衆議院

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第2号 平成29年11月24日(金曜日)

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平成二十九年十一月二十四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 橋本  岳君 理事 堀内 詔子君

   理事 渡辺 孝一君 理事 西村智奈美君

   理事 岡本 充功君 理事 桝屋 敬悟君

      赤澤 亮正君    秋葉 賢也君

      安藤 高夫君    井野 俊郎君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      大岡 敏孝君    大西 宏幸君

      門山 宏哲君    木村 哲也君

      国光あやの君    小泉進次郎君

      小林 鷹之君    佐々木 紀君

      佐藤 明男君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    白須賀貴樹君

      杉田 水脈君    鈴木 隼人君

      田畑 裕明君    高木  啓君

      高橋ひなこ君    中曽根康隆君

      長尾  敬君    鳩山 二郎君

      原田 憲治君    百武 公親君

      福山  守君    船橋 利実君

      穂坂  泰君    星野 剛士君

      三ッ林裕巳君    山田 美樹君

      池田 真紀君    尾辻かな子君

      長谷川嘉一君    初鹿 明博君

      堀越 啓仁君    山本和嘉子君

      吉田 統彦君    下条 みつ君

      白石 洋一君    山井 和則君

      柚木 道義君    伊佐 進一君

      中野 洋昌君    篠原  孝君

      高橋千鶴子君    足立 康史君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   内閣府副大臣       松本 文明君

   厚生労働副大臣      高木美智代君

   厚生労働副大臣      牧原 秀樹君

   内閣府大臣政務官     山下 雄平君

   厚生労働大臣政務官    田畑 裕明君

   厚生労働大臣政務官    大沼みずほ君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        川又 竹男君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         中川 健朗君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           神山  修君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       高橋 俊之君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福田 祐典君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         宮本 真司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  木下 賢志君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十四日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     鳩山 二郎君

  木村 弥生君     中曽根康隆君

  小泉進次郎君     星野 剛士君

  後藤田正純君     門山 宏哲君

  高橋ひなこ君     穂坂  泰君

  初鹿 明博君     堀越 啓仁君

  吉田 統彦君     山本和嘉子君

同日

 辞任         補欠選任

  門山 宏哲君     福山  守君

  中曽根康隆君     杉田 水脈君

  鳩山 二郎君     佐々木 紀君

  穂坂  泰君     高橋ひなこ君

  星野 剛士君     原田 憲治君

  堀越 啓仁君     初鹿 明博君

  山本和嘉子君     吉田 統彦君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     小田原 潔君

  杉田 水脈君     大西 宏幸君

  原田 憲治君     鈴木 隼人君

  福山  守君     後藤田正純君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     高木  啓君

  大西 宏幸君     百武 公親君

  鈴木 隼人君     小泉進次郎君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     穴見 陽一君

  百武 公親君     尾身 朝子君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     木村 弥生君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 旅館業法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府子ども・子育て本部審議官川又竹男君、文部科学省大臣官房総括審議官中川健朗君、大臣官房審議官神山修君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官高橋俊之君、医政局長武田俊彦君、健康局長福田祐典君、医薬・生活衛生局長宮本真司君、労働基準局長山越敬一君、子ども家庭局長吉田学君、社会・援護局長定塚由美子君、社会・援護局障害保健福祉部長宮嵜雅則君、保険局長鈴木俊彦君、年金局長木下賢志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橋本岳君。

橋本委員 皆さん、おはようございます。

 さきの選挙が済みまして、特別国会最初の厚生労働委員会質疑でのトップバッターを務めさせていただくことになりました自由民主党の橋本岳でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、本当に、選挙が済みまして、きょうこの場におられる先生方は皆さんその選挙を勝ち抜いてこられたというわけでございますから、まことにおめでとうございますとお祝いを申し上げたいと思います。とともに、やはり姿の見られなくなった先生方もおられるというのは残念なことでございますが、それも選挙の結果であるわけでございますが、ぜひ再起を期して頑張っていただきたいと思います。

 私自身も、選挙区におきまして九万三千百七十二票という得票をいただいて当選をさせていただくことができました。その重み、責任を感じながら、しっかりと議員としての職務を果たしていきたい、このように思っているところでございます。

 また、与党として三分の二を超える多数の議席をお預かりしたわけでございますから、直近の民意という言い方をすれば、引き続き政権を担当せよ、しっかりやれという民意をいただいたというふうに思っていますから、私たちはその自覚を持って取り組まなければいけないというふうに思っております。

 一方で、比例票の割合でいえば議席数ほどのことではないというのも、それはそれで事実なのでございますから、しっかりとそうしたことも踏まえながら、謙虚に丁寧に政権運営に取り組む、これは総理の言葉でございますが、それを我々としては胸に刻みながら、そして、今、答弁席というか政府側の席におられる政務の方々にも、ぜひそのように取り組んでいただけるようにお願いをしたい、こう思っているところでございます。

 さて、今回の選挙戦におきまして、私たち自由民主党は、公約を掲げて戦ったわけでございますが、その柱の大きなものとして、人づくり革命、そして生産性革命、こういうことを申し上げて選挙戦を戦ったわけでございます。ですから、当然、それで御支持をいただいたわけでありますから、この公約の実現をするということは、まさに有権者の皆様方の御期待に応えるというためにはぜひ実現をしなければならないことでございます。

 幼児保育、教育の無償化、それから子育て安心プランの前倒しの実施、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善、こうした内容などが含まれていたわけでございますけれども、再来年に予定されている消費税二%の増収分の社会保障の充実に充てる分のバランスを変えまして、今申し上げたような政策の財源にする、こういうことを私たちは提案をして選挙戦を戦ったわけであります。きょう、自民党において、それに関する具体化に関する提言をまとめて政府に申し入れるということになっていると思いますが、ぜひしっかりと受けとめていただきたい、政府の皆様にはそう願うところであります。

 ただ、私個人といたしましては、その公約を掲げて選挙を戦ったわけでありますから、これはぜひやらなきゃいけないということは思っているわけでございますが、いろいろ複雑な思いがあったということは事実でございます。これは党内の会議におきましてもその旨発言をさせていただいて、若干報道にも出たりもいたしましたけれども、党内のことは国会に出すべきではないので余り申し上げませんが、その気持ちだけはぜひ皆様にお伝えをしなければならないと思っているのであります。

 それは、今回の公約によって、税と社会保障の一体改革ということで、当時の民主党それから自民党、公明党、三党が合意をして、消費税を五%から八%、一〇%と上げさせていただくときに、これを全額社会保障の充実と社会保障の安定化に充てるのだということを決めて、そしてその中で具体的に、このためにこれだけ使いますというような配分も決めて、そしてそれに沿って私たちなりに三%の引き上げを行い、あと二%の引き上げをさせていただこう、こういうことであったわけでございます。ですから、その使い方を変えるという話をもう少し丁寧に本当は議論してほしかったなという思いが正直ございます。

 そこでないがしろにされるのは何かといいますと、社会保障の充実、安定化といいます、充実しているんだからいいじゃないかという議論があるかもしれませんけれども、単に充実をさせてもらっているというだけではなくて、財政再建しなければいけないというものがありますから、二〇二〇年プライマリーバランス黒字化という目標に向かって、同時に社会保障というものの自然増を削るということをしてこれまで取り組んできている。そのためには、本来伸びるはずだった自然増を削るわけですから、実際には現場の方々に負担増をお願いしないといけないということもこれまで取り組んできたし、あるいは、適正化ということで、無駄かもしれないと思われるものについては削る。本当に無駄なものを削るんだったらそれは必要なことではありますけれども、現場の方にやはりそれだけの我慢をしていただいているという面もあるということ。

 そうやって一生懸命、毎年毎年、ここ二年でいえば、社会保障の自然増を五千億円にとどめる、おおむねですね、めどとかそういう言葉がついていますけれども、そういう努力をしてきたわけであって、社会保障というものは、単に伸ばして充実をさせてきていただいただけではない、歯を食いしばって、努力をして、我慢をしていただいて財政再建というものに対して努力をしてきた。そのことは、多分、ここにおる皆様方は共感をしていただけるんじゃないかと思います。

 それを今回、使途を変更するということでありますし、その変更するべき政策というものは必要なことだと思いますから、ぜひ進めるべきだという立場を崩すものではございませんけれども、やはり財政再建というものに対する社会保障の努力というのはしっかり受けとめていただきたい。そういう政策決定であったと信じたいと思っていますが、そうしたことが総理から感じられるかというと、もうちょっと発信してほしかったなという気持ちがあるというのは正直なところなわけであります。

 未来の、将来の話をしますね。

 今回の使途の変更によりまして、当然ながら財政再建というのは遠のくということになります。それでも、総理も所信表明で述べられたように、財政再建の旗というのはおろすわけにはいかない。これは当然なことでございまして、今後、社会保障というもの、また、これまでの財政再建の計画は三年間でありますから、また来年の骨太の方針とかそういうのに向けて、今後の社会保障を含めた財政再建の取り組みというものは議論されるということになるんだと思いますし、ある意味で、新しい、使途を変更したということは、政府の支出をふやしたということですから、それをさらに財政再建をしていこうとすると、より厳しい財政再建をしていかなきゃいけないということにはね返ってくるおそれがあるんじゃないかと大変心配をしております。

 もちろん財政再建に協力はしなきゃいけないんですけれども、守るべきものはしっかり守っていかなければいけない。国民の安心とか生活を守っていく大事な社会保障でありますから、医療にしても介護にしても年金にしても子育て支援にしても、しっかり守るべきものを守るのだ、こういう姿勢を持って我々はしっかり議論をしていかなければいけないんだというふうに思っています。

 私は党の部会長という立場ですから、党の中でそうした思いを持って取り組んでいきたいと思いますし、ぜひ、加藤大臣初め政務の皆様には、政府の中において、これからのそうした議論の中で、しっかりとした、ちゃんと守るべきものを守っていくんだという思いを持って取り組んでいただきたい、このことは要望を申し上げたいと思います。

 今申し上げたことを含めて、ぜひ、自民党の公約についてどのように受けとめておられるのか、加藤大臣としての御所感をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今、橋本委員からお話がありましたように、今、自民党において、橋本委員も厚生労働部会長としてもこの二兆円規模の政策パッケージについて御議論をいただき、大詰めに来ているというふうに承知をしております。そして、自民、公明のそれぞれの与党からいただいた提言、これを十分踏まえて、政府内でも、たしか十二月の上旬を目途に、政策パッケージの取りまとめに向かっていきたいというふうに思っております。

 その上で、今委員からいろいろ御指摘がありましたけれども、財政再建の、もちろん旗はおろさないということは総理が明言をされているわけであります。

 実際、医療、年金、介護に係る社会保障給付のうち約四割がいわゆる国、地方によって負担をされているわけでありまして、残り五割以上は保険料、これも国民の皆さんに御負担をいただいているわけでありますけれども、そして、加えて、この社会保障給付費は、例えば二〇〇〇年からこの十七年間、比べると約一・五倍にふえています。

 また、国だけで見て、社会保障関係費は約二倍に増加をしているわけでありまして、この国全体の歳出の増加に大変大きく影響している、こういう状況にあるわけでありますから、そういったことも考えると、国の財政が安定をしているということと社会保障を持続可能なものにしていくということは、もう表裏一体な関係にあると言ってもいいんだろうと思っております。

 そういった意味でも、社会保障をしっかり維持していくという意味においても、財政健全化というのはしっかり我々は取り組んでいかなければならないと思います。

 ただ、社会保障においても、必要な方に必要なサービスを提供するということと並行して、効率化等にこれまでも取り組んできたところでありますけれども、やはり、機械的にキャップをはめる、実は、過去、それは我々苦い経験があるわけであります。それが国民生活にさまざまな副作用をもたらした。そういう意味においても、その点は十分認識をしていく必要があるんだろうというふうにも思っております。

 そういった意味で、中長期的視点で考えれば、国民のQOLを向上していくということと同時に、医療、介護需要の増加の抑制が図られていくよう、今、データヘルス改革、あるいは保険者のインセンティブ改革による予防、重症化、重度化防止、あるいは医療、介護の提供体制の改革など幅広く取り組みながら、他方で、必要な財源をしっかり確保して、これからの社会保障に期待される、そういったものに応えていくべく努力をしていきたい、こういうふうに思っております。

橋本委員 今、表裏一体という言葉がありまして、国の財政が安定しているということと社会保障が持続するということと表裏一体だというお話がありまして、これは本当にそのとおりなんだろうと思っています。

 なので、ぜひ、ちゃんと予防に回すのであれば、例えばデータヘルスの推進だとかいろいろなことを取り組んでおられるわけでございますけれども、しっかりそうしたことが効果を上げるということを期待しますし、そうしたことによって、きちんと持続可能な社会保障というものと国の財政というものが安定をするということを両立させるということが、我々に、もちろん政府にもですけれども、与党としても課せられた使命だということは考えなければいけませんから、そうした思いでこれからも取り組んでいかなければならない。

 ただ、結局、そのときにやはり現場の方々に単に負担をかけるような形になってはいけない、そのことはぜひ申し上げておかなければいけないと思います。政策的に、みんなが健康になったので医療費かからなくなったね、そういうような方向を目指さなければいけませんから、ぜひそうした思いを持って取り組んでいただきたいと思います。

 さて、自民党の公約の中で、今その財政的な話をしたわけですけれども、いろいろな項目がございます。特に、幼児教育、保育の無償化というところについても、今、党内でもたくさん議論があったわけでございますし、また、いろいろな方々からいろいろな御意見が出ているというのも事実でございます。

 これは代表質問でもどなたかがおっしゃっておられましたけれども、無償化よりも全入化ではないかというようなお話もございました。いや、ちょっと、保育園に全入化というのはすごい表現だな。まあ、希望する人がみんな行けるようになるといいねという意味でおっしゃったんだと思いますから、それはそうなるといいなというものとして受けとめますが、別に、一〇〇%保育園に入るということを政府が奨励するとか何かが奨励するのも変な話でありまして、もちろん、子育てと仕事をしたい方はその両立をするという方向で臨めるような受け皿をきちんとつくっていく、それは大事なことだと思いますけれども、ちょっと全入化という言葉には私は違和感を感じたところでございます。

 そして、自民党でも、もちろん無償化というのだけをやろうと言っているのではなくて、待機児童の解消に向けて、子育て安心プランを前倒し実施するということはしっかりうたっているわけでございますから、ぜひそれも実現をしていって、待機児童問題に悩むお母様方がいないように、あるいはお父さんもですね、お母さんもお父さんも悩まないで、仕事をするということ、それから育児をするということが安心してしていただける環境をつくっていくということは大変大事なんだと思っております。

 ただ、子育て安心プランというのは、これから二〇二〇年までに必要な保育の量というのを三十二万人だということで試算をして、それを整備するのだ、それを今回前倒しするのだということで掲げていたわけでございますが、三十二万人で本当に足りるのかという議論がございます。

 これは、実際に党の会議にも野村総研の方々にもお越しをいただいて、例えば野村総研さんの試算についてお話を伺いました。それによりますと、二〇二〇年までに必要な保育の受け皿は八十八・六万人分であると。八十八・六万人でありまして、五十六万人ぐらい差があるわけですね。

 もちろん、どちらも将来の試算ですから、計算の仕方だとか考慮する要素だとかによって差がある。そこをきちんと検証して、さあ、どうなのだろうということを見ていかなければ、多いか少ないかという話は議論はできないと思っているわけでございます。

 ここで政府にお尋ねをしますけれども、その二つの試算について、何が違っているのかということについて御説明いただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えをいたします。

 野村総合研究所の保育の受け皿整備量に関する試算につきましては、全国の未就学児を持つ男女約三千七百人を対象としたサンプル調査による保育サービスの利用希望をもとにして、必要な保育の受け皿を推計したものというふうに伺っております。これは、育児休業中の方など、必ずしもすぐには保育を必要としない方も含まれている数字というふうに承知をしてございます。

 一方、政府の子育て安心プランにおきましては、二十五歳から四十四歳の女性の就業率が平成三十四年度末、二〇二二年度末に八〇%まで上昇する、その就業率と相関して保育の利用申込率も五割を超える水準まで伸びること、これを想定いたしまして、必要な整備量をマクロベースで推計した結果、足元二十九年度末までの整備見込み量との差約三十二万人分の保育の受け皿整備が必要としたところでございまして、それを今般、二年前倒しをするということになってございます。

橋本委員 今のお話ですと、アンケートの数字なのか、また申込量等々の数字なのかということの違いはある。ということで、結局、アンケートの方で利用したいんですと答えた人ということと、実際に自治体で申し込みをされたという人、その割合も伸びるだろうということも考慮されているということでありますが、どっちの数字を使ったのかということで差が出たのだという御説明だったのだという理解をします。

 これは、さっきおっしゃったように、アンケートの方は、育休で、ですから、今実際には行政的な意味でいうと保育のニーズがないねという判断がされ得る人が、でも希望としては使いたいと思っているということで、差になるねということはあるだろうと思う。

 ただ、逆に言うと、行政側の申し込みをもとにという話も、やはり実際にいろいろな方にお話を聞きますと、役所に行って保育園の申し込みをする、ただ、要するに、例えば、近くの保育園がいっぱいなんですとか、仕事先の方もいっぱいなんですとか、紹介できる、行ける先はすごく遠くなんですみたいな話があったりとか、あるいは待機がすごくあってなかなか難しいですねみたいな話を聞いて、申し込みしないで帰ってしまう人もそれなりにおられる、そういう方もおられるんだというお話も聞きますと、一応、伸びていくということも加味されているという話ではありますが、あくまでも推計は推計でありますので、現実がどうなるかということは、もちろんなってみないとわからないというところもあるんだろうと思います。

 ですから、当面、とりあえず、まず保育の受け皿を拡充していくことが大事なのであって、まずは三十二万人を目標にやっていくんだ、そのことはぜひ進めていただきたいと思いますけれども、ただ、要するに、これから二〇二〇年まで何年かあるわけでございますから、その間のさまざまな動向等を見て、政府が思っていた予想と何かずれてきているとかそういうようなことが起こり得るかもしれないなという頭というのは、ぜひ持って臨んでいただきたいと思うんです。

 そういう意味で、今申し上げたように、例えば、申し込みをベースに試算しているんだ、いや、でも行けない人もいるじゃないか、こういう議論というのはあるわけでございますから、今申し上げたようなことも含めて、姿勢として、そういう現場のこともきちんとこれからもウオッチをしながら、必要に応じて対応することは考えるのだ、ぜひそういう姿勢で臨んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先ほどマクロベースで推計した三十二万人というふうに申し上げましたが、保育の受け皿整備を実際に進めるに当たりましては、実施主体であります市区町村において、保護者の方々の御意向を丁寧に確認しながら、いわゆる潜在的ニーズも含めて必要な整備量を的確に把握して、その整備計画に反映していくということが重要だというふうに私どもも思っております。

 こうした取り組みを確実に実施するために、子育て安心プランにおきましては、保育コンシェルジュの拡充など、保護者への寄り添う支援というものをさらに進めていくことにしてございまして、市区町村ごと、さらには市区町村内の保育提供区域ごとに保育の利用意向を的確に把握して、それを踏まえた受け皿整備が進むように、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

橋本委員 今、保育コンシェルジュの話もあって、これを利用できた方からは、かなり、とても好評だったというのは私も伺ったことがございます。

 こうしたことも含め、まさに寄り添って、ある意味で、これは野村総研の方が自民党本部に来られたときにおっしゃっていたことですが、それこそ、お父さん、お母さんにとって初めてお子さんができた、これから育てていかなきゃいけない、いろいろな不安があるわけですね。ただでさえそれでも不安なことなのに、保育園がどうなるんだろう、仕事はどうなるんだろうということで、さらにいろいろ悩まなきゃいけないということはとてもつらいことなのだというお話がございました。そういうときに、コンシェルジュの方に寄り添っていただいて、丁寧に、こういう方法もあるね、ああいう方法もあるねということを一緒に考えていただけるというのはとても心強いことだろうと思います。

 ですから、それはぜひ、現場でもそういう方々が、でも足りていないみたいな話もあるので、進めていただきたいと思いますし、また、政府の立場で、厚労省としても、そうした方々の意見、意見というか、酌み上げたいろいろな思いというのもあるでしょうから、そうしたことも踏まえながら、これからもまさに現場に寄り添って取り組んでいただきたいということをぜひお願いしたいと思います。

 さらに、これはもう質問はいたしませんけれども、例えば病児保育でありますとか夜間の保育でありますとか、例えば病児保育なんかは、ふだんに保育所を利用している人も、子供が病気になってそっちに行かなきゃいけないみたいな形で、保育園の受け皿というのとはまた別に、さらに必要な受け皿で、インフラみたいなもので、これもやはりまだまだ足りていないという声は多々ございます。また、あるいは逆に、もう少し病院とかと連携してつくりやすくしてくれみたいな話もあったりするのは、党内でも声が出ているのは聞こえていると思います。ぜひ、そうしたことも含めて取り組んでいただきたいと思います。

 また、そこで育ったお子さんたちが、今度は小学校に行くと、放課後児童クラブというのを利用しなきゃいけないというお子さんも出てくるでしょう。これは加藤大臣の方に、先般私どもの地元の市議会議員の先生が行かれて、いろいろお話をされたということも伺っておりますけれども、その受け皿の拡大あるいは事務負担の軽減だとかいろいろな要望をされたというふうに伺っておりますので、ぜひ、それも前向きに取り組んでいただきたいとお願いをします。

 さて、続きまして、今度は働き方改革について、しばらくお時間をいただきたいと思います。

 大臣所信の冒頭にも触れておられまして、ぜひこれは実現をしなければいけないことだというふうに思っております。法律案の要綱というのはもう取りまとめられておりまして、労政審でも答申が出ているという状況であります。今国会はちょっと会期が短過ぎるということで提出は控えられるということなんだと理解をしておりますが、ぜひ来年度、通常国会でしっかり審議をさせていただいた上で、速やかに成立をさせるべきだ、これは私もそう思っております。

 そもそも、やはり今がそのタイミングだと思うんですね。生産年齢人口の減少というのは過去二十年ずっと続いている。その中で、女性の参加、あるいは高齢者の方の就業促進だとか、障害者の方の就業促進だとかいろいろな取り組みをしてきているし、同時にその就業形態も多様化をしてきているということ。

 ただ、結果として、正規、非正規で大変、賃金、処遇等に差が出てしまっているという問題も出ているわけで、労働市場の二極化という問題も指摘をされることにつながっていますが、ある意味で、今、比較的景気がよくて、失業率が低い、求人の倍率が高い、人手不足だ、こういうタイミングだからこそ、労働市場の二極化、あるいは正規、非正規の格差みたいなものについてしっかりメスを入れる。あるいは、無理をして働いていただいている人に無理をしていただかなくてもいいように、きちんと長時間の残業等の規制をする。とても大事なことであります。ぜひ、しっかりとこれは前に進めていただきたい。

 ただ、その上で幾つか議論があります。

 特に、これは、一昨日ちょっとBSテレビに出演をいたしまして、神津里季生連合会長とも御一緒させていただいて、いろいろな議論をしたのですが、そこでも論点になったのは高度プロフェッショナル制度というものでございました。

 いろいろな話がございまして、一体でまず議論をするのはどうかという話もあったりしました。これは、もともと労政審に諮られたときは一体だったものが、先に結論が出て先に法律が出たものと、そのとき結論がつかなくて、でも、前の法律が審議ができなくてずっととまっていたので、結果として追いついてしまったという経緯があるし、働き方改革としては、原則があって、その例外をつくるという話ですから、原則、例外一緒ににらみながら御議論をいただくべきだと思いますから、ぜひ一体で議論されるべきことだろうというふうに思います。

 そういうことだと思うわけでありますし、しっかりいろいろな要件がかかっていますから、あくまでも、単に労働時間規制を外すんだという話ではなくて、専門性の高い、あるいは、労働時間と成果というものが合わない、いろいろな、ディーラーの方とかそういう方に対して、そういうような仕事のあり方にふさわしい、健康確保措置等も含めて、規制というものにするのだというふうに御理解をいただけると理解がしていただきやすいのかなというふうに思うわけでございます。ぜひ、ここはちゃんと我々としては進めていただきたいと思っているわけです。

 ただ、やはり懸念というのはあるわけで、今は年収一千何十万円以上の人にということで、それなりに年収が高い方、それは、きちんと会社に対して、いろいろな、自分の、自主的に仕事ができるような能力を持った人という意味で年収要件を課しているわけですし、ある意味で、その方々が残業制度というものから外れても、別に残業代で生活していないよねということも言えるというわけであります。

 だから、この年収要件が下がって、いきなり年収三百万円の人に高度プロフェッショナル制度を適用しますみたいな話になると、それは本当に、よく野党の先生方から残業代ゼロだと言われることになってしまいかねないという懸念はあるわけであって、そこはしっかり制度のたてつけとして、所得の、給料の高い人とか専門性の高い人にこれは限るのだということで位置づけて、既に位置づけてあると思いますけれども、改めてそれは国会の場でもそうしたことをおっしゃっていただくべきなんだろうと思うのであります。

 この法案が仮に成立をしたとしたときに、さらにその後要件を下げてくるんじゃないのといった懸念に対してどうお応えをしていかれたいと思うのか、その点について大臣から御所見を頂戴したいと思います。

加藤国務大臣 今お話がありました高度プロフェッショナル制度についても、今私どもが進めている働き方改革、これは、健康確保を図りながら、それぞれの方が置かれている状況のもとで、その意欲や能力を十二分に発揮できるような多様な働き方ができる社会を実現していく、そういう中で取り組ませていただいております。

 特に、この高度プロフェッショナル制度は、高度な知識、技術を持つ専門職の自律的に働きたいというニーズに応えて、意欲と能力を十分に発揮できるよう、めり張りのある効率的な働き方を可能としよう、そういった意味で設けようとしている制度であります。

 今、法案を当初提出しておりましたが廃案になっておりますので、現状、労働政策審議会の答申を得た法案要綱ということでお話をさせていただきますけれども、この制度の要件について、対象業務については、高度の専門的知識、技術または経験が必要、従事した時間と成果との関連性が通常高くないこととされております。また、年収要件については、支払われると見込まれる賃金の額が平均給与額の三倍を相当程度上回るとされているわけでありますので、これをしっかりと踏まえて法案を策定していきたいというふうに考えております。

 これ以外にも、健康確保措置についても法案要綱に記述がありますので、それも踏まえていきたいと思っております。

 いずれにしても、ここは法案の中にしっかりと書き込んでいきたいと思っておりますから、したがって、法案を改正しない限り、対象業務の拡大や年収要件の引き下げはできない、こういう仕組みになっているわけであります。

橋本委員 今の、法案について、しっかりと書き込んでいるのだ、そして、それが国会で成立すればそれが法律になるわけですから、法律上そうした制限をするのだということは承りました。

 ただ、そこでさらに言われるのが、いや、あの与党のことだから、どの与党のことかわかりませんけれども、一旦法律を成立させたら、その後さらに改正案ということで下げてくるんじゃないのみたいな懸念まであるやに伺っている。

 私はそんなことは思っていませんよ。私はそんなことは思っていませんが、そうしたことをおっしゃる方も世の中にはおられるということで、ここはちょっと大臣としてはお答えしにくいところ、まだ法律案を出してもいないところですからお答えしにくいことだとは思うんですが、その上で、安易に年収要件を引き下げる、そんなことはする気は毛頭ありませんということはぜひおっしゃっていただきたいんですが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まだ法案も提出していない段階で、成立したその先までお話をすることが適当なのかという気はいたしますが、ただ、今申し上げたような、対象業務を絞った、あるいは年収要件というのは、やはり今の状況を踏まえながら、皆さんがそれぞれ議論してできたコンセンサスだということでありますから、それは非常に大事なものであり、当然、成立をされれば、この経緯の中で労使それぞれが議論し、そして、若干労働側には御議論はありますけれども、おおむね妥当ということで要綱も通していただいたわけであります。

 これから、いずれにしても、国会審議を経ないとその先のことを申し上げられませんけれども、そういう中ででき上がったものだ、この事実は大変重いものが私はあると思います。

橋本委員 ぜひ、その事実は重いということでありますから、まずは、ちゃんと法案を、法律を国会に提出いただいて通すという作業をしなければいけませんけれども、その上で、今の重いという言葉はしっかりと受けとめたいと思います。

 さて、この働き方改革について党内で選挙前に一遍議論をしたときには、二回議論しましたが、中小企業の方々にしわ寄せが行ってしまうのではないか、大企業は体力もあるし余裕もあるからしっかりとした規制にも対応できるであろう、だけれども、地場の小さい会社なんかはようできないわというようなお声もあったりしたのは事実であります。

 ただ、私もいろいろな方とお話をするときに、必ずしもちゃんと正しく、我々がというか、政府が議論をしているような形で受けとめていただいていなくて、平たく言ってしまえば誤解をされていて、なかなか難しいとおっしゃっている方もそれなりにおられるなという感じがあるんですね。

 そういう意味で、しっかりと、政府が思われていることというのをちゃんと伝えていく、そして、きちんとそうした方向に丁寧に導いていくということは政府として大事なんじゃないのかな、それをしっかり支援をしていっていただきたいと思うんですが、ぜひ、中小企業のそうした理解だとか支援について教えてください。

牧原副大臣 橋本委員は私の前任者でございますので、本当にそうしたことを大変大切に考えていただいておりまして、我々もしっかり重く受けとめたいと思っております。

 働き方改革は、誰もが生きがいを感じられる一億総活躍社会実現の最大の鍵でありますので、我が国の雇用の約七割を占める中小企業や小規模事業者の皆様に着実に取り組んでいただくことが極めて重要と考えております。

 このため、厚生労働省として、中小企業庁とともに中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会を立ち上げ、中小企業、小規模事業者の現状や働き方改革に取り組むに当たっての課題についてヒアリング等を行うとともに、支援策について検討を行ってきました。

 ヒアリング等におきましては、委員御指摘のとおり、労働関係法令や働き方改革の内容をよくわからないとか、あるいは人手不足の中で時間外労働の規制に対応できるか不安であるとか、こういう声が寄せられております。

 こうしたことを踏まえて、支援策としては、全都道府県に相談拠点を設け、各地域の商工会、商工会議所等と連携し、労働関係法令や労務管理の見直し等についての助言、相談対応等を行う事業、時間外労働を縮減するために生産性向上に資する機器の導入等を行う中小企業に対する助成を行う、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善等を実施した中小企業に対する助成の拡充などを案として取りまとめたところでございます。

 さらに、官房副長官をトップとしまして関係省庁で構成する中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議を立ち上げまして、私も議長代理として議論に加わっておりますが、生産性向上や取引条件改善といった中小企業等が抱える諸課題について、内閣を挙げて対策を検討させていただいております。

 引き続き、中小企業や小規模事業者等の皆様が働き方改革に前向きに取り組むことができますよう、全国各地で積極的に説明会を開催するなど、しっかりと、丁寧かつきめ細かく対応してまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

橋本委員 今御紹介をいただきましたけれども、まさに内閣を挙げて取り組むのだというお言葉がありまして、心強い思いをいたしました。ぜひ、しっかりとそうしたことを、我々も受けとめて、しっかりとその実現をしていかなければいけないと思います。

 さて、一方で、また同時に、中小企業の方々というのは主に大企業の方から下請取引をしているという関係が多うございまして、これがある意味で、大企業の方がむちゃを言ってくる、中小企業は働き方改革どころじゃないみたいな話もあったりする。やはり、下請取引の適正化ということ、それも業種別にいろいろな慣行があったりしますので、それも取り組まなければいけないし、既に取り組んでおられるとは承知をしておりますが、ぜひ、それについてもしっかりと取り組んでいただくのだということで御紹介をいただきたいと思います。

田畑大臣政務官 お答え申し上げます。

 橋本委員の同じ問題意識を持ってこれはしっかり取り組んでいかなければいけないと感じるわけでありますが、まさにおっしゃるとおり、取引関係によって弱い中小企業というのは、発注企業からの短納期の要請であったりとか顧客からの要求によって、それに応えようとしてあながち長時間労働になりがちであります。大企業のそうしたしわ寄せが中小企業に行かないようにしっかり対応することは非常に重要だと考えているわけであります。

 このため、商慣行の見直しですとか取引条件の適正化等について、それぞれ業界の実態に応じたきめ細やかな対応に取り組んでいかなければならないと思っております。

 以下、具体的には二つの業種のことについて御説明申し上げたいと思います。

 一点は、自動車運送事業でありますが、荷主の都合によりまして手待ち時間の発生ですとか、業務の特殊性から長時間労働が発生しやすい状況がございます。

 そのため、今、牧原副大臣からお話がございましたが、関係省庁の連絡会議におきまして、取引環境の適正化など直ちに取り組むべき施策を取りまとめるとともに、今後さらに検討を進め、来年春ごろまでに行動計画を策定、公表することといたしております。

 もう一点、建設業でございますが、こちらの業種も、天候不順等によって、自然環境によって、自然の条件によって作業日程が圧迫される中、施主から工期を厳格に守ることを求められるなど、業務の特殊性や取引慣行上の課題があるものだと認識をしております。

 このため、同様、関係省庁の連絡会議におきまして、週休二日の確保等について配慮した適切な工期の設定など、受注者、発注者が相互に協力をして取り組むべき事項を建設工事における適正な工期設定等のためのガイドラインとして取りまとめをして、今、公表したところでございます。

 中小企業における働き方改革が円滑に進むよう、今後とも、関係省庁と連携をしつつ、商慣行の見直しや取引条件の適正化等について、しっかりとした、それらを含めた支援を取り組んでいきたいと思います。

 よろしくお願いします。

橋本委員 特に今、二業種について具体的に御説明いただきましたが、これらは両方とも長時間労働がやはり特にきつい業種であるという中で、そうした検討をされているんだと承知をしています。

 ぜひ、実効性のある取り組みをしていただかなければいけません。取引の中に入る話ですから、そこはどうするかというのは結構難しいんですが、ぜひしっかり取り組んでいただきたいということは申し上げたいと思います。

 さて、続いて、今度は医師の働き方についてちょっとお尋ねをしたいと思います。

 やや時間が限られてきましたので、済みません、山越局長は割愛をします、ごめんなさい。

 医師は労働者なのかという議論をちょっとしたかったんですが、答えから先に言ってしまえば、それは、病院等で勤めておられる勤務医の方は労働基準法の適用になりますよね。ざっくり言ってしまえばそういう話なんだというふうに理解をしています。

 ですから、きちんと、ただ、働き方改革の中でも、時間外労働規制の対象とするが、しかしながら猶予を設けて検討する、こんなことになっているわけでございまして、この検討の進み方について、今、状況を教えてください。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 医師につきましても、働き方改革をしっかり進めていく必要があると認識をしております。

 このため、働き方改革実行計画を受け、医療界の参加のもと、医師の働き方改革に関する検討会を開催いたしまして、時間外労働規制の具体的なあり方、労働時間の短縮策などについて検討を進めているところでございます。

 なお、医師の働き方改革におきまして、医師の長時間労働についても御議論ございますけれども、私ども、平成二十六年の医療法改正に基づき、医療機関が勤務環境改善に取り組む仕組みを創設いたしまして、国においてその自主的な取り組みを支援するガイドラインの策定、また、各都道府県における医療勤務環境改善支援センターの整備などを行っているところでございまして、医療従事者の勤務環境改善に向けた各医療機関の取り組みを促進しているところでございます。

橋本委員 今、もう既にその勤務環境改善等の努力もされているということで、それはぜひ進めていただきたいと思いますし、また、その検討は、まだ検討中、働き方改革のプランでも二年をめどにと書いてありますから、まだ期間がありますから、いろいろ絡み合いがありますので難しいと思いますが、ぜひしっかりとした議論をいただきたいと思います。

 ある意味で、病院等、やはり労働基準法というものをこれまで余り気にしていなかった。もちろん、医療が大事なんだ、患者さんが来たら治さなきゃいけないんだ、それはとうといことでありますけれども、そのために、逆に言うと、ドクターの方が過労死するみたいなことだってあったわけでございまして、やはりそこにはきちんとメスを入れていって、ドクターの方も健康に働ける環境というのをぜひつくっていかなければいけないんだと思いますし、ある意味で、そこにメスを入れるいい機会ですから、しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 ただ、いかに勤務環境を改善しようと思っても、元手が要るわけでありまして、新しいお医者さんをふやすにしても、ほかの、タスクシフティングをしていくんだとしても、やはりコストというのを考えなきゃいけません。

 その上で、そういえば来年四月に診療報酬改定というのがありますねというタイミングでもありまして、今、検討会は検討をしているわけですけれども、やはり、それはもう前倒しをしてできることはやるんだという思いを持って、そして、それをきちんと裏打ちできる診療報酬にならなければならないんだろうというふうに思っていますが、その点についてどのように考えておられるか、保険局長、お願いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、平成三十年度の診療報酬改定に向けまして、改定の基本方針につきまして社会保障審議会の医療保険部会と医療部会において検討いたしております。その中で、基本的視点の一つといたしまして、医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進、これを位置づけることといたしております。

 また、改定の具体的なあり方は、御案内のように、中医協で検討をしておりますけれども、その上で、医療従事者の多様な働き方支援、負担軽減について検討を進めております。具体的には、医師事務作業補助者の配置や他職種との業務の分担等の推進、小児科、産婦人科等における常勤医師の配置要件の緩和、ICTを活用した医師の柔軟な配置の推進など、こういった具体的論点を提示して御議論を進めさせていただいております。

 医療従事者の働き方改革、負担軽減に資するような診療報酬改定となりますように、しっかり検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

橋本委員 ぜひ、しっかり、我々も取り組まなきゃいけませんが、皆さんもよろしくお願いします。

 あと、精神保健福祉法について質問したかったんですが、時間が来ましたので割愛をさせていただくということで、きょうは質問は私からは以上とさせていただきます。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、安藤高夫君。

安藤(高)委員 本日は質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。安藤高夫でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 一カ月前の衆議院総選挙におきまして、比例東京ブロックで初当選をさせていただきました。立法府の一員として、また選任していただきました厚生労働委員会の委員として、大変大きな責任を感じているところでございます。

 質問を始める前に、私、安藤高夫の背景について少しお話をさせていただきたいと思います。

 私は、医師になって三十三年、今も患者様に向かい合い、診療をさせていただいております。二十九歳のときに父が急逝いたしまして、東京の八王子で病院を引き継いで以来、約三十年間、医療機関そして介護施設の経営に携わってまいりました。救急病院を初め、リハビリテーション、今非常に問題になっております療養病床、そしてさまざまな介護施設、在宅医療、現在国策として進められている地域包括ケアシステムを、まさに現場で当事者として、さまざまな専門のスタッフと邁進してまいりました。

 現場の医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、これはSTですけれども、それからまた栄養士、救急救命士、介護福祉士、そして事務職のスタッフと多職種連携、多職種協働で医療、介護に向かい合って、毎日、日々悩み、一歩一歩推進してまいりました。

 そして、八王子市の医師会、東京都医師会の役員として、また東京都の病院協会、全日本病院協会、そしてまた日本慢性期医療協会の副会長として、加えて全国の老人保健施設協会、日本認知症グループホーム協会で仕事をさせていただきながら、医師会の立場、それからまた病院団体の立場、それから介護団体の立場で、日本の医療と介護の未来をどのように描き、足元の現実からどのように進んでいけばいいのかということを日々考えてまいりました。国民の皆さんに良質な医療と介護を持続的に提供するためにも、良質な経営が必要であると日々痛感しております。

 それでは、御質問をさせていただきたいと思います。

 一つは、診療報酬、介護報酬の現況についてでございます。

 日本の医療、介護のサービスは、一つは報酬制度、もう一つは提供体制という二つに分けて考えることができると思っております。

 その中でも、非常に緻密に構成された診療報酬、介護報酬の制度は、日本の医療、介護のサービスの一つの特徴であると言えます。この仕組みは、海外の医療、介護の現場の方々とお話をしてもとても驚かれることが多く、厚生労働委員会の先生方及び厚生労働省を含めて各関係省庁の御尽力のたまものだ、そう考えております。

 医療機関それから介護施設などは、この報酬制度に規定された項目を満たしながらサービスを提供することによって収益を得るという構造であります。そして、医療、介護の従事者は日々、医療、介護が滞りなく継続できるように努めています。そして、この報酬の内容は、医療では二年に一遍、介護では三年に一遍の見直しが行われ、ちょうど来年の二〇一八年はその二つが同時に起こる非常に重要な年でございます。

 まずは、診療報酬、介護報酬の同時改定について検討の現状を教えていただければと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十年度の診療報酬と介護報酬の同時改定につきましては、現在、関係審議会を中心に検討を進めているところでございます。

 まず、診療報酬でございますが、中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協におきまして、入院医療、外来医療、在宅医療などのあり方でございますとか、あるいは、がん、救急医療などの個別の医療のあり方につきまして、具体的な論点をもとに議論を進めていただいてございます。

 また、先ほど御答弁申し上げましたように、改定の基本方針につきましては社会保障審議会におきまして御検討いただいておりまして、この基本方針、十二月に取りまとめるべく今議論を進めていただいております。

 次に、介護報酬でございますけれども、社会保障審議会の介護給付費分科会におきまして、訪問介護、通所介護、介護老人福祉施設など、各種の介護サービスの報酬、基準に関します具体的な対応案を提示いたしまして、これもまた十二月に審議報告を取りまとめていただくように議論を進めているところでございます。

 先ほど御指摘ございましたように、今般、診療報酬、介護報酬の同時改定でございますので、医療と介護の連携につきまして、関係審議会が二回にわたりまして意見交換を行って議論を進めるというようなやり方もさせていただいております。

 いずれにいたしましても、関係者の御意見をよく伺いながら、適切な改定になるように進めてまいりたいというふうに考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 診療報酬、介護報酬ということを考える中で、ぜひ行政の方々には現場を見に来ていただきたいと思っております。特に夜勤を御一緒にさせていただければ、どれだけ現場が大変であるということがよくわかると思いますので、どうかよろしくお願いします。

 次に、二つ目の御質問に行きたいと思います。これは診療報酬、介護報酬絡みで、医療機関、介護施設の経営についてちょっとお話をさせていただきたいと思っています。

 現在、日本の医療、介護を語る上でも押さえるべきキーワードは、先ほどちょっとお話をしましたけれども、地域包括ケアシステムと地域医療構想です。これは、地域医療構想というのは、日本の病院の種類を、高度急性期、急性期、回復期、慢性期に分けて、各地域でそれが過不足なく働けるようにしていくような仕組みでございます。ひっくるめて言うと、これは医療機関や介護施設などが地域で十分に整備されて、国民の方々が安心して生活できるための環境づくり、言いかえれば、医療と介護の提供体制の構築に大きく貢献をしています。

 一方、この提供体制を維持していくためには、施設の規模、千床の病院もあれば五十床の病院もあります。それから地域環境、これは東京など大都市もあれば、島の、島嶼の部分もございます。あと設立母体、これは公立病院もあれば民間病院もあります。こういうふうな公私格差などによって大きな違いがございます。その中で、医療機関や介護施設の経営が安定することも重要な視点でございます。

 現在、医療機関、それから介護施設も、公定価格ということで全部決まっているわけです。さらにまた、人員配置だとか施設基準等で、もうがちがちに決まっているような状況です。そういう中で人手不足が加速をしているということも大きな現状でございます。さらには、今後、拡大再生産までもいかなくても、せめて再生産できるぐらいな建物とか施設のリニューアルというものが、やはり良質な医療、介護を国民の方々にお届けするためには重要なものでございます。そういうふうな全ての経費がかかるということをやはり考えていかなければならないと思います。

 そういうことも含めて、私個人としては、ぜひ、適正利益水準というものを今後考えていくというような議論が必要ではないかな、そう思っております。それがやはり基礎になっていって、病院や介護施設のマネジメント、経営というものが行われてくるのではないかと思っております。

 そういう意味で、地域包括ケアシステムや地域医療構想を推進するためにも、医療機関、介護施設が一定の利益水準を確保しつつ、安定的に経営を行っていく必要がございます。報酬改定に当たっても、医療機関、介護施設の経営状況に配慮することが必要ではないかと考えております。ぜひ御見解のほど、よろしくお願い申し上げます。

鈴木政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、医療機関や介護施設などが社会の重要な基盤として役割を果たしていただくためには、こうした機関が地域のニーズを的確に反映しながら安定的な経営を行うこと、これが重要だと考えております。

 現在、先ほど申し上げましたとおり、同時改定に向けまして、中医協あるいは介護給付費分科会において検討を進めるところでございますけれども、この検討におきまして、医療経済実態調査あるいは介護事業経営実態調査などによりまして医療機関、介護施設などの経営状況を的確に把握いたしますとともに、それとあわせて、物価や賃金の動向、保険料負担などの国民負担のあり方、こういったことを踏まえながら議論を進めていただいているところでございます。

 同時改定によりまして、先生御指摘いただきましたように、地域包括ケアシステムのさらなる推進が図られるように、医療・介護機関の経営状況を初めといたします関係指標をよく踏まえながら、適切に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございます。

 特に今回の現状ですけれども、特に大都市部、東京においては、ほとんど、介護報酬に関しましては、ある程度の地域の差によって報酬体系が少し変わっておりますけれども、医療の場合は、多少の地域加算がついていますけれども、東京は本当に人件費も高い、物価も高い、そしてまた土地の値段も高い、そして土地もないという中で、さまざまな医療機関の機能分化をしていかなければならないということで、圧倒的に不利な状況が続いており、都内の病院は、中小病院がどんどん倒産、あるいは地方からの体力のある大規模法人にMアンドAをされて、今、MアンドAの草刈り場の状況になっております。そういうことも配慮した、地域格差、規模の格差、公私格差というものを十分配慮した、医療も介護も報酬体系をさらに充実したものにしていただければ、そう思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 続きまして三番目の質問ですけれども、これは医師の働き方改革ということで、先ほど橋本岳先生からお話しした内容とかぶる部分がございます。特にそれを医療機関の経営の切り口から考えさせていただきたいと思っております。

 医師においては、患者様が来たら診なければいけないという応招義務とか、あるいは、手術を行うために、新たな知識を得るためにさまざまな勉強をしなければなりません。また、患者様がぐあいが悪いときに、やはり人によっては過剰に心配をして、何度も何度も病院に足を運ぶというような状況もあります。そういうのが全て既定の労働時間の中に入ってしまうのかどうかということ、これは非常に大きな問題でございまして、そこら辺は、特に、急性期の、救急病院のマネジメントを行う人たちは非常に心配をしております。

 一つの説によりますと、医師等が既定のお仕事の時間以外に、今言ったようなさまざまなものを全部お金に換算してしまうと、これは一兆円以上のお金になってしまうということになります。これは非常に大きな問題でございまして、多分、国にとっても、また患者様にとっても、医療機関にとっても、非常にこれは慎重に考えていかなければいけない部分だと思います。

 そういうことも含めて、今後、医師の働き方改革の考え方次第では、非常に大きなインパクトがあると思います。そういうような切り口でぜひ御意見を賜れればと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 医師の働き方改革と、それの経営への影響などにつきまして御質問をいただきました。

 医師につきましても、今、政府全体で進めております働き方改革、これをしっかりと進めていく必要があると認識をしておりまして、このため、働き方改革実行計画を受けまして、医療界の参加のもと、医師の働き方改革に関する検討会、ことしの八月二日に第一回を開催いたしましたが、順次議論を重ねてきておりまして、時間外労働規制の具体的なあり方、労働時間の短縮策などにつきまして、平成三十年度末にも結論を得るべく、ただいま精力的に議論をしているところでございます。

 その際、御指摘の財政面、経営面への影響をどのように考えるかということにつきましても一つの論点と考えておりまして、検討会におきましても、さまざまな構成員から、経営に対する影響または財政支援の必要性について御意見をいただいているところでございます。

 また、この検討会の議論といたしましては、勤務環境改善に伴いまして、診療業務の効率化をあわせて進めることについての御議論もございます。タスクシフティング、業務の移管、タスクシェアリング、業務の共同化の推進でございますとか、ICTを活用した効率化などにつきましても、論点ということで御議論をいただいているところでございます。

 私どもといたしましても、引き続き、医療機関の経営や地域医療への影響も十分考慮しながら、また、医療現場の実態をよく把握し、その実態を踏まえつつ、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。どうか御配慮のほど、よろしくお願い申し上げます。

 次に、四番目の質問ですけれども、これも橋本岳先生の方からお話をしていただきましたが、消費税の問題でございます。

 医療と介護は、人の命と生活を支える重要なインフラの一つです。一方、その体制整備には、多岐にわたるさまざまな投資が必要でございます。

 例えば、患者情報を管理する電子カルテなどのICTの投資には、数千万から数億円かかる場合も少なくありません。私の近くの公立病院なんかは、三百床ぐらいで、電子カルテの導入に八億円、そして、毎年のランニングコストが数千万円かかるということでございまして、この時点で、もう圧倒的に経常利益よりもそっちの投資の方が多いというような逆転現象が起きているわけでございます。

 また、医療機関を建設、改築するに当たっても同様でございます。

 加えて、昨今では、医療・介護人材の確保が困難な状況から、人材紹介会社を経由した医師、看護師、最近では介護職を確保する際の仲介手数料、これも医師や看護師の年俸の三割、二割というもので、非常に高いお金でございます。

 そのようなさまざまな面で、全て消費税の負担が発生している現状でございます。

 しかしながら、医療、介護は非課税であり、仕入れ税額控除を受けることはできません。数千万円単位の、これは損税と言わせていただきますけれども、損税を負担している医療機関や介護施設も少なくありません。

 このような現況を踏まえて、医療機関や介護施設は多額の控除対象外消費税を負担しており、損税となっております。根本的にこれをやはり解決しなければならないと思っておりますが、これについての御見解を、どうかよろしくお願い申し上げます。

武田政府参考人 お答えいたします。

 これまで、消費税の導入、それからその後の税率の引き上げに際しましては、厚生労働省といたしましては、医療機関の仕入れ費用負担を勘案して、それぞれの時点で適切な水準の診療報酬の引き上げによって対応を行ってきているところでございます。

 一方で、今御指摘もございましたように、医療機関が多額の控除対象外消費税を負担している、それについての抜本的な対応が必要であるというような御意見も医療関係の方々からお聞かせをいただいているところでございます。

 それを踏まえまして、私ども、税制当局とも議論を重ねてきているところでございますし、また、抜本的解決に向けた税制改正要望もお出ししているところでございますが、昨年末に取りまとめられた与党税制改正大綱におきましては、この医療に係る消費税等の税制のあり方につきまして、一つは、消費税率が一〇%に引き上げられるまでに、抜本的な解決に向け、適切な措置を講ずることができるよう、実態の正確な把握を行いつつ、二つ目といたしまして、医療保険制度における手当のあり方の検討などとあわせて、関係者の意見、特に高額な設備投資にかかる負担が大きいとの指摘等も踏まえ、総合的に検討し、結論を得る、こういうふうにまとめられているところでございます。

 現在、平成三十年度税制改正に向けた議論を進めているところでございますので、引き続き、関係者の御意見も伺い、また、関係者の議論の状況等も踏まえつつ、鋭意検討をしてまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 どうもありがとうございました。

 やはり根本的には、診療報酬や介護報酬の上乗せだけではなくて、ベーシックな部分をどう考えるのかということが非常に重要になってくると思っております。

 局長おっしゃったように、ハード面の投資だけではなくて、これは国の戦略でありますICTというものに関しても、医療と介護、連携も含めて、非常に重要視しておりますので、どうか御検討のほど、よろしくお願い申し上げます。

 続きまして、五番目の質問をさせていただきたいと思います。これは、介護職の不足の問題です。マンパワー問題でございます。

 介護人材は全国的に慢性的な不足状態なことはもう先生方御存じだ、そう思っております。

 何と、私の地元八王子では、看護師さんの時給よりも介護職の方の時給の方が、これは非常勤の方ですけれども、逆転して上がっているような、そんな状況です。それだけ介護職の人が非常に不足しているというのが現況です。

 そのような背景から、介護人材の確保に関しても、先ほどお話ししたように、人材紹介会社が仲介するケースがふえています。

 また、私のところもやっておりますけれども、EPAとか、今後行われます外国人の実習制度に介護が入りましたけれども、そのような活用に関しても、経営的な視点からは非常に負担になっております。一人の外国の方を、日本に来て資格を取っていただくまでに、うちの施設でも数百万円、多いときは一千万円ぐらいの設備投資が必要でございます。

 そういうことも含めて、介護人材の確保についての財源確保が非常に必要な状況になってきておりますけれども、それに関してどのような御見解か、お伺いしたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、我が国全体として労働力に対する需要が高まってきている中で、介護分野の有効求人倍率、全業種より高い水準で推移しているというところでございます。介護人材の確保のために、必要な予算を確保し、総合的な方策を講じていくこと、御指摘のように大変重要であると認識しているところでございます。

 このために、一旦仕事を離れた人が再び仕事につく場合の再就職準備金や、介護福祉士を目指す学生への返済免除つきの奨学金制度、また、地域医療介護総合確保基金を活用した、各都道府県が地域の実情に応じて実施をする参入促進や資質の向上、労働環境、処遇の改善に資する取り組みへの支援など、総合的な介護人材確保を進めているところであり、引き続き必要な予算の確保に努めてまいりたいと思います。

 加えて、介護人材の処遇改善につきましては、今国会での総理の所信表明演説におきまして、他の産業との賃金格差をなくしていくため、さらなる処遇改善を進めていくこととされていることを受けて、厚生労働省としても、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

 また、外国人介護人材の受け入れについてでございますが、EPAや技能実習制度など、それぞれの制度趣旨に沿って適切な受け入れを進めているところでございますが、EPAでは、受け入れ施設における候補者の学習、指導経費の助成などさまざまな支援を実施しているほか、技能実習制度につきましても、日本語の自己学習のためのウエブコンテンツの開発などの整備を行っているところで、引き続き、しっかりと必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

安藤(高)委員 どうも、力強いお言葉をありがとうございました。ぜひ、介護職の人たちの元気が出る処遇改善加算も、できれば介護報酬の枠組みから外に外していただくとありがたいな、そう思っておりますので、また御検討のほど、よろしくお願い申し上げます。

 六番目、最後の御質問をさせていただきたいと思います。総まとめとして、診療報酬、介護報酬の同時改定についてです。

 東京を初めとする大都市部では、高齢者の増加と独居老人、医療・介護需要の伸びが認められる中、どのようにして需要と供給のバランスをとっていくか、けんけんがくがくと議論をされています。一方で、地方部では、高齢化の波は同様であるものの、既に人口減少が認められている地域も少なくなく、今後の需要減少に対して供給体制の効率化という非常に難しい議論となってきております。

 加えて、特に顕著なものとして、医療・福祉領域に従事する人材確保が大きな課題となっております。全国一律の施設では対応困難な状況を踏まえ、二〇二五年問題、二〇四〇年問題を乗り越えるためには、各地域にて独自の戦略を考えていく必要があると考えております。

 加えて、日本は高齢化先進国として世界から注目されています。これまでも、大病院においては、先進的な医療や高度な救急体制を整備、提供してまいりました。また、地域の中小病院や診療所においては、地域住民の安心な環境づくりに寄与し、生活を支えてまいりました。また、地域によっては医療機関が雇用創出に大きく貢献していることも事実です。加えて、介護施設においては、今後ますますふえる高齢者の生活の場として重要性が増していくことは間違いありません。

 これがこの時代の医療、介護の実態であり、地域を支えるという大きな大義のもとで、さまざまな医療、介護の関係者が共同していく時代になると実感しております。

 そして、医療、介護が元気になることが、多くの医療従事者、地域の患者様、御家族、そして地域産業と密着につながりながら、人づくり、町づくり、そして住みなれた町で楽しく暮らせる思い出づくりを支えて、日本全体として大きなパワーにつながると確信をしております。そのような思いで、直前に迫った二〇一八年の診療報酬、介護報酬の同時改定に臨もう、そう思っております。

 直近の医療経済実態調査、そして介護事業の経済実態調査の結果、医療機関や介護施設の損益状況が、かつてないぐらい非常に厳しい状況に追い込まれております。これを踏まえて、社会の重要な基盤である医療、介護の現場を守るために、今回の同時改定はプラス改定を実現すべきであると考えております。これについての御見解をお聞かせいただければ幸いです。よろしくお願いします。

加藤国務大臣 安藤委員から、これまでもそれぞれの論点についていろいろ御議論いただきました。ありがとうございます。

 最後にお話がありましたように、実態調査、医療も介護も前回に比べて低下傾向にあるということはしっかり受けとめておかなければいけないというふうに思いますし、また、医療と介護、これは国民生活を支える大変重要な基盤でもあります。そして二〇二五年、団塊の世代が七十五歳以上になるというこの年を見据えて、三報酬の改定ということであります。その中で、質が高く、そして効率的な医療、介護の提供体制を構築していくことが何よりも不可欠だというふうに思っております。

 改定率については、まさにこれから御議論をいただくところであります。先ほど申し上げたような経営の実態、あるいは物価、賃金の動向、あるいは国民の負担のあり方、それなどを踏まえながら、これからしっかりと議論していきたいと思っておりますが、やはり大事なことは、国民、必要な方に必要なサービスをしっかりと提供していく、このことが大事だと思っておりまして、それに向けて、効率化を図るべきところは図りながら、必要な財源はしっかり確保できるよう努力をしていきたいと思っております。

安藤(高)委員 加藤大臣、力強いお言葉を本当にありがとうございました。

 私も含めて、医療現場の人間、介護現場の人間、頑張って国民のために邁進していきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 選挙が終わりまして最初の、この特別国会での質疑になります。

 大臣所信を伺い、質疑ができるというのは大変いいことだと思っております。

 と申しますのは、今回の衆議院選挙、私は、個人的には、あんな選挙はやっちゃいかぬ、こういうふうに思っている一人であります。その最大の理由は、前回もそうでありましたけれども、解散から選挙まで二十四日という短期間で、しかも、選挙に入る前に、総理は九月二十五日に記者会見をされた。固唾をのんで僕らは見たわけでありますが、それを十分消化できないまま選挙戦に突入してですね。我々は、とりわけ我が党はネットワーク政党でありますから、地方議員の皆さんとしっかりと議論をしなきゃいかぬ、党員、支持者の皆さんと我が党の姿勢、訴えることをしっかり議論し、理解をしていただく時間がなかったのであります。今度安倍総理に会ったら言おうと思っておりますが、もうこんな選挙はやめてよねと。

 難しい議論でありますが、やはり一月、二月、選挙戦へ向けて議論をしていくということは、私は民主主義にとって大事なことではないかなとひとり言を言いながら、質問に入りたいと思います。

 一つは、今申し上げたことでありますが、九月二十五日に総理は記者会見をされた。人づくり改革と、それから生産性革命。さっき同僚の橋本議員が議論されたところであります。それで、人づくり改革については二兆円のパッケージをつくると。我々も今一生懸命取り組んでおりますが、与党の中で議論をしておりますが、こうしたパッケージの財源ですね。この財源は消費税の引き上げをバランスよく見直す、こう総理はおっしゃいました。

 最初に、加藤大臣の御認識を確認したいと思いますが、消費税引き上げの財源の使途を見直すということは、特に厚労関係でいいますと、二十五年の持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革推進に関する法律、いわゆる社会保障改革プログラム法、この中身を変えるということに私はなるのではないかと思っているわけであります。これは消費税法にもそう書いてあるわけでありますが、いわゆる制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策、いわゆる社会保障四経費と言われておりますが、幼児教育や高等教育まで総理は言及されたわけでありまして、これは見直さなきゃいかぬのではないかと私は素朴に思っているんですが、大臣の御認識を最初に伺いたいと思います。

加藤国務大臣 桝屋委員、今お話がありましたように、御党においても、この二兆円の政策パッケージに向けて今、大筋の御議論をいただいているということでございますので、そうした与党の御提言をいただきまして、この消費税引き上げによる増収分の活用を含め、二兆円規模の政策パッケージ、政府としても来月上旬に取りまとめをしていきたいというふうに考えております。

 今、消費税の使途の問題でありますけれども、基本的に、消費税法、そしていわゆる社会保障改革プログラム法にそれぞれ記載がされているわけであります。多分、それぞれの党においても、そこの記載を念頭に置きながら御議論はいただいているんだろうと思っておりますけれども、ただ、いまだ具体的なものが固まっておりません。したがって、その盛り込まれた具体的な政策を制度化する際に、最終的には改正の要否を整理していく必要があるんだろうというふうには思っております。

 ただ、幼児教育のお話が少しありましたけれども、子ども・子育て新システムに関しては、これは消費税を充てているということでございます。

桝屋委員 ありがとうございました。

 中身をしっかり固めた上で、法律のたてつけなどについても議論しなきゃいかぬというふうに御理解をさせていただきました。

 後ほどお話ししますが、ぜひ私は、そうした大きい観点からも見直しをしなきゃいかぬ。子ども・子育て新システム、これはもちろん、消費税財源を充てると大臣がおっしゃったとおり、そこは決まっているわけでありますが、高等教育も含めて、我が党は、それに私立高校の授業料の問題まで言及をしているわけでありまして、さっき申し上げた、制度として確立された少子化に対処するための施策ということは何なのかということはどこかで整理をする必要があるだろうと。

 制度として確立されたということは、法的な措置がきちっとできているというふうに理解をするのかなと思いつつも、財務省的に言うと、ここをやたら広げてもらうととんでもないというふうに多分思うのでありましょうし、ここはしっかりこれから、さっき申し上げたように、衆議院選挙は極めて短期でありましたから多くの国民の皆さんもまだ十分理解されていない、野党の皆さんがひっついたり離れたりされるものだから余計、政策議論がほとんど、批判しているんじゃないんですよ、政策論争ができなかったということもありますから、しっかりここはこれから議論の余地が残っているというふうに思っている次第であります。

 それで、二点目でありますが、幼児教育の無償化あるいは高等教育の無償化などを含む政策パッケージを今つくっているわけでありますが、これが税・社会保障一体改革との関係でどうなるのかということは大変気になるところであります。

 大臣の最初の発言で私は大分安心したのでありますが、多くの国民の皆さんは、二十五年にやりましたプログラム法で、社会保障改革推進法第四条の規定に基づく法制上の措置、この骨子による改革工程表ということが頭に入っているわけでありまして、こうしたものにどういう影響をこの二兆円パッケージが与えるのかというのは、実は私自身もまだ整理が十分できていないのであります。大臣のその辺の御見解を伺いたい。

 特に、使い道を変えるというのであれば、まずは約束してきたことはちゃんとやりましょうねということが絶対必要だろう。それはすなわち、この税・社会保障一体改革の中で約束されております、例えば年金生活者支援給付金でありますとか、介護保険料のさらなる軽減措置、こうしたことは約束になっているわけでありますから、ここはちゃんとやる、前倒しということまで僕はあえて言いませんが、これをちゃんとやるということが絶対必要だろうと思っているんですが、そこも含めて、大臣の御認識を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、新しい政策パッケージの策定に向けて消費税の使途の見直しを行うことになっているわけでありますけれども、もともと、社会保障・税の一体改革で、それぞれ、基礎的年金に充てるもの、社会保障の充実に充てるもの、あるいは社会保障の安定に充てるもの、一応整理をして、それぞれ金額も当て込んでいるわけでありますから、それを前提にしながら、社会保障の充実については、そこの上にどうするかということで今議論をしているというふうに私は認識をしております。

 そういった意味において、特に、具体的にこの中に盛り込まれております年金生活者支援給付金、あるいは介護保険料の軽減強化、これは当然、予定どおり、消費税率一〇%への引き上げによる増収分を活用して実施をしていく、この考えには全く変わりはございません。

桝屋委員 ありがとうございます。

 何も消費税一〇%時でなくても、大臣、いいですよ。というのは、一〇パー時にやるという約束の中で、既にやっていることもあるわけであります。例の六十四万人の無年金者救済、これはやってきたわけでありますから、ここは政治が判断をしてもいいんだろう、こう思ったりしているわけでありますが、まずは、大臣おっしゃったように、既に約束をしております税・社会保障一体改革の改革事項はきちっとやらなきゃいかぬ、こういう御認識を伺いました。

 そこで、実は、総理の記者会見では総理はこう言われたわけです。今後三年間を集中投資期間として位置づける、そして、人づくり革命と生産性革命、この二本柱を具体化する、政策パッケージをつくりますよ、こうおっしゃったわけでありまして、してみると、この政策パッケージというのは、平成三十年、三十一年、三十二年、この三カ年になるわけですね。

 実は、最初に申し上げた税・社会保障一体改革の平成二十六年から続いております作業というのは、大体、平成二十九年で終わる予定だったんですね。それを、消費税引き上げを延期したものですから、今僕が議題に出したように年金の生活者支援給付金などは消費税一〇パー時に約束があったわけでありますから、これが三十一年まで延びたということで、今あの改革工程表がぐちゃぐちゃになっている。びしっと入っている人はあるかもしれませんが、私の頭の中ではもう相当混乱をしているわけであります。ここに三十年から三十一年、三十二年の二兆円のパッケージが乗っかってくるわけであります。ここはしっかり国民の皆さんに理解をしていただかなきゃならぬ。

 恐らく、総理は、消費税の引き上げの財源だけでなくて、その他の安定的な財源を得るということも御発言をされているわけでありますから、そこは相当議論があるわけで、そういう議論をした上で、時期は私もいつになるかわからぬのでありますが、改めて、私は、プログラム法に基づく改革工程表はどこかで整理をしなければ、これは、多くの関係者、特に、先ほど話が出ております医療や介護の従事者の皆さん方、経営者の皆さん方、あるいはサービスを受ける国民の皆さんもわかりにくいだろうと。

 選挙中ずっと、極めて短期の選挙で私はいろいろな声を聞きましたけれども、全世代型の社会保障に転換するというのは、大体、多くの国民の皆さんが理解をされている。これは、社会保障制度改革国民会議、平成二十五年のあの報告書の方向でありますから、私はいいんだろうと思っておりまして、ある意味では、税・社会保障の一体改革を、あの総理発言は、さらに深化し、発展をし、将来を展望した大きな改革、方向性をお示しになった、私は、とても大事な発言であっただろう、こう思うんですが、それゆえに、次の改革工程表を急いでお示ししなければ多くの国民に理解されない、こう思うのでありますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 ぐちゃぐちゃになったかどうか、ちょっとあれなんですが、当然、消費税の引き上げ時期が二度にわたって延期をされておりますから、それに伴って、消費税の引き上げに合わせて導入するといったものは後ろに倒れてきているということは、そのとおりだと思います。

 それから、今回、消費税の使い道を変更して、今政策パッケージをおつくりいただいているわけですから、それらも含めて、この工程表全体がどうなっていくのかというものは当然お示ししていく必要があるんだろうというふうに思います。

桝屋委員 大臣、余りのんびりできないんです。

 ここは、消費税の引き上げということもありますし、我々はそこで軽減税率、庶民の暮らしを守るために軽減税率ということも言っているわけでありますから、当然ながらその分税収が減るわけでありまして、その辺の財源の手当ても含めて、あるいは、今回の二兆円のパッケージの財源が、今回は総理がお動きになって、経済界から三千億の規模で企業拠出金を何とか御理解いただける、そんな環境はできていると思っておりますが、しかもその中身はまだこれから議論しなきゃならぬわけで、できるだけそうしたものが相整った段階で、私は、改めて改革工程表、さらに言いますと平成二十五年度のあのプログラム法、これを一回見直すというような形で。

 しかも、その中では、さっき申し上げた、制度として確立された少子化に対処する、この中身、やはり線引きとか、消費税はこういうものに充てるんですよというようなものを国民の皆さんに理解していただく。将来を展望し、私はそういう作業が絶対に必要だ、急ぐと思っているんですが、改めて大臣の御所見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 もちろん、今お決めいただく、あるいは我々がこの十二月末にする政策パッケージ、また一方で例の財政再建の問題がございます、それについても総理は、財政再建の旗をおろさず、そして次の目標に向けて早々に議論するということでございますから、それらを見ながら改革工程表の方も並行して私は作業していく必要があるんだろうというふうに思います。

桝屋委員 大臣がおっしゃるとおり、財政の健全化ということも極めて大事でありまして、そういう意味では、来年の骨太などに向けて、我が党も与党の一員として、今のような形をしっかりと整理をしていきたいというふうには思っているんです。

 私は、この選挙戦、最初に個人の思いを申し上げましたが、なかなか、国民の皆さんと話をするときに、総理のおっしゃった二兆円パッケージがどういう位置づけになるのかというのは、自分の頭でも整理できない。したがって、選挙民ももっと理解できない。

 私、一番ショックだったのは、その説明をしたときに、ちょっと待て、消費税というのは全部社会保障の充実のために使うのではなかったのか、こういうお叱りを受けました。何を怒られたのかなと思ったら、いつ借金返しに使うと決めたのか、そんなことは自分たちは相談にあずかっていないという声を聞いて、いやいや、平成の時代から社会保障がどれだけ伸びたか、したがってそれは国民の負担になっているんですよというようなことを一々説明しなきゃいかぬ。その説明がたった二十四日ではできなかったということを、私はさっきからひとり言を言っているわけであります。

 そんなことで、できるだけ早く、おっしゃったように、プライマリーバランスの黒字化も含めて全体の姿を私は示していかなきゃいかぬのではないかと。示したらまた選挙をされるんじゃないかと不安になるのでありますが、どうぞ、加藤大臣、落ちついて政治をやりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。それぐらいマグニチュードの大きい話だということを私は申し上げているわけであります。

 同僚の橋本先生がさっきおっしゃった、その工程表には、恐らく、三十一年の十月、消費税が引き上がって、三十二年、三十三年、あるいは三十四年あたりの社会保障に対する自然増の圧縮、この圧力というのはすさまじいものが私は来るのではないか、こういうことも大変危惧をしているわけでありまして、それはもう、あとは消費税収を上げるか、給付を合理化するか、あるいは新たな安定的な財源を得るか、この道はそんなにないわけでありますから、そんな議論をしっかりこれからさせていただかなきゃいかぬと思っております。

 次のテーマに移りたいと思います。

 先ほど話も出ましたけれども、今、新年度予算あるいはトリプル報酬改定に向けていろいろ各団体と議論しておりますが、さっき安藤先生がおっしゃったとおりであります、人不足、これはもうえらいことであります。私は、総理が、私たちが政権を担当して雇用情勢は本当に改善をした、こう胸を張っておっしゃっているたびに、実は暗い気持ちになります。それどころではない、社会福祉、医療の現場は、人不足でえらい事態に立ち至っているわけであります。医療、福祉現場の人材確保策について、ここはちょっと抜本的な対策が必要ではないか。

 とりわけ、総理が九月二十五日の記者会見でおっしゃった、私は予定しておりませんでした、介護離職ゼロのために介護人材の確保ということを、改めて処遇改善をなさるということを言われるとは思っておりませんでした。あれは国民はどう受けたかというと、ああ、やはり、いろいろ言われるけれども、介護職員の賃金はまだ低いんだなというイメージをさらに与えたという効果もあったりしまして、賃金の、もちろん処遇の改善ということが大前提、必要ではありますけれども、それだけでは済まない、大胆な改革が私は必要と思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 国民一人一人に大変大事ないわゆる福祉サービスがしっかり提供されていくためには、もちろん施設整備等々も必要でありますけれども、そこで働く方々をしっかり確保し、そして、その方々が誇りとやりがいを持って仕事をしていただく環境をつくっていくということが何よりも大事だと思います。

 そのためにも、今働いている方々が就業を継続していただけるような離職防止、また、改めて今、これからそういった世界で働こうと思う志を持つ皆さん方、あるいは資格を持っているけれども今働いていないという潜在的な皆さん、こういった皆さんの思いをしっかりと掘り起こして、人材確保を総合的に進めていくことは当然やっていかなきゃならないことだというふうに思っております。

 具体的には、これまでも、保育人材に関しては、潜在保育士の再就職支援とか、あるいは、もちろん処遇改善にも今取り組んでおります。また、介護人材についても、今委員からもお話がありました、他の産業との賃金格差をなくすべく、さらなる処遇改善にも挑戦をしていくということでもあります。また、加えて、賃金だけではなくて、やはり職場の環境ということもありますので、ICTをうまく活用することによって現場の負担軽減をしていく、あるいは職場の環境改善、こういったものにもしっかりと取り組んでいきたいというふうに思います。

 これだけやったら全部ということはないと思いますので、それぞれのニーズや状況を踏まえながら、一つ一つ、その問題、あるいはそうした皆さんが就業を継続しようとする思い、あるいは新たに入ろうとする思いを阻害するもの、それを一つ一つ除外していく、そういった取り組みをしっかりとやっていくことが大事なんだろうと思います。

桝屋委員 三つぐらいちょっと議論したいんですが、時間もないのでありますが、人材確保の観点でいうと、一つは、大きい話からしますと、福祉の人材確保については、社会福祉法に基づきまして、人材確保指針というのが平成五年にスタートしたと思っております。その後、介護保険制度ができて新たな環境が生まれたので、この指針を見直されました。今、これほどの人材不足の中で、私は、この指針を抜本的に見直すべきではないか。

 ここは、大臣がおっしゃるように、どれか一つやればいいということではない。イメージアップもやらなきゃいかぬ。賃金の引き上げもやらなきゃいかぬ。あるいは、その養成施設のあり方をどうするか、職場環境をどう変えるか、もちろんいろいろテーマはありますが、今求められていることは、やはり改めて、大体、平成五年につくったこの指針を十九年に見直しをし、これは十四年、間があります。今、新しい指針から十年たっているわけで、ここはやはり見直しの作業をやらなきゃいかぬのではないかという思いが一つあります。ここは、局長、いかがでしょうか。

定塚政府参考人 福祉人材確保のための国の指針についてでございます。

 御指摘のように、この指針は、福祉人材について横断的に確保対策を見るという指針でございます。

 一方、介護や保育、それぞれの分野におきましては、それぞれの確保方策というのをこの間掲げてきたわけで、例えば介護につきましては、直近ではことしの十月に、介護人材に求められる機能とキャリアパスはどうあるべきかということを審議会で方向性も出しております。

 しかしながら、御指摘のように、やはり、福祉人材確保のための国の指針は大変重要な指針でございますので、認知症高齢者あるいは高齢単身世帯の増加など、最近の複雑化、多様化しているようなサービスへの現状を把握しながら、必要な見直しをしっかり検討してまいりたい、このように考えております。

桝屋委員 そこで、二つお願いしたいのであります。

 指針で足りるかどうか、私は新しい法律が要るんじゃないかという思いすら持っておりますが、その中で、先ほど安藤先生がおっしゃった、今の医療、介護の現場、福祉の現場で、いずれも皆さんの保険料や税金で賄われているサービスが、さっき言った派遣会社とか人材紹介会社、そうしたところへ法外なお金が流れているんじゃないか。負担する方々はそこまで考えていないわけで、私は全部派遣会社を否定しているわけではない。しかし、都市部等では、それぞれの単体の事業所が労務管理ができなくなっていまして、そこは、需給調整を人材会社、派遣会社に任せるという状況が生まれている。

 私は、指針でも法律でもいいんですが、そうした方々が相当大きな力を、役割を果たしている、否定するんじゃなくて、そうした方々のあるべき姿、やはり、そこまでは国民が許容しませんよというようなレベルはそろそろ考えなきゃいかぬのではないかというのが一つ。それがどの程度の規模であるかというようなことを把握する必要があるんじゃないか。

 もう一つは、福祉事業者、介護事業者の中で、ここは人はちゃんと確保できていますという事業所があるんです。そういう事業所はしっかりウオッチしてもらって、職場環境の改善とおっしゃるけれども、具体的にこういうところは人がちゃんと確保できているという事例をしっかりと積み上げていただきたい、これをお願いしたいと思うんですが、今の二点、いかがでしょうか、局長。

定塚政府参考人 御指摘ありがとうございました。

 やはり介護現場の状況を踏まえながら対策をとるということが何より重要と考えておりまして、実は今、厚労省内でも、私どもの局だけではなくて、職業安定局、老健局も含めて、現場の意見など把握しながら、次の対策はどうあるべきかということを検討しているところでございます。

 そうした中で、先生から御指摘ありましたように、いい事業所と、余り人が集まらない、離職しやすい事業所というのがかなり分かれている、ここをしっかり、よいところはよいと評価することによって人も集まりやすくなるのではないかというような御意見も出てきておりますし、いただいたような人材紹介会社をどうしていくかというような課題も出てきているかと思います。

 しっかりいろいろな課題を把握して、現場の意見を聞きながら整理をしてまいりたいと考えております。

桝屋委員 大臣、我々はいろいろな声を現場で聞いておりますが、こういう事例すら聞きました。国庫補助、補助金を受けて施設整備、ハードを整備して、いよいよ事業を開始しよう、人が集まらない、その事業所は事業を開始できない、そうすると、補助金の適化法にひっかかって、予定した時期に事業を開始しないのであれば補助金は返してくださいという事例すら私は聞いておりまして、人の確保の難しさはそこまで来ている。

 ここは、厚労省だけでなくて、これからの社会保障各制度の人材の確保ということが極めて大きな課題になっておりますので、ぜひそうした取り組みを政府挙げて私は取り組むべきではないかとお願いをしておきたいと思います。

 さらに補正予算の話もしたかったのでありますが、ちょうど時間になりましたので、これで終わります。

 きょう申し上げたことは、我が党が与党の一員としてさらに一生懸命取り組んでいくということをお誓い申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、吉田統彦君。

吉田委員 皆様、おはようございます。立憲民主党・市民クラブの吉田統彦でございます。

 大変貴重な時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 先日の所信表明で、加藤大臣は、待機児童解消に向けての施策を力強く述べられておられました。二〇二〇年度までに三十二万人分の保育の受け皿の整備、そして保育人材の確保、そして三歳から五歳の幼児教育、保育の無償化、ゼロ歳から二歳児についても所得の低い世帯の無償化を行うと言っておられました。

 そのような中で、読売新聞の報道によると、岸田政調会長を本部長とする自民党人生百年時代戦略本部は、一昨日の二十二日、安倍内閣が掲げる看板政策、人づくり革命に向けた提言集の中で、大臣も所信表明で述べられ、また今回の衆議院選の公約で全ての子供の無償化を明記した三歳から五歳の幼児教育、保育については、料金が一定額以上の施設や高額所得者は無償とせず、助成額に上限を設けるよう求めるなど、公約と随分食い違う内容となっているようですが、まずその点に関して、大臣のお考えを簡潔にお聞かせ願いたいと思います。

加藤国務大臣 報道は承知しておりますけれども、今、党においてまさに大詰めの議論をしていただいておりますので、我々としては、それを踏まえながら、また、総理が言われたこと、それもしっかりと沿うような形で、来月の上旬の政策パッケージの取りまとめに向けて検討させていただきたい、こう思っております。

吉田委員 大臣としての思いは変わらないかということに関して、もう一言いただけますでしょうか。

加藤国務大臣 大臣としての思いは、先ほどの挨拶で申し上げたとおり、総理の指示を踏まえて対応していくということでございます。

吉田委員 ありがとうございます。

 具体的な政策の議論に移ってまいりたいと思います。

 実際の保育人材の確保のためには、やはり結婚や出産を機に保育士さんをやめてしまった休眠保育士さんとかあるいは潜在保育士さん、そういった方に保育の現場に戻っていただく、こういった魅力ある環境整備が必須であります。また、保育という重要な仕事を選ばれた方がそれを継続できる、そういった環境整備も必須であります。

 そのためには、もちろん、当然ですが、給与面だけでは不十分であります。子供たちのための行事があまたある保育施設という職場では、必然的にサービス残業と言われるものや、そして、場合によっては、家庭に仕事を持ち帰って残業をしている、行事の衣装や道具をつくる、そういったことが本当に頻繁に見られるというか、日常茶飯事であります。

 こういった状況を改善して、ゆとりのある環境で保育をしっかりという、こういった崇高な仕事に邁進できるような、そういったことを実現するための具体的な施策を大臣にお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 吉田委員御指摘のように、保育士の方々が継続をしにくい、あるいは潜在的な方々がもう一回保育士になろうかなというときのハードルとして、希望に沿う賃金ではないという、まさに賃金面の問題も確かに大きな柱の一つであります。

 しかし、同時に、こうした調査をいたしますと、業務負担に対して自分の健康からいっても自信がない、あるいは休暇がなかなかとれない、こういった点が、まさに勤務環境のことがいろいろ指摘をされております。中には、本当に毎日家に持ち帰って作業しなきゃいけない、私も、地元の保育士の方からもそういうお話をお伺いするところであります。

 そういった意味で、まず、処遇の改善については平成二十九年度予算においても対応させていただいておりますけれども、あわせて、保育士の方々の業務負担の軽減のため、保育士の業務を補助する人を雇い上げるような支援、あるいは保育業務のICT化等の支援に取り組んでそうした今申し上げたような業務の負担の軽減を図り、そのことが潜在保育士さんの方々が就職をする、そうしたきっかけにもなっていけるように取り組ませていただいているところであります。

 いずれにしても、高い使命感と希望を持って保育の道を選んでいこうという方々が長く仕事を続けていただく、あるいは、そういった志を持った方々がその現場に入っていただける、こういったように、勤務環境の改善にも引き続き努力をしていきたいと思います。

吉田委員 大臣、ありがとうございます。

 そういったお取り組み、理解いたしますが、今伺った話で、保育士さんの補助をされる方という話、これは大変いいと思うんですが、保育士さんの給与も安い中で、この保育士さんの補助をされるお仕事につかれる方というのは、なお給与面で魅力のある仕事になりがたいと思うんですけれども、そこをちょっと大臣、もう一言お願いいたします。

加藤国務大臣 そういう中で、今、対象になる方については、当面は保育士の資格を持っていないんですけれども、保育の現場で働きながら保育士の資格を持っていただく、そういったことも一つの前提として、ねばならないということではありませんけれども、そういったところで努力をしていただくということを前提として、そういった皆さんも最終的には保育士の資格を取っていただくということが、また保育士の方々がふえていくということにもつながっていくんだろうというふうに思います。

吉田委員 ありがとうございます。

 ぜひ、しっかりとした具体的な道筋をまたつけていただければと思います。

 それでは次に、また保育でございますが、出産を経た女性の職場復帰の最初の関門というのは、やはりゼロ歳児の保育の受け入れ先の確保であります。

 また、もっと具体的に言えば、アカデミアに所属する女性や、キャリアを追求していわゆる産前産後休業直後に社会復帰を目指す女性にとって、労働基準法第六十五条で定められているように、通常八週間は仕事ができません。医師が許す場合、本人が望む場合は、六週間は働くことができませんので、現実的に最短で生後二カ月の乳児を保育してくれる施設を確保するということが早期の職場復帰を目指すお母さんたちの最初の悩みであります。

 加えて、産前産後休業に加えて約一年間の育児休業後の保育の受け入れ先も極めて狭き門となっています。

 さらに、第一子と第二子、第三子、第四子と、複数のお子さんの保育を同時に希望される両親にとって、保育を必要とする子供たちが別の保育施設にばらばらに通わなければいけない事態というのは最も避けたい事象の一つであると考えます。しかし、それは実は往々にして起こっております。

 具体的に言うと、妊娠中のお母さん、そしてその御主人が、これから生まれてくるお子さんが上のお兄ちゃんやお姉ちゃんと同じ保育施設に通うことができるかしら、そんな心配をしなくてよいシステムづくりが肝要だと思います。それこそが、深刻な少子高齢社会となっている我が国において、一人目から二人目、二人目から三人目、三人目から四人目へと、多くの子供を産み育てたいと考えている御両親にとって大きな希望と勇気を与えるのではないでしょうか。

 大臣がおっしゃった施策を実現するために、この三点は必須だと思います。

 もう一度申し上げますが、産後休業直後に生後二カ月の乳児の保育を希望する御両親、そして約一年の育児休業の後の保育を希望する御両親、そして複数のお子さんの同時保育を希望する御両親に希望を与える具体的な施策を、加藤大臣から力強くお示しいただきたいと思います。お願いします。

加藤国務大臣 まず、乳児あるいは育休明けという意味において、今でも待機児童の大半はゼロ歳から二歳で発生をしているわけでありますから、そういった意味で、そういった子供さんを保育園に預けたい、そうした希望が実現できるように、やはりこの待機児童解消にしっかりと取り組んでいくことがまず何よりだというふうに思っておりまして、そういった意味で、安心子供プランも来年度からスタートし、それを前倒しして取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、複数のお話もありました。私のところも、娘、実は四人おりまして、そういった立場からすると、子供が何人いても親は、両親そろっていれば二人ということでありますから、同じところにという希望はあるんだろうと思います。ですから、そのためにもやはり、保育園の整備あるいは待機児童の解消、これをしっかり進めていくことがまず何より大事なんだろうというふうに思います。

吉田委員 ありがとうございます。

 おっしゃっているとおりなんでございますが、やはりちょっと具体的なところに焦点を当ててやっていかないと、本当の意味で、数をふやすことももちろん大事でございますが、大臣は四人お子さんがいらっしゃるという、もうお気持ちは十分おわかりだと思いますので、大変、特に都市部においては本当に深刻になっておりますので、ぜひそういった形で進めていただければと思います。

 今、加藤大臣がおっしゃったこと、そして安倍総理が所信表明演説で力強くおっしゃった施策を完遂するためには、やはり本質的な部分で、それを必要とする、つまり保育を必要とする人に対しては、保育を国民の権利として、そして国家の責務として義務教育並みに手厚く担保していくことが、この少子高齢社会で、本当にこの国を支えていく子供たち、将来を担う子供たちが必要な我が国にとっては必要かと私は思いますが、そういった点に関して加藤大臣の御意見を承りたいと思います。

加藤国務大臣 済みません、先ほどちょっと安心子供プランと申し上げたかもしれませんが、子育て安心プランでございます。ちょっと訂正をさせていただきたいと思います。

 その上で、今の御指摘というのは、まさに、先ほど、最初の御質問にあった幼児教育の無償化等にもつながる話なんだろうと思います。やはり、幼児期における教育の重要性、特に、コミュニケーション能力とかそういう非認知的な能力を高めていくためにも非常に大事だということは、海外の文献からいっても指摘をされているところでございまして、そういった意味においても、いわば、今の段階では義務教育ではありませんけれども、準義務教育的なものとしての位置づけということを認識しながら、私どももそういったことを提案させていただいているということでございます。

 そういった認識を持ちながら、あと、具体の話は今、党で御議論いただきながら、またそれを政府で受け取って来月末のパッケージにし、それをまたさらに具体的に進めていく、そういう中で一つ一つ実現をしていきたいというふうに思っておりますけれども、しかし、そういうものを進めるに当たっても、先ほど御指摘の待機児童の問題、これにしっかりと取り組んでいくことがまず何よりも肝要なんだろうと思います。

吉田委員 大臣、ありがとうございます。

 準義務教育という言葉を言っていただきましたが、これは、聞いていただいたお母様方や、これから子供を産み育てよう、そう思っている方々に大変に勇気を与えるお言葉ではないか、そう思います。

 それでは、次のテーマに移らせていただきます。

 移植に用いる造血幹細胞の適切な提供に関する法律が議員立法で制定されました。平成二十四年九月十二日に公布、平成二十六年一月一日に施行されたことは、血液疾患に苦しむ患者がよりよい造血幹細胞移植を受けるために大変な福音であったと考えております。

 また、平成二十六年度、平成二十七年度と連続で収支が赤字となっている骨髄バンクに対して、超党派議連、骨髄・さい帯血バンク議員連盟の御尽力で補助金が六千万円増額になったことや、旧態依然たるシステムであった骨髄バンクのコーディネート支援システムを臍帯血バンクシステム並みに強化していく方向性というのにも大変期待をしております。

 しかし、現実はそう簡単ではありません。

 実際にドナー適合者が見つかっても、ドナーとなり得なかった場合の患者の悲嘆というのはいかばかりか、もう大臣おわかりだと思います。それは、場合によっては患者本人への死刑宣告となってしまうこともあるわけであります。

 私の地元名古屋の市議会議員、日比健太郎氏は、ドナー登録者の中にドナー適合者が見つかりました。しかし、残念ながらドナーとなり得ず、昨年の平成二十八年十一月三日午後十一時八分、三十五歳の短い生涯を閉じました。こういった悲劇を繰り返さないためにも、ドナー登録者がドナーになりやすい環境づくりが最も肝要であると考えます。

 ただ、ドナー登録者もいろいろな社会的な制約を受けています。ドナー登録者の仕事や経済的な負担、また、移植、これは医療行為でありますので、移植に対する恐怖、もちろんあるでしょう。そして、麻酔や医療行為そのものに対するリスク、そういったものに対応し、それを軽減していく必要があるのではないかと考えます。

 この点に関して、大臣の御見解をお示しください。

加藤国務大臣 まず、今、残念ながら、ドナーの候補者がいながら、実際その移植を受けることがなく亡くなられた方に対して、心からお悔やみを申し上げたいと思います。

 骨髄移植をするにおいては、提供者の善意による医療ということであります。提供を希望する方がまさにドナーになりやすい環境を整備していくことは非常に重要であり、そのことが受ける方の命を救っていくということにもまさにつながっていくんだろうと思います。

 特に、ドナーになることに伴うさまざまなリスクもあると思いますが、もう一つは、ドナーになると、特に働いている方の場合には、やはりどうしても身体的な負担もあるので、休暇をとったり、そういった必要もあるんだろうと思います。

 そういう意味で、各企業に対して、そうした休暇をとるといった面における配慮をしていただくことが重要だということで、今も日本骨髄バンクにお願いいたしまして、企業に対するドナー休暇導入のための普及啓発を進めさせていただいておりますし、また、一部の自治体では、企業に対するドナー休業の補償措置を自主的に行っているとも承知をしているところであります。

 いずれにしても、そうした積極的に取り組んでいる好事例をしっかり共有することによって、またそれを横展開することによって、ドナーの休暇取得が容易になるような環境づくり、また提供を希望する方がドナーになりやすい環境、この整備にしっかりと取り組ませていただきたいと思います。

吉田委員 ありがとうございます。

 ぜひ、政府におかれましてもより力強い御支援を賜ればと思いますし、また、急性白血病を初めとした多くの血液疾患は、骨髄移植をして治ってしまえばもう本当に健康体となって普通にお仕事ができるという点で、ほかの病気と大きく違うところがあります。つまり、この社会、日本という経済を支えるための一員としてまた大きな力となっていただく。また、白血病は子供さんにも多く発症する疾患でもありますので、ぜひそういったところも御留意いただきまして、より一層のお力添えをお願いさせていただきまして、次のテーマに移らせていただきます。

 大臣は、私の地元愛知県のデンソー社が、二〇一五年四月から、手術支援ロボット、アイアームスを発売したのを御存じでしょうか。

 同社のホームページからの抜粋でございますが、手術時に医師の腕を支え、生理的な震えや疲れを軽減するとされています。この機序は、医師が腕を動かしたい位置にロボットアームが自動的に追従する、ついていく形ですね、かつ手術時にはしっかりと固定され、医師の腕を支え、術者の直観的な操作を可能にするために、内蔵されたセンサーが、腕を置く、腕を制止する、腕を浮かせるという動作を感知して、術中の腕の固定や腕の移動、周辺機器操作時の待機の三つの動作をスイッチレスで切りかえるものであります。

 また、医療現場で求められる高い安全性と軽やかな操作性を実現するために、動作はモーターを使わず、重力バランスと腕の動きによって行われます。医療現場の顕微鏡や内視鏡の普及によって長時間かつ繊細な手術がふえている現状に甚だマッチする、また日本らしい、本当に日本らしい技術だと私は誇りを覚えます。

 上記のように、安全であり、また直接患者に触れるものではありませんので、当然、私も医師でございます、日本でもアメリカでもやっておりましたが、医療機器ではないと考えます。これが医療機器であるというのであれば、例えば、我々が顕微鏡手術のときに使用する椅子すらも医療機器になってしまう、そんな感じで私や医療従事者は思うのでありますが、大臣はいかにお考えになられるか、御所見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 まず、今回の御質問で初めてこのアイアームスというのですか、お話を、またデンソーが開発しているということもお聞かせいただいて、ああなるほど、それぞれ培ってきた技術をこういった形で医療の方に、あるいは医療機器、医療機器と言ってはいけないですね、医療の関係に展開していただいている、これはすばらしいことだなというふうに思います。

 この機器がどういう機能を持っているのか、正直言って私十分承知をしておりませんので、ただ、どうしても、手術のときに使うということであるならば、それが具体的にどう制御されてどう機能されていくのか、その辺はよく見ていく必要があるんだろうと思います。

 ただ、いずれにしても、詳細な説明をお聞きした上で、それが医療機器に該当するのかどうか、しっかりと判断をさせていただきたいというふうに思いますし、また、使用目的とかリスクをしっかりと判断した上で、あえて医療機器にする必要がないものまで医療機器にすることは、私は避けるべきなんだろう、こういうふうに思います。

吉田委員 大臣のおっしゃるとおりでございます。

 しかし、実は、せっかく世界のデンソーのあれなので、かなり早く質問通告をして、大臣にちょっと見ていただきたいということを打ち合わせのときにさせていただいたので、ぜひ、もうちょっと内容を承知していただきたかったなという思いはございます。内容全て、デンソー社のアイアームスと私、申し上げましたので。

 いずれにせよ、大臣が最後言っていただいたことは大変にすばらしいお考えですし、厚生労働行政を所管される大臣としては大変に御見識が高いと安心をいたしました。

 そこで、こういった、今回大臣はそうおっしゃっていただきましたが、誤った、もしくは行き過ぎた規制で、せっかくデンソーのような日本を代表する企業が医療関連事業に参画をしようとする思いや好機を失ってはならないと私は考えます。その点は重々御承知おきいただきたいところでございます。

 関連でございますが、我が国の医薬品、医療機器に関する規制は、もちろんその安全性こそ最も担保すべき重要なものでありますが、過去に行き過ぎたものがあり過ぎました。もう大臣お詳しいと思います。その結果、日本発、そして国産の医薬品、医療機器の国際的な、そして国内でのシェアは低下の一途をたどっております。

 特に、治療用医療機器の分野では極めて深刻となっています。この技術立国日本の医療機器に関する貿易収支は悪化の一途であります。二〇一四年の貿易赤字は約八千億円、そして数年以内に恐らく一兆円を超えてくるでありましょう。また、二〇一四年の医療費約四十兆円の約七%、二・八兆円を占める医療機器市場のうち、金額ベースでは、治療用機器であるカテーテル、ペースメーカーなどが五三%、診断用機器である内視鏡、CT、MRIは二五%となっています。成長率も市場規模も治療用機器が圧倒的に高いんです。輸入比率も、残念なことに、この治療用機器が極めて高くなっています。

 つまり、日本発の安全で最先端かつ高性能な治療用医療機器を数多く生み出していき、日本国内だけでなくグローバルに普及せしめることは、医療費の削減や貿易収支の改善はもとより、産業を生んで、雇用を生んで、そして税収を生む、極めて重要な施策であります。

 しかし、現実、大臣、どうでしょうか。治療用医療機器における、今回はペースメーカーを例として大臣とちょっと議論をさせていただきたいと思います、御提言もさせていただきたいと思いますが、大臣は国内で使用されているペースメーカーの国産品の割合を御存じでしょうか。お答えください。

加藤国務大臣 私の認識している限り、ペースメーカーをつくっているメーカーはないというふうに認識をしています。

吉田委員 ありがとうございます。

 そのとおりでございます。ゼロであります。これは、私も実は薬機法の成立に尽力をさせていただいた身でございますが、極めて残念であります。

 そのような中、二〇一七年九月の五日の報道でありますが、上海市の張江科技城に位置する創領心律管理医療器械有限公司が生産したRegaTM心シリーズ植え込み型心臓ペースメーカーが先ごろ、国家食品薬品監督管理総局、中国のCFDAの認可を受けて、中国初の世界最先端の水準の国産心臓ペースメーカーになったそうであります。中国ペースメーカー市場が長年にわたりやはり輸入品に主導されていた局面を打ち破って、多くの中国の患者さんがその恩恵にあずかる、そういったことになると報道は伝えております。

 日本でのペースメーカーの植え込みは、実は一九六三年です。もう五十年以上前の六月に初めて行われております。その歴史の中で、国産ペースメーカーが誕生しそうだったことは実は四度ほどございます。

 特に、一九七一年、五年後の一九七六年に開催される第五回国際心臓ペーシングシンポジウムの東京誘致が決まった中で、東京女子医大の堀氏は、開催までに何とか国産ペースメーカーを実現したい、そういった思いで、大手時計メーカー、どなたも御存じの会社でございます、と共同して、当時の最先端デジタル腕時計の技術によって、外国製を含めて、世界で、もうどこの国も到達できなかったレベルのすばらしい試作品を完成させました。しかし、メーカーの最終判断は、ペースメーカーで万が一のことが起こると、企業、会社全体のイメージが損なわれるということで、製品化されませんでした。

 そして、一九九二年、テルモ社が次世代ペースメーカーの開発に取り組むと発表しましたが、七年後の最終決定は、製品化を行わないというものでありました。公式な理由は、テルモはペースメーカーの販路を有しておらず、既存のマーケットに参入することが困難であるというものでありました。これもまた一面であるのは事実だと思います。

 しかし、十年余り後に、本事業の責任者を務めていた片山氏は医療系ジャーナルのインタビューに対して、国内企業は心臓ペースメーカー用だとわかると高分子材料も電子部材も協力してくれない、断ってきた企業の中には米国のペースメーカーに部品を提供するところもあったということであります。大臣、こう回顧しております。

 同様の指摘でございますが、これはちょっとペースメーカーではないんですが、国産の植え込み型補助人工心臓、エバハートを御存じですよね。エバハートを製品化したサンメディカル技術研究所の山崎氏は朝日新聞の特集記事の中で、人工心臓の本体のチタン材料、羽根車を制御する磁石、積層コンデンサー、電池など主要な部材のほとんどが供給を断られた、その説得に六年かかったと述べています。

 今こそ日本は治療用医療機器における失地を挽回する、そのために、ペースメーカーを代表として極めて国産医療機器のシェアの低い分野に対して、産官学、そして政が力強い四銃士として参画して、革命的、革新的に推進していかなければ。お隣の中国でこういうことが起こっているという報道を受けて、大臣、どのようにお考えになるか、ここは本当に力強いお言葉をいただきたいです。

加藤国務大臣 治療用医療機器のお話が今いろいろありました。もちろん、我が国の企業がそういったものに積極的に転換をしていくことが成長にもつながっていくということもありますけれども、同時に、やはり日本国内で開発し、生産されるということは、その場合、日本人がつけることを前提に考えるわけですから、日本人の患者の方々にとっても私は大事なことなんだろうというふうに思います。

 私もこの分野はかつてから大変関心を持っておりまして、どうやってふやしていくのか。そのときに、今言った、万が一のときというお話も聞かせていただいたところでもあります。また、逆に、特に侵襲性の高い治療用医療機器のときには、そういったことで万が一で手を引いていたこともあるんでしょう、なかなか製品開発の人材そのものも残念ながら不足をしてしまっている、また、連携もなかなか難しい、こういうことで、残念ながら輸入に大変頼ってきている、海外のものに頼っているというのが現状だと思います。

 そういう中で、医療機器促進法に基づく医療機器基本計画に沿って、いわゆるAMEDにおけるオールジャパン医療機器開発プロジェクトを通した産官学の連携、あるいは人材育成、あるいは研究開発に係る税制上の優遇措置等には取り組んでいるところではあります。

 そういったことも通して、ステントとかカテーテル等については国内での市場占有率は上がってきている。まだ、残念ながら、先ほど申し上げたペースメーカーについては出てきていないということでありますので、さらにこうした取り組みが進んでいくことによって、先ほど申し上げた、日本の患者さんがよりいい機器に、より早く、そしてより適したものが使える、その環境をつくるべく一生懸命努力をしていきたいと思います。

吉田委員 大臣、ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、まずは国内の患者さんに最新のすばらしい性能を持つ医療機器を届けることが極めて大事であります。しかし、もっと言えば、日本ですばらしいものをつくって、世界に、グローバルにこれを輸出していく。

 例えば、日本の国産でまだ世界でも使われている医療機器はたくさんございます。杉田クリップという、もう誰もが知る動脈瘤のクリッピングを行う機器、これは実は私の母校の名古屋大学の教授がつくり出したものでございます。

 あと、問題は、例えばダビンチ、大臣、ダビンチはもうもちろん御存じだと。ダビンチの中の機械、部品というのは、大臣御存じのとおり、国産のものもいっぱい入っているわけであります。いわゆる医療機器をつくり出すときというのは、今のこの時代は、そこを構成する部品や高性能なパーツをつくるところまで含めてそれを提供し得る環境を、政府としても厚生労働省としても推進をしていく環境をつくらないと、さっき私が二個申し上げた事例のように、海外の企業とおつき合いがあって、例えば、国産に協力するなら、もううちは別のところから部品をとると言われてしまったら、そういった部品やパーツをつくる企業だって、やはり提供を断念せざるを得ない状況があるわけであります。

 今申し上げたのは、実は本質的な部分で一つ重要な部分かと思って私は大臣に御提言をさせていただいたのでありますが、もう時間が来ておりますので、最後にもう一度だけ。

 私は、大臣の思いや大臣のお考えというのは大変に期待をしておりますが、パッケージとして、中の部品、パーツ、薬のシーズ一個と違って医療機器というのはいろいろな構成成分があるんです。その構成成分一個一個に関してもオール・ジャパンでやらないと、絶対にこれは外圧に負けたり、ほかとの競争に負ける可能性が高いんです、大臣。なので、ぜひそこを、もう一度ちょっと、しっかりとした御検討をいただく旨の力強い答弁を何とかいただけませんでしょうか。

加藤国務大臣 医療機器を構成している、最終的にアセンブリーして提供する会社と、そしてそこに向けてさまざまな部品を提供する会社、またあるいは、そういう技術がすり合ったことによってよりよい製品はつくり上げられていくんだろうというふうに思いますし、そういったインテグレートするというのは、割と日本の企業では、ほかの分野では非常によくやられていることでありますから、そのことも念頭に置きながら、先ほど申し上げた製品開発をしっかり進めていける、そうした環境をつくっていきたいというふうに思います。

吉田委員 ありがとうございました。

 では、終わらせていただきます。

高鳥委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 おはようございます。立憲民主党・市民クラブの尾辻かな子です。

 今回、特別国会、初めて厚労委員会での質問の機会となります。初当選から約一カ月、衆議院議員に当選をさせていただいた一人として、しっかりその責任を果たしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速ですけれども、まずは、保育の問題、待機児童対策と幼稚園、保育園無償化についてお聞きをしたいと思います。

 先ほどからも質問にあるとおり、安倍総理は、二〇二〇年までに、三歳から五歳まで、全ての子供たちの幼稚園、保育園の費用の無償化、そして子育て安心プランの前倒しで二〇二〇年度までに三十二万人分の受け皿整備を進めるということをおっしゃっております。

 私たち立憲民主党は、幼児教育の無償化については、社会全体で子供の育ちを応援するという観点からは賛成であるということは、さきの代表質問でも述べさせていただいております。しかし、無償化の前提というところでありますけれども、やはり、まずは、希望した全ての人が入園できる、これを私、全入制とちょっと呼ばせていただきたいと思いますけれども、この全入制でなければ、入園できた人とできなかった人との差が著しく、不公平なものになってしまうと考えております。

 二〇一七年四月一日現在の待機児童数は二万六千八十一人と、前年比で二千五百二十八人ふえております。待機児童数は三年連続で増加、隠れ待機児童数も含めると約九・五万人という計算もあると聞いております。特に、先ほど大臣おっしゃったように、一歳から二歳、待機児童が非常に多い状態になっております。

 まずは、無償化の前に、希望する方が全員入所できる、入園できる、この全入化を目指す待機児童対策が優先されるべきだと思いますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 まさに御指摘のとおり、待機児童の解消に関しては、我々、政権がスタートしたときからこれは大きな課題だと認識をし、それ以前に比べて三倍程度のスピードで受け皿整備を図ってきたところでありますけれども、しかし、残念ながら最初の五年間では待機児童の解消ということには至らなかった。

 それを含めて、子育て安心プランというのをことしの六月に策定いたしまして、そしてさらに、それを前倒しで実行していこうということで取り組んでいるところであります。

 いずれにしても、今、子供さんを抱えながら働きたいという希望を持っている方々のその希望を実現していくためにも、待機児童の解消には当然全力で取り組んでいかなければならないというふうに思っております。

 また、それと並行して、やはり三歳から五歳の子供さんの無償化について、総理の所信表明、また私からも申し上げたところでありまして、これはこれとして少子化対策であり、また、先ほど申し上げた、その時期の教育の大変な重要性に鑑みて、それを並行して進めていく必要があるんだろう、こういうふうに考えております。

 いずれにしても、今与党の方で御議論いただいておりますので、その結果を受けて政府の中でさらに検討を進めさせていただきたい、こう思っております。

尾辻委員 三十二万人分の前倒しのことについて、もう少し細かく聞きたいと思うんです。

 先ほど桝屋委員も、何かいろいろなことがあって順番がぐちゃぐちゃになっているとおっしゃいましたが、私の中も大分混乱しております。

 まず、前倒しなんですけれども、これは今年度も前倒しをやるということなんでしょうか。それは、補正予算、財源等はどうなるのか、教えてください。

加藤国務大臣 今年度の前倒しですか。どう御指摘されたか、ちょっとごめんなさい。

尾辻委員 失礼いたしました。

 二〇二〇年度までに、五年間の分を三年にということで前倒しですけれども、これは来年度から始まる三年間で待機児童三十二万人を整備するということでいいのか、それとも、その前倒しというのは、今回、今年度補正予算を組んでやるのかという部分、スタートの時期でございます。

加藤国務大臣 基本的には来年度からでございまして、当初、六月にお示ししたプランでは、最終的には三十二というのは五年間かけてでありましたけれども、その五年間を前倒しして当初三年間の中で達成していこう、こういうことであります。

尾辻委員 ありがとうございます。

 そうすると、来年度の予算なんですけれども、今概算要求が出ておりますが、ここに既に入っているのか。そして、さらに前倒しですから、ここは財源はどうなるのか。自然増を五千億円までに抑えるという話がありますけれども、ここの中にこの増加分が入ってくるのかどうか、教えてください。

加藤国務大臣 基本的に、当初の六月のプランでも、最初の二年間で待機児童の解消をするということで、かなりこの全体の三十二に対して、前倒しと言うと誤解がありますが、前の方に重点を置いてやっておりましたので、それに加えてさらにもう一年間分、要するに三十二年度にもう少しかさ乗せしていくということで前倒しを図っていくことでありますから、したがって、今要求をしております三十年度予算の中には、前倒しを前提としても対応し得る予算の要求をさせていただいております。

 なお、財源については、まさにこれから予算編成の中でしっかり議論をしていかなきゃいけないんだろうと思います。

尾辻委員 今、一千三百億の削減がシーリング五千億でかかっている中で、この保育園予算が増大するがゆえにほかのサービスが切られることのないようにというのを非常に懸念しているところであります。これは消費税の増税前になりますから、特に財源、非常に疑問に思っているところでありますということを言っておきたいと思います。

 次に、無償化の対象についてお伺いしたいと思うんですけれども、先ほどの、代表質問の方では、認可外の方を対象外とする方針は決定しないということになっております。この対象については、今どうなっていますでしょうか。

加藤国務大臣 総理の所信表明演説でも、二〇二〇年度までに、三歳から五歳まで、全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化する、ゼロ歳から二歳児も、所得の低い世帯では無償化するという方針を示させていただいて、その上で、今、与党の方で鋭意議論をいただいているということでございます。

 その中において、先ほど、総理の御答弁がありましたけれども、認可外を外すということ、ちょっと正確な言い方はあれですけれども、そういったことも言われておるわけでありますから、その辺を踏まえて今議論をいただいているというふうに思います。

尾辻委員 今、認可で入れずに認可外でやっておられる方もたくさんいらっしゃいますので、不公平感のないようにお願いしたいと思います。

 次に、無償化した際の自治体負担について聞きたいと思うんですが、二十二日に横浜市の林市長が、市としては最大五十億円、市の費用負担増になると記者会見で発表されています。特に、建設の方は国や都道府県でやりますけれども、一般財源比率の高い保育所運営経費、これは非常に市町村の経常経費比率を高めるような結果にもなるのではないかと危惧をしております。このあたりを教えてください。

加藤国務大臣 その辺も含めて、国の分だけ用意して、地方は何か自分でやりなさいということには当然ならないわけでありまして、全体として進めなければ保育園の整備は進まないので、その辺もしっかり念頭に置きながら検討させていただきたいと思います。

尾辻委員 それでは次、保育の質の向上ですけれども、子ども・子育て新制度がスタートした際に、質の向上策ということで恒久財源〇・三兆円を確保して実施予定だったものが、まだ実施されていないものがあります。三歳児はできていますけれども、一歳児の職員配置基準を六対一から五対一にするといったことや、四、五歳児の職員配置基準を三十対一から二十五対一ということはいまだ実施をされておりません。

 保育の質の確保のためにも、この達成はいつごろになるのか、見通しをお聞かせいただければと思います。

加藤国務大臣 当初、子育てに関して、充実として一兆円、そして、そのうち〇・七兆円を消費税の引き上げ分で充たり、残念ながら、〇・三兆円について財源の見通しがないまま今日まで来ているところでございます。その中で一部やっているものもあるわけでありますけれども、それらについても、我々、引き続き必要な財源を確保して取り組めるように努力をしていきたいというふうに思っております。

 ただ、今申し上げた、質を上げなきゃいけない、当然でありますけれども、並行して、先ほど御議論いただいているように待機児童の解消ということもございます。その辺もよく見ながら、しかし、最終的には質の向上も図っていけるように努力をしていきたいと思っております。

尾辻委員 質の改善は非常に大事だと思っております。特に、これは達成するというもともと予定にあったものですから、しっかりやっていただきたいと思います。私たちは、質の改善、そして保育士さんたちの待遇改善、これがなくしては保育の充実はないと考えておりますので、これは通常国会でも引き続きお聞きをしたいと思っております。

 これとちょっと関連して、質問通告からちょっとずれていくんですけれども、世田谷区の保坂区長が、今回の無償化の議論に際して、実は、国民健康保険料、これは来年から広域化するんですけれども、これが、多子世帯、つまり子供さんがたくさんいる世帯は人数に比例するというんですね。だから、一人三万円であれば、五人だったら十五万円とか、完全に人数ごとの比例で、つまり子供が多ければ多いほど国民健康保険料の負担が大きくなる、こういうふうに今無償化の議論をしているのであれば、ぜひ国民健康保険料でも子供が多い世帯に対する負担軽減策が必要ではないかという提案があります。

 これはちょっと質問通告しておりません。もし、受けとめだけでもいただければと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 国民健康保険は各市区町村ごとに保険料の算定が違うので、たしか資産割とか世帯割と、そして、たしか個人割だったですかね、あって、当然、そこに世帯が多ければ、その分だけ、人数が、高いというのが今の状況なんだろうというふうに思います。

 いずれにしても、少子化対策ということにおいて、どういったことをやるのかということを常に考えていかなきゃいけないんだろうというふうに思っておりますから、それ以外にもいろいろございます、そういったことも念頭に置きながら我々も鋭意検討はしていかなければいけないなというふうに思います。

尾辻委員 ぜひ検討していただければと思います。

 それでは次、テーマをかえまして、介護保険についてお伺いしたいと思います。

 もう皆様も御承知のとおり、来年四月は、医療、介護、障害、これの報酬トリプル改定ですけれども、ニュースや分科会、審議会等で聞こえてくるのは、マイナス改定の話が多く聞こえてきます。介護保険についても、今回またマイナス改定になるのではないかというような話も聞こえてくるんですけれども、前回、報酬改定でマイナス改定になっております。

 介護事業経営実態調査結果を見てみると、前回の報酬改定前の二十六年度と比較をすると、例えば老人福祉施設、これは特養のところですけれども、収支差率、いわゆる利益率は、平成二十六年度は八・七%あったものが二十九年度は一・六%ということで、七・一%落ちております。在宅サービスを見ても、訪問介護も二・六ポイント減って四・八%。通所介護、デイサービスに至っては六・五ポイント減の四・九%。軒並み下がっております。

 全国老人福祉施設協議会は、二十三日、特養における赤字施設の割合が実に三割を超えまして、三施設に一施設が赤字になっているということをおっしゃっております。

 ですから、この経営実態調査結果では、どれぐらいが赤字かというのはなかなか見えないわけなんですけれども、この状態で、いわゆる効率化とかめり張りをつけるという名の介護給付費減が、本当に、総理が今回所信でおっしゃった、全ての人が安心できる社会保障の実現につながるのか、非常に疑問に思っております。

 例えば訪問介護事業所を見てみると、大臣も御承知のとおり、訪問介護事業所は非常に人数が少ない零細なところが多いです。今回も四・八%利益があるということなんですが、厚労省さんの訪問介護の一施設当たりの収支を見ると、実は平均で一カ月十万八千円が利益だと言っているわけですね。法人税を引くと九万三千円という利益なわけです。これは、パートをお一人雇ったら、もうこの給与で利益が吹っ飛んでしまうようなこういう状況で、特に介護分野は人件費比率が非常に高いですから、いわゆる中小企業の利益率と比べて介護保険を一緒のようなことで見るというのは乱暴な議論じゃないかなというふうに思います。

 今回、介護の審議会の方では、通所介護もそうですけれども、前回、小規模の方の報酬を下げました、大規模化に誘導しました。今回出てくるのは、大規模な通所介護の報酬を下げようとか。こうやって三年ごとにはしごを外す、次はこっちだと誘導しておきながら、次は、それが利益が上がったらはしごを外すというのは余りに過酷だと思います。

 この利益率、収支差率ですね、これだけを見て報酬改定を議論するのはちょっと、非常に乱暴だなと思うとともに、もしここをしっかりやるのであれば、中小企業よりも利益が低いところを上げるという議論も一緒にしていただきたいと思います。

 済みません、ちょっと時間がないので、介護保険は一括して質問させていただきたいと思います。

 先ほどの収支比率のことについての質問と、次なんですが、訪問介護の新しい生活援助に対して、来年四月度から新しいサービスのための研修制度を始めるということが、今回、介護給付費分科会でされております。

 確かに、介護の担い手不足の中でいろいろな方に参加していただくことは大事なことですけれども、それでもってまた報酬の、これが下がったりとか、そういうようなことになってしまっては、これは何のためにやっているのかわからないということになります。

 ちょっと申し上げたいのは、私も介護現場におりましたから、要支援サービスが市町村事業になって、遅いところはことしの四月だったんですね。これも複雑でわかりにくい。なのに、また新しい生活援助に新しい研修制度を設けるというのは余りに複雑過ぎるということ。これまで行ってきた生活援助と一緒であれば絶対介護給付費は下げてはいけないと思いますが、この辺はどうなっているのか。あと、分科会の意見としては、生活援助と身体介護の切り分けはできないということもおっしゃっております。ですので、この辺について、新しい研修制度についての大臣の御所見もお伺いしたいと思います。

 あわせて、介護保険のことですけれども、分科会の中で、訪問介護を百回以上使っていらっしゃる方がいるということで、かなり議論になったというふうに私も議事録で見させていただきました。

 この頻回利用についても、私自身は、お一人お一人、介護のサービスを受けられる方というのは事情が違います。家族がいらっしゃる方、お一人で住まわれている方、それによって必要な訪問介護の数も違いますし、百回が多いということですが、一日三回、朝昼晩、服薬管理と食事に入ったらもう九十回ですから、これでちょっと体調が悪くなったら、あっという間に百回になりますし、体調が悪くなって入院したらサービスがゼロになったりとか、こういうこともありますので、頻回のことについてチェック機能を今回設けていくということについては、私は慎重であるべきではないかというふうに思っております。

 訪問介護を私は充実していただきたいと思っておりまして。というのも、総理も介護離職ゼロというふうにおっしゃっておられます。介護離職をゼロにしようと思えば、御本人が働いている間、誰かが介護が必要な人を見なければいけないわけですよね。そういう見なければいけない介護サービスを、今回、介護報酬を下げたり、そして訪問介護事業所がさらに経営悪化するようなことをしては、これは本末転倒になるのではないかというふうに考えます。

 これらのことについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 済みません、ちょっと多岐にわたられたので、漏れがあったら御指摘いただきたいと思うんですけれども。

 まず、収支比率は、御指摘のように、平成二十六年度の実態調査における平均の収支差率に比べて、今回の調査で約四・五%低下をしているという実態でございます。この背景には、介護報酬のマイナス改定、また人材を確保するための人件費の増加、こういったものがあるんだろうというふうに思っております。

 いずれにしても、これから、介護報酬改定については、今回の調査結果のみならず、賃金、物価の動向、あるいは、やはり介護報酬を上げるということは、結果的に利用者の負担がふえる、あるいは介護保険料がふえるということにもつながっていくわけでありまして、そういったことも含めて、あるいはそれぞれのサービスの一つ一つも見ながら、必要な方に必要なサービスが提供されるよう、しっかり議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 それから、研修制度の話については、今、そうしたことも含めて、介護給付費分科会において御議論をいただいているところでございます。

 それから、身体介護と生活援助、これは今でも分けられているところでありますけれども、やはり、身体介護として必要なもの、そして生活援助というもの、それぞれをしっかりと位置づけて対応していくことが必要なんだろうというふうに思っております。中には、より介護を受ける側の自立につながっていくようなことについて、これは身体介護においてさまざまなことを考えていく必要もあるんだろうというふうに思っております。

 それから、訪問回数の多い、特に生活援助の訪問回数の多い利用者については、利用者の状態あるいはサービスの利用実態等を自治体が調査したところでありまして、その中身を見させていただきながら、適正な利用が行われるよう対応していくことが必要なんだろうというふうに思っております。いたずらに多いからだめということではなくて、本当に必要なものは当然必要に利用されるべきでありますし、いろいろ見てもやはり必要を超えているようなことがあるならば、適正な使用が行われるように対応していくことが必要なんだろうというふうに思います。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

尾辻委員 いたずらに多いのはだめですけれども、必要な人には必要なサービスということでおっしゃっていただきました。中身を見ることが大事というのもおっしゃっていただきました。今回分科会で出た百回を超える方というのは、おひとり暮らしの方で認知症の方です。ですので、一日三回、食事をする、そして服薬管理をしなければいけない、それで体調を崩したのでもう少しやったということで、介護事業者にとっては、これは遠いところにあるので赤字ということもあります。しっかり中身を見ていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。

 次に、介護ですけれども、技能実習生についてお聞きをしたいと思います。

 もうことしの十一月から技能実習生が介護分野に参入ということになりました。今までと違って、対人サービスになる介護事業は、仕事をするに当たって、やはりコミュニケーション能力が非常に大事になってきます。技能実習生が二カ月の研修期間を過ぎれば現場に出てくるわけですけれども、その前に、懸念することについて確認をさせていただきたいと思います。

 まずは、求める日本語能力レベルについてお聞きをしたいと思います。

 EPAの受け入れ施設のアンケートからは、就労開始時に必要な日本語能力レベルはN3レベルであるというふうに九割の施設が答えたと調査結果が出ている。つまり、N3レベルがないと介護の仕事はなかなか難しいです。N3というのは、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるという程度。

 今、EPAの方でいくと、ベトナムの方はN3で来日をされております。最初、日本語がなくてN5で来られる方もいたんですけれども、インドネシア、フィリピンの方も、今は、来日時、N3で来日される方が九割ということになりました。

 では、介護実習生はどうなのかということですけれども、入国時、N4程度というのに基準がなっております。N4は、N3の下のレベルで、基本的な日本語を理解することができる程度で、実はこの試験はマークシートなんですね。だから、介護に必要な口頭のコミュニケーションとか、介護記録を書けるかどうかというのは全くはかることができません。ですから、一つは、この能力が一つ下で来られるということと、一年たったときにN3にならなければ、これ以上研修を続けることができない、一年でお帰りいただくということになります。では、日本語の研修を一年でできるのか、働きながらできるのかということなんです。

 先ほど、たしか副大臣もおっしゃったと思いますが、EPAについては政府がお金をかけてやっておりますが、介護実習生の日本語研修というのは完全に民間任せなんです、確かに教材はおつくりになるということなんですけれども。こうなると、日本の介護現場は、日本語能力が余り確保されていない方が来てしまって、御本人さんも困りますし、もちろん受け入れ側も大変ですし、最後は利用者さんにしわ寄せが来るのじゃないか、こういうことを懸念するわけですけれども、この日本語能力のことについて、大臣の御所見をお聞かせください。

加藤国務大臣 今度の技能実習で介護が追加になったところでありまして、チームで介護していくためにもコミュニケーションというのは大事なことでありますので、日本語というのは大事な部分なんだろうというふうに思います。

 今お話がありましたように、入国時は日本語能力試験N4程度、二年目以降は日本語能力試験N3程度を要件として、日本語能力を技能実習生に求めるということにしている。それはそのとおりでございます。

 その上で、それをどう支援していくのかということにおいて、監理団体が実施する入国後講習で活用できる介護の日本語の共通テキストを開発したり、あるいは、実習開始後の継続的な日本語学習を支援するためのウエブコンテンツ、こういったものを開発し、それを提供することによって技能実習生の方々が日本語の能力の向上を図っていただける、こういう環境をつくっていきたい、こういうふうに考えております。

尾辻委員 やはり、今御説明いただいた日本語能力の研修では非常におぼつかないと思うんですね。ウエブとかテキストだけでは無理で、やはりしっかりと国がかかわる必要があるのではないか、国が責任を持って日本語研修を行うべきではないかということを申し上げておきたいと思います。

 次に、人員基準についてもお伺いしたいと思います。

 EPAは、御承知のとおり、母国で看護師資格を持っていらっしゃるなど、かなり技能の高い有資格者が来ておりました。それでも日本の介護になじむのは時間がかかったわけですね。このEPAの基準と同じくして、就労の半年後に人員配置基準の算定を認めるということですけれども、N4でやってきて、二カ月研修をして、そしてもう半年後には人員配置基準の算定になるというのは、これでは非常に、技能が身についているのか、日本語能力が身についているのか、疑問があります。せめてN3を取得した後にすべきだと思いますけれども、この人員基準の算定について、大臣の御所見をお聞かせください。

加藤国務大臣 今委員お話ありましたように、技能実習生に関しては、就労を開始してから六カ月経過後で配置基準に算定する、こういうことになっております。

 これは、技能実習といえども雇用契約を結んで働いているわけであります。また、就労開始から六カ月経過すれば介護の技能や日本語もある程度は向上している。そういったことを踏まえてそうした算定を設定している、こういうことであります。

尾辻委員 今、基準を御説明いただいたと思いますけれども、もう間もなくこの方々は現場に入ってこられるわけです。現場に入ってこられたときに、さまざまな、私が申し上げたような懸念があるかと思います。もしこういう懸念があった場合、この基準を見直すような検討はしていただけるかどうか、お答えをいただければと思います。

加藤国務大臣 いずれにしてもこれからでありますから、こういう点も含めて、具体に今回の技能実習制度が介護の現場においてどう展開されていくのか、全般を私ども広く見ていくことは当然だというふうに思います。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

尾辻委員 済みません。見ていくということですが、ぜひ御検討をいただきたいということで最後に要望を申し上げまして、私、質問時間、発言時間は終了ということで参りました。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、山井和則君。

山井委員 三十分間質問をさせていただきます、山井和則です。二年ぶりに厚生労働委員会に戻ってまいりました。

 厚生労働委員会というのは、全ての国会の委員会の中で、私は一番重要な委員会だと思っております。国民の命を守る、健康を守る、本当にそういう意味では、私は、党派を超えて、国民の幸せのために一致結束して論戦をし、国民のために尽くすのが、この厚生労働委員会での論戦の役割だと思っております。そういう立場から、きょうも質問をさせていただきたいと思います。

 まず、来年、通常国会で、この厚生労働委員会の大きな論戦のテーマにもなるのではないかと思われます働き方改革、私も、三年前に成立しました過労死防止法の成立のために、党派を超えて多くの議員の方々、そして何よりも、過労死をされた方々の御家族の方々や弁護団の方々とも、力を入れて取り組んでまいりました。しかし、残念ながら、過労死は減るどころか、どんどんふえていっております。

 そんな中で、私も多くの御家族の方々のお話をお聞きしたりしておりますけれども、まず何よりも、このような多くの、一生懸命、家族のため、会社のため、社会のために働いておられる、過労死を何としてもゼロにせねばならない。そして冒頭に、そのような過労死の被害に遭われた方々に心より御冥福をお祈り申し上げたいと思います。また、きょう取り上げさせていただきますNHK女性記者、三十一歳でお亡くなりになられました佐戸未和さんにつきましても、心より御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 私の配付資料の一ページ目、そして最後のページに、佐戸未和さんの過労死の報道を添付させていただきました。記者さんというお仕事は、非常に社会的に重要なお仕事でありますが、同時に、長時間労働が常態化している過酷な仕事であります。そんな中で、三十一歳、働き盛り、大変お忙しい記者の現場のお仕事の中で、残業時間が何と月百五十九時間ということでお亡くなりになられ、労災認定をされたわけであります。

 ここの報道にもされていますように、御両親も訴えておられますが、お母様は、上司から記者は個人事業主のようなものと言われたことに触れ、こうした意識が、労働時間管理をせず、命と健康を守る責任とルールに欠ける原因になったというふうに指摘をしておられます。また、一番最後のページにございますように、これはやはり明らかな人災なのではないかということで、お父様も、労働時間の管理も休むのも自分でやれでは全く管理していないということだということで、睡眠時間や休みを強制的に確保しないと同じ過ちを繰り返す、何としてもこういう過労死の再発を社会全体で防止してほしいということを御両親もおっしゃっておられます。そして、終業から次の始業まで一定の休憩時間を設ける勤務間インターバルを導入するなどの仕組みづくりが必要だということも提言をしておられます。

 本当にすばらしいお仕事をされておられた志高い娘さんを失われた御両親の心中を察すると、本当に私もつらいつらい思いでいっぱいであります。しかし今、この佐戸未和さんに象徴されるように、例えば電通事件の高橋まつりさんも、二十四歳、過労死をされました。若者の過労死が残念ながらふえているわけであります。このような痛ましい事案をどう再発防止するのか、加藤大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 先般も、過労死の、これは厚労省主催ででありますけれども、そうしたシンポジウムがございまして、私も参加をし、全部は参加できなかったんですが、御家族の話だけでも聞きたいと思って聞かせていただきました。佐戸さんのお母様からもお話がありました。また、それ以外の方からもお話がありました。

 特に御両親にとってみると、忽然として、愛する娘さんや息子さんが病で倒れる、あるいはみずから命を絶つ、この現実を本当に受け入れられない、また受け入れるのに時間がかかっている、本当にそうした悲痛な思いを聞かせていただきましたし、また、亡くなられた方も多分そういった思いを持っておられたんだろうということでありまして、改めて、亡くなられたそれぞれの皆さん方には心から御冥福をお祈りし、御家族の方には衷心よりお悔やみを申し上げたいというふうに思います。

 こうした事案を二度と起こさせない、そういった意味でも、私どもは日ごろから監督指導にしっかりと取り組んでいかなければならないということでございまして、今、日々そうした問題を、特に過労死をゼロにしていく、こういった思いを持って、それぞれの基準監督署においてそうした対応を努める、監督指導を徹底していく。また、それを通じて、こうした過労死を二度と起こさせない、そういう思いで取り組ませていただいているところであります。

山井委員 この佐戸未和さんも、あらかじめ決まった一定時間を働いたとみなす事業場外みなし労働時間制を適用されていた。私も過労死のゼロのためにさまざまな取り組みをさせていただいておりますが、御家族の方々や弁護団の方々のお話をすると、やはり裁量労働制など労働時間の把握をされていない仕事で長時間労働がふえ、過労死がふえている、労働時間のしっかりとした把握をすべきだ、そういう労働基準法の改正、規制強化をすべきだということをおっしゃっておられます。

 しかし、残念ながら、私が危機感を持っておりますのは、今政府が成立を目指そうとしている裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル、これはいわゆる残業代ゼロ法案とさえ言われております。この法案に関しては、逆に、労働時間を的確に把握して長時間労働の歯どめをかけて過労死をなくすという方向とは百八十度逆で、ますます労働時間の把握をいいかげんにして、そして長時間労働と過労死をふやすことになるのではないかという反対の声が非常に多いんです。残業代ゼロ法案、過労死促進法とさえ言われております。

 実際、きょうの配付資料にも入れさせていただきましたが、例えば、四枚目、ワーク・ライフバランス社長の小室さんも、残業上限規制こそ急務であって、高度プロフェッショナルや裁量労働制的な働き方というのは今回やはりやるべきじゃないということをおっしゃっておられます。長時間労働是正の第一人者の方のお一人であります。

 ですから、加藤大臣への要望ですが、とにかく過労死を減らすのが働き方改革のはずなわけですから、逆に長時間労働や過労死をふやすというふうな不安が高い裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル、この法案は、来年の通常国会で提出は断念していただきたいと思います。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 先ほどもお話し申し上げたように、過労死をしっかりゼロにしていくということでさまざまな取り組みをさせていただいているところであります。これをさらにしっかりやっていきたいと思っております。

 また、働き方改革においても、健康を確保することを前提とし、しかし他方で、それぞれの置かれている状況に応じて、その意欲や能力を発揮できる多様な働き方を用意していこうということで取り組ませていただいております。

 そういう流れにおいても、長時間労働の是正も、過労死のゼロにもちろんつながることにありますけれども、同時に、長時間労働が是正されることによって、例えば高齢者や女性など、さまざまな制約条件がある方もフルタイムで働くということもできてくるわけであります。そういった意味で、今回の裁量労働制の見直しや高度プロフェッショナル制度、これもそうした流れの中で私どもとしては位置づけさせていただいております。

 ただ、その上において、今委員御指摘のように、健康確保というのは大変重要な課題でありますし、それはしっかりと守っていかなければなりません。裁量労働制においても、その対象となる方について客観的な方法による労働時間の把握を義務づける、あるいは健康確保措置を必ず実施させる。あるいは高度プロフェッショナル制度においても、在社時間等の客観的な把握を使用者に求めた上で、年間百四日かつ四週間当たり四日以上の休暇取得を義務づけるとともに、健康確保措置を講じさせていく等の措置を予定しているところであります。

 こういった法案を先般、労働政策審議会に要綱として提出し、おおむね妥当と認めるとの答申をいただいたところでございますので、今、厚生労働省としては、その審議会の答申を踏まえて、速やかに法案を国会に提出すべく準備をさせていただいているところでございます。

山井委員 全く納得できません。

 厚労大臣の挨拶の中にも、働く方の視点に立った働き方改革と言っておきながら、連合も過労死の家族の方々も弁護団の方々も、高度プロフェッショナルや裁量労働制の拡大には強く強く大反対しているわけですね。過労死をなくすと言いながら、過労死がふえると言われていることを強行するなんということは絶対に許されません。

 きょうはここでとどめておきますが、私は体を張ってでも阻止します。国民が今望んでいるのは長時間労働の是正そして過労死ゼロなわけですから、それを言いながら逆に過労死をふやすような改悪の法案を強行することは、私は絶対に許しません。申し上げておきたいと思います。

 次に、保育のことを質問したいと思います。

 ことし四月から、平均二%、月六千円、保育士さんの処遇改善、成りました。また、勤務経験が七年以上の方々に関しては月四万円の処遇改善。これは、当時の民進党が、私も中心になって、野党一体となって出しましたが、五万円の、保育士さん、幼稚園教諭の賃金引き上げ法案を提出したとか、私も国会でたびたび安倍総理に要求しました。そういうことも一つの要因であったと思っております。

 まず確認したいんですが、この六千円や四万円の処遇改善というのは時限措置ではなく、これは恒久的な賃金引き上げということでよろしいですね。

加藤国務大臣 別に時限としてということでこれを導入したわけではございませんので、当然これについては引き続き継続をしていく、こういうことであります。

山井委員 恒久制度と理解をして安心をいたしました。

 それで、今議論をされている保育士さんの処遇改善というのは、当然これに上乗せをすべきではないかというふうに考えておりますが、保育士さんの処遇改善の決意をお願いいたします。

加藤国務大臣 今御指摘あった二点、二%の処遇改善あるいは一定の経験を持っている方に四万円、このパッケージ、これは二十九年度からやらせていただいておりまして、我々、引き続き、保育人材の処遇改善には努めたい、これは一般的な姿勢として持っているところであります。

 その上で、さらなる保育人材の処遇改善については、現在与党においても御議論いただいておりますので、それを受けて、さらに十二月上旬の取りまとめに向けて政府の中でも議論をさせていただきたい、こう思っておりますし、当然それは、今御質問のように、二十九年度をベースとした上での議論というふうに認識をしております。

山井委員 確認ですが、引き上げるということでよろしいですか。それとも、まだ保育士さんの賃金を引き上げるかどうかは決まっていないということですか。

加藤国務大臣 ですから、これから先については、まず与党での御議論をいただいておりますので、それを踏まえて政府の中で議論をしていきたい、こういうふうに思っております。

山井委員 当然引き上げていただきたいと思っております。

 それに関連して、保育所の運営費を、報道によりますと、二百億円程度カットして待機児童対策に回すなどの報道があるわけですけれども、今これだけ子ども・子育て支援ということを言っているときに、逆に保育所の運営費をカットするなんということは全くあり得ない話だと思います。

 こういう議論が今あると聞いておりますけれども、このような保育所の運営費のカット、現場も大変不安になっておりますが、こういうことはしないとこの場で言明をいただければと思います。

加藤国務大臣 公定価格の見直しにおいては、経営の実態や、あるいは賃金、物価の動向、あるいは関係者の意見も聞きながら、これはそれぞれ毎年議論をさせていただいているところであります。

 ちょっと報道の背景のことは私はよく承知をしておりませんけれども、平成二十九年度においては、子ども・子育て支援新制度が施行されて三年ということで、幼稚園、保育所、認定こども園の経営実態調査を、いわば初めて実施をさせていただきました。

 現在、内閣府の子ども・子育て会議において、公定価格設定等のあり方について、それらも踏まえながら議論をいただいているところでございます。

山井委員 一般の企業の利益と子ども・子育てをしている保育所を同列に考えて、運営費をカットするなんということは絶対あってはなりません。片や子ども・子育てを力を入れると言いながら、保育園の運営費をカットするということは絶対許されませんので、そこは強く要望したいと思っております。

 それで、今回の加藤大臣の挨拶を聞いて、私、あれっと思ったのは、この就任の挨拶、冒頭の挨拶の中で、介護職員の処遇改善は触れられているんですけれども、障害福祉サービス職員の賃金引き上げや処遇改善は触れられていないんですね。当然、介護職員と障害福祉サービスの職員の方の賃金引き上げ、セットでやっていただきたいと思いますが、お約束をお願いしたいと思います。

加藤国務大臣 これまでも、介護の人材の処遇改善と障害福祉人材、これをパラレルで議論してきているわけでありますから、今回においても、介護人材と同様に障害福祉人材についても検討していきたいと考えております。

山井委員 そうしたら、介護職員の賃金を引き上げる場合は、セットで障害福祉職員の賃金も引き上げるということでよろしいですか。

加藤国務大臣 介護職についても、今、具体的には与党の中で議論をいただいておりますから、それを踏まえてということになりますけれども、今申し上げたように、介護人材と障害者福祉人材、これまでも、いわば、一体と言うとちょっと語弊がありますけれども、何といいますか、連関するものとして捉えてきたということでございますので、それは当然踏襲していくことになるんだろうと思います。

山井委員 さかのぼれば、今から十年ぐらい前に、介護職員さんと障害福祉職員さんの賃金の引き上げの法案というのを、超党派で成立をこの厚生労働委員会でさせました。そのときからセットで賃上げはしておりますので、ぜひともお願いをしたいと思います。

 それで、特に、私の地元の障害者施設、通所の施設で非常に今不安が広がっておりますのは、来週月曜日にも障害者の報酬の検討委員会、十一月二十七日に行われますが、食事提供体制加算が廃止されるという議論が出てきているわけでありますね。

 これは簡単に言いますと、通所の作業場、工賃というのがありまして、一カ月通うと障害者の方は六千円とか七千円、工賃がもらえるわけです。ところが、そこから食費の実費が差し引かれるわけですね。それで、今でしたら、多少差し引かれても工賃の方が上で、一カ月障害者の方々が通所の施設に行ったら給料がもらえるわけです。

 ところが、今議論されているように、この食事提供体制加算が全部廃止されてしまって、自己負担が食費一万円ぐらいになってしまったら、通所の施設に障害者が行って逆にお金を払う、こんな残酷なことになってしまうわけであります。

 一億総活躍と言いながら、最も弱い立場にいる障害者の方々の自己負担を大幅にふやすなんということは、人道的にも絶対に許されません。ですから、今そういう検討会で議論されているそうですけれども、食事提供体制加算は今までどおり残すということを、加藤大臣、この場でお約束をいただきたいと思います。

加藤国務大臣 食事提供体制加算は、障害福祉サービス等報酬加算の一つで、収入が一定額以下の障害福祉サービスの利用者に対して、事業者が食事の提供を行った場合に算定可能ということで、全額ではなくて一部、たしか人件費部分が対象になっていたというふうに理解をしております。当初は、二十一年三月三十一日までの経過措置ということでありますけれども、これまで三回の報酬改定で平成三十年三月まで延長されているというのが今の状況であります。

 この加算については、平成二十九年度末までの経過措置とされている一方で、平成二十七年十二月の社会保障審議会障害者部会の報告書では、平成十八年からの時限的な措置であったこと、平成二十二年度から障害福祉サービスの低所得者の利用者負担が無料になっていることから、他制度とのバランスや公平性を踏まえて検討すべきとされているところでございます。

 現在、平成三十年度の障害福祉サービスの報酬改定に向けて、この報告書の内容、そして関係者の御意見、これも踏まえながら検討していきたいと考えております。

山井委員 検討はやめてください、そういう恐ろしい検討は。一番困っている方々が、障害者の方が、一億総活躍と言いながら、障害者の方々もと言っておられるじゃないですか。なぜそんな、これだけ多くの税金の無駄遣いとか、加計学園、森友学園とかも言われている中で、何で障害者の通所の方の自己負担をふやすんですか。どう考えてもおかしい。やめていただきたい。強くそのことは言いたいと思います。こういうことは、政治の本質にかかわる問題です。

 介護報酬、障害者福祉報酬も、ぜひ引き上げていただきたいと思います。三年前に介護報酬が過去最大に引き下げられたことによって、今危機的な、介護人材も不足、また障害者福祉現場も非常に苦しんでおります。

 それで、ここに平均賃金の比較も書きましたけれども、保育士さん、ホームヘルパーさん、福祉施設職員さん、介護員さんの月給というのは、一般の仕事よりも十万円ぐらい低いわけです。先ほど、これを引き上げる方向で検討するという答弁をいただきましたけれども、そのためには、処遇改善加算だけではなくて、やはり介護報酬と障害福祉報酬を引き上げないとだめなんです。

 加藤大臣、こういう子育てや老後の安心こそが、消費を拡大し、景気回復にもつながる、経済政策にもなるわけです。ぜひとも、障害者福祉の報酬、介護報酬引き上げ、そのことをお約束いただきたいと思います。

加藤国務大臣 今、具体的な報酬のあり方については議論をいただいているところでありますけれども、当然、サービスを必要とする方に必要なサービスが適切に提供されていく、そして、そのためにも、介護事業所の経営実態、また、それぞれのサービスの状況、そして、何といっても、介護報酬を上げるということは結果的に利用者の負担や保険料を増加させるということにもつながるわけでありますから、その辺も踏まえてよく検討させていただきたいと思います。

山井委員 しっかり取り組んでいただかないと、これはもう、介護現場は今崩壊しつつあります。介護職員さん不足で、必要なホームヘルプが派遣できない、あるいは、特別養護老人ホームも一部閉鎖する、ショートステイが実施できないとか、危機的な状況になっておりまして、これは、残念ながら、三年前、大幅に介護報酬を引き下げた。私たち大反対しましたよ。大反対したけれども強行した。その結果、今全国で介護職員不足。これは人災です。ぜひとも、それを今回は引き上げていただきたいと思います。

 先日も、介護現場の働く組合であります日本介護クラフトユニオンの方々と、川合参議院議員とともに私も、三十万人の介護報酬引き上げ、介護職員さんの処遇改善の申し入れを、蒲原事務次官にもさせていただきました。その意味でも、ぜひ介護、障害者福祉、保育、しっかりと力を入れていただきたいと思います。

 それで、昨日も検討会がありましたが、今、何やら、生活援助のホームヘルプに上限を設けるとか、報酬を下げるとか、そういう議論がされておられるようですけれども、とんでもありません。

 ちょっとだけ宣伝させていただきますが、私も議員になる前は高齢者福祉を大学で教えておりまして、もうこれは二十数年前ですけれども、岩波新書二冊書きましたし、日本で初めて介護保険の本、出たのが一九九五年、今から二十二年前ですけれども、これも共著で私が書かせていただきました。また、認知症のグループホームの本も五冊書きましたし、合計十四冊書いておりますけれども。

 何が言いたいのかというと、スウェーデンでも二十年前から巡回型ホームヘルプという形で、一日五回、六回、ホームヘルプに行く、そのことによって、望めば在宅で暮らせる、そういう状況を培ってきたわけですね。にもかかわらず、今回、ホームヘルプの上限を決めるということは、先ほども質問が出ていましたけれども、どんどんどんどん施設にお年寄りを入れる、認知症のお年寄りもどんどん施設に入れる、今まで厚生労働省がおっしゃっていた在宅優先に逆行をします。さらに、生活援助サービスがあるから、ひとり暮らしができる、老夫婦の方々で暮らしていける、あるいは御家族の方々が仕事を続けられるということもあります。

 ですから、このような生活援助の上限を決めたり報酬を下げるということは、介護離職をふやします。さらに、認知症の家族の会も反対の意見をおっしゃっておられますけれども、今この生活援助で辛うじて在宅生活ができている方というのは、認知症の方が多いんですね。そういう認知症の方々を支えていくという厚生労働省の方針にも反すると思います。

 介護離職をふやす、認知症の方々をもっともっと苦しめる、そういう意味で、ホームヘルプの生活援助の報酬引き下げや上限設定、やめていただきたいと思います。いかがですか。

加藤国務大臣 今、いずれにしても、介護に係る報酬については、介護給付費分科会において議論を進めていただいているところでありますけれども、一つは、自立支援を進めていくという意味において、やはり身体介護というものをしっかり進めていくということも必要なんだろうというふうに思っておりますし、それから、生活援助のお話もありましたけれども、やみくもに何回だからということではなくて、よくその実態も見きわめながら、先ほど申し上げた、必要なサービスは必要に応じて提供されていくということが必要でありますし、しかし同時に、一方で、効率化等を図れるものはしっかり図っていくことによって、介護制度そのものの持続可能性というものをしっかり図っていくということも、当然必要なんだろうというふうに思っております。

山井委員 いや、これは、生活援助があることによって、自立ができている、要介護度が改善する、あるいはひとり暮らしが続けていられる方、たくさんおられます。生活援助というのはホームヘルプで家族やお年寄りの命綱なんです。それを削ることはやめていただきたい。

 さらに、高齢者にとって一番必要なのは、自己決定なんです。施設に入るか在宅で暮らすか、それは家族と本人が自己決定する。そのためには、必要であれば多くのホームヘルプが生活援助でやはり来てくれるという体制が重要であります。

 デイサービスについても、今また従来のデイサービスの報酬を下げてはどうかという議論をされています。とんでもありません。このデイサービスも、あるおかげで、家族が仕事ができる、家族が休息ができる、あるいはお年寄りも元気になるという多くの効果が出てきております。にもかかわらず、今議論されているように、何か、要介護度が改善して卒業できたら点数を上げるけれども、従来のサービスは下げるなんて。

 でも、加藤大臣、ぜひわかっていただきたいと思いますが、八十五歳、九十歳の方がデイサービスに行っているんですよ。九十歳の方の要介護度が改善して元気になってデイサービスを卒業する、はっきり言ってナンセンスな部分もあるんです。今の状態を維持するためにホームヘルパーさんやデイサービスさんは精いっぱい頑張っているんです。それを、改善しないと点数を下げるとか、そういうことというのは、では九十歳、百歳になってもどんどん老化しないんですか。人間の生き方に反するようなことにもなりかねません。

 もちろん、要介護度が改善することはいいですよ。でも、常識的に考えて、八十五歳、九十歳になったら、人間、体が弱っていくんですよ、弱っていくんです。そのことを踏まえて、従来のデイサービス、介護報酬を下げるのはぜひやめていただきたい。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 要介護度が改善するということは、やはりその中でいろいろな方々が御努力をされて、そういった結果が生んでいる、こういうケースも正直言ってあるわけでありますし、そういった介護サービスが、より提供されていくようにしていくということも非常に大事だというふうに思います。

 もちろん、御指摘のように、一定の年齢、あるいは年齢を重ねていけば、だんだん身体能力は下がっていくわけでありますから、その辺も当然勘案しながら考えていくべきだと思いますけれども、いずれにしても、よりよいサービスが、より効率的に提供されていく仕組みというものを我々は不断に考えていかなければならないというふうに思っております。

 いずれにしても、そういったことも含めて、今議論をいただいておりますので、それを受けて我々も対応させていただきたいというふうに思っております。

山井委員 これで終わりますけれども、やはり私は、うそがあり過ぎる、言行一致をしていただきたいと思うんですね。介護離職ゼロ、そして認知症対策を推進するというならば、それを支えているホームヘルプやデイサービスを削ってどうするんですか。介護離職がふえるじゃないですか。さらに、過労死ゼロと言いながら、働き方改革と言いながら、長時間労働や過労死をふやす残業代ゼロ法案を強行しようとする、そういう言行不一致はやめていただきたいと思っております。

 私は、民主党政権では厚生労働大臣政務官として、労働問題や介護、子育ても担当しておりました。そういう意味では、党派を超えて、この厚生労働委員会で、国民の幸せ、特に弱い立場の方々の暮らしをしっかり守るために、皆さんとともに議論をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。池田真紀君。

池田(真)委員 よろしくお願いいたします。立憲民主党の池田真紀と申します。

 私は、生活困窮者自立支援法と生活保護、並びに子供の貧困対策について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、きょうは初めてでございますので、簡単に自己紹介をいたしますと、この七年間はフリーソーシャルワーカーという形で全国津々浦々、ソーシャルワーカーの活動をさせていただきました。その前は公務員という立場で福祉事務所に十四年間おりました。介護保険が始まる前からの高齢者の介護、そして障がい者や児童の介護、さらにはソーシャルワーカー、あるいは今、生活困窮者自立支援法がございますけれども、そういった現場、そして生活保護のケースワーカーも、当時では異例と言われていました専門資格を持つケースワーカーということで、異例の取り組みをさせていただいたことがございます。

 そういうことで、いろいろな視点からきょうは現場の声をお届けさせていただいて、そして、この国、日本の福祉のために本当に全力を尽くしてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 続けてこのまま質問させていただきます。生活保護基準部会で検討していることを承知しておりますが、社会・援護局長さんにお伺いしたいと思います。現在の検討状況をお伺いしたいと思います。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護基準につきましては定期的な検証を行うこととしておりまして、昨年五月から、社会保障審議会生活保護基準部会において、生活扶助基準の検証のほか、有子世帯の扶助、加算の検証などを主な検討課題として議論を行っているところです。

 具体的には、昨年度は、生活扶助基準の検証については、全国消費実態調査の消費支出データをもととしまして、変曲点などの考え方を用いて、比較対象として妥当な所得分位等について検討を行うこと、また、有子世帯の扶助、加算の検証については、一般世帯との均衡だけではなくて、子供の貧困対策の観点から生活保護制度において保障すべき子供の健全育成に係る費用の範囲及び水準について検証を行うことなどの各検討課題における検証作業の進め方について議論してまいりました。

 その上で、本年一月からはこの部会に検討作業班を置きまして具体的なデータ分析の作業を進めており、これまでに年間収入階級別や消費支出階級別の消費データの分析を行い、これらの分析結果をもとに基準部会において議論を続けているところでございます。

池田(真)委員 ただいま有子世帯調査ということがございました。

 お話にもありましたように、子供の貧困対策にも絡めて検討しているというふうに伺いましたけれども、この有子世帯調査の中で、有子世帯の扶助、加算における教育費用に関する検討というのが進められているかと思います。学校外で必要なものということで、こういったものも取り上げられているかと思いますが、こういう算定も、教育の部分も、一般世帯との整合性といったものもぜひ絡めていただきたいというふうに改めてお願いをしたいと思います。

 しかし、教育という、実際に授業料以外にかかるものも非常に多くございます。そういうことで、この基準部会の結果、有子世帯の方々、扶助の方々でございますが、もし万が一、有子世帯が基準額が引き下げられるというようなことがあれば、子供の貧困対策に矛盾をしているのではないかというような考えを私は持っております。いかがお考えでしょうか。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、基準部会で検討を進めているところで、子供がいる世帯への扶助や加算のあり方についての議論を行っているという状況でございます。見直しの方向性については、まだ決まっていないところでございます。

 御指摘いただいたように、基準部会の議論の中では、子供の養育に係る費用についてさまざまな観点から検討を進めております。一般世帯との消費実態のバランスのみで見直すことは適切ではないという意見もございまして、子供の貧困対策の観点から、先ほど御指摘いただいたような教育費用について、学校外の費用も含めて分析を行うとか、あるいは、子供のいる世帯の消費特性について踏み込んだ分析を行うなど、一般世帯の消費実態とのバランスを見るというだけではなく、踏み込んだ分析を今してきていただいているところでございます。

 こうした丁寧な議論の中で、データに基づきながら、生活保護制度で保障すべき子供の健全育成に必要な費用の範囲や水準について検証を行っているところでございます。

池田(真)委員 この基準部会の全体の結論というのがいつごろ判明するのか、結論の見込みをお伺いしたいと思います。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、検証を進めているところで、具体的な取りまとめ時期というのが申し上げられる状況ではございませんが、年内に結論を得られるように、引き続き検証を進めてまいりたいと考えております。

池田(真)委員 先ほどから申しております子供の貧困対策に絡めて、一言申し上げたいと思います。

 生活保護の子供たちが、教育扶助創設時、高校進学率が四二・五%だった時代は、高校が今のように生業扶助でも認められておりませんでした。それから何十年もたってからでございますけれども、一九九一年、福岡市の学資保険訴訟提訴時が九五・四%の高校進学率。そして、福岡市の学資保険訴訟最高裁の判決のときには、それから何年もたって、平成十六年に最高裁の判決が出て、ようやく平成十七年に生活保護の生業扶助というものが創設をされました。それから、御存じのとおりでございますけれども、生活保護世帯の高校進学率は着実に伸びておりますので、それは本当に一つの大きな成果で、着実な成果だったというふうに私も受けとめております。

 しかしながら、学習支援以外に必要な家庭の環境が非常に多くございます。学校に行けない理由、背景というものは、学業のおくれだけではなくて、お母さんに障がいがあったり、病気だったり、お父さんがDVだったり、認知症のおばあちゃんと暮らしていたり、不登校で学校ともつながっていない、生活保護を受けていても、ケースワーカーは世帯主とのやりとりだけで、子供は全く誰ともつながっていない状況がございます。

 実際に訪問すると、履ける上履きを持っていなかったり、制服は小さくて、着れるものは何もない、そういう家庭もあります。さらには、小学校一年生のときから、学習の準備を手伝う、親御さんができなかったり、手紙を読んだり宿題を手伝う、そういう見守りをできるような環境にない状況が多くございます。

 今、子供の貧困対策ということで学習支援を取り上げていただいているかと思いますけれども、ぜひ、学習支援のみならず、生活支援全般に向けてのこういう対策支援も強化をしていただきたいと切に願っております。

 こういうお願い事を申し上げまして、厚労大臣の方から、ぜひ、この生活保護基準部会についての御見解をお伺いできればと思います。

加藤国務大臣 今、子供の貧困のお話がございまして、私も、この前の大臣のときにも子供の貧困の担当もさせていただきながら、まさに今委員御指摘のように、所得が低いとかいうことのみならず、やはり社会と隔絶しているということを非常に強く感じたところでありまして、いかにそうした社会とのつながりを子供さん、またその御家庭が、あるいは世帯が持ってもらえるか。これは、国レベルあるいは市町村、さまざまなNGO等のボランティア、それぞれの努力が本当に必要だなということを実感させていただいているところであります。

 そういう意味で、生活保護の話でありますけれども、今局長からるる御説明をいたしましたように、まさに今議論を行っているところでありますけれども、特に有子世帯の扶助、加算については、貧困の連鎖を防ぐという観点から、子供の健全な育成に必要な費用を意識しながら、その範囲、水準についても行っているところでございまして、この検証結果を踏まえて、適正な生活保護基準になるようにしっかり見直しを行っていきたいと思っております。

池田(真)委員 次の質問に参ります。

 生活困窮者自立支援法及び生活保護の見直しについてでございます。

 時間がないので、生活困窮者自立支援法の現状の課題等については今省かせていただきますが、全体の見直しとして、結論としてどのような取り組みを行っていくのかということをお聞かせいただきたいと思います。

定塚政府参考人 現在、社会保障審議会の部会におきまして、生活保護の見直しとともに、生活困窮者自立支援制度の見直しを進めているところでございます。

 論点としては、例えば、自立相談支援機関にしっかりと相談をつなげていこう、あるいは就労準備支援や家計相談を全国的に実施する必要性があるだろうということ、また、子供の貧困について、先生から御指摘がありましたような、学習支援に加えて生活習慣や環境の向上などに向けた支援のあり方を考えていくべきではないかといったような論点について、生活保護とともに一体的な検討を行っているところでございます。

 この部会の検討結果も踏まえて、平成三十年通常国会への法案提出も含めて、必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

池田(真)委員 ぜひ、通常国会で引き続き私もいろいろと質問させていただきたいというふうに思います。引き続きよろしくお願いいたします。

 さて、今回、一体的な見直しということで、生活保護もようやく見直しが来たなというふうに思っています。

 今までは、生活支援戦略ということで検討されていましたのが生活保護の出口だったと思います。しかし、生活困窮者自立支援法に変わって、呼び名が変わり、さらには生活保護を省いて、その入り口での支援に今は特化をして、この三年間は実施してきたかと思います。それがようやく生活保護を含んでの一体的な見直しということで、私も非常に期待をしているところでございます。

 一つ、御質問でございます。

 生活保護法の七十八条、いわゆる不正受給と言われているものでございますが、それの件数は私も把握をしておりますが、その発見の機会をお伺いしたいと思います。

定塚政府参考人 御質問いただきました生活保護法七十八条に基づく不正受給件数、これは二十七年度で四万四千件程度、件数が過去最高となっておりますが、契機といたしましては、課税調査などの調査により発見されたものが三万九千百七十五件、一方、通報や投書によるものが二千百七十六件となってございます。

池田(真)委員 ありがとうございました。

 無申告、過少申告というのはあるんですけれども、年金の課税突合というのが多くだと思います。

 いわゆる課税突合調査というのは、ワーカーが一人一人、直接福祉事務所の方から訪ねていくのではなくて、一斉に一年に一回リストが回ってきて、自動的に、機械的にチェックをしていくような作業でございます。それでようやく見つかったというのが実態だと思います。

 このこと自体に、私は一つ、仕事の仕方ということで改善点があろうかと思っています。本来であれば、日常の業務の中で、生活の状況や制度の説明や申告、こういったものがなされなければいけません、年金は事前にわかることですし。しかし、こういったことが結果的に、本人が知らないままに不正受給となっているケースが非常に多いというふうに私自身は受けとめております。

 また一方で、ケースワーカーの事務遅滞、あるいは濫給とか漏給と言われるような不適正処理というのも全国的には存在しておりまして、これは日常の業務の非常に課題であるというふうに受けとめています。この間、非常に煩雑になってしまった相談支援、加えて事務処理、これは適切な事務処理ができるように改善していかなければならないというふうに思っております。

 もう一点、この不正受給に言われているものの問題点は、法七十八条の精査がされていないということでございます。

 一点目、不正受給かどうかという点できちんとした調査をしていません。単なる課税突合調査だけでございます。さらには、申告がないという点でいきなり不正というふうにしている点に問題があるというふうに思います。

 宮城県知事のも、横浜地裁の判決でも、いずれも高校生のアルバイトなどについての処分取り消し審査請求や訴訟、これらのものも、実際に処分を職権で取り消した例なんかも多くございます。よく把握して説明していれば、これらは収入申告という形で、法六十三条の適用が非常に多いというふうに私は受けとめております。

 一方で、この七十八条の不正受給に対する取り締まりにつきまして、私が懸念をいたしますのは、取り立ての問題ではないんです。いかに防止をするかということが非常に重要だと思いますので、丁寧な説明をきめ細やかにやっていくことだというふうに思っております。

 私が、大学院の方で簡単にアンケート調査を全国で行いました。この結果、保護の開始時以外に支給額の内訳や変更の詳細な説明をしているかどうか、これは一人一人の話ではなくて機関として。それは、していないが四四・二%でした。そして、年に一回から二回しているというのが三四・四%でした。

 といいますと、要するに、基準改定等の通知が一年に一、二回あるのみで、あとは、保護の開始のときにはいろいろやりとりはするけれども、それ以降はそれっ放しという世帯が多いということが、私の、実体験でも思いますけれども、このような簡単なアンケート調査でも浮き彫りになされています。

 保護の開始時というのは、非常に多くの問題を抱えていて、混乱期でございます。いろいろな説明をされても、そのときにならなければわからないこともたくさんありますので、七十八条の取り締まりにつきましては、取り締まるという形ではなく、出さないようにしていくような支援の方法をぜひ取り組んでいただきたいと思っております。

 そして、六十三条については件数が懸念されます。七十八条は四万四千件で百六十九億円、これが徴収の額でございます。しかし、六十三条という費用返還につきましては、それよりももっと多い十二万八千件、そして返還対象額は三百十八億七千万円という形になっており、次にこちらの強化が始まるのではないかと私は懸念をしております。

 六十三条に関して言えば、これは先ほどと同様に、説明不足というものも非常に多くございますので、できるだけこのような返還を生まないような支援、あるいは支給決定をぜひお願いしたいというふうに思います。

 そのための対策ということで、福祉事務所のあり方、これは、ぜひ前向きに、私も貢献してまいりたいと思いますので、前向きに受けとめて、引き続き御検討をお願いしたいと思います。

 次に参ります。

 もう一つ、福祉事務所の人員体制でございます。

 この人員体制についての実態調査というのが、平成二十一年に行われてから公表されていなかったと思います。先日、最近のということで、二十八年度の部分の実態調査を私もいただきました。

 しかし、この二十一年から二十八年までの実態調査は行っていなかったのか、それとも、行っていたけれども公表されていなかったのか、どちらか、お伺いをしたいと思います。

 また、福祉事務所のケースワーカーの病欠、病気休暇でございます、あるいは、自死や病死などの労災認定などの件数の把握をしているかどうか、お伺いしたいと思います。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 福祉事務所の人員体制調査でございますが、直近では、御紹介ありましたように、二十八年に総務省の承認統計という形で調査を行っております。同様に正式の形で調査をしたのは二十一年ということで、二十一年以来七年ぶりの調査ということになります。

 その間、いろいろな形で、例えば監査に行く場合がありますので、その場合にケースワーカーの状況を確認したり、個別にいろいろなデータを自治体からお知らせいただいたりというようなことで把握はしてまいったところでございます。

 もう一つお尋ねがありましたケースワーカーの病休や労災については、把握しているデータはございません。

池田(真)委員 ありがとうございました。

 実は、専門性がないからという理由で、生活保護が始まった当初から、六十年前から、非常に相談支援は難しいというふうに現場では言われていました。精神疾患の方も非常に多いです。精神障がいという断定や認定ではなくて、メンタル的に一時的にうつ的になってしまう、そういうような状況での方々も非常に多いんです。

 そういう中での一人一人の対人援助、さらには保護の説明だとか、こういったことを行うに当たりまして専門的技術が必要だと言われながらも、いまだに、二十一年から二十八年の比較をしましても、社会福祉士は今でも、生活保護担当でいいますと、現業員で一三・五%、まだたった一割なんです。そして、現業員を、ケースワーカーを指導する立場の査察指導員は八・七%なんです。現業員よりも査察指導員の方が低いということで指導を本当にできるのかどうかということが、私もずっとこの間懸念をしているところでございました。

 そして、精神保健福祉士の点でいえば、ほとんどが、多くの方が精神的な状況で、メンタルな状況でございますけれども、にもかかわらず、現業員、ケースワーカーではわずか二・四%です、現在でも。査察指導員は、それよりも低い一・七%でございます。

 私は、何も専門家であれば全てがよしというふうには思いません。生活保護というのは大切な行政処分でございますので、行政としての役割の方が多いと思います。その中での具体的な、もう一方のケースワーカーを支える手だてとしては、こういった相談援助技術といった専門性は非常に不可欠だと考えております。

 このような仕組みについても、ぜひ前向きに今後御検討をいただきたいというふうに思っております。

 そして、最後の質問になります。

 先ほどからいろいろ、教育の無償化とかがございますが、子供についての部分です。

 生活保護についてもですが、総理がおっしゃっていました、全ての子供、幼児教育の無償化というふうにございました。この全てという子供たちにこのような生活保護世帯が入っているのかどうか、お伺いをしたいと思います。

越智副大臣 内閣府からお答えいたします。

 幼児教育の無償化につきましては、二〇二〇年度までに、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育園の費用を無償化する、ゼロ歳から二歳児についても、所得の低い世帯について無償化するとの方針のもとで、現在、具体的な検討が進められているところでございます。

 この点につきましては、現在、与党においても議論が行われていると承知しておりまして、政府としては、与党の提言をいただいた上で、十二月上旬に新しい政策パッケージにまとめていきたいというふうに考えております。

池田(真)委員 先ほど大臣がほかの、多分吉田先生の質問のところでもおっしゃっていたように、早期の幼児教育というのは、コミュニケーション力とか、非常に大きな期待ということで、幼児教育に力を入れているんだ、入れていこうというお話があったかと思います。ぜひ前向きに、低所得者世帯、生活保護も含めて御検討を願いたいと思います。

 今現在も、幼稚園の利用料、利用負担金は、生活保護は無料というふうになっていますけれども、現実的には利用できるケースは非常に少ないです。それは当然、幼稚園でも長時間利用できる、保育園でなければ預けられないというようなことが今までだったかもしれません。

 でも、今、多くの生活困窮者のお母さんたちは教育を望んでいます。知的障がいのお母さん、あるいは精神障がいのお母さん、預けるという養育の観点だけではなくて、ぜひ自分が教えられない分を、地域にある幼稚園、何で入れないのというようなことがあります。それは、そのほかの利用負担が非常に高いからなんです。やはり経済的な事情で入れないというのも一つの要因であることをぜひ鑑みていただき、ぜひこれも御検討いただきたいと思います。

 最後に、もう時間がなくなりましたので簡単に申し上げて終わりにしたいと思いますが、今度は高等教育です。

 生活保護の高等教育が本当に入ってくるのかが非常に不安です。真に必要な子供というのが、どんなに貧しい子供であってもというので、これは入るでしょう。でも、意欲のある子供という言葉に私は懸念をいたします。意欲のあるという評価は、どのような基準や方法で行うのでしょうか。

越智副大臣 内閣府からお答えいたします。

 どんな貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば、専修学校、大学にも進学できるよう、真に必要な子供たちには高等教育を無償化するとの基本的な考え方に基づいて、どの範囲にどういった対応をしていくのか検討をしてまいります。与党の提言をいただいた上で、十二月上旬に新しい政策パッケージに取りまとめていきたいというふうに考えております。

池田(真)委員 子供の意欲のあるというのは、実は生活困窮者自立支援法になる前に、意欲喚起事業というのをやっています、生活保護の方で。要するに、意欲を喚起していく、その支援が必要な、こういうのが困窮者世帯なんです。

 より早くその意欲を出すためには、幼児教育だったり、あるいは社会経験が非常に重要であります。困窮者世帯、あるいは生活保護世帯、あるいはいろいろな問題を抱えている世帯の子供たちは、社会とのつながりがありません。お祭りに行ったり、キャンプに行ったり、釣りに行ったり、いろいろな経験や、スポーツや、友人と一緒になって活動していく、何か一つできた、それが次の自信につながってまいります。

 ぜひ、社会教育やそういった経験もこの中に一緒に入れていただいて、子供の真の健全対策に向けて、子供の貧困対策も取り上げていただきたいというふうにお願いを申し上げまして、最後、厚労大臣から一言御見解をいただければ幸いです。

加藤国務大臣 委員からも、生活保護、生活困窮者自立支援法等々にお話もいただきました。

 子供さんが、その生まれた家庭環境の中で伸び行くものが摘まれることがないように、それぞれの皆さん方が意欲とその能力を発揮できるように我々努力をしていきたいと思いますし、また、今お話がありましたように、特に幼児期においてさまざまなつながりがないと、なかなか自分の将来を見通すこともできない。中には、ある会では、大学生と会ったのは初めて、そういう子供さんは正直いるわけで、大学生に会うのが初めてということは、大学というのは当然想定し得ないということなんだろうと思います。

 そういったことも含めて、特に幼児期を中心にしっかり教育をしていくこと、また、さまざまな、今、居場所づくりとか、あるいは子供食堂とか等々の取り組みもさせていただいております。そういうのを総合的に進める中で、可能性のある子供さん方を、しっかりとその力が発揮できる、またそういう環境をつくるために我々も努力をしていきたいと思っております。

池田(真)委員 ありがとうございました。

 来年の通常国会に向けても、私もまた改めて質問をさせていただきたいと思いますが、ぜひ実現に向けて、私も努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、白石洋一君。

白石委員 希望の党の白石洋一です。

 五年ぶりに国会、そして厚労委員会に戻ってまいりました。その間、丹念に地元の声を聞いて、その方々に成りかわって質問させていただきたいと思います。

 一言で言ったら、将来の生活不安です。将来どうなるかわからない、今は何とかやっていけても将来よくなる要素が見当たらない、これが地域の最大の課題です。

 特に、年金しか収入源がない方、もうそれ以外に当てはない、蓄えはあっても、それは崩すだけ、そして、家族はいても、それぞれ生活がある、あるいは頼ることができない事情がある、そういう方々の不安。そして、そういう生活を見ている若い方、現役世代も、これは自分たちの老後は大変なことになりそうだ、だからいろいろなことを控える。家族を持つ、子供を持つ、あるいは事業に新しく挑戦する、そういったことに二の足を踏んでしまう、これが最大の課題で、それを克服せずしては、幾ら景気対策にお金を使っても、無駄金になってしまう、一時的なものになってしまうと思うんです。

 そこで、大臣、挨拶でいろいろおっしゃられましたけれども、老後の生活の安心という面について、ちょっと、年金制度のところ、制度改正のことについても書かれていますけれども、もう少し肉づけして、そのあたりの所信をお聞かせいただけますでしょうか。

加藤国務大臣 所信で申し上げましたように、年金制度についても、法律のできているもの、これはしっかり施行していく等々ございますけれども、加えて、低所得の高齢者の方には、そうした年金のみならず、社会保障全体で総合的に支えていくことが大変大事だと思っておりまして、消費税一〇%への引き上げ時に予定をしております年金生活者支援給付金、あるいはその際に、平成三十年に予定している生活困窮者自立支援制度の見直し、こういったことをしっかり進めていくことが必要だと思います。

 また同時に、年金に関しても、確実に受給をしていただくということで、今回、受給資格期間二十五年を十年に短縮いたしましたけれども、そういったことをしっかりと対処するとともに、年金の保険料の納付、また、必要な場合には保険料免除制度を活用することなど、これは年金受給資格になる前の話でありますけれども、そういったことも含めて、制度の周知を図り、そういった皆さん方の老後の生活の安定に向けて努力をしていきたいと思っております。

白石委員 大臣がおっしゃったように、老後の生活というのは年金だけではありません。確かに年金だけではない。物事の順番として、生活している方はどういうふうに考えるかというと、まず年金があって、そこから介護保険料が引かれ、そして七十五歳以上の方については健康保険税が引かれ、その手取りで生活をしている、ここがどうなるかということですね。それからまた、自分が介護サービスを受けたり病院に行ったら自己負担金を払う、こういうことになるんだと思いますけれども、やはり一番最初に考えるのは手取りがどうなるかということですね。

 ちょっとお手元にお配りした資料ですけれども、やはり懸念するのは、国民年金だけでやっていらっしゃる方、もう少し広げても厚生年金だけでやっていらっしゃる方、その方々が一体、月額幾らでやりくりをしようとしているのか。

 この一ページ目のところで、老齢基礎年金、月額平均は五万五千円。これは大変低い金額です。これでは本当にやっていけない。加えて、これは厚生年金や共済年金の基礎年金部分も含まれているから、ですから、国民年金だけ、つまり自営業や農家の方々あるいは一人親方でやってこられた方はもっと平均は低いはずなんです。これに加えて、厚生年金では報酬比例が乗ってきたりするんですけれども、ここがまず一つあります。

 次に、次のページですけれども、では、介護保険料はどうなっているのか。二〇〇〇年のとき、発足当初のときは月額二千九百円程度であった。それが今や五千五百円ですね。ずんずん上がってきていて、さらに、この五年、十年では七千円、八千円台になろうとしているということです。これが引かれる。

 しかし、低年金の方は軽減措置もある。それが次のページでありまして、三ページ目で、低年金の方は、ほぼほぼこのグラフの第一段階から第三段階の中に含まれてきて、割合でいったら〇・四五であったり、あるいは〇・七五の負担でいいですよと。それでもやはり数千円は払っていかないといけない。この数千円が非常に重いんです。さらに、本人が非課税であっても世帯に課税者がいると。では、課税者というのはどういうところかというと、大体年収二百数十万円ですね。所得でいったら百五十万円。自分の生活で精いっぱいの方が世帯にいる、そうしたら、もう一〇〇%支払わないといけないということになってくるわけです。

 もう一つ、後期高齢者医療制度の方、保険料ですけれども、それは四ページのところにありますが、平成二十九年度でいったら月額五千六百五十九円であります。

 これは平均ですから、では、低年金の方がどれぐらい払わないといけないのかというと、その次のページで、ここは、後期高齢者医療保険の保険料については相当軽減措置はなされている。月に三百八十円だったり、月に五百七十円だったり。ここはそんなに負担にはなっていないかもしれない。

 こういったところが見えてくるわけですけれども、私、前の議員のときもそうでしたけれども、手取りベースを把握して、そして御高齢の方々が一体どれぐらいの金額で生活しているのか、ここの可視化がなかなか難しいんです。これは年金局だけじゃない。老健局だったり、保険局だったり、あるいは生活保護との比較をしようとしたら援護局であったり、局が横断的になって、それぞれの制度をこうやって説明されるわけですけれども、私の事務所ではそれを総合的に考えることはなかなか難しいんです。

 しかし、年配の方がどういう生活をしているのかということを把握するためには、手取りベースの金額、これを、過去から推移を見て、そして今後どうなるか、制度の改正によって、幾つかあります、介護なり、医療なり、そして生活保護なり、どういう影響を受けるのかということは、局横断的に見ていかないといけないと思うんです。

 それで、審議官については、医療介護担当とか、ちょっと横断的な審議官もおられると思うんですけれども、手取りベースの把握をする、これについて局横断にやっていただきたいなと。そうすると随分可視化されて、そして、これで、手取りでやっていくのは相当難しいだろう、あるいは、ここのところはちゃんと手当てしないといけないということがわかりやすく見えてくると思うんですけれども、ここは、加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 御指摘の点はもっともだというふうに思います。

 ただ、厚生労働省の制度だけではなくて、例えば税をどういじるか、税も国税、地方税とございますので、そういったものも全部込み込みで見て、それがどうなるのか。それから、例えば、今のは負担ですけれども、今度、利用するときも、いろいろな軽減措置がありますので、そこもどう考えていくのか。総合的に見ていくのは全くそのとおりだと思いますけれども、ただ、それを見る人をどこかに置くかどうかというのは、ちょっとまだ私もイメージを持てないんです。

 ただ、それぞれ所掌しているところは、さまざまな制度改正、それが自分のところにどういう影響が来るのか、そのことにはやはり常に関心を持って対応していかなきゃならないですし、それが結果として、どういう影響があれば今度、自分たちの改正をするときにそこはどう考えていくのか、やはり常にそういうマインドというんでしょうか、意識を持ってやっていくことは非常に大事なんじゃないかなというふうに思います。

白石委員 それは、政府の側の、所掌している側の立場で、でも、生活している方々にとっては、やはり、手取りベースでどんどん減らされて、しかも、さしたる説明もなく天引きされてきて、ここが将来どうなるのかと。いろいろ制度が変わるといっても、それが一体、自分の通帳にどういう金額が入ることになるのか、ここをぜひ、担当官じゃないにしても、私どもが厚労省の役所の方に聞いたら、ちゃんとそういう資料が用意されているような体制にしていただきたいなと。

 確かに、制度がそれぞれ違うし、県や市によって違うんだ、こういう話で、こうやって別々のこういう議論になってしまうんですけれども、ぜひそこはやっていただいて、まずそこで、それから住民税なり所得税なりやっていけばいいと思います。大体、ここで私が懸念しているところは、住民税を払うほどの所得では、年金ではないわけですから、まず厚労省の中でやっていただきたいなと思います。

 ちょっとそこで、ひとつお願いします。

加藤国務大臣 御指摘は私も納得できるところは多々あるんですが、ただ、例えば、先ほど議論もあったんですけれども、住民税非課税世帯で我々が切っていたりすると、今度、住民税を変えると変わっていっちゃうわけですね、その対象が。だから、やはりそこは、どこかで集約的にというのはなかなか、例えば厚労省の中でそれをというのはなかなか難しい部分はあるんだろうと思います。

 ただ、おっしゃる御視点、それは非常にごもっともだというふうに思いますので、我々も、他の制度でどう変われば、それから各市町村ごとで全然違うので必ずしも一元的には見られませんけれども、それがどういう影響を及ぼしているのか、そういったことはしっかり関心を持ちながら対応していくべきだと思いますし、御指摘のように、我々はどうしても、制度をつくる方でありますから、制度という意味においては、いわば供給側かもしれませんけれども、しかし、最後は、国民一人一人、受け手がそれによってどういう影響を受けていくのか、そのことは常に認識をしておかなければならない、その御指摘は、私はそのとおりだというふうに思います。

白石委員 ぜひそこは進めていただきたいなと思います。

 それで、やはり、生活者の視点でいうと、もうこれではやっていけないということで、それは実際、数字にあらわれています。

 それはどういうことかというと、次のページの六ページ、年金をもらっていながら生活保護に頼らざるを得ないという方が本当にふえてきているんです。平成十七年、六十五歳の被保護人員五十五万六千人、うち年金受給者二十六万人ですね。それが双方ふえております。平成二十七年のときには、六十五歳以上の被保護人員というのは九十六万七千、七割増加しているんです。そして、そのうちの年金受給者の数は四十七万人、八割ふえているんです。

 つまり、年金をもらっていながら、自分はちゃんと、多少サボったことがあるにせよ、公的年金、国民皆年金でやってきた方々が生活保護に頼らざるを得ない。人数でいったら、それは、六十五歳以上の人口というのは、過去は二千六百万人、そして今は三千四百万人程度ですから、今は全体の数からいったら二%に満たないかもしれない。しかし、これからどんどんふえてくる、このことは見えております。

 というのは、なぜかというと、その横にあります年金受給者当たりの年金受給額、月額の四万五千円から、ずっと今に至って四万七千円。さっきの国民年金の平均の受給額とそう変わらないじゃないですか。つまり、普通にやってきた方々が生活保護に頼ってきているというわけです。もちろん、それだけじゃない。家族のサポートあるいは蓄えが少なかった、こういうこともあるにせよ、年金の金額としては一般の平均とそんなに変わらない方々が生活保護に頼ってきているわけですね。

 これは、よく言われる、団塊の世代の方々が二〇二五年に全て七十五歳以上になるというときには、相当ふえてくるんじゃないかと私は危機感を感じているんです。このあたり、大臣、危機感の共有について所見をお願いします。

加藤国務大臣 例えば、基礎年金そのものの水準で十分な生活が足りないじゃないか、幾つかいろいろな水準がありますけれども、二人であれば基礎的消費を上回る水準、これは満額ですけれどもね、しかし一人では足らない、こういう指摘もこれまでございます。

 ただ、この基礎年金の水準そのものが、全ての基礎的消費を全部賄うんだということで設定されているというよりは、もともとが御承知のような経緯からスタートし、自営業をされている方々が将来引退をして、引退としながらも、例えばお店屋さんであればお店も手伝いながら、そんな認識の中でつくられてきて、そして、その水準をこれ以上上げると、やはり保険料を負担されている若い世代、これが上がるということで、保険料を一定に抑えましょうということで、たしか平成十六年に制度改正がなされて今日に至ってきているということであります。

 そういう中で、先ほど申し上げましたけれども、現行の年金の中で納めていただける機会があれば納めていただく、そして、仮にそれが難しければいわゆる免除制度を使っていただく等々で、しっかりとした年金をまず受けてもらえるように我々も周知を図っていかなきゃならないと思いますし、貯蓄も残念ながら持つことができずに、それでは生活ができないということに対しては必要な生活保護等をしっかり提供していく、こういった複合的な対応をすることによって高齢者の方々の生活の安心というものもつくっていきたいな、こういうふうに思っております。

白石委員 確かに、大臣おっしゃる、年金だけでは生活できないということは当初わかっていたはずじゃないかと。それにしてもここまで目算が狂うとは思っていなかったという方がすごく多いんです。年金の減らされ方、そして負担、特に天引きされるところですね、それがふえてきている。あとは、寿命が延びているというところもあると思います。

 それで、将来どれぐらいもらえるんだろうかというところも視野に入れたいところです。そのために、ねんきん定期便やねんきんネットができてはおりますが、ここでちょっとここは事務方の方に聞きたいんですけれども、そのねんきん定期便やねんきんネットで、将来このままでいけばこれぐらいもらえるだろうという金額がありますけれども、これはマクロ経済スライド後の金額でしょうか、前の金額でしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今、ねんきん定期便でございますとか、ねんきんネットで、御自身の記録の確認でございますとか年金見込み額の確認ができるようにしてございます。

 この年金見込み額試算につきましては、将来のマクロ経済スライドは反映しない数字で記載してございまして、現在の年金制度を前提とした試算というふうにしてございます。

白石委員 かくのごとくに、やはりこのままだと目算が狂ってしまう。書かれているその金額が来ると思って、自分は蓄えがあるにせよ、これぐらいのペースで崩したらいいだろうというふうに思っていたところが、実際は、マクロ経済スライドで、基礎年金部分については最終的に今の標準的なシナリオでも三割減であります。

 これだと、将来、見込み違いの方々がどんどんふえてきてしまうんじゃないでしょうか。そうすると、また、この生活保護に頼らざるを得ない人が本当に不本意ながらふえていくということになるんじゃないでしょうか。ここのところは、ちょっと大臣、お願いします。

加藤国務大臣 まず、試算の見込みといっても、マクロ経済スライドがどの程度反映されるか、これはなかなか、正直言って、経済の実態に応じて変わってくるわけでありますので一義的に前提を置くのは非常に難しいのかなと。そういうことで、多分それもお断りした上でさまざまな試算ができる仕組みにこれはなっているんだろうと思います。

 それから、委員の後の資料にもありますけれども、これからマクロ経済スライドが適用されていく中でどういう姿になっていくのか、これは財政検証をする中で確認をさせていただいているところでございますので、その辺しっかりと、今どういう制度になっているのか、そういったことも含めて周知をしていく、これは大事なことだろうと思っておりますので、我々もさまざまな機会において、今の年金制度がどういう状況になっているのか、そして、先ほど申し上げた、一方で、しっかりと年金を受給していただくためにも、日ごろの保険料の負担、あるいは保険料の納付、あるいは免除制度の活用、そういったことも含めて幅広くPRはしていかなきゃいけないというふうに思います。

白石委員 大臣、やはりそこは、結局は、自分はどうなるんだというところが一番の生活者の、個々人の関心事です。やはり、自分がどうなるというところに反映された形で、ねんきん定期便、ねんきんネット、試算すべきだと思うんです。もちろん、その前提条件はこうですよというふうに書いてもいいですよ。でも、下がるところは書かないでおいたら、目算違いの人がこれからたくさん出てくる、このように思うわけです。

 それで、次のページ、七ページ目のところで、では一体どうなるのか、何とか知りたいという人は、厚労省のホームページにも、分厚いPDFの中の一枚にはこれがある、これを見れば何となくわかるわけであります。

 これは、現役男子の手取り収入との比較、つまり、貨幣価値が変わってきますから、現役男子の手取り収入が、将来も同じような生活をできるという仮定のもとでいったとしても、今の状況からして、全体、一元化モデルでいったら、平成四十二年、二〇三〇年度には一割減るということです。六二・七%、所得代替率が五六・五%、一割減るということですね。基礎年金の部分についてはさらに減る、一三%減るわけです。基礎年金、つまり国民年金だけでやっている人はさらに減っていく。これは三十年続くわけですから、基礎年金の調整終了にはまだ十三年残っているのにもかかわらず、ここまで減るというわけですね。これはもう今対処しないといけないんじゃないでしょうか、大臣。

 本会議の中で維新の方もおっしゃっていましたけれども、国難というのは怠慢の部分もあると。これはもう見えていて、国難になることは明らかであります、これが実際に行われたら。マクロの経済スライドは発動されていない、だからといったら、だから将来、余計悪くなるわけです。そのことを考えたら、この年金制度、ほかにもいろいろあります。要するに、目的は、生活保護に頼らないで、老後、少なくとも最低限の生活ができる、尊厳ある生活ができる、惨めな思いはすることはない。この制度を今着手、再建なり新しくつくるなりしないといけないんじゃないでしょうか。大臣、所見をお願いします。

加藤国務大臣 先ほど申し上げた、たしか平成十六年の改定のときに、やはり、このまま行くと現役世代の保険料は一体どこまで上がるのか、逆に、それでは年金に対する信頼も失っていくだろう、そういうことで、要するに、保険料をここまでということで、いわば上限を設定し、そして、その中でどう回していくのかということで今の仕組みがつくられてき、そして、その検証として、少なくとも、今お話がありましたように、現役の方の実質の所得に対してもらえる年金が五〇%を切らない、そのような財政検証をしていく、こういう仕組みに入ってきているわけでありまして、これはこれとして、やはり、年金制度を将来に向けて、負担を考えながらも安定化させていく、そういった中でつくられてきた制度だというふうに認識をしております。

 加えて、今お話ありましたように、確かに、この中で基礎年金の部分はだんだん減少していきますねと。そういったことも含めて、今度、一〇%への引き上げのときに給付金を支給するとか、さまざまな手当てを考えながら、こうした高齢者の方も安心してお過ごしいただける、こういったことにはしっかりと配慮していかなきゃいけない。それはおっしゃるとおりだと思います。

白石委員 こういう見込みを見ながら手当てをしていくと。今でさえ国民年金はきゅうきゅうとしているのに、さらにその国民年金がより厳しい状況に置かれる。税と社会保障の一体改革で、加藤大臣も担当されて、給付金をお支払いすると。でも、月額五千円。しかも、それも払った期間に案分してですから、低年金の方は五千円満額じゃないわけですよね。数千円かもしれない。これでは安心して将来生活できるとは言いがたいんです。根本的な制度の見直し、あるいは刷新、これが必要だと思うんです。

 それで、ここは議論となりますけれども、一番最後のページで私がちょっと書かせていただきました、ブレーンストーミングの一つのたたき台というか。

 目的は、高齢者の方で低所得、低保有資産で扶養者なしの方々、これからふえるわけですから、そういった方々がなるべく生活保護に頼らないで尊厳ある最低限の生活保障をいかに実現するのか。

 これはいろいろなやり方があります。年金をそうやってふやすということもあるでしょうし、給付つき税額控除というのもあるでしょう。あるいは、最低限の月々の所得を保障していくということもあるんだと思います。

 しかし、財源をどうするかということですけれども、その考え方としては、まず保険料収入から取ることを考える。

 まず、年金保険料、取るべきところからちゃんと取れているのか。国民年金の納付率というのはまだ七割ですね。これをどう上げていくのか。あるいは、数年前に長妻議員が調べたように、厚生年金、被用者年金であったとしても、二百万人の人が納めるべきところを納めていないというところがある。ちゃんとここを取ろうじゃないか。

 それから、国庫負担分、基礎年金の二分の一は国庫負担、年間十兆円、これを全てに給付するんじゃなくて、低年金の補填に回せないかということ、そういったところがあります。

 ここでちょっととめて、大臣、ここは非常に既存の制度を前提にした議論ですけれども、ここについて御所見をお願いします。

加藤国務大臣 先ほど申し上げておりますように、まず、年金がしっかりと受給できる状況をつくるために、納付がしっかりと行われていくということは大変大事なことだと思っておりますので、これまでも国民年金保険料の納付率の向上にも取り組んでまいりましたし、それから、実際、その方の実態から見たら、国民年金ではなくて厚生年金が本来なら適用されている、そういう方もおられるわけであります。そういった意味で、厚生年金の適用されるべき事業所をしっかりと探し、そしてそこに対応していく。そのためには、今、国税ともいろいろな情報をやりとりして、これに対してはかなり力を入れて取り組ませていただいております。

 そういったさまざまな対応をしながら、先ほど申し上げた、本来もらえるべきと言うのが適切かわかりませんけれども、もらえるべき年金がしっかりともらえていく状況をつくっていくということが私は大変大事だというふうに思います。

 国庫負担分をどこに充てるか、これはいろいろな議論があると思いますけれども、現状、これまでの議論を踏まえて今のような姿になっているというふうに認識をしているところであります。

白石委員 やれるところをちゃんとやるということが大事だと思いますので、それを引き続きやってもらいつつ、限界もあります。限界があるからどうするか。例えば、保険料の上限の引き上げ。これは、標準報酬月額の上限というのは今、六十五万円なりになっていると思うんですけれども、それを上げる。でも、その分給付もふえるわけですから。

 提案したいのは、保険料率を累進化する。日本は、社会保障制度前と後でより格差が広がっているという統計もあるわけですから。社会保険料というのは逆進性が非常に高い、国民年金保険料が一番最たる例だと思うんですけれども。税金は累進税率になっているわけですから、社会保険料率、料率を累進的にする。しかし、給付は標準報酬月額を基準に給付する。だから、その方々にたくさん、相応に支払う。でも、払った金額、保険料金額に比例する金額ではないですよということで、格差是正型の保険料率にするということもあると思います。

 時間もちょっと足らなくなりましたけれども、この議論をぜひしていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 希望の党の柚木道義でございます。

 本日、貴重な質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速、質問に入らせていただきたいと思います。委員の先生方のお手元に資料の方を配付させていただいていると思うので、お目通しをいただきながらと思います。

 よく本会議代表質問等でも議論になっております幼児教育、保育の無償化について前半伺いたいと思います。

 これは解散前の記者会見の様子をボードにしましたが、基本的には直近の本会議等の答弁においても、安倍総理は一貫して、この赤線を引かせていただいた、二〇二〇年度までに、三歳から五歳まで、全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化します、こう一貫しておっしゃっておられるわけでございます。これが、二枚目ごらんをいただきましても、自民党さんの政権公約で一致している状況でございます。

 ここまでは、それはそれとして一つの公約というか考え方、あるいは総理の御発言なんだと思われますが、きょう伺いたいのは、自民党さんの中で非常に実態のよくおわかりの委員の先生もたくさんおいでの中で、人生百年時代戦略本部の提言がきょうまとまって、この後、たしか総理大臣官邸に申し入れに行かれる、そういうふうに伺っておりまして、その内容を仄聞、報道等で確認したところによれば、衆議院選公約で全ての子供の無償化を明記した三歳から五歳児の幼児教育、保育については、料金が一定額以上の施設や高所得者は無償とせず、助成額に上限を設けるよう求めるなど、公約と食い違う内容となっていると。さまざまな報道がありますが、大体こういう報道ぶりが多いというふうに認識しております。

 そうすると、きょう、保育の所管の厚生労働大臣以外にも、この分野に関係する内閣府の副大臣、政務官にもお越しいただいているわけですが、私は非常に、国民の皆さん、特に子育て世帯、場合によっては、子供さんが希望する保育園に入れなかった、あるいは入れたけれども非常に高いとか遠いとか、さまざまな面で御苦労されておられる親御さんから見て、一体どういうふうになっていくのか全く見えない、こういう声を、まさに子育て政策おかしくないですかとか、希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会の代表の方からも、きょうもやりとりをして、一体どうなるんですか、柚木さんと。私に聞かれても正直困るものですから、きょうこの委員会の場でつまびらかにぜひお願いをしたいと思っております。

 この人生百年時代戦略本部、岸田政調会長のもとで、この厚労委員のメンバーでもある小泉進次郎議員が事務局長。あれっ、小泉進次郎さん、厚労委員ですよね、何かさっきまでおられたように思うんですが。ぜひ、小泉事務局長にも、私、本当に伺いたいんですよね、こういう提言を本当に出されるんですかと。出される場合には、これは官邸に三時四十分にという話も聞きましたけれども、公約を、逆に言うと否定する内容を自民党さんの戦略本部が提言を出される、こういうことに普通考えたらなるわけです。

 担当の内閣府の越智副大臣、きょうお越しいただいていますね。ぜひ伺いたいのは、政府としては、こういう総理大臣発言、自民党の公約も出ていて、全ての子供を無償化、幼児教育、保育、そして……(発言する者あり)ちょっと、こっちに今聞いていますから。ぜひ、私も、公約なのであれば守っていただきたいんです。ただ、これから……(発言する者あり)ちょっと静かに。これから提言を申し入れに行かれる内容が報道されているとおりとするならば、それをもし政府が受け入れる場合は、これは公約違反になりますよね。

 ちょっと副大臣、所見をお述べいただけますか。

越智副大臣 内閣府からお答えを申し上げます。

 まず、幼児教育の無償化につきましては、二〇二〇年度までに、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育園の費用を無償化する、ゼロ歳から二歳児についても、所得の低い世帯について無償化するとの方針のもとで、現在、具体的な検討を進めているところでございます。

 まず、政府としましては、これまで、例えば自由価格の施設は上限を設けるなどといった具体的なあれについて決めた事実はございません。

 幼児教育の無償化を含めて、新しい政策パッケージに関する自民党の提言については、先ほど柚木委員からもいろいろとお話ございましたけれども、現在、党内で大詰めの議論を迎えているというふうに承知しております。

 政府としては、与党の提言も踏まえて、十二月上旬に新しい政策パッケージに取りまとめていきたいというふうに考えているところでございます。

柚木委員 与党の提言を踏まえということで、伺ったところ、自民党さんの後に公明党さんも御要望されるというふうなお話も聞いておりますが、多分、それを踏まえてという趣旨の御答弁を今いただいたんだと思うんですね。

 ただ、踏まえてということになると、その提言の内容自体は、やはり普通に読んだら、全ての子供たちが無償化になると読めるわけですから、私の周りにも、選挙のとき、それで、はっきり言って、自民党さんに投票した人たち、いっぱいいますよ、いっぱいいる。しかし、この提言をもし受け入れる形になれば、今、踏まえてと言われましたが、これは公約違反になるという認識でよろしいですか、副大臣。

越智副大臣 先ほど申し上げたとおり、与党の提言がございました場合には、それを踏まえて、その内容をしっかりと勉強して、そして経済政策パッケージに取りまとめていきたいというふうに考えております。

柚木委員 ここは副大臣、ぜひちゃんと担当の副大臣としてお考えを述べていただかないと。

 踏まえてというのは、それを受け入れるということになれば、普通に読めば公約違反です。そうでなくて、踏まえるんだけれども、安倍総理の発言どおり、全ての三歳から五歳児、無償化するのであれば、これは人生百年時代戦略本部の提言を突っぱねるということになりますよ。

 どっちにされるんですか、ちゃんとお考えを述べてください。

越智副大臣 改めて政府の立場を申し上げます。

 政府にとりましては、安倍総理が所信表明演説でも述べましたとおり、二〇二〇年までに、三歳―五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育園の費用を無償化する、そして、ゼロ歳から二歳児についても、所得の低い世帯については無償化するということの方針のもとで、現在、具体的な検討を進めているということでございます。

柚木委員 今の答弁だと、要はわからないということを言われているんですよね。

 これは本当に、私も下の子供はまだ保育園です。実際、ゼロ―二、三―五の、それぞれ、まさにその間の壁も含めて、この制度がどうなるかによって、お子さん方はもとより、親御さんたちの、まさに働き方を含めて大きく影響してくる。

 それで、もう新年度に向けて、親御さんたち、まさに保活の実態調査、私も提案をして調査いただいて、私も実際保活しましたよ。二人目のときは失敗して妻は仕事をやめました。私、保活しましたけれども、復職の前日に。

 本当に、実際に、子供さんを預けられる、預けられない、では無償化になる、ならない、その対象がどうなる、所得の制限ができるのか、助成額に制限ができるのか、それによって預け方、働き方、全然変わってくるんですよ。だから、少しでもやはり政府の考えを早い段階で明確にしていただかないと困るんです。

 ぜひ、これは、せめて方向性を副大臣としてお述べいただきたいのは、公約を守るという視点で対応されるのか、さっきの自民党さんの提言をよく踏まえてということであれば、これは公約違反をするということになるのか、どちらの立場に立って対応されるのか、ちゃんと答えてください。(発言する者あり)

 委員長、ちょっと静かにしていただけませんか。

高鳥委員長 静粛に願います。

越智副大臣 現在、自民党の本部におきまして、自民党の政権公約を踏まえて議論が行われているものだというふうに承知しておりまして、それが最終段階に来ているものだというふうに思っております。

 ですので、その本部の提言を踏まえて、政府としては、十二月の経済政策パッケージの取りまとめに向けて検討を進めていき、そしてパッケージの中に盛り込んでいきたい、取りまとめていきたいというふうに考えております。

柚木委員 これは担当は内閣府でいらっしゃるんですが、保育行政所管の厚生労働大臣にぜひ御所見を伺いたいのは、まあ、これに対する意見は当然あると思いますよ、私もありますよ。だけれども、このように明確に、三―五歳全ての子供たちの幼稚園、保育園の費用を無償化しますというふうに述べられているんですね。その公約を見て選挙に投票された皆さんは、そんな、所得制限とか助成額の上限とか、そういうことを親御さんたちはイメージされるというふうに、これは保育行政を所管される厚生労働大臣としてはどう読まれますか。普通に受けとめたら、どうですか。

加藤国務大臣 いや、申しわけないですけれども、そのまま読まれているんじゃないかなというふうに思いますので、我々は、二〇二〇年度までに、三歳から五歳まで、全ての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化する、ゼロ歳から二歳児も、所得の低い世帯では無償化する、この方針にのっとって、今、党で最後大詰めの議論をいただいているわけですから、それを踏まえて、政府としては、来月の上旬に向けて二兆円の経済パッケージ全体をまとめていきたい、そういうふうに考えております。

柚木委員 まあ、普通に読めば、全ての子供さんですから、所得制限とか助成額上限とかは、普通はこれだけ見れば考えません、普通は。ただ、実際、今後どうなるかというのが私は懸念されますが。

 これはぜひ、厚生労働大臣あるいは内閣府、どちらもになるのか、お願いを申し上げたいのは、先ほどから、三ページ目にもちょっとそういう親御さんたちの発言をつけさせていただいていますけれども、これは結局、認可に入れる人と入れない人で本当に血で血を洗う状況になるとか、認可施設に入れないのは自己責任なのかとか、これは実際そういう親御さんの声を私も聞いていますよ。それから、認可施設に入れず無償化からも除外されれば二重の負担ということにもなってしまうわけです。

 もちろん、私も、無償化、負担の軽減はいいことだと思います。もちろん、待機児童の解消、特に首都圏、そういうことが最優先という親御さんも多いと思うんです。だったら、ちゃんとニーズ調査をやっていただきたいんですよ。

 実際に、例えば保活の実態調査もされましたけれども、インターネットを使ってでもいいです、それこそ、「子育て政策おかしくないですか」ハッシュタグ、あるいは、希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会、調査をされていますよね。

 これは、調査によれば、無償化か全入化かということで聞けば、まあ全入化という言葉の理解は先ほどございましたけれども、要は望む人がみんな保育園に入れる、これが七七%なんですね。つまり、それぐらい切実に、お子さんを預けるところがないから働けない、仕事をやめざるを得ない。

 預けるところがあっても、きょうちょっと資料につけていただけなかったんですけれども、本当に切実な親御さんのお手紙をいただいて、これは本当に今の、都内の方ですけれども、読むのは大丈夫ということだったので、これは、保育園の入園は大学受験よりも厳しい、無理をして本当にゼロ歳で認可入園を果たしたんだけれども、非常に遠いところに行かなきゃいけなくて、仕事も、どっちをするかみたいな感じになったんだけれども、奨学金をいただいて借金を返さなきゃいけないから仕事もやめられないし、結局、本当にうつ状態になってしまって、もう正直、今の状況では怖くて二人目は産めません、こういう親御さんのお手紙もいただいているわけです。

 ぜひ、これは厚生労働省でも内閣府でも連携してでもいいんですが、無償化あるいは全入化という言葉以外のことでも結構ですが、実際のニーズはどこにあるのかということを、これはもちろん地域ごとであってもいいと思います、あるいは年代ごとであってもいいと思うんです、ニーズ調査をしていただきたいんです。

 これは内閣府でも厚生労働省でも結構なんですが、ぜひニーズ調査の実施、お願い申し上げたいんですが、どちらでも結構なんですが、お答えいただけませんか。

加藤国務大臣 済みません。ちょっと何の、ごめんなさい、もちろん保育の話をしているのは、幼児教育の話をしているのはよくわかっているんですが、その中で、どういうニーズの調査を委員は念頭に置いて質問されているんですか。

柚木委員 大きく言うと、まず、やはり今一番親御さんたちが気になっているのは、優先順位が、全面無償化なのか、あるいは待機児童解消なのか。これをぜひ、これはまず大きな方向性で、これによって、この後の質問にもつながるんですが、予算も巨額の予算です、二兆円のうち八千億円。ぜひ、限られた財源の中で優先順位をつけていただく上で、親御さんたちが、まずは待機児童解消なのか、あるいは全面無償化なのか、どちらを望んでいるのかという、まず優先順位をはっきりいただくためのニーズ調査をお願いしたいんです。

 その上で、当然、自治体ごとに、地域ごとに特性があると思うんですね、首都圏であったり。そういう地域ごとの実態を酌み上げていただいて、私は、全国一律で必ずしもやる必要はないという考えもあります。ですから、そういうところを一つ一つ、どのような、まさに今回のゼロ―二、三―五、幼児教育、保育無償化、あるいは待機児童解消、そういった、それぞれの政策の限られた財源の中での優先順位を、ニーズ調査を行うことで、私は、政府や自民党さんの中で、これがいいからというのも一つのあり方ですけれども、これだけ、実際には七七%が、全員入れるように、待機児童解消優先という答えも来ています。

 ですから、そうすると、この後の話にもつながりますが、今のままでは、二〇二〇年で三十二万人、これは到底足りないわけですね。この間、野村総研、八十八万六千人という、まあ、カウントの仕方もありますけれども。ただ、いずれにしても、今後、よりニーズが顕在化してくると、受け皿が不足することの方がより大きくなると考えられますから、より待機児童解消を進めないと、財源的な手当てもしないと、例えば七七%という方に応えることにはならないと思います。ですから、そういった点を一つ一つニーズ調査で整理をいただきたいということを申し上げています。お願いします。

加藤国務大臣 ほかの委員にも申し上げましたけれども、待機児童解消については、我々は全力で取り組むと。申しわけないですけれども、皆さんの政権のときに比べて、我々のときには三倍のスピードで受け皿整備もやらせていただきました。

 そういった中で、しかし、残念ながらここに至っていない中で、これを次のときにおいて解消を図ろうということで、今回新たなプランをつくらせていただいたわけでありまして、それはそれとしてしっかりやっていく。そして、その上で、ある意味では無償化について議論をさせていただいているということですから、別に、無償化と、財源をどっちじゃなくて、我々は両方を今考えて進めていきたい。こういうことで、今、党の方でも御議論をいただいている、こういうふうに承知をしております。

柚木委員 もちろん、どちらも一生懸命やっていくというスタンスはわかるんですけれども、実際に、それこそ、二〇二〇年に三十二万人に向けて今さまざまなことを組み立てて、しかし、無償化によってより顕在化してきたり、総理がおっしゃるように、女性の方がどんどん要は社会進出して、例えば非正規の方もふえる、待機児童がふえてうれしい悲鳴だという御答弁がかつてありました。まさにそういうことで、どんどんどんどんニーズが喚起されて、待機児童がふえていく可能性というのも想定されていて、野村総研も、八十八万人という方々が、今後、より保育園を必要とされると。

 そういうこともあるものですから、しかも、これは二兆円の財源の中でその解消を、今後、保育士さんの処遇改善も、この後お聞きしますけれども、財源が全く足りない。こういう状況が目に見えている中で、私、ぜひ、ニーズ調査という意味では、資料は七ページ目ですね、ページで言えば。これをちょっとごらんいただきたいんですけれども、記憶に新しい、トランプ大統領が訪日をされて、F35A戦闘機、一機百四十七億円。これを四十二機の発注で六千百三十二億円。これを、言葉は悪いですけれども、売りつけられると。

 こういうことも含めて、では、有権者の……(発言する者あり)ちょっと委員長、静かにしていただけませんか、人の質問は。

高鳥委員長 静粛に願います。静粛に願います。

柚木委員 ちょっと、私の質問中なので、よろしいですか。

 私は、さっきやじも飛びましたけれども、自衛力は強化すべきだし、日米同盟は深化すべきだという立場ですよ、一貫して。

 ただ、この今の待機児童の問題、予算が足りない、優先順位をつけなければ、潜在的な待機児童もふえてくる中で追いつかない、仕事を続けられない、そういうものもある中で、では財源をどうするかを考えたときに、先ほどのニーズ調査にもつながるんですけれども、限られた財源の中で優先順位をつけてやっていかなければいけないというのは一致していると思うんです。

 ちなみに、戦闘機については、他国の戦闘機もどんどん開発されて、実効性がどれだけあるのかという専門家の指摘もある中で、こういうものを売りつけられるお金が六千百三十二億円。ちなみに、これは待機児童解消に換算すると六十五万三千人分の保育の受け皿整備が可能になると。

 これは、所管の内閣府の担当副大臣、御地元の方に、これはどっちを優先してほしいですかと仮にニーズ調査したら、どっちが優先されると思われますか、御地元の方に。世田谷区、全国で一番待機児童が多い御地元ですよね。いかがですか。お答えをお願いいたします。

越智副大臣 仮定のお話には、お答えは差し控えたいと思います。

柚木委員 いや、仮定の話じゃなくて、私が伺いたいのは、先ほどの実はニーズ調査の話にもつながるんです。これはあくまで例えですよ。これは、なぜならば、皆さん、いろいろな今やじを飛ばされていますけれども、では、実際に聞いてみてください、御地元で、待機児童で困っている方々で。

 私は、繰り返しますけれども、別に自衛力の強化は必要だと思いますよ。ただ、さまざまな意見がありましたね。今回のこういうことだったり、イバンカ基金の五十七億円とか、いろいろな意見がありましたよ。

 こういうことも含めて、私は、実際に親御さんたちのニーズ調査をいただく中で、予算の優先順位、そして全面無償化なのか、あるいは全入化なのか、そういうことをぜひ、子育てに直面をしている、困っている、その親御さんたちの視点に立って政策立案をしていただきたいから、一番わかりやすい……(発言する者あり)ちょっと、済みません、理事の方がさっきからずっとやじを飛ばされるので、静かにしていただけませんか、委員長。

高鳥委員長 静粛に願います。

 質問を続けてください。

柚木委員 はい。

 ぜひそういう視点で、親御さんたちの視点に立って、実際のニーズ調査を行った上で、自民党さんの戦略本部あるいは官邸がそれを踏まえてと言われるんですけれども、その判断をいただきたいという意味で、私は、ぜひ本当にニーズ調査を、これは厚生労働省と内閣府で連携をして行っていただきたい。これは保活だってやられて、随分いろいろなことがわかりましたよね。男性の方が全然参加をされていないとか、いろいろなことがわかりましたよ。ぜひニーズ調査をやるぐらいの検討は、厚生労働大臣、前向きな御答弁をいただけませんか。

加藤国務大臣 いずれにしても、保育所と、例えば認可保育所で申し上げさせていただければ、各市町村がそれぞれ計画を立てて実施をされて、そしてそれに対して、これは年々の話ですよ、我々は予算をつけさせていただいているわけでありまして、少なくともその限りにおいて、予算が足らないから希望の内数にしているということには今なっていない。もちろん処遇の問題等は、それは若干あると思いますけれども。したがって、今言ったAかBかという、その前提がちょっと私は違うのではないかなと。

 それからもう一つ、もちろんニーズ調査というのもあると思いますけれども、まさに先ほど防衛等の話もありましたけれども、トータルとしてどうするかは、やはり我々国会議員が日ごろからしっかり意見を聞きながら、それを政策の中で反映をしていくという形で私はつくり上げていくものではないのかな、こういうふうに考えております。

柚木委員 受けとめ方はそれぞれ、委員の方の言葉がさっきから来ていますけれども、それはあるかもしれませんよ。でも、実際に直面をされている親御さんや、あるいは国民の皆さんがどういうふうに考えているのかという政策の優先順位をはかるためのニーズ調査というのは工夫をしていただくことは可能だと私は思いますので、これは私も今後もぜひ提案をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ちょっと時間が限られていますので、医療、介護の方の質問もさせていただきます。

 きょうも、介護報酬、診療報酬等、医療、介護にかかわる発言がございましたが、介護報酬について、人材の確保のためにも、さまざまな、この間、審議会でのやりとり、あるいは報道等も見て、少なくとも、これは田村先生も、最低、前回のマイナス二・二七はあり得ないと述べておられますね。

 ですから、ぜひこれは、私は当然まずプラスになるものだと思っておりますし、そうでなければ、今後の人材の確保、介護保険法改正のときにも、私も実際に事業者アンケートをとりまして、百四事業所から返ってきたのは、経営悪化が過半数です、前回改定で。人手不足になったのが七割です。しかも、利用抑制が二五パーもかかっていた。

 今後、二割負担、三割負担の議論もありますから、さらなる利用抑制も懸念されるわけですが、まずは人手が確保されないと事業所も経営が成り立ちませんから、しっかりとプラス引き上げをいただける、こういう方向で、厚生労働大臣、御奮闘をいただけるということでよろしいでしょうか。

加藤国務大臣 介護の事業経営実態調査の結果を見ても、前回の改定に比べて収支差率というのが低下しているというのは御指摘のとおりでありますし、その背景には、前回の介護報酬のマイナス改定、あるいは、それ以外も含めた事業に必要な人材の確保を要する人件費の増加、こういったことがあるというふうに認識をしております。

 それらを踏まえて、今、介護報酬に当たっては、今回の調査結果、賃金、物価の動向、それからやはり保険料の国民負担、こういったものをしっかり踏まえながら、介護の必要な方には必要なサービスがしっかりと提供される、そういったようにこれからしっかり議論をしていきたいというふうに思っております。

柚木委員 ぜひプラス改定をお願いしたいのと、あわせて、診療報酬についても、この間、ここにおられる先生方も憲政記念館の会議にたくさんおいでで、私も伺ったわけですが、当然プラス改定、しかも、最低限医科本体もプラスというようなお話も出ていたと思うんですが、それももちろんそうですし、もう一点、これも時間がないのであわせて御答弁をいただきたいのは、医療機関の消費税の問題を今議論されていると思うんですね。

 ちょっとまだ、少し時間をかけて議論をされる中で抜本的な解決をという流れだと思うんですが、これについても、ぜひ、これはちょっと資料につけられなかったんですが、いわゆる一般病院における経常利益率、さっきから委員から厳しい発言が飛んでいたんですが、一応この分野は、民主党政権のときが圧倒的に経常利益率も改善されているんですね。自民党さんに戻って、非常にまた厳しくなっている。

 これは、まさに現場の声を聞かれている委員の先生方もわかっておられるからこそ、何としてもプラス改定ということをおっしゃっておられるわけですが、病院の消費税の問題についても、さまざまな、非課税で損失補填というようなやり方も含めて、工夫をしていくことは十分可能だと思いますので、プラス改定と同時に、医療機関の消費税の問題についても、ぜひきっちりと解決をする。診療報酬の中に入ってよくわからなくなるということもこの間ありましたから、この非課税還付方式というのをしっかりと詰めていく、こういう認識でぜひお進めいただきたいと思いますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、診療報酬の方でありますけれども、御指摘のように、今回の調査、医療経済実態調査の結果では、損益率が全般的に低下をしているということであります。

 いずれにしても、改定率については、そうした経営状況、物価、賃金の動向、そして国民の負担、こういったことを踏まえながら、しっかり議論をさせていただきたいというふうに思います。

 また、消費税の医療に係る消費課税、消費税のあり方について、これはこれまでも議論されてきたところでありまして、問題があるということは私も重々認識をさせていただいておりまして、医師会等医療関係団体からもいろいろな要望をいただいているところであります。

 医療に係る消費税のあり方については、医療機関や患者等の負担に対する配慮が求められるとともに、負担の公平性、透明性、財源のあり方など幅広く議論していく必要があるというふうに思っておりますので、こうした各医療関係団体からの要望も踏まえながら、しっかり議論をさせていただきたい、こう思っております。

柚木委員 もう時間なので、短く一問だけ、三十秒ぐらいで聞かせてください。生活援助、たくさん聞いていましたので、一つだけ。

 報道でも、通告後に、社保審の分科会で、生活援助、いわゆる回数による報酬の上限設定は見送ったという報道が出ているんですね。

 これは、私もぜひそうしていただきたいですし、その理由として、やはり、やむを得ない事情、本当に、認知症などの症状があるとか、家族が仕事や要介護状態なので支援を受けられない、そういうようなことも含めて、今後、自治体が生活援助について点検をしていく、こういう報道を私は通告後に目にしたものですから、これはぜひ、報酬の上限設定はしない、そして、今後、自治体が地域ケア会議などでプランを検証した上でいろいろな形で必要な是正を行う、これはこういう理解でいいのかどうなのか、御答弁いただけますか。

加藤国務大臣 生活援助に関しても、これはしっかりと実態を踏まえて議論をさせていただきたいというふうに思っております。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 三期目の当選をさせていただきまして、一期目は厚生労働委員会で大分仕事をさせていただきましたが、二期目は希望かなわず、ちょっと厚生労働委員会から離れておりましたが、ようやくまた厚生労働委員会に戻ってくることができました。また委員の皆様、また政府、厚労省の皆さん、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 しかし、厚生労働委員会、山井さんとか柚木さん、変わらないですね、全く。政党の名前が変わったので、変わるかなとちょっと期待をしておったんですが、全く変わらない。

 一方で、すばらしい、新しい顔ぶれもきょういらっしゃっていまして……(発言する者あり)僕は合わせているだけですからね、まあ、あれですけれども。

 すばらしいですね、池田真紀さん。現場のことを本当によく御存じで、私もきょう大変勉強させていただきました。立憲民主党というと僕は辻元清美さんの顔しか思い浮かばないんですが、こういうすばらしい方もいらっしゃるということをきょう発見することができました。

 また、私、隣に座らせていただいている、委員の皆さんの論評をしても仕方ないんですけれども、白石洋一先生、すばらしいですね。きょう大臣も、言っていることはよくわかるということでしたが、大変よく勉強されておられて、私も隣でその資料を拝見していて、すごいなと。また、書いていらっしゃる質問の趣旨がもうほとんど維新の政策ぴったしかんかんみたいな感じなので、白石先生、柚木さんとかと一緒にやるのをやめて、維新の会にぜひ移っていただくような機会があればなということで、ちょっと期待だけ一方的に申し上げておきたいと思います。

 さて、山井さん。二つこれは問題があります。

 一つは御本ですね。自分の著作を勝手に、理事会の承諾もなくここで宣伝をされました。あれはもう懲罰物じゃないですか。

 それから労働法制。労働法制を取り上げて、以前は残業代ゼロ法案というレッテルを張っていらっしゃいましたが、きょうは過労死促進法案というまた新しい名前をかぶせた上で、体を張ってでも阻止すると。またこの厚生労働委員会で暴力を振るうことをマイクで宣言をされました。

 ルール違反と、それから、私だって自分の著作を宣伝したいですよ。「永田町アホばか列伝」という、山井さんの悪口を書いてある本ですが。

 ぜひ委員長、山井委員のそういうルール違反、それから、体を張ってでも阻止するという、暴力を示唆する宣言、これの取り扱いについて改めて理事会で御検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

足立委員 今、山井委員の暴力の話が、暴力というか、私がそう受けとめたということでありますが、きょう、大沼みずほ先生が、初めて多分政府に入られた。初めてですよね、多分。今回から初めて政府に入られたわけでありまして、政府に入った方は、初めて僕らは質問できるんですね。政府に入らないと質問できません。

 僕たちは、そういうこともできるようにしようと。例えば、今回、国会が始まってから三週間ぐらい、総理の外遊もあって、国会はほとんどとまっていました。そういうときにこそ、野党が出している議員立法をここに上げて、与党の皆さんが質問する。そのときは与党八でいいですよ。そういうことをぜひ私はやっていったらいいと思います。

 それはともかくとして、大沼みずほ政務官、一言だけで結構です。僕は、もう過去のことだから、こんな話を改めてここで出す必要はないという御意見もあるのはわかっているんですが、あの、もう今は参議院議員ではあられないわけでありますが、津田弥太郎さんが、僕は犯罪だと思いますよ、犯罪だと。だって、暴力を振るっているんでしょう、暴力を。ところが、何かうやむやになって、終わっているか終わっていないかよくわかりません。

 これ、大沼先生、一言で結構です。あのてんまつというか、あれは一体何だったんだと。あれは犯罪ではないのかと国民は思っていますよ。ちょっと一言お願いします。

大沼大臣政務官 現在、政務官として答弁に立たせていただいておりますので、個人の見解は差し控えさせていただきたいと思います。

足立委員 いや、しかし、大沼先生、これはせっかくの、せっかくというか、私が勝手に言っているんですが、あの問題は、国民はすごく不思議に思っていますよ。

 国会の中でいろいろな特権があります。憲法で決められている特権もあります。でも、それは言論ですよ。例えば国会の中でナイフを振り回す、だめですよね、現行犯逮捕ですよ。不逮捕特権というのは僕はよくわかりませんが、あれは明らかに暴力、傷害事件ですよ。これを党対党のうやむやにするのは、私は日本の国会のためにならないと思うんです。

 だから、政務官としてじゃない、大沼先生という一人の国会議員がこの問題をうやむやにするのは、これは私はよくないと思っているんです。それでもやはりこのままおさめますか。これは先生の、大沼先生の大きなポジションですよ。

大沼大臣政務官 現在、政務官としてこちらの委員会に出席させていただいておりますので、個人の見解は差し控えさせていただきたいと思います。

足立委員 まあまあ、この場所が適当ではないという御指摘は、それはよくわかります。

 もうこれでやめますが、私は、やはり国会の、もう毎回言っています、厚生労働委員会は規範が、予算委員会と厚生労働委員会、これが最もルールが壊れている。壊れているというのは失礼ですね、委員長に。いや、ルールを破る人が多い、それも言い過ぎですね。私は、やはりもう一度その規範をつくり直す必要があると思いますよ。

 あの話は平和安全法制の話だったから、厚生労働委員会ではありませんが、しかし、あれをうやむやにして、国会でどうのこうのと、発言がどうのこうのということに私は意味があるとは思いません。

 私は五つ懲罰動議を受けていますが、あれは野党対野党で、まさに政局の、政局ですよ、政局のツールとして懲罰動議が使われて、私はニュースで、足立は懲罰動議、立憲民主党が懲罰動議だといって、そこの部分だけ流れるので、私の票はそれで大分目減りをしているわけです。そんなことはどうでもいいけれども。

 ただ、大沼先生のケースは逆ですよね、逆。本来、問題がある問題が政局でうやむやにされたんですよ。私は逆ですよ。大した問題じゃない問題が、政局で懲罰動議が発せられているわけです。全く逆です。

 私は、いずれも同じように国会のあり方にとって大変問題だと思いますので、大沼先生には、どこかで勇気を出して、しかるべき告訴等をされるのが本来の、国民から見たときの当たり前の行動ではないかと思っていますので、国会は言論の府ですので、一言思っていることを申し上げた次第であります。

 本論に入りますが、先ほど白石先生が、本会議における維新の会の馬場幹事長の話を引いていただいて、何が国難か。北朝鮮も国難だけれども、少子化も国難だけれども、でも、それは私に言わせれば自民党の問題ですよね。自民党政権が、民主党は三年間だけです、北朝鮮の問題も少子化の問題も、ここまで事態を悪化させた責任は、私は長年の自民党政権にあると思いますよ。だって、自民党がずっと政権をとっていたんだから。

 したがって、白石先生もおっしゃったように、今、大変厳しい、国民の皆様が大変懐が厳しい、低年金、無年金で苦しんでいらっしゃる方がたくさんいる、将来も不安だ、そういう事態を招いた、北朝鮮も米中がどう動くかわからない中で大変不透明さを増している、これは自民党の責任だと思いますね、私は。だからこそ、馬場幹事長は本会議で、国難というよりもそれは自民党の怠慢だ、こう申し上げた。

 加藤大臣のその点についての、総理は御答弁されましたが、加藤大臣にもこの点について御見解を開陳いただきたいと思います。

加藤国務大臣 北朝鮮まで含まれているんですが、少子化に対してということでよろしいでしょうか。(足立委員「はい」と呼ぶ)

 御指摘のように、平成二年のいわゆる一・五七ショックということでありまして、それから出生率の低下が喫緊の課題として意識をされたわけでありますけれども、実は、その前においては、第三のベビーブームが来るのではないか、そういったことも前提になされていた。

 それが、平成二年の一・五七ショック、そして、その後のエンゼルプラン等さまざまな少子化対策が打たれ、そして平成十五年には超党派の議員によって少子化社会対策基本法が成立し、政府も平成十六年に少子化社会対策大綱を制定し、取り組みをしてきたということでありまして、やはりそうした状況、今おっしゃったような一つ一つの少子化の状況、これをしっかりと受けとめながら、それに対しての対応をしてきたところであります。

 そうしたいろいろな対応もあって、合計特殊出生率についてはいっときのボトムから少し上がってきたところでありますけれども、残念ながら、出生数についてはずっと減少しておりまして、昨年は九十七万七千人という、初めて百万人を切る状況になったわけでありますので、私はこれは、少子化は大変厳しい、我が国の社会経済の根幹を揺るがしかねない大変危機的な状況だというふうに認識をしております。

 そういった意味でも、やはり、しっかりと課題を克服すべく、今回の人づくり革命を進め、また保育の受け皿整備、あるいは子育て世代、子供たちに大胆に投資し、お年寄りも若者も安心できる全世代型社会保障制度を構築していきたい、こういうふうに考えているわけでありますので、これまでの状況、そしてそれに対する対応を踏まえながら、さらにこの政策を進めなければならない、そういう思いで取り組ませていただいているところであります。

足立委員 ありがとうございます。

 すると、大臣、これは想定外、今、第三次ベビーブーム云々という話もありました。結局、自民党政権、政権といったって、いろいろな方が担ってこられたわけでありますし、自民党を一体視するのもきょうの議論では余り適当だとも思いませんが、過去を振り返って、やはりこの政策は、想定外、こういう少子化時代を迎えたことは想定外だと、こういうことで、私はそう思っていますが、そうだと推測しますが、いかがですか。

加藤国務大臣 私は、当時の政権というよりは、そうした専門家の見立ての中で、もう一回、次の波が来るだろうということがいろいろ言われていたということであります。

 その上で、今回の少子化の状況を想定したかしないか、これはなかなか難しいと思いますが、ただ、先ほど申し上げたように、現在の状況というのは我が国の社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的な状況だ、こういう認識は持っているところであります。

足立委員 釈迦に説法ですが、政治は結果責任ですから、その責任は自民党政権にあるということでいいですね。

加藤国務大臣 したがって、そうした状況状況を的確に認識をし、今、少子化についても、少子化対策をしっかりと、より積極的に進めていかなければならないということで、現在も保育の待機児童の解消、そして、先ほど言った無償化を初めとした措置等々、全世代型社会保障制度の構築等に努めていきたい、こういうふうに考えているところであります。

足立委員 大臣、ここは大事なところだと私は思っていまして、結局、大変な事態を招いています。これは言うまでもありません。これから厚生労働委員会で最も議論すべきテーマの柱は少子高齢化、この厳しい峠を日本がどうやって乗り越えていくか。それでみんな大変な思いをして、政策をつくっている人も大変ですが、現場はもっと大変です。厚生労働省の職員の皆さんも大変ですが。私は、やはり責任の問題というのはあると思いますよ。

 私、別途、総務委員会にも所属をしていまして、例えば平成の大合併、これについても議論をしたのに、誰も責任を認めないんだな、失敗しているのに。失敗しているからこそ、基礎自治体の財政力が、基盤を強くし切れなかったから、医療保険の財政責任について、国保の財政責任について、市町村で面倒を見切れなくなったから、都道府県の手をかりるようになったんでしょう。それは総務委員会で議論しましたよ。

 私は、責任の問題というのがはっきりしないと、議論は前に進めないと思うんですね。こういう事態を招いた、まさに安倍総理が国難とおっしゃった。私は、自民党がそれを言うのは恥ずかしいと思いますよ。でも、国難だと言うのであれば、それは、三年三カ月を除いて政権を、戦後、五五年体制のもとで、万年与党として日本をリードしてきた自民党、責任あるでしょう。ぜひお願いします。

加藤国務大臣 少子化の背景として、さまざまなことが指摘をされております。例えば、なかなか結婚しにくい環境にあるとか、あるいは子供が持ちにくい環境にあるとか、そういったこと、それ自体、そういった状況があるということは我々しっかり受けとめなければならないわけでありまして、子供を持ちたい、結婚して子供を持ちたい、そういった思いを阻害するそういった要因を一つ一つ除外していく、取り除いていくということが我々の責務だ、こういうふうに思っております。

足立委員 未来に向かっての責務を議論する前に、過去の総括をしましょうよ。

 北朝鮮については、僕は北朝鮮についても責任問題があると思いますよ、ここまで相手を信用してやってきた。でも、それは国際問題ですから、まだ言いわけができるかもしれない。でも、少子化の問題は、自民党以外に誰が責任をとれるんですか。

 加藤大臣は御答弁、そつないですから、というか、うまいですから、それは幾らでも答弁される。でも、そんな答弁、僕は期待していないんです。ここまで、国難と安倍総理がおっしゃるような事態を招いた責任は自民党政権にある。ほかにあるんだったら、どこにあるんですか。国民が悪いんですか。

 答えじゃない答えはいいですから、ちょっと、大臣、お願いします。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げたように、少子化が生み出されてきた背景、そういったものをしっかりと我々は認識をしなければならないということはもう申し上げているわけでありまして、それに対して、それを乗り越える、それを解消する、そういう手だてを一つ一つ尽くしていかなければならない、こういうふうに考えているところであります。

足立委員 私、最も尊敬申し上げる加藤大臣にしてこれでは、もう自民党もだめですね。

 本当に、国民は自民党政権にそろそろ限界を感じ始めていますね。北朝鮮の問題も、このままいけばアメリカのやりたい放題ですよ。そして、少子化の問題も、加藤大臣は前の少子化担当大臣、加藤大臣がやれないことは自民党にはやれません。だから、私は加藤大臣に期待をし、そして、この厚生労働委員会に参ったわけでありますが、今の御答弁ではもう委員会を持つ、少なくとも私、ここに立たせていただく意味がありません。

 大体、きょうも自民党の先生方、橋本先生は部会長だからお立場があるけれども、僕、また僣越なことを言うと怒られるかな。安藤先生、ここで安藤先生に語りかけちゃいけないけれども、大事な問題を言われました。

 例えば、医療機関の損税の問題、それは持論でいらっしゃいますよ。でもそれを、医師会がこう思っているよとここで言って、政府が、いや、政府はこう思っているよと言って、そんなことを僕らは聞きに来ているんじゃないですよね。そのテーマについて、大臣と医師会の出身であられる先生がちゃんとここで議論してくださいよ。医療機関の損税についてはどうするんだ、それを国民に見える形で、自民党の部会みたいに誰も見ないところじゃなくて、国民が見ているところで、医療機関の損税というのはどういう問題なんだということを、ここでかんかんがくがくやってくださいよ。それをやらないようなことで、三くれとか五くれとか、ちゃんちゃらおかしいですよ、与党も。

 だから、政府の閣法を議論するんだったらもう要らないです、ゼロでいいですよ、与党なんて、つまらない質問で。だから十対ゼロですよ。ゼロ、十ですよ。そのかわりに、野党の議員立法をやるときに、野党はやらなくていいですよ。立憲民主党の法案だったら僕はやりますけれどもね。そういう国会にしなければ意味がないと僕は言っているんです、加藤大臣。加藤大臣はわかっていらっしゃるからいいんだけれども。(発言する者あり)議論になっていないね。

 問いを吹っかけて大臣が答弁して終わり、そんなもの雑誌に書いてありますよ。そうじゃなくて、それを深めるから国会なんでしょう、田村先生。そういう委員会にしないと、みんなまた寝ますよ、この委員会。きょうも前半はつまらなかった。柚木さんが来て、僕もだんだん元気になってきたんだけれども。まあいいや。

 教育無償化について柚木さんがいろいろおっしゃいました。もう本当に、偉そう過ぎてへどが出ますね。

 教育無償化について、本当に政権がかわっても子育てをする親御さんが不安に思わないような状況をつくるためには、憲法改正しかないじゃないですか。それを一番知っているのが民主党、民進党ですよ。民主党政権がまた野党になって、自民党にいいようにまた制度を変えられた歴史があるでしょう。

 だからこそ我々は、教育無償化の議論は、何かちょろまかちょろまか、何か政府と自民党が、どっちが偉いとかどっちがどうとか、党が無視されたとか言っておられる小泉さんもきょういらっしゃっていますが、それは勝手にやってください、そっちで。政府と与党の関係は勝手にやってもらったらいいんです。そんなものは僕たちは関心ありません。そうじゃなくて、政権がかわっても変わり得ないような国の形をそろそろ決めるタイミングじゃないんですか。だからこそ安倍総理は、憲法改正の玉として教育無償化と手をかけてくださっているわけですよ。それから見れば、政府と自民党との何かやりとり、きょうも何かやりとりをやっているんでしょう。つまらないですよ。大した仕事じゃないですよ。本当に大事な仕事は、憲法に書くかどうかですよ。

 大臣、教育無償化については、私は、少子化対策の切り札である、こう思っています。加えて、憲法について、これはちゃんと書く。大臣もそれはサポートいただいていいと思いますので、一言お願いします。

加藤国務大臣 まず、少子化において、教育の無償化ということでありますけれども、国立社会保障・人口問題研究所が行った調査で見ても、理想の子供数を持たない理由としては、子育てや教育にお金がかかり過ぎる、こういうことが挙げられているわけでありまして、そういった意味でも、経済的理由によって子供を持つことをちゅうちょされる方もいるということからすると、教育の無償化というのは少子化対策の有効な方策になり得るもの、こういうふうに考えているところであります。

 また、今、憲法の話は、これはむしろ国会の中でやっていただく話でありますから、私としては言及を控えさせていただきたいと思います。

足立委員 教育無償化は、御承知のとおり、日本維新の会がもう二年前に、二年半前かな、憲法改正原案の三項目の一つとして取り上げ、ようやく世論を喚起することができ、ここに至ったと自負をしているところであります。

 維新の会はこの総選挙で議席を減らしましたが、我々維新の会は、政党のために仕事をやっているのではありません。しっかりと地方分権、統治機構改革が前に進み、少子化対策、北朝鮮の問題が解決するのであれば、党はなくなってもいい、それぐらいの思いでこの国会に来ておりますので、数が減っても、とにかく教育無償化の憲法規定、義務教育は無償と憲法に書いてあるんだから。

 柚木さんだって希望の党でしょう。柚木先生、希望の党は憲法は前向きだと言ってくださっている。ぜひ私は、柚木先生を初め希望の党の方々と一緒に、この教育無償化、憲法改正、もちろん与党の皆さん一緒に、公明党の皆様にもぜひ前向きに取り組んでいただいて。

 私は、イギリスに憲法審査会の調査団で、キャメロン前首相と会ってきました、中谷先生たちと。やはり、憲法改正が大きな、要は、六対四で割れるようなテーマではやはり難しいんです。政局になります。だから、私は、自民、公明、維新、希望ぐらい、それで八割いくんですか、ちょっとよくわかりませんが、大きな勢力をこの教育無償化についてまとめていくことが、まさにことしから来年にかけての最大のテーマで、それ以外の話は勝手にやっていてください。だって、どうせまた毎年変わるんだからと、勝手に思うところを申し述べました。

 その際に私たちがこだわっていることを一点だけ大臣にもお聞きをしておきたいと思いますが、何でもかんでも国のお金でやるというのは反対です。これだけ地方分権が進んだ日本国において、幼児教育まで国が全部面倒を見るというのは私はおかしいと思いますね。国が決めるというのもおかしい。既に大阪は、大阪府大阪市、あるいは守口市、門真市、維新の首長のところはもう幼児教育無償化をやっています。増税なしでやっていますよ。

 そういう、つかさつかさで、憲法に規定した上で、その前からやってもいいんですよ、僕らはやっています。憲法に規定することとあわせて、それぞれの持ち場で、大学無償化は国がやる、幼児教育、高校教育は地方公共団体が責任を持って行財政改革をやってやる、こういうめり張りのきいた教育無償化、ぜひ大臣もそういう点を御理解いただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 大阪等における取り組みは、それはそれぞれすばらしい取り組みだというふうに思います。

 ただ、全体で物事を進めようとすると、そのやり方についてはいろいろあるのかもしれませんけれども、財源をどう確保していくかとか、これは国全体で考えないとなかなか進まないものがあるんじゃないかなというふうに考えておりまして、そういった意味で、我々、今、無償化等の議論をさせていただいているわけでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 最後に、年金ですね、白石先生がおっしゃっていただいた国民年金。

 先日、自民党の竹下総務会長が、多分、若くして出てきている国会議員たちが退職したら全員生活保護だみたいな発言をされたと報道をされています。国民は、何を言っているんだというところだと思いますが。

 元国会議員は、国民年金では生活できないんでしょうか。国民年金だけで生活を維持できないんだったら、まさに白石先生がおっしゃったように、大臣は、いや、ほかの収入もあるだろうと言うかもしれませんが、指摘があったように、国民年金だけで生きていかないといけない低年金の方が大変ふえている。これは大問題だと思いますね。それに対して、国会議員だけが、地方議員だけが先に特別の議員年金制度をつくろうと自民党が画策をしていると仄聞します。問題じゃないですか、大臣。

 大臣として、こうした自民党の動き、これはちょっと批判していただいた方がいいと思いますが。

加藤国務大臣 個々の方の議員としてのコメントに私の立場でコメントするのは控えたいというふうに思います。

 ただ、今お話がありましたように、いわゆる国民年金、あるいは基礎年金だけで生活が全部賄うのかという指摘に対しては、先ほど申し上げましたように、一人で生活をされている方に関して見れば、基礎的支出を十分に賄い得ていない、こういう御指摘もあるわけでありますので、そこは、それのみならず、さまざまな施策をしっかりと講じることによって、そうした方々の老後の安心を確保していく、そのためにもしっかりと取り組ませていただきたい、こういうように思っています。

足立委員 もう時間が来ますので、最後ですが、通告じゃないんですが、きょう大臣が、吉田先生の質問に対して準義務教育という言葉をおっしゃいました。

 私、あの後、昼休みに議事録を検索したら、準義務教育という言葉は、中等教育の後半、すなわち高等学校が全入に近くなってきているということで、高等学校について言われているケースが二カ所出てきました。幼児教育について準義務教育という言葉は初めて伺いましたが、これはどういう意味で使われたか御紹介ください。

加藤国務大臣 たしか、正確には準教育的というふうに申し上げた……(足立委員「準義務教育的」と呼ぶ)的というふうに申し上げたと思うんですけれども、まさに幼児教育が持つ役割、特に子供のころに非認知能力等を高めていくということが、それから先の教育、あるいはその方の成長にとって大変重要であり、その必要性は内外のさまざまな研究機関、研究においても指摘をされているわけでありまして、また、日本においては、今四歳児、五歳児についても多分九六、七%以上の方がいずれかの保育園あるいは幼稚園等で教育を受けておられる、こういった実態を見た上で、その必要性とその実態を見てそういう言い方をさせていただいたところで、これは決してこなれた言い方ではなくて、状況をそういうふうに表現をさせていただいた、こういうことであります。

足立委員 終わりますが、今おっしゃった準義務教育的という話は、私は、この国会において時代を画する、まさに初めて幼児教育についてそういう表現をかぶせてくださった、感謝を申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

高鳥委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 時間がもったいないので、早速質問いたします。

 二〇一三年四月施行の改正労働契約法は、同一の使用者との間で締結された二つ以上の有期労働契約の契約期間が通算五年を超える労働者が申し込みをした場合、使用者が承諾したものとみなす、いわゆる無期転換ルールを定めました。当時、有期雇用契約労働者一千二百万人の三割、三百六十万人が無期転換になるであろうと言われていたわけです。そして、いよいよ来年二〇一八年四月で施行から五年目となり本格実施というこのときに、この資料の一枚目があるわけです。

 朝日新聞の今月四日付でありますが、自動車大手が「無期雇用を回避」と大きく見出しを打ってあります。図がありますけれども、五年というのは、例えば、一年契約を反復五年、通算で五年、あるいは二年と三年などといろいろあるんですけれども、その間に半年間の空白期間を入れればそれまでの期間をリセットできる、だから空白からまた一年というふうに数えていくということになるわけですよね。そういう形で雇用ルールを変更したと報道されております。

 総理は、二十二日の参議院の本会議で、我が党の山下芳生議員の質問に対して、無期転換ルールを避ける目的で雇いどめすることは法の趣旨に照らして望ましいものではないと答えていらっしゃいます。

 クーリング期間を使えば無期転換を避けることができることは、実は最初からわかっておりました。質疑のときに、この五年前のときに議論をされていたし、私自身は改正案に対して、これを削除する修正案も出したわけであります。結果として法の抜け穴を用意し、雇いどめのツールにされてしまったと言えないでしょうか。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

加藤国務大臣 まず、クーリング期間が労働契約法上設けられた趣旨でありますけれども、クーリング期間を設けない場合、例えば、有期労働契約を締結し三年間働いた労働者が、一定期間を経過した後に再度同じ企業に働こうとした場合に、企業が雇うことをちゅうちょするおそれがあること、また、通算された期間の記録等を永久に保存しなければならないのは実務上の問題がある等を生じることを防ぐために、そうしたクーリング期間が設けられたというふうに承知をしているところであります。

 総理が言われたように、これは明らかに脱法的に、例えばクーリング期間があって、またその先に、さらに雇用の予約というんでしょうか、そういったことをする、こういったことについては非常な問題があるというふうに思っておりますので、そういったことを含めて、しっかりとこの無期転換ルールというものが円滑に行われるように、我々も周知啓発に努めていきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 脱法という言葉を使われました。調査を今されているということでよろしいですか。

加藤国務大臣 都道府県の労働局を通じて、自動車メーカー十社について、有期労働契約の終了後六カ月を経過するまで当該労働者の再応募を受け付けていない運用をしているかどうか、あるいは六カ月経過後の再雇用を約束しているかなどについて、実態調査を行っているところでございます。

高橋(千)委員 調査を踏まえて、今おっしゃったように、脱法である、その立場を明確にした指導をしていただきたいと思うんです。

 JILPT、労働政策研究・研修機構の調査では、フルタイム契約労働者について、申し込みがなされた時点で無期に切りかえる、あるいは五年を待たずに無期にする、これは合わせると六五%が無期転換すると答えているんですよね。これは、最初の調査のときには四一・二%でした。ですから、無期にするという人がふえている。そういう中で、こうした大手企業の法抜け行為というのは他の産業にも波及されかねず、絶対認めてはならないと思います。

 最初に大臣がおっしゃった、五年働いた後も同じ事業所へ再就職することもあるから、それが困難になるからということは答えていたわけですよね。ただ、それは、さっき事業所がちゅうちょするとおっしゃったんですけれども、当時の答弁は、労働者の再就職の権利というか選択を狭めてはならないという答弁で、何か労働者の立場に立ったような言い方だったわけです。でも、実際は、やはり業界の要望に応えて、バランス感覚というか、そういう中で生まれたものであったということで、改めて指摘をしておきたい、このように思います。

 もう一つ、あのときの議論で指摘をしたことは、無期転換をするんだけれども、有期のときと労働条件が変わらないということ。無期であるという以外は変わらない、つまり給料が上がるわけではないしということも問題としました。

 ただ、そのときの答弁は、雇用が不安定であって、雇いどめを恐れて年休などの権利を十分に行使することができないといった課題を解消することがまず大事と。西村副大臣でございました、当時は。無期転換によって、雇用不安をなくし、労働者としての権利行使も容易にして、安心して働き続けることができる、あるいは正社員へのステップにもつながると言ったわけです。

 私は、百歩譲って、雇用の安定、まずはそれ自体を目指すんだということは大変重要だと思っております。

 そこで、改めて聞きますが、労働契約法の無期転換ルールは雇用の安定化を望んだものか。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

加藤国務大臣 いわゆる無期転換ルールの規定は、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、有期契約で働く方の雇用の安定を図るために設けられた規定である、こういうふうに認識をしておりますし、厚生労働省としても、企業においてこうした法の趣旨に沿った対応がなされるよう、有期契約労働者の正社員転換、また無期転換のための企業の取り組み、こういったことを後押しするなど、周知啓発や支援にも努めていきたいというふうに考えているところであります。

高橋(千)委員 資料の二枚目に厚労省のホームページをつけておきましたが、「無期転換ルールで実現する 雇止めの不安がない生活!」となかなか力を入れておりまして、かわいらしいイラストで、「平成三十年四月まであと百三十日」とカウントダウンをしております。これをプリントアウトしたのが二日前でしたので、きょうはあと百二十八日ということになると思うんですけれども、そういうわくわくして待つ状況ならいいんですよね。そうなっていないから今問題にしているんですけれども。

 東北大学の非正規職員の大量雇いどめ問題について、ことし三月二十四日の本委員会で指摘をいたしました。

 実は、組合の方たちは、今私が紹介した、無期になっても処遇が変わるわけじゃないことは知っているんです。だけれども、でも雇用の安定が欲しい、無期というだけでもよいと言ったんですね。やはり雇用の安定がまず第一歩というのは、そのとおりだったと思うんです、労働者にとって。それはとてもよくわかりました。

 ところが、東北大学は、二〇一四年の四月に就業規則を変更し、これまでは更新の上限は三年と決めていたんです、決めていたんだけれども、実際は、協議の上更新をして、長く反復更新をしていました。だけれども、これを更新は五年までとして、もうこれ以上しないということを決めてしまったんですね。

 ただし、二〇一四年からそれを始めますと二〇一九年で五年目を迎えますので、無期転換ルールにかかっちゃう。なので、就業規則を決めたときに、あろうことか、一年さかのぼって、つまり過去に戻って、この契約は二〇一三年四月から始まったと変更してしまったんですよね。それで、来年四月で、ちょうどよく雇いどめになると。これはちょっと幾ら何でもひどいんじゃないかという指摘をしたわけです。

 三千二百名を超える非常勤職員のうち、来年四月で千百三十八名が期限を迎えます。大学側は、三年上限を五年にしたんだから不利益変更ではないと説明したんですね。だけれども、今までは更新ありとあったものを、例外はないと言い切っているんですから、これは不利益変更ではないかと思うんですね。

 まして、労契法の第十一条には、就業規則の変更手続に関しては労働基準法九十条の定めによるとあるんですね。九十条というのは、就業規則を変更するときあるいは作成するときは組合または過半数代表の意見を聞かなければならない。そして第二項には、使用者はその聞いた意見を書面を添付して届けなきゃいけないとなっているわけですよね。

 局長に伺いますが、東北大学の手続は適正だったのでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法第九十条におきましては、今御指摘もございましたように、就業規則を作成、変更した場合には、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその組合、そういった組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければならないというふうにされております。

 また、就業規則を作成、変更する場合には、これを労働基準監督署に届け出なければいけないわけでございますけれども、その際には意見を記した書面を添付しなければならないこととされておりますけれども、具体の事案につきましては、個別の事案でございますので、御回答を差し控えさせていただきたいと思います。

高橋(千)委員 三月の質問のときにも、私、組合は知らなかったと言っていると指摘をしました。そのときに、個々に司法が判断するというふうな答弁をされたと思うんですけれども、改めて確認したいのは、これは一般論でいいんです。組合が知らないけれども、もうこれは変更されていましたよとなったら、届け出しなきゃいけないんですから、添付しなきゃいけないんですから、これは違反になるということで、一般論でお答えください。どうですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 就業規則の変更の効力につきましては、労働基準法と別に労働契約法の規定がございますので、それに従いまして判断がされることとなるというふうに考えております。

 それとは別に、今申しましたような労働基準法第九十条の規定があって、それは遵守していただかなければならないということかというふうに思っております。

高橋(千)委員 今、精いっぱいのお答えだったかと思っております。そういうことだと思うんですね。遵守をしていただかなければならないということですから、個々に見ていただきたい。私は遵守していないと思います。

 そこで、資料の三枚目を見ていただきたいんですが、宮城労働局も大変頑張っているんですね。「はじまります!無期転換ルール」、これは「地下鉄・窓ガラスステッカー」と書いてありますので、地下鉄に張ってあるのかなと。結構目立つように頑張っているわけなんです。

 それから、無期転換ルールについて、下の方に、知っている七七%、導入済み三七%ということで、これは全国の調査では、知らない、あるいは、制度改正は知っているけれども中身は知らないというのが四〇・九%ですから、それに比べると周知が進んでいるということになると思うんです。そういう努力をしていると思います。

 だけれども、そのことによって、制度はよく知っている、だからそれを悪用しちゃったということになっては、労働局としても大変不名誉なことではないかと思うんです。

 そこで、文科省に伺います。

 三月の質問のときに、昨年十二月に、各国立大学法人、八十六ありますけれども、無期転換ルールの対応方針を調査した、その結果はまだまとめ中ということで答弁がなかったわけでありますけれども、一体どれだけの非正規雇用職員がいるのかなということと、対応状況、無期転換をもうした、するよと決めたところもあると思いますが、簡潔にお願いします。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしましても、国立大学法人の職員の雇用形態は、労働関係法令に従って、各国立大学法人が経営方針等に基づき適切に定めるべきものであると考えております。そして、文部科学省としても、この改正労働契約法の趣旨を踏まえ、各国立大学法人が適切に対応いただくようお願いしてきております。

 御質問の、各国立大学法人及び大学共同利用機関法人における無期転換ルールへの対応状況に関する調査についてでございます。

 平成二十九年三月三十一日時点では、例えば、一、業務の専門性や特殊性を考慮して職種によって異なる対応を行う法人、あるいは、二、契約更新に原則として通算五年以内の上限を設けるが、一定の要件を満たした場合に通算五年を超える更新を認める法人、三、契約更新に上限を設けない法人、これらそれぞれございまして、各法人の実態に応じて対応をしていると承知しております。

 いずれにいたしましても、文部科学省としては、国立大学法人等に対して、今後も必要に応じて情報提供等の支援を行ってまいる所存でございます。

 なお、雇用期間が通算五年以上となる有期雇用職員数については、現在、調査結果を精査中でございますので、恐縮ですが、回答を差し控えさせていただきます。

高橋(千)委員 あのときに資料は公表していただくというお約束をいただいたので、いただいた資料を見ますと、上限を設けない、つまり、無期転換になると思うんですが、六法人あったと思うんですね。

 そのときは、ずっと見ていきますと、秋田大学、浜松医科大学、愛知教育大学、京都教育大学、三重大学、奈良教育大学とあったと思います。その後、名古屋大学や山形大学などが、事実上無期転換を行うということを発表しているということではないかなと思っているんです。

 それは事実でいいと思うんですけれども、その後の対応、要するに、もう一度調査をするとか、何か考えていましたら一言お願いします。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 この調査を全体についていたしまして、今後、この適用に向けて、各大学個別の取り組みをしてまいると思います。

 この基礎データがそろっておりますので、必要に応じて、しっかりと大学等にこの趣旨が伝わるようにやってまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 もう一度局長に伺うんですけれども、この調査に対して、東北大学は、契約更新に通算五年の上限を設けるが、別途の無期転換制度が既にあると答えているんです。大変驚きました。

 別途の無期転換制度、つまり、対等だということですよね、今の無期転換ルールと。では、何かというと、一つは、もともと上限がなかった方たちがいらっしゃいます。一九八〇年七月以前の採用とか、そういう方たちは一割に満たないんですが、いるんです。だから、これは聞いていることとは別枠なんですね。

 では、一般の非正規職員に対しては限定正職員制度を導入する予定であると答えています。しかし、この限定正職員、もう八月に締め切っていますが、採用規模がどの程度のものなのか、発表されていません。千百三十八名が雇いどめになる一方で、そのうち、例えば数十名ですよ、あるいは半分とか限定正社員になった、あるいは新規の募集に入れかわったとなれば、これが別途の無期転換制度があるということとは言えない、全く別の次元の問題であるというふうに思いますが、これも一般論でお答えください。どうですか。

山越政府参考人 個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げれば、有期労働契約で働く方を無期雇用に転換する仕組みを設けます場合において、どのような方を無期雇用に転換するかということは、それぞれの企業において定めていただくべき事柄であるというふうに考えておりまして、行政としては、その適否について申し上げる立場にはないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、労働契約法第十八条でございますけれども、これは有期労働契約の濫用的な利用を抑制するものでございますので、各企業におかれましては、こうした法の趣旨を踏まえていただきまして、適切に御対応をいただきたいというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 ですから、労働契約法に基づく無期転換制度は一切使わない、限定正社員を、かわりの別途の制度があると言っていることは、それは正しくないですよね。それで採用される人がいたとしても、それで無期転換を補ったとか、あるいはかわりになったということにはなりませんよねということだけを今聞いています。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働契約法第十八条でございますけれども、これは、五年を超えて有期労働契約が反復更新されている場合に無期雇用に転換する申込権を認められるという制度でございまして、こうした場合には、この権利がいずれにしても発生するということでございますので、そういうことかというふうに思います。

高橋(千)委員 ですから、やらないと言っているんです。一切対象はない、やらないと言っています。

 前はやっていました。やるつもりだったけれども、今やめている、やらない。そのかわり、今言っているように、別途の制度があるといって限定正社員にすると言っているんだから、それは違うでしょうということを言っているんです。そうじゃないですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 無期転換制度を設けるかどうかというのは、労働契約法等に定められている問題ではございませんので、これは労働契約法第十八条に定める無期転換ルールとはまた別途のものだというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、無期転換ルールとか雇いどめ法理につきましては、これは労働契約法で定めます民事法規でございますので、この問題については司法において判断されるべき問題だというふうに私どもは考えているところでございます。

高橋(千)委員 そういうことなんです。別途のものなんです。だから、それで採用される人が一部にあったとしても、無期転換を設けたからいいんだ、かわりになったということではない。そのことだけを確認させていただきました。

 実際に申し込んだけれども、採用枠がないからと言われて、上司から判こをもらえなかった人もいるんですね。たくさんいます。だったら就職活動した方がよかったよ、退職するしかないと、悔しい声が聞こえています。これで別途制度を設けたなんて言わせてはなりません。

 名古屋大学では、財政は厳しいけれども、法の趣旨と働く人々の意向も踏まえたと答えているんです。そういう立場に立っていただきたいと思います。

 東北大学は、学部生と大学院生合わせて約一万七千名の学生を抱え、正規職員は六千二百名。合わせると一万名の雇用なんですね、教職員。本当に地域経済にとっても多大な影響があります。

 二〇一三年五月の人事改革プロジェクトチームの報告書の中でも、正規職員の削減を非正規で補ってきたことによって、もう臨時的とは言えない労働力になってきている、スキルの蓄積にも支障を来している、こういうことを大学自身が言っているんですね。

 私は、やはりこの立場に立って本当に本来の役割を果たしてほしい、雇用を守るということが大学の発展にとっても大事なことなんだという立場で援助していただきたいということを、文科省にも厚労省にも求めたいと思います。

 きょうはもう一つ質問があるので、ここは要望にとどめたいと思います。審議官、もしよければ退席されても結構です。

 次に、建設アスベスト訴訟について質問をいたします。

 資料の5は、十月二十八日の神奈川新聞。東京高裁が国と建材メーカー四社に対して賠償命令を出したと報じております。これは十四件、全国で集団訴訟が起こっておりますけれども、二審としては初めての判決であること、メーカーの賠償責任を認めたのは三度目、国に対しては、時期は少しずつずれてはいるんですけれども、原告の七連勝、ほぼ確定と言えるのではないでしょうか。

 十年に及ぶ裁判の中、首都圏の原告五百四十二名中三百八十五名が既に死亡されています。これ以上裁判を長引かせるのではなく、政治決着をしてほしいと原告らは求めておりますが、大臣の所見をお願いします。

加藤国務大臣 今のものは横浜建設アスベスト訴訟一陣と二陣と言われるものでありますけれども、現在、国としては上訴しているところでございます。

 この上訴した理由としては、国はその時々の知見に応じて適時かつ適切に措置を講じて、あるいは強化してきた、そして、過去の最高裁判決に照らせば、国の規制権限の不行使が違法であったとは言えないというふうに考えられること、また、これ以外にも訴訟がございます、そういった影響等を勘案し、関係省庁で調整をした結果として、上級審の統一的判断を求めるべきであるという結論に至っているところでございます。

高橋(千)委員 そうおっしゃると思っているわけですが、続けて聞きたいと思います。

 石綿肺については五〇年代、肺がんや中皮腫などは七〇年代に、石綿との因果関係があると医学的知見は確立されておりました。一九七二年にILOあるいはWHOが石綿による発がん性を指摘したにもかかわらず、一九七四年には石綿の輸入量は三十五万二千百十トンで、ピークに達しておりました。石綿使用禁止とされたのはそれから三十年後と、余りにも遅過ぎると思います。

 昨年度の石綿関連の労災請求件数は千百六件で前年比四%増、支給決定件数も九百八十一件、一・二%増と、今もふえております。

 資料の7に、これはわかる限りさかのぼってもらって、一九七九年、十九件から始まっていますけれども、ずっとコンスタントにあって、二〇一六年の速報値で千五十五件とあるわけです。救済法による特別遺族給付金も、これは二〇〇六年から始まっていますけれども、トータルで千五百四十件が労災認定されております。

 めくっていただいて、そのうち、死亡数を出していただいたのが最後の資料なんですが、これは昭和三十八年、一九六三年からさかのぼるわけですね。そして、今、一万九百七十三名で、そのうち女性が三百四十名もいるというのもかなり衝撃で、多分、製造の現場ですとか、さまざまなところであったのかなと思っております。

 十年から四十年とも言われる長期潜伏期間、震災による解体工事などで石綿暴露が懸念されるなど、まだまだ石綿による症状だと気づいていない潜在的な患者、あるいは亡くなった方、今後も発症するであろう患者は相当数いると思います。大臣は、その認識を共有されるでしょうか。

加藤国務大臣 今、委員からも御指摘がありましたけれども、この石綿による疾病は、石綿を吸ってから非常に長い年月を経て発症することが特徴で、例えば中皮腫の場合には、多くが三十五年前後という長い潜伏期間の後に発症するというふうに承知をしておりまして、ここ十年間の石綿による疾病の労災請求件数、委員のお示しいただいた資料にもありますように、千件台で推移をしておりまして、過去の石綿の使用状況や三十五年という潜伏期間を考えますと、今後も同水準で推移していくのではないか、こういうふうに見ているところでございます。

 いずれにしても、石綿による疾病の労災請求に関しては、迅速かつ適正な決定に取り組んでいきたいと考えております。

高橋(千)委員 まず、同水準で推移していくのではないかという認識が示されたと思います。

 昨年度の石綿関連労災の統計で見ますと、五五・五%が建設業なんですね。輸入石綿の大部分が建材に使用されたために、建設業従事者が最大の石綿被害者とも言えるのではないか。

 ただ、一人親方が労働者ではないとして認められてきませんでした。ダクトや配管工、保温工など、それぞれ同じ現場で働いていたのに、労働者ではないからと認められないのは理不尽だと思います。また、メーカーとの関係では全く区別がないと思うんですね。

 そうした中、今回の高裁判決では、一人親方でも実質の働き方の形態を見て、例えばもう工務店を退職しているんだけれども、それは工務店の都合によって依願退職であったものだから、その後も同じ仕事をしていましたとか、そういう人を国の責任は八年とちゃんと認めている。そういうことがやられているんですね。

 ことし、国土交通委員会で、議員立法で建設従事者の健康安全確保法、もう出されて今通っておりますし、そういう点でも、一人親方に対してのやはり救済というのが非常に注目されるのではないかと思うんです。

 もう一つ興味深いのは、メーカーの共同不法行為、これは立証されませんでした。大変厳しい。それぞれに、一人一人、場所が違うし、いろいろなところに行っていろいろな建材を使っているということで、これまでにない特質を有すると明記をしているんですね、判決文の中に。だけれども、例えば当時のシェアとかそういうのを見て、四十三社のうち四社を絞り込んでいった。そういう点では、私は大変ヒントになる、こういう手法というのは。別に高裁判決だけがそれができたのではなくて、一審の判決を踏襲しながら認めているんです。ここがとても大事なところですね。

 そこで言いたいことは、原告らが求めている給付金制度、メーカーを絞り込むのは困難という壁も破ったし、一人親方についても一定の見解が示されました。こういうことをヒントにして、やはり国とメーカーの共同責任で救済制度に踏み込んでいくべきではないか。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 基本的には、先ほど申し上げた答弁に尽きるところでございます。

 また、一人親方等について、係争中の案件でありますから、その中身についてはコメントを差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 ただ、いずれにしても、国としては、労災保険による補償制度、あるいは住民に対する石綿健康被害救済制度、こういった制度を設けておるところでありますので、こうした制度をしっかり周知し、その救済制度の実施にしっかりとまずは取り組んでいきたい、こう考えております。

高橋(千)委員 これで終わりますが、原告らの交渉の場で、今回の責任が問われたメーカーの皆さんは、国が言ってくれれば自分たちも考えるということを言っておりますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたい、このことを強く求めて終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

高鳥委員長 次に、内閣提出、旅館業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 旅館業法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤国務大臣 ただいま議題となりました旅館業法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 消費者のニーズの変化、違法な営業者の広がり等を踏まえ、旅館業に係る規制緩和を進めるとともに、無許可営業者に対する取り締まりを強化し、旅館業の健全な発展を図るため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、旅館業の営業種別について、ホテル営業と旅館営業を統合し、旅館・ホテル営業とします。

 第二に、無許可営業者に対して、都道府県知事等が報告徴収や立入検査、緊急命令を行うことを可能とするとともに、旅館業法に違反した者に対する罰金の上限額を引き上げます。

 最後に、この法律案の施行期日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としています。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

高鳥委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十九分散会


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