衆議院

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第18号 令和4年5月11日(水曜日)

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令和四年五月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 橋本  岳君

   理事 今枝宗一郎君 理事 齋藤  健君

   理事 高階恵美子君 理事 牧原 秀樹君

   理事 山井 和則君 理事 柚木 道義君

   理事 池下  卓君 理事 伊佐 進一君

      畦元 将吾君    上田 英俊君

      加藤 勝信君    勝目  康君

      川崎ひでと君    菅家 一郎君

      小森 卓郎君    後藤田正純君

      佐々木 紀君    塩崎 彰久君

      鈴木 英敬君    田村 憲久君

      高木 宏壽君    土田  慎君

      中川 貴元君    西田 昭二君

      長谷川淳二君    深澤 陽一君

      堀内 詔子君    松本  尚君

      三谷 英弘君    三ッ林裕巳君

      盛山 正仁君    八木 哲也君

      柳本  顕君    山本 左近君

      和田 義明君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    中島 克仁君

      長妻  昭君    野間  健君

      山田 勝彦君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      金村 龍那君    堀場 幸子君

      吉田とも代君    山崎 正恭君

      吉田久美子君    田中  健君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       後藤 茂之君

   厚生労働副大臣      佐藤 英道君

   内閣府大臣政務官     宮路 拓馬君

   厚生労働大臣政務官    深澤 陽一君

   厚生労働大臣政務官    島村  大君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         山田 雅彦君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    田原 克志君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           熊谷 法夫君

   参考人

   (関西大学人間健康学部人間健康学科教授)     山縣 文治君

   参考人

   (特定非営利活動法人ぱっぷす理事長)       金尻カズナ君

   参考人

   (獨協大学国際教養学部教授)           和田 一郎君

   参考人

   (大阪府中央子ども家庭センター所長)       藥師寺順子君

   参考人

   (児童養護施設子供の家施設長)          早川 悟司君

   厚生労働委員会専門員   大島  悟君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     山口  晋君

  塩崎 彰久君     神田 潤一君

  長谷川淳二君     高見 康裕君

  堀内 詔子君     小島 敏文君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     塩崎 彰久君

  小島 敏文君     堀内 詔子君

  高見 康裕君     長谷川淳二君

  山口  晋君     勝目  康君

同月十一日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     西田 昭二君

  田村 憲久君     盛山 正仁君

  三谷 英弘君     中川 貴元君

  三ッ林裕巳君     小森 卓郎君

  吉田とも代君     堀場 幸子君

同日

 辞任         補欠選任

  小森 卓郎君     菅家 一郎君

  中川 貴元君     三谷 英弘君

  西田 昭二君     畦元 将吾君

  盛山 正仁君     八木 哲也君

  堀場 幸子君     吉田とも代君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     三ッ林裕巳君

  八木 哲也君     和田 義明君

同日

 辞任         補欠選任

  和田 義明君     田村 憲久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案(岡本あき子君外十二名提出、衆法第二八号)

 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(早稲田ゆき君外十六名提出、衆法第三〇号)


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     ――――◇―――――

橋本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案並びに岡本あき子君外十二名提出、保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案及び早稲田ゆき君外十六名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、関西大学人間健康学部人間健康学科教授山縣文治君、特定非営利活動法人ぱっぷす理事長金尻カズナ君、獨協大学国際教養学部教授和田一郎君、大阪府中央子ども家庭センター所長藥師寺順子君、児童養護施設子供の家施設長早川悟司君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十二分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず山縣参考人にお願いをいたします。

山縣参考人 皆さん、おはようございます。参考人の関西大学の山縣と申します。

 本日のテーマに関するものとしては、現在、厚生労働省で、社会的養育専門委員会の委員長、それから、通称ですけれども、子供虐待死亡検証の委員長をさせていただいております。また、これらに関連するものとして、昨日、今日、ここ数日間ですかね、新聞、テレビで話題になっております、熊本市に設置されている「こうのとりのゆりかご」ですね、これの委員及び委員長を十四年間、昨年の四月末までさせていただいておりました。

 本日は三法の改正に関する意見陳述ですけれども、私に関連するものとしては、児童福祉法改正を中心にお話をさせていただきます。スライドの方にあります四つの項目、子供虐待等深刻な子供家庭福祉問題への対応以下、四番目の、皆さん方ここで議論いただきました二〇一六年の児童福祉法改正の検討事項、この四つに分けてお話をさせていただこうというふうに思います。

 まず一点目ですけれども、子供虐待等深刻な子供家庭福祉問題への対応を強化する必要があるということです。

 社会的養育専門委員会における現状及び課題認識につきましては、スライド三の方を参照ください。

 児童相談所及び市区町村の子供家庭相談を受け付ける窓口ですけれども、子供虐待相談対応件数が非常に増加しています。グラフも示していますように、二〇二〇年度には、児童相談所で二十万件、市区町村で十五万件を超えました。とりわけここ五年間では、面前DVに関する警察から児童相談所への通告件数が非常に増加し、急勾配を生んでおります。

 このような状況に対して、市区町村に子ども家庭総合支援拠点及び子育て世代包括支援センターの設置が進められているわけですけれども、二〇二一年四月現在の設置数は、子ども家庭総合支援拠点が六百三十五自治体ということで、三分の一ということになりますけれども、一方で、子育て世代包括支援センターは千六百三ということで、二〇一六年の法改正後の非常に短期間で、少なくとも九割以上の地方自治体にはどちらかが最低設置されている。とりわけ子育て世代包括支援センターですね、こちらの母子保健中心のセンターが非常に設置率が進んでいるという状況にございます。

 一方で、残念な状況もございます。例えば、死亡検証報告書によりますと、そもそも御家庭が相談機関を含め公的なサービスにつながっていないということです。

 母子保健担当のグラフも入れておりますけれども、そこに見られますように、母子保健担当部署に係属していたとしても、そもそも虐待事案として認識していない、つながっているけれども虐待と捉えていないということによる子供の犠牲というのが起こっていたり、さらには、母子保健担当部署と子供家庭福祉の担当部署が異なる場合には、そこの連携が十分取れていないというふうな状況もございます。

 私自身が虐待死亡検証で訪れたある自治体では、母子保健担当部署が虐待として認識していたにもかかわらず、庁内協議の方、虐待ですから子供家庭福祉の方の担当部署が中心になりまして、結果として、虐待という形で対応せずに亡くなってしまったという事案もございました。

 児童相談所と市区町村、児童相談所と里親あるいは施設等、主従関係が生じやすい、本来は対等なんですけれども主従関係という意識が生じやすい場面では、主たる主体の判断に抗し難いという現実は決して珍しくないということです。

 加えて、虐待死亡の中には、妊娠の届出をせず、専門家の立ち会わないいわゆる孤立出産、自宅出産、これが多くあり、それがゼロか月以内の死亡だということになります。お子さんが亡くなっているというわけではございませんけれども、「こうのとりのゆりかご」でも孤立出産で一週間以内に預け入れというものが多く、このような保護者への支援、危険な出産、養育というような支援が必要なんだというふうに考えます。

 第二は、予防的視点での地域における身近な相談体制の構築です。

 専門委員会の認識については、同じくスライド六の方を御覧ください。

 子育て家庭の七割くらいが何らかの負担がある、子育てに負担があると言っています。多くの母親が、交流機会や相談相手が必要であるということでございます。児童相談所等行政の相談機関は重要ですけれども、日常的に利用する場ではないということです。現行制度では、地域子育て支援拠点事業がこれに最も近いと考えられますし、保育所、認定こども園、幼稚園等にも、法律で子育て支援の機能が重要だということが位置づけられています。

 専門委員会の報告書にもありますように、身近にアクセスできる子育て支援の資源などが、これを利用していない家庭も含めて、身近な相談先としての機能を果たしていくことが引き続き重要というふうに考えます。また、保育所等に属していない子供の養育家庭については、かかりつけ相談機関のようなものが検討に値すると考えられます。

 現状の対策で困難なのが、公的相談機関を忌避される家庭です。「こうのとりのゆりかご」の利用者やゼロ日児死亡に至る家庭などがこれに近いんですけれども、現行制度は届きにくいということになります。これについては、民間によるSNS相談あるいは匿名相談、場合によっては内密出産なども検討する必要があるかもしれません。

 加えて重要なのは、相談に応ずる人の専門性です。生活者として本人を捉え、生活全体を視野に入れた支援を行う、ソーシャルワークの視点を持った人の配置を積極的に進める必要があるというふうに考えます。

 第三は、児童相談所の機能強化と社会的養護経験者やその家庭への継続的支援です。

 この問題に関する委員会の認識は、スライド八の方に記載しております。

 二〇一六年以降、児童福祉法の改正で、児童福祉司の増員のみならず、介入担当と支援担当の分離、弁護士の配置など、児童相談所の機能強化が図られております。これらの成果は少しずつですけれども表れているというふうに認識しています。

 一方、この法改正を受けた新しい社会的養育ビジョンでは、少なくとも家庭養護委託率を三年、五年、十年かけて上昇させるという目標値を立てていたわけですけれども、残念ながら、まだ十年後の目標値、昨年の、社会的養育推進計画、都道府県の推進計画の積み上げによっても、学齢期以降の場合は四割ぐらいの目標値ということですので、十年かかってもまだ目標値には到達しないというふうな状況にあるというのが現実でございます。

 里親やファミリーホームへの委託は法的には児童相談所の業務ですけれども、それを進めていくには、児童相談所の機能は無論のこと、その周辺で重要な役割を果たす里親支援機関や、施設に配属された里親支援専門相談員などの活動の充実も必要となります。

 さらに、里親や特別養子縁組家庭の開拓においては、住民の方と直接向き合って仕事をしておられる市区町村の役割も非常に重要だというふうに考えます。

 一方、気をつけておく必要があるのは、里親や養子縁組の下で生活する子供が増えると、施設養護以上に、児童相談所等が支援すべき個別事案が増える可能性が高まるということです。この点からも、児童相談所の機能強化が重要だということになります。

 次に、社会的養護経験者への支援です。

 子供の貧困と教育歴との関係が取り沙汰されています。高校進学率は一般と大きな差がないレベルまで上昇しましたけれども、大学進学率は、一般家庭が五割強であるのに対して、児童養護施設の子供は二割に満ちません。さらに、就職した場合、短期間での退職率も高く、居所を確保、住所を確保した上での進学支援、進学しなかった者や中退した者への相談支援体制の整備や、住宅保障を含む支援が必要と考えられます。

 一方、検討が必要なのは、社会的養育の枠組みで支援をいつまで続けるのかということです。

 周知のように、児童福祉法は十八歳未満の児童を対象とするものですけれども、制度的には、段階的に引き上げられ、現在では二十二歳までの支援が可能になっています。二十二歳以降も支援が必要だという認識はしておりますけれども、いつまでこの子供の枠組みでやるのか、むしろ、子ども・若者支援法との関連を強化した方がいいのではないか、いろいろなことが考えられると思います。

 最後は、二〇一九年の児童福祉法改正時の検討事項です。

 これは、社会的養育専門委員会の中心的関心事でした。ここでは、スライド九に示す三点が、法律に検討事項として明示されていました。今回の改正案は委員会の検討結果を踏まえたものとなっているというふうに認識しております。

 スライド十には、改正法が成立した場合の更なる課題と私自身が感じていることを記載しております。

 第一の、一時保護の措置の手続の在り方については、保護者の同意が得られない場合には、一時保護の迅速化のために、家裁等において、申請に基づき一時保護状を発行するという新しい制度を導入することになっています。目的の一つが迅速化と安全を確保した上でのアセスメントであることを裁判所の方に十分認識していただかなければ、かえって時間がかかる可能性があります。一方で、児童相談所が安易に裁判所に依存し、ソーシャルワークによる支援をおろそかにしないということも求められると思います。

 第二の、意見表明権、こちらについても今度の法改正でかなりの部分が対応されるということになっております。第三者性というところがここでは重要になるかと思います。

 最後は、専門職の問題ですけれども、専門委員会の報告書では、実務経験のある方に対して必要な研修を実施した後に試験を実施するという取りまとめで、法案もその枠組みに従って作られておりますけれども、これにつきましては、資格取得に向けての動機づけ策、現役学生への対応が早急に検討される必要があると思います。とりわけ、保育士を含め、福祉職に対する人気が若干低下している、非常に残念なんですけれども、少子化の中で、学生数、入学生も減ってきておりまして、こういう方々を含めて、どう今後対応するのかということが重要ではないかと思います。

 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、金尻参考人にお願いをいたします。

金尻参考人 皆様、おはようございます。NPO法人ぱっぷすの金尻です。

 児童福祉法と高校生AV出演問題の関係性について御説明いたします。

 ぱっぷすは、デジタル性暴力や性的搾取の相談支援やアウトリーチ活動を行っている団体です。

 高校生AV出演問題から見えてきた児童福祉法に関する要望事項としまして、まず一、家出をするなど行き場のない子供、若者がAV等の性的搾取の被害者とならないよう、一時保護所の充実を含む子供、若者の居場所支援を強化すべきです。

 二、児童養護施設等を退所したケアリーバーが孤立、経済的困窮等を理由にAV等の性的搾取の被害者とならないよう、ケアリーバーに対する相談支援や財政的支援も充実すべきです。

 三、児童虐待の被害者がAV等の性的搾取の被害者になるケースが多くあることから、児童虐待を防止するだけではなく、虐待被害者の心のケアも強化すべきであると考えます。

 四番目、子供、若者がAV等の性的搾取の被害者とならないよう、子供、若者に向けた教育、広報、啓発を強化すべきです。

 子供、若者がAV等の性的搾取の被害者になることと貧困問題は大きな関わりがあります。児童手当の高校三年生までの延長、児童扶養手当の充実など、子供の貧困対策を強化すべきです。

 次の資料は、四月一日の成人年齢引下げに伴い、高校生AV出演の増加が、高校生や子供への性犯罪、性暴力の増加を助長する可能性がとても高いという点です。児童福祉法の理念である児童の健全育成にも反します。

 閣法では、児童をわいせつ行為から守るため、わいせつ行為を行った保育士の資格管理の厳格化を定めておりますが、高校生AV出演の増加は、逆にわいせつ保育士を増加させることにもつながりかねず、政府の取組についても逆行いたします。

 次に、大学や専門学校に進学するためのお金を用意するために、やむを得ずAVに出演するケースが少なくありません。児童福祉法では、国は児童の健全育成に責任を負っています。しかし、コロナ禍の中で、生活に困窮する子育て世帯が増加、子供の貧困問題も深刻化です。子供の貧困がAV、性産業につながっていること、そして、そもそも親に頼れない子供たちがAV、性産業に行きやすいというのは福祉に携わったことのある人ならよく知られていることです。子供の貧困対策を充実させることが、高校生AV出演被害をなくすことにもつながります。実際に、十八歳で施設退所を求められ、生きるためにAVに出演するしかなかったという相談者も見てきました。今、国の在り方が問われております。

 次の資料は、親族に頼れない十八歳のケアリーバーの問題について取り上げた資料です。

 その次の資料も、ケアリーバーの困難さについて取り上げたものです。

 次の資料が、現在、議員立法で進められておりますAV出演防止法についてです。

 特に、成人年齢が、今回、十八歳に引下げにより、十八歳、十九歳の方の取消権を行使できない問題に直面しています。AVの撮影をしたくない意思表示をしても、電話や対面などで、えっ、仕事でしょうとか、さっきまでやると言ったよね、何で俺のこと信じてくれないのなど、こう言われて、これまで、若年層の方が、こういうふうに強く言う人に対して、このように言われたら、何か私は本当に悪いことをしてしまったんじゃないかという気持ちにさせて、何か彼を悲しませてしまったらいけないというふうなことで、ある種そういった気持ちを巧みに利用して出演を承諾させてしまうという現状もございます。

 これまでは、十八歳の方の被害相談であれば、取消権が行使できました。しかし、四月一日から、支援団体としてどのように伝えたらいいのか、正直分かりません。

 次のページですが、新宿歌舞伎町では、コロナ禍ですが、多くの若年層が集まっている場所となって、性的搾取の中心地の一つとなっております。

 次のページですが、若年女性が社会に希望を持てなくなった瞬間、社会とのつながりを見出せずに居場所を失う瞬間を性的搾取をする人たちは見逃さないということです。

 東京新宿、渋谷を歩くと、このように、性的搾取にまつわる広告宣伝バス、繁華街を大音量で走っております。報道によると、六歳の子供が、そのバスが流している高収入募集サイトの広告の歌を歌い出したりとかということ、それで親が驚いたというふうなニュース報道もございました。

 多くの方は、このぎらぎらした怪しい広告でひっかかる人はいないと思われますが、これにはからくりがあって、学校の道中でこの音楽に慣れ親しまされ、十八歳、十九歳になったとき、例えば、奨学金を使い込んでしまって、来月の家賃どうしよう、もう払えないとなったときに、高収入アルバイトでスマホで検索するわけなんです。そのときに、困っている人にとっては、さっきの高収入バイトがきらきら見えてしまって、それで、結局、そこから性的搾取に巻き込まれてしまう。つい先週も、ここにあるような求人サイトによる被害相談が実際に寄せられ、相談支援も行っております。

 具体的な事例についても御説明したいと思います。

 ある方、Aさんというふうに呼びますけれども、Aさんは、スマホで、渋谷、短期、アルバイトという形で検索すると、先ほどのような求人サイトで、触られない、顔ばれしない、撮影会モデルの募集サイトを見つけ、応募しました。

 来て早々、今着ている服のままでいいので、モデル登録用に写真撮影を行うというふうに言われたんですね。Aさんは、えっ、脱ぐんですかというふうに聞き返したところ、カメラマンは、えっ、どうしてそういうこと言うの、だって、ほら、有名なアイドルグループだってみんなやっているよね、何か、下着と水着と何が違うのとか、だって、モデルを目指すんだったら普通のことでしょう、実際、体のラインとかも見たいしということで、あたかも、脱がない私があたかも悪いかのように思わせて、結局トップレスの写真を撮られてしまうわけなんですね。

 重要なのは、ここで被害者を選別するわけなんです。ここで断れる人は確かに被害に遭わないかもしれないんですが、十七歳、十八歳、十九歳の方がどれだけ断れるのかということを是非考えていただきたいと思います。特に、密室で一対一になって、高校生の方です、やはり、私がもし子供の頃だったら断れなかったのではないかなと思っております。

 特に、その後、断れなかった方は、後日、別の事務所に連れていかれたところ、今度は、カメラ面接に一回応じると三千円もらえるアルバイトがあるけれども、どうと。ここで契約、署名することになるわけなんですけれども、ただ、契約書には、アダルトビデオと書いてあるんですね。Aさんは、それはちょっとというふうに伝えると、事務所の人は、ここはそういう総合モデルプロダクションで、グラビアさん、タレントさん、AV女優さん、俳優さん、いろいろな人が所属しているから、そういう共通の契約書だから大丈夫だよ、仕事も選ぶことができるしというふうに言って、そう言われたので、拇印で押印されました。

 後日、また事務所に来るように言われて、別の担当者が現れて、連れていかれたところは、いわゆるアダルトビデオの面接でした。当初の話と違うこと、撮影会も含めた面接だと思っていて、その担当者に伝えたところ、担当者の人は、別に、紹介するだけで、仕事は選ぶことができるよと言ったので、引き続き、大体四社ぐらいですね、いわゆるメーカー面接というのを回るんですけれども。面接回りの最後に、担当者の人は、今まで、宣材写真の撮影とか面接回りにお金を使ってきて、お仕事をしない女の子がいたけれども、そういうことはしないでねというふうに言うわけなんですね。それで、だんだん怖くなって、結局、全てメーカー面接を受けることになります。

 それから、特に何も連絡がなかったのでそのまま放置していると、二週間後、電話がありました。事務所から、仕事が決まったよというふうに言われたわけなんですね。そこで、すかさず断る電話をしたところ、結構頑張って断ったんですね、勇気を出して。そうしたら、事務所の人が、ああ、そこまで言うんだったら分かった、取りあえず事務所で契約解除について話し合おうみたいな感じで言われて、事務所に行ったところ、結局、同調圧力ですね、やはり一対三とかという形になるわけですから、結局、頑張りますというふうに言わされるわけなんです。

 それでも嫌だったので断ったところ、すかさずまた電話がかかってきて、だって、さっき頑張るって言ったよね、さっきまでやるって言ったよね、君、やりたくないとか言うけれども、俺たちとか業界のことを何か否定したり差別しているのというふうに言ってきて、そうやって畳みかけて、結局、出演を承諾させるわけなんですね。でもね、君、またころころ変わるし、信用できないからさ、じゃあさ、LINEで、頑張りますって書いてというふうに言って、結局、そういった加害者の都合のいい証拠が作られていくわけなんです。

 後日、出演同意書というのを署名押印する際も、また君、話が変わるかもしれないから、その署名欄の上に、お仕事楽しみです、ハートマークって書いてって言われて、結局、その様子をビデオカメラで撮られて、契約内容も朗読させられ、自由意思で出るというふうに言わされてしまいました。

 Aさんは、自分の持てる能力の全てを使って撮影に対してあらがうんですけれども、全く話が通じないんですね。何か自分の伝え方が悪かったんじゃないかというふうに、御自身を責めてしまいました。

 結局、撮影当日になって、したくないというふうな、やはり言えるような状況ではなく、多くの大人の人たちに囲まれて、結局、性行為、性交類似行為をさせられてしまった。Aさんもそうですけれども、被害を受けた方の多くは、撮影中は無だったとおっしゃるんですね。無というのは、結局、心身が乖離している状態のことを指すんだろうと私は認識しております。

 しかし、そういった新人のビデオというものは一本契約ということはまずないんですね。Aさんの場合は、結局、六本契約だったわけなんですけれども、撮影は毎月一回行われて、三か月から半年間かけて行われるんですね。実際、一本出ました、二本出ましたと。事務所の人たちは、えっ、何か誰かに知られた、知られていないでしょうというふうに言うんですね。それはなぜかというと、まだ販売されていないから知られることはないんですね。しかし、契約本数の六本ぐらいの撮影になった頃に販売されるわけなんです。

 しかし、その間、加害者、その事業者の人たちと長時間一緒に過ごすことによって、一緒にビデオを作っている、作品というものを作る仲間とか、妙な連帯意識とか、信頼関係が生まれていくわけなんです。

 その中で、唯一コントロールできるのは、結局、演技でしかないと。そもそも素人さんに何の演技を求めるのかというと、否定的に対応するよりかは、協力的に、従順に応じるということなんですね。自ら性的に演技をする。ハードなことをすれば、その事業者の人たちはそれを報いるように、まるでお姫様のように誠意を尽くして対応してくれるわけなんですね。体調が悪くなっても、多少の融通を利かせてくれる。

 結局、こういった契約本数の撮影が終わる頃に販売が開始されて、相談者の方の地獄が始まるわけなんです。

 ただ、こういった被害相談が寄せられました。そのとき、この方は十九歳だったので、取消権が使えたんですね。回収もされました。しかし、四月一日以降、それができなくなっております。

 そこで、私、今回、特に高校生AV出演問題から見えてきた児童福祉法に関する要望事項として、繰り返しますが、一つ目、家出をするなどして行き場のない子供、若者がAV等の性的搾取の被害者とならないように、一時保護所の充実を含む子供、若者の居場所支援を強化すべきです。

 二つ目、児童養護施設等を退所したケアリーバーに対して、孤立、経済的困窮等を理由にAV等の性的搾取の被害者とならないよう、ケアリーバーに対して相談支援や財政的支援を充実すべきです。

 三つ目、児童虐待の被害者がAV等の性的搾取の被害者となるケースが多くあることから、児童虐待を防止するだけでなく、虐待被害者の心のケアもやはり強化すべきです。

 四つ目、子供、若者がAV等の性的搾取の被害者とならないよう、子供、若者に向けた教育、広報、啓発を強化すべきです。

 五、子供、若者がAV等の性的搾取の被害者になることと貧困問題は大きな関わりがあります。児童手当の高校三年生までの延長、児童扶養手当の充実など、子供の貧困対策を強化すべきです。

 子供や高校生への性犯罪、性暴力を防止するためにも、高校生AVの規制を強化すべきです。

 特に、高校生や十八歳、十九歳のAVが増えたら、やはり被害が低年齢化し、高校生や子供への性暴力被害が増加し、やはり児童福祉法の理念に反する事態になりますので、性犯罪から児童、子供を守るためにも、今回、児童福祉法改正とセットで、AV出演被害防止法案の議員立法を成立することが必要だと考えております。

 以上になります。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、和田参考人にお願いいたします。

和田参考人 おはようございます。獨協大学の和田でございます。

 専門はデータサイエンス、特に、人口減少社会における公共サービスの在り方について、データサイエンスに基づいて解決する。具体的には、首都直下型地震が発生した際の行政機能が低下した場合における子供と弱者の支援を、データサイエンスを利用した解決、危機管理、意思決定支援などを今研究しております。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回は、子供の視点から見た児童福祉システムのよりよい改善について、お手元に配付した資料を基に意見を述べさせていただきます。

 大きな意見といたしましては、二つございます。

 一つ目は、児童の意見聴取等の仕組みの整備についてです。

 (一)にあります福祉領域における子供の意思表明支援の現状については、本改正案において、福祉のマクロ、メゾ、ミクロにおいて検討がなされております。注目すべきは、他国では福祉領域では失敗して現在も探索中であるミクロレベル、つまり、子供に直接関わる領域を重点的にしようとしていることでございます。

 2になりますが、なぜ福祉領域でミクロレベルをやろうとするのかという疑問です。

 直接子供に関わる、意見を聞き出すというのは、高度なスキルと専門性が必要です。また、意見聴取をしても、意見調整は別の機関が行うような仕組みを作成して対応が遅れることにより、裏切られた、諦めたという子供が出る可能性があります。

 つまり、子供の意見を聞いた後に迅速に判断できなければ子供の失望感を招いてしまう可能性があるために、諸外国では、司法が直接子供の意見聴取を行い、迅速に支援をしている状況であり、福祉の立ち位置が混迷しているのです。話を聞くだけでしたら心理の人が適切かもしれません。なぜ福祉でやるのかという問いに答えられないのです。

 もし、子供の声を聞けたとして、児相や施設に物申す機会を設けるのならば、その介入の根拠を法で明確にする必要があります。何の根拠もない方が家庭に入り、お気持ちをぶつけるだけのアドボカシーは無責任であります。

 よって、結論としては、福祉によるミクロ領域では、研究による知見もなく、海外でもうまくいっていない意見表明について我が国で導入しようとするのは、前のめりで非常に危険であります。

 そして、本法案にはアドボカシーの定義がありません。どこにも代弁という言葉がない致命的な欠陥があります。定義もなく、誰に対して代弁するのか、その結果どうなるのかというシステムについて書かれていないのです。非常に危険です。

 これは、例えば、児相が子供の意向を把握、勘案して決定してきたと言われたら、それでよいという解釈にもつながりかねません。むしろ法文上、見ますと、意見表明は手段であり、関係機関との連絡調整が目的とされています。つまり、代弁という子供の視点がない、非常に不備に見られるところでございます。

 次に、二ページ目の(二)、それでも福祉領域のミクロレベルで意見聴取をする場合、つまり、子供の直接介入、子供への聞き取りをする場合になったときの条件を説明いたします。

 1の現状ですが、本案の基礎となった子どもの権利擁護に関するワーキングチームの議論を見ますと、次の三点の懸念があります。

 一つ目は、KPI、重要業績評価指標の議論がないことです。

 政策を検討するに当たり、KPIの議論は必須中の必須ですが、それがないのです。導入した効果、導入の悪影響、特にミクロレベルでは、子供に介入するので、子供への侵襲性がどうしても発生します。子供への人権侵害や不利益が起こった場合の責任体制などの記載がないのです。

 こういうことをしますと、子供の視点がなくなるので、政策評価指標が、二〇二三年に三十人意見聴取して、翌年には六十人になって、よかったというような非科学的な評価になってしまうおそれがあります。

 次に、二点目です。支援者を養成するプログラムについての科学的な記載がないのです。

 現状で、我が国において、子供の視点に沿ったもので、科学的で、標準化されて、効果分析がなされているものはありません。プログラムの利点だけではなく子供への権利侵害を含めて分析するには、数学、統計、データサイエンスを駆使して科学的に行うことが必要なんですけれども、該当領域には存在しません。

 標準化も効果も明らかでない、情熱だけの非科学的なプログラムを受けただけで支援員になってしまうおそれだけではなくて、そもそもこの支援員が子供の最善の利益にどう寄与するのかさえ説明できません。

 次に、三つ目です。支援者のスキルについて記載がないんです。特定の資格も求めないと書かれています。これは、子供に対して無責任であるとともに、福祉の専門性の否定です。

 例を挙げます。ワーキングの資料を見ますと、全ての一時保護所は子供から意見聴取をしているという調査結果になっておりますが、事例調査からは、意見聴取を受けていないという子供の意見も見られます。その大きな理由は子供の解離です。

 子供は、不安定な状況の中で、解離などの心理的な状況もあり、日々、時には数時間ごとに意見や態度が変わるのです。また、ゆがんだ関係性を持つ親子を分離した場合などは、敵意もあり、意見も言わない可能性も高いのです。そのような子供たちに対応するには福祉においても高度なスキルが必要ですが、その専門性の記載がないのです。

 つまり、前のめりで情熱だけでスキルもなく、学術的根拠もないまま、子供のアドボカシーは話を聞くことであると論点をすり替えて、話を聞けばいいという援助者側の視点になってしまうという、子供の視点の否定になっております。

 それでは、2になりますが、どうすればいいのかです。二つ対策を述べます。

 一つは、事業のKPIを設定して評価し続け、その結果を基に事業を改良させる必要があります。意見表明をした子供としなかった子供の背景、それぞれの予後を比較をして、しっかり分析して、効果を測定する必要があります。

 次に、二つ目として、支援員を政策化するには、その育成プログラムを科学的に標準化するとともに、標準化ができるまでは、そちらの表にありますように、それぞれの国家資格のプロの活用が望ましいと考えられます。現状では福祉領域にはそれに該当する資格はなく、そのため、子供家庭福祉士等の議論があったと思うんですけれども、それもなくなったので、やはりこれはそれぞれの領域の国家資格のプロを活用した方がいいと思います。

 次に、大きな意見の二つ目です。次のページに行きます。一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入についてでございます。

 こちらは結論から先に言います。

 それは、児童相談所は捜査機関でないため十分なデータが入手できず、リソース不足もあり、一時保護状の作成ができないことが想定されます。よって、司法が主体的に情報収集、アセスメントを行い、子どもの権利条約にのっとった司法審査を行うべきという意見です。

 1の現状を見ますと、本改正案からは、裁判所が一時保護状を審査するに当たり、どの程度の証拠を要求するのか不明です。つまり、ガイドラインも何もないのです。そして、もし裁判所が検察に求めるレベルの証拠資料を求めるのならば、それは不可能です。

 その理由として、次の2の、子供の意向を聞き取るについての課題を三つ挙げます。

 課題一は、児相は十分なデータを所持していないです。

 児童相談所は捜査機関ではありません。それを前提として、児童虐待対応は、少ない情報で将来を予測して判断をする最高難度のソーシャルワークです。そもそもデータが少ないというのが前提なのです。

 課題二は、一時保護状には空欄が多くなる可能性があるため、裁判所から過度に追加資料が請求されるおそれです。

 子供の視点から考えると、解離やトラウマの影響のさなかに、法で想定する七日間で、それらを考慮した一時保護状を作るのは最難関であり、児相の業務圧迫です。そして、少ない情報のため、裁判所から追加資料請求、子供の聞き取りを再び求められる可能性があります。それは、児相の業務圧迫だけではなく、子供の視点からは再被害などの懸念があるため、行うべきではないと考えられます。

 課題三は、児相に全て責任を負わせるシステムになる可能性があるです。

 司法審査を基に、一時保護は適切でないという判断がなされて、児相が従って家に子供を帰したところ、重大事故が起こった場合などが想定されます。このような場合、児相側の調べが足りないというような言及をせず、あくまでも司法が決定したものであり、司法で主体的に原因分析をして、児相が収集すべき情報はどのようなものか提示していただきたいと思います。

 これらの課題の理由として説明いたします。

 学術的には、我が国のように、虐待の受付、受理、介入、保護、措置、家庭支援を一つの福祉機関が行うことは適切ではないのです。司法と役割分担しているのです。しかし、現状はそうではないので、児童福祉法で可能な提言をいたします。

 次のページ、提言、子どもの権利条約に合った司法関与の実施です。

 改正案では、児童相談所の聞き取りだけで司法審査となっています。改正案への提言としては、提案一、裁判所は児童相談所に追加資料を請求しないこと、提案二、司法審査の影響については裁判所が主体的に対応すること、提案三、司法審査の基準は他国の司法アセスメントシステムを参考に作成することを盛り込むことです。

 これら提案を実施する対応策として最適なのは、詳細な一時保護の要否条件、つまりガイドラインを司法で作成することでございます。

 児相の情報は欠損が多い状態です。しかし、裁判所には膨大なデータがあって、それは福祉と本当に比較にならないほどあるのです。このデータを基に一時保護の要件を作成して、児相の欠損のデータから未来を予測して主体的に判断していただきたいと思います。

 児相のデータが足りなくても、なぜ他国は司法が決定できるのか。それは、学術を取り入れて、足りない情報を既存データで浮かび上がらせるアセスメントを行い、子供を救っているのです。よって、他国では、司法が四十八時間とか七十二時間以内に保護の決定ができるんです。

 このシステムには副次的効果があります。国連子どもの権利委員会のやり取り議事録からは、我が国は子供に関するデータの収集と分析が足りない、データを政策立案のために活用するよう勧告されていますが、我が国はそれに真摯に回答できない状態が続いています。

 本システムによるデータ化を基に、一時保護のアセスメント、つまり、それが一時保護状を含めたガイドラインになりますけれども、これは、子供の人権に対する行為を数値化できることにありまして、政策科学として、国連にも十分説明できる根拠になります。アドボカシーの支援者育成もそうですが、政策をつくるには、科学的なデータがあって、そこから始まるということです。

 よって、まとめとしましては、本法案は、児相だけでは子供の意見聴取、代弁ができないということなので、外部から支援員を導入しようとしていると同時に、司法審査では、子供の意見を聞かずに、児相だけの資料で決定しようとする、相反する矛盾があります。さらに、アドボカシーの定義そのものの代弁という言葉が法案にもなく、ただ意見を聞くだけなので、技術も専門性も必要性がないという、福祉の専門性を否定している制度でございます。援助者の前のめりの視点だけで、子供への影響や効果などを検討しないシステムについては、再考を願いたいというのがまとめです。

 ありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、藥師寺参考人にお願いいたします。

藥師寺参考人 よろしくお願いいたします。

 大阪府中央子ども家庭センターの藥師寺と申します。

 それでは、早速説明をさせていただきます。お手元の資料を御覧ください。

 二ページを御覧ください。

 大阪府子ども家庭センターは、児童相談所機能、郡部福祉事務所機能、配偶者暴力相談支援センター機能を有しております。児童福祉法改正案にあります、市町村が設置するこども家庭センターと紛らわしいと思いますが、御了承ください。

 大阪府の児童相談所の担当する地域の状況ですが、所管地域は大阪府内、政令指定都市である大阪市、堺市を除く全四十一市町村を六つの児童相談所が担当しております。

 三ページを御覧ください。

 大阪府子ども家庭センターの職員体制です。児童相談所の相談支援を担う児童福祉司二百六十五名、児童心理司八十一名、医師二名、保健師六名を配置し、一時保護所には、子供のケアを担う児童指導員や保育士、心理職、栄養士、看護師を配置しております。

 令和四年四月時点では、国の配置標準と比べ、児童福祉司百九十四人、児童心理司百四十六人不足しているという非常に厳しい状況にございます。

 なお、優秀な人材を一度に確保することは困難であり、採用後の育成にも一定期間を要するため、毎年度、児童福祉司二十名の計画的増員を進めております。

 四ページを御覧ください。

 児童福祉司の状況です。計画的増員を進める理由は、児童相談所が組織として専門性を確保するためでもあります。令和四年度現在、児童福祉司の児童相談経験年数の平均は四・五年です。平成二十八年度の百六十二名から令和四年度までに百三名増員しており、児童相談経験年数三年未満の職員はおよそ半分になっております。

 まさしく職員の育成が急務であり、体系的な研修を実施し、実務では若手職員とベテラン職員が複数で保護者に対応し、子供には児童心理司とチームを組んで支援しております。特に、児童虐待対応の専門性は、職員一人一人が十年、二十年と経験を積み重ね、最新の知見を取り入れながら、組織として培っていく必要があると考えております。

 五ページを御覧ください。

 大阪府の二十年余りの児童虐待に対する取組について、大きく三期に分けて整理しております。

 第一期は、平成十二年に児童虐待防止法が施行され、支援的なアプローチから転換し、弁護士、医師との協働を得て、児童虐待への介入をしっかりできる組織にしようと取り組みました。

 第二期は、介入保護と法的対応の蓄積を進め、子供の生命と安全を守るため、弁護士の協力を得て家庭裁判所に積極的に申立てをし、現在では年間七十件に上ります。

 第三期は、虐待を防止するために、切れ目のない包括的な支援を地域でどう構築していくかという課題に取り組んでいるところです。まさしく児童福祉法改正案が実現しようとしているものです。

 まず、児童相談所が二十四時間三百六十五日対応するために、平成二十七年度より、全センター職員輪番の夜間休日当直チームを開始しております。若い職員が多い中、警察官OBとともに、子供の安全確認や保護を適切に実施できる体制を整えております。緊急対応にとどまらず、改正案に示されております一時保護解除後の親子支援や市町村と連携した家庭支援に取り組んでいるところです。

 六ページを御覧ください。

 具体的なデータをお示ししております。虐待相談対応件数、一時保護件数、家庭裁判所への申立て、立入調査や警察への援助要請、弁護士への相談の件数の推移を見ていただきますと、年々厳しい状況になっております。児童相談所が介入するより前に、市町村や地域の支援で虐待を未然に予防することが非常に重要であると考えております。

 七ページを御覧ください。

 計画的な増員とともに、児童相談所の機能を強化するため、平成二十八年度から、組織再編、効果的な業務分担に取り組んでおります。大きくは、地域の保護者や子供、関係機関からの通告や相談を受けて対応する相談対応課と、施設入所や里親委託児童のケア、保護者支援を担う育成支援課の二課体制とし、組織として介入と支援を分けております。

 年間一万六千件を超える虐待通告や様々な相談をインテーク・初期対応チームが一手に初期調査、初期アセスメントを行って、よりリスクの高いケースの継続支援を地域担当児童福祉司が担うなど、より効果的な組織対応を目指しておりますが、増加する新採、新任職員の育成を担う指導教育職員の負担が大きいことが課題になってまいりました。

 八ページを御覧ください。

 大阪府では、昭和三十五年より福祉専門職を採用し、相談機関や福祉施設の支援業務の全てを福祉専門職が担っております。児童福祉司や心理司の計画的増員を進め、児童相談所の機能を高める優秀な人材を確保するために、八年前から採用セミナーや職場体験実習、大学訪問など、積極的なアウトリーチを行っております。

 しかし、他府県、児相設置を進める中核市、市町村の専門職採用も活発になっておりまして、人材確保は非常に厳しい状況にございます。

 九ページを御覧ください。

 大阪府の児童虐待相談対応件数の推移です。過去十年間で三・三倍と急増しております。中でも、近隣住民からの泣き声通告や、警察からの面前DV通告などの心理的虐待に関する通告が増加しておりまして、約六割を占めており、職員たちが子供の安全確認や保護者面接に走り回っている状況です。

 十ページを御覧ください。

 夜間休日対応の現状です。夜間休日対応班の出動件数が年々増えておりまして、令和二年十月より、休日は出動二班体制にしております。ただ、夜間休日は、市町村が閉庁しておりますので、家族の状況、市町村での支援の状況、学校等の情報が得られず、情報の少ない中で対応を検討せざるを得ません。

 夜間休日も含め、市町村と連携した対応体制が取れることが次に取り組む課題だと考えております。

 十一ページを御覧ください。

 一時保護件数と、そのうちの虐待相談における一時保護件数の推移です。少し増減はありますが、高止まりの状況となっております。特に中高生の一時保護が増えており、一時保護先の確保が困難であり、一時保護所だけでは対応できず、児童養護施設や児童自立支援施設、自立援助ホームなどにも委託をお願いしております。

 十二ページを御覧ください。

 一時保護全体のうち、子供の安全を優先して保護した結果、職権保護の割合が八割弱になっておりまして、対応困難なケースが増加しております。また、一時保護所への夜間休日の入所が約六割となっておりまして、夜間休日の保護等の対応体制とともに、一時保護所の受入れ体制の整備も必要となっております。

 十三ページを御覧ください。

 改正案では一時保護開始時の司法審査が導入されますが、職権による一時保護開始直後、児童相談所が保護者に初めて会うことが多く、虐待等の事実や養育状況を確認し、児童相談所の役割や一時保護の必要性を説明しても、初回面接では納得されないことが多いため、ほとんどが司法審査を受けることになると考えます。

 現状では、七日以内の裁判所への請求事務を行うには非常に厳しい状況にありますので、必要な体制を整備するには一定の時間が必要です。国には、法施行までの体制整備への支援をお願いしたいと思います。

 また、一時保護中、担当者は、子供の気持ちを聞いて、どうしたいかを話し合う時間、保護者と養育について振り返る時間を優先したいというのが切実な思いです。司法審査に係る事務負担はできる限り少なくなるよう、運用上の工夫をお願いいたします。

 また、一時保護所の設備運営基準を独自に設定することは、二十四時間三百六十五日、緊急に保護され、様々な背景を持った子供のニーズを把握し、必要な個別的ケアや支援を行うために必要不可欠です。基準の設定に当たっては、現状や現場の意見を十分に反映いただきたいと思います。

 十四ページを御覧ください。

 児童相談所の対応は、弁護士や医師との連携が欠かせません。平成十二年度より、弁護士と医師から成る大阪府児童虐待等危機介入援助チームを設置し、令和四年四月一日時点で九十六人の弁護士に登録いただいております。各児童相談所二、三名の担当弁護士が定期的に児童相談所に来ていただくとともに、個別の法的対応について、電話やメール、事務所への訪問相談などにより、日常的に相談しております。

 また、通告を受けた子供の受傷や骨折などの法医学鑑定、性的虐待被害の医学的診断を必要とするケースも増加しておりまして、チームに登録いただいた医師に医学的な診断を求めております。

 里親や施設に措置された後も、虐待を受けた子供のケアは必要不可欠です。平成二十五年度に開設した診療所、こころケアに児童精神科医の常勤医師二名を配置し、虐待を受けた子供への医療、心理治療を集中的に実施しているところです。

 十五ページを御覧ください。

 新たに施設に入所する中学生、高校生の割合が増加し、入所先の確保に苦労している現状があります。思春期の子供たちと関係を構築し支援するには、高い専門性とスキルが必要です。また、自立について考える期間は短く、退所後の支援が必要な子供が多いため、支援体制の構築が急務となっております。

 十六ページを御覧ください。

 一時保護や入所に至った子供のケアだけでなく、保護者への支援が親子関係の再構築には欠かせません。児童相談所が子供の安全確認や緊急保護という初期対応だけでなく、中長期に子供と保護者の虐待からの回復を支援するためには、児童相談所における保護者支援の体制を強化するとともに、専門性の高い民間団体の育成、支援、市町村の支援体制の強化と民間団体との連携が急務となっております。

 私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、早川参考人にお願いいたします。

早川参考人 皆さん、こんにちは。児童養護施設子供の家の早川と申します。よろしくお願いいたします。

 私は児童養護施設の現場におりますけれども、今回の法案あるいは二〇一七年からの新しい社会的養育ビジョンについては、業界の中でも様々な反応がございます。ただ、それについて統一した見解があるわけではないので、私からは、一施設の職員として、報告ということで捉えていただければと思います。

 パワーポイントのスライドを中心にお話をします。

 まず、1、社会的養護とはということで、国による定義は一応書きましたが、割愛をします。

 赤字で書いたところは、適切に養育を受けられないにもかかわらず社会的養護にも結びついていない児童等が少なからず存在することに留意が必要というふうに書かせていただいております。

 権利条約でも、十八歳未満の全ての者について、二十条では、国が代替的養護の責任を持つ、第一義的には家庭で育つ権利があるんですけれども、それができない場合には国が責任を持つということになっているんですけれども、実際は、社会的養護に結びついていなくて、保護者の元を離れている子供だったり、あるいは、社会的養護に結びついても、十五歳、十六歳で結果的には自立を強いられている子供たちがいます。そういった人たちの存在を忘れてはならないということを留意しないといけないと考えています。

 3、社会的養護下の児童等や退所者が負わされている二大不条理ということで書きました。

 一つは、若年、低学歴で強いられている社会的自立ということで、今言ったように、極めて適切でないような養育環境で育った子供もいるわけですけれども、一般の子供よりも早く、そういった低年齢、低学歴で社会に出されている現状がある。

 二番目に、地域生活の連続性の欠如。これが私は非常に配慮が足りていないなと思うんですけれども、子供は、虐待や保護の名の下に、ある日突然、家庭、学校、地域という三つの柱を同時に奪われます。場合によっては、これが里親さんのところに行って里親不調とか施設不調ということになれば、この家庭、学校、地域の引っ剥がしというのはまた繰り返されます。このことが子供の発達に及ぼす影響は極めて甚大なんですけれども、その辺りに対する配慮が十分でないなというふうに常々考えています。

 貧困、虐待、養護問題の世代間連鎖を止めるにはこれらへの対応が不可欠と考えており、4のところで、子供の家では、どうやってこの二大不条理に立ち向かっていくかということで日々検討しております。

 赤字で書きましたが、中段のところで、社会的養護自立支援事業利用者、今八名ということで、多いときには十名を超す利用者がいました。

 どういうことかというと、二十歳までは措置延長で在籍できるんですけれども、二十歳を超えると、二〇一七年から、社会的養護自立支援事業ということで、二十二歳年度末までの在籍が認められるようになっております。そういったことで、子供の家では、今はもう二十二歳まで在籍するのが当たり前ということで、先月も、三月に三人の人が社会に出ていきましたが、三人とも二十二歳年度末でした。二人は四年制大学を出て、一人は、専門学校を中退してしまったんですけれども、その後、就職をして社会に出ていきました。

 そういったことで、昨今、非常に議員の皆さんや厚労省の皆さんの御尽力もありまして、非常に手厚い支援ができるようになったなというふうに感じておりますけれども、ただ、全国的な状況を見ると、大半がいまだに十八歳自立です。せっかく制度がつくられても、使われていないというのが現状です。

 あと、家庭、学校、地域の引っ剥がしということを言いましたけれども、6、7のところでちょっと紹介をしていますけれども、子供の家では、一度預かったお子さんは二度とたらい回しにならないように精いっぱい、最大限二十二歳まで、場合によってはそれ以上、そこを超えて支援を継続するということと、あともう一点は、地域の中で、措置されている子供を施設の中で待っているのではなくて、我々から地域に出ていって、地域のお子さんを支えましょうということで、そだちのシェアステーションという取組をしております。

 基本活動は、ショートステイ、トワイライトステイ、あとは、放課後児童、不登校児童の居場所、生活支援、学習支援、食事提供、保護者への養育相談を柱にしています。

 次のスライドに行ってもらって、8、これは付言ですけれども、こういった活動も、この後拡充していきたいなというふうに考えております。

 この辺り、児童養護施設全体にこういった機能強化とか機能転換といったことが言われていますけれども、是非こういった辺りも強化していっていただきたい。

 ただ、このときに自治体の負担率がかなり課題になります。私がいる清瀬市は、私ども社会福祉法人は税金を納めていなかったり、あるいは、都営住宅が非常に密集しているところなので低所得の御家庭の皆さんがかなりいらっしゃって、非課税世帯だったり、あるいは生活保護受給世帯だったりが多くて、そうすると、市の収入が少ないわけですね。市の収入が少ない自治体ほど支援のニーズが高いわけです。でも、これを一律に、市町村が三分の一とかそういった負担を負わされると、結局、必要な自治体が必要なことができない、裕福な自治体はできるという矛盾が生じております。この辺り、十分御検討いただければと思っております。

 9から児童福祉法改正案というところですけれども、先ほど言ったように、二十二歳年度末までの支援は実施施設が極めて少なく、格差が拡大しているということで、大半の施設は十八歳でやはり出ないといけないと思っています。先ほど言ったように、子供の家は大学卒業まではみんないられるというふうに思っていますけれども、子供は施設を選べないのにそういった格差が看過されるべきではないと考えます。

 次に、児童自立生活援助事業。この辺りについては、今までの社会的養護自立支援事業が、法的根拠がないために都道府県によって取組がまちまちだったんですけれども、今回、六条の三で法的に裏づけられて、義務的経費になったということは非常に大きな前進だと思っております。

 ただ一方で、支援が一旦途絶えると、措置延長から継続、連続していないと支援が継続できないんですね。一旦途絶えて出戻るみたいなことが想定されていませんので、この辺りは今後の課題だということで考えています。

 10の(16)のところ、社会的養護支援拠点事業のところです。いわゆるアフターケアの拠点なんですけれども、こちらも根拠法に明示されたのは前進なんですけれども、こちらについては義務的経費になっていないんですね。生活支援に関しては義務的経費になりました。だけれども、アフターケアになると義務的経費にはなっていないということです。

 あと、ここも、対象に、先ほども申し上げたように、社会的養護に本来来た方がいいんだけれども来られなかったお子さん、青年たちがいるというところで、そういった方々が困難の中にあるといったときに、ここの、こういう拠点事業から排除するということがないようにお願いしたいなと思っております。

 (17)、意見表明等支援。これも先ほどからお話がありましたが、今回、十八歳成人になりますので、今まで措置延長とか社会的養護自立支援事業が十分に活用されていない大きな理由に、子供不在で、施設だったり里親さんだったり児童相談所だったりが決めているということですね。ここを十分に、サービス利用の主体は子供だったり、十八歳を超えて成人になりますので、そういった方々がどうやって、意見を表明するだけではなくて、それを支援に反映していくか、この辺りが非常に大きな検討課題になっていくと思っております。

 あとは、国連の児童の代替的養護に関する指針というところでお示しをしましたが、こちらについては、国連が社会的養護はどうあるべきかということを示しているということで、御参照いただければと。

 あと、二点、資料を追加しておりますけれども、その辺りも、二〇一一年の末に、厚労省が措置延長を積極的に活用すべきということで通知を出していただいております。そこがいまだに、十年以上たちますけれども十分に生かされていないという現状、こういったところをどうやって生かしていくか。これは、子供の主体的な選択というところをどう強めていくかというところに懸かっていると思っております。

 私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山本左近君。

山本(左)委員 おはようございます。自由民主党の山本左近です。

 まずは、本日、五名の参考人の皆様、本当に貴重な御意見をどうもありがとうございました。

 また、質問のこの場に立たせていただきました国民の皆様、先輩議員の皆様、そして同僚議員の皆様、全ての関係する皆様に感謝申し上げます。しっかり頑張ります。よろしくお願いします。

 児童虐待等をなくして全ての子供たちの幸せを守りたい、この思いは、ここにいらっしゃる皆さん共通の思いかと思います。また、子育て世代やまた社会全体の幸せを守るためにそれぞれの現場で御尽力をされていらっしゃる参考人の皆様に、改めて敬意を表したいと思います。

 初めに、山縣参考人にお伺いいたします。

 先ほど、お話の中で、公的サービスにつながりにくい、また、身近にアクセスできる支援が課題だというふうにおっしゃられておりました。

 今回の法案の中に、こども家庭センター設置、新設が盛り込まれております。このセンターは、全ての子供や子育て世帯を支援する役割を担うことになりますが、私としては、子育て世帯を具体的な支援に結びつける、つながる、つながる力、ここが非常に大事かと思っています。

 この機能に関して、NPOや、施設、また子育て支援に取り組む熱意のある方たち、地域社会において悩みを抱える親やお子さんをしっかりつないでいくことが求められている中で、こども家庭センターは地域でのつなぐ役割を担うと思いますが、山縣先生の目で見て、このセンター創設の意義を改めて教えてください。

山縣参考人 御質問ありがとうございました。

 今委員御指摘のように、私は、このこども家庭センターというのは非常に期待をしているところです。

 とりわけその意義というのは、ばらばらな相談窓口が、非常にたくさんあるんだけれども、その中で、コントロールタワーといいますか、まずそこで中心的な関わりをしていただき、そこから必要なものにつないでいくという意味で、今、市町村には、先ほども話をしましたが、子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターと大きな二つのものがありますけれども、これをもう既に設置されているところについては、一定の整理をしつつ、完全に一体化をするかどうかはまた別にして、有機的な連携ができるものとしてこれを設置していくというのは非常に意義が高いというふうに思っています。

 一方、先ほどの話でもしましたが、役所がつくるものというのは日常的には少し利用しづらさがあるというふうに思っておりまして、こども家庭センターと地域にあるNPO等様々な機関のネットワーク化ということが併せて重要になるんだろうというふうな認識をしております。

 以上です。

山本(左)委員 ありがとうございました。

 ただいま山縣参考人がおっしゃられていたところで気になった点、もう少し深掘りさせていただきたいと思います。

 公的な機関ですと、利用しづらいということもあります。そこで、NPO等、民間の力を活用していこうということなんですが、改めて、活用していくため、そういった場所に対して、私は、いつでも誰でもどなたでも必要があるときには伺えるような場所であってほしい、相談できる支援体制が欲しいと考えています。

 ただ一方、そこに行くと虐待をしている親だと思われてしまうとか、また、そこに行くと自分は困っている子育て世帯だと思われてしまうと、やはり、ぎりぎりなラインにいる人たちというのは利用をなかなか、しに行くのを控えてしまうんじゃないか、そういった逆効果もあるんじゃないかと思いますが、その点、利用される方の目線で考えたときに、山縣先生としてはどのような方策をこのこども家庭センターが持つべきと考えますでしょうか。

山縣参考人 これも先ほど少しだけお話をしたつもりなんですけれども、例えば「こうのとりのゆりかご」にしても、匿名でしか相談できない、匿名でしか預けることができないというふうな方々が実際にいらっしゃいます。その方々は、名前を出してくださいというのは言葉としては簡単なんですけれども、言い出しにくい事情がその背景にある。そこをやはりしんしゃくしてあげないといけないのではないかなというふうに思っておりまして。

 そうすると、今、役所等の相談は、基本的には名前を名のっていただいて、書類を作って記録が残るという形になっていますけれども、その役所の仕組み、公的な仕組みは名前を名のらないという形で受けるのはなかなか難しいと思っていまして、そうすると、NPOさんとか、あるいはNPOでさえ顔を出しにくいような方々について言うと、安全性の確保を一方で考えないといけませんけれども、ネット等を通じた相談、こういうところまで公的なものが支援していくのかどうかという、私はぎりぎりのところに来ているのかなと。

 そこまで、先ほどの別の参考人の話ではありませんけれども、追い込まれた女性がいる、追い込んだ男性がいる、そういう構造を理解してあげないと、女性のみを加害者として見るという相談の仕組みだと、やはり近寄り難い方がいらっしゃるのかなというふうには思っています。

 以上です。

山本(左)委員 山縣参考人、ありがとうございました。匿名性によって質問される方を守っていくということが大事だということはよく理解できました。ありがとうございます。

 続いて、藥師寺参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 児童相談所における親子に対する支援の質を向上させていくことは本当に大事なことでありますし、また、そこの重要性を先ほどお話をいただきました。また、夜間対応の急増ですとか一時保護所での対応、非常に困難ケースも増えているということで、働く皆さんにとってはますます今は、現状、厳しい現場になってきているんじゃないかというふうに思います。

 その中で、今回、見直しの中では新たな資格を設けることとしています。様々な議論があったということは承知しておりますが、私としては、児童相談所で働かれている方のうち最も多い社会福祉士の方、まずはその方々の資質を向上することを促すことを重点に置いている今回の法改正は、非常に現実的であり、評価をしています。

 そこで御質問させていただきたいのは、児童相談所でもこの資格を持っている方が活躍することが期待されると認識していますが、児童相談所を総括する立場として、今回、資格創設に対する所見、また児童相談所の体制への影響についてお伺いさせていただきます。

藥師寺参考人 お答えいたします。

 児童相談所の体制を整備し、機能を強化するためには、児童相談所の仕事は大変だと思うけれども子供を虐待から守るために働きたいという意欲のある人材を確保することが非常に重要だと思っています。

 自治体の立場といたしましては、基本的なソーシャルワークの力を持った人材、社会福祉士や精神保健福祉士を採用した上で、現任者として児童相談所の実務に必要な子供家庭福祉についての研修課程を受講することによって専門性を確保する認定資格は、有効と考えております。

 ただし、児童相談所等で働きながらの受講になりますので、現場の状況を踏まえた受講方法等の柔軟な設計をお願いしたいと考えております。

山本(左)委員 藥師寺参考人、どうもありがとうございました。

 続きまして、早川参考人にお伺いいたします。

 児童虐待を経験した方や児童養護施設で暮らした経験のある方をしっかり守り、支えていくことはもちろん重要であります。また、その生活を成り立たせる、継続させるという点でも、今後、今、課題といったところはお話をいただきました。

 ココ・シャネル、ジョン・レノン、スティーブ・ジョブズ、こういった方たちは、ファッションや芸術、ビジネスの世界で、様々な領域で偉業を成し遂げた世界の変革者たちです。彼らも、実は孤児院であったり里親で育っていたり、そういった環境を持つ方々です。生い立ちは変えられないが未来は変えられる。一見、私が言うと陳腐に聞こえ、薄っぺらそうに見えるこの言葉にも夢と希望を与えてくれる方たちだと私は思います。

 日本でも、社会的養護を経験された方が、自分自身の夢を抱いて、それに挑戦し、自己実現できる社会環境が必要であると強く感じています。

 今回の児童福祉法改正案では、自立支援の強化のために年齢制限の弾力化に取り組む内容となっていますが、日頃まさに社会的養護を経験した方々に多く向き合っていらっしゃる早川参考人の目から見られて、この法改正の評価や、期待すること、また思いをお伺いしたいと思います。

早川参考人 御質問ありがとうございます。

 私も常々感じているのは、子供たちは、先ほども申し上げたように、ある日突然、大人の都合で施設に来ます。施設を選んでいません。それで、来た上で、十八歳という大人が決めた年限で一方的に出されます。おめでとうなんと言って祝福されるわけですけれども、子供にとったら、本当にめでたいのかというのが非常に疑問です。

 こういったことで、これが二十二歳に延びたというのは、私は非常に大きな成果を感じているんですけれども、ただ、それでもやはり、大人が決めた年限で一方的に出ていかなければいけないというところはまだ変わっていないわけですね。

 そこで、場合によっては、子供のペースで、もうそろそろ俺、もう大丈夫だから出ていくわとか、私、まだ不安だからあと半年、少しここにいたいとか、そういった子供の主体的選択を支えるためには、そういった弾力的な運用が非常に重要だと思っております。

 そういった意味では、今回の法改正は、うまく使えば非常に有用だと思っております。

山本(左)委員 ありがとうございました。

 時間も限られていますので、最後に質問させていただきます。和田参考人へお伺いします。

 二ページ目の課題の中で、プログラムについて、KPI等がないことによってやりっ放しになってしまうんじゃないかと危惧を、意見をされました。福祉的に、よく、現場の皆さんは、非常にモチベーションを持って、熱意を持ってやられるんですが、その振り返りや、また、客観的な分析が乏しいところもあるかと思います。こういったKPI評価をもしするのであれば、具体的にどんな指標がつくられると思いますか。

和田参考人 お答えいたします。

 子供の回復の度合いや、意見表明をするしないとか、その背景などを分析して、意見表明をした後、ずっと継続的に追って、その意見表明が本当に評価があったのかというような評価指標が必要だと思います。

山本(左)委員 時間が終了いたしましたので、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は誠にありがとうございました。

橋本委員長 次に、山井和則君。

山井委員 十二分間ですので、申し訳ございませんが、金尻理事長を中心に質問をさせていただきます。

 まず、この厚生労働委員会でも、児童福祉法に関連して、アダルトビデオの問題というのは議論をさせていただいております。その中で、齋藤理事、牧原理事、伊佐理事を始めとして、本当に超党派で議員立法の議論が行われていて、先ほど金尻理事長がおっしゃったように、残念ながら、高校生、十八歳、十九歳のアダルトビデオ出演ということになると、被害が低年齢化していく。恐ろしい話だと思うんです。

 今日は、金尻理事長とふだんから性暴力の被害に取り組んでおられる岡さん、内田さん、相談員の方もお越しをいただいて、本当にうれしく思っております。

 そこでなんですが、私、配付資料を見て驚いたんですが、完全サポート体制、一日体験、脱がない、触られない、なめない、余り言いにくいですけれども、こういう。これを、東京の方は御存じかと思いますが、この音楽が渋谷、新宿、流れ出て、子供も口ずさんでしまっている、こういう状況なんですね。

 それで、ちょっと先ほど時間がなかったんじゃないかと思うので、子供の性暴力被害に関して確認したいんですけれども、金尻理事長さんのおっしゃりたいことというのは、要は、求人のときには安心なアルバイトですよといいながら、実際、行ったお店の広告ではわいせつ行為もオーケーみたいなことを、実際されてしまっている、そういう話なんでしょうか。ちょっと差し障りのない範囲で御説明いただければと思います。

金尻参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございまして、こちらの女性の求人のサイトの方は、すごく甘い言葉、それも、一日体験五万円というふうに書いてある。本当に、来月家賃を支払えない、どうしようとなったときとか、ほかにも、奨学金を使ってしまってどうしようとか、そういった本当に生活困窮になってしまうと視野が狭くなってしまうんですね。そのときに、この五万円という言葉が本当にきらきら映るということがございます。

 実際それで体験入店という形で入っていくと、実際はこういった、下の方にあるような形で、結局事実と違う結果になってしまって、精神的にも追い詰められてしまわれる方、妊娠や、性感染症に感染されて、そのことで更につらい思いをされる方というのが、相談が寄せられております。

山井委員 私も本当にショックです。

 上の広告を見たら、安心な、いいアルバイトかなと、お金に困っている人であればあるほど思いますよね。

 私も、政治家になったきっかけの一つ、学生時代、児童福祉施設で六年間ボランティアして、ケアリーバーという、施設を出た女性の中には、性暴力被害に遭う方がやはり残念ながら多かったんですね。そういうこともあって、私も政治の道を、理系から転向したんですけれども。

 こういうふうな、残念ながら深刻な問題です。

 結局、金尻理事長さん、こういう被害者がぱっぷすさんに相談に来られているということですか。

金尻参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございまして、ぱっぷす、当団体の方には、そういった若年層の方から、二十代前半の方の相談がやはり多くございます。その方の多くが、様々な理由で性的搾取に巻き込まれてしまうという状況でございます。

山井委員 今日は児童福祉法の審議ですけれども、本当にこれは深刻な問題で、残念ながら、東京渋谷、新宿に行けば、今でもこういうPRの車は走り回っていまして、もっと怖いのは、子供と若者がこの歌を口ずさんでいますからね、びっくり仰天ですけれども。

 それで、もう一つ私が驚いたのは、次のページ、十代を狙う路上スカウトの様子。百名のスカウトがいると。それで、このスカウトに声をかけられた女性に対して、恐らくぱっぷすさんは、アウトリーチで、今声をかけてきたのは、あれはスカウトと名のっていないけれども、あれはナンパじゃないですよ、スカウトですよということを多分アドバイスして守ってくださっているんじゃないかと思うんですけれども。

 その下も、高校生、十代の性を買う大人たち。これは私は何の写真かなと思ったら、この写真というのは、もしかして、高校生も含む援助交際とかそういうことを待っている男であって、ここに残念ながら行ってしまう高校生、子供も残念ながらいるという状況なんですか。ちょっとこの二枚目の写真について御説明ください。

金尻参考人 お答えいたします。

 上のスライドの方ですが、こちら、新宿駅東口は、本当に常時百名近いスカウトがいると承知されています。

 我々大人が歩くと特に声かけとかはないんですけれども、やはり、十代後半、二十代前半の若年層の方、子供を含む方が歩くと、本当にずうっとつきまとうんですね。それもナンパと称して、例えば、アルタ前というところから、ずうっと本当に二百メーターぐらい、ゴジラ前、シネシティ広場とかそっちの方まで、ずうっとつきまとって、結局解放してくれない。LINEを交換しようというふうな形でLINEを交換して、そこから、結局、性的搾取ですね、AV被害とかに巻き込まれてしまうというふうな状況がございます。

 下のスライドにつきましては、これは、とある東京都内の場所でございますけれども、ここに、いわゆる性を買う大人たちがある種待っているわけですね。それで、若年女性が歩くと、その大人たちが声をかけて、幾らというふうに聞くわけですね。我々もアウトリーチをしていると、我々に対しても幾らというふうに声をかけられますので、本当にびっくりするわけなんですけれども、そういう実態がございます。

山井委員 これは本当に児童福祉法の理念に百八十度逆行する、高校生がそういう搾取に遭う。田村前大臣も本当に子ども貧困議連の会長で取り組んでくださっておりますけれども、残念ながら貧困、貧困じゃなかったら喜んでこういう危ない橋を渡る人なんて絶対いないと思うんですね。貧困と家庭環境、それは私たちが守らねばと思います。

 そこで、今日のスライドのラストにも、議員立法の提出をということを書いておられますけれども、結局、改めてお聞きしたいんですけれども、十八歳、十九歳、高校三年生がアダルトビデオ出演がオーケーになってしまったら、児童福祉法の対象である十六歳、十七歳、子供まで性暴力被害が増えやすくなるのかどうなのか。児童福祉法の観点から、アダルトビデオが高校三年生、十八歳、十九歳に事実上解禁されつつあるということと、児童福祉法の対象の子供や高校一年生、二年生の性暴力、性犯罪の被害が増えるんじゃないかということ、そこの関連性についてお答えください。

金尻参考人 お答えいたします。

 先ほどの、前の質問の方ですね、十代の路上スカウトの様子ですけれども、こちらのスライドについての補足がございまして、高校生に対しても今声をかけるようになっております。それは確認しております。本当にそれは成人年齢引下げのある種残念な影響だというふうに認識しております。

 次の、先ほどの御質問につきましては、特にインターネット上には、大量の、アダルト動画と称して、児童ポルノやリベンジポルノも含まれて、ネット上にたくさん拡散している状況がございます。そういったものを基本的に児童であっても見られる状況にあるわけなんですけれども、児童はそういった、高校生AV解禁ということが実質的に行われるわけなんですが、そうなると、中高生も見るわけです。自分が幼ければ幼いほど、それが、性は売れるものだということを幼い頃から体験させられてしまうという状況があるわけですから、やはりすごく深刻な問題に直面しているというふうな認識をしております。

 以上です。

山井委員 これも聞きづらいんですが、先日、ある裁判がありまして、ある男性がある女性を監禁して性奴隷にしたいと考えて、切断して殺人をしてしまった、これはとんでもない極悪犯罪の裁判で、その裁判の中で、なぜそういう性奴隷にしようということを考えたんですかという議論の中で、アダルトビデオを見たと。そういう驚くべきまた事実だったんですね。

 そうしたら、私が一番心配しますのは、高校三年生、制服の方が、万が一、今後、アダルトビデオ、十八歳で増えていったときに、またそれを、言いづらいけれども、男性が高校生のアダルトビデオを見た、自分も何か同じことをしたいと妄想に駆られてしまったということで、結局、高校三年生のそういうビデオが、今までは二十歳以上で偽物のセーラー服だったのが、本物のセーラー服のアダルトビデオがもし増えてしまったら、高校三年生どころか高校一年生、二年生も、痴漢とかレイプとか、そういう犯罪に遭うリスクが高まるんじゃないかと思うんですが、そこは金尻理事長、いかがでしょうか。

金尻参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、やはり性暴力加害の公判傍聴とかも通じて、実際、AVを模倣して自分もやりたくなったというふうに証言した加害者も実際におりますので、そういった形で、それが今回更に低年齢化するわけですから、高校生AVが解禁されることによって、高校生も性の、性的な欲求の対象にしていいんだということを、ある種お墨つきを与える結果にならないかということを、我々はとても懸念しております。

山井委員 一番深刻なのは、アダルトビデオの場合は、一回だまされた、一回ふらふらと同意してしまった、それがデジタルタトゥーとして永遠に残ってしまうわけですよね。例えば学校の進学、就職、あるいは、ばれて解雇、一歩間違って、そのことが結婚とか恋愛の支障になる。幼いときにだまされたか丸め込まれたかはさておき、そうやって契約してしまったことが一生に与える悪影響についてお話しいただきたいのと、もう今時間が来ましたので、それと加えて、そういうことを防止するために児童福祉法に関する要望、改めてお聞きできたらと思います。

金尻参考人 特にデジタルタトゥーの問題につきましてあえて申し上げますと、やはり、AVを製造、販売している事業者は、若年女性、こどもたちが、今回の平仮名こどもですけれども、後でデジタルタトゥーになることを十分に理解して撮影、販売しているということは、やはりまず最初につけ加えたいと思います。

 被害者の置かれた状況ですが、本当に、誰かに見られてしまうかもしれないというふうな恐怖に常におびえながら、日々の生活を余儀なくされています。実際、そのことで生きづらくなってしまわれて、自死された方も実際にいらっしゃいます。そういった意味で、本当に深刻な状況があるというふうに認識しております。

 あと、悪影響については、実際、私どもも、どうなるのか本当に正直分からないというところです。今後これがずっとこのまま野放しになってしまうと、一年後どういった日本社会になっているのかというのは、正直もう分からないというところが正直なところでございます。

山井委員 ほかの参考人の方々、お聞きしたいことは多々あったんですけれども、時間がなくて申し訳ございません。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓です。

 本日は、委員の皆様、お忙しい中わざわざ当委員会にお越しいただきまして、本当にありがとうございます。また、貴重な意見をいただきましたので、それにつきまして御質問の方をさせていただきたいと思います。

 私の方からは児童虐待についてお伺いをしていきたいという具合に思うんですけれども、まず、児童虐待が疑われる場合には、まずは一時保護をすることで、疑わしきは一時保護をして、子供の安全を確保していくということが第一義であるかと思います。また一方、子供の意見をしっかりと聞き取って、それを代弁していくということも非常に重要だと思っている中で、最初に、この児童の意見聴取の仕組みについてお伺いをしていきたいと思います。

 児童の権利条約、日本が批准しております児童の権利条約について、国連から今日本は是正の勧告を受けて、それに基づいて今回の改正というのも行われたと認識しております。

 今回の事業においては、都道府県等がアドボケート、意向表明支援について、努力義務という形でされていますけれども、努力義務では各都道府県において事業に対する温度差ということも出てくるのではないかなという具合に懸念をしております。

 私、本来であれば、この事業は、努力義務ではなくて、各都道府県がしっかりと義務化することで、子供の意見を聞き取れるような仕組みをつくっていくべきではないかなという具合に考えております。

 また、アドボカシーの定義がないということで、和田参考人、言われていたんですけれども、また、条文の中に子供の意見を代弁する文言が入っていないということでありますが、改めて、この問題意識と、単に聞くだけではなくて、代弁というところに着目して、必要なポイントというところにつきまして、御意見をお聞かせ願いたいと思います。

和田参考人 今の議員がおっしゃったアドボケート、意見、意向表明支援と言いましたけれども、実はそこは代弁という言葉なんですね。ただ子供が言ったことを聞くだけでしたら、お気持ちアドボカシーなんです。聞いただけでは駄目でして、聞いた後に、その聞いた人が、その子供の解決を、伴走して寄り添っていくというのが代弁でございますので、そういうことでございます。

池下委員 ありがとうございます。

 今の御意見をいただきまして、また代弁というところの重要性というのも感じさせていただきました。

 先ほどちょっと私申し上げたんですけれども、今回の改正では子供からの意見聴取というのが都道府県の努力義務という形になってくるわけなんですけれども、やはりちょっと温度差が出てくるかと思うんですよね。そうすれば、逆手を取るということは、言い方が正しいのかどうか分からないんですけれども、この意見聴取を行っている都道府県と、逆にやっていないところ、これを比べることによりまして、やってきた事業の成果であったりとか、逆に足りない点なんかというのが浮き彫りになってくるのかなという形で考えております。いわゆる先生が言われておりましたKPIなんか、重要業績評価指標なんかというのにも該当してくるかなと思います。

 この点に関してと、あと、今の代弁の点に関しましては、午後も厚労委員会がありますので、そこでもちょっと質問の中に取り入れさせていただければありがたいなという具合に思います。

 そこで、児童福祉の観点からKPIの評価というものが必要だということで申し上げられていたんですけれども、和田参考人の御意見をちょっと改めてお伺いをしたいと思います。

和田参考人 ありがとうございます。

 この領域において政策評価は最重要だと思っております。KPIもなく導入して、しばらくして廃止される事業がとても多いんです。これは厚労省の皆様にとっても非常に負担でございますし、効果などの評価も分からず、現場の人にも迷惑をかけるだけの、ただの税金の無駄遣いなんです。

 今回、池下先生の御質問というのは、多分、児童福祉法創設以来初めての政策評価である、因果推論を含めた評価の視点を取り入れた質問でございます。

 確かに、努力義務というのは自治体の実情によって実施できるということがあるんですけれども、ランダム化した介入ではないんです、実情によってなので。

 でも、そういう場合であっても、回帰不連続デザインとか、そのような、今、世界若しくは日本の他分野では盛んな因果効果の測定が実施できて、介入効果、つまり政策評価ができるんです。これによって、政府は、自治体にインセンティブを与えることによって、政策の望ましい実行を奨励することができるということなんです。

 これにより児童福祉は初めて政策科学やデータサイエンスの視点が入るということなので、是非御検討していただければと思います。

 以上です。

池下委員 ありがとうございました。

 是非、今の御意見を参考にさせていただきながら、また議論の方を進めさせていただきたいという具合に思います。

 次に、子供の意見表明等の支援員の件について、また和田参考人にお伺いをしていきたいと思います。

 和田参考人のお話によりますと、ストレスなどで子供さんが不安定な心理の中で、正確な子供の御意見を拾い上げるということが難しいという点がありました。そのような中で、スキルも身元も重視されず、希望すれば数日の研修を受けただけの支援員がその業務を行うという怖さも理解させていただきました。

 スキルがない支援員が意見聴取をしたとしても、それはやっているだけで、効果がなかなか上がらないという具合に思います。センシティブになっているお子さんたちは、変な形で受けちゃうと、逆に子供さんが傷つくというケースもあるのではないかなという具合にちょっと懸念するところであります。

 子どもの権利擁護に関するワーキングチームの議論からも、懸念されるものとしまして、今回の改正には、導入の効果、導入の悪影響、介入の人権侵害を防ぐ対策、子供に悪影響を及ぼした場合の責任の所在、またKPIが含まれていないという点、また、支援者を養成するプログラムについての記載がない点、支援者のスキルについての記載がないことや、特定の資格も求められていないという点が挙げられているという具合に聞いております。

 子供の人権に精通した有資格者を育成すべきという御意見もありましたけれども、法改正後にいきなりそれが一気にばっといくわけにはいかないので、その過渡期として、どのような人材が子供のアドボカシー支援を行っていくべきかという点につきまして、和田参考人にお伺いしたいと思います。

和田参考人 まず、福祉がアドボカシーをやるような理由はという問いの回答がありません。福祉の専門性、技術というのがまだ定まっていない状況でございます。そのために、この分野の専門性のために、子供家庭福祉等の国家資格の議論があったんですけれども、それもなくなったので、国家として認定される児童スキルのスキルというものはないということになります。

 よって、もし福祉でやるのならば、そのスキルが標準化されるまでは、これまで子供の人権、少年事件等に関わってきた弁護士などを更にトレーニングして支援していただくなど、まずは他領域の専門家を活用するというのが考えられます。

池下委員 ありがとうございます。

 他領域の専門家の活用ということと、また、子供の人権に関した弁護士さんとか、また裁判官さんとか、そういうことも考えられるのかなという具合に思います。

 次に、一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入についてお伺いしたいと思います。

 児童の権利条約におきましても児童が自己の意見を表明する権利を確保することとされておりますし、また、虐待を疑われている親御さんの方にも意見をしっかりと聴取していかなければならないということで考えております。

 やはり、虐待の疑いがあるときは、まずは一時保護するというのは変わりないわけなんですけれども、それを踏まえた上で、もし虐待がないという場合には、親子を引き離すということは、当然、お子さんの成長にも非常に影響を及ぼしていきますし、そして、親御さんの親権というところにも、侵害していくという危険性があるのではないかなという具合に考えております。

 福祉機関であります児童相談所は捜査機関というほどの捜査権というのはありませんので、子供の人権保護に関しましては司法、そして支援については福祉機関ということで、私は、やはり役割分担というのをきっちりとやっていかなければならないのかなという具合に考えております。

 そこで、児童虐待が疑われた場合に、一時保護するのは児童相談所、子供の意見表明等をするのも児童相談所、司法の判断になる資料を作るのも福祉関係のところということで、本当に、今日も来られていますけれども、児童相談所の仕事はたくさん、本当に気の毒なくらいたくさんあると思っているんです。

 そこで、今回の改正による一時保護に関してのガイドラインですが、私は非常に曖昧なものであると感じております。ガイドラインにつきましてはどのような内容を考慮して作成していくべきなのか、また和田参考人の方にお伺いをしたいと思います。

和田参考人 お答えいたします。

 一時保護状がどのようなレベルの記載を求めているのか、たった七日間でどのようなシステムで児相がどう動けばいいのか、子供の聞き取りができない、うまくいかなかった場合などの起こった場合の対応方法や責任体制など、現状ではガイドラインについては不明でございます。

 それは、福祉ではデータがなく、エビデンスに基づいたガイドラインが作成することができないということなんです。

 だからこそ、司法で作成していただくか、また、もし福祉でやるのならば、可能な限りデータを民主化して、研究者が科学的に評価可能なガイドラインを作成する必要がありますが、それを実施する決断力と能力があるかでございます。データなくして政策は語れませんので、データに基づいたガイドラインを作成すべきだと考えております。

池下委員 ありがとうございます。

 まさに科学的データというのと、そのデータの蓄積というのがこれからの対策について必要だということが、改めて感じさせていただきました。

 ちょっと時間もなくなってしまったということで、本当にほかの参考人の皆様にも御質問したかったんですけれども、時間が来ましたので、これで終了させていただきたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

橋本委員長 次に、吉田久美子君。

吉田(久)委員 公明党の吉田久美子でございます。

 本日は、参考人の五人の先生方には、貴重な御知見をお聞かせいただき、大変にありがとうございます。

 早速ですが、山縣参考人にお伺いいたしたいと思います。

 先日、五月三日は日本国憲法制定七十五周年でありました。国連も認める普遍的価値の基本的人権の尊重というのが、我が国の憲法の基本理念、大きな三原理の一つとしてありますが、残念ながら、国連が八九年に採択し、九〇年に発効した子供の基本的人権についての国際条約においては、我が国では、国際社会から後れを取って、九四年に批准をいたしました。現在、国内法であるこども基本法の制定に向かって議論が進んでいるところではありますが、一九八〇年代の議論の中で、山縣先生が、子どもの権利条約と訳さず、子供の人権条約と訳されるものと思っていた、つまり、権利は、義務を行使して始めて保障されるものという、相対的関係を示す意味を持つが、対して、人権には、生まれ持つ絶対的なものという意義を持つ言葉としてあり、権利と訳したことで様々な混乱を起こしている、一部の地方自治体においては、判断力の乏しい子供に権利を認めるのはいかがなものかとの意見を取り入れ、権利という言葉さえ条例から削除した市町村もあると、参考人自らの苦い経験も紹介された記事も拝見をいたしました。

 今法案でも重要視されているところではありますが、子供の虐待の未然防止や対応においては、子育て世帯の身近にある市町村の役割の大きさは論をまたないところであり、山縣参考人のお考えのとおり、まずは、子供の人権を絶対的なものとして尊重し守るという基本的な理念を共有してこそ、全ての施策が始まると私も考えております。

 参考人の率直な御意見として、市町村の役割、その現状認識、また、今後の対応についてのお考えをお伺いしたいと思います。

山縣参考人 御質問ありがとうございます。

 今、委員御指摘のとおりでございまして、私の古い文献等を読んでいただいたようで本当にありがとうございます。

 私自身、子どもの権利条約が日本で批准されるプロセスの中で、少し、いろいろ勉強をさせていただいたんですが、結局、最終的には、どうも国の方にある英語の翻訳ルールに従って、ヒューマンライツとなっていたら基本的人権と訳す、ライツとなっていたら権利と訳すという、どうもそういうルールがあるようで、御承知だと思いますけれども、国際人権規約というのがありますけれども、これ、ヒューマンライツなんですね。大人の場合、一般の場合は人権と訳し、子供の場合は権利と訳しています。

 でも、チルドレンズライツというふうに考えたときに、子供期、人間の中の、ヒューマンの中の子供期のライツだから、私は人権と訳せるんだというふうに解していたんですけれども、残念ながら、そうならなかった。

 ここのテーマではありませんけれども、障害者の権利条約も同じです。私はあれも、障害者の人権条約ではないかというふうに考えています。障害のある人たちのライツという意味では、人権に近いんだと思っていまして、このことを十分世の中が理解できていなかったというのが現状、いまだにそうかもしれません。

 子供だからという言い方ですね、一番それを言っているのは、社会ではなくて、私は親だと思っていますけれども、親自身も子供の人権を認めていないというところがある。社会もそういうものはたくさんあるというふうに思っています。このことをまず周知するということが非常に重要なんですけれども。

 それを踏まえた上で、市町村の役割という質問の趣旨のところに入りますけれども、市町村というのは、最前線で多くの子供に関わっていく場所ということになります。ですから、その方々は、人権意識を持って親子に向き合っていただく。親子に向き合うというのは、時には、親の意向を無視してでも、子供の人権のために介入なり支援をする必要があるというところが、意識が必要なんですが、それは法的にサポートしなければ保護者の親権の侵害に当たると思いますので、親権の侵害に当たらないやり方をルール化する必要がある。親権というのは、また一方で非常に重要なものですから、軽視しようとは全く思っていませんので。

 しかし、親権というのは、子の利益のために存在するというふうに民法に書いてありますので、子の利益にならない親権の行使については、やはり不適切である。子の利益になるものであれば、むしろ親を応援すべきである。保護者支援も非常に重要だと思っています。

 子供の最善の利益を守るために、市町村の窓口等がそれを意識していただき、さらに、地域活動をしている方々が一緒になって支えていただく必要があるのかなということを感じております。

 以上です。

吉田(久)委員 子供の人権、絶対的なものという認識、しっかり共有をしていきたいと思っております。

 再度、山縣参考人にお伺いいたします。

 今回の児童福祉法の改正には新たな家庭支援事業の創設などが盛り込まれ、今まで手の届かなかった課題に実効策を用意する考え方で、評価できるところではありますが、実際の自治体の規模や財政力、また、民間事業者がどの程度あるか、そういった実情には地域差があると思われます。このようなことを思うとき、子供の人権を守るという理念においては共有できたとしても、この改正法の目指すものがどの程度実現可能なのか、御心配されている点など、参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山縣参考人 今の財政問題も含めてですけれども、先ほど和田参考人からも、そういう地方財政の差によって施策に違いが出てくる可能性があるということを御指摘されましたけれども、私自身も同様の感想を持っています。

 地方への財政支援の在り方、これから、子供の問題に限らず、少子高齢化がどんどん進んでいくと、財政力がある自治体とない自治体が今まで以上に差が出てくるような気がしています。そこを、私の場合は子供の視点で支援していくということが、国の方からも支援していただくということが重要ではないかと思います。

 ちょっと例は今日のテーマと直接ではないんですけれども、例えば、地方ではもう幼稚園がほぼなくなってきています。千七百数十の自治体があるというのは御存じだと思いますけれども、公私含めて、幼稚園が全くないところが今一五%ぐらいでしょうか。六か所に一か所はないということですね。それから、広域合併した中で一か所しかないところを含めると、ほぼ五割になります。ゼロ若しくは一しかないところが半分を占めているという状況がある。そうすると、子供の育ちの場をどう保障していくかというところですね。まさに人権問題になってくるわけですけれども、育つ権利そのものが奪われる可能性が出てくるということになります。

 それから、また違う例ですけれども、鹿児島の与論島、与論町に、あんまぁ〜ずという団体さんがあるんですけれども、数年のつき合いがあるんですが、これは、私、男で本当に恥ずかしい思いをしたんですけれども、妊婦さんが航空機に乗れるのが、日本の大手の航空会社でいうと妊娠九か月までなんですよね。そうすると、一か月前から、与論島には産科の施設が、産婦人科がありませんから、那覇若しくは鹿児島で出産されるんだそうです。一か月前から行き、このコロナ状況であれば、更に沖縄は二週間滞在しないといけませんでしたから、要は、一か月半以上、地元から離れて女性が一人で出産をしないといけない。それを応援しているのが、あんまぁ〜ずさんなんですけれども。

 そういう、地方に行くと、国からはなかなか見えづらい様々な子供の問題、女性の問題が存在している。そういうところを、地方の弱い財政の中では非常にやりにくいと思いますので、是非、私たちもできるだけ頑張ってみますけれども、皆様の方も、それぞれの地域から出ておられると思いますので、各地にある本当に細かい問題、これが子供の育ちに非常に影響していくんだと私は思っていますので、是非、そういう一人一人の子供たち、誰一人取り残さないというSDGsの理念を大切にしていただきたいなというふうに思っています。

吉田(久)委員 地方の厳しい現実を教えていただきました。しっかり国としての支援を進めていくべきだと私も考えております。

 ちょっと時間になりました。最後に藥師寺参考人にお伺いいたします。

 大阪府の児童相談所所長としてこれまで多数の案件に関わってきてくださったと思いますが、テレビ報道等を見ている限りにおいて、とても凄惨な虐待事件が増加をしていると認識をしております。最近の児童虐待について、どのような認識をお持ちなのかをお聞かせください。

藥師寺参考人 お答えいたします。

 児童相談所の立場で事案に関わっている立場からお答えいたします。

 確かに、凄惨な虐待事件が起こっておりまして、当該自治体では、再発防止に向けて児童相談所や市町村の対応経過の検証を行って、改善に向けた取組を行っているところでございます。

 国の児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会の検証結果によりますと、毎年、児童虐待による死亡事例が発生しておりまして、心中以外の虐待死亡事例の人数はほぼ横ばいという厳しい状況にあると承知しております。

 年齢別ではゼロ歳児が一番多いということでございまして、児童相談所におきましても、乳幼児の虐待通告につきましては、子供の状態、保護者の状況、家庭の養育環境などから、子供の安全が守れないと判断しましたら、調査のための保護を実施しております。

 その御家庭の状況を具体的に確認してまいりますと、望まない妊娠や出産、住むところがない、頼る人がいないなど孤立をされております。また、経済的にも困窮しているなど幾つもの困難が重なっている状況がございまして、そういったことが明らかになってまいります。そのような困難な状況が重なれば、誰もが追い込まれ、虐待に至ってしまうのではないかと少なからず思っております。

 今回の改正案につきまして、地域の困難を抱える子供や保護者が虐待に至る前に人とつながって、必要な支援が届くことが重要であり、児童虐待の防止に資すると考えております。

吉田(久)委員 今日は貴重なお話をありがとうございました。

 時間になりましたので、以上で終わらせていただきます。

橋本委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 今日は、参考人の皆さん、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問をさせていただきたいと思います。まず、和田参考人にお伺いをしたいと思います。

 和田参考人は、科学データに基づく政策立案が大切であるということを今回も述べていただきました。子供の虐待による社会的コストについても調査をしておりまして、大変甚大であると。また、データに基づいた客観的な分析による政策実行を、虐待やDVでも導入をすべきだという考えを示しておりますが、私も大変賛同いたします。

 この中で、社会的コストが一・六兆円という試算も出していただきまして、この試算に実に十年もかかったということも論文の中で述べておりました。どうしてそれだけの時間が、コストを計算するのにかかってしまうのかということは大変疑問です。

 このデータの分析において、アメリカ等で質の高い結果がもう既に出ていて、それを参考にしているということでありますが、日本において、今後このデータを科学的に政策に利用する場合に、どのような調査を行い、また、定量的なデータを積み上げていく必要があるのかということについて伺いたいと思います。

 同時に、この論文の中で、EBPMの基本デザインも必要であるということも言及されていましたが、それについても述べていただければと思います。

和田参考人 お答えいたします。

 信じられないかもしれませんけれども、ほかの国では、匿名に配慮して、個人の個別のデータまで、子供のデータまで公開されております。そういうふうに、研究者が申請すれば、許可されれば見られるんです。つまり、データを民主化しているんです。なので、研究者がそのデータに基づき、あと、いろんな様々な公開データが制度としてできているので、それを基に評価ができているんです。

 また、私、熱意があって情熱があってスキルがないのは子供に害というのをいつも提言しているんですけれども、子供に介入する団体、それはNPOでもいいんですけれども、ほかの国だと、私たちに一ドルくれれば、今言った虐待のコストで、そういう犯罪とか、そういうのをなくして、ちゃんと働かせるので、私たちに一ドルくれれば七ドルに変えて社会に還元するということをどの団体も言っているんですね。というのは、そういうことを言わないと補助金が得られないんです。それを明確に、つまり、子供の権利とかというのは全て数値に変換できます、特に金額にはできるんです。トラウマとか将来の犯罪率、生活保護率ですとか、全て金銭化できるんです。

 ですから、そういう金銭化ができないような団体というのは熱意と情熱だけの団体なので、補助金がカットされるわけでございます。ですから、非常に、どんな団体であっても、政治の皆さんであっても数値にこだわるのはそこでして、数値化できないのはやっていないのと一緒ですし、逆に子供にとっては害悪かもしれないということなので、数値の重要性というのがまさにEBPMの基だと思っております。

 以上でございます。

田中(健)委員 どうしても、インパクトある大きな事件が起きますと、社会問題となりまして、子供をなぜ救えなかったのかと。また、児相に対しても大変厳しい追及がされてきたのが何度も何度も繰り返されてきました。

 確かに、福祉というのは感情にどうしても左右されるものでありまして、私たちも、かわいそう、悲しい、何とかしなきゃという思いはあるんですけれども、やはり、政策をつくり、また判断する立場としては、冷静に客観的に測定でき、他分野とも比較を和田先生の場合はされておりましたが、そういった見える化を進めた環境を是非整備を進めていきたいと思っています。

 更にもう一問伺います。

 児童虐待防止政策においては、司法の関与の必要性ということも、和田委員、何度も訴えられてきました。今回、一時保護の司法関与ということについては前進しつつある、喜ばしいという評価もしていますが、改正法案では、司法の関与は一時保護の開始時だけとなり、親子の再統合やまた虐待における相談、助言というのは都道府県事業というふうに位置づけられました。これについてはどのように評価をされているかをお聞きしたいと思います。

 また同時に、この虐待防止対策に本腰を入れるならば、警察との情報共有ということは必要だということを虐待においては何度も言われてきたんですけれども、それだけではなくて、先ほど少し報告もありました役割の分担というのがそれ以上に大事だ、これを子どもの権利条約に則して政策の方向性に位置づけるべきだと述べられていますが、これらを併せて御説明をいただければと思います。

和田参考人 お答えさせていただきます。

 司法関与、児相の司法に関すること、子供の意思決定や、親子の分離とか再統合に関して福祉の児童相談所が行っているというのは、私が調べた限り、OECDとかを含めても日本しかないんですね。役割分担ということなので、なぜ日本だけ福祉で全部やっているのかな、ですから、厚労省の皆さんも忙しいわけでございます。ちょっとおかしいということでございます。

 また、次にありました質問でございますが、ちょっともう一回、済みません。

田中(健)委員 その役割分担が、子どもの権利条約に則しての政策の方向性ということで位置づけて御説明いただければ。

和田参考人 それで、今思い出しましたが、警察との情報共有なんですけれども、警察の情報を共有ではなくて、児童相談所から一方的に警察にデータを吸い上げるシステムに今なっています。逆に、警察から児童相談所に情報が行くのは、一七%の情報量しか行っていないんですね。ということは、警察の下請機関になっているということなんです。逆に警察は、児相の全ての情報プラス自分たちの捜査情報のビッグデータで今アセスメントモデルをつくって運用しているんです、全国で。

 ですから、そういうように、福祉よりも本当は司法の方が情報があるんですね。だから、情報があるところが判断をするべきであって、情報が足りなくて、もがいていて人も足りないところに全て責任を負わせるというのが非常に課題ということなので、世界と同様に役割分担が必要じゃないかということの意見をさせていただきました。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 引き続き、今度、早川参考人に伺いたいと思います。

 今回の児童自立生活支援事業の対象者が、年齢を弾力化して二十二歳以上も受けられるという改正案が出されましたけれども、この年齢制限の撤廃が進むことは望ましいと早川参考人からもありましたけれども、早川参考人の資料を読みますと、成人年齢と自立支援は直結しない、また、これまで以上に児童養護施設は高校卒業までとなってしまわないかという懸念も示されていました。

 同時に、施設を運営されている実態として、全国のほとんどの施設が二十二歳どころか二十歳までの措置延長もやっていない、制度が使われていないと先ほど御説明がありました。

 実際、この児童養護施設の現場では、今、措置延長も含め、何が現場で起きているのか御説明をいただければと思います。

早川参考人 ありがとうございます。

 現場の実態でいうと、まず、措置延長に関しては、児童相談所も消極的ということが多々あります。というのは、一時保護所は常に満床で、何か月も留め置かれていて次の行き場がないということなので、措置延長が積極的に使われると受皿の確保が難しいんじゃないかというような懸念があって、消極的になっているというところもあります。

 ただ、そこに関しては、措置延長期間というのは、十八歳になって、最小一年から最大二年です。一年から二年、平均して一年半ぐらいの期間が延びたからといって、それほど受皿が不足するとは私は考えていないし、もし不足するのであれば、近年はグループホームの増設なんということも推奨されているわけなので、私どものところでも、三年前に比べて在籍の人は四十二名から五十八名に増やしていますし、そういった努力で対応はできるはずなんですね。

 もう一方で、施設現場が消極的というところでいうと、これまで、十八歳でゴールみたいなことで、やはりこれも、申し訳ないんだけれども、大人目線の仕事の仕方なのかなと思っています。自分たちの仕事は、高校を卒業して、子供たちを社会に送り出すのが仕事、それ以上のことは、やったことがないので自信がない、イメージができないという声を聞いたことがあります。だから、やはり、大人主体で大人が決めるのではなくて、先ほどから申し上げているように、子供主体、子供目線で、子供の意見をきちんと反映するような制度に変えていかないといけないと考えています。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 最後に山縣参考人の方に伺いたいと思います。

 今お話があった児童自立生活援助事業の年齢の弾力化、二十二歳以上も今回入るよと、撤廃になりましたけれども、先ほどの説明の中で、この二十二歳以上は必要だ、どこまでやるのかが次の課題である、また、子ども・若者支援法との関連もしっかり考えていかなきゃならないというふうにお話がありました。これについて、参考人としての、どこまでやるのか、また、次の若者支援というものにどうつなげていくのかということのお考えを聞かせていただければと思います。

山縣参考人 ありがとうございます。

 私自身、大学を出て、四年半でしたけれども、児童養護施設の児童指導員をやっていました。今から四十数年前という話になりますけれども、実は、その当時の括弧つきで子供と、今でもつき合っています。それは、単につき合っているのではなくて、その後、アルコール依存になったり、いろいろな社会のお世話に、迷惑をかけたりした子供たちがいたり、あるいは、途中で亡くなってしまって、その子供ですね、ケアリーバーの子供の世話を今しているのが、三十歳ぐらいの子が二人いますけれども、ずっと支援は必要なんですね。

 それは、社会的養護の子だから必要な部分と、一般の人たちだって、なかなか社会に適応できない人たちが増えてきているということで、ずっと養護の枠組みでいくと、だんだん先細りなんです、仲間がどんどん減っていきます。一方、子供、若者支援のところはたくさんの人たちが今増えてきていますので、私は、一緒になって考えていく。

 社会的養護の子供たちの場合は住居が必要な場合が非常にたくさんありますので、例えばですけれども、今は児童福祉法の範疇で延ばして児童養護施設を利用させていただいていますけれども、例えば子ども・若者支援法にも同様なものをつくって、生活の場所として児童養護施設が利用できる、他法の施設を利用するという、今、こういうのはほかの法律でも幾つかありますので、そういう相互乗り入れによって、例えば就労支援とかであれば、施設関係者よりも、私は、若者支援をやっているサポートセンターなどの人たちの方がノウハウをたくさん持っているような気がしていまして、そこの協力関係をつくっていく。一気に渡すのではなくて、まずは協力して一緒にやっていくような仕組みをつくっていくということが重要なのかなというふうに思っています。

田中(健)委員 大変参考になりました。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、早川参考人にお伺いしたいと思います。

 二大不条理に立ち向かっていくということを努力されているというお話がありました。早期に自立が強いられるという現状を、子供の家では二十二歳まで当たり前にしているけれども、格差が施設によって大きいんだというお話もございました。

 この格差をなくしていく上で大事なことは何なんでしょうか。

早川参考人 ありがとうございます。

 正直なところ、私も、ずっと、この業界に来てから、支援の標準化ということを、言葉を掲げていて、この格差と立ち向かってきたつもりなんですけれども、現状、私は、できる限り情報共有ということで、ついている制度や法制度は子供にとっては権利なんだからということで、子供や各施設の人たちが分からないということがないようにということで、情報発信に努めてきました。それで、ある程度の効果は出てきたと思います。

 もう一方で、この格差を、標準化するために私が一番有効だと考えたのが、支援を専門に担うスタッフの配置ということで、自立支援を専門に担うということで、私は二〇〇二年から自立支援指導員というのを名のって、施設や他施設との標準化を図って、進めてきたつもりです。二〇一二年には東京都で自立支援コーディネーターが制度化され、昨年から、実質的には国においても自立支援担当職員がついたということがあります。

 この人たちを、ついたのはいいんですけれども、施設でばらばらに、一人職場とか、二人、三人のところもありますけれども、孤立させていては、支援の標準化は進まないというふうに考えています。今後の課題は、この自立支援担当職員を組織化し、そして共通の学びを。資質をきちんと、資質要件を整える、方針を整える、業務内容を整える、そこまではある程度できているんですけれども、組織化し教育をする、そこがまだ足りていない、これが今後の課題だと考えています。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続いて、もう一問、早川参考人にお伺いしますが、大人目線でなく子供を主体にした社会的養護が大事だというお話が今日もございましたけれども、その点で一番大事なことは何なんでしょうか。

早川参考人 やはり、先ほどからずっと話に出ている意見表明といったところ、ここが全くもって不十分だったと言わざるを得ないと思っています。なので、これから直ちに、先ほどからもお話に出ていますけれども、やればいいというものではないというところはあるかもしれませんが、でも、まず第一歩を踏み出して、そういったことが必要なんだと。

 今回、三十三条にも触れられていますけれども、措置の開始あるいは解除に当たっては、子供の意見がきちんと反映されるといったことを試みるということ。最初は恐らく格差もあると思うんですけれども、まずやってみるということですね。

 今の時点では、恐らく、児童相談所も施設も、措置の開始や解除が子供の意向と関係なく行われていることに対して、当たり前というように、そういうものだというような感覚がはびこっていると思います。そこをまずしっかり変えていかないといけないと考えています。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続きまして、藥師寺参考人にお伺いをしたいというふうに思いますが、一時保護開始時の司法審査について、現場からは大変負担に関しての懸念があるというお話もございましたが、率直に、国に対してどういうことをお求めしたいと考えていますか。

藥師寺参考人 児童相談所は、子供の生命とか安全を守るために、疑わしきは保護するという姿勢でやってまいりました。

 一時保護開始時の司法審査につきましては、親子を分離するという重大な行政処分になりますので、中立的な第三者の立場で、客観的な事実、子供や保護者の意見を把握して審査するという点では、基本的には必要であるというふうに思います。

 しかし、今までお話しさせていただいたように、児童相談所の現場は、虐待相談対応件数は増加しておりますし、緊急保護、夜間休日対応も増えて、待ったなしの非常に厳しい状況です。そこに司法審査の手続が加わるということになっておりますので、国に対しては、一時保護が将来の子供の安全を確保するための手続ということで有効に機能するように、現場の意見を十分に聞いていただいて、運用の工夫をお願いしたいと思います。

 具体的には、夜間休日の児童相談所、裁判所の体制整備ですとか、書類をできるだけ簡素にして、裁判所に書類を持ち込むのではなく、ファクスやメール、オンラインなどの効率的な事務の工夫ですとか、児童虐待についての共通理解に基づく児童相談所と裁判所との連携体制の整備、こういったことが特に必要であるというふうに考えております。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続きまして、金尻参考人にお伺いしたいと思いますが、アダルトビデオの高校生出演を阻止するという日頃の取組に本当に大変感謝しておりますが、家出などで行き場のない子供の居場所の支援が大事だというお話がございましたが、具体的にどういう支援の強化が必要とお考えなのか、お伺いしたいと思います。

金尻参考人 お答えいたします。

 特に、当団体ではアウトリーチ事業も行っておりまして、まずは居場所の拠点を整備するということも重要でございますし、その後、やはり居場所を失われた方、特に新宿歌舞伎町でアウトリーチ、声かけ、夜間声かけをしておりますと、その中で様々な、ホストクラブのホストにお金を吸い取られてしまってお金がない状況の方とかもいらっしゃいますので、そういった方に対して居所の提供ですね。それも、今、ショートステイのような形もありますけれども、やはり中期の、最低でも一年とか二年いられるような、そういった、シェルターとは違うんですけれども、一時的な安心と安全が保たれるような居場所というのも物すごく重要というふうに認識しております。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続きまして、山縣参考人と和田参考人に同じ質問をさせていただきたいと思います。

 社会的養育専門委員会の報告書では、子供の意見表明、子供の権利の問題に関わって、国レベルの権利擁護機関、子供コミッショナーの制度の検討というのを提言されていたというふうに思います。ところが、今回、児童福祉法の改正にも、あるいはこども家庭庁の設置法案にも、この子供コミッショナーの制度は入っていないというのが現状でございます。

 この点についてどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

山縣参考人 委員の中でもその部分については少し意見が割れていたところです。ですから、すべきだとまでは書けなかったんですけれども。

 この子供コミッショナーというのは、国連の子どもの権利委員会からも、日本にはそんなものがないというふうに指摘されているというところがまず根っこにございます。それをベースにつくっていくんだけれども、では、世界の中でどれぐらいあるかというと、必ずしもたくさんはないんです。別に世界にないからつくるなと言うつもりは全くなくて、どういうふうにつくるのかということについて、もう少し時間をかけて議論する必要があるということで、この形で、報告書の形で取りまとめております。

 私自身は、子供の権利を守るための国の統一した機関というのは、私は個人的には必要だと思っていますけれども、このつくり方については、正直、まだちょっと不勉強で、私自身もこうすればいいですというところまでは言えないというのが現状でございます。

和田参考人 山縣先生御指摘のとおり、世界でかなり異なっているというのが現状でございます。

 ただ、つくっていないところも、裁判所の中にある子供裁判官、それも数年の専門的なトレーニングを受けた方が子供の意見をきちんと聞いて調整するということになっておりますので、そういう制度が各地にあります。

 一方、こども家庭庁を見ますと、法務省とか、その人材を、関係する総務省とか、あと文科省の一部も入っていないので、恐らく、今後、日本ではそういうことはできないのではないかと考えております。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 改めまして、早川参考人にお伺いしたいと思いますが、お話の中で、アフターケアの拠点をつくる社会的養護支援拠点事業について、これは義務的経費に至っていないというのはどうなのかというお話もございましたけれども、やはりこれは、どこでも、どの都道府県でも、あるいはそれぞれの地域であった方がいいというふうに私も思うんですけれども、その辺り、どういう思いでこういうふうに述べられたのか、お伺いできればと思います。

早川参考人 ありがとうございます。

 私も、この辺り、実は一番期待をしたところです、拠点事業が義務的経費になるということが。ただ、やはり専門的なことは私も十分に理解していませんが、まず、この居住費支援、インケアのところ、二十二歳年限を撤廃してというところですけれども、そこを先に義務的経費にされたというところで、何事も一歩一歩なのかなというふうには理解をしています。

 なので、まず、居住費支援が、二〇一七年のときに、あそこももう法的根拠に明示されるのかなと思ったんですけれども、そこはなくて、予算事業で活用されたんですね。それが今回義務的経費になったということなので、これは段階を追って、今後は是非この拠点に関しても義務的経費になるように検討をお願いしたい。

 それで、併せて予算事業等も裾野を広げて、社会的養護を経験しなかった方々にも対応できるように検討をしていただきたいなと考えています。

宮本(徹)委員 あと、これも早川参考人と山縣参考人にお伺いしたいと思いますが、子供アドボケート、意思表明支援事業も、これも努力義務でということになっておりますが、これは早急に義務事業にしなきゃいけないんじゃないかと思いますが、この点、いかがでしょうか。

山縣参考人 権利擁護部分については努力義務ということになっておりますけれども、少なくとも自治体の方々においては、子供の人権を守ることが重要なんだという大前提で考えると、人権を守る手段の一つが子供自身の考え方を尊重するということになると思いますので、受け止め方としては、私は義務として受け止めていただきたいなというのが正直なところの思いでございます。個人的にもそういう考え方をしております。

早川参考人 私も同様に、これも義務であるべきだと思っています。九四年に日本は権利条約に批准しているわけなので、私は、その時点で義務にするべきだったと思っています。

宮本(徹)委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、終わります。

橋本委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 最後になりました。有志の会の仁木博文と申します。

 皆さん、今日は、いろいろ大切な御意見そして現場のお話、ありがとうございました。

 私、実は今、訪問診療とかをしていました、この場に来るまでに。それで、放課後デイの方との医療連携でありますとか、様々な家庭に深く入り込んで、様々な、例えば医師として本来外来でやる場合には得なかった以上の情報を得るわけですね。

 今回、例えばこども家庭センターなるものがこの法律の下に設置されて、いろいろ、様々な子育て、そしてトラブルに基づく、解消の司令塔になっていくわけでございますけれども、そういった知り得た情報、皆さんの立場で知り得た情報、これに対してどういうふうになされているかということを一つ知りたいわけでございます。

 例えば、子供のことでありながら、やはりお父様、お母様の職場、あるいは状態、あるいは健康状態までが、例えばその日の食べる食事が作れなかったりとか、そういうことにもつながっていくわけでございますけれども、そういった、いわゆる本来皆さんがそれぞれの場所でプロとしてやられていること以上のことをやる際のコストというのは、公的に出ないことが結構あります。その辺に関しての御意見ですね。

 ちょっと具体的に言うと、例えば、本来の児童相談所の事業を超えた、されど皆さんが経験的に、これはちゃんと応対して、話も聞いて、それなりのそこでの結論を出して、そのことを相手に伝えておかないとうまくいかないなというふうに思ったときの、そういったコストというのは将来的に、今はなかったとしても、あるべきなのかどうなのか、そういうのをお聞きしたいと思いますけれども、まず、山縣先生、どうでしょうか。

山縣参考人 今、私は直接そういう業務を担当していないので明確に伝えることはできないんですけれども、例えば評価の仕方も少し変えた方がいいのかなというふうに思っていまして、それは、今、例えば児童相談所でいいますと、幾つケースを抱えているか、一人当たり何ケース抱えているかという見方をしがちですけれども、そこにある中身は、質はかなり違うと思っていまして、むしろ、時間数とかあるいは時間帯とかそういうところまで踏み込んでいかないと、なかなか、今おっしゃったような必要な、現場に直接役立つような形になりにくいのかなというふうな感じがしております。

 これについては恐らくほかの参考人の方が詳細を御存じかと思いますので、私の方はこれぐらいで控えさせていただきます。

仁木委員 済みません。時間の関係で、個別にまた質問していきたいと思います。

 藥師寺参考人にちょっと聞きたいわけですけれども、御提出の資料の中に、児童相談所に常勤のドクターを雇用というか配置されているということを記載されていましたが、具体的に、そのドクターは一般の外来業務はやられているんでしょうか。そして、非常勤のドクターは、例えば、いわゆるキャパを超えたような相談があったとき、あるいは、これは医療に結びつけた方がいいということを経験的に児童相談所の職員が判断したときに、例えばリモートとかで電話相談等でやられて、それで診療報酬という形で返されているのか。そういった雇用の実態を一点お聞きしたいと思います。

藥師寺参考人 お答えいたします。

 大阪府の児童相談所におきましては、診療所を開設しておりまして、常勤医を二名配置しておりますけれども、基本的には、やはり、なかなか一般の外来では診ていただきにくい子供たち、虐待を受けて心身の傷ついた子供たちの治療に専念しているということで、一時保護ですとか施設入所児童、里親委託児童ということに限らせていただいております。

 そのほかの非常勤の医師につきましては、同じく、やはり一時保護とか施設入所児童、主に一時保護児童に限って、医療相談という形で、報酬は取らずに診ていただいているという状況でございます。

仁木委員 私、子供の立場はもちろんなんですけれども、やはり、基本的に子供はお父さん、お母さんと一緒にいた方がいいというふうに思っております。皆さんも同じだと思います。

 そういう中で、何かの理由、もちろん司法判断で別々に生活するようなことに決まった場合の、また、どこかの時点で復帰というか、そういうのもあると思うんですけれども、その辺でいうと、私は、よく、虐待をした親であったりそういう方々が、いわゆる医療的、専門的見地から、あるいは診察を行って、ちょっとよくなったなとか、あるいは、面会の回数を増やしていって、逆にまた元のような状態の、一緒に住めるような状態になる。そういうのをやるために、これはアメリカの論文でもあるんですけれども、やはり、虐待をしている母親は過去に遡ると自分もちっちゃいときに虐待を受けた経験がある、虐待の連鎖という言葉がありますけれども、そういう事例が多うございまして。

 となると、やはり、子供の立場はもちろんです。子供の精神的な虐待を受けた方の心のケアもそうです。ですから、小児精神科医が少ない今の日本の現状は問題がありますが、その虐待してしまう親のケアあるいは治療、そういったものに対してのお考えがございましたら教えていただきたいと思います。藥師寺参考人、お願いします。

藥師寺参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃるように、保護者へのそういった治療的な支援というのは非常に重要でございます。そこに児童相談所自身が関わるというのはなかなか難しいところがございますが、保護者の方が精神的に不安定な場合は医療機関につなぐという形で、その医療機関の方々との連携によりまして、家族再統合に向けてどのように進めていくかということも連携しながら進めているところでございます。

仁木委員 ですから、今回、こども支援センターができますけれども、やはりそういった形でいいますと、医療機関の連携を私もさきのこの厚労委員会でも大臣に提言しました。

 ですから、やはり様々な、妊娠であるとか、あるいは子育てであるとか、何か問題が生じたときのそういった医療機関との連携、専門的な方々へのいわゆるリエゾンというか結びつきをしていくことも大切だと思いますので、冒頭申し上げたそういったところのコストは、意外に、その方々を無理やり連れていくということも難しいわけでございますね。特に、それが精神科であったり、心療内科でも難しい事例もあります。そうすると、それを説明して、理解して、実際、クリニックなりに行っていただく、その手間暇はすごいと思うんです。そこに対してのやはりコスト。実は皆さんも、そういったことの調整において非常に時間を取られていると思うんですね。あるいは、エネルギーが割かれていると思います。そういうことをちょっとこれから私たちも考えていかなきゃいけないと思いますし、皆さんにそういうことを聞きたいと思って、しました。

 最後に早川さんにお聞きしたいと思いますが、今、養護施設にいらっしゃる子供、私の地元にもいまして、保育園、幼稚園のとき以上に、学校に上がってから、ほかの子との違いをどうしても意識してしまうんですね。例えば運動会であるとか、具体的に言うとPTA活動であるとか。そういったことの、さっきの質問ともかぶりますけれども、皆様方のそういった学校における申し送りは担当の先生もいらっしゃるから密には連携されているとは思うんですが、やはり子供たちから見ると、その皆様方のいらっしゃる施設の方々が一種、親みたいな気持ちも持っていると思うんですね。そういう中で、学校への連携というのは、実際、早川さんの施設においてはどんな形で取り組まれているか、ちょっと実態を教えていただきたいと思います。

早川参考人 どこの施設でも例外なく、学校との連携というのは非常に大事だと思っています。

 ただ、最近は、小規模、分散化ということで、かなり、私のいる施設も、学区が散っているんですね。そういったところで少し連携が難しくなっているなという感じはしています。

 ただ一方で、学校に限らず、地域の住民の方々にもしっかり理解をされて、やはり地域のお子さんは決まった親が運動会とか保護者会に来るんですけれども、我々は代わる代わるいろいろな職員が行きますので、何でだろうというふうに思われることもあるんですけれども、そこでは、今日もそだちのシェアステーションというのを簡単に触れましたけれども、まず施設を、入所の子のところだけではなくて、地域の人たちが通ってこられる場所というのをつくっています。

 ショートステイで毎日通ってくる子もいるし、お風呂に入って泊まっていく子もいるし、一週間ぐらい泊まっていく子もいるしということで、児童養護施設を、グラデーションをかけて、地域の中で非常に様々な使い勝手ができるような、そういう形にしていく中で、いろいろな人が子供の家を利用している。

 だから、子供の家の子供が特別じゃなくなる、地域の中で子供の家はいろいろな人が使っている、そういうようなパラダイムをつくっていきたいなと思って、今取り組んでいるところです。

仁木委員 皆さんにお伝えしたいと思いますが、冒頭申し上げたように、やはり、いわゆるプロとして働かれている皆さん方がいらっしゃるわけですけれども、そういう方々が評価をされる、つまり、具体的に言うと、皆さんが、スタッフの方を含めて動いたときにいわゆる支給される、保険、介護保険から支給されることが多いわけでございますけれども、そういった財源、お金が、実際、評価されないところの方が結構大変だったりします。

 例えば時間帯を取ってみても、行政が設置するこども家庭センターでございますが、例えば夜に、あるいは休日に、結構そういうときにそういう事案が起こることが多いですし、子供の、実際、例えば小児の診療においても、深夜とか夜にそういう相談があることも結構ありますし、実際、そういう時間帯に受けたいという方がありますので、これは、そういったところのやはり評価、現場の実態から踏まえた、そういった行政的な視点を向けて、それに対するフィードバックをしていかなきゃいけないなということを思っていますので、この後も、午後から厚生労働委員会、この委員会の中でまた質疑がありますので、そういうことも訴えていきたいと思っております。

 時間が来ましたが、最後に、済みません、高校生アダルトビデオ出演問題ですけれども、私は、そういった、経済的でどうしてもということはあるんですけれども、やはり自分の体を大切にする、命を大切にする、そういう教育、大切だと思っています。

 NPO法人ぱっぷすの金尻参考人にお聞きします、最後の質問ですけれども。

 そういった教育ですね、学校の現場で、とかく、最近、性教育でありますとか、そういったものがなかなかなされていないというふうな、海外に比べて遅れているというようなこともよく聞く話でございますが、そういったことを、今この問題、すごく、皆さんの、困っている方の代弁者として今日こちらに参考人として出られていますけれども、今、こちらにおいても山井議員が頑張って、本当にこの法案をどうしても、この国会で見過ごすわけにはいかない、成人年齢が十八歳になって、自分でそういった権限を得られるような状態になったとしても、やはり様々な被害に遭う方がいて、一度出ちゃうと、いわゆるネットプリンティングでずっと残っちゃう、こういった問題を含めて真剣にやられていると思うんですけれども。

 その中でも、そういったことに自分から、できるだけ頑張って、こういう被害に遭わないような、抑止的なことも踏まえて、そういった教育のことのお考えを、御自身の経験、もしございましたら教えていただきたいと思います。

金尻参考人 お答えいたします。

 まず、教育としましては、加害予防教育というのがすごく重要というふうに認識しております。今はやはり被害予防がすごく重きが置かれておりますし、AV被害については被害予防というのも全く行われていないんですが、今後、被害予防も重要です。加害予防も重要です。あと、傍観者にならないということも、もちろん重要でございます。

 あと、もう一つ重要なポイントとしましては、やはり性的同意というのは契約で結ぶものではない、対価でも、性的同意は買ったりするものではないというところを、今後、予防教育として必要ではないかなと考えております。

仁木委員 ありがとうございました。貴重な御意見をいただいて、また私ども勉強していきたいと思います。

 今日はありがとうございました。失礼します。

橋本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

橋本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案並びに岡本あき子君外十二名提出、保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案及び早稲田ゆき君外十六名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省健康局長佐原康之君、雇用環境・均等局長山田雅彦君、子ども家庭局長橋本泰宏君、社会・援護局障害保健福祉部長田原克志君、農林水産省大臣官房審議官熊谷法夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橋本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橋本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。早稲田ゆき君。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきでございます。

 質問の時間をありがとうございます。

 それでは、児童福祉法改正案について順次質問をしてまいります。後藤大臣、よろしくお願いいたします。

 さきの、午前中の参考人質疑でもございました、児童福祉法改正時の主要な部分といいますか、これも提示をされまして、山縣参考人それからまた和田参考人からも、児童の意見表明権、これを保障する仕組みというのの問題、課題について、いろいろ御説明もございました。山縣参考人の方からは、第三者性、これが大変重要だという御意見でございましたし、また、和田参考人の方からは、本当にアドボケートの定義が決められていない中で実効性が担保できるのか、KPIの指標などの課題、たくさんあるのではないかという厳しい御意見もございました。こうしたことを踏まえて、私も質疑をさせていただきたいと思います。

 私は、党の子ども・子育てPTの方をやらせていただいている中で、児童虐待につきましての重大な、そして死に至るような大変な事案が後を絶たない、少なくならない、こうしたことを何とかしたいという思いで、この大きな一歩となるように、私はこの意見表明支援については期待をしているところであります。

 つまり、数年前は、千葉県の野田市の栗原心愛ちゃんの死亡の問題です。これは、一時保護をしていた、そして解除をして、その直後に、直後といいますか、その後に、実の親によって虐待を受けて亡くなっているという事案であります。多くの大人が関わりながら、学校にも、お父さんの暴力を何とか、どうにかできませんかと書いています。それから、児童相談所、一時保護所の方でも、帰りたくないという言葉を発しているとも報道がありました。それでも、その子の命を救えなかった、大人がこれだけいて、関わっている中で。

 私は、そこで、自分自身も含めて非常に無力感、どうしたらいいんだろうということを考え続けて、多分、厚生労働省の皆様も同じお気持ちだと思います。ですから、今回のこの子供意見表明支援というのは大変重要なものだと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、第六条のところに、第六条三の十七項、意見表明支援事業とはと書かれておりまして、措置その他の措置が取られている児童に対して、処遇に係る意見、意向について、児童の福祉に関し知識又は経験を有する者が、意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握するとともに、これらの意見又は意向を勘案して児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整その他必要な支援を行うと書かれております。

 この記載について、順次質問をまずさせていただきます。これは新規の規定であります。

 児童福祉に関し知識又は経験を有する者といいますと、子育てをしている皆さん全般がそれに当たるのではないかとも取れるわけです。私は、ここで、児童福祉だけではなく、児童の権利というものも含まれるべきではないかと考えますが、まず大臣の御認識を伺います。

後藤国務大臣 委員御指摘の規定は、子供の意見表明等支援事業の定義規定でございますけれども、弁護士や社会福祉士等の専門職、ノウハウのあるNPOなど、多様なバックグラウンドを持つ人材が担うことを想定いたしております。

 このため、このような方々を包摂する表現として児童の福祉と規定したものでございまして、児童の福祉は、委員御指摘のとおりで、児童の権利を包含するものと認識しております。

早稲田委員 権利が含まれるということを大臣からいただきました。

 この資料の方の一を御覧ください。こちらは、子どもアドボカシー研究会、後藤大臣にも総理にも意見書を児童福祉法改正に当たりましては提出をされている、有識者、専門家のグループでございます。そこに書かれていることが三つありまして、私もこれは大変重要な視点だと思っております。

 その中で、意見又は意向の把握、これはそもそもは児童相談所、こうした実施機関がやるべき責務でありまして、このアドボケート、これがそれを補完するものだけであってはならないと思います。裁判における弁護人のように、権利主体である子供の、本人の権利主張や意見表明を支援するものでなければならないと考えるわけですが、そのことについて、意見表明支援であることを明記をすべきではないかということが一点。

 それからまた、意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法によりというのは、あくまでも意見聴取を原則として、それがかなわない何か事情がある場合、年齢もそうでしょうけれども、そのときに適切な方法を取る、あくまで原則は意見聴取なんだということを大臣には確認をさせていただきたい。

 あともう一つ、追加といたしましては、では、適切な方法とはどんなものを含まれるのか。

 三点伺いたいと思います。

後藤国務大臣 児童の権利に関する条約十二条の理念も踏まえまして、児童福祉法の第二条においては、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮される旨が規定されておりまして、今回設ける児童相談所等の意見聴取等義務や意見表明等支援事業も、その趣旨を実現するために運用されていくものと考えております。

 具体的には、今般の児童福祉法改正法案において、児童相談所等が、一時保護や施設入所措置等の際に、子供の意見や意向を勘案して措置等を行うように、意見聴取等義務を設けるとともに、意見表明等支援員が、上記の措置等の際や処遇について、子供の意見や意向を把握し、必要な支援を行う旨の規定を設けております。

 これらは、それぞれ子供の最善の利益のため、子供の意見や意向を把握するために重要な制度でありまして、委員が御指摘されるとおりで、補完的な関係にあるものではないと認識をいたしております。

 その上で、子供の意見や意向については、それぞれの制度に基づきまして、子供の置かれた状況や子供のニーズに応じて、意見表明等支援員や児童相談所、関係施設の職員など適切な関係者が把握し、適切な子供への支援につなげていくことが重要であるというふうに考えております。

 それから、意見聴取が原則ではないかという御質問でございましたけれども、委員御指摘のとおり、自ら意見を述べることが可能な子供に対しては、意見聴取が原則なされるものというふうに考えております。

 子供の意見表明等支援においては、審議会等での議論を踏まえまして、ゼロ歳児や幼児等も対象としておりまして、そのような自ら意見を述べる能力が未熟な場合であっても、言葉のみならず、その態様や行動変化など、客観的な状況を酌み取ることも想定しているため、児童に応じた適切な方法により、意見又は意向を把握するものと規定をいたしております。

 意見聴取以外の具体的な方法については、今後、現場の方々や有識者の意見等を踏まえまして、施行までに検討をしてまいりたいというふうに考えております。

早稲田委員 原則、もちろん意見聴取をしていただくということは確認ができました。

 また、しかし、その中で、意見聴取をしていただくけれども、年齢、それから、あるいは障害児の場合にどうするかということもございます。今、モデル事業をやっていただいておりますけれども、私も調査書を読ませていただきましたが、なかなかそうしたことも難しいのではないかというふうにも思っております。

 だからこそ、専門家それから有識者の方々の知見、それから今までやっていらした、そうしたものを生かしてガイドラインなりをきちんと作っていただくことが、この意見聴取の、間違いのない適切な意見聴取につながるんだろうと思います。子供の意見を聞かないで、観察とか記録、また関係者の見解から子供の意見を推察するというようなことだけに終わることが絶対にないように、私はここをしていただきたいと思いますので、お願いいたします。

 それから、ここに勘案とありますが、勘案というのは、いろいろまとめて考え合わせるということであろうとは思いますが、考慮とか重視よりも低いということはないということを確認させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 法律上の用例も踏まえて、意向を勘案と法律案では規定したものでございまして、勘案と考慮で、その程度を比較して規定しているものではなく、考慮より程度が劣るとも考えておりません。

 また、意思表明等支援事業において、委員御指摘のとおり、支援員は、子供の最善の利益のため、子供の立場に立って、その意見、意向を把握し、行政機関や児童福祉施設に対して、子供の意見を代弁した上で、その旨を関係機関等に伝達して連絡調整を行うことを規定したものでございます。

早稲田委員 何度も大臣の方からは子供の最善の利益を重視してというお言葉、それから、今、子供の意見の代弁ということもおっしゃっていただきました。

 しかしながらなんですが、法文には、代弁ということも入っておりませんし、意見表明支援というものの非常にばくっとした考え方しか載っていないように思われます。

 これからガイドラインなどでそこを細かく決めていただくとは思いますが、伺いますが、児童の福祉に関し知識又は経験を有する者、これが実施をできる、これですと先ほど申しましたように誰でも実施できるようになってしまいますので、そこをこれから細かく決めていただくことにはなろうかと思いますが、いわゆるアドボケートの、意見表明支援員さんの養成については、厚生労働省の子ども権利擁護ワーキングチームの取りまとめにも書かれておりますように、意見表明支援に関する基本的な考え方、それからまた、エンパワーメント、子供中心、独立性、守秘、それから平等、子供の参画という六原則、これを理解し身につけることが重要だと書かれておりますので、こうした専門家の意見を取り入れ、そして、原則を取り入れた養成カリキュラムを国が作るということでよろしいのか。

 それからまた、施行が令和六年四月となっておりますが、大体どのぐらいまでにガイドラインを作られる予定か、目途をお知らせいただきたいと思います。

後藤国務大臣 まず、今先生から御指摘もありました六つの点でございますけれども、昨年五月に取りまとめられた権利擁護ワーキングチームの報告書において、意見表明等支援員については、エンパワーメント、子供中心、独立性、守秘、平等、子供の参画という意見表明支援の基本原則を理解し身につけることが必要というふうに取りまとめをさせていただいております。

 意見表明等支援員にはこのような専門性が必要であると認識しておりまして、国としても、意見表明等支援員の養成カリキュラムの例の作成等を通じて、専門性が確保されるように、しっかりと支援をしてまいりたいというふうに思っております。

 意見表明等支援事業については、都道府県等における実施が進むように、事業実施に当たってのガイドラインの策定を予定しております。可能な限り早くお示しし、自治体に準備していただけるよう検討していきたいというふうに考えております。

 なお、子供の権利擁護に関しては、これまでも調査研究を実施し、都道府県等にもお示ししてきておりまして、都道府県等においてこれらの活用も図っていただきたいというふうに考えております。

 いずれにしても、意見表明等支援事業のガイドラインの策定の前に、座談会を開くなど、様々な方法を通じて、意見表明等支援の取組について周知を進めていきたいと考えております。

早稲田委員 法文に専門性、それからまた、その後で申しますが、独立性ということがないわけなので、非常にそこが、本当に担保されるのかということが懸念の一点であります。ですからこそ、ガイドラインそれから指針などでこれを書き込んでいただく、そして、本当に実効性のある、子供の意見を代弁できる、そういう支援員さんを養成していただけるように、また、今のモデル事業で関わっていただいている専門家の方々にも御活躍、御指導いただけるようにしていただきたいと私は切に願うものであります。

 次に、独立性でございますが、独立性が求められるのは当然でございまして、つまりは、今の実施機関、児相、そうしたところと意見が、子供の意見が違う場合はもちろん多々あります。そうしたことを児童相談所の皆様も酌み取りながら、一生懸命に日々やっていただいている。先ほどもいろいろ御説明ありましたけれども、本当に少ない人員の中でやっていただいていることは十分分かりますが、こうやって対立する場合があるわけです。ですからこそ、独立性を担保する、あるいは民間の専門機関に委託をするというようなことも視野に入れていただいているのだと思いますが、そのことについてお答えをいただきたいと思います。

 重ねて、独立した第三者機関でなければならないと私は思っておりますが、児童相談所が少し別な形で、児童相談所自身が意見表明支援をやるというようなことはないということは、確認をさせていただきたいと思います。

後藤国務大臣 御指摘の独立性については、法文上明記されておりませんけれども、実際に一時保護や措置等を実施する児童相談所等からの独立性が重要であると認識しておりまして、社会保障審議会の専門委員会の報告書においても、一定の独立性を担保する必要がある旨記載されております。

 今後、施行に向けてガイドライン等の策定を検討してまいりますけれども、こうした考え方を自治体にも周知しまして、子供の権利擁護の観点に資する適切な運用が担保されるよう、厚生労働省としてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

早稲田委員 児童相談所がこの事業を引き受けるということはないですねということについてのお答えをいただきたいと思います。

後藤国務大臣 御認識のとおり、意見表明等支援を行う者は、児童相談所からの独立性が求められるため、児童相談所が自ら行うことは想定されておりません。

早稲田委員 是非、専門性と独立性を担保していただきまして、しかも、そうはいっても子供ですから、子供の意見をどうやって引き出すのか、大変難しい支援事業だとは思いますが、だからこそやっていただきたい、実効性のあるものにしていただきたいということを強く思いますので、これからの指針それからガイドライン、また施行令などでそういうものが担保できるようなものを書き込んでいただくように、心から要望を強くいたします。お願いいたします。

 それでは次に、里親についてであります。

 私も、この質疑をするに当たり、何人かの里親さんから現場の声を聞いてまいりました。

 お一人は、この後に、資料の方にもつけさせていただきました。沖縄の里親委託解除の問題でありまして、これにつきましては、私の地元神奈川の中井町の加藤久美町議が陳情を出しまして、その意見陳述で参考人として陳述を県議会でされたということであります。

 まず、ごめんなさい、順番を変えまして、この沖縄の方の質疑をさせていただきます、時間もありますので。

 この件、大臣、ここに書かれているとおりでありまして、知事も謝罪をされたということですが、今、第三者委員会が立ち上がっておりまして、訴訟もされておりますので、これからの推移を見守るのはもちろん分かるんですが、後藤大臣としてこの案件をどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。お聞かせください。

後藤国務大臣 里親制度については、家庭的な養育環境の下で、特定の大人との愛着関係の下で子供を養育するものでありまして、委託の変更、解除は、里親だけでなく子供に大きな影響を与えることから、子供や里親等の意向も踏まえながら検討されるべきものであるというふうに考えております。

 里親委託は、児童福祉法にのっとって、基本的に保護者の同意の下で行われるものでありまして、保護者の同意が撤回された場合には、ケースによって異なりますが、基本的には、児童相談所において一時保護を行い、アセスメントを経て、家庭復帰又は児童養護施設等の施設への入所、里親委託等の措置といった新たな援助方針を検討することとなります。

 里親委託の解除に関して、児童相談所において適切な判断が行われるように、その子供の最善の利益に適合する援助を選択するとともに、その理由を明確にしておくようお示しするように、また、チェックシートをお示しするなど、しっかりとした最善の利益の観点から適切に判断をしていくようにというふうに考えております。

 それから、御質問の趣旨が沖縄のことについてもということであれば、沖縄の事案については、個別の事案でありまして、現在、県が調査委員会を設置し、問題を検証しているものと承知しております。まずはその結果の取りまとめを待ちたいというふうに思っております。

早稲田委員 もちろん、一般論としてはそういうお話になろうかと思いますけれども、この事案の場合、里親として生後二か月から五歳まで養育をしてきたわけです、里子さんを。そのときに、児童相談所が、実の親からの申出により、里親を解除したいという依頼ですよね、これがあったために、突如としてと、受け止めとしては、里親さんとしてはそういうことだと思います、その中で引き離されてしまったということが納得ができないということで、こういう訴訟に至っているわけです。

 それで、私が申し上げたいのは、確かに、里親さんから里子を、育ててきているけれども、いつかは実親のところに戻す、これは当然の流れだとは思いますけれども。その中で、私が是非、これはよく大臣なら御存じだと思いますけれども、この委託解除に関しては、これは加藤町議がおっしゃっています、強引とも取れる同様の事案が多々あり、全国の里親間ではよくあることとされていると。現状、児童福祉法が適切に実施されているとは言い難く、特に、子供の生活環境を大きく変化させる家庭復帰、措置変更に関しては、丁寧に、その実親さんとの面会も含めた何回もの交流を経てとか、それから、いろいろなリスクアセスメントもしながらやってもらいたいということを強く訴えていらっしゃいます。

 ですから、そこのところは、もちろん、いろいろなチェックシートをしながらやっていただいているのは分かるんですけれども、この事案についてはやはり重く受け止めていただきたいと大臣には思います。

 それで、国としても、もちろん、県と児相の問題、個別の案件ではありますけれども、この第三者委員会の結果が出ましたら、これをきちんと調査、把握をしていただきまして、課題があれば、きちんとそれを、ガイドラインなのか指針なのか分かりませんが、そういう改善も視野に入れてやっていただきたい、その把握をしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 里親委託の解除に関しては、児童相談所において適切な判断が行われるように、援助方針の決定に当たりましては、児童相談所運営指針において、子供の意向、保護者等の意見及び保護者等の家庭養育環境、里親を含めた具体的援助を行う者や社会資源等の条件を考慮、アセスメントして、その子供の最善の利益に適合するよう援助を選択するとともに、その理由を明確にしておくようお示しするとともに、里親委託を解除する際等の家庭復帰等の適否を判断するためのチェックシートをお示しするなど、各児童相談所において運営指針やチェックシートも活用していただきながら、里親委託解除に関して、子供の最善の利益の観点から適切に判断をしていただく、そうしたことを、今先生からも御指摘のありましたように、里親委託解除や家庭復帰が図れるように、最善の形で取り組んでまいりたいというふうに思います。

早稲田委員 私が申し上げたのは、国としても、個別の案件ではあるけれども、きちんと把握をして、何か改善点ができないかということを考えていただきたいが、どうでしょうかということを申し上げたのですが、もう一度お願いいたします。

後藤国務大臣 今現在、県が調査委員会を設置して問題を検証しているものと承知しておりますけれども、それを踏まえて、国として行うべきことがあれば対応したいというふうに考えます。

早稲田委員 大臣から、対応したい、やるべきことがあればということでございますので、是非御検討をよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦です。

 どうぞ、大臣、よろしくお願いいたします。

 前回、四月二十七日に質問させていただきましたが、ちょっと不十分なお答え、答弁もございまして、まだまだ児童虐待防止への政府の強い決意というものが残念ながら感じられませんでした。

 本日は是非とも、政府として絶対に児童虐待を起こさない、そして、そのような状態で新たに設置されるこども家庭庁に移管しても大丈夫だということをしっかりとお示しいただきたいと願いながら、質疑を進めていきたいと思います。

 それでは、前回の質問の続きということで、前回、時間がなくて数問できなかった児童虐待の現状ということで、面前DVへの認識について、大臣にここはお伺いします。

 面前DVによる通告が増えていますね。司法や厚生労働省において、面前DVが子供にとって虐待であるということは認識されているのかということをまずお答えいただきたいのと、DVについては、夫婦の問題であっても同居の子供たちに与える影響が深刻だと認識していますが、司法や厚生労働省においても深刻な虐待であるという認識がされているのかどうかということを確認させてください。これはもう厚生労働省だけで結構です、お願いします。

後藤国務大臣 子供の目の前で配偶者等に対して暴力や暴言を行う、いわゆる面前DVについては、心理的虐待であり、児童虐待防止法にもその旨明記をされております。面前DVを始め、児童相談所の虐待事案に対する対応については、しっかりと警察等との連携を図るとともに、必要に応じて一時保護等の措置を実施しているところでございます。

 いずれにしても、心理的暴力も含まれる旨、子ども虐待対応の手引きにも明記するなど、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 それでは、大臣、児童虐待対応とDV対応の関連部署との連携強化として、令和元年の児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律において、DV対策との連携強化のため、婦人相談所及び配偶者暴力相談支援センターの職員については、児童虐待の早期発見に努めることとし、児童相談所はDV被害者の保護のために、配偶者暴力相談支援センターと連携協力するよう努めるものとすると書かれていますね。

 面前DVに遭遇している子供の保護に当たって、連携というのはどういった連携が想定されているのかということを、大臣、お答えいただけますか。

後藤国務大臣 面前DVを含め、児童相談所の虐待事案に対する対応については、警察との連携強化によりまして、警察から児童相談所への通告をより一層進めるとともに、通告を受けてから原則四十八時間以内に子供本人を直接目視することによる安全確認を行うこと、子供や保護者との面接、関係機関への調査等により子供や保護者の状況を把握し、リスクを評価した上で当該事案に対する援助方針を決定すること、そして、必要に応じて一時保護等の措置を実施するということで対応を考えています。

吉田(統)委員 委員長も聞いていて分かると思うんですけれども、大臣、全然違うことを答えていらっしゃいますよ。全く違うことを私は聞いています。大臣、ちょっと、余りにもこれは、議事録を読む人がびっくりしちゃいますから。大臣、大丈夫ですか。ちょっとこれはひどいですよ。

 児童相談所と配偶者暴力相談支援センターの連携というのが法律に書かれているわけですよね。だから、それをどう連携するのかということを聞いているんですが、今の大臣の答弁は、さっきお答えになった答弁とほぼ一緒のような話であって、何も答えていないですよ。ちゃんと答えてください。

 あと、ちゃんとお話を、この前も、まあ、答弁書を読まれるのはいいんですが、そこまで難しい内容を聞いているわけでもないところも多いので、お話を聞いていただければ大臣ならお答えいただけると思いますので、今私が聞いたことにちゃんと答えてください。

後藤国務大臣 どういうふうに連携というふうに話があったので、警察との連携というのは重要だと思ってお話をいたしましたけれども、当然、児童相談所につなぎながら連携をしていくということは当然だと思います。

吉田(統)委員 これは結構大事だと思うんですよね、大臣。なので、具体的にどういう連携を想定しているかというのは、現状、ないんですか。もう少し具体的に、この二つの連携を詳しく知りたいんですが、そこに関しては御知見がないということでよろしいですか。

後藤国務大臣 配偶者暴力支援センターも、いわゆる協議会には入っておりますので、そうした形で連携は進むと思います。

吉田(統)委員 またちょっと、大臣、ここは教えてくださいね、今後。しっかり伝えてあるので。

 では、虐待通告でカウントされる面前DVというのは、さっき、精神的なというのも少し大臣にコメントいただきましたが、面前DVは身体的なDV以外のものも面前DVとして考えられるのかということを確認したいのと、大臣、それを理由とした一時保護が大体どれくらいあるかということを教えていただけますか。

後藤国務大臣 身体的なものじゃなくて心理的なものも含まれるということは、先ほど申し上げたとおりであります。

 虐待事案として対応しているものは二十万件ほどありますけれども、面前DVを含む心理的虐待が六割というデータ、そこまでしか持っておりません。

吉田(統)委員 あるデータだけで結構です。ありがとうございます。

 そうすると、今大臣がおっしゃっていただいたように、ドメスティック・バイオレンスという言葉、もう本当によくよく浸透している言葉ですが、一般的に、我が国では、成人の親密な関係の中で身体的暴力を振るうことだと考えられてきた部分が多いんですが、諸外国では、そもそも心理的、情緒的、経済的虐待を含むものと理解をされていますね、大臣。威圧的で支配的な虐待を含むという考えが諸外国では当たり前になっていると我々は仄聞しています。

 子供の前でこのような精神的なDVが行われる例も多いと思いますが、政府はDVの本質についてどう考えて、それが子供の面前で行われていることに対してどういう対応を今後お考えになっているのかということを教えていただけますか。

後藤国務大臣 政府委員を立てていただくか、私としては、通告をしっかりしていただきたいと思うわけですけれども。

 いずれにしても、先ほど申し上げたように、子供の目の前で配偶者に対して暴力や暴言を行う、いわゆる面前DVについて、児童虐待防止法にも明記されておりまして、しっかりとそうしたことについて対応していくことが重要であるというふうに思っております。

吉田(統)委員 通告はしっかりとしていますので、そこは、そうおっしゃるのであれば、御確認いただきたいところですね。

 では、次の話に行きますが、一時保護に関する司法審査制度についてお伺いいたします。

 前回、冒頭しかできなかった一時保護に対する司法審査についてお伺いします。前回、お答えが非常に不十分で、私がお聞きしたことに全くお答えにならなかった点を再度確認します。

 今回、一時保護に対する司法審査制度が導入されました。司法判断を第一に考えるような制度とすることで、児相の判断が弱められないかという懸念が当然あるわけであります。

 つまり、子供の保護のためには、これまでの児童相談所の判断だけでは足らず、司法による第三者的なチェックが必要であるということで今回このような制度が導入されたと思いますが、日常的業務として子供に接している児童相談所の判断に加えて、司法審査をした方が虐待されている子供の保護に優れているというエビデンスがあればお示しください。

 これは前回、大臣、全く同じ質問をしています。しかし、そのときに、前回、政府参考人の方が私の話を全然聞いていなくて、答弁書を読んで全く的外れな答弁をされたので、もう一度、このお話を大臣から直接教えていただきたいと思います。

後藤国務大臣 一時保護の適正性を司法が審査することが子供の権利擁護の観点から望ましいか否かという点についての定量的なエビデンスがあるわけではございませんが、今般の改正で導入しようとしている司法審査においては、児童相談所が、子供の意見も可能な限り聴取し、疎明資料に盛り込むこととしておりまして、子供の権利擁護の観点からは、より一層丁寧な手続になるものと考えております。

 その上で、一時保護開始時の司法審査については、一時保護が、親子を一時的に分離し、子供の行動の自由や親権の行使等に対する制限を伴うことから、児童の権利条約が親子を分離する措置は司法の審査に服することを要請していること、海外の主要国において我が国の一時保護に相当する制度には司法の関与が行われていることを踏まえまして、令和元年、児童福祉法改正法の附則に基づいて検討し、今般、導入しようとするものでございます。

 今般の司法審査が円滑に施行され、一時保護が引き続き適切に行われるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 大臣、丁寧にということがやはり趣旨ですよね。大臣が途中でおっしゃった、丁寧に、しっかりとと御答弁いただきましたけれども、そういう中で、また次の質問をさせていただきたいと思います。

 ここも細かく通告をしてあります。

 児童相談所が行う一時保護状の請求手続において、裁判官は何を審査対象とするのでしょうか。子供の最善の利益を守るためには、司法審査があるといえども、萎縮することなく、ちゅうちょなく一時保護を実施する必要があると当然考えますが、法令上の要件の設定によっては、これまで実務上行われてきた一時保護が実施できなくなる可能性があるのではないかと危惧をするんですが、大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 一時保護状の請求手続においては、児童相談所が、一時保護の開始前又は開始後七日以内に、児童相談所が行った調査の結果や児童や保護者の意見等を可能な限り盛り込んだ疎明資料を作成し、裁判所に一時保護状を請求することとなります。

 裁判所は、児童相談所から提出された疎明資料に基づいて、児童相談所が行おうとする又は行った一時保護が、虐待の疑いがあるか等、一時保護の要件に該当するか否か、明らかに一時保護を行う必要がないと認められるか否かについて確認をし、その適正性を判断することとなります。

吉田(統)委員 大臣、ありがとうございます。

 しっかりかみ合っていますので、しっかり通告してありますので、大臣、そこは御理解ください。かみ合わない議論をしても意味がありませんので。

 それでは、次に行きたいと思います。

 一時保護状の制度を導入するにしても、それに対応する人材が当然必要になりますね、大臣。

 現状として、日本の児童相談所及び家庭裁判所の人的体制は圧倒的に不足していると承知しています。現時点で一時保護状の制度を導入したとしたら、現場に混乱をもたらし、かえって子供の権利保障を後退させる危険性が多分に想定されますが、特に、家庭裁判所の人的体制の問題はどのように捉えていらっしゃるのか。

 また、実質面というか能力的な部分について、現在で十分であると考えているのかを厚生労働大臣と最高裁判所、各々にお伺いさせて、どちらからでも結構です。

後藤国務大臣 一時保護状の請求については、その件数も多数となることが予想されるところでありまして、司法審査に係る児童相談所の事務負担が過剰なものとならないようにする必要があります。

 一時保護開始時の司法審査の導入に当たりまして、一時保護状の請求に係る疎明資料の作成や、裁判所との間で疎明資料のやり取りを行う事務が新たに発生することになるため、人材確保も含め、児童相談所の司法とのやり取りのための体制強化が必要と認識をいたしております。

 厚生労働省としては、弁護士を配置した場合や弁護士事務所等に委託を行った費用の補助を行っており、さらに、法的対応を行う事務職員を配置した場合の費用の補助を令和四年度に創設する等、これまでも、児童相談所の司法とのやり取りのための体制強化を図っているところでありまして、今後、更に必要な支援をしっかりと行ってまいりたいというふうに思います。

 また、司法審査に係る児童相談所の事務負担が過剰なものとならないようにするため、裁判所に提出する請求書類については全国共通の様式を設けることや資料の簡素化について、今後、施行までに、設置を検討している実務者から構成される作業チームにおいて検討してまいります。

 また、家庭裁判所の能力、事務につきましては、これは最高裁判所の方から責任を持って対応するということでございますので、答弁は控えたいと思います。

手嶋最高裁判所長官代理者 お尋ねの裁判所の関係について、お答え申し上げます。

 今般の改正法案における一時保護開始時の司法審査は、一時保護の要件を明確化した上で、中立な第三者としての裁判所が客観的な要件の具備を迅速に審査する制度であると承知をしております。

 そして、この要件は、今後、内閣府令において客観的に明確な形で規定される方向で検討が進められるものと承知をしておりますが、そういった要件の明確性が確保されることによりまして、裁判官であれば、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所のいずれの裁判所においても対応が可能というふうに考えられているものと承知をしております。

 具体的な制度運用の在り方につきましては、児童相談所の一時保護状の請求の在り方を含めまして、改正法が成立しました後に厚生労働省が設置を予定されている実務家を含む作業チームにおいて検討がされるものと承知をしておりますところ、最高裁判所としましては、そこでの検討等を踏まえまして、どの裁判所が担当するのかを含め、必要な体制の在り方を検討することを考えております。

 人員数の点でございますけれども、裁判所全体の事件動向や事件処理状況等を踏まえて検討していく必要がありますことから、現時点では確固たることは申し上げられませんが、いずれにせよ、新たに導入される制度が円滑に運用されるよう、必要な体制を整えてまいりたいというふうに考えております。

 また、能力の点についても申し上げてよろしいでしょうか。能力の観点として御指摘いただきました点については、一時保護の要件の明確性が確保されることにより、裁判官であれば基本的に対応が可能となるものと承知をしておりますが、改正法が成立いたしました暁には、一時保護開始時の司法審査の制度趣旨、内容を的確に周知いたしますとともに、必要な研修等を実施することなどを含めまして、所要の準備をしっかりとしてまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 大変よく分かりました。ありがとうございます。安心してお任せしていいという大臣からも力強いこと。

 手嶋局長、もうここであれですので、もしお忙しければ御退室をいただいて結構です。

橋本委員長 手嶋局長、御退室いただいて大丈夫です。

吉田(統)委員 最高裁の方、そして厚生労働省から、必ず遺漏なくできる体制を整える、そういった力強いお言葉をいただきましたので、そこは本当に期待をしながら推移を見てまいりたいと思います。

 それでは、大臣、親権者が一時保護に同意しなかった場合、児童相談所が一時保護状の発付を求めるというスキームですが、子供を保護する緊急性が高い状態であるにもかかわらず、児童相談所が司法審査で万全を期すという意識が強い余りに、親権者から一時保護の同意を得ようと試み、その結果、保護が遅れる事例が生じるなど、児童相談所職員によるケースワークに支障が生じる可能性というのはないか心配なんですが、大臣、どうでしょう。

後藤国務大臣 一時保護の司法審査の導入後においても、一時保護が子供の安全を守る観点からちゅうちょなく適切に実施されることが重要であると考えておりまして、委員御指摘になられたような、児童相談所が親権者等からの一時保護の同意にこだわり、一時保護の実施が遅れることや一時保護をちゅうちょするような運用があってはならないと考えております。

 この点、現行の一時保護ガイドラインにおいて、子供や保護者の同意がなくとも、子供の安全確保が必要な場面であれば一時保護をちゅうちょなく行うべき旨お示ししているところでありまして、司法審査導入後も引き続き必要な場合にちゅうちょなく一時保護が行われるよう、今後、実務者から構成される作業チームにおいても議論した上で、施行までにガイドライン等に盛り込むことを検討してまいりたいというふうに考えています。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっと時間がなくなってまいりましたが、大臣、少し先の話をさせていただきたいと思います。

 親子の再統合の判断基準に関して大臣にちょっと教えていただきたいんですが、社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会の報告書では、親子の再統合は、虐待や親子分離などにより傷ついた親子関係の修復や再構築に取り組むものであるが、必ずしも家庭復帰を唯一の目標とするものではない、この点について周知徹底を図る必要があることや、この事業を保護者が利用したことのみをもって子供を保護者の元に返すといったこと等がないよう、親子再統合支援事業によりどのように保護者や子供の状況に変化があったか等を適切に評価した上でその後の対応を取ることが必要であると指摘していますね。

 児童相談所の介入により親子分離した家庭の親子関係の修復は、多様で複雑な課題を抱えています。保護者が虐待を認めない場合など、児童相談所との対立がある場合も多く見られますね。

 児童相談所が親子再統合支援事業を行うに当たっては、里親や施設等を含む民間との協働や保護者が居住する市町村との連携の中で実施することが必要です。一時保護や施設入所措置等の解除等に当たっては、安易な親子の再統合が必ずしも子供の最善の利益になるとは限らないことにも留意しつつ、保護者に対する支援の効果を適切に勘案して、各ケースにおいて慎重な判断を下すことが求められると考えます。

 どのような場合に親子の再統合を目指すのか、具体的な基準などがあるのか、若しくは今後ガイドラインなどの形で示す予定なのか、大臣、教えてください。

後藤国務大臣 児童相談所において、親子関係の再構築に向けた支援を行った後、一時保護や施設入所等の措置を解除するに当たり、親子再統合支援事業を利用していることのみをもって子供を保護者の元に返すことがないよう、子供の最善の利益のために子供や家庭の状況を丁寧にアセスメントすることは重要であり、今般の児童福祉法等改正案による親子再統合支援事業の整備を契機に、親子関係の再構築に関するガイドラインを改めて策定することとしております。

 家庭復帰に当たっては、現行制度においても、国からその適否を判断するためのチェックシートをお示ししておりまして、各児童相談所においては、このチェックシートも活用いただいているものと認識をしております。この従来のチェックシートの運用など、児童相談所における現場の意見等も丁寧に伺いながら、今後、施行までに適切なガイドライン等を策定できるように検討してまいります。

吉田(統)委員 ありがとうございます。ガイドラインを作られるということで。

 大臣、もう時間がないので、それでは、児童の意見聴取等の仕組みの整備についてのことを、少し、また何問か飛ばしていただきまして、一番大事だと思うんですが、虐待を受けつつ家庭に帰りたいとする子供の安全へのリスク回避策について伺いたいと思います。

 子供が表明した意見は、当然、今回、尊重すべく、大臣、進めていらっしゃると思うんですが、子供が虐待に慣れてしまっており、また施設になじめない場合などには、虐待があっても家に帰りたいという表明をしてしまうことがあるのも承知しております。そのような場合に、子供の意見に流されてしまい、安全が守れないというリスクがあるわけですが、それをどのように回避していくのかということを大臣にお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 親への愛着等もあり、子供が、児童相談所等の行う一時保護等の措置に反対して、家庭に帰りたいと言うことも考えられるわけですけれども、子供の意見聴取等はあくまで子供の最善の利益のために実施するものでありまして、子供の意見、意向どおりの対応を必ずしも取るものではなくて、子供の最善の利益のためには意に反する措置を講ずることもあるということだろうと思います。

 このため、児童相談所等が子供の意見を聴取するに当たっては、研修等の実施によりまして、意見表明等支援員や児童相談所における専門性を高めることが重要であるとともに、子供や家庭への面談のみならず、関係機関への調査、情報収集などを通じて丁寧にアセスメントすることが必要でありまして、意見、意向聴取を実質的に意味あるものとするように、しっかりと対応していきたいと思います。

吉田(統)委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますが、もっと本当は、児童からの聴取の点は今回の大きなポイントですし、お伺いしたいことがあります。次なる機会、法案審査では問うことができませんでしたが、また続きをやりたいと思いますので、またよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、ちょっと、質疑に先立ちまして、一点だけ、ウクライナ避難民のペットの検疫についてお伺いをしたいと思います。

 狂犬病は、一度発症すれば致死率一〇〇%と言われる恐ろしい感染症であります。日本では一九五六年を最後に発生をしておりませんが、世界では年間約六万人が死亡している感染症。狂犬病ゼロを達成した清浄国、清浄な国は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、ノルウェーなど、約十か国前後にとどまっております。

 狂犬病の対応は厚生労働省の保健所でありますが、海外から入国する際の検疫は農林水産省なので、本日は農水省からも参考人にお越しをいただいております。

 資料の一を御覧ください。

 こちら、現状は左側の図で、犬や猫を日本に入れるときは、海外から出国する前にマイクロチップを埋め込み、狂犬病予防注射を二回打って、抗体検査をして、百八十日以上待機してから日本に来るということになっています。これらの輸入条件を満たしていない場合や証明書に不備がある場合は、日本に到着した港や空港にある動物検疫所で最大百八十日係留されて、検査を受けることになっています。

 一方で、右側の図、今回、ウクライナから避難してこられた方々のペットは、急な戦争で証明書が用意できない特別な事情を考慮して、動物検疫所で百八十日係留するのではなく、自宅で百八十日間飼育をする形を許可します。

 図では、右側真ん中ぐらい、1、2、3と、マイクロチップとか狂犬病ワクチン二回とか抗体価の確認、この図ではこういうふうに手厚く確認をしているように見えますが、これらは、先ほど説明しましたように、現状、全ての犬、猫が義務づけられているので、右と左の図の違いは、百八十日間を動物検疫所で係留するのか自宅飼育するのかというのが右と左の違いになっております。

 農水省は、四月二十一日の参議院農水委員会において、こう答弁しています。この対応によりまして、ウクライナの避難民の方の右側のような対応によりまして、国内での狂犬病発生のリスクが増すことはない、このように答弁をしています。

 農水省参考人に伺いますが、動物検疫所で隔離せずに自宅飼育の隔離で、この特別対応について、リスクが増加することはないと答弁をした根拠をお答えください。

熊谷政府参考人 お答えいたします。

 犬の輸入に当たっては、狂犬病が侵入しないようにすることが必要かつ重要です。狂犬病に関し、動物衛生の国際基準であるOIEコードでは、個体識別のほか、狂犬病の非清浄国からの輸入に当たってのリスク管理措置として、ワクチンの接種及び一定以上の抗体価の確認又は百八十日間の係留のどちらかとなっており、このどちらかについて動物検疫証明書による証明を求めることとしております。

 今回、ウクライナから避難されてきた方の犬については、ワクチン接種及び一定以上の抗体価を確認しているところです。

 今回のケースは、ウクライナで戦闘が開始されたことに伴う避難であり、あらかじめ検疫条件を満たすことを示す証明書の発給を受けることが事実上困難な状況にありますが、国際基準における安全の実質要件は満たしていることになります。

 また、日本獣医師会も、ワクチンの接種及び一定以上の抗体価の確認を満たした犬は、狂犬病に感染している可能性は極めて低いと判断される旨の見解を示しております。

 一方、日本は世界でも数少ない狂犬病の発生報告がない国ですので、同じステータスである豪州と同様に、リスク管理措置として、ワクチン接種及び一定以上の抗体価の確認に加えて、百八十日間の係留を求めています。

 今回の対応についても、百八十日間の係留を免除しているわけではなく、本人が希望する場合、現行の犬等の輸出入検疫規則に基づき、動物検疫所の指示を遵守できる場合に限って、動物検疫所外での係留を可能とするものです。

 この動物検疫所外での係留は、動物検疫所における係留と同等となるよう、まず、係留場所について適切な逃亡防止措置を講ずるとともに、毎日の健康観察及び結果の定期報告を求めるほか、定期又は無通告での家畜防疫官による現地確認を受けることなどの指示事項の遵守を求めています。

 また、仮に、これらの事項を遵守されず、動物検疫所外での係留が適切に実施されていないと認められた場合、動物検疫所外での係留を取り消します。

 これらの対応により、狂犬病のリスクは増加しないと考えております。

井坂委員 もし本当に、これまでのやり方と今回のウクライナからのペットのやり方でリスクが増加をしない、リスクが一緒だ、本当にそうであれば、これはもう今後は全て、ウクライナからのペットと同じ扱いでよいということになってしまうと思います。国際基準は確かに満たしていても、それだけでは不十分だから、日本、狂犬病ゼロを達成した数少ない国である日本は、予防接種プラス抗体検査だけでなく、同時に、入国の際に百八十日の隔離を行ってきているわけであります。自宅隔離では、犬や猫が外に出てしまったり、飼い主が散歩に連れ出してしまったり、あるいは庭に入ってきた猫や小動物にペットがかみついたり、施設隔離に比べて明らかに狂犬病が国内に広がるリスクは増えると思います。

 厚生労働省に伺いたいのですが、自宅隔離した犬や猫が後に狂犬病を発症し、そして隔離期間中に外に出ていたことが発覚をした場合、どのような対応が必要になりますでしょうか。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 狂犬病清浄国である我が国におきましては、狂犬病予防法に基づきまして、海外から持ち込まれる犬や猫については、動物検疫所において輸入検疫が行われるとともに、国内犬については、飼い主の義務として犬の登録や狂犬病予防注射等を行うことにより、犬や猫由来の狂犬病の発生を未然に防止をしております。

 今般のウクライナ避難民が持ち込む犬や猫に関しては、動物検疫所において、狂犬病予防注射や、国際基準に定められている抗体価が十分にあることの抗体検査による確認などのほか、自宅係留中の定期的な状況の確認等が行われていると承知をしております。

 仮に、御質問の、ウクライナ避難民が飼育する犬や猫におきまして狂犬病が確認された場合には、狂犬病予防法や狂犬病対応ガイドラインなどに基づきまして、管轄の都道府県の知事が任命する狂犬病予防員が、発症した犬等と接触した可能性のある方、方というのは人間ですが、方や犬などの特定のための調査を行います。調査の結果、発症した犬等と接触した犬などがいた場合には、その隔離及び隔離した犬などの健康観察を行うなど、狂犬病の拡大を防止するために必要な措置を講ずることになります。さらに、調査の結果、発症した犬等と接触した方がいた場合には、医療機関等において、治療の要否の判定や、必要に応じてワクチンの接種が行われることになります。

井坂委員 ありがとうございます。

 ちょっと厚生労働省の参考人に重ねて追加でお伺いをしたいんですけれども、これまで、日本に今回ウクライナからの避難民の方が連れてこられたペットは、犬が五匹と猫が二匹というふうに伺っております。この合計七匹のうちに、既に自宅隔離を始めていたり、あるいはもう自宅隔離をすることが決定をしているというのは、七匹のうち何匹でしょうか。

熊谷政府参考人 お答えします。

 本日時点では、動物検疫所外での飼育が決定したものはございません。

井坂委員 ありがとうございます。

 まだ、日本に入ってきたのは七匹で、しかも、動物検疫所の中にみんないて、自宅隔離が決まったワンちゃん、猫ちゃんはまだいないということであります。

 ちょっと大臣、厚生労働大臣に今までの議論でお伺いをしたいんですけれども、ウクライナの避難民の方には、百八十日間の施設隔離はしませんと別に約束をして日本に来ていただいているわけではないそうであります。私も、三月三日の本会議で、厚生労働大臣に質疑で、ウクライナの避難民の受入れと、あと、生活のケアとか心のケアとか、こういったことをお願いした側でもあります。ペットは家族同然であり、命からがら逃げてきたウクライナの方とペットを無理やり引き離すのはよくないというのも分かります。しかし、致死率一〇〇%の狂犬病を再び国内に蔓延をさせないために、従来の厳しいダブルチェックの入国規制を維持しつつ、ウクライナの方とペットが頻繁に会える第三の方法もあるはずです。

 大臣にお伺いしますが、狂犬病の入国検疫は農水省ですけれども、国内で発生すれば、先ほどのように、厚生労働省が大変なことになるわけであります。厚生労働大臣として、農水省にも声をかけて、百八十日の隔離はやはり施設で行いつつ、施設での飼育費用や施設に通う交通費を補助するなどの形で、狂犬病のリスクを増やさない形で、ウクライナの方に人道的な配慮をすべきだというふうに考えますが、大臣、こういったことを農水省と一遍話し合っていただけないか、検討していただけないでしょうか。

後藤国務大臣 今般のウクライナ避難民が持ち込む犬や猫に対しては、動物検疫所において、狂犬病予防注射や、国際基準に定められている抗体価が十分にあることの抗体検査による確認等のほか、自宅係留中の定期的な状況の確認等が行われているというふうに承知しておりまして、そういう形で法律の制度の枠組みを担保する運用がなされているというふうに考えております。

井坂委員 大臣、ちょっと今の答弁は、もちろん政府として現状、そうなんでしょうけれども、ただ一方で、七匹来て、本当に厳しい自宅隔離措置を求めると、これはやはり無理だということで、なかなかそうはならないわけなんですね。かといって、そこが緩んで、自宅飼育が簡単になってしまうと、これは、先ほど私が申し上げたような、逃げたり、紛れ込んだ別の動物にかみついたり、いろいろなリスクがやはりゼロではありません。

 せっかく今、現状、七匹とも施設隔離になっているわけですから、自宅隔離という人道配慮ではなくて、施設隔離に、ウクライナの方がきちんと会えるような、そういった配慮を考えていただきたい、検討ぐらいはしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 厚生労働大臣が検疫を、いわゆる動物検疫をやっているというわけではないということでございます。一応、十分に制度の趣旨を考えて、政府としてこういう結論を出しているというふうに認識をしております。

 いずれにしても、国民の命と安全を守るためにどうしたことをしていくべきか、そういうことについては不断に考えていかなければならないと思います。

井坂委員 ここは農水委員会ではありませんから、これぐらいにしておきますけれども、やはり七匹の犬とその家族のことですので、もっといろいろなやり方があるというふうなことは強く申し上げたいと思います。

 本論に入りまして、児童養護施設の自立支援について伺います。

 私、これまで、児童養護施設などにいられる期限を十八歳から二十歳、二十二歳、延長する議論を続けてまいりました。今回の法改正で、二十二歳を超えて、必要と認められる間は施設に残れるようになったことを本当によかったと思っております。しかし、制度は延長されても、実際にどれだけ制度が使われているのか。

 参考人に伺いますが、児童養護施設と自立援助ホームで二十歳を超えて自立支援を受けている人数、お答えください。

橋本政府参考人 令和二年五月一日現在でございますが、児童養護施設におきまして、二十歳を超えて予算事業による居住を含む自立に向けた支援を利用されている人数が二十人でございます。それから、令和元年度末に自立援助ホームにおきまして、二十歳を超えて自立支援を受けている方の人数は二十七人となっております。

井坂委員 極めて少ないわけであります。

 資料の二番を御覧いただきたいと思います。

 この上の表は、今答弁がありました、自立援助ホームと児童養護施設で十八歳を過ぎても自立支援を受けている子供たちの人数です。児童養護施設の場合は社会的養護自立支援事業となるので、米印の注釈は追加をお願いしたいと思います。

 一目見ていただいて分かるのは、やはり二十歳を過ぎると自立支援を受ける人数が極端に減る。まさに二十歳の壁ともいうべき現状であります。

 なぜこうなるのか。二十歳になると大人扱いをされてしまう、あるいは元々、児童養護は原則十八歳、最長でも二十歳だったことなど、複数の理由が考えられますが、このように、例えば自立援助ホームの利用者数は、十八歳が二百五人、十九歳百三十九人いるのに、二十歳になると十五人と一気に十分の一に激減をしてしまう。今回の法改正で二十二歳の年齢制限が延長されるわけでありますが、そもそも、二十二歳まで自立支援を受けている子が極めて少ない現状があります。

 資料二の下の表は、同じく十八歳の壁についてであります。

 児童養護施設で、これは二〇二〇年の三月末に高校を卒業した人数が千七百五十二人、そして措置延長で施設に残れるのはそのうち二割の三百五十六人だけであります。大学に行った子が施設に残っているのかと思いきや、そうでもなくて、大学進学三百十一人のうち措置延長、施設に残れるのは僅か百九人と、要は、進学したかどうかと関係なく、とにかく十八歳になったら児童養護施設を卒業という十八歳の壁もいまだに存在をしているわけであります。

 午前中の早川参考人は、大半の施設、児童養護施設が現在も十八歳自立という考え方で、二十二歳まで残れるように制度が変わっても使われていない、こういう御意見がありました。

 参考人に伺いますが、十八歳を超えた子が一人も在籍をしていない児童養護施設、あるいは二十歳を超えた子が一人も在籍していない児童養護施設というのは、それぞれ全体の何割ぐらいでしょうか。

橋本政府参考人 今御指摘いただきましたような十八歳を超えた児童の個別施設ごとの自立支援の実施状況ということについて、私ども厚労省としては把握してございません。

井坂委員 大臣、そうなんです。全体の数は把握しているんですけれども、施設ごとのという把握はしていないんですね。ただ、これは、大臣、当然、都道府県は基の数字を持っていますから、新たな調査をしなくても、都道府県に聞けば、各施設ごとに何歳の子がどれだけいるかというのは、当然、施設から数字が上がってきているはずであります。

 ちょっと大臣にお伺いしたいんですが、まず、これは午前中も本当に参考人から議論があった、施設ごとに随分差があるということ、今、僅かしか二十歳を超えて自立支援されていないんですけれども、それも一部の施設が当たり前のように大量にやっていて、残りはゼロというようなところが非常に多いという現状があります。是非、まず都道府県に聞いて、大臣、施設ごとの、十八歳以上あるいは二十歳以上の支援をしているのかどうかということをまず確認をしていただきたいのですが、大臣、検討はいかがでしょうか。

後藤国務大臣 自立支援実施状況につきましては、今般の児童福祉法改正案において、自立支援の状況を都道府県が把握することとしております。社会的養護推進計画の中で自立支援の状況も把握し、ニーズに沿った体制を整備することともされているわけでございます。この中で個別施設ごとの実施状況を把握していくことについては、今後検討してまいりたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 これはどこかの施設をあげつらうという意味ではなくて、やはり現状、十八歳自立という昔ながらの考え方がまだ色濃く残っているんだという参考人の指摘がありました。もし、そういう大半の施設が十八歳あるいは二十歳でみんな卒業させてしまっているというのが分かったら、次にはやはり、各施設に具体的な手だてで、いや、二十二までちゃんと必要があればやってください、場合によっては二十三でも四でもやってくださいということを頼んでいかなければいけません。

 大臣に最後にお伺いをしますが、例えば、午前中の意見であったのが、自立支援の担当職員を置かれたけれども、やはり各施設で一人とか二人とか、孤立をしてしまっていると。こういう自立支援担当職員同士を組織化して研修をするなど、要は、自立支援をちゃんと二十二まで、場合によっては二十三、四までやるんだということを仕組みとして進めていく必要があると思いますが、大臣に最後に御所見をいただいて、終わりにしたいと思います。

後藤国務大臣 今委員の御指摘については、入所等措置が十八歳までという原則にのっとった運用がされているのではないか、そうしたことをもう少ししっかりと改めていくという必要がある、そのための体制整備を、あるいはどういう準備を進めるか検討すべきだという御意見だというふうに思いまして、今後、法律施行までに、そうした手だてをどういうふうにしていくか考えて、対応していきたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 この図のように、二十歳の壁とか十八歳の壁という、制度が使われないということが今後なくなるように、是非、大臣、よろしくお願いをいたします。どうもありがとうございました。

橋本委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓です。

 午前中に引き続きまして、よろしくお願いしたいと思います。

 私の方から、児童虐待につきましてお伺いをしていきたいという具合に思います。

 令和二年度におきまして、児童虐待の相談件数が約二十万件を超えているという傾向にありまして、先日も議論ありましたけれども、非常に増加している傾向にあるという具合に感じております。この児童虐待が本当に痛ましい事故につながっていくというケースも報道等でもありますので、非常に懸念をしているところなんですけれども、まずは、疑わしきは一時保護していくということが第一だと思っております。

 ただ一方、児童虐待が発生していない場合には、親御さんと児童相談所の間でトラブルが発生したりとか、一時保護の期間が長引いてしまうということがありまして、親子関係がちょっと崩れてしまったりとか、親の親権に侵害をしてしまうということも多いという具合に聞いているところであります。

 そこで、今回の改正の中で、児童からの意見聴取等の仕組みの整備というものをされているところでございますけれども、日本が批准しております児童権利条約では、その第十二条におきまして、児童が自己の意見を表明する権利を確保するようにという具合にされております。

 午前中の参考人での質疑でも伺いましたけれども、今回の意見、意向表明制度、いわゆるアドボケートの体制づくりといいますのは、都道府県の努力義務になっているわけであります。そこで、なぜ努力義務で終わっているのか、義務にしていくべきかなという具合に私は思っておるんですけれども、まず、その点につきましてお伺いをしたいと思います。そして、児童の意見を確実に拾い上げる仕組みとして今の体制が十分であると考えられているのか。大臣に、併せて二点お伺いいたします。

後藤国務大臣 意見表明等支援事業は、事業の担い手など地域資源の状況が自治体ごとに異なることから、義務とはせずに、都道府県による必要な措置の実施を努力義務としております。

 しかしながら、子供の意見表明等支援は重要なことでありまして、しっかりと国としても支援することによりまして、その着実な実施を図ってまいりたいというふうに考えております。

 その中で、今般の児童福祉法改正案において、意見表明等支援事業のほかに、措置等の際に児童相談所長等による子供への意見聴取を法律上義務づけることとし、さらに、子供の権利擁護の環境整備について、都道府県が行わなければならない業務とするという形の改正をさせていただいております。

 このため、意見表明等支援事業における意見聴取を行う人材の養成を支援することはもとより、施行までの間に、児童福祉審議会を活用した権利擁護の枠組みや児童相談所の体制強化など、児童の意見を確実に拾い上げる仕組みの整備についてしっかり取り組んでまいりたいと思います。

池下委員 ありがとうございます。

 今の段階では、支援員のリソースであったりとかというのが都道府県によって温度差があるということもありまして、努力義務にしていくということは一定理解をさせていただきました。

 そこで、午前中でもちょっと質疑の中でやり取りをさせていただいていたんですけれども、この部分を逆手に取りまして、今から都道府県の中でこの支援事業、アドボカシーをやっていく地域、自治体と、まだ手が足りずにやっていかない地域、温度差があるわけですけれども、そこで、重要業績評価指標、KPIの考え方をちょっと活用しながら、この支援制度でやっていくことの意味合いであったりとか評価であったりとか、そういうところのデータの積み重ねというものが必要であるかと思いますけれども、こちらについて私はやっていただきたいなという具合に思うんですが、そちらの方の御検討をお願いしたいと思います。

 そして、もう一方、先ほど、将来的には義務をやっていくべきじゃないですかということも併せてなんですが、今の二点、改めてお伺いをしたいと思います。

後藤国務大臣 厚生労働省として、意見表明等支援事業はできる限り多くの都道府県において実施されるように支援していくわけですけれども、なかなか事業の実施に踏み切れない自治体が生じることも認識をしております。

 委員御指摘のように、一般論として、新設する事業を実施する自治体とそうでない自治体との間でその差が出る指標をKPIとして設定することは、事業実施の効果があった場合に、未実施の自治体に事業の実施を促していく手法の一つになり得ると考えております。

 このため、まずは今般の意見表明等支援事業について円滑な施行を図った上で、当該事業の取組状況について適切に把握、評価するためにどのような手法が適当か、KPIを設けることも含めて、今後しっかりと検討をしていきたいというふうに思っています。

 それから、将来、義務化できるように改正を見据えて考えるべきではないかという御指摘でありますけれども、都道府県等には意見表明等支援の体制整備を推進していただきたいと考えております。

 このため、厚生労働省としても、現在実施しているモデル事業の事例も活用して、施行までに、都道府県が実施する意見表明等支援員の研修に参考となるプログラムの例を開発する等の支援を行いまして、より多くの都道府県等で事業を実施できるように取り組んでまいりたいというふうに考えています。

 今般の児童福祉法改正案においては、施行後五年をめどとして見直しを行う検討規定が盛り込まれておりますが、その際には、意見表明等支援事業の都道府県等における施行の状況等も見た上で、義務化も含め、必要な見直しを検討したいと考えています。

池下委員 ありがとうございます。

 KPIの考え方も取り入れていただけるということと、あとまた、五年後に関しまして、義務化も含めて御検討いただくという御答弁をいただきましたので、しっかりと、本当に子供の意見というのは大事だと思いますので、取り組んでいただきたいと思います。

 そこで、次に、児童の意見表明、アドボカシーを行う支援員について、改めてちょっとお伺いをしていきたいと思います。

 先ほども大臣の答弁の中で、人材のリソースがなかなか足りないので義務化ができないという話もありましたけれども、ただ、今回の改正案では、支援員に対して資格要件もなく、標準化されていない数日の研修を受けただけで支援員になれると聞いております。

 傷ついているかもしれない児童への支援は高いスキルを要すると考えておりますけれども、児童の人権についても踏み込んで聞き取り、調整をしなければならない支援員の皆さんは、非常にハードなお仕事だと思っております。

 ワーキングチームからも、支援員を養成するプログラムについての記載がない、また、支援者のスキルについても記載がなく、特定の資格も求められていないという指摘も出ているところであります。

 本日の和田参考人からも、まずは他領域の専門家の活用も検討すべきと御発言がありましたけれども、支援員について、この事業を自治体任せ、しっかり国も関与していただきたいと思うんですが、国として積極的に主導して、支援員の育成プログラムをどのように行っていくのか。そして、将来的に、司法関係者で子供の権利関係についてトレーニングを行った人材、これを育成して、実効性があるアドボカシーの制度にしていただきたいと思いますけれども、所見をお伺いいたします。

後藤国務大臣 厚生労働省の補助事業で実施しているモデル事業においては、既にノウハウのある弁護士、NPO、大学などに委託して、意見表明支援等を行っていただいております。

 厚生労働省としても、現在実施しているモデル事業の事例も活用しまして、施行までに、都道府県が実施する意見表明等支援員の研修に参考となるプログラムの例を開発する等の支援を行いまして、より多くの都道府県で事業を実施できるよう取り組んでまいりたいと考えています。

 なお、子供の属性や状態、抱える悩みは多様であることから、意見表明支援員も多様なバックグラウンドや専門性を持った者がいることが望ましく、意見表明等の支援員は、地域の実情に応じて、弁護士等の法務に関わる人材に加えて、社会福祉士などのソーシャルワークの専門職、ノウハウのあるNPO職員等に担っていただきたいと考えております。

池下委員 本当に人材育成というのは非常に重要だと思っておりますし、先ほどからもありましたけれども、まだまだ人材が育成されていないということでもありました。ならば、今大臣が言われましたように、司法関係者も含め、またその他の職域の方々も含めて、しっかりとトレーニングして人材育成していく仕組みづくりというのを早急にしていただきたいという具合に改めて申し上げておきたいなという具合に思います。

 そして、本日の和田参考人とのやり取りの中で一つありましたのが、アドボカシー、意見表明等の定義に入るべき子供の意見の代弁、この代弁という部分が条文から抜けているのではないかという御指摘がありました。それを改めてお伺いをしたいなと思うんですけれども。

 条文内にある意見表明等のこの等という部分だけで包括的にやってしまうにはちょっと問題があるのではないか、それだけで済ますことができない本質的な部分であるのではないかなと私は考えております。

 子供の意見を正確に聴取し、それを代弁してこそ初めて、この新しい事業に意義が出てくると私は考えるのですけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。

後藤国務大臣 意見表明等支援事業につきまして、今般の児童福祉法改正法案においては、子供の意見又は意向について、児童の福祉に関し知識又は経験を有する者が、意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握するとともに、これらの意見又は意向を勘案して児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整その他の必要な支援を行うというふうに規定しているわけであります。

 この規定の趣旨は、意見表明等支援員が、子供の最善の利益のために、子供の立場に立って、その意見、意向を把握し、行政機関や児童福祉施設に対して子供の意見を代弁した上で、その旨を関係機関等に伝達して、連絡調整を行うことを規定したものでございます。

 御指摘の代弁という点も含めて、この趣旨について、今後、施行に向けて策定を検討するガイドライン等において盛り込み、こうした考え方を周知して、意見表明等支援事業が都道府県等において適切に運営されるようにしっかりと取り組んでいきたいというふうに思います。

池下委員 今、大臣の方から、条文には入っていないけれども、ガイドラインの方に盛り込んで、この代弁ということにつきましてしっかりと入れていただくという旨の御回答をいただいたかなという具合に思います。

 今日の参考人の質疑の中ででもやはり御心配されていた部分があるかと思いますので、そこら辺はしっかりと実効性があるようなものに私もしていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 それでは次に、一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入についてお伺いをしていきたいと思います。

 今回の改正におきまして、一時保護の独立性、中立性、効率性を確保するために、司法審査の導入というものが盛り込まれているわけです。司法が判断をする際には、この中立性等を担保するために、第三者が資料等を作成するべきだと考えておりますけれども、その資料の作成や、親やまた児童への聞き取りは誰がするのか、親側の意見を聞く機会はあるのかどうかについてお伺いをいたします。

橋本政府参考人 一時保護開始時の司法審査につきましては、児童の安全を確保しながら、あわせて、一時保護の判断の適正性を迅速に判断する必要がございますので、いわば迅速性と適正性の両立ということが求められるわけでございます。このため、今般、児童相談所が裁判所に関係書類を提出した上で、一時保護状による方式というものを採用したわけであります。

 一時保護を行う際の子供と親権者等の意見につきましては、児童相談所が一時保護状を請求する際に、可能な限り疎明資料に盛り込んで裁判所に提出するという形を検討しております。

 誰がそういったことをやるのかということでございますが、子供や親権者等の意見の聞き取りを行う者につきましては、各児童相談所の実情に応じて異なるものとは考えておりますが、基本的には、個々のケースについてアセスメントを行う担当の児童福祉司が実施するということを想定しております。

 なお、子供につきまして、担当の児童福祉司には意見等を言いにくいような、そういった場面も考えられますので、そういった場合には、意見表明等支援事業を実施し、児童相談所とは異なる第三者の立場にある意見表明等支援員の支援の下で児童福祉司が意見を把握するということも考えられるというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、一時保護状を請求する際の疎明資料に盛り込む内容につきましては、子供と親権者等の意見が裁判所に適切に伝わりますよう、施行までの間に、実務者から構成される作業チームにおいて検討してまいりたいと考えております。

池下委員 御答弁いただきましたけれども、児童相談所は、一時保護する際に、仮に親と意見が違っても、取りあえずは子供の安全確保のために一時保護をしなくてはもちろんいけません。もし万が一にでも、児童を家庭に帰した後に、今日も質疑の中でありましたけれども、お子さんを御家庭に帰したときに、また虐待があって、マスコミ等に児相さんの方がやり玉に上げられるケースというのも発生しているのかなと思っております。だからこそ、そういうケースが見られるからこそ、児童相談所も虐待の疑いのないケースでもなかなか一時保護を解除しないということも実際に発生しております。

 児童虐待のある場合には一時保護も当然必要ですけれども、そうでない場合には不必要な親子の引き離しは親権の著しい侵害に該当するかと思います。一時保護の開始の司法判断は、司法が聞き取りや資料作成も含めて司法関係者で行うこととすることで、司法と福祉の役割分担をすべきだと思いますけれども、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

後藤国務大臣 一時保護開始時の司法審査については、児童の安全を確保しながら、あわせて、一時保護の判断の適正性を迅速に判断する必要がありまして、迅速性と適正性の両立が求められるところでございます。

 その中で、裁判所が子供や親権者、児童相談所等の陳述を直接聞き取りまして、さらに調査や資料作成まで行うとなると、相当の時間を要することになると考えられます。審判の結果が出るまで、司法の判断がないままに一時保護を長期間継続する取扱いは、今回の開始時の司法審査の趣旨に照らして適当でないことなどから、今般の一時保護状による迅速な手続を導入することといたしております。

 司法と福祉の役割分担の在り方については様々な議論があり得るわけでございますけれども、今般の児童福祉法改正案においては、裁判所による審査を通じた透明性の確保の観点から、まずは今般の一時保護の司法審査を円滑に導入することが重要であると認識しております。

 児童相談所など現場の意見も今後十分にお聞きしながら、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

池下委員 日本が批准しております児童権利条約の九条の二項におきまして、一時保護の司法審査において、全ての関係当事者は、その手続に参加しかつ自己の意見が述べられる機会を有するという具合にされているわけです。

 今大臣が言われましたように、透明性の確保もしっかりとやっていただきたいなという思いはもちろん共有しているところではありますけれども、しっかりと、やはり児相さんの負担というところもありますので、御検討願いたいなと思います。

 次に、一時保護する場合には、厚生労働省では一時保護ガイドラインに基づいて判断されていると思いますけれども、私は非常に曖昧なものだと思っております。ガイドラインには、虐待等により緊急保護が必要な場合、アセスメントを行う必要がある場合、また、短期入所指導を行うことが適当である場合という具合に定められております。

 当然、余りにもかちっとやり過ぎちゃいますと、それから漏れたところが当てはまらないということももちろん考えてはいるんですけれども、ある程度精緻にこのガイドライン、又は要件の明確化をすべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

橋本政府参考人 現行の一時保護ガイドラインにおきましては、虐待等の理由により子供を家庭から一時引き離す必要がある場合、それから、適切かつ具体的な援助指針を定めるために総合的なアセスメントを行う必要がある場合などに一時保護を行うということにしております。

 今般の児童福祉法改正案におきましては、一時保護の開始の要件につきましては法令上、明確化することとしておりまして、具体的な要件については、児童相談所がちゅうちょなく適切な一時保護を開始できるよう、現行の一時保護ガイドラインや、各都道府県において行われている一時保護の実情を踏まえた、適切な規定ぶりとする必要があるというふうに考えておりまして、今後、実務者から構成される作業チームにおいて検討してまいりたいと考えております。

池下委員 今御答弁いただきましたけれども、今日午前中の和田参考人との質疑の中で、このガイドラインを、私も今、作ってくださいねということでお話をさせていただいたんですけれども、和田参考人の方からは、データがなかなか少ないのでガイドラインを作成するにも困難が生じるのではないかという具合に言われておりました。

 だからこそ、情報収集、今日は科学とかデータの話もお話をされておりましたけれども、そういう情報収集を重ねて、KPIなどを実行して、常にガイドラインのバージョンアップというものをやっていくべきかなと私は思いますけれども、御見解をお伺いいたします。

後藤国務大臣 一時保護の実施に関する判断を含めて、児童虐待の有無に関する判断を行うには、児童相談所におきまして、子供や保護者へのアセスメントを丁寧に行うほか、関係者への調査や聞き取り等を通じて多くの情報を収集すること、収集した情報を基に適切にリスクを評価することが重要と認識をしております。

 まず、調査に関しましては、今般の児童福祉法改正案において、児童相談所が、一時保護や児童養護施設等への措置に関して関係機関に情報の提供等を求めることができる根拠となる規定を盛り込み、調査権限の強化を図ることとしております。

 そして、厚生労働省では、児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会において、児童虐待における死亡事例の背景要因等を分析、検証し、これまで十七回にわたり問題点や課題を明らかにしてきております。各地方自治体において研修実施の際にこの報告書を役立てていただけるように、モデルとなる研修カリキュラムの作成等を行い、自治体の判断の質の向上に努めております。

 加えて、虐待対応に当たって、精緻な判断のためにはデータの活用は重要と認識しておりまして、児童相談所における一時保護の判断に資するAIツールについて、令和四年度から設計、開発を行いまして、令和六年度に全国での運用を開始することを目標としております。

 これらの取組を通じて、児童相談所等における虐待事案の判断がより一層精緻なものとなるように、厚生労働省としてもしっかり支援をしてまいりたいと考えます。

池下委員 よろしくお願いします。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、次に行かせていただきます。

 次に、一時保護時の親からの不服申立てについてお伺いしたいと思います。

 アメリカ、イギリス、フランス、ドイツでは、一時保護の開始から四十八時間以内などの一定期間に、児童、保護者といった当事者の裁判所による意見聴取や不服申立てができるという具合に聞いております。

 今回の改正では、一時保護について不服申立てができるのは児童相談所側のみであり、これは児童権利条約に違反するのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

橋本政府参考人 海外の主要国におきまして、我が国の一時保護に相当する制度には、司法の関与が行われている例が見られます。例えば、ドイツにおきましては、日本と同様に、行政機関が一時保護し、親権者の意に反する場合に事前又は事後の司法審査を行う、こういった国がある一方、アメリカのカリフォルニア州のように、行政機関が一時保護するものの、四十八時間以上の一時保護は裁判所に申立てを行う必要がある、そういった国もあるわけでございまして、その状況というのは様々というふうに認識しております。

 それで、児童の権利条約との関係でございますが、まず、条約の第九条第一項との観点で申しますと、親権者等や子供が一時保護を不服とした場合は、従来から行政訴訟によって司法の審査を受けるということが可能でございますし、今般の改正法案による一時保護開始時の司法審査についても同様でございますので、これが条約に反するというふうには考えておりません。

 また、条約の第九条第二項との関係でございますけれども、手続参加という観点なわけでございますが、一時保護の適正性の判断を迅速に行う観点から保護状方式というものを取りまして、子供と親権者等の意見については児童相談所が可能な限り疎明資料の中に盛り込んで裁判所に提出する、そういう形にすることを考えておりますので、やはり児童の権利条約に反するというふうには考えてございません。

池下委員 今御答弁いただきましたけれども、行政不服審査は行政の内部審査でありまして、司法審査ではありません。

 資料の一枚目を御覧いただきたいと思います。

 一時保護開始時点で親の同意が得られていないケースは、上の表で、同意なしが八千五百七十七件あります。行政訴訟まで行われているケースといいますのが、下の表になりますけれども、平成三十年度で二件、そして令和元年度では僅か八件しかありません。

 この行政訴訟で児童、保護者側の請求が認められて、二か月以内に一時保護が解除されたケースはあるのかどうか。あるのかどうかだけで結構ですので、教えてください。

橋本政府参考人 今御指摘いただきました、行政訴訟で児童、保護者側の請求が認められて、二か月以内に一時保護が解除されるケースについては、把握してございません。

 令和二年度に調査をしました結果の中で、平成三十年度に一時保護決定に関する取消し訴訟が一件認容され、一時保護が解除されているものというふうに承知しております。

池下委員 一時保護に対する不服なんですね。だから、取りあえず一時保護されて、まずは二か月間保護されるということになるかと思うんですが、今の行政訴訟が、時間が二か月以上かかるよということですので、実際、これは救済措置となっていないということが分かるわけなんです。ということで、この行政訴訟というものが本当に意味があるのかどうかというのが非常に疑問な点であります。

 また、現在の児童福祉法の三十三条審査では、一時保護に同意しなければ我が子との面会も許されない、児童虐待がない場合でも、我が子と会えないよりかはと渋々認めざるを得ないケースも多いと。これは、先日までのゴールデンウィークの中で当事者の側の方から御意見をいただきました。

 そこで、別途、準抗告に似た、類似の仕組みをつくるなどして、簡易迅速に、児童や親の意見も聞いて、一時保護が必要かどうか判断できる仕組み、制度が必要だと思いますけれども、御所見をお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 今般の児童福祉法改正案において、一時保護開始時の司法審査は、裁判所が迅速にその適正性を判断する仕組みとしており、不服申立て手続については、一時保護状の請求が却下された場合において、一時保護を行わなければ子供の生命や心身に重大な危害を生じ得るようなケースに限り、児童相談所が申し立てることができることとしております。

 委員御指摘の子供や親からの不服申立てについては、審議会の報告書においても、その点の意見があった旨明記されたところでありまして、将来的な課題と認識している一方で、児童相談所の体制や手続、親や子の意向をどう受け止めていくかなど課題も多く、また、一時保護の司法審査は相当多数の件数になると見込まれ、まずはその開始時の審査の円滑な施行が重要であると考えております。

池下委員 ありがとうございます。必要性の認識というのはありますという御答弁でありました。是非、児童権利条約に則した仕組みを早急に整備していただきたいなと思います。

 ちょっとそのほかにも様々御質問はあったんですけれども、時間が来ましたので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、金村龍那君。

金村委員 日本維新の会の金村です。

 今日は、こども家庭センター、そして子育て支援、家庭支援策の充実、児童発達支援センターや少子化対策について一部お伺いをしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 まず初めに、今回、こども家庭センター、児童福祉と母子保健のところが組織的に見直され、そして統合していくことによって、子供自身やそして御家庭の支援をしっかり、妊産婦も含めてしていくということだと思うんです。これは私、すばらしいと思います。つまり、切れ目のない支援をしっかり継続していく、そのことによって、いたずらに子供たちに負担が偏らないようにする、困難を抱えた家庭をしっかり支援していく、すばらしいと思うんです。

 ですが、今回、こども家庭センターそのものは設置に努めることとするとなっておりますので、市区町村によっては実際にどうなるか分からないということもありますし、あと、私は、実は、組織的だけではなくて、例えば建物も一体化するとか、窓口も一本化するとか、そういったことが本来であれば最も効果が高いと感じております。

 改めてお伺いさせてください。

 今回のいわゆる児童福祉とそして母子保健を組織的に見直すことによる効果、どのようにお考えか、お答えください。

    〔委員長退席、高階委員長代理着席〕

橋本政府参考人 これまで、市区町村におきましては、母子保健の子育て世代包括支援センターと児童福祉の方の子ども家庭総合支援拠点、この両方の設置を進めていただいてきたところでございますが、社会保障審議会の方でいろいろ御議論いただいた中で、母子保健と児童福祉とで二つの相談支援機関があるということが、利用者である保護者や子供から見て分かりにくいといった御指摘がございました。

 今般の児童福祉法改正案におきましては、児童福祉と母子保健双方の機能を有するこども家庭センターが、全ての子育て世帯、子供、妊産婦を対象とした一体的な相談機関として設置することによりまして、一つは、支援対象となる子供や保護者にとっては相談先が分かりやすくなって相談支援がより円滑に進むということとともに、こども家庭センターを通じて、児童福祉と母子保健の両分野や地域における子育て等の関係機関による必要な支援につながりやすくなる、こういったことを認識しております。

 こども家庭センターの設置によりまして、これまで以上に、支援対象の子供や保護者から見て効果的な支援を継続的に提供することができるよう、メリットを感じていただけるようにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

金村委員 ありがとうございます。

 これは提案みたいな形ですけれども、せっかく同じ名称ですから、こども家庭庁の職員が例えば出向先の一つとしてこども家庭センター長になるとか、そういったものは、まさに現場を持っていないこども家庭庁からすれば、より生の声をしっかり拾い上げていくことにつながるんじゃないかなと理解しております。是非お願いします。

 その上で、いわゆる要支援児童、生まれた瞬間から要支援児童になっているケースというのが別に多いわけではなくて、やはり、御家庭に困難があって、徐々に徐々に要支援となっていくケースというのが非常に多いと認識しています。そして、このこども家庭センター、様々な支援メニューとつなぐサポートプラン、そういったものが一つ目玉になってくると思いますので、そういった意味では、要支援児童となってしまうかもしれないその前段階において支援メニューとつないで、実際にそのサービスを受けること、こういったことはこの制度において可能なんでしょうか。

後藤国務大臣 要支援状態に至る前の段階で早期に支援を行うことは、子育て世帯の負担感や悩みを解消し、虐待の未然防止にも資するという意味において重要であるというふうに考えています。

 今般の児童福祉法改正案により新設する訪問による家事支援等の家庭支援のための事業等については、まずは要支援、要保護児童などに確実に行き渡るようにする必要はありますけれども、より広く、子ども・子育て支援事業計画の作成を通して地域のニーズとそれに応じた計画的な体制整備を促すこと、子ども・子育て支援交付金の対象として位置づけて財政支援を行うことなどによりまして、提供体制の整備を進め、より広い層に量的にも広げてまいりたいというふうに考えております。

 その上で、新たに創設するこども家庭センターにおいては、要支援状態に至る手前の方々も含めて全ての子育て世帯、妊産婦、子供へ一体的な相談支援を行うとともに、要支援状態に至る前の子育て世帯等を把握し、地域子育て相談機関等との連携によりまして、支援の必要度に応じ、関係者との情報共有やサポートプランの作成等も通じて、訪問による家事支援など、必要な支援につなぐ役割を果たすことになると考えております。これによりまして、多くの子育て世帯の支援につながるよう取組を進めてまいります。

金村委員 ありがとうございます。

 やはり、大切なのは妊産婦から要支援になる手前の段階、つまずいてからやってくる支援よりもつまずかないための支援にしっかりと力を入れていくということが現代では非常に強く求められていると思いますので、どうか、しっかりと行き届いた支援が必要だと認識しています。

 その上で、やはり、支援を受けるわけですから、しっかりと確認しておかなきゃいけないのが自己負担の部分です。

 実際、サポートプランを通して、御家庭が客観的に、御家庭や子供にこういう支援が必要なんじゃないかと第三者の視点で提案されることは、実は、御家族にとってはいいきっかけになると思うんですね。自らは支援が要らないんじゃないかと誤解している人たちが、こども家庭センターで相談を受けて、実際に支援メニューを見せてもらうことによって、あっ、自分の家庭に少し困難がある、このサービスを提供されることによって負担軽減につながるということをしっかりと受容できると思うんですね。

 その上で、その受容した先にしっかりその支援メニューを実際に受けるためには、無料でこれは提供するわけではないと思いますので、どのぐらいの自己負担額を想定しているのか、教えてください。

橋本政府参考人 新たな子育て家庭への支援事業につきましては、基本的には利用者負担を求める運用とすることを考えておりますが、要支援児童のいる家庭などが利用者負担を理由として利用を諦めるといったことは避ける必要があるというふうに考えております。

 このため、令和三年度補正予算によりまして、法の施行に先駆けて実施しております訪問家事支援事業等の家庭支援に関する事業におきましても、住民税非課税世帯など、経済的な負担が困難な家庭の利用者負担の軽減を図る仕組みを設けているところでございます。

 この先行実施しております事業の運用状況等も踏まえながら、今般の児童福祉法改正案が施行される令和六年度からの本格実施に向けて、具体的な仕組みについて検討を進めまして、支援を必要とする家庭が適切にサービスを利用することができるように、必要な予算の確保等も含めまして努力してまいりたいと考えております。

金村委員 ありがとうございます。

 本当に、支援が必要なのに受けられないということ、こういった事態が起きないようにしていただきたいのと、もう一つ、先ほどの質問の繰り返しになりますが、要支援ではないけれども、全額それこそ自己負担の中で、そういう支援メニューを提供されると、家庭負担、子供の負担が軽減されるということを体感すると、実はすごいいいんじゃないかなと思うんですね。例えば、我が家も家事支援、これまで、夫婦で話し合って、どちらかというと遠慮していたんですけれども、この度使ってみると非常に便利だったと。つまり、その一歩目がすごい大切なんですね、こういったものは。なので、是非、こども家庭センターのサポートプランを通して、親が受容しやすい環境を整えていただきたいと思います。

 続いて、産前産後のサポート、それから産後ケアのところを御質問させてください。

 コロナ禍もあり、今、里帰り出産もできず、そういった意味では、第一子の出産、育児から御夫婦だけ、一人親もそうですけれども、親だけで育児をスタートさせる御家庭が増えていると聞いています。

 例えば、東京であれば、中野区や品川区で産後ドゥーラという、いわゆる産前産後のサポートをしていく職業があるんですけれども、そういった職業の方を派遣するのを、いわゆる出産後に低負担で利用できるようなサービスが一部の自治体でスタートしていると聞いています。

 つまり、もはや産前産後のサポートは、困難を抱えた御家庭やお母さんだけじゃなくて、一般的に広く利用されるべきであると私は認識しています。

 その上で、今回、こども家庭センターを通して、例えば、産後うつのような重度の状況を招いた後に、実際に産後ケアに入っても、私は遅れてしまうと思うんですね。そういった意味では、こども家庭センターを通して、産前産後のサポート、産後ケアというのは、何かある前から既に使えるようなサービスになっているのか、それとも、実際に産後うつのような症状が表れた後に支援に至るのか、その辺りのお考え、お聞かせください。

後藤国務大臣 委員御指摘の各事業、その実施要綱によりまして、産前・産後サポート事業は、身近に相談できる者がいないなど、支援を受けることが適当と判断される妊産婦を対象に、また、産後ケア事業は、産後に心身の不調又は育児不安等がある者を対象に、それぞれ支援を実施しております。

 また、市町村では、妊娠の届出などの機会を通じて、妊産婦の状況の継続的な把握や相談支援などを行っておりまして、その中で、リスクの高い妊産婦に限ることなく、市町村が実施する産後ケア事業などの母子保健事業につなげていただいているところでございます。

 今般の児童福祉法改正案で新たに市町村が設置することとなるこども家庭センターにおいても、全ての妊産婦、子供、子育て世帯に支援を提供することとしておりまして、引き続き、支援の必要な方にそれぞれの事業が幅広く提供されるように取組を進めてまいります。

金村委員 ありがとうございます。

 この産前・産後サポート、産後ケアは私、非常に重要視しておりますので、是非、いわゆる市区町村、自治体がそのサポート案を提案しやすいような環境を国がしっかりとつくっていっていただきたいと思います。

 続いて、児童発達支援センターについてお伺いをさせていただきます。

 重ねてになりますが、私も障害児支援事業所をこれまで事業として運営してまいりましたので、児童発達支援センターの地域の中における役割、いよいよ新しいフェーズに来たなと、どちらかというと歓迎しております。

 まず、これまでの児童発達支援センターは、どちらかというと、相談機能より実は直接支援に力を入れているところが多かったんですね。そうすると、事業所側からすると、同じ立場でより公的なものが直接支援に力を入れると、何か優劣のような感じで、建物も全然違いますので、存在としてあったんですね。

 それが、相談支援の強化、さらには地域の中で中核的な役割を担うと。いよいよ、一事業所の療育の質もそうなんですけれども、やはり地域の中で広域的に児童発達支援センターが、質もそうですし、相談支援機能を強化することによって、障害児、そしてその御家族が安心、安全な子育てに向かえると思うんですね。

 そういった意味では、改めて教えていただきたいんですけれども、児童発達支援センターの役割が変わり、いわゆる児童発達支援事業所にとってどういった効果が見込めるのか、教えてください。

田原政府参考人 お答えいたします。

 今般の改正では、児童発達支援センターにつきまして、地域における障害児支援の中核的役割を担う機関といたしまして、幅広い高度な専門性に基づく発達支援、家族支援機能や、地域の障害児通所支援事業所の支援内容等に対し助言、援助等を行う機能などを担っていくべきものであることを明確化することとしております。

 背景といたしまして、児童発達支援事業には新たな参入が続いておりまして、必ずしも障害児の発達支援に係る知識経験が豊富でない事業所も増えておりますし、また、障害のある子供の状態像も、医療的ケアを必要としたり、行動上の課題や家庭環境に困難を抱えるなど、多様でありまして、必要とする支援内容の幅も広くなっております。

 今回、児童発達支援センターの機能強化を図ることによりまして、一般の児童発達支援事業所の知識経験だけでは適切な支援が難しい子供の発達支援につきまして、児童発達支援事業所への通所に加えて、曜日により児童発達支援センターにも並行して通所をするなどによりまして、児童発達支援センターとともに専門性の高い発達支援を行うということや、児童発達支援センターから児童発達支援事業所に対しまして支援内容等に対する助言、援助を、児童発達支援事業所がそういう援助を受けることによりまして、その事業所自身の支援力を高めて質を向上させていくことが可能になるものと考えております。

金村委員 ありがとうございます。

 療育の質、療育の定義というのは非常に難しいですから、地域の事業所をしっかりとコンサルテーションする中で、障害児とどう向き合うべきなのか、私は、どちらかというと、共に歩む、そして家庭支援にしっかり未就学の間は力を入れることが望ましいんじゃないかなと思いますので、その辺りも是非御検討いただければと思います。

 その上で、児童発達支援センターの役割が新しいフェーズに来たということは、私は対象年齢を引き上げることを是非御検討いただけないかなと思っています。

 つまり、今の児童発達支援センターは未就学児を対象としていまして、いわゆる障害を抱えた子供たちが小学校に上がる、例えば特別支援学校や特別支援学級、そういった学校に入ると、もうその段階から児童発達支援センターとは関わりがなくなるんですね。なので、そうすると、御家庭と学校の関係になるんですね。でも、例えば障害児の大半が今利用している放課後等デイサービス、いわゆる児童発達支援事業所と同じ位置づけなんですけれども、この事業所と学校が必ずしもしっかり連携を取れているかというと、そうではない。

 やはり今回、ちょっと話はそれますが、こども家庭庁の議論もそうだと思うんですけれども、確かに、縦割り構造が残っていたとしても調整機能をどうやって果たしていくのかというのは、やはりポイントになるわけですね。そう考えたときに、学齢期にある障害児も児童発達支援センターで相談支援を受けられると、この調整機能にひょっとすると至っていくのかなと感じるんですね。

 そういった意味では、今回、児童発達支援センターが新しい位置づけになることを境にいわゆる学齢期も対象とする、こういったことを検討できるのか、また、今の現状の中で学齢期の障害児に対してどういったことができるのか、教えてください。

後藤国務大臣 学齢期の障害児に対する支援の質を高めていくことは重要な課題と考えております。

 今般の改正では、児童発達支援センターの地域における中核的役割として、学齢期の障害児が利用する放課後等デイサービスを含め、地域の障害児通所支援事業所の支援内容等に対し助言、援助を行う機能、地域のインクルージョン推進の中核として、地域の放課後児童クラブ等での積極的な障害児の受入れに対して支援を行う機能、地域の障害児の学齢期も含めた発達支援に係る相談機能等も担っていくべきものであることを明確化いたしております。

 法改正を機に、児童発達支援センターと地域の経験豊富な放課後等デイサービス事業所との連携を進めることによりまして、児童発達支援センターが、未就学の障害児だけでなく、学齢期の障害児も対象として、地域の中核的役割を担っていくことが重要であると考えております。

 また、学齢期の障害児への支援に際しまして、教育との連携は大変重要でありまして、児童発達支援センターが学校等の地域の教育関係者等と十分に連携、協働できるよう留意していくことも必要であるというふうに考えています。

 今後、こうした点も十分に踏まえまして、児童発達支援センターの運営基準等を見直してまいります。

    〔高階委員長代理退席、委員長着席〕

金村委員 ありがとうございます。

 是非とも、学齢期、児童発達支援センターに通えるようにしていただきたいと思います。

 続いて、いわゆる医療型児童発達支援と福祉型児童発達支援の一元化についてお伺いさせてください。

 私の認識だと、医療型と福祉型というのは、通う児童に障害種別がかなり違いがございまして、その結果、支援の内容も大分異なってきていると思います。

 そんな中、いわゆる単に一元化してしまいますと、従前の資料でもありましたとおり、どちらかというと福祉型が多いと思いますので、福祉型ばかりが増えてしまうと、実際に医療型支援を受けたい先天性の障害を抱えた子供たちが支援を受けられないといったことも起きてしまうのかもしれません。その上で、なぜ一元化するかというと、私は、報酬単価の在り方や運営のしやすさとか、そういったところにあるんじゃないかなと思っております。

 改めて、この一元化について少しお伺いさせてください。

田原政府参考人 お答えいたします。

 現行の医療型児童発達支援センターには診療所が設けられておりまして、肢体不自由児のみを対象としてリハビリテーションを提供しております。今般の改正によりまして、児童発達支援を一元化した後も、診療所が設けられた児童発達支援センターでは、これまでと同様に、肢体不自由児に対してリハビリを提供することができるようにすることとしております。

 福祉型と一元化することのメリットでございますけれども、現行の医療型児童発達支援センターはリハビリに重点が置かれた人員基準となっておりまして、保育士、それから児童指導員の人員が少なく、乳幼児期に重要な、遊びを通した様々な領域の発達支援を十分に行うことが難しい、こういう現場の声がございます。こうした声を踏まえまして、一元化した後は、保育士などについて必要な人員配置基準等を検討し、現行の福祉型児童発達支援センターと同様に、遊びを通じた発達支援が十分に提供されるようにしたいと考えております。

 さらに、今般の児童発達支援センターの一元化によりまして、従来の医療型児童発達支援センターにおきましても、肢体不自由児以外の幅広い障害児が通所できるようにすることによりまして、障害種別にかかわらず、身近な地域で必要な発達支援が受けられるようにしてまいりたいと考えております。

金村委員 ありがとうございます。

 児童発達支援センターのところで最後になりますが、私、三番目の子供が障害児なんですけれども、障害児を子育てしている親にとって、実は、新しい可能性というかサービス、こういうサービスがあったら家庭負担は軽減されるよねとか思うものが、やはり短期入所なんですね。

 例えば、私の家であれば、長女と長男は健常で、障害児と家族で出かけても、障害児に軸を合わせたお出かけ先しか選択ができなくなっていたりしています。そういった意味では、きょうだい児の健全な発達を捉えたときに、短期で入所できる又はお預かりできる場所があると、家族の選択肢、きょうだい児の選択肢は広がると思います。

 そういった意味で、今の短期入所について少しお伺いさせてください。

深澤大臣政務官 お答えいたします。

 短期入所サービスについては、障害のある方々の在宅生活の継続や、介護者のレスパイトの観点から、障害のある方々が地域で生活する上で非常に重要な福祉サービスでありまして、委員は既に御承知のことと思いますが、内容に関しましては、入浴、排せつ及び食事の介護などの支援を夜間も含めて提供するものであり、夜間等の支援体制が整っている障害者支援施設等において実施されていることが多いサービスであると認識をしております。

 以上です。

金村委員 ありがとうございます。

 できれば、理想的な話ですけれども、児童発達支援センターを運営する法人が短期入所のサービスを提供していると、親も安心して利用しやすいんじゃないかなと思いますので、なかなか施設要件にそれを入れることはできないと思いますけれども、そのぐらい、障害児の親にとっては非常にニーズのある声だということを御理解いただきたいと思います。

 最後に、少子化について、今日、宮路政務官にもお越しいただいておりますので、是非お伺いさせてください。

 私はかねてより、第三子、インセンティブをしっかりつけるべきだという主張をしてまいりました。

 私の妻も、いわゆる証券会社に勤めておりまして、第三子誕生時、二百万円、会社から支給される。それが目当てでないことは皆さんにも御理解いただけると思いますけれども。第四子以降も、引き続き、出産に伴って二百万円。その会社はですよ、管理職になるまで毎月十八歳までのお子さん一人当たり八千円ということで、民間企業も一生懸命頑張っているのと併せて、やはり、第三子に対してしっかりとインセンティブを出していくことによって、第三子を子育てしたいと思うきっかけにしていくべきだと思っています。

 その上で、私は、私案としては、例えば第三子に教育の無償化を提供するとか、家計負担が非常に重たいですから、そういった負担軽減につながることで夫婦にとってのきっかけをつくっていくというのは十分必要だと思うんですけれども、実際に今、児童手当の中で、第三子におけるインセンティブ、どのような構造になっているのか教えていただけますか。

宮路大臣政務官 まず、奥様の会社が大変すばらしい会社だということで、そのようなすてきな奥様をお持ちで羨ましいなと思っております。

 児童手当の現行制度につきましてお答え申し上げます。

 三歳から小学校修了までは第三子以降は一万五千円と、第一子、第二子よりも増額しております。

 以上でございます。

金村委員 私の妻の会社の話をした後なので、ちょっと寂しいかなと思ったんですけれども。ただ、やはり第三子にしっかりとインパクトをつけていくことが必ずきっかけになると思います。先日、イーロン・マスクも、日本の、いわゆる死亡率と出生率を掛け合わせて、このままいくと心配だというような発言をなさったようです。やはり、全ての子育て支援、それから家庭支援をしっかり少子化対策に結びつけていく、そういう前提条件をまず共有していくことが必要なんじゃないかなと思います。

 その上で、児童手当なんですけれども、私は児童手当の中で所得制限を撤廃するべきだと考えているんですね。これは、児童手当の前段である、いわゆる子ども手当のとき、当時の政権与党と野党であった自民党が、その政策を、法案が成立する過程において、財源論としての金額、給付額ですね、それから、子育ては家庭がしっかり責任を果たしていくということで所得制限が置かれたと私は認識しています。

 その上で、その時点では、二〇一〇年とか一一年ですから、つまり、この十年間で子供を取り巻く環境はかなり大きく変化してきている。その結果、こども家庭庁というものが実際に内閣府の外局でできるというところにまで至っていることを想定すると、私は、政策的な転換は十分可能性があると思っているんですね。

 そういった意味では、政府の中で、児童手当における所得制限の撤廃、どのようなお考えか、お聞かせください。

宮路大臣政務官 政府では、これまでも、幼児教育、保育の無償化など、子育て世帯全体の支援を充実させてきているところです。例えば、幼児教育、保育の無償化や不妊治療の保険適用などについては、所得の多寡にかかわらず、支援が必要な方に対して、その必要な支援を重点的に提供することとしています。

 一方、児童手当につきましては、家庭等の生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的として給付するものであります。

 この家庭等の生活の安定に寄与するという点において所得制限が設けられているものというふうに認識しておりますが、今後、全ての子育て世帯を支援の対象とするか、あるいは所得制限等により支援の対象を限定するかという点について、個々の制度の目的や支援方法などに応じて判断されるものというふうに考えております。

金村委員 ありがとうございます。

 子供支援とか家庭支援を少し度外視すると、やはり少子化対策のためには、相当、ありていに言えば予算をしっかり確保しないと実際に効果を生まない。まして、今誕生しても納税者となるにはもちろん時間もかかるという意味では、やはりしっかり、少子化対策が今日本において最も力を入れて取り組まなければならないんだ、そういった思いを持って取り組んでいただきたいと思います。

 その上で、実は、世帯主の年収なのか世帯年収なのかも質問しようと思ったんですが、時間が来てしまいましたので、ここで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

橋本委員長 次に、堀場幸子君。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子です。よろしくお願いいたします。

 私、内閣委員会の所属で、先ほども内閣委員会の方でこども家庭庁の議論の方をさせていただいております。今回、児童福祉法の一部を改正する法律案、これに関しては、こども家庭庁と非常に関連性が深いということで、本日、こちらの方で質疑をさせていただくことになりました。何とぞよろしくお願いいたします。

 そもそも、こども家庭センターについて御質問させていただこうと思っていたんですが、このこども家庭センターというものとこども家庭庁というものが、一見、私は最初見たときに、おお、これはこども家庭庁の出先機関ができるのかなと一瞬思ったぐらい、同じ名前なんだなというふうに感じておりました。

 先ほど、本当に一時間ぐらい前に野田大臣との質疑をさせていただいたときにも、こども家庭センターを全国に配置していくことでつなぐということの御答弁がありました。

 私といたしましては、まず一番最初に、こども家庭センターの位置づけということについて大臣にお尋ねしたいと思います。

後藤国務大臣 今般の児童福祉法改正法案により新設するこども家庭センターは、児童福祉と母子保健の相談支援の機能を一体的に担うものとして、市町村において設置に努めることとされているものでありまして、そういう意味においては、子供の施策の拠点として、しっかりといろいろな施策をつなぐものであるということについての認識を持っております。

 別途審議されているこども家庭庁設置法案が成立した暁には、児童福祉、虐待対応や母子保健に関する国の事務が厚生労働省からこども家庭庁に移管されることに伴いまして、こども家庭センターに関する国の事務もこども家庭庁が所管することとなります。こども家庭センターの設置促進や適切な運営の確保のために必要な財政上の支援、各市町村におけるこども家庭センターの運営方法等に対する助言等をこども家庭庁が行うこととなります。

 しかしながら、こども家庭センターは、こども家庭庁の手足となる機関というわけでは、いわゆる制度論ということからいうと、いうものではなくて、あくまで市町村が自治事務として自ら設置するものでありまして、市町村内のどの部門がこども家庭センターの運営責任の主体となるかなど、組織体制の問題、そうしたことについては各市町村において決定されるものであるというふうに認識しています。

堀場委員 ありがとうございます。

 このこども家庭センターという存在が、今大臣のお言葉にもありましたけれども、様々な支援とつなぐ役割を果たしていくというふうに理解しております。

 このつなぐということについて、つなぐというのはどのようなことか、教えていただければと思います。

後藤国務大臣 今般の児童福祉法改正法案では、虐待が起こってからの対応を強化することに加えて、家庭への支援を強化して、虐待の発生を未然に防止することを目的としております。そのためには、幅広い範囲の子育て世帯や妊産婦、子供とのつながりを持ち、各家庭に寄り添って課題や悩みを受け止めていく必要があります。

 このため、こども家庭センターでは、全ての妊産婦、子育て世帯、子供に対する相談を行うことや、子育て世帯に対して計画的に支援をしていくためのサポートプランの作成を行うこと、要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協において、関係者間で情報共有やアセスメント等を図ること等によりまして、それぞれの子育て世帯や子供が必要とする支援サービスや関係機関につないでいくこととしております。

 また、子育て世帯や子供が実際に支援につながっていくようにするためには、地域において子育て支援に取り組むNPO等の協力も必要となってまいります。

 このため、こども家庭センターでは、家庭支援に取り組むNPO等の発掘も担い、地域における様々な民間主体との連携を推進していくことにも取り組むこととしております。

 これらのこども家庭センターの機能が地域において十分に発揮されていきますように、市町村における設置促進を国としてもしっかりと支援してまいりたいと思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 このこども家庭センターのポイントとなる一つの情報共有の機関として、先ほどの大臣のお言葉にもありました要保護児童対策地域協議会、要対協の方があるかと思います。

 しかし、この要対協が一体どの程度機能しているのか、及び、守秘義務があって、ここにいらっしゃる方は、非常に多くの機関が参加できるようになったということも承知しているところではございますけれども、まだまだこの要対協の知名度、分かってもらえていない部分が多いんじゃないかなと思っております。様々な団体が、要対協に対する課題として、知名度が、まだ分かっていない人が多いというような点もかなり言われております。また、人員が非常に不足している等の問題がありまして、なかなか要対協自体がうまくいっていないということも問題として挙げられるかと思います。

 そして、この要対協の対象となる児童というところが、保護者が見られない人、保護者がいない児童、それ以外にも、虐待を受けた児童だけではなく、障害を持った子供や、不良行為をする、非行ですよね、犯罪行為などをするようなおそれのある児童等というふうなことになっております。

 今私たちの目の前にある課題というのは、もちろんこういった課題もありますけれども、実は、親の貧困が生まれる子供の貧困、そういった多様な困り感というのがありますので、このメニューを本当に全部やっていくには、本当に相当のお金の投入が必要ではないかなというふうに感じているところでございます。

 次に、児童発達センターについてお尋ねさせていただきます。

 この児童発達センター、先ほど我が党の金村議員の方からも様々ありましたけれども、まず、機能強化ということで、役割と機能強化について教えてください。

後藤国務大臣 児童発達支援センターの役割についてでございますけれども、今般の改正案では、児童発達支援センターについて、地域における障害児支援の中核的役割を担う機関として、幅広い高度な専門性に基づく発達支援、家族支援機能、地域の障害児通所支援事業所の支援内容等に対し助言、援助等を行う機能、地域のインクルージョン推進の中核としての機能、地域の障害児の発達支援に係る相談機能を担っていくべきものであることを明確化することといたしております。

 そうしたことにつきまして、しっかりと今後進めていきたいというふうに思っております。

堀場委員 ありがとうございます。

 一つ目に、地域のインクルージョン機能の、中核としての機能というのは具体的にはどういうことを指しているか、教えてください。

後藤国務大臣 御指摘のインクルージョンの推進については、子供たちが年少期より、障害の有無にかかわらず、様々な遊び等を通じて共に過ごし、それぞれの子供が互いに学び合う経験となるものであり、地域共生社会の実現推進の観点から大変重要なことであるというふうに考えています。

 このため、児童発達支援センターにおいて、地域の保育所や幼稚園等に対し、障害児の受入れについて専門的な支援を提供する保育所等訪問支援の実施を推進することで、地域全体の障害児の受入れ体制の充実につなげていくとともに、児童発達支援センターが地域の児童発達支援事業所や放課後等デイサービス事業所と連携しながら、個々の障害児の状態や希望を踏まえつつ、保育所や幼稚園の移行支援を行っていくことによりまして、地域のインクルージョンを推進していきたいと考えています。

堀場委員 ありがとうございます。

 先ほど、我が党の金村議員から、学童期の子供たちに対して、児童発達センターというのは対象になるのかならないのかというお話がありまして、私がレクを受けたときには、その対象になっているというお答えだったと思っています。

 そうなりますと、小学校の方では、インクルーシブ教育システム、これを取り上げさせていただいている学校が非常に多いのかなというふうに思っています。新学習指導要領の中でもインクルーシブ教育システム、言及がございますし、多様性、共生社会の中でやっていくという方向性を見出しているところでございます。

 また、同様に、療育をしていただいていると思いますけれども、療育についても、学校で行われている特別支援教室も含みますけれども、やっていることが非常に類似しているというふうに感じているんですけれども、この点についてお願いいたします。

後藤国務大臣 障害児通所支援と教育との連携は大変重要と考えております。国としても、児童発達支援ガイドラインや放課後等デイサービスガイドラインにおきまして、地域の教育関係機関との連携を図ること、障害児に対する支援内容等につきまして、通学先である学校へ情報共有を図っていくこと、そうしたことが必要である旨、これまでも示してきたところであります。

 しかしながら、現状では、必ずしも障害児通所支援と教育との連携が十分でない場合もあるというふうに考えておりまして、今後、児童発達支援センターが地域の障害児支援の中核的役割を果たしていく際には、学校等の地域の教育関係機関と十分に連携、協働した上で、地域全体で障害児通所支援と教育との連携が深まるように、後方支援を行っていくことが重要であると考えます。

 引き続き、現場の声をお聞きしながら、こうした取組を推進していくことにより、児童発達支援と教育の連携をより一層図ってまいりたいと思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 こども家庭庁の議論の中で、なぜこども家庭庁をつくるのかというお話をさせていただいたときには、縦割り行政の打破ということでございました。つまり、今のまま、今の状態、教育と福祉がまず連携ができない、その主たる原因は縦割りにあるというふうな問題意識があるので、こども家庭庁ができる。横だとできないので、上につくるというのが今回のこども家庭庁の議論だと認識しています。

 これも同じだと私どもは思っています。日本維新の会は、教育と福祉を一体化したサービスを提供する必要があるのではないかということで、教育子ども福祉省という提案をさせていただいているところでございます。

 先日のレクで聞かせていただいたところによると、学校教育の中でつくられている個別指導計画、個指計といいますけれども、とサービス利用計画というものが連携されている事例があるというふうにお聞きしていたんですけれども、それはそのとおりでよかったでしょうか。

後藤国務大臣 うまく連携をしている、そういう地域もあるというふうには認識しておりますけれども、先ほども申し上げたように、全てにおいてその連携がうまくいっているわけではないというふうに思っております。

 先生も特別支援教室で御経験をされて、御活躍をされたということも伺っておりまして、非常にうまくやっているところ、また連携も進んでいるところもあるという認識は持っております。

堀場委員 ありがとうございます。

 個指計と個別サービスの利用計画が連携がうまくいけば、実は、子供たちにとって一番いいことなんだと私自身、認識しています。

 結局、今子供たちにとっては、先ほど大臣もおっしゃっていました、別なところに行けば、そこで個別のサービスが受けられる、ここでも受けられる、だけれども、ここが連携したらもっとよくなる。多分、きっとそれはみんな同じ問題意識だと思います。

 そこで、子供たちの個人情報の取扱いについてお尋ねしたいと思っています。

 違う部署で連携をするというのは、個人情報のやり取りがされることになると認識しています。今、文部科学省の方でもデジタル化についての議論があると承知しています。同様に、この法案の審議の中でも、先ほど児童相談所と司法のところでAIデータの活用ということが話題に上がっていたかと思います。

 こういったデジタルツールを使った場合に、子供の個人情報の取扱いというものに関してどのような規定がされているか、教えてください。

後藤国務大臣 子供に関する個人情報については、各自治体で制定されている個人情報保護条例に沿って、各自治体において適切に管理されているものと考えています。

 厚生労働省としても、各自治体において子供の個人情報が適切に管理されているか、よく注視してまいりたいと思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 今、私たちは、平成十五年に制定されました個人情報の保護に関する法律に基づいて個人情報というものは管理されているかと思います。けれども、デジタルツールが本当に発達してきて、先ほど言っていました、非行と言うと本人たちは怒るかもしれませんが、一定、非行に当たるような行為を表出するような児童もたくさんいますけれども、児童や生徒がそういった行為をしてしまった。それは、そこから反省して彼らは成長していくと思うんですけれども、そういった経験をしたことがずっと残って、例えば就職するときにもそういった情報が残ってしまっているというような事態にならないように、今、世界中で様々な対策を練ろうというところだと認識しています。

 例えば、経済協力開発機構、OECDですけれども、閣僚理事の勧告として、プライバシー保護と個人データの国際流通に関するガイドラインというものが制定されております。

 私たちはこういったものにしっかりとコミットして、そして、最新の子供たちのデータが、大人もそうなんですけれども、特に子供たち、未来をしっかりと担っていただくためにも、個人のデータの利用される目的、それが目的に関連するものに限定されるべきだというふうに言われているんですけれども、こういったことがこの法律の中で規定される必要があるかと思うんですけれども、それについてはいかがでしょうか。

後藤国務大臣 現在、各自治体における個人情報保護につきましては、個人情報保護条例に沿って各自治体において適切に管理されているという仕組みでございますけれども、来年から、個人情報保護委員会、こうしたところで一体的に管理をしていくということになりますし、今先生がおっしゃった、個人情報をしっかりと保護しながら、情報データをつなげていき、新しい情報社会をつくっていくということが大切だというふうに思っております。

 世界的なそうした動きとともに、日本においても、しっかりとした個人情報保護の体制の上にこうしたデジタル社会をつくっていく必要があると思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 私も支援を経験した者として、データが非常に重要だということは強く強く認識しています。中学校の現場にいたんですけれども、小学校やその前の未就学のときにどういった支援を受けてきたのか、若しくは何も受けてこなかったのか、そういった情報、若しくは家族の状況、そういったもの一つ一つが彼らの支援につながっていく。適切な支援を適切な時期にやっていくために必要な情報ですから、その情報連携が非常に重要だということを重々思っているからこそ、この個人情報の保護についても、より明確な、そして明文化されるべき案件だなというふうに感じているところでございます。

 本日はありがとうございました。

橋本委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 本日も質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、社会的養育自立支援についてお伺いをしたいと思います。

 児童養護施設や里親の家庭などに暮らす子供や若者は、入所は原則十八歳まででありまして、措置延長や児童自立生活支援事業によって最長二十二歳までに自立することがこれまで求められてきました。

 今回、年齢要件を弾力化する改正案が提出され、年齢制限の撤廃というのは多くの関係者の方からの要望もありまして、委員会の中でも賛成の声が聞かれるところでありますが、今日午前中にありました参考人質疑の中で、早川さんの方から、全国のほとんどの施設が二十二歳どころか二十歳までの延長措置さえやっていないという指摘がありました。

 これはちょうど、先ほど井坂委員の質疑にもありましたけれども、現在、社会的養護自立支援事業の対象者の数と、また、その中で二十歳を超えている施設に入っている方というのは何人いるのか、改めてお伺いをいたします。

橋本政府参考人 令和二年五月一日現在でございますが、社会的養護自立支援事業による居住を伴う自立支援を利用している方の人数は二百四十六人でありまして、その中で二十歳を超えている方の人数は六十七人となっております。

田中(健)委員 こちらは、早川さんの資料によりますと、都内に絞りますと、社会的養護自立支援事業の対象者で施設に入っているのは三千名でありまして、二十歳を超えているのは十七人ということであります。早川さんの子供の家という施設は、措置延長を以前から積極的にやってこられまして、施設全体の定員四十八名のうち二十歳を超えているのが十名と。東京が十七人ということですから、ほとんど、東京の二十歳以上の方はこの早川さんの施設にいることになります。

 二十歳を超えても、二十二歳になる年度末までは、この社会的養護自立支援事業によってこれまでも国と都道府県からその経費が出ることから、資金的な施設においてのデメリット、これはないわけでありますが、しかし、今例に挙げました早川さんの子供の家のように二十二歳まで居住できることが標準という施設は、全国的に見ても大変ごくまれだということであります。

 なぜそのような状況が続いてきたのかということを、お聞きをしたいと思います。

 そもそも、これは今日に始まったことではなくて、厚労省は、二〇一一年の十二月二十八日、自治体の首長を通して、児童養護施設等及び里親等の措置延長についてという通知の中で、措置延長の積極的な活用を施すということをしています。つまり、もう長年の課題であったと思っています。

 この問題点というものを認識し、これは十年以上たっているわけでありますが、これまでこの措置延長ないしはこの事業というものが広がらなかった原因というのを伺うとともに、それに対してこの十年以上どのような対策が取られてきたのか、伺いたいと思います。

橋本政府参考人 児童福祉法上でございますが、児童養護施設等への入所措置等は原則十八歳まででございますが、二十歳までは措置の延長ができることとしております。しかし、児童養護施設におきまして高等学校卒業後も措置延長されている方は、令和元年度末に高等学校等を卒業した約千七百五十人のうち約三百五十人にとどまっております。

 措置延長の仕組みがなかなか活用されない背景には、自立に向けた社会的養護自立支援事業や、あるいは生活費、家賃等の貸付けを行う事業、こういったものを拡充してきたこと等も含めて様々な理由があるとは考えられますが、入所等措置は十八歳までという原則にのっとって、措置延長できるケースが根強く厳格に捉えられている場合もあるということも、これも一つの要因であるというふうに考えております。

 厚生労働省としましては、これまでも、全国会議等で、各都道府県等に対して措置延長制度の積極的な活用をお願いしたところでございます。

 今般の児童福祉法改正案におきましては、都道府県の行わなければならない業務として、措置解除者等の実情を把握し、その自立のために必要な援助を行うことということを位置づけることとしておりますので、この業務を都道府県が果たしていく上で、支援が必要な場合には確実に措置延長がなされるように、私どもとしてはより一層の働きかけということを行ってまいりたいというふうに考えております。

田中(健)委員 様々な理由ということでまとめてしまったんですけれども、やはりそれではいけないと思っていまして、これが一年か二年の話ならいいんですが、もうこの通知を出してから十年以上たって、更にその前から問題であったということがこの証明でありますから、是非、今回の法改正によって事業の推進を図るということですから、進めていっていただきたいと思います。

 ちなみに、参考人の早川さんからは、措置延長を決めてしまうと施設がいっぱいになってしまう、次の子供が入らなくなるということがあるんじゃないかと。また、今局長言ってもらいましたけれども、高校卒業がゴールだ、それ以上のことをするイメージが今まで湧かない、あくまで十八歳までだということが根強く考えにあると。しかしながら、最低限のことしかやらないという風潮は何とか変えていかなきゃならないんじゃないかという指摘もあったことをお伝えしておきます。

 というのは、ここを解消していかないと、せっかく法改正までして、また議論もこのように皆さんでしているんですけれども、年齢要件を弾力化しても絵に描いた餅になりかねず、また、児童養護施設は、何らかの事情で児童相談所が保護していた一時保護所から児童養護施設にやってくるわけですけれども、しかし、子供は、自分がどこの養護施設に行くかは選べません。

 つまり、都内の子供であった場合は、早川さんの子供の家という施設に入れば、措置延長も、また、社会的養護自立支援事業も、これまで長らくやってきたということですから、これを活用して二十二歳まで、少しでも長く入所して、大学や専門学校に行きたければその指導もしてきたということでありますから、そういった道もあるんです。しかし、選べなくてほかの施設に行ってしまうと、高校卒業までということでばさっと切られてしまって、同時に退去となって、もう自分の自立というものがそこで求められるわけでありまして、子供によって、また行く場所によって自分の人生が大きく左右されてしまうということがあってはならないと思っています。

 同時に、このような現状の中でもう一点懸念していたのが、成人年齢の引下げであります。これによって、児童養護施設というのは高校卒業までということが更に強化されて、十八歳からもう成人になりますから、ますますこれが進むんじゃないかということも懸念をされていました。成人年齢と自立年齢は直結しないということを述べています。

 一般家庭でも、高校卒業と同時に自立しなさいとはなかなかいきませんで、困ったら実家があるとか、経済的支援が受けられるとか、支えてくれる後ろ盾があるというのが今の一般の十八歳の姿だと思います。

 社会的養護を必要とする子供というのは、元々、親は当てにならないどころか、ある意味では、虐待を受けたり、ネグレクトを受けたり、メンタル的にも大きなダメージを受けた状態で施設に来ています。だからこそ、一般的な子供よりも丁寧に支援していかなければならないのに、懸念されるのは、一般の人よりも早く。今回の成人年齢引下げがもう始まりましたから、この法律が通っても施行されるのは二年後ですから、そのギャップがある中で、ますます社会的養護が進まないんじゃないかということの、これは矛盾というふうにも発言していましたけれども、これについて大臣の見解を伺いたいと思います。

後藤国務大臣 現状でも、入所等措置の延長や児童自立生活援助事業等によりまして、十八歳を超えた者に対しても状況に応じた支援を行っていますが、成年年齢引下げ後もこれらの支援について取扱いが変わるものではないので、特段のそのことによる理屈の上での不利益を被ることはないというふうに考えております。

 一方で、今般の児童福祉法改正においては、児童自立生活援助事業について、一律の年齢制限を弾力化することで、これまで支援が届かなかった者に対しても必要な自立支援が実施できるようになるわけでございます。

 なお、改正法の施行までの間に十八歳以上の年齢に達する措置解除者等については、現行の児童自立生活援助事業のほか、施設等での居住の場の提供や就労支援、その他の支援を提供する予算事業、社会的養護自立支援事業のことでございますが、こうしたものや、家賃や生活費等の貸付けを行い、一定期間の就業継続により返還を免除する事業等による支援も活用していただきたいというふうに思っております。

 しかし、先ほどから先生が御指摘の、制度の考え方について、しっかりと広報をしたり、理解を深めていったり、今後の新しい法律の中では地方自治体がそうしたものを事業としてしっかりと自分でやっていかなければならない旨規定されておりますので、そうした考え方を変えていかなければならない、そういう御指摘はいずれにしても根本にあるものとして、よく今後とも努力していきたいと思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 大臣から、地方自治体に、今回の法改正で大きく変わるんだと、意識変革と、そして、まだ二年間ありますので、その間にしっかりとこの考えを根づかせるということの決意を述べていただきましたので、是非お願いをしたいと思います。

 次に移りたいと思います。

 措置延長や自立支援の年齢制限を撤廃するということですが、年齢を上げても抱える問題の本質というのは変わらないのではないかと思い、幾つかの質疑をさせていただきたいと思います。

 一般の家庭なら、一律に住居の場を追われることはなく、本人の選択、進路選択も含め、ライフステージに合わせて家を出ます。出ても帰ってこれます。何だったら出なくてもいいよと、今優しいお父さん、お母さんは言う、選択もあります。

 社会的養護で大切なことは、代替のそのような一般の人と同じような家庭を与えることだというふうに言われています。その例としましては、養子縁組であったり、里親であったり、今議論しています児童養護施設であります。

 そこで、里親制度について伺いたいと思います。

 令和二年度末で、里親の家庭は、一万二千三百八十一世帯、リーマン・ショック後には一部落ち込んだとは言われますが、その後も、微増でありますが、少しずつ増え続けています。

 しかし、子供を実際に受け入れている里親家庭というのは四千七百四十二世帯、子供の数は五千八百三十二人にとどまっておりまして、複数の子供を受け入れるファミリーホームを含めても七千七百七人ということでありまして、里親の委託率というのは二二・八%にとどまっております。これは午前中の参考人の資料にもありました。

 国の目標の五〇%以上にまだまだ遠い状態でありまして、里親の登録の拡大は、なかなか進まないとあります。これもいろいろな要因がありまして、資料やまた本を読みますと、様々な要因があって、なかなか明確な答えを、ずばっとこれだというのはないというふうに言われますが、その中でも、幾つかの課題について伺いたいと思います。

 まず、親権者の同意ということです。

 児童福祉法には、里親委託ガイドラインの中に、保護者による養育が不十分又は養育を受けることが望めない社会的養育の全ての子供の代替的養護は、家庭的養護が望ましく、里親委託を優先して検討することを原則とするべきであると、里親が優先的な場所であるというふうに定めているんですけれども、この里親委託をする際に、その委託をするかどうかの判断というのは親権者の同意が必要とされています。施設においては、家庭裁判所を通った場合、そのまま施設にどんと自動的に入れられることがあるんですけれども、里親においては親の同意が必要だ、親権者の同意が必要だということでありますが、この同意が必要な理由、また法的根拠というものについて、まずお聞きをしたいと思います。

橋本政府参考人 今委員が御指摘いただきましたように、平成二十八年度の児童福祉法改正によりまして、家庭養育優先原則ということが法律上明確化されました。それを受けまして、私どもとしては、里親への委託推進といったことを今強力に進めているところでございます。

 それで、法的根拠等についてのお尋ねがございましたが、児童福祉法に基づきまして、児童養護施設等への入所措置や里親委託を行う場合には、児童福祉法第二十七条第四項の規定に基づきまして、原則として親権者等の同意を得るということとされております。

 この仕組みの考え方でございますが、児童の保護者等の親権との均衡ということを確保する観点等を踏まえたものでございまして、施設への入所措置や里親委託というものが児童や親権者の生活の在り方に大きな影響を与える措置である以上、家庭養育優先原則を進める中においても、やはり同意を取得する必要があるというふうに考えているものでございます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 里親の皆さんに聞きますと、里親ガイドラインの中には、積極的な承諾がなくても、反対の意思表示がなければ、児童福祉法上、里親委託の措置を行うことは可能であるというふうに、これをよく例に挙げられます。先ほどの大臣の中には、基本的にということで、親権者の承諾が必要だということがあったんですけれども、ガイドラインだけを見ますと、承諾がなくても可能になるというふうにも読み取れるんですが、もう一度、局長、ここの法律の考え方をお聞かせいただければと思います。

橋本政府参考人 仮に、やはり里親の方に委託ということがされた後で、そこのところで、実の親との間で十分な納得感というものがない状態のままで委託というものがされたときに、様々、委託後にトラブルが生じてきている、そういったことがまた子供に対して悪影響を与える。そういったこともいろいろ懸念されるところでございますので、現在そういった法制度になっているということでございます。

田中(健)委員 具体的にちょっとお聞きをしますけれども、里親の皆さんから聞いた話で、例えば、現在施設におるお子さんがいますが、週末ないしは一時里親ということで、短期里親制度があると思うんですけれども、それを繰り返しているうちに、施設よりも里親の方に行きたいという子供の思いがあります。しかしながら、なかなか承認を取るのは難しいということで、当の本人の意見というのはどのように尊重されるのかというふうに言われることがあります。

 そういう中で、今回、子供の意見聴取や、また子供の尊重の観点も含めますと、当の本人の意見の尊重というのはどのように考えればいいのかということをお聞きしたいと思います。

橋本政府参考人 子供の意見ということでございますが、現行法の下におきましては、子供につきましては、運用上のガイドラインに基づきまして入所等措置の理由等について説明が行われているというふうには承知しておりますが、児童本人の意見にのっとって、どこに行くのかといったことを選択するというふうなことまではされてはおりません。

 こうした中で、入所措置であれ、また里親の方に委託されるのであれ、そういったことというのはその子供にとってみればその後の生活に重大な影響を与えるものでございますので、また、処遇等について子供の意向も踏まえたものとすることが、かえって、その後の養育環境として適当であるということもございますので、今般の児童福祉法改正案におきましては、入所措置等の際に、児童相談所等が子供の意見聴取等を行わなければならないこととしたところでございます。これは、入所措置の場合も里親委託の場合も同じでございます。

 今般の児童福祉法改正案を契機としまして、子供の意見、意向を聴取した上で、可能な限り子供の意見、意向を踏まえた養育環境の提供となるように取組を進めたいと考えております。

田中(健)委員 もちろん、どんな親であっても、親権というのは子供に持っているわけでありまして、それを引き離すということはあり得ないんですけれども、実務的には、里親さんからいろいろな声が上がりまして、寄せられることには、やはり委託を受けた子供を取ってしまうんじゃないか、そういった、これまで風評というのもありました。やはりそういうのをなくしたいと思いますし、冒頭言っていただきましたように、里親優先、家庭優先という考えの中、集団養育よりもやはり里親が望ましい養育ができるよ、そういった社会的なイメージを是非とも確立するためにも、親権ということで今議論をしましたが、里親の推進というのを是非進めていってほしいという思いで質疑をさせていただきました。

 さらに、支援という中でいえば、午前中の山縣参考人から、里親の委託率が上昇しない理由の一つに、里親への支援が十分ではないことが考えられるという指摘がありました。

 今の養護支援においては、大きな施設への措置というのはこれまでかなりいろいろな制度ができまして、手厚くなったと言われる一方で、里親への委託費や、また、児童への個別給付というのは十分な支給がされていないという指摘があります。

 これについての見解を伺います。

後藤国務大臣 施設への措置費につきましては、施設の多機能化、高機能化が求められることとなったこと等によりまして、里親や地域の家庭に対する専門的支援機能に着目した加算などの充実を図ってきたところでございます。

 一方、里親等に対しては、里親手当のほか、食費、被服費等に充てる一般生活費、一人当たり月五万一千六百十円や、幼稚園費、教育費、医療費等の児童の生活に要する実費も支給されているところでございます。

 このうち、里親手当について、平成二十八年の児童福祉法改正による家庭養育優先原則等の流れを踏まえまして、令和二年度には、一人目の手当額を月額四千円増額させて九万円とするとともに、二人目以降の手当額について、一人当たり月額四万三千円を九万円に倍増させるほか、障害を持つ子供を養育する専門里親に対する手当を月額四万九千円増額させる、九万二千円から十四万一千円など、大幅な拡充を行ったところでございます。

 厚生労働省としては、こうした里親への支援の仕組みについて周知を図るなどして、引き続き、家庭養育原則に基づき、里親委託が進むように取り組んでまいります。

田中(健)委員 いわゆる委託費と給付費だけでなく、様々な支援があるということも今るる御説明をいただきました。

 そういうのをなかなか知らない方もたくさんいらっしゃいますので、是非その周知も行っていただきたいと思いますし、さらに、実際、里親で預かっていらっしゃる皆さんは、まだまだ、いろいろな要望があると思いますので、是非それにも耳を傾けていただきたいと思っています。

 施設と、また、里親との関係ということでお聞きをしますが、自立に必要なものということを里親の皆さんに聞きますと、子供との十分な依存、いい意味の依存ですね。旅立っても安心して帰ってこれる、人がいる、場所があるという絶対的な安心感、ロールモデルとなる、また、理想の大人像の獲得、児童から継続して行われるトラウマケアや治療、環境が近い人同士の支え合い、こういうものが必要だと。しかしながら、施設というのは家族の代替にはならないと。しかしながら、専門性の高いケアだとかキュアを行う施設として機能ができるだけでなく、様々な蓄積したノウハウを里親や子育て支援、子育て家庭に提供する機関として機能してほしいということがありました。

 どこで生活するか、また、どのような支援を受けるか、教育を受けるかというのは、本人の自立のために、選択をすることができないだろうかというふうに考えます。

 これは十八歳以上を考えておりますが、障害者総合支援法を考えますと、措置と選択というのが二つありまして、それによって選ぶことができるわけですけれども、ちょっと、もちろん形が違うということは分かっているんですけれども、救済のための措置と、また、自分たちが自立するために、契約をすることによって支援を続けていけるというこの利用の二種類があってもいいんじゃないかと思うんですが、この考えについてはいかがでしょうか。お伺いします。

後藤国務大臣 行政による措置の対象となるような児童においても、自身の生活等の在り方について自身で考えていくということが、将来的に自立して生活をしていくことを目指す上で重要であると思います。

 一方で、児童虐待の発生時等に際して、全ての児童の生命や健全な育ちを守り、最終的にその自立を促していくという責任を果たしていくためには、児童の状況、状態等に照らしまして、適切な専門性を持った児童養護施設等を行政側が選択し、措置入所をさせるといった対応を取ることの必要性もあると考えています。

 こうした中において、今般の児童福祉法改正案において、施設への入所措置が行われる児童の意見、意向を聴取等をする仕組みを創設すること等を通じまして、本人の希望をよく聞いて措置内容に反映するという取組を進めていくこととしております。

 これらの仕組みの円滑な施行に取り組み、社会的養護という困難な状況に置かれている児童が希望を持って暮らすことができる環境をつくってまいります。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 どうしても、施設といいますと、皆同じ、特に私たち、直接関わることがない人にとっては、ホームページ等を見ても、家庭的な環境、誰でも受け入れられるような、温かい、ファミリー的な施設というようなことで、どうしても差が分からないわけですね。

 しかし、先ほど言ったように、施設というのはこれから様々な役割を果たせると思っていまして、そのいろんな経験や、また、施設によっては、例えば、虐待する子たちのケアがしっかりできる施設であったり、また、自立に強いそういったノウハウを持っているというようなことで、少しずつ色が、また顔が見えてくるような施設の在り方というのがこれから求められると思いますので、是非進めていってほしいと思います。

 次に移ります。

 一時保護所に関してです。

 この一時保護所に関しては、保護人員は、平均在所日数とともに増加傾向にあります。二〇一八年度、虐待を理由に一時保護された子供というのは延べ三万二百六十四人、そのうち、一時保護に預けられたのが一万六千八百五十三人です。都内七か所にある一時保護所の、古いんですが、二〇一六年の入所率というのは、義務教育期間中の男の子は一五〇・六%、女の子は一三八・四%と定員を大幅に超えて、定員超過の状態が続いています。そして、この入所率の高さというのも問題となっています。

 各県とも、子供の権利が制限されることを最小限にするため、一時保護期間の短縮化というのを目標としておりまして、例えば、私の静岡県では、二十四日が今平均なんですけれども、これを二〇二九年までに十四日にしようということを目標にして取り組んでいます。

 一方、全国を見ますと、かなりの日数にばらつきがありまして、長い県では六十日、逆に短い県では五・八日という結果が出ています。

 どうして、都道府県によって在所日数の差が生まれてしまうのか。また、一時保護所の定員超過が常態化している状態というのをどう認識されて、解消に向けての対策を考えているのか。伺います。

後藤国務大臣 一時保護の期間は、保護者の元に家庭復帰するための環境整備に時間を要したことや、適切な受入れができる入所施設や里親が見つからなかったこと等により長期化することがありまして、個別のケースの状況や各自治体における施設の里親の状況によりまして、一時保護日数に差が出ているものと承知をいたしております。

 また、都市部の一部の一時保護所において定員超過が慢性的に続いている現状があり、子供の処遇改善の観点から、定員超過の解消は急務であるというふうに考えています。

 厚生労働省としては、これまでも、一時保護所の整備のための整備費等を補助してきました。国二分の一の補助です。自治体が定員超過解消のための計画を策定し、厚生労働省が承認した場合には、整備費の補助率の二分の一から十分の九までかさ上げすることといたしております。

 こういった取組を通じて、一時保護所の定員超過解消に向けて、自治体とも相談しながらスピーディーに取り組んでまいりたいと思います。

田中(健)委員 一時保護所の充足に、定員超過解消を進めていただけるということで、決意を伺いました。

 また、在所日数の件については、もちろん、案件によっては長く預かってしまって、それが平均日数を上げているというのもあるかと思うんですけれども、この中にいろんな要因や、いろんな分析する中身があると思います。これを分析することで、様々な虐待の問題やまた一時保護所の問題というのが見えてくるかと思いますので、是非、単純に差が生まれるのが当然ではなくて、その要因というものを対策に生かしていただきたいと思っています。

 時間がないんですけれども、最後、一時保護の開始時の司法審査に質問を移りたいと思います。

 今回の制度導入のメリットでありますけれども、児童相談所による一時保護に関するより一層の判断の適正性の確保、また、手続の透明性の確保につながりまして、第三者の司法介入によって妥当性を判断することで、親側の納得が得られやすく、児相と親との対立も含むことということの効果が期待をされています。

 二か月を超えて長期に一時保護する場合には、これまで裁判所の承認がありましたけれども、今回、一時保護の開始時に、保護者の同意がないケースというものにこれが適用されますが、この一時保護の開始時に保護者の同意がないというケースというのは、一体全国でどれだけ数があったんでしょうか。お聞きします。

橋本政府参考人 令和元年度に厚生労働省が実施しました実態調査を踏まえて推計いたしますと、今般導入する司法審査の対象となる範囲とは厳密には一致しないんですけれども、一時保護の全数の年間三万九千三百三十件のうち、親権者等の同意なしのケースは、一時保護の開始時点で八千五百七十七件、開始から七日経過時点では三千三百三十件ということでございました。

田中(健)委員 八千五百七十七件、三千三百件。つまり、それだけのものが、今までは要らなかったものが、裁判所の承認を、司法の手続が必要になるということでありまして、児童相談所の本当に負担というものがこれから大きくなるということが、その数からも分かります。これについては、るるこれまで質問が続いてきまして、裁判所に出す書類、これが大変に煩雑になってしまうんじゃないかと。しかしながら、これは、全国共通や、資料の簡素化を進めるという答弁もいただいております。

 今回取り上げたかった神奈川県の大和市の事件においては、兄弟が亡くなる中、家庭生活が安全にできるかという疑問を県は持っていたんですけれども、家裁の判断について、この家庭での養育が不適切だという書類がそろえられなかったということで、残念に思っているということを記者会見で述べています。

 ですから、今回の、書類がそろえられなかったということで、手続の煩雑さから保護をちゅうちょしたり、また、子供が守れないということがあってはならないと思っています。

 是非、この大和市の幼児死亡事件における司法審査の課題から、今回の法改正がどのようにこの問題の解決に寄与できるのかということについて、最後お伺いいたします。

後藤国務大臣 今般の児童福祉法改正案による一時保護の司法審査の導入に当たり、児童相談所においては、裁判所に提出する疎明資料の作成や、裁判所との間で疎明資料のやり取りを行う事務が新たに発生することになるため、事務負担のために必要な一時保護がちゅうちょされることがないよう、司法審査に係る児童相談所の負担が過剰なものとならないようにする必要があります。

 裁判所に提出する請求書類については、全国共通の様式を設けることや資料の簡素化について、今後、施行までの間に、実務者から構成される作業チームにおいて検討をしてまいります。

 また、人材確保を含めた児童相談所の体制の強化も重要でありまして、これまでも、弁護士を配置した場合や弁護士事務所等に委託を行った費用の補助を行っており、さらに、法的対応を行う事務職員を配置した場合の費用の補助を令和四年度に創設するなど、児童相談所の法的対応の体制強化を図っているところでありますけれども、今後、更に必要な支援をしっかりと行ってまいりたいと思います。

田中(健)委員 今後、一時保護の開始要件の法令化も明確にしていくということも委員会の中で述べていただきましたので、是非またそれについても議論をさせていただき、しっかりと子供たちが守れる環境をつくってまいりたいと思います。

 以上です。

橋本委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 社会的養護を巣立った人などを対象にしましたアフターケア相談所ゆずりはでお話を伺ってまいりました。何重にもハンディを負い、虐待のトラウマで苦しんでいる人も多いそうです。就職、進学、手術、住宅など、保証人になる家族もいない。住まいの確保や生活保護や通院の同行、就労の身元保証人引受け、自己破産の手続の支援、高卒認定資格取得学習会、週一回ジャム作りでの就労支援など、困難に寄り添い、支援をしていらっしゃいます。

 相談件数は延べで三万件、施設退所者以外の相談が四割、虐待に遭ったけれども社会的養護にたどり着かなかった方の支援も行っているとのことであります。そして、出身施設には相談しづらい方もいるということでありました。相談者の年代は十代後半から六十代で、二十代後半から三十代が多い。人生のステージごとの様々な相談があるとのことです。

 運営費は五千万円かかっているけれども、国の退所児童等アフターケア事業の補助金は一千五百万円程度。民間の様々な助成金をひっかき集めるなどして、ぎりぎりの運営だということです。もう少し相談スタッフを確保したい、こういう話もありました。

 今回、このアフターケア事業、社会的養護自立支援拠点事業というのが始まりますけれども、これについては、社会的養護経験者に限らないこと、対象年齢も区切らないこと、出身施設では相談しづらいケースも当たることを踏まえて事業の設置を進めること。また、現在アフターケア事業に取り組んでいるところの状況もしっかりつかんで、財政的支援を抜本的に強める必要があると思いますが、いかがですか。

橋本政府参考人 社会的養護自立支援拠点事業の利用者の問題でございますけれども、児童養護施設等を退所後に引き続き相談支援等を必要とする方に限らず、入所等の措置は受けなかったけれども児童相談所による一時保護や在宅指導措置を経験した方なども想定しておりまして、また、対象年齢についても上限は設けておらず、利用者の状況に応じて適切な支援へのつなぎを行うこととしております。

 それから、出身施設に相談しづらいというふうなお話もございました。御指摘のような、そういうケースもあろうかというふうに思っております。出身施設以外の拠点においても支援を受けることも想定しております。

 それから、スタッフの不足等々の問題も御指摘いただきました。現在、施設退所者等の自立支援に取り組んでいただいている事業所における相談スタッフの状況についても、私どもとしてつぶさに把握しているわけではございませんけれども、予算事業である社会的養護自立支援事業におきましては、継続支援計画の策定、関係者間の連絡調整等を担う自立支援コーディネーターですとか、あるいは、地域での自立した生活に向けた相談支援を行う生活相談支援担当職員の配置などを行っております。

 今後、社会的養護自立支援拠点の役割を果たすことができる人員配置の基準等について、実態も踏まえつつ、施行までの間に、必要な財政支援とともに検討してまいりたいというふうに考えております。

宮本(徹)委員 しっかりとした、実態に見合った財政支援をお願いしたいと思います。

 同時に、今日、午前中の参考人質疑では、是非これも義務的事業にしてほしい、次の児童福祉法の改正ではしてほしいという意見も参考人から出ておりましたので、よろしくお願いいたします。

 そして、社会的養護の手前での支援が極めて重要であります。

 養育環境などに課題を抱える児童の居場所づくりなどを行う児童育成支援拠点事業について、これはスティグマを感じさせないための工夫が必要ではないかと思います。

 また、毎日の居場所をつくる事業に加えて、子供たちが地域とつながり、時間をかけて地域の大人との相談ができるような関係性が築ける子供食堂などのボランタリーな活動もしっかりバックアップする支援策が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

橋本政府参考人 まず、スティグマというふうな問題を御指摘いただきました。

 この児童育成支援拠点事業でございますけれども、御指摘いただきましたように、スティグマの影響により、本来であれば支援をつなぐことが適切な児童が支援を受けにくくなってしまう、そういうふうな事態を起きないようにしていく必要がございます。

 先進事例の中におきましては、事業実施場所の詳細をホームページなどで公表しないことですとか、あるいは、顔見知りと会うことを嫌がる不登校の児童等については近隣ではなく少し離れた事業実施場所を利用させることなど、そういった様々な工夫をしているところもあるようでございまして、こうした事例も参考にしながら、事業の具体的な設計に当たってまいりたいというふうに考えております。

 それから、子供食堂等のバックアップのことも御指摘いただきました。

 身近な場所で居場所を得ることができることは、児童の健全な成長につながるという大きな意義を持つものであると考えております。

 このため、今般の児童福祉法の改正により新設するこども家庭センターの業務といたしまして、子供食堂等の取組を行うNPOやボランティア等の主体の掘り起こしを行うということも位置づけますとともに、子供食堂等の地域の取組を支援するための予算事業も実施することといたしておりまして、引き続きそれぞれの地域の取組をバックアップしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 この点でもしっかりとした財政支援というのをお願いしたいと思います。虐待の原因は孤立にあるということがよく指摘をされるわけでございます。そういう点で、子供が話せる環境、親以外に、地域で設けていく、築いていくという上で、子供食堂は大変大きな役割を果たせるというふうに思いますので、ふさわしく支援をお願いしたいと思います。

 続きまして、子育て短期支援事業のショートステイですけれども、仕事でもいいですよという自治体もあるんですけれども、仕事理由での利用は駄目という自治体もあります。これは利用できることを明確にすべきではありませんか。

橋本政府参考人 子育て短期支援事業におけるショートステイは、保護者の疾病その他の理由により家庭において子供を養育することが一時的に困難となった場合等に児童養護施設等において一定期間養育、保護を行うものでございます。

 このショートステイについては、保護者の育児に係る負担軽減の観点から、虐待の発生を未然に予防するための取組として重要であるというふうに認識しておりまして、今御指摘いただきましたように、保護者の仕事を理由とした場合であっても、一時的に支援が必要な場合には事業の利用を可能としているところでございます。

 今般の児童福祉法改正案におきまして、このショートステイは支援内容等の拡充を図ることとしておりますので、ショートステイの実施体制をより充実させるため、利用要件についても通知等により自治体に対して更に周知を行ってまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 今、ショートステイは、仕事というのは実は明記はされていないですので、今の通知には。しっかりと明記していただけるということですので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 それから、家庭支援の様々な事業が今回メニューとして盛り込まれております。こうしたものについて、やはり市町村の財政力格差によって施策に支援の格差が生じないように国がしっかり責任を果たす、このことが必要だと思いますが、この点、いかがでしょうか。

橋本政府参考人 今御指摘いただきましたように、家庭支援のための各事業につきまして、小規模な市区町村も含めて、広く全国に普及していくことが重要というふうに考えておりますので、提供体制の整備に取り組んでいくことが必要でございます。

 具体的には、国の策定する指針の下で、子ども・子育て支援事業計画の作成を通じて地域のニーズとそれに応じた計画的な体制整備を促すということ、それから、子ども・子育て支援交付金の対象として位置づけて財政支援を行うということ、それから、令和三年度補正予算において、安心こども基金を活用して、各市区町村における先行的な事業の実施を促すこと、こういったことを様々今進めているところでございますので、多くの地域で円滑にこういった事業を導入いただけるように、私どもとしての取組を進めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 ですので、様々なメニューを考えるときに、やはり財政力格差が支援の格差にならないようにしようと思ったら、何分の何ぼで自治体に対して支援を出すのかというのに左右されるわけですよね。これは、十分の十でやれば、格差は、それは人材確保以外は、財政的には出ないわけですから、そういう辺りをしっかりと検討していただきたいと思います。

 続きまして、児童養護施設等についてお伺いしたいと思いますが、今、入所者、障害などがある子の比率が大変増加をしておりまして、三六%に国の統計ではなっております。

 医療、心理的ケアが必要な子を積極的に受けている施設に先日伺いましたが、通院、投薬している子が本当に多いんですね。ケアニーズが高い子が不安定になると、職員がかかり切りになって、ほかの子のケアができなくなる。そして、その子へのケアは時間外で対応することになる。職員を増やしたい、こういう切実な声を伺ってまいりました。

 先日、ここの委員会のやり取りで、児童養護施設等の措置費の在り方の検討について、調査研究を行って議論し、よりよいものを実現するという答弁がございました。ケアニーズが高い人が多い施設は、当然、更に人的配置が可能になるように、早急な具体化を求めたいと思います。

 あわせて、一方を引き上げる代わりに、別の施設についてはケアニーズがそれほど高くないなどといって措置費や人員配置を引き下げるようなことは決してない、このことも確認したいと思いますが、これはいかがでしょうか。

橋本政府参考人 児童養護施設におきましては、障害等を理由に手厚い支援が必要な子供が増加しておりまして、施設において児童の状況に応じた支援ができるように、入所定員数等に応じて施設に支払われる措置費に上乗せして、児童のケアニーズに応じ、心理療法担当職員の配置ですとか、被虐待児や医療的ケア児を受け入れた際の加算等を行っているところでございます。

 それで、措置費等の在り方等につきましては、児童養護施設等に入所している児童へのケアの現状や施設の課題等についての調査研究を実施する準備を進めているところでございますけれども、今後、こうした取組を通じて課題や進め方を整理しつつ、できる限り早急に有識者や施設関係者との検討の場を設けたいというふうに考えております。

 引き続き、児童養護施設等に入所する子供のニーズに応じた支援が行き届くように、支援してまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 そこまでの話は前回の委員会の話だったと思うんですよね。

 ですから、当然ケアニーズが高い人には支援をしていく。だけれども、それほど高くないなどという理由で、逆に、じゃ、スクラップ・アンド・ビルドみたいなことは起きないですよねということを確認させていただきたいと思います。

橋本政府参考人 施設の職員配置ですとか補助額等につきましては、様々な事情を抱えた個々の児童に対応するため、より充実させてほしいという要望を、施設を運営されている方々から私ども日々頂戴いたしておりますので、そういった当事者の御意見をよく伺いながら検討をさせていただきたいと考えております。

宮本(徹)委員 それは、当事者の意見を踏まえて伺ってやれば、当然スクラップ・アンド・ビルドみたいにはならないということだと思いますので、受け止めたいと思います。

 続きまして、こども家庭センターの設置についてお伺いしたいと思います。

 母子保健と児童福祉の連携を図ることは極めて重要でございます。子ども家庭総合支援拠点、東京では子供家庭支援センターが、自治体に設置をされておりますが、現状、ここでの相談は増え続けております。

 学校や保育園などから対応をしてほしいと要請され、一度は訪問、面接するんですけれども、ケースがどんどんたまっていくので、困難を抱えている親子に継続的に支援を続けるためにはマンパワーが足りない、こういう悲鳴の声を伺います。また、客観的に支援が必要な人ほど支援を拒否するケースも少なくないのが現状でございまして、粘り強く働きかけるだけの十分な体制も必要になります。

 今日は資料を配っておりますけれども、資料二ページ目のところに、厚労省から資料をいただきましたけれども、今、こども家庭センターの、正規、非正規ということで見れば、四割が非正規、会計年度任用職員ということになっております。そのうち多数が、かなりの部分が、三年以内の方ということになるわけです。

 自治体なんかのお話を聞けば、保健師を除けば正規は一般行政職で、数年で入れ替わるということで、福祉職の正規がいないということも伺います。専門性がなかなか蓄積されていかないという悩みも伺います。

 こうした子ども家庭総合支援拠点の現状について、大臣は、どう把握、認識されているでしょうか。現状の配置基準でもマンパワーが足りない、こういう声が上がっていることを認識しているでしょうか。こども家庭センター、これを今回設置するに当たっては、現状よりも配置基準そのものを引き上げる必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 現行の市町村が設置する子ども家庭総合支援拠点については、その設置運営要綱におきまして、人口規模のみならず、児童虐待相談対応件数等に応じまして、必要となる専門職員の配置人数を設定しているところであります。

 今後、こども家庭センターの職員に係る配置基準について、どのように設定するかは、子ども家庭総合支援拠点や子育て世代包括支援センターにおける現行の配置基準等を十分に踏まえた上で、虐待相談対応件数以外の相談件数を含め、市町村における相談件数の増加にどう対応するか、サポートプランの作成など今般の制度改正による市町村の業務の増加にどう対応するかなどの論点につきまして、市町村等の自治体の意見を伺いながら、今後、施行までに必要な検討を行っていくこととしております。

 なお、その際には、委員御指摘のように、マンパワーが現行制度において十分でないとの意見もある一方、小規模自治体において専門人材の確保が難しいといった意見も見られるところでありまして、それらを十分に踏まえる必要があると考えております。

宮本(徹)委員 大事なのは、やはり子供の福祉の観点だというふうに思いますので、やはり子供の福祉の観点を貫いて是非この問題を考えていただきたいと思いますが、その点の決意をお願いいたします。

後藤国務大臣 委員のおっしゃるとおりだと思います。

宮本(徹)委員 では、そのとおりに、子供の福祉の観点から、配置基準はしっかり引き上がっていくものだと私は受け止めさせていただきました。

 その上で、先ほども申し上げましたけれども、現状の子ども家庭総合支援拠点は、正規は一般行政職の方が少なくなく、三年程度で入れ替わるということも多いわけでございます。専門職は会計年度任用職員が多数という自治体も少なくありません。こういう点で、本当に専門性をどう確保していくのかということを考えた場合に、やはり児童福祉の専門性を持った職員が正規で配置できるような財政支援が必要ではないかと思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 市町村における子供家庭福祉分野の職員の専門性の確保は、重要な課題であると認識しています。

 現行においても、厚生労働省としては、市町村において相談援助業務を行う職員の専門性向上に向けた研修に必要な経費の補助を行うなど、自治体の取組を支援し、加えて、母子保健と児童福祉の一体的な運営に要する費用についても、今般の児童福祉法改正案の施行に先駆けて、補助率の充足を図ったところであります。

 職員の雇用形態については、現行の市町村の子ども家庭総合拠点における正規職員の割合は約六割程度と承知しております。今般の児童福祉法改正案において設置するこども家庭センターにおける職員の雇用形態についても、引き続き、各市町村における地域の実情に応じて、適切に配置いただきたいと考えています。

 いずれにしても、こども家庭センターにおける専門人材の確保は重要でありまして、これまでの研修等の支援に加え、今般の改正案において導入することとしている子供家庭福祉の認定資格についても、その積極的な取得促進に取り組むとともに、こども家庭センターの円滑な設置に向けて、財政支援も含めた必要な支援を検討して、その設置を促進してまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 今の御答弁というのは、できるだけ専門職、正規で、しっかりと配置できるようにしていきたいということでよろしいんでしょうか。

後藤国務大臣 財政支援も含めて必要な支援を行いまして、こども家庭センターにおける専門人材の確保、しっかり図れるようにしてまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 専門人材、本当にそこで長く経験も蓄積をして頑張っていただこうと思ったら、やはり正規でというのが一番目指さなきゃいけない方向だというふうに思いますので、そこはしっかりと財政支援をお願いしたいというふうに思います。

 あわせて、公務員人材増が見込めない下で、保健と福祉の双方をマネジメントできて、要支援家庭を発見して介入できる人材、これをどう確保していくのか、この点はどうお考えでしょうか。

橋本政府参考人 こども家庭センターにおきましては、児童福祉と母子保健の担当者が合同でケース会議を定期的に開催する等によりまして一体的かつ適切に情報を共有して支援につなぐということが重要でございますし、そのためには、児童福祉、母子保健共に造詣の深い統括支援員を配置をいたしまして、各々の専門職の専門性を生かしつつ、それを束ねるコーディネートを担うということとしております。

 それで、この母子保健と児童福祉の双方をマネジメントする統括支援員ですとか、あるいは、個々の支援の相談の中で支援が必要な方々を把握し支援につなぐ、そういう人材の確保に当たりましては、これまで市町村において取り組んでいただいている児童福祉及び母子保健の相談支援や指導等に関する知識、技能を有する人材を、現役のみならず、市町村勤務経験者、すなわちOBの方々なども含めて活用いただくとともに、自治体の規模に応じて柔軟な人員配置を認めること、あるいは、市町村向けの研修の充実を図ること、今般の児童福祉法改正案において導入することとしている子供家庭福祉の認定資格の積極的な取得を促進すること、こういったことなどによりまして、市町村において適切な人材が確保できるように支援してまいりたいというふうに考えております。

宮本(徹)委員 是非、人材育成の支援、更にお願いしたいと思います。

 本当にこども家庭センターが担う仕事というのは極めて大事な仕事になると思うんですけれども、先週の答弁を聞いていますと、地方分権の観点からこれは努力義務にしたんだという大臣から答弁がありましたが、私は、こうした事業というのはそもそも地域間格差があってはならないんだと思いますが、その点、大臣、いかがですか。

後藤国務大臣 今般のこども家庭センターについては、努力義務とはしたものの、地域の状況も踏まえつつ、可能な限り地域間格差がなく整備する必要があるというふうに考えます。

 こども家庭センターについて、虐待防止や家庭支援等の観点から、児童福祉と母子保健の一体的な対応が重要であることはどの自治体にも言えることでありまして、丁寧にその必要を説明し、可能な限り早く各自治体にこども家庭センターを設置いただけるよう、自治体に促してまいりたいと思います。

 このため、厚生労働省としても、こども家庭センターの円滑な設置に向けて、人材確保のための支援を行うこと等について検討しまして、地域間格差が生じないように設置を促進してまいります。

宮本(徹)委員 続きまして、児童相談所の体制についてお伺いしたいと思います。

 私も連休のはざまに都内の児童相談所を伺いました。連休のはざまですけれども、執務室はいっぱいで、皆さん仕事をされておられました。本当に大変な仕事量だということになっていると思います。今、東京ではリクルーターも配置して児童福祉司を懸命に増やす努力をしておりますけれども、まだまだ足りないということで、児童の虐待事案等の一人当たりの対応件数、そこの児童相談所では一人当たり六十から百件というふうな状況だというふうに聞きました。最大の課題は人材の確保と育成だということでございました。

 先日、児童福祉司の人数について、大臣からでしたかね、新プランの目標、三万人に一人を一年前倒しでおおむね達成した、こういう答弁があったわけですけれども、今日、資料を一ページ目と三ページ目に児童福祉司の人数、一ページ目は都道府県ごとの一人当たりの対応件数も書いておりますけれども、つけております。一人当たり件数は、東京、大阪では七十件を超すというのが直近の数でございます。

 ですから、自治体ごとに見ると全く現状は足りていない、この認識をしっかり持つ必要があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

後藤国務大臣 児童福祉司を四年間で約二千人増員すること等を目標とした新プラン、児童虐待防止対策体制総合強化プランについては、国全体での増員目標でありまして、自治体ごとの目標は定めておりません。一方で、御指摘のとおりに、特に都市部の児童相談所では人員が引き続き不足している状況であると認識をいたしております。

 また、児童福祉司については、社会福祉士や精神保健福祉士などのソーシャルワークの専門職に加え、大学で心理学や教育学等を専修した者等も任用要件に加えておりまして、一定の専門性の確保に留意しつつ、学校等で養成された幅広い人材の確保を図っております。

 厚生労働省としては、各自治体で必要とされる人材を確保できるように、自治体が行う児童福祉司等の採用活動、研修に必要な経費について補助を行っております。

 これに加えて、新プランにおいて国全体として児童福祉司等の増員を進めていることを踏まえ、厚生労働省が自ら、児童福祉司等の仕事の内容や魅力を周知するための動画作成、周知する、児童福祉司等の採用活動に資するポスターやパンフレットを作成し各自治体に活用してもらうよう送付するといった取組を行いまして、児童福祉司の仕事の魅力の発信もしているところでございます。

 今後とも、こういった取組を通じまして、各自治体の児童相談所の人材確保をしっかり支援してまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 本当に人材確保、大変苦労しておられまして、今日も大阪の児童相談所の方が、午前、参考人で見えて、この上、一時保護時の司法審査まで考えたら本当に大変な状況だということもお述べになられておりました。

 終わった後に少しお話を伺って、意見交換もしたんですけれども、やはり、今少子化で、子供が減っていく中で、児童福祉の担い手も、志望者を本当にどうやって広げていくのかというのは相当な努力が必要だ、高校生ぐらいの段階からも働きかけていく必要があるんじゃないかということもおっしゃっておられましたので、そうしたところも含めて幅広く、この児童福祉司もそうですけれども、児童福祉に関わる人々が、この分野で頑張ろうというふうに、増えていくような働きかけを努力していただきたいと思いますが、更に踏み込んでの御検討を大臣にお願いしたいと思いますが、いかがですか。

後藤国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、いろいろ施策についてはこれまでも取り組んでおりますけれども、今回こうした形で児童福祉法の改正も御提案させていただいておりますので、しっかりとした支援を含め、我々としてやれることをしっかりやっていきたいというふうに思います。

宮本(徹)委員 やれることを全力でやっていただきたいと思います。

 その上で、一時保護の司法審査についてでございますが、児童相談所の方と意見交換する中で、子供が帰りたくないという場合、なぜそうなのかなど、調査のための一時保護もしっかり認められるようにしてほしいんだという強い要望がありました。この点、いかがでしょうか。

橋本政府参考人 お尋ねの、子供が帰宅を拒否し保護を求めているケースについては、現行制度においても、そのことのみをもって機械的に一時保護を行っているわけではございません。

 その上ででございますが、一時保護の具体的な要件については、実務者を含めた作業チームにおいて今後検討していく予定でありますが、児童相談所がちゅうちょなく適切な一時保護を開始できるよう、今御指摘いただきました調査保護ということを含めまして、現行の一時保護ガイドラインや、様々なケースで行われている一時保護の実情を踏まえた、適切な規定ぶりとする予定でございます。

宮本(徹)委員 では、しっかりと適切な規定をお願いしたいというふうに思います。

 あと、これは前回通告したんですけれども、子供シェルターの弁護士の方から子供代理人という提案がございます。

 今、子供シェルターでは、子供を担当する弁護士は、児童相談所や保護者からの窓口となって、子供の意見表明を援助するにとどまらず、子供の今後の生活場所についても、児童相談所、保護者と、子供を代弁して、子供の立場から協議、交渉しているということでございました。

 そこで、義務教育終了以上の子供が、一つは、子供自身が児童相談所に対して一時保護を求めるに当たって代理人、弁護人の選任を希望した場合や、二つ目に、一時保護された子供が代理人、弁護士の選任を希望した場合について子供担当弁護士を選任する制度を設けるべきではないか、こういう提案をされているんですけれども、これはいかがでしょうか。

橋本政府参考人 一時保護の開始時の司法審査に際しまして、子供の意見については児童相談所が可能な限り疎明資料に盛り込んで裁判所に提出する形とすることを考えております。

 これに加えまして、都道府県における事業として、弁護士を含め、NPO、ソーシャルワーク専門職など、多様なバックグラウンドを持つ意見表明等支援員を養成し、意見聴取等の際に支援することを制度的に位置づけ、しっかりと取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

 今委員が御指摘されました子供担当弁護士ということにつきましては、私の理解では刑事事件における国選弁護人のようなものに近いものというふうに認識しておりますけれども、一時保護というのは刑事手続とはその趣旨、目的を異にするものでございまして、その開始時の司法審査の際に刑事手続における国選弁護人と同等の手続を講じるということについては慎重に考えるべきものというふうに考えております。

宮本(徹)委員 別に刑事手続をわざわざここで持ち出して慎重にというような話じゃないと思うんですけれども、やはり、子供の意見表明をしっかりと権利として保障しようという方向で、今回、法改正も全体としてやるわけですから、その際、現時点での専門職としては、やはり弁護士というのはしっかりと私は力をかりる、そのことによって子供は意見表明、自分の意見がしっかり通る仕組みが設けられるというのは、これは子供の福祉にとっても非常に大事なことだと思いますので、再考を求めまして、質問を終わらせていただきます。

橋本委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文でございます。今日も頑張って質問したいと思います。よろしくお願いします。

 こども家庭センターの機能について質問したいと思います。

 最近、過去に厚労省が担当した子育て支援への、具体的に言うと特別給付金、あるいは過去の臨時特別給付金等々、これは実は、情報は児童手当に用いて、なぞらえて、そういったところである例えば口座とかに振り込まれるわけでございます、自治体を経由して。

 どういう事案かといいますと、離婚していたり、あるいは離婚調停中に入って弁護士が介在しているような方は、実際に、父親と母親がいて、母親の方が子供の支援を行っているわけでございますけれども、現実的に、そういった事案じゃない、例えば別居している場合、離婚は成立していないし、離婚の正式な、弁護士さんが介在して調停に入っているような、そういう状態でない段階の方々の、例えば、母親で、実際に子育てをしていながら生計を実は同一にしている母親の方に支援が届かない事例があるということで、私も相談を受けました。

 これは、例えば今回のこども家庭センターにおけるこういった事案のいわゆる情報共有というのは、あるいは、この事案についてまずどうでしょうか。実は、このことに関しては内閣府の児童手当の担当の方にはレクを受けて回答を得ているんですけれども、厚労省的にはこの事案に関してはどうでしょうか。

橋本政府参考人 今回の経済対策に盛り込まれました低所得の子育て世帯に対する特別給付金につきましては、児童手当等の口座を活用してプッシュ型で支給を行うということを考えております。

 この場合におきまして、給付金は児童手当等の口座に振り込まれることとなりますので、例えばDVなどで妻が子供を連れて別居しているような場合ですと、児童手当の振り込み口座を妻の口座に変更する手続がなされていれば、そちらの口座の方に振り込まれるというふうなことにはできるかと思います。

仁木委員 通告していたんですけれども。そうでなくて、例えば、夫婦関係がうまくいかなくなって別居している、子供は母親の方にある。だから、そういったいわゆる口座の交換というか入替え等々もできないような夫婦関係にある場合に、例えば、夫の方の口座に入ったものを、あなたのところに入ったから返してということも言えないような形になるようなケースが意外にあるというのも私も地元徳島でも聞きましたので、そのことに関してはどうでしょうか。

 これは、実は対応している自治体もあるんですけれども。さっき児童手当のことを申し上げましたが、国としては、それは、趣旨からいうと、同居している母方の方にも、子供の方に支援が届くべきであるから、自治体の方にはそういう形ですると言いましたので、厚労省の方も、今回の例えば補正予算において五万円の子育て世帯生活支援特別給付金が予定されていますので、その辺のことも是非ともそういった同じスキームでやってもらいたいという趣旨で質問していますので、それに対する答弁をお願いします。

橋本政府参考人 今回行います給付金の具体的な制度設計は今検討中でございますけれども、令和三年度に実施しました低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金の際には、一つは、DV避難者の配偶者に二人親世帯の給付金がまだ支給されていない段階であれば、その避難者が現在居住している市町村の方に申出をすることで、DV避難者の配偶者への給付金の支給を差止めするとともに、DV避難者の方が受給できるというふうな仕組みとしておりましたので、今回もこの例を踏まえつつ検討したいと思っております。

 それから、DV避難者の方の配偶者が既に給付金を受給してしまっているような場合、そういった場合も、別途要件を満たせば一人親世帯への給付金の方を受給できるというふうな仕組みとしていたということも踏まえまして、今回の給付金につきましても、DV等により避難している方が給付金の対象となるように検討してまいりたいというふうに考えております。

仁木委員 答弁では、済みません、別居の根拠としてDVだけを挙げられておりますけれども、さっき私が申し上げたように、様々な理由でそういった別居に至っている。現実として子供さんが母方の方にいるわけですよね。つまり、生計を今、口座の方にお金が入ってくる父親と共にしていないわけですね。そういうことが分かったら、内閣府のレクにおいては、内閣府においては、児童手当に関しては、それは、その実態に基づいて母方の方にも支給されるというふうな回答を得ましたので、それは、今の答弁ですとそういうふうにちょっと聞こえないんですけれども、いかがでしょうか、もう一度。

橋本政府参考人 今回行います給付金の制度設計につきましては、今検討を始めたばかりでございますので、そういった内閣府の方での運用等も含めまして、いろいろ意見交換をした上で詰めていきたいというふうに考えております。

仁木委員 子供が母親と、いわゆる一人の親と生活しているかどうかというのは分かると思うんですよね、いろいろな方法がありますから。

 これは、今回のこども家庭センターもそうでございますけれども、私が思うのは、やはり現場に行く。現場というのは、家庭に実際行くとかいう行為ですね。それってすごくハードルが行政の方々からしたら高いかもしれません。私も実際そうでした、訪問診療とかやっていて。ただ、やはりそこに入って分かる情報っていっぱいあると思うんですね。

 そういうことで、そういった、子供とまず同居しているかどうかというのは基本中の基本でありますので、そういうことを踏まえた上での、実際、生活に困っていて、届くべき子供がいる世帯に確実にそういう行政的、公的な支援が届くような体制というのは、いわゆるお金の、税金の趣旨からいうと、やっていただきたいと思います。

 そのことを、大臣、改めてお願いします。

後藤国務大臣 今、話を局長の方からもさせていただきましたけれども、DVに限らず、内閣府の方で、例えば、私はまだ内閣府の方からDVの立証等がない場合以外にもそういうことになるという話は聞いてはおらないわけでありますけれども、しかし、DV等で妻が子供を連れて別居している場合にどういう取扱いをするか、その点につきましては内閣府ともよく調整の上、対応をしていきたいというふうに思っておりますけれども、少なくとも、先ほど申し上げたように、今回の給付金の具体的な制度設計をするに当たって、令和三年度に実施した低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金の際のいろいろな措置は、今回もこの例を踏まえつつ検討をしていきますし、後戻りするようなことはないようにしっかりやりたいと思います。

仁木委員 そこにおきまして、このこども家庭センターの機能のことに戻りますが、今回の例えば障害福祉サービス等の報酬で反映されないような形でのサポートというのは現実あるわけですし、逆に、そういったものが時間もエネルギーもかかることが多いです。

 これは具体的に言うと、例えば、先ほど訪問の話をしましたが、家庭に入ったり、あるいは、その方が、例えば深夜に電話相談があるかもしれません。それは子供との直接なことでなかったとしても、やはりケアラーである家族のそういった悩みを聞いてあげることによってよりよい子育てにつながることもあるわけでございますけれども、そういったことが果たしてこの障害福祉サービス等の報酬という形で反映されるのかというと、そうでないことも結構あります。

 今日の午前中の参考人をお呼びしての審議の中でも私はそういうことを指摘させていただいて、そこの質疑が終わった後に参考人と会話をした中で、そういう実態のことも実際大きいということを聞かされました。

 このこども家庭センターにおける、私は一つ、前も大臣に提言して、大臣もいい答弁をしていただいたんですけれども、医療機関との連携、特に、例えば子供の誕生に直結する産婦人科との関係。この中で、例えば助産師の果たす役割も多いわけでして、今回の法改正におきましても、産前産後のサポートというのも大きな文言に入っています。

 ところが、産後のケアといったときに、助産師さんが、どういった、誰の指示で、どういう形で、普通はドクターの指示で行くわけですけれども、そういうことで動いたことに対する、動いたというのは産褥後のサポートをしたときに、そういった報酬が下りるかどうかというそのスキームですね。その辺は、大臣、いかにこれから拡張していくべきであるとお考えでしょうか。

橋本政府参考人 医療機関と虐待防止のために連携していくということは大変重要なことでございます。今御指摘いただきましたような産婦人科の医療機関ですとか、あるいは小児科の医療機関ですとか、そういったところなどとの連携ということは非常に意義があるというふうに考えております。

 現在、市町村で設置されております全国の要対協のうちの約四割が構成員に小児科医を含んでおりまして、要保護者等の支援の内容等に関して情報の共有を図っているところでございますので、今回の改正案で設置することを予定しておりますこども家庭センター、こちらにおきまして要対協の事務局を担うということを想定しておりますので、このこども家庭センターにおいて、要対協での情報共有ということも含めて、そういった医療機関との連携ということもしっかり図ってまいりたいと考えております。

仁木委員 そういうことでして、産褥期には、マタニティーブルーという言葉もありますように、体力的にも疲れたり、メンタル的にも落ち込むようなことが多い中、例えば赤ちゃんが、自分の子供が三時間置きに母乳、おっぱいを求めてくる、あるいは睡眠障害もある。あるいは、場合によったら乳腺炎が起こったり、あるいは悪露がなかなか収まらないとか、そういうふうな様々な体の変化に伴って、それで、昔は大家族制で、そういったケアラー、そういった子供を、新生児を見ていけるような体制もあったかもしれませんが、今は核家族化、あるいは場合によったらシングルマザーという形で、一人で、初めての子供さんをどういう形で育てたらいいのかということを初めて経験する中で、その辺がうまくいかないと、また第二子、第三子へとつながらないということも一つ考えられると思いますので、先ほど答弁いただきましたけれども、そういった助産師さんの活用も含めて、改めてこのこども家庭センター、医療連携も併せてお願いしたいと思います。大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 小児科医、また産科も含めてでありますけれども、そうしたものとしっかり連携していくことが重要でありますし、児童福祉分野においてその専門的な知見を生かしていただくためにも、そのことは進めていく必要があるというふうに考えております。

 要対協のうち約四割は構成員に医療関係者を含んでいるわけでありまして、そうした支援の内容等に関して情報の共有を行い、今後ともしっかり連携をして進めていきたいと思います。

仁木委員 そういうことで、私がこのこども家庭センターでお願いしたい、あるいは創設された後の例えば日々のルーティンの業務については、例えば問題の起こった家庭、あるいは子供さんの事案を抱えたことに関する情報共有ですね。よく医療の現場は、介護の現場でも、申し送りとかいうことがあります。そういったICTのいわゆる情報だけでなくて、担当した人が必ず時間を取って、実態を踏まえて個々の本当に詳しい申し送りができて、そういった情報を共有した中でまた現場へとフィードバックしていくことが大切だと思います。

 そういう中で、冒頭申し上げた、障害福祉サービス等における報酬、そういったことに対しても、より考えていただきたいということがあります。

 例えば、特別支援学校の子供さんたちがある施設で暴力を振るって、それで警察沙汰になった。学校に呼ばれました。その関係者が行って、ドクターも行くわけですけれども、そういったところに例えば報酬は発生するのかという問題もあります。

 そういった、気持ちが、すごく能動的に取り組んで積極的にやっても、やはりそれは限界があるし、やはりそういうところを一生懸命やるようなスタッフ、あるいはそういう担当者がいるこども家庭センターは今後いい形になると思いますし、そういった事業所と連携しているところはいいところになるわけですけれども、なかなかそうでないような事業所もあるかもしれませんし、そういったことに対してのこども家庭センターのなすべき役割というのを、改めてこれから新設される中において取り組んでいっていただきたいと思います。

 そういう中で、具体的にさっき私が情報ということを申し上げましたけれども、この申し送り等々、あるいはそういった得た情報、今日の午前中の参考人の中でもありました、そういう匿名性を出してそういった事案を共有しながら解決していくということもあるわけでございますけれども。こういった子供の障害、児童福祉法に基づいてやる事業で得た情報の扱い、セキュリティーあるいは個人情報という概念から、何かそういう大きな理念というのはありますか。大臣にお願いしたいと思います。

後藤国務大臣 支援対象の子供や子育て世帯の抱える課題を把握し、適切な対応を考えていくためには、児童相談所や学校といった関係機関との認識共有や支援実施の際の連携が重要だと思います。

 このため、これまでも、要保護児童対策地域協議会の枠組みの下で、子育て世帯のプライバシーにも配慮しつつ、関係機関と情報共有を行いつつ、市町村が支援に当たることとしてきたところであります。

 個人のプライバシーの、個人情報保護の問題の体制もしっかりと取りながら、こうした連携を進めていけるように進めていきたいと思います。

仁木委員 これは、産婦人科との連携ということも申しましたけれども、例えば、上のお兄ちゃん、お姉ちゃん、子供さんですね、障害を持った子がいらっしゃるとか、そういう情報、それで、それでも妊娠した、あるいは妊娠しようか考えているとか、そういったことの患者さんも外来にはいらっしゃいます。そういったことも、このこども家庭センターとの連携、これはさっき大臣がおっしゃったような個人情報保護をやはり前提にしながら、されど、今私が申し上げたような具体例でございますが、重要な情報だと思うんですね。そういう情報をシェアしながら、そういった医療であり、あるいは児童福祉において反映させていくということは非常に重要だと思いますので、そのことも併せてお願いしたいと思います。

 次の質問に移ります。

 今回の児童福祉法の改正におきまして、例えば、保育士、性的ないろいろトラブル、問題を起こすような保育士の問題についてでございますけれども、特に、わいせつな行為を繰り返す保育士への資格管理の厳格化ということもうたわれております。

 これは、欧米において、例えばそういう事案、これは保育士に限らず、こういった方は、ニンフォマニアじゃないですけれども、ちょっと病的な形もあると思います。そういう中で、例えば医学的にそういった方を治療するという考え方もあります。ホルモン剤を打ったりとか、そういうことで治療するということもあるわけでございますけれども。

 我が国における保育士、これは、一旦こういうことが発覚したら、もうレッドカードで、保育士の分野からは退場という形になるわけでございますけれども、更生とか治療とかしてまた保育士に戻ってくるというふうな概念はないんでしょうか、大臣。

後藤国務大臣 今回の法案では、児童にわいせつ行為を行った保育士について、保育士資格の取消し事由とすることなど、資格管理の厳格化を行うこととしています。

 一方で、今先生から御指摘された意味が、児童にわいせつ行為を行ったことを保育士資格の欠格事由にするということのように私は今受け止めましたけれども、刑法に基づく刑罰ですら十年の経過によりまして効力が消滅することとの均衡や、小児性愛の概念が十分に明確とは言えない、適用範囲の明確さが求められる中で、法令上の欠格事由と規定することはなかなか難しいという法制上の課題があると判断して、今回の法案には欠格事由として盛り込んではおりません。

 このように、わいせつ行為を行ったことを欠格事由とはしていないものの、今回の法案では、児童へわいせつ行為を行い保育士登録を取り消された者等について、都道府県の審議会の審査を経て再登録が適当と認められる場合に限り、再登録できる仕組みの創設を行っております。児童へわいせつ行為を行い保育士登録を取り消された者等の情報が登録されたデータベースを構築し、保育士の任命又は雇用の際に活用することなどを盛り込んでおります。

 これらの措置によりまして、児童へのわいせつ行為を行った保育士が再び保育の現場でわいせつ行為を行うことがないように、適切に取り組んでまいりたいと思います。

仁木委員 それでしたら、今も答弁の中でありましたが、保育士資格を取る際に、そういうもし事案があるならば、例えばそういったことで性犯罪、幼児を巻き込んだ性犯罪で逮捕歴があるとか、犯罪歴があるとか、もしそういうのが分かった時点での、例えば保育士資格要項の欠格条項に入れるとか、そういうことも考えてもいいかなと私は提案したいと思います。これもレクを受けていますから、なかなか難しいということも伺っておりますけれども。

 いずれにしましても、健全ないわゆる子供さん、本当に、生活が苦しいから、なかなか子育てに困難を感じている方々が、本当にそれをできるだけそういうストレス、不安が取り除かれるような児童福祉法の改正を進めていかれる、皆様方と一緒に私も、こういった立場でございますけれども、取り組んでいきたいと思います。

 今日は質問の時間をいただきまして、ありがとうございました。

橋本委員長 次回は、来る十三日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会します。

    午後五時六分散会


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