衆議院

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第10号 平成31年4月17日(水曜日)

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平成三十一年四月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君

   理事 橋本  岳君 理事 西村智奈美君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      安藤 高夫君    今枝宗一郎君

      上野 宏史君    大岡 敏孝君

      大西 宏幸君    鬼木  誠君

      門  博文君    木村 哲也君

      木村 弥生君    国光あやの君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      佐藤 明男君    笹川 博義君

      塩崎 恭久君    繁本  護君

      新谷 正義君    田野瀬太道君

      田村 憲久君    高橋ひなこ君

      武井 俊輔君    冨樫 博之君

      西田 昭二君    鳩山 二郎君

      福田 達夫君    船橋 利実君

      穂坂  泰君    堀内 詔子君

      本田 太郎君    三谷 英弘君

      三ッ林裕巳君    御法川信英君

      宮路 拓馬君    山田 美樹君

      和田 義明君    渡辺 孝一君

      阿部 知子君    池田 真紀君

      尾辻かな子君    吉田 統彦君

      稲富 修二君    岡本 充功君

      白石 洋一君    山井 和則君

      桝屋 敬悟君    鰐淵 洋子君

      高橋千鶴子君    本村 伸子君

      丸山 穂高君    森  夏枝君

      中島 克仁君    柿沢 未途君

    …………………………………

   議員           尾辻かな子君

   議員           西村智奈美君

   厚生労働大臣       根本  匠君

   文部科学副大臣      浮島 智子君

   厚生労働副大臣      高階恵美子君

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   厚生労働大臣政務官    新谷 正義君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局次長)         柴崎 澄哉君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局審議官)          三田 顕寛君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 渡邉  清君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            池永 肇恵君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 田中 勝也君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    高島 竜祐君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          大村 慎一君

   政府参考人

   (総務省統計局統計調査部長)           佐伯 修司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   下川眞樹太君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           丸山 洋司君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         小林 洋司君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大島 一博君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     鬼木  誠君

  大隈 和英君     田野瀬太道君

  木村 哲也君     穂坂  泰君

  木村 弥生君     大西 宏幸君

  田村 憲久君     今枝宗一郎君

  谷川 とむ君     鳩山 二郎君

  丹羽 秀樹君     御法川信英君

  高橋千鶴子君     本村 伸子君

  丸山 穂高君     森  夏枝君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     冨樫 博之君

  大西 宏幸君     木村 弥生君

  鬼木  誠君     大岡 敏孝君

  田野瀬太道君     大隈 和英君

  鳩山 二郎君     三谷 英弘君

  穂坂  泰君     木村 哲也君

  御法川信英君     笹川 博義君

  本村 伸子君     高橋千鶴子君

  森  夏枝君     丸山 穂高君

同日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     武井 俊輔君

  冨樫 博之君     田村 憲久君

  三谷 英弘君     和田 義明君

同日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     西田 昭二君

  和田 義明君     本田 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  西田 昭二君     福田 達夫君

  本田 太郎君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 達夫君     門  博文君

  宮路 拓馬君     谷川 とむ君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     丹羽 秀樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

 業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案(西村智奈美君外五名提出、衆法第二号)

 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(岡本充功君外五名提出、衆法第三号)

 労働安全衛生法の一部を改正する法律案(西村智奈美君外五名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案、西村智奈美君外五名提出、業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案、岡本充功君外五名提出、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外五名提出、労働安全衛生法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局職員福祉局次長柴崎澄哉君、事務総局人材局審議官三田顕寛君、内閣府大臣官房審議官渡邉清君、男女共同参画局長池永肇恵君、警察庁長官官房審議官田中勝也君、消費者庁審議官高島竜祐君、総務省自治行政局公務員部長大村慎一君、統計局統計調査部長佐伯修司君、法務省大臣官房審議官保坂和人君、文部科学省大臣官房審議官丸山洋司君、厚生労働省医政局長吉田学君、健康局長宇都宮啓君、雇用環境・均等局長小林洋司君、子ども家庭局長浜谷浩樹君、老健局長大島一博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。堀内詔子君。

堀内委員 自由民主党の堀内詔子です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、委員長始め理事の皆様方、関係各位の皆様方に心から厚く御礼申し上げます。

 初当選以来、私は、社会や企業あるいは政治にもっと女性の視線を、そして発想が生かされるべきだと主張してまいりました。

 ボス・オア・ベビー、管理職になるか又は子供を産むか、そういったかつてこの日本社会に流れていた風潮を、これからは、ボス・アンド・ベビー、管理職になってそして子供も産んでいく、そういった社会になっていかなければならないと思います。それが女性活躍につながり、少子化の進展の防止につながっていくのではないかと思っております。

 ですので、四年前に女性活躍推進法が成立しましたときには、これで新しいページがまた一枚めくれた、そのような感慨を持ちました。

 質問を始めさせていただくに先立ちまして、冒頭、パネルを使わせていただきたいと思います。これは、皆様方のお手元の資料にもありますように、いわゆるかるたです。私の地元の山梨県の笛吹市の男女共同参画推進委員会の家庭部会の堀内知恵子部会長たちが集ってつくったかるたです。二百三十八句の川柳が集められました。

 例えば「認め合うこれができたら傷つかない」又は「性別は見えないけれど高い壁」又は「女子でも男子以上働ける」あるいは「イクメンともてはやさずに日常で」、こういったかるたが皆様方の中から集められてまいりました。

 このジェンダーかるたは、今年度、笛吹市内の小中学生たちに配られることになっております。やはり、ジェンダー教育は小さいころから着実に続けてきて、そして自然の中で獲得されていくものではないかと思っております。

 このように、地域においても男女間の垣根をなくそう、女性にもっと活躍してもらおうとの大きな動きがありますので、ぜひ国におきましてもこれらを一層強力に後押ししていただきたいとの思いを込めて、具体的な質問に移らせていただきたいと思います。

 第二次安倍政権が発足してから六年と四カ月がたちました。安倍政権は、日本再興戦略において、成長戦略の中核に女性の活躍を位置づけました。育児休業給付の充実を図ったり女性活躍推進法を制定したりなど、女性が活躍できる土台づくりに全力を挙げてまいりました。その結果、女性の就業者数は六年で二百八十八万人も増加し、そして、子育て中の女性が職業を持つ、いわゆる子育て中の女性の就業率も七六・五%に上昇するなど、具体的な数字となってその成果はあらわれております。

 民間部門におきましても公務部門においてもこの機運を更に高めて、そして加速していただきたいと思っておりますが、現実にはまだまだ、ガラスの天井、そしてガラスの壁が存在しています。だからこそ、今回、この女性活躍推進法が見直されて、更にブラッシュアップされたものになるのだと思っております。

 そこで、まず、女性活躍推進法で定められました行動計画の策定など、この三年間の施行状況について改めて御説明を頂戴したいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 常時雇用する労働者三百一人以上の企業に義務づけられております一般事業主行動計画につきましては、義務づけの対象企業が一万六千五百三十六社ございますが、そのうち一万六千四百二十五社、九九・三%の企業から計画策定の届出をいただいておるところでございます。また、三百人以下の中小企業につきましては、努力義務でございますが、五千六百八十一社から一般事業主行動計画の策定の届出をいただいておるところでございます。

 また、三百一人以上の企業に対しましては女性の活躍に関する情報の公表を義務づけております。このうち、約七千社が厚生労働省が運営しております女性の活躍推進企業データベースで情報公表をいただいております。さらに、三百人以下の企業も含めますと、約一万社が当該データベースで情報公表をいただいておる。

 さらに、女性活躍に関する取組が優良な事業主に対する認定制度としてえるぼし認定がございますが、これは直近で合計八百十三社が認定を取得しているという状況でございます。

堀内委員 ありがとうございました。

 義務づけ対象企業の九九%が行動計画策定をもう既に届け出済みということでございますので、今回の計画策定の義務づけを百一人以上の規模の企業まで拡大するといったことは理解ができます。

 けれども、現在、多くの中小企業の皆様方が、働き方改革関連法に基づく長時間労働の是正などに一生懸命取り組まれている、まさにその最中でございまして、その負担というのは極めて大きなものになっています。

 その一方、三年前の平成二十八年のニッポン一億総活躍プランには、七年後の二〇二六年の中小企業の行動計画の策定率を一〇〇%にするということがうたわれております。

 そこで、どのように中小企業の皆様方の負担を減らしながらこの一億総活躍プランの目標を達成していくのか、支援策とあわせて御説明をお願いしたいと思います。

上野大臣政務官 今回の女性活躍推進法の見直しは、委員御指摘のとおり、働き方改革関連法の施行時期も踏まえ、中小企業に十分な準備、周知期間を設けるため、中小企業に対する女性活躍に関する行動計画策定等の義務づけの施行時期について、公布後三年以内の政令で定める日とし、それまでの間は努力義務としているところであります。

 その上で、義務化が施行されるまでの努力義務となっている間においても、可能な限り早期に対応を進めてもらえるよう、利用しやすい行動計画策定支援ツールの開発、行動計画に基づく取組に対する助成、それからセミナーの実施や事例集の策定等による周知啓発など、十分な支援を実施してまいります。

 こうした支援を通じて、改正法案の円滑な施行を進め、百一人以上の中小企業において速やかに行動計画を策定いただくよう、厚生労働省としても取り組んでまいります。

堀内委員 上野政務官、ありがとうございました。

 今御答弁をいただきましたように、女性の職業生活における活躍に関する情報公表については、改正案では、三百一人以上の事業主の情報項目として、職業生活に関するもの、そして職業生活と家庭生活との両立に関するもの、それぞれの分野から一項目以上公表することとなっておりまして、公務部門についても同様とされております。

 しかしながら、社会全体で女性活躍を進める観点や、民間企業の取組をリードするといった観点から、公務部門の皆様方が率先して取り組まれ、各省庁や地方公共団体において女性活躍の状況把握や情報公表がきちんと行われるように確保することが極めて重要ではないかと思っております。

 そこで、今後、公務部門における見直しの方向性について御答弁いただきたいと思っております。

池永政府参考人 お答えいたします。

 公務部門における法の施行状況を見ると、国、都道府県、市町村の全ての事業主が行動計画を策定済みであり、また情報公表を行っているところです。

 次なるステージとして、行動計画の実効性を高めるため、状況把握項目の見直しと情報開示の充実を図る方針でございます。

 状況把握項目の見直しについては、例えば、超過勤務時間の把握について、現行では平均値を把握しているところでございますが、人事院規則等において定められた超過勤務の上限を超えた職員の割合を把握する方向で検討しているところです。

 また、情報開示の充実についても、行動計画の実施状況の公表について、数値目標を設定した項目の進捗状況と取組内容を経年で公表することを内閣府令で制度化する方向で検討しているところです。

 さらに、男性が育児のために一定期間休暇や休業を取得することは、本人にとって子育てにかかわる契機となる意味で重要であるだけではなく、事業主にとっても子育てに理解ある職場風土の形成の観点から重要であることなどを基本方針などの改正により周知し、各府省や地方公共団体の積極的な取組を求めていきたいと考えております。

堀内委員 ありがとうございました。

 一方、今回の改正案のもう一つの柱はハラスメント対策の強化であります。

 今回の改正では、事業主及び労働者に対しハラスメント防止のための措置義務が課せられています。この意義は非常に大きいと思いますが、国などに対する措置義務の規定はありません。

 そこで、今後、国家公務員のハラスメント対策はどのように進めていらっしゃるか、教えていただきたいと思っております。

柴崎政府参考人 お答えいたします。

 今般の民間法制の改正案におきましては、セクシュアルハラスメント等に起因する問題に関する事業主及び労働者の責務の明確化や、労働者が事業主にセクシュアルハラスメント等の相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いの禁止などが盛り込まれていると承知しております。

 委員御質問の公務における対応でございますけれども、一般職国家公務員のセクシュアルハラスメントの防止等につきましては、人事院規則一〇―一〇を制定しているところでございます。

 そこにおきまして、各省各庁の長の責務として、セクシュアルハラスメントの防止及び排除に関し必要な措置を講じること、苦情を申し出た職員の不利益を防止すること、職員に対して必要な研修を実施することなどが義務づけられるとともに、職員の責務として、セクシュアルハラスメントをしないように注意することなどが義務づけられているところでございます。

 また、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等につきましても、人事院規則一〇―一五を制定しているところでございまして、セクシュアルハラスメント防止と同様の規定を設けているものでございます。

 パワーハラスメント防止のための措置につきましては、これまでも、パワー・ハラスメント防止ハンドブックの配布等によりまして周知啓発を行ってきたところでございますけれども、さらなる防止策の検討を進める必要があるということから、現在、有識者によって構成する検討会を開催し、検討を行っているところでございます。

 今後、国会における法案審議状況等を注視しつつ、検討会での議論を踏まえて、パワーハラスメント防止対策を講じていくこととしているところでございます。

堀内委員 ありがとうございました。

 まず隗より始めよ、そういったことわざもございます。ぜひ、公務員の皆様方におかれましても率先して取り組んでいただき、国民の皆様方に範を示していただきたいと重ねてお願い申し上げたいと思います。

 次に、ハラスメントの中身についてお尋ねしたいと思います。

 今日、ハラスメントは実に多様化しておりまして、いわゆる何々ハラスメントとつくハラスメントだけで四十以上もあるというふうにも言われております。その多くは、決して許されるものではありません。

 先ほど触れていただいたように、マタニティーハラスメント、いわゆるマタハラの防止は、女性活躍推進法の観点のみならず、少子化対策の観点からも極めて重要なことだと思っております。妊娠をするのに職場に気を使っているようでは、少子化の流れに歯どめがかかるわけがありません。

 そこで、今回の改正案では、マタハラ防止についてどのような見直しが行われているか、御説明を更に頂戴したいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 職場におけるハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるものでありまして、あってはならないことだというふうに考えております。

 とりわけ、先生御指摘になりました、労働力人口が減少する中で、意欲、能力のある女性、子育て中の女性が就業を継続し、活躍できる環境を整備するということは非常に重要な課題でございまして、いわゆるマタハラ防止の実効性を高めていく必要性があるというふうに認識をしております。

 そこで、今回の法案でございますが、国、事業主及び労働者の責務規定というのを設けまして、いわゆるマタハラを行ってはならない旨を明確化する、また、労働者が事業主にいわゆるマタハラの相談を行ったことを理由とした不利益取扱いの禁止といったことを盛り込んでおるところでございまして、こうしたことを通じてマタハラのない職場づくりというのを一層推進してまいりたいというふうに考えております。

堀内委員 ありがとうございます。

 ハラスメントというものはいずれも許されるものではありませんが、少子化について特に言うならば、やはり、女性が祝福されて出産や妊娠ができるような職場環境にすることが大切だと思っております。

 女性の年齢階級別労働力率、いわゆるM字カーブを台形に近づける、そういったことにもなると思いますので、ぜひ徹底を重ねてお願いいたしたいと思っております。

 続きまして、いわゆるカスタマーハラスメント、そういったものについて伺いたいと思います。

 今日、顧客や取引先からのいわゆるカスタマーハラスメントが大きな問題になっております。

 例えば、タクシーのドライバーさんのように、今までそのほとんどが男性であった職場に女性が進出するようなことによって起きるそういったカスタマーハラスメントもございます。

 けれども、また一方で、今まで女性がもともと多かった職場、例えば介護といった現場についても、カスタマーハラスメントが重要な問題となっております。

 また、医療の現場でもそういうことが起こりますし、その場面というのは、いわゆる公共のような大きな施設から訪問介護先の各家庭、そういったより小さな場でも起きているといったものが現実だと思っております。

 特に深刻なのは、訪問看護又は介護の現場で加害者となるのが、患者さんや又は被介護者のみならずその御家族から受ける、そういった状況があると伺っております。

 そこで、こうした問題を防止するためには、厚生労働省としてどのような対応を考えていらっしゃるか、御答弁を頂戴したいと思っております。

上野大臣政務官 今回の法案においてはパワハラ防止に関する指針を定めることとしており、当該指針の中でいわゆるカスタマーハラスメントに関する企業の望ましい取組を明示し、周知啓発に取り組んでいきたいと考えております。

 その上で、御指摘がありました看護職員、介護職員に対する患者、家族などからのハラスメントは、メンタルヘルスを損なったり離職の一因となっているとの指摘もあり、その対応には、医療機関や介護事業所における組織的な対応が重要であると考えております。

 医療機関は、医療法に基づき、計画的に医療従事者の勤務環境改善に取り組むこととされており、国においては、ガイドラインや手引を策定し、ハラスメントについても、相談窓口や対応マニュアルの整備、研修の実施など、さまざまなハラスメント対策に包括的に取り組むよう促しているところであります。

 また、平成三十一年度厚生労働科学特別研究事業において、看護職員が受ける暴力、ハラスメントに対する実態調査とそれを踏まえた医療機関におけるマニュアルの作成指針について研究を進めていくということにしており、今年度中に研究成果を取りまとめる予定であります。

 介護現場におけるハラスメントについては、昨年度の調査研究事業において、訪問介護等の介護現場におけるハラスメントの実態把握、また介護事業者向けの介護現場におけるハラスメント対策マニュアルの作成等を実施したところであり、マニュアルそれから報告書については、四月十日付で各都道府県や関係団体宛てに周知をし、あわせてホームページに掲載をいたしました。

 引き続き、医療や介護の現場におけるハラスメント対策にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

堀内委員 ありがとうございます。

 そもそも、カスタマーハラスメントは、単なる労働といった問題ではなく、社会全体や消費者の方の意識啓発が大変重要なことになってきていると思っております。そして、こうした観点から、消費者教育や学校教育も非常に重要ではないかと思っております。

 そこで、今後、厚生労働省が作成します指針の内容も踏まえ、消費者への周知啓発など、厚生労働省や消費者庁、更に文部科学省などの関連機関が連携して取り組むことが重要だと考えますが、これについて御見解を頂戴したいと思っております。

高島政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま委員からお話がございましたとおり、消費者への意識啓発、消費者教育ということは大変重要であるというふうに考えております。

 公正で健全な経済社会を形成するためには、消費者が、消費社会において自身が果たし得る役割について自覚をし、適切に声を伝えることができるための知識や判断力、交渉力などの能力を育むということが必要であると考えております。

 そのため、消費者庁といたしましては、自立した消費者を育成するための消費者教育の推進に取り組んでおります。

 今後とも、社会課題の解決と安全、安心で豊かな消費生活の実現に向けて、厚生労働省も含めまして関係省庁とよく連携をして、さまざまな角度から消費者教育の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

堀内委員 ありがとうございました。

 消費者教育、そして子供たちの教育。教育というものには時間がかかるものであります。これからも、カスタマーハラスメント、そういったものを払拭していくためにも、しっかりとした、さまざまな教育を消費者庁においてもしていただけるようによろしくお願いいたします。

 話として少し前に戻らせていただきますが、現在、三百一人以上の規模の企業は、省令で定める十四項目の中から任意の一項目以上を選んで公表することが義務づけられております。

 この十四項目を見ますと、いずれも重要なものだと思いますが、現在は具体的にどのような項目が公表されているでしょうか。また、公表が多い項目はどれでしょうか。女性活躍の推進について、いま一度立ち戻って、更に重ねてお伺いしたいと思っております。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省の方で女性の活躍推進企業データベースを運営しております。ここで情報公表を行っております企業におきましては、平均して約五・五項目を公表しておるという状況です。

 そして、公表している企業の多い項目というのを申し上げますと、採用した労働者に占める女性労働者の割合を公表しているところが六六・七%、管理職に占める女性労働者の割合が六五・五%、男女の平均勤続年数の差異等を公表しているところが六五・三%、労働者全体に占める女性労働者の割合を公表しているところが五八・六%ということになっております。

 また、独立行政法人労働政策研究・研修機構が二〇一八年一月に実施したアンケートにおきましても、おおむね同様の項目について情報公表をしている企業が多いという結果になっております。

堀内委員 ありがとうございました。

 御説明を伺っておりますと、どうも管理職割合といった働きがいにかかわる項目に偏っているような印象も若干受けるところもございます。

 女性が継続的に活躍できるようにするためには、こうした働きがいも大切でございますが、一方、仕事と家庭生活を両立できる環境をあわせて整備していくことが重要だと思いますが、今回の見直しでは、情報公表の仕組みについてどのような見直しを行うのか、そういったところについても御答弁を頂戴できればと思っております。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 女性が継続的にキャリアを積んでいけるようにするためには、今御指摘いただきましたように、職業生活と家庭生活を両立できる環境の整備が重要であるというふうに考えております。

 今回の法改正におきましては、常用労働者数三百一人以上の企業につきまして、御指摘いただいたような、これまで比較的公表する企業の多かった職業生活に関する機会の提供に関する項目だけではなくて、継続的な活躍に不可欠な職業生活と家庭生活との両立に関する項目の見える化を促すということで、双方の区分から一項目以上を選んで公表することを義務づけているところでございます。

 これはあくまで最低基準ということでございますので、各企業に対しましては、どのような項目を情報提供しているか自体も求職者から評価されているというようなことを伝えるなどによりまして、バランスのとれた積極的な公表を促してまいりたいというふうに考えております。

堀内委員 ありがとうございます。

 職業生活と家庭生活はまさに車の両輪ですので、新たな公表方法が女性活躍の強い後押しになってくださることを願っております。

 今回の改正だけでいわゆる女性活躍あるいはハラスメント対策が一瀉千里に進むとは思っておりません。けれども、女性活躍推進法は十年間の時限法であり、その中で確実に成果を上げていくためには、今回の改正は不可欠なものであり、早期の成立を願っております。

 同時に、厚生労働省や内閣府、人事院におきましては、改正の着実なフォローと徹底を図っていただくように重ねてお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、木村弥生君。

木村(弥)委員 自由民主党の木村弥生でございます。

 質問の機会をありがとうございます。

 私は、この女性活躍推進法改正案につきまして、先ほどの堀内委員と重複するところはなるべく避けながら、特に、女性が大半を占める医療職を中心に質問をさせていただきたいと思っております。

 まず初めに、看護職に対するハラスメントの実態の把握及び調査研究についてでございますけれども、パワーハラスメントを始めとするそういったハラスメントが、医療、看護の現場においても大きな問題となっているところでございます。

 安全で質の高い医療の提供に努めようとするところで、患者やまた御家族の方から看護職に対するハラスメントが深刻化し、それが離職につながり、またメンタルを病むというような実態があり、安心して働く上での基盤を危うくする事態となっているところでございます。

 そこで、まず、患者や利用者、また御家族からの看護職に対するハラスメントについて、先ほど堀内委員から上野政務官に御質問がございまして、調査研究また通知等を行っているというお話がございましたが、その実態調査についてちょっと教えていただければと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 看護職員に対する患者あるいは家族などからのハラスメントに対しましては我々も重要な問題意識を持っておりまして、有効な防止策あるいは対応策を講じるために、御指摘のような実態をまずしっかり把握することが大事だというふうに思っております。

 平成三十年版の過労死等の防止対策白書において、労災支給決定事案の分析によれば、看護師等において精神障害の事案の割合が多いということが示されてございます。さらに、その発病には暴言、暴力を体験したことが関与したと考えられる事案も一定数存在しております。

 こういうことも踏まえまして、私ども、今年度、平成三十一年度の厚生労働科学特別研究事業におきまして、看護職員が受ける暴力、ハラスメントに関する実態調査、さらに、それを踏まえた医療機関におけるマニュアルの作成指針について研究を進めていくこととしておりまして、この特別研究事業におきましては、今年度中にその成果を取りまとめていただくということで具体的に動いているところでございます。

木村(弥)委員 ありがとうございます。ぜひ現場の状況をきめ細かく調査していただければと思います。

 日本看護協会の二〇一七年の看護職員の実態調査については、過去一年間に暴力やハラスメントを受けた経験がある人たちが全体の五二・八%で、患者から暴力、ハラスメントを受けた中での身体的な攻撃が七割程度、また精神的な攻撃やセクシュアルなもの、どちらも四割を占めている、こういった実態がございますので、ぜひ皆様にこの実態を御理解いただけたらと思っております。

 それで、パワーハラスメントに関する事業主の雇用管理上の措置義務を設けるに当たりまして、厚生労働省は、取引先や顧客等からの著しい迷惑行為については、法律上の措置義務の対象とはしないが、指針において労働者からの相談体制の整備や被害者への適切な配慮等を行うことが望ましい旨を記載すると説明しておりますけれども、事業主が十分に実効性のある対応を講じていくためには、やはり抽象的に配慮等を求めるのではなくて、その配慮等の内容について、業界ごとの特性を踏まえて具体的に示す必要があると私は考えております。

 その事業主である、例えば看護職の場合は医療機関でありますが、その配慮等の内容を指針等で明確にすべきであると思いますし、配慮というのが今のところ措置義務の対象とはなっていないことを指摘したいと思っております。

 顧客等からの著しい迷惑行為について、どこまでが相当の範囲のクレームで、どこからがそれを超えた嫌がらせなのかといった判断が自社の労働者等からのパワーハラスメント以上に難しい等の課題があるということは労働政策審議会の建議でも指摘されているところでございますが、看護の場合におきましては、明らかに相当な範囲を超えた暴言や暴力で苦しんでいる看護職が現在おります。そういった暴言、暴力、クレーム対応のために相談、苦情対応の検討会議を設置するとか、また、苦情に対する相談体制を整備したことで看護職の精神的な負担の軽減につながったといった事例もございます。

 そこで、看護職を患者等からのハラスメントから守るために、その相談体制の整備等、雇用管理上必要な措置の義務づけが必要ではないのかという意見がございます。

 国による各種の支援を、例えば義務づけが難しい場合でもやはりこの支援を充実させていくことが必要であると私も考えますけれども、こういった看護職に対する患者等からのハラスメント対策を推進するためにどのような支援を行っているのか、そういった具体策についてもお尋ねしたい。

 以上、私の看護職の先輩であります高階恵美子副大臣にお尋ねをいたします。

高階副大臣 先ほど委員からも触れていただきましたけれども、二〇一七年の看護協会の皆様で行っていただいた調査では、過去一年以内のハラスメント被害が五二%、非常に現場の状況は深刻だというふうに認識しておりますし、また、先ほどお答えさせていただきましたとおり、介護現場のハラスメントの状況も我が省におきまして調査をさせていただいておりまして、中間的な取りまとめによりますと、四割から七割の人が利用者からのハラスメントを経験しているという実態にございます。

 もとより女性の多い職場であるということ、閉鎖的な空間であるということ、そして二十四時間連続してサービス提供が人に対して行われるといったような業務の特殊性もございます。業務の範囲と迷惑行為の線引きが難しい中、いかにして職場の中における対策を充実させていくのか、私どももしっかりと考えてまいりたいと思いますし、法案成立後の労政審の協議におきましても、御指摘のところを踏まえながら検討を進めさせていただきたく存じます。

 また、医療機関におきましては、さきの医療法に基づきまして勤務環境改善マネジメントシステムというのを稼働させております。医療法に基づきまして計画的に医療従事者の勤務環境改善に取り組むということとさせていただいておりまして、国においてガイドラインや手引を策定するなど、ハラスメントについても、相談窓口の設置、対応マニュアルの整備、研修の実施等々、取組を包括的に促しているところでございます。

 また、本年二月にも、都道府県を通じまして、医療機関における暴言、暴力等のハラスメント対策について情報提供をさせていただいております。

 いずれにいたしましても、最前線で命を守る仕事をしていただいている人々にしっかりとその業務に自信を持って取り組んでいただけるよう、私どももしっかり支援をしてまいりたいと存じます。

木村(弥)委員 高階副大臣、ありがとうございました。

 私ども、女性医療職エンパワメント推進議連というのがございまして、今御回答いただきました高階副大臣が幹事長、私が会長補佐を務めておりまして、平成二十九年の十一月に、地域医療を支えている、医療界の大半を占める女性たちが働きやすい環境のもとで国民医療の維持発展のために活躍できることを目的とした働きやすい職場づくりということで、決議文を提出したところでございます。ともに、これからのまた医療提供体制をしっかりとやっていくためにも、頑張ってまいりたいと思っております。

 済みません、次の広報活動については抜かして、次の人確法の質問をさせていただきます。

 看護職の人材確保の促進に関する法律というのがございます。これは、人材確保に関する基本指針を定めるとともに、看護師等の養成や処遇の改善、資質の向上、就業の促進等を図るための措置を講ずるものであり、平成四年に制定されたものであります。

 これは、看護の現場からは、国、地方公共団体、事業主等が患者や家族からの看護職に対するハラスメント対策に取り組むことが同法に明記されるべきではないかという意見が寄せられているわけでございますが、この人確法の改正が必要ではないかという意見に対して、根本厚生労働大臣の見解を伺いたいと思っております。

根本国務大臣 患者、家族などからのハラスメントは、医療機関内の上司、部下の関係ではなくて、医療機関外の相手との関係で起きる問題でありまして、その意味で、今回の法案では、次の理由から医療機関に対して一定の義務を求めておりません。

 具体的には、どこまでが相当な範囲のクレームで、どこからがそれを超えた嫌がらせなのかといった判断が医療機関の労働者に対するパワーハラスメント以上に難しいことや、再発防止まで含めた一連の措置を課すことが難しいことという理由で、今回の法案では一定の義務を求めておりません。

 御指摘のように、看護師等の人材確保の促進に関する法律において、国、地方公共団体、事業主等に対して、患者、家族などから看護職員へのハラスメント対策に取り組むことを義務づけることについても同様の課題があると認識をしております。

 ただ、一方で、看護職員に対する患者、家族などからのハラスメントは、メンタルヘルスを損なったり、あるいは離職の一因という指摘もあります。

 引き続き、看護職員に対する患者、家族などからのハラスメントへの対応について、医療機関に対する支援や国民の啓発にしっかり取り組んでいく必要があると考えております。どのような形で取組を推進することが適切かについては、更に検討していきたいと思います。

木村(弥)委員 大臣、ありがとうございます。ぜひ前向きに検討していただきますようお願いを申し上げます。

 次に、医療現場の働き方改革の一環として、平成三十一年の三月二十八日に公表されました厚生労働省の医師の働き方改革に関する検討会の報告書におきまして、タスクシフティングの必要性が記載をされました。

 同報告書には、タスクシフティングの一つとして、将来的にはいわゆるナースプラクティショナー、NPなど、従来の役割分担を変えていく制度的対応を検討していくべきとの指摘があったとのことについて言及した上で、いずれにせよ現行制度のもとでのタスクシフティングを最大限推進しつつ、看護師がより能動的に対応できる仕組みを整えることは重要と記載をされています。

 厚生労働省としてはまず現行制度におけるタスクシフティングを進めていくことになるというのは承知しておりますけれども、それと並行してナースプラクティショナー制度の実現に向けた検討を進める必要があると考えますが、この点について、厚生労働省の方針をお伺いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 医師の働き方改革を進める、そしてまたチーム医療を推進するという観点、それを通じてよりよい医療を提供するためにも看護師さんが重要な役割を果たすというふうに認識しておりますので、今御指摘いただきましたような、本年三月、医師の働き方改革に関する検討会の報告書に具体的な方向性が示されておりますように、特定研修制度のパッケージ化を活用した研修修了看護師を養成していく、あるいはナースプラクティショナーなど、従来の役割分担を変えていく制度的な対応を検討していく、そういう方向が示されておりますので、それに沿った取組を進めさせていただきたいと思います。

 まずは、厚生労働省として、特定行為研修制度を推進するという観点から、研修を受けた看護師が、在宅や手術後の患者に必要な一定の診療の補助行為を行うことができるように制度を見直す予定でございます。これによりまして、現場の実態あるいは関係者の御意見を踏まえながら、特定行為研修の活用を進めてまいりたいと思います。

 さらに、御指摘のナースプラクティショナーを始め多くの専門職種の方々が、みずから能力を生かし、より能動的に対応できる仕組みについて、我々としても精力的に検討を進めてまいりたいと考えてございます。

木村(弥)委員 ありがとうございました。

 看護の視点を軸にした、看護職たちがより能力を発揮して、そして日本の医療を支えていく、これがまたチーム医療の推進につながり、患者や御家族、また国民の皆様に貢献する、資するものであるということも重ねて申し上げまして、以上、医療に関する質問は終わらせていただきます。

 また、先ほどの質問にもありました介護職あるいは訪問看護につきましても、皆様の指摘のとおりであります。私が看護学生のころ、訪問看護の実習に参りましたときに、懸念として、やはりセクシュアルなリスクはどうするのか、あるいは、例えば看護師が来たことでお財布がなくなったとかそういったクレームについてはどう対処するのかといったことをレポートに書いたんですけれども、それに対する明確な回答はその時点ではなかった。

 私が働いていたちょうど十年ぐらい前のころは、患者や御家族から暴言が吐かれても、あなたにだけそういった感情を表出してくれたのねというような、そういう対応しか管理職や上の人たちがなかったのに比べたら、本当に進歩したと思っております。ぜひ、こういった離職防止につながるような形で進めていくことをお願い申し上げたいと思っております。

 次に、セクシュアルハラスメントに関する質問を三つさせていただきます。

 セクシュアルハラスメントの防止対策を推進するに当たりましては、ほかの行政機関との連携が必要であります。例えば、都道府県に設置されている性犯罪、性暴力の被害支援のためのワンストップ支援センターは、こういった性犯罪、性暴力の被害者に対して、被害直後から、相談、カウンセリング等の心理的な支援、法律的な支援等の総合的な支援を可能な限り一カ所で提供することにより、被害者の心身の負担軽減や健康回復、また被害の潜在化の防止を図ることを目的としているところでございます。

 このセクハラ防止対策の実効性を高めるためには、こういったセンターを始めとする他の行政機関との連携を進める必要があると考えますけれども、厚生労働省の見解をお聞かせください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 職場のセクシュアルハラスメントにつきましては、御指摘のように性犯罪や性暴力に当たるものも含まれておるところでございまして、被害者の方の救済を図る上で、御指摘のような性犯罪・性暴力被害者支援のためのワンストップ支援センターなど他の機関との連携を図っていくことは非常に重要な課題であるというふうに認識をしております。

 このため、本法案の施行に当たりましては、被害者の方々の求める支援の内容等を踏まえまして、同センターを始めとする関係機関としっかりと連携して対応を図るよう都道府県労働局に促すなど、実効ある対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

木村(弥)委員 このワンストップ支援センターは、三年ぐらい前はまだ全国に二十六カ所ぐらいしかなかったんですが、今、全都道府県に設置されています。

 ただ、設置主体が警察であったりNPOであったり、また病院、医療機関であったりするんですけれども、お願いしたいのは、そういったかかわる方たちにきちんとした研修をお願いしたい。例えば、連携機関として、精神科医だけでなくて、やはり婦人科医を含めて、被害に遭って、そして行ったところで心ない言葉でまた被害者が傷つくという、セカンドレイプという言葉もございますが、そういった事態も指摘されているところでございます。

 例えば、看護師から心ない言葉を受けたというのを聞くと、私は本当に胸が痛みます。看護師においても、性暴力の被害者を支援する看護師としてSANEという看護師たちがいるんですけれども、これが全く、全然周知されていない。私は、こういった取組をぜひ応援してまいりたいと考えております。

 二つ目の質問でございます。

 婦人相談員の活用というのが、きっとこの女性活躍推進におきましては非常に重要ではないかと思うわけであります。

 私は、ハラスメントというのは、結局、立場の強い人間が立場の弱い者に対して、支配し、そしてコントロールしようとする、力で抑えつけようとする、その構図がハラスメントであり、また児童虐待であり、DVであり、いじめにつながると思っております。これを根本的に根絶していかなければ諸問題は解決しないと思っております。

 そこで、DVにつきましては、婦人相談員の役割というのが非常に重要であります。その適切な配置というのがなかなかされていない実態があります。今、児童虐待についても、DVは非常に重要な、表裏一体の問題であります。

 こういった婦人相談員の配置や人員等の現状についての実態把握というものは国はどういうふうに考えているのか、お聞かせください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、要保護児童の早期発見、虐待対応あるいはDV対応のために、婦人相談員の役割は極めて重要であるというふうに考えております。

 実態でございますけれども、婦人相談員は、平成二十九年四月一日現在で、全国に千四百四十七名が配置されております。

 内訳でございますけれども、福祉事務所に七百五十一名、県、市、特別区の本庁、支庁に三百八十六名、婦人相談所に百七十名、その他に百四十名でございます。

 配置主体別に見てみますと、配置の根拠が売春防止法でございますけれども、これにおきましては、市、特別区については任意設置になっております。この任意設置になっております市、特別区につきましては、現状、配置率が四割にとどまっておりまして、厚生労働省といたしましては、この配置の拡充を要請いたしているところでございます。

冨岡委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 では、一応定数が足りましたので、速記を起こしてください。

 失礼しました。ちょっと質問の内容を。

木村(弥)委員 今、配置が各都道府県にはあるけれども、結局、基礎自治体にはないということなんですよね。

 私は思うんですけれども、DV被害者というのは、なぜ被害者が逃げ隠れなくてはいけないのか、こういった問題があると思います。ぜひ、婦人相談員の人材確保と、そして専門性を更に高めていく、この専門職としての位置づけというものがやはりDV支援に必要であり、それがひいては児童虐待防止にもつながる。

 前にありました野田市の痛ましい事件も、沖縄でDV被害を報告されていたにもかかわらずこういった事態になり、結局、母親が加害者として逮捕されるといった最悪の事態になりました。

 ぜひ、こういった婦人相談員の体制強化というものをしていただきたい。そして、その実態調査につきましては、要対協、要保護児童対策協議会にDV関係者も入れるべきだということも提言されているところでありますけれども、やはり、DVを受けた人たちへのフォローというものがこの国はまだまだ私は乏しいと思っております。専門性を持った人たちがいて、それをその被害者に対しての自立、就労につなげるべきであります。売春防止法がもともと法的根拠である中で、非常に時代錯誤感があるこのDV被害、婦人相談員の配置等を、ぜひ改善に向けて進めていただければと思います。

 次の質問に入ります。

 LGBTの性的指向と性自認に関するハラスメント防止対策についてお尋ねをいたします。

 ちょっと、二つ質問がございましたけれども、二つ目の質問の方からさせていただきます。

 性的指向と性自認に関するハラスメントについて、民間の調査では、LGBTの当事者の約四割から五割が、頻繁に職場で耳にして、メンタルヘルスの影響も指摘されるなど、その対策は職場における喫緊の課題となっているところでございます。骨太の方針二〇一八の中でも、性的指向や性自認に関する正しい理解の促進をするとともに、社会全体が多様性を受け入れる環境づくりを進めるともしているところでございます。

 そこで、今指摘されているアウティングの防止についての質問をさせていただきます。

 性的指向や性自認を本人の意に反して公にする行為がいわゆるアウティングと呼ばれておりますけれども、この問題について、平成二十七年には、大学生が、同級生によって同性愛者であることを了解なく周囲に広められてしまったといったことで、非常に最悪の状況になってしまった、大学の建物から転落死をするといった事件が発生したところでございます。アウティングは当事者について非常に重要な問題であり、日本学術会議が平成二十九年の九月の提言の中で、生命にかかわるほど深刻なハラスメントであると位置づけているところでございます。

 これらを踏まえまして、アウティングはパワーハラスメントに含まれることを指針で明示する必要があるという意見もありますが、厚生労働省の見解をお尋ねいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案におきましてはパワーハラスメント防止のための措置義務を設けているところでございますが、パワーハラスメント、三つの要件を規定しております。職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることということにしております。

 お尋ねの性的指向や性自認に関する言動でございますが、特にこの二つ目の定義の関係で申し上げますと、業務上必要のないものでございまして、性的指向や性自認について本人の意に反して公にするようなこと、これによりまして精神的な苦痛を与えたような場合にはパワーハラスメントに該当し得るのではないかというふうに考えられるところでございます。

 こうしたことにつきまして、法案の成立後、労働政策審議会で議論する予定のパワハラ防止措置の指針に記載するなど、明確化や周知啓発の方策についてしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。

木村(弥)委員 ありがとうございます。

 もう一つの方の質問もさせていただきます。

 こういったことに関しまして、根本大臣が先週金曜日の本会議におきましても、性的指向や性自認に関する言動は、業務上必要ないものであり、性的指向や性自認を理由に仕事から排除したり、性的指向や性自認に関して侮蔑的な発言を行うこと等によって精神的な苦痛を与えたような場合にはパワハラに該当し得るとした上で、法案の成立後、労働政策審議会で議論する予定のパワハラ防止措置の指針に記載するなど、明確化や周知啓発の方策についてしっかりと検討すると答弁をされておられます。

 私ども自由民主党におきましても、橋本岳委員が事務局長となって、特命委員会におきまして、雇用環境の改善や、また相談体制の支援についても議論を進めていくとしているところでございます。

 私は、先ほどのアウティング等につきましても、単なるいじめというか、からかいだけではなく、相談されたことによって、その人が生きやすい、風通しのいい職場にしようとしてあえて皆に伝えたけれども、本人に相談もなくそれを広めてしまったがゆえに悲劇が起こってしまうような、そういう善意でやったことがまたかえって本人を傷つけることになったということもあるのではないかと思っております。一言本人に相談してくれればというような、そういった段取りがない場合もあるのではないでしょうか。

 そういったことも踏まえまして、改めまして、この実態の把握について、厚労省の見解を伺いたいと思っております。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 性的指向、性自認に関する不当な差別や偏見はあってはならないものでございまして、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権を尊重し、支え合う共生社会を実現していくことが重要であるというふうに考えております。

 こうした観点から、厚生労働省といたしましては、パンフレットあるいはモデル就業規則等を通じまして、性的指向、性自認に関する職場での理解促進や働きやすい職場環境づくりに取り組んできたところでございます。

 また、実態把握ということでございますが、職場におけます性的指向、性自認への対応等も多様であることがございますので、今年度、所要の予算を確保いたしまして、性的指向、性自認に関する実態あるいは企業の取組事例等につきまして調査をし、公表することを予定しているところでございます。

 こうした取組を通じまして、職場における性的指向、性自認に関する正しい理解を促進し、多様性を受け入れる職場環境の整備を進めてまいりたいというふうに考えております。

木村(弥)委員 ありがとうございました。

 多様性を認め合う、その価値を尊重し合うというのが、私は、この人口減少社会の中で、日本が更に発展していく中で非常に重要なキーワードではないかと考えております。

 この女性活躍推進法は、そういった意味でも、多様性を尊重していく、いろいろな価値観を進めていくというところで四年前に成立したものでありますが、女性管理職の数値目標等を定めたことが功を奏して、M字カーブのいわゆる谷間も改善傾向にあります。

 私の周りでも、子育てで一旦仕事をやめた高学歴の女性が、例えば夫の海外赴任に伴ってキャリアを中断した女性が、これまではなかなか再就職、生かす場がなかったということで、外資系の企業に流れていったという話を五年ぐらい前は聞いておりました。しかしながら、再雇用のチャンスが広がったことで、もともといた職場に戻ったり、また新たにキャリアパスを構築している、そういったお話も聞いております。

 こういった、女性の潜在力を生かしていく、子育てで一旦仕事をやめた方たちの女性の力を生かしていくという、この広がりをもっともっと続けていきたい。私自身も、子供が中学生になったときに、三十八歳で看護学校に行って看護師になったということは何度も申し上げております。

 こういったさまざまな人生経験をキャリアに生かせるように、例えば、今、この国では、PTA活動の経験ですとか、また、こういった子育て経験や介護の経験というのがキャリアとして評価されません。それを、女性が生き生きと、また働きたいという意欲のある人たちにはチャンスがある、そういった柔軟性のあるセカンドチャンスの門戸を広げることを更に更に進めていきたいと思いますし、お願いをしたいと思っております。

 次の令和の時代に、女性が更に自分らしさを大切に、そして可能性を発揮できるように私も微力ながらしっかりと力を尽くすことをお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、鰐淵洋子君。

鰐淵委員 公明党の鰐淵洋子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 私たち公明党は、女性が輝けば地域、社会が輝くとの信念のもと、女性の健康、仕事、子育て、教育等、女性の皆様からさまざま声をいただきながら女性の一生をサポートする、そういったことを目的として、さまざま政策実現を積み重ねてまいりました。今回の法改正におきましても、女性の人権が守られて、そして一人一人が輝く社会を実現するための法改正となるよう、強く政府にもお願い申し上げまして、具体的に質問に入らせていただきたいと思います。

 この女性活躍推進法でございますが、これは、我が国の職場での男女間の事実上の格差が大きい現状を踏まえて、女性が個性と能力を十分に発揮し、職業生活において活躍できることを推進するために、平成二十七年に成立し、翌年四月一日から施行されております。

 施行後三年を迎えますが、政府として本法案をどのように総括しているのか、まず大臣の方にお伺いをしたいと思います。

根本国務大臣 女性活躍推進法が平成二十七年九月に施行されて以降、民間企業における同法に基づく女性活躍の取組が着実に進展していると思っております。

 具体的には、常時雇用する労働者三百一人以上の企業に義務づけられている一般事業主行動計画については、ほぼ全ての企業から計画策定の届出をいただいております。また、この六年間で女性の就業者数が二百八十八万人増加し、子育て世代の就業率が八・八ポイント増加をいたしました。

 一方で、我が国の女性の年齢階級別労働力率は依然としていわゆるM字カーブを描いておりまして、仕事と家庭生活の両立や、諸外国と比べて低水準にある女性管理職比率などの課題があると考えています。

 今回の女性活躍推進法の改正は、施行三年後の見直し規定に基づき、このような状況を踏まえて労働政策審議会において議論を行ったものであります。この法改正により、女性活躍の計画的な取組を中小企業にも広げること、あるいは情報公表制度を強化することなどを通じて社会全体で女性活躍を更に推進し、誰もが能力を十分発揮し、生き生きと輝ける社会を実現していきたいと考えています。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 女性活躍は安倍政権の重要施策でもございまして、これまでもさまざま取組を講じてまいりました。その中で、今、大臣からも具体的な成果ということで、例えば就業者が新たに二百八十八万人増加したとか、あと就業率が上がったとか、そういった御報告もございました。

 具体的なこのような成果が見られる一方で、しかし、大臣の方からもありましたが、まだまだ課題があるのも事実でございます。

 例えば政治の分野でございますが、女性の参画、これは平成三十年二月の時点でございますが、女性議員の占める割合、衆議院におきましては女性の割合は一〇・一%、参議院議員は二〇・七%でございます。また、会社役員等に女性が占める割合ですけれども、これは平成二十九年労働力調査によりますと、一番高いフィリピンでは四八・九%に対しまして、日本では一三・二%でございます。

 そのほか、日本の女性研究者、これは平成二十九年版の男女共同参画白書でございますけれども、一五・三%でございます。これに対して、韓国では一八・九%、またアメリカでは三四・三%ということで、海外に比べても大変に低いということでございます。

 引き続き、それぞれの分野だったりまた業界でのお取組も重要になってくると思うんですけれども、しっかりと今後も女性の活躍の環境整備を加速させていく必要があるかと思っております。

 その中で、働く側、労働者側の生活環境また求めているニーズというものも多様化してきておりますので、それを踏まえた上での環境整備をしっかりと進めていかなければいけないと思っております。

 例えば、これもこれまでの課題でもありますが、育児、介護、こういったものとの両立だったり、地域参加、地域の活動への参加をしていく、また、これから人生百年と言われている中で、リカレント教育、学び直しをして、また更に力をつけて活躍をしていきたいという、そういった生き方が進んでいく中で、こういったことも含めて、雇用環境の整備、しっかりと労働者の方のニーズに応じた環境整備を更に進めていく必要があるかと思っております。

 これは、男女関係なく、職業生活と家庭生活を両立できる雇用環境整備が更に重要になってくると思いますけれども、これに取り組む大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 私も、委員の今のお話のとおりだと思っております。育児や介護、学び直しなど、さまざまな事情やニーズを抱える方々が個々の事情に合わせた働き方を選択し、その能力を発揮できる職場環境を整備することが重要だと考えています。

 このため、育児や介護等をしながら就業を継続できるよう、育児・介護休業法に基づく、例えば短時間勤務や残業の免除など両立支援制度の充実、あるいは働き方改革関連法に基づく長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進、そして、今もお話がありましたが、労働者の学び直しを支援するため、教育訓練休暇制度の導入促進、これは人材開発支援助成金というものを用意しておりますが、この導入促進などに取り組んできたところであります。

 今後も、これらの取組を一層推進することによって、誰もがワーク・ライフ・バランスを実現した働き方ができる職場環境の整備に努めていきたいと思います。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、職場環境の改善ということで、最終的には働き方に全部つながっていくかと思いますので、そういった意味で、ちょっと繰り返しになりますが、これから人生百年と言われる中で、学び直し、こういった充実を求める声だったり、また、高齢社会が進む中で、後ほども触れさせていただきますが、介護にかかわるということも大変に大きな割合を占めてまいります。そういった労働者の方のニーズに応じた環境整備ということで、ぜひ大臣を中心に頑張っていただきたい、取り組んでいただきたいということで、再度要望させていただきたいと思います。

 続きまして、特定認定制度のプラチナえるぼしについて伺っていきたいと思います。

 女性の職業生活における活躍の推進状況が特に優良な事業主を評価し、さらなる取組を推奨する仕組みといたしまして、今回、特定認定制度、仮称プラチナえるぼしが創設されると聞いております。この概要についてお伺いをしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 現行のえるぼし認定でございますが、これは三段階に分かれておりまして、現在、最も基準の高い三段階目の認定を受けた企業が最も多くなっている状況でございます。

 こうした中で、企業に対するインセンティブをより一層強化し、企業のさらなる女性活躍の取組を推進するため、えるぼし認定よりも更に基準の高いプラチナえるぼし、仮称でございますが、そうした認定を創設することとしたものでございます。

 えるぼし認定を取得することによりまして、認定マークを商品等に表示し、女性活躍に取り組む優良な企業であることを求職者等に対してPRでき、優秀な人材の獲得につながる効果が期待できるわけでございまして、プラチナえるぼしは更にということでございます。

 また、プラチナえるぼしにつきましては、取得企業は一般事業主行動計画の策定が免除されるということのほか、公共調達の際の加点評価についても検討しておるところでございます。

鰐淵委員 ありがとうございました。現行のえるぼし認定制度より更に水準の高い認定制度ということでございます。

 えるぼし認定制度はこれまであったものなんですけれども、取得している企業は年々増加をしていると伺っております。平成三十一年二月時点では八百十三社あると聞いておりますけれども、しかし、実際にはなかなか、認定されている企業を含めて、この認定制度のことがまだ知られていないように感じております。

 この認定制度は、女性活躍の取組を推進している企業ということで、それを国が認定することになりますので、それによって認定企業には女性の人材が集まってくると思っております。そういったことからも、事業主の皆さんが女性の活躍できる職場づくりに努力されている、取り組まれていることをしっかりと厚生労働省としても周知していただきたいということで、お願いを申し上げたいと思います。

 また、今後、この特定認定制度、仮称ですけれどもプラチナえるぼしは、例えば認定取得企業の数、目標をどのように定めてどのように取り組んでいくのか、今後の方向性も、ぜひ御見解をお伺いしたいと思っております。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただきましたように、この認定制度の周知を図っていくということは非常に重要な課題であるというふうに考えております。

 えるぼし認定の周知を図るために、これまでは、えるぼし認定を取得している企業名などを女性の活躍推進企業データベースあるいは厚生労働省のホームページ等において公表する、また、当該データベースとあわせまして、パンフレット、リーフレット等によりまして、特に就職活動中の学生さんに対する周知を図るというようなこともやってまいりました。また、えるぼし認定取得企業が認定取得によって感じている効果、メリット、あるいは取組事例といったものを調査し、これを当該データベースで公表するといったようなことも行ってきたところでございます。

 プラチナえるぼし制度につきましては、こうした取組を踏まえ、更に効果的な周知を図っていく必要があるというふうに考えておりまして、関係機関の協力を得ることを始めとして、いろいろ知恵を絞って効果的な周知に努めてまいりたいというふうに考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 今御答弁の中にも、女性の活躍推進企業データベースを開設しているということでございました。これも私も実際に見てみたんですが、ホームページからこちらにつながっているということで、それ自体もなかなか、本当に関心を持って行かない限りはそこに行き着かない、ちょっとまだまだわかりづらいなというものもございました。ぜひとも、これからの女性人材を各企業が確保していくというところで周知徹底も大事だと思いましたので、改めて、しっかりと対応していただきたいということを申し上げたいと思います。

 続きまして、女性活躍と介護について質問させていただきたいと思います。

 厚生労働省の調査によりますと、介護の担い手の約六割が同居の家族で、その男女比率はおよそ三対七、男性が三で女性が七となっております。家庭内では、依然として女性、とりわけ配偶者、また娘、息子の妻等が介護の担い手となっているという実証研究もございます。そのほか、内閣府の、平成二十六年の非就業者のうち、過去三年間に介護、看護を理由として離職した人の人数は、女性は十二万人、男性は三万人でありまして、女性は男性の四倍となっております。

 今後、高齢化の進展によりまして、介護はますます女性の生き方、働き方に大きな影響を与える課題になると思いますが、女性の活躍と介護について、厚生労働省の御見解をお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘をいただきましたように、介護を理由に離職、転職された女性労働者の数でございますが、減少はしておりますが男性の約三倍ということでございまして、女性に負担が偏っている状況にございます。女性活躍ということを考えますと、介護離職ゼロの実現に向けて、仕事と介護を両立できる環境の整備というのが非常に重要な課題だというふうに考えております。

 厚生労働省といたしましては、企業における仕事と介護の両立支援の取組が進みますように、育児・介護休業法に基づく介護休業制度の周知、あるいは、労働者の介護離職を防止するために職場において何に取り組むべきかということを示した、仕事と介護の両立支援対応モデルというものを事業主に普及していく、あるいは、実際に介護に直面した労働者が介護休業取得や職場復帰を図るための事業主による介護支援プランを策定できるように支援をしたり、助成金を支給したりといったことに取り組んでいるところでございます。

 また、介護の受皿整備も重要な課題でございまして、二〇二〇年代初頭までに約五十万人分の介護の受皿整備を進めるということにしておるところでございます。

 引き続き、こうした取組を着実に進めることで、介護と仕事の両立を実現できる環境というのを整備してまいりたいというふうに考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 介護の課題は、女性に限らず、先ほど申し上げましたが、高齢化が進んでいく中で、私たちの働き方、生き方に大きくかかわってくる課題だと思っております。

 また、先ほども申し上げましたが、家庭内の課題ではあるんですけれども、やはり依然として特に女性の負担というか役割が大きいということで、こういった課題がある中で、職場において、また地域社会において、しっかりと社会全体で高齢者の方を支えていくという、そういった仕組みづくりが更に重要になってくるかと思っております。

 そういった意味で、今具体的に、介護離職ゼロの取組だったり、また受皿の拡大ということでしっかり取り組むというお話がございましたけれども、その中でも、やはりどうしても、女性の負担と言ってはあれなんですけれども、かかわっているところが大きいというところがございますので、そういったことに配慮した上での介護離職者ゼロにしっかりと職場環境の整備も含めて取り組んでいただきたいということを、改めて申し上げておきたいと思います。

 その上で、介護に関連して、ちょっと具体的に、少し話はずれるんですけれども、質問させていただきたいと思っております。

 今後の取組といたしまして、言うまでもなく、要介護者の増加を抑制していくことが重要になってくるかと思います。

 これまで、要介護となる主な原因といたしまして脳血管疾患が言われておりまして、その中で、減少してきている、しかし一方で、転倒、骨折が原因となるケースがふえてきていると伺っております。実際に私の祖父も、転んで骨折をして入院をして、これを何回か繰り返しまして、最終的には寝たきりになって介護を受けるという、そういったこともございました。

 今後、介護予防という観点からも、高齢者の骨折対策を一層重視していく必要があると考えておりますが、厚生労働省の御見解をお伺いしたいと思います。

大島政府参考人 高齢者が要介護状態となることや要介護状態の悪化の防止を目的としまして、介護予防を推進しております。委員御指摘のとおり、骨折は介護が必要となる主な原因の一つでございます。介護予防の取組におきまして、骨折予防につなげていくことが重要であると認識しております。

 現在、介護予防の方法としまして、ハイリスクの高齢者に限るといったことをせずに、幅広く高齢者全般を対象とした通いの場の取組を推進しています。その中で、住民主体で体操等を実施して運動機能の向上を図るといった取組が多く実施されてきておりまして、これらは転倒予防に効果があると思われます。例えば荒川区では、転倒予防を目的とした荒川ころばん体操といったものを開発して実施しておりまして、住民同士の教室を開催して、交流にも役に立っているといった状況でございます。

 こうしたいい事例の紹介ですとかインセンティブ交付金の活用によりまして、取組を一層推進してまいりたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 各市町村で、例えば通いの場ということでそういった取組をしているということでございますけれども、骨折対策ということで、そのほか具体的には、健診時の骨密度検査、こういったことを推進するなど、地道な取組が重要になってくるかと思っております。

 例えば、大腿骨近位部、ここを骨折した女性が五年以内に再び骨折するリスクは、骨折したことがない女性の十七倍という報告もございます。普通ならまず折れることのない大腿骨近位部を骨折すること自体、骨密度が著しく低下をしていることであると思います。

 特に骨折のリスクの高い方につきまして、適切なケアを医療の現場で行っていくということが重要になってくるかと思いますが、それに対しての御見解をお伺いしたいと思います。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘いただきましたように、骨折予防を目的とする骨粗鬆症対策を推進することは重要な課題であると認識してございます。

 厚生労働省では、市町村が健康増進法に基づきまして実施する骨粗鬆症検診に対する補助を行ってございまして、平成二十九年度時点で、千七百三十七自治体のうち千八十五自治体、率にしますと六二・五%で実施をいただいている状況でございます。

 この検診の対象は、市町村に居住地を有します四十歳から五歳刻みで四十五歳、五十歳、五十五歳、六十歳、六十五歳、七十歳の女性を対象としてございまして、内容としましては、運動習慣や食生活等についての問診と骨量測定ということでございます。検診の結果で要指導に該当した場合につきましては、希望者に対して栄養や運動などの日常の生活習慣について指導してございます。

 これらの取組を行うに当たりましては、健康教育、健康相談等の保健事業や介護予防事業等と有機的な連携を図ることにより、適切な指導等が継続して行われるように配慮することとしてございます。

 さらに、高齢化が進展する中で、御指摘いただきましたが、骨量測定が必要なハイリスクな女性を効率的に見つけるための問診方法の開発などが現在進められているということを踏まえまして、厚生労働省として、骨粗鬆症予防マニュアルを改定するために必要な研究を今年度から実施する予定でございます。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 御存じだと思いますけれども、骨粗鬆症は圧倒的に女性が多くて、女性ホルモンの減少によって女性が多いということで、これから女性の皆さんが健康で長く活躍できる、そういった環境をつくる上での健康という部分でも大事な課題かと思っております。

 そういった意味で、骨粗鬆症は予防もできることですので、食生活また運動を含めてやはり適切なケアが重要だと思っております。そういった意味で、医療の現場で求めてくる人に対してやるのではなくて、基本的に予防するという観点でしっかりとこれは国で取り組んでいく必要があると思っておりまして、また機会がありましたらこの点も今後取り組ませていただきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、話はまた戻りまして、ハラスメント対策の強化について質問させていただきたいと思います。

 今回の改正案では、国の施策といたしまして、明確にハラスメント問題を解決するための必要な施策の充実を位置づけておりまして、ハラスメント対策に総合的に取り組まれることが期待をされております。しかし、現実には、職場におけるいじめ、嫌がらせに関する都道府県労働局への相談は平成二十九年度で七万二千件を超え、六年連続で全ての相談内容のトップとなっております。また、セクハラの相談件数は約七千件ということでございます。

 職場におけるさまざまなハラスメントは、労働者の尊厳や人格を傷つける人権問題でございまして、決して許されることではございません。まず、今回の法改正を通しまして、そのことを日本社会全体に広く周知していかなければいけないと思っております。

 ハラスメント対策について具体的に伺ってまいりますが、実効的に取組を進めるためには中小企業への配慮が必要であると考えております。しかし一方で、中小企業に対する取組がおくれてもならないと思っております。中小企業は人数が少なく人間関係も濃いですので、なかなか労働者が声を上げにくいという、そういったことも多いかと思います。また、マンパワーやノウハウが必ずしも十分とは言えないと思います。

 中小企業に対しまして、どのように支援をいたしましてハラスメント対策を進めていくのか、御見解をお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 中小企業については、先般の働き方改革関連法の施行時期も踏まえ、要は、労働時間の上限規制は二〇二〇年四月一日、同一労働同一賃金が二〇二一年四月一日施行ですので、これらの施行時期も踏まえて、十分な準備、周知期間を確保できるよう、パワハラ防止措置の義務化の施行時期を公布後三年以内の政令で定める日として、それまでの間は努力義務としています。

 この間を利用して、中小企業団体との連携や働き方改革関連法の内容の周知の機会も活用することによって、中小企業に対して措置義務の内容について周知徹底を図るとともに、中小企業などを対象とするセミナーやコンサルティングの実施、中小企業が適切な外部相談窓口を活用できるような支援策の検討などに取り組んで、中小企業がパワハラ、セクハラの予防、解決のための職場づくりを円滑に行えるように支援していきたいと考えています。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 特に、中小企業がしっかりと、さまざま課題がある中で働き方改革も進めていく、そういった中でハラスメント対策をしっかりと進めていくということが重要であります。

 そういった中で、今少し触れていただいたと思うんですが、外部相談窓口も今回新たに設置すると聞いております。ちょっと確認させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

小林政府参考人 相談窓口の件でございますが、中小企業につきましてもハラスメントの相談体制を整備していただくということが必要なわけですけれども、中小企業につきましては、なかなか自社内で相談体制を確保するということには困難を伴う場合もあるであろう。したがって、中小企業が外部の相談窓口を活用しやすくするということを支援していく必要があるというふうに思っておりまして、これは今後の予算確保等が必要となってまいりますが、中小企業が外部の相談窓口を活用する際の支援策といったことも検討してまいりたいというふうに考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。しっかりと対応していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 続きまして、パワハラについては、自社の労働者等によるハラスメント行為だけではなくて、取引先や顧客からの著しい迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメントについても労働者に大きなストレスを与える大変に深刻な問題でございます。

 これも先ほども御質問でございましたけれども、どこまでが相当な範囲のクレームなのか、どこからが嫌がらせなのか、そういった判断が難しいという課題もございます。また、取引関係があるということで相談しにくい、そういったこともある中で、しかし、このカスタマーハラスメント対策をしっかりと講じていく、人権を守るためにも、また働きやすい環境をつくっていくためにも必要であると思っておりますが、御見解、取組をお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 顧客や取引先等からの迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメントでございますが、労働者に大きなストレスを与える悪質なケースもございまして、安全配慮義務の観点からも、労働者へのケアなど必要な対応を企業に促していくということが重要であるというふうに考えております。

 このため、今後、パワハラ防止措置に関する指針におきまして、顧客や取引先等からの迷惑行為に関する企業の望ましい取組を明示していくということにしたいと考えております。

 また、顧客や取引先等との関係につきましては、例えば元請、下請関係にある場合がある、あるいは、消費者への周知啓発が必要であるといった場合もあると考えられるところでございまして、関係省庁とも連携をして、社会的な啓発活動ということにも力を入れてまいりたいというふうに考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 最後に、セクハラ防止対策について伺って終わりたいと思います。

 今回の改正案では、セクハラに関する相談を行った労働者に対する事業主による不利益取扱いの禁止を法律に規定するものでございまして、被害に遭った労働者が相談しやすい環境を整備するということで一歩前進したとは思いますが、しかし、これの実効性をいかに確保していくかが課題であると思っております。ここがしっかり確保されない限りは労働者が安心して相談できないと思っておりますが、この実効性の確保について、最後にお伺いをしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の法案におきましては、労働者が相談等を行うことにちゅうちょすることがないよう、労働者がセクハラ等に関して事業主に相談したこと等を理由とした不利益取扱いの禁止規定を置いております。これに違反した場合は、男女雇用機会均等法二十九条等に基づきまして行政指導の対象となるということでございまして、状況に応じて助言、指導若しくは勧告を行うことになりますし、勧告に従わない場合には、同法第三十条に基づいて企業名公表の対象にもなってくるということになります。

 こうした形で履行確保を図っていくということも含めて、今回の改正の趣旨や内容について積極的な周知広報を行い、セクハラを受けた労働者が相談しやすいような環境づくりに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。女性の権利を守るためにハラスメント対策をしっかりとやっていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党・無所属フォーラムの阿部知子です。

 本日の審議は、女性活躍推進関連の法案とあわせてハラスメント関連法案ということでありますが、私は、そもそも、これを一緒に全部まとめてやろうというのがすごく無理があると思います。女性活躍に今緊急に求められる政策課題もありますし、ハラスメントの方はより深刻な現状をはらんでおります。

 しかし、これは委員会の仕切りでありますので順次質問をさせていただきますが、大事なことが何もかも一緒になってということで結局実りが少なくなると思いますので、特に閣法でありますから、与党にあってはお考えをいただきたいなと思います。

 まず、質問の一番目というか、きょうは主にハラスメント関係を取り上げさせていただきます。

 そもそも、二〇一三年の五月、国連の社会権規約委員会勧告、あらゆる形態のハラスメントを禁止、防止するための立法規制の制定ということがなされ、次いで、二〇一八年の六月のILO総会で、労働の世界における暴力及びハラスメントの規制について議論が行われて、ことしの六月にも、労働の世界における暴力とハラスメントの除去に関する条約が採択される方向にあります。

 ILOの調べでは、直近の調査した八十カ国中六十カ国が直接の禁止、すなわちハラスメント禁止の法令をつくり、また、G7ではそうしたものがないのは日本だけだということであります。

 ここで根本大臣にお伺いいたしますが、今回の法案については、パワハラは労働施策総合推進法、セクハラ並びにマタハラは男女雇用均等法そして育児・介護休業法の改正と、おのおの別途の法律を改正していくという手法をとっておられますが、そもそも、ハラスメントは人権侵害であるという観点に立った、あらゆるハラスメントの包括的な規制をなぜなさらないのか、この点についてお伺いいたします。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

根本国務大臣 委員の今のお話にあった包括的な禁止規定をなぜ設けないのかということでありますが、ハラスメントの禁止規定を設けることについては、昨年十二月の労働政策審議会、ここで御議論していただいていたわけですけれども、この建議において、中長期的な検討を要するとされました。

 しかし、職場におけるハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるものであって、あってはならないものであります。御指摘のように、ハラスメント対策全般について総合的に取り組んでいくということは重要な課題だと考えております。

 今回の政府提出法案では、労働施策総合推進法第四条の国の取り組むべき施策にハラスメント対策全般を充実することを明記するとともに、パワーハラスメントを防止するための事業主の措置義務を設け、また、国、事業主及び労働者の責務規定や、労働者からの相談を理由とした不利益取扱いの禁止規定を共通に設けることによって、ハラスメント防止対策全体の強化を図ることといたしました。

 今回の法案でハラスメント対策は大きく前進するものと考えております。今後とも、ハラスメントのない職場づくりを一層推進していきたいと考えております。

阿部委員 前進がないとは申しません。ただ、大幅におくれていると思います、諸外国に比べて。

 大臣のお手元に、EU諸国の職場におけるハラスメント規制立法の一覧、これは挙げられている限りでもっとあると思いますけれども、ドイツ、フランスなどを見ていただければ、個人の尊厳を侵害し脅迫的、下劣な、屈辱的、攻撃的環境をつくり出す、あるいは、労働者の権利や尊厳を侵害し、その肉体的あるいは精神的健康を悪化させ、以下云々。

 すなわち、今、大臣は職場環境のことだけおっしゃいましたが、働いているその方自身にやはり著しい問題を生じせしめる。働き方改革の中で私は一方の大きな車輪だったと思います。

 今、職場環境の中で、いわゆるうつで休職、あるいは自殺などの問題が大きいことは、大臣もお認めになるところと思います。

 そして、あけて一枚めくっていただきますと、これは平成三十年七月二十四日の閣議決定でありますが、ここにおいては、過労死に結びつきかねない職場のハラスメントということの認識の上に、やはりある意味、総合的にハラスメントについて目配りをしている閣議決定なんだと私は思います。

 しかし、それが年末の労政審の建議を経て今のような形のものになり、とりわけ今般の法規制の中では、職場のパワーハラスメントは、優越的な関係に基づく、あるいは業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動、そして三つ目が労働者の就業環境を害するとなってございますが、実は、ハラスメントは、例えば職場においても必ずしも優越的な関係だけで生じるものではありません。

 いろいろな調査がございますが、垂直、上から下へのハラスメント、水平、仲間同士のハラスメント、それから下から上へのハラスメントなどがあるのはもう広く知られたことであります。私は、この建議に基づく政策というのは、やはり全体を見ていないと思います。

 そして、その結果として、じゃ、私のがマタハラなのかパワハラなのか、まあ、マタハラはわかりやすいかもしれない、パワハラかセクハラか。あるいは、私がそれをそう思ったんだ、働いている私がそう思ったんだという、労働者側からのそういう声によってスイッチが入るものではない形に分断されております。職場の優越な関係に基づくか、業務上必要な範囲を超えたかどうか等々。私は、これでは政策は一歩進んだとは言えない。

 しかし、こういう法案で出てきておりますので、せめて大臣にお願いがありますが、これからこうしたさまざまな働く側からの、自分がハラスメントを受けている、これは理不尽だと思ったときの、労働局雇用環境・均等部が窓口になる。先ほど伺いました七万二千件、うちセクハラ七千件等の窓口ですね。ここにしっかりとした人員の配置、特にセクハラ関係についてはそれが強く求められると思いますが、ここの充実についての御意見を伺います。

根本国務大臣 まず、我々、指針で丁寧に書きたいと思っておりますが、例えばセクハラ指針、マタハラ指針においては、事業主は、相談に当たっては職場におけるセクハラに該当するか否か微妙な場合であっても広く相談に対応すること、あるいは、セクハラやマタハラとパワーハラスメントなどのその他のハラスメントは複合的に生じることも想定されますので、あらゆるハラスメントを一元的に受け付ける体制を整備することが定められておって、事業主に対してこれらについて取り組む旨周知しているところであります。

 また、今お話しの都道府県労働局、ここでは、雇用環境・均等部や総合労働相談コーナーにおいて、パワハラ、セクハラ、マタハラの別を問わず、相談を受け付ける体制としております。その上で、労働者の相談内容に応じて専門の相談員等に取り次ぎ、速やかに必要な対応をとることとしています。

 あわせて、今年度から、ハラスメントについて平日の夜間や土日も対応するフリーダイヤルなどによる相談窓口を設置する予定であります。労働者などの相談に迅速に対応し、ニーズに応じた支援につなげられるよう、対応を充実していきたいと考えています。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 一元的受け付けは当然重要なことで、ですから、一元的に禁止するような法体系にしていただきたいと重ねて申し上げます。

 あわせて、今回のいろいろな施策には大きな問題があると思います。

 二〇一二年の三月十五日、そもそも、こうしたハラスメント問題で提言がございました。そのときの提言の中身は、「精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる」と、横並びでこのハラスメントの問題を取り上げておりました。

 お手元の資料三ページ目、開いていただきますと、「職場のパワーハラスメントとは、」云々、「精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる」という書きぶりでありました。ところが、今般の施策においては、特に建議においては、「労働者の就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)」と、括弧の中に入れ込まれてしまいました。

 AオアB、すなわち、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境が悪化する、これはおのおの独立したことであります。括弧の中にくくられていいものではないし、被害者の視点、すなわち、本人、働く側の視点が職場の雇用環境や労働環境の陰に隠れてしまうと思いますが、いかがですか、大臣。

根本国務大臣 御指摘のとおり、昨年三月の職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会、この報告書においては、パワハラの三つ目の要素は、「身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること」とされておりました。

 現在のセクシュアルハラスメント等の防止措置義務の規定において、就業環境を害すること、これが法律上の要件とされております。このため、パワーハラスメントについても、法律上は同様に、就業環境を害することという要素を規定して、身体的若しくは精神的な苦痛を与えることはその具体的な意味内容を指すものと位置づけることが適当と考えられたので、労働政策審議会の建議では、御指摘のように、「苦痛を与える」という部分は括弧書きで付記される形となりました。

 このような就業環境を害することの具体的意味については、今後、労働政策審議会で議論をするパワーハラスメントに関する指針においてわかりやすくお示しをしていきたいと考えています。

阿部委員 学校のいじめ問題でも、学校環境が害されたからいじめなんじゃないんです。本人がいじめと感じたときなんです。ここを大きく逆転させてしまっては、私はハラスメント対策のもとが崩れると思います。

 引き続いて、人事院にお伺いいたしますが、二〇一五年七月に人事院職員福祉課が作成したパワー・ハラスメント防止ハンドブックの中では、今私が申し上げた、「人格と尊厳を侵害する言動を行い、精神的・身体的苦痛を与え、あるいは職場環境を悪化させる」と併記されております、人事院においては。これは今でもそうですよね。人事院のガイドラインのハンドブックにあるとおりですよね。いかがですか。

柴崎政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御紹介のございました人事院作成のパワー・ハラスメント防止ハンドブックにおきましては、パワーハラスメントの概念として、「一般に「職務上の地位や権限又は職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、人格と尊厳を侵害する言動を行い、精神的・身体的苦痛を与え、あるいは職場環境を悪化させること」を指すといわれています。」というふうに記述しているところでございまして、このハンドブック等を用いまして、公務におけるパワーハラスメントの防止に努めているところでございます。

阿部委員 明らかな官民格差になりますよね。だって、私は、公務員にパワハラ、モラハラが多いという、これは諸外国のデータです、やはり圧倒的に多いと言われています。ですから、きちんと人事院がこういう対応をなさることは正しいと思います。

 その一方で、民間も同じように、要するに人格と尊厳を侵害された行為なんだ、雇用者側の都合じゃないんだと。ここはすごく重要です。精神的、身体的苦痛を与えられたと本人が思うところからスタートしないと、本当の解決にはならないと思います。何で官民格差でいいんですか、根本大臣。御答弁お願いします。

根本国務大臣 先ほど申し上げましたが、パワーハラスメントの法律上の定義としては、雇用機会均等法におけるセクシュアルハラスメントなどの措置義務の規定ぶりを踏まえて、法律上の定義は就業環境を害することとしておりますが、しかし、委員がおっしゃるように、身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、これは、具体的な意味内容として重要な要素であります。

 このようなパワハラの定義の具体的な意味内容について、今後、労働政策審議会で議論をするパワーハラスメントに関する指針においてわかりやすくお示しをして、周知を図っていきたいと思います。

阿部委員 私が申し上げたいのは、ハラスメントの本質とは何かということです。ここに書かれているように、「人格と尊厳を侵害する」というふうに立てないと、何度も申し上げますが、きちんと対策がなされない。

 そして、今回の建議に基づくいろいろな施策では、大きく抜け落ちるものが二つあると思っております、加えてですが。

 資料の四ページ目をおめくりいただきますと、これはいわゆる駅員さんたちが乗客から受ける暴力行為の発生件数を、上のグラフ、二〇〇五年から二〇一六年まで並べてございますが、年間に七百件余り、中には酔ったお客さんもおられましょうし、暴言、胸ぐらをつかまれた、殴られるなどの被害が相次いでおります。

 しかし、今回の建議に基づく施策では、同じ職場内の、中での出来事であって、こういう第三者からの暴力問題は完全に排除されております。

 野党の対案の中でこれはきちんと対策すべきとされておりますが、この点については、今後、政府としてはどのように考えていくのか、御答弁をお願いいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 取引先や顧客からのいわゆるカスタマーハラスメントでございますが、社外の相手との関係で起きる問題であり、顧客等への対応業務には一定程度のクレーム対応が伴うといったこともあることから、どこからが迷惑行為に当たるかといった判断が社内のパワハラ以上に難しいということ、また、再発防止まで含めた一連の措置を課すということは難しい面があるということ、そうしたことを踏まえまして、今回、措置義務の対象には含めないという整理をしておるところでございます。

 一方で、御指摘のように、労働者に大きなストレスを与える悪質なケースもあるわけでございまして、安全配慮義務の観点からも、労働者のケアなど必要な対応を企業に促していくことは重要でございます。

 このため、パワハラ防止措置に関する指針におきまして望ましい取組を明示するとともに、カスタマーハラスメントに対する社会の認識を高めていくための啓発等にも積極的に取り組んでいくこととしております。

 また、御指摘いただきましたように運輸関係、あるいは医療、学校といったところも御指摘いただいておりますが、第三者からのハラスメントというのは、一部の業界分野等で特に問題となっているということもございますので、そういった関係省庁などとも十分連携をいたしまして、実効性が上がるような取組にしてまいりたいというふうに考えております。

阿部委員 戻りまして、皆様のお手元の資料の平成三十年七月二十四日の閣議決定の中でも、今あるそうした暴言等々第三者からの行為が、「労働者に大きなストレスを与え、無視できない状況にあるという問題が明らかになったとされた。」と述べてございます。

 必要な対応を検討していくということですが、可及的速やかでないと、私は、実際の現場で働く労働者が心身ともに傷ついてまいりますので、難しいからと後送りせず、この点についても早急な検討を求めますが、大臣、確認答弁をお願いいたします。

根本国務大臣 今局長からもお話をしたとおり、やはりこれはしっかりと普及啓発を図って、社会全体として、こういうパワハラは認められないんだ、こういう機運を醸成させていく、これが私も大事だと思います。

 その意味で、関係省庁とも連携をとりながら、この問題についてもしっかり取り組んでいきたいと思います。

阿部委員 もう一つ積み残された重要な課題があって、お手元の資料の四枚目の下の段です。これは何を示しておるかというと、いわゆる自営業、フリーランス、クラウドワーカーなどの方がどのような状況に置かれているかをJILPTの調査で示したところであります。「セクハラ・パワハラ等の嫌がらせを受けた」というのが下から二段目にございますが、全く解決していないというのが五六・五%、自営業という形態で働く方はセクハラ、パワハラを受けても、全くですよ、未解決のものもあるまで含めればもう七割、八割ですね。

 これから政府は、いわゆる在宅勤務を含めて自営業の新しい形を広げていこうとされているわけですから、これも私は早急な課題と思いますが、御答弁をお願いいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案におきまして、ハラスメントを行ってはならないこと、あるいはそれを踏まえて他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきこと、そういったことを、国、事業主、労働者の責務として明確化しておるところでございます。

 男女雇用機会均等法等は、労働法制ということもございまして、対象は労働者ということに限っているわけでありますけれども、自営業者あるいはフリーランス等の労働者以外の方に対する言動についても同様に注意を払うということは当然望まれるところでございます。

 また、事業主は、ハラスメント防止のための措置義務として、ハラスメントがあってはならない旨の方針の明確化等の予防措置を講ずることとされておるところでございますが、この場合におきましても、自社の労働者以外の求職者あるいは個人事業主等に対してもハラスメントは行ってはならないということをあわせて示していただくということにすれば、企業の対応というのも相当前進するのではないかというふうに考えております。

 こういった責務規定の趣旨ですとかあるいは措置義務の予防措置に関する企業の対応を促すことができるように、今後の指針の検討におきましては労政審においてしっかりと議論を行っていただきたいと思っております。

 それから、いわゆるフリーランスなどの雇用類似の働き方につきましては、現在、雇用類似の働き方に関する論点整理に関する検討会というのを開催しておりまして、そこで保護等のあり方についても検討しているところでございます。

阿部委員 私は、今回の法改正が働き方の変容に追いついていないと思うんです。こういう多くのものを取りこぼしたまま、形式だけ三つの法律にばらばらに分けて禁止しても、そこからはみ出た部分の方がもしかして多くなってしまうかもしれない。それゆえに、全般的に、ハラスメント自身はいけないんだ、だめなんだ、いじめなんだ、やっちゃいけないんだという法規定を社会の中に打ち出すことこそ政治の役割と考えます。大臣はおわかりと思いますし、また、今の当局の御答弁で、おくればせでもしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 最後は、いわゆるセクハラ問題でお伺いをいたします。

 このセクハラこそ、もう百年河清を待つどころか、どんどんひどくなる問題であります。昨年の財務事務次官による女性記者に対するセクハラ問題で麻生大臣は、セクハラという罪はない、こういうふうにおっしゃいました。セクハラという罪はないと放言されました。

 しかし、もう十数年になる雇用均等法において、いわゆるセクハラの相談窓口が必置とされても三六・五%しかまだないんですよ、窓口すらも。大臣はそうした罪はないんだとあたかも居直る。本当にひどい状況と思います。

 根本大臣は、このセクハラ問題、特に私はお考えを伺いたいです。これこそきちんと禁止しないと本当にもうとんでもない事態が、恥の国になってしまいます。よろしく御答弁をお願いします。

根本国務大臣 セクハラは、働く人の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるものであって、あってはならないことであります。

 そして、セクハラ防止対策については、平成十九年度に措置義務を導入して履行確保や定着支援に努めてまいりました。

 平成二十九年度の調査結果によれば、三百人以上九百九十九人以下の企業では九七・四%、取組状況ですが、千人以上四千九百九十九人以下の企業では九九・五%、五千人以上の企業では一〇〇%がセクハラ防止のための対策に取り組んでおります。ただ一方で、中小企業も含めた十人以上の企業全体では六五・四%にとどまっており、主に中小企業に対する履行確保が課題となっております。

 やはり、今回、パワハラ防止の法整備にあわせて、中小企業団体との連携や働き方関連法の内容の周知の機会も活用し、中小企業に対して措置義務の内容について周知徹底を図るとともに、ハラスメント撲滅月間を設定して、シンポジウムの開催などによる集中的な周知啓発の実施や中小企業等へのセミナーやコンサルティングの実施などによって、中小企業において適切に措置義務の履行確保が図れるように対応していきたいと思います。

 そして、今回の法改正では、セクハラ対策の実効性のさらなる向上を図るために、セクハラは行ってはならないものであり、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきことを、国、事業主及び労働者の責務として明確化するほか、労働者が事業主にセクハラの相談を行ったことを理由とした不利益取扱いの禁止、自社の労働者などが他社の労働者に対してセクハラを行った場合の他社の講じる措置への協力の努力義務の新設などを今回の法改正で行っておりまして、これによってセクハラのない職場づくりを一層推進していきたいと思います。

阿部委員 大臣が一生懸命御答弁くださいましたけれども、全く不十分。そして、先ほど申し上げましたように、現在でも相談窓口は三六・五%しかないんですよ。それから、管理職研修一六・三、全労働者に対する研修一一・四、相談窓口担当者への研修三・四。もうとてもとても目も当てられない。

 ここで、対案を出された方にお伺いをいたします。

 本対案ではセクシュアルハラスメントについて明確に禁止規定を設けておられますが、その趣旨はどのようなものなのかというのが一点。それから、いわゆる就職活動中の学生、今大変に問題が多くなっております。あるいはフリーランスの方、先ほど私が例示いたしました。そういう方についてもこういうセクシュアルハラスメントの対象としているのかについて御答弁をお願いいたします。

尾辻議員 セクシュアルハラスメントは、従業者等の心身を害し、その生活に深刻な影響を及ぼすものです。

 セクシュアルハラスメントに対しては、まず、法律においてセクシュアルハラスメントの禁止を明確に私たちの法案では宣言し、その前提のもと、緊急に対策を講じていかなければならないと考えております。

 ところが、現行の男女雇用機会均等法は、事業者の措置義務を規定していますが、セクシュアルハラスメントを行うこと自体を禁止する規定はありません。そのために、例えば、先ほどおっしゃいました、セクハラ罪という罪はないなどという発言に象徴されるように、セクシュアルハラスメントは悪いものであるという認識が十分に浸透しておらず、依然としてセクシュアルハラスメントによる被害は後を絶ちません。

 そこで、セクシュアルハラスメント禁止法案では、セクシュアルハラスメント自体を禁止することを明記し、セクシュアルハラスメントが法的に禁止された違法なものであることを明確にしております。これにより、セクシュアルハラスメントが許されないものであるという認識を浸透させ、セクシュアルハラスメントが行われることを防止し、もって従業者等の職業生活の充実等を図ることとしております。

 もう一問、セクシュアルハラスメントの被害者の範囲ということで御質問がありました。

 本法案で禁止するセクシュアルハラスメントの対象としては、セクシュアルハラスメントの被害者として一般的に念頭に置かれている労働者をまず当然の対象としております。

 その上で、最近では、就職活動中のセクシュアルハラスメントやOB訪問の機会を悪用するなど、内定をとりたいという就職活動中の学生の心理につけ込んだ卑劣きわまりないセクシュアルハラスメントが社会問題となっております。それにもかかわらず、就職活動中の学生は、雇用関係にないことを理由として、現行の男女雇用機会均等法ではセクシュアルハラスメントからの保護の対象とされておりません。

 しかしながら、雇用の入り口に立とうとしている就職活動中の学生についても、既に雇用関係にある労働者と同様に、セクシュアルハラスメントの被害を受けないように守らなければならないという点において両者に違いはありません。就職活動においてセクシュアルハラスメントの被害を受けたことにより、就職活動を行うことに支障が生じたり、中には就職すること自体を諦めてしまう学生もいると思います。学生が将来の可能性を広げるために行っている就職活動が、かえってその選択肢を奪ってしまうということは絶対にあってはならないことです。

 また、企業に属していないいわゆるフリーランスの方についても、契約を解消されるおそれがあるという弱い立場から、セクシュアルハラスメントの被害を訴えにくい環境にあるにもかかわらず、現在のところ、雇用関係にないという理由で保護が図られておりません。

 そこで、私たちのセクシュアルハラスメント禁止法案では、採用面接やOB訪問等における就活生へのセクシュアルハラスメントやフリーランスの方へのセクシュアルハラスメントについても禁止の対象として、保護を図ることとしております。

 このように、本法案では、禁止しているセクシュアルハラスメントの被害者の範囲を、既に雇用関係にある労働者だけではなく、就活生やフリーランスの方まで広く規定することにより、これらの方々を保護し、職業活動の充実等を図ることとしております。

阿部委員 酒の席に連れ出して暴行を振るう等、恥ずかしいことばかり起きております。社会規範として、セクハラは罪なのです。

 そのことをしっかりと申し上げて、終わらせていただきます。

冨岡委員長 次に、池田真紀君。

池田(真)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの池田真紀です。よろしくお願いいたします。

 きょうは、閣法、あと議法とありますけれども、先ほどから閣法の方もずっと続きましたので、まず議法の方からちょっと御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、今回の法案につきましては、セクシュアルハラスメントについては明確に禁止規定を議法の方では設けている、この趣旨についてお伺いをしたいと思います。

西村(智)議員 セクシュアルハラスメントの禁止の趣旨でございます。

 先ほども尾辻委員、提出者から答弁がありましたとおり、なかなか、セクシュアルハラスメントが発生しても対応が十分にとられていない、もう既に参考人の質疑でも明らかになりました。また、セクハラ罪という罪はないという昨年の発言にありましたとおり、セクシュアルハラスメントをやってはいけないことだという認識が社会的にまだ広がっていないように思われます。

 これについて対応すべく、私たちとしては、今回、禁止という規定を入れたものでございます。

池田(真)委員 この禁止規定なんですけれども、セクハラは、いろいろな現場で被害に遭った方々が声を上げても、なかなか相談体制といったものが実行されないといいますか、適切に実行されない実態があります。

 こういった状況の中で、一人一人に寄り添った支援がなされる必要があるということでありますが、今回の法案におきまして、禁止を前提にした上でですけれども、被害者に対する支援そしてその施策といったものが規定されていますけれども、この具体的な内容をお伺いしたいと思います。

 二点続けてお伺いさせていただきたいと思いますが、一点目は、まず、事業主に対してどのような責務が課せられているのか、そして二点目は、国、地方公共団体の施策としてはどのようなものが規定されているのか、お答えいただきたいと思います。

西村(智)議員 ありがとうございます。

 まず、事業者に対しての責務ですけれども、先ほども申し上げましたとおり、本法案では、セクシュアルハラスメントの禁止を明確に宣言するという前提のもと、その禁止規定に違反してセクシュアルハラスメントが行われてしまった場合について、被害者に対する支援その他の施策を定めております。

 まず、事業者は、セクシュアルハラスメントの加害者に対して戒告、減給、降格や懲戒解雇等の懲戒処分を行うほか、加害者がセクシュアルハラスメントについて真に理解し、みずからの責任を認識して更生するための研修の実施など、セクシュアルハラスメントに対処する措置を講じなければならないものとしております。

 さらに、事業者には、セクシュアルハラスメントの被害者に対して、そのセクシュアルハラスメントについての事実関係や、公的機関による援助の仕組みなど被害者が利用できる制度の情報の提供その他の必要な措置を講ずる義務も課しております。

 これらにより、まずはセクシュアルハラスメントの被害者を雇用する事業者において、被害救済に向けた適切な対処を行うこととしております。

 次に、国、地方公共団体の施策ですけれども、まず、従業者等が行った言動に関する事実関係を調査した上で、それが本法案におけるセクシュアルハラスメント、すなわち業務等における性的加害言動に該当するかどうかを判断し、その結果を就業環境の改善等に適切に活用するための体制の整備を行うものとしております。

 これは、セクシュアルハラスメントの司法的救済が被害者にとって簡易な救済制度とは言いがたいということに鑑み、行政が主体となって、専門的知見を有する第三者により構成される新たな公的救済機関を創設し、その機関が調査や判断、助言及び勧告等を行うことを想定したものです。

 あわせて、国及び地方公共団体は、被害者の行う損害賠償請求についての援助その他の必要な施策を講ずるものとしております。具体的には、日本司法支援センターによる支援や、損害賠償請求制度等に関する情報提供の充実などを想定しております。

 さらに、このような被害者の支援等の実施に当たって、二次被害が生じないよう、国及び地方公共団体は、その名誉及び生活の平穏に十分配慮しなければならないことも規定をしております。

 これらの施策は、被害に遭われた方一人一人に寄り添った支援を行い、セクシュアルハラスメントに関する紛争を迅速かつ適切に解決することに資するものと考えております。

 なお、セクシュアルハラスメントの禁止と、その違反の場合の被害者に対する支援などの施策等の実効性を確保するためには、広く国民の中でセクシュアルハラスメント及びこれにより生ずる問題についての関心と理解を深める必要があると考えます。そこで、国及び地方公共団体について、そのための国民の啓発の推進その他の必要な施策を講ずるものとしております。

 以上です。

池田(真)委員 すごく、独立した機関で対応していただけるということで、また迅速な対応ということで、非常に前進というか現実に即しているなというふうに思いますので、閣法の方も、こういった、いいなというところはぜひ組み入れていっていただきたいというふうに思います。

 そして、済みません、もう一つ議法の方で質問をさせていただきたいと思います。

 パワーハラスメントですが、企業内で行われるだけではなくて、先ほどからもお話がありますように、取引先とか他社の労働者、さまざまな関係者からも行われるということも多くございます。このような企業横断的なパワハラについての、この法案について、事業主の措置義務の対象、中身についてもお伺いできればと思います。

西村(智)議員 ありがとうございます。

 いわゆるパワーハラスメントですけれども、労働者に対して業務上の優越的な関係がある場合に優越的な立場にある者によって行われる、現行法はそのように理解をしております。

 このような業務上の優越的な関係は、具体的には同一企業内における上司と部下の関係が典型ではありますが、同一企業内だけに存在するものではなく、親会社の従業者と子会社の労働者の関係や、元請会社の従業者と下請会社の労働者の関係などにおいても存在するものと考えられます。そのため、パワーハラスメントは、御指摘のように、企業内だけで行われるものではなく、取引先などとの間における企業横断的なものも重大な問題となっているところであります。

 このような取引関係における企業の労働者の間のパワーハラスメントを防止し、労働者の保護を図るためには、企業横断的な対策が不可欠と言えます。つまり、被害者側の事業者が十分な措置を講じていたとしても、加害者側の事業者がその労働者や役員に対してパワーハラスメントを行わないように措置を講じていなければ、パワーハラスメントの根絶を図ることはできません。

 そこで、我々のパワハラ規制法案では、同じ会社内でのパワーハラスメントだけではなく、他社の労働者に対するパワーハラスメント、他社の従業者からのパワーハラスメントについても広く事業者の措置義務の対象としております。

 他社の労働者に対するパワーハラスメントについては、事業者に対し、その従業者が他社の労働者にパワーハラスメントを行わないように必要な措置を義務づけることとしております。具体的には、事前の措置として従業者に対する研修の実施など、それから事後の措置として、事実関係の調査やパワーハラスメントを行った従業者に対する懲戒等といった迅速かつ適切な対応などを講ずることを想定しております。

池田(真)委員 今と同じ質問を閣法にしたいなと思っているんですが、議法についてはこれで質問を終了させていただきますので、ありがとうございました。

 引き続き、今の、取引先や顧客についての著しい迷惑行為について、今回、閣法の方で対象としなかった理由をお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 取引先や顧客からのいわゆるカスタマーハラスメントでございますが、社外の相手との関係で起きる問題であり、顧客等への対応業務には一定程度のクレーム対応が内在していることもあることから、どこからが迷惑行為に当たるかといった判断が社内のパワハラ以上に難しいということ、また、再発防止まで含めた一連の措置を課すことも難しい面があるということ、こうしたことで、措置義務の対象には含めないという整理をいたしております。

 一方で、労働者に大きなストレスを与える悪質なケースもあるわけでございまして、労働者のケアなど必要な対応を企業に促していくことは重要でございます。このために、パワハラ防止措置に関する指針におきまして望ましい取組を明示する。あわせて、カスタマーハラスメントに対する社会の認識を高めていくための啓発等にも積極的に取り組んでいく。

 指針の内容につきましては今後労政審で議論することになるわけでございますが、介護、看護の現場あるいは学校現場等で特に深刻な問題となっていることも踏まえて、適切な内容となるようにしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。

池田(真)委員 今ちょっとおっしゃった一言、社会の認識を高めていくというお話がありました。具体的にはどういうことをお考えでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 顧客等からのいわゆるカスタマーハラスメントというのは、例えば消費者であるとか、あるいは患者の御家族の方、あるいは学校の保護者の方等々の行動規範というか行動の仕方というところにかかわってくる問題でございまして、そういったところにやはり踏み込んで啓発をしていかないとこの問題の本質的な解決につながらない部分があるんじゃないかということで、そういった社会的啓発というのにこれから取り組んでいく必要があるということで申し上げたところでございます。

池田(真)委員 その具体的な方法を今お伺いしたんです。例えば、ポスターでとかインターネットでとか、あるいは具体的なプランニングをするとか、どのようなお考えが今の段階でありますか。

小林政府参考人 具体的な方策についてはこれからの検討ということになりますが、それぞれの業界等を所管している関係省庁がございますので、そういった関係省庁と十分連携をする、そして業界団体等を巻き込んで対応していくということで、そういった形で効果的な方法というのをこれから検討していきたいというふうに思っております。

池田(真)委員 それでは、そのほかの質問をさせていただきます。

 この間もありましたけれども、就業率が上がった上がったという話を何度か伺いました。実際に、女性の就業者の所得といいますか、男女の賃金格差の実態はどうなっていますでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 女性の賃金でございますが、平成三十年の賃金構造基本統計調査によりますと、二十四万七千五百円でございます。男女間賃金格差につきましては、男性の賃金を一〇〇としたときに、女性の賃金が七三・三ということになっておるところでございます。

池田(真)委員 男女の賃金格差についての見直しといいますか、どうやって埋めるかというような検討は、この間、具体的にされたのでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 男女の賃金格差の要因ということになりますと、勤続年数あるいは役職、年齢、学歴などさまざまでございますが、主な要因ということを分析いたしますと、管理職比率そして勤続年数の差異ということになるわけでございます。

 したがいまして、女性の管理職への登用を進めるとともに、職業生活と家庭生活を両立しやすくすることなどによって女性の勤続年数を伸ばしていく、そういったことによって男女の賃金格差の解消が進むのではないかというふうに考えたわけでございます。

 そういったことを踏まえまして、今般御提案しております女性活躍推進法の見直しにおきまして、企業に公表を求める内容については、職業生活に関する機会の提供とともに、女性の継続的な活躍につながるという観点から職業生活と家庭生活の両立についても公表を求めていく、そういったバランスのとれた公表を求めることによって賃金格差の解消につなげていければということでございます。

池田(真)委員 今幾つかお話がありまして、ありがとうございます。

 ただ、やはり格差を埋めるというのは、女性特有の例えば出産、妊娠を機にということであれば、その穴埋めはできないわけですから、その部分を通算するのかどうなのかというのは、そこを踏み込んでもう一歩前進させていただきたいなというふうに思っていたので、その検討がなされていないというのは、非常に口先だけみたいなところがあるというふうに思います。

 また、あと、仕事と生活ですか、家庭の両立をということで、アンケート調査もされていると思いますが、子育ての中での妊娠と出産前後の統計の調査ということでありますので、いわゆるマタハラのきっかけということで、自発的にやめるような統計、そしてその内容がどうなのかというような項目、具体的な理由があります。

 あわせて、これは、企業だけに押しつけるのではなくて社会全体でというような、全体の政策の中で解決をしていかなければいけない問題も当然あるんですが、ここの中で一つ申し上げたいなと思うのは、子育て中のアンケート調査といいますか実態調査というのは、この間、行われたのでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十八年度に、厚生労働省が委託をする形で、仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業ということをやりました。そこで実態を調査いたしておりまして、仕事と育児の両立が困難で仕事をやめざるを得なかった理由に挙がっておりますのが、勤務時間が合いそうにないこと、保育園等に子供を預けることが難しいこと、育児休業がとれそうにないこと、職場に育児との両立を支援する雰囲気がないことといった理由が挙がっておるところでございまして、こういったことを踏まえて、仕事と育児を両立することができるような環境整備に取り組んでいるところでございます。

池田(真)委員 今お答えいただいたのは妊娠と出産を機に退職をした理由という調査だと思うので、これは想像の世界なんですね。なのですが、実際に出産をし終わって、子育て中の御家庭にも統計調査をしたのかという問いだったものでございます。

 というのはなぜかというと、どういう困難を抱えて、どういう解決をしながら働いているのかといったものを実際に調査しないと、働き続けるということはできないのではないか。今のこれはマタハラの調査だけだと思いますので、これは、加えてこの後やっていただく必要があるというふうに思います。

 また、非正規労働者の割合といったものが、平成二十七年の六月三日、衆議院内閣委員会で今回の女性活躍推進法の法律の附帯決議として掲げられておりますが、ここの、非正規の部分が七割で、雇用全体の四分の一といったもの、これは改善されたんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたような女性の非正規労働者の割合といったような数字については、ほぼ横ばいで推移をしているというのが実情でございます。

 ただ、不本意ながら非正規雇用の職についている女性の割合というのは対前年比で二十四半期連続で低下していること、また女性の正規雇用労働者の数は四年連続して増加していることなど、雇用の質の面での改善も見られるところでございます。

 そうしたことを更に進めようということで、キャリアアップ助成金などによって正社員転換を進めていくこと、あるいは働き方改革の関係で同一労働同一賃金の取組を進めていくこと、あるいは今回の女性活躍の法改正というのを進めて女性の活躍を促していくというようなことに取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。

池田(真)委員 今、速やかに検討するというので、この三年間、具体的にどういうことを検討して、結果はどうだったのかというのがなかなかはっきりと回答を得られなかったなというふうに思っているんです。

 あわせて、同じなんですけれども、参議院の方の内閣委員会の平成二十七年八月二十五日の附帯決議もそうなんですが、これも同様のことが書かれてあります。

 なかなかここが一歩進まなかったということなので、引き続き具体的に取り組んでいただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 この参議院の内閣委員会の附帯決議の中で、例えば十三の部分、子育てへの支障が生じないようにということがありますので、今回のマタハラ調査だけではなくて、子育て中あるいは介護、女性の役割と言われるところから変えなければいけないんですが、介護休暇中の、どういった支援をされているのか、実態がどうなのかという調査も積極的に行わなければ何の解決にもならない、ただの附帯決議、つけただけになってしまいますので、これはちゃんとお願いをしたいと思います。

 そして、あわせて、同じ内閣委員会の附帯決議ですが、十四番ですね。これはお願いになるんですけれども、DVと、あとストーカー行為によってということで女性の活躍が阻害をされるというところでの相談支援体制の充実という項目が入っています。ここについての実際の取組がどうなっているのかということ。

 また、とりあえず置いていますということではなくて、私は、加えて、職場において本当に適切な対処をしていただけるように配慮あるいは留意をしていただかなければならないなと思っています。

 個人情報の守秘義務はもちろんのことでありますが、この取扱いについて、勤め先がわかってしまった、あるいは、職場からの書類あるいは採用通知が送られてはいけないところに送られてしまった、あらゆる事例が実際にございますので、こういった方々の働き、女性の活躍が阻害されないようにということで、プラス、あわせて、事業主に対してですけれども、きちんと留意・配慮事項を設けていただきたいというお願いがございます。確認をお願いします。

小林政府参考人 済みません、手元に附帯の十四を持ち合わせていないものですから抽象論になって恐縮でございますが、今委員御指摘なさいましたように、女性活躍が阻害されるようなことのないようにいろいろな配慮を企業に求めていく、その中にはプライバシーの保護とかいろいろな要素はあると思いますので、お話を受けて、検討してまいりたいというふうに思っております。

池田(真)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 ここで、もう一点。ちょっと別になりますけれども、公表の話を一点、ちょっと確認させてください。

 今回、公表が少し、一項目だけではなくて二種類という形になりましたけれども、何で全部公表しようとかということにはならなかったんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 女性活躍の状況ですとかあるいは課題というのは、企業によってさまざまなものがございます。そういった実情に応じた主体的な取組を促すというのがこの女性活躍推進法の基本的な考え方でございまして、一定部分は義務づけた上で、その先はいわば企業の競争原理に委ねるという形で進めてきておるところでございます。

 そうした中で、今回、企業の自主性を尊重しつつ、女性が継続的に活躍できる環境整備を進めるということで、これまで比較的公表するところの多かった職業生活に関する情報の提供に関する項目だけではなくて、やはり女性の継続的な活躍ということを考えますと、職業生活と家庭生活との両立ということが非常に重要になるだろうということで、双方の区分から一項目以上を選んで公表するということを義務づけることにいたしました。

 これはあくまでも最低基準ということでございますので、どれだけ公表しているかというのがまさに求職者にとっても関心事項だというようなことも周知しながら、バランスのとれた積極的な公表がなされるように促してまいりたいというふうに考えております。

池田(真)委員 よろしくお願いしたいと思います。

 次は、希望出生率一・八に向けた取組の方向性で掲げられておりますことについて、ちょっと一言お願いといいますか、申し上げたいなと思っているんです。

 今回、子育てでお仕事を一度中断された方の学び直しの機会というような表現が先ほどの質疑でもございました。でも、この学び直しという言葉自体を女性にだけ使われるというのも非常にちょっと差別的だなというふうに思っていまして、これは、出産やあるいは介護休暇とかで一度、少しその期間を活用して例えば今までの仕事を研究サイドで見てみようかというところで、研究の時間に当ててみるとか、いろいろなキャリアアップという意味での助成といいますか補助も含めて、あるいは保障といったようなものを与えていくべきだ、価値観として与えるべきだなというふうに思います。でなければ、男性はいつ学び直すんでしょうかねというようなこともございます。

 これは非常に女性の希望に応じてということが書かれてありますが、退職、出産、育児というようなことの課題をぜひ、継続して仕事をする仕組みだけではなく、その期間を両立できるような、プラス、レベルアップできるような保障をしっかりと、多様な保障の仕方を与えていただきたいことも一言、これはつけ加えのお願いでございますが、お願いしたいと思います。

 これは確認、答弁は結構ですけれども、最後に大臣にですが、この間、済みません、やはり非常にセクハラオンパレードといいますか、セクハラの実態調査が今回行われましたけれども、これは、類型が非常に詳細がわからない状態になっています。誰に言われたのか、どういうことを言われたのかというのがごちゃまぜになっていて、取引先の方あるいは顧客、そして上司、あるいは同僚、部下、社員、いろいろな人の調査が一緒くたになっているんですね。これはやはり改めてちゃんと詳細を調査し直すべきだというふうに思いますし、これを見るだけでも本当にセクハラ王国みたいな形で、世界に恥じるような項目がたくさん書かれています。

 ぜひ、セクハラはだめなんだということをまず今回の閣法の中に盛り込むようなお考えはないでしょうか。

根本国務大臣 セクハラはだめなんだ、要はハラスメントを禁止する規定は、昨年十二月の労働政策審議会の建議において、民法など他の法令と法制度的にどう整理するかということや、違法となる行為の要件をどこまできちんと明確化できるか、こういう課題があったものですから、これは中長期的な検討を要するとされました。

 しかしながら、職場におけるハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷つけ、そして職場環境を悪化させるものであって、あってはならないことであります。

 今回政府として提出した法案では、国の取り組むべき施策に、ハラスメント対策全般を充実するということを明記した上で、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントに加え、喫緊の課題となっているパワーハラスメントの防止のための事業所の措置義務を設けるとともに、国、事業主及び労働者の責務規定を設けました。これらのハラスメントを行ってはならない旨を責務規定の中で明確化しております。

 こういう対応によって措置義務のやはり実効性を高めるということが必要で、措置義務の実効性を高めて、ハラスメントのない職場づくりを推進していきたいと考えています。

池田(真)委員 やはり、これはもう一度ちゃんと、今回の審議時間を十分に活用して、参考人質疑の方のいろいろなお話もありましたし、セクハラといったものは性犯罪、性暴力につながるものでありますから、性犯罪、性暴力はだめだといっても、いまだにですけれども、被害者の声がきちんと、安全が保障されないし、声もきちんと検証といいますか立証ができないような、非常にそういう状況になっています。

 ましてや、この労働の場面だけでも、セクハラといったもの、町を歩いてもそうですけれども、これは当たり前になってしまっているのは非常にみっともないことであると思いますので、これはまず原点に立ち返って、セクハラはだめなんだという禁止をきちっと法律に明記すべきだというふうに思います。

 あと、カスタマーハラスメントについてもですが、今回これだけ、あるいは昨年の働き方改革から、審議の中でも多様な事例がたくさん紹介されています。それを中長期的というふうに悠長に構えて検討するなんていうことは言えないと思うんですね。なので、ぜひここについても今国会の中で、見直しも含めてですけれども、十分に検討をいただきたいというふうに思います。大臣にお答えいただきたいと思います。

根本国務大臣 今まさに、この委員会においてさまざまなやりとりが行われているところであります。

 我々は、今回、要は、例えばハラスメントは行ってはならないということを、国、事業主及び労働者の責務規定を設けていますし、全体の国の取り組むべき施策に、ハラスメント対策全般を充実することも明記いたしました。そして、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントに加えて、今喫緊の課題であるパワーハラスメントの防止のための事業主の措置義務を設けておりますので、こういう措置義務の実効性を高めて、ハラスメントのない職場づくり、これはしっかりと進めていきたいと思います。

池田(真)委員 でも、極めて不十分だと思いますので、これは重ねて申し上げたいと思います。

 また、さまざまな各業種についてのセクハラやパワハラ、職種の状況、労働者の状況についてはまた次回質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 立憲民主党・無所属フォーラムの尾辻かな子です。

 今回提出されました閣法に対して質問をさせていただきたいと思います。

 今回、ハラスメントに対してさまざまな対策が打たれるわけですけれども、まず大臣の御認識ということでお伺いしたいんですけれども、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなど、ハラスメントに対しての研修を大臣は受けたことがあるかどうか、ここをぜひ教えていただければと思います。

根本国務大臣 厚生労働省では、平成三十年度に、本省課長級以上の職員を対象に、セクシュアルハラスメント防止幹部研修などのハラスメントに関する研修を実施しております。

 私についてはこの研修を受けておりませんが、例えば、幹部研修自体、私は受講しておりませんけれども、研修テキストで、どういうことがやられているかというところは把握しております。

尾辻委員 財務省の事務次官によるセクハラのときもそうなんですけれども、結局、幹部や一番パワーのある人たちが最も気をつけなければいけないのに、この人たちがこういう研修を受けていないということは、特に大臣は今回この政策を進める責任者ですから、やはり研修を受けていただきたいというふうに思います。

 質問通告していないんですけれども、副大臣と政務官にもちょっとお聞きしたいんですが、副大臣、政務官はこういうハラスメントの研修を受けたことがあるかどうか。就任してからでもいいですし、就任する前にあるかないか、ちょっと教えていただければと思います。

高階副大臣 セクハラ対策研修ということでは、ございません。私は、家族療法とかそういったところを専門として仕事をしてきておりますので、そういった部分での研修というか研さんは積んでおります。

上野大臣政務官 私自身も、セクハラに関する研修は受けておりませんけれども、さまざま内容については事務方から説明を受けているところでございます。

尾辻委員 まずは厚生労働省の皆さんから、やはり幹部の皆さん、そして大臣、副大臣、政務官の皆さんが研修を受けるべきだと思います。ぜひとも検討いただきたいというふうに思います。

 更に大臣にお聞きいたしますが、いろいろなハラスメントの被害者の声、受けた人の声というのをお聞きになったことはありますでしょうか。

根本国務大臣 これまでのところ、私自身が、セクハラやパワハラの被害者の方の声、これを直接聞く機会はなかったところであります。

 ただ、今回こういう法案もやっていますし、私も直接は聞いておりませんけれども、でも、さまざまな声や意見や、あるいは書かれたものがここでいろいろ紹介されていますから、どういう被害に遭われたかという状況については私もそれなりに認識をしております。

 それから、例えば雇用政策審議会雇用環境・均等分科会における議論では、一部の委員から、パワハラを受けた方の親族の方からのメッセージを御紹介いただいたと聞いております。そして、都道府県労働局が実施している職場のいじめ、嫌がらせのあっせんやセクハラの調停の事例、パワハラやセクハラに関する裁判例、あるいはパワーハラスメントに関する実態調査について審議会で資料を配付されており、御議論いただいたと承知をしております。

尾辻委員 大臣自身はお聞きになったことはないということですので、ぜひとも、今回の審議もありますから、直接お聞きになるなり、その方々が思っている思いを受けとめるような何かアクション、行動をしていただきたいというふうに思います。

 ハラスメントの認識についてですけれども、これは単純に、なぜさまざまなハラスメントはしてはいけないのかということについて、大臣の御認識を教えてください。

根本国務大臣 職場におけるハラスメント、これは働く方の尊厳あるいは人格を傷つける、職場環境を悪化させるものであって、あってはならないと考えています。

 また、具体的に私もいろいろ聞いておりますが、ハラスメントを受けることで、労働者は仕事に対する意欲が減退する、眠れなくなるなど心身に対する負の影響を受けますし、それは事業主にとっても、職場環境の問題がありますので、結果的には職場の生産性が低下するなどの損害が発生すると思います。

 ですから、今回の法案では、労働施策総合推進法第四条の国の施策にハラスメント対策全般を充実することを明記した上で、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントに加え、喫緊の課題となっているパワーハラスメントの防止のための事業主の措置義務を設けるとともに、国、事業主及び労働者の責務規定を設けて、これらのハラスメントを行ってはならない旨を明確化しているところであります。

 この法案に基づいて、ハラスメントのない職場づくりを推進していきたいと思います。

尾辻委員 ハラスメントは、受けた被害者の方の尊厳を非常に傷つけ、そしてその人たちの生きる意欲すら失う、このようなやってはならない行為なんですけれども、では、こういう行ってはならないというハラスメントを受けた人々が、いまだになかなか声を上げられない、相談できない、これはさまざまな調査で出ております、これはなぜでしょうか。

根本国務大臣 ハラスメントの被害者が声を上げられない要因の一つとして、相談したことなどによって不利益な取扱いを受けることを懸念していたことがあると認識をしております。

 例えば、実態調査によりますと、職務上不利益が生じると思ったから、これを答えた方が二四・九%、あるいは、職場の上司や同僚との人間関係が悪くなることが懸念されたから、一三・四%、実はこういう実態調査の結果も出ています。

 そのため、今回の法案では、労働者が事業主にハラスメントの相談を行ったことを理由とした不利益取扱い、これを禁止することにしました。そして、国、事業主及び労働者の責務規定を設けることで、ハラスメントは行ってはならないものであるという社会的な共通認識、今回の対応によってこの共通認識を形成することができると考えております。

 やはり大事なのは、被害者がちゅうちょなく相談を行えるような環境づくりだと思いますので、被害者がちゅうちょなく相談を行えるような環境づくりを促していきたいと思います。

尾辻委員 本当に相談できる体制になっているかどうか、これはまた後から聞かせていただきたいと思います。

 そして、去年ぐらいから、世界じゅうでは、ミー・トゥー運動といって、やっと被害者が声を上げるようになりました。これは、決して自分自身が受けた被害を訴えるということだけではなくて、ここで被害者が声を出さなければ同じように更に被害者がふえていく、だから自分のところでしっかりと声を上げることによって次の被害者を出さない、こういう運動が今広がっていっていると思います。

 このミー・トゥー運動について、大臣、どのように捉えておられますか。

根本国務大臣 ミー・トゥー運動は随分広がっていると思います。やはりこれは、深刻なセクハラがなお横行していることや、あるいはそうした言動をなくしていくことへの社会的関心の高まりなどを痛感させるものだと思います。

 職場におけるセクシュアルハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるものであり、あってはならないことと考えております。今回の法案による対応を含めて、ハラスメントのない職場づくりを一層推進していく必要があると考えています。

尾辻委員 今、認識を聞かせていただきました。

 では、もう少し詳細にお聞かせいただきたいと思います。

 まず、今回の閣法ですけれども、束ね法案にまたもやなっております。一体何本の法案が束ねられているか、教えてください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案におきましては、女性活躍推進法など、合計五本の法律を一括法により改正しておるところでございます。

尾辻委員 非常に重要な法案がまたこのように束ねられて出てくることによって、審議もなかなか詳細にできません。いつもいつもこういうふうに束ね法案で出してくることについては、本当に出し方は検討いただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、女性活躍推進法についてお伺いをしていきたいと思います。

 女性活躍推進法については、今回の改正で、まず百一人以上の企業も対象になるというところで、そしてさらに、社内の女性活躍の状況について、今は、女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間の状況、女性管理職比率、この四つの項目を把握して事業行動計画を策定するということを義務づけているわけです。しかし、今回の改正では、状況把握の基礎項目、選択項目の見直しが行われなかったということで、私が問題だと思うのは、男女間の賃金格差が選択項目のままになっているんです。

 これは、例えば「ポジティブ・アクションを推進するための業種別「見える化」支援ツール活用マニュアル」というのを厚労省さんでつくられているんですけれども、そこでは課題分析の一番の視点、視点一として、総合的な指標である平均賃金指数を検証する、つまり、男女の平均賃金の指数を見なさいというふうに書いてあるわけです。

 そこには、男女の平均賃金は、男女の活躍や勤続の実態を総合的に反映した指数と言えます、同指数が一〇〇に近づくほど、活躍と定着の両方が進んでおり、男女格差が解消されつつあることを示すということで、「見える化」支援ツールマニュアルでも非常に大事だ、一番最初にこれを見なさいと指摘されている男女間の賃金格差が、今回も選択項目になっております。また、先ほど言ったように、情報公開の公表項目にもなっていないわけです。

 これはやはり公表されるべきだと思います。このような賃金格差が公表されずに、働く女性の状況というのは本当につかめるものなんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生御指摘されました「見える化」支援ツール活用マニュアルにおきまして、男女間の賃金格差についても検証すべき視点の一つとしてお示ししておることは事実でございますが、ここでは総合的な指標という位置づけというふうになっております。

 男女間の賃金格差というのは、さまざまな背景が積み重なった最終的な結果指標という意味合いを持つものでございまして、このツールではそういった位置づけをしておりますけれども、今般、状況把握の必須項目あるいは情報公表項目というところにつきましてはなお慎重な検討が必要というのが審議会における議論でございまして、そういった項目には入れられなかったということでございます。

尾辻委員 これは私は非常に残念だと思います。これは、本来であれば、必ず把握しなければいけない項目や情報公開の公表項目にすべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 男女間の賃金格差の問題、これは、今局長から答弁したように、さまざまな背景が積み重なった最終的な結果指標という意味合いを持つものという答弁がありました。その意味で、状況把握の必須項目や情報公表項目には入れておりません。

 ただ、民間における女性の活躍に係る現状や課題、これは業種、規模、地域によって各社各様ですから、このため、女性活躍推進法に基づく状況把握については、まず、多くの企業に該当する課題に対応する項目である、採用者に占める女性比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、管理職に占める女性比率の項目について、その把握を必須とした上で、それ以外の項目については、各企業がみずからの企業の課題を分析した上で、その課題を解決するのに最もふさわしい項目について任意で把握をしていただくことが適当だと思います。

 各企業の実情に応じて、適正な項目について状況把握が行われているものと考えております。

尾辻委員 女性活躍推進法という法律の中で、本来しっかりと男女の賃金格差は入れないとわからないと思います。ですので、今回、いろいろな理由を言っておられますけれども、公表項目として入らなかったことについては非常に残念であります。しっかり入れていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 そして、情報公表の項目ですね、二つの区分から一つずつ公表ということで、これも遅々として本当に進んでいないという状況だと思います。

 一つは、求職者の関心が高い情報項目である平均残業時間と有給休暇取得率、これが雇用管理区分ごとではなくて平均値の公表でも構わないということになっておりまして、職場の実態が正しく反映されているというふうにはなっておりません。これは雇用管理区分ごとにやはり公表すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

冨岡委員長 出ませんか。

 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 起こしてください。

 小林局長。

小林政府参考人 大変失礼いたしました。

 状況把握項目について、御指摘いただきました労働者一人当たりの各月ごとの時間外労働時間とそれから有給休暇取得率等につきましてでございますが、これは必要に応じて把握する項目とされておりますけれども、把握する場合には雇用管理区分ごとに実施する必要があるということを省令で規定しているところでございまして、恐らく私が今申し上げた取扱いということになっていると思っております。

尾辻委員 つまり、雇用管理区分ごとに発表しているということでしょうか。

小林政府参考人 省令上そういう取扱いになっておるところでございます。

尾辻委員 私の認識では、これは平均値の公表で構わないということになっていて、雇用管理区分ごとではないというふうに思っていますけれども、これはちょっとまた確認いただきたいと思います。

 次に参ります。

 女性活躍推進法についてですけれども、これはもともと男女雇用機会均等法のポジティブアクションが義務化された法律ということで、実は十年の時限立法になっていますね。二〇一六年から二〇二六年までの時限立法なわけです。

 今回、百一人以上の企業の計画策定や情報公表は三年を超えない範囲で改正するということで、そうすると二〇二二年ということになって、これは時限立法でいうと残り四年しかないということになるわけです。二〇二六年までなのに二〇二二年というのでは、余りに遅過ぎるのではないかというふうに思います。

 さらに、内閣府などでは、二〇二〇年までに指導的地位に占める女性の割合を三割にするという政府の目標もあるわけで、それと比べてもこの女性活躍推進法は余りに対策が遅過ぎるのではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょう。

根本国務大臣 行動計画策定や情報公表義務の対象企業の拡大、これは新たに義務対象となる事業主に対して新たな取組を求めるものでありますが、特に規模の小さい企業においては、先般の働き方改革関連法への対応が急務となっている状況があります。

 このため、先般の働き方改革関連法の施行時期、これは、労働時間の上限規制が中小企業については二〇二〇年四月一日、同一労働同一賃金が二〇二一年四月一日施行、これは中小企業ですけれども、こういう施行時期も踏まえて、行動計画策定等の対象拡大については、十分な準備、周知期間を設けるために、施行時期を公布後三年以内の政令で定める日としております。

 ただ一方で、義務化が施行されるまでの間においても、可能な限り早期に中小企業に行動計画の策定などを行っていただけるようにすること、これが重要だと思っております。このため、行動計画に基づく取組に対する助成や利用しやすい行動計画策定支援ツールの策定、セミナーの実施などによる計画策定支援など、十分な支援措置を実施していきたいと考えています。

尾辻委員 内閣府では、二〇二〇年までに指導的地位に占める女性の割合三割とかをやっている割に、二〇二六年までの時限立法で二〇二二年からというのは、今大臣がいろいろおっしゃいましたけれども、私はこれはやはり少し歩みが遅いのではないかというふうに思うところです。女性が輝くというか、男性も女性もしっかりと仕事で自己実現ができる、そういう社会をつくっていくということが非常に大事だというふうに思います。

 次に、ハラスメントについてお聞きしたいと思います。

 今回、労働施策総合推進法とか雇用機会均等法の改正とかがあるわけですけれども、私から見ると、ハラスメントの法律がばらばらになっているんじゃないか、阿部委員からもありましたように。例えば、パワハラでマタハラだってありますし、パワハラでセクハラとか、ハラスメントというのは非常に多岐にわたって、それも複合で重なっていると思うんです。このあたり、法律の整理はどうなっているんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、セクハラとパワハラが複合的に起きるような事案というのは多々あると思っております。

 今回は、それぞれ理由があって、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、そして労働施策総合推進法ということで置く法律が異なることになるわけでございますが、一つは、労働施策総合推進法の四条に全体を統括するような規定を入れたということと、あと、実際にこれから施行に当たって指針等を示していく中で、企業においては一元的な窓口とか一元的な対応というのが望ましいということは示していく必要があるというふうに思っておりますので、そういうことで担保してまいりたいと思っております。

尾辻委員 次に、SOGIハラについてお聞きしたいと思います。

 三月二十九日の、参議院予算委員会、先日の本会議、そしてきょうの委員会でも、パワハラの中に性的指向、性自認に基づく侮辱的な発言は該当し得るということでありましたし、先ほどの委員とのやりとりの中でも、アウティングについても今後は指針の中に入っていくことを検討するというふうにありました。これは非常に大事なことだと思います。

 こういうことがあるということで、大分パワハラも概念が広がっていっているように思うんですが、じゃ、例えばジェンダーハラスメント、これもパワハラに該当し得る、中に含まれるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、性的指向、性自認の関係でございますが、それに関する言動というのは業務上必要ないものでございますので、性的指向、性自認について本人の意に反して公にする等によって精神的な苦痛を与えたような場合には、パワハラに当たり得る。

 一方で、ジェンダーハラスメントでございますが、ジェンダーハラスメントにつきましては、どのような言動がこれに当たるかということについて、現時点においては社会的な共通認識が形成されているとは言えない状況にあるんじゃないかというふうに考えておるところでございまして、パワハラに該当し得るかということを一概にお答えするのは難しいのかなと。当たり得ると考えられるものについては、今後、指針で明示する等の対応をとってまいりたいというふうに思っております。

尾辻委員 パワハラでいうと、職場における優越的な関係を背景とするということになっています。優越的な関係というのはどのようなことを指すのか。

 そして、先ほど言ったように、じゃ、パワハラの中にはSOGIハラが含まれるとしたら、障害をもとにしたハラスメントや嫌がらせとか、例えば年齢とかによるハラスメントなども結局入っていくというようなものなんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 冒頭申し上げませんでしたが、パワハラの定義は三点ございまして、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること。

 この優越的な関係というのは、必ずしも上司、部下ということではございませんで、その人の協力がなければ業務遂行ができないような関係性をあらわすということでございますが、一定の制約はある。その上で、特に二つ目の、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりというところに関しては、いわゆるLGBTの関係は業務と関係ない話だろうということで、特にこの点を取り出せばパワハラに当たり得ると考えられるということを申し上げました。

尾辻委員 ですので、例えば障害に対するハラスメントとか年齢に対するハラスメントも職場において関係ない話ですから、これも幅広くとっていくということになるんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 職場における優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当の範囲を超えたものによって、就業環境を害されることということが基本的な定義でございますので、この定義の範囲でどういうものが該当するか考えていくということになるわけでございますが、こちらにつきましては、また審議会等で十分御議論をいただいた上で、指針等で明らかにしてまいりたいというふうに考えております。

尾辻委員 パワーハラスメントの定義について、もう一つ確認をしておきます。

 ここにおける、職場におけるの職場とは、どのような場所になるのか。セクシュアルハラスメントではかなり広く取り扱っていると思いますけれども、この辺はどうなるんでしょう。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 職場は、基本的には、セクハラにおきましても、業務が行われている場所ということで、必ずしも執務室に限られるわけではないという広い解釈がとられております。パワハラにつきましても、基本的にはそれと同様の解釈になるというふうに理解をしております。

尾辻委員 あと、ちょっとセクハラについて確認をしておきます。

 今回、男女雇用機会均等法の改正とかがありますけれども、何か義務として加わったものはありますか。それだけ聞きます。新たに義務になったもの。

小林政府参考人 例えばセクハラに関して申し上げますと、相談を理由としての不利益取扱いについて禁止規定を置く、それから、他社のセクハラに関して、加害側の企業に協力の努力義務を課す、あるいは、これはハラスメント全般でございますが、ハラスメントは許されない行動であって、言動に配慮すべしという、これは配慮規定でございますが、そういったものを入れるといったことを今回盛り込んでいるところでございます。

尾辻委員 ちょっと時間が来ていますのであれですけれども、結局、男女雇用機会均等法は、事業主の措置義務があるだけで、やはりセクハラ自体を禁止したりしていないんですね。努力義務は少しふえましたけれども、これではやはり不十分じゃないかというふうに思います。就活生へのセクハラとかフリーの人に対してもなかなかこれはきかないわけですし、こういったことについてはやはり今回不十分ではないかと思っております。

 またちょっと次のときに、このあたりについて聞かせていただければと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長下川眞樹太君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑を続行いたします。吉田統彦君。

吉田委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、立憲民主党などが提出した労働安全衛生法の一部を改正する法律案、いわゆるパワハラ規制法案について質問させていただきます。

 この法案では、いわゆるパワハラの問題について、事業者に対し、そのもとで働く労働者へのパワハラが行われ、労働者の職場環境が害されることのないよう、必要な措置を講ずることを義務づけているものと理解しています。

 現在、職場におけるパワハラが非常に大きな社会問題となっていることは、委員の先生方の御案内のとおりであります。例えば、具体的には、平成二十九年度の精神障害等による労災保険の支給決定件数を出来事別に見ますと、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたという理由が、八十八件でトップとなっております。まさにパワハラが労働者の心身をむしばんでいる、そういった事態でございます。

 その結果、ひどい場合には、被害を受けた労働者の方が、もはや職場で働き続けることができず退職に至ってしまうといういたたまれない事態が発生しています。被害者の方にとっては、単に収入の道が途絶えるのみならず、精神的なダメージによって再就職も困難になる、人生そのものに大きな影響を受けることとなるわけであります。

 そのような中、パワハラ問題の対策として、事業者に対して、従業者への周知及び啓発、パワハラの実態の把握、労働者からの相談に応じ適切に対応するための体制整備などの措置を求める本法案は、まことに時宜にかなった提案であると考えます。

 その一方で、パワハラ対策については、内閣提出法案でも、事業主に対して、パワハラ防止のための相談体制の整備等の雇用管理上必要な措置を講ずることを義務づけております。

 両案は、いずれも、事業者に対して措置義務を課す点で共通していますが、議員提出法案では労働安全衛生法の改正になっているのに対して、内閣提出法案では労働施策総合推進法の改正であるという点で違いがあります。

 そこで、議員提出法案について伺います。

 パワハラを防止するための事業者の措置義務等の施策について、閣法では労働施策総合推進法に規定することとしているのに対し、議員提出法案では、繰り返しになりますが、労働安全衛生法に規定することとしていますが、その趣旨はどのようなものか、御答弁ください。

尾辻議員 いわゆるパワーハラスメントや、いわゆるカスタマーハラスメント、消費者対応業務に係るハラスメントは、労働者の心身に深刻な影響を与えるものであり、ひいては、精神的又は身体的な健康を害することにつながるものです。

 このようなハラスメントの防止のための措置については、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする労働安全衛生法に規定することが適当と考えられます。

 そこで、本法案では、労働安全衛生法に事業者の措置義務等を盛り込むことといたしました。また、労働安全衛生法に規定することによって、労働基準法を中心とする労働基準行政の枠組みで、つまり、労働基準監督署や労働基準監督官などの既存の行政体制による監督の対象とすることができます。

 さらに、労働安全衛生法に定められている衛生委員会や安全衛生委員会などの既存の社内体制を利用できる点にもメリットがあると考えます。これらの委員会は、その委員の半数が過半数労働組合等の推薦を受けて選任されることとされており、労使の意見を反映し、それぞれの事業場の実情に即したパワーハラスメント対策を講じることが可能になるものと考えております。

吉田委員 ありがとうございます。

 つまり、本法案では、パワハラに関する施策について、労働安全衛生法に規定することによって、労働基準行政の枠組みを用いて行政庁による監督を行ったり、労働安全衛生法上の衛生委員会等の既存の体制を利用できることがよく理解できました。閣法と比べてより実効性のある内容である、そのように理解いたしました。

 では次に、本法案の消費者対応業務に係るハラスメントと規定している、いわゆるカスタマーハラスメント、悪質クレームについて伺います。

 こちらもパワハラと同様に、大きな社会問題となっているところであります。もちろん、消費者による正当なクレームの機会は十分に保障されなければなりません。しかし、近年問題となっているいわゆる悪質クレームには、正当なクレームの範囲を超えて、労働者に理不尽な暴言や暴行、長時間にわたる拘束を加え、労働者の心身を害するものが少なくありません。

 例示させていただくと、例えば面識のない顧客からの電話でのクレームに際し、死ね、殺す、潰れてしまえ、生きている価値なしなどの暴言を浴びせられた、商品が冷めていると怒って返金を要求し、返金した金銭を投げつけた上に土下座を強要してきた、接客した覚えがないのにSNSで名指しでクレームを書かれたといった、極めて悪質な事例もあると聞いております。

 このような悪質クレームについても、被害者が精神的、身体的に大きなダメージを受けて退職をしてしまう、そこまで至ってしまう場合もあるわけであります。人生そのものに与える影響は極めて大きいと言わざるを得ません。

 また、このような事態は人材の定着率の低下や働き手不足につながるため、直接顧客に接する機会が多くクレームが発生しやすいサービス業の現場にとっては特に大きな問題となっています。しかも、これらの行為は、加害者が消費者、いわゆるお客さんであるために、現場の労働者としては強く出ることができず、対応に苦慮しているのが実態であります。

 ところが、閣法には残念ながら悪質クレームについての対応策は何ら設けられていません。このような悪質クレーム、カスタマーハラスメントに適切に対処し、労働者の職場環境を守るためには、まず事業者に対して適切な措置を講ずる義務を課すべきであると考えます。

 そこで、議員提出法案について伺います。

 議員提出法案では、いわゆる悪質クレームなどの顧客等によるハラスメントについて対策を講じており、事業者に特定の措置を講ずることを義務づけていますが、具体的にはどのような措置を想定しているのか、御答弁ください。

尾辻議員 顧客からの悪質なクレームなどのハラスメントである、いわゆるカスタマーハラスメントは、セクシュアルハラスメントや社内におけるパワーハラスメントと同様に、労働者の心身に深刻な影響を与えるものとして重大な問題になっております。

 そのため、事業者に対しこのようなハラスメントから労働者を保護するための措置を講ずることを義務づける必要があると考え、私たちのパワーハラスメント規制法案では、いわゆるカスタマーハラスメント、消費者対応業務に係るハラスメントも規制の対象としております。

 具体的に事業者が講じなければいけない措置としては、まず事前の措置として、一、消費者対応に係るマニュアルの作成、リーフレットの配付、労働者に対する研修の実施、個々の労働者の負担を軽減するための業務体制の整備、二、消費者対応業務に係るハラスメントを受けた労働者のための相談窓口の設置、相談窓口の担当者による適切な相談対応の確保などの措置を想定しております。

 次に、労働者が消費者対応業務に係るハラスメントを受けた後の対応としては、三、ハラスメントを受けた労働者の交代や配置転換、四、ハラスメントを受けた労働者のメンタルケアなどの措置を想定しております。

 このほかにも、労働者に迷惑行為をしないよう、消費者に対し周知啓発をすることなども想定をしております。

吉田委員 ありがとうございます。

 本法案では、カスタマーハラスメント、悪質クレームに対応するため、事業者に対して事前の研修や相談対応の確保など、事後的な被害者の配置転換やメンタルケア等の適切な措置を講ずる義務を課しているということですね。よくわかりました。ありがとうございます。

 それでは次に、政府及び閣法について質問をしてまいります。

 平成二十八年医師・歯科医師・薬剤師調査によると、医師総数三十一万九千四百八十人に対し女性医師は六万七千四百九十三人で、割合は二一・一%となっています。これは十年前の調査と比べると約四%、人数にして約二万人増加しております。

 年々、女性医師の割合は上がって、現在の医療制度における女性医師の活躍の重要性というのは、大臣、極めて上がっているのは御異存ないと思います。

 中でも、産婦人科、小児科、皮膚科、麻酔科、眼科などでは特に女性の比率が高くて、この分野の医療が安定的に継続、発展するためには、女性医師、殊に若手女性医師へのキャリアサポートが待ったなしの状況であります。

 そこで、このような女性医師の活躍の状況について、現状認識及び将来の展望、また、本法律案の改正によって女性医師の活躍にどのような影響があると考えるのか、大臣の御所見を伺います。

根本国務大臣 医師の働き方改革に関する検討会において、医師の労働時間短縮、健康確保と必要な医療の確保の両立という観点から、医師の時間外労働規制の具体的なあり方、労働時間の短縮などについて検討を進め、平成三十一年三月に報告書を取りまとめられました。

 今後、報告書を踏まえて、医師の働き方改革を着実に進めていくためには、医療機関全体としての効率化や他職種も含めた勤務環境改善に取り組むことが不可欠です。

 医師不足とならないよう、医師でなくとも行うことができる業務を他職種に移管するタスクシフティングを推進するなどの取組を進め、医師が働かなければならない総労働時間の短縮を進めることとしております。

 今、委員からお話がありましたように、これから本当に女性の医師の活躍が期待される時代でありますが、一方で、女性医師は医師免許取得後十二年目をピークに、推定離職率が約二五%と高くなっており、今後は働き方改革や勤務環境改善を通じて、妊娠、出産や育児などと両立して女性医師が働ける環境を整備すること、これが重要だと思っております。

 今回の法案では、医療機関を含めた一般事業主に対して、行動計画策定義務や情報公表義務の対象企業の拡大、あるいは職業生活に関する機会の提供と職業生活と家庭生活の両立の両面からの情報公表義務の強化を行うこととしております。

 女性医師が働きやすい環境づくりを促して、医療現場を含め、職場における女性活躍を更に推進していきたいと考えています。

吉田委員 随分いろいろおっしゃっていただきましたが。大臣、きのうかなり細かく通告、きのうじゃないかな、もっと前だと思いますが、通告をしてあるので、細かくもうちょっと聞いていきたいんです。

 大臣がおっしゃっていることは従前から言われていることであって、何ら変わっていないんですよ。タスクシフティングも、実際、全然うまくいっていないんですね。これはいろいろな理由があります。以前、私もこの委員会で前加藤大臣のときにもお話をしているんですが、いろいろ大きな問題、さまざまな問題があるんです。今るるおっしゃっていただいたことに関しては繰り返しの答弁は要りませんので、今からまた細かく大臣に聞いていきます。

 大きな懸念として、今、大臣もおっしゃいました、ことし三月にまとめられた医師の働き方改革に関する検討会の報告書でこう書いてありますよね。

 働き方と保育環境等の面から、医師が働きやすい勤務環境を整備していくことが重要である。連続勤務時間制限等の導入により、勤務時間に制約のある医師もチームの一員として重要な役割を担うことによって、働く意義にもつながっていくと期待される。勤務時間に制約のある医師でも働きやすい環境整備をすることにより、就労意欲のある医師が就労すれば、医師数の確保にもつながっていく。

 ワーク・ライフ・バランスへの関心が高まっていることなどを踏まえれば、育児等を行いながら就業を継続したり、復職したりできる環境を整え、多様で柔軟な働き方を実現していかなければ、多様な人材の確保が困難となる。とりわけ、女性医師の割合が上昇していることにも留意しなければならない。

としていますね。

 しかし、一方で、医師の残業時間の上限を年千八百六十時間としましたね。この残業時間の上限に関しては、昨日の参考人質疑でも参考人の方々から余りにも過酷な労働環境であると非常に厳しい批判が、大臣、聞いていらっしゃったと思いますが、ありましたね。批判されているわけです、これに関して。

 しかしながら、医療の現場では、この年間千八百六十時間の条件を厳密に守ると逆に大変な医師不足に陥って、現状の医療水準を守ろうとすると医師数は倍必要であるなどという懸念が示されている事実があるわけです、大臣。

 考えてみれば、このような残業時間をこなしながら女性医師が結婚し、挙児し、子育てをするといったライフプランと医師としてのキャリアの両立を図ることは、極めて困難なのはもう明々白々だと思いますよ、大臣。今回の女性活躍の法案では、このような医師の現状について全く触れていませんね。

 そこで、本法案の運用面や今後の行政の対応の方も含めて、この点に関してどう対処していくのか。さっきのようなふわっとした御答弁じゃなくて、三月に報告書も出て、今、この法案を審議するんだから、もうちょっとはっきりしたメッセージを国として出していかなければ手おくれになりますよ、大臣。

根本国務大臣 医師の働き方改革の検討会の報告の内容、今委員から御紹介をしていただきました。そして、さまざまな課題も今指摘をいただいたところであります。

 女性医師あるいは現状をどう見るかということでありますが、特に内科や外科等の診療科においては、当直の回数が多いあるいは長時間、緊急の手術などによって、他の診療科に比べ時間外労働時間が相対的に長い傾向がある、そして、女性が診療科として選択しづらい傾向があることから、働き方改革の取組が極めて重要であり、全体をふわっとという話でありましたけれども、ここは働き方改革の取組が極めて重要であって、要は、診療科の偏在がありますので、診療科偏在対策としても有効であると考えております。

 そして……(吉田委員「ちょっと大臣、調整した方がいいですよ、答弁。むちゃくちゃだもの、今の答弁。全くかみ合っていない。これはひどいよ。細かく通告した意味がないじゃないですか、大臣。きのう、どれだけ細かく通告したと思っているんですか。とめてください、委員長」と呼ぶ)

冨岡委員長 じゃ、ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 速記を起こしてください。

根本国務大臣 先ほどタスクシフティングの話がありましたが、タスクシフティングをこれからどう対応していくかということと、女性医師への支援、これについてお答えすればよろしいですか。(吉田委員「まず、じゃ、答えてください」と呼ぶ)はい。

 先ほど委員がおっしゃられましたが、タスクシフティングがなかなか進まないんだとの趣旨のお話がありましたけれども、昨年二月に医師の働き方改革に関する検討会が取りまとめた、医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組、これにおいては、次の業務について、原則医師以外の職種により分担して実施することを医療機関に促しています。検査手順の説明や入院の説明、静脈採血や静脈注射、診断書等の代行入力あるいは患者の移動など、こういうものは他の職種で分担して実施してくださいねと。

 そして、今年度には、業務のタスクシフティングに関する先行的な取組について医療機関へ周知し、各医療機関における速やかな実行を促すための事業として、タスク・シフティング等勤務環境改善推進事業、これを行う予定であります。

 そして、医師の働き方改革に関する検討会の報告書においても、現行制度のもとでのタスクシフティングを最大限維持しつつ、多くの医療専門職種それぞれがみずからの能力を生かし、より能動的に対応できる仕組みを整えることが重要であり、そのための議論を引き続き確実に深めていくことが必要だとされておりますから、引き続き、タスクシフティングの推進について検討を行って、その推進を図っていきたいと思います。

吉田委員 やっと具体的なお話をちゃんとしていただいて。大臣、具体的にやらないとだめですよ。しっかりと、具体的な項目を挙げて、どんどんこれをタスクシフティングするということを現場に落としていかないと、何にも今起こっていないんですよ、タスクシフティング。

 大臣、年々、女性医師の割合は上昇し続けています。今後もこの勢いはとまらないんですよ。だから、医師数をふやしても、仮にですよ、女性医師が男性医師と同様に活躍できる環境をつくらなかったら全く効果が上がらないんです。そこを本当によく理解をして、金曜日も委員会があればぜひこれを引き続きやって、どんどん細かくやっていきましょう。大臣、もう一回ちゃんと事務方とレクをしっかり入れておいてください。もう少し細かく、やはりちゃんとメッセージを出していかないと。

 大臣、さっき、タスクシフティング、タスクシフティングと言っておけば、これで解決するという問題じゃないですよ。わかります、タスクシフティングは大事です。大事だけれども、錦の御旗じゃないんだから、それだけを言っていればもう終わっていくという話じゃないですから。もうちょっと次は細かく聞きますから、お願いしますね。次回、期待しています。

 では、次の質問、文科省に来ていただいていますので、ちょっと質問させてください。副大臣、いらしていただいてありがとうございます。

 現時点で、旧帝国大学の医学部の旧第一、第二、第三内科だとか、旧第一外科、第二外科の主任教授に女性は何人いるのか。そして、いわゆる内科、外科における現状及び今後の女性活躍に関して、副大臣からの御答弁をいただきたいんです。

 もうちょっと言うと、まず、実際、女性教授が何人いるのか、主任教授ですね。いわゆる、メジャーと言われる中でもメジャーです、旧帝国大学の第一、第二、第三内科、第一外科、第二外科。これはやはり日本の医療を根幹から支えてきた主要なアカデミアの幹ですが、ここに女性教授は何人いらっしゃいますか。

浮島副大臣 旧帝国大学の大学附属病院における女性教授の七大学中の合計ですけれども、十二人いらっしゃいます。女性教授の比率は四・三%でございまして、うち内科系は四人、そして外科系は三人、その他は五人でございます。

 また、今、現状と今後というお話もございましたけれども、現状におきましては、例えば九州大学においては、女性医師の復職の支援コースの設定、そして、学習支援、Eラーニング教材の配信、また、育児、介護、そして御自身の病気等によりキャリアが途絶えることのないように雇用する仕組みの構築、また、名古屋大学におきましては、ジェンダー平等支援事業を設けまして、女性教員が教授に昇任した場合には奨励金を措置するなどの取組を今行っているところでございます。

 また、今後でございますけれども、文科省といたしましては、女性医師の個性と能力が十分に発揮されるよう、各大学の病院における子育て、介護の支援、そしてキャリア形成への支援、柔軟な勤務体制の導入、短時間勤務などですね、また勤務環境の整備などを、好事例の展開を通じまして、各大学病院に対して勤務環境の改善に向けた対応を促すなど、厚生労働省と関係団体と連携して対応してまいりたいと考えているところでございます。

吉田委員 副大臣、ちょっと私の質問と最初のところがずれちゃっているので確認しますが、今、副大臣がおっしゃったのは、私も手元に資料がありますが、旧帝国大学の医学部の臨床科目全体の話ですよね。これだと確かに四・三%、これも極めて少ないですが、四・三%なんです。

 副大臣、もう一回聞きますよ。これは一問一答で聞くと言ってあったので、ちょっと事務方が悪いと思いますが。旧帝国大学の、委員長も属していらっしゃったような、第一、第二、第三内科という本当のメジャーな内科、そして第一外科、第二外科の主任教授は何人いるんですかと聞いたんです。

浮島副大臣 失礼いたしました。

 教授でなく主任教授の数はという御質問であったと思いますけれども、この主任教授の身分については、法令の定めがあるものではなく、配置している大学、していない大学等さまざまでございまして、文科省として人数は把握していないところでございます。

吉田委員 それはおかしい。主任教授は、大体、帝国大学は一人しかいないです。いないの。ほかの教授は、何らか別の条件の教授。もう委員長なんかはよくわかっていますよ。そんな答弁を文科省がさせちゃだめだよ、文科省、ひどいな。

 主任教授というのは一人で、誰かは明白なんですよ。これは正確に言うと、旧帝国大学はゼロなんですよ。ゼロなんです、副大臣。だから、そういう答えをまず欲しかっただけで、何でこんないいかげんな、ごまかそうとする答弁を文科省が、きのう私があれだけ細かく言ったにもかかわらず準備をするのか、何か意図があるのかわかりませんけれども、ゼロなんです、副大臣。わかって聞いているんですよ。だから、何でわざとごまかそうとするのか。ごまかす必要はないですよ、本当は次の質問に行きたいんだから。

 確かに、副大臣がおっしゃるとおりで、旧帝国大学の医学部の臨床科目の全教授の割合は四・三%で正しいと思います。ただ、外科に関しては、これを見ても明らかなように、ゼロですよね。それでもなおゼロ。整形外科を含めてもゼロです。また、内科でも、主要な分野と言われるところはゼロですよ。この人数では、とても女性活躍なんて言えない状況じゃないですか、副大臣。言えますか、この段階で女性が活躍していると。

 このような大学での、もう時間が来たので次に行けないかもしれないですけれども、内科、外科などのいわゆるメジャー診療科において女性活躍を、さっき御答弁をいろいろいただきましたが、ここに限って言えば、どのようなことをしてあげると文科省としては女性が活躍できると考えているのか。

 今後、大学医学部のアカデミアに女性活躍に関する取組を、副大臣にさっきたくさんおっしゃっていただきました、それは大変私も勉強になりましたが、この部分だけ切り取った場合、メジャー科目でも女性が活躍していかないとだめなんですよ、副大臣。そこを単体で切り取った場合には、何が文科省としては問題だと思って、何をすれば文科省は解決されると思っているのかを明確に答えてほしいんです。

浮島副大臣 今御指摘がございました女性医師の活躍、これは本当に重要で、しっかりとやっていかなければいけないと思っております。

 そこで、文科省といたしましては、先ほども御答弁をさせていただきましたけれども、各大学における、子育て、そして介護の支援、キャリア形成支援、柔軟な勤務体制、短時間勤務も含めてでございますけれども、そして勤務環境の整備、これを、しっかりと好事例を集めまして、各大学病院に対して、関係環境の改善の整備、この対応をするなど、厚労省としっかりと連携をとって進めてまいりたいと思います。

吉田委員 時間が中途半端になってしまったので、これはお答えになれる範囲で結構ですし、後ろの事務方に聞いていただければいいんですが、今、厚労省と連携をとってというお話もいただきました。

 今のお話になかったと思うんですけれども、院内の保育施設、ここに関して、実は、一番勤務環境が過酷なのは医師である場合が医療機関の場合は多いですね。特に大学病院、アカデミアはそうなんですが、決して、こういうところにいる女性医師のお子さんが院内の保育施設や保育所若しくは隣接している保育施設や保育所に優先的に入れていただけるという仕組みが実はないことがほとんどなんです。

 これは、多分、私の記憶では、与党時代にも私は発言させていただいたことがあるんですが、ここを、答えられる範囲で結構ですし、もし取組をしていただけるというお言葉があればそれはなお結構ですが、やはり保育に関しても今話題になっているわけでありますので、副大臣、これは大臣にもお答えいただきたいんですが、院内の保育施設や隣接する保育施設を、こういう女性活躍、女性医師のことを考えるんだったら、ここをやはり女性医師に優先的に使ってあげるということを、しっかりと監督官庁から指示をした方がいいと思うんですが、済みません、ちょっとこれは正確に通告していないので答えられる範囲で答えていただけますか。

根本国務大臣 子供を持つ医療従事者の離職防止あるいは再就業を図るために、民間の病院内保育所の設置、運営、これは、今、地域医療介護総合確保基金を活用して財政支援をしています。その意味では、病院内保育所、これは、女性の働くことを支援するためには大変重要だと思っております。

 そして、優先、これは一般職員と共通して対応していると思いますので、女性医師を優先枠とするかどうかは、そこは、それぞれの病院の状況に応じた判断ではないかなと思います。

浮島副大臣 全国立大学では整備がなされているところでございますけれども、今委員御指摘がありました点につきましては、適切な取組をしっかりと促してまいりたいと思います。

吉田委員 時間が参りましたので、また続きをさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの西村智奈美です。

 まず、今回の女性活躍推進法などの一部改正案、私からも、非常に多岐にわたる内容を含んでいるものですが、本当に必要なものが含まれていない、一方で大変多くの法案が束ねになっているということについては、最初に指摘をしておきたいと思っております。

 本来、女性活躍推進法とか均等法、育介休法等々を改正するのであれば、私は、もっとできること、やるべきことがあったというふうに思うんですね。それが含まれていない。であるがゆえに、私たち、今回、議員立法ということで提案をさせていただきました。ぜひ、閣法の審議の中でも生かしていただきたいと思っておりますし、また、今後の与党との折衝などにも生かしていきたいと考えております。

 それで、まず最初に、いわゆる女性活躍について、政府はどういうふうにこれを認識しているのか、この点から伺っていきたいと思います。

 いただいた法案の説明資料の中に、「現状等」ということで、「女性就業者がこの六年間で約二百八十八万人増加する等、女性活躍は着実に前進。」というふうに書かれています。でも、私、ちょっとこれを見て、おやっと思ったんですけれども、二百八十八万人女性の就業者が増加すること、これが本当に女性活躍にイコールでつながっていくんだろうか。本来は女性就業者の内容、これをしっかりと見ていかなければならず、幾ら数がふえたからといって、それだけで女性活躍が進んだなどということは、私は、短絡的に言えないんじゃないかというふうに思うんです。

 まず、この内容について伺いたいと思います。

根本国務大臣 女性の就業者数、この六年間で二百八十八万人増加をいたしました。そして、中身というお話でしたが、この中で正規雇用労働者と非正規雇用労働者について見れば、女性の正規雇用労働者は九十五万人増加し、女性の非正規雇用労働者は二百二万人増加をいたしました。そして、配偶者関係別の就業者で見ますと、女性の有配偶の就業率は百六十七万人増加し、女性の未婚の就業者は七十二万人増加をいたしました。

西村(智)委員 正規雇用もふえている、しかし、それを上回る数で非正規がふえている。やはり内実といいますか質を見ていかないといけないというふうに思うんです、数という面だけで見ても。それから、もうずっと問題になっていますけれども、男女間の賃金格差、男性を一〇〇とすれば女性はまだ七〇ちょっと、これでは女性活躍というふうには言えないと思うんですよ。だから、こういうふうに堂々と書くということ自体、私はやめてもらいたいというふうに思っております。

 また、ハラスメントも非常にまだ根深いということ。きょうはこの後いろいろ聞いていきたいと思っておりますけれども、そういうことを踏まえれば、女性活躍が着実に前進という状況にはまだほど遠いということをまず政府としてしっかりと認識をしておいていただきたいと思っております。

 それで、先ほど、いわゆる見える化の中で、情報公表項目が今度はふえる、区分をして、いずれかから必ず一つは公表するということになったわけなんですけれども、男女間の賃金格差、これはやはり必須だと私は思っております。

 このことについて、先ほども非常に後ろ向きな答弁がありましたけれども、入れるべきだというふうに思っておりますのに加えて、セクハラ等の対策ですね。これはもう既に、女性活躍推進法の情報公開制度において、特定事業主に関してはセクハラ等対策の整備状況を追加すると予定をされておりますし、また、ハラスメントについては昨年以来取組が行われているところですから、一般事業主についても、セクハラ等対策の整備状況、これを公表項目として立てるべきではないかというふうに思うんですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。追加で通告をしております。

根本国務大臣 先生の前段の賃金格差の話はよろしいですね。(西村(智)委員「いいです」と呼ぶ)はい。

 民間企業におけるセクハラ対策については、男女雇用機会均等法に基づいて、全ての企業に雇用管理上の措置を義務づけるとともに、都道府県労働局が助言、指導等により履行確保を行う仕組みになっております。

 本法案による改正内容も含めてその周知徹底を図るとともに、労働局による着実な履行を引き続き進めることによって、企業が法律で義務づけられた措置を適切に講じることを担保していきたいと思います。

 女性活躍推進法でも、省令において、民間企業が一般事業主行動計画策定に当たって任意で状況を把握することが望ましい項目としてセクハラの相談状況、これを示しているところです。

西村(智)委員 任意でとることが望ましい、非常に弱い表現ではあるんですけれども、やはり、これほどまでにセクシュアルハラスメントが社会的な問題となっている昨今ですから、求職活動をする人にとって、やはりこれは極めて重要な、かつ有益な情報だというふうに思うんです。

 情報公表項目に加えてほしいと思いますけれども、大臣はどういうふうにお考えですか。

根本国務大臣 情報公表項目については、その情報公表項目にするか、あるいは民間企業が一般事業主行動計画策定に当たって任意で状況を把握することが望ましい項目として整理をするか、そういうことだと思いますが、やはり、今回の全体の行動計画の状況を把握して課題を整理して、具体的にどういう措置をそれぞれの企業が講ずるか。情報公表の項目も、その意味では、対外的に仕事と家庭の両立支援でどういう項目をやっているか、実はそういう整理の問題だと私は思いますが、我が方としては、やはりセクハラの相談状況という項目については、一般事業主行動計画策定に当たって任意で状況を把握する、この状況把握というところに位置づけることが適切ではないか、こう考えているところであります。

西村(智)委員 昨日、参考人質疑が行われましたが、その中でも、与党推薦の参考人の方も、この女性活躍推進法の情報公表項目を通じた公表によって企業イメージなどにもつながる話であるから、これは極めて有効だというお話があったんですね。

 私、やはり、市場や私人、こういった人たちによるモニタリングを通じて企業の取組を評価する仕組みというのがこの女性活躍推進法の基本的な考え方だと思いますので、まさにセクシュアルハラスメントへの対策をとっているかどうかというのは極めて重要な内容だと思います。ぜひ検討していただきたいと思っております。

 それで、次の質問に移りますが、今度は、セクシュアルハラスメントについて私はきょうは、中心に聞いていきたいと思っております。

 まず、大臣、先ほど午前中の答弁で、こういった答弁がありました、多くの企業がセクハラ防止の取組を行っていると。大臣はさっき、午前中、こんなふうにおっしゃいませんでしたでしょうか。それはどういう意味ですか。多くの企業がセクハラ防止の取組を本当に行っているのかどうか、さまざまなデータが違うというふうに示していましたけれども。先ほどの午前中の答弁、ごまかしだったと言っていただけますか。

根本国務大臣 私が申し上げたかったのは、大企業はかなりやっているんですよ。ただ、中小企業は取組が、大企業は取り組んでいますけれども、中小企業はやはりまだまだですので、そこは中小企業に対しての支援をしていかなければならない、そういう趣旨で申し上げました。

西村(智)委員 議事録を後でよく精査してみますけれども、大企業は多くが行っている、中小企業が行っていない。まさにやっていないところが今課題であるので、いずれにしても、多くの企業がセクハラ防止の取組を行っているという答弁をちょっと不用意にされるというのはいかがなものかというふうに思っております。

 それで、では、実際に、二〇〇六年に均等法が改正されて以降、つまり第十一条に事業主に防止措置が義務づけられて以降、履行状況はどうなっているのか、お聞かせいただきたいと思います。相談状況、対応状況を含めてお答えいただきたいのと、本当に、二〇〇六年の均等法の改正で防止措置義務が課せられて以降セクハラはなくなったのか、なくなってきているのか、大臣、お答えください。

根本国務大臣 セクシュアルハラスメント防止措置に係る企業の取組状況についてでありますが、厚生労働省雇用環境・均等局が実施した平成二十九年度雇用均等基本調査の結果によれば、常時雇用する労働者が、三百人以上九百九十九人以下の企業では九七・四%、千人以上四千九百九十九人以下の企業では九九・五%、五千人以上の企業では一〇〇%がセクハラ防止のための対策に取り組んでおります。

 一方、中小企業も含めた十人以上の企業全体では六五・四%にとどまっており、主として中小企業に対する履行確保が課題となっている、こういう状況にあります。

 こういう観点から、中小企業団体との連携や、働き方改革関連法の内容の周知の機会も活用して中小企業に対して措置義務の内容について周知徹底を図るとともに、ハラスメント撲滅月間を設定し、シンポジウムの開催などによる集中的な周知啓発の実施や、中小企業等へのセミナーやコンサルティングの実施などにより、中小企業において適切に措置義務の履行確保が図られるように対応していきたいと思います。

 また、都道府県労働局に対するセクハラに関する相談件数、これは約七千件と高水準にとどまっております。

 今回の法改正では、セクハラ対策の実効性のさらなる向上を図るために、セクハラは行ってはならないものであり、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきであることを、国、事業主及び労働者の責務として明確化するほか、労働者が事業主にセクハラの相談を行ったことを理由とした不利益取扱いの禁止、自社の労働者などが他社の労働者に対してセクハラを行った場合の他社の講ずる措置への協力の努力義務の新設などを行っており、これによってセクハラのない職場づくりを一層推進していきたいと思っております。

西村(智)委員 セクハラがなくなってきているのかという質問については、何のお答えもいただけませんでした。都道府県労働局における相談件数は年間約七千件、ここのところずっと横ばいだというふうに聞いております。また、均等法の中では最も多い相談事案ということで、やはりここが一番大きな問題だということなんですよ。

 しかも、これは均等法改正以降何も変わっていないということですので、やはり均等法十一条の枠の中でセクシュアルハラスメントへの対策をやり続ける、やっていくというのもやはりある種の限界があるんではないか、こういうふうに、私は、この間の推移を見れば、分析結果を得なければいけないんではないかというふうに思うんです。

 きのうの参考人の御発言にもありました、措置義務を履行していない事業主が多い。先ほど大臣は、大企業はほとんどやっているというふうにおっしゃいましたけれども、ならせば三四・六%の事業主がセクシュアルハラスメントの防止対策に何も取り組んでいない。これは厚生労働省の雇用均等基本調査ですけれども、そこにおいて、二〇一六年、回答がなされているわけです。

 なおかつ、均等法によって措置義務とされている十の措置、これを遵守させる仕組みが足りないということも指摘をされております。実際にその十の措置が完全に履行されたとしても、セクシュアルハラスメントを受けた方、あるいは法が求めている措置が、本当にセクハラの防止や解決に有効かどうか実際のところ不明である、こういった指摘もあるわけですね。

 ですので、今回の法改正というのは、私は、本当に土台のところからやはりもう一回考え直す必要があるんじゃないかと思うんです。

 その一例として申し上げます。均等法第十一条は、フリーランスの方あるいは就活中の学生、こういった方は対象になるんでしょうか。

根本国務大臣 男女雇用機会均等法第十一条では、事業主に対し、その雇用する労働者に対するハラスメントの防止のため、雇用管理上の措置義務を課しており、フリーランスや就職活動中の学生など雇用関係にない者は対象には含まれておりません。

 これは、男女雇用機会均等法は労働法制でありますので……(西村(智)委員「イエスかノーかだけお答えいただければ十分です」と呼ぶ)とりあえず、これでいいですか。はい。

 法律上は対象には含まれておりません。

西村(智)委員 そこはやはり、私は、均等法の持っている限界の一つだというふうに思うんです。

 私たちもいろいろ検討しましたけれども、やはり均等法の枠の外で規定を置かないと、なかなかフリーランスの方や就職活動中の学生も、本当に大変な状況で、ネットで世論調査をすると、六百人の方に対して回答を得たところ、三百人の方が就職活動中にセクシュアルハラスメントを何らか受けた、三百人の方は受けていない。相当な高い率で受けているという実態があります。

 ですので、そこのところは、今回、今のような実態に鑑みれば、何らかの対策というのはやはりとるべきだった、このような女性活躍推進法改正のタイミングに合わせてやるべきだったと私は思っております。

 それで、次の質問なんですけれども、審議会の建議では「自社の労働者が社外の労働者に対してセクシュアルハラスメントを行わないよう配慮する」とされていますけれども、これは一体、具体的にどういう内容を指すんでしょうか。

根本国務大臣 労働政策審議会の建議を踏まえ、本法案では、セクシュアルハラスメントは行ってはならないものであり、社外の労働者を含めた他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきこと、これを事業主の責務として明確化しております。

 言動に必要な注意を払うとは、ハラスメントに起因する問題に関する関心と理解を深めて、みずからの言動がセクハラ、マタハラ、パワハラなどに該当することのないよう注意を払うことを指しております。

 要は、社外の労働者を含めた他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきであるということを事業主の責務として明確化しております。そして、これも、これからの指針の中でより具体的に内容を、これからの指針を策定するに当たっては、ここはわかりやすく、どういう対応かということは明らかにしていきたいと思います。

西村(智)委員 指針で書くということなんです。

 セクハラについては、加害者の範囲については通達で結構幅広く規定をされております。「事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者及び学校における生徒等もセクシュアルハラスメントの行為者になり得るものであり、」と、結構幅広く加害者については書かれているんですね。

 そうしますと、いわゆる被害者の側、社外の労働者に対してセクハラを行わないよう配慮するという、指針で書くという今の大臣の御答弁だったんですけれども、では、この社外の労働者に対してというのはどの範囲のことを考えていらっしゃるのか。

 きのう、これも与党推薦の参考人の方が質問にお答えになって、社内の労働者だけでなく、取引先、個人事業主、就活中の学生、取引先の従業員、そういうことも社内で禁止していくということであったら、指針に盛り込むということだったら比較的簡単に実現できるというふうに述べておられました。

 これは指針に幅広く書いていく、そういうふうに、大臣として今、お考えはお持ちですか。

根本国務大臣 本法案では、労働者に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならないことや、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきことを、国、事業主及び労働者の責務として明確化しております。

 そして、他の労働者には、他社の労働者や求職者も含まれます。また、男女雇用機会均等法などは労働法制であるため、対象は労働者に限っておりますが、学生や個人事業主等の労働者以外の者に対する言動にも同様に注意を払うことが当然望まれます。

 そしてさらに、事業主は、セクシュアルハラスメント等の措置義務として、セクシュアルハラスメント等があってはならない旨の方針などの明確化と周知啓発といった予防措置を講じることとされております。その際、被害者が求職者や個人事業主などの自社の労働者以外の場合であっても同様にあってはならない旨を企業があわせて示すようになれば、予防の観点からの対応は相当程度前進するものと考えております。

 このような責務規定の趣旨や措置義務の予防措置に関する企業の対応を促すことができるように、セクハラ指針などの内容について労働政策審議会においてしっかりと議論を行っていきたいと思います。

西村(智)委員 ちょっと今の答弁だと弱いですね。

 均等法五条では、労働者になろうとする者が対象とされております。ですので、均等法十一条の対象に就活中の学生も含むというふうにすること、これは考えられないでしょうか。せめて、今の状況に関して、この法改正は、私はやるべきだし、やれるというふうに思うんです。労働者及び労働者となろうとする者、あるいは議法で出しております従業者等というふうにできないですか、大臣。

根本国務大臣 まず、男女雇用機会均等法第五条、これは、労働者の募集及び採用について性差別を禁止しているものであって、その対象者は就活中の学生も含むものであります。第五条は含むものであります。

 一方で、男女雇用機会均等法十一条に定めるセクシュアルハラスメントの防止のための措置義務については、その雇用する労働者を対象に、予防、救済、再発防止のための一連の雇用管理上の措置を事業主に求めるものであって、就活中の学生など事業主と雇用関係にはない者について、救済や再発防止も含めた措置をどこまで事業主の責任として求められるかといった課題がありますので、就活中の学生を対象とすること、これは慎重な検討が必要であると思います。

 男女雇用均等法は労働法制でありますから、直接の保護の対象は労働者としておりますが、就活中の学生に対しても同様に注意を払うことは当然望まれます。労働者に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならないことに理解を深めることや、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきことを、国、事業主及び労働者の責務として明確化をしております。

 こういう責務規定の趣旨も踏まえれば、事業主が措置義務の予防措置としてセクハラを禁止する社内方針の明確化を行うに当たっては、就活中の学生に対するセクハラも同様にあってはならない旨を示すよう促していくことが必要だと考えております。こういう企業の対応ができるように、指針等の内容について、審議会においてしっかりと議論を行っていきたいと思います。

西村(智)委員 先ほど大臣は、大企業の多くがセクハラ防止の取組を行っていると答弁をされました。しかし、今回、例えばこの一カ月とか二カ月の間でセクシュアルハラスメント、もうあれはセクシュアルハラスメントじゃなくて刑事事件そのものですよね、そういうふうになっている事案を起こした会社はどこですか。まさにそのセクハラ防止対策をやっているはずの大企業じゃないですか。だから、責務規定を入れても十分に効果がないというのは、あれを見ても明らかなんですよ。認識が不十分だと思います。

 ですから、私たちは、やはり根本的には議員立法で提出したようなセクハラ禁止等々が必要だということを申し上げておきたい。

 それで、今度は紛争解決の方に話を進めますが、措置義務の履行確保は不十分である、これはもう参考人の方が、与野党推薦を問わず指摘をされておられました。とにかく、法定化されている措置義務であるのに履行している事業主が少ない、罰則がない、企業名公表制度もゼロ、セクハラ指針にある十の措置が本当に有効かどうかわからない。紛争解決の援助、調停は、お互いに譲り合いを前提とする解決方法であって、金銭解決、中央値が二十九・五万円、非常に低額です。被害者の方が求めている、セクハラと認定すること、謝罪すること、二度と起こらないようにすること、こういったこととは大きく乖離しているという実態があります。これでは、被害者は救済されず、抑止にもなりません。

 この実態について、大臣はどういうふうにお考えになっていますか。

根本国務大臣 実効性を高めるための措置ということでよろしいですか。(西村(智)委員「実態について」と呼ぶ)実態ね。

 実態については、平成二十九年度に男女雇用機会均等法に基づく報告徴収によって徴収をして雇用管理の実態把握を行った八千二百二十二事業所のうち、何らかの法違反が確認されたのは六千九百十二事業所、そして、セクシュアルハラスメントの措置義務違反に対する是正指導件数は四千四百五十八件でした。また、その是正指導件数の内訳は、助言四千四百五十八件、指導二百六十一件、勧告ゼロ件であります。

 御指摘のとおり、これまでに、セクハラの措置義務違反に関して、事業主が勧告に従わず、氏名公表を行ったことはありませんが、ただ、事業主が雇用管理上必要な措置を講じていない場合、まずは、均等法二十九条に基づいて事業主に対して報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告を行うことになります。その上で、勧告に従わない場合に、三十条に基づき氏名公表を行うこととなります。

 現状は、助言、指導を受けた段階で企業において適正に是正措置がとられているために、勧告に至る件数も少なくて、勧告違反の企業名公表には至っておりません。

 引き続き、均等法の履行確保に取り組んでいきたいと思います。

西村(智)委員 もう時間が来てしまいましたので終わりますが、これではとても実効が上がらない、上がることは期待できないと思います。そのことを申し上げて、きょうは終わります。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは、閣法について質問をさせていただきたいと思います。

 女性が活躍する社会を目指していくということで今回法改正を出されたんだと思いますが、大臣、ちょっとお聞きをしたいんですけれども、現行法で、女性はうまく活躍できている、そうお考えですか。そもそも、その活躍というのはどういうことだというふうに大臣はお考えですか。ここで言うところの活躍というのは何を指すんですか。

根本国務大臣 やはり、女性活躍というのは、それぞれの女性が自分の持てる能力を十分に発揮して、そしてそれぞれの立場で活躍していただくということだと思います。

岡本(充)委員 いやいや、その活躍というのはどういうことを指すのかということを聞いているんです。活躍していただく、活躍とは何を指すんですか。

根本国務大臣 みずからの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること、これが女性活躍であります。

岡本(充)委員 最後、活躍することと言ったけれども、その活躍とは何をいうのかと言っているんです。

根本国務大臣 活躍の定義のような話にはなりますが、要は、みずからの意思によって職業生活を営んで、あるいは営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活を営んでいただくということだと思います。

岡本(充)委員 では、活躍とは職業生活を営むこと、そういうことですか。

根本国務大臣 活躍とは何か、これはいろいろな定義があると思いますが、この法律による女性の活躍ということでいえば、私が先ほど申し上げたことで、要は、「自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において」、同語反復みたいになりますけれども、「において活躍すること」というのがこの法律の定義ですから。

 だって、活躍といったら、それぞれの思いがあると思いますよ。要は、この法律での女性活躍ということでいえば、この法律はそういう定義をしている、これに基づいて施策を講じている、こういうことだと思います。

岡本(充)委員 大臣、答えられないんですね、これは。

 だって、「女性の職業生活における活躍」と書いているんですから、この活躍というのは一体どういうことを指すんだと言われたときに、活躍というのはこういうことなんだと、それはやはり言えるべきじゃないですか。

 だから、厚生労働省が思う活躍というのはどういうことなのか。内閣でもいいです、閣法で出しているわけですから。活躍とはどういうことなのか、それを教えてくれと言ったら、活躍することだと。申しわけないですけれども、それは答えているとは言えませんよ。

 大臣、もう一回答えますか。次の問いに行きましょうか。難しいんですか。答えられますか。

根本国務大臣 最後に「活躍すること」という語尾を申し上げたので、活躍は何なんだという話になると思いますが、やはりそれは、かいつまんで言えば、要は女性がみずからの能力を十分発揮して生き生きと働くことだと思います。

岡本(充)委員 僕は、働くことだけじゃないと思いますよ。いろいろな場所でそれぞれの能力を発揮して、個人の個性を生かしながら生活していくこと、それが生かせる社会をつくっていくことが活躍なんじゃないかと私は思っていますけれどもね。だって、この場合、タイトルのところに枕言葉で「女性の職業生活における」と定義していますから、活躍はもっと広いんですよ。その中の、女性の職業生活における部分の活躍がここなんですよ。大臣が言っているのは違うんですよ。活躍の方が狭いですよ、それは。よく後で事務方と整理してみてください。

 では、きょうは逐条で聞こうかと思いましたけれども、きのうちょっといろいろありまして、金曜日にメーンは残しておいて、きょうのところはいろいろ確認をしていきたいと思います。

 きょうお配りをしました一覧表、私も含め、立憲民主党さんと国民民主党などで対案を提出しています。

 そもそもいろいろなところに違いがあるんですが、先ほどちょっと気になったんですけれども、ほかの会社から自社へのセクハラ行為、これに対して労働者を守ることを事業主に課す、このことができたとしても、何で他社へそんなことはやめてくれということが言えないのか、ちょっと気になったんです。それで、きのうちょっと役所の人と議論しました。

 そもそも、労働法制及びそれに係る指針などで、ほかの会社に対して事業主が働きかけを求める条文若しくは指針、こういったものがあるのか、お答えをいただきたいと思います。

小林政府参考人 企業が他社に対して改善要請等ができるとする規定の例が幾つかございます。

 一つは、労働安全衛生法におきまして、元方事業者は関係請負人等に対し、労働安全衛生法の規定に違反しないよう必要な指導等を行わなければならない。それから、派遣の関係でございますが、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針というのがございまして、派遣元事業主は派遣先に対して健康診断等の結果に基づく就業上の措置を講ずるに当たって、派遣先の協力が必要な場合には、派遣先に対して当該措置の実施に協力するよう要請すること等とする規定がございます。

岡本(充)委員 それだけですか。ほかにはないんですか。

小林政府参考人 私どもが把握している限りでは、今申し上げたとおりです。

岡本(充)委員 最初に言われたのが、建設会社の元請、下請の話という理解でよろしいですか。元請と下請の関係というような理解。はい。うなずかれています。

 労働法制が、自分の会社の従業員に危害が及んでいても外への対策を求めることをなぜしないたてつけになっているのか、ここがよくわからないんですね。つまり、自分の会社の従業員に何らかの危害が及ぶ、何でもいいんです、それが外部に要因があるときに、自分の会社だけを守ることに徹しなさいという話なんですね。

 つまり、外から例えばとんでもない騒音が聞こえてくることに対して、もう少し音を小さくしてもらえませんかとか、他の事業所から有害な物質が飛んでくる、これに対して、有害な物質を出さないようにしてもらえませんか、こう要請することは、労働法制上、条文、指針ではできない、こういう理解でいいですか。

小林政府参考人 基本的に、今のセクハラは……(岡本(充)委員「いや、セクハラじゃない。危害一般」と呼ぶ)ちょっとセクハラのところから申し上げさせていただきますと、今のセクハラは、他社からセクハラを受けた場合に、事業主は措置義務等がかかっているんです。ただし、その措置義務というのは、本来は再発防止措置まで含むはずですので、加害企業に対して物を言ってしかるべきということがございます。

 そこのところがこれまで十分ではなかったということがございまして、今般の改正の中で、セクハラの加害企業は、被害企業の方から協力を求められたときには協力に応じるよう努めなければならないという努力義務規定を今回入れさせていただいております。

岡本(充)委員 それは次の質問なんですよ。

 私が聞いているのは、そもそも労働法は、なぜ自社の中での行為に完結をするのか。他の企業なり外部に要因があることに対して何らかのアクションを起こすことを条文、指針等で定めているものは、ほとんどないと言われました。なぜそういうたてつけになっているのかということを聞いているんです。

小林政府参考人 自社の労働者を保護するのは事業主の責務というのが労働法の基本的な構造でございまして、通常、外との関係というのが生ずるケースがこれまでは少なかったということなのではなかろうかというふうに思っております。

岡本(充)委員 本当にそれでいいんですか。金曜日にまた聞きますから、ちゃんと整理した方がいいですよ。

 そういう意味で、外へなぜ求めないのか、気になるんです。先ほどちょっと局長が言われた、協力要請があった場合には、原因となる企業は何らかのアクションを起こすよう努めなければならない努力義務を入れます。今回そうですね。じゃ、そもそも要請は、何に基づいてするんですか。他社に要請をするときに、あなたは一体何に基づいて要請してきたんですかと言われたときは、何を根拠に要請するんですか。

小林政府参考人 被害に遭った労働者を雇用する事業主は、その被害の再発防止を含めて措置義務を果たさなければいけない。その措置義務を貫徹する上で加害企業側の協力が必要になるということでございまして、出発点は、みずから雇用している労働者を保護するために、その措置義務を果たすために必要になるということであります。

岡本(充)委員 ここは、安衛部長が来ていないから、安衛法を聞くのはあれかもしれないですけれども、外の企業、さっきの騒音だ、有害物質だ、こういうとき、騒音がうるさければ自分の会社の壁を二重構造、三重構造にして頑張りなさい、自社で完結しなさいというのが今の労働法制の考え方じゃないですか。

 今回、努力義務を課すとはいえ、B社に対応を求める、これを言うということは、これまでの概念と違うんでしょう。であれば、一体何に基づいて言うのか。じゃ、原因となっている加害企業の側が対応を求めてきた企業に、あなたは何に基づいてその発言をしているんですかと言った場合は、一体何に基づいてその申入れをしていると言うのか、明確にお答えをいただきたいんです。

小林政府参考人 繰り返しになりますが、みずから雇用する労働者が被害に遭ったときに、その被害状況を改善していくというのが雇用している事業主の措置義務の一つであります。

 セクハラにつきましては、今までも、他社からセクハラを受けた場合の措置義務を認めてきた。ただ、そこのところが実効上弱かったということがあって、今回、法律でそこを補強したということであります。

岡本(充)委員 それは違うんです。B社の中では、やってくださいということは努力義務に該当する。何に基づいて要請をするのか。民法なんですか、刑法なんですか、それとも何らかの指針なんですか。何に基づいて要請しているんですかと言われたときに、これに基づいて要請していますと何を根拠に言うんですかと聞いているんです。

小林政府参考人 基本は、男女雇用機会均等法の十一条のセクハラの措置義務と、それに基づいて、それを貫徹する上で加害企業側の協力が必要なので協力してほしいという言い方だというふうに理解しております。

岡本(充)委員 だとすれば、これは小林局長の範疇じゃないけれども、大臣、また金曜日に聞くから、ちゃんと調べておいてください。

 じゃ、労働安全衛生法でも、さっきの話、騒音がうるさければ、騒音を出している企業に対して、労働者を守るためにきちっと、静かにしてくださいということを同じように労働法制に基づいて言うことができるのか。今、局長はそう言っているんですよ。言っていることがこれはずれているんです。どっちなんですか。これはちゃんとはっきりさせてほしいんですけれども、どうですか。今答えられないのなら、金曜日までに答えますでも結構ですけれども。

根本国務大臣 法律というのは、それぞれの目的によって構成されていると思います。

 先ほど局長が答弁したように、今回、他社に協力を求めるというのは、要は労働者を保護するという責務がありますから必要な措置義務がかかっているわけですが、あくまでも自分の会社の労働者を保護するという観点で、法律に協力義務という根拠を置いて、その根拠に基づいて必要な対応をするということの整理だと思います。

 じゃ、具体的にどういうケースの場合というようなことについては、どんなケースでどういう対応をするのかということはこれから指針等の審議の中で詰めていく話だと思います。基本はそういうことだと思います。

岡本(充)委員 じゃ、大臣は今答えられるんですね。金曜日まで引っ張らずに、今ここで答えるか。法律に基づいていると言うなら、どこの法律に基づいているのか聞きますよ。いいですか。

根本国務大臣 要は、今回は、どの法律に基づいてというよりも、ここの法律に根拠を置いた、だからそれを運用するということだと思います。

小林政府参考人 今回提出をさせていただいております均等法の十一条の三項というのが協力規定の根拠になるわけでございますが、三項は、「事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。」ということで、条文上も、第一項の措置の実施に関し必要があるという整理になっておるところであります。

岡本(充)委員 違うんです。協力を求められたときは努力義務なんです。

 委員長、これはちゃんと整理してください。時間がもったいない。わかっているでしょう。何を根拠に協力要請するんだと聞いているんですよ。協力要請を求められたときにはやらなきゃいけないというのは、それは十一条に書いていますよ。何を根拠にあなたは言ってきたんですかと言われたときに、何と答えるんですかと言っているんです。

 委員長、わかってもらっていますよね。答えていないですよね。

冨岡委員長 ちょっととめて。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 速記を起こしてください。

小林政府参考人 済みません、改めて整理をさせていただきます。

岡本(充)委員 じゃ、整理してください。

 これは金曜日にして、今度は医師の働き方に行きたいと思います。

 医師の働き方検討会を開いて三月二十八日にまとめた話で、医師の働く時間の上限、A、B、C、いろいろ分けて考えたという話になっています。この働く時間の上限は一体何時間がいいのかというのは、正直言って本当に難しいと私も思います。だから、これがいいとかけしからぬと言うつもりは、まだ私自身もわからない、正直、十分説明も受けていませんから。

 ただ、ざっと見せていただいたところ、千八百六十という時間がひとり歩きしています。千八百六十時間、集中的技術向上水準。技術を向上していくときに、どうしても年千八百六十時間ぐらい、休日労働を含む所定時間外の労働が必要になることがあり得る、こういう理解ですね。

 これだけ働く状況が必要な時代が二十代若しくは三十代前半にやってくるという中で、子育てをしている女性はどういうサービスを使いながら千八百六十時間働くのか、具体的なイメージを、きょうはぜひちょっとシミュレートしたものを出してほしい。要請です。局長で結構です。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 三月に出ました医師の働き方改革に関する検討会の報告書の中で、今委員御指摘のように、とりわけ集中的技能向上水準という形で一定の技能向上を必要とする時期にあるドクターについて、本人の申出により、上限を一八六〇というところまで設けるということが盛り込まれております。

 具体的に、その期間、女性ということに着目した場合に、一方においてライフイベントがございます。女性医師のライフイベントに対する支援策というのは別に設けてございますが、今回の上限時間との関係でどのようになるか、もう少し踏み込んだ分析というのがどこまでできるか、検討させていただきたいと思います。

岡本(充)委員 年間千八百六十時間、これは何年間可能なんでしたか、局長。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 集中的技能向上水準と言われる今申し上げました上限年千八百六十時間にも、二種類ございます。一つは、初期、後期の研修医について本人がプログラムを選択して行う場合、もう一つは、医籍登録後、臨床従事六年目以降の方が行う場合ということになってございます。

 前者につきましては前期及び後期研修期間ということになりますけれども、後者につきましては、基本的に六年目以降の者ということで、これにつきましてはそれぞれの本人が選ぶプログラムなどに応じてというふうに考えられております。

岡本(充)委員 つまり、何年でもできちゃうんですね。すごい話ですね。そういう状況で一体働き続けることができるのかというのは、正直、想像がつかないですね。

 じゃ、この千八百六十は、言われていますけれども、きょうはちょっと資料を提出しませんでしたけれども、報告書でまとめられたところの十七ページですか、米国卒後医学教育認定評議会のレジデントの労働時間は週八十時間制限が導入されている、こう紹介されています。この週八十時間というのは、いわゆる自己研さんの時間、自宅でのトレーニング、こういうものは含まれますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 私どもが把握をしている限りで申し上げれば、この時間は、イン・ホスピタルという表現になっております。デューティー・イン・ホスピタルということでございますので、そこまでの、今先生おっしゃったようないわゆる研さん時間が明確に整理されているというふうには、私どもとしては把握してございません。いわば、そういうものも込み込みの時間というふうに整理され得る、あるいは整理されているのではないかというふうに受けとめてございます。

岡本(充)委員 ACGMEポリシーのエフェクティブ、ジュライ・ファースト、二〇一七年のジュライ・ファーストです、ここからスタートのものにはこう書いています。八十時間を超えてはいけない、これは四週間の平均を見てですね。ただ、これは、エクスクルーシブじゃないですよ、インクルーシブですよ。「オール インハウス クリニカル アンド エデュケーショナル アクティビティーズ、クリニカル ワーク ダン フロム ホーム、アンド オール ムーンライティング」と書いてあります。

 これは、和訳すると、副業も含めて全部なんじゃないですか。アルバイトも含めて、全部の時間を含めて八十時間と言っているんじゃないですか、家でやることも。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先生がごらんいただいている同じ文献を私どもも見ていると思います。今引用されたところの表現について、私どもも同じ認識を持ってございます。

岡本(充)委員 さっきは研さんが入らないと言われたじゃないですか。自己研さんの時間は入らないと言わなかったですか。自己研さんの時間も入るんですか。確認です。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 失礼しました。先ほどの答弁が言葉足らずであるとすれば言い直させていただきますが、デューティー・イン・ホスピタルということでございまして、先ほど引用された部分でございますので、ホスピタルにおいて行われるものについては今先生が引用された部分は入るというふうに私どもとしても認識しております。

 あえて申し上げれば、自宅を含めたところでの自己研さんというものがあるとすれば、それについてはイン・ホスピタルではないというふうには思いますけれども、基本的には、先生の今引用された部分を私どもとしても同じように踏まえた上で議論をさせていただいております。

岡本(充)委員 ところが、今回まとめた千八百六十は、家での時間は入りませんね。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の千八百六十時間は、時間外労働の上限規制ということでございます。基本的には、労働者として指揮を受けて行った労働行為における時間の上限規制ということで考えております。

岡本(充)委員 つまりこれは、自己研さんの時間は、家で何かガイドラインを読んでいました、こういう時間は入らないわけですよね。これを引用してきて、アメリカの方は八十時間になっていますから、それと比べて今回の我々の千八百六十は妥当だと比較するのはおかしいんじゃないかと言っているわけです。出してくる引用がおかしいんじゃないか。

 いや、千八百六十が多いとか少ないとか言っているわけじゃないですよ、大臣。ほかのものを引用するなら、一体その八十時間という時間が何を示しているのかということをきちっと把握しないと、これはミスリードしていますよ、明らかに。

 今のを聞いていて、そう思われませんでしたか、大臣。大臣に感想を聞いています。

根本国務大臣 一般論として、そういうものを引用する場合には、きちんとそこは概念等の整理は必要だと思います。

岡本(充)委員 今の議論を聞いていてどう思われましたか。八十時間はちょっと違ったでしょう。どうですか。

根本国務大臣 今のやりとりを聞いてどう思うかということと、今の話をきちんとやはり整理した上で判断するということ、そこは、今のやりとりを聞いていると、そこのところの整理が必ずしもきちんとされていないのではないかという気もいたしますが、いずれにしても、そこは事実関係の問題ですから、それは事実関係を確認させたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 事実関係という意味で申し上げれば、委員先ほど来御指摘いただいております集中的技能向上水準の上限一八六〇という数字につきましては、それぞれの目的に応じて何時間の時間外労働であれば必要十分であるかを考慮する必要があるが、我が国において、時間外労働といわゆる集中的技能向上水準の業務の関連性を検証したエビデンスは現在のところ存在しないということを明確に報告書においても書かれ、その上で、二〇二四年四月というこの上限規制が医師に適用される段階において、医師に適用される時間外労働の上限のうち高いものと同じ水準ということで、いわゆるC水準については一八六〇と書かれております。

 その上で、今引用されましたように、報告書においては、米を書いて、「ただし、米国においては、」云々という記述がございます。報告書は、公開において行われた検討会を踏まえた検討でございますが、委員の中から、ACGMEのファクトについても検討会に示されて、それについてもいろいろな形での紹介がなされたということを記録にとどめるべしということもあり、ここに書かせていただいたというのがまずこの報告書に至った事実でございます。

 もちろん、この報告書においても、今の週八十時間制限の話に加えて、ACGMEにおいては、連続勤務時間の問題、宿直勤務の頻度の問題、最低休息時間あるいは強制的な非番の週当たり日数などの制限もございます。その旨は注意書きをしてございまして、一律にACGMEの基準をもってして一八六〇というものを招いたものではございませんが、事実として記載されたものについて今おっしゃったような違いがある点は、これから私どもがこの報告書についていろいろなところで触れるに当たっては十分留意してまいりたいと思います。

岡本(充)委員 いや、この報告書を見ると、米印をつけて、ただし、米国においてはこうだ、週八十時間制限が導入されていて、注釈の十六番がついていて、「これは、時間外労働年千九百二十時間に相当する水準である。」と書いているんですよ。つまり、これと比較して一八六〇がどうなのかということを見せているわけですよ。これが本当にミスリードじゃないのかどうか、私は大変疑問を持っています。

 それ以外にもいろいろ聞きたいことがあります。

 もう一つ重要なポイント、Bという水準が終わるのが二〇三六年ですか、二〇三六年三月末で終わるんですか、このときには医師の需給バランスがとれるというのが根拠だと理解しています。

 でも、このときの根拠、僕が聞きたいのは、つまり、長時間労働になっている、そしてまた、その能力を得るために、また維持するために、長時間労働が実際行われている診療科に女性医師がどのぐらい就職しているのか、その科についているのか。そして、今働いている方じゃないですよ、新しく女性医師がそこへどれだけの割合ついているか、今後の女性医師の推移。

 ことし、私立大学の女子学生の合格がふえた大学がありまして、これまで試験は平等だと言っていたのに本当だったのかなと思わせるような結果が出た大学が幾つかありましたが、これから女子学生の割合が医学部でも更にふえていくとすれば、この割合を勘案しても、二〇三六年にキャッチアップできるのか、これをもう一度シミュレートする必要があると思います。

 ぜひ、局長でもいいです、一度それを、まあ時間がかかると思うから、さすがに金曜日とは言いませんけれども、しっかりシミュレートしてみられたらいかがですか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘いただきましたように、いわゆるB水準の期限につきましては、全国的な医師の需給だけではなく、医師の偏在も含めて是正がされるという政策目標年度に合わせております。

 医師の需給そのものが今回の働き方の新しいルールを入れることによって変わってくるということを考えて、マクロとしての需給についても見直さなければいけませんし、今おっしゃったように、性別を入れ、また診療科別を入れたときにどのような形になるかについては、もう少し時間をいただいて、私どもとしても研究課題だというふうに思っておりますので、今後、問題意識を持って取り組ませていただきたいと思います。

岡本(充)委員 ぜひ早目に出して、御報告いただきたいと思います。要望を申し上げて、質問を終わります。

冨岡委員長 次に、山井和則君。

山井委員 三十分間、女性活躍支援に関連して質問をさせていただきたいと思います。

 女性活躍支援法といいますけれども、私、日本の現状は、逆に危機的な状況になっているんではないかと思います。

 例えば、きょうの朝日新聞の朝刊でも、「性暴力 無罪判決続き疑問」「娘の同意なく性交―「抵抗著しく困難」否定」「酔って抵抗不能「許容」と誤解―故意認めず」「憤る虐待被害者」と。そして、この抗議のミー・トゥー運動の活動も十一日にあったということであります。

 もちろん女性の活躍支援は重要で、私たちも大賛成ですけれども、一方では、このような深刻な事態が広がっているのではないかと私は思います。

 また、伊藤詩織さんの事件もありまして、きょうの配付資料でもお配りをさせていただきましたけれども、きょうの配付資料の中にありますように、十三ページ、「「性被害者 救済の仕組みを」 伊藤詩織さんが手記、会見」という記事がございます。

 そういう中で、ここに書いてありますように、伊藤さんは二〇一五年、就職相談のため記者の男性と都内で飲食した際に、意識を失い望まない性行為をされたとして警察に告訴、準強姦容疑で捜査されたが、嫌疑不十分で不起訴処分となった。それで、会見で伊藤さんは、日本では七月に改正刑法が施行されたが、強制性交罪も、被害者が抵抗できないほどの暴行、脅迫を受けたと証明できないと罪に問えないことは変わらない、三年後の見直しでさらなる議論が必要だと述べた。また、さらに、記者会見では、被害を公にしてからバッシングを受けて、前のように生活できなくなった、しかし、隠れなければならないのは被害者ではない、話すことでよい方向に変えていきたいと話したということです。

 こういう性暴力の被害者が、勇気を持って、本当に悩みながら公表、告発しても、逆に第二次の被害を受けて、この伊藤詩織さんも、日本に住みづらくなって、今、イギリスに住んでおられる、そういう状況にすらなっております。

 配付資料の十四ページ。そういうことに関して、このたび、伊藤詩織さん支援の会も発足しましたし、また、伊藤詩織さんがカルバン・クラインのキャンペーンにも起用されております。

 こういうふうに、本当に女性を取り巻く環境というのは逆に深刻化して、こういう性暴力被害などで不起訴の案件が逆にふえているのではないか、そういう恐ろしい危機感を私は持っております。

 さらに、その次の配付資料にもありますように、十七ページ、睡眠薬を使った性犯罪の急増、就活OB訪問の女子大生に大林組社員がわいせつ行為、さらに、その横の記事にありますように、就活生にわいせつ、これも不起訴。結局、不起訴になるわけですね。

 本当にこういうことでいいのかということを私は思わざるを得ませんし、このことについて、何とか党派を超えて、こういう現状というのは国際的にも恥ずかしいし、こういう被害者の方を守るのが国会の責務であるので、この女性活躍支援法の中でもこういう審議をしっかりとせねばと思っております。

 さらに、後半で触れますけれども、来年の通常国会で、早ければ、介護保険法の改正で二割負担への自己負担増とか、あるいは、要介護一、二の生活援助サービスを介護保険から外して地域支援事業にする、介護者支援を後退させる、こういう法改正も検討されていると聞いております。こういうのも女性の活躍支援に逆行していると思います。

 そこでなんですが、きょう、具体的に、外務省にもお越しをいただいておりますが、日本の政府、役所がどう対応しているのかという問題、具体例をお聞きしたいと思います。

 毎日新聞四月十三日、「元駐イラン大使セクハラ 公邸で職員にキス 外務省が注意」「退職後 交流協会会長に」という記事がございます。

 簡単に、この話はどういう話かというのをお話ししたいと思います。

 二〇一二年の十月、今から七年ぐらい前に、この元大使の方が、イランを去る前日の晩に、二人きりで食事をしたいと誘って、食事の後、二人きりの執務室に誘ったということですね。それで、報道されるとおりで言いますと、結局、キスしたり体をさわったり、まあ、読み上げることもはばかられるような強烈なセクハラ行為をしたということであります。

 それで、このことについてなんですけれども、被害者の女性は外務省にこの被害の三カ月後に訴えたけれども、処分も何もなし。おまけに、退職後、この方は、イランとの交流協会会長にもなっておられる。結局、被害を訴えたのに握り潰されたのではないか。

 このことに関して、河野大臣は昨日、外務省としてはこれまで被害者に寄り添った対応をしてきた、セクハラ行為があったと認定された場合には外務省として厳しい処分で臨むことになると思いますとおっしゃっているんですね。

 個別のことではありますけれども、こういう法案審議の中で元大使のこういうセクハラが明らかになって、外務省が十分な対応をしていない、これは非常に深刻な問題だと思っております。これは現在進行形の問題です。

 ついては、外務省の官房長、お越しをいただいておりますが、これはどういうふうな経緯であったのか、そしてどういう対応をしたのか、報告をお願いします。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問のありました案件に関しましては、本年三月、元在イラン大使が刑事告訴されているというふうに承知しております。

 本件につきましては、被害者のその時々の意向を踏まえまして、今般の刑事告訴にかかわる、警察に協力も含めまして、できる限りの措置を誠実に講じてきているところでございます。

 これ以上につきましては、警察にて手続を行っているところであり、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

山井委員 いや、でも、河野大臣が寄り添って対応したと言っているけれども、全然寄り添っていないじゃないですか。

 被害に遭われた三カ月後に、身上書にもセクハラ被害を訴えた。直属の上司にも事の次第を訴えた。人事課の方からその元大使に注意喚起をしたけれども、結局、処分も何もなし。おまけに、当時の上司は、忘れて休みなさい、かつ、身上書についてのわいせつ行為の記述を削除するようにと言っているんですね。

 結局、それで告訴することになった。御本人も、そんなもの、告訴とかしたくなかったと思いますよ。外務省が動かなかったから、やむにやまれぬ思いで、七年たって、ことし十月に時効になるから。そして、御本人は、残念ながら今、急性ストレス障害になられて体調を著しく壊してしまわれているわけですね、急性ストレス反応が出て。こういう状況を招いたわけであります。

 外務省は、今まできっちり寄り添って対応したと言えるんですか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましては、事案が発生した当初、そして我々がその事案について知り得たとき以降、その時々の被害者の意向を踏まえまして、できる限りの措置を誠実に講じてきているという認識でございます。河野大臣はそういう趣旨を述べたものだというふうに理解しているところでございます。

 以上申し上げた上で、今は、これは警察にて手続が開始されておりますので、外務省としましては、引き続き、被害者の意向を踏まえまして、警察に更に協力することを含めて、できる限りの対応を行ってまいりたいというふうに考えております。

山井委員 外務省に対しては、御本人は非常に失望したと。何度お願いしても十分な対応をしてもらえなかった、事案の公表もしていない、処分もしていない、結局、警察沙汰になるまで放置されていたということであります。

 それではこれをお聞きしますが、ちゃんとこの三カ月後に被害を受けたときの調査をして、調査した記録というのは外務省に残っているんですね。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 個々の経緯、事案の内容について言及するのは差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げたとおり、その時々の被害者の意向に応じて、我々としましては誠実に対応してきたという認識でございます。

山井委員 答えてください、さっきの質問。記録は残っているんですかと聞いているんだから。内容は聞いていない。

下川政府参考人 いろいろなやりとりなどの記録は残しているところでございます。

山井委員 今までの話は、当時の文書での記録は残っていないと聞いておりますよ。口頭で引継ぎがあったが、あの件は済んだということになっている、元大使は既にやめた人、私人だから何もできないと担当課は答えた、こういう報道もあります。

 ということは、当時のやりとりの記録は残っているということですね、今、残っているということをおっしゃいましたから。これは非常に現在進行形で、刑事告訴までなっている政府の問題ですから、その残っている記録を、プライバシーにかかわることは黒塗りで結構ですから、厚生労働委員会の理事会に提出してください。よろしいですか、官房長。

下川政府参考人 委員会の御判断にお任せしたいと思います。

山井委員 これは非常に重要です。もちろん私はその方々のプライバシーを傷つけようという気は全くありませんけれども、今まではその記録はないと言っていたわけですから。ということは、今までないと言っていたのは、もしかしたらうそだったかもしれないということですから、じゃ、資料があるんだったら出してもらいましょう。

 なぜならば、今回報道している内容を聞けば、読み上げませんけれども、どんな恐ろしい被害かということは、かなり悪質なセクハラ、強制わいせつ罪に相当するかもしれないぐらいのことはやっておられますよ。それを知りながら何の処分もしていなかったとなったら、外務省、大問題になりますよ。

 退職金法の十五条によると、退職をした者が基礎在職期間中の行為に係る刑事事件に関し禁錮以上の刑に処せられたときは、退職金の返納とかを求めることができる。さらに、在職期間中に懲戒免職等の処分を受けるべき行為を認めたときには、当該退職の日から五年以内に限り、退職金の返納や減額を行うことができる。

 つまり、やめた後という言いわけは通用しないんですよ。やめてからでも、懲戒免職に相当するとか禁錮刑になり得る場合は、調査をして、そういう被害ではないということを立証する責任が外務省にあったということです。

 ということは、現在までこういう行為を行われていないということは、官房長、調査を今されたとおっしゃいましたね、調査して記録も残っている、その記録の中で、懲戒免職に相当する、あるいは禁錮刑になり得るような案件ではないという判断を外務省がされたということでよろしいですか。

下川政府参考人 先ほど私が申し上げましたのは、その時々の被害者の意向を踏まえて誠実に対応してきたという認識であるということでございまして、そういったやりとりについての記録は残っているということでございます。

山井委員 ちょっと待った。今のは違うじゃないですか、さっきの答弁と。

 ということは、この案件がどういう事案だったという調査をした、その資料というのはないということじゃないですか。被害者がこう言ってきたという記録はあるけれども、実際、そのことについてどう外務省が動いて、どう調査してどうだったか、そういう資料はちゃんとあるんですか。改めて言ってください。

下川政府参考人 この手の事案が生じる場合に、訴えを受けた組織として何を行うかということにつきましては、その被害者の意向を踏まえて行っているところでございます。

 したがいまして、その事実関係をただす、それを当事者にただして事実関係を認定する、そういったようなことをやるかどうかということも含めて、被害者の意向をまず確認してから対応するようにしているところでございます。

 そういう意味で、この事案につきましても、被害者の意向を踏まえて、その時々、誠実に対応してきたというふうに考えております。

山井委員 官房長、やはりあなたの答弁は不誠実だと私は思いますよ。

 なぜ告訴されたのかということに関しては、被害者の女性の方は、何度も何度も言っても外務省が動いてくれないから告訴せざるを得なくなったと言っているんですよ。被害者の方がこうおっしゃっているのに、被害者に寄り添って被害者のために対応してきた、それを言うのは余りにも私は失礼だと思います。そうじゃないからこういう事態になっているわけじゃないですか。被害者の方は問題があったことを公表し、元大使を処分してくれと言ってきたわけですよ。それを握り潰したわけですね。

 それで、今言いましたように、退職金法の中では、在職当時のこういうわいせつ行為、セクハラ行為で懲戒免職に相当するときや禁錮刑に相当することになったときには退職金の返還を求めることになるがあるわけですから、当然、それをしなかったということは、それに当たらないという判断を外務省がされたということですけれども、私は、それは大問題だというふうに疑わざるを得ません。

 ついては、先ほど警察に任せるとおっしゃいましたが、警察に任せるということは、告訴しないと、今後、セクハラの被害者は救われないということですよ。女性活躍支援法という法案を私たちも今議論していますけれども、率先垂範して政府が、国の役所が、外務省が動かないで、外務省はもう知りませんよ、警察が判断したらいいじゃないですか、そんなことで済むはずがありません。

 ついては、この問題について、ここまで、刑事告訴までなって、こういう報道まで出ているわけですから、再調査をしてください。お答えください。

下川政府参考人 外務省がどういう措置を当時とり得たかということに関連して、一般論として申し上げれば、当該職員が退官するなどして、既に、国家公務員法上、国家公務員としての身分を有していない場合は懲戒処分の対象とはならないということがまずございます。

 その上で、先生から御指摘のございましたように退職手当法上の措置というものもございますので、これは、その要件が満たされた場合にはそれに応じて必要な措置をとっていくということであろうかと思います。

 追加調査等につきましては、何が必要か、何が適切か更に検討してまいりたいと思います。

山井委員 もっと踏み込んだ前向きな答弁をお願いします。

 今おっしゃいましたよね、退職手当法に関連して何ができるか。つまり、禁錮刑やあるいは懲戒免職に相当する処分を受けた行為のときには対応しないとだめなんですよ。退職しているしていないは関係ないんです。

 ついては、ここまで、刑事告訴までなって、外務省が動かなくて、それで警察が動いて黒だったとわかったら、もうこれは、外務省、ただでは済みませんよ。みずからの、外務省の女性職員がこういう被害を受けているのに、握り潰してほったらかして、警察が動くまで動かなかった、そんなことは通用しませんよ。ほとんどの被害者は告訴できないから苦しんでいるんです。警察が動いたら動きますよ、そんなことは通らないんです。

 外務省の威信にかけても、女性活躍支援法を出している安倍政権の威信にかけても、警察がはっきりさせる前に、もともとこれは外務省で起こった事件なんですよ、きっちり再調査する、そして必要であれば処分をする、そのことをお答えください。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 冒頭申し上げましたように、ことし三月の元イラン大使の刑事告訴、これに関連いたしましては、外務省といたしましては、警察に協力することを含めて必要な措置を講じてきたと認識している次第でございます。

 それから、処分につきましては、先ほど私が答弁申し上げましたように、懲戒処分としてできることというものについては、退職した人に対しては、権限がないと処分もできないということでございます。

 さらに、退職手当法については先生御指摘のとおりでございますので、そこの要件が満たされる場合には必要な措置を講じてまいりたいと思います。

 さらに、調べることがどこまでできるか、これは、何ができるか更に検討してまいりたいと思います。

山井委員 再調査をするというふうに受けとめました。

 女性活躍支援法もいいけれども、足元の日本の国の役所、安倍政権のど真ん中の外務省でこういうことを放置して、警察に任せました、再調査もしません、そんなことだったら、女性活躍なんて全く言えない。これは再調査をぜひしていただきたい。

 それと、先ほどお願いした当時のやりとり、今、最近女性から言われたとおっしゃいましたけれども、最近じゃないんですよ。七年前、被害に遭われた三カ月後にはおっしゃっているんですよ。ところが、その部分の上申書を削除しろとか、忘れて休みなさいとか、握り潰しているんですよ。この問題は非常に深刻だと思います。

 女性活躍支援法を担当する根本大臣も、外務省に一言指導してください。こういう法の趣旨からいっても、女性の人権、こういうものを守る、セクハラ被害を守る責任者である根本大臣からも外務省にしっかり再調査を命じてください。

根本国務大臣 セクハラは働く方の尊厳や人格を傷つけ、あってはならないと思います。

 今回の事案については、外務省が適切に判断されることと思います。

山井委員 本当に頼りないですね、適切に判断されることだと思いますと。適切にやっていないから、こういう大問題になっているんでしょう。しっかりやりなさいぐらいのことを担当大臣として言うべきだと私は思います。

 それで、警察にもお越しをいただいております。

 最初の、最近いろいろ、お酒に酔わせて意識不明にして性暴力を加えるとか、伊藤詩織さんの案件が不起訴になるとか、さまざまな不安が高まっています。国際的にも、日本というのはそういう性暴力に対して極めて緩い、恥ずかしい国だというレッテルが張られています。

 警察にお伺いしたい。

 酒を飲んで意識不明になって性行為に及んでも、本人は、レイプドラッグなり大量のお酒、テキーラを飲まされたりしてふらふらになっているわけですから、それは抵抗できないでしょう。それで、勇気を持って起訴しても不起訴になる。連日、大林組にしても、不起訴ばかりじゃないですか。こんな新聞を見たら、世の中はどう思いますか。ああ、日本ではこんなことをやっても罪にならないんだなと。犯罪がふえます、これでは。警察としてどう考えるのか。

 それと、法務省も来ていますが、脅迫要件等々、やはり刑法の改正が必要なんじゃないか。

 その二つ、一括してお答えください。

田中政府参考人 事件の起訴、不起訴の判断につきましては検察庁で行われますので、警察といたしましてはお答えをする立場にないと思っております。

 一般に、飲酒や薬物を飲ませることなどによりまして女性を抗拒不能にさせてわいせつな行為などを行うといった性犯罪は、被害者の心身に大きな被害を与えるものでありまして、許されるものではないというふうに認識をいたしております。

 警察におきましては、被害者からの聴取や被害前後の状況から薬物の使用が疑われる事案を認知した際は、被害者の同意を得た上で速やかに採尿等を実施するなど、事件化に向けた証拠保全を適切に行っているところであります。

 また、飲酒や薬物の影響により、被害者が意識があるように行動していても被害時の記憶が欠落している場合もあることから、被害者からの聴取に当たってはこうした点にも十分留意するよう都道府県警察を指導しているところであります。

 警察といたしましては、引き続きこうした取組を推進し、この種事案について、法と証拠に基づき適切に対処してまいりたいと存じます。

保坂政府参考人 委員から検察の不起訴処分についてのお尋ねがまずございましたので、それについてお答え申し上げますが……(山井委員「余り時間がないので、法改正を検討するかどうかだけ」と呼ぶ)はい。検察官の方では法と証拠に基づいて適切に判断していると一般論としては考えてございます。

 法改正の点のお尋ねがございましたが、先ほどおっしゃった暴行、脅迫要件の点につきましては、平成二十九年の刑法改正では対象とされない、その撤廃はしないということになったわけですが、その理由というのが、暴行、脅迫のような外形的行為がないときに不同意を証明するのは容易ではなく、性交に応じるか否かという内心の立証や認定が難しい、そういった点などが考慮されてそこは改正されなかったところでございますが、その平成二十九年の改正法の附則におきまして、政府に対して、広く性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策のあり方、これを検討することが求められてございます。

 具体的にどの点を検討するかはまだ現段階では確たることを申し上げることはできませんが、現在、法務省ではさまざまな実態調査を進めておるところでございますので、御指摘の点も含めて、実態調査を着実に進めてまいりたいというふうに考えてございます。

山井委員 時間がないので、これはまた引き続きやりたいと思いますが、深刻な事態ですよ、被害がどんどん広がっているんですから。警察も法務省も私たち国会議員もしっかりしないと、恥ずかしいです、これは。本当に、来年オリンピックもあると言われているのに、これだけ性犯罪に緩い国、甘い国、不起訴になる国、何とかせねばならないと思います。

 そして、もう一個、最後に介護保険です。

 これは女性活躍支援で、私も議員になる前に高齢者福祉の研究をしておりましたが、財政審に基づいて、配付資料にありますように、簡単に言いますと、一割負担を二割負担にする、介護保険の自己負担を、そのことと、要介護一、二の生活援助サービスを介護保険から切り離して地域支援事業にする、こういうサービスカットが財政審で提案されていまして、これが、この配付資料にもありますように、スケジュール表では、六ページにありますように、二〇二〇年、来年実施する、こういう工程表になっているんです。

 女性の方の多くが、男性も含めてですけれども、介護との両立で大変苦労されておりまして、女性活躍といいながら、一割を二割に自己負担を上げる、あるいは要介護一、二のサービスをカットする、こういうことをやるのであれば、女性活躍支援に完全に逆行します。

 ついては、来年の通常国会で介護保険法の改正を出して、一割から二割への自己負担アップ、生活援助サービスの要介護一、二のカット、このことがそこに入る可能性はあるんですか、ないんですか。ないということをここでお約束ください。介護者の方々から大変な心配の声が上がっております。

根本国務大臣 介護の軽度者に対する生活援助サービスなどに関する給付のあり方については、平成二十六年の法改正により実施された要支援者の訪問介護サービス事業への移行状況なども踏まえつつ、骨太の方針二〇一八などに沿って検討することとしております。

 また、介護保険の利用者負担については、世代内、世代間の負担の公平性や負担能力に応じた負担のあり方、利用者への影響などについて慎重な検討が必要だと思います。

 制度の持続可能性を確保するには不断の見直しが必要ですが、他方で、高齢者の方々の生活実態などを考慮し、必要なサービスが提供されるよう、引き続き介護保険部会等において丁寧に検討していきたいと思います。

山井委員 質問に答えてください。端的にお答えください。

 来年の介護保険法の改正の中で、一割負担から二割負担への対象拡大、全員とは言いませんよ、二割負担にする自己負担の対象拡大や、要介護一、二の生活援助サービスを介護保険から外す、そういうことが入る可能性があるのかないのか。ないのであれば、ないと明確に否定してください。否定されないのであれば可能性があるというふうに私たちは受けとめますし、これは大きな参議院選挙の争点にもなると思います。

 介護の家族はもちませんよ、二割負担の拡大とか、要介護一、二の生活援助サービスがカットされたら。女性活躍支援どころか、介護離職はどんどんふえますよ。

 可能性があるのかないのか。ないんだったらないと。ないと言われないのであれば、あるというふうに理解します。根本大臣、答弁をお願いします。

根本国務大臣 介護保険の利用者負担は、原則一割負担、そして、一定以上所得がある層に対し、平成二十七年八月から二割負担を導入し、前回の制度改正により、平成三十年八月から特に所得の高い層に対して三割負担を導入いたしました。

 その上で、御指摘については、世代内、世代間の負担の公平性や負担能力に応じた負担のあり方、利用者への影響などについて慎重な検討が必要であると考えております。繰り返しになりますが、制度の持続可能性を確保するには不断の見直しが必要だと思います。

 他方で、高齢者の方々の生活実態を考慮し、必要なサービスが提供されるように、引き続き介護保険部会等において丁寧に検討していきたいと思います。(山井委員「可能性はあるんですか。委員長、答えてもらってください。可能性があるのかないのかだけ聞いているんだから、答えてください」と呼ぶ)

冨岡委員長 時間が来たようなんですけれども。(山井委員「だから、さっきした質問の答えを返してください」と呼ぶ)

 もう一度言いますか。まあ、答えているような気がしますけれどもね。

根本国務大臣 私は既に答えておりますが、制度の持続可能性を確保するには不断の見直しが必要です。他方で、高齢者の方々の生活実態を考慮し、必要なサービスが提供されるよう、引き続き介護保険部会等において丁寧に検討していきたいと思います。

山井委員 不断の見直しをするということですから、そういう、一割負担から二割負担への自己負担アップや、要介護一、二の生活援助サービスのカットの可能性があるというふうに理解をしました。断固として阻止したいと思います。

 以上で質問を終わります。

冨岡委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 国民民主党の大西健介でございます。

 早速質問に入っていきたいというふうに思うんですけれども、まず、今回の法改正に至る労政審の分科会での議論の過程で、どのようにセクハラ、パワハラの実態把握をされてきたのか、このことについてお聞きをしたいというふうに思います。

 十分な実態把握がなければ有効な改善ができないということだというふうに思いますので、この点、まさに被害者の声を直接聞く機会というのがこの法案をつくっていく過程で設けられたのかどうなのか、このことについて、まず、大臣に確認したいと思います。

根本国務大臣 労働政策審議会雇用環境・均等分科会、ここで検討して議論をしていただいたわけですが、この分科会の中で、セクハラやパワハラの被害者の方の声を直接聞く機会は設けられておりません。

 しかしながら、分科会においては、一部の委員から、パワハラを受けた方の親族の方からのメッセージを御紹介いただきました。そしてまた、都道府県労働局が実施している職場のいじめ、嫌がらせのあっせんや、セクハラの調停の事例や、パワハラやセクハラに関する裁判例、そして、平成二十四年度と二十八年度に事業主や労働者に実施した職場のパワーハラスメントに関する実態調査について、審議会で資料を配付し、資料ごとに御議論をいただいております。

大西(健)委員 今の委員会の審議の中でもいろいろなお話が出てきましたけれども、やはり、私は、間接的にじゃなくて、実際にセクハラやパワハラでつらい思いをして、今なお、例えば、本当にもうPTSDで悩んでおられるみたいな方の生の声というのは聞くべきじゃないかと思うんですよ。あるいは、なぜ、じゃ、相談に行けなかったのかとか、どういう気持ちで、どういう行動をとったのか、私、生の声を聞くのが、やはり、まさに法案をつくる前提じゃないかと思うんですけれども、何で聞かなかったのか、あるいは、聞くべきだったと大臣はお思いになりませんか。

根本国務大臣 審議会においては、さまざまな実態あるいは御意見なども踏まえながら議論いただいたと思います。

 先ほど申し上げましたように、親族の方からのメッセージ、このメッセージは、具体的に、労政審に向けたメッセージというのをいただいたという委員の方から、これは直接のメッセージでありますが、それは紹介していただきました。

 それから、いろいろな事案がこれまでもあったと思いますが、職場のいじめ、嫌がらせのあっせんやセクハラの調停の事例、これは中身の問題、そして、あるいは裁判例でのさまざまなそういう事案の内容、あるいは、その中には、どうしてこういうことが起こったのか、こういうことも紹介されていると思われますが、要は、そういう形で幅広く審議会で議論をいただいたものと承知をしております。

大西(健)委員 私は、やはり、間接的なものと、直接被害者の声を聞くというのは、全く異質だと思います。

 きのう、参考人に来られていた内藤先生が、JILPTの方で、労働局を利用した実際の被害者にインタビューをされている研究があります。私、その内容を読ませていただきましたけれども、これは非常に示唆に富んでいるというふうに思います。

 少し御紹介したいと思いますけれども、そこで明らかにされている労働局の対応というのは、率直に言って、被害者の期待を大きく裏切るものだというふうに私は思います。

 例えば、局はどちらが悪いという判断はできないと言われた。また、労働局が幾ら言っても強制力はない、本当に無力ですと。労働局の担当者が私たちは無力ですと被害者に言っているんですね。あるいは、幾ら指導しても強制力がないので、あの会社や社長にもうかかわらないのが一番と。何のために相談に行ったのかわからないですよね、これでは。それから、さらには、男性の調停委員に、何をされたの、いつ、加害者とは幾らで示談したのなどと矢継ぎ早に聞かれて苦痛だった。こういうことを実際に労働局に相談に行った人が、内藤さんがインタビューをすると答えているんですよ。

 まさに、生の声を聞くとこういう実態が私は見えてくるんじゃないか。つまり、労働局に駆け込んだ人たちが残念ながら期待するような救済を受けられなかった、こういうことをまさにこのインタビューの結果というのは私は物語っているんじゃないかと。これは解決につながらないどころか、労働局に相談して、被害者はこれでは私は傷つくだけだと思います。

 現行の救済制度の仕組みでは、当該行為をセクハラとして認定してやめさせることはできない、そういう制度上の限界があるということは、きのうの参考人質疑の中でも繰り返し参考人の皆さんからもありましたけれども、それどころか、このインタビューから浮かび上がる実態というのは、それ以前の問題として、紛争解決に当たる担当者のスキルが不足している、こういうことだというふうに私は思います。

 大臣、今私が申し上げたようなこういうようなことをどう受けとめておられるか、また、スキル向上をどう図っていくべきかと思っておられるかについて、御答弁いただきたいと思います。

根本国務大臣 私は、相談を受けた場合には、丁寧に真摯に対応すべきだと思います。

 労働者からの相談に対して、都道府県労働局においては、労働局長の助言による紛争解決援助制度や調停制度の利用などの問題解決の方法を提示し、相談者の意向に沿った解決に向けて働きかけを行っております。

 加えて、事業主が雇用管理上必要な措置を講じていない場合は、都道府県労働局は、雇用機会均等法二十九条に基づいて、事業主に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告を行うこととなります。

 やはり、相談への対応に際しては、労働局職員のスキル向上を図るとともに、相談者に真摯な態度で接することなどについて研修等により指導しているところでありますが、今後とも適切な対応がなされるように努めてまいりたいと思います。

大西(健)委員 大臣、今私が言ったことをちゃんと聞いていただきましたか。男性の調停委員から、何をされたの、いつ、加害者とは幾らで示談したのと矢継ぎ早に聞かれる。まず相談に行くところで大変勇気が要ったと思うんですよ。相談に行って男性の調停委員からそんなことをばばばっと聞かれたら、これは傷つきますよね。

 あるいは、相談に行って、会社の社長に指導したけれども、結局、何回指導したって会社は聞かない、社長は聞かない。それに対して、幾ら指導しても強制力はないので、あの会社や社長にはもうかかわらないのが一番と。かかわらないのが一番ということは、あなた、やめなさいと言っているのと同じですよ。何のための相談なんですか。こういうことになるんですよ。

 これはだから、さっき言ったように、私は、やはり相談に当たる担当者のスキルが不足していると思うし、それからもう一つは、やはり制度上に、結局、確かに何もできないんですよ、労働局は、言うことを聞かなかったら。まあ、公表というのはできますけれども。

 そこで聞きたいんですけれども、実際に、制度上は、さっきも言いましたけれども、加害者のセクハラ行為を違法と認めさせて謝罪させたいというのが被害者の求めるところですけれども、それはできないというのが実態である。

 それから、相談しても無駄だと思われているから、実際、きのうの参考人質疑の中にもありましたけれども、JILPTの調査では、会社の相談窓口、担当者に相談したというのは全体のわずか三・一%ですよ。

 ですから、措置義務の中で相談窓口を整備しなさいといっても、整備したところでみんな行かないんですよ。何で行かないかというと、行っても無駄だと思われてしまっているからではないか。会社の窓口にさえ行かない。さらに、労働局に相談に行ってもさっきみたいな扱いに遭うということなんですね。

 それから、今言ったように、では労働局に相談した、ところが、労働局から社長に対して何回も指導したけれども、幾ら指導しても強制力がないので、あの会社や社長にはもうかかわらないのが一番、こう言われてしまったという話なんですよ。

 そういうふうに、言うことを聞かなければ勧告して、さらに勧告にも従わなければ企業名公表をすると言っているけれども、企業名公表も、結局、今まで過去一度もセクハラについてはないということ。

 企業名公表が過去にないこと、あるいは会社の相談窓口に相談に行ったというのが三・一%しかない、こういう事実がまさに行政救済制度がうまく機能していないということを物語っているというふうに思いますけれども、これをどう厚労省は評価していますか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたように、セクハラに関する企業名公表はゼロ件ということでございます。

 基本的に、事業主が雇用管理上必要な措置を講じていない場合には、先ほど大臣が申し上げましたように、均等法二十九条に基づく行政指導の対象となるということで、助言、指導若しくは勧告、そして勧告に従わない場合には均等法三十条に基づいて企業名公表を行うということでございますが、これまでの状況は、助言、指導を受けた企業において是正指導がその段階で図られているということがございます。したがって、勧告件数も少なく、それ違反の企業名公表には至っていないということだろうというふうに認識をしております。

 今回、責務規定等も導入するところでございまして、この措置義務の実効性を高めていく機会になるというふうに思っておりますので、そういうことを図り、そしてその履行確保が図られるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

大西(健)委員 指導して大体改めたと言うけれども、本当にそうなんだろうか。

 先ほど言いましたように、このインタビューの中では、何回も言いますけれども、労働局は幾ら言っても強制力はない、本当に無力だとか、あるいは、幾ら指導しても強制力がないので、会社や社長にもうかかわらないのが一番というふうに、労働局の担当者が言っているんですよ。

 そういうことで、むしろちゃんと企業名公表をしなきゃいけないようなものについてもできていないというのが実態なんじゃないかなというふうに私は思います。

 それから、細かいところでちょっと一点、セクハラについて確認したいんですけれども。

 地方自治体については、行政指導や紛争解決の対象外になっていると思うんですけれども、職員の相談先は自治体の人事委員会のみになってしまって、中立の都道府県労働局の紛争解決の仕組みは利用できないというふうに思うんですけれども、この点は見直しが必要と考えますけれども、いかがでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 地方公務員でございますけれども、地方公共団体の人事委員会あるいは公平委員会に対する行政措置要求等の仕組みがございます。したがいまして、都道府県労働局による紛争解決援助、調停等の規定は適用されないという取扱いになっております。

 人事委員会等でございますけれども、全ての地方公共団体に設置をされておりまして、勤務条件に関する措置要求の審査、あるいは不利益処分の不服申立ての審査など、任命権者と職員との間の紛争を裁定する権限を有しておる第三者組織でございまして、御指摘のような不公平ということにはならないのではないかというふうに理解しております。

大西(健)委員 私は、労働局の紛争解決の仕組みを地方公務員についても利用できるような、あるいはそれにかわるようなものというのを考えるべきじゃないのかなというふうに思います。

 続けてお伺いしますけれども、先ほど来議論になっているセクハラの禁止規定の問題です。

 昨日の参考人質疑でも、内藤参考人の方から、児童虐待防止法改正案においては、民法の懲戒権の見直しを待たずに先行して体罰禁止規定を定めた、これとパラレルに考えたらセクハラ禁止規定を置くことはできるんじゃないか、また、均等法の防止義務措置が導入されてからもう十数年が経過しているので、判例の蓄積もあるので、違法なセクハラ行為とはどういうものなのかということを定義することも可能なんじゃないか、つまり、中長期的な課題なんて言わずに今すぐにでもやろうと思ったらできる、こういうふうに言われました。

 この点、厚労省は、禁止規定については、まさに民法との関係や違法となる行為の要件の明確化が必要で中長期的な検討が必要と説明してきましたけれども、きのうの参考人の皆さん、専門家の皆さんの意見を聞けば決してそういうことはないんじゃないか。

 百歩譲って、今回の法改正で禁止規定を見送るとしても、この法改正が終わったらすぐにでも検討を開始すべきだ、年度を区切って、期限を区切って検討を開始すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

小林政府参考人 今回の児童福祉法等の改正法案におきます体罰禁止規定でございますが、これは刑事罰による制裁を科すですとか民事上の損害賠償請求の直接の根拠となるような性質の規定ではなく、訓示的な規定であるというふうに承知をしておるところでございます。

 訓示的な規定ということにかかわって申し上げますと、本法案におきまして、関係者の責務ということで、パワハラ等は行ってはならないものであり、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきであるという点を盛り込んだところでございます。

 御指摘の禁止規定の件でございますが、昨年十二月の労政審の建議において指摘をされておりましたのは、職場のパワハラ等の行為者に対して刑事罰による制裁を科すことや被害者による行為者等に対する損害賠償請求の根拠を法律で新たに設けることについては、民法等他の法令との関係の整理や違法となる行為の要件の明確化等の課題があり中長期的な検討を要するというふうにされておるところでございまして、ここで指摘をされておりますような法的効果を持つ禁止規定につきましては、やはり十分な検討を要する課題ではないかというふうに考えております。

大西(健)委員 私は、この法改正の後にすぐにでも検討を、期限を区切ってやっていただきたいというふうに思っています。

 それから、先ほどちょっと西村委員からもありましたのではしょりますけれども、今いろいろな問題になっている、例えば番記者が事務次官にセクハラを受けたとか、フリーランスの記者が就職相談で取材先というか仕事先で受けたセクハラとか、就活生がセクハラあるいは性的暴行を受けたとか、こういった問題というのは、結局、今回の法改正では解決されないわけですよね。今まさに起こっている問題が、今回法改正があるから何か解決されるのかなと思ったら何も解決されないんですよ。

 ILOの条約案は、契約上の地位にかかわらず、労働する者、実習生、雇用を終了した労働者、雇用を終了した労働者という意味ではさっきのイラン大使のセクハラの話だって、お互い被害者も加害者ももうやめているんでしょうけれども、そうですし、求職者等その対象を広く捉えている。

 また、セクハラが人間の尊厳だとか人権にかかわる問題だということを考えれば、これは相手の属性に関係なく、雇用関係にある者に対象を限定すべきじゃないというふうに考えますけれども、改めて、大臣、この点についてはいかがでしょうか。

根本国務大臣 委員おっしゃられるように、ハラスメント、これは被害者の尊厳や人格を傷つける、あってはならないものであり、被害者が誰でも同様であると認識しております。

 民間企業に雇用されている記者が社外からセクハラを受けた場合には、その記者を雇用する事業主は、必要なケアを行うなどの雇用管理上の措置義務を負っております。

 男女雇用機会均等法、これは事業主に対して、その雇用する労働者に対するハラスメントの防止のため、雇用管理上の措置義務を課しており、フリーランスや就業活動中の学生など雇用関係にない者は措置義務の対象に含まれてはおりませんが、ただ、本法案では、労働者に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならないことに理解を深めることや、他の労働者に対する言動に注意を払うよう努めるべきことを、国、事業主及び労働者の責務として明確化しております。

 男女雇用機会均等法や労働施策総合推進法、これは労働法制でありますので、直接の保護の対象は労働者としておりますが、フリーランスや求職活動中の学生に対しても同様に注意を払うこと、これは当然望まれます。

 このような責務規定の趣旨も踏まえれば、事業主が措置義務の予防措置としてセクハラを禁止する社内方針の明確化を行うに当たっては、フリーランスや就職活動中の学生に対するセクシュアルハラスメントも同様にあってはならない旨を示すよう促すことが必要だと考えております。

 このような企業の対応を促すことができるように、これからセクハラ指針等の内容については労働政策審議会において審議いただきますが、しっかりと議論を行ってまいりたいと思います。

大西(健)委員 先ほど私が申し上げたように、今ILOで検討されている条約というのは、雇用関係にある者だけではなくて、広くその対象を捉えている。

 それからもう一つ、先ほど禁止規定の話をしましたけれども、今検討されている条約の案、五条の2の(a)というところには、暴力とハラスメントを法的に禁止するというふうに書いてありますけれども、まさに今回の法律というのは、そういう禁止規定が入っていないということで、ILOで採択を予定している条約の水準を今回の法律というのが果たして満たしているんだろうかということが問題になると思います。

 きのうの参考人質疑で、私は、五人の参考人の方々に、この法案でILOの条約を批准することができると思いますか、どうですかということを聞いて、順次答えてもらいました。経団連の布山参考人については、まだILOの条約がどういうものかよくわからないので何とも言えないというお話でしたけれども、あとの四人の方は全て批准できないとおっしゃいました。

 つまり、今の政府提出の法案の水準ではILO条約を批准するレベルに達していないと、一人は答えを保留して、あとの四人がみんな批准できないと答えたということなんですけれども、このことを、大臣、どうお受けとめになられますか。

根本国務大臣 ILOの仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約案、これは本年六月のILO総会において議論された上で採択されることが想定されております。

 この条約について、世界各国が効果的にハラスメントの防止対策を進めていくことができる基準の内容となるよう、日本政府としてもILO総会の議論に引き続き積極的に参加していきたいと思います。

 仮に条約がILO総会で採択された場合、その批准については、採択された条約の内容等を踏まえて検討していきたいと思います。

大西(健)委員 どう思うかなんですよ。

 まさに、確かにILOの条約、今後いろいろな国々の意見を入れて、どうなるかわかりません。わかりませんが、少なくとも、今言われている、今我々が知る限りの内容においては、とても政府案というのはその水準に達していないと専門家の方々が、きのう五人いて一人以外、四人の方はみんな無理だと言われたんです。ということを私が今大臣に紹介して、それを大臣はどう思いますかということを聞いているんです。

根本国務大臣 今申し上げましたように、条約は六月のILO総会において更に議論された上で採択されることが想定されているものであって、その批准については、採択された条約の内容などを踏まえて検討していきたいと思います。

大西(健)委員 本来は、この法律を今このタイミングで改正する一つの理由というのは、私はILOの条約採択というのが一つの理由としてあると思うんですよ。であるならば、それにやはり合わせていく、その水準に合わせていく法案を出してくるというのが本来の姿だというふうに思いますけれども、これ以上は申し上げません。ぜひ批准を目指していただきたいと思います。

 先ほど、性自認とか性指向あるいはLGBTに関することがちゃんと防止措置の対象であるということについては、他の委員からも確認がありましたのであえて確認は求めませんけれども、その上で、性自認に関する事例でこういうことをどう考えたらいいのかということについて聞きたいと思うんです。

 これは実際にあった相談ですけれども、ある会社が女性社員の新しい制服を導入したところ、女性社員の一人が制服の着用を拒否したという事例なんです。その女性社員は、高校卒業以来もう十年以上スカートをはいたことがない、スカートをはくと気分が悪くなるというふうに言って、スカートの制服は着たくないということなんですね。これに対して総務部は、服務規定をわざわざつくってお金をかけて制服を新調したので着てもらわないと困るというふうに言っている。着てもらわないと、要は服務規定違反だということを言っている。

 こういう場合に男女雇用機会均等法上どういう問題を生じることになるか、御説明いただきたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 どのような制服の着用を求めるかにつきましては、基本的には、企業の業務運営上の裁量の問題というふうに考えることができるわけでございますが、例えば、業務上の必要性がないにもかかわらず短いスカートの着用を強制するというような場合には、セクシュアルハラスメントに該当し得るというふうに考えられるところでございます。

 また、個々の事案の状況等にもよりますが、例えば、性自認が異なる方に対しまして制服のスカート着用を強制し、それを拒否したことを理由として性自認に関して侮辱的な発言等を行う場合には、これはパワーハラスメントにも該当するケースもあり得るのではないかというふうに考えるところでございます。

大西(健)委員 時間がなくなったので、もう一問、パワハラについて聞きたいんですけれども。

 パワハラについて、平均的な労働者の感じ方を基準とすべきというふうにされていますけれども、例えば、仕事になれていない新入社員とかあるいは精神疾患から復職したばかりの人というのは、これは平均的な労働者ということであってもちょっと違った配慮が必要じゃないかなというふうに思うんですけれども、この点、厚労省、いかがでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月、労働政策審議会の建議が取りまとめられたところでございますが、労働者の就業環境を害されているかどうかについては、平均的な労働者の感じ方を基準とすべきというふうにされております。

 ここで言っております平均的な労働者の感じ方でございますが、社会一般の労働者全体の平均、つまり、社会一般の労働者から見て看過できない程度のものということで理解すべきものだというふうに考えております。

 今御指摘いただきましたような、受け手が新入社員でありますとかあるいは発達障害の方についてでございますけれども、こういった方については業務上の指導のあり方に配慮するというのは当然必要なことだと思うんです。

 その場合、どういうことをもってこの問題を考えるかということについては、パワハラの定義は三つございましたが、先生は三つ目の平均的なというところでおっしゃいましたけれども、二つ目の、業務上必要かつ相当な範囲を超えてという、相当性のところで考えるのがむしろ適当ではないかというふうに私どもは理解しております。

大西(健)委員 最後に、きのう参考人質疑で伊藤和子弁護士が、先ほど山井議員からもあった、娘に中学二年生から性虐待を続けて、十九歳になった娘と性交した父親に対する準強制性交罪の事件で無罪を言い渡したという、こういう事件に関して、裁判所が抗拒不能というのを極めて狭く解していて、これは不当だということを言われました。

 父親から無理やり性交されてもレイプにならずに、父親は刑事罰を負わないというのは理不尽であって、世間の常識と私も乖離していると思います。

 二〇一七年に監護者性交罪等が新設されましたけれども、これは十八歳未満が対象で、本件の十九歳の女性には適用されないということで、きのう伊藤弁護士からはほかの国の法制についての紹介もありましたけれども、世界では不同意性交を犯罪とする法改正も進んでいます。

 刑法の再改正に向けて検討を始めるべきというふうに思いますけれども、時間が来ていますので簡潔にお答えいただければと思います。

保坂政府参考人 御指摘の判決に対しましては、検察官が控訴を申し立ててございますので、個別具体的な事件の判断について所感を述べたり、あるいは、確定していない段階でそれを前提とした法改正について言及することは差し控えたいと存じます。

 先ほども御答弁申し上げましたとおり、平成二十九年の刑法改正法の附則におきまして、政府に対して、施行後三年を目途として、広く性犯罪の事案の実態に即した対処を行うための施策のあり方の検討が求められてございます。

 具体的な項目は、今現段階で確たることを申し上げることはできませんが、適切な検討を行うことができるように、まずは、性犯罪被害の実情の把握ですとか、御指摘のございました外国の制度の調査、こういったことを着実に進めてまいりたいと考えてございます。

 以上です。

大西(健)委員 済みません。時間を少しオーバーしました。終わります。

冨岡委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今回、セクシュアルハラスメントとマタニティーハラスメントと同様に、パワーハラスメントについて、事業主の防止措置義務が入る法改定が提案をされております。しかし、それだけでは被害を受けた方は救われない、ハラスメント禁止規定、何が禁止される行為なのかの規定が必要だ、それは、昨日の参考人質疑の中でも、長尾参考人、内藤参考人、伊藤参考人が言われたことでございます。

 きょうは、そのことについて、既に事業主の防止措置義務があるセクシュアルハラスメントの現状の問題点を指摘しながら議論をしたいというふうに思います。

 まず、セクシュアルハラスメントの被害の実態なんですけれども、厚生労働省の労働局の雇用環境・均等部(室)への相談件数の中で一番、トップがセクシュアルハラスメントだと。二〇一七年度は六千八百八件と、相談件数の中で三五・五%になっております。労働局の紛争解決援助の申立て受理件数は百一件、そして調停の申請の受理件数は三十四件ということで、ごくごくわずかでございます。

 まずお伺いをしたいんですけれども、セクシュアルハラスメントの被害を受けた人のうち労働局に相談をした人はどのくらいの割合なのか、把握をしておられますでしょうか。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 セクシュアルハラスメントの被害を受けた方の全数を把握はしてございませんので、したがって、割合につきましても申し上げられないところでございます。件数につきましては、先ほど御指摘がございましたように、平成二十九年度、六千八百八件ということになっております。

本村委員 労働政策研究・研修機構の二〇一六年の調査では、労働局に相談した人は〇・九%しかおりません。二十五歳から四十四歳の女性の方の約三割が職場においてセクシュアルハラスメントの被害を経験しております。しかし、労働局に来ている方は〇・九%だと。我慢した、特に何もしなかったというのが六三・四%、多くの方々が相談できていない実態がございます。

 セクシュアルハラスメントの被害の実態の一端を、大臣は本会議の答弁で、上司に報告したが適切な対応がされなかったため休職などの事例ということで答弁をされましたけれども、こういうひどい実態が大変多いわけでございます。そのひどい実態から、被害を受けた方々をどう救済できているのかということが問題だというふうに思います。

 先ほども御議論がございましたけれども、内藤忍先生の調査の中で、労働局の利用者の調査から見た均等法のセクシュアルハラスメントの行政救済に関する考察がございます。セクシュアルハラスメントの被害を受けて労働局を利用した人への聞き取りの中で、労働局の職員の方が、労働局が幾ら言っても強制力はない、本当に無力です、こう言われたということでございます。

 今の均等法は、セクシュアルハラスメントに実効ある対処ができていないという実態がございます。これは、相談に行っても仕方がないというふうに思われるのではないかというふうに思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

根本国務大臣 やはり労働局においては、相談を受けた場合には、丁寧に、真摯に相談者の意向に沿って相談にあずかるということが私は何よりも大事だと思います。

 相談件数は、六千八百八件寄せられております。これは平成二十九年度。これらの相談を端緒としたものを含めて、事業主がセクシュアルハラスメントに関し、雇用管理上必要な措置を講じていない場合には、均等法二十九条に基づいて助言、指導若しくは勧告を行うことによって是正を図っております。

 また、労働者からの相談に対して、労働局においては、労働局長の助言による紛争解決援助制度や調停制度の利用などの問題解決の方法を提示して、そして相談者の意向に沿った解決に向けて働きかけを行っております。

 いずれにしても、労働局に寄せられた相談については真摯に対応して、そしてセクハラのない職場づくりを推進していきたいと思います。

本村委員 先ほども議論がありましたけれども、確認をさせていただきます。改正均等法が施行されてから十二年たちますけれども、企業名の公表は何件あったんでしょうか。

小林政府参考人 セクシュアルハラスメントの措置義務違反に関しまして、事業主が勧告に従わずに、企業名公表を行ったということはございません。

本村委員 ゼロ件だということですけれども、被害を受けた方が相談に行ってきちんと救済されなかった場合、企業名の公表というのはあるんでしょうか。

小林政府参考人 企業名公表でございますが、助言、指導、勧告、そしてその勧告に従わなかった場合に最終的に企業名公表になるということでございまして、この勧告の対象となる内容は措置義務を適切に実施していないということでございますので、基本的には措置義務の実施状況に非常に問題があるというケースだというふうに理解しております。

本村委員 企業名の公表があるからといって、セクシュアルハラスメントの被害を受けた人が救済されるという担保にはならないということでございます。

 先ほど大臣が答弁をされました紛争解決援助、調停についてもお伺いをしたいんですけれども、この紛争解決援助、調停の解決金の水準はどの程度になっておりますでしょうか、中央値でお答えをいただきたいと思います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 全ての調停の解決金につきまして網羅的に把握ができていないところでございますが、厚生労働省が協力をいたしまして、文部科学省科学研究費助成事業で実施した研究によりますと、中央値が二十九・五万円というふうになっております。

本村委員 ありがとうございます。

 ごくごく本当に少ない現状がございます。しかも、調停や紛争解決援助をやっても、退職しているケースもあるわけでございます。被害の回復、人権の回復にはほど遠いような少額でございます。

 厚生労働大臣にもう一問お伺いしたいんですけれども、紛争解決援助、調停は、相互互譲の制度なんだと。被害者なのになぜ譲らなければいけないのかというふうに思いますけれども、大臣の御認識を伺いたいと思います。

根本国務大臣 男女雇用機会均等法における調停制度は、紛争当事者同士の個別具体的な私法上の紛争について、公正中立な第三者機関の調停により、迅速、簡便に解決を図るものであります。

 調停というのは、学識経験者などで構成される第三者機関による調停案の提示で解決を図るものであります。

 調停については、紛争のもととなった行為がセクハラに該当するか否かを行政が判断するものではなくて、生じた損害の回復などについて現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより紛争の解決を図ることを基本としております。

本村委員 被害者なのになぜ譲らなければならないのか、納得いかないという声が出ているわけでございます。

 先ほどの内藤先生の調査、インタビューでは、この調停、紛争解決援助などは、社長が突っぱねたらそれで終わり、この制度はお互い譲歩があっての制度だと労働局に言われたと。自分は何も悪いことをしていないのに、どうして譲歩しなければいけないんだろうと思った、労働者が一人で裁判などで闘うのは、報復も怖いし、精神的、肉体的、金銭的負担が非常に重たいため無理で、会社の逃げ勝ち、労働局の紛争解決援助制度は強制力がなく、これでは個人で会社に立ち向かう方法がほかにない、本当に悔しいといって退職をされておられます。

 また、別の事例ですと、調停を利用した女性正規労働者の方ですけれども、上司が履歴書を見て携帯番号から勝手にLINEで連絡してきたり、肩、背中、腰、髪の毛などをさわり、家の場所を調べられた、会社に相談し、自分の担当は一時かわることができたが、会社として行為者の異動、処分などはない、そのうち不眠、動悸、耳鳴り、過呼吸など心身にさまざまな症状が出て休職、無給だったそうです、その間、会社からは一切連絡なし、労働局は話をじっくり聞いてくれたが、局は、どちらが悪いという判断も、セクハラだから慰謝料を払ってくださいと会社に言うこともできないと言い、解決するのか不安になった、弁護士に相談したが、弁護士はお金がかかるので、労働局の調停を利用し、謝罪と、休職中の給与、通院費、慰謝料として六十万円を求めた、調停の結果、解決金は三十五万円、謝罪はなし、会社はセクハラも認めず、悔しいと。先ほど迅速というふうに言われましたけれども、労働局相談後も時間がかかり、つらかったと。それで退職になっております。同種の行為を受けた同僚も二十九万円で、結局退職をしたと。

 事業主の防止措置義務が二〇〇七年の四月一日から施行されておりますけれども、結局、救済されているというふうにはとても言えない現状があるというふうに思います。

 局が、どちらが悪いという判断も、セクハラだから慰謝料を払ってくださいと会社に言うこともできない、これでどうやって救済されるのか。これが今回の法改正で変わるのか、判断できるようになるのか、大臣に認識を伺いたいと思います。

根本国務大臣 都道府県労働局では、主に事業主の措置義務の履行が法に沿って適切に行われているかについて確認し、必要な助言、指導などを行っているものであります。本法案においても、都道府県労働局がセクハラに当たるか否かの認定を行うことにはならないものであります。

 なお、男女雇用機会均等法では、セクシュアルハラスメント等の防止のための措置義務として、事業主には、被害者に対する配慮のための措置や行為者に対する措置を適正に行うこととされております。

 引き続いて、この事業主に対する措置義務の履行確保を通じて適切な対応が行われるように図ってまいりたいと思います。

本村委員 事業主やあるいは会社にとって利益となる人がセクシュアルハラスメントをした場合、とりわけ解決が難しいわけでございます。先ほども、法律は判断するものじゃないんだということですけれども、厚生労働省は、改正均等法の施行に関する都道府県の労働局に宛てた文書があるんですけれども、その中でも、法及び指針は、個々のケースが厳密に職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否かを問題にするものではないので、この点に注意することということで徹底しているわけですよ。被害を認定できずに、どうやって被害者を救済するんですか。

根本国務大臣 男女雇用機会均等法では、事業主に対し、セクシュアルハラスメントなどの防止のための措置義務として、予防、相談、被害者へのケアや再発防止などの一連の取組を求めて、被害者救済などを図ることとしております。

 都道府県労働局では、個々のケースがセクシュアルハラスメントに該当するか否かの判断は行っておりませんが、事業主の措置義務の履行が法に沿って適切に行われているかについて確認して、行政指導等を通じて問題解決に努めているところであります。

本村委員 加害があったか被害があったか、このことを認定せずに、どうやって事業主にしっかりとした対応をさせるんですか。

小林政府参考人 基本的に、事業主が講ずべき措置義務の中で、双方の話をよく確認すること、そして、セクシュアルハラスメントが認められた場合には、その加害者に対する厳正な処分ですとかあるいは被害者に対する謝罪とか、そういったことを指針でも書かせていただいておるところでございまして、そういった企業における措置義務を適切に実施していただくことで救済ということがある程度図られるものというふうに理解しております。

本村委員 例えば、社長がやったケースでは、どうやって指導するんですか。

小林政府参考人 基本的に、社長でありましても事業所としての措置義務を果たしていただく必要があるわけでございますが、それが必ずしも十全に図られない場合には労働局の方に御相談いただけば、労働局として会社の方に助言等を行っていくという対応はさせていただいております。

本村委員 内藤先生の調査では、社長のケースで退職に追い込まれているケースだってあるわけですよ、労働局に相談に行って。解決していないわけでございます。

 次にお伺いしたいんですけれども、紛争解決援助、調停制度で解決せずに裁判を提訴した事案は何件あるんでしょうか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 都道府県労働局の紛争調整委員会による調停が開始されたもののうち調停案が受諾されたものの割合は、平成二十九年度で約三割でございます。

 調停案が受諾されなかったもののうち訴訟に至ったケースがどの程度あるかについては、申しわけございませんが、把握をしておりません。

本村委員 被害者の実態をちゃんとつかんでいないということがはっきりしたというふうに思います。

 次に、現状の裁判の限界についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 大臣にお伺いしたいんですけれども、セクシュアルハラスメントの被害を受けた方が裁判に訴えることはなかなかハードルがある、難しいというふうに言われている、当然そうなわけですけれども、大臣は、その理由は何だというふうに認識をされておりますでしょうか。

根本国務大臣 セクハラ被害者が裁判を起こすことについては、幾つか心理的なハードルがあると考えております。原告としてみずからの名前が明らかになってしまう、会社にいづらくなり、やめざるを得なくなることもある、被害者に落ち度があった等の中傷を受ける、セクハラを受けたという明確な証拠を示すことが難しい、あるいは費用や時間がかかるなどの理由によって特に心理的なハードルがあると考えられると思っております。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

本村委員 裁判にかなりのハードルがある、被害を受けた方々にとって本当に高いハードルなんだということはお認めいただいたというふうに思います。だからこそ、私たちは、独立した行政の救済機関が必要だというふうに考えているんです。

 こういういろいろなハードルがあるわけですけれども、そういう中でも裁判に訴えた方も見えます。セクシュアルハラスメントの被害について裁判に訴えると、何年ぐらいで解決しておりますでしょうか。被害者の訴えが認められて勝訴した場合、賠償金の金額の中央値、被害を受けた方々は原職復帰できているのか、その点、どういうふうにつかんでおられますでしょうか。

小林政府参考人 恐縮でございますが、個々の裁判の状況ですとかその結果については把握できておらないところでございます。

本村委員 今回の法改正が、こういう裁判でどういう限界があるのかということも調べずに出されたということが明らかになったというふうに思います。

 行政救済されず提訴に踏み切る被害者の方は、被害を認めてほしい、謝罪してほしい、二度とないようにしてほしいということで訴えるわけですけれども、今の均等法の状況では、行政指導の法律だからということで、裁判では立証には使えないわけでございます。

 現状では民法の不法行為論ということでやられているわけですけれども、先ほども大臣がお話しされましたように、不法行為論では、被害者なのに過失が問われ、被害に遭わないために注意を怠った、落ち度のような理不尽なことが問われることになってまいります。

 日本で初めてセクシュアルハラスメントの裁判を担当し、長年、セクシュアルハラスメントをなくすために、そして女性差別をなくすために奮闘されておられます弁護士の角田先生も、不法行為論では、本来、被害を受けた方々の人権救済、権利回復にはならないんだというふうにおっしゃっております。しかも、不法行為論では金銭解決ということになるのではないか、結局、ゴールは金銭解決じゃないかと。

 被害者の方が原職復帰できる根拠となるのか、キャリアを失わずに済むのか、企業に指導するような内容を盛り込めるのか、この点、どのように考えておりますでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 民法上の不法行為、民法第七百九条に基づく損害賠償請求につきましては、立証責任は原告の方にあるわけでございまして、御指摘のように主張、立証のハードルはあるんだろうというふうに思っております。

 また、損害賠償請求の仕組みでございますので、御指摘のように金銭解決が中心になるというふうに理解しております。

本村委員 もう一つお伺いをしますけれども、法律の中でどこにもセクシュアルハラスメントの禁止規定がない中で、何が禁止される行為なのかということが条文上ない中で、裁判の中でセクシュアルハラスメントと認定をされたことがございますでしょうか。

小林政府参考人 加害者の行為につきまして、セクハラに該当するとしている地方裁判所の判例というのはございます。そこでは、均等法の規定ぶりと同じ表現をなぞる形で判決が書かれているという例はございます。

 ただ、セクハラ行為の認定につきまして、一般的に明確な規範とまで言えるようなものは存在していないというふうに承知をしております。

本村委員 そういう中で、賠償金というのは、たとえ勝ったとしても、仕事をやめて、長期間裁判で闘って勝訴をしたとしても、せいぜい百万円ぐらいなわけでございます。とても権利を回復するような、そういう事態に裁判の中でもなっていないのが現状でございます。

 均等法が裁判規範にならないというのは、やはり禁止規定がないからだと。ハラスメント禁止規定というのは、被害を受けた方々始め労働者の方、組合の方、女性の団体始め各方面から強い要望があるわけでございます。今議論をしてきました相談、企業名の公表、紛争解決援助、調停、裁判、こういうことをやっても、やはりいろいろなことで救済をされていないわけでございます。

 大臣は、先日も本会議で御答弁いただいたんですけれども、ハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるんだ、あってはならないというふうに御答弁されておりますけれども、にもかかわらず、このハラスメント禁止規定が中長期の課題というのは、本当に私は意味がわからないわけでございます。諸外国はできているものを、なぜ日本だけは中長期の課題となっているんでしょうか。

 昨日の参考人質疑の中でも、伊藤参考人が、諸外国に禁止規定を入れている国は多く、日本の法律をどのように実施していくかということを整理することは比較的短時間で可能ではないか、速やかに禁止規定を入れてほしいという発言をされておりました。

 なぜ、諸外国はできているのに、日本は中長期の課題なんでしょうか。

根本国務大臣 セクシュアルハラスメント等の禁止規定、これについては、昨年十二月の労働政策審議会の建議において、現状でも悪質なセクシュアルハラスメント等は既に刑法違反にも該当し、不法行為として損害賠償請求の対象にもなり得る中で、要はそれぞれの法律との関係の整理だと思いますが、民法など他の法令との関係の整理や、あるいは違法となる行為の要件をどう限定していくか、あるいは明確化していくか、つまりそういう課題があって、今回の見直しによる状況の変化も踏まえた上で、その必要性を含め中長期的な検討を要するとされたものであります。

 これは要は、関係法令との整理が必要だということと、違法となる行為の要件の明確化、ここが大きな課題で、議論があった、こういうことだと思います。

 ただ、一方で、ハラスメントのない職場づくりを推進する必要がある、これは言うまでもありません。ですから、今回の法案では、労働施策総合推進法第四条の国の施策に、ハラスメント対策全般を充実するということを明記した上で、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントに加え、喫緊の課題となっているパワーハラスメントの防止のための事業主の措置義務、これを設けるとともに、国、事業主及び労働者の責務規定を設けて、これらのハラスメントを行ってはならない旨を明確化しております。

 本法案に基づいて、その意味で、今回こういう法案の手当てをしているわけですが、ハラスメントのない職場づくりを推進していきたいと思います。

本村委員 セクシュアルハラスメントの被害を受けた方は、多くは女性でございます。女性の働く場、働く権利が奪われて、女性が仕事の能力を蓄積することが阻まれてしまいます。退職したら年金にも連動いたしますし、老後だって年金が少なくなってしまうわけでございます。生涯にわたって女性の貧困をつくり出すもので、甚大な人権侵害だというふうに認識をしております。

 だからこそ、今すぐ救済できるようにしてほしい、そのためには、禁止規定や、何が禁止される行為なのか、これを明確にしてほしいというのが、研究者の方々や弁護士の方々や被害を受けた方々の声でございます。

 認識をちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、女性差別撤廃委員会は、女性が女性であるがゆえに受ける暴力は条約上の女性差別とみなし、セクシュアルハラスメントもその一種として、国に対策を求めております。

 禁止規定そして制裁措置、これも女性差別撤廃委員会に日本政府は求められておりますけれども、そのことをどう認識されておりますでしょうか。

根本国務大臣 事前に通告を受けていませんでしたので、確認してからお答えしたいと思います。

本村委員 事前に通告はしております。(発言する者あり)委員長、時間がないんです。

冨岡委員長 では、ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 速記を起こしてください。

根本国務大臣 近年、女性差別撤廃条約において、セクシュアルハラスメント防止対策で、職場でのセクシュアルハラスメントを防止するため、禁止規定と適切な制裁措置を盛り込んだ法整備を行うこと、この勧告は、差別委員会の最終見解については、これを受けております。

本村委員 女性差別撤廃委員会は、女性が女性であるがゆえに受ける暴力は条約上の女性差別とみなし、セクシュアルハラスメントもその一種として国に対策を求めておりますけれども、そういう認識はありますか。

根本国務大臣 職場でのセクシュアルハラスメントを防止するために禁止規定と適切な制裁措置を盛り込んだ法整備を行うこと、こういう勧告は受けておりますから、そういう認識はあります。ありますが、これは、最終見解ということで聞いておりますが、強いて言えば法的拘束力はないものと考えています。

本村委員 国に対策を求められているのにやっていないということは、女性差別を放置しているという認識でよろしいですか。

根本国務大臣 今回の法案で、今、我々は法案を提案させていただいておりますが、それは、セクシュアルハラスメントはあってはならない、こういう観点で法案を出させていただいております。そういう対応をさせていただいております。

本村委員 女性差別撤廃委員会からも禁止規定、制裁措置を求められておりますので、真剣に受けとめていただきたいというふうに思います。

 世界銀行グループからも、OECD高所得の国の中で日本だけがセクシュアルハラスメントから女性を守っていないと名指しをされておりますので、その点、深く認識をしていただいて、早急に検討していただきたいというふうに思います。

 そして、国内の動きについても申し上げたいんですけれども、男女共同参画会議の女性に対する暴力に関する専門調査会が四月八日、セクシュアルハラスメントの対策の現状と課題という報告書を出しました。

 この議論は、そもそも財務省の事務次官の事件がございまして、今のセクシュアルハラスメントの防止対策が全然だめだ、調査会の会長がこういう発言をして、その調査会の中では委員の皆様方が次々に、被害者保護がなっていないという発言を繰り返しているわけでございます。そういう認識のもとで、二〇一八年六月から二〇一九年二月までヒアリングや議論を重ねて出されたものでございます。

 この報告書の中には、セクハラ行為に係る禁止規定などの検討が進められる、そういうときにはこの報告書を生かしてほしいんだということで、期待が込められております。諸外国の法制度の内容なども書かれておりますので、この報告書というのは、この報告書に掲げられた各課題について、可能な限り早期に種々の対策、立法が検討され、実施に移されることを期待するというふうに述べられております。

 こういう指摘をしっかりと受けとめるべきじゃないですか、大臣。

根本国務大臣 女性に対する暴力に関する専門調査会の報告書においては、我が国においては、セクハラ規制の方向性、定義の統一の必要性があるかどうか自体についての前提的な議論が求められている段階にあり、今後、総合的に規制の方向性について議論することが課題といったことも指摘されております。

 また、この報告書では、労働政策審議会の建議を踏まえて職場におけるセクハラは許されないものであるという趣旨が法律上で明確化されることになれば、職場におけるセクハラ対策の実効性も一定程度向上していくことが期待されるという指摘もいただいております。

 いずれにしても、セクハラの禁止規定については、労働政策審議会の建議を踏まえて、今回の法改正の施行状況や同専門調査会の報告書の内容も踏まえて必要な検討を行っていくことになるものと考えております。

本村委員 早急に種々の対策、立法が検討されということも求められておりますので、ぜひ、早急に前段の議論をやっていただいて、さまざま検討会、研究会を開いていただいて、禁止規定を入れていただきたいというふうに思います。

 きょう議論をさせていただきましたけれども、今の現状では、やはり事業主の防止措置義務では被害を受けた方々が救済されないんだということが明確だというふうに思います。

 少なくともセクシュアルハラスメントについては禁止規定、何が禁止される行為かということを明確に明記をするということ、被害者の方が早急に救済される独立した機関をつくるということ、そして都道府県労働局の現状、人が足りないんだということを内藤参考人も言われておりましたけれども、私も愛知の労働局の実態をお伺いをしましたけれども、セクシュアルハラスメントなどを聞く雇用環境・均等部、相談を受ける方は、ほとんど非正規雇用の方が多いんだというふうに言われておりました。これからパワーハラスメントの方々の相談を受けるということになりますので、体制の強化をぜひやっていただきたいというふうに思いますし、正規でちゃんと任用してやっていただきたいというふうに思います。

 そして、迅速に救済をされる機関が必要だというふうに思いますし、ぜひ、差別禁止法あるいは雇用平等法、こうしたものをつくって、被害を受けた方々が迅速に救済をされる、そういう制度にしていただきたいというふうに求めたいと思いますけれども、最後に、大臣、御答弁をお願いしたいと思います。

根本国務大臣 我々、まさしく、方向性は多分共通していると思いますが、さまざまな課題に対して対応すべく、今回の法改正を提案させていただいております。そして、労働局の体制の充実も図っていきたいと思っております。

冨岡委員長 時間が来ていますので。

本村委員 終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、森夏枝君。

森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。

 質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 女性活躍推進法の一部を改正する法律案に関連する質問をさせていただきます。

 安倍政権のもと、働き方改革が推進されておりますが、社会が多様化し、働き方も多様化する中で、誰もが安心して働くことができる就業環境を整備することはとても重要なことです。また、これまで以上に女性の活躍を進めていくことは、労働人口が減少していく現状を踏まえても、就業を希望している女性がふえていることを考えてもとても重要な課題であると考えております。

 そこで、女性活躍推進法の一部を改正する法律案について、根本厚労大臣に改めてお尋ねいたします。

 今回の法案の改正により、女性の職業生活における活躍に関する事業主の取組を更に推進するための仕組みを整備し、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント等のハラスメントの予防、解決に向けた事業主等の取組を推進するための仕組みを整備し、さらに、セクシュアルハラスメント等に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務の明確化や、労働者が事業主にセクシュアルハラスメント等の相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いの禁止等を行うこととしていると、本会議において趣旨説明されました。

 法施行により、その効果として大きく変わると考えているものは何でしょうか。また、政府が法改正により達成しようとするものはどの程度の期間で達成することができると計画されておられますでしょうか。さらに、今回の改正でまだ不足していると考えているものがあれば、お答えください。

根本国務大臣 少子高齢化や社会経済情勢の変化が急速に進む中で、女性活躍を更に推進するとともに、働き手や働き方が多様化する中で、誰もが安心して活躍できる就業環境を整備すること、これは大変重要な課題だと思っております。

 先ほど、私の本会議での答弁を御紹介いただきましたが、今回の法案では、女性活躍推進法について、女性活躍推進に関する行動計画策定や情報公表義務の対象企業の拡大、これは、常用労働者三百一人以上だったところを百一人以上に拡大するということを行うとともに、職場におけるハラスメント防止対策の強化を図るため、昨今大きな問題となっているパワハラ防止のための事業主の措置義務の新設や、セクハラ防止対策の強化などを行っております。

 このような法整備については、やはり必要なのはその周知と確実な履行確保に取り組むことですから、法律の施行後できるだけ早期に、誰もが能力を十分発揮して生き生きと働ける社会を実現していきたいと思います。

 また、本法案の附則第七条に、施行後五年を経過した場合の見直し規定を盛り込んでおります。新たな課題が生じた場合などには、当該規定に基づき必要な対応を検討していきたいと考えています。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 新たな課題が出てきたときには再検討していただけるということですので、お願いしたいと思います。女性活躍推進法の改正で、本当の意味で女性が活躍できる社会となるようにお願いをしたいと思っております。

 引き続きまして、女性活躍推進法に関して質問をいたします。

 行動計画の策定義務及び情報公表義務の拡大について、義務の対象が、これまでの三百人超の企業から百人超の企業に拡大される内容となっております。平成三十年六月末時点での三百一人以上の企業は約一万六千社、百一人以上三百人以下の企業は約三万二千社あるとされているので、今回の改正により、その対象が三倍になるということとなります。

 そこで、お尋ねいたします。

 これまで施行されてきた義務により、中小企業における取組の現状はどのようになっているのでしょうか。三百人超の常用労働者がいる企業とそれ以下の常用労働者の企業において、女性活躍や女性の職場生活における活躍にどのような差が生じていたのか、調査、検証されたものはございますでしょうか。

 今回の改正により、単純に考えると、今までよりも倍もの企業が変わっていくことになります。日本の企業の女性活躍のあり方が大きく変わることとなっていくと言っていいかと思います。その変化を見据えるためには、政府がこれまでどのような支援策を行い、それによる成果はどのようなものであると評価をしているのかお示しいただくことが今後の参考になると考えます。お答え願います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、中小企業、三百人以下の企業でございますが、一般事業主行動計画の策定あるいは情報公表が努力義務となっているわけでございます。そうしたところに対しまして、中小企業を対象とした説明会の開催、あるいは女性活躍推進アドバイザーの個別訪問等によるきめ細かな支援などを行ってきておるところでございます。

 そうした取組もございまして、三百人以下企業におきましても、五千六百八十一社から労働局の方に行動計画の届出が行われているというのが今の状況でございます。

 ただ、大企業の場合は届出の率が九九・三%であるのに対しまして、中小の事業所数自体は非常に多いことを考えますと、まだまだ中小の取組は課題が多いということと、それから、進んでいるところとそうでないところの差が大きいんだろうというふうに思っております。

 今回、情報公表、届出の義務の対象拡大を図りましてPDCAの計画的な取組を広げることとしておりますので、こうしたことで中小を含めた女性活躍の取組が更に推進されるようにしていきたいというふうに思っております。

 また、百一人以上三百人以下の一般事業主に対する支援策ということでございます。

 今回の改正におきまして、こういった中小のところについても円滑にこの義務を実施していただくことができますように、幾つか支援策を講じているところでございます。

 まず、施行時期でございますが、公布後三年以内の政令で定める日ということで、働き方改革との整合性を確保しているところでございます。

 また、義務化が施行されるまでの努力義務となっている間におきましても、できるだけ早期に対応を進めていただけますように、行動計画に基づく取組に対する助成、行動計画策定が容易になるような支援ツールの開発、それから個別の相談やセミナーの実施など十分な支援措置を講じてまいりたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 引き続き、行動計画の策定義務及び情報公表義務の拡大についてお尋ねいたします。

 今回新たに義務の対象となる、常時雇用する労働者の数が百一人以上三百人以下の一般事業主にとっては、大企業とは違い、人員体制から社内体制等、対応するためには大きな負担となることが予想されます。また、中には法改正に対すること自体がかなりのハードルとなる業種もあると考えられます。負担軽減のために、どのように支援策を拡大すると考えておられますでしょうか。

 また、新たに対象となる企業数がさきにお話ししたように三万二千社程度とかなりの数となり、それらの会社に対してフォローが必要となります。義務の対象である旨の周知もさることながら、負担軽減策を検討しているのであれば、ワンセットで企業にしっかりと伝えていく責務があります。この点についてどのような方針を定めていくのか、教えてください。

小林政府参考人 失礼いたしました。先ほど、百一人以上への拡大に対するところも御答弁申し上げてしまいました。

 改めて繰り返させていただきますと、まず、百一人以上に拡大するということで、中小企業に対する負担というものが生じます。したがって、中小企業におきまして十分な準備、周知期間を確保していただくということで、施行時期を公布後三年以内の政令で定める日というふうにいたしまして、それまでの間は努力義務というふうにしておるところでございます。

 その上で、義務化が施行されるまでの努力義務となっている間につきましても、可能な限り早期に対応を進めていただくということが重要でございまして、行動計画策定が容易にできるような支援ツールの開発ですとか、行動計画に基づく取組に対する助成、電話相談や個別企業への訪問、セミナーの実施などによる周知広報、支援というようなことをあわせて講じることによって、今後円滑な義務の施行が図られるように十分留意してまいりたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 もう一点、行動計画の策定義務及び情報公表義務の拡大について伺います。

 先ほどの質問で触れましたが、策定義務の対象拡大は中小企業にとって負担が大きいことが予想され、そのために、ニッポン一億総活躍プランにおける行動計画一〇〇%策定の目標達成には、あらかじめ大企業とは異なる期間が設けられています。つまり、当初より、ある程度の期間を設けないと、中小企業にとってはかなりの負担であるため難しいと予想されていると思います。

 一方で、女性活躍を推し進めるためには、全ての企業に対し同様の体制をとっていただくことが望ましく、どの企業でも同じように、安心し、女性が活躍できる環境をつくっていくことが大切だと思います。

 百人以下の企業については、策定が引き続き努力義務となっております。女性活躍を推進する観点からは、策定義務の対象企業の範囲を更に拡大することも考えられるわけですが、先ほどよりお話ししているとおり、企業の現状や負担を考慮しなければなりません。

 まずは、今回の改正により、義務の対象をこれまでの三百人超の企業から百人超の企業に拡大するわけですが、今後さらなる小規模企業への対象の拡大の方針はありますでしょうか。現時点で検討がない場合でも、将来検討する場合、どのタイミングで検討が予想されますでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 常用労働者数が百人以下の中小企業でございますが、その負担を考慮いたしまして、引き続き努力義務とすることにしております。努力義務の中小企業でありましても、行動計画の策定等の取組が進むように、行動計画に基づく取組に対する助成ですとか、先ほども申し上げましたような簡易版の行動計画策定支援ツールの開発、セミナーの実施などによる計画策定支援等を百人以下の中小企業に対しても実施してまいりたいというふうに思っております。

 その後の規定の見直しについてのお尋ねでございましたけれども、改正による影響も十分踏まえた上で行うということが必要でございますので、本法案の附則七条には施行後五年を経過した見直し規定というものも盛り込まれているところでございますが、今後、法案が成立した場合には、こういった規定に基づきまして必要な見直しを検討していくということになっていくんだろうというふうに思っております。

森(夏)委員 ありがとうございます。しっかりと見直しも検討して進めていっていただきたいと思います。

 今回、女性活躍に関する取組が特に優秀な事業主に対し、インセンティブを強化するため、現行の優良事業主認定、えるぼし認定よりも水準の高い特定認定制度、プラチナえるぼし認定の創設を行うこととなっております。これは、現在設けられているえるぼし認定が認定段階一から三段階目まであるもののうち、認定段階三にある企業に対しさらなる取組を促すものと評価できるものと考えております。

 平成三十年末時点で、えるぼし認定は七百七十五社という数の企業が取得していますが、段階目ごとの取得企業数に対する評価についてお答えください。

 また、女性活躍推進法改正の行動計画の策定義務及び情報公表義務の拡大に関連し、今後の参考のため、三百人超の企業から百人超の企業と百人以下の企業の三段階でそれぞれえるぼし取得企業数の数についてお答えいただき、企業規模や体力によって取得に差があるのか、検証されたものがあればお答えください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十年末時点のえるぼし認定企業でございますが、全体が八百十三社でございます。そのうち、認定段階一、星一つのものが四社、それから認定段階二のものが二百六十四社、認定段階三、一番上のものが五百七社ということで、最も基準の高い三段階目の認定を受けた企業が最も多くなっているという状況でございます。

 また、企業規模別についてのお尋ねでございましたが、認定段階一は四社ございますが、全てが三百一人以上企業、それから認定段階二でございますが、三百一人以上が二百八社、百一人以上三百人以下が二十一社、百人以下が三十五社、それから認定段階三でございますが、三百一人以上が三百六十二社、百一人以上三百人以下が七十四社、百人以下が七十一社ということでございまして、認定取得数だけを見ますと、むしろ、高いレベルの認定段階のところで中小企業の占める割合が高まるというような傾向が見られるところでございます。

 これは、中小企業においては、非常に取組が進んでいるところがある一方で、そういった取組もされておらないところがあるということで、進んでいるところとそうでないところの差が非常に大きいということのあらわれかというふうに思っております。

 こういったことも踏まえて、今回、中小にも取組を求めることにしておるわけでございますが、全体としてこういった計画的な女性活躍の取組が進むようにしてまいりたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 中小企業でも大変進んでいるところもあるというお話でした。進んでいないところには積極的に支援、サポートをして女性活躍が進むようお願いをしたいと思います。

 プラチナえるぼし認定制度の認定基準については、四つの基準を満たすものに対して認定を行うこととなっております。その中において、当該女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施状況が特に優良なものであることと、その他の厚生労働省令で定める基準に適合することについてお尋ねいたします。

 この二点について、内容がわかりにくいと感じております。明確な基準がどこに規定され、どのような内容なのかをお示しください。法律に明記するもの以外に、何らかの基準を設ける方針でしょうか。その場合、どのような基準となるのでしょうか。

 また、現行のえるぼし認定とプラチナえるぼし認定を受けた場合の違いについて、その差をわかりやすく御説明いただくとともに、認定を求める魅力についてどのように周知していくおつもりなのか、現時点で検討しているもの等があれば、そのスケジュールとともにお示しください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 プラチナえるぼし認定の基準の具体的内容につきましては、今後、労働政策審議会の雇用環境・均等分科会において御議論いただくこととなります。

 現時点で考えております内容でございますが、まず、えるぼし認定の基準となっている女性管理職比率等の基準がございます。これよりも更に高い水準のものを設定していくことになるであろうということ、それから、一般事業主行動計画の数値目標を達成していることを求めていくことになるのではないかということ、また、今回の法案で選任を努力義務としております男女雇用機会均等推進者を選任していることなどを基準にしていくことを検討しているところでございます。

 プラチナえるぼしを取得した場合には、えるぼしの場合と異なりまして、一般事業主行動計画の策定が免除されるということがございますが、あわせて、公共調達の際、高い水準で加点評価がされるように、関係省庁と調整をしてまいりたいというふうに考えております。

 また、えるぼし認定、プラチナえるぼし認定を取得することによりまして、認定マークを商品等に表示して、女性活躍に取り組む優良な企業であるということを求職者等に対してアピールすることができ、それが優秀な人材の獲得につながるといった効果も期待できるところでございます。

 したがいまして、法案が仮に成立した場合には、プラチナえるぼしの認定基準を決定し、それが決定した後には速やかに、認定基準や取得のメリット等について、ホームページ等を利用して広く周知を行ってまいりたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 まだこのえるぼし認定について余り知られていないようにも思いますので、先ほどお話がありましたけれども、ホームページ等で周知するとのことですが、しっかり国民の皆様に周知をしていただけるように、そして女性が活躍できるように、しっかりと進めていっていただきたいと思います。

 少子化の流れを食いとめ、子供が健康に生まれ育つ環境を整備するための対策を推進することを目的とする次世代育成支援対策推進法においては、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定、くるみん認定を受けることができます。

 さらに、平成二十七年四月一日より、くるみん認定を既に受け、相当程度両立支援の制度の導入や利用が進み、高い水準の取組を行っている企業を評価しつつ、継続的な取組を推進するために、新たにプラチナくるみん認定が始まりました。プラチナくるみん認定を受けた企業は、プラチナくるみんマークを広告等に表示し、高い水準の取組を行っている企業であることをアピールすることができます。

 政府は、これらを促進するため、目標を定め、達成をしてきました。今回新たに創設するプラチナえるぼし認定やこれまでのえるぼし認定について、目標を設ける考えはありますでしょうか。その場合、どの程度の速度感をもって目指すのか、お答えください。

小林政府参考人 今先生御指摘のとおり、くるみん認定につきましては、二〇二〇年までに三千社という数値目標を設定しております。実際には、平成三十年十二月末現在で三千三十七社ということで、目標を既に達成しているという状況がございます。

 一方で、えるぼし認定でございますけれども、えるぼし認定企業につきましては、現在のところ、数値目標というのは設けていないところでございます。

 今後、更にプラチナえるぼしという新たな仕組みを設けるということもございますので、数値目標を設けるかどうかにつきまして、今後プラチナえるぼし認定の基準の議論をいただきますが、そういった中で御議論いただき、検討してまいりたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。目標についてはこれからということですが、目標を定め、達成していただけるようにお願いしたいと思います。

 今回、ハラスメント対策の強化として、労働施策総合推進法の中で、職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進を明記するとしています。

 近年、嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたことによる精神障害の労災認定件数が増加しているほか、都道府県労働局における職場のいじめ、嫌がらせの相談件数は平成二十九年度で七万二千件超となっており、六年連続で全ての相談の中でトップとなっております。また、同じく平成二十九年度でセクハラの相談件数は七千件と高水準のままとなっており、ハラスメント対策は喫緊の課題だと重く受けとめております。

 大臣にお尋ねをいたします。

 今回、職場のハラスメント解決を国の施策として位置づけた意義について、また労働施策総合推進法の中で明記したことの意義について、そして、これまでの施策とどのような違いとなってあらわれてくるのか、お答え願います。

根本国務大臣 ハラスメントのない就業環境を整備することは大変重要な課題です。

 今委員からもさまざまな課題を御指摘いただきました。それらの課題も含めて、その対応として、今回の政府提出法案では、労働施策総合推進法第四条の国の取り組むべき施策にハラスメント対策全般を充実することを明記するとともに、パワーハラスメントを防止するための事業主の措置義務を設けました。また、国、事業主及び労働者の責務規定や労働者からの相談を理由とした不利益取扱いの禁止規定を共通に設けることにより、ハラスメント防止対策全体の強化を図ることとしています。

 加えて、シンポジウムや事業主向け説明の開催等による一体的な周知啓発や、労働者などからの相談に平日の夜間や土日も対応するフリーダイヤル等による相談窓口の設置などの総合的、一体的な取組を進めていきたいと思います。

 その意味で、本法案によりハラスメント対策は大きく前進するものと考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。相談できる環境もしっかり整えていただいて、今回の法改正によってハラスメント防止の強化をしていただくということですので、ぜひお願いをしたいと思います。

 私も女性ですので、多くの女性から、セクハラを受けた、マタハラがあるといったような声を聞いております。ぜひ、女性が本当の意味で活躍できるような社会にしていただきたいと思っております。

 政府は、ハラスメント対策において、予防、解決に向けて取り組むとしてまいりました。ハラスメント対策には、まずはハラスメントの発生を防止する取組が重要であると考えます。

 改正案では、ハラスメントの問題解決のための必要な施策としていますが、ハラスメントの発生予防への取組を含めた総合的な施策を講じることとなるのでしょうか。

 また、どのような内容を検討されているのでしょうか。また、ハラスメントの認識自体を企業そして労働者が同じ知識として持つことがその解決につながると考えます。事前の予防に向けたこの考えは取り込まれるものなのか、お答えください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、セクシュアルハラスメントあるいはマタニティーハラスメントに加えまして、パワーハラスメントの措置義務を規定いたしております。

 これらの措置義務というのは主に三つの内容から成っておりまして、事業主によるハラスメント防止の社内方針の明確化と周知啓発、それから苦情などに対する相談体制の整備、三つ目が被害を受けた労働者へのケアや再発防止ということで、予防から事後の対応までの一連の措置を義務づけるという形になっております。このうちの、最初に申し上げました社内方針の明確化と周知啓発というのが、まさに予防の取組ということになります。

 そして、今御指摘いただきましたように、企業としてこれに取り組むというのが非常に重要な課題でございまして、特にパワハラ、セクハラなどは、企業風土の問題が背景にあるということがあろうと思います。

 したがいまして、措置義務という形に基づきまして、企業でその企業の実情に応じた主体的な取組をしていただく、それが何より問題の未然防止、そして万一起きた場合の円滑な解決につながるということが期待できるものでございまして、こういった取組について、現場の労使双方が共通の認識に立って取り組むということが非常に重要であるというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。私も、現場の共通認識というのは大変重要だと思いますので、今後も、指導も含め、取組を進めていっていただきたいと思います。

 いじめ、嫌がらせ、又は暴行を受けたことによる精神障害の労災認定件数や、また都道府県労働局における民事上の個別労働紛争相談件数のうち、職場におけるいじめ、嫌がらせは明らかに増加傾向にあります。相談しやすい体制をつくってきたことにより、昔より実態が明らかになってきたということもあるかもしれません。また、職場環境の構造が変化し、労働者の意識も変わってきたという部分もあるかもしれません。

 パワーハラスメント問題を解決していくためには、発生した問題を受けとめ解決していくことはもちろん必要ですが、そもそもどうして件数が増加してきているのかの検証も必要です。相談件数が増加しているのはなぜなのか、お尋ねいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 総合労働相談コーナーに寄せられますいじめ、嫌がらせに関する相談内容は多種多様なものがございまして、相談件数の増加の理由につきまして一概にお示しするというのは難しゅうございますけれども、一つは働き方ですとか働く方の多様化、それから業務自体のストレスの増加、そして職場のコミュニケーションというか人間関係の希薄化といった職場環境の変化というのが大きな背景になっているものというふうに認識をしております。

森(夏)委員 ありがとうございます。お一人お一人、さまざまな理由があると思いますし、一概には言えないと思いますけれども、しっかりと理由を把握して、改善できる部分はしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 パワーハラスメントの具体的な定義や事業主が講じる雇用管理上の具体的な内容を定めるため、厚生労働大臣が指針を策定することになっています。指針で規定する内容の中で、パワハラの具体的な定義として、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たらないとなっておりますが、そもそも業務上相当な範囲はどのように判定されるのでしょうか。

 また、長時間労働の結果、過労死が発生した場合、そもそも長時間労働が労働基準法に抵触する場合、見過ごせない行為とはなりますが、その一方で、労働基準法違反とは別に、その業務が必要であればハラスメントとしては該当しないということになるのでしょうか。法的な解釈も含め、お答えください。

小林政府参考人 お答えいたします。

 個々の言動が業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であるかどうかにつきましては、行為の目的ですとか当該言動が行われた経緯や状況、当該言動の態様、頻度などさまざまな要素を踏まえて判断することが必要であると考えております。

 その上で、お尋ねの例でございますが、業務上必要なものであっても相当な範囲を超えればパワハラに当たり得るというものでございまして、パワハラの類型の一つである過大な業務の要求に該当するかどうかにつきましても、そういった点を踏まえて判断すべきものというふうに考えております。

 今後、法律に基づく指針におきまして、パワハラの判断基準ですとか具体例等を示していくことになるわけでございますが、先ほどお話があったようなことも含めて、パワハラに当たるかどうかの予見可能性を高めていくということも重要なことでございます。したがいまして、どこまでが適正な指導の範囲なのかといったようなことについて、各企業、職場で認識をそろえていただくことが望ましいというふうに考えておりまして、そういったことにつきましても今後指針でお示しすることを検討してまいりたいというふうに考えております。

森(夏)委員 時間がなくなりましたので、最後、セクシュアルハラスメント関連で一問質問させていただきます。

 今回のセクシュアルハラスメント等の防止対策の強化において、事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止が規定されています。しかし、事業主が、その優越的な地位を利用し、他の理由をつけて不利益取扱いを行うことも想像されます。

 このようなケースを想定しておくことはとても必要だと考えますが、厚労省において想定されましたでしょうか。された場合、例として幾つかお示しいただけますでしょうか。また、そもそもこのような場合、不利益取扱いの禁止に該当するのでしょうか。そこから外れるということはあり得るのでしょうか。お答えください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 事業主が、セクシュアルハラスメントの相談をしたことではなくて、他の理由で労働者に対する不利益な取扱いを行ったといたしましても、実質的にその原因がセクシュアルハラスメントの相談をしたことにある場合には、不利益取扱いの禁止規定に違反するというふうに考えられるところでございます。

 また、労働者から、事業主は認めないけれども、不利益な取扱いの原因はセクシュアルハラスメントの相談を行ったことだといった相談が労働局に寄せられたような場合には、これは男女雇用機会均等法の措置義務違反に該当する可能性がありますものですから、労働局が報告徴収などを行い、必要な助言、指導を行っていくということも可能になってくるというふうに理解をしております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 時間となりましたので終わりますけれども、大臣からもハラスメントのない職場づくりに取り組むと力強い御答弁をいただいておりますので、しっかりお願いしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 社会保障を立て直す国民会議の中島克仁です。

 朝からの質疑でお疲れだと思いますが、最後の質疑者でございますので、おつき合いをいただきたいと思います。

 政府提出の女性活躍推進法改正案、パワハラ、セクハラ法案について、それぞれ質問いたします。

 女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進をするための女性活躍推進法が成立して、四年がたちます。きょうの質疑でも、これまでの成果、就業率のアップであったりとかといったことも答弁として返ってきておりましたが、一方で、女性の年齢階級別労働力、いわゆるM字カーブを描いていて、管理的職業従事者に占める女性の割合は一四・九%、上昇傾向にはあるものの、依然として低い状況にあります。年齢階級別労働力率において、特に三十五歳以上で、実際に、労働力率と潜在労働力率との差が大きくなっておる。

 まず、大臣、大臣じゃないか、順番どおり質問します。

 労働調査において、潜在的労働力率と実際の労働力率に差が生じている原因、分析の状況について、まず御説明をいただきたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 女性の労働力率と潜在的労働力率の差は大きく、就業を希望しながら働くことができていない女性の数は二百三十七万人に上っております。また、年齢階級別に見ますと、三十歳代における労働力率と潜在的労働力率の差が特に大きくなっているところでございます。

 この背景といたしましてはさまざまなことが考えられるところでございまして、例えば、仕事と家庭生活との両立が難しく、出産、育児を機に離職している女性がいることなどが大きな原因であると考えられるところでございます。

 今般の改正におきましては、常用労働者数三百一人以上の企業につきまして、これまで比較的情報公表する企業の多かった職業生活に関する機会の提供に関する項目だけでなく、継続的な活躍に不可欠な職業生活と家庭生活の両立に関する項目の見える化を促すために、双方の区分から一項目以上を選んで公表することを義務づけることとしております。

 こうした女性活躍推進法に基づく民間企業における取組の推進ですとか、育児休業など両立支援制度の普及などの取組を通じまして、女性がその希望に応じて十分能力を発揮できるような環境整備を図ってまいりたいと考えております。

中島委員 出産、育児など家庭と仕事の両立、これはよく理解できます。ちょうど三十五歳以上は、お子さんがいたりということ、育児、そして仕事もキャリアスキルを上げていく時期、なかなかこれがということで政府も取り組み、そして今回の改正案ということだということは理解できますが、一方で、三十五歳から四十歳代で実際の労働力率と潜在力の差が出てくる一つの要因として考えられるのは、介護離職、介護を理由に離職をする、これもやはり一つの理由になっているんだと思います。

 ここで大臣でした。申しわけありません。

 改めて大臣に確認しておきたいんですが、いわゆる介護離職、家族の介護でやむを得ず仕事をやめる、女性の活躍を阻む要因となっている現状ということでよろしいですかという確認の答弁をいただきたいと思います。

根本国務大臣 家族の介護、看護を理由とする離職、転職者数、直近の数字で見ますと九・九万人となっております。これは五年前の前回調査で十・一万人であったのと比べると二千人の減少となっています。また、その間、介護をしながら働く方は、五十五万人、一方で増加をしている。これが現状だと思います。

 仕事と介護が両立できる環境の整備、これは大きな課題で、一億総活躍プランに基づいて、二〇二〇年代初頭までに約五十万人分の介護の受皿整備や相談支援の強化など、介護離職ゼロの実現に向けた取組を今推進しております。

 その目標に向かって、各自治体において計画的に受皿整備を進めております。特に人材の確保、育成が重要になりますので、総合的に対策を推進しています。

 具体的には、処遇改善や就業促進、あるいは職場環境の改善による離職の防止、人材育成への支援など、受皿整備にさまざまな支援を講じております。

 また、働く方が離職せずに仕事と介護を両立できるよう、育児・介護休業法に基づく介護休業などの周知徹底など、職場環境の整備にも取り組んでおります。

 このような取組を着実に進めることで、介護離職ゼロを目指していきたいと思います。

中島委員 今大臣にお答えいただいたように、政府は、二〇一六年にニッポン一億総活躍プラン、安倍政権の新三本の矢、その一つとして介護離職ゼロを大きな看板として掲げました。そして、今大臣に御答弁いただいたように、受皿づくりであり、介護従事者の処遇改善、さまざま取り組まれ、それに向けてというお話でありましたが、具体的に、二〇一六年ですね、新三本の矢として掲げた介護離職ゼロ、今目標に向かってさまざま取り組んでおるということですが、現状でどのような成果があったのか、お答えいただきたいと思います。

大島政府参考人 ニッポン一億総活躍プランの中では、介護の受皿整備ということで五十万人分の基盤を整備する、二〇二〇年代初頭までということで、上乗せをいたしました。

 それに基づきまして、各都道府県、市町村で介護保険事業計画をつくっていただき、それを踏まえた整備を今進めているところでございまして、介護基盤の受皿の着実な整備に努めているところでございます。

 同時に、介護職員の処遇改善という意味では、ことしの十月に、その前にも処遇改善を行いましたが、ことしの十月にもさらなる処遇改善を行うという状況でありまして、引き続き、基盤整備とあわせて、職員の定着、新規採用が進むように取り組んでいるところでございます。

中島委員 さまざま取り組まれていたと。私が聞いているのは結果。だって、政府は大看板を掲げて介護離職ゼロと言っているわけですよ。

 私は当時、質疑の中で、そんなに単純な話じゃないと何度も何度も指摘をしたのを今でも覚えております。実際、資料の一枚目ですね、先ほど大臣もおっしゃいましたが、前回、平成二十四年度の調査、それに比べると、十万一千人だったのが九万九千人になった、要は、結果的に二千人減っただけ、そういう理解でよろしいですか。

大島政府参考人 介護離職をした数としてはそのとおりでございますが、加えまして、その間、介護をしながら働く方が五十万人超増加しているという状況もございます。

中島委員 直近の九・九万人という数字を今言われましたが、前回から二千人、いわゆる介護離職者、男性は二・四万人に対して、女性はその三倍の七・五万人。先ほど大臣にも御答弁いただきましたが、女性の活躍を阻む介護離職の現状はいまだ変わっていない。

 そして、今、整備がとおっしゃいましたが、現状は、介護保険三施設、特養、老健、介護療養型医療施設、この整備率は一六%。養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サ高住を入れても整備率は三二%にとどまる。処遇改善もされておるのは理解しておりますが、二〇二〇年代初頭までに約五十万人分の介護の受皿を整備する計画ですけれども、建設費の高騰や、介護人材、これも処遇改善しているのは理解していますが、なかなか確保できていない。

 そんな状況の中、介護離職ゼロを大きく掲げたときに、今言った受皿の整備、処遇改善とともに唯一法改正したのが、介護休業の取得に関する周知、資料の二枚目でありますけれども、唯一、介護離職ゼロに向けた法改正は、ここに示されている育児・介護休業法の改正だったわけです。

 これでは、介護休業の分割取得、介護休暇の取得単位の柔軟化を始め五項目にわたって改正が行われたわけですが、お尋ねいたしますが、介護休業、その取得率は現状どうなっておるでしょうか。

小林政府参考人 就業構造基本調査によりますと、介護休業の取得率でございますが、平成二十四年調査が三・二%で平成二十九年調査が一・二%ということで、低下をしているという現状でございます。

中島委員 今、これも資料で示してありますが、平成二十四年度、介護休業の取得率三・二%、そして次の調査、平成二十九年度ですね、一・二%。これは下がっているじゃないですか。

 これは法改正で唯一、まあ、介護離職ゼロのための受皿整備はいいです、先ほど言ったように受皿整備もままならない。一方で、法改正されている介護休業の弾力的な取得、取得率を上げるための法改正だったと思います。もちろん、法改正から間もない調査ということではありますが、正規、非正規も含めて、二十四年、六年前の調査、二十九年が五年後でありますから、この下がり方、これは原因は何なんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今、就業構造基本調査で申し上げましたけれども、ほかの雇用均等基本調査などを見ますと、逆に、平成二十五年度が〇・〇六%、二十九年度が〇・一一%などと、別の結果も出てくるものもございます。

 ただ、全体としては非常に低調ということでございまして、一つは周知等にも課題があるというふうに思いますが、今後、実態把握を適切に行うとともに、制度の周知に努めてまいりたいというふうに思います。

中島委員 堅調と言いますが、じゃ、これは違うということですか。

小林政府参考人 この就業構造基本統計調査が一つの実態をあらわしているというふうに思いますので、御指摘いただきましたように、減少しているということでございます。

中島委員 いや、だから、その要因を聞いているんですよ、違う調査が堅調だとかというんじゃなくて。厚生労働省は、この就業構造基本調査をもとに介護休業の取得率を評価するんですよね。いいんですよね。だとしたら、この数字が、平成二十四年から二十九年で三・二から一・二、半分以下に下がっているこの要因をどう分析しているかをお尋ねしています。

小林政府参考人 失礼いたしました。

 今御指摘いただきましたように、三・二から一・二というふうに大幅に減少しているところでございます。この一つの要因として、周知が不十分だという指摘は別のところからもいただいておるところでございます。

 そういうことで、周知不足ということもあるわけでございますが、より的確な実態の把握にも努めまして、状況というものの改善を図りたいというふうに考えております。

中島委員 受皿の整備状況も整っていない。先ほど言った軽費老人ホームや有料老人ホームを含めても三二%どまり。そして、唯一の法改正であった介護休業取得率も下がっておる。何ら進んでいない。介護離職ゼロと言いながら、大きな看板を掲げながら、今に至って何ら改善はされていないという理解でよろしいでしょうか。

小林政府参考人 平成二十八年の育児・介護休業法等の改正の中には、介護休業をとりやすくするということとあわせまして、介護休業給付の給付率を四〇%から六七%に引き上げるというような内容も含んでいたわけでございますけれども、なかなかその成果があらわれていないということだというふうに思っております。

 私どもとしては、一つの大きな理由というのが、周知が十分行き届いていないというところにあるというふうに思っておりまして、そこの改善というのはこれからの大きな課題だというふうに思っております。

中島委員 私、あの当時も、介護離職ゼロ、先ほども言ったように、この問題は大変複雑で難解な部分がある、単純に、受皿を整備する、更に介護休業をとりやすくすれば介護離職ゼロに至るなんということは、実際大変難しいと何度も指摘をしました。

 それで、この調査自体、これは資料の五枚目、先ほど来言っておられる就業構造基本調査における調査票、これがいわゆる介護離職を調査する調査票ということになると思いますが、Bの部分で、まず、現在、仕事をしていない人への質問、ここで、以前仕事をしたことがあると答えた方がCに行き、前の仕事をやめた年月を記入する、そして、その理由の中に「介護・看護のため」というふうになっているわけですが、私は、これは、一枚目の資料にお示しした実際の介護離職の現状を反映していない調査だと。

 理由は、「前の仕事をいつやめたのですか」。これは、直近でやめた、一年から、これはもう釈迦に説法ですが、民間が調べているデータでも、平均の介護期間は四年七カ月ですね。十年を超える介護期間もある。そういうことを考えたときに、繰り返し正規雇用から介護のために仕事をやめて、一旦離職をしたけれども、私の周りにたくさんいます、そういう方。そして、親の介護をするために弾力性のある仕事を、そして、介護をしている人の状況によっては、もう一度一旦離職をしなきゃいけない。そういった状況がまさに介護現場。

 そして、前回、私、介護認定審査率の地域間格差を言いましたが、要介護三以上の施設への重点化、そして、要支援一、二の方は地域支援事業への移行、要介護一、二の方が在宅にいる割合が非常にふえておる。そういう状況を鑑みて、この調査が本当に介護離職にあえいでいる方々の数字をあらわしているものかどうか、私は大変疑問です。

 これについて何か、これは本当に実際、介護離職の数を反映する調査に私はなっていないと考えますが、いかがですか。

大島政府参考人 委員御指摘のとおり、一年前仕事をやめた方についてデータをとっていますので、繰り返しやめている方についてはとれないという状況はございます。

 この調査は基幹統計でございまして、我々としましては、介護、看護を理由とした離職者数を把握するこれを超える調査は今のところないんじゃないかと考えています。したがいまして、一定の限界はあるものの、一定期間継続的に評価をしていく上では、この調査が今の時点では最適のものではないかなというふうに考えております。

中島委員 時間ですので、また次回に続きをしますけれども、政府があのとき大看板を掲げて、結果は全く、出て二千人ですよ、数字上。十万一千人から九・九万人。そして、介護の受皿整備もできていない、法改正の実効性は全く伴っていない、そして実態も把握できないような現状は、大変問題だ。

 続きは、次回また質問させていただきたいと思います。

冨岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時八分散会


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