衆議院

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第6号 令和4年3月15日(火曜日)

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令和四年三月十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 橋本  岳君

   理事 今枝宗一郎君 理事 齋藤  健君

   理事 高階恵美子君 理事 牧原 秀樹君

   理事 山井 和則君 理事 柚木 道義君

   理事 池下  卓君 理事 伊佐 進一君

      畦元 将吾君    石橋林太郎君

      上田 英俊君    加藤 勝信君

      勝目  康君    川崎ひでと君

      後藤田正純君    佐々木 紀君

      塩崎 彰久君    鈴木 英敬君

      田村 憲久君    高木 宏壽君

      土田  慎君    西田 昭二君

      長谷川淳二君    深澤 陽一君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      三ッ林裕巳君    柳本  顕君

      山本 左近君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    中島 克仁君

      長妻  昭君    野間  健君

      山田 勝彦君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      金村 龍那君    吉田とも代君

      山崎 正恭君    吉田久美子君

      田中  健君    宮本  徹君

      仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    深澤 陽一君

   参考人

   (一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部統括主幹)          平田  充君

   参考人

   (日本労働組合総連合会総合政策推進局長)     冨高 裕子君

   参考人

   (昭和女子大学副学長)  八代 尚宏君

   参考人

   (法政大学経済学部教授) 酒井  正君

   参考人

   (全国労働組合総連合事務局次長)         秋山 正臣君

   厚生労働委員会専門員   大島  悟君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     石橋林太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     畦元 将吾君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)


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     ――――◇―――――

橋本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する山井和則君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。

 本日は、原案及び修正案審査のため、参考人として、一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部統括主幹平田充君、日本労働組合総連合会総合政策推進局長冨高裕子君、昭和女子大学副学長八代尚宏君、法政大学経済学部教授酒井正君、全国労働組合総連合事務局次長秋山正臣君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十二分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず平田参考人にお願いいたします。

平田参考人 経団連、平田でございます。

 本日は、雇用保険法の一部を改正する法律案に対する経団連の考え方を御説明する機会を頂戴し、誠にありがとうございます。

 改正案の内容は多岐にわたりますが、私からは、主に、雇用保険法、職業安定法、それから職業能力開発促進法について、賛成の立場から考え方を述べたいというふうに考えております。

 まず、雇用保険法の改正について申し上げます。

 今回の改正案でございますけれども、新型コロナウイルス感染症が雇用に甚大な影響を与えるリスクが高まる中、雇用の安定と就業の促進を図るとともに、雇用保険財政の安定運営に配慮した適切な改正案であるというふうに考えております。

 その上で、三点申し上げたいというふうに思っております。

 まず第一に、雇用保険料率について申し上げたいと思います。

 雇調金の財源である雇用安定資金への多額の貸出しによって積立金が減少し、本来であれば二〇二二年度の雇用保険料率は本則に戻すべきところでしたけれども、労使の負担感を考慮していただきまして、改正案では、急激な料率引上げを回避する激変緩和措置を講じていただいております。こうした配慮に改めて感謝を申し上げますとともに、二〇二三年度以降も、雇用情勢だけではなく財政状況も慎重に見極めながら、適切な対応をお願いしたいというふうに考えております。

 第二に、失業給付に要する費用に対する国庫負担割合について申し上げたいと思います。

 改正案は、財政状況が悪化した場合の国庫負担を四分の一、それ以外は四十分の一というふうにして、これに加えて、機動的な国庫からの繰入れの常設化を盛り込んでおります。コロナ禍が長期化し先行きが不透明な中で、セーフティーネット機能を確実に果たし、財政の安定運営を実現するという観点からは適切な改正であるというふうに考えております。今後、必要なタイミングで確実に国庫を繰り入れ、このような仕組みを適切に運用していくことが重要だというふうに考えております。

 第三に、雇用調整助成金に関する費用負担について申し上げます。

 雇調金を含む雇用保険二事業は、事業主のみ負担する保険料と単年度の剰余を積み立てた雇用安定資金によって賄われております。雇調金の二〇二〇年度の当初予算は約四十億円に満たないレベルであったというふうに記憶しておりますけれども、特例措置等により、この二年間で五兆円を超える支出が行われております。雇用安定資金につきましては、失業等給付の積立金から約二・六兆円を借り入れており、来年度末には三兆円近くまで膨れ上がる見込みと、当初全く想定していなかった状況にあるというふうに考えております。

 こうした想定を大きく上回ることとなった支出や借入れを誰が最終的に負担をするか、すなわち、多額の累積債務に関するその返済の在り方については、改正案では二〇二四年度までを目途に検討することとされております。

 このこと自体は評価をしたいというふうに思っております。ただし、感染症対策として国ですとか地方自治体の要請により休業を余儀なくされているということを踏まえれば、仮にその全てを最終的に全額事業主の負担とすることには、大きな疑問そして強い懸念を持っているところでございます。

 今後の議論であるとは承知しておりますけれども、雇調金の本来の役割である急激な景気変動に対する一時的な雇用の維持という範疇を大きく超えるような長期間の特例の運用の結果、雇調金が本来の運用をしていれば失業給付に移行していたであろう部分までカバーし、失業給付に係る負担を実質的に肩代わりしたという見方も可能だというふうに考えております。

 したがいまして、雇調金として支出されたという外形的な理由で、全額事業主のみの負担として形式的あるいは固定的に整理することは適切でないというふうに考えております。制度の持続可能性の確保に向けて、適切な御検討をお願いいたしたいというふうに思っております。

 次に、職業安定法の改正について申し上げたいと思います。

 ICT等の活用により、求人メディア等の雇用仲介サービスが多様化し、これまで想定していなかったビジネスモデルが生まれております。今回の改正は、こうした実態を踏まえ、多様化する事業者が依拠すべきルールの整備を企図しており、事業運営の適正化の推進に寄与するものというふうに承知しております。

 また、雇用仲介サービスを労働市場において積極的に位置づけると同時に、マッチング等につながる有益なイノベーションを阻害しないという観点からも制度設計がされているというふうに理解しております。結果として、求人者や求職者等のユーザーが安心して求人メディア等を利用できる環境の構築と、労働市場の需給調整機能の向上につながる改正というふうに評価しているところでございます。

 最後に、職業能力開発促進法について申し上げたいと思います。

 ポストコロナ社会を見据えますと、雇用維持ではなく、成長産業や分野への労働移動の促進も重要な政策課題というふうになると考えております。さきに述べました労働市場のルール整備に加えて、働き手の職業能力の開発それからスキル向上は不可欠になるというふうに考えております。

 新型コロナウイルス感染症によって社会全体が甚大な影響を受けた一方で、業績については、業種や企業、あるいは地域ごとに大きな差が出ている状況です。職業訓練におきましても、画一的な内容とするのではなくて、地域経済の状況ですとか特性、ニーズ等を適切に反映することがこれまで以上に求められている。そうした中にあって、都道府県単位で関係者が参画する協議会を法的に位置づける改正案は妥当であるというふうに考えております。

 以上が、簡単ではございますけれども、今回の改正法案に対する私どもの認識でございます。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、冨高参考人にお願いいたします。

冨高参考人 連合で総合政策推進局長を務めております冨高です。

 本日は、参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。

 私からは、雇用保険法等改正法案の内容を議論した労働政策審議会の労働者代表委員としまして、雇用保険法等改正法案について、働く者の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、雇用保険法の改正案についてでございます。

 御承知のとおり、いざというときに働き手を守る重要なセーフティーネットである雇用保険制度は、労使と国の共同事業でございます。提出資料二ページのとおり、労使折半の保険料と国庫負担を財源として政府が運営しておりまして、このうち、雇用調整助成金などが含まれる雇用保険二事業につきましては、使用者負担の保険料のみで運営されております。

 雇用保険の給付面においては、閣法では各種暫定措置の継続などが盛り込まれており、特に雇い止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例を三年間延長することは評価しております。

 一方で、三ページのとおり、令和三年度末時点で約一兆三千百億円ある失業等給付の積立金の残高が、次年度にはほぼゼロに近い残高となる見込みであるなど、雇用保険財政は危機的な状況にあることから、閣法における財政面の改正について三点申し上げたいと思います。

 一点目につきましては、失業等給付の国庫負担の見直しについてでございます。

 連合は、労働者の失業時の生活の安定を図ることは国の責務であり、国庫負担は当然の道理である旨、労働政策審議会を始めとする場で主張してまいりました。しかし、今回の改正法案には国庫負担割合の本則の見直しが盛り込まれており、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合のみ四分の一とし、それ以外の場合には四十分の一とする、別途国庫から機動的に繰入可能な制度を導入するとされております。

 本来、失業等給付の国庫負担割合は、四ページのとおり、四分の一とされているところ、暫定的な引下げ措置によって四十分の一が適用されております。

 この点、過去の衆参の厚生労働委員会の附帯決議においては、五ページのとおり、国庫負担には政府の雇用政策に対する責任を明確にする意義があるという政府の認識の下、早期に安定財源を確保し、四分の一に戻すこと、時限的な引下げ措置は令和三年度までに厳に限ることとされておりました。

 雇用保険部会においても労使双方から意見が相次ぎ、本年一月に取りまとめられた雇用保険部会報告では、失業等給付に係る国庫負担については、本来、国の財政状況に左右されることなく、現行制度の原則的な負担割合である四分の一に戻すべきであるとの意見が付記されているところでございます。

 さらに、新たな国庫繰入制度につきましては、六ページのとおり、部会報告では、新たな国庫繰入制度の実効性を可能な限り担保するための運用の考え方が示されておりますが、閣法では、部会報告に記載されている内容がどこにも規定されておらず、制度の趣旨に沿った運用がなされる保証がありません。国庫繰入れの機動性と実効性が担保されなければ、適切な時期に適切な規模の財政措置がなされない懸念があります。

 今回、様々な議論がなされたものの、国庫負担割合の本則を四十分の一とすることに加え、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合の要件が厳格であることに関して、合理的かつ十分な説明がなされたとは言い難い状況にございます。国庫負担は、国が主導する雇用政策の責任を明確化するものであり、国の財政状況によってその責任が軽くなるものではありません。政府による政策の判断は労働者の雇用に大きく影響するものであり、政府には、約四千万人いる雇用保険の被保険者に対する責任を改めて御認識いただき、最大限の努力をお願いしたいと思います。

 二点目は、失業等給付の雇用保険料率についてです。

 閣法では、令和四年度の雇用保険料率を、年度前半に現行どおり〇・二%、後半は〇・六%に引き上げることとしております。新型コロナウイルス感染症の拡大状況が長期化する中で、労使の厳しい状況に配慮していただいたことは大きな意味があるというふうに考えておりますが、労使の雇用保険料率を引き上げる前に、まずは失業等給付の国庫負担を原則に戻すことが必要と考えます。

 最後、三点目は、育児休業給付の在り方とその財源についてです。

 育児休業給付は雇用保険で運営しており、被保険者のみが対象となります。子育てと仕事の両立の大変さは、フリーランスなど雇用によらない働き方をしている方についても変わるものではありません。この点、閣法では、令和六年度までを目途に、雇用保険法の規定による育児休業給付及びその財源の在り方について検討を加え、必要があると認めるときには、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとの検討規定が盛り込まれております。

 一方、育児休業給付の今後の財政見込みによれば、給付の増加率が高い水準で推移すれば、令和六年度までの間でも安定的でなくなる、と言えなくなるおそれがあります。早期に、育児休業給付の在り方とその財源についても検討を開始すべきです。

 また、財源に関して、子育て支援における国の責任を踏まえれば、フリーランスを含め、育児休業期間中の経済的支援は一般会計で実施されるべきというふうに考えます。現場からは、雇用調整助成金の特例措置を始めとする雇用保険制度が非常に重要であると切実な声も寄せられております。

 今後、労働政策審議会において雇用保険財政の今後の在り方についての議論がなされた際には、法律案要綱に付された意見も踏まえ、公労使の意見を最大限に尊重していただきたいということを最後に申し添えておきたいと思います。

 次に、職業安定法改正案についてでございます。

 連合は、求人広告に係るトラブルが多く発生している現状を踏まえれば、募集情報等提供事業者が職業安定法の適用対象になっていないことは、これまで、求職者保護に欠けると指摘してまいりました。今回、募集情報等提供事業者の範囲にクローリング等の新たな形態サービスも加えた上で、職業安定法の対象とする改正が行われることについては、一歩前進と評価しているところでございます。

 その上で、求職者保護の観点から、特に、労働条件明示、規制の在り方について申し上げます。

 まず、労働条件明示については、求人者が労働条件を明示するタイミングは、求職者と最初に接触する時点とされております。しかし、七ページにありますように、連合には、募集情報と実際の労働条件が違っているといった相談が寄せられており、募集の時点で労働条件と相違ない正確な情報が提示される必要があると考えております。

 規制の在り方につきましては、今回の改正法案において、求職者情報を収集する募集情報等提供事業者につきましては、特定募集情報等提供事業として届出制とすることとされました。今まで募集情報等提供事業者は法の適用対象ではなかったため、届出制として実態を把握していくことは最初の一歩として必要かというふうに考えておりますが、実態を把握した上で、求職者保護の観点から、規制の在り方については引き続き検討すべきというふうに考えております。

 最後に、職業能力開発促進法についてでございます。

 職業訓練は、労働者及び求職者が就職活動やキャリアアップを行うに当たり必要な知識、スキルを習得するための公的な職業支援制度であり、労働者や求職者と企業のニーズが合致する訓練コースを充実させる必要があります。さらに、DXやGXへの対応に向け、広くデジタル分野に対応した人材育成も求められております。

 今回の能開法の改正によりまして、八ページにありますように、地域での職業訓練を協議する場が法定化され、また、その協議の場に、労使などに加え、新たに教育訓練機関や民間職業仲介機関等も加わることから、今後は、地域や企業の求める人材、訓練ニーズが、これまで以上に職業訓練に反映されることを期待します。

 一方で、そうしたニーズを踏まえた訓練の設定、効果の分析及び効果検証は引き続き重要と考えておりまして、今後も欠かすことはできません。さらに、求職者などが職業訓練受講後に自らが希望する仕事に就けるよう、就労支援の強化を図っていくことも重要と考えます。

 次に、キャリアコンサルティングについてでございます。

 九ページに記載のとおり、キャリアコンサルティングの責務規定の整備などが行われますが、キャリアコンサルティングは、企業や労使の取組など実態に即した対応や取組をすることが重要だと考えます。さらに、個々の企業や労働者の状況を踏まえた上で、DXやGXなどによる変化も想定したコンサルティング能力が求められており、労働者自身が望むキャリア形成支援の更なる充実を図っていく必要があると考えております。

 以上、意見として申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、八代参考人にお願いいたします。

八代参考人 昭和女子大学の八代でございます。

 本日は、このような貴重な場を与えていただきまして、ありがとうございました。

 私は、どこかの組織に属しているわけではありませんので、あくまでも経済学者として個人の意見を述べさせていただきます。お手元に資料が配られていると思いますので、それに沿って御説明させていただきます。

 言うまでもないわけですが、今回のコロナ危機によって、特に二〇二〇年の四月に極めて大きな影響があり、失業者、休業者が激増したわけです。これは、もし、こういう雇用調整助成金のような制度がないと、かなりの大きな部分が失業者になっていたわけで、その意味で、二〇二〇年の四月、五月、六月、この辺りまでは、雇用調整助成金制度が極めて有効に機能したというふうに見られるわけですが、その後を見ますと、普通と同じように、失業者と休業者は同じぐらいの数で推移しているわけです。

 ですから、これは雇用調整助成金への普通の評価でありますけれども、緊急時には非常に役に立つけれども、それが長い間継続すると、むしろ労働者の円滑な移動を妨げるマイナス面が大きい、そういう評価をしております。

 右側は、ほかの方が既におっしゃったように、この膨大な雇用調整助成金が使われたことによって、ピーク時には六兆円を超えていた雇用保険の積立金が、もうほとんど枯渇している状況であります。

 この雇用調整助成金の使われ方というのは、例えば、その前のリーマン・ショックのときを見ますと、一兆円程度だったんですね。GDPの落ち込み幅というのは今回よりもリーマン・ショックの方が少し大きかったわけですから、同じ程度の不況に対して、今回は雇用調整助成金が極めて大幅に使われたというのが一つの現状であります。

 その次の資料でございますが、このように大幅に雇用調整助成金が拡充されたというのは、言うまでもなく制度変更があったからでありまして、平時は、休業手当の補助率というのは、大企業で二分の一、中小企業で三分の二、日額の上限が八千二百六十五円というふうに決められているわけであります。それが、緊急事態ということでやって、何回か変わったわけですが、最後はもう条件を満たせば企業規模にかかわらず、中小企業だけでなく、大企業に対しても十分の十、つまり、休業手当の一万五千円の範囲内でありますけれども、全てが政府から、雇用保険から支出されたということになります。

 元々、この雇用調整助成金の考え方というのは、企業が、そもそも雇用保障をすることが企業にとって望ましい、労使の安定とか、熟練労働を確保するという意味で。そういう雇用慣行に対して、政府が補助をする。政府が補助をすることによって、基本は企業の努力によって雇用を維持するという考え方だと思いますが、それに対して、十分の十、全額を政府が補助をするというのは、私は基本的にやり過ぎだったと思います。企業の自助努力の余地がほとんどなくなってしまう。それが一つの問題点。

 もう一つは、失業給付とのアンバランスということです。

 元々は、失業給付と休業手当の関係はバランスが取れていたはずなんですが、雇用調整助成金が一方的に増えたことによって、例えば、失業手当であれば九十日から三百三十日という期限があるわけですが、雇用調整助成金の場合は、あくまでも緊急措置ということながら、期間がどんどん、緊急措置が延長されて、現在は一年間を超えている。

 それから、これは多くの人が指摘していることでありますが、休業手当をもらった後に企業が例えば倒産した場合には、改めて失業手当をもらえる。これは、最初から企業が倒産したり、企業が営業をやめたりすることでいきなり失業者になった人との格差が非常に大きくなってしまう。むしろ、失業手当の方を拡充することによって労働者を救うというのが、本来の雇用保険の在り方ではなかったのかと思います。

 それから、支給額の上限についても、元々は、休業手当も失業給付も上限八千二百六十五円でそろっていたのが、休業手当の方だけ倍近くまで上げられたわけでして、これも一つのアンバランスではないか。

 それはなぜかというと、雇用調整助成金というのは失業の防止ということが目的なわけなんですが、正確に言うと、これは正規社員の失業の防止には役に立つわけですけれども、非正規社員の場合、その多くは雇い止めをされるわけですね、不況になりますと。そうなると、この雇用調整助成金の対象には非常になりにくいわけで、それに対して、失業給付の方は、正規、非正規の格差はないようにできているわけです。

 ですから、今から言っても遅いかもしれませんが、当初、このコロナ危機が起こったときには、みなし失業制度というような構想もあったわけで、失業保険の制度を拡張することによって、一時的に企業に残っている人もカバーするというような考え方もあったわけで、その方がはるかに公平な措置ではなかったかと思います。

 二番目に、次のページですが、じゃ、ともかく、もうここまで枯渇してしまった雇用保険財政をどう再建するかということなんですが、雇用保険というのは、そもそもの役割というのは、産業間とか企業間の失業リスクの分散ということであります。あくまでも保険制度でありまして、そういう事故に遭った企業とその労働者を、遭わなかったところがカバーする。

 今回のコロナ不況の場合は、非常に産業間、企業間の格差が大きいわけでして、ほとんど影響を受けなかった企業も多いわけであります。対人サービス関係の業種にコロナの影響は集中している。ですから、そういう意味では、まさに助け合いの原則が機能するわけでありまして、コロナの影響を受けた産業あるいはその労働者の救済には、影響を受けなかった企業や労働者が助けるというのが本来の保険の考え方なわけです。

 その意味でも、やはり、リスクが高まれば保険料が上がるのは、民間の損害保険でも同じことなわけですよね。水害のリスクが高まったことによって、民間の損害保険は上がっている。これが本来の保険の仕組みなわけです。ですから、そういう意味では、私は基本的に、この法案のように、今後、保険料を上げていくことによって雇用保険財政の再建を行うというのが基本ではないかと思います。

 今回の、雇用調整助成金が拡張されて被保険者以外の方にも適用されたというのは非常に望ましいことですが、本来は雇用保険自体がそういうことをすべきであって、フリーランス等を対象にするというのは、失業保険の方も同時にやっていく必要があるんじゃないか。

 基本的に申しますと、やはり一般財源に安易に頼るということは、過去の経緯はともかく、私は、保険として望ましいことではないんじゃないか、雇用保険はあくまでも雇用を守るためのもので、一般財源というのは、やはり福祉政策で対応する、福祉と雇用はきちっと分けるという考え方が本当は必要ではないかと思っております。

 最後に、山井議員の方から提出されたという修正案の評価でございます。

 これは、育児休業費用を全額国庫負担にというか一般会計でということの御提案なわけですが、これにつきましても私は反対でありまして、子育て支援ということに対する、当然、国の責任があるんですが、それは福祉政策として行うべきではない、あくまでもこれは、子育てということを、社会全般で、個々の家庭の責任じゃなくて社会全体でカバーするという、いわば介護保険と同じ考え方が望ましいのではないか。

 私も、介護保険をつくるときには、当時の厚生省の中央福祉審議会というところで一緒に、参加させていただいたわけですが、介護保険は、元々高齢者福祉であった仕組みを、介護保険と、福祉の基礎構造改革によって、貴重なサービスであるという形に大転換したわけですよね。本来は子育てもそれと同じようなことをしなければいけなかったんですが、当時、非常に反対が多かったので、その福祉の基礎構造改革から漏れてしまった。それが、今の大きな問題になっているわけです。

 ですから、今行われている雇用保険の枠組みの中で、育児休業給付というのは、私は、あくまでも暫定的な仕組みであって、本来は、介護保険と同じような社会保険としての子供保険というのをつくるべきではないだろうか。幸い、今、介護保険の中で二十から三十九歳というのが空いているわけですね、四十歳以上が被保険者ですから。この空いているところを子供保険として対応するということは十分に可能ではないかと思われます。

 ですから、山井議員のおっしゃっている全額国庫負担というのは、あくまでも福祉制度として考えるということであれば正しいんですが、私は、それは保険制度として考えるべきである。その意味ではこの修正案には反対でありまして、子育ての費用を家族だけじゃなくて社会全体で分担するということであれば、究極的に子供保険、当座は雇用保険の中の育児休業給付という形で維持することが望ましいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、酒井参考人にお願いいたします。

酒井参考人 法政大学の酒井と申します。よろしくお願いいたします。

 私は、経済学の立場から、労働市場におけるセーフティーネットなどを研究しております。

 私は、職安法については余り詳しくありませんので、特に、雇用保険部会の公益委員として今回の改正法案策定の議論に参加してきた立場から、今般のコロナ禍によって改めて顕在化した雇用のセーフティーネットの問題と、それに関連して、この改正法案が持つ意義についてお話ししたいと思います。

 まず、今回のコロナ禍の労働市場と雇用対策について、私がどのように見ているか述べることから始めさせていただきたいと思います。

 御存じのように、おととしに、我が国でも新型コロナウイルスの感染拡大が始まった比較的早い時期から、雇用調整助成金の特例措置が発動されてきました。この雇調金の特例措置によって支給額は累計で五兆四千億円、支給件数にして五百九十万件以上ということになっており、この措置によって失業への流入が相当程度抑えられてきたであろうということは確かと思われます。

 ただ一方で、このような雇用維持策にもかかわらず、非正規雇用者数は大きく減少したというふうに理解しております。

 したがって、雇調金のような雇用維持策と同時に、コロナ禍で現に仕事を失った人々に対するセーフティーネット、すなわち、失業状態から脱出させるための施策として、求職期間中の所得保障ですとか、就労支援、職業訓練といったものを十分に機能させることが必要となると考えております。

 しかし、従来の雇用保険、雇用保険の本体である失業給付ですけれども、これは非正規雇用が受給しにくいという問題を抱えていることは、これまでも様々に指摘されてきたところです。

 というのも、非正規雇用は、就業が短時間、短期間になりがちであり、保険料の拠出を前提として給付を行う社会保険では十分に給付を行いにくいという側面があるからです。したがって、非正規雇用に十分なセーフティーネットを提供するには、保険料拠出と給付の対応関係を緩めた制度が必要になると考えます。

 この点に対応するのが、第二のセーフティーネットと呼ばれる求職者支援制度です。

 求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者が、無料の職業訓練を受講し、一定の要件を満たす場合には月十万円の給付金を受給しながら再就職や転職を目指す制度であり、雇用保険制度の附帯事業として実施されております。

 この求職者支援制度はリーマン・ショックを契機に創設されたものですけれども、求職者支援訓練の受講者数は、十万人をピークにその後減少を続け、コロナ禍以降、若干の増加に転じておりますが、今年度は、目標受講者数の五万人に対して、一月までの実績となりますが約二万二千人ということで、残念ながら利用者数は低迷していると言わざるを得ません。

 その原因として、支給要件が厳し過ぎるのではないかという指摘があり、コロナ禍における特例として、収入要件、あるいは出席要件の緩和などが行われてきました。これらの措置については、まだまだ認知度が高いとは言えないというふうに考えておりますので、より一層の周知が必要ではないかと思います。

 ただし、求職者支援制度、この利用が低調な理由は、年収要件などが厳しいだけとは限らないとも思います。雇用保険から漏れ落ちている人であっても、必ずしも転職を希望していないということもあるかと思います。

 その意味では、先般、特例措置として、対象者が拡大され、在職者が転職を希望しなくてもスキルアップのために求職者支援訓練を受講できる、利用できるようになったということは、研究者の立場からすると非常に注目に値することだと思っております。このような特例措置の効果を十分に検証した上で、利用状況によっては特例措置の恒久化も検討すべきだと考える次第です。

 この求職者支援制度ですが、基本的に雇用保険から漏れ落ちた人たちのための制度ということですから、財源における相応の部分は雇用保険料以外から充当すべきというのはストレートな発想だと思われます。求職者支援制度の国庫負担割合、この本則は二分の一ですが、現行では五%にすぎません。今回の法案には、来年度以降当分の間、本則の負担割合の二分の一の五五%水準、すなわち二七・五%ですけれども、これに引き上げる改正内容が盛り込まれております。本則に完全に復帰というには至りませんけれども、本来あるべき財源構成に近くなったという意味では、ある程度は評価できるのではないかと思います。

 求職者支援制度の対象となる人々、この人たちには様々な人たちが含まれていると思いますが、その中には、通常の就労が困難で、何らかの通常の就労に困難を抱えているがゆえに雇用保険制度から漏れ落ちている人たち、そういう人たちも含まれるというふうに考えております。そのことを常に念頭に置いた上で、今後の求職者支援制度の在り方を長い目で考えていく必要があると思っております。

 次に、非正規雇用のセーフティーネットと同様に、このコロナ禍でもう一つ注目を集めるようになっている課題の一つとして、フリーランスのセーフティーネットの問題があるかと思います。その必要性については、私自身非常に強く認識しております。ただ、これを単純に雇用保険の適用を拡大するような形で救済するということは、実は難しいんじゃないかというふうにも感じております。フリーランスの方々については、失業という保険事故をどのように認定するか、この点が難しくて、また、仮にフリーランスに雇用保険を適用したとしても、実際に受給要件を満たすケースというのが非常に僅かになってしまうということがあり得るというふうに思うからです。

 むしろ、現行でもフリーランスの人たちは求職者支援制度を利用することが可能ですので、この点をしっかりと周知する、あるいは、更にその求職者支援制度をフリーランスの人たちが利用しやすくするような措置といったものが必要なのではないかと思います。

 今回の法案においては、雇用保険加入者が離職後に起業したがその後廃業した場合に、起業から廃業の期間は受給期間の進行を最大三年間停止することとして、基本手当を受給しやすくする仕組みが新設されました。個人事業主あるいはフリーランスの人々全般に対する救済策とは言えませんけれども、現行制度における適用の考え方を踏まえた上で、フリーランスの方々における失業の一定のケースに対するセーフティーネットになり得るものではないかというふうに思っております。

 多様な就業実態を持つ事業主、フリーランスのセーフティーネットの在り方について、雇用保険制度だけでなく、幅広い選択肢の可能性を視野に入れた上で、真に有効なセーフティーネットを検討していく必要があると考えます。

 次に、育児期間中の所得保障について意見を述べたいと思います。

 我が国の育児給付は、労使折半の雇用保険料と国庫負担を財源として雇用保険制度の中で行われております。OECD加盟国の中でこのタイプの国は、日本、カナダ、韓国の三か国のみとされております。

 拠出原則に基づく社会保険の仕組みで行われる現行の育児休業給付には、幾つかの課題があると考えられます。一つには、雇用保険制度の適用対象となる雇用者のみに受給資格が限定されることから、自営業者や無業者は対象となっていないといったこと。また、失業給付と同じように一定の被保険者期間を受給要件とすることから、非正規雇用などの短期間の就労者には受給しにくい可能性があるといったこと。こういったことが課題として考えられると思います。

 以上の課題については、雇用保険制度からの給付であるということがやはりその制約要因になっている部分もあると思われます。雇用保険制度による育休期間中の所得保障というのは、安定的な財源を確保しつつ、権利性のある給付を実現してきたという点でこれまである程度役割を果たしてきた、そのことは必ず評価しなければいけないことだと思っておりますが、今後、更に普遍的な制度としていくためには、今回の改正法案に規定されているとおり、育児休業給付とその財源の在り方について広く検討していくことが必要だと考えます。

 最後に、財政運営の在り方について一点触れさせていただきたいと思います。

 失業等給付の国庫負担割合については、これまで、労働政策審議会や国会における議論において、本則の四分の一に復帰すべきという意見が強かったと認識しております。また、今回の雇用保険部会においても、本則の四分の一に戻すべきとの主張は、労使双方より当初からなされておりました。しかしながら、今回の改正法案では、雇用情勢や雇用保険財政状況に応じた負担率の設定や新たな国庫繰入制度の導入という内容になっております。すなわち、労使双方の主張をそのまま反映した形とはなっていないというふうに認識しておりますが、この点については、雇用保険部会の位置づけ、あるいは政策決定プロセスなどの観点から、やはり残念に思う部分がございます。

 しかし、今回の改正法案を、コロナのような想定できなかったリスク、つまり社会保険の想定を超えるようなリスクが実際に起こり、雇用保険財政が逼迫した場合に、機動的かつシステマチックに国庫を繰り入れる仕組みが約束されたと見るならば、社会保険制度としての性質を保ちつつ、国も一定程度の責任を果たし得る仕組みなのではないかと評価できる部分もあるのではないかと思います。

 ただし、雇用保険部会でも繰り返し議論されましたが、この新しい国庫繰入規定の実効性が確保されるものかどうかという点こそが懸念であり、この仕組みのまさに肝の部分になると考えます。ですので、政府にはその誠実な履行を求めたいですし、審議会の場でもその実際の運用について不断にモニターし、実効性に疑問があるならば、その是正を求めていくことが必要と思っています。国庫繰入れの際の具体的な要件の妥当性も含め、今後も開かれた議論が行われていくべきと考えております。

 私からの意見は以上となります。どうもありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、秋山参考人にお願いいたします。

秋山参考人 全国労働組合総連合、略称全労連で、事務局次長の秋山と申します。

 本日は、発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 労働者の立場から雇用保険法と職業安定法についての意見を述べさせていただきますが、少しだけ私自身の話をさせてください。

 私は、元労働事務官で、公共職業安定所などの現場で職業紹介や雇用保険の仕事をしていました。また、労働行政で働いた経験とともに、労働組合の役員としても活動してまいりました。今の私は、このような経験があってこそだと思っております。応援してくれる労働組合の仲間や、労働行政で苦楽を共にしてきた多くの方に、この場をかりて感謝を申し上げたいと思います。

 さて、初めに雇用保険の問題について申し上げたいと思います。

 まずは、国庫負担を原則に戻し、失業給付基本手当日額の支給額を引き上げ、離職理由による給付制限や給付日数の格差の見直しについてです。

 雇用安定事業については、コロナ禍において雇用調整助成金による失業の予防が高く、まだまだ先行きが厳しいことから、特例措置についての更なる延長を求めます。

 それでは、それぞれの点について理由などを申し上げます。

 一つ目は、国庫負担を原則に戻すことについてです。

 雇用保険制度の本来的な役割を考えるなら、労使負担だけでなく国庫負担を行うことが基本です。その負担割合を定める今回の改正法案については、半永久的に原則を適用させないことになる、国庫負担の原則を引き下げたままとなるような改正であるということで、反対であります。

 ただし、今回のような感染症の感染拡大などがあれば、速やかに対処できるように一般財源を機動的に投入できるようにすることは必要です。しかし、今回の法改正では、これまで以上に保険制度としての機能を弱めることにつながる。繰り返しになりますが、国庫負担の原則を引き下げたままとするような法改正は反対です。

 お配りしております資料にも記載しておりますので、お読みいただけると幸いです。

 次に、失業給付の基本手当の問題です。

 現行の給付水準が低過ぎると考えます。とりわけ上限額が低過ぎます。

 雇用調整助成金では、特例措置として一万五千円まで限度額を引き上げていました。雇用保険失業給付の基本手当を支給している間も、社会保険料や地方税などの負担は避けられません。扶養家族、子供や介護の必要な家族を抱えていたなら大きな負担が強いられます。したがって、上限額を一万二千円以上に引き上げていただきたいというふうに思います。

 なお、資料として上限額がどれぐらい下げられているのかを示しておりますので、こちらの方についても是非御覧いただければと思います。

 雇用保険に関して次に申し上げたいことは、カバー率の低さです。

 資料の二ページに都留文科大名誉教授の後藤道夫教授に作成していただいたグラフがありますが、カバー率は二割程度であります。労働保険が全面適用となってからかなりの年月が経過しましたが、カバー率が低くなってきています。

 その要因は幾つか考えられますが、実態は労働者であるにもかかわらずフリーランスの扱いにされている人が多いことや、シフト制勤務で働く労働者が被保険者にされていないケースが多いことなどがあります。

 国際的な比較についても出してみました。資料二ページ図表三を御覧ください。

 この点で、行政には積極的に実態を踏まえた適用拡大を図っていただきたいと思います。契約上だけで労働者ではない個人事業主といった判断を行いがちです。そうではなく、必ず実態を見て判断するようにしていただくとともに、労働者のカバー率を引き上げていただきたいと思います。

 雇用保険法に関して、最後に、自己都合退職による給付制限はなくしていただきたいと思います。また、離職理由によって給付日数に格差を設けることも業務を煩雑化させています。したがって、これらの見直しを求めます。見直しで業務簡素化が実現します。

 離職理由による給付日数の格差や給付制限は、窓口でも一番悩ましい問題です。早期に失業給付を行わなければならないため素早い決着が求められますが、事業所の確認などに時間がかかります。一方で、失業者に対する給付ですから遅れることは許されません。職員が遅くまで残業することにもつながっています。

 このような働き方をなくしていくためにも、また、資料四ページのアンケートにもあるとおり、離職理由による給付の格差について見直しをしていただきたいと思います。

 二つ目の課題として、職業安定法の改正法案について申し上げます。

 歴史的に見ると、日本では、職業紹介業務が中間搾取や強制労働と密接につながっていました。そのため、国が職業紹介を独占するとして法が作られたと思いますが、有料職業紹介について一部だけ認められてきました。その後、労働者派遣事業などが発達するとともに、インターネットの発展によって求人募集の形態が大きく変化をしてきました。

 こうした変化が、仕事を探す求職者と人を探す求人者双方にとってメリットだけがあるなら何も問題はありません。しかし現実は、便利さに潜む危険性、わながあります。こうしたことは事前に予測することが難しいことが多く、新しい技術の発展による落とし穴にはなかなか気がつきません。

 職業安定所では、求人内容が労働基準法などに違反していないかをチェックし、指導助言を行います。求人、求職の申込みは全て受け付けることが原則ですが、悪質な労働法令違反を行った企業の求人は受付を拒否することができます。

 仕事を探している求職者の立場は弱いものです。求人内容が信頼できるかどうかは、応募の判断に大きく影響します。ブラック企業に応募する人はいないと思います。

 しかし、応募してもなかなか採用されず、長期にわたり失業すると、生活が困難となっていきます。また、資格を取得することによって就職の可能性を広げようと自ら努力する人も多くいます。

 こうした求職者の弱みにつけ込み、手軽さを売りにして、貧困ビジネスともいうべき悪質な業者がはびこっています。これに対する規制を強化することが必要です。

 就職するために必要だとして、高額な講座の受講をさせる事例や、就職した事業所で強制労働まがいの仕事をさせられている事例もあります。資料四ページから五ページにあるとおり、アンケートに切実な声も寄せられています。

 求職者が受ける被害と比較すると、改正法の罰則規定はまだまだ弱いと思います。また、なかなか告発に至る事例がなく、職業安定行政の職員に司法警察職員としての権限を与えるなど、行政の体制強化を図ることも必要だと思います。

 一人一人の求職者が、応募しようとする企業に関する信頼性の高い情報を得ることは困難です。その意味でも、国が運営する職業安定所は高い信頼性を持っていると思います。多様な求人募集の情報に接することは求職者にとってもメリットが大きいと思いますが、信頼性を高めなければなりません。

 中小零細企業では、高額な仲介手数料を支払っても労働者が定着せず、繰り返し手数料を支払って労働者の確保をしなければならないケースもあります。

 全てを民間に任せるのではなく、国の機関としての公共職業安定所、ハローワークがその中心にしっかりと座り、求職者と求人者を支えていくことが必要です。

 最後に、委員の皆様方にお願いであります。

 冒頭に申し上げましたが、私は職業安定行政に携わってきた経験を持っています。現場を離れたとはいえ、行政には愛着を持っております。

 そこで、行政現場に関するお願いであります。それは、非常勤として働いている職場の仲間の雇用安定です。雇用不安からメンタル疾患となった者もいます。正規労働者として安定した働き方ができるよう支援している行政が、不安定な非常勤職員を中心に運営していることは、倒錯していると言うほかありません。

 非常勤職員の雇用安定とともに行政体制を拡充することは、中小企業経営者の皆さんに対するきめ細かなサービス提供が可能となり、仕事を探している人々に寄り添った対応が今以上に可能となります。今のままでは、中小零細企業の経費負担も大きくなる一方であり、安定した雇用にもつながらないと思います。

 行政サービスを拡充することは利用者である国民の皆さんに大きなメリットがあることを御理解いただき、委員の皆様におかれましては、労働行政で働く非常勤職員の雇用安定と行政体制の拡充に向け、お力添えをいただきますようお願いを申し上げ、私の公述を終わらせていただきます。

 御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上田英俊君。

上田委員 おはようございます。自由民主党、上田英俊でございます。

 本日は、厚生労働委員会で参考人質疑に立たせていただきます、質問の機会をいただきました。本当に感謝申し上げたいというふうに思っております。

 また、今ほど参考人の先生方から雇用保険法等改正に対する参考人としての御意見を拝聴させていただきました。大変それぞれ貴重な御意見ということで、改めて感謝申し上げたいというふうに思います。

 今日は、時間が限られておりますので、平田参考人に限って質問させていただきたいというふうに思います。

 さて、労働条件の最低基準を示す法律が労働基準法であります。労働基準法の四十一条には労働時間の適用除外が述べられております。四十一条は三項から構成されておりまして、第二項には、管理監督者、機密の事務を取り扱う者についてはこれは適用除外というふうに示されております。

 かつて、残念なことでありますけれども、名ばかり管理職という手法が横行いたしました。人手不足であるとか、経費削減を狙っている使用者の方々が、この労働基準法四十一条をあえて都合よく解釈して、実質的な労働者を、権限や部下がいない労働者であるにもかかわらず管理職に仕立て上げて搾取する手法が名ばかり管理職であります。

 私は、昨年九月まで県議会議員を務めておりました。六期二十二年間務めさせていただいております。その中で、雇用であるとか年金であるとか医療等の社会保障政策といったものに大変強い問題意識を持ちました。数多くの方々から、自分の働き方はどうなっていくんだろうか、自分の年金は大丈夫なんだろうかという大変強い相談がたくさんありました。

 詳しいだけではなくて、やはりしっかりとした背骨を持たなければならないという思いで、一念発起して、在職中に社会保険労務士の資格を取得いたしました。とはいっても、三回滑って四回目でようやく合格したということでありますので、余り自慢できるものではないと思っておりますけれども、また、実務も経験しておるわけではありませんので、自虐的な意味を込めて、名ばかり社労士というふうに言っております。

 さて、いろいろな方々の話を聞いている中で、よく言われることが、皆さん方、どんな社会を望みますかといった場合に必ず出てくるキーワードというのが、安全、安心な社会を望みますというふうに言われます。

 私は、安全、安心のスタートラインというのは、安定した雇用から始まるというふうに思います。安定した雇用から安定した収入を得ることができる。安定した収入があるからこそ、結婚であるとか、子育てであるとか、家族を養うことができるというふうに思います。家族、家庭が円満であるから、地域社会の様々な行事や活動に飛び込んでいくことができる、積極的に関わっていくことができるということであります。地域社会が目に見えない形のセーフティーネットといった役割を果たしているというふうにも認識をするものであります。

 安定した雇用というのは一体どういうものかと私なりに整理をしてみますと、先般、予算委員会の分科会で厚生労働省の方から話を聞きますと、労働法的な定義はなかなか難しいということでありましたけれども、私は、安定した雇用というのは、期間の定めのない、フルタイムである、直接雇用である、そして労働・社会保険が完備したものであるというふうに私自身は位置づけております。

 さて、昭和の終わりから今日に至るまで、失われた二十年、三十年といった言葉がはびこって、バブル経済の崩壊から今日に至るまで、非常に残念なことに、非正規雇用と言われている方々がどんどんどんどん増加している、雇用が流動化しているというふうにも言われています。

 昭和六十年に労働者派遣法が制定されて、派遣という働き方が合法化されたわけであります。順次対象業務が拡大されたり、ポジティブリストからネガティブリストに移行するとか、あるいは、製造業の現場にまでも労働者派遣といったものが解禁されたわけであります。

 私は派遣という働き方を否定するものではもちろんありません。派遣という働き方を積極的に選択される方がおられるというふうにも認識をしております。

 しかしながら、本人が望まない形で非正規雇用という場にとどまっている、とどまらざるを得ないというのであるならば、やはりこれは政治や行政の出番なんだろうというふうに思います。政治が、行政が完全雇用の達成に向けて努力することが求められているというふうに考えます。

 その証左として、証拠として、労働保険において、これは雇用保険と労働者災害補償保険法、二つがありますけれども、両方とも国が保険者であります。一方で、労災保険においては、事業に関する費用というものは、これは国庫補助という形になっています。その一方で、雇用保険においては、失業等給付等に要する費用は、これは国庫負担という形であります。国の責任といったものが強く求められている、訴えられているんだろうというふうに思います。

 そこで、平田参考人にお尋ねしたいと思います。

 先ほども話がございましたけれども、雇用保険財政が危機に瀕したきっかけというのは、コロナ禍に対応した雇用調整助成金の拡充であったというふうに言っておられました。結果として、雇用調整助成金は功を奏して、日本の失業率というものをどんどんどんどん低く止めることができた、また企業の倒産も防いだというふうに考えます。

 しかしながら、参考人の発言にもありましたけれども、コロナ禍において、雇用調整助成金の本来の役割である急激な景気変動に対する一時的な雇用の維持、これは雇用調整助成金の本来の役割でありますけれども、今回のコロナ禍というのはその範疇を大きく超えている。従来の運用の仕方をしているならば失業給付といった形に移行していたであろう部分までもカバーをして、結果として国庫の負担を実質的に軽減されたという見方もできるんだろうというふうに思います。

 そこで、平田参考人が言っておられましたけれども、今後、雇調金として支出されたからという理由で全額事業主のみの負担とするということは適切ではないというふうに述べておられましたけれども、具体的にどのような処方箋があるのかというものを、見解をお伺いしたいというふうに思います。

平田参考人 ありがとうございました。

 雇調金の累積債務が非常に大きくなっているという中で、今後それをどう分担していくかという御質問だったかと思いますけれども、端的にお答えしますと、残念ながら、先ほど申し上げましたとおり、今の規定のままですと、今後、全額事業主が負担する雇用保険料率の財源でもって借金を返済していかなければならないという状況でございまして、予算的には、毎年約六千億円ぐらいの予算で雇調金を含む雇用保険二事業を運営しておりますけれども、それが約三兆円ぐらいの借金を背負ってしまっているという状況にあると思います。

 そこで、事業主負担、事業主だけではなくて労働者も受益をしたということもありますし、それから、先生御指摘いただきましたけれども、本来失業給付で負担するべき部分も肩代わりしているということであれば、今後の検討というふうなことになろうかと思いますけれども、事業主だけではなくて受益者全体、社会全体で分かち合うことを検討していくというふうなことが必要だと思っております。

上田委員 ありがとうございました。

 今回、雇用保険法の改正案で、雇用保険料率が本年九月までは千分の二に据置きという形で、年度途中の十月に千分の六に引き上げられるという内容になっております。

 平田参考人は、雇用情勢のみならず財政状況もきちっと慎重に見極めた上で適切な対応を求めるというふうに言っておられましたけれども、参考人御自身として、具体的にこうすればいいのではないかという所見があれば伺いたいと思います。

平田参考人 ありがとうございます。

 激変緩和措置を講じていただいているというのが来年度でございまして、それで、再来年度以降ということですけれども、まず、感染状況がどうなるかというのが見極められないという中で、そのときの雇用情勢がどうあるかということと、それから、雇用保険でございますけれども、労使と国で負担ということで、それぞれが相応の負担をしなければならないというふうに考えておりますので、そのときの財政状況も見据えながら、二つ、両にらみで検討していかなければならないのではないかというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 最後に一点、平田参考人にお尋ねしたいというふうに思います。全般的な話になりますけれども、御容赦いただければというふうに思います。

 やはり、働くということは、人生百年時代においても大変大切な大きな柱だろうというふうに思っています。今、労働状況、労働環境を見れば、働き方改革をどうするのかとか、あるいは先ほども述べさせていただきましたけれども、結果として非正規雇用という形がどんどんどんどん増えてきている、雇用が流動化してきているというふうに思いますけれども、そうした中において、労働行政において求められている課題はたくさんあるというふうに認識しておりますけれども、今後の働き方のモデルといったものを思い描いておられるならば、御所見をお伺いしたいというふうに思います。

平田参考人 ありがとうございます。

 モデルというところまで申し上げられる自信はないんですけれども、現状も含めて申し上げますと、働き方をめぐってということでございますけれども、コロナ禍を契機に、テレワークを始めとして、働き手が時間と場所を柔軟に選ぶことができる新しい働き方が急速に進展したというふうに認識しておりまして、その環境整備に企業も努めてきたところというふうに考えております。

 ポストコロナということを見据えては、こうして、多様で柔軟な働き方を定着させることが大事であるというふうに考えておりまして、それを更に生産性の向上、つまり成長につなげていくことがとても重要だというふうに考えております。

 生産性向上によって得られた成果につきましては、企業にとって大切なステークホルダーである働き手に賃金引上げ等ということも含めて適切に分配して、成長と分配の好循環に寄与していくということが大事であるというふうに思っております。

上田委員 ありがとうございました。終わります。

橋本委員長 次に、早稲田ゆき君。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきと申します。よろしくお願いいたします。

 本日は、雇用保険法改正の審査に当たりまして、参考人の皆様に御出席を賜り、貴重な御意見を賜っておりますことを、まずもって感謝申し上げます。

 私から、まず、働く人の立場からの御意見として、連合の総合政策推進局長であられます冨高参考人に伺わせていただきたいと思います。

 今回政府が提出をいたしました雇用保険法改正、これは、コロナ禍の厳しい雇用情勢を踏まえまして、雇い止めの離職者や雇用情勢の悪い地域における求職者の基本手当の給付日数の拡充措置を延長するなど様々な暫定措置の継続など、こうした点については評価がおおむねできると思っております。先ほど参考人からも御説明がございました。

 その上ででございますが、このコロナ禍において、働く現場からどのような声が上がっていますでしょうか。お聞かせください。

冨高参考人 まず、雇用保険制度全般も含めてどういった声が上がっているかということでございますけれども、先ほどございましたように、雇用調整助成金や産業雇用安定助成金、こういったことで雇用が守られているということについて評価の声があるかというふうに思っております。また、今回の特例措置等の延長等も含め、雇用保険の全体に対する役割に対する期待というのは非常に大きいと思っています。

 また、現場の声ということでございますけれども、先ほどもございましたように、雇用への影響も業種によってかなりばらつきがございますけれども、特に、交通、運輸、観光、サービス、飲食の業界を中心に非常に厳しい状況になっております。そういった業界からは、コロナ禍の長期化で自助努力が限界に達している、また、雇用調整助成金の特例措置によって雇用が辛うじて守られているんだ、そういった厳しい状況に関する声、それから、雇調金の特例措置については、国費の投入による安定財源の確保などを求める声というのをいただいているところでございます。

早稲田委員 大変厳しい職種におきましては、雇用調整助成金で辛うじて守られているという評価もあるということでございます。ありがとうございます。

 しかし、この改正案につきましては、一方で、大変、最大の問題点というのは、失業等給付に係ります国庫負担割合について、これまでの本則の四分の一から実質四十分の一に引き下げるというものであります。これは、雇用情勢、雇用保険の財政状況が悪化している場合にのみ四分の一とするもの。そして、コロナ禍で厳しい経済情勢が続いている中で、労使折半の雇用保険料率を〇・二%から〇・六%にこの十月に引き上げるということを決めた一方でこうした国庫負担割合の実質引下げ、これは改悪とも言えるもので、雇用政策の担い手としての政府の責任を果たしていないのではないかと言わざるを得ません。

 そして、この国庫負担割合を実質下げる代わりに雇用情勢、雇用保険財政の状況に応じて国庫から機動的に繰り入れる、そういう新しい制度もつくる仕組みというふうにはしておりますけれども、その要件は、法律それから政令には一切明確にされておりません。

 そこで、二問目、伺います。

 国庫負担割合の見直し及び新たな国庫繰入制度についての機動性、実効性については、冨高参考人が御出席の労働政策審議会においてどのような議論が行われてきたのでしょうか。教えてください。

冨高参考人 労働政策審議会雇用保険部会におきましては、労使委員から、国庫負担の意義や過去の附帯決議を踏まえれば、国の財政状況に左右されることなく、現行制度の本来の負担割合である四分の一に戻すべきというような意見が、国庫負担割合の見直しについては出ていたところでございます。

 また、労働者側というところで申し上げると、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合以外の国庫負担を四十分の一とすることについて、合理的かつ十分な説明がなされていないのではというような指摘もしているところでございます。

 こういった議論があったことにつきましては、雇用保険部会の報告にも意見が付されているところでございます。

 また、新たな国庫繰入制度についてでございますけれども、この機動性、実効性のところにつきましても様々意見が出ました。こちらにつきましては、一定要件の下で国庫から繰入れができる新たな国庫繰入制度が示されたわけでございますけれども、国庫繰入れの機動性、実効性の担保というところでは、その懸念について労使委員から意見が示されたところでございます。

 年度決算を待ってからの対応では機動性に欠けるのではないか、また、雇用情勢と雇用保険の財政状況の片方が悪化していない場合には、少額の繰入額にとどまって財政安定化が果たされないのではないか、そういったような主張があったように思っております。

 最終的には、雇用情勢と雇用保険の財政状況の両方が悪化している場合には、一年分の予算に相当する資金が確保されるよう国庫繰入れを行う、それ以外の場合には、保険財政が赤字となることがないよう国庫繰入れをすること、また、早期の財政安定化を要するときには、決算確定後などの時点を問わず、部会で議論し、必要な対応を取ることというところが雇用保険部会報告には記載をされております。

 ただ、運用につきましては、先ほども申し上げたように、法令、政令等には記載はされていないということでございます。

 以上でございます。

早稲田委員 ありがとうございます。

 国庫負担の本則を四分の一で維持すべきこと、それから機動的な国庫負担、繰入れの基準を明確にすべきということは、労使で一致した意見であったということをしっかりと確認をさせていただきました。つまり、四十分の一に引き下げることについて、それからまた新たな国庫繰入制度の機動性、実効性共に、労使で非常に懸念が示されたということだろうと思います。

 その上で、私たち立憲民主党は、雇用のセーフティーネットである雇用保険が将来にわたり安定的に運用されるために、国庫負担割合の四分の一の本則を維持するとともに、機動的な国庫繰入れにつきましては、雇用情勢や雇用保険の財政状況に応じた基準を明確に政令で書き込むこと、定めること、そしてさらに、労働政策審議会の御意見を聞くこと、これを入れ、さらに、育児休業給付については、雇用保険外のフリーランスなどの働き方も広がっておりますので、そうした方々にも対応できるように雇用保険ではなく国庫負担の新しい制度をつくるというようなことを盛り込みました修正案を三月十一日に、国民民主党、そして有志の会とともに提出を共同でいたしました。

 三問目。このことにつきまして、国民民主党、そして有志の会、立憲民主党の提出した修正案に対しまして、連合の御見解、伺いたいと思います。

冨高参考人 今回、立憲民主党、国民民主党、有志の会で共同提出された修正案の内容につきましては、国庫負担割合を本則に戻すということ、それから機動的な国庫繰入れの確保といった内容も含めて、連合の考え方と共通するものというふうに考えているところでございます。

早稲田委員 立憲民主党、国民民主党、それから有志の会で共同提出をいたしましたこの修正案は、連合のお考えとも合致をする、共通をするというものであることを確認させていただきました。ありがとうございます。

 もう一つ、職業安定法関連でフリーランスに係る募集情報について伺います。

 募集情報等提供事業者の求人広告については、雇用契約ではない業務委託それから請負など、いわゆるフリーランスと言われる方々に関する情報も掲載をされておると思いますけれども、このフリーランスに対する対応について、連合としてどのようにお考えでしょうか。

冨高参考人 募集情報の的確性、正確性、最新性については、これは、雇用に係る情報のみならず、フリーランスに係る情報についても担保されるべきだというふうに考えております。非雇用だからといって募集情報が的確でなくてもいいということにはならないというふうに考えております。

 今回、職業安定法が対象としておりますのは労働者であるということでございますので、フリーランスが法の適用対象外ということは承知しておりますけれども、だからといって、募集情報の的確性を一体誰が担保するのか、事業者に一任することで本当にいいのかどうかというところについては課題が残るというふうに考えております。

 今、国の方ではフリーランス一一〇番などで相談を実施しておりますけれども、寄せられる相談内容や募集情報の実態調査、こういったものを行っていただき、その内容を踏まえて、保護の在り方については引き続き検討していただきたいというように考えているところでございます。

早稲田委員 私も、党のフリーランスに関するプロジェクトチームの方で、引き続き、このフリーランスの方への保護について、また御意見を賜りながら考えてまいりたいと思います。

 他の参考人の方々にも伺いたい、御指導賜りたかったところでございますが、時間となりましたので、これで質問を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。

橋本委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 よろしくお願いいたします。日本維新の会の一谷勇一郎です。

 本日は、大変貴重な御意見を皆様にいただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、八代先生に御質問をさせていただきたいと思っております。

 雇用調整助成金の金額の方が失業手当よりも高くなってしまって、なかなか人の流動性が保たれなくなってきているというところでありますが、我々維新は、やはり働く方の流動性を高めていき、そして、できるだけ利益が出るような新しい産業に人がシフトしていっていただく、そういったことを掲げております。

 しかし、その中で、やはり失業してしまって不安も募ると思うんですが、我々維新は、このことに対して、ベーシックインカムを広げてはどうかというふうなことを掲げております。

 八代先生が考えられるベーシックインカムについて、少しお考えをお聞かせいただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

八代参考人 ありがとうございました。

 ベーシックインカムについてお話しする前に、一言、先ほどの雇調金のことでありますが、これはもちろん流動性を高めるという面だけではなくて、今の雇調金制度は、やはり、正規社員と非正規社員に対して意図せざる不公平な仕組みになっているということが極めて重要であると思います。その意味で、できる限り失業給付を拡大することで、そちらの方にもフリーランス等を入れることによって対応する方が望ましいと思います。それが第一点です。

 ベーシックインカムというのは、論理的には非常にいい制度だと思いますが、なかなか実際には難しい面が非常にあるんですが、ただ、今回例えば、安倍内閣で十万円の一律給付というのをやったわけですね。これにはいろいろな批判もあるわけですが、私は、あれが一つのベーシックインカムの実験になったと思うんですね。

 つまり、最初から困った人だけに給付するというのが本来の案だったんですが、誰が困っているかということの情報が日本は残念ながら非常に乏しい。そのために、取りあえず、緊急性があるということで一律十万円、赤ちゃんも入れて配ったわけなんですが、私は、あのときに、一旦配った十万円を年末調整のときに、所得が減らなかった人からは返してもらうということをやれば、それがベーシックインカムそのものになったわけなんですよね。残念ながら、財務省の方が早々に、十万円の給付金は課税対象外にするということを言ってしまったわけで、あそこをもうちょっと慎重に考えるべきだったのではないだろうか。

 だから、今の日本でもできないことはないわけで、年末調整とかあるいはいろいろな形で、時間をかけて、後で、所得が減らなかった人からは返してもらうという仕組みは完備されているわけですから、少しずつそういうことを拡大することによって、今のかなり生活保護制度というのにはいろいろな問題点があるわけですから、やはり、フリードマンなんかが提唱した負の所得税、最近の言い方ですと給付つき税額控除という形で、所得のある人には税金を払ってもらう、ない人には所得税の仕組みとして負の所得税を支出するという形で、これはアメリカではかなり実現している制度なわけで、そういうやり方をやっていく、その中でベーシックインカムというのも一緒に考えていったらいいかと思います。

 以上でございます。

一谷委員 ありがとうございます。ベーシックインカムについての知見が深まりました。

 今、雇用調整助成金の中で、フリーランスの方にも広げるべきだというお話をいただいたんですけれども、なかなか、今、働く時間によって失業の手当とかもいろいろ決まってくると思うんですけれども、フリーランスに拡大するに当たっての何か問題点であるとか、こうした方がいいんじゃないかというところがあればお聞かせいただけたらと思います。どうぞ、八代先生、お願いします。

八代参考人 ありがとうございました。

 これはなかなか現実には難しいわけで、フリーランスの方とか自営業の方は、なかなか、元々の、平時の賃金というものをどう把握するかというのが難しいわけですので、普通のサラリーマンのようにはいかないわけですが、そこは、例えば一種の定額の給付、定額負担で定額給付を行うというような形もあるのかと思います。ただ、この分野は私の専門ではありませんので、なかなか難しいかと思います。

 ただ、大事なことは、今の雇用保険の中ではなかなかそういうフリーランスのような方は対応できない、だから一般財源にという考え方は、ちょっと疑問を持つわけで、じゃ、一般財源にしたら問題は解決するのか。基本的には同じ問題があるわけですので、私はやはり、こういうことは保険原則の中で、原則としてやる必要があるんじゃないかと思います。

 およそ、一般財源を使えば国の責任が明確になるという論理は、私は理解できません。

 というのは、一般財源というのは使途を定めずに国民から受け取った税金を使うわけであって、保険料というのは目的を定めて負担を国民から出していただく、負担の仕方が違うだけなのであって、どっちも国の責任に基づいてやっている仕組みなわけですよね。むしろ、一般財源に依存することによって、非常に使い方がある意味で雑になってしまう。そこがやはり問題であって、今回のような雇用調整助成金の使い方によって雇用保険財政が極めて悪化した、だから、それはやはり保険料を上げることによって次からはもっと慎重に使う、そうしないと保険料がどんどん上がってしまうというのが保険の重要な役割なわけなんですよね。

 例えば、自動車保険で、乱暴な運転をしたら次から保険料は上がる、だから乱暴運転はしないという抑制効果が保険には働くわけなので、苦しいから一般財源にといったらそれが結局働かなくなってしまうわけなので、そういう点が大事ではないかと思っております。

 ありがとうございました。

一谷委員 ありがとうございます。

 いろいろと質問を続けさせていただきたいんですが、先ほどの保険原則の中で、これが持続するには不可欠だということで、その中に収支相等の原則というのがあると思います。これは、やはり、みんなで負担していくとなればかなり税をいただかなければならないと思うんですが、そこで雑に使わなくなるというのは確かだと思います。この保険原則を定着させていくためにはどのようなことをしていけばいいのかというところを少し御教示いただけたらと思うんですが、広く国民の方に理解していただくためには、政治として、行政としてどのようなことをしていけばいいのかというところを少しアドバイスいただけたらと思います。よろしくお願いします、八代先生。

八代参考人 ありがとうございました。

 その点は非常に大事な点であります。

 それは、一般財源と言われている国の一般会計は、今、物すごく大きな赤字なわけですね。それで、借金もどんどんたまっている。これは結局、国民が、使途が明確でない支出のために税金を払うことに対して非常に拒否反応があるわけですね。特に消費税。だけれども、国民の多くは、そういう特定の目的のため、年金のため、医療のため、雇用安定のため、そういう目的が明確であれば、保険料に対しては負担しても仕方がない、負担すべきであるという考え方を持っておられるわけです。

 だから、そういう状況であればこそ、できる限り保険の方で負担と給付の均衡を図っていくというのが大事なわけで、一般会計にするということであれば、じゃ、増税に賛成するのかということもセットで考えないと、余り責任のある議論にはならないんじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

一谷委員 ありがとうございます。やはり国民の皆様から政治が信頼されるというところがまず第一だというふうに思います。

 少し視点を変えた質問をさせていただきたいと思います。

 全国知事会から、ハローワークについて、地方移転を強く求めるという意見が出ております。二重行政になっているのではないかというふうな考えがあり、我々維新はここを徹底的になくしていきたいというふうに考えておるんですが、このハローワークの二重行政について御意見を少しいただけたらと思います。八代先生、どうぞよろしくお願いをいたします。

八代参考人 済みません、私はハローワークについてはそれほど詳しくはないわけですが、議員のおっしゃる点というのは、地方としては、やはり、例えば生活保護の問題とか障害者の問題とか、そういうものを就労と組み合わせてやりたいというお考えがあるんじゃないかと思いますね。

 ですから、そういう意味で、ハローワークは職業紹介だけというんじゃなくて、やはり、職業訓練と職業紹介、それからそういう生活保護の方なんかの就労支援、そういうことを地方で一体的にやりたいというお考えはそのとおりだと思います。

 これは、例えば職業紹介をする場合でも、例えば特に中高年なんかの場合は、ピンポイントで何か職業訓練をすることによって、この人をもっと高く売れると言ったら失礼なんですが、いい仕事に紹介できる。だけれども、それはハローワークの仕事ではないというので、非常に難しい。それから、職業訓練をやっているときにその人の能力というか特性がよく分かるので、そうすると、それに見合った、いい就職先を紹介することもできる。

 だから、ハローワークは紹介だけをしているんですが、本来は、職業訓練と紹介、それから福祉の分野も一体的にやるような組織に変える方が効率的である、それは国のままでは無理なので、自治体にもう少し権限を移譲して、総合的にやるというお考えには私は賛成であります。

 以上でございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 今、職業訓練、公共訓練のお話が出ましたので、最後、一問だけさせてください。

 今回のこの改定の中で、協議会を都道府県が主体になってやるというふうに書かれておりますが、なかなか、私、今の現状では、この公共訓練、成果が出ているのかなというところにすごい疑問があります。今後、都道府県にこの協議会が移った場合、成果を出していくためにはここをしっかり、やはり重点的にやらなければならないというポイントがあれば、御教示いただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。最後の質問になります、八代先生。

八代参考人 ありがとうございました。

 やはり職業訓練というのは画一的にやっては駄目で、これからはやはりICTの技能であるとか、非常に、個人の能力に応じて多様な形でやらなければいけない。そのときには、やはり民間の訓練というものをうまく活用する、そういう方向で持っていく必要があるんじゃないかと思います。ですから、これは官と民の役割分担の問題ですが、やはり、官は全体をマネージする、実際に行うのは民間だというような形での役割分担をやっていくということが職業訓練においても必要ではないかと思います。

 ありがとうございました。

一谷委員 ありがとうございました。

 今、八代先生からいただいたいろいろな御意見、アドバイスを基にして、我々維新も、今後とも皆さんとともに頑張っていきたいと思います。

 これで私の質問を終わらせていただきます。どうも皆さん、誠にありがとうございました。

橋本委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 厚生労働委員会の委員として初めての登壇になります。よろしくお願いいたします。

 時間がありませんので、早速質問に入らせていただきます。

 まず一点目に、フリーランスの雇用環境の改善等について御質問いたします。

 この問題につきましては、先日の本委員会の法案審議におきまして、我が党の吉田久美子委員も質問いたしました。最近の就業傾向として非正規やフリーランス化が進み、企業が業務委託契約をフリーランスの方と結ぶビジネスモデルが広がり、従来であれば企業内で行っていた業務をアウトソーシングし、雇用保険料も含め企業側の負担を節約する手法が広がり、本来労働者として取り扱われるべき働き方をしていながら自営業者として取り扱われ、労働法の適用を受けられない偽装自営業者が増え、労働者とも自営業者とも言えない中間的な存在の人たちを一くくりに自営業者としてみなされ、健康保険、厚生年金保険の対象外にあるのは、やはり健全な労働環境とは言い難く、格差がますます広がっていくのではないかという点について、先日、吉田委員の方から指摘させていただきました。

 この点につきましては、新しい資本主義実現会議緊急提言においても、非正規労働者等への分配強化として、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するとし、フリーランス保護のための新法の早期国会への提出や、フリーランスが労災保険に加入できるよう、労災保険の特別加入の対象拡大を図るとも言われておりますし、先日の吉田委員への答弁として、古賀副大臣より、大変大事な指摘であり、今後は、多様な働き方に対応したセーフティーネットが確保される勤労者皆保険の実現に向けて取組を進めていく中で、こうした課題を整理していきたい、フリーランスとして業務を行っていても、個々の働き方の実態に基づいて実質的に労働者と認められる場合には、労働関係法令を適用し、適切な保護を図ってまいりたいという大変前向きな御答弁をいただきまして、うれしく思ったところでございます。

 そこで、私、この問題への取組に向けまして、まずもって重要だと思うのは、一口にフリーランスといいましても、受注を受けてから、発注から納品まで全く自由に任される形態のフリーランス契約であったり、若しくは、先ほど言いましたように、本来ならば、実質は社員とほとんど変わらないのにフリーランスと契約されて、実際の社員と扱われない、そして、その中間の人も含めて、フリーランスには様々な勤務形態、また勤務内容があり、実に千差万別であります。

 とするならば、これだけ多様なものを十把一からげにして対策を考えること自体が難しいのではないかと感じまして、先日、この問題の事前説明を省庁の方に受けたときに、こういったフリーランスの方のジャンル分けとかグループ分けみたいな定義なんかというのはあるのでしょうかというふうにお聞きしたら、今のところそういった明確な分類はないというお答えでした。

 そこで、本日、参考人の先生方にお聞きしてみたいのは、今増えてきていると言われているこのフリーランスの雇用、労働環境の改善充実、この点につきまして、私が先ほど言いましたように、一くくりにフリーランスとしてではなく、ある程度、雇用形態、契約形態等でフリーランスを分類して今後の対策を考えていくことがフリーランスの方の労働環境の改善についてのスタートの時点では非常に重要だと思うのですが、そういった点も含めまして、フリーランスの方の雇用保険等の労働環境の改善について平田参考人と酒井参考人の方にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

平田参考人 ありがとうございました。

 フリーランスに関する御指摘ということで、多種多様な働き方が増えてきて、フリーランスも含めていろいろな働き方が増えているという認識はそのとおりというふうに思っております。

 ただ、恐らくセーフティーネットが手薄なのではないかという御意見だろうかと思いますけれども、一般論として、フリーランスなどをどうカテゴライズするかという御指摘もあったかと思いますけれども、給付の仕組みですとか、その水準をどうするのか、あるいは費用負担の在り方等、多くの課題があるというふうに思っておりますので、そうした課題をまずは整理していくことが大事なのではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

酒井参考人 今の山崎先生の問題意識、非常に共有するところです。

 フリーランスの雇用環境あるいはフリーランスのセーフティーネット、非常に重要なものだと認識しており、私自身もいろいろなところで、フリーランスのセーフティーネットをどういうふうに考えるんだというふうに聞かれるんですけれども、おっしゃるとおり、フリーランスといっても本当に様々な形態があるというのは全くそのとおりだと思います。これらを十把一からげにして議論するというのは、なかなか生産的な議論ができるとは思いません。ただ、どういうふうに、では分類すればいいのかということに関しては、私はこれまでそういった研究、余り知悉しておりませんし、私自身もこういった分類の仕方があり得るということをこの場で提示することはできないわけです。

 ただ、繰り返しになるかもしれませんけれども、やはりフリーランス自体を何かなくしてしまうということはないと思うわけなんですね。企業の企業行動というものを考えれば、フリーランスが一定の役割をしているという部分もあるかと思います。その中でどのように、この人たちのセーフティーネットを提供するかということを、今後、まさに多様な選択肢を含めて議論していかなければいけないのではないかと思います。雇用保険の適用拡大だけが選択肢ではないというふうに私は思っております。

 以上です。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 次に、キャリアコンサルティングについてお聞きしたいと思います。

 私、大変これは重要な取組だと思っていまして、特に二点、人生百年時代と言われる中で、仕事の中でしっかり自分のキャリアが積み上がっていく能力を開発できるということは、やはり人生の充実と直結していくという点において、非常に重要だと思います。またもう一点は、今、日本全国いろんな業種で人材不足が進んできております。これをしっかりと、今まで例えば定年と言われた六十歳以上の方なんかにもしっかりとしたキャリアコンサルティングがされていくことで労働力不足の解消であったりとか、また、それぞれの特性を生かした、特徴を生かした、きちっとした、そういったキャリアコンサルティングがなされていくことで生産性の向上にも資するんじゃないかと思います。

 そして、その中で特に重要だと思うのは、なかなか、大企業の場合はこういった機能が果たせるのではないかと思うんですけれども、やはり中小企業においてしっかりとキャリアコンサルティングが進んでいくことが非常に重要であるというふうに思います。このことにつきまして、冨高参考人、また八代参考人の方に御助言等をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

冨高参考人 ありがとうございます。

 キャリアコンサルティングにつきましては、労働者の職業の選択、職業生活設計及び職業能力の開発及び向上に関する相談に応じて助言指導を行うということでございますので、そういった意味で申し上げると、キャリアコンサルタントと申しますのは、企業などにおける労働者のキャリア形成支援などの担い手だというふうに考えておりまして、とりわけ、今後のDX等の進展による働き方の変化等を勘案すると、その役割というのは非常に大きいのではないかというふうに思っております。

 一方で、中小に関する支援というところは、おっしゃるとおりでございまして、この点につきましては、キャリアコンサルタントをいかに活用していくかというのは審議会の中でも議論がされたところでございますけれども、一方で、キャリアコンサルタント自体が、まだいろいろ得手不得手の部分もあるということも含めて、まずはそのスキルアップをしていただいて、それで中小でより活用していただくということができるように支援をしていく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

八代参考人 御質問ありがとうございました。

 キャリアコンサルティング、あるいは最近、リスキリングとか、そういうことが極めて今重要になっているわけであります。

 ただ、これをやるときの非常に大事なことは、これまでの日本の企業内での職業訓練の形成というのは専らOJT、つまり、業務上、働きながら訓練を受けるということを中心にやってきたわけで、それが今のICT、DX時代にはもう対応できなくなってきている。そういう意味で、もう少し個々の労働者に合ったキャリアコンサルティングが重要だということが言われてきているわけですが、そのときに、私は、大事なのは、あくまで、画一的にやるんじゃなくて、労働者のインセンティブを高めるようなやり方でやらないと効果は上がらないんじゃないかと。

 ですから、ある意味で、労働者にも一定の自己負担を課すような形で行って、その代わり、キャリアコンサルティングの成果が上がればきちっと昇給をしてあげるというか、そういう、ただで訓練して、それで何となくよくなるだろうという考え方じゃなくて、あくまで一定の、労働者自身も自らへの投資をする、それによって成果があればしかるべき報酬が出る、そういうやり方でないと余り効果は上がらないんじゃないかと思います。

 今、私の方でも、社会人大学院というのをつくっていて、介護とか保育の人たちにビジネスを教えているわけですが、本当に喜んで勉強していただいているわけですよね。そういうニーズがあるからであって、だから、ニーズのない方に訓練をしても、それは非常に、本人にとっても、社会にとっても無駄になってしまう。あくまで個人のインセンティブを高めるような形のコンサルティングが大事ではないかと思っております。

 以上です。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 先生御指摘のように、能力開発という側面もあるんですけれども、それよりも、やはり、それぞれの個人の、しっかり一生を見たキャリアの形成というか充実が、日本全体の労働市場の充実にもなると思います。

 済みません、以上、時間になりました。大変にありがとうございました。

橋本委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 今日は、参考人の皆さん、朝早くから貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、働く立場、連合の冨高参考人に伺いたいと思います。

 まず、育児休業給付金についてです。

 これは、給付額がかなりの増加傾向にあります。二〇二〇年度は、受給者が四十万人、また支給額は六千四百億円以上に達しています。今回の改正案では国庫負担割合が一・二五%のままの据置きとなりましたが、この保険料率の在り方や、また育児休業給付制度の在り方について、参考人の意見を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、高階委員長代理着席〕

冨高参考人 ありがとうございます。

 改正法案では、先ほど御指摘いただいたとおり、令和六年度又は令和七年度に資金残高が枯渇する見込みであるというような厚生労働省の試算結果もございました。したがって、令和六年度までを目途に、育児休業給付とその財源の在り方について検討し、必要があると認めた場合には所要の措置を講ずるとしておりまして、先ほど冒頭でも申し上げたとおり、これが高水準で推移していくとそれより前に安定的な財源が確保できない懸念もあるということも含めますので、より早期に、子ども・子育て支援の観点から、政府の責任で一般会計により実施するということも含めて、幅広な制度の在り方について早期に検討していただければというふうに考えております。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 この給付制度については、先ほど来、自営業者やフリーランスはどうあるべきかといった議論もあります。私たちとしては、働く環境がどんな環境であれ、またどのような形であれ、子育てを支えていくということは必要な政策でありまして、政府もフリーランスの法的保護というようなものも重要な政策として掲げていますので、この制度の確立に努めていきたいと思っています。

 次に行きます。

 失業等給付について伺います。

 今回の改正では、基本手当、また教育訓練給付、求職者支援制度に関連する令和三年度末までの暫定措置が、コロナ禍の経済の回復途上にあるということも踏まえて、三年間の継続となりました。この継続についての考え方を冨高参考人に伺います。

冨高参考人 まず、基本手当でございますけれども、雇い止めによる離職者の基本手当の給付日数を延長する措置を継続する、これにつきましては妥当だというふうに考えております。特に、雇い止めによって離職した者が再就職に要する期間というものが長期化する傾向がございますので、これが改善されない限りは措置を継続するべきというふうに考えております。

 地域延長給付につきましても、雇用情勢の悪い地域、これに対する配慮というのは引き続き必要だというふうに考えておりますので、制度を延長すべきだというふうに考えております。

 教育訓練支援給付金の継続につきましても妥当というふうに考えておりますけれども、こちらにつきましては、制度の失業予防とかそれから早期再就職の効果検証、こういったものをしっかり不断に行っていただきたいというふうに考えているところでございます。

 また、求職者支援制度における収入要件や出席要件の緩和、こういったものの特例措置を延長することにつきましては利用者数を増加することに寄与するのではないかというふうに考えておりますけれども、今後は、この制度の利用というものがなかなか大きく拡大をしていかない、そういったところの要因について、しっかりと一層の調査、検証を行っていただいた上で利用促進策について講じていくべきではないかというふうに考えているところでございます。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 求職者支援制度におきましては、先ほど来、他の参考人の先生からも、多々、まだまだ改善余地があるんじゃないかというお話もいただきました。支給要件が厳しいことや、更に緩和ができるのではないか、また、利用率がピークより下がっているということもありましたので、是非、これも利用しやすい制度に拡充をしてまいりたいと思っていますし、また、市場ニーズに合った教育訓練を行うことで、やはり安定した雇用につなげていくための利用促進が必要であると考えています。

 引き続き、続けていきます。

 今回、雇用保険に一定加入後に転職して起業する者がやむを得ず廃業した場合に、改めて求職活動に入る場合にも最大四年間まで基本手当が受給できるというふうになります。

 この仕組みについて、考え方を冨高参考人に伺いたいと思います。

    〔高階委員長代理退席、委員長着席〕

冨高参考人 今御説明いただきました、事業を開始した者に対して基本手当の受給権を確保するということでございますけれども、この見直しによって、例えば、一度フリーランスになって、それから事業に残念なことに失敗をして、再び雇用労働者に戻ろうとする方の保護にはつながるものというふうに考えております。

 審議会の中では、真に支援を必要とする雇用労働者に戻る方にきちんと適切に支援がなされるのか、そういったところをしっかり確認しながら運用することが重要であるということを発言をしておりまして、是非、チェック体制の整備などをお願いしたいところでございます。

 以上です。

田中(健)委員 これは新しい取組でありまして、まさに一度フリーランスになってもう一度就職するというような形もこれから考えられますし、起業することを恐れることなくチャレンジすることに対してもセーフティーネットが用意されるということになりますので、四年間というのが、私、これは長いのかどうなのかというのがちょっとまだ実感として分からないんですが、今、しっかりとチェックをしていくというか、その後の効果検証をしていってほしいという要望がありましたので、是非そこは私どもも要望していきたいと思っています。

 引き続きまして、今回の国庫負担率や繰入れの話になった、そもそもの雇用調整助成金について伺いたいと思います。

 今回、この特例措置が六月までの延長となりまして、原則は、上限助成額九千円、助成率は、中小企業が十分の九、大企業が四分の三ということが維持されることになりました。

 これについての評価と今後の特例措置に関する考え方を、冨高参考人に伺いたいと思います。

冨高参考人 雇用調整助成金に関する考え方というところでございます。

 冒頭でも申し上げましたけれども、コロナ禍においてこの雇調金の特例が迅速に講じられたことで、企業の業績が厳しい中、休業を余儀なくされた多くの労働者の雇用が守れたものというふうに考えております。

 雇用調整助成金には、原則的な措置と、また感染拡大地域や特に事業の厳しい企業に配慮した地域特例、業況特例というものが存在しますけれども、業況が回復していない産業、地域につきましては、先ほども申し上げたように非常に切実な声というものが寄せられておりますので、コロナ禍の影響を受ける産業、地域の労働者の保護というものは不可欠だというふうに考えております。

 したがって、そうした観点から、地域特例、業況特例については現行水準をしっかりと継続をしていく必要が現時点ではあるというふうに考えております。

 また、原則的な措置の水準についても、段階的な引下げありきではなく、あくまで業況、雇用情勢等に応じて機動的に対応することが必要なのではないかというふうに考えております。

 以上です。

田中(健)委員 この雇用調整助成金について、今日の委員会の中でもいろいろな議論があり、大変参考になりました。いまだに需要が戻らない業種、これは先ほども挙げていただきました、交通、運輸、観光、サービスですかね、大変厳しい状況にあるのは事実であります。そのような業界に対しては雇用維持のためには必要かと思いますが、一方で、非正規雇用にしわ寄せが来るといった指摘もありましたので、こういった面に対する安全面の強化も必要であると考えています。

 また一方で、これまでこの雇用調整助成金を活用した休業による雇用維持をしてきましたが、事業の一時的な縮小を行う企業が、人手不足などの企業との間で、在籍型出向というものを活用して従業員の雇用を守る取組が一方で進められてきました。

 この現状と課題等があれば、冨高参考人に伺いたいと思います。

冨高参考人 今御指摘いただきました出向、元に戻ることを前提とする在籍型出向と申しますのは、厳しい環境下において企業が雇用を維持するための選択肢ということで、非常に重要なものというふうに捉えております。

 先ほど、課題はというお話でございましたけれども、まだまだ活用状況というところは進んでいないのかなというふうに思いまして、いろいろ今拡充、また要件の部分も見ていただいておりますけれども、その辺りも、より利用しやすいような改定というのを見ていただければ、チェックしていただければというふうに考えているところでございますし、また、しっかりとこの制度があるということを周知していただくということは非常に重要なんだろうというふうに考えております。

 これにつきましては、労働者本人の意に沿うということが重要だというふうに思っておりまして、その場合にはしっかりとこの制度を活用していただければというふうに考えておりますし、そのことで雇用保険二事業の財政負担の軽減にもつながるというふうに考えておりますので、是非利用促進の方を厚労省にお願いしたいというふうに考えています。

 以上です。

田中(健)委員 この在籍型出向を有効に活用されているという働く立場からの御意見をいただきましたが、一方で周知徹底が必要ということも伺いました。

 私も、よくテレビの番組などで、空港会社が大変に厳しい中、他の業種に派遣をされて、出向して仕事をしているということを見まして、これはどのような今現状になっているのかなというふうに思っておりましたので、お話を聞けて大変参考になりました。ありがとうございます。

 引き続きまして、職業安定法関連について伺いたいと思います。

 今回の法改正では、求職者情報を収集する募集情報等提供事業者については、届出が義務づけられることになりました。

 前回、私のこの委員会での質問で、現時点で八百を超える企業が、会社が対象になるのではないかとのことでありました。一方ではある意味規制ということになりますが、この届出制について、冨高参考人としてはどのように考えていらっしゃるでしょうか。

冨高参考人 ありがとうございます。

 今回様々な、職業安定法改正についても一定の前進が図られたというふうに思っております。

 今、募集情報提供事業者につきましては全く法の対象ではありませんでしたので、実態がどうなっているかというところも含めて全く分かっていないということでございますので、まず届出によって情報収集することによって、課題というものが浮かび上がってくるかというふうに考えております。

 その上で、今は届出でございますけれども、本当にその規制の在り方でよいのかどうかというところにつきましては、引き続き検討していくべきではないかというふうに考えております。

 以上です。

田中(健)委員 時間となりました。質問を終わります。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、参考人の皆様、お忙しい中貴重な意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 まず、冨高参考人にお伺いいたします。

 給付水準についてです。雇調金はこの間コロナ禍で日額の上限が引き上げられましたが、失業給付の基本手当の水準は二〇〇三年に下げられたままです。これは大変問題ではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

冨高参考人 御指摘のとおり、基本手当の水準につきましては、平成十二年と平成十五年の法改正で基本手当の賃金日額、給付日数などが引き下げられておりまして、現在も水準の回復には至っていないというふうに認識しております。

 基本手当につきましては、労働者が失業した際の生活の安定を図る雇用保険制度の中核というふうにも捉えているところでございまして、雇用情勢や景気動向も含めて、水準の回復をしっかりと検討していくことが必要だというふうに考えております。

 以上です。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 秋山参考人にも給付水準の問題についてお伺いいたします。

 先ほどのお話では、日額上限も引上げが必要だというお話がありましたけれども、日額の下限額は今二千六十一円ということになっているんですけれども、この下限額についてはどうお考えでしょうか。

秋山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、雇用保険の失業給付というのは短時間被保険者も含んで計算されますので、週二十時間以上となる労働者が被保険者ということになります。下限額はこうした方も考慮する必要があるんですが、失業給付の対象日というのは休日も考慮していない、毎日支給されるということもありますので、一日当たり三時間程度ということで金額を下限として考えるのはどうかなというふうに思っております。

 全労連では、最低賃金額について、この間全国各地で行ってきた生計費調査の結果として、単身二十五歳の労働者で、最低額は時間額換算で全国一律千五百円であることを申し上げています。したがって、下限額は四千五百円以上として、全体水準を引き上げるべきだろうというふうに思います。

 なお、上限額については、先ほども申し上げたとおり、一万二千円以上とすることを求めたいと思います。

 以上です。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続いて、秋山参考人にお伺いをいたします。

 先ほどのお話で、退職理由の違いによって給付制限、給付日数に差があることについて、悩ましい問題もいっぱいあるんだというお話がありました。現場での経験から感じられていることについて教えていただけるでしょうか。

秋山参考人 御質問ありがとうございます。

 現場で多くの給付手続にも関わってきました。相談する中で、正当な理由のない自己都合と言えるのかどうか、日々悩みを持ってやっておりました。給付日数や給付の始まる時期に関わることでありますから、当該の方の生活がちゃんとできるかどうかというせっぱ詰まった問題につながってきます。

 自分勝手な理由で退職したという方が全くないわけではありませんけれども、売り言葉に買い言葉で退職したケースというのがあったり、家族の病気や介護のため会社に迷惑をかけられないと退職した人もいらっしゃいました。いじめや嫌がらせによる退職というのを含め、人それぞれに様々な物語があります。そんなお話を日々伺いながら業務を行ってきました。

 退職した理由を丁寧に聞き取り、再就職に向けて気持ちを入れ替えてもらえるような心のケアを行うこともしながら、雇用保険の受給資格が決定されていきます。

 同時に、特定理由離職者に該当するのか、特定受給資格者に該当するのかということも判断をしていかなければなりません。給付日数や給付額はその場で簡単に決まるわけでなく、裏づけも必要になってきています。しかし、時間をかけると給付が始められないということでありまして、今回の雇法改正で特定理由離職者の給付日数の特例が更に延長されますが、そもそも退職理由による格差があること自体をなくすべきだというふうに思っております。

 雇用保険の給付制限についても業務を煩雑化させるということになりまして、事業主の都合による解雇となれば事業所が助成金を受ける制限につながっていくということもありますので、回避するためにいじめや嫌がらせをやって辞めさせているというケースも多く相談がありました。

 こういうことを考えますと、退職理由の違いによる給付日数の格差や給付制限をなくすことが業務の簡素化にもつながっていくということでもありますので、是非検討いただければと思います。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 もう一問、秋山参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 お話の最後で、ハローワークで働く職員の皆様の雇用の安定についてお願いというお話もありました。今、ハローワークでは職員のおよそ半数が非常勤職員というふうに伺っておりますが、現場の実態について教えていただけるでしょうか。

秋山参考人 御質問ありがとうございます。

 ハローワークの現場で長く働いてきましたが、多くの優秀な非常勤職員の皆さんに支えられてきました。労働組合専従で、退職する直前は職業紹介の窓口にいたんですが、全部で職員は三十六人で、うち正規は十二名だけでした。

 非常勤ということであるんですが、職員数が絶対的に足りないということでそのポストが恒常的に置かれている状況になっていますので、仮に現在の職員数のままでやれということを言われると、来所者に対応する窓口は半数以下に減少してしまうのが実態であります。そうなれば、あらゆる手続が滞りますし、待ち時間が何時間になるのかも想像するのも怖いばかりであります。職員の労働時間もどうなっていくのかという心配があります。

 なくてはならない非常勤職員が、幾ら優秀であっても契約更新は二回まで。そのため、三年目が終われば公募となり、同じ職で募集があれば、他の方と並んで面接を受けています。こうなると仕事を探している求職者と何ら変わりはありません。受かるためにどうすればいいのかという相談も受けてきました。ポストがなくなることによって、今後についての相談や、違うポストに応募することについての相談なんかも受けてきました。これが毎年のように繰り返されています。

 非常勤職員は女性が多いこともあり、ジェンダー平等の観点からも問題だというふうに思っております。男女問わず正規職員として働き続けられるようにしていただきたい。そのためにも、正規職員の数を大幅に増やしていただいて、希望する非常勤職員を正規にするなど、行政体制の拡充を図っていただきたいというふうに思います。

 出先の中に非常勤だけで運営されているところがあって、災害が発生した場合に非常勤だけで対応しなければならないということもあります。東日本大震災の際は、陸前高田にあるふるさとハローワークは非常勤二名だけで運営されていました。そのうち一名が津波で亡くなっています。

 同じように仕事をしていても処遇は大きく違うということがあります。こうした事態に対処しなければならない非常勤職員と正規職員の格差是正のためにも、正規の増員を図っていただきたいということであります。

 以上です。

宮本(徹)委員 続きまして、これは平田参考人と冨高参考人と酒井参考人にお伺いしたいと思います。

 今回、労政審では、国庫負担については本則の四分の一に戻せということを労使が共に主張をし続け、しかし、ある意味国が押し切るような形でまとめていったという経過があったわけです。

 それについて雇用保険部会長からは今後の会議の運営に当たってということで異例の意見が出されて、こんなものが過去にあるのかということを先日国会で聞きましたら、過去二十年調べたけれども、ないというのが政府の答弁でした。ですから、本当にまれに見る乱暴なやり方で今回この法案が決められていったのではないかと思いますが。

 労政審の在り方として、やはり今回のやり方というのは大変禍根を残すものであったかと思いますけれども、その点について御意見をお伺いしたいと思います。

平田参考人 御質問ありがとうございました。

 私自身のことを申し上げますと、二〇〇八年のリーマン・ショックのときも雇用保険部会の委員を務めていまして、そのときとの比較しかできないんですけれども。

 今回の国庫負担割合についてですけれども、四分の一に戻したとしても対応できないほどの急激な財政悪化が生じているというふうにまず認識しております。

 それで、新しい仕組みでございますけれども、機動的に国庫を繰り入れる、そういう仕組みでございますけれども、今後につきまして、繰入規定の実効性を高めることが非常に重要だと思っておりますし、その実効性を高めるために、今後、労政審の意見を聞いて繰入れ等を検討していただければというふうには思っております。

 以上でございます。

冨高参考人 今回の報告書も含めて、労使の意見がついた、国庫負担を本則に戻すべきですという意見がついたということで、かなり異例なことだという認識は我々も持っております。

 最後、諮問の際に、今後の財政状況も含めてしっかりと検討していく、それから、その際には労政審で公労使の意見をきっちり聞いていく、そういったことを前提としての今回のことをおおむね妥当とするというような意見をつけさせていただいておりますので、今後しっかりとその反省を踏まえて審議会運営をしていただけるものというふうに考えております。

 以上です。

酒井参考人 私、雇用保険部会の公益委員として参加したのが、まだ一年たっておらず、過去にどういった形でこういった議論が進められてきたのかという経験がないものですから、比較参照基準を持たないという部分があるんですが、やはり戸惑いながら参加していたというのが実態です。やはり厚労省側からというか、提示される雇用保険部会報告あるいはその法案といったことに関して、唐突感があるなというふうな形、感触は持っておりました。

 しかしながら、労使双方あるいは公益委員の強い意見を酌む形で、今後開かれた議論をするということを約束するというのがあの附帯の意見だというふうに認識しております。その限りにおいては、先ほどもありましたけれども、おおむね妥当。特に、国庫繰入規定に関して、諸要件のところに関して、非常にこの要件が妥当なのかということが議論されたわけですけれども、そこに関して今後も議論は開かれているんだということが約束されたものと思っております。その上でのおおむね妥当だというふうに理解しております。

 以上です。

宮本(徹)委員 時間になりました。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文と申します。

 今日は、雇用保険法に関しまして、参考人の皆様方、五人の皆様方に御参加いただきまして、いろいろお話を伺いました。

 雇用保険二事業というのは、雇用の安定、能力開発ということが主な事業の内容でございますけれども、まず、冨高参考人の方に御質問したいと思います。

 よく言われる話でありますけれども、雇用調整助成金が、今いろいろな労働環境、もっと言うと経済環境が変わっておりまして、労働のシフトというか労働移動ということが叫ばれていますけれども、かえって雇調金がそれを阻害しているという意見もありますけれども、そのことに関しましてどのように受け止められていますでしょうか。

冨高参考人 審議会等でも様々、労働移動を阻害しているのではないかというような意見も出ておりました。

 ここにつきましては、我々として考えておりますのは、雇用調整助成金というものは決して転職の意思のある労働者の、会社に囲い込むような制度ではないというふうに考えているところでございます。労働移動するかどうかというのはあくまでも労働者本人の意思によるものだというふうに考えておりますので、やはり、労働者本人がしっかりと選択をしたいと思えるような産業だったり、そういった企業づくりというのを国を挙げてやっていただくことがまず重要なんだろうなというふうに考えております。

 また、あくまで労働者本人が移動を希望しているという場合には、転職に必要な知識、技能の習得について公的な職業訓練を一層推進をしていただくということ、また、産業雇用安定センターがございますので、この機能拡充にも取り組んでいくべきではないかというふうに考えております。

 以上です。

仁木委員 時の政権あるいは政治の思い、あるいは将来展望、この国がどういう国になっていくのかということで、経済そして雇用というのは非常に重要でして、私は特に少子化の問題というのは地方が元気になることであるということを訴えています。

 ということで、今、岸田政権におきましても、DXあるいはグリーン、様々なこれまでの分野を更にパワーアップして地方に雇用をつくるということをうたわれておりますので、それに伴い、どうしても、今までの産業で頑張る方法もあるんですけれども、やはり労働を移動することによって、いわゆる新たな分野の開拓を行うということも大切だということを考えています。

 さて、二番目の質問ですけれども、八代参考人に質問したいと思います。

 先ほど雇用保険のありよう、この資料の方で、雇用保険財政再建のための手法ということで、産業間、企業間の失業リスクの分散ということが言われております。これはリベラル的な考え方からいうとちょっと逆のような形にも思うんですけれども、具体的には、先生の考えというのは、大企業あるいは中小企業という形で分類はされますか。具体的には、保険料率とかそういう形で差があるとか、そういう感じでしょうか。

八代参考人 御質問ですが、私は、そういう大企業と中小企業で保険料率に差をつけろということじゃなくて、あくまでも、今回のコロナ危機というのは特定の産業に打撃を与えたわけですね、特に対人サービス業。ですから、製造業とか公務とか、ほかの分野にはほとんど影響を与えなかったというかなり特殊な性格のものなわけです。

 ですから、まさに保険の原則からいえば、事故に遭った人に遭わない人が、いわば助ける。だから、非常に大きな事故によって雇用調整助成金がたくさん必要になったわけで、この使い方についても異論はあるわけですが、ともかくもそれだけの雇用調整助成金が使われた。それによって財政が非常に厳しい状況になったら、やはり、今回事故に遭わなかった産業あるいは企業の方から助け合うために保険料を上げるというのは、私は保険としては当然のことではないかと思います。

 繰り返しになりますが、例えば最近水害が増えているわけで、そういう中で、水害に遭った地域だけじゃなくて全国的に損害保険の保険料が上がるということでこれに対処をしたわけで、これは国の保険についても基本的には同じではないかと思います。

 そういう意味で言っているわけでは。

仁木委員 説明ありがとうございました。分かりました。

 この業界なり、そういったコロナの影響を強く受けている、あるいはそうでないという、区分けというか分類が難しいのも政治的にはございますけれども、そういう先生のお考えがあるということも一部、実際ちまたの経済的な経営者ともお会いする中で伺っているところでございます。

 さて、また話を能力開発ということに変えたいと思いますけれども、今、デジタル化という形で、例えば、現場でAIなりロボット等活用が進むことも片やあると思います、イノベーションで。そうすると、私も過去に連合の方々とお話をしたんですけれども、そういうことが進行すると結局雇用が減ってしまうんじゃないかというふうな考え方もありますが、されど、やはり、このデジタルトランスフォーメーションという流れは今後続くと思われます。

 そういう中で、今回の例えば雇用保険法の改正に伴ってデジタル化というのは、そういった将来的な労働現場のありよう、そういうのを反映したものになっているとお考えでしょうか。

冨高参考人 恐らく職業能力開発促進に関する御質問かというふうに思っておりまして、デジタル化の中で雇用も減ることもあるのではないかというようなことも含めてのお問いかなというふうに思っております。

 今回の改正法案の中では、いろいろ公的な職業訓練に地域のニーズというものを反映するための協議会の強化というものを盛り込んでおりますけれども、御指摘のDXのような対応についての部分からすると、その部分については、地域の雇用における解決というのが図れるのかどうかというのは少し分かりづらい、言い切れないのではないかなというふうにちょっと思っているところでございます。

 先ほど雇用が減るのではないかというようなお話もございましたけれども、やはり、DX、GXで何かが変わって、どのような業務が生まれるのか、また、そうするとそこに新たな雇用が生まれたり、そういったこともあるかというふうに思いますので、決して雇用が減るということだけではないのではないかというふうには考えておりますけれども、そういったところをしっかり、政府レベルでDX、GXを牽引するための人材像などをしっかりと明らかにしていく。そのことで、それを踏まえて、しっかり労働政策審議会の中でも必要なスキル人材というところをしっかりと議論していくことが必要ではないかなというふうに考えております。

 以上です。

仁木委員 同じく冨高参考人の方に質問でございますけれども、そういった能力開発という中において、キャリアコンサルティングはかなり重要だと思います。

 世の中のトレンドとかによってかなりデジタル化が進んでおりまして、例えば、私たちがレストランに行ってメニューを見る際、紙メニューからタブレットでオーダーを聞くような状態になっていまして、そういう意味でいうと、ウェーター、ウェートレスというか、そういう働く現場の方々、最前線の方も変わっておりますが、そういったキャリアコンサルティング過程において、そういうトレンドに合った、あるいは地域の実情に合って、よりマッチングに結びつけて求職者の新たな雇用に結びつけるということは大切だと思っております。

 そういう中で、キャリアコンサルティングの質というかクオリティーというか、それをどういった指標で、つまり、いかにマッチング率が高いような、そういったメニューを提供できるようなコンサルティングがいいというふうに私は思うわけでございますけれども、そういったことに対しまして、連合というか、そういった冨高委員のお考えというのはどのようにお考えでしょうか。

 私は、地域訓練協議会等々の質を高めるために、その人員に対するお手当を厚くするとか、そういったことに関する予算をより増やして、その質を担保していく、マッチングをより高めていく。あるいは、最初の話に戻りますけれども、より地域が一丸となって新しい産業をつくっていくときの牽引する場、啓発するような、そういう、より新しい産業でそこで働く人たちが働きやすいような、すぐ労働力になるような、そういうキャリアコンサルティングというのは重要だと考えますけれども、いかがでしょうか。

冨高参考人 ありがとうございます。

 先ほども別の方への質問でも申し上げましたけれども、キャリアコンサルタントの役割というのは非常にこれから重要になってくるというふうには思っております。

 まさに、キャリアの形成支援の担い手であることを考えれば、やはりDX等の内容もしっかりと踏まえていただいた上で、その専門的知識や実践力というのをいかに高めていくかというのがこれから重要になってくるというふうに考えております。

 そのためには、単に継続的な講習を受けるだけではなくて、しっかりとコンサルタントの不断の努力というものも求められるのかというふうにも思いますけれども、しっかりそういった活用であったり、また、どういうものが必要なのかというところにつきましては労働政策審議会等においても十分議論していく必要があるんだろうなというふうに思っております。

 また、キャリアコンサルタント自体が、資料にも入れましたけれども、非正規の方も多いというところもありますので、そういった方たちの処遇をしっかりしていくことで、また知識を、専門性を深めていってということを同時にやっていくことが重要ではないか、それが地域に還元をされるというふうに考えております。

 以上です。

仁木委員 キャリアコンサルティング、いろいろ、そういう分野の業種というか新たなそういった仕事も生まれているわけでございますけれども、やはり、質とかあるいはその内容、ピンからキリまであると思うんですね。そういう意味で、やはり評価されている業種がより活用されていく、つまり、その分野も淘汰されていくというか、そういうことも大切だというふうに思っております。

 そういう形で、今日、雇用保険二事業に関しまして、雇用の安定そして能力開発について二つ質問させていただきました。

 お時間過ぎておりますので、私の質問を終えたいと思います。今日はありがとうございました。

橋本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明十六日水曜日午後三時理事会、午後三時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十九分散会


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