衆議院

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第14号 令和5年5月17日(水曜日)

会議録本文へ
令和五年五月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      石原 正敬君    上田 英俊君

      柿沢 未途君    勝目  康君

      川崎ひでと君    小泉進次郎君

      小林 鷹之君    塩崎 彰久君

      新谷 正義君    瀬戸 隆一君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      西野 太亮君    橋本  岳君

      平沼正二郎君    堀内 詔子君

      本田 太郎君    松本  尚君

      三谷 英弘君    吉田 真次君

      阿部 知子君    荒井  優君

      井坂 信彦君    大西 健介君

      西村智奈美君    野間  健君

      山井 和則君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      遠藤 良太君    吉田とも代君

      古屋 範子君    吉田久美子君

      田中  健君    宮本  徹君

      仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   文部科学大臣政務官    伊藤 孝江君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大西 友弘君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 原  圭一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文部科学戦略官)       伊藤 学司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         富田  望君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官)            浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  榎本健太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         八神 敦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  川崎ひでと君     石原 正敬君

  小林 鷹之君     平沼正二郎君

  土田  慎君     西野 太亮君

  西村智奈美君     荒井  優君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     川崎ひでと君

  西野 太亮君     土田  慎君

  平沼正二郎君     小林 鷹之君

  荒井  優君     西村智奈美君

    ―――――――――――――

五月十六日

 若者も高齢者も安心できる年金と雇用に関する請願(田村貴昭君紹介)(第九七四号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一〇一七号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一〇三三号)

 同(篠原豪君紹介)(第一〇三四号)

 同(山崎誠君紹介)(第一〇三五号)

 同(渡辺創君紹介)(第一〇三六号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第一〇五五号)

 同(神谷裕君紹介)(第一〇五六号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一〇五七号)

 同(末次精一君紹介)(第一〇五八号)

 同(米山隆一君紹介)(第一〇五九号)

 同(青山大人君紹介)(第一〇八八号)

 同(櫻井周君紹介)(第一〇八九号)

 同(堤かなめ君紹介)(第一〇九〇号)

 同(大河原まさこ君紹介)(第一一一四号)

 同(たがや亮君紹介)(第一一四六号)

 同(岡本あき子君紹介)(第一一九五号)

 同(山岸一生君紹介)(第一二二八号)

 パーキンソン病患者への難病対策の推進に関する請願(西村智奈美君紹介)(第九七五号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第九八一号)

 同(長友慎治君紹介)(第九九四号)

 同(阿部知子君紹介)(第一〇一八号)

 同(阿部知子君紹介)(第一〇三七号)

 同(小森卓郎君紹介)(第一〇三八号)

 同(中島克仁君紹介)(第一〇六一号)

 同(寺田稔君紹介)(第一一二九号)

 同(赤羽一嘉君紹介)(第一一九六号)

 国民を腎疾患から守る総合対策の早期確立に関する請願(北村誠吾君紹介)(第九七六号)

 同(平沼正二郎君紹介)(第九九五号)

 同(丹羽秀樹君紹介)(第一〇一二号)

 同(小森卓郎君紹介)(第一〇三九号)

 同(鈴木憲和君紹介)(第一〇四〇号)

 同(中島克仁君紹介)(第一〇六四号)

 同(早稲田ゆき君紹介)(第一〇六五号)

 同(梅谷守君紹介)(第一〇九一号)

 同(寺田稔君紹介)(第一一三九号)

 同(稲富修二君紹介)(第一二一〇号)

 同(村上誠一郎君紹介)(第一二二三号)

 同(田所嘉徳君紹介)(第一二三三号)

 建設アスベスト被害給付金法を改正し、建材企業が参加する補償基金制度の創設を求めることに関する請願(田村貴昭君紹介)(第九七七号)

 同(森山浩行君紹介)(第九七八号)

 同(菅直人君紹介)(第九八二号)

 同(末松義規君紹介)(第九九六号)

 同(櫻田義孝君紹介)(第一〇一三号)

 同(阿部知子君紹介)(第一〇二一号)

 同(篠原孝君紹介)(第一〇二二号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一〇六六号)

 同(中島克仁君紹介)(第一〇六七号)

 同(早稲田ゆき君紹介)(第一〇六八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一一六五号)

 同(大石あきこ君紹介)(第一一六六号)

 同(神津たけし君紹介)(第一二一二号)

 福祉職員の大幅な賃金の引上げと増員に関する請願(篠原孝君紹介)(第一〇一九号)

 同(早稲田ゆき君紹介)(第一〇六二号)

 全国一律最低賃金制度への法改正に関する請願(篠原孝君紹介)(第一〇二〇号)

 同(早稲田ゆき君紹介)(第一〇六三号)

 同(手塚仁雄君紹介)(第一一一七号)

 じん肺とアスベスト被害根絶等に関する請願(近藤昭一君紹介)(第一〇五四号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため人員増と処遇改善を求めることに関する請願(早稲田ゆき君紹介)(第一〇六〇号)

 国立病院の機能強化に関する請願(大河原まさこ君紹介)(第一一三〇号)

 同(吉良州司君紹介)(第一一三一号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一一三二号)

 同(長坂康正君紹介)(第一一三三号)

 同(宮本徹君紹介)(第一一三四号)

 同(山崎誠君紹介)(第一一三五号)

 同(湯原俊二君紹介)(第一一三六号)

 同(米山隆一君紹介)(第一一三七号)

 同(笠浩史君紹介)(第一一三八号)

 同(青山大人君紹介)(第一一四七号)

 同(小沢一郎君紹介)(第一一四八号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第一一四九号)

 同(神谷裕君紹介)(第一一五〇号)

 同(神田憲次君紹介)(第一一五一号)

 同(菅直人君紹介)(第一一五二号)

 同(櫻井周君紹介)(第一一五三号)

 同(たがや亮君紹介)(第一一五四号)

 同(寺田学君紹介)(第一一五五号)

 同(中谷一馬君紹介)(第一一五六号)

 同(仁木博文君紹介)(第一一五七号)

 同(森田俊和君紹介)(第一一五八号)

 同(山岡達丸君紹介)(第一一五九号)

 同(山岸一生君紹介)(第一一六〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一一九七号)

 同(石川香織君紹介)(第一一九八号)

 同(稲富修二君紹介)(第一一九九号)

 同(大石あきこ君紹介)(第一二〇〇号)

 同(大西健介君紹介)(第一二〇一号)

 同(岡本あき子君紹介)(第一二〇二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二〇三号)

 同(末次精一君紹介)(第一二〇四号)

 同(田中健君紹介)(第一二〇五号)

 同(堤かなめ君紹介)(第一二〇六号)

 同(福島伸享君紹介)(第一二〇七号)

 同(藤岡隆雄君紹介)(第一二〇八号)

 同(渡辺創君紹介)(第一二〇九号)

 同(源馬謙太郎君紹介)(第一二一九号)

 同(野間健君紹介)(第一二二〇号)

 同(柚木道義君紹介)(第一二二一号)

 同(吉田統彦君紹介)(第一二二二号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第一二二九号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一二三〇号)

 同(佐藤公治君紹介)(第一二三一号)

 同(重徳和彦君紹介)(第一二三二号)

 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願(神田憲次君紹介)(第一一六一号)

 同(長坂康正君紹介)(第一一六二号)

 同(古川元久君紹介)(第一一六三号)

 同(牧義夫君紹介)(第一一六四号)

 同(大西健介君紹介)(第一二一一号)

 同(吉田統彦君紹介)(第一二二四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一二三四号)

 同(重徳和彦君紹介)(第一二三五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国立健康危機管理研究機構法案(内閣提出第四九号)

 国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第五〇号)


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     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国立健康危機管理研究機構法案及び国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大西友弘君、こども家庭庁長官官房審議官野村知司君、外務省大臣官房審議官原圭一君、文部科学省大臣官房文部科学戦略官伊藤学司君、厚生労働省大臣官房総括審議官富田望君、大臣官房危機管理・医務技術総括審議官浅沼一成君、医政局長榎本健太郎君、健康局長佐原康之君、医薬・生活衛生局長八神敦雄君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日いただきましたお時間は十五分ですので、早速質問に入らせていただきます。

 コロナの感染、実は、二〇二〇年の一月十五日、神奈川の相模原協同病院が一例目ですが、始まりまして、今、三年五か月たったところかと思います。そして、最も重要な、今後の感染症に備えるための今回の法案ですが、やはり、感染症、とりわけこうしたパンデミック等々が起こった場合に、果たしてそのことによって何人が罹患され、重症化し、亡くなられていったかということは、基礎データとして大変重要と思います。

 ちょうど今から一年ほど前、ランセットという論文に、日本と世界の、特に二〇二〇年の初頭から二〇二一年の終わりまで二年間における死者数の予測についての論文が出て、大きな話題になりました。

 発表されている死者数よりも約三倍ほどの方が全世界では亡くなられているだろうと。日本の場合は、発表された、ここで把握された数、一万八千四百人、最初の二年間ですから。これに比べて、この手法を用いると、六・〇二倍の十一万一千人に上ると。各国、一生懸命、死者を把握して対策を打つわけですが、日本の場合は六分の一しか把握されていないのではないかという指摘で、それは先進諸国でも特記すべき事態であったという論文であります。

 加藤大臣にお伺いいたしますが、この間、質疑を承ってきて、もろもろ、初動体制含めて問題があったという御認識はおありだと思いますが、果たして、今もそうですが、我が国において一番根本的な、その実態が把握されないという事態、特にこのランセットの指摘についてはどのようにお考えでありましょう。

加藤国務大臣 超過死亡についてはいろいろな分析があります。今御指摘のランセットの論文があることも承知をしております。また、WHOの推計では、逆に、二〇二〇年から二〇二一年の二年間で十万人当たりマイナス八人の過少、そうした分析も出されていると承知していますし、また、我が国における研究班の分析では、二〇二〇年については、実際に報告された死亡者数約二千八百人に対して超過死亡はおよそ三百人から六千人、二〇二一年については、実際に報告された死亡者数約一万五千人に対し超過死亡はおよそ一万一千から五万人の範囲と推定されています。

 ポイントは、その超過死亡の中にどういったものが入るのかということなんだろうと思います。

 新型コロナを直接の原因とした死亡の影響に加えて、例えば、医療の逼迫により通常医療の制限も起こることから他の疾患の死亡が増えること、循環器系を含む様々なCOVID―19の合併症による死亡が増えることなども考えられるとしております。

 こういうことでございますので、引き続き、こうした超過死亡の状況等も調査分析をして、こうした流行の状況というものを重層的に把握していくということは必要だというふうに考えております。

阿部(知)委員 私は、超過死亡という専門用語に逃げ込まないで、国民に説明が必要なんだと思うんです。

 最初は、例えば、在宅で亡くなられてからコロナが分かるとか、保健所では、三十七・五度C以上、四日待てと言われて、これも、当然、ピークも過ぎてしまうわけです。やはり、圧倒的に検査体制が遅れていたこと。それから、二点目は、流行の予知、予測の体制、サーベイランスとか疫学調査と申しますが、これも立ち遅れていること。三番目は、リスクコミュニケーション、一体何が起こっていて、どのように行動すべきか。この三点、いずれも、実は、二〇二〇年から約二年間、立ち遅れていたと思います。そして、今回のこの法案によって、その各々がどう改善されたかの方が重要であります。

 超過死亡の累計は、いろいろな切り口がありますから、いろいろなデータが出てくるのは承知です。だって、例えば、二〇二一年ですか、一万一千から五万、そんな幅のあるもの。ですから、そこに着目するのではなくて、何が把握されていなかったかに私は着目すべきなんだと思います。

 まず、検査体制ということについて申せば、これまで何人かの方が質疑されておりますが、地方衛生研究所が、やはり、この十数年、二十年、どんどん機能を落とし、人員も落としていて、それが十分保健所と連携してワークしなかった問題、これはもう何人もの方が指摘しておられますし、大臣も御答弁でありますが、これを法定化せよと私たちが、立憲民主党が求めて、いや、地方分権だから、あるいは地域差があるから法定化しないということで、役割を定めることだけで動いてきておりますが、果たしてそれで十分なのかどうかという問題であります。

 地方衛生研究所とは何をしていくのか。その地域におけるサーベイランスと、そして、実は、今後ますます、危機になれば、分権化した対応が必要になります。一斉にパンデミックに、一斉に増えるわけではない。どこかから始まって広がっていく。初動が大事で、始まったところから抑えていくということが大事なときに、果たして、今回の改正がそうなっているかどうかであります。

 お手元の資料を見ていただきたいです。

 今回の改正は、今の国際医療センターを、名前は国立健康危機管理研究機構、感染研と併せていたしておりますが、果たして、名は体を表すでいえば、日本版CDCかというと、一番上のまとめたもの、これは神奈川保健福祉大学の兪さんという先生の講演資料から引きましたが、アメリカのCDCと日本の中央政府。やはり、州単位、郡単位でのいろいろな情報を把握し、更新をしていること、そして、予測モデルを更新する研究組織の数も二十に及ぶこと。これは、各々、日本は、国一本とか、せいぜい都道府県、そして、いろいろなデータは国立感染研究所のみ集計がかなうというような、中央政府が握っておるわけです。そして、地域レベルで自分たちの感染動向を見たいと思ったとき、利用できるソフトウェアがないという状況が今も続いております。

 下にお示ししてありますが、神奈川県ではダイヤモンド・プリンセスがやってきましたので、神奈川モデルをつくって、病院に患者さんの搬送をシステム立ってやると同時に、その後、いわゆる感染予測の地域モデルというものが各市町村段階まで予測できるようという取組をやってまいりました。

 まだ必ずしも十分ではないと思いますが、考え方として、やはり、中央にデータを集めるというよりも、面で、地域で感染状況を把握して、それをもちろん感染研に伝えることも重要ですが、こうした、アメリカでも、ちなみに地方版CDCがありますから、地域における取組ということが重要と思います。

 私は神奈川の例を御紹介しましたが、大臣は、ほかにこういう県単位、地方単位、自治体単位での感染予測モデルをやったところがこの間あったでしょうか。そして、今回の法改正でそうなるんでしょうか。お願いします。

加藤国務大臣 まず、先ほど超過死亡に逃げ込んでいるとおっしゃったんですが、委員の質問が超過死亡の話だったので超過死亡のことについてお話をさせていただいたということ。

 それから、アメリカと日本は、ただ、政治の体制が違っています。例えば先ほどダイヤモンド・プリンセスの話がありましたが、ダイヤモンド・プリンセスのときに、あれは日本政府が出ていったわけですが、アメリカで似たような事案があったときには当該州が対応するということで、やはりそのたてりが違うということですから、それにのっとった体制になっているということがまずあると思いますが、ただ、今委員おっしゃるように、地方の地衛研ないし地方での対応力をしっかりつけていくということの重要性、これは全く同じ認識をさせていただいているところでございます。

 ほかに神奈川のような例があったのかというのは、残念ながら、私、神奈川の件しか承知をしておりませんので、ちょっと、なかったとは言えませんけれども、必ずしも承知しているわけではありません。

阿部(知)委員 是非詳しく検証していただきまして。

 流行予知モデルというものをつくって対応してまいりました、どのくらい病床が要るか、発熱外来はどうするか。そして、これは試みですから必ずしも完成形ではないです。しかし、そうした取組ができる体制をつくっていくことが今回の改正の重要点だと私は思うんです。

 そこにおいて、今回の改正で最も欠落しているものは、大学の機能をどう見るかということであります。

 神奈川の保健福祉大学、神奈川ではお力をかりました。そして、次の資料ですね、厚生労働省と文科省が既に、令和三年二月十九日に発出しておられますように、大学等と自治体が連携して地域における検査体制の強化を図れということであります。これは、検査体制だけでなく、その後の疫学やあるいは研究や人材育成、全てに大学は関わることができます。しかしながら、今回の法改正でその大学の姿は見えません。

 続いて、三枚目にお示ししている資料が地衛研と国立感染症の間の情報交換ですが、果たして面ではどうかというと、書いてございますように、保健所、研究所、その他の地衛研、都道府県というところでとどまっております。

 是非、大臣、大学というもの、これは人材の育成も関わってまいります、この中にしっかりと連携を位置づけていただきたいが、いかがでしょう、厚労大臣。

加藤国務大臣 まず、今回のコロナ対応においても、大学等においてPCR検査に御協力をいただいた、あるいはゲノム解析等について御協力をいただいたところでございます。

 また、昨年十二月に成立した改正感染症法に基づいて、検査に関する数値目標を盛り込んだ予防計画を都道府県が策定することとなっていますが、都道府県においては、その取組を進めるに当たって大学との連携が進むことも期待をしているところでございます。

 また、行政検査に係る自治体と大学の連携が強化されることなどを通じて、ゲノム解析等が大学で実施されるということになりますと、地域の感染状況の分析等に対する大学の科学的な知見が生かされる、あるいは大学におけるそうした対応がより強化される、こういった相乗効果が期待されるところでございますので、引き続き、今回のコロナ対応の体験も踏まえて、単に検査の対応だけではなくて、委員御指摘のように、それぞれの大学における知見、これをしっかり活用していけるように、よく文部科学省とも連携し、大学等の協力をお願いしていきたいと考えています。

阿部(知)委員 今日は文科省にもお越しいただいております。この三年余りをどう見ておられて、課題はたくさん残っていると思いますが、いかがお考えですか。

伊藤大臣政務官 お答えいたします。

 大学の役割ということについての御質問かと思いますので、その観点でお答えをさせていただきます。

 新型コロナウイルス感染症への対応に関しましては、各大学が、それぞれの強みや特色を生かして、感染症の研究や、大学を拠点としたワクチン接種など、様々な取組を行ってきたものと承知をしております。また、PCR検査に関しましても、文部科学省と厚生労働省の連携の下、それぞれの地域における検査体制の整備等にも取組を協力をして進めてきたところです。

 各大学の教育研究の成果を広く社会に提供していくということはやはり大変重要なことであり、今後、次の感染症危機への備えに当たっては、地域における検査体制の整備等に大学も協力をして取り組むことができるように、厚生労働省と連携を図ってまいります。

阿部(知)委員 この法案の提出時に、そういうことを既に織り込んで出していただきたいです。そして、大学は単に検査の下請ではありません。そこからオン・ザ・ジョブ・トレーニングにもなりますし、感染症対策のサーベイランスを実施することもできる能力を持ったところであります。

 さて、最後に、今回の改正で私が一番気になっていることを申し上げたいと思いますが、実は、アメリカのCDCは政策立案をする、日本はしないということでずっと繰り返されておりますが、本当は、科学的な知見を政策として提案しても十分いいんだと思うんです。政治の側がそれを採用するかどうかが、別途、政治判断なわけです。アメリカでは州、日本では内閣の危機管理の、あるいは有識者会議等々がなさる。私は、科学が進歩していくためには、多様な、先ほど、二十のサーベイランス、統計処理があったと。そういう状態を日本でもつくり出すことです。危機こそ、中央集権ではなくて、地方分権でその人材を生かしていくことだと思います。

 時間がないので御答弁いただけませんが、そういう観点からも、今回の改正はせいぜい、正直言って、日本版CDCではなく、感染症研究センターとか感染症研究診療センターでいいんだと思います。公衆衛生、疫学が圧倒的に足りません。

 以上、申し添えて、質問を終わります。ありがとうございます。

三ッ林委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 本日は、今審議もありましたけれども、いわゆる新しい機構の創設、これにまつわる様々な問題について質問させていただきたいと思います。

 今回、この機構ができる、あるいは内閣にも感染症の危機管理統括庁等ができて、今までの新型コロナ対応について、様々な反省の中で、とりわけ総理の司令塔機能が十分でなかったということが度々出てきます。そういうものを強化するために今回こういったものもできたんだと思うんですが、ポストとか組織が物すごいできるんですよね。

 例えば、内閣感染症危機管理統括庁、これまた長官という人が出てくるわけですね、これから。そこにまた内閣感染症危機管理監、これは内閣官房副長官の充て職だそうです。それから、内閣感染症危機管理監補、この人も内閣官房副長官補の充て職だ。その下にまた内閣感染症危機管理対策官、これは厚労省の医療技監の充て職です。そしてまた、それ以外に、新たな専門家組織として今回の機構等ができるわけですけれども。

 何か、戦でいえば、総司令部に、総司令官の下に、参謀幕僚、金ぴかなモールをつけた人たちが、参謀がいっぱい集まっているわけですが、実際最前線で戦っている、働いている人たち、地方衛生研究所、保健所、そして地域の医療機関、こういったところはなかなか補給も十分でない、兵たんも十分でないところで戦えと。総司令部だけが金ぴかな、いっぱいポストをつくってやっているというのが、実際、地方から見た我々の感覚でありますし、また、地方の医療関係者の見方であります。これで本当に次の戦ができるんだろうかということを危惧するわけですけれども。

 今回できる国立健康危機管理研究機構ですけれども、これは、科学的な知見を、とりわけ有事の際、内閣総理大臣や厚労大臣に報告する、そしてまた対策本部にも出席をして意見を述べることができるというのが大きな業務の一つでありますけれども、後ほども聞きますが、誰が、どのように、そういう機構に収集された情報とか科学的知見、これをまとめて、どういうふうに総理、厚労大臣に報告するんでしょうか。内部的な、どういう組織的なやり方になるんでしょうか。

加藤国務大臣 まず、法律上は、機構法案の第二十三条に業務を規定していますが、業務の実施状況を内閣総理大臣、厚生労働大臣に報告するとされておりますが、厚生労働省令で定めるところにより報告するという形になっております。

 実際、機構から統括庁や厚労省に対して報告する方法、頻度、内容なども検討した上で詰めていくことになるわけでありますが、いずれにしても、機構が平時から統括庁等に対して科学的知見を積極的に提供することを想定しておるわけでありますので、担当者レベルでの常日頃からの意思疎通はもちろん、理事長等の幹部レベルにおいても統括庁と常日頃から密接に連携をしていく、それを前提に省令等も定めていきたいと考えております。

野間委員 この機構には、理事長、副理事長、それから理事九名、あと監事とかがいるんですけれども、この方々は全部事務職だという可能性も当然あるわけですね、研究者が入らない、あるいは医師等が入らないという場合もあるかと思うんですが、その辺がどうなのか。そして、どういう意思決定をして、そういった科学的知見を理事とかそういった人たちはまとめていくんでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構の役員は、理事長一人、副理事長一人、理事九人以内及び監事二人を置くこととしておりまして、理事のうち四人以上は非常勤の外部理事でなければならないとしております。

 役員は、研究者か事務職かにかかわらず人物本位で選定いたしますが、理事長は、機構を代表し、業務を総理することとされており、幅広い見地から広範な業務を包括的に管理できる人材を厚生労働大臣が選定して任命いたします。また、副理事長は、機構を代表し、業務を掌理するとともに機構の業務の総合調整を行うことができる人材を、理事は、それぞれ担当する業務に精通した人材を理事長が厚生労働大臣の認可を受けて任命いたします。

 機構業務は、理事長の総理の下で各担当理事が執行いたしますが、厚生労働大臣の認可又は承認を受けなければならない事項その他理事会が特に必要と認める重要事項につきましては、全理事で構成する理事会におきまして審議及び決定等を行うこととしております。

野間委員 今のお話ですと、事務職、研究職ということもない、あるいはマネジメントができる人、もろもろだと思うんですが、よく言われることですけれども、これが単なる天下り先になっては何の意味もないと思いますし、あるいは、こういう医療関係、いろいろな学閥とか様々なグループが、非常勤の理事も入っていくわけですから、そういったところの利益だけを代弁するようなことがあってはならないと思いますので、そういったことも厳しく国民は見ているということをお分かりいただきたいと思います。

 今回、統括庁などもできるということ、これは、総理が司令塔となって行政各部を指揮命令し、一元的に感染症対策を行う体制を強化するんだということで統括庁もできます。機構も当然これを強化するためにできるということですけれども、例えば、昨年、感染症法の改正もあり、特に問題になったのは、有事の際、病床が足りない、保健所の業務も本当に逼迫して大変なことになりました。こういった問題は、今回この機構ができ、あるいは統括庁も当然関係してきますけれども、どういうふうにこれは改善されるんでしょうか。

加藤国務大臣 御指摘のように、新型コロナへの対応では、病床確保に当たって事前の準備が十分でなかった、あるいは医療人材の確保、さらには、知見や情報の迅速な収集、提供といった課題が指摘をされております。

 こういった課題に対応するため、昨年十二月に改正した感染症法改正法において、都道府県と医療機関との間で病床確保や後方支援等を内容とした協定を締結する、都道府県をまたいで人材派遣の応援をする仕組み等、必要な病床を速やかに確保できる医療機関をあらかじめ適切に確保していくことなどとされているところでございます。

 今回の機構の設立によって、機構においては、病院における患者の受入れから、臨床病床、検体の共有、その感染症の分析、リスク評価までを一体的かつ迅速に行うこととしておりますので、そこから得られる診療方法等の知見、これが医療機関に提供され、そうしたことによって感染症対応の実効性がより高められていくというふうに期待しています。

野間委員 形の上ではそういうことも分かるんですけれども、本当に具体的にこれが改善に結びつかないと、全く意味がないことだと思います。先ほどの阿部委員との質疑もあったんですが、そういう意味で、やはり一番大事なのが、保健所あるいは地方衛生研究所の機能をきちっと強化していくということだと思います。

 昨年の改正地域保健法の施行によって、地方衛生研究所の業務、機能については法制化されたわけですけれども、実際、組織自体が法制化された、法定化したということはないわけですよね。自治体に対して、こうしなさい、ああしなさい、こういう機能を持ちなさい、それがイコール地方衛生研究所ということになるんでしょうけれども、実際、きちっとした意味での法定化がされていないということが大きな問題だと思います。

 私も、先日、地元の地方衛生研究所、鹿児島県では環境保健センターということで、衛生部門、環境部門、両方を兼務をしているところですけれども、いろいろ話を聞いてまいりました。

 確かに、新型コロナの拡大に伴って、地衛研に対する次世代のシークエンサーやリアルタイムPCR装置の整備の支援、最初二分の一補助だったのが十割補助ということにもなりまして、これは非常に設備を導入する上で助かったということで、ありがたいということを言っておられました。また、地方財政措置として、百五十人、今度、増員についても図られたということで、これも大変ありがたいことなんですが、それまで、以前の段階は、毎年毎年、人員、予算も削られてきて、地衛研を非常に軽視されてきたのも事実であります。そういった意味で、今回、一過性でこういったことがやられても、その後が続いていかないと、人材の確保とか、また専門性の継続、こういったものができないで困るということも言っておられました。

 現在、東京とか北海道とか愛知とか、そういった大きな自治体はそれなりのきちっとした地衛研を持っていますので、これはこれでいいんでしょうけれども、それ以外の非常に財政が厳しい自治体については、なかなか、全国一律的なきちっとした健康管理、危機管理のサービスの提供が受けられないということで、全国的な平準化が図られていないというのが大きな問題だと思います。

 そういった意味で、先ほどの阿部委員が言われたように、やはり地方衛生研究所が法定化されるべきであると思いますし、そしてまた、それ以外にも、今回、新しい機構と地方衛生研究所の連携強化ということがうたわれていますけれども、研修を受けさせるとか、また、いろいろな装置を導入してもらうのは結構なんですけれども、これはまた、メンテナンスの費用等が非常にかかります。こういったものに対して、国の支援、どういうものを考えているんでしょうか。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月に成立した改正地域保健法や本法案におきましては、平成九年の地方分権推進委員会の勧告の趣旨や、あるいは、人口規模や財政規模の小さい保健所設置自治体では地方衛生研究所の機能を十分に確保することがなかなか困難であるということ等も踏まえまして、保健所設置自治体に対しまして地方衛生研究所の設置の義務づけはしなかったところでございます。

 しかしながら、昨年十二月に成立しました改正地域保健法におきましては、保健所設置自治体に、地方衛生研究所等の機能を確保するために必要な体制整備の措置を講じる責務を課すとともに、地域保健法の基本指針において、自治体における地方衛生研究所等の整備の在り方や自治体相互の連携の在り方についてお示しをしたところでございます。

 さらに、現在御審議をお願いしています法案では、昨年の感染症法等の一部改正に対する附帯決議で法律上の位置づけを明確にすべきという御指摘をいただいたことも踏まえまして、地域保健法におきまして、調査、研究、試験等を行う機関を地方衛生研究所等と定義することにより、その位置づけを明確化することとしております。

 この一連の改正によりまして、都道府県が主導する形で域内の地方衛生研究所等の連携体制の構築を進めていくところとしているところでございます。各自治体においては、都道府県連携協議会の下で、都道府県内の関係自治体が協議の上、予防計画を策定し、地方衛生研究所の整備や自治体間の連携を計画的に進めることとしておりまして、これによりまして、各地域において必要な検査がしっかりと実施できる体制を構築してまいりたいと考えております。

 また、御質問のPCR装置の保守点検等でございますけれども、地方衛生研究所のPCR装置の保守費用等につきましては、これは感染症法に基づく病原体の検査に係る経費に相当しますので、国庫負担金による財政支援を行っているところでございます。

 また、職員の研修等におきましては、これも、地域保健法に基づく基本指針におきまして、計画的な人員確保や人員配置と研修参加を求めているところでございまして、地方衛生研究所の職員が研修に参加する費用については国が補助を行っているところでございます。

野間委員 新型コロナの発生に伴ってそういったことが少しずつ行われているということは分かるんですけれども、やはり、残念ながら、今は、機能を強化しなさい、これは精神論なんですよね。きちっとやはり予算をつけていかないと、これを継続していくことは不可能だと思いますので、是非そこはやっていただき、また、法定化も、確かにそういう機能面の、曖昧な形の法定化になっていますので、これはやはりきちっとしていただかないと困ると思います。

 それで、人員も、小さな自治体ですと、大体、地方衛生研究所、保健所、あるいは県立病院、そういったところをぐるぐる人事として回りますので、なかなか専門性が、三年ぐらいで異動していますと専門性が高められないということもありますので、やはりきちっと法定化をして予算をつけるということをしてもらいたいんですけれども、いかがですか。もう一度お答えください。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 地方衛生研究所の法的な位置づけについては、今回の法律改正の中でお願いをしているところでございます。

 また、各地衛研等におけます人員体制につきましても、今般策定していきます予防計画の中で、各都道府県の中でしっかり検討していくべきものと考えております。

野間委員 是非、検討して、実現させていただきたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、これはちょっと本論からずれる問題でありますが、今回の統合される機構の所在している、国立感染症研究所を一九八九年七月に、旧厚生省戸山研究所として造り替えるとき、地面を掘っていたら人骨が出てきたということで、いわゆる戸山人骨と呼ばれていますけれども、少なくとも六十二体の人骨があった。それは男性だけでなくて女性もあった、あるいは子供の人骨も発見されたということであります。

 今回、機構ができて特殊法人化されますけれども、国立でなくなるわけですが、この人骨を納めてある保管庫、私も昨日伺って手を合わせてきたんですけれども、この保管庫についてもきちんと、やはり国が責任を持って維持をしていくべきだと思います。そしてまた、この身元調査、これも続けてやっておられると思うんですが、これもきちっと継続していくべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

加藤国務大臣 平成元年七月に国立感染症研究所戸山庁舎の建設工事中に地中から発見された人骨については、平成四年から、当時の厚生省において、所在等の把握ができた陸軍軍医学校関係者等に対して聞き取り調査やアンケート調査を実施し、平成十三年六月に報告書を公表するとともに、戸山庁舎に発見された人骨の保管施設を整備し、現在に至るまで保管を行っているところでございます。元々ここに旧軍軍医学校があったということであります。この報告書において、発見された人骨は国が処分した人体標本に由来するものと推測されるとされており、国立感染症研究所戸山研究庁舎の保管施設において保管をしてきているところでございます。

 今回、機構の発足に伴う保管施設の管理については今後具体的に検討していくこととなりますが、しかし、これまでの経緯も十分踏まえ、引き続き国の責任で人骨の管理を行うとともに、できるだけ身元の確認につながるような努力を継続していきたいと考えております。

野間委員 是非、国の責任においてきちっと管理、保管、維持をしていただきたいと思います。

 これは申し上げるまでもなく、旧陸軍軍医学校の人体の標本だったという説もあれば、旧七三一部隊の被害者だったのではないか、いろいろな説があって、これは定まってはいないわけですけれども、地元の市民団体の皆さんが、戸山の人骨関連文書の、厚労省さんがまとめたリスト、あるいは人骨の由来調査記録、こういったものの情報公開を求めていると思いますけれども、どうなんでしょうか。これはされるんでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 発見された人骨に関連します文書のリスト、あるいは報告書に関わる記録につきましては、現在、確認、整理中でございます。その結果を踏まえまして、御指摘の点については適切に対応してまいりたいと考えております。

野間委員 是非、市民団体の方には、何かコロナの業務で厚労省さんが非常に繁忙だったということで遅れていたということですが、一応、一段落しましたので、是非それは行っていただきたいと思います。

 ちょっと最後に、大臣、これは質問通告していませんけれども、先ほどから申し上げている、余りにいろいろな機構とかポストがいっぱいできて、どこから情報がきちっと総理に伝わって、どうなるのか、非常にこれは感じている方は多いと思うんですが、本当に有事になったとき、その辺、大丈夫なんでしょうか。大臣はどう思われますか。これだけポストもできて、情報が錯綜してしまうんじゃないかと思いますけれども、大丈夫ですか。

加藤国務大臣 まさに、これまでの国立感染症研究所とセンターとがそれぞれ別々であったわけでありますが、それが一体となって取り組むことによって、一元的にまずそこで情報の集約ができてくる。それを、あとどのレベルで政府、いわゆる官邸、総理のところ、あるいは厚労省に伝えるかということ、これはこれから整理をしていく必要があると思いますけれども、まず大事なことは、平時からそうした関係をしっかり構築していくということが緊急時における対応にもつながっていくというふうに思っておりますので、七年度から施行されるわけでありますが、それに向けて、そういった点もしっかりと詰めさせていただき、まさに機構をつくった目的に資するように体制をつくっていきたいと考えています。

野間委員 是非、屋上屋を重ねる、あるいは船頭多くして何も物事が進まないということにならないように進めて、やっていただきたいと思います。

 時間となりましたので、終わらせていただきます。

三ッ林委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 国立健康危機管理研究機構法案、整備法案の質疑でございます。私からも質問させていただきたいと思いますが、今回の法案は、三年三か月余り、新型コロナウイルス感染症で抽出された課題、また教訓から検討されたものと承知して、理解をしているわけでございますが、新型コロナウイルス感染症に関連して、冒頭、二点、大臣にちょっと御確認をさせていただきたいと思います。

 先週末の土曜日、十三日とそして十四日、G7保健大臣会合が長崎県長崎市で開催をされました。これは、コロナ、WHOが五月五日に緊急事態を終了した、そして、我が国においては、五月八日、感染症分類二類相当から五類へと移行をした、大きな節目、直後のG7の保健大臣会合ということで、これは、各国との協調性、また我が国がこれまでコロナ対策に取り組んできた、そして今後、ポストコロナに向けて、私は大変重要な会議だというふうに位置づけております。

 大臣、御出席され、議長国として対応されたと思いますが、我々は、やはり、ここ、国会の衆議院厚生労働委員会、こういうことで、私も、報道、また厚労省のホームページ、詳録も確認させていただきましたが、改めて大臣に、G7保健大臣会合、今回の保健大臣会合で一番の成果とは一体何だったのか、確認をさせていただきたいと思います。

加藤国務大臣 今回大きく三つの柱で議論させていただきましたが、一つは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジについて、それを二〇三〇年までに達成するための行動指針となるG7のUHCグローバルプラン、これに合意ができたこと、また、今般のコロナパンデミックにおいて開発されたワクチンが途上国の人々に十分には行き渡らなかったという課題を踏まえて、途上国を含めて、世界中の人々の医薬品等への公平なアクセスを確保するための仕組みづくりの必要性について合意ができたこと、また、薬剤耐性として、いわゆる研究開発を促進するだけではなくて、プル型インセンティブの重要性についても認識を一致したこと等、幾つか挙げられるわけですが、その中で私が思っている一番は、やはりこのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの話だというふうに認識をしております。

 G7を始めとした多くの国や国際機関から成るパートナーシップであるUHC二〇三〇が作成したUHCアクションアジェンダをベースに、世界全体の達成に向けてG7各国が更に取り組むべき行動、これをG7UHCグローバルプランで合意をしたということでございます。

 特にこの三年間、やはり世界各国においても新型コロナの対応に追われたわけでありまして、UHCに対する取組が遅れていた、あるいは後退したという側面もございますので、そうした面に対してしっかり、この保健分野に関心が集まっている今、取り組むことが必要だということで、UHCを国の優先的な政策課題に位置づけ、UHC達成に向けた政治的機運を高めることをこの中で強調し、そして、それをプランという形で出したということが大変大きいと思っております。

 今回採択された長崎保健大臣宣言、またG7UHCグローバルプラン、これがG7の広島サミット、さらには国連でハイレベル会合等もありますので、そういったところも踏まえて更にこの議論が深まるとともに、各国が協調してこうしたことに取り組んでいけるよう、我が国としても貢献していきたいと考えています。

中島委員 UHCを国の優先課題として、世界各国、当然、今回非常にまれな世界的パンデミックということでございますので、このことが一番ということ、何か成果を答弁いただくと与党質問みたいですけれども、私は大変関心が高かったんです。理事会でも、この会合の報告そして成果、そして大臣がどのように感じられたか、これは非常に関心が私は高いんです。

 例年この時期に保健大臣会合が開かれ、昨年は当時の佐藤英道副大臣が出席。私は、これは国会の運営の問題かもしれませんが、やはり、今回のみならず大臣には是非御出席をするべきであってという中で、今回は開催国ということでありますから、今回、コロナの教訓をどう世界各国で共有して、先ほど言ったUHC、大変重要な観点だと私も思いますので、できればもっと大臣が感じられたこと、今日は一般質疑ではございませんのでここにとどめますが、改めて私は報告をしていただきたいなという希望をお訴えをさせていただきたいと思います。

 もう一点。もう一点は、連休前、四月の二十六日、大臣には、大変お忙しい中でありましたが、厚生労働委員会の後、自宅放置死遺族会高田共同代表から、コロナ五類移行に当たりの提案、そしてそれに対する署名、これを受け取っていただきました。お忙しい中対応していただいた、また、自宅放置死遺族会の皆様の気持ちを受け止めていただいたことには、心から感謝を申し上げたいと思います。

 その提言、提案の中にもあった、これは総論から一言で言うならば、これまで三年三か月の間、波を繰り返すたびに、いわゆる自宅放置死の疑い、必要な方が医療につながらずお亡くなりになった可能性、そういった方が波を越えるたびに増えていった、こういった状況を明確に検証して、そして、五類へ移行されましたが、二度と必要な方が医療にアクセスできないなどという状況にはしない、そういった医療提供体制を構築してほしい、こういう内容だったと思います。

 そして、今現在、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザと同様の五類へ移行されている。確認ですが、現在、必要な方が必要なときに医療にアクセスできる状況にあるということで間違いないでしょうか。

加藤国務大臣 今回の分類見直しを踏まえ、外来については、同じ五類感染症である季節性インフルエンザの診療機関が約六・四万であることを踏まえて広く一般的な医療機関による対応を、入院については全ての病院による対応をそれぞれ目指すとし、外来対応医療機関については、五年二月の約四・二万が五月十日では四・四万で、そのうち、かかりつけ患者に限定しない医療機関数は約二・三万機関から約二・九万機関に増加が行われているところでありますし、入院についても、各都道府県で移行計画を策定していただきましたが、それによると、病院は、全病院の約九割である約七千三百機関、有床診療所は約一千機関、トータル八千三百の医療機関で入院患者を受け入れる体制を確認をしているところでございます。

 引き続き、発熱患者が身近な医療機関にアクセスできるよう、医療機関に関して医療設備整備等の支援などを行うことによって、新たな医療機関に参画を促す取組を重点的に進めつつ、全ての都道府県において発熱等の受診、相談機能も維持することなどにより、今お話がありましたように、必要な方に必要な医療を提供できる体制を構築していきたいと考えています。

中島委員 今お話もされましたが、報道によると、コロナ患者に外来で対応する、初期診療ですね、これに対する診療所、厚労省は全国六・四万か所を目標に、現在のところ四・四万か所とされています。

 しかし、そもそも、季節性インフルエンザと同様の五類分類ということになれば、コロナを理由に診療を拒否できないということだと思います。これは確認ですが、現在、医師法の応招義務、これが課せられている状況、コロナを理由に診療を拒否できない状況ということでよろしいですね。

加藤国務大臣 御指摘のように、コロナだということをもっては診療拒否はできません。

 ただ、当該診療機関における、何といいますか、感染防止の対応等々、様々な事情、これは踏まえて判断することが必要だと思いますし、少なくとも、受け入れることができないとしても受け入れる機関を紹介していただくとか、そういった対応が必要だと考えています。

中島委員 これ以上続けませんが、自宅放置死遺族会の方々の思いは、この三年三か月余りの間、この国の医療保険制度、皆保険制度の中で、幾らコロナを理由にしたとしても、初期診療さえアクセスできなかった、こういう状況が、幾ら五類になったからといって。これからまた、今日も暑い、あしたも暑いということで、エアコンで部屋は閉鎖された密閉が増える、これはまた感染が拡大する可能性もあるということで、是非その辺は、必要な方が確実にアクセスできる医療提供体制。今、五類相当、季節性インフルエンザと同じでありますから、二度とそういうことが起こらないと、この提言に基づいてしっかり対応していただきたいと思います。

 それでは、通称CDC法案について質問させていただきます。

 今回、我が国の、コロナ禍において、医療、公衆衛生について様々な課題が浮き彫りとなった。特に、国内感染拡大初期の検査体制不足、感染状況把握と情報共有、連携、我が国の公衆衛生分野におけるデジタル化の遅れ、情報共有の仕組みの不備ですね。それで、一番は、やはり私は、保健所や地方衛生研究所等の組織弱体化が混乱を招いた、これが一番の課題であって、教訓だと私は認識しています。

 今回、いわゆる日本版のCDCを創設されるに当たって、様々な意見があったと思います。感染症に特化するべき、若しくは、健康、慢性疾患も含めた安全上の課題もこのCDCのスコープに入れ込んでいくべきではないか、様々な意見があったと私は承知しておりますが、今回創設される国立健康危機管理研究機構、これは、国立感染研の感染症サーベイランス業務と情報の収集、解析、提供などの機能と、国立国際医療研究センター、NCGMですが、これの病院機能を統合するという形態になっています。

 私が調べたところ、CDCのような機構、世界各国にございますが、このような病院機能を備えているのは、私が承知している限り、シンガポールだけだと思います。様々な意見があったにもかかわらず、今回、病院機能。世界各国、病院機能を兼ね備えたCDCの機構はシンガポールだけ。

 改めてですが、なぜこのような形態を取られたのか、意見が様々ある中でこのような体系を取ったのか、確認をさせていただきたい。

加藤国務大臣 今回の対応というのは、まさに新型コロナの対応についての昨年六月の新型コロナ対応に関する有識者会議報告書で、科学的知見と根拠に基づく政策判断に資するため、政府における専門家組織を強化するとされたことを踏まえて対応したわけでありますが、その際の課題としては、未知の病原体が出現した際に、隔離、待機期間や診療方法等の決定に必要な科学的知見を早期に収集、分析する初動対応が極めて重要であったこと、治療薬等の早期開発が求められるが、製薬企業と個々の医療機関との連携に時間を要したことなどの課題が指摘をされたところでございます。

 こうした課題に対応するために、病院における患者の受入れから、臨床病床や検体の共有、その感染症の分析及びリスク評価までを一つの組織内で一体的かつ迅速に行うことが望ましいと考えたこと、また、創薬等の開発のためには、基礎研究で発見されたシーズを病院の協力を得て臨床研究に円滑に橋渡しする、基礎から臨床までの一体的な研究基盤をつくることが望ましいということ、こうしたことから、国立感染症研究所のサーベイランス業務、情報収集、分析、提供の機能と国立国際医療研究センターの病院機能を統合するということでございます。

 おっしゃるように、アメリカのCDCもこういう病院機能は持っていないという意味において、まさに病院機能を持っているというのは今回の一つの特色と言ってもいいんだろうと思います。

中島委員 今回のコロナウイルスの経験、教訓からこういう形態にしたと。

 私が調べたところ、シンガポールは、超過死亡、年率の増減率も含めて、あと、一日の感染拡大、人数も、日本より多いんですよ。シンガポールの体系が本当に資するのかどうか、そういった検証もなく、病床、病院機能を統合させたからといって、シンガポールが、別にシンガポールはもちろん様々な部分が違うと思いますけれども、本当に今回のコロナの教訓、課題を生かすためにこの形態がいいのかどうかということは私はやはり少し懸念があります。

 今、未知のウイルス、初期発動、これに対しては、絶対こんなのは意味はないと言うつもりはないです。しかし、これはいわゆる感染対策とすればエボラ型ですよね、エボラ型。例えば、今回、NCGMが八十床の病床を確保すると。初期段階ではそういう隔離に専念する、しかしそれが強毒性のものだった場合には、病床機能とそして治験も含めて進めていくということは一定の理解はいたします。しかし、今回の変異を繰り返し感染力がどんどん増していく、こういうものに対して本当にこの体系が今回のコロナを教訓としたいわゆる日本版のCDCと言えるかどうかということは私は大変疑問が残ります。

 先ほども言いましたが、今回のコロナ最大の課題は、感染症対策として情報収集、研究、感染研やNCGMの機能よりも、やはり国立感染研の手足としての地方衛生研究所の脆弱性、これが、コロナ、三年三か月余り混乱を招いた最大の課題だと。結果として、地域ごとの検査体制の展開の遅れや下水サーベイランスの実施の遅れ、感染対策が後手後手になったこと、こういった状況を、先ほども言ったようにエボラ型の強化は一定程度理解はしますが、今回のような感染力が増し、そして初期段階からどんどんどんどん変化していく状況、やはり先ほども言ったように、国立感染研として、その手足として、その足腰を強化していく、これが今回、教訓、課題を解決する、いわゆる最も重要なところなのだというふうに私は考えます。

 昨年の十一月四日、衆議院厚生労働委員会、感染症法改正附帯決議、先ほど来お話ございますが、これはあくまでも、「地方衛生研究所について、本法の趣旨を踏まえ、法律上の位置づけを明確にしつつ、その体制整備等」、るるありますが、後半の部分は今回の法律で、人材、予算の配分、若干、そして連携を強化するということが盛り込まれております。

 改めてですが、我々は、地方自治体の組織として地方衛生研究所を法律上明確に位置づけるべきではないのか、なぜ今回、法案では法整備がされなかったのか。昨年、与野党で合意した附帯決議、これに対して、加藤大臣も、その趣旨を十分尊重いたしまして努力をしてまいりますと発言された附帯決議の実現について、なぜ今回されなかったのか、何が支障となっているのか、お答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 法律上の位置づけということにおいては、今回の法律の中で地方衛生研究所というのを法律的には位置づけたところでございますが、多分委員がおっしゃっているのは必置等ということなんだろうと思います。

 それについてはこれまでも議論してきたところでありますけれども、人口規模や財政規模の小さな保健所設置自治体については、地方衛生研究所に求められる全ての機能を十分に確保することが困難であることから、必ずしも単独で地方衛生研究所の整備を求めるのではなく、都道府県や政令指定都市の地方衛生研究所等との連携によりその機能を確実に確保することが適当と考えているところでありますし、それ以外に、地方分権推進委員会のこれまでの勧告ということもございます。そうしたことから、今回、既に成立した改正地域保健法、そして、それにおいて、地域保健基本方針、これを設け、都道府県や政令指定都市については地衛研を自ら整備する、そうでないところはという話も明記をさせていただいたところでございます。

 引き続き、御指摘のように、各地域において対応できる力を持っていくこと、これは大変重要な視点だと我々も認識しておりますので、今回の体制の中で、そうした地方において感染症等へ対応できる力はしっかり持っていけるように必要な体制整備を行っていきたいと考えています。

中島委員 地方衛生研究所については、その能力や機能に格差が存在すること、これはコロナ以前から指摘されていました。つまり、ある都道府県の地方衛生研究所は非常に充実している一方で、別の都道府県の地方衛生研究所は主な役割の一つである検査すら満足にできない。今回のコロナ禍のような全国的なパンデミックにおいて、ある都道府県の住民は公衆衛生面で手厚く守られる一方で、別の都道府県では検査すら十分に受けられないといった地域格差を私は容認できると思えないんですね。

 今回の法律で人員等の強化をされたことは一定程度評価いたしますが、やはり私は、それに加えて、地方衛生研究所が備えるべき能力、機能の最低水準を示した上で、それをクリアできるだけの人員、施設への財政支援、また、地方衛生研究所について、抽象的なざっくりとした指針だけじゃなく、人口当たり一日に処理できる検体数の目標など、今回のコロナの教訓を踏まえて、こういったことを明確に具体的に示していく、そのことが、今回のコロナを教訓にした、いわゆる日本版CDCに最も重要なことだと改めて私は思います。大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 都道府県ごとにしっかり体制を整備することは大事だということに対して異なる意見を持っているわけではありませんが、ただ、それに当たっては、各自治体の責任の下、地域の実情に合わせて地方衛生研究所等の整備などを計画的に実施をしていくこと、また、都道府県内の各自治体の連携の下で役割分担をし、検査、サーベイランスに係る人材育成などを計画的に実施をしていくということが重要であり、自治体の機関である地方衛生研究所等の人員、施設について国が一律に基準を示すということはなじまないと考えているところであります。

 先ほど地域保健基本指針の話もさせていただきましたが、さらに、都道府県等において、昨年十二月に成立した改正感染症法に基づき、今後の感染症危機時に、特に流行初期における検査体制を確保していただくこととしており、具体的には、都道府県連携協議会で自治体間の連携を含めた検査体制について検討の上、検査に関する数値目標を盛り込んだ予防計画を策定していただくことになっていますが、それに際して、厚労省としては、関係省令等においてこの目標に係る具体的な考え方をお示ししたいと考えております。

 さらに、都道府県の取組を支援するため、職員を全国で約百五十名増員することをこの令和五年度地方財政措置において講ずるとともに、令和五年度予算においても、地方衛生研究所等の検査能力の向上等、実践的な訓練に対する財政支援を盛り込んだところであります。

 引き続き、地方衛生研究所が果たすべき機能が確実に発揮できるように、厚労省としても必要な支援を行っていきたいと考えています。

中島委員 私は、それでは今回の教訓は生かされない、また同じようなことを繰り返す可能性が否定できないというふうに私らは考えている立場です。

 もう一点、今回の法案、公衆衛生対策のための機関に医療提供機能を備える不合理の点について確認しますが、今回、機構の目的は、感染症蔓延時の予防、感染拡大防止と公衆衛生の向上、増進ということになっていますが、このNCGM、日頃から、例えばHIVの患者さん、今回のコロナ禍でその方々に疲弊が起こったということも指摘されています。

 総論から言います、もう時間ですから。我々としては、今回の二法案によって、いわゆる日本版CDCを設立するのではなく、地方衛生研究所を法定化して体制を強化するとともに、大学などの連携を強化して、十分な実態把握によりエビデンスに基づく感染症対策を行えるようにすること、これまでのコロナ対策の実情と課題を徹底的に総括することこそが真の日本版CDCと。今回の政府案では、課題、教訓を生かされていないということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

三ッ林委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓です。本日もよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、質疑の方に入らせていただきたいと思うんですけれども、先日の五月の八日に新型コロナウイルス感染症の類型が二類から五類に変更されたところであります。都道府県知事の一部の方々からは、この変更の時期につきまして、ちょっと遅いんではないかなという声も一部聞かれているところではございますけれども、今回の日本版のCDCについて質問をさせていただきますが、あわせて、先ほどからもありましたが、この三年余りの新型コロナウイルス対策における政府の振り返りも含めましてお伺いをしていきたいと思います。

 今回の日本版CDCにつきましては、次の未知なる感染症の危機に備えて、政府の司令機能であったり感染症対応能力の強化を行うために、情報収集能力であったり分析、地方公共団体が国民へ安心して情報提供できるような環境の整備、基礎研究も含めた研究環境の向上など、様々、今回対応をなされていくところかなと思っております。そこで、有事の際の情報発信、いわゆるリスクコミュニケーションにつきまして少しお話を聞いていきたいなと思うんです。

 今回、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長の発言であったり、内閣対策本部の考え方の違いといいますのが度々マスコミ等を通じて問題になったかという具合に思います。例えばワクチンの三回目接種のときもそうでしたけれども、政府の方は、打ってくださいねということで推奨されておりましたけれども、専門家の方から、二回目と三回目の接種の期間がまだ短いのでエビデンス上ちょっと問題があるのではないかという御意見もありました。

 本来、感染症対策の専門家の意見と経済の対策を含めた政府の考え方といいますのは当然異なってくるということが多分にあるかとは思うんですけれども、今回のコロナ禍におきまして、まず、感染研が果たした情報発信についてどのように評価をされているのかにつきまして、お伺いをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 国立感染症研究所は、平時から様々な機能を担っているところでございますが、今般の新型コロナウイルス感染症におきましても、例えば、都道府県別の感染者数の推計や分析をしてそれを公表していく、また、新たに懸念されるような変異株が出た場合には、その初期症例を対象として疫学的あるいは臨床的、ウイルス学的な特徴に関する調査をし、公表していく、それから、例えばゲノムサーベイランスにおける変異株の発生動向やそのリスク評価を行っていくなどなど、政策判断に資する様々な研究や調査を実施していただいております。

 また、こういった結果につきましては厚労省のアドバイザリーボード等で情報提供いただきまして、また、記者向けの説明会の場においても、感染症研究所の専門家に同席していただいて、国民に向けた正確な情報の発信に御協力いただいたところでございまして、こういった国民への周知や、対策の判断に資する評価を提供いただいているものと考えております。

池下委員 感染研の方からしっかりと正確なエビデンスに基づいた情報発信をしていただく、これは非常に重要でありますけれども、一方、やはり、国民の目線、その情報を受け取った国民がどのような形で行動していくのかということが最終的な大事な部分になってくるかと思うんですけれども、政府と政府の参考になっている専門家が発信している情報については、国民の側としてはやはりちょっと、若干違うと、違和感といいますか、戸惑いといいますか、じゃ、どう行動したらいいのかというところになってくるのかなと思います。

 ちょっと例えは違うんですけれども、例えば、マスクを着用してくださいねということを、厚生労働省の方からすれば、通常、コロナに限らずでもそうですけれども、冬の時期になりましたら、手洗い、うがいしてくださいね、マスクをできるだけしてくださいね、これは、厚生労働省からすれば、国民の健康を第一に守るからそういう発信になるわけでありますよね。逆に、マスクをしていたらちょっと口元が見えない、表情が見えないので教育上余りよくないねということでありましたら、文科省は、外していただいても構いませんよということで発信されるわけですよ。当然、それは、各々の省庁の役割が違うからそういう発信の仕方になるということは承知をさせていただいているわけなんですけれども。

 今回の新機構は、政府に科学データを提供することというのがCDCの役目でありまして、そのデータを基に政府が政策立案するということは当然承知をさせていただいているんですけれども、日本版CDCということで世の中に登場している以上、新機構に対して、科学的根拠に基づいたスピーディーな情報発信を期待する国民も多いと思います。ただ、一方、先ほど申し上げたような問題もあるわけですので、平時よりその役割というのをしっかりと明確にしておかないと、今回のコロナ禍で起こったような混乱も生じるわけです。

 特に、未知なる感染症時では、必要以上に、政府が意図的に情報を隠蔽しているんじゃないかとか、ネット上でもよくあったんですが、陰謀論的なことで国民が混乱を来すようなこともありますので、これは是非、新機構につきましては注意をしていただきたいと思うんですけれども、加藤大臣の御見解を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 まず、今回のコロナ対応に当たっても、昨年六月の有識者会議の報告書においても、リスクコミュニケーションの在り方に問題があったということが指摘されているところでございます。また、感染症対策をしっかり進めていくためにも、国民の理解を得ながら適切に進めていくことが必要であります。

 そのためにも、政府が、科学的知見を踏まえて、国民の混乱を招かないように、今回新しくできる機構と一体となって正確な情報を発信することなどが重要と考えており、機構においても、感染症等に関する調査、分析、研究により得られた知見などについて分かりやすく情報発信をしていくことが必要だと考えております。

 さらに、感染症危機対応の司令塔である内閣感染症危機管理統括庁とも緊密に連携し、分かりやすく効果的な情報発信ができるよう工夫していきたいと考えております。

 また、先ほどマスクの事例をおっしゃったところでございますが、まさにそういった点に対しては、内閣感染症危機管理統括庁等、政府全体で様々な視点から考え、こういった場合にはこうだとか、こういった場合にはこうだということを、この機構から提供される科学的知見を基にお示しをしていく、判断をしていくということになると思います。

池下委員 政府の政策判断であったり、CDCの情報発信というのは重要だと思いますし、できるだけ分かりやすくやっていただきたいと思うんですけれども、一方、やはり、政府が発信するというのと一緒に、メディアを経由して国民の皆様に当然情報というのが入ってくるという形になるかと思うんです。やはりメディアの発信の仕方も、ちょっとここで言うことではないとは思うんですけれども、メディアの発信の仕方によって国民がどう捉えるかということもありますので、そういうところも本当にちょっと注視をしていただきながら、政策運営につきましてやっていただきたいなと思っているところです。

 それでは、次、今回の審議でも多くの委員の皆様から御指摘、御質問がありましたけれども、新たな感染症発生時の司令塔についてお伺いをしていきたいと思います。

 これはちょっと確認になりますけれども、新型インフルエンザ等の感染症の発生時においては、先ほどからありました内閣官房における統括庁、内閣感染症危機管理統括庁が司令塔機能、これを発揮されるということでありますけれども、新型インフルエンザ特措法以外の感染症、例えば、SARSであったりMERSであったり、それ以上の、新型特措法以上の非常に厳しい感染症が発生したときの司令塔につきましてどのようになるのか、お伺いをしたいと思います。

大西政府参考人 お答えいたします。

 内閣感染症危機管理統括庁が対応する感染症の範囲ということでございますけれども、これは、特措法に基づく感染症に加えまして、統括庁自体は感染症の発生及び蔓延の防止に関する総合調整事務というものを所掌しておりますので、政府全体の立場から総合的な対応が必要となる場合には、統括庁が司令塔として総合調整を担うということでございます。

 具体的には、新型インフルエンザ等の感染症につきましては、特措法の対象ということで統括庁の対象になりますけれども、特措法の対象ではない感染症につきましても、政府全体の立場から総合的な対応が必要となる場合には、統括庁が蔓延の防止に関する総合調整を担うということで考えております。

 統括庁が対応する感染症に該当するかどうかということにつきましては、個別具体的に判断することが必要と考えておりまして、ただいま御審議をいただいておる法案に基づいて設置される国立健康危機管理研究機構の科学的知見等を踏まえまして、個別の感染症に係る具体的な病状等の状況に応じて判断させていただくというふうに考えております。

 以上です。

池下委員 新型インフルエンザ特措法外の非常に厳しいものに関しましては、個々に判断されて、科学的知見に基づいてということでありました。当然、そのためにCDC、今回の新機構というものができているかと思うんですけれども、やはり、厳しい感染症、未知なる感染症につきましては初期対応というものが非常に重要でありますので、当然、スピーディーな判断というものが必要になってくるかと思います。

 そこで、厚労省の中で、ちょっと、大臣の方にこれもお伺いをしたいと思うんですけれども、できるだけスピーディーに判断をしていただいて、統括庁をつくって、その体制整備をかっちりとつくっていく中で、どのようなプロセスで判断等されていくのか、ちょっと、先ほどの御回答とかぶることもあるかもしれませんけれども、大臣にお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 感染症自体が、いわゆる感染症の一類から五類、新感染症、指定感染症、新型インフルエンザ等感染症と、いろいろございますが、特に国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症については、当該感染症の性質に応じて、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症のいずれかに位置づけることにより、それぞれの感染症の危険性に応じた対応を実施することとしております。実際、これまでもそういう対応をしてまいりました。

 こうした深刻な感染症の発生についての判断のプロセスとしては、その感染症の重篤性や特徴、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれの有無等の科学的知見を考慮し、総合的に判断することとなりますが、まずは、現状でいえば、国立感染症研究所等で当該感染症に関する科学的知見を収集した上で、続いて、厚生科学審議会感染症部会で法律や保健所、行政などの幅広い分野の専門家の審議を経た上で、当該感染症を感染症法に基づいて分類し、必要な措置を講ずることとなります。

 なお、今回、機構が設置された後は、機構から厚生労働省へ迅速に提供される質の高い科学的知見を考慮し、今のと一緒ですが、感染症部会で審議をし、政府として感染法上の位置づけを判断し、科学的知見に基づいた政策決定を行うことを想定しているところであります。

池下委員 しっかりとこのプロセスに基づいてやっていただきたいと思うんですけれども、当然、CDC、新機構の方でしっかりと分析していただくということは今御答弁いただいたところなんですが、また後ほど質問させていただきたいと思うんですけれども、やはり、新機構は当然東京にありまして、情報というのは地域から、いろいろなところから集まってきて、感染症が発生した地域から情報は集まってくる。ただ、現場といいますのは、やはり地衛研であったりとかというところで、しっかりとその体制強化というものがなっていないと、やはり、東京に入ってくる、新機構に入ってくる情報もおざなりになってくるかもしれませんので、そこら辺はまた後ほどちょっと議論させていただきたいなという具合に思います。

 それでは、先ほどちょっと中島委員からもありましたけれども、先日のG7の保健相会合の成果、内容についてお伺いをしていきたいと思います。

 先ほど中島委員の方から全般的なお話を聞いていただいたかなと思うんですけれども、私の方からは、特にワクチンであったりとか治療薬の開発についてお伺いをしたいと思うんですが、報道等で仄聞しておるところによりますと、開発途上国に速やかに公平に行き渡る仕組みも必要ということで発表がなされたと聞いておりますけれども、その点につきまして、ワクチン、治療薬につきましてどのような成果があったのか、もう少し詳しく大臣の方からお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 ワクチン等の医薬品に関しては、今回のコロナパンデミックにおいて、まあワクチンそのものは非常に迅速に開発されたという評価があるわけでありますが、他方で、開発されたワクチンが途上国の人々に十分に行き渡らなかった、こうした課題があります。そうした点を踏まえて、途上国を含めた世界中の人々の医薬品への公平なアクセスを確保するための仕組みづくりが必要だということについて合意をしたところであります。

 将来の健康危機によりよく備えるために、医薬品の製造から流通に至る、まさにアクセス・アンド・デリバリーというふうにいっておりますが、までを含めたバリューチェーン全体の改善に焦点を当てて、特に途上国で公平、迅速、有効かつ入手可能な価格の医薬品へのアクセスを促進していくための仕組みを構築し、G7各国が率先して取り組むことが重要であるということを確認したところでございます。

 それが今回採択されたG7長崎保健大臣宣言に盛り込まれておりますので、それが今週末に開催されるG7広島サミットにもつながっていくべく努力をしていきたいと考えておりますし、また、宣言に盛り込まれた施策の着実な実施に向けて、各国と協調し、国際保健に更に我が国としての貢献を果たしていきたいと考えています。

池下委員 詳しく御説明していただきまして、ありがとうございました。

 保健相会合、またこれからG7の会合があるということで、非常に我々もその動向につきましては注視をさせていただきたいなと思っているところなんですけれども、当然、国際的な立場の中から、しっかりと日本も各国と協力しながら、途上国の皆さんにしっかりと公平にアクセスできる環境というのをつくっていただきたいと思うところなんですが、一方、やはり、国内を見ますと、ワクチン及び治療薬といいますのを国内で開発していく能力ということも、一方、非常に重要だ、それが国際的な貢献につながっていくものだと考えているところであります。

 ただ、残念ながら、今回のコロナ禍におきましては、特にワクチンの開発につきましては、海外、特にアメリカになるかと思うんですけれども、この開発競争から非常に後れを取ったという印象が否めません。また、国内で開発が遅れたことにより、海外との交渉で、大臣も含めてもそうかと思うんですが、多大な労力も費やしましたし、海外の企業の方に貴重な税金、国費が多く流れていったという事実もございます。そういうところでもありますし、また、原材料の問題もありますよね、原材料もいろいろなところに、海外に依存しているということから、緊急事態に備えた医薬品の開発体制というのも非常に重要だと思っております。

 また、有効な薬剤だったとしても、開発から時間がたつと薬価が低下しまして、企業サイドとしても製造中止をしてしまうという心配もはらんでおります。

 国内でも安全で安心な供給できる体制、開発できる体制というものは重要だと思っておりますけれども、また、医療機関、製薬企業、様々ありますが、人的、物的な支援、研究支援ですね、これはAMED等を通じてされているというのは当然承知をさせていただいているところなんですけれども、さらに、治験もやりやすく整備していただく等含めて、これからのワクチンや治療薬の戦略につきまして、世界に先んじてできるような体制づくりが必要だと思うんですけれども、今後の政府が目指す対策につきまして大臣の方にお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 御指摘のように、感染症に対するワクチンや治療薬を開発、生産できる国内での体制を確立するということは、国民により早くそうしたワクチン、治療薬を提供するということのみならず、安全保障、危機管理、こういった点でも大変重要でありますし、また、先ほどG7で国際貢献の話がございましたが、そういった中において、我が国の役割を果たすということにもつながると考えております。

 厚労省では、昨年三月に、厚生科学審議会感染症部会において、治療薬等の国内での利用可能性を確保すべき重点感染症の考え方とその暫定リストを決定をいたしました。

 これを踏まえて、次の感染症危機を見据えたワクチンの開発、生産について、令和三年六月に閣議決定されたワクチン開発・生産体制強化戦略に基づいて、先進的研究開発戦略センター、いわゆるSCARDAにおいて重点感染症を対象とするワクチンの開発支援を行うとともに、経済産業省においてデュアルユースのワクチン製造拠点の整備に取り組んでいるところでありますし、重点感染症に関する治療薬についても、厚生労働科学研究やAMEDを通じた研究開発支援、また、国立国際医療研究センターを中心として、感染症患者の受入れを行う医療機関がネットワークを構築し、迅速に治験を実施できる体制の整備等を推進しているところでございますし、また、今回の機構ができれば、そういったことを更に推進することにつながるというふうに考えております。

 まさに今申し上げたことを関係府省、AMEDと連携しながら推進し、ワクチンまた治療薬の早期開発等につなげていきたいと考えています。

    〔委員長退席、大岡委員長代理着席〕

池下委員 この創薬、ワクチン、治療薬、お薬を作っていくということ、創薬ということなんですけれども、私も以前の委員会の方で質疑をさせていただいたんですけれども、やはり、この問題といいますのは、国民の安全、安心を守るということもそうですけれども、創薬企業、この経済活動にも直結しているところであります。やはり、お薬を作っていくときにはイノベーションというものが非常に重要でありますので、この薬価の問題につきましてもまた引き続き御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、もう一つ御質問させていただきたいと思うんですけれども、新型コロナウイルス、先ほどワクチンと治療薬のお話をちょっとさせていただいたんですが、中和抗体薬というものについてのお話を聞かせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げました、新型コロナが二類から五類に変更をされたということなんですけれども、ただ、変更されたからといって、ウイルスそのものが何か変わってしまうというわけでは当然ございません。引き続き注視していかなければならないということにつきましては皆さん共通の認識ではないのかなということで思っておりますけれども、希望される方はワクチンは接種できるような体制というのはつくっていただきたいんですが、一方、ワクチンを接種したとしてもなかなか免疫が上がらない、そういう方々もいらっしゃるわけであります。逆に、打てないという方もいらっしゃるわけなんですね。

 例えば、白血病であったりとか悪性のリンパ腫といったような血液悪性腫瘍患者の方々であったりとか、先日からも質問させていただいておりますけれども、臓器移植を受けられた方であったりとかというのは、免疫抑制剤を打たれているわけですから、ワクチンという問題ではなくなってくるかなという具合に思います。

 こういったような患者さんが国内では約十六万人ほどいらっしゃるということで聞き及んでいるところなんですけれども、このような患者さんは通常でも様々な感染症に罹患しやすい中で、五類になったことで周囲もちょっと気が緩んでいる中で、更に心配しながら生活というものをしていかなければならないと思います。

 こういう方々を取り残すようなことがあってはならないと思っておりますが、令和四年の九月一日、厚生省の事務局通知で、新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬の医療機関への配分についてと、事務連絡があったと承知をしています。

 そこで、確認ですけれども、この中和抗体薬の対象となる患者さんのうち、中和抗体薬の投与者数と抗体獲得の期間はどれくらいなのか、お伺いしたいと思います。また、国内で対象者が十六万人ほどいらっしゃるということですが、直近での中和抗体薬の投与状況と現在の備蓄状況につきましても、併せて参考人の方にお伺いをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の中和抗体薬は、国が買い上げて、希望する医療機関に無償で配分しているものでございます。これまでのところ、投与者数につきましては、令和五年四月末時点までに約三万人に使用されております。

 また、その効果につきましては、臨床試験において、投与六か月後までの発症の割合が有意に低下していることが確認をされております。

 また、政府の確保数につきましては、十五万人分を元々確保しておりますので、現時点では、約十二万人分がなお供給可能というふうになっております。

池下委員 延べの備蓄量が十二万人分ですかね、あるということでありますけれども。

 アフターコロナの不安を考える中、対象となる十六万人の患者さんは全国いろいろなところでお暮らしになられているというわけですが、五類に移行した後、予防目的の中和抗体薬について、選択肢があるんですよということをこの対象者の皆様にしっかりと周知する、まだ十二万も残っているということですから周知啓発をやっていただきたいということと、あと、医療機関への理解、またさらに、望んだときにしっかりと投与できるような提供体制の整備というものは必要不可欠だと考えておりますけれども、今後の方針につきまして、加藤大臣の方にお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 エバシェルドについては、従前より、新型コロナの発症抑制薬として、免疫力が低下された方など、本剤を必要とする方に行き渡るように、関係学会などを通じて、幅広い医療機関に本剤の配分を受ける方法を周知し、国で買い上げ、希望する医療機関に無償で配分し、そして、こうした医療機関を患者が確認できるよう、都道府県のウェブサイトで公表するなどの取組も行ってまいりました。

 五月八日の新型コロナの感染法上の位置づけ変更後においても、使用方法や対象となる患者などに変更はないということでございます。

 今後とも、本剤の流通を確保するとともに、関係学会を通じて、対象となる患者を診療している医師等に情報提供することで、希望する医療機関に確実にお届けできるように努めていきたいというふうに考えております。

池下委員 ありがとうございます。

 せっかく政府がこのお薬を買っていただいて、免疫がなかなか上がらない方々に対しての準備というのをされておりますので、しっかりと対策をやっていただいて、誰一人取り残さないような形でやっていただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、少し、次の質問を飛ばしていただきまして、地衛研についてちょっとお伺いをしていきたいと思います。

 先ほどからも各委員から質問がありましたけれども、新機構と地衛研の連携を目的といたしまして、地域保健法というのが改正されますが、前国会の感染症法改正の附帯決議においても、地衛研の法的立ち位置につきましてしっかりとやってくださいねという決議はされた。これまでも議論がありました。

 これまでもこういう議論がありましたけれども、政府からの御回答は、地域によって、財政規模の小さい政令都市など、地衛研等が設置できないような事情がいろいろありますよということでありましたが、そういう答弁も含めまして、これから、地衛研の能力をしっかりと強化していく対策、人員配置ということもあるかと思いますけれども、含めて、今後何が必要なのかにつきましてちょっとお伺いをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 地衛研につきましては、今般のお願いしております法律改正の中で、しっかりと地方衛生研究所を法律上の位置づけを行いまして、そしてまた、人員体制そして設備、そういったものも、地域の中でしっかりと連携しながらやっていく体制を整えていくということで、今後、都道府県におけます予防計画等の中で、地域における役割ということにつきまして明確にしていきたいと考えております。

池下委員 ちょっと時間がなくなってしまいましたので、もう一つだけ聞いて終わりにしたいと思うんですけれども、今回、コロナにおきましては、感染研における疫学調査について、科学的な知見が得られていたのかなと思うんですが、一方で、保健所の業務ですよね。保健所では、様々業務を行う中で、DXが進んでいないなど対策不足も含め、全数検査していかなければならない中で、非常に業務逼迫をしたという苦い経験があります。

 保健所の役割につきまして、地衛研であったり基礎自治体への職務分担など見直す必要があるかと思いますけれども、最後、御見解をお伺いしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、保健所業務が逼迫しないように、平時から様々な機関の役割分担を整理しておくことは非常に重要なことだと考えております。

 具体的には、例えば、積極的疫学調査などの対人的な業務につきましては、保健所が市町村から保健師の応援派遣を受けながら行う、また、検体の分析等の業務については地方衛生研究所が実施する、あるいはまた、保健所がやっておりました生活支援など住民に身近なところのきめ細かなサービスにつきましては、市町村が保健所設置自治体からの委託を受けて実施することなど、こういったような役割分担につきまして、しっかりと平時から決めていくということが非常に重要であると考えております。

池下委員 ありがとうございます。

 時間になりました。これで終了させていただきます。ありがとうございました。

大岡委員長代理 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質疑に入らせていただきます。

 まず、政府参考人の方にお伺いしたいんですが、特殊法人化の是非についてお伺いいたします。

 国立感染症研究所は、現在、厚生労働省の施設等機関、つまり、厚生労働省の一組織として国が直轄管理する位置づけとなっています。今回の統合は、国家的、国際的な非常事態への迅速な強力な対応こそが目的と考えられますが、これを統合に当たり特殊法人化することは、組織の柔軟性を高めることにつながる一方で、国家的、国際的な感染症の危機に対抗するに当たって十分な責務と執行力を発揮できると保証できるのか。特殊法人化することでその問題への対応力が下がってしまわないかどうかについて、質問をさせていただきます。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構は、平時から、国の責任の下で、質の高い科学的知見の獲得、人材派遣、国際医療協力、エイズや肝炎等の政策医療を行う役割を担う。感染症危機対応時には、政府対策本部の方針等に従い、病原性の高い病原体の検体採取、患者の入院治療等を迅速、柔軟に行う役割を担うこととしておるところでございます。

 こうした公的な役割を果たしていくためには、厚生労働大臣が、例えば検体採取などの感染症法の大臣の権限を委任している業務に関与できるようにするとともに、感染症危機対応時に質の高い科学的知見を迅速に獲得できるようにするためには、国際的に卓越した人材を確保する必要があることから、大臣が強い監督権限を持ち、かつ、国の組織よりも柔軟性のある組織にふさわしい法人形態として、特殊法人としたものでございます。

 今般、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合することによりまして、感染初期の臨床情報、検体を迅速に収集して分析する初動対応の強化や、基礎研究から臨床までの一体的な研究開発等が可能となり、あわせて、国際的に卓越した研究者や医師等を確保していくこと等により、感染症危機への対応力は強化されると考えております。

 期待される役割を果たせるよう、準備を進めてまいりたいと考えております。

一谷委員 先ほど何度もおっしゃっていただいた国際的な人材の確保というところなんですが、特殊法人化することによって給与体系は柔軟になると思うんですが、日本の様々な機構を見ていて思うんですが、海外の方というのは、多分、給与体系だけではなくて、その機構の中で例えば開発ができたり自らのベンチャー企業を立ち上げたりとか、そういった柔軟なことができることが魅力ではないのかなというふうに考えますので、そこまで柔軟に是非対応していただいて、海外の有望な人材を是非日本で獲得していただけたらと思います。

 それでは、次の質問を大臣にさせていただきたいと思います。

 統合による医療研究開発の偏りの危険性について、御質問させていただきます。

 今回の改定により、国立感染症研究所と国立国際医療研究所が統合された上で、感染症を中心とする危機対応が強化されることになります。他方で、現在、国立国際医療センターは、病院機能を持ち、高度専門医療研究の拠点であるナショナルセンターとして、感染症のみならず、肝炎や糖尿病、難病を含む非感染性疾患についても多く治療、研究を行っています。

 世界的な傾向として、感染症に対する医療財源の集中が発生しており、その原因として、新型コロナウイルス感染症を別として、エイズ、結核、マラリアの三大感染症を始めとする感染症が、低中所得国では死因として大きな割合を占めていることが挙げられます。その一方で、中所得国以上では非感染性疾患対策の重要性が高まりつつあることは事実です。

 非感染性疾患の重要性、特に難病など、患者が少なくても治療法研究に取り組んでいく必要がある疾患については、日本を含む先進国がしっかりと取り組んでいくことでしか治療法の確立はできないのではないかと考えます。

 今回の法案では、機構法第二十三条において、国立健康危機管理研究機構の業務として、感染症その他の疾患の研究開発や医療の提供等が挙げられており、必ずしも感染症のみを対象とするものでないことになっているが、機構が感染症対応にフォーカスすることにより、難病、非感染性疾患患者への対応が遅れ、結果として彼らを取り残してしまうようであれば、これは問題ではないかと考えます。これらの治療法を確立することで高齢化社会における医療で世界をリードし、その知見を世界に広げていくことは日本の責務だとも考えます。

 統合によって、これまで国立国際医療研究センターが担ってきた非感染性疾患への対応はどうなるのか。機構の業務が感染症への対応に偏ることで非感染性疾患への対応が後回しになり、予算、人員の縮小により研究、治療に影響が出るようなことが起きないよう、配慮だけでなく、制度的な保障が必要ではないかと考えます。

 さらに、もう一点、平成以降、看護科の新設が進む中で、この国立健康危機管理研究機構の中に看護師育成の機能とありますが、どういった意味を持つのかについて大臣にお伺いをいたします。

加藤国務大臣 まず、委員お話がありましたように、国立国際医療研究センターでは、現在、国の医療政策として実施すべき医療として、国際的感染症だけではなく、エイズ、肝炎に係る医療の全国均てん化や、全国医療拠点や国際医療協力の拠点、また、一部の高度先進医療や難病ゲノム医療の研究開発など、他のナショナルセンターが十分カバーできない医療を担っております。

 また、地域の医療提供体制の中でも、外国人患者や救急搬送の積極的な受入れなどの重要な役割を担っていることから、引き続き、これまで実施してきた医療提供や研究開発を行っていく必要があると考えております。

 この点、本法案では、国立国際医療研究センターが現在行っている業務を全て国立健康危機管理研究機構が引き継げるよう、機構法第二十三条の業務規定に定め、制度的な担保も図っているところでございます。同センターがこれまで担ってきた医療に関する責任をこれまでと変わらずしっかりと果たしていけるように、我々としても対応していきたいと考えております。

 また、看護大学校のお話がございました。

 国立国際医療研究センターが現在設置、運営している看護大学校は、国の政策医療を担う六つのナショナルセンターの看護師育成を目的とするものであります。したがって、卒業生は主としてこれらのナショナルセンターに就職をしておりますので、基本的に他の民間の看護学校と役割が重複をするものではないと認識をしております。

 なお、この機能についても機構に引き継ぐこととしているところであります。

一谷委員 九十名の卒業生の方がこの看護科を卒業されるということで、目的としてはやはり国際協力ということも掲げてありました。まさに先ほどG7での大臣のお話にあったように、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現していくために、是非、卒業生の方々を導いていただけたらと思います。

 それでは、次の質問をさせていただきます。

 ちょっと時間の都合もありますので、三番目の平時の人員、財源確保はちょっと後回しにさせていただいて、民間との協力体制についてを、大臣に引き続き質問させていただきます。

 コロナ禍の初期における検査能力の不足は、民間検査機構が参入することにより解消された側面もあると思われます。検査機器や医薬品、医療機器の開発、製造でも民間の力を活用すべき場面はあるのではないかと思います。感染症危機においては、民間との協力体制を築くなど、柔軟な対応体制を実現することが重要な選択肢と考えられます。

 整備法案では、地方自治体の組織である地方衛生研究所等との連携強化が行われると承知していますが、民間の検査機構、あるいは大学の研究機関、製薬メーカーとの連携協力体制構築が平時からあってもよいのではないかと考えます。また、機構と民間の検査機構や大学等の研究機構との協力体制構築がこれまで以上に実施されるべきと考えますが、御見解を伺います。

 もう一つ、機構の業務として、機構法案の第二十三条第一項第十三号には、出資並びに人的及び技術的援助を行うこととされていますが、この業務を設けられる趣旨を伺わせていただきます。

    〔大岡委員長代理退席、委員長着席〕

加藤国務大臣 次の感染症危機に流行初期から必要な検査体制が確保できるよう、平時から地衛研などにおいて機構との連携を強化しながら検査能力を確保すること、また、昨年十二月の感染症法改正に基づき都道府県等が民間検査機関などと協定を締結することなどにより、備えを推進することとしております。

 これに加えて、機構としても、有事に民間検査機関でも迅速に検査体制が立ち上がるよう、機構法案の第二十三条六号にも係る話でありますが、平時から民間検査機関と技術支援等々の連携を行って、感染症発生後に迅速に検査数を拡充できる体制を整備していきたいと考えております。

 また、大学との連携でありますが、現在も、国立感染症研究所また国立国際医療研究センターでも多数の大学と協定を締結し、共同研究を行っております。機構になっても、共同研究の更なる強化また人的交流の推進、連携の強化が一層図られるよう、取り組んでいきたいと考えております。

 また、機構法第二十三条第一項第十三号の御指摘がありました。

 この条文は、機構の研究開発の成果の活用を促進する事業を行う者に対して、機構が出資等を行うことを業務に位置づけるものであります。これは、実は、今の国立国際医療研究センターの業務に位置づけられているものを引き継いだ規定であります。国家戦略としての科学技術イノベーションを実現していくため、研究開発成果を基にベンチャー企業の創出を促進し、ベンチャー企業等が行う事業を通じて、研究開発成果の普及や活用を図ることを目的としているところであります。

 残念ながら、国立国際医療研究センターではまだ実は事例がないわけでありますが、今後、そういった成果も出るようにしていきたいと考えています。

一谷委員 今、更に追加で質問させていただこうと思ったんですが、事例がないということを大臣からお聞きしましたので、是非、これは事例をつくっていただきたいと思いますし、スタートアップやアウトソーシング、株式会社ができることによって、様々に機構の形が変わるのではないかなと思います。

 もう一つ、大学等の研究所、大学や研究所と協力体制をつくるというのが、条文を見てもどこにも記載がありません。条文に記載がないのに、本当に協力的に進んでいくのかなというのは少し疑問があります。でも、厚生労働省の所管の法案に、文科省のことを何かくちばしを挟んでいくのも問題だというふうには思うんです。ですので、ここは是非、今日ここにいらっしゃる議員の皆さんとともに、超党派で議員立法でこういった法案を作って、協力体制をつくっていくというようなことをさせていただけたらと思うんですが、是非また御検討いただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問をさせていただきます。

 新組織が世界で果たすべき役割について御質問させていただきます。

 機構法第二十三条の機構の業務に関する規定には、国際協力に関する研究開発や人材の育成、資質の向上といった内容が盛り込まれています。

 また、コロナ禍においては、人種による免疫の差異が感染状況や死亡者数に関係しているのではないかとの指摘や、新型コロナウイルス感染症のワクチンを日本に導入する際の議論として、アジア人での治療が十分に行われているか、ワクチンが日本人の体質に合うのかといった議論がありました。

 グローバル化や温暖化の世界的な動きの中で、新型コロナウイルス感染症に限らず、サル痘やマラリアなど、様々な感染症が流行する地域を拡大しているとの指摘もあります。感染症から国民を守るには、自国の範囲だけをカバーしていては不可能であることは明らかです。感染症が流行しやすい地域を持つアジアの中で、日本は、アジア人の体質を踏まえた医療、公衆衛生体制を構築し、アジアの感染症対策をリードする役割を担うべき国際的責任があるのではないかと考えますが、国民の健康を守るためにも重要です。

 機構は、日本がアジアの医療、公衆衛生のリーダーとなれるような研究開発体制を整えているかどうかということについて、お伺いいたします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 我が国は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現等に向けて、二〇一六年のG7神戸保健大臣会合におきまして、国際社会、国際機関と連携して、アフリカ、アジア等でのUHCの確立を支援することを既に表明しておりまして、これは今日まで継続されているものでございます。

 特に、感染症領域におけますアジア地域の国際共同臨床試験は大変重要であると考えておりまして、アジア地域における臨床研究、治験ネットワークの構築事業におきまして、国立国際医療研究センターに事務局を設置し、国際機関との連携や国際的な人材育成等やアジア地域における臨床研究、治験ネットワークの構築に取り組むとともに、ベトナムやインドネシア、タイやフィリピンにその拠点を設置するなど、環境整備を進めているところでございます。

 国立健康危機管理研究機構はこうした役割を引き継ぐことになることから、新たな感染症に備え、ワクチンや治療薬の研究開発に向けた国際共同治験等の体制整備を進めるとともに、UHCの実現に向け、国際的なリーダーシップを発揮できるように取り組んでまいりたいと考えております。

一谷委員 本当にアジアでは、日本、韓国、台湾以外の環境というのは少し問題があるのではないかというふうに思いますし、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの観点からも、是非ここは力をしっかり入れていくのが日本の役割だというふうに考えております。

 それでは、大臣に、機構における医療DXについてお伺いをさせていただきます。

 コロナ禍を経て、また急激に進む少子高齢化により、医療DXを推進する必要はますます高まっています。NCGMの国際医療協力局では、感染症に限らず、日本の母子手帳のコンセプトを国境をまたいで移動する難民へ活用できないかということで、二〇一七年から研究開発に取り組んでいると承知しています。このシステムは、ワクチン接種歴や受診歴など全て登録されており、どこの国からもアクセスできる仕組みと聞いています。

 このようなNCGMにおける医療DXの取組を機構においても着実に進めるとともに、国外だけでなく日本国内でもEHR、PHRの構築に向けた取組の一環として積極的に活用していく必要があると考えますが、機構における取組の継続と深化についてお伺いをいたします。

 また、コロナ禍では、患者発生動向や患者の転帰について、デジタル化が遅れているために迅速な情報収集に支障を来し、研究の基礎が不十分となったとの指摘もあります。感染症においてこれらの情報を迅速に得ることは、いわゆる致死率や感染状況の把握など医療や公衆衛生の観点からも重要であると同時に、研究の基礎としても必要であります。国内の医療DXを一層迅速に進めることは、新たな感染症の発生に備え、研究開発を進める意味でも重要ではないでしょうか。機構などの研究機関が活用できる医療DXを加速すべきと考えます。

 平たく言いますと、機構の中では情報共有できたとしても、一般のクリニックや医療との情報共有をするときに、そのデータを変換して収集するということになれば、医療費の中にこういったITのコストが非常にかさんでくるというふうに思いますので、こういった共通のプラットフォームを私は国が備えるべきではないかというふうに考えるんですが、この二点、併せて大臣にお伺いをいたします。

加藤国務大臣 まず一点目でありますけれども、国立国際医療研究センターにおいては、今お話がありました、母子手帳のコンセプトを活用した研究開発を進めているほか、国内における糖尿病分野の患者データベースの構築、全国六つのナショナルセンターの連携による医療ビッグデータベースの運用、感染研と連携した新興・再興感染症に関するナショナルリポジトリの構築などにも取り組んでおります。

 機構においては、医療関係の専門家だけではなくて、情報システムの専門家も含めた組織体制を構築することとし、また、医療DXを活用した研究開発に関する取組を更に推進し、また、昨年十二月に成立した改正感染症法により強化される全国的な情報基盤、これも活用して、外部の知見も取り入れながら質の高い科学的知見を獲得し、提供できるよう、準備を進めていきたいと考えております。

 また、医療DXについては、まさに委員御指摘のとおりであります。医療DXを通じてより多くの情報に基づく医療が提供されていく、また、それを基に様々な開発、例えば治療薬とか治療法の開発を続けていく、更に政策的な効果も進めていく。また、そうしたことを通じて、今、入力に非常に手間がかかるわけでありますが、例えば、カルテをベースにすることによって、そうした入力をせずにデータの共有化が図れるといったメリットがあり、これは迅速に進めていくべきと考えております。特に、異なる電子カルテを使用する場合には共有化をしなければなりませんので、具体的な項目についての標準化を進めるべく、今、電子カルテ情報の標準化にも取り組んでいるところでございます。

 医療DX、総理の下で本部をつくり、政府挙げて取り組んでいるところでありますが、次の感染症危機への対応を含め、国民の保健医療の向上を図る等、我が国の医療の将来を大きく切り開くものとして、医療DX工程表を早急に策定し、取組の具体化を進め、更なる医療DXの推進を図っていきたいというふうに考えております。

一谷委員 まさに今おっしゃっていただいた電子カルテについては、一元化というのは非常に問題になっていると思いますので、進めていただきたいと思いますし、このPHRについては、経産省の方で、民間企業も団体になって、国民の健康向上のためにというのは進んでいるんですが、なかなかスピード感が遅いなというのもあって、何が障壁になっているのかというところはなかなか私一人では考えにくいんですが、何とかここを進めていただけるようにしていただけたらと思います。

 それでは、次が最後の質問になると思います。機構における研究の自由度、独立性について御質問させていただきます。

 機構に感染症対応に対する優秀な人材を集めるためにも、アカデミアの側面も維持し続けなければならないとも考えます。

 機構法第四十条においては厚生労働大臣の緊急時の機構に対する命令の規定、第四十一条においては厚生労働大臣の機構に対する監督命令の規定があり、また、第四十二条には厚生労働大臣の機構に対する報告及び検査の規定が設けられています。

 国家的、国際的な感染症の危機に対抗するに当たって、機構に対する国の監督権限を設けることは、国全体で一体的な対応を確保する上で重要であると言えます。しかし、一方で、政治的な干渉から独立した自由な発想ができる環境でなければ、優れた研究は期待できない。政治的な側面とアカデミアの側面が相反することなく、うまく両立できる体制づくりも重要と考えます。

 今回の法案においては、アカデミアの側面、研究の独立性や客観性はどのように担保されていくのか、参考人の方にお伺いいたします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の厚生労働大臣の監督命令に関する規定につきましては、有事に病原性の高い検体の採取や入院治療等を迅速に行えるようにする観点から、必要に応じ命令をできるようにすることを想定して規定したものでございまして、具体的な研究における科学的手法や、得られた科学的事実の内容等について関与することを念頭に置いたものではございません。

 したがいまして、機構が行う研究に対しまして、政府が科学的根拠についてその内容に関与することは基本的には想定してはおりませんけれども、御指摘の厚生労働大臣の監督命令規定につきましては、適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 今回のこの規定では、本当にアカデミアというところは重要だと思いますし、各議員からもそういった御指摘も多くありました。是非、この機構の中にアカデミアとの連携が十分できるということを超党派で議員立法できるようなことの動きになっていくようにしていただければというお願いを申し上げて、本日の御質問を終わらせていただきます。

 どうも誠にありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、遠藤良太君。

遠藤(良)委員 日本維新の会の遠藤良太でございます。

 まず初めに、今回の法改正のところで、法案では、国立研究所と国立研究センターが統合するというところなんですけれども、この統合の効果の期待とか、そういうところをまず確認したいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 これまでの新型コロナウイルス感染症対応の反省を踏まえまして、国立健康危機管理研究機構は、全国的な情報基盤、基礎から臨床までの一体的な研究基盤、また外部の専門家との連携によりまして、質の高い科学的知見を獲得し、内閣感染症危機管理統括庁及び厚生労働省感染症対策部に迅速に情報を提供することといたしております。

 今回、両機関を統合して機構を創設し、基礎から臨床までの一体的な研究基盤や全国的な情報基盤等を活用することによりまして、科学的知見の質やスピードが強化されるものと考えており、これによりまして、感染初期に数百例程度の検体や臨床情報等を迅速に収集して分析する初動対応の強化や、感染初期の患者受入れ機能や重症患者等の診療機能の強化、また、国内外の共同治験ネットワークで中心的役割を担うことによる研究開発力の強化などを図ってまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 今回できる機構は特殊法人であるというところだとお伺いしますけれども、政府が全額を出資するんだというところで、これは厚労大臣が機構に対する監督権限を確保するというところが求められているというところなんですけれども、今回、特殊法人にしたところについて、どうして特殊法人にされたのかを確認したいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構は、平時から、国の責任の下で、質の高い科学的知見の獲得、人材派遣、国際医療協力、エイズや肝炎等の政策医療を行う役割を担い、感染症の有事の際には、特に、政府対策本部の方針等に従い、病原性の高い病原体の検体採取、患者の入院治療等を迅速、柔軟に行う役割を担うこととしております。

 こうした公的な役割を果たしていくためには、厚生労働大臣が、例えば検体採取などの感染症法の大臣の権限を委任している業務に関与できるよう、業務の監督上、必要な命令を発することができる権限を持つ必要があるとともに、感染症危機対応時に世界レベルの質の高い科学的知見を迅速に獲得できるようにするためには、国際的に卓越した人材を確保する必要があり、人事、組織などの運営を柔軟に行える組織であることが必要であることから、大臣が強い監督権限を持ち、かつ、国の組織よりも柔軟性のある組織にふさわしい法人形態といたしまして、特殊法人としたものでございます。

遠藤(良)委員 今回の機構では、理事長が一人、副理事長が一人、理事が九人、監事が二人というところで、最近、国交省のOBが、国交省側の意向だとして民間企業である空港施設の副社長ポストを求めたというところで、検証委員会では、企業価値が毀損されたと指摘をされています。

 今回のこの特殊法人である機構の理事に厚労省の出身の方が入る予定はあるのかどうか、確認したいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構は、平時から、質の高い科学的知見の獲得と内閣感染症危機管理統括庁や厚生労働省に対する提供、あるいは人材養成、派遣や国際協力などを行うものとしておりますので、理事につきましては、今申し上げたような機構を運営するのに適切な人材を、あくまで人物本位で、大臣認可の下、選ぶこととしております。

遠藤(良)委員 人物本位というところだと思うんですけれども、実際、厚労省のOBの方が入るという可能性はあるのかどうかをお尋ねしたいと思います。どうでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、機構の理事につきましては、機構の目的に沿って機構を運営するのに適切な人材を、あくまで人物本位、具体的には、この人物の経歴や、それまで取り組んできた業務内容などを鑑み、かつ、リーダーとして適切な人物かどうかということも踏まえた上で、大臣認可の下、選ぶこととしておりますので、そうした観点で理事は選定されると認識しております。

遠藤(良)委員 是非、そこをきっちりとやっていただきたいと思います。過去にこういう国交省の事例があったりとか、OB、俗に天下り先とか、そういうことを言われないように、しっかりとしていただきたいと思います。

 今回の国立感染研究所は、統合されるこの研究所は、令和三年四月、常勤三百六十二人から七百十六人に増員されている。国立国際医療研究センターは常勤が二千二百二十人。合わせると約三千名程度規模であるというところで、他方、アメリカのCDC、モデルになっているCDC、これは一万四千人いるんだというところで、規模が大きく違うと思います。

 今後、人員体制の強化とか、この辺りはお考えはあるんでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構の具体的な組織構成や人員につきましては、機構に期待される役割を踏まえながら、例えば、どういう部署にどういう研究者等を配置して、予算と人員をどれくらい確保するかといった検討を併せて行う必要がございます。その際、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの現在の部署、あるいは業務、そういったものを生かしながら、基礎から臨床までの一体的な研究開発など、機能強化を図る必要がございます。

 国会での御審議、両機関の関係者、あるいは有識者の御意見などを踏まえながら、令和七年度以降の創設までに鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 予算規模のところなんですけれども、アメリカ版のCDCは七十七億ドルというところで、今回つくられる新たな機構に関して、予算規模については今後拡充の可能性があるのかどうか、どの程度を想定されているのかをお尋ねしたいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構の予算につきましても、例えば、どういう部署にどういう研究者等を配置して、予算をどのくらい確保し、どういった業務、研究を進めていくかといった検討を併せて行う必要があると考えておりまして、その際に、先ほど申し上げたとおり、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの現在の部署の特性、あるいは業務の継続なども考慮しながら、どういった予算を立てていくかということは検討していくこととなると思われます。

 具体的には、国会での御審議、両機関の関係者、有識者の御意見なども踏まえながら、令和七年度以降の創設までに鋭意検討してまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 有識者会議では、次の感染症危機に向けた中長期的な課題で、新型コロナウイルス感染症の流行時に日本からの論文の報告は先進国の中でも下位であったと。つまり、疫学研究や臨床研究の体制が余り整備されていないんだというところだと思います。

 今回の統合によってセンター病院、国府台病院での臨床を生かせるというところだと思いますけれども、総合的に、統合によって具体的に研究力をどういうふうに高めていくのか、お尋ねしたいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構におきましては、総合診療機能を持ち、治療や臨床研究で感染症対応の最前線に立ってきました国立国際医療研究センターと、ウイルス学や細菌学など感染症に関する基礎的研究能力を持ち、感染症サーベイランス情報のまとめ役ともなる国立感染症研究所を統合することで、例えば、最初の数百例程度の知見について詳しい臨床情報や疫学、病原体情報を踏まえた調査、分析、評価を一体的かつ迅速的に行うことにより、政策判断に資する質の高い分析評価を行うことが可能になると考えております。

 また、医薬品やワクチンなどの研究開発に関しましては、国立健康危機管理研究機構が平時から医療機関に対しまして治験等の協力を求め、感染症の発生時におきまして製薬企業から相談を受けた場合に一元的に協力医療機関を紹介することができるネットワークを構築すること、また、国際共同治験等の体制整備のため、アジア地域における臨床研究、治験ネットワークの構築に取り組むことなどによりまして機構が国内外の多施設共同治験等の中核的役割を担う機関となり、治験等の円滑な実施を支援することによりましてワクチンや治療薬の早期開発を推進できるものと考えております。

遠藤(良)委員 今回の日本版CDCの中で、予算規模であったり、人材というところ、御説明いただいたと思いますけれども、やはり人材というところが非常に重要だと思います。世界最高水準の高度な専門的な知識であったり経験をされている方の中で、十八条三項、十九条三項で、公務員の報酬、給与体系とは別に考慮するというところが明記されています。名古屋大学では卓越教授に二千万円から三千万円程度の年俸を設定されている、民間からのサイバー自衛官には二千三百万円程度の年俸を検討しているというところなんですけれども、実際、どの程度の人材を想定されているのか、報酬とか給与についてはどういう水準を想定をしているのかをお尋ねしたいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構が質の高い科学的知見を得るためには、御指摘のとおり、国内外で最先端の研究を行っている人材等を確保することが重要であると考えております。

 本法案におきましては、役職員の報酬、給与等を定める考慮事項といたしまして、国際的に卓越した能力を有する人材を確保する必要性についての考慮規定も盛り込んでいるところでございます。

 具体的に、じゃ、どのような人材をどういった処遇で採用していくかということにつきましては、機構が期待される役割を発揮できるよう、国会での御審議や両機関の関係者あるいは有識者の御意見等も踏まえながら、創設までに鋭意検討をしてまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 創設までに検討するというところなんですけれども、やはり、先ほどの給与水準についても、世界最高の水準というところなんですけれども、一方で、行政の天下り先にならないように、批判になるような要素はしっかり排除していただいて、検討いただきたいと思います。

 政府対策本部ができたときには、科学的知見については機構が意見を述べることができるということになっていると思います。コロナでは、有識者会議や分科会が専門家として情報発信したと。優れた人材を採用できるようにするのであれば、むしろこの機構のメンバーが政府対策本部に入って科学的知見を積極的に発信していくという考えでもよいのではないかなというふうに思うんですけれども、機構のメンバーが政府対策本部に入っていくことは想定されているのかどうか、お尋ねします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構と政府対策本部との関係につきましては、感染症有事におきまして、統括庁と厚生労働省と機構が緊密に連携して感染症対応に取り組めるよう、政府対策本部長の招集を受けて、機構の代表者が本部会合に直接出席し、意見を述べることができるとしております。

遠藤(良)委員 東大医科学研究所の石井健教授が、以前、国立研究開発法人医療基盤・健康・栄養研究所に所属していた際に、メッセンジャーRNAワクチンを研究していたと。MERSの感染が拡大した二〇一五年に研究を開始しているんだというところで、二〇一七年度に臨床試験のために数億円の研究費を申請したと。これは高過ぎるから、反対され、断念したというところなんですけれども、一方で、その後、ファイザーがメッセンジャーRNAワクチンの実用化に成功して、国内では、昨年十一月に塩野義製薬が組み換えたんぱく質ワクチンを承認申請、第一三共が今年一月にメッセンジャーRNAワクチンの承認申請をした。これは三年ぐらい遅れたというところなんですけれども、ワクチンの開発を元々やっていたものが、一方で高過ぎると反対されて断念したというところで、ワクチンの開発をいかに高めていくのかというのは非常に重要だと思います。

 機構と産学との連携が図られないといけないと思うんですけれども、この辺り、いかがでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 議員の御指摘のとおりでございまして、かつ、今般の新型コロナウイルス感染症対応においても、ワクチンや治療薬の早期開発が求められる一方で、製薬企業と医療機関の治験に関する調整に時間を要することといった課題があったことが、私どもとしても認識しているところでございます。

 こうした課題に対応するために、国立健康危機管理研究機構が平時から医療機関に対して治験等の協力を求め、感染症発生時において製薬企業から相談を受けた場合に、一元的に協力医療機関を紹介することができるネットワークを構築することとしております。

 また、現在、国立国際医療研究センター及び国立感染症研究所におきまして、協力医療機関から臨床情報、検体を収集し、病原体やヒトのゲノム情報の解析を行い、利活用を希望する国内の大学を含めた研究機関、企業等に所属する研究者にデータの提供を行うことを目的として、ワクチンや治療薬の研究開発の基盤となる仕組みの整備を行う新興・再興感染症データバンク事業、REBINDを実施しているところでございます。

 両機関が統合する機構におきましては、このREBINDが更に強化して実施していくこととなると考えております。

遠藤(良)委員 ワクチンとか治療薬が、三、四万人規模の接種をする最終段階の治験ができなかったというのがあったというところで、JICAは、タイ、ケニアなど六か国と治験のネットワークを構築しているんだと。

 海外での治験の実施体制についてはどのように整備していくのか、お尋ねしたいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁を申し上げたところでもございますが、感染症領域におけます海外での治験につきましては、アジア地域における臨床研究、治験ネットワークの構築事業に基づきまして、現在、国立国際医療研究センターにおきまして、ベトナムやインドネシア、タイやフィリピンにその拠点を設置する等、環境整備に取り組んでいるところでございます。

 また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現等に向けて、国際機関との連携や国際的な人材育成等を行うこととしてもおりまして、こうした取組により、アジアも含む国際的なリーダーシップ、これが取れるようになると考えているところでございます。

遠藤(良)委員 G7広島サミットでは、低所得国にワクチン購入資金を迅速に支援する枠組みについて議論する予定であるというところなんですけれども、今後どのように進めていくのか、また、この予算をどう確保していくのかをお尋ねしたいと思います。

加藤国務大臣 今回のG7保健大臣会合でも、今般のコロナパンデミックにおいて開発されたワクチンが途上国の人々に十分行き渡らなかった課題を踏まえて、途上国を含めた世界中の人々の医薬品への公平なアクセスを確保するための仕組みづくりの必要性について合意をしたところでございますので、これを踏まえて、これから行われるG7の広島サミット等でも御議論いただけるものと思います。

 そこから先、まさにこれから、それについて具体的な中身を詰めていくということになると思います。

遠藤(良)委員 感染症対策を含めて、グローバルヘルスについて日本が国際社会を主導していくべきだと思います、JICAとも連携をして。

 大臣、ゴールデンウィーク中に東南アジア三か国を御訪問されたというところなんですけれども、週末にはG7の長崎保健大臣会合があったということなんですが、今後、日本の存在感、どのように打ち出していくのかをお尋ねしたいと思います。

加藤国務大臣 まず、連休中を活用して、フィリピン、シンガポール、ベトナムに訪問いたしましたが、国際保健分野について、二国間における、これまで日本からもいろいろ支援をしておりますから、その中身について議論するとともに、将来の健康危機対応の一環として、ASEANの感染症対策センターというのがございますので、それに対する支援をしていくこと。

 また、医薬品とかワクチンを使おうとすると、我が国もそうですが、通常、薬事承認というのが必要になってきます。そして、その前提として治験が必要になってきます。そういうのをきちんとつくっていかないと、いいものができても、なかなかそれぞれの国ですぐ使えるようにならないということもありますので、医薬品アクセス向上を見据えた薬事規制上の協力、あるいは調和をどう図っていくのか、また、治験の国際ネットワークをどう推進していくのか、そのときにはAMRの対策もしっかり念頭に置きながら、そういったことについて意見交換を行い、将来に向けて、そういった薬事規制の調和、あるいは国際的な治験の基盤、こういったことをしっかりつくっていきたいというふうに考えております。

 また、G7では、大きく、将来の健康危機への予防、備え、対応のための国際的な協力の強化、あるいはユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けての貢献、そして、それを下支えするためのヘルスイノベーションの促進について議論させていただき、先ほども少し申し上げましたが、G7UHCグローバルプランというものを合意をして、そのUHCの二〇三〇年の達成に向けての、一つ、ふりをつくることができたというふうに考えています。また、前の答弁で申し上げた、ワクチンについては、そうした必要性について合意がなされた。また、AMRの対策、これはもう、サイレントパンデミックといって、大変、各国も非常に課題だと認識をしておりますが、それに対しても、いわゆるこれまでのプッシュ型と言われる研究開発を促進するのみならず、企業に対して開発された薬の利益を保証することで新たな抗菌薬の研究開発を促進するプル型インセンティブ、これは日本も今導入しようとしていますが、その重要性についても認識を一致させた。

 こういった合意が、あるいは共有化できたところでありますので、そうした中身については、G7の広島サミット、あるいはこれから開かれる国連でのハイレベル会合等々を通じて更にこの議論を深めていくとともに、今回まとめた内容について、我が国としても、各国と協調しながらも、具体的な施策を進めていきたいと考えています。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 少し質問を飛ばさせていただいて、ちょっと少子化対策の財源のところ、最後、質問したいと思います。

 五月九日の大臣の記者会見のところで、今の年金、今の医療、今の介護の保険料からほかに流用する余地はないと。社会保険料の引上げでは現役世代に大きな負担がかかるというところだと思います。

 我が党の馬場代表が、社会保険料の増額や流用となると納税を直撃するんだ、国民負担率が上昇して可処分所得が減って経済に悪影響を与えるという悪循環に陥るんだということを指摘しています。やはり、可処分所得を増やして経済成長していくというのが基本路線だと思うんですけれども、茂木幹事長は増税や国債を否定しているんだと。一方、大臣は、社会保険料方式、税、国債等々様々なやり方があるんだと発言もされています。つまり、税や国債を排除していないんだというところだと思います。

 大臣、最後にお尋ねしたいんですけれども、少子化対策の財源についてはどのようにお考えなのか、お尋ねします。

加藤国務大臣 まず、従前から申し上げておりますように、現状の医療、介護、年金、この社会保険制度については、それに必要なサービスに見合う形で保険料を徴収させていただいているということでありますから、その今の仕組みの中に他に流用するといったものの余地はないということは申し上げているところであります。

 その上で、具体的に子供、子育て施策の強化をどう図るのか、また、その予算、財源をどうするのかについては、今、総理を議長とするこども未来戦略会議で議論を深めているところでありますので、具体的な財源の在り方については、歳出改革に加えて、税、社会保険料、国債等様々なやり方があるというふうに、特定しているわけじゃなくて、いろいろなものが考えられるわけでありますから、それらについて、どういう形で今申し上げた子供、子育て財源を確保していくのかについて丁寧に議論を深めたいというふうに考えています。

遠藤(良)委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いいたします。

 私からは、法案の審査に入る前に、二点お伺いをしたいと思います。

 一点は、前回積み残した質問でありますが、知的障害のある子供の一時的失踪についてお伺いをしたいと思います。

 知的障害のある子供は、目を離した隙にどこかに行ってしまうことがあり、ひとときも目が離せないとも言われています。

 昨今、新聞の記事ですが、ある養護学校に通う女の子というのは、父がATMを操作している僅か二十秒の間にいなくなってしまって、十三・五キロ先のコンビニで見つかったのは三十三時間後の次の日の夜であったということでありまして、また、今年一月には、その子は、家から二キロ離れた交差点で車にはねられて、一時、意識不明になったと。

 また、ある放課後デイサービスでは、昨年の十二月、車から降りた特別養護支援学校の男子生徒が、突然走り出して、行方が分からなくなってしまったと。これは、川で発見されてしまって残念な結果だったんですが、この男子学生は川に強い興味があったということであります。

 家族や通所先の施設からは、切実な問題であって、対応が求められております。この実態というのをどのように把握をして対応がされてきたのか、お伺いします。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害児の支援におきまして、子供の安全確保というのは、これは支援の基礎となるものでございまして、大変重要な課題であるというふうに考えてございます。

 障害児の福祉サービスを提供する事業者、施設に対しましては、その運営基準の中で、事故が発生した際には、都道府県へしっかり報告をしてくれということを義務づけてまいりましたが、加えて、本年四月、この基準を改正いたしまして、設備の点検、職員の研修等々、安全確保に関する計画、いわゆる安全計画の策定を義務づけをいたしまして、それに基づいて、日々の取組、安全確保に向けての取組を進めてもらうということにしているところでございます。

 また、福祉サービスにおける危機管理に関する取り組み指針というものを示してございまして、障害のあるお子さんの潜在的ないしは顕在的なリスクを把握しつつ、アセスメントを行って、個別支援計画を立てていくなど、施設としての対策をあらかじめ明らかにしておくなど、事故防止策を講じるようにということで求めているところでございます。

 こうした取組を行っているところではございますけれども、今年度、こども家庭庁で実施する調査研究におきまして、こうした障害児支援事業者における支援の提供の中で発生した事故などについての実態を把握することとしております。その結果も踏まえて、必要な事柄につきましては、先ほど申し上げましたような取組に反映させていくなど、引き続き、子供の安全確保に向けた取組の徹底が図られるように取り組んでまいりたいと考えております。

田中(健)委員 知的障害の方、児童だけでなく、二十歳を超えても、親と一緒にいなけりゃならないという状況は変わりません。児童だけの課題ではなく、知的障害を持つ一般の方は、一時的失踪をめぐっては、今度は、厚労省としてはどのように把握をして、支援が取られてきたのか、伺います。

辺見政府参考人 成人期にある障害者の入所施設など、障害者支援におきましては、サービスの提供に当たって、障害者の安全を確保することは大変重要と考えております。

 障害福祉サービス事業者には、法令上の運営基準において、サービス提供時に事故が発生した場合の都道府県等への報告などを義務づけており、障害者の行方不明を含めた個別の事故の状況や、事故に際して取った措置などについては、都道府県において把握する仕組みとしているところでございます。

 また、福祉サービスにおける危機管理に関する指針として、事業者としての事故の未然防止策や事故発生時等に取り組むべき対応などを示しているところでございます。

 なお、障害福祉サービス事業者が満たすべき基準に違反することが明らかになった場合には、指定権者である都道府県等が指導監督を行うということとなっております。

 さらに、各自治体や施設において、地域の関係者のネットワークによる見守りや捜索の仕組みなどを活用することなど、障害者が行方不明となってしまった場合の早期発見に取り組まれている事例もあることと承知をしております。

 成人期にある障害者につきましては、行動の自由にも配慮した意思決定支援も重要と考えておりますが、あわせて、このような取組は障害者の行方不明対策としても有効と考えており、引き続き、関係部局や市町村とも連携をしながら、障害者の安全確保に努めてまいりたいと考えております。

田中(健)委員 幼児であっても成人期であっても、問題なのは、日本全体としてどのくらい起きているのか分からないということであります。先ほど、一義的には都道府県また市区町村というお話がありましたけれども、こども家庭庁では、四月に、これから調査をして、取りまとめていただくということでありますので、是非、まず全体の、何が起きているのか、何が課題かというのを集約してもらって、その上で対策を取っていただきたいと思っています。

 専門家からは、失踪は命に関わる問題だが調査研究は十分に進んでいないと、実態把握や傾向分析の立ち遅れが指摘をされており、情報が集まれば有効な手段が取れるんじゃないかということも言われています。是非、子供を始め、障害を持つ全ての人々の命を守り、また、家族が大変に負担でございますので、そのサポートができるための共生社会の実現に向けて取組を進めていただきたいと思います。

 引き続きまして、もう一点が、先ほど来も他の委員からもありましたG7の保健相会合についてです。

 長崎で開かれていた先進七か国の保健相の会合、十四日、終わったところでありまして、加藤大臣におかれましては、議長の大役をお務めいただきました。お疲れさまでありました。

 その中で、先ほど来からお話がありました、将来の感染症危機に備えて、特に低中所得国に行き渡るようにすること、ワクチンの問題が挙げられておりました。ワクチン、治療薬、検査キット、発展途上国を含めた世界各地に公平に供給する必要性が明記された共同声明が採択をされたところであります。

 その中で、どの新聞を見ても、ワクチン、公平に供給という見出しが躍っておりますし、また、大臣からも公平な供給のお話がありました。その必要性は誰もが認めるところでありますが、なかなか難しい現実がありまして、特に公平という概念であります。

 ワクチンを開発した企業、欧米を含め、その企業が開発費を出しているわけですから、その国が優先して供給を受けるということも当然であると思いますが、一方、途上国に配布をしようと思いますと、全く開発等に関係ない途上国が、同じ人口比率で供給をすることが公平なのかという様々な議論が起こると思っています。

 日本も含め、ワクチンに関しては、各国が我急ぎ確保に努めた、またその確保競争の現実を私たちは見てきましたが、公平という概念、この言葉について、大臣が共同声明に込めた思い、またその大臣の認識というものを伺いたいと思います。

加藤国務大臣 まさに公平なアクセスを確保するための仕組みづくりの必要性について合意をしたわけであります。

 ここで言っている公平という点については、パンデミック時に先進国でも、途上国も含め世界全体、どこの国にいても開発された医薬品が迅速にアクセスできる、あるいは届けられる、こういったところを念頭に置いたものであります。

 じゃ、更に具体的なというお話が今ありました。

 その具体的な仕組みづくり等については、まさにこれから進めていくわけでありますし、これはG7だけでできるわけでもありません、G20だけでできるわけでもありませんが、まだ、今回のG7の議論、また、この秋にはG20もあります、そうしたところ、そして、さらには、本年九月に国連総会のハイレベル会合等もありますから、そういったことを通じて、その仕組みづくりの必要性を更に認識をし、そして具体的な議論を進めていかなければならないというふうに考えています。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 今、国際的な仕組みと。なかなか、市場や民間だけに任していては、この実現がいかないとは思うんですが、その中でも、コロナ禍でも、世界で様々な仕組みが構築をされて、取組が行われてきたのも事実であります。そのこれまでの取組について伺いたいと思いますが、一つは、ACTアクセラレーターと言われるものです。

 新型コロナウイルス感染症を収束させる上で決め手となった検査、治療、ワクチン、この三つの医療ツールの開発や生産を加速をして、低中所得国への公平な、まさにまた公平が出ますが、アクセスを実現させるための国際協働の仕組みであります。

 これは、G20の提唱に基づいて、各国政府、WHOを始めとする国際機関、民間財団によって二〇二〇年の四月に立ち上がりました。これについては外務省が中心となって取組が進められてきたとのことですが、この成果、また今後の取組について伺います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 ACTアクセラレーターは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けまして、我が国を含む八か国、世界保健機関及びゲイツ財団の共同提案によりまして二〇二〇年に設立された、緊急対応のための国際的な枠組みでございます。ワクチン、治療、診断、保健システム、こういった四つの柱から構成されておりまして、関係国際機関等が連携して、安全、有効で負担可能なワクチン、治療、診断の開発、生産及び公平なアクセスを加速化させるための取組を実施してまいりました。

 ACTアクセラレーターを通じまして、これまでに、主に低中所得国に対して、およそ十九億回分のワクチン、一・七億回分の検査薬、三十一万回分の治療薬、加えて医療用酸素等の供給がなされたと承知しておりまして、新型コロナウイルス感染症に国際社会が協調して対処する上で一定の役割を果たしたと評価しております。

 ACTアクセラレーターにつきましては、様々な評価が行われておりますけれども、昨年十月に公表されましたACTアクセラレーター外部独立評価報告書におきましては、ACTアクセラレーターが前例のないレベルでの迅速な対応と関連機関間の調整、協力を可能にしたと評価する一方で、特に保健システムの柱については十分に目的が実現できなかった点や、四つの柱の間での調整不足、さらには、意思決定における低中所得国の関与が不十分であった等の点が課題として指摘されております。また、今後に向けまして、パンデミックへの対応に関する政治的リーダーシップの確保や、平時における保健システム強化への投資の必要性が指摘されたところでございます。

 こうした教訓も踏まえまして、G7の議長国として、G20等の各種フォーラムやアフリカ、インド太平洋等の途上国、さらには、WHOを始めとする保健関連機関と連携いたしまして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を見据え、将来の健康危機対応に向けた感染症危機対応医薬品等への公平なアクセス確保のための取組を一層推進してまいりたいと考えております。

田中(健)委員 そのACTアクセラレーター中でワクチンの件が述べられましたけれども、このワクチンに関しては、COVAXという枠組みがつくられまして、これもWHOが主導して、ワクチン普及のための国際組織としてつくられました。

 その中で、厚労省は、流行感染症対策イノベーション連合、CEPIということを担っておりまして、この取組を進めてきたところでありますが、これまでの成果、また課題というのを伺います。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 感染症流行対策イノベーション連合、CEPIでは、将来起こり得るパンデミック等に備えるため、ワクチンの研究開発等を支援しております。新型コロナウイルスワクチンについても、CEPIの支援を通じて、現在までに世界で八種類のワクチンが開発されております。

 こうした中、CEPIに対しては、我が国は、設立当初から支援を行っておりまして、昨年二月には、岸田総理が、今後五年間に更に三億ドルの拠出を行う旨を表明しているところでございます。

 ワクチンの研究開発は比較的迅速に行われた一方で、開発されたワクチンが途上国の人々に十分に行き渡らなかったという課題があったというふうな指摘もございます。先ほど加藤大臣からもございましたとおり、先週開催したG7長崎保健大臣会合での議論におきましても、製造から流通に至る、アクセス・アンド・デリバリーまでを含めたバリューチェーン全体の改善に焦点を当て、G7各国が率先して取り組むことが重要と認識しておりまして、関係機関等と連携しながら進めてまいりたいと考えております。

田中(健)委員 ACTアクセラレーター、またCOVAXの仕組み、今も、一定の役割はあったと言いますが、まだまだ期待したほどの成果は出ていないという厳しい評価もあります。是非、G7で高らかに、ワクチン、治療薬、検査キット、発展途上国を含めた世界各地に公平に供給すると訴えるのであれば、これまでの検証をしっかりした上で、次のパンデミックに備える、その先頭に日本が立ってほしいと思っています。

 是非、日本政府には、国際保健の理念、誰一人取り残さないというこの理念を真に実現されるように、次のG7にこの概念を生かしてほしいと思うんですが、それに加えて、これら二つの機構を先導したのはWHOであります。

 WHOに関しては、コロナ禍でも、時に中国に忖度するような言動を繰り返したり、また、日本にも批判的であったことも事実であります。日本や西側諸国も、WHOに不信感を持つ人が多いのではないかと思っています。コロナ禍でのWHOの途上国支援の呼びかけが余り功を成さなかったというのは、もちろん、自国内の対応でみんな手いっぱいであったのも事実であるんですが、それだけではなく、ある意味の不信感ということも一因ではないかという指摘もある中、これまでのWHOの取組や、また信頼関係に対して大臣はどのように感じてきたか、伺います。

加藤国務大臣 WHOは、保健分野における国連の専門機関でありまして、国際的なルールづくりを行うなど、グローバルヘルスにおける重要な国際機関であります。

 コロナ禍におけるWHOの一連の対応がどうだったのかというのは、なかなか評価は難しいところでありますが、WHOには、科学的知見に基づき、専門の立場から公衆衛生上の助言や支援を行うことが求められているところでございます。

 いろいろな評価はありますけれども、例えば、地域でいえば西太平洋の事務局、WPROにおいては大変感染症に対応をうまくやったという、これはランセットという雑誌でも高く評価されていたということはあったと思います。

 その上で、パンデミックの対応をする上でまず大事なことは、パンデミックを引き起こし得る病原体やそのデータを迅速にまず共有するということ、そして、適時適切に国際交通の往来等を管理して、感染が拡大しないようにするということが非常に大事であります。

 WHOが加盟国とともに将来のパンデミックに備えるため、国際保健規則、IHRというのが設けられておりますが、それを改正する、あるいは、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書、いわゆるパンデミック条約の制定の議論を進めております。先日のG7でもその必要性について認識が一致し、そうした方向性を共有をしているところでありますので、我が国としても、こうした議論を積極的に関与し、また、そうした方向に向けて進めていくように対応していきたいというふうに考えております。

 また同時に、WHOが引き続き、全ての人々の健康を増進し、保護するための国連専門機関として期待をされているわけでありますから、その専門性を生かして、科学的知見に基づいた活動がなされるよう期待をしていきたいと思っておりますし、必要な関与もしていかなきゃならないと考えています。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 ここから法案に関する質問に入っていきたいと思うんですが、今、途上国に支援するのは大切であり、その取組、是非、加藤大臣に先頭に立って進めていただきたいと思うんですが、日本でのワクチン、新薬への製造支援体制や薬物研究機関の強化というのも、もちろん大事なことであります。

 感染症に関する国産ワクチンの開発の司令塔と言われる組織は、先ほど来も出ていましたSCARDAが昨年発足し、日本医療研究開発機構の中に新設をされました。この医療研究開発機構は内閣府所管の独立行政法人でありますが、国立健康危機管理研究機構は厚労省の位置づけになります。それぞれ、ワクチンの開発に従事するということでありますが、どのような役割分担がなされて役割を果たしていくのか、伺います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 役割分担のお尋ねでございますが、AMED、国立研究開発法人日本医療研究開発機構につきましては、国立研究開発法人日本医療研究開発機構法において、医療分野の研究開発及びその環境の整備に対する助成を行うこと等を業務とする、いわゆるファンディングエージェンシーでございまして、特にAMED内に設置されています御指摘のSCARDA、先進的研究開発戦略センターにおきましては、今後の感染症有事に備え、ワクチン開発・生産体制強化戦略に基づき、世界トップレベルの研究開発拠点の形成、アカデミアや企業への戦略的な研究費の配分等により、ワクチンの開発能力の向上に取り組んでいるものと承知しております。

 一方、国立健康危機管理研究機構は、研究費配分機能は持たず、研究実施機関といたしまして、次の感染症危機に備えた科学的知見の基盤、拠点としての機能を果たすことを目的とした組織でございまして、ワクチン、医薬品開発におきましては、治験などに取り組んでいく組織でございます。

 かように役割分担は違いますが、機構とSCARDAを含むAMEDとが必要な連携を図っていくことは感染症対策上、重要であると考えておりますので、機構設立後は、この連携を適切に図ってまいりたいと考えております。

田中(健)委員 今お聞きしたのは、SCARDAを紹介するときもワクチン開発の司令塔というふうに言われまして、今回の日本版CDCをつくるときも司令塔という言葉が乱立をしておりまして、やはり、船頭多くしてとならないように、今の役割というのをしっかりと明確に定めて、そしてしっかり機能するようにしてほしいと思っています。

 その中で、新機構の二十三条、機構の業務という中に質問を移したいと思いますが、十一号、業務に係る成果の普及及び政策の提言を行うとあります。

 今回の新機構、基礎から臨床までの一体的な研究基盤、また全国的な情報基盤を確立して、質の高い科学的知見を提供するということをこれまで答弁をされてきましたが、この場合は、誰に関して普及をし、また、政策提言とありますけれども、政策提言をしていくということが想定されているんでしょうか。

加藤国務大臣 まず、誰に対してということでありますけれども、第二十三条第一項第十一号の規定は、現行の、高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律第十六条第五号の規定、いわゆる国立医療研究センターの規定に該当するわけでありますが、引き継いだものであり、業務に係る成果の普及とは、感染症に関する分析、調査、研究、医療提供や国際協力などの機構の業務を通じて得られた科学的知見や技術などを国民に分かりやすく普及啓発をしていくことを意図するものであります。

 それから、政策提言でありますが、これも既に今の国立国際医療研究センターにも同じ業務がついているわけでありますけれども、実際、どういう活動をしているかといえば、政府の審議会等に委員として参加して、科学的見地から意見を述べること、シンポジウムを開催し、社会全体に向けた提言を行うこと、感染症の特性に基づく注意喚起を行うことといったことを実施をしているわけでありますので、機構においてもそうした役割を果たしていただきたいと考えているところであります。

田中(健)委員 政策立案等、意思決定に関しては、感染症危機管理統括庁と、また厚労省の感染症対策部ということが説明を受けてきましたけれども、先ほどの阿部先生ですか、質問、答弁にもありましたけれども、この科学的知見に基づいた政策提言というのは、この新機構も是非どんどんとしてほしいと思っておりますし、また、それがしっかりと私たちの生活に役に立つ、科学的知見に基づいた政策提言につながるように期待をしていきたいと思いますが、その中で必要なのはリスクコミュニケーションだと思っています。

 今、国民に情報発信をしていく、普及をしていくと言ったのでありますが、これもこの間の委員会でありましたけれども、情報発信については、新型コロナウイルス会議の分科会の尾身会長が大きな役割を果たしてきた一方、感染研では脇田所長も専門家で発言をするなど、様々な立場から専門家としての意見が出されてきました。それぞれの役目を果たしてきたとは思うんですが、様々な情報、特に新しい情報が次々と出てきますから、私たち専門家でない国民からすると、困惑した方も大変多かったと思っています。

 司令塔ということに関しては統括庁が担うことになると思いますが、アメリカにおいてはCDCの所長が常に感染症に関する情報発信を一括して行って、国民とのコミュニケーションを果たしてきたと考えられます。日本においては、まさにコミュニケーションをしていく、いわゆる報道官のような役割というのは誰が担っていくことになるんでしょうか。

大西政府参考人 お答えいたします。

 リスクコミュニケーションについての御指摘でございますが、感染症危機におきましては、政府が科学的根拠に基づいた正確、迅速な情報発信を行うことですとか、あるいは政策判断につきまして明確、丁寧な説明をすることによりまして、国民の理解を得ることが極めて重要であるというふうに認識をしております。

 今般設置することとされております内閣感染症危機管理統括庁でございますけれども、政府の感染症対策の司令塔機能を担う組織として、情報発信についても中心的な役割を果たすということで、広報実施体制をきちんと整備してまいりたいというふうに考えておりまして、先般、内閣法の改正法案を御審議いただきました参議院内閣委員会におきましても、その発信や説明については、政策決定等に責任のある者がその役割を担い、十分な頻度でかつ継続的に行うという御指摘をいただいておりますので、こうした御指摘も踏まえながら、今後の感染症危機における政府の情報発信の体制を整備を図ってまいりたいというふうに考えております。

田中(健)委員 統括庁が一元化して行っていくということでありますが、それに対して機構はどのような形で関わっていくんでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 感染症対策を国民の理解を得ながら迅速に進めるに当たりましては、先ほど御答弁がありましたけれども、政府が科学的知見を踏まえて、国民の混乱を招かないようにすることが大事だというふうに考えております。

 その際、国立健康危機管理研究機構が一体となって正確な情報を発信することが重要であると認識しております。

 このため、機構におきましても、感染症等に関する調査、分析、研究により得られた知見等につきまして、政府の方針に沿って分かりやすく情報発信していくことが必要であると考えており、政府全体のリスクコミュニケーションを担う内閣感染症危機管理統括庁等とともに緊密に連携して、分かりやすく効果的な情報発信ができるように工夫してまいりたいと考えています。

田中(健)委員 感染症に関わる情報の一元化が統括庁であり、それをサポートするのが新機構というようなお話であったと思うんですけれども、しかし、先ほどの話では、統括庁の方から責任ある立場の人がということでありましたけれども、リスクコミュニケーションというのは国民が不安なことを説明をして解決をしていくと思いますが、さらに、この国民の不安に応えるために、恐怖を鎮めるためには、クライシスコミュニケーションと言われるものもコミュニケーションにはあります。

 これらは、単に役職として責任ある立場、これは審議官というお話も聞きましたが、それが担うのではなく、やはり、広報の専門家としての位置づけを統括庁に置き、そのときの担当官が、たまたま感染症があったからではなく、平時から訓練をしたり発信をしていくということが必要ではないかと考えますが、再度、この専門官の必要性や、また、その養成ということはどういうふうに考えているか、伺います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの御指摘につきましては、国立健康危機管理研究機構も先ほど申し上げた情報発信機能を強化いたしますので、リスクコミュニケーションに特化した組織体を検討するよう、今後考えていきたいと思います。

大西政府参考人 恐縮ですが、補足させて、内閣感染症危機管理統括庁としての取組について御説明させていただきます。

 私どもも、統括庁において、リスクコミュニケーションに専門的な知見を有する者、そういった者の人材の確保等に努めるということと、あわせまして、私ども、新型インフルエンザ等対策推進会議という外部の有識者の会議もございますので、そういったところでリスクコミュニケーションの専門家からいろいろ御助言をいただくというようなことも含めて、きちんと対応してまいりたいというふうに考えております。

田中(健)委員 これについては、これまでの過程の中でも、情報の一元化や発信の在り方、専門家にも指示やまたアドバイスを仰いできたということでありますが、まだなかなか一元化ということには至っておりませんので、是非、検討課題として取組を進めていただきたいと思っています。

 引き続きまして、二十四条のことについてお聞きをしたいと思います。株式又は新株予約権の取得及び保有という欄であります。

 成果活用事業者が発行した株式や新株予約権を取得することができると、ここにはありますが、そもそも、機構の研究者が会社を起こし、株式を発行するということが考えられているという理解でよいのか、伺いたいと思います。また、先ほどの質疑の中でも、国際医療研究センターの際には実績がないということでありますが、今回、これは特殊法人に移るということであります。特殊法人においては、他の法人でもいいんですが、これまでそのような事例があったのか、伺います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構法第二十四条第一項に規定いたします成果活用事業者は、国立健康危機管理研究機構の研究開発の成果を事業活動において活用し、又は活用しようとする者を指します。

 これは、機構の研究者が創設した会社を排除するものではございませんけれども、そうした会社を想定した規定ではなく、広く機構の成果を活用しようとする事業者が対象となり得るものでございます。

 厚生労働省といたしましては、特殊法人全体における同様の事例は把握しておりませんが、同じ規定を持つ現在の国立国際医療研究センターにおきましても、これまでのところ具体的な実績はございません。

田中(健)委員 独立行政法人でも同じような仕組みがあり、そのままこの法案にも適用したということと理解をしておるんですが、国立大学法人や大学共同利用機関法人、また地方独立行政法人法では、その活用がガイドラインに示されておりまして、かなり具体的な形でこれを活用していくと、いい意味で前向きなガイドラインが示されております。

 感染症に関しては、基礎研究を感染研が担って、ある意味、国の政策を担う機関でありました。一方、今、機構の研究開発の成果を生かしていくということでありますので、是非、私はスタートアップとかベンチャーとかということも可能となって、先ほど人材確保という面もありましたけれども、自分の研究成果が外でも発信できる、ないしはオープンイノベーションで活躍、また活用ができるというように思っていたんですが、そうでは少しないという位置づけではあると思うんですが、スタートアップやベンチャーということが可能になるという位置づけでないということでよろしいでしょうか。もう一度。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 御質問の件につきましては、広く機構の成果を活用しようとする者であれば、そういった方を排除するものではございません。

田中(健)委員 先進国におけるワクチン、治療薬で、やはり多くのベンチャー企業や、またそういった人たちが今回も役目を果たしてまいりました。是非、この機構においても、ワクチン開発、治療薬というのは、事業者が果たす役割が大きい一方、いつ感染症が起こるか分からない、どんな感染症が起こるか分からないということで、なかなか巨額の投資を日本もできなかったという現実があります。是非、次のパンデミックに向けて、今回の新機構が専門的な見地から対策に必要となる治療薬、またワクチンの研究開発の方向性を示すような役割も期待をされていると思いますので、その研究開発の成果を生かせるような制度を構築していただきたいと思っています。

 引き続きまして、二十七条の中期目標、また二十八条の中期計画、年度計画について伺いたいと思います。

 機構の運営の流れというのは、まず、厚労大臣が、六年間において機構が達成する中期目標を定め、その際に、健康・医療戦略推進本部と独法評価委員会の意見を聞く。そして、それに基づいて、さらに、機構が中期計画と年度計画を定めていくというふうに読み取れますが、そのような理解でよろしいでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構法第二十七条におきまして、厚生労働大臣は、あらかじめ、健康・医療戦略推進本部及び独立行政法人評価制度委員会の意見を聞いた上で、六年間における中期目標を定め、これを機構に指示することとされております。

 また、機構は、同法第二十八条の規定により、大臣が定める中期目標に基づき、国民生活等に重大な影響を与える感染症の発生等に備えるための体制整備に関する事項、研究開発の成果の最大化その他業務の質の向上に関する目標を達成するため取るべき措置、業務運営の効率化に関する目標を達成するため取るべき措置などを中期計画として定めることとしております。

 さらに、機構は、同法第二十九条の規定によりまして、この中期計画に基づき、年度計画を策定することとしております。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 その中で、国立国際医療研究センターというのは、今まで、六つある国立高度専門医療センター、先ほども六NCというお話がありましたけれども、これに位置づけられておりまして、その横断的な研究というのが推進をされてきましたけれども、機構に変わることで、また、計画が変わることで、今回、その中に、特に医療研究連携推進本部という位置づけがされておりませんが、どのように、特殊法人に移ることで連携というのが取られていくのか、伺います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部、いわゆるJHと我々称しておりますが、このJHにつきましては、平成三十年度に取りまとめられました国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会報告書を踏まえまして、いわゆるNC、国立高度専門医療研究センターの横断的な組織として設置されたものでございまして、NCの資源及び情報の集約による研究の更なる活性化や他機関との連携に取り組んでいるところでございます。

 機構はこのNC法上の国立高度専門医療研究センターではなくなりますが、他のNCとの連携の中の枠組みは重要であると考えております。JHの取組の中で機構をどのような位置づけができるかどうかは、法案の施行までに検討してまいりたいと考えております。

田中(健)委員 是非、これまで六NCで様々な提携をして連携してきたということでありますので、それについて今後検討していただけるということですので、お願いをしたいと思います。

 以上で質問を終わります。

三ッ林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

三ッ林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今回の法案は、感染研と国際医療研究センター、NCGMを統合して、特殊法人とします。

 資料一枚目を御覧いただきたいと思いますが、橋本行革のとき、災害等国の重大な危機管理に直結し、直接国の責任において実施することが必要な事務事業は、国が自ら主体となって直接実施しなければならない事業だとして、感染研は国立とするという判断をしてきたわけでございます。

 私は、国立というのは当然、本来続けるべき形態だと思いますが、なぜ国立をやめてしまうのか。今日あるいはこの間の議論を聞いていましても全く説得力がある説明はなされていないと思いますが、いかがですか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 平成九年の行政改革会議最終報告書が取りまとめられた際ですが、国立感染症研究所につきましては、感染症に係る国の重大な危機管理に直結する業務を行っている一方、独立行政法人は国が自ら主体となって直接実施しなければならない事業を対象業務としないものであるため、独立行政法人化しなかったものと認識しております。

 国立健康危機管理研究機構につきましても、感染症有事には、特に政府対策本部の方針等に従い、病原性の高い病原体の検体採取、患者の入院治療等を迅速、柔軟に行う役割を担うこととしており、国の関与を必要最小限とする独立行政法人にはなじまない一方、感染症危機対応時に質の高い科学的知見を迅速に獲得できるようにするためには、国際的に卓越した人材を確保する必要があり、人事、組織などの運営を柔軟に行える組織であることが必要であることから、これらの両方の側面を考慮し、大臣が強い監督権限を持ち、かつ国の組織よりも柔軟性のある組織に相ふさわしい法人といたしまして特殊法人とするものでございます。

宮本(徹)委員 柔軟性のためにと言うんですけれども、柔軟性のためにの、その先の理由は余り説得力あるものが示されていないわけですよね。せいぜい言われるのは、高度人材のための給与の話が出てくるわけで、それだったら、ちゃんと公務員の給与の体系について考えればいいだけの話ですし、何よりも、やはり感染症対策に当たられている研究者の皆さんというのは、一番大事なのは使命感ですよね。使命感で皆さん研究をやられていると思います。

 その点、特殊法人って、これは総務省のホームページを見ましても、こう書いていますよ。その事業の性質が企業的経営になじむもの、これが一番初めに書かれているわけですよ。およそ感染症対策が企業的経営になじむものなんというのは、私は言えないと思いますよ。

 その上で、法案では、厚労大臣が定める中期目標として業務運営の効率化、これが掲げられております。機構が定める中期計画でも、業務運営の効率化に関する目標を達成するため取るべき措置が明記されております。

 これは国立大学法人法などと同じなわけですね。国立大学では、効率化の名の下に長期にわたり運営費交付金が削減され、研究力の低下を招きました。

 資料の二ページ目を御覧いただきたいと思いますが、今回、統合の一方でございますNCGM、赤線を引いたところを御覧になっていただければと思いますが、研究費以外の運営費交付金で支えられております補助金見合い事業を除く研究研修事業及び情報発信事業、運営基盤確保事業は、毎年一%の効率化が求められて、事業費が削られる構造になっているわけですよ。

 そうすると、新法人でも、事業運営の効率化の名の下に、NCGMや感染研の事業や研究について毎年一%などの効率化を求め、運営費交付金、事業費が削られる、この構造が継承されていく、こういうことになるのじゃありませんか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 現在の国立国際医療研究センターにおきましては、主に臨床研究を含む研究を推進する事業、国際医療協力や研修医、看護師を育成する事業、情報発信や教育研修その他の事業を行っておりまして、御指摘の毎年一%の効率化を求められている事業は、情報発信や教育研修等の事業でございまして、センターの重要な役割である研究開発や国際医療協力等の事業につきましては、その重要性等に応じて増額も行っているところでございます。

 また、制度的にも、現在の国立国際医療センター等の研究開発法人につきまして、主務大臣が定める中長期目標は、研究開発成果の最大化を第一目的とし、効率化目標の設定についても、研究開発の特性を踏まえた柔軟な運用を行うこととされており、さらに、特殊法人である国立健康危機管理研究機構の中期目標の設定につきましては、本法案におきまして、第一に感染症の発生及び蔓延に備えるための体制整備に関する事項を規定し、そのための研究開発の成果の最大化に関する事項を定めた上で、業務効率化等の一般的事項について定めることとしております。

 いずれにいたしましても、機構の具体的な事業やそれに伴う予算等につきましては、次の感染症危機に備えて機能強化を図る観点から両機関を統合するため、両機関の現在の事業の特性も生かしつつ検討をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 検討をしていくということで、これが続くのかどうかということについては明言されないわけですよね。ちなみに、NCGMは、平成二十二年当初、運営費交付金は八十四・五億円ありましたけれども、二〇一九年には五十八・八億円まで減っているんですよね。大規模に削減をされております。

 二〇一〇年、新型インフルエンザ対策総括会議報告書で、感染症危機管理に関わる体制の強化が指摘されました。特に国立感染研究所については、米国CDCを含め、各国の感染症を担当する機関を参考にしてよりよい組織や人員体制を構築すべきであるとして、人員体制の大幅な強化、人材の育成などを求めておりました。ところが、感染研では、二〇一一年をピークにコロナパンデミックが起きる前まで常勤研究者は削られ、経常的研究費も削られていったわけであります。そうした体制が弱体化した中で、今回のコロナパンデミックを迎えるということになりました。

 この法案で、わざわざ中期目標で業務運営の効率化というのを掲げていくということになって、一律の効率化を求めていけば、同じ過ちを繰り返すことになるんじゃありませんか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 まず、国立感染症研究所の人員につきましては、令和元年度までは若干の減少傾向であったものの、令和三年度におきましては、新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた大幅な増員を行ったところでございます。また、研究費につきましても、平成二十八年度まで若干の減少傾向が続いておりましたけれども、平成二十九年度よりおおむね増加傾向、令和三年度におきましては大幅な増となっておるところでございます。

 本法案におきまして、厚生労働大臣が定める国立健康危機管理研究機構の中期目標には、感染症の発生及び蔓延に備えるための体制整備に関する事項を掲げ、研究成果の最大化に関する事項を定めた上で、業務効率化等の一般的事項について定めることとしており、これに基づき、機構が人員、予算の計画を含めた中期計画を作成することとなります。

 法案が成立すれば、施行に向けまして、機構に求められる、平時から政府に質の高い科学的知見を提供する役割や、有事におきまして政府と一体的に感染症対策を担う役割を全うすることができるよう、厚生労働大臣が中期目標を、機構が中期計画を検討し、必要な人員、予算等を確保してまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 必要な人員、予算を確保するとおっしゃるんですけれども、その確保の中身が語られないわけですよね、抽象的なことばかり掲げられて。現に、今まで法人化された様々なところでは、運営費交付金が削減されてきた。あるいは感染研についても、国立でありながら削減されてきた。いや、そういうことはもう今後一切ないんですと言うんだったら、そう言ってもらえばいいんですよ。それを一切言わずに今後の検討課題だということを言うから、不安が広がっていくわけです。

 資料の六ページ目を御覧いただきたいと思いますけれども、日本版CDCと今回法律で通称を言われているわけですけれども、感染研は、感染症については、アメリカのCDC、NIH、FDAにまたがる機能を担っているわけであります。例えば、国立の研究機関として、大学などでは研究者がいない希少感染症も含めて、感染症法で届出が必要な全ての感染症の研究を行っております。あるいは、民間の検査会社や地方衛生研究所では行えない、メジャーでない感染症も含めた検査業務も担っているということになっているわけですね。

 感染症の研究、検査という点では最後のとりでの役割を果たしているのが感染研です。仮に、効率化の名の下で切り捨てられる希少感染症があれば、それにかかった国民の命にとって重大な事態になるわけです。

 これらの希少感染症等の研究の継続というのは、法律上、どう担保されるんでしょうか。これも中期目標で左右されるということになるんでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立感染症研究所は、現在も、例えばエボラウイルスやジカウイルス、その他国内での発生がまれな感染症を含めた様々な感染症に対応できるよう、研究や検査などを研究所の予算や厚生労働科学研究費等において実施してきたところでございます。

 本法案では、国立健康危機管理研究機構が国立感染症研究所の業務を確実に引き継いで実施するため、機構法に必要な規定を置いておりまして、こうした感染研以外では実施が困難な事業も着実に実施していくこととしております。

 法案が成立すれば、中期目標の策定等を進めることになりますけれども、機構に求められる役割を確実に果たすことができるように、しっかりと検討をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 これはもう本当に、希少感染症も含めてしっかりとした体制を取っていただきたいと思うんですね。現状でも、感染研で希少感染症の専門家が退職しても、当該分野の専門家が補充されずに、関連する分野を専門とする研究者がフォローするということも現状でも広く起きているんですよ。それが、新しい体制になって、業務運営の効率化だとなったときに、本当に専任の研究者がしっかり配置されるのか、大変大きな懸念があります。

 さらに、現状の感染研でいいますと、国立研究機関として負っている任務からいいますと、国からの研究予算というのは全く足りない状況にあります。

 基盤的研究費というのがありますけれども、今年度の予算でいえば一億弱であります。これは人頭割で、それぞれの部に下りていくそうですけれども、ある部の方にお伺いしますと、一人四十万円掛ける二十人で八百万円来るけれども、共有しているコピー機や部長の秘書の給与などになって、この基盤的研究費で個人の研究で必要な試薬を買うなど、こういうことにはほとんど回ってこない状況にあるわけですね。ほぼゼロだと言っています。

 では、どうやって皆さん研究しているのかと聞きましたら、自ら競争的研究費を獲得するしかない、しかし競争的研究費は取れない場合もある、とりわけ希少感染症などは競争的研究費が取りにくい、その場合は競争的研究費を取った研究者から融通してもらうなどしなければ自らが責任を負っている分野の研究はできない、こういうことになっているというお話を聞きました。

 資料の五ページのところですか、労働組合の皆さんのアンケートも載せておきました。基盤的研究費を増やしてほしいという切実な声が上がっております。七七・五%の人が増やしてほしいと。百万円でも二百万円でも、あれば本当に助かるんだということで、声を上げていらっしゃるわけですね。

 ちょっと大臣の認識もお伺いしたいと思いますけれども、感染症法に基づいてやるべき研究が競争的研究費頼みになっていて、基盤的研究費は全く足りない、こういう認識、大臣はお持ちでしょうか。

加藤国務大臣 国立感染研究所では、感染症に関する情報収集、解析及び基礎研究、また感染症危機時における検査対応や疫学調査などを行っており、これらの研究業務を遂行するために必要な予算は措置してきたところであります。

 御指摘の基盤的研究費でありますけれども、特に特定の研究目的に縛られない研究費ということでありますが、これについては、例年、一定の水準の予算額を確保しておるというところであります。

 国立感染症研究所の研究予算全体としては、新型コロナを踏まえ、令和三年度に大幅に増額するなど必要な予算を確保してきたところであり、同研究所全体として、研究費が不足したり、その結果、研究の遂行に支障が生じる状況ではないというふうに認識をしているところでございます。

宮本(徹)委員 その答弁を聞いたら、現場の研究者の皆さんは、本当に大臣は現場を知らないとお思いになると思いますよ。

 ワクチンの国家検定も、予算は前年度実績でしか来ないので、ワクチンの多い年は国の予算だけでは足りずいろいろ融通している、こういう話も聞きました。

 コロナパンデミックで感染研の人員と予算は確かに増えました。しかし、資料の六ページ目の感染研の全体の図を載せているのを見ていただければ分かりますように、数字が入っているところが増えた人数ということになっていますけれども、増えた人数の大半は、疫学関係、危機管理関係のところが増えているわけですね。基礎的な研究のところの人の配置はほとんど増えていない。

 そして、研究費は増えたといっても、全体の、電気代始めそうした運営費に充てられていて、個々の研究者の基盤的研究費は全く足りない。減り続けているわけですよ、この基盤的研究費は。ですから、この間、電気代が払えない事態が生じて、節電のためにディープフリーザーを停止した、こんなことも感染研では起きているわけですよね。

 その一方で、研究に必要な試薬は高騰している。十年で二倍以上に値上がりしているものも少なくないという実態にあるわけですよ。逆に言えば、十年前の半分しか、同じ予算でも試薬は買えない状況がある。

 私、大臣の先ほどの答弁を聞いて本当に思ったんですけれども、是非、現場の研究者から直接、大臣、状況をお伺いした方がいいと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 例えば、基盤研究費が不足する際には、他の研究費の残余を充当するということも可能であり、実際そういったこともやりくりしながら、感染研における研究の遂行に支障が生じないよう対応しているというふうにお聞きをしているところでございます。

 引き続き、現場の状況はしっかり把握しながら対応していきたいと考えています。

宮本(徹)委員 その足りているという認識は、本当に、現場の皆さんからしたら、大変がっかりな認識だと思われると思います。全く足りません。それで本当に今ので足りるという認識でいたら、これから皆さんがつくろうとしているこの新しい法人というのはどんなものになるのか、大変心配な状況にますますなります。

 更にお伺いしますけれども、希少感染症も含めて、感染症危機対応のためには、平時は役に立たないように見えてもしっかり人員を配置する、このことが必要不可欠であります。効率化を求めて人や研究費を減らしたならば、危機時の対応能力が下がってしまう。この点は大変自明なことだと思います。

 そこで、次に、資料の七ページ目のところに毎日新聞の記事を載せておきました。科学論文全体で見ると、デジタルサイエンス社の調査で、日本は世界の五位ということになっておりますけれども、感染症の研究論文で見ると十二位なんですね。ここには日本の感染症研究予算の少なさが反映している、こういう自覚は、大臣、お持ちでしょうか。

加藤国務大臣 我が国の感染症に関する研究開発について課題があることは承知をしておりますが、それに関しては、疫学研究、臨床研究等で医療情報を利活用するための枠組みが不十分であったこと、情報や試料を研究者が入手できなかったこと、平素の疫学研究や臨床研究の体制が整備されていなかったことなどの課題が示されているところでございます。

 こうした課題に対しては、令和三年度より、国立国際医療研究センターと国立感染症研究所において、協力医療機関から臨床情報、検体を収集、病原体や人のゲノム情報の解析、利活用を希望する国内の大学を含めた研究機関、企業等の研究者へのデータの提供をするための新興・再興感染症データバンク事業、いわゆるREBIND、こうしたことも実施をしているところでございます。

 また、この法案によって、機構においては、基礎研究と臨床研究の一体的な実施を可能とし、また、国内外の研究機関等による治験等のネットワークを構築して、ワクチン等の開発に対する貢献も期待をされているところでございます。

 さらに、研究費のお話がありましたが、研究費については、新型コロナを含めた新興・再興感染症研究に対して、厚生労働科学研究、またAMEDの事業を通じて、令和二年度から令和四年度までの三か年で少なくとも約四百二十五億円の予算措置をしてきたところでありますし、また、ワクチン開発・生産体制強化戦略に基づいて予算措置も行っているところでございます。

 特に、AMEDに設置されたSCARDAにおいて感染症ワクチンの中長期的な研究開発を推進するため、国内企業やアカデミアへの戦略的な研究費の配分も行っているところでございます。

 厚労省としては、この法案が成立し施行されれば、機構を中核として関係省庁が連携しながら、必要な予算を確保して、厚生労働科学研究、またAMEDの事業なども通じまして、感染症研究をしっかり進めていきたいというふうに思っています。

宮本(徹)委員 その中心になる感染研の予算は、先ほど、増やしたというお話をしましたけれども、今年度の予算は九十二億円ですよね。例えば、平成二十一年度の当初予算でいうと、九十八億円ですよ。コロナを経ても、ちょっと前の予算と比べても、それよりも少ないというのが現状なんですよね。

 それで、今回、NCGMとの統合ということになるわけですけれども、NCGMは、事業会計を見ますと、コロナパンデミック以前は、二〇一九年度までは、研究事業、研修事業は損益がマイナスで、診療事業による収益がその二つを支える構造に大体なっているわけですよね。

 そうすると、国は余り予算を出していない、感染研も出していない。感染研とNCGMが統合して、感染研が担ってきた研究の部分まで診療事業の収益で支えるということになったら、これはもう到底無理な話だと思います。これは本当に国自身が抜本的に予算を拡充するしかないと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 現在の国立感染症研究所では、必要な研究費を予算計上し研究を実施するとともに、同研究所の目的に合致するような外部の競争的資金も積極的に獲得して研究が実施されているものと承知をしております。

 また、国立国際医療研究センターにおいては、独立法人となった平成二十二年度以降、教育研修事業は全て赤字である一方、研究事業及び診療事業に関しては年度によって黒字、赤字と異なるため、必ずしも、今御指摘があったように、診療事業の収益が研究事業及び教育研修事業を支える構造となっていないというふうに認識をしているところであります。

 その上で、国立健康危機管理機構に求められる、平時から政府に質の高い科学的知見を提供する役割、あるいは有事において政府と一体的に感染症対策を担う役割、また、これまで継続して実施することとされている役割、これを全うすることができるよう、各事業の性質などに応じて機構全体として必要な予算などを確保できるように努力をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 資料の三ページにNCGMの運営費交付金、経常収益、経常費用を載せていますけれども、研究事業についてもほとんどの年が赤字で、収益が上回っている年は少ないわけですよね。これはしっかりと見ておいていただきたいと思います。

 その上で、感染研は、ワクチン、血液製剤の国家検定、レファレンス業務、実地疫学調査などなどを行っております。今回、業務の運営の効率化というのが法律で定められるわけですけれども、こうした分野で効率化を求めるということになったら、必要な業務ができなくなり、国民の命を守れなくなる、こうなっていくと思います。

 これらの事業の効率化まで求めていくのか、あるいは、現在感染研が担っている業務の中で、効率化や予算削減を求めないと決めている業務があるのか、この点をお伺いしたいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構は、御指摘いただきました業務を含めた、いわゆる感染研が行う様々な事業を引き継ぐこととしておりまして、本法案におきましては、国立健康危機管理研究機構法に必要な規定を置いているところでございます。こうした事業は確実に実施されなければならないと考えております。

 他方、機構は国民の税金も充てて運営されている法人となる以上は、限られた資源の中で予算配分や人員配分が適切に行われることが重要でございます。全体の予算額、人員数等、業務運営の効率化は必ずしもトレードオフの関係ではありませんし、両方を目指しながら検討を進めてまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、機構に求められる役割を確実に果たすことができるよう、令和七年度以降の創設に向けてしっかり取り組んでまいりたいと考えています。

宮本(徹)委員 その答弁も大変不安になりますね。トレードオフじゃないということを言いますけれども、やはり効率化を求めてお金を削っていったら、当然、必要な業務、必要な人的体制に影響が出るわけですよ。ここはもう、絶対そこは予算は減らさないんですということをここでやはり言ってもらわなきゃ困ると思うんですね。

 ちょっと角度を変えます。

 法人化後、感染研が行う国家検定について、PMDAに順次移していく、こういう検討が進んでおります。日本も含めて、ワクチンなど同じものを製造するのが化学合成品より格段に難しい生物学的製剤を製造する国では、ロット毎の国家による試験検査を経て出荷を認める制度を維持しております。

 試験検査能力のないPMDAに国家検定業務を移管して、必要ならば試験による検査は外部委託となれば、試験の軽視が進むことになりかねないと思います。これでは国民の安心、安全は後退するんじゃないでしょうか。

八神政府参考人 ワクチンの国家検定についてお尋ねをいただきました。お答え申し上げます。

 ワクチンなど高度な製造技術や品質管理が必要な医薬品等につきましては、出荷する際に、企業の自家試験だけでなく、国立感染症研究所による国家検定を実施し、その品質、有効性、安全性の確認を行ってまいりました。

 その検定の手法には実地試験と書面審査があり、ワクチンの国家検定の多くは実地試験を実施してまいりましたが、近年、医薬品メーカーの品質管理、試験技術が大幅に向上しており、国の機関により重ねて実地試験を実施せずとも、品質の確認、確保ができるようになってきております。

 また、ワクチンの国家検定に関して、WHOのガイドラインがございます。ロットごとに製造工程と品質管理試験の記録を書面で確認をし、評価するということが推奨され、必ずしも実地試験を行うことを求めていないなど、国際的にも、検定の実施方法が実地試験から書面でのデータの評価を重視したものに合理化が図られてきており、実際に米国等では、全ロットでの実地試験を実施していない。

 こうした我が国の医薬品メーカーの状況ですとか国際的な動向を踏まえまして、国立健康危機管理研究機構の発足後において、機構が書面で審査できると評価した製品の国家検定から順次PMDAに移管をするという予定としてございます。

 ただし、引き続き、実地試験等必要な製品、あるいは製品の品質や安全性が疑われる場合には、PMDAへの移管後も実地試験部分を国立健康危機管理研究機構に委託をして実施をする予定であり、引き続き、ワクチンの安全性確保について重層的な確認ができる体制を確保するということといたしております。

宮本(徹)委員 必要なものは実地試験をやるというわけですけれども、私が聞いたのは、実地試験が外部委託となったら、これは試験の軽視になっていくんじゃないのか。実際、実地試験で問題があるということではじかれたロットもあるわけですから、ここは国民の安全、安心が非常に関わる問題だと申し上げておきたいと思います。

 加えて、感染研で実施されております書類審査には、ワクチンの試験担当者としての専門性が生かされております。これまでは、書類審査と実際の試験結果を踏まえて、実際に両方に関与した研究者が慎重に判断してまいりました。専門性の知見を生かして検査結果の動向の分析等を審査方法や検査法の改良に役立ててきた有機的なつながりを断ち切ることになりかねない懸念があります。

 実際に試験を実施しているからこそ深い審査ができるという面があると思いますけれども、PMDAに移管後は、この専門性が生かせなくなり、これは、ワクチンの安全、安心を守る体制としては後退することになるんじゃありませんか。

八神政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省では、従来から、効率的な国家検定業務の在り方につきまして、国立感染症研究所とも連携をしつつ検討を進め、これまで実地試験を行ってきた品目についても、国立感染症研究所により書面のみで審査が可能と評価できたものについては、書面審査への移行を進めてまいりました。

 国立健康危機管理研究機構設立後は、書面でできると評価した製品の検定から順次、製品の審査、安全対策を一貫して実施できるPMDAに移管することとしております。

 これによりまして、PMDAにおいても医薬品の製造プロセスの調査や品質審査を担っていることから、国立感染症研究所と同様に十分な専門性を有しており、その専門性を生かしてPMDAが書面審査を担うことができる。

 一方、機構では、検定業務に時間を割かれることなく、ワクチン、治療薬の研究開発などのより専門性の高い業務に専念できるということで、安全性、品質の確保と迅速性、効率性の徹底を図りつつ、ワクチン産業の負担軽減、競争力向上等にも資すると考えております。

 引き続き、PMDAにおける検定実施体制の整備を進めるとともに、国立感染症研究所においては、書面のみで審査が可能である品目の評価を着実に進めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 試験を実地にやっている人がやらなくても同様に審査ができるというのは、これは今の研究者の皆さんが聞いたら大変侮辱的な発言にも聞こえるんじゃないかなと思いますね。

 従来、国家検定の基準や試験の方法は、感染研が申請者と協議をして決めてまいりました。感染研が専門的な蓄積を有してきたからであります。感染研には試験法の開発や改良の研究を行う研究者がおり、その研究者が実際に検定を行っております。PMDAが基準作り、感染研が委託されて試験と分けることで、日本の品質管理の水準が下がっていくことになるのではないか、大変懸念しております。

 さらに、感染研は、資料をお配りしておりますけれども、WHOの協力センターとしても、この面でも大きな役割も果たしておりますし、ワクチンの国際共同治験への参画もしております。

 国家検定の試験が単なる委託試験となった場合、ワクチン等の品質管理、研究者としてのモチベーションを維持することや、人材の確保、養成も困難となるのではないかという懸念の声も出ております。

 この面からも、安心、安全を守る体制の後退につながるんじゃありませんか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 現行ワクチン等の国家検定に当たりましては、厚生労働省が国立感染症研究所の意見を聞きつつ、審議会での審議を経て作成している生物学的製剤基準を基準に実施しているところでございまして、感染症対策の専門機関である国立健康危機管理研究機構が創設された後もこの体制は維持することとしております。

 また、検定業務の移管後は、医薬品の製造プロセスの調査や品質審査を担っているPMDAがその専門性を生かして書面審査を担うこととなっているため、ワクチン等の品質管理の質が低下することはないと考えておるところでございます。

 また、人材確保の面の御指摘もございましたけれども、ワクチン等の検定がPMDAから機構に対して委託試験となった場合でも、業務の内容には変わりはないことから、機構においてしっかりと職員の確保、養成を行ってまいりたいと考えております。

 また、機構における具体的な職員の採用、教育訓練やキャリアパスの描き方を含めた人材確保戦略につきましても、国会での御審議、両機関の関係者や有識者の御意見等も踏まえながら、ワクチンの国家検定制度の見直しの状況も見ながら検討してまいりたいと考えています。

 将来的には、検定業務のPMDAへの移管によりまして、機構では、定期的な検定業務に時間を割かれることではなく、ワクチン、治療薬の研究開発等により専門性の高い業務に専念できることを期待しているところでございます。

宮本(徹)委員 よく現場の研究者の意見を聞いていただきたいと思うんですね。ウイルス学者だからこそ、そしてまた実地の試験もやっているからこそ深い審査ができるんだというお話も伺っております。

 こうした話がどこから出てきたのかというと、資料を最後に見ていただきたいですけれども、十ページ、十一ページ目の、自民党の小委員会が、ワクチン産業の負担軽減、そのためにこの試験をPMDAに移管しよう、こういう話が出てきたわけですよね。製薬産業政治連盟からは、加藤大臣も、勉強会のパーティー券なんかも毎年のように買ってもらっていると思いますよ。ぱっと見たら百万円ぐらい買ってもらっていますよね。そういう業界の皆さんの要望を受けて、ワクチン産業の負担軽減、こういう角度から物事が考えられて、ワクチンの安全、安心の体制が後退する、こういうことがあっては決してならない、このことを強く申し上げまして、時間になりましたので質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文です。

 今日、ラストバッターでまた質問したいと思いますが、まず冒頭に、内閣感染症危機管理統括庁と今回の法案ででき上がる国立健康危機管理研究機構、いわゆる私は岸田版CDCと言っていますけれども、そのCDCとの連携についてお尋ねしたいと思います。

 この間の議論の中でも、例えば米国のCDCとこの新しくでき上がるCDCの違いについて、私は一番考えていますのは、意識しているのは、政策立案が米国CDCにはあるんだけれども、このCDCにはない。

 そこでちょっと、これは分かりやすい観点から質問したいと思いますけれども、例えば、今、農林水産省所管ですけれども、鳥インフルエンザがはやっています。もしこれが本格的に人から人への感染を引き起こすようなウイルスに変異したときに、この科学的知見を単独で新しくでき上がるCDCが研究に臨めますか。大臣、いかがでしょうか。これは質問通告はしていませんが、もしあれでしたら政府参考人。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 今般できます国立健康危機管理機構、これは国立感染症研究所、それと国立国際医療研究センターの統合で発足するものでございますけれども、実は感染症研究は、議員御指摘のとおりで、必ずしも人だけではありません。人畜共通感染症というものが世の中にたくさんあるわけです。

 それについては、現在の国立感染症研究所でも研究等は行っておりますけれども、例えば鳥インフルエンザでの事例が出されましたが、そういったものに関しましては農水省のいわゆる農研機構の方でも対応していますし、広く言えば国内の各大学、世界の各大学、こうしたところでも研究等を行っておるところでございます。そうしたところの情報なども集めまして、本機構がしっかり感染症に対する科学的知見を提出できるようにこれから努めてまいりたいと考えているところでございます。

仁木委員 再問になりますが、ということは、結論ですけれども、この新しいCDCの中で、先ほど申し上げたような新型というか鳥インフルエンザに対する感染症の知見をつくるための研究を独自に人とお金を使ってできる、そういう御答弁でよろしいでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 議員が御指摘の新型インフルエンザ、鳥インフルエンザの例えばHnNnという意味では、どちらで合っているかはちょっと定かではないんですけれども、いずれにしましても、新型インフルエンザウイルスの研究も現在感染研でしていますし、人畜共通感染症という意味合いでは関係部局もあります。ですから、必要があればそういったところの部署で研究は行われるものと承知しております。

仁木委員 ですから、必要があればという判断ですね。ある種、これは政治的な判断かもしれないんですけれども、私はこの新しいCDCの中で単独ではちょっと難しいんじゃないかなと。もう少し上の政治的な判断が要るんじゃないかなというふうに思うわけです。

 ですから、例えば今、これは次の質問にも該当しますけれども、要は、そういったほかの今農水省の事案も出されましたけれども、新しいCDCと統括庁との連携、これは私は本来は一緒にすべきだ、それが本当の米国CDCだし、日本の私も目指したい日本版CDCであったと思うんですけれども、今、結果的にそうはなっていません。

 そこで、この連携についてこれからどのように強化していこうとお考えか。今、私の記憶では、新しい統括庁では医系技官もいますけれども、かなり少ない人数だというふうに伺っていますし、そういった、リアルタイムでどのような研究が新しいCDC、研究機構の中でなされているかということを日々把握するということも、そういった少数の人数で、しかも専門的な知識を要する立場では難しいと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

藤丸副大臣 統括庁が政府全体の見地から、各省庁の一段高い立場で、感染症危機管理を行うに当たって、機構に対して必要な科学的見地を求めます。機構はこれを受けて、平時から迅速に質の高い科学的知見を提供する。これに基づいて、統括庁において政策決定を行う枠組みでございますけれども、統括庁においては、関係省庁から必要な情報を収集するほかに、新型インフルエンザ等対策推進会議において、感染症の専門家のみならず幅広い分野の専門家の意見を聴取することなど、様々な知見を総合して考慮して対策を講じるということにしております。

仁木委員 そうですね、先ほど藤丸先生の方から御答弁あったように、統括庁がやはりそういった情報収集、そして司令塔になって、また発信していくという立場だと思います。

 具体的には、例えば子供のマスクですね、長期の着用でいろいろな、健全な発育に影響があるんじゃないかという議論もありましたが、実際にそれが検証はされていません、実証もされていません。しかし、そういったこともやはり考えていかなければいけない、そういうふうに私は思うわけでございます。

 例えば、今、ワクチンのこともこの前の議論で出ておりましたけれども、子供にワクチンを打つべきかどうか。これは、新しく出てくる病原体、あるいは感染症に対する、いわゆる感染症の感染力であるとか、あるいはウイルスの持っている病原性であるとか、それが年齢に対してどのような影響、インパクトを及ぼすかということによって、有効性と副反応を考えて子供に打つべきかどうか。それを新しい統括庁の下で、あるいは、場合によっては岸田版CDCの下で、リスクコミュニケーションを行いながら国民に発信していくという、そういう一連の作業があるわけだと思います。

 ちょっと、今、藤丸先生も来ていただいていますので、質問ですけれども、リスクコミュニケーションもこの間非常に大切だということが分かりました。新しいCDCででき上がってくる科学的知見に基づいてそれを発信する際にも、例えば、今回のコロナウイルス一連でそうだったように、若い世代は感染するけれども病原性が低い、つまり、分かりやすく言うと感染しても死ぬことはない、しかし、高齢者、基礎疾患のある方はそうじゃない、そういうことですけれども、例えば、前者を強調し過ぎると、若い人がそういった行動変容をしていただけない、高齢者はもちろん遵守するでしょうけれども。そうすると、総じて、社会全体として、これはパンデミックを予防したりパンデミックになっているフェーズですから、やはり問題がある。

 私が申し上げたいのは、リスクコミュニケーションもそうですし、今回のコロナウイルス感染症で学んだことは、国民の行動変容、やはり理解してそれに基づいて行動していただかなければ、なかなか国全体としてコロナという敵に対処できない、そういうことだと思います。その辺に関しまして、どうでしょうか。

藤丸副大臣 感染症対策を効果的かつ迅速的に進めるに当たっては、そういう、今言われたように、国民や事業者の理解や協力を得ることが大前提であります。そのためには、科学的知見を踏まえて、正確な情報を分かりやすく発信することが今言われたように重要なことであります。

 統括庁においては、国立健康危機管理研究機構の科学的知見や、新型インフルエンザ等対策推進会議での議論を皆さんによくお知らせして踏まえつつ、関係省庁と連携して正確かつ分かりやすい情報提供ができるように、指摘されたように、行動科学等の様々な専門家の知見を活用して取り組んでまいります。

仁木委員 そうですね、今、最後におっしゃった行動科学、このビヘービアサイエンスというのは非常に重要だということも分かっていますが、私は、その分野というのは、例えばアメリカとかに比べて我が国は足りないと思います。

 こういう情報を得たら、それぞれの年代別の背景とか、職業的な背景とか、アメリカの場合でしたら民族の背景によって、アウトプットの行動が違ってきます。それは、感染した場合の、いわゆる病気、あるいは症状の出方もあるわけでございますけれども、そういった行動科学、ビヘービアサイエンスというのもどこかでやはり考えていかなければいけないと思いますし、大臣、この分野というのは、新しいCDCの研究対象に加えるべきだと思います。これは出していませんが、どうでしょうか。

加藤国務大臣 今回の国立健康危機管理研究機構、基本、感染症に対する科学的知見を提供するということでございますから、その上において、例えばデジタルを活用するとか、そういったところも取り入れているわけでありますので、委員のおっしゃる、その全部の分野を抱えるかとは、多分そうはならないと思いますけれども、そうしたことをするに当たって、必要があればそういった視点も取り入れながら、科学的知見を深めていただくことになるんだろうと思います。

仁木委員 ですから、人が対象である以上は、やはりこのビヘービアサイエンス、行動科学というものを、今回のこのCDCの研究分野に一つ加えていただきたいということを要望したいと思います。

 それで、大臣、でき上がったCDCが、例えば、今回、はしかの流行というのが、特にはしかのウイルスを接種していない世代に応じて増えているということもあるし、大臣がそのことに対するリスクコミュニケーションに準じた発信を国民に対して先般されておりました。今回、こういったケースは、例えばこの研究対象になりますか。

 いわゆる、新しく、はしかというのもRNAウイルスですから変異するかもしれない、あるいは集団免疫を保つという意味で打った方がいいかもしれない、ワクチンを。そういったことを踏まえて、大臣、新しくでき上がったCDCの中で、今回のような、風疹もそうでございますけれども、そういった、はしかがまた蔓延したときの、研究対象にはなりますよね。確認のために聞いています。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省といたしましては、例えばコロナに関して言えば、アドバイザリーボードのリスクコミュニケーションの専門家が参画していただいて、御意見をいただいたりしていますし、私ども行政の中でも、常日頃からリスクコミュニケーションの専門家等の御意見をいただきながら、例えば厚労省ホームページ、SNS、テレビCMなども活用して、国民の皆様へ情報提供を与えております。

 今回の麻疹の件ですが、まさに御指摘のとおりでありまして、従前だったらば、ポスターだとかホームページでの情報発信なんですけれども、厚労省ツイッターでかなりやっています。今回かなり情報を出しています。

 ですから、そういった新しい情報ツールの活用をしながら、分かりやすく情報発信していくことが必要であると考えております。引き続き、分かりやすい効果的な情報発信ができるよう、工夫をしてまいりたいと考えています。

仁木委員 今の御答弁でしたら、新しいCDCでもやるけれども、厚労省でも既にやっているからという意味で、それが両方パラレルであるから大丈夫みたいな答弁でございましたけれども、そういうのじゃなくて、やはり、どちらか、ある程度、今回の感染症という分野においては日本をリードする、そういう組織ができ上がるわけでございますので、そういったところを、こちらの方を重点を置いていただきたいというふうに思います。

 その上で、これは通告していることですけれども、今回アメリカのCDCと違うところは、NCGMに象徴されますように、入院して、そういった患者さんを治療する場所があるということです。私は、この病院というか、そこの医療機関は、特殊なところであるべきだというふうに思っております。

 ただ、やはり今、行革ということに象徴されますように、人員だけ配置する、あるいはハード面だけ置いておいてコストだけ垂れ流しとなると、また国民の批判に遭うかもしれません。

 しかし、今のこの状態では大丈夫かもしれませんが、これは後で質問する人材確保とも併せますけれども、特に、今、平時のときに、この新しいCDC、いわゆる昔からのNCGMでの入院されている患者さんが、例えば海外ではやってきたものが水際をくぐり抜けて国内に入ってきて、患者さんが出ました、そういう患者さんをまず最初に治療するのがここだという位置づけだと思うんですね。そうすると、その方々がどんどん、その新規感染者がどんどん増えてくると、入院している患者さんは退院するということもオプトインした形で理解してもらってというのも一つの選択肢だと思いますが、その辺、日本の今の医療制度、皆保険制度を含めて、可能ですか。それとも、どういうプランをお持ちでしょうか。

 それと、済みません、藤丸副大臣、ありがとうございました。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、感染症有事の際、大体水際対策のところから感染者が増えていくと考えますと、この機構の入院機能で当面は承っていく。もちろん、その中で感染症の本質が分かってくれば、場合によっては、この機構の、いわゆる今のNCGMの中で一定程度の感染者数、患者さんの数を賄われなきゃいけなくなる。その際に、入院機能の中で、関係の近隣の医療機関との連携を構築しておりますので、他院で受け入れてもらえるような患者様がいらっしゃれば、その方々に他院に行っていただき、病床を空けるなどの手配を今後考えていくということで検討を進めているところでございます。

仁木委員 私が懸念していることはまだ完全に方針は固まっていないんだけれども、要は、新規感染者が増えてきて病床がいっぱいになったりするようなことになることが喫緊に予想されるのであるならば、近隣の医療機関に受け入れていただく、退院をしていただいて、納得していただいて他の医療機関で診てもらうということでよろしいですね。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 想定している感染症は様々なので、例えばエボラみたいなものであれば、いきなりたくさんの感染者が出るとは思っていませんから、それは多分、今のNCGM、引き継いだ機構で対応できると思うんですけれども、コロナみたいなパンデミックタイプのたくさん感染者が出るようなものにつきましては、今議員から御指摘のとおりで、近隣の医療機関の協力を得ながら役割分担の中で対応できるように、今後しっかりまとめていきたいというふうに考えております。

仁木委員 私が申し上げているのは、これは名前にあるように、今回でき上がるのは国立健康危機管理研究機構、その中の医療機関ですから、やはり国民にも、その病院が、医療機関が特殊なものであるということもある種位置づけることも重要だと思っています。

 その上で、後の質問にもつながるんですけれども、新しい治療法とかあるいはワクチン開発という話もこの間出ていますけれども、そこで入院した人の医学的な、いわゆる治療の履歴ですね、データ、血液検査のデータでありますとか画像検査、これの経時的な変化。経時的というのは、どういう治療を開始して、どの段階、デー3とかデー7にどうなったかとか、そういったことを客観的に、匿名加工した上でデータベース化して、それでエビデンスにしていく、この治療が新しい感染症のこのステージにはいいのかどうかということを検証していく、そういうふうな機関だと位置づけております。

 その辺に関して、患者さんの、こういった自分の情報が、匿名加工というのはもちろん当然だと思いますけれども、これから他の国民、感染した人のワクチン開発とか治療法の開発のために使われるんだ、そういうことも踏まえたような形の、入院以前の了解等々も取れるような形が私は望ましいと思いますが、その辺に対してのお考えがありましたら、どうぞ。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 感染症医療におきましても、患者様への説明と同意、これは非常に重要なものと考えているところでございます。そうした説明と同意の中で確認が取れるのならば、患者様のデータを用いて、新たな感染症対策のために役立てるということは、十分に対応できるものと考えています。

仁木委員 考えているということは、まだそこまで具体的な形はないということでございますけれども、私は、やはり新しい機関は、国民の方々にも理解してもらった上で、特殊なそういう医療機関であるということの認識が必要だと思うんですね。

 場合によっては、もう全く感染症がなくても、ゼロで、ベッドでという形も極論だとあり得るんですよ。そういう環境において、例えば、医者の給料、看護師の給料とかがほかの病院と変わらないのに、やることがないのにそこにいるとか、そういうふうに思われる医者ばかり集まったら、例えば、そこからいい人材が集まらないとか、そういうようなことにもなるかもしれませんが、それくらい危機管理をしていくような医療機関であるべきだという、そういう認識の新しい組織であるということを私は強調したいと思います。

 それはこれからいろいろな、臨機応変にやっていくんでしょうけれども、少なくとも、先ほど答弁の中にあった、患者さんに対する、入退院のこと、そして自分のデータのことも含めて、それは今後の感染症対策のために使っていただけるような、そういう病院、医療機関であるということを改めてお願いしたいと思います。

 次に、新しい薬、いわゆる創薬とか医療機器のことについてお聞きしたいと思います。

 それ以前の、治療法のことなんですけれども、一旦、入院患者さんに関して、ほかの医療機関でも行われますけれども、新規の、新しい未曽有の感染、ウイルスが多いと思いますけれども、起こってきたときに、なかなか治療薬もありません、ワクチンもすぐにはできません。そうすると、上市されている、既に使われている例えばお薬を使って、それで治療していくということ、この間議論があったと思います。インフルエンザに使われるアビガンとか、あるいは寄生虫に使われたイベルメクチンとか、そういう議論がこの国会でもあったと思います。

 そういったことの、他の疾病に使われているものを新型の、新しい感染症の感染者に対して使っていくということも大切だと思いますけれども、そういった先進的な治療、この環境も行っていく、新しいこの組織の医療機関が行っていく、そういう認識でよろしいでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 新規の、例えば新興感染症の例だと思いますけれども、確かに、ワクチンも治療薬もないような感染症に対してどう挑むかというところだと思います。

 こうした新しい感染症の治療というのにどう取り組んでいくかという、臨床研究的な側面は大変重要なことでございますので、そうした科学的な根拠を出せるために、この新機構、機構を創設したいというふうに考えております。

 具体的には令和七年度以降になりますけれども、どのようなことが準備段階で必要か、検討を進めていきたいと思います。

仁木委員 大臣に御質問します。

 今回、新しくでき上がる組織、法人格は特殊法人ということでございまして、これにした理由というのもこの間質問があったと思いますけれども、私が途中述べましたのは、ここで働く人材は、やはり、崇高なミッションというか、高い志と、そしてまた国民を感染症、新規の感染症から守っていくんだという、そういうふうな強い気持ちも必要だと思います。

 具体的に、処遇について、そしてまた、さっき私が、特に医療従事者に関しましては、場合によっては患者さんがいない状況でも、研究とかあるいはいろいろな連携のための仕事をしていくということでございました。その辺に関しまして、何かNCGMの今の状況と違うことがありましたら、加藤大臣、おっしゃっていただきたいと思います。

加藤国務大臣 まず、その前に、先ほど治療データの話がちょっとありましたけれども、国立国際医療研究センターと同様に、この機構においても、いわゆる個人情報保護法の適用、これはしっかり受けた中で適切に対応するということ、これは変わらないということでございます。

 それから、人材でありますけれども、今回、こういう特殊法人の形態を取るというのも、一つは、有為な人材を海外からも獲得をしていく、そのためにこうした規定を置かせていただいているところでございます。またさらに、特殊法人とするということによって、国家公務員では時間が規制、規定されているわけですから、なかなか兼業もできない。しかし、特殊法人化することによって、そういったことも柔軟に対応できる。こうしたことを一つのいわば武器として、有為な人材をしっかりと獲得していきたいというふうに考えています。

 ただ、いずれにしても、令和七年度以降の創設ということになりますから、具体的な内容については、そこに向けてしっかりと詰めていきたいというふうに考えているところでございます。

仁木委員 大臣も先ほどちょっと少し言われかけましたけれども、アメリカの組織とかを見ていますと、やはり海外からいろいろな人材が、優秀な人材が来て、研究、あるいは実際に医療的な仕事をするということも現場として起こっています。ですから、この今回の新しい組織においても、もう少し海外の人材にも門戸を開けて、まあ今、これは日本のアカデミア全体で問題になっていることでもありますけれども、そのことも、大臣、改めて確認したいと思います。よろしくお願いします。

加藤国務大臣 まさに、国際的に卓越した能力を有する人材を確保する、こうした必要性も考えて今回そうした規定も設けておりますし、あえて特殊法人という形態も取っている理由の一つでもありますから、しっかり国内、あるいは今いる人だけではなくて、やはり新しい組織になるわけでありますから、そこに様々な新しい血を内外からも入っていただいて、そこの機構に期待される役割がしっかりと担っていけるよう、そうした体制を組んでいきたいというふうに考えています。

仁木委員 最後になりますが、医療DXの推進という中で、今回、新型コロナウイルス感染症における現場においては、保健所への感染者の報告に関しまして、HER―SYSというものも使われていました。今日デジタル庁の人はお呼びしておりませんが、そこでの情報が、入力する情報の割には活用が余りにも少ない。

 これは、かなり患者さんの情報が入っています。年齢とか、あるいはワクチン接種をいつしたかとかですね。そういったことも、今回この法案において地方衛生研究所等々が連携して行うわけでございまして、これも個人情報保護法等々ありますけれども、やはり様々な事態があったと思います。地域によっての違い、年齢別によっての違い、ワクチンを打っているか打っていないかによっての違い、あったと思います。

 そういったことを基にして、これが科学的知見になって、それで、統括庁を経由して政策という形で形になっていくわけでございますので、この辺の連携、しっかりできるように、今と違うような体制づくりもしていかなきゃいけないと思いますけれども、大臣、これは特に、地方衛生研究所の方とこのHER―SYS的なことはこれからまずやっていくとは思うんですけれども、この辺の連携ですね。

 特に私が思うのは、保健所もそうですし地方衛生研究所もそうですけれども、平時のときから、ほかの一般の医療機関、特に二次救急以上で感染症の患者さんが出た場合に治療するような、患者さんが行くような場所になる方々との交流、こういう顔の見える関係というのは非常に重要だと思いますので、この新しい組織の創設に先立って、やはりそういった地域でのソフト面での交流も、単なる、デジタルといいますけれども、つながっているだけよりもやはり顔の見える関係の方がいいと思いますけれども、それに関しまして、これは質問通告していない内容かもしれませんが、大臣、答えられましたら、どうぞ。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構、密接な連携を取るべき地方衛生研究所等ございますけれども、御指摘のとおり保健所も大事なパートナーだと思っております。

 保健所長会や、あるいは地方衛生研究所の関係団体もございます。そういったところに、私どもの方も、研究機構が積極的にアピールをし、情報交換をし、顔の見える関係をしっかり構築していけるように努めてまいりたいと考えている次第です。

仁木委員 このことは、科学的知見ができたときに、いかに政策立案して、それを実行するまでのスピード、期間を短くしますから、非常に私は重要だと思っています。ですから、そういう連携ができていないがために、ワクチンを本当はもっと打たなきゃいけない人が、何かワクチンに対する悪いイメージが広がって打てていない、あるいは、場合によっては、もっと打たなきゃよかったなんていう人が打っているような状況になりますので、正確な国民に対してのリスクコミュニケーションをするために、やはりこういった医療DXを、この今回の法案によって新しい感染症に対する大きな対応をする組織ができ上がるわけですから、やっていっていただきたいというふうに思っています。

 今、HER―SYSのことを出しましたけれども、このデータの検証というのは、大臣、これはデジタル庁の所管ではありますけれども、こういったコロナの三年三か月の検証の中で、こういったHER―SYS等の情報、あるいはそこのデータベースの扱いというのは、どのようにお考えでしょうか、厚労省として。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 機構におけるDXの積極的活用につきましては、先般から答弁しているものでございますが、質問は、多分、HER―SYSの活用ということだと思います。

 このHER―SYSを、今回の新型コロナウイルスのある意味のレガシーになっていると思っていますので、これをよりよい方に改良して、地域との感染症の流行状況の把握等々にしっかり役立てられるよう、そのときにこの機構が中心的な役割を少しでも担えるように努めてまいりたいと考えている次第でございます。

仁木委員 ありがとうございます。

 そういった前向きな形で、大切な国民が大きな犠牲を払って、コロナ禍、やっと五類の方に緩和されたわけでございますけれども、そこで歩んだ履歴がやはり次のステップ、次のステージへと生かされるような環境づくり、そして、そういった次の、これから到来するかもしれない未曽有の感染症に対して、しっかりと組織として国民の命、健康を守るために立ち向かっていけるような、そういうよりよい組織になることを祈念申し上げまして、私の質問としたいと思います。ありがとうございました。

三ッ林委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。中島克仁君。

中島委員 ただいま議題となりました政府提出、国立健康危機管理研究機構法案、国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対して、反対の立場から討論を行います。

 岸田総理は、日本版CDCを創設すると表明をいたしましたが、機構法案で設立される国立健康危機管理研究機構は、米国CDCと比べて、人員や予算の規模、所管分野などの面で見劣りをします。また、機構は、健康危機管理といいながら感染症対策が主眼であり、スリーマイル島事故やハリケーン災害等の健康危機にも対応する米国のCDCの広い業務範囲には及びません。とても日本版CDCと呼べるような組織にはなっておりません。さらに、全国的なパンデミックに対応するサーベイランス能力を備えておりません。

 機構法案による機構の創設の意義について、政府は、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して、調査研究から臨床まで一体的に行うことにより、迅速な対応が可能になると説明をしております。しかし、コロナ禍の十分な総括の基に機構の在り方が検討されたとは言い難く、国産のワクチンや治療薬の開発の出遅れなど、コロナ禍で露呈した課題を解決し得る組織になっているかどうか、十分な確証が得られておりません。

 また、整備法案は、機構が地方衛生研究所等に対して研修等の支援を行うことなどを規定しておりますが、地方衛生研究所等の法的根拠は曖昧なままです。このままでは、感染症対策において重要な役割を担う地方衛生研究所等の体制強化は期待できません。地方衛生研究所等の体制を強化しなければ、実態を十分に把握した感染症対策を実行できません。

 以上のような問題点があるため、二法案には反対いたします。

 立憲民主党は、このまま二法案によって国立健康危機管理研究機構を設立するのではなく、地方衛生研究所を法定化して体制を強化するとともに、大学などとの連携を強化して十分な実態把握によりエビデンスに基づく感染症対策を行えるようにすること、これまでのコロナ対策の実情と課題を徹底的に総括し、真に日本版CDCと呼べる組織となるよう組織の在り方を検討し直すことを提案をいたします。

 感染症などから大切な命と健康を守り抜くことができるようにするため、政府・与党に対し、立憲民主党の提案を実現させるよう強く要請をし、討論を終わります。(拍手)

三ッ林委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党を代表して、国立健康危機管理研究機構法など二法に反対する討論を行います。

 平時から様々な感染症から国民の命を守りながら、次の感染症危機に備えるために感染研やNCGMが担っている研究や人材養成、疫学調査などの体制を抜本的に強化することは極めて重要であります。

 我が党は、コロナパンデミックの前から、感染研の人員、予算が削られ続けていることについて、国民の生命や健康への重大な脅威となると厳しく批判し、定数削減の対象から外し、予算を増やすことを求めてきました。

 ところが、今回の法案は、国立感染研とNCGMを統合し、特殊法人とするものであります。

 本法案では、厚労大臣が定める中期目標の一つに「業務運営の効率化」が掲げられ、機構が定める中期計画でも「業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置」が明記されています。

 法人化されているNCGMでは、教育研修事業は毎年一%の効率化が求められ、事業費が削られる構造になっています。感染研は、希少感染症の研究や検査など、大学や民間検査会社、地方衛生研究所が行わないものも含めて、感染症対策の最後のとりでとなってきました。ワクチン、血液製剤の国家検定、レファレンス業務、実地疫学調査なども行っております。

 業務運営の効率化の対象外となる業務があるのか問いましたけれども、答弁で明示されたものはありませんでした。これからの検討と繰り返されました。さらに、ワクチンの国家検定業務をPMDAに移管することには、研究者からも懸念の声が上がっております。事業の効率化の名で、事業や人、予算を削っていくことになれば、国民の命と健康に関わる事態になります。

 現状でも、研究現場は、基盤研究費が全く足りず、競争的研究資金頼みの研究になっています。基盤研究費を増やしてほしいとの切実な声が、現場からは上がっております。ところが、大臣は、研究費が足りているとの認識を示されました。感染研の研究予算が足りているとの誤った認識の下で新法人の業務運営の効率化を法定化することは、大問題と言わなければなりません。やるべきは、感染研など感染症研究予算を数倍に増やし、研究体制などを抜本的に拡充することであります。

 加えて、政府は、橋本行革のときでも、さらにはその後も、国立感染症研究所は、感染症に係る国の重大な危機管理に直結する業務を行っているため、独立行政法人化しない、直接国の責任において実施することが必要な事務事業としてきました。なぜこの立場を変更するのか、説得力ある説明は全くありません。

 さらに、NCGMは、感染症以外に、糖尿病や難病など様々な研究、医療で重要な役割を果たしております。新法人は、感染症対策といいながら、感染症以外の様々な研究、あるいは看護大学などの事業も抱えることになります。これが果たして日本版CDCなるものなんでしょうか。統合のデメリットもちゃんと検討された経緯も全く示されていないと思います。

 以上、指摘し、反対討論といたします。(拍手)

三ッ林委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、国立健康危機管理研究機構法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ林委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ林委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 次回は、来る十九日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十四分散会


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