衆議院

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第15号 令和4年4月20日(水曜日)

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令和四年四月二十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 橋本  岳君

   理事 今枝宗一郎君 理事 齋藤  健君

   理事 高階恵美子君 理事 牧原 秀樹君

   理事 山井 和則君 理事 柚木 道義君

   理事 池下  卓君 理事 伊佐 進一君

      畦元 将吾君    上田 英俊君

      加藤 勝信君    勝目  康君

      川崎ひでと君    神田 潤一君

      後藤田正純君    佐々木 紀君

      塩崎 彰久君    田村 憲久君

      高木 宏壽君    土田  慎君

      長谷川淳二君    深澤 陽一君

      古川 直季君    堀内 詔子君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      三ッ林裕巳君    柳本  顕君

      山本 左近君    阿部 知子君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      野間  健君    山田 勝彦君

      吉田 統彦君    早稲田ゆき君

      一谷勇一郎君    金村 龍那君

      吉田とも代君    山崎 正恭君

      吉田久美子君    田中  健君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       後藤 茂之君

   厚生労働副大臣      古賀  篤君

   厚生労働副大臣      佐藤 英道君

   厚生労働大臣政務官    深澤 陽一君

   厚生労働大臣政務官    島村  大君

   国立国会図書館調査及び立法考査局農林環境調査室専門調査員         樋口  修君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澤田 史朗君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 吉住 啓作君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         鋤柄 卓夫君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        相川 哲也君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     齋藤 秀生君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 堂薗幹一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官)            浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            吉永 和生君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         山田 雅彦君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    田原 克志君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           小林 洋司君

   政府参考人

   (国立感染症研究所長)  脇田 隆字君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           沖  和尚君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 大和 太郎君

   厚生労働委員会専門員   大島  悟君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  鈴木 英敬君     神田 潤一君

  山本 左近君     古川 直季君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     鈴木 英敬君

  古川 直季君     山本 左近君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

橋本委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澤田史朗君、内閣府大臣官房審議官吉住啓作君、食品安全委員会事務局長鋤柄卓夫君、子ども・子育て本部審議官相川哲也君、消防庁審議官齋藤秀生君、法務省大臣官房審議官堂薗幹一郎君、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官浅沼一成君、医政局長伊原和人君、健康局長佐原康之君、労働基準局長吉永和生君、職業安定局長田中誠二君、雇用環境・均等局長山田雅彦君、子ども家庭局長橋本泰宏君、社会・援護局障害保健福祉部長田原克志君、人材開発統括官小林洋司君、国立感染症研究所長脇田隆字君、農林水産省大臣官房参事官沖和尚君、防衛省防衛政策局次長大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橋本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。塩崎彰久君。

塩崎委員 おはようございます。愛媛一区の衆議院議員の塩崎彰久でございます。

 厚生労働委員会では初めての質問となります。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の国会では、こども家庭庁設置法案が提出され、岸田総理も、子供に関する取組や政策が真ん中に据えられる社会を実現するというふうに発言をされております。この委員会でも、来週以降、児童福祉法改正法案などが審議されることになり、まさに我が国における子供の在り方が根本的に転換するかもしれない画期的な国会、まさに子供国会と呼ぶにふさわしい、そんな国会になろうかと思っております。

 そこで、本日は、子供に関する観点から四点ほどテーマを絞って御質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初のテーマでございます。まず、難病を抱える子供たちについて。

 令和元年に政府としては、全ゲノムの解析等の計画、これを採択しまして、今、がんや難病の新たな治療法の確立に向けた治療精度の向上、こうした研究を進めており、まさに難病を抱えた子供たちは新しい治療法が見つかることを日々心待ちにしているわけでございます。

 例えば、今年の二月に、慶応大学のグループが八十五人の赤ちゃんに対して遺伝子検査を行ったところ、四十一人の赤ちゃんについて初めてその難病の原因を突き止めることができ、二十人については新しい治療法の確立、こういったものが見つかったわけでございます。このようにゲノム解析というのは非常に大きな、大勢の子供たちに希望を与えるポテンシャルを持っているわけでございます。

 一方で、大きな課題もございます。

 お手元の資料一を御覧ください。今年の四月の六日、日本医学会、日本医師会、そして当事者団体、がん患者団体、この四つの団体が、遺伝情報、そしてゲノム情報による差別や社会的不利益の防止の法規制を求める共同声明を出しております。

 実は私も、地元で患者団体の皆さんのお話を伺ったときにも、まさにこのゲノム医療の推進については本当に希望を持っているんです、期待しているんです、でも、例えば、この人の遺伝子を見るともしかしたら重病にかかるかもしれない、だから昇進をやめておこうとか、そんな形で社会的な差別や不利益が起きるようなことがあっては本当に困るんです、そんな心配のお声を聞かせていただきました。

 そこで、まず厚労省に質問でございます。

 今現在、日本で企業が採用の際に遺伝情報に基づいて差別を行うことを禁止するような法規制はあるかないか、簡潔にお答えください。

田中政府参考人 現在、我が国において、企業が労働者を採用するに関しまして、遺伝情報に基づく差別を禁止する法制度はございません。

塩崎委員 ありがとうございます。

 もう一点、重ねて聞かせてください。

 では、採用した後、その従業員の昇進などにおいて、遺伝情報に基づく差別、これを禁止するような法制度はございますでしょうか。

吉永政府参考人 我が国におきまして、昇進などの労働者の処遇につきまして、お尋ねのようなゲノム情報の収集やそれに基づく差別を禁止する法制度はございません。

塩崎委員 回答ありがとうございました。

 このように、残念ながら、我が国ではいまだ、ゲノム情報に基づく差別、そして不利益な取扱い、こういったものを法的に規制するような法制度というのが十分整っているとは言いにくい状況でございます。

 一方、海外では、二〇〇八年にアメリカではGINA法というものができまして、採用、昇進、解雇、こういった場面における遺伝情報に基づくような不利益な取扱い、これは禁止をされております。また、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、まさに我々がゲノム解析の計画を進める上でいろいろ参考にしている諸外国でも、こうした法制度が整っている次第でございます。

 そこで、後藤厚労大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 我が国においてもやはり、遺伝情報、ゲノム情報に基づく差別や社会的不利益を禁止するような法制度、これを早急に整備する必要があるのではないか、私はこのように考えておりますが、大臣において、このゲノム医療を進めていくという観点から、こうした法整備の必要性についてどのようにお考えか、また、現在、厚労省としてどのように取り組んでいらっしゃるか、この点について御回答をお願いいたします。

後藤国務大臣 ゲノム医療を将来にわたって更に発展させていくためには、研究開発の推進や医療提供体制の整備を行うとともに、遺伝子異常が見つかった患者やその血縁者が差別などの不当な扱いを受けることがないように、ゲノムに関する教育や普及啓発、社会環境の整備を行っていくことは、今委員御指摘のとおり、非常に重要であると考えております。

 厚生労働省としては、ゲノム医療に関する倫理的、社会的課題の検討のために、ゲノム医療を受けるための社会実現に関する研究事業を実施しております。

 また、採用選考の際に遺伝情報を取得したり利用したりしないように、パンフレットを用いて事業主に周知啓発を行っております。

 国民に安心してゲノム医療を受けていただくために、引き続き、関係省庁とともに必要な施策を検討してまいりたいというふうに考えております。

塩崎委員 大臣、ありがとうございました。

 ゲノム情報に基づく不利益や差別があってはならないという大臣の今のお言葉、非常に心強く、子供たちや患者団体の皆さんにも届いているのではないかと思います。

 では、次のテーマ、二番目のテーマでございます。二番目は、虐待に苦しむ子供たちについての質問でございます。

 令和二年度、児童相談所における児童虐待の相談件数、これは初めて二十万件を超え、残念ながら過去最多を更新するに至りました。つい先月も、岡山で五歳の女の子が虐待の結果亡くなってしまった、そのお母さんと交際相手が起訴をされるに至りました。

 児童虐待の問題、これに対する社会の対応をまさにしっかりとやっていこうということで、今国会においても児童福祉法の改正法案が提出されておりまして、まさに来週以降、詳しい審議が行われていくというふうに考えております。ただ、その中で一つ私が特に大事だと思っている点について、今日は御質問をさせていただきたいと思っています。

 今回の法改正の中で、やはり一つ大きなテーマは、虐待が疑われる児童、その保護の判断に当たる現場の専門の方について、この専門性をどう向上させていくか、そして、そのための専門資格の向上であるというふうに考えております。

 今回の法改正では、一定の実務経験のある有資格者やそして現任者、こういった方について、国の基準を満たした認定機関の認定した研修を経て取得する認定資格、これを導入するということになっております。ただ、子供を家庭からまさに引き離して、そして保護するかどうか、こういうぎりぎりの判断をする重たい責任を伴ったお仕事でございます。やはりここは認定資格ではなくて国家資格とすべきではないか、こういった議論も多くあったところでございます。

 この点、附則の第二条、この資料の二番を御覧いただければと思います。今回の法改正の附則の第二条では、この本文の下から四行目でございますが、支援実施者に関して、その能力を発揮して働くことができる組織及び資格の在り方について、国家資格を含め、この法律の施行後二年を目途として検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるというふうにされております。

 そこで、質問でございます。

 政府として、この附則第二条に従って、今後、誠実かつ速やかに検討を行うということをこの委員会の場でも確認をさせていただきたいと思います。また、検討を進めるに当たって今後、有識者会議などを設置する際には、今回の経緯に鑑みて、我々立法府に携わる者の意見も参考としていただくということを確認をさせていただければと思います。

橋本政府参考人 子供家庭福祉の現場でソーシャルワークを行う人材の専門性の向上を図るということを目指しまして、今般の児童福祉法改正案におきましては、一定の実務経験を有する有資格者や現任者につきまして、国の基準を満たした認定機関が認定した研修や試験を経て取得する子供家庭福祉の認定資格を導入することとしております。

 また、同じ児童福祉法改正案の附則の検討規定におきまして、認定資格の取得状況等を勘案するとともに、業務内容や必要な専門知識、技術、教育課程の明確化、養成体制や資格取得者の雇用機会の確保といった環境を整備しつつ、その能力を発揮して働くことができる組織及び資格の在り方について、国家資格を含め、施行後二年を目途として検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じることとしております。

 今国会でこの改正法案を御議論いただきまして、改正法案が成立した暁には、子供家庭福祉の現場における人材の早期の輩出を行う観点から、令和六年四月の認定資格導入に向けた施行の検討を進めるということが一つでございます。

 もう一つは、これと併せまして、改正法案の附則の規定に沿いまして、施行後二年、すなわち令和八年四月ということを目途として検討し、その結果に基づいて必要な措置が講じられるよう、与党とも連携して検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

 具体的にこれをどのような形で進めていくのかということにつきましては、まだ今の段階で私ども具体的なイメージを持っているわけではございませんが、委員の御指摘も念頭に置きながら、今後、与党ともよく御相談させていただきながら、連携して検討してまいりたいと思っております。

塩崎委員 ありがとうございました。

 もちろん附則に書いてあることではあるんですが、こうして委員会の場で橋本局長からしっかりと御確認をいただいたことは非常に大きいことだと思います。ありがとうございました。

 それでは、三番目のテーマに移らせていただきたいと思います。三番目のテーマ、貧困に苦しむ子供たちの問題でございます。

 資料三の一を御覧いただければと思います。これは我が国における一人親家庭の貧困率の推移のチャートでございますが、左側を見ていただきますと分かりますように、最新のデータによりますと、二〇一八年、一人親家庭の貧困率、何と四八%でございます。つまり、一人親家庭の二世帯に一つは、現在、この日本において相対的貧困の中にいる、こういう現状でございます。

 これが国際的に見てどれほど異常かということ、資料三の二を御覧ください。三の二、赤枠で囲っておりますのが、一人親家庭の貧困率の国際比較でございます。OECD三十六か国を比較したときに、日本は何と三十六か国中三十五位、我々の下にはコスタリカしかいない。言い換えれば、日本は世界で最も一人親家庭に冷たい国の一つになってしまっている、こういう現状でございます。

 さて、この一人親家庭の貧困が高い原因の一つとして厚労省の報告書などでも指摘をされているのが、養育費の不払いが多いという問題でございます。

 もう一度三の一に戻っていただければと思いますが、右側の表でございます。現在、養育費の支払いを受けている家庭がどれぐらいあるか、二四・三%。何と四世帯に一世帯しか養育費を受け取ることができておりません。

 私の地元でも、シングルマザーのお母さんたちにお話を聞くと、やはり、別れてしまった旦那に養育費を求めてもナシのつぶて、連絡先が分からない、そして、弁護士に頼もうと思ったら費用が高過ぎて心が折れてしまった、こんな話をよく聞くわけでございます。

 こうした現状を一日も早く改善しなければいけないということで、養育費の支払い確保に関する政策を進めていただきたい、そんな思いで、我々自民党の議連においては要望書を出させていただきました。こちら、資料三の三でございます。先月、後藤厚労大臣、そして古川法務大臣にもこちらをお届けさせていただきました。

 この中で、特に我々としては強く推したいのが、具体策の一番上でございますが、政府として養育費の受領率に関する達成目標を定めてほしいというところでございます。

 今日はせっかく法務省にも来てもらっておりますので、法務省に確認をさせてください。

 法務省としては、離婚時における養育費の取決め率、これについては七〇%を目指すという数値目標を設定しておりますが、先ほどの表に、見ていただきましたように、取決めはしても払われないという例がたくさんあるわけでございます。取決めだけでは問題解決にならない。是非、政府として、受領率に関する政府目標を立てるべきではないかと思っておりますが、この点についてお考えをお願いいたします。

堂薗政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省の平成二十八年全国ひとり親世帯等調査によれば、母子世帯のうち、養育費の取決めをした割合や現在も支払われている割合がいずれも低調にとどまっておりまして、法務省としても、養育費の支払い確保は早急に取り組むべき重要な課題であるものと認識しているところでございます。

 また、御指摘いただきましたとおり、法務省としては、まずはその取決め率の向上を図ることを目指して、離婚届に養育費の取決めをする割合を七〇%とする具体的な数値目標を設定して取組を進めてきたところでございます。

 委員御指摘のとおり、養育費の支払い確保のためには、取決め率の向上だけではなく、その受給率を向上させることが重要であると考えられるため、引き続き、一人親家庭の支援を行う関係府省庁とも連携しながら、養育費の受給率向上に向けて様々な取組を進めるとともに、厚生労働省の行っている全国ひとり親世帯等調査の結果を注視してまいりたいと考えているところでございます。

塩崎委員 ありがとうございました。

 この問題については、まさに省庁間の縦割りの問題が解決を妨げてきた背景もございます。今般、こども家庭庁が設置された暁には、まさにこういった問題についても政府一体として取組が進んでいくことを期待したいと思います。

 最後の質問でございます。最後、四番目のテーマは、障害を抱える子供たちについてでございます。

 今、四肢の不自由な重度の障害などを抱えるお子さんたちにおいては、障害者総合支援法の下で、自宅において介護サービスを受けられる、いわゆる居宅介護と言われるサービスがございまして、全国で八千人ほどのお子さんたちが利用しております。しかし、この居宅介護を受けようとすると、大人と比べて問題があるということがございます。

 資料の四を御覧ください。大人であれば、大人の障害者の方であれば、要件の3、4でございますが、重度障害者、中重度の障害者であれば、一定割合以上を受け入れると、その事業者に対しては特定事業所加算が認められるような仕組みになっております。

 しかし、児童、要するに障害児については、この加算の前提となる障害者の支援区分がまだ政府として定められていないという問題がございます。この結果、障害を持っている子供については、成人と同様にこの支援サービスを受けるときの事業所加算が認められないということになっております。

 そこで、質問です。

 障害を抱える子供たちが成人の障害者と同じ条件で居宅介護のサービスを受けられるよう、特定事業所加算の要件に重度の障害児への対応を定めるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの居宅介護サービスの特定事業所加算でございますけれども、利用者に占める重度障害者の割合等に応じて、事業所に支払われる報酬に一定割合を加算する仕組みとなってございます。

 この特定事業加算の算定に当たりまして、重度の障害児の人数が考慮されていないということによりまして、現場で支援に当たっていらっしゃる居宅介護サービスの事業者、それからサービスの利用を希望される重度の障害児がいらっしゃる御家庭で御苦労されている状況があるということは、委員からもいろいろと伺っているところでございます。

 この特定事業所加算を含む障害福祉サービス等報酬につきましては、これまで三年に一度改定が行われているところでありまして、報酬改定に当たっては、障害者の関係団体から御意見をお伺いし、有識者に参画をいただきながら、公開の場で検討を行っているところでございます。

 次期改定に際しても、現場の声をしっかりお聞きしながら、よりよい報酬の在り方について検討してまいりたいと考えております。

塩崎委員 ありがとうございました。

 今日は、難病を抱える子供、虐待におびえる子供、貧困に苦しむ子供、そして障害を抱えるお子さん、こうした子供たちの問題について取り上げさせていただきました。どうしても、投票権を持たない子供の声というのは民主主義のプロセスで忘れられがちでございます。だからこそ、政治が温かい目を届けるということがとても大事なんだなと。今日ここにいらっしゃる厚生労働委員の皆様と一緒に、私も勉強してまいりたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、吉田久美子君。

吉田(久)委員 公明党の吉田久美子です。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 まず、関節リウマチ患者、特に若手女性への支援についてお伺いしたいと思います。

 関節リウマチは、若い女性の発症率が高く、関節リウマチの薬を服用している女性が妊娠した場合、流産四三%、また先天性形態異常七%等起こしやすいために、避妊が必要とされております。

 一方で、近年、生物学的製剤を始めとする薬物療法の進歩は著しく、寛解を目指せる時代となり、関節リウマチの女性でも、寛解や低い活動性で安定した状態を継続している場合は、妊娠、出産が可能な場合もあるとお聞きしております。

 そこで、まず、若手女性、いわゆる生殖可能年齢にあるリウマチの患者数についてお聞かせいただきたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 まず、関節リウマチ患者数は、厚生労働科学研究においてNDBを用いて分析されたデータでは、全体として八十二・五万人と推計されております。また、この研究のデータを基に、十六歳から四十九歳までの女性の関節リウマチ患者数を厚生労働省において計算したところ、約八万七千人と推計されます。

吉田(久)委員 令和二年十二月三日、厚生労働大臣に、日本リウマチ学会の竹内理事長、日本産科婦人科学会の木村理事長、日本周産期・新生児医学会の中村理事長の連名で、若年女性関節リウマチ患者の医療費の公費負担に関する要望がなされたと伺っております。

 その要望書には、関節リウマチの患者さんの多くは生涯薬物治療を必要とし、推定患者は今言われましたけれども八十万人、男女比は一対四で女性が多い、そして三五%が生殖年齢に当たる二十代から三十代に発症をしており、関節リウマチに効果があって妊娠にも安全な生物学的製剤を使用して妊活をすることが理想と記されております。今お答えいただいた全国で約八万七千人の若手女性リウマチ患者さんの中で妊娠、出産を希望されている方にとっては大変な朗報だと思いますが、要望書にはまた、生物学的製剤は薬価が高いため使用できず、関節リウマチの治療を中断して妊娠を優先した場合は、産後に関節リウマチが高い率で悪化し、育児もままならない状況になることから、妊娠することをちゅうちょする女性もあると書かれております。

 関節リウマチを寛解させるだけでなく、産後の悪化に対しても即効性や効果の確実性がある生物学的製剤による治療の推進は、関節リウマチを患う女性の妊娠、出産を支える重要な取組であると思います。経済的な問題で妊娠を諦めることのないような環境の整備は少子化対策としても大変に有効と考えます。

 そこで、不妊治療が保険適用になったことも踏まえ、若年女性の関節リウマチ患者さんの妊娠周辺、一定期間の医療費の助成について早急に検討すべきだと考えますが、後藤厚生労働大臣の見解をお聞かせいただければと思います。

後藤国務大臣 関節リウマチは、治療期間が長く、社会的負担が大きな疾患でありまして、平成三十年に厚生科学審議会のリウマチ等対策委員会が取りまとめた報告書に基づき、医療提供体制や情報提供、相談体制等の充実、研究開発の推進等の対策に取り組んでおります。

 今先生からも御指摘があったように、関節リウマチ患者に一般的に用いられる比較的安価な治療薬には催奇形性がある一方で、妊娠や出産を希望する女性の関節リウマチ患者に用いることが容認されている生物学的製剤は高価であるということを承知いたしております。

 医療保険分野においては、家計に対する医療費の自己負担が過剰なものとならないように、高額療養費制度として、所得に応じまして月単位の窓口負担に上限を設けておりまして、御指摘のような患者の治療費についても、この制度において負担軽減を図っているところでございます。

 なお、こうした保険診療における自己負担を更に軽減するために、妊娠や出産を希望する女性の関節リウマチ患者に対し、リウマチの治療費を公費で助成することについては、他の様々な疾病に罹患されている方への対応との公平性、バランスということも考える必要があるというふうに思っております。

吉田(久)委員 関節リウマチの女性の妊娠、出産を妨げる要因を是非取り除き、希望する人々が安心して安全に子供を産み育てられる環境整備のために、是非今後も前向きな御検討をお願いしたいと思います。

 次に、母子健康手帳の今後についてお伺いします。

 まず、名称についてですが、母子健康手帳は、昭和十七年に作成された妊産婦手帳に淵源があり、今の名称に変更されたのは昭和四十年の母子保健法制定に伴うと認識しており、その後十年ごとに改正が行われてまいりました。最新の改定については、昨年の夏頃から子育て関係団体や自治体などからのヒアリングをし、そうした声を基に、どう反映していくのか、今検討されていると承知をしております。

 この母子健康手帳という名称についてですが、私自身も二人の子育て経験があり、当然深い思い入れはありますが、今、様々な団体からヒアリングでも出された意見だとは思いますが、育児が今や必ずしも母親だけに頼らない、父親やパートナー、祖父母が担っている場合など、家族の在り方が変化している中で、長年親しまれている母子健康手帳の名称も、例えば、パパママ手帳とか、親子手帳であるとか、子供中心にずばり赤ちゃん手帳とか、多様化する社会の中で検討する時期に来ていると思われますが、お考えをお伺いしたいと思います。

橋本政府参考人 母子健康手帳の名称につきましては、昨年度開催いたしました母子健康手帳に関する意見を聴く会、こちらにおきまして、母子健康手帳という名称を引き続き用いるという意見が多かったところではございますが、父親の育児参加の重要性ですとか、あるいは多様な家族形態がある中で、どのような名称とすることがよいか検討する必要があるというふうにされたところでございます。

 これまでも、自治体におきまして、親子手帳という名称を併記するなど様々な工夫が進められております。今年度、母子健康手帳の在り方について検討を行うに際しましては、このような実態を踏まえつつ検討を行ってまいりたいと考えております。

吉田(久)委員 電子母子健康手帳の使用状況について、お伺いしたいと思います。

 現在、母子健康手帳は紙媒体でありますが、近年、デジタル版の母子手帳を併用して利用する親は増加をしていると聞いております。

 かなりの自治体で、従来の紙媒体の母子健康手帳交付の際に、予防接種や健診の情報等をスマホやパソコンなどを通じてプッシュ型でお知らせする母子健康手帳のアプリ版の利用が進められており、ダウンロードして利用している親御さんたちからは好評で、また、自治体側も、そうしたサービスを望む親御さんが多いことに鑑み、徐々に増えてきているようでありますが、現在、こうしたデジタルでの取組を実施している自治体は全国でどのくらいあるのかをお伺いしたいと思います。

橋本政府参考人 令和三年度の調査研究事業でございますが、子供、子育て領域に特化したアプリ等の電子的な母子保健ツールを導入している又は導入が決まっているというふうに回答した自治体は、全体の四二・一%というふうに報告されております。有効回答率は五二・五%ではございますが、導入自治体におきましては、これまでに実施していなかった母子保健に係る住民向けサービスも提供できるようになったなどの効果が認められるというふうに承知しております。

吉田(久)委員 今お答えいただいたとおり、四二・一%、これだけ多くの取組が既にある中で、もちろん全ての方がスマホを利用していらっしゃるわけではなく、紙媒体が基本であるということは分かりますけれども、親御さんにとっては、自分のスマホで我が子の予防接種情報や健診情報をチェックする方がはるかに便利で、また、自治体にとっても、最新情報や、変更があった場合の情報提供など、正確な情報を素早く送ることができることから、双方にとってメリットも大きく、むしろ導入されていない自治体の親御さんは、もっと国がいろんな面で導入を後押ししてほしいというのが実情だと思います。

 実際、公明党の多くの地方議員も、各地の要望の声を受けて、電子母子手帳アプリの導入のリーダー役を担っております。また、マイナンバーカードによる電子健康保険証の推進も含めて、国はデジタル化を進めていくことを目指しているわけですが、まず、身近なところでデジタル化の利便性、メリットを実感することは、インセンティブになるとも思われます。

 また、お子さんが生まれた後は、出生届等、数多くの手続を役所の窓口に、様々な窓口に行って、指定された用紙に記入し提出しなければならないということで、特に一人親家庭においてはかなりの負担になっているといいます。産後二週間までに役所に直接出生届を出すことは、パートナーがいない場合、ほとんど不可能に近いものです。これも、電子母子手帳等を活用し、ひもづけして諸手続をデジタル化できるようにすること、また、困難を抱える親子には支援制度の利用を促すプッシュ型のサービスの周知など、電子母子手帳を入口とすることによって、難しいデジタルから人に優しいデジタルとして浸透していくことが期待されると思います。

 今回の検討では、是非とも紙とデジタルの併用を行っていくことを国としても積極的に推進していくべきだと考えますが、大臣の所見を伺いたいと思います。

後藤国務大臣 まず、母子健康手帳に掲載される妊婦健診や乳幼児健診等の健康情報や予防接種情報については既に一部電子化されて、これはマイナポータルを通じて、本人がスマートフォン等で閲覧できる仕組みを国としては設けているところでございます。

 また、先ほど政府参考人の方からも答弁させていただいたとおり、各市町村による母子保健に関する電子的なツールの導入、これは電子化のような、アプリ情報を使うものやSNSのプッシュ型も含めてでございますけれども、そうしたものも御指摘のとおり四二・一%、進んでいるという実態でございます。

 今年度、母子健康手帳の見直しの検討を行うに際しては、このような実態を踏まえつつ、情報の更なる電子化を含めて、御指摘のとおり、より使いやすくなるように検討を進めてまいりたいと思います。

吉田(久)委員 是非、親子に優しい制度になるようにお願いしたいと思います。

 次に、更年期障害の対応についてお伺いしたいと思います。

 今、NHKの報道等で、「#みんなの更年期」ということで、多くの人にこの時期の女性の抱える困難を共有してもらおうと、報道番組などがクローズアップして組まれております。私も、女性活躍を進めていきたいという思いで政治家になった一人として、大変興味深く番組を視聴いたしました。

 四十代中期から五十代前半までの閉経期の女性の約四割が、更年期障害を経験しています。その様々な症状、ほてり、目まい、吐き気、動悸、激しい頭痛、うつ又は感情のコントロールができないなどの様々な病態から、幾つもの病院を受診しても更年期障害という診断に結びつかず、したがって、国際標準の治療であるホルモン充填療法というものに結びついた方は僅か五・二%、ある治療では二%という数字もありましたけれども、そういう状況で、残念ながら、離職をされたり、上司の理解がなく二十年にわたって積み上げたキャリアを失ったり、離婚で大事な家族を失ったりと、その影響は深刻です。

 私も更年期の経験がありますが、目まいや頭痛、吐き気に度々襲われ、ささいなことで感情が爆発してしまう。ちょうど子供も反抗期で、我が家の家の中は最悪。自身の人格が許せず、全てから逃げ出したいという思いになったりと、苦しい時期がありました。自分でも薄々更年期障害だとは分かっていても、受診するだとか、その症状が緩和できる、そういう国際標準の治療法があることなどは思いも寄りませんでした。

 イギリスでは、教育の場で更年期、更年期障害という言葉をオープンに使って、その年齢の女性がどんな状態にあり、苦しんでいるかを学び、いたわり、優しい言葉をかけるなど、周りの理解や対応も重要なことを中等教育等でも学んでおります。また、職場では、更年期を理由に解雇や降格などを行ってはならないことも法制化が目指されており、また、医療面でも、更年期障害の診断、治療が保険適用がされているなど、女性の健康を支える医療側の体制も整っているということでございます。

 そこでお伺いしますが、更年期の四十代後半から五十代前半といえば、男性も女性も責任ある役職に就いて、まさに経験に基づく能力を発揮すべき年齢だと思いますが、日本において、この女性の更年期障害による雇用の不安定化、離職や降格などによってどれくらいの経済的損失が生まれているのか、そこについて、国としての認識をお伺いしたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 更年期症状による離職の経済損失については、政府としては把握したものはございませんが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した調査があるものと承知しております。

 これによると、この機構がNHK等と合同で行ったアンケート調査において、現在又は過去三年以内に更年期特有の症状を自覚して、更年期症状の診断スコアが受診、診断レベルであって、かつ発症当時に有業であると回答した四十から五十九歳の男女労働者のうち、更年期症状が原因で離職したと自ら認識した者の割合と労働力調査の情報を基に、更年期離職者の人数が推計されております。

 その上で、推計した更年期の離職者数や平均賃金などを基に年間経済損失を算出すると、女性の場合ですと約千八百五十億円、男性の場合ですと約千三百四十億円であって、男女計で三千百九十億円の年間経済損失が生じているという結果が出ていると承知しております。

 同じ方法で、診断スコアの条件を除外して範囲を広げて、現在又は過去三年以内に更年期特有の症状を自覚したと回答した四十歳から五十九歳の男女労働者のうち、更年期症状が原因で離職したと自ら認識した者の割合等に基づいて推計した場合は、女性の場合は四千二百億円、男性の場合は二千百三十億円という年間経済損失、男女計で六千三百二十億円の年間経済損失が生じているという結果が出ていると承知しております。

吉田(久)委員 相当な金額の損失だと思います。是非国としてもしっかり調べていただきたいと思いますが、今までは、男女共同参画という言葉で、一部の男性から、女性が社会に出て同等の権利を要求するのであれば女性だからとの甘えは許されないという偏った認識の方も多く、この時期の女性特有の困難さを理解する土壌は大企業においても整っていないというのが現状だと思います。

 是非、生理休暇という制度に倣って、女性の身体的変化に寄り添った柔軟な働き方ができる制度の導入や、更年期障害緩和の国際標準治療に結びつきやすい医療体制の整備、また、教育の場においても、正しい知識を身につけ、本人と社会の認識を深めていくなど、全てを一遍に実現することは難しいにしても、女性活躍を進める上で、また、女性が幸福に、安心して年を重ねられるよう、是非とも国に前向きに取り組んでいただきたいと思いますが、これについて後藤大臣の所見をお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 更年期障害を患う労働者の職場における支援に関しては、まずは職場における更年期障害に関する理解を深めることで、年次有給休暇等の既存の制度を活用しやすい職場環境整備を推進することが重要であると考えております。

 このため、厚生労働省においては、働く女性の健康応援サイト等において、企業や働く女性に向けまして、更年期障害を含む健康管理に関する情報を提供しまして周知啓発を図るとともに、産業医を始めとする職場の産業保健スタッフに対しまして、女性の健康課題に関する知識の向上を図るため、各都道府県に設置された産業保健総合支援センターにおいて専門的な研修を実施いたしております。

 更年期障害の治療につきましては、日本産科婦人科学会がホルモン補充療法ガイドライン二〇一七をまとめるなど、必要な水準の医療を提供できるよう取り組んでいるものと承知をいたしております。

 また、厚生労働省において、女性の健康に関する情報提供サイトである女性の健康推進室ヘルスケアラボ等を通じまして、更年期障害の症状や治療法について広く情報発信を行っております。

 さらに、厚生労働省では、女性が人生の各段階に応じて抱える健康に関する問題を把握して、的確な支援につなげていくための研究にも取り組んでおります。今年度からは、更年期障害が日常生活に与える影響等に関する研究を実施する予定でありまして、その成果を支援策につなげていくなど、総合的な支援にしっかり取り組んでまいります。

吉田(久)委員 ありがとうございます。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、山井和則君。

山井委員 よろしくお願いをいたします。二十七分間、質問させていただきます。

 まず、後藤大臣、ちょっと質問通告にはないんですけれども、最新のニュースで、最後のページを見ていただけますでしょうか。低所得の子育て世帯に子供一人五万円再給付を検討ということのニュースを見ましたので、質問させていただきたいと思います。

 これは、先週も私たちが経済対策で政府に要望をさせていただきました。また、遡りますと、十五ページ右下にありますように、菅政権が昨年の三月二十四日にやると決めたもので、その基となったのは、昨年の一月、野党で、私も提出者になって、低所得の子育て世帯への給付金をやってくれという議員立法を出しまして、それを菅総理が丸のみをし、今日に至っていて、今回の緊急対策に是非入れてくれということで、我が党からも政府に今要望をしているところであります。

 つきましては、是非、これは超党派、与党の方々も思いは当然一緒だと思いますので、実現をしていただきたいと思います。後藤大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 今、対策については政府部内で検討している最中でありまして、決定を何かしているという状況ではありません。様々な意見を伺いながら、今の原油価格の高騰や物価高騰に対応して、必要な施策をしっかり取りまとめさせていただきたいというふうに思っております。

山井委員 今検討中ということですが、ということは、今検討している緊急対策の中に、低所得の子育て世帯、子供一人五万円の再給付も検討課題の中に入っているという理解でよろしいですか。

後藤国務大臣 入っていないと申し上げているので、ありとあらゆる課題を、我々、検討課題として、物価高あるいは原油価格高騰に対する経済対策として考えていきたいというふうに思っています。

山井委員 ちょっと今聞こえにくかった。入っていないことはないとおっしゃったんですか。もう一回言ってください。

後藤国務大臣 ありとあらゆる対策について今検討をしている最中でありまして、御質問がありましたから申し上げると、入っていないのかと言われたら、入っていないというわけではないということを申し上げたということでございます。政府としては、基本的に、そうした観点から必要な対策を今検討中であるというのが、最初の、全体像を的確に示した言葉だというふうに思います。

山井委員 入っていないわけではないということは入っているということですので、検討中ということで、これは与野党を通じて本当にお願いをしたいと思います。

 例えば、あすのばという子どもの貧困対策センターの取組では、新学年の応援給付金を出しておられるんですけれども、千六百人に対して三万円から五万円を給付するというのに対して、何と一万六千人が応募をされた。去年は九千人だったということで、本当に、困窮度合い、深刻化しておりますので、是非とも、与野党共に要望しておりますので、実現をしていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 これについては、今までからこの厚労委員会で私も何度も質問をさせていただいております。高校生AV出演解禁を止めてくださいと、ぱっぷすさんの資料であります。

 このことについては、まず御礼申し上げたいのは、本当に齋藤理事、牧原理事、伊佐理事を始めとして、党派を超えて取り組んでいただきまして、与党PTとしても今案を作成してくださっていると思います。

 昨日も岸田総理の答弁で、一ページの右下にありますように、各党の皆様の御議論の動きがあることは承知しており、契約解除可能期間などの御指摘のような点も含め、御議論の内容や状況をよく見守るとともに、早期に結論が得られることを期待いたしますと。事実上、岸田総理も、異例ではありますが、この議員立法の、超党派で、AVの未成年者取消権がなくなることに対する対応ですね、それと同等、あるいは同等以上の効力を持つ議員立法を、早期成立を岸田総理も望んでいると。これは、はっきり言って異例の答弁だと思います。

 三週間前に質問を塩村議員がされたときは、議員立法の協議を見守る。そして、十日ほど前に早稲田議員が質問されたときは、議員立法の議論をフォローアップするだったんですね。昨日は、早期に結論が得られることを期待しますですから、本当に、与野党を超えて、総理を先頭にこの議論が進んでいると思います。

 そこで、自民党、公明党さんも、すばらしい案も今作成されていると聞いておりますが、ただ、誠に申し訳ないんですけれども、肝の部分がまだ詰まっていない部分がありますので、あえて議事録に残る形で今日議論をさせていただきたいと思います。

 そして、まず現状認識として申し上げます。このページにありますように、残念ながら、四月一日以降、こういう、四月一日法改正、これは前回もお配りしましたけれども、十八歳何とか三年生、秘蔵映像公開、売りますというようなこと。次のページにもありますように、これはもう、十八歳何とか三年、新しい法律では年齢的に問題ないでしょうということで、どんどん売り出されてしまっております。

 この被害者の方々の支援団体の、ぱっぷすさんのお調べによりますと、この種のサイト、四月二十日の時点で四百五十九人がレビューをしているということは、四百五十九人ぐらいの方が買われたのではないかと。

 ということは、一つが二万五千円ということですから、一千百万円ぐらいの売上げが、これだけでも、そういう現役高校生アダルトビデオと称するもので、このサイトだけでもそういう商売が行われているのではないかという非常に深刻な事態であって、当然これは立法府、政府、試されている部分もあるんですね。こういうことをどんどん売っていって、セーフであれば、これはもう十倍、百倍に増えていきますよ。そこを止めるために、私たち衆議院厚生労働委員会も、国会も存在するのだと思っております。

 それで、かつ、被害者の声が被害者支援団体ぱっぷすさんに届いておりますので、読み上げさせていただきます。一ページの右です。ちょっとつらい内容ですけれども、読み上げさせていただきます。

 声一。二十歳になった瞬間に、脅されてサインをさせられ、アダルトな撮影をされました。山の中で断る状況ではありませんでした。何年も契約があって、断れず、何本か出されました。お金もなく、弁護士も頼めず、契約解除もできませんでした。十八歳になったら、こういう被害は増えると思います。

 これは、十八歳の取消権がなくなったら、こういう被害が十八歳にも増えるのではないかと。

 こういうのを見れば、いや、脅されたんだったら警察に訴えればいいじゃないかとおっしゃるかもしれませんけれども、もちろん訴えられる方もいるけれども、泣き寝入りしている方というのが残念ながら大部分なんですね。これは本当に何とか私たちが守らねばと思います。

 声三。お金が欲しいと安易にプロダクションと契約してしまいました。撮影日にやっぱりやめたいと思いましたが、大勢の年上の男の人に囲まれて断ることも怖く、結果、複数回撮影してしまいました。実際に映像が発表されてからは一日五回ぐらい自殺したいと考えたりしました。同級生にも知られて、本当に私かを確認するためにみんなで何回も見たと言われたときはとてもつらかったです。今は会社員をしていますが、もしかしたら周りの誰かが知っているのではないか、ばれたら会社を辞めなければならないのではないかと不安です。私のように、発売された先の未来を考えずにお金が欲しいと契約してしまう十代、二十代の方がほかにもいるかもしれません。私は五年以上たった今も、当時のことを思い出してつらくなったり、あのとき出演しなかったらと考えたりします。私のようなつらい経験をする人が出ない世の中になってほしいと切に願っています。

 児童福祉法はこの衆議院厚生労働委員会、厚生労働省の管轄でもありますが、十八歳以上であっても、また、十八歳前から囲い込みとか類似的な勧誘は始まるわけですから、後藤厚労大臣としてもこれは看過できない問題ではないかと思っております。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 内閣府にお越しをいただいております。今、配付資料にもありましたように、未成年者取消権がなくなった四月一日以降、現役高校生出演アダルトビデオが増加しているという認識はありますか。四月一日以降、現役高校生出演アダルトビデオの販売は増えていますか。いかがですか。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点については、アダルトビデオに出演する現役高校生の確認方法や販売の範囲など、様々な論点があり、内閣府として現状を直ちに把握することは難しいものと考えています。

 その上で、昨今、現役高校生出演をうたうアダルトビデオがポルノサイトで販売されていることは承知しております。

山井委員 つまり、もちろん、じゃ、その方が本当に高校三年生ですかとか、その検証のことはあるとは思います。

 ただ、これは、ぱっぷすさんにもお聞きしましたけれども、やはり、いろいろチェックをする中で、そういうものが売られている、そしてこの四月一日から増えているということであろうということを、ぱっぷすさんもおっしゃっておられました。

 私が言いたいのは、行政というのは、確認できません、確認できませんとおっしゃいますけれども、半年、一年、二年たって、そう言っている間に、インターネット、女子高生のアダルトビデオだらけになったら、これは誰が責任を取るんですかという話なんです。これは内閣府を責めているんじゃないんです。だから、私たちは今、議員立法でやらねばと思っております。

 つまり、現状認識として、残念ながら、こういう現役高校生のアダルトビデオが、販売が増えているのではないかという現状があるわけです。

 そこで、御質問します。結局、なぜ、今年の三月末までは高校三年生を含む十八歳、十九歳が出演するアダルトビデオや、十八歳、十九歳のアダルトビデオ出演者が二十歳以上に比べて少なかったのですか。内閣府に見解をお聞きしたいと思います。

 ちょっと説明をさせていただきます。

 例えば、支援団体ぱっぷすさんの資料にありますように、四ページにありますように、二十歳未満のアダルトビデオ被害相談件数は二十人、二十歳以上が六十一人。少ないんですね、非常に。ここについては、ぱっぷすさんの資料にありますように、少ないように二十人は見えますけれども、これは未成年者取消権が抑止力として機能していたということではという分析であります。

 それともう一つは、今日お配りした配付資料、前回もお配りしましたが、読んでいただきたいんですけれども、二ページ目左下、三月一日投稿のアダルトビデオ事業者ブログ。

 この方は、四月一日から取消権がなくなって、今後は十八歳のビデオを売っていくという趣旨のことを書いています。

 年齢が低いほど需要が高まるからです。今までは撮らなかった、でもこれからは撮ります。今回の法律施行は棚からぼた餅だと。

 その理由は、二ページ目の上を読んでください。なぜ今まで十八歳、十九歳を撮影しなかったのか。

 それは、かつて私自身が未成年の子を撮影し、作品公開が没になった。十九歳でということですね。承諾書にサインをもらっているし、そのときは援助交際で知り合ったからオーケーじゃないかと親からの抗議に反論したら、親御さんが映像を公開するなら弁護士を立てて裁判も辞さないと言ったので、みすみす、みすみすというか、この方は作品を没にせざるを得なくなって、今までは十八歳、十九歳のモデルの採用は控えていたと。

 つまり、未成年者取消権があるから、抗議されたら、取消権を行使されたら没になるから、今までは撮影していなかった。でも、左下にありますように、四月一日からは方針を転換して、これからは没にならないから撮影して売りますと言っている。恐ろしい、残念ながら、話なわけなんですね。

 そこで、改めてお伺いします、内閣府。今まで、この三月末まで、高校三年生を含む十八歳、十九歳が出演するアダルトビデオや、十八歳、十九歳のアダルトビデオ出演被害が二十歳以上に比べて少なかったのはなぜだと認識されていますか、内閣府。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 高校三年生を含む十八歳、十九歳が出演するアダルトビデオ出演被害が二十歳以上に比べて多いか少ないかということについては把握はしておりませんが、悪辣な手口によりAV出演被害の問題が起きることはあってはならないことです。

 一般論として言えば、未成年者取消権がある場合には、他の要件の必要はなく、無条件で契約を解消することが可能であり、事業者に対する一定の抑止力になるという面もあると推察されます。

 いずれにしても、三月三十一日に決定した「アダルトビデオ」出演強要問題緊急対策パッケージに基づき、関係省庁と連携して、アダルトビデオ出演被害の根絶にしっかりと取り組んでまいります。

山井委員 ちょっと弱いというか。一定の抑止力なんですか、かなり効果があったんじゃないんですか。

 この配付資料九ページにありますように、九ページ、十ページ。前も読み上げましたけれども、九ページの左下。二十歳になると、プロダクションが第二次の営業委託契約書を交わし、その契約書の内容は、最初に取り交わした契約書の内容とほとんど変わらず、アダルトビデオという文言が入ったということで、二十歳になったら契約している。

 その次の裏のページも、十ページ下。Cさんの例は、十八歳未満のときにスカウトされ、そのまま、十八歳以上、二十歳以上と法的に自立する年齢になるまで様々な理由をつけてプロダクションにつなぎ止められ、挙げ句に撮影に至ったと。成人に達しているか否かはかなり決定的なあれだと。

 それで、十ページ目の左。契約を結べるのは成人になってから。

 十ページ左上。Bさんの場合、スカウトされたときには二十歳になっておらず、二十歳の誕生日を迎えたところで、契約書にサインをしている。契約に至る経緯には、プロダクション側にも言い分があろうが、私たちから見ると、スカウトされて二、三か月ほどジム通い、プチ整形などで時間稼ぎをして、二十歳になるまでBさんをつないできたと。

 内閣府さん、一定の効力、私から言うと絶大な効力があったんですよ。それでほとんどのアダルトビデオのメーカーさんとかプロダクション、取消権が成ると回収することになって大損害を被るから、先ほどのブログに書いておられたように、もう十八歳、十九歳はアダルトビデオに出演させなくて、二十歳の誕生日を取って契約していた、これが事実なんですよ。その一番、十八歳、十九歳の方々、男性も含めてですけれども、アダルトビデオから守っていたとりでであった取消権が四月一日からなくなって、今、残念ながらそういうビデオが増えてきている、こういう状況であります。

 そこで、法務省にお伺いをいたします。なぜ、それだけ取消権というのが効力があったか。これは、ぱっぷすさんの資料でありまして、今日の配付資料の三ページ目を見てみてください。

 後ほど後藤大臣にも、最後でちょっと御見解をお伺いをしたいと思っております。

 つまり、単に契約の解除の場合は、これ以上アダルトビデオ出演しなくても済むが、販売は続く、拡散された動画の削除などはできない、被害者にとって常に身ばれの恐怖、アダルトビデオ業界の抑止力にはならないと、解除は。今まで撮ったやつは売っていいわけだから。それだったら、作品を撮影して売ったら、今後は駄目ですよと言われても、アダルトビデオ業界としてはそれほど痛手にならないわけですよ。

 ところが、取消権に関しては、取消権ということは契約が無効だったという遡及効果、初めからなかったことになるという強烈なものですから、加害者に原状回復責任、原状回復義務が生じる。それによって、ぱっぷすさんがおっしゃる、今、販売、拡散した動画の削除が現時点では可能であると。もちろん、これは残念ながら、買って家に持って帰った、ダウンロードして個人的に持っている、ここまでは回収は無理ですよ。でも、店頭にあるものとか、売っているインターネットのものは削除できるという絶大な効果が取消権にあったわけです。

 あえて大事なので確認をしますが、アダルトビデオの未成年者取消権については、事業者に原状回復義務はありましたか、法務省。

堂薗政府参考人 お答えいたします。

 一般に、取り消された行為は、御指摘のとおり、初めから無効であったものとみなされますので、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務、原状回復義務を負うこととされております。

 未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為が取り消された場合にもこれらの規律が適用され、取り消された契約に基づく債務の履行として未成年者から給付を受けていた者は、未成年者にこれを返還して、当該法律行為がなかったのと同様の状態に復させる義務を負うことになります。

山井委員 つまり、これは、配付資料五ページにありますように、原状回復の義務というのが取消権にあるんです。第百二十一条の二、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負うと、原状回復義務が取消権にはあったと。

 そこでなんですけれども、今、私たち与野党で議論をしております。やはり、契約の解除だけではなく、取消権並みの原状回復義務が必要だ、遡及効が必要だ、こういうことについて、今、与野党で協議をしております。

 つまり、それがなかったら、繰り返し言いますけれども、なぜ今十八歳、十九歳の方がAV出演を契約でされていないのかというと、メーカー側あるいはプロダクション側にとったら、後で原状回復義務、回収しなさいといったら大きな損害を被るから、これはやめておこうという抑止力になっているわけです。

 ところが、今回、私たち、今、議員立法を与野党で協議しておりますけれども、その中にも取消権と同じ効力の原状回復義務を入れることができるか、これは入れねばならないと思いますけれども、そこがポイントなんですね。

 そこで、法務省にあえてお聞きします。一般論として、取消権でなく、アダルトビデオ契約の解除において、遡及効、つまり原状回復義務を事業者に負わせる法律を作ることは、一般論として可能ですか。

堂薗政府参考人 お答えいたします。

 解除の原則的規定である民法五百四十五条第一項では、当事者の一方が解除権を行使したときは、各当事者は、相手方を原状に復させる義務を負うとされているところでございます。

 ある類型の契約について法定の解除権を設ける場合に、その効果として原状回復義務を負うものとすることは、解除に関するこのような原則的規定に合致するものであり、可能であると考えられるところでございます。

山井委員 これは非常に重要な答弁で、与野党で合意すれば、取消権並みに強力な、契約の解除とセットで原状回復義務、つまり、店頭に出ているビデオの回収、インターネットで売られるやつの回収、その法律を作ることは法律的には可能だと。これは非常に重要な答弁であります。

 そこで、もう一つポイントは、今、もう一つ議論させていただいておりますのは、与党の方々も大変頑張ってくださっております、私たちもそれを応援する立場です、そういう前提で言いますと、撮影が終わった後、一定期間、無条件に取り消せるようにする、そういうことが必要なんではないかという議論をしておりました。この一定期間ですね。

 では、お伺いします。未成年者取消権の行使可能期間は何年ですか。その期間が長い理由は何ですか。法務省、お答えください。

堂薗政府参考人 お答えいたします。

 未成年者取消権を含む取消権につきましては、追認をすることができるときから五年間行使しないときは時効によって消滅するとされ、行為のときから二十年経過したときも同様であると規定されているところでございます。

 未成年者が親権者の同意を得ずにした法律行為は、民法第五条第一項の規定に反するものであるため取り消すことができるものとする必要がある一方で、法律行為をいつまでも取り消すことができることとすると、余りにも法律関係が不安定なものとなるところでございます。

 そこで、権利関係を確定し、法律関係を安定させる観点から、追認することができるときから五年という消滅時効期間が定められたものと理解しているところでございます。

山井委員 これも重要な答弁であります。つまり、短過ぎたら意味がないと。かといって、残念ながらですけれども、私たちは長い方がいいと思っているんですけれども、ただ、長過ぎるのも法務省としてはいかがなものかということで、五年。

 具体的に言いますと、二十五歳までですから、十八歳の人の場合は七年、現状では。現状では、十八歳即契約、撮影した人の場合は、二十五歳になるまでの七年、それで二十歳直前の人は五年、最短五年ということなんですね。

 これについては、五ページ目にありますように、取消権の期間の制限、第百二十六条、取消権は、追認することができるときから五年間行使しないときは時効という、五年間ということなんです。

 ですから、今、与野党で協議しておりますが、これぐらいの、昨日、岸田総理が答弁されましたけれども、契約解除可能期間、やはりこれぐらいの長さが必要なのではないかというふうに思います。

 そこで、後藤大臣にお伺いをしたいんですが、今後、児童福祉法改正法案も議論をいたしますが、今、瀬戸際なんですね。このまま議員立法なしにこの国会が終わったら、現役高校生アダルトビデオはもう激増、急増する危険性があります。そういう高校三年生出演のアダルトビデオが増えることは、高校生や子供への性犯罪、性暴力を助長する懸念はないか、児童福祉法の理念に反すると思わないか。そこは、大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 先ほどから山井委員が本当に熱心に述べておられます、若年層への性暴力被害が深刻化するのではないかという大変大きな懸念については、私としても共有をいたしております。アダルトビデオへの出演の強要や性暴力は、あってはならない重大な人権侵害でありまして、政府一丸となって対応すべき課題と認識しておりますので、厚生労働省としても、内閣府を中心とした性暴力被害の防止に関する取組に協力しておりまして、できることは引き続き適切に対応していきたいというふうに考えております。

 また、性暴力が十八歳未満の児童を対象としたものであれば、まさに児童の健全育成といった児童福祉法の理念からいっても、全く許されるものではないというふうに考えております。

 以上でございます。

山井委員 時間がありませんので、最後に一問だけ質問させていただきます、内閣府。

 昨日、岸田首相は本会議で、未成年者取消権がなくなったことにつけ込む性的搾取は許さないということを答弁されましたが、具体的にどのような性的搾取かお答えくださいということと、よく、今まで内閣府は国会答弁で、意に反するアダルトビデオ出演はあってはならないという答弁をされているんです。私、実は、ここは残念ながら、非常にちょっと重要なポイントなんです。

 つまり、今朝の朝日新聞にもインターネットで出ておりましたけれども、残念ながら、例えば、断りにくい雰囲気で撮影しちゃった、あるいは本当に、今朝も朝日新聞にも出ていましたけれども、お金がなくて、どうしてもそのときはそういう撮影をされちゃった、でも、半年、一年たって、就職したい、学校に行きたい、結婚したいとか、様々な中で、やっぱり取り消してというケースは当然あると思うんですね、動画が一生残るというのはもう耐えられないことですから。

 そういう意味では、内閣府としては、結局、高校三年生のアダルトビデオが増えることは、意に反しないアダルトビデオだったらオーケーということなのか。意に反してなくても、やはり高校生の現役のアダルトビデオはよくないということなのか。これは本質的なことなので、内閣府の見解をお聞きしたいと思います。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 アダルトビデオ出演被害について、具体的には、モデルやアイドル等への憧れや好奇心を利用する、顔は映さない、絶対にばれない等と説明することにより契約に至るといった悪辣な手口はあってはならないということを岸田総理は答弁されたものと認識をしております。

 このような昨今の巧妙化する手口については、更なる情報収集の必要があると考えております。このため、先般決定した「アダルトビデオ」出演強要問題緊急対策パッケージにおいて、手口の更なる情報収集を行い、注意喚起するとともに、教育啓発や各種相談窓口とも情報を共有し、活用を促すこととしております。

山井委員 もう時間なので終わりますが、極めて残念ですね。内閣府がこの国会の場で高校三年生のアダルトビデオはよくないという答弁をできない、しないというのは、私は非常に残念です。でも、責めるわけではありません。そこの部分は、与野党で、私たちで協議をして、しっかりと対応していきたいと思います。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 立憲民主党の長妻昭でございます。

 今日、冒頭、尾身先生に質問をしようとしていたんですが、いらしておられないと。準備されておられたと聞いておりますけれども、自民党の反対でここには呼ばないということになったと聞いております。

 これはとんでもないことだと思いますね。自民党の議員の方も、呼ぶべきだと思う方、いると思うんですよ。何でこんなことをするんですかね。公明党も、呼ぶの反対なんですか。ちょっと信じられない。尾身先生がいなくて、コロナの質疑なんかできないじゃないですか。

 尾身隠しですか。過去も、ここの委員会でも、政府にとって耳の痛いことをおっしゃっておられた記憶がありますけれども、まさかそういうことではないと思いますけれども、専門家の意見、政府の政治的判断とは別にお伺いするというのは大変重要なことですので、是非、委員長、考え直していただきたいと思います。

橋本委員長 私の考えでしたわけではございませんが、今日は理事会で協議が調わなかったということでございます。

 ただいまの件につきましては、後刻、理事会で協議をいたします。

長妻委員 現状……(発言する者あり)だから参考人で呼んでいるんですよ、今日。自民党から何か言っていますが、参考人で今日呼んだんですよ。(発言する者あり)この間は違うでしょう、テーマが、新型コロナと。今回はコロナで質問するので、自民党が、参考人で呼べって、今日、呼んでいるんですよ。自民党の皆さん、ちょっと知識がないんじゃないですか。ちょっと、お願いします。

 後藤大臣にお伺いしますけれども、ちょっと尾身先生がおられないので。今、第七波はもう始まっているという認識でございますか。

後藤国務大臣 今の感染の状況につきましては、全国的に見れば、新規感染者数の七日間の移動平均では前週比で減少をしておりますが、地域別に見ると、継続的に増加している地域もある一方で、横ばいの地域や減少している地域も見られるなど、感染状況の推移に地域で差が生じている事態であります。

 厚生労働省として、感染拡大の波について明確な定義は設けてはおりませんけれども、感染力がより強いBA・2系統への置き換わりの状況も含めて、今後の動向に注意が必要と認識をいたしております。

 感染拡大の波のことについて申し上げるとすれば、十二月末からの感染拡大について、一般に第六波と呼ばれているものと承知していますけれども、いわゆる第六波について、一月末から二月の上旬にピークを迎えた後、感染者数は減少傾向にありましたけれども、その後、三月下旬から再び感染者数の増加が見られたわけでございます。

 この感染者数の増加が継続的に全国的な感染者の増加につながっていくのか、第六波の一部と捉えられるような一時的な感染者の増加にとどまるのかについて、引き続き慎重に感染状況を見極める必要があるというふうに思います。

長妻委員 ちょっと現状認識が甘いと思うんですね。国民の皆さんにもやはりきちっとメッセージを出さなきゃいけない。第七波は始まっていると私は思うんです。

 アドバイザリーボードの専門家の先生方の中でも、第七波はもう始まっているとおっしゃっておられる方もいらっしゃるので、これから五月の大型連休が始まるわけで、その前にやはりきちっとしたメッセージを出さないといけない。このまま自然体でいってしまいますと、五月の中旬とか、大きな波がやってきかねないと強い懸念を持っています。

 連休前に蔓延防止措置を一定の地域に出すべきだと思うんですが、後藤大臣、いかがですか。

後藤国務大臣 今、長妻委員の御指摘のとおり、ゴールデンウィークが近づく中で、人流や都道府県を越える移動が増えることも予想されることから、引き続き、感染防止策の徹底が必要であるというふうに認識しております。

 このため、国民の皆様には、感染リスクの高い行動を控えていただいて、改めて、マスクの着用、手洗い、三密の回避や換気などの基本的感染防止策の徹底を心がけていただくように、機会をつかまえてはお願いをさせていただいている状況でございます。

 感染が再び拡大する可能性も懸念される中で、政府としては、引き続き最大限の警戒を保ち、昨年十一月に取りまとめた全体像で準備してきた保健医療体制をしっかりと稼働させていくことを基本としつつ、必要であれば、これまでの考え方にもとらわれることなく、適時適切に対応していく必要があるというふうに考えています。

 また、蔓延防止等重点措置の実施につきましては、特定の都道府県全域において感染拡大のおそれがあり、それに伴い、医療提供体制、公衆衛生体制に支障が生ずるおそれがあると認められる場合に、政府対策本部長が基本的対処方針分科会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断するものでありまして、厚生労働省としても、随時アドバイザリーボードを開催して感染状況の分析、評価を行うとともに、政府一体となってしっかり対応していきたいと思います。

長妻委員 従来と変わらないですよね。自然体でこのまま大型連休になだれ込むというのは、私はあってはならないというふうに思いますし、沖縄を始め蔓延防止をしないといけない。つまり、蔓延防止措置というのは、蔓延を防止する。これまで、蔓延をし始めて、相当ピークに近づいて蔓延防止を打っていましたよね。蔓延を防止するというのが蔓延防止措置ですから、是非、厳しい対応をきちっと、連休前ですから、していただきたいというふうに思います。

 そして、農薬の安全性について農水省にお伺いしますけれども、言われているネオニコチノイド系の農薬チアクロプリドについて、EUでは今どんな状況にあるのか、その理由も分かればお知らせください。

沖政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のチアクロプリドにつきましては、二〇二〇年一月にEUの欧州委員会が登録更新を認めなかったと承知をしております。

 これは、当該成分を人への生殖毒性があると推定されるものとした欧州化学品庁の分類結果等に基づきまして、欧州食品安全機関が人の健康に及ぼす影響への懸念等も示した評価結果を提出したことを考慮し、欧州委員会が決定したものと理解をしております。

長妻委員 にもかかわらず日本では平気で使われていると。心配でございます。

 これは、子供の成長に影響というのもあったんですか、EUの判断で。

沖政府参考人 私どもの承知をしている範囲ですと、化学物質全般について欧州化学品庁が評価を行う仕組みの中で、動物試験等のデータに基づきまして、人への生殖毒性があると推定されるというカテゴリーに分類をされたというふうに承知をしております。

長妻委員 いろいろあるんですけれども、もう一つ、有機リン系殺虫剤クロルピリホス、これは、EU、米国で禁止、一旦使われていたのを禁止したようでございますが、理由は何でございますか。

沖政府参考人 お答えをいたします。

 米国の官報の情報によりますと、米国においては、安全性の評価の結果、食品、飲料水等からの暴露量が神経毒性及び発達神経毒性の懸念されるレベルを超えることを踏まえ、食用作物への使用の登録が削除されたと承知をしております。

 また、EUの官報の情報によりますと、EUにおきましては、再評価の結果、遺伝毒性に懸念があること、発達神経毒性に影響が認められ、生殖毒性が懸念されることから、登録の更新が認可されなかったと承知をしております。

長妻委員 これも平気で日本では使われていると。心配でございます。

 今日は国会図書館にもお出ましいただいて、この前者、私が申し上げたのは、ネオニコチノイド系殺虫剤の話でございます。後者は有機リン系殺虫剤の話でございます。それぞれについて、発達障害との関連性を疑うような、そういう論文について御紹介いただければと思います。

樋口国立国会図書館専門調査員 お答えいたします。

 ネオニコチノイド系農薬が発達障害に影響を与えているという研究論文といたしましては、東京都医学総合研究所の研究員等を務めた木村・黒田純子氏、黒田洋一郎氏らが二〇一二年に発表したプロスワン誌の英語論文がございます。これは、新生児ラットの小脳ニューロンに対するネオニコチノイド系農薬の影響に関する論文であり、ネオニコチノイド系農薬には、人の健康を害し、特に子供の脳の発達に影響する可能性があることが記載されております。

 この二〇一二年の論文の著者の一人である木村・黒田純子氏は、雑誌「現代農業」の二〇一九年八月号で、最近の研究成果として、ネオニコチノイド系農薬のマウスへの影響に関する国立環境研究所、神戸大学、近畿大学の研究等を紹介した上で、ネオニコチノイド系農薬と発達障害の関連については近年研究が進んだものの、完全な解明にはまだ時間がかかる、しかし、未来を担う子供に関わる重要事項については、予防原則に基づいて、危険性が指摘された時点で規制が必要であると述べられています。

 続きまして、クロルピリホスでございますけれども、雑誌「科学」の二〇二二年三月号に掲載されました遠山千春氏、木村・黒田純子氏らの論文は、クロルピリホスの暴露を胎児期から小児期にかけて受けた同一の児童を長年にわたり追跡してきた米国の疫学的研究を紹介しており、これによれば、建材用クロルピリホスの胎児期の暴露量が多いと精神発達への影響が顕著になること、クロルピリホスを含む有機リン系農薬の胎児期の暴露と、記憶力、知能指数の低下や注意欠如症状の増加との関係が認められたこと、胎児期の有機リン系農薬の暴露で、学童期に精神発達が遅延することなどが挙げられております。

 以上でございます。

長妻委員 非常に不安です。仮に日本で発達障害や子供の脳への影響があるとすれば、大変なことでございます。

 今日、食品安全委員会にも来ていただいておりますけれども、調査をするということになったと聞いておりますけれども、食品安全委員会はお子さんの発達障害や脳の発達との関連性も含めた調査をするんですか。

鋤柄政府参考人 お答え申し上げます。

 食品中の残留農薬の食品健康影響評価におきましては……(長妻委員「いや、発達障害」と呼ぶ)発達障害でございますね。発達障害を含めまして、食品中の残留農薬の食品健康影響評価におきましては、海外や国際的な機関における情報を収集しつつ、農林水産省が定めているガイドラインに沿って、リスク管理機関、農林水産省等から提出された試験成績等に基づきまして評価を行っております。

 このガイドラインにおきまして、発達神経毒性につきましては、ほかの毒性試験の結果から神経学的影響が認められ、発達期の神経毒性を確認する必要がある場合に、試験成績の提出を要するとされており、例えばネオニコチノイド系農薬の評価におきましても、こういった資料が提出されるものというように考えております。

 今後、再評価に係る諮問があった際には、食品安全委員会において、発達神経毒性の結果や公表文献等の最新の科学的知見に基づきまして、専門家により評価が行われることとなります。

長妻委員 しっかりと、本当にしっかりと評価をして、もう既にこれは欧米で使えていないわけですから、そういう農薬についてはもう速やかに私は規制する必要があると思うんですが、食品安全委員会はいつから調査を始めるんですか。

鋤柄政府参考人 お答え申し上げます。

 農薬の再評価におきましては、現在、農林水産省の方で資料の準備等をしているということで、それの準備ができましたら私どもの方に諮問がされるものというように考えております。

長妻委員 農水省、諮問はいつするんですか。

沖政府参考人 今御指摘のございましたものにつきまして、現在、三種類の農薬について、私ども、再評価のための資料の提出を受けております。それらにつきまして、独立行政法人農林水産消費安全技術センターにおいて、提出されたデータに漏れがないか、あるいはGLPですとかガイドラインに適合しているかどうか、そういうような確認を行っております。

 この再評価という仕組み自身が新しい仕組みなものですから、経験的にどれくらいで終わるという蓄積がないものですから、今の時点で、いつ内閣府に諮問できるかということについては、ちょっと申し上げることができません。申し訳ありません。

長妻委員 ちょっと信じられないんですが。食品安全委員会がまだ調査が始まっていない。それは、その前に農水省が諮問しなければ調査は始まらないということですよね。その農水省が食品安全委員会に諮問する時期すら分からないと。とんでもないことですよね。

 これは、年内には諮問するんですか。

沖政府参考人 お答えをいたします。

 済みません。先ほど三種類と申しましたが、今、五種類のネオニコチノイド、申請を受けておりますけれども、今後の評価のプロセスを円滑に進めるためには、資料の提出を受けた今の段階で、データ等の不足がないか確認しておくと……(長妻委員「年内にやるんですか」と呼ぶ)ですので、今、かつ、この再評価は新しい仕組みなものですから、どれくらい実際、データ確認に時間がかかるか、その蓄積がなくて、経験がなくて分からないというのが現状でございます。申し訳ございませんが、国会の場で、いつ諮問できるということをお答えできる状況には今ございません。

長妻委員 これは私、聞いてびっくりするんですね、年内かどうかも分からない。でも、その資料というのは、新たな研究じゃなくて、メーカーからもらう資料なんですよね。その資料なんて、メーカーからもらえばいいじゃないですか。何やっているのかなと。

 これは、後藤大臣、人ごとではもちろんありませんで、食の安全は、この農水省の諮問は厚労省も受ける可能性があるわけですから、厚労省の基準課ですかね、食品の。そういう意味で、発達障害ということも厚労省の所管でしょうから、後藤大臣、ぐずぐずせずに早くやってほしい、きちっとやってほしいというようなメッセージを出していただきたいと思うんですが、いかがですか。

後藤国務大臣 国民の命と生活を守っていくという観点から、必要なことについては検討させていただきます。

長妻委員 ちょっと消極的なんですけれども。

 これは農水省の話じゃないですからね、健康の話ですから、是非、主体性を持って、もうちょっと踏み込んだことをもう一言言っていただければ。

後藤国務大臣 しっかりと、委員の今の御指摘も踏まえて、どう対応していくのか考えていきたいと思います。

長妻委員 じゃ、是非是非よろしくお願いをいたします。

 このテーマは以上でございますので、この関係の方はお帰りいただいて結構です。ありがとうございました。

 最後に、防衛省、お出ましいただいていると思うんですが、防衛省にお伺いしますが、ロシアに核兵器の自動報復システムがある、こういうふうに聞いたことがあるんですが、これは事実ですか。

橋本委員長 農林水産省さんと食品安全委員会事務局長さんは、もう御退出いただいて結構です。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありました自動核報復装置につきましては、様々な論考がございますが、例えば、防衛省の防衛研究所が刊行している「安全保障戦略研究」というものがありまして、その中に、これについて記述したものがあります。

 ただし、防衛研究所が刊行する「安全保障戦略研究」は、防衛研究所や部外の研究者が執筆した個人の研究論文を記載する論文集でありまして、防衛省としての見解を述べたものではありません。

 その上で申しますが、二〇二〇年八月に発刊された論文集の中に、ロシアのいわゆる死者の手というシステムについて記述したものがございます。この論文は、公刊資料を引用する形で、死者の手について以下のように述べております。

 すなわち、これは、一九八五年にソ連が運用を開始したとされる自動核報復システムであり、アメリカの先制核攻撃によってソ連指導部が壊滅し、核報復の命令が出せなくなった事態に備えて開発、配備されたものである。そして、核攻撃の早期警戒情報を受けてシステムが起動されると、ほぼ自動的に報復核戦力を発動する仕組みになっており、現在も稼働中と見られている。かように述べているところであります。

長妻委員 最後のところ、現在も稼働中と見られていると。ソ連で始まったシステムということでございますが、これはどういうメカニズムで発射ということになるんですか。もう少し詳しく説明いただけますか。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 ただ、これは今御紹介した論文が引用している公刊資料にある記述ということになりますけれども、例えばですね、幾つかの条件を満たした場合には、この死者というシステムは、核報復の発動に係る通常の指揮命令系統を迂回して、直ちにシステムの当直将校に核報復を発動する権限を委譲する、最後に、当直将校が発射ボタンを押し、複数のサイロから指令用のミサイルが発射されると、その後に人間が介在する余地はない、飛び立った指令用ミサイルはソ連の各地に残存している核戦力に対して空中から無線で暗号化された発射命令を送信し、アメリカに対する報復攻撃が自動的に発動される、こういった記述が引用されているところであります。

長妻委員 死者の手ということを今御紹介いただきましたが、仮に、今、ロシアはウクライナ侵略しておりますけれども、ロシアでクーデターなどが起こって相当混乱したとき、このシステムによる不測の事態というのが起こる可能性もあるのではないか。大変心配でございます。

 翻って、日本国においても国民保護法制というのがあって、今、世界の秩序が混沌とし始めております。厚労省の役割も、これは防衛省任せではもちろんいけませんで、国民保護計画の概要ということで一番最後におつけしておりますが、厚労省も、武力攻撃を受けたときには相当な役割を果たさなければならないというふうに考えております。

 後藤大臣にお伺いしますが、日本が武力攻撃を受けたときに、核の脅威含めて、厚労省としてはどのような対応を考えておられますか。

後藤国務大臣 今、こうした事態に対しては、内閣官房等において危機に関する対応を検討をしている、検討、調査も進めているというふうに思っております。

 国民保護ということは厚生労働省にとっても重要な課題でありまして、政府一体となって取り組むべき課題であるというふうに当然思っておりますので、そうした内閣官房における研究、検討について、厚生労働省として必要な協力を行っていきたいというふうに思っています。

長妻委員 ちょっと確認すると、非常に、国民保護計画の中で厚労省の役割というのはきちっと決まっているんですが、これの検討がなかなか進んでいないような気がいたしますので、しっかりとした検討をして、実施計画をきちっと策定をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

橋本委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、私は、東京電力福島第一原発事故後十一年を経過いたしましたが、特に緊急時の作業に携わってくださった皆さんの健康管理ということについて、大臣にお尋ねをいたします。

 平成二十三年の三月十四日から十二月十六日までの間、収束のために、被曝線量を一時期、二百五十ミリシーベルト、限度を上げた時期に働いておられた方二万人、また、実は現在も収束のために日夜作業してくださっている方がいて初めて、まだ緊急事態も取れておりませんが、私どもの国が一定この放射線の事故からある意味で回復したり、あるいは被害を最小化させるための取組中であると思います。

 そして、そこで働く皆さんの健康管理、安全性について、果たして政府は十分な対応をしておるかということで、私は二〇一九年の質問主意書で、約二万人、あのときの緊急事態の緊急作業に関わった皆さんに対して健康管理手帳を出すべきではないかと。健康管理手帳は、アスベスト等々で皆さん御存じと思いますが、自分の不安なとき等々、健診を受けられて、特に、アスベストもそうですが、発がん等々の事態が早期に発見されるということであります。

 私の質問主意書に対して御答弁は、いわゆる原子力施設等における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針でちゃんとやっているから健康管理手帳については考えておらないということでありましたが、では、大臣に伺います。この指針、どんな目的で設けられているものでありましょう。

後藤国務大臣 がんその他の重度の健康被害を引き起こすおそれのある業務への従事歴がある方で、一定の要件を満たす方には、労働安全衛生法に基づきまして、離職の際又は離職後に健康管理手帳を交付しまして国の費用で健康診断を実施しているというのは、今委員の御指摘のとおりです。

 この健康管理手帳制度については、御指摘の平成三十一年の質問主意書で答弁したとおり、離職後の労働者について、その従事した業務に起因して発生する疾患であって、発病まで長期の潜伏期間があり、しかも発病した場合重篤な結果を引き起こすものの予防ないし早期発見のために創設したものでありまして、現在もこの考え方には変わりはありません。

 なお、福島第一原子力発電所の事故発生後に緊急作業に従事していた緊急作業従事者等については、原子力施設等における緊急作業従事者等の健康の保持増進について定めた指針、いわゆる大臣指針に基づきまして、緊急作業に従事した間に受けた放射線量に応じ、がん検診等の実施を事業主に対して求めるとともに、離職後は厚生労働省ががん検診等に要する費用を援助するなど、長期的な健康管理を実施することといたしております。

    〔委員長退席、高階委員長代理着席〕

阿部(知)委員 今の大臣の御答弁は、健康管理手帳は長期的に見てがんなどの発生がある場合、それを今現在採用していない理由は、このガイドラインで当時の二万人の方をフォローしておると。大臣、最後のところをちょっと省略しておっしゃったので。この方たちには、一部についてはがん検診が受けられますが、全員が受けられているわけではありません。

 このガイドラインに基づいた三つの区分が資料の一枚目にございます。

 この二万人全体に対して、その作業に従事した登録証が送付され、うち五十ミリシーベルト以上の方については、白内障の検診のために、いわゆる緊急作業従事者等被ばく線量等記録手帳というものが五十ミリシーベルト以上には渡され、五十ミリシーベルト以上であれば白内障の検診、さらに、百ミリシーベルト以上であればがん検診、そういう三つの区分になってございます。

 果たしてこれが十分に機能しているかどうかということで私はお尋ねしたいと思いますが、この二万人のうち、例えば、必要な健康診断等々は一体何人受けておられるのか。また、五十ミリシーベルト以上被曝された方のいわゆる白内障検診の受診率はどうであるのか。百ミリシーベルト以上の方のがん検診の受診率はどうであるのか。これは担当部署でも構いません。大臣がお分かりであれば大臣でも結構です。

 申し訳ないので、時間が無駄ですので、私から言わせていただきます。

 多分、昨日伺ったところ、二万人のうち、いわゆる離職された後は健康診断を受けておられませんので、会社が実施する健康診断が約二千十八件、一割ですね。それから、白内障の検診は、対象者九百十一人のうち四九・〇九%、半分しか受けておられません。がん検診は、対象者百七十四人のうち百五十四人、九割弱ということで、これで大臣、よろしいでしょうか。

後藤国務大臣 今おっしゃられた、事業主から一般健康診断の結果の報告があった人数は二千六十人ということでございますし、それぞれの、先生の数字はそのとおりだというふうに思います。

阿部(知)委員 約一割弱しか健康診断を受けておられないということ、そして、がん検診についても、百ミリシーベルト以上でも百五十数人しか受けておられないということ、私は、これは大変に深刻な事態と思うのです。

 それで、次の資料に挙げてございますが、果たして、東京電力福島第一原発事故のこの二万人、緊急作業に関わった中で、現在まで何人、がんが労災で認められておりますでしょうか。これについてどうでしょう。

吉永政府参考人 お答え申し上げます。

 東京電力福島第一原発の事故後の平成二十三年度以降、当原発で作業した方で、電離性放射線による疾病で労災認定をされた方は八件となってございます。

 この八件の内訳につきましては、白血病が三件、甲状腺がんが二件、肺がんが一件、咽頭がんが二件となってございます。

 また、一方、東京電力福島第一原発事故後の平成二十三年度以降、東京電力福島第一原発以外の原発労働者で電離性放射線による疾病で労災認定された方は五件となってございます。

阿部(知)委員 次まで御答弁ありがとうございます。

 福島では八件、それ以外では五件。二万人から八件、それ以外、多分二十万人近い方がおられると思いますが、五件ということで、明らかに多いと私は思います。

 そこで、大臣、資料の二枚目を御覧いただきたいと思いますが、ここには、近々、昨年の九月に認定された咽頭がんの二例について書いてございます。

 一例目は、トータルの線量百九十九ミリシーベルト。これは、この方は長いこと放射線業務に関わっておられましたから。うち、事故後の収束作業で受けた被曝は八十五ミリシーベルト。

 もう一方、ケース二については、この方も平成八年から十五年間放射線業務に従事されて、トータルで三百八十六ミリシーベルト、うち、事故後は四十四ミリシーベルトとなっております。

 実は、このお二人は、緊急作業のときに従事した線量は百ミリシーベルト以下であります。そうなりますと、このお二人はがん検診の対象には基本、ならないと思うのですが、いかがでしょうか。今までのガイドラインだと、五十と百で割って、この片一方の方は白内障の検診の対象にすらなりません、緊急時の被曝線量で決めてございますから。

 私は、この二つの事例を見ても、ほかも調べてみましたが、結局、そのときだけの線量で、今分けている三つの区分で健康管理ができるのかどうかということをお尋ねしたいと思います。局長、もし、この事実認識、どうでしょう、よかったら答弁してください。

吉永政府参考人 委員先ほど御指摘いただきましたとおり、基準としては、五十ミリシーベルト、百ミリシーベルトという緊急作業期間中の被曝によりまして、白内障の検診、がん検診という形で設けてございますので、それ以外、その期間に当該基準を満たさない方については、現状の大臣指針の対象としてはなっていないというところでございます。

阿部(知)委員 白内障検診を受けられないのももちろん問題ですが、がん検診が受けられない、受ける対象となっていない。しかしながら、現実に二万人から八件のがんが出ている。やはりこれは深刻に考え直していただきたい。

 私がなぜ健康管理手帳というものをこの方たちに交付していただきたいと思うのか、それは、今の区分でそこに当てはまらなくても、健康診断を受けて、早くにがんを発見していただきたいと願うからであります。

 そもそも、健康管理手帳とはどのようなものであるのか。実は、昭和四十七年四月二十五日の衆議院の社会労働委員会で、塚原労働大臣が、離職後の労働者について、従事した業務に起因して発生する疾病で、発病まで長期の潜伏期間があって、しかも発病した場合重篤な結果を引き起こすものの予防ないし早期発見のためというふうにおっしゃっております。

 健康管理手帳の意義は今も変わりませんね。大臣、いかがでしょう。

後藤国務大臣 先ほど申し上げたと思いますけれども、健康管理手帳自身の目的、離職後の労働者について、その従事した業務に起因して発生する疾患であって、発病まで長期の潜伏期間があり、しかも発病した場合重篤な結果を引き起こすものの予防ないし早期発見のために創設したものでありまして、現在もこの考え方に変わりはありません。

阿部(知)委員 二〇一九年の私の質問主意書で、なぜこれを適用されませんかとお伺いいたしましたら、健康管理手帳の交付要件に三つあって、一番目は、当該物質等について重度の健康被害を引き起こすおそれがある、二番目が、当該物質等の取扱い等による疾病が業務に著しい影響を与えるということ、そして三点目となりますが、当該物質の取扱い等による疾病、がんその他の重度の健康障害の発生リスクが高く、今後も当該疾病の発生が予想されることという中で、三点目が整わないから健康管理手帳の適用ではないという御答弁でした。

 しかし、繰り返しますが、福一で働いた、緊急作業に従事した方からのがんの発生は高く、有意に高いと思います。

 なお、現在もトータルな申請が二十八件あって、うち八件が認められ、九件が審査中で、不支給は十一件。すなわち、これからもまだ増えてくるという途上にあると思います。

 明らかに発生リスクが高く、今後も疾病の発生が予想されます。そうなると、三要件を満たしていると言えるのではないでしょうか。局長、検討していただきたいが、いかがでしょう。

吉永政府参考人 委員御指摘のとおり、健康管理手帳の交付につきましては、三つの要件、そのうちの、がんその他の重度の健康障害の発生リスクが高く、今後もその疾病が発生すると予想されることという要件が入ってございまして、現時点におきまして、国際的な医学的な知見等々からするとこの要件に該当しないのではないかということで、現時点におきまして健康管理手帳の交付というものは行っていないところでございます。

 現在、緊急作業従事者につきましては疫学調査を行っているところでございまして、その疫学調査の中でそういった問題が有意に出てくるということであれば、当然そういうものに対応してくるというふうに考えるところでございます。

阿部(知)委員 そうおっしゃったので疫学調査も見てみましたが、ほとんど意味ある集計データがありません。むしろ、今ここに出されている労災申請、そして結果的に認められた労災件数の多さ、これが何よりも発がんの証拠なんだと思います。

 労災認定は、一定の基準で積み重ねられてきたものであります。何度も申し上げますが、既に申請全体は二十八件に及び、八件が認定され、近々、咽頭がんも認められました。最初、白血病、そこから甲状腺がん、肺がん、そして咽頭がん。これからも増えてくると思います。

 大臣、虚心坦懐に見直してみて、私は、特に作業員の皆さんには感謝をしなきゃいけないし、健康を守らなきゃいけないし、今のおっしゃったような研究ベースでやっている中には何のデータも出てまいりません。労災から見て、認定から見て、このがんの多さということで発生リスクということを判断し、健康管理手帳を出していただきたいが、御検討いただけますか。大臣にお願いします。

後藤国務大臣 健康管理手帳の交付の条件等については、先ほどから御指摘もあり、三番目の、がんその他の重度の健康障害の発生リスクが高く、今後もその疾病の発生が予想されることという三つ目の要件が、法令で定められた被曝限度を超えないことが事業主に義務づけられているということから、健康管理手帳の交付ということは難しいということを申し上げております。

 科学的な根拠、そうしたことについてしっかりとフォローしていくということは必要なことだろうというふうに思います。

 それから、労災補償については、放射線業務従事者が罹患したがん等について、その時点での医学的知見に照らして個別に総合的検討を行った上で、労働者の補償に欠けることのないように労災認定は行っておりまして、健康管理手帳の交付とは考え方が異なると考えております。

阿部(知)委員 そのようにおっしゃっても、今、ガイドラインでやっている業務でたくさんの抜けが起きているんです。これをまずお認めいただかないと。それから、二〇一九年の時点で私が質問したときはまだ五件でした、労災は。本日ただいま八件。これからも増えてまいります。是非、あのときやっていただいたことに対して、その方の健康を国が責任を持ってフォローするという観点から、もう一度考えていただきたいと思いますので、今日は一回目の指摘とさせていただきます。

 引き続いて、二問目、いわゆる婦人相談員と言われている皆さんの業務について、あるいは待遇についての質問をさせていただきます。

 いわゆる婦人保護事業と言われておりまして、様々な困難を抱えた女性たちに対しての支援の体制として、昭和三十一年に作られた売春防止法の成立以降、近年のストーカー被害に至るまで、様々な女性が抱えた困難、あるいは、DVは男性も被害になりますから、そういうものに対して、婦人相談員等々が置かれております。

 果たして、その婦人相談員は、実は、発足当初から、一九五六年の売春防止法の当時、わざわざ、婦人相談員は非常勤とするという規定が法律の中にございました。父子支援のスキームとこの婦人相談員だけが、わざわざ書かれた非常勤とするという、そういう規定を持ったものでありますが、いかに何でもこれは問題ではないかということで、二〇一七年の児童福祉法の改正の折に共にこの規定は削除されましたが、当時、すなわち発足当時、つくられた当時、いかなる理由で非常勤とされ、また、二〇一七年、いかなる理由で削除されたのか、大臣に御答弁を伺います。

    〔高階委員長代理退席、委員長着席〕

後藤国務大臣 婦人相談員につきましては、売春防止法成立当時、適切な人材を得て、できるだけ早期に相談体制の整備を図る必要があったこと等を踏まえまして、その配置については非常勤とされていたというふうに認識しております。

 しかしながら、都道府県等における職員の任用については、採用を行う都道府県知事等において、地域の実情等を考慮しつつ判断されるべきものであることから、平成二十八年に売春防止法が改正されまして、婦人相談員を非常勤とする旨の規定を削除いたしまして、常勤による配置を可能としたものであります。

阿部(知)委員 六十数年据え置かれて、やっと改正されたのですが、現状はどうかということでお伺いをいたします。

 婦人相談員は、その後、常勤化することも可能な道が開かれたとおっしゃいますが、お配りしました資料の終わりから二枚目を見ていただきますと、実は大半が会計年度職員で、うち、会計年度の中でもフルタイムとパートとありますが、八〇%は、会計年度職員の八割はパートであります。フルタイムが一二%、本来的な正規職員は六%。

 これを見ていただきますと、現状では雇い止めもありますし、この方たちが極めて重要な、例えば地域で調整に関わるときも、自分自身の身分がどうなるか分からないという中で仕事をしておられます。

 大臣は、なぜこのようなことが今も、非常勤ではなくて常勤化できるようにした、けれども、ほとんどが任用職員である、雇い止めもある、継続ができない、なぜこのような事態になっているとお思いでしょう。大臣に伺います。

後藤国務大臣 今先生から御指摘のように、全国で千五百三十三名配置されている相談員のうち、千三百十三名、八五・六%が非常勤職員となっているわけであります。

 もちろん、令和四年度予算において、婦人相談員手当について、経験年数に応じた加算の設定や期末手当の支給等、婦人相談員の適切な処遇の確保に向けた措置を講じておりまして、例えば経験年数五年の場合は、年収ベースで二百三十七万二千円から三百三万九千円と、六十六万七千円の処遇改善の増が令和四年度予算において図られてはおります。

 しかし、今先生からおっしゃられた、職員の任用について、常勤配置になぜなっていないのか、常勤配置にすべきではないかということにつきましては、都道府県における職員の任用の問題であって、都道府県知事の下で判断されるべきものでありますし、他の同種の相談員との関係なども考慮して、公務員制度全体の中で、地方公務員制度全体の中で検討が必要なものであるとも考えております。

 厚生労働省としては、まずは、非常勤として配置する場合であっても、適切な処遇が確保されるよう努めてまいりたいというふうに考えております。

阿部(知)委員 確かに、令和四年度に予算づけをされた婦人相談員活動強化事業というものは、最後の資料につけてございますが、経験年数に応じた加算が新設されたり、研修をした、受けた場合の期末手当等々も加算をされるということで、これ自身はいいことなんだと思うのですが、ところが、実態を見てみると、果たして、五割以上の方が勤務継続年数は三から五年未満ということで、長期の勤続者は極めて少ない。そして、研修を受けると申しましても、大臣、今度、児童福祉法の論議があるからまた出てくるでしょうが、いわゆる子どもの虹センターのような研修機関も、婦人相談員の場合は国によって設けられておりません。子どもの虹の場合は、横浜と明石市にできましたけれども。

 すなわち、こういうことをつくっていただいても、年数は短い、研修は受けられない、果たして利用できるんだろうかということになります。

 大臣には、是非、実態を把握していただきたいと思いますし、特に研修の期間について早急に検討していただきたいが、いかがでしょう。

後藤国務大臣 必要な研修でありますとか、必要な例えば処遇の問題だとか、そうしたことについては、しっかりとまた考えていきたいというふうに思います。

阿部(知)委員 その必要な研修が本当に受けられない。いろいろな訴え、女性の抱える困難は多様化している。是非本腰の取組をお願いしたいと思って、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

橋本委員長 次に、早稲田ゆき君。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきでございます。

 質疑の時間をありがとうございます。

 それでは、質疑に入ってまいります。

 コロナ後遺症、それからコロナ対策、グループホーム、この三点について順次伺わせていただきたいと思っております。

 まず、後遺症についてでございますが、昨日、また夜のネット配信のニュースでも出ておりました。オミクロン株になって、更に増えているのではないかという報道も多々ございます。そして、昨日の報道でございますけれども、新型コロナ後遺症の三十代女性が、記憶力低下の症状もある、そしてまた、二か月以上たった現在も倦怠感、疲労感、吐き気、頭痛などがあるということの切実な訴えをされておりました。

 また、静岡県内でいち早く後遺症外来をやられている富士市の共立蒲原総合病院、ここで週一回当たっていらっしゃる土田医師によれば、この年明けの一月、二月に感染したオミクロン株での、大体オミクロン株と思われるということですけれども、後遺症を訴えてきている方が大変増えていると。そして、若い世代も、四十代、五十代、そして若干女性も多いのではないかというようなことであります。そして、デルタ株では味覚、嗅覚障害ということがメインであったとも言えるけれども、オミクロンでは、倦怠感、疲労感というものですね、考えがまとまらない、頭がぼうっとするというような、ブレーンフォグという症状も多く見られると語られております。

 この土田医師によれば、ワクチンを打つと半分ぐらい後遺症を予防できるのではないかともおっしゃっておりますけれども、こうした、非常にコロナ後遺症が多々報道されているわけでございますので、しっかりと国としても対策を強化をしていただきたいという思いで質問に入らせていただきます。

 昨年の十二月、罹患後症状マネジメント、診療の手引が発表をされました。資料を御覧ください。これについて何点か質問をさせていただきます。

 まず、この中で神経免疫系の専門家の編集委員はいらっしゃるのかどうかということが一点。

 それから、この中身についてでございますが、まず、二ページの方を御覧ください。

 こちらの方では、線を引きましたところです、このような症状は三か月ほどで約三分の二は回復しますけれども、不安が募ると更に持続、悪化することがありますというような文言がございます。

 これはどうなんでしょうか。今、自治体が必死になって調査をしています、コロナ後遺症の。そのものもたくさん出ております。埼玉県も神戸市も東京都もですけれども、五ページを御覧ください。後遺症、三か月以上が五四%という東京都の資料もございます。そういう中でこうした書きぶり、これは少しミスリードにならないかとちょっと心配なわけでございますが、このことについてが一点。

 それから、次の、資料三を御覧ください。

 説明はしっかり時間をかけて行い、大きな病態はないこと、何か小さな異常があるかもしれないが、感染は終わっており、基本的に症状が悪くなる病態ではないことを説明すると書かれておりますが、本当にそれだけであるのかどうかもまだ解明がされていない中に、こうした記述というのはいかがなものかという指摘も、外来、治療に当たっていらっしゃる先生方からもいただいているところです。ヒラハタクリニックの平畑先生もこうしたことを指摘をされております。

 また、専門の機関でありましても、二〇二〇年の十月、英国国際医療研究センター、NIHR、こちらの方がコロナの後遺症の四つのパターンの公表を既にしております。その中には、肺と心臓への恒久的な臓器障害、それから集中治療症候群、また、ウイルス感染後疲労症候群、ME、CFSも含む、あとは、COVID―19の症状が継続する、この四パターンを出しておりまして、臓器の障害もあるのではないかということも言われている中で、この診療の手引、今私が申しました三点についてどのようにお考えか。

 やはり、これは十二月に出されたものですから、もう既にステージも変わっておりますし、改善点は早急に改善をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。まとめてお尋ねいたします。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状、いわゆる後遺症につきましては、まだ明らかになっていないところ、たくさんございます。

 昨年十二月に、御指摘のように、専門家による診療の手引というのを取りまとめたところでございます。この具体的な手引の内容につきましては、かかりつけ医等の医療従事者向けの診療や経過観察の考え方、また、症状ごとに、かかりつけ医等がどの範囲まで対応し、どの時点で専門医の受診を勧めるか等について盛り込んでいるところでございます。

 まず、御指摘の、本手引の編集におきましては、神経学やあるいは免疫、膠原病の専門家の方々にも御参加をいただいておりますけれども、引き続き、関係学会との連携は進めていきたいというふうに考えております。

 また、この手引の記載について、いろいろと御指摘をいただきました。罹患後症状に悩む方々が適切な医療を受けられるように、この手引については、日々蓄積されてまいります科学的知見を踏まえながら、今後、必要に応じて改定を行って、より適切なものにしていきたいというふうに考えております。

 また、いわゆるME、CFSとの関係についても御質問いただきましたけれども、新型コロナウイルス感染症に起因する後遺症につきましては、このME、CFSとの関係性も含め、いまだ関連の有無が明らかになっていない点も多く、まずはその実態を明らかにすることが重要かと思っております。

 またこの点につきましては、今後とも、その実態の把握や病態解明のための調査研究の予算を確保しておりまして、引き続き科学的知見を集積していくとともに、臨床現場の意見あるいは新たな知見を踏まえながら診療の手引の改定を行うとともに、政府の取組を周知するなど、罹患後症状に悩む方が必要な医療を受けられるように、我々としても引き続き努力していきたいと考えております。

早稲田委員 不安ということがここに書かれているわけですけれども、ワクチンの接種後の副反応についても、不安とか心の問題ということが原因のような形で言われてしまうと、その方たちのこれからあるべき治療法とかそういうことを間違う可能性もあります。

 そして、私が申し上げた今の二点についてですけれども、三分の二の方が三か月で大体治っている、大きな病気にはならないということは、そこのところは改善をしていただけるんでしょうかということをお聞きしているんです。だんだんには改善していきますということではなくて、もうステージも変わっておりますし、どんどんどんどん自治体ではこういうデータを出しておりますから、やはりそごが出ていることは間違いないわけですから、是非そこのところは前向きに改善をということを御答弁いただきたいと思います。

 それから、ME、CFSについてでございますけれども、これについてももちろん、今世界的な知見がないから、だから調べていただくということでありまして、この後大臣にお聞きしたい二億円かけてこれからやる研究は、こうしたものも含めて、神経免疫系の専門家の方も入れてやっていただきたいと私は思うので、そのことについて、今の局長の御答弁では、少し、深まった御答弁ではないと私は思うので、是非そうしたところを今の実態に合っているものに改善していくということでよろしいですね。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 この診療の手引につきましては、引き続き、最新の知見を踏まえながら改定をしていくということにしております。また、その際には、専門家の方々の御意見を踏まえてやっていくということが必要だと考えております。

 今の段階でどういうふうに直すということを申し上げることはできませんけれども、そのような考え方で進めていきたいと思います。

早稲田委員 それでは、大臣に伺います。

 報道でございました、二億円かけてこれからまた科研費等の調査をやっていくということでありますけれども、これは後遺症だけに特化をしていないということでございますが、その中身、内容、今分かっている時点で、もう始まっていると報道では書かれておりましたので、教えていただきたいと思います。

 また、その中に、今まで入っていない神経免疫系の問題、ME、CFSとの関連性、そうしたものを、調査研究をしていただく一つの課題に挙げていただきたいと思いますが、その点についてもどのようにお考えでしょうか。

 それからまた、今の時点で、国としてはコロナ後遺症の方が大体何%おられると考えていらっしゃるのか。かなり自治体の知見も集まってまいりましたので、その辺のお取りまとめをされていると思いますから、お答えください。

後藤国務大臣 厚生労働省が新たに二億円で行うコロナ罹患後の症状の調査研究でございますけれども、現在、研究者において、本年度から開始する研究の詳細について検討中でございまして、まだ詳細を述べる段階にはありませんけれども、調査研究に一定の進捗が見られた際にその成果を御報告いただくことについて、研究者とも連携しながら検討していきたいというふうに考えております。

 また、引き続き科学的知見を集積していくとともに、臨床現場の意見や新たな知見も踏まえながら診療の手引の改定を行う等、罹患後症状に悩む方が必要な医療を受けられるように今後とも努めていきたいというふうに考えております。

早稲田委員 残念ながら詳細は決まっていないということでありますが、その中で、当然、コロナの後遺症についても新たな知見をやっていただくということでよろしいわけですよね。それをもう一度確認させていただきたいのと、今までの三つの科研費の研究がございましたが、ここだけでは足りない部分を、更に、オミクロン株ということもございますので、そこにも踏み込んでいただいた研究をしていただかないと、本当に、必要な医療にとさっき大臣おっしゃいましたが、そこにアクセスできていないんです。ですから、ヒラハタクリニックもそうですし、先ほどの富士市の蒲原病院もそうですけれども、そういうたくさん治療をしていらっしゃる現場のそういう先生方の御意見も是非ヒアリングを広くしていただきたいと思います。

 そして、ME、CFSの関連、もちろん、分からないというから、分からないからこそ調べなければならないのでありまして、私たちは、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労症候群、ME、CFSの会の方からヒアリングも行わせていただきました。その中で、二回ほど厚労省の方に要望も行わせていただきまして、昨年三月と十月です、こうした中で、どのような対策が講じられたのかという質問をして、そのお答えもペーパーでいただいております。しかしながら、この答えには三つの科研費の研究だけが載っておりまして、その中ではほとんど触れられていません、ME、CFSについては。だからこそ、神経免疫系の専門家を入れてくださいという要望をさせていただいているんだけれども、そこには神経内科の専門家は含めておりますと、編集委員にですね、さっきの診療の手引。でも、そこは違うんです。

 ですから、私が申し上げたいのは、国立精神・神経医療研究センター病院、こちらで山村隆先生が、このME、CFSとコロナの後遺症との関係も診療されていると聞いておりますので、そうした学会からの推薦とはまた別に、実際に診療されている、治療していらっしゃる、そういう知見も入れていただきたい、先生方の御意見も入れていただきたいということを強く要望させていただきます。

 この二億円の研究が、本当に今コロナで苦しんでいる方々のために資するように、そして、早く。この診療の手引も、今、専門家でない私が指摘しただけでも二つあって、もっとたくさんあると思います。それだけまだ遅れているのではないかと非常に心配しています。

 そして、今もなお、後遺症外来という名前のところに行っても、これは気のせいだとか言われてしまっている方がいるわけですね。そして、二か月も仕事ができない、収入も減ってしまっている、本当にそういう訴えがたくさんございますので、是非、政府も本気を出していただきまして、自治体がこれだけ大変だ大変だと言っているんですから、もう少し真剣に、早くやっていただきたいということを強く要望させていただきます。

 それでは、次の質問に移ります。

 臨時病床使用率の低さでございます。

 これにつきましては、報道等もあります。この資料にも書かせていただきました。六千床つくったのに、これは岸田総理の肝煎りですよね、二月に記者会見されました。都知事とそれから大阪府知事と会われて、コロナと戦うためには国と地方自治体が一体となってやっていくことが最強だ、そのために自分たちは千床の臨時病床をやるんだということをおっしゃいました。でも、それが、残念ながら一〇%の使用率では何もなりません。

 この間、どれだけ第六波で救われるべき命が失われたのか。本当に、私たちはかかりつけ医法案も出しましたけれども、そういうところにアクセスできない方たちがたくさん自宅で、あるいは高齢者施設で亡くなりました。そういう方たちを一人でもなくすために臨時病床施設をつくってくださいと私はこの二年間、厚生労働委員会で言い続けてきました。それでやっと、岸田総理になってこうしたことが、ああ、行われたんだと思いましたけれども、それが使われていないということはどういうことなんだろうと。

 大阪の方では、想定していなかったみたいなことをおっしゃって、それは若い人の感染が高いからと。とんでもないことだと思います。若い方の感染が高くても、高齢者の方はたくさん多くの方が命を落としておられます。だったら、それを想定しないなんということはあり得ない。それなのに、なぜ一〇%なのか。そして、国が司令塔としての機能を全く果たせていないこと、大臣に改善点を伺います。

後藤国務大臣 一般的に、臨時の医療施設は既存の病床を補完するものでありまして、その地域の状況により使用率が低くなる傾向があるわけでございますけれども、この冬の感染拡大においては、高齢者の入院の割合が高かったものの、臨時の医療施設の場合、通常の病床と比べて介護が必要な高齢者の受入れなどが人員や施設面で難しいところもあったというのが実態だと思います。

 一方で、感染の拡大が厳しかった東京都と大阪府において、医療従事者の確保を国が全面的に支援し、高齢者を受け入れる体制を整えた施設を整備をいたしました。

 高齢者対応のニーズは引き続き高いと想定されるため、四月四日の事務連絡を発出しまして、臨時の医療施設を始めとする既存の確保病床について、高齢者に対応した人員配置や環境整備を行うことにより、高齢感染者の受入れのキャパシティーを高めるように依頼をいたしております。

 今後とも、自治体、医療関係者、専門家等と緊密に意思疎通を図りながら、臨時の医療施設の活用も含め、必要な方が必要な医療を受けられるように、医療提供体制の確保に努めてまいります。

早稲田委員 何か余り本気度の感じられない御答弁で、大変残念ですけれども。

 もう実際にやっているところは、高齢者の方も入れて臨時病院施設でやっているわけですよね。私の神奈川でも、もちろん、湘南鎌倉総合病院の隣につくりましたから、それは万全にできているとはいえ、それでもやはり五〇%近く、そして最大ではもう八割の方が八十代以上だったということもあります。それはやはりそういうことを想定してやっていたからであります。それから、山梨県でも、山梨大学病院の方では七二%も、臨時病床施設でもその治療をされていたということですから、もうこれからはそういうことも想定をしてしっかりやっていただかないと、パフォーマンスだけでは人の命は救えません。ですから、そこのところをもっと、例えば酸素の投与施設をどんどんつくるとか、そういうこともしていただきたいと思います。今落ち着いているときに少しでも、少なくなっているときにそうしたことをどんどん考えていただく。そして、六月には司令塔というお話もありますので、国が率先して、大臣がリーダーシップを取っていただくことを強く要望いたします。

 それでは、ちょっと質問を飛ばしまして。

 これから第七波ということがなければもちろんいいわけですけれども、今日もNHKの朝のニュースでやっておりましたけれども、都市部は少し低くなっているものの、和歌山一・一五、鳥取一・一三、沖縄も一以上、それから病床使用率も五〇%近くということで、大変地域格差が心配だというお話でございました。このゴールデンウィーク前に、このゴールデンウィークに人の足を止めない、経済を回すために今何をすべきか。そしてまた、そうした注意点を国民の方々に広く強く発信をする必要があると思います。

 今日は国立感染研究所脇田所長にお越しをいただいておりますので、是非、具体的な、そして強いメッセージをいただきたいと思います。

脇田政府参考人 御質問にお答えいたしたいと思います。

 ただいま御紹介がありましたとおり、現在の感染状況ですけれども、全国的に見ますと、新規感染者数、これは七日間の移動平均で見ますと、三週間近く増加をしておりましたが、足下で少し減少してきているというところであります。しかし、地域別に見ますと、継続的に増加をしている地域もございます。一方で横ばいの地域あるいは減少している地域も見られるなど、その感染状況の推移に差が生じているという状況だと理解しております。

 この感染状況の増加要因としては、やはり、接触の増加、あるいは、感染力がより強いBA・2系統への置き換わりというものがございます。また、感染の増加を抑制する要因としては、三回目のワクチンの接種の進行であったり、あるいは、感染による免疫の獲得というものがございます。

 こういった状況を含めまして、今後の動向には注意が必要な状況でありまして、引き続き、アドバイザリーボードにおいても感染状況に関して評価をしていくということにしております。

 これまでも、年末年始あるいは年度替わりなど年中行事において、ふだん会わない人との接触が増えて、感染拡大のきっかけとなったことがございます。今後、ゴールデンウィークが近づく中で、旅行や外出で人流や都道府県を越える移動が増えるということも予想されております。引き続き、若い方を含めましてワクチンの三回目接種、これを進めること、それから感染防止策の徹底が必要だと考えております。

 したがいまして、ゴールデンウィーク中も、引き続き、マスクの着用、手洗い、三密の回避、換気など基本的な感染防止策の徹底を継続していただき、外出に際しましては、混雑や換気が悪い場所を避けて、大人数や大声など感染リスクの高い行動を控えていただくということが重要と考えております。

早稲田委員 今、脇田所長からお答えをいただきましたが、こうした地域格差が出ている、そしてまた、都市部以外の地方の方でもこういうふうになっているわけですけれども、県境をまたぐ行動制限は必要ないと今のところはお考えでしょうか。

脇田政府参考人 現在のところの感染状況でありますけれども、もちろん、地域的に感染状況に差があるという状況ではありますけれども、そういったところに外出あるいは移動をするということであれば、そこは感染対策をしっかりしていただく。つまり、感染のリスクというのは、やはり移動そのもの、移動中ももちろん感染対策をやっていただくわけですけれども、移動先での感染対策、これをしっかりやっていただくということが重要だと考えております。

早稲田委員 ゴールデンウィーク、そしてまたその後、また感染者が増えないように私たちも注意をしていきたいし、また、強いメッセージを国の方からも出していただきたいと、大臣にもお願いをしておきたいと思います。

 最後の質問でございますが、障害者向けのグループホームについて伺います。

 全国に一万八十六の事業所、十四万一千八百十人が利用されているグループホームでございます。生活の拠点となっています。そして、このグループホームですけれども、都市部を中心に四分の一がマンションなどの集合住宅内にあります。

 その中で、本年一月二十日、大阪地域において、消防法上の義務を果たしていないということを理由に、大阪市内のマンションの住戸を利用したグループホームに対して、その継続を認めない判決が出されました。

 この大阪地裁の判決に対しまして、ここにも資料をつけさせていただいております、全国手をつなぐ育成会連合会、日本グループホーム学会及びDPI日本会議などの当事者団体、親の会などが抗議声明を出しております。この内容を見ていただければ一目瞭然でございますが、このことについて、消防庁の御見解を伺います。

齋藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 抗議声明については承知をいたしております。

 一般論として申し上げれば、消防法におきましては、共同住宅に障害者グループホームが存する場合については、消火器や自動火災報知設備の設置など一定の対策を求めているところでありますが、その障害者グループホームが小規模である場合には、それに応じて必要最低限の対策となるよう負担軽減を図ってきたところであります。

 本件につきましては、訴訟が係属中でありますので、現時点で申し上げられることはなく、引き続き、その動向を注視してまいりたいと考えております。

早稲田委員 今お答えいただきましたが、この判決はもちろん確定はしておりませんけれども、障害者が地域で生活する上で、グループホームが主たる選択肢であるわけです、実際には。そして、その障害者を一定の居住場所から差別的に排除することにつながりかねず、また、国が掲げる共生社会の実現という理念に逆行する上に、国連障害者の権利条約第十九条に明らかに反するものであると私は考えます。

 三月十一日に障がい・難病PTを開催をし、このような当事者の困惑と将来への不安、つまりは、この判決が確定して、ほかのグループホームも追い出されることがないだろうか、そういうことまでもちろん、御自身たちのことも当然ですけれども考えていらっしゃいます。そして、直接声を伺いました。

 そこで、大臣に伺います。

 障害者総合支援法におけるこのグループホームは住居でありますよね。そのことを確認をさせていただきたい。そして、上級審の判決を待つことなく消防庁との協議の場を設け、利用者、親そして事業者の不安を早急に解消すべきと考えますが、その協議の御検討をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

後藤国務大臣 今の控訴審の話について言えば、現段階で具体的な対応を行うことが難しいと考えておりますけれども、引き続き、こうした問題について、適切なグループホームの設置、運営の観点から必要な検討を行ってまいりたいというふうに思っております。

早稲田委員 済みません、消防庁との協議の場を設けていただきたい、今御検討を是非していただきたいという御質問でございます。

 というのは、厚労省が後ろ向きであっては、こうしたことは成り立ちません。もう本当に、障害者のグループホームは、生活の場、そして居住の場であります、住宅であります。そこは大臣が一番お分かりだと思いますので、消防庁とよく話し合っていただく。そして、確かに規制の緩和もしていただいています。ですから、そういうことも含めて、もっと何かできることがあるのではないかという、そしてまた、当事者の意見を聞いていただきたいと思いますが、もう一度そこだけ、前向きに御答弁いただければと思います。お願いします。

後藤国務大臣 引き続き、消防庁ともよく連携しまして、適切なグループホームの設置、運営の観点から必要な検討を行ってまいりたいというふうに思います。

早稲田委員 是非、よろしくお願いいたします。

 これで終わります。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 本日は、私の地元、鹿児島県伊佐市で、食品大手日本ハムグループの二つの食肉加工、生産の工場が閉鎖される、清算されるということで、今、三百名の従業員の方々の仕事がなくなる、雇用を失う、そういう状況に直面しております。この問題について御質問させていただきます。

 ちょっと事実関係に触れたいと思うんですけれども、今から四十九年前、一九七三年に日本ハムグループが、鹿児島県の伊佐市に、主に豚そして牛の食肉生産、加工の二つの工場を造りました。日本フードパッカーグループの鹿児島工場ということで造られたわけですけれども、以来、本当に半世紀、皆さん御承知のとおり、鹿児島県の黒豚、非常においしいということで、全国に出荷をして、従業員の皆さんも誇りを持ってこの生産に取り組んできたわけでありますけれども、四月に入って突然、会社を来年三月末で清算して閉鎖するということになりました。

 従来、この日本フードパッカーグループは、全国に四社八工場あるわけですけれども、これを、再来年末の、二〇二四年の三月までに一社六工場に統合再編するということで、鹿児島工場、そして青森県の津軽の工場も閉鎖するということになりました。

 会社側の説明としては、豚の頭数を確保するのが非常に困難になっていると。確かに、養豚や畜産をやる農家が減っているのも事実です。高齢化、そして今、飼料や燃料が非常に高騰していますので、これでは経営できない、赤字になるということで、なかなか農家が減ってきているということがあります。また、人手が足りない。少子化や労働人口が減少している。新規の採用も難しい。そしてまた、施設や機械が老朽化している。設備投資がなかなか今できない。そして、アニマルウェルフェア、環境対策にこれからやはり多額の投資がかかりますので、こういったことも困難である。こういった理由で、統合再編せざるを得ないということなんですけれども。

 それで、この従業員の皆さんに対しては、今後の処遇については真摯に対応するということをプレスリリースでは発表しているところなんですけれども、この中身がどうなるか、まだ分からないところであります。

 もちろん、雇用の問題、伊佐市というのは人口が二万四千余りでありますので、ここで三百人もの仕事をなくす場合、数千名にこの影響が及ぶだろうと言われています。まして五十年もやってきていますので、今も、親子、あるいは孫、三代にわたって働いている方もいます。そういった意味で、地域経済にとっても、畜産業にとっても、非常に大きな打撃、マイナスになることはもうお分かりになろうかと思います。

 私も、先日、ここで働いている方々や地域の方といろいろお話を聞かせてもらいましたけれども、会社側としては、今、鹿児島工場を閉鎖しても、長崎とか四国とか北海道、青森、こういった別なところに転籍してくれということを言っているそうですけれども、これは、事実上、皆さんに聞くと、もう無理ですよと。

 これは、地元で、非常に今、その再雇用のために頑張っている伊佐市の橋本欣也市長も言われていますけれども、ほとんど、やはり若い三十代、四十代の方が多いです。子育て世代でありますので、家を建てたばかり、あるいは親御さんの介護、こういったことで、とても地元を離れて、長崎とか北海道とか、転勤することはもう無理だということでありますので、恐らく、この三百名の職を失うであろう方の一割も、そういったところに転籍する人はいないのではないかという声も聞くわけであります。

 こういった処遇に対しても非常に懸念されるところなんですけれども、これはもちろん民間企業のことではありますけれども、国として、厚労省さんとして、是非とも、こういう本当に過疎で非常に困っている中、せっかく雇用を守ってきたところであります。どういった支援を、手を差し伸べていただけるか、大臣、お答えいただきたいと思います。

後藤国務大臣 日本ハム関連の工場の操業終了につきましては、現在、鹿児島労働局と管轄するハローワークにおいて必要な情報収集を行っているところでございます。

 今後、仮に離職を余儀なくされる労働者が生じる事態となった場合には、早期の事前説明会の実施や、求人の確保と求人情報の提供、必要に応じて就職面接会の開催等も含めた職業相談、職業紹介の実施等、できることをやらせていただきたいと思います。

野間委員 是非、全力で真摯に向き合っていただければと思います。

 今、伊佐市の方も、一昨日、市関連企業雇用対策本部というのも設置して、近隣の市や町の工場に再就職の先がないだろうかと、様々なことを今市長も力を入れてやってもらっているところであります。

 昨年、一昨年と、こういった例、全国でもいろいろあります。

 昨年は、青森県のむつ市で、ストッキングの生産で有名なアツギ、この東北工場なんかは、ここもやはり工場の閉鎖ということで、五百名もの離職者が出るということで、これは、むつ公共職業安定所、あるいは、むつ労働基準監督署、県、そして、むつ市で構成するアツギ東北離職者雇用対策本部というのをつくって対応していただいているということであります。

 また、北海道の夕張でも、マルハニチロや夕張リゾートが閉鎖になるということで、その再就職のため、北海道労働局、夕張地域大量雇用変動等対策本部というのをつくって対応いただいておりますので、是非、厚労省さんとしても、力強い支援を地元のために行っていただきたいと思いますけれども、もう一言、大臣の決意をお願いしたいと思います。

後藤国務大臣 再就職支援など、先ほど述べたように、しっかりと支援をしていきたいというふうに思います。

 また、地域の雇用を担っていた工場がなくなるということは、非常に、働いている方にとっても、また地域にとっても重大な影響が出ます。しっかりと地方公共団体等とも連携をしながら、そうした対応を、国としても連携しながら支援を考えていきたいと思います。

野間委員 是非、お願いいたします。

 日本ハムの、非常に大きな企業グループの一員でありますので、退職金とか、今後の処遇について非常にいい扱いをしてくれるであろうということは確信しているところであります。

 日本ハムグループは、操業八十年、一兆円を超える売上げで、従業員の皆さんを非常に大事にする企業だということで、従業員の真の幸せと生きがいを求める場に職場をするんだ、一人一人を尊重し、それぞれが持てる力を発揮、活躍できる環境づくりを推進していくということをうたっておられます。

 これは過去の新聞等でも出ていましたけれども、二〇一八年に日本ハムグループが四十五歳以上の方の希望退職者を募りました。二百人募ったんですけれども、このために、会社の予算として、八十二億円の退職金の加算、プラスをするということで計上されていました。ということは、やはり、一人四千万ぐらいですね、希望退職の方にはきちっとした処遇をするということをされている企業でありますので、是非、今回のフードパッカーさんの三百名もの皆さんへの処遇もきちっとされるものと私も確信しているところであります。

 それでは、続いて、これは厚労省さんとそれから法務省が共管をしている外国人技能実習機構という、技能実習生を一元的に管理監督する機関の問題についてお尋ねしたいと思います。

 これは、四月六日の毎日新聞が報道してからいろいろ明るみに出てきている問題でありますけれども、二〇一九年にベトナムから、二十代、三十代の女性だそうでありますけれども、三人、日本に技能実習生として来日をして、宮城県の石巻市の水産加工会社に勤務をしたということであります。

 ところが、今、三年余りたって、働いている中で、上司からいろいろな叱責を受けたり、また、この三人の中の一人が、機械の操作で親指を切断せざるを得ない、そんな労災事故もあったりして、そういったところへの対応が雇主からきちっと受けられないということで、いろいろ会社と交渉していたんですけれども、そういううるさいことを言うなら辞めてくれということで、退職、離職を余儀なくされたということであります。

 それで、この三人の女性は、退職して五日後に外国人技能実習機構に相談に行って、何とかしてほしいと言ったら、機構の担当者から、あなたたちも悪いところがあるんだ、会社に謝罪の手紙を書けということを言われて、何とか復職したいのでそれを書いたら、突き返された。そしてその後、その三人は機構の担当者と面談したら、その前に、この三人は、自分たちで全く頼りもないので、地域の合同労働組合の仙台けやきユニオンという個人で加盟できる組合に入っていたんですけれども、そうしましたら、その組合をやめてこい、やめれば復職等、話合いに応じてもいいということを、会社側がこう言っているからといって、機構の担当者が、組合をやめて、それで出てこいということをメールでこの三人に伝えて、そうすれば会社も話合いをしますよ、早く返事を下さいということをこの三人に言ったんですね。

 組合の脱退を条件にして話合いに応じる、機構の方がそれを促すようなメールを送ってやっている、これは明らかに、組合を脱退せいというのは不当労働行為であります。この事態に対して、大臣、どうお考えでしょうか、この事実に対して。

後藤国務大臣 今般、外国人技能実習機構において、技能実習生への相談を行う過程で、復職の条件として労働組合からの脱退を求める企業の主張を漫然と技能実習生に伝える等の不適切な対応があったところでございます。

 労働組合からの脱退を求めることは、労働組合法に規定する不当労働行為に該当するおそれのある行為でありまして、厚生労働省としても遺憾であると考えております。同機構に対して、速やかに再発防止策などについて指示をしたところでございます。

 今後、技能実習生の意向に沿って転籍の支援を行う中で、職員の発言等、不適切であったことを反省し、しっかりと同機構が対応していくように求めてまいりたいと思います。

野間委員 今大臣から、反省しという言葉がありましたけれども、この三人の皆さんも、不適切だったということは言われたそうですけれども謝罪なり反省の言葉がなかったということでしたけれども、今大臣から反省という言葉が出ました。それを先方も聞いてもらえればと思います。

 今、再発防止等のお話も出ましたけれども、こういう機構ですね、実習生のある意味、一番相談できるところの皆さん、労働関係の法令とかそういったことについての研修とか、そういったことは従来から行われているんでしょうか。

小林政府参考人 まずもって、本件事案でございますけれども、労働基本権に対する基本的な認識を欠いていたということでありまして、非常に深刻に受け止めておるところでございます。

 日頃からもちろん機構の方は職員に対する研修を行っておりますけれども、今回の事案というのは、職員一人一人の基本的な自覚、認識に関わる部分でありますので、重ねて研修を行うように指示をしたところでございます。

野間委員 あと、やはり、相談を受けるときに、一人で受けるということではなくて、いろいろ人員の関係はあると思いますけれども、二人で受けていろいろ相談して答えていただくなど、そういう体制の整備もしていただければと思います。

 外国人技能実習機構の令和二年度の業務統計を見ますと、年間で合計一万三千件余りの母国語の相談を受けています。相談の内容として、管理に関することや、賃金、時間外労働等の労働条件に関することが非常に多いです。実習先を変えたい、こういったことの相談も多いです。

 こういった相談を受けて、これを、では本当に、実地検査、実習先がどうなっているか実地検査が必要なところもかなりあると思うんですけれども、相談と実地検査の連携というのはどういうふうになっているでしょうか。

小林政府参考人 御指摘いただきましたように、技能実習機構の方では、母国語相談として、電話、メール等の相談を行っております。こうしたものを実効あるものとするということで、昨年四月からでございますが、緊急案件に対する専用相談窓口として、技能実習SOS・緊急相談専用窓口というのを開設いたしました。

 また、通常の母国語相談につきましても、技能実習生からの相談内容というものを関係の職員が情報共有、分析をして、緊急性の判断を行っているところでございます。

 さらに、今月からでございますが、機構の組織改編を行いまして、実習実施者等への指導と技能実習生の援助を一体的に行う指導援助部を新設いたしたところでございます。

 今後とも、母国語相談を広く行いつつ、指導、保護というのが迅速、適切に行われるように対応してまいりたいというふうに思います。

野間委員 大分、機構改編等で対応できる体制になっているということでありましたけれども、この実地検査についても、監理団体については年一回検査する、それから実習実施者については三年に一回ということでありましたけれども、法の制定当初より監理団体も実習実施者も大幅に増えておりますので、実地検査が本当に適正に行われているのか。

 それと、実地検査における指導件数、要するに、技能実習法に違反している数が四割近くあるという統計が、三八%ですね、あります。こういったことを踏まえると、やはり実地検査の回数は増やしていくべきだと思いますけれども、そのために、先ほどのことも含めて、人員の体制、十分なんでしょうか。

小林政府参考人 外国人技能実習機構における体制でございますけれども、実地検査ですとか相談、援助等の強化を図るということで、令和元年度におきまして、三百四十六名の体制を五百八十七名の体制へと増員したところであります。

 こうした増強の効果といたしまして、機構が行う改善勧告の件数ですとか、それを受けての主務大臣の認定計画の取消し等の行政処分の件数も、令和二年度以降、大幅に増加をしているところでございます。

 今後とも、技能実習の適正な実施に向けまして、外国人技能実習機構の体制の在り方については、しっかり対応できるようなものにしてまいりたいというふうに思います。

野間委員 よく分かりました。

 技能実習生制度自体に内在する多くの問題がありますけれども、そのことについては今日は触れません。

 それでは、最後の質問として、最低賃金の問題についてお尋ねしたいと思います。

 今、コロナの状況の中で、私も地域を回っていますと、最低賃金ということは聞いたことがあるけれども、自分たちの地域が幾らなのか、よく分からなかったり、実際、後で考えると、どうもそれより低かったんじゃないか、こんなことに後から気がつくというような会社や、また個人の方がいます。

 こういう最低賃金の履行状況について、その監督指導、また違反率についてお尋ねします。

吉永政府参考人 労働基準監督署におきましては、最低賃金法を含めました労働基準関係法令の履行確保を図るための監督指導を実施しているところでございます。

 例年、十月に地域別最低賃金の改定を発効いたしますので、翌年の一月から三月に、最低賃金の改定により法違反が生ずる可能性が高い業種等を対象にいたしまして、最低賃金の履行確保を主眼とした重点監督を実施しているところでございます。

 令和三年の一月から三月の重点監督におきましては、九千三百八件の事業場に監督指導した結果、七百五十一件、八・一%の事業場で最低賃金法違反があったと承知しているところでございます。

 監督指導におきましては、最低賃金法違反が認められた場合は、その是正を指導しているところでございます。

 また、先ほど、地域の最低賃金について知らない場合があるという御指摘もございましたけれども、地域別最低賃金の改定が行われる十月以降には、改定額について幅広い周知を実施するため、地方公共団体に対して、広報誌への掲載やポスターの掲示を依頼するほか、最低賃金制度を紹介する特設サイトにおいても改定額を分かりやすく表示するなど、周知広報に努めているところでございます。

野間委員 是非、周知徹底を更に図っていただきたいと思います。

 最低賃金ということで、我が国はこの二十年間、実質賃金が上がっていない。なかなか日本の景気がよくならないのも、その辺の賃金、そして、消費が盛り上がらない一つの原因になっていると思います。

 非常に世界的にも日本の最低賃金が低いわけであります。OECD三十八か国、先進工業国の加盟の中でも十四位、二〇二〇年で十四位だということであります。イギリスなんかは千四百八十円、フランス千三百七十四円、ドイツ千二百七十七円、オーストラリア千七十六円など、日本が九百三十円ぐらいが平均と言われておりますので、先進工業国の中で日本の最低賃金が非常に低いわけですし、これを何とかしなきゃいけない。様々な政策はあるんでしょうけれども、上げるための方策、何があるでしょうか。

後藤国務大臣 最低賃金の引上げに当たりましては、中小企業、小規模事業者が賃上げしやすい環境を整備することが重要であります。

 このため、中小企業の生産性向上支援や下請取引の適正化などに取り組みつつ、政府としては、最低賃金について、できる限り早期に全国加重平均一千円以上となるよう取り組んでまいりたいと思います。

野間委員 様々な施策で、中小零細企業に対して、生産性の向上とかいう様々な面で、きめ細かな政策をされていることはもうよく分かっているところなんですけれども、なかなか、その程度のことでは上がらないんじゃないかというのを感ずるところであります。

 ドイツでは、二〇二一年の九月の連邦議会選挙で、社会民主党が勝った。そして、その政策、公約の中で、最低賃金を大幅に上げていこうということで、今、法案は審議されているところですけれども、十月から十二ユーロ、約千五百円に上げていこうということをやってきております。

 過去、二一年の選挙後、四段階に分けて上げてきておりまして、今も約十ユーロにまで上げてきています。これはある意味で政治主導で、こうするんだ、政治の判断として政策として、こうやるんだということで、ここまで上げてきているわけですけれども、こういう上げていく手法に対して、どういうふうに評価されるでありましょうか、大臣。

後藤国務大臣 ドイツでは、御指摘のように、二〇二二年十月から最低賃金額を十二ユーロに引き上げる法案が提出されておりまして、今後、連邦議会で審議される見込みであります。現段階で、内容が確定しているものではないと承知しております。また、他国の政策でもあるため、そのこと自体に対する評価は差し控えたいというふうに思いますけれども。

 我が国においては、毎年の具体的な引上げ額については、最低賃金法において、公労使三者構成の最低賃金審議会で議論し、決定することとしておりまして、政府としては、先ほども述べたとおり、賃上げしやすい環境整備に取り組みつつ、できる限り早期に全国加重平均千円以上となるよう、取り組んでまいりたいと思います。

野間委員 他国のことだということでありますけれども、ドイツでは、確かに最低賃金を引き上げると雇用が国外に流出してしまうんじゃないかという声もある一方、やはり賃金全体が底上げされれば、個人消費の押し上げにつながって、経済全体が活性化するんじゃないかと、大きな期待が今湧いているところであります。我が国も、なかなか消費が伸びないという中で、やはり賃金を上げていくということが、最も今、政治にとっても必要なことではないかと思います。

 時間となりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、長崎三区の山田勝彦でございます。

 早速質疑に入らさせてもらいます。黒い雨訴訟についてです。

 原爆投下から七十六年、放射性物質を含む黒い雨を浴びて、健康被害を訴えた住民の全面勝訴。この間、原告八十四人のうち十二人が判決を見ることなく他界され、その涙が雨となって迎えた判決となりました。

 七十六年という長きにわたり、国、県、市に対し、戦争被害者として当たり前の権利をかち取るために、まさに人生を懸けて闘ってこられた全ての方々に対し、心より敬意と感謝を申し上げます。また、道半ばでお亡くなりになられた全ての被爆者の方々に対し、心より哀悼の意を表します。

 この黒い雨をめぐる救済制度が四月一日から始まり、広島市と広島県は、申請のあった約二千人のうち審査を終えた四十四人の方々に、新たに被爆者健康手帳を交付しました。新たな歴史が始まりました。

 私自身、原爆によって親戚を亡くしており、子供の頃から平和教育を当たり前に受けて育った一長崎県民として、最高裁へ上告しなかった当時の政府の御英断に心より感謝申し上げます。

 しかし、この救済制度は、もう一つの被爆地である長崎には適用されていません。当然、長崎でも黒い雨は降っており、被爆当事者である多くの方々からその証言が残されています。

 後藤大臣、なぜ政府は被爆地で差別をするのでしょうか。広島の黒い雨と長崎の黒い雨で何が違うのでしょうか。

後藤国務大臣 今回の被爆者認定指針は、広島で黒い雨に遭った方が原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったとして、手帳の交付を認める判決が出たことを踏まえたものであります。広島地裁、広島高裁での事実認定と、その判決を受けて出された総理談話に基づきまして、原告八十四人と同じような事情の者として、被爆者認定する要件を設定することといたしました。

 一方、長崎につきましては、広島と同様の争点について最高裁に上告がなされ、被爆地域として指定されていない地域にいる方は、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったとは言えないとする判決が平成二十九年及び令和元年に確定いたしております。

 また、この判決では、被爆地域として指定されていない地域では、原爆投下後間もなく雨が降ったとする客観的記録はないとされております。

 このため、長崎については、まずは過去の裁判例との整合性や黒い雨が降った地域の存在を示す客観的な資料の有無等を整理する必要があると考えておりまして、現在、厚生労働省と長崎県、長崎市との間で、過去の裁判資料の整理や課題の洗い出しを行っております。

 長崎については、このように難しい課題がありまして、引き続き、長崎県、長崎市の意見をよく聞きながら打合せを続けてまいりたいと思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 まず、最高裁の判例について、後藤大臣から御答弁があられました。

 確かに、平成二十九年の最高裁において、爆心地から約五キロメートルまでの範囲内の地域に存在しなかった者は、その際に一定の場所に存在したことにより直ちに原爆の放射線により健康被害を生ずる可能性がある事情の下にあったということはできない、このように述べられています。

 簡潔に言えば、被爆地の五キロ範囲外にいた方々は直ちに急性症状があったとは推認できない、ただそのように言っているだけであって、健康被害の可能性を否定しているわけでは決してありません。

 さらに、長崎においても十分な科学的な根拠もありますし、広島の高裁判決を受け入れ、上告をしないと政治決断されたならば、長崎も同様に、従来の被爆地とされた地域以外の方々も被爆者として同様に認めるのが筋ではないでしょうか。

 政府は、内部被曝による健康被害を認めた広島高裁の判決をもっと真摯に受け止めていただきたいと心から願います。

 広島高裁の判決では、黒い雨に放射性降下物が含まれていた可能性があったことから、雨に直接打たれた者は無論、たとえ打たれていなくても、空気中に滞留する放射性微粒子を吸引したり、水を飲んだり、野菜を摂取したりすることで内部被曝による健康被害を受ける可能性があったことから、被爆者に該当するとされました。つまり、争点は雨に打たれたかどうかではない、そのようにもう明確に判決が下されています。

 この判決を受け入れた政府が、なぜ執拗に雨にこだわるのでしょうか。長崎においても、雨に打たれた方はもちろん、たとえ打たれていなくても内部被曝の可能性があったことから、被爆者として認められるべきではないでしょうか。後藤大臣、お答えください。

後藤国務大臣 今回の広島高裁の判決には、原爆の健康影響に関する過去の裁判例と整合しない点があるなど重大な法律上の問題点があり、政府としては本来受け入れ難いものであることを総理談話でまず表明しております。

 とりわけ、黒い雨や飲食物の摂取による内部被曝の健康影響を科学的線量推計によらず広く認めるべきとした点については、これまでの被爆者援護制度の考え方と相入れないものであり、政府としては容認できるものではないという立場であります。

 他方、原告の八十四名については、一審、二審を通じた事実認定を踏まえれば、一定の合理的根拠に基づいて被爆者と認定することは可能であると判断し、また、原告と同じような事情にあった方々については、訴訟外においても救済するとしたところでございます。

 これを踏まえ、原告八十四名それぞれの事情について、広島県、広島市とともに判決内容を分析した結果、広島地裁、広島高裁の事実認定において、原告八十四名の方全員が、広島への原爆投下後の黒い雨に遭ったこと、十一類型の疾病を抱えていたことが確認されました。

 このような原告の事情を踏まえ、被爆者健康手帳を交付する要件として、黒い雨に遭った方で、十一種類の障害を伴う一定の疾病にかかっている方としたものでございます。

山田(勝)委員 全く理解できません。

 もしその判決に納得がいかないのであれば、なぜ上告されなかったのでしょうか。

後藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、内部被曝の健康影響を科学的線量推計によらず広く認めるべきとした点については、これまでの被爆者援護制度の考え方と相入れないものであって、政府としては容認できるものではないというふうに考えたわけでございますけれども、他方、八十四名については、一審、二審を通じた事実認定を踏まえれば、一定の合理的根拠に基づいて被爆者と認定することは可能であると判断し、また、原告と同じような事情にあった方々について、訴訟外においても救済するとしたところであります。

 その訴訟外において原告と同じような事情にあった方々がどんな方々であるかを広島県、広島市とともに判決内容を分析した結果、こうした形で、原告八十四名の方全員が黒い雨に遭ったこと、十一類型の疾病を抱えていたこと等から、被爆者健康手帳を交付する要件としたものであります。

山田(勝)委員 先ほどの私の話を大臣は聞いていただいたのかどうか分からないんですが、広島の高裁判決は、あくまで雨に打たれたかどうかではない。しかし、今なお、黒い雨に直接打たれたかどうか、その事実認定に政府はこだわっているということでした。

 長崎のケースで、実際に、現状被爆地として認められている地域、それ以外にも放射線が確認されている科学的データもあります。

 その前に、用意した資料を御覧ください。事実認定が大事だというお話がありましたが、そもそも、この長崎の被爆地認定はどのような科学的根拠に基づいて行われたのでしょうか。

 配付資料に示しております、資料一です。ピンクのエリア、旧長崎市内、隣接市街の一部にいた人だけが指定地域被爆者。旧長崎市の端の方、この地図では、下の方は爆心地から十二キロを超えていても被爆者認定されています。なのに、指定地域外の人は、十二キロ以内であっても被爆者でないという行政取扱い。

 なぜこのような取扱いになっているのでしょうか、お答えください。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 長崎におきます被爆地域の指定については昭和三十二年に行われておりまして、当時、放射線に関する科学的な知見が限られる中、爆心地からおおむね五キロの範囲を念頭に置きつつ、当時の既存の行政区域の範囲を考慮に入れたため、旧長崎市全体を法律上の被爆地域として指定したということでございます。このため、御指摘のように、爆心地より南に細長い形になっているということになっております。

 ただ、この点につきましては、昭和五十五年の原爆被爆者基本問題懇談会の報告書におきまして、被爆地域の指定は科学的、合理的な根拠のある場合に限定して行うべきという旨の報告がなされており、この考え方に基づきまして、現在、指定地域の運用等を行っているところでございます。

山田(勝)委員 改めてお話を伺っても、やはり到底納得できる被爆地の認定の在り方ではなかった。あくまで行政区域をベースに被爆地認定されていらっしゃいます。

 被爆者の方々に対し、具体的な健康被害を訴えても黒い雨に打たれた事実認定がなければ認められない、そのような姿勢である政府が、余りにもいいかげんな被爆地認定を行っていたことは明白であり、いまだにその誤りを正そうとしない姿勢は異常であると言わざるを得ません。

 この地図でいうと、当日、原爆が落ちた日は、左から右へ風が吹いていました。

 長崎や広島の原子爆弾の影響に関する日米合同調査団であるマンハッタン調査団の資料二を御覧ください。

 半径十二キロ以内の原告の区域において、満遍なく放射線量が数値として表れています。そして、風が吹いている東に向かって線量が出ていることが確認されています。

 東に向けて線量が高いのにもかかわらず、なぜ被爆者を南北に広げて認定していったのでしょうか。もはや科学的根拠がないことは明らかです。

 このように、ピンクのエリア以外、国が指定した地域外でも高い放射線量が測定されています。この科学的根拠に基づき、これらの地域で被爆された方々を、広島同様に被爆者として認めるべきではないでしょうか。後藤大臣、改めてお答えください。

後藤国務大臣 御指摘のマンハッタン調査については、過去の長崎の裁判においても争われ、マンハッタン調査の結果も踏まえた上で、被爆未指定地域にいた方は、被爆者援護法第一条第三号の規定する、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者には該当しないとの判示がなされております。

 厚生労働省としては、被爆地域の指定は科学的、合理的な根拠がある場合に限定して行うべきと考えておりまして、米国のマンハッタン調査以外にも、被爆地の外の地域に対しても残留放射能の評価を行ってきております。

 しかしながら、原爆放射能が健康影響を及ぼしたという科学的、合理的な根拠は得られていないことから、被爆地域の拡大を行うことは困難であるというふうに考えております。

山田(勝)委員 マンハッタン調査、明らかに広島の雨以上に科学的根拠があると、はっきりと言わせていただきます。

 その上で、次のテーマです。この長崎の被爆者の方々に対して政府が行ってきた裏切り行為についてお尋ねいたします。

 このような地域認定制度は、そもそも不合理であり、整合性が全くありません。放射線は行政区域の地図に沿って降ってきたのでしょうか。現場の皆さんにとって到底納得がいきません。ここに根本的問題があり、同じ長崎の被爆者の中で分断を、差別を生み出している原因があります。

 そのような中、ようやく政府は、二十年前、平成十四年四月から、爆心地より半径十二キロ圏内の方々に対する新たな救済制度、被爆体験者精神影響等調査研究事業をスタートさせました。あくまで被爆は認めないが、被爆体験による精神的要因に基づく健康被害に対し医療費を支給するという内容です。

 厚労省は、平成十四年三月に、現地長崎で説明会を開催しました。私は、当時参加された方々から直接お話を伺い、また、当時の説明会の映像も確認させてもらいました。

 そこでは、参加者の方々から精神病に特化されることに対する不満の声が続出し、厚労省の担当者の方が何度も強調してこう説明をされていました。入口はあくまで精神病ということにさせてください。簡単な検査を行った後、精神科の医師の診断を受ければ認定されます。認定されれば、がんやけが、感染症以外の病気は全て医療費が給付されます。いわゆる第二種手帳の始まりです。ただし、第一種手帳とは差別され、被爆者健康手帳は交付されないままでした。

 このように、救済内容に不十分な面もありましたが、申請者の九〇%を超える多くの人たちが新たに認められ、いわゆる地域認定をされてきました。一定の成果、前進があったと思います。

 ところが、平成十七年に制度の見直しが行われ、検査内容が厳しくなり、個々人の選別を行う、個人認定されるようになりました。これに伴い、県内約一万人の該当者のうち、三二%もの人々が落とされ、適用外となり、これまでの給付が一切受けられなくなった。疾病が重い人は大きな打撃を受けました。

 また、再度認められたとしても、約束されていた、がんやけが、感染症以外の全ての病気ではなくなり、給付対象の病気が明らかに限定されていったのです。

 政府はなぜ、平成十四年の救済事業を拡大するどころか大きく縮小させて、救済内容を大幅に縮小させていったのでしょうか。大臣、お答えください。

後藤国務大臣 長崎で原爆のキノコ雲を見るなど被爆体験をされた方に対しては、平成十四年度より、被爆体験者精神影響等調査研究事業を行っております。

 この事業は、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響に関連する特定の精神疾患を有する方に対して、こうした精神疾患と、これに合併する疾患を対象として医療費の支給を行うものであります。

 平成十四年の事業開始当初は、精神疾患に伴う合併症については、身体化症状や心身症などについて、添付される医師の意見書を基に個別に判断されることになっていました。

 なお、事業開始当初から、がん、感染症、外傷は精神疾患に伴う合併症とは言えないとして、医療費の支給対象外と整理されていました。

 その後、平成十六年に設置されました被爆体験者精神影響等調査研究事業の在り方に関する検討会におきまして、精神疾患の治療を支援する事業であるにもかかわらず治癒した方は僅かであること、がんや感染症など対象外の疾患に医療費の支給が行われていることなどの問題点があり、事業の本来の目的に立ち返って効果的な仕組みとしていく必要があるとの指摘を受けました。

 これらの指摘を踏まえ、平成十七年度より、居住要件を拡大する一方で、事業の適正化を図る観点から、対象精神疾患と対象合併症を明確化することとしたものでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 この方針転換は、明らかに予算削減が目的であったと言わざるを得ません。

 最後の資料三を御覧ください。平成十六年度、十四・一億円であったのに対し、強引な制度改正を行った平成十七年度には、八・九億円にまで事業規模が縮小されました。対象外となった方は何と二千八百十一人です。二十年前の約束は何だったのでしょうか。

 長崎の被爆者の皆さんは、不十分な内容ながらも一歩前進であることを受け入れ、いずれ被爆者手帳に限りなく近づいていくと国を信じていました。結果は逆でした。前進どころか、大幅な後退となったのです。

 さらに、被爆当事者の方々から話を伺い、驚きました。平成十四年の、当時、ピンクの手帳が全て取り上げられ、平成十七年の見直し事業から、厳しい検査に合格してようやくもらえる手帳は、この緑色の手帳になりました。

 そして、この緑色の手帳には、驚くべき内容が記載されていました。

 あなたが原爆投下時にいた場所は、原爆の放射線による直接的な身体への健康被害はないことが確認されています。当時、光、爆風又は熱を体験したことがあっても、原爆の放射線の直接的な身体への影響はありませんので、御安心ください。

 被爆者認定を求める方々に寄り添うどころか、突き放すかのような冷酷な言葉としか受け取れません。

 これまで、長崎の皆さんは、矛盾だらけの認定、裏切り行為、さんざんひどい目に遭わされてきました。その上に被爆地による新たな差別が生まれようとしています。もうこれ以上、悲しみや失望を与えないでください。今こそ、長きにわたる闘いの歴史に幕を閉じる、真の和解のチャンスではないでしょうか。マンハッタン調査団の調査という、雨以上の証拠もあります。広島も長崎も同じ被爆地であり、戦争被害者です。

 どうか一日でも早く長崎も救済していただきますよう、心よりお願い申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十一分散会


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