衆議院

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第9号 令和4年11月16日(水曜日)

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令和四年十一月十六日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      青山 周平君    東  国幹君

      畦元 将吾君    石井  拓君

      石原 正敬君    泉田 裕彦君

      上田 英俊君    柿沢 未途君

      勝目  康君    川崎ひでと君

      小泉進次郎君    小林 史明君

      後藤田正純君    高村 正大君

      佐々木 紀君    塩崎 彰久君

      新谷 正義君    鈴木 貴子君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      土田  慎君    中川 郁子君

      中西 健治君    西野 太亮君

      橋本  岳君    長谷川淳二君

      鳩山 二郎君    平沼正二郎君

      藤井比早之君    古川 直季君

      堀内 詔子君    牧原 秀樹君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      山口  晋君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    大西 健介君

      西村智奈美君    野間  健君

      山井 和則君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    池畑浩太朗君

      一谷勇一郎君    早坂  敦君

      吉田とも代君    古屋 範子君

      吉田久美子君    田中  健君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   議員           井坂 信彦君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   政府参考人

   (内閣官房こども家庭庁設立準備室審議官)     野村 知司君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           森  源二君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西條 正明君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         間 隆一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 堀井奈津子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           藤原 朋子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   参考人

   (国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部長)   藤井 千代君

   参考人

   (全国「精神病」者集団運営委員)         桐原 尚之君

   参考人

   (一般社団法人日本難病・疾病団体協議会常務理事) 辻  邦夫君

   参考人

   (一般社団法人全国地域で暮らそうネットワーク代表理事)          岩上 洋一君

   参考人

   (日本弁護士連合会高齢者・障害者権利支援センター精神障害のある人の強制入院廃止及び尊厳確立実現本部本部長代行)      池原 毅和君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     石原 正敬君

  勝目  康君     石井  拓君

  小林 鷹之君     青山 周平君

  塩崎 彰久君     平沼正二郎君

  橋本  岳君     中西 健治君

  長谷川淳二君     東  国幹君

  三谷 英弘君     鳩山 二郎君

  遠藤 良太君     池畑浩太朗君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     泉田 裕彦君

  東  国幹君     古川 直季君

  石井  拓君     西野 太亮君

  石原 正敬君     上田 英俊君

  中西 健治君     橋本  岳君

  鳩山 二郎君     三谷 英弘君

  平沼正二郎君     塩崎 彰久君

  池畑浩太朗君     早坂  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     小林 史明君

  西野 太亮君     勝目  康君

  古川 直季君     山口  晋君

  早坂  敦君     遠藤 良太君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     佐々木 紀君

  山口  晋君     長谷川淳二君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     鈴木 貴子君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 貴子君     藤井比早之君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     中川 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     小林 鷹之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案(道下大樹君外十名提出、衆法第一一号)


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     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案及び道下大樹君外十名提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部長藤井千代君、全国「精神病」者集団運営委員桐原尚之君、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会常務理事辻邦夫君、一般社団法人全国地域で暮らそうネットワーク代表理事岩上洋一君、日本弁護士連合会高齢者・障害者権利支援センター精神障害のある人の強制入院廃止及び尊厳確立実現本部本部長代行池原毅和君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず藤井参考人にお願いいたします。

藤井参考人 このような意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の藤井です。

 今回の法改正に向けた検討会に構成員として参加いたしました。法改正に全体として賛成の立場から意見を述べさせていただきます。

 私は、今回の法改正に向けた検討会の前年に開催された、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会にも構成員として参加しておりました。その中では、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、包括的な支援体制を確保する、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構築することの必要性が示されました。

 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムは、地域共生社会の実現に向かっていく上では欠かせないものであるとされております。

 現在、日本の各地域では、地域共生社会の実現に向けた取組が始まっておりますが、メンタルヘルス不調や精神疾患、精神障害を持つ人など、精神的な不調を抱えた方々に対するスティグマはいまだに根強くあり、真にインクルーシブな社会を目指す上では、精神的な不調を抱えた方たちが社会に包摂されることが重要です。

 スティグマは、社会構造レベルのスティグマと個人レベルのスティグマに大別されます。社会構造レベルのスティグマとは、精神科医療の提供体制が身体科医療の提供体制と比較して不十分であったり、精神保健や精神医療に関するシステムが一般の地域保健や医療とは別に扱われたりといった、社会や制度の仕組みにおける差別のことを指します。個人レベルのスティグマとは、精神疾患は怖いといった誤った認識や、一緒に働きたくないといった心理的抵抗感など、個人が持つ認識や態度などを指します。

 現在の日本の状況を見ると、関係者や当事者、御家族の努力により、医療や福祉の質、メンタルヘルスリテラシーの向上が一定程度進んできておりますが、精神の不調に対するスティグマは、個人レベルのみならず、社会構造レベルにおいても今なお存在しています。

 私は、今回の法改正を、このようなスティグマの解消に向けてのステップとして生かしていかなければならないと考えております。

 精神障害のあるなしにかかわらず、地域には様々な生きづらさや困難を抱えた方がいらっしゃいます。地域住民全てが、制度の隙間に陥ることなく、必要なときに必要な支援を過不足なく受けられることが必要です。そのためには、住民の身近にあって福祉の支援体制を既に構築している市町村が、こうした支援ニーズを取り込んで支援できる体制の強化が重要であると考えます。

 本改正案において、精神障害者等に対する包括的支援の確保の必要性を明記していただいたことや、精神障害者のみならず、精神保健に関する課題を抱える方についても自治体における相談や援助の対象者として明記していただいたことで、地域全体の支援強化につながるものと考えております。

 一方で、市町村が義務として行っている様々な地域保健福祉関連業務の多くが精神保健と関連していることは、私どもの研究からも明らかです。今回、市町村の精神保健業務に関する規定を設けていただきましたが、これを是非実現した上で、今後は、市町村間の支援に格差が出ないよう、精神保健業務に必要な人員配置や予算措置にも支援をお願いしたいと思います。

 市町村における精神保健業務のニーズが年々高まっていることも私どもの調査により示されておりますので、地域保健の中に精神保健をしっかりと位置づけていただけるように、予算措置や下位法令の整備などが必要であると考えております。これは、精神の不調を抱える人を別扱いしない社会構造を目指す上で非常に重要です。

 また、法改正で、都道府県は市町村の求めに応じてバックアップするよう努めなくてはならないと明記していただいたことはありがたいことなのですが、保健所、精神保健福祉センターも、市町村と同じく人的資源が不足していることに十分な配慮をお願いしたいところです。

 医療保護入院の在り方についてですが、今回の改正は、入院期間の法定化や入院理由の告知、退院支援措置の拡充など、医療保護入院をより適正に行う方向での見直しと理解しており、このような見直しは進めていただきたいと考えます。

 なお、医療保護入院の同意に関しては、家族等同意を維持せざるを得ないということであれば、今回の改正案のように市町村長同意となる要件を広げる方向で致し方ないと考えますが、従前から、家族等同意は、家族に過大な負担を強いるばかりでなく、当事者と家族の関係性にも悪影響を及ぼしかねない制度であるとの指摘もありますので、より適切な手続の在り方について引き続き議論を重ねる必要があります。改正案の附則第三条にあるとおり、当事者等の意見を聞きつつ、検討すべきと考えます。

 障害者権利条約の対日審査では、総括所見において、実際の障害又は危険であると認識されることに基づく障害者の強制入院を認める全ての法的規定を廃止することとされました。非同意入院に関しては、精神科臨床における倫理課題の中でも最も重要なものの一つであり、国内外で様々な立場から長年にわたり議論されています。障害者権利条約の第十四条ガイドラインあるいは国連障害者権利委員会からの勧告を受けて、批准国では、非同意入院の在り方についてこれまで以上に真剣な検討が行われています。ですが、私が知る限り、非同意入院に代わる具体的かつ現実的な対応策については、現在までのところ、まだ模索が続いている状況です。

 注目に値する取組として、北アイルランドでは、非同意入院を行うに当たって、精神障害があることを前提とするのではなく、本人が自律的とみなされる意思決定ができない場合であって、非同意入院が本人にとっての最善の利益であると判断された場合にのみ容認する法律の運用が開始されています。すなわち、精神障害のみを別扱いとせずに、原因のいかんを問わず、自律的な意思決定ができるか否かを前提とした、かなり画期的な法律です。

 この法律の運用はまだ段階的に始まったばかりですし、ほかの国でも障害者権利条約に可能な限り準拠するための努力が続けられているところですので、そのような海外の動向も注視しつつ、附則第三条に基づく検討を進めていただきたいと思います。

 その際には、できれば、精神保健福祉法に規定される範囲の検討にとどまらず、保健医療福祉体制全体において、精神障害者等が精神障害を有するがゆえに別扱いとなる仕組みをなくしていくと同時に、精神疾患、精神障害という疾患特性、障害特性に配慮した仕組みとなるように、関連法を含めて検討することが望ましいと考えます。

 次に、入院者訪問支援についてです。

 精神科病院では、職員が治療や支援に真摯に取り組み、法令に基づく権利擁護が行われています。当事者と医療従事者が治療方針について話し合いながら決定していく共同意思決定についても、まだ十分とは言えないながらも、精神医療現場で進みつつあります。

 それでも、入院医療の特性上、患者さんはおのずと外部と隔てられ、集団生活の規律を守り、医療機関の職員の指示に沿って治療を受けないといけない立場にあり、孤独、孤立感や自尊心の低下が起こりやすく、本来その人が持っている権利の行使が難しいことがあります。こうした方が、病院外の常識から見れば当たり前の権利を行使できるためには、本人の立場に立った味方が必要です。こうした支援のことはアドボカシーと呼ばれています。

 アドボカシーは、医療機関などの支援提供側が行うフォーマルアドボカシーや、家族や友人によるインフォーマルアドボカシー、同じような属性を持つ仲間によるピアアドボカシーのみならず、独立した第三者が行う独立アドボカシーがあることが望ましいとされています。

 今回、入院者訪問支援事業が改正案に盛り込まれましたが、こうした独立アドボカシーの考え方が一定程度反映されたものと考えております。この事業が御本人の力を引き出し、権利擁護に資することが重要であり、より広く普及することを期待しています。

 障害者虐待防止の義務化や通報については、今回、精神科病院においてそれらが制度化されたことに賛同したいと思います。前に述べましたとおり、精神科病院では職員による様々な権利擁護の取組がなされていますが、非常に熱心な病院から、そうでもない病院まで、その取組状況には差があります。今回、虐待防止の取組が義務化されることにより、病院間の取組状況がよい方向に均てんされることを期待したいと思います。

 障害者虐待防止法の附則第二条において、医療機関などにおける障害者虐待についても、施行後三年をめどに必要な措置を講ずるとしていることや、医療機関における虐待は精神科病院だけで生じているわけではないことなどもあり、将来的には、より広く、医療機関における虐待防止の規定を設けることについて引き続き検討していただきたいと考えておりますが、まず精神保健福祉法に規定されることで、早期に実効性ある執行体制が整うという利点があるものと考えます。

 最後に、今のコロナ禍において、精神的な不調を抱える方が増えていることを鑑みても、精神保健医療福祉の取組は、国民全体の生活と健康を守る上で極めて重要です。法案の内容の実現を望むとともに、精神保健医療福祉について、国を挙げての一層の取組をお願いしたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

三ッ林委員長 ありがとうございました。

 次に、桐原参考人にお願いいたします。

桐原参考人 全国「精神病」者集団の桐原です。

 全国「精神病」者集団は、一九七四年に結成した、精神障害者個人及び団体で構成される全国組織です。結成当初から、精神障害者への保安処分や精神衛生法に基づく入院制度の撤廃を求めてきました。

 この度の束ね法案は、障害者を分断するものです。

 難病の仲間にとっては、待ちに待った改正であり、我々、精神障害者にとっては、参議院先議でありながら廃案という前代未聞の末路をたどった精神保健福祉法改正法案の五年ぶりの出し直しということになります。参議院先議の法案が廃案になるのは憲政史上初のことであり、前代未聞の出来事でした。私たちは、難病法改正を否定したいなどとこれっぽっちも思っていないのですが、仮に法案に反対しようものなら、難病の仲間からはそのように見られてしまうことになります。まさに、当事者間の評価が真逆の法案を束ねて、障害者同士の分断を誘発するものでした。

 全国「精神病」者集団は、唯一、賛否を決める基準として、障害者権利条約の総括所見に基づく法制度の見直しの検討を附則で担保することを示し、それをしなければ反対すると主張してきました。しかし、附則には、障害者権利条約の実施について精神障害者等の意見を聞きつつ検討するとあり、ここで言われている障害者権利条約の実施が総括所見を含み得るのかどうかは、条文上からは分からないようになっています。先日の加藤大臣の答弁で初めて、総括所見を踏まえることが明らかになりました。ただ、附則第三条の、精神障害者などの意見を聞きつつの部分は、病院団体側からの意見も含まれるのだと思います。結局、総括所見の内容や精神障害者、障害当事者の意見よりも、最終的に病院団体側の意見が優勢になってしまうのではないかと憂慮します。

 この度の参考人でさえも、当事者の数は少ないです。障害者権利条約の監視機関とされる内閣府障害者政策委員会の中にも、精神科病院を代表する団体の構成員が入っているのに、精神障害や知的障害の当事者は構成員として入っていません。厚生労働省の地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会は、当事者の構成員が数の上では増えましたが、常に病院団体側の意見が優位との印象を拭えませんでした。

 特に日本精神科病院協会は、与野党の国会議員に影響力を持っています。省庁からの提案は、政党の政調部会や総務会において反対意見が出ると白紙になると聞きます。それを恐れて、省庁は忖度します。国会議員の中には日精協から献金を受けている者もいるため、立法府内も病院団体の優位に陥りやすい構造があります。

 私は、検討会において、当事者としての立場に依拠しつつも、病院側も含めた他団体とのコンフリクトを回避できるように論理を組み立てて意見を出したのに、日精協から、全くかみ合ってもいない、根拠に基づかない意見によって議論の蓄積を全否定されました。

 具体的には、医療保護入院について、将来的な廃止が、誰もが安心して信頼できる入院医療が実現されるようへと大幅なトーンダウンをしたことが挙げられます。

 私は、同検討会において医療保護入院の廃止を主張した際に、非同意だから廃止すべきなどとは一言も言いませんでした。あくまで、精神保健指定医と家族等という二者に負担が集中した現行の医療保護入院制度のたてつけの困難さを廃止という形で乗り越え、同意によらない医療開始の手続を一般医療と同質にしていくことを当面の方策として望んでいるのだと意見しました。

 すなわち、非同意の入院が必要であることと、医療保護入院が必要であることを切り分けた上で、非同意の入院自体は必要だが、医療保護入院は廃止すべきであると主張したわけです。

 しかし、日精協は、非同意の入院が必要だから医療保護入院が必要であるとし、医療保護入院が廃止されたら精神医療が崩壊すると言いました。このことは新聞誌面でも取り上げられました。

 当事者は、医療保護入院が廃止されても医療が受けられなくなる不安は感じていません。むしろ、医療保護入院によって医療不信になり、かえって医療保障が遠ざかると感じています。改めて医療保護入院の廃止に向けて検討することを確認してほしいと思っています。

 身体的拘束の告示改正の検討では、事前に日精協と調整した新要件案が事務局案として出されました。その内容には多くの構成員が反対し、修正を求める意見が出ましたが、検討の中で形を変えて残り続けました。不透明なところで不透明な形の合意が図られ、その内容が公開された検討会の中で覆らないことに対し、当事者の無力さを感じました。

 精神科病院における虐待についてです。

 精神科病院における虐待事件は、神出病院事件を始め、枚挙にいとまがありません。精神保健福祉法の枠組みでは自浄作用が働きにくく、明るみになっていない虐待も数多く存在するものと思われます。

 私は、二〇一八年から二〇一九年にかけて厚生労働省が行った障害者虐待防止法附則第二条に基づく検討について納得していません。

 検討の結果、二点の理由で法改正をしないこととなりました。一つは、障害の有無に関係なく利用する機関においては、障害者への虐待のみが通報対象となる不整合が生じるということ、もう一つが、各機関における虐待に類似した事案を防止する学校教育法や精神保健福祉法等の既存法令と重複する部分の調整の必要性が生じることでした。

 しかし、現行の使用者による虐待は、障害の有無に関係ない職場を対象とした制度なので、現行の法律と検討結果の間に深刻な矛盾が生じています。また、医療機関には通報義務こそありませんが、通報自体はできることとされているため、通報義務に伴って新たに重複する部分の調整が必要になるはずもなく、現行の法律との間に深刻な矛盾が生じています。

 精神保健福祉法に精神科病院における虐待の通報義務が設けられたことで、障害者虐待防止法の改正が行われなくなることがないよう、障害者虐待防止法附則第二条の再検討を求めます。

 私は、当事者も病院団体も立法も行政も、知性に基づく論議によって解決しようとする姿勢を見せる必要があると思います。いかに強い立場の人であったとしても、当事者の意見をないがしろにした知性によらない要望は堂々とはねのける勇気がなければ、この社会を変えることはできません。

 障害者権利条約に基づく日本政府への勧告には、精神保健福祉法に基づく非自発的入院や身体的拘束を含む行動制限、医療観察法の廃止、精神保健福祉法の廃止を含む精神医療の一般医療への編入、成年後見制度の廃止などが書かれています。国連が廃止を勧告している政策は、障害者と他の者を分け隔てる考え方の上に成り立っているものであり、これらを廃止して、障害者を包摂する社会モデル的な政策へと抜本的に見直す必要があります。

 精神保健福祉法の場合、精神障害者が病状のために治療の必要性を判断できないという病気の特性があるという医学モデル的な前提に立ち、その上で、医療保護入院、措置入院、任意入院という精神障害者だけを別の枠組みに位置づけた入院制度と病床の位置づけ、そして報酬体系があります。

 精神障害者は、池田小学校事件や津久井やまゆり園事件のような事件が起きると、度々、犯罪素因者のような扱いを受けて、医療観察法や退院後支援ガイドラインといった制度がつくられてきました。偏見が助長されないようにするためにも、退院後支援の警察参加は、全国に不安を抱える仲間がいるので、警察は参加しないようにしてほしいです。医療観察法は、長期入院の問題が指摘されている中、当初予定されていた以上の病床が整備されていることから、病床整備を凍結させるとともに、法律の廃止に向けた検討を開始してほしいです。

 医療計画には、非自発的入院を縮減できるよう、指標例を実数で補足してほしいです。

 この社会における精神障害者を取り巻く問題の根本は、精神障害者と関わろうとせず、病院に入れておけばいいのだという市民の意識にこそあります。精神科病院は、こうした市民の意識を引き受けて精神障害者を入院させていきます。すると、地域から精神障害者がいなくなっていき、地域の人々が精神障害者と関わり合いを持たなくなっていきます。精神障害者との接し方が分からない中で長期入院者を受け入れていこうとはならず、現状の問題を帰結しています。私たちは、先に市民の理解を得てから、それから地域移行を進めるという順番ではなく、病床を減らすことで入院者を減らし、地域で精神障害者と実際につき合っていくことを通して、包摂に向けた創意工夫が実践されていくことになると考えています。

 精神科病院が市民の要求に応えているのは事実だと思います。しかし、そのようなところに自信を持ってほしくはないです。そうではない社会を目指すための議論を共にしてほしいです。

 本日は、貴重な場を設けてくださったことに感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)

三ッ林委員長 ありがとうございました。

 次に、辻参考人にお願いいたします。

辻参考人 日本難病・疾病団体協議会の辻邦夫と申します。

 本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私ども日本難病・疾病団体協議会、JPAは、資料一にございますように、昭和四十七年の難病対策要綱の前後に、続々と難病の患者団体が誕生し、その全国組織が幾つか集まった中で、二〇〇五年に大人や子供の難病それから長期慢性疾患の団体が一つに集まった、加盟、準加盟、今九十八の団体で構成される全国組織でございます。

 本年も貴院で採択いただきました国会請願や難病患者サポート事業などを始め、個別の患者団体や地域難病連単体では解決が難しい課題について様々に活動しており、先週末も難病フォーラム二〇二二を開催し、たくさんの議員の先生にも御参加いただきました。誠にありがとうございます。

 私自身は、JPAで常務理事をしておりますが、指定難病の一つである慢性炎症性脱髄性多発神経炎という神経難病の一患者であり、また、全身性エリテマトーデスという指定難病の娘を持つ当事者の家族でもあります。

 さて、今回の難病法、児童福祉法の改正案では、患者も参加いたしました難病対策委員会等で検討が進められた結果をおおむね反映しており、治療研究と福祉の両面の推進を図る点が盛り込まれている点で、その成立に患者としても大変期待をしております。また、コロナ禍で、当初の五年以内の見直しが、ほぼ七年後の見直しになっている点にも鑑み、早急に御審議をいただきたいと考えております。

 一方、まだまだ積み残された課題が多いのも現状です。本日はこれらの点につき、意見を述べさせていただきたいと思います。

 最初に、難病法の成立経緯でございますが、若干振り返らせていただきます。

 資料二の、二〇一一年の十二月、中間的な整理、また、厚生労働大臣の基本方針にもあるように、難病は、その確率は低いものの、国民の誰にでも発症する可能性があり、難病の患者及びその家族を社会が包含し、支援していくことがふさわしいことを基本認識とするとされております。

 また、資料三にありますとおり、治療研究の推進と、なかなか光の当たってこなかった難病患者への福祉、両面の推進を基本理念として法制化が進められました。その過程で、患者の意見はもちろん、医療、福祉、行政の担当者や有識者、そして超党派の議員の皆様の御支援、後押し、御賛同を得て成立に至ったものです。

 そして、今回の五年以内の見直しにつきましても、コロナ禍により何回か中断を余儀なくされましたが、難病対策委員会とそのワーキンググループでの検討、各地でのヒアリングや患者へのアンケート、医療者、支援者、行政担当の意見なども踏まえた上で、制定時と同様、検討が進められた結果である点は評価できるものというふうに考えております。

 では、今回の改正案の具体的なポイントについてですが、まず一点目、資料四にございます、重症化した際に迅速に医療を受けられる制度については、発症後、更なる重症化を防ぐ、あるいは遅らせる治療をできるだけ早く開始することが、医療の観点からも、本人の日常、療養生活の観点からも大変重要であることは、医療関係者、患者双方が認めるところであります。

 今回、医療費助成の開始を、申請時から重症化時点まで一定期間遡ることは、実際に助成が治療開始に間に合わないという例が多くある中、重症化や治療控えを避けるためにも法の趣旨に沿う改正であり、患者としても早急に是非実現していただきたいと考えております。

 ただし、資料では、遡りの期間の案が原則一か月となっており、患者が安心して適切な治療が開始できるよう十分な期間が保障されるよう設定していただきたいと考えております。

 といいますのは、指定医が申請に必要な臨個票というものを作成する期間は、通常二週間から一か月かかると言われており、指定医のいる病院は決して身近な医療機関ではないことを考えますと、とても一か月では余裕がないことは明らかです。患者としては、原則三か月をお願いしたいところでございます。

 二点目として、資料五になりますが、各種支援を円滑に利用できるようにするための登録者証を発行する点につきましては、患者としても、生活の質の充実と向上、治療研究や根治療法の研究促進に資するものとして、こちらも大変期待するものです。

 なお、登録証の情報を基に、希少疾患への偏見や差別などにつながらないように十分配慮するとともに、個人情報の保護と安全管理措置を十分に行っていただきたいと思います。その点からも、法案説明にありますマイナンバーカード連携への不安はまだまだ大きく、そのデメリットやメリットの丁寧な説明を行い、しっかりとした検討の上で、慎重に進めていただく必要があると強く考えております。

 また、今回の登録証は、指定難病ではない総合支援法の対象疾患の患者は含まれておりません。それらの患者も同様の利便性が持てるよう施策を早急に考えていただき、同じ法律での支援に差異や谷間が生じないよう、十分な対策を講じていただきたいというふうに考えます。

 そのほか、資料六にあります、難病患者の療養生活支援の強化などなどについては、福祉と治療法開発の研究の両面を推進するものとして、患者の立場からも是非お願いするものです。

 さて、以上、改正案について述べてまいりましたが、そのほか、前回の附帯決議も多くが現在課題として残っており、今回の法改正に盛り込まれていない点や、法の運用面についても、これから述べる点について、課題として残っていることを述べたいと思います。

 これらの点については、五年以内の見直し規定を再度定めていただくとともに、資料七、八の難病法制定時の附帯決議を引き続き継続して政府に要請していただきたく、また、資料九の点について政府に検討を要請していただきたいと強く考えております。

 一点目は、トランジションの問題始め小慢対策についてです。

 トランジションの問題始め小慢における医療や福祉に対する対策について、患者やその家族の要望の多くは、今回の改正法案には反映されない、若しくは不十分なものでした。要望は、他の法律との関係や福祉政策とのバランスなど、難病法、児童福祉法だけでは解決できないものも多いため、大変難しい課題ですが、是非、患者、家族の声に耳を傾け、引き続き早急に小慢対策の充実を図るようお願いいたします。

 難病患者の約半数は、障害者手帳等の手帳を未所持でございます。そのため、法定雇用率の対象とならず、特にその就職時の困難性は一律に非常に高いと考えております。難病患者を法定雇用率の対象とし、難病患者の特性を踏まえた就職支援、就労継続支援を、また、他の病気を持つ者への支援策との連携を図るなどして、適切に講じていただきたいと考えます。

 また、難病患者就職サポーターは、概して県に一人しかおらず、その質のばらつきも、多くの患者団体が指摘するところです。増員のほか、身分、処遇の改善、支援の質と量、双方の向上を図るとともに、ハローワークでの難病患者支援の充実を図っていただきたいというふうに思います。

 国民皆保険の下、国民目線に立った医療政策や欧米に負けない研究開発、患者本位の医療を実現するためには、医療全般へ広く患者参画を進め、健全な患者視点を入れることが必須と考えます。難病法の下であれば、難病患者の日常生活又は社会生活の支障の評価ですとか、難病ゲノム医療等新たな医療の進展への対応などへの患者参画を推進するとともに、社会資源としての患者活動を適切に支援して、産官学に患が加わった連携かつ協業して医療の健全な発展に寄与するよう、有効な施策立案が必要と考えます。

 難病患者の最も身近なところにあるべき難病相談支援センターですが、保健師や看護師である支援員とピアサポーターの連携が薄かったり、行政や医療、福祉、また就労や教育等の機関との連携についても地域差があるのが現状です。患者の意見を十分に反映して、地域格差のない質の高い支援につながるよう、職員の増員、身分や処遇の改善、福祉専門員の配置なども行っていただきたいと考えます。

 指定難病の中でも、比較的希少な疾患や歴史の浅い疾患は、一時的であれ、その治療法や適応薬が、そうでない疾患に比べて非常に少なかったり、研究者も少なく、研究が進みにくいという点が挙がっております。比較的希少な疾患に対する治療法研究を促進するよう、予算と施策の充実を検討していただきたいと思います。

 最後に、地域においては、障害者基本法に基づく障害者施策推進協議会はもとより、総合支援法に基づく自立支援協議会においても、難病患者は当事者としてほとんど参加できていません。支援法と同様に、障害者基本法にも難病等が対象であることを明記し、国の障害者に対する諮問委員会や地域の協議会等において、目標設定や実現への道筋を明らかにするなどして、当事者としての難病患者の参加を促進し、真の共生社会の実現を目指せるようにしていただきたいと思います。

 意見は以上となります。

 その次に、参考資料として、法改正を速やかに実施していただきたいという本年四月の要望書を添付しておりますので、御参考にしていただければと思います。

 今日はどうもありがとうございました。(拍手)

三ッ林委員長 ありがとうございました。

 次に、岩上参考人にお願いいたします。

岩上参考人 皆さん、こんにちは。一般社団法人全国地域で暮らそうネットワーク、通称チイクラネットというんですが、その代表をしております岩上でございます。

 本日は、貴重な機会に出席をさせていただきまして、本当にありがとうございます。

 私ども全国地域で暮らそうネットワークは、社会的な支援が必要な精神障害者の地域移行に向けた課題の解決及び未来の創造の下、希望する地域で自分らしく生活することができる持続可能な社会づくりに寄与することを目的として活動しております。

 また、私自身は、埼玉県の南埼玉郡宮代町で社会福祉法人じりつという法人を経営しております。委員長の幸手市、杉戸町も私どもの地域でございまして、基幹相談支援センター、地域生活支援拠点も受託をさせていただいているところでございます。

 資料を御用意させていただきましたので、御覧いただければと思います。

 最初に写真が載っておりまして、これはキャンドルナイトという、私どもの事業所で、法人でやっているイベントなんですが、障害者の皆さんが町内の七つの小中学校に出向いて、障害当事者のお話と、そして、感謝の気持ちを紙コップに書いてもらうということをお願いして、十六年たちました。私どもの町では、障害者の方が地域で暮らすということはごく自然なこととなっています。そんな中、三万人の町で三千個の紙コップですから、十人に一人は参加をしているということで、かるたを募集したところ、このキャンドルナイトが第五位で、「ろうそくに感謝を灯すキャンドルナイト」というのが、かるたになっております。

 何でこんなことをお話ししますかというと、私たちは、やはり、公的な制度を活用して障害のある人の暮らしぶりを支援する障害福祉サービス等には、こうした地域に必要とされ、地域を元気にする役割が求められていると思っております。そういったことを大切にして事業運営をしているところです。

 それでは、意見を続けて述べさせていただきたいと思います。

 今般、内閣提出の法改正案に対して、私は全体として賛成の立場で意見を述べさせていただきます。

 共同生活援助について意見を述べたいと思います。

 一年以上入院している長期在院者は、退院後の暮らし方について大変不安です。しかし、通過を前提としたグループホームがあると、これからの生活を病院で考えるのではなく、退院してから考えることができるので、絶好の機会となります。この考え方は、御本人の望んでいる暮らし方の選択の範囲を広げ、児童養護施設や社会的な支援が必要な若い世代の方々にも大変有効だというふうに思っております。私もそうしたことで実践をしております。独り暮らしのための訓練をすることは想定はしておりません。むしろ支援者の方が、彼らが地域で暮らすためにどのような支援をしていくかということを考える重要な機会で、訓練されるのはむしろ支援者だと思っております。

 次に移ります。

 市町村を基盤とした支援体制の構築ということで、基幹相談支援センターと地域生活支援拠点等、協議会プラス精神保健が柱となります。本来、これについては義務化が望ましいと考えているところです。

 基幹相談支援センターは、人材育成、相談支援体制構築、協議会運営を担う機関です。地域生活支援拠点は、地域生活の緊急時対応、福祉救急や地域移行を推進するサービスの拠点となります。これもサービスのありようを見直す絶好の機会となります。平時の対応を充実させることで、本人の一大事でも、緊急対応にはなりません。真に緊急とは、今までに関わりのなかった人の一大事のことです。そのためには、類型を問わず、地域のネットワークが要となります。

 地域移行を実効性のあるものにするには、地域移行支援を担うコーディネーターを地域生活支援拠点等と施設、精神科医療機関の双方に配置することが必要です。

 そして、地域生活支援拠点のコーディネーターには、平時、緊急時対応を行う者と、地域移行を専任で担う者の複数配置が必要で、地域移行を担うコーディネーターには一定の権限を与える必要があります。これは、私は精神科領域で仕事をしていますが、施設に対しても同様で、特に施設の地域移行についてはこのような配置が望ましいと思っています。

 また、地域保健、これについては健康と福祉を併せたもので、福祉との親和性は極めて高いものです。本人、家族、地域を包括的に支援することができますので、この精神保健を、市民の健康はもちろんのこと、孤立、孤独、生活困窮、引きこもり等の課題、重層的な支援体制整備事業等の基盤として位置づける必要があると思っています。

 ページをめくっていただきまして、今般の法律改正に当たって厚生労働省等が示しているポンチ絵ですけれども、この上に、「精神保健を基盤として」、そうした考え方を加えていただきたいと思っています。

 次に、就労支援です。

 私たちの支援の基本は、本人の意思を中心にした生活です。生活とは、命と暮らしと生きざまです。就労支援も、本人の望む幸せを上位概念に置いて就労を支援します。このため、就労選択支援は重要なサービスとなることが期待できます。

 一方で、事業所の囲い込みにならない仕組みが必要です。事業所を決める前に市町村に申請を行う。そして、中立公正である相談支援専門員に適切な権限を与える必要があります。協議会の評価も重要と考えます。

 次に、精神保健福祉法の改正です。

 私は、今回の法改正に向けた、地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会に構成員として参加しました。私自身、この十年間、検討会に参加した経験がありまして、大変失礼ですけれども、あと三回法改正するつもりで取り組まないと山積する課題の合意形成は難しいという立場で議論をしました。つまり、地域では精神科医療機関を必要な社会資源と認識しながら、国レベルになるとどうしても、病院が悪い、国が悪いといったある意味偏見が根強くあり、議論がかみ合わなくなるんです。

 そんな中、今回の検討会では、多くの重要な課題に対して、構成員がその立場を超えて議論を深めてまとめることができたと思っています。障害当事者の立場からの積極的な提案もあり、精神保健医療福祉領域において長期にわたり議論が続けられていた課題について一定の方向性を共有でき、これからの取り組むべき方向性も共有できたと思っています。目指すべき方向性は、国民の精神保健の向上、良質な精神医療の提供、患者の権利擁護に資する法律体系にすることだと思います。

 医療保護入院の在り方です。

 今回の改正により、入院期間が法律に定められ、退院支援措置の拡充が行われるなど、医療保護入院が適正化されることとなり、人権擁護の要請に対しても、一歩前に進むことになると思います。

 長期在院者への支援については、市町村が精神科病院との連携を前提に、病院を訪問し利用可能な制度の説明等を行う取組を行う必要があります。患者の同意が得られない場合の入院医療の在り方などに関して、課題の整理を進め、見直しについて速やかに検討していくことが必要と考えています。

 入院者訪問支援事業の創設。

 精神科医療機関は入院患者の権利擁護を行っていますが、非同意入院では、その特性上、医療機関がその任務を全て行使することには限界があります。そのため、外部の第三者が面会に行く、この権利擁護に資する仕組みとなることを期待しています。医療機関が行う共同意思決定支援とこの外部機関が行使する必要がある入院者訪問支援は、権利擁護機能としては区別する必要があると考えています。

 今後の検討課題として、こうした支援を望む全ての非同意入院患者に支援がより広く普及する、そうした体制の構築が必要と考えています。個別給付の対応も考え方の一つだと思っています。

 精神科病院における虐待防止に向けた取組の一層の推進。

 最も重要なことは、虐待が起こらない組織風土を醸成することです。今回の法改正が、虐待防止法で培ってきた、虐待の深刻化を防ぎ、より軽微な段階で通報しやすい組織風土等の醸成を図り、障害者の権利利益の醸成に資する仕組みとなることを期待しています。

 今後の推進力として。

 地域生活への移行を推進するため、地域の基盤整備を着実に進めるための財政的な措置をお願いしたいと思います。

 障害者支援体制の更なる構築を考えると、社会保障審議会の障害者部会は、大局的な在り方を議論する場として、検討会等を併設して課題等の整理を行う必要があると考えます。

 また、国民の精神保健の向上、良質な精神医療の提供、患者の権利擁護に資する議論をするために、常設の検討の場が必要ではないかと考えているところでございます。

 以上でございます。

 本日は、貴重な機会を大変ありがとうございました。(拍手)

三ッ林委員長 ありがとうございました。

 次に、池原参考人にお願いいたします。

池原参考人 本日は、貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。

 最初に、お配りしてある資料について確認をさせていただきたいと存じます。

 資料一は、本年十一月九日付で日本弁護士連合会会長が発出いたしました精神保健福祉法改正案の見直しを求める声明でございます。

 資料二は、日本精神神経学会の委員会が医療保護入院の市区町村長同意制度を中心に調査、分析した報告でございます。

 資料三は、精神医療審査会による医療保護入院の定期病状報告の審査の資料ですけれども、衆議院調査局厚生労働調査室が作成された、先生方お持ちの白表紙の参考資料の二百七十六ページと同じ内容ですので、そちらを御覧いただきますとよいかと存じます。

 資料四は、日本が批准しております市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約、それから拷問等禁止条約、そして障害者権利条約などにつきまして、各条約の委員会から日本に対して出された勧告の中から、精神保健福祉法に関するものをまとめたものでございます。

 そこで、まず最初に御覧いただきたいのは資料四でございます。

 国連の障害者権利委員会は、本年九月に日本に向けた総括所見で、強制入院は障害を理由とする差別的な自由の剥奪になるとして、強制入院を廃止することを要請しております。この総括所見に法的拘束力はないからそれに従う必要がないというような考え方は、国連の意義をないがしろにし、その機能をおとしめるものでありまして、法の支配を基本的な価値とし、国際社会で名誉ある地位を確保することを目指す日本が取るべき考え方とは言えないと思います。

 また、B規約については、非自発的入院の要件が極めて広範であると指摘をされています。強制入院を最小限の期間にすべきことも求めています。

 拷問等禁止条約については、医療保護入院の決定を民間の私立病院が行えること、そして、長期入院が続いていることに懸念が示されています。

 日本の精神科病床数はOECD諸国の三七%を占めていると言われまして、大量の入院者がおり、その約半分が医療保護入院を中心とした強制入院者です。白表紙の資料の二百六十四ページ、これを御覧いただきますと、医療保護入院者の約六三%が一年以上の長期入院者で、五年以上の入院者が三〇%以上もいらっしゃいます。

 他国に例を見ない長期で大量の入院者と強制入院を多用しているということについて、B規約の委員会は、強制入院の要件が緩過ぎるということ、それから、必要最小限度を超えた入院を許しているということに原因があるというふうに見て、改善を求めているわけです。

 拷問等禁止条約の委員会は、大量の強制入院者と入院の長期化の要因として、裁判所でも行政機関でもない民間の私立病院が医療保護入院を行えることに問題があると見て勧告をしています。

 そして、障害者権利委員会は、精神障害のある人だけを対象にする強制入院がそもそも差別的であるということを指摘しているわけです。自傷他害の危険性があっても一般の人は強制的に収容されませんし、内科や外科の患者さんを判断能力がないとして本人の意向に反してでも入院させてしまうという制度はないわけですから、障害者権利委員会の総括所見も、その意図を私どもは真剣に受け止める必要があるというふうに考えます。

 これらの条約は、批准によって国内法になっておりまして、法律より上位の法規範になっているということも忘れてはいけないと考えます。

 以上のように、日本が批准している各条約は、強制入院を少なくとも最小化すること、本来であればなくしていくことまで求めています。こうした大きな方向性から、今回の精神保健福祉法改正を検討していくことが必要だと考えます。

 そこで、資料一の日本弁護士連合会の会長声明を見ていただきたいと思いますが、第一に、医療保護入院の期間を限定しながらも、何度でも更新できるという点を問題にしております。問題は、更新の判断が公正かつ厳格に行われるかどうかにかかっています。

 現行法では、精神医療審査会が、十二か月に一度、各病院からの定期病状報告を審査して入院継続が不要であると判断すれば、都道府県知事等が退院命令を出すことになっております。その手続の流れは、白表紙の資料の二百七十三ページを御覧いただくと分かりやすいと思います。

 しかし、この二百七十六ページの表から分かるように、精神医療審査会が入院継続不要と判断した事例は、毎年、何とゼロ%ということになっています。精神医療審査会は、独立性に問題があるとされていますが、それでも病院とは別の機関です。その機関でさえも入院継続不要の判断をほぼしていないのに、改正法による入院期間の更新は、患者さんを入院させている病院が自ら行うわけですから、ほぼ自動更新になってしまうということが予想されます。少なくとも更新回数を一、二回に限定するぐらいの工夫をしなければ、強制入院の縮小化、長期入院の解消という効果は期待できないというふうに考えます。

 第二に、家族が医療保護入院の同意若しくは不同意の意思表示を行わない場合に、市区町村長の同意で医療保護入院を行えることにしてしまう点にも問題があります。

 資料二を御覧いただきますと、市町村長が同意して医療保護入院をさせた患者さんについて、本人への支援や主治医との連携、その他の担当者との連携を半年に一回以上はしたとする市町村は一、二%にとどまっています。適切な入院判断ができていない、形式的で形骸化しているという市町村担当者の回答が多く見られます。精神医療審査会の委員からは、市町村の担当者が入院後全然関わっていない、同意が形式化して無責任、制度そのものが形骸化しているなどが多かったとされています。

 市町村長同意の実態について十分な立法資料を集めずに、家族の同意が得られない場合に市町村長同意で代用するという改正は、形式的で形骸化した同意によって医療保護入院を拡大してしまい、入院をさせたまま放置して、長期入院を更に増やしていくという作用を果たすことになります。以上のような法改正の方向性は、強制入院の縮小化の方向性に逆行するものです。

 第三は、虐待防止についてです。

 問題点の第一は、障害者虐待防止法では市町村が虐待通報の窓口になっているのに対して、法改正案では都道府県だけが窓口になって、市町村の役割が抜けている点です。

 市町村は、身近で小回りの利く機関として、障害者福祉の第一線を支えており、障害者虐待についても第一次的な役割を果たしています。法改正案が、医療保護入院については市町村長に同意権限を拡張するということにしていながら、入院患者に対する虐待については市町村の権限を認めないというのは、制度的矛盾と言うべきだと考えます。

 問題点の第二は、都道府県等が指定する指定医に病院への立入りと診察の独自の権限を付与している点です。

 虐待の立件は、虐待の法的構成要件に該当する事実の確認が必要になります。その認定作業は、本来法的なものが、司法的なものが典型的になりますが、行政機関の職員も法的素養を備えて同様の対応をすることが期待できます。しかし、医師は、司法的な事実認定について専門性を有する職種ではありません。ですから、ここで指定医に独自の権限を与えるのは見当違いであり、むしろ同僚審査の弊害を招くおそれがあると思います。医学的所見が必要であれば、担当職員が医師を補助者とすれば足りるのであって、医師の所見は司法的、行政的事実認定の一つの要素になるにとどまると理解すべきです。

 障害者権利委員会への次回の日本からの報告は二〇二八年とされております。本年九月の総括所見の勧告について、二〇二八年までにどれだけ誠実な努力をしたのかが問われることになります。現在の法改正案では、残念ながら、強制入院をなくしていくべきであるとする障害者権利委員会の要請には全く届きません。強制入院の要件を厳格化し、強制入院は必要最少限度のものに縮小し、長期入院をなくしていくべきだとするB規約や拷問等禁止条約の委員会の要請にも応じることができていません。むしろ国連からの要請に逆行していると批判を受けることになってしまうでしょう。

 今回の法改正が小さな一歩であるとしても、それが向かっていく方向を誤ることがないように、市町村長同意の実態調査なども実施して、多くの国民の納得を得られる法改正を行っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

三ッ林委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。川崎ひでと君。

川崎委員 おはようございます。自由民主党の川崎ひでとです。

 本日は、初めて参考人質疑をさせていただきます。こうして参考人の皆様には朝早くから御参加いただき、本当にありがとうございます。

 この障害者総合支援法は大変多岐にわたる分野でございます。様々な観点から御見解を聞かせていただきました。本来であれば、皆様全員に質問させていただきたいところではございますが、質問の時間が限られておりますので、要点を絞って質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、岩上参考人にお話をお聞かせいただきたいと思います。

 今回の障害者総合支援法の改正では、地域で暮らす障害者の支援を強化するというのが目的だと理解しております。精神障害者の支援については、福祉からの支援と、そして医療、保健からの支援、この両方が大事であるというふうなお話であると理解いたしました。

 今回の法改正の意義、特に福祉の関係者にとってどのような意義があるのか、岩上参考人のこれまでの実績に照らし合わせて、御見解をお聞かせいただければと思います。

岩上参考人 御質問ありがとうございました。

 今回、法改正、総合支援法と精神保健福祉法ということだと思うんですけれども、まず、基盤として、市町村に精神保健を位置づけるということは非常に重要なことだと思っています。それが今まで位置づいていなかったのかというふうに思われるかもしれませんけれども、適切には、法的には位置づいてございませんでした。今回、精神保健法で精神保健として位置づけて、その中で市町村にも努力規定を課したということは非常に重要なことだと思います。

 先ほども申し上げましたように、様々な課題、引きこもりであるとか自殺であるとか生活困窮であるということで、それに対して福祉としては対応をしています。しかし、それは、後から出てきたことに対応するということになるので、基盤としての精神保健、そして地域保健の中の精神保健として位置づけることは非常に大きなことで、その保健と福祉が連携をしていくということが非常に重要なことだというふうに考えています。

 以上でございます。

川崎委員 ありがとうございます。

 引き続き岩上参考人にお伺いいたします。

 地域で生活するためには、グループホームや、あるいはそこから独り暮らしして例えばアパート暮らしをするなど、いろいろな形があると思います。私自身も、自身の地元からお話を伺いますと、独り住まいをしてしまうとごみ屋敷になってしまう、又は近所においてトラブルを起こしてしまう、だからグループホームを選びましたなどといったような御意見もあります。

 長年障害者の地域生活を支援されてきた御経験から、グループホームが果たしていくべき役割や、地域生活を送る精神障害者等への支援の在り方について、改めて御見解をお伺いいたします。

岩上参考人 ありがとうございます。

 グループホームは非常に重要な機関だと思います。先生方にも育てていただいたというふうに認識をしています。選択肢としてグループホームがあり、そこで暮らしていくということは、非常に重要です。

 あとは、独り暮らしをただ目指したいという方もいらっしゃるわけですから、そこを支援する必要がある。独り暮らしをした場合、非常に心配であるという御懸念がございますが、これについても、前回の総合支援法の改正で、自立生活援助というサービスをつくっていただきましたので、自立生活援助は、御本人がどのような生活をすると自分らしく生活できるかということについて適切にアセスメントして支援を組み立てるという、大変重要なサービスをつくっていただいたと思っています。それも利用していただくということになります。

 また、前回の報酬改定でピアサポートという位置づけをつくっていただきまして、当事者が当事者を支援するという枠組みをつくっていただき、全国で研修が今行われているところでございます。そうした当事者同士の支援も活用いただくと、自分がどういう暮らしをしていくのかということが非常に分かりやすくなると考えています。

 以上でございます。

川崎委員 大変分かりやすい御見解、ありがとうございました。

 引き続きまた岩上参考人に質問になります。

 今回の改正法案において、基幹相談支援センターや地域相談支援拠点の設置が努力義務になったということは、私も非常に大きいことだと考えております。現在では約五割の自治体がこの支援センターや拠点整備などができている状況ではございますが、言い換えれば、できていないところが五割ある。

 ここのできていないところの御意見を聞くと、実は、こうした法律で明文化されていないから、地方自治としても予算が取りづらいんだ、だからこそ、今回こうして明文化されることには大変意義があるというふうに御意見もいただきました。

 一方で、もう一つの懸念点としては、しっかり予算措置ができても人員が確保できるのか、これが各自治体共通の言葉として出てきました。この分野においては、経験や知識に加えてコミュニケーションスキルの高さが必要になるのではないかというふうに考えております。

 そうした点においては、なかなか人材確保というものに本当に苦労すると思います。是非、この人材確保あるいは人材の早期育成という観点から、もし御見解があれば教えていただきたいと思います。

岩上参考人 ありがとうございます。

 確かに、委員が御指摘のとおり、人材を確保するというのは非常に重要な課題だと思っています。少子化もございまして、福祉人材がなかなか集まらないということもございます。

 福祉は、ふだんの暮らしを福祉と申しますので、ふだんの暮らしの実践者は市民の皆さんですから、必ずしも従来福祉を勉強した方だけでなく、地域で暮らされている方で是非福祉に携わりたいという方にも参画をしていただきたい、そういう仕組みも必要ではないかと思っています。

 先ほど御指摘ございました基幹相談支援センターというのは、地域の相談支援体制をつくる機関になって、相談支援も、育成にも協力していくという形になりますので、是非いろいろな方に参画していただきたい、子供たちにも福祉に身近になっていただきたいと考えています。

 以上でございます。

川崎委員 ありがとうございます。

 時間も差し迫ってまいりましたので、次は藤井参考人にお話をお伺いしたいと思います。

 入院者訪問支援事業についてです。

 入院者訪問支援事業として、患者の体験や気持ちを丁寧に聞くということが今回盛り込まれております。これによって、病院に入院される患者は具体的にどのような支援を受けることができるのか、また、入院患者にはどのようなメリットがあるのか、この二点について、今回の法定化に当たり、研究班の代表として御検討に携わられた立場から、具体的に御紹介をいただけますと幸いです。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 今回、入院者訪問支援事業が法制化、法案に盛り込まれたということで、今御指摘のとおり、傾聴、入院されている方のお話を十分に聞くということや、誠実に対応すること、あるいは情報提供をしっかり行うということが盛り込まれているかと思います。

 それによって、入院されている方、先ほど意見陳述の中でも申し上げましたけれども、特に精神科の病棟に入院されている方は、多くの方が閉鎖空間に入院することになります。そうしますと、おのずと外部と遮断された状況になりますので、いかに病院の職員の方が丁寧に話を聞き、真摯に支援を行っていても、やはり疎外感を感じてしまったり、孤独感を感じてしまったりということは少なからずあるというふうに考えられます。実際、そのような声が多く寄せられています。

 実際のところは、病院の職員がそのような話をしっかり聞いて情報提供を行う、それをすればいいのではないかというように考えられる向きもあるかと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、実際に支援をする側とされる側とでは立場の違いもありまして、支援をされている側からすると、なかなか言い出しにくいことがあったりとか、特に強制入院をされている場合には、医療従事者の方に気持ちを開きにくいような状況にあることもございます。

 そのような場合に、外部から第三者的な立場の方が来てくださって、違う立場で話を聞いてくださることによって孤独の解消であるとか、しっかり話を聞いてもらう、外部の方から大事にされるという経験から自尊心の回復というものが期待されるというふうに考えます。それによって本人が元々持っている力を引き出して、いわゆるセルフアドボカシーと申しますけれども、そのような力を引き出すことによって、御本人が自ら自分の言葉で医療従事者の方に自分の意見や気持ちを伝えたりしやすくなるというような効果が期待されるのではないかというふうに考えております。

川崎委員 御説明ありがとうございます。大変分かりやすいお言葉で説明をいただきました。ありがとうございました。

 引き続き藤井参考人にお伺いいたします。

 今回の法案では、メンタルヘルスに関する相談支援を身近な市町村で受けられるような改正法が、盛り込まれております。

 市町村では、子育てや介護、生活困窮等、各分野の相談支援が現在行われておりますが、メンタルヘルスに関する市町村の取組の重要性について、こちらも、研究班の代表として地方自治体のメンタルヘルスの相談支援について御検討に携わられていた立場からお話を聞かせていただければと思います。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 この点につきましては、先ほどの岩上参考人からのお答えに重複するところもございますけれども、市町村では、今御指摘のように、母子保健でありますとか、生活困窮者支援でありますとか、高齢者の支援でありますとか、ライフステージに沿ったような形で、様々な生活課題についての支援が、支援体制が今構築をされております。さらには、改正社会福祉法の規定に基づく重層的支援体制整備事業のようなものも行われつつありますので、そのような形で住民支援が行われていますけれども、その中で、非常に重要な視点として、メンタルヘルスがございます。

 これは、どなたでもメンタルヘルスの不調を抱える可能性があるということ、さらに、生活上の困難、生きづらさとメンタルヘルス不調というのは非常に密接な関係がございまして、例えば、経済的に困窮すれば誰でも精神的な不調になるというのは非常によく経験されることだと思いますし、想像に難くないと思います。ですので、生活上の課題とメンタルヘルスの支援というものは切り離して考えること自体が難しい、それは無理であるということです。

 これは、保健師さんの活動を思い浮かべていただければ非常によく分かると思うんですが、市町村の保健師さん、家庭を訪問されたりとか、様々な支援の中で、赤ちゃんから御高齢者の方まで世帯ぐるみに支援をされているわけです。その中では、メンタルヘルスの課題というのは必ず出てまいります。ですので、現時点でも、市町村の職員の皆さん、特に保健師の方々は、精神保健の支援だと明確に意識をしないままにメンタルヘルス支援を行っている状況だと思います。

 ただ、状況によっては、メンタルヘルス支援が、専門的な支援が必要とされる場合がありまして、その場合に、なかなか保健師の方が精神医療の専門職に相談ができなかったり、あるいは必要な連携が取れなかったりというような状況もございますので、生活に密着した課題であるメンタルヘルス支援を市町村の業務としてしっかり位置づけることによって、そのような住民支援の質の向上でありますとか、様々な支援の制度のはざまに陥るような方がこぼれないようにするというふうな効果も期待できるというふうに考えております。

川崎委員 ありがとうございました。

 私、昨年、初当選をさせていただきました。今回のこの法案に携わらせていただくに当たって、現場からも様々な御意見をいただきました。引き続き、現場の、地元の皆様が様々な支援を受けられるように私も精いっぱいヒアリングを続けてまいりますので、また皆様からの御指導のほどよろしくお願いします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、早稲田ゆき君。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきでございます。

 今日は、参考人の皆様方には貴重な御意見を賜りまして、心から感謝申し上げる次第でございます。また、日頃より、JPAの辻さん、そしてまた日弁連の池原先生には御指導を賜りますことを心から感謝を申し上げます。

 本来ならば皆様に御質問させていただきたいところでございますが、時間の関係もございますので、桐原参考人に伺わせていただきます。よろしくお願いいたします。

 二〇一六年に、神奈川県の相模原市の障害者施設津久井やまゆり園で、大変多くの犠牲者を出した痛ましい事件がございました。安倍政権下では、措置入院歴がある精神障害者が起こした犯罪ということにフォーカスをしまして、入院措置解除後のフォロー、支援計画、それからまた監視を強める内容、これを都道府県に義務づける精神保健福祉法改正案を二〇一七年に参議院に提出をいたしました。先ほど桐原参考人からもお話がございましたとおりですが。その改正内容が精神障害者の人権を著しく侵害するおそれがあるとして、参議院では徹底した議論が行われ、そして最終的に廃案となったわけです。このことについても伺いたいと思います。

 この五年前に出た法案について桐原参考人の評価と、それからまた、参議院での議論を踏まえて、その後五年間、厚生労働省の取組、さらには今回の法案改正について、どのような評価をされているでしょうか、伺います。

桐原参考人 ありがとうございます。

 廃案になった精神保健福祉法改正法案は、措置入院の運用の協議と退院後支援が規定されています。退院後支援は、津久井やまゆり園事件の再発防止策を契機としたものであり、精神障害者と犯罪を結びつける偏見が助長されて、医療現場が治安的にゆがめられてしまわないかと憂慮する声が高まりました。

 廃案になってからは、措置入院の運用に関するガイドラインと、地方公共団体による精神障害者の退院後支援ガイドラインという二つのガイドラインで運用される運びとなりました。

 退院後支援ガイドラインは、法案審査での指摘を反映して、医療保護入院や任意入院を対象としています。しかし、この五年で整備された、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進事業と診療報酬では、措置入院者の退院後支援だけを対象としています。

 また、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築支援事業により作成された、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築のための手引き二〇一九年度版には、退院後支援のモデル事例として鳥取県の取組が紹介されています。鳥取県措置入院解除後の支援体制に係るマニュアルは、精神保健福祉法改正法案の廃案になったものに則していて、治安的な印象を否めません。冒頭には、津久井やまゆり園事件を受けて作成されたとも書かれています。

 運用ガイドラインに規定された協議の場には、困難例という表記でグレーゾーン対応が残っており、退院後支援ガイドラインも、個別支援の警察参加を例外的に認めています。私は、検討会において、警察の参加しないことへの確認を求める意見を出しましたが、結果として退けられました。

 このことから、五年前と比較して改善された事項もありますが、今回の法案では解決されなかった課題も残されているものというふうに考えます。総括所見に基づき、関連法制度の見直しを始めとする必要な措置を講じることが不可欠であると考えます。

早稲田委員 改善された部分もあるけれども、課題もまだたくさん残っているということを理解いたしました。

 それでは、閣法の五本束ね法案と一緒に並行審議をしております議員立法について伺います。

 重度訪問介護を就労と就学に拡大するこの議員立法について、参考人の評価をお尋ねいたします。

桐原参考人 重度訪問介護を職場や学校で使えるようにすることを目指すとしたものであって、成立を強く望みます。

 特別事業については、使いにくさが指摘されており、実績も九十二名にとどまります。しかも、約半数は自営業で、そのうち決して少なくない数が介護事業所の管理者です。彼らは、所得を得るために事業所を立ち上げたのではなく、地域の介護体制が不十分であることから、地域生活を続けていくために自ら事業所を立ち上げて、利用者兼管理者になっています。それでも、重度障害者が事業所の管理者になることは社会参加の一つだと思います。しかし、管理者には常勤義務があって、それに相当する時間は、所得の有無に関係なく就業しているとみなされて、重度訪問介護の支給が認められないという問題が各地で生じています。管理者を辞めて社会参加の機会を失うか、管理者を続ける代わりに、特別事業と重度訪問介護のそれぞれの請求事務の負担を負うか、その二択を迫る状態になっています。

 加えて、重度訪問介護は、見守りを中心とした唯一の制度であり、介護保険では提供できないサービスのはずですが、重度訪問介護のニーズに対して介護保険を優先して適用する自治体が散見されます。例えば、要介護五に該当しないと支給決定しないという自治体もあって、介護保険優先原則によって重度訪問介護の利用が妨げられています。

 また、ALSなどの場合は症状が進行するため、申請時と支給決定時で障害の状態が違うので十分対応できていないし、精神障害の場合は、認定調査というのをやるんですけれども、その項目が対応していないため、見守りのニーズがあっても重度訪問介護の利用はできないといった問題があります。

 まだまだ必要な人が使えていないという問題はありますが、この度の法案は大きな前進であるというふうに考えています。

早稲田委員 ありがとうございます。成立を目指して頑張ってまいります。

 それから、検討会の議論の運びについて伺いたいと思います。

 精神病院における身体的拘束について、検討会のメンバーとして御参加の桐原さんですけれども、参考人に伺いたいのは、検討会の報告書に、不適切な隔離、身体的拘束をゼロにするための取組として、大臣告示第百三十号の第四章、身体的拘束の対象となる患者については、不穏及び多動が顕著である場合ということがございまして、これについての改正についてですが、この改正後の文章はどのように提案をされて、そしてまたどのように報告書に記載をされたのでしょうか。

桐原参考人 当初、私たちが不穏及び多動要件というものの削除を提案しました。事務局である厚生労働省からは、削除できないというふうに言われて、ほどなくして改正という方向になっていきました。

 改正後の要件の文案は、特に検討会には議論していた経緯とかはなかったと思うんですけれども、ある日突然、事務局から出てきました。聞くところによると、水面下で日本精神科病院協会の提案を受けて、事務局が起案したもののようでした。

 検討会の席上では何度も、反対意見や修正意見が出されたんですが、最後まで、表現を変えて同様の文言が残ったということです。

早稲田委員 水面下でというお話もございましたが、事務局が関連団体にヒアリング、調整をするということはあり得ると思いますけれども、その検討会で反対意見が出ていたにもかかわらず変わらなかった理由をどのようにお考えでしょうか。また、これ以外にもそうしたことがあったのかどうか、また、桐原参考人以外にも異議を唱えたメンバーがいらっしゃったのかどうか、伺います。

桐原参考人 変わらなかった理由ですが、どうも、日精協が自分たちの提案をのまなければ改正させないと言っているからだというふうに聞いています。

 ほかにもあったことですが、陳述でも述べたとおり、医療保護入院の将来的廃止のときがそうでした。将来的な廃止を支持する構成員というのが複数いたのに対して、修正を要求したのは、日精協の構成員、ただ一人でした。

早稲田委員 それは大変ひどい話だと思います。これは看過できない問題だと思いますし、また、当事者参画といいながら、これが形骸化している、そういう事態はやはり改善をしなければならないと私は今強く思いました。

 そして、桐原参考人はこうした現状をどのように改善すべきとお考えでしょうか。

桐原参考人 検討会には当事者を入れてほしいというふうに何度も何度も訴えて、ようやく入ることができました。合意形成に向けて建設的な議論をする場だと思っていましたが、実際は、意見を交わし合うことはほとんどと言っていいほどありませんでした。

 構成員のほとんどが医療関係者で、当事者委員はたった三人です。その中で意見を言うことは本当にしんどいことでした。さらに、理を尽くして意見を示してきたにもかかわらず、日精協から根拠のない理由で頭から否定され、理不尽さを感じずにはいられませんでした。当事者というのは本当に無力だなと感じました。

 現状を改善するためには、国会議員が、日精協を始めとするプロバイダーの意見を一方的に聞いて行動に移してしまうのではなくて、まず、プロバイダーに対して、当事者との合意形成を図るのはどうかというふうに促すことや、そのための場を確保するなど、当事者参画に実効性を持たせるための取組ということをしてほしいなと思っています。

早稲田委員 ありがとうございます。

 当事者参画ということについて桐原参考人から切々と今御答弁をいただきましたが、同じ検討会のメンバーであられる藤井参考人にもこのことについて一点だけ伺いたいのですが、どのような御感想を、この検討会の運びとしてお持ちでしょうか。やはりここのところは大変重要だと思いますので、メンバーとしてお答えいただければと思います。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 検討会のメンバーとして、構成員として参加させていただいておりました。

 今回の検討会は、先ほど岩上参考人からも意見陳述の中でありましたけれども、様々な立場の方が立場を超えて話し合う場というふうに私も理解をしておりました。今回の検討会の前の検討会には当事者のお立場の方二名が参画してくださっていましたけれども、今回は三名に増えたということで、より当事者の意見が反映されやすい状況になったということは、私も非常に歓迎をした記憶がございます。

 先ほど桐原参考人からお話がありましたとおり、桐原参考人を含む当事者の構成員三名の方、それぞれに非常に聞くべきことの多い御意見をいただいたというふうに感じました。

 どうしても、まあ、プロバイダーと桐原参考人はおっしゃいましたけれども、医療従事者、福祉従事者、支援を提供する側だけの議論になりますと、当事者が、そのユーザー、実際に支援を受ける側にもかかわらず、支援者側のよかれと思っての理屈で制度ができてしまう。そこは変えていかなくてはいけないところでありまして、当事者の方が参画することに非常に意義があると考えた次第なんですが、実際に検討会での議論を伺いながら、我々がよかれと思って考えていたこと、当事者の構成員のお話を聞くと、あっ、そのような考え方もあったのかと、実際に支援を受ける方はこのように感じておられるんだということを、その場でお伺いして、その都度、考えを改めたり、自分の不明を恥じたりしたようなこともございました。

 それらの意見をどの程度反映されたかというのは、なかなか、実際のところ、十分に反映されたとは言い難い部分もあったかと思います。

 これは、私が構成員として参加していて、私が出した意見ももちろん全てを採用されたわけではございません。ですので、全て採用されたわけではないというのは構成員全員が感じているところだとは思いますけれども、当事者が参画してその意見をしっかり取り入れるというプロセスが、まだこの日本では十分に機能をしていないという側面は否めないかなと思います。

 これは、検討会だけではなく、この国会の場だけではなく、医療の現場であったりとか、地域の協議会であったりとか、様々なところで今、当事者の参画ということが進められていますけれども、そのプロセスというのはまだ発展途上であるというふうに感じております。ですので、いかに当事者の意見を取り入れて、それを政策に反映していくかということは、検討会での反省も含めて、これからもっと検討していかなくてはならないことだと思います。

 そのためには、検討会であるとかこの国会であるとか、いわばフォーマルな場だけで当事者の意見を聞くというのでは不十分だと思います。

 臨床現場でもケアサポーターの方の参画というものが進んできておりまして、私どももケアサポーターの方からたくさんのことを教えていただきます。私は研究者の立場でもありますけれども、研究の場でも当事者の方に参画をしていただいて、非常に有用な御意見をいただいているところです。様々な場で当事者の方が参画することを通じて、最終的に、このような、いわゆる平場と言われるようなフォーマルな場で当事者の方がしっかり発言をして、それをどのように適切に取り入れていくかということを今から更に進めていかなくてはいけないと思います。

 余り答えになっていないかもしれませんけれども。

早稲田委員 藤井参考人、ありがとうございました。深い御考察を教えていただきました。

 まだまだ当事者参画が進んでいないことは否めないとおっしゃいましたけれども、その点も踏まえまして、また、皆様の御意見を踏まえて、審議に十分生かしてまいりたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓です。

 本日は、参考人の皆様、早朝から当委員会にお集まりいただきまして貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 また、今回の法案、束ね法案ということでありまして、本日は精神関係の質問が多いなと思っておりました。私の方からは、一方、大変重要であります難病についてお伺いをしていきたいと思いますので、辻参考人の方に御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、今回の難病法の改正につきまして、原則五年、これを目安にこれまで行われていくということで、関係者の皆さんから大変期待も多かったわけでありますけれども、実際には七年の歳月というものがかかってしまいました。コロナの関係ということも多分にあるかと思いますけれども、改めて、参考人の方から、今回の法改正の遅れにつきまして、患者さん、そして当事者の皆さんからの御意見、これをお聞かせいただけたらと思います。よろしくお願いします。

辻参考人 御質問ありがとうございます。

 難病法は、その制定の基本理念や基本的認識に従い、また、当時、多くの未指定の患者団体、それから超過負担となっている都道府県、こちらの方からの要請もあって、どちらかといいますと、大急ぎで作った法案という印象もあったかと思います。その意味で、附帯決議ですとか五年以内見直し、こういうものがついたと思っておりますので、そういう意味で、患者も参加して国民の皆さんの理解を得て作った法律なので、よりよくしていこうという気持ちは、患者ももちろん、医療者、行政の方にも大変強いものがあったというふうに考えております。

 疾患数も三百三十八まで増えましたし、運用のできる部分では、皆さんが努力していただいて、改善してきたと思うんですけれども、今回のポイントは、法の改正なしではかなわないものであり、本来カバーすべき部分であるのにカバーできなかった、例えば遡りの部分、また、本来、支援や研究開発に利用すべきだった軽症者の部分を登録証でなどの、議論を重ねた重要な点を改正する部分と考えておりますので、残念ながら、コロナの影響で二年以上、ひょっとすると三年は延びてしまうのかなというふうに思いますけれども、何とか速やかに実施していただきたいというふうに思っております。

池下委員 ありがとうございます。経緯と、そして生の声を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。

 政府は、必要があると認めるときはその結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするということで返してくるときもあるんですけれども、これを盾に取って、変えていかない、実際にやっていかないということでは、本当に駄目だと思っておりますので、我々も国会の立場からしっかりとこれを注視していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そして、次に、今回の難病法改正の中身についてお伺いをしていきたいと思います。

 今日の話にもありましたけれども、医療費助成の開始時期の原則が一か月遡り、また、難病を抱える方への登録証の発給など、一見すれば、これまでの患者団体さんの御要望が反映された形に見えるかと思いますけれども、一方、やはりまだまだ、実際には、皆様の御要望とずれが生じているんじゃないかというお声も聞かせていただいているところであります。その点につきまして、辻参考人の方から御意見を聴取させていただければと思います。

辻参考人 御質問ありがとうございます。

 遡りにつきましては、多くの難病が、重症化の際の早期治療をカバーするものとして、例えば、もやもや病などは、すぐに脳内出血が起きてしまう、早急な手術が必要な場合が多い、こういうふうに聞いておりますし、多くの自己免疫疾患では、その症状、重症化した症状を一気に抑えるために、血液製剤ですとか分子標的薬の投与でまずは抑え込むということが早急に必要になります。

 気になりますところは、やはり、一か月というところでございまして、遡り期間のところです。診断確定や重症化や再発などで気が動転している中で、患者や家族が治療とその医療費助成の申請をしなければならない、医療機関の診断書、いわゆる臨個票はまだかまだかというような、待っている患者の状況を少し理解をしていただければというふうには思っております。そういう点で、一か月というのはちょっと短いなというのが本音のところでございます。

 登録者証におきましては、今回、マイナンバーカード連携というところがつけ加えられております。この件は、難病対策委員会の意見書にもなくて、少しというか、大変不安を感じているところです。

 理由は主に三点ございまして、一点目は、国民の皆様が感じているものとほぼ同じと思いますが、マイナンバーカード自体、それから健康保険証との連携などについて感じている不安と同じものでございます。

 二つ目は、希少な疾患ということで、どうしてもまだ理解がされにくい、差別につながりやすいというものですので、より高度な保護をお願いしたいと思っているところなんですけれども、今回は、どのような情報が連携されるのか、どうやってきちんと保護されるのか、説明がなくて、よく分からない、こういう状況です。

 三点目は、難病患者は、障害者でもあり、病気を持つ者でもあります。障害者の方で、例えば手帳のマイナンバー連携をどうするのかという議論が行われているのかどうか。それから、他の医療費助成、例えば障害者の、例えばHIVですとかの医療費助成ですとか自立支援医療、あるいは原爆被爆者の医療などをどうするのか等を議論し、そこら辺での議論の上で決めていくのが先ではないか。それに従って、難病の特性を踏まえてどうするのかを決めるべきと思いますので、そういう意味でも、慎重に進めていただきたいというふうには思っております。

池下委員 ありがとうございます。

 もやもや病のお話もしていただきました。医療費助成について、やはり医療現場のずれ、また生活の現場とのずれというのも感じましたし、また、マイナンバーカードにつきましては、私も予算委員会の方でもこの安全性について質問させていただきましたけれども、医療における個人情報の漏えいについては特に厳格に監視していかなければいけないと思いますので、引き続き議論していきたいと思います。

 次に、難病患者の当事者参加についてお伺いをしていきたいと思います。

 今回の難病法の改正におきましても、患者団体さんからも御意見をいただきながら進めていったと聞いておりますが、一方で、国の重要な医療制度を決めていく際に、当事者である患者団体さんの声が反映されていないというケースも聞き及んでいます。

 そこで、辻参考人にお尋ねいたしますけれども、難病等を抱える患者さん、当事者が、具体的にどのような検討会や審議会に参加することに、国の医療政策において効果があるのかというのを一点お伺いしたいと思います。また、そのような専門的な検討会におきまして、患者さんが当事者として参加されるに当たりまして、準備といいますか、それまでのやり方といいますか、そちらの分の用意というのができているのかについても併せて、二点お伺いをしたいと思います。

辻参考人 ありがとうございます。

 難病対策委員会を始め、ゲノム医療の進展に関する委員会等、難病患者もしっかりと参加できているところはあるんですけれども、例えば、最近は限られて傍聴ができることになりましたが、指定難病委員会、指定難病を決める委員会ですね、こちらの方で患者の生活の困難度なども決めているようでございます。生活の困難度の議論を医療者だけで決めていいものか、あるいは決められるものなのかというのは素朴な疑問としてございます。また、先ほども述べましたとおり、地域における障害者関係の協議会、これには障害者の範囲に入っているんですけれども、難病患者が入っている例はほとんど全く聞かない、こういうような状況です。

 国の障害者関連の委員会にどこまで参加できているか、ちょっと調べていないので分かりませんが、そういう点からも疑問が少しございます。

 そういう意味では、病気を持つ者、難病患者に限らずですけれども、例えば中医協ですとか、そういうところに市民が参加できているのかどうか、まあ労働組合さんなんかは参加しているということですけれども、患者若しくは市民として参加する必要があるのではないかと強く思っております。

 しかしながら、意見を言うべき難病の患者団体は、私どもも含め多くは、人、物、金が貧困でございます。JPAは、欧米の同様の団体の十分の一にも二十分の一にも満たないという財政規模であります。貧すれば鈍するということで、患者側も成長しなければいかぬというふうに思っておりますが、欧米では、政府が、患者をそのような委員会に出せるように、あるいは研究に貢献できるように育成プログラムをしっかり立てているというふうにも聞いております。

 健全で目の肥えたユーザーがおりませんと、業界は発展せず、例えば衣食住でもエンターテインメントにしても、そのようなユーザーがいないところでは他国との競争に負けてしまうというところは必然でございますので、患者、市民参加はもちろんですけれども、そのための土壌づくりにつきまして皆保険制度の中で何ができるのかというところを、国の重要な方針として考えていただきたいというふうに思っております。

池下委員 ありがとうございます。

 医療関係につきましては、やはり科学的な見地からという視点が非常に重要になってくるかと思いますけれども、ただ一方、やはり、障害を持つ方そして難病の方といいますのは自分たちの生活があるわけですから、この生活の質の向上を考えるときに当事者の皆さんの御意見というのは非常に貴重なものになってくるかと思います。それがなかったら、やはり、仏を作って魂を入れずということにもなりかねませんので、しっかりとそちらの方、御意見を聞かせていただきました。

 次に、難病患者の就労環境について、最後、お伺いをしていきたいと思います。

 私もちょっと難病を持っている一人なんですけれども、難病を抱えながらも普通にお仕事を続けておられる方や、また、突然、難病を発症した方も多くいらっしゃいます。そういう中で、就労環境というのは非常に重要になってくるわけですけれども、難病を抱えられている方がその治療のため一定期間、仕事を休まなければならなかったり、それを理由に希望する部署から異動させられたり、若しくは解雇をされるようなケースはあったりするものなのでしょうか。

 私はやはり、雇用側、そしてもう一つ職場の仲間、こういうとこら辺にも難病に対する認識と理解というものが非常に重要だと考えておりますけれども、制度面も含めまして、辻参考人から御意見を伺いたいと思います。

辻参考人 御質問ありがとうございます。

 難病法だけではなくてそのほかの法律にも関係するところですので、いろいろ御調整も大変かと思いますけれども、難病患者の就労課題につきましては、前に述べましたとおり、ほとんど解決できておりません。

 難病を発症すると入院などをしなければならないので、会社や企業などにはそこで分かってしまうわけなんですけれども、そういう場合が多いわけなんですが、現状では、病気を隠していらっしゃる難病患者さんは約四割に達しております。手帳を持たない患者さんも、難病患者は約半分と言われておりますので、彼らのニーズに合った、利用できる支援制度やそれから支援機関はほとんどないというのが現状です。

 法定雇用率への算入は難病患者の望んでいるところで、現在、JEEDさんによる調査も行われていますが、残念ながら、症状が軽いとか重いにかかわらず、難病患者の就労の一律の困難性の原因は、現状の制度と社会の側にあるのではないかというふうに思っております。

 社会に理解されにくい希少な疾患を持つ難病患者が、新卒を含む就職については、法定雇用率が最大の効果を生むと考えておりますが、途中で発症するなど、就労継続については雇用率以外にも有効な方法があると考えています。

 これは難病患者に限ったことではなくて、がんなど病気を持つ者全般に言えると思うのですが、例えば病気の休暇、短時間労働、それから治療と仕事の両立支援、この三つだけでも、本人にも企業にも大きなメリットが生まれると考えております。さらに、この三つと補助金や助成を組み合わせることで効果は更に上がるのではないかと思っておりますが、企業の任意の取組であるですとか、縦割り行政などによって、なかなか推進が難しいところでございます。

 同僚や上司はもちろん、経営の方にも自分が病気であるということが伝わっていると、本人の働きやすさというのは格段に上がることが調査で分かっております。病気を隠して無理をして体調を壊して退職するという話は、本当に今でも絶えません。障害者として、また病気を持つ者として、病気を開示して周囲の理解を得て治療と仕事の両立を図って、本人にも企業にもよりよい結果が出るような難病患者の就労支援の制度設計と運用を今後しっかり望んでいきたいというふうに思います。

 以上です。

池下委員 ありがとうございます。

 非常に状況が分かりました。私も心を打たれるところがあります。まさに治療と仕事の両立を図れるような仕組み、しっかりとつくっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道です。

 参考人の先生方、本日は、お忙しい中、大変にありがとうございます。

 まず、藤井参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 国連障害者権利委員会の対日審査の総括所見におきまして、障害者の強制入院による自由の剥奪を認める全ての法的規定を廃止すること、精神障害者の強制的な扱いを正当化する全ての不当な法的規定を廃止することなどが指摘されました。このような指摘への受け止めと今後の対応について、藤井参考人の御意見を伺いたいと思います。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 この点、先ほどの意見陳述で述べましたとおり、精神科臨床における極めてセンシティブかつ重要な課題であると受け止めております。国連の障害者権利条約の勧告をまつまでもなく、非同意による入院というのは最小限度にとどめるべきということ、これは関係者の異論がないものというふうに考えております。

 私は、精神保健指定医の立場でございますので、非同意入院を行うときの判断をしなければならない立場にもあります。

 非同意入院の判断をするというのは非常にジレンマを伴うものでございまして、実際に入院をしたくないとおっしゃっている当事者の方のその意思を覆して、それでもこの方の健康や生命あるいは生活を守るためには非同意入院しかないというぎりぎりのところで、医療資源でありますとか御本人の価値観でありますとか、自分自身の専門家としての判断、あるいは治療の可能性、治療の必要性に関してのエビデンス等々を総合的に勘案して判断しなくてはならない、極めて重い判断でございます。

 正直申し上げて、できれば非同意入院の判断はしたくないとも思うわけですね。当然、医師であれば、患者さんの同意を得て治療をしたいと思うわけです。ですので、できることなら、可能な限り非同意の入院は減らしていきたいし、そのような局面に至らないように、入院の必要性に至らないような早期の支援を提供できるような体制をつくっていくということがまずは重要だというふうに考えております。

 その上で、先ほど桐原参考人からもお話がありましたけれども、この法改正に係る検討会の中で、医療保護入院の廃止ということが当初出されました。それに関しては、非常な混乱があったと私自身は考えております。

 というのは、先ほど桐原参考人がおっしゃっていたように、非同意入院ということと医療保護入院ということがほぼイコールで語られていたというところがあると思います。実際には非同意入院イコール医療保護入院とは限らないわけなんですけれども、私ども、医療現場で非同意入院の判断をする立場にいますと、非同意入院イコール医療保護入院ということがほとんど固定観念のようにインプットされております。ですので、医療保護入院廃止ということが前面に出たときに、イコール非同意入院の廃止というふうに自動的に捉えてしまう方は多いかと思います。

 その点を踏まえて申し上げますと、私自身は、非同意入院は、時によってはどうしても避けられないことはあるというふうな立場でおります。現行の医療技術でありますとか支援の状況を見て、非同意の入院以外にはその方の利益を守る方法がないという局面は、ここで具体的なケースを挙げることは適切ではございませんので控えますけれども、そのようなケースは臨床現場では多々経験するもので、先ほど申し上げたとおり、重い判断であるけれども判断しなくてはならないというのは、医師としての責任において行わざるを得ない局面というものはございます。ですので、全面的な廃止というのは、現時点では、非同意入院ですね、それは厳しいというふうに言わざるを得ないと考えております。

 ただ、まだまだ削減できる余地はたくさんあると思っておりますし、そもそも入院に至る前の適切な支援、その支援体制の構築というものは、まだこれも発展途上と考えております。

 精神科医療でいえば、入院医療に比べると、外来医療の体制というのはまだ脆弱でございます。本来であれば多職種で支援をしていくべきようなところであっても、なかなか多職種支援に対して診療報酬上の手当てがまだ不十分です。徐々に改善されてきておりますけれども、例えばケースマネジメントをしっかり行うということが包括的支援においては重要なんですけれども、多職種によるケースマネジメントを十分に行える体制にはないということでありますとか、そのような点に改善の余地もありますし、できるだけ支援を必要としている人に早期に支援を届けるためのアウトリーチの体制、そのようなものもまだ不足をしております。まずそういう体制をきちんと整備をしていくということが必要です。

 さらには、今長期に入院されている方の中には、実際には地域で生活できる方もたくさん含まれていると思いますけれども、住まいの手当てができないであるとか様々な理由で入院されている方がいらっしゃる。それをできる限り解消していくということは、引き続き全力で取り組んでいかなくてはいけないと考えております。

 以上でございます。

佐藤(英)委員 次に、岩上参考人にお伺いします。

 ただいまの国連障害者権利委員会の総括所見では、精神科病院や入所施設からの地域生活への移行が進んでいないとして、障害者が地域で自立した生活ができるよう政府の予算配分を変えるべきとの指摘もなされているところであります。

 このような指摘への受け止めと、今後、地域生活への移行を更に推進するためにどのような取組が重要と考えているのか、精神障害者の方々の地域生活の支援に取り組まれている岩上参考人の御見解を伺います。

岩上参考人 御質問ありがとうございました。

 まず、総括所見についてでございますけれども、非常に重要な指摘を受けていますので、先ほども申し上げましたように、適切に議論を進めていく必要がある。その際に、今、入院されて一年未満で退院される方が大体九割なんです。ここが一年に移行しますので、そこの部分の対応もきちんとしていかなくてはいけないということと、病床の在り方等も議論が必要だというふうに認識しています。

 また、今御質問いただきました、施設や病院からの地域移行についてどこに力を入れるべきかということについては、今回、地域生活支援拠点でコーディネーターを配置して地域移行に携わるといった方向性が示されておりますので、そこは非常に重要だと思っています。

 私は、精神障害については粛々と地域移行は進めていけると思っています。そのための手だてをいろいろ打っていただいている。むしろ、施設からの地域移行についてもきちんと議論が必要で、施設関係者の皆さんは、やはり、地域でなかなか暮らせなかった方を幸せにするのが自分たちの使命だというふうな認識をされておりますので、その辺りは、その中で、地域で暮らすことを望んでいる方がいるということを、施設にも地域移行を進める職員を配置し、地域の側でも拠点にコーディネーターを配置して、ここが連携することによって地域移行は進めることができる。そのためには、先ほど申し上げましたように、財源的な措置も必要ではなかろうかと考えている次第でございます。

 以上でございます。

佐藤(英)委員 次に、難病関係について辻参考人にお伺いします。

 本法律案においては、医療費助成の基準を満たす指定難病患者さん等について、医療費助成の開始時期が、申請日から、重症化と診断された日に前倒しをされます。

 まず、医療費助成の開始時期が前倒しされることについて、患者さん方の受け止めについて、辻参考人のお考えをお聞きしたいと思います。

 それからもう一問、本法律案におきまして、指定難病の患者さんや小児慢性特定疾病の児童の皆さんたちがデータベースに臨床データを登録した際に、地域における自立した日常生活の支援のための施策を円滑に利用できるようにするために都道府県などが登録者証を発行することとしておりまして、登録者証の交付対象者は、指定難病患者については軽症者も含めて全員を対象としております。登録者証が普及することで期待される効果や交付対象者の範囲について御意見を伺いたいと思います。

 また、データベースについては、法的根拠を新設し、医療費助成の申請をしていなかった軽症の指定難病患者についてもデータ登録をすることとしております。このデータベースが充実することで期待される効果について、辻参考人の御見解を伺いたいと思います。

辻参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、前倒しにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、非常に濃厚で高額な治療をやって早期に重症化を抑えていくというところは、医療従事者につきましても患者につきましても同じような認識を持っております。そういう意味では、すぐに治療開始できる。例えば血液製剤などですと、一回の治療に百五十万ぐらいかかるということになりますので、そういう意味では、そこでちゅうちょをさせないという意味でも、是非、確定診断が助成の開始時期となるようにお願いしたいと思っております。

 実際に、私も娘のときに、全身性エリテマトーデス、大分腎臓をやられまして、すぐにパルスを行わなければいけないということで、すぐにパルスを行ったわけなんですけれども、当然臨個票は後から出てくるわけで、当初の助成は全く間に合いませんでした。そういう意味でも、遡っていただくことは非常にありがたいですし、法の趣旨にかなっているというふうに考えております。

 一か月というのが適当かどうか、これについては、省令で決めるということですので、更に議論をしていただきたいなというふうには思っております。

 続きまして、データベースの登録につきましてですが、今回、今まで医療費助成を受けていなかった者も登録される、登録できるということでございますが、実は、難病法が成立して三年経過措置ということで、今まで医療費助成を受けて対象になっていた方がどなたでも一応継続するという形の経過措置が取られました。その三年後どうなったかといいますと、約十五万人ほど受給者が減っております。

 要するに、軽症で重症度基準に満たなかった方たちが約十五万人以上、新規の方が毎年五万人ぐらいいらっしゃいますので、予想としては二十万人ぐらいがそこで抜けているわけです。その方たちが重症化した際の利用の迅速性、それから、その方たちのデータベース、医療データが全く活用されなくなったというところは、福祉の点からも医療の点からも、非常に残念なことだというふうに思っております。

 今回、そのような方が是非登録いただきまして、医療の、特に重症化を抑える、あるいは根治療法につながる軽症者のデータを活用できるという点は、非常に医療側としても評価が高いというふうに聞いておりますし、さらに、最後の御質問がございましたけれども、登録することによって福祉のサービスが非常に利用しやすくなる、あるいは、今ある制度だけではなくて、官民含めて登録者証による福祉サービスが広がるということも期待できますので、そういう点につきましても、是非患者側も協力して、データベースへの登録、それから登録者証発行への協力をしたいというふうに考えております。

 以上でございます。

佐藤(英)委員 貴重な御意見、ありがとうございました。

 終わります。

三ッ林委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 今日は、参考人の皆さん、朝からありがとうございます。

 早速質問をさせていただきます。

 まず、桐原参考人に伺いたいと思います。

 今回の障害者権利条約に基づく国連の総括所見では、精神保健福祉法に基づく強制入院や無期限の入院の廃止という勧告が出ています。この精神保健福祉法に基づく入院についてはどのように改善していけばよいと思っていらっしゃるか、検討会に出られて、また、対日審査にも参加をした当事者の立場からお聞きをさせてください。

桐原参考人 精神科医療は一般医療から隔絶された政策体系に位置づいており、その中心に精神保健福祉法が存在しています。このような政策構造を変更させずして精神保健福祉法のマイナーチェンジを繰り返しても、問題の解決にはならないと考えます。

 例えば、精神科医療は地域医療構想や病棟機能報告制度の対象外とされていて、新型コロナウイルス感染症対策をめぐっては、一般医療との連携ができずに、多くの、市中感染の六倍の死者を出すに至りました。地域医療構想と病院機能報告制度は医療の可視化に資するものですが、精神科病院こそ最も求められている科の一つではないかと思います。

 入院制度については、非自発的入院だけではなく、任意入院も極めて問題があります。任意入院は長期入院の温床となっている嫌いが否めません。

 任意入院は、精神障害者本人の同意による入院とされていますが、任意で入院しても、任意で退院できない制度となっています。任意入院できないけれども入院の必要性がある人は医療保護入院、同意をしたら任意入院、同意をしなければ医療保護入院と、結局は入院することになるわけです。そのため、実態としては、任意と称して事実上の強制的な入院のようなケースも散見されます。むしろ、医療保護入院のようなチェック機能が存在しないため、半ば無法化しているような状態の病院もあります。中には、任意での入院が長期化している病院や、八割が死亡退院というような病院もあります。一般医療での自由入院とは性格が異なる制度ともなっています。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 精神福祉法の課題、これは委員会の中でも議論をしておりますけれども、その現実、また、今、任意入院の現実についても、また課題についてもお聞かせをいただきました。しっかりとこれについても議論していきたいと思っています。

 引き続きまして、桐原委員にお聞きしますが、医療計画と障害福祉計画について。今回の国連からの障害者権利条約の勧告を踏まえ、この医療計画と障害福祉計画、どのようにこれを反映をさせていけばいいのか、当事者の立場からまたお聞かせいただければと思います。

桐原参考人 国連からの勧告を実現するには、精神障害を理由として、精神障害者だけを切り離して特別な枠組みで扱うこととしている精神保健福祉法の廃止が前提となります。このことを確認した上で進める必要があると考えます。

 医療計画と障害福祉計画の話が出ました。この関係は、障害福祉計画が、いわば、岩上参考人からも話があったように地域移行とかそういう出口の部分なのに対して、医療計画は、入院していく人たちの病床とかを定めています入口のものと言ってもいいと思います。

 医療計画には、精神科医療を一般医療と同質のものという位置づけで基準病床算定式を定めて、地域医療構想によるダウンサイジングを行い、非同意入院のゼロ化に向けて指標例を定めるべきであると考えます。

 障害福祉計画は、総括所見に書かれた漸進的措置に関わる勧告の内容について、具体的な数値目標を掲げていくような形が望ましいと考えます。精神障害の場合は、一年以内退院を九二%とする目標値が現行の計画に立てられていますが、言い換えれば、新規入院者の八%が長期入院になるという計算ということになります。十二人中一人が一年以上長期入院するという目標値、これは見直されるべきだと思います。

 より積極的に病床を削減して地域移行を進めるとともに、訪問系サービスを充実させる必要があります。特に、長期入院の見守り介護が可能な重度訪問介護を精神障害者にも利用しやすくすること、精神科病院に入院中でも申請や利用を可能にすることが求められます。

 それから、障害当事者として、ピアサポートの活動が重要であると考えます。研修のシラバスなどをブラッシュアップしていくことを通じて、多様なピアサポート活動が評価されるようにしていくことが望ましいと考えます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 精神科病院の病床数の話も出ました。これが多いことは大変に課題であるということは、もうこの委員会でも議論が出ていますし、国内外からも批判が出ているのも事実であります。

 そこで、今度、池原委員にお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほど医療保護入院の話がありまして、今回、家族同意なしでも市町村で入院の判断ができるということでありまして、弁護士会としましては、これが適用拡大につながるんじゃないかということを御提言いただきました。これは前回の委員会でも議論になった話であるんですが、大臣は、医療保護入院が増えるとは一概に言えないと、一言この答弁をしました。

 私は、この根拠は何なんだろうということを午後の委員会でも質問をしたいと思うんですけれども、先ほどお示しいただきました、精神医療審査会のチェック機能が働かないと。さらには、市町村同意においても不同意になった数というのは把握していないと厚労省は言いまして、更に言えば、入院患者に対する面会、これによってどのような変化が起き、退院につながったのか、こういった各自治体や市区町村のデータもないと。それにおいて一概に増えると言えないという発言が、私はとても整合性もないし理解ができないと思っておるんですが、これについて、池原参考人として、どのように御理解し、また課題があると思っていらっしゃるか、お聞かせください。

池原参考人 御質問ありがとうございます。

 資料でお配りしていますように、市区町村長同意というのはとかく形骸化しているということが古くから指摘されているところで、その後、ここ数年間の調査というのは正確にはなされていないので、いわば、家族が同意できない場合に市区町村長の同意を代用するというか、そういうことにすることが立法事実として妥当なのか、許されるのかということは、今のところ分からないということになってしまうわけですね。

 だから、そこはやはり、しっかりした制度をこれからつくっていくのであるとすれば、基本的には厚生労働省なりでその前提事実をしっかり調べて、市区町村長に委ねても十分制度として適正に運用できるという前提が確保できて初めてその改正が認められるということになるでしょうし、あるいは、市区町村長の同意が形骸化しているという事実が分かったら、むしろ、じゃ、どうすれば形骸化しないような市区町村長の同意の関わり方ができるのかということを考えるべきだと思うんですね。

 ただ、この医療保護入院について、医療者以外の人の、家族なりあるいは市区町村長なりの同意というものを要件に加えるべきかどうかということについては、前回の法改正のときに議論があって、むしろ、保護者、当時は保護者制度でしたけれども、保護者の同意を撤廃すると。要するに、医療者でない人の同意ということを前提条件として医療保護入院を運用するという制度を大幅に変えていこうという提案が、厚生労働省の検討会でもなされたところです。

 そのためには、逆に、同意要件が抜けるわけですから、要件がある意味では緩んでしまうので、では、どうするのかというと、理想的には、措置入院と同じような形で指定医二名の判断を大前提にするというのが一つの考え方でしょうし、あるいは、入院期間を極めて限定されたものにすると。今回の改正案では更新ができてしまうので、形の上では限定しても実質的には自動更新になってしまうという危険性が高いわけですね。だから、そういう形で医療保護入院の枠組みを狭めていくというような工夫が必要だと思います。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 もう一点お聞きをいたしますけれども、この精神科病院の病床数の中には、今言いました医療保護入院とともに医療観察法に基づく入院もありまして、この議論はまだまだ、なかなか議論が進んでいません。病床数においても当初の規定よりも増えているというのが実態でありまして、これが今減らしていこうという中にあって、現状は逆行しています。

 この理由を含めて、医療観察法における見解というのもお聞かせいただければと思います。

池原参考人 ありがとうございます。

 御指摘の医療観察法という制度も、措置入院、医療保護入院と並んで強制入院をつくっているわけで、これはやはり権利条約の観点から再検討するということが非常に重要だと思います。

 ところが、残念ながら、先生御指摘のように、医療観察法における入院病床は増え続けている、入院者が増えているという実態があります。これがなぜそうなのかということについては、いろいろな要因があると思うんですね。

 私が一番大きな要因であるというふうに思っておりますのは、退院することが困難になっている方が少なくないという、困難なというか、別の言い方をすると、病院に滞留してしまう人がいらっしゃるわけですね。

 当初の、制度をつくるときは、十八か月で退院ができるようにする、一年半で治療が終わって地域に戻るというモデルで制度を構築した、それを前提にして病床数を考えたわけですけれども、実際には、やってみると、十八か月で退院できるという人はむしろ少数派で、平均すると、大体その二倍近い三十数か月は、平均の在院日数になっているわけですね。ですから、病院に残っていくという人が多いので、結局は、病院のベッドがより多く必要になるということになると思います。

 この病院に残ってしまう人がどうして発生するのかというと、やはり一番大きな理由は、一般の精神科と同じ、いわゆる社会的入院という現象が起こっているということですね。結局、退院した後に地域で生活する場所とか、あるいは地域で支えてくれるネットワークとか、そういうものが十分に供給されていないので、絶対量としてそれが利用しにくいということがあります。

 さらに、残念ながら医療観察法の退院者という方にはある種のスティグマが貼られてしまうので、地域の側がどうしても引いてしまって、そういう方の地域での生活を支えるのには特段の何か配慮をしないとできないのではないかということになって、なかなか地域の積極的な協力が得にくい、ほかの、医療観察法以外の入院者の方に比べるとそこのハードルが高いということがありますね。

 それからさらに、三番目は、医療観察法はかなり制度的な枠組みが、何というんですかね、融通が利かないところがあって、例えば、入院している人の退院先というのは、基本的には、対象行為を行った場所とかでなければならないということになっていまして、そうすると、退院先の地域を自由に選ぶということができないわけですね。ですから、その地域の中にグループホームなり、あるいは日中活動の場所なりが少なかったりなかったりすると、とても難しいことになりますし、まして対象行為を行った地域住民の人は、あの人が帰ってくるのは困るみたいなことを言われる方もなくはないので、なおさら退院が難しいということになります。

 更に言うと、医療観察法の退院というのは、裁判所の許可が必要なわけですね。裁判所の許可というと、裁判所に申し立てても数か月の時間がかかるわけです。ところが、地域の側で、じゃ、退院したらグループホームで受け入れますよと言っても、裁判所の三か月後の判断までそのグループホームの部屋を空けて待っているということはできないわけですから、裁判所の退院許可の申立て手続をしている間に入るはずだったグループホームの部屋がなくなってしまって、結局、やはり退院できないというようなことも起こってくるというようなことがあります。

 最後にもう一点だけ申し上げますと、入口が広がっているという点がありまして、元々、医療観察法がスタートした頃は、入院処遇というのは全体の六割ぐらいだったんですけれども、今七割を超えているんですね。だから、裁判所の判断も、原因はよく分かりませんが、入院に傾いていて、入ってくる人が多くて、出ていく人が少ないというのが一番の原因だということになると思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 済みません、最後、一問だけ藤井参考人に伺います。

 先ほど入院訪問支援事業のお話がありました。傾聴するということ、孤独感、自尊心の低下の軽減というお話がありましたけれども、これは、入院者の人権を守るアドボケートの制度というふうに理解をしてよろしいんでしょうか。最後、お願いします。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 まさにアドボケートの制度と私は理解をしております。入院者訪問支援事業でアドボケート全てをカバーするものではないと思いますが、アドボケートは一定程度カバーするものと考えております。

 もちろん、まだまだ課題はございまして、例えば、今回は市町村長同意の方中心ということになっておりますが、もちろん、それ以外の入院の方を排除するものにはなっていませんけれども、当初はかなり限られた方に対しての制度になってしまうということがございますが、本来、このアドボケートというのは入院されている方全員に届くべきものでありますので、今後は、支援員となる方の養成であったりとか、制度を運用していきながら、よりよい制度にしていきつつ、全ての方に普及していくということが必要だというふうに考えております。

 ありがとうございます。

田中(健)委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、五人の参考人の皆さん、大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 まず、辻参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど、お話で、登録者証がマイナンバーと連携することについて不安があるということをおっしゃっておられました。具体的に、どういうリスクがあるという懸念があるんでしょうか。

辻参考人 御質問ありがとうございます。

 いまだ詳細については、厚労省の説明等は受けておりませんので、ちょっと分かりかねるところもあるんですけれども、一番患者の声で多いのは、やはり個人情報のところ。疾患名でありますとか、あるいは症状の状況等がどういうふうにつながっていくんだろうか、つながらないんだろうかというところが心配の声として上がっております。疾患名を聞いただけで、例えば、行政の担当者はそうではないかもしれませんけれども、支援機関の方は、聞いたことがない難病だ、病気だ、私たちはどうしていいのか分からないとか、そういうような反応につながるのではないか、あるいは、それがもし漏れてしまったらどうすればいいのか等々、自分の疾患名若しくは症状についての保護のところが非常に気になっているというところが、患者の個人としては多いように感じております。

 また、先ほども申し上げましたように、障害者の方々とか、あるいは他の医療費助成を受けている方々とのバランスといいますか、そちらの方で大枠も決まっていない中で、何で難病なのというところは、難病の患者団体の方から声は上がっております。非常につけやすいところからどんどんつけていくというような方法もあるかとは思うんですけれども、そうではなくて、健康保険証との連携についても、国民の間で、できるだけ丁寧な説明が必要ではないかというような声が上がっておりますので、それ以上に配慮をしていただきたい難病関係の情報でございますので、是非丁寧な説明と、それから慎重な運用をしていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続きまして、今度は辻参考人以外の四人の参考人の方にお伺いしたいと思いますが、医療保護入院の市町村長同意というのが形骸化しているという指摘が先ほどあったわけですけれども、今回それを、ある面、拡大していくということになるわけですけれども、この点について、どういう懸念があるとお考えなのか、四人の参考人それぞれの方にお伺いしたいと思います。具体的にどういう問題が起き得るのか。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほどから話題になっておりますとおり、市町村長同意に関しては、本来であれば、事務処理要領に基づいて、市町村の職員が入院者を訪問するなどして状況を把握するということが求められているわけなんですけれども、現実には、なかなかそのような適切な対応がされていない現実があるというふうには伺っております。ですので、これをしっかりと、市町村長同意になった方に対して市町村が状況を把握していく、訪問して御本人と面談をし、本当に入院が適切なのかどうか、あるいは退院後の支援も含めて対応していくということが本来求められていると思います。

 ただ、現実問題として、市町村のマンパワーを考えたときに、そこまでできるのであろうかというのは非常に懸念はするところではあります。ですので、そこは、市町村長同意の要件を広げていくに当たっては、市町村がしっかりと本来求められている対応をできるような何らかの措置が必要であるというふうに考えます。

 市町村長同意の要件の拡大に関しましては、私どもの研究班で、調査の一部ですけれども、御家族と御本人の利害関係があり、例えば御家族から何らかの暴力であるとかDVの被害を受けている方であっても同意者に今現状ではなれるということが問題であるというような意見が多数寄せられておりましたので、現状のままの運用ではかなり厳しい側面もあるかと思いますので、法改正自体に関しては私は賛成する立場ではございますが、今申し上げたような、本来の市町村の役割が取れるように何らかの対応をしっかりとしていくということは必須であろうというふうに考えております。

桐原参考人 今回改正される予定の、家族等が不同意の意思表示をした場合とか、そういった場合については市町村長同意になるわけですが、これは今までなかった市町村長同意の層をつくり出すわけなので、医療保護入院が増えていくのではないかということを懸念しております。

 また、この制度は家族会からの提案でできたというような話なわけですが、少し文脈がありまして、家族会の方々は、医療保護入院の廃止をまず第一に主張なさいました。その上で、廃止しないのならせめて家族の負担を減らしてほしいということで、あくまで廃止を前提に、廃止までの間こういった形でというふうな話でした。

 ただ、医療保護入院自体は、医療保護入院の市町村長同意に関しては形骸化しておりまして、例えば、具体的な話なんですが、なぜか市町村長同意なのにもかかわらず家族がいて、その家族が入院させているような状況になっていて、ただ同意者は市町村長、家族が退院に反対するので病院としては動けなくて、市町村長同意のままずっと続いている、そういうようなケースがあります。

 さらに、そういったケース、何件か知っているんですけれども、そのうちの一つ、後見制度を使ってそれで退院させるというような話が出て、後見制度の申立てをしたんですけれども、後見人がちょっと外れというか、退院に対して余り意欲的じゃない人で、結局入院を追随してしまったみたいな、そういったケースも相談を受けています。

 なので、この改正の流れというのは、とにかく廃止するということであればという括弧つきのものであったわけであって、それまでの間の制度としても、これは医療保護入院を拡大してしまうのではないかという懸念は拭えないなと思っています。

岩上参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、今回の医療保護入院については、従前よりは適正化されるという立場でございます。

 懸念していますのは、入院者訪問支援事業というのは非常にいい事業だと思っています。元々私も手がけさせていただいて、日本精神科病院にも調査研究をしていただいて、その後、藤井参考人の方で様々な意見を取りまとめていただいたという経過がございます。ただ、この事業が都道府県の事業としてスタートする関係で、適切に予算措置をして体制を整えていただきませんと、医療保護入院患者に入院訪問支援事業が入れないという事態が生じますので、まずはこの事業を適切に行うことによって、従前、医療保護入院者に速やかに市町村が会いに行っていなかったのではないかという懸念を払拭する絶好の機会にもなりますので、この事業をきちんと都道府県で実施できるような措置をお願いしたいと思います。

 以上でございます。

池原参考人 ありがとうございます。

 市町村長同意については、先ほど日本精神神経学会が調査した結果を資料としてお配りしたとおりで、形骸化していて、さらに、入口の問題として、同意の問題として形骸化しているというだけではなくて、自ら入院に同意しておりながら、市町村の職員が患者さんに適切に会いに行くということが極めて乏しい、半年に一回会っているという人が一、二%しかいないという報告です。

 ですから、ここについては、もし市区町村長同意を家族がどうしても同意できない場合に変えていくということであれば、まず前提としては、先ほど申し上げたとおり、その前提事実として大丈夫なのかというところをしっかり調べていただく必要があると思うんですね。

 その上で、もし相変わらず形骸化しているということであるとすれば、じゃ、どうしたらその市町村長同意をもっと実質化できるのか。例えば、市町村のどの部署が、どういう担当者がどんなことをするのかとか、ある程度の努力義務なり義務づけをして、同意した場合はこうしなきゃいけないとかということをしておくことが最低限必要だと思います。

 ですから、そうしたものなしに、家族の負担を軽減するという側面があるとしても、逆に、では、形骸化した同意で入院させられる患者さんの権利の方はどうなるんだという話になってしまうので、そういうバランスを欠いた結果にならないようにしていただきたいというふうには思っています。

宮本(徹)委員 続きまして、藤井参考人と池原参考人にお伺いしますが、精神医療審査会が患者の人権を守る役割を十分果たせていないという指摘があると思うんですけれども、これはどう改善すべきでしょうか。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 精神医療審査会についてのお尋ねですけれども、私も以前、精神医療審査会の医療委員としてかなり長く務めさせていただいておりましたけれども、常勤先がある中で非常勤としての勤務でございます。ですので、どうしても、例えば退院請求、処遇改善請求があったというときに、すぐにそれに対応するということができていない状況であった、それに非常にじくじたる思いがあったということを記憶しております。

 やはり、全て、忙しい業務を抱える中での非常勤の委員ですので、おのずと精神医療審査会の委員としてできることに限りが出てしまうというような状況ですので、もう少しフレキシブルに動ける委員がいる必要があるのではないかなというふうには考えているところです。

 さらに、感じていたところが、書類審査が非常に多く、これは医療保護入院の数が非常に多いこととも関係するとは思いますけれども、書類審査の数が非常に多く、それももちろん、ないよりはあった方がいいわけなんですが、実際に病院に訪問して、患者さん、入院されている方とお話をするというような機会が余りないというような現実がございます。これも、委員の数であったりとか勤務に当てる時間数が少ないというところも関係しているところですので、全体的な強化というものは必要だと思いますけれども、なかなか、実態を私の知る限りで申し上げると、事務局を担っている精神保健福祉センターもかなり人手不足の中で運営をしているというふうに伺っておりますので、全体的に人権擁護にかける予算であるとか人員というものが少ないというのが、医療審査会に限らず問題ではないかというふうに考えております。

 人権擁護をしっかりしていくためにはお金が必要であるということは、これはもう事実であると思います。非常に限られた予算の中で、予算を捻出するというのが難しいところだと思いますけれども、現に今、強制入院ということが制度としてある以上は、人権擁護がしっかりしているから強制入院をしてもいいという意味ではございませんけれども、強制入院があるということを前提として、しっかりとした人権擁護の仕組みをつくっていかなくてはいけないというふうに考えます。

池原参考人 既に御承知かとは思いますが、先生方のお手元にある白表紙の資料の二百七十七ページに、精神医療審査会の審査結果についての統計資料が載っています。そして、入院又は処遇が不適当であるとかいう判断をされているのは毎年多くても五%程度ということで、ほとんどは入院相当の結論になってしまっているということなんですね。

 これはちょっと二つの観点で考えたいと思いますのは、一つは、現行制度を微調整することで何とかできる部分と、少し長期的にどうしていったらいいかということがあると思います。

 長期的な視点の方を先に申し上げますと、先ほど来何回か出ています障害者権利条約の総括所見においても、パリ原則に基づく人権機関をちゃんとつくりなさいということが言われておりまして、そういう意味では、精神医療審査会という知事の下にある審査会という形ではなくて、独立した一つの機関としての人権擁護機関というのをつくることが求められていて、これは実のところ、ほぼ、先進国ではどこの国でもある状態になっていて、日本だけがむしろないという非常に寂しい状態であります。

 ですから、すぐにつくるのは困難であるとしても、五年、七年という長さの間にはちゃんとしたパリ原則に基づく独立、公正な人権擁護機関といいますか、国内人権機関を通常の先進国並みにつくるということが必要で、それができれば、そこで、精神医療だけにかかわらず、障害のある人やそれ以外の人々の人権を審査する機関として、中立性が保たれたよい制度になると思います。

 ただ、それまでに時間がかかるので、当面どんな工夫ができるのかということですけれども、先ほど藤井参考人からも出ましたけれども、一つは、そこまではっきりおっしゃらなかったかもしれませんが、常設化するということもとても大事なことです。担当委員なりあるいは事務局なりが常にパートタイム的に関わるということで解決できるような問題ではありません。医療保護入院になっている人は十三万人ぐらいいますので、この十三万人の人の定期病状報告を精神医療審査会が毎回審査するというのも、ほとんどペーパーワークになってしまって、そのペーパーワークさえも、しっかり読み込むことができないような状態になっているわけですね。

 ですから、そういう意味では、本来、悪いサイクルになっちゃっているんですけれども、強制入院者を減らしていけば現状でももうちょっとまともな審査ができるということになるのかもしれなくて、そういう意味でいうと、先ほどの医療保護入院の入口を狭めていって、もうちょっと入院者を減らしていきましょうという方向を政策的に取ることが重要だと思います。

 それからもう一点は、若干、手前みその話で申し訳ありませんけれども、日弁連でも、精神医療審査会に対する退院請求あるいは処遇改善請求という申立て手続について、法律的な権利擁護者をしっかりつけていく、いわば刑事手続並みに弁護人がつくような手続にしていくということを提案しております。実際にそれをやっている福岡県とか弁護士がちゃんと権利擁護者としてついているところでは退院請求の認容率が高いということも報告されていて、私ども日弁連としては、できれば、国費による弁護人、精神医療の弁護人ですね、強制的な処遇を受けているわけですから、そういう制度を手続としてしっかりつくっていくということも必要だというふうに考えています。

宮本(徹)委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、終わります。

三ッ林委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文といいます。

 今日は、参考人の皆さん、お疲れさまでございます。

 まず、藤井千代参考人の方に質問があります。

 日本の今までの精神科、特に医療面でいいますと、薬物療法というのがかなり主流であった結果、実際、最初、精神科にかかって、今においても、お薬が一つ二つで始まったものが気づくともう十種類になっている、多剤になっている。

 皆さんも御案内だと思いますけれども、お薬、特に精神科領域のお薬を飲むといろいろな合併症が、いわゆる副作用が出てきます。その副作用をまた抑えるためのお薬を飲んでいる、そういうことも原因とされていますので、他の、例えば諸外国の状況を見据えながら、より、行動認知療法であるとか、いわゆる作業を伴った療法であるとか、非薬物療法のような治療というのも推進していくべきであるというふうに思うわけですね。結局、薬漬けにして、薬漬けという言い方は悪いですけれども、薬物療法をして、そういった入院という、そういうふうなことが続いているのではないかという疑念があります。

 そういうことに関しまして、先ほども、ほかの診療科のスタッフ、ドクターも含めて連携というのは大切で、私も地元で訪問診療をやっていまして、精神科の先生が音頭を取って、地域包括ケアの中で、いろいろな患者さんの情報を共有しながら、精神障害をお持ちの患者さんに対応していくという体制、これもやりつつありますが、まだまだ、例えば今までの経緯からいっても、精神科のドクターとそれ以外のドクターとの交流あるいは情報交換、そういった勉強の場が少ないと思います。

 そういう二点のことはどう思いますか。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。

 御指摘のとおり、精神科に関しましては、薬物療法以外の精神療法でありますとか認知行動療法、作業療法、その他の非薬物療法が非常に重要でございます。患者さんによっては、薬物療法は必要なく、その他の治療法が必要である方も多数いらっしゃいますので、薬物療法だけというのは、今の精神科にいらっしゃる患者さんの治療を考えたときに、それは不適切であろうというふうに思います。

 ただ、問題は、今、外来で診なければならない患者さんの数、非常に多うございます。実際に、朝から夜まで外来を行っても、診察できる患者さんの数はおのずと限られてくるわけです。ですけれども、精神科受診のニーズは、特にコロナ禍において、若い方も中心に非常に増えているという現状もございます。そのような中で、限られた時間でたくさんの患者さんを診察しなければいけないということになると、薬物療法以外の治療法を十分に提供する時間がないという、これは精神科医の多くが抱えているジレンマというふうに言えるかと思います。

 そのような状況を解決する上での幾つか重要なポイントがあるかと思うんですけれども、まずは、精神科にいらっしゃる患者さん方、精神科医のみで治療を完結しようとしないということも必要かなというふうに思っております。もちろん精神科医と一対一の診療、薬物療法中心でよくなっていく方もいらっしゃいますので、全員とは申しませんけれども、薬物療法以外の支援が必要な方に関しては、多職種で対応するということが必要で、医師の面接がどうしても限られてしまうところを、ほかの方との面接も行うことによって、総合的に診療をしていく、治療を提供していくということができるようにならなければいけないと思います。

 ただ、現状では、外来で、医師以外の、例えば精神科の外来に勤務される看護師さんであるとか精神保健福祉士の方が外来で医師とは別に面接をしたり、連携のお手伝いをしたりということ、実際に行われているんですけれども、そこに対しては、評価がつかない、あるいは評価が非常に低いという状況でございますので、なかなか多職種での対応、先ほどケースマネジメントのことも少し触れましたけれども、多職種で、多機関で連携して支えていくという体制をまだ取りにくい状況にございます。それは改善していかなくてはいけないと思います。

 さらに、他科の医師との連携でございますけれども、これも今回の診療報酬でこころの連携指導料というものも創設をしていただきまして、他科との連携を促進していくというような方向性も見えてきてはおりますけれども、まだまだ、もちろん不十分で、実際に、日本では、精神科の専門医がプライマリーケアレベルの精神科の患者さんを診察しなければいけないわけですけれども、GPのシステムがあるような国では、軽度の精神疾患でありますとかもう安定している精神疾患の方はGPの方が診療するということになって、精神科専門医はセカンダリー以上の患者さんを診察するということになっていますので、十分に時間をかけられるわけです。

 そのようなことを、諸外国の状況も踏まえて、実際にたくさんの患者さんがいらっしゃる、そして、精神科医の数は限られているという状況を改善していくような対応を検討していかなくてはいけないと思っております。

仁木委員 すばらしい御指摘、ありがとうございました。

 私もアウトリーチという面で質問しようと思っていまして、今おっしゃった、いわゆる他の、精神科専門医以外もアウトリーチの一員たる形で、患者さんの例えば就労に結びつけていくような、PSW、作業療法士、そういったことの医療的な側面から支援できるということも今日御示唆としていただいて、それはすばらしいなと思いました。

 やはり、我が国は、極端に言うと、精神病院があって、そして、いきなり世の中、社会、家庭がある。いわゆるそういったアウトリーチ、バッファーみたいなゾーンに人が少な過ぎる。今も精神科の外来というのは、私も存じていますが、特に新患だと本当に時間がかかりますよね。一日に何人も診られるわけじゃありません。例えば耳鼻科とか眼科とか、そういう状況とはまた違う現状があります。そういう中で、いろいろな方がサポートしたことに対してのいわゆる診療報酬等々のそういったバックアップ体制が行政的にないということも御指摘されたと思うので、その辺は進めていきたいと思います。

 ちょっと話を変えますが、小児慢性特定疾患のことなんですけれども、それに並んで、例えば、子供の健全な発達に必要なサポートをし得る、小児科の分野において、小児精神科医というのは日本は少な過ぎると思いますので、またこれは要望ですけれども、藤井参考人におかれましては、そういった形の応援もお立場でまたやっていただきたいと思います。これはちょっと質問ではありません。

 次に移りたいと思います。

 ちょっと突然ではありますけれども、私、皆さん議員の方も関係する選挙のことについて、精神障害者の政治参画ということについてお尋ねしたいんですけれども。

 まず桐原参考人に対しまして質問しますが、もし知っていたらというか情報でいいんですけれども、例えば、今、全国に三十万人近く入院されている精神疾患をお持ちの方がいらっしゃいまして、そのうち半分ぐらいが自分の意思で例えば投票に行けない、つまり、病院から出られない状況ですよね。そういう中で、例えば国政選挙、今日もこの束ね法案云々のことを冒頭熱く訴えられていましたけれども、そういう、御自身が障害を持たれているけれども政治参画するということに関しまして、実態はどういう感じでしょうか。知っていましたら。御存じでしたら。

桐原参考人 参政権は選挙権と被選挙権がありますけれども、入院中の選挙権の行使については、通常は病院の中で投票を行うか郵送で投票します。ただ、投票用紙が届いていないというような相談を選挙の都度、相当数受けておりますので、何かしら起きているのだと思います。ただ、原因ははっきりとは分かっていません。

 被選挙権に関しては、地方議員の方で精神障害であるということを公表して当選している方というのは、全くいないわけではないですけれども、非常に少ないです。国連のアジア太平洋社会経済委員会が、各国の議員で障害を持っている人がどれくらいいるかということを調査したデータを出していましたが、日本は非常に少ないという結果になっております。

仁木委員 ありがとうございました。

 次に、同じような質問を岩上参考人の方にしたいわけでございますけれども、介護施設とかいろいろな形で障害者向けの施設というのを経営されているんですけれども、そういった選挙になりましたら、不在者投票、先ほど桐原参考人の方から御答弁がありましたが、例えば、介護の分野では、要介護五だったら郵便投票をするような案内というのは出せるわけで、来るわけですけれども、実際のところ、例えば、最近でしたら、若年性の認知症の方、アルツハイマー病等々の方々が精神科の病院に入院されていることも結構ありまして、そういうときに、この方は、例えば、自分の判断で候補者を選んで投票できる、あるいはできないからもう案内をするのもやめておこうという形で、不在者投票の情報を、その患者さんに誰かの判断でしないこともあるんですね。

 例えば、御施設はどういった基準でそういったことをされているか、ちょっとお答えできるようでしたらお願いしたいと思います。

岩上参考人 ありがとうございます。

 私のところはグループホームに入られている方が対象になると思いますが、基本的には、皆さん、選挙に行っていただくということをしています。

仁木委員 私、このことを午後の委員会の方でも少し質問に立つ予定でございますけれども、やはり、障害者の権利を担保する、より充実した、誰も取り残さない社会をつくろうという今回の障害者総合支援法の一つの趣旨だと思いますけれども、そういう意味でいうと、その人が判断能力があるかどうか、例えばさっき要介護五とかいうのが出ましたけれども、例えば、本当に認知症がひどかったり、あるいは、精神科の、状態が病態として悪くて、そういった選挙における判断能力がない方々をどういうふうに救済して、全国約十五万人ぐらい、そういった不在者投票をすることになる精神疾患をお持ちの方もいらっしゃるわけでございますので、そういったことも、今各官僚の方にレクを受けて、午後答弁をいただく予定になっておりますので、そのこともただしたいというふうに思っております。

 最後に、辻参考人の方に質問します。

 この前もありがとうございました。

 難病、特にオーファンドラッグということに象徴されるように、オーファンディジーズ、つまり数が少ないであるがゆえに、本当にいろいろな新薬を開発してその治療に結びつけようとしましても、やはり莫大なお金がかかる。莫大なお金がかかって、いわゆる承認されて、上市されても、使われる数が少ないから、企業にとってはなかなか厳しい現実もあります。

 そういう意味で、今回のこの法改正に伴って、データベースをより活用して、そういった創薬とか等々にもつなげていこうという議論がありまして、先ほども参考人の方から、質問がありましたけれども、私は、情報が漏れるという、セキュリティーがしっかり安心できる、そういう状況が生まれたら、皆様方というか団体の皆さんは、やはり、こういった自分のデータが、自分のことはもちろん、仲間たちあるいは今後同じような難病になる方に対して、新薬の開発により貢献できるんだというふうなことにも取れると思うんですね。

 そういうことでいいますと、やはり日本の数々の問題というのは、そういった臨床研究であるとか治験がやりにくいということがあります。そういうことにおいて、データベースの活用、これに対して前向きなお考えなのかどうか、ちょっと、改めてセキュリティーが担保された上でのお考えというのを聞かせていただきたいと思います。

辻参考人 御質問ありがとうございます。

 難病患者の願いは、治療法の開発、特に根治療法の開発でございます。なかなか根治療法の開発に至らないまでであれば、重症化を抑える、若しくは重症化を遅らせる、この治療法の開発です。ですので、多くの難病患者は治療研究に対して非常に協力的であり、患者団体もそのような形になっています。

 ただ、個人情報の保護については、当然差別を受けやすいというようなところもありますので、当然、きちっとした法整備とそれから運用が必要であるというふうには考えておりますが、基本的には、先ほどオーファンドラッグのお話もありましたけれども、なかなか進まない治療研究や薬の開発に、患者の方はできるだけ協力したいというのが本音でございます。

 マイナンバーの連携につきましても、そのメリットについて十分認識した上で、そこについてのしっかりとした個人情報の保護がきちんとしているのであれば、当然連携も推進していくべきではないかというような意見も多々あります。ただ、説明がちょっと不足しているので、患者側の方で今こうあるべきだというのはちょっとまだ示せていないというような状況です。

 欧米に比べまして、本当に、難病の薬もそうなんですけれども、最近はドラッグロスということで、欧米での研究開発は進んでいるけれども、日本の研究開発は非常に遅れ始めているというふうに聞いております。そういう意味でも、患者が参画して、いいお薬を日本の中でしっかりと作っていける環境を患者の方としても望んでおりますし、是非協力させていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

仁木委員 本当に貴重な御回答というか御意見、ありがとうございました。

 それと、やはり最後に申し上げたいのは、いろいろ難病をお持ちの方というのは、それを専門に診られるドクターも少ないものですから、例えば遠いところに家族と一緒に行く、家族が仕事を休んで行く、経済的な負担も大きいわけでございますので、今この間の与党は、伴走的な支援というのを経済対策でよくうたっています。そういう意味で、こういった分野にも伴走支援というのをかなり組み入れていくことを私は目指すような政治をしていくことをお誓い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

三ッ林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案及び道下大樹君外十名提出、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房こども家庭庁設立準備室審議官野村知司君、総務省自治行政局選挙部長森源二君、文部科学省大臣官房審議官安彦広斉君、大臣官房審議官西條正明君、厚生労働省大臣官房総括審議官間隆一郎君、大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官堀井奈津子君、健康局長佐原康之君、子ども家庭局長藤原朋子君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上田英俊君。

上田委員 自由民主党、上田英俊でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今国会に提出されております障害者総合支援法等改正法案について質問をさせていただきます。限られた時間でありますので、障害者雇用に絞って質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 私は、県会議員、六期二十二年務めてまいりました。そうした中において、厚生労働行政に大変強い問題意識を持って活動してきました。特に、雇用、年金、医療、社会福祉といった社会保障制度はどうあるべきか、あるいはまた、社会保障制度はどうすれば持続可能なものになるのかということを考えてまいりました。

 社会保障制度の中で、社会福祉は、児童福祉、高齢福祉、障害福祉等に大きく分類され、児童福祉、高齢福祉というのは、我々がいつか来た道であって、また、いつか行く道であります。そうであるがゆえに、誰からも見えやすく理解されやすいのが児童福祉、高齢福祉であろうかと考えます。

 一方、障害福祉は、更に身体障害、知的障害、精神障害等に分かれて、さらに、障害を有する部位であるとかあるいは障害等級が異なる、そうであるがゆえに、なかなか一つのまとまった声になりにくいというのが障害福祉の分野ではなかろうかというふうに思っています。そうであるがゆえに、政治や行政に携わる者は注視しなければならない分野が障害福祉であろうかというふうに考えております。

 県議会議員時代に、県議会の仲間と雇用問題調査会という会を設立して、現地調査を重ねてまいりました。従業員の約七割を知的障害者が占めている日本理化学工業であるとか、あるいは、ヤマト運輸の社長を務められた小倉昌男さんが立ち上げられたスワンベーカリー等も視察してまいりました。

 スワンベーカリーを視察した際に、小倉昌男さんの遺志を継いだ海津社長が言われた言葉が大変印象的でありました。障害者はできないことが顕在化、表面化しているだけであって、健常者はできないことを隠すことがうまいだけだという言葉でありました。障害者はできないことが顕在化、表面化しているだけで、健常者はできないことを隠すことがうまいだけだと。非常に印象に残る言葉でありました。

 以下、通告に従いまして、順次質問させていただきたいと思います。

 まず、昭和三十五年の身体障害者雇用促進法の制定以降、障害者雇用においては、障害者の範囲の拡大、法定雇用率の算定対象者の拡大、法定雇用率の引上げ等が行われてきたというふうに認識をしておりますが、障害者雇用政策の変遷と、法定雇用率の達成、未達成企業の推移と現状、そして、それに対する認識をまず確認したいと思います。

堀井政府参考人 お答えをいたします。

 今、上田委員御指摘のように、我が国の障害者雇用政策は、昭和三十五年の身体障害者雇用促進法が制定されて以来、累次の改正が行われて、施策の充実が図られてきたところでございます。

 具体的には、例えば障害者の雇用義務制度につきましては、昭和五十一年に、それまで民間企業においては努力義務だった身体障害者の雇用が義務化をされ、平成十年には知的障害者が、平成三十年には精神障害者がその雇用義務の対象に加わったところです。また、平成二十年には短時間労働者を雇用義務の対象とする改正が行われまして、平成二十二年に施行されるなど、就労を希望する障害者の雇用の実現を図るため、各企業における雇用環境の進展も背景に、法の対象範囲を拡大をしてきたところでございます。

 こうした施策の充実も背景にして、雇用障害者数でございますが、昭和五十二年の十二・八万人から、令和三年時点において五十九・八万人と大きく増加をし、全体の実雇用率につきましても、昭和五十二年の一・〇九%から、令和三年時点において二・二〇%となり、障害者の雇用は着実に進展をしているものと考えております。

 一方、法定雇用率を達成している企業の割合についての数字でございますが、これは昭和五十二年に五二・八%であったのに対して、直近の私どもの持っている数字は令和三年ですが、その令和三年の二十年前の平成十三年は四三・七%、十年前の平成二十三年には四五・三%、そして、直近である令和三年では四七%となっております。

 法定雇用率の達成企業割合は、法定雇用率が引き上がった際に下がる傾向が見られます。現在、法定雇用率が昭和五十二年時点の一・五%から順次引き上がって二・三%となっているということもありまして、先ほど御紹介をした実雇用率の伸びと比べて伸展が見られているとは言い難く、特に、労働者数が百人未満の企業を中心とした中小企業を始めとして、障害者の雇用の経験に乏しくノウハウが少ない企業における障害者の雇用の取組が課題であると認識をしております。

 また、今後は、単に雇用の場が確保されることのみならず、障害者御本人がその希望を踏まえて能力を発揮して活躍できているか等、雇用の質の向上を図ることが重要であると考えております。

 こうした課題認識も踏まえまして、今般の改正法案におきましては、中小企業に対する支援や障害者の雇用の質の向上に関する内容を盛り込んでいるところでございます。

 引き続き、更なる障害者の雇用の促進と安定に向けて取組を進めてまいりたいと存じます。

上田委員 先ほど話をさせていただきましたスワンベーカリーはたしかヤマト運輸の特例子会社であったというふうに理解をしておりますけれども、昭和六十二年に特例子会社制度が法定化されたわけでありますけれども、特例子会社の意義や、その創設の背景というのは何なのか。

 私も、先ほど話をしましたように、様々な特例子会社を視察してまいりました。特例子会社は障害のある方にとって和やかで働きやすい環境であるという一面を持っているというふうに思います。しかしながら、一方で、健常者と分断されているという見方もありますけれども、障害者雇用を推進していくことにとって、一つの形態であろうというふうに評価をするものであります。

 障害者雇用をより推進していくために、特例子会社の創設についてより何らかのインセンティブを与えて拡大すべきと考えますが、所見を伺いたいと思います。

堀井政府参考人 まず、委員からも御指摘がございました特例子会社制度創設の背景につきましては、大企業の障害者雇用の更なる充実が求められる中で、親会社が障害者の雇用に特別の配慮を行った子会社を設立し、そこで障害者を集中的に雇用する例がありまして、こうした特別の配慮がなされた事業所であれば障害者にとってもその能力を最大限に発揮する機会が増大する、そのようなことが考えられたことから、昭和六十二年の法改正で創設をされたものでございます。

 現状を御紹介させていただきますと、令和三年六月一日時点の特例子会社の認定数は五百六十二社でございまして、十年前と比較して約二百五十社弱増加をしております。雇用率算定上の障害者雇用者数は約一・六万人から約四・二万人に増加をしており、障害者雇用の促進に一定の効果があったものと考えております。

 特例子会社制度自体は、雇用率の制度上、子会社の労働者を親会社に雇用されているものとみなして実雇用率を算定できることに加えまして、事業主、障害者双方にメリットがある、具体的には、事業主にとっては、障害者の特性に配慮した仕事の確保、職場環境の整備が容易となり、障害者の能力を十分に引き出すことができることや、障害者にとっては、障害者に配慮された職場環境の中で能力を発揮する機会が確保されることなどがあると考えております。今後も、必要に応じてその設置を推進していくことが重要であるというふうに考えております。

 そのため、都道府県労働局等におきましては、事業主に対して雇用率達成指導を行う中で、特例子会社制度のメリットを伝えつつ、一つの選択肢として特例子会社制度について説明を行っているほか、創設を検討する事業主等に対して必要な助言、支援等を行うなど、設置に向けた支援を積極的に行っているところでございます。

 さらに、特例子会社制度によって蓄積された障害者雇用に関するノウハウ等について、その企業グループ全体への共有や、障害者雇用に取り組もうとするほかの企業等に対する提供なども期待をされることから、こうした特例子会社制度の積極的な取組の支援についても検討してまいりたいと存じます。

上田委員 厚生行政と労働行政とは、私は表裏一体のものだというふうに考えます。また、福祉と雇用も表裏一体であろうかというふうに認識をしております。

 そこで、雇用と福祉の推進を目的とした障害者就業・生活支援センターが全国各地に設置されておりますけれども、その実績と評価といったものを確認したいと思います。

堀井政府参考人 障害者就業・生活支援センターは、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下で、障害者の身近な地域におきまして、就業に関する相談支援や、日常生活、地域生活に関する助言等の就業面及び生活面の支援を一体的に行っております。

 このセンターが障害者雇用促進法に規定をされた平成十四年には箇所数は全国で三十六か所でございましたが、現在は三百三十八か所となっており、地域の関係機関の連絡調整などの援助を総合的に行う拠点として非常に重要な役割を担っております。

 また、障害者雇用が年々進展する中で、事業主に対する相談支援件数は、平成三十年の数字と比較をしますと、令和三年度には約四千件増加をして四十五万件となるなど、企業側からの支援ニーズも高まっているというふうに考えます。

 さらに、支援対象障害者に対する相談支援件数につきましても、新型コロナウイルス感染症の影響もございますが、平成三十年と比較しますと、令和三年度は約八万件減少しておりますが、百二十九万件となっており、就職率は七八%、就職後一年経過時点の職場定着率は八一%と、非常に高い数字で推移をしております。

 近年、特に精神障害者や発達障害者など就労困難性が高い障害者が増加をする中で、その雇入れや定着支援において求められる役割はますます大きくなっていると思います。このため、就業支援関係に関しては、就業支援担当者の処遇改善により人材確保や支援力の強化を図るとともに、生活支援関係に関しては、地域生活支援促進事業として生活支援担当者を配置をして、就業に伴う生活面の相談等に引き続き取り組むこととしております。

 今後とも、必要な体制の確保など、障害者就業・生活支援センターが地域における中核的な就労支援機関として業務を適切に運用できるように取り組んでまいります。

上田委員 日本理化学工業であるとかあるいはスワンベーカリー等の、働いておられる現場の方々とも話をさせていただきました。また、経営者の方々からも話を伺いました。経営者の方のお話を伺っていて、なるほどなと思ったのが、知的障害を持たれる方々というのは非常に粘り強く働かれるということでありました。例えて言うならば、お昼のベルが鳴ったのも気づかずになのか、ずっと働き続けている、こちらが、お昼だよ、休憩だよと言って初めて作業の手をやめると。一つ、粘り強さというのも、もちろん人によっては違うと思いますけれども、知的障害を持たれる方々の一つの特性なんだろうというふうに思います。

 そうした中において、障害者の方々の特性を生かした分野において、農福連携、農業と福祉の連携といったものが各地で取組が見られているというふうに認識をしておりますけれども、その実績と、やはりこれは農林水産省との連携も大切だろうというふうに思いますけれども、今後の取組について伺いたいと思います。

辺見政府参考人 農福連携につきましては、農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて社会参画を実現していこうという取組でございます。令和元年六月に、内閣官房長官を議長とした省庁横断の農福連携等推進会議において取りまとめられました農福連携等推進ビジョンに基づいて、各省庁連携しながら施策を進めているところでございます。これによりまして、農福連携に取り組む事業者等の数は、令和元年度末の四千百十七件から、令和三年度末には五千五百九件に増加をしたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、農業等の専門家を障害者就労施設に派遣する事業ですとか農福連携マルシェの開催などに取り組みます都道府県に対して、農福連携による就労促進プロジェクト事業を行って補助を行うほか、関係省庁の施策をまとめましたパンフレットの作成や、実務担当者の連絡会議において情報共有を行うことなどに取り組んでいるところでございます。

 今後とも、農林水産省を始めとした関係省庁と連携をして、農福連携の推進を図ってまいります。

上田委員 私どもの富山県は農業が大変盛んなところでありまして、富山県庁においても農福連携といったものに取り組んでおりますけれども、やはり、経営体としての、農業経営体ですね、そちらに対する周知といったものがまだまだ足りないのではないかというのが認識であります。やはり、福祉政策も大事であるけれども、障害を持たれる方々も働いて収入を得る、働く喜びというものを知っていただくために、農林水産省との連携も大切だろうというふうに認識をしておりますので、しっかりと厚生労働省と農林水産省と連携を取っていただければというふうに思います。

 さて、今回の法律案では、事業主による障害者の職場定着などの取組への支援の充実といったものが盛り込まれています。

 事業主が施設整備であるとか介助等の支援に取り組む場合、どうしてもやはりこれは一定の費用といったものが必要になってくるわけであります。また、障害者の雇用の質を高めるには、やはり本人の能力開発等にも力を入れていく必要があろうかというふうに思います。障害者雇用といったものをより促進し、雇用の質を高めるためには、事業主への支援も必要不可欠であって、やはり助成金による支援も重要であろうかというふうに考えるものであります。

 そこで、今回新設する助成金の狙いといったものは何なのか、既存の助成金の拡充を含め、今後どのようにして事業主を支援していくのか、所見を伺いたいと思います。

堀井政府参考人 助成金についてのお尋ねでございます。

 考え方としましては、今後、更なる障害者雇用の進展を図る上では、障害者の雇用の場を確保することに加えまして、障害者一人一人が能力を十分に発揮をして活躍できる機会の確保等、雇用の質の向上に重点を置いて推進をしていくことが不可欠であると考えております。

 そのため、今般の改正案におきましては、新たに助成金を創設をいたしまして、雇用の質を高めるという観点から、企業が実施をする障害者の職場定着等の取組に対する支援等に活用することで、事業主支援をより一層推進をしていくこととしております。

 具体的には、まず、雇入れや雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助の支援でございますとか、加齢に伴い職場への適応が困難となった障害者へ雇用の継続を行う、そういった支援、このような助成金を新設をするということを考えております。また、既存の助成金の充実も行っていくこととしております。

 この助成金の内容の検討に当たりましては、調整金や報奨金の調整等の対象企業を中心に、障害者雇用に関する個々の企業の取組状況や支援ニーズ等をヒアリング等を通じて把握をしているところでございます。その結果を踏まえて、効果的な支援策を検討しているところでございます。

 こうした助成金の新設、拡充による支援の強化を行うほか、引き続き、ハローワークにおきまして、企業ごとの属性やニーズを踏まえたチーム支援等を実施をし、企業の積極的な取組を支援をしてまいりたいと存じます。

上田委員 最後に、加藤厚生労働大臣に伺いたいと思います。

 これまでやり取りしてきましたとおり、特例子会社制度であるとかあるいは障害者就業・生活支援センターの創設など、やはり障害者雇用に対する世の中の認識といったものも広がってきたし、また、特例子会社であるとか障害者就業・生活支援センターの増加を見ても、やはり理解が深まってきているというふうに考えるものであります。また、冒頭確認させていただきましたとおり、昭和三十五年の身体障害者雇用促進法から順次改正がされてきて、障害者の方々がどんどんどんどん働けるような環境になってきたというふうに認識をしております。

 そこで、雇用される障害者といったものは着実に増加してきているというふうに認識をしておりますけれども、先ほど政府委員からの答弁もありましたとおり、いまだ、大変残念なことに、もちろん皆さん方努力をされているというふうに思いますけれども、半数の企業が法定雇用率を達成していないという現実もあるわけであります。また、数だけの問題ではなくて、やはり、単に雇用率の確保のみを目指して、障害のある方の特色ある能力といったものを生かしているのかという疑問のある雇用もあるというふうに伺っております。

 今回の法律案では様々な方策が盛り込まれておりますけれども、更なる今後の障害者雇用の機会の確保、ボリュームの増加に加えて、やはり、先ほども述べさせていただきましたけれども、障害のある方の雇用の質といったものの向上にも重点を置いて取り組むべきというふうに考えますが、加藤厚生労働大臣の障害者の雇用の促進に向けた取組に対しての思いといったものをお聞かせいただければと思います。

加藤国務大臣 上田委員との質疑の中で、障害者雇用がこうして進んできて、雇用者数で見ると十八年連続で過去最高を更新をし、約六十万になる。そして、今のやり取りの中でありました特例子会社の活用、また障害者就業・生活支援センター、箇所数も増え、また相談支援件数も、若干コロナの影響は最近あるものの、確実に増加をしてきているわけであります。

 一つ一つの取組が進んできているというふうに思いますが、今お話がありましたように、まだ法定雇用率を達成している企業が半分にいっていないということを含めて、まずは雇用機会の確保をしっかりしていくということが求められていると思いますが、それに加えて、今お話があった雇用の質という問題について、それぞれの障害がある方も、その持てる能力を発揮をして、やりがいを持って活躍をしていく、そして雇用の安定につながっていく、こうしたことが、これは障害者であろうがなかろうが、当然必要なことであります。

 そうしたために、今般の法改正においては、事業主の責務として、障害者の職業能力の開発及び向上を行うことの明確化、また、障害者の雇入れや雇用管理に関するノウハウ不足等の課題がある中小企業等に対する支援の強化を含め、事業主が取り組む職場環境の整備や能力開発のための措置等への助成の実施、こうしたことを盛り込ませていただいているところであります。

 今後とも、一方で、先ほど申し上げた法定雇用率の達成というものをしっかり進めるとともに、職場環境の整備、能力開発の機会の確保など、障害者の皆さんの雇用の質の向上に向けて、事業主の取組を積極的に応援をしていきたい、支援をしていきたいというふうに考えております。

上田委員 冒頭申し上げさせていただきましたけれども、社会福祉と言われている分野の中で、児童福祉、高齢福祉は誰もが来た道であって、誰もが行く道でありますから、皆さん理解しやすくて非常に見えやすい分野だというふうに思っております。

 ただ、その一方で、障害福祉というのは、先ほども申し述べさせていただきましたけれども、障害といっても身体障害、知的障害、精神障害等がある。さらに、それを更に掘り下げていくと、障害を有している部位であるとかあるいは障害等級がそれぞれ異なっているわけでありますから、児童福祉、高齢福祉のようにまとまった一つの声になりにくいというのが障害福祉の分野だろうというふうに思います。

 また、福祉の表裏一体を成すものは、やはり雇用であります。福祉と雇用政策をしっかり推進していくことが、やはり、この施策、この法改正に求められるものだというふうに認識をしております。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、重度障害者の介護について伺います。

 私は、大学時代、宇宙物理をやりたくて理論物理専攻になりました。そのきっかけが、スティーブン・ホーキング博士であります。筋萎縮性側索硬化症、ALSを学生時代に発症し、その後、五十年にわたり、ブラックホールやあるいは宇宙の始まり、ビッグバンなどで画期的な理論を打ち立て、車椅子の宇宙物理学者として活躍をしました。

 一方、日本では、このような重度障害の方が大学で勉強したり仕事をするのはまだ非常に難しい状態であります。重度訪問介護が使える範囲が限られていて、職場や大学、通勤や通学には使えません。厚労省もこの問題は認識をしていて、二〇一八年から、大学で使える重度訪問介護利用者の大学修学支援事業、そして二〇二〇年から、職場で使える重度障害者等就労支援特別事業を始めました。しかし、どちらも中途半端な事業で、市町村が実施主体のため、十分に活用されているとは言い難い状況であります。

 立憲民主党は、先日、障害者総合支援法の改正案を提出いたしました。重度訪問介護の対象に、職場や学校での介護、そして通勤通学における介護を加えるものであります。

 まず、大臣に直球で伺います。

 学校や会社など、行き先によってヘルパーの制度を変えるのではなく、生存や生活の保障は厚生労働省が一貫した制度で行うべきではないでしょうか。伺います。

加藤国務大臣 福祉政策という意味においては、私どもがそうした立場で関与していくべきだというふうに思いますが、私たちの暮らし、いろいろな場面がございます。

 今、御例示を挙げた中でいえば、就労という場面においては、単に福祉というだけではなくて就労面からの支援、これは雇用政策ということになる、これは厚労省の管轄になるわけであります。また、教育の場面においては、まさに文科省、役所でいえば文部科学省ということでありまして、それぞれが連携をして進めていくということが必要ではないか。

 また、そうしたそれぞれの視点に立った対応をしていくということが、重度障害者の皆さん方がそうしたそれぞれの場面場面で活躍をしていただく、また、それに対する支援を推進していくという意味においても必要ではないかというふうに考えております。

井坂委員 本日、障害者総合支援法の質疑でありますが、実態は障害者縦割り支援法になっていやしないかということであります。

 ちょっと、通告の二問目より三問目を先にしたいんですけれども、重度障害者等就労支援特別事業についてです。

 職場での重度障害者支援は、今、更に複雑な縦割りになっています。文書の作成補助や入力作業など業務の介助は、これは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、JEEDに事業主が助成金を申請をして、事業主がヘルパーの費用を払う仕組みであります。一方、たんの吸引とか姿勢の調整など、JEEDの助成金の対象外である身体介護は、これは重度障害者等就労支援事業という新しいものを使って、障害者が申請し、市町村がヘルパーの費用を払う仕組みであります。

 通勤の支援はもっと不可解で、一年のうち三か月は、JEEDに事業主が助成金を申請して、事業主がヘルパーの手配をする、残りの九か月は、重度障害者等就労支援特別事業を使って、障害者が申請し、市町村がヘルパーの費用を払う、こういうことになっています。同じヘルパーが同じ重度障害者の通勤を介助するのに、三か月と九か月に分けて、申請者も実施主体も財源も全く異なる制度を使う意味が分かりません。

 参考人に伺いますが、通勤については、まず第一歩として、全て重度障害者等就労支援特別事業で行えないのか、伺います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 重度障害者の就労の場における支援につきましては、個人の経済活動に要する経費を公費で負担すべきか、障害者雇用促進法に基づき障害者を雇用する事業主が合理的配慮として対応すべきかという課題がございます。

 こうした中で、重度障害者の就労に意欲的に取り組もうとする企業や自治体に対しまして、御指摘の通勤支援も含めまして、障害者雇用納付制度に基づく助成金と障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業が連携して事業を実施する形が支援として適当であるというふうに考えているところでございます。

井坂委員 ちょっとこの件で大臣に考えていただきたいんですけれども、この重度障害者の就労支援特別事業は、そもそもJEEDの助成金をもらっている会社に勤めている重度障害者しか申請ができない。しかし、助成金をわざわざ申請してくれる事業主というのはまだまだ少ないわけであります。しかも、この就労支援特別事業は市町村の任意事業なので、実施している市町村は全国で二十五しかない。めったにないことが二つ掛け合わさってようやく使える制度なので、実際にこの重度障害者就労支援特別事業を利用できている重度障害者は、全国で僅か八十二名であります。

 これをどう改善するのか。第一段階として、やはり、雇用と福祉の両方が支援する複雑な今の縦割り制度をやめて、就労中や通勤時の重度障害者のヘルパーは、福祉一本、自営業と同じように重度障害者等就労支援特別事業だけで支援すること。そして、第二段階として、やはり僅かな市町村しか実施しない任意事業ではなく、我々が法案提出したように、重度訪問介護としてヘルパーを手配するなど、国の事業として、全国どこに住んでも重度障害者が福祉から就労支援を得られるようにすること。

 利用者八十二名というこのひどい状況を改善するためには、やはりこういうことが必要だと思いますが、ちょっと大臣、御所見をお願いします。

加藤国務大臣 先ほど部長から申し上げたように、それぞれこうした支援をするときに、誰がどういうふうに財源を負担していくのか、そして、その前提としてどういう考え方に基づくのかということで今の形がつくられてきているというふうに考えております。重ねて同じことは申し上げませんけれども。

 したがって、今御指摘がある中で、まだ利用が少ない、これは我々も真摯に受け止めなければならないと思いますし、それから、今、両方使う場合には二つの申請をしなきゃいけない、こうした指摘もいただいているわけであります。元々実施主体が違うということはありますけれども、こうした制度を組んでいるのは我々全体で組んでいるわけですから、使う皆さんがどうやったらより使い勝手がいいものになるのか、これは関係者を含めて議論していくべき課題だというふうに認識をしております。

井坂委員 確かに、障害者雇用促進法で、事業主は、障害者が障害のない人と同等に仕事ができるように合理的配慮が求められます。また、障害者差別解消法で、大学も合理的配慮の提供が義務化をされたところであります。しかし、この合理的配慮によって、事業主とか大学は、重度障害者の普通の身体介護までお金を出して責任を持ってやらなければならないのかということです。

 参考人に伺いますが、例えば大学が提供すべき合理的配慮の中に身体介助が含まれているのかどうか、伺います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 大学における合理的配慮の考え方につきましては、障害者差別解消法に基づき文部科学省が策定をいたしました文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別解消の推進に関する対応指針において、「個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。」とされているものと承知をしております。

 大学における合理的配慮につきましては、こうした考え方に基づき、各大学において適切に判断されるものと承知しております。

井坂委員 文部科学省が二〇一二年に、障がいのある学生の修学支援に関する検討会というものを開いて、この第一次まとめで、大学等における合理的配慮をこのように定義しています。障害者の教育を受ける権利を確保するために大学等が必要かつ適当な変更、調整を行うことであり、障害のある学生が教育を受ける場合に個別に必要とされるもので、かつ、大学に対して体制面、財政面において均衡を失した、過度の負担を課さないものと定義をしているわけであります。

 教育とは直接に関与しない学生の活動や生活面の配慮については、大学において提供すべき合理的配慮の対象ではないものとしたということは、これは指摘をしておかなければなりません。

 そもそも、職場や大学、通勤や通学が重度訪問介護の対象から外れているのがやはりおかしいと私は考えています。

 これは何で外れているかというと、二〇〇六年の厚生労働省の告示第五百二十三号で、経済活動に係る外出と通年かつ長期にわたる外出は重度訪問介護の対象外と告示で定められているからであります。例えば大学、これは通年かつ長期にわたる外出に当たるとされて、今、重度訪問介護が使えません。

 大臣に伺いますが、この通年かつ長期の外出が対象から外されたのはなぜか、重度訪問介護の対象に含められないのかということについて伺います。

加藤国務大臣 御指摘の通年かつ長期の外出、これは主に通学を想定しているわけでありますが、従来から重度訪問介護における外出支援の対象とはなっていないところであります。

 障害のある方に対する通学中及び学内の介助については、障害者差別解消法に基づく教育機関等による合理的配慮との関係から、福祉政策と教育政策との連携で支援をしていくということになっております。

 重度障害者の就学については、教育機関等の役割を踏まえ、引き続き、教育を所管する文科省と必要な連携協力をしつつ対応していかなきゃならないというふうに考えております。

井坂委員 ちょっと、あっさり答弁されたので、参考人でも結構ですが、お伺いをしたいんですが、この通年かつ長期の外出が対象から外された理由は何ですか。何で外されたんですか。

辺見政府参考人 本事業については、通年かつ長期の外出について、施行当初より、従来からの重度訪問介護の支援に鑑みまして、経済活動及び通学を想定する通年かつ長期の外出については支援対象としていないというところでございます。

 通学及び学内における介助につきましては、教育機関における合理的配慮との関係から、福祉と教育による連携により支援を行っているところでございます。

井坂委員 ちょっと分からないんですが。

 それは、通年かつ長期の外出の中に、もちろん通学とか学内のことがある、そこについては今いろいろ厚労省が考えてやってくださっているというのは分かります。ただ、大前提の、この告示五百二十三号で、通年かつ長期の外出というのが何で重度訪問介護から外されたのかということをお答えください。

辺見政府参考人 規定の経緯から申し上げますと、通年かつ長期にわたる外出という規定自体が通学を想定して規定したものでございます。

井坂委員 だから、何でそれをそもそも重度訪問介護から外すんですかということをお聞きをしています。外した後の手だてについては御説明いただきましたけれども、そもそも何で最初から外すんですかということをお聞きをしています。

辺見政府参考人 繰り返しになりますけれども、経緯として、通年かつ長期の外出については、通学及び通学した後の学校等における介助等を想定したものでございます。これは、当時より、学校、例えば特別支援学校等に通学する障害者について、学校等において行うべき役割等を想定して規定しているというふうに考えております。

井坂委員 ちょっと整理をお願いします。

三ッ林委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

三ッ林委員長 速記を起こしてください。

 加藤大臣。

加藤国務大臣 これは先ほどからの議論と重なるわけでありますけれども、障害のある方に対する通学中の介助については、障害者差別解消法に基づく教育機関等による合理的配慮、この関係であって、こうした整理をさせていただいているということであります。

井坂委員 経緯、今お聞きして、何となくそういう経緯でなったのかという気が、私の受け止めですけれども。

 昔は、特別支援学校とかそういったところへの通学しかそもそも想定をされていなくて、それだけを対象に通年かつ長期の外出という名前で除外をしたという理解でいいんですかね。この通年かつ長期の外出というのは、通学、在学以外のことは一切含まれない、全くイコールのことだということでいいですか。

辺見政府参考人 制度の運用上、現在、具体的に主なものとして想定しているのは通学でございまして、そのほかの事例として想定しているというものは、我々の運用において、今のところございません。

 一方、先ほどの特別支援学校等の支援のほか、差別解消法に基づく対処方針においては、大学等においても一定の合理的配慮を行うということについて、文科省の対応方針等でも、今、現状でも示しておりますので、そうしたことを踏まえて役割分担を行っているということでございます。

井坂委員 そうすると、今除外をされている通年かつ長期の外出をする重度障害者というのは、外出先や移動中にはどのような制度で支援が受けられるということになっているんでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 一つは、特別支援学校等通学等においての支援等もあるというふうに私ども認識しておりますし、また、文科省の差別解消に関する対応指針の中では、合理的配慮につきまして、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者や日常生活、学習活動などの支援を行う支援員等の人的支援、情報アクセシビリティーの向上などの環境の整備などを基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置というふうに書かれているところでございます。

井坂委員 この告示が出た頃とか最初の頃は、主に特別支援学校をイメージをしながら、この通年かつ長期の外出というものを規定をされたんだというふうに思います。

 そういう、いわゆる小中高までの部分というのは、一遍子供が通学をして学校に入ったら、もうずっとそこに拘束をされて、勉強だけをして、時間になったら学校から出ていくということで、ぎりぎりそういう運用が可能だったというふうに思います。

 ただ、やはり、今議論になっている大学に関しては、これは特別支援学校とかとは全然制度もコンセプトも違って、いつ来ていつ帰るかも分からない、また、学内にいたって、別に、ずっと小中高校みたいに拘束をされているわけでもなく、学内でもまた自由な活動をしている、出たり入ったりしているということで、この通年かつ長期の外出という同じくくりで、私はこのくくり自体を認めない立場ではありますけれども、仮にそうだとしても、大学までこの同じくくりで重度訪問介護から除外をしてしまうというのは、これはもう全く実態に合わないというふうに思いますが、参考人か大臣か、御所見を伺いたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 障害のある方に対する通学及び学内の介助につきましては、先ほど申し上げましたとおり、障害者差別解消法に基づく教育機関等による合理的配慮との関係等があり、教育を所管する文部科学省と必要な連携協力をしつつ支援を推進することが適当と考えております。

 厚生労働省におきましては、こうした考えの下、大学等が必要な支援体制を構築できるまでの間を対象として、重度訪問介護利用者の大学修学支援事業を実施をしているところでございます。

井坂委員 大臣に伺いたいと思いますが、その大学修学支援事業、これも実施主体が市区町村となることから、やはり、一部の自治体に住んでいる障害者しか使えません。しかも、まさに必要な体制を大学が構築できるまでと、今答弁のあったような条件なので、税金からの支援は一時的で、やはり最後は大学が自腹で重度障害者の支援をしなければならないという仕組みになっています。

 一方、文部科学省の重度障害学生に対する支援のあり方に関する調査研究報告書では、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、デンマーク、オーストラリア、調査した国みんな、大学内でパーソナルケアアテンダントという個人にひもづいた介護者に付き添ってもらえる、こういう調査結果であります。唯一その制度がない韓国でも、障害学生の人数に応じた予算が大学に配分される仕組みということで、諸外国は、大学に来なくても必要な生活介護は、これは完全に福祉の仕組みで、税金で、そして、学問のしやすさへの配慮だけが大学の責任でと明確な分け方をしております。調査の中では、日本だけが、障害のある学生の生活介護まで大学の責任という考えなわけであります。

 大臣に通告どおり伺いますが、この大学修学支援事業で、大学が自力で重度障害者を支援できることを目指すのではなく、これはやはり最後まで厚生労働省が福祉的に支援し続けるべきではないでしょうか。

加藤国務大臣 この制度については、先ほど部長から説明をさせていただいたとおりでございます。

 実際、支援ができるまでというふうには書いてありますけれども、現在、二十三大学で二十三人の学生が利用しておられる。本事業を活用して卒業まで至った学生もおられるということで、大学修学期間内を通じて、支援ニーズに応じた継続的な支援をこの中で、一部の学生さんというか、限られた人数ではありますけれども、実施をさせていただいているところでありますし、また、この補助要件として、障害のある学生の支援について検討を行う委員会や相談窓口を設置すること、重度の障害者に対する支援体制の構築に向けた計画を立てて支援を進めること、これが補助要件になっているわけでありますから、大学等において重度障害者を含め様々な障害のある学生が共に学ぶための取組、これをしっかりと進めさせていただくということが大事じゃないかというふうに考えております。

井坂委員 この制度は、結局最後は大学が必ずやらなければいけないということで、そこに最大の問題があるというふうに思います。

 前半に議論した重度障害者等就労支援特別事業では、営利活動でさえ税金でヘルパー支援されているのに、肝腎の学問は、税金ではなく、大学が自腹でヘルパー支援しなければならないというのは、ちょっと大臣、これはお伺いしますが、さすがにおかしいのではないでしょうか。営利ですら、厚労省は今、不十分ながらやってくださっている。ところが、学問は、一時的にはやるけれども、最後は大学でと。これはおかしいんじゃないですか。

加藤国務大臣 就労の方は、それぞれの事業者が出された、そうしたものを原資として活用させていただいているということでありますので、あくまでも事業者の皆さん方がそれに対して対応していただいている。また、したがって、就労の場において事業者、雇主の皆さんが対応していただいている。そして、大学においては、まさに教育をされる機関において、そうした対応をまさに合理的な配慮との関係でお願いをさせていただいている。こういう整理をした上で今の制度を運用しているところであります。

井坂委員 もう時間なんですけれども、就労支援特別事業と同じように、やはり大学内や通学中においても、合理的配慮の外にある身体介護は福祉の仕組みで支援すべきだというふうに考えます。原点に返って、やはり経済活動に係る外出と通年かつ長期にわたる外出は重度訪問介護の対象外とした告示第五百二十三号を見直す必要がある、そして、職場でも学校でも、通勤でも通学でも重度訪問介護を使えるようにするのがシンプルで本質的かつ世界標準の解決策だということを申し上げて、今日は終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

三ッ林委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 立憲民主党の中島克仁です。

 障害者総合支援法等改正案、私からも質問させていただきたいと思うんですが、一昨日、通告はしていたんですけれども、昨日、コロナの感染状況について、加藤大臣の御認識をちょっと確認させていただきたいというふうに思います。

 昨日、二か月ぶりですか、コロナ陽性者十万人超え。北海道では一万人を超え、先週から過去最高を更新しているわけでありますけれども、東京でも約二か月ぶりに一万人を超えた。重症者の数も、前日から二十二人増えて、二百五十七人。

 加藤大臣、先週の水曜日、九日ですけれども、第八波につながる可能性もあるというふうにおっしゃっておられました。様々な有識者の方が、今の状況はもう第八波、そして、岩手県知事、三重県知事も、既に第八波に到達しているという発言もされておるということで、改めてでありますが、私は、決して八波だからどうたらということではなくて、正直言うと、ちょっと早いな、そういう認識を持っています。

 国民の皆様に、今後、ウィズコロナも含めて対策、例えばマスクの適切な使い方、感染対策、これを重点的に理解を求めていく上で、私はもう第八波と呼んでいいのではないかというふうに思いますが、大臣の御認識を確認をさせていただきたいと思います。

加藤国務大臣 先週申し上げたように、明らかに、第七波が完全に下がり切らずにまた上昇に転じてきている。ただ、これまでの上がり方のスピード感から見ると、これまで見ると、割と速いスピードでぐうっと上がっていたのが、それほどのスピードではなかったり、少し蛇行しているという感じはあるものの、トレンドから見たら上昇傾向に入ってきたということはまず言えるんじゃないかと。

 したがって、こうした傾向が進めば、大体、第八波、第七波と余り定義はしていませんけれども、いわゆる第八波の流れに入っていく可能性があるというふうに見させていただいているところでございます。

 それと、今委員がまさしくおっしゃったように、早いなというのは私も思っておりまして、過去二年は、ちょうどこの時期というのはそんなに感染が出なかった時期で、むしろもっと寒くなってから出たという認識からすると、経験からすると、少し前倒しで来ているなということ、そのことはしっかりと発信をしていかなきゃいけないので、先週もそういう言い方をさせていただきましたし、さらに、また今週もADB等で議論していただきながら、やはりそれに向けての心構えといいますか、そうした備え、これをしっかりしていく必要があるんだろうというふうに考えています。

中島委員 もう一点だけ。

 昨日の報道によると、八王子、公立学校、学年閉鎖、学級閉鎖、これは季節性のインフルエンザでということも相次いでいるということも報告されます。これも私、ちょっと認識を改めなきゃいけないなと。いわゆるダブルインフェクション、二つの感染症が同時流行ということは余りないとは思うんですが、現実にそういうことが報告されておるということで、前回も前々回もお話ししましたが、いわゆる季節性インフル、コロナ同時流行タスクフォースのいわゆる概要、指針。

 これは、別に、いろいろ考え方はあると思うんですが、先日、我が党も部門会で、この件の要件、いわゆる、いつから発動するのか、しないのか。私、聞いていると、今後感染が拡大した後、強く言うか、弱く言うかみたいなことでは、今も北海道、また、うちの山梨県も昨日千人を超えて、同時にインフルも流行するということになると、タスクフォースの概要、いわゆる四類型、小児、高齢者、基礎疾患、妊婦さんですね、持つ方以外の方はいわゆる受診を抑制して、重症化リスクの高い方に重点化していくということが事実上始まっていると考えていいのかどうか、ちょっと大臣にお尋ねをしたいと思います。

加藤国務大臣 まず、季節性インフルエンザの関係でありますけれども、これも、地域によって、若干立ち上がってきている。全般的に立ち上がり傾向にあることはそうなんですが、立ち上がり方が結構急になってきている地域が幾つかあるという認識はしておりますので、引き続き動向を注視しなければなりませんので、従前申し上げた同時流行の可能性、このことも頭に置いておかなきゃいけないなというふうに思っております。

 どのタイミングでどう言うかという今の御指摘であります。これはまさに、これからちょっとアドバイザリー、専門家の御意見も聞きながら、また、必要に応じタスクフォースもさせていただいて。これは、正直言って、急に、デジタルではなくてアナログ的に動いていくわけですから、また地域によってもそれぞれ動向が違いますので、そこはよくそれぞれの地域の状況を発信をしながら、その地域の皆さん方にこれからどうなっていくのかということをできるだけお知らせをしていく、そして、その中でそれぞれで対応を取っていただく、こういったことが大事じゃないかなというふうに考えております。

中島委員 先ほど冒頭にも言ったように、予想よりちょっと早いというか、いずれ第八波は来るんだろうというふうに考えていたものの、大臣おっしゃるとおりで、もっと寒くなった、恐らくもう北海道から感染が広がっている、そして、これまで余り感染が広がらなかった集団免疫的な部分で局地的に感染が増えている。恐らく、そういう意味からすると、いわゆるタスクフォースの概要も、検査キット、これは前から小川委員も指摘しておりますけれども、十分に個人として購入できていない状況の中、感染が早まっているということで。

 大臣、先週の時点では、二週間後には第七波のピークに迫るかもしれない。そして、一週間がたって、来週にはどういう状況になるか大変心配されます。これは与野党を問わず、我々も、コロナの対応、十分に連携を取っていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、障害者関連の法案についての質問をさせていただきたいと思います。

 今日、午前中は参考人質疑がありまして、それぞれの立場で様々、大変貴重な御意見をいただきました。

 改めてでありますけれども、今回、障害者総合支援法、雇用促進法、精神保健福祉法、難病法、児童福祉法などなど、やはり多岐にわたる、これは論点も、今日も参考人の方々の御意見を聞いていて、本当に分野が異なるなと。特に、精神保健福祉法関連については、全国精神病団体、桐原参考人、一方で、国立精神・神経医療研究センター、藤井参考人の御意見、私も、精神科ではないですけれども、改めて我が国の精神疾患、精神病、また医療、この本質的な部分を一回ちゃんと見直さなければいけないなというふうに改めて思いました。

 藤井参考人は現場にもおられて、薬物療法ではなく、それ以外の治療、様々な専門家が関わってやっていくことが望ましいけれども、実際には毎日目の前の課題に向き合いながら、結果的に薬物療法が中心になってしまうというジレンマだというふうにおっしゃっていました。

 だからこそ、国連の障害者権利委員会の総括、この勧告をやはり改めて、我が国として、そして厚生労働行政としてしっかりと受け止める、医療保護入院も含めた強制入院の在り方、やはり廃止に向けて、改めてしっかり取り組まなければいけないと私は思います。

 そういう意味では、今回の束ね法案の中で、精神福祉法関連、これはやはり同時に進めるべきではないということを改めて私からもお伝えさせていただきたいと思います。

 その上で、多岐にわたる内容でありますから、うちの会派も役割を分担いたしました。私からは障害者雇用、雇用の質の向上についての質問をさせていただきたいと思います。

 今回新たに創設されるとする就労選択支援についてでございますが、これまで就労系障害福祉サービスには、就労移行支援、就労継続A、B、就労定着支援がありました。改めて、今回新たに就労選択支援を創設する趣旨、理由についてを確認させていただき、ちょっと時間が過ぎちゃったので、二問目も一緒にいいですか。趣旨を確認させていただきたいのと、質の高いアセスメントを行う人材の育成確保支援体制の整備、地域との連携、この趣旨と、新たに創設されるこのサービスと人材の育成確保支援体制の整備、また地域との連携をどのように取られるか、政府参考人に確認をさせていただきたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、障害者の就労につきましては、福祉サービスとしての就労支援、また企業における一般就労など多様でございます。障害者の希望や能力に沿った就労を実現するためには、本人の就労ニーズの把握、能力、適性の評価、就労開始後の配慮事項などについて整理を行った上で必要な支援につなげていくことが重要と考えております。

 このため、新たな障害福祉サービスとして就労選択支援を創設をいたしまして、就労を開始する前段階から、就労アセスメントの手法を活用した支援を行うこととしたものでございます。この就労選択支援を通じまして、障害者が就労先などをより適切に選択できるだけではなく、就労先の事業所においてもアセスメントの結果が活用されて、より一層、本人の目標や意向に沿って、知識や能力の向上のために必要な支援を受けられるように取り組んでまいりたいと考えております。

 なお、この就労選択支援を行う事業所の人材育成、非常に重要でございまして、全国共通の研修体系の構築を図ってまいりたいと考えております。今後、施行に向けて、支援手法を習得するためのカリキュラムですとか教材を開発した上で研修を実施して、専門人材の養成を図ってまいります。

 また、就労選択支援を行う事業所と地域の関係機関が連携した支援体制も重要でございます。その整備につきましては、ケースに応じて、障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所、ハローワーク、特別支援学校などの地域の関係機関を交え、支援について意見交換や検討を行うケース会議を実施することや、事業所の指定に関する指定基準として地域の協議会への参画を求めることなどが必要と考えておりまして、施行に向けて更に検討を進めてまいりたいと考えております。

中島委員 アセスメントの運用を高めるということは、非常にいいことだというふうに思います。恐らく、この就労のアセスメントに関しては移行支援事業所の担当の方、また、一般就労であればハローワークの方が担ってきたんだと思いますが、これを事前にアセスメントを強化するということは私も評価したいというふうに思います。

 ただ、これは、現場の方、先ほど参考人からも話がありましたが、地域とどうやって連携を取っていくかということは、これは大変肝の部分。これは私も、山梨県、障害福祉施設の担当の方にもちょっと話を聞きましたが、やはり、このアセスメントの運用は重要と感じるものの、企業の多い、いわゆる選択肢の多い都市部では一定の機能を果たす、しかしながら、私の地元もそうですが、なかなか企業が少ない、またコロナで大変な状況の中、そもそもの移行支援事業自体が成り立たない、閉鎖している、そしてニーズも、本来はあるんでしょうが掘り起こせない、こういう事情があると。

 アセスメント、障害者本人、ハローワーク、企業はもちろんですが、今もお答えいただきましたから繰り返しになりますけれども、地域の商工会であったりとか、いわゆる地域地域の実情に合わせた地域ごとのアセスメントの在り方が大変重要だということは御指摘をさせていただきますが、今、そのような趣旨で今後具体的に取り組んで地域実情を反映させるようなアセスメントが、いわゆる形骸的になっているんです。

 私として思うのは、恐らくこれは、都会とかでは、この役割分担が明確になることで、非常に、事前にアセスメントが対応できるんだ、強化できるんだと思いますが、恐らく地域では、人材不足も含めて、余り機能しないものになってしまってはいかぬな、企業が少ない地域だからこそのアセスメントが独自にできるような支援を是非お願いをしたいというふうに思います。

 続いて、障害者の自立、就労、雇用に関連をいたしまして、障害者優先調達推進法の現状について御質問したいと思います。

 これは資料の一枚目と二枚目でございますが、一枚目、障害者優先調達推進法の概要、そして二枚目が法律のポイントということでお示しをさせていただいております。

 この法律は、障害のある人が自立した生活を送るため、就労によって経済的な基盤を確立することが重要であるとの趣旨の下、障害者の就労する施設の仕事を確保して経営基盤を強化することを目的に、国や地方公共団体が率先して障害者就労施設から物品等を調達する、このように定めたものです。

 私、実は、これは毎年のように数字を追いかけさせていただいておりまして、コロナもありましたから昨年は厚労委員会では質問いたしませんでしたが、改めてですが、障害者優先調達法の趣旨、重要性について、大臣の認識を確認をさせていただきたいと思います。

加藤国務大臣 障害者優先調達推進法、これは議員立法で成立したと記憶をしておりますし、当時、私もいろいろ議論にも参加させていただいたところであります。

 この法律では、障害福祉サービス事業所などの障害者就労施設等が供給する物品や役務の需要の増進を図るため、国や地方公共団体等によるこれらの物品等の調達を推進することを目指しているところでございますので、厚労省としても、こうした優先調達の取組を推進をして、障害者就労施設等の受注の機会を確保することによって、そこで働く障害者の皆さんの就業の機会を併せて確保していく、また、さらに、障害者の自立を促進をしていく、そういった上でも大変重要な枠組みだというふうに考えております。

中島委員 大臣も関わられたと聞いていたので、あえて、その趣旨というか、重要性を確認させていただきました。

 資料の三枚目になります。

 これは令和四年度の厚生労働省の、この優先調達法に沿って、物品等の調達の推進を図るための方針ということで、一の五行目ですね、いわゆる調達の方針、目標というのが、前年度の実績額を上回ることというふうな目標となっています。私、確認したところ、中央省庁の調達目標は全てこの厚生労働省に沿った内容になっておるということ。

 そして、資料の四枚目ですね。

 これは国による、中央省庁の障害者就労施設からの調達実績というもので、令和三年度はまだ出ていないということですので、直近で令和二年度が一番右端になるわけでありますけれども、いわゆる、先ほど申し上げた調達目標、前年度を上回れなかったもの、これは一番右の令和二年度、青で記させていただいています。当然、厚生労働省は、調達目標、前年度より上回って、四億六千万、調達額ということになっているわけでありますが、青い部分の省庁がいわゆる目標を達成できなかった。

 一方では、オレンジ色のところですね。オレンジ色は、これは最大時より発注額が低い。前年度から増えてはいるけれども、例えば法務省さんは、二十五年度と今年度を比べると実績は減っている、にもかかわらず、前年度よりは目標を達成しているということで、一応目標は達成しているということになっている。

 私、何が言いたいかというと、前年度を上回るという目標というのは、例えば、一度実績が下がって目標を達成できなかった、一旦下がって、そしてまたじわじわ上げていけば、毎年のように一応目標は達成できる。私、そういうことではなくて、やはり数値目標、例えば何%、物品、役務調達の割合で目標値を設定するべきだというふうに思うわけであります。

 ちょっと参考人に確認をさせていただきますが、厚生労働省、直近だと令和二年度ということになると思うんですが、厚生労働省の物品、役務経費のうち、障害者就労施設からの調達、全体の何%ぐらいになりますでしょうか。

間政府参考人 お答えいたします。

 今委員御質問の厚労省の物品、役務経費全体に占める障害者就労支援施設からの調達の割合ですけれども、分子は、委員御提出の資料にございますように、令和二年度において約四・七億円ということでございます。これは少額随意契約の案件を含めてということでございます。一方で、分母になりますものが、少額随意契約も含めた全体のものが統計的には把握していないものですから、正確にお答えすることは難しゅうございます。

 ただ、その上で、少額随意契約を含まない金額を分母に仮に計算いたしますと、令和二年度、厚労省全体の物品、役務経費は、コロナウイルス関係でちょっと経費が増加するという特殊要因がございましたけれども、八千九百四十五億円でございましたので、四・七億円をこれで割りますと、割合は約〇・〇五%ということでございます。

中島委員 私、平成二十九年のときにも確認をさせていただいたんですが、このときの厚生労働省での調達割合、全体の〇・八六%。そして、今お答えいただいた、正確にはというのは、私も、一昨日ですから、急に計算するのも大変だったと思うので言うと、〇・〇五%。

 改めて、大臣、いろいろあるのは分かるんですけれども、先進的に目標値を設定している県もあるんです。例えば宮城県は、前年度を一〇%上回る目標を立てております。そして、静岡県も、各部署、各所で必ず物品を障害福祉施設からやろうと。各自治体でそういう数値目標をしっかり持って、そして、そのことが、先ほど前段で話をした、地域で雇用を増やしたり、こういうことにつながるという意味から、私、決して厚生労働省を責めるわけではありませんが、厚生労働省でさえ今の割合ですよ。

 これは、他の省庁からすると、先ほど冒頭で、加藤大臣もこの議員立法に関わられたということでありますけれども、この法の趣旨に本当に沿っているのかどうか。やはり、前年度を上回るという目標は法の趣旨からそぐわない、それよりも、物品、役務、トータルのうちの何%にするという数値目標を設定することがこの法の趣旨に沿うことになるのではないかと私は考えますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 法律上は、「当該年度における障害者就労施設等からの物品等の調達の目標」、こう書かれているわけでありまして、その目標をどういうふうに設定をするのか。

 今委員からお話があったように、着実にその実績を拡充するということは大変大事なことだと思いますが、多分、先ほど見た、各省庁ごとに見た表も、やはり予算というのは、同じような中身がずっとつながっているだけではなくて、当該年度だけで増えるもの、あるいは減るものというのがありますので、その内容によって、こうした物品の対象になり得るものと、あるいはなりやすいものと、そうでないものもこれは混在するので、一概に、何か目標を設定する、しかも各省ごとに設定するというのはなかなか難しいんじゃないかなということで、これまで、対前年度は少なくとも伸ばしていきましょうということでやらせてきていただいたということでありますが。

 大事なことは、着実にその実績を拡充していくということでありますので、そうした面について、また各省庁においても、この法の趣旨を踏まえて着実に調達実績を増やしていただけるよう、厚労省としても働きかけていきたいと考えています。

中島委員 私から先ほどお示しした資料の四枚目、これは着実になっていないんですよ、着実に。例えば、先ほど言った以外の、金融庁も二十六年度が最高ですね。それで、令和二年度は下がっているわけです。着実じゃないんですよ。

 だから、前年度を上回るという目標になると、一度下げて、それから少しずつ上げていれば何となく、その割合は厚生労働省でさえ〇・〇五%。そして、先ほども申し上げました、もう一度言いますが、宮城県では、前年度の調達実績を一〇%上回るという数値目標を立てている。また、静岡県では、一所属一発注、これはスローガンを掲げた結果、昨年度は過去最高を、やる気になればできるんですよ、やる気になって。残念ですが、前年度を上回るという数字では、これは四年ほど前ですか、法定雇用率、中央省庁の水増し問題、これは大ショック、ショッキングな事実でした。そのときに反省を踏まえた上であれば、これはしっかりと数値目標を示すべきだと思います。

 改めて、大臣、数値目標、検討するぐらい言っていただけませんか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたように、予算の中身というのは毎年度毎年度変わっていくわけでありますので、必ずしも、同じ中身が続いているのであれば、同じように、しかもそれが増えているのであれば、おっしゃるような考え方が取り得るんだろうと思いますけれども、個々の事情ということもよく踏まえていかなきゃならない。

 しかし、着実にその実績を拡充していかなきゃいけないというのは、これは私もそのとおりだと思っておりますので、そのためにはどういう形で取り組めばいいのか、そういったことはしっかりと検討させていただきたいというふうに思います。

中島委員 残余の質問は、またの機会に質問させていただきます。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 本日は、まず、立憲民主党が提案をしたこの法改正案について、井坂信彦議員に御質問したいと思います。

 先ほど、井坂議員と政府側とのいろいろやり取りがありました。その中にもいろいろ出てきたわけですけれども、重度障害者の方が職場に行って働いたりあるいは学ぶために学校に行ったり、そういった、通勤したり通学したりするということに対して、残念ながら、重度訪問介護サービスというのが、その間の、職場での就労中、通勤通学の間の介護サービスというのが受けられないという現状にあります。

 これを、先ほども意見が出たんですけれども、どう評価されているのか、これでいいんだろうか、そしてまた、これに対して立憲民主党が提出した法案の意義、これによってこういうふうに変わるんだということについてお答えいただきたいと思います。

井坂議員 野間議員、ありがとうございます。議員立法の提出者として答弁をさせていただきます。

 重度の肢体不自由者等に対する重度訪問介護サービスについては、厚生労働省の告示によって、通勤、営業活動等の経済活動に係る外出時及び通年かつ長期にわたる外出時における移動中の介護が支援の対象外とされており、職場や学校、通勤通学中に利用できないことがかねてより問題となっております。このことが、重度訪問介護が必要な障害者の方々の就労や就学への大きな障壁となっています。

 こうした社会的障壁を解消し、障害者の方々の社会参加等を促進するため、職場又は学校での介護及び通勤又は通学における移動中の介護を重度訪問介護の対象にすべく、我々は、職場又は学校での介護及び通勤又は通学における移動中の介護を重度訪問介護の定義に加える本法案を提出いたしました。

野間委員 ありがとうございます。

 やはり、重度の障害者であっても、働く権利といいますか、勤労していくということは、これはもう国民の権利でありますので、是非そこがきちっと保障されることを望みたいと思います。

 そして、もう一問。障害者雇用においては、障害者がそれぞれの特性に合わせて能力や適性を十分に発揮し活躍できるような、必要な支援を実施することが重要だと思います。

 重度障害者の就労支援について、厚生労働省は、令和二年度から、障害者雇用納付金制度からの助成金と、そして市町村の任意事業である地域生活支援事業の組合せで支援を行っています。

 厚生労働省の資料によれば、市町村の任意事業である、雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業の令和四年十月一日時点の実施自治体は、日本全体で二十六市町村、利用者数は全国で僅か九十二名ということが公表されています。これに対して、重度訪問介護を利用している重度障害者の方は約一万二千名おられる。

 こういった現状について、提出者としてどう認識、評価されているのか、また、立憲民主党案ではこの点についてどのような対応になるか、重ねてということになりますけれども、質問いたします。

井坂議員 委員御指摘のとおり、重度障害者等の就労支援の対象者が非常に限られているのが現状です。これは、重度訪問介護利用者一万二千人のうち、就労を希望している方が少ないということではなく、特別事業の実施自治体が二十六市町村に限られているために、支援を受けられる方が少数にとどまっているということであります。重度障害者の方々の社会参加を促進するという観点からは、現行制度による就労支援は全く十分ではありません。

 勤労は、全ての国民に保障されている権利です。我々は、常時介護を必要とする重度の障害者であっても働くことのできる社会を実現したいと考えております。そこで、この度、職場又は学校での介護及び通勤又は通学における移動中の介護を重度訪問介護の対象にする本法案を提出しました。

 本法案では、さらに、障害者等が職場において業務を行うに当たり、障害の特性に配慮した必要な支援を受けられるよう、障害者等を雇用する事業主に対する支援の拡充について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることを政府に義務づけております。

野間委員 ありがとうございました。

 現在は、重度の障害者が職場に行ったり通学する際の費用は障害者本人が負担をしたり職場が負担しているということですので、これは是非、今おっしゃったような形で改善されていけばと思います。どうもありがとうございました。

 じゃ、提出者の方は御退席ください。

 それでは、政府の方に、厚労省の方に御質問したいと思います。

 今回、改めて、障害者をめぐる様々な問題、対策についての法改正でありますけれども、障害者の数、現在では、これはもう公表の資料でありますけれども、障害者が日本全国で一千百六十万人、人口の約九・二%いるということで、身体障害者の方が四百三十六万人、知的障害者の方が百九万人、精神障害者の方が六百十四万人、合計一千百六十万人ということになっております。

 これを、二〇〇一年とか二〇〇二年ぐらいの資料を見ますと、合計で五百八十七万人なんですね。ですから、この約二十年で二倍になっているわけであります。

 その中でも、身体障害者の方は一・一倍ぐらいなんですが、知的障害者の方が二十年前は三十九万人で、三・四倍になっています。精神障害者の方も二・七倍になっているということで、非常に増えているわけです。私も、地元の小学校やそういったところの児童生徒、特別支援学級が物すごく増えているわけですね。発達障害の児童も非常に増えております。

 そういったことで、このように激増していることの原因、社会的な要因、どのように分析されているか、大臣にお聞きしたいと思います。

加藤国務大臣 我が国において障害者数が増加している原因というか背景ということで御質問がございました。

 これはまさに様々な要因があって、なかなか特定することは難しいと思いますが、例えば、高齢化に伴って障害者手帳の交付対象数が増加をしているということで、まさに高齢化が一つの背景にあるのかなと。

 それから、保健医療や障害福祉のサービスなど、制度がこの間、改善されてきた、また、それが浸透することによって支援ニーズが顕在化をし、また、障害に対する認識が深まってきた、こうしたこともその背景にあるのではないかなというように考えております。

野間委員 そういうもろもろの要因、原因はあるとは思うんですけれども、何かやはりもう少し本当に社会全体で総合的に対策を立てていかないと、常にパッチワーク的にというか、つけ焼き刃的な対策では対応できないんじゃないかということは思いますので、指摘をさせていただきたいと思います。

 そして、今回の法案について伺いたいと思います。

 今、地域の障害者の相談支援の中核的な役割を担っている基幹相談支援センターについてなんですけれども、これは、私どものような鹿児島県、人口減少、過疎化、高齢化の地域では、なかなか設置できないところが多いんですよね。

 今、この基幹相談支援センターというのは、全国の市町村、どんな割合、規模で現実にあるのか、教えていただけますか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 基幹相談支援センターにつきましては、おおむね半数の市町村において設置をされているところでございますけれども、人口に着目をして分類をいたしますと、人口規模が少ない市町村ほど設置割合が低くなるという調査研究結果もあるところでございます。

野間委員 資料を見ますと、大体人口十万人以下のところですと五四%ぐらいは設置していないんですよね。十万人以上になると、大分、七割とかぐらいの設置率になってくるかと思います。

 私の地元の鹿児島県でも、四九%。四十三の市町村があるんですけれども、十万人を超える市というのは三つしかないものですから、なかなかこれは人口一万、二万といった市町村では設置できていないのも現状であります。

 確かに、今回の改正案では、一つ二つの市町村で無理であれば広域でということも掲げられているんですけれども、例えば鹿児島県の奄美群島などは、大きな島で八つ、それ以外を合わせて百以上の、二百キロぐらいに及ぶ地域でやっと十万人を切るぐらいの人口ということですから、なかなか、そこに一つそれを置いたからといって、相談支援が充実するとも思えないわけであります。

 今回、この設置が努力義務化されましたけれども、相当な予算を投じたり人材を確保したりしないと機能しないと思うんですけれども、その辺の新たな努力義務化に伴う国の支援、そういったものはどういうふうになっているんでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 人口が少ない市町村におきましても、複合化、複雑化した課題を抱える障害者の方は存在をするところでございますので、そうしたところも含めまして体制整備を行っていくということは必要なことであるというふうに考えております。

 基幹相談支援センターの運営費につきましては、これまでも、国から市町村に対して、地方交付税措置に加えまして、補助金によりまして、専門的職員の配置ですとか、地域の相談支援体制の強化の取組、こういったものを支援することを行ってきております。

 引き続き、基幹相談支援センターの設置促進や機能充実のための必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

 さらに、基幹相談支援センターの設置を促進するためには、都道府県から広域的に設置を促進するための支援をすることですとか、国としても、好事例の収集、周知とか、こういったノウハウ面の支援も必要だと考えておりますので、そういった面も含めまして、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

野間委員 これは努力義務化ということになっていますけれども、これが達成できない場合というのは、どういう、何かペナルティーがあるんでしょうか。また、あるいはどれぐらいの目安で、何年後までにとか、そういうようなことというのはあるんでしょうか。

辺見政府参考人 努力義務でございますので、設置しないことによるペナルティーがあるわけではございませんけれども、令和六年度から各自治体で策定いたします障害者福祉計画の指針を今、国として検討しているところでございます。そうした中におきまして、基幹相談支援センターの設置ですとか、また、都道府県の立場に立てば、域内の市町村に対しての支援ですとか、そういったようなことも規定をしていただきまして、地域の実情に応じるという部分もございますけれども、しっかりと設置に向けて取組をしていっていただきたいと考えているところでございます。

野間委員 先ほども予算の確保に努めるということでありましたけれども、もうそこが一番の肝であると思いますので、よろしくお願いします。

 障害を持った子供さんを持つ親御さん、保護者、この方々が一番悩み、困っていることは、まだ自分たちが元気なうちはいいけれども、高齢化していずれ亡くなる、しかし、この子を残してあの世に行けない、どうしたらいいんだろうか、それで、現実に亡くなる親御さんもおられて、親亡き後の支援体制、これが一番、皆さん、地域で心配していることですけれども、これについての施策、今回の地域生活支援拠点等というのはそのための一つの大きな拠点だということでありますので、その施策を述べていただきたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 障害当事者、また家族の方から、親亡き後についての不安等については、私どもとしても、いろいろ御意見があることを承知をしております。

 親亡き後につきましては、その親亡き後も見据えて、段階的、継続的に、プロセスとして支援をしていく必要があろうかと思います。障害者が地域で安心して暮らしていけるよう、これまでも、居宅での自立した日常生活を支援する自立生活援助ですとか、重度障害者にも対応できる、日中、夜間も含めた支援体制を確保した日中サービス支援型のグループホームの創設などに取り組んできたところでございます。

 加えて、今回の改正法案では、地域生活の体験の機会を提供する障害者の地域生活への移行の支援ですとか、緊急時の対応などを行います地域生活支援拠点の整備を市町村の努力義務とすることとしております。

 さらに、令和六年度に見込まれます次期の報酬改定を見据えまして、障害福祉サービスにおける重度の方の受入れ体制の充実などに取り組みまして、家族による支援から地域における支援へ、親亡き後も見据えて、段階的、継続的に支援を進めていくこと、これによりまして、障害者や御家族が安心して生活することができる地域の体制の構築に努めてまいりたいと存じます。

野間委員 是非、次の報酬改定においては、そこを厚く考えていただきたいと思います。

 あと、地元の相談支援に当たっている事業所の方などの話を聞くと、報酬の問題になるんですけれども、件数に応じて報酬をもらうということなんですけれども、非常に採算性が悪く、そこに人を張りつけるとか、人材を確保するということも難しくて、相談支援のそういったものを廃止するところも結構出ているわけですけれども、その辺の現状、そして、やはり報酬も、次はもう少しプラスに持っていってもらいたいという要望が出ておりますけれども、どうでしょうか。

辺見政府参考人 相談支援事業者でございますけれども、サービス等利用計画を作成することなど、障害者に対しての支援を総合的に調整する重要な役割を担っているところであり、利用者に対して安定的、継続的な相談支援を提供していただく、こういったことが求められていると考えております。

 このため、相談支援事業者に対しては、前回、令和三年度の報酬改定において、計画相談支援や障害児相談支援というものについて基本報酬を充実すること、また、従来評価されていなかった、計画を決定する月ですとかモニタリングの対象となっている月以外の月についての一定の業務についても、新たに報酬上の評価を行うといったような充実策を講じてきたところでございます。

 今後、次期の報酬改定に向けまして、令和三年度報酬改定の影響も含めて経営の実態を調査をいたしまして、相談支援事業者の経営状況をよく把握をして、今後の報酬について必要な検討を行ってまいります。

野間委員 是非、手厚い支援をお願いしたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、ちょっとまた学童保育についてお尋ねしたいと思います、内閣府になると思いますけれども。

 こども家庭庁では、こども家庭庁発足後、学童保育の位置づけを、成育部門の、全ての子供の居場所づくりというふうに位置づけられているんですけれども、学童保育を経営されている方、協議会の皆さんは、何か自分たちは、学童保育というのは単なる居場所なのかと。居場所じゃないよ、やはり安心、安全に子供たちが過ごせる継続的な生活の場なんだと。ちょっと、居場所というふうな、軽く見ているんじゃないか、軽視されているんじゃないか、そういう声が上がっているんです。

 ですから、学童に携わっている皆さんは、居場所というんじゃなくて、やはり育ちの保障、保育はそう位置づけられていますけれども、保育と同様なそういう位置づけ、そういう見方をしてもらいたいということを強く望んでおりますし、確かにそうだなと思いますけれども、この辺の位置づけをどうお考えなんでしょうか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 こども家庭庁では、学童期を含めた様々な子供につきまして、御指摘の居場所づくりを始め、子供の可能性を引き出すための取組を推進していくということにしてございます。

 そうした中で、御指摘の放課後児童クラブでございますけれども、この放課後児童クラブといいますのは、仕事などで昼間家庭に保護者の方がいらっしゃらない間に学童期の子供たちが集う、そういう意味では居場所という面もございますけれども、その上に、指導員という大人の方々の指導であるとか、助言であるとか、見守りなどなどの下で、子供たちが集まり、遊びであるとか、あるいは生活などをする場として、子供一人一人の状況でございますとか、あるいは発達段階、そういったものに応じた育成というのを推進していく。

 さらに、子供に関わる地域の様々な関係機関と連携をしたりしながら、子育てであるとか、あるいは子供自身の成長を支援していくといった大変重要な役割を担うものでありまして、御指摘のとおり、継続的な生活の場であるというふうに考えております。

 そうした意味では、こども家庭庁の発足後におきましても、これは、保育所などと同様に、これまでどおり、放課後児童クラブというものは、子供にとって安全、安心して過ごせる、そして継続的な生活の場として、その重要性に変わりはないものと考えてございます。

野間委員 そういう位置づけであれば、ちょっと今、こども家庭庁のホームページ等では、居場所だという位置づけになっていますので、そこはやはり、きちっとした、単なる居場所ではないんだと。育ちの保障、子供さんによっては、家庭にいるよりも長く学童にいるというような場合もあります。本当に生活の場でありますので、これをちょっと軽く見るような表現の仕方、位置づけは、是非、改善といいますか、表現を変えてもらえないだろうかと思いますけれども、重ねてになりますけれども、どうでしょうか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の資料、こども家庭庁の組織の大きなくくりとして、企画立案・総合調整部門と成育部門と支援部門と、大きく三つの、いわば局のような構成を考えているという資料の中で、全ての子供の居場所づくりという項目がございまして、その中の一つとして放課後児童クラブが入っております。

 この組織の立て方といった資料についてどうするかでありますけれども、今後、こども家庭庁準備室としても、放課後児童クラブに関する情報発信をする際には、生活の場であるとかいった、従来から重要な場として位置づけられているもの、こうしたものを念頭に置きながらの情報発信、そういったものに努めてまいりたいというふうに考えてございます。

野間委員 ちょっとその組織の、今、局のお話が出て、これは別に通告はしていませんけれども、すると、局の扱いとしては、保育と学童保育というのは異なる局に入るということなんですか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 言葉足らずで申し訳ございません。今のところ考えておりますのは、成育部門という大きな一つの局的な固まりがございまして、その中で、保育をつかさどる部署であったりとか、あるいは放課後児童クラブをつかさどる部署であったりということをこの成育部門の中で担当することを考えてございますが、具体的なその中での組織のたてつけにつきましては、現在政府内で調整中でございます。

野間委員 是非、生活の場、育ちの保障の場でありますので、きちっとした位置づけをして、学童で働く人たち、また、これを経営する人たちの誇りを傷つけないようにしていただきたいと思います。

 それでは、時間となりましたので終わらせていただきます。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓です。

 本日もよろしくお願いいたします。

 まず、国連の障害者権利委員会の総括所見についてお伺いをしたいと思うんですが、その前に、今回の法案につきまして、束ね法案ということで、非常に重要な法案が幾つか束ねられているという形であります。

 その中で、今回の精神の問題に関しましても、非常に多くの委員の皆様、そして参考人の皆様からも御意見がありました。そんな中で、本来であれば、難病であったりとか、様々な部分と分離して審議するのが本来であるべきじゃないかなと個人的には思っているわけであります。そんな中でも、今回、審議されているわけですので、しっかりとした誠実な御答弁をお願いをしたいと思います。

 今回、本法案の改正におきましても、様々委員から御指摘があるところなんですけれども、もう一つ加えて、次期の障害福祉計画及び障害児の福祉計画、これが令和六年の四月に改定されるという形になります。それに向けた政府の基本指針、これが来年の令和五年の三月に示されるという形になるかと思いますけれども、そんな中で、障害者部会の方の委員さんからも非常に多くの御意見を頂戴しているところであります。これから都道府県であったりとか市町村が作成する福祉計画に、今回の国連の総括所見の内容がしっかりと反映されるのかどうか、これが非常に重要なポイントだと思っております。

 まず、今のこの基本指針に、政府が進めている基本指針に織り込まれなければ、やはり次の計画にはなかなか欠けている部分が非常に出てくるかと思うんですが、次回の障害者部会につきまして、その点についてしっかりと委員の皆様に提示して議論していただいて、その上で計画の中に盛り込めるのかどうか、大臣の方にお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 池下委員からお話がありましたように、令和六年度から新たな計画が進むわけでありますので、そこを、各自治体における計画策定に向けて、今年度末までに基本指針の中身を、これは審議会において議論しながら確定させていただくということになるわけでありますが、そこにおいては、障害者権利条約、あるいは条約に基づく対日審査に関する総括所見等、もちろんでありますし、また、この間の様々な取組、そして、何といっても障害者の皆さんからの御意見、こうしたものも承りながら、この基本指針の内容について議論を深めていきたいというふうに考えております。

池下委員 大臣、ありがとうございます。

 ちょっと確認なんですけれども、大臣、今、障害者部会の方で議論していただくということなんですけれども、改めてちょっとお伺いをしますが、この総括所見の中身を入れ込んでいく方向でちゃんとやっていく、計画、入れるような形でいきますよという認識でよろしいんでしょうか。改めてお伺いします。

加藤国務大臣 まさに、どういう中身にするか、これから御議論いただくわけなので、今、こうだとかいうことを私が申し上げるのは避けたいと思いますが、ただ、議論に当たっては、今回の対日審査に係る総括所見、こういったものもお示しをさせていただきながら議論を深めていただきたいと思っています。

池下委員 この基本指針が都道府県のベースになってくるものですので、やはり、今の部分が入っていかないと、当事者団体の皆さんも、今日来られているかもしれませんけれども、当事者団体であったりとか自治体の方では理解が得られないのじゃないかなと思いますので、しっかりと議論の方をしていただきたいなという具合に思っております。

 次に、基幹相談支援センターの件についてお伺いをしようと思っておったんですけれども、先ほど野間委員の方からも質疑がありました。通告の方でお示しはさせていただいていまして、三つほどお話をさせていただこうかなと思っておったんですけれども、最後、三つ目の大臣にお伺いする部分だけ、少しお伺いをしていきたいなという形で思っております。

 先ほど野間委員の方からも御指摘がありましたように、この基幹相談支援センターにつきまして、全国の中では平均の設置率というのが五〇%程度、資料の一枚目と二枚目の方にこれを描かせていただいております。

 全国でも設置のばらつきがあるということもお話がありました。岐阜県の方では九〇%程度設置されておりますけれども、奈良県の方では僅か三%程度しかないということで、本当に地域格差というものが顕在化しているということは、私、心配な点であります。

 先ほどの答弁におきまして、努力義務というところをつけられるというところから予算措置も含めて検討していくよというお話があったのは、これは前向きに捉えさせていただきたいなという形で思うわけなんですけれども、当然、設置というのは、設置の率を上げていくということは非常に重要なわけであります。先ほどお話もありました。

 ただ、一方、やはり基幹相談支援センターの機能、これをしっかりと充実させていくということも併せて非常に重要な点だと考えております。

 そこで、その機能が十分発揮されているかどうか、評価指標というものをしっかりと作って示していくべきだと考えますけれども、大臣の所見、検討状況についてお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 基幹相談支援センターにおいては、地域における相談支援の中核的な機関として、例えば、支援困難事例など専門的な支援が必要なケースへの対応や三障害への総合的な対応、あるいは地域支援や地域づくりの取組等、こうしたことが期待をされているわけでありますので、その期待をしっかり果たしていただくことが量的な充実とともに大事なところであります。

 市町村は、障害福祉計画において、相談支援体制を含むサービス提供体制の確保に関する目標と活動指標を設け、計画的に体制整備を進めることとされております。

 基幹相談支援センターについても、令和六年度からの次期障害福祉計画に係る国の指針について見直しを検討する中で、設置目標を設けるとともに、新たに、具体的な機能を評価するための活動指標、これを盛り込む方向で今検討を行っているところでございます。

 基幹相談支援センターの機能が十分に発揮していただけるよう、活動指標の設定も含めて、必要な方策を検討させていただきたいと思います。

池下委員 今御答弁ありましたように、設置の数を増やしていくということと、その機能が大事だということで、活動の機能の、設置の指標というのを作っていただけるということでありました。

 ただ、今の現状でいいますと、基幹相談支援センターを設置しているところ、若しくは設置していない市町村もあるかと思いますが、そんな中で、なかなか予算が少ないよという状況の中で、センターをつくらなくて役所の中で相談を受けているというところもあると聞いております。それではなかなかこの機能というものは上がらないという形で思っておりますので、是非、設置の向上とともに、機能の充実というのを併せてしっかりとやっていただきますよう申し添えておきたいと思います。

 それでは次に、難病法関連についてお伺いをしていきたいという具合に思います。

 今日の午前中の辻参考人への質疑でもちょっとさせていただいたんですけれども、今回、原則五年の見直しの難病法改正まで実質七年の歳月がかかっております。その経緯、コロナの部分もあるかと思いますけれども、その経緯につきまして参考人にお伺いしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 難病法の見直しに関しては、難病法施行五年目の令和元年五月に関係審議会で検討を開始しまして、同年八月から十二月にかけてワーキンググループでの議論を取りまとめ、そして、令和二年の一月より関係審議会においてワーキンググループ取りまとめを踏まえた議論を開始していたところでございます。

 しかし、その後、新型コロナウイルス感染症の流行が生じたところです。

 この後、新型コロナ対応に万全を期す必要があったことから、関係審議会を開催して難病法の見直しに関する議論を進めることが困難な時期が続き、今回の法案提出まで時間を要したというところでございます。

池下委員 今御答弁がありました。

 そして、今回の改正に、中にも入るかと思いますし、これから今後どうなるかということにもなるかと思うんですが、難病を持たれている方の当事者参加というものは、私、非常に重要であると思っております。

 今日の午前中の辻参考人の方にもありましたけれども、難病患者の医療の部分はやはり科学的な知見からというのが大事になってきます、ただ、生活の質の担保という面からはやはり当事者の意見というのをしっかりと聞いていただきたいという御発言もありました。

 そんな中で、今日もありましたが、例えば難病指定委員会や中医協などで参加が認められていないとも聞いております。そういうところで、これからの患者の療養生活の質の向上、これも難病法の一条にも目的として中に書かれているところでありますけれども、健全な患者視点をしっかりと入れていくということが私は非常に大事だと考えておりますが、社会的資源としての患者活動を有効に活用する意味におきましても、産官学、併せて患者の連携が必須と考えますけれども、大臣の御意見、所見、お伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 今般の改正案のうち、難病法や児童福祉法の改正内容を議論いただく関係審議会、ここで取りまとめた意見書の内容を基にしているわけでありますが、この審議会で、難病患者やその家族等の代表として三名の委員が参加していただいていると認識をしております。厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会には二名、社会保障審議会児童部会小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会に関しては一名の方が入っておられるというふうに認識をしております。また、その他の医療に関する審議会においても、委員や参考人として当事者に参加いただき、政策に当事者の声が反映するよう努めているところでございます。

 今後とも、今回、難病患者等に関するというお話でありましたが、難病等患者に関する施策の検討に当たっても、そうした皆さん方の意見を聞きながら、引き続き議論を進めていきたいと考えております。

池下委員 難病患者さんの生活といいますのは、私もヒアリングもさせていただきましたし、現場も見させていただいたんですけれども、生活を一つするにしても非常に困難な生活を強いられているわけです。そこの中で、やはり生活の質の担保というのは非常に重要だと思っておりまして、今大臣も御答弁ありましたけれども、できるだけ審議会等に御意見、酌んでいただきたいと思いますし、もしその委員になれなかったとしても、やはりヒアリング等々をしっかりと丁寧にやっていただくことによりまして、現場の意見の酌み上げというのが本当に直接影響してくることになるかと思います。是非よろしくお願いをしたいなという具合に思います。

 そこで、次なんですけれども、難病患者の生活の質、これを守っていくもう一つの、ターニングポイントといいますが、これはやはり就労、お仕事でやっていく、就労というところになってくるかと思います。この就労環境、難病を抱える方々にとっては非常に深刻な問題を抱えております。

 そこで、参考人にお伺いをしていきたいんですが、現在取り組んでおられる難病患者に対する就労対策についてお伺いをしていきたいと思います。

堀井政府参考人 お答えをいたします。

 現在、ハローワークにおきまして難病患者の新規求職申込件数が増加傾向にあるという状況もございます。数字を紹介させていただきますと、平成二十九年度五千八百一件と比較しまして、令和三年度は約千五百件増加をしておりまして七千二百九十四件となっております。非常に就労支援に対するニーズが高まっているというふうに感じております。

 このため、厚生労働省といたしましては、就労に困難を抱える難病患者に対しまして、難病相談支援センターを始めとした地域の関係機関との連携の下、ハローワークに配置をした難病患者就職サポーターによる就労支援の強化でございますとか、難病患者を雇用し適切な雇用管理等を行った事業主に対する助成による雇用の促進に努めているところでございます。

 一方、障害者の雇用率の対象の関係でございますが、現在その対象となっていない難病患者の雇用率制度における取扱いにつきまして、本年六月に労働政策審議会障害者雇用分科会において取りまとめられた意見書におきましては、就労場面において生じる課題等に個別性が高く、個人の状況を踏まえることなく、一律に就労困難性があると認めることは難しく、就労の困難性の判断、その在り方に関わる調査研究等を進め、その結果等も参考に、その取扱いを検討することが適当とされているところでございます。

 これを踏まえまして、まずは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、JEEDにおきまして調査研究を進めていくこととしておりますが、いずれにしましても、難病患者に対する就労支援につきましては、それぞれの個人の状況等に応じたきめ細かい支援を行ってまいりたいと思います。

池下委員 御答弁いただきました。

 JEEDで調査研究されているということでありますし、ハローワークさんの事業も大変重要だと思っております。これはまた、就職する際にはこのハローワークさんを窓口にするということもあるんですけれども、一方、やはり、現在就労中の方々の問題というのも非常に大事だと思っております。

 そんな中で、私もいろいろお話を聞かせていただいた中で感じたところなんですけれども、やはり、難病患者さんといいますのは、ふだんはこういう元気な形で仕事をされているということなんですけれども、ただ、病状が悪化したら、通院しなくてはいけないであったりとか、若しくは長期の休暇、長期の入院が余儀なくされる、こういう場合もあります。

 ただ、難病を持たれている方というのは、先ほどもちょっとあったんですけれども、知られたくないということがかなりあるんです。やはり、自分が難病患者ですよというのが会社に分かってしまいますと、首を切られるんじゃないかとか、若しくは部署を、今思うような部署で働いているんですけれども、部署が替えられるんじゃないかとか、そういう心配の中でなかなか言い出せない、そういう患者さんも非常にたくさんあるという具合に聞いております。

 そんな中で、私、大事だと思いますのは、やはり、雇用者側、雇う側ですね、会社側、雇用者側と、雇われる側、難病患者さんの方になるんですけれども、そこの周知、若しくは職場の仲間の皆さんの理解というものがしっかりないと就労の継続というものはなかなかできないなという具合に思っておりまして、そんな中で、やりがいという部分も含めて、しっかりとフォローできる制度設計というものをしっかりとつくっていかなければならないのかなと私は感じているところです。

 そこで、雇用者が難病に向き合う被雇用者を支援する制度というものを是非創設していただきまして、後押しできるようなものを是非つくっていただきたいと思うんですが、具体的に言いますと、例えば、難病患者さんに就労してもらっているという企業さんには税制優遇をするというところを検討していただいたりとか、若しくは、経済産業省が今所管しております健康経営優良法人認定制度の活用、これは、聞き取りしますと、マークみたいなものをつくられていまして、トップ五十のマークとか、そのほかの企業さんもある程度受け入れるところはマークをいただいて、いわゆるCSR、社会的にもこういうところにも取り組んでいるんですよという制度があるそうなんですけれども、そういうところも活用していくということも非常に大事なのかなという具合に思っております。

 そこで、今働いている患者さん、難病者の皆さんが今のまま変わることなく輝き続けることができる就労環境の整備、これをするために何ができるのかということを考えるべきだと思いますけれども、政府のお考え、お伺いをしたいと思います。

堀井政府参考人 池下委員御指摘のように、難病のある方が、離職をすることなく、治療を継続しながらやりがいを持って働き続ける、その能力を十分に発揮して活躍しやすい職場環境を整備する、こういったことは非常に重要だというふうに考えています。

 このため、現在、事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン、これを活用した具体的な支援の取組の周知啓発に加えまして、難病患者に特化をした支援策としまして、事業主の難病についての誤解や先入観を取り除き、適切な雇用管理を行うための雇用管理のマニュアルですとか、保健医療分野の相談支援に関する課題を解決するための就労支援活用のガイド、また、難病患者の専門支援者のための職業リハビリテーションハンドブックQアンドA、こういったものの周知を行っています。これらを通じまして、企業における職場環境の整備等を促進をしているところでございます。

 さらに、現在、難病患者の就労困難性、企業側の支援ノウハウ、地域における支援体制の整備状況等の直近の実態を把握をするために、JEEDにおきまして難病患者の就労困難性に関する調査研究も行っているところでございます。

 このような取組を通じまして、治療を継続しながら働くことを希望する難病のある方やその事業主の実態を把握をした上で、難病のある方の意見も聞きながら、必要かつ効果的な支援策となるように、省内の関係部局と連携をして検討してまいりたいと存じます。

池下委員 是非、取組を早急に進めていただきたいなと思います。

 今、就労についてお伺いをいたしましたけれども、もう一つ、やはり就学、学びの場、これも非常に大事だと思っておりまして、今回、ここの部分はちょっと確認になるかと思うんですけれども、長期療養を必要とする難病のお子さんたち、この方々たちにしっかりと教育の機会というものも担保していかなければならないという形で思うんです。

 そこで、ちょっと確認でお伺いしたいんですが、義務教育である小中学校、そしてもう一つ、高校、ここにつきましての対策と現在の取組についてお伺いをいたします。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 難病を始め、病院や自宅等で病気療養中の児童生徒への学習支援につきましては大変重要であると考えております。

 そのため、文部科学省においては、長期入院している小中学校、高等学校の児童生徒に対しまして、病院内に設置されています教室等における対面指導、対面授業や、ベッドサイドでの教師の訪問による指導、また、ICTを活用した同時双方向型の遠隔授業、こういったものの学習支援の充実に努めているところでございます。

 また、同時双方向型の遠隔授業のみならず、事前に収録した授業を視聴するオンデマンド型の授業につきましても可能となるよう、今年度中を目途に制度の見直しを図るとともに、これらの効果的な活用方法等の調査研究に係る経費を令和五年度概算要求で要求しているところでございます。

 引き続き、病気療養中の子供を含めまして、様々な課題を抱える子供たちを誰一人取り残さず、可能性を最大限に引き出す教育の実現に向けて取り組んでまいります。

池下委員 コロナ禍で、オンデマンドであったり双方向の通信というのが飛躍的に今広がったというところですので、小中高それぞれ、子供たちの学びの機会の場を失わないようにしていただきたいと思います。

 一方、ちょっと大学の方にも目を向けていきたいなと思うんですが、やはり、大学の方は、大学の自治であったりとか建学の精神であったりとかというところで、なかなか小中高とは若干違う部分があるかと思いますけれども、同じように、大学における対策、難病患者、難病の子供たちの就学対策についてお伺いをしたいと思います。

西條政府参考人 お答え申し上げます。

 難病や障害の有無にかかわらず、全ての学生がその意欲と能力に応じて大学等において学ぶ機会の確保や、そのための環境整備を進めていくことは大変重要だと考えております。

 大学においては、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律等に基づき、難病等による病弱、虚弱を含め、障害のある学生に対して合理的配慮の提供が行われるものと承知しております。

 このため、文部科学省では、大学が提供すべき合理的配慮の考え方や合理的配慮の決定手順等を取りまとめ、各大学に周知しているほか、先進的な取組を行っている大学を中核として、大学等からの相談への対応や大学間、担当間の連携を推進するため、令和二年度より、障害のある学生の修学・就職支援促進事業を実施しております。

 また、独立行政法人日本学生支援機構と連携し、障害学生支援の理解啓発に向けたセミナー等を実施しているほか、病弱、虚弱などの障害種別ごとに障害特性の理解や支援方法等をまとめた教職員向けのハンドブック等を作成し、全国の大学等に配布するなど、大学等における理解促進を図っています。

 今後も、これらの取組を通じまして、難病を抱える学生が大学での修学を断念することがないよう、難病を含めた障害のある学生への支援の充実を促してまいります。

池下委員 先ほども申し上げましたように、大学は建学の精神であったり大学自治というものがあります。なかなかちょっと踏み込めないという点はあるかと思うんですが、ただ、難病を持つお子さんでも、やはりホーキング博士のように非常に優秀な方もいらっしゃるわけですよ。そういう中の学びの機会を何とか取りこぼさないようにといいますか、それを難病のお子さんたちがキャッチできるような形で、学びの機会を是非つくっていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 余り時間がないので次に行きたいと思うんですが、新生児のマススクリーニング事業についてお伺いをしていきたいと思います。

 小慢であったりとか、難病についてもそうなんですけれども、やはり、早期発見、早期治療、早期支援、これは非常に大切なことでもありますし、障害者部会におきましてもその重要性というものは指摘されているところであります。

 そこでお尋ねしますけれども、都道府県等で実施されております新生児マススクリーニング事業についてなんですけれども、法的根拠についてちょっと改めて確認をしていきたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 新生児マススクリーニング検査ですけれども、疾患の早期発見、その後の早期治療や生活指導を行うことで知的障害の予防をするということを目的として事業化をされたものでございます。昭和五十二年度から、都道府県、指定都市を実施主体として、五疾患を対象に国庫補助事業が開始をされました。平成十三年度には一般財源化されたところでございますけれども、一方、検査方法や対象疾患については、検査技術や治療法の進展を踏まえ、検査方法の見直し、疾患の追加を行ってきておりまして、現在、二十疾患を対象としております。

 根拠というふうな御指摘がございました。この検査につきましては、成育医療等基本法に基づき政府が定める基本方針、これは閣議決定でございますけれども、その中で、新生児へのマススクリーニング検査の実施により先天性代謝異常等を早期に発見し、その後の治療や生活指導につなげるなど、先天性代謝異常等の対応を推進すると位置づけております。

 また、それに加えまして、その適正な実施を確保するため、異常又は異常の疑いのある事例への対応方法、検査実施の留意事項などにつきまして実施主体である都道府県等に通知をしておりまして、こうした取組により、本マススクリーニング検査事業につきましては全ての自治体において実施をされ、非常に高い受検率を維持しているというところでございます。

池下委員 御答弁はいただいたんですけれども、法的な根拠というのがないんですよね。

 これは私もちょっと資料の三番目でつけさせていただいているんですけれども、厚労省子ども家庭局母子保健課長の通知をつけさせていただいています。先ほどお話がありましたように、自治体の方でやっていただくという形になりますけれども、自治体によっても、その予算のかけ方というものが、非常にやはり地域間格差がありますよということで、この通知の一番下、黄色の部分で線を引かせていただいているところなんですけれども、本通知は、地方自治法第二百四十五条の四第一項に規定する技術的な助言として発出するものであるということで、ちょっと今回書かせていただいております。

 ただ、このマススクリーニング事業といいますのは、先ほど申し上げましたように早期発見すれば早期治療ができるという中で、その子供たちは将来的に、早期に治療すれば完全に治るという病気も中にはあるという具合に聞いております。やはり、この新生児マススクリーニング事業というものにつきまして、こういう通知だけではなくて、明確な根拠を持って、国が率先してやっていくということが非常に大事だと私は思っております。

 先ほども地域間格差のお話をしましたけれども、しっかりとやっているところは先進的にやっていただいているということも私は理解させていただいているんですが、このような先進的取組をしている自治体の好事例、これを政府が参考にして、現在の二十疾患の公費負担の対象、これを広げていく、公費対象を広げていくということも検討すべきだと思いますけれども、御意見をお聞かせ願いたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたとおり、新生児マススクリーニング検査につきましては、対象疾患の追加など、検査技術や治療法の進展を踏まえて見直しをしてきたところでございます。

 またさらに、近年、関係学会等から対象疾患追加の必要性を指摘されていることも踏まえまして、現在、日本医療研究開発機構におきまして、対象疾患を選定する基準に関する研究を令和二年度から三か年で実施しているところでございます。

 検査方法や対象疾患の追加につきましては、疾患の選定基準に加えて、例えば、検査や診療の体制整備ですとか、遺伝検査ということになれば、倫理的、社会的な課題等についても考慮していくという必要があると考えます。

 委員から御指摘いただきました、一部自治体におきまして独自に対象疾患や検査方法を拡大をしているところがあるということは承知しております。

 自治体での本事業の実施の状況ですとか、実施をする中での課題などについても、我々としてもしっかり把握をして、その上で検討を進めていきたいというふうに考えております。

池下委員 今御答弁ありました。

 私は、改めて申し上げますけれども、やはり法的根拠というのは必要だと思います。それが、難病に苦しむ子供たち、希少な病気に苦しむ子供たちを救う手だての一番最初の取っかかりになるんじゃないかなと。今やっていただいているのは十分承知をしておりますけれども、是非お願いしたいと思います。

 ちょっと時間がなくなりましたのであれなんですが、本来であれば、新たな治療薬が開発されたときの対応の仕方であったりとか、私の地元であります大阪府議会、これは、小慢の方が二十歳を超えたときに医療費助成がなくなる、これを何とかしてほしい、切なる声が意見書として府議会から上がってきておりますけれども、この点につきましては、ちょっと今日は時間がございませんので、申し添えて、また次回の機会にさせていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いいたします。

 さきの質問で積み残しになりました精神保健福祉法についてまず伺いたいと思いますが、ほかの委員からもありましたように、今回の改正法案、束ね法案ということで多岐にわたるわけでありますが、この精神保健福祉法においては、大変に、午前中の参考人の中でも課題が多々提示をされています。やはり束ねで議論するのは無理があったんじゃないかと、問題点として先に、冒頭述べさせていただきたいと思います。

 まず、医療保護入院について伺います。

 今法案では、これまで議論が出ていたように、家族が同意しない意思表示や、意思表示そのものを拒絶した場合は、市町村長が同意を与えて入院をさせることができるようになります。この場合、市町村としては、資格を持った医師が入院の必要性を判断したのに、なかなかそれを覆す形で同意を与えないという旨の主張をするそもそもの根拠を持ち得ないため、事実上はそのまま入院させるほかなくなるのではないかといった懸念が示されています。その場合、医療保護入院は縮小するどころか増加する可能性さえあるとも懸念されています。

 これについては、さきの質問で、宮本委員がこの医療保護入院の適用拡大につながるんじゃないかという観点で質問をしてもらったところ、加藤大臣から、医療保護入院が増えるとは一概に言えないという発言がございました。この発言、何を根拠にその発言をされたのか、まず伺います。

加藤国務大臣 まず、今回の市町村同意に関する本改正については、精神障害者の家族団体からの要望を踏まえ、同意に伴う関係の悪化を懸念する家族が意思表示をちゅうちょする場合を想定し、こうした場合における家族の過度な負担を軽減する、こういう趣旨であります。

 今回の改正案によって、例えば、現在、家族がちゅうちょしながら同意をしているケース、これが市町村同意に移るということもあり得るわけでありますので、そうした場合には、市町村同意によって入院が増えるとしても、医療保護入院が増えるということには一概につながらないのではないか、こういったことを念頭に置きながら申し上げたところであります。

田中(健)委員 大臣から、家族の要望もあったというんですが、それも、午前中の参考人質疑の中で、あくまで家族からの要望は、医療保護入院の廃止を前提として、その上での話だということもありましたので、是非それも御理解いただければと思います。

 午前中の参考人質疑の中で、参考になる資料をいただきました。日本精神神経学会の医療保護入院制度、保護者制度に関する全国調査の資料であります。

 その中を見ますと、市区町村長同意による医療保護入院に関する問題点、適切な入院判断ができていない、また、形式的で形骸化している、今の体制では対応が困難ということが多数を占めていました。

 今、大臣からの発言では、一概に増えると言えないという発言がありましたけれども、もっと具体的に、市町村長が例えば不同意に、反対した件数がどのくらいこれまであったのか、それが把握をされていたり、また、入院面会中の実態や、それが退院促進につながった例が、こういうことがある、そういったものを積み上げて総合的に分析をした結果ならいざ知らず、最近は現状の把握もしていないということでありますし、面会の把握もつかんでいないということでありますと、余りに私は説得力がないというか、無責任にも聞こえてしまいます。

 今のこの資料を見る限りではですが、これは二〇一三年のいただいた資料なので、もう十年近く前なので、これが今の現状とは私は言えないんですが、だからこそ、この十年間で何が起きたのか、私自身も現場に行っているわけでないので、あくまで様々なデータやお話を聞いての議論なものですから、何が今起きているのかということをつかむ必要があるんじゃないかと思っています。

 自治体の不同意の数や面会状況、現時点における医療保護入院制度の全体像というのを何か調べるということに着手ができないでしょうか。

 また、今回は、入院訪問支援事業、これも議論になりました。また、地域の障害福祉事業者との連携を義務づける、新しいこういった提案もされています。これは、最低ここは、需要把握というのは、これから新しくなるものですから、していくということでよいのでしょうか。伺います。

加藤国務大臣 市町村同意による医療保護入院について、これまでも、事務処理要領により市町村の手続を明らかにさせていただいたところであります。

 市町村同意による入院に当たっての面会の有無等も把握をして、中には面会している自治体と面会していない自治体があるといったことは把握をしておりますが、市町村が不同意した事例の数そのものは把握はしていないというのが今の状況であります。

 今回の改正については、医療保護入院に際して必要となる家族等同意について、家族が同意、不同意の意思表示を行わない場合についても市町村の同意の対象とすることとしていますが、病院から家族への説明や市町村の同意のプロセスが適切に実施されるということが重要であります。

 改正案の施行に当たっては、市町村同意による医療保護入院の実態についてしっかり把握することが必要だ。また、これについて、さらに検討条項もございますから、そういった意味では、実態、どういう形でするか、いろいろ考えなきゃいけないと思いますが、そうした把握には努めていきたいと思っております。

 それからまた、地域援助事業との連携、これを今回も入れさせていただいておりますが、これについても、これは法案が成立して、実際にスタートして多少時間がたってからじゃないとなかなか把握できないと思いますが、今回のそうした措置がどう実施されているのか、こうした状況を把握していく上においても、実態の把握に努めていきたいと考えています。

田中(健)委員 この資料を提供していただきました池原参考人のお話では、やはり市区町村同意の形骸化ということを強調しておりましたが、それが本当に形骸化しているのか、それさえもやはり実態が分からないと。まずそこをしっかりと把握した上で、何が必要なのか、何が問題なのかというのを是非皆で議論してほしいということが言われておりましたので、今、形はどうであれ、大臣の方から、調査も必要ではないかというようなお話をいただいたと思っておりますので、是非お願いをしたいと思います。

 さらに、この市区町村長判断だけでなく、司法審査や第三者機関を同意者とすることについての質疑も昨週ありました。

 これは、医学的な専門性を伴う判断については法律家による判断がなかなか困難であると政府参考人からの答弁がありましたが、法律家ができないのであれば、現在、指定医の一人の判断というところから、セカンドオピニオンというような考えもありますけれども、これは、措置の場合のように、最低二人の専門医、どうしても一人ですと、その一人の人に全ての情報も、また判断も任されてしまうということがありますので、二人の専門医を配置するようなことというのは、提案としてお示ししたいと思うんですが、これはできないでしょうか。大臣、お願いいたします。

加藤国務大臣 精神障害を有する当事者、法律家を含む有識者により構成された検討会で、まさに医療保護入院時に最低二人の専門医が判断すること、これについても議論がなされたところでございます。その中では、同一医療機関の指定医が二人で判断しても、これは独立した判断とはなり得ないのではないかということと、精神保健指定医が足りないという今の現状の中で、実際上難しい面がある、こうした課題が指摘されたと承知をしているところであります。

 ただ、先ほどの話ともつながるわけでありますが、今般の改正案の附則第三条において、本人の同意がない場合の入院制度の在り方について検討規定が置かれているわけでございますから、今後、そうした中において課題の整理をしっかりと進めていきたいと考えています。

田中(健)委員 まさに検討会の中でその二人のが上げられて、マンパワーがないということも議論に出ていました。全国で一万五千人ほどしか指定医がいないということで、これからの増員やまた増強というのも必要かと思っていますが、何か対応しなければ、この不安というのがなかなか解消につながらないかと思っていますので、引き続きの議論をお願いしたいと思います。

 それでは、医療保護入院の方を伺います。

 六か月以内の期限を定めることとしまして、さらに、更新もできるとされているため、長期入院の解消の観点から実効性に乏しいと指摘もされています。半年ですと、一度更新すると一年、一年といいますと、もう国における長期入院の定義になりますので、すぐに長期入院ということになってしまいます。これについても、さきの委員会で、更新回数を制限するなどはどうかといった指摘もありましたけれども、これはなかなか現実的でないといった話がありました。

 そうであれば、六か月という指定を更に短い期間に省令で定めるとか、ないしは、期間については、それぞれ運用状況を見て、まず六か月でもちろん始まったとしても、この省令の見直しができるような対応というのが必要ではないかと提案いたしますが、見解を伺います。

加藤国務大臣 改正案では、医療保護入院について、精神科病院の管理者が、六か月以内の省令で定める期間の範囲内で期間を定め、要件を満たす場合に更新できるとされております。

 関係審議会において、六か月の上限を法律上明らかにした上で、省令においては、例えば、入院から六か月経過までは三か月ごととすること等を定めることとされたことを踏まえたわけでありますが、これを具体的に省令にどう盛り込んでいくのか、これについては現在検討させていただいているところでございます。

 また、先ほどありました、更新回数について上限を求めることはなかなか難しいという意見もその場であったところでございます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 これも、さきの、午前中、参考人が示してくれました。例えば、精神医療審査会においては、これはまたもちろん違った制度でありますけれども、二〇一四年の医療保護入院審査は、二十六万六千八百四十八件のうち、入院形態の移行が十三件で、入院継続を不要とした、つまり退院できた人は五件、〇・〇〇〇六%だと。これについて、精神医療審査会については、池原参考人だけでなく、藤井参考人からも、書類審査だけで、実質、チェックがなされていて、非常勤で、フレキシブルに働けない、つまり人員不足だという話がありました。

 今回のこの延長においては、さきの参考人の話では、期限の到来が来た場合は、精神科病院が入院の要件や医療の必要性、同意の能力等を確認するということでありまして、病院にこれが課されることになるんですけれども、このように、審査会でもマンパワーが足りない、また、どうしても形骸的になってしまっている、書類審査だけになってしまっているという中で、今回、この六か月の期間延長を病院に委ねるというか、お願いする、やってもらうということが現実的なのかということに併せて、長期入院になってしまった場合に、それを医療体制がしっかりと、長期入院化している例に対して精神病院管理者としての対策が可能なのかという現実的な問題について、これは参考人から伺います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正によりまして、医療保護入院につきましては、入院期間ごとに病院として病状の確認ですとか同意能力の確認を行うことになります。この確認を適正に行っていただくことというのがまず大事なことだと思います。

 その上で、病院管理者としては、併せて退院を想定した支援も必要となってくるところでございます。法律上、退院支援委員会を病院管理者として設置をするということが求められておりますけれども、退院支援委員会においては、地域生活への移行を促進するための措置について、退院した後の通院医療ですとか訪問看護などの活用も視野に入れながら審議を行うほか、地域での生活というものを考えて、今回の改正で義務づけられます地域援助事業者との連携の措置を講じることが必要となります。

 具体的には、総合支援法におけます相談支援事業者などを紹介することが想定されるわけでございますけれども、紹介された相談支援事業者は、患者本人の希望を踏まえて、生活支援拠点などとも連携しながら、退院後の地域生活の調整を行っていくということになります。

 こうした医療保護入院者に対する退院支援の措置につきましては、従来より通知の形でお示ししているところでございますけれども、今回の法改正により新たに講じられる措置もございますので、施行に向けてしっかりと整理をして、示してまいりたいと考えております。

田中(健)委員 ちょっとまだ十分でないところがあると話を聞いて思いましたけれども、これからもしっかりチェックしていきたいと思います。

 最後、伺います。

 今回、虐待防止に係る取組についても改正法案が出されています。これについては、通報義務と通報保護義務の話でございます。これにおいては、当初、障害者虐待防止法の改正で運用するのではないかと言われておりましたけれども、結果、精神保健福祉法での運用となりました。これについて、身近な市町村が虐待のおそれのある第一通報先とされずに、通報先が今度は都道府県に限定をされておりまして、通報の促進、初期対応の観点から不十分になるんじゃないかといった指摘があります。

 考えてみれば、東京都全体で何か虐待があれば東京都庁に行くというのは、余り私、現実的じゃないような感じがありますし、多くの地方公共団体からも、障害者虐待防止法の改正を要望する声というのが上がっています。これについては、大臣、お考えはいかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、委員御指摘の検討会では、障害者虐待防止法の改正と発言された方が九名、精神保健福祉法の改正と発言された方は三名と承知をしております。その上で、最終的には、双方を支持する意見があったが、いずれにしても、実効的な方策となるよう、制度化に向けた検討を行うべきであるとまとめられたところでございますので、そうしたことを議論した上で、今回は都道府県という形で法案をさせていただいたわけであります。

 それは、一つは、精神科病院に対する指導監督権限を精神保健福祉法上、都道府県が有するため、都道府県を通報先とすることにより、より実効的な対応が図れるということ、また、精神科病院については、精神保健福祉法上、都道府県が入院届や定期病状報告を受理することとなっており、入院患者の情報を都道府県が保有していることから、市町村ではなく、都道府県を通報先とすることが合理的だと考えて、そうした形での法案を提出させていただいたということでございます。

田中(健)委員 本当は、第三者の目が、たくさんの人に触れてもらって、そして虐待というのが防止ができる体制というのが私は望ましいと思っていますが、また議論させていただければと思います。

 時間になりました。以上です。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 法案の前に一点、昨日、報道を見て大変驚いたんですけれども、統一協会で、教団が関わって、教義に基づいて養子縁組が七百四十五組も行われていたと。信仰上の目的を達成するための養子縁組で、子供の福祉に反すると思います。養子縁組あっせん法に基づく都道府県知事の許可も得ておりません。

 大臣、これは養子縁組あっせん法、児童福祉法に抵触するんじゃありませんか。

加藤国務大臣 報道は承知をしております。

 どのような組織であっても、養子縁組あっせん法に規定する許可を受けずに、養子縁組あっせんである、養親希望者と児童との間を取り持って養子縁組の成立が円滑的に行われるように第三者として世話をすることを反復継続的に行うのであれば、それが金銭の授受にかかわらず、同法に反するものであるというふうに考えております。

宮本(徹)委員 これは早急に調査をしなければいけないと思いますけれども、今週中に調査は開始されるということでよろしいんでしょうか。

加藤国務大臣 御指摘のその報道を受けまして、昨日、事務方に対して、養子縁組あっせん事業に当たる行為がいわゆる旧統一教会の中で行われているかどうか、事実確認の確認を行うよう指示したところでございます。

 現在、世界平和統一家庭連合本部の所在地を管轄する東京都と厚労省の連名でこうした事実確認の確認の質問書を提示し回答を求めるという方向で調整を行っているところでございますので、その確認結果を踏まえ、必要な対応を更に検討していきたいと考えています。

宮本(徹)委員 早急な調査をお願いしたいと思います。法令違反が確認されれば、これは宗教法人法に基づく解散命令請求の新たな一つの要件を満たしていくことになるのかなというふうに思っております。

 法案についてお伺いします。

 私からも、まず、午前中の参考人質疑に関わって、何点かお伺いしたいと思います。

 市町村長の同意による医療保護入院について、これが形骸化している、こういう声が、立場を超えて今日の午前中は参考人の方から御指摘がございました。適切な入院の判断ができない、入院後全然関わっていない、こういうことがあるわけです。

 先ほど、田中委員とのやり取りで、この市町村長同意の医療保護入院について実態把握を行うような答弁がありましたけれども、先ほどの答弁を聞いていると、これは法施行後にやるかのように聞こえたんですけれども、そうじゃないと思うんですね。やるべきは、そもそも、今、市町村長同意で医療保護入院を拡大していいのかどうか、ここを今調べなければいけないんだと思います。

 その点、現状、問題点、この市町村同意による医療保護入院について、今、このタイミングで実態調査を始める必要があるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今回の改正案で、今委員がお話しになったような中身にさせていただいておりますし、同時に、病院から家族への説明、市町村の同意のプロセスも適正に実施されていくということが必要でありますので、先ほど申し上げたように、改正案の施行に当たって、こうしたものがしっかりとなされているか、こうしたことを把握していきたいということを先ほど申し上げたということでございます。

宮本(徹)委員 改正案の施行に当たってというのは、施行の後なんですか、その前にやろうということなんですか。

加藤国務大臣 施行後、実際、施行された中においてどう実施されていくのか、その辺も含めてしっかりと把握していきたいと考えております。

宮本(徹)委員 施行されたらその問題点をつかむのは当然のことだと思うんですけれども、そもそも、市町村同意そのものが形骸化していると、今日、与党の推薦の参考人の方からも厳しい指摘が出ていたわけですよね。そんな形骸化しているものの下で市町村同意の対象を拡大していいのかというのが問われているわけですから、私は、法施行後ではなくて、今やって、立法事実が本当にあるのかないのかというのをはっきりさせる必要があると申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、もう一点。

 今朝の参考人質疑の中で、入院期間を定めても、更新回数の上限がなければエンドレスに強制入院が続くという指摘がありました。中でも、精神医療審査会がマンパワー不足で実質的な審査がなかなかできないんだという話が、これも与党、野党を超えての参考人からの指摘がありました。

 私は、この精神医療審査会がやはり全ての強制入院について実質的な審査をしっかり行っていく、書類審査だけではなくて、入院後速やかに入院者との面談も実施すべきだと思います。そのために、常設化だとか審査委員の大幅な増員、これが必要なんじゃないでしょうか。

加藤国務大臣 精神保健指定医には、先ほども答弁申し上げた、限りがあります。医療機関で患者に必要な医療を確保する観点から、精神医療審査会の審査を行う指定医の大幅増員を図ることは、なかなか現実的には難しいと考えております。

 患者から退院請求がなされた場合には、原則として患者の意見を聴取する、行うこととしておりますが、さらに、今般の改正案では、精神科病院に入院中の患者について、患者を訪問し、患者の話を傾聴する入院者訪問支援事業を新たに設けたところでありますので、こうした体制をしっかりとしいて整備をしっかり図っていくことを通じて、先ほど委員が御指摘がありましたような、適正に執行がされるように努力をしていきたいと思っております。

宮本(徹)委員 お医者さんを増やしていくということも私は是非取り組んでいただきたいと思いますし、併せて、常設化ですよね、今、皆さん、パートタイムでやられているわけですから、常設化することも含めて是非検討していただきたいと思います。

 あわせて、今日、参考人で、JPAの辻さんが、難病法の関連で何点か要望を述べられておられました。

 一つは、症状が重症化した際の医療費助成の開始の時期を重症化時点に遡る期間について、指定医が申請に必要な臨個票を作成するのに二週間から一か月かかる、指定医のいる病院は決して身近な医療機関ではないことや、医療機関や申請窓口が平日しか開いていないことなどを考えると、入院などしていなくても一か月では余裕がない、原則三か月、これをお願いしたいという話でした。

 全ての患者が安心して適切な治療が開始できるよう、これについては十分な期間を設定すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今般の改正案で、難病の医療費助成について、申請日から重症化時点に遡って開始する仕組みに見直すわけでありますが、申請日から遡る期間の限度については、本年七月、患者団体も参加する関係審議会において御議論いただきました。

 個々の事情により様々なケースが考えられ、原則一か月としつつ、入院その他緊急の治療が必要であった等の事情がある場合においては、前倒しの期間はおおむね三か月程度が妥当ではないかとされたことを踏まえて定めることとしており、関係者の議論に沿った適切な期間と認識をしているところであります。

 申請日から遡って助成する事情の有無については、患者からの医療費助成の申請書にチェックボックスをつけるなど、簡易に地方自治体が確認できる方法とすることでしておりますし、また、改正案が成立した暁には、その施行に当たって通知やQアンドAで具体的なケースをお示しすることにより、可能な限り、全国的に、そしてスムーズな取扱いがなされるよう努めていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 これはせっかく遡りの制度を設けるわけですから、間に合わないということで重症化時点に遡っての適用が受けられないという方が出ないように、しっかりとした運用をなされるように定めていっていただきたいと思います。

 もう一点ですけれども、登録者証については、マイナンバーとの連携に不安の声が上がっているということでした。疾病名だとか病状がひもづいたら心配だという声もあるということをおっしゃっておられました。希少疾患や遺伝性疾病等への偏見や差別などにつながらないようにしなければならないと思います。

 また、マイナンバーカードを持たずに、あと、通知カードもなくした人や、あるいはマイナンバー連携をしたくない人、あるいはデータベースに登録したくない人も、希望すれば登録者証が利用できるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今般の改正案で、指定難病の患者の方々が福祉、就労等の各支援を円滑に利用できるようにするため、患者が指定難病にかかっている旨を証明する事業として、いわゆる登録者証の発行をまず行うこととしております。また、現行の難病制度におけるマイナンバー連携の状況も踏まえ、患者の利便性の向上、また自治体における発行事務の負担軽減を図るため、登録者証をマイナンバー連携の対象としているところであります。

 登録者証のマイナンバー連携による情報流出等が要因で、疾患情報を基にした偏見や差別につながってはならないことは当然のことであります。マイナンバーカード自体に登録者情報が入らないこと、本人確認手続が厳格であることから、仮にマイナンバーカードを紛失した場合であっても、不正に難病患者等であることやその疾病名を知ることは困難であると認識をしておりますが、実際にマイナンバー連携する難病患者等の情報の内容は、福祉、就労支援の窓口で必要となるということでありますから、その情報として、指定難病患者であることといったことに限る、いわゆる疾病名は含まない、そういった方向で検討していきたいと考えております。

宮本(徹)委員 後段にお答えになっていないんですけれども。

加藤国務大臣 マイナンバーカードを持たない方への対応ということであります。

 指定難病患者データベース等へのデータ登録を希望しない場合であっても、指定難病に罹患している等の要件を満たす場合には登録者証を発行することができるわけであります。また、何らかの事情によって手元にマイナンバーカードがない方について、指定難病患者であることを確認する方策に関しても、関係団体等の皆さんの意見も幅広く聞きつつ、丁寧に検討していきたいと考えております。

宮本(徹)委員 この登録者証の制度ができれば、毎回毎回福祉サービスを使う際に診断書を取り直すということがなくて済む、経済的負担の軽減という点では大変いい制度だと思いますので、これはあまねく希望される方が受けられるような運用をお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、通過型グループホームの創設についてお伺いをしたいと思います。

 東京は既に通過型グループホームがあります。私の知人のNPO法人は、現在、滞在型のグループホームと通過型のグループホームを運営しております。実は、二つ目のグループホームをつくるときに、元々二つ目も滞在型グループホームでつくろうと思っていたんですけれども、自治体の側から、通過型にどうしてもしてほしい、こう言われて、やむなく通過型にしたと。

 この結果、何が起きたかといいますと、本人の状態からいえばとても三年では自立できない方も、通過型のグループホームに入るということになりました。三年を迎えてどうなったのか。結局、自治体に配慮してもらって、通過型だけれども、その後もしばらくいられるようにはしてもらっているわけですけれども、これは、自治体によってはそういう判断が異なってくるというのも起きちゃうわけですよね。

 私は、十分な滞在型のグループホームが足りない下で通過型グループホームをどんどんつくるということをやったら、当事者のニーズに沿わないことが起きかねない、これを私の地元の経験からも大変感じております。

 そういう認識は、厚労省にはあるんでしょうか。

辺見政府参考人 今回の改正案は、グループホームの支援内容といたしまして、共同生活住居における日常生活上の支援に加えまして、独り暮らしを希望する方に対する支援を含むということを法律上明確化するものでございます。

 グループホームは地域における障害者の住まいの場として重要な役割を担っており、グループホームの共同生活を希望する方は、改正後もこれまでどおりグループホームを利用できるという仕組みとするものでございます。

 したがいまして、今回の改正による独り暮らしに向けた支援というのは希望者に向けての支援でございますので、利用者の意に反した追い出しは適当でないということを法改正に伴いまして周知徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。

宮本(徹)委員 私の質問の趣旨が伝わっていないようなんですけれども、入っている人を出すなんてとんでもない話ですし、入るときに選択できるというのは当たり前の話なんですけれども、問題は、滞在型のグループホームが今足りないんですよね。ところが、自治体の側は、通過型をつくれ、こういうふうに言ってくるというのが現状起きているわけですよ。そうしたら、通過型に入らざるを得ないじゃないですか。通過型に入ったら、三年たったら出てくださいよという話になっちゃうんですよ。そういうことが起きないことを考えたら、私は、通過型グループホームというのは、今考えるというのは時期尚早だと思います。もっと滞在型グループホームが必要な、充足するところまでしっかりつくるというのをそれぞれの地域でやらないと、おかしなことが起きるんじゃないかと思いますよ。

三ッ林委員長 辺見部長、簡潔にお願いします。

辺見政府参考人 各地域におけます障害福祉サービスの整備につきましては、自治体が定めます障害福祉計画において、地域のニーズを踏まえて策定をしていただくことになっております。

 今回の法改正によりまして、グループホームのサービス内容に独り暮らし向けの支援が入るということにするわけでございますけれども、その趣旨も含めまして令和六年からの障害福祉計画が策定されるように、現在検討中の国の指針等においても何らか工夫をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 どういう暮らし方を選ぶかは障害者の意向に基づくというのをはっきりさせていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文です。

 今日もラストバッターでこの委員会の方、質問を始めたいと思います。

 大臣、前回、私の質問の中で積み残したことなんですが、今回も、精神保健領域、福祉領域におきましては、今約三十万人の方が入院されていて、いかに、障害者というか、精神患者さん団体もそうだったんですけれども、地域へ、在宅へ移行できるかということなんですけれども。

 具体的には、まだまだ、大きな施策としてのアウトリーチというか、いわゆるバッファー地帯というか、そういうところの人材が極めて少ないように思うわけでございまして、今日も午前中の参考人質疑の中でNCNPの藤井参考人の方から、例えば、アウトリーチを担う人材というのは、専ら数が少ないとされている精神保健医のみならず、それ以外のいわゆる専門医というか医師も参画すべきだというふうな答弁もいただきました。

 そういう中で、例えば、今、在宅の方に行った場合、精神科在宅患者支援管理料というのもいわゆる診療報酬の中でできましたが、例えば、具体的には、このアウトリーチの中、看護師も大きい存在です。看護師というのは、精神科の看護を担うということで講習を受けて、それで現場に行きます。ただ、その指示書という、ドクターが書く指示書があるんですけれども、そこを書く要件は精神保健医なんですね。

 ですが、例えば、今日も藤井参考人がおっしゃったように、精神科の疾病の軽くなった方、あるいは、入院をしなくて在宅でもケアできるというふうな判断の下、診断の下でそうなるわけですから、例えば軽い方に対して、ほかのドクターが訪問看護指示書を書けるような、そういう要件緩和というのはお考えでないでしょうか。

辺見政府参考人 御指摘のように、精神疾患を有する方が安心して暮らすことができるように、地域において切れ目なく支援していくということが重要でありまして、在宅において、必要に応じて医療サービスを受けられるよう、医療機関や訪問看護ステーションによる訪問診療、訪問看護の普及を図ってきたところでございます。

 そうした中で、引きこもりの方や医療機関の受診を中断された方などについても、通院が難しいことがあることから、アウトリーチの取組が必要であるということで、令和四年度診療報酬改定で、こうした方々に対しての在宅医療の実施を精神科在宅患者支援管理料の対象として追加をしたところでございます。

 こうした取組を進める上での課題につきましてはしっかりと受け止めさせていただいて、まずはこの管理料の普及を図ることが大事だと思っておりますけれども、様々な課題については整理をさせていただきたいと思っております。

仁木委員 私は、欧米のICMのような、インテンシブなケアマネジメント、そういう、いわゆるアウトリーチが急にできるとは思いませんが、大臣、先ほど、通告になかったということもつぶやかれていましたが、やはりそういった人材を厚くする。

 そして、例えば、退院はできたものの、なかなか就労に結びつかず、例えば、就労できたものの、やはり会社の環境は入院環境とはドラスチックに違うわけでございまして、ちょっと嫌なことがあったりしたら引きこもっちゃったりして、なかなか行けなくなるときに、そういう訪問看護師さんがおうちに来てくれて、状態を把握して、ああ、これは精神科的に状況が悪くなったから、もう一回医療機関につないだ方がいいんじゃないかとか、そういったいろいろな総合的なケアができるわけでございまして、こういった切れ目のない、いわゆる伴走的な支援というのは非常に重要だというふうに思いますので、アウトリーチの部分の、これは公認心理師も含めて、やはり人材を厚くすることで、今、病院という枠の中でいるケアがいわゆる在宅、地域包括ケアの中でもできるということを改めて主張したいと思います。

 実は、問題なのは、今回の強制入院の一つの医療保護入院にしましても、やはり、精神科の病院の中の状態がちょっとクローズドというか、閉ざされた感があるんですね。そういう意味でいうと、今回の入院者訪問支援事業というのはすごくいい制度だと私は思っていますし、実は、この厚生労働委員の与野党の筆頭の御尽力で、そういった精神科の病院を視察するような話も出ております。

 そういう形で、やはり外部の人というか、今日もいろいろ、内容としては、地域包括ケアの中でも、今までは、精神科というのはほかのドクターから見てもなかなか特殊でして、話は長くなりますけれども、感染症の時期でも、精神科の患者さんが、重症患者さんを治療するICUに入った後の、例えばその次の病棟になかなかすぐ移行できないんじゃないかと。その病院に精神科というドクターがいなかったら共診できない、診れないというふうなことを勝手に思ってしまうわけです。

 ですから、ふだんからそういうふうな情報共有というか、そういった患者さんの状況も含めてケアしているような経験なり情報交換があると、例えば、コロナ感染症がクラスターとして精神科の病院で発生しても、長期化したりすることがなく、この程度の精神科の疾患だったら、一般病棟でも、一般病棟というのはあれですけれども、ICUとか一般病棟の段階でも診ることができるというふうなことにもなるわけでございまして。

 合併症として精神科の患者さんがコロナ感染症になっちゃうと受入れをできないという形で、もうそれだけで拒んでしまうような実態があるのも事実だということを加藤大臣の方には分かっていただきたいと思います。

 それで、私は、医療従事者と患者さんは、共に医療、介護、特に医療というのはつくっていくものだと思いますので、いい形で。よく、医療従事者から虐待を患者さんにしないような法改正もあるわけでございますけれども、逆の、例えば精神科の病院内で、結構暴行事案というのが報告されているのは御案内だと思うんですけれども、これが、患者さん側から医療従事者になったときの、どういった対応があるのか、マニュアルとかQアンドAということをこの前お聞きしたんです。

 やはり、その辺の治療とあるいは虐待との境目というのはなかなか、そういった実態を知らない人が見ると分かりにくいと思いますので、私は、先ほど申し上げた入院者の訪問支援事業の中に、そういった精神科領域のこともより分かったような人材がそういう訪問をすることも踏まえて、それがある意味での、いい意味での適正な、そういう精神科領域における治療というか、そういう医療環境になるということを提案したいんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 一つは、精神科病院の医療従事者の皆さん方が安心して治療を行うことができる環境を確保していく。

 先日も、私、見させていただいたときに、やはり経験とかいろいろノウハウを持っておられると、その従事者の方が、余裕を持ってというんでしょうかね、対応していかれている、そういうのを非常に感じたわけでありますので、やはりそういったことは非常に大事なことであり、また、それは逆に、患者さんに対しても安心感を与えることにも多分つながっていくんじゃないのかなというふうに思いました。

 それは、医療機関の中においては、今、精神科医療体制確保研修事業というのをやらせていただいて、精神科病院に勤務する幅広い職種の方々を対象に、暴力を未然に防ぐための資質と技術を有した人材育成のための包括的暴力防止プログラムに関する研修を実施をさせていただいているところでございます。

 また、アウトリーチ支援に係る事業に関しては、医療につながっていけない方々を対象に、多職種による訪問支援を推進する、先ほど委員が御指摘のような。これが大変重要で、そのための補助制度、また、やはり必要人材の確保、育成への支援、これも必要だというふうに思っておりますので、いろいろなところにいいノウハウがありますので、それを幅広く活用していくということ、これが大事だろうと思います。

仁木委員 大臣、ありがとうございます。

 そして、済みません、総務省森参考人、今回、私、午前中の審議でも、いわゆる障害者の人権の一つである参政権、いわゆる投票すること、不在者投票のことを聞きました。

 ちょっと二点聞きます、時間がないので。

 一つは、実態をまず、総務省として、そうした不在者投票における実態を把握されているかどうか。そして、その方が実際自分の判断でもって投票する能力があるかどうか、そして、実際、現場では、この人はちょっと認知症だからそういう判断はできないよねといって選挙のある情報すら教えていないような入院患者さんだったり、あるいは介護のそういった若年性の認知症の方とかもいらっしゃるわけなんですね。その辺に対して、厚労省に聞くことかもしれませんが、その判断能力の担保というのはどのようにこれから考えていくのかということを、二点お聞きしたいと思います。最後の質問です。

三ッ林委員長 総務省森選挙部長、簡潔にお願いします。

森政府参考人 お答えをいたします。

 都道府県の選挙管理委員会におきましては、指定施設の指定や選挙の執行に際しまして、投票用紙の請求や具体の投票は選挙人の意思表示を確認して行う必要があること、そして、選挙人の意思に反して投票用紙の請求を行った場合には罰則の適用があることなどの留意事項を指定施設の不在者投票管理者に対し丁寧に説明して実施をしているものというふうに承知をしております。

 投票はあくまでも選挙人本人の自由意思に基づくものでなければならないものでございますので、代理投票も含めまして、選挙人本人の意思を確実に確認した上で、適切に実施しなければならない。

 他方、選挙人の態様が様々でございますので、個々の選挙人の状況に応じてきめ細かく適切に対応することが重要であり、その意思確認に十分努力すべきことなどを各選挙管理委員会に要請するとともに、不在者投票管理者に対する指導に遺漏のないよう対応をお願いしているところでございます。

 その基準というようなお話もございましたけれども、これは、平成二十五年の議員立法で成年被後見人の選挙権回復のための公選法改正が行われた際に、選挙権を行使するに足る能力といったものをどのように定義するのかというのが大変難しいこと、仮に定義ができたとしても、一体誰がどのような手続でそれを決定していくのかというような点についても非常に難しいことなどの観点から、判断力の程度のいかんというようなことを基準とするような、そういった仕組みとせずに、一律に選挙権を回復することが適当と判断されたところでございます。

 あくまでも選挙人本人の自由意思に基づくものをきちんと現場で対応するということかと存じます。

仁木委員 済みません、時間をオーバーしまして。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次回は、来る十八日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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