衆議院

メインへスキップ



第8号 令和4年11月11日(金曜日)

会議録本文へ
令和四年十一月十一日(金曜日)

    午後一時十一分開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      畦元 将吾君    上田 英俊君

      勝目  康君    川崎ひでと君

      工藤 彰三君    小泉進次郎君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      高村 正大君    齋藤  健君

      塩崎 彰久君    新谷 正義君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      土田  慎君    西野 太亮君

      橋本  岳君    長谷川淳二君

      平沼正二郎君    堀内 詔子君

      牧原 秀樹君    松本  尚君

      三谷 英弘君    山口  晋君

      阿部 知子君    大西 健介君

      西村智奈美君    野間  健君

      山井 和則君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      遠藤 良太君    吉田とも代君

      古屋 範子君    吉田久美子君

      田中  健君    宮本  徹君

      仁木 博文君

    …………………………………

   議員           早稲田ゆき君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   総務大臣政務官      中川 貴元君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 堀井奈津子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十一日

 辞任         補欠選任

  川崎ひでと君     平沼正二郎君

  小泉進次郎君     山口  晋君

  齋藤  健君     柿沢 未途君

  長谷川淳二君     西野 太亮君

同日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     長谷川淳二君

  平沼正二郎君     川崎ひでと君

  山口  晋君     工藤 彰三君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     小泉進次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案(道下大樹君外十名提出、衆法第一一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言申し上げます。

 与党理事の到着が遅れたことにより、理事会の開会が遅れ、ひいては委員会の開会が遅れたことは、委員長としても誠に遺憾であります。それぞれ注意していただくよう、委員長としてお願いいたします。

     ――――◇―――――

三ッ林委員長 内閣提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案及び道下大樹君外十名提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官三橋一彦君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官堀井奈津子君、健康局長佐原康之君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、保険局長伊原和人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。吉田久美子君。

吉田(久)委員 公明党の吉田久美子です。トップバッターで質問をさせていただきます。

 予定があるということですので、伊佐副大臣にお聞きしたいことを二問、先にさせていただきたいと思います。

 難病法におけるデータベースの整備、効果、利活用についてお伺いしたいと思います。

 本法律案においては、指定難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に関するデータベースについて法的根拠が設けられることとなっております。従来は、医療費助成の申請をした患者について、同意を得た上でデータ登録をしておりましたが、今回、軽症の患者のデータについても登録ができる仕組みとし、データ登録した患者に対して登録者証が発行されることとなっております。

 我が党のマニフェストにおいても、このデータベースの充実や地域の福祉サービス等を円滑に利用できるようにする登録者証の発行を掲げており、このように法律案として整備されることを高く評価をしております。軽症の難病患者を含めた臨床データを収集し、今以上にデータベースを充実させることで、治療法や治療薬等の研究開発が更に推進されることが期待されております。

 まず、従来の予算事業で構築していたデータベースの利活用の状況や研究成果について伺いたい。そしてまた、今回、法律に位置づけ、登録者証の発行と併せて行うことで、今後、データベースの構築にどのような効果が期待され、どのように利活用されていくのかをお伺いしたいと思います。

伊佐副大臣 まず、これまでの予算事業のデータベースの利活用の実績でございますが、令和二年四月から令和四年十月三十一日までに、三十九件の研究プロジェクトに対しまして、延べ約百五十万件のデータを提供させていただいております。

 これによりまして、このデータが利活用されまして、例えば、疫学研究等に活用されておりますが、例えば、指定難病の一つであります肺胞蛋白症では、バイオマーカーと重症度との関連性が明らかになったと学術学会でも発表がなされておりまして、既に一定の成果を得られたものもございます。

 そしてまた、今回、法定化の効果でございますが、これまでは、医療費助成の申請をすることでデータベースに登録をされておりました。つまり、助成の対象とならない軽症者の方については、指定難病に罹患している旨を証明するため自治体が登録者証を発行する事業を創設することと、今回、法律で定めさせていただいておりますが、これは従来、公明党からも提案していただいていたものでございます。

 これによりまして、例えば、軽症の方が障害福祉サービス、これまでは医療機関の診断書が必要でありました。あるいは、就労支援でありますとか、こういうものも登録者証によって支援が受けやすくなるということになります。また、軽症者に関するデータベースへのデータ登録も促進されると、より多くのデータ分析が可能となりまして、研究の一層の促進につながるということでございます。

 更に付言させていただきますと、法定化することによりまして、ほかの医療に係る公的データベースとの連結解析が可能となる。また、障害者のデータベースと連結することで、病状に応じた難病患者等の障害福祉サービスの利用状況の分析を行う、こういうことも可能になりまして、医療のみならず、療養生活を支援する施策の検討あるいは研究の推進に寄与することが期待できるということでございます。

吉田(久)委員 より多くのデータが集まって、患者の皆さんに還元されることを期待したいと思います。

 続きまして、グループホーム関係についてお伺いします。

 本法律案では、グループホームの支援内容として、独り暮らし等を希望する者に対する支援や、退居後の独り暮らし等の定着のための相談等の支援が含まれる点について、法律上、明確化することとしております。また、社会保障審議会障害者部会の報告書、「障害者総合支援法改正法施行後三年の見直しについて」では、いわゆる指定基準において、現行のグループホームにおける独り暮らし等に向けた支援の充実とともに、独り暮らし等に向けた支援を目的とする新たなグループホームのサービス類型の創設を検討すべきと提言されたことを受けて、令和六年度に予定される次期障害福祉サービス等報酬改定に向けた議論の中で、この検討を行われる予定であると承知をしております。

 この独り暮らし等を希望する者に対する支援が充実し、本人が希望する生活を実現できるようになることは、大変重要なことではあります。しかし、この検討に当たっては、独り暮らし等に向けた支援に対する障害福祉サービス等報酬を手厚くする結果、グループホームにおける継続的な支援を希望する利用者に対する支援が手薄になることがないようにしなければならないと思っております。グループホームが安定して暮らせる場であり続けるように報酬体系を整備していくべきだと考えておりますが、この点についての見解をお伺いします。

伊佐副大臣 今、吉田委員が言及していただきました、今回の改正の中で、独り暮らし等に向けた支援を行った場合の報酬上の評価というものだけではございませんで、例えば、先ほどおっしゃっていただいた継続的な支援が必要だという点に関しましては、重度障害者を受け止めていただいている施設に対しての支援、もっとしっかり評価するべきじゃないかというようなことも課題として挙がっておりまして、これもしっかり今後検討を進めていきたいというふうに思っております。

 そもそも、このグループホームは、障害者の地域における住まいの場、地域で安心して生活を継続するための重要な役割なんだ、この前提にしっかりと立ちまして、三年ごとに報酬改定を行っておりますので、恐らく次は令和六年度ということになろうかと思いますが、次期報酬改定におきましても、こうした前提に基づいて、グループホームが利用者の皆さんの希望であるとか、あるいは状態に応じてあるべき支援を行えるように、しっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

吉田(久)委員 ありがとうございます。

 伊佐副大臣、御退席いただいて結構でございます。ありがとうございます。

三ッ林委員長 伊佐副大臣は御退席されて結構です。

吉田(久)委員 続きまして質問させていただきます。

 今国会において、この法案は、障害者当事者の皆様だけでなく、我が国がどういう国を目指していくのか、まさに共生社会、包摂的な社会へと進んでいくのかどうか、内外から注目をされている極めて重要な法案だと認識をしております。

 本年九月、国連における権利委員会が、日本に対して障害者の権利について重い勧告を行いました。障害者権利条約の第十九条、自立した生活と地域生活への包容と、第二十四条、教育の二点が是正勧告されたポイントでありますが、本法案に関連する第十九条の勧告に対する政府の受け止めについて、加藤厚労大臣にお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 本年九月、障害者権利条約に基づく障害者権利委員会が公表した総括所見においては、障害者権利条約の第十九条に関する指摘として、障害者の収容施設を廃止するため、予算配分を入所施設から地域社会で生活するための支援に振り向けること、精神科病院に入院している障害者の無期限の入院をやめ、地域社会での自立生活を推進することなどが含まれているところでございます。

 この総括所見、文字どおり、法的拘束力を有するものではありませんが、厚労省としては、障害者の希望に応じた入所施設等から地域生活への移行、精神障害者の希望する地域での生活の実現に向けて、今回の総括所見の趣旨も踏まえながら、引き続き取り組んでいきたいと考えております。

 今般の改正法案においても、地域移行や地域で生活する障害者の支援体制の充実に向けた取組を進めることとしております。

 具体的には、緊急時の対応や施設等からの地域移行を支援する地域生活支援拠点等の整備を市町村の努力義務とすること、精神科病院における医療保護入院の期間について、その上限を法律上創設すること、精神科病院に対して、障害福祉サービス事業者などの地域生活を支援する地域援助事業者との連携を義務づけることなどを盛り込んでおります。

 障害者の方々が安心して地域に移行し、地域で生活が送れる体制整備、その一層の推進に取り組んでいきたいと考えております。

吉田(久)委員 障害者の皆様に寄り添い、意思を尊重する仕組みの構築が進むようにお願いしたいと思います。

 先ほども触れられておりましたけれども、精神科において、本人の同意なしの入院に、措置入院と医療保護入院とがあるわけですが、あくまで患者本人に必要な、急性期の治療のための、やむを得ない入院ということを明示できることが重要であり、これが、障害者権利条約の委員会からの勧告、いわゆる強制入院を可能とする法律としてみなされないよう整備していくことが求められていると思います。

 そこで、医療保護入院についてお伺いします。

 本法案では、家族等が同意、不同意の意思表示をしない場合でも、市町村長の同意により医療保護入院が可能となっております。大変重要な判断を伴う事柄なだけに、丁寧かつ慎重な運用が求められていることは間違いありません。患者家族等の同意、不同意の意思表示がない場合には精神科病院の判断基準がベースとなるわけですが、この市町村長がこの基準や判断の妥当性を確認する手順等は確立されているのかどうか、確認をしたいと思います。

辺見政府参考人 お答えいたします。

 医療保護入院制度は、患者の権利擁護に責任を有する精神保健指定医が入院治療の必要性を判断した上で、医師から十分な説明を受けた家族等の同意に基づき入院を行うことで、入院治療への患者のアクセスを保障する仕組みでございます。こうした患者の権利擁護を図る仕組みにつきましては、今回の法改正におきましても、基本的に維持されるものでございます。

 一方、今般の法改正によりまして、家族等が意思表示を行わない場合に市町村長同意の対象となるところでございますが、改正法施行後には、医療保護入院に当たり、まずは、病院から家族等に対して、従来どおり、患者本人の入院治療の必要性について説明を行うことに加えて、医療保護入院制度における家族等同意の意義ですとか、同意した家族等に対して入院理由やその期間について書面での通知があるといったようなことについて十分説明を行った上で、家族等の意思を確認することが重要となると考えております。

 こうした説明を行った上で、どうしても意思表示が得られない場合について、市町村において、病院が連絡を取った家族等のほかに家族等がいないか、病院が連絡を取った家族等が病院側から十分な説明を受けた上で意思表示を行わない判断を下しているのかなどの事実確認を行った上で、市町村長として同意の可否の判断の手続に進むということを想定しているところでございます。

 本改正事項の施行に当たりましては、適切な運用が図られるよう、市町村に対して、適切な手続や確認事項について今後、明示してまいりたいと考えているところでございます。

吉田(久)委員 是非、適切で慎重な運用をお願いしたいと思います。

 次に、入院者訪問支援事業についてお伺いします。

 本法律案では、精神科病院入院者のうち、市町村長の同意による医療保護入院者に対し、入院者訪問支援員が精神科病院を訪問し、本人の話を傾聴し、入院中の生活に関する相談、必要な情報提供等の支援を行う入院者訪問支援事業を都道府県が行う任意事業として創設することとしております。

 この事業は、精神科病院の入院患者の権利擁護を図るために非常に重要な取組であり、事業が全都道府県で実施されるようにする必要があると考えます。このための財源の確保も含めた取組方針についてお伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 今回創設いたします入院者訪問支援事業は、家族からの音信が困難な、市町村長同意による医療保護入院者が医療機関外の者との面会交流が特に途絶えやすくなるということですとか、支援者が精神科病院を訪問し、こうした患者を中心にその体験や気持ちを傾聴することを通じて、患者の孤独感や自尊心の低下の軽減を図るというものでございます。

 施行のために必要な予算の確保に努めてまいるとともに、その実績や実施による効果を検証した上で、より一層の充実、拡充なども検討してまいりたいと考えております。

吉田(久)委員 続けてお伺いします。

 入院者訪問支援事業の支援の対象は、制度開始当初は市町村長同意による医療保護入院患者を中心とする予定であると厚生労働省は説明をしております。

 精神科病院は、第三者が病棟に入る機会も余りなく、外部の目が入りにくいという閉鎖性があると指摘をされております。そのような閉鎖的な環境の中で入院生活を送り、患者から見れば大きな権限を持っている医師や看護師に対し、療養環境を改善してほしいという要望があっても、なかなか患者本人から言い出すことができないという話がよく聞かれます。

 このような状況に置かれているのは、この医療保護入院患者だけではないと思います。支援員の養成など、早期に支援体制を整備し、支援対象を精神科病院の希望する全入院患者に拡大していく必要があると考えますが、支援対象の拡大に向けた取組方針についてもお伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 本事業の実施に際しましては、支援員の養成の確保が大変重要だというふうに考えております。都道府県が行う研修をできるだけ速やかに開始していく必要があると考えているところでございます。

 支援を行う者に求められる資質につきましては、現在、厚生労働科学研究において調査研究を行っているところでございます。その結果を踏まえて、都道府県が行う研修の標準的な内容を早急にお示しをいたしたいということで準備を進めております。

 また、Eラーニングの研修を一部に活用するなど、研修の効率的な実施のための検討も進めており、できるだけ早急に支援員の確保を行っていきたいと考えております。

 また、本事業につきましては、段階的、確実に進めていくと考えているところでございますが、まずは市町村長同意による医療保護入院者を中心に事業を展開するわけでありますけれども、その実績や実施による効果を検証した上で、より一層の充実、拡充なども検討してまいります。

吉田(久)委員 関連しまして、本法律案では、入院者訪問支援員の役割として、精神科病院を訪問し、入院患者の話を誠実かつ熱心に聞くこと、入院中の生活相談に応じること、必要な情報提供を行うこと等を規定をしております。このような傾聴や情報提供を中心とした役割だけでは、患者の権利擁護は十分に行えないのではないかという懸念も指摘をされております。

 本法律案の施行後、支援員の役割が入院患者の権利擁護に資するように十分に機能しているかという点について、事業の実施状況を調査、分析し、必要があれば入院患者の意向を病院側に代弁するなど、支援員の役割を見直す必要もあると考えますが、この点についての見解をお伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の入院者訪問支援事業でございますが、精神障害をお持ちの当事者など幅広い関係者とともに検討を重ね、その支援内容について、これまでのモデル事業や調査研究等により蓄積されたノウハウも踏まえまして、支援者が本人に寄り添いながら患者の体験や気持ちを丁寧に聞くことを通じて、患者の孤独感や自尊心の低下の軽減を図るというものとしているところでございます。

 したがいまして、入院者訪問支援員の方につきましては、精神医療保健福祉に関する制度や現状、精神科医療における障害者の権利擁護の実践、傾聴を中心とする支援の方法など、国で標準化した基礎的な研修の受講を修了した者に担っていただくスキームとしたいと考えているところでございます。

 その一方で、都道府県における本事業の実施状況やその効果を、実態をよく把握しながら、必要な見直しと改善についても検討してまいりたいと考えております。

吉田(久)委員 しっかり入院患者の皆さんの権利擁護も進めていただきたいと思います。

 次に、基幹相談支援センターの設置促進についてお伺いしたいと思います。

 地域の相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターの設置は、増加傾向にあるものの、設置市町村は、令和三年四月時点で約半数にとどまっております。

 本法律案は、基幹相談支援センターの設置について、市町村の努力義務とすることとしておりますが、その整備に係る費用については、その一部が補助の対象となっているものの、予算額が限られており、十分な運営費の確保が難しく、そのことが設置が進まない主な原因であるとの指摘もあります。

 財政的措置も含めた今後の基幹相談支援センターの設置促進策についてお伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 市町村における基幹相談支援センターの設置を促進していくに当たりましては、財政面やノウハウ面での市町村への支援が必要であるということについては、御指摘のとおりと考えております。

 今回の改正法案におきましては、市町村における基幹相談支援センターの設置の努力義務化と併せまして、都道府県による市町村への基幹相談支援センターの設置の促進や適切な運営のための広域的な支援の役割を明記したところでございます。

 また、今後、国におきまして、自治体に対する基幹相談支援センターの設置促進や機能充実のための必要な予算の確保に努めるとともに、全国会議等を通じまして、都道府県による広域的な支援や、市町村による設置に向けた働きかけですとか、基幹相談支援センターの業務を担う人材の計画的な養成、地域の事業者のネットワーク化などの相談支援体制の構築について、好事例の収集と周知など、基幹相談支援センターの設置促進にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(久)委員 続きまして、本法律案による就労選択支援という新たなサービスが創設されるわけですが、就労アセスメントの手法を活用することにより、障害者本人の希望、就労能力及び適性等に合った就労先や働き方につながることが期待をされております。

 今後、この就労選択支援を行う人材の養成や支援体制の整備を行うに当たっては、地域格差が生じないよう、全国どこでも質の高い就労選択支援のサービスを受けられるように整備を進める必要があると思いますが、この点についての取組もお伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 今回の改正法案において創設いたします就労選択支援につきましては、より専門的で質の高い支援を実施するため、指定基準の検討や適切な運営の確保、人材育成、多機関との連携の仕組みなどの整備を進めてまいりたいと考えているところでございます。

 具体的には、事業所の指定基準として、例えば、就労支援に関する一定の経験を有する人材の配置ですとか、障害福祉サービス事業者等からの収益収受の禁止を始めとした中立性の確保などを含めまして、有識者の御意見も伺いながら検討をしてまいります。

 また、新たな支援を提供する事業所の人材育成に向けて、十分な準備期間を確保しつつ、全国共通の研修体制の構築を図ることが必要であると考えており、今後、支援手法を整理するとともに、その習得のためのカリキュラムや教材を開発した上で研修を実施し、専門人材の養成を進めてまいります。

 こうした人員、運営等に関する基準の設定や、研修体制の構築によりまして、全国的に一定の支援の質を確保した上で施行できるように取り組んでまいります。

吉田(久)委員 次に、障害者の雇用調整金等の減額の影響についてお伺いしたいと思います。

 本法律案では、週所定労働時間が特に短い精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者を事業主が雇用した場合に、実雇用率において算定できるようにすることとしております。これは、週二十時間未満の労働時間であれば働くことができる者の雇用機会の拡大につながるものであり、大変評価をしております。

 一方で、障害者雇用納付金制度において、限られた財源を効果的に運用するため、調整金及び報奨金の支給対象人数が一定数を超える場合、当該超過人数分の支給額を調整することとしております。一定数や調整後の単価は政省令で規定され、支給額は現行より減額される見込みでありますが、影響を受ける企業の理解を得られるように検討を進めるべきだとは思いますが、どのようにされるおつもりかをお伺いしたいと思います。

堀井政府参考人 お答えをいたします。

 今後、更なる障害者雇用の進展を図る上では、障害者の雇用の場を確保することに加えまして、障害者一人一人が能力を十分に発揮をし活躍できる機会の確保等、雇用の質の向上に重点を置いて推進をしていくことが不可欠と考えております。

 そのため、今般の改正案におきましては、一般に、障害者雇用に要する費用は、雇用者数が増えるほど逓減をしていく傾向にあることを踏まえまして、一定の数を超えて障害者を雇用している場合に、その超過分の調整金等の額について一定の調整を行うこととし、これにより、雇用の質を高めるという観点から、企業が実施をする障害者の職場定着等の取組に対する支援等に活用することで、事業主支援をより一層推進をしていくこととしております。

 この方針につきましては、労働政策審議会で使用者団体も含め御議論の上、御理解をいただいているものではございますが、さらに、調整金等の調整が行われる対象企業を中心に十分な御説明を行うとともに、障害者雇用に関する個々の企業の取組状況や支援ニーズ等についてヒアリング等を行いまして、これらの結果を踏まえ、効果的な支援策となるように検討しているところでございます。

 引き続き、企業の積極的な取組を支援するとともに、丁寧な周知に努めてまいります。

吉田(久)委員 それでは、最後の質問をさせていただきます。

 近年、雇用されている障害者の数は、身体障害者や知的障害者と比べて、精神障害者の伸び率が大きいと言われております。この状況について、企業側は身体障害者や知的障害者より精神障害者の方に多く仕事を任せようとしているのではないかという不安の声が、こちらの方に寄せられております。

 ハローワーク等の就労支援機関は、雇用面で障害種別による差異が生じないように丁寧に対応すべきではないかと思いますが、これについてお答えをお願いしたいと思います。

三ッ林委員長 堀井審議官、答弁を簡潔にお願いいたします。

堀井政府参考人 お答えいたします。

 障害者雇用を進めるに当たりましては、障害種別にかかわらず、個々の特性や課題等を踏まえたきめ細かい支援を行うことが重要と考えておりまして、ハローワークが中心に、地域の関連機関と連携をして、障害者向けのチーム支援ということで、募集の準備段階から職場定着まで一貫して支援を行ったり、あとは、職場に専門のスタッフが出向いて、障害者、事業主双方に対する支援を行うジョブコーチ支援などを通じて、現在、就職の実現と職場定着を図っております。

 引き続き、どのような障害の方であっても、それぞれの特性に合わせて能力や適性を十分に発揮をして活躍できるように、支援を実施してまいります。

吉田(久)委員 時間になりましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、山井和則君。

山井委員 三十五分間、質問をさせていただきます。

 前半は障害者の法案について、そして後半は、今、十一月、児童虐待防止強化月間でありますので、統一教会、エホバの証人に関係して、児童虐待防止、今回、加藤大臣がSNSでの啓発のツイートも流していただきました。大変皆さん、喜んでおられます。そのことについても、後半、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、加藤大臣、四年前に、覚えてくださっているかと思いますが、京都府宇治市の知的障害者の通所施設の保護者会の会長の加治屋勝枝さんなどとお目にかかっていただきまして、そのときは、障害者の方々の通所施設などの食事加算をなくさないでほしいということがこの厚労委員会で大変問題になりました。そのとき、大変お忙しい中、加藤大臣、加治屋勝枝さんを始めとする施設の保護者会の方々にお目にかかっていただきまして、最初二十分ぐらいと言われていたのを、一時間ぐらい時間を取ってくださったということで、当時は自民党の安藤裕衆議院議員が同席してくださったと聞いておりますけれども、大変喜んでおられました。優しい優しい大臣で、自分たちが持っていった、当事者の方々が作られた品物を早速大臣室に飾ってくださって、すごく優しい方だったと大変喜んでおられまして、私も、今でも会うたびに、その方々からのお話をお聞きいたします。

 そして、その方々が、今回の法改正について非常に不安を持っておられるんです。御存じのように、今回、通過型のグループホームというのが法制化されるんだと。一歩間違うと、そのことによって、今までついの住みかと言われていた知的障害のグループホームが、通過型になって、ついの住みかでなくなるんじゃないかということで、多くの当事者の方、また保護者の方、施設の方々は大変心配をされているんですね。

 もちろん、私も、もう一年以上、厚生労働省とは、そういうことには絶対ならないようにしてほしい、知的障害の方がグループホームから意に反して追い出されることは絶対にあってはならない、そういうことにならないでほしいということを、実は一年以上前から厚生労働省さんにもお願いをさせていただきましたし、この間、きょうされんの方々からも要望をいただいておりまして、そのことも厚生労働省と協議をずっと続けてまいりました。そういう中で、かなり厚生労働省も、当初の案よりはマイルドにというか、当事者の方々、現場の声を取り入れてくださったというふうに理解をしております。

 そういう中で、まずお聞きしたいんですが、今回の法改正によって、知的障害のグループホームに関して、意に反して出されるんじゃないか、独り暮らしを強いられるんじゃないか、ついの住みかでなくなるんじゃないかという非常に大きな不安がありますけれども、そのことについて、加藤大臣、お答えください。

加藤国務大臣 まず、今般の改正案は、グループホームにおいて独り暮らしを希望する利用者に対する支援ということでありまして、共同生活住居における日常生活上の支援に加えて、独り暮らし等に向けた支援や退居後の独り暮らし等の定着のための相談等の支援が含まれている点、これは障害者総合支援法で明確化するものであります。

 グループホームは、障害者の地域における住まいの場として、地域で安心して生活を継続するための重要な役割を担っております。グループホームにおいて共同生活を希望する者については、改正後もこれまでどおりグループホームを利用できる仕組みとするものであります。

山井委員 そこは非常に重要なところで、やはり、特に保護者の方々としたら、親亡き後というのが非常に心配なんですね。自分たちがいなくなった後、ついの住みかと思っていたグループホームを追い出されるんじゃないか。そうであれば、何のためのグループホームなんだという不安が非常に今回の法改正において高まっております。

 そこで、お伺いをしたいんですけれども、当然、知的障害の方々もお年を召されて、どんどん高齢化していかれたり、あるいは重度化されるわけですね。そういう年を取って重度化されたり高齢化しても今住んでいる知的障害のグループホームに入居を続けられるようにしてほしいと思いますが、加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 グループホームを住まいの場として希望する方が安心して住み続けていただく、そして、実際、今、障害の方が重度化したり、あるいは高齢化したりするということがあります。そうした事態にも対応した支援の充実を図っていけるよう、我々としても体制整備をしっかりと進めていきたいというふうに考えております。

山井委員 やはり、知的障害の方々を、どうやって親亡き後も安心して長生きをしてもらえるのか、それを社会全体でどうやって支えていけるのかというのは、本当に私たち政治、そして行政の大きな責任であると思います。ですから、今回の法改正によって、意に反してグループホームを追い出されることがない、そういうふうなことを確認させていただきました。

 同時に、はっきり言いまして、やはり知的障害の方々というのは意思表示というのが難しいんですよね。そういう意味では、やはりそのときに丁寧に、本当に、誘導尋問したら誘導されてしまいかねない方もおられるわけですから、そういうことではなくて、本当にその方の御意思を尊重していただきたいですし、先ほど申し上げました保護者会長の加治屋さんなんかもおっしゃっておられましたけれども、少なくとも自分たちの周りでは、独り暮らしをしたいという知的障害の方というのは聞いたことがないと。だから、そういう意味では、通過型の独り暮らしできるグループホームを増やすよりは、そもそもグループホームが足りなくてみんな困っているんだから、グループホームの数を増やしてほしいということをおっしゃっています。

 私も、議員になって、当選八回、二十三年ですけれども、二十三年間、地元の障害者施設の関係の方々、保護者の方々、当事者の方々からは、ついの住みかのグループホームを何とか増やしてほしい、グループホームに入居できるまでは親も安心できない、そういうことをずっと言われておりました。

 そういう中で、今回、通過型によってグループホームから知的障害の方を追い出すんじゃないですよということは分かるんですけれども、やはりそれとセットで、今までのグループホームをもっともっと増やしていってほしい、知的障害者のグループホームを増設するスピードを今よりアップすべきではないかと思いますが、加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、今回の制度の運用に当たって、今委員から御指摘があったように、グループホーム側が本人の希望や意思に基づいてサービスの提供を行っていくことが大変大事でありますので、法の施行に当たっては、グループホームのサービス管理責任者や相談支援専門員等が本人の希望を把握をし、意思決定の確認を丁寧に行い、そして支援をしていく、そのことをまず周知をさせていただきたいと思います。

 また、グループホームを含む障害福祉サービスについては、各市町村が地域の障害福祉ニーズを把握して障害福祉計画を策定して、計画的な整備を推進してきたところであります。

 グループホームについて申し上げると、事業所が平成二十六年の約七千か所から令和三年の一万一千か所、利用者が平成二十六年の約九・六万人から令和三年の十五・七万人になるなど、必要な整備を進めてきましたが、同時に、需要もそれだけあるということであります。

 グループホームを含む障害福祉サービス事業所については、社会福祉施設等施設整備費補助金によって基盤整備を図っておりますが、この補助金については、令和四年度当初予算において約四十八億円を計上し、今般の補正予算において、国土強靱化の推進と障害者の社会参加及び地域移行を推進するための受皿等の整備として、今の四十八億円とは別に、合計約九十九億円を計上したところでございます。

 こうした予算をしっかり活用して、必要な施設整備を図っていきたいと考えております。

山井委員 もちろん、防衛から経済、農林水産業の振興、様々な予算を私たちも重視をしているわけですけれども、私はやはり、そういう中でも、この障害者福祉、特にこのグループホームというのは最優先課題の中の最優先課題だと思うんです。

 二〇〇九年から二〇一〇年、民主党政権で、長妻厚生労働大臣、私は政務官で予算編成とかさせてもらいましたけれども、そのときも、今でも覚えていますけれども、ほかをちょっと、厚生労働省の予算、申し訳ないけれども、ちょっと我慢してでも障害者の予算あるいはグループホームの予算だけはちょっと増やそうよ、そんな議論を、今からもう十年前ですけれども、させていただいたことは覚えておりますので、是非ともこの知的障害者のグループホームがこれからも増えるようにしていただきたい。

 それで、もう一問、それに関して、やはり新設ですね。運営費を出すのは当たり前なんですけれども、知的障害者のグループホームの新設の補助金の予算が少な過ぎる。これによって、毎年増やせる数が足りないわけですから、この新設の補助金の予算をもっと大幅に増やすべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 先ほど社会福祉施設等施設整備費補助金のことを申し上げさせていただきましたので、これについて、今委員御指摘のように、当初予算の四十八億円に加えて補正予算で合計約九十九億円を計上しているところでありますので、こうした予算をしっかり活用して、施設整備、グループホームの整備、これを進めていきたいと考えております。

山井委員 これは質問はしませんが、要望にとどめますけれども、それに関連して、通所の知的障害者の施設に行きますと、身体障害者、精神障害者の方々も同じなんですけれども、やはり工賃が低過ぎる、もうちょっと工賃を上げてほしいと。雨の中、風の中、雪の中、様々な作業をして汗だくになっても本当に一万円いかなかったり、本当に今安過ぎる、これを引き上げてほしいという要望がありましたので、これはお願いしたい。それと、こういう大切な尊い仕事をしてくださっている障害福祉職員さんの処遇がやはりまだまだ悪い。この十月から三%上がるとはいえ、これをもっと上げていただきたい、このことは要望としてお願いを申し上げたいと思います。

 また後で障害者の福祉の質問に戻りたいと思いますが、ちょっと話題を切り替えて、今月は児童虐待防止月間になっております。そして、今、統一教会やエホバの証人のようなカルトの問題が大きな問題になっております。

 今日の配付資料にもございますが、今日の配付資料の五ページ目の右。昨日付で厚生労働省が、宗教が理由でも児童虐待は許されません、子供に暴力を振るうことや食事を何日も与えないといった行為は宗教が理由でも児童虐待であり、許されません、お子さん自身や身の回りの方が虐待を受けている場合は、児童相談所虐待対応ダイヤル一八九に御連絡をということをツイッターで流していただきました。

 先週、私のこの質問の中で、一般国民向けにツイッターで来週中に流してほしいということを要望しましたら、そのことを受けてこういうことを昨日やっていただき、これは本当に被害者の方々、関係者の方々も大変喜んでおられます。児童虐待防止対策室長の羽野室長を先頭に、加藤厚労大臣も、この宗教的虐待という問題に、先日も、十月六日、通知も出していただきましたし、今度、年内にはQアンドAを作って、どういうものが宗教的な虐待に当たるのかということについて取り組んでくださっていることに大変皆さん感謝をしておられます。

 そこでなんですが、あえて私申し上げますと、前回も申し上げましたけれども、私も高校が仏教の高校でして、社会の雑巾になって社会をきれいにしなさいという仏教思想をたたき込まれまして、その結果、福祉や政治に関心を持ったということもありますので、最初に申し上げておきますけれども、私は、宗教というのは人間にとってとっても大切なもの、すばらしいものだというふうに思っております。

 しかし、これからお話ししますような統一教会やエホバの証人のような、一部でカルトではないかというふうなそういう非難を受けている、そういう行き過ぎた行為に関しては、このツイッターにもありますように、幾ら宗教という名において行われていても児童虐待だということで、厳しく取り締まって子供を守る責務が加藤大臣を始め私たち国会議員にあると思うんですね。

 そこで御質問させていただきたいんですが、例えば、配付資料の五ページの左、今週月曜日、ここに写真が載っております、仮名でありますけれども、エホバの証人の被害者であります夏野ななさんという方が、私たちの勉強会で証言をされました。

 様々な被害を訴えられましたけれども、毎日新聞の記事にもありますように、小さいとき、居眠りなどをすると、家族にトイレに連れていかれ、平手やベルトでたたかれたと。残念ながら、エホバの証人は、今は余りやっていないと言われているんですけれども、以前は、むち打ちをするということで非常に問題になっておりました。

 具体的には、六ページに、その勉強会での夏野ななさんの発言がございます。読んでいただければと思いますが、途中、抜粋しますと、小さいときに、集会中に声を出したり、真面目に話を聞いていなかったり、居眠りをしたり、手遊びをしたり、ノートに落書きをしたなどがあると、トイレに連れていかれ、むちをされます。むちというと、皆さんなかなかイメージが湧かないと思いますので説明すると、まず下着を取られ、お尻を出した状態でたたかれるというもので、我が家の場合は、ごく小さいうちは平手、その後は父親の革ベルトでした。同じ組織の信者同士の間で、何を使えば子供に効率的にダメージを与えられるかという話合いが、日常的にエホバの証人の間で行われていました。ですから、これは決して一家庭としての問題ではなく、組織的に体罰が推奨されていたということを意味します。ガスホースや布団たたきや竹の物差しなどでたたかれている子供もいました。むちの回数などですが、うちの場合は決まっておらず、親の気が済むまででした。皮膚も裂けてミミズ腫れになるので、座ることやお風呂に入るのが地獄でしたと。

 そして、こちら、右に行きます。

 小学校の高学年の頃にもむちで打たれました。毎日、いつ自殺しようか、本気で悩んでいました。当時、団地の五階に住んでいたので、毎日ベランダから下を見て、ここから飛び降りれば死ねるかどうか考えていましたが、実際に飛び降りる勇気はありませんでした。これに関しては、今でも、あのときに飛び降りていればよかったと思っていますと。

 本当に壮絶な、悲惨なお話をお聞きしました。

 そのことに関係して、七ページ、「よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話」ということで、ここの中の漫画、詳しくは言いませんけれども、むちに打たれるお子さんたちの漫画が出ております。余りにも悲惨な漫画ですので、ちょっと必要なところはグレーで網かけをさせていただきました。余りにも悲惨なので。

 そして、その次の「カルト宗教信じてました。 「エホバの証人二世」の私が二十五年間の信仰を捨てた理由」、こちらの漫画の中にも、詳しくは読みませんけれども、少し姿勢が崩れたとかペンを落としたという理由で何十回というむち打ちを、泣いたり叫んだりすると回数が増えるそうです、終わった後は、ありがとうと言わねばなりませんと書いてありました。

 こういうのを見たときに、これはもちろん過去のこととはいえ、宗教という名の下においてこんなむごいことが行われていたのかというのは、私も、本当に政治家として、今までこういう問題が放置されていたことに反省をしております。

 そこで、加藤大臣にお伺いしたいんですが、このことについて、五ページにありますように、こういう記事が出たんですね。それに対して、エホバの証人の広報担当者が、毎日新聞の取材に次のように答えております。聖書の教えに基づき、子供は愛情を持って育てるように伝えている、方法は各家庭で決めることだが、体罰をしていた親がいたとすれば残念なことだ、教えを強制することもしていないというふうに、組織的に行ったであろう虐待を、親に責任転嫁するかのようなコメントをしておられます。

 これについて、加藤大臣、いかが思われますか。

加藤国務大臣 個別の詳細は承知をしておりませんが、宗教二世の方から、保護者から教団の集会への参加を強制し、そこで寝てしまった際に暴力を振るわれた、学校行事への参加を禁止された、交友関係を制限された、こういったことがなされたとの報道があることは承知をしております。

 これまで申し上げているように、宗教の信仰を含め、どのような理由があるにせよ、児童虐待は許されないというものであります。そのことは、保護者に限らず、広く国民の方々に御理解いただく必要があります。

 また、団体の関与の有無にかかわらず、児童虐待が行われている場合には、児童相談所等において児童の安全を確保するために一時保護等の対応をする必要もあると考えております。このため、宗教二世の方々からの相談に対して、児童相談所等の虐待対応の現場において適切に対応できるよう、具体的な対応、留意点を整理したQアンドAを年内に作成、周知することは前回御説明をさせていただきました。また、現在国会に提出中の懲戒権を削除する民法改正案が成立した暁には、その趣旨を広く国民に向けても周知していきたいと思っております。

 こうしたことを進めて、児童虐待防止対策の徹底を図りたいと考えております。

山井委員 私、今のむち打ちは一例で言ったんですけれども、繰り返し言います。私は、宗教というのは人間にとってとても大切なものだと思います。しかし、一部、こういう行き過ぎた、宗教の名において事が行われている、このことによって真っ当な宗教も私は迷惑を被るというふうに思います。

 配付資料十六ページ、統一教会被害者二世の小川さゆりさんの資料をお配りをいたしました。簡単に読み上げます。

 小さい頃からお小遣いはなし、両親が信者、多額の献金。誕生日、クリスマスもプレゼントはなく、髪を切るお金ももらえず、父におかっぱ頭にされたりするので髪は私も兄弟も自分で切っていた。服も学校に必要なものも使い古したもらい物ばかりで、小学校全期間いじめられた。修学旅行には何とか行かせてもらえたが、決まってお小遣いは少なく、お土産は絶対買ったら駄目と言われた。卒業アルバムを買ってもらえず先生たちに心配された。高校一年生から卒業後五年間、バイト代二百万円を没収された。その結果、心が病んでしまい、精神病院に一時期入院したこともあったということなんです。

 こういうふうにして、子供にお金をかけるべきじゃない、そんな余裕があるんだったら、どんどんどんどん献金をしなさいというのが統一教会の多くの教えであったりするというふうに私も聞いております。

 そういうことで、一般論としてお聞きします、個別論は加藤大臣もお答えできないと思うので。一般論としてお聞きしますが、結局、こういう教義や献金の理由によって、子供のとき、服を買ってもらえない、散髪に行かせてもらえない、見た目の貧しさからいじめに遭った、このようなことは児童虐待に当たるでしょうか。

加藤国務大臣 まず、生活が厳しいということで児童虐待になるかどうかというのはもちろんあるわけですが、例えば、子供の下着等を長時間不潔にするなど衣服が極端に不適切な状況のままにする行為、これはネグレクトに該当し得るものと考えております。また、今お話がありました、子供の意に反してアルバイトの給料を取り上げ、子供の現在の生活や将来の進路等に全く資さない形で浪費する等の行為は、個々のケースの事情によっては心理的虐待やネグレクトに該当することもあり得ると考えております。

 そういったことで、私ども、子ども虐待対応の手引きというものを出させていただいておりますので、それで明らかに該当する場合、また今回、そこまで言及されていない場合もありますので、しっかりそういったことも念頭にQアンドA等を策定していきたいなというふうに思っております。

山井委員 これは本当に、今まで宗教だからということで見過ごされていたけれども、恐ろしい問題が今起こりつつあって、残念ながら、自ら命を絶ちたいというような相談も未成年の方々から今寄せられているわけです。何とかこれは私たちは命を救わねばなりません。

 例えば、こういうことがあるんですね。子供のとき、あなたは神の子だから、他のサタン、悪魔ですね、サタンの子供とつき合わないように言われ、交友関係を制限され、そのため孤立していじめられる。テレビ、漫画はサタンが制作しているので、恋愛物などを中心に一般のテレビ、漫画は多くが禁止され、そのためクラスメートの会話に加われず、不登校になったケースもある。

 こういうふうに、教義によって、ほかの子供は悪魔の子だ、サタンの子だ、あなたは神の子だ、だからそれほど深くつき合わないでください、こういう教えを受けて、その子供は幸せになれるんでしょうか。残念ながら、私も、二十人ぐらいの統一教会の被害者の方、また、エホバの方にも数人お目にかかりましたけれども、不登校になってしまった、一番極端なケースは、未成年のときに自殺をされた、そういうケースがかなりあるんです。

 加藤大臣、こういうふうに交友関係を制限される、別に殴る、蹴るじゃないですよ、でも、つき合うな、深く友達をつくるな、これはやはりむごくないですか。こういうのは児童虐待に当たりますか。

加藤国務大臣 その行為の一つを取ってそれが直ちにというのはなかなかどうかなという感じがしますけれども、それが社会的通念に照らして非常に過度なものであったり、またそうしたことが長期間にわたって繰り返し繰り返し行われる、こういった場合には、今お話があった、子供さんによっては自殺に追い込まれるとか様々な精神的な影響を受けるということ、そうした心身に深刻な影響が生じているような場合には、これは虐待に当たり得るものというふうに考えます。

山井委員 おっしゃったように、結局これは誰かが救わないと駄目なんです。私もこの統一教会のこと、エホバの証人のこと、かなりこの三か月取り組んできましたけれども、一つ言えるのは、一番の被害者は子供であるということなんですよ。本当に大変な御苦労をされています。

 繰り返し言いますよ。やはり、宗教のおかげで幸せになっている御家庭も私は多いと思います。最初に言ったように、私も高校は仏教の高校でよかった、そのことによっていい人生、幸せに送れたと感謝しています。多くの宗教はそうなんです。でも、一部のカルトと言われる宗教は、子供の人生を壊しかねないんです。

 もう一つ、恋愛禁止についてもちょっと御質問したいと思います。

 エホバの証人や統一教会では、結婚前の恋愛を禁止、結婚は信者同士という形になっていて、例えば、高校生が彼氏ができたら、親は、地獄に落ちるから別れなさいと無理やり別れさせられる。やはり私は、それは親が関心を持って、この人はつき合ったら駄目よ、それはあると思うんです、はっきり言って。それはあります、いいんですよ。問題は、地獄に落ちるから別れろと言って、なぜかというと、教義が、娘さん、息子さんが恋愛したら家族全体が地獄に落ちるという教義なんですよ。これはやはりあんまりだと思うんですね。その結果何が起こるかというと、やはり男女関係、うまくつき合いにくくなって、幸せになりにくいということなんです。

 そういう意味で、別に、恋愛禁止、恋愛自由、それは家庭の自由ですよ、はっきり言いまして。でも、恋愛したときに、地獄に落ちるとか、そういうことで無理やり脅して別れさせる、こういうふうなことをやって子供が幸せになるのか。これも児童虐待に当たるんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 今お話があった、交友関係を制限する、あるいは恋愛を禁止をする、あるいは結婚に対してそれを阻害する、こういったことがまさに言葉等の脅迫などによって行われるということであれば、これはそれぞれ、社会活動を過度に阻害する行為は心理的虐待、こうしたものに該当するという場合もあるんだろうと思います。

山井委員 本当に、私は非常に重要な答弁だと思います。

 そういう意味で、今回、QアンドAを作っていただいて、こういうケースも宗教が理由であっても虐待に当たり得るよ、児童相談所に相談していいよというのが、今厚生労働省が羽野室長を先頭に取り組んでくださっていることだと思います。

 そこで、ちょっとまとめてお聞きしたいんですけれども、これは質問通告しておりますので、以下の九点、ばっと言いますので、虐待に当たるもの、当たらないもの、通告しておりますのでお答えください。

 一番目、むち打ち。二番目、数日間一切食事をさせない。三番目、恋愛禁止。四番目、大学進学禁止。五番目、アルバイト代の没収。六番目、高額献金や子供にお金をかけない教義により服を買わない。七番目、サタンとはつき合うなという教義により交友関係の制限。八番目、漫画やテレビの禁止。九番目、輸血禁止。こういうふうなもの、どれが虐待だと思われますか。

加藤国務大臣 まず、明らかにという思いでは、むち打ちと、それから、本来的に与えるはずの食事を数日間にわたって意図的に与えない行為、輸血が必要な場合に禁止する行為、これは身体的虐待やネグレクトに該当するんだろうというふうに思います。

 その他の行為については、先ほど申し上げましたけれども、それが直ちに当たるかどうかというのはなかなか判断し得ないところがありますけれども、過度であったり長期にわたって繰り返されるといったことで子供の心身に深刻な状況が生じたような場合には、これは虐待に当たり得るものというふうに考えております。

山井委員 これも非常に重要な答弁です。

 つまり、ポイントは、合わせ技というかトータルなんですよ。一つ一つは虐待じゃないかもしれないけれども、それが一歳から十八歳、全部これをされた場合、その方が幸せな人生を歩みやすくなるか。繰り返し言いますけれども、こういう宗教でも、エホバや統一教会でも私は幸せだという方はたくさんおられると思います。しかし、これによって被害を受けている方もおられるんです。

 そこでお伺いしたいんですけれども、こういうふうな教えをトータルで十八歳まで、交友関係もかなり制限されて教えられた方というのは、やはり組織的、集団的な児童虐待の疑いがあるのではないか。今言いましたように、交友関係制限、余りお金もかけてもらえない、大学にも余り行くなと言われる、そういうふうなことで子供は幸せになるのかということなんですけれども、あえて申し上げますが、普通の宗教のことは言いません、カルトではないかという批判が出ている統一教会やエホバの証人に関しては、やはり児童虐待的な疑いを言わざるを得ないと思います。

 そういう意味では、これは、文化庁は指導はできません、はっきり言いまして。児童虐待防止の観点から、厚生労働省、加藤厚労大臣の方から、今おっしゃった内容で結構です、これこれこれが虐待というよりも、トータルでネグレクトあるいは心身に被害を及ぼしかねないということで、こういう統一教会やエホバの証人に対して指導なりをしていただくわけにはいきませんでしょうか。

加藤国務大臣 今まで議論したのは、例えば児童福祉法の上においてということでございまして、児童福祉法上の作りというのは、指導対象はあくまでも保護者ということになります。委員の御指摘のような団体に対する指導を児童相談所が直接行うということは、今の法律の建前からしてなかなか難しいかなと思っておりますが、他方、厚労省としても、児童虐待から子供を守る必要性は強く認識をしております。今お話があった団体等の第三者による教唆によって保護者が児童虐待を行っている場合、こういった場合には、警察とも連携して対応することが重要と考えております。

 従前から児童相談所に対し警察と迅速に情報共有を図る等の連携についてもお願いしているところであり、引き続き、こうした対応を徹底していきたいと考えております。

山井委員 おっしゃるとおり、親が悪いという問題ではないんですよ。教えに基づいてこういうケースが極めて多いということなんですね。

 そこで、今回のQアンドAを作るに当たって、加藤大臣も、どのような具体例がよいのか、宗教的虐待の定義、これは駄目ですよ、これはオーケーですよとか、どのような具体例がよいかも含め、当事者や支援者の方の御意見も伺いつつ作成するというふうに加藤大臣もおっしゃっておられます。

 ついては、加藤大臣が、統一教会の二世被害者の、仮名でありますけれども小川さゆりさんや、エホバの証人の二世被害者の夏野ななさんなど、統一教会やエホバの証人の被害者の方々に直接面会をしてお話を聞いていただき、担当者の方々とともに、それでよりよいQアンドAを作っていただきたいと思うんですが、加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今、大事なことは、そのQアンドAをできるだけ早く作るということでありまして、それについては、厚労省、これは事務的にということになりますが、当事者や支援者の御意見も伺いながら、この作業をまずしっかり進めさせていただきたいと思っております。

 私自身、今まさにちょうどこの法案を含めていろいろな審査をしておりますので、なかなか、どのタイミングというのを今申し上げることは難しいんですが、そういった方々からお話を聞くタイミングというものも探していきたいと思っておりますが、まずはこのQアンドAの作業、これをしっかり進めさせていただきたいと思います。

山井委員 加藤大臣がお忙しいことは私もよく分かっておりますので。ただ、今もおっしゃったように、タイミングがもし合えばということで、もし可能でしたら、短い時間でも見つけてタイミングをつくっていただいて、小川さゆりさんや夏野ななさんを始めとする、やはり被害者本人のお話を聞いていただければと思います。

 私も、昨日、今日と、電話とかあったりして、五人の方のお話をお聞きしましたけれども、例えばある方は、高校に行きたいと言ったら、誰がお金を出すのと言われた、結局、高校に行かせてもらえず、家出をして高校に行ったと。高校にって、その学費、誰が払ったのと聞いたら、親は払ってくれないから、結局コンビニでアルバイトして、コンビニは時給が安いんだけれども、廃品というんですかね、売れ残りをもらうことができる。売れ残りをもらって何とか生き延びることができたということをある被害者の方はおっしゃっておられました、統一教会の被害者の方ですけれども。

 やはり話を聞くと異常ですよね、異常。どう考えても、これはネグレクトですよ、はっきり言いまして。それで、その方に聞いたら、やはり、統一教会に入っていなかったら、そこまでのひどい仕打ちは当然されなかったと思う、一方、家の中には数百万するつぼがたくさんあって、献金はたくさんしていたと。やはり、そういう意味では、これは個人とか家庭とか親の問題ではなく教義の問題だ。

 もうこれで終わりますけれども、文化庁はなかなか宗教団体には指導もできないんです、今回、質問権はされますけれども、なかなか指導はできないんです。そういう意味では、とにかく子供を児童虐待から守るという観点で、加藤大臣、羽野室長を始めとして厚生労働省の皆さんに、是非とも子供を、繰り返し言いますけれども、宗教だからじゃないんですよ、どんな理由があろうと児童虐待から子供を守らねばならない、それが宗教的な教義であっても、それは例外なく守らねばならないということで御尽力いただければと思います。

 ありがとうございました。終わります。

三ッ林委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 先ほどは山井さんが、子供たちの命あるいは権利を守るために喫緊に大臣に要請したい、そうした旨をるる御質問されました。

 冒頭、恐縮ですが、国家による、いわゆる死をもって罪を償う死刑ということにつきまして、葉梨法務大臣がボタンを押すだけの仕事だというふうにおっしゃったということは驚愕であり、とても許されない言葉だと私は思います。

 私も大臣も今この委員会室におりますので御存じないかもしれませんが、一部報道では更迭というお話も出ておりますが、大臣は、今回の発言や事態、特に命を預かる厚労大臣ですから、どのように受け止めて、また、内閣の一員としてはどのような御意見を表明されていますでしょう。

加藤国務大臣 やはり、死刑の執行ということ、これはいろいろな議論もあるわけでありますけれども、これまでそうした立場になった方からもお話を聞いて、やはりいろいろと、死刑に至る、あるいは、もちろん、判決文というんでしょうかね、そういったものもよく読みながら、相当重い覚悟を持って判断してきたというお話を聞かせていただきました。

 そうしたこれまでの大臣が取ってきたスタンスと今回の発言とはちょっと、随分そごがあり過ぎるのかなというふうな印象は受けたところでありますが、これについて、葉梨大臣もそうした発言に対しては撤回をし、反省をしているということでありますので、今後、そうしたことを、その反省を踏まえて、法務行政にしっかり当たっていただきたいというふうに思っております。

阿部(知)委員 恐縮ですが、御質問は、それで更迭ということが出ておるようですが、大臣はまだ御存じないということですかね。じゃ、首を横に振られましたので、まだ御存じないと。

 私は、やはり命というものに対する冒涜だと思います。極めて深刻な事態で、政府としては毅然と、特に任命責任者の岸田総理にあっては、これを看過することはあってはならないと強く思いますので、大臣も同じ思いと思いますから、政府としてしっかりと対応していただきたいと思います。

 では、予定された質問に入らせていただきます。

 そもそも、今回は五つの法案を、世で言う束ね、一緒にして提案をされておりますが、大臣のお手元に資料として、一枚目、並べてございますが、各法案は、それぞれ審議会等々で様々な議論を経て、そしてその問題、課題も多々ある中で、なぜ五本を束ねて私どもに審議を要求されるのか。また、九月の九日には、国連から、いわゆる障害者の権利条約を批准した、締結した我が国に対して、勧告、初めて出ております。その勧告を踏まえての五つの法案を束ねての御提出であるのか。この二点を伺います。

加藤国務大臣 まず、法案を束ねるときには、法案の趣旨、目的が一致しているということと、それから各法案の条項が相互に関係している、こうしたことが必要なんだろうと思います。

 今般の改正は、障害者や難病患者等の方々を地域や職場で総合的に支援していくため、医療、福祉、雇用等の支援を連携しながら充実することを目指したものであります。

 また、具体的に、精神保健福祉法の改正による精神科病院の長期入院等を見直していくための医療面での見直しと、障害者総合支援法の改正による退院後の生活面での支援の見直し、これを併せて行うことになっております。

 条文の改正上も、精神保健福祉法上、精神科病院等が患者本人又は家族の求め等に応じて紹介する地域援助事業者の例示として、医療保護入院者の希望する退院後の地域生活の実現を図るため、今回の障害者総合支援法の改正により市町村の努力義務としている基幹相談支援センター、地域生活支援拠点の事業を追加し、地域の福祉サービスと精神科病院との連携の下、患者の病状に応じた適切な支援を地域で切れ目なく受けられる体制を構築するということになっております。また、障害者の雇用に関しても、また、難病患者等の支援に関しても、そうした関係があるわけであります。

 したがって、関係法案の一体的な見直しが必要ということで、こうした形で提出をさせていただきました。

 また、総括所見との関係がございました。

 障害者総合支援法は、御存じのように、平成三十年施行の改正法において施行後三年見直しとされており、令和三年三月より、審議会、障害者部会において議論を開始し、令和四年六月に報告書が取りまとめられたところでございます。

 報告書において、障害者権利委員会から、医療保護入院等の強制入院の撤廃等に関する事項について、事前の情報提供が求められている、患者の権利を確保するための取組をより一層推進していくことが重要であるとされ、今般の改正案では医療保護入院の期間の導入などを盛り込んだところでありますが、あわせて、勧告が行われたときには、障害者を代表する団体の参画の下で、当該提案及び勧告に基づく現状の問題点の把握を行い、関連法制度の見直しを始めとする必要な措置について検討すべきであるとされ、今般の改正案の附則において検討規定を設けているところでございます。

 こうした対応で、今回提出をさせていただいたということでございます。

阿部(知)委員 大臣から、この五つの法案の各々の課題について、特に障害者の総合支援法並びに精神保健福祉法についての御指摘がありました。

 事ほどさように、論点は多々あり、本当にこんなに大急ぎで詰め込んで審議すべきものなのかどうかということを、私は、大臣もそれだけ問題意識を持っておられるんだから、しっかり議論すべきだと思います。

 また、当事者の意見というのも当然聞かねばなりませんし、これからこの委員会でも参考人等と質疑がおありでしょうが、その後も更に論議が必要です。当事者の意見を聞いて、形式だけに終わらせるということは、障害者の自己決定権がこの勧告の肝ですから、それに反するものと思います。

 大臣が思いが深いということは分かりましたから、それに見合う審議を是非政府としても私たち立法府に求めていただきたいし、委員長には是非そのようにお取り計らいをお願いいたします。

 さて、野党の御提案ですが、道下さん始め十名の御提案、これは二年ほど前にも重度の障害者の様々な支援についての御提案があったかと思いますが、今回、就労就学支援法という形でおまとめになったその意味と、またお考えについて、お願いいたします。

早稲田議員 阿部委員より御質問をいただきましたので、提出者としてお答えいたします。

 重度の障害者の方々の就労、就学を通じた社会参加を促進し、地域社会で生きがいを持って暮らしていくことができるようにするために、職場及び学校での介護並びに通勤及び通学における移動中の介護を重度訪問介護の対象とすることといたしました。そして、重度訪問介護の対象とならない障害者等に対する支援の拡充及び障害者等を雇用する事業主に対する支援の拡充について規定する法案を提出いたしました。

 以前、二〇一国会に提出をした法案では、学校や通学中の介護については検討条項の対象としておりましたが、今回の法案では、学校や通学中の介護についても、職場や通勤中の介護と同様に、重度訪問介護の対象に加えることとしております。

 また、重度訪問介護の対象とならない障害者等の社会参加の支援は大変重要な課題であり、このような方々に対しての職場や学校それから通勤や通学における支援を行うことにつきましては検討を加え、そして、その結果に基づいて必要な措置を講ずることを政府に義務づけることといたしております。

阿部(知)委員 御説明ありがとうございます。

 移動は人権であります。特に、障害をお持ちの方が、就労するにも就学するにも、移動ということが保障されなければその次もないわけで、是非、意欲的な御提案と思いますから、本委員会でも鋭意審議をされて、成案を見ることを私も祈っております。

 野党の提出者は、もしよろしかったら結構です。ありがとうございます。

 さて、今日は総務省にもお越しいただきました。障害のある方の自己決定という観点から見て、今のマイナンバーカードがどのようなものであるかということについて、今日は総務省の政務官にお越しいただいております。

 冒頭、一問目でありますが、せんだって、中部地方のある自治体で、御両親が自分たちのマイナンバーカードを取ろうと思って役所に行った、御自宅には重度の障害者がおいでです。この障害者についても、自分たちがマイナンバーカードを取るんだから一緒に取れまいかというふうに御相談をされたけれども、できないと。なぜならば署名ができないからということで、いまだにマイナンバーカードは交付されておりません。

 総務省としては、一体どれくらいの人が、例えば自署ができないとか、あるいは出向くことができないとか、あるいは意思が確実に確認されないとかという形で、マイナンバーカードの入口からシャットアウトされているのか、御存じでしょうか。また、この中部地方の事案について、どのように今後対処されますか。二点、お願いいたします。

中川大臣政務官 マイナンバーカードの取得に当たりましては、カードの受取のために庁舎に出向くことが困難、また、必要な書類を用意する際にサポートが必要などの課題がある方がおられるものと認識をしております。

 こうした課題を抱えている方の人数を正確に把握することは困難ではありますが、例えば、認知症高齢者の方は令和七年に約七百万人になると推計され、このほか、身体障害者の方は約四百三十六万人、知的障害者の方は約百九万人、精神障害者の方は約六百十五万人との推計もあり、こうした方の中には、カード取得に当たり、課題を抱えている方もおられるものと考えられます。

 こうした方への対応について、現行制度においては、例えば、病気や身体の障害などやむを得ない理由により庁舎に出向くことが困難な場合は、代理人が本人確認等の書類をお持ちいただくことによる交付を可能としているところであります。この場合、代理交付に必要な委任状の自筆が困難な場合には、押印等により本人の意思が確認できるのであれば、代筆も可能とされております。

 また、交付時に持参する交付通知書への氏名等の記入については点字によることも可能であること、また、暗証番号の設定が困難であると認められる場合は、介助者や市町村職員が必要な補助を行うこととして差し支えないことなど、課題を抱えている方への交付時の対応について自治体にお示しし、周知を図ってきたところでございます。

 さらに、市町村において、役所の窓口に出向くことなく郵送でカードを取得することができる出張申請受付の取組も推進しておりまして、その経費については全額国費により支援をしているところでございます。

 今後も、カードと保険証の一体化に向けた検討を進めていく中で、カードの手続等の見直しも含め、デジタル庁、厚生労働省と連携をし、課題を踏まえた必要な対応を検討してまいります。また、これから円滑な交付がそれぞれの自治体でできるように、改めて自治体への周知にも努めてまいりたいと存じます。

阿部(知)委員 御答弁の全てを書き留められませんでしたが、ざっと合算しても二千万人以上が、可能性としては、御自身で自署ができない、あるいは御理解が届かない可能性があるんだと思います。六人に一人くらいになりましょうか。

 今政務官はそのようなお答えですけれども、現実には、自治体では、自署ができないからということでお断りせざるを得なかったということが起きているわけです。私は、数日来、ここをヒアリングをしていて、総務省には全くその認識がなかった。びっくりいたしました。

 そして、総務省の書かれたものの中には、代理人として成年後見制度を利用せよとありましたが、御承知かどうか。成年後見制度は、今度の障害者の権利条約の勧告の中で、この制度自身を見直せと言われているものであります。やはり、この障害者の権利条約の勧告の本質を理解していない。ある制度をつくるときに、それが利用できない人、それが特に障害がおありの人、それを生んではいけないというのが、この勧告の肝なんですね。

 成年後見制度がそのような見直しの対象で指摘されていることは御存じですか、政務官。

中川大臣政務官 総務省といたしましては、御指摘の後見人制度の懸念について直接お答えする立場にはありませんが、現行の成年後見人制度の趣旨を踏まえ、マイナンバーカードの円滑な交付に努めてまいります。

阿部(知)委員 懸念があるから、成年後見制度は使えないと言ってもいい。成年後見人をお持ちでない人もいますし。それから、郵送で送って、それでマイナンバーカードで確認できると言いますが、そんなずさんなものでいいんですか。本当に、はなから眼中にないから、私は、そういう乱暴なことを国は一挙に進めようとするんだと思います。

 健康保険証は、みんな一人一人、命の問題です。今度、次に加藤大臣に伺いますが、まして、マイナンバーカードと健康保険証を一体化するということは、マイナンバーカードが取れなければ、健康保険証もないということになります。これだけのボリュームの人がそういう可能性を持っているということは政府として認識してしかるべきだし、それをどう対応するかは、現場で混乱が起こる、自治体が直面する以前に対処しておくべきなんですよ。私は、余りに先を焦って、大事なことを忘れたやり方だと思います。

 もう、政務官、結構です。これで総務省には終わりです。是非、総務大臣寺田さんにもお伝えください、大事なことですので。本当に眼中にないことは残念です。よろしくお願いします。

三ッ林委員長 中川政務官は御退席ください。

阿部(知)委員 加藤大臣にお伺いいたしますが、今度、保険証との一体化の中では、いわゆるオンライン資格等確認システムとマイナンバーの中のチップの本人確認の番号をタグづけするという形ですが、そもそも、このオンライン資格確認システムと言われるものの中にどんな情報が入っていて、その情報は誰が入れることを決めたのか、そもそも何を選択しているのかを国民は知らされていません。個人情報保護の観点からどうであるか、論議された議事録もありません。

 そもそも、このオンライン資格確認システム、例えば、大臣、自分の入院歴が入るわけです。でも、人に知られたくない、個人情報ですから。しかし、それはオンラインで入っているわけです。そして、場合によっては見られる。元々私は、入口のところでどんな情報が入っているか、なぜ国民に一度たりとも問わないんですか。このことについて、大臣、お願いします。

加藤国務大臣 現在、オンライン資格確認システムにおいては、特定健診等の情報、例えば血液検査、尿検査の結果などがあり、また、薬剤情報、医療機関、薬局名、調剤年月日、医薬品名等々、診療情報、医療機関名、診療年月日等々が登録をされております。

 オンライン資格確認については、令和元年に成立した健康保険法の一部を改正する法律で法的に位置づけられたわけでありますが、それに先立ち社会保障審議会医療保険部会において行った議論において、オンライン資格確認の構築に当たっては、資格確認と併せて、本人の同意の下、医療機関等が特定健診等情報や薬剤情報の閲覧を行うことができる仕組みとして整備することについて御議論をいただき、御了解いただいた、こういう経緯でございます。

阿部(知)委員 大臣、ちょっと、質問の趣旨を御理解じゃないと思うんですね。

 今のは使うときの話ですが、そもそも、どんな情報がオンライン情報システム、確認システムに入っているかということを国民は知らされていないわけです。

 いただきました説明資料、開いて三ページ目は、今おっしゃった資格情報、どんな健康保険の種類か、あるいは特定健診等情報、薬剤情報等と書いてありますが、これからはかかった医療機関の入退院情報も入る。これからもどんどん増えるかもしれない。手術の情報も。どこで何を入れることを論議しているのか、国民からは全く見えない、説明もない。

 プラス、私が議事録を斜め読みした限りでは、個人情報保護のホの字もない。情報をそこに吸い上げて、入れていいか、そこには個人情報も含まれているわけです。例えば、精神科の病院に入院した情報、知られたくないかもしれません。そして、知らせる必要もないことです、個人の情報だから。

 そのことについて大臣は御認識ですか。本当に乱暴。個人の情報をかすめ取るに等しい。これは入力段階での話です。いかがでしょう。

加藤国務大臣 いや、さっき説明したのは、その話を説明させていただいたので。

 出てくるんじゃなくて、この資格確認にどういう情報をつなげるかということの中の議論を社会保障審議会医療保険部会で御議論いただいて、特定健診等情報、薬剤情報の閲覧を行う、できる、要するに、できる仕組みとして整備することで御了解いただいたということでございます。

 また、その仕組みを更に拡大することについては、令和二年六月に発表したデータヘルスの集中改革プランで方針はお示しをさせていただいていますが、具体的な内容として、本人同意の下で、病理診断、透析などの診療行為名などレセプト由来の診療情報を閲覧することを医療機関等で開始する旨についても、これも医療保険部会等において説明をさせていただいているところでございます。

阿部(知)委員 私は、その医療保険部会の認識の中に、個人の、その人の医療情報で、その人の履歴だという認識がないんですよ。だから、これからどんどん自分たちで、ユーザー側が話し合って、これとこれとこれ、入れていこうねとなっちゃうんです。それは本当に個人情報保護とは相反する。

 そして、大臣、これを使うときは、医療機関でマイナンバーカードを使って、今入っている情報を見ていいですかと問われて、イエス・オア・ノーを何かぽちっとやるといたします。しかし、先ほど申し上げた約二千万人余りは、その意味を果たして十分理解して、ぽちっとできるでしょうか。マイナンバーカードを取るところから、そもそも、本人意思確認は問題でした。今度は、日々の医療で使うときに、本人の意思確認を担保するものがないです。どうするんですか。

加藤国務大臣 まず、個人情報保護の議論がその部会でなかったか、済みません、私はそこに出席していないので、それがもし必要ならば、事務局から聞いていただかなきゃいけないんだろうと思いますが。

 個人情報保護等との関係については、個人情報保護法上、事業者は、原則として、本人の同意を得ずに要配慮個人情報を取得してはならないとされているわけであります。医療機関等による診療、薬剤情報の閲覧については、本人同意の下、医療機関等がオンライン資格確認等システムを運用する支払基金等に照会し、情報を提供できるものである、これはまた医療保険部会において説明をさせていただいているところでございますので。

 今おっしゃった本人の同意に関しては、カードリーダーに置いて本人の同意をもらうわけでありますけれども、そうしたときにはしっかりその辺を説明をしておくということが必要だと思いますし、いずれにしても、そういったことは本件だけではなくて、広くいろいろなところでなかなか意思の確認ができないケースというのはあるんだろうとは思います。

阿部(知)委員 これから、高齢社会ですし、その数は増えてくると思うんですね。大臣、簡単に同意なしにはと言いますが、その同意の一つ、インフォームド、本当に理解された同意じゃなくちゃいけないんですよ。サポートする人も要る。毎回、受診に誰かがついていかなきゃいけないかもしれない。

 厚労省と総務省で、本当にこれが障害のある人の本人の意思を確認するものになるのかどうか、マイナンバーカードの、そもそも。それから、オンラインの資格等確認システムの中に入れ込んで一体化すること。たんびに、受診の都度確認しなきゃいけないんですよ。誰が本当にその人の情報、使っていいということを確認できますか。私には、到底、その二千万人のフォローができるとは思いません。

 プラス、健康保険証はそういうことはなかったです。どの保険に入っていらっしゃるかだけです。だからこそ、これだけたくさんの人に普及し、昭和三十六年から国民皆保険制度の下、保険証一枚でいつでも、誰でも、どこでもと定着してきたわけです。

 はなから障害者を念頭に置かない、あるいは非現実的な対応しか考えていないこのマイナンバーカードとオンライン資格等確認システムのいわば突合というか連携は、徹頭徹尾、障害者については、私は、同意を取れない仕組みだと思います。引き続いてまた指摘させていただきますので、今日、総務省と厚労省に指摘させていただきましたので、是非、次回は実りある答弁を。

 そして、昨日もおとといも官僚には聞きました。個人情報保護はどう話されたのと、ここに入力時ですよ。答えはなかったです、今朝に至るも。そこでもうあらかじめ時間を割くことはいたしませんので、また次回に送らせていただきます。

 さて、今回の法案、五つ束ね、そして、障害者の権利条約批准、締結後の初めての勧告を受けたといいますが、私は、障害者本人の意思ということについて、非常に大きな欠けたる点というか、真っ逆さのことが、特に精神病院関係において起こっていると思います。

 精神保健福祉法の改正ということですが、そもそも、大臣のお手元に資料としてお示ししましたのは、今年の、OECDの三十八か国加盟中、いかに日本の精神病院が相も変わらず多いか。世界中の精神病院の三七・一三%は我が国にあります。

 開いて二枚目、これは十年前どうだったか。ほとんど十年間何も変わらないまま今日に至り、横には平均在院日数も書いてございますが、これは五年前のものです。非常に在院日数も長い。千人当たりの精神科病床が多いだけじゃなくて、平均在院日数も長い。これが、残念なことに、我が国の精神医療のプロフィールであります。

 そして、精神保健福祉法は、今問題になっております保護入院制度ということを持つことにおいて、今後は自治体の長の、御家族が同意できない場合はその同意でよいというふうになりますが、ますます、強制的な入院をなくしていこうという流れとは相反するものになると思います。

 まず、大臣には、この病院の多さ、病床の多さ、プラス、今回の自治体長を代わりに置くことで、しかし保護入院そのものは縮小する方向ではないと思いますが、どうですか。

加藤国務大臣 今お示しされた表というのは我々が出した表ではないだろうと思うんですね、病院のやつは。どなたかが、有識者の方が作られた表なんだろうと思います。必ずしも、病床数の定義、制度が違うため、なかなか国際比較は難しいのではないかという認識を持たせていただいております。

 その上で、入院期間が長期に及ぶ要因については、精神障害者の退院支援を具体的に進めるに当たり、患者御本人の抱える多様な課題を解決するための仕組み、これは必ずしも十分でないということ、また、先ほど非自発的な入院の数もありましたが、その要因については、高齢化の進展に伴う認知症患者の増加により、入院に同意する能力を有していないと考えられる患者に任意入院に代わり医療保護入院を行う場合が増えたことなどが指摘をされております。

 そうした認識の下で、今回の改正案では、医療保護入院の入院期間を六か月の上限を定めるとか、支援者が精神科病院を訪問し、患者の体験や気持ちを傾聴する取組を都道府県の事業として位置づけるとか、身近な市町村における支援体制の充実を図る等の対応を行うこととしております。

 入院期間の短縮化に向けては、実態を踏まえた検討と取組が重要であり、今後ともしっかり取り組んでいきたいと考えております。

 その上で、医療保護入院制度は、患者の権利擁護に責任を有する精神保健指定医が入院治療の必要性を判断した上で、医師から十分な説明を受けた家族等の同意に基づき入院を行うことで、入院治療への患者のアクセスを保障するとともに、患者の権利保護を図る仕組みでありますが、こうした仕組みに対して、御家族の皆さん方から、なかなかそうした同意に対して精神的な負担になっている等々の御議論をいただいて、今回の仕組みを、改めて仕組みをつくらせていただいたということでございます。

阿部(知)委員 大臣、日本の入院の中で、半数以上、半数近くが医療保護入院なんですよ。本人同意じゃないんですよ。そのことを踏まえて御答弁いただきたいし、家族と患者さんとの間も確かに複雑です。

 私は、今回、障害者権利条約からの勧告を受けて、まず精神医療の歴史を根本から見直していただきたい。

 大臣のお手元の終わりから三枚目、ここには我が国の精神医療の法的な歴史が書いてございます。

 一九〇〇年ですね、遡れば。ここで、精神病者監護法という法律ができました。明治三十三年のことで、監護という特別な言葉は使われていますが、いわゆる精神病院が不足していて、私宅監置、御自宅で、その方が興奮されるからといって見ているしかなかった。でも、これは、私宅というから個人がやっていたのかというとそうじゃなくて、ちゃんと行政が関わって、私宅監置の登録があったわけです。それは一九一九年の精神病院法を経ても変わることなく、第二次大戦が終わって、精神衛生法になって初めてこれはやめられたけれども、沖縄では復帰の一九七二年まで残りました。

 そして、これは、我が国の精神疾患の人がいかに虐げられているか。呉秀三さんという、精神科の、昔私どもの大学の教授でしたが、おっしゃった、日本に生まれた不幸があるんだと。プラス、沖縄で置かれた状況というのは更に米軍統治下で不幸でありました。

 写真が載せてあります。山原の森の中に、私宅監置のコンクリートの小屋が今もたった一つだけ残っています。これは、こういう歴史の証言です。ここに入っていた。もちろん、御家族だって思いは複雑です。入れたくなかったでしょう。でも、そうするしかなかった。その重みを踏まえて、こういうものは国として保存すべきなんだと思います。

 私がこのことを知ったのは二〇一八年でした。不明を恥じました。よく座敷牢と言われていたけれども、こういう形で患者さんたちが置かれていたんだなと。是非、大臣、今日は時間が私はもうないので、御紹介しますから、厚生労働省としてもきちんと自分たちの行政を反省し、ハンセン病のように歴史を見直すという観点で、こうしたものの保存を考えていただきたいが、どうでしょう。

加藤国務大臣 まさに過去の歴史から学ぶこと、その上で今後の制度の在り方を考えることは大変重要だと思っております。今回の議論の中においても、そうした歴史的な経緯を振り返りながら行われたものと承知をしております。

 今、私宅監置のお話がありましたが、これは私宅監置の関係者等にも配慮する必要があって、現状で、保存するということ、そのこと自体は検討しているわけではございません。

阿部(知)委員 それが問題なのです。歴史を消してはいけない。それは家族のせいじゃない、制度のせいなんです。そこを厚労省が自分たちの行政のせいだと自覚しない限り、今コロナで精神科疾患、精神病院が、多発して、その一つ、ちゃんと調べていないじゃないですか。いかにたくさんの患者さんがそこでは亡くなるか。隔離して収容しているからにほかなりません。そんな反省のない行政をやってほしくない。

 大臣には強くそのことを申し上げて、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、吉田とも代君。

吉田(と)委員 日本維新の会の吉田とも代です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 今般の法律改正案への質問に先立ち、警鐘を鳴らす意味でも、危機感を共有する意味でも、一件だけ、近々の課題と考えているものを取り上げさせていただきます。

 さて、ランサムウェアと呼ばれる身の代金要求型のウイルスによるサイバー攻撃を受け、診療に大きな影響が出ている大阪市の大阪急性期・総合医療センターですが、先月、十月三十一日に障害が発生し、診療を一部停止し、今もシステムの復旧に向けた作業を進めているといいます。

 昨今、医療機関を標的にしたサイバー攻撃が相次ぎ、厚生労働省は本年三月に、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインなど指針を示し、具体策を示しているとはいえ、医療機関側の対応が追いついていない現状があります。

 この大阪急性期・総合医療センターは、サイバー攻撃によりシステム障害が起き、患者の電子カルテが使えなくなり、緊急時以外の手術や外来診療がストップしています。紙のカルテを利用し、一部手術を再開していますが、事故から一週間の時点でも通常診療ができない状態が続いています。電子カルテが使えないために、救急患者や外来診療の受入れを停止しているのみならず、一部で転退院も進めている状態だといいます。今後、電子システムの再構築やMRI、CTなど他部門のシステムとの再接続を進める必要があり、完全復旧には来年一月までかかるということです。

 医療機関は官民問わず攻撃対象となっており、セキュリティー強化が近々の課題です。しかし、現状は、どの医療機関も、社会的にはまずコロナ対策を求められております。その結果、財源が限られる状況では、特に民間ではセキュリティー予算が不足しています。セキュリティー対策を強化し、徹底すべきとの有識者の声も多く聞かれます。

 病院側が対策に向けてどのように費用を捻出すべきと考えるのか、国として対応を考えるつもりなのか、加藤大臣の見解をお聞かせください。

加藤国務大臣 医療機関がサイバー攻撃でその機能を失うことがないよう、サイバーセキュリティー対策の強化、これは不可欠であります。

 医療機関において、PCやネットワーク機器、情報システムの脆弱性に対する措置、診療の継続や早期の業務復旧に必要なデータや情報システムのバックアップの確保、災害対策と同様に、サイバー攻撃やシステム障害等の非常時を想定した訓練の実施などの対策を継続的に行っていただくことが重要であります。

 厚労省では、医療機関に対策を求めるだけではなくて、医療情報システム安全管理者の配置や、職員に対する研修等の体制を強化するとともに、医療情報システムのバックアップの確保状況について届出をいただくことについて、令和四年度診療報酬改定で手当てをさせていただいたところでもございます。

 また、サイバーセキュリティー対策に関する研修や研修資材の提供、また、サイバーセキュリティーインシデントが発生した医療機関への初動対応支援など、医療機関に対するセキュリティー対策の強化にも必要な支援を行っているところであります。

 医療機関の現状を踏まえ、サイバーセキュリティー対策を強化するために必要な対応を今後とも行っていきたいと考えております。

吉田(と)委員 経営に余力があれば対策を講じることもできますが、現状、コロナ対策でどの医療機関も財源が限られております。普通の病院では、予算も、最新鋭の医療機器や看護師の拡充などが優先されるのが当然で、セキュリティー費用にまで手が回らないのが一般的です。

 短期的に、先ほど加藤大臣からお話しいただきましたが、教育、IT人材の育成、もちろんこちらも必須なんですが、もっと踏み込んで、国が基金を創設し、セキュリティー対策を講じた医療機関に補助を出すなど、医療機関側に対策を求めるだけでなく、国がリーダーシップを取ってサイバー攻撃に立ち向かう姿勢、国として断固たる姿勢を示すことが必要であると申し添えたいと思います。

 また、医療提供の観点からも患者さんへの影響は計り知れず、最悪の場合は、サイバー攻撃に起因する死者が出る可能性もあります。医療機関の金銭的な負担も容易に想像ができます。また、医療を守る、命を守るという観点でも前向きに御検討をお願いいたします。

 続きまして、今回の電子システムの障害の原因となったコンピューターウイルスは、給食について委託した事業者のシステムから侵入した可能性が高いと言われています。外部の取引先から医療機関に感染拡大している状態である、あるいはその蓋然性が高いことが判明してきたわけですが、病院は人材派遣会社とかメンテナンス会社とかいろいろな取引先があり、今後、その取引先のセキュリティー対策が必要になります。病院自身のセキュリティー対策が幾ら万全になっても、そういった接続する取引先の対策がおろそかでは攻撃を防げないということです。

 厚労省として、この取引先のセキュリティー対策についてどのように対応していくおつもりでしょうか。

加藤国務大臣 医療情報システムの安全管理については、医療機関側と委託先の事業者側がお互いの責任範囲を明確に協議をし、共同して対応することが重要であります。

 厚労省では、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインにおいて、医療機関等が医療情報の管理を委託する場合に、事業者との契約において、事業者との分担や事業者の義務を明記する必要性などを示しております。

 また、事業者側に対しても、これは総務省、経済産業省によって策定されているものでありますが、医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドラインにおいて、医療機関等に対し安全管理に関して情報提供すべき項目を具体的に明示し、適切に共通理解を得るようにしているところであります。

 さらに、厚労省では、大阪の急性期・総合医療センターの事案を踏まえ、医療機関が委託先の事業者を含むサプライチェーン全体を俯瞰し、委託先の事業者のセキュリティー管理体制を確認するなど、サイバーセキュリティー対策を強化することと、身の代金の支払いは厳に慎むべきであることについて、昨日、全国の医療機関に対して注意喚起を行ったところでございます。

 引き続き、医療機関におけるサイバーセキュリティー対策が適切になされるよう、関係省庁とも連携を取って必要な対策を行ってまいります。

吉田(と)委員 サイバー攻撃のリスクと隣り合わせであるという、医療機関だけでなく取引会社にも強く認識をしていただくことが大切です。医療機関には様々な取引会社が関わり、サプライチェーンのリスクが顕在化をしています。もちろん、最終的に、日本全体として、医療機関のみならず全ての分野でセキュリティー対策が満遍なく強化される必要があります。しかし、今まずできることとして、今後、医療機関の内部対策だけでなく取引先にも注意が必要であると、政府からの強いメッセージをよろしくお願いいたします。

 また、全国の警察に報告があった身の代金要求型ウイルス、つまりランサムウェアの被害は、令和二年下半期は二十一件でしたが、令和四年上半期では百十四件と、五倍以上に膨れ上がっています。日本の危機感がまだまだ低いと言えます。

 今回の攻撃では、ハッカー側から、システム復旧に当たってビットコインを支払うよう要求され、金銭を支払う考えはないと、まあ、このビットコインが金銭に当たるのかどうかというところも不明ですけれども、拒絶をしていたといいますが、医療機関によっては、オープンにせず、金銭などの要求に従ってしまう場合もあるやもしれません。

 米国では、十年以上前から医療機関を標的とするサイバー攻撃が続出し、医療機関専門のセキュリティー会社が設立され、政府として、二次被害を防ぐため、身の代金を支払うことを禁ずる通達を出しています。

 日本政府としても、サイバー攻撃への強い意思を示すためにも、身の代金は支払わないようにという通達などで強く発信をしていくことが大切だと思いますが、加藤大臣の見解をお聞かせください。

加藤国務大臣 厚労省では、今般の大阪急性期・総合医療センターの事案を踏まえ、身の代金の支払いは厳に慎むべきであることについて、昨日、全国の医療機関に対して注意喚起を行ったところであります。

吉田(と)委員 身の代金を払っている医療機関があれば、呼び水になって更に狙われるということになりますので、引き続き、加藤大臣の強いリーダーシップを期待しております。

 では、続きまして、難病治療薬についての質問に移ります。

 難病対策の根本は、治療手段の確立であり、そのための原因究明や治療法、薬剤の研究開発であります。政府、アカデミア、民間企業の努力により、原因究明や治療法、治療薬の開発が実現されることは、難病患者にとって何よりも望ましいことの一つです。しかし、せっかく原因究明がなされ、治療法、治療薬が開発されたとしても、患者のこれらへのアクセスが阻害されていては、難病対策としては本末転倒だと思います。

 現在、診療報酬において、DPC、診療群分類別包括評価を始めとして、薬剤費を包括する項目が複数設定されています。こうした薬剤費を包括する診療報酬では、高額な薬剤を使用した場合には、実際にかかった医療コストが設定された報酬を上回る逆ざや、つまり、医療機関から見れば赤字が生じることが懸念されます。とりわけ、高薬価にならざるを得ない希少疾病、難病の治療薬においては逆ざやになりやすいと考えられています。

 実際に、DPCや療養病棟入院基本料などの薬剤費を包括する診療報酬を算定する場合に逆ざやが生じ、医療機関の持ち出し、赤字が生じたり、入院中の患者さんがほかの医療機関に出向いて、希少疾病、難病の治療薬の投与を受けたり、投与そのものをちゅうちょするといった声が寄せられていると聞いています。これらは、患者さんや医療機関に本来かけるべきではない負担をかけていることになり、治療法や治療薬へのアクセスを阻害している状態であると思われます。

 薬価を包括する診療報酬において、難病治療薬を用いた場合に病院にとって逆ざやとなるケースがあることを把握していらっしゃるのか、お聞かせください。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の診療報酬における包括評価につきましては、医療の標準化の観点から、平均的な医療資源投入量に見合う報酬を支払う、こういう仕組みでございます。

 具体的な例としまして、御指摘のDPC制度では、急性期入院医療を対象とした包括評価制度として、病気の名前、傷病名、それから実施した手術、処置等に基づき、きめ細かく分類を設定した上で、過去の実績に基づいて一日当たりの包括点数を設定しております。

 このDPC制度の運用に当たりましては、例えば新しく保険収載された高額医薬品等について、すぐには運用できませんので、一定の基準に該当する場合には、十分な使用実績が収集されるまでの間は包括評価の対象外として、出来高算定を可能としております。

 また、二年ごとに診療報酬改定を行う際に、こうした新しく承認された医薬品も含めまして、実績データに基づく診断群分類や点数設定の見直しを行って、その際、難病等の薬剤を含む、一つ一つの薬剤に特化した診断群分類を設定する、こうしたきめ細かな対応を行っているところでございまして、この診療報酬の包括評価の運用に当たりましては、御指摘のようなことがないよう、きめ細かな対応を進めているところでございます。

吉田(と)委員 患者さん一人一人に着目した場合には、やはり逆ざやは存在し、それが患者さんにとって一定の足かせになっているという話は耳にします。是非そのような認識を厚生労働省には持っておいていただければと私は思います。

 そして、このDPC評価は、診断群分類により、療養病棟入院基本料などの包括点数は、病床の種別により包括報酬が設定されています。しかし、難病治療薬を必要とする患者の場合、主な診断群分類は難病以外であったり、ほかの疾患で包括病床に入院しながら難病治療を受け続けるケースがあったりするなど、診断群分類や病床種別により難病治療に係るコストを適切に評価、設定することは極めて困難であると考えられます。

 こうしたことを鑑みると、希少疾病、難病に係る治療薬は、そもそも包括評価の対象外とした方が適切なコストを反映できるし、患者の必要とする医療アクセスを阻害することもないと考えられますが、いかがでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 診療報酬制度におきましては、いわゆる出来高払い制度と、典型的にもう一つ、包括報酬制度がございます。

 包括報酬制度は、まさに医療の標準化を進めていくという、過去の出来高払いに対するいろいろな御指摘も踏まえて、いろいろな形で研究され進められてきたものでございまして、御指摘の指定難病の患者さんの場合も含めて、可能なものは包括報酬の対象とすることでやってきたところでございます。

 一方、当然、包括報酬になった場合には、新しい薬が出た場合とか、高額な薬剤への配慮、対応が必要になってまいりますので、先ほど御説明させていただきましたように、新たに保険収載された高額な医薬品を使用する場合とか、あるいは二年ごとに診療報酬を改定する際にきめ細かな対応を行っているところでございまして、今後とも、この包括報酬の意義を踏まえつつ、御指摘の難病患者の方への対応も踏まえまして、きめ細かな対応をしっかりしていきたい、このように考えております。

吉田(と)委員 制度ができて二十年近くになるこのDPC制度そのものを否定するわけではありません。国民皆保険制度のある日本で、医療の標準化、効率化について果たした役割というものは大きいものがございますし、結果として医療費の抑制にもつながっております。

 しかし、一般的な疾病と希少疾患や難病を同列に扱っていいのかという疑問はあります。というのは、DPCという包括評価に至るまでの十分な例が、希少疾病や難病の場合に集まっているのか、実績を積み上げることができているのか、よく分かりません。こうしたことを鑑みると、希少疾病、難病に係る治療薬は、そもそも包括評価の対象外とした方が適切なコストを反映でき、また、患者の必要とする医療アクセスを阻害することもないと考えられます。

 また、血友病治療薬や抗HIV薬は包括評価の対象外です。継続投与が必要な、高額な慢性疾患の薬剤であるHIV感染症患者に使用する抗HIV薬、また血友病等の患者に使用する血液凝固因子製剤などが包括評価の対象外であることの整合性を是非考えていただきたいと思います。

 では、次の質問に移ります。

 障害者施策は多岐にわたりますが、厚労省は障害福祉サービスを誰のために提供しているのでしょうか。加藤大臣に御答弁をお願いしたいと思います。

加藤国務大臣 誰のためというのはなかなか難しい答えなんですが、御指摘が障害福祉サービスの対象はどういう者かということでよろしければ、障害者総合支援法は障害種別ごとに制定された障害福祉サービスに係る給付を一元化するものであり、同法のサービスの対象者となる障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、障害児が定められております。

吉田(と)委員 今、加藤大臣に、法律としての障害者の定義、これを御紹介いただきましたけれども、障害者の方のために、例えば視力障害者用の信号機、音の鳴る音響式信号機を設置したら、視力障害者の方だけでなく、例えば白内障、緑内障の方にも便利な環境となります。仮にエレベーターにしても、たくさん町じゅうにつくったら、結果、高齢者も、妊婦さんも、そしてベビーカーを引くお母さんも、全ての方が利益を享受できる結果となります。

 つまり、障害者の方のためにインフラ整備であったりサービスを充実させるということは、障害者の方だけでなく、実は、小さい子供さんにも、妊婦さんにも、そして高齢者の方にも、全ての国民にとって心地よい環境、暮らしやすい社会を提供できる結果となるということだと思います。これからの厚労省が目指すべきところはそういった社会だと私は考えます。

 続きまして、本年九月に出された国連障害者権利委員会の対日審査に係る総括所見では、我が国の障害者政策がパターナリズムに偏り、障害者は平等に扱われる権利を持ち、社会はそれを保障する義務があるとの障害者権利条約の趣旨と矛盾しているとの懸念が指摘されたとのことです。このような指摘について今後どのように対応していくのか、お伺いいたします。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 本年九月に公表されました障害者権利条約に係る総括所見におきましては、障害者に対する非自発的入院の見直しや障害者の地域生活での自立した生活の推進など、厚生労働省に関連する事項が多岐にわたり含まれているものと認識しております。

 これらに関しまして、本人の同意がない場合の入院の制度の在り方や患者の権利擁護に向けた方策などにつきましては、社会保障審議会障害者部会の報告において、精神疾患の特性や障害者権利委員会の勧告についての障害者の意見等を踏まえて引き続き検討すべき課題とされているところでございます。

 今般の改正法の附則第三条はこうした経緯を踏まえて置かれた検討規定でございまして、その検討に当たっては、本年九月に公表されました勧告の内容についても、精神障害者の方々の意見を聞きつつ、海外の制度との対比などを行いながら、権利擁護の仕組みを含め、速やかな検討に着手してまいりたいと考えております。

 そのほかの事項につきましても、本法案の施行状況を踏まえて、附則第二条の検討規定に基づき検討を行うこととされているものはもとより、障害者の一層の権利擁護やその希望に応じた地域生活の実現に向けて、勧告の内容や関係者の意見等も踏まえながら、関係省庁とも連携をして引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(と)委員 先ほどの話とも関係しますけれども、日本の障害者政策というのは、実際のところは社会モデルに基づいて行われておらず、いまだ障害への対応に個人的な、医学的な働きかけを常に優先し、障害克服のための取組というのは専ら個人の適応努力によるものとする医学モデルのまま行われ続けているのではないでしょうか。いま一度立ち止まって考えることも必要かと思います。

 そして、同じ国連の総括所見では、我が国では入所施設等で暮らす障害者が依然として多いと指摘をされています。

 障害者権利条約の十九条には、自立した生活及び地域社会への包容が定められています。しかし、実情は、加速どころか減速しているとの声が聞かれます。国はこれまでも施設入所者の地域移行、これを進めてまいりましたが、近年は移行者数が減少しています。厚生労働省の発表では、二〇〇九年から二〇一二年度は毎年五千人前後が移行していましたが、二〇一八年には千五百二十五人まで減少しています。

 このような状況を厚労省はどのように受け止め、また、今後どのように対処していかれるのか、お聞かせください。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者総合支援法の基本理念に基づきまして、障害者の入所施設等から地域への移行を推進しており、障害福祉計画に係る国の基本指針における施設入所者の地域移行に係る目標値の設定ですとか、地域生活への移行、定着を支援するサービスの充実、また、地域のニーズに応じた自治体による計画的なグループホームなどの整備、こうしたことを通じて地域移行の取組を進めてきているところでございます。

 御指摘のとおり、近年、施設等から地域への移行者の数は減少傾向にございますが、これは、施設入所者の重度化や高齢化が進んでいること、地域によっては重度者を地域で受け入れる体制が十分に整っていないことなどが要因として考えられるところでございます。

 このため、今回の改正法案におきましては、緊急時の対応や施設等から地域移行を支援する地域生活支援拠点等の整備を市町村の努力義務とすること、また、地域の協議会で障害者の個々の事例について情報共有することを法律上明記することなど、地域移行や地域生活の支援体制の充実を図ることとしており、障害者が安心して地域に移行して生活を送れる体制整備を一層推進してまいりたいと考えております。

 一方で、施設等から地域への移行が一定程度進む中で、重度障害者への適切な対応が課題となっております。地域生活拠点等の機能強化や、グループホームなど障害福祉サービスの重度者の受入れ体制の充実など、地域における重度障害者の支援体制の整備も進めてまいります。

吉田(と)委員 今、重度障害者の入所者の割合、これが増加して、高齢化が進んでいる、そしてまた、地域で、皆さんで共同して受け入れる体制の構築、これを進めていくと御答弁いただきました。本当に、障害のない方と、そして平等に、施設から地域社会で自立した生活を、移行することであり、これは、人材とか技術、そして国家戦略、資金を伴う法的な枠組み、都道府県の義務づけなど、政策を生かして地域移行の実施に結びつけていただくことをお願いしたいと思います。

 それでは、次の質問に移ります。

 二〇二〇年に、精神科病院で、病棟で入院患者に暴行をするなどして看護師らが逮捕される事件が起きました。この際に厚労省が実施した調査では、全国の精神科で、二〇一五年から二〇一九年度で、職員による患者への虐待が疑われる事案が少なくとも七十二件判明したとしています。不祥事が相次いで発生し、国民からも不信の声が上がりました。今後の取組について、どのように強化対策をしていくのか、お教えください。

辺見政府参考人 御指摘いただきましたとおり、平成二十七年度から令和元年の五年間で行われた精神科医療機関の虐待が疑われた事案につきましては七十二件でございました。その約半数でございますけれども、病院関係者からの通報により把握したものと承知しているところでございます。

 今般の改正法案では、精神科病院において従事者による虐待を受けたと思われる患者を発見した場合に、速やかに都道府県等に通報するよう義務づけることとしております。これによりまして、例えば、看護職員による患者への虐待を発見した別の看護職員が都道府県に通報を行った場合、通報を受けた都道府県が事実関係について調査を行い、必要な場合には改善命令等を行うこととなります。

 こうした仕組みを整備することにより、障害者虐待防止法の通報制度と同様、虐待を早期に発見し、深刻化を防ぐことはもとより、精神科病院においては、より軽微な虐待の段階から、担当の都道府県等との連携の下、虐待を起こすことのないようにするための組織風土の構築、虐待の早期発見、再発防止に向けた実効的な方策の検討が可能となるものと考えております。

 また、今回の改正法案では、都道府県等が、毎年度、精神科病院の業務従事者による虐待状況等を公表することを規定しておりまして、今後の虐待の実態把握にも資するものと考えております。

吉田(と)委員 精神科病院での虐待件数は、調査が令和元年度以降行われておらず、現在の虐待件数は分かりませんけれども、今回の通報義務というのは、実態を把握するための、今見つかっていない虐待件数を把握するための法改正だと理解をいたしました。

 この事件はたまたま別件から虐待が発覚したわけで、問題の根底の一つとして、自治体が指導監督をしながらこの状況に気づいていなかったという点も問題視をされています。虐待を防ぐための職員研修の実施、これももちろん重要ですが、自治体が指導監督の立場で責任を持って徹底的な指導、これが必要であり、厚労省としてもしっかり自治体に発信をしていただきたいと思います。

 また、虐待が実際起こってしまっている場合、どのようにすれば虐待を発見していけるのか、御答弁もいただきましたけれども、この通報制度で終わりではなく、そのような実効性がある研究というものも引き続き必要ですので、しっかりとよろしくお願いいたします。

 それでは、時間になりましたので、私の質問を終わります。ありがとうございます。

三ッ林委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いします。

 今回の障害者総合支援法改正法案、先ほどもありましたが束ね法案で、様々な多岐にわたる論点がありますが、今日は精神保健福祉法改正案について伺いたいと思います。

 先ほど来出ておりますが、国連の障害者権利委員会における日本審査が実施をされて、九月に総括所見が出されたばかりであります。精神障害においては、別建ての強制入院や、隔離、拘束、虐待対策の見直しというものが勧告をされております。

 また一方、精神保健福祉法の附則の中で、障害者の権利条約の実施については、精神障害者等の意見を聞きつつ、必要な措置を講ずることを検討するということも付記されております。

 今回の国連の総括所見で示された勧告について、このような視点から政府はどのように対応を進めていくのかから、まず伺います。

加藤国務大臣 障害者権利条約に基づく勧告、これは法的拘束力を有するものではありませんが、厚生労働省としては、精神障害者の一層の権利擁護の確保やその希望に応じた地域生活の実現に向けて、本年九月に公表された勧告の内容や関係団体の意見なども踏まえながら、関係省庁とも連携して引き続き取り組んでいきたいと考えております。

 本人の同意がない場合の入院の制度の在り方や患者の権利擁護に向けた方策などについては、本年六月に取りまとめた関係審議会の報告書において、精神疾患の特性や障害者権利委員会の勧告についての障害者の意見などを踏まえ引き続き検討すべき課題とされており、今般の改正案では、そうした経緯も踏まえ、検討規定を置くこととしたものであります。その検討に当たっては、本年九月に公表された勧告の内容についても、精神障害者の方などの御意見も伺いながら進めていきたいと考えております。

田中(健)委員 是非、この勧告の内容についても、関係団体また精神障害者等の当事者の意見も聞きつつ進めていただきたいと思っています。

 引き続きなんですけれども、次期の、次の政府報告提出期限が二〇二八年というふうに定められています。今回の法改正施行が、法案が通りますと、令和六年からの施行でありまして、さらに、次期改正というのはそれから五年後になりますので、それですと二〇二八年に間に合わないということでありまして、これまで決められていました五年ごとの改正ということではなく、この勧告に向けて柔軟に、次期改正は例えば三年をめどに行うとか、そういった対応が必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 本年九月に公表されました障害者権利条約に係る総括所見におきましては、障害者に対する非自発的入院の見直しや障害者の地域社会での自立した生活の推進など、厚生労働省に関連する事項が多岐にわたり含まれております。

 これらに関して、本人の同意がない場合の入院の制度の在り方や患者の権利擁護に向けた方策等については、社会保障審議会の障害者部会の報告書において、精神疾患の特性や障害者権利委員会の勧告についての障害者の意見等を踏まえて引き続き検討すべき課題とされております。

 今般の改正案の附則第三条はこうした経緯を踏まえて置かれた検討規定でございまして、その検討に当たっては、本年九月に公表された勧告の内容についても、精神障害者の方々の意見を聞きつつ、海外の制度との対比等を行いながら、権利擁護の仕組みを含め、速やかな検討に着手をしてまいりたいと考えております。

 その他の事項につきましても、本法案の施行状況等を踏まえまして、附則第二条でございますけれども、の検討規定に基づきまして、施行後五年を目途として行うこととされている検討に加えまして、障害者の一層の権利擁護やその希望に応じた地域生活の実現に向けて、勧告の内容や関係者の意見等を踏まえながら、関係省庁とも連携して引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

田中(健)委員 ちょっと一番目の質問と混じってしまっていたかもしれないんですけれども、五年だと勧告に間に合わないんじゃないかという端的な質問で、先ほども最後に五年でと言っていたんですが、どうなんでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げました附則の条項でございますが、附則第二条の検討規定、これは法案の施行状況全体について五年を目途として検討と定めているところでございますが、非同意の入院に係ります附則第三条の規定につきましては施行後何年といった書きぶりの文言は規定をしておらず、先ほど申し上げましたように、速やかな検討に着手をしてまいりたいと考えているところでございます。

田中(健)委員 間に合うという理解でよろしいんでしょうか。五年というのはあくまで附則の二条だということでありますので、それでは、今回の勧告の是正が進んでいないということがないように、是非、これからも私たちはしっかりと見ていきたいと思っていますので、お願いいたします。

 引き続き、障害者の権利条約に基づく委員会の勧告の中身について伺いますが、一般医療と精神医療を分ける精神保健福祉法の解体ということも勧告がされています。実際に、精神医療は一般医療から隔絶された政策体系に位置づけられていますので、このような政策の中心に精神保健福祉法が存在する形になっています。

 精神福祉法、精神医療というのは、地域医療構想とか、また病棟機能の報告制度、一般の病院ではありますけれども、その対象外とされておりまして、先ほども委員の中からありましたけれども、新型コロナウイルスの感染症対策をめぐっても、一般医療とは連携ができないものですから、市中の感染よりも約六倍以上の死者を出したという報告もあります。NHKでも、この感染病棟における死者の状況というのが特集もされていたほどであります。

 また、精神保健福祉法の規定の影響で、精神保健指定医、家族等に大変な負担が集中しておりまして、他の一般の科のように、意思決定の支援というような協議モデル、いろいろな人が入ってきて協議をしながら入退院を決めるような、そういった協議モデルの採用が難しいというのが現実であります。

 その意味では、この精神保健福祉法の在り方そのものを見直していくということが必要ではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 精神疾患につきましては、患者本人が病気の認識を持っていない場合や、症状の悪化により判断能力そのものが低下する場合がございます。こうした特性を持つことから、患者の精神科医療へのアクセスを保障するということが求められるところでございます。

 また、精神科病院は、精神科以外の病院や介護保険施設とは異なり、専門的な精神科医療が必要とされる患者を専門的に受け入れて、必要な入院医療を提供する役割を担っております。

 精神保健福祉法は、こうした精神疾患の特性や精神科病院の役割等を踏まえて、精神障害者の医療及び保護を行うことなどを目的とし、必要な制度を規定している法律でございまして、今後ともその役割を果たしていく必要があると考えているところでございます。

田中(健)委員 精神福祉法の理念や考えというのは分かるんですけれども、それによって、今回のような新型コロナウイルスにおいても大きな死者が出てしまったり、また、結局、長い時間入院しなきゃならないというようなことが続いているということでありますから、もちろん現状は分かっておりますし、また、他の病気においても、もちろん専門家というのがお医者さんですから、それは精神科だけに特化したものではありませんから、精神科医療というのを他の科と同質な政策の体系に改めていくという、精神保健及び精神障害福祉に関する法律の改定、廃止を含めた制度体系の在り方についても是非議論は深めていってほしいと思っています。

 その中で、今年六月に出された、地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会、この報告書によって今回法改正がなされておりますけれども、この総論の中で、検討に先立ち、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの位置づけというものについて、津久井やまゆり園事件の再発防止策を契機とした取組を含まないという点についてしっかりと明確にすべきであるということが確認をされました。

 これまで運用されてきましたのは、措置入院の運用に関するガイドラインであったり、また、地方公共団体における退院支援のガイドラインでこれまで運用がされてまいりましたが、このガイドラインというのは、津久井やまゆり園事件の再発防止を契機にしたものという位置づけであると言われています。

 二〇一八年、加藤大臣、当時も厚労大臣でございましたが、ガイドラインの運用状況を見て法案を出し直すという旨の、趣旨をされております。

 今回、これらの経緯を踏まえて、ガイドラインのどのような点を評価し、そして法案提出の判断に至ったのかということを大臣にお聞きします。

辺見政府参考人 まず、ちょっと事実関係の御説明をさせていただきたいと思います。

 御指摘の加藤大臣の発言は、平成三十年七月三日の参議院厚生労働委員会における退院支援のガイドラインに関する発言であると承知をしております。

 このガイドラインにつきましては、患者本人のニーズに応じて、退院後に医療や福祉等の継続的な支援を受けられる仕組みを整備できるよう、平成三十年三月に自治体に対して発出したものでございまして、支援の対象者を措置入院者に限ることなく、自治体が中心となって退院後支援を行う必要があると認めた者のうち同意が得られた者とすること、また、退院後支援計画の作成、実施等に関する会議において、原則として警察の関与を認めないことなどを明記しているところでございます。

 また、ガイドラインに基づきます退院後支援については、病院を含む支援者間の連携が強化される、また、支援者間の認識の共有が図られ、支援の質向上につながる、患者の孤独感が軽減され、治療への動機につながるなどの効果が報告をされております。

 このため、改めて法的な措置を講ずることなく、引き続きこのガイドラインをベースとした支援を継続していくこととし、平成二十九年の法改正にございましたような措置入院患者の退院支援はこの改正法案に含めていないというところでございます。

田中(健)委員 大臣にお聞きをしますけれども、この改正法案はやはりいろんな経緯がありまして、私はまだ議員でなかったのでありますが、二〇一七年の第百九十三回の国会に精神保健福祉法案が提出をされたんですけれども、今まさにおっしゃりました退院支援の警察の参加などが監視につながるというような批判も多々出まして、これは審議中にも法案資料の部分が変更されたり、また、野党からも様々な問題点が指摘をされて、結局、参議院の先議での異例の継続審議となりました。その後、衆議院の解散によってこの法案が廃案になってしまったということがありまして、その後は、今言いました退院支援と措置入院はガイドラインで示してきたということです。

 だからこそ、このような経緯を踏まえて、今回、ガイドラインをどのように評価をして、そして、それに基づいて大臣が法改正というものを提出をしたのかということを大臣の口から説明をいただければと思います。

加藤国務大臣 まさに委員おっしゃったように、当時の議論の中でいろいろ指摘をされて、最終的に継続になったんですかね、それで、今お話があったように衆議院の解散で廃案になったという経緯をたどったというふうに記憶をしております。

 今部長からも答弁させていただいたように、本件については、ガイドラインを作って、そして実際に今運用させていただいているわけであります。したがって、改めて法的な措置を講じることなく、引き続き、患者本人の意向やニーズを踏まえながら、このガイドラインをベースに支援を継続していくことが適当と判断をし、平成二十九年の改正法案にあったような措置入院患者の退院後支援、これは今回の法案の中には含まれていない、こういう経緯でございます。

田中(健)委員 声としましては、新設される退院支援の協議会の中には、措置入院の運用のための協議の場として、二〇一七年のときも議論のありました、警察の参加を想定しながら進められる懸念があるということも心配をされています。

 また同時に、精神障害にも対応した、地域包括ケアシステムに組み込んでいくという中においては、本人、家族、近隣の住民の理解が必要ですし、また、地域のサポート、最前線にいる福祉サービス事業者さんという、こういったところの十分な対応がないと、これはうまく引き継いでいけないと思っています。不十分です。

 ですから、地方公共団体による精神障害の退院支援に関するガイドライン及び措置入院の運用に関するガイドラインというのを見直しを行うことも、この法改正に合わせて必要かとは思いますが、改めて大臣にお聞きしたいと思います。

辺見政府参考人 本ガイドラインについては一定の効果が報告されているところでもございますので、本人の意向やニーズを踏まえながら、このガイドラインをベースに支援を継続していくことが適当であると考えているところでございますが、運用に際しまして見直しが必要な点等ございましたらば、見直しについても必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

田中(健)委員 今、見直しについての検討も必要と。大臣も同じ考えでよろしいんでしょうか。

加藤国務大臣 まず、先ほどガイドラインをベースに支援を継続していくことが適当だということを申し上げたところでありますけれども、日々日々いろいろと御意見もあろうかと思いますので、これは本件に限らずいろんなものについて、特に障害のある皆さん、当事者等とか、御意見があれば、それを踏まえながら必要な検討はさせていただく、これは当然のことだと思います。

田中(健)委員 しっかりとした、当事者の声も聞きながら、ガイドラインの見直しも含めて検討を進めていただきたいと思います。

 さらに、厚労省は今年三月に、有識者の検討会で、精神医療の制度改正に向けて案を提出をしています。これも先ほどから出ています精神科医療の問題として、入院が約二十七万人、この半分を占める医療保護入院についてです。ここで出されましたのは、基本的には将来的な廃止も視野に、縮小に向けて検討という方針がこの案の中で示されました。これを出されたときは大変話題となりまして、画期的だ又は意欲的だと評価をされたほどです。

 この保健福祉法が始まって、先ほども阿部先生の方から歴史がございましたけれども、この歴史の中で本当に画期的だというような声も上がっていましたが、しかし、六月には、たった三か月で廃止も縮小も削られてしまって、残ったのは、将来的な見通しについて検討という文言に変更がされてしまって、大きくトーンダウンをしてしまいました。

 今回、満を持して、厚労省の皆さんが、この検討会も、十月から、昨年から続いて出した案というのが大きく後退をしてしまったその理由をお聞かせ願いたいと思いますし、また、検討会報告書には、併せて、誰もが安心して信頼できる入院医療が実現されるため、それを検討しようということも明記されています。誰もが安心して信頼できる入院医療というのは、やはり、医療保護入院の将来的な廃止や縮小というものを、私は、含んで、ここに読み取っていいのかということをお聞きをしたいと思いますが、見解を伺います。

辺見政府参考人 議員御指摘の医療保護入院の将来的な廃止も視野とした縮小という部分でございますけれども、本年三月開催の第七回地域で安心して暮らせる精神医療福祉体制の実現に向けた検討会の事務局から提出させていただきました資料において、その時点までの検討会での議論を整理して、構成員から出された意見を踏まえまして、検討が必要な事項としての論点の中で提示をさせていただいたものでございます。

 その後の検討会での議論を経て、本年六月の取りまとめの報告書では、患者の同意がない場合の入院制度の在り方については、将来的な見直しについて検討することとされるとともに、精神疾患の特性や障害者権利委員会の勧告についての障害者の意見等を踏まえて、引き続きの検討課題、引き続きの課題とされたところでございます。

 今般の改正案の附則三条はこうした経緯を踏まえて置かれました検討規定でございまして、その検討に当たりましては、障害者権利委員会の勧告の内容についても、障害者の方々の意見を聞きつつ、海外の制度との対比等を行いながら、権利擁護の仕組みを含めて、速やかな検討に着手してまいりたいと考えております。

田中(健)委員 今回、質問通告で全て大臣にということでお願いして、あくまで参考人の人は補助ということでお願いしてありましたので、大臣の真摯な対応をお願いしたいと思います。

 更に言わせてもらいますと、この三か月の間何があったといいますと、三か月の間に、この検討会の中に、病院協会のトップの方が参考人として発言に来まして、医療保護入院制度を廃止したら精神科の医療は完全に壊れる、これは忠告しておくぞというような発言が残っています。

 私は、これについて厚労省を責めるというよりも、確かに、精神医療が民間病院に支えられてきた、そういう歴史もありますし、現在も民間病院が主としてやっているのが事実です。しかしながら、地域で安心して暮らせる環境をつくっていくという地域移行を今回の法改正案には様々な形で盛り込んでいるわけです。つまり、せっかく厚労省がそういった意思を示しているのに、この発言で覆ったとは思いたくありませんけれども、これまで積み重ねてきて、そして、三月に出した案が六月には大変大きく後退してしまっている。それが私は余りに疑問でなりませんし、なぜこうなってしまったんだろうという思いがあります。

 厚労省は、今回、障害者、精神障害者も含め地域移行を進めていく、これまで施設や病院にいたそういう人たちが一人でも多く、地域で住みやすい体制をつくるということであるならば、精神医療に関しては、やはり、廃止とまで言えなくても、将来に縮小を入れた検討をしていくということぐらいなぜ入れられなかったのか、大変に疑問です。

 入ったのは、将来的な見通しについて検討という言葉です。将来的な見通しについて検討というのは、何も言っていないということですよね、将来的な見通しを検討するということですから。大変残念です。その意思を、是非、大臣からお聞きをさせてもらえればと思います。

加藤国務大臣 まず、先ほどのは、将来的な見通しではなくて、将来的な見直しでありますから、そこはちょっと趣旨が違うんだろうと思います。

 その上で、まさに、この場というのはいろいろな関係者がおられます。そして、かんかんがくがく、いろいろな議論が行われている。ちょっと、私、当時担当じゃなかったので、そのこと自体直接は見てはおりませんけれども。まさにそういった議論をしながら、方向として、まず地域移行を進めていく、これはコンセンサスになっていくわけですから、まさにそれを一つ一つ進めていくということが大事なんだろうというふうに思います。

田中(健)委員 是非、その意気込みを今回の法案にもしっかりと書き込んでほしかったです。

 済みません、見通しが見直しということでありましたので。見直しであったとしても、将来的な見直しについて、さらに、それを検討ということでは、私は何もしないということに等しいんじゃないかと思っておりますので、そこは最後に述べさせていただきたいと思います。

 済みません、時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 国連の障害者権利委員会の総括所見が出されました。私、もっとこの総括所見の中身を政府は重く受け止める必要があると思います。強制入院の法的規定の廃止、これを求めました。そして、障害者が地域で自立して生活できるようにしっかり支援をしていきなさい、こういう勧告が出たわけですね。

 先ほど田中議員が指摘をされておりましたけれども、障害者の権利委員会の総括所見は、この勧告の実施状況の報告は二〇二八年二月二十日なんですよね。ところが、今回の法案は、勧告の中身は入っていない。強制入院の見直しの方向は何も入っていない、逆の方向のものすら入っている、こう指摘がされているわけです。そうして本法案の成立後の見直しは、法施行後五年、つまり二〇二九年四月ですよ。二〇二八年の障害者権利委員会の報告は、法的対応を取ってくれという要請を全く無視をする、こういうことになってしまうわけです。

 先ほどの答弁を聞いていましたら、法律が成立してから速やかに検討していくんだ、こうおっしゃいます。速やかに検討すると言いながら、法的対応が実施後の五年後というのは、速やかに検討したって、ずっと長い間検討するという話じゃないですか。ちっとも実行しようということにはならないわけです。

 大臣、私は、障害者権利委員会の総括所見、しっかりと受け止めて、束ねを外して法案を見直して、出し直すべきだと思いますよ。いかがですか。

加藤国務大臣 先ほど、束ねている理由は既に申し上げたとおりでございます。

 また、障害者権利委員会の総括意見というんでしょうか、それに対する対応についても、まさにそうしたことも念頭に置きながら、附則において、二条、特に三条ですかね、を加えさせていただいて、そうした対応も想定をしながら今回の法律を出させていただいた、こういうことでございます。

宮本(徹)委員 そうした対応といったって、速やかな検討でしょう。それでも法改正は二〇二九年ですよ、次は。これが法案の中身なんですよ。速やかにのんびり検討するという法律なんですよ。それでいいんですか。

 厚労省は、そもそもこの法案作成過程において、有識者検討会では、先ほどお話ありましたけれども、医療保護入院の将来的な廃止を視野に縮小、これを掲げていたわけですよね。病院団体の反対でなくなってしまいましたけれども。

 私は、今回の障害者権利委員会の総括所見を受けて政府がやるべきなのは、束ねを外して、精神保健福祉法、とりわけこれについては有識者検討会の議論からやり直すべきだと思いますよ。大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 いや、ですから、今お話をさせていただいたように、検討規定には第二条と第三条があるわけでありまして、それはもう委員御承知のとおりで、第三条では、「政府は、精神保健福祉法の規定による本人の同意がない場合の入院の制度の在り方等に関し、精神疾患の特性及び精神障害者の実情等を勘案するとともに、障害者の権利に関する条約の実施について精神障害者等の意見を聴きつつ、必要な措置を講ずることについて検討するものとする。」と。当然、この必要な措置には、法律をいじる、法律を改正するということも含まれるものと考えております。

宮本(徹)委員 ですから、その法律の改正が実施後の五年になっているという法律だということを指摘しているわけですよ。

 大体、速やかに検討するというんだったら、今すぐに始めればいいじゃないですか。だって、検討会の元々の厚労省の思いだって、医療保護入院の将来的な全廃を視野に、これが厚労省自身の事務方の提案した中身だったんですから。そこに立ち戻っての検討を今からやろうじゃないですか。そのために束ねを外しましょうよ。賛成すると多くの皆さんがおっしゃっていますよ。多分、大臣がそうすると決断したら、与党の皆さんだって、うんと言うと思いますよ。是非お願いします。

加藤国務大臣 いや、ですから、ちょっと委員と私、何かかみ合っていなくてあれなんですが、第三条においてこうした規定を設けているのは、別に施行後五年とは関係ない。それとは別に第三条が設けられているんですから。そこに是非御理解いただきたいと思います。

宮本(徹)委員 じゃ、それとは関係ないとおっしゃるんでしたら、なおさら、私はこれは外して、直ちに今から見直した方がいいと思いますよ。なぜなら、障害者権利委員会からの総括所見に反する中身がある、こういう指摘が日弁連からも、先日会長声明が出て指摘をされております。だから、私はきつくここで申し上げているわけですよ。

 ちょっと中身の議論に行きたいと思いますけれども、強制入院の比率は、EU諸国では平均一〇%台ということでありますが、日本では、二〇二一年六月三十日、入院者二十六万三千七人のうち、医療保護入院が十三万九百四十人、四九・七%、半分を占めております。

 そして、今日、資料をつけておりますけれども、精神病床の平均在院日数は、OECDの資料で、多くの国は十日から四十日、スペインが五十六日、ギリシャが九十六日、韓国は百七十六日と。日本は、厚労省の資料では、二百九十四日と飛び抜けて多いわけですね。

 大臣、なぜ日本はこんなに非自発的な入院が多いのか。なぜ日本の入院期間が長いのか。認識をお聞かせいただきたいと思います。

加藤国務大臣 各国との比較というのは、文化とかいろいろなものが違うので、なかなか難しいと思いますが、入院期間が長期に及ぶ要因については、精神障害者の退院支援を具体的に進めるに当たり、患者御本人の抱える多様な課題を解決するための仕組みが必ずしも十分でない、こういったことが指摘をされているところでございます。

宮本(徹)委員 やはり日本の医療保護入院の制度は十分じゃないところだらけなわけですよね。入院の際の同意も、家族の同意。基本は、お医者さんが指定したら、家族の同意ではいれてしまう。その際に、司法審査だとか第三者機関だとか、こういうところがチェックする仕組みもない。そして、一回入院した場合、期限も設けられていない。そして、地域でも、精神障害者の皆さんを支えていく体制が余りにも欠けている。たくさんの課題があるわけですけれども、これは一つ一つ、やはりちゃんと見直していきましょう、解決していきましょう、これが国連の障害者権利委員会の総括所見が言っている中身だと思うんですよ。

 今回、法案では、医療保護入院について、家族の同意、不同意の意思表示がない場合、市町村長の同意で入院を判断する、こういう仕組みが設けられますが、これは医療保護入院の適用拡大だと日弁連の声明では言っております。これによって不要な強制入院が増えることになるんじゃないですか、大臣。

加藤国務大臣 家族の同意、不同意の意思表示がない場合の医療保護入院の適用拡大に関して、今御指摘がありました。

 今回の改正は、家族等が患者本人との関係が疎遠であることなどを理由に、同意、不同意の意思表示を行わず、患者が必要な入院治療にアクセスできない場合があることや、家族同意に伴う家族関係の悪化を懸念する精神障害者の家族の団体からの要望を踏まえて行うものであります。

 患者の症状は様々であり、今般の改正案により医療保護入院が増えるとは一概には言えないと考えておりますが、改正法の施行後においては、医療保護入院に当たり、病院から家族等に対して従来どおり患者本人の入院医療の必要性についての説明を行うことなどに加えて、医療保護入院制度における家族等同意の意義、同意した家族等に対して入院理由やその期間について書面の通知があること等についても十分な説明を行った上で、家族等の意思を確認することが重要であり、その上でどうしても意思表示が得られない場合について新たに市町村同意の対象となるほか、今回の改正案では、精神科病院の管理者に地域の障害福祉、介護従事者との連携を義務づけるなど、あわせて、入院患者の退院支援も推進するとしており、施行に当たってはこうしたこともしっかりと周知をし、医療保護入院の適切な運用、これを図っていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 家族関係の悪化、家族同意だとそれが起きる可能性がある、これはもう昔からずっと指摘されてきたわけですよね。ですから、そもそも医師の判断と家族同意の要件だけで医療保護入院を可能とする制度はやめるべきだというのが言われてきたわけですよ、人権保障の観点から。裁判所がかむだとか、第三者機関がかむだとか、もっと家族に負担がかからない制度にしようということは言われてきたわけですよね。

 ところが、今回は医師の判断に加えて、家族の意思表示がなければ市町村の同意だと。今でも家族がいらっしゃらないケースなどは市町村の同意で医療保護入院というのがあります。ただ、それはやっていることというのは極めて簡単な書面審査なんですよ。通常は判こを押してしまう。市町村長が不同意にした件数があるのかと厚労省に聞きましたら、そんなものは把握していないということですよ。

 そして、実施要領では、入院中の面会について、市町村長が同意した患者には市町村の担当者が面会することになっておりますけれども、面会をやられていないケースが大変多いわけですよ。面会状況はどうなっているのか厚労省に聞きましたけれども、これも全然つかんでおりません。市町村長の同意というのは、ほったらかしの同意になっているんですよね。

 こういうことを拡大していって本人の意に反する強制入院を増やしていいのかというのは、本当に大問題だというふうに私は思います。医療が必要だけれども入院でなくてもやっていけそうだ、こういう方が、いや、この方は入院した方が周りとしては楽だということで医療保護入院になってしまう可能性が、これによって生まれる可能性がある。これはもう、本当に私は人権侵害になると思います。こういうことが起きない保証はないんじゃないんですか。

三ッ林委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

三ッ林委員長 速記を起こしてください。

 辺見障害保健福祉部長。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 医療保護入院制度は、患者の権利擁護に責任を有する精神保健指定医が入院治療の必要性を判断した上で、入院治療への患者のアクセスを保障するとともに、患者の権利擁護を図る仕組みとなっております。

 医療保護入院については、患者の意思の尊重や家族の負担軽減等の観点から廃止を求める意見がある一方、代替策がない状況で廃止の方向を示すことは困難であり、十分な議論が必要との意見があるところでございます。

 精神障害を有する当事者、法律家を含む有識者による検討会における議論におきましては、例えば、司法機関を同意者とするということについて、医学的な専門性を伴う判断について、法律家による判断というのはなかなか困難な面があるといったようなことも含めて、御議論いただいたところでございます。

 今回の改正法案の附則において検討規定を置いているところでございますけれども、こうしたことと併せまして、現行の医療保護入院の課題について整理を進めてまいりたいと思っております。

宮本(徹)委員 聞いたことにお答えになっていないんですけれども、私は本当に、本人の意に反して不要な強制入院がこのことによって増えることは否定できないと思いますよ。私は本当に、当事者の皆さんの意見も聞き、日弁連の皆さんとも意見交換し、ちゃんと人権が保障された形での精神医療の在り方とはどうなのかというのを、やはり国連がせっかくああいう総括所見を出していただいたわけですから、ここは立ち止まって考えるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 もう一点伺いますけれども、この医療保護入院について、今回、期間は何か月というのはありますけれども、更新が無限にできるものになっております。どうしても更新が必要だというのであれば、最低限でも、更新は一回だけだとか、回数に上限を設ける必要があるんじゃないでしょうか。設けなければ、ずっと本人の意に反した入院が続いてしまうことになります。いかがでしょうか。

辺見政府参考人 今回の法案につきましては、入院患者の退院促進や地域移行を図るために、新たに医療保護入院の入院期間に六か月の上限を定めるといった規定を置いたところでございます。

 この入院期間につきましては、期限の到来の際に、精神科病院が入院の要件、これは医療の必要性や同意の能力等でございますけれども、これを確認するということが必要でございまして、単に家族の同意だけでは入院を継続できない仕組みとしております。

 個々の患者の症状等によりまして必要な入院医療の期間も異なるため、一概に上限を設けることは困難でございますが、今回の改正案では、精神科病院について、現行は努力義務とされている地域のサービス事業者との連携を義務とするなど、退院後の地域での生活を見据えた退院支援の更なる拡充を図ることとしております。

 適切な運用に努めてまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 ここは本当に、人権保障の観点から、この異常な日本の長期の入院、どうやって歯止めをかけるのかというのを真剣に考えていただきたいと思います。

 残された時間で、別の問題、質問します。

 一般就労と就労系障害福祉サービスの併用についてお伺いしたいと思います。

 日常的に就労系障害福祉サービスの支援を受けているからこそ、一般就労が続けられている方々がいらっしゃいます。今回の法案についても、現場で支援する方からは、一時間でも働けたら福祉サービスに利用制限がつくのが原則になるというのは、福祉サービスによる生活支援の放棄という感じがする、こういう声もいただきました。

 自治体の判断で併用できているものについて、国が新たに一時利用だと法律に明記して、原則の利用期間、これを定めたら、私は、絶対自治体の判断に影響しちゃうと思うんですよね。

 私はやはり、法律上、一時に限るべきではないと思います。そして、当事者のニーズに合わせて、期間を定めずに継続的に利用できることを明確にすべきだと思います。あわせて、例えば、週十時間未満の超短時間雇用の方はこの期間制限の対象外だとか、こういうことも明確にしていただいて、とにかく継続的な併用を、必要な方にはちゃんといつまででもできるんだ、こういう仕組みにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

辺見政府参考人 現行の制度におきましては、一般の就労が困難な方について、福祉サービスの利用を認めているところでございます。

 こうした枠の中で、一般的な就労とは異なる形で、短期間、臨時的な働き方をされている事例があろうかと思いますが、これは今回の法律で想定しております一時的な雇用というものとは異なるものであると考えておりまして、こうしたところについて適切な運用がなされるように、法施行後の運用においてしっかりと周知をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 短い時間の場合はそうだと。

 例えば、週二十時間、三十時間働いている方のケースであっても、週一回、就労系の福祉サービスを利用することによって、そこで、いろいろな悩みを相談したりだとか支えられることによって、一般就労も続けられているという方もいるんですね。こういう方についても当然、利用期間を制限せずに利用できるようにすべきだと思いますが、その点はいかがでしょうか。

辺見政府参考人 就労の形態、働き方等、様々でございますので、ちょっと一概に申し上げることが今の時点では困難でございますけれども、法施行後において現場において混乱が生じることのないよう、整理をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 一番大事なことは、障害がある方が一般就労をする際に、それだけではなくて、就労を続けるためには福祉的なサービスも必要だという方がいれば、その方もしっかり期限を区切ることなくちゃんと利用し続けられることだというふうに思いますので、期限を区切って、福祉サービスが受けられなくなって、逆に一般就労も困難がもたらされるようになったら、これは本末転倒ということになると思いますので、そこは本当にしっかりやっていただきたいことを申し上げまして、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文でございます。

 今日も、まずは障害者の就労について説明した上で、答弁をいただきたいと思います。

 この間も議論に出ておりますけれども、就労継続支援のA型の施設がありまして、例えば私の地元でも、一次産業とのコラボということで、農福連携という言葉が定着したように、障害者が農業を担って、それでそういった事業を展開していくということもあります。

 今日ちょっと大臣に改めて提言したいのは、やはり、願わくば、今、日本全体でも今後、労働力人口の減少でありますとか、あるいは、私としては、そういう障害をお持ちの方も、福祉の分野から一般の就労に移りたいという方も多々いらっしゃると思うわけですね。

 まず、そういったマッチングのことも含めてですけれども、地元においても、そういった経営者、いわゆる障害者を本気でこれからそういった労働力人口の減少も踏まえて雇用したいという方もいらっしゃると思うんですけれども、かなり改善はされつつありますけれども、その啓発活動ですね、まず障害者の属性を知るとか、お互いを認め合う社会でございますので、やはりそういったことの啓発、ハローワークを通じてやっているということでございますけれども、大臣、このことに関しまして、経営者がまずそういった障害者の個々の実態を知るということに関して、何か御意見がありましたら、よろしくお願いします。

加藤国務大臣 障害者の方を雇用されたいという意向を持っている経営者の方も、私の周りにもいろいろおられます。

 ただ、具体的にどういう形でそういった皆さんに働いてもらうのか、そのために何をすべきなのか、そういったところがなかなか見えてこない、こんなお話も聞くわけでありますから、是非、今おっしゃっているように、障害者の方が通常の事業所で働ける、その環境をどうつくっていけばいいのか、あるいは、事前に少しそこで働いてみて、今のやり方がありますよね、少しなじんでみて、あるいはそこでサポートしながら、そして定着をしていただくとか、そうした様々な対策を講じていくことで、できる限り一般の就労に入っていただけるように、また、障害のある方も一般の就労で働きたいという希望を持っている方も大勢おられると思いますので、そうした希望を実現できるように努力をしていきたいと思います。

仁木委員 雇用をする経営者、あるいは人事部の方を含めて、大臣がおっしゃったことの具体的なサポート体制として、ジョブコーチみたいな制度があると思います。やはり、国の財源から申しましても、福祉でいると一人頭年間二百万円ぐらい要るというような試算もあるわけでございますけれども、それが障害者雇用を一般雇用に移行すると、例えば、一番増えていて二万七千円としても、年間三十五万円ぐらいで済むというふうなこともあります。

 ですから、障害者だからこの仕事はできないだろうではなくて、障害者でも可能な、可能性、ポテンシャルを持っていますし。されど、例えば、一つのこういった作業が得意で、すごくなじんできて、信頼もできて、出世して、管理職になるという話をしたら、それがすごく重荷になったりする、そういうケースもあると思うんですね。

 ですから、経営者、人事部の方も含めて、障害者の属性を、やはり、いわゆる一人も取り残さない社会でございますので、そういった価値観、多様性を重んじる、そういう面も、この障害者の雇用、労働行政においても、大臣としてまたリーダーシップを取っていただきたいと思います。

 そういう意味でハローワークの果たす役割は大きいと思うんですけれども、大臣、私が冒頭申し上げた、就労継続型の、A型施設から移行した際の、いわゆる保険での収載があります、福祉における。これをもう少し、例えば、一年しかいわゆるポイントというか報酬がないわけでございますけれども、それを延ばすとか、就労継続でそういった障害者がそこで得た経験、そしてスキルをまた一般就労で生かした場合のインセンティブをより現場に与えるような。つまり、そこの就労継続の場である程度技術が整った、経験を積んだ従業員がいると、そこで、福祉だけで頑張っていって、まあそれはいいことではあるんですけれども、やはり一般就労に生かすということも非常に大切な目的でありますので、そういったインセンティブを厚くするというふうなことに対して、大臣、これは影響はあると思いますので、どうでしょうか。

加藤国務大臣 まず、就労継続支援A型事業は、通常の事業所に雇用されることが困難で、雇用契約に基づく就労が可能な障害者に対して、就労や生産活動の機会を提供して、就労に必要な知識とか能力の向上のために必要な訓練などを行う、こういう場でありますから、これを利用する中で、今申し上げた、能力が向上して、一般での就労も可能になってくるという方もおられると思います。本人の希望、また、今申し上げた能力の向上に応じて、一般就労への移行をむしろ支援していくということが大事であります。

 障害福祉サービス等報酬においても、就労継続支援A型事業所での就労から一般就労に移行して六か月以上就労を継続している方がいる場合には当該A型事業所を加算で評価するという仕組みを、令和三年度報酬改定においてその充実も図ったところであります。

 引き続き、A型事業所において、一般就労への移行も含めた、利用者のニーズに沿った支援の提供が重要であり、また、それに向けて必要な方策を推進していきたいと考えております。

仁木委員 大臣の御答弁ですと、ある種、就労継続A型施設というものが、障害者の方が一般就労に向けての訓練とかそういったことを担っている可能性もありますので、私が冒頭申し上げたような形で、やはり、例えば就労移行支援の体制加算等の増額とか、そういった要件の緩和とかも踏まえて、こういったところに、施設の方にインセンティブを与えていただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 その上で、私も、知的障害を持たれたお子さん、例えば友人としているわけですけれども、特別支援学校を卒業した後のその人たちの居場所というのはすごく重要です。

 そういうことで、これも、ハローワークの、地域の、持っている様々な、雇用する場、事業所の方々の情報を、例えば、特別支援学校の先生に提供しながら、それぞれの子供たちがその学校を卒業した後の就労につなげていくということも大切だと考えますけれども、ちょっと、特別支援学校も文科省的なエリアになるわけでございますけれども、特にハローワークのスタッフの方々のそういった連携、その辺を大臣、どのようにお考えでしょうか。

堀井政府参考人 お答えをいたします。

 今、仁木委員からも御指摘があったように、特別支援学校等との連携、非常に重要なことだと思っております。ハローワークにおきましては、特別支援学校等と連携をして、職場実習の実施も含めて、在校時から支援を行うようにしております。

 そして、これ以外にも、例えば精神保健福祉士の方、こういった方々を専門人材ということで配置をしまして、担当者制によって障害の特性に合わせたオーダーメイドの就職支援を実施をしているところでございます。

 そしてまた、就職後におきましても、ハローワークで定着支援を実施をしたり、具体的な問題が生じる場合は地域障害者の職業センター等とも連携をしてジョブコーチなどの専門的な支援を行っている。こういった形で、一貫した形での支援を行っているところでございます。

仁木委員 ありがとうございます。

 ちょっと精神科の関係の方の問題にしていきたいと思いますけれども、私も医師として、大分前になりますけれども、精神科の病院の方に当直に行ったことがありますけれども、本当にそのときの環境というのは非常に劣悪なものもありました。

 実際、そこでルーティン的に、こういう状態になったらこういうふうな薬物療法を施してくださいといったときに、やはり、男性看護師がそういった暴れようとする患者さんを押さえて、それでそこで注射をするとかいうふうなことがありました。こういったのは結構、ある種、閉じた空間で起こっていることです。

 それで、先ほど来、やはり精神科病棟とかそういったところ、特にクローズドな関係があって、今回のこの改正案にもあるんですけれども、例えば入院者訪問支援事業とかいうことがありますけれども、入院していない方々が訪問する、あるいは専門家が訪問するということがありますけれども、大臣にちょっとここでお尋ねしたいんですけれども、そういった精神科領域、特に病棟内のクローズ的なところで行われるそういった治療の一環というものと、今回問題にもなっています虐待、この見分け方というか、そういったのもある程度必要だと思います。

 この質問に先立ちまして、高齢者虐待防止法というのがありまして、例えば身体的、心理的虐待でありますとか、介護放棄、ネグレクトとか、あるいは性的虐待であるとか、経済的虐待とか、五つの虐待のテーマを項目別に出して、そういった高齢者の虐待を予防するような法律があるわけでございますけれども、今回、この辺の見極めというか、さっき私が冒頭に申し上げた、治療と虐待の、ある種の見る人が見たら、押さえ込まれて、それはちょっと虐待じゃないのというふうに取られるかもしれませんが、そういったところの、クローズな中で行われるそういった行為、それを大臣、何かお答えいただければと思います。

辺見政府参考人 ただいま御指摘いただきましたとおり、精神科病院では、隔離、身体拘束につきまして、精神保健福祉法に基づき、精神科実務経験を有し、法律等に関する研修を修了した精神保健指定医が、代替の方法によることが困難であり、医療保護を図る上でやむを得ないと判断した場合に、必要最小限度の範囲で隔離、身体拘束というものを定められた手続を経て行われるというものでございます。

 他方、今回の精神保健福祉法の改正案では、精神科病院における障害者の虐待の内容として、身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行、わいせつ行為、暴言等の著しい心理的外傷を与える行為、衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置などを規定することとしております。

 こうした隔離、身体拘束と医療上の合理性が認められない虐待とは、一般的にはその状態が異なるものと考えられますが、通報される案件の中には両者のいずれに該当するかが一義的には分からないものも含まれる可能性がございます。

 現場で適正、円滑な運用が図られるよう、通報の手続や通報を受理した都道府県の対応などについてしっかりと明示をして、適切に対応してまいりたいと考えております。

仁木委員 いずれにしても、なかなか現場の実態把握は難しいと思いますけれども、やはり、今までの歴史的な経緯がありますし、保健も、ある種、一般の形と行政的に違うということもありますので、そういったことも踏まえて、私は、定義づけ、そしてQアンドA的なこともしていくべきだと思っております。

 といいますのは、高齢者虐待法におきましても、高齢者に対しての虐待は駄目ですよ。でも、実際は、例えばこういう高齢者もたまにいるんですね。介護施設で若い介護スタッフのお尻を触ったりとか、高齢者からそういったケアラーに対する虐待というかセクシュアルハラスメントというか、そういうのを認められますし、例えば、さっき私が精神科病棟の話をしましたけれども、患者さんが医療従事者に暴力を振るってきたりとかいうことも実際あるんですね。そういうのが、人ですから、いわゆるプロで働いている人も人ですよね、介護士にしても、介護の現場の人、そして医療の現場にしても人ですから、何だとか、ちょっと感情的になった場面もあると思うんですね。

 そういったことに対してのQアンドAとか、この際、こういった法改正をするのであるならば、やはり大臣、一度、こういう現場視察も含めて、もっともっとリアリティーというか現場のことを踏まえた上で、どういったQアンドAが望ましいのか。

 そして、やはり医療とか介護というのは、私、現場にいて思うんですけれども、お互いが、医療を提供する側、介護を提供する側、受ける側も、皆お互いが協力し合っていいものにつくっていくものだと思うんですね。

 そういう意味でいうと、私は、もちろんサービスを提供する側でいろいろな問題が起こって、こういう法改正もあるわけでございますけれども、そういった我慢ばかりということもあるので、そういうことも踏まえて、やはりある程度、国としての現場を見据えた上でのQアンドAみたいな、ガイドラインというか、大げさですけれども、そういう対応をすべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 私も、先日、精神科の医療機関も視察を行かせていただきまして、いろいろお話を聞きました。そういう中で、QアンドAもあるんだと思いますけれども、やはり、そこで働く方々がよくトレーニングされていて、いろいろな状態に対して冷静に対応していけるかどうか、また、それだけの経験を積んでいるかどうか、そういったものがかなり影響するのかなということを感じさせていただきました。

 このため、精神科医療体制確保研修事業においては、精神科病院等に勤務する幅広い職種を対象に、暴力を未然に防ぐための資質と技術を有した人材を育成するための包括的暴力防止プログラムに関する研修なども実施をさせていただいているわけでありますので、こうしたことを通じて、医療従事者の方々がまずは安心して対応できていただく、そして、そのことは患者さんにとってのプラスにつながるわけでありますから、そうした対応もしっかりやらせていただきたいと思っております。

仁木委員 精神科の患者さんが入院する際に、今回の医療保護入院もそうでございますけれども、入院したい、治療するから、自分が病気を持っているからという、その病識が余りない方もいらっしゃいます。そういう中で、自分の意思に反して入院して、それでそういう事案が起こってしまう。そうしたら、例えば、また入院かというときに、何か本当に自分が行きたくないところに行かされるようなところしかないわけですね。

 自分が持っているそういう病気を治すために入院するんだというのが、本来のそういうありようだと思うんですけれども、そういう意味でいうと、やはり、現場のことをもう少し把握した上でのしっかりとした対策というのは、せっかく法改正して現場を変えていくことになりますので、私は、例えば、入院してから退院に向けてのアウトリーチ、公認心理師とかそういった形でどんどん、精神科医とあるいは看護師だけでなくて、そういった一般の生活に移行する際のいろいろな人材を増やして、こういったバッファーというかアウトリーチを増やしていく、それが大切だと思いますけれども、その最後のこと、それで、もしございましたら、お願いします。

三ッ林委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、終了してください。

仁木委員 じゃ、次回、質問させてもらいます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る十六日水曜日午前九時三十分、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十六日水曜日午前九時十五分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.