衆議院

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第9号 令和5年4月19日(水曜日)

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令和五年四月十九日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      石川 昭政君    上田 英俊君

      柿沢 未途君    勝目  康君

      川崎ひでと君    小林 鷹之君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      新谷 正義君    瀬戸 隆一君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      土田  慎君    平沼正二郎君

      深澤 陽一君    古川 直季君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      山口  晋君    井坂 信彦君

      大西 健介君    岡本あき子君

      佐藤 公治君    野間  健君

      馬場 雄基君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      遠藤 良太君    吉田とも代君

      古屋 範子君    吉田久美子君

      田中  健君    宮本  徹君

      仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局内閣審議官)         滝澤 依子君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 友井 昌宏君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 大橋 一夫君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    原  和也君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     黒田 岳士君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁在留管理支援部長)       君塚  宏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西條 正明君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官)            城  克文君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  榎本健太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         八神 敦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         村山  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           川又 竹男君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大西 証史君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           奈尾 基弘君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 中村 博治君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 岸本 武史君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 針田  哲君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  小泉進次郎君     古川 直季君

  高村 正大君     平沼正二郎君

  瀬戸 隆一君     石川 昭政君

  橋本  岳君     宮路 拓馬君

  西村智奈美君     岡本あき子君

  野間  健君     佐藤 公治君

  山井 和則君     馬場 雄基君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     宮澤 博行君

  平沼正二郎君     高村 正大君

  古川 直季君     山口  晋君

  宮路 拓馬君     深澤 陽一君

  岡本あき子君     西村智奈美君

  佐藤 公治君     野間  健君

  馬場 雄基君     山井 和則君

同日

 辞任         補欠選任

  深澤 陽一君     橋本  岳君

  宮澤 博行君     瀬戸 隆一君

  山口  晋君     小泉進次郎君

    ―――――――――――――

四月十八日

 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第四五号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣人事局内閣審議官滝澤依子君、警察庁長官官房審議官友井昌宏君、長官官房審議官大橋一夫君、警備局長原和也君、消費者庁次長黒田岳士君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、長官官房審議官野村知司君、総務省大臣官房審議官三橋一彦君、法務省大臣官房審議官保坂和人君、出入国在留管理庁在留管理支援部長君塚宏君、文部科学省大臣官房審議官西條正明君、厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官城克文君、医政局長榎本健太郎君、健康局長佐原康之君、医薬・生活衛生局長八神敦雄君、労働基準局長鈴木英二郎君、職業安定局長田中誠二君、雇用環境・均等局長村山誠君、社会・援護局長川又竹男君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、老健局長大西証史君、保険局長伊原和人君、人材開発統括官奈尾基弘君、政策統括官中村博治君、政策統括官岸本武史君、環境省大臣官房審議官針田哲君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小川淳也君。

小川委員 立憲民主党の小川淳也です。

 大臣、今日は、いつもにも増して近しく議論させていただき、大変光栄に存じます。狭い委員会室ですし、少し落ち着いて議論させていただきたいと思います。

 まず、今日は、法案審査を離れまして、厚生労働行政一般についてお聞きする機会でございます。ただ、その前に、余りにもちょっと衝撃的な事件でした。先週土曜日、岸田総理が手製の爆弾と思われるもので襲撃されたという、ちょっと信じ難いといいますか、こういうことが繰り返されておりますので、もはや信じ難いとは言い切れないんですが、ちょっとこの事件の受け止めなりをお聞きするところから始めたいと思います。

加藤国務大臣 まさに選挙中といいますか、選挙応援中にそうした、暴力的行為と言っていいんだと思いますが、ということによってそれを阻害する、こういったことは、民主主義の根幹である選挙活動、そのことに非常に影響を与えるものであり、断じて許すことはできない、こういう思いであります。

 本当に、ああした形で展開したので、数名がちょっとけがをされたとはお伺いしましたけれども、今回はそういうことで終わったわけでありますけれども、しかし、常にそうしたことに十分注意をしていかなきゃならない。

 私どもの場合、特に今回、この週末にはG7倉敷があります。それから、来月には長崎が、それぞれ雇用と保健大臣会合がございますので、そういったことも含めて、よく警備当局とも連携を図りながら、これはちょっと選挙活動ではありませんけれども、こうしたことにもしっかり取り組ませていただきたいというふうに考えております。

小川委員 全くそのとおりだと思います。

 ちょっと、報道も含めて、また、大臣の今御発言の中にも、選挙中にという枕言葉がありました。それは確かにそうなんですが、あえて、選挙中であろうがなかろうが、言論を闘わせるならまだしも、政治的意見表明、今回は前回に比べますと少し、私の臆測ですが、政治犯的な意味合いがひょっとしたらあるのかもしれないと様々な報道を受け止めていますが、いずれにせよ、こういう暴力的行為は断じて許されないことであり、それは選挙中であるかないかにかかわりなく、もちろん、選挙中はより候補者、候補予定者、あるいは閣僚、党幹部と一般有権者との接点が近くなりますので、リスクが高まるということにおいてはそうなんでしょうが、選挙中であろうがなかろうが断じて許されない行為であるということは改めて確認したいと思います。

 その上で、ちょっと事件直後ですから酷なんですが、警備当局の見解も聞いておきたいと思って、今日は出席を依頼しております。

 警察庁の警備局の受け止め及び、報道で目にしていることですので私もちょっと事実確認は取れていませんが、まだ記憶に新しい安倍元総理の昨年の事件以降、たとえ屋外であっても金属探知機などを用いて厳重な警戒態勢をしばらくは取っていたやに報道に接しています。この事実関係なり、あるいは、その経緯を踏まえた今回の事件の受け止め、ちょっと警察庁の警備当局として見解をお聞きしておきたいと思います。

原政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の警護につきましては、新たな警護要則に基づき、警察庁におきまして事前に計画を確認するとともに、和歌山県警察におきましても、所要の体制を構築するなど、必要な警護を行ったものでございます。

 しかしながら、今回の事案を受けまして、改めて全国の警察に対し、警察官の配置の増強、不審者への積極的な職務質問、所持品検査、不審物の検索等、警護の強化を指示したところでございます。

 今回の捜査の中で事実を明らかにするとともに、その結果を踏まえて一層の警護の充実強化に努めてまいりたいと考えております。

 それから、報道について御質問がございました。

 御指摘の報道について、我々といたしましても承知をいたしております。

 その上で、一般論として申し上げたいと思いますが、警護現場におきます金属探知機等の使用につきましては、行事に参加される方々の範囲でありますとか場所の特性等を踏まえた上で、行事の主催者等と警護当局との相談により、主催者等の、そういった方々の御理解と御協力の下、実施されているものと承知をいたしております。

 今後とも、様々な関係者の方々の御理解と御協力の下、適切な警護、警備を実施できるように努めてまいりたいと考えております。

小川委員 検証も必要でしょうし、今、事件直後です、ですから酷であることは分かった上でお尋ねしているんですが、ちょっと、警備局長は聞いてくださいよ、この手の話はやはりどうしたって結果責任が問われるんですよね。だから、今の御答弁からも感じるし、あるいは松野長官の御発信からも感じるんですが、警備に問題はなかったという立場なんでしょう。そして、最善を尽くしておられるのはそうだと思う。しかし、あくまで結果責任、これは免れませんから。

 加えて、今回、私も素人ですから気をつけてとは思いますが、鉄パイプが投じられてから爆発までに約五十秒かかったと言われている。理由が、原因がどうかは分かりません。それから、殺傷能力が実際にどうだったのかもよく検証が必要でしょう。しかし、犯行に及んだ方の恐らく思惑としては、即爆発させることを予期あるいは期待していた可能性もある。もし、あのとき、五十秒の間がなく即爆発していたと仮にし、そして、相当程度の殺傷能力が仮に認められたとすれば、ちょっと信じ難い惨劇になっていた可能性もあるということも含めて、警備は適切だったとかではちょっと済まない事態に立ち至っているということはよく御認識をいただいて、今後の対応を考えていただく必要があるということを指摘し、最後ですが、これも今朝報道で目にしましたから確認させてください。これは厚生労働大臣の身の上にも関わることですので、安全管理全体としては。

 昨年の事件が手製の銃でありました。今回は恐らく手製の爆弾ではないかと言われている。私もインターネット上でちょっと確認しましたが、ちょっとした技術、ノウハウあるいは材料があれば、やはりネット上の知識で容易に銃や爆弾を製造できる可能性があるんだなということは改めて感じております。この点、インターネット上の巡回、サイトの巡回など、ネット上の警備の強化に当たられるという報道に接しました。この事実関係も改めて確認しておきたいと思います。

大橋政府参考人 お答えいたします。

 委員お尋ねの件につきましては、警察庁において、本年二月に、委託するインターネット・ホットライン事業及びサイバーパトロール事業の取扱範囲に爆発物、銃砲等の製造方法等の情報を追加したところでございます。また、サイバーパトロール事業におきまして、爆発物、銃砲等の製造方法等の情報を検索するAIを活用したシステムを本年九月に導入する予定でございます。

 引き続き、関係機関等とも緊密に連携し、違法情報、有害情報対策の強化を図ってまいります。

小川委員 それこそ、言論の自由とか表現の自由の世界観と、今のような事件が多発する時代背景、社会背景とのせめぎ合いだと思いますが、あらゆる角度から今回の検証、また今後の対策、改めて求められることを指摘し、警察庁の皆さん、これで結構です。どうぞ御退席をいただいて。

 しかし、加藤大臣、いろいろなことを感じるんですが、もしかしたら、私も分かりません、ちょっと断定は控えたいと思うんですが、ある意味、社会の閉塞状況とか、様々な不安とか、抑圧とか、いろいろなことがこういう形で暴発しているのかどうか、少なくとも、お互い、政治家としては、そういう社会的な事情なり背景があるのかないのか、そういうことには関心を持つ必要が、こういう事件が起きるたびにですね。犯人が悪いのはそうなんですが、犯人と思われる人が悪いのはそうなんですが、私たちの務めは、一方、社会的背景はないのか、社会的遠因は眠っていないのかということに考えを巡らせることもまた必要ではないかということを、こういう事件が起きるたびに感じております。

 その上で、本題、厚生労働行政についてお聞きいたします。

 まず、連休明け、一番大きなのは、コロナの二類相当の現在の取扱いが五類相当に変わる、これに向けて様々御準備あるいは様々な御発信に努められていることと思います。

 まず最初にお願いをしておきたいのは、二類相当でより厳しい厳格な管理をしてきた世界観から一定外れるわけですが、これに当たって、私、まず第一にお願いしておきたいのは、この三年間、二〇二〇年の春あるいは一九年の暮れにこの感染症を認知して以降、約三年間のこの対応、これについては財政的な対応、社会的な対応、感染症的な対応、様々御苦心があったことと思いますが、一旦、私は、これは総括をする、政府としてきちんと総括をする責任があると思っていますが、まずちょっとこの点、五類移行を前にして、二類相当期間の様々な政策的な手だて、これはいい面も悪い面もあったと思いますが、総括をする必要がある、この点についてちょっと、まずお聞きしたいと思います。

加藤国務大臣 昨年のたしか六月だったと記憶していますけれども、有識者の方において、中間的な形でしていただいたわけであります。しかし、その後も、こうしてコロナが七波、八波というふうにあったわけであります。それも含めて、どういう形でやるかというのはまだ何とも申し上げられませんが、常に総括をしながら、あしたの対応を考えると同時に、もう少し中長期的な話も考えていく。

 ただ、その一環としては、先般、臨時国会で通していただいたような感染症法の改正と、あるいはこれから御議論いただく日本版CDC、こういったことも御提案させていただいていますが、さらに、これからについても、今御指摘のように、これまでの経験を踏まえながら進めていく必要があるし、そういった機会を、ちょっと、どういうふうに持つかは、厚労省だけというわけにはいきませんから、政府全体で考えていくべきことだろうというふうに思います。

小川委員 これは、むしろ私どもも協力したいと思っていますし、よかったところ、それから、うまくいかなかったところ、いろいろあってしかるべきだったでしょうし、その総括は改めて必要だというふうに強く感じております。

 その上でなんですが、今、ちょっと様々な発信が五月雨でなされていると感じています。例えば、外出自粛をどうするのか、入院の場合の患者負担がどうなるのか、いろいろなことが言われています。

 ざっと並べてみますと、感染者数の公表。死者数、亡くなる方の動向。それから、診療報酬がどうなっていくのか、医療機関にとっては。そして、患者負担はどうなっていくか。さらに、検査費用はこれからどうなるか。ワクチン接種。そして、冒頭申し上げました外出自粛のようなものに対する考え方。そして、出勤、勤務先においては欠勤、学校においては出席停止、これがどうなるのか。

 つまり、二類から五類になることによって、総体として、生活者あるいは患者の目線に立ったときに何がどう変わっていくのか、これは、私は、極めて分かりやすく、全体を束ねる形で体系的に説明なり発信に努めていただく必要があると、非常に強くそれを感じておりますので、そのことをちょっと大臣から御答弁いただきたい。

加藤国務大臣 今お話があったことについて、考え方がまとまった都度都度、できるだけ早くということで発表させていただきました。

 しかし、これから五類移行、まだ最終的に確認をしていかなきゃなりませんが、入っていくわけでありますから、その中においてどうなのかということ、今委員おっしゃったように、総括的な説明、そういったことも必要だと思いますので、また、私が先般もちょっと会見で少しお話をさせていただきましたけれども、そうした機会とか、私どものホームページとか、そういったことも通じてしっかり発信していきたいと思います。

小川委員 五月雨式になっていますから、一度ちょっと束ねていただいて、分かりやすくということは改めてお願いをしたいと思います。

 それで、私なりにちょっといろいろなことを想像しているんですが、来週、政府・与野党協議会を開催していただくようにお願いしているところなんです、来週ですね。そこから連休に入り、連休明けにいよいよ五類ということになります。私なりに一番想像しているのは、何がその日から変わるかと想像しますと、毎日速報されている感染者数の速報が多分世の中から消えるだろうな。翌朝、新聞を開いても、前日の感染者数が何人だったのか、累計でどうなっているのか、亡くなったのは何人なのかという発表が、今、日々、毎日この三年間行われていたのが、五月八日から恐らく、九日かな、八日分までは恐らく発表されるのかもしれませんが、なくなるということを一番大きな、まず目に見える変化としてそれがやってくるというふうに感じています。

 しかし、大臣もよく御理解いただいているとおり、五類になったからいきなり何の情報も、何の警戒心も伝わってこないというのはちょっとやり過ぎでして、そこで、既に御公表なされているんだと思いますが、今後、感染者数の動向、感染実態の発表、そして、亡くなられる方、死亡者数の発表は具体的にどうなっていくのか、どうされるおつもりなのか、まずちょっとその点をお聞きしたいと思います。

加藤国務大臣 まず、感染症法の位置づけが変わることで、これまでのように全ての医療機関からの患者総数の報告等がなくなるということでありますから、毎日、今、感染者数の公表をしているのはその報告がベースになってきます、そのベースがなくなるということになります。したがって、季節性インフルエンザと同じように定点での報告ということになります。具体的には、五月の七日分を五月の八日に発表する、これがこれまでのやり方の最後ということになります。

 その上で、それから以降でありますけれども、毎週金曜日に、定点報告を求める医療機関から報告される前の週の月曜日から日曜日までの患者数などを取りまとめて、都道府県ごとに公表するということとなります。したがって、五月十九日に五月八日から十四日までの患者数等を、位置づけ変更後最初に公表するというのが今の考え方であります。

 また、死亡者数の把握については、発生届の提出がなくなることから、これまでのような保健所における死亡例の把握、これがまた難しくなりますので、本来でありますと人口動態統計ということになりますが、これは二か月後ということになってしまうので、少しでもということで、一部の自治体ということにはなりますが、新型コロナ感染の有無を問わない総死亡者数の推移を一か月後に公表するといった新たな取組を行いたいというふうに考えています。

小川委員 そうしますと、感染者数については、大体、おおむね週一回程度、前週のものを、最初は大臣自ら発表されるのか、当局として発表すると。そして、死亡者数については、月に一回、前月のものになるのか、それが大体発表されると。最終的には、さっき大臣がおっしゃった死亡統計ですね、恐らく超過死亡という、ちょっと私も先週から勉強しようとしているんですが、御担当にお聞きしても十分理解できないぐらいちょっと難しい概念だなというふうには感じているんですが、超過死亡の統計を見て、大体、この病変がどの程度人の健康にあるいは生命に影響しているのか、あるいはその可能性があるのかということを見ていく世界観に移行するというふうにざっと理解しています。

 そうすると、この超過死亡の概念というのは、今まで余り注目している人がいたのか、いないのか。インフルエンザのときなんかよく言われますよね、超過死亡と。それから、今お聞きしたところですと、例えば東日本大震災でとか、例えば、もっと言えば、この戦争でとか、いろいろな不測の事態があったときに、通常の統計的死亡傾向より異常値が見られるということを観測していくということなんだと理解しているんですが。

 それでいうと、ちょっと、直近発表された二〇二二年の超過死亡は最大で十一万人という分析をお聞きしています。つまり、二〇二二年に何事もなければ普通に亡くなられる方は当然いらっしゃるわけで、それに増して最大十一万人死亡者数が上積みされた可能性があるということだと理解しているわけですが、この十一万人、二〇二二年の超過死亡、最大十一万人という数字は、どう分析され、どのように理解、解釈されているのか、そこもちょっと併せてお聞きしたいと思います。

加藤国務大臣 超過死亡は、今お話がありましたように、実際の死亡者数が予想死亡者数を上回った場合ということになります。

 我が国の超過死亡の状況については、厚生労働科学研究班により分析が行われており、具体的には、直近過去五年間の死亡者数の状況から予測死亡者数を推計し、その数値と実際の死亡者数を比較して、超過死亡とか、あるいはそれより少ないという場合ももちろんありますけれども、が算出をされています。

 その結果、今委員御指摘のように、昨年の我が国の超過死亡は、一番多く取れば十一万三千人、一番少なければ四万七千人、こういう数字となっています。

 超過死亡の原因について、研究班では、新型コロナを直接の原因とした死亡の影響、新型コロナによる基礎疾患が悪化した影響、あるいは、新型コロナの流行によって医療の逼迫によって通常の医療の制限も起こることから他の疾患の死亡が増えること、こういう間接的な影響、こういったことが考え得るとされています。

 二〇二二年の超過死亡の数については、感染力の強いオミクロン株により感染者数が大幅に増加し、基礎疾患が悪化すること等により多くの方が亡くなられたことや、新型コロナの医療逼迫期には一般医療への負荷が増大した可能性もあることなどの影響について専門家から指摘をされているところであります。

 引き続き、こうした分析をしっかり進めながら重症化しやすい方を守っていく、そして必要な医療体制を適切に、移行後もしっかりと構築していく、これが必要だというふうに考えています。

小川委員 一般的に御説明になるとそうだと思うんですが、ちょっと、大事なことは、これから死亡者数の発表がダイレクトにはなくなっていくわけです。一か月ごとにしばらく追われるんでしょうが、最終的には超過死亡を見ていくということをおっしゃっているわけですね。じゃ、振り返って、二二年の超過死亡十一万人はどう分析しているんですかという問いにもうちょっと真っすぐ答えていただかないと、これから先、コロナの感染動向を一応監視し、そして死亡者数も併せて超過死亡で見ていきますとおっしゃっていることとの整合性といいますか、そこが私は問われてくると思っているんです。

 超過死亡でこれから見ていきますとおっしゃっているわけですから、過去の超過死亡についてはこう見ていますということがもうちょっとはっきり言えないと、説得力、説明の、説明責任は度合いですよね、それが非常に不確かなものになるという意味でお聞きしているんです。ですから、あんなことも考えられる、こんなことも考えられる、それもそうかもしれない、あれもどうかもしれないということは、それはお答えになれるでしょうが、もう少し精緻にこの超過死亡を見ていく責任が、五類になったらなおさらあるんじゃないですかということを問いかけています。

 それで、一つ具体的にちょっとお尋ねしたいんですが、この超過死亡は、日本の場合、どうも、年齢ごとの分析はせずに、ひっくるめて何人ということを発表している上に、分析していない、年代ごとに。

 これは、たまたま、コロナの場合、高齢者の致死率が高かったので、高齢者が亡くなる傾向というのは、恐らく年代ごとに見ても大きくは変わらないんでしょう、その傾向は。しかし、感染症によっては、例えば若年者の致死率が高い感染症だってあり得るわけで、それはやはり、要因分析をきちんとしていこうと思えば、その第一歩は、私は、これから超過死亡で説明していくとおっしゃっている以上、年代ごとにしっかり超過死亡、つまり通常亡くなると思われる数値からどのぐらい上振れるのか、それは年代ごとに見るとどういう状況なのかを併せて監視していく、ウォッチしていくということが求められると思うんですが、この点、是非直ちに改善をしていただきたい、そのことをお願いしたいと思います。

加藤国務大臣 さっきの分析、もちろんより詳細な分析を進めていかなきゃなりませんが、ただ、先ほど申し上げた、直接間接を含めてコロナの影響ということが今回の二〇二二年の超過死亡の背景にはある。しかし、それが何なのかということまで突き詰めていくと、さっき申し上げた、いろいろな要因が入っていますということであります。

 したがって、そうしたコロナの影響がある中で、引き続き超過死亡を見ていくということは非常に大事だ、そういった意味においても、コロナの影響というものを見る上において、コロナによって、直接か間接かはともかくとして、死亡者数が増えているということを見る上においては、超過死亡で見ていくということも一つの手法だということで、人口動態の調査ではなくて、一か月早くそうした形での超過死亡数というものを公表できるように、幾つかのところにはお願いしたい。

 その上で、今委員御指摘のように、諸外国においては、年齢階級別というか、ある程度区切って発表していることが行われているわけでありますから、当然そういった分析はできるというふうに思っております。

 具体的な分析方法については、研究班においていろいろ御検討いただく必要があろうかと思いますけれども、そうした年齢階級別の超過死亡の推計が示されていることも踏まえて、研究班と相談をして、そうした形で発表することも含めて検討したいと考えています。

小川委員 これは是非前向きにお願いします。より精緻に見ていく環境づくりを是非お願いしたいと思います。

 それから、五類になった後、私はいろいろなことを想像するんですが、あらゆる矛盾がどこに集約されるかと考えたときに、恐らくなんですが、救急搬送困難事案に行き着くんだろうと、ちょっと勝手ながら想像しているんです。

 つまり、医療機関は今まで、発熱外来あるいは別の動線確保等々、非常に、かえって二類相当であることが医療提供体制を制約している面がありました。病院が十一万あるのに四万しか対応しないとかも含めて、医療提供体制に、随分この二類相当の指定が負荷となってきた面がある。したがって、これを五類にすることで、そこの制約が解除される可能性もあると思っています。

 片や、仮に感染が広がった場合、まあまあ、二、三日自宅でおとなしくしていればよくなりましたという分には、これはそれこそ一般の風邪やあるいは軽度のインフルエンザと変わらないわけですから、さほど大きな社会的混乱、社会的抑圧につながらなくて済む可能性がある。

 ということはなんですが、医療提供体制が十分に、潤沢に機能しているかというこちら側の側面と、感染が広がる広がらないもありますが、どの程度重症化し、高度救急、救急医療、高度医療を要するニーズが増えるか、その需給バランスが最も激しくせめぎ合うのが救急の現場に最終的にはなるんだろう。ということは、救急搬送困難事案をこれから今まで以上にウォッチしていくということが、五類以降、感染者数とか死亡者数とか医療提供体制を直接ウォッチする対象から、やや目を離し始めますので、やはり、救急搬送がうまくスムーズにいっているのかどうか、これをしっかりウォッチしていくことが、実は五類移行後、一番大事なことであり、逆に言えば、矛盾がある場合はここに集約されるんじゃないかということを、ちょっと勝手ながら想像しています。

 したがって、お尋ねしたいのは、お尋ねというのかな、リクエストなんですが、救急搬送事案をこれからこれまで以上に、五類以降はなお、間接的で死活的なウォッチ対象としてよく見ていきますという御答弁をいただきたいんです。

加藤国務大臣 今御指摘のように、今回、報告が上がってこないということになりますから、これまでのような形での感染あるいは死亡者数等の把握ができない。しかし、その分を、今お話があった救急搬送事案、あるいはG―MISによる入院状況、あるいはゲノムサーベイランスによるウイルスの進展、こういったものをしっかり見ながら、まさに重層的に把握していく必要があるというふうに思います。

 救急搬送事案は、確かにこれまでも、特に入院が逼迫をしていく、あるいは発熱外来そのものもかなり厳しくて、そこに行くべき人が救急車を呼んで、結果的に救急車が満杯になるので、厳しい人たちがより厳しくなっていく、いろいろなそうした状況もございました。そういった意味では、全体の状況をつかまえる一つの指標であることは間違いないと思いますので、これは、厚労省が直接取るわけではありませんが、よく消防庁とも連携しながら、そうした情報を入手して、そうしたものも入れて、実態をしっかり把握していきたいと考えます。

小川委員 これも本当に是非お願いしたいと思います。

 どうも、私が確認した統計ですと、コロナの感染確認がされた二〇二〇年初頭は大体、一週間に千件前後。第四波以降、かなり大きな波になっているわけですが、波によっては一週間で六千件、七千件、最大で八千件余りの救急搬送困難事案が確認されているようであります。ですから、このまま平時に移行すれば、それは一番いいことなんですが、仮にそうでない場合を想定するときに、この救急搬送困難事案がどのくらいなのかというのは、非常に重要な指標としてこれまで以上にウォッチしていただくことをお願いしたいと思っています。

 最後に、私は、この五類移行後、非常に大きな宿題としてむしろ今までより大きく残るのが、後遺障害対策と、そしてワクチンの副反応対策。これは被害救済も含めてです。これは、五類に移行しようがしまいが、この事案の宿題の重さ、抱えている課題の量、これは全く不変ですので、むしろ、現場の当面の対応に少し仮に余力が出るとすれば、この被害救済の方にある程度精力を集中していただかなきゃいけないのが五類移行後の姿ではないかということを感じております。

 そこで、お尋ねなんですが、まず、これは事務的な答弁で結構です。ワクチンの副反応に絞りましょう。現在の被害救済の申請件数と承認件数、これをちょっとまず確認するところから始めたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 現在の被害救済の厚労省への進達受理件数は合計で七千二百二十二件、また、このうち認定された件数は二千二百六件となっております。

小川委員 七千件の申請があって、二千件決着しているということですから、五千件が積み残しになっているということです。

 これは事務的にお聞きしましたから局長の耳にも入っていると思いますが、申請してから最も待たされている人は、どのぐらい待たされていますか。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 一番長い方は、進達されてから約一年半お待ちいただいております。

小川委員 ということなんですよ。一年半待たされている。

 この間、党の部会で、突如として例えば息子さんを亡くされた、あるいは旦那さんを亡くされたという遺族の方のお話もお聞きしました。大変に悲惨といいますか。やはり、共通して、どういう審査体制で、どのぐらいの迅速さと、あるいは誠意を持って対応いただいているのかには、非常に大きな疑問をお持ちでありました。

 今、最長一年半待たされている、そして五千件の積み残しがあるという状況で、今までのペースを前提にすると、これも局長から御答弁いただければと思いますが、審査するのにどのぐらい時間がかかる見通しですか、この五千件。

佐原政府参考人 今、見通しというのは明確に持っておりませんけれども、現在、非常にたくさんの申請を毎月いただいておりまして、これに対して、審査に回せる数がこれまでは非常に少なかったわけですが、今は、いろいろ増強いたしまして、申請している数よりは多い件数を審査に回す、つまり、積み上がってきたものをだんだん減らす方向になってきております。

小川委員 大臣、御存じかどうかあれなんですが、ちょっと、問題点を指摘したいのは、大臣は当然御存じだという前提で申し上げますが、予防接種審査分科会というのがありますよね。そこで重篤なものや死亡案件は審査しているとお聞きしています。それ以外のものについては、別途、部会を二つ設けられた。ですから、私が今回一番申し上げたいのは、一億人に打たせた、半ば強制的に打たせたワクチンですから、半ばね。一億人が二回も三回も四回も打っているわけですから、この副反応への審査体制が平時の体制であってはならないということです、一つはっきり言えることは。有事の対応をしたわけですから、救済も有事にふさわしい体制を取るべきだということです。

 しかし、部会を設置して体制を強化したのが、一発目が二一年の九月です。二一年の一月からワクチンを打ち始めています、物すごい勢いで。特別に部会を設けたのが二一年の九月、一発がね。部会を二つ設けているんですが、二発目を設けたのは二三年の一月なんですね。ワクチンを打ち始めてから丸二年、被害の救済申請が六千件たまったところで、ようやく二つ目の部会を設けている。

 大臣、ちょっと、御存じかどうかお聞きしましょうか。この部会が月に何回行われ、一回当たり何件審査し、何時間ぐらい会議をしているか。大臣、御存じなら御存じと、御存じないなら御存じないと、ちょっと御答弁いただきたいんですが。

加藤国務大臣 まさに委員と同じ、私は問題意識は持っておりまして、特に、ずっと、国に上がってくるものがどんどんどんどん積み重なっていって、まずこれを解消しなきゃいけないということで、様々な対応をさせていただきました。

 そういった中で、開催頻度も、当初二、三か月に一回から、令和四年の四月からではありますけれども、月一回に増加する。また、先ほどあったように、部会を、さらに、二部会を設置する等の機能強化を図ったところでございまして、先ほど局長から答弁したように、現時点では上がってくる以上の処理はできるという状況にはなってきていますけれども、これを更に速めていく努力はしていかなきゃならないと思っていますし、御指摘のように、私どもが、強制をしたわけじゃありませんが、推奨してこうして進めてきたわけでありますから、ワクチンの接種に伴う被害救済、これをできるだけ速やかにやっていくというのは私たちの責務だというふうに思っています。

小川委員 詳細を御存じかどうかあれですが、月に一回開いていただいている部会で、一部会、二百件ぐらい審査しているんだそうです、二百件ね。その部会の時間が三時間、百八十分なので、単純計算ですが、一件、一分で審査しているということです。もし仮に、一部会、月に一回、一回二百件だとし、二部会あるので月に四百件の審査ができるとすると、積み上がった五千件を審査するのに、なお一年以上かかるということです。既に答弁があったように、今待っている人は最長一年半待っていますから。

 という状況を前提にすれば、部会は二つじゃ足りないでしょう。三つ目、四つ目。二類から五類に移行し、当面の、目下の対応に追われることから少し解放される厚生労働省としては、ワクチンの副反応被害救済により注力をするという意味では、部会を三つ目、四つ目、少なくとも今の倍ぐらいにしないと。それでも半年かかるわけですから、是非対応をお願いしたいと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、上がってきたもの以上の処理というところまで来たわけでありますが、更にそれを進めていく必要、それは私も認識をしております。

 その上で、どういう進め方があるのか。これまでもかなりの数をこなしてきましたから、かなり類似で判断できるものも出てきているというふうに承知をしていますので、委員御指摘のように部会を増やすというやり方なのか、もっと手前でより処理をして部会に具体的にお諮りをしなきゃいけないのと、こういった形で承認をいただくものと、そこの峻別をするとか、いろいろなやり方があろうかと思っていますが、いずれにしても今でいいとは全く思っていません。

 スピードを上げてより促進し、ただ、一つあるのは、個別によっては少しかかるものも中にはあるんだろうと思いますので、しかし、全体としてスピード感を上げて処理をしていきたいというふうに思います。

小川委員 是非、力強い御答弁に期待したいと思います。本当にこれは結果を出していただきたい。

 ただ、三時間で二百件、百八十分で二百件、一件、一分も審査していないということは、よく言えば、おっしゃったように、ルーティン化されて、ある程度類型化されて、大量処理できる環境が整いつつあるというふうにも取れるし、しかし悪く言うと、真面目に審査できているのかと。一件、一分、どれも重篤な健康被害でしょうから、ちゃんと審査できているのかという心配もあります。

 ですから両サイドから、速ければいいというものでもないだろうし、当然、遅くて積み上がるようじゃ話にならないし、もちろんそのバランスだということなんですが、ただやはり、これだけの有事で、これだけ国策としてワクチン接種を進めたにしては、被害救済の体制が僅か二つ部会を積み増しましたで終わっていること自体、現に五千件積み上がり、なかなか被害の救済の連絡あるいは途中経過の報告もないと遺族の方々は相当やきもきしておられますので、これにはやはり誠意を持って応える体制なり取組、これは改めてお願いをしたいと思います。

 最後に、五類に移行した後、申し上げたような救急搬送、そして後遺症、副反応対策、そして累次の適時の状況把握、その発信、そして学校や勤務先、様々対応がスムーズに移行していくことを願いたい、望みたいと思いますし、これといった大きな感染拡大や大きな社会的活動停止のようなことはもちろん望んでもおりません。このまま平穏を取り戻していけるのが一番いい。

 しかし一方で、厚生労働大臣としては、やはり突如としての強毒性に関わる変異や、あるいは別の形での感染症ももしかしたらあり得るのかもしれません。ちょっとそれを言い始めると切りがありませんので、コロナの強毒性を帯びた変異に一応備える、警戒心を怠らないということは必要だと思うんですね。

 それについては、五月八日以降、どういう体制なり、あるいはどういう心構えで新たなる変異の脅威や感染拡大の脅威には備えていくのか、その点を最後にお聞きして、質問を終えたいと思います。

加藤国務大臣 これまでもそうでありますが、今後とも、コロナウイルス、非常に変異すると言われているわけであります。これまでの変異はどちらかというと感染力が高まる形での変異ではありましたが、今後どう変異するか分かりません。

 そのためにも、まずは、各国において流行しているウイルスも実は様々でありますから、そういった情報をしっかり入手をしていく。それから、引き続き水際の体制も、五類移行に伴って変わってはきますけれども、そういったところにおける、あるいは国内も含めて、ゲノムサーベイランス等しっかり実施をしていくことによって、今何が起きているのかということをしっかり把握をしながら、そして必要な対応を取っていきたいというふうに思っています。

小川委員 ありがとうございました。終わります。

三ッ林委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、一般質疑ということで、自由にテーマを選びまして、一つは介護の問題、それから二つ目は障害者福祉の問題、自立支援の問題、そして、三つ目が子供のいない単身者の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。時間があれば、ワクチンコールセンターの体制縮小の問題についても伺いたいと思います。

 まず、介護について、特に介護や福祉で働く方の賃上げについて伺いたいと思います。

 私が国会議員になって二年目の平成二十六年に、山井さんとか大西さんとかと一緒に、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案というものを議員立法で提出をいたしました。当時は、介護、福祉従事者の月額賃金が全産業平均から約十万円も低いということや、あるいは、介護職員の有効求人倍率が当時一・八二で、全産業平均の二倍も高かったということ、また、家族の介護のために仕事を辞める、いわゆる介護離職が五年で四十九万人に上ったということなどを法案提出者として本会議場で答弁をし、介護、障害福祉で働く方の賃上げを求めたわけであります。

 最終的には、全会一致の委員長提案として、当時後藤委員長だったと思いますが、法案を通していただき、その後、平成二十七年、それから二十九年、そして令和元年の三回にわたり、介護、障害福祉の処遇改善加算が上乗せ、拡充をされたわけであります。

 介護職員の賃金は順調に上がり続けてきましたが、全産業平均との月十万円の差はどれだけ縮まったのか、配付資料を持ってまいりました。

 配付資料の一ページ目を御覧ください。

 職種別の役職者を除いた平均賃金の推移のグラフであります。手当やボーナスも含めた年収を十二で割った月額賃金が年ごとに書かれています。左端の平成二十四年には、全産業平均が月三十五万円に対し、介護職員は二十五万五千円で、九万五千円の差がありました。一方、右端の令和二年は、これは全産業平均の役職者の取り除き方が大きく変わって、がくっと下がって、比較対象に全くなりませんので、令和一年で比べますと、全産業平均が月三十七万三千円に対し、介護職員は二十八万五千円で、八万五千円の差となっております。残念ながら、全産業平均と介護職員の月額賃金の差は、九万五千円から一万円しか縮まっていないわけであります。

 大臣に伺いますが、介護、福祉で働く方の賃金アップを更に進め、早急に介護、福祉従事者の年収を全産業平均並みにすべきではないでしょうか。

加藤国務大臣 これまでやってきた実態をどうやって把握するかという話、また後で委員から御議論があるんだろうと思いますけれども、それはちょっと横に置いておいた上でですね。

 介護従事者の処遇を改善するということは、まさに介護人材を確保する上でも大変大事な課題であるというふうに考えております。そして、これまでも累次の処遇改善に取り組んできており、その結果として、今お話のあったような給与の差も縮小していると承知していますが、今般の処遇改善の措置が職員の給与にどのように反映されているか等について、令和六年度の介護報酬改定に向けた議論の中でしっかり検証していきたいと考えております。また、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、費用の使途の見える化を行いながら、介護の現場で働く方々の処遇改善、あるいは業務の効率化、あるいは負担軽減、こうしたものに取り組んでいきたいと考えています。

井坂委員 政府の厚生労働白書によれば、有効求人倍率は令和三年で全産業平均が一・〇三に対して介護は三・六四倍と、私が議員立法を提出した九年前より更に有効求人倍率が二倍の人手不足に悪化をしているわけであります。また、障害者福祉の有効求人倍率も、厚生労働省の職業情報紹介サイトで三・六というふうに書かれていました。同じ程度であります。また、訪問介護員については、事業所の二九%が人手不足、そして二五%は大いに人手不足と答えており、これも議員立法を提出した九年前より数値が悪化をしております。職員数を確保できなくて利用者の定員を減らす施設もあり、人手不足により、介護サービスの供給量に影響が出ております。

 配付資料の二を御覧いただきたいと思います。今後どれだけ介護職員を増やさなければいけないかということで、政府の計画を示したグラフであります。

 これによると、二〇一九年から二〇二三年までの四年間で介護職員を二十二万人も増やさなければいけないということであります。ところが、この政府のグラフの基になっている介護サービス施設・事業所調査の基データを私が見ましたところ、二〇一九年とそれから最新の二〇二一年の数字を比べると、その二年間で僅か二万八千人しか介護職員が増えていないように見受けられます。

 大臣に伺いますが、政府のこの計画どおり、二〇一九年から二〇二三年の四年間で二十二万人の介護職員を増やせるのか、増やせる見通しなのか、お伺いをいたします。

加藤国務大臣 二〇一九年時点の介護職員数が二百十万五千くらいだったと思いますが、対して、八期の介護保険事業計画に基づき将来必要となる介護職員を推計しますと、二〇二五年度で約二百四十三万人となっているところであります。また、直近の二〇二一年度の調査結果では二百十四万九千人というふうになっているところでございますので、約三万人の増加になっています。

 こうした増加ペースで達成できるのかという御指摘でありますけれども、現状を見る限り、なかなか達成には難しい状況にあるというふうに認識しています。

井坂委員 政府も何もやっていないわけではなくて、処遇改善は累次やっていただいている。ただ、全産業平均との差はなかなか縮まっていない。そして、その結果、二〇一九年から二〇二三年、四年間でこれだけ増やすと言ったのも、前半二年間ではそのペースには遠く及ばない増加数しか確保できていないということであります。

 政府は、介護職員さんの離職率というのはうまく下げることに成功しています。辞める理由も、今は賃金の低さというのはそこでは減ってきているんですけれども、ただ、既に介護は賃金が低いのは分かった上で介護で働いてくださっている方がなお辞める理由というのは、これは人間関係が今第一位と。しかし、多くの方は、やはり介護は相変わらず賃金が低いということ、これはみんなが知っている事実ですので、そもそも介護の業界に入っていただけていないというのが現状ではないでしょうか。

 介護、福祉業界に入ってくる方を増やすためにも、やはり介護、福祉職員と全産業平均の賃金の差をしっかり縮める必要があるというふうに思います。最近は、外国人材も、日本より給料のいいアメリカとか中国とかドイツとか、最近は、さらに、韓国とかオーストラリアにも抜かれて、そちらに外国人材まで流れているというふうに報じられております。

 大臣にちょっと重ねてお答えをいただきたいんですが、総合的な人材確保策もいいと思います。ただ、やはり本丸である低賃金の問題について、これは大臣に、更に処遇改善を進めて全産業平均に近づけるとはっきり答弁をいただけないでしょうか。

加藤国務大臣 介護人材の確保に当たっては、今議員御指摘のように、処遇を改善する以外に、イメージアップや多様な人材の参入を促進をしていく、あるいはICTや介護ロボット等のテクノロジーを活用した職場環境の改善による離職の防止を図る、また、介護福祉士修学資金の貸付け等により新たな人材が入っていくための人材育成を支援する、こうした総合的な取組が必要だというふうに考えております。

 私ども、これまでも処遇改善に先ほど申し上げたように努めてきたところでございますし、また、令和六年度の介護報酬改定というものも、この年末議論されていく。そうした流れの中で、まずは、今、賃金全体が上がっていますから、それを同じように上げていかなければ差が開いてしまいますので、そういったこともまず念頭に置きながら、処遇改善を少しでも図れるように努力をしていきたいと考えています。

井坂委員 もう少しやはり認識をそろえたいんですが、もちろん全産業平均より差が開くなどというのは論外だと思います。そうならないように処遇改善をするというのでは不十分であって、やはり全産業平均との差を縮めない限りはいつまでたってもこの状況が続く。そして、大臣がお認めになったように、政府が立てたばかりの介護職員をこれだけ増やすという目標すら、このままいけば達成は難しい、明らかにそういうペースになってきているわけであります。

 また、二〇二三年、直近はっきり目標が示されているので、これに全く届かないということが分かった時点で更なる大幅な処遇改善をしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、これまでも我々、処遇改善を含めて様々な施策を予算を確保しながら進めてきたところでございます。

 今後とも、今お話がありました全体の賃金の動向はもちろんのこと、処遇改善をより図り、全産業平均並みと今おっしゃいましたけれども、それにどう近づけていくのか、これは大きな課題であることは十分認識をしておりますが、これから、先ほど申し上げた介護報酬改定等を含めて、こうした議論をしっかりやっていきたいと思っておりますし、重ねて、介護報酬加算でいろいろ仕組みをつくってまいりましたので、そうしたことも含めて、よりそれを使っていただきやすいような状況、こういったことも対応していく必要があると考えています。

井坂委員 法案も通していただき、処遇改善も累次していただいていることはよく認めております。ただ、やはり結果が出ていない。そして、それは、まだまだそれが不十分なのではないかというのが大方の見立てだと思いますので、更なる処遇改善、賃金アップを本丸としてやっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、介護離職ゼロについて伺います。

 政府が二〇一五年の九月に発表した経済政策、新三本の矢というものがありました。GDP六百兆円、それから希望出生率一・八、そして介護離職ゼロの三本柱。残念ながら、どれも達成をされておりません。

 厚生労働省の介護離職ゼロポータルサイトにはこう書かれています。二〇二〇年代初頭までに家族の介護を理由とした離職の防止等を図るべく介護離職ゼロを推進、今でもこう書かれております。しかし、介護離職は、直近の数字でも年間九万九千人ということで、私が議員立法を出した九年前からこれは全く減っていないわけであります。

 大臣、二〇二三年ももう四月下旬に入り、二〇二〇年代初頭と呼べる時期はもう過ぎております。介護離職ゼロの目標をいつ達成をするのか、お答えください。

加藤国務大臣 これまでも、仕事と介護を両立できる環境の整備が重要という認識の下で、介護離職ゼロを達成するため、介護の受皿の整備、処遇改善等による介護人材確保など、総合的に取組を進めてまいりました。

 直近でありますが、五年間で、介護しながら就業する者の数は五十五万人増加をしているわけでありますが、一方で、介護等を理由とする離職者の数は二千人の減少となっておりますから、一定の効果はあったというふうには認識をしております。

 家族の介護を理由とした離職者には、介護サービスを利用できずにやむを得ず離職する方だけではなく、勤務先の支援体制に問題があった方、介護保険制度の利用法が分からなかった方、また、さらには、御自身や御家族の希望で離職される方なども含まれているというふうに承知をしているところであります。

 こうした方を含めて、介護離職ゼロに向けて、介護サービスの受皿の整備、介護人材の確保に加えて、地域における家族介護者への相談支援の強化、介護保険制度や育児・介護休業法に基づく介護休業等の周知徹底、さらには、仕事と介護を両立できる職場環境の整備の支援、こうしたことについて、この夏に公表される令和四年就業構造基本調査の結果も踏まえて、引き続き努力をしていきたいと考えています。

井坂委員 ありがとうございます。

 団塊世代がいよいよ後期高齢者となって、要介護の方が今後ますます増えるわけであります。私の周りでも、四十代や五十代の友達で、親の介護と仕事の両立に苦労する人が増えてきています。特養というのはなかなか空いていないわけですよね。有料老人ホームは非常に高い。政府は在宅介護にかじを切っておりますけれども、親の近くには自分も含め兄弟も住んでいないというパターンもよくあります。

 参考人に伺いますが、介護者が離職をせずに在宅介護を行う、これは本当は特養に入れたら一番いいんですけれども、そうできないという現状がある中で、離職をせずに在宅介護を行うという方法が十分に用意されているのか、お伺いいたします。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 在宅サービス等による対応ということでございますが、高齢者の方々が住み慣れた地域で安心した暮らしを続けていただくためには、介護を必要とする高齢者の方のみならず、家族介護者も含めて社会全体で支えていくことが必要であると考えております。

 介護保険サービスにおきましては、御案内のとおりだと思いますが、訪問介護、デイサービス、小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問看護介護、また、今回、法改正事項でお願いをしておりますが、看護小規模多機能型居宅介護、そういった様々なメニューをそろえまして、家族介護者の負担軽減などに重要な役割を果たす在宅サービスなど、これらを適切に御利用いただくことによりまして、家族の方が就労されている時間帯におきましてもサービスを利用いただけるように、それを可能としているところでございます。

 また、市町村が設置いたしております地域包括支援センターにおきましては、家族介護者に対します総合的な相談支援を行っておりますほか、就労されている家族介護者の方の仕事と介護の両立支援のために、関係部局、関係団体、例えば、地元の企業関係者、商工サービス団体ですとか、ケアマネさんの団体ですとか、様々な連携の下で研修会、相談会といった取組も行っておりまして、厚生労働省といたしましても、その事例をしっかり周知をしてまいってきているところでございます。

 今後とも、家族介護を必要とする高齢者の方のみならず、家族介護者を含めて支えていくための必要な取組を進めてまいりたいと考えております。

井坂委員 いろいろな手段があるというのは、私も事前にかなり詳しく伺っているんです。

 ただ、例えば、私がフルタイムで働いていて、うちの親を見なきゃいけなくなったときに、私の妻が専業主婦のような形であれば何とかなると思うんですね。ただ、両方ともフルタイムで働いていたり、あるいは、後で議論するように、そもそも単身だったりする場合に、本当に、昼の時間、全部家を空けて、在宅でその間フルで見てもらえる体制が常に取れるのかというと、残念ながら、そこは大変心もとない現実があるというふうに思います。

 私、今日の昼、ちょうど遠隔医療、オンライン医療の勉強会にも出てきたわけですけれども、医療は一部何とかなっても、介護はオンラインとか遠隔ということには全く移行できないわけなんですね。ですから、要介護者の近くに親族がいないという場合であったり、あるいは遠くの親族も含めて皆がフルタイムで働いているなどの場合は、施設に優先的に入れるぐらいにしないと、介護離職はなくならないのではないかというふうに思います。

 仮に、どうしても在宅介護中心でとおっしゃるのであれば、二十四時間ケアができるという体制を整えていただく必要があるというふうに思いますから、介護離職ゼロ、これは国が大々的に掲げた国家目標の三本柱の一つですので、ちょっとでも進んでいるならまだしも一歩も進んでいないわけでありますから、これは今から、これは私は批判したいのではなくて、やはりこの質疑を機に本格的にまき直しをしていただきたいというふうに思って質疑をしておりますので、よろしくお願いをいたします。

 続きまして、障害者の自立支援について伺います。

 障害のある子を持つ親御さんとお話をすると、悩みはいつも、やはり自分がいなくなった後でこの子は大丈夫だろうかという、親亡き後問題であります。日常生活が困難で労働によって収入を得ることができない障害者に給付される障害基礎年金二級というのは、月額約六万五千円であります。この金額だと、親と暮らしている間は、ありがたい金額で、何とかなるわけでありますが、親亡き後やあるいはそれに備えて独り暮らしを始めた場合は、六万五千円だと、とても暮らせる金額ではありません。

 作業所の工賃は、月二万円からせいぜい三万円であります。それ以上働いて稼げるような方は、そもそも障害基礎年金の対象ではありません。結局、生活保護を受給するしかないということになるわけでありますが、そうなると、資産も使い切らなければいけないし、貯金も自由にできなかったり、極めて不自由な制約がつくわけであります。

 大臣に伺いますが、独り暮らしの障害者が生活保護を受給せずに生活できるよう、年金の増額や新たな給付などを検討できないでしょうか。

加藤国務大臣 障害のある方が地域で自立して生活をし、あるいは社会生活を送っていく、そのためには、障害年金などの所得保障、一方で就労支援などを組み合わせて、本人が希望する生活を実現できるようにしていくことが大変大事だと思います。

 就労を希望する障害のある方に対しては、就労継続支援や一般企業への就労を支援する就労移行支援などの就労系障害サービスの提供等により、本人の適性や希望、能力に応じた就労の実現が図られるよう支援をしているところであります。

 今お話がありました公的年金制度においては、保険料を負担する現役世代の負担が過重なものとならないよう、保険料の上限を固定し、国庫負担や積立金と合わせて、財源の範囲で給付水準を調整する仕組みを導入しているところでありますが、この仕組みの中でも、障害年金については、先ほどの数字はまさに老齢年金と同じ水準でありますが、さらに、障害一級の方については、その一・二五倍とするなど、特段の配慮を行っているところであります。

 また、年金を含めても所得が低い方に対しては、障害年金生活者支援給付金としての支給も行っているところであります。さらに、重度の障害のある方に対しては、日常生活において常時特別の介護を必要とされる方については、特別障害者手当としても支給がなされております。

 これらの施策を組み合わせて取り組むことによって、障害のある方が希望する地域で生活を続けていけるよう、しっかりと支援をしていきたいと考えております。

 なお、障害者であることのみをもって生活保護の受給が不要となる程度の年金の増額や新たな給付を行うということ、そのことは、他とのバランスもございますから、直ちにそれができるというものではないというふうに考えております。

井坂委員 事前にも担当の方と随分議論をしたんですけれども、ほかの制度とのバランスという考え方も分かるんです。

 ただ、実態として、しっかり十五万、二十万稼げるという方は、何とかそれでやっていけると思います。逆に、重度過ぎると、年金が仮に一・二五倍に増えても微々たる額ですが、重度のいろいろなものを足しても、そもそも、そこまで重度な方は独り暮らしそのものが非常に難しいという側面もあります。

 私が問題にしているのは、まさに軽度で、日常のことはある程度、助けを多少かりればできる、ただ、まさに働いて稼ぐというところはできない、障害基礎年金二級に当てはまる層のことですよね。こういう方は、グループホームとかに入れれば、家賃や食費がそこで節約できて何とかなるわけですけれども、今、グループホームも、昨年末に通った法律で、どちらかというと、独り暮らしへの、自立支援が強化された方向であります。ぽっかりちょっと穴が空いていると思うんですね。

 生活保護だったら、それはそれで成り立つんですよ。しっかり十五万、二十万稼げるんだったら、それはそれで成り立つんですよ。その間の人が、そこまでは稼げない、年金だけだと六万五千円、生活保護をもらえばいいと言うけれども、それだとそれでいろいろ制約がかかってくる。その間のところは、やはり事実として暮らせない層がいるので、これは何か考えていただきたい。すぐにここでお答えいただける話か分からないですが、やはり一遍考えていただきたい、そういう方々がいると。自立ということを考えたら、そういう層の人たちを何とかしなきゃいけないということでありますから、これは是非、大臣にもお考えをいただきたいというふうに思います。

 障害のあるお子さんはやはり収入面で厳しいので、親御さんは少しでも財産を残そうとするわけであります。その財産をお子さんが管理するのが難しい場合が多いですから、普通であれば、成年後見制度を使うことになります。ただ、成年後見には、月二万円、財産が多ければ三万、四万とかかってくるので、仮に親が六十五歳で子供が三十五歳、親がもうそろそろ、自分が認知症とかにならないうちにと思って、大体子供が三十五歳のときから成年後見を使い始めると、そこから年間二十四万円、子供が七十五歳になるまで、四十年間で実に一千万円、成年後見の手数料だけでかかってしまうわけであります。

 ということは、子供に残す財産が一千万や二千万のときには、成年後見制度を使うというのは全く現実的ではないということですから、じゃ、何かほかの方法はというと、社会福祉協議会がやっている日常生活自立支援事業というものがあります。これは、障害者の日常的な財産管理をしてくれて手数料も安い、ありがたい制度であります。ただ、ネット上での支払いに対応していなかったり、あるいは、障害者本人がもうこの制度を使うのをやめたいと言えば、財産管理が打切りになってしまったりという問題があって、ひどい場合には、障害者の財産を狙う悪い人に唆されて財産管理を打ち切ってしまうおそれも、親御さんからするとあるわけであります。

 参考人に伺いますが、障害者の財産管理のために、解約ルールとかネット対応など、日常生活自立支援事業を強化、改善をしていただけないでしょうか。

川又政府参考人 お答えします。

 日常生活自立支援事業では、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などの判断能力が不十分な方々が地域において自立した生活を送れるよう、支援をしております。具体的には、福祉サービスの利用のための各種手続、日常生活上の消費契約、住民票の届出など行政手続に関する援助や日常的な金銭管理などを、社会福祉協議会との利用契約を締結することによって実施をしております。

 今、お話のありました利用契約の解約ということでございますけれども、これは民法上の委任契約でありますので利用者からの解約というのは可能でございますけれども、仮に本人の意思に疑義を感じた場合などにおきましては、社会福祉協議会に設置されております契約締結審査会、専門家から成る審査会の助言を求めるなど、支援が必要な方々が不利益を被ることがないよう、運用上配慮をしているところでございます。

 また、ネットバンキングというお話がございましたが、通常の預貯金の場合ですと、例えば、預金通帳と届出印を会計責任者と出納責任者が別々に管理する、あるいは複数の目でチェックするなどの対策を取っているところでございますが、一方、ネットバンキングの場合には、不正防止あるいは利用者の保護といった観点からどのような具体的な手続とすべきかなど、現状では課題が多いものと認識をしております。

 今後とも、日常生活自立支援事業の適切な実施を通じまして、地域で生活する判断能力が不十分な方々が地域で尊厳のある自立した生活ができるように支援をしてまいりたいと考えております。

井坂委員 この問題も、実際に、五百万や一千万、親御さんが財産を残したときに、成年後見は全く使えない、社協にお願いするしかない。ただ、幾つかやはり改善をしていただきたいことがありますし、今の制度だとやはり問題が多少残るので、これは改善を何とか考えていただきたいというふうに思います。

 次に、もう一つ、障害者に対する手当や補助金の所得制限について伺います。

 親の所得に関係なく子育て支援をするために、我々は児童手当の所得制限撤廃を長年訴えてきたわけであります。同様に、障害のある子に対する特別児童扶養手当についても所得制限を撤廃すべきだというふうに考えます。障害児を持つ親御さんは、特別児童扶養手当だけでなく、このほかにも、障害児福祉手当、特別支援教育の学用品の経費、通所支援や障害福祉サービスの自己負担の減免、補聴器や電動車椅子などの補装具の自己負担、それから自立支援医療など、ありとあらゆる政策に所得制限のラインが設けられているわけであります。

 例えば、百万円の電動車椅子が、自己負担上限の三万七千円で済むのか、それとも百万円全額払わなければいけないのか、もう大きな違いであります。一定の所得以下なら、全てが安く済んで、手当までもらえる。一方で、一定の所得を超えると、手当ももらえず、全てが自己負担で、差があり過ぎるという状況があります。

 大臣に伺いますが、特別児童扶養手当や障害児福祉手当、また障害福祉サービスや補装具の自己負担など、全て同時にとは申し上げませんが、一部でも所得制限を撤廃していただけないでしょうか。

加藤国務大臣 特別児童扶養手当や補装具費支給制度を含めて各制度の所得制限の在り方については、個々の制度の目的、支援方法などに応じてそれぞれ判断されるものであります。

 特別児童扶養手当は、精神又は身体に障害を有する児童の生活の安定に寄与するとともに、これらの児童の福祉の増進を図るとの目的に照らして必要な範囲で支給することとしており、制度発足時から所得制限が設けられております。

 また、補装具費支給制度においては、高所得者には全額御負担いただくこととしていますが、それ以外の場合は、所得に応じた自己負担額を設定し、過剰な負担にならないようにしているところでございます。

 こうした所得制限、利用者負担については、制度の持続可能性や公平性などを踏まえて設定しているものであり、委員御指摘の所得制限の撤廃については、制度の目的や他制度との関係も含めた慎重な議論が必要だということを従来から申し上げさせていただいているところでございます。

 その上で、今般、こども政策担当大臣の下で取りまとめられた子供、子育て政策の強化に対する試案では、障害児支援において、児童発達支援センターの機能強化による地域における障害児の支援体制の強化など、支援基盤の拡充を中心に速やかに取り組むことに重点を置いて進めていくというふうに承知をしております。

 こうした政策を含めて、障害のある子供さん、あるいは子供さんを持っておられる御家庭、あるいは障害のある方々に対する支援、こうしたことをしっかり進めていきたいと考えています。

井坂委員 大臣、一つ一つの政策は理由があって、バランスを取って所得制限を設けたんだと思うんです。ただ、やはり障害児福祉の場合は、そういう政策がもう五個も十個も積み重なって、この所得制限が、全ての手当、補助や減免を合わせると、所得制限がかかる世帯とかからない世帯でとてつもない極端な差がつく。この現実を、ちょっと大臣、一遍計算してみられたらいかがでしょうか。単品の政策だったら、まだ今の御答弁でも理解はできるんです。ただ、全ての政策にそういう発想でやっていると、全部もらえない家と全部もらえる家で、所得の差よりはるかに大きな支出の差が出ているんだということ、ちょっと一遍、その実態把握ぐらいしていただけないですか。

加藤国務大臣 今、先ほどおっしゃられた特に補装具においては、かなり価格の高いものが、先ほどありましたように百万オーダーのものもあったと承知をしております。そうした実態があることは十分承知をしているところでありますけれども、一方で、先ほど申し上げた、これまでの元々の制度のたてつけ、そして制度発足当時からの運用、こうしたことを踏まえて今日に至っているということでございます。

 今委員御指摘がございましたから、私自身もいろいろとそうした状況は把握はしたいというふうには考えておりますが、それと制度そのものをどうするのかというのはまた別の議論だろうというふうには思っております。

井坂委員 大臣、そんな、最後、変な予防線を張らないでほしいんですよね。まず調査をして、虚心坦懐にその結果をかみしめていただきたいと思います。

 次に、子供がいない単身者の増加について伺います。

 配付資料の三番を御覧ください。

 左のグラフは、五十歳まで未婚だった人の割合です。生涯未婚率と呼ばれている数字です。右肩上がりに伸び続けて、二〇二〇年は、女性の一七・八%、男性の二八・三%が一生未婚であるというふうにされています。右のグラフは、五十歳まで子供がいない女性の割合、生涯無子率と呼ばれる数字であります。日本は、この十年で各国を抜き去って、二七%の女性が一生子供を持たない、あるいは持てないという、世界一の数字になっております。男性の生涯無子率は更に高く三八%で、男女共にぶっち切りなわけであります。これらの方々が十二年後には六十五歳となり、その後は、高齢男性の三八%、高齢女性の二七%が子供がいないという社会に突入をしていきます。

 大臣に伺いますが、子供がいない単身高齢者が今後増加して、高齢者のやがて三割、四割を占めてくるということについてどのような問題意識をお持ちか、お答えください。

加藤国務大臣 単身世帯というのと、子供がおられる、おられない、これは必ずしも一致はしていないと思います。中にはもちろん子供さんと御一緒に住んでいる世帯もありますし、いろんな事情で別々に住んでおられる方もいらっしゃいます。

 そうした点について、昨年十二月の全世代型社会保障構築会議報告書では、高齢期はもとより、全ての世代において独居者が増加をし、二〇三五年頃には、孤独、孤立の問題も深刻化するおそれがあるとの指摘がなされているところであります。

 独り暮らしが直ちに生活の困難をもたらすと短絡的に結びつけているわけではありませんが、それぞれの状況によっては、社会的孤独、孤立や生活の困窮といったリスクがあると考えております。個別の状況に応じて活用できる、あるいはリスクに応じた施策を講じていく必要があると考えています。

 高齢者の経済不安に対しては現役から備えるということで、被用者保険の適用拡大を通じた年金給付の確保、あるいは若年期からの経済基盤を確保するための同一労働同一賃金の遵守等の徹底等々、さらに、高齢期に入り低所得により厳しい生活を送られている方々に対しては、社会保障制度全体で総合的に支援をしていくということで、年金生活者支援給付金の支給などが行われているところであります。

 さらに、社会的孤独、孤立の防止という観点からは、住民一人一人が地域社会とつながりながら安心して日常生活を送ることができる地域共生社会の構築が重要という認識の下で、いわゆる重層的支援体制整備事業、あるいは電話、SNSを活用した相談支援、こうしたことを進めているところであります。

 全ての世代にとって安心できるような社会の構築に向けて、今申し上げた取組を通じて、そうした全ての世代にとって安心できる全世代型社会保障の構築、まさにこれを図っていきたいと考えています。

井坂委員 大臣、独居というのは、独り暮らし、でも遠くに子供がいるというパターンが多いわけですね。でも、独居という話と、今日私が問題にしている子供がいない高齢者、特に単身の高齢者の問題はやはり一段階、違うわけであります。

 子供がいないと、高齢になって親兄弟がいなくなれば、まさに天涯孤独という状況になります。社会保障でよく自助、共助、公助といいますけれども、そのうち自助というのは、実は子供やその配偶者が助けてくれることが前提になっているわけであります。自助といったって、病気や要介護の高齢者が自分自身を助ける、助けられるというわけではありません。海外では、一部、独身者向けの住宅政策などを用意している国もあるようですけれども、大臣、これは間違いなく日本が世界で最先端を行っている問題でありますから、子供がいない単身者のための社会保障政策というのを今から考える必要があるのではないでしょうか。最後にそれだけお伺いして、終わりにします。

加藤国務大臣 子供がおられないということに伴う事情もあると思いますし、必ずしも子供がおられるからといってという、そこは、その辺をどう整理するのかなということを思いながら、ちょっと先ほど答弁はさせていただきました。

 もちろん、子供がおられない単身高齢者において様々な課題があることはそのとおりだと思います。それに対して、こうした公的な制度、あるいは地域にもよりますけれども、地域の中でお互い支え合っておられるというところもあるわけであります。まさにそうした様々な対応が行われていける社会をつくっていく、そして、自然に任せていたってといいますか、それでは足りないところは、我々、しっかり政治の責任で補っていく、これは今お話にあった課題だけではなくて、一つ一つの課題についてそうした姿勢で取り組んでいきたいと思います。

井坂委員 終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は、大臣、そして羽生田副大臣もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 様々なことを質問してまいりたいんですが、まずは、海外臓器移植ツーリズムに関して、大臣と議論していきたいと思います。

 今年の二月、NPO法人難病患者支援の会が仲介した海外での臓器移植で、売買された臓器が使われた疑いがある問題で、NPOがベラルーシでの移植を無許可であっせんした疑いが強まったとして、警視庁がNPO理事長を臓器移植法違反、無許可あっせん容疑で逮捕したと報道されました。その後、この容疑者に関しては、別の移植に関連し再逮捕されたとの報道もされています。

 我が国は、国内の臓器移植数は臓器移植法が施行されても依然として低い水準が続いています。これは日本人の死生観なども影響していると思いますが、同時に、国民への啓発がまだまだ不足している部分もあるんだと思います。

 今回の例でいえば、移植を受ける国の医療水準が必ずしも高いとは言えず、しかも、熟練の医師ではなくて、あえて言葉を選ばずに言えば、人体実験的ともいうべき、ずさんかつ未熟極まりない医療の結果のように見えます。

 海外を見れば、アメリカはもちろんですが、アジアでも、例えば、インドのアポログループ、タイ、マレーシア、シンガポール等、移植医療において非常に高い医療水準の医療機関がある国もある一方で、一部の国では臓器の出自が問題になる場合も、大臣、あるわけであります。

 そもそもの話として、臓器移植法の無許可あっせんは海外での移植も適用されると承知しています。とすると、厚生労働省は、海外で移植を行う悪質な医療機関などを把握するなどし、かつ、そのような医療機関へのあっせんを行う業者を厳重に取り締まるべきだと考えます。厚生労働省として、このような移植をあっせんする悪質な仲介業者に関する規制について、どのように行っているのか、大臣、お答えください。

加藤国務大臣 まず、公正、適正に行われるべき臓器のあっせんについて、今般、NPO法人難病患者支援の会が無許可で行ったとし、法人の理事長が起訴されたところであります。業として行うべき臓器のあっせんを無許可で行ったことが事実とすれば、これは大変遺憾な事態と考えています。

 また、臓器移植については、臓器移植の国際的な原則であるイスタンブール宣言において、国内の移植医療の推進に努めるべき旨が規定されております。渡航移植を全面的に禁止するという国際ルールはないと承知しており、我が国からの渡航移植を禁止する規定もないところであります。

 今御指摘の点でありますが、厚労省としては、今回の事案も含めて、関係学会と連携し、まずは四月上旬に医療機関を通じた渡航移植に関する実態調査、これをやろうということで進めているところであります。

 今後は、その結果も踏まえて、関係省庁と連携し、これまでの臓器移植の課題も分析した上で実効性のある対策を検討していきたいと考えておりますが、今回の臓器移植法そのものが議員立法であるということもございます。そういったことも踏まえて、どういった対応ができるかについては、国会等ともよく相談をして進めていきたいと考えています。

吉田(統)委員 ありがとうございます、大臣。

 イスタンブール宣言、大臣今おっしゃっていただきました。大臣よく御存じだと思いますが、イスタンブール宣言は、移植の恩恵は、世界中の貧しく弱い立場にある人たちに危害をもたらす非倫理的行為や搾取的な行為に依存することなく、最大化され、公平に、それを必要とする人々に分配されなければならない、臓器提供や臓器移植の専門家と関連分野の同士たちの決意を表明するものであると書いてありますよね。

 ただ、我が国はやはり、今、大臣、いろいろお取り組みいただくとおっしゃっていただいたんですが、結果的に、我が国は海外での違法な臓器売買に加担しているということも実は指摘をされているんですよね、現段階で。今大臣一部お答えいただいたんですが、改めて、このイスタンブール宣言の内容を実現するために大臣としてどのような御決意やお取組をお考えか、もう一度お願いできますでしょうか。

加藤国務大臣 一部の国において人身取引による臓器売買が行われていることなどを背景にして、まさに国際移植学会が中心になってイスタンブール宣言が採択をされたわけであります。

 このイスタンブール宣言においては、臓器取引や移植ツーリズムに関し、医療従事者や保健医療施設は、臓器取引や臓器摘出のための人身取引や移植ツーリズムの防止や対処を支援すべきであること、各国政府や医療従事者は自国住民の移植ツーリズムの防止や対処を支援すべきであるとされております。

 厚労省としても、関係学会を通じて、医療関係者に対してはそうした内容の周知も図っているところでありますので、今後とも、国際的な原則であるイスタンブール宣言の趣旨にのっとって、国内における臓器移植の推進等、これを適切に進めていきたいというふうに考えております。

 また、昨年十二月にイスタンブール宣言を支持する国内五学会が共同声明を発表され、各学会のホームページで周知するなど、医療従事者に対する周知啓発が行われているところであります。

 厚労省としても、共同声明を発表した関係学会とも連携し、臓器提供に関する正確な情報、これを発信していくとともに、国内における臓器移植の適切な執行がなされるよう努力をしてまいります。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 大臣、本当にしっかり頑張っていただきたいんですが、さっき、大臣、臓器移植のために出国することを妨げるものではないということをおっしゃっていただいたと思います。ただ、原則そうであっても、やはりこの臓器売買について、例えば新疆ウイグル自治区の住民や法輪功の信者等の臓器が強制摘出されているなんという、やはり様々な話も聞くわけであります。

 もちろん、事情があって特殊な例、例えば小児の心移植なんかは、心臓移植、なかなか日本国内ではできないですよね。アポログループの創始者なんかも、心臓移植をするためにたしかつくったというようなことも、私、昔、アメリカ時代に記事で読んだ記憶があるんですが。

 やはり、海外での悪質、違法な臓器移植を受けるために出国することは禁止すべきである、あくまでこういった悪質かつ違法な臓器移植に関してはやはりしっかりと禁止すべきである見解が、これは海外ではコンセンサスが一定程度あるんですが、大臣、ここに関してはどうですか。全てを妨げるものではない、もちろん出国した全ての海外での臓器移植を妨げるものではないということを前提に置く中でも、悪質、違法な臓器移植を受けるために出国すること自体はやはり禁止すべきじゃないですか、大臣。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたのは、現行の規定において我が国からの渡航移植を禁止する規定はないということを申し上げたところであります。

 実際、心臓移植に関しては、アメリカに渡航して心臓移植を受けておられる方もおられます。これについては、それぞれの国のルールにのっとって実施されているというものだと承知をしております。

 その上で、今悪質なというお話がありました。そうした点も踏まえて、先ほど申し上げたように、まず実態調査をやります。そして、それを踏まえた上で実効性のある対策を検討していきたいと考えているところでありますが、この臓器移植法案そのものが、議員立法で、かんかんがくがくの議論の中で成立をしたという経緯もございますので、そうした経緯を踏まえると、よく国会等とも御議論しながら進めていくべきものと考えています。

吉田(統)委員 大臣、ありがとうございます。

 それでは、ちょっと視点を変えますね。

 大臣、この悪質な、あるいは違法な海外臓器移植を受けて帰国した患者さんに対して、今度は、医療的に責任が持てないといって国内の医師が診療を断る例がやはりあるんです。しかし、移植医療というのは患者にとって一生継続します。委員長もよく御存じだと思いますが、免疫抑制剤などを、ずっと生涯にわたって、拒絶反応の発症を抑制するために使用するわけであります。

 ただ、そういった方に、手厚い医療を施すことで、当然、これによって悪質な海外臓器移植を促すようなことになってはいけないと考えます。

 ただ、このようなずさんかつ未熟、悪質な医療行為を海外で受けた患者さんに対して、通常以上の医療費がかかって、高額な医療費に対して保険が支払われることになれば、やはりそれに納得できない国民の方もいらっしゃる可能性があります。

 厚生労働省としては、このような違法かつ悪質な海外での移植という限定でありますが、これは当然自由診療ですよね。これを受けた方の移植後の免疫拒絶反応等の発症抑制、つまり免疫抑制剤の投与や、あるいは、本当に移植ってやはり何が起こるか分からないという、我々も医療の現場では見てきた中で本当に感じるんですが、移植後トラブル、本当に多いんですよ。これに対して、日本国内で今度行われる医療についてはどのように捉え、お考えなのか。果たして日本の健康保険というのは適用に基本的になるのでしょうか。大臣、お答えいただけますか。

加藤国務大臣 渡航移植後の対応については、応招義務との関係の判決があることは委員よく御承知のとおりだと思っております。結果的には、患者、そうした形で移植をされた方なんだと思いますが、その訴えが棄却されたという判決であります。

 他方で、今、実態がどうなっているかということで調査をさせていただいております。そうした実態調査では、移植に関連する学会に所属する医療機関を対象に、渡航移植後の患者が帰国後にその医療機関に外来通院している数や、その予後などを把握することとしております。

 渡航移植後の患者の帰国後の受診状況を含め、渡航移植の実態を把握した上で必要な対策を検討したいというふうに考えておりますので、ちょっと、今の時点でこうだということを申し上げるという状況ではございませんので、まずはしっかり調査を行い、その上で必要な検討を図っていきたいと考えています。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 応招義務は、必ず、医師法で規定されたものでございます。

 これは本当に難しい問題です。ますますこれからグローバルな社会になりますし、臓器移植がない中で、やはり、透析を受けていらっしゃる方から見れば、腎移植って非常に魅力的ですよね、大臣。週三回も半日以上、場合によっては寝て透析を受けなきゃいけない。透析を受けた後の、やはり、特に糖尿病の方なんかそうですが、かなり倦怠感等々も残って、そういった中でも、ただ、国内で違法とされていることを行うということは非常に問題ですし、そこに関わる医療がまた広がってしまえば、医療人材がそこに割かれるわけですから、大臣、是非、そこはしっかりとやっていただきたいと思います。

 それでは、滝山病院の入院患者虐待の実態についても大臣とちょっと議論していきたいと思います。

 精神科病棟における虐待事件はかなり前から繰り返されています。日本は、誤解を恐れずに言えば、やはり座敷牢から精神科病床が一定程度影響を受けてでき上がってきた部分も当然あるんだと思います。私が在学中の名古屋大学の医学部の精神科病床は、やはり、銀行のような非常に堅牢な鍵を開けないと入れなくなっていまして、畳でしたね、当時。当然、平成ですけれども、私が大学にいたときは。本当に畳の病床で違和感、異質な感じを受けたのを今でもやはり印象に、まあ、羽生田先生の頃はもっと古いですものね、だからもっと違った環境だったと思うんですけれども、本当にそうですよね。近代まで非常にそういった雰囲気であったのも事実であります。

 一九八三年に宇都宮市の報徳会宇都宮病院の看護職員らの暴行で患者二名が死亡した宇都宮病院事件は、これは入院患者への身体拘束や非人道的な行為が長年行われていたと。二〇〇一年には、元職員の告発によって、現在の春日部市での朝倉病院事件、最近では、二〇二〇年に職員による患者に対する虐待が発生した兵庫県神戸市西区の神出病院事件、静岡でも二つの精神科病院であったと。そして、今年に入り、八王子市の精神科、滝山病院での暴行事件が明らかになった。二月と四月に看護師が逮捕されています。

 大臣にお聞きしますが、この滝山病院における看護師の暴行事件についての実態把握をされたのか、そして今後、厚生労働省としては何か対策をされるのかをお答えいただけますか。

加藤国務大臣 まず、精神科病院における患者に対する虐待など、人権侵害はあってはならないことでありますし、本件のような虐待事案の発生は誠に遺憾であるということをまず申し上げたいと思います。

 滝山病院の事案について、現在も東京都において引き続き調査中であります。調査結果を踏まえて、東京都において、まずは適切な対応がなされるものと承知をしております。

 厚労省としても、東京都と本件について必要な情報交換を行うなど、綿密な連携を図っているところであります。

 引き続き、連携を図りながら、東京都における調査状況も踏まえ、必要な対応を図っていきたいと考えています。

吉田(統)委員 本当に、日本の精神科医療って、やはり、ちょっと欧米に比べても特殊な部分はあるんだと思います。多剤併用療法なんかをしているのは日本の医療だけと言われていますね。やはり、なるべく単剤でコントロールするように欧米はするんですが、出てくる症状に対して全ていろいろな薬を使っていくので、本当に、精神科の患者さん、特に入院されている方は多剤を使って、物すごい量の薬を、まあ、薬漬けとよく言われますけれども、そういった状況になるわけですよね。

 拘束具もやはりそもそもそうですよね。患者をベッドに縛る、身体拘束、これをされているんですが、当然、最小化するような委員会、最小化委員会の設置など患者の権利を守る取組はされていますが、やはり精神科病院での身体拘束は、統計を取り始めた二〇〇三年から増加をずっと続けて、十年で二倍になった。その後も減ることはなく、ずっと高止まっています。これはやはり、身体の拘束は人権の制約でもある、また対応によっては刑法二百二十条の逮捕監禁の罪にも当たるわけであり、当然、必要最低限度で行うべきであります。

 二〇二二年八月にスイスのジュネーブ国連欧州本部において第一回政府報告審査が行われ、その結果が総括所見として政府に示されています。その中で、我が国においては、やはり、精神科病院における障害者の隔離、身体拘束、化学拘束、強制投薬、強制認知療法、電気けいれん療法などの強制治療及び心神喪失の状態で重大な事件を起こした者の医療と治療に関する法律など、その行為を正当化する法律、これを懸念を持って観察するとされています。

 三十年ぶりに大臣告示も改定されていますね。医師の裁量を広げ、より身体拘束しやすくするようにしていることがあって、これは昨年の障害者総合支援法の審議の際にも問題になったわけであります。

 身体拘束は医師の裁量ということですが、実際、医師の裁量というより、やはり医療現場の裁量ということにはなってしまうと思うんです。医師が常にいるわけではないので、看護師含め、スタッフも含めた裁量ということになるんですが、ここはやはり、大臣としてどうでしょう。これからこの身体的拘束に関する医療側の裁量を縮減していくという動きが世界的な潮流なんですが、ここは縮減していくおつもりは、大臣、あるんでしょうか。

加藤国務大臣 身体的拘束、精神保健福祉法上は、代替の方法によることが困難な場合に必要最小限度の範囲のみで行われるとされているわけであります。その判断は、精神保健指定医の専門的知見に基づき、個別の事情に照らし行われる、こういうことになっているところでございます。法律上許容される範囲を超える不適切な身体拘束はもとよりあってはならないものであります。都道府県の実地指導の際に身体的拘束の状況を確認し、不適切な身体拘束があれば改善を指導するとしているところであります。

 さらに、やはり身体拘束そのものは、もうできるだけ少なくしていくということは当然必要だと考えております。そのため、精神科医療機関へのヒアリングも行った上で、具体的な方策、精神的拘束を最小化するための具体的な方策について検討する有識者、当事者を交えた調査研究を令和四年度、そして令和五年度にかけて実施をしているところであります。

 厚労省としては、そうしたところの議論も踏まえて、不適切な身体拘束をなくす、さらに、身体的拘束の最小化に向けて必要な取組を行いたいと考えています。

吉田(統)委員 大臣、是非本当に、少し精神科医療全体が冒頭申し上げたようにちょっと世界の潮流からずれている部分もやはりありますので、基本的に欧米なんかは開放的に治療していくことを優先をしていって、入院をなるべくさせないこともそもそも試みているところでもあります。冒頭、私がちょっと言い方は悪かったかもしれませんが、座敷牢の話を出したのは、そういった少し日本の伝統的な悪い文化というものがまだ日本は残っているんじゃないかと若干危惧をしているわけであります。

 また、多剤併用療法もやはりなるべく改めていって、単剤によるコントロール、これをやはりやっていく。やはりこういったことは、なかなか医療現場でずっと起こっていたことを変えるというのは難しいことでありまして、やはりここは大臣がリーダーシップを取っていただいてやっていただく以外にないものですから、最後お願いをして、ちょっと次の議題に移っていきます。

 ちょっとシンプルな話なんですけれども、ずっと私も、そして多分、多くの医療人が不思議に思っていることをちょっと聞いていきます。病院経営です。

 新型コロナの影響とは関係なく、ほとんどの自治体病院は、大臣、赤字経営ですよね。税金が投入されている場合がほとんどです。そのほかの中核病院も、公的病院や様々であるわけですが、中核病院は赤字体質、同様です。この赤字体質は、そのままやはり勤務医などの病院で働く方々の処遇に影響するわけです。だから、やはり勤務医が時給にすると本当に最賃以下になってしまいかねない、安月給で働いているという現状があるわけであります。

 特に、もっと言うと、大臣、管理者である病院長や幹部の給料は結構安く抑えられているんです。私も実際に経験した例ですけれども、二年目の研修医の方が、ある公的大きな病院、中核病院で、院長より高いということが、大臣、これは実際に、本当に起こっているんですよ。残業代、当直代がつきますから。先生も、委員長もよく御存じだと。本当に院長の給料って意外と安いんですよね。

 だから、これは誤解を恐れずに言うと、今や、大臣、教授もそこまで魅力がある仕事じゃなくなってきています。(発言する者あり)ありがとうございます。本当にそうなんです。大病院の院長も、本当に魅力ある地位に、大臣、ないんですよ。さっき言ったように、二年目の研修医より場合によっては給料が低いわけですから。

 大臣、御承知だと思いますが、勤務医の待遇の低さは、多くの医師がその病院や勤務医にとどまることを困難にするわけです。当然ですよね、独立開業する医師が増えてくるわけです。勤務医が減って開業医が増えるというのは、大臣、以前、二〇〇七年、二〇〇八年、二〇〇九年と医療崩壊が起こりかけていましたよね。医療崩壊を助長するのはもちろんですが、医療経済的にも当然マイナスです、大臣。

 こういった事態を改善するには、根本の病院を赤字体質から脱却させなければならないわけであります。根本的に病院が赤字になってしまう、赤字体質の経営を余儀なくされている状況に関しては、大臣はどう思われていますか。

加藤国務大臣 まず、今お話があった、そこで勤務されている、院長も初め勤務医ということになるんだろうと思いますが、そうした皆さんの環境を改善するということが非常に大事だと思いますし、私も、個人的に聞くと、えっと驚くようなことが時々あるところであります。

 その上で、病院の経営状況については、診療報酬と補助金とを合わせた収入と、様々な費用による支出が影響しているところであります。

 令和三年度の医療経済実態調査によりますと、令和元年度と令和二年度のコロナ補助金を含む損益率を比較しますと、民間の医療法人、公立病院、そして病院全体のいずれにおいても損益率は上昇に転じているところでございます。

 また、医療給与については、全産業における平均年収が三百七十四万円であるのに対し、令和三年度の医療経済実態調査による医師の給与を開設者別に見ると、民間の医療法人が約一千四百五十万円、公立病院が約一千二百四十六万円、病院全体が千三百十五万円となっているところでございます。

 診療報酬については、もう委員御承知のように、医療機関の経営実態を把握した上で、保険料負担、患者負担、さらには物価、賃金の動向、医療費の動向、経済状況、財政状況、これらを総合的に勘案しながらこれまでも対応してきたところであります。

 令和六年度の診療報酬改定に向けた議論を進めていく中で、医療機関の収支の状況、特に、今、一方でコロナに伴う経営に対する影響もございます、他方で物価等が上がっていく、あるいは賃金等がこの春闘を含めて今賃上げという流れになってきている、そういったことも含めて注視をしていきたいというふうに考えているところでございます。

吉田(統)委員 大臣、注視はいいんですけれども、もう今も赤字ですから。

 大臣、原因は分かっていらっしゃると思います。診療報酬を相当中核病院やDPCの病院等々に手厚くしていくしか、やはり解決策はないと思うんですよね。大臣もそれはもう分かっておっしゃっていると思うんですが。

 これは、ちょっと、本当に早く手を打たないと、ある非常に優秀な、サイエンス、ネイチャー、セル、そういったところにたくさん主著論文を持つ日本人の、割と最近赴任した教授がいます。彼は、アメリカでもイギリスでも臨床医もやりながら、本当に世界的に優秀な男で、僕だったら、はっきり言ってアメリカで教授をやりますね。多分、彼だったら四億、五億の報酬を得られるでしょう。ただ、ある帝国大学の教授になってくれた。そのとき私に電話で言ったこと、先生、これは罰ゲームですと本当に言ったんです。ただ、僕は日本国を愛して、日本国の医療に寄与したいから戻ってきましたと。本当にこの志だけなんですよ、大臣。これは実話ですから。私はよく戻ってきてくださったと思いながら、本当に彼らはやはり応援して、頑張ってもらわなきゃいけないという思いを新たにもしました。

 大臣、本当に診療報酬をしっかり上げていただくこと、重要であります。

 続けていきますが、医療崩壊を防いで医療経済的にも良好な結果を促すという日本の医療体制の維持をするためには、勤務医が、本当に、ずっと勤務医でいてくださることが重要です。

 特に、消化器外科医、循環器内科医などは、過酷な勤務状況かつ訴訟などリスクが高いので、そういった診療科の勤務医師は、やはり本当にどんどん開業していきます。

 外科医は残念ながら、開業して外科医ができる方はほとんどいないですよね。肛門科あるいは消化器科、そういった形でやっていければまだ技術を生かしているわけでありまして、場合によっては内科専門になっちゃったり、整形外科という形で開業される方もいます。

 私の母校である名古屋大学でも、もう第一外科と第二外科が今度一緒になります。これは、やはりもう、医局の維持や関連病院の維持、様々なもので、帝国大学の名古屋大学ですらなかなか難しい状況になっています。

 大臣、本当にこれも、前も委員会で申し上げたことがありますが、外科医って本当に過酷なんですよ。

 朝七時ぐらいには病院に来るんです。血液ガスをやった中、七時半ぐらいからカンファレンスで、重症の患者さん、厳しい患者さん、そして手術の打合せをする。九時から外来かオペをしますよね。午後から中核病院はみんなオペに入るわけですよ。早くても五時、六時ぐらいですよね、オペが終わるの。大きな膵臓とか食道のオペが入っていると、もう夜十時、十一時まで手術をしている場合もある。その後、若手の医師は自分の持ち患者さんを診に行って、やっと家に帰れると思って、どうでしょうね、やはり十時ぐらいに家に帰ろうとして御飯を食べようと思うと、もう中華料理屋しか、大臣、やっていないですよ。

 これは本当なんです。この前も、外科医で、ある病院の医院長をやられている方と話したときに、もう中華しかやっていない、だから本当に太るんですよ、外科医、本当に。あるときなんか冗談で、僕も若いとき、先生たち外科医はみんな太っていますねと言うと、そうすると、いや先生、これは無駄に太っているわけじゃなくて、術野から鑷子が落ちるときに僕らは腹で押さえますからなんて冗談でおっしゃるんです。

 ただ、そんな生活をしながら、当然、本当に命懸けですよ。やはり、患者さんって明け方に亡くなる患者さんが結構多いんですよね。四時ぐらいに持ち患者さんが亡くなると、病院に来る。あるいは、夜中に虫垂炎の手術なんかが入ると、虫垂炎の手術を夜中にやる理由というのは、手術をする余裕がないわけです、昼に枠がなくて。だから夜中にやるわけです。これも大臣、本当に若いときならいざ知らず、なかなか年齢が上がってくると、この生活を続けるのは本当にしんどいんですよ。

 ですから、外科医は本当に絶滅危惧種とも言えます。ですから、本当に、特に、こういう危機的な診療科はやはり大臣も分かっていらっしゃると思いますよ。特に、消化器外科は本当に危機的です。こういうところは特別なインセンティブを利かせて、勤務医だったら三千万ぐらい出してあげるとか、これはもうリーダーシップを取ってやるしかないでしょう。だって、大臣、アメリカだと、フェローとかになるともう四千万ぐらいもらえるんです、当時私がいた頃で。今だと円安なので、換算すると六千万ぐらいですかね、フェローで。これがアメリカの勤務医の給料ですよ。

 日本は本当に外科医は大変だけれども、時間外手当をもらうだけで。また、今度、医師の働き方改革が始まったら、ただでさえ外科医が足りないのに外科医が働けなくなっちゃって患者さんの命を救えなくなる。そして、がんの手術が、イギリスみたいに半年手術ができないとか、そういうふうになってしまうんです。

 だから、本当に今いる外科の先生たち、外科だけじゃないですけれども、過酷な勤務をしている診療科ってもう分かっているはずです。そういう診療科の医師に対して特別なインセンティブを、大臣、利かせないと、やはり人間ですから辞めていきますよ、大臣。

 どうですか。さっきの、私が外科医の一日も話しましたけれども、それを受けてどう思われますか、本当に。

加藤国務大臣 今、外科医を希望する方あるいは外科医の数そのものが減少しているということは承知をしているところであります。それから、先ほど、海外から、米国から日本に戻ってこられたお医者さんのお話をされておりました。私も似たようなお話を聞かせていただいて、本当に気概だけで帰ってきたというその思いには大変感激をしたところであります。

 その上で、まさに外科も含めて、どんどん少子化が進んでいくわけでありますので、限られた全体の人間の資源の中でどう医療資源を確保していくのか。また、今お話が、特に診療科目別にもそうした課題がある。そのためには、今お話があった処遇ということもあると思います。さらには、タスクシフト、タスクシェアの推進や複数主治医制の導入など、医師の働き方そのものを見直して負担の軽減を図っていくことも必要だと考えております。

 厚労省としては、そうした医療機関における取組を支援するため、地域医療介護総合確保基金による支援、あるいは診療報酬における評価など実施をしているところでありますが、引き続き、お医者さんの健康、先ほど中華料理を食べて太っているというお話がありましたが、健康を守り、そして、よりよい医療を国民の皆さんに提供していただくために、医療機関における勤務環境の改善を含めて取り組ませていただきたいと思っています。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 ただ、なかなか外科はタスクシフト、タスクシェアが一番しにくいのはもう大臣お分かりだと思います、生死に関わるその瞬間はやはり医師でないとできないわけでありますので。

 医師の働き方改革、大臣今おっしゃいましたけれども、それをやると本当に外科医は足りなくなると思います。従前のように志や思いだけで医師として働いていただける方も本当に減ってきている。これは、時代に合わせた当然のことでもあると思います。ですので、是非そこは本当にしっかりとやっていただきたい。今外科医を大切にしてあげないと、本当にいなくなってしまうと思います。

 確かに、技術の進歩、腹腔鏡や様々なダビンチを始め、そういったもので手術時間の短縮、そういったものはできているとはいえども、やはりまだ職人芸である外科医としてのスキル、技術というのがないと立ち行かない診療科でもありますので、是非そこは本当に大切にしたい。私は外科医じゃないですけれどもね。私は外科医じゃない、祖父は外科医でしたけれども。外科医ではないですけれども、本当に外科医はよく頑張ってくださっていると本当に心から感謝を日々しますので、是非そこはお願いいたします。

 あえて言うと、私が一緒に診療していたあるマイナー科の先生は、部長先生は、午後になると株で遊んでいたりとか、そういう先生もまれにはいるんです。ただ、大臣、給料は一緒なんですよね、ほぼ。ちょっと、あえてそういう話も今申し上げましたが、やはり本当に国家国民のために頑張っているそういった医師にはしっかりとしたインセンティブが利くような、診療報酬だけじゃなくて様々な仕組みをつくってあげてほしいなということをお願いして、次の質問に移ります。

 それでは、ちょっと医療費、そうだ、羽生田先生も活躍してもらわなきゃいけないので、羽生田先生への質問をちょっと挟ませていただいてよろしいですかね。羽生田先生、お願いします。

 三月一日の集英社オンラインの記事で、「“東大生の官僚離れ”が加速…早慶の学生にも避けられ、厚労省若手キャリアの半数がMARCH卒レベル?「過酷すぎる労働時間」「ヒラメ幹部に嫌気」「スキルが学べない」のは本当か?」という記事が、副大臣、掲載されていましたね。

 この記事の中の東大の若手卒業生の話として、最近の東大生は、官僚として徹夜で働いても労働時間や仕事のハードさに見合った年収が得られないから、外資系企業やコンサル企業に行った方がいいと考える人間が多い、もちろん外資やコンサルも忙しいのは確かだが、年収も高いし、ビジネスで必要な知識やスキルは身につく、転職や起業といった選択肢も官僚よりよっぽど広がっているように思うという話が載っています。

 現在、就職に際しての選択肢が確かに広がっている、これはもう世界的に、グローバルにもそうなんだと思います。また、優秀な人材が在学中若しくは大学卒業してすぐに起業するなど、多様化しているのも喜ばしいことだとは思います。しかし、一方で、省庁に優秀な人材が少なくなってきているのは極めて憂うべきことだと考えます。大臣も実感されていると思います。

 同じ記事の中で、厚生労働省の若手官僚の話として、東大生の官僚離れが進んでいたとはいえ、ほんの少し前までは東大生が三、四割はいた、それがこの一年、一気に一、二割まで減っているという談話が載っていました。

 そこで、羽生田副大臣にお伺いしますが、例えば、昨年、今年の四月一日の採用の職員の方の出身大学がどんな感じになっていらっしゃるのか、ざっとでいいので教えてください。

羽生田副大臣 就職の状況ということでよろしゅうございますでしょうか。毎年データは取っているわけでございますけれども、確かに、東大というランクでいくと、少し数が減っているかなという面はあると思いますけれども、多くの大学から就職を採っているということは事実でございますので、全体的にレベルとして特別落ちているということはない、そういうふうに理解をしているところでございます。

 実際の数は、国家公務員の総合試験の合格者数を見ますと、二〇二二年の春には、全合格者数が千八百七十三人、うち東大出身者は二百十七人ということでございますので、御指摘のように一割強ということになっておりますので、そういったことが実際の数でございます。

 現実には、採用する時点での選別ということになりますけれども、厚生労働省といたしますと、やはり、管轄している業務が国民の暮らしに直接関わるという行政分野でございますので、そういった点で、やはり採用に当たっては、人物本位でやるとか、能力、適性を十分に評価して採用しているということになるわけでございます。

吉田(統)委員 副大臣、ありがとうございました。

 そうすると、もちろん、副大臣、今おっしゃっていただいた、私も先ほど申し上げた、多様性は望ましいことでありますよね。もちろん、出身大学のみが学生の優秀さを示す指標ではないですよね。ただ、学歴も学生の優秀さを評価する一つの指標では、副大臣、ありますよね。

 そうすると、一言でちょっとお答えいただきたいんですが、副大臣、今の状況は全然問題がないとお考えで、もう大丈夫だと、職務遂行に足る状況、人材は十分に採用されているという理解でいいですか、副大臣。イエスかノーかで。

羽生田副大臣 現状としては十分に近い状態であるというふうに理解をしているところでございますけれども、やはり、優秀な人材に選ばれる厚生労働省にならなければならないという、そういう評価を受けるということが非常に大事でございますので、そういった点は職員一人一人が実感をして、実際にそういった活動をしているというふうに御理解いただきたいと思います。

吉田(統)委員 くしくも今副大臣おっしゃった、魅力ある省庁であるということは大事だと思います。

 ただ、やはりレクなどで、今はZoomですけれども、お部屋に来ていただいたときにちょっと雑談をするわけですが、やはり、入省して数年で退職されてしまう方も本当に増えていますよね、副大臣。これは、仕事内容、今るる最初に引用させていただいた部分はあると思うんですが、やはり福利厚生、待遇面も問題あるんじゃないかと思うんですよ。

 やはり、聞くと、仮眠は机に突っ伏してしているとか、人間、横になって寝ないと体力の回復はやはりないですし、家に帰らなくても、仮眠室、病院なんかも、我々、仮眠して、羽生田先生も若い頃はばりばり、三日に一回ぐらい当直してシャワーも浴びる時間もなく働いて、ただ、仮眠室で寝てなんということをやったと思うんですけれども、やはりそれでも、仮眠室等で寝たり、そういうふうにリラックスできる環境。

 あるいは、一番いいのは、やはり官舎が、若手の場合は、シングルのみであれば、ワンルームとかでもいいので近くに公務員官舎があったり、自転車や歩いて帰れる距離に家があれば、やはりそういった激務の中でもしっかり頑張る素地は一定程度あると思うんです。そういったことは、副大臣、厚生労働省として、そして、もし、その後一言、内閣の人事局からもあれば、お答えいただけますか。まず副大臣からお願いします。

羽生田副大臣 ありがとうございます。

 先ほど申し上げましたように、厚生労働省自体が、やはり厚生労働省に入りたいと思っていただかなきゃならないということで、そういった努力はしているというところでございますけれども、特に働き方改革の担当省庁でございますので、そういった点では、やはり、今言われたような、しっかり睡眠も取れる、そういった時間帯での勤務というものをしっかりつくっていかなきゃいけないだろうなというふうに思っておりまして、それは十分やっていきたいというふうに思っておりますし。

 現場を知り、自らのこれまでの取組を見詰め直す機会となる地方自治体、民間企業への出向ですね、要するに、県との人事交流等々がある。そしてまた、我が国の強みであります、他国との特徴を再認識する機会となる長期の在外研修、あるいは在外公館への出向。そして、自発的なキャリア形成、あるいは成長の機会となる厚生労働独自の省内ポスト公募制度、公募制度があるんですね。そういったもので、いわゆる職員の発案による研修等を行う、これはとびラボと言われているんですけれども、職員の発案によって研修等も行っていく、そういった対応をしておりますので、言われたような努力は続けてまいりたいと思います。

滝澤政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣人事局では、若手職員も含めてアンケートなどを行っているところでございます。現職の若手職員の中には離職意向というものを持つ者もいるんですけれども、その理由といたしましては、もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたいということですとか、長時間労働などで仕事と家庭の両立が難しいといったことを挙げている者がおります。

 そのため、長時間労働を是正し、その意欲と能力を最大限に発揮できる職場づくりということが重要だと思っておりまして、そういう取組がひいては有為な人材を継続的に確保していくことにもつながるというふうに考えております。

 政府におきましては、業務効率化、デジタル化の推進で真に必要な業務に生産性高く取り組めるようにすること、上司が適切に部下の業務分担の見直しなどを行うマネジメント改革を進めること、テレワークやフレックスタイムなどを活用して時間や場所にとらわれずに柔軟に働ける環境をつくることなどの働き方改革を実施してまいりまして、若い職員も含めまして、働きやすい職場づくりに取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 今のお二人の答弁を聞いて若手官僚が奮い立てばいいんですけれども、奮い立つような御答弁だったかというと、少しちょっと疑問符が残るので、またお伺いしてみたいと思いますし、ちょっと本当に、羽生田先生がばちっと格好よくもう応援するんだと、今度は是非、メッセージを次は用意してきていただいて。ちょっと先のキャリア形成とかより、やはり今すぐそこにある待遇改善が大事だと思いますよ。今ぎりぎりで頑張っていますからね、皆さん。是非それを、次は、羽生田副大臣とまたそういった議論をしていきたい。

 ちょっと、大臣との、あと、どうしてもしたい質問がありますので。

 以前から、私、大臣に、国産医薬品、医療機器が拡大するように、政府が主導して助成を行うなど、審査においても極めて適切かつ優遇をして審査するなど、そういったことを考えてほしいと。安価で高品質、高性能な国産医薬品、医療機器のシェアを拡大するということは、当然、医療費の適正化もできますし、雇用を生んで税収を生むわけです。ペースメーカーなど、頻用かつ必須な医薬品がやはりいまだ国産化できていないということは、安全保障の観点からも非常に大きな問題であります。

 そこで、提案なんですけれども、国産医薬品、医療機器の使用に基づいて例えば診療報酬上の加点を行うなどということをすることによって、医薬品、医療機器の国産化の推進、あるいは国産医薬品、医療機器の使用を推進をするというのは、私は絶対的に有効な手段だと考えるんですが、大臣、こういったインセンティブはいかがでしょうか。

加藤国務大臣 今回のコロナのワクチンも含めて、国内でそうした開発能力、生産能力を持っていくということは非常に大事でありますし、ある意味では、経済安全保障というんでしょうかね、安全保障上も非常に大事な要素だと考えており、もう委員御指摘のように、厚労省も、あるいは政府を挙げて様々な支援措置は実施しているところでございます。

 ただ、その上で、単に国産であるということで診療報酬上何かたがえるという、その中に、効用とか効能が違えば、それはもちろん変わるわけでありますが、それでやると、いわゆるWTO協定との関係等、いろいろ課題はあるのではないかなというふうには思っておりますけれども、ただ、先ほど申し上げた、研究開発や国内における生産をしっかりしていく、あるいは、その背景として、例えばそうしたものの買上げをどうするかとか、様々な指摘もいただいているところでございますので、引き続き、国内において我が国が、創薬力というんでしょうか、そういったものを持てる、そして、今回のコロナだけじゃなく、また次に向けて進んでいく、特に、今ベンチャーが中心になって医薬品を開発していますから、ベンチャー企業の支援も含めて、しっかりと取組を進めていきたいと考えています。

吉田(統)委員 ベンチャーやスタートアップですね。欧米はスタートアップが主にもうワクチンなんかも作っていますので、ベンチャーやスタートアップを中心で。

 ただ、大臣、その一個一個に加点ということだとちょっと弊害があるかもしれないんですけれども、ほかにさっき私が、診療報酬上の、基づいてと言ったのは、それだけじゃなくて、使用状況とかそういうことを含めて、何か工夫をして加点って僕はできると思うので、それはもうやらないと、目の前にニンジンをぶら下げないと。

 あと、市場の拡大が、大臣、大事なんですよ。市場がある程度見通せないと開発できないので、国産、国内のメーカーに頑張らせたいと思うんだったら、やはり市場も提示してあげないと無理だと私は思います。

 それでは、もう一個だけ最後に質問させてください。

 大臣、ジェネリックの推進というのはもう厚生労働省挙げてやってきていますよね。これはいいんですが、ただ、先発品に比べてどうしても効能、効果が若干劣るジェネリックが存在するのは、もうこれは医療界ではよく分かっていることであります。

 ですので、国民のためには、オーソライズドジェネリック、つまり先発品と全く同じジェネリックを使用するのが最善、最良なんですよね。これは医療経済的にもそうだし、患者にとっても最も幸せであり、医師の裁量権も奪わないので、一番いいと思うんですが、このオーソライズドジェネリックを、やはり、特に国産のメーカーに相談をして協力も得つつ推進することは、非常に国益にかなうと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今委員おっしゃったオーソライズドジェネリック、これは必ずしも定義が医療法等々であるわけではございませんので、一般的には、先発医薬品メーカーの許諾を受けて製造販売される後発医薬品であって、有効成分や効能、効果のみならず、原薬、添加物、薬効等が先発医薬品と同一であるといったものを指すものと承知をしております。

 こうしたオーソライズドジェネリックも、それ以外の後発品もそうでありますが、有効性、安全性、品質が先発医薬品と同等であるとの評価の上で承認をされ、また、薬価算定等においても、特に異なる扱い、AGであるかどうかということで異なる扱いをしているわけではないわけであります。

 したがって、引き続き、それ以外の後発医薬品と同様、そうしたものの使用促進、これはしっかり図っていきたいというふうに思います。

吉田(統)委員 また是非議論させていただきたい。ただ、オーソライズドジェネリックとほかのジェネリックは根本的に違いますし、効能、効果は、厚生労働省が一番よく分かっていますが、若干違いますので、また議論させてください。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓でございます。

 本日もよろしくお願いいたします。

 先ほど吉田委員の方も臓器移植のことにつきまして御質問させていただきましたけれども、私の方からも一問だけ質問の方をさせていただきたいという形で思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 先日、予算委員会のときに私の方が質問させていただきまして、渡航移植の実態調査につきまして、四月から六月の期間の中で、まさに今実施していただいているところかと思っております。その中で、六月の調査終了後以降に、調査報告というのがどのような形、スケジュール感で出されるのかということにつきまして、一問御質問させていただきたいと思います。

 また、現在、移植学会を通じて医療機関等にこの調査をされているところなんですけれども、その調査項目といいますのはどのようなものになっているのか。そしてまた、それ以外、例えば、その他というところで、医療機関の方がもう少し詳細な形で御自分で書かれた場合には、それは調査報告にどのような形で反映されて報告されるのかにつきまして、大臣の方にお伺いをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省としては、関係学会等と連携して、医療機関を通じた渡航移植に関する実態調査、これを四月三日に開始したところでございます。同調査の回答期限は五月の十五日としておりまして、今後、厚生労働科学研究の研究班や関係学会と連携しまして、調査の回収率の向上を図るための対応や、そして回答の集計、分析などに取り組む予定としております。また、調査結果がまとまり次第、厚生労働省において調査内容を精査した上で、公表する予定としております。

 それから、御質問ありました調査項目でありますけれども、これは、例えば、診療科、それから移植後外来通院患者の各医療機関におけます総数、それから、うち渡航移植後患者さんの総数、それからドナーの内訳、これは生体ドナーなのか死体ドナーなのか、それから渡航先、また仲介団体の有無、そして渡航移植後患者の予後、その他、この中に御指摘の自由意見というものも入っているところでございます。

 また、調査項目の中の自由記載につきましては、今後、様々な御意見が寄せられることが予想されますので、委員御指摘のとおり、これは内容をよく精査した上で、そこに書かれておりますことにつきましても丁寧に対応してまいりたいと考えております。

池下委員 ありがとうございます。

 規定の項目につきましてはできるだけ早く御報告いただければと思いますし、詳細な部分につきましては、当然るるあるかと思いますので、そこについてはちょっとまたタイミングがずれても構いませんので、丁寧な対応の方をしていただきたいと思います。

 また、先ほど吉田委員からの御質問の御回答で、大臣、ありましたけれども、調査後に実効的な対策をやっていきたいということでありましたけれども、私は、前からも申し上げておりますが、加えて、これはやはり法改正というものが非常に必要なものではないかなという具合に思っておりますので、そちらの方はちょっとつけ加えて申し上げておきたいなと思います。

 それでは、次の質問をさせていただきたいと思いますが、次は、脆弱性骨折について御質問の方をさせていただきたいと思います。

 脆弱性骨折の原因、いわゆる骨粗鬆症ですね、が耳になじんでいるかと思いますが、骨粗鬆症はちょっと私の口では非常に言いにくいですので、骨粗という形で言わせていただきたいと思います。

 骨粗は、皆さん御存じのとおり、骨の密度が低くなりまして、骨が弱くなって、骨折しやすくなるという病であります。主な原因といいますのは、女性ホルモンが低下することとか、あと加齢ということが言われるかと思うんですけれども、二〇〇五年の疫学調査では、日本に千二百八十万人、男性が三百万、女性が九百八十万人の患者さんがいると推計をされております。また、骨粗を引き起こす主な場所としては、背骨であったりとか大腿骨の近位部ということで言われているところなんです。

 実は、私の祖母がまさに骨粗で大腿骨が骨折をいたしまして、寝たきりになりました。もう随分昔の話なんですけれども、寝たきりになりました。その中で、やはり医療費もかさみましたし、認知症も進みましたし、当時、介護サービスというのがありませんでしたので、非常に、家族としてでも介護をするのに大変だったと記憶をしております。

 そこで、骨粗による骨折といいますのは、骨折が治ればそれでオーケーだというわけではありません。骨がもろいわけですので、繰り返し骨折する危険があるということになります。ですので、私は、骨粗による二次骨折をいかに防いでいくのかということが非常に重要であると考えております。

 そこで、次期健康日本21に向けて二月に基本的な方針が出されたところですけれども、骨粗の検診受診率の目標値を令和十四年度で一五%という形で示されました。その中で、現状の受診率と、骨粗の疑いのある受検者の早期治療勧奨が非常に重要だと思っていますので、そのような中で、現実的な骨折予防の対策についてお伺いをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 骨粗鬆症の検診につきましては、四十歳から七十歳の女性を対象として五歳ごとに実施しておりまして、現状の受診率は五・三%と低い状況となっております。

 生涯にわたって生活機能の維持向上を図る観点から、個人が骨折のリスクを認識し、日常の生活を無理なく行えるよう支援することは非常に重要であると考えております。そのため、御指摘いただきました健康日本21、第三次のプランにおきましては、新たな目標として、骨粗鬆症検診の受診率に関しまして、令和十四年度までに一五%まで引き上げるという目標を作っているところでございます。

 今後、厚労省としては、検診受診率も含めた次期プランの目標の達成に向けまして、自治体が実施する取組の参考となるよう、周知広報を行う際の留意事項や、あるいは各自治体の好事例等を作成するなどしまして、具体的な方策をお示ししていく予定としております。

 また、次期プランの目標につきましては、令和十一年度を目途に中間評価を実施しまして、目標達成に向けた進捗状況、そして、実施してきた取組を評価することとしておりまして、骨粗鬆症検診の受診率の目標についても評価を行うこととしております。

 こうした取組を通じまして、効果的な健康づくりの推進を図ってまいりたいと考えております。

池下委員 今お答えいただきまして、令和十一年度を目途に中間評価を行うということで言われたかと思うんですけれども、先日も私、慢性腎臓病、いわゆるCKD対策で御質問させていただいた際に、CKDも二〇二八年に新規透析者の導入を年間三万五千人以下に抑えるという話がありました。あれも実際、なかなか目標達成は難しいというのがもう目に見えて分かるわけなんですけれども、しっかり中間評価をしていただいた上で、PDCAをしっかり回していただいて、受診率の達成のためにしっかりとやっていかないと、目標を出して絵に描いた餅になっては全く意味がないということで考えておりますので、そこら辺はしっかりとやっていただきたいなということで思っております。

 それでは、同じく、その続きになりますけれども、骨粗につきましては、先ほど申し上げましたように、大腿骨の近位部が骨折のパターンが多いということを申し上げましたけれども、次は、診療報酬上の大腿骨近位部に関わる二次骨折予防管理料についてお伺いをしていきたいと思います。

 こちらの方は、資料の方を準備させていただいておりますので、資料の方、ちょっとこちらを御覧いただければありがたいんですが、この予防管理料につきましては、前提が骨折をして治療を始めた患者さんのみが対象となるという点につきまして、私はこの点について問題点を感じております。

 こちらを見ていただいたら分かるんですが、二〇二二年の四月の診療報酬改定で診療報酬の加算が始まったわけなんですけれども、図の左上、急性期治療を行う一般病院ということで書いてありますが、まず、ここが骨折した後に治療として通うところになってくるわけです。ここが、まずは診療報酬の加算の対象になってきます。つまり、過去に骨折された方とか、若しくは履歴があった方とか、受検された方で骨粗ですよという方につきましては加算の対象にならないという点が私、一つ問題点だと思っております。

 そして、急性期で骨折したときに治療を行いまして、その後、リハビリテーションを行っていただいて、その後、治療している中で骨粗ですよと分かった場合には、骨粗の、骨がすかすかになっている部分を薬剤等々で治療していくという形の外来、クリニックに行っていただくわけなんですけれども、なかなか、急性期からリハビリテーション、そして骨粗の治療に至るまでの情報連携がなされていないのではないかなと思っています。

 なぜかといいますと、やはり、骨折して治っちゃうと、治ってよかったよねというところで終わってしまうと全く意味がありませんので、必ず継続的な治療につなげていただけなければならないので、是非、この情報連携の在り方についても一つお伺いしたいと思います。

 そして、先ほど申し上げましたけれども、今回の骨粗における骨折なんですが、大腿骨近位部のみが対象でありますので、背骨とか、例えばお尻であるとか、そういうところが骨折したとなっても、診療報酬の加算の対象にはなってこないというところになっておりますけれども、この点につきまして、三点ありますが、御見解をお伺いをしたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の二次性骨折予防継続管理料につきましては、先生から御説明いただきましたように、大腿骨近位部の骨折をした後の患者さんにつきまして、骨粗鬆症の治療を併せて行っていくことによりまして、二次性骨折の予防、ここにつなげていこうということでございます。

 そういうこともございまして、ガイドラインに沿って継続的に骨粗鬆症に関する評価を行って、必要な治療を早期から実施した場合の評価として、昨年四月の令和四年度診療報酬改定にて新設いたしました。

 この管理料につきましては、手術治療を担う医療機関からリハビリテーションを担う医療機関へ、そして、最終的には外来医療を担う医療機関まで継続的に骨粗鬆症に対する適切な治療を行う、ここを評価しております。したがいまして、この狙いは、やはり、こうした医療機関同士の連携強化を図ることとしてございます。

 こうした中で、先ほど先生から、疾患の対象範囲等を含めた、管理料の今後の評価の在り方について御質問ございましたけれども、まずは、昨年からスタートした二次性骨折予防継続管理料で評価している取組の状況、これをしっかり評価していく、それから、あわせまして、関係者の御意見を聞きながら、必要に応じて中央社会保険医療協議会において議論していきたい、このように考えております。

池下委員 去年、二〇二二年四月からスタートして、これから評価をしていくということで、また様々なところで検討していただくということは理解させていただきました。また、情報連携につきましても、今回の制度を入れたということも一定ちょっと理解をさせていただいたんですけれども、やはり、問題は、骨粗で骨折した方々が当事者意識を持てるかどうかというところが一番大事なわけであります。ですので、今回は大腿骨近位部が骨折された方という具合に限定されておりますけれども、是非もうちょっと枠を広げていただいて、やはり、骨折して、二次骨折した先に介護というものが待っていますので、医療費であったり介護の負担というのは非常に大きいですから、そこに、予防になるような形で対策というのをしていただきたいなと思っております。

 そこで、ちょっと一つ事例を挙げながら、対策の御提案といいますか、やっていただきたいなと思うんですが、私の地元である大阪、具体的には大阪市になってきますけれども、過去の国保のレセプト歴から、四十歳以上の骨折歴のある方を対象に、個別で、はがきで精密検査と受診の勧奨通知を行っていると聞いています。

 私、これは大変大事な取組だと思っているわけなんですが、政府は、このような取組につきまして、是非、積極的に全国展開できるようにやっていただきたいと思うんですけれども、せっかくですので加藤大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今、骨粗鬆症のお話をずっとしていただきましたけれども、骨折や骨粗鬆症の方への受診勧奨など、これはフレイル予防の推進ということにもつながるわけであります。

 厚労省としては、都道府県の担当者会議の場やホームページなどを活用して、例えば、骨粗鬆症の治療中断者や骨折の既往歴がある方をレセプトにより抽出し、該当者に対して医療機関への受診勧奨や保健指導を実施している自治体の取組など、具体的な事例を紹介しているところでありますので、それは今お話あった大阪府の高石市の事例など、掲げさせていただいております。国民健康保険では、これらの事業に要する経費を補助することによって自治体の取組を支援をしているところであります。

 さらに、令和六年度からの第四期医療費適正計画では、新たな目標として、医療、介護の機能連携を通じた効果的、効率的なサービス提供を位置づけることとしております。骨折リスクの高い方への受診勧奨のほか、骨折した高齢者の急性期、回復期、在宅での医療、介護や通院等における医療、介護の機能連携の取組、こうしたことを推進したいと考えています。

池下委員 国だけしかできないと思うんですよね。こういう様々な先進的な事例を、高石市の話も今していただきましたけれども、そういう先進的な事例を各都道府県、自治体に広めていただけるのがまさに厚労省であったりとか政府の役割であると思いますので、是非そちらの方は進めていただきたいということで思っております。

 それでは、少しちょっと変えさせていただきまして、次、医薬品の零売という問題について質問をさせていただきたいと思います。

 零売という言葉自体が余り一般的ではないということなんですけれども、薬局さんの方で、お薬を小分けであったりとか切り売りという形で少量ずつで販売されるという販売形態だという形で聞いております。この零売問題につきましては、古くからるる、問題点があるよということで指摘をされているということで聞いておりますけれども、ただ、抜本的な解決につきましてはまだまだ至っていないという形で認識しております。

 この問題につきましては、先日、立憲民主党の早稲田ゆき委員の方から質問主意書が出されておりましたし、今日見ましたところ、リスファクスというファクスの方にも、その早稲田委員の内容の方がちょっと記載されておりましたので、ちょっと私の方も拝見させていただきました。

 そこで、資料の方を御覧いただきたいかなと思うんですけれども、資料の方に、医薬品の分類というところで体系的なものを書かせていただいております。

 そもそも、医薬品の分類につきましては、平成の十四年ですかね、薬事法の改正のときまでは要指示医薬品制度というものがありましたけれども、そこはもうなくなりまして、その後、医療用医薬品の中で、処方箋医薬品というものと処方箋医薬品以外の医療用医薬品という形で大きく分類されました。

 その処方箋医薬品、これが大体三分の二、こちらにつきましてはお医者さんの処方箋が基本的に要りますよというものでありますし、処方箋医薬品以外の医薬品、ここの部分が零売であったりとか非処方箋医薬品であったりとかいうものがあるんですけれども、こちらの方が大体三分の一になっているかと思います。

 この非処方箋医薬品、処方箋医薬品以外の医薬品、零売の部分なんですけれども、通常は、医師の処方箋を必要としない医薬品と解されるかなと思います。ところが、ここがポイントになってくるわけなんですけれども、実は、政府は、この非処方箋医薬品は、処方箋や医師の指示によらず薬局で販売することは禁止されていないものの、処方箋に基づき交付することが原則であり、処方箋なしで交付することはやむ得ず販売を行わざるを得ない場合に限るという通知を出されておりまして、私の理解の中では非常に奇々怪々といいますか、非常に理解がしにくい通知が出されています。

 それなら、この図の方にありますけれども、非処方箋医薬品も上の処方箋医薬品にそもそも入れてしまって、同じルールの中で原則的にやってしまうのが筋でないかなという形で思っております。

 そこで、なぜ、この非処方箋医薬品のグループが必要なのか、みんな一緒に処方箋医薬品としてしまえば何も問題が起こらないはずなのに、わざわざ通知でこういう奇々怪々なものを出されているのか、ちょっと理解ができないんですけれども、まず、医薬品の分類の中で非処方箋医薬品、いわゆる零売が存在する理由は何なのでしょうか。そして、法的根拠のある医薬品の分類と通知は存在はするけれども、非処方箋医薬品は何を法的な根拠として分類されているのかにつきまして、加藤大臣の方にお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 分かりやすい表を作っていただいたというふうに思いますけれども、医療用医薬品、この表の真ん中の一番上でありますけれども、これは、法律上定義があるわけではありませんが、医師等による使用や処方箋等により使用されることを目的とした医薬品であり、厚生労働大臣が医薬品医療機器法第十四条に基づいて個々に製造販売を承認しているということでございますので、第十四条に別にこの医療用医薬品の定義があるわけではないわけであります。

 その上で、重篤な副作用等のおそれがある等の医薬品、これを、法四十九条に基づき、処方箋医薬品として、そうしたことを踏まえて指定をしているというのが、この右側の上と下の区別になるわけであります。そのため、処方箋医薬品については、医師等から処方箋を交付された者以外の者に対しては、薬局の開設者や医薬品販売業者が正当な理由なく販売又は授与することは、これは法によって禁じられている、こういう仕組みになっています。

 他方で、処方箋医薬品以外の医療用医薬品については、処方箋の交付を受けた者以外の者に対する販売又は授与を禁止する法律上の規定はないわけでありますが、こうした医薬品については、厚生労働大臣の製造販売承認の内容が医師等による使用等を前提としたものであることを踏まえて、局長通知により、正当な理由がある場合を除いては、処方箋に基づく薬剤の交付が原則である旨をお示しをさせていただいておるところでございます。

 その上で、今委員から、それだったら法令上ちゃんと位置づければいいのではないかという御指摘がありました。

 処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売の在り方については、医薬品の販売制度に関する検討会で本年の二月から検討を進めているところであります。法令上の位置づけも含めて、関係者の御意見も伺いながらそうした場で検討を進めていきたいと考えています。

池下委員 御答弁ありがとうございます。

 まさに、法的根拠は今のところないという理解をさせていただきました。

 そこで、先ほど大臣の方からも検討会のお話をしていただきましたけれども、二〇二二年の八月五日に局長通知を更新されまして、処方箋がなくても買えるといった宣伝は不適切などと、規制強化に踏み込まれているという具合にお伺いをしております。

 先ほども申し上げましたけれども、問題はやはり、ここの法的根拠がないというところが、うやむやになっているというところが非常に問題ではないかなと思っております。

 そこで、ちょっと、一問、時間がないので飛ばさせていただきたいんですけれども、本田政務官の方にお伺いを次にさせていただきたいと思います。

 大臣が今言われました、販売制度に関する検討が今、厚労省の中で進められているというところなんですけれども、この検討会の内容を聞かせていただいたところ、感想は、やはり現行法を改正することなしに行政権を濫用することで規制強化に向けた動きをしているのではないかということで、私はちょっと危惧をしているところなんです。

 そこで、非処方箋医薬品のうち、学会などの専門医からの意見、大臣、まさに意見を踏まえられてということなんですけれども、非処方箋医薬品の中から一部を処方箋医薬品に指定されるということはないのかどうか。また、非処方箋医薬品のうち学会などの専門医から指摘を受けていないものについて、通知などで抽象的な表現を繕うのではなくて、別個、要薬剤師薬として指定して、薬剤師さんの適切な管理の下で処方されるべきという具合に考えておりますけれども、具体的に、処方箋医薬品以外の医薬品の在り方につきまして、薬剤師さんでもあられます本田政務官にお伺いをしたいと思います。

本田大臣政務官 池下委員にお答え申し上げます。

 まず、薬剤師で処方されるべきと今おっしゃいましたけれども、薬剤師は処方権は持っておりませんので、そこはできないということをお伝えさせていただきます。

 先ほど大臣からありましたように、今まさにその販売を、医薬品の適正使用の確保の観点から、販売制度に関する検討会が設けられて、その中で、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売の在り方について検討を行うということにしておりまして、その中で整理をされていくと思います。

 薬剤師として今のところで思いますのは、やはり、正当な理由ではなく、やむを得ない場合、どうしても救急を要している、そういうときには薬の専門家として販売ができるというのがこの処方箋医薬品以外の医薬品。そこが、非常にグレーなところではあると思うんですけれども、薬剤師に今できることではないかと思っております。

 ただ、その中でも副作用の強いステロイド点眼薬が処方箋なしに販売されている、そういった事態は非常にちょっと、危惧をしておりますので、適切な販売がなされるようにこの検討会で整理がされていけばというふうに思っております。

池下委員 まさにグレーな部分があるということでしたので、私はほんまに処方箋医薬品と要薬剤師薬ということできっちり分類される方がよろしいのではないかなと思っておりますし、やはり、今、ちょっと時間がないのであれなんですが、薬大の方も、薬学部の方もせっかく四年制から六年制にされて、そして、専門的な資格をきっちりと修得された方々が今薬剤師さんになられているわけですから、当然、薬剤師さんも仕事に対して矜持というものがあるわけですので、しっかりと、そこら辺の部分につきまして、今後、検討されているということなんですが、法改正も含めたことをやっていただきたいと思います。

 以上で質問の方を終了させていただきます。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 本日は、労働環境全体についての質問をさせていただきたいと思います。

 皆様も御存じのとおり、昨年初め頃から消費者物価指数は上昇を続けております。前年度比で申しますと、今年、二〇二三年の二月には一〇四・〇となっております。一方、我が国の実質賃金の推移は、一九九一年を一〇〇として二〇二〇年の時点で一〇三・一。つまり、たった一年分の物価上昇が、三十年間の実質賃金の伸び、国民が使える賃金の増え方を超えてしまっている状況です。

 これらの数字は、現在、日本社会が、インフレではなくスタグフレーション、景気停滞の中で物価上昇が起きるという、経済において最も避けるべき状態に陥っているのは明白です。こうした状況を変えるには、賃金水準そのものの向上とともに、労働環境全体の改善を可能な限り速やかに進めていかなければなりません。

 その点について、政府は既に幾つかの御提案をされております。本日は、それらについて、意図や有効性について御意見を伺いたいと思います。

 まず、岸田総理が先日、失業手当の早期給付開始を目指す目標を話されましたが、大臣に伺いたいんですが、こうした改革に関して、政府・与党内では何を狙い、どこまでの決断を下されるのでしょうか。もし、何らかの決断も取らず、あくまで検討中ということでしたら、どのような方法をもって日本の雇用市場を変えていこうと考えておられるのか、その御意見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 雇用保険制度の関係で御質問いただきました。

 まず、雇用保険制度では、繰り返し失業給付を受給することを抑止し、安易な離職を防止する観点から、倒産や解雇といった自発的でない理由による離職者とは異なり、自己都合による離職者については給付制限を設けているところでございます。

 そうした中で、先般の新しい資本主義実現会議で、岸田総理から、成長分野への労働移動の円滑化のため、失業給付制度について、自己都合による離職者の場合、会社都合の場合と異なり、一定期間、失業給付を受給できないとされていることを踏まえ、要件を緩和いたしますと発言がございました。

 制度の趣旨、冒頭申し上げたことも踏まえながら、賃金上昇を伴う労働移動の円滑化を図るということで、今いろいろな政策を進めさせていただいております。そうした視点に立って、今申し上げた総理の発言を踏まえて、具体的な検討を進めていきたいというふうに考えています。

一谷委員 私は、この自己都合による退職で労働市場が流動化するということについては少し疑問もあるんですけれども。

 もちろん、事業所側にもすごく負担がかかると思います。また、これで賃金が上昇していく、いろいろなものを含めて上昇するというふうに思っているんですが、今の加藤大臣の御説明では、何か私は、自己の退職が流動性につながっていくというのはなかなかちょっと難しいなというふうに思ったんですが、いろいろそのほかの政策も合わせて流動性を加速させていくんだというふうに思います。本当に、AIの発達もありますし、働き方を変えていく、生産性を高めていくというのは非常に重要ですし、岸田総理のお考えがこれからいろいろ政策に出てくるんだと思うんです。

 続きまして、雇用の流動性を通じて果たすべき目標についてお伺いをしたいと思います。

 雇用の流動性をもって、私たち日本をどのような社会にしていくのでしょうか。ただ人が仕事を辞め、給付金によって漫然と時を過ごし、生きるため致し方なく仕事に就くことを繰り返す社会でしょうか。労働者が突然職を失い、何の補償のないまま、新しい技術も身につけず、成長もないまま、ただ社会に空いた穴を埋めるための道具となって生きる社会でしょうか。そうではないと思いますし、皆さんもそうではないというふうに思っておられるのはもう確かです。

 一人一人がその能力を最もよく発揮できる場所により柔軟に転職することができ、それによって企業が成長、経済が活性化し、税収が増え、国民のよりよい生活のために国がしっかりと政策を進めていける社会、これは当然のことだと思います。

 例えば、企業が余剰人材を市場に放出し、放出された人材が、経済的な負担なくリスキリング教育を受け、市場が必要とする能力を身につけ、新たな活動の場を見つける。こうした人材の循環を可能にすることが、日本経済にとっても、ひいては生まれてから日本の高度成長を経験したことのない若い世代の才能を埋もれさせないためにも必要ではないかというふうに考えています。これはもう皆さん一緒の考えだと思うんです。

 そのためには、企業だけにではなく、労働者にもメリットのある解雇ルールが必要だと私は考えます。

 日本の解雇ルールは、アメリカに比べれば厳しく、欧州に比べれば緩やかだと言われております。しかし、現状でも、一部の企業においては実質的金銭解雇が行われているのが現状だというふうに思います。いわゆる追い出し部屋問題など、解雇規制をかいくぐってでも解雇を行いたいという企業の意向により、労働者に不当な圧力がかけられているケースです。

 企業側が解雇をしやすくすると同時に、解雇される労働者にしっかりと補償を行い、速やかな転職が実現するような仕組みをつくらなければなりません。

 そこで、大臣にお伺いをしたいんですが、失業手当の給付時期の他に、雇用に関する規制改革や制度整備などについて、どのようなものが必要と考えておられるか。具体的にまだない、今検討中ということであれば、現状の制度が適切であるとお考えか。また、変えるべき点があるならば、その御意見をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今、私たちが取り組んでいるのは、まさに働く人たち個々が自主的に対応していただく、そして、それに対応しやすい環境をつくっていくということであります。

 まさに委員おっしゃったように、意欲ある個人が自分の能力を更に場合によっては磨いて、そして、よりよい働き場所で働く。それは会社の中である場合もあるし、外でもあろうかと思いますが、そういったことを実現をしていきたいと思っております。

 会社の中は会社の中でありますけれども、会社の外を含めてそれを実現するためには、一つは、スキルを身につけるというためのリスキリングの環境をつくっていく、そして、それにのっとって、転職しやすい、円滑な労働移動ができる、こうした環境を整えていく、これが大事だと。その中の一つとして、先ほど失業給付の話がございましたけれども、やはり、実際辞めてみると、そのとおりいかない場合もあるわけですね。したがって、できれば、もちろん辞める前にいろいろ計画を準備して次に移っていただく、これがよりよいケースだと思いますが、そうでない場合もある。しかし、そのときにしばらく失業給付をもらえなくなってしまう。そういったところをどう考えるのかといったところから先ほどの議論をさせていただいているということでございます。

 その上で、政府としては、最初に申し上げたような流れをつくることで、最終的には持続的に賃金が上がる、こうした構造にもつなげていきたいと考えています。

 その上で、解雇ルールのお話がございました。

 これについては、多くの働いている方々は賃金によって生活を立てられているわけでありますので、企業の雇用慣行や人事労務管理の在り方とも合わせて、その在り方については労使間で十分に議論を尽くしていかなければならないと考えています。

 現時点で、解雇の金銭解決制度について、金銭を支払えば自由に解雇できるという制度を導入することは考えておりませんが、無効な解雇がなされた場合に労働者の請求によって使用者が一定の金額を支払うことにより労働契約が終了する仕組みについては、労使の御意見を伺いながら丁寧に検討を行っているところであります。

一谷委員 不当に解雇するということはいけないというふうに思うんですが、でも、やはり企業側も、実際雇用をしてみて、面接もして、どんな資格を持って、どういった技術を持って、会社に来ていただいたとして、会社側もなかなか想定していなかったこともあると思うんですよね。そうなった場合に、なかなか適材適所のところで仕事がしてもらえない場合に、なかなか解雇が難しいということは現実に起こっているのではないかなと思いますし、そういった、なかなか解雇ができないから、正規の雇用を二の足を踏んでしまうというか、働く方の生活を安定させるような雇用条件で迎えることが難しいというようなことが実際ではないかなというふうに思います。

 そして、追い出し部屋みたいなところ、負担を押しつけて解雇をさせてしまう、解雇に持っていくという現実もありますので、そういったところは今の現実をちょっと直視をしていただきながら、私は実は、先ほどおっしゃっていた自己都合で辞めた場合の雇用保険の早期の給付というのは、これはいいのではないかなと私は思っていますけれども、ただ、その場合に企業側には負担が増すのではないかなというふうに思いますので、その辺のバランスを取っていただかないと、企業側としてはなかなか雇用を進めるということはしないのではないかなというふうに私自身は考えていますし、私自身も実際自らが仕事をしながらそういうふうに思っています。

 それでは次に、政府参考人の方に御質問をさせていただきたいんですが、残念ながら、新型コロナウイルスの感染症の際に政府が取られた戦略、これは、本当に誤解を恐れずに申し上げたいんですが、私は少し、いいと思う政策と逆を行っているところが一部あるのではないかなというふうに考えています。

 それは、失業保険よりも高い雇用調整助成金が支払われることで、本来、社会情勢の変化に伴って新たな業界に流動性をもって移っていくべき人たちがタイミングを失ってしまったのではないかなというふうに思っています。

 本来ならば、その事業所であったり、その仕事というのは、新型コロナの影響下にはなかったとしても、少し影響を受けたとしても、失業手当よりも雇用調整助成金の方が金額がはるかに高かったですから、それを受給をして、何とか生き長らえたと言ったら怒られますけれども、事業を続けられて、その方も転職の機会をなくしたというような感じで私は受け取っているんです。

 でも、その一方、弱い立場の方の非正規労働者の方やパートタイム労働者の方、職を失った方も多く、これらの課題に対して政府が給付金等の手当を行ったということは、これは正しいことであって、議論の余地もないと思いますし、正しい方法であったと思います。

 ただ、企業には、事業継続のための補助金や無利子の貸付けなども行われてきて、返済できずに倒産するケースも増えてきているというふうに認識をしています。

 調査結果なんですが、帝国データバンクによりますと、コロナ融資を受けた際に倒産した企業は、二〇二一年には百六十七件にとどまっていましたが、二〇二二年には二・三倍の三百八十四件に増加をしています。今年返済開始を迎える企業は、融資を受けたうちの二七・八%とまだまだ数多く残されており、中小企業を中心とした労働者が失業するリスクがかなり高く残されているのではないかというふうに考えています。

 新型コロナウイルス感染症のような非常事態においては、臨時の給付金等の政策が功を奏したということもありますが、しかしながら、コロナ後の変革の時代において、企業、産業の新陳代謝とそれに伴い市場に放出される労働者への生活保護、能力開発、再就職といった流れをより広い視野で進めていかなければならないということは皆さんも同じ考えだと思います。

 そこで二点、参考人の方にお伺いしたいんですが、産業の転職とリスキリングについて現在どのような制度が準備されておるのかということと、それがどのような効果をもたらしているのかというのを、具体的な数字があれば示していただきたいなというふうに思います。

 もう一点は、私たちは、労働者の生活保護と雇用の流動化を後押しする政策として、部分的ではあってもベーシックインカムを導入するべきではないかと考えています。最低限の収入を保障することが、失業、退職、転職のリスクを軽減すると考えています。これにつきましても、現行法の制度との兼ね合いで課題と思われる点についてお伺いをしたいと思います。

田中政府参考人 雇用調整助成金の効果についての御指摘をいただきました。

 緊急事態の対応としては大きな効果を及ぼしたが、長期化したことによって有効な人材活用が進まなかったといった先生のような御指摘もいただいておりますので、今後、そういったことも含めてきっちり検証していく必要があると考えております。

 なお、コロナ禍においても、雇用調整助成金の休業支援だけでなく、もう少し前向きに、在籍型出向を支援する取組や、個人に対する訓練受講支援の強化なども図ってきたところでございます。

 例えば、在籍型出向を支援する産業雇用安定助成金を新設し、令和五年三月末までの約二年間で約一・九万人の出向計画を受理をして、そういう方々が対象となっております。また、無料の職業訓練と月十万円の給付金の支給を行う求職者支援制度についても特例措置を実施して、令和三年度の受講者数は約二・八万人、令和四年度は二月までの数字で約三・五万人の方がこの制度の利用対象となっております。

 今後におきましても、こうした制度の充実強化によりまして、雇用の安定化、それから円滑な労働移動に対する支援を行いまして、労働力需給のミスマッチを解消することで雇用の状況の改善に努めてまいりたいと考えております。

中村政府参考人 ベーシックインカムについてのお尋ねをいただきました。

 我が国の社会保障制度は、病気等の人生における様々なリスクに対しまして、本人と事業主が保険料を拠出することで支える社会保険方式を基本としているところでございます。

 委員から御提案のございましたベーシックインカムでございますけれども、年金、生活保護、それから、今もお話がございました失業給付などの既存の制度との関係をどう整理するのか、例えば、給付の重複でございますとか、追加の必要財源の確保、既に支払った保険料、積立金の扱いなど、現実的に乗り越えなければならない大きな課題がございまして、そうした方式を採用することが可能かどうかという点も含めて慎重な検討を要するものと考えているところでございます。

一谷委員 雇用保険の早期受給も、ある意味、ベーシックインカムに近いのではないかなというふうに思うんですが、リスキリングしようとか転職しようとかというときに、やはり、最低限の保障があれば思い切ったチャレンジができて、新しい産業の芽も出てくるのではないかというふうに考えますので、そこは全否定ではなくて、共に考えていくことができればというふうに思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問をさせていただきます。

 社会保険料、雇用保険料についてなんですが、雇用の流動性を実現するに当たって、我々は、同一労働同一賃金の原則が徹底され、性別や年齢、契約形態を問わず、果たす役割と成果に応じた報酬が得られなければなりません。非正規雇用の拡大がもたらした大きな社会問題は、同じ仕事をしていても同じ報酬が得られないという正規と非正規の待遇格差です。もしも日本が雇用の流動性を拡大することによって経済の再発展を目指すというのであれば、こうした格差をなくさなければ、転職によって待遇が悪化する人が増えるのは火を見るより明らかだと思います。

 今から二年前の二〇二一年四月、パートタイム・有期雇用労働法の全面施行により、同一労働同一賃金の原則が日本でも全面的に適用されましたが、大きな変化があったという声は、私は残念ながら聞いておりません。

 そこで、参考人の方にお伺いしたいんですが、日本における同一労働同一賃金の原則の適用状況において、どのような見通しを持っておられますでしょうか。よろしくお願いをいたします。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの同一労働同一賃金の施行状況と今後の取組、あるいは見通しということでございますが、昨年十一月に実施されました労働経済動向調査という統計調査によれば、同一労働同一賃金の取組について、取り組んでいる又は取り組んだ、待遇の見直しは必要ないと判断した、異なる雇用形態が存在しないと、それぞれ回答した事業所を合計すると、全体の九一%となってございまして、総じて取組は着実に進んでいるものと認識をいたしております。

 ただし、この調査で全体の七%が取り組んでいないと回答されておりまして、また、企業規模が小さいほど取り組んでいないと回答した割合が高いことから、特に中小企業、小規模事業者への法制度の周知徹底が課題であると考えておりまして、各労働局における取組とともに、四十七都道府県に設けております働き方改革推進支援センターにおける個別相談等による支援に努めているところです。

 さらに、昨年十二月から、労働基準監督署の監督官が事業場を訪問した際に、同一労働同一賃金関係のチェックリストを記入させ、その結果を活用しまして、労働局が法違反の疑われる事業所に対して効果的に報告徴収等を行うという新たな連携の取組を進めますとともに、本年三月十五日から五月末までを同一労働同一賃金取組強化期間と定めまして、非正規雇用労働者の方々への賃上げの流れの波及に向けて、経済団体や個々の企業への働きかけの強化等に集中的に取り組んでいるところでございます。

 こうした新たな取組の結果も含め、御指摘のパートタイム・有期雇用労働法の施行状況を把握、分析した上で、同一労働同一賃金関連規定の制定時における検討規定を踏まえ、必要な対応を図ってまいりたい、このように考えているところでございます。

一谷委員 私は、同一労働同一賃金が徹底されて、それには評価をどう高めていくかというのが非常に重要だと思うんですが、これが徹底されて評価がしっかりできれば正規と非正規の壁はもうなくなってしまうのではないかなというふうに思っております。ですから、これには評価が非常に重要になって、ここを企業に任せっ切りにしてしまうのか、ある程度指針を出すのかということは、国がある程度指針を出して進めることが必要だと思うんですが、なかなか非正規と正規の壁をなくしていくというのは、現実、私は難しいんではないかなと思っていますので、同一労働同一賃金をしっかり進めていくことをしていただけたらと思います。

 それでは、次の質問に行かせていただきます。

 少し質問を飛ばしていただきまして、特定技能実習生の廃止と外国人労働者の導入について質問をさせていただきます。

 四月十日、外国人の日本での労働の在り方を検討する政府の有識者会議は、技能実習制度の廃止と人材確保を主な目的とする新制度の導入を提言したとの報道がありました。

 途上国の人材を訓練し、技術を移転するのが目的とされた技能実習生制度ですが、既に多くの指摘があるとおり、実際には、人手不足の業界に対する労働法に守られない低賃金労働者が目的となっており、技術移転という目的は忘れ去られているのではないかなというふうに感じております。また、実習生であっても、人権の侵害や、アメリカ政府の人身取引報告書でも名指しで取り上げられているほど国際的な非難を集めております。制度の変更は間違いなく必要だと考えます。

 その一方で、人材の確保が目的であるとするならば、これは本格的な移民労働者の導入に日本がかじを切ることを意味しているのではないでしょうか。移民というのは、国際的には、一年以上その国に在籍している人を全て含めるものですから、実際には、技能実習生制度や就業目的の留学生への門戸拡大により、移民労働者の受入れは実質的に始まっていると言えます。

 しかし、これまでは不適切な運用により実質的な受入れ状態にあったものを名実共に移民労働者の受入れに切り替えるのであれば、そのためには、ただ入口を外国人労働者の入国、登録、就業部分を整備するだけでなく、日本国内で働く際の登録や労働環境、納税などのシステムや、いずれ日本を出国することになる際の出口部分などの整備もしていかなければならないのではないかと思います。

 そこで、大臣にお伺いをさせていただきます。

 これまで技能実習制度は、実習が目的とされたがゆえに、一般的な労働者に認められている転職の自由などは保障されておりませんでした。皮肉なことに、その点が労働者を必要とする業界に人材を供給していた側面があります。新たな制度を導入した場合、この制度で入国する外国人は、他のあらゆる日本人あるいは正規の資格を持つ外国人労働者同様に、労働者としての権利を持つことになるという理解にそごはございませんでしょうか。お願いします。

加藤国務大臣 技能実習制度及び特定技能制度の在り方を御議論いただきました有識者会議において、四月十日に、これまでの議論に基づく検討の方向性がたたき台として示されたところであります。引き続き、中間取りまとめに向けて有識者会議の場で更に御議論いただく、こうした段階にあります。

 たたき台の中では、技能実習制度が労働力確保の目的にもなっている実態を踏まえ、人材確保と人材育成を目的とした新たな制度を創設する方向性とされております。

 その上で、転籍制限の在り方については、人材育成に由来する制限は残しつつも、人材確保が制度目的に位置づけられることを踏まえ、制度趣旨と外国人の保護の観点から、従来より緩和する方向で検討すべき、具体的な在り方は、産業分野や地方における安定的な人材確保なども含め、総合的な観点から最終報告書の取りまとめに向けて具体的に議論していくという方向が示されたところでございます。

 厚労省としては、有識者会議での議論を踏まえ、関係省庁とも連携を図りながら、転籍制限の在り方を含めた検討を更に進めていきたいと考えております。

一谷委員 これで本当に必要な業界に人材が、外国人の労働者の方が来てくださるのかというような問題意識も持っております。

 最後、時間になりましたので留学生の労働について一言お答えいただけたらと思うんですが、二十八時間以内でしか働けないということなんですが、実際はこれを超えている学生の方も多いと思うんです。これについて問題意識があるかどうか、お答えいただけたらと思います。

三ッ林委員長 君塚在留管理支援部長、答弁は簡潔に願います。

君塚政府参考人 御案内のとおり、留学生のアルバイトにつきましては、一定の範囲内での就労活動を認めているところでございますけれども、今御指摘のあったとおり、許可条件に違反すると疑われる者も存在しています。

 私ども出入国在留管理庁では、こうした条件違反に対しては、学校を通じて本人を強く指導する、あるいは悪質な場合には在留期間の更新を認めないといった厳正な対処をしております。

 いずれにいたしましても、教育機関の理解と協力を得ながら、所属学生に対する指導を徹底するとともに、関係省庁と連携し、引き続き留学生の資格外活動の適正化に努めてまいります。

一谷委員 日本語教育機関の認定等に関する法律も変わるとお聞きしております。誰もが日本で幸せに働ける国をつくっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いいたします。

 まず、先ほど井坂委員からもありましたが、障害児福祉の所得制限について伺いたいと思います。

 三月三十一日、子供、子育て政策の強化についての試案が公表されまして、子育て支援における所得制限の撤廃が掲げられました。

 国民民主党は、障害のある子供の教育費負担を軽減するために、障害者福祉の所得制限撤廃に向けた法律を今国会に提出をしております。障害があろうがなかろうが、子育てをする家庭を社会全体で支援していくというのは同じことであると思っておりますが、是非実現に向けて取組を進めていただきたいと思っておりますが、まず大臣の考えを伺います。

加藤国務大臣 先ほども御答弁させていただきましたが、所得制限を設けるかどうかは個々の制度の目的、支援方法などに応じてそれぞれ判断されるものと考えております。

 障害福祉の各制度の所得制限については、制度の持続可能性や公平性などを踏まえて設定しているものであり、制度の目的や他制度の関係も含め慎重な議論が必要と考えているところでございます。

 その上で、今般、こども政策担当大臣の下で取りまとめられた子供、子育て政策の強化に関する試案では、障害児支援において、児童発達センターの機能強化による地域における障害児の支援体制の強化など、支援基盤の拡充を中心に速やかに取り組むことに重点が置かれているものと承知をしております。

田中(健)委員 個々の目的、支援方法に応じてと何度も答弁をいただいておるんですけれども、障害者福祉の所得制限撤廃による課題とか懸念事項というのは何なのであるか、それに対して対策は何が考えられるのか、質疑を続けていきたいと思うんですが、例えば、具体的に、先ほどもありました補装用具、この費用負担が大きいと言われています。所得制限がなければ三万七千二百円の負担で済むところ、所得が一定額を超える家庭では、全て自腹になります。ある家庭では、カーシートに十万円超、車椅子三十五万円超、座位の保持装置四十五万円超、さらに、この座位の保持装置というのは、多くの場合、学校と家と二か所に置くということで、これらを合計すると百三十五万円から百五十万円という大きな額になります。

 この補装用具費用の支援の年間の予算は、現在、約百五十億であります。うち一割の人が対象外で、一割負担が全額負担ということでありますから、つまり、十五億円あれば、補装用具費用の所得制限というのは撤廃できるのではないかと思います。

 この補装用具費用の所得制限撤廃であれば、もちろんそれぞれの制度が、今、大臣おっしゃったように、目的や支援方法に応じてあるのでありますが、これは決断すればすぐにできることであると思いますが、是非進めてほしいと思いますが、具体的に、大臣、見解を伺います。

加藤国務大臣 補装具費支給制度においては、高所得者には全額で御負担をいただくとしておりますが、それ以外の場合は、所得に応じた自己負担額を設定し、過剰な負担にならないような制度設計をしておるところでございます。

 こうした所得制限や利用者負担があるのは、先ほど申し上げた制度の持続可能性、また公平性を踏まえた、あるいは福祉的措置ということですね、そうしたことを踏まえて実施をされているところでありますので、所得制限の撤廃そのものについては慎重な議論が必要というふうに考えております。

 ただ、先ほど、井坂議員との間で、様々な、例えば、障害を抱えておられる子供さんが、今言った補装具を買われる、あるいは様々なサービスも買われる、だから全体としてどういうことなんだという御指摘もいただいたところでございますので、そういったところもしっかり、我々としては、まずは実態を把握しておくことは必要だというふうに考えています。

田中(健)委員 この議論になりますと、高所得者というのが出ますけれども、これは逆転現象が起きておりまして、幾ら高所得者であっても、使える額というのは、これだけの負担が増えると、同じ、それよりも更に下がってしまうというような現象もあります。

 さらに、大臣が今、様々な支援があると言ったんですが、それでは、進めてお聞きをしたいんですけれども、他に、重度心身障害者の子供がいる家庭においては、特別児童扶養手当、また障害児童福祉手当が支給をされます。またさらに、支援制度を使えば、デイサービスやショートステイも月四千六百円で利用することができます。これらの所得制限を撤廃した場合は、一体年間どれくらいの予算が必要になるか、つまり、それが財政的問題なのか、予算の問題なのかというところをお聞きをしたいと思っています。

 この障害者福祉の所得制限撤廃による財政的な影響、また持続可能性について、どのような検討がなされているのか、また、実際に議論がされているのか、これは参考人に伺います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 特別児童扶養手当及び障害児福祉手当につきましては、障害児の障害の程度に応じて、一定の基準を満たす場合に支給するものでございます。また、主たる生計維持者の所得と扶養している者の人数に応じた所得制限が設けられているところでございます。

 このため、所得制限を撤廃した際に必要となる費用を算出するとなりますと、所得制限の廃止をした場合に支給の対象となります障害児の障害の程度や主たる生計維持者の所得、扶養している方の人数の状況を把握することが必要となりますが、こうしたデータがございませんため、試算を行うことは困難な状況にございます。

 また、障害児に対してのサービス、障害児通所支援等の利用に際しては、所得に応じた負担上限額が月額で設定をされておりますが、いわゆるこれは所得制限というものではないというふうに承知をしております。

 こうしたことから、所得制限を撤廃した場合に必要となる費用の試算を前提としました財政的な影響等についての議論につきましても、現状、同様に困難な状況にございます。

田中(健)委員 財政的な金額も分からない、その影響も分からない、つまり何もやる気がないと言っているような答弁だったので、大変残念であります。

 障害児の、今、児童手当というのがあります。特別児童扶養手当、これは、障害を持たない家庭に支給される児童手当は今回、所得制限撤廃になりますが、これよりもかなり厳しい基準であります。ですから、所得制限撤廃ができているのにどうして障害児福祉ができないのか、本当に私は理解できません。

 更に詰めますと、自治体では独自に障害者福祉の制度改革に取り組んでいます。福岡市は、二〇二四年一月から、デイサービス、ショートステイの支援について所得制限を撤廃することを発表しています。自己負担を未就学児については無償、学齢期については一律三千円にすることを決めました。

 やはり、自治体任せにしていては駄目だと思うんです。是非、国が障害児支援に一層取り組むべきだと思っておりますが、撤廃については、先ほど言ったように調査もしていない、またその影響も分からないということでありますが、それであれば、障害児福祉の改善に向けた具体的な取組というのは何を行っていくのか。それがあればお聞かせください。

辺見政府参考人 障害児支援の充実につきましては、こども政策担当大臣の下で取りまとめられました子供、子育て政策の強化に関する試案におきまして、支援基盤の拡充を中心に速やかに取り組むことに重点を置いていると承知をしております。具体的には、地域の中核的役割を担う児童発達支援センターの機能強化を進め、地域全体の障害児支援の質の向上につなげるとともに、インクルージョンを推進し、地域全体で障害児とその家族を支える体制の整備充実を図っていくというものであると承知をしております。

田中(健)委員 支援センターの拡充は、先ほど大臣からもありましたし、これは以前に私たちの委員会でも議論がされてきたことであります。

 こども基本法の基本理念を見ますと、全ての子供について、適切に養育されること、また、生活を保護されること、愛され保護されること等、福祉に関する権利がひとしく保障されることとあります。

 児童手当の所得制限撤廃が掲げられた中、野党のみならず与党の皆さんからも、この撤廃はどうなんだという声が上がっているのは御承知かと思います。是非、この障害児童福祉に関する所得制限撤廃、検討を要望させていただきます。お願いいたします。

 引き続きまして、強度行動障害について伺います。

 強度行動障害、聞かれない言葉かもしれませんが、これは、自分を傷つける自傷や、他の人や物を傷つけるなど他害、さらに、睡眠の乱れ、異食、物を壊すなど、周囲の人々の暮らしに影響を及ぼす行為を著しく高い頻度で起こすため、特別に配慮された支援が必要な状態をいいます。

 この強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会、昨年十月から頻繁に議論がされ続けてきました。そしてこの度報告書がまとめられたということでありますが、まずその概要を伺いたいと思います。

辺見政府参考人 御指摘をいただきました検討会でございますが、強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会といたしまして、昨年十月から開催し、本年三月に報告書を取りまとめたところでございます。

 これまで厚生労働省では、強度行動障害を有する方につきまして、障害特性や支援の手法等を理解した支援人材の育成を進めるとともに、強度行動障害を有する方に支援を行う障害福祉サービス事業所について報酬上の評価を充実するなど、その支援の推進を図ってきたところでございます。

 今回の検討会におきましては、困難な状況を抱えてきた御家族や支援現場の実践などの報告を受けながら、身近な地域におけるグループホームなどの障害福祉サービス事業所での受入れ体制を始め地域の支援体制の整備が不十分であること、困難な事例に対応するため、支援者の一層の専門性の向上や、知見、経験を共有するための支援のネットワークの構築が求められていること、また、障害福祉サービスと医療、教育との連携、こうしたことについて課題があるとの指摘を受けたところでございます。

 三月に取りまとめられました報告書におきましては、強度行動障害を有する方の地域における支援体制の在り方といたしまして、支援人材の更なる専門性の向上、状態が悪化した方への集中的な支援体制の整備、地域における関係機関が連携した重層的な支援体制の整備、子供期からの予防的支援と教育との連携、医療との連携体制の構築などにつきまして、今後の道筋をお示しいただいたところでございます。

    〔委員長退席、高木(宏)委員長代理着席〕

田中(健)委員 これはかなり厚い報告書でありまして、内容も大変に示唆に富んだもので、拝見させてもらいました。これまで、この強度行動障害、なかなか人目につかないものですから、分からなくて、当初八千人とも言われていましたが、今回の報告書で、この支援を受けている、また加算の対象になっている人が全国で六万八千九百六人と、七万人近い人がいることが明らかになってきています。これだけでも大きな進展かと思って、この報告書を拝見させてもらいました。

 その中で、障害者の地域移行を進めるということでありますが、その地域移行を求める中、強度行動障害を有する者の移行というのは進みにくいと言われています。背景としては、地域に移行先となる法人や事業所がないという状況があります。

 地域で強度行動障害を有する者を受け止めて標準的な支援を実現できる法人や事業所を広げていくために、支援体制の整備にどのように今後取り組んでいくか、お聞きします。

辺見政府参考人 地域におきまして強度行動障害を有する方を受け止めて標準的な支援を実施できる法人ですとか事業所を広げていくためには、専門性のある人材の育成を量的にも質的にも進めていくことが必要であると考えております。

 このため、都道府県で実施されております強度行動障害支援者養成研修の修了者に加えまして、新たに、現場支援の中心となる中核的人材の育成、また、高度な専門性により地域を支援する広域的支援人材の育成、こうしたことに取り組むとともに、こうした支援人材を中心に支援者間のネットワークを構築し、地域としての支援力向上を図っていくということが重要であると考えております。

田中(健)委員 ハードとともにソフトの面の人材育成というのに是非力を入れていただきたいと思っています。

 これは、実は先日、TBSの報道特集でも大きく取り上げられまして、その当事者が施設を二十か所も断られて、家族は大変な苦労の末、何とか重度訪問介護を利用して、最終的には十人のヘルパーで二十四時間対応をして独り暮らしを実現したという例が取り上げられていました。日常生活において常に介護が必要となる障害者が多く、家庭だけで療育していくというのは本当に難しい現状です。

 さらに、社会に居場所がないという家族の声もありました。地域において支援につながれていない、又は支援から切り離されてしまった強度行動障害を有する者とその家族を把握、フォローしていくことがまず重要であると思っております。

 ニーズを把握し支援につなげていくための今後の対策、まずこれが第一でありますが、これについて大臣に伺いたいと思います。

加藤国務大臣 今もちょっと説明があったと思いますが、強度行動障害に対する支援でありますが、御指摘のように、障害福祉サービス事業所で受入れ体制が整わない等によって、適切に支援に結びつかない状況があると承知をしております。地域において支援に結びついていない強度行動障害を有する方とその家族を把握し、必要な支援につなげていくことが重要と考えております。

 先ほど委員からお話があった検討会の報告書では、市町村が関係機関などと連携して、本人とその家族の支援ニーズを把握して支援につないでいくこと、支援する人材が強度行動障害の障害特性を正しく理解し、支援の専門性の向上を図ることや、地域における日常的な支援体制の整備、状態が悪化した方に対する集中的支援の実施及び体制の整備等の取組が必要とされております。

 今回の検討会の報告書を踏まえ、障害福祉計画に関する基本方針において、各市町村又は圏域において支援ニーズを把握し、支援体制の整備を進めるといった内容を位置づける、また、今後行う次期報酬改定において、強度行動障害を有する者の支援を担うことができる専門人材の育成や受入れ事業所の拡充に向けて必要な検討を行い、強度行動障害を有する方とその家族が地域で安心して生活できるよう、支援体制の整備の促進を図りたいと考えております。

田中(健)委員 今までは、どうしても現場対応だったり、家族任せになっていたというのが現実であるようです。このテレビの中では、夜になると起きてしまって、また暴れてしまって、近所に大変迷惑になるということで、お母さんが夜中じゅう車に乗せて走っているというような姿も見ました。

 今回の報告書、当事者やまた関係者の障害者サービスの皆さんには大きな注目をされて、期待をされているところでありますので、地域で支えていける体制、第一歩だと思っておりますので、是非力を注いでいただきたいと思います。

 次に移ります。飛ばして、二問、大臣に直接伺いたいと思います。

 コロナの経口治療薬のゾコーバについてです。

 これは昨年十一月に緊急承認された塩野義製薬の新型コロナウイルスの感染症の飲み薬であります。昨月、厚労省は、公的医療保険の適用対象にすると決めまして、一回当たり治療が五万千八百五十円と高いことでも話題となりました。さらに、初の国内生産メーカー、初の緊急承認ということで注目もされました。

 一方、このゾコーバ、これから流通というときに、コロナが二類から五類への変更となり、緊急で必要な薬ではなくなってしまう、現実ですね、ということがあります。法律まで改正して緊急承認制度をつくって初の適用となったわけでありますが、この緊急承認の制度の意義や制度の在り方、タイミング、遅かったんじゃないか、また本当に必要なのかといろいろな声が今上がっているんですけれども、大臣、どのように認識されておりますでしょうか。

    〔高木(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

加藤国務大臣 まず、昨年の十一月二十二日に緊急承認された塩野義製薬のゾコーバ錠については、重症化リスクの高い患者を対象としてきたこれまでの経口薬と異なり、低リスクの患者でも高熱等の強い症状があれば使用可能な薬として、世界で初めて承認されたものであります。また、国内企業が製造、販売するため、安定的に供給することができるようになると見込まれたところであります。この二点において、新たな治療の選択肢の一つとして大きな意義があると考えております。

 また、ゾコーバ錠の臨床的意義に関しては、緊急承認される前の昨年九月に、日本感染症学会と日本化学療法学会の連名で提出された提言書において、解熱薬等の対症療法薬の処方しか受けられなかった患者ではつらい症状や後遺症に苦しんでいる場合が多いこと、抗ウイルス薬の投与によって感染の拡大を抑えることの重要性も指摘されたところであります。

 ゾコーバ錠の承認時期でありますけれども、昨年五月末に企業から緊急承認が希望され、PMDAにおいて優先かつ迅速な審査を行ってまいりました。七月の関係審議会では、第二相試験の成績に基づき緊急承認の可否について審議された結果、現時点では有効性が推定されるとは判断できないとの結論に至り、継続審議とされました。その後、十一月に、第三相試験の全ての資料が提出される前に速報値等に基づき関係審議会で改めて審議され、緊急承認することについて了解されたため、迅速に手続を進め、審議会と同日に緊急承認が行われたものであります。

 したがって、緊急承認の制度にのっとって対応させていただいたということでございますので、承認そのものが遅かったとは考えていないところでございます。

 引き続き、治療薬の普及を含めて、国民の皆さんの安心につながる対策を進めたいと考えております。

田中(健)委員 緊急承認制度、この委員会でも皆で議論して、何とか国内産の、本来ならワクチンがよかったわけでございますが、治療薬ということで、議論して初の治療薬となりました。タイミングにおいては遅くなかったという話でありましたけれども、いろいろな今議論があります。是非、今回の経験を基に、この緊急承認制度、本当に適切に機能するのか、また、これから同じようにコロナの、ないしは新しいパンデミックが起きたときに機能するのか、是非それを検証してもらって、次に生かしていただければと思います。

 以上で終わります。

三ッ林委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、今日も、子供の医療費有料化問題について初めにお伺いします。

 この間、政府が引用しております論文では、低額の自己負担によって子供の受診が減るということが明らかになっているわけですけれども、どういう家庭の子供の受診が減るのかというのが問題だと思うんですよね。

 今日、配付資料を御覧いただきたいと思いますが、これは阿部彩先生たちの実証研究の、グラフがあるページを載せました。

 このグラフを見ますと、受診抑制の割合は、小学校五年生困窮層で、無料なら二・四%、定額負担で八・七%、三割負担で一九%、償還払いで二三・九%。中二の困窮層では、無料五・五%、定額負担一一・四%、三割負担二四・二%、償還払い二〇・八%。このうち統計的に有意なのは三割負担と償還払いで、受診抑制が起きると。グラフを見たら、定額負担も受診抑制が起きているようにも見えるわけですけれども、サンプルが少ないので、定額負担の場合は統計的に有意な推計値にはなっていないということなんですね。

 阿部先生たちの論文、こう書いているんですね。定額負担の受診抑制への影響は、本分析からは全容が見えておらず結論づけることができない、より多くの自治体データが必要であるということでございます。

 先日の岸田政権のたたき台で、子供医療費の有料化を自治体に求めていく、こういう協議を行うと書いてあるわけですけれども、私は、それは問題だと思います。まずやるべきは、定額負担でどういう収入階層、どういう家庭状況の子供の医療が抑制されるのか、ここをしっかり厚労省として調べる必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 先般来から、飯塚教授の論文、また今、阿部彩教授の論文について御指摘を頂戴したところでございます。この論文について評価するのは差し控えたいというふうに思いますが。

 子供、子育て政策の強化に関する試案においては、適正な抗菌薬を含め、子供にとってよりよい医療の在り方について、今後、国と地方の協議の場などにおいて検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずることが盛り込まれたところであります。

 厚労省としても、制度を所管する立場として、自己負担を設けることによる世帯状況に応じた受診行動への影響などについて、様々な観点から行われた研究報告などを分析しつつ、子供にとってよりよい医療の在り方について丁寧に検討していきたいと考えています。

宮本(徹)委員 研究は、今お示ししたように、グラフでは、多分、やはり定額の負担でも影響が出そうだというのがあるんですけれども、ただ、統計学的にはnが足りなくてそこは示せていないから、より大規模な調査をしてほしいという意見もあるわけですから、やはりそこはしっかり厚労省としても、とりわけ困窮層への影響はどうなのかというのは調べていただきたい。それなくして自治体に対して自己負担を求めるのはあり得ないと思います。そのことは受け止めていただきたいと思います。よろしいですか。

加藤国務大臣 先ほどの阿部さんのやつについては、サンプル数と、それから地域の偏りということが指摘をされておられたというふうに思いますが、ただ、飯塚論文もそうなんですが、ちょうど各自治体で切替えの時期なわけですね。ですから、サンプルで、ある自治体をやればいいんじゃなくて、ある自治体が変わった、あるいは変わったところと比較できる、こういう状況ということでありますから、それが今、じゃ、そうしたサンプルが取れるのかといった問題もあろうかと思います。

 そういった意味で、先ほど申し上げた、それぞれの研究報告などを分析しながら、子供にとってよりよい医療の在り方、まさにしっかり議論していきたいと考えています。

宮本(徹)委員 子供にとってよりよいということを考えた場合、私は、子供の医療費は自己負担もなく無料というのがよりよいのは間違いないと思いますので、しっかりそこは受け止めていただきたいと思います。

 次ですけれども、賃上げについてお伺いいたします。

 今日、各委員から、介護分野の賃上げの話、先ほどは医師の、勤務医の処遇の改善のお話もございました。医療、介護、障害者福祉、保育の分野は、診療報酬だったり、介護報酬だったり、障害福祉サービスの報酬だったり、公定価格、公的価格によって賃金水準が左右されるわけでございます。

 まずお伺いしたいのは、今年の春闘の結果なんですよね。全体の傾向と医療・介護分野の傾向についてどうそれぞれ評価されているのか、お伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 結果等が必要だったら事務局から説明しますが、まだ春闘は途中の段階でありますので、まずは、引き続き労使の真摯な取組を見守っていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 途中ですけれども、途中段階についての評価をお伺いしたいと思います。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 まず、連合が四月十三日に発表いたしました二〇二三春季生活闘争の第四回回答集計結果によれば、加重平均での月例賃金は、賃上げ額一万一千二十二円、賃上げ率三・六九%と、昨年やコロナ禍前の二〇一九年の同時期の集計と比較いたしまして、大きく上回っているものと承知をしております。

 また、全労連が四月六日に発表されました二三国民春闘共闘賃上げ第四回集計によれば、加重平均で所定内賃金は、賃上げ額五千九百十九円、賃上げ率二・〇七%でありまして、賃上げ率は昨年やコロナ禍前の二〇一九年の同時期の集計と比べて、やはり上回っているものというふうに承知をしております。

 また、同じ第四回集計で見まして、全労連に加盟する日本医労連の回答金額を見ますと、加重平均での所定内賃金は、医療分野で、賃上げ額五千三百十六円、賃上げ率一・八九%、福祉分野で、賃上げ額二千八百九円、賃上げ率二・〇一%となっておりまして、昨年同時期と比較しまして、医療分野では〇・〇七ポイント下回り、福祉分野で〇・〇一ポイント上回っているものと承知をしております。

 いずれにしましても、先ほど大臣からも御答弁ございましたとおり、春闘の途中段階で、これから回答を引き出すところ、出てきた回答に対して引き続き労使交渉を続けていらっしゃるところがございますので、引き続き労使の真摯な話合いを見守ってまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 中間集計の数字を今お話しいただきましたけれども、連合の集計で見れば、この十年間で最高の賃上げに現段階ではなっているわけでございますが、医療でいえば、医労連の数字がありましたけれども、昨年と比べても若干マイナス、昨年並み、介護についても昨年並みということになっているわけですよね。

 それは当然だと思うんですよね。昨年と同程度の政府からの支援しかしないわけですから、今の政府のこの分野の賃上げへの支援を考えたら、そもそも春闘で大きな賃上げができる保証がないんじゃないですか。

加藤国務大臣 それは、それぞれの医療機関等の経営も踏まえながら個々に交渉がされているということだと思いますが、ただ、今委員おっしゃるように、医療の場合、かなりの部分がいわゆる報酬にのっとって運営されているわけでありますから、報酬の改定あるいは処遇改善の取組、こういったものの影響は受けるのではないかというふうに思います。

宮本(徹)委員 ですから、本当は、今、物価高の中で賃上げを、岸田総理も経団連に要請してということもやったわけですよね。民間ではこの十年で最高、こういう賃上げも一方では報じられているわけですけれども、肝腎要の政府が責任を負っている分野では、そのような賃上げがなされていないわけですね。物価高の中、賃金が上がっていない。これは、本当に政治が責任を持たなきゃいけないと思うんですよね。

 私、前もここで、臨時に報酬改定も含めて対応する必要があるんじゃないかと申し上げましたけれども、そういう決断をする必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 報酬改定に当たっては、それぞれの病院、まあ医療でいえばですけれども、病院等の経営の実態、あるいは物価、賃金の動向等々を踏まえて議論するということでございますので、今年は令和六年度の診療報酬改定の時期を迎えるわけでありますので、そうしたこともにらみながら、まずは、こうした賃上げの動向と、あるいは各医療機関の経営動向、これをしっかりと注視をしていきたいというふうに考えています。

宮本(徹)委員 その答弁はもうずっと前からそうなんですよね。ずっと注視する注視する注視するで、注視し続けてもずっと、もう春闘の結果も見えてきているわけですから、今の支援では、物価高の中、政府が責任を負っている分野で賃金が上がっていないということなんですから、ここは本当に政治として決断しなきゃいけないんじゃないかと私は思います。

 加えて、昨年二月から、看護師四千円、介護九千円の処遇改善というのがあったわけですけれども、昨年十月から、これは報酬の臨時改定ということで、看護職でいえば看護職員処遇改善評価料、介護では介護職員等ベースアップ等支援加算ということになったわけですが、この看護職員処遇改善評価料は、就業している看護師のどの程度が対象となっているのか、実際の申請状況はどうか、現場でどういう処遇改善につながっているのか、把握されていますか。

伊原政府参考人 お答えをいたします。

 看護職員の処遇改善につきましては、令和三年に閣議決定された経済対策、さらに、公的価格評価検討委員会での中間整理に基づきまして、給与を恒久的に一%引き上げるために昨年二月から九月までは補助金による支援、そして昨年十月からは、さっき先生からお話ございました、給与を恒久的に三%引き上げるために診療報酬上の評価を行ったところでございます。

 この対象医療機関につきましては、看護職員の賃金水準が全産業平均に比べて高い状況の中で、コロナ医療など地域において一定の役割を担っていると評価できる医療機関を対象としておりまして、昨年九月まで実施した補助金を申請した医療機関数が二千四百十一でございましたが、十月から開始した診療報酬の評価料の算定届出を行った医療機関数は、今年の三月時点で二千五百七十五施設という形で、この制度を利用する医療機関が増えている状況だと認識しております。

宮本(徹)委員 私が聞いたのは、就業している看護師のどの程度が対象になっているのか。人数で、大体分かりますか。

伊原政府参考人 診療報酬上の評価の対象となる看護職員については五十七万人と見込んでいるところでございますが、この評価料の使途については、医療機関が必ず給与に還元するとしております。ただ、その場合は、対象は、各医療機関ごとの判断で、看護職員のほか、看護補助者、理学療法士、作業療法士等のコメディカルの処遇改善にも充てることが可能となっておりまして、正確な数値というものについては把握できておりません。

宮本(徹)委員 看護師五十七万人が対象の基礎だという話なんですけれども、就業している看護師の数というのは百六十六万人いるんですよね。結局、支給要件に該当する医療機関というのは一部だけですよね、先ほど答弁ありましたように。一定規模の、救急搬送件数が二百件以上だとか、こういう要件が課されているために、医療機関のうちの一部しか対象になっていないので、就業している看護師さんからすれば三分の一ぐらいしか、そもそも対象になっていないんですよね。

 私、医療というのは本当に地域全体で担っているということを考えたら、やはり全ての看護師を対象にしてこうした報酬は出すべきだと思いますよ。

 先ほど、看護職員の賃金水準が全産業平均に比べて高いから絞ったんだという説明がありましたけれども、それは夜勤を入れているから高く見えているわけで、夜勤を抜いたらそんなことは全然ないんじゃないですか。やはりこれは、地域でみんなで医療を担っているということを考えれば、全ての看護師を対象にするよう制度を改善すべきだと思いますが、いかがですか。

伊原政府参考人 御指摘いただきました、看護職員の方々の処遇改善をもっと広げていくかどうかということにつきましては、今般実施しました処遇改善の措置が職員の給与にどのように反映されているかといったことにつきまして、来年の同時改定に向けた議論の中で検証していくこととしております。

 あわせまして、令和三年十二月の公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえまして、費用の使途の見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善や、業務の効率化、負担軽減に取り組んでいきたい、このように思っております。

宮本(徹)委員 初めに春闘の結果の紹介がありましたように、もう見えているわけですから、今のやり方では全然賃金は上がらないと。抜本的に報酬改定で報酬を引き上げて、賃上げの責任を果たすべきだということを申し上げておきたいと思います。

 最後のテーマですけれども、健康保険証の廃止に関わって幾つかお伺いしたいと思います。

 資格確認書を設けるということになっているわけですが、この申請というのは役所等の窓口に行く必要があるのか、それとも受取人払いの封筒つきで申請書が皆さんに送られてくるのか、どちらなんでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 資格確認書につきましては、申請が必要となる事情がカードの紛失など様々な、被保険者の方ごとによって、ケースによってありますので、全ての被保険者に対して交付する健康保険証とは異なりまして、本人の申請に基づいて保険者が交付するという仕組みにしております。

 資格確認書の申請方法など具体的内容については今後検討していくことになりますけれども、窓口で御本人から直接申請していただくといったほかに、申請書を保険者のホームページから入手していただき、郵送で行っていただくといった運用も、実際、保険証の場合は行われておりますので、そうした実例も参考にしながら考えていこうと思っております。

 いずれにしましても、被保険者が必要な保険診療をきちっと受けることができるように、関係者の意見を伺いながら、申請勧奨時などの資格確認書が必要となる場面に応じまして、実効的な方法を検討してまいりたいと思っております。

宮本(徹)委員 今の例示だと、ホームページで申請するか、窓口に行くかという話なんですね。

 この間、本委員会でも議論になっていますけれども、子供の修学旅行だとか部活の遠征の際にこの資格確認書を持っていくということになろうかと思うんですよね。有効期間はどうなるんでしょうか、一年にするんでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 学校現場におきまして修学旅行とかそういった際にどのような形で資格確認のための書類を使うのか、これについては、今後、関係省庁とも議論をしていくことだと考えております。

 具体的な内容を検討するに当たりましては、先ほど先生から御指摘のありました資格確認書の有効期間も含めて議論をし、丁寧に検討していきたい、このように考えております。

宮本(徹)委員 今だったら、健康保険証をコピーして持っていけばいいわけですけれども、資格確認書、もし有効期間が一年じゃなくて、修学旅行の間とか部活の遠征の間だとか、こんな発行の仕方をしたら、それこそ毎回毎回申請しなきゃいけなくなっちゃうわけですよね。今の仕組みでも、最大一年ですかね、毎年毎年申請しなきゃいけないということになるわけですね。これだけ見ても、子育て世代からしたら大変な負担になると思いますよ。大体、マイナカードのように、共通IDだけ記していて、券面を見ても被保険者資格が分からないようなカードに健康保険証を統合しちゃうから子育て世代に新たな負担をかける、こういうことになっちゃうんじゃないかと思いますよ。

 加えてお伺いしたいと思いますけれども、今は自動的に健康保険証は届けられるわけですけれども、マイナカードを取得しないと意思表示している方にも何度も何度も毎回申請させる合理性というのはどこにあるんでしょうか。

伊原政府参考人 先ほど御説明いたしましたように、資格確認書を必要とする場面は様々、被保険者によってございますので、そうした事情も異なるので、先ほど申し上げたように、御本人の申請というような形を基本に置いております。

 ただ、いずれにしましても、先ほど先生からお話ございましたように、保険診療を受けることができないという事態を防がなければいけないという意味からすると、保険証利用の登録を行っておらず、資格確認書の申請も行っていない被保険者に対するアプローチの仕方、それも、御本人にとってしっかり医療が受けられるような形でやるための方法、これについては、関係者の意見を聞きながら実効的な方法を検討してまいりたいと思っております。

宮本(徹)委員 結局、私、マイナ保険証もそうですけれども、この資格確認書もそうですけれども、申請方式ということにすると、どうしても保険証がない人が多く出ちゃうと思いますよ。保険証を持たない人が出ないようにしようと思ったら、今と同じように健康保険証を使い続ける、配り続けるしかないと思いますよ。大臣、それしかないと思うんですけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 何度も申し上げているように、マイナンバーカードと健康保険証を一体化することによってよりよい医療を受けていただく、そのメリット、それを考えて、今般、健康保険証を廃止をするということにしたわけですが、廃止をしたからといって、委員が御指摘のように、保険診療が受けられないという事態、これは引き起こしてはならないということで、今、局長からも答弁させていただきましたけれども、様々な措置を講じ、そして、申請をしていただけない場合は職権交付を行う、こういった手段も講ずる中で対応していきたい。そして、全ての方が必要となる医療を保険診療の形で受けられる、こうした状況はしっかり確保していきたいと考えています。

宮本(徹)委員 本当に、自治体からしても大変な負担になると思いますよ、この人は職権交付が必要かどうかとか一々確認しなきゃいけなくなるわけですから。今までどおりやれば、本当に何の問題もないわけですから。加藤大臣はそのことを分かっていると思うんですよね。分かっているけれども、河野大臣に気を遣ってこんなことになっちゃっているんじゃないかと。本当に、全ての国民の医療をしっかりお届けして健康と命を守る、この立場で考えていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文です。よろしくお願いします。

 大臣、五月八日から、コロナウイルス感染症疾病分類、二類から五類に緩和されます。確認しておきたいことがございまして、今からお聞きしますので、よろしくお願いしたいと思います。

 特に、病院とか介護施設においての対応ですけれども、まず、こういったアクリル板は消えていく、例えば病院の窓口、そういった等々でよろしいでしょうか。それと、マスクですね。特に外来患者さん、あるいは入院に際して面会をしに来る家族さんへの対応はどのようになっていますか。

加藤国務大臣 マスクについては、もう既に申し上げているとおり、そうしたリスクの高い高齢者がおられる、こういった場所についてはマスクの着用を推奨している。ただ、基本的には、我々、一律にお願いするということではなくて、個々の皆さんが御判断をするに当たって、情報として提供させていただいているということでございます。

 それから、アクリル板でありますけれども、これも一律なということではなくて、まさにそれぞれで御判断いただくということになるわけであります。

仁木委員 私が今日、問題にしたいのは、そういったそれぞれの現場の判断ということが、それぞれの場所によって基準に差が出てくるんじゃないかということです。

 特に、例えばこういう事案がありました。今の段階、いわゆる二類分類の中で、今、統一地方選挙が行われていますが、投票権が行使できない介護施設の方がいらっしゃるという問題です。それは何かというと、施設の管理者が、今、グループホームあるいは有料老人ホームあるいはサ高住の患者さんが、おうち、いわゆるそういう施設を出て投票所に行くことをすごく警戒されています。つまり、もしコロナを持ち込んだら、院内感染、あるいは施設内感染、ひいてはクラスターになるということでございます。

 大臣、これは、五月八日以降、劇的にというか、より、かなりの通達というか、そういうものを現場に出していかない限り、やはりなかなか変わらないんじゃないかというふうに思うわけでございまして、もちろん感染症対策が一番でございますが、やはり過剰にやり過ぎて、ある種、例えばさっきの選挙の事案ですけれども、選挙権、いわゆる参政権を行使できないような高齢者が厳として結構な数いらっしゃるということなんです。

 大臣、そのことに関しては、私は、現場への通達を強めるということも一つの案として出しましたが、何か大臣、お考えをお持ちでないでしょうか。

加藤国務大臣 選挙権は、もう申し上げるまでもなく、我が国の民主主義を支える基本であります。まさに国民の権利であり、有権者の投票の機会を確保するということが大変重要であります。

 これに関しては、令和三年一月八日に総務省の事務連絡がありまして、「選挙の管理執行における新型コロナウイルス感染症への対応について」ということで、選挙は、緊急事態宣言がなされた場合においても、公職選挙法第三十三条等の規定に基づき執行するものであり、不要不急の外出に該当しないということを明確に言っているところでありますので、委員の御指摘、そうした事例があるとすれば、さらに、こうしたことを、これは総務省とも連携をしながら対応していきたいと思います。

仁木委員 ありがとうございます。

 大臣、これは実際、例えば、いろいろな施設基準もありまして、今のおっしゃった事案に関しましては不在者投票ができるとか。ただ、現実的に、期日前投票とか投票日の当日ができない高齢者も、さっき言ったようなコロナゆえの自主的な判断でもって外へ外出すること、例えば、一旦出てしまうと二週間はもう自宅でいてくださいとか、ひどい場合、対立しちゃうともう出ていってくださいとかそういうふうな事案まで、これは名前は出せませんが、現実としてございますので、そういった実態調査はする必要はないかもしれませんが、そういうことも、二類から五類へと疾病分類が緩和されるに当たって、改めて、今大臣がおっしゃったように総務省とも提携しながら、そういった国民の大切な権利を保障できるような体制も取っていただきたいと思います。

 次に、今年のワクチンのことについてお尋ねしたいと思います。

 今年度はある種国民の側にすると負担ゼロ、来年度以降は、まだ検討の段階で、場合によっては季節性インフルエンザワクチンのような扱いになるということが出ているみたいでございますが、この間、ワクチンの接種率、特に四回目、五回目の接種率がかなり低いというデータがありまして、されど、ワクチンの購入価格、これは、メイド・イン・ジャパンの製薬メーカーのワクチンはありませんので海外との交渉になります。

 私は二段階の購入を、是非、岸田総理も含めて、製薬メーカー、ワクチンメーカーの方におっしゃっていただきたいと思うんですね。つまり、はなから一億二千万回分、全国民の数を調達しても、大臣御案内のように、これは一回接種するのに、今、ブラックボックスでありますけれども、契約内容は分かりませんが、おおよそ、一回、ワンショットが二千七百円かそれくらいかかるかもしれないんですね。そして、医療従事者の二千七十円を足して、いろいろなもろもろのコストをいくと、一人頭、国民が多分、ワンショットを受けるのに、公的なお金、これは五千円以上かかっていると考えられます。そうすると、例えば一億回を準備するとすると、打つと五千億円ですね。だから、私が二段階と申し上げたのは、最初、四回目ぐらいまでの接種を受けた方の数を勘案して、五千万回分用意して、それで、何か需要が更にあれば追加契約するというふうな交渉はできないかということですけれども。

 これは、本当に、ブラックボックスと言いましたけれども、交渉内容、いわゆる契約内容が明示されていませんので、私が一議員として入り込む余地はないかもしれませんが、大臣、そういった限られた財源を、ワクチン事業に関しては有効に使っていただく、そういうお考えはないでしょうか。

加藤国務大臣 まず、今年度の新型コロナワクチン接種に使用するワクチンは、審議会において、高齢者等の重症化リスクの高い方を対象とした春夏の接種では引き続きオミクロン株対応ワクチンを用いること、五歳以上の全ての方を対象とした秋冬の接種に使うワクチンは、今後、流行株の動向を踏まえ引き続き検討することとされておりますので、その上で、今後のワクチンの確保に当たっては、今申し上げた審議会における結論を踏まえるとともに、ワクチンが安定的に供給されるようになってきているということ、また、これまで国で確保したワクチンを最大限有効活用すること、あるいは、実際のこれまでの御指摘のようなワクチン接種の状況、これらも考慮した上で、希望する国民の皆さんに接種の機会が提供できるようにしつつ、適切な量を確保するということで取り組みたいと思います。

仁木委員 このワクチンのことに関して一つ申し上げておきたいのは、結局のところ、先ほど、ゾコーバ、いわゆる治療薬の話が出ましたが、国産のワクチンはでき上がっていません。そして、五つの事業があって、一つはリタイア、いわゆる断念ということも出ておりまして、残りの四つの事業についても、把握しておりませんが、これはいつまで開発するかという質問もこの委員会でしたことがございます。

 今後、例えば疾病分類が二類等々にまた強化されるようなパンデミックに陥ったときに、やはり国産のワクチンがあるかないかというのは非常に大きいことなんですね、調達がすぐできるかどうかということは。

 そういう意味でいいますと、コロナがはやったときのことを想定していただきたいわけでございますけれども、やはり、そういった国産のワクチンメーカーがより国産のワクチンを作れるような、上市できるような体制づくりということで、デジタル、医療DX、重要だと思っておりまして、治験なり、あるいはその前提の臨床研究をする上での体制づくり、これは、改めて、国民の皆さんも今大分、雰囲気としては、自分のワクチンを打った後の効果、有効性、副反応も含めて情報を提供していただけるような雰囲気になっていると思いますので、そういったこともリスクコミュニケーションの中で、今後とも、将来のワクチンを国産で作っておくためのプラットフォームを国民一丸となってやっていくということを、大臣が音頭を取ってやっていただけたらと思っております。

 その中で、二番目の質問ですけれども、医療DX、特に、私が問題にしている、これは前回も岸田総理の方にお聞きしたことでございますけれども、せっかく、パーソナル・ヘルス・レコード、電子カルテ等、こういったレセプトやあるいは様々なことがタグづけして連携されていくという中で、国民が自分の体のデータをより客観的に知っていくということは、予防医学であったり医療の適正化、ひいては医療の、いわゆる財源のより無駄遣いをなくしたり、よりよい医療になっていくと思うわけでございます。

 例えば、公文書に準ずるカルテの内容を、自分が、つまり患者自身が自分のデータということでそれを引き出す、閲覧する、そういったことは、今後、大臣、これはこの間岸田総理もあり得るとおっしゃったわけでございますが、カルテが開示されるとなると、この間、私たち医師も、現場でそういったことが起こってくるので、昔は英語であったりあるいはドイツ語表記のものあるいは汚い字でも許されたわけでございますけれども、電子カルテになって、読みやすくなって、基本的に日本語で書きましょうねというふうな、そういう暗黙のルールみたいなのもあります。

 そういう中で、公文書の管理にも伴う、個人の情報とはいえ、それを引き出して閲覧して、それで自分のパーソナルヘルスあるいはセルフメディケーションのために活用していくという、そのことに関する大臣の踏み込んだ考えというのはありますか。今、検討の段階だけでしょうか。それとも、公文書の管理に関する法改正も含めてやるべきだというふうなところまでお考えでしょうか。お答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 まず、国民が自身の保健医療情報を閲覧できる仕組みとして、現在、薬剤や特定健診等の情報をマイナポータルを通じて確認できる仕組み、これは運用されています。これに加えて、今、医療DXを推進をしており、その取組として、全国医療情報プラットフォームを創設することにしております。それによって、傷病名や検査結果等の標準化した電子カルテ情報、また、介護情報についてもマイナポータルを通じて経時的に確認できる仕組みを構築し、国民の更なる健康増進に寄与することを目指していきたいというふうに考えているところでございます。

 この医療DXの取組については、この春を目途として策定予定の工程表に基づいて、その具体化を進めていきたいと考えております。

 その上で、医療情報の保護ということでありますけれども、厚労省では、医療機関が医療情報の保護をしっかり図っていくということは必要でありますし、この医療DXを推進するに当たっても、そうしたサイバーセキュリティーへの対応等含めてしっかり講じていきたいと思っております。

仁木委員 ありがとうございます。最後の辺りは、ちょっと次の質問の答えの一部だったと思うんですけれども。

 医療従事者が患者さんの貴重な医療情報にアクセスする、これはユーザー認証という形、ログインする際のID、パスワードとかあるんですけれども、実際、医療の現場では、例えば大きい病院とかでは、カルテが開かれている、インターフェースの画面上に患者さんの情報が開いたまま診療します。そうすると、例えばナースであったり医療クラーク、メディカルクラークがそれを見られます。場合によっては、医師がその場を離れて、この処方、どういう処方をしておいてとか、この検査をしておいてと言ったときに、そこでメディカルクラークが入力するようなことが、実際、現場としてはあるんですね。

 そういったところの一連のガイドライン、これはやはり、私たち医療従事者というのは、結構そういった守秘義務というのは守らなければいけないわけでございますけれども、アクセスコントロールに加えて、患者さんの情報をどのように扱うかという一連のガイドラインみたいなものも、大臣、出しておいた方がいいと思います。

 その上で、今、ユーザーの認証、いわゆるドクターがどの患者さんにどういう治療を行ってどういう効果が出たということ、これも非常に有効ないわゆるエビデンスにもつながるデータになるわけでございまして、場合によっては、診療報酬においても、この分野のこういう治療を行ってどういうふうになったかということで、今後、診療報酬のいろいろな改定にもつながる貴重なデータになっていくわけです。

 そういう意味で、その基となる、現場で行われているアナログ的な状態のものを入力していく、そして、その患者さんにどういう検査とか治療を行った、その責任者たる、そういうドクターを中心としたユーザー認証を高めていくということに関しましては、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 厚労省では、医療機関等が医療情報を安全に管理するため、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを策定をしているところでございます。

 業務単位ごとのアクセス制限の付与を行うこと、電子カルテの利用者の識別、認証を行うこと、電子カルテのアクセスログを残すこと、個人情報が保存されている機器の設置場所及び記録媒体の保存場所には施錠すること等が求められているところであります。

 また、本ガイドラインで、サイバー攻撃を受けた場合などにおいて、医療機関等から所管官庁に連絡等、必要な対応を行うほか、そのための体制整備もすることにしております。

 それらの対応を行うに当たって、厚労省として、様々な支援をさせていただいているところでございますので、医療機関における医療情報の安全管理が適切に行われるとともに、特に医療従事者の方の意識あるいは、資質と言うとあれですけれども、マインドですね、そういったものを高めていく、こうした取組を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

仁木委員 ありがとうございます。

 改めて、今、この間のこの厚労委員会の議論でも、マイナ保険証の所持が義務かどうかとか、そういうことが議論になっていますが、国民が医療DXに関して推進される中で一番心配事をアンケートを取っても、やはり情報漏えいということだと思います。

 ですから、大臣も今強調されましたように、医療セキュリティー、非常に重要ですので、やはり医療従事者の方も、日々の診療に加えて、大切な国民の情報を扱っているということを常に認識するような、そういう意味での所管省庁としての、ガイドラインを含めた、いわゆる現場へのしっかりとした監督をやっていっていただきたいということを最後に申し上げまして、私の質疑としたいと思います。

 今日はありがとうございました。

     ――――◇―――――

三ッ林委員長 次に、内閣提出、生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

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 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

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加藤国務大臣 ただいま議題となりました生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 食へのニーズの多様化や食のグローバル化の進展等により、我が国の食を取り巻く環境は大きく変化をしています。また、水道に関しても、近年、人口減少に伴う水道事業者の経営環境の悪化、水道施設の老朽化や耐震化、災害発生時の断水への対応等が強く求められるようになっています。

 こうした状況を踏まえ、政府全体として生活衛生等関係行政の一層の機能強化を図るため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、食品等の衛生に関する規格や基準の策定その他の食品衛生基準行政に関する事務について、食品安全行政における総合調整と一体的に行う観点から、厚生労働省から消費者庁に移管することとします。

 第二に、水道整備、管理行政のうち水質又は衛生に関する事務について、河川等の環境中の水質に関する専門的な知見等を活用する観点から、厚生労働省から環境省に移管するとともに、それ以外の水道整備、管理行政の事務について、社会資本整備や災害対応に関する専門的な知見等を活用する観点から、厚生労働省から国土交通省に移管することとします。

 また、水道について、災害対応の強化や他の社会資本と一体となった効率的かつ計画的な整備等を促進するため、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法及び社会資本整備重点計画法の対象に加えることとします。

 第三に、これらの事務の移管を踏まえ、厚生労働省、国土交通省、環境省及び消費者庁の所掌事務並びに関係審議会の調査審議事項について所要の見直しを行うこととします。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和六年四月一日としています。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

三ッ林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十一日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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