衆議院

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第7号 令和4年11月9日(水曜日)

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令和四年十一月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      畦元 将吾君    石原 正敬君

      上田 英俊君    勝目  康君

      川崎ひでと君    小泉進次郎君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      高村 正大君    齋藤  健君

      塩崎 彰久君    新谷 正義君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      武部  新君    土田  慎君

      西野 太亮君    橋本  岳君

      長谷川淳二君    堀内 詔子君

      牧原 秀樹君    松本  尚君

      三谷 英弘君    保岡 宏武君

      山口  晋君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    大西 健介君

      西村智奈美君    野間  健君

      山井 和則君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      遠藤 良太君    吉田とも代君

      古屋 範子君    吉田久美子君

      田中  健君    長友 慎治君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   議員           道下 大樹君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        秋野 公造君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   品川  武君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          片岡  進君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   中村 英正君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  佐々木昌弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       宮本 直樹君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  榎本健太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         八神 敦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           川又 竹男君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大西 証史君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  橋本 泰宏君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月九日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     武部  新君

  田村 憲久君     石原 正敬君

  橋本  岳君     山口  晋君

  長谷川淳二君     西野 太亮君

  田中  健君     長友 慎治君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     田村 憲久君

  武部  新君     小林 鷹之君

  西野 太亮君     保岡 宏武君

  山口  晋君     橋本  岳君

  長友 慎治君     田中  健君

同日

 辞任         補欠選任

  保岡 宏武君     長谷川淳二君

    ―――――――――――――

十一月八日

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案(道下大樹君外十名提出、衆法第一一号)

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案(道下大樹君外十名提出、衆法第一一号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長品川武君、消費者庁政策立案総括審議官片岡進君、財務省主計局次長中村英正君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官佐々木昌弘君、大臣官房年金管理審議官宮本直樹君、医政局長榎本健太郎君、健康局長佐原康之君、医薬・生活衛生局長八神敦雄君、労働基準局長鈴木英二郎君、社会・援護局長川又竹男君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、老健局長大西証史君、保険局長伊原和人君、年金局長橋本泰宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高木宏壽君。

高木(宏)委員 おはようございます。自由民主党の高木宏壽です。

 今日は、まず、薬物行政について何点か質問をさせていただきます。

 昨年六月、大麻等の薬物対策のあり方検討会が取りまとめを公表いたしました。それを受けて、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の下に大麻規制検討小委員会が設置されて、本年九月に議論の取りまとめが公表されました。この小委員会の議論の取りまとめのポイントは、CBD、カンナビジオール、向精神作用のないカンナビノイドという大麻草特有の化合物があるという事実に基づいて、大麻由来医薬品の解禁、使用罪の創設、部位規制から成分規制へ、適切な栽培と新たな産業利用といったところがポイントだと思います。

 日本のこの取締りを含めた薬物行政は、戦後制定された麻薬及び向精神薬取締法、あへん法、大麻取締法、覚醒剤取締法、いわゆる薬物四法を基本として、加えて、麻薬特例法や薬機法、これを加えて各種施策を実施してまいりました。

 その結果、違法薬物の生涯経験率、G7各国と比較して低い状況にあります。特に大麻については、欧米で二〇%から四〇%であるのに対して、日本は一・四%と圧倒的に低い状況にございます。

 そこで、まず、戦後の薬物行政の評価、そして最近の薬物事犯の検挙状況を教えていただきたいと思います。

八神政府参考人 薬物行政の評価、それから薬物事犯等についてお尋ねをいただきました。

 まず、我が国の薬物対策、今御指摘いただきましたように、大麻取締法、あるいは覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法等、これを中心といたしまして、関係機関の連携による取締り、これを始めとした各種施策を実施をしてまいりました。その結果、今御指摘いただきましたように、違法薬物使用の生涯経験率、これは諸外国と比較して著しく低いなど、一定の成果を上げてきたと考えております。

 一方、大麻に関しましては、今申し上げたように諸外国と比較して低い水準ではありますが、近年、大麻事犯の検挙人員が増加傾向にございます。令和三年に過去最多を更新するなど、憂慮すべき状況にございます。特に、三十歳未満の検挙人員が大麻事犯全体の六五%以上を占めております。若年層での大麻乱用の拡大が懸念をされる状況でございます。

高木(宏)委員 大麻事犯の検挙人員が過去最多更新、そして若年層の検挙が多いということでありますけれども、先ほど述べた薬物四法の中で、七十五年間、ほとんど何も変わっていないのが大麻取締法であります。そこで、法律と運用に矛盾が出てきているんですね。

 例えば、法律では部位で禁止しているわけですけれども、実際に、所持、持っていたことを裁判で証明するには、禁止部位であるTHC、テトラヒドロカンナビノールという成分が入っているかどうかを調べます。法律で部位規制をしているのに、実際には成分規制による運用が行われている。

 また、国内で、CBD、先ほど申し上げた向精神性のない成分でありますけれども、このCBD製品で日本で販売されているのは、禁止されていない、成長した茎や種から作られたものであります。一方、海外製の中には、日本で禁止されている花穂や葉から作られたものがあるものの、規制成分であるTHCが入っていないことがあります。このような製品が日本に入ってきても禁止認定ができない、これも法律と運用の矛盾点であると思います。

 また、なぜこれは部位規制なのか。この法律が制定された昭和二十三年当時、大麻の有害作用がどのような物質によってもたらされるのか、これについては分からなかったわけなんですね。これも、六〇年代には大麻草からTHCやCBDといった成分が同定されて、大麻の有害作用は主にTHCが原因であることが判明しております。

 さらに、大麻取締法に使用罪がない理由として、考慮したと考えているのが麻酔いというものであると言われていますが、これは、大麻草の栽培農家が大麻草を刈る作業を行う際に大気中に大麻の成分が飛散して、それを吸引して麻酔いという症状を呈する場合を考慮したと言われております。ただ、この麻酔いも、その後、近年、作業後の尿検査を実施したところ、大麻成分代謝物は検出されなかったとともに、いわゆる麻酔いというものは確認されなかったわけです。

 こうしたことを考えると、議論の取りまとめにある、大麻規制の見直しに向けた方向性というのは、制定時と比べて科学的な根拠、エビデンスも分かってきたということで、まさにこれは時宜を得た検討、見直しであると考えております。

 そこで、確認をしておきたいんですが、大麻規制の見直しを議論する、あり方検討会や大麻規制検討小委員会、これを設置した背景と趣旨についてお伺いしたいと思います。

八神政府参考人 大麻規制の見直しの検討の背景、趣旨といったことについてのお尋ねでございました。

 まず、先ほど申し上げたように、薬物事犯の検挙人員、大麻事犯の検挙人員が過去最多を更新しておって、特に、若い、若年層の方の乱用の拡大が懸念される状況にある、これがまず背景の一つでございます。

 また、昨今、欧米諸国におきまして、大麻草から製造された医薬品、これが重度のてんかんなどの治療薬として承認をされる。国連の麻薬委員会でも大麻の医療用途への活用といったことが認められたところでございます。

 こういった社会状況の変化、国際的な動向等を踏まえまして、大麻規制の在り方を含めた薬物対策の在り方を議論するということで、令和三年に、大麻等の薬物対策のあり方検討会、これを開催いたしました。さらに、その取りまとめを踏まえまして、本年五月から、厚生科学審議会に大麻規制検討小委員会、これを開催し、医療ニーズへの対応ですとか、薬物乱用への対応、また、大麻の適切な利用の推進、適切な栽培及び管理の徹底、こうした中に、部位の規制の話であったり、あるいは使用罪についても含めて、議論を進めてきたところでございます。

高木(宏)委員 今、医薬品、大麻の医療用途の話が出ましたけれども、この小委員会の議論の取りまとめでは、大麻から製造された医薬品であっても、有効性、安全性が確認され、薬機法に基づく承認を得た医薬品については、その輸入、製造及び施用を可能にすべきと結論づけております。

 この春には、大麻由来のカンナビジオールを含む難治性てんかん治療薬、エピディオレックスの治験計画を厚労省は認められました。このエピディオレックスは、アメリカを始めとするG7諸国で既に承認をされております。

 また、麻薬単一条約で大麻はスケジュール1及びスケジュール4という規制カテゴリーに位置づけられていましたけれども、WHOの専門家会合の勧告を踏まえて、国連麻薬委員会の会合でスケジュール4のカテゴリーから外すことが可決されて、医療上の有用性が認められました。

 翻って日本では、現行法の下、国内で大麻由来の医薬品を治験をすることはできるものの、医療現場では使えないんですね。治験というのは、病気の治療に必要な薬となるものの効果と安全性を調べるものです。治験で効果と安全性が確認されても国内医療現場では使えない、これはおかしくないですか。医薬品の原料の多くを今日本は海外に依存している現状で、医薬品原料用途の栽培を可能にして、国内承認が得られた薬は使用可能にすべきであると私は考えております。

 大麻の医療用途の活用について、厚労省の見解を伺いたいと思います。

八神政府参考人 大麻の医療用途の活用につきまして御質問をいただきました。

 まず、現在、我が国におきましては、大麻から製造された医薬品、これを使用することは大麻取締法により禁止をされてございます。

 一方、治験につきましては、大麻の研究ということで、大麻研究者である医師の下に適切な計画に基づき治験を行うということは可能でございます。これを踏まえて、てんかん薬の開発が進められていると承知をしております。

 また、先ほど御指摘いただきました国際的な動向等も踏まえまして、厚生科学審議会の大麻規制検討小委員会において議論を行い、本年九月に、我が国においても、大麻から製造された医薬品について、麻薬及び向精神薬取締法の流通規制の下でその製造、輸入及び施用を可能とすべきという方向性が示されたところでございます。

 この方向性を踏まえて、制度の見直しに向けて必要な検討を進めてまいりたいと考えております。

高木(宏)委員 大麻は医療用途ではなくて産業用途も大きな可能性を秘めていると考えております。

 大麻草というのは、アサ科の一年生の植物で、中央アジア原産、古くから繊維や種子を得るための原料植物として栽培されてきました。日本でも、縄文時代から誰もが自由に栽培できる農作物。ですから、一万年以上も前からこの大麻を栽培しており、神事や祭事、衣類の原料等にも用いられてきた伝統的な文化がございます。茎から作られた繊維は格式ある神社のしめ縄にも使用されており、また、私もほぼ毎日食しておりますけれども、定番の調味料である七味唐辛子にも麻の実が入っております。

 ところが、この産業用大麻、ヘンプといいますけれども、戦後の占領政策の一環で、乱用薬物と同様に大麻取締法で規制されて、出荷や栽培に厳しい基準が設けられました。そうしたこともあり、昭和二十九年に全国で三万七千人いた栽培者、令和三年、昨年ですけれども、僅か二十七人まで激減をしております。この結果、国産大麻は高騰して、神事で質の悪い中国産大麻の使用を余儀なくされている神社もございます。大麻草から採取される繊維等の収穫量も国内需要を満たすには遠く至らず、多くは中国等からの輸入に頼っている状況であります。まさに日本の伝統文化の危機、産業の危機であると私は捉えております。神事においては麻は絶対に必要であり、産業振興の観点からも考えていく必要があると思います。

 先般、東京ビッグサイトで開催されたアグリビジネス創出フェアというのを視察してきました。そこに出展していたのは、私の地元でもあります、一般社団法人北海道ヘンプ協会がブースを出展しておりました。この北海道ヘンプ協会というのは、ヘンプを北海道の基幹産業に、目標面積は全道で二万ヘクタールというのを掲げて、有害成分であるTHCを含まない産業用大麻、ヘンプの有用性と可能性に着目して、研究や産業化に必要な法整備等の要請活動などに取り組んでおります。

 産業用大麻というのは、これは本当に、衣料品や食品、化粧品、建材、それから複合素材など、まさに今、持続可能な開発目標、SDGsが掲げられておりますけれども、その達成にも大きく貢献できる農作物であります。また、ヘンプは自動車用部品、それからボディー等にも使われており、温室効果排出ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラルに向けた産業用素材としての利用促進も考えられております。

 今、ロシアによるウクライナ侵攻等を踏まえて経済安全保障が重視されておりますけれども、こうした経済安全保障や、神事などの日本の伝統文化の保護の観点からも、大麻の産業利用を含め、健全な市場形成の基盤を構築していくべきと考えますけれども、厚労省、どう考えますか。

八神政府参考人 大麻の産業利用についてのお尋ねでございました。

 まず、大麻栽培者免許、これを取得している栽培者、しめ縄などに使うということでございますが、栽培者は、昭和二十九年以来、今御指摘いただきましたように減少を続けて、今、令和三年末時点で二十七名となっております。

 一方で、近年、諸外国では、大麻草の利用につきまして、医薬品のほか、バイオプラスチック、またカンナビジオール成分の抽出、利用など、様々活用が進んでおります。

 こうしたことを踏まえまして、先ほどの小委員会でも、現行の繊維、種子を採取する目的に加えて、新たな産業利用、医薬品原料の用途に向けた生産についても栽培目的として追加をすべきだ、また、産業用途の大麻草の栽培については、有害物質であるテトラヒドロカンナビノールの濃度が低いものを活用して、もっと栽培のしやすい合理的な管理規制、免許制度とすべきといった方向性が示されております。

 こういったことを踏まえまして、栽培者の負担、栽培農家の継承、そして今後の健全な産業利用などの展開も考慮した方向性だと思っておりますので、これらを踏まえて見直しの検討を進めてまいりたいと思っております。

高木(宏)委員 小委員会の議論の取りまとめの中には使用罪の創設も含まれておりますので、使用罪についても一点伺っておきたいと思います。

 薬物四法の中には、先ほど申し上げたように、大麻取締法には使用罪がないんですね。この使用罪がないことが安易な大麻の乱用を拡大する一因になっているのではと言われております。

 また、大麻は、より効果の強い薬物の使用に移行していくおそれが高い薬物、いわゆるゲートウェードラッグとも言われております。

 そこで、この使用罪が存在しないことと大麻の乱用との関係をどう捉えているのか、この使用罪創設についての考え方を確認しておきたいと思います。

八神政府参考人 使用罪創設に関しましてお尋ねをいただきました。

 まず、大麻の所持で検挙された方の調査結果がございます。大麻取締法におきまして使用罪が規定されていないということを知っていた割合が七割から八割になっております。多くは大麻の使用罪がないことを認識した上で使用しているということが明らかになっております。また、そのうちの二割程度は、使用罪がないことが使用へのハードルを下げているというふうに回答しております。大麻使用の契機にもつながっていると言える状況だと考えております。

 したがいまして、小委員会におきましても、大麻に使用罪が存在しないということをもって大麻を使用してもよいというメッセージと受け止められかねない、こういった誤った認識を助長して大麻使用へのハードルを下げている状況がある、若年層を中心に大麻事犯が増えている中で、大麻の使用禁止を法律上明確にすべきであるといった方向性が示されてございます。

 こうした取りまとめを踏まえまして、大麻の使用罪を含めた制度の見直しについての検討を進めてまいりたいと考えております。

高木(宏)委員 大麻の医療用用途の活用、あるいは新たな産業の創設、そうしたものと、やはり乱用防止というのは両てんびんにかけて考えていかなければならない問題だと思います。

 薬物行政についての最後になりますけれども、今回のあり方検討会、小委員会の議論の取りまとめ、これは、いい大麻と悪い大麻を分けましょうというのがポイントではないかなと思っております。

 日本では、現行法上、全て麻薬の原料植物としての大麻になっており、マリファナとヘンプの区別もついておりません。栽培免許制度自体も、誰でも取得できる仕組みではありますけれども、実際にチャレンジすると誰も取得できないというゆがみも起きております。

 そこで、今回の議論の取りまとめを受けて、法律をしっかりと見直していくべきと考えますけれども、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 今、事務当局からもお話もさせていただきましたが、本年九月に開催された大麻規制検討委員会で、大麻から製造された医薬品を適正に医療で使用できるようにすること、大麻の使用罪の設定を含む薬物乱用対策に取り組むこと、大麻草の栽培についてもその規制の合理化を図ることといった、大麻規制の見直しの基本的な方向性が取りまとめられたところでありますので、この取りまとめられた内容を今後、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会に報告し、議論をいただく予定であります。

 その議論を踏まえながら、法改正を視野に入れて必要な検討を進めていきたいと考えております。

高木(宏)委員 大麻については、がんに効くとか、健康にいいものである、あるいは大麻に有害性はないといった、大麻使用を誘引するような情報があふれている一方、大麻は「ダメ。ゼッタイ。」と、非常に偏見というか負のイメージ、誤った情報がSNS上を含めて氾濫しております。今回の、法改正等に向けて取り組んでいくということでありますけれども、マインド、意識というものは極めて重要ですので、エビデンスに基づいた正しい情報の発信、それから広報啓発活動にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 まだちょっと時間がありますので。

 先般の感染症法の改正案の審議で、参考人質疑で、国立感染研の脇田所長がハイブリッド免疫という言葉を発しておりました。感染した免疫とワクチンによる免疫で免疫がより強化すると。その言葉を聞いて、すぐに、二〇〇八年のリーマン・ショック、金融危機のときに、ハイブリッドCDOというのがございまして、シンセティックCDO、債務担保証券なんですけれども、金融危機を誘引した原因とも言われておりますサブプライムローンを一緒くたにして、原資産が何であるかも分からなくなってしまったということ。

 そこで、ちょっと金融のことについて一点だけ、大臣の決意を伺いたいと思います。

 今年の骨太の方針では、新たな資本主義に向けた重点投資分野の一つに人への投資と分配が掲げられております。そこで挙げられているのが資産所得倍増プランで、その柱となっているのがiDeCoの制度の改革です。

 日本銀行資金循環統計によりますと、二〇二一年末の家計の金融資産残高は約二千二十三兆円、金融資産の構成比で見ると、貯蓄が五四%で、株式などの投資資産は一六・五%にすぎません。

 貯蓄から投資へ向かわせることがこの資産所得倍増プランの大きな狙いであって、より豊かな老後生活を実現していくためにも、企業年金のない会社員のiDeCoの利用促進も含めて、このiDeCoの普及拡大に向けた改革にどう取り組んでいくのか、大臣の決意を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 個人型確定拠出年金でありますiDeCo、これは平成十三年に制度が創設されました。爾来、加入者の拡大、そして全ての国民年金被保険者を加入可能にするなど、累次の制度充実を行い、結果、近年では加入者が年間約四十万人のペースで増加をしております。国民の老後生活の多様なニーズに応える制度として普及、定着が進んでいるというふうには認識をしております。

 他方で、高齢期の就労が拡大をしている、働き方やライフコースが多様化している、さらに、国民の老後生活への様々なニーズに応えて老後の資産形成を促進していく必要があると考えており、企業年金のない会社員を含め、iDeCoを更に利用しやすい制度に見直しをしていくことが必要であると考えております。

 これまでの閣議決定や、新しい資本主義実現会議の下に設置された資産所得倍増分科会、与党の税制調査会等での議論も踏まえた、本年末に策定することが予定されております資産所得倍増プランにおいてiDeCo改革を盛り込むべく議論を進め、そして、国民一人一人のよりよい豊かな老後生活の実現を図っていきたいと考えております。

高木(宏)委員 よろしくお願いいたします。

 時間が参りましたので、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日はワクチンをテーマに質問してまいります。

 まず、財務省にお伺いをしたいと思っております。今日は秋野副大臣においでいただいております。よろしくお願い申し上げます。

 七日に、新型コロナウイルスワクチン接種の費用を国が全額負担していることをめぐり、財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会では見直しを求めることでおおむね一致したという報道がございました。これはNHKの報道なんですが、毎日も、全額国費負担廃止を、朝日、コロナワクチン、いずれは自己負担に、読売、ワクチン一部実費提案、全額国費見直し等々、全紙こういう報道が出ました。特に、季節性インフルエンザなどと同じように、接種希望者が費用の一部を負担する定期接種に移行するなど、見直しを図るべきとの指摘がされたということであります。

 審議会の増田分科会会長代理は終了後の記者会見で、重症化の程度や重症化率を見ながら、特例的な措置は廃止をしていく方向で検討していくべきだと述べております。また、このNHKの報道でも、これに対して、委員の間からも支援の緊急性は薄れているといった意見が出され、見直しを求めることでおおむね一致したということでございました。

 緊急性が薄れているかどうか、ましてやコロナワクチンの法的位置づけを今後どうしていくか、これは専門家による精緻な議論が必要だと思っております。

 政府は、希望する全ての対象者が年内にオミクロン株対応ワクチンの接種を受けられるように、接種促進に向けて今取り組んでいる真っ最中でありますが、こうした報道があるのはいかがなものか、この接種の加速化にブレーキをかけかねない、そのように思っております。

 今回の財政審での議論、ワクチン接種費用の一部負担について、この真偽をお伺いしたいと思います。

秋野副大臣 現在、新型コロナワクチン接種は特例臨時接種として国費負担にて実施をしておりますけれども、仮に蔓延予防上の緊急の必要性が認められない場合にはその特例は終了するということを、この点は国会でもこれまで説明がなされてきたとおりでございます。

 一昨日、七日に財政制度審議会が開かれ、社会保障につきまして幅広い議論が行われました。数多くのテーマの一つとして、新型コロナワクチンについても事務局から資料を提出しておりまして、接種費用の支援に関する今後の課題として、感染症の状況の変化等を踏まえて、重症化率やほかの感染症とのバランス等を見ながら定期接種化を検討すべき、その際には特例的な措置は廃止すべきといった指摘がございました。

 この点は今後の検討課題として議論がなされているものでありまして、足下で行われているオミクロン株対応ワクチンの接種については、特例臨時接種として全額国費で行っております。まず、希望する全ての対象者が年内にオミクロン株対応ワクチン接種を受けられるよう、接種の取組を支援していきたいと考えているところであります。

 よって、一昨日、官房長官からも、財政制度審議会の指摘は足下の接種加速の方針とは矛盾するものではないと説明をさせていただいているとおりでございます。

 国費の件にお触れになりましたので、買上げについて御答弁しておきたいと思いますけれども、今回の経済対策におきましては、来年の秋冬用のワクチンを買い上げることとしております。また、国産ワクチンの開発やワクチンの国内製造ができる体制を確立しておくことは重要な課題であると認識をしておりまして、開発が成功した場合の買上げに係る予算も既に措置済みでございます。

 いずれにしろ、ワクチン接種に係る対応は、感染症法上の位置づけ、疾病の性質、ほかの疾病とのバランス等を踏まえ検討していくものと考えてございます。

古屋(範)委員 多くのテーマの一つとしてこれが扱われた、そして、今後の検討課題であると。また、オミクロン株対応のワクチンについては、当然のことながら全額国費であるという御説明を頂戴いたしました。

 国民に今、誤ったメッセージを発することがないよう、是非丁寧な御説明をお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 副大臣、一問だけですので、ここで御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 今、副大臣の方からも、国産ワクチン等々、次に向けてのワクチンの予算についての答弁もございました。大臣に、これまでも何度もほかの委員も質問している点でございますけれども、国内ワクチンの開発についてお伺いをしてまいりたいと思っております。

 次の新たな感染症危機に備えるために、感染症法改正案、今衆議院を通過したところでございます。早期成立を図るべきと考えております。

 コロナ禍におきまして、検査体制、医療提供体制とともに不安視されていたのがワクチンの供給の遅れでありました。これも私たち、海外メーカーとの契約を早期に締結すべきだということも訴えてまいりました。また、早くからコロナワクチンの国産化も提唱してきたところでございます。今、国内では、数多くの企業、研究機関がワクチンの開発、生産体制の整備に取り組んでいるところだと思います。国として最大の支援をすべきと考えております。

 私も、昨年なんですが、山口県の光市にあります武田の工場を訪問してまいりました。本年四月十九日、副反応が少ないとも言われております組み換えたんぱくワクチン、武田で生産をしておりますけれども、ノババックスのワクチンの新規承認がされました。

 本当にこれは、二〇〇九年の新型インフルエンザの教訓を基に、国内でのワクチン製造体制を整備しなければいけないということで、国費で工場を造りました。その後、幸いにもSARS、MERSは日本に入ってこなくて、それで、ここが稼働することはなかったんですが、この度、少し改修をして、そしてコロナワクチンを製造することとなったということであります。社員たちも非常に高いモチベーション、使命を感じながら生産をしているという印象を受けました。

 国内で数多くの企業、研究機関がワクチンの開発、生産体制の整備に取り組んでおります。国産ワクチンの製造拠点の整備に向けた取組の現状、国産ワクチンの開発状況についてお伺いをいたします。

 また、あわせまして、新たな感染症が流行する事態に備えて、対応できるワクチンも早く開発をして提供できる体制を整備するということが重要であり、ワクチンの国産化、国内製造を国家戦略として進めることが急務であると思っております。

 海外メーカーに比べてどうしても資本力の弱い日本の製薬メーカーが開発をし、そして治験をし、承認を得て、そして製造、販売して、もうここに一貫した支援がなければならないと思っております。感染症に強い国づくりに向けまして、国内におけるワクチンの開発、生産体制を構築していくことが重要であると思います。

 これに関しての大臣の御決意を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 今回のコロナへの対応の中でも、やはり我が国におけるワクチン、治療薬もそうでありますけれども、全体として、研究開発、また、それを作る力が大変不足をしているということを認識をし、この間、生産設備支援を行い、委員が多分御視察されたところもそうだと思いますが、今、二社のワクチンについて、国内で製造するということが実現をされています。

 また、ワクチンの開発については、研究開発の支援、また、臨床試験の実施費用に対する補助、生産体制の整備に関する支援、さらには、ワクチン開発が成功した場合の買上げに係る予算、こういった措置を取っております。

 現在、そうしたことも背景に、複数社においては第三相の臨床試験を実施されているということで、これがいわゆる製品化につながることを期待をしているところであります。

 さらに、今回、今のは新型コロナでありますが、今後の感染症に対するワクチンの開発できる基盤をつくっていこうということで、昨年六月にワクチン開発・生産体制強化戦略が閣議決定をされました。これに基づいて、AMEDにおいて、先進的研究開発戦略センター、SCARDAの設置、また、経産省においては、デュアルユースのワクチン製造拠点の決定などを行ったところでございます。また、厚労省においては、臨床研究中核病院の連携により治験のデータを効率的に収集する基盤の構築等も併せ行っております。

 こうした様々な施策をしっかりと進めていくことで、国内でワクチンを開発、生産できる体制、この確立に向けて更に努力をしていきたいと考えております。

古屋(範)委員 コロナの変異株、また将来の感染症に備えて、質の高い国産ワクチンの製造、また海外ワクチン国内製造というものも、長期的視野で積極的に是非取り組んでいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 次に、足下、オミクロン株対応のワクチンについてお伺いをしてまいります。

 新型コロナウイルスワクチンの接種間隔期間が、三か月以上ということで短縮をされました。このオミクロン株に対応したワクチン二種、BA・1型、それからBA・4、5型、どちらを接種すればいいのか。流行しているのはBA・5なのに、なぜBA・1でもよいのか。国民や自治体で少し混乱があるかというふうに思います。

 厚労省では、二種類どちらも違いがないということを強調されています。はっきりと方針を示す必要があるのではないか。また、違いがないという根拠についてお伺いをしたいと思います。

 先日、感染症法の参考人質疑の中で、国立国際医療センターの大曲国際感染症センター長に第八波への備えということを伺いました。それに対しては、二つの政策が必要と。一つは、やはりワクチン接種なんですね。このワクチン接種を加速化していく、これが第八波への備えだということをおっしゃっていました。

 今、新型コロナ感染者は微増の状態にあるかと思いますが、新型コロナの行方は本当に予断を許さない状況にあります。新規感染者は全国的に増えているようで、第八波の入口に入りつつあるのかという懸念もあります。年内に再び流行が来る可能性、また、年明けに大規模な流行が来る可能性というものを専門家が指摘をしております。やっと戻りつつある社会経済活動。何としても、景気回復のために、これを戻してはならないというふうに思います。これにはワクチン接種が欠かせない。政府は国民に丁寧に理解を求めて、協力を得なければならないと思います。

 ワクチン接種促進について、これは局長にお願いをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 オミクロン株対応ワクチンにつきましては、BA・1かBA・4、5かにかかわらず、現在のオミクロン株が流行している状況では、どちらのワクチンであっても、オミクロン株成分を含むことで従来株ワクチンを上回る重症化予防効果があること、また、新しいワクチンはどちらも二価のワクチンでありまして、今後の変異株に対しても、従来型ワクチンよりもより効果が高いことが期待されます。また、安全性につきましても、現時点で重大な懸念は認められない旨が関係審議会で報告をされているところでございます。

 このため、接種対象者には、種類を問わず、その時点で接種可能なオミクロン株対応ワクチンの接種をなるべく早期に受けていただきたいと考えております。

 また、委員御指摘のとおり、ワクチンの接種の促進は重要であります。こうしたワクチンの有効性や安全性に関する情報につきましては、リーフレットやQアンドAを作成し、厚生労働省のホームページで公表することやSNSで発信するなど、様々な媒体を活用しながら、国民の皆様への周知に取り組んでいるところです。

 引き続き、こうした様々な媒体を活用しながら、国民の皆様に丁寧に周知し、できるだけ多くの方が接種を受けていただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 どちらも重症化予防に効果があるということでございますので、またしっかり、その辺、していらっしゃるとは思うんですが、更に広報、周知をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、ワクチン定期接種の質問をしたいと思います。

 私も、二〇〇三年初当選なんですが、そのときから、ワクチンで防げる病気から国民の命を守る、これに取り組んできました。

 当時はまだ、Hibワクチン、小児用の肺炎球菌ワクチンも定期接種化されておらず、子供たちも細菌性髄膜炎の危機にさらされているというような状況でした。一つ一つ定期接種化を求めながら、その後、水ぼうそうとか、直近ではロタウイルスのワクチンなどが定期接種化となりました。都度都度、交付税措置の裏打ちが必要ですので、総務大臣にも要請をしながら、定期接種化を進めてきました。当時、二十年あるいはそれ以上ワクチンギャップがあると言われておりましたけれども、大分それは縮まってきたのかなというふうに思っております。しかし、まだ課題がございます。

 まず、おたふく風邪ワクチンについてお伺いしたいと思います。

 コロナ以外にも、子供を中心に注意が必要なのがこのおたふく風邪なんですね。四年から六年の間隔で流行を繰り返している。おたふく風邪は子供を中心に流行しまして、発熱、また耳の下の腫れ、また、このウイルス感染症で千人に一人が難聴になるという報告があります。先日も、おたふくで難聴になられた方のお話を聞きましたけれども、聞こえないわけではないんだけれども必要な情報を聞き分けられない、それを絵にも描いてくださったんですけれども、日常生活に非常に大きな影響があるということであります。

 このワクチン接種は、現在、任意接種となっておりますので、対象者の四割程度しか受けておりません。このおたふく風邪による難聴というのは、治療が難しいそうであります。日常生活に非常に大きな支障を来してしまうということで、このリスクを考えますと、誰でも公費で受けられる定期接種化の検討を急ぐべきではないかと思っております。

 これにつきまして、伊佐副大臣にお伺いしたいと思います。

伊佐副大臣 先ほど、おたふく風邪に罹患されて、後遺症で難聴になった若い女性のお話、副大臣室にも来ていただいて、直接お話を聞かせていただきました。これは厚労省としても、こういうことを減らしていきたい、また、なくしていきたいというふうに強く思っております。

 現在、このおたふく風邪ワクチンにつきましては、二種類が薬事承認をされていると。定期接種に位置づけるかどうかについては、これまでも審議会において議論していただいておりまして、医学的、科学的知見等について今整理を進めているというところでございます。

 この審議会の議論の中では、接種後の、ワクチンを接種した後の副反応で無菌性髄膜炎というものがありますが、この発生頻度が非常にばらついている、つまりデータが不十分だというような指摘が今なされておりまして、しっかりとしたデータを集めていく必要がございます。

 そこで、厚労省としては、今、小児科学会にも協力をしていただいておりますが、更に呼びかけをさせていただいて、参加していただく小児科医の皆さんが増えるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 もう本当に検討が長過ぎて、いつになったら結論が出るのかと思いますけれども、しっかりと症例を集めて、定期接種化への議論を加速化してほしいと思います。

 次に、帯状疱疹ワクチンについてお伺いしてまいります。

 この帯状疱疹ワクチン。コロナ禍で急増していると言われております。それは、免疫力が下がっているとか、コロナ感染で免疫細胞の働きがダメージを受けているとか、新型コロナワクチンによって一時的に感染したときに似た状況が生じるとか、いろいろ原因は言われておりますけれども。

 この帯状疱疹、私の学生時代からの友人は、持病があったんですけれども、帯状疱疹にかかって、あっという間に意識不明になって、亡くなられました。これはもう随分前のことなんですが、それ以来、その追悼の意味もあり、帯状疱疹ワクチンに取り組んでおります。

 非常にすごい痛みがあるそうなんですが、虫に刺されたものなのか、あるいはじんま疹なのか、帯状疱疹だと気がつかない方もいらっしゃいます。ですので、早期に医療機関で診察を受けることが大事なんですけれども、それに至らない、まだ認知度が低いということもございます。

 発症予防率を見ると、インフルエンザ、肺炎球菌ワクチンが六〇%で、この帯状疱疹ワクチンは九七%と高いんですね。このように予防率の高い帯状疱疹ワクチンですけれども、接種率は、最も高い六十五歳でも四割程度にとどまっております。

 そこで、現在、厚労省でも、この帯状疱疹ワクチンの定期接種化について議論が進められていると承知をしております。帯状疱疹の予防、重症化、後遺症を防ぐためにも有効なこの帯状疱疹ワクチンの定期接種化、これを一刻も早く実現すべきと考えます。

 この見解をお伺いしたいと思います。伊佐副大臣によろしくお願いいたします。

伊佐副大臣 委員御指摘のように、この帯状疱疹につきましては、コロナ禍、またコロナ前からも増えているというふうに認識をしております。

 現在、この帯状疱疹ワクチンにつきましては、二種類が薬事承認をされております。定期接種化に位置づけるかどうかについては、これまでも審議会において議論をさせていただいておりますが、その議論の中では、例えば、期待される持続効果がどれぐらいか。十年もつのか、それ以上もつのか。あるいは、費用対効果。こうした評価を踏まえて、どの年齢層にどのタイミングで接種するべきか。例えば、六十歳で打った後、七十歳でもう一回打っていただいて、その次、十年後、八十歳か、それとも六十歳に一回打てばいいのかというところについて、今検討していく必要があるというふうに思っております。

 なお、現在、この帯状疱疹ワクチンの接種に関しては、自治体が独自に補助制度を設けているところもございまして、定期接種化ではありませんので救済制度の対象にはならないんですが、ただ、例えば、今回の補正予算で臨時交付金というものがございますが、この対象にも措置されているというふうに伺っております。

 こうした論点について審議会でしっかりと、先ほど一刻も早くという御意見もいただきましたので、しっかりと議論を前に進めてまいりたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございます。

 副大臣がおっしゃいましたように、幾つかの自治体では既にこの助成を始めているところもございます。しかし、助成というのは大体一回だけなんですね、三千円から五千円程度の助成を行っているというところが多いんですけれども。そうすると、この八年後、再び接種が必要になった際の助成というのはほとんどがないというような状況でもございます。

 地方議員さんたちも、やはり高齢者のためにここの助成をしたいという動きをしている自治体もございます。国としてもそれに呼応して、先ほどおっしゃったように、有効性とか費用対効果、またその対象、こういうことを加速化をさせて調査をさせて、定期接種に向けての議論を加速化してほしいと思っております。

 最後に、これは、もう時間ですので、指摘にとどめておきたいと思います。

 今、予防接種基本計画が、予防接種施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、中長期的なビジョンを示すものとして平成二十五年に策定をされ、今検討中だというふうに伺っております。五年の見直しということなので、もう既に七年たっているということで、コロナで少し議論がストップしていたものと思われます。この総合的な計画を推進する基本的な方向とか、国、地方の、また関係者の役割分担とか、そういうものをしっかりとこの計画に位置づけてほしいと思っております。

 この三年近くに及ぶコロナの知見等も踏まえまして、充実をした基本計画策定への議論を進めていただくようお願いをして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 立憲民主党の大西健介です。

 今日は、一般質疑で、三十五分の時間をいただきました。

 そこで、一つは、少子化に関して、保育について質問をしたいというふうに思っています。それからもう一つは、現代は少子化社会でありますけれども、同時に、年間にたくさんの方が亡くなっていく多死化社会とも言えるというふうに思いますので、多死化の課題についても、後半、聞いていきたいというふうに思います。

 では、まず保育の問題について質問をしていきたいと思うんですけれども、今日は、基本的な考え方を聞いていきたいと思いますので、大臣には是非、御自身のお言葉で、率直にお考えを聞かせていただければなというふうに思います。

 まず、配付資料の一ページ目を御覧いただきたいんですけれども、これは保育士の配置基準の変遷を表にしたものであります。これを見ていただきますと、例えば一歳児、二歳児、これは五十年以上、配置基準が変わっていない。私は五十一歳なんですけれども、私が生まれた頃から変わっていないということであります。それから四歳児、五歳児に至っては、基準制定の一九四八年以来、七十年以上変わっていないということなんですね。

 一九四八年というのがどういう時代だったかというと、これは戦後の第一次のベビーブームです。当時の出生数は約二百六十八万人、そして、昨年の出生数は八十一万人。もう全然世の中が違うわけです。七十年、当たり前ですけれども、全く世の中が変わってしまっている。なのに、保育士の配置基準はずっと、五十年以上、七十年以上変わらない。このことは、ある種、異常なことだと私は思うんですけれども、大臣の率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。

加藤国務大臣 今、委員から、表もお示しをいただきました。

 見ていると、一時的に配置基準がよりきつくなった時期もあったように私、見させていただきましたけれども、いずれにしても、それぞれ、時期時期に応じて配置基準については見直しがなされているところでありますが、御指摘のように、一、二歳児は昭和四十二年以降、四、五歳児は昭和二十三年以降変わっていないというのはそのとおりだと思っております。

 児童の身体的、精神的、社会的な発達、必要な保育の水準を確保する観点から、常にその改善は課題であると思っておりますし、御承知のように、平成二十七年度は、三歳児に対する保育士の配置を二十対一から十五対一に改善をする。あるいは、この間、改善ではありませんが、保育士の負担軽減を進めさせていただいているところでありますし、さらに、消費税以外で財源を確保することによって対処するとされている、いわゆる〇・三兆円の質の向上の中には、一歳児や四歳、五歳児に対する保育士の配置改善が含まれている。

 しかしながら、今まで実施ができていないということ、このことは強く認識をしているところでありますので、引き続き、財源をしっかり確保する努力をし、そうしたものの実現に向けて努力をしていきたいと考えております。

大西(健)委員 最初に申し上げましたように、答弁書を読むんじゃなくて、大臣の率直な受け止め、まさにこれを見て、五十年変わっていない、七十年変わっていない、七十年前と日本の今の社会、子供を取り巻く状況は全く違うわけですから、やはり七十年一回も変わっていないということが、率直に言ってこれは普通ですかということについて大臣の受け止めを私は聞いているので。こういうことを順番に聞いていきますので、よろしくお願いします。

 では、今現場で実際に働いている保育士さんたちが、保育士一人が受け持つ子供の人数として何人が適切と考えているのか。これについて、先ほどの資料の今度は裏面を見ていただきたいんですけれども、これは、愛知県の保育士や保護者が立ち上げた、子どもたちにもう一人保育士を!実行委員会が行ったアンケート調査の結果です。

 例えば、左側の一歳児だと、国の配置基準は保育士一人に子供六人ですけれども、一番多い回答、約半数の方が三人と答えています。六人に一人じゃなくて、三人に一人。それから、四歳児、五歳児の国の配置基準は、今度は右側の下二つですけれども、見ていただくと、これは保育士一人に対して子供三十人ですけれども、一番多い回答は、四歳児では十五人、五歳児では二十人、これが一番多くなっている。

 つまり、これが現場の受け止めなんです。それと実際の配置基準、これが大きく乖離していること、これをまた大臣の受け止めをお聞きしたいというふうに思います。

加藤国務大臣 今の御指摘以外にも、私どもでも、令和元年度幼稚園・保育園・認定こども園等の経営実態調査等もさせていただく中で、公定価格上の配置と実際の配置、実際の配置の方がより手厚くなされているということ。また、そうしたことを背景に、保育団体などからも、実態に即した配置基準とすべきであるというような御要望をいただいていることは十分承知をしているところでございます。

 それに対して、先ほど申し上げたように、三歳児に対する保育士の配置改善などを行っていますが、まだ一歳児、四歳児、五歳児、いわば宿題として我々は負っているわけでありますので、その宿題を果たすべく、しっかり財源も確保し、見つけて、その実現が図られるよう努力をしていきたいというふうに思っています。

大西(健)委員 繰り返しになりますけれども、私が最初に聞いたのは、五十年、七十年変わっていない、これは変ですよねという話ですよね。

 それから、今の話は、現場の保育士さんとか保護者の皆さんがこれぐらいがいいんじゃないかと思っていることと今の実際の厚労省が定めている配置基準にこれだけ大きな開きがある、まさに現場の感覚と国が定めている基準が全く違っているということをまず大臣にお認めいただきたいんです。

 それから、例えば、具体的に聞いていきたいと思いますけれども、一歳児、二歳児は、国の基準では六対一です。じゃ、これで例えば災害時に子供の安全を守ることができるんでしょうかということを聞きたいんです。

 例えば、アンケートは、自由記載の部分があって、次のような回答がありました。

 子供の発達には個人差があり、一歳児でも歩けない子供がいる中、六対一の配置では全く十分でない。おんぶ、だっこ、両手をつないで守れるのは四人まで。残り二人を声かけで避難などは到底無理。

 なるほどなというふうに私は思いましたけれども、大臣は、一歳児、二歳児、六人に保育士一人という配置で、例えば地震等の災害が起きた場合、火事が起きた場合、これは安全を守ることができるとお思いになりますでしょうか。

加藤国務大臣 もちろん、災害時の対応、災害への備え、これは日頃からしっかり対応していくことが大事であります。

 定期的な避難訓練等による災害発生時の対応体制の整備と避難への備え、また、地域の関係機関と連携して必要な協力が得られるよう努めることなどの対応をお示しをしているところでございますので、そうした対応に限らず、また今般、保育所に係る、バス運行に係る事故もございました。保育所の安全対策としては、先般成立した児童福祉法の一部改正法を踏まえた設備運営基準の改正で、保育所等に対し、児童の安全の確保に関する計画の策定を義務づけているところでありますので、保育所においては、安全計画、そしてそれに沿った対応をお願いできるように、我々としても努力をしていきたいというふうに思っております。

大西(健)委員 全く私、かみ合っていないと思うんですよ。要は、計画を立てようが、おんぶ、だっこして、両手つないで四人、これしか無理なんです。だから、六人に一人では、火事とか地震とかいつ起きるか分からないんですから、逃げられないですよ。だから、これじゃ安全を守れないですよねということを言っているんです。

 それから、じゃ、災害時に限らず、アンケートではこういう回答もありました。

 三歳児十八人を一人で担任していたときに、まだお漏らしをする子も多い中、便の始末にかかっている間に、部屋にいる子がけんかでかみつきがあったり、椅子に上って大人の事務戸棚からセロテープを取ろうとしてテープカッターを落としてしまい、テープカッターの刃の部分で隣にいた子の頭を切ってしまい、三針縫うけがをさせてしまったことがあります。

 これは場面が思い浮かぶようなリアルなエピソードですけれども、三歳児は今二十対一の配置基準です。ですから、こういう配置基準だと、今言ったように、もう目が届かなくて、こういう事故が起こるというのがもう避けられないというふうに私は思うんですけれども、これは大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 保育士の皆さん方は、特にコロナの感染もあり、子供の保育における安全という意味においても大変な御苦労をいただいているというふうに承知をしております。

 そうした保育の現場の負担軽減という意味において、今委員からお話があった配置基準あるいは加算ということ、これをどう進めていくのか、それだけではなくて、保育士の業務負担の軽減を図ってきたわけであります。保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用、また、清掃や遊具の消毒、園外活動時の見守り等といった保育の周辺業務を行う保育支援者の雇い上げに必要な費用、あるいは、業務の効率化に資するよう、登園管理システムの導入によるICT化の推進、こうした補助も行っているところでございます。

 こうしたことも併せて、より現場における負担の軽減、そして保育士の皆さんが子供さんと直接しっかりと向き合っていただける、こうした状況をつくっていきたいと思っております。

大西(健)委員 またかみ合っていないですけれども、災害のときは六対一じゃ無理ですよね、例えば三歳児、これは二十対一じゃ、もう三歳なんて何するか分からない中で、これは安全なんか確保できないですよねということを言っているんですね。

 まず、じゃ、子供たちの安全が最優先であるのは言うまでもありませんけれども、子供の発達という点においても、ぎりぎりの人数でやっている現状というのは、私はこれは問題だと思っています。

 また再びアンケートに戻りますけれども、アンケートでは、国の保育士配置基準が改善されればどのようなよい点があると思いますかという質問に対して、次のような回答がありました。

 子供一人一人にじっくり向き合える。子供たちの主体性を大切にし、いろんなことに挑戦したり、なかなかできない遊び、大人が足りなくて危ないから使わせられないものとか遊具とかもたっぷり保障できる。事務負担も分担してサービス残業も減る。一人で請け負う負担も減るから、メンタル的なしんどさも解消され、保育士辞める人も減る。保育士続けやすい環境ができる。こういう意見がありました。

 ほかには、子供の声に丁寧に応えられる。楽しいことをいっぱい共感してあげられる。負担が減れば保育者に余裕ができ、辞める保育者も減り、保育の積み重ねが充実、深まる。余裕が増えれば保護者対応も丁寧にでき、子育て支援が充実し、少子化問題の解決にも進んでいく。

 こうした現場の声を聞けば、子供の発達だけでなくて、子供と向き合いたい、だから保育士になっているんです。ところが、それができないこのもどかしさ、そして消耗していって辞めていく。こういう保育士の退職防止にもつながる。ひいては、少子化対策のためにもなる。

 私は、この現在の配置基準を見直すべきだ、子供の発達、あるいは保育士の退職防止のためにもこれは必要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げているように、今の基準を保持していくべきだということを申し上げているのではなくて、既に、一歳、そして四歳、五歳については見直していこうという方向はもう既に確定をして、決めているわけでありますから、それにのっとって我々はまず対応していく必要があるというふうに思いますし、また、保育の現場から、先ほど申し上げたように、様々な御要望もいただいているところでありますので、トータルとしても、保育士の皆さん方の負担の軽減、これをしっかり図っていく必要がある。

 ただ、それを進めるに当たって、これまでも議論があったように、安定的な財源を確保していかなければそれができないわけでありますから、その安定的な財源をどういうふうにして確保していくのか、このことも含めて議論を深めさせていただきたいと思います。

大西(健)委員 今日、だから、私がやっているのは、さっき言ったように、大臣も今のままでいいと思っていないと。ところが、五十年、七十年、動かしていないんですよ。そして、今言ったように、安全はこのままでは守れませんよね。子供の発達のために、このままでいいと思いませんよね。でも、お金がないからできないと言って、五十年、七十年、やってこなかったわけですよ。

 決まって、この話をすると、先ほど来答弁に出てくる、三歳児の配置基準の改善については税と社会保障一体改革で消費税財源を使って加算でやりましたと。ところが、一歳児や四、五歳児の保育士配置基準の改善は、消費税以外の財源を確保すると言われている〇・三兆円の質の改善の部分でやるので、まだできません、こういう答弁なんです。

 しかし、今、議論すれば、必要性はもう明確なんです。お金がないからできないと言っているけれども、五十年、七十年、やってこなくて、これから本当にできるんですか。私は、必要だということが分かっているんだったら、これはもうやるしかないと思うんですよ。

 マイナポイントに費やした予算は二兆円ですよ。それから、政府が今導入を検討していると言われる米国製の巡航ミサイル・トマホーク、一発一億円から二億円。千五百発装備すれば、その値段になるわけですよ。

 今後、子供の数は減っていくわけですよね。減っていって、保育士の今の数を維持していけば、手厚い配置というのもこれは可能になってくると思うんです。

 私は、そもそも、幼児教育は社会的な投資効果が高いから、これはしっかりやらなきゃいけないという話であったのに、それがいつの間にか無償化にすり替わって、そして保育の質の問題が置き去りになっている、これが私は大問題だと思うんです。

 もう財源の確保を言い訳にしないで、必要なことはやる。こども家庭庁もできる、こういうタイミングですから、今まさにそのタイミングが私は来ているんじゃないかと思うんですけれども、加藤大臣、是非御決断いただきたいと思います。

加藤国務大臣 やるべきことに関しては、そんなに意見の違いがないんだろうというふうに思います。ただ、委員がおっしゃるように、これが要らない、これが要る、そういった歳出の削減の議論、それもあるんだろうと思います。

 ただ、いずれにしても、当初、税と社会保障一体改革のときも議論しましたけれども、やはり、子供施策を進めるに当たっては安定的な財源が要りますよと。そして、一部は消費税引上げ分を使いましょうと。しかし、そこで行かない部分についても、財源をつくる努力をしながら、それを実現していきましょうと。これはしっかり我々は受け止めていかなきゃいけないと思いますし、また、やはり、ある意味では、財源の議論もしっかりしながらやっていくということ。また、それだけ必要であれば、また財源の確保の必要性ということも理解がいただけるのではないかなというふうに思います。その辺の議論をしっかり深めさせていただきたいと思います。

大西(健)委員 でも、こども家庭庁をつくって、子供予算、倍増するんでしょう。それから、防衛予算も倍増するんでしょう。じゃ、その財源の話、どこでやっているんでしょうか。是非、五十年、七十年、金がないからとやってこなかったんですから、もうやるタイミングだと思います。是非お願いしたいと思います。

 それでは、今日のもう一つのテーマ、多死社会の問題に移りたいと思いますけれども、札幌市で納骨堂を経営する宗教法人が実質的に経営破綻して、代表者が行方不明になっています。堂内には約千体の遺骨が収められていますけれども、十月下旬以降は施錠されて無人の状態になっていて、遺骨の引取りもできない事態になっています。建物は、債権者の葬儀会社が昨年差し押さえて、本年の七月に強制競売をされて、落札した不動産会社が所有者になっていますけれども、跡地に新築マンションを建てる予定だということなんですね。

 札幌市は閉鎖される直前に立入調査を実施していますけれども、墓地埋葬法の規定で義務づけられている財産目録などの財務資料一式が見当たらなかったそうです。

 また、これはかなり悪質だと思うんですけれども、強制競売が行われた七月以降も新規の納骨壇販売を継続していたということで、九月には文書で札幌市は販売しないように要請したということであります。

 納骨堂を経営するには都道府県の知事や指定都市等の長の許可が必要で、許可基準については厚労省が墓地経営・管理の指針等についてというのを定めています。その中では、墓地には永続性、非営利性が求められており、この理念に沿った安定的な経営が利用者の最も切実な要望であろうというふうなことが書かれていて、そして、具体的には、安定的な経営を行うに足りる十分な基本財産を有していること、中長期的収支見込みが適切で、将来にわたって経営管理が可能な計画を立てていることなどの基準が示されています。

 ところが、札幌市が立入調査したのは十月二十一日です。さっき申し上げたように施錠されて無人になったのが二十四日なので、直前なんですね。でも、その前にもう競売とかされているわけですよ。

 私はまず厚労省にお聞きしたいのは、札幌市による許可及びその後の経営管理が適切だったと厚労省は考えているのかどうなのか。

 それから、加えて、実際には、一旦許可されてしまうと、その後の経営管理のチェックというのは許可時に比べるとどうしても不十分にならざるを得ないと思います。私、今後の多死社会の中で今後も今回と同じようなことが今のままでは起きることが避けられないんじゃないかと思うんですけれども、指針の見直しであったりとか、契約者保護のための新しい仕組みづくりを検討するつもりがないのかについて厚労省にお聞きをしたいと思います。

佐々木政府参考人 二点、お答えいたします。

 まず、札幌市の事例についてです。

 委員御指摘の、墓地、埋葬等に関する法律、いわゆる墓埋法では、納骨堂の経営の許可等については、その権限が自治体の長にあり、よって、基本的には自治事務として自治体において適切に取り組んでいただく、これがまず基本でございます。

 御指摘の札幌市の納骨堂については、実質的に経営が破綻し、遺骨の引取りにも支障が生じている、これは私どもも当然ながら承知しております。

 札幌市の取組、先ほど委員御紹介、御指摘いただいた内容に加えて、先週十一月一日にも納骨堂の一部使用を禁止する命令書の送付を行うなど、こういった対応を今後も引き続き行っているものと承知しております。

 次に、厚労省が更に対応すべきではないかという点についてお答えいたします。

 厚生労働省といたしましては、これは札幌市のケースではありますが、ほかの自治体にもこういうことがないように、今般の事案を踏まえ、先月十月二十八日に、全国の自治体に対して、納骨堂については、先ほど御指摘いただいた永続性等の観点から安定した経営が求められている、そのために、これも先ほど御紹介いただいた平成十二年に策定した墓地経営・管理の指針の趣旨を勘案して適切な納骨堂等の経営管理が行われるよう、指導監督の徹底を改めて依頼しました。

 この指針ですけれども、先ほど委員に御指摘いただいた内容、御紹介いただいた内容に加えて、まず基本的事項として、経営者には利用者を尊重した高い倫理性が求められていること。さらには、安定的な経営管理計画のところで、これは先ほど二つ御紹介いただきました。加えて、当初から過度な負債を抱えていないこと、中長期的需要見込みが十分行われていること、他の事業を行っている場合には経理、会計を区分するようにすること。さらに、消費者保護という点では、墓地使用契約という項目を設けて、契約解除の場合にも使用者の保護が図られていること。こういった点が盛り込まれております。

 こうした内容が盛り込まれておりますので、厚生労働省といたしましては、今後、同様の事案が発生しないよう、まずはこの指針をきっちりと徹底していくということを地方自治体と連携して対応してまいりたいと考えております。

大西(健)委員 私は、よく札幌市の報告も聞いていただいて、検証した方がいいと思います。

 というのは、さっき言ったように、二十四日の日にはもう施錠されて入れなくなっている。でも、札幌市が立入りしたのは二十一日ですから。でも、その前の年にもう破綻していて、強制競売とかあるわけですから、ちょっと対応が私は遅いんじゃないかと思います。

 まずは今のこの仕組みを徹底するということはそのとおりですけれども、やはりこれは今後同じような事例がこのままでは私は起こると思いますので、やはりよく今回の事例を検証して、手を打たなきゃいけなければ手を打つべきだと思います。

 続けて、火葬場について質問したいと思います。

 全国の大半の火葬場は公営だそうです。ただ、東京二十三区では、九か所火葬場があるんですけれども、公営は二か所で、七か所は民間の施設になっています。そして、その七か所のうちの六か所を東京博善という会社が運営をしているんですけれども、この東京博善は二〇二〇年の三月に広済堂ホールディングスという会社の完全子会社になっていますけれども、この広済堂ホールディングスは中国資本が大株主になっているそうです。

 さらに、この広済堂ホールディングスは、大手葬儀社と手を組んで、グランセレモ東京という合弁会社を設立して葬儀事業にも乗り出されている。火葬場と葬儀事業を一緒にやっているわけですね。同時に、そのタイミングで東京博善は、葬儀事業者向けに、東京博善の斎場を他の葬儀事業者がウェブの宣伝に掲載することを禁じる内容のガイドラインを出したということなんですけれども、大体、お亡くなりになると、遺族はネットで検索して葬儀事業者を探すんですけれども、そのときに、自宅に近い斎場の取扱いがあるかどうかで判断するというのが多いようです。ですから、その情報が掲載できないということになると、これは葬儀事業者にとっては大変痛いということなんです。

 また、今回、東京二十三区の六か所の火葬場については、突然の値上げが行われて葬儀事業者は戸惑っている、こういうお話もあります。

 火葬というのは、これはさっきの納骨堂も同じですけれども、公共性の高い事業なのにもかかわらず、これは民間に任されていて、しかも、これはストレートに悪いというわけではないですけれども、外国資本に買収をされるという事態が起きていることを、まずこれは大臣、どういうふうに思われますか。

 それから、火葬場の計画、運営は極めて高い公共性が求められていることから、厚労省は通達等によって、運営の主体は地方公共団体が望ましい、やむを得ない場合でも宗教法人か公益法人とされているはずですけれども、これはこのままでいいというふうにお思いになりますでしょうか。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、仕組みですけれども、火葬場の許可は地方自治体が自治事務として実施をしております。

 火葬場の経営主体については、今委員が御指摘あった昭和四十三年の厚生省の通知で、永続性や非営利性の観点から、原則として地方自治体、これが難しい場合であっても宗教法人や公益法人等に限るとされてきたわけであります。しかし、この通知の発出前から設立されている火葬場など、一部の火葬場はこれは民間企業によって経営されているところでございまして、全国、火葬場数は約一千四百件、うち株式会社によるものは十三件というふうに承知をしておりますが、こうした中には、今お話があった外国資本が株式を取得することもあり得るというふうに承知をしております。

 経営主体が外国資本であるかどうかにかかわらず、墓地、埋葬等に関する法律に基づき、火葬場の運営が、国民の宗教的感情に適合し、かつ公衆衛生等の公共の福祉の見地から、支障なく行われることが重要であります。そのような観点から、火葬場の運営が適切に行われない場合は、指導等を行う主体である地方自治体と連携して必要な対応を取っていきたいと考えています。

大西(健)委員 私が今日なぜ多死社会と言っているかというと、昭和四十三年の頃と今とは全然世の中が変わっていますよね、ですから、ビルの中に納骨堂があるなんというのも、多分最近の、ここ最近というか現代の動きなんです。火葬場も、今、首都圏では、火葬場が足りないから、火葬してもらえないから葬儀がすぐに挙げられない、通夜、葬儀が挙げられないみたいな事態も起きているんです。そういう中で、やはり、この今の時代に合わせて、この多死社会において、今言っているような問題というのをもう一回やはりいろいろ検討していく必要が私はあるんじゃないかというのが基本的な課題意識です。

 じゃ、今のこの二十三区内の火葬場の大半を運営する企業が、グループ企業以外の葬儀事業者に斎場をウェブサイトの宣伝に掲載することを禁じたり、一方的な料金の値上げを行うということは、公正かつ自由な競争を妨げるものとして独禁法上の問題が生じないかについて、今日、公取に来てもらっていますので、公取の方から御答弁いただきたい。

品川政府参考人 お答えを申し上げます。

 特定の個別の問題についてのお答えは差し控えたいと思いますけれども、一般論で申し上げさせていただきますと、事業者がどのような条件で取引をするかということにつきましては、基本的には取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものでございます。ですので、事業者がグループ会社を優遇したりでありますとか取引料金の値上げを行うこと自体が直ちに独占禁止法上の問題となるというものではございません。

 ただし、競争者を市場から排除するなどの目的を達成するための手段として不当に取引先事業者を差別的に取り扱う場合でありますとか、取引上の地位が優越していることを利用して取引先事業者に対して不当に不利益を与えるような場合には、独占禁止法上の問題となる可能性があるというふうに考えております。

大西(健)委員 個別事案についてお答えいただけないと思いますが、さっきも大臣の答弁にあったように、全国でも十何か所しかない中で、東京の場合は九か所のうち七か所が民間で、そのうち六か所を特定の事業者が押さえているわけですよね。ですから、そうなると、やはり私は、競争上の地位を利用することも可能になってしまうというおそれがあるんじゃないかということを思います。

 残り少し時間がありますから、他の問題についても質問したいと思いますけれども、アルコール、薬物、ギャンブルなどの依存症の対策のための依存症対策地域支援事業について、実施主体である都道府県、指定都市、保健所設置市、特別区のうち、補助金の交付先自治体数が幾つあって、また、過去三年の予算額と執行額がどうなっているか、政府参考人から御答弁いただきたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 依存症対策地域支援事業は、都道府県、指定都市等において依存症の専門医療機関及び治療拠点機関選定や相談拠点の設置、普及啓発など、地域の実情に応じて総合的な支援を提供することができるよう、必要な経費の補助を行っているものでございます。

 補助金交付先自治体数でございますが、令和三年度において七十一自治体となっており、このうち、都道府県は四十六、指定都市は十九、指定都市以外の保健所設置市は六自治体となっているところでございます。

 過去三年間の予算額及び執行額でございますが、令和元年度は予算額は五・一億円、執行額は二・五億円、令和二年度は予算額は五・一億円、執行額は三・三億円、令和三年度は予算額は六億円、執行額は三・七億円となっているところでございます。

大西(健)委員 依存症の問題、薬物、それからアルコール、ギャンブル、いずれも、この依存症というのは、例えばDVだとか離婚だとか虐待にも結びつく可能性がある非常に大きな問題だというふうに思っています。

 今お答えいただいたように、七十一自治体に交付しているということですけれども、都道府県を見ると、福井県を除いては実施されているようです。ただ、これは対象の自治体の数が全体で百五十七、そのうち交付実績は七十一ということですから、全体でいうとまだまだこの予算を使っていない自治体が多いということでありますし、予算の執行率も見ると、六一・六%、直近でですね、約六割ということなんですけれども、この依存症対策地域支援事業の実施状況を、今、厚労省としてどう評価をしていて、更に実施を促していくために何が必要と考えているのか、副大臣から御答弁いただきたいと思います。

羽生田副大臣 依存症という疾患でございますけれども、これは適切な治療と支援というものによって回復が可能である疾患であるというところで、この依存症を抱える方がお住まいの地域において支援を受けられるようにすることが一番重要なことであるというふうに考えているところでございます。

 このためには、今お話がございました依存症対策地域支援事業、これに今、都道府県、指定都市等が参加をしていただいているんですけれども、地域での依存症の支援体制整備というものをもっと進めなければいけないというふうにも考えているところでございまして、今言われたように、実施率が六十数%というところで、もう少し上げていかなければいけないというところでございますけれども、これは平成二十九年から始まって、徐々に増えていたんですけれども、このコロナ騒ぎで少しそれが落ちてしまったというのも実際にあるところでございますけれども、こういったところで、専門医療機関あるいは相談拠点というものとのしっかりとしたネットワークをつくっていくということが必要であるというふうに認識をしております。

大西(健)委員 せっかくの事業ですから、より使っていただけるようにお願いしたいと思います。

 最後に、美容師法について質問したいんですけれども、美容師法では、いわゆるヘアセットができるのは美容師の資格を持つ者のみで、また届出をした場所でのみ可能で、無料であっても無資格者は行えず、有資格者でも無届けの場所ではできないことになっています。

 以前、私の地元で、国際交流をやっている団体から、外国人に日本文化の体験をしてもらうイベントで着物の着つけ体験をするときに、簡単なヘアセットやメイクをすると美容師法違反になると言われたので、どうにかならないかという陳情をいただいたことがあります。

 それから、この間、愛知県の美容業生活衛生協同組合の皆さんと懇談した際に、組合で子供たちに美容師の職業体験をしてもらうイベントをしたそうですけれども、そのとき、やはり無届けの場所で行うと美容師法違反になりますよと保健所から言われたそうなんですね。

 ヘアセットやメイクは人体に接するものであるために、必要な衛生措置を講じるための知識を習得した美容師でなければ業として行うことはできないことであったりとか、公衆衛生上の観点から美容所以外での施術を禁止するという法の趣旨は私も十分に理解しています。

 しかし、他方で、無資格者や美容所以外でのヘアセットとかメイクが現実には横行しています。あるいは、ネットで検索していただくと、ヘアセットアーティストとかスタイリストを養成する専門学校なんというのも多く存在しているんですね。

 私は、社会貢献が目的で、いわゆる営業目的でない活動が美容師法違反だといって厳しく制限されている一方で、無免許営業が野放しになっている状況というのはアンバランスじゃないかと思うんですけれども、これについて副大臣の受け止めを最後に伺って終わりたいと思います。

伊佐副大臣 美容師法におきましては、美容師でなければ美容行為を業として行うことはできないというふうにまずなっているということです。

 具体的に申し上げれば、反復継続して行う場合、あるいは特定、不特定をこれは問いません。また、営利、非営利も問わないということでございますので、ボランティアも資格が必要というようなたてつけになっております。

 一方で、さっき委員の御指摘いただいたヘアセットアーティストあるいはスタイリストについても、これは、容姿を美しくするために業として行うものであれば、やはり資格が必要と、指導の対象になるものだという認識をしております。

 厚労省としては、このようなルールについて改めて注意喚起をしっかりと行ってまいりたいというふうに思っております。

 これは、現場で対応するのは保健所ということになります。今、コロナの対応も様々ございますが、そういう状況でありますけれども、もし例えば美容師法違反に疑われるような場合があれば、是非また、保健所また厚労省に御連絡をいただければ適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

大西(健)委員 まさにこの業としてというところがポイントになると思うんですね。

 それで、私は何回も言うように、美容師法の法の趣旨は、これはもうそのとおりだと思いますけれども、ただ、一方で無免許の営業が横行していて、ボランティアでやろうとしている人たちが美容師法違反だと言われるこのアンバランス、これはやはり公正にしていただきたいなということを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、早稲田ゆき君。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきでございます。

 それでは、質問の機会をお与えいただきましてありがとうございます。通告に従い質問してまいります。

 まず、先般、十一月の四日に、大臣室もお邪魔をして、私ども立憲民主党としても、コロナとインフルエンザの同時流行を見据えた第八波対策、これについての申入れもさせていただきました。この点について大臣にお尋ねをしてまいります。

 資料の方を御覧ください。これは、政府が出した案を分かりやすくまとめていただいたものを使わせていただきました。

 今、小学生以下、六十五歳以上、それから基礎疾患がある方、妊婦さん、こうした四類型の方は発熱外来へ、そうでない方は検査キットでまず自主検査をされて云々かんぬんということになっております。

 しかし、今、発熱外来という位置づけはありますけれども、この発熱外来が、実際のところ、増えているとはいっても、全体で、全医療機関で、十一万ある中で、四万件がこういうふうになっております。それを更に増やしていくとあのときに、大臣との意見交換でもおっしゃっておりましたけれども、コロナの変異株が弱毒化をしている、そういう中で、発熱外来という位置づけをいつまでやっていく必要があるのかということを私は非常に疑問に思うわけです。

 その中で、一般の医療機関でも診ていらっしゃるところもたくさん一方でございます。そしてまた、発熱外来と銘打っていても、きちんと防護対策を万全にしているところもあれば、残念ながら、そうでないところもあると聞いております。そのような中で、いつまでも発熱外来ということがいいのかどうか。これも、弱毒化ということであれば、やはりこの位置づけを変えていくべきではないか。

 それから、この資料で申しますと、左側のこの四類型に属さない方々が、自己検査をして、その後にでもとにかく医療機関にかかれるように。御心配な方はいらっしゃると思います。それからまた、発熱はしているんだけれども、国からかからないでと言われているから、だから自宅で療養している、治療薬もない、そのような方、若い方たちも、たくさん私もお話を聞きました。

 ですから、この左側の方々については、一般の医療機関でインフルエンザの検査もしていただく、そういうことを国としてもっとしっかりと通知をしていただくなりしていただきたいんですね。そうでないと、どうしても、四類型の方だけが発熱外来に行って結構です、あとの方は自宅で様子を見てくださいということになっております、実際のところ、市民の間では。

 ですから、一般の医療機関でも診ていただける、当然ですけれども、フリーアクセスで、日本は国民皆保険でやっているわけですから、そういう方たちにも診ていただけるということを政府としてしっかりと言っていただく。そして、一般の医療機関。それから、オンライン診療、これも大変有効でありますので、これも増やしていただくように。

 是非、厚労大臣として、第八波に向けた対策の強化をお願いしたいわけですけれども、四類型以外の方に対する一般医療機関での診療、これについて厚労省として周知をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まさに私どもがお示しをさせていただいて、特に医療が逼迫したときに、そうした形での御協力をお願いをしていきたい。ただ、症状が悪化している場合には医療機関等にかかっていただきたいということを申し上げておりますので、今お話があったようなことを踏まえて、更にその趣旨をしっかりとPRしていきたいと思っております。

 それから、発熱外来云々の話がありましたけれども、これは、新型コロナ感染症の御本人だけではなくて、他の患者への感染リスクを考慮する必要があるということでこうした対応を取らせていただいておるところでありますし、また、新型コロナに関して、若い方に対するリスクについてはほぼ季節性インフルエンザ並みと指摘をされておりますが、高齢者の方にとってはいまだ大変リスクの高い疾病だということでありますから、引き続きそこはよく感染管理をしながら対応していくことが求められておると思います。

 今御指摘があった、発熱外来の中で感染管理が余りされていないという御指摘、これはちょっと私ども事務的に確認したんですが、余りそういう話は自分たちのところには上がってきていないということで、ここはギャップがあるかもしれません、もしそういう事例があれば是非教えていただければと思います。

早稲田委員 インフルエンザの場合は、医療機関にかかるわけですよね。ですけれども、もちろん検査キットも、今出てきているようではありますけれども、まだまだ少ない中で、やはり高熱になれば苦しいし、早く医療機関にかかりたいというのは当然だと思います。

 今大臣おっしゃっていただいたように、それはかかってくださいと言っているんだとおっしゃいますが、なかなかそこまで伝わっておりませんので、もう一度、そこをきちんと通知を出していただくように。そして、コロナとインフルエンザだと、同時にかかった場合により重症化するおそれもあるというふうに厚労省もおっしゃっておりますので、そのことも含めて、早めの受診も必要だと思います。ですから、四類型以外の方にもそうやって早めの受診をしていただけるように、よく通知等でやっていただきたいということを強く要望させていただきます。

 昨日は全国で八万一千人を超えました、新規感染者。それから、北海道では九千人超えということで、これも、八月を超えた最多だということであります。非常に心配でありますからこそ、その四類型以外の方たちにも、医療にアクセスできる、つながる、そういう仕組みをしっかりと周知徹底をしていただき、本当に発熱外来の数も増やしていただきたいということを強く要望させていただきます。

 それから、先般、岸田総理と議論をしたときに、沖縄県のOCASについて、これは重点医療機関の受入れ状況や体制について、全県で、それから全医療機関で把握をしているというシステムは分かっているけれどもというお話でしたが、ここのみそは、重点医療機関だけではなくて、一般の医療機関も全てここに入力をされているんです。それが非常に効果的でありますし、また、別途、沖縄県では、高齢者施設についても、内部資料ではありますけれども、そういう入力のシステムを作っていて、非常に機能しております。

 それなので、加藤厚労大臣には、これもしっかり調査研究をしていただいて、是非全国でできるところではどんどんこれをやれるように、また国としても支援をしていただきたいということを要望させていただきたいと思います。

 次に、生活保護基準額の引下げについてであります。

 これは、この度、違法の判決、つまり、行政処分取消しを内容とする原告勝訴の判決が地裁レベルで相次いでおります。これは、二〇一三年に行われた生活扶助基準の改定についてであります。

 先日も、神奈川、横浜地裁でありました。これは内容的には、大臣御存じのとおりだと思いますが、基準改定の主な理由となったデフレ調整、物価スライドにつきまして、厚労省の生活扶助相当CPIの計算がおかしいと、これは四地裁の裁判官が指摘をしております。物価指数、下落率を大幅に意図的に膨らませた物価偽装ではないかとも報道されているぐらいの重大な問題であります。

 このことは大臣は報道等で御存じだと思いますが、憲法で認められた生存権の範囲を決める行政処分において、統計不正とも言える、疑われるようなこの事態は非常に深刻だと思います。

 我が党でも、長妻昭議員始め多くの議員がこのことを指摘し、そして、行政側の敗訴が続く中で、厚労省の計算が正しくなかったのではないかということも指摘をしております。

 是非、物価指数計算の専門家や統計委員会の委員など含めて、検証をすべきではないでしょうか。そういう時期に来ていると思います、これだけ行政の違法が指摘をされているわけですから。是非大臣においては、またこれから高裁の判決も出るようでありますけれども、上訴し続けるのではなく、立ち止まって、その基準について、統計の取り方について考えていただく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 政府の考え方でありますが、平成二十五年の生活保護基準の改定において、当時、デフレ傾向であったにもかかわらず、平成二十年以降、生活扶助基準が据え置かれていたことに鑑み、生活扶助から支出されることが想定される品目のみを勘案した物価指数、いわゆる生活扶助相当CPIについて、平成二十年から平成二十三年までの変動分、三角四・七八%を勘案して基準の見直しを行ったということであります。

 これに関しては、保護変更決定処分の取消しを求める訴訟が全国二十九の裁判所で現在提起をされております。

 これまで十三の地方裁判所で判決がありました。適法であるとされた地裁判決が九つ、生活扶助相当CPIの設定について不合理な点はないとその判決ではされているところであります。

 他方で、違法であるとされた四つの地裁判決があります。これについて、高等裁判所で係争中であり、いずれも判決は今委員御指摘のように確定をしていないところであります。

 厚労省としては、この訴訟でも申し上げておりますように、生活扶助相当CPIの設定、これは適切であるというふうに考えており、これ自体、再検証する考えはございません。また、今後の訴訟対応については、係争中のため、ここの場での回答は差し控えたいと思います。

早稲田委員 こうした判決が続くにもかかわらず、再検証するつもりはないとおっしゃるわけですけれども、本当にそれでいいんでしょうか。

 この今回の横浜市の判決でも、厚生労働省、厚生労働大臣の裁量権を逸脱し、違法という判決が出ております。それから、今、デフレ傾向にあるということでおっしゃいましたけれども、その当時ですね、二〇一三年、でも、生活保護費のうち、非常に生活水準の低い方々の生活必需品の占める割合が大きいにもかかわらず、そうではないテレビとかパソコン、そうしたものの基準を取り入れたということも指摘をされております。

 そうした意味においても、やはり、この受給世帯の、非常に今、このコロナ禍で、更に今度は物価高騰で厳しい折でありますから、この基準額をもう一度、やはり再検証をすべきではないでしょうか。今係争中であるからということでこのまま突っ走るのでは、本当にこの地裁判決が生かされないことになります。やはり指摘をされたということは重く受け止めていらっしゃると思いますけれども、その点について。

 それからまた、これから、今、二〇一三年の扶助基準改定は、このときには非常に、政権交代後で、厚労省がこの基準を、デフレ調整の検討をした、そのこと自体が拙速の作業だったとも指摘をされているわけです。そうしますと、今、同じようなことを、同じ轍を踏まないためにも、ウクライナの戦争で非常に物価が高騰している、それからまたコロナの不景気もずっと続いているという中で、二〇二三年、これから、この生活扶助基準は引き上げる方向で検討すべきではないかと思いますけれども、そのときの、どういう物価指数を、どういう物価スライドをするかなどもしっかりと、もちろんここでは立ち止まって検討していただきたいと大臣には強くお願いをしたいわけですけれども、御見解を伺います。

加藤国務大臣 生活扶助基準については、保障すべき最低生活の水準を一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定するという考え方から、国民の消費動向や社会経済情勢などを総合的に勘案して、必要に応じ改定を行っているところであります。また、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られるよう、五年に一度の頻度で定期的な検証を行っております。本年は、今委員御指摘のように検証に当たる年でもあります。

 現在、生活扶助基準について、一般低所得世帯の消費実態と均衡が適切に図られているかの検証作業が進められており、検証結果やその後の社会経済情勢等を総合的に勘案した上で、適切な生活扶助水準の設定をしていきたいと考えております。御指摘あった、どのような経済指標によって社会経済情勢等を勘案するかについては、まさにその中で併せて検討していきたいと考えております。

早稲田委員 今検討されているということですけれども、生活実感として、厚労大臣、いかがですか。この生活保護を受けている方々、ぎりぎりの生活をされている方々のその基準を決める大変重大な時期であります。そのことについて、今のこの物価高対策を政府が打つほどひどいという状況の中で、やはりそれは前向きに上げるべきだと思いますけれども、そこも踏まえて考えていらっしゃるということでよろしいですか。

加藤国務大臣 どうするかは、まずどういう指標で検討し、そしてその結果がどうなるのか、その辺の議論もしっかり踏まえて判断させていただきたいというふうに思っております。

早稲田委員 ですから、物価偽装ではないかという判決も、物価偽装と言われるほどのその指標の取り方が違うのではないかというふうに言われているわけですから、そこはきちんと真摯に受け止めていただきたいと思います。

 このときも、〇八年―一一年の物価下落率は、総務省の指数では二・三五%、厚労省の指数では四・七八%と高い値でありました。そして、扶助基準額は平均六・五%の減となっております。これは、本当にぎりぎりの生活をする方々にとっては過酷であります、打撃として。だから私は申し上げているわけで、裁判でもそういうことが言われているわけですから、是非そこは重く受け止めていただいて、今の検討の状況の中でここのところを踏まえて考えていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 またこの問題は引き続き取り組ませていただきます。

 それから次に、フリーランス新法についてであります。

 これは総理の肝煎りでフリーランス新法、これを言われていたわけですけれども、今国会で提出が危ぶまれているという状況でありまして、このめどがどうなっているのか。また、大臣も所信において、非常に、関係省庁と連携し、フリーランスの方々が安心して働ける環境の整備に取り組むとおっしゃってもおられます。

 女性の多いフリーランスにとって、出産、育児、介護の支援、それからハラスメント対策など、厚労省が主眼となって取り組むべき課題は非常に大きなわけです。また、日本芸能従事者協会のアンケートでは、出産、育児との両立ができないというお声、それからパワハラが九三%、また、ハラスメント、レイプなどの答えが一一%。

 厚労省が他省庁をリードしてこの新法、この成立に向けてリーダーシップを取るべきと考えますが、大臣のお考えを伺わせていただきたいと思います。

加藤国務大臣 本年六月の閣議決定がなされた新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画において、フリーランスの取引適正化のための法制度について検討し、早期に国会に提出するとされているところであります。法案の取りまとめは内閣官房で行っておりますし、取引適正化を所管する公正取引委員会、中小企業庁とともに、もちろん様々に関連する厚労省、法整備に向けた検討を行っております。

 フリーランスの方々が安心して働ける環境を整備することは、多様な働き方を選択できる社会を実現する観点からも大変重要であります。早期の法案提出に向けて、引き続き、こうした検討また連携をしっかり図って、それに向けて努力をしていきたいと思っております。

早稲田委員 早期提出に向けてとおっしゃいましたけれども、是非やっていただきたいと思います。

 これは、芸能従事者の方々も、契約が、なかなか契約書が取り交わされない、そんな現実の中で、非常にフリーランス新法ということについて期待をされているわけです。それなのに、今回、今まだ、残りがもう一か月を切るかもしれないと言われるときにこれが出ていないということについても心配をされておりますので、今、厚労大臣おっしゃいましたように、早期にということですので、是非、今国会で提出されるべく働きかけをよろしくお願いしたいと思います。

 そして、また一方で、このフリーランスの芸能従事者等の自殺報道が非常に残念なことに続いておりまして、こうした非常に不安定な立場の方、個人事業主である、そしてまた、契約についても履行されない、履行されないけれども発注元にそれを強く言うこともできないというような方々の、このコロナ禍での、それからまた物価高でのメンタルヘルスケア、これも重要な施策であります。

 個人事業主等への安全衛生対策の在り方に関する検討会、こちらでメンタルヘルスの議論もあると承知をしておりますけれども、厚労省が、受託事業のこころの耳、この事業がありますが、この事業を是非フリーランスの特別加入労災保険加入者にも利用できるようにしてほしいと思いますし、またそうした議論も行われていると思いますが、この新法が先送りということに万が一なっても、ここのところはしっかりと着実に四月から始めていただけるように、大臣の見解を伺います。

加藤国務大臣 御指摘の、働く人のメンタルヘルスポータルサイト、こころの耳は、労働者やその家族、産業保健スタッフなどを対象として、働く人のメンタルヘルスに関する総合的な情報の提供、メンタルヘルス不調などによる健康障害に関する相談などを行う事業でありまして、財源的には労災特会の事業として実施をしております。

 そうした中で、いわゆるフリーランスが対象となっては、現時点ではなっておりません。ただ、他方、フリーランスについても、労災保険の特別加入者が精神障害で労災認定される事例もあるなど、メンタルヘルス対策は非常に重要であります。

 このため、令和五年度の概算要求において、こころの耳のサービス対象を、来年度から、フリーランスを含む労災保険の特別加入者に拡大することを盛り込んでおります。予算編成においてしっかりと議論をさせていただき、こうした取組を通じてフリーランスに対するメンタルヘルスの対策の充実にも資するよう努力をしてまいりたいと考えております。

早稲田委員 特別加入者にということを今大臣からおっしゃっていただきました。

 新法については、これが今、今国会で提出されないことは、非常に期待外れになってしまいます。これは契約取引の適正化に向けたものでありまして、与党内で非常に反対の意見も根強いと聞いておりますけれども、そこは議論が違うと思うんですね。やはり、個人事業主といって、誰にも雇われない、そして誰も雇わずに個人で働いている方々が、発注元に対する立場が弱いから、その契約に対する新法でありますので、是非これは、与党の皆様にも御理解をいただく中で新法の成立をしていただくように、私からも強く要望させていただきます。

 それから、最後の質問になりますが、子供、子育て政策であります。

 昨日、補正予算、これが閣議決定されまして、二十九兆円ということであります。予備費が四兆円も積み増しされて、二二年度の予備費は十一兆円以上ということで、大変、これは国会の議決もない、その政策をどんどんやって、後でも振り返らないということで、私たちは反対をこの予備費についてはしているわけですけれども。

 その中で、子育てについては、ゼロ―二歳児、この伴走型支援とともに、出産のときに十万円というのが出ておりますが、私どもは、こういうふうにゼロ―二歳児というふうに切らないで、しっかりと、物価高に対する対策でありまして、子育て支援費が非常に日本はOECD諸国の経済先進国の中で低いということはもう分かっているわけですから、とにかく皆様に、まず教育費、子育て費、そのために十万円を給付をしていただきたいということを主張しておりますが、このことについて大臣のお考え、伺わせてください。

加藤国務大臣 核家族化が進み、地域のつながりも希薄となる中で、孤立感や不安感を抱く妊産婦や子育て世帯も少なくありません。全ての妊産婦、子育て家庭が安心して出産、子育てができる環境整備、これが非常に大事であります。

 三歳以上の子供さんについては保育所、幼稚園等に通う場合が多く、また、その利用料については、先般、幼児教育、保育の無償化も図ったところであります。

 他方、未就園児が多いゼロ―二歳児のいる子育て家庭では、日々通う場がない方もおられる。また、地域子育て支援拠点や一時預かりなど、年齢を問わず利用できるサービスが地域によって偏りがある。こうしたことから、子育ての負担感、また孤立感にもつながっていると考えております。

 このため、十月二十八日に、物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策を閣議決定いたしまして、支援が手薄なゼロ歳から二歳までの低年齢期に焦点を当てて、妊産期から出産、子育てまで一貫した伴走型相談支援の充実を図るとともに、地方自治体の創意工夫により、経済的支援を一体として実施する事業を創設してきたところでございます。

 これは、今申し上げたような、まずどこにフォーカスを当てて今何をすべきかということで実施をしたということでございまして、今回、立憲民主党からはそうした御提案があったと承知をしておりますが、我々としては、まず、こうしたゼロ歳から二歳児にかけての支援をしっかりやっていこうということで、今回の補正にこうした措置を盛り込ませていただいたところでございます。

早稲田委員 未就園児、こちらがゼロ―二歳児、多いということで、そこに寄り添った支援、そのための伴走型相談支援というものは大変重要だと思います。そして、これからは、今回の補正予算に限らず、もちろん例年でやっていただきたい、毎年やっていただかなければならない事業だと私も思っております。

 ただし、出産に対しての、ゼロ歳児に対して十万円ということではなく、私は、やはり物価高対策ということで、そして子育て予算も少ない日本ですから、しっかりと十八歳までのお子様たちに所得制限なしでそして十万円を給付するというのが、物価高対策では非常に有効だということを申し上げておきたいと思います。

 それからもう一つ、時間がございますので、質問させていただきます。

 障害者関係法案とそれから権利条約の委員会の勧告についてであります。

 この勧告、対日審査が行われ、そして勧告が行われました。日本に対しても非常に厳しい意見がつきました。特に、精神障害の方に対する強制入院については、これは今まで日本がやってきたことと真逆のことが勧告をされておりまして、それにもかかわらず、今回、束ね法案で、障害者の関連法案が幾つも一括で出てきている、束ねて出てきているということに私は非常に憤りを感じます。

 一つ一つ、難病の法案も重要です。そういうものは成立をさせる、当然のことです。でも、この勧告と、内容と真逆の内容が書かれているものをなぜそこで一緒にするんでしょうか。信じられません。障害の政策、加藤大臣はお詳しいと思いますけれども、そこに障害者の方々お一人お一人、いろいろな、多様な方たちに寄り添う政策にはそれはならないです、この束ねなんかをやっていたら。厚労省の姿勢が問われます。皆さん、どういうふうにお感じですか、これ。主要な法案だけで四本、それからまた、それぞれに付随するものも更についています。そんなことをしていては、厚生労働省の、本当に気概がないのではないかと私は大変心配をします。

 それから、一番苦しんでいらっしゃるのは当事者の皆様方ということを強くここで申し上げたいと思います。

 その上で、この対日審査、勧告、これもコロナで延びておりまして、二年も延期をされておりました。この二年の延期がなかったら、この法案、特に精神障害の方の強制入院に関係するところですけれども、この内容は大きく変わっていたと理解をしてよろしいでしょうか。大臣のお考え、お聞かせください。

加藤国務大臣 そもそも、障害者総合支援法においては、平成三十年施行の改正法において、施行後三年を目途として見直すとされているわけでありまして、令和三年三月より社会保障審議会障害者部会において議論を開始して、令和四年六月に報告書が取りまとめられた。そして、その報告書を踏まえて、今回、法律を出させていただいたということでございます。

 今おっしゃったたらればの話、これはちょっとなかなか、仮定の議論でありますので、お答えは困難でありますが、ただ、今般の改正案については、障害者部会や関連する審議会において当事者の方などの意見も踏まえたものであり、引き続き、今後においても、当事者の御意見を踏まえながら障害者支援は進めさせていただきたいというふうに思っております。

早稲田委員 いや、意見を踏まえていないじゃないですか。だからこれだけ私たちにいろいろな意見が来るわけです、絶対これは一緒にやらないでほしいと。精神障害者の方々の意見を与党の皆さんは踏まえられたんですか、これ。踏まえていないから、こうやって束ねで出してきているんじゃないんですか。そういう、何というか、すり替える答弁はなさらないでいただきたい。

 やはり、しっかりとここは向き合って、勧告も出ているわけですから。そして、多くの当事者の方たち、団体の方たちが権利条約の委員会には行かれました。そこでも、そういう意見が出ていた。それを無視するような形でこうしたことをやってはならないと私は申し上げて、この質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。

 十月の二十六日に労働政策審議会の労働条件分科会が開催されまして、そこで、スマートフォンの決済アプリなどを使って賃金をデジタル払いできるという制度が解禁される、そのための省令の改正案がこのときの分科会で承認をされたというふうに伺っております。

 改正省令は、二〇二三年の四月、来年の四月に施行予定ですけれども、様々なアプリ事業者の審査などに時間がかかるということで、実際に運用が始まるのは施行から数か月先になりそうだということでありました。

 労働政策審議会の分科会では、労働者の賃金の保全、これが課題になって、やはり、資金移動業者が破綻した場合にどうなるのか、それから、保証額が百万円が上限だということなんですけれども、百万円を超えた場合にどうするのかといったことが様々議論になったというふうに伺っております。

 実際のところ、どういう仕組みになったかといいますと、結局、アプリ口座の残高上限は百万円とする、それが超えた場合は連動している銀行口座の方に賃金が移動されることになる、それから、破綻したとき、あるいは不正の取引で損失が出た場合には全額補償するということになりました。

 これらが、言ってみれば事業者の指定条件、指定要件になったということなんですけれども、なお、そういうことであったとしても、本当に大丈夫なのかという心配はあるところなんですね。

 今日、具体的に私が伺いたいと思っているのは二つです。

 一つ目は、モニタリングを適正に行えるのかどうかということであります。

 一階建ての事業者の認定というのは金融庁が行う、賃金を移動させる業者として適正かどうかという二階部分については厚生労働省が審査を行う、申請に基づいて審査を行うということなんですけれども、実際に、口座残高が百万円以下になるというための措置を講じているかどうかについては、冒頭、二階建ての部分の審査で、厚生労働省が書面で確認をするということでありました。

 しかし、実際にその運用が始まってみて、本当に適切に措置が履行されているのかどうかということについて、モニタリングは、これは金融庁が行うのか、それとも厚生労働省が行うのか、これはどちらが行うことになるんでしょうか。

加藤国務大臣 要件を満たしているかについては、労働基準法施行規則を所管する厚労省において、資金移動業者の指定時に書面で確認するとともに、必要に応じヒアリングをする、指定後も定期的に確認をするということであります。

 具体的にどういう形でやるかについては、現在検討させていただいているところでございます。

西村(智)委員 なので、具体的にどういうやり方でやるのか今検討中ということは、まだ決まっていないということですか。金融庁の方から何かお答えはありませんか。

藤丸副大臣 お答えします。

 資金移動業者を管轄しておりますので、資金決済法において、送金とか無関係の利用者の資金を保有しない体制整備が求められています。

 金融庁としては、こうした規則の遵守を含めて、各資金移動業者において資金決済法に基づき適正かつ確実に業務が行われるように、モニタリングをしっかりしていきます。

西村(智)委員 賃金決済法に基づいて資金移動業者を監督するのは金融庁、御答弁いただいたとおりだと思います。

 ただ、問題は、モニタリングをどういう形で、承認が一回ですね、申請時に移動業者としてよろしいですよということを確認した後で、本当にその措置が履行されているのかどうかということをモニタリングするのは、どういう形で、どちらが行うのですかということなんですけれども、これはまだ決まっていないということでしょうか。

加藤国務大臣 今のあれは、資金移動業者として、これは金融庁が資金決済法に基づいて対応しているんだと思いますが、その分野については金融庁が行われるし、また、それについて我々もよく情報交換をしていかなきゃいけないと思っていますが、私が申し上げたのは、その上に立って、今回の賃金の支払いという観点に立っての部分については、これは労働基準法施行規則を所管する厚労省が担当しているわけでありますから、先ほど申し上げたような、指定時において書面確認したりヒアリングをすると同時に、指定後もしっかり確認をしていきたいというふうに考えておりますが、ただ、その具体的なやり方等については、これは令和五年四月一日が施行ということでございますから、そこを念頭に置きながら、その中身は今鋭意詰めさせていただいているところでございます。

西村(智)委員 じゃ、厚生労働省がモニタリングは行うということですね。

 それで、先ほど金融庁の方からも御答弁いただいたんですけれども、やはり、労働基準法は厚生労働省の所管、賃金ですから労働基準法ということになるわけです。賃金決済法は金融庁の所管ということで、それぞれ所管が異なるということで、適正に履行がされるのか、確保されるのかということについてはやはり懸念があります。

 厚生労働省と金融庁がどうやって、どのように連携して措置の実効性を担保していくことになるんでしょうか。それはそれぞれお答えいただくことになりますか。

加藤国務大臣 委員、資金決済法ですよね。(西村(智)委員「そうそう、ごめんなさい、資金」と呼ぶ)これは金融庁が所管をしております。資金移動業者を所管する金融庁と、これは私どもの立場でありますが、指定時や指定後の定期的な報告時に、行政処分がなされていないか等、指定要件に関連する事項を確認をする、あるいは、指定を受けた資金移動業者に対して金融庁が行政処分を行う場合等に情報連携する、こういったような緊密な連携を図りながら賃金のデジタル払いの適切な履行を確保していきたい、金融庁との関係においては確保していきたいと考えております。

藤丸副大臣 いわゆる賃金のデジタル払いの適切な履行を確保していくということですが、資金移動業者を所管する金融庁と、賃金の支払いに関する制度は厚労省ですから、緊密な連携を図るということは大事でありますので、賃金の支払いを受ける資金移動業者の指定要件としては、その口座が今言われたように百万円以下になるようにということとか、十分な社会的信用を有することなども定められております。

 金融庁としては、こうした要件も踏まえて、例えば指定を受けた資金移動者に行政処分を行う際には厚生労働省に適切に情報連携をして、賃金の支払い業務の適正かつ確実な実施に貢献していきたいと考えております。

西村(智)委員 万が一のことがないように、そこはよく連携を取ってやっていただきたいというふうに思います。

 さて、次に、新しい資本主義の関係で、岸田総理が所信表明演説でおっしゃった日本に合った職務給、それから、これは加藤厚労大臣も所信でおっしゃった同一労働同一賃金、こちらの方について質問をしたいと思っております。

 総理の所信表明演説の中身は、もうこれは既に指摘をしたとおりですけれども、やはり、格差という言葉がなくなり、貧困などという言葉は影も形も見えず、分配という言葉が消えてしまった。やはり、どちらかというと企業サイドに立ったトリクルダウン的な考え方が色濃く出てきた新しい資本主義だというふうに私は見ているんですね、大変残念ですけれども。

 これは、昨日も参議院の厚生労働委員会で石橋委員との間で議論があったというふうに聞いていますけれども、構造的な賃上げ、説明を聞いても私もよく分からないです。あるいは、日本に合った職務給、これって一体何を指すんだろうかというふうに思うんですね。

 ただ、よく取れば、そういうふうに、日本に合った職務給とか、それから同一労働同一賃金とかいうふうに言っていただいた、所信で述べていただいたということは、政府としてそれを今度こそは進めていこう、そういう意気込みなんじゃないかなというふうにも思うわけなんですね。

 それで、今日は資料を何枚か用意していまして、一枚目の資料、これは金融庁が、六月だったでしょうか、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループというところで、有価証券報告書に法定の開示情報といたしまして改定を行うんですね。今パブコメにかかっている最中で、十二月の九日まででしたでしょうか、パブコメをやって、その後、改定になるということなんですけれども、ここに、ちょっと真ん中ぐらいに、多様性という、黒いゴチックで書いてあるのが見えますでしょうか、多様性。それで、男女間賃金格差、女性管理職比率、男性育児休業取得率を記載項目に追加ということで、これはなかなかいい前進だなというふうに思っているんですけれども。

 金融庁の方に伺いたいんですけれども、この詳細あるいはこの背景、この理由について伺いたいと思っております。なお、もし手元にあれば、男女間賃金格差というふうに書いてあるんですよ、これはなぜこういう言葉になったのか、もし手元にあったら教えていただきたいんですけれども、いかがですか。

藤丸副大臣 議員の御指摘のとおり、十一月七日から、男女間賃金格差とか女性管理職比率とか男性育児休業取得率といった非財務情報を有価証券報告書に開示項目とする内閣府令等の改正案のパブリックコメントの手続を開始しております。

 これは、岸田総理が国会等で示された方針を踏まえて、金融審議会において議論も経て、人的投資や多様性に関する開示の充実の一環として対応を進めているものであります。

 具体的には、女性活躍推進法に基づいてそういう情報の開示を行っている企業に対して、そういう有価証券報告書にも同様の開示を求めるものでありますので、二〇二三年三月期から有価証券報告書の適用を予定しております。

 金融庁としては、こうした人への投資や女性活躍に向けた取組に関する開示の充実が、企業と投資家の対話を通じて中長期的な企業価値の向上につながればということを期待しております。

西村(智)委員 男女間賃金格差という言葉は、元から金融審議会でそのように使われてきた、何の、何というか、疑いもなく、何のちゅうちょもなく男女間賃金格差という言葉がここに入っているわけですね。

 今度は加藤大臣に伺いますけれども、まさに先ほど金融庁に答弁をいただきました女性活躍推進法、これに基づいて、厚生労働省の方でも情報公表の対象事項を徐々に追加してきていますね。これは今年の七月の八日から、ここの資料の二枚目にあります、右の列の下から三分の一ぐらいのところですかね、赤い字で書いてあります男女の賃金の差異というものが、今度は情報公表の対象事項として追加されたわけなんです。

 これは三百一人以上の企業ということで、お聞きしましたら、数としては約一万八千。先ほど、上場企業の有価証券報告書、こちらの方の対象、上場企業なので大体四千社ぐらいということで、数としては非常に少ないんだけれども、やはり男女の賃金の差異というものが公表されるというのはいいことかなというふうに思っています。

 さっき、これは女性活躍推進法の流れもあってということでいただいたんですけれども、厚労大臣、金融庁の方が男女間の賃金格差というふうに、格差と言っているのに、肝腎の男女間の賃金格差を縮めようというふうに努力すべき厚生労働省が、男女の賃金の差異ということで逃げてよろしいんですかね。私は、やはりここは明確に、格差ということがあるというふうに認めるべきではないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 まさに、この議論の中では、労働者の男女間賃金格差を解消していく、こういうことで、女性活躍推進法を定め、そしてその中で、各企業における取組状況を公表していこうと。その具体的な項目として、今委員から御指摘があった常用労働者三百一人以上の大企業に対し、男女の賃金の差異の公表という形で省令の中で定義をさせていただいたということでございますので、前提となっているのは、先ほど申し上げた男女の賃金格差を解消していくということ、その目的があることは変わらないところでございます。

西村(智)委員 それで、この情報公表の最終的な目的は、やはり男女間の賃金格差を解消していくということだというふうに思うんですね。

 今、男女間の賃金格差是正に向けて、世界的な動きは相当急速に進んでおります。諸外国、EU、ILOももちろんいろいろな取組をやっているんですけれども、やはり注目すべきは、昨年の三月四日にEUが指令案というのを提示しまして、これはもうすぐ恐らく指令として出されるんだろうというふうに思うんですけれども、ここで、賃金の透明性を更に高めなさいと。これはちょっと日本語訳がなかなかうまく見つけられなくて、原稿、記事として書かれているものをちょっと引っ張ってきたんですけれども、資料でいいますと三枚目です。

 こちらは、情報労連という労働組合の機関誌でしょうか、こちらに出されている神尾真知子先生の原稿なんですけれども、そこに、とにかく性中立的で客観的な基準を設けるように求めていますというふうになっております。

 下の方に行きますと、下から二段落目あたりになりますけれども、「さらに、従業員二百五十人以上の企業に対しては、いずれかのカテゴリで男女労働者の平均賃金水準の格差が五%以上あり、」五%ですよ、一〇〇と九五、それ以上あった場合、「あり、それが客観的かつ性中立的な要素で正当化できない場合は、労働者代表と協力して共同で賃金評価を行うよう求めています。」

 要は、一〇〇対九五以上の賃金格差があった場合には、それを是正してくださいと。しかも、この賃金格差の説明責任は使用者側が負っていますよというふうに書かれているわけなんですね。

 情報開示とそれから格差の是正というのは、私はやはり一体で進めていかなければいけないというふうに思っております。ですから、日本もこのように、女性活躍推進法で差異の情報開示というのが進んでいくわけですから、これを格差是正の契機とすべきではないかというふうに思うんですけれども、加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まさに女性活躍推進法では、企業が、管理職割合、平均勤続年数など、男女間賃金格差の要因になる状況把握を行い、これは企業として目標を定めてもらって、そして行動計画を作成し、PDCAも回していく、そして、それが外からもしっかり見える化をしていこうということであります。

 男女間賃金格差の公表を義務づけることで、各企業の取組を加速させ、格差の更なる縮小を目指していきたいと考えていますし、また、こうした男女間賃金格差の情報公表を更に進めるため、今般、適用対象となった事業主について、男女の賃金の差異を適切に公表するよう履行確保に努めるのは当然として、さらに、適用対象となる事業主の拡大、あるいは追加的な項目もあるんだろうと思いますが、こうしたことについて、今後の施行状況なども踏まえながら検討を進めていきたいと考えております。

西村(智)委員 型どおりの御答弁はいただいたというふうに思うんですけれども、実際に、情報公開、こうやって公表を進めていっても、本当に今の厚生労働省のやり方で、私は格差が縮まっていくというふうにはなかなか思えないです。今、現に男女間の賃金格差は、ほんの少しずつは縮まってはきているけれども、もっと国際標準に追いついていく、それこそ、EUの指令でいえば、五%以上の格差は駄目ですよというふうに言っているわけですから、そこに追いつくためには相当頑張らないといけないと思うんですけれども。

 今、厚生労働省が、まさに、職務評価、それから男女間の賃金格差、非正規との間でもそうですけれども、それを事業主にそれぞれ点検していただいて、職務給という目で見て格差がないようにしましょうというためのマニュアルというのがあるんですね。今、私の手元にあります。職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアルというものなんですけれども、これは令和三年の三月に最終版が出ております。

 中身を見ていただきますと、もう一枚資料をめくっていただくと、十四と左下の方に小さく数字が書いてあるものがあるんですけれども、こういった評価項目、1から8までありますね。こういった評価項目によって、ウェート、スケール、ポイント、ちょっとこの辺りは省きますけれども、これでそれぞれの労働者の職務を評価して、それで基本給を決めていきましょうというための支援の、厚生労働省が事業主を支援しているマニュアルなんですね。

 これは、評価項目で見ますと、職務の内容とか仕事の内容とか専門性とか、それから責任の重さとか、そういったものについては随分重く見ているんです。知識とか技能ですね、知識や技能、それから責任という要素、この二つは非常によく見ているんですけれども、実際に国際的な標準の職務給は何によって評価されているかというと、もちろん知識や技能、それは一つの重要なファクターです。責任、これも重要なファクターです。もう二つ重要なファクターがあって、一つは、労働条件、これが大変重要な職務の要素であるということ。それからもう一つは、負担の重さですね。それも職務の評価に当たっては非常に重要な要素であるというふうに言われているんですけれども、ここのマニュアルで紹介されている評価表の中には、知識や技能はあるんだけれども、あるいは責任はあるんだけれども、負担と労働条件というファクターが全くないんです。

 これは改めるべきだと思うんですけれども、加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 本マニュアルにおいては、人材代替性や専門性などの八つの要素を職務評価の項目として示しているわけでありますが、この策定に当たっては、民間の調査研究機関、企業のみならず、労働組合の賃金の専門家も参加されて、やはり日本におけるそうした雇用の情勢というんでしょうか、雇用条件というんでしょうか、そういったものも踏まえながら、数多く議論が重ねられて策定されたというふうに承知をしているところでございます。

 なお、そのマニュアルでは、国際標準の四大ファクターとしてILOが示している職務評価の評価項目、これも併記をし、それぞれの企業の実情に応じて評価項目の設定を行うこと、これは推奨しているところでございます。他方、中小企業でも負担が少なくなるよう、簡便性にも配慮しているというところであります。

 評価方法については、職務評価については、非正規雇用労働者と正規雇用労働者の間の賃金格差等を把握し、公正な待遇の確保を実現するためにも大変大事だと考えておりますので、今後とも、事業主が適切に企業のそれぞれの実態に合った形で職務評価が実施していただけるように、周知またその支援を行っていきたいと考えております。

西村(智)委員 そういうことをおっしゃっているから、いつまでたってもSDGsの達成ができないということになりはしませんか。SDGsだって、八・五で、完全な同一価値労働同一賃金の実施を二〇三〇年までにそれぞれ達成してくださいということを求めているわけですよ。これだったら、いつまでたっても達成できない。EUの水準から考えても、このままだとやはりできないというふうに思うんですよ。

 総理は、あるいは加藤大臣は、構造的な賃上げというふうにおっしゃっていて、何か、労働生産性を非常に上げるようなところに人を集めて、まずそこのところで生産性を上げて、次第にそれをその他の労働者にも広げていくというふうにお考えになっていらっしゃるのかもしれません。だけれども、このやり方だと、やはり、今までだって、本当に、例えばアベノミクス、トリクルダウンを起こして、何か一部の大きなところが豊かになれば、次第にいつかほかのところにも行くというふうに言われて、言われて待ったのに起きなかったトリクルダウンですよね。

 やはり構造的な賃上げというのは、最終的には、本当に今、派遣などで働いている方々、非正規で働いている方々、同じ仕事じゃないかもしれない、労働条件悪い、厳しい、負担が重い仕事をしているのに、この仕事だから、あるいはこういう雇用区分だからということで、それで理由づけをされて賃金が低いままになっている女性の人たち、そういった人たちをやはり置いてきぼりにするんじゃないかというふうに思うんですよ。

 今回のコロナでも、本当にまさに命の問題でしたよね、働いている人たちのその賃金の低さ、待遇の悪さ。こういったものが、やはり底の方から上げていくというやり方をしないと、本当の意味での賃上げに私はなっていかないというふうに思うんです。

 加藤大臣、ここはやはりちょっと考え方を変えていただかないといけない。私は、リスキリングもそれは否定はしないし、構造的な賃上げ、それもあっていいとも思うけれども、やはり置いてきぼりにしていくところが出てしまうとこれはどうしようもないんですよ。

 それで、ちょっとこのマニュアルの方に戻りますけれども、もう一つこのマニュアルには大問題がありまして、活用係数というのを掛けるということができるようになっているんです。正社員と比べて、仕事の内容や例えば責任の重さ、あるいは労働条件、負担、こういったものが仮に同じだとしても、まさに事業主の判断によって活用係数を〇・九とか〇・八、要するに、基本給を有無を言わせずそれだけ下げるということを認めているマニュアルなんですよ、これは。

 資料を御覧ください。

 この次のページ、資料の次のページで、十九ページですけれども、活用係数の水準、各企業の事情によって異なります。事情によって異なる職務評価とか職務給なんて、それは普通、そんなことを海外で言ったら、大変恥ずかしい話だと思うんですが。〇・九とか〇・八に設定したと書いてありますけれども、それは基本給にその分掛けて引いていいということなんですよ。

 こんなことを推奨している、この職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル、これはやはりちょっと見直した方がいいんじゃないですか。恥ずかしいですよ。どうですか。

加藤国務大臣 パート・有期雇用労働法にも規定されている人材活用の仕組みや運用、これは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差であるか否か判断する際の考慮要素の一つとなっております。配置転換しながら、幅広い職務遂行能力の向上を促し、それと対応した賃金とするといった、これは我が国の雇用慣行となっているわけでありますから、そうした特質を踏まえて導入されたものであります。

 それを踏まえて、本マニュアルにおいても活用係数として人材活用の仕組みや運用を考慮することは、現行のパートまた有期雇用労働法ともそごがないものと考えているところでございます。

西村(智)委員 いや、これは唯一の、厚生労働省が職務評価を行うために事業主に指導するときの唯一のマニュアルですよ。確かに、パート労働法、人材活用の仕組み、書いてあるかもしれません。だけれども、そもそもその法律自体が、私からいえば、国際標準からはかなり逸脱しているというふうに思うんです。

 大臣、少なくとも、さっき私が申し上げた二つ、評価の要素について、まさに、ILOだって、これは資料を見ていただくと、次のページ、最後のページから二枚目になりますか、三十五ページというところに、ILOによる職務評価の項目ということで書いてある。ここにはちゃんと、知識・技能、負担、責任、労働条件、これはきちんと四つ書いてあるわけです。随分ページが後ろの方になっていて、何か、見なくてもいいようなところにさせられちゃったのかなというふうに思っていますけれども、一応、こういうふうには書いてある。

 しかも、〇・九とか〇・八とか、具体的に掛けてくださいというふうに書いてあるマニュアルは、これは明らかに、ちょっと国際的な考え方からも、そして、まさに職務給とかあるいは同一労働同一賃金をこれから政府として進めていきましょうと言っている政府ですから、こんな〇・八、〇・九掛けるということはちょっとやはり余りにもおかしいんじゃないかと思うんですけれども、大臣、もう一回、これは検討していただけませんかね。今までは、これでしようがない、使ってきたと。だけれども、これからは日本に合った職務給を模索していくんだ、だからこれも見直しましょうということで、大臣、ちょっとそういうふうに言っていただけませんか。

加藤国務大臣 まさに、仕組みは、先ほど申し上げたように、パート・有期雇用労働法に規定されている、そうしたものを踏まえてつくらせていただいているということであります。

 その上で、この中身をどう見直していくのか、あるいは、このというのはマニュアルでありますけれども、それをどう使っていくのか、これについては、これまでも、こうした職務評価を導入している実態の調査などもさせていただきました。その好事例等も横展開もさせていただいたところであります。

 そうした状況を見ながら、いろいろとこのフォローアップはしていく必要があるんだろうというふうに思います。

西村(智)委員 実態調査も行われたようですが、私も見ましたけれども、非常に分かりにくい、余り参考にならない調査でした。

 なおかつ、今の大臣のお言葉を聞いていると、まあ、もうちょっと待ってくれということなんですかね。もう本当に、でも、これまで待ちましたよ、長いこと、働いている人たち。派遣法やパート法、それぞれの働き方の中で、本当にこれまで待って、待って、待って、新しい資本主義とか職務給とか均等待遇とか、いろいろ言われてきたけれども、そのたびに期待して裏切られて、今になっている。これからも更に待ってくれと言われる。

 本当に、こういう政治はやはりおかしいということを私は申し上げて、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 この臨時国会の冒頭で、大臣は、医療DXとともに、介護のICT化を活用した生産性の向上に取り組むというふうに御挨拶をしてくださいました。

 私は前職で、ICT化を介護事業に導入する、またそれを定着させるという仕事を五年ほどやってきました。大変手前みそですが、我が社は当時、生産性の向上、はばたく中小企業三百というのに経済産業省から選んでいただいて、介護部門としては初の、当時は世耕大臣でしたが、表彰をいただきました。それは、ICT化による残業の削減と完全なペーパーレスを成し遂げてきたわけです。

 もちろん、我が社もですが、それを他社にも普及させるために取り組んできたんですが、その中で大きな壁になっていたのが伏せ字の問題です。

 伏せ字というのは、例えば介護保険証の番号であるとか名字である、それを黒く潰して事業所に送ってくる。また、我々はケアプランという計画書にのっとってサービスを提供させていただきますが、そのケアプランの対象者の方の名字であったりとかまた番号であったり、そういうのを黒く塗り潰して送られてくるわけなんです。書類でもPDF化してデータにしておけば検索機能が使えるわけなんですが、検索機能がなかなか使えないので、また紙の書類を見に行かなければならないという非常に非効率な状態です。

 これは次の質問にもさせていただくんですが、ケアプランデータ連携システムというのがもうそろそろ始まると聞いています。これは物すごく画期的なシステムです。全く違うソフトを使っている会社が同じようにデータ連携ができるということなんですね。ただ、このシステムが普及したとしても、伏せ字の問題がなくならなければ、このシステムの、データとともに申し送りやいろんなものを添付して送れると聞いていますが、その検索機能も生かせないというふうに思います。

 そこで、実は前回の通常国会のときに、私はこの問題をここで質問させていただきたく、厚労省の皆さんにいろいろと質問をさせていただいた中で、いや、これは別に介護の法令の中で決まっていません、民間と民間の問題、民民の問題なのでという話だったんです。

 NPOのタダカヨさんという、ICT化を進めるNPO法人、これは我々維新の中の守島という衆議院議員も理事を務めておりますが、そこの方がアンケートを取りました。分母が百九十八件とやや少ないように思いますが、民民だと言われている伏せ字の問題、伏せ字をしなくてもいいということに対して、実は実地指導で一二・六%の事業所の方が伏せ字をしてくださいねと言われているわけなんです。

 我々にとって実地指導というのは最も緊張するというか、もちろん介護報酬の返還もありますから、過剰に言われたことには反応してしまうんですが、そこで一二・六%言われた。これはもう民民の問題ではないというふうに思うんですね。

 実際、ファクスで送る場合に四六%の方が伏せ字をして黒く塗り潰している、メールであっても三一・八%の方が黒く塗り潰しているということなんですね。ということは、これは検索できないので、幾らデータ化してもなかなか生かせないということになります。

 そこで、御質問を政府参考人の方にさせていただきたいんですが、まず、伏せ字についてやはり通達を出していただけないかなというふうに考えております。特に、我々介護事業所は、やはり居宅支援事業所ですね、ケアプランセンターから介護の計画をいただいたり申し送りをいただきますので、全て広くというのが難しければ、居宅支援事業所に伏せ字についてはしなくてもいいというようなことを通達していただけないかというふうに思っております。そのことについて御意見をいただけたらと思います。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 居宅介護支援事業所、ケアマネ事業所さんですけれども、の介護支援専門員がケアプランを作成した際には、当該ケアプランを居宅サービスの担当者に交付することを義務づけております。

 そういうことでございますので、利用者の同意をいただかなくとも、当該ケアプランに係る利用者の個人情報の提供は可能でございます。要すれば、先生がおっしゃられたとおりでございます。

 それで、実地指導のところでございますけれども、国が通知をいたしております介護保険施設等指導指針というのがございますが、そこにおきましても、そのような形のマスキングをする必要があるとの指示はしてございません。

 まず、マスキングについての実態を把握するため、今年度、老人保健健康増進等事業を活用いたしまして調査を実施しているところでございまして、この調査の結果を踏まえまして対応を検討してまいりたいと考えております。

 なお、御指摘いただきました、来年度から稼働予定のケアプランデータ連携システムにおきましては、まさにマスキングをせずに書類をシステム上データで当然送受信できるようになりますので、そういったことですとか、そもそもの転記の誤りですとか、そういった業務負担の削減が期待できますため、しっかり利用の促進を図ってまいりたいと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 いわゆるローカルルールというものなんですね。我々介護事業所は、非常にこのローカルルールに苦しんでいるところがあります。これについては政府の方で相談窓口をつくっていただいているというふうにお聞きしましたので、事業所の方もしっかりと理論武装をして、これはおかしいんじゃないかなということについては相談をしていただけたらというふうに思います。

 また、先ほどのケアプランデータ連携システム、伏せ字にせぬでもいい、塗らなくてもいいと言いますが、それをわざわざ塗るわけなんですよ。今も塗らなくても送れるんです。でも、それをわざわざ塗ってしまうというところに対しては、やはり通達を出していただく。もし通達が難しいのであれば、QアンドAというのも広く実施されておりますから、その中で、伏せ字は要りますかというようなところで、必要ないのではないかというようなことを書いていただけると、非常に事業所としては心強いのではないかなというふうに思っております。

 それでは、またこれも政府参考人の方にお伺いしたいんですが、このケアプランのICT化、このケアプランのデータ連携システムというのは非常に有効だと思います。今まで、連携はできたけれども同じソフトでなければなかったということで、実質、使い物にならないと言ったら失礼ですが、実施されている例は少なかったと思います。

 ただ、このインバーターシステム、違うソフトでも連携をしていけるということは非常に効果的だと思いますが、これが何と有料だということで、事業所の方々はちょっと驚いたそうなんですね、有料なんだと。事業所の方々は、どちらかというと、このシステムを使うと加算ぐらいつくんじゃないかというような気持ちでいたそうなんですね。実際、これも、ツイッター上のアンケートですからあれですけれども、無料なら使いたいけれども有料だと様子を見ようという方が四七・六%でした。

 これも分母が非常に少ないので当てになるかどうかというのは理解がまだ及びませんが、有料になったその根拠と、また、民間ソフトでは、やり取りができる、違うシステムがですね、の中の無料バージョンも出てきている。この関係性も含めて、参考人の方に今の考えをお聞きしたいと思います。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 ケアプランデータ連携システムにつきましては、事業所間でやり取りをされております居宅サービス計画書などにつきまして、高いセキュリティーが確保された環境下で、紙やファクスではなくデータ連携でやり取りを可能とすることで、先ほど申し上げました事務負担の軽減、業務効率化、さらにはケアの質の向上を図るためのシステムでございまして、現在、国民健康保険中央会において構築を進めていただいているところでございます。

 このシステムを安定的に稼働させるためには相応の運用、保守経費が必要となりますことから、国民健康保険中央会におきまして、受益者でございます介護事業者さんに負担いただくことが適当という判断の下、想定利用事業者数を勘案して設定をすることとしております。

 また、御指摘のように、一部の介護のソフトベンダーさんが同様の機能を持つシステムを無料で提供していることも承知してはございますが、ケアプランデータ連携システムにおきましては、介護報酬請求に使用しております高いセキュリティーを持つ電子証明書、これを利用することなどによりましてより質の高いデータ連携が期待できるものでございまして、無料のシステムとの差別化となるものと理解をしております。

一谷委員 ありがとうございます。

 ケアぽすという無料のソフトが出てきていますが、やはり民間の技術力を侮ってはいけないというふうに思うんですね。もっともっと追随してくるところも出てくると思います。

 このシステムも、ある一定レベルの事業所が使わないと、私は使うけれどもそちらが使っていないではなかなか普及しないと思うんですが、この連携システムがある一定以上、その一定以上を超えたときにはぶわっと広がると思うんですが、この一定以上をどれぐらいを想定しているかということを政府参考人の方にお伺いをします。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、できるだけ多くの事業所においてケアプランデータ連携システムを利用いただくことで、先ほどから申し上げておりますような効果を介護業界全体、一層波及いただくことができるというふうに考えております。

 そのため、介護サービスごとの事業者団体様に個別に説明を差し上げる機会を設けるなど、理解促進に努めてございます。また、令和四年度の調査研究事業を活用いたしまして、より効果的な普及促進策を研究しているところでございます。

 なお、昨年度、居宅介護支援事業所さんや介護サービス事業所の皆様に対して調査を行いまして、その中では、いずれも七割以上の方々が利用したいという前向きな御意向を示していただいておりまして、より多くの介護事業所に利用していただけるよう、引き続き普及促進に努めてまいりたいと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 その七割の事業所の方々が、では、本当に負担が発生したときに使ってくださるかどうか。隣の事業所が使うまで様子見とこうかとなって、だらだらだらだらと普及しないと、非常にもったいないというふうに思います。人材も足らない中で、このICT化を進める、これは物すごい起爆剤になると思います。

 そこで、御提案なんですが、例えば、年間の二万一千円というのを、三年で区切って、これは三年でも四年でもいいと思いますが、介護報酬改定が三年ですから、三年で区切って、何か助成や加算をつけていただいて、ある一定レベルに達するまで支援をしていただくというのはどうかと思います。もし達せなければ、達するような政策を取りながら、もう少し支援の手を延長するとか、そういった具体的なところをもう少しお話し、また、考えておられるところがあればお聞かせいただけたらと思います。政府参考人の方にお願いします。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 若干繰り返しになるところがあるかもしれませんが、御容赦いただければと思います。

 本システムを利用いただいて全てのケアプランのデータ連携が実現した場合には、それぞれの事業所さんにおかれまして、人件費ですとか各種印刷費用等の事務費の削減効果があると考えております。こうしたメリットがあることですとか、当該システムの運営費が必要となりますことから、適切な利用料を中央会さんにおいて徴収する必要があると考えているところでございます。

 なお、厚労省といたしましても、こうしたコスト削減効果を広く周知いたしますとともに、地域医療介護総合確保基金を活用いたしまして、こうした連携システムを利用するためのソフトを含めまして、介護ソフト等の購入費用の一部を補助するICT導入支援事業を実施をいたしておりますが、こうしたところも引き続き推進をしてまいりたいと思っております。

 引き続き、介護事業者さんにとりまして過度な負担にならないように、国民健康保険中央会ともよく相談して対応してまいりたいと思っております。

一谷委員 ありがとうございます。

 このシステムを導入すると、約八十一万円の年間のコスト減になるというふうに示されております。ただ、そのほとんどがやはり人件費ということになっているんですが、多くの介護事業所が十人以下のスタッフの中で、では、事務員の方がどれだけいるのかなというふうに思います。特にケアプランセンターなんかでしたら三人、四人のところも多いですし、訪問は確かにヘルパーさんがいるかも分かりませんけれども、通所に関しても、小規模であれば五、六人で運営はできます。そうすると、そこの経営者がこういう請求のことを仕事としてやっているとなれば、そこに人件費は発生はしていないと思うんですよね、自分がやっているわけですから。

 そういったところも本当に実態をしっかり調査していただいて、私が問取りで質問をいろいろさせていただいている中では、加算をつけるという方法も検討はしているというふうにお聞きもしているんです。それが先ほどの基金の話につながるのかも分かりませんが、前向きに検討をしていただきたいというふうに思っております。

 このシステムが本当に普及すれば、今、自転車で計画書を持っていっているとか、ファクスの誤信というのもなくなりますし、かなり有効だと思います。

 そこで、一つ壁になっているのが、これは多くの声をいただいて、ここで質問させていただきます。

 大手介護ソフトベンダーがあります。レセコン会社ですね。そこの会社は、こういった連携システムが普及すると、システムを乗り換えるということもできてくるわけですね。そうすると、これはベンダーロックといいますが、せっかくの顧客を逃がすというのはもったいないですから、このケアプランデータ連携システムのCSVデータ、これを排出する方法をなかなか教えてもらえない、ネットで探してもこのマニュアルが出てこないというふうなことを少しお聞きしております。

 そういったことについてはどういう認識があるのかというのをお答えいただけたらと思います。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 ケアプランデータ連携につきましては、これまでも、介護ソフトベンダーの事業者団体の協力を得ながら、研究等を進めてきたところでございます。

 また、ケアプランデータ連携システムでは、異なるベンダーの介護ソフトを使用していてもデータ連携ができるように、国が示した標準仕様に基づくデータをやり取りすることとしております。

 標準仕様に準拠した介護ソフトの導入に対しては、先ほど申し上げましたように、基金を活用した補助を行うなど、各ベンダーにおける介護ソフトへの実装を促しているところでございます。

 さらに、今後も、ケアプランデータ連携システムの利用促進には介護ソフトベンダーの協力が欠かせないと考えておりまして、理解促進を図りながら普及啓発を図ってまいりたいと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 是非促進を前向きに加速させていただけたらと思いますし、これは事業所側もやはり努力しなければならないというふうに思いますので、一緒に頑張っていけたらと思います。

 続きましては、大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 要介護一、二の総合事業への移行、これについて、多くの、我々事業所にとっては、介護事業所さんにとっては死活問題にもなりますし、御家族や本人にとってもサービスの質や量という問題があります。

 十一月七日に、財政制度等審議会財政制度分科会では、実質、段階的には実施すべきといいながら、見送りを容認したのではないかというふうに思っております。

 ただ、これは、二〇一八年の医療、介護のダブル改定、これが次、二〇二四年に来ますけれども、二〇一八年のときも、この移行については大変議論になったと思うんですね。

 これはなぜ移行する必要があるかというのは、やはり私は財政面的な問題もあると思います。これは厚労省の資料を見ると、財政的な問題はないという話で、どちらかというと、地域住民を主体にした多様なサービス等を普及させていく、そういったところで、生活をどのように援助していくかというふうに議論されているんですが、私は、今回、これをまた見送るということになった場合、これを見送るかどうかがいいか悪いかはおいておいて、一体、いつになったら、この要介護一、二を移行するのか、また、移行しなくて、ほかの手を考えるのかということが、どういった検討を厚労省でされているのかというのを大臣にお伺いさせていただきます。

加藤国務大臣 今委員からお話があった軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方については、令和元年の社会保障審議会介護保険部会で、引き続き検討を行うことが適当とされたところでございまして、これを踏まえて、本年の介護保険部会でも幅広い観点から御議論をいただいております。見直しに慎重な意見、あるいは積極的な意見、様々からの御議論をいただいているところでございます。

 二〇四〇年に向けて高齢化が進む、生産年齢人口が減少する中で、老後の生活の安心を支える介護保険サービスというものをどう、その重要性が増し、そしてその持続可能性をどう維持をしていくのか、これは大変重要な課題でありますので、そうした点を念頭に置きながら、この点についてもしっかりと御意見をいただきながら、高齢者の方々に必要なサービスが提供されるよう、丁寧な検討を行っていきたいと考えておりますので、今委員から具体的な御質問がありましたが、現在、そうしたことも含めて議論が行われているということでございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 今の中で軽度者という言葉があったんですが、財政制度分科会の方ではこの軽度者という言葉は今回見当たりませんでした。ということは、やはり軽度者という言葉が使われてなくなる。

 要は、要介護一、二の方が地域支援事業に移行する場合、私は、一つの大きな問題が、やはりこれは認知症の方の問題ではないかなというふうに思うんですね。

 今、私も、やはり移行するのは、実質、現場を二十年見てきた中で、難しいと思います。それは、この二十年の間に、地域包括ケアシステムはかなり高度化して、地域のリハビリというものに対してはレベルが上がって、サルコペニアやフレイルに対しては対応できています。そして、地域で認知症の方を受け入れるということもできますので、引きこもって足腰も弱らない。となると、足腰の強い認知症の方もいらっしゃるわけなんですよ。この方に対してのケアというのは物すごく難しいです。周辺症状をどうやって抑えていくのか、また、慈しむ心がなくなって暴言を吐き出したときは、例えば栄養が足らなくなっているのは何か、これを地域住民主体のサービスでは賄えないと思うんですね。

 ですから、私は、先ほどの大臣への質問で、通達している二問目は理解しましたので、三番目の質問、三の三をさせていただきますが、政府参考人の方に、この介護保険制度の中で、認知症というものについては別の枠組みがそろそろ必要ではないか、要支援から要介護七段階の中とまた別に必要ではないかというふうに考えますが、お考えをお聞かせください。

大西政府参考人 御下問ありがとうございます。お答え申し上げます。

 先生から、要介護認定について、認知症の方については別の枠組みが必要と考えるがというおただしでございますけれども、要介護認定につきましては、高齢者等に係る介護の手間に着目をいたしまして、もう釈迦に説法でございますが、認定調査員によります心身の状況の調査、さらに、主治医意見書、学識経験者で構成されます介護認定審査会の審査という何段構えによりまして介護サービスの必要度を判定する仕組みとなってございます。

 認定調査におきましては、認知症の方に固有の徘徊ですとか昼夜逆転、そういった介護に係る介護の手間などにつきましても、御家族や御本人のふだんの状況を聞き取ることなども通じまして本人の状態を把握することとしております。また、主治医意見書におきましても、認知症の症状を確認する欄を設け、要介護認定に当たっては認知症に係る介護の手間について適切に勘案されているものと考えております。

 今後も、認知症の方も含めまして、介護が必要な高齢者の方が安心して必要なサービスを受けられるように、引き続き適切な要介護認定制度の運用に努めてまいりたいと考えております。

 なお、軽度者の方々といいますか、要介護一、二の方につきましては、やはり認知症の方々が多くなってくるということは審議会の場でもお声を多数いただいているところでございまして、先生と認識は一致していると思います。

 以上でございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 我々、課題先進国ではありますが、世界の方々も認知症のことも問題になると思いますので、是非、我々から、いい認知症の世界というか、つくっていけたらと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

 本日はこれで質問を終わらせていただきます。誠にありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、遠藤良太君。

遠藤(良)委員 日本維新の会の遠藤良太でございます。

 今日はマッサージの資格について質問をさせていただきたいと思います。

 大臣も、非常に激務だと思います、マッサージに行かれたりするかと思いますけれども、マッサージは御承知のとおり国家資格でありまして、まず初めに、あんまマッサージ指圧師の国家資格についての概要をお聞きしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねのあんまマッサージ指圧師につきましては、従来は都道府県知事による免許制でございましたが、昭和六十三年のあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の改正に伴いまして国家資格化されたものでございます。

 この国家資格化によりまして、医師以外の者であんま、マッサージ、指圧を業としようとする者は、厚生労働大臣の免許を受けなければならないということにされたところでございます。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 大学又は専門学校などで三年間学んで、かなり時間と費用をかけて国家資格を取られると。

 このあんまマッサージ師については、基本的な知識を要していて、これは実際、こういうあんまマッサージ指圧師の国家資格を取得することについての趣旨はどういう点にあるのか、お尋ねしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 あんま、マッサージ、指圧につきましては、これは施術者による独占業務ということになっておりまして、そういう意味できちんと適正な施術が行われるということをきっちりして法律化しているということで理解しているところでございます。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 これのほかに、はり師及びきゅう師といった、鍼灸師と言われるこれも国家資格があると思います。我が党の一谷議員もお持ちの柔道整復師、これも国家資格です。

 先日、この柔道整復師の柔道整復師試験の問題漏えいがありました。柔道整復研修試験財団の理事が逮捕された。こういう事件があった中で、これは国家資格に対する信頼を低下させるんじゃないかというふうに考えるんですが、厚生労働省としては、この再発防止についての取組をお尋ねしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘ございました事案につきましては、現在、警察において捜査が継続しているというふうに承知しているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、この柔道整復師国家試験を実施する柔道整復研修試験財団に対しまして、再発防止のための対策を含めて必要な措置を講じるように指導したところでございます。

 今後とも、更なる事案の詳細の把握に努めながら、必要な対策をしっかりと講じてまいりたいというふうに考えております。

遠藤(良)委員 これはいつ頃をめどにこの再発防止を取り組むのか、お尋ねしたいと思います。時期ですね。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 やはり、いろいろと事案の中身をよく把握をしながら整理をする必要があるかと思っておりますので、今の段階でいつまでにこれをきっちりと整理できるかという点について明確にちょっと申し上げるのはなかなか難しゅうございますが、できるだけしっかりと早めにきちんと整理をするということを旨として考えていきたいというふうに思っております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 是非、この時期は非常に重要だと思いますので、取り組んでいただきたいと思いますけれども。

 それでは、あんまマッサージ指圧師についてちょっと伺いたいと思います。

 このあんまマッサージ指圧師の現在の資格保有者がどれぐらいいるのか、お尋ねしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 あんまマッサージ指圧師の免許を登録している者の数になりますけれども、令和四年九月三十日現在におきまして約十九万九千人となっているところでございます。

遠藤(良)委員 十九万九千人ということで、実際、一方で、マッサージを行う店というのはかなり数が多くあると思います。例えば、駅の近くに、仕事帰りに立ち寄ったりするリラクゼーションであったりとか、あると思いますけれども、あんまマッサージ指圧師については国家資格であるんですが、一方で、こういった免許を持たずにマッサージを行っているケースもあるように思いますけれども。

 ちょっと古いデータですが、経済センサスによれば、平成二十八年度では、療術業で六万五千以上の事業所がある。平成二十四年に比べて二五%も増加している。これは、先ほどの御答弁がありましたけれども、現在では更にもっと多くの事業所が存在していると思います。

 他方で、この国家資格を、頑張って勉強して国家資格を取って、一方で無資格でマッサージを行うところも多い状況である。これは、やはり今後、国家資格を取っていく人が少なくなってくるんじゃないかなというふうに思います。

 あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師に適用されるのは、これは法律の中であはき法と言われるもので、あんま、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを業とした者に対して五十万円以下の罰金があるという罰則がある。

 このマッサージの内容の定義というのはどういったものになるのか、お尋ねしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねいただきましたマッサージの定義でございますけれども、今先生御紹介いただいたあはき法、いわゆるあはき法の条文上、また法令上、具体的に規定をされているものは正直言ってございません。

 ただ、昭和五十八年に発行されております旧厚生省の解説本によりますと、あんま、マッサージ、指圧とは、疾病の治療又は慰安の目的を持って、人の体の各部を押し、引き、もみ、なで、さすり、たたくなどの施術を行うことというふうにされているところでございます。

遠藤(良)委員 では、様々事業所で行われている、先ほど私の方で、リラクゼーションがあったりとかボディーケアがあると。これはマッサージに該当して違法ということになるのか、この辺り、お尋ねしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 マッサージの定義につきましては、先ほどお答え申し上げたとおり、関係法令上の規定はないところでございますが、厚生労働省としては、あんまマッサージ指圧師が行いますマッサージにつきましては、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある医行為ではないけれども、一定の資格を有する者が行わなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為、すなわち医業類似行為であるというふうに解しているところでございます。

 今委員お尋ねございましたボディーケアなどの施術について、これがその医業類似行為に該当するかどうかという点につきましては、個々の事情を総合的に勘案して判断することになるものというふうに考えているところでございます。

遠藤(良)委員 御紹介いただきましたけれども、医業類似行為ということで、あはき法や柔道整復師法は、あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復以外の医業類似行為を禁止している。もっとも、判例によっては、無資格の医業類似行為として処罰の対象になるのは、医学的観点から人体に害を及ぼすおそれのある医業類似行為に限定されているということなんですけれども、ここで言われる人体に害を及ぼすおそれのある医業類似行為というのは具体的にどういったことを意味しているのか、お尋ねしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御紹介いただきましたように、昭和三十五年の最高裁判決におきましては、医業類似行為について、禁止処罰の対象となるのは人の健康に害を及ぼすおそれのある業務に限定されるというふうに判示されているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、医業類似行為について、先ほど申し上げましたように、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある医行為ではないが、一定の資格を有する者が行わなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為であるというふうに解しておりまして、具体的には、あんま、マッサージ及び指圧、はり、きゅう並びに柔道整復といったものが該当すると考えておりますが、また、それら以外の手技、温熱などによる療術行為であって人体に危害を及ぼすおそれのあるものというものが含まれるというふうに理解しているところでございます。

 この医業類似行為に該当するかどうかにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、個々の事情を総合的に勘案して判断するものでございまして、なかなか一概にお答えすることは難しい面があるという点、御理解賜ればありがたいと思っております。

遠藤(良)委員 これは、人体に害を及ぼすおそれがあるとしても、おそれがあるだけでは摘発は困難じゃないかなと。結果的には、人体に害を及ぼした結果がある場合に摘発になっているのかなと思うんですけれども。

 あはき法に違反して摘発された事例についてお尋ねしたいと思いますが、どの程度摘発があったのか、具体的に御説明をお願いします。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 施術者に対する指導権限につきましては、都道府県知事等が有しているという整理になっているところでございまして、厚生労働省におきましては、網羅的に把握していることができていない状況でございます。

 例えば、そういった中でございますが、平成十六年に、無免許でマッサージを行っていた運営会社の社長らが、いわゆるあはき法第一条に違反をして逮捕された事例があるというふうに承知しているところでございます。

遠藤(良)委員 ちなみに、無資格だと、基礎的な知識がないと思います。事故が多く起こるのではないかなというふうに思うんですけれども、実際に事故に関してどういった報告があるのか。例えば、資格のある者による事故、又は資格のない者による事故という比較をした場合、恐らく資格のない者による事故が多いかなと思うんですけれども、その辺り、いかがでしょうか。

片岡政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者庁の事故情報データバンクに寄せられましたマッサージ等の手技による危害・危険件数は、令和二年度で三百四十六件、令和三年度で四百十九件となってございます。

 なお、この件数は、法的資格制度がある施術とない施術の双方を含んだ数字でございますけれども、消費者庁による平成二十九年度の調査におきましては、法的資格制度がない施術による危害・危険件数は毎年度二百件前後で推移していたというふうに承知してございます。

遠藤(良)委員 質問したときには、これは資格がある者とない者と分けていないということをお伺いしたんですけれども。

 こうした事故に対して対応するために、今後どのような取組を行っていかれるのか、厚生労働省と消費者庁、両方にお聞きしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございました国家資格を有しない者が行った施術による被害につきましては、厚生労働省におきましても、平成三年以降、累次にわたって、あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復以外の医業類似行為に関する取扱いについて、その医業類似行為の施術が医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあるということであれば、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師法及び柔道整復師法において禁止処罰の対象となるという旨を都道府県等宛てに周知をしておるところでございまして、また、それと併せて、指導の徹底を依頼しているところでございます。

 実際に、医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれのある行為があったということが把握されれば、都道府県等において、その行為を行った施術者に対して指導や注意喚起が行われているというふうに認識しているところでございます。

 引き続き、こうした被害が生じないように、都道府県等に対して周知に努めてまいりたいというふうに考えております。

片岡政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者庁におきましては、医業類似行為による施術の事故が発生していたということで、平成二十九年五月に、「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」というふうに題する注意喚起を行ってございます。この注意喚起では、消費者に対して、法的な資格制度がない手技を含むいわゆる統合医療は多種多様であり、玉石混交であるので、施術を受ける前によく情報を見て、施術や施術者を慎重に選ぶことなどを呼びかけているところでございます。

 なお、令和二年十一月の総務省の勧告を踏まえまして、消費者庁といたしましても、医業類似行為による事故情報を把握できるよう、都道府県等、関係省庁に対して消費者事故の通知制度の周知を改めて依頼するとともに、どのような手順で消費者事故の通知を行うかの確認も行ったところでございます。

遠藤(良)委員 これは、お客さんがマッサージ屋さんに行ったときに、実際、施術する人が資格を持っているか持っていないかというのは多分分からないと思うんですけれども、そこで、店舗内外に資格を有する旨の表示をすることが考えられると思うんです。

 そこで、厚生労働省としては、財団に委託をして、厚生労働大臣免許保有証といった身分証を発行している、携帯するなどして資格者であることを示しているということなんですけれども、これってどれぐらい効果があるのか、お尋ねしたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘ございましたように、消費者の方が有資格者、無資格者を見分けて安心して受けられるようにするということは非常に大事なポイントであるかと思っております。

 今御紹介ありましたように、免許保有証の発行とか、施術所で有資格者である旨を表示するということが、施術を受ける方にとってみれば、有資格者と無資格者を判別するに当たって有効な一つの方策になるのではないかというふうに考えているところでございます。

 今委員御紹介ございましたように、平成二十八年三月から、施術者があんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師といった免許証を保有していることを証明するような厚生労働大臣免許保有証を公益財団法人東洋療法研修試験財団において発行しているところでございます。

 そういったことを各都道府県を通じて周知をするとともに、やはり施術者が国家資格を持っていることを確認するポイントとして、施術者御本人が今申し上げた保有証を着用していること、また、施術所において大臣による免許を有する者であることを広告、掲示するといったこと、また、施術所内に免許証や免許証の内容等を記載した書面を掲示するといったことが一つ見分けるポイントになるといったことをお示ししたリーフレットも通じて周知をしているところでございまして、こういったものがより広まっていくことで、見分けていく上での有効なやり方になるのではないかというふうに考えているところでございます。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 これは資格がない者であっても様々なサービスを行っている、これが今の現状だと思います。安全性の確保は非常にこれは重要だと思います、マッサージされて事故が起こったときに。

 これは一つの方向性としては、無資格で、人体に害を及ぼすおそれがある事案に対して取締りの強化をしていく、これが必要だと思います。

 一方、別の方法としては、民間で行っている試験に対して何らかの支援を行って事故を減らしていくというふうに考えられると思いますけれども。事故を減らすためには、基礎的な知識が必要であったりとか、例えばそれをするために試験を行って、公的な資格の補完を、国家資格の補完をしていく方向性も考えられると思いますけれども、こういった安全確保の方向性について、大臣に最後、お尋ねしたいと思います。

加藤国務大臣 まず、法的な資格制度がない医業類似行為による施術、そのことはまず問題でありますけれども、さらに、そうした施術によって事故が発生するということは、公衆衛生の観点からはこれは到底看過できる問題ではないと考えています。

 施術を受ける方が有資格者と無資格者を判別できるよう、今委員からもお話がありました、厚生労働大臣による免許を有する者である場合、そうした証明書を見せるとか、あるいは、広告可能である、こういったことの周知をしっかり行っていくということ。

 また、昨年三月には、免許を有しない者による医業類似行為の施術が医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象となることから、その指導を徹底するよう改めて都道府県等にも依頼をしているところでございます。

 引き続き、法的な資格制度がない医業類似行為による施術で事故が発生することがないように、また、利用者が適切な施術が受けられるように、都道府県ともよく連携をして取り組んでいきたいと考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 是非、国家資格を取っている方であったりとか、無資格でやられている方はあると思いますけれども、しっかりと政府として、先ほど大臣答弁いただきましたけれども、しっかりと政府として取り組んでいただきたいというふうに思います。是非よろしくお願いします。

 これで質問を終わります。

三ッ林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

三ッ林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 本日は、同僚の田中健委員に代わりまして、厚労委員会で初めて質問をさせていただきますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、地元、宮崎が出身なんですけれども、私の地元でも、イベントなどが再開し、徐々に町の活気が戻ってきたように感じているところでございます。経済も人の往来も活性化してまいりました。

 しかし、医療、介護の現場は別です。新型コロナウイルスの感染拡大、第八波の到来による医療崩壊や介護崩壊を防ぐために、今も緊張感を高く保ちながら引き続きの対応に当たっていただいている医療、介護現場のエッセンシャルワーカーの皆様には、心からの敬意を表します。

 年が明ければ、国内でコロナウイルスの感染者が確認されてから丸三年ということになります。その間、過去の二年間を見れば、年末年始に新型コロナは流行しています。インフルエンザとの同時流行にも備えなければいけなくなるわけですけれども、そうなってくると悩ましいのが、老人ホームなど介護施設での面会制限、家族との面会が制限されるというところでございます。施設の管理者である施設長などは、自らの施設でクラスターを出すわけにはいかないと当然思いますし、一方、利用者の家族、肉親は、できる限り面会して、手を握ったり心を通わせたりしたいと思うのが人間としてのごく当たり前の感情だと思います。

 介護老人保健施設を管理運営する側、そして施設に両親や家族を預けている側、両方の気持ちもよく分かるわけですけれども、現在、面会制限はどのようなルールで行うことになっているのか、厚生労働省の見解を伺います。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 介護施設での面会についての御下問でございますが、介護施設での面会につきましては、面会者からの感染を防ぐ、いわゆる感染経路の遮断ということでございますが、そういう観点だけではなく、利用者や御家族のQOLといいますか、例えば、つながりですとか、交流ですとか、そういうことが心身の健康に与える影響という観点もございまして、そういうことを考慮して対応を検討する必要があると考えてございます。

 そのため、国としましては、現在は面会の一律の制限ということは行っておりませず、地域における発生状況、感染動向等も踏まえつつ、可能な限り安全に実施できる方策を検討いただきたいという考え方で、各施設で面会を行う際に参考となるように、面会の実施に当たっての留意点を周知しているところでございます。

 具体的には、地域の感染状況等を考慮しつつ、入所者、面会者のワクチン接種歴等も踏まえ、対面での面会の実施を検討することや、対面での面会を制限せざるを得ない場合にもオンラインでの実施を検討することといった考え方をお示しをしているところでございます。

 以上でございます。

長友委員 今の御答弁から理解すると、面会制限ということは政府としては強いているわけではなく、できる限り利用者や家族の気持ちに寄り添って、QOLの向上も踏まえて、面会は基本的には可能な限り地域の実情に応じてやってほしいということで理解をしました。

 しかし、私の地元であり、また九州の各施設、両親を預けている、母親を預けている、そういう方々の声を聞くと、今でも面会制限があるのが実情でございます。よっぽどの理由がない限り会わせてもらえないという施設もございましたし、工夫をしていただいています、ガラス越しや窓越しだったり、LINE電話、オンラインなどの手段を使ったりして面会をさせてくれる施設もあるということも把握はしております。なんですが、一方で、やはり、これは地域の実情なのかどうか判断が難しいんですけれども、かたくなに一律面会NGの施設もあるということを聞いているわけでございます。

 今日も午前中に、九州のとある県の、九十歳の母親を高齢者施設に預けてもう二年以上になるという方に話を聞きました。一年以上前からやはり面会制限があって、なかなか簡単には会わせてもらえないということがまだ、いまだにあります。

 こうした触れ合いの制限ですね、入所者の心身に影響を及ぼしかねず、施設側の悩みも深いとは思うんですけれども、家族もまた悩んでいます。私が聞いた方の中には、二年間会わせてもらえないうちに、認知症が進んで、妻が自分のことを認識しなくなったという、大変悲しい、つらい思いをしたという方もいらっしゃいましたし、会わせてもらえないことで生きる希望を失ったという御家族もいらっしゃいました。

 全ての施設がそういう面会制限を行っているわけではないということは私は理解してはいるんですけれども、家族や利用者さんに寄り添って、何とか面会を実現してあげようと取り組む施設もある中で、対応がまちまちなことに課題意識、問題意識を持っているわけでございます。

 そこで、次の質問ですが、面会の機会を確保することがいわゆる努力義務規定だというふうに私は理解しているんですけれども、それにもかかわらず一律に面会制限をしているような施設に対して、厚労省からはどのような働きかけができる、またしていくのか、お伺いしたいと思います。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘のとおり、心身の健康に与える影響といった観点から、利用者さんとその御家族とのつながりを維持することは大変重要でございます。介護施設における面会が過度に制限されることがないように取り組んでいく必要があると考えております。

 そのため、これまでも、先ほども御答弁申し上げましたけれども、面会の実施に当たっての留意点の周知などを実施してきたところでございますけれども、これに加えまして、今後、面会を積極的に適切に実施されている施設の事例ですとかその手法を、例えば動画などで情報発信、提供して、取組を促していくようなことも予定をしてございます。

 このような取組を通じまして、介護施設での面会が進むように、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

長友委員 上手にやられている、工夫されているところの事例を広めていただけるということではあるんですけれども、この新型コロナウイルスの感染防止対策下においても、高齢者が家族や親族と面会の機会を確保すること、その心身の安定や機能低下の防止、適切な身上保護のための重要な権利利益だというふうに考えております。

 そのように啓蒙していただくだけではなくて、もう一押し、国として何かできることがないのかなと私は考えるんですが、国や地方公共団体が、施設での面会実施のための環境を整えるための設備を整備することや、また、そこに人員を配置する上で必要な財政支援、また介護報酬等の加算措置を講じるということができないのかというふうに考えているんですが、見解を伺います。

大西政府参考人 介護施設での面会実施のための設備整備の支援ですとか、人員配置の上での加算措置などを講じるべきではないかというお尋ねでございます。お答え申し上げます。

 厚労省では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止しつつ、家族との面会を再開、推進するために、地域医療介護総合確保基金、消費税財源を基に積ませていただいている基金でございますが、これを活用しまして、家族面会室の整備に対する支援を実施してございます。

 令和二年度の第三次補正予算で創設させていただいた取組でございますけれども、二方向から入る形の面会室を整備いただく形でまずスタートいたしまして、令和三年度の補正予算でもこれを拡充いたしまして、更にその数の追加ですとか、別の形のしつらえですとか、そういう形も対応させていただくように、支援をさせていただくように取り組んできているところでございまして、令和五年度の概算要求におきましても、こうした取組を進めてまいる方向で要求をしているところでございます。

 片や、介護報酬につきましても御指摘がございましたけれども、先生、先ほどの御質問でも若干お触れいただきましたけれども、面会を実施するための人員の配置につきましては、介護保険法に基づきます運営基準というものがございます。この基準におきまして、介護施設は入所者とその御家族との交流などの機会を確保するように努めなければならない、努力義務という位置づけをさせていただいているところでございまして、現行の介護報酬の中で実施をいただくものとそこは考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、介護施設におきます面会を推進することは、感染動向を踏まえつつということでございますけれども、利用者さん、御家族のつながり、交流、心身の健康に与える影響、そういった観点から大変重要と考えておりまして、引き続き必要な取組を進めてまいりたいと考えております。

長友委員 ありがとうございます。

 基金を活用して、家族面会室の整備等を行っていただいていると。これは引き続き進めていただけるということではあるんですけれども、設備面のサポートはしっかりやっていただいていると。

 先ほど、介護報酬等の加算措置などは難しいというお話ではありましたけれども、やはり、現場が面会をする環境を整える、そして努力しよう、工夫しようというと、人手がかかるということは容易に想像できますし、事実そうなわけでございます。面会室で消毒をして、そして、利用の後にも片づけたり、また消毒する。そして、オンラインで環境を整えようと思っても、オンラインに不慣れな職員の皆様が一生懸命、利用者さんと家族とをオンラインでつないであげるというようなことで、現場に負荷がかかっていることは皆様も御理解できると思うんですね。

 そのようなところに対する支援、いわゆる人的なサポート、そこに対するいわゆる人件費のサポートなども措置できれば、更に後押しができるんじゃないかとも思います。

 また、今度は管理者の側の声を聞くと、このようなことをおっしゃっておりました。実態として、なぜ面会をちゅうちょするかというと、管理者サイドとしては、それによってクラスターを発生させてしまって、施設閉鎖というようなことになってしまったら、また施設の利益も下がるわけでございます。スタッフの給料にも影響をするということを御心配されている方もいらっしゃいました。

 そのようなことであれば、いわゆる面会の確保努力をしていたにもかかわらず残念ながらクラスターが発生した場合に対する、施設閉鎖となった場合の補填を継続する、そのようなことも施策として検討した方がいいのではないかというふうに思うんですが、これはちょっと通告の方には触れていなかったことかもしれませんが、もし御回答できるようでしたら見解を伺いたいんですが、いかがでございますでしょうか。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 若干総括的なお答えになるかもしれませんが、御容赦をいただければと思います。

 高齢者施設におきますサービスの提供、こういうコロナの感染状況下におきましては、感染予防、感染拡大防止の徹底を行いつつ、利用者さんに対して必要なサービスが安定的、継続的に提供される、これがまず第一であることはおっしゃるとおりでございます。

 これまでも事業者団体などから、必要な支援につきまして累次御要望をいただいてきたところでございます。感染者が発生しました高齢者施設に対しましては、緊急時の介護人材の確保ですとか、消毒などに係りますかかり増し経費の補助、助成を行っておりますほか、施設内でやむを得ず、医療機関への転院が原則ではございますけれども、施設内でやむを得ず療養される方につきましては、一名当たり最大十五万円が基本でございましたけれども、これは三十万円への追加補助の拡大というのをいたしまして、現行、十二月末まで延長することにさせていただいているようなところでございます。

 また、通所リハビリテーション事業所等につきましては、利用者減の生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数などから一定以上減少している場合に、基本報酬に一定の加算を行うことといったような措置もさせているところでございます。

 そのほか、るる対応させていただいておりますが、こうしたことの周知も引き続きしっかり行ってまいりたいと思っております。

長友委員 ありがとうございます。

 これまでの御答弁の中で、家族面会室の整備についての予算配置、また、今、かかり増し費用についても、人件費等も延長していただけるという話もいただきました。

 そのような情報をしっかり現場に届けていけば、しっかり面会制限を緩和して努力していこうということも生まれやすくなるのかなと思いますので、そのような情報をしっかり現場に届けていただければと思っております。

 今日は、面会制限ということを一つのテーマにして私の課題認識を共有させていただいたところでございますが、今からの質問、最後の質問になりますけれども、面会制限ということではなく、コロナ禍で認知症の患者の症状が悪化しているというようなことを認識しているところでございます。

 専門家や医療の現場から、コロナ禍で認知症患者の症状悪化を招いているということに関しては早くからの御指摘があったというふうに記憶しているんですが、認知症ケアを受ける機会が失われることによりまして認知症患者にとって症状の悪化を招くことが、多くの認知症診療に関わる医療関係者から今も懸念をされているところでございます。

 認知症学会の調査によりますと、症状の悪化の事例として、うつ症状を呈する人が増えた、施設での家族による面会が中止となったことで言動が不安定になった、デイケアやデイサービスでの活動がなくなるなど活動量が減って、ADL、日常生活動作が低下した、意欲や発動性、自分から何かを始めようとする能力が低下したことなどが挙がってきております。

 国としまして、このコロナ禍の認知症の進行予防の取組を適切に行っていただく、取り組むことが必要だと思うんですが、政府としての見解を伺いたいと思います。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴いまして、高齢者の方々の外出自粛などが長期化をしてきているという実態もございます。そうしたことによる心身機能の低下ですとか地域のつながりの希薄化といったことの回復に向けまして、認知症の方への支援、介護予防の更なる推進が重要であるというふうに認識をしております。

 具体的には、自治体等に対する、感染防止に配慮しました通いの場ですとか認知症カフェ、そういった取組を実施するための留意事項や手引、また好事例の周知、さらに、高齢者の健康維持に参考となります情報や事例を掲載する特設のウェブサイト、オンラインの通いの場アプリなども国立長寿医療センターに開発していただきまして、そうした面の情報発信を進めております。

 また、通いの場を始めとする介護予防の取組の、平場というか、実態としての再開、推進のための広報の強化、そういったことも進めまして、感染防止に配慮しながら高齢者の健康支援に取り組んでいるところでございますし、引き続き、地域における感染状況を考慮しながら、支援、介護予防の取組を進めてまいりたいと考えております。

長友委員 ありがとうございます。

 以上で質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、生活保護の扶養照会について質問いたします。

 扶養照会は、生活保護申請の心理的なハードルになっております。申請させないための水際作戦の機能も果たしていると指摘されております。

 資料一を見ていただきたいんですけれども、これは、厚労省の監査を基に扶養照会の状況をグラフにいたしました。二〇二〇年度に厚労省が監査をした五十二自治体のうち十五の自治体は、対象親族の七割以上に照会をしております。照会率一〇〇%、申請者の親族全員に照会している自治体もあります。

 一〇〇%扶養照会しているということは、つまり、機械的に全員扶養照会をしている、あるいは扶養照会をしても問題がない人しか申請していない、こういうことになるわけですね。

 大臣にお伺いしますけれども、この監査結果は扶養照会について機械的な対応があるということをうかがわせるものだと思いますが、この監査結果、どう受け止めていますか。

加藤国務大臣 まず、扶養照会でありますが、扶養義務者の扶養が保護に優先して行われることは生活保護法に明記された基本原理でありまして、扶養照会は必要な手続でありますが、一方で、一律に直接照会を行うといった機械的な調査は必ずしも適切ではないと考えております。

 御指摘の福祉事務所の事案は、令和三年度生活保護法施行事務監査資料の一部、令和二年度扶養能力調査の状況を取り上げられたものと思いますが、今年度の監査において当該自治体の状況を改めて確認したところ、関連通知等に基づき適切な運用がなされていることを承知をしているところであります。

 引き続き、扶養照会の取扱いについては適切な対応がなされるよう、周知等を行ってまいります。

宮本(徹)委員 一〇〇%だった自治体は今年度は改まったというのが大臣のお話だったと思うんですけれども。

 昨年、扶養照会への批判が高まる中、二月、三月に生活保護の問答集を改正しました。扶養照会をしないケースの判断基準を変え、一人一人に寄り添った対応を求めて、申請者が扶養照会を拒む場合は丁寧な聞き取りをするように求めたわけでございますが、先ほどの一〇〇%だったところは姿勢が少し変わったというのが大臣の答弁でしたけれども、では、この問答集が改正されて、それ以降、生活保護行政で具体的にどう徹底され、どう実践されているのか、ちゃんとつかんでおられますか。

川又政府参考人 答弁させていただきます。

 二月、三月に通知を発出いたしましたけれども、生活保護が必要な方に確実かつ速やかに保護を実施するということでございまして、著しい関係不良の場合を位置づけるなど、通知、事務連絡の改正を行ったところでございます。

 この通知と事務連絡による扶養照会の取扱いにつきましては、これまでも、全国会議の場などを通じまして各自治体に対して周知を行ってきております。また、自治体における取扱いにつきましては、国の監査におきまして、監査対象自治体の状況を確認をし、課題がある場合には、要保護者に対して寄り添った対応がなされるよう、個別に指導を行うということで現場への徹底を図っているところでございます。

宮本(徹)委員 個別に監査もして、指導もしているというお話ですけれども、一年間に監査した自治体数というのは幾らなんですか。

川又政府参考人 お答えします。

 国における、国の監査といたしましては、毎年、四十七の都道府県本庁それから二十の政令指定都市本庁全部、それに加えまして、各福祉事務所に対しまして、毎年五十から六十程度の福祉事務所を個別に指導を行うということになっております。

 また、都道府県においては、都道府県内の各福祉事務所を毎年監査することになっております。

宮本(徹)委員 ですから、五十から六十しか毎年監査は実際にはやられていないわけですよね。

 ですから、どういうことが起きているかといいますと、資料の二ページ目を御覧いただきたいと思いますけれども、これは東京新聞が独自に都内の自治体の扶養照会の状況について調査を実施したものです。

 通知等が出て、二〇二一年度にかけて、前年度に比べて中野区や足立区は一〇ポイント以上照会率が下がって、照会率は一〇%程度まで今なっているわけです。一方で、高い照会率のままの自治体も、通知が出て以降もあるというのが実態なわけですね。

 大臣にお伺いしたいと思いますけれども、扶養照会率が一〇%程度にまで顕著に下がった自治体と照会率が高い自治体の差は一体どこから来るのか。扶養照会の判断基準を変えて、寄り添った対応を求めても、高い割合で照会をかけ続けている自治体が存在する点について、どう考えているんでしょうか。

加藤国務大臣 自治体ごとに扶養照会状況の違いが発生する原因としては、要保護者と扶養義務者との関係性、これがまた地域によって様々であること、また、扶養義務履行が期待できない者に該当するか否かは個別の要保護者への聞き取り結果によって異なるわけでありますから、照会率によって、適切な運用が行われているかどうか、これを一概に判断するのは難しいというふうに考えております。

宮本(徹)委員 一概に判断するのは難しいというふうにおっしゃいますけれども、その地域地域によって、同じ通知に基づいて生活保護行政をやりながら、片や、生活保護、扶養照会、照会率は一〇%程度と、片や一〇〇%近い、八〇%、九〇%というのは、これはどう考えても、その地域の、要保護者の方と義務を負っている方との関係だけでは、その差だけでは説明できないですよね。どう考えても、自治体の通知に対する受け止めというのが私は違うんじゃないかというふうに思いますが、そうは思われませんか、大臣。

加藤国務大臣 まず、後者の、自治体によって受け止めが違うことがないように、今後とも、各都道府県等を通じながら、あるいは直接に、しっかりとその中身を徹底をさせていただきたいと思います。

 また、前者については、どこの水準が適正なのかという、これは、だから、それぞれの地域によってばらばらでございますし、その中のまさに実態を見ながら判断をしていくことが重要ではないかと思います。

宮本(徹)委員 この東京新聞の調査を御覧になっても分かりますように、生活保護の問答集の改正を受けても現場の運用を変えていない自治体が少なからずあるということなんですね。これは東京の調査ですけれども、恐らく全国を見ても同じような状況があると思います。

 私は、これは厚労省としてやはりしっかり調査をしていく、今、年間は五十、六十のところしか調べていないというお話でしたけれども、これは全部をちゃんと調べていくということが必要だと思いますし、あわせて、やはりこの生活問答集を改正した趣旨をしっかり再度徹底していく、こういうことが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 通知が出て変えないというのは、従前もその通知に従ってやっておられるというところもあるんだろうというふうに思いますので、それだけで見て判断するのはなかなか難しいかなと思って聞いておりました。

 この現行の扶養照会の取扱いについては、各自治体において徹底していただくことが重要でありまして、先ほどから申し上げておりますように、全国会議等の場を通じて周知を行い、また各自治体に対しても周知徹底を図っていきたいと思っております。

 国の監査においても、現行通知に基づき適切に扶養照会が実施されているか、引き続き自治体の取扱いを確認をしていく。また、都道府県等が行う監査における指導状況、これも継続的に把握して、適切な取扱いを行っていきたいというふうに思っております。

宮本(徹)委員 やはり、これまで以上の監査をしっかり私は国としてやるべきだというふうに思いますので、その点は強く求めておきたいというふうに思います。

 もう一点、最低賃金についてお伺いしたいと思います。

 物価高騰が続いている中で、私は、最低賃金をもう一回引き上げる必要があるんじゃないかと思います。十月に三・三%引き上げましたけれども、直近の消費者物価指数の伸びは最低賃金の伸びを上回っている状況で、国民の中からも悲鳴の声が上がっております。

 資料の三ページ目に載せておきましたけれども、そもそも日本の最低賃金は、賃金の中央値との比較で見ると、世界の中でも大変低い方です。三十一か国中、下から六番目、賃金の中央値に対して四五%が日本です。フランスは六割を超えているということです。今でも、最低賃金だけでは生活できず、一人親の方でダブルワーク、トリプルワークをされているという話は皆さんの周りでもたくさんあると思います。

 資料の四ページ目に、中央最低賃金審議会の公益委員の見解を載せておきましたけれども、なぜ今年度の引上げ率は、今年四月の持家の帰属家賃を除く総合が示す三・〇%を一定程度上回る水準、こうしたのか、お答えいただけますか。

鈴木政府参考人 最低賃金につきましては、最低賃金法に基づきまして、地域における労働者の生計費、賃金、通常の事業の賃金支払い能力を踏まえて審議会で議論し、決定するという規定になってございます。

 まず、このうちの労働者の生計費に関します指標といたしまして、中央最低賃金審議会におきましては、物価に関する物価指数について、持家の帰属家賃を除く総合を用いて判断をしてございます。これは、実際に市場での売買が存在しない持家の帰属家賃を除くことで、消費者と実際に取引がある品目の価格の動きを把握するということで、従来からこの数値を使ってございます。

 その上で、今年度の引上げ率につきましては、今年四月の持家の帰属家賃を除く総合が示す三・〇を一定程度上回る水準とするということになりまして、これにつきましては、賃金については、春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率は二%を超えまして前年より大きくなっていることに加え、今年の賃金改定状況調査結果における賃金上昇率は一・五%と平成十四年以降最大であるものの、これらの賃金引上げには今年四月以降の消費者物価の上昇分が十分に勘案されていない可能性があること、労働者の生計費につきましては、必需品的な支出項目に係る消費者物価が四%を超える上昇であることを勘案いたしまして、最終的に三・三%という目安を示したと承知してございます。

宮本(徹)委員 それで、持家の帰属家賃を除く総合の三・〇を一定程度上回る水準というふうに今回して三・三になったわけですけれども、直近の消費者物価指数の十月速報値を見ますと、持家の帰属家賃を除く総合、これの伸びは四・三%なんですね。つまり、最賃引上げ率を一%上回っているわけです。物価は、この十一月もいろいろなものの値上げ、牛乳だとかいろいろありました。今後も消費者物価の上昇が見込まれているんですね。

 中央最低賃金審議会の公益委員会の見解は、次のように述べているんですね。「今後、公益委員見解の取りまとめに当たって前提とした消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じたときは、必要に応じて対応を検討することが適当である。」と書いています。

 今の消費者物価の伸びは、それ以降の大きな変化だと私は思います。そして、必要に応じて対応ということになれば、当然、最低賃金をいま一度更に引き上げる、こういうことが必要だと思いますが、この公益委員会の見解に従えばそうなるんじゃないでしょうか、大臣。

加藤国務大臣 まず、御指摘の変化の内容、程度、これはあらかじめ定められているものではなくて、その状況に応じて検討すべきだというふうに考えております。

 また、最低賃金の決定に当たっては、消費者物価指数のほか、賃金や労働者の生計費、通常の事業の賃金支払い能力、各種データを総合的に勘案するということにもなっておるところでありますので、引き続き各種指標を注視していきたいと考えております。

 まず、最賃自体の引上げがこの十月一日から段階的に実施されておりますので、そうした動向もよく見ていきたいと思っております。

宮本(徹)委員 ですから、労働者の生計費が一つの大きな要素なわけですよね、最低賃金。それを考えた場合には、消費者物価指数というのは一番着目しなければならないというのが、この間、最賃の審議会でもずっと言ってきたことだと思います。そういう点でいえば、今、公益委員会の見解のまとめからいえば、更に消費者物価が上がっている下でもう一度上げるというのを考えなきゃいけないことだと思います。

 念のため確認しますけれども、最低賃金というのは年一回しか引き上げてはならない、こういう法令はどこかあるんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えを申し上げます。

 最低賃金の改定の頻度につきまして、年一回しか引き上げてはならないという法令の定めはございません。

宮本(徹)委員 そうなんですよね。別に日本の最低賃金法では、年何回最低賃金を引き上げてもいいわけですよね。

 ちなみに、フランスは今年、最低賃金を三回引き上げております。フランスの場合は、物価が上がれば自動的に連動して上がる仕組みがあるから、物価高騰の中で最低賃金が上がっているということはありますけれども、世界を見ても、年間複数回、最低賃金を段階的にこの物価高騰の中で上げている国というのはあるわけですよね。

 私は、物価高騰がこれからも見込まれている下で、やはり最低賃金の再改定もしっかり視野に入れた取組をしていく必要があると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 先ほどの答弁と同じことになって恐縮でございますけれども、消費者物価指数だけではなくて、賃金とかあるいは支払い能力とか、そうした様々な点を勘案しながら最賃自体も議論させていただいているわけでありますから、したがって、消費者物価指数あるいは物価の動向、こういったものも含めて、引き続き注視していきたいと考えております。

宮本(徹)委員 消費者物価指数をやはり上回っていかないと、実際は賃下げになっちゃうわけですよ。実際、この間発表されている実質賃金は、ずっとマイナスがここのところ続いているわけですよね。

 今回の最低賃金でいけば、一番生活が厳しい層も、この物価に賃金の上昇が追いつかずに、実質賃金はマイナスということにこのままではなってしまうわけですね。これは絶対、政治の責任で避けなきゃいけないことだというふうに思います。ですから、是非、政府部内で最低賃金を再度引き上げていく、速やかに千五百円を目指していく、このことを強く求めまして、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文です。

 今日もラストバッターになりましたが、よろしくお願い申し上げます。

 まず、お手元の資料で、日本糖尿病協会が七日、糖尿病という名称の変更を本格的に検討する方針を打ち出し、また、日本糖尿病学会とも連携し、具体的な検討を始めるというふうな報道がありました。

 大臣、このことは、糖尿病というワード、もうかなり広まっていると思います。厚生労働行政のみならず、社会的な周知を得て、また、いろいろな、例えば、具体的に言うと、民間の保険にもありますし、いろいろなもろもろの消費活動をする上でもあると思います。

 こういったワード変更、これを受けて、例えばこの団体からの影響を受けて国が糖尿病というワードを本格的に変更するということは、どういうふうなお考えをお持ちでしょうか。

加藤国務大臣 公益社団法人日本糖尿病協会が、糖尿病に関する患者へのアンケート調査で、病名に抵抗感、不快感を持ち、変更を希望する人が多かったということを受けて、新しい病名を検討する方針である旨の報道がなされたことは承知をしております。

 一般論になりますが、病名変更については、当事者の思いや学術的な立場による考え方、病名変更に伴う社会的影響など個別の事情も勘案しながら、総合的に検討されるものと承知をしております。

 国において何か基準があるわけではありません。学会等で決定していただいた病名、それを国で採用しているというのがこれまでの流れであります。

仁木委員 名は体を表すといいますが、今、例えば医師同士でしたら、糖尿病をDMと言ったりしています。これは英語あるいはラテン語由来でございますけれども、そういうふうに一旦定着したものが変わるということは、過去にも、そういう学界的なアカデミアの方からの提案じゃなくて、あったわけです。例えば、男女共同参画の下で、医療の現場で働く看護婦が看護師になって、今はもう看護師で定着しています。あるいは、先般も、障害者の漢字表記において、従来のものに加えて、いしへんのものも加わったりしているというのが現状でございますけれども。

 特に、この糖尿病というワードは、先ほど冒頭私も申し上げましたが、非常に大きなエリアをカバーしている今状態ですので、これを変えていくというときの例えば社会的なコスト、あるいは、事務的にいろいろな、今、文面あるいはワード、これは国の文書としてあるわけですけれども、それを変えていく、あるいは、さっき私、民間の保険のこととか、民間の様々なもろもろサービスの中での書面の文字のことを言いましたけれども、そういったコスト等もあるわけでございますので。

 先ほど大臣は、そういった、病名に関しては大きなクライテリア、基準はないということでございましたけれども、このことも改めて、これは多分上がってくると思うんですけれども、御慎重に。そしてまた、もし変えられるのであるならば、いろいろなことを考えてその方向に導いていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。その辺、どうでしょうか。

加藤国務大臣 例えば、これまで精神分裂症という言葉が統合失調症という形で疾患名の変更が行われてきました。これも、国の基準等に基づくものではなくて、当事者の声などを学会などが踏まえて実施されてきたところであります。

 名前を変更するというのは、いろんな意味で、メリット、デメリット、それぞれあるんだろうと思いますが、そうしたことも踏まえて、学会等で御議論いただいて、そこで一つのコンセンサスになれば、それはそれとして我々としても受け止めていかなきゃいけないのかなというふうに思っておりますが、現状、まだそこまで議論が進んでいるというふうには認識はしておりません。

仁木委員 大臣は思い出していただきたいんですけれども、私はこの場で、定期接種化した子宮頸がんワクチンの名前がいつの間にかHPVワクチンという形で統一されるようになった経緯、これは、るる、場合によっては、旧統一教会の教義に反するようなことがあって、それがこういった、いわゆる、子宮頸がんというと性行為とかを連想してしまう、そういったことがあって、例えばそのHPVワクチンという名前に変わった経緯があるかもしれないということを申し上げましたので、今大臣が御答弁されたことを、本当に、しっかりと受け止められてそういったことを所管していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に私が申し上げたいのは、今、物価高、そして、地方を歩きますと、やはり、年金で特に生活されている方々が非常に厳しい状況にあると思います。実際、年金受給者の多くの方々はもう年金だけが収入でございまして、その年金が、この物価高で、なかなか年金支給額は余り上がっていないというふうな状況にあるわけでございまして。

 私、国の、これから、特に地方の経済対策の中で、高齢者、いわゆる年金受給者の比率が多い地域でございますので、そういった年金を受給されている方々をターゲットにした経済対策というのも重要だと思います。

 そういう意味で、まず、今、いろんな形でDXが社会保障の分野、私はここで医療DXを推進しているということを申し上げましたが、年金、これに関しても、例えば、ねんきんネットというのがあります。これも実は、今までどれだけ年金の保険料を払ってきたのか、そして、自分が何歳になって年金を受給し始めると毎月幾らもらえるのか、そういった年金見込額試算等をできるわけでございます。

 これも一つちょっと問題があるんですけれども、例えば、公務員の方々の共済年金、加盟されている方々はこのシミュレーション、計算ができないようなスキームになっていますが、とにかく、私が申し上げたいのは、そういった、年金のマイナンバーとのもう少し利活用、連結を、将来、進めていっていただきたいと思うんですね。これは、個人が把握して今みたいなことを知るだけじゃなくて、例えば、マイナポータルに年金の情報があって、その情報の一部が、例えば年金を持っている人が経済活動をするときに利活用できるような場面をつくっていただきたいと思いますけれども。

 まず、将来的な展望として、年金のサービス、あるいは年金の状態、これをマイナンバーに取り入れて利活用を展開していく、そういう意思というか展望が今以上にあるのかというのをちょっとお聞きしたいと思います。

宮本政府参考人 お答えいたします。

 日本年金機構では、スマートフォンやパソコンを使って、いつでも、委員御指摘のような、保険料見込額だとか自身の年金記録を確認したり、年金見込額の試算などを行うねんきんネットというサービスを行っているわけでございますが、このねんきんネットにつきましては、平成三十年十月から、マイナンバーカードを用いてマイナポータル経由で連携することが可能になっております。また、令和三年七月からは、連携機能の改善を行って、より簡単にアクセスをすることができるようになっております。

 また、マイナポータル経由でのねんきんネットの利用者向けのサービスといたしましては、国民年金保険料の未納のあった方で、保険料納付基準に該当する可能性がある場合は、マイナポータルでの申請に必要な基本状況をねんきんネットからマイナポータルに提供することによって、簡単に保険料免除申請を可能とするプッシュ型のお知らせをこの十月から開始をしております。また、今後、国民年金の学生納付特例の申請についても、同様のお知らせをお送りするという予定でございます。さらに、社会保険料の控除証明書の電子データをマイナポータルに提供するサービスをやはり十月から開始をしております。令和五年の一月からは、公的年金等の源泉徴収票を提供するというサービスも同様に開始をする予定でございます。

 このように、マイナンバーカードを保有している方について、ねんきんネットと連携していただくことによりまして、様々なメリットを現時点においても提供しているところでございます。

 引き続き、ねんきんネットの利用者の利便性向上につながるよう、年金事業運営におけるマイナンバーカードを活用したデジタル化の取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

 以上です。

仁木委員 私も年金法の改正がなされたときは落選していましたのでこの場にいませんでしたが、やはり、特に地方においては、冒頭ですけれども、年金で生活されている方が非常に多い。そういう人たちが安心して今お持ちのお金を、経済を回すためにも、地元、地域で使える環境づくりというのは大切だと思います。

 今言ったプッシュ型のサービスがあるとするならば、例えば、そういった年金受給者が、場合によっては、マイナンバーは道路交通法における車の運転免許証との連動もあるとおっしゃっていますので、免許証を返納しちゃって、車を自分で運転していけない、そういった人たちの地域におけるローカルの交通サービスの方を、例えばディスカウントクーポンとかがプッシュ方式で送られて、それを提示すると安い交通費で移動することができるとか。あるいは、バウチャーで、例えば、地域で年金をもらっている、ある程度の制限を設けて、そういう年金の支給額が低い方に対しましては、そういったバウチャーを国から付与するとか。今でも年金生活者支援給付金等々ありますけれども、それも例えばポイント制でやるとか、いろんな、いわゆる、これからDXの年金における浸透においてもそういったことができるようになると思います。

 それと、私がここで申し上げているのは、EBPMのように、いわゆる年金を使ったそういう事業を展開して、実際に年金受給者がどういう行動を行ったか、いわゆる経済的なそういった政策の検証ができるというふうに思います。

 私は、今、税と社会保障の一体改革の中で始まったマイナンバー制度でございますけれども、そういった本当に、受ける国民にいかにメリットがあるか。今の状態では行政的に迅速性とかメリットは感じるわけでございまして、国民にメリットがまだまだ足りないので、そういったことを是非、皆さん、私の、地方の声も今伝えましたけれども、考えていって、年金のいわゆるDX化、そしてそれを政策に反映させる、そして今の苦しい年金受給生活をされている方々の生活をサポートすることが経済にも、地方経済にも寄与するという考え方を理解していただきたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。

加藤国務大臣 まさにマイナンバーカードのメリットをまず周知をしていくということと、そのメリットをより広げていくという、委員の御指摘はそのとおりだというふうに思います。

 今後も利便性の向上に努めていきたいと思いますが、ただ、その際、どうしても考えておかなきゃいけないのが、個人情報をどう保護していくのかということ、これを念頭に置きながらそれは進めていきたいというふうに思っているところでございます。

 それと、あと、年金受給者に対してどういう政策を打つのかというのは、またそれはそれとして、切り離して議論していく必要があるんだろうと思います。

仁木委員 大臣、前向きな御答弁、ありがとうございました。

 また今後とも、そういった前向きな、私も提案もしていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 今日はありがとうございました。

     ――――◇―――――

三ッ林委員長 次に、内閣提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案及び道下大樹君外十名提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤国務大臣 ただいま議題となりました障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 障害者、難病患者及び小児慢性特定疾病児童等の生活を地域や職場等の様々な場面で総合的に支援していくためには、医療、福祉、雇用等の各分野の支援を充実するとともに、相互に連携しながら、当事者を支える仕組みを構築していくことが必要です。

 障害者等の地域生活や就労を支援するための施策の強化により、障害者等が希望する生活を営むことができる社会を実現するため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、障害者の地域生活の支援体制の充実のため、共同生活援助の支援内容として、一人暮らし等を希望する者に対する支援や退居後の相談等が含まれることを法律上明確化するとともに、地域の相談支援の中核的役割を担う基幹相談支援センター及び緊急時の対応や施設等からの地域移行の推進を担う地域生活支援拠点等の整備を市町村の努力義務とすることとしています。

 第二に、障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上を推進するため、障害者の意向、適性等に合った働き方の選択を支援する障害福祉サービスとして就労選択支援を創設するとともに、公共職業安定所はこの支援を受けた者に、その結果を参考に職業指導等を実施することとしています。また、雇用義務の対象外である週所定労働時間が特に短い重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者について、実雇用率の算定対象とするとともに、障害者雇用調整金等の支給方法を見直し、企業が実施する職場定着等の取組への助成措置を強化することとしています。

 第三に、精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制を整備するため、その家族等が同意、不同意の意思表示を行わない場合に、市町村長の同意により医療保護入院を行うことを可能とするほか、医療保護入院の期間を定め、医療保護入院者について、一定期間ごとに入院の要件の確認を行うとともに、市町村長の同意による医療保護入院者を中心に、入院者本人の希望の下、支援員の訪問により入院者本人の気持ちを丁寧に聞き、相談に応じる入院者訪問支援事業を創設し、精神障害者の権利擁護を推進することとしています。また、虐待防止のための取組を推進するため、精神科病院において、従事者等への研修、普及啓発等を行うとともに、従事者による虐待を発見した者が都道府県等に通報する仕組みを整備することとしています。

 第四に、難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する適切な医療の充実を図るため、これらの者に対する医療費助成について、助成開始の時期を申請日から重症化したと診断された日に前倒しすることとしています。また、障害福祉サービス等の各種支援の円滑な利用を促進するため、指定難病要支援者証明事業等を創設するほか、難病相談支援センターと福祉、就労に関する支援を行う者の連携を推進するなど、難病患者を対象とした療養生活環境整備事業及び小児慢性特定疾病児童等自立支援事業を強化することとしています。

 第五に、障害福祉サービス、難病患者等の療養生活等の質の向上に資するため、障害福祉サービス等、指定難病及び小児慢性特定疾病に係る各データベースについて、大学や民間事業者などの第三者に対する提供の仕組み等の規定を整備することとしています。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和六年四月一日としています。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いをいたします。

三ッ林委員長 次に、道下大樹君。

    ―――――――――――――

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

道下議員 ただいま議題となりました障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 重度の肢体不自由者等に対する重度訪問介護サービスについては、かねてより職場や学校、通勤通学中に利用できないことが問題となっており、このことが、重度訪問介護が必要な障害者の方々の就労や就学への大きな障壁となってきました。

 政府は、こうした取扱いになっている理由について、個人の経済活動等に関する支援を公費で負担すべきか、又は、当該障害者を雇用する事業主等が合理的配慮として対応すべきか等の課題があるため、就労、通勤等の経済活動に係る外出時や、就学、通学等の通年かつ長期にわたる外出時の介護は支援の対象としていないと説明しています。

 しかしながら、排せつや食事への介護といった支援の内容自体は、就労や就学をするか否かにかかわらず必要な介助であり、あくまで日常生活の延長線上にある支援であると言えます。

 また、就労や就学中を支援の対象としていない現行の取扱いに対しては、障害者の社会参加を阻害する社会的障壁であるとして、障害者の方々からその見直しが求められております。

 こうした社会的障壁を解消し、障害者の方々の社会参加等を促進するため、我々は、本法律案を提出することとした次第であります。

 次に、本法律案の概要を御説明いたします。

 本法律案では、重度の肢体不自由者等に対する職場又は学校での介護及び通勤又は通学における移動中の介護を重度訪問介護の対象とするため、職場又は学校での介護及び通勤又は通学における移動中の介護を重度訪問介護の定義に加えるとともに、重度訪問介護の対象とならない障害者等に対する職場及び学校並びに通勤及び通学における支援の実施並びに障害者等を雇用する事業主に対する支援の拡充について検討規定を設けることとしております。

 なお、この法律は、一部の規定を除き、令和五年四月一日から施行することとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ御賛同いただきますようお願い申し上げます。

三ッ林委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十七分散会


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