衆議院

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第22号 令和元年6月5日(水曜日)

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令和元年六月五日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君

   理事 橋本  岳君 理事 西村智奈美君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      穴見 陽一君    安藤 高夫君

      上野 宏史君    越智 隆雄君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      金子 俊平君    神谷  昇君

      神山 佐市君    木村 次郎君

      木村 哲也君    木村 弥生君

      国光あやの君    小林 鷹之君

      後藤田正純君    佐藤 明男君

      新谷 正義君    杉田 水脈君

      田村 憲久君    平  将明君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      百武 公親君    船橋 利実君

      古川  康君    細田 健一君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      宮内 秀樹君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      渡辺 孝一君    阿部 知子君

      池田 真紀君    尾辻かな子君

      吉田 統彦君    稲富 修二君

      岡本 充功君    白石 洋一君

      山井 和則君    中野 洋昌君

      桝屋 敬悟君    鰐淵 洋子君

      高橋千鶴子君    藤田 文武君

      柿沢 未途君    中島 克仁君

    …………………………………

   参議院厚生労働委員長   石田 昌宏君

   厚生労働大臣       根本  匠君

   厚生労働副大臣      大口 善徳君

   厚生労働副大臣      高階恵美子君

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   厚生労働大臣政務官    新谷 正義君

   国土交通大臣政務官    田中 英之君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局審議官)          三田 顕寛君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 黒田 岳士君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 船越 健裕君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 吉井  浩君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           玉上  晃君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     内藤 敏也君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         池田千絵子君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         宮本 真司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            土屋 喜久君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         小林 洋司君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           谷内  繁君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大島 一博君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  木下 賢志君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           吉本 明子君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   参考人

   (独立行政法人国立病院機構理事長)        楠岡 英雄君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     木村 次郎君

  小林 鷹之君     細田 健一君

  塩崎 恭久君     越智 隆雄君

  繁本  護君     百武 公親君

  丹羽 秀樹君     八木 哲也君

  三ッ林裕巳君     穴見 陽一君

  桝屋 敬悟君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     三ッ林裕巳君

  越智 隆雄君     神山 佐市君

  木村 次郎君     古川  康君

  百武 公親君     神谷  昇君

  細田 健一君     小林 鷹之君

  八木 哲也君     金子 俊平君

  中野 洋昌君     桝屋 敬悟君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     宮路 拓馬君

  神谷  昇君     杉田 水脈君

  神山 佐市君     平  将明君

  古川  康君     木村 弥生君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     宮内 秀樹君

  平  将明君     塩崎 恭久君

  宮路 拓馬君     丹羽 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  宮内 秀樹君     繁本  護君

    ―――――――――――――

六月四日

 自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律案(参議院提出、参法第二七号)

 死因究明等推進基本法案(参議院提出、参法第二八号)

 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)

五月三十一日

 高過ぎる国民健康保険料の引き下げへ抜本的改善を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一二一五号)

 七十五歳以上の医療費負担の原則二割化に反対することに関する請願(志位和夫君紹介)(第一二一六号)

 子供のための予算を大幅にふやし国の責任で安心できる保育・学童保育の実現を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一二一七号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一二五一号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため夜勤改善と大幅増員を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一二一八号)

 同(生方幸夫君紹介)(第一三六四号)

 同(大串博志君紹介)(第一三六五号)

 同(吉良州司君紹介)(第一三六六号)

 同(日吉雄太君紹介)(第一三六七号)

 パーキンソン病患者が生きる希望を失うことなく治療に専念できる環境の整備に関する請願(志位和夫君紹介)(第一二一九号)

 同(阿部知子君紹介)(第一三〇一号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(志位和夫君紹介)(第一二二〇号)

 同(木村弥生君紹介)(第一三三八号)

 同(日吉雄太君紹介)(第一三六八号)

 難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願(井野俊郎君紹介)(第一二二一号)

 同(伊藤渉君紹介)(第一二二二号)

 同(太田昌孝君紹介)(第一二二三号)

 同(岡本充功君紹介)(第一二二四号)

 同(鬼木誠君紹介)(第一二二五号)

 同(佐藤茂樹君紹介)(第一二二六号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第一二二七号)

 同(階猛君紹介)(第一二二八号)

 同(寺田学君紹介)(第一二二九号)

 同(富田茂之君紹介)(第一二三〇号)

 同(中村喜四郎君紹介)(第一二三一号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一二三二号)

 同(本多平直君紹介)(第一二三三号)

 同(山岡達丸君紹介)(第一二三四号)

 同(穴見陽一君紹介)(第一二五二号)

 同(江田康幸君紹介)(第一二五三号)

 同(大西健介君紹介)(第一二五四号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一二五五号)

 同(笹川博義君紹介)(第一二五六号)

 同(森山浩行君紹介)(第一二五七号)

 同(山井和則君紹介)(第一二五八号)

 同(吉川赳君紹介)(第一二五九号)

 同(伊藤渉君紹介)(第一二七三号)

 同(石川香織君紹介)(第一二七四号)

 同(小渕優子君紹介)(第一二七五号)

 同(太田昭宏君紹介)(第一二七六号)

 同(門博文君紹介)(第一二七七号)

 同(上川陽子君紹介)(第一二七八号)

 同(木原稔君紹介)(第一二七九号)

 同(中野洋昌君紹介)(第一二八〇号)

 同(堀井学君紹介)(第一二八一号)

 同(宮内秀樹君紹介)(第一二八二号)

 同(矢上雅義君紹介)(第一二八三号)

 同(阿部知子君紹介)(第一三〇三号)

 同(小渕優子君紹介)(第一三〇四号)

 同(額賀福志郎君紹介)(第一三〇五号)

 同(堀越啓仁君紹介)(第一三〇六号)

 同(道下大樹君紹介)(第一三〇七号)

 同(吉川元君紹介)(第一三〇八号)

 同(小渕優子君紹介)(第一三三〇号)

 同(津島淳君紹介)(第一三三一号)

 同(橋本岳君紹介)(第一三三二号)

 同(馳浩君紹介)(第一三三三号)

 同(岡本あき子君紹介)(第一三四一号)

 同(金子恭之君紹介)(第一三四二号)

 同(池田真紀君紹介)(第一三六九号)

 同(横光克彦君紹介)(第一三七〇号)

 患者負担をふやさないことに関する請願(山本和嘉子君紹介)(第一二五〇号)

 同(阿部知子君紹介)(第一二九九号)

 同(横光克彦君紹介)(第一三五八号)

 学童保育(放課後児童健全育成事業)を拡充し、子育て支援の充実を求めることに関する請願(高橋ひなこ君紹介)(第一二七二号)

 同(とかしきなおみ君紹介)(第一三三七号)

 介護保険制度の改善、介護従事者の処遇改善等に関する請願(早稲田夕季君紹介)(第一三〇〇号)

 同(池田真紀君紹介)(第一三六一号)

 障害者等の暮らしを支える介護・福祉の拡充に関する請願(阿部知子君紹介)(第一三〇二号)

 生活保護受給者へ自動車の使用等を許可することに関する請願(山岡達丸君紹介)(第一三三六号)

 障害福祉についての法制度拡充に関する請願(八木哲也君紹介)(第一三三九号)

 同(山本ともひろ君紹介)(第一三四〇号)

 中小零細企業の社会保険料負担の軽減、国庫負担増に関する請願(志位和夫君紹介)(第一三五九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一三六〇号)

 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一三六二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一三六三号)

六月四日

 国の責任で社会保障制度の拡充を求めることに関する請願(神谷裕君紹介)(第一三八四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一五〇三号)

 子供のための予算を大幅にふやし国の責任で安心できる保育・学童保育の実現を求めることに関する請願(日吉雄太君紹介)(第一三八五号)

 介護保険制度の改善、介護従事者の処遇改善等に関する請願(神谷裕君紹介)(第一三八六号)

 七十五歳以上の医療費負担二倍化反対等に関する請願(神谷裕君紹介)(第一三八七号)

 学童保育(放課後児童健全育成事業)を拡充し、子育て支援の充実を求めることに関する請願(木原稔君紹介)(第一三八八号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため夜勤改善と大幅増員を求めることに関する請願(神谷裕君紹介)(第一三八九号)

 同(中川正春君紹介)(第一三九〇号)

 同(本多平直君紹介)(第一三九一号)

 同(道下大樹君紹介)(第一三九二号)

 同(矢上雅義君紹介)(第一三九三号)

 同(山岡達丸君紹介)(第一三九四号)

 同(伊藤俊輔君紹介)(第一五〇四号)

 同(大河原雅子君紹介)(第一五〇五号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一五〇六号)

 同(櫻井周君紹介)(第一五〇七号)

 同(田嶋要君紹介)(第一五〇八号)

 同(長谷川嘉一君紹介)(第一五〇九号)

 同(広田一君紹介)(第一五一〇号)

 障害福祉についての法制度拡充に関する請願(荒井聰君紹介)(第一三九五号)

 同(稲津久君紹介)(第一三九六号)

 同(稲富修二君紹介)(第一三九七号)

 同(江田康幸君紹介)(第一三九八号)

 同(小沢一郎君紹介)(第一三九九号)

 同(大岡敏孝君紹介)(第一四〇〇号)

 同(大串博志君紹介)(第一四〇一号)

 同(岡田克也君紹介)(第一四〇二号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第一四〇三号)

 同(加藤寛治君紹介)(第一四〇四号)

 同(神谷裕君紹介)(第一四〇五号)

 同(神山佐市君紹介)(第一四〇六号)

 同(木原稔君紹介)(第一四〇七号)

 同(吉良州司君紹介)(第一四〇八号)

 同(岸本周平君紹介)(第一四〇九号)

 同(北村誠吾君紹介)(第一四一〇号)

 同(串田誠一君紹介)(第一四一一号)

 同(熊田裕通君紹介)(第一四一二号)

 同(小寺裕雄君紹介)(第一四一三号)

 同(小林史明君紹介)(第一四一四号)

 同(國場幸之助君紹介)(第一四一五号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一四一六号)

 同(佐藤公治君紹介)(第一四一七号)

 同(塩谷立君紹介)(第一四一八号)

 同(階猛君紹介)(第一四一九号)

 同(篠原豪君紹介)(第一四二〇号)

 同(篠原孝君紹介)(第一四二一号)

 同(武部新君紹介)(第一四二二号)

 同(武村展英君紹介)(第一四二三号)

 同(谷畑孝君紹介)(第一四二四号)

 同(寺田学君紹介)(第一四二五号)

 同(冨樫博之君紹介)(第一四二六号)

 同(中川正春君紹介)(第一四二七号)

 同(中谷一馬君紹介)(第一四二八号)

 同(中谷元君紹介)(第一四二九号)

 同(中谷真一君紹介)(第一四三〇号)

 同(長尾秀樹君紹介)(第一四三一号)

 同(西岡秀子君紹介)(第一四三二号)

 同(馳浩君紹介)(第一四三三号)

 同(原口一博君紹介)(第一四三四号)

 同(日吉雄太君紹介)(第一四三五号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一四三六号)

 同(本多平直君紹介)(第一四三七号)

 同(松平浩一君紹介)(第一四三八号)

 同(三ッ林裕巳君紹介)(第一四三九号)

 同(道下大樹君紹介)(第一四四〇号)

 同(宮川伸君紹介)(第一四四一号)

 同(矢上雅義君紹介)(第一四四二号)

 同(山本有二君紹介)(第一四四三号)

 同(柚木道義君紹介)(第一四四四号)

 同(吉野正芳君紹介)(第一四四五号)

 同(早稲田夕季君紹介)(第一四四六号)

 同(青山周平君紹介)(第一五一四号)

 同(青山大人君紹介)(第一五一五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一五一六号)

 同(穴見陽一君紹介)(第一五一七号)

 同(井上義久君紹介)(第一五一八号)

 同(伊東良孝君紹介)(第一五一九号)

 同(伊藤俊輔君紹介)(第一五二〇号)

 同(泉健太君紹介)(第一五二一号)

 同(小倉將信君紹介)(第一五二二号)

 同(大河原雅子君紹介)(第一五二三号)

 同(大西健介君紹介)(第一五二四号)

 同(岡島一正君紹介)(第一五二五号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五二六号)

 同(金子恵美君紹介)(第一五二七号)

 同(河井克行君紹介)(第一五二八号)

 同(黒岩宇洋君紹介)(第一五二九号)

 同(小林茂樹君紹介)(第一五三〇号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一五三一号)

 同(笹川博義君紹介)(第一五三二号)

 同(清水忠史君紹介)(第一五三三号)

 同(田嶋要君紹介)(第一五三四号)

 同(高木錬太郎君紹介)(第一五三五号)

 同(谷川とむ君紹介)(第一五三六号)

 同(中野洋昌君紹介)(第一五三七号)

 同(中村喜四郎君紹介)(第一五三八号)

 同(長坂康正君紹介)(第一五三九号)

 同(長島昭久君紹介)(第一五四〇号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一五四一号)

 同(長谷川嘉一君紹介)(第一五四二号)

 同(広田一君紹介)(第一五四三号)

 同(藤原崇君紹介)(第一五四四号)

 同(船橋利実君紹介)(第一五四五号)

 同(古屋圭司君紹介)(第一五四六号)

 同(堀井学君紹介)(第一五四七号)

 同(宮川典子君紹介)(第一五四八号)

 同(宮路拓馬君紹介)(第一五四九号)

 同(務台俊介君紹介)(第一五五〇号)

 同(山本公一君紹介)(第一五五一号)

 難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願(石田祝稔君紹介)(第一四四七号)

 同(大岡敏孝君紹介)(第一四四八号)

 同(繁本護君紹介)(第一四四九号)

 同(武村展英君紹介)(第一四五〇号)

 同(日吉雄太君紹介)(第一四五一号)

 同(青山大人君紹介)(第一五五二号)

 同(広田一君紹介)(第一五五三号)

 同(藤原崇君紹介)(第一五五四号)

 同(宮川典子君紹介)(第一五五五号)

 患者負担をふやさないことに関する請願(長谷川嘉一君紹介)(第一四八九号)

 同(広田一君紹介)(第一四九〇号)

 七十五歳以上の医療費負担の原則二割化に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四九一号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四九二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四九三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四九四号)

 同(清水忠史君紹介)(第一四九五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四九六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一四九七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四九八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一四九九号)

 同(藤野保史君紹介)(第一五〇〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第一五〇一号)

 同(本村伸子君紹介)(第一五〇二号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(広田一君紹介)(第一五一一号)

 同(宮川典子君紹介)(第一五一二号)

 同(山本公一君紹介)(第一五一三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律案(参議院提出、参法第二七号)

 死因究明等推進基本法案(参議院提出、参法第二八号)

 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国立病院機構理事長楠岡英雄君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として人事院事務総局人材局審議官三田顕寛君、内閣府大臣官房審議官黒田岳士君、外務省大臣官房参事官船越健裕君、国税庁長官官房審議官吉井浩君、文部科学省大臣官房審議官玉上晃君、文化庁審議官内藤敏也君、厚生労働省大臣官房総括審議官池田千絵子君、医政局長吉田学君、健康局長宇都宮啓君、医薬・生活衛生局長宮本真司君、労働基準局長坂口卓君、職業安定局長土屋喜久君、雇用環境・均等局長小林洋司君、子ども家庭局長浜谷浩樹君、社会・援護局長谷内繁君、社会・援護局障害保健福祉部長橋本泰宏君、老健局長大島一博君、保険局長樽見英樹君、年金局長木下賢志君、人材開発統括官吉本明子君、政策統括官藤澤勝博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。木村哲也君。

木村(哲)委員 よろしくお願いします。十五分の短い時間でございますけれども、質問時間を与えていただきまして、まことにありがとうございます。自民党の木村哲也でございます。

 本日は、介護分野についての外国人就労拡大、人材不足解消をどうしていくのかということと、そしてまた、人材不足が招く労働生産性、こちらについての向上をいかにしていくのかというところのIT化、ICT化含めてお伺いをさせていただきたいと思います。

 まずは、介護分野の外国人就労拡大についてであります。

 二〇二五年までに厚生労働省試算では二百四十五万人が必要、そのうちの三十四万人が不足をするということでありまして、外国人就労拡大は非常に必要不可欠であります。

 その分野におきましては、まずはEPAが二〇〇八年からスタートしているわけでございまして、こちらは四千三百名がと。そして、このEPAにおきましては、最長五年間、そしてこの五年間の間に二回の介護福祉士の受験資格があって、これに合格すれば永続的に働ける、合格しなければ帰国を余儀なくされるということでありましたが、これらを方向転換して、四年間の研修と就労を行えば、特定技能と同等、そしてプラス更に最長五年間の就労期間がふやされるということであります。

 そしてもう一つは、技能実習。これは、N4からN3までに一年間で試験に受からなければならなかったということでありましたが、こちらも方向転換をして、二年間の猶予ができました。ですから、N4のまま三年間日本で働くことができることとなりました。

 この二つについて方向転換をして、一つはコミュニケーションが本当にこれで保っていけるのかどうなのかというところが問題であります。やはり、介護の受け手側としては、日本語がうまく通じるか通じないか、そしてまた、認知症の方々は非常にコミュニケーションをとるのが難しいという状況であります。介護の質をこのような方向転換をして下げずに、しっかりとコミュニケーションをいかに保つことができるのかというところを御見解を伺います。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 外国人介護人材のコミュニケーションの能力の質の担保につきましては、職場への円滑な定着を図るとともに、利用者に提供されるサービスの質の確保の観点からも重要であると考えております。

 これまで、介護分野の技能実習生に対しましては、監理団体が実施する入国後講習で活用できる介護の日本語の共通テキストや、実習開始後の継続的な日本語学習を支援するためのウエブコンテンツなどの開発を進めてきたところでございます。

 今年度予算では、この四月から新たな在留資格、特定技能が創設されたことを踏まえまして、更に増加が見込まれます外国人介護人材の受入れ環境を整備し、円滑に就労、定着できるようにするため、介護技能や介護の日本語等の向上のための研修、これは地域の中核的な受入れ施設で行われるものでありますけれども、そういった研修等の実施に対する支援や、先ほど述べましたウエブコンテンツの拡充、これは利用者の学習状況に応じて助言を行う機能を付与する、そういったものの拡充を行っております。さらには、介護業務の悩み等に関する相談、こういった取組を行うこととしております。

 こうした取組を通じまして、外国人介護人材が安心して日本の介護現場で就労、定着できるよう、国内受入れ環境の整備をしっかり進めてまいりたいと考えております。

木村(哲)委員 EPAでは四千三百人が、そしてまた技能実習では、ある新聞報道では二百五十人という数字もありますし、この間、正式な数字を聞いたら千八百十九人ですね、合わせて大体六千人。今回の就労拡大一年目で五千三百人、五年間で六万人ということでありますけれども、間口を開いて本当に来てもらえるのかどうなのかというところ。

 フィリピンの学校に問合せをしてお伺いすると、日本離れをしてしまって、英語圏に移ってしまっている、例えばオーストラリア、アメリカ、カナダ、こちらを優先されてしまっていたり、やはり、長い期間をかけて日本語を学んでも五年間しか働けないとか、そういう問題があってなかなか難しい。

 そして、四月に特定技能の試験がフィリピンで行われて、これは予想以上にかなり多くの方が来られたということで、百十三名の受験者、八十四名が合格をしたということでありました。

 これから九カ国で行うということでありますので、本当に確保できるのかどうなのかというのは非常に心配な問題でありますので、まだ始まって二カ月しかたっておりません、そしてまた、これから七月までに四回開かれるということでございますので、しっかりと人材確保と質を下げないようなコミュニケーション能力、こちらにおいての試験の内容もぜひともお願いしたいと思います。

 続きまして、今、この外国人就労の拡大も重要なんですけれども、その前に、日本の例えば退職をされた方、そしてまた子育てが一段階終わられた方、加えて、例えば今ちょっと引きこもりの問題がありますから、本当はこういう方々も何か就職の道はないのかというところで、やはり、まずは退職された方とか子育てを終わられた方とかに福祉の分野に目を向けていただけるような、興味を持ってもらえるような、そういうような政策が必要であります。

 そこで、厚生労働省は昨年の四月からことしの三月までそのような研修を行っています。入門的研修ということで。昨年の十月に私が調べたら、四十七都道府県のうち十六都道府県にとどまっておりました。こういうのを早い段階からもっと四十七都道府県に浸透をさせて、外国人就労拡大の前に、日本人の就職のチャンス、再チャレンジのチャンス、そういう機会をやはり政策的に持つべきだったと思いますけれども、この入門的研修、私は昨年の十月でございますけれども、それから半年間また大きく変わっていると思いますけれども、現状でどれぐらい浸透したのか、どれぐらい進んでいるのか、ちょっとお伺いいたします。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘の介護に関する入門的研修でございますけれども、多様な人材の活用の観点から、介護未経験者等の介護分野への参入を促すために実施を進めているところでございます。

 議員御指摘になりましたように、昨年度は十六カ所でしたけれども、本年度はそれより二十二カ所多い三十八都府県が実施する予定でございます。また、これに類似の取組をやっているところもございまして、それらの取組を含めますと、四十六都道府県ほぼ全てで実施しているというふうに承知しております。

 また、研修受講者数でございますけれども、昨年度より約四千人多い六千人を予定しているなど、その取組は着実に浸透しているというふうに考えております。

木村(哲)委員 これを外国人就労拡大の前に、本当は五年ぐらい前に始めて、高齢者も福祉に進む道が充実しました、女性のマンパワーも充実した、あと足りない分は外国人就労拡大で充てましょうねというんだったらスムースだったと思います、本当にスマートだったかなと思うんです。

 しかしながら、この政策というのは、まだまだ、地域包括ケアにおいても、高齢者の方々がボランティアに来ている、例えばタオルを折ったりシーツを折ったり、そういう方々がこういうところで入門して、介護助手じゃなくて介護職員になって週三回でも働いてくれたら福祉の人材の確保につながるわけでございますから、これをもっと四十七都道府県で徹底的に浸透させていただきたいと思います。

 そして、この人材不足が何を招いていくのかというところでございますけれども、やはりこれは介護事故につながっていくと思います。そして、労働生産性をどんどんどんどん下げてしまうというところにつながってしまうと思います。

 これも昨年の十月、ちょっと調べたところ、全国の老健そして特養、こちらにおいて厚生労働省が死亡事故について調査をいたしました。今まで全国の施設での死亡事故を集約する調査というのは行われていなくて、厚生労働省は死亡事故件数を把握していなかったというところでありまして、今回は、誤嚥、誤薬、転倒などということであって、曖昧なんですね。この調査項目自体がちょっと曖昧ということもあって、はっきりと、これが本当に事故で亡くなってしまったのか病気で亡くなってしまったのかというところもないんですけれども、全国の施設数からほんの一割弱の調査でこれだけ、千五百四十七名の死亡者が確認された。これも、病気がまじっているかもしれないというところで、正しい数字じゃない。

 というところで、何が問題かというと、施設が市町村に報告する義務は政令ではありますけれども、国に報告する義務はないというところが問題でありまして、それで正確な調査ができない。報告する基準というものが曖昧であるからこそ、これは実態的な把握ができていないというのが現状であります。

 この基準をつくることによって再発防止となるわけでございますから、この基準を明確化していくことが必要ではないでしょうか。見解を伺います。

大島政府参考人 委員御指摘の調査は、社会保障審議会介護給付費分科会のもとに介護報酬改定検証・研究委員会というのがございまして、そこで平成三十年度の介護報酬改定の検証の中で行われたものでございます。死亡者数の調査結果を、各介護保険施設で市町村に連絡があったものを積み上げたものとしてこの委員会に提出いたしまして、御審議いただきました。

 先生御指摘のとおり、その範囲ですね、事故の範囲、例えばインフルエンザなどそういう感染症とか食中毒とか、どこまで含めるのかといったそもそもの基準のところにばらつきがあって、報告内容をあらかじめきっちり決めるべきじゃないか、ルール化すべきじゃないかといった御意見がございました。そういった数字がひとり歩きするのも好ましくないといった御意見もありまして、今回の調査結果の死亡者数の結果は採用しないということになったところでございます。改めて調査をするということになりました。

 今、そういうことで、こういった御審議の内容も踏まえまして、行政、市町村あるいは国に対しての報告内容、方法、こういったことを統一的なルールとして定めるべく、いわば、先生のお言葉で言えば報告基準の明確化といったことをすべく、速やかに着手してまいりたいと考えているところでございます。

木村(哲)委員 これらの問題は、二つ三つありまして、国が介護施設で死亡件数を把握できていないということは、やはりその基準というものがなくて、どれが事故で、どれが病気で、だから施設が報告をするのも曖昧な基準であったというところからでありますから、しっかりとまたこの基準を明確化して、施設が隠さざるを得ない、隠すというのはおかしいですけれども、報告を上げてきていないというのがあって、それが裁判に発展してきてしまっているというような事例もありますから、この基準を明確化していただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきまして、ICT化、IoT化もお話しさせていただきたかったんですけれども、書類の簡素化ですね。やはり、対面上のサービスは得意であっても、書類の作成は苦手な職員が多い。これが、今度六万人の外国人が就労されるわけで、どうやってその報告書を書くのかというところがまた問題になってくると思います。

 なかなか、日本人で書きづらい書類、これをやはりICT化していかなければならないというところもあるので、これはまた次回以降に質問させていただきます。

 済みません、最後にですけれども、今までの流れの中で、これから外国人就労を拡大しなければならない、これは私ども賛成でございますけれども、やはり介護の質は下げてはならない、どうやって介護の労働生産性を上げていくのかというところでありますけれども、これらについて、やはり人材の確保、外国人就労とともに、もう一度、福祉分野で高齢者や女性のマンパワー、そして引きこもりの方々が再チャレンジをできるような政策も必要でありますし、ICT、IoT、AI化を図って、労働生産性を高めて、書類の簡素化をしていくことも必要である。

 このようなことも含めて、総括的に厚生労働大臣の御見解を伺います。

根本国務大臣 委員お話しのように、サービスを提供する人材の確保、育成、これは喫緊の課題だと認識をしております。

 介護人材確保については、処遇改善や就業促進、職場環境の改善による離職の防止、人材育成への支援などを含めて、総合的に取り組むことが重要だと考えております。特に、高齢化に伴って、介護サービスの需要増とともに、労働力の制約が強まりますから、委員がお話がありましたように、介護現場の生産性向上、これは重要な課題であります。

 ことしの三月に、介護分野のロボット、ICTなどを含めた介護現場の組織マネジメントの確立を推進するために、介護現場革新会議というのをつくってそこで議論をしてもらって、基本方針を取りまとめました。また、先日には、私を本部長とする、二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革本部において取りまとめを公表いたしました。

 具体的には、介護現場における業務の洗い出し、仕分、今書類の話がありましたけれども、元気高齢者の活躍、ロボット、センサー、ICTの活用、介護業界のイメージ改善、こういうものを行うパイロット事業、これを今年度全国七カ所で実施して、来年度から全国に普及、展開を図ることとしております。

 これらの取組を着実に推進して、介護現場の生産性向上に全力を尽くしていきたいと思います。

木村(哲)委員 今までの部分を厚生労働省の皆様に期待をして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、谷川とむ君。

谷川(と)委員 自由民主党の谷川とむでございます。

 質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、久しぶりの厚生労働委員会一般質疑ということで、私のライフワークの一つである生活保護について質問させていただきたいと思います。

 本日は、データは最新ではないんですけれども、以前質問させていただきました生活保護ビジネスの問題について、私が大学院在籍時に研究調査をした当時の大阪市のデータをもとに分析し、検討を加えながら、一歩踏み込んだ質問をさせていただきたいと思います。きょうは少し数字が多いので、皆さん、注意深く聞いていただきたいなというふうに思います。

 まず、路上生活者等の居宅保護開始時に支給される敷金、一時扶助費について質問させていただきたいと思います。

 従来、路上生活者に対しては、そもそも生活保護を利用させないか、利用させるとしても施設や病院等に入所させる収容保護しか認めないのが一般的でありました。生活保護法第三十条第一項は、「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする。」として、居宅保護の原則を定めています。

 しかしながら、同条第一項ただし書きが、例外として、「これによることができないとき、これによつては保護の目的を達しがたいとき、又は被保護者が希望したときは、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、又は私人の家庭に養護を委託して行うことができる。」と認めています。

 このただし書きを根拠として、実務運用は明らかに路上生活者に対する差別であり、違法な運用であると、野宿からの居宅保護を求めた訴訟が行われたのが佐藤訴訟であります。

 二〇〇二年三月二十二日、その佐藤訴訟において、大阪地方裁判所が従来の実務運用を違法であると判決を下し、そこで厚生労働省は、二〇〇三年七月三十一日、実施要領を改正し、「保護開始時において、安定した住居のない要保護者(保護の実施機関において居宅生活ができると認められる者に限る。)が住宅の確保に際し、敷金等を必要とする場合」には、敷金の支給を認めて差し支えないものとしました。

 今申し上げた実施要領は、「保護の実施機関において居宅生活ができると認められる者に限る。」としていますが、大阪市では、ほぼ限定なく、居宅保護の開始が認められていました。この実施要領の改正を受けて、居宅保護開始にかかわる生活保護ビジネスが拡大されたと私は考えています。

 二〇〇九年度の大阪市における敷金の請求金額は、一万二千四百四十五件であり、総額は三十三億三千三百二万二千百六十七円であり、一件当たり二十六万八千二百二十二円となります。そのうち、路上生活者の居宅保護開始件数は六千一件であり、ほぼ半数を占めています。

 保護開始時に支給される一時扶助のうち、布団類の請求件数は九千二十三件であり、総額は一億六千四十八万七千四百十一円であり、一件当たり一万七千七百八十六円。家具什器費の請求金額は、八千六百六十六件であり、総額は二億二百五十三万四千七十八円であり、一件当たり二万三千三百七十一円。被服費の請求件数は百三件であり、総額は百二十八万八千八百九十五円であり、一件当たり一万九百六十円。居宅保護開始時に支給される敷金、一時扶助費の平均金額は、一件当たり三十二万三百三十九円となります。

 生活保護ビジネスを展開する業者は、大阪市では支給限度額いっぱいで請求することが多く、仮に支給限度額いっぱいの請求であれば、一件当たり三十五万円になります。一方、浪速区のある良心的な業者の請求金額は十七万四千百円。生活保護を展開する業者と良心的な業者との請求金額の差額は、一件当たり十七万五千九百円であり、百件当たりであれば一千七百五十九万円にもなります。二〇〇九年度の大阪市の支給金額と良心的な業者の請求金額の差額を比較しても、一件当たり十四万六千二百三十九円であり、百件当たりであれば一千四百六十二万三千九百円となります。

 今申し上げたように、居宅保護開始時に支給される敷金、一時扶助費の支給水準と実際に生活保護サービスが提供できる費用にはギャップが大きいと指摘できます。このギャップが大きいからこそ、居宅保護開始時に支給される敷金、一時扶助費に便乗する生活保護ビジネスが成立すると考えられます。

 さらに、路上生活者を申請させれば、ほぼ間違いなく支給決定され、支給元が行政であるので確実に請求額を得ることができます。生活保護ビジネスを展開する業者は、住宅扶助、生活扶助サービスを一括して行っているのが一般的であり、その結果、一人入居させれば、入居の一時費用だけでなく、被生活保護者の死亡まで半永久的に利益を上げ続けることができます。

 現在、行政は被生活保護者に直接給付を行っていますが、私の実態調査を踏まえると、もし行政が良心的な業者を通じて生活保護サービスを提供する仕組みに転換すると、現在の生活保護水準を大きく変更せずに、居宅保護開始時に支給する費用が半分以下になる可能性を示唆しています。この場合、被生活保護者からすれば、支給水準が切り下げられたとは言えません。サービス提供に必要なだけの生活保護が行政から支給されるようにすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 路上生活者に生活保護を適用する際に、福祉事務所におきまして居宅生活が可能と認める場合には、居宅にて保護を開始することとしており、その際、必要に応じまして、アパートなどへの入居時に必要な敷金や布団代、被服費、家具什器費といった費用を一時扶助として支給することを認めております。

 これらの費用につきましては、それぞれ上限額が設けられておりまして、本人の需要に応じまして、その金額の範囲内において支給されるものでございますけれども、全額が公費によって賄われている生活保護費の性質からすれば、質を損なわないものであれば、より安価で適切な給付が望ましいと考えているところでございます。

 一時扶助の支給に当たりまして、良心的な事業者を選定してサービスを提供する仕組みとすべきとの議員の御提案でございますけれども、支給までの時間的な制約さらには地方自治体の事務負担など、考慮すべき点はあると考えておりますけれども、現場を担う地方自治体から意見を聞くなどいたしまして、一時扶助がより適切に支給されるような方策について何ができるか考えていきたいというふうに思っております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がないので、この点についてはまた次に突っ込んで質問させていただきたいと思います。

 次に、住宅扶助、生活扶助費について質問させていただきます。

 二〇〇九年度の大阪市における被生活保護世帯数は十万二千四百八十三世帯であり、四百四十三億八千七十四万八千円が住宅扶助費として支給されました。一世帯当たり年間約四十三万三千五十五円であり、一カ月当たり三万六千八十八円となります。この金額は、不動産業者に問い合わせたところ、ワンルームマンションの相場は三万五千円から四万円プラス管理費だと回答があったので、妥当な金額と言えそうであります。

 しかしながら、大阪市西成区の個人住宅や共同住宅に住みながら生活保護を受給している六十歳以上の被生活保護者の千二百四十五人のうち、二%が三畳未満の住宅に住み、二三%が三から四・五畳の住宅に住み、一三%は四・五畳から六畳未満の住宅に住んでいました。また、トイレを共用している住宅が四〇%、風呂のない住宅が五〇%を超え、三畳未満の住宅はトイレ、風呂、キッチンが共同となっていました。この結果として、約四〇%の被生活保護世帯は六畳未満の住宅に住んでいることになり、これらの住宅においては相場以上の金額を請求されている可能性がありました。

 次に、二〇〇九年度の大阪市における生活扶助費として支給された金額は九百二十億九千九百九万九千円であります。六十歳から六十九歳の単身者であれば、一カ月当たり七万九千五百三十円が支給されています。

 そこで、住宅扶助費、生活扶助費に関して、生活保護ビジネスを展開する業者と良心的な業者を比較すると、生活保護ビジネスを展開する業者は、住宅費、生活費として、被生活保護者一人当たり、一カ月約十万円を一括して請求します。年間であれば約百二十万円となります。一方、良心的な業者は、被生活保護者一人当たり、家賃一カ月として四万二千円、管理費、光熱費、水道代として約一万円、食費として、五人以上の被生活保護者が食事の提供を必要とする場合は一万八千六百円を請求されます。年間であれば合計八十三万九千円となり、生活保護ビジネスを展開する業者と良心的な業者の差額を比較すると、一人当たり年間三十六万一千円になり、百人当たりであれば年間三千六百万円にもなります。

 今申し上げたとおり、住宅扶助、生活扶助の支給水準と実際に生活保護サービスが提供できる費用にはギャップが大きいと指摘できます。このギャップが大きいからこそ、住宅扶助、生活扶助に便乗する生活保護ビジネスが成立すると考えられます。

 現在、行政は被生活保護者に対して直接給付を行っています。もし、住宅扶助と生活扶助をあわせて、行政が良心的な業者を通じて生活保護サービスを提供する仕組みに転換すると、現在の生活保護水準を大きく変更せずに、住宅扶助、生活扶助費が三分の二程度になる可能性を示唆しています。この場合、生活保護者からすれば、先ほどと一緒で、支給水準が切り下げられたとは言えません。サービス提供に必要なだけの生活保護費が行政から支給されるようにすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 ただいま議員御指摘になられました、良質な事業者を通じまして月々の住宅扶助費や生活扶助費の現物支給を実施することにつきましては、受給者本人の自己決定を制限することにならないか、さらには実務において過大な負担とならないかなどの課題がありますことから、慎重な検討が必要ではないかと考えております。

 一方、無料低額宿泊所などにおきまして、生活保護受給者などを狭い部屋に住まわせ、提供されるサービス内容に合わない高額な利用料を徴収する、いわゆる貧困ビジネスの存在が指摘されておりまして、その対策は急務でございます。

 このため、昨年の通常国会で成立いたしました改正社会福祉法におきまして、無料低額宿泊事業につきましては、新たに事前届出制の導入、さらに法定の最低基準及び当該基準に違反した場合の改善命令の創設をし、規制の強化を図ることとしたところでございます。これは来年の四月一日施行でございます。

 さらに、住宅扶助につきましては、その支給額が住宅の質に見合ったものになるよう、二〇一五年の七月一日から、床面積が一定以下の場合につきましては、その床面積に応じて上限額を減額する措置を講じているところでございます。

 まずは、こうした取組によりまして良質な事業者による必要な支援を確保していきたいと考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 まだまだ突っ込みたいところはたくさんあるんですけれども、時間が参りましたので、最後に大臣にお伺いします。

 生活保護制度は、生活保護を受けなければ生きていけない者は、必ず守らないといけないと私も考えております。一方で、貧困ビジネス等もあるのが現状であります。これから私も厚生労働省と一緒になって、根本大臣の御指導のもと、改善すべきところは改善していかなければならないと思っていますけれども、根本大臣のお考えをお聞かせください。

根本国務大臣 生活保護制度は、最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットであります。一方で、制度への国民の信頼を確保するためにも、公正な運用が行われること、これが重要だと認識しています。

 これまでも、生活保護制度の適正化を図るため、例えば、平成三十年法改正における後発医薬品の使用の原則化、貧困ビジネス対策としての、今局長から答弁しましたけれども、無料低額宿泊所の規制強化などを行うほか、地方自治体に対しても全国会議の場において制度の適正な運用を促しています。

 支援が必要な方には確実な保護が行われることを十分に留意しながら、生活保護制度の適正な実施に向けて、現場の実態を十分に踏まえつつ、今後とも必要な対策について不断の検討を進めてまいります。

谷川(と)委員 ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 質問を終わります。

冨岡委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 久しぶりに厚生労働委員会で質問をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 私からは、就職氷河期世代への対策についてお伺いをしたいというふうに思います。

 と申しますのも、私自身も氷河期世代だということもございますけれども、公明党としても、青年委員会などを中心に、今まで氷河期世代の、不安定な就労の方が多い、あるいは引きこもりの方が多い、こういう対策を常々お願いしてきたところでございますし、こうした若者の就労支援という対策はかなり充実をしてきたというふうには思っております。わかものハローワークでございますとか若年者雇用促進法でございますとか、いろいろな対策を政府にも講じていただいてまいりました。

 しかし、他方で、社会参加あるいは安定就労、こういうものになかなか結びつかない方々がいらっしゃるというのも現実でありまして、また、こうした方も三十代そして四十代、こういう年齢に差しかかってきているということで、今回、公明党といたしまして、「就職氷河期世代」支援検討委員会、こういうものも設置をいたしました。私も取りまとめの責任者になりまして、こうした支援の現場のさまざまな視察やヒアリング等々を行わせていただき、厚生労働省にも提言をさせていただきました。

 こうしたことに沿いましてきょうは質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 大臣に、まず冒頭、基本的な大臣の御認識ということで、ちょっと何点かお伺いをしたいというふうに思います。

 今回、私どもも、就職氷河期世代への対策というものをいろいろ検討していったときに、日本の労働市場あるいは労働慣行、こういうものが、一つは新卒に就職や採用の機会というものが偏っているというふうな現実もありまして、社会人のスタートでつまずくと再び活躍の機会を得ることが残念ながらなかなか難しい状況にあるのではないか、こういう構造的な課題というものが横たわっているのではないかという認識を強く持ちました。ですので、こうした時期にたまたま景気が悪いという状況になりますと、多くの優秀な人材も埋もれていってしまう、これは我が国にとっても大変にゆゆしき課題であるというふうに思います。

 ですので、まず冒頭、大臣にお伺いをしたいのが、一体この問題の根底に横たわるものは何なのか。やはり、支援を講じるに当たって、社会の構造的な課題も含めてしっかりと手を入れていかないと。より具体的に言いますと、支援を受ける方にどういう支援をするかというのももちろん大事でありますけれども、それを受け入れる企業の側であったりあるいは社会の側であったり、こういう側も主体的に変わらないと、取り組まないと、これは全体的にやらないと解決をしない課題なのではないか、こういう認識を持っております。

 これについて、大臣の御認識、基本的にはどのようなものをお考えかというのを冒頭お伺いしたいというふうに思います。

根本国務大臣 幾つか課題があると思いますが、委員御指摘のとおり、一つは、いわゆる正社員としての採用の機会が新卒者の方々に偏っている我が国の雇用慣行、このもとですと、経済情勢が厳しい時期に学校を卒業して、そして就職活動につまずいた方々、これは職業人としての活躍の場が得にくくなっております。就職氷河期世代はまさにこういう状況だと思います。

 このような状況を改善して、働く人一人一人が持てる力を十分に発揮できるように、新卒採用志向の強い大企業における中途採用、経験者採用の拡大や、評価、報酬制度の見直しが課題だと思います。このため、大企業に中途採用比率の情報公開を求めるとともに、総理の出席のもとで私が事務局として開催している中途採用・経験者採用協議会から得られた知見を活用して企業への働きかけを強化して、ハローワークにおいて求職者の状況に応じたマッチング支援を充実するなどといった取組を進めて、再チャレンジが可能な社会をつくり上げていきたいと思います。

中野委員 大臣の方からも、企業側の取組、働きかけ、こういう認識について答弁をいただいたというふうに思います。

 もう一つ思いますのが、氷河期世代支援というときに、安定就労に向けた取組というのはもちろんございます。しかし、支援の現場でのいろいろな御意見ということで、例えば長期間無業であったりあるいは引きこもっておられるような方について、一足飛びに、やはりいきなり正社員で安定就労というわけにもなかなかいかないのもこれまた現実だということも現場からお伺いをしております。

 ですので、今回、特に総理の方から、三年間で集中的に対策を講じよう、こういうことでお話もいただいておりますけれども、就職氷河期世代への支援策ということに関しては、単に、三年間で、では安定就労をどうするのかという目標を設定する、こういうことだけではなく、長期的なかかわりを視野に入れながら、もちろんこうした方には、伴走的な支援というか、まずは社会参画もしっかりしていただく、そういうところから自立のプロセス全体を評価しないといけないと思います。

 私は、やはり伴走型で長期的な支援というものがどうしても不可欠なのではないか、就労した後の定着なども考えると、なおのこと長期的なかかわりというのが大事なのではないか、こういう認識を持っておりますけれども、こうした点につきまして大臣はどのようなお考えかということをお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 私も、委員が御指摘の点も非常に大事だと思います。

 就職期に厳しい経済状況の影響を受けた就職氷河期世代の方々は、さまざまな状況の方がおられるので、やはり、ある程度それぞれの現状を分析して、少し類型化して、それに対して適切な支援策を講じる、これが必要だろうと思います。

 委員御指摘のように、引きこもり状態にある方や長期無業者の方については、就職や社会参加に向けて極めて個別的な多様な課題を抱えています。それぞれの状況に応じて長期的なかかわりを持ちながら柔軟な支援が必要、それは私は委員と全く意見が同じであります。

 私自身も、郡山の引きこもりやニートの方の就労、自立支援を行うNPO、これを十年ぐらいやっている方なんですが、話を聞いていて、かつて行ったこともあるんですが、改めて、実際に支援を受けて社会復帰された方の話も聞いてまいりました。

 伴走型支援というお話がありましたように、成果を早く求めるだけではなくて、やはり、就労に至る前の準備期間として、まず多様な社会参加が可能となるように、丁寧に時間をかけた支援に取り組んでいくことが重要であると実感をしております。

 このような観点を踏まえて、先般取りまとめた厚生労働省就職氷河期世代活躍支援プランにおいては、社会参加実現に向けたプログラムとして、支援が必要な全ての方に支援を届ける体制の強化、地域に生きる一人一人が尊重され、多様な経路で社会とつながって参画することでその生きる力や可能性を最大限に発揮できる地域共生社会の実現を盛り込んでおります。

 このような取組を通じて、政府としては、この夏までに取りまとめることとしている三年間の集中プログラムによって重点的な支援をしつつも、長期的なかかわりが必要な方に対しては、その後の状況も見据えながら、じっくりと腰を落ちつけて取り組んでいきたいと思います。

 それから、御党の提案も私は直接いただきまして、そこは我々、共有する立場にいると思っております。

中野委員 ありがとうございます。大臣の方からもお話を、現場も見に行っていただいたということで感謝申し上げます。

 先ほど大臣からも触れていただきましたとおり、我々公明党としてもプランを提言させていただきました。

 主に先ほど私がお話をさせていただいた二点の認識に基づきまして、一つは、こうした社会構造を変えるということが必要だという認識から、やはり官民協働の取組をしていくことが必要だろう、こういう大きな問題提起もございます。あるいは、それぞれの就職氷河期世代の方々の状況に応じた安定就労に向けての支援であるとか、社会参画に向けての支援であるとか、いろいろな段階というか、個々の方の状況に応じたそうした支援というものをしっかりやっていっていただきたい、こういうことも提言をさせていただいたわけでございます。

 大臣の方からももう大分中身も答えていただきましたけれども、こうした公明党の提言を受けまして、厚労省全体として、今後どのような形で対策をするのかということをもう少し大臣の方から述べていただければと思いますので、よろしくお願いします。

根本国務大臣 御党がまとめた令和時代の人財プラン、これは非常に現状もしっかり的確に分析されて、そして必要な施策を盛り込んでいただいていると思います。

 就職期に厳しい経済状況の影響を受けた就職氷河期世代への支援、これは、その世代の方々が高齢期を迎える前に、今取り組むべき待ったなしの課題だと認識しております。御党の人財プランも、精力的にヒアリングや職場視察等を行っていただいて、就労以外の社会参加、地域とのつながりなどの自立へのプロセスを含めた重要な課題について御提言をいただきました。

 このような御提言や、私を本部長とする、二〇四〇年を展望した社会保障・働き方改革本部での丁寧な議論を踏まえて、先日、五月二十九日に取りまとめた厚生労働省就職氷河期世代活躍支援プランでは、行政機関や地域の経済団体などの関係者によるプラットフォームを形成、活用するとともに、就職、正社員化の実現だけではなくて、地域とのつながりづくり、あるいは社会参加、対象者の方々の事情に応じた施策を丁寧に設計しております。

 今般取りまとめたプランに基づいて、産業界、関係府省と一体となって、就職氷河期世代の方への支援にともに取り組んでいきたいと思います。

中野委員 ありがとうございます。大臣からも大変に力強い御答弁をいただきました。

 やはり、非常に重要な問題でございますし、その施策の中心を担うところが私は厚生労働省だというふうに思っておりますので、しっかりと対策、検討また具体化をしていただければということで、改めてお願いを申し上げます。

 少し個別の中身についても政府参考人の方に質問させていただきたいというふうに思います。

 一つは、能力開発メニューの充実というところであります。

 私の視察ですと、例えば大阪の豊中などで視察して状況を伺ったんですけれども、確かに今、不安定就労の方あるいは就労できていない方に対して、厚労省が能力開発の支援をするということを行っていただいております。しかし、それぞれの状況に応じたメニューになっているかというと、なかなかその状況に合わない場合もあるというふうなこともお伺いをいたしました。

 例えば、支援のメニューが比較的長期である場合、働きながら、あるいは働かずに訓練を受けると、ではその間の生活をどうするんだという問題もやはり出てまいりますので、できるだけ、もっと短い期間の方がいいですとか、働きながらでも非常に受けやすいものの方がいいですとか、あるいは資格を取ってすぐ採用に直結をするようなものであった方がいいとか、いろいろな形でお声をいただいております。

 こうした一人一人の状況、課題に応じた能力開発メニューの充実というものをやはり具体化する必要があると思いますけれども、これについて答弁いただければと思います。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 就職氷河期世代の方々の中には、不安定就労を繰り返されたことによりまして能力開発の機会が十分得られなかった方や、企業の方に評価され得る職務経験を積めていないといった方々もおられるというふうに考えております。そのためにも、職業能力開発のメニューの充実というのは大変重要だというふうに考えておりまして、それも、その方々一人一人の状況に応じたメニューを用意していきたいというふうに考えております。

 御党の御提言の中でも、就職即効性の高い資格、スキルを習得できる短期の訓練コースでありますとか、求職者支援制度について、一人親などでも在職中でも受講しやすくなるように要件を見直すことといった御提言をいただいておりまして、こうした重要な視点の御指摘も踏まえまして、先日お示しをいたしました厚生労働省就職氷河期世代活躍支援プランにおきましては、その政策メニューを盛り込んでおります。

 一つは、短期間で取得でき、安定就労につながる資格等の習得を支援する短期資格等習得コースの創設、また、求職者支援訓練におきましては、特に短時間の労働者の方などが働きながらでも受講できるような、そうした柔軟なコース設定が可能となりますように、一日当たりの訓練時間の下限を緩和するといったようなことも盛り込んでおります。

 こうしたものに基づきまして、産業界、関係府省とも一体となりまして、一人一人の状況、課題に応じたメニューを充実させていきたいというふうに考えております。

中野委員 続きまして、支援の体制というか受皿、こうしたところについてもお伺いをさせていただきます。

 今ですと、例えば地域若者サポートステーション、こういうところで引きこもりの若い世代の方にアウトリーチの支援というものをやっておったりもするんですけれども、やはり個々の事例をお伺いすると、非常に複合的な課題を抱えられている場合も多い。

 例えば、本人が四十代で、親の世代も大変に高齢化をしている、世帯全体としての支援が必要な場合。場合によっては、例えば本人が引きこもりで、お子さんがいらっしゃるようなケースももちろんある。そうすると、やはり子供に対するアプローチというものももちろん必要である。こういう複合的な課題というものを考えると、やはりアウトリーチ型の支援というものをしっかりやっていかないと、単に行政に窓口があって、ここに来ていただければ支援しますというふうな縦割りの体制では、とてもではないけれどもこういうことは解決しないということを実感しております。

 他方で、今の地域若者サポートステーションというのは、ある程度若年のところの就労の支援ということをやるところでございまして、世帯全体を支援するというと、市町村の方の、例えば生活困窮者自立支援であるとか、そういったほかの窓口があるわけでございます。

 やはり、アウトリーチ型のものをやる、そしてワンストップで支援できる体制を組む、こういうことを考えると、今いろいろな形の支援の仕組みというものがありますけれども、こうしたものをできるだけ一体的に支援をして、ワンストップで支援をできる体制の強化というものが必要だ、こういうふうに思って提言もさせていただいております。今後の取組についてお伺いをしたいというふうに思います。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 就職氷河期世代の無業者の方々が抱えておられる問題は、御指摘がございましたように、生活面も含め、また世帯全体としても複合的な課題があるというふうに考えております。

 こうした方々の職業的自立を進める上で、一つは、これまで積み重ねてまいりました地域若者サポートステーション事業、ここでの専門的な知見を活用していくということとともに、やはり福祉施策と一体的に支援を提供できるような体制をつくっていく、それがポイントだというふうに考えております。

 そこで、先般まとめましたプランにおきましても、長期にわたり無業の状態にある方に向けたサポステのプログラムといたしまして、一つは、支援の入り口の段階で、生活困窮者の自立支援などの福祉施設とのワンストップ型の窓口を設けるといったこと、また、それに加えまして、更にその福祉施設にアウトリーチをして出張相談を行うといったような形のものも含めまして、入り口の段階で、対象者をきちんと把握して働きかけをしていく、そうした体制を整備したいということが一つ。また、出口といたしましては、ハローワークの就職支援プログラムですとか訓練のプログラム、ここにきちんとつなげていけるような継続的な支援を行っていくという方向を示させていただいているところでございます。

 特に、今年度からサポステと困窮者支援の窓口のワンストップ化はスタートしておりますので、そうした成果も十分に検証しながら、更に実効あるプログラムを整備してまいりたいというふうに考えております。

中野委員 今答弁にありましたとおり、サポステと生活困窮者自立支援事業の一体実施、今試験的というか、一部の地域で既に始めていただいておりますけれども、私はこれは非常に大事な取組だと思っておりまして、全国的にぜひ展開をしていっていただきたいというふうに思いますし、こうした支援を求める方々からは、やはり、どこに相談をすればいいのかがわからない、こういうお声も大変に多いかというふうに思います。

 とかく行政というのはすぐ縦割りになってしまって、こうした取組で、その問題であればあっちの窓口に行った方がいいですとか、いろいろな形でたらい回しになるようなケースもあるんですけれども、こうした課題を抱えた方に、そもそも、いろいろな窓口にそれぞれ支援を求めに行ってくれと言っても、なかなか現実的に難しいということもございます。

 この支援体制の強化というものが一つの大きな鍵になってまいりますし、また、そうした支援の取組についても、どういう形で広報をしていくか。引きこもっている方にそうした情報というものがどういう形でいけば届いていくのか、こういうことも、SNSとかも含めて、広報のあり方というのはいろいろな工夫というものが可能であるというふうに思います。どこに行けば支援というものをやっているのか、そういう情報がどうやったら行き届くのかということも含めて、さまざまぜひ工夫をしていただければということを改めてお願い申し上げます。

 もう少し具体の中身の議論をさせていただきたいんですけれども、先ほどの例えば長期の無業者の方あるいは引きこもりの方、こういう方についてどういう形で自立をしていただくか、就労していただくか、こういう現場を見てまいりました。自治体でやるケースもございますし、あるいは若者のサポステのようなところでやる場合もございます。

 今、自治体の生活困窮者自立支援事業の中では、就労準備支援ということで、やはり直ちに就労に結びつかないだろうということで、就労の準備、これの前段階の支援もしっかりやらないといけない、こういう取組がございます。

 また、私は今回さまざまな支援の現場も見せていただいたんですけれども、やはり、就労のかなり準備の段階というか、本当に、居場所づくりみたいなものも含めてなんですけれども、例えば社会とのつながりをどうやってつくっていくのか、こういう支援も非常に大事なんだということを痛感いたしました。

 例えば、引きこもっている当事者の方が集まる、女性の方だけで集まるような会を開いている、こういう取組もお伺いをしました。こういうところに参加をするだけでも、本当に外に出るのも何年ぶりだ、こういう方が参加をする、居場所ができるというか、同じような経験の方がいっぱいいらっしゃるんだということで、そうした中で、自分だけじゃないんだ、じゃ、アルバイトを自分は始めてみようかとか、どんどん自立につながっていった、こういう事例も伺いました。また、就労以前のそういう方が社会とつながっていける居場所というものを準備していく、最初はやはりそこに出ていくところからスタートをしていく、その中でどんどん自立をしていく、こういうことも事例として伺ってまいりました。

 やはり、就労準備支援というものの中に、こうした居場所のような、もう少し社会とのつながりといったものも支援をしていく必要があるのではないかと感じましたし、そうしますと、就労準備支援というのは今、一年だけでございますけれども、より長期的な取組を行っていったり、こうした制度についていろいろな支援を広げていった方がいいんじゃないか、こういうふうに感じたところでございます。

 就労準備支援事業の今後につきまして答弁をいただきたいというふうに思います。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘になりました生活困窮者自立支援法に基づきます就労準備支援事業でございますけれども、生活リズムが崩れているなど就労に向け準備が必要な者を対象といたしまして、一年間を基本とした集中的な支援を実施するものでございます。

 課題といたしましては、全国的な実施率が約五割にとどまっているといったようなこと、また、引きこもり状態にある方など、地域社会との関係性が希薄であり、比較的長期にわたる支援が求められる方の特性を踏まえた支援を行う必要があるなどがあるものと考えておりまして、事業の全国的な普及を進めるとともに、地域社会との関係性が希薄な方などに対しましては、まずは地域における居場所づくりをしつつ、社会参加活動を通じまして段階的な支援を行うことが必要と認識しております。

 このため、先ほど大臣から言及のありました就職氷河期世代活躍支援プランに基づきまして、就労準備支援事業につきましては、まずは、事業の実施促進の観点から、多様な形態での広域実施のさらなる推進を図って、全対象自治体での実施を進めていきたいと考えております。また、事業の機能強化の観点から、御指摘の取組事例なども参考にしながら、地域社会との関係性が希薄な方などを効果的に支援するために、地域におきます居場所づくりや社会参加活動の推進を就労準備支援事業の手引きなどに事業の機能として明確化していきたいと考えております。

 また、そうした方の支援が一年を超える長期にわたることが見込まれることも踏まえまして、継続的な支援が円滑に行えるよう、必要な方策についても検討していきたいと考えております。

中野委員 最後に、政府全体の取りまとめを行っていただきます内閣府の方にも質問させていただきたいというふうに思います。

 厚労省、根本大臣の方にも先ほどお伺いをしましたとおり、やはり基本的な認識は政府全体としてぜひ共有をしていただきたい。特に、こうした就職氷河期の支援は社会全体の構造的な問題という要因があることはやはり強く認識をしていただきたいですし、その結果として、企業あるいはそうした受入れ側の意識を変え、そして主体的にこうした方々も取り組んで変わっていただく、社会全体で解決をしていかないといけない、こういう認識もぜひお持ちをいただきたいというふうに思います。

 そして、先ほど来御答弁にもさまざまありましたとおり、三年間の集中という話もございますけれども、しっかり長期的な取組というのも不可欠なんだ、こういうこともぜひ御認識をいただきたいというふうに思いますし、そしてその上で、やはり政府全体として就職氷河期世代の対策のプランをぜひ取りまとめていっていただきたい、こういうことをお願いしたいというふうに思います。

 内閣府としての認識、そして今後の取組について答弁をいただきたいというふうに思います。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、まずは、年齢が働くことの制約とならないよう、これまでの考え方や慣行、諸制度を見直し、働き方を自由に選べる中で、誰もが幾つになっても活躍できる社会を構築する必要があると考えます。

 その上で、いわゆる就職氷河期世代が抱える固有の問題、すなわち、希望する就業とのギャップ、社会との距離感、実社会での経験不足、年齢の上昇等を踏まえつつ、個々の状況に応じた支援、状況によっては息の長い継続的な伴走支援を行い、この世代の方々の活躍の場を更に広げるべく、正規雇用化など現状よりもよい処遇、そもそも働くことや社会参加などを促してまいりたいと考えております。

 その際には、既に就職氷河期世代活躍支援プランを取りまとめ、公表された厚生労働省にも加えて、教育訓練の場やまた働く場となり得る産業分野を所管する省庁も含め、政府を挙げて取り組むとともに、民間のノウハウを最大限活用しつつ、NPOや企業、経済団体などとも連携し、社会全体が一丸となって取り組んでいく必要があると考えます。

 以上のような認識のもと、内閣府としては、厚生労働省のプランも踏まえながら、今月中に取りまとめますいわゆる骨太方針二〇一九の中で、政府全体として就職氷河期世代を支援するプログラムを取りまとめるとともに、関係省庁や官民で連携、協働する仕組みをうまく工夫しながら、プログラムの着実な実行にも尽力してまいります。

中野委員 骨太方針で全体取りまとめということでございますので、しっかり与党としてもまた議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、吉田統彦君。

吉田委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 二十分と時間が短いので、大臣、早速いろいろディスカッションしてまいりたいと思います。

 まず、遺伝的なエビデンスが確立している疾患等に対する予防的な臓器切除についてお伺いします。

 時代の流れもありまして、本件のような臓器の予防的切除の議論は今後絶対避けて通れない、そのように私は考えています。

 乳がん及び卵巣がんの五%から一〇%というのは、遺伝性乳がん卵巣がん症候群、以下、HBOCと略称させていただきますが、と呼ばれるBRCA1、2遺伝子における変異に起因するものが考えられています。

 HBOCは、このBRCA1又はBRCA2遺伝子の生殖細胞系列変異が原因で、若い年齢、しばしば五十歳以前で乳がんを発症する。常染色体優性遺伝なんですよ、大臣。トリプルネガティブ、エストロゲン、プロゲステロン、HER2受容体陰性の乳がんを発症しやすく、また卵巣がんにおいても、より予後の悪いとされる漿液性のがんが多くを占めます。腹膜がんを発症することもあります。

 さらに、リスクとしては、大臣、乳がんは四〇%から八五%に発症する。先ほど述べたように、若年発症の傾向がある。

 大臣、ここはよくお話を聞いて御答弁いただきたいと思います。対側の原発性乳がん、逆側の発症のリスクは四〇から六〇%。また、同じ側の新たな乳がんのリスクも増加します。

 加えて、大臣、ここもちょっとポイントなんですけれども、男性乳がんのリスクも増加するんです。男性の乳がんは予後が悪いですからね。男性では、前立腺がんも五倍から七倍のオッズ比でリスクが上がりますし、膵臓がんも約三倍と増加します。

 一般集団と比較して、この変異というのは、乳がんを発症するリスクは六から十二倍、卵巣がんを発症するリスクは八から六十倍というデータも多々あるわけであります。

 男性のリスクも含めて、根本大臣は、本症候群のことを御存じでしょうか。よく御存じか、そうでないか、ちょっとまずお答えいただけますか。

根本国務大臣 よく御存じかどうかというところでは、よくかどうかは別として、まあ、この話は私も知っております。

吉田委員 ありがとうございました。多分、しっかりいろいろ資料とか目を通してくださったということですね。

 まずは、私が大臣にお伺いしたいのは、このHBOCを契機として、本症候群だけでなく、エビデンスが確立した他の臓器も含めた予防切除の保険収載等の検討を議論の俎上にのせるべきだと考えますが、その点は厚生労働大臣としていかがお考えになるでしょうか。これは、本症候群ではなくて、一般論として、エビデンスの確立した他の臓器も含めた予防切除の保険収載等という意味です。

根本国務大臣 治療を必要としている方に医療技術の進歩を適切に取り入れてお届けする、これは大変重要だと思います。

 今お話のあった新規の検査や医療技術の保険適用、これについては、治療と疾病の関係が明らかで、治療の有効性や安全性などが確立しているものについて、普及性や社会的妥当性なども考慮して中医協において議論した上で判断しております。

 御指摘の遺伝子変異を有して、乳がんや卵巣がんになりやすい方に対する予防的手術への保険適用については、がんの原因となる疾病に対する治療と位置づけられるかという課題や、あるいは、他の方法で早期発見の可能性があるかどうかという論点などがあります。これは、今委員もお話がありましたが、エビデンスを確認しながら、関係者の意見を聞きながら慎重に検討を続ける必要があると思います。

 一方で、がんを発症された方の生存率を改善させる治療のあり方という観点からは、同じ遺伝子に起因する他の部位に対する治療を医療保険においてどのように取り扱うかという点については、学会等の要望に応じて、疾病と療養の関連性やエビデンスの状況などを踏まえて、中医協において検討していきたいと思っております。

吉田委員 大臣、私が聞きたかったのは一般論で、私が繰り返し述べたように、一般論としての部分がまず大事なんですよ。やはり、その議論をしていく前提で、一部、さっきもう、先の私の問いに対しても答えをいただいてしまいましたが、一般論として、厚生労働省の考え方として、エビデンスが確立して、患者の生命と健康を守るために有益だと考えるものに関しては、中医協等の議論を経て、もちろん学会等の意見を取り入れて、例外なくちゃんと検討を、厚生労働省として、一般論としてですよ、全ての悪性腫瘍と言ってもいい、そういったもの、遺伝的エビデンスのあるものに対してはそうするということですね、大臣。そうか、そうでないかだけ、一言だけ下さい。

根本国務大臣 私、先ほど、新規の検査や医療技術の保険適用、そうですということであります。もう申し上げましたよね。

吉田委員 大臣は先ほどちょっと先の問いに対しても答えをいただいたんですが、それは結構なんです。

 つまり、まず、大臣、例えば日本乳癌学会のホームページなどによると、入院十四日間で乳房の切除術、腋窩リンパ節郭清などの手術をすると総額は大体百万円ぐらいです。実際は三割負担の三十万ですね。抗がん剤治療の代表というと、例えばFEC療法。三週ごとに六回、身長百六十センチ、体重五十キログラムぐらいの場合は約五十三万で、三割負担の場合だと約十六万ぐらい、こういった形です。化学療法は抗がん剤をいろいろ組み合わせることもありますので、実際の費用はもっと上がることもあるわけであります。

 がんに罹患してからの治療というのは、手術に加えて抗がん剤治療をする必要があったり、また手術不能で抗がん剤治療だけを続けていくなど、やはり経済的な負担はいろいろ、大臣、あるわけであります。

 乳がんというのは、比較的、今の技術、委員長も外科医でいらっしゃいますけれども、予後はよくなりましたね。ただ、しかしながら、やはりステージ4だと五年生存率は三七・八%ぐらいですね、五年生存率、ステージ4の場合。やはり、発見がおくれると高い死亡率となるのは間違いない。

 また、がんの手術自体も、大臣、腫瘍というのは増殖性の変化をしていくわけですよ。そうすると、未熟な血管ができてくる。いわゆる癒着を含めて、他の臓器へ進展していくときに、がんというのは未熟な血管をどんどんつくって、そういうものが豊富になると、当然、切除のリスクは高くなるんです、大臣。外科的手術というのは、出血を制御しないと患者さんは死んでしまいますので、出血を制御することが課題の一つです、外科手術は全て。つまり、がんになってからの手術というのは、それだけやはりどんどん難しくなっていくわけですよ。それは、がんが進展していけばしていくほどそうである。

 それに比べて、予防的切除の場合は、血管の処理とかそういうリスクも当然、比較的低くなります。外科的手法に関しても、不測の事態も起こりにくいということがまずあります。手術時間も短い。当然、本人への負担も軽く済みますね。こういった外科的手術、似たような手術をするにせよ、安全性が高い手術が提供できる可能性がある。

 また、がん治療の場合は、大臣、大事なことですが、根治術が成功すれば社会復帰をすることも可能ですよね。しかし、根治が可能で、先ほど乳がんの例でお示ししたとおり、抗がん剤の治療が続くとすると、経済的負担も当然重いんですが、なかなか社会復帰できないということが起こってくると、社会的な利益の喪失、家族の負担といったさまざまな不利益をこうむってくる、そういったこともあります。

 大臣も調べられたかもしれませんけれども、アメリカのアンジェリーナ・ジョリーという女優さんが、二〇一三年の五月にニューヨーク・タイムズに寄稿しています。乳がん予防のための両乳腺を切除する手術を受けたとおっしゃっています。これは、乳がんになる可能性が八七%と診断された、アンジェリーナ・ジョリーさんのお母上も卵巣がんで五十六歳で亡くなっていたので決断をしたと。

 まず、卵巣がんというのは、大臣、非常に静かに進展していくがんでもありまして、卵巣そのものも、挙児、子供を産むことを希望しなくなってからは、子宮とともに人体における必要性というのは相対的に低下をしていきます。その反面で、悪性腫瘍が発生した場合は大きなリスクと負担を負う臓器であるとも言うことができ、そういった意味でも、予防切除の必要性は大きいと考えられるわけであります。

 さっき申し上げたように、根治できずに抗がん剤の治療を続けると、社会的コストの問題、家族の負担の問題の重大さに加えてやはりこういった医療経済的な問題からも、予防的切除というのは考慮していかなければいけないと思います。だから、まさに我が国もそういった時代に来たんだと思います。

 もう一度、重なった答弁はなるべく少なくしていただきたいですが、医学や科学技術の進歩は、それまで不可能だった予見、予防を可能にしましたね、大臣。それに対して、例えば保険給付や国民の哲学、倫理が必ずしも追いついていないかもしれないわけであります。

 しかしながら、国民のためには、病気になる前、病気が重くなる前に対応することが、医療費の低減もさることながら、国民の幸せ、幸福のために必要なのではないかと考えます。そして、それに制度を対応していく、そういったことが政治や行政の役割ではないかと、大臣、考えるわけであります。

 今、ゲノム、ジェノムの時代になりましたね。全ゲノムの時代に突入しました。そういった今こそ、いつか誰かが決断しなくてはならない、そういったことなんだと思います。

 まずは、もう一度、大臣、一部重なる答弁をいただくかもしれませんが、本症候群、HBOCに対する予防切除の保険給付、さらには国民への普及啓発の決断、こういったものを大臣の御決意として御答弁をいただけませんでしょうか。

根本国務大臣 御指摘のHBOC、遺伝子変異を有して、乳がんや卵巣がんになりやすい方に対する予防的手術、つまり切除したらどうか、こういうことで、保険適用したらどうかというお話だと思います。

 これについては、先ほど申し上げたことと重なりますが、がんの原因となる疾病に対する治療と位置づけられるかという課題や、あるいは他の方法で早期発見の可能性があるかどうかという論点などがありますので、これはエビデンスが大事だと思いますが、エビデンスを確認しながら、関係者の意見を聞きながら慎重に検討を続ける必要があると思います。

 また、じゃ、ここは……(吉田委員「ぜひ、どうぞ御答弁ください」と呼ぶ)はい。

 一方で、がんを発症された方の生存率を改善させる治療のあり方という観点から、同じ遺伝子に起因する他の部位に対する治療を医療保険においてどのように取り扱うかという点については、学会などの要望に応じて、疾病と療養の関連性やエビデンスの状況などを踏まえて、中医協において検討していきたいと思います。

吉田委員 大臣、ありがとうございます。

 私の知る限り、大臣が臓器の予防切除、保険給付、その前提となる中医協での検討について国会の場で御答弁いただいたのは初めてではないかと思います。

 しっかりとした御答弁をいただきましたので、大臣、ぜひ具体的に進めていただきたいと思いますし、先ほど来、そのハードルとなる点も御答弁いただきましたね。こういったものはやはり与野党超えてぜひ一緒に取り組んでまいりたい、大臣、私もそのように思います。

 大臣、もう一度ちょっと聞かせていただきたいんですけれども、中医協の議論を非常に大事になさるということと、学会からの提言、要望が非常に重要である、そういったところを御説明いただいたんですが、その両方でしっかりとした議論がなされた場合というのは、念のための確認ですが、厚生労働省としては、その要望、中医協での非常に前向きな議論がなされた場合に関しては、保険適用をしっかり考えて速やかにしていくということでよろしいんですね。

根本国務大臣 一般論としては私が先ほど申し上げましたとおりでありますが、今回の要はHBOC、予防的臓器切除についての知見、これは現時点では十分に集まっていないと認識しておりまして、まずはHBOCについて研究に取り組んでいるところであります。

 ここはやはり、御指摘のHBOCということでいえば、更に研究を進めて、HBOCに関する予防的臓器切除の有用性などを検討していくことが必要だと認識をしております。

吉田委員 大臣、そうすると、そこはちょっと大事なところなんですけれども、まだ今の学会等や国際的な論文等、私も相当この質問のために読ませていただきましたが、これでは足りない、そういうことですか。ちょっとここは大事なところなので、ちゃんと答えてください。足りないのか、今のエビデンスは厚生労働省として十分だと考えているのか、これは大事なことですよ、お答えください。

根本国務大臣 BRCA変異保持者で卵管卵巣がん未発症者に対する卵管卵巣の予防的切除の実施、これは、卵巣がんや卵管がん等を減少させるだけではなくて、予後の改善が海外の研究から示されておりますが、日本でのデータは今後蓄積が必要であると思います。

 また、BRCA変異保持者で乳がん未発症者に対する両側乳房予防切除手術は、乳がん発症リスクを確実に減少いたしますが、これまでに予後の改善効果は示されておりません等々の課題がありますので、ここは更に研究を進めて、HBOCに関する予防的臓器切除の有用性等を検討していくことが必要であると認識をしております。

吉田委員 大臣、ちょっと今、大事な御答弁をいただいたんですけれども、それじゃ、日本人のデータがないとやらないということですか。日本人のデータを得るためには自費でどんどんやらせるしかなくなってしまいますけれども、そこは大事なポイントですよ。広く海外で公知であっても、日本人のジャパニーズポピュレーションのデータがないとこれはだめということですか。そのポイントだけ答えてください。イエスかノーか。

根本国務大臣 基本的には、日本人のデータが必要だと思いますし、日本でのデータは今後蓄積が必要だと思います。

吉田委員 蓄積と簡単に言いますけれども、これは自費で蓄積しなきゃいけないんですよ、大臣。みんな自費でやらせなきゃいけなくなりますし、ちょっとジェネティクスの専門家を入れた方がいいですよ、厚生労働省。私も、ジェネティクス、原因疾患遺伝子を発見していますけれども、ちょっとその御答弁ではアカデミアからいろいろ言われちゃうと僕は思いますけれどもね。ちょっと答弁がしっかり、安定していなかったと思います。

 いや、結構です。もう次に行きます。時間がないので、最後の問いです。

 予防切除だけじゃなくて、大臣、そこだけじゃなくて、ちょっと別のところも行きましょう。

 前述したように、根治できず、抗がん剤での治療を続けるとすると社会復帰が困難になりますし、また、本人、家族の負担が増大しますね。本当に、医療経済的な意味や、何としても本人の命、健康を守るために、早期発見も含めて、予防的切除という一つの使い方だけではなくて、いわゆる早期発見のためのこのHBOCの遺伝子検査についてお伺いします。

 御説明は時間がないのでちょっと割愛しますが、お手元に御準備したこの日本HBOCコンソーシアムによるデータ等を見ても、先ほど来申し上げたように、男性を含めたリスクを鑑みても、このHBOCを引き起こすBRCA1、2遺伝子のミューテーションの遺伝子検査の必要性啓発、そして保険適用、保険収載、そういったもの、こちらも同様に、これは結構高いんですよね、自費だと、そこに関しての保険収載もやはり考えるべきときに来たのかなと思いますので、そこについて、最後、大臣と厚生労働省の御見解を伺います。

樽見政府参考人 大臣からもいろいろ御答弁申し上げましたけれども、予防的臓器切除ということについての知見を更に集めて、有効性というものを検討していくことがまず必要だというふうに考えております。

 保険適用、まさに疾病で有効性、安全性が確立して、治療ということで確立しているものについては保険適用ということなんですけれども、遺伝子の異常があるということが病気というふうに言えるのかということ、それはその検査の方法という御指摘でございますけれども、ここはなかなか慎重な検討が必要なポイントだというふうに思っておりまして、まずは更に知見を集めるということだろうというふうに考えております。

吉田委員 もう時間が来たので終わりますが、大臣、予防切除に関する保険収載と検査の保険収載というのはまた違う事象ですから、これはちゃんと言っておいたんですけれども、本当は全部大臣に御答弁をと言っていたんですが、局長が手を挙げられたので答えていただきましたが、予防切除だけじゃなくて、その検査自体の有用性もやはりしっかりと着目をして、その必要性啓発、教育、さまざまなところで政府はよく御検討をいただければと思います。それを最後にお願いして、大臣、終わらせていただきます。

 委員長、ありがとうございました。皆様、ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 立憲民主党・無所属フォーラムの尾辻かな子です。

 一般質問を二十分頂戴しました。ありがとうございます。

 ちょっと短い時間ですので、答弁は簡潔にお願いをいたしたいというふうに思います。

 それでは、まず、毎月勤労統計のことについて大臣にお伺いをしたいと思います。

 厚生労働省は、五月二十四日に、毎月勤労統計の集計にミスがあって、この日に予定していた三月分の確報と二〇一八年度分確報の公表を延期して、三十一日に、訂正したものの発表がありました。

 これだけ集中審議をして毎月勤労統計の議論をやってきたのにまだこういう集計ミスがあるということで、本当に言葉もありません。大臣の見解をお聞きいたします。

根本国務大臣 毎月勤労統計の平成三十一年三月分結果確報及び平成三十年度分結果確報について、公表を延期するとともに数値を訂正する事態が生じたことはまことに遺憾であります。

 今回の事案は、平成三十一年一月に公表した平成二十四年以降分の再集計の作業の中で、平成三十年七月分の母集団労働者数の推計において、平成三十年六月分の雇用保険データを使用すべきところ、同年五月分の雇用保険データを使用していたために生じたものであります。

 毎月の集計作業においては、現在、雇用保険データを紙で打ち出しての確認やダブルチェックが徹底されており、今回のような事案が起こらないようにするための取組は既にされております。

 厚生労働省としては、点検事項、点検体制を再整理し、マニュアル化して、その実施については、管理職による確認を徹底することを含めて、再発防止を徹底していきたいと思います。

尾辻委員 本当にびっくりしているんです。まだこういうミスが起こるのかということなんです。人間ですからミスはありますけれども、チェックをやはりちゃんとしないといけないと思います、基幹統計ですから。

 あと、公表の時期についても申し上げておきます。

 新聞報道等では、ミスは五月十六日に気がついたけれども、発表は二十四日なんですね。二十一日には、参議院の厚生労働委員会で毎月勤労統計の不正に関する集中審議が開かれていたんです。つまり、参議院の集中審議の後にこれが発表されている。でも、気づいたのはその前なんですね。

 この発表の時期についても、集中審議のところを外して、後に出したんじゃないかなと勘ぐってしまうところもあります。本当に、統計への信頼が更に揺らぐ事態になっていると思います。

 復元の課題もまだありますので、これはしっかり厚生労働委員会で集中審議をしていただくように求めておきたいと思います。

 それでは、次の話題に参ります。

 職場における女性に対するヒール、パンプスの着用について、これも大臣にお聞きをしたいと思います。

 一昨日、六月三日に、約一万八千八百通の署名とともに、職場のヒール、パンプス着用指示をやめてほしいという要望書が厚生労働省に提出をされています。

 これは、#KuToo運動といって、ローマ字なんですけれども、義務による着用は苦痛だと表明することがインターネット上なんかでも広がっております。

 ヒールやパンプスは、非常に足に負担がかかり、外反母趾、靴ずれなどを起こしますし、腰への負担もあります。

 労災の調査論文では、十八歳から二十六歳の女性の労災が多発しており、その原因は、ハイヒールの着用が原因と推察できると記載をされています。さらに、ハイヒールは、立位姿勢の保持機能が衰え、前方に倒れやすいということも論文では指摘をされています。つまり、転倒の危険性が高くなるということです。

 こういった指摘がある一方、就職活動や接客の職場などを主にして、パンプス、ハイヒールの着用が必須とされているようなところが多く見受けられます。

 職場の中でハイヒール、パンプスが必須で義務づけられていることについて、また、今回このような要望書が出されたことに対する大臣の受けとめ、さらに、今後の対応についてもお聞きをしたいと思います。

根本国務大臣 厚生労働省としても、一人一人の労働者が働きやすい就業環境を整備することは大変重要だと考えております。

 このハイヒールやパンプスの着用については、それぞれの業務の中でそれぞれの対応がなされていると思いますが、例えば労働安全衛生の観点からは、腰痛や転倒事故につながらないよう服装や靴に配慮することは重要であって、各事業場の実情や作業に応じた対応が講じられるべきであると考えております。

 それは、それぞれの職場がどういう状況にあるのかということで、一般論としては、それぞれの職場での判断だろうと思います。よろしいですか。

尾辻委員 ちょっと今、不十分かなというふうに思うので、もうちょっとお聞きしたいんですけれども、このような要望書が出されたことについて、大臣はどう受けとめておられますか。

根本国務大臣 そういう要望書を受けました。署名も受理しております。

 やはり、一人一人の労働者が働きやすい就業環境を整備することは大変重要であると考えております。ここはいろいろな動き、動向があるわけですが、そういう動向を注視しながら、働きやすい職場づくりを推進していきたいと思います。

尾辻委員 もう少し受けとめを聞きたいんですが、ハイヒール、パンプスが義務づけられる必要はあると思われますか。大臣にお聞きしています。

根本国務大臣 義務づけられることについてどう思うかというお話ですよね。

 女性にハイヒールやパンプスの着用を指示する、義務づける、これは、社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲か、この辺なんだろうと思います、それぞれの業務の特性がありますから。よろしいですか。

尾辻委員 私は、これはやはり見直していかなきゃいけないし、だから、ハイヒールやパンプスを履かなければならない職場というのは、実は、よく考えたらないはずなんですね。だから、義務づけ自身がもうだんだん時代に合わなくなっている、健康障害を起こしている。先ほど言ったように、労働安全衛生から考えても、これは問題だと思うんですね。

 大臣に問題だという意識があるのかないのか、ちょっとわからないので、もう一度、問題があると思っておられるか、それともないと思われるか、そこだけでもお答えいただけますでしょうか。

根本国務大臣 ハイヒールやパンプスの着用を強制する、指示する、これは、いろいろなケースがあると思いますが、社会通念に照らして業務上必要かどうかということ、要は社会慣習にかかわるものではないかなと思います。だから、そういう動向は注視しながら、働きやすい職場づくりを推進していきたいと思います。

尾辻委員 ちょっと何か違うなというふうに思います。

 ちょっと突然ですけれども、高階副大臣、ハイヒール、パンプスを女性が義務づけられている、着用義務がある職場について、多分、大臣は男性なのでちょっと厳しいのかなと思うんです、感想で結構です、感想として、どういうふうに思われているか、お答えいただいてよろしいでしょうか。突然で申しわけありません。

高階副大臣 済みません、突然のお尋ねで、十分な答えになるかどうかわかりませんけれども。

 そもそも、職場でそういった義務づけをしているところがどの程度あるのかということをちょっと私も承知していないんですけれども、一般的に言って、その業務の必要な範囲、そして安全性が確保されるような環境の中で労働者には仕事をしていただける、そういうふうなことをみんなで環境整備していくというのが職場の考え方だろうと思いますので、強制されるものではないのだろうというふうに思います。

尾辻委員 ありがとうございます。

 大臣にもちょっと、それぐらいのことをぜひ答えていただきたかったなというふうに思います。

 こういうふうに、慣習だということで、足が痛いし、外反母趾にもなるし、靴ずれも起こるし、転倒で労災もしているのに、結局言えないわけですよね。この環境をどうにかしてほしいと言っているわけですから、ぜひ受けとめていただきたいというふうに思います。

 特に、労働安全衛生法は、事業者に労働者の安全と健康を確保する責務というのを課しているわけです。

 そして、これからこれはぜひ検討していただきたいんですが、女性にのみこういうハイヒールやパンプスの着用を求めるというのは、ハラスメントにもやはり当たり得るものだと思うんですね。

 今、国家公務員が対象となるセクハラ規制である人事院規則一〇―一〇では、性別により役割を分担すべきとする意識、つまりジェンダーに対する言動もセクシュアルハラスメントであるというふうにしております。こういったことはハラスメントになるということもこういうところから明確化していると思いますので、労働安全衛生、そしてハラスメントの両面からの整理をしっかりしていただくようにお願いをしたいと思います。

 大臣、ちょっと、しっかりと取り組んでいただくことをお願いしたいんですが、いかがでしょう。

根本国務大臣 職場において女性にハイヒールやパンプスの着用を指示すること、これについては、今、パワハラという観点からのお話でした。

 当該指示が社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうか、これがポイントだと思います。そこでパワハラに当たるかどうかということだろうと思います。

 一方で、例えば足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合などはパワハラに該当し得ると考えております。

 そこはどういう状況かということ、そして、その職場で、どういう状況の中でそういうことがなされているのかという、そこのところの判断かなと思います。

尾辻委員 要望を受けたということ、一万八千近くの方が署名しているということをぜひとも受けとめていただきたいというふうに思います。議論を始めてください。

 ちなみに、カナダのブリティッシュコロンビア州では、ハイヒール強制を禁止しました。また、イギリスのロンドンの大手会計事務所で、受付係として下請会社に採用された女性がハイヒールを履いていないことを理由に帰宅を命じられたことで、大きな社会問題にもなっています。フィリピンでは、職場でハイヒール着用の強制を禁じる行政命令が施行されているということで、今、多くの国で、この強制はやはり問題なんだということが課題になってきているわけです。

 ですので、しっかり取り組んでいただきたい。多くの働く女性や働こうとしている女性たちにとってのこれは壁になっていて、性差別の一種でもありますから、一刻も早く対応していただきたいというふうに思います。

 ちょっと済みません、あと五分になりました。先に生活保護のことについてお聞きをしたいと思います。前回残していた二分の一のゆがみの部分であります。

 お手元に「生活保護制度の見直しについて 取扱厳重注意」と書かれた資料を配付させていただいております。

 前々回の生活保護基準の見直しで、年間削減額約六百七十億円のうち、約九十億円がゆがみ調整で削減をされました。その内容をどういうふうにやったかというのがこの文書には書かれているわけですけれども、この文書の作成経過と目的について、誰が、いつ、誰に対する説明文書として作成したものか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘の文書でございますけれども、平成二十五年八月十四日付の行政文書の開示請求に対しまして、平成二十七年八月三十一日付で開示決定を行った文書でございまして、厚生労働省社会・援護局保護課が、平成二十五年一月十八日前後に、当時の世耕内閣官房副長官に対する説明資料として作成したものでございます。

尾辻委員 一月十八日前後と言っていますけれども、これで見ると、今後のスケジュール案のところに一月十八日とあるんですから、前ではないんでしょうか。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 当時の詳細な日程表が残っておりませんので、当時の世耕官房副長官に実際に何月何日に説明したかということがはっきりしないということでございますので、答弁といたしましては、平成二十五年一月十八日前後にということで答弁させていただいております。

尾辻委員 これは、誰と誰が説明を世耕官房副長官にされたんでしょう。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 当時の社会・援護局長の村木局長と古川保護課長が説明したというふうに承知しております。

尾辻委員 ここは下線を引かせていただいたんですけれども、実はここで、ゆがみ調整として、年齢、世帯人員、地域差における影響の調整を二分の一としというふうに、勝手に厚労省が、二分の一にするよということを生活保護基準部会に諮らずに、そして、その前後のところでもう世耕当時の内閣官房副長官に言っているということを示す資料になっているわけですね。

 つまり、二分の一にするということを生活保護基準部会には意見として聞いていないということでいいかどうか、イエスかノーでお答えください。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 当時の基準部会報告書におきましては、生活扶助基準の見直しを検討する際には、現在生活保護を受給している世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたいとされたところでございまして、政府としましては、こうした御指摘の趣旨に沿って、検証結果を完全に反映させた場合には世帯によって大幅な減額になるおそれがあることを踏まえまして、激変緩和措置といたしまして一律二分の一とすることを政府の判断として実施したものでございます。

尾辻委員 つまり、基準部会には諮っていないということでよろしいでしょうか。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 今の御指摘のとおり基準部会に諮ったものではございませんけれども、基準部会の報告書の趣旨に沿った対応であったというふうには考えております。

尾辻委員 それは国の裁量権の濫用だと思います。何のために基準部会があるのか。

 そして、この二分の一にしたということ、国会において二分の一にしましたということを説明されたことはありますでしょうか。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 国会におきましては、国会でそういった御質問があった際に、二分の一とした理由につきまして答弁をしている例はございます。

尾辻委員 勝手に二分の一にしているというのは絶対おかしいわけですよ。それも、激変緩和のためなら減額となる数値だけ半分にしたらよくて、増額となる数値まで半分にして、結局、かなりの人たちが、増額になっている分が半分になっているんですよ。これは何で半分にされたんでしょう。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 検証結果を完全に反映させた場合には世帯によって大幅な減額になるおそれがあることを踏まえまして、検証結果をできるだけ公平に反映したいということでございまして、生活保護世帯への影響を一定程度に抑えるための激変緩和措置として、検証結果を反映させる比率を、増額となる場合も減額となる場合も一律に二分の一としたところでございます。

尾辻委員 やはり、今いろいろ検証していったら、これは本当に裁量を逸脱しているとしか思えないんです。何のために基準部会で計算しているのかもわからない。やはり、今聞いたところでいっても、前々回の生活保護基準の見直しというのは非常に意図的であったと言わざるを得ないと思います。

 時間が来ましたので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、池田真紀君。

池田(真)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの池田真紀です。よろしくお願いいたします。

 まず、きょうは、大きく分けて三つの種類の質問をさせていただきたいと思いますが、まず初めに、名前のローマ字表記について伺いたいと思います。

 きょう、資料で配らせていただきました一枚目なんですが、平成十二年、答申という形でこのように出されておりますけれども、どうしてこのような姓、名という順序が望ましいということなのか、この根拠をちょっともう一度確認させていただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十二年十二月の第二十二期国語審議会答申「国際社会に対応する日本語の在り方」においては、「日本人の姓名については、ローマ字表記においても「姓―名」の順とすることが望ましい。」との考え方が示され、文化庁ではその周知を図ってきたところでございます。

 この考え方の根拠といたしましては、世界の人々の名前の形式は、名、姓のもの、姓、名のものなど多様であり、それぞれが使われる社会の文化や歴史を背景として成立したものであること、人類の持つ言語や文化の多様性を人類全体が意識し、生かしていくべきであること、一般には、おのおのの人名固有の形式が生きる形で紹介、記述されることが望ましいことなどがこの答申において示されているところでございます。

池田(真)委員 これは二十年も前のお話なんですが、昨今、いろいろな動きがありましたので、ちょっと振り返りも兼ねて、それぞれに確認をさせていただきたいと思っています。

 まず、外務省のホームページで安倍首相の氏名の表記がいっとき変わったということなんですが、五月の二十七日に、もとの名、姓に戻ったということがありました。これは新聞とかでも報道されていると思いますけれども、まず、何でいっとき姓、名に変わったのか、そして、何でもとの名、姓に戻ったのか、その理由を教えていただけますか。

船越政府参考人 お答え申し上げます。

 トランプ大統領の国賓訪日といいます非常に国民から高い関心を頂戴している事項でございましたので、取り急ぎ、速やかにホームページに掲載したところでございますが、その上で、従来の外務省の標準的な記載順に修正させていただいたところでございます。

池田(真)委員 あわせてお伺いしたいんですけれども、今、トランプ大統領が来たから合わせて姓、名にして、でも、もとに戻したということですよね。もう一度お願いします。

船越政府参考人 大変舌足らずで失礼いたしました。

 トランプ大統領の訪日という非常に国民の高い関心を頂戴している事項でございますので、取り急ぎホームページにアップしたわけでございますけれども、その後、省内で確認をして、従来の標準的な順序に変えた。

 すなわち、外務省におきましては、ホームページにおいては、日本人の姓名につきまして、従来から名、姓の順で標準的な記載となっておりますところ、その順に戻したというところでございます。

池田(真)委員 そうすると、姓、名に合わせたという感じなんでしょうか。戻した理由ではなくて、変えた理由を教えていただけますか。

船越政府参考人 もちろん、姓、名の表記につきまして、間違っていたかどうかというのは、若干、判断のところでございますけれども、外務省の従来の表記と違う形で表記をされてしまったところ、直ちに修正をして、外務省のホームページにおける標準的な名、姓の順の記載にさせていただいたというところでございます。

池田(真)委員 大臣の指示があってということでしょうか。

船越政府参考人 そのようなことではございません。

池田(真)委員 世界に向かっての発信なので、表記がころころ変わる理由とかというのも、非常に丁寧な説明とか、我々一人一人の国民も説明ができなければいけないというふうにも思いますので。

 あわせて、連日の報道だと思うんですが、柴山文科大臣もこれについて言及をされています。こちらの確認もお願いできますでしょうか。

内藤政府参考人 日本人の姓名のローマ字表記に関しましては、先ほど御答弁申し上げました平成十二年の国語審議会の答申が出された当時、文化庁から、国の行政機関等に対し、この答申の趣旨に沿った対応を依頼しているところでございます。

 文部科学省では、この答申の趣旨に関し、これまでの慣行等考慮すべき要素もあるため、現在、関係省庁と何ができるかを検討を行っているところでございます。

池田(真)委員 これから検討するというのが文科省の方で、外務省の方はいかがでしょうか。

船越政府参考人 外務省につきましても、今後につきましては、これまでの慣行等もあって考慮すべき要素が多々ある問題でございますところから、まずは関係省庁で何ができるか、文科省とも連携して適切に検討しているところでございまして、それも踏まえて対応していきたいと思います。

池田(真)委員 今回、名前の表記ということなんですが、もう少し踏み込みますと、姓が前で来ているということだけではなくて、夫婦別姓の部分ですね、選択的な夫婦別姓の問題とかというのも、この間ずっと、放置ではないですけれども、二〇一五年の間からずっと、三年間、議論もされていない。

 何でこれを私がちょっと不思議に思ったのかといいますと、やはり、二〇〇〇年、平成十二年の答申のところに、人名固有の、要するに、あなたはあなたという特定をする、個人を指す名称について、文化的な表記ということでの希望をされるということなんですが、この個人を特定していくときに、本当に家族の多様化が進む中、厚労省にかかわるような、例えば子供たちも、学齢期の中では、義務教育の間に名字が何度も変わるとか、非常に悩ましい子供たちもたくさんいるんですね。ずっと変わらないのは、ファーストネームということもあります。女性の働きというところでもいいますと、通称名を使われている女性もどんどん進出していますし、ステップファミリーの姓をどうするかということも、多様化している状況なんですね。

 こういう問題について、厚労大臣はどのようにお考えでしょうか。

根本国務大臣 名前のローマ字表記、今いろいろと議論がありましたが、官房長官が会見で答えられているように、これまでの慣行もあって考慮すべき要素が多くあるため、関係省庁で何ができるかを検討していくことになると私は理解をしております。関係省庁における検討結果も踏まえ、適切に対応したいと思います。

池田(真)委員 関係省庁の中にもし厚労省が含まれていなかったとしたら、厚労省でかかわってくる子供たちだとか女性とかいろいろな人たちの、今までの風習といいますか、今までの状況によって生きづらさを抱えているというのも実際あるわけでありますので、厚労大臣には、この問題は配慮してほしいとか、こういうことも検討してほしいということは出張っていっていただきたいと思います。

 また、今回の質問をする際に、各省庁に御協力いただいたときに、いろいろな数値が把握されていませんでした。ですので、先ほど申したような対象の方たちの厚労省で把握をしなければいけない数値は、今後、実態調査をちゃんとしてほしいなというふうに思います。

 私自身が、海外に行ってファーストネームでディスカッションしたときに、初めて個人というか個を実感して、物事を発信していいんだとか物をしゃべっていいんだというふうに実感したものですので、本当に今、自己肯定感がすごく低いこの日本の今の実態でありますので、個を認めていく、本当に大事な名前の問題でありますので、ぜひ大事に厚労大臣には取り組んでいただきたいと思います。

 確認の答弁だけお願いします。大臣に。

根本国務大臣 委員の御意見は御意見として受けとめたいと思いますが、この名前のローマ字表記、これに関しては、官房長官が会見で答えられているように、これまでの慣行もあって考慮すべき要素が多くあるため、関係省庁で何ができるかを検討していくことになると理解しております。

池田(真)委員 何か主体的な意見がなくて大変残念でした。これまでの慣行によって生きづらさを抱えている人たちがいるということを今申しているわけですから、このことがおわかりにならないというのは大変残念に思いますが、次の質問をさせていただきます。

 障害者の水増し雇用の後、採用されてきたということですが、報道等にありますように、百三十一人、この間に離職をされていたということがありました。

 ここの確認ですが、障害種別は不明というふうに公表しておりますが、各省庁では把握をしているのでしょうか。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点につきましては、公表していないというお話でございましたが、私どもとしての把握では、まず、各府省における、これは昨年十月からこの四月一日までに採用した、いわゆる基本方針のもとで採用した数でございますけれども、これが二千五百十八人、実人員でございます。このうち、五月二十三日時点における離職者の数が百三十一人となっておりまして、障害種別で見ますと、身体障害の方が五十人、知的障害者の方が四人、精神障害者の方が七十七人という状況でございます。

池田(真)委員 今のような状況でありますので、再度、検証していただきたいというふうに思うんですね。

 この後、実態調査を行うというふうになっていますけれども、この実態調査については、どのように検証を、どのようなスケジュールで行おうとしているのでしょうか。

土屋政府参考人 今般の調査では、数は把握ができているんですけれども、個別の障害者の方の離職理由まで把握ができていない状況にございます。

 このことを踏まえまして、まず、相当数の離職者の方が生じているような機関あるいは離職割合が高かった機関に対しまして、離職理由などを具体的に把握して、採用、定着に関する課題を明確にしていくための、私どもから訪問をさせていただいてヒアリングをするというようなことを近日中に実施したいというふうに考えております。

 さらに、国の機関の六月一日時点の状況については、例年の通報をいただくわけですが、これとあわせまして、採用・離職状況等特別調査をあわせて実施することを予定しておりまして、この調査の中で、離職者の方の離職理由を包括的に把握いたしますとともに、国の機関で働く障害者御本人に対して、職場等の満足度に関するアンケート調査というものを、この六月一日現在の通報とあわせて御報告をいただくようにしていきたいというふうに考えております。

池田(真)委員 検証の方は丁寧にやっていただきたいのと、あと、この後、四千人また採用するということで、人事院の方は何か変更する予定はありますでしょうか。

三田政府参考人 お答えいたします。

 本年度の障害者選考試験につきましては、各省庁が本年末までに採用を行うことができるように、受験申込みの受け付けを六月十七日から六月二十六日まで行い、第一次選考は九月十五日に、第二次選考は十月二十八日から実施し、合格者発表は十一月二十六日に行うことを予定しております。

 人事院が第一次選考として統一的に能力実証を行い、各府省が第二次選考といたしまして採用面接を行う、昨年度と同様の選考方法としておりますが、昨年度の実施状況等も踏まえまして、受験上の配慮などについて必要な見直しを行っております。

 具体的には、昨年度の障害者選考試験の実施の際、第一次選考通過者発表後から各府省への面接の申込みまでに時間がかかる場合があることが認められたため、本年度につきましては、第一次選考通過者発表から第二次選考開始までの期間を延長し、昨年度の五日間から十一日間としたところでございます。

 また、第一次選考における受験上の配慮といたしまして、視覚障害のある方について電子ファイルの試験問題集により受験できることをあらかじめ明示することや、聴覚障害のある方について試験室への手話通訳士の配置を選択可能とすることなどの措置も行うこととしているところでございます。

 さらに、第二次選考である各府省の採用面接において受験者の間の不公平感が生じないように必要な改善を行いたいと考えておりまして、現在、各府省等の意見も伺いつつ検討しているところでございます。

池田(真)委員 まず、各省とのヒアリングだけではなく、当事者のヒアリングというのが一番だろうと。あとは、日常的に支援員とか周りの方々が思っている業務をするに当たっての阻害要因というのは、日常的に声が上がってきていいはずなんです、わざわざ調査しなくても。こういった問題を丁寧に集約するとともに、改善に向けていただきたいというふうに思います。

 障害者問題、本当はもっと丁寧に行いたいんですが、昨年の検証チームの取りまとめも、当事者が入っていなかったということから始まっていますので、ぜひ、当事者の声を聞いていただきたいというふうに思います。

 次に、最後の質問をさせていただきますが、きょうの資料の二枚目になりますけれども、このように、五月の二十九日から、大雨に関する、土砂とか水害に関しての警戒レベル、こちらの方が表記が変わってきました。こちらの部分についてなんですが、一番後ろの方を見ますと、警戒レベルの効果的な運用に向けてということで、住民の主体的な行動を促すというのが目的になります。

 しかし、こちらの方の、厚生労働省管轄の高齢者施設では、あるいはグループホームでも結構ですので、福祉事業者については、この警戒レベルに応じてどのように利用者を安全に避難させるように変わる点があるのか、お答えいただけますでしょうか。

大島政府参考人 現在、高齢者施設に関しましては、運営基準の中で、利用者の避難を含む非常災害対策計画というものを立てることとしておりまして、この中で、避難を開始する時期ですとか判断基準の項目も盛り込むこととしております。

 今般、内閣府の方から、警戒レベルの方式が示されました。恐らくこれは従来、避難準備情報発令ということをめどにしている施設が多かったと思われるんですが、そこの警戒レベル三が大体同じ水準になると思われます。

 今回、この警戒レベルを活用していくという方針にのっとりまして、今回のこの内閣府のガイドラインを施設が避難を開始する時期や判断基準の際の目安にしていくということを示したいと考えておりまして、厚生労働省から、速やかに通知などによりまして、都道府県を通じて施設に周知をしてまいりたいと考えております。

池田(真)委員 してまいりたいということなので、通知もまだということですよね。これでもう数日たっているわけです。この間に大雨があったらどうするんですかということだと思いますので、これは迅速にお願いしたいと思います。

 また、通知だけでは問題だと思っているのが、今、警戒レベルの三というのが該当するだろうとおっしゃいました。でも、違いますね。

 介助者が、その当時、何人配置されているのか。隣で救助をサポートしてくれるような近隣の関係が、三十分ないと救助が呼べないというところの立地条件だとか。本当に施設、施設というのが千差万別だと思います。時間帯によっても、曜日によっても違うと思います。個々のプランをつくる必要があると思いますので、単純に、通知で頑張ってねという自己責任が強まっていくということは、私は、こういう現場で働く人も、こういうところで生活する人たちにも、非常に不安にしかなりませんので。

 ぜひ、災害に対しては、命を守るというところでの取組でありますので、厚生労働省は、より一層、障害、在宅を含め、こういう方たちにきちんと災害の取組、命を守る、守り切る取組ということで、個別に対策を打ち出していただきたいというふうにお願いを申し上げまして、きょうの質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党・無所属フォーラムの阿部知子です。

 冒頭、大臣、お席を立ちたいということで、足どめをして恐縮です、一問だけお伺いをいたします。

 川崎での不幸な子供たちの殺傷事件、あるいは父親が息子さんを殺害したかもしれないと言われる引き続く事件等々で、大臣が非常に大事なメッセージを出していただいたと思いますので、私は冒頭は、大臣にしっかりと頑張っていただきたいという意味で、安易に引きこもりと事件を結びつけることのないようという御発言は極めて私は大事で、時を得ておりますし、ともすれば、日本の家庭は閉じられていて、外からの支援をなかなか求められないという、これはもう歴史的にそうなっております中で、厚生労働省として、しっかりとした支援策をもって、差別や偏見や、あるいは、今そこで悩んでおられる御家庭の一つの希望のメッセージとなるものを発していただいたと思っておりますので、引き続いてよろしくお願い申し上げたいと思います。

 と同様に、実は、ハンセン病の御家族の皆さんが家族訴訟というものを起こしておりまして、昨年の暮れに結審をいたしております。現在、六月二十八日の判決を待っておられるところですが。これもまた、家族とか家庭の問題で、ハンセン病として収容されていった、その当の御本人と残された家族、これまでのさまざまなハンセン病の被害者に対する救済、補償においては、御家族の問題というのは俎上に上りませんでした。しかし、この訴えを聞いてみればみるほど、私は、国の隔離政策の過ちの罪深さを改めて思っております。

 大臣には、ちょうど六月二十八日というと、国会がどうなっておるやらわからないところでございますので、ぜひ、私はきょうしか申し上げる機会がありませんので、大臣の先ほどの御見識を、本当に家庭というものがどう守られ、どう引き続いて一つの生活単位たり得るかということをお考えいただいて、対処をしていただきたいと思います。

 これはお願いですので申し添えて、もし何か一言あれば伺いたいと思います。いかがでしょうか。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

根本国務大臣 先ほどの川崎市の事件や農水省の元事務次官による事件、これについては、私も大変痛ましい事件が続いていると思っております。

 これについて、私もいろいろな報道も含めて話を今まで聞いておりましたが、事件の詳細は現在捜査中であって事実関係が明らかではありませんが、でも、これは、いずれにしても、安易に引きこもりなどと結びつけることは厳に慎むべきものと考えている、これを記者会見で申し上げました。

 そして、お尋ねの件については、今、裁判中の事案ですので、大変恐縮ですが、具体的に私がこの場でコメントをするということは差し控えたいと思います。

阿部委員 私の要望は、家族というものに対しての深い思いを大臣が持って対処していただきたいということでございます。

 では、どうぞ、お席を離れてください。

 私は、きょうは国立病院機構の理事長の楠岡さんにも来ていただきました。ありがとうございます。

 国立病院機構と申しますのは、皆さんのお手元に組織図が書いてございますが、独立行政法人、平成十六年の四月一日から、それまでの世で言う国立病院を独法化してできた、日本で一番大きな医療系のネットワークでございます。日本の医療を支える、そして大事な医療政策の推進役でもあると思っております。

 その意味で、日ごろの理事長の御尽力、ありがたいと思いますし、また、きょうもお運びいただいたこと、誠意ある対応と思いますので、冒頭お礼申し上げます。

 そして、独立行政法人に属する病院、ここに書いてございますけれども、五疾病五事業、がん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、精神疾患、救急医療、災害医療、僻地医療、周産期医療、小児医療、これを五疾病五事業と申しまして、加えて、セーフティーネット医療というものを担っておられます。重度の心身障害児者のケア、筋ジスを始めとする神経・筋疾患、精神科医療、結核、エイズ、こう御紹介しますと、あらゆるものを担っておられて、特にきょう私が取り上げたいのは、セーフティーネット医療のことでございます。

 セーフティーネット医療という名前を聞いていただければわかりますように、これをなくしたら、安易に民間に委ねることができない、さまざまな制約要因を持っておるというところで、これからも国立病院機構の中でしっかりやっていただかねばならない疾患群だと思います。

 あけて、二ページ目をごらんいただきたいと思いますが、現在、徳島で二つの病院の統廃合が俎上に上ってございます。

 徳島病院、筋ジスの患者さんが入院していただいている、最近はALSとかパーキンソンの患者さんも神経難病もおられます。もう一方の東徳島医療センターは、重度の心身障害児を預かっておる、百五十六床あったと思いますが。いずれにしろ、両方の病院ともまさに政策医療のど真ん中にある病院でございます。

 この二つの統廃合問題が俎上に上ってまいりましたのが、平成の二十九年の秋のことのようでございます。二十九年の十一月に、当時の院長先生が筋ジスの患者さんのところに行かれて、移転することになったから、大丈夫だからとおっしゃって、しかし、患者さんは非常に、それまでの生活が変わるのではないか、災害のときにどうしよう、今度行く先はどんなところだろうと不安を持たれたと。

 私は、障害者の権利条約にも、自分のことを抜きに自分のことを決めないで、私の思いを聞いてくれというのが患者さんや障害当事者の思いですから、この移転問題にあって、当事者の意見は十分聞かれたんだろうかと。非常に、私も現地に行き、入院患者さんにお目にかかって、抱いておられる不安の大きさを改めて思い、何で患者さんたちに不安を与えながら強硬に行われねばならないのかということをまず大きな疑問と思いました。

 そして、あけて、三枚目を見ていただきますと、先ほど申し上げましたように、患者さんに初めてお話があったのが二十九年の十一月ごろ、そして、平成三十年の二月二十一日には病院内に張り紙が出されました。「お知らせ」と称するこの張り紙は、結論を先んじて述べていて、線を引いてあります、独立行政法人国立病院機構東徳島医療センターに移転、統合することになりましたという、もう結論が述べられた張り紙が出ました。今度は、地域住民の皆さんが青天のへきれきでありました。

 理事長に伺いますが、この国立病院機構のいろいろな印刷物を見ますと、まず、患者さんの目線に立って懇切丁寧に医療を提供ということと、特に、地域の医療にあっての、地域の皆さんとの意思疎通ということは、この機構のいわば精神としても書かれておるところでございますが、今回、なぜこのような経緯になっておるのか。

 加えて、徳島県の県議会は、全会一致で移転の見直しを求める決議をことし三月に上げておられます。各自治体、徳島県下の全ての自治体も、見直しの決議文を賛成多数で上げております。

 私は、とても不幸な経緯だと思うんです。患者さんからも不安、自治体からもどうなっているのかという声が聞かれている。

 このことについて、まず、理事長のお考えをお伺いいたします。

楠岡参考人 御指摘ありがとうございます。

 徳島病院と東徳島医療センターの機能統合に関してでありますけれども、まず、両病院とも、長期の入院患者を対象とした慢性期中心の病院であるため、地域医療における課題が同じであるということが一点。

 二点目といたしまして、両病院の共通課題といたしまして、医師の高齢化等により、継続的な医師確保が極めて困難な状況になっていること。外来管理棟が築四十年と老朽化しており、両病院ともに整備が必要な状況であること。特に徳島病院では、近年、患者数の減少等により、経営的に極めて厳しい状況が続いていること。

 以上のような点から、両病院が単独で将来にわたって安定して運営していくことが困難な状況であると判断し、両病院の医療機能を将来にわたって継続していくために、国立病院機構として決定したところでございます。

 しかしながら、御指摘のとおり、地元自治体、徳島県、近隣の住民、さらに入院の患者様から、さまざまな御意見をいただいておりますので、現在、国立病院機構において、こうした困難を克服して、徳島病院及び東徳島医療センターの医療機能を将来にわたって継続していくために最適な方策につきまして検討しているところでございます。

阿部委員 今の理事長の御答弁であれば、まず、このお知らせを、謝罪の上、撤回していただきたいです。これは結論が書かれてございます。移転、統合することを検討しておりますなら、まだよろしゅうございます。

 このように、一方的に、決定しましたといって張り出すと、理事長も医師であられるからおわかりと思います、何が起こるか。まず、医師がやめてしまいます。それによって、ますます病院は赤字が膨らんでまいります。

 今、もろもろ、理事長がおっしゃったような問題、経営上の問題を抱えておるという御指摘、私はこれも二つの病院に伺って、それぞれの院長が大変御尽力をされている、この二つの病院の院長先生は、すばらしい先生たちであります。

 例えば、徳島の筋ジスを診ている病院の方は、今、他のALSやパーキンソンに自分たちのテリトリーを広げながら、スポーツ医学を含めて、自分たちの新たな展開を考えておられる。リハビリのセンターとしての機能も強化しておられる。一方の東徳島病院の方は、重度心身障害児で、県内でもういっぱいだと言われるところからこちら側にどうやって連携できるかなどを、実はそれぞれに工夫しておられます。

 私は、もう少し丁寧な、医療現場の工夫を共有されて、この歴史ある病院のそれぞれが本当に役立つようにしていただきたい。

 でも、きょうのところ、時間の制約で、理事長にはお願いがあります。この表示は不適切です。決まっていない、だけれども、決まるかもしれません。それは、結果は、皆さんが納得すればそれでいいのです。でも、県議会を挙げて反対、二十五の自治体全部反対。これでは、日本医療機構と県や自治体との関係がとても対立的なものになってよろしくないと私は思います。日本全国の大事な日本医療機構は、私は、国立病院機構はですね、失礼いたしました。大事な組織と思いますので、まず、このお知らせについて、現状、検討中であるというふうに表示を直していただきたい、いかがですか。

楠岡参考人 先ほど申し上げましたとおり、現在、国立病院機構において、徳島病院及び東徳島医療センターの両病院が抱える課題を克服し、その医療機能を将来にわたって継続していくために最適な方策について、今検討しているところでございます。

 両病院の医療機能を将来にわたって継続するための検討の結果、具体的な事項を決定した際には、改めて、患者さん、御家族、職員、地域住民等へ説明することとしており、それまでの間は、両病院に掲示している機能移転に関する基本構想のお知らせというものを掲示するとしてきたところでございます。

 しかし、御指摘のとおり、地元自治体を始め関係者からさまざまな御意見をいただいておりますので、一旦、現在の院内掲示を撤去することといたします。院内掲示で混乱を招いたことに関しましては申しわけなく思っております。

阿部委員 ありがとうございます。

 大変見識ある御答弁だと思います。結果がどのような方向に向かうかはこれからです。だから、丹念に論議して、本当に患者さん、地域住民が安心できるようにしていただきたい、心からお願い申し上げます。

 そして、この移転にはもう一つ大きな問題がございます。

 実は、開いていただいて四ページ目となりましょうか、移転先とされた東徳島病院は、いわゆる洪水浸水地域に入ってございます。高さが四・五メートル、片一方の徳島病院は山の上で四十五メートル、そして、高台です。片一方は、吉野川のすぐ横。そして、当然ながら三から五メートルの浸水、洪水が予定されている。三から五メートルというと、病院の建物の二階までは水につかってしまう。

 患者さんとしては、到底そこに自分が、例えば車椅子で動いていらっしゃる筋ジスの患者さんもいますが、水が来てどうやって逃げようかというふうに思われるのが当然で、私は、そもそも、こうした地域になぜそうした自由な動きがない患者さんを動かそうとするのかという、これも検討をしていただきたいと思います。

 ちなみに、根本大臣に伺いますが、実は、愛知県の東海市と知多市で市民病院を運営する西知多医療厚生組合というところが新病院建設を考えましたが、実はここは液状化の上にあってとても安心できないというので、この移転が見直し、見送りになりました。大臣には、こういう事案を御存じでありましょうか。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

吉田政府参考人 まず、事実関係としてお答えをいたします。

 全国いろいろなところで病院の移転、再編等の情報がございます。私どもとしては、必要に応じて各自治体からあるいは医療機関から情報をとっておりますし、その際には、移転の背景あるいは考え方などについてもお話を伺っているところでございます。

 とりわけ、今御指摘いただきました災害対策という観点からの動きについては、これまでも、そしてこれからも、より私どもとしてアンテナを高くして情報を収集してまいりたいと思います。

阿部委員 答弁になっていないものをなぜ出てきて答弁しますか。この事案を知っていますかと私は聞いたんですよ。あなたは知っているんですか。知らないのに答弁に出てきたんですか。私の時間を返してください。余りに不誠実でしょう。私は具体名を挙げましたよ。この病院の事案を知っているんですか、大臣、どうですか。

根本国務大臣 私は、その事案は、今、阿部委員から初めて聞きました。

阿部委員 これも質問に投げて、私の方から知らせて、私がなぜこういうことを言うのかというと、厚生労働省の基準の中に、病院の立地について明記されたものがないんです。普通は、液状化のところに病院を建てるなんてあり得ないんです。杭を何本か打って病院の建物がしっかりしたからいいだろうというのが今回の東徳島医療センターに新たにつくろうという計画ですが、じゃ、道はどうするんでしょう。液状化は、病院だけに起こるんじゃないんですよ。

 私は、そういうこと一つ厚労省が基準に置かず、聞いても知らず、答えられず、患者の命は守れるのかと、心から憤りを持って今の御答弁と現状を指摘したいと思います。

 大臣、最後のページをごらんください。

 これは、例えば内閣府と総務省がおのおの広域防災拠点、内閣府がつくるのは防災センターですね、総務省もそうです。そこにおいて基準を設けてあって、例えば総務省だと、自立性のところに液状化、津波被害の危険がないと明示しているわけです。厚労省だってこれくらいのことができると思います。そういうことをはっきりさせないで、把握もしないで、移転を急いで、何が起こるかです。

 きょう、申しわけありません、国土交通政務官に来ていただきました。お時間なのですが、一言だけ。恐縮です。

 国土交通省でもいろいろ調べておると思います。その情報を厚労省ときちんと今後共有していただきたいが、いかがでしょう。

田中大臣政務官 お答えさせていただきます。

 災害拠点病院など重要公共施設の立地箇所を決定する際に、あらかじめ当該地域の災害リスク情報を確認することは大変重要だというふうに認識いたしております。

 そのため、国土交通省では、国土交通省ハザードマップポータルサイトを通じて、洪水浸水想定区域など各種災害リスク情報を、厚生労働省のみならず、国民に対して提供しているところであります。

 国土交通省としては、引き続き、厚生労働省等と連携をしながら、各種災害リスク情報が施設の適正な立地に活用されるよう、各種災害リスク情報の共有、周知を図ってまいりたいと思います。

阿部委員 早急な連携を求めます。

 終わらせていただきます。

冨岡委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは限られた時間ですから、早速質問に入りたいと思います。

 まず、年金に関してちょっと確認したいんです。

 ことしは年金の財政検証の年なんですけれども、財政検証に際して、現時点で、より新しいデータが出てくれば差しかえるということはあるでしょうけれども、不足をしている前提やデータがあるのか、もうデータはそろっているという状況なのか、これについて確認をしたいと思います。

木下政府参考人 お尋ねのことしの財政検証でございますけれども、今現在作業中で、必要な検証作業が終わり次第公表するということを考えております。

 今お尋ねの前提についてでございますけれども、三月十三日の社会保障審議会年金部会におきまして了承いただいておりまして、特にデータとして不足しているものはございません。

岡本(充)委員 であるとすると、これを受けて、一体いつ出てくるのかということです。二十六年検証、二十一年検証は、今の話で、データがそろってから実際に出るまでにそれぞれどのぐらい時間がかかったのか。年金部会でそろって、そしてデータが出る、それがどういう日時の関係だったのか、御説明いただきたいと思います。

木下政府参考人 お答え申し上げます。

 前回は平成二十六年、前々回は二十一年でございますけれども、それぞれいつまでに前提がそろって公表したのかというお尋ねです。

 前回の平成二十六年財政検証におきましては、経済前提を年金部会に報告いたしました日は平成二十六年三月の十二日でございます。財政検証の公表日は平成二十六年六月三日でございます。

 一方、前々回、平成二十一年でございますけれども、経済前提を年金部会に報告した日は平成二十年の十一月十二日でございます。財政検証の公表日は平成二十一年の二月二十三日ということになっております。

岡本(充)委員 年末年始が一週間ほど挟まったから、実質的にほぼ三カ月で出ているんです。つまり、五年前とほぼ同じであれば、もうきょうぐらいに出ていなきゃおかしい話なんですよ。

 大臣、一体これはいつ出るんですか。鋭意作業中、作業中じゃなくて、このぐらいのときに出せそうだということをやはり教えてもらいたいし、もっと言えば、参議院選挙で、この対策をどうしていくべきなのか、これは議論をするべきなんですよ。国民の皆さん方に財政検証を示して、一体どういう政策が必要なのか競うべきだと思います。

 そういう意味で、終わった後によもや出すんじゃないんでしょうねということは予算委員会でも私は伺いましたけれども、大臣、いつごろ、鋭意作業中とか言わずに、めどぐらい言ってください。だって、これまで過去の状況を見たら、三カ月で出ているんですから。どうですか。

根本国務大臣 今、必要な検証作業をしているところで、これが終わり次第公表することを予定しております。要は、今作業中ですから、私もこの作業の経緯を見ているということであります。

岡本(充)委員 よもや、官邸からのゴーサインが出なければ出せない、その作業が残っているということではないですね。

根本国務大臣 そういうことはありません。要は、今我々も丁寧に作業をしておりますので、私はその事務方の作業の経緯を見守っているということであります。

岡本(充)委員 事務方に聞けば、前回、前々回と比べて大きく計算量がふえたとか、大きく計算式が変わったわけではないんですよ。制度改正は、それは毎回毎回、少しずつはあります。なかったときはないわけですから、制度改正を織り込みながら毎回やっても、いつでも三カ月で出てきたものが、同じ三カ月がたってまだ出ないということがどういうことなのか、これは合理的な説明が要ると思いますよ。なぜ出ないのか。

 後からよもや出すことなく、参議院選挙の前にこれを出して議論に付す、そのために最大限努力するという理解でよろしいですか。それとも、参議院選挙の後になる、こういう理解なんですか。

根本国務大臣 今我々、丁寧な作業をやっておりますので、その検証作業が終わり次第公表するということであります。

岡本(充)委員 いやあ、結局それは先送りするんじゃないか、数字が悪ければ出さないんじゃないか、そういう疑いを拭えませんよ。だって、過去には出しているんだから、この期間で。

 何か特別に難しいことが、大臣、あるんですか。過去に比べて何か特別に難しいことがあるのかないのか、それをお答えください。

根本国務大臣 今我々、丁寧な作業をしておりますが、これまでの年金部会の議論や政府の未来投資会議での議論、あるいは自民党の人生百年時代戦略本部取りまとめも踏まえて、財政検証本体の試算作業に加えて新たなオプション試算などの内容の充実を図っておりますので、そこでは今丁寧な作業をしているということであります。

岡本(充)委員 これは機械的な計算ですから、自民党で何らかの案が出たから計算式が変わるわけじゃないです。計算を粛々とするだけですから。それの時間が過去と違ってくる合理的な説明が今できていないと私は思いますよ。これはぜひとも早急に出してもらって、国民の皆さんにきちっと案を示すべきだ、どうしていくか示すべきだということを強く申し入れておきたいと思います。

 もう一つ重要な話があります。皆さんのお手元に配りました、これは、最近非常に高額で話題になった血液疾患の治療薬のキムリアについてであります。

 一体どのくらいのお金がかかるのかということで、これは岡本事務所でつくったんですけれども、対象となる患者さんは、一つは白血病、ある種の白血病ですが、これは百人ぐらい年間発症する。一方、もう一つが、悪性リンパ腫というものの中の一部。これが、これも岡本事務所の推計ですけれども、がん統計、それから、その中で血液学会や国立がんセンターが示しているパーセンテージを掛けていくと、再発・難治性のB細胞リンパ腫でキムリアの適応となるのは大体二千人から三千人ぐらいいるんじゃないか、こういう話であります。

 しかし、今回、中医協で示された予想投与患者数は、わずかに二百十六人であります。どうして二百十六人しか投与ができないのか、この合理的な説明が、なかなか会社側からのいわゆる秘密の開示がない中で、されていません。

 そこで、私が懸念しているのは、多くの方がこの薬、本当に、例えば再発・難治性のリンパ腫の場合、予後が極めて悪いから、治療しなければみんな亡くなってしまうわけです。そういう中で、何としても、わらをもすがる思い。この再発・難治性のリンパ腫とわかれば、平均の余命は大体半年ですよ。何とかこの薬を使いたい。使いたいと思って努力をすれば、この数はふえていくんじゃないか。

 もちろん、効果があってその後の病状が改善する、喜ばしいことでありますが、そういう意味で本当に二百十六人なのか。例えば、推定の五倍、千人、いや二千人となると、実際には、中医協で示されたキムリアの予想販売金額七十六億円から三百八十億円、七百六十億円と膨らんでいくわけです。いやいや、市場拡大再算定があるから二五%値段が下がりますといったところで、それぞれ、五倍の場合は二百八十五億円、十倍の場合は五百七十億円の売上げが見込め、結果として、これは税、保険料に多大な影響を与えるということになりかねない。

 したがって、一体この投与患者数がどうして二百十六人で、予算規模として七十六億円で済むのかということについて、きちっと説明を国会に対してするべきだと思います。

 ぜひ委員長、これについて理事会で取り扱っていただきたいと思います。(発言する者あり)

冨岡委員長 まず、答えを聞きましょう。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 キムリアの薬価は、原価計算方式ということで算定されているわけでございます。その中で、製品総原価は二千三百六十三万円というふうに公表されておりまして、その中に、輸入価格あるいは予測本剤投与患者数といったようなものが根拠になっているわけでございます。

 こうした輸入価格あるいは予測本剤投与患者数は企業から提出された資料に基づいて算出しているということでございまして、ここの中には企業にとって機密性の高い情報あるいは企業独自のノウハウが含まれているということで、公にすることによって企業の利益や競争上の地位を害するおそれがあるということで、詳細についてはお答えを差し控えたいというふうに考えているところでございます。

 ただ一方、予測本剤投与患者数については、一般的に、企業がさまざまな統計資料を参照して、類似薬の処方動向や企業が実施したアンケート等の結果を踏まえて推計した数値を、厚生労働省におきましても妥当性を精査した上で、薬価算定組織において専門家による確認を行っているということでございますので、大幅に相違するものではないというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 大幅に相違するものではないといいながら、大幅に相違したものも過去にあるわけですから。

 これは、二百十六人という前提で割り戻すから、結局、今の三千数百万円という価格になるんです。これが十倍の患者さんに投与できるということになれば、当然単価は下がるはずなんです。当たり前です。したがって、この二百十六というのは極めて重要なんです。

 だから、委員長、今の話で、厚生労働省で妥当だと考えているわけですから、それは国会に示すべきですよ。予算規模で三百億も七百億も変わってくるようなものですよ。これが一体どうしてこの根拠になるかということを、この委員会に出していただきたい。委員長、お願いします。

冨岡委員長 定型的にやっていかれたんでしょうけれども、理事会で諮るというよりも、その過程とかを確認したいと思います。それは理事会でやりましょう。

岡本(充)委員 ぜひお願いします。これは本当に極めて重要だと思います。

 もう一つ。使用可能施設は最大百七十施設だと言っているんです。発売初期は限定して供給するんだということを聞いています。しかし、百七十施設が使ったとすると、今度は逆に、年間一例しか使わないというと、やはり経験値が上がりませんよ。それは、集約してやっていく以上は、二例、三例、四例、五例やっていくというのが経験値を上げるということに、委員長だっておわかりだと思います。年間一例しかやらないのでは、経験値は上がらないでしょう。

 そういう意味では、経験値を上げるために二例、三例やるんですよ。二例、三例やった段階で、これはもう二百十六を超えるんです。使用可能施設数を百七十と言っておきながら、二百十六というのもこれは合理性がない。

 こういう側面でも、ぜひ委員長、なぜこの百七十なのか、ここは私はぜひ委員会に御報告いただきたいと思います。

 あわせて、大きな問題として私が気にしているのは、この後です。新聞記事も載せています。

 これは何年か前にもやったんです。製薬協が、透明性ガイドラインに基づいて各社がいろいろ公表しています。四ページです。アメリカにサンシャイン法という法律があるそうでありますけれども、一体どこの研究者にどれだけ原稿執筆料また情報提供関係費用が出ているのか、これはわからないんですね。各社を調べようと思ったら、名寄せするのがめちゃくちゃ大変でした。

 それで、名寄せするのも大変だし、今の各社をこうやって集めてこの数字をつくるのに厚生労働省は大変努力していただきましたが、新聞にも、期せずしてほぼ同じ日に中日新聞に載ったわけであります。総額で三千三百八十三億五千百万円、右下に書いています、結構大きいお金です。もちろん、この中には、研究開発としてやらなきゃいけないものもあると思いますが。

 一方で、例えば、ちょっと一部の先生を調べてみました。国立大学の先生で、二〇一六年分、私が名寄せしてみたら、十二社、百二十七件、およそ千七百四十万円の原稿執筆料をもらっている国立大学の先生が見えます。

 これが果たして適正なのか。百二十七回も学生にも講義していないと思います。百二十七回、お金をもらって製薬メーカーの講義に行って、一千七百四十万円もらっている。私がざっと調べた限りでも、少なくとも、およそ半分弱の方々、いろいろ調べましたが、そのうち十人を超える方が一千万円以上のお金をもらっている。みんな大学の先生です。そして、なおかつその中には、千五百万円以上もらっている人が五人以上います。大変大きな金額だと思います。

 こうした金額、原稿執筆料、これは前回、国立病院機構については、私、取り上げたことがありました。適正化は大分されたんだと思います。国立病院機構の先生は、影を潜めましたというか、見えなくなりました。

 一方で、今、大学病院、この実態で本当にいいのか。きょうは文部科学省に来てもらっています。ぜひ一回調査をするべきです。余りにも高額、しかも、自分の授業を一年間に百二十七回、教授が講義をしているのかどうかわかりませんが、やっている教授もいるのかもしれません。こういう話。

 中には本当に、一社から五百万、六百万のお金をもらっている教授もいます。これで、例えばがんのガイドラインをつくっているんです。今、私がお話をした方は、あるがんのガイドラインの編集のトップをしています。この方がつくったがんのガイドラインが、果たしてそうした製薬メーカーに影響を受けていないのか。千七百四十万円もらっているんですよ。下手したら、大学の教授の本俸よりも多いかもしれませんよ、国立大学ですから。

 これが本当に適正なのかということを文部科学省はやはり調べるべきだし、どうあるべきなのか考えるべきです。また、あわせて、私が調べたところ、私立大学の方が圧倒的にそれが多い。こういったことについても、どうあるべきか。

 国立病院は、さまざまな方法を使って適正化しました。必要なことを世の中に周知していくことは必要です。したがって、やめろと言っているわけじゃないです。余りにも高額なのはおかしいんじゃないか。一社から五百万、六百万もらってガイドラインをつくって、それで適正なガイドラインになっていると本当に言えるのか。

 例えば、厚生労働省は、薬食審の、審議会の委員会で議論するとき、議決するとき、それぞれ、どこかの会社からお金をもらっていたら、五十万円もらっていたら議決できないんですよ、五百万円もらっていたら審議に参加できないんですよ。

 こういうことを考えたときに、どうあるべきか、文科省はぜひ考えるべきだと思います。どうですか。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省といたしましては、各大学病院におきまして、まず本務に支障がないこと、教員の業務にですね、それから本務の信頼の確保に影響を及ぼすおそれがないことなどを定めました兼業規程というものがございまして、これは全ての大学病院で整備されていることを確認しております。

 例えば、ある大学病院におきましては、兼業について、上限期間や報酬の制限を設けるなどの規程を設けていると伺っておりまして、各大学におきまして、兼業が本務の公正な執行に影響を及ぼさないことや本務に支障がないことを確認するなどの取組を行っているというふうに伺っております。

 このように、教職員の兼業は各大学の規程に基づき運用されていると考えておりますので、私どもといたしまして、現時点で、兼業の観点からはこれ以上の対応は考えていないところでございます。

岡本(充)委員 百二十七回行って、五百万、六百万もらって、特に問題がない、こういう理解ですか。

 普通に考えたら、だって、ほかの教官たちは、行っていてもせいぜい年間十件以下ですよ、ほとんど。もっと言ったら、中央値は三から四ですよ。平均は一ですよ、年間一回ですよ。それを百二十何回行っていて、もっと言えば、一千九百五十三万円もらっている人は百三十二回行っている。一社から五百六十八万、二番目の会社から四百八十四万ももらっている。

 これで本当にいいんですか。どうあるべきか考えるべきじゃないですか。国立病院だっていろいろ取り組んだんですよ。なぜそんなに文科省は後ろ向きなんですか。

 ぜひ、ちょっと実態をまず調べて、どうあるべきか検討する、それぐらいは答弁してくださいよ。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 文科省といたしましては、国立大学病院長会議の自主的な取組の状況などを踏まえまして、例えば全国医学部長病院長会議などの関係団体における前向きな議論を促してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 実態ぐらい調べてくださいよ、この一千九百万とか二千万を超えるような人がごろごろいるかもしれないですよ。ちょっと一回、どのぐらいもらっているのか、調べてくださいよ。その実態を踏まえてちゃんと指導してくださいよ。

冨岡委員長 玉上審議官、今の実態把握を理事会に報告してください。(玉上政府参考人「はい」と呼ぶ)

 今答えられますか。実名とかは出ないけれども、どういう分布になっているのか。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 既に、国立大学におきましては、各大学のホームページにデータが公開されておりますので、それはすぐにわかるのでございますけれども……(岡本(充)委員「私立も含めて」と呼ぶ)私立は、今申し上げましたとおり、ちょっと病院長会議などともまたよく協議をしてまいりたいと思っております。(岡本(充)委員「だから、データを出してくださいと言っているんですよ、委員長が」と呼ぶ)じゃ、それはまた……(岡本(充)委員「出してくださいね。委員長の指示ですよ、出してくださいと言っているんですから」と呼ぶ)検討いたします。

冨岡委員長 検討じゃなくて、しっかり理事会に報告してください。

玉上政府参考人 はい、承知いたしました。

岡本(充)委員 じゃ、終わります。

冨岡委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 国民民主党、大西健介でございます。

 会期末まで一カ月を切りました。この国会、始まりは毎月勤労統計の問題で始まったんですけれども、ここに来てまた毎勤統計について誤りが見つかったというのは、先ほども尾辻委員からありましたけれども、非常に残念なことだというふうに思っています。

 特に、私はやはり対応について非常に残念だと思っていまして、皆さんのお手元に経過の紙、厚労省から出てきたものをお配りしています。

 ここにありますように、厚労省が気づいたのは五月十六日の夜、大臣への一報が二十日になっているんですけれども、確報値の公表を予定していた二十四日の前日の夜に、大臣が、公表がおくれることは遺憾であるとしつつ、対応についてはやむを得ないと判断をして、翌日の八時半の公表を見送った、こういう経緯が書かれております。

 先ほども尾辻委員からは、二十一日の日には参議院での集中審議があったじゃないかという話がありましたけれども、少なくとも、大臣が知られた二十日以降、衆議院の厚生労働委員会も二十一、二十二、二十四とやっているんですよ。特に二十四日については、前日の夜に公表の先送りを判断しているわけですから、二十四日の朝の理事会で少なくとも何か説明があってよかったんじゃないかと私は思います。

 私は、もっと早く、精査をしていますが実は間違いが見つかりましたということを理事会に報告していただきたかった、それが誠実な対応だというふうに思いますが、この点について大臣の御答弁をお願いします。

根本国務大臣 私も、五月二十日に一報を受けた際には、詳細を速やかに精査して報告するように、事務方に指示をいたしました。その後、五月二十三日の夜に報告があったわけであります。

 統計は正確性が重要であって、二十四日に予定していた公表には修正が間に合わないことが判明したことから、予定していた統計の公表をおくらせる対応については、遺憾ではあるがやむを得ないと判断いたしました。

 その上で、今委員から、二十四日の朝の理事会に公表の遅延を報告すべきだったとの委員の御指摘については、真摯に受けとめたいと考えております。

大西(健)委員 ぜひ真摯に受けとめていただきたいと思います。

 私は、間違っているのがわかっていて公表を強行しなかったこと自体は、前回の教訓が生きていると思っています。それはよかったと思っています。

 このことに関連して、ちょっときょうびっくりしたんですけれども、けさの西日本新聞に新たな報道が出ています。私も先ほど見たんですけれども、一部読ませていただきますが、政府関係者によると、このうち労働者数データ更新の影響は一七年後半に省内で非公式に試算され、伸び率を大きく押し上げる見通しが判明、酒光氏ら、この酒光さんというのは酒光一章元政策統括官ですけれども、酒光氏ら幹部にも報告されていた、省内には、世間に賃上げが急に進んだかのような誤解を与えるとの懸念の声もあったが、酒光氏らは改善策の検討は指示しなかったというと。

 つまり、厚労省内で上振れするということが共有されていたけれども、上振れすることがわかっていて公表している。まさにこれが今回の問題だったんじゃないですか。だから、上振れするということがわかっているのに、わかっていて、ある種、事実と異なることをあえて公表したということは私は大きな問題だというふうに思いますけれども、これについて大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

藤澤政府参考人 けさの新聞報道についての御質問でございますけれども、私も、新聞報道の内容につきましては、報道を見て知ったところでございます。

 それで、上振れというふうな記載がございますけれども、記事に書いてありましたようなことは、事実関係、改善策を検討せずといったような報道についての事実については承知をしていないところでございます。

 毎月勤労統計の事案につきましては、御承知のとおり、厚生労働省の特別監察委員会がことしの一月、二月に報告書をまとめておりますけれども、そこで厳正に検証していただいた結果が明らかにされているものというふうに認識をしているところでございます。

大西(健)委員 まさにその報告書と異なる報道があったから私は驚いているんですけれども、じゃ、この報道は誤報ということで、はっきりこの国会の中で答弁するということですか。

藤澤政府参考人 済みません。報道の詳細について承知しておりませんので、コメントを申し上げることは控えたいと思います。

大西(健)委員 これはけさあった報道ですから、また今までの話が覆る部分が私はあると思いますので、まさにさっき言ったように、今回、二回目のミスのときは、間違っていることがわかったから、精査するまで、影響がしっかり出るまで公表を差し控えていますけれども、こういうふうに、間違いではないけれども上振れすることがわかっていて出していたということは、今までここで議論をしていたこととは少し違う話が出てきていますので、これはまた引き続きしっかり議論させていただきたいなというふうに思っています。

 次に、話をかえまして、労働時間の過少認定の問題について伺いたいと思うんです。

 四月二十四日の本委員会で、私は、自宅から社用車を運転して取引先に直行したような場合、直行直帰のような場合、運転時間が一切労働時間としてカウントされないのは不合理じゃないか、こういう質問をさせていただきました。これに対して、大臣は、労働時間の認定について解釈をこれまでと変更したということはない、今後も適正に労働時間を把握して労災認定を行っていく、こういう御答弁をされました。

 しかし、実際には、こういう本来労働時間と認定されるべきケースで、それに反する取扱いというのが現に行われているんですね、この間、私が示したように。その原因というのは、まさに現在の労災認定基準において、どのような場合に労働時間として認定するかについて実務上の運用基準や認定方法がきちんと共有されていないというところに私は問題があるというふうに思っています。

 したがって、認定基準について、例えば過労死弁護団の皆さんは、認定基準の改定案について、具体的な提案として、こういう表を作成したらいいんじゃないかというような表を作成されています。例えばこういうものであったりとか、とにかく、今言ったように、実務の運用がこうなっているということを踏まえて、認定基準の見直しについて、私は、まずは専門検討委員会を開催すべきだと思うんです。直すか直さないかは専門検討委員会で議論してもらったらいいけれども、まず専門検討委員会を開いてほしいんです。

 というのも、例えば脳・心臓疾患の認定基準について言えば、二〇〇一年以来、十八年間改定がないんです。ですから、その間、医学上のいろいろな新しい事実とかも積み上がってきていますから、まずは労災の、労働時間の認定基準の見直しに関して専門検討委員会を開いていただきたい。このことを大臣に強くお願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の方から、前回の質疑との関係も含めて御質問がございました。

 個別の事案の関係については回答を差し控えさせていただきますが、労災の認定におきます労働時間につきましては、労働者が労働時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価できるか否かによって客観的に定まるものでございますけれども、労災認定に当たりましては、パソコンのログイン、ログアウトの記録でありましたり、会社への入退館の記録であったり、同僚等への聞き取りなどさまざまな方法によって独自に調査を行って、実際に働いた時間を把握することとしておるところでございます。

 こういった関係で、個々の労働者の労働時間の捉え方については多岐にわたるということから、その認定の方法自体を認定基準自体に明記するということはなじまないと考えております。

 ただ、委員からも御指摘がございましたように、今後も、労災請求がなされた場合、客観的な資料によって実際に働いた時間を把握して適正に労災認定を行うこと、そういったことで全国斉一的に適正に労災認定が行われるということは重要であると考えておりますので、私どももしっかり対応してまいりたいと思っております。

 また、委員の方から、脳・心臓疾患の認定基準についての見直しについても御指摘がございましたけれども、御指摘の点等につきましては、私どもも、医学的な知見というものについてはしっかりと収集をしていきたいと思っておりまして、そういった医学的な知見の収集を踏まえた上で、今後の対応というものをしっかり検討してまいりたいと考えております。

大西(健)委員 だから、今おっしゃっていただいたような医学的な知見だとか、いろいろな判例だとか、実務上の運用だとか、積み上がっているけれどもそれがうまく共有されていないんじゃないですかということを言っているので、ですから、専門検討委員会を開いてください。開くつもりがないのか、あるいは、場合によっては開くのか、どっちですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもとしましては、脳・心臓疾患等の認定基準のあり方については、しっかりと医学的な知見の収集を行うということがまず必要かと思っておりまして、その結果を踏まえた上で、今後の対応については検討させていただきたいと考えております。

大西(健)委員 さっき言ったように、脳・心臓疾患については十八年未改定なわけですから、十八年間で十分いろいろな知見が私は積み重なっていると思いますよ。

 問題は、だから、それをちゃんと専門検討委員会の場にのせて議論する、そういう段階に来ていると思いますので、ぜひ専門検討委員会ぐらい開いていただきたい。それで改定するかしないか、それはしっかり議論したらいいんです。だから、そこはぜひ強くお願いをしておきたいというふうに思います。

 次に、高度プロフェッショナル制度についてお聞きしたいと思います。

 大激論の末に鳴り物入りで導入した制度ですけれども、これまでの導入実績は何社あるのか、どういう仕事で導入されているのか、また、これは非常に数が少ないと思いますけれども、その導入が進んでいない理由についてどう見ているのか、お答えいただきたいと思います。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 高度プロフェッショナル制度についてでございますが、高度プロフェッショナル制度を導入する場合には、労働基準法第四十一条の二の規定に基づきまして、労使委員会による決議を行って、それで高度プロフェッショナル制度に関する決議届を労働基準監督署に届け出ることとされてございます。

 状況でございますけれども、今、四月末時点の届出は一件、対象労働者は一名、対象業務は、新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務でございました。

 高度プロフェッショナル制度につきましては、本年四月に制度の運用を開始したばかりということでございまして、今後とも、私どもとしましては、制度の導入状況について注視をしてまいりたいと考えております。

大西(健)委員 大臣、今局長から答弁がありましたけれども、一件ですよ。あれだけ大激論して導入したにもかかわらず一件ですけれども、これは、周知が不足しているのか、まだ間もないから一件なのか、あるいは要件が厳し過ぎるのか、それともニーズがないのか、大臣、どう思われますか。

根本国務大臣 今局長からも答弁がありましたが、本年四月に制度の運用を開始したばかりであって、これは制度の導入状況について注視していきたいと思います。

 事情はさまざまあるんだろうと思いますが、要は、高度プロフェッショナル制度というのは、新たな働き方の選択肢として活用が期待される一方で、長時間労働の歯どめがないといった指摘もあるところであります。まずは、真に働く者の働きがいや自由で創造的な働き方につながる制度として運用され、かつ、そのような制度をみずから希望する労働者のみに適用されなければならないという制度の趣旨が正しく理解されることが重要であると考えております。その上で、真に必要な方には制度を有効に活用していただきたいと考えております。

大西(健)委員 さすがに一件ですからね。ですから、今後注視していただきたいですけれども、本当に伸びないんだったら、こんなのはやはり要らなかったんじゃないかということにもつながりかねないと思います。ですから、そこはしっかりこれからも注視していただきたいと思うし、我々もこういう機会にまた質問させていただきたいと思います。

 次に、肝炎対策について伺います。

 日本肝臓病患者団体協議会を始め関係者の御努力によって、昨年の十二月から肝がん、重度肝硬変入院医療費助成制度が始まっていますけれども、これが当初の厚労省の助成見込み数、毎月七千二百人を大幅に下回る利用状況になっている。

 これについても、周知が不十分などさまざまな理由が考えられるんですけれども、やはり私は利用要件が少し厳し過ぎるんじゃないかというふうに思っています。特にがん患者については、四カ月以上入院に該当するケースというのは今まで出ていないと聞いていますし、重度肝硬変でも、四カ月以上入院というのに該当される方はかなり限られている。肝がんとか重度肝硬変で四カ月以上入院されるような重篤な患者さんというのは、四カ月を待たずして残念ながらお亡くなりになることが多いんじゃないかというふうに患者団体の皆さんから聞いております。

 この点について、厚労省はこの利用者数が当初の見込みと大幅に乖離していることをどう分析されているのか、お伺いをしたいと思います。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業につきましては、予後が悪く長期の療養が必要となる等のウイルス性肝がん、重度肝硬変の特徴を踏まえて、患者さんの医療費負担の軽減を図りつつ、肝がん、重度肝硬変の治療研究を促進する事業でございます。

 ただいまお話しいただきましたように、昨年十二月から開始いたしておりまして、指定医療機関での入院患者で、医療費が年間四カ月以上一定額を超えて高額であることなどを要件としてございます。この事業につきましては、本年二月に全都道府県で実際に事業を開始できたところでございます。

 御指摘いただきましたような、事業の利用実績が予算見込みを下回っている理由といたしましては、入院医療を実施する指定医療機関の指定がまだ十分に進んでいないこと、それから、患者への事業の周知が十分でないことなどが考えられるところだと思います。

 厚生労働省といたしましては、関係機関、団体、学会とも連携いたしまして、指定医療機関の指定の働きかけやわかりやすい説明資材の提供により指定医療機関の確保に積極的に取り組むとともに、医療機関に対しまして、患者さんへの事業の説明を行う担当者、部署を設定して患者に事業の案内を行うように働きかけること、あるいはホームページやSNSを活用した患者への周知を行うことなども進めて、更に必要な方が助成へつながるよう努めてまいりたいと考えているところでございます。

大西(健)委員 これについても、制度が始まったばかりだからとか、指定医療機関が少ないからとか、周知がまだ徹底していないからとかというレベルの話なのかどうなのか。さっきの高プロの一件の話じゃないけれども、大幅に乖離しているわけですよ。ちょっとの乖離じゃないんです、大幅に乖離しているんですから、その原因というのをちゃんと客観的に分析していただきたいということを強くお願いしておきたいと思います。

 同様に要因分析していただきたいのは、ウイルス検査の受検者数の地域間格差なんです。

 資料の次のページにつけておりますけれども、B型もC型も大体同様の傾向ですけれども、二十歳以上の人口比で見ると、二・五%程度の佐賀県に対して〇・五%に届かない奈良県、五倍の開きがある。この要因を厚労省としてはどのように分析しておられるのか、御答弁を願いたいと思います。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 ウイルス性肝炎は、感染してもほとんど自覚症状がございませんが、適切な治療を行わないまま放置すると、慢性化して肝硬変、肝がんといった重篤な疾患に進行するおそれがございますことから、厚生労働省としましては、地方自治体が実施する肝炎ウイルス検査を支援し推進しているということでございます。

 御指摘いただきました佐賀県につきましては、肝がんの死亡率が高く、肝炎対策に重点的に取り組んでございまして、肝炎ウイルス検査の受検率向上に向けて、医療機関、県の機関、イベント等でのリーフレット配布等によりまして受検勧奨を積極的に行っていると承知してございます。

 一方、奈良県につきましては、確認させていただきましたが、市町村における肝炎ウイルス検査についての関心や住民の周知、受検勧奨の取組が必ずしも十分とは言えない面があるとのことでございました。このため、奈良県では、肝炎ウイルス検査の周知を市町村に働きかけますとともに、県としても、みずから実施する肝炎ウイルス検査について、委託医療機関をふやす等の取組を行っているとのことでございます。

大西(健)委員 今のようによく分析していただいて、受検率が高いところのいいところをしっかり横展開していただきたいというふうに思います。

 次に、先ほど岡本委員からもあったキムリアの話なんですけれども、岡本委員からは、本当に二百十六人に見込みがとどまるのか、もっと結果として多くなるんじゃないかという懸念が示されました。

 それもそうですし、既に米国で製造販売承認されている薬の中には、例えばイエスカルタ、約四千二百万円、ラクスターナ、約九千五百万円というものもありますし、また、日米で製造販売承認申請中のゾルゲンスマという脊髄性筋萎縮症の薬は一回四億円以上、こういう超高額薬がこれからもどんどん保険適用される可能性があるということであります。

 こういう超高額薬を使用した方が出た場合に、健保連の中では、高額医療交付金交付事業という健保連の中での助け合い事業があって、医療費についてはそういうものがあるそうなんですけれども、一方で、前期高齢者納付金の計算式の中で、各保険者の前期高齢者の給付費に調整率というのを乗じてそれを計算するという方法がとられている。したがって、超高額薬によって給付費に大きな変動が生じた場合に、その結果、小さな健保組合が破綻のリスクにさらされるおそれがあるというふうに指摘をされています。

 この点、給付費に大きな変動が生じた場合に、前期高齢者納付金の負担が過度にならないような何らかの仕組みが必要だというふうに私は思いますけれども、この点、厚労省の答弁をお願いしたいと思います。

樽見政府参考人 お尋ねの前期高齢者の財政調整は、高齢者医療確保法の規定に基づきまして、六十五歳から七十四歳までの前期高齢者の医療費を国民全体で支えるという趣旨でございます。前期高齢者の多くは国民健康保険に加入していらっしゃいますので、保険者間での負担の不均衡を是正するという観点から、健保組合などに納付金というものを負担していただくということになるわけでございます。

 御指摘のように、計算の結果として、健保組合の負担が過重にならないようにということでは既に幾つか手だてを入れておりまして、調整対象となる一人当たりの前期高齢者給付費というものに上限を設けて計算する、計算する上で一人当たりの金額が非常に大きいところは外すということにしておりますのと、あと、前期高齢者納付金の負担の重さ、それから伸びに着目をした円滑化補助金という形で助成を行っております。ですから、御指摘の点については、この伸びに着目するということだと思います。

 現在の制度は、団塊の世代の異動に着目をした伸びの計算という仕組みでやっておりますので、それ以外の要素について、納付金が急増する保険者に対して円滑化補助金の枠組みを活用して何らかの支援を行うことはできないかということは考えられるところでございますので、これは健保組合などと相談をしながら検討していきたいと考えております。

大西(健)委員 最初に言っていただいた額の上限については、国保も入れた全部の平均との比較ということなので、それでもぼんとはね上がることがあるというふうに聞いていますので、後に言っていただいた、例えば円滑化補助金を使ってしっかりこういう対策をとっていただかないと、これから超高額薬の保険適用がどんどん進んでくると、それによって破綻する健保が出てくるというおそれがあるんじゃないかというふうに思っています。

 次にもう一つ、健保連が、このキムリアの保険適用を受けて、公的医療保険の役割というのは、個人が負担し切れないリスクをカバーするところが公的医療保険の役割なんだ、だから、こういう超高額薬についても、これは保険適用を容認して、健保連としては仕方がない、ただ、その分どこかで調整する必要があるだろう、調整というか、ほかのところでやらなきゃいけないことはあるんじゃないかと。それは、軽症疾患用の医薬品については、例えば保険の給付範囲から除外するとか償還率を変えるとか、こういう見直しが必要じゃないかということを健保連さんは見解として発表されていますけれども、この点について厚労省はどう考えておられるのか、御答弁いただきたいと思います。

樽見政府参考人 御指摘の健保連の主張でございます。まさに、ことしの五月に、健保組合の「「保険給付範囲の見直し」に向けた意見」ということで発表されておりまして、軽症疾患用医薬品について、スイッチOTC、市販薬への転換というものを更に推進すると同時に、医薬品の重要度に応じて、保険償還率に段階を設定している諸外国の事例も参考にしながら、保険給付範囲からの除外や償還率変更を実行すべきであるというふうに言っておられます。

 医療保険の負担というものがどんどん大きくなるということになりますと、これはまさに国民皆保険、それを支える方の保険料というところにも影響してくることになりますので、給付の効率化あるいは無駄の排除ということにまずしっかり取り組まなければいけないというふうに思います。それとあわせて、給付の効率化という中を具体的にどういうふうに考えていくのかということについては、医療保険の機能ということをあわせて広く議論していく必要があるだろうというふうに思っているところでございます。

 健保連が御指摘の薬剤自己負担の引上げということに関しては、経済・財政計画の去年の工程表におきまして、「諸外国の薬剤自己負担の仕組みも参考としつつ、市販品と医療用医薬品との間の価格のバランス等の観点から、引き続き関係審議会において検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる。」というふうに書いてありますので、これに基づきまして、私どもとしては引き続き検討していきたいと考えています。

大西(健)委員 時間がないので次に行きますけれども、高齢、障害共生サービスについて聞きたいんです。

 障害のあるお子さんを持つ親御さんから、親亡き後の生活への不安という声がよくありますけれども、もう一つは、高齢になった親御さんが障害のあるお子さんと一緒に住める場所がない、こういうお声もよく耳にします。

 資料の最後につけましたけれども、これは「アースくんのおうち」という名古屋市中村区にある施設なんですけれども、一階に就労支援B型の事業所があって、二階が住宅型有料老人ホームになっていて、そこの相部屋には障害のあるお子さんと高齢の親御さんが一緒に住めるようになっている。そして、老人ホームの利用者向けの食事提供だとか家事手伝いの部分をこの一階のB型が担っている、こういうサービスです。

 私は、これは一つの高齢、障害共生型サービスの形だと思うんですけれども、このように、障害のあるお子さんが高齢の親御さんと一緒に住める共生型サービスの整備をもっと進めるべきだというふうに思いますが、この点について厚労省のお考えをお聞きします。

橋本政府参考人 同一の施設の中におきまして障害福祉サービスと高齢者向けの介護保険サービス、こういったものを提供する取組といいますのは、共生型社会を構築するという観点からも有意義なものというふうに考えております。

 ただいま委員から御紹介がございましたような取組というのは、地域の実情を踏まえて、各事業者の創意工夫のもとで進めていただいていると思います。

 厚生労働省におきましては、平成二十八年の三月に、地域の実情に合った総合的な福祉サービスの提供に向けたガイドラインというものを発出いたしまして、人員や設備の兼用ということにつきまして運用上対応可能な事項を明確化いたしました。また、この中で、高齢者や障害者、子供たち、そういった福祉サービスを総合的に提供する際に利用が想定されるサービスを整理してお示ししております。

 引き続き、こういったことを通じまして、地方自治体や事業者のニーズを踏まえながら取組を進めていきたいと思います。

大西(健)委員 ちょっと時間がないので最後の質問に移ります。

 自民党さんの中に、最低賃金の一元化推進議員連盟というのが昨年の二月に発足したというふうに聞いていますけれども、三月七日の議連の会合にきょうもお越しの坂口労働基準局長と当時の武田賃金課長が呼ばれて、賃金課長が説明の中で最賃の水準と若者の流出入の相関の高さを指摘して、海外の制度を紹介しながら、全国一律にするには適用除外も考えないといけないと発言した、また、賃金課長は会合後、記者に囲まれて、地域別最賃の全国一律制よりも、特定最賃の全国適用の方が影響は小さく現実的だと説明したというふうな報道があります。

 そこにいらっしゃった坂口局長に確認したいんですけれども、賃金課長がこういう発言をしたというのは事実でしょうか。

坂口政府参考人 お答えを申し上げます。

 今議員の方から御指摘がございました、三月七日に開催されました自民党の議連の中のやりとりの中で、当時の賃金課長から、全国一律の産業別最低賃金を設けることや最低賃金の適用除外について言及したのは事実でございます。また、御指摘の、記者の方への御説明ということについては、私自身はその時点で把握しておりませんけれども、その後報道がなされ、当人に注意をする中で、そういった発言があったということについては承知をしております。

 ただ、いずれにしましても、当時の賃金課長の発言は、個人的な見解を述べたものということでございます。

大西(健)委員 時間が来ているので終わりますけれども、当初、この後に何か厚労省でも有識者検討会を設けるみたいな報道が出て、やはり設けませんみたいな話だったんですけれども、二〇〇五年にも最低賃金制度のあり方に関する研究会というのが厚労省にありましたから、とにかく、どうするかは別にして、私は検討会をつくって議論したらいいんじゃないかというふうに思います。

 そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。

冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 早速ですが、資料の1を見ていただきたいと思います。二月三日付の朝日新聞です。

 子供の死亡登録・検証制度、いわゆるチャイルド・デス・レビューについて、二月二日、都内で国際シンポがあり、子の死亡例、四人に一人は防げた可能性があると発表があったといいます。

 本文を少し読みますが、「CDRは、子どもが死亡した時、その数をすべて把握し、予防できた可能性があったかどうかという観点から複数の機関と専門家が検証し、同じような死を可能な限り減らそうとする取り組み。欧米各国では実践され、成果を上げている。」と書いてあります。

 日本小児科学会の沼口医師らのチームで二〇一四年から二〇一六年の十八歳未満の死亡事例約二千件を分析した、中には、乳幼児突然死症候群、SIDSなど、不詳とされているものが二百八十五件含まれていたといいます。

 今回、附則に子供の死因について情報収集、管理、活用等の仕組みを検討する旨盛り込まれた死因究明法案が参議院から本委員会に付託をされております。児童虐待防止の法案審議でも必要性が議論されました。

 大臣、このチャイルド・デス・レビューの具体化を急ぐべきだと考えますが、いかがでしょうか。

根本国務大臣 委員御指摘のように、死因究明推進等推進基本法案の附則、あるいは二十九年の児童福祉法改正の附帯決議で導入を検討することとされておりますし、成育基本法においても規定をされております。

 厚生労働省としても、予防可能な子供の死亡の再発防止を図るために、その導入について検討する必要があると考えています。このため、平成二十八年度から、チャイルド・デス・レビュー制度の確立に向けた調査研究を実施しております。

 また、平成二十九年十月には、省内での検討を進めるため、関係部局による省内プロジェクトチームを立ち上げ、有識者からのヒアリングや論点整理を進めております。

 今後とも、このような取組を更に進めて、制度の導入について検討していきたいと考えています。

高橋(千)委員 比較的はっきりとした答弁であったかなと思います。省内でも検討を始めている、それから調査研究事業も立ち上がっているという報告でありました。

 今、シンポジウムのことを紹介したように、小児科学会の中に子どもの死亡登録・検証委員会というのが既に立ち上がっていて、パイロットスタディーの報告は、二〇一六年に既に群馬、東京、京都、北九州のデータをもとに報告されているんですけれども、その時点で、予防可能性が中等度以上は全小児死亡事例の二七・四%あった、しかも、先ほど述べた不詳死に関する再評価で、四十六例のうち真に原因不明と判断された例は五例のみであった、四十一例では限られた情報の中で真の不詳死とするには解決すべき疑義や不備が存在していたというふうに指摘をされているのは非常に重要だと思っております。

 このためにも、きちんと全ての子供の死亡事例について登録をし、検証して予防可能性を高めていく、防げる死であったということも十分に指摘をされていると思いますので、重ねて進めていただきたい、このように思います。

 そこで、きょうは、保育施設の死亡事故について質問したいと思います。

 資料の2を見てください。昨年七月の教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議の年次報告であります。

 上の段の円グラフは、睡眠中の死亡事故が全体の七割であることを示しています。そのうち、よく言われるうつ伏せ寝は十一件なんですけれども、残りも体位不明などとあって、別にあおむけが多いという意味ではないわけですね、不明ですから。まず、それが言えると思います。

 それから、下の段は死因別です。これは、いわゆるSIDSは二件にとどまっています。窒息及び溺死、各一件。だけれども、最も多い六六%はその他なんですね。その他の内容については、不明、司法解剖中、SIDSの疑いとあります。

 これを考えてみたいんですけれども、ちょっとめくっていただいて、資料の3、これは後でもう一回やりますけれども、赤ちゃんがすやすやしているポスター、突然死を減らしましょうというポスターです、その後、ガイドラインが出てくるんですけれども。この中で、乳幼児突然死症候群の診断は剖検及び死亡状況調査に基づいて行う。フローチャートを見ていただいても、法医解剖又は病理解剖、いずれにしても解剖する必要があると指摘をしている。やむを得ず解剖がなされない場合及び死亡状況調査が実施されない場合は不詳とする。

 言いたいのは、結局、やむを得ず、要するに体制が整わずに原因がわかっていない部分も多いのではないかということなんです。

 SIDSの定義並びに診断の手引作成に当たった名古屋大学の戸苅、加藤両氏らによれば、一般医師を取り巻く諸般の事情と、その受皿である監察医制度が全国レベルで普及されていないこともあって、一部の大都市を除いては実際に機能していないのが現状である、その結果、我が国では衛生統計学的にも本疾患の実数の把握すら困難な状態にあるのであると指摘をしています。

 改めて、この指摘を受けとめて、伺いたいんです、その他が多いのはなぜか。こうした監察医の体制といった事情は、今言われたような事情が反映していると思われますが、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、子供たちが安全で質の高い保育を受けられる体制を整えることが重要でございます。御指摘いただいておりますとおり、保育施設等で重大事故が発生した場合には、事故の再発防止のための事後的な検証に資するように国へ報告することとなっておりまして、内閣府のホームページに事故情報データベースを掲載いたしますとともに、年次報告を取りまとめております。

 配付していただいておりますけれども、御指摘のとおり、三十年七月の年次報告によりますと、二十七年から平成二十九年における保育所等での死亡事故三十五件の死因別の内訳は、SIDS二件、その他が二十三件と最も多くなっております。なお、その他の中には、不明のほかに、司法解剖中、あるいはSIDSの疑いも含まれております。

 また、御指摘いただいておりますけれども、厚生労働省といたしましては、正確な診断に資するよう、平成二十六年にSIDSの診断ガイドラインを策定いたしまして、乳幼児の鑑別診断を行う際は、SIDSと窒息又は虐待とを鑑別するために的確な対応を行うことを求めております。

 また、監察医制度でございますけれども、これは、犯罪性はないと判断されたが死因不明の死体につきまして、法医学の専門家である監察医が検案、解剖して死因を明らかにすることにより、公衆衛生の向上等に資することを目的とする制度でございまして、現在、東京二十三区、大阪市、神戸市が同制度を設けております。他方で、監察医制度のない地域では、警察から嘱託を受けた医師が死体の検案を実施している、こういうような現状であるというふうに認識しております。

高橋(千)委員 今の答弁は、私が読み上げた指摘のように、本当に一部の都市でしかそういう体制が整っていないのだということだと思います。ですから、これは別に子供の問題に限らず、監察医制度の体制が不備だということは指摘をされている問題だと思うんですが、これを整えていくことと同時に、やはり、そうであればあるほど、死因を単純に決めつけてはいけないということが更に言いたいわけなんです。

 もう一度資料の3、赤ちゃんすやすやのポスターに戻っていただきたいと思うんですが、十一月がSIDS強化月間ということで、それをアピールするポスターなんです。「睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう」「睡眠中に赤ちゃんが死亡する原因には、乳幼児突然死症候群という病気のほか、窒息などによる事故があります。」とあります。SIDSとは、続けて読みますが、「何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なります。」と強調しています。本当にそうでしょうか。

 私自身も、二〇一〇年ごろから何度か具体の死亡事故を取り上げてきました。これまで、保育園側が突然死だ、SIDSだと主張すれば、病死だから園側の責任はないとして、保護者側と死因や責任の所在を争う事件が幾つもあったと思います。

 現在はどうなんでしょうか。知見が積み上がってきました。今は、うつ伏せ寝による窒息死もあると認めているのでしょうか。もしそうなら、どのくらいあるのか、お答えください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほど、SIDSの診断ガイドラインにつきましては、平成二十六年と申し上げたかもしれませんけれども、平成十六年でございます。訂正いたします。

 今の御質問でございますけれども、保育施設等で発生した事故につきましては、死亡事故や治療に要する期間が三十日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故については国へ報告を行うことといたしております。

 この報告の際でございますけれども、SIDSにつきましては医療機関等での確定診断が出されたときのみ記載することとしておりまして、SIDSの疑いの場合はその旨を区別して報告することとしております。疑いの場合には、死因としてはその他に分類をいたしております。したがいまして、これによりまして、保育施設で死亡事故が起こった場合でございますけれども、確定診断がなければ死因としてSIDSを主張することは困難になっているものと考えております。

 また、死亡事故等の重大事故が発生した場合でございますけれども、地方自治体におきまして事後的な検証も行うことといたしております。SIDSや死因不明とされた事例につきましても、事故発生時の状況等につきまして検証を行うことといたしております。

 今後とも、死亡事故等の報告、検証を続けますとともに、保育関係者に対しまして、先ほど御指摘がありましたけれども、毎年十一月のSIDS対策強化月間等を通じまして、正しい知識の普及を進めたいと考えております。

 なお、重大事故が発生した場合の国への報告の仕組みが整備されました平成二十七年度以降でございますけれども、発生時の状況がうつ伏せ寝の状態だった事例で、死因が窒息とされた事例は報告をされておりません。

高橋(千)委員 おりませんという答弁でありました。だからおかしいと言っているんです。

 強化月間をやるのは構いません。だけれども、睡眠中、うつ伏せ寝は気をつけてねと言っておきながら、これは病気だとなぜ言い切れるのかということを問題にしているんです。

 これは本当に大事なところで、大臣に伺いたいと思うんですけれども、これは厚労省にも大いに責任があると思うんですね。施設側にはもうマニュアルがあるんですよ。乳幼児突然死症候群ですと言えば、警察も行政もフリーズしてしまって、施設側の責任が問えなくなる。

 赤ちゃんの急死を考える会などが、行政が本来やるべき調査をしてくれないためにみずから保育者からの聞き取りをするなどして真相を究明し、国にも働きかけて、認可外の施設からも報告書をとることや検証委員会を設置させる、そうやって動かしてきました。

 私が二〇一〇年三月に取り上げたのは、大臣の地元福島県郡山市の無認可保育園での一歳女児、りのちゃんの事件です。私は、本委員会で、直接かかわった保育士さんが証言した陳述書を読み上げました。うつ伏せ寝にして、その上にバスタオルをすっぽりかけて、厚手の毛布で頭の上から足先まで覆って、その上、円柱形の重たい枕を二つもおもしにしたんです。証言では、副園長から、警察が調べに来たら、五分に一回は様子を見ていたと言いなさい、横向きになっていたと言いなさいと指示されて、うそをつけと言われたことで、もう本人はショックで、ぐあいが悪くなったんです。

 でも、結局、仕事をやめたけれども、勇気を持ってこのことを証言してくれたんです。だから、この事件は、一審で勝訴し、二〇一五年三月に、仙台高裁で確定しています。突然死ではなく、うつ伏せ寝による窒息死であると確定をしているんです。先ほど事例はないと言いましたが、裁判では確定をしています。

 さらに、資料の一番最後のページを見てください。最後のページというか、ごめんなさい、最後、二枚なんですね。

 国民生活センターが事例を紹介しています。昨年八月に公表した、認可外保育施設での乳児の窒息死亡事故。この事件は、亡くなったのは生後四カ月の男の子で、お姉ちゃんもいて、二人でお試し保育をやって、お試し保育の後、正規に預けられて、一週間たって亡くなったんです。

 一審では、死亡の原因はSIDSによるものとして、請求は棄却されました。しかし、控訴審で大阪高裁が、これは窒息死だと認定をしたんです。実証実験をやって、園側は、これは枕の専門店の枕なんだからそんなはずはないと言うんですけれども、柔らか過ぎて、実験をすると二・五センチも顔が埋まるんです。なので、フェースダウン、窒息死と認定をした。事実を詳細に検討した上で死因を窒息死と判断した点において、参考となると評価をしている。まさに国民生活センターが参考となるとして裁判例を紹介している、こういうこともあるんですね。

 こうした裁判例も積み重なっている中、一方的に突然死だと決めつけることはもうできない、うつ伏せ寝を放置したことによる窒息死もあるということは認めますよね。大臣、お願いします。

根本国務大臣 子供たちが安全で質の高い保育を受けられる体制を整えることが重要であります。保育施設などで重大事故が発生した場合に、事故の再発防止のための事後的な検証に資するように国へ報告することになっております。内閣府のホームページに事故情報データベースを掲載するとともに、年次報告を取りまとめております。

 我々は、SIDSに関する調査研究や普及啓発活動などの取組を進めていきたいと思います。例えば、平成三十一年度に開始することにしていますが、我が国の至適なチャイルド・デス・レビュー制度を確立するための研究において、日本での至適なCDR制度を目指して、チャイルド・デス・レビュー制度を目指して、多機関が連携した登録、検証システムの構築とデータ収集及び評価の検討を行っておりますので、先ほども省内でプロジェクトチームを立ち上げて論点整理を進めているということを申し上げましたが、このような取組を更に進めて対応していきたいと思います。

高橋(千)委員 厚労省も、本当に真面目に検討会をやってきたんですよ。二〇一五年五月十二日の第五回の重大事故の再発防止策に関する検討会では、赤ちゃんの急死を考える会からプレゼンがあったんです。さいたま市の認定施設で一歳七カ月の長女を亡くした阿部さんが報告をしています。

 さいたま市は、最初は調査しないと言った。でも、その阿部さんたちの訴えに応えて、今度はお昼寝中に抜き打ちの立入検査をする、そこまで市を変えたんですよ。そして、こうした事件にたくさんかかわってきた寺町東子弁護士が具体例を四例紹介して、参加者一同、胸を痛める、こんなことがあるのかと驚きを隠せなかった。

 私が一番驚いたのは、外傷があって、顔が変わっていて虐待が疑われるような事案でさえも、SIDSだと施設側が平気で言い逃れをしてきたんだと。当然、これは実証されて、そうじゃないということがわかるわけなんですけれども。だからこそ、実効ある指導監督体制や第三者による検証委員会が必要なんだということを重ねて指摘したい。

 大事なことは、保護者自身が言いたいのは、あんな施設に預けた自分が悪いとみずからを責めています、だからこそ、きちんと検証してほしいし、犯人捜しだとか、保育者の責任にしたいとか、裁きたいとかそういうことではない、何があったかを知りたいんです。その声に応えていただきたいと思います。

 資料の5を見ていただくと、事故発生時の担当職員の動き、一番多いのが赤で、至近距離で対象児を見ていたというのが一応多いんですけれども、三割くらいは離れていて見ているとか、見ていなかったのが二五%もあるんですね。また、右側を見ると、ほかの職員は、一番多いのが、見ていなかったです。六五%、七割くらい。しかも、その見ていなかったの内訳を見てください。担当以外の職員がいなかったと。見ているも何も、職員一人だったということなんです。これを本当にどう見るか。

 今、深刻な人手不足が言われています。先ほどの大阪の事案も、一人は勤めて一カ月目、一人は六カ月、いずれも無資格者です。間仕切りがあるのに、そのうち一人は離乳食をつくっていて、当然、一人しか手が回らなかったんです。だけれども、認可外保育施設であっても、指導監督基準では、保育者は二人を下回ってはならないとあります。そうですよね。だとすれば、こんなことは絶対あってはならないんです。どんなに人手不足で大変だといっても、必要な体制をつくらなきゃいけない。そのために国がきちっと支援をしなければならないんだということ。

 もう少し問いがあったんですけれども、残念ですが、そのことを指摘して、時間が来たので、終わりたいと思います。

冨岡委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 きょう、先ほど他党の先生からも御指摘がありましたが、私は、きょうは、中央省庁の水増し問題の発覚後の離職者についてのお話を少しさせていただきたいと思います。

 中央省庁の雇用水増しの問題が発覚した後に、二十八行政機関で昨年から新たに採用した障害者二千五百十八人のうち十六機関の百三十一人が既に離職したということが先週の五月三十日に参議院の厚生労働委員会で御答弁がありまして、ニュースにもなっております。

 これを私は特に糾弾するつもりもなくて、この数字が物すごくひどいということも言い切るつもりもなくて、私の立ち位置を少し先に説明させていただきたいなと思うんです。

 この四千名を新規に採用するという問題については、私も、法案質疑の際にも、また参考人質疑の際にも取り上げてお話しさせていただいたんですけれども、不正計上があって、約四千人を採用するというのは、人数的には倍になるというのはかなり大きなプロジェクトであるという認識を持った上で、ありとあらゆる手をやはり尽くしていただきたいという思いの中で、そもそも、数字を合わせて、いわゆる雇用率、パーセンテージを合わせにいくのではなくて、国民の信頼を取り戻すということが本旨でありますから、その中で、今回、こういう数字が出ておりますところを、少し御見解を突っ込んで聞いていきたいなというふうに思っております。

 まず最初に、この百三十一人の離職者数について、想定されていたものかどうかということと、それから、この離職者数を多いと捉えるか又は少ないと捉えるか、この御見解をまずいただきたいと思います。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、各府省の採用計画に基づきましてことしの四月一日までに採用した人数の合計は、雇用率のカウントで二千七百五十五・五人、実人員で二千五百十八人となっておりまして、これらの方々の職場への定着状況を各府省に調査をした結果が、先ほど御紹介もいただきました、各府省の離職者数の合計が実人員で百三十一人ということで、定着率という面で見れば約九五%の方々が定着をしている、こういう状況がわかったということでございます。

 私どもとしては、離職率は可能な限り低い方が望ましいと考えておりますけれども、参考となる目安としては、例えば、二〇一七年、一昨年の高齢・障害・求職者雇用支援機構が行った調査研究によりますと、障害者求人によって民間企業に就職した方の職場定着率というのを時間を追って見ているものですが、一カ月後で九三・九%、二カ月後では九一・〇%となっているというような状況がございますので、これが一つの目安になるかなというふうに思っているところでございます。

 ただ、私どもとしては、やはり、今回、離職した方が出ているということには変わりはございませんので、まず、出先機関も含めまして多くの障害者を採用した機関で相当数の離職者の方が出ているとか、あるいは、離職者自体は少ないけれども離職割合が一割を超えるような機関もあるということを踏まえまして、今後、定着に向けての私どもの取組として、まず、各府省に対してヒアリングをしっかり行う、それから、労働局やハローワークから出先機関に対して訪問指導を行う、そしてまた、六月一日時点の雇用状況の通報にあわせまして、特別な調査、離職理由の確認であるとか満足度アンケート調査を図って、定着に関する問題、課題を把握するといったことをこれからしっかりとやってまいりたいと考えているところでございます。

藤田委員 非常に真摯な御答弁をありがとうございます。よくわかりました。

 今、百三十一人離職されたということで、今後も退職される方はないとは言えないんですけれども、例えば、それで減った分というのは、そもそも最初に計画されていた四千名から減るわけですから、その分、穴埋めとして、新規採用枠を更にふやすという認識でよろしいんでしょうか。

土屋政府参考人 もともと、今回の採用の取組は、昨年六月一日現在において法的雇用率を達成していない府省について、障害者雇用促進法等の規定に基づきまして、ことし一年間の採用計画を策定して、本年末までに達成へ向けて取組を実施しているというものでございます。

 したがいまして、今お話のあったように、離職した方が出てきた場合には、その状況も踏まえて、法定雇用率の達成に向けて採用し、また定着の支援に取り組む必要があるというふうに考えております。

 なお、各府省では、計画に基づいて、人事院の統一試験のほかに、各府省ごとの常勤採用あるいは非常勤採用などの積極的な採用に取り組んでおるところでございますし、また、採用した障害者の定着に向けては、責任者を配置し、また相談窓口を整備する、そしてまた個々の障害者の方をサポートする支援者を配置したり委嘱するなどの取組によって職場環境の整備に取り組んでいるところでございますので、私どもとしては、各府省の採用、定着に向けた取組に対して最大限積極的な御支援を申し上げたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 ということは、例えば、仮に、最悪の場合、大量に離職してしまうことが今後あったら、その分穴埋めで更に採用枠をふやすということやと思うんですね。ということは、やはり離職率をいかに下げていくかというのがすごく大きな問題だと思うんです。

 その中で、この定着率を上げるということですけれども、この目標設定みたいなものはそもそもあるのか、又は、あるとしたら、どのような根拠で設定されているものなのかを教えてください。

土屋政府参考人 各府省におきます状況、あるいは全体の状況として、離職率のようなものについて特段の目標設定は行っておりませんが、先ほど申し上げましたように、離職の状況としては、可能な限り離職のないようにしていくことが望ましいという考え方のもとでこれからも取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 そのためには、やはり各府省の採用や定着に関する状況をしっかりと把握していくということだと思っておりまして、先ほど申し上げましたような各府省に対するヒアリングや特別な調査をして、採用、定着をめぐる課題を把握し、分析していくというようなことに取り組んでいきたいと思っていますし、また、それを踏まえた支援策というのをしっかりと検討してまいりたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 今、先ほどからの御答弁の中で、ちょっと、私が通告した次と次ぐらいの質問の内容も含まれていたので、その前提で、私、レクのときにも結構ディスカッションしたんですけれども、この離職率を下げていく中で、徹底して現状も把握した上で必要な支援をやっていくというのは、まさにそのとおりだと思うんです。

 であるならば、やはり、先ほどの離職率が多いか少ないかの議論になったときに、いわゆる民間の数字と比較したらそこまで悪い数字じゃない。だから、もしかしたら、メディアなんかは離職した人数が百三十一人というのを批判的に書くということもあると思うんですよ。でも、それは、根拠を持って、こういう離職率の目標設定があって、それに対して、ゼロにすることは現実的に多分物すごく難しいことでしょうから、退職される方をできるだけ少なくするということを努力している、その根拠はこうであるということを私は示すべきだと思うんですね。

 その中で、私がちょっと一つだけやはりどうしても納得いかないのが、過去のデータをさかのぼって整理するということをやる気がないということがあるんですね。それはレクのときにもお話ししたし、あと、前の質疑のときにも出てきたわけです。

 いわゆるその他の民間企業と見比べて、その退職率、定着率がいいのか悪いのかということもそうですけれども、やはり過去の毎年の推移だったりとか傾向みたいなものを分析して新たな対策を講じていく。特に、今回に関しては、倍増させるという、採用計画でいったら、普通に考えたらちょっとむちゃな数字をやり切るわけですから、関係しているスタッフにはよほどの気持ちを持って臨んでいただかないといけない事案だと私は思っているんです。

 この過去の採用関連のデータ、そんなに難しいものでもなくて、いわゆる総在籍数から新規採用、離職者があって、離職率又は定着率、これを厚生労働省はもう出してはりますけれども、民間の定着率みたいなものとか、どの障害の分類の方がどれぐらいかみたいなものはもう分析されて出しているわけですから、自分のところの省庁であったり中央官庁でできないわけがないというか、これはぜひさかのぼってやっていただきたいというふうに思っているんですけれども、そのあたりの御見解はいかがでしょうか。又は、できないとしたら、その理由は何でしょうか。

上野大臣政務官 各府省における障害者の採用関連データについて、毎年六月一日現在の任免状況通報書に計上されている総在籍数、これは雇用障害者数ですけれども、及び新規採用数については、過去にさかのぼって把握、分析をすることが可能であります。

 その上で、不適切計上の対象となった障害者と適正に計上される障害者とを過去にわたって区別して整理し直すということは、多くの時間と労力を要するものであります。そのため、なかなか現実的には困難ではないかというふうに考えているところであります。

 今後は、本年一月一日を始期とする採用計画に基づく採用状況等について、適切にフォローアップをしていきたいと思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 というお話をレクでもいただきました。いただいたんですけれども、やはりちょっと納得いかないというか、不適切な計上があって、そのデータの抽出を整理するというのが手間的に大変だというのが見解だと思うんですけれども、これは本当に、私、障害者の事業にかかわっているので、この問題にかなり思い入れがありまして、やはり、民間のいわゆる労働市場を半ばゆがめてでも大量採用を一気にやっているわけですから、成功させてもらわないとちょっと浮かばれないというのは思いとしてあります。

 その中で、異常なほど退職者が仮に出た場合に、それが妥当だったのか、妥当な数字なのかどうか、それからその対策はしっかりと打てていたのかどうかが仮に問題になったら、多分、過去をさかのぼれという話になると思うんですよ。

 又は、違う視点で、指針の中でも、民間でノウハウがあるアドバイザーの方とかを外部から入れたりして、実際にそのアドバイスのもとに適切な職場環境を整えていくみたいなことをやっていくという指針もありますけれども、外部の方は、普通に考えたら、民間でやっておられたら、今までの傾向はどうだったとか、今まで官庁で起こり得る問題はどういう傾向があるのかということを知った上で、じゃ対策はこうしましょうというのが当たり前の発想だと思うんですね。

 ですから、これはちょっともう一度、官僚の皆さんと話をしていてもこれはそう答弁するしかないので、あえて政務の方にお答えをお願いした事案なんですよ。政治的意思でぜひこれはやっていただきたいなというふうに、もう一度お願いします。でなければ、適切に今後の対策とかというのを定量的な分析がないままに進めるのは逆に危険なことだなというふうに思いますので、ぜひともそれはもう一度ちょっと検討していただけたらと思います。

 それから、その流れの中で、この四千名の採用に関しては、倍増させるという採用に関しては、その指針を出したことについては妥当な数字だったというふうに改めて考えておられるか、御見解をお願いします。

上野大臣政務官 平成三十年の六月一日現在で法定雇用率を達成していない二十八府省が、本年一月一日を始期とした一年間の採用計画を作成し、現在、達成に向けて取組を進めているところであります。

 法定雇用率の達成等のための取組については、関係閣僚会議における基本方針及び基本方針に基づく対策のさらなる充実強化のための取組方針に基づき取り組んでいるところであります。

 まずは関係法令に沿ってこの取組を進め、進捗状況や課題について関係閣僚会議等でフォローアップをしながら、政府一体となって取り組んでいくということであるというふうに思っています。

 この取組を進めるに当たっては、障害者の採用が単なる数合わせとならないように、個々の障害者の希望と能力に応じた活躍しやすい職場づくりを推進する必要があり、厚生労働省としても、各府省の取組を最大限支援してまいりたいと思います。

藤田委員 なかなか、その四千名が妥当かどうかというのを直言するのは難しいのはわかるんですけれども、この問題に関しては、実際に法案ができて現場が走り出します、その中で四千名の採用があって、これはぜひとも、やはり最大限配慮した上で成功させないといけないと私自身も問題意識を持っていまして、そこについては私もちょっと注視していきまして、引き続き問題意識を持ってやっていきたいと思います。

 時間になりましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 社会保障を立て直す国民会議の中島克仁です。

 時間をいただきましたので、質問いたします。十二分しかないので、端的にお答えいただければと思います。

 五月の十五日のときにもちょっと触れさせていただいたんですが、先月五月の十六、十七日、フランス・パリでG7保健大臣会合が行われた。また、引き続いて二十日より、スイス・ジュネーブで第七十二回世界保健総会、WHO総会でありますが、新谷厚生労働政務官が大臣のかわりとなって出張され、出席をされたということでございます。

 内容に関しては、多岐にわたると思います。端的に、まず、G7保健大臣会合、どのような成果があったのか、お示しいただきたいと思います。

新谷大臣政務官 お答え申し上げます。

 五月十六日から十七日にかけてフランス・パリで開催された、委員おっしゃられた、G7の保健大臣会合に参加をさせていただきました。今回の保健大臣会合では、議題として、プライマリーヘルスケアの強化、推進等について議論が行われたところでございます。

 このプライマリーヘルスケア、これは、十月に岡山で開催するG20保健大臣会合のメーンテーマであるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、略してUHCの礎となる概念でございます。このUHC、全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを支払い可能な費用で受けられる状態のことを指しております。

 そして、今回、保健大臣会合でG7各国と意見交換をしましてお互いの立場の理解を深めたこと、これは、G20議長国としましても、今後、各国の意見を取りまとめる上で大変有益であった、そのように考えております。

中島委員 事前に我々にも配られた案内ですと、今内容を本当に端的にお示しいただきましたが、各国の保健分野における課題を議論していく大事な場面だということが示されておりました。

 改めて新谷政務官にお聞きしますが、我が国の保健分野の課題についてはどのように具体的にプレゼンをされ、その内容について各国からどのような御意見が出されたのか、お尋ねしたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 G7保健大臣会合では、主にプライマリーヘルスケアについての議論が行われたため、我が国の国民皆保険を通じた医療へのアクセス確保の経験、高齢化に対応した地域包括ケアの実現に向けた取組、長期的に持続可能なヘルスシステムを実現するための保険財政を構築する重要性等について御発言をいただいたところでございます。

中島委員 いや、私、政務官に、案内にあったのは、各国のハイレベルに直接働きかけを行うとともに、関係国のハイレベルとの間で個人的な信頼関係を築くとあったわけですよ。

 私は、世界各国が、我が国はもう言うまでもなく、高齢化、少子化、人口減少と、世界に類を見ないこういう時代を迎えて、どのように、この社会保障のあり方は、外交、安全保障にも比するぐらい、そういう状況の中で、我が国のこれからをどう理解を深めてもらうか、これをまさに個人的に働きかけ、そしてG20に向けて出席を促すためにも信頼関係を築くというふうに書いてあるわけですよ。

 ハイレベルというわけですから、今答弁いただいたのを、直接、バイでどういう話をされたのか、お尋ねしたいと思います。(発言する者あり)

冨岡委員長 速記をちょっととめて。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 速記を起こして。

 しっかり答弁してください。

新谷大臣政務官 改めまして、このG7保健大臣会合ですね、我が国の国民皆保険を通じた医療へのアクセス確保の経験、これはUHCを達成したということでございますが、また、高齢化に対応した地域包括ケアの実現に向けた取組、そして、長期的に持続可能なヘルスシステムを実現するための、保健大臣会合等の重要性等についてお話をさせていただいたところでございます。

 また、保健大臣会合につきましては、一つ決定事項がございまして、WHOが中心となりまして、五つの国際機関が協働で本年中にレポートを提出することを目指す、そういった決定事項もなされているところでございます。

 また、G7議長国の期間が終了しても、引き続きプラットフォームに関して責任を持ち、リーダーシップを発揮していくことを宣言したところでございます。

 議題に関しては、プライマリーヘルスケアの推進、またグローバルファンド増資会合への対応等の議題もなされているところでございます。

 以上でございます。

中島委員 私は、十五日のときにも、大臣からは、重要な法案の審議を国会にお願いしているほか、その他の国内の諸課題に対応するため、総合的に判断して、大臣御自身が判断して、そして政務官を出張させたと御答弁いただきました。そして、事前に案内があった内容を見て、本当に大臣が行かなくていいのか、そして、このG7保健大臣会合は、外務省から、昨年の十二月には予定がわかっていたと。

 この内容、先ほどの繰り返しですが、関係国のハイレベルとの間で個人的な信頼関係ですよ。今御答弁いただいて、先ほど言ったように、我が国の抱える諸課題について、先進国、G7の参加国に対してどう理解を求めていくか。そして、G20に向けて非常に大事な、これは大事だということは前回も答弁いただきましたが、私たちは報道で聞くぐらいしかないわけですよ。ホームページにも今、まだ厚生労働省、報告も上がっていないですよね。

 私は、先ほど言ったように、例えばWHO総会であれば、今回、国際疾病分類最新版、改訂版、ゲーム障害が承認をされました。これについては、いわゆる業界団体が、ゲーム障害の主張と相反する研究に言及して、ビデオゲームの長所を訴えて反対をしていたところ、WHO総会にて今回承認された。これを受けてどう対応していくのか、そういった意味も含めて、その内容を詳細に知りたい。

 そういう意味も含めて、やはり私は、大臣、昨年の十二月からわかっていたわけですよね。もちろん議運の承認は必要かもしれませんが、今国会も、本来出さないはずだった法案を提出するのかしないのか、会期延長するのかしないのか、よくわかりませんが。やはり大臣、個人的な信頼関係を築く、これだけ重要な会議ということであれば、検討した結果と言いますが、厚生労働省、大臣にお聞きしますが、具体的にどういう検討をされたんですか、出席のために。

新谷大臣政務官 お答え申し上げます。

 WHOの総会におきましても、出席しましたのは私の方でございますので、お答えをさせていただけたらと思います。

 WHOの総会に関しましては、政府代表演説、これを行わせていただきまして、UHCの達成に向けて日本の立場を表明させていただきました。また、あるいは、G20保健大臣会合、これが予定されておるところでございます。この成功に向けて、シンガポール、タイなどの保健大臣に個別に働きかけをさせていただいておるところでございます。

 いずれにしろ、このUHCの国連ハイレベル会合が予定されておるところでございますけれども、これは日本が主導して開催が決まったものでございます。

 いずれにしましても、この決議に関しては、UHCの国連ハイレベル会合への各国首脳レベルの出席の推奨、これを行わせていただきまして、また、UHCの達成に向けた各国の進捗把握の仕組みの強化、あるいは、民間も含めた分野横断的な連携の強化等が強調されているところでございまして、本決議がWHO総会で採択されたことは非常に大きな成果だ、そのように考えておるところでございます。(発言する者あり)

 いずれにしろ、この十月のG20保健大臣会合においても、しっかりとリーダーシップを発揮してまいりたいと考えております。

冨岡委員長 ちょっと答弁をやめてください。

 ちょっととめて。

    〔速記中止〕

冨岡委員長 速記を起こしてください。

 池田審議官から、まず話を聞きましょう。どうぞ。

池田政府参考人 お答えを申し上げます。

 G7の保健大臣会合の日程につきましては、議員御指摘のように、昨年の十二月に日程の御連絡を受けたところでございます。その後、非常に重要な会議であるということもございまして、日程調整が可能かどうかということを含めて、省内で検討させていただきました結果、重要な法案の御審議を国会にお願いしているということもございまして、新谷政務官にお願いするという御判断をいただいたところでございます。

中島委員 じゃ、大臣にお尋ねしますが、大臣は、昨年十二月に、G7、この十年間で四回しか開かれていません、そして、特に今回は、事前の案内にもあったように、G20に向けて大変重要な個人的な関係を築く会議だと、そのことは承知しながら、昨年十二月にわかっていて、この日程、最初からわかっていたと今事務方から話がありましたが、大臣自身は出るつもりで調整されたんですか。

根本国務大臣 保健大臣会合ですから、私も、直接出ていろいろな議論をしたいとそれは当然思いますよ、大臣だから。

 ただ、一方で、厚生労働委員会、我々、重要法案を抱えていますから、国会審議をお願いしている立場ですから、そこは国会の審議日程との兼ね合いを考えて、私も行きたいのはやまやまですが、一方で、法案を担当している大臣ですから、法案もお願いして通さなければいけない。そういう立場の中で、私は、かわりに政務官を出席させたという判断をしたということであります。

冨岡委員長 最後の質問にしてください、時間がもう過ぎていますので。

中島委員 私、ちゃんと通告してあるんですよ。

 それで、政務官に、だって、バイでやったんでしょう。だって、書いてあるじゃないですか、ここに。そういう意味で、ちゃんと答弁いただければ、冒頭にも言ったように、私、持ち時間十二分しかありませんから、そういうことだったんですが。なぜ事務方から答えるのか私には理解できません。ぜひ、報告書、個人的にでもいいですから、ちゃんと報告していただきたいと思います。

 質問を終わります。

     ――――◇―――――

冨岡委員長 次に、参議院提出、自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院厚生労働委員長石田昌宏君。

    ―――――――――――――

 自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石田参議院議員 ただいま議題となりました自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国の自殺対策につきましては、参議院の議員立法として、自殺対策基本法が平成十八年に制定され、平成二十八年の改正により拡充強化されました。これに基づく自殺対策の推進等により、長らく年間三万人を超える状況が続いていた自殺者数が減少するなどの成果が上がってきておりますが、依然として年間自殺者数は二万人を超えております。また、我が国では、若年層の自殺死亡率が主要先進七カ国の中で最も高く、十代から三十代の死因の第一位が自殺であるなど、若年層の自殺の深刻な状況が続いております。

 自殺対策基本法第十五条におきましては、自殺対策のため、調査研究及びその成果の活用等を行うことが規定されており、現在、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターに置かれている自殺総合対策推進センターが中心となって、調査研究及びその成果の活用等が実施されておりますが、精神保健や研究の枠に活動が縛られがちであることなども指摘されております。

 今後、自殺対策の一層の充実を図っていくためには、保健、医療のみならず福祉、教育、労働など、広く関連施策と連動した総合的かつ効果的な自殺対策の実施に必要な調査研究及び検証並びにその成果の活用や、地域レベルの実践的な自殺対策の取組への支援などを、総合的かつ適確に推進する仕組みの整備が重要となります。

 本法律案は、こうした認識のもと、自殺対策を支える調査研究及びその成果の活用等の中核を新たに担う指定調査研究等法人の制度を設けるとともに、調査研究及びその成果の活用等の基本方針、国や地方公共団体による調査研究及びその成果の活用等を行うための体制の整備等について定めるものであります。

 次に、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、調査研究及びその成果の活用等の基本方針として、居住地域にかかわらず生きることの支援を等しく受けることができるようになることを目指して総合的かつ確実に推進すること、地域の実情を反映した実践的かつ効果的な自殺対策につながるものとすること、自殺対策と保健、医療、福祉、教育、労働その他の関連施策との有機的な連携への配慮、関係者相互の密接な連携、総合的かつ定期的な検証とその結果の自殺対策への適切な活用などについて定めております。

 第二に、基本方針に基づき調査研究及びその成果の活用等を行うための体制の整備に関する措置として、国は、関係者との連携協力体制の整備、地方公共団体に対する支援などの措置を、地方公共団体は、その地域の実情に応じ、地域における調査研究及びその成果の活用等のための拠点の整備、関係者との連携協力体制の整備などの措置を、それぞれ講ずることとしております。

 第三に、厚生労働大臣は、指定調査研究等法人を全国を通じて一個に限り指定することとし、その業務として、調査研究及び検証並びにその成果の提供等、地方公共団体に対する助言その他援助などを定めるとともに、指定調査研究等法人について、地方公共団体との連携、役職員の秘密保持義務、国等による情報提供、交付金の交付、所要の監督規定などを定めております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することとしております。

 以上が、この法律の提案の理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようによろしくお願い申し上げます。

冨岡委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 本案につきましては、質疑、討論ともに申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

冨岡委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

冨岡委員長 次に、参議院提出、死因究明等推進基本法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院厚生労働委員長石田昌宏君。

    ―――――――――――――

 死因究明等推進基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石田参議院議員 ただいま議題となりました死因究明等推進基本法案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 死因究明等については、生命の尊重と個人の尊厳の保持、紛争の未然防止、国民生活の安定及び公共の秩序の維持等に資するものであり、また、公衆衛生の向上及び増進、災害、事故等の被害の拡大の防止等の観点からも、その推進が図られることが極めて重要であります。

 しかし、我が国における死因究明の現状は、諸外国と比較しても十分な水準にあるとは言いがたい状況にあります。死因究明のために不可欠な解剖が実施される割合は、警察取扱死体のうち一割程度にすぎない上に地域間格差も大きく、司法解剖や行政解剖に従事する医師についても、十分な人員、体制の確保ができておりません。こうした状況を打破すべく、平成二十四年に議員立法で死因究明等の推進に関する法律が制定され、この法律に基づき、平成二十六年には、死因究明等推進計画が閣議決定されました。

 しかし、死因究明等推進法は二年間の時限立法であったため、その失効から既に五年近くが経過しており、死因究明等に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための恒久法の制定が求められております。

 本法律案は、これらの状況を踏まえ、死因究明等の推進に関する基本理念や国等の責務を明らかにするとともに、死因究明等に関する施策の基本となる事項を定め、死因究明等に関する施策を総合的かつ計画的に進めるための死因究明等推進計画や、厚生労働省に設置する死因究明等推進本部について定めようとするものであります。

 次に、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、総則的事項として、この法律の目的、死因究明等の推進に関する基本理念、国及び地方公共団体等の責務、法制上の措置等、年次報告などについて規定しております。

 第二に、基本的施策として、死因究明等に係る人材の育成等、死因究明等に関する教育及び研究の拠点の整備、死因究明等を行う専門的な機関の全国的な整備、警察等における死因究明等の実施体制の充実、死体の検案及び解剖等の実施体制の充実、死因究明のための死体の科学調査の活用、身元確認のための死体の科学調査の充実及び身元確認に係るデータベースの整備、死因究明により得られた情報の活用及び遺族等に対する説明の促進並びに情報提供の適切な管理について規定しております。

 第三に、死因究明等推進計画に関する事項として、政府が死因究明等推進計画を定めなければならないこと、死因究明等推進計画に定めるべき事項、死因究明等推進計画の実施に要する資金の確保、死因究明等推進計画の見直し等について規定しております。

 第四に、死因究明等推進本部に関する事項として、厚生労働省に特別の機関として死因究明等推進本部を置くこと、死因究明等推進本部の組織及び権限等について規定しております。

 第五に、地方公共団体は、死因究明等推進地方協議会を設けるように努めるものとする旨規定しております。

 第六に、医療提供に関連して死亡した者の死因究明に係る制度については、別に法律で定めるところによるものとしております。

 なお、この法律は、令和二年四月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

冨岡委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 本案につきましては、質疑、討論ともに申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、死因究明等推進基本法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

冨岡委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

冨岡委員長 次に、内閣提出、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。根本厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

根本国務大臣 ただいま議題となりました医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 少子高齢化に伴い人口構造が変化する中で、住みなれた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備することや、技術革新等が進展する中で、国民のニーズに応えるすぐれた医薬品、医療機器等をより安全かつ迅速に提供することを通じて、健康寿命の延伸など保健衛生を向上させていくことが必要です。また、過去に発生した医薬品の製造販売等に関する不適切事案の経験を踏まえ、医薬品、医療機器等の安全性を十分に確保し、健康被害の発生や拡大の防止を図ることが必要です。

 これらを踏まえ、医薬品、医療機器等が安全かつ迅速に提供され、薬剤師及び薬局が地域の中でその専門性に基づく役割を果たし、関係事業者が法令遵守体制の整備を行うことなどを目的として、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、世界に先駆けて開発される医薬品、医療機器等や患者数が少ないこと等の理由により治験が困難な医薬品、医療機器等を患者に速やかに届けるための承認制度の創設等を行います。あわせて、製造販売業者に対し、医薬品、医療機器等の包装等へのバーコードの表示を義務化するなど、安全対策の強化を行います。

 第二に、患者が適切に医薬品を服用できるよう、薬剤師に対し、調剤時に限らず、必要に応じてその後も患者の医薬品の使用状況の把握や服薬指導を行うことを義務づけるとともに、患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう、機能別薬局の認定制度を導入します。また、一定のルールのもとで、テレビ電話等による服薬指導を新たに認めます。

 第三に、製造販売業者等に対し法令遵守体制の整備を求めるほか、虚偽、誇大広告による医薬品、医療機器等の販売に対する課徴金制度や承認等を受けない医薬品、医療機器等の輸入に係る確認制度の創設等を行います。

 第四に、医薬品、医療機器等の安全性の確保等に関する施策の実施状況を評価、監視するための医薬品等行政評価・監視委員会を設置します。また、科学技術の発展等を踏まえ、血液由来iPS細胞を医薬品試験に活用する場合の採血の制限の緩和等を行います。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から一年を超えない範囲内で政令で定める日としています。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

冨岡委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十六分散会


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