が一〇〇%じゃないので、すき間が出ている。だんだんだんだん、すき間が結構あるということになるわけなんです。これをアウトリーチによって埋めていくことが、やはり虐待予防にとっても極めて重要ではないかという指摘を佐藤さんはされているわけであります。

 それで、実は、大分前の話なんですけれども、母子手帳はとったらしい、だけれども、出生届を出していない、そして健診にも来ないし、おかしいねというところから、いろいろな機関が訪問したりして、既に手おくれだったケースがありました。私の地元ですけれども、押し入れの中で赤ちゃんの白骨化した遺体が見つかったということでありました。実家に戻るから出生届を出すのがおくれたなどと言いわけをし続けて、結局一年以上放置されたということでありました。

 それで、母子手帳をとっていたことは、たまたま児相は把握をしていたんです。だけれども、結局、ではその責任の所在が市役所なのか児相なのか、どっちどっちと譲り合うような格好になっちゃうわけですね。

 ですから、これをこうやって見ていきますと、やはり、さまざまな、市役所がかかわる部分と児相がかかわる部分、あるいは医療機関との連携、そうしたことですき間が、人の面でもすき間があってはいけない、重なり合うことは構わないんだけれども、そういう意味でのすき間をつくってはならないというふうに思いますが、一言あればお願いします、局長。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたように、妊娠期から出産、そしてその後の新生児、そして子供の育ちという過程について、すき間のないようにというのは御指摘のとおりだと思います。

 そういう意味では、それぞれのフェーズに切れ目なくということと、関係者それぞれの方々が、かかわっておられる方が連携をとってやるという意味では、その拠点となるような子育て世代包括支援センターという新しい制度も使って、それぞれの地域地域の特徴はあろうかと思いますけれども、すき間のないような取り組みを進めていただくように我々も支援してまいりたいと思います。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 譲り合うことが結局、赤ちゃんが犠牲になるということになってはならないと思いますので、しっかりとお願いしたいと思います。

 次に、司法の関与について伺います。

 きょうかなりの意見が出ているわけですけれども、資料の二枚目に、これは裁判所のパンフレットの一部なんですけれども、「家庭裁判所調査官 家族・人・社会の架け橋」というのがタイトルなんです。

 先ほど来いろいろなことを言われている調査官でありますけれども、左と右と、大きく言って少年事件と家事事件の二種類を扱うわけです。しかし、家事事件、家族関係の事件が結果として少年事件に、同じ子供が少年事件にもかかわっていくということもありますので、どちらもとても大事で、関係があるというふうに思うんですけれども、離婚の調停や、親権、監護権をめぐる争い、養子縁組の許可や、後見人の選任などに必要な調査を行い、裁判官に報告をするというものであります。もちろん、決定をするのは裁判官なんですけれども、その報告をするというふうになっております。

 それから、資料の三枚目は、先ほど来出ている、今の法律で新設される司法が関与する部分であります。それから、下の方が、家庭裁判所の保護者指導勧告がどの程度出されているかというのがあります。

 それで、もともと、児相の所長には職権による一時保護というのがあるわけでありますよね。そして、児童福祉司による保護者指導というものもある。しかし、施設入所などが必要だとしても、保護者がそれに同意しない場合、児童福祉法二十八条に基づく申し立て、家裁による審判を仰ぐことになるということです。しかし、通常、その審判が二カ月から四カ月かかるのに対して、一時保護であれば原則二カ月以内とされているのに、それが結果として長くなるのではということも指摘されてきたと思うんです。

 それで、まず伺いたいのは、調査官による調査は、このフローを見ながらですが、どんなときに、どのタイミングで行われるのか、現状との比較でお答えください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 家庭裁判所は、申し立てのあった全ての事案について勧告を行うわけではないということをまず前提に、今回、親子分離が避けられないほど深刻な虐待の場合など迅速な裁判が必要な場合に、従来どおり勧告を経ずに審判が行われるものはあるということかと思います。

 私どもとしましては、今回導入しようとしております勧告の仕組みの方法について、いろいろと、都道府県に周知するなどにより、どういう事案に適切に活用されるかということについては今後考えたいと思います。

 その上で、お尋ねいただきました、家庭裁判所がどのタイミングで、どういう形でということでございます。

 あくまでも必要に応じて家庭裁判所の調査官に事実の調査をさせることができるという形になってございますので、現在のところは、私ども承知している限り、保護者等の陳述の聴取を行った後に家庭裁判所の調査官の調査が行われることが現実としては多いというふうに承知をしております。

 先ほど阿部委員のやりとりの中で、ちょっと私、発言の機会を失しましたが、今回の形におきましても、家事審判手続法におきまして、それぞれの審判事案につきましては、保護者の陳述の聴取を行わなければならないということは決まっておりまして、タイミングが決まっていないということになってございます。

 そういう意味では、今回の勧告を設ける改正により家庭裁判所調査官による調査のタイミングがどうなるかについて、なかなか一律にお答えするわけにはいきませんけれども、それは個々の裁判官の判断によって適切なタイミングで行われるというふうに私ども受けとめております。

高橋(千)委員 先ほど、ちょっと局長が言いたそうな顔をしていたので、そのことはまずフォローいたしました。

 それと同時に、そのタイミングというのは一回ではないですよね、つまり、一時保護の延長の場合と、それから再統合の場合など。そういう意味で、つまり、何か、一回出したらもうそれっきりよみたいな議論がされてあったんだと思うんですが、司法の関与というのは、そのたった一回の、勧告の紙を出すとか、あるいは審判を出すとか、それだけなのかということを聞いています。

吉田政府参考人 失礼いたしました。

 基本的には、勧告といいましょうか、申請をして、一定の指導をさせていただいて、その状況も報告をして、勧告をいただくということでございますので、その後、必要に応じて、また必要があれば、私ども、児童相談所サイドからは、裁判所に対しての申請は行われ得るということでございます。

高橋(千)委員 それで、単に、児童相談所が保護者との対立関係にあるから、家裁が勧告書を出してお墨つきを与えるだけではないと思うんですね。それだと逆に対立を強めることにもなりかねない。

 では、家裁による勧告書が出されても保護者が従わない、保護者指導に応えない場合はどうするのかということを伺いたいと思うんですね。

 実効性の確保のために裁判所が命令を発したにもかかわらず保護者がそれに従わないときは、直ちに一時保護するべきとの意見もあったと聞きます。ただ、日弁連は、一時保護は子供にとって必要であるから実施されるべきものであって、保護者に対する制裁として実施されるべきものではないから賛成できないと表明している。私もそうだと思いますが、大臣の認識を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 あくまでも、子供のために何をするのかということが大事であるということは御指摘のとおりだと思います。

 家庭裁判所は、保護者指導の勧告をした場合に、勧告のもとでの保護者指導の結果について都道府県等から報告を受け、その内容を踏まえて、里親委託等の措置の承認の審判を最終的には行うということになることがあるわけであります。

 審判の内容については、家庭裁判所が個々の事案に応じて判断すべきものであって、その際、保護者が勧告のもとでの指導に従わないということは、一つの重要な考慮要素となると考えておりますけれども、それのみで判断をするのではないわけで、保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害するおそれがあるかどうかと、この大事な判断をすることになると考えられるところでございます。

高橋(千)委員 制裁的なことではないというふうに確認をさせていただきたいと思います。

 きのうの参考人質疑の中でも、藤林参考人が、家裁の出番のことについて、これまでは、あらゆる手段を尽くしても奏功せず、最後の手段として親権の取り上げだけが残された段階で、親子分離の決定、そういう局面でしか裁判所が出てこなかった、出てこなかったというか、それは裁判所のせいではなくて、そういうふうになっていたということで、そうではなくて、もう少し、指導の段階、プロセスの段階でかかわるようになったことはよいことだというふうな指摘をされていたので、私もそのとおりだなというふうに思って受けとめました。

 それで、この間、司法関与のあり方についても検討会が行われ、家庭への公権力の介入というのは、本来、憲法十三条、尊重されるべき個人の自由を不当に侵害するものであるし、あくまで、介入しなければ子供の権利としての健やかな成長を確保できないと判断する場合のみだ、ですから極めて制限されたものである、その上で、その強い権限だからこそ、ひとり児相だけの判断ではなく、司法の関与がやはり必要なのではないか、そういう議論があって、まずここにたどり着いているのではないかなと思っております。

 そこで、最高裁に伺いたいと思います。

 子供の意思確認、子供の福祉を守るために調査官はどのような工夫をされているのかということです。

 先ほど来、九時―五時で、休日も出てくるわけじゃないしとか、ちゃっちゃと仕事を済ませる、そういう話ばかりされているわけですけれども、さっきの資料の中にも、これは、裁判所の中の児童室で親と子が遊んでいるところを黙って見ているわけなんですね。そのことによって、元気に生活できているのかな、パパとママに一番伝えたいことはどんなことかなというので見守っているんですが、親子の愛着関係を見ている、そういうふうな説明だと思うんですね。

 例えば、きょうも大分議題になった面会交流で、監護親と非監護親の葛藤が激しいときに、子供は、やはり、今自分と一緒にいる監護親にさえも捨てられたら困るという気持ちが強くてなかなか本音を言わない、そういうふうな大変複雑なあらわれ方をするわけですよね。そこをどのように工夫していらっしゃるのかということをぜひ聞かせていただきたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 家庭裁判所におきまして、子の意思を把握するに当たっては、委員の御指摘にもございましたとおり、家庭裁判所調査官が心理学、教育学等の行動科学の知見及び技法を用いて行う事実の調査という形で行っておりますもの、これを活用しているというふうに承知しております。

 このような事実の調査に当たって、家庭裁判所調査官は、子の意思を把握するために、子供に対して面接をする際には、単に子供から話を聞く、言葉として出てくる表現を聞くということだけではなくて、子の表情やしぐさなど言葉以外の情報も十分に観察しながら、子供の意思を総合的に理解するように努めております。

 委員の御指摘にございましたとおり、資料にありますような、裁判所の児童室で、遊具で一緒に遊びながらその様子を観察し、あるいは親と子がそういう形で交流している場面も見ながら、さまざまな情報を得ているところであります。

 また、父母の紛争の内容、子の年齢、性格、それから子供が紛争に巻き込まれている程度ですとか、親子関係、子の現状などを踏まえますと、子供がいきなり初対面の家裁調査官と率直に話をすることは難しいな、こういうふうに予想される場合もあるわけでして、そういった場合には、いきなり事件の内容にかかわるような質問のための面接ということではなくて、子供と良好な雰囲気を醸成するためのまずは顔合わせというような形を先行させて、今回は一緒に遊ぶだけにとどめておく、その次に、信頼関係ができたところで面接という形にしていく、こんな工夫もしております。

 また、家庭裁判所調査官は、事案に応じて、子供のふだんの様子を見ている保育所ですとか学校の職員の陳述、こういったものを聴取したりして、子を取り巻く事情、客観的な事実関係なども十分に把握して、これらを踏まえた上で、そのお子さんの意思、真意というのはどこにあるのかということを理解するように調査をしております。

 このように、家庭裁判所におきましては、今申し上げたような形で、事案に応じて子供の意思を適切に把握するように工夫、努力しているものと承知しております。

高橋(千)委員 貴重な紹介をしていただいたと思います。

 私がこのことを取り上げようと思ったのは、司法心理学の視点ということで、家庭裁判所調査官による子の福祉に関する調査というレポートを読ませていただきました。これは、金沢家裁小松支部の主任家裁調査官小沢真嗣さんがまとめたもので、若干前のものなんですけれども、今みたいに面会交流が主流になっているもっと前の時点なんですけれども、実は、初鹿委員などが熱心に取り組まれている、親子断絶をめぐって、どちらかの側の話ではなく両方の、お母さんにもお父さんにも、それが逆の立場になる場合もあるんですけれども、両方の側で、監護親と非監護親の両方の支援をして経験をしている弁護士さんから紹介をされて読んだのがきっかけでありました。

 いわゆる行動科学ということで、先ほどお話があったように、子供の発達段階、年齢によって当然理解できる範囲というのは違うわけですから、そういうものに応じて子供の心情や希望を聴取するものである、両親の紛争を経験した子は、自分はこれからどうなるのだろうという不安、対立する両親の間に入って悩む忠誠葛藤、一方の親と別れたことによる喪失感、両親が不仲になったのは自分が悪かったからではないかという罪悪感などなど、さまざまな関係、気持ちを持っていて、それをいかに引き出すかという非常に重要なスキルを持っているんだなということを学んだわけであります。

 それで、ちょっとだけ紹介をしたいなと思うんですけれども、小五の長男を置いて家を出たお母さんが離婚訴訟をしているわけですが、夫は飲酒と暴言がひどいということで子供を置いて出たんだけれども、改めて親権を争っていて、母は、長男は父を嫌っているんだと言う。父は、いやいや、長男がそういうふうに反発しているのは反抗期のせいなんだし、お母さんのところに行くと転校しなきゃいけないし、友達とも別れなきゃいけないから、自分のところにいる方がいいんだと、全く、真っ向から陳述することが違うわけですよね。

 その長男と調査官が会ったときに、お父さんとお母さんの言っていることが違うんでしょうと子供の方から言われたというんですね。だから、本当は、そういうことを聞かれる前に子供の方から言い出すというのは、いろいろな、事前に親からいろいろなことを吹き込まれていたりとか、そういう事情があるわけで、調査官が言ったことは、どっちが正しいかとかジャッジをするために来ているんじゃないんだよと安心をさせた上で、今後の生活のためにお父さんとお母さんができることが何かないかなと尋ねた。

 これは、尋ね方が、物すごくストレートで、どっちに行きたいとか、そう言っちゃうと非常に難しいということで、あえてそういう聞き方をしたときに、お母さんのところに行きたい、勉強したいというふうなことを言ったんだそうですけれども、そのときに長男が言ったせりふが、時々寝る前に宿題をしていて考えてしまう、何でこうなったんだろうか、お母さんが出ていった日、僕は早く寝ていた、それがあかんかったんかと思ってしまう、夜更かししていればお母さんが出ていくのをとめられたのではないかと思うことがあると打ち明けたそうです。

 ですから、打ち明けるまでにも相当の時間がかかっていると思うんですけれども、出ていったことをとめられなかったということが自分のせいだ、そういうことも子供は抱えているというふうな中で、いかに、大人の都合ではなくて、子供が本当に望む道を、そのときはもしかしたら本当の気持ちが見つけられないでいるかもしれないわけですけれども、それを引き出すスキルというのが本当に経験を積んでこそのものであり、また調査も慎重でなければならないなということをつくづく思ったわけであります。

 そのことをもう一度確認したいのと、大変申しわけないんですが、この間も何度も言われていましたけれども、やはり、そういう意味でも、体制の充実ということが改めて必要なのではないか、これまでにない仕事をするのであるから体制をふやしていくことが必要なのではないかと思いますが、最高裁にもう一度伺います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 体制につきましては、質の点と量の点があるということで、既に答弁もさせていただいたところでございますけれども、質の点に関しまして、今御紹介いただきました小沢調査官の論文は、現場の家庭裁判所調査官が必ずと言っていいほど読んでいるものの代表的なものの一つでございまして、こういったものも含めて、それぞれ研さんに励んでおりますし、また、外部の専門の方を講師にお呼びして御講演いただくなどして、面会交流ですとか子供の心理の問題に関する専門性を高めている、こういったことはこれからも続けてまいりたいというふうに思っております。

 それから、量の点につきましては、今のところでは、現有勢力を活用してということで考えてございますけれども、新しい事件類型もできるというところもございますので、今後の事件動向等を踏まえて、必要な体制の整備については、もちろん努めてまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 答弁としては、今後の任務のことを踏まえてということと、国会の議論を踏まえてということもおっしゃったと思うんですね。それは、前回の委員会でもそういうお答えをされていますし、きのうの参考人の陳述の中でも複数意見があったと思いますので、ぜひ前向きに御検討いただきたいということを要望したいと思います。ありがとうございます。

 もしあれでしたら、最高裁への質問はこれで終わりですので、御退席いただいても結構です。

 それで、大臣に伺いますが、ちょっと時間が心配になってきましたので、二つくっつけて聞きます。

 先ほど来議論をしていますので、もう十分そういうつもりでいらっしゃると思いますが、親子分離、再統合においても、やはり、大人の都合ではなく、子の最善の利益が尊重されなければならないと思いますけれども、その点の認識を伺いたい。

 その上で、先ほど、午前でも水戸委員の指摘もあったんですけれども、児相の調査権限の強化というのは、全国児童相談所長会などが主張しているわけですよね。それで、できる規定といっているけれども、そもそも出せる情報も、虐待に関するものということで、非常に狭めているということも指摘をされています。ということで、児相の調査権に対する応答義務というのはやはり明記するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 まず第一に、子の最善の利益をしっかり尊重して、親子分離、再統合についても行わなければならないのではないのか、こういう御質問でございましたが、児童虐待対策につきましては、昨年の児童福祉法の改正におきまして抜本的な改正を行いました。何しろ、一番大事だと思っているのは、やはり子供の権利、子供が権利の主体であるということ、子供の最善の利益が優先して考慮される旨を、規定を明確にいたしたわけでございます。

 したがいまして、児童虐待における親子分離や再統合の場面においても、子供の最善の利益が優先して考慮されるべきであるということを明確に考えているところでございます。

 それから、児童相談所に対する関係機関からの資料または情報の提供に関しましては、昨年の児童福祉法の改正によりまして、民間の医療機関、児童福祉施設、学校等についても、地方公共団体と同様に、児童相談所長から児童虐待の防止等に関する資料または情報の提供を求められたときは、これを提供することができることといたしております。

 これによりまして、原則として、個人情報保護法や守秘義務に違反することなく情報を提供できることを明確化したところでございます。

 また、この改正を踏まえて、民間事業者からの資料あるいは情報の提供についても、個人情報保護法や守秘義務との関係について整理をし、必要な場合にはちゅうちょなく資料または情報の提供を依頼するよう、都道府県等に通知を発出し、周知を行ったところでございます。

 引き続き、民間事業者を含めた関係機関から必要な資料や情報の提供が受けられるように、こうした規定や通知について周知を行ってまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 ですから、できる規定であることには変わりないわけですよね。今、三つくらいの審議会が動いていると思います。また次の法改正を準備しているのかなと思いますが、やはりこれは、応答義務ということで、今通知している内容を法定すべきではないかというふうに指摘をしておきたいと思います。

 それで、全国二百九カ所の児童相談所のうち、百三十二カ所に一時保護所が併設されていると聞いています。

 この一時保護は、保護者の同意も子の同意も必要ないわけですよね。それだけ緊急を要するということで、とにかく緊急の場合は、私はちゅうちょするべきではない、このように思っています。子供の命が最優先であります。ただ、それが長くなれば、さっきも議論をしてきたわけですけれども、本当に突然連れていかれて、いつまで入っていなきゃいけないのかな、友達にも会えないと。言ってみれば行政による神隠しだという表現をされた方がいますけれども、そこは本当に、子供が第一だということをおっしゃっていますので、十分な対応をしなければならないと思うんです。

 しかし、現実には、そもそも一時保護自体ができない、一時保護施設が満杯であるということがあるわけで、そういうときどうするんですかと聞いたら、児童養護施設に一時預かりとか、里親に、里親といっても、子供が欲しいと言っている人もたくさんいるらしいんですが、だからといって経験がない方に、子供を持ったことがない方にいきなりということは、それはできないということで、ベテランの方にお願いするということもあると聞きました。

 そういう意味で、やはり、ちゅうちょすることがあってはならないという点で、施設の増設も含めて検討するべきかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

塩崎国務大臣 残念なことでありますけれども、一時保護を必要とする子供の数はふえているわけでございます。一時保護所は、入所率、常に一〇〇%前後となっているところも多々あるわけで、こういうことから、地域の状況に応じて、一時保護所の数とか定員をふやすとともに、里親そしてまた児童養護施設などへの一時保護委託も進めるという必要があると考えております。

 厚労省では、従来から一時保護所の改修等に必要な整備費の補助を行っておりますが、加えて、平成二十八年度からは、里親に一時保護委託した場合の手当を引き上げるということもやってまいりました。児童養護施設等が一時保護委託児童を一定数受け入れることができる専用の居室などを設けていただいた場合には、その運営費に対する補助の加算も行ってきております。

 そういうような措置を通じて、子供の安全等を適切に確保し、一時保護所の整備、そして一時保護委託の一層の推進に向けて、引き続きの努力をしてまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 本当に緊急避難の話かもしれませんが、定員をふやすというのは、今、多様な子供もいるんだからということで、なるべく部屋を分けようという議論をしている、環境づくりをしようと言っているときですから、なるべくそれは避けた方がいいのではないかと思いますし、手当を当然出して委託もやるし、補助も加算するとおっしゃったけれども、いずれにしても、それには受け入れる側の人手も必要でありますから、あわせてお願いをしたいと思います。

 少し具体の話に入りますが、第十次から十二次までの心中以外の虐待死事例の中で、施設入所の経験のある事例十四例のうち、家庭復帰後、児童相談所が家庭訪問等を実施して支援をしている、あるいは市町村が関与している、そういう事例は九人、六四・三%。関与しているにもかかわらず死亡に至っている。本当に残念であります。しかも、家庭復帰後、一から三カ月未満で死亡が四人、半年未満に九人で六四・三%であって、本当にこんなことは絶対あってはならないと思うんですね。

 ですから、現実に、日々新しい事案に対処をしながら、しかし、家庭に帰してそれで終わりではない、フォローも本当にやっていかなきゃいけないという点では、やはり児相の体制というのをさらに強化することが必要かと思いますが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 施設入所措置等の解除後におけるお子さんあるいは家庭への支援を継続するということが重要だというのは、委員御指摘、我々も同感でございます。

 従来から、退所したお子さんたちに、退所前に、それぞれ、市区町村の要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協において、退所前で関係機関が情報共有するということを行うとともに、退所後少なくとも半年間は、児童福祉司指導等の支援という形で継続をするという運用を、これまで都道府県等に対して通知をさせていただいております。

 また、昨年の児童福祉法等の改正によりまして、入所措置あるいは一時保護の解除後に、一定期間、市町村あるいは児童福祉施設など地域の関係機関と連携して、子供の家庭を継続的に訪問することによって、定期的に子供の安全確認、保護者への相談支援を行うことといたしました。こういうのを支えるためにも、児童相談所の体制強化という御指摘かと思います。

 私どもとしては、昨年の法改正によりまして、児童心理司や弁護士等の専門職の配置を新たに法律に位置づけさせていただきましたし、それに伴う政令改正によりまして、児童福祉司の配置基準について、人口当たりの数というものをまずふやすと同時に、人口だけではなくて業務量も考慮できるように見直しをいたしました。

 さらに、昨年四月からは、児童相談所強化プランという形で、児童福祉専門職などを、平成三十一年度までの四年間で千百二十人の増員を計画的に行うということをしておりますので、今後引き続き、体制の強化、計画的に着実に行うことによりまして、退所後のフォローを含めた、お子さんや家庭に対する適切な支援を行ってまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 強化プラン、四年間で千百二十人ふやすと。先ほど来もこの強化プランの資料を配って議論されているわけですけれども、増員してきたことはわかっております。ただ、実際には、虐待の件数が何しろ十万件を超えたわけでありますから、一人当たりのケース数というのはやはり年々ふえていって、追いついていないというのが現状だと思います。

 しかも、今、増員していると言いましたけれども、正規職員の比率というのはどうなっているのか。それから、そのうち兼任、先ほども議論がありましたように、虐待対応だけではありませんので、兼任はどのくらいされているのか、この点、お願いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所における専門職、手元に、平成二十八年四月一日現在、これは私ども厚生労働省として調べさせていただいております。

 具体的には、児童福祉司の方々につきましては、その常勤職員、ここだけ数字を申し上げますと、三千十九人で、全体の児童福祉司さんの九九・六%。同様に、児童心理司さんにつきましては、常勤職員の方の比率が八七・三%、保健師の方が八六・一%ということで、専門職全体を合わせますと、九六・一%は常勤職員ということになってございます。

 また、常勤職員の方、兼務の方もおられますが、どことの兼務ということまで把握できませんけれども、全体の兼任職員の割合は約八%というふうに把握をしてございます。

高橋(千)委員 今、八%とお答えになりました。これはしかし、ある程度ばらつきはありますよね。当然、都市部ほど兼任が多いという指摘もありますし、ちょっと私が前に把握していた数字では、常勤率は六六・三%という程度の数字がありましたので、一定ふやしてきたのかなと思うけれども、まだまだそういう状況であるというのは言っておかないと。さらに対応していただきたいと思います。

 それで、大臣に伺いたいんですが、市町村との連携を強めてきました。ただ、実際のところ、市町村の担当者というのは二年か三年でどんどんどんどんかわってしまうわけですね。そうすると、経験が蓄積されない、せっかく連携のいろいろなスキームをやってきたけれども、また人がかわって振り出しに戻っちゃうというので、非常に悩みになっています。

 ただ、だからといって、同じ人がずっとそこにいろという提案はなかなかしづらいです。それだと、さっきから大臣が言っているように、それこそバーンアウトになってしまいますから、そこはうまくローテーションを組むとか、あるいは経験のある人を必ず残しながらというふうな、うまい組み合わせというのは絶対必要だと思うんです。

 そういう点では、例えば総務大臣ですとか関係省庁と少し連携をとり合って、経験の蓄積がちゃんとされていくような体制をとるべきと思いますが、いかがでしょうか。

    〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 去年のあの法改正で市町村に支援の役割を担っていただくということで、この役割は非常に大事になってくるわけであります。したがって、現場は市町村ということで、そういう意味で、子供とそれから妊産婦の福祉に関する支援事業を行うための拠点の整備にも努めないといけませんということで、組織や職員体制の充実が市町村レベルで求められるわけでございます。

 一方で、今御指摘のように、職員は定期異動というのがございますので、一定年数経過した後には必ず異動してしまうというこれまでの現実がありますが、こういう点は、昨年七月から、子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ、そこにおいても、短い期間の中で異動した場合は経験が積み上がらないので、勤め続けられるような人事配慮をぜひ市町村にお願いをしたいということ、それから、人事異動が人材育成の妨げに間々なりがちではないのかといったことで御意見を伺っているわけでございます。

 各市町村における職員の人事異動につきまして、各自治体の実情に応じて、それぞれの裁量によって行われるものではございますけれども、引き続き、私どものワーキンググループなどの構成員の方々の貴重な御意見を伺いながら、どういうことを、私どもとして改めて、市町村で子供の支援に当たっていただける方々、とりわけ虐待に対応していただく方々のあり方について、検討をよくしてまいりたいというふうに思います。

 要対協が市町村にありますから、児童福祉に関してはやはりとても大事で、そこにおられる調整担当者というのが一人か二人、まあ多くてもですね、この研修受講は義務づけられておりますけれども、私は、市町村の担当する虐待関係の職員の皆さん方にはあまねく研修を受けてもらえればというふうに考えています。

高橋(千)委員 問題意識は共有できているんだと思います。ぜひ、人材が引き継がれていくように、経験が継続されていくようにお願いをしたいと思います。

 ちょっと定員があれかもしれませんが、続けますので、ぜひ、人の配置は大丈夫でしょうか、お願いいたします。

 それで、二〇〇九年の改正児童福祉法によって、施設職員等による被措置児童等虐待について、都道府県知事が公表する制度が法定化されました。二〇一三年度の届け出、通告受理件数は二百八十八件で、事実確認が行われた事例は八十七件。この届け出というのは、子供自身だったり母親だったりさまざまあるわけですが、二百八十八件の届け出のうち、確認されたのは八十七件だと。この実態をどう見ているかということと、そのうち一時保護所の中の数字はどのようになっているのか、お願いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきました平成二十五年度の被措置児童等の虐待のうち、届け出、通告受理のうちの事実が認められた件数は八十七件ということでございます。

 そもそも、被措置児童等の虐待というのはあってはならないというのがまず基本、我々はそのように強く思っております。その上でも、こういう事例が報告されてございます。我々としては、このような事例が生じないように、まず最善の努力をするということは当然のことだというふうに思います。

 そのため、引き続き、届け出、通告等の制度、こういう仕組みを、制度、法定化されましたものを周知するということと、自治体が行っていただいております指導監査、あるいは第三者評価などを受審していただいて、こういう施設内におけるあってはならないことを防止する、そして子供の権利擁護に係る取り組みを推進するということを進めてまいりたいと思います。

 なお、お尋ねのこの八十七件のうち、一時保護所における件数は一件と把握をしてございます。

高橋(千)委員 まず、私は、三分の一ほどの認定が正しいのかどうか、それから一件というのが正しいのかどうかというのを大変疑問に思います。

 まず、あってはならないとお答えくださった。当然であります。絶対にあってはならない。だけれども、やはり一時保護所の中は大変閉鎖的で、なかなか実態が見えません。子供が小さ過ぎて訴えることができない、あるいは、訴えたとしても子供だからと相手にされないおそれもあります。正直言って、学校のいじめすら認めない行政が、自分たちの施設の中のことは認めないのかと言わなきゃいけないわけですね。これは本当にメスを入れなければなりません。

 私は、三人の子供を児相に保護されて、家庭に戻った後、長女だけ分離させられた母親を知っています。三人ともとても仲よしで、子供たちとじゃれ合ったりして、私も一緒に会ったことが何度かあるんですけれども、今回の措置は大変衝撃でありました。

 ただ、子供が複数いたために、複数の、つまり、長女も長男も次女も同じことを言っているんですね、児相の中で起こったことについて。隣の部屋から毎晩のようにどなり声や泣き声が聞こえたと訴えました。これは相手にされない。私も担当官にも話をしたわけですけれども、なかなかそこに光が当たりません。そのときに強く思ったのは、やはり第三者が欲しいと思ったわけであります。

 新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の提言でも、一時保護所等への第三者機関による評価の仕組みを構築すべきとされました。第三者評価について、ことしから予算措置をしたというんですけれども、まだ手を挙げたところはないと聞いています。手挙げ方式では広まらないんじゃないか、これはやはり義務づけるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 児童相談所の一時保護所は、虐待等を受けた子供の安全を確保するとともに、心身の状況や置かれている環境を把握する、そういう施設でもあるわけでございます。子供の立場に立った保護、それから質の高い支援を行うということのために、一時保護所の運営等についての自己評価そして外部評価、これを行うことが質の向上につながるというふうに考えております。

 こういうことからも、厚労省において、平成二十九年度予算で、第三者評価を受けるための費用への補助というのを創設いたしました。

 今年度から第三者評価を実施することとしている一時保護所の数は現時点ではまだ把握できる段階にはなっておりませんけれども、今後、各一時保護所において、国庫補助を活用いただいて第三者評価を実施していただきたいと思っておりますし、その実態は私どもとしてもしっかり把握をしてまいりたいというふうに思っております。

 あわせて、私どもの新たな社会的養育の在り方に関する検討会において一時保護のあり方そのものを検討することとしておりますので、その議論なども踏まえて、一時保護所の第三者評価を義務づけるかどうかについても検討してまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 あってはならないと言った以上は、やはり第三者評価は絶対避けては通れないと思いますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。

 今、社会的養育の在り方に関する検討会のお話がありました。その中で、問いが一つ残っていますので聞いておきたいと思うんですが、児童養護施設ですね、これはやはり、今、家庭に近い状況でやるべきだという方向の中で、大舎ではなく小規模な施設というのを全体として進めてきたと思うんです。

 先日も、岩手県盛岡市で、たまたま、子供の貧困をテーマにしたシンポジウムをやったときに、みちのく・みどり学園というところの副理事長さんからお話を伺う機会がありました。

 幼児から高校生まで、合わせて五十一人の児童を見ているんですけれども、そのうち、本体と合わせて六カ所、つまり、残りの五カ所は、小規模グループケアとか地域小規模児童養護施設という形で、まさに方針に沿って小規模化、定員五人から六人くらいのをやっているわけなんです。でも、大変いいんですけれども、私はそれも理想だと思うんですが、そのためには、当然、職員一人プラス宿直、それで三交代ですから、大変な人が必要です。しかも、夕食づくりも後片づけもやらなきゃいけないし、学校の対応もあって、子供と向き合う時間がない。本来なら、一対一くらいでなければ本当の意味での家庭的な環境というのはできないんだと訴えられているわけなんですね。

 御存じのように、児童養護施設はみずから何か利益を上げて収入を得ることができるわけではありませんので、ここはしっかりと手当てをしなければならないと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 去年の児童福祉法の改正においては、やはり生みの親に育ててもらうというのが子供は一番、そして、それがかなわないということであれば、それと近い家庭環境で育ててもらう、つまり特別養子縁組ないしは里親、ファミリーホームというのがその複数形でございますが、それでもうまくいかないという場合には、施設の中でも、今御指摘のあったような小規模なものについてぜひ活用をというふうに考えています。

 良好で家庭的な環境で養育をされるということが小規模のケア単位での養育であって、施設機能の地域分散による小規模化を私どもとしても推進しているわけでございます。

 小規模化などに向けた職員体制について、今、充実の必要性を御指摘いただきました。そのために、平成二十七年度予算では、児童指導員等の職員配置を引き上げた児童養護施設等に対する新たな加算というのを設けたところであります。

 また、職員の処遇改善については、これは何度も申し上げておりますけれども、平成二十九年度予算で、民間の児童養護施設等の業務の困難さに応えて、人材の確保と育成を図るために、まず、全ての職員の皆さんに給与の二%相当の処遇改善、これを行う。続いて、これに加えて、虐待や障害等のある子供への夜間を含む業務内容を勘案した、初めての上乗せということをやることになりました。

 これらの改善が確実に実施をされるように都道府県や施設関係者に周知をしていくということと、現場の実態も伺いながら、児童養護施設等において良好で家庭的な養育環境が確保されるように、しっかりと取り組んでまいらなければならないというふうに考えております。

高橋(千)委員 現場は本当に頑張っていますので、よろしくお願いします。終わります。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 二回目の質問に入らせていただきますが、先ほど高橋委員も御心配されていたように、かなり空席が目立っている状況です。これから採決も予定されていると思いますので、ネット中継等を見られている委員の方がおられたら、早目に戻ってこられるといいかなというふうに思います。

 それでは、児童相談所のことについてお聞きをしたいと思います。

 まず、児童相談所で相談を受けてから対応に至るまで、どのくらいの職員がかかわり、要する時間がどの程度あるのか、地域によってそうした体制に差があるのかどうか、政府の認識を伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 大変恐縮でございますけれども、虐待の相談を受けてから対応までにかかわる職員数、時間数、これについては、ケースによりさまざまということで、私ども一概にお答えをするのが難しゅうございますし、ましてや、地域差という点については、ちょっとそれに対してお答えするものを持ち合わせてございません。

河野(正)委員 児童相談所での児童虐待の相談対応件数を都道府県、政令市、児童相談所設置自治体の別に分けて見ていきますと、都市部はもちろん、地方部においても二割程度件数がふえていることが珍しくない状況と思います。

 児童相談所の人数配置は相談の急増に対応できているのかどうか、認識を塩崎大臣に伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただいたとおり、児童相談所における虐待相談対応件数というのが、平成二十七年度で十万三千二百八十六件ということで、これは児童虐待防止法施行直前でありますが、平成十一年度に比べると約八・九倍に増加をしています。

 支援を担う児童福祉司は、平成二十八年度、三千三十人でございまして、これが平成十一年度に比べますと約二・五倍ということで、伸びは大分下回っているということでございます。

 増加する虐待相談に的確に対応して、子供の安全確保を迅速に行うためには、児童相談所の体制や専門性の強化を図ることが必要だというふうに考えているわけで、このため、私ども、昨年四月に児童相談所強化プランというのをつくって、児童相談所の専門職を平成三十一年度までに、四年間で千百二十名増員することを目指しております。加えて、昨年五月に改正されました児童福祉法を踏まえた政令改正によりまして、児童福祉司の配置基準は、人口だけではなくて業務量も考慮するということにいたしました。

 また、専門性を高めるために、増員だけではなく、児童相談所に配置する専門職として、児童心理司、それから弁護士などを新たに法律上に位置づけました。さらに、児童福祉司などの研修受講も、前は児童相談所長だけでしたが、職員にも、そして要対協のスタッフにも、そして、私は市町村の担当者もやるべきだというふうに思っております。

河野(正)委員 人が足りない状況があっても、それを補うためには、やはり予算措置が伴わないと対応ができないんじゃないかと思います。

 昨年まとめられました児童相談所強化プランでは、児童福祉司や児童心理司、保健師といった専門職を大幅に増員することとされております。現在二年目でありますが、着実にふえているという評価なのかどうか。増員された職員が常勤、非常勤のどちらかという点もお尋ねしたいと思いますし、また、司法の関与がふえていけば、いわゆるデスクワーク、事務作業の増加も見込まれると思います。今大臣から業務量に応じてということも言われましたが、果たして専門職だけの増加で足りるのか、この二点について伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月の児童相談所強化プラン、平成三十一年度までに専門職を千百二十人増員という計画的な増員計画でございまして、これにおきましては必要な交付税措置が講じられているものと承知をしてございます。

 実績につきましては、平成二十八年度の交付税措置におきまして、これは標準団体ということでございますが、人口百七十万人当たりで、児童福祉司については前年と比べて三人の増員、それから、二十九年度の交付税措置におきましては、さらに児童福祉司二人の増員がなされたというふうに思っております。

 また、あわせてではありますけれども、昨年の児童福祉法の改正におきまして弁護士の配置ということがございましたので、この児童相談所強化プランに基づきまして、児童相談所の体制あるいは専門性もあわせて計画的に強化することにしてございます。

 ただ、今交付税措置の中身を申し上げましたけれども、その上で、常勤、非常勤ということ、大変恐縮でございますが、ちょっと今手元に増員の実績という意味では持ってございませんので、今後またいろいろなところから問い合わせをさせていただいて、我々も現状把握に努めたいと思います。

 また、二点目としまして、今回の法改正によりまして、非常に家庭裁判所の承認に係る事務というものがふえるということでございます。これに伴いまして、私ども、事務職員も必要かと思いますが、そのあたりにつきましては、もう少し改正内容を踏まえまして、実態を把握したいと思っております。

 ただ、非常にラフな計算ではございますけれども、現在、四百六十八件程度の親権者の意を欠いて行っております二カ月超えの一時保護の承認事務ということで、これを単純平均すると一児相当たり二件程度ということでございますので、このあたりも念頭に置いて、新しい制度を入れて実態がどうなったか注視をしてまいりたいというふうに思っております。

河野(正)委員 児童相談所は虐待への対応に追われているというのが現状だろうと思いますが、障害や育成、非行、保健についての相談も行う必要があります。

 虐待相談の急増によって他の相談業務にしわ寄せが及んでいないかどうか、伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 確かに、現場、虐待の相談対応件数が大幅に増加しておりますので、虐待相談以外、類型としましては、その次に多いものとしては、いわゆる障害相談と言われるもの、またあるいは育成相談、不登校などの相談などなど、ほかの類型の相談も行っておりますが、そのあたりについて、全体として業務に支障が生じないように、先ほど申しました児童相談所強化プランなどを通じて専門職の計画的な増員などなど体制の強化、そして、その実態については注視してまいりたいと思います。

河野(正)委員 市町村との役割分担について伺いたいと思います。

 昨年成立した改正児童福祉法では、市町村は児童等に対する必要な支援を行うための拠点の整備に努めることとされ、児相との連携、協働した支援を求められていますが、これが実際に機能しているのかどうか。制度が始まったばかりでありますが、こうした取り組みが自治体で進んでいるのかどうか。拠点整備の進捗状況、今後の見通しについて伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えをいたします。

 市区町村の子ども家庭総合支援拠点、いわゆる支援拠点と略称しておりますが、昨年の法改正により新たに制度化されたものでございます。

 市区町村における子供とその家庭及び妊産婦等を対象としたまず実態の把握をするということ、それから、子供等に対する相談全般から、通所、在宅支援を中心にしたより専門的な相談対応や必要な調査を行う、そして訪問等の継続的なソーシャルワークなどの業務を行うものとして、私ども、その役割に期待してございます。

 この拠点の整備に向けましては、私どもの、有識者によります市区町村の支援業務のあり方に関する検討ワーキングで御議論をいただき、それを踏まえまして、ことしの三月に、支援拠点の設置運営要綱という形で定めさせていただきました。

 また、財政面で、既存の施設の修繕等に要する費用に補助をする、あるいは人件費等の運営に要する費用の補助という形で、ハードあるいはソフト両面からの支援拠点の整備を今促進しているところでございます。

 現時点において、まだ整備状況については、ことし四月から改正法が施行されたばかりでございまして、直近の数字という形では把握してございませんけれども、今後引き続き、事態の推移に応じて実態を把握するとともに、私ども、できるだけ多くの市区町村において整備を進めていただくよう、調査、実態を把握させていただきたいというふうに思っております。

河野(正)委員 次に移りまして、家庭裁判所について伺いたいと思います。

 司法関与がふえることで、それに対応する家庭裁判所の体制を整えておく必要が生じるのではないかと思います。どのように備えているのかを確認させていただきたいと思います。

 実務の中心を担うのは家庭裁判所の調査官になると思いますが、調査官自身は、少年事件など、ほかの種類の案件を多数抱えているのではないかなと思います。

 児童虐待事案への司法の関与が広がるのに合わせて、どのような研修を重ねているのか、現状と今後の取り組みについてお示しいただきたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 家庭裁判所調査官につきましては、委員の御指摘にございましたとおり、裁判官の命を受けて、心理学、教育学等の行動科学の専門的知見及び技法を用いて判断に必要な調査、調整を行うわけですが、御指摘ございましたとおり、少年の非行等を扱う少年事件と、それから家事事件と、それぞれ担当している者もおれば、その両方を担当している者もございまして、家事事件におきましても、離婚、子供の親権、監護権をめぐる紛争でありますとか、御審議いただいておりますような児童福祉法二十八条に関係するような事件など、さまざまな類型を担当しているというところでございます。

 今回の法改正を踏まえた体制の整備につきまして御質問いただきましたが、まずはこの国会での御審議の結果を踏まえて対応を考えてまいりたいというふうに考えてはおりますけれども、家庭裁判所による一時保護の審査など、新たに導入される制度が円滑に運用されるよう、これまで増員してきた現有人員の有効活用を図りつつ、法改正の趣旨を踏まえて、必要な人的体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

 また、研修につきましても、これまでも児童虐待の関係は、専門家の方、実務家の方を研修にお呼びするなどして御講演いただいたりして、裁判所としての専門性も高めるように研修に努めてきたところでございますが、今後も、この新たな制度のことも念頭に置きまして、さらに研修の充実を図っていきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 家庭裁判所は、離婚後の親子の面会交流に関する調停などの場面で、子の福祉、子の成長と向き合う最前線で取り組んでおられることと思います。この問題から、家庭裁判所による実務の現状と課題について伺いたいと思います。

 離婚後の親子の面会交流の問題をめぐり、当事者から家庭裁判所への不信感を訴える声というのも聞いております。例えば、調査官が当事者の声に耳を傾けるのでなく、既に結論ありきで、それに合わせた意見を引き出すような対応を受けた、子供が調査官に話したことと違う内容を裁判官に伝えていたといったものが聞かれます。

 面会交流について定める民法七百六十六条では、親子の面会交流や子の監護費用など必要事項は協議で定め、子の利益を最優先で考慮することとされております。

 先日、厚生労働委員会における法務省の政府参考人答弁では、夫婦の離婚と親子の離別は別問題、子の健全な成長という面からは、一般的に、親との接触は継続することが望ましいとされております。このような考え方は、裁判所における実務において、基本方針のような形として共有されているのかどうか、こうした基本方針があれば、現場の担当者がそれにのっとって仕事をしがちになる懸念も生じますが、見解を伺いたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 面会交流の際の基本的な考え方については、委員御指摘の民法七百六十六条の定めがまさにそれを定めているものと思っておりまして、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と規定されているところでございます。

 各裁判官はこの規定に従って判断をしているというところで承知をしておりますが、この規定を国会で御審議いただいたときの審議経過、あるいはその後の解釈論などでは、子の健全な成長の面からしますと、委員の御指摘にもあったとおり、一般的には、いずれの親との間でも接触は継続するということが望ましいと言われているところでございまして、これも重要な要素として検討の中に入っているものというふうに思います。

 他方で、虐待があるような事案など、面会を認めることがかえって子の利益に反する事案もあるものと承知をしておりまして、面会を認めることが子の利益にかなうかどうか、これは個別事案の事情を踏まえて検討すべきというところでございまして、家庭裁判所では、面会を認めることが子の利益に反するおそれがあるようなそういう事案では面会交流を行わないということももちろん当然含めまして、親子間の面会交流のあり方について個別の事情に応じて適切に判断をしているものと承知しております。

河野(正)委員 たびたび話題となっておりますけれども、ことし四月、兵庫県伊丹市で、離婚後の面会交流中だった父親と長女が死亡する痛ましい出来事がありました。心より御冥福をお祈りいたしたいと思います。

 面会交流の機会が親による子殺しにつながってしまったと言え、なぜ子供の命を救うことができなかったのか、関係者を含めて丁寧に事後検証をすることが必要だというふうに思います。

 仮に家裁の関与があったならば、裁判官の独立は尊重しつつも、判断に至ったプロセスを検証することが不可欠ではないかと考えますが、また、この事件を取り上げた報道の中で、家庭裁判所の実務では、同居する親が離婚した元配偶者に子供を会わせることに不安や恐れを感じていても、それが過小評価され、面会を強要されがちとの弁護士による指摘もあっております。

 面会交流に当たっては、離婚後の状況だけではなく、同居時にどのような行動をとっていたのか、面前での暴力を含め虐待はなかったのか、きちんと評価して判断すべきであって、面会交流は、子の福祉を過度に一般化することなく、ケース・バイ・ケースでの判断が求められると思います。

 失われた命は取り戻すことができませんが、せめて同様の事件を起こさないように我々含めて努力をすることが求められると思います。いろいろとまだこの事件等に関しても答弁いただけないこともあるかと思いますが、可能な範囲で、最高裁並びに塩崎大臣の見解を伺いたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、検証につきましてでございますが、裁判所に申し立てが全くされていないような事案につきましては、裁判所においてはその事案について何ら情報がございませんので検証が困難であるということは御理解をいただきたいと思います。

 また、裁判所に何がしか面会交流に限らずですけれども申し立てがあった事案ですと、一定の情報があり得るわけですけれども、最高裁判所事務総局といたしましては、裁判官の独立との関係上、個別の事案の審理運営、判断等の当否を検証するということは、これはできかねる、この点をまた御理解をいただければありがたいと存じます。

 その上で申し上げますと、一般的な面会交流の審理のあり方につきましては、例えば裁判官が非常に判断が難しかった事例を持ち寄るというようなことも含めまして、ある程度抽象化して持ち寄るということにはなろうかと思いますが、これまでも裁判所内部の研究会などで取り上げられてきているところでございまして、今後も面会交流について適正な審理、判断がされるよう、必要な取り組みを支援してまいりたいと考えております。

 なお、個別事案の実情を踏まえる際には、委員の御指摘ございましたとおり、離婚後の状況のみならず、同居時の事情も当然考慮の対象として含まれるものというふうに理解をしておりまして、家庭裁判所において、これらの事情を総合的に考慮して、面会交流のその事案におけるあり方について適切な判断がされているものと承知しております。

塩崎国務大臣 厚生労働省では、こういった心中事案を含めて、児童虐待による全ての死亡事例につきまして、それぞれ、自治体から報告を受けて、関係省庁を交えた社会保障審議会児童部会の児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会というところで、いつも、養育環境とか関係機関の関与の状況がどうだったかとか、いろいろな分析や検証を行って、虐待死の防止のための取り組みにつなげていくことにしておりますが、今回の事案につきましても、捜査の状況あるいは自治体における対応を待つ必要はありますけれども、当然、今申し上げたとおりの国における検証、加えて、その検証結果を踏まえた上で、再発防止をしっかりとやっていかなければいけないというふうに考えております。

河野(正)委員 配偶者等への暴力の背景に精神疾患がある場合の支援策の検討、子供の成長、発達に向けた児童精神科領域の知見など、医学的知見を有する医師が貢献できる部分はたくさんあるんじゃないかなと思います、実際には人材がいなくて厳しいこともあるかもしれませんが。

 例えば、児童への性的虐待や、それに伴う性非行などの問題行動、解離性障害、PTSDなど、精神科領域での適切な診断と治療を受けることで、子供が快方に向かい、自立へと結びつけることにつながるかもしれません。

 保護者指導や支援などのさまざまな局面で、医学的知見を含めた専門家の知見を結集することが重要だと考えますが、いかがでしょうか。

古屋副大臣 お答えいたします。

 児童思春期の精神疾患に速やかに対応できる医療体制を確保するためには、専門人材の養成、専門医療を提供できる医療機関の確保、また医療機関のネットワーク化といった課題があると認識をいたしております。

 このため、厚生労働省では、平成十三年度より、児童思春期の心の問題に関する専門人材を養成するため、医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、臨床心理技術者等を対象とした研修を実施してきております。

 さらに、都道府県が策定する平成三十年度からの第七次医療計画では、多様な精神疾患等に対応できる医療連携体制の構築を目指し、児童思春期精神疾患につきましても、専門医療を提供できる医療機関を明確にすることや、多施設連携の拠点となる医療機関を明確にし、医療機関のネットワーク化を図ることなどを記載することといたしております。

 厚生労働省としては、こうした取り組みによりまして、児童思春期の精神疾患に対応できる医療機関の裾野を広げることによりまして、地域の医療体制を確保して、支援を必要としている方々に良質かつ適切な医療が提供されるよう、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

河野(正)委員 では、次の質問に移りたいと思います。

 平成二十七年度の児童虐待を理由とした一時保護件数は一万七千八百一件に及び、そのうちおよそ三分の一は児童養護施設や乳児院などに委託されているということであります。経年的に見ますと、一時保護件数は平成二十一年度の一万六百八十二件から七千件ほどふえており、一時保護委託の割合も増加傾向というふうに思われます。

 こうした現状をどのように受けとめているのか、そして、委託先をどのように選んでいるのか、考え方があればお示しいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 二点お尋ねをいただきました。

 まず、数の問題としまして、児童相談所における一時保護件数の増加ということでございますが、保護理由別の件数で見ますと、児童虐待以外の部分についてはおおむね一定数ということでございますので、結果、全体の一時保護件数の増加は、児童虐待による保護についての増加ということで、これは児童相談所における虐待相談対応件数が年々増加を続けていることが少なからず影響しているのかなというふうに思っております。

 ただ、二点目の一時保護の委託先をどのように決めているかということでございますが、この委託先につきましては、お子さんの年齢ですとか心身の状況とか地理的要因などを勘案するということでありますけれども、特に、乳児あるいは障害を有するお子さんについては、その子供に対応できる施設または里親さんへの一時保護委託になりますし、親権者等から施設入所の同意が得られなくて、児童福祉法第二十八条措置の申し立てにより一時保護期間が相当長期化すると予測される場合などは、子供の生活環境や公教育などを考慮して児童福祉施設への一時保護委託か、あるいは、専門的な治療や検査が必要なお子さんは、その子供に対応できる医療機関等への一時保護委託という形で、それぞれ、今申しましたようなことを想定しながら、個々、現場において最も適切な一時保護委託先を選んでいるというのが実態かと思います。

河野(正)委員 夫婦の離婚と親子の離別は別問題というふうにされておりますが、離婚の原因が配偶者への暴力であり、暴力が日常的に見られる家庭で育つ子供にとっては、そうした家庭環境は良好な成長、発達を阻害すると考えられます。きょうも、面前DVということで随分議論をされていたかと思っております。

 一般的に、配偶者間で暴力が振るわれていれば、子供は面前DVという心理的虐待にさらされる懸念が高く、児童福祉法による一時保護、児童虐待防止法に基づく接近禁止命令によって、子供の安全を確保していく必要があるのではないかと思います。

 例えば、配偶者による暴力の被害を受けた者が子供を連れて一時保護シェルターに避難した場合、子供はどのような保護を受けることになるのか。児童福祉法の枠組みを利用するため、親と子が離れることが求められることになるなら、むしろ、一時保護の委託先にDVの一時保護シェルターを加えるなどの対応が必要ではないかというふうにも思います。

 配偶者暴力の加害者は児童虐待の加害者ともなり得るのであり、加害者更生プログラムなどの、DV、児童虐待、双方のプログラムを受けるといった取り組みを求めることが、子供の安全、健やかな成長のために必要だと思います。その先に親子再統合に向けた取り組みがあるのではないかと思います。

 子供の健全な成長を実現する環境を整えることを最優先とし、子供に向けられたあらゆる暴力、虐待から子供を守る取り組みが求められますが、塩崎大臣の見解を伺いたいと思います。

古屋副大臣 お答えいたします。

 児童相談所による一時保護は、いわゆる面前DVを含めて、虐待等を受けた子供の安全確保が第一目的でありまして、一時保護をした子供の保護者が面会を希望して強引に一時保護所に来所する場合など、必要と認めるときは、児童虐待防止法第十二条に基づく面会、通信の制限を行うことが可能であります。

 また、今回の改正法案におきましては、現場からの意見を踏まえまして、一時保護等の場合でも接近禁止命令を行うことができることとしておりまして、これにより、一時保護された子供のさらなる安全確保を図ることといたしております。

 御指摘の、児童相談所からDVシェルターへ子供の一時保護委託をすることは制度上可能でありますけれども、通常、婦人相談所からDVシェルターに母子ともに一時保護委託され、安全が確保されていると考えられます。

 今後とも、児童相談所と婦人相談所の連携をしっかりと図り、子供の安全の確保とケアをしっかりと進めてまいりたいと考えております。

河野(正)委員 委託に当たっては、委託先の施設に対して委託費が出るものの、一日二千円程度で低過ぎるという声を伺っております。性的虐待の被害者への支援など一定の専門性がありながら、金銭面で十分評価されていないように思われます。

 児童虐待の相談件数は増加が続き、それに適切に対応していくためには、委託費の拡充など経済面も含めた環境整備が重要であると思いますが、見解はいかがでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 一時保護委託手当につきましては、平成二十八年度から日額二千三百六十円を日額四千四十円に引き上げさせていただきました。

 この一時保護のあり方全体につきまして、現在、私どもの新たな社会的養育の在り方に関する検討会において検討することとしておりますので、必要となる一時保護委託費につきましても、その議論を踏まえて検討してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 次に行きますが、接近禁止は、親権者等の意に反して施設入所等の措置がとられている場合に限られておりましたが、本改正案により、同意のもとでの施設入所と一時保護の場合も接近禁止命令が出せるようになります。

 説明では、性的虐待を受けた児童生徒を、一時保護、同意入所措置をとっている場合、加害者の待ち伏せの危険があって通学できないといった事案に対応できるようになるということでありました。性的虐待が例示されておりましたが、他の虐待の類型の被害者においても同様の問題が生じ得ると思われます。例えば、面前DVによる心理的虐待を理由に一時保護されている子供に対し、面会交流を求めて親が待ち伏せるといったこともあり得るのではないかなと思います。

 虐待の類型にかかわらず、接近禁止命令を行える場合が広がるという理解でよいのかどうか、法改正の必要性とあわせて確認したいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案で、接近禁止命令を一時保護あるいは同意入所の場合にも拡大することを提案させていただいていますが、これは、全国の児童相談所に対する調査結果、いわば現場の声を踏まえて整理をさせていただいております。

 その対象につきましては、御指摘のとおり、性的虐待に限りませんで、いわゆる面前DVなどのケースにおきましても、例えば児童へのつきまとい、徘回などにより子供の安全が確保できないなど、必要がある場合には接近禁止命令を行うことができるというふうに私ども整理をしてございます。

河野(正)委員 次に移ります。

 昨年成立した改正児童福祉法において、児童自立生活援助事業、自立援助ホームの対象者が、二十二歳の年度末までの間にある就学中の者も追加されるとともに、里親等への委託、施設入所措置を受けていた者も原則二十二歳の年度末まで必要な支援を受けられることとなり、社会的養護自立支援事業が創設されたと思います。事業はまだ始まったばかりでありますが、二十二歳までの継続した支援が行き届いているのか、取り組み状況を現時点でお示しいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 昨年の法改正によりまして、今御指摘のように、自立援助ホームに入所している方については、大学等に進学している方が、必要に応じて二十二歳の年度末まで引き続き入所して支援ができるということにいたしました。

 また、大学等の進学以外の、就職などの場合で自立援助ホームに入居している場合、あるいは養護施設などや里親等に入所、委託していた方についても、同様に、措置解除後、二十二歳の年度末までの間、引き続き入所、委託して支援する事業、これは予算として二十九年度、盛り込ませていただきました。

 この事業につきましては、いずれも新規事業ということもございまして、特に予算事業、今後、補助金の申請手続等を行っていくことになりますが、多くの都道府県等がこの事業に取り組んでいただけるよう働きかけてまいりたいと思っております。

河野(正)委員 全国社会福祉協議会の調査によりますと、二〇一五年度に児童養護施設等を退所した者のうち、二割近くと連絡がとれなくなっているということであります。退所後も、相談などによって自立支援が必要な例も少なくないはずだと思いますので、こうした状況を放置すべきではないと考えますが、見解を伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童養護施設等に入所しているお子さんの退所後においても円滑に社会生活を送っていただくことができるように、そのためには、入所中から退所後の生活を念頭に置いてきめ細かな支援を行うことが必要だという点は私ども委員と同意見でございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、まず、入所中の段階から、地域生活を始める上で必要な知識あるいは社会常識等を学んでいただく、それから金銭管理など生活技能を習得するということが必要ですので、その支援を行う、そして、退所後も、生活、就労に関する相談、施設を退所した子供同士が気軽に集まり、意見交換をできる活動を支援するというようなことに対して補助を行う事業を実施しております。この支援に取り組む都道府県も、二十八年度見込みで三十三自治体とふえてございます。

 さらに、二十九年度からは、措置解除後、原則として二十二歳の年度末まで、支援コーディネーターが自立に向けた支援を行うための継続支援計画を策定していただいて、住まいの場が必要な場合には、里親の居宅や施設等において引き続き居住の場を提供して、必要に応じて一定額の生活費を支給するということにさせていただきました。

 これらの取り組みを通じて、退所後のお子さんたちに対しても継続的な自立支援の充実に取り組んでまいりたいと思います。

河野(正)委員 いろいろと新たな取り組みも行われているということでございますので、ぜひとも十分なフォローができればなというふうに思います。

 大臣に伺いますが、二十二歳まで支援が続く枠組みというのはできましたが、生活基盤を確立するためには、子供たちの状況に応じて支援を続けていくことが重要かと思います。二十二歳という節目を迎えても、生活困窮者支援など、他の支援策ときちんと連携して取り組むことで、より早い自立へとつながるのではないかと思います。

 制度の枠組みにとらわれない支援も重要と考えますが、見解を伺いたいと思います。

古屋副大臣 先ほど局長からも御答弁をいたしましたけれども、昨年の児童福祉法の改正等によりまして、自立援助ホームや児童養護施設等の入所者は、措置を解除された後も、二十二歳の年度末までの間、継続的に入所できるようにいたしました。

 議員御指摘のとおり、その後の自立の見込みが立っていない若者等に対しましては、就労支援も含めた包括的な支援が必要なため、生活困窮者自立支援制度の相談窓口に適切につなぐことを周知いたしております。

 また、生活困窮者自立支援制度の施行三年後見直しの議論の中でも、こうした若者等に対する自立に向けた相談支援の必要性が論点として挙げられておりまして、こうした論点も踏まえて、社会保障審議会において制度の見直しを検討していくことといたしております。

 これらの取り組みを通じまして、児童養護施設退所者等の継続的な自立支援の充実に取り組んでまいりたいと思います。

河野(正)委員 次の質問に移りたいと思います。

 昨年の十一月十五日、私の地元であります福岡の西日本新聞に、「「親子心中は虐待」認識あるか」「精神科医療と児童福祉 足りない連携」「進まぬ対策」と題する記事が掲載されております。親子心中は最悪の身体的虐待であり、保護者自身が精神疾患を抱えていることも多く、精神科医と児童相談所などの福祉の連携によって未然に防ぐ取り組みを進めるべきといった趣旨の記事であります。

 厚生労働省が毎年公表している子ども虐待による死亡事例等の検証結果では、心中とそれ以外に分けて死亡事例と人数をまとめておられると思います。心中による虐待死では、主たる加害者は実母が八割以上を占め、保護者自身の精神疾患、精神不安が加害動機の六割ほどとなっているということであります。

 こうした現状を踏まえ、福岡市の児童相談所、こども総合相談センターの所長の藤林武史先生は、きのう参考人としてお越しいただきましたが、精神科病院協会との連携を深めようという取り組みを進められております。

 児童相談所にとっては、保護者の精神科受診といった状況を把握することにハードルを感じることも多く、日常からの連携が必要との問題意識でありますが、こうした取り組みをどのように受けとめているのか、政府の認識を伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 心中であれ、心中でない場合であれ、児童虐待による子供の死亡というのをとにかくなくす、未然に防ぐというためには、関係機関の連携協力体制を強化する、とりわけ、今御指摘いただきましたように、児童相談所の現場と精神医療との間の連携関係を強めるというのは大変重要であるというふうに私どもも思っております。

 市区町村におきましては、児童相談所、そして精神科医療、精神科のドクターも含む医療機関、警察、保育所、学校などで構成されます要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協、これも地域によって多少メンバーは変わっておりますけれども、要対協を設置して、子供の保護や支援に必要な情報と、まず考え方を共有していただいております。

 また、昨年の児童福祉法改正によりまして、この協議会、要対協の機能をさらに強化するために、調整機関への専門職の配置をする、そして研修受講を義務化するということをさせていただきました。調整機関に配置される専門職の資質の向上を図ることで、協議会を構成する関係機関との連携協力体制の強化もできるのではないかというふうに狙っております。

 また、あわせて、この改正によりまして、児童相談所、市町村に求められた場合には、医療機関あるいは学校は被虐児童等に関する資料を提供できるというふうにさせていただきました。

 こういう制度の活用により、それぞれの地域地域における関係者の間の連携強化、とりわけ児童相談所と精神科医療関係者の方々との連携強化を進めさせていただきたいと思っております。

河野(正)委員 精神科医の立場からしますと、守秘義務や患者さんとの信頼関係のために情報提供に応じがたいという面も多々あるかと思います。ただ、その点を難しいからといって放置してしまう、逃げてしまうことによって親子心中のリスクを無視するわけにもいかず、極めて難しい課題なのかなと思います。こういった連携が、そういう障害を乗り越えて、しっかりとうまく実を結んでいくように求められるのではないかなと思います。

 最後の質問ですが、児童精神科の専門的な人材や治療機関の現状をどのように捉えられているか、大臣に伺いたいと思います。

 きのうも参考人で来ていただきました松田先生、非常に多くの役職を抱えておられまして、なかなか児童精神科の専門家というのがいないというのが、古屋副大臣もよく御存じのとおり、現状としてあるかと思います。

 発達障害の診断が急増するなど、幼児、児童期からの早期治療介入を求める声もふえていると感じます。しかし、繰り返しになりますように、専門的な治療機関や人材は少なく、受診までに半年以上かかるというような例もあります。私も精神科医ですので、専門の児童の先生を紹介しようと思ってもなかなかいないし、我々が個人的な人脈も使ってお願いしても、半年後だよとか、早くても三カ月後とかいう例がざらにありまして、本当に困ってしまうということがあります。

 また、待っても診てくれる施設があればいいんですけれども、居住地域や地方であれば専門医がいないというところもあるかと思います。本当に、飛行機に乗ってどこかまで診てもらいに行かなければいけないという例もあるかと思います。

 専門的な人材の養成を進めるとともに、治療や相談を受けられる機会を拡充していく取り組みも求められると思っておりますが、見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 これは昨年の児童福祉法の改正を準備する過程で、今、河野先生御指摘のように、いかに日本は児童精神医学の専門の先生方が少ないかということを聞いてびっくりしました。その方から聞いたのは、六年間の医学教育の中でこの児童精神医学は二十分ぐらいしか教わっていないという話で、医系技官に厚労省で聞きますと、ほとんど学んだ記憶がないというふうに言っていました。

 ということは、医学教育からして、児童精神医学に対するウエートづけが少しほかの国と違うのではないかということで、これについては、いずれにしても、普通の保育とかいうのとは全く違う、難しい、精神医学を踏まえた上での対応を子供さんにしていかないといけない、あるいは、それを治していくということについては本当に専門的に知識がないといけないわけで、そういう先生方とも私は去年の法改正に向けては随分議論をいたしましたけれども。

 やはりこれは医学教育から、そして、もちろん臨床研究、臨床研修、それから専門医が今度始まりますけれども、そういったところでも、やはり改めて子供に対するウエートをもう少しかけていただくように文科省にもお願いをし、そして、初期研修は厚労省ですからこれはみずからやらなきゃいけないし、専門医機構については専門医機構の方にまたお願いをしなきゃいけないなというふうに思っております。

 いずれにしても、非常に、一番愛されなきゃいけない親から虐待を受けるという中で、精神が、いろいろな問題を抱えている子供さんたちにどう真っ当に育ってもらうかということを考えたときに、やはりそういう専門の先生方を育てる、人材育成をしっかり考えた上で、文化も少し変えていかないといけないんじゃないかなというふうに思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 私も多分、医系技官の方々と同じように、何か児童精神医学の専門の先生が講義に来られていたというのは覚えているんですけれども、何を聞いたかはほぼ覚えておりません。

 そしてまた、私は研究室としては老年精神医学の方にいたんですけれども、今、高速道路の逆走であるとか高齢者の交通事故とかありまして、免許をどうするか、高齢者免許の問題とかありますので、やはりそういった面も医師が判断していかなければいけないことがあるので、児童ばかりに余り時間をかけても困るのかなと思いますし、非常に医学部教育六年でやることがたくさんふえちゃって本当に大変だなと思いますが、しっかりと我々も含めて考えていかなければいけないなと思っております。

 それでは、時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

丹羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 この際、本案に対し、とかしきなおみ君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。初鹿明博君。

初鹿委員 私は、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 家庭裁判所の研修内容に、子どもの権利や児童福祉についてのソーシャルワークの研修を組み込む等、人材育成に努めること。

 二 一時保護所においては、多様な背景を持つ児童の心の安定が保たれ、プライバシーに関して十分な配慮が払われるよう、個室化等の環境の改善を図ること。また、一時保護所への入所時における教育を受ける権利の保障、教員等の配置を充実させること。

 三 より適切な一時保護の在り方として、里親や民間NPO等への一時保護委託の活用を進めること。

 四 親子の再統合を支援するため、児童相談所の体制整備を進めるとともに、保護者に対するカウンセリング、依存症等の必要な治療、家庭内の子どもに係る衣食住を含む日常生活についての指導など、養育環境の計画的な改善を図ること。

 五 DV被害者が子どもを連れて婦人相談所に来た場合は、子どもに対する直接的な虐待がないとされる場合も面前DVの疑いについて児童相談所に連絡し、その後の対応について、一時保護委託先として取り扱うことも含めて検討し、連携を図ること。

 六 虐待死の防止に資するよう、あらゆる子どもの死亡事例について死因を究明するチャイルド・デス・レビュー制度の導入を検討すること。

 七 児童心理治療施設については、各都道府県一施設を早期に実現するとともに、児童の良好な成育環境を提供できる人材の育成と専門職の確保に努めること。

 八 児童相談所、婦人保護施設、NPO等の支援団体等が相互に連携する体制について検討を加え、適切な措置を講じること。

 九 予期せぬ妊娠をした妊婦や養育困難と見込まれる妊婦に対する支援については、妊娠中から特別養子縁組も視野に入れて児童相談所や民間団体との連携を深めること。

 十 児童虐待対応が必要な家庭に関する情報について、児童相談所と警察や医療機関等が全件共有できるよう必要な検討を行うとともに、転居時の対応や今後の政策立案にも活用すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

丹羽委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、塩崎厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

丹羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十六分散会


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