衆議院

メインへスキップ



第5号 令和2年3月18日(水曜日)

会議録本文へ
令和二年三月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 盛山 正仁君

   理事 後藤 茂之君 理事 新谷 正義君

   理事 冨岡  勉君 理事 長尾  敬君

   理事 平口  洋君 理事 小川 淳也君

   理事 岡本 充功君 理事 高木美智代君

      あべ 俊子君    安藤 高夫君

      上野 宏史君    大岡 敏孝君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      木村 哲也君    国光あやの君

      小島 敏文君    小林 鷹之君

      後藤田正純君    佐藤 明男君

      塩崎 恭久君    繁本  護君

      白須賀貴樹君    田村 憲久君

      高木  啓君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      船橋 利実君    堀内 詔子君

      三ッ林裕巳君    山田 美樹君

      阿部 知子君    稲富 修二君

      尾辻かな子君    岡本あき子君

      下条 みつ君    白石 洋一君

      中島 克仁君    西村智奈美君

      山井 和則君    山本和嘉子君

      柚木 道義君    伊佐 進一君

      桝屋 敬悟君    宮本  徹君

      藤田 文武君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      稲津  久君

   厚生労働大臣政務官    小島 敏文君

   厚生労働大臣政務官    自見はなこ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  奈尾 基弘君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      風木  淳君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 達谷窟庸野君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       日原 知己君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            小林 洋司君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           渡辺由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大島 一博君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  高橋 俊之君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 伊原 和人君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            奈須野 太君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     中曽根康隆君

  山田 美樹君     高木  啓君

  尾辻かな子君     山本和嘉子君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     山田 美樹君

  中曽根康隆君     小林 鷹之君

  山本和嘉子君     尾辻かな子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

盛山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官奈尾基弘君、日本経済再生総合事務局次長風木淳君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官達谷窟庸野君、大臣官房年金管理審議官日原知己君、健康局長宮嵜雅則君、労働基準局長坂口卓君、職業安定局長小林洋司君、子ども家庭局長渡辺由美子君、老健局長大島一博君、保険局長浜谷浩樹君、年金局長高橋俊之君、政策統括官伊原和人君、中小企業庁事業環境部長奈須野太君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武です。

 朝一番の質疑、よろしくお願いを申し上げます。

 きょうは、前半、新型コロナ関連をさせていただきまして、その後、雇用保険法について質疑したいと思います。

 まず、新型コロナの影響で、中小企業を始め、企業の経営が広範囲にわたって厳しくなっている。この状況でいけば、今、三月ですけれども、四、五、六と中小企業の倒産が立て続けに起こってくるという可能性も出てまいります。この中小企業を守る政策として、給付にまで踏み込んだ議論が、今、各党もなされておりますし、政府も多分検討しておられると思いますが、まずは今、企業に対しては融資での対応というところが主なメーンになっているわけでございます。

 そこで、融資でいうと、代表的なもので、先日発表されました日本政策金融公庫の無利子、無担保の新型コロナ感染症特別貸付がスタートしました。これは非常にありがたいことだと思います。

 それから、民間企業対応でいうと、民間企業が引き受けるセーフティーネットの四号、五号があるわけでありますけれども、これをちょっと説明しますと、四号は業種指定がなく、二〇%以上の売上げ減、五号というのは業種指定があって、五%以上の売上げ減が対象となるという形になっております。

 このセーフティーネット五号については、四号よりも使い勝手がいいわけでありますけれども、業種指定がなされていまして、これは業種指定が追加でどんどん出てきている状況ではあるんですけれども、なぜこの厚労委員会でやっているかというと、厚生労働省の所管の指定事業というのがほとんど漏れ落ちているというのがあります。

 例えば、代表的なものでいうと、デイサービスの介護事業とか、それから障害福祉関係、鍼灸整骨院とか薬局、そういったところの医療関係、これはほとんど漏れ落ちてしまっています。これは民間の株式会社がやっているものもたくさんありますし、特に、今回、高齢者が新型コロナの重篤化リスクが高いということから、いわゆる施設に、デイサービス等に通うことを控えるということももう実際に現場では起きていますので、非常に経営としては厳しくなってきている。

 経産省に聞きますと、この指定は、各所管省庁から要望を集めて、それによってやるかやらぬか決裁していく、こういう流れみたいなんですけれども、厚生労働省所管の指定事業が漏れ落ちてしまっているということについて、私は入れた方がいいというふうに思いますが、御見解をいただけますでしょうか。

大島政府参考人 委員御指摘のとおり、融資につきましては、先般の緊急対応第二弾におきまして、介護の分野も福祉医療機構の無利子、無担保融資の取組が始まったところでございます。

 他方、債務保証に関しましては、現時点では関係団体からも特段の要望は受けていないところでございますが、再度、丁寧に声を聞きながら厚労省としての対応を考えてまいりたいと思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 業界団体もさまざまで、私もいろいろヒアリングをしたんですけれども、特にトップ層がすごく危機感が薄いというか、現場はかなり厳しい状況になっているのは明らかですから、受け身ではなくて、所管の官庁は規制する側でもあります、規制することも仕事ですけれども、業界を守ることも仕事だと思いますから、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 更に踏み込んで、実際に対象業種があるというのはもともと趣旨があると思うんですけれども、もう既に業種を絞れないほど全業種にわたって経済的なダメージが出始めている今、この対象業種というのを撤廃すべきだと私は思います。

 加えて、五%だったり二〇%の基本的な減収の計算方法は前年度の同月比の売上げという形になっているんですけれども、例えば、たまたまその月が悪かったり、これはよくあるんですけれども、成長軌道のところは、売上げを一〇%、一五%ぐらいの増を見込んで、例えば人材に投資したり設備に投資したりして、それがたまたま、売上げは昨年から一五%増の予算だったけれども、でも、それが五%しか伸びなかった、ゼロ%成長だった、でも、コストはふえていて赤字が出ている、こういう状況の企業はかなりあります。ですから、減収の計算方法も、売上げだけに限らず、利益ベースの考慮もすべきだと私は思います。

 それから、リスケ等の条件変更の実績がある企業さんについては、排除されないようにぜひ御配慮をいただきたいと思いますが、このあたりの御見解はいかがでしょうか。

奈須野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお話のありましたセーフティー保証五号でございますけれども、三月六日に、宿泊それから飲食など、四十業種を緊急的に指定しております。それから、三月の十三日には三百十六業種を指定して、現在、五百八業種が対象となっております。全業種足し合わせると計算上は千百業種ぐらいになるわけでございますけれども、半分弱というところでございます。

 今回、幅広い業種で影響が生じているので、業種指定のないセーフティーネット保証四号、それから、今回、同じく業種指定のない危機関連保証、こういったものを発動して、組み合わせて実施しているということでございます。

 今後のセーフティーネット保証五号の対象指定業種拡大につきましては、それぞれの業種の中で一定程度の売上げ減が起きている事業者が相当程度生じているということが必要な制度でございますので、こういった業種への影響をきちんと確認した上で追加していきたいというふうに思っております。

 それから、認定要件である売上げの減少の前年同月比の運用でございますけれども、御指摘のようなさまざまな特殊事情がございます。そこで、今回、前年同月比の売上げが著しく低くて、どうしてもうまく数字が出ないというような個別事情がある場合には、例えば二年前の同月の数字を使うとか、あるいは、創業一年たたなくて、そもそも前年の同月の数字がないという事業者さんもおられますので、こういった場合には算出期間を短く柔軟化するとか、それぞれ弾力的な対応を実施するよう指示しております。

 これは、まず一義的には市町村の現場において確認の作業をする必要があるものでございますので、こういったものはきちんと現場にお伝えして、柔軟な対応ができるように指導してまいりたいと思っております。

 それから、条件変更の実績のある事業者への対応ということでございますけれども、もちろん、そのことをもって一律に排除するのではなくて、新規の保証や融資について、今後の返済見込みというものをきちんと総合的に判断するということが必要だというふうに考えております。

 そのため、経済産業大臣から、担当となる政府系金融機関と信用保証協会に対しては、融資審査に際しては、融資先の赤字や債務超過、それから貸出条件の変更といった形式的な事情のみで判断するのではなく、事業者の実情に応じて最大限配慮することなどとする要請を行っているところでございます。

 今後とも、日々変化する事業者の皆様の状況を十分に把握して、必要な対策をスピード感を持って実行していきたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 業種のことはそのような答弁になるのは仕方ないと思うんですけれども、外すのは政治決断で一発だと思うんです。これは事務コストもかかりますし、膨大な業種のいろいろな陳情を受けてそれの正否を判断しているわけですから、それは役所も大変じゃないですか。ですから、もう広範囲にわたっているんですから、ぜひ省内で議論をしてください。よろしくお願いします。

 それから、続きまして、社会保険料の納付について、年金事務所の対応についてお聞きしたいと思います。

 折からのコロナショックで社会保険料の納付が厳しくなって、滞納だったり、少しおくれぎみになっている企業も出始めています。その中で、年金事務所の対応は通常時と変わらず、非常に厳しいというふうに聞いています。

 そもそも、三月というのは期末で、残高を残さないように、内部でも、ノルマ的な、残高を少なくしようということで取立てが厳しい時期というふうに聞いているんです。セーフティーネット保証を申し込んでいらっしゃる企業さんなんかも変わらず取立てをされて、お金が用意できなかったら差し押さえるというようなことを実際に窓口で言われている企業もあると、私、直接聞いています。

 セーフティーネットや給付にまで踏み込んだことをやろうかと言っているこの非常事態において、この社会保険料の納付の少し柔軟な対応というのはあってしかるべきだというふうに思います。特に、確定申告の納付期限延長がなされていたり、昨日の報道では、中小企業に向けて固定資産税の減税措置の検討なんかも出ていますから、社会保険料だけが通常どおり、三月末で絶対払いなさい、それじゃなかったら差し押さえるよという対応はちょっと、私は、全体を見渡したときに、バランスを欠いているというか、政策として漏れ落ちていると思うんですが、御見解はいかがですか。

日原政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生年金保険料等を納付することによりまして事業の継続が困難になるおそれがある場合など、一定の要件に該当される場合には厚生年金保険料等の納付を猶予するなど、事業主の皆様の状況に応じた納付をしていただくことができる仕組みがございます。この納付を猶予する仕組みを活用した場合には、猶予が認められた期間中につきましては、財産の差押えも猶予されることとなってございます。

 今般の新型コロナウイルス感染症の影響を受けた場合につきましてもこうした仕組みをより活用いただきますように、日本年金機構と連携を図りながら、ホームページや事業主の皆様へのお知らせなどによりまして一層の周知を図っているところでございまして、この仕組みの活用によりまして柔軟に対応してまいりたいというふうに考えてございます。

藤田委員 ちょっと確認ですけれども、今のこの緊急事態なので、年金事務所さんが通常どおりの非常に厳しい対応をやって、聞いているところでは、銀行にまで直接行って残高を聞いて、差し押さえるぞというようなことを言っているところがあるんですよ。これは、柔軟に対応するようにというふうな、特にこういう事態だからというのを、通知を出していると聞いたんですけれども、実際、出していますか。

日原政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げました猶予の制度の活用につきましては、三月二日付で、日本年金機構に対しまして、事業主の方々への丁寧な御案内や説明、また制度の十分な活用などについて通知をいたしました。さらに、現場におきましてこの制度の柔軟かつ適切な対応が行われますように、三月十二日付で、日本年金機構等へ通知を追加で出しているところでございます。

藤田委員 ありがとうございます。それはぜひ気にとめていただきたいと思います。

 続きまして、新型コロナの出口戦略をこれから考えていかないといけない時期に来ていると私は思います。国民の素朴な不安として、どうなったら終息するのか、終わりはどこにあるのか、先が見えない戦いというのが一番厳しいですから、これをどういうふうに提示していくかというのが非常に重要になってくるというふうに思います。

 どのような状態を目指して具体的に戦っていくのかということを国民の皆さんに説明すべきだというふうに私は思っていまして、よく言われる政府への批判として、例えば、イベント自粛や学校一斉休校が発動、発信が急で、その対応がやはり後手後手になってしまっている。例えば、補償の話も後で出てきていますよね。例えば、学校一斉休校があって、その発信と同時に出すということも戦略としては、発信のやり方としては考えられたわけですけれども、こういうことがあるわけで、これをやはり国民がコストとして、何というんですかね、政治決断の演出のコストとして支払ってしまっているという一面は、批判ばかりするつもりはないですけれども、あると思います。

 その中で、例えば大阪は、我々は大阪から生まれた政党ですから、大阪の事例をよく見ていますと、感染症が大幅に拡大したときのシミュレーションを実際に行って、その推計値を公表したり、又は医療崩壊を起こさないための具体的な戦略を発表して、また専門家会議の内容も公開して、吉村知事がメディアに出て府民の皆さんに周知を図っている、こういうようなコミュニケーションをやっているわけです。

 吉村知事はこういうことを言っているんです。コロナの感染症はこれからもふえてくる、そこで大事なことは、重症者の命を守る、死亡者を一人でも少なくする、そのために、医療崩壊を起こさないことをやると。ここを防衛ラインの第一優先にするというふうに明言しています。このような大きな方向性を示して府民に訴えかけているというのが重要であるということです。

 それから、医療崩壊を防ぎながら経済活動も徐々にもとに戻していくという指針も先日来出されています。経済活動がストップしていると経済からの死者も出るということで、専門家の意見を聞きながら、もちろんリスクがある決断ではあるけれども、経済の正常化に向けて歩みを始めるということを発信し始めています。

 それから、決断は政治家にしかできない役割であるということもおっしゃられています。

 また、検査についても、検査という入り口に対して出口の、医療崩壊を起こさないための施策ということも重要で、大阪では、厚労省の基準よりもちょっと検査基準を広げて、要件を広げているんですけれども、誰彼でも検査をするということはできないというふうにも明言しています。

 こういう、重症者を救うということを第一の防衛ラインにするということを設定して、アクションを説明するということをやっているわけです。

 そこで、政府の方にお聞きしたいところで言いますと、先日の総理の会見を始め、この一、二週間が、急速な拡大が進む中、終息できるかの瀬戸際にあると。今が勝負、今が勝負というのはまさにおっしゃるとおりだと思うんですけれども、現時点において終息した状態というのはどのような状態と定義しておられるか、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

加藤国務大臣 正直言って、終息というのは非常に難しくて、今ベースとなっております新型インフルエンザの中でも、未発生期、海外発生期、国内発生早期、国内感染期、小康期までなんですね。図を見ると、小康期の後に場合によっては再燃する可能性というのも指定されているわけでありますから、トータルで見て、どこの段階で終息宣言をするのか、前回の新型コロナのときにはWHOは約一年後に終息宣言をしておりましたけれども、ではそのとき全部がおさまっていたのかというと、なかなかそこは難しいと思います。

 したがって、私どもは、今は、クラスターが次のクラスターを生み出すことを防止していくということによって終息を図っていきたいという方向は出させていただいておりますので、そういった中で、最終的には、そのときの実態と専門家の御意見、それから、例えば今の発生者数というのは、実は二週間とかもっと前に感染していたということなので、そうすると、今感染していた数字は二週間後、三週間後でないとわからない、こういった課題もありますので、そういったことも踏まえながら、最終的には専門家の御判断を仰ぎながら考えていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。

 したがって、ある意味では常に我々は拡大する分岐点に立っているというのは間違いない事実でありまして、それが、総理が言い始めたときから非常にそのリスクが高くなって、では今やんでいるかというと、十九日にまた専門家の御意見を踏まえなきゃいけませんが、途中の段階での、きのうは海外からのリスクの話もされていましたので、リスクは引き続き変わっていないんだろうというふうに思いますので、そういった意味においても、まずはやるべきことをやっていく、ただ、今御指摘があるように、やはり長期戦を一定程度覚悟しなければならないということになれば、我々は経済活動をし社会活動をすることによって暮らしているわけですから、それと感染防止をどうバランスを図っていくのか、こういう観点、大阪でも議論していただいていると思いますけれども、それは非常に重要なポイントだと思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 厚生労働省が新型コロナウイルス対策の基本的な考え方というのを提示していまして、いわゆるピークを抑えるという、こういう図示もポンチ絵でしていただいているんですけれども、総理が先日の記者会見で、感染の爆発的な拡大を抑え、医療崩壊を避け、感染のピークをできるだけ後ろにおくらせるという趣旨の発言をされました。三月十二日に、イギリスのボリス・ジョンソン首相が主席医務官と主席科学顧問を従えて、更に踏み込んで、国民の六〇%が感染して集団免疫を獲得するというような、こういう方針を発表しました。

 日本の国内の方針と見比べて、ピークをおくらせるという、感染することは避けられないけれども、じわじわと感染しながらピークを抑えて医療崩壊を起こさない、重症者を起こさないという観点でいうと非常に似通っているというふうに思うんですが、日本の国内の方針というのは集団免疫戦略なんでしょうか、それとも違うんでしょうか。これをお答えいただけますか。

加藤国務大臣 イギリスの対策について、ちょっとコメントは控えたいと思います。

 その上で、私どもは、既に御示唆いただいた山、二つの山を示させていただいたように、いかに増加スピードを抑制するか、そして山自体のピークを後ろに下げ、またそのピークを下げていくのかということが基本的な戦略であります。

 それはなぜかというと、やはり、医療崩壊というお話がありましたけれども、医療の能力の中におさめ込めなければ、重症者が結果的に手当てすることなく亡くなるというケースがふえてしまうということになるわけでありますから、そういった意味においても、できるだけピークを低くする、そして、後ろに倒せばやはり準備をする時間が獲得できるわけでありますから、それを獲得していきたい、そういうことでやらせていただいている戦略で、今御指摘のあった集団免疫云々という形で議論をしていることではありません。

藤田委員 ありがとうございます。

 では、出口というか、最終、ずっと抑え続けて最後は何なのかというのは、やはり、どういう状況を目指して我々はやるのかというのがいまいち明確に見えてこないというのはちょっと不安かなというふうには思います。これはまた十九日の専門家会議でも議論があるのかと思いますが、出口戦略については、国民の皆さんにも、ここを目指そう、そのために今こういうふうに頑張ろうということは、ぜひわかりやすく発信していただきたいと思います。

 それから、検査についてちょっとお聞きしたいと思います。

 先日、WHOのテドロス事務局長が、検査、検査、検査と繰り返しまして、ある種のミスリードも起こっていると私は思っているんですけれども、いろいろなことが、この感染症の特徴というのがわかってきた今、検査についても、どのようなスタンスで今政府が考えておられるかというのをもう一度まとめて発信していただきたいなというふうに思います。

 実際に、検査も、聞いてみると、毎回防護服をかえて、物すごい手間と暇をかけて検査も行わないといけないし、一旦陽性になれば報告義務もあるし、それから、軽症でも入院しなければいけないし、行動履歴のあった施設なんかは全部閉鎖されていくし、濃厚接触者の調査まで多岐にわたってやるということがある中で、大阪では、確かに基準は広げているんですけれども、希望者が誰でも彼でもやることはできませんというような指針を出しておりますけれども、私はこれは正解だというふうに思っています。

 希望者全員、私も含めて、私は国会議員ですから、ちょっと不安だからやらせてくれと言って、そんなにみんながやっていたら、病院に殺到して、二次感染も起こりますし、大変なことになると思いますけれども、こういうことも含めてやるべきだという方もいらっしゃいますし、メディアでもそういうふうにあおるところがあります。

 実際の、検査に対しての考え方、厚生労働省の正式見解をいただけますでしょうか。

加藤国務大臣 検査といっても幾つかあります。一つは疫学的調査。要するに、ある人が陽性に反応した、その辺の接触者を限定して、いわゆる濃厚接触者というのはどこまでなのか、そして、では、濃厚接触者について、実際に感染しているかどうか、その時点において反応があるかどうかということではありますけれども、PCR検査をやるということで行われるPCR検査と、それから、医療の必要性、診療の必要性でいわゆる検査をする、したがって、これは、医師が必要と判断した方について検査をしていただく、医療ニーズ、診療ニーズから発生するPCR検査というのが、大きく分けると、もう一個言えば退院のとき、三つぐらいあるんだろうと思います。

 今の委員のものは二番目の話でありまして、これはあくまでも診療のためであります。

 ただ、新型コロナウイルスそのものは、治療薬とか、具体的な、これでやれば治るというものはないわけでありますけれども、しかし、一つの診療の参考、あるいは、場合によっては、当該医療機関において感染があれば当然別の扱いをしなきゃいけないという意味で、広い意味での診療に大事な情報ということになってくるわけでありますから、そういった意味では、しっかりこれをやっていく体制をつくる必要があると思います。

 したがって、委員御指摘のように、ちょっと心配だからというのは、これは今我々の対応の中で考えていない。むしろ、あくまでも、主として担当する医師は帰国者・接触者外来の医師ということになるわけでありますが、そこの医師の判断を踏まえてPCR検査をしていただく。

 ただ、そこの流れがちょっと滞っているときがあるという御指摘をいただいていますから、それはスムーズに流れるようにしていかないと、本来PCR検査をすべき人ができていないということがあってはならないと思っておりますので、それについては、いろいろな御指摘をいただきながら、改善をすべきところを改善をさせていただいているということであります。

藤田委員 ありがとうございます。

 続いて、イベント等の自粛もどのように解除していくかというのは非常に難しいことですけれども、自粛に関しては、大小さまざまにかかわらず、四、五人の飲み会も自粛しようというふうに今ムードとしてはなっているわけです。これは、イベントの規模の自粛のガイドラインみたいなものを設定して、安心して批判を恐れず行ってくださいというステージに、やはり規模によっては来ているというふうに私は思うんですけれども、ガイドラインの設定等をする予定はございますでしょうか。

加藤国務大臣 今、専門家会議で三月十九日を目途に、一つは、北海道の事例があります、ちょうど二週間たって、その後十日ぐらいで分析をするという時期が十九日、また、その北海道を踏まえて全国的にどういう対応をすべきなのか、そういったことについて御議論いただいておりますが、基本的には十九日の専門家会合のそうした判断、見解を踏まえて我々として対応していきたいというふうに思っております。

 ただ、考えるときに、規制をするときというのは、例えば、今、国によっては十人とかいう規模で規制をしているところがあるんですけれども、規制を解除するときに、ではどこまでという基準、例えば、十人集まっても、集まり方とか、端的に言えば部屋の大きさとか、会話をするかしないかとか、いろいろな状況がまざり合う中でリスクが変わってくるわけでありますから、なかなか一律に規模だけで、抑制するときはある意味ではそういった提示の仕方が必要になってくると思いますが、解除するときというのはその辺はなかなか難しい点があるのではないかな。

 ただ、いずれにしても、最初の御質問であったように、さはさりながら、そうした対策が長期化する中で、経済、社会の問題と感染防止のバランスをどう図るのか、そういった観点も含めて考えていく必要があるんじゃないかと思います。

藤田委員 ありがとうございます。難しいかじ取りですけれども、ぜひともよろしくお願いを申し上げます。

 ちょっと一点、これは質問じゃないんですけれども、大阪では入院フォローアップセンターというのをスタートさせまして、いわゆる陽性が出た方の症状に応じて四段階に振り分けて、指定病院、一般の病院、稼働していない病院を活用する、それから宿泊施設を利用するといったような、こういう振り分けをやり始めています。

 実際に自宅待機となると、家族への感染というリスクを負ったままずっと待機するということになって、非常に心苦しい状況で、リスクも伴います。その際に、医療法上の病床ではない廃止病院、休床病棟等を活用して、そういったことを宿泊施設も含めてやっていこうということを吉村知事が言っているんですけれども、これは、お金でいうと、実際には府の単費でやらないといけないという状況になっているんです。ぜひ、要望として、国からの財政支援の方をぜひ検討していただきたい。これは社会防衛のためにやることですから、ぜひとも検討していただきたいということを申し添えさせていただきます。よろしくお願いします。

 ちょっと時間がなくなってしまいまして、長くなってしまったんですが、最後に兼業、副業についてちょっとお聞きしたいと思います。質問をまとめて一個にさせてもらいます。

 まず、今回、兼業、副業、マルチジョブホルダーに対しての補償について強化される方向で進むことは私は賛同します。しかしながら、きのうも参考人の方に聞いたんですけれども、この兼業、副業というのが果たして社会全体、労働市場全体に対してプラスであるんだろうかというのは、私は少し疑問を感じています。

 なので、問いとしては、兼業、副業をそもそも推進しているのかというのがまず一つ目の問いです。

 というのも、全世代型社会保障検討会議の中間報告では、思考・分析といったいわゆる高度人材は、副業をしている人がそうでない人よりも本業の賃金が三六%高くなっている、つまり、よいというふうに位置づけて、これは兼業、副業のよい効果が見られているよということを言っているんですけれども、あたかも、ミスリードとして、全業種、全層についていいような、進めようというようなミスリードも実際起こっているわけです。実際、高度人材というのは労働市場全体で考えたら一部ですから。

 それ以外に、これはデータでありますけれども、調査では、コミュニケーションタスクであるとか運動タスク、いわゆるブルーワーカーとかサービス業とか、一般の労働者に関しては実際にそういう相関関係はありませんから、兼業、副業を実際にやっていく、強力に推進していくということが労働市場全体の生産性を上げることに寄与するのかというのは、ちょっと立ちどまって考えるべきことじゃないかなというふうに思います。

 このあたりの見解をいただけますでしょうか。

風木政府参考人 お答えいたします。

 委員から幾つかデータなども示されているところですが、就業構造基本調査によりますと、副業を希望する者は近年増加しておりまして、実際、二〇一七年の数字をとりますと四百二十四万人ということでございます。実際に実は副業がある者は二百六十八万人にとどまっているということで、その差は百五十六万人。実際にやりたくてもできていないという人が百五十六万人いるということでございます。

 そうした中で、兼業、副業を希望する者については、こうした働き方が可能となればモチベーションが高まるとか、それからスキル、経験の獲得につながるとかいうことで生産性の向上が期待される、幾つかこういうデータが、あるいは研究がございます。

 そうした中で、政府としては、広く希望する者が適切な形で多様な働き方ができるように、環境の整備が必要だというふうに考えておりまして、必要な政策については検討を進めてまいりたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 兼業、副業に関しては、私が思うに、高度人材は、今働いているところと、それから副業、兼業でやるところと、実際に、うまく、コンプライアンスも守りながら、お互いの情報とかもちゃんと整理しながら、時間も管理してできるというのは、これは兼業、副業を推進しなくても全然できることだというふうに思います。

 しかしながら、兼業、副業を社会として働き方改革の中でどんどんやろうとなると、確かに、希望する者とおっしゃいますけれども、やはり、それが適合するしないにかかわらず、希望する人はふえると思いますよ、実際に。いいところは実際フィーチャーされますから。

 そういう意味で、私は、この兼業、副業のそもそも社会に与える影響というのは、もう少し継続して検証をぜひしていただきたいなというふうに思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

盛山委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、きょうは、雇用保険の財政運営の試算見通しからお伺いしたいと思います。

 もともと、今回の法案が出される前提の雇用保険部会で議論されていたときの雇用情勢と、今の雇用情勢は全く違う状況になってきているのではないかと思います。きのうも、西村経済再生担当大臣は、リーマン・ショック並みか、それ以上の影響が経済に出ているという発言をなさっております。

 そうすると、きょう資料をお配りしておりますが、当初、財政運営の試算というものが労政審の雇用保険部会でも出されたわけでございますが、実際の見込みはこれとは違うんじゃないかと思うんですよね。仮にリーマン・ショック並みの影響が今回の新型コロナウイルスで出た場合、この試算の見通しというのはどうなるんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生お示しの資料でございますが、これは、昨年十二月十三日、労働政策審議会の雇用保険部会の方に今後の試算としてお示しをしたものでございます。

 それで、今、仮にということで、リーマン・ショック並みの影響があった場合というお話がございました。

 もちろん、今回の新型コロナウイルス感染症による影響というのは現時点でお示しすることは不可能であるわけでございますが、仮にということで、リーマン・ショックの際の実績で申し上げますと、平成二十一年度の失業等給付の支出額は約一・八兆円、基本手当の受給者実人員の月平均数ですが、八十五万人でございました。

 お示しの昨年十二月十三日の試算でございますが、令和二年度の見込みのところでございますが、これが一・一兆円強、受給者実人員が三十七万人ということになります。今申し上げました平成二十一年度と単純に比較しますと、約七千億円の差ということになります。

 一方で、積立金残高のところをごらんいただきますと、なお相当程度の積立金を有しておるところでございまして、今後、リーマン・ショック並みの支出を求められた場合でありましても対応できる。

 また、今般、雇用保険料率の暫定引下げ措置を二年間継続するということにしておりますが、弾力条項と申しまして、千分の四の範囲内で保険料率を変動できるという規定については生かした形での暫定措置の延長でございますので、こういった措置も含めて、今後の対応というのは十分可能であるというふうに考えております。

宮本委員 リーマン・ショック並みの影響を見込んだら七千億程度の支出が更にあるんじゃないかということですから、令和六年度見込みの積立金残高は一・八兆じゃなくて一・一兆ぐらいになる可能性もあるということなのかなと思いますけれども、かなりの減り方ということになるわけですよね。

 これが単年度で終わるのか。リーマン・ショックのときも、すぐにおさまったわけじゃないですよね、それ以降も続くということになるわけですよね。そうすると、一・一兆どころじゃなくて、令和六年度見込みというのは数千億の積立金になる可能性もあるということでいいわけですね。

小林政府参考人 先ほど申し上げましたように、今回の新型コロナウイルス感染症の影響ということは見通すことは不可能でございますが、いろいろな可能性としては議員御指摘のような状況もあり得る、ただし、それに対しては積立金及び保険料の弾力的な対応で対応できるというふうに考えております。

宮本委員 もちろん、積立金が足りなくなったら保険料を上げる手段はあるわけですけれども、きのうの参考人質疑の中でも、経済情勢が悪いときに保険料が上がると大変だという話もあったわけですよ。そういうときに、こういう、もしかしたら本当に積立金ががくんと減りかねない経済状況がある中で、国庫負担を減らし続けるというのを延ばしていいんですか、大臣。今の状況から考えたら、やはり国がふさわしい責任を果たすべきなんじゃないですか。

加藤国務大臣 今回の措置は、まさに雇用保険の財政状況と、そして、予算の状況というんでしょうか、国全体の財政状況、その全体の中で、本来だったら二年で終わるべきところを更にまた延長のお願いをしているわけでありますので、そういった判断でさせていただきました。

 いずれにしても、これからの動向はよく見ていきながら、今は保険料を一番低いところまで下げておりますけれども、それをどうするのかということを中心に、状況状況を見ながら対応はしていかなければいけないというふうに思いますし、また、今回の暫定の期間が終わることに向けて、附則にも書いてありますけれども、必要な財源を確保することを含めて、こうした国庫負担をしっかり確保すべく、引き続き努力をしていきたいと思います。

宮本委員 私は、やはり、保険料でまず対応するというのじゃなくて、そうなれば中小企業は本当に大変なことになりますから、これは国庫負担をもとに戻すということで対応すべきだと思いますよ。今回の法案は、やはり、もう事態が変わっているわけですから、修正がこの点については必要だということを厳しく申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、あともう一つ、雇用保険二事業の方の財政運営については、この新型コロナの影響というのはどう見込んでいるんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用保険二事業のお尋ねでございますが、雇用保険二事業は、先ほど御指摘いただいた失業等給付とは別に、事業主のみから保険料をいただいておるものでございます。こちらの雇用保険二事業の運営でございますが、毎年度事業主からいただく保険料収入と、それから不況時の支出に備えて積み立てております雇用安定資金により運営をしておるところでございます。

 今般、新型コロナウイルス感染症対策として、雇用調整助成金の特例、そして学校休業に伴う保護者の休業補償につきまして措置を講ずることとしたわけでございますが、これは今年度の予備費及び既定予算の範囲内で実施をすることといたしておりまして、雇用安定資金を取り崩すことにはしておりません。雇用安定資金はなお一兆円を超える資金残高がございますので、当面これで問題なく運営できるというふうに思っております。

宮本委員 こちらの方は、ことしの予備費と予算の範囲で対応するから取り崩さずできると。ということは、逆に言えば、大変余裕があるということなわけですよね。

 それで、きのうからも議論になっておりますし、予算委員会でもずっと議論になっておりますけれども、雇用調整助成金の対象あるいは助成率がこれでいいのかということは、やはりもっと考えなきゃいけないと思うんですよね、リーマン・ショック並みか、それ以上の影響だと。リーマン・ショックのときは、助成率はもっと高かったんじゃないですか。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 リーマン・ショック時につきまして、雇用調整金の助成率でございますが、上乗せ助成をしておりまして、中小企業が三分の二から五分の四、それから大企業が二分の一から三分の二ということで引上げをしているところでございます。

宮本委員 その上乗せに加えて、雇用を守った場合のさらなる上乗せもしていたんじゃないですか。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 一定の雇用を維持した事業主につきましては、中小企業の場合、例えば十分の九という形で上乗せをしているところでございます。

宮本委員 ですから、リーマン・ショックのときは中小企業は十分の九までやっているわけですよね、十分の九まで。大企業も四分の三をやっていたと思いますけれども。

 リーマン・ショック並みか、それ以上の影響だと一方で経済再生担当大臣が言っていて、雇用調整助成金の出し方はリーマン・ショック以下。おかしいじゃないですか。これは、加藤大臣、私たちは本来十分の十をやればいいと思っていますけれども、せめてリーマン・ショック並みには引き上げる必要があるんじゃないですか。

加藤国務大臣 リーマン・ショックのときの失業率が、一番ひどいときは五・五までいったように記憶をしております。今、足元はたしか二・四とか、そんな水準なんだろうと思います。ただ、これは遅行指数なのかもしれませんから、それだけで判断するべきではないと思います。

 西村大臣が言われたのは、まさに、今起きている状況というのは、そういう厳しい状況と。ただ、問題は、これがどこまで続くのか、そして、雇用情勢にどういう影響を及ぼし得るのか、そういったことも、全体を判断しながら必要な措置をとっていかなきゃいけない。我々も、今のままで常に固定するということを考えているわけではありません。状況状況を見ながら、必要な措置。

 したがって、先般、北海道のいわば特例的にやらせていただいたものも、北海道においてはそうした事業自粛等をすれば悪化するおそれがある、そうすると、それに対処する必要があるということでやったわけでありますから。したがって、それは単に北海道だからやったのではなくて、悪化をするおそれがある、あるいは悪化するということでやっているわけでありますから、当然、足元の状況がそうした形に移行していくのであれば、それに応じた対策をとっていく、これは当然のことなんだろうと思います。

宮本委員 実際は、労働組合への労働相談でも、雇いどめの相談が相次いでいるわけですね。恐らく、厚労省でも雇いどめの相談が今ふえてきているんじゃないですか。違いますか。

小林政府参考人 解雇ですとか雇いどめについての御相談というものも増加しております。主に旅客運送、中国人を相手として観光バス等を運営していた会社に大きな影響が出ております。それ以外のところにつきましては、宿泊業、製造業を含めて、今、休業という形で御対応いただいておるというふうに承知をしております。

宮本委員 ですから、影響がどこまで続くのかというのはあるわけですね。どんどんどんどん、どこまで広がるかわからない状況があるわけですから。だって、既に雇いどめが出ている、雇用調整助成金を緩和しても雇いどめが出ているのが今の現状なわけですよ。雇用を守るためには、もっと強力なメッセージを、雇用調整助成金の拡充ということで発する必要があると思いますよ。

加藤国務大臣 もちろん、雇いどめ等、あるいは内定取消し等、我々も一つ一つ見させていただいております。したがって、リーマンのときにはベースの雇用情勢が今より悪かったところからより悪化をした、今はそれよりもはるかにいい状況になってきているという、私は水準が低いからいいと言っているんじゃないんですよ、そこからどう動くかがむしろ大事なんだろうと思います。したがって、それがどういう形で動いていくのか、それを見ながら対応していく。

 委員の御指摘だと、もう最初から十分の十を常にやっておけばいいじゃないかということになるんだろうと思います。日常だって発生するわけですからね。さはさりながら、そういうわけには、なかなか難しいので、やはり状況状況に応じて施策の強さ、強度は変化させていくということなんだろうと思います。

 したがって、先ほど申し上げたように、我々も、ずっと今のままで経済あるいは雇用情勢が悪化しても続けていこうということを考えているわけではありません。足元、あるいはそこから見られる今後の推移、これをしっかり見きわめながら、必要な対策を講じていきたいと思います。

宮本委員 雇いどめだとかがふえていなければ今の大臣の言い分は成り立つのかもわからないですけれども、既にふえているというのが厚労省自身の認識なわけですから、ではそれを食いとめるためにどうしようかという手を打つべきだということを強く申し上げておきたいと思います。

 その上で、きのうに続いて、高齢者の雇用、六十五歳から七十歳にかけて、就業確保の際に雇用によらない働き方、個人請負でもいいとされた問題について質問させていただきたいと思います。労働者保護法制が及ばないことになります。

 きのう東京電力の例を紹介しましたが、実際は会社の指揮命令下に置かれている場合、労働者性がある場合も少なくない。個人請負の場合は、そういう場合もたくさんあるわけですね。

 きのうの答弁の中でこういう話があったんですね。契約のいかんにかかわらず、指揮監督を受けているなど労働基準法上の労働者と認められれば労働法制が適用される、こういう答弁がありました。

 労働基準法上の労働者と請負契約の方が認められるには、どうするんですか、誰がどうやって認定してくれるんですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問の労働基準法上の労働者という概念でございますけれども、基準法の第九条で「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」ということとなってございます。

 この労働者に該当するか否かということにつきましては、契約形態にかかわらず、仕事の依頼あるいは業務指示等に対する諾否の自由があるか、あるいは業務を遂行する上で指揮監督を受けているか、支払われた報酬が提供された労務に対するものであるかなどの実態を勘案した総合的な判断ということでございまして、個別に即して、私どもの監督署の方に申告等がございましたら、私どもの監督署の方でも事案に即した総合的な判断をして、その事案に対して対処するということでございます。

宮本委員 それでは、きのう例を挙げた東京電力の関連会社の方々が労基署に今から行けば、東京都の労働委員会は労働組合法上の労働者だと認められました、あの命令書の中身をもってして、労働基準法上の労働者だと労基署で認めていただけるということでいいわけですか。

坂口政府参考人 きのうもお話を申し上げましたけれども、お尋ねの個別の事案、あるいは個別の事案でまた係争中の事案ということについてのお答えについては差し控えたいと思います。

 いずれにしましても、先ほど申し上げましたとおり、一般論としましては、労働基準法上の労働者に該当するかということにつきましては、個別のお話に即して総合的に判断するということになりますし、また、労組法上の労働者に該当するか否かということにつきましては、個別の事案に即して労働委員会あるいは裁判所において判断されるというものでございます。

宮本委員 それで、労基署に相談に行って、労働者性が認められるというふうに労基署が判断をする、そういう仕組みがどういうふうになるのかわからないですが、労基署が判断していただいた。それに対して、使用者の側が、いえいえ、違います、これは個人請負ですというふうになった場合はどうされるんですか。

坂口政府参考人 繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げましたような判断のメルクマールというものを、個別の事案に即して、労使双方のお話も聞きながら、総合的に判断をさせていただくというものでございます。

宮本委員 ですから、それを労基署が判断をして、労働基準法上の労働者だと労基署が言っても、いえいえ、違いますと、使用者の側が違いますというふうに争う姿勢を見せたらどうなるんですかということをお伺いしているんです。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法の観点で結果的に労働者であると私どもが判断し、法令の違反があるということであれば、私どもは労働関係法令違反が認められた場合には必要な指導をするということでございますが、事業主の方々の方でそういった部分についてまた争いがあるということであれば、それは一定の訴訟、争訟ということになると思われます。

宮本委員 ですから、労基署に相談に来てくださいよと言っても、使用者の側が認めなかったら訴訟になるわけですよ。訴訟になって労働者性が認められるまでに何年もかかるということに実際はなるわけですよね。ですから、結局、この個人請負という働き方を労働法制の中に今回の高年法の改悪という形で入れていくというのは、私は、実際は保護されない働き方がどんどんふえていくと言わざるを得ないと思いますよ。

 その上で、もう一点、高齢者雇用にかかわってお伺いしたいと思います。

 きのうの他委員の質疑を聞いていましたら、三十人以下の企業で六十歳以上の雇用確保がどの程度なされているのか集約もしていないという答弁で、私も驚きました。

 お伺いしたいんですけれども、六十歳を超えたら継続雇用が再雇用なり何らかの形で六十五歳まで義務づけられているわけですけれども、この継続雇用や再雇用を拒否されたことをめぐる労働相談というのは、今どれぐらい政府は把握されていますか。

小林政府参考人 六十歳の継続雇用を拒否された事案があるということは認識をしておりますが、具体的にそれを数として把握はできておりません。

 それで、今の御指摘に関して申し上げますと、平成二十五年に高年齢者雇用安定法が改正されておりまして、六十五歳までの継続雇用義務というのを課す一方で、年金の支給開始年齢に合わせる形で、労使が合意すればということでございますが、段階的に継続雇用年齢を引き上げるという経過措置が現在講じられておるところでございます。

 この結果としてこの対象になるかならないかということが生じてき得るということでございますが、仮に基準に該当しないということで雇用継続されないということになった場合には、事業主は本人が希望した場合には再就職援助措置を講ずるよう努めなければならないというふうにされております。したがって、事業主の方で再就職の援助をしていただくことになるわけですが、あわせて、ハローワークの方におきましても、速やかな再就職の実現に対する支援というのを行うこととしておるところでございます。

宮本委員 法律があっても拒否されるということは起きているわけですが、こういう話を伺ったんですね。税理士国民年金基金で働いてきた職員が、二〇一八年十月、六十歳で雇いどめにされたという話でございます。

 国民年金基金は、今でいえば厚労大臣の認可を受ける公的な法人ということになるわけでありますが、六十歳で継続雇用してくれと言われても雇いどめになるというのは、これは法律違反ということでいいわけですか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、六十五歳までの継続雇用制度を設けるということが事業主の義務とされておりまして、また、その制度導入に当たっては、労使協定によって段階的な引上げを行うということが認められておるわけであります。

 一方で、これは制度の話でございますので、同じく高年齢者雇用安定法上の理解といたしましても、個々の労働者に対して事業主が個別に六十五歳まで雇用する義務を負うわけではない、したがって、解雇事由として定められているような事由に該当する場合には継続雇用の対象としないということは可能になってくるわけでございます。

 こういった個々の効果につきましては、これは民事的な判断になるわけでございますが、例えばということで申し上げますと、客観的かつ合理的な理由がないにもかかわらず高年齢者を継続雇用の対象としなかったことについて、労働契約法十六条に基づく解雇権濫用規制の類推適用という形で再雇用契約の成立というものを認めた事例もあるというふうに承知をしております。

宮本委員 この六十歳で雇いどめされた方というのは、私が伺っている話では、職場でパワハラに遭う中で、数年前に労働組合に入られたということなんですよね。ほかの方々はみんな六十歳になっても勤められたけれども、この方だけが再雇用されなかったという話なわけであります。こういうことは許されるんですか。

小林政府参考人 先ほど申し上げましたように、個々の労働者の継続雇用ということにつきましては、事業主として、解雇事由としてどういったことを定めているか、またその事由に該当するか否かという個別の判断になってくるわけでございます。

 それで、今御指摘いただいた件でございますが、これはまさに民事訴訟が提起されておる事案だというふうに承知をしておりまして、個別の係争中の事案でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

宮本委員 この税理士国民年金基金は、昨年四月に全国国民年金基金に集約されているわけですよね。全国国民年金基金は、御存じのとおり、常務理事は厚労省からの天下りの皆さんがやられているわけですよ。まさに厚労省自身の足元でこういうことが起きていて、訴訟になるような話になっているわけですよ。

 これはやはり、もっと高年法の趣旨がちゃんと徹底されるように、正しく法律が運用されるように、足元から正していく必要があるんじゃないですか、大臣。違いますか。

加藤国務大臣 お尋ねの方は、日本税理士国民年金基金に対して民事訴訟を提起されている。私どもの全国国民年金基金に引き継いだのは平成三十一年四月一日ということでありますから、まさにその段階では民事訴訟について私どもが受け継いだ、そして今そうした訴訟が行われている、こういう流れであります。

宮本委員 そういうことじゃなくて、別に訴訟の解説をしてほしいと言ったわけじゃないわけですよ。

 厚労省の所管している法人で、しかも、厚労省の皆さんが、ここで一生懸命労働者を守りましょうと言っている厚労省の皆さんが、実際は天下って運営の中心にいるわけじゃないですか。そういうところでこういう問題が起きているというのは、これはやはりちゃんと解決しなきゃいけないと思いますよ。個別の事案ということしかおっしゃれないのかもわからないですけれども、やはりちゃんとやっていただきたいと思います。

 それから、現状でも、雇用を義務づけられていても、企業の側が守らず、選別しているということが起きているわけですよね。

 法案の六十五歳以上の努力義務、今度は義務じゃなくて努力義務だと。そうすると、雇用がされる、されない、就業が確保される、されない、こういうことをめぐって不当な差別が起きるんじゃないですか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、高年齢者就業確保措置というのを法律に新たに規定をしたわけでございますが、この条文のところにございますように、高年齢者が希望するときに継続的に雇用や就業の機会を確保する、こういう規定になっております。

 この法の条文をどうやって運用していくかということになるわけでございますが、個々の労働者のニーズというのを十分踏まえていくことが必要である。そのため、一つは、昨日来申し上げておりますように、この措置を具体的に実施する上での運用計画というのを定めていただく。これについては、労使がしっかりと合意をしていただく必要があるわけであります。

 その上で、この措置を個々人に具体的にどう適用していくかという局面が次にあるわけでございますが、この措置の適用につきましても、本人の希望を聴取し、本人の希望を勘案して選択できるような仕組みとすることが重要であるというふうに考えておりまして、こういったことについても今後指針で定めていく必要があるというふうに考えております。

宮本委員 指針でいろいろ定めるということを言いますけれども、今でもこういう差別、選別が起きていて、法律上の文言には今回は努力義務ですよと。差別、選別してはいけませんということは別に法律上は何も書かれていないわけですよね。そこは大変懸念されます。

 時間が来たからもう終わりますけれども、とりわけ、実際起きている例でいえば、雇用か請負か、こういう選別が行われているわけですよ。きのう尾辻委員が挙げられていた布団の丸八のケースは、営業職で売上げが芳しくない人は請負契約にしているわけですよ。こういうやり方がまかり通るものになりかねないということを厳しく指摘させていただいて、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。

盛山委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立国社の阿部知子です。

 昨日に引き続き、昨日は、夜なべ、大変長時間の質疑で、大臣始め各委員の皆様、また裏方をやってくださる官僚の皆さんも大変御苦労なことかと思います。

 そして、そうした上で、今回のような拙速過ぎる審議のあり方、本当にこれで立法府がきちんと国民の要請に応えられるんだろうかということに強く苦言を呈しておきたいと思います。

 そもそも、今回の法改正ですが、昨日の参考人の中でも御指摘がありましたが、六つの法律の修正、改正が一緒くたに一気に行われ、それもきのう、きょうで終わる。本当にこんな、ところてんでいいんだろうか。私は国会に来て二十年になりますが、最近の国会のありようは本来の立法府の姿ではないと思います。

 六つの法律は、皆さんも御承知のように、高齢者の雇用安定法、雇用保険法、労災保険法、労働保険料徴収法、特別会計法、労働施策総合推進法、これだけ聞いても一つ一つすごく重要なことなのに通り過ぎていき、そして、結果、本当に何年たっても改善しないことがございます。

 私は、一番目、きょうは育児休業について御質疑をさせていただきます。そして、もし加藤大臣が覚えておいでであったら、この質問は、全く同じものを平成二十八年の三月十一日に私はいたしました。そして、何ら進歩がない育児休業問題であります。

 大臣のお手元をまず見ていただきますと、今回の法改正は育児休業を一般的な雇用保険の中から独自な特別会計にしていくということで、ある種そこは充実の方向に行くんだと思います。育児休業という大きな社会のセーフティーネットが広く張られていくということを期待しながら、しかし、そうはなっておらないというところで質疑をさせていただきます。

 お手元の一枚目を見ていただけますれば、女性たちのいわゆる育児休業取得率も八割、もうちょっと伸びたらいいなと思いますし、男性の方はまだ六%でありますから、ますますこれではと思いますが、それでも一応伸びております。そして、育児休業給付に係る制度変遷も、平成十二年、私はこの年に当選しましたが、今日に至るまで料率も徐々に上がってきて生活を保障するので、育児休業をとってお金が入らないということがないようにはなってきております。

 大臣にお伺いをいたしますが、実は、労働基準法に定める産前産後の休暇、これは大臣はどのくらいか御存じと思いますが、出産の予定日までに六週、出産後八週、計十四週という。これは、労基法に定める二カ月というのがございます。ところが、今大変ふえてきているフリーランス等々の女性の場合は、実は、出産一時金は来るんですけれども、出産手当金もなければ、もちろん産休をとる間の保険料の減免もなければ、育児休業も有給のものはとれません。フリーランスですから、仕事がとまった途端に収入がとまるという中で、さあ出産ができるかどうかということであります。

 実は、一般社団法人フリーランス協会による調査では、フリーランスの女性たちは、産後二カ月以内に職場に戻るというか、仕事を開始する方が五九%、産後一カ月以内でも四四・八。すなわち、当然保障される二カ月以内に仕事を始めなければ食べていけないという実態がございます。今回のコロナの休業でも大変に大きな問題になっております。

 さて、大臣には、母性保護は、どんな働き方をしていても女性が出産することを守られていなければならない、当たり前のことですが、なぜこんなに、フリーランスであれば何の保障もなく、そして女性たちにひとしく与えられるべき権利がこのような形で保障されないのか、この実態について、現実について、まず大臣の御認識を伺います。これは四年前と同じ質問です。

加藤国務大臣 たしか四年前はILOの規定との絡みで御質問をいただいたというふうに、なぜ入らないのかという、たしかそっちに主眼があったように記憶をさせていただいているんですが、今回は制度そのものの御議論なんだろうというふうに思います。

 今の御認識、働き方はいろいろありますけれども、いわゆる働く女性の方々の母性が尊重され、働きながら安心して子供を産むことができる環境をつくっていく、これは非常に大事なことでありますし、まさに今、さまざまな少子化対策等々をとっている中においてもしっかり認識していくべき問題なんだろうとは思います。

 現状においては、使用者の指揮命令下で働く労働基準法の労働者については、使用者との使用従属関係にある中において、母性保護の観点から、産前六週間、産後八週間の産前産後休業を権利として保障しております。若干、産前、産後においては状況が違って、産後は、請求しなくても就業させてはならないと、より強い規定になっているというふうに認識をしております。

 一方、いわゆるフリーランスについては、雇用関係によらない働き方については、実態として労働者に該当しない限り、雇用関係を前提とするこうした制度の対象にはならないというのが今の実態であります。国民健康保険制度は、自営業や無職等、あるいはフリーランスの方々、さまざまな方々が加入をしております。労務につけないときの所得保障である出産手当金については、出産一時金は今お話があったように支給はされていますけれども、出産手当金については保険者による任意給付になっているわけであります。

 雇用関係によらない働き方のうち、労働者に類似した働き方をする方の出産、育児、介護等との両立については、雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会においても議論をしていただいているところであります。雇用類似の働き方の広がりや、発注者に対してどういうことを求めていけるのか、あるいはそれに対する社会の理解、そういったことも踏まえて、既に中間整理が行われておりますけれども、引き続き検討していきたいというふうに思います。

阿部委員 雇用類似の働き方で中間整理をしている、引き続き論点整理をしていきたい、その間にも、女性たちは、産みたいと願いながら、生活が成り立たないから産めないという状況も来しているんです。なぜ、労働者性をもってして、女性の産む、産まないの、その産むことの当然の権利が侵害されるのか。

 大臣が御答弁になったILOの母性保護条約第百八十三号、ちょうど二〇〇〇年に採択です、そして二〇〇二年発効、日本はいまだ批准せず。これは何かというと、全ての働く女性を対象として、どんな働き方であってもです、どんな働き方であっても、全ての女性を対象として、母性保護の観点から、最低十四週の出産休暇、公費からの所得の三分の二を下らない現金給付、出産を理由とする不利益処遇の禁止、原職復帰の保障、哺乳時間の保障などを規定してございます。多く女性が働くと言われる時代になって、いまだに当たり前のことが保障されない日本、本当にこれでよいのかというのが私が四年前に聞いたことであります。

 そして、フリーランス以外の自営業の場合は、ILOではなくてEU指令で、この自営業の方たちの出産、育児をどう支えるかということも既に出されております。二〇一〇年であったかと思います。

 いずれにしろ、世界は女性たちの活躍を期待し、しかし制度がそれに追いついていない、特に日本は。このことを私は実は今回の附帯決議につけていただきたいと申し上げましたが、与党もそれを了となさいませんでした。本当にこういう状態がいつまで続くのか。心からの憤りを持って、次の質問に行かせていただきます。

 この間、こうしたフリーランスで働く皆さんの協会が調査をなさいました。大臣、このフリーランスと比較いたしましょう。その方といわゆる雇用状態にある方が、出産をめぐって、出産の一年間でどのくらいの経済格差ができると御認識ですか。

加藤国務大臣 まず、フリーランスという方をどう捉えていいのかわからないというのが非常に課題だというふうに思っておりますので、したがって、わからない方と比較をするというのはなかなか難しいというふうに思っております。

阿部委員 そういうのを詭弁というんです、大臣。もっと真面目に考えてくださいな。

 あなたの想像の中のフリーランスで構いませんよ、フリーランス一般が規定できないんだったら。みんな、働き方なんて個々人じゃないですか。いいですか、個人事業主と言いかえてもいいですよ、実際にそういう女性たちが、二〇一八年、大臣のもとに要望書を出しているはずですよ。大臣、見ていないんですか。お答えください。今のような御答弁をされるなら、この方たちが出した厚生労働省への要望書、その中に書かれていることです。御存じありませんか。教えてください。御答弁がないなら、とめてください。

加藤国務大臣 担当課では受け取っているというふうに承知をしております。

阿部委員 いいですか、大臣、担当課で受け取って、あなたが大事なんですよ。厚生労働大臣で、女性活躍の旗を振り。女性たちに本当に出産すら保障されていないことをもし御存じなく、聞く気もないんだったら、加藤厚生労働大臣はどんなに優秀でも今の時代の厚労大臣にはふさわしくないですよ。大臣は確かに優秀です。どんなことでも答弁をなさいます。しかし、基本認識、この社会の基本認識がなければ厚生労働行政などやれません。

 大臣、お手元に資料をつけました。ここには、彼女たちの試算によるものです、出産の一年間で三百万円の差が生じる。なぜこの差が生じるのか。

 先ほど申し上げました出産一時金は、当然、働き方にかかわらず入ってまいります。約四十二万円。しかし、出産手当金、通常六十五万円、そして育児休業中の給付、これらを合わせると、まず、一年で二百八十八万、雇用の場合は来るであろう。ところが、個人事業主、フリーランス、自営業の皆さんは、産休中も保険料を納め続けなければならないからマイナスなんです。収入がなくて、マイナス十三万五千三百七十三円。これを合わせれば三百万円近い格差がここで生まれる、これが現実です。

 もし、大臣、御存じないなら調査されたらどうですか。要望が上がっても見ていない、知らない。調査してください。いかがですか。

加藤国務大臣 ですから、要するに、雇用者になっている方、なっていない方との比較なんだろうと思います。

 そして、雇用者の方は当然、それに基づく負担もされているわけであります。雇用保険料等々であります。フリーランスというか、そうでない方は負担をされていないわけであります。そして、ではその負担をどうやって求めていくのか、多様な議論があるということでありまして、我々は別に逃げているわけではありません。

 それから、まずは、その中で雇用に近い方からどうにかやれないかということでありますし、今回も、いろいろ御批判はありましたけれども、小中学校の臨時休業に伴う措置だって、それは本来だったらなかなかできるものでもない、それでも少しは何かやっていかなきゃいけない、そういう認識でやっているわけでありますから、別に私はこの問題に関心を持っていないわけではなくて、むしろその難しさと、それから、その中におられる方には相当な幅があって、むしろ余り規制をしてほしくないという方と、規制をしていかなきゃいけないという方と、さまざまな方がおられる中で、それにどういうふうに対応するのか、正直言って簡単な問題ではない、したがって、この改革は時間がかかっている。

 これはこれとして反省しなきゃいけないと思いますけれども、しかし、そういった状況の中で、一つずつでもやれること、皆さんの理解を踏まえながら対応できること、これは対応していきたいというふうには思っています。

阿部委員 何度も申し上げますが、この点については四年間、一つも、何一つです、改善しておりませんので、私が再び取り上げさせていただくことになりました。

 多様な働き方。働き方は、個々人、みんな違います。百人いれば百通り。ただ、出産というときに、実際に就労できない、あるいは、自分の、個人事業主でもなかなか仕事はできません。これから産後ケア云々を充実させるということは、そもそも、その方たちが安心して子供といられて、安心して産後の疲れを癒やして。大臣、おわかりですか、二カ月もたっていないのに仕事を開始しなきゃいけない方が半数いるんですよ。調査もしていない。重きを置いていないわけではないとおっしゃいますが、到底、私は、それは言いわけにしか聞こえません。

 そして、次のページを見ていただきますと、今大臣は、保険料を負担していないとおっしゃいました。確かに雇用保険の保険料は負担しておられませんが、この方々は医療保険においては国保に入っておられます。

 国保の中におけるさっきの一時金の支給件数を見ていくと、大体、国保の方がどれくらい出産されて一時金をもらっておられるかがわかります。下の赤いラインが国保、上が全体です。十万件を今なら欠いてきているでしょう。出産全体も八十六万と、この前、数が出ました。少子化が明らかに進行し、そして、この方々は、実は、先ほど私が申し上げましたように、出産手当金をもらっていません。一時金をもらっているので、それで算出して数は出ます。

 大臣、保険料を彼女らは負担しています、国保の保険料を。しかし、出産手当金は来ません。本来、健康保険組合であれば出産手当金を給付しなければならないとなっているんです。国保の場合は、大臣もよくおわかりでしょう、財政基盤が弱いからということで、ずっとこの出産の手当金も給付されずにまいりました、今日まで。そこにもまた差が生まれております。保険料を負担していないからというのは、失業給付、失業保険について言えることであって、そのほかでも差があるということを、しっかりとここで認識をしていただきたいんです。

 さて、そういう形で、大体、二十歳から四十四歳くらいまで、出産年齢と言われる女性たちが国保の中には何人おられるか、大臣、御存じですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 数字の関係でございますので、私からお答え申し上げます。

 市町村国保の被保険者であります二十から四十四歳までの女性につきましては、平成三十年度で約二百七十六万人でございます。

阿部委員 大臣のお手元にも資料でつけてございます。大体、二十歳から二十四歳が四十八万、二十五から二十九が四十六万、そして、三十から三十四、五十一万、三十五から三十九、五十八万、四十から四十四、七十万、これらの方々は出産のとき、自分は保険料を払っています、だけれども手当金は来ない。

 この件については、参議院でせんだって国民民主の足立さんが質疑をされて、これは保険者が条例をつくればもちろんできるようになるんです。だけれども一県もないんです、そういうふうにやっている県は。だから、いまだに給付もないんです。一部、国保組合で出しているところがあるだけです。

 大臣、せめてここだけでも改善されたらどうでしょう。保険料は払っています。どうですか。

加藤国務大臣 いわば、だから、その出産手当金等々を含めた傷病手当金もありますけれども、まず、それを払うことをベースに国保の保険料が計算されているわけではないということであります。

 その上で、今回も、新型コロナウイルスのことで傷病手当のことがありました。これについては、特別調整交付金という中で、国費で対応するということ、そういう中で国保に入っている方でも傷病手当をとれる環境をつくらせていただいているということでありまして、それでも常にというわけではありませんし、一つ一つの中で考えていかなきゃいけないということだと思っております。

 それから、お手元にいただいた、市町村国保における出産一時金の支給件数の比率が下がってきている、これは、若い人の数が減ってきているのと同時に、やはり、今進めております被用者の適用拡大、これも非常に大事なことなんだろうと思いますので、そういったさまざまな施策を総合的にしながらこういった課題に取り組んでいく必要があるんだろうと思います。

阿部委員 まず、前段については、今回のコロナの問題で傷病手当は出すようにしたんだと。いいことです、国保だと傷病手当もないから。

 私は、コロナは感染症の危機です、でも、我が国にとって少子化も危機だと思います。産みたくても産めない。

 私は、この間、不妊症のワーキングを立憲民主の子ども・子育てのPTでやらせていただきました。これも危機です。産みたくても産めない。産む、産まないは女性の選択です。でも、実際には経済的に考えて産めない。あるいは、この不妊ワーキングでもわかったことですが、大変費用が高い。それらは、当然、女性たちの産みたい願いをかなえられなくしているんです。コロナの危機同様、少子化は我が国にとって危機です。それは、産みたいと思っても産めない現状があるからです。

 傷病手当ができたなら、ぜひ出産手当もやってください。その危機の認識が違うから、今日の日本の少子化は幾ら政府が一・八の旗を振ろうと改善していないじゃないですか。本当に、こんなことをいつまで放置するんですか。

 私は、このことはきょう大臣にしっかりと申し上げましたので、大臣に期待して、次の質問に行かせていただきます。

 今回、御高齢期の問題も何人かの方が取り上げられましたので、私はそれと重なり合わない中でお尋ねをいたしますが、今回の雇用延長、雇用だけではないですね、委託業務も選択肢になり、そちらに誘導されるかもしれませんから。いずれにしろ、そうなっていった場合に、御高齢期には特に、さまざまな労災のリスク、けがや脳血管障害もあるでしょう、いろいろなリスクが高い。

 これについて、高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドラインというものがつくられておりますが、果たして、このガイドラインでは、どんな事故が多いかと見ると、転倒が多くて、段差があるから。特に、女性の転倒事故がすごく多いんですね。そういう実態を踏まえて、労働現場の環境改善、あるいは、そういう事態が放置されていれば労災は来しやすいから、労災等々の判断の根拠としてしっかりこれを据えていくのか。この点について、大臣、御答弁をいいですか。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、働き手全般が高齢化をしておりまして、労働災害で死傷された方々を見ますと、六十歳以上の方々の占める割合が、二〇〇八年には一八%だったものが、十年後の二〇一八年には二六%となっております。さらに、女性に着目をしてみますと、女性の転倒災害が増加をしております。職場における段差などのバリアフリーへの対応、高齢者が安心して安全に働ける職場づくり、これは結果的に若手の方にとってもプラスになるわけでありますが、重要な課題であります。

 先般、今お話があった高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドラインにおいては、まず、高年齢労働者の特性や課題を想定したリスクアセスメントをしっかりやるということ、その結果を踏まえて、手すりの設置、通路の段差解消、あるいは安全標識の掲示による注意喚起など、職場環境の改善策を示させていただいておりまして、これに対してしっかりと周知啓発を図りたいと思っておりますし、加えて、高年齢労働者の安全衛生確保に資する事業者の取組に対しては、エイジフレンドリー補助金を新設をさせていただいて、中小企業等における段差などのバリアフリーの、解消を含めたさまざまな取組を後押しをしていきたいというふうに考えております。

阿部委員 働きやすく安全な職場で、そして、万が一そこで事故が起きた場合は速やかな労災の認定につながる、だけれどもこれは労働者性がないとなかなかそうはならないというところで、ここでまた同じ問題が惹起いたします。

 では、昔から、大工さんとか、建設現場の一人親方は、いわゆる特別加入の労災に入られるということを政府としても進めてこられたと思います。さて、昨日も伺いましたが、この特別加入の労災保険の加入者の男女比を教えてください。果たして、特別加入されている方は、どのくらいのパーセンテージが男性で、どのくらいのパーセンテージが女性でしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねではございますけれども、私どもの方で、現在、特別加入者の男女別の加入者数というのは把握はしてございません。

阿部委員 大臣も、SDGs、最近国連でもこれが皆さんの共通目標になっていますから、その中に必ず、ジェンダー、性別の視点を入れるべきということが出されております。全ての統計に、男女比をきちんと見ること。特に、高年齢で働く方の場合に、男性というイメージが皆さんの中にはあるかもしれませんが、多く女性たちも働いております。そして、雇用関係になければ、当然、この特別加入ということが少なくとも保障されなくてはならない。そこに誘導するものではありません。きちんとした雇用関係が一番ですから。

 しかし、さまざまな理由でそうやって働かれる方の、特に女性たちが安全衛生的にも転倒が多い。だけれども、実際に特別加入しているかどうかのデータも、性別では把握されていない。この点についての大臣の御認識と、改善を求めます。

加藤国務大臣 まず、特別加入制度のあり方でありますけれども、昨年十二月二十三日に労政審の取りまとめた建議で「社会経済情勢の変化も踏まえ、特別加入の対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合った制度運用となるよう見直しを行う必要がある。」というふうに指摘をされております。

 我々はこの建議を踏まえて必要な見直しを行っていきたいと思っておりますが、その際に、まさに、現代に合ったということは、現代がどうなのかということを承知をしていなければ適切な対策はとれないということでありますので、今委員御指摘がありました現在の特別加入における男女割合を含めて、まず、現状がどうなっているのか、特別加入に入っている人はもとより、これから対象を広げようとしたときの対象はどうなっているのか、さまざまなデータを集めた上で判断をしていく必要があると思っております。

阿部委員 ぜひ、これを契機によろしくお願いしたいと思います。

 引き続いて、法案については以上で、今問題になっております新型コロナ感染症についてお伺いをいたします。

 大臣のお手元に、資料の一番最後につけさせていただきましたが、三月十六日現在、厚生労働省からいただきました資料によりますと、ここでは、感染症の感染者数が八百十四人で、うち国内の死亡者は二十四人。ちなみに、これはクルーズ船を除いたものであります。この数値に関して、以下、各国のものが並べてございますが、ここから何を読み取るのか。

 例えば、大臣、ドイツでは、感染者数五千四百二十六、お亡くなりの方が十二。我が国では八百十四、お亡くなりの方が二十四。私は、正直言って、我が国の医療現場で働き、我が国の医療体制というものは世界に誇れるものだと思っております。にもかかわらず、感染者として挙げられた数の中に死亡者が多い。例えば、イタリアは医療崩壊の後だから死亡者が多いんだとよく言われております。

 私は、本来、これはどちらかの問題があると。例えば、感染者の数の調査が行き渡っていない。あるいは、これは悲しむべきことですが、重症化されてから見つかるので、高齢者の場合は亡くなられる方も多い。いずれにしろ、我が国の医療体制から見て、この数値を大臣はどうごらんになりますか。

加藤国務大臣 機械的に算出すると、致死率としては、これは三月十七日の時点の我々のデータでありますけれども、三・四%。これは、感染者数に占める亡くなった方を割れば出てくる数字であります。

 この数字をどう見ていくのかというお話でありますけれども、一つは、今、日本の中で医療崩壊が起きているかというと、必ずしもそういうことでは私はないと。ベッド数から見てかなり厳しくなってきている地域があることは事実でありますけれども、イタリア等の報道を見ると、重症者患者の中において人工呼吸器をどうやって優先的につけるかとか、そういうまさにシビアな判断を求められるという状況には私はなっていないと思いますし、日本の医療水準は世界に冠たるものであって、実際、医療現場の方においてはさまざまな医薬品を、例えばアビガンとかさまざまなものを使いながら、よりいい治療効果がないかということは積極的にやっていただいているというふうに思っております。

 そういった意味で、この人数をどう評価するか、これは非常に難しいところであります。

 一つは、これはちょっと、分析をしておりますと、発症してから亡くなるまでの期間というのが、人によってまちまちなんですけれども、日本のデータを見ると、平均すると十日以上たっているということもあります。そうすると、日本はずっと低い状態でありますけれども、割と早くからそうした方が出てきた、ドイツにおいては急にふえてきたという、そんな事情もあるのか。

 あるいは、もちろん、感染者数の把握の仕方。要するに、これは二つあって、医療に行かれた方の検査と、もう一つ、積極的疫学ということですから、日本でもたくさん出てくれば積極的疫学調査はどんどん拡大をします。そして、当然PCRをやるということも出てきます。そうすると、そこからは、多分、症状のない方、あるいは軽症の方も当然出てくる。そういったいろいろな状況が相まじっているんだろうというふうには思います。

 いずれにしても、我々の目的は、重症化をいかに抑えて、そして死亡につながらないようにしていくかということでありますから、そういった観点からもしっかりこういった数字をよく見ていきたいというふうに思っています。

阿部委員 私が指摘したいのは、我が国の医療実態、あるいは医療者の頑張りからして、三・数%は多過ぎます。なぜか。やはり検査の絞り込みが大きな要因で、一体何日目に検査されて、発症からです、この期間も長過ぎます。なぜそこまで遠ざけるのか。

 私は、実は、日曜日、夜間、休日診療の担当をいたしました。今、休日診療の現場では、インフルエンザの検査とかアデノウイルスの検査もやってはなりませんと。なぜなら、飛沫として、もしその人がコロナであれば、飛んでくるから。でも、大臣、御存じですか、この二つの検査をやっていなければ、次のコロナの検査はできないのです。いいですか。そういうふうな厚労省の指針というか、方針なんです。きのう、うちの岡本さんがお示しいただきました。インフルやアデノをやって、それで、そうでなかったらコロナをやりなさい、あるいは、やってなお心配だ、そうかもしれないと思われるならやりなさいと。

 私は、例えばなぜドイツやアメリカでドライブスルーにしているか、なるべく医療者がそこで接触感染をしないように、あるいはシールドをかけて、検体をとるときに医療者と患者さんを隔ててやる、いろいろな工夫があると思うんです。検査をやり渋る方向に持っていったら、一つは、重症化させてしまう、それから、この感染症がどんな行動形態をとったかが後から見えなくなります。

 私や山井さんはいつも、もっと検査をしろ、検査をしろと求めます。その理由は、それが早期発見につながり、よりよい治療、亡くならなくてもよい方を救いたい、それから、そのときのリスクは他の方法で改善できると思うからであります。

 大臣にはきょうはこのことを指摘して、今の方法は誤った方向に進んでいます、ますます医療から遠ざかればインフルだって重症化する、アデノだって投与が、治療が必要だと思いますので、ぜひお伝えをしておきたいと思います。

加藤国務大臣 今のお話、医師会からも、今言われたまさにインフルエンザの検査というのは、たしか鼻ですよね、先生。くしゃみが出たりして、そうすると飛沫感染をするおそれがある。私も聞かせていただいたら、通常のインフルエンザのときは、新型コロナウイルスのような完全防備をしているというのは余りなくて、割とマスク一つでやっておられるということで、非常にリスクが高いという。実際、現場では、もうインフルエンザの検査をせずに、インフルエンザと思えばインフルエンザの治療をしてくださいというような話もされております。

 我々は、それを踏まえて、別にインフルエンザ検査をしなくても、疑いがあるということであれば回してくださいということは申し上げているところでありますが、まだ徹底が足りないという御指摘であれば、しっかり徹底したいと思います。

阿部委員 私が申し上げたいのは、安全に検査ができる、例えば、ここに遮断があればいいんです、真ん中に穴があいていて、そこからこうやってとれれば。そういう工夫も何もないんです。そして、やったら飛沫が来るぞとなったら、みんなやりません、やれません。そういう中で、患者さんの発見がおくれるだろう、後ずらしされることを懸念します。大臣は、今私が御紹介しましたので、改善していただけると思います。

 さて、大臣、この間、地方の衛生研究所のことが随分話題になっております。私はその機能はとても大事だと思いますが、時間がないので、三つまとめて言わせていただきます。

 この衛生研究所の法的な根拠は何でしょう。感染症法上や、あるいは特措法上にはどういう位置づけがなされているでしょうか。三つまとめてお願いします。

加藤国務大臣 これまでも指摘をされていますが、地方衛生研究所は、地域保健法に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針において、地域における科学的かつ技術的に中核となる機関として位置づけられ、調査研究や試験、検査、公衆衛生情報の収集、解析、提供の業務を担っております。

 また、感染症法において地方衛生研究所に関する直接の規定はないものというふうに承知をしております。

阿部委員 前段のお答えは、簡単に言うと通達ですよね。要するに、根拠が法的にないんです。それから、感染症法上にもないんです。特措法上は、法律にはなくて、行動計画にあるだけなんです。

 大臣、ここでぜひ見直しをすべきです。なぜなら、地方衛生研究所は、自分たちの報告や公表を何に基づいてやったらいいのか、そこが本当に保障されていないんです。この間、厚労省も、何件実施しましたと言って、全国の毎日のデータは決して出てきていません。まとめて何日とか。これからパンデミックになるかもしれないと言っているときに、まずインフラを整備すべきです。それは、医療においても、検査体制においても。

 大臣は今御答弁なさいましたので、この法的基盤が置かれていない、通達はあくまで通達です、このことを強く認識して、私ども野党の検査の充実と公表を求める法案をぜひ成立、若しくは閣法で出していただきたくお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

盛山委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 おはようございます。きのうに引き続き質問させていただきます、立国社の尾辻かな子です。

 まず、法案審議に入る前に、少し新型コロナウイルスのことについてお聞きをしていきたいと思います。民間の検査機関におけるPCR検査のことについてです。

 これは、そもそも、安倍総理が二月二十九日の記者会見でこのようにおっしゃったわけですね。来週中にPCR検査に医療保険を適用いたします、これにより、保健所を経由することなく民間の検査機関に直接検査依頼を行うことが可能となります、民間検査機関の検査能力も大幅に増強されます、こうした取組を総動員することで、かかりつけ医など身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、全ての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたしますというふうにおっしゃって、三月六日から保険適用が開始をされたということです。

 本当にこの言葉のとおりになっているのかということについてお聞きしていきたいと思うんですが、まず、きのう、厚労省のホームページで保険適用されたPCRの検査数が発表されているかと思います。これは何件でしたでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 PCRの件数でございますが、保険適用が開始された三月六日以降で、三月十六日までにPCR検査が行われたのが全体で一万四千二百七十五件、このうち大学及び医療機関で実施した件数が三百七十九件でございまして、昨日の時点で保険適用されているものとして厚労省が確認しているのが、そのうち百八十九件でございます。

 また、三月六日から三月十六日までに民間検査会社において行われたPCR検査が三百四十八件でございまして、このうち医療機関から検査を受託されたものが二百二十四件でございまして、これについては保険適用された検査ではないかと考えているところでございます。

 以上でございます。

尾辻委員 そうすると、一体、全体の何%が保険適用された検査になったんでしょう。

宮嵜政府参考人 済みません、パーセントまではちょっと計算していないんですけれども、今お答え申し上げました三月六日から三月十六日までの検査全体が一万四千二百七十五件、このうちの大学及び医療機関で実施されたもののうち、保険適用されていると考えられるものが百八十九件、それから、民間の検査会社で行われたもののうち、保険適用されたと考えられるものが二百二十四件という報告をいただいております。

尾辻委員 ということは、一万四千件、保険適用をやってからのPCR検査のうちで、二百二十四件と百八十九件、約四百件ですかね、が保険適用でやったであろうという検査だということでいいですか。

宮嵜政府参考人 今お話があったとおりでございます。

尾辻委員 この数字をどのように評価されるでしょうか。今、保険適用されたというのは、まず、全部把握されているのかどうか。つまり、保険適用された検査の全てを把握してこの件数になっているのか、それともこれは一部なのか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今現時点で報告をいただいている件数ということでございますので、これ以降も報告が上がってくるということで、数字が更新される可能性はございます。この十六日で締めて全部ではなくて、十六日の分でも後から報告が来る分とかがありますので、まだふえる可能性があると思います。また、こういう形で保険適用へと順次検査が今後は進んでくるのではないかというふうに期待しているところでございます。

尾辻委員 このことについて、まず、私は、本当に全体像をつかんでいるのかどうかというのがちょっとわかりません。

 きのうヒアリングで聞いたところ、なかなか都道府県からは上がってこないので、厚労省の皆さんが直接医療機関とかに連絡をして把握しているんだ、ですから、これは一部であって全体でないというふうにお答えがあったんですね。

 今の答えでは一部か全体かというのがちょっとよくわからなかったんですけれども、私はこれは一部だというふうに聞いておりますので、そうすると、これを今どのように評価していますか。今、保険のPCR件数はやはりまだ少ないというふうに思っていらっしゃるのか、これで十分だと思っていらっしゃるのか。評価はどうですか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、件数ですけれども、これはあくまでも、先ほども申し上げましたが、報告が上がってきているものということで、今後も上がってくる可能性があるので、全部ということではないということでございます。

 それから、こういう形で保険で導入されましたので、現時点で多いか少ないかというのは一概に申し上げにくいんですけれども、今後、保険適用をされる検査というのはふえていくものというふうに期待しております。

尾辻委員 まず、やはり全体像がつかめないと私は非常に問題だと思っておりますので、しっかり全体像をつかんでいただきたいというふうに思います。

 実はこれは非常に難しいスキームになっていまして、私たちは民間検査ができるということになると非行政検査が広がるんだなというふうに思っていたら、実は、三月四日の厚労省さんの通知で見ると、いやいや、違うんだ、これは行政検査としてやってくださいね、行政検査の委託ですよというふうになっているわけです。

 今保険適用をされているPCR検査は行政検査としてやっているということで、これは確認、よろしいですか。

宮嵜政府参考人 今委員から御指摘ございました点につきましては、PCR検査は行政検査としての側面もあるということと、あと、行政検査の側面もある検査として実際に受けられた場合には、患者さんの一部負担金のところも公費で負担するというような仕組み、対応が必要でございますので、今議員から御指摘があったような仕組みで今回は取り組んでいるというところでございます。

尾辻委員 ということなので、非行政検査によるPCR検査というのは今はない、保険適用によるPCR検査で、非行政検査ではないということで、確認です、よろしいですよね。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 原則として今委員御指摘のとおり行政検査として行われているということでございますが、実際に行政として上がってこないで一般で保険適用を仮にやられた場合には、一部負担金も含めて見るというスキームに乗ってこないので、そこはちょっと実態としては逆にわからない、数値として、純粋に保険だけでやられているかどうかというところは件数も含めてわからないというのが現時点でのお答えになろうかと思います。

加藤国務大臣 その行政検査という言葉でありますけれども、行政検査ということになると丸ごと負担、要するに保険ではないということです。それから、保険適用についても、三割負担の部分は国が持つということを申し上げておりますので、当然、国が持つということになると、それに係る手続はどうしても必要であるということであります。

 ただ、もう一つあるのは、これは多分、ちょっと私も一部しか聞いたことがないんですが、実態として、それぞれ、医療機関というのはいろいろな検査を出しますね、血液検査とか何とか検査と。日ごろからつき合っている先がPCR検査をしているのであれば、そのまますっと流せるわけですね。ところが、PCR検査をしていないというと、別途、PCR検査をする検査会社を探さなきゃいけないということが出てくるわけで、そこを今我々はマッチングしながらそれぞれつないでいる、そうすると、その間どうするかというと、当然検査しなきゃいけないんですから、その分は地衛研の方に回している。

 これはいわば弾力的な運用が含まれているということなので、これから、動きとしては、今地衛研に回っている部分について、本来であれば保険適用でやっていける部分も一定程度あるんだろうと思います、そういった意味での環境が整えば。そちらへ移行していく、そしてそのためにも、今、民間検査会社にはそれぞれの地域地域で営業所等の展開もしていただいております。それから、できるだけいろいろな箇所で検査をしませんと、検体を運ぶというのは結構大変なことなんですね。当然、運べば時間もかかりますし、時間がかかれば検査の判明までの時間もかかるということでありますから、そういった意味での環境も整えながら、この保険適用がより一層進んでいくように努力をしていきたいと考えています。

尾辻委員 いや、大臣、今おっしゃっていますけれども、厚労省が出した文書はこういうふうに書かれているんです。

 今般、PCR検査に保険適用されるが、現在のところ、医師の判断により診療の一環として行われ、帰国者・接触者外来を設置している医療機関等において実施する保険適用される検査については、前述の行政検査と同様の観点を有することから、同検査を実施する医療機関に対して都道府県等から行政検査を委託しているものとして取り扱い、当該検査費用の負担を本人に求めないこととする。

 今やられている検査は、やはり、行政検査の委託ということでやっていて、非行政検査にはなっていない。だから、なかなか、私たちは、最初に総理の発言を聞いたら、非行政検査が保険適用で広がると。もちろん、これはいろいろな争点はありますけれども、現状はそうではないということを確認をしておきたいというふうに思いますし、今、検査の自己負担が要らないスキームをとっています。ということは、自己負担分は、都道府県等が委託契約によってちゃんとその分は払いますよということを医療機関等とやるわけです。この委託契約、今どれぐらいできているのかということについてお聞きしたいと思います。

宮嵜政府参考人 お答えを申し上げます。

 現時点で委託の契約の締結が終了しているというところはゼロというふうに聞いております。

 ただ、実際には、医師の方が必要と判断した方が確実にPCR検査を受けられるように早急に取り組んでいくということで、検査自体、契約に先んじて取り組んでいるというのが実態だというふうに聞いております。

尾辻委員 ゼロ件なんです。本当に検査は広がっているんでしょうか。

 もちろん、報告がまだだというのはわかりますけれども、帰国者・接触者外来だけで八百カ所以上ある、そして入院している病院もある、でも、ここでの検査を保険適用で自己負担分をやる場合は、この委託契約をしなければいけないわけですよ。しかし、それがゼロ件だ。私、これは一体どうなっているのかな、本当にこれからちゃんと保険適用の検査が広がっていけるんだろうかと、すごく不安を感じているところです。

 一つ、ちょっと具体的なお話をさせていただくと、神戸市北区のクリニック、これはテレビでも報道されました。新型コロナウイルスの陽性者が来院をされた、診察されたドクターはマスクをつけて診察していたけれども、後で、その方が新型コロナウイルスの陽性者だったということで、念のために自分も、そしてドクターもPCR検査をしてくれないかというふうに保健所に依頼をしたら、保健所には、あなたは濃厚接触者ではない、マスクをしていたからと断られた。ですから、もちろんクリニックの消毒もしてもらえない。

 そのクリニックはどうしたかというと、これではこれ以上診療できないので、薬の投薬だけの指示はさせてもらうけれども面と向かってのことはもうやらないということで、休診になってしまったということで、このように、ドクターがPCR検査をしてほしいということになっても結局は検査につながらない現実が今あるということは、これは私は非常に問題じゃないかなと思うんですね。もちろん、クラスターが発生をしているとかで、同様の事案というのはこれからも出てくるし、最初は風邪に似た症状ですから、やはりクリニックに行ってしまうということはあると思うんですね。

 この一件の例をもって全ての地域がそうだとも言えませんけれども、このような、ドクターが望んでもPCR検査ができないという状況はやはり今現場で起こっているわけで、これについて大臣はどうお考えになりますか。

加藤国務大臣 ちょっと、今の話をベースにすると、詳細に我々も聞いていないのであれなんですが、基本的には、濃厚接触者かどうかの判断の中で、濃厚接触者であれば場合によってはPCR検査をする、これはむしろ、診療の話ではなくて、疫学的調査の一環として実施をしているということだと思います。

 したがって、今のケースでいえば、その方が直接に発症等をしているわけでもありません、それから、WHOがおととい出した中でも発症等があればしっかりやれということを言っているわけでありますから、そこは一つの基準なんだと思いますが、ただ一方で、濃厚接触、要するにそこから拡大するおそれがあるという場合にどういった形で疫学調査をして、そしてその中においてPCR検査をどの程度やっていくのか、これは、その場その場の判断でかなり相当数やっておられるケース、例えば和歌山のケースがよく言われますけれども、相当な数をやっておられると思います。

 それはケース・バイ・ケースの中で対応していただくということで、我々は別にそれに対して、今言った疫学的な話について何か規制をしているわけでは全くありません。

尾辻委員 そうすると、大臣、今、濃厚接触じゃないからこのドクターも、そのまま診察していただいて結構ですよ、PCR検査を受けていただかなくていいですということになるんだということで、それは仕方がないんだということでしょうか。

加藤国務大臣 まず、それは非常に大事なところで、濃厚接触者になると、その方は、PCR検査だけじゃなくて、少なくとも十四日間は診療行為をしていただくわけにはいきません。これは当然のことです。そこを非常に厳格にしているんですね。ですから、これを曲げちゃうと、みんなが感染するおそれがある。

 医師が一回誰かとやって十四日間ずつずっと自宅待機をしたら、診療してくれるお医者さんがいなくなっちゃうと思うんですね。それから、実際にその段階でPCR検査をしたからといって、本当にその人が陽性ではないかということには、今は判定するだけのウイルスがないということでありますから、そういった課題がある。したがって、可能性というのはいろいろな可能性がありますけれども、やはり、そうした一つの基準を設けなければ医療現場そのものを維持していくということはできないんだろうというふうに思います。

尾辻委員 ということは、今の話でいうと、このドクターがPCR検査を受けられないのは、今の枠組みの中ではそういうことになると大臣としては肯定されるということですね。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げた疫学的調査の一環としてやっていて、そして、保健所等、要するに疫学調査をやっている方々が、この人たちは濃厚接触者である、あるいは、この人たちは判定した方がいいという場合には実際にPCR検査をやっているわけであります。ですから、それを私は否定をしているわけではありません。

 ただ、お医者さん自身の判断ということになれば、それはそれぞれ皆さんいろいろな判断がありますので、そこはむしろ、今言ったように、きちんとしているかどうかというのは、やはりそこは保健所の、PCR検査をするかしないかじゃなくて、どういう対応をとるべきかということの判断に委ねるべきではないかというふうに思います。

尾辻委員 だから、最初に総理がおっしゃったことと現実に起こっていることにやはり乖離が起こっていると私は思うんですね。ドクターが自分でPCR検査が必要だと思ってもPCR検査につながれない今の現状というのは、より多くの人が不安を感じると思うんですね。

 ですので、もう少し、検査のあり方というところで、何のために保険適用にしたのかということも含めて、もちろん、医療崩壊を起こさないことや、重症者をしっかりと医療の中でやっていくことは大事なことですけれども、実際にこういうことが起こっている反面がありますから、しっかり受けとめていただきたいというふうに思います。

加藤国務大臣 今非常に大事なことなんだと思います。PCR検査をしたからといって、その段階でのウイルス数が判定するまでに至っていないということであって、その後どうなるかというのはわからないんですよね。実際、我々も、陰性だった人が一週間後にやったら陽性だったというケースは幾らでもしているわけですから。

 逆に、余りにPCRに乗り過ぎると、要するに、診療のためにPCRをする、これは非常に大事なことですけれども、その人がかかっていないか、かかっているか、じゃ、陰性だから大丈夫だといって、実はその後、陽性になるかもしれないんですね。ですから、そこは、PCRというものはそういうものなんだということを認識しながらやらないと、逆に、社会に逆の意味で感染を拡大するおそれもある、しかし一方できちんとやらなきゃいけない、だから、そこのバランスはよく判断しなきゃいけないと思います。

尾辻委員 同じことをおっしゃっているので、これで終わりたいと思いますけれども、この案件がほかのところでも起こってくると、これは本当に不安が広がりますよ。ですので、何のために保険適用をしてPCR検査ができるように広げたのかということも含めて考えていただきたいと思います。

 法案審査の方に移りたいと思います。

 きのうから申し上げているとおり、高年齢者雇用安定法、今回の改正にこれが入っていることについては私は非常に問題だと思っています。特に、業務委託などができる就業確保措置をこれから努力義務としてつくることは、やはり私は看過できないと思っているんですね。

 それも、この方々は六十五歳までは何らか雇用者、労働者として働いていて、今まで自営業者でも何でもない人なんですよ。その人が、いきなり六十五から、創業支援等措置だ、さあ、あなたもきょうから自営業者だということになるわけです。

 自営業者のノウハウを持っているんでしょうか。そういう働き方を今までしているんでしょうか。全然していない人を、最後、こんなに労災がふえるような、体の衰えもやはり少しあるだろう、その人たちにこういうことを、穴をあけるような形で業務委託を制度として持ってくるというのは、私はこれは大問題だと。本来であれば六十五歳以上の人をどうやってしっかり働く中で守っていくかを考えなければいけないのに、こういうような、抜け穴のようなものをつくって本当にいいんですかと。

 健康保険だって、国民健康保険になるわけですよ。労働時間だってなくなるわけですよ。休日という概念もなくなるわけですよ。最低賃金も保障されないわけですよ。労災もならないんですよ。本当に、こんな働き方を六十五歳からの方々に選択肢として示していいのか。これは本当に私は問題だと思っています。

 委託契約のことについてお聞きしていきたいと思うんですけれども、まず、運用計画や業務内容、報酬などは決めるんだとおっしゃっています。ただ、高度プロフェッショナル制度のときというのはもっと厳格だったんです。私たち、今でも反対ですよ。でも、労使委員会をつくって、委員の五分の四以上の多数による決議をもって、そして決議を労働基準監督署長に届け出る、ここまでやるわけですが、今回の場合は、過半数労働組合又は過半数代表者の同意だけでできちゃうんです。

 この同意についてお聞きしますけれども、何をもって同意というのか。口頭でもいいのか、文書じゃないとだめなのか、それとも過半数の賛成で決議を上げなければいけないのか。これはどういうふうに想定されているんでしょう。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 創業支援等措置を講ずる場合、運用計画を書面によって作成していただくことを予定しております。また、その作成に当たりましては、創業支援等措置を選択する理由というのをしっかりと説明していただいた上で、過半数代表者との間で書面で合意し、その内容等について十分説明し、納得を得る努力をする、そういったことをしっかりと指針に書き込んでまいりたいというふうに思います。

尾辻委員 同意はどういう形態になるんでしょう。

小林政府参考人 今申し上げましたように、同意をして運用計画というのを作成する、それは書面で作成するということになりますので、同意の結果は書面にあらわれてくるということでございます。

尾辻委員 そうしたら、ちょっともう一問だけいきたいと思うんですけれども、もし運用計画や業務内容が実際の業務と違った場合、これは結局どうなるんでしょう、労働局はどのようなことができるんでしょう。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、運用計画につきましては今申し上げましたように労使でしっかりと合意していただく、これは制度の入り口でございまして、その先は、運用計画に沿って、その方を対象とするかどうかということになるわけでございます。その方を対象とするかどうかについては、御本人の希望をきちんと聴取していただく、そして納得を得る努力をしていただくということが重要となってくるというふうに思っております。

 そういった手続というのが形骸化しているような場合につきましては、これは法の執行として問題があるということになってまいりますので、労働局の方で必要な助言、指導をさせていただくということになってこようかというふうに思います。

尾辻委員 助言、指導で本当に強制力があるのかということですよね。ヒアリングで聞いたら、実は勧告までで、例えば会社名の公表とかもないんですよ。そうすると、やはり、企業の方が力が強いわけですから、なかなか言えないんじゃないかということもあるわけです。

 大きな話でいくと、雇用契約よりも業務委託の方が、企業にとってはコストが非常に楽になるわけですよね。そうすると、企業は全部こっちを選んでいくんじゃないか。じゃ六十五歳以上の人の働き方は一体どうなるんだということは、これは非常に疑問が残るところです。

 高年齢者雇用安定法第十条の二のただし書き、ここは削除すべきだということを強く申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、岡本あき子君。

岡本(あ)委員 ありがとうございます。きのうに引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 きのう、マスクのお話を最後にさせていただきました。

 私は、今、政府で一生懸命マスクを届ける努力をしていること自体は評価をしたいと思いますが、やはり、そこにすき間があったり、優先順位の関係で、まだ、なかなか届くめどが立たない、あるいは自己調達ができない、そういう方々が現実にいらっしゃいます。

 なので、自覚症状がない方、あるいは、人混みに行かないところでは、マスクではなくて、大臣もずっとハンカチを持っていらっしゃいますけれども、まずハンカチで対応して、できれば、必要なところに優先順位を、国民の皆さんも、優先順位で必要な職種、今必要としている方にマスクを届ける御協力をというメッセージを大臣としては発出する気はございませんか。

加藤国務大臣 今の委員の御提言は、大変ありがたい御提言だと思います。

 まさに、マスクがなくても、ハンカチ、ティッシュなど、いわゆるせきエチケットと申し上げています。それから、私の地元でも、ハンカチを使って輪ゴムをかけて、自分でつくるマスクみたいなもの、あるいはその講習会をやったり、いろいろな形でしていただいております。

 まさにそういった努力をする中で、本当に必要なところに必要なものが行く、そういう流れをぜひつくっていきたいなというふうに思いますけれども、なかなか難しいところがありまして、そうすると、我々は今一生懸命やっているんですが、それを国民の皆さんに足らないところの負担を求めていくというふうにまた受けとめられても、非常に難しいところがあるとは思っておりますが、ただ、いずれにしても、そういったことも含めたさまざまな対応のお願いはさせていただきたいというふうに思っています。

岡本(あ)委員 できれば一言言っていただきたいなと思っていたんですが、ちょっと国民の皆さんも、私自身も誤解をしていたんですが、せきエチケット、イコールまずはマスクを使用ということに受けとめられかねないところがあると思います。あちこちにせきエチケットのポスターやチラシを配ってくださっています。マスクを正しくつけましょう、あと、ないときはというのも小さく書いてはいるんですが、マスクをつけなきゃいけないというようなプレッシャーになっていないかということを懸念しています。

 なので、自覚症状がある方についてはというところを強調していただくとか、あるいはハンカチとか、今大臣おっしゃったように、代用で十分きくんですよというところ、そこをもっと啓発してほしいと思うんですが、せきエチケット、イコール優先的にマスクを着用するのがマナーだという誤解につながっていませんでしょうか。これは担当の方で結構ですが、今お答えいただけますか。

宮嵜政府参考人 誤解につながっているかどうかということはちょっとなかなかお答えしにくいところですけれども、もしそういうような状況があれば、正しく理解していただくようにやっていかなきゃいけないというふうに感じておりますので、引き続き、しっかり周知とか広報活動に取り組んでいきたいというふうに思っております。

岡本(あ)委員 ぜひお願いします。手づくりで、こういうので大丈夫ですよと一生懸命言っているグループ、個人の方がたくさんいらっしゃいます。そういう参考情報を、ぜひ政府としても積極的にPRをしていただきたいなと思います。

 あと、昨日、相談センターから接触者外来、そして検査につなげる中で、熱が四日以上続くということは必ずしも言っていないような御答弁があったと思います。必ずしもその四日というのが条件ではないとおっしゃっていたかと思うんですが、大臣、そのお答えは変わっておりませんでしょうか。

加藤国務大臣 その前に、マスクについては、ちょっとここで示していいかわかりませんけれども、ポスター等で、三つのお願いということで、マスクは買い占めなくても大丈夫、使い捨てマスクがないときは代用品を使おうとか、こういったこともPR、アピールはさせていただいているところでありますので、まさにそういったところをしっかりと周知を図っていきたいと思います。

 それから、今の御質問の件でありますけれども、受診・相談の目安というのはお示しをさせていただいております。それは、それぞれの国民の皆さんが、熱が四日以上たったら行ってくださいということでもあります。

 それを踏まえて、帰国者・接触者相談支援センターにおいてもいささかそれにこだわった対応をされていたというのを我々も承知をしたものですから、むしろ、一律的にそれを適用するのではなくて、いろいろな事情を聞いていただいて弾力的に対応してくださいということの通知は出させていただいているところであります。

岡本(あ)委員 きのう厚生労働省が報道関係者に発表した患者等の発生についてという文書のところでも、国民の皆様へのメッセージで、最初に、せきエチケット、手洗いなどの実施がとても重要ですという言葉が入っています。私は、やはり、このせきエチケットという言葉がイコールマスク優先という誤解につながりかねないというところがあると思いますので、今の点、代用がきくんだというところは十分宣伝をしていただきたいと思います。

 そして、その次の項目として、三十七・五度以上の発熱が四日以上続いていたら相談センターに来てくださいというフレーズも残っています。決して四日までは待たなきゃいけないということじゃないんだよというところは、なかなか伝わっていないのかなと。条件とすれば、高齢者、基礎疾患のある方については二日ということは入っておりますけれども、四日という言葉がひとり歩きするということについては懸念を持っておりますので、正しく伝えていただきたいと思います。

 この国民の皆様へのメッセージの表現の仕方についてはいかがでしょうか。そのメッセージ自体、今手元にないかもしれないんですが。これは担当局で結構ですが。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 メッセージ自体は、大臣の方からもお答えさせていただいておりますが、全然間違ったことは書いていないとは思うんですけれども、伝わり方という面で、なかなかうまく伝わりにくいということであれば、表現の工夫も含めてちょっと検討したいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、メッセージ自体はそんなに間違ったことを書いてあるわけではございませんので、ちょっとそこは検討させていただければと思います。

岡本(あ)委員 発信する側が間違っていないかどうかよりも、受けとめる方に誤解を生じさせないかという点にぜひ視点を置いていただきたいと思います。

 ウイルスの関係はまだ聞きたいところがあるんですが、法律の方に移らせていただきます。

 高年齢者雇用安定法、これについて、るる懸念の指摘が今までも先輩議員からございました。

 高年齢者の雇用状況、厚労省の元年度の調査がございます。これは三十一人以上の企業ですけれども、未実施のところもありますが、加えて、本人が希望しても継続雇用にならなかった方がいらっしゃるという数字が出ていると思います。これの中身、そして、これ自体は違反にならないのかどうか、その点、お答えください。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 高年齢者雇用状況調査の集計結果におきまして、御指摘の千二百十九人は、継続雇用制度の対象について労使協定によって定められた基準がある場合に、基準に該当せず、継続雇用が終了した方々でございます。

 この継続雇用制度に対象者の基準を設けることにつきましては、平成二十五年度の法改正におきまして、経過措置として法に定められたものでございますので、今の千二百十九名の方につきましては、経過措置によるものでございますので、法令違反には当たらないということでございます。ただし、基準に該当しないために雇用継続されない方々に対しまして、事業主は本人の希望により再就職援助措置を講じるよう努めなければならないということとされてございます。

 厚生労働省といたしましては、これら継続雇用終了者に対してハローワークの再就職支援を行うとともに、雇い入れる企業に対して助成金なども活用して、可能な限り速やかな再就職の実現に努めてまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

岡本(あ)委員 今の御答弁の中で、企業としては条件に合わなかったけれども再就職の支援をしなきゃいけないというのは、これは企業の側の責任でしょうか。それと、もう一点、千二百十九名はそういう支援を受けたということまで確認をされていらっしゃるのか。

 あわせて、実は、三十人以下の企業というのは全然対象になっていないので、現実に、本人が希望しているにもかかわらず継続雇用がかなっていない、就職のあっせんもされていない、そういう方々がいるのかいないのか、その点は検証されているのか、お答えください。

達谷窟政府参考人 まず、このデータが、集計しておりますのは三十一人以上ということでございまして、三十人以下の企業につきましても、例えば、基準に合わなくて継続雇用を終了した方がいらっしゃるということであれば、再就職援助の義務が課されている、措置をとらなければならないということでございます。

 では、その状況について私どもとしてフォローアップをしているかというと、現時点ではその把握をしている状況ではございません。

岡本(あ)委員 まず、六十五歳までの方々で、違反、あるいは、もし社内の条件に合わなかったとしても、ちゃんと再就職のあっせんとかそういうものが行われていなければいけないものがまだ行われていない、今、御答弁では、なかなかその現状も全部把握し切っていないように見受けられましたので、まずはここを先にやるべきではないかと思います。この条件がしっかりできているよとなって初めて、社内の雇用あるいは雇用に満たない場合ということが検討の材料に上がるのかなと思うんですが、まず、今、現行制度がしっかり適法になって健全に運営されているよというところの検証自体がまずは必要じゃないかと思います。

 もう一つ、今回、義務化については二〇二五年までになっていると思います。段階的に、六十五歳まではとなっていますが、今回の法律が成立をした場合、この六十五歳までの段階的引上げを前倒しであわせて行うべきじゃないかと思いますが、これは担当の方でお願いします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、六十五歳までの継続雇用を着実に行っていくべきということは御指摘のとおりでございます。

 ただ、これは、その対象につきましては、希望者全員を対象にするということでございますので、企業の取組も非常に積極的な対応を求められるということであります。そういうことで、経過措置としては令和七年度までということでございますが、もちろん、それに率先して対応していただくことは全然構わないわけでございますが、希望者全員という目的がかなえられるように、着実にやっていく必要があるということでございます。

 その一方で、六十五歳以降の取組でございますが、これは昨日も少し申し上げましたが、二〇四〇年ぐらいを見通しますと、今から着手していかなければならない課題であるということでございますので、六十五歳までの継続雇用を着実にやるということは、それとして、年金との接続がございますので、きちんとやっていきます。

 それから、六十五歳以降の多様な雇用、就業機会の確保ということにつきましても、並行して、今から一歩ずつ進めていく必要があるというふうに考えております。

岡本(あ)委員 まずは六十五歳までの現状をしっかり把握することと、もし不適正な事例があれば一件たりとも見逃さないということをまず徹底していただきたいと思います。

 そして、今回、七十歳までという部分については、年金もいずれ七十歳までにしようというための準備じゃないかという懸念の声がたくさん聞こえております。ここについては全く関係ないものなんでしょうね。改めてこれは大臣に確認をいたします。

加藤国務大臣 年金支給開始年齢については、成長戦略実行計画及び全世代型社会保障検討会議中間報告でも「七十歳までの就業機会の確保に伴い、現在六十五歳からとなっている年金支給開始年齢の引上げは行わない。」と明記をさせていただいているところであります。

岡本(あ)委員 その言葉をぜひ着実に守っていただきたいと思っています。

 今回、資料一をつけさせていただきました。私、ちょっと生涯賃金との関係を確認したいと思っております。

 今、直近の生涯賃金でいきますと、資料一の図表3の23あるいは24なんですけれども、二〇一八年の調査では、生涯賃金は、大卒男性でいきますと二億五千九百五十二万です。これは一般労働者です。3の24の方を見ますと、二億八千六百二十六万、こちらの方は一つの企業を勤め上げた場合の生涯賃金です。左側は、転職、中途採用、あるいはいろいろな経験をされた中での生涯賃金だと思います。上に二〇〇五年がございますが、そこと何とか、ほぼ同じぐらいかな。それ以前にさかのぼると、生涯賃金というのは残念ながら減ってきているという状況かと思います。

 これは退職金が入っておりませんので、これに退職金を加えますと、実は三十年間で一千万円、大卒の場合、退職金が減っております。これは、麻生財務大臣が報告書を受け取る受け取らないと言った報告書の中に記載されています。二十年でも六百万円退職金が減っております。しかも、一般労働者と同じ企業に勤め上げた方との間では、多分、退職金も更に格差が出てくるのかなと思います。ですので、生涯賃金がなかなか伸びていない中では、逆に、六十歳を超えても六十五歳を超えても働かざるを得ない、そういう事情が出てくるのかなと思います。

 下の方、線のグラフを見ていただければ、旧来の六十歳定年を持っていた企業だとすると、A、B、C、Dという枠がその方の生涯賃金になると思います。定年延長になって、もしかしたら、A、G、H、F、Dという、現役の方にも実はしわ寄せが来る可能性があるんじゃないかという点も懸念をしています。ましてや、A、G、その後Lまで下がってM、F、D、こういう図式になって、結果とすると、現役の世代が本来もらえたであろう生涯賃金が、実は、定年後の再雇用とかいろいろな制度で半額程度に手取りが減らされて、この面積自体がほぼ変わらないとか、あるいは減らされる、そんなことはあってはならないと思うんですが、そういう懸念というところは想定をしていらっしゃるのか、あるいは、防ぐ手だてというものがあるのか、このことをお聞かせいただきたいと思います。

小林政府参考人 お答えを申し上げます。

 今先生御指摘のお話というのは、賃金原資全体のどういう配分をしていくべきかということにかかわる話だというふうに思っております。

 雇用期間が長期化することに伴って企業が賃金カーブを見直していくということは、企業の行動としてはあり得るところだと思いますけれども、生涯賃金で見れば、雇用期間の長期化と賃金カーブの見直しというのは打ち消し合う関係にあるのかなと。そういう意味で、賃金原資全体の問題というふうに考えることができるわけでございまして、この点で、日本の賃金が諸外国に比べて上がっていないじゃないかというような指摘というのはたびたび各方面でなされておるところであります。デフレですとか、非正規雇用の問題、内部留保の問題、生産性の問題等々が指摘されておるところであります。

 いずれにしても、私どもとしては、高齢者の雇用を進めていくということについては、社会の支え手をふやし、社会の活力につながるものだというふうに考えております。また、現役世代の待遇にかかわってくる問題に関しましては、これは、現役世代も含めて、処遇、賃金体系の見直しを検討する際に十分話し合っていただく必要があるテーマかなというふうに思っております。

岡本(あ)委員 民間企業の契約なので、どこまで口を出せるかという問題はあるにしても、やはり、賃金が伸びていない、結果として生涯賃金が六十まで働こうが七十まで働こうが変わらないというような流れになるということはあってはならないと思っております。

 資料三にガイドラインをつけさせていただきました。ちょっと時間がないので、これはできれば西村議員に再度指摘をしていただきたいと思いますが、私からは、赤線を引いているところ、請負の形式による契約、これは、参考にすることを期待という言葉しか入っておりません。資料三の健康確保のためのエイジフレンドリーガイドラインというものですけれども、やはりこれは指針に、まあ指針とガイドラインがどれだけ違うかというところもありますけれども、守らせるべきものという位置づけにぜひしていただきたいということを言わせていただきます。

 もう一つのテーマなんですが、資料五をごらんください。

 今回、私は、保健所、地衛研、国立感染研究所は人員も足りないんじゃないか、本来業務も回らない状態じゃないかということを指摘させていただきました。今回、国立感染研究所で非常勤の、でも研究員の募集を始めております。大学院、博士課程を持っていることが望ましい、そのぐらいのレベルの方の募集がございますが、日給は、時給換算でいくと一時間千五百円という処遇です。この募集、行政にかかわるところでの募集という中では、高齢者の賃金も働きも問題ですが、若手の方々が低所得でこういう形で働かされるということも非常に問題だと思います。

 大臣はどうお考えになりますか。時給千五百円で、理系の大学院卒で、研究も経験があって、論文ぐらい書けるような、そんな条件かと思いますけれども、率直に感想を聞かせてください。

加藤国務大臣 これは、以上と書いていますから、最終的には個々の方の経歴に準じて決まるんだろうというふうに思います。

 この金額については、非常勤研究員の給与については、一般職の職員の給与に関する法律に基づき、初任給の算定方法に準じて号俸を決定し、日額給与として算定している。この方法は、国立感染研究所だけでなく、他の指定研究機関においても同様な方式にのっとって算出をされているというふうに承知をしております。

岡本(あ)委員 全国同様になっているということ自体も非常に問題だと思うんですね。

 未経験で、これは東京都内で働きますよね。東京都は最賃でも千十三円でございます。それに比べて、感染分野で経験があって、質も担保されて、大学院の博士課程までの資格がある方が望ましいという前提条件で募集をしているにしては、やはり官製ワーキングプアを招きかねないような形が全国での基準になっているということ自体も指摘をさせていただきたいと思います。

 国立感染研究所の問題、あるいは地衛研、先ほど阿部知子議員からもございました、法的位置づけがない。インバウンドでどんどん海外からもお越しくださいという政策を進めながら、一方で、こういう感染症対策、公衆衛生の分野というのが行革の対象になって、残念ながら体制も十分ではないということを懸念申し上げたいと思います。

 評価委員会が国立感染研究所について評価の報告書を出されております、二〇一四年ですね。この中で、やはり、インハウスの予算自体が足りなくて、研究予算を使って日常的な人的体制を組んでいるということに対しても既に懸念をされておりまして、国に対してしっかり要望していくべきだという報告書も出ておりますが、残念ながら、予算という部分は厳しい状況が続いております。

 ぜひ、この点も、今回の経験の中で、あるいは、今現在、保健所、感染研究所、地衛研ともども精いっぱい頑張っている中でも、しっかり充実をさせていくという姿勢を持ち続けていただきたいと思いますので、その点を大臣にお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。

加藤国務大臣 今まさに、検査の現場、感染研、地衛研、検疫所のみならず、民間の皆さん方、医療機関の方々、本当に大変な御苦労をいただきながら、また、ある意味では検査自体もリスクが高いんですね、ウイルスそのものを扱いますから。そういった中で、中には、場合によっては昼夜通して仕事をしていただいている方もいらっしゃいます。

 これが長く続くということになると、そういう形では長く続かないわけでありますので、そういった意味においても、しっかりとした体制を講ずべく、更に努力をしていきたいと思います。

岡本(あ)委員 ありがとうございます。

盛山委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 西村です。

 きのうに引き続いて質問をさせていただきます。

 きのう、私、学童保育で働く人たちの指導員の皆さんの収入がいわゆる百三十万円の壁を突破したときに、いきなり月額二万数千円の社会保険料がかかってくるのは酷ではないかというお話をさせていただきました。大臣からの答弁は残念ながらちょっと冷たくて、私もきのうの夜は悶々としておったんですけれども、もう一回、改めて質問をしたいと思います。

 厚生労働省は、今回の学校休業に伴う学童保育の時間延長などの影響で、指導員の方の収入がどれほど実際に変化しているかということは把握していないそうであります。これは確認をいたしました。まあ、今の時点で当然のことだというふうに思うんですけれども。

 ただ、大臣も、きのうは、お地元の方からそういうお話があったというふうにもお聞きをしましたし、実際にそういった壁という制度が現状である以上、この要請に伴って学童保育を例えば午前中からあけた、そして、例えば数万円だと思うんですよ、この期間中、午前中からあけて収入が上がるといっても。そんな、十万も二十万も収入が上がるなんというわけではない、もっとふえるというわけではないと思いますので、この影響で収入が例えば百三十万の壁を少し突破したとしても、ぜひそこは配慮をしてもらいたいというふうに思って、もう一回お伺いをいたします。

 仮に月額二万数千円の保険料の負担がふえるということになれば、これはやはりかなり酷だし、かなりの負担になってくるというふうに思うんですけれども、大臣、これについてどういう認識をお持ちですか。(発言する者あり)

盛山委員長 では、とめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 時計を動かしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 まず、手元の資料ですけれども、平成二十八年度に実施した放課後児童クラブの経営状況に関する調査では、職員の収入は二百七十・〇万円という数字が出てきております。

 今委員御指摘のように、それはさまざまな方がおられる、そういった事情はわからなくはないところではありますけれども、ただ、こういったものは一律でやりませんと公平な執行というのができなくなるというふうに思います。

西村(智)委員 きのうの答弁よりまた更にちょっと冷たさが増しちゃって、これはどうしたらいいものかと思うんですけれども、もう一回答弁してもらえませんか、この認識です。

 確かに、収入がふえたというのは、それは一律、そうだと思いますよ。思うんだけれども、でも、今回のことについては、学童保育をあけなければいけないということで、そんなに急にアルバイトをふやすわけにもいかないし、感染防止策もとらなければいけないし、今まで来ていなかった子供たちも来るようになるし、学校の先生が来るといったってそんなにすぐにはうまくいかないしということで、今までは午後だけだった人たちが、例えば午前中から出てくるということで対応せざるを得なかった人たちに、月額二万数千円の保険料がまたかかりますというのはさすがに酷じゃないですか。

 もう一回、大臣、その認識だけ答弁してください、認識だけ。これは私はちゃんと回答をもらっているので。(発言する者あり)

盛山委員長 では、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 動かしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 被扶養者の年間収入の確認については、過去の収入、現時点の収入、又は将来の収入の見込みなどから今後一年間の収入を見込むとされているところであります。このため、一時的に所得が上昇したことのみをもって直ちに被扶養者認定を取り消したり、これは前回も申し上げたと思いますが、認定後の事情変更により被扶養者の要件を満たさないことになった場合に、認定時点にさかのぼって被扶養者認定を取り消したりするといった運用は行われていないというふうに承知をしています。

西村(智)委員 ということは、つまり、そういった運用を行っていただくことによって、一時的に所得が上昇した被扶養者の生活に急激な変化が生じないよう努めていくということで確認させていただいてよろしいですか。

加藤国務大臣 一時的に所得が上昇したということで、まさに先ほど申し上げた、一時的に所得が上昇したことのみをもって直ちに被扶養者認定を取り消したりはしないということであります。

西村(智)委員 大臣のお考えはいかがですか。今回の学童保育、これは政府の要請で休校になりました、学童保育はあけますということで判断をされました。ですので、学校を休校になった子供たちが午前中から学童に行きます。それはやはり事情のあることだというふうに思うんですよ。大臣のお考えとして、こうした事情がある中で、一時的に収入がふえたという方についても同様の取扱いになるということでよろしいですか。

加藤国務大臣 これは、申しわけないんですけれども、非常に技術的な話になっていくんですね。実際、現場で、最終的には個々の判断です。コロナがあるから一律的に、学童だから一律でということはあり得ないと思います。個々の判断になる。

 ただ、その判断をどうするかは、ちょっと申しわけないんですけれども、私がしゃべれる力を持っていないので、まさにこういった問題は担当局長を呼んでいただいて、ふだんどうやってやるのかとか、そういったことをしっかり御質問いただいた方が、いいかげんなことを言って、これを見ている方に間違ったインフォメーション、情報を与えてもいけませんので、ぜひ、そういったことを含めて、きちっと説明をさせていただいた方がいいんだろうと思います。

西村(智)委員 繰り返し申し上げますけれども、私、今回は、政府からの指示によって勤務せざるを得なかった人たちということで申し上げているんです。ですので、先ほど大臣から、一時的な収入をもって換算しないというようなことは答弁をいただきましたので、また引き続き、そこは技術的にどうなるのかということも私は議論していきたいというふうに思います。

 それで、雇用保険法についてなんですけれども、たくさんたくさん論点があるんです。

 まず、条文の方で、また昨日の続きの高年齢者の雇用安定法なんですけれども、ちょっと気になりましたのが、第六条の第二項の二、高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項について政府の方は基本方針を策定することになっていたんですけれども、これが改正後は、高年齢者の就業の機会の増大の目標に関する事項ということで、変更をされたわけなんです。

 これは、今度は雇用の増大ではなくて就業措置もということで、就業のということになったのかというふうに思うんですけれども、やはり私は変えるべきじゃなかったんじゃないかというふうに思うんですよ。なぜこれを就業というふうに変えてしまったのか、その理由を教えていただけますか。

加藤国務大臣 まさに今委員がおっしゃられたことで、当初は雇用だけだったわけですが、今回は幅広くなって、それを形容するとすれば就業ということが適当だということで、雇用から就業へと文言を変更したということであります。

西村(智)委員 そうすると、確認です、雇用の機会の増大の目標に関する事項は、今度は基本方針の中で定めなくてもよいということになるんですか。

加藤国務大臣 高年齢者の就業の機会の増大の目標に関する事項ということですから、就業の中には当然雇用も含まれるということであります。

西村(智)委員 就業の中に雇用も含まれるということで、確認をさせていただきました。

 ただ、ずっとこれは皆さんからの一貫した主張なんですけれども、例えば今の新型コロナの関係で、フリーランスの人たちへのセーフティーネットがないという状況も改めて明らかになっている中で、また、非雇用、委託とかフリーランスとか、そういった労働法制の及ばない働き方をふやそうというのは、私はやはりおかしいというふうに思うんですよね。

 なので、やはりここは、法制のかかる仕組みでやるか、それとも全く別の、何というか、それはやっていただければいいというふうに思うんですよ。あえて政府が法律をつくってやるという意味が一体どこにあるのか、やはりいぶかしく思わざるを得ないんです。これを一穴として、また、今実際、フリーランスは多様な働き方ということでふえてきていますけれども、それにあわせて、七十歳までの人たちにおいても新たなカテゴリーをつくって、そういったところからもフリーの人たちをふやそう、そういうことなのかといぶかしく思っている。それはやはり私は引き続き指摘をし続けていかなければいけないことだというふうに思うんですけれども、大臣のお考えとしてはいかがですか。

 私は、こういった非雇用就業のあり方を、やはり今回の新型コロナの問題を見ても改めて疑問に思うんですけれども、大臣は、こういった働き方、こういった形態をふやそう、つくろうということで推進をしていくということ、そういうことをお考えなんですか。

加藤国務大臣 多分、こういう議論というのは、何と比較してというところが非常に大事なような気がするんですね。

 今、六十五歳以上の人は何にもないわけです。そうすると、今の中では、今ここで御指摘いただいているような、いわゆる請負的な、事業委託的なことをやっている方もおられるかもしれない、何にもかかっていないですということでいいのかどうか。

 それから、やはり七十までの雇用を拡大したい、あるいは働きたいという方々がおられて、その希望を見ると、もちろん雇用という方もいらっしゃいます。でも、それ以外で、自営業でやりたい、フリーランスの方がいいや、いろいろな事情を持っている方がおられるわけですから、そういった希望を見る中で、では、今、お任せじゃなくて、やはり、そういった事業委託というか、請負みたいな形だけれども、ちゃんと事業主は一定の責任を持ってやってくださいねという部分をつくっていくことによって、七十までの働き方をよくしていく、しっかりと確保していく、そういった思いで出させていただいているところであります。

 それから、この措置は、それぞれ本人が希望するということが大前提になっているということを申し上げておきたいというふうに思います。

西村(智)委員 選択であるからいいんだということを大臣はおっしゃりたいのかもしれないですけれども、これまでもそうですけれども、選択すると、大体、いろいろな選択肢を示されることもあるんだけれども、やはりすき間といいますか端っこの方を探して、そういったやり方でやろうやろうというところで泣きを見てきたのが労働者だという、そういったいろいろな事件とかも起きてきているわけですよ。

 ですので、私は、やはり今回の仕組みを導入するのであれば、もっときちっとした保護の仕組み、保険もそうだし、労災もそうだし、あるいは過半数代表の同意ということもそうだし、もっとかちっとした仕組みがなければいけなかったんじゃないかというふうに思うんです。

 時間がちょっと限られておりますので、先に進みたいと思いますが、雇用保険の問題です。

 今回、雇用保険の保険料率、それから国庫負担の引下げがまた継続されるということになりました。先ほどの質疑では、こうやって新型コロナウイルスのリーマン級以上と言われる影響が懸念をされている中で、本当に大丈夫なのかという質問があったときに、参考人の方からは、問題ありませんという答弁があったんです。本当にそうかなというふうに思うんですけれども。

 まず、今回の雇用保険法の改正では、やはり限定的だった、時限的だったはずの引下げについては、本来であれば戻るということになっていなければいけなかったというふうに思うんですよ。前回の法改正のときには、附帯決議、これは衆参どちらもそうですけれども、厳に三年度に限定するというふうになっていたんですけれども、それがなぜ、衆参の附帯決議ですよ、どちらもつきました、それがなぜほごにされてしまって延長するということになったのか、その理由を教えてください。

加藤国務大臣 そうした決議もいただき、また、附則の中においても、できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で附則第十三条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止するものというふうに明記をしていたところであります。

 それはしっかりと踏まえていかなければならないわけでありますけれども、この議論をさせていただいたときの雇用保険の財政の状況、あるいはまた引き続き厳しい国全体の財政状況、そういったことも勘案しながら、当面あと二年ということで暫定措置を延長することを、今回、労政審にもお願いをさせていただき、きのう参考人をされた中でも、職業安定分科会の会長を務められた阿部先生もたしか御出席の中で、苦渋の選択というお話をされておりました。まさにそういった思いを含めながら、こうしたことをお願いさせていただいているということであります。

西村(智)委員 苦渋の選択、それは労政審の方では苦渋の議論はされたというふうに思うんですけれども、この法案を出してきているのは政府ですから。

 それで、雇用保険法の第十五条には、できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で暫定措置を廃止するものというふうにも書かれております。ですので、こういった引下げ継続が今回行われてしまうと、政府は本当に安定した財源を確保する気があるのかなというふうに思ってしまうんですけれども、そういったことについては大臣はどういうふうにお考えですか。

加藤国務大臣 確かに、前回は、前回限りというお話を多分していたというふうに思いますが、それを今回また延長するということでありますので、そのことをしっかり、その重みをしっかりと踏まえながら、この附則が実現できるように努力をしていきたいと思います。

西村(智)委員 重み重みって、どこまで重みを感じていただければ暫定措置をやめるということになるのか。この暫定措置で国庫負担が縮小されたのが二〇〇七年です。もう今から十年以上前になります。いつやめるのか、暫定措置をいつまで続けるのか、これについて、大臣、明確に答えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。(発言する者あり)

盛山委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 時計を動かしてください。

 加藤厚労大臣。

加藤国務大臣 まさにそれは附則に書いているとおり、令和四年四月一日以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で附則第十三条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止するものとするということであります。

西村(智)委員 何か声が小さいのですごく不安なんですけれども、二年ということですね。確認させていただきました。

 それで、次に、兼業、副業をしておられる方々への、いわゆるマルチジョブホルダーへの雇用保険について伺いたいと思います。

 六十五歳以上の方々という年齢の区分けが行われて、今回、雇用保険適用がなされるということになります。第一歩ということで評価はしたいというふうに思うんですけれども、他方で、六十五歳に満たない方でも、生活のためにやむなくマルチジョブをやっている方がいらっしゃるというふうに思うんです。そういった方々にも適用すべきだというふうに考えるんですけれども、なぜ今回、六十五歳以上の方々に適用範囲を限定したのか、お聞かせください。

加藤国務大臣 雇用保険は、失業という自分の意思により発生される事故、これは離職という意味においてですね、を保険事故としている。労働者本人の申出を起点として雇用保険を適用する場合には、給付を受けることを見越した者が申出により適用されるおそれ、いわゆる逆選択、あるいは、安易な離職や循環給付のおそれ、モラルハザード、こういったことが懸念されております。

 さはさりながら、今般の改正は、やはりそうしたニーズもあるということで、一定の層を抽出して試行的にまずやってみて、今申し上げた逆選択やモラルハザード等、いろいろな課題がどうなのかといったことをいわば検証しようとしてやるということであります。

 では、そのときにどの層を取り上げた方がいいかということでありますけれども、一つは、六十五歳以上であれば、雇用保険による給付体系も一般の被保険者と違って、これは一時金の支給という形になっております。また、定年や継続雇用制度の期間を過ぎて、これまでの職業人生で得られたスキルを生かした多様な就労を目指している年齢層とも考えられる、こういったことから、まずはここでスタートをするということであります。

 そこから先については、今回の取扱い、あるいは実際にやってみたことを踏まえて、今後のあり方についてはよく検証し、検討していきたいと思います。

西村(智)委員 それで、では今後の検証や検討に資するのかということで、実際に今、現状で、そういった要件に該当しそうな雇用保険被保険者は何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。

加藤国務大臣 今、被保険者になっていないので、これから新たに雇用保険が適用されると見込まれる人は、私どもの試算でしかありませんが、最大で八千人程度ではないかと考えています。

西村(智)委員 最大で八千人という試算なんですね。最大で八千人ですから、ゼロ人から八千人の間があるということだと思うんですけれども、やはりちょっと検討するには少し少ないのかなという感じはいたします。

 いずれにしてもなんですけれども、六十五歳ということで区切って雇用保険の適用をやってみた、それで、例えば、行動変化といいますか、それから財政的な影響とかいろいろなことはあると思うんですけれども、そういったことを見ながら、対象範囲、適用対象を広げていくということについて、拡大をしていく、六十五歳に満たない、六十五歳以下の被保険者についても対象を広げていく、こういう考えは大臣にはおありでしょうか。

加藤国務大臣 今の段階で対象を広げていくとはなかなか言えませんけれども、まさにこういう試行をしようとしていることは、そういったマルチジョブを持っている方々に、雇用保険について何らかの対応を考えていかなければいけない、こういうことであります。しかも、六十五歳以上であれば、試行ではなくて制度でありますから、試行と申し上げているのはそういうことでもあります。ただ、ここから先の議論の中では、もちろんそういった担保も必要なんですけれども、中には、マルチジョブじゃなくて、シングルジョブでしっかり生活ができるという状況をつくっていくということも一方で大事だというふうに思っておりますので、そこを含めて、全体のあんばいという問題、それから今回の試行がどういう結果になるのか、その辺も含めて検討していきたいと思います。

西村(智)委員 もう一つお伺いしたいのが、労災認定の基準についてです。

 もうずっとお話が出ていますけれども、高年齢の方は、やはり、労働現場での災害死傷病、発生率は高いです。それから、男性、女性、いろいろ特性がありますけれども、転倒といったものも多くなりがちです。また、きのうでしたか、配られた資料の中にもありましたけれども、例えば時間外労働の上限規制なんかについても、年齢が若い人と、それから高年齢の人と、同じでいいのか。今八十時間ということになっていますけれども、その認定基準のあり方については、年齢に応じた考え方があっていいんじゃないかというか、それがあった方がいいんじゃないかというふうに思うんです。

 例えば有識者会議の方でまとめられたガイドラインがあって、それは事業主の方からきちんと取り組んでもらうというふうに大臣からきのうも答弁をいただきましたけれども、それをやってもなお発生することはやはりあるというふうに思いますので、年齢に応じた基準のあり方、これについてぜひ考えていただきたいんですが、いかがですか。

加藤国務大臣 実際の労災の現場で、今の基準を用いながら、どこまでそういうことも加味しながらされているのか、ちょっと私は必ずしも承知をしておりませんけれども、一方で、今、脳・心臓疾患の労災認定基準について、本年度までに労働者の年齢別の脳・心臓疾患の発症に係る医学的な知見を収集しているところでありまして、その結果を踏まえて、令和二年度に有識者検討会を設置し、労災認定基準の内容全般にわたって検討を行っていただくことにしております。したがって、今申し上げたように、労働者の年齢別の脳・心臓疾患の発症に係る医学的な知見の収集においては、属性別に関するそうした文献等々も集めているところであります。

 ただ、それを踏まえてどのように議論いただくか、これはちょっと、私が今この段階でこうだああだということは言えないというふうには思っておりますが、いずれにしても、そういう資料を踏まえて、令和二年度から有識者検討会を設置して検討を行っていただきたいというふうに思っています。

西村(智)委員 時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

盛山委員長 午後四時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時三十分開議

盛山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長吉田学君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは雇用保険法の改正でありますから、主にはその法律案について聞いていきたいと思っています。

 今回、いろいろな議員が指摘をしているように、大変多くの改正事項が束ねられて提出をされ、限られた時間で審議をということで極めて窮屈な日程になったということは私からも指摘をし、そして、どういう審議をするかというのはもちろん国会において決めることとはいえ、やはりこうした多くの法律案を束で出してくるというのはいかがかという思いは持っています。

 いずれにしても、限られた時間ですから、質問に入りたいと思います。

 まず、皆さんにお配りをしております雇調金の関係から行きたいと思います。

 先ほど来、雇調金の適用拡大を求める声、現下の厳しい経済情勢に鑑みという話でありますけれども、まずお聞きをしたいんですけれども、私の資料の一番目にありますように、雇用保険法は、第一条の目的として、本体給付は、雇用の継続が困難になる事由が生じた場合に給付を行う、そして、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大を図ることを目的とする、こういうふうに書いてあるわけでありますけれども、これを受けて、第六十二条の一項、景気の変動に伴って、若しくはその他の経済上の理由により必要な助成を行うということが雇調金の根拠条文だと理解をしています。

 そこでお伺いをするんですが、本当に厳しい経済情勢だという中にあってではありますけれども、二ページ目にありますように、そもそも、本来は生産指標要件というのがあったわけでありますが、これを満たすものとして扱うということになると、私は広げることに反対しているわけではありませんよ、法律の趣旨からすると、例えば、もうかっている企業であろうと、経済的な損失、先ほどの法律でいえば、景気の変動によって、若しくはその他の経済上の理由によりという条文に照らし合わせると、やはり生産要件というのは必要なんじゃないでしょうか。これを満たすものとするということになれば、何でもできることになる。

 やはり、少なくとも何らかの、経済上の若しくは景気の変動の影響、こうしたものが読み取れるような要件だけは入れて広げていくというふうにするべきではないかと思いますが、参考人で結構です、解釈について、このままだと法違反になるのではないかという私の指摘についてどう考えるかもあわせてお答えください。

小林政府参考人 御指摘のように、雇用保険法の六十二条の条文は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に関するものでございます。そして、雇用調整助成金の生産指標要件でございますが、原則は直近三カ月を前年同月と比較して一〇%減ということでございますが、今回の緊急特定地域につきましては、これを満たすものとして取り扱うという形にしております。

 これは、北海道を例にとりますと、その自治体の首長が住民、企業への活動自粛というのを要請する旨の宣言を出しているということがございまして、他の地域に増して事業活動が抑制することが見込まれる、すなわち事業活動の縮小がそれによって見込まれているのではないか、事業活動の縮小が起きるであろうと見込んでということで、こういう特例を講じることにしたものでございます。

岡本(充)委員 せっかく参考人を呼んでいて、これはとめますよ。ちゃんと参考人を呼んでいるんですから、ちゃんとそれは、局長、答えてくださいよ。

 法律と照らし合わせれば、経済上の事由がないにもかかわらず今回適用できるというのは法律の根拠に外れるのではないかという私の指摘について、外れないというのであればその理由を説明してくださいというのであって、何も、どういう条件で支給をするかなんということは今さら聞いていないんですよ。そんなことで時間を使わないでください。お願いします。

小林政府参考人 先ほど申し上げたところでございますが、北海道のような例をとりますと、自治体の行政の活動自粛により事業活動の縮小が見込まれているのではないかということで、事業活動を余儀なくされた事業主の解釈の中で対応することができるというふうに考えております。原則は直近三カ月を比較する、そして、今回、全体に対して特例ということで一カ月で比較する、北海道についてはいわばゼロカ月で比較するという形と御理解いただければと思います。

岡本(充)委員 いやいや、もうかっている企業でも、北海道に事業所があるものについて、これは事業所ですね、これはペーパーが間違っていますね、これは事業所に直した方がいいですよ、事業主じゃないですよ、適用になると言っているわけですから、これはやはり現行の法律を考えると何らかの生産要件が必要で、面的に地域全体が経済的理由が厳しければ助成できると六十二条の一項で読めるんですか。読めるのであればそれでいいと思いますが、さすがにそれは読めないんじゃないかと思うので、これはきちっと、経済的な要件、それぞれの、だって、助成されるのは企業なんですから、エリアを助成するわけじゃないんですから。そういう意味では、企業の要件はきちっとやはり、そんな、もうかっている企業にまで出せるものではないということはしっかり示す必要があるのではないか。

 満たしているものとする、みなすみたいな話ができれば、何でもみなせばいいんですよ。失業しているものとみなして給付しちゃっていいんですか。そういうわけにはいかないですよね。だから言っているんです。みなすといってやるのはやはり法の趣旨から若干ずれているという今回の国会の指摘を受けて、ちょっと見直すぐらいの答弁をされたらどうですか、局長。

小林政府参考人 ありがとうございます。

 コロナの場合もそうでございますが、経済上の影響が大きいほど雇用への影響も短期で出てくるということが一つございます。そういうときほど企業としてはすぐに休業支援ということを受けないと手おくれになりかねないということがございまして今回こういう対応をしているところでございますが、今御指摘いただいたことも踏まえ、どういうふうにすれば短期の影響を、そして短期間の支援ができるのかということについてはよく研究させていただきます。

岡本(充)委員 ぜひ、私は広げてもらうことは必要だと思いますよ。だけれども法律の趣旨に基づいた制度にしておく必要があるということを指摘をしておきたいと思います。

 続いて、資料の二と書いているところです。

 条文ごとに聞いていくのはちょっとどうかと思う気もあるんですが、せっかくの法改正でありますから、条文ごとに聞いていきたいと思います。

 まず、高齢者就業確保措置について。ここにありますように、今回の法改正の中でも大変議論になっている六十五歳から七十歳の就業確保についての話でありますが、まず、そもそも、改正された第十条の二は、定年が六十五歳以上七十歳未満のものに限ると書いています。したがって、定年が六十五歳未満に設定をされ、雇用継続措置をもって六十五歳までの雇用を確保している事業主はどのようになるのでしょうか。お答えください。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば六十三歳定年の場合につきましては、今度は六十三から六十五までは継続雇用ということになりますので、第十条の二の、定年の定めをしている事業主又は継続雇用制度を導入している事業主はという……。

岡本(充)委員 ちゃんとこれは通告しているんですから。定年は六十五から七十歳のものに限ると書いてあり、この定めをしている事業主又は継続雇用制度を、又はなんですよ。六十三歳の事業主はどうなるんですか。主語に入らないですか、六十三歳定年の事業主。

小林政府参考人 お答えいたします。

 この十条の二でございますが、定年の方に六十五歳以上七十歳未満のものに限る、そして、御指摘いただいた二行目でございますが、継続雇用制度、括弧、七十歳まで引き続き雇用する制度を除くということで、六十四歳未満の定年の事業主をどう読むのかということでございますが、二行目の方の継続雇用制度の方に含まれるということで、こういう条文になっておるところでございます。

岡本(充)委員 そうなんですよ。そこからまずいきましょうよ。そこで入るんですよね。継続雇用をしているから、こっちの二行目の方に入る、六十三歳のものは。

 そこで、聞きます。その後に、一号のところで当該定年の引上げと書いてある。この当該定年というのは、六十三歳の定年のところの事業主は、六十三歳が入るのか、六十五から七十のものに限るということになるのか、どっちですか。

小林政府参考人 この一号のところの当該定年でございますが、六十五歳から七十歳未満の方の定年を指しております。

岡本(充)委員 そうすると、六十三歳定年を定めている事業所は関係ないという理解でいいんですね。

小林政府参考人 こちらは高年齢者就業確保措置の規定でございまして、六十三歳の方は高年齢者雇用確保措置の方で既に規定済みという整理をしております。

岡本(充)委員 ちょっと確認してください。

 当該定年と書いてある、この当該はその当該に入らないんじゃないんですか。この当該に入るのは前の条文になってしまう、それだと。局長の言う話だと、この当該は前の条文にかかりますから、この条文にかかる当該は六十五から七十なんじゃないですか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 先ほど答弁したとおりでございますが、六十三歳の方は九条の方の雇用確保措置でございまして、こちらの当該は六十五歳から七十歳未満の方ということでございます。

岡本(充)委員 したがって、六十三歳の定年を定めて雇用継続措置をしている企業にとってみれば、六十三歳定年は、この条文で言うところの当該定年に当たらない、そういう理解でいいですよね。

小林政府参考人 御理解いただきたいと思いますが、この条文のたてつけは、まず、年金との接続を図るため、六十五歳までの雇用の継続を確実にしていこうということの塊が一つございまして、その上に立って、六十五歳から七十歳までの雇用、就業を進めていこうというのがこちらの条文ということで、二つ、あえて書き分けているところでございます。

岡本(充)委員 いや、ちょっとこれはかみ合っていないです。

 だって、ここで書いている当該定年というのは六十三歳定年じゃないでしょう、六十五歳から七十歳までの定年についてのことを言っているわけですよね。だから、六十三歳定年は入らないんじゃないんですか。ちゃんとそこのところを整理してください。

小林政府参考人 済みません、六十三歳は第九条の方で対応しておりますので、高年齢者就業確保措置を規定しております十条の二の方は六十五歳以上の方を規定している条文ということになります。それを受けて、先ほどのところは当該を受けているということでございます。

岡本(充)委員 したがって、十条の二では六十五歳から七十歳の定年を定めている者を当該定年と呼んでいるんです。九条のところで、それを引き上げる措置をもう既に成立させて施行している、段階的に実施しているのはわかっています。雇用継続確保措置がとられています。当該定年と言っているこの当該定年はこの条にかかるのであって、前の条の定年にもかかるんですか。かからないですよね。この条文で言うところの六十五歳から七十歳の定年を指しているんじゃないんですか。

小林政府参考人 多分かみ合っていると思うんですけれども、六十五歳以降を規定している条文がこの十条の二でございまして、十条の二は六十五歳以上の世界を規定しておりますので、ここで言う定年というのは六十五歳以降の話ですということが十条の二に書いてあります。六十五より前の方については九条の方で規定済みでございます。

 そして、先ほど御指摘いただきました一号のところの当該定年の引上げというのは、したがって、これは六十五歳以降の世界の中で当該ということで指し示しているということでございます。

岡本(充)委員 こればかりに時間をかけているわけにはいかないんですけれども、六十三歳で定年をしました。その後、雇用継続措置です。その企業の定年は六十三歳になったままです。こういう企業が、この法が施行されるときにも存在しますね。存在します、九条の措置が完全に終わっても存在するんです。

 この企業が、実際にこの法が施行されたときに、十条の二で言うところの定年と定めている、六十五から七十歳未満のものに限ると書いてある定年です。十条の二の指す定年は、六十五歳以上七十歳未満のものに限る定年を十条の二は指しています。この当該定年に対して引き上げるんですから、六十三歳を定年にしたままになっている会社の六十三歳定年は、十条の二の定年に入らないんじゃないんですかということを聞いているんです。

小林政府参考人 六十五歳までは、先ほどの高年齢雇用継続確保措置の中で、定年の引上げであったり、その他継続雇用の制度であったりということで、義務のもとでお取組をいただいている。それ以降の、六十五からの新たに導入する努力義務というのは六十五歳以降のところで書いておりますので、矛盾した規定にはなっていないと思います。

岡本(充)委員 同じことを聞いていてもしようがないんだけれども、六十三歳で定年と書いて決まっているんですよ、その会社はね。そこは継続雇用で六十五までの雇用確保措置ができているから、この法が施行される時点ではもう大丈夫なんです、その企業は。この十条の二が生き始めるんです、新しくできた。

 十条の二の主語は何と書いているかといったら、六十五歳以上七十歳未満のものに限る定年と書いているんですよ。そうすると、この会社の定年は六十三歳のままなんですから、六十三歳定年の企業の定年は、十条の二の定年が当たらないんじゃないかということを聞いています。それでも当たるというんなら、どこかに読みかえ規定があるはずなんですよ。それはどこで読みかえるんですか。

小林政府参考人 十条の二でございます。十条の二に、定年、六十五歳以上七十歳未満のものに限るというのの後に、又は継続雇用制度、括弧、七十歳以上までする者を除くということで……。

岡本(充)委員 そこは聞いたんです。だから、それをやっていていいんです。

 ところが、一項で当該定年と書いているんですよ。この当該定年というのは、この条における当該定年なんじゃないかと言っているんです。だから、当該定年といったら、六十三歳定年の定年は入らないでしょうと言っているわけですよ。

小林政府参考人 十条の二の一項の二号に、六十五歳以上継続雇用制度の導入といった号もあるところでございまして、これらをあわせ読むということになろうかと思います。

岡本(充)委員 ちょっと、大臣でもいいですよ。ちょっと整理してください。

盛山委員長 じゃ、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 じゃ、時計を動かしてください。

 小林職業安定局長。

小林政府参考人 失礼いたしました。

 先生御指摘いただきました十条の二の書き出しに、定年、六十五歳以上のものに限るということはございまして、その後の一号のところで当該定年ということで、六十五歳以上の方の定年を指すと。したがって、例えば六十三歳から六十五歳の方についてはということでございますが、その六十三から六十五の引上げについては九条の方に規定があるところでございまして、それによって、それが六十五歳に達することによって、こちらの六十五歳からの規定と接続してくるというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、違う。だから、当該定年に入らないですよねと、その事実だけを聞いているんです。つながっているか、つながっていないかなんて聞いていないんです。大臣はわかっているんでしょう。ちょっと、もう一回とめて、ちゃんと整理してください。

盛山委員長 じゃ、時間をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 動かしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 委員御指摘のように、第十条の二の、定年の定めと書いてあるこの定年、これを受けて、この定年というのは括弧がついております六十五歳から七十歳に限る、この定年を受けて、当該定年の引上げ、こういうふうになっているということであります。

岡本(充)委員 逐条だから大臣に聞かないでおこうと思ったのに、結局大臣が答えているんだったらどうなのかという気がしますけれども、私も大臣と同じ解釈をしていたわけですよ。だから、ここの当該定年というのはそこを指しているんだと思います。

 それで、聞くわけですけれども、六十三歳定年の会社は、そうすると、一項は当該定年ではないので、二をとるということが必然的に求められる、こういうことになるんですか。二か三ということですね。

小林政府参考人 御指摘のように、三は廃止でございますので、二号の継続雇用制度の導入というのを採用することになると思います。

加藤国務大臣 ですから、その場合は、六十三歳を例えば六十七歳に引き上げる、まあ、ちょっと考えますよね。そうすると、まず、六十三から六十五は九条なんですよ。そこで、九条でまず六十五までいけば、今度は読みかえで、この一項に当該定年と。したがって、それからは、六十五から六十七はこっちでいく。だから、切り分けられるということなんです。

岡本(充)委員 ちょっと事務方と大臣の答弁が違っていて、私も大臣の方に手を挙げたいんですけれどもね。言っていることが違うんだけれども、それでいいんですか、どうなんですか。

 ちょっと待って。違う人がまた手を挙げていますよ。

達谷窟政府参考人 二つあるのかなというふうに思ってございます。

 一つは、六十三歳定年、それから、この十条の二で当該定年を引き上げようとするときは、まず六十三歳を六十五歳に上げた上で、この十条の二で当該定年に該当しますから、それを引き上げることに努めるということが一つ。それから、仮に、六十三歳定年で、六十五まで今継続雇用であるという企業につきましては、二号によって、継続雇用でございますので、二号の継続雇用を導入していただくということになると考えます。

岡本(充)委員 そうなんですが、ここからが質問なんです。ここまでは当たり前のことを聞こうと思って、ここでまさか二十分食うとは思わなかったんですけれどもね。

 ここから聞きたいのは、先ほどの六十三歳の会社、継続雇用でやっています。継続雇用でやって法律を満たしている会社が、三番の、今度、当該定年の定めの廃止ということをやった場合、じゃ、定年は廃止しました、継続雇用もあります、こういった会社において継続雇用にするという合理的な説明は、いわゆる整理解雇の要件に当たるのか、当たらないのか、どちらなんでしょうか。定年の定めがない、そこに継続雇用制度だけが残っている会社はどうなるんですか。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 定年の定めがないということは、幾つまででも働くことができるということでございますので、継続雇用とは両立しないといいますか、そもそも定年がないという状況ではないかというふうに考えます。

岡本(充)委員 違うんですよ。定年の定めがなくても、労働契約上、いろいろな、例えば、きのうも大激論をしたんですよ、重いものが持てなくなった、高いところに上れなくなった、いろいろな要件を満たさなければ、だって、そんなことを言ったら、死ぬまで働けるというのが定年の廃止ではないですよね。何らかの労働をしていく上で、できなくなることの要件を定めて、その要件に合致したときには退職していただくということを、年齢ではない理由で退職理由を定めることが定年の廃止なんですよ。そうでしょう。

 であれば、体力的な要件でもって退職してもらうという制度をつくれば、これは定年の話なんです、その後に継続雇用という制度をつくっている会社が存在するのではないかということを問うているわけです。その場合、継続雇用制度はどういう扱いになるんですかということを聞いています。

小林政府参考人 継続雇用というのは、一定の定年年齢以上継続して雇用するということだと思いますので、今先生がおっしゃった定年が廃止ということは、そもそも上限がない世界でございますので、その後に継続雇用ということは条文上想定されないのではないかというふうに思います。

岡本(充)委員 違う、年齢によって一律に退職の制度をつくらないことが定年の廃止なんですよ。それ以外の要件で、例えば、視力の衰えで運転するのが難しくなってきた状況の中で退職をしていただくということを定めるとすれば、これは年齢による退職の定めではありませんから、こういう退職理由を就業規則上設けることは定年の廃止になるはずなんですよ。どうですか、違いますか。

小林政府参考人 先生がおっしゃっていることは、定年を廃止した場合は上限がなくなる、しかし社員の入れかえというのを行うということがあるだろう、その際に定年にかわる別途の退職事由を設けるということだと思います。

 そういうことはあり得ると思いますが、それは、その退職理由というのが合理的なものか、そしてその適用が合理的なものか、そういう話だと思います。

岡本(充)委員 それは次にしたいです。その合理性には整理解雇の要件に合致するようなものがあるのか、何らかほかに合理性を判断する根拠があるのか。

 年齢以外のもので退職をさせるというときにおいて、先ほど言った、さまざまな労働契約上若しくは労働条件としての退職事由を定めることができるでしょう、例えば、先ほど言ったように、肉体的要件があるかもしれません。そういった要件の設定については、解雇の濫用に当たらないような何らかの要件、指針、そういったものを示す方向なんでしょうか、若しくはあるんですかということを聞いています。

小林政府参考人 定年を廃止する、したがって、従業員をやめさせる別の事由が必要になるだろうというお話だと思います。

 そういった条件を設ける場合には、これは、労働条件の変更、労働契約法の方の話になってくると思いますので、労働契約法に照らして、労働条件の不利益変更に当たるかどうかというようなところから相当性が評価されるものではないかというふうに思います。

岡本(充)委員 いやいや、不利益変更と言うけれども、じゃ、そういう退職事由を設けること自体は否定しないとさっき言われました、年齢以外のもので退職事由を。その退職事由というのは、どういうものであるべきなのか。

 今まで言ったように、不利益変更というのは、変更したときのは確かに不利益変更ですよ。ただ、変更した後、それが実際に運用されている段階で不当解雇に当たるのかどうかという判断を一定程度示さなきゃいけないわけですから、そうした判断はどこかで示されていますか、まだ示していないですよね。どうですか。

小林政府参考人 例えば、非常に体力を要するような業務があったとして、そこの会社が定年の定めがなかったとした場合に、体力的な要件を満たさない場合には退職事由に当たるというような定め方をする場合はあり得るのではないかというふうに思っております。その場合にそれが不利益変更に当たるかどうかというのはケース・バイ・ケース、それぞれの事業の内容等によって大きく変わってくると思いますので、統一的に何か基準でそれを示しているということはないのではないかというふうに思います。

岡本(充)委員 したがって、ないんだと思います。

 そうしたら、それは一々労働争議で決めていくというわけにはいかないんですよ。だから、どういうものがそれに当たり得るのかというのをあらかじめ示しておかなければいけないんじゃないかということを言っています。

 じゃ、今言った、すごく体力が要る企業で、体力がなければ退職してもらう、そういう肉体的要件で退職してもらう要件をつくっていた、だけれども、体力の要らない職場に継続雇用ができる、もしそういう継続雇用が残っている場合には、結局、定年の定めがない企業でありながら継続雇用制度はできるんですよ、でき得るんです。並立しますよね。そういう場合に継続雇用の方に移ってもらうことができるのか。並立しないんですか。

 だって、肉体的な理由で退職してもらうということが決まっている企業、それが不利益変更に当たるかどうかは別として、そうやって決まっている、でも、退職した後に、そうではない仕事を提案して継続雇用するという仕組みをつくっていくことは理論上可能なはずなんですよ、それは。そういうときに、継続雇用にする、しないという、両方を両立することがあり得るという理解でいいですかということを聞いています。限られた時間ですから、まだいっぱい聞きたいんですから。

小林政府参考人 私どもの継続雇用の整理というのは、定年後引き続いて雇用していただく場合をこの高齢法の方ではそういうふうに呼んでおります。

 今先生がお話しになったお話というのは、例えば就業規則で定年の定めがないとしつつ、どういう場合に退職事由に当たるかというような定めは当然就業規則で用意すると思うんですね。それが一般的な社会通念に照らして合理的なものかということで判断されるのではないかと思います。

岡本(充)委員 ということは、この法律で言うところの継続雇用は年齢による継続雇用であって、その他の要件による退職のときに継続雇用制度をつくることは法律で言うところの継続雇用ではない、こういう理解でいいですか。

小林政府参考人 高年齢者雇用安定法、この法律でございますが、第九条の一項二号で継続雇用制度を定義しております。「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。」そういうことでございます。

岡本(充)委員 したがって、定年以外の理由で解雇される者についての雇用継続措置はこの法律で言うところの継続雇用に当たらないから、定年制度を廃止した瞬間にこの法律で言うところの雇用継続制度というのはなくなる、こういう理解でいいんですね。

小林政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

 あとは、別途定める退職事由の合理性にかかわってくる話だと思います。

岡本(充)委員 わかりました。

 じゃ、次の質問に行きたいと思います。資料二の三に行ってください。

 今度は労働契約を結んだときにどうなるかということですけれども、ここで言うところの創業支援等措置は次に掲げる措置をいうということで、一号からつらつら並んでいます。

 まず、一号で言うところの、赤線を引いているその他の契約というのはどういう契約を指すのでしょうか。そして、ここでは当該高齢者等に金銭を払うということになっていますから、等としては、高齢者以外には誰に払えるんでしょうか。二号では同様にその他の契約となっていますが、こちらにはかぎ括弧をつけていますが、等が入っていません。なぜそうなっているんですか。

小林政府参考人 就業確保措置の内容のお尋ねでございますが、当該事業に係る委託契約その他の契約というのは例えば請負契約みたいなものでございまして、これはその当事者間、労使でお話しいただく中でいろいろなケースがあり得る、そこは名称にかかわらないものだというふうに思っております。

 それから、高年齢者等の等でございますが、例えばフリーランスという形で業務委託契約をする場合もございますけれども、例えば退職した高齢者の方が起業する、会社を起こすという場合もございますので、そういったことも含めて等を使わせていただいております。

岡本(充)委員 ということであるとすると、その次の二号のところは会社ではだめだ、法人ではいけない、こういう理解ですか。

小林政府参考人 御指摘のとおり、この等のついていない高年齢者は個人を指すというふうに理解しています。

岡本(充)委員 そこで疑問です。何で法人ではだめなんでしょうか。

盛山委員長 じゃ、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 動かしてください。

 小林職業安定局長。

小林政府参考人 業務委託といった委託契約の関係におきましては、相手方が法人の場合ということも十分考えられるわけでございますが、社会貢献事業ということになりますと、具体的な事業を行う方ということでございますので、これは法人ではなく個人を指すということで足りるというふうに思います。

岡本(充)委員 いやいや、二号の方だって、法人をつくって、法人でやればいいじゃないですか。なぜ法人でやることを認めていないんですかと聞いているんです。

小林政府参考人 ここの社会貢献活動でございますが、NPO法人等が行う事業に個人が参加する場合ということで規定をさせていただいております。

岡本(充)委員 だから、何で個人でなきゃいけないんですか。法人で参加しちゃいけない理由はあるんですか。だって、法人だって参加する権利はあるでしょう。法人だと参加しちゃいけないんですか、そんなことはないでしょう。

小林政府参考人 創業支援等措置、創業支援措置でございますが、これは、六十五歳まで働き続けた高齢者の方がその後どういう形で活躍していただくことが適当かということでございます。起業した場合については、引き続き継続的な支援ということになりますと、その企業との間での委託契約を継続してくださいというようなお話になります。

 こちらの社会貢献活動につきましては、基本的には、こういう社会貢献的な活動にその高年齢者が従事していただく、そのNPO等にもとの企業の方が支援を行うというスタイルを想定しておりますので、その対象となるのは企業ではなく、その高齢者個人で足りるというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、それは説明になっていない。何で一号で言う委託契約は法人がよくて、二号は法人がだめなのかという理由になっていないです。その理由をちゃんと言ってください。

盛山委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 時計を動かしてください。

 小林職業安定局長。

小林政府参考人 高年齢者の方の活躍機会の支援というのを考えたときに、その高年齢者の方が会社を起こしてということであれば、先ほど最初のところで御指摘いただきましたような、高年齢者等の等というところで十分拾えるというふうに思います。こちらは残された社会貢献活動事業に従事するということでございますので、その対象となるのは高年齢者個人、御本人ということではないかというふうに思います。

岡本(充)委員 全然それは説明になっていないと思いますよ。何で法人では参加できないのかという理由になっていないんです。ちゃんとそこは説明してください、何で法人だったらだめなのかと。法人を認めない理由になっていないじゃないですか。

小林政府参考人 今申し上げましたが、高年齢者の方が会社を起こして法人になられたということになれば、それは法人対法人の契約ということになりますので、先ほどの一号の方に高年齢者等との間のその他の契約という文言がございますので、こちらの方に包含して解釈すれば足りる、そういう整理でございます。

岡本(充)委員 いや、これはちょっと、大臣、ヘルプしてあげた方がいいと思うんですけれども、これは答えになっていないですよ。

 だって、二号と一号ではやることが違うわけですから、二号でできることが一号でできるわけじゃない。わざわざ二号を立てているということは、こうした事業について、やることができるということをわざわざ立てている理由にならないじゃないですか。そうしたら二号なんか要らないじゃないですか、全部一号だけで済むじゃないですか。わざわざ二号を立てて個人しかできないものを定めているのはなぜなのかと聞いているんです。

小林政府参考人 今先生おっしゃっているのは、例えば、退職された高年齢者が起業してみずからNPO活動みたいなものを行うというケースが想定されると思うわけでございます。そういった、起業してNPO法人そのものとなった方と、もといた企業との間は、その法人間で契約を結んでいただけばいいわけですので、これは一号の方。

 一号の方は、委託契約その他の契約ということで、特に契約の内容というのを限定しておりませんので、その法人については、法人間という極めて、余りケースはないと思います、そういうものについては一号で包含できる、二号は、それ以外の高齢者個人の活動としてこういう社会貢献活動があるだろうということで書かせていただいておりますので、書き分けはできているというふうに思います。

岡本(充)委員 であれば、一号で高齢者等と書いているんですが、こっちは個人も入るわけですから、個人で業を起こしてやってもいいし、法人でもいいと、一号は。二号は、社会貢献事業はなぜか法人でやってはいけないと。法人でやりたければ一号に行くということなんですか。だとすると、これは、わざわざ二つ書き分ける必要はなくて、一つにまとめることもできたんじゃないかと思います。

 もう時間がないからいいです。もうちょっとやりたいんですけれども、もう一つ重要な論点もあるから。本当はもう一回質疑をやりたいですね、これは。本当に、これはちょっと答弁がなっていないと思いますよ。武士の情けで次の質問に行きましょうか。優しいという声をいただきましたが、武士の情けで次に行きます。

 資料三の一。まだこういうのが続くんですけれども、今度はいわゆる労災の補償の方です。

 そもそも労災の補償はどうなっているかというと、金額は八条の方でとにかく平均賃金に相当する額としているんだけれども、この二のところで、低い方については政府が算定する額を給付日額とする、こうしているわけです。つまり、最低給付日額をここで定めています。

 この定めている最低給付日額を受けて、前二項の規定にかかわらずから始まる、新設される三項が出てくるわけでありますけれども、前二項に定めるところにより当該複数事業者を使用する事業場ごとに算定した給付日額。この給付日額は、例えば安いところと安いところで働いていた場合は、それぞれの事業場で最低日額が決められます。そうですね、二項のところで最低日額が決められます。二カ所目も安かったら最低日額が決められます。

 したがって、安いものと安いものを足して、それでも最低日額を超えられなければ最低日額になるのか、最低日額と最低日額が足されて最低日額の二倍になるのかというと、この条文を読むと最低日額の二倍になるという理解になるんですが、それでいいのか、そうでないとする場合にはどういう解釈をするのか、教えてください。

坂口政府参考人 お尋ねでございます。

 まず、資料の三の一の現行の条文のたてつけは、今議員の方からございましたとおり、八条の一項で、給付基礎日額を平均賃金で算定すると。ただ、二項で、一定の場合については省令で定めるところによって政府が算定する額を給付基礎日額とするということで、その点につきましては、いわゆる自動変更対象額ということで、最低の、被災時の事情によって給付基礎日額が極端に低い場合を是正して補償の実効性を確保するということから、そういった額を設けて給付基礎日額を、その額をもって充てるということを、省令で具体的には定めているということでございます。

 それで、お尋ねの、次のページの新三項ということでございますけれども、この点につきましては、複数就業者に対しまして非災害発生事業場の賃金額も合算して労災給付を行うということで、今回御提案させていただいている給付基礎日額の算定ということを規定するものでございますけれども、この点につきましては、先ほどの自動変更対象額、いわゆる最低補償額の考え方については、この法案の議論をしていただいた労働政策審議会の労災保険部会の建議におきましても、この自動変更対象額については、その趣旨から、非災害発生事業場の賃金額を合算した場合もその取扱いを変えないことが適当であるということにされておるということでございます。

 次のページ、資料三の三にございますように、厚生労働省令で定めるところによって政府が算定する額ということとなっておりますので、具体的には、労働政策審議会で議論していただいた上で省令を定めるわけでございますけれども、先ほど議員が御指摘になったような、仮にそれぞれの事業場における賃金額に自動変更対象額を適用して合算した場合ということになりますれば、単一の事業場で働く方と複数の事業場で働く方とで同じ賃金額であっても労災保険給付の額が異なる可能性があるという点についても留意した上で御議論をしていただき、省令で定めたいと考えております。

岡本(充)委員 とにかく最後は省令で定めるから、この法律が決まった後に労政審で決めます、こういうことを言っているわけですね。それでいいのかということを、ちょっと、やはり条文に書いているんですから。

 しかも、ここにちゃんと書いているのは、この新設の三項のところに、最後にこう書いているんですよ。結局、これは、この前までのところを基礎としてですよ、相当する額を合算した額を基礎としてと書いているわけですから、勝手に、好きなようには金額を決められないんです。これを基礎として省令で定める、そうじゃなかったらこの条文は要らないんですから。

 私が聞きたいのは、結局、二項のところで既に、給付基礎日額が決められる。そうですね、二項で給付基礎日額が決まっているんです。それぞれ給付基礎日額は決まってしまう。それを受けて新三項が立って、それぞれが給付基礎日額を合算すると言っている以上は、給付基礎日額は二項で決まってしまっているわけですから、当然それが加算をされるというふうにしか読めない条文になっているのではないかと私は思います。

 したがって、これを読む限りでは、最低基礎日額が二倍になってしまうのではないか。もしそうでないとすると、唯一残された道はここなんですよ。事業場ごとに算定した給付日額と、給付日額に相当する額、これが違うということであるとすると、坂口局長が言っている話が成り立つかもしれない唯一のエクスキューズかなと思いますが、さすがに、給付基礎日額と給付基礎日額に相当する額が違う金額だということは言えないんじゃないかと思うんですね。

 そういう意味で、やはりこれは合算するときには私が指摘しているような形にこの法令上はならざるを得ないんじゃないか、これを基礎として今後労政審で決めさせていただきます、こういう理解にならざるを得ない。最後は労政審で決めますというのはそうでしょう、しかし、こうしか読めないんじゃないかということを指摘しておきたいと思いますし、次の質問がありますから、ちょっと次に行きたいと思います。

 ポンチ絵の方に行きます。就業先A、就業先Bで働いています、就業先Bで事故が起こりました。

 ここで問題です。

 AとBの両方で合算して給付をもらえる、ありがたいですね。しかし、Bの方では事故を原因にして解雇することはできません、法令上。しかし、Aの事業場は、ある日、自分のところで労災事故がなかったにもかかわらず休業を始めてしまいます。結果として、この休業をすることを理由にして解雇することは不当解雇に当たるのかどうか。

 つまり、元気になって戻ってみたら、Bの方は法律によって守られていて職を失うことはないでしょう、しかし、Aの方はこの法律が適用されないと思います。したがって、Aの方は解雇することができてしまうのではないかと思うんですけれども、この見解が間違っているのかどうか。もし間違っていないんだとすれば、Aの方が不当解雇されないような厚生労働省としてのセーフティーネットを張るべきだと思いますが、いかがですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今の先生の御質問は、労働基準法の十九条の解雇制限に係る御質問かと存じ上げます。

 労働基準法の十九条の解雇制限は、みずから労働者を業務上負傷させ又は疾病にかからしめた者について、その休業する期間及びその後の三十日間の解雇を制限するものということでございます。この業務上という概念でございますけれども、これは当該負傷や疾病を発生させた企業の業務をいうものであり、他の企業によるものは含まれないというものと解しております。

 一方、今先生も御質問ありました、複数の就業先における業務上の負荷を総合的に評価して労災認定をしようということの御提案を今回させていただいているわけでございますけれども、このような形で総合評価をして初めて労災認定ができるような場合における当該就業先ということにつきましては、それぞれ、各企業単独では労働災害を発生させたということは言えないということでございますので、先ほど御紹介しました労基法の十九条の業務上には該当しないということで、この労基法十九条の解雇制限には該当しないというものでございます。

 ただ、解雇につきましては、先生御案内のとおり、労働契約法の第十六条によって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には無効となるということでございますので、先ほどのような解雇制限の規定が適用されないということをもって、直ちにこの解雇が有効となるものではございません。

 私どもとしましては、こういった裁判例あるいは労働契約法等のルールということについて、啓発指導、周知ということをしっかり行ってまいりたいと考えます。

岡本(充)委員 これは絶対やった方がいいですよね。せっかく制度改正したのに、趣旨が生かされないことになるんじゃないかと思っています。

 長らくお待たせをしていますが、ちょっと新型コロナウイルス関係の質問もしたいんですが、労働法制の質問がたくさんあり過ぎて、たどり着かないかもしれません。

 もう一つ、雇用保険料の話を最後に聞きたいです。

 雇用保険料、これから先、大変厳しくなる中で足りなくなるんじゃないかということを危惧しています。もちろん、弾力条項があることは知っています。しかし、弾力条項を適用するための判断は、決算ベースで確定をしていきます。結果として、この法律上、弾力条項を適用して料率を変えるとしても、年度途中には変えられないというふうに思います。

 そんな中、大変多くの需要が発生し、積立金が著しく減っていく状況になったときにとれる措置、あるとは思いますけれども、年度途中でとれる措置には何があり得るのか。そして、もちろん法改正というのは別途ありますけれども、法改正なくしてできるものはどれだけあるのか。その場合に、去年の決算でいえば、一体幾ら程度の積立金が入ってくることが見込まれるのか、教えてください。

小林政府参考人 お答えいたします。

 まず、リーマン・ショックの際の状況でございますが、平成二十一年度は一・八兆円出ております。現在の財政見通しでいきますと年間で大体一・一兆円ぐらいということでございますので、この七千億円ぐらいの差が、もしリーマン・ショックが起きたとすればということで申し上げれば、生ずるということになるわけでございます。

 積立金につきましては、私どもの試算でも令和三年度末においてなお三兆円弱というふうに見込んでおりますので、まずこの積立金が十分耐え得る状況にあるというふうに思っています。

 それから、御指摘のあった弾力条項でございますが、今回、二年間、引下げの暫定措置を継続することで問題なしというのが今回の中身でございますが、その際、千分の四の弾力条項は生きた形で暫定措置を講ずるということにいたしております。

 この千分の四でございますが、これは、最大千分の四の範囲で引下げができるという弾力条項、今はその最大限の千分の四を使って料率設定をしております。この千分の四というのを状況を見て弾力条項で引き上げ得るということ。

 そして、年度途中に引き上げられるかということに関して申し上げますと、過去の例で申し上げますと、平成十四年十月、年度半ばに財政状況を踏まえて引き上げた経緯というのがございまして、以上申し上げたような措置を駆使すれば十分対応できるというふうに思います。

岡本(充)委員 今、千分の四まで下げているから、最大千分の八、上げられるんですよね。今、千分の四まで下げているから。だから、千分の八なんです。

 上げた場合、積立金に一体幾らお金が入ってくるんですか。

小林政府参考人 直近の状況で申し上げますと、料率千分の一で約千七百億円ということでございます。千七百億円掛ける四、あるいは千七百億円掛ける八、そういうことになります。

岡本(充)委員 じゃ、これが入ってきました、申しわけないですけれどもそれでも厳しいという状況になったときに、積立金がいよいよ減ってきたという状況の中で、ほかにとれる措置というのはあるんですか。なければやはり法改正するしかない、こういう理解ですか。それとも、一般財源から借り入れることができるという制度があるんですか。

小林政府参考人 一般財源から繰り入れられるという規定はございませんけれども、先ほど来御指摘いただいた雇用調整助成金ですとか、それから、過去には一般財源による基金制度といったことも講じてまいりました。そういったいろいろな方法はとり得るというふうに思います。

岡本(充)委員 そのいろいろを教えてほしいんです。そのいろいろは何があるのか、ちゃんと羅列して教えてください。

小林政府参考人 雇用保険の現行の規定を前提にすれば、先ほど申し上げましたように、弾力条項あるいは積立金の取崩しといったことによって対応していく。そこから先は法律改正が必要になる世界でございますが、法律改正によって料率を更に引き上げる、あるいは国庫を投入していくというようなことが可能になってまいります。

 それから、過去のリーマン・ショックの際の例で申し上げますと、国庫から拠出した資金をもとに基金を形成いたしまして、それで失業者に対していろいろな事業をしていただくということで支出した経緯がございます。

岡本(充)委員 それは本体給付とは別の話じゃないんですか。だから、本体給付としてやらなきゃいけないときに、お金が尽きてきたときに何ができるのかということを言っているわけですから、それは羅列して言ってもらうしかないんだけれども、それがやはり法改正しかないということであればそう答えていただいて結構だし、一般会計から借り入れられるのかどうか、そういったことも全部、あるんなら言ってください。ないんなら、法改正しかない、それで結構です。

小林政府参考人 国庫の方から繰り入れられるという規定はございませんので、そこは、法律を改正するのか、あるいは似たような状況を、別途、何か工夫するかということだと思います。

岡本(充)委員 ここは、とめちゃうところですよ。何か工夫するというのを聞いているわけですから、ちゃんとそれは答えてくださいよ、工夫、何があるのか。まあ、もういいです。ここも武士の情けで、ここでちょっととめて、皆さんから苦笑をいただいていますけれども。やはりそれは重要ですよ。きちっと議事録で何ができるのかというのを示しておかなきゃいけないと思います。

 コロナの話に行きたいと思います。

 コロナもいろいろな話があるんですが、ちょっと気になっているのが、まず大臣に、大臣の二月十七日の答弁で、私に対して、最終的な下船に当たっては、クルーズ船、もう一度、この十四日間にさまざまな症状がなかったかどうかの健康確認をする、もちろんPCR検査もする、こう答弁していたんですけれども、結局、PCR検査をせずに下船させちゃいましたよね。この事実だけ、この答弁と違っていたんじゃないかということについてはどうですか。

加藤国務大臣 今このときの議事録を読ませていただいておりますけれども、この、確認する、もちろんPCR、この前に十四日間で確認しますよということを申し上げておりましたので、そのことを私は申し上げたつもりであります。

岡本(充)委員 でも、最終的な下船に当たってはもう一度、もちろんPCR検査もすると書いてあるんですよ。最終的な下船に当たってはもう一度、もちろんPCR検査もする、こう言っているんですから。残念ながら、しなかったですよね。事実関係だけ、やはりしなかったんですよ。

加藤国務大臣 もちろんして、一回検査をすればいいということで、これは十五日でも、具体的な仕組みを説明させていただいておりますから、それを踏まえて議論をさせていただいているということで、今委員御指摘のような受けとめ方があるのなら、私の説明が不十分だったということで、おわびを申し上げたいと思います。

岡本(充)委員 文字どおり読むと、そう読めちゃうんですよね。やはりこれは、私は、繰り返し言っているように、このときにもう一回やるべきだったと思っていますよ。今でもそう思っています。

 その上で、資料の四の方に行きたいんですけれども、国内で患者数が最大にふえたときのいろいろな体制についてということで、いろいろ計算式が出ています。

 これはるる読んでいくと、時間がないので、結果として、一体どのくらいの患者さんが発生するかということの重要なのは、基本再生産数、R0によって決まるんだと。このR0の数字が高くなるほど感染がふえるということなんですが、一・七という数字にしました、ここまではいいでしょう。このRの一・七から発症率、入院率のパーセンテージがいきなり出てくる、そして、もちろん、Rの二・〇でも発症率、感染率の人数が出てくる。このパーセンテージとR0との相関がどういう計算式になっているのか一切示されないまま、この表がいきなり出ているんですが、この相関については、参考人で結構です、答えられますか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 当該領域においては推計の一定の手法が既に確立しているということで、通知というか、それへの記載は省略させていただいておりましたが、具体的には、モデルがございまして、その微分方程式に基本再生産数等の初期値を代入すると得られるというふうに専門家から聞いているところでございます。

岡本(充)委員 それをちょっと今披露してください。

宮嵜政府参考人 済みません、私、その分野の専門ではないので、具体的に専門家から聞いたことを申し上げますと、ケルマック・マッケンドリックモデルという微分方程式に先ほど申し上げたような数値を初期値として代入すると得られるというふうに聞いているところでございます。

岡本(充)委員 だから、ちゃんと、どういう計算式でやるのかを、これは、いきなりこの数字が出ていてわからないんですよ。それでいて、専門家会議にかけてこれでオーケーですかと聞いたというんだから、びっくりなんです。どういう計算式でやるかもわからないのを専門家会議にかけて、それでオーケーですかと聞いているのもどうかと思いますが、じゃ、どういう式なんですか。どうやったらこの〇・一八とかが出てくるんですか。教えてください。

宮嵜政府参考人 申しわけございません、先ほどお答え申し上げましたが、そのケルマック・マッケンドリックモデルという微分方程式を用いたということは聞いておりますが、具体的な計算式については、ちょっと私どもの方では承知しておりません。

岡本(充)委員 ちょっと、通告していて、ちゃんとそれを出すように言ったじゃないですか。繰り返し、きのうから言っているんだから。ちゃんと出してください。どうやって計算したのかもわからなくて、だって、ベッドの数を決めているんですよ。これで、本当は今から医政局長に聞かなきゃいけない、ベッドが足りるのかという話をするのに、ベッドが足りるかどうかの計算式がわからないんだったら、そんなの、妥当かどうか専門家にも聞けないじゃないか。ちゃんと数式を出してください。

盛山委員長 じゃ、時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 時計を動かしてください。

 宮嵜健康局長。

宮嵜政府参考人 まことに申しわけございませんが、私が承知しているのは先ほど答弁申し上げたところまででございまして、どういう式かというのは専門家の方に改めてちょっと確認させていただければと思います。

盛山委員長 とめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 じゃ、時計を動かしてください。

 岡本君。

岡本(充)委員 きのうから、累次にわたって通告していることだけは認めてください。数式がどうなるかを聞いているのは、それだけは認めてください。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 どういうモデルというか、形の計算式というか、手法を用いているかということはお伺いしていたんですけれども、具体的な数式がどうかというところまでは、ちょっと我々の方の理解が足らなかったのかもしれませんが、そこまで、具体的な数式というところまでは理解していなかったので、改めて、その具体的な数式というところは専門家の方に御確認させていただければというふうに思っております。まことに申しわけございません。

岡本(充)委員 これだけ皆さんお集まりですから、いろいろなこと、時間を限られて。(発言する者あり)じゃ、ちょっと一言だけ。

 最後に、医政局長に来ていただいています。

 この数式で出た数字をもとに私は聞きたかった。急性期の病院の病床数、高度急性期は十六万床、急性期が五十六万床と言っている中で、これから先、病床のやりくりをしていかなければいけない。そういう中において、早く病院にどういうことをやっていかなきゃいけないか、そしてどういう研修なり取組をしなきゃいけないかということを周知をするべきです、急ぐべきです。そういう意味で、それをぜひやっていただきたい。

 本当は数字を比較してやりたかったけれども、数字が出ないようですから、定性的な話ですけれども、それをしっかりやっていただくということを最後に医政局長に言っていただいて、終わりたいと思います。

吉田政府参考人 省全体、本部として、政府として、しっかり都道府県と相談しながら確保させていただきたいと思います。

岡本(充)委員 いろいろと質疑も残っていますけれども、時間になりましたので、これできょうは終わりとしたいと思います。

盛山委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 雇用保険法等改正案に反対の討論を行います。

 本法案に反対する最大の理由は、高年齢者雇用安定法案で、事業主に対し六十五歳から七十歳の就業確保の努力義務を課す際に、委託契約、個人請負や有償ボランティアなど、労働関係法令が適用されない雇用によらない働き方を選択肢として位置づけていることです。

 労働時間の規制はなし、最低賃金の保障もなし、有休もなし、高齢者は労災が多いのに、労災保険の適用もなし。現に、雇用から個人請負に切りかえられ生活に窮する事態や、契約の改善を求めて声を上げれば、契約更新の際に生活が立ち行かなくなるような不利益をこうむる事態すら起きています。不安定で無権利な働き方を広げることは許されません。

 労使合意が歯どめと政府は説明しますが、しっかりした過半数労働組合がない場合には使用者の意のままになり、歯どめにならないことも参考人質疑で明らかになりました。

 今回の法案は、六十五歳以下にも非雇用を広げる一穴になりかねません。高年齢者雇用安定法案の十条の二第一項の「ただし、」以下は削除し、六十五歳から七十歳への努力義務は、雇用の確保とすべきであります。

 第二に、高年齢雇用継続給付金の給付率を最大一五%から一〇%へ削減する措置は、高齢者の収入を引き下げ、生活困窮に追い込むことになりかねず、認められません。

 第三に、雇用保険の国庫負担率の引下げのさらなる延長は認められません。

 三年前の引下げの際の衆参の附帯決議は、三年度間に厳に限った措置とすることとしました。延長は、附帯決議を真っ向から踏みにじるものであります。労政審は今後の財政見通しを踏まえて二年間に限った継続としましたが、その後、新型コロナウイルス感染拡大の中、解雇、雇いどめが増加し、労政審での検討時と経済状況も財政見通しも変わっています。雇用状況の悪化が懸念されており、雇用に対する国の責任を果たすため、国庫負担は直ちに本則に戻すべきであります。

 以上、指摘し、反対討論とします。

盛山委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

盛山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 この際、本案に対し、平口洋君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、公明党及び日本維新の会・無所属の会の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。小川淳也君。

小川委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 六十五歳までの高年齢者雇用確保措置が全ての企業において確実に実施されるよう事業主に対する周知を強化するとともに、違反事業主に対する指導等を通じて、六十五歳までの希望者全員の雇用確保が図られるように努めること。

 二 事業主が複数の高年齢者就業確保措置を講ずる場合において、個々の労働者の意思を十分に尊重することを指針等で明確にし、その周知徹底を図ること。

 三 創業支援等措置による就業は、労働関係法令による労働者保護などが図られないことから、以下の事項を指針等で明確にすることを検討し、その周知徹底を図ること。

  1 事業主は、当該措置を選択する理由を書面等により過半数労働組合又は過半数代表者に十分に説明すること及び当該措置を適用する労働者に対しても丁寧に説明し納得を得る努力をすることが重要であること。

  2 事業主が当該措置のみを講ずる場合は、過半数労働組合等の同意が必要であること。また、継続雇用制度の導入に加えて当該措置を講ずる場合であっても、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。

  3 当該措置により就業する者について、同種の業務に労働者が従事する場合における労働契約法に規定する安全配慮義務の内容も勘案しつつ、委託業務の内容・性格等に応じた配慮を当該措置を講ずる事業主が行うことが望ましいこと。

  4 高年齢者雇用安定法の改正の趣旨が七十歳までの雇用・就業機会の確保であることを踏まえ、当該措置を講ずる事業主は、七十歳まで継続的に労働者を支援することが求められること。

 四 創業支援等措置による就業について、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を参考とするよう周知・広報すること。また、就業する者が被災したことを把握した場合は、当該措置を講ずる事業主が厚生労働大臣に報告することを検討することとし、同種の災害の再発を防止するための対策の検討に当該報告を活用すること。

 五 高年齢期においては、労働者の体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況がより多様となることから、事業主がより柔軟な労働条件を整備できるよう適切に支援すること。

 六 六十五歳以降も働くことを希望する全ての労働者が個々の意欲及び能力に応じて働くことができる環境整備を図るため、施策の充実に努めること。

 七 雇用政策に対する政府の責任を示すものである雇用保険の国庫負担については、改正後の雇用保険法附則第十五条の規定に基づき、早期に安定財源を確保し、本則に戻すこと。また、今回の時限的な国庫負担率の引下げ措置の継続については、令和三年度までの二年度間に厳に限った措置とすること。

 八 失業等給付と異なる給付体系に位置付けられる育児休業給付について、給付額が増加傾向にある状況を踏まえ、中長期的な観点から国庫負担割合も含めた制度の在り方を検討すること。

 九 求職者支援制度について、雇用の安定化の必要性が高い者に対し十分な支援が行き届くよう制度運営の充実に努めるとともに、雇用政策に対する政府の責任を示す観点から、国庫負担割合の在り方を検討すること。

 十 企業による六十五歳までの雇用継続を下支えしている高年齢雇用継続給付について、今回の給付率の引下げに当たって、働き方改革関連法の「同一労働同一賃金」に基づく高年齢者の不合理な待遇差の解消に取り組む企業に対して十分な支援を行うこと。その上で、今後の給付の在り方については、六十五歳までの高年齢労働者の雇用の進展状況を十分に踏まえ、中長期的な観点から検討すること。

 十一 複数の事業所に雇用される六十五歳以上の労働者に対する雇用保険の適用について、施行後五年を目途に、懸念される逆選択やモラルハザードといった事象も含め、適用による行動変化や財政への影響等を十分に検証し、必要に応じて、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用の在り方を検討すること。

 十二 新型コロナウイルス感染症により我が国経済は大きな影響を受けており、今後雇用への影響の拡大が懸念されることから、雇用の維持に向け、雇用安定資金も活用して、雇用調整助成金をはじめとする雇用保険二事業により十分な支援を行うこと。

 十三 労災保険の複数事業者に係る改正事項を確実に実施するとともに、特別加入制度について、働き方が多様化し、雇用類似の働き方も拡大していることから、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる者の加入促進を図るため、制度の周知・広報を積極的に行うこと。また、社会経済情勢の変化を踏まえ、その対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合ったものとなるよう必要な見直しを行うこと。

 十四 大企業における中途採用比率の公表に当たっては、企業の実態や入社後のキャリアパスなどの情報も中途採用を目指す労働者にとって有益であることから、様々な情報を総合的に公表しやすくするための支援を検討すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

盛山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

盛山委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、加藤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力してまいります。

    ―――――――――――――

盛山委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

盛山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.