衆議院

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第10号 令和6年4月9日(火曜日)

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令和六年四月九日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 新谷 正義君

   理事 大岡 敏孝君 理事 大串 正樹君

   理事 橋本  岳君 理事 三谷 英弘君

   理事 井坂 信彦君 理事 中島 克仁君

   理事 足立 康史君 理事 伊佐 進一君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      上田 英俊君    勝目  康君

      金子 容三君    川崎ひでと君

      塩崎 彰久君    鈴木 英敬君

      田所 嘉徳君    田畑 裕明君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      中谷 真一君    仁木 博文君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      三ッ林裕巳君    柳本  顕君

      山本 左近君    吉田 真次君

      阿部 知子君    大西 健介君

      堤 かなめ君    西村智奈美君

      山井 和則君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      遠藤 良太君    岬  麻紀君

      福重 隆浩君    吉田久美子君

      宮本  徹君    田中  健君

      福島 伸享君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    塩崎 彰久君

   参考人

   (学習院大学経済学部経営学科教授)

   (一橋大学名誉教授)   守島 基博君

   参考人

   (日本労働組合総連合会総合政策推進局長)     冨高 裕子君

   参考人

   (リクルートワークス研究所研究センター研究1グループ長/主任研究員)   大嶋 寧子君

   参考人

   (一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部副本部長)          平田  充君

   参考人

   (全国労働組合総連合副議長)           秋山 正臣君

   厚生労働委員会専門員   森  恭子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――

新谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、学習院大学経済学部経営学科教授、一橋大学名誉教授守島基博君、日本労働組合総連合会総合政策推進局長冨高裕子君、リクルートワークス研究所研究センター研究1グループ長/主任研究員大嶋寧子君、一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部副本部長平田充君、全国労働組合総連合副議長秋山正臣君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず守島参考人にお願いいたします。

守島参考人 皆さん方、おはようございます。学習院大学の守島と申します。

 本日は、雇用保険の一部を改正する法律案に関する私の意見を申させていただきたいと思います。このような機会を与えていただき、誠にありがとうございます。

 まず、総論から入りたいと思います。

 雇用保険制度が雇用に関する総合的機能、総合的なセーフティーネット機能を果たしていることは、皆さん方も御存じのとおりだと思います。端的に言ってしまえば、雇用が失われたときに、新しい雇用に転換できるまでの生活支援をするのが雇用保険の基本的な意義でございます。

 そうなんですけれども、最近少し変わり始めているなというふうに私は感じております。

 一つには、雇用を守るという言葉の意味が少し変わってきたのではないかなと思っています。

 もちろん、これまでは、この言葉の意味は、雇用契約を守るということであり、一人の人間の雇用を続けるということにあったわけですけれども、それについては、もちろんこれからも重要だというふうに私は考えております。

 だけれども、皆さん方御存じのように、現在、いろいろな意味での経済環境の変化であるとか、あと、大きな点としては、ITであるとかAIであるとか、最近いろいろな議論がされていますけれども、技術革新によって仕事の内容が変化する時代に入ってきました。そうなってくると、これまで一人一人の人間が持っていたスキルであるとか培ってきた能力が、役に立たないという言い方はちょっときついかもしれませんけれども、陳腐化するということが起こってきて、新たな仕事のスキルであるとか能力を身につけて、今の雇用契約がなくなったとしても、仮にそこの企業で雇用されなくなったとしても、新たな雇用契約に転換する力を労働者は持たなければならない、そういう時代に入ってきたんだと思います。

 そうなってくると、労働者を守る、若しくは雇用を守るという意味合いが今までとは少し変わってくるのではないかなというふうに思っています。

 結果として、雇用保険にも、単に、雇用がなくなったときにセーフティーネット、生活支援をしていくということだけではなくて、失業若しくは失業の可能性に対して、新たな仕事に支障なく移動できるための新たなスキルであるとか能力を持たせるための支援も重要だというふうに私は考えております。

 最近はやりの言葉で言ってしまうと、いわゆるリスキリングという言葉になってしまうんですけれども、リスキリングという言葉は後でまたお話があるかもしれませんけれども、そういうふうなことに対する、リスキリングに関する支援というのが重要になってくるのではないかなというふうに私は思っています。

 そう考えると、今回の教育訓練給付関係の拡充、まあ今回の雇用保険法の改正の中にいろいろなものが入っておりますけれども、そういうふうな意味でいうと、今回の教育訓練給付関係の拡充というのは正しい方向へ進んでいるのではないかなというふうに私は思っております。

 例えば、給付率の上限アップであるとか、自己都合退職者への支援拡充、それから在職中の労働者の教育支援のための休暇への給付金創設などが、そういう意味では、今回の法改正というのは当てはまってくるのではないかなというふうに思っております。

 もう一つ、一つの大きなポイントとしては、現在の仕組み、まあ労働法制全体ですけれども、仕組みが、比較的、正社員を守る、まあ正社員という言葉は法律的に裏づけられた言葉ではないんですけれども、俗語として使っている言葉をそのまま使用させていただきますと、いわゆる正社員の雇用を守るということに大きな力点があったというふうに思っています。

 日本の労働法制というのは、今申し上げたように、正社員、非正規社員というふうに分けた場合に、正社員に対して比較的厚く、かつ非正規社員に対してはそれほどの保護を与えていなかった、そういうふうなことが実情としてあったのではないかなというふうに思っています。雇用保険も例外ではなくて、二十時間という制限を設けて、短時間労働者、短時間労働者というのは御存じのように非正規労働者の代表選手であるわけですけれども、彼ら、彼女たちの支援というのを制限していたわけです。

 一般論として、例えば、最近いろいろなところで議論されている同一労働同一賃金等があるように、いわゆる非正規社員への格差是正支援というのは、比較的重要な労働政策の一つの大きなポイントではないかなと思っています。

 もう一つ、皆さん方御存じのように、現在、正社員の労働者というのが、全労働力の約四割になっています。したがって、ある意味では非正規という形の言葉でくくってどこかの隅に押しやっていく、そういうことはもうできない状態になっていますので、そういうふうな人間たち、非正規で働いている人たちに対して、安心して働ける環境であるとかセーフティーネットを用意するということは、今後も日本経済全体にとって重要なものではないかなと思っています。

 したがって、今回の、二十時間という制限を十時間にして短時間労働者への支援をするというのは、極めて意味があるのではないかなと思っています。

 もちろん、これは、ある意味では、私に言わせれば道半ばであって、これからは十時間という制限もなくして、全ての労働者に対して失業へのセーフティーネット、まあセーフティーネットという意味は、単に守るではなくて、先ほども申し上げたように、新しい仕事へと潤滑に移っていけるという部分も含むんですけれども、そういうものを提供することが必要ではないかなと思っています。

 テクニカルな問題としては、マルチジョブホルダー、二つ以上の仕事を持っている人たちに関する総労働時間をどういうふうに把握するかという問題もあるんですけれども、令和四年より、六十五歳以上のマルチジョブホルダーについて、自己申告という形で総労働時間を把握する、そういう試みがなされておりますので、この方法の結果を見て検証しながら将来的に検討していくということが重要ではないかなと思っています。審議会でもそういう議論がされておりました。

 また、こうした改正は、雇用保険のかなりの部分というか、雇用保険の性質を変える可能性があると思います、失業に対するセーフティーネットということから結構変えていく部分というのはあると思うんですけれども、先ほども申したような日本経済全体の動きを考えると、やはり合理的な改革ではないかなと思っています。

 次に、育児休業給付に関してお話を申し上げたいんですけれども、我が国経済の、これは皆さん方まさに御存じのことだと思いますけれども、もう一つの大きな問題は、人手不足、人材不足でございます。企業が経営を続けて経済を回すためには人材の確保というのが極めて重要で、それがちょっと、今の状況だと危機的な状況になっていると思います。

 人的資源の確保というのは企業にとっても重要なんですけれども、同時に、やはり国全体にとっても、経済成長にとっても重要な役割を持つものではないかなというふうに思います。したがって、国家戦略として、未来へ向けての人材確保ということを機動的に行う必要があるというふうに私は考えております。

 その場合、人材不足への対応というのは、マッチングの精度を上げて労働市場の機能を高めるというのもありますし、さきに述べたリスキリング等を行って、現在いる人材をある意味では、再活用という言い方はいいかどうか分かりませんけれども、再活性化していく、そういうふうな動きもあるんですけれども、やはりもう一つの大きなポイントというのは少子化対策であろうというふうに思っています。やや長期的な解決法ですけれども、少子化対策というものが重要になってくるのではないかなというふうに思います。

 したがって、育児休業給付というのは、これまで、出産による休業を失業状態と位置づけて、失業対策として始まった制度であり、かつ、その後の子育て中の所得保障という色彩も強くなってきており、そういう面では今まで十分機能してきたわけですけれども、さきに述べたような、人口減少、それに伴う労働力減少という中で、育児休業給付というのは国の経済政策としての意味合いが結構大きくなってきているのではないかなと思っています。

 そういうことでいうと、今回、国庫による負担が八十分の一から八分の一という本則に復帰したというのは極めて重要なことであろうと思いますし、ある意味では当然のことであろうというふうに思っています。

 ただ、これは皆さん方御存じのように、審議会では、保険財政の状況に柔軟に対応できるように、育休保険料率に弾力を持たせることも同時に含んでおります。

 上記に述べたような点を考慮すると、育休というのは、仕組みの検討も含めて、やはり基盤を盤石にしていかないと、これからもたない。ある意味では、非常に現在の雇用保険財政の中では大きな部分を占めておりますので、基盤を盤石にするということが重要で、そのためには、国による積極的な財政面での支援というのが重要ではないかなというふうに思っています。

 最後に、財政運営やその他についての幾つかの問題を指摘しておきたいと思います。

 まず第一に、雇用保険の財政運営については、これも皆さん方御存じのように、コロナ禍により、やはりかなり状態が悪くなりました。国からお借りしてということもやっておりましたし、ある意味では非常に難しい状況に陥ったんですけれども、令和四年以降、コロナが明けるに従って少し上向いており、少しずつ前の状態に戻っております。

 ただ、やはり現在、先ほども申し上げたように、様々な形で、雇用保険が担うべき役割というのは大きくなっておりますので、そういう意味では、一層の国による財政的な支援も含めた関与が必要になってくるのではないかなと思っています。

 時間になりましたので、私のお話はこれで終わりにさせていただきたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

新谷委員長 ありがとうございました。

 次に、冨高参考人にお願いいたします。

冨高参考人 皆様、おはようございます。連合で総合政策推進局長を務めております冨高です。

 本日は、参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。

 私は、労働政策審議会の労働者代表委員を務めております。本日は、雇用保険法等の一部を改正する法律案について、働く者の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、皆様のお手元にございます資料をおめくりいただけますでしょうか。二ページでございます。まず、雇用保険被保険者の適用拡大についてでございます。

 連合は、雇用形態にかかわらず全ての雇用労働者に雇用保険を適用し、セーフティーネットを整備することが重要と考えております。現在の所定労働時間二十時間から十時間以上に拡大することは、雇用保険によるセーフティーネット機能の拡充に資する改正であると受け止めております。

 一方で、二〇二八年十月の施行に向けては検討すべき事項も残っていると考えます。

 まず一点目でございますが、雇用保険の加入や失業の在り方についてでございます。

 新たに適用の対象となる労働者の中には、生計を維持するために副業、兼業をしている方も増えることが想定されます。しかし、雇用保険は、ほかの社会保険とは異なり、複数就労時は、主たる賃金を受ける雇用関係のみ加入対象となり、副業先は雇用保険に加入ができません。その結果、副業先のみ失業した場合は、その部分の失業手当などを受け取ることができません。

 一方で、二〇二二年一月から、先ほどございました、試行しておりますマルチジョブホルダー制度という仕組みがございます。こちらにつきましては、二つの雇用の労働時間を合算して二十時間以上となる場合、雇用保険に加入することができるということでございまして、合算して雇用保険の被保険者になれることは望ましいことだというふうに考えており、労政審においては、この制度の検証と対象の拡大に向けた検討を行うべきというふうに申し上げてきました。現時点では利用者やデータが少なく、引き続き施行後五年の二〇二七年を目途に検証することになっております。

 連合としましては、施行後五年を待たずに、二〇二八年の適用拡大に向けて早期に試行結果の検証を行い、副業先を雇用保険の対象とすることを含め、雇用保険の加入や失業の在り方を労政審において議論することが必要だというふうに考えております。

 続いて、二点目でございます。

 適用拡大により現場の混乱が生じないよう、例えば、複数就労時にどの雇用関係で雇用保険手続を進めればよいか、こういった判断基準を明確化する、こういったことなど、運用について検討と丁寧な周知が必要というふうに考えます。

 三点目でございます。適用拡大に伴う働き方の変化の調査についてでございます。

 新たに被保険者となる週所定労働時間が十時間以上の短時間就労者については、JILPTによる調査では、雇用保険に加入したくないと回答されている方たちもいらっしゃいます。そのため、まずは施行までに雇用保険のメリットなどを十分周知をした上で、短時間就労者において、雇用保険加入を避けるための就業調整であったり就業形態の変更などの働き方の変化が生じないか、調査を行う必要があるというふうに考えております。

 続いて、資料の三ページでございます。教育訓練給付の拡充及び教育訓練休暇の給付金、この創設でございます。

 三ページにお示ししました図一では、自己啓発を行った者は非正規雇用の方より正規雇用の方が多いということ、また、図二においては、企業によるリスキリングの実施が進んでいないこと、また、図三、四では、教育訓練休暇制度の導入や利用が進んでいないという現状が分かると思います。

 このような状況において、労働者個人への直接支援の拡充により、労働者自身による教育訓練やリスキリングの実施、これに一定の効果はあるというふうに思います。しかしながら、雇用形態にかかわらず教育訓練のための時間を確保する意識、これを社会全体として醸成をしていくことが重要であり、まずは、労働者を雇用している企業が非正規を含む全ての労働者を対象に教育訓練の実施を推進していくことが重要であり、そのための支援が必要だというふうに考えております。

 また、教育訓練給付を効果的なものとするために、受講後の賃金上昇が訓練受講の結果であることを確認する方法の検討、また、指定講座ごとの訓練の効果検証に基づく検討というものも必要だというふうに考えております。

 加えて、教育訓練給付の指定講座においては、地域、類型、科目により講座数の偏りがあることから、偏りの是正に向けた実態把握や訓練効果等を踏まえた検証、検証に基づく指定講座の見直し、これが必要だというふうに考えております。

 続きまして、パワーポイント四ページを御覧いただければと思います。国庫負担の見直しについてでございます。

 雇用保険の財源の在り方につきましては、労使により保険料を拠出していることから、国庫負担と労使の保険料率との適切なバランスを、当事者である労使が入る労働政策審議会で十分に議論し、決定することが重要だと考えます。その際、雇用の維持、安定という雇用保険制度の趣旨も踏まえ、適正な収入と支出についても十分な検討が必要です。

 そのような考え方の下、一点目の、介護休業給付に係る国庫負担を引き下げる暫定措置の二年間の延長、これにつきましては、国として介護と仕事の両立支援を推進しており、実際に受給者数、支給額は増加していることなど介護休業給付の重要性が増しているということを踏まえれば、介護休業制度全体の内容を含めた議論を行い、二年後を待つことなく、暫定措置の廃止に向け、労政審において検討すべきというふうに考えます。

 二点目でございますが、雇用保険の目的を超えるような施策に関する財源の在り方でございます。

 雇用保険の主たる目的は、労働者の生活及び雇用の安定を図ることであり、人への投資、リスキリング強化支援を目的とした教育訓練給付の拡充の施策、これにつきましては、本来の雇用保険の目的を超える国の政策としての側面も強く、雇用保険財源以外の一般財源、関係する省庁の予算等の実施というものも引き続き検討する必要があるのではないかと考えます。

 なお、社会経済の急激な変化が雇用に悪影響を及ぼす局面における国を挙げた支援として雇用保険を活用する場合には、財政状況の把握を待たずに、労政審の判断の下、国庫からの繰入れができる仕組みの導入の検討なども必要というふうに考えます。

 最後のページでございます。五ページでございます。育児休業給付の保険料率の見直しについて。

 こちらにつきましては、労政審での議論の終盤において、育児休業給付の国庫負担を一年前倒しで本則に戻すことと併せまして、保険料率の引上げ、弾力的な引下げ措置の導入に関する案が示されました。

 先ほど申し上げたとおり、国庫負担、保険料率については、本来、労政審において十分な議論が必要だというふうに考えておりまして、そのことは二年前の失業等給付の国庫負担の議論の際にも主張してきたところでございます。

 今回、議論の時間が十分ではなかったというふうな部分につきましては、労政審でも改めて強く申し上げ、労政審の雇用保険部会の報告においても、弾力的な調整を検討する際には、保険料率が労使に影響を与えることも認識し、財政状況のみならず育児休業給付の現状や見通しに基づいた丁寧な議論を行うということを記載していただいております。このことを厚労省としては重く受け止めていただきまして、今後の審議、運営につきましては真摯に対応を行っていただければというふうに考えております。

 資料に参考としてお示ししたように、厚労省の試算によれば、令和八年度に単年度赤字となり、それを受けて令和十年度から保険料率を引き上げる必要があると試算されております。

 保険料率の引上げは、先ほども申し上げましたが、労働者にとって負担増となることから、実際に引上げが必要となるまでの間も含め、育児休業給付の在り方など、引き続き労政審において不断の検証と丁寧な議論が必要だというふうに考えております。

 以上、法案の施行や今後に向けて、雇用のセーフティーネットである雇用保険が将来にわたり安定的に運営され、支援を必要とする労働者が適切に保護されるよう、引き続き労政審を通じて議論を尽くしていきたいというふうに考えております。

 ありがとうございました。(拍手)

新谷委員長 ありがとうございました。

 次に、大嶋参考人にお願いいたします。

大嶋参考人 おはようございます。リクルートワークス研究所の大嶋と申します。

 本日は、参考人として貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。

 さて、私は、組織における人材マネジメント、それから個人のキャリア形成、そして労働政策の領域で研究を行ってまいりました。その中で、最近は、働く人や中小企業の視点から見たリスキリングについても研究を行ってまいりました。本日は、その立場から、就業者や離職者の学習に関わる現状ですとか課題につきまして概観しながら、改正案のうち、主に教育訓練やリスキリングに関する部分についてお話を申し上げたいと思います。

 初めに、少し大きな話になりますが、日本では今後、サービス需要の大きい高齢人口が増加していく一方でサービスの担い手が縮小していく、この結果、労働需要と供給のギャップが継続的に拡大し、慢性的な労働供給制約社会になるということが予測されています。これは、経済にとっても大きなボトルネックになる問題です。これに対抗していくためには、徹底的な自動化ですとか柔軟な働き方の推進により、多様な働き手が付加価値の高い業務で働ける、そういう環境をつくっていく必要がございます。

 さらに、二〇二三年以降は、生成AIを利用したサービスが急速に増えております。本格的な活用に乗り出す企業も増える中、今後、AIにより、人の仕事が大きな影響を受けていくと考えられます。

 このような変化の中で、就業者や離職者が新しいスキルを身につけ、組織内で、あるいは企業内で新たな仕事に移行していく、つまり、リスキリングの重要性はますます高まっていくものと考えています。

 このリスキリングですけれども、大きく、個人主導で行われるものと企業主導で行われるものに分けることができます。

 個人主導のリスキリングは、勤務先の指示とは関わりなく、在職者や離職者がこれから労働市場で求められるスキルと自分のスキルのギャップを埋めるために主体的に学び、スキルを実践することを指します。一方、企業主導のリスキリングは、企業が事業課題の解決ですとかビジネスモデルの転換を行っていくために、従業員がその新たな業務プロセスや職務で価値創造できるよう、スキルの転換を促すものと言うことができます。

 このうち個人主導のリスキリングには、その円滑な拡大を妨げる大きな問題が存在していると考えます。

 まず、現状として、日本の就業者の多くが、自分の意思で仕事に関わる知識や技術の向上に関わる取組、すなわち自己学習を行う習慣を持っていない、そもそも学ぶ必要を認識していないという問題が挙げられます。

 私が所属するリクルートワークス研究所では、全国約五万人の方々の追跡調査を行っております。そのデータを分析したところ、自己学習をする人の割合は雇用者の中で三割にとどまり、自己学習しない理由は何かということを聞くと、特に当てはまるものはないという回答が五割近くを占めるという結果になりました。そもそも、学ぶ理由がないということになります。

 よく日本の就業者は忙しくて学ぶ時間がないということも言われますが、労働時間が減った人で自己学習が増えるのかといった傾向を確認したり、また、コロナ禍で通勤時間が減った方で自己学習が増えているのかということを検証いたしましても、自己学習の時間は増えていないといったことも見て取れます。つまり、仕事等で忙しいというのは、学ばない理由として、重要なものではあるけれども、最大のものと言うことはできないというふうに考えています。

 日本人が自己学習をしない最大の理由は、企業主導のキャリア形成が主流であったため、自ら仕事を替えていくような思考や行動を持つことに極めて不慣れであるということがあると考えています。

 戦後の日本では、就業者の多くを雇用者が占める雇用社会が形成されてまいりましたが、企業では、解雇を極力避けるような雇用慣行と引換えに、会社が強い人事権を持って異動や配属先を決定する結果、昇進を軸とするような企業主導のキャリア形成が行われてきました。そうした中、今の組織で通用するような特殊な能力の形成が重視される一方で、雇用者が特定の職務への希望を持つことや、今の仕事に直接関わらない学びをすることが必ずしも歓迎されてこなかったという事情がございます。

 さらに、転職へのマイナスのイメージが社会的に存在してきたことや、企業横断的な能力評価、それから賃金評価の仕組みが発達せず、転職後に賃金が低下するといったケースも多く見られました。また、女性の良質な就業機会が限られてきたことから、男性にとって、家族の家計を支えるということが非常に重要になり、今の職場で働き続けるといった選択が合理的なものとなってきたという経緯もございます。

 大企業を中心に、近年は社員のキャリア自律を重視する企業も増えてきておりますが、国際比較データを見ますと、まだまだ、キャリアは状況によって決まると考える人の割合が日本で高く、また、近年でも、就業者のうち、労働市場における自分の強みが分からないといった方が非常に多いといった状況にございます。

 このように、個人のキャリアが企業主導で形成されてきたことは、日本の就業者の多くが、今後のキャリアについて相談できる人間関係を持たないといった状況にも関わっています。

 このような人間関係というのは、心理的なサポートだけでなく、情報ですとか、これまでやってきたことの評価など、あらゆるサポートを人に提供するわけですけれども、こういったキャリアの挑戦を後押しする人間関係を持つ人がどれぐらいいるのかというのを国際比較で見てみますと、大体、アメリカとかデンマーク、中国、フランスだと三、四割を占めるのに対して、日本は一割しかいないといった状況も見られます。つまり、日本は、人間関係が家族や職場に閉じがちで、なかなか次のキャリア、仕事につながるような人間関係、相談先を持たないといったことも分かっているということになります。

 これに対して、企業主導のリスキリングというのは、より効果を期待しやすい側面があります。

 働く人のデータからは、企業が学びの機会であるとかあるいは方向性を示すことが個人の自己学習を促すということが分かっています。そうした方向の示し方としては、OJTとかオフJTのほかにも、昇進や仕事のレベルアップ、それから、学ぶべきことを示したり、学んだことを評価する場を与えるといったものがあります。

 同様に、勤務先が自分に対してITやデジタルの学びを推奨していると認識している人とそうでない人で、実際にデジタルやITの学びをしている人の割合がどれだけ違うのかというのを見ていくと、大体九倍ぐらいの差があるといったこともデータから確認されていまして、その意味でも、今なお、企業が提供する学びの機会というのは個人の自己学習においても非常に大きな力を持っていると考えることができます。

 以上より、私は、日本のリスキリングを推進する上では、二つの時間軸を持つことが必要だと考えています。

 一つ目の時間軸は、早急に社会におけるリスキリングの総量を増やしていくためのもので、それには企業主導のリスキリングが欠かせないと考えています。

 企業によるリスキリングは、これまで述べたような影響力の大きさに加えて、学んだことを実践する機会を持ちやすいですとか、あるいは、転職を前提としないので、労働者の心理的な負担が相対的には小さいといった強みがあります。

 日本のリスキリング政策では、在職者支援の中心を企業から個人に移行していく必要性も指摘されているところではありますが、私個人は、社会のリスキリングの総量を上げていく上で、企業のリスキリング、企業主導のリスキリング支援についても更なる充実が欠かせないと考えています。

 一方、これまで申し上げましたように、個人主導のリスキリングには大きな課題もあり、少し長い時間軸の下で、個人が主体的に学べるような機運をつくっていくというような仕掛けが必要だと考えております。

 これに関して、現在国会に提出されている雇用保険法の改正案におきましては、教育訓練やリスキリング支援の充実に関わる内容が幅広く含まれており、個人が主体的に学ぶ社会の形成に向けた重要な一歩になるものと考えております。

 具体的に、週所定労働時間二十時間以上から週十時間以上への適用拡大は、短時間の非正規雇用者や、そうした仕事をかけ持ちする人が、失業時の所得保障に加えて、教育訓練給付を通じて在職中からの学びの支援を得られることという効果もございまして、働き方が多様化する中で非常に重要な改革だと思っています。

 また、教育訓練給付の支給対象となる教育訓練等を受講した場合に、自己都合離職者への基本手当の給付制限を解除する見直しですとか、あるいは教育訓練給付の拡充も、在職中の学びを促し、安心して再就職できる環境づくりに貢献すると考えております。

 ですからこそ、制度改正後においては、その効果検証を精緻に行い、次の一歩に向けたエビデンスを取得していただきたいと存じます。

 最後に、雇用保険の範囲を超える内容も含まれますが、日本でより多くの人がリスキリングの機会を得ていくための今後の課題について、三点ほどに絞って意見を申し上げたいと思います。

 まず一点目は、今後の成長産業や、そこで求められるスキルなど、学ぶべき内容に関する情報提供の充実です。

 日本の場合、企業が社内で職務の範囲や職務遂行に必要なスキルを十分明確にしていないことから、単純に企業の求人票を集約しても、なかなか労働者が参照できるスキルの情報とはなりにくいといった事情があります。ですので、国と例えば業界団体が連携し、実際に就業する人のスキルに関わる情報を国民に提供していくような方法があり得るかと思います。例えば建設業では、技能評価の仕組みを構築し、労働者のキャリア形成に役立てるといった取組を行っていますが、このような動きが広がることが重要だと考えています。

 二点目は、多くの人が利用しやすい小さなリスキリング支援の充実です。

 教育訓練給付制度は非常に重要な制度ですが、例えば、最も負担額が小さいと考えられる一般教育訓練給付についても平均支給額が三・八万円、支給率が二〇%で、ここから逆算したときに、個人の負担額は一定の大きさを占めます。

 企業のリスキリングは、中小企業で働く非正規雇用者や女性、それから繰り返し作業の多い労働者で少ないということが分かっておりまして、こうした労働者の方々が手にしやすいような、小さなリスキリング支援を充実していくことが必要かと思います。例えばシンガポールでは、全国民に約五万円を上限とするリスキリングクレジットの提供を行っていますが、一定の要件を満たす人に、カウンセリングとセットで質の高いリスキリング支援を供給するようなやり方もあり得るのではないかと思います。

 三点目は、簡単に申し上げますが、企業によるリスキリング機会を一層充実することです。

 地方自治体や地方の経営者団体からは、今なお、DXやリスキリングに二の足を踏む企業が多いということが指摘されていますが、経営者の方々のリスキリングが遅れると、やはり従業員の方のリスキリングも遅れてしまうという問題がございます。これに関しては、既に厚生労働省の生産性向上支援訓練等の拡充が行われていますが、そういった支援にアクセスできないような中小企業へのアウトリーチの取組なども検討していく余地があるのではないかと思います。

 大きな変化が見込まれるこれからの時代に労働者の雇用や職業の安定を図るためには、変化に適応していく力を高めるといったセーフティーネットの変革が必要だと考えています。

 意見は以上となります。どうもありがとうございました。(拍手)

新谷委員長 ありがとうございました。

 次に、平田参考人にお願いいたします。

平田参考人 経団連の平田でございます。

 本日は、雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する経団連の考え方を御説明する機会を頂戴し、誠にありがとうございます。

 改正案の内容は多岐にわたるというふうに理解をしております。本日、私からは、教育訓練やリスキリング支援の充実、基本手当の給付制限期間の見直し、それから雇用保険の適用拡大、育児休業給付の財政基盤強化の四点に絞って、改正法案に賛成の立場から考え方を述べたいと存じます。その上で、雇用保険制度の財政運営の在り方についても申し上げたいというふうに思っております。

 第一に、教育訓練やリスキリング支援の充実について申し上げます。

 御案内のとおり、政府は、三位一体の労働市場改革の柱の一つとして、国を挙げてリスキリングによる能力向上支援を推進し、その一環として、在職者個人の学び直しに対する直接支援の拡充を目指しています。こうした観点も踏まえ、改正案では、専門実践教育訓練給付と特定一般教育訓練給付の給付率の引上げが盛り込まれたというふうに理解をしております。

 教育訓練給付の充実につきましては、在職者の主体的な能力開発、スキルアップを支援する給付として、失業の予防ですとか生活の安定のみならず、離職者の再就職支援にもつながります。これは、経団連が主張している労働移動推進型セーフティーネットの一端を担うものというふうに評価をしております。

 加えて、訓練期間中の生活を支えるための新たな給付とそれから融資制度の創設は、いずれも、経済的な理由によって教育訓練の受講をためらう労働者を支援する仕組みであるというふうに承知しております。とりわけ、新しい給付につきましては、教育訓練給付の一つと位置づけた上で一般財源を投入するということは、政府として、人への投資にしっかりと取り組む姿勢を示すものとして高く評価しております。

 第二に、基本手当の給付制限期間の見直しについて申し上げます。

 現状、安易な離職を防止する観点から、基本手当の受給に当たって自己都合離職者に二か月間の給付制限が設けられているところ、これが転職を阻害をしているとの指摘も踏まえて、今般の改正案において、給付制限期間を原則一か月に短縮するほか、離職期間中や離職日前一年以内に公共職業訓練などを自ら受けた場合には給付制限が解除されます。これは、円滑な労働移動を推進し、日本全体の労働生産性を向上していくという観点から評価できる見直しであるというふうに考えております。

 第三に、雇用保険の適用拡大について申し上げます。

 適用労働者の要件見直しが最後に行われた平成二十二年以降、働き方ですとか雇用形態は多様化しているというふうに理解をしております。こうした中、働き方に中立的な制度とし、かつ、セーフティーネットを拡充するという今回の改正の内容の意義は大きいと受け止めております。本改正は令和十年十月の施行と承知をしております。それまでの間、事業主等への周知を丁寧に進めていただくようにお願いしたいというふうに思います。

 第四に、育児休業給付の財政基盤強化について申し上げたいと思います。

 育児休業給付につきましては、少子化対策の要請や男性の育児休業取得促進という観点から累次の拡充が行われてきており、労働者の育児休業の取得や雇用継続に一定の役割を果たしてきたというふうに認識をしております。他方、育児休業の取得者数は、ここ十年で男女共に増加し、とりわけ男性で大幅に増加し、今後更なる増加が見込まれるということから、財政基盤の強化が喫緊の課題となっています。こうした観点から、暫定的に引き下げられている国庫負担割合八十分の一を、二〇二四年度から本則、八分の一に一年前倒しで復帰することを高く評価したいというふうに思っております。

 最後に、雇用保険全体の財政運営について申し上げたいというふうに思います。

 コロナ禍における雇調金等の大幅な活用によって、雇用保険二事業ですけれども、二・九兆円に上る借入金を抱えていて、雇用保険二事業に係る財政は危機的な状況にあるというふうに理解をしております。二年前の改正法の附則において、令和六年度までを目途に検討を加えるとされております借入金の積立金への返済の在り方の議論を含めて、財政再建に向けた道筋を早急に明確化することが不可欠だというふうに考えております。

 その際、雇調金の特例措置が新型コロナウイルス感染症の拡大という有事の際に失業予防に一定の機能を果たしたということを踏まえて、その費用の全てを全額事業主負担の雇用保険二事業だけで賄うことが適切なのかどうかという観点も踏まえながら、返済の在り方を議論するべきだというふうに考えております。

 私からは以上になります。どうもありがとうございました。(拍手)

新谷委員長 ありがとうございました。

 次に、秋山参考人にお願いいたします。

秋山参考人 全国労働組合総連合、略称全労連で副議長の秋山と申します。

 本日は、発言の機会をいただき、ありがとうございます。労働者の立場から、雇用保険法の一部を改正する法案についての意見を述べさせていただきます。

 初めに、厚生労働委員会は、国民生活に深く関わる政策を所管しており、様々な課題が山積していると思います。こうした問題に日々向き合いながら、国民生活の向上に向け、委員の皆さんが昼夜をたがわず御奮闘いただいていることに心より感謝を申し上げたいと思います。

 私からは、問題意識を三点に絞って申し上げたいと思います。

 第一に、雇用保険給付の財源と給付に関してであります。

 雇用保険制度の本来的な役割を考えるのであれば、労使負担だけでなく、国庫負担は欠かせません。行うことが基本です。資料の方に、二ページに入れましたが、雇用保険失業給付の国庫負担は僅か二・五%にすぎません。育児休業給付は、八分の一ということで、一二・五%です。

 先般、財務省が国民負担率に関する推移を公表しましたが、資料三ページに入れているとおり、社会保険負担の比率が二〇〇〇年代に入り高まっています。社会保険料や税負担の増大が実質賃金の低下に大きく影響してきました。特に中高年層は、昨年と今年の春闘でベア引上げが言われていますが、賃金引上げが余りなされず、負担ばかりが増大しているというふうに思います。

 三月二十七日に厚生労働省が二〇二三年賃金構造統計調査の結果を公表していますが、資料のページ四に入れました第四表、企業規模、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び企業規模間格差によりますと、大企業の三十五歳から五十四歳のところは前年よりも賃金が減少しています。

 今年の春闘で賃金が大幅に引き上げられたということは報道もされていますが、中高年層の賃金が上がるのか、疑問を持ちたくなります。

 これらのことを考えると、労働者の実質賃金低下をもたらす保険料の引上げは避けるべきだというふうに思います。五ページに厚生労働省の資料も入れておきましたが、国庫負担の減少によって給付の抑制が進められ、受給者も絞り込まれてきたと思います。

 特に、失業給付の基本手当については、現行の給付水準が低過ぎると思います。上限額が低いだけでなく、改正法案では下限を引き下げることになっています。育児休業給付は、給与の八〇%を給付するという実質賃金を保障する方向であるにもかかわらず、失業した場合には所得代替率が現在の水準を更に下回るのではないかと思います。こうした給付の抑制をやめるべきだと考えます。

 全労連は、全国一律の最低賃金制度を確立するよう求めています。同時に、直ちに千五百円を実現させるべきと考えていますが、下限の引下げにより更なる低賃金労働者を再生産するようなことはすべきではないということを申し上げたいと思います。国庫負担の拡充で給付の拡充を図っていただきたいと思います。

 二つ目に申し上げたいのは、雇用の流動化政策に関することであります。

 最近のテレビを見ていますと、職業紹介会社や人材派遣業のコマーシャルを見ることが多いと感じております。

 株式会社ビデオリサーチが運営されているVRダイジェストというページに、今年一月の広告主出稿ランキングというものがありました。資料の六ページに入れましたが、一位はリクルートさん、二位は日本マクドナルド、三位は興和といった、名立たる企業の名前が並んでいます。二十位にはリクルートスタッフィングの名前もあります。人材紹介、派遣業の最大手であるリクルートは、テレビ広告でも圧倒的な量を出されています。リクルート以外のCMもよく拝見しますが。

 七ページを御覧いただくと、有料職業紹介は拡大をし続けています。手数料の総額は、二〇二二年には六千三百十五億円とコロナ前の水準となっており、今後ますます増えていくと思われます。

 転職に当たって情報量が多いにこしたことはありませんが、転職するなどほとんど考えられなかった私の若い頃とは大きな違いを感じます。八ページに、厚生労働省の雇用動向調査から入職者の経路をグラフとして入れておきましたが、職業安定所の利用が減少し、広告の割合が高まっています。

 中小零細企業にとって、人員を確保することは容易ではありません。縁故採用が難しくなっていることもあり、人材紹介企業や広告を利用することが多くなっています。そのため、経費が大きな負担となっています。人材紹介企業を通じて採用したが短期間で退職してしまい、経費ばかりがかかっているという話も聞こえてきます。働く者が確保できなければ成り立たない社会福祉の分野では大変であります。

 そもそも、労働者供給事業は中間搾取であり、禁止をされていましたが、一九八五年の労働者派遣事業法の施行以降、派遣労働者など不安定な雇用労働者が増加してきました。その後、職業紹介事業の規制緩和、インターネットの発展による情報提供業者の増加など、転職を仲介する手段は多様化してまいりました。

 転職に対する壁を低くしてきたことは悪いことだとは思いませんが、プラス面よりも負の側面が一段と大きくなっているのではないでしょうか。転職を繰り返す人が増えることによって、日本全体の技術力の低下につながっていないだろうか、日本が世界に誇ってきた技術力は、現場で培われてきたものだというふうにも思います。雇用の流動化政策は、CMに見られるような転職をあおる風潮を起こしているように思えてなりません。

 労働組合に加入している組合員は、その仕事が好きで続けていきたいと考えています。だからこそ、私もそうでありましたけれども、働きやすい職場にしたいと考え、組合に加入して、環境改善について経営者と交渉を行います。

 また、雇用政策でありますが、無料の職業紹介事業や雇用保険業務を国の出先機関である公共職業安定所が直接行っているからこそ成り立ち得るものだというふうに思います。地域経済や働く者の雇用安定のためにも、公共職業安定所の役割を再確認していただきたいというふうに思っております。

 三つ目に申し上げたいのは、行政体制の拡充についてであります。

 雇用保険の適用拡大という今回の改正は、セーフティーネットの拡充として受け止めています。その上で、最も強調したいのは、実務を担う人員体制の強化が不可欠であるということです。

 雇用保険被保険者の手続として、資格取得届が月平均六十万件強、離入職の多い四月から五月には百万件の手続が行われています。ページ九に資料を入れておきましたので、御参照ください。今日も全国各地で手続を待っている長蛇の列ができていると思います。

 今回の適用拡大では、対象となる労働者が五百万人とも言われています。大幅な人員増がなければ、公共職業安定所、ハローワークの雇用保険窓口はパンクしかねません。

 電子申請の活用も考えておられると思いますが、電子申請を活用できるのは一般的に規模の大きな事業所であります。それだけでなく、電子申請であっても、今回の適用拡大によって労働時間に関することを詳細に把握する必要があります。むしろ窓口での手続の方が効果的、効率的ではないかとも思われます。いずれにしても、膨大な業務量をこなす人員が必要であります。

 新規に適用される労働者が増えれば、受給者も増加します。しかも、短時間パート労働者ですから、ダブルワークが容易に想定されます。給付の窓口では、失業状態の確認がこれまで以上に慎重にならざるを得ません。

 さらに、雇用保険二事業の対象にもなりますが、最も影響が大きいと思われるのが各種助成金の対象者になることであります。特に、新規雇入れを対象とする助成金の種類が多く、今回の適用拡大で対象者が急増することも見込まれます。

 助成金の目的や内容を十分に理解して、適切に受給してもらう必要がありますが、事業所に対しての事前説明や申請時の確認、実際の審査、支給に至るまで様々な対応が必要であります。しかも、公共職業安定所による紹介を要件としている助成金も多く、職業相談の窓口でも、求職者に対して要件を満たしているかどうかの確認が必要となります。同時に、紹介先事業所に対して助成金の対象者であることを説明することも必要になります。

 資料の十ページと十一ページに人員数と人口の関係を示すグラフを入れましたが、公共職業安定所の人員数を拡充していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 以上、三点にわたり申し上げましたが、短時間労働者や複数就業者などをカバーするなど、雇用保険の適用範囲を広げていることについては歓迎をしますが、依然として、フリーランスやギグワーカーといった労働者性の強い人々の問題が残っています。また、個人経営者と同様な状況に近い中小零細企業の経営者も保護の対象として考える必要があるのではないかとも思います。ただし、雇用保険という制度の限界も見ておく必要があることは間違いありません。

 いずれにしましても、社会の変化に対し、政策が迅速に推進できるよう、行政の体制拡充を重ねてお願い申し上げ、陳述を終わりといたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

新谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

新谷委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。三谷英弘君。

三谷委員 神奈川八区、衆議院議員の三谷英弘です。

 今日は、本当にお忙しい中、参考人としてお越しいただきまして、様々な見地からの御意見をいただきましたこと、まずは心から御礼を申し上げたいと思います。

 今日のお話の中にもありましたけれども、今、労働市場、本当に人手不足が深刻になる中で、少子高齢化の中でどうやってしっかりと働き手の方々を確保するかというのがどの企業においても非常に重要になってきているという中で、今、三位一体の労働市場改革というものをしっかりと進めていくという中で、リスキリングによる能力向上支援ですとか、それから成長分野への労働移動の円滑化、そういったことを後押しをしていかなければいけないという状況であるということは、我々としても十分理解をしているところでございます。

 そういった中で、雇用保険法によって何を守るのかというところが、少しずつその意義が変化をしてきていると、最初に守島参考人がおっしゃったそういった意義が変化をしてきていること、今この雇用保険で何を守ろうとしているのか、改めて御説明いただきたいと思います。セーフティーネットとしてなのか、リスキリングなのか、そういったところを守島参考人、お願いします。

守島参考人 御質問ありがとうございます。

 もちろん、雇用保険ですから、第一義的には、失業状態に陥ったときにその生活の基盤を支えるというのがあると思います。ただ、先ほども申し上げたように、今、生活の基盤を支えるといったときに、やはり、一つの仕事を、仮に雇用契約が終わったとしても次の仕事に順調に移っていくという、そこの部分の支援というのもこれからどんどん重要になるのではないかなと思っています。もちろん、雇用保険だけでできることではないんですけれども、雇用保険というやり方も一つの重要なやり方であろうというふうに思っています。

 以上です。

三谷委員 ありがとうございます。

 そういった中で、今回、雇用保険の適用対象が拡大をされるということになります。いろいろな働き方があるよということで、できるだけ適用される範囲を広げていこうという方向性については、各参考人の先生方は賛成の方向だと意見をいただきました。

 その中で、冨高参考人にお伺いをしたいんですけれども、いろいろな働き方があるという中で、幾つかの、複数の短時間の仕事を重ねられている方もいれば、本当に短時間の仕事だけをしている方もいらっしゃると思います。例えば、育児中の方で、なかなか子育てで手は離せないけれども空いた時間だけ少し働きたいという方々、そういった方々が、今まで雇用保険の適用対象ではなかったけれども、それが今回の改正によって適用対象になるということで、労働者の側あるいは企業の側、双方にとって負担だから、ちょっとそういう方の採用はやめようよみたいな感じになるのは何とかして避けたいんですね。

 とすれば、どういうメリットがあるよということを特に被用者、労働者の方にお伝えをするべきなのか。特に、十時間ちょっとぐらいしか働いていない方にどういうメリットがあるかについて、もう少し分かりやすく教えていただければと思います。

冨高参考人 ありがとうございます。

 今回、御指摘のように、十時間以上に拡大することによって、労使共に、雇用保険料を負担したくないというようなことも含めて、少し懸念される方がいらっしゃることは想定はされます。

 しかし、労働者にとっては、単純に失業手当だけではなくて、教育訓練であったり育児休業などの利用というのも可能になります。とりわけ教育訓練の部分というのは、その部分の給付があるというのは非常に重要だというふうに考えておりますので、そういった点をアピールするということもあるでしょうし、また、コロナ禍においては雇用調整助成金の対象にならなかった労働者の方たちも今回ある意味その対象になるということでございますので、これは企業側にとっても意味のあることだというふうに考えているところでございまして、そういったメリットになる部分をしっかり伝えていくことが重要だというふうに考えております。

 以上です。

三谷委員 ありがとうございました。

 そういったメリットをしっかりと伝えていくという努力が必要になるのかなというふうに思っておりますので、ありがとうございます。

 それから、もう少しリスキリングについてお伺いをしたいんですけれども、これは守島参考人と大嶋参考人にお伺いをしたいと思います。

 リスキリングをするということが極めて労働者にとっても大事ということは改めて言うまでもないことだと思いますけれども、リスキリングをすることで企業とか事業とか採用している側、雇用している側にどういったメリットがあるのかということについて、もう少し詳しく御説明をいただけますでしょうか。

守島参考人 ありがとうございます。

 先ほども申し上げたんですけれども、今、企業というのは様々な経営環境の変化の中で戦略の転換というのを図っています。今までやってきた事業じゃないものをやっていくであるとか、そういうときに、働く人たちがそういう新しい事業にフィットして働いてもらう、そういうためにやはりリスキリングというのは企業にとっては極めて重要な施策ではないかなというふうに思っております。

大嶋参考人 ありがとうございます。

 企業の立場に立ちますと、リスキリングというのは目的ではなく手段でありまして、例えば、事業課題を解決しなければならない、新たなビジネスモデルを展開していかなければ生き残れないという中で、それを担えるように従業員の方にスキルを転換してもらう、それが従業員の方が新たな能力を身につけていくきっかけになるという順番だと思いますので、その意味では、経営者の方に、まず、事業課題を解決する手段としてのデジタルの可能性ですとかそういったものを伝えていくということが重要かと考えています。

三谷委員 重ねて、今回、大嶋参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、そういったプラスはあるんですけれども、どうしても、企業の側からすると、そういった学び直しをしていってどんどんどんどんスキルが上がっていって労働市場の中で価値が上がっていくと会社を辞めちゃうんじゃないかなというふうに思ってしまう、そういった側面もあるんじゃないかと思います。

 そういったリスクを背負ってでも企業があえて自分の従業員には学び直しをさせるべきだというためには、やはりそれだけ企業も努力をしていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、その辺、ただ単にリスキリングをさせればいいですよということなのか、それとも、企業はどんな努力をしていくべきなのか、その辺についてもう少し詳しく教えてください。

大嶋参考人 リスキリングをすると従業員が辞めてしまうという問題については、非常に多くの中小企業の方からもお伺いしているところで、大きな懸念材料であることは間違いないと思います。

 実際には、リスキリングを積極的に執り行っている企業においては、社員の成長を支える姿勢を見せ、実際に支援することで、この企業であれば成長できるといった満足度を高めるといった取組も併せて行ったり、働き方改革を進めているといったこともございます。

 そうした、単にリスキリングの機会を与えるだけではなく、働き方であるとか、社員にとってこの会社にいる意義を高めるような取組が恐らく必要になるというふうに考えていまして、企業の皆様にリスキリングの意義を伝えるに当たっては、どのようにすれば従業員がその会社で働き続けるのかといった方策についても併せて情報提供していくことが必要かと思います。

三谷委員 ありがとうございます。

 本当に大変なことだと思っておりまして、今回新たに教育訓練休暇給付金という制度も導入されるというふうに承知をしております。これまでは、空いた時間をどうやって使うのかという、就業期間内にもしっかりと勉強してよということは言っていくわけですけれども、これからは、休職をして、国が制度として、学び直しをしてくださいねということをやっていくわけです。そうすると、これまで以上にやはり学び直しがどんどんしやすくなるし、どんどんどんどん、そういう意味では、休職をして学ぶ。転職を前提としない学び直しと、それから転職を前提とする学び直しというのが質的に違うのかどうかについても、もう一度、大嶋参考人にお伺いをしたいと思います。

大嶋参考人 社内における働き続けることを前提とした学び直しと、転職を前提とした学び直しは、明らかに性質が違うものと思います。

 働き続ける上での学び直しは、企業の事業戦略や業務プロセスの改善等と結びついた学び直しで、逆にそれを外れるものに関しては、企業にとっての投資の回収というのが難しいところから、そこは実は質的にはかなり違いがあるのではないかと思います。

 ただ、制度上はそういったものを区別するということが難しいという面もありますので、企業はどういった内容について学ぶのかについてよく労働者と話し合うような取組ももしかしたら必要になるのではないかと思います。

三谷委員 ありがとうございました。分かりやすい御説明をいただきました。

 そういう意味では、企業からすれば、しっかりと自社の従業員に対して、休んでも学んできてよということを言いやすくなるんだろうというふうに思いますので、しっかりと、せっかくできる制度ですから、活用していただきたいなというふうに思います。

 その中で、やはりちょっとお伺いをしたいのが、今回、雇用保険を使ってどんどんリスキリングをしていく、最初、守島参考人がお話しをいただいたとおり、目的が本来的にはセーフティーネットだし、仕事を辞めた後にはこういった雇用保険に入っているから生活も何とかなりますよという話だった、それが労働者個人のスキルを上げていくというように変わっていくという中で、少しこの制度、欠けている部分があるんじゃないかと思い始めたのが、実は公務員についてなんだろうと思っています。

 今、公務員については、もちろんそういった退職給付等々があるわけですから、生活支援という意味では足りているのかもしれません。ただ、民間企業で働いていれば、その時間を使って、いろいろな制度を使って学び直しができるし、退職した後もそういった制度を使ってリスキリングで自分の価値を上げられる、だけれども、一方で、公務員になればその期間中は学び直しができないし、そういった国からの支援が欠けているという形になれば、どんどんどんどん、これは民間企業で働いた方がいいんじゃないかという話になっていくようなおそれがあるのかなというふうに思っております。

 公務員のリスキリングについて、その必要性をどう考えるか、あるいは、民間企業で公務員経験者ももっともっと採用をしていきたいんだけれどもリスキリングが必要だとか、そういったことについて、大嶋参考人、それから平田参考人の御意見をいただきたいと思います。お願いします。

大嶋参考人 公務員の方々におきましてもリスキリングの機会を充実していくということは、非常に重要かと思います。また、公務員の方の離転職が増えているといった問題も指摘されておりますので、そういった機会拡充を通じて働く満足度を高めていくことは急務であるかと思います。

 以上です。

平田参考人 ありがとうございます。

 明確な答えを持ち合わせていなくて、公務員についてちょっと余り知見がないので分からないんですけれども、公務員の方も例えば民間に転職するとか、行ったり来たりということもあろうかと思いますので、民間に来たときに学び直しの機会があるとか、それでまた公務員に戻るとか、今後そういう雇用社会も訪れるんじゃないかなというふうに思っております。

 以上です。

三谷委員 ありがとうございます。

 公務員に対するリスキリングの支援をもっと民間と同じようにやっていくべきじゃないかというふうに考えておりますが、その辺、冨高参考人も、もし御知見というか御意見があればお答えいただきたいと思います。

冨高参考人 ありがとうございます。

 私もそこの部分については専門ではございませんけれども、選択肢の一つとしてそういったリスキリングが行われるということは重要だというふうに考えておりますし、官民交流という意味でそういった部分が充実されるということは重要だというふうに考えます。

 以上です。

三谷委員 ありがとうございます。

 これからは、本当に、リボルビングドアとか、いろいろな官民交流とか、いろいろなところで働く、そのキャリア形成の一つとして、公務員、国家あるいは地方自治体で働くというのは重要になってくるんだろうというふうに思っておりますので、しっかりとそういった形での後押しというのができればなというふうに思っています。

 少し時間はまだあるようなので、最後、一点だけ、大嶋参考人にお伺いします。

 御説明の中で、人間関係が閉じてしまっているというような話がありました。それを広げていく、特に新たな挑戦を後押ししてくれる人間関係というものが日本の場合は足りていないという御指摘がありました。

 どういうところに行けばこういった人間関係がつくれるか、御知見を御披露いただけますでしょうか。

大嶋参考人 御質問ありがとうございます。

 近年、働く人の動向を見ていますと、例えば、同じ職業であるとか同じ問題意識を持った人たちが集い、新たな挑戦を支え合うといったコミュニティーが多数形成されております。例えば、育児休業中あるいは復職された男女の方々がお互いのキャリアを共有し合って、成長を支え合うといったコミュニティーなどがございます。

 そういったコミュニティーはSNS上等でも仲間を求めているといったこともございますので、働く人がコミュニティーの意義を実感し、そういったところを探索し、参加していくというような流れをつくっていくことも大事ではないかと考えています。

三谷委員 ありがとうございます。

 終わります。

新谷委員長 次に、中島克仁君。

中島(克)委員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 雇用保険法等改正案質疑、審議におきまして、本日は、大変お忙しい中、五人の参考人の皆様には御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場での大変貴重な陳述、勉強また参考になりました。

 限られた時間ではございますが、私からも質問させていただきたいと思います。

 まず、今回の雇用保険法等改正案の適用拡大について、守島参考人と冨高参考人にお尋ねをしたいと思います。

 今回の適用拡大によって、被保険者となるアルバイトやパートなどの短時間就労者が増加すると考えられますが、一方で、短時間就労者の皆さんの置かれる状況、環境、これがどのように変化されるとお考えになられるか。一方で、日本の被保険者の失業手当の受給者割合、これはOECD各国の中でもかなり低位にあるという状況でございますが、今回の見直しによって受給率にどのような影響があると考えられるか、お尋ねをしたいと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 もちろん、短時間労働者にカバレッジを広めるということは、先ほど申し上げたように、非正規、まあ非正規という言葉はちょっといいかどうか分かりませんけれども、に対しての支援をしていくという意味では非常に重要だと思います。

 ただし、先ほどもちょっと議論がありましたけれども、十時間の壁というかそういうふうな、雇用主の方がそういう人間を雇わないということが起こってくる可能性もあるとは思います。ですから、そこのところは、やはり、この適用拡大によってどういうふうな効果が出るかということについて検証をして、その後検討していくということが必要ではないかと思います。

 それから、OECDと比べて日本の受給率が低いんじゃないかという話ですね。

 それは、確かに数字上は低いんですけれども、ただ、やはり、制度の中身を見てみると、日本の場合には、自己都合退職の場合のウェーティングの期間があるであるとか、あとは比較的支払いの期間が短いであるとか、いろいろな違いがございますので、必ずしも、二〇%で、OECDと数字で比べると低いということを、単純に結論は出ないというふうに私は考えておりまして、そこの部分ももう少し制度を並べて比較するということをやっていかないといけないのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

冨高参考人 ありがとうございます。

 少し今の内容と重複する部分もあるかというふうに思いますけれども、実際に適用拡大してみて調査をする必要があるんだろうというふうに思っておりますが、先ほど少し申し上げたように、雇用保険に加入したときのメリット、それぞれ労使に対するメリットというのを、効果というところをいかに周知をするかというのが非常に重要だというふうに思っておりまして、先ほど申し上げたように、失業手当だけでなく、教育訓練給付であったり、様々、雇用保険のメリット、効果というところをきちんと丁寧に周知をする必要があるというふうに思っております。

 それから、日本の失業給付の受給率の低位であることでございますけれども、先ほどもございました、自己都合離職の際の給付制限であったり、また、短時間就労者のハローワークの利用状況、こういったところも関係しているのではないかというふうに考えております。

 給付制限の部分につきましては、連合としては、労政審の中でもこの期間の短縮を求めてきたところでございます。

 いずれにしましても、失業手当の受給者割合への影響であったり、あとは就労調整といった適用拡大に伴う変化につきましては、調査を実施しまして、その結果を踏まえて検討を行うことが非常に重要だというふうに考えております。

 以上でございます。

中島(克)委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、今回の適用拡大後、しっかりとした調査分析が必要と、お二人の参考人の御意見だったと思います。

 この適用拡大において、昨今の社会状況からアルバイト等で生活を維持している学生が非常に増えている、そして、この学生も適用対象にしていくべきだという御意見、私たちも承っています。現在、通学の傍ら仕事をしている学生の規模、総務省の労働力調査においても、十五歳から二十一歳で百四十一万人、そして、二十二歳から二十四歳で四十万人という数が示されております。

 ここは、守島参考人、また冨高参考人、そして秋山参考人にそれぞれ御意見をいただきたいんですが、学生を適用拡大に含むべきではないか、これについて御意見をお聞かせ願いたいと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 確かにそのとおりで、私の学生を見ていても、週六でバイト、入っていますなんていうのも結構おりまして、そういう意味では、バイト漬けになっている学生というのは多いと思います。

 ただ、とはいっても、やはり学生の本分というのは私は学業だと思っておりまして、それに対する支援という意味でいうと、この委員会であるとか雇用保険の枠を超えますけれども、奨学金であるとか、そういうふうなものを充実させることで彼ら、彼女たちの生活を支えていくということをやっていくというのがやはり重要ではないかなと思っております。

 安易に学生に適用拡大をするということが、そういうふうな観点から考えると本当にいいことなのかというのは、ちょっと、にわかには私は賛成できないところはございます。

 以上です。

冨高参考人 今ほどもございましたように、学生につきましては、奨学金制度などもございます。そうはいいながら、環境の変化等で生活のために就労している学生も非常に少なくないというふうに思いますので、そのセーフティーネットの在り方というところは、社会保険などとの加入のバランスもあるかというふうに思いますので、学生も含めた短時間労働者の状況について調査をして、厚労省全体で検討を行う必要があるのかなというふうに考えております。

 以上です。

秋山参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 全労連としては、学生に対しては高等教育無償化を含めて無償化すべきだということが基本にありますので、生活に心配なく学業に専念できるようにするというのが基本だというふうに思っております。

 したがって、学生を適用対象にするというのは余り賛成できないというふうに思っております。

中島(克)委員 ありがとうございます。

 先週金曜日に質疑の中で政府にこの問いが投げかけられたら、けんもほろろに、そういう状況にないなんて言われたんですけれども、少なくとも、社会状況が変化している中で、やはり実態がどうなっているか、この調査分析は、これも必須というふうな御意見だったと思います。

 続いて、国庫負担の部分について、先ほど秋山参考人からはそこを中心にお話をいただきましたので、ここは、冨高参考人、平田参考人にお尋ねをしたいと思います。

 今回の改正において、育児休業給付の国庫負担の本則回帰や介護休業給付の国庫負担の引下げ措置延長など、国庫負担に関する事項が法案に含まれておりますが、雇用保険制度における、本当にそもそもですけれども、国庫負担の在り方ですね、例えば災害時の、先ほどコロナ禍での雇調金の話も平田参考人からございましたが、様々な状況に対応していくための国庫負担の在り方について、冨高参考人、平田参考人にお尋ねをしたいと思います。

冨高参考人 雇用保険につきましては、政府が管掌する強制保険制度でございまして、労使から保険料を徴収して運用しているということで、先ほども申し上げました、国庫負担と労使の保険料の適切なバランスというのをしっかり見ていかなければいけない。そのために、雇用保険財源の収入、支出、財源の活用方法というものは、その当事者である労使が参画をしている労政審で議論するものだというふうに考えております。

 そもそもの国庫負担の在り方というところでございますけれども、前回の雇用保険法の改正で、一般会計からの繰入れを可能とする規定が盛り込まれております。ただ、受給者数の急激な増減であったり、決算を待ってから判断をするというようなことで、急激な変化に迅速に対応するというところでいうと、やはり少し難しいところがあるのかなというふうに考えておりまして、そういった、国を挙げて急激な、対応しなければいけないということについて雇用保険財源を使うような場合には、労政審における判断の下、一般会計からの機動的な繰入れというものを可能とする仕組みというのも検討するべきではないかというふうに考えております。

 以上です。

平田参考人 ありがとうございます。

 国庫負担につきましてですけれども、労使の負担する保険料と、それから国庫負担、一般財源ということで、相応の負担をしていくことが原則だというふうに思っております。

 それで、前回の改正で少し制度は変わりましたけれども、財政状況が厳しいときには四分の一という負担になってきておりますので、そういった意味では、現状は適切な制度というふうに考えております。

 以上でございます。

中島(克)委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間が限られておりますが、最後、冨高参考人、大嶋参考人にお尋ねをしたいと思います。

 今回、雇用保険を通じた助成金や給付、教育訓練やリスキリングの促進に、改めてですが、どのような具体的な効果があると思われるか。また、教育訓練給付の拡充についてどのような課題があるか。先ほども少し述べられておられましたが、いま一度お尋ねをしたいと思います。

冨高参考人 ありがとうございます。

 適切な教育訓練を行うということは、社会経済の様々な急激な変化の中で、雇用の安定であったり、賃金、処遇の安定、向上に資するものだというふうに考えておりまして、雇用政策として実施をする意義があるというふうに考えております。

 ただ、教育訓練とかリスキリングについて、少し雇用保険の趣旨を超える部分等につきまして、一般財源等を活用するということも重要ではないかというふうに考えているところでございます。

 また、教育訓練の拡充の課題でございますけれども、訓練メニューとか給付の在り方についてはやはり課題もあるのかなというふうに考えておりまして、具体的な給付要件、それから給付率引上げ対象の選定については、実効性があるメニューに限定をした上で、今回、見直しで、賃金上昇というのが要件に入ったりしましたけれども、どうやって賃金上昇というところを見ていくのかという要件の検証とか、給付の公平性の観点から、そういったところをどういうふうに見ていくのかというチェックは必要なのではないかというふうに考えています。

 以上です。

大嶋参考人 今回の教育訓練回りの制度拡充に関する効果でございますけれども、特に在職者向けの支援制度というのは、在職者はふだんハローワークに行ったりしないので、なかなか情報を入手しにくいというところがございます。ですので、具体的な効果を上げる上では、在職者向けの情報提供をかなり充実していかないと効果が出にくいといった部分も出てくるのではないかと思っています。ですので、そういった情報提供につきまして、十分、新しい手法なども採用し、行っていただければと思っています。

 あと、大きなリスキリングだけではなく、小さなリスキリングもできるような支援制度の充実も行っていただきたいというのは、先ほど申し上げたとおりです。

中島(克)委員 私ども、学び直し、教育訓練、特に学び直しに関しては、社会状況の中でそういう機会をつくっていくということが非常に重要なことだと思いますが、一方で、やはり、先ほど秋山参考人もおっしゃいましたが、そもそもの高等教育の無償化、また奨学金の拡充、そして働き方改革がちゃんとできていれば、自主的に学び直しは、いろいろな、職種にかかわらず進んでいくものだというふうに私は考えております。

 秋山参考人、そのようなことでよろしいでしょうか。

秋山参考人 ありがとうございます。

 おっしゃっていただいたとおりだというふうに思っております。生涯学んでいくというのは非常に大事ですので、高等教育も含めて無償化なりの対応が図られるように願っております。

中島(克)委員 今日はありがとうございました。

 質問を終わります。

新谷委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩です。

 本日は、お忙しい中、五人の参考人の先生方に御出席をいただきまして、大変にありがとうございます。

 それでは、早速ですが、質問に入らせていただきます。どうかよろしくお願い申し上げます。

 まず、守島参考人にお聞きしたいと思います。

 人材マネジメント研究の第一人者である守島先生は、これからの企業戦略においては、社内のあらゆる人材を生かし切る全員戦力化こそが必須であり、そのためには場づくりが重要であるとお話をされておられます。

 今回の改正で、教育訓練給付が拡充され、リスキリングによるキャリアアップ、スキルアップのチャンスが広がり、賃金の上昇につながり、転職、再就職においても有利になると思います。

 守島先生は全員戦力化を提唱されておりますが、リスキリングについて、人材マネジメントの専門的な視点から、どのような意義を持つと思われているでしょうか。御見解をお伺いいたします。

守島参考人 ありがとうございます。

 全員戦力化というのは私が二年ぐらい前に出した本のタイトルでもあるんですけれども、やはりリスキリングというのは、現存している人材のスキルであるとか能力を変えていって、その企業が行う新たな戦略であるとか事業に対してフィットするような形で変えていくというのが、先ほどもありましたけれども、第一義的なテーマだと思っています。

 したがって、企業の中に今いる人たちを、できるだけ多く、できるだけ長く、できるだけ輝く形で使っていこうというのが、やはりリスキリングということをやっていく一つの意味であろうというふうに私は思っています。

 以上です。

福重委員 重要な御指摘、ありがとうございました。

 次の質問に入ります。

 今回の法改正で、週の所定労働時間が十時間以上二十時間未満の労働者にも雇用保険を適用拡大することとなっており、この改正により新たに五百万人が対象となりますが、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において、中小企業を代表する委員を中心に、事務負担等が増えることを懸念する意見もあったと聞いております。

 施行に向けては、まずは、雇用保険制度適用の意義や重要性、メリット等について十分な理解を得られるよう、労使双方向に対して丁寧な周知を行うことが重要であります。その上で、適用拡大で被保険者数が増大することにより、事業主、特に中小企業の事務負担が増えることは否定できないものであり、国としての負担軽減を図ることも重要な問題であります。

 中長期的な対応も含め、どのような対応が考えられるのでしょうか。五人の先生方に、それぞれ御意見をお伺いしたいと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 それもおっしゃるとおり、中小企業にとっては、いろいろな事務負担というのは増えると思います。

 ただ、やはり、そういう意味でいうと、例えば、IT化というかDX化というか、そういうものを使っていったり、様々な形で負担を軽減していかないといけないし、同時に、先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、働く人たちが生き生き働けるような環境をつくるという意味では、やはりこういう意味では、カバレッジを広くしていく、安心、安全を提供していくというのが重要だと思っておりますので、そういうメリットも是非訴求していきたいというふうに考えております。

 以上です。

冨高参考人 ありがとうございます。

 企業負担増につきましては審議会でも発言がございまして、報告書の中には、事業主の負担軽減というような記載も盛り込まれております。

 我々としましては、企業の規模によって労働者の格差が生じないようにしっかりやっていく必要があると思いますので、中小企業に対する支援の強化、これは助成であったり、また相談体制の強化、こういったところもあるかというふうに思いますし、今ほどございましたように、やはりそのメリットという部分についてしっかり周知をしていくことが重要というふうに考えております。

 以上です。

大嶋参考人 私も、事務負担の拡大につきましては、特にパート、アルバイトの雇用が大きい企業におきまして大きな負担になると思っており、負担軽減に関わる対応というのが非常に重要かと思います。

 一方で、今後日本が労働供給制約が拡大していく中で、新たに、これまで働いていた人に働く時間をもう少し延ばしてもらうであるとか、あるいは、社外の方にセーフティーネットや学び支援を受けられる良質な雇用機会であることをアピールして、採用を増やすといったメリットもあると考えておりまして、そうしたメリットを中小企業の方々にきっちりお伝えしていくことが重要ではないかと考えています。

平田参考人 ありがとうございました。

 冒頭の陳述でも申し上げたとおり、働き方に中立的な制度であるということが原則だと思っておりまして、そういった原則に立って一定の線を引いたというのが十時間以上ということだというふうに理解しております。

 その上で、確かに、労政審の場において中小企業の代表の方から負担に関する指摘がありましたけれども、確かにそのとおりかもしれませんが、それを上回るメリットもあるというふうに考えておりますので、加入に関わるメリットを丁寧に周知をしていくことが大事だということと、それから、事務負担も含めて簡素化ができるのかですとか、オンラインによって簡単にできるのかとか、そういった観点からも実態を踏まえて検討して進めていくことが大事だろうというふうに思っておりますので、施行までまだ少し時間がありますので、そういった検討も必要なんじゃないかというふうに思っております。

 以上です。

秋山参考人 御質問ありがとうございます。

 中小企業の負担が多分増えるだろうなと私も考えております。中小企業を経営するに当たり、様々な手続、いろいろなことをやらないといけない経営者にとって、負担が大きくなるのはできるだけ避けたいところでありますが、適用拡大ということを考えれば手続をしていただかなければならないと思います。

 その中でどのように国として支援ができるかというところでは、できるだけ、社会保険労務士の制度とかいうのもありますけれども、そういった制度の周知であるとか、国としても、事務がきちんとできるように職業安定所なんかが支援できるような体制を整えることが重要ではないかなというふうに思っております。

 以上です。

福重委員 ありがとうございました。

 五人の先生方、それぞれ前向きな御答弁をいただきまして、まだIT化とか国の支援だとか、様々やっていかなくちゃいけないことはしっかりやっていかなくちゃいけないわけでございますけれども、またそれぞれの知見を今後も教えていただきながら是非この推進をしていきたいなというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 今回の改正で、被保険者になりますと、同時に、教育訓練給付制度の対象者にもなります。この教育訓練給付制度は資格習得や技能習得を目指す約一万五千の講座があり、昨年度は約十一万七千人が利用したとされておりますが、さらに、今回の改正で給付率が引き上げられることになっております。

 ただ、こうした拡充は雇用保険が原資でありますが、教育訓練給付制度の利用者が急増した場合、雇用保険財政に影響を与えるのではないかと思います。新型コロナ禍による不況で財政が枯渇したことを踏まえ、労使の保険料だけではなく、国庫からの負担を増やすような議論もあったとお聞きしております。

 今後の財政基盤をどう確保していくかが課題であると思いますが、五人の先生方にそれぞれの御意見をお伺いさせていただきます。

守島参考人 ありがとうございます。

 まさにそれもそのとおりでありまして、国全体が三位一体の労働市場改革のような、いわゆるリスキリングみたいなものに力を入れていくという中では、今回の雇用保険の変更、改革は重要だというふうに考えます。

 ただし、無尽蔵に増やしていくことがいいかというと、そうでもなくて、保険料の増加にもつながりますので、やはり、そういう意味でいうと、プログラムを選んで、国庫の負担とそれから保険料とのバランスというのを考えていかないといけないのではないかなというふうに思っております。

冨高参考人 教育訓練でございますけれども、これは国の重要な政策課題ということで、それを踏まえれば、基本的には、国の責任によって、一般財源も入れて活用していくべきではないかというふうに考えております。

 また、給付が増加した場合の財源の在り方であったり、それから、今ほどもございましたけれども、より受講しやすい、訓練効果の高い講座の設定、こういったところをしっかり労政審等で検討を進めていく必要があるんだろうと考えております。

大嶋参考人 私も、無尽蔵に教育訓練の給付を増やしていくということは適切ではないと考えております。

 欧州では、職業別の労働組合が職業の領域の中で、キャリアラダーであるとか職業訓練との接続を考慮しながら必要な訓練と個人を接続していくというような機能もございますが、こういった給付を行うに当たっては、その人にとって本当に役立つスキルと接続するような取組も非常に重要であり、そういったことを通じて効率的な制度としていくことがこれからも重要になると考えています。

平田参考人 ありがとうございました。

 冒頭にも申し上げたことですけれども、今回新たに創設される生活を支える給付ということで、これを教育訓練給付と位置づけて一般財源が入るということでございますので、これは政府として人への投資にしっかり取り組むという姿勢が表れているというふうに思っております。

 それから、給付率が引き上げられる部分もありますけれども、これがどのように影響するのかということは、ちゃんと実績ですとかを踏まえた上で今後どうするかということだと思いますけれども、人への投資を進めて日本全体の生産性が上がるということであれば国全体の成長にとってプラスということですので、じゃ、それを保険料で支えるのか、一般財源、国全体で支えるのかというのはあると思いますので、今後の実績等も踏まえて、財政状況も踏まえて検討が必要なのではないかというふうに思っております。

秋山参考人 教育訓練給付の拡充ということにつきましては、科目によってのいろいろな違いとかもあるかと思いますが、そういうのも見ていくことは必要だというふうに思います。

 ただ、企業側からすると、転職するために学んでいるとなると保険料を払うのが嫌になってくるんじゃないかなという危惧を持ってしまいますので、やはり、国がきちんとした財源の確保を図っていく、公費負担を大きくしていくということが必要じゃないかな、その状況は、受講している状況なんかを見ながら考えていかないといけないかなというふうに思っております。

福重委員 それぞれの御意見、ありがとうございました。

 次に、大嶋参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど大嶋参考人のお話の中で、リスキリングには個人主導と企業主導の二つの形態があるというふうに示されました。特に、個人主導については、自己学習の意識が薄く、受講者全体が大体約三割程度ではないかというようなお話がございました。

 実は、私は、議員になる以前、大学を卒業して十八年間、電子部品を製造するメーカーに勤めておりまして、私の会社も結構こういった通信講座等の学び直し、これが非常に充実をしておりました。ただ、それでも二割から三割ぐらいだったと思います。二十年以上もたっておりますので大分、リスキリングと変わっているとは思いますけれども、そういった意味で、やはりもうちょっとこういった受講生を上げていくインセンティブだとか、あと、これは企業側の努力なのか、それとも政府、行政の努力なのか、こういった数字を上げていく方策に関しまして何かありましたら、お知恵をいただければというふうに思います。

大嶋参考人 御質問ありがとうございます。

 今、リスキリングは誰の責任かという御質問をいただいたかと思いますけれども、海外では、リスキリングはどちらかの部門だけで達成できるものではなく、企業、国、地方、それから個人、それからNPO等も、あらゆる主体が連携して進めていくべきという意識の下で、様々な形でステークホルダーが連携していくといった取組が進んでいます。

 私は、やはり企業がリスキリングを進めていく余地というのはまだ非常に大きいと思っておりまして、企業のニーズに沿った形でリスキリングの機会を個人に増やしていくということも非常に重要ですし、また、個人がどうしても自分で学べない、学ぶ習慣を持っていないということもありますので、企業主導だけでなく個人が学ぶ機運を、様々なところに今壁があるという状態ですので、何か一つをやればいいというわけではなく、すごく遠回りに見えるかもしれませんが、例えば、意識の問題もそうですし、給付の問題もそうですし、働き方の問題もそうですし、少し長い時間軸での個人のリスキリング喚起の取組が必要であると考えております。

福重委員 五人の先生方、今日は、短い時間でございましたけれども、本当に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。しっかり、知見をいただいて、我々も今後も推進をしてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 本日は大変にありがとうございました。

新谷委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、五人の参考人の皆さん、大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 まずお伺いしたいのは、育児休業給付に係る国庫負担の問題でございます。

 子供をなぜ欲しいだけ産めないのかという問いが立てられた場合に、いろいろな理由の一つとして育児の負担というのが挙げられて、とりわけ日本の場合は、女性に家事、育児の負担が集中している。そういう点では、男性が育児に参加する動機づけとしても、男性の育児休業取得というのが、これは政府を挙げて取り組もうということになっているわけであります。

 そういうことを考えると、育児休業給付の国庫負担、今回、本則の八分の一に戻すわけですけれども、本来もっと引き上げてしかるべきではないのかという思いを私は持っているんですけれども、この点、五人の参考人の皆さんの御意見をお伺いしたいと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 要するに、育児給付というのは、その性質が大分変わってきたんだと思うんですね。最初は、いわゆる子育て状態というのを失業と考えて、そこに対する所得補填というところが大きかったんですけれども、それ以降、まさにおっしゃるように、今は国全体の少子化対策ということになっているんだと思います。

 そうなってくると、ここからは個人的な考えですけれども、国がもっと全面的に負担をするべきだというふうに私は個人的には考えております。やはり国として対策を練る時期にだんだん入ってきていると思いますので、そう考えております。

 以上でございます。

冨高参考人 御承知のとおり、日本の育児休業給付というものは雇用保険を財源にしておりますので、そういった意味では、今、フリーランスなどの方たちというのは給付を受けることはできません。ただ、妊娠、出産というような事象というのは、これは雇用保険被保険者かどうかということに限らず発生するものでございますので、また、今あったように、少子化対策という観点からも、国がより積極的に、雇用保険財源以外、一般財源から支出するということも幅広に検討すべきだというふうに考えております。

 以上です。

大嶋参考人 個人的な意見になりますが、育児休業給付のここまでの充実というのは、この制度において少子化対策という意味合いが非常に強くなってきたことを反映していると考えています。

 今御指摘がございましたように、自営業とかフリーランスの方々がこの保障から漏れてしまっているといった問題も、近年、非常に働き方が多様化する中で大きくなっております。その意味では、私個人としても、多様な方々の保障ということで、一般財源というか国庫負担としていくことが最終的には望ましいのではないかと思っています。

平田参考人 ありがとうございます。

 現在の雇用保険制度の枠内でやっている給付を賄うものとしましては保険料とそれから国庫負担ということで、相応に負担ということが原則ということは先ほども申し上げたとおりでございますけれども、雇用保険制度の枠を超えて少子化対策の性格が強いものについては、先生御指摘の方向で、国庫負担を更に引き上げるべきという、そうすることが望ましいというふうに考えております。

秋山参考人 育児休業給付の国庫負担についてでありますが、制度として、全体的に国庫負担については引き上げるべきだというふうに考えております。

 ただ、ほかの方もおっしゃられているとおり、被保険者を対象にしているものでありますので限界はあると思いますから、あと、いかに広げるか、少子化対策とはちょっとまた別個に考える部分は必要かなというふうに思います。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続きましてお伺いしたいのは、本法案で教育訓練休暇給付金というのが新しく導入されるんですけれども、秋山参考人に、まずこの課題についてお伺いしたいと思います。

秋山参考人 教育訓練休暇給付金という新たな制度でありますけれども、制度そのものに反対ではないんですが、労働者がこれを受給をすると被保険者期間がリセットされてしまって、訓練給付金を受けてから失業給付を受けられるようになるには、休暇の終了後一年以上被保険者期間がなければ受けられないという問題があります。

 倒産の場合は経過措置として特定受給資格者としての受給ができるような法のたてつけにはなっていますけれども、教育訓練を受けることによって、休業して休むことによって被保険者期間がリセットされて、失業したら給付が受けられない状態が長く続くというのは、ちょっといかがなものかなというふうに思っております。

 こうした点については、受給する労働者に十分に周知しておかないと、いざ失業したときに受けられないというようなことがあって、窓口でのトラブルにもなりかねないと思います。きちんとした判断材料の一つとなると思いますので、失業給付を受給したことと同じ効果があるということについて、厚生労働省には十分な周知を図っていただきたいというふうに思っております。

宮本(徹)委員 冨高参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、今、秋山参考人から、一旦この新しくつくられる教育訓練休暇給付金を受けると、それまで何十年と加入していた雇用保険の期間がリセットされてしまうと。そのため、次に失業してしまった場合のデメリットが生じるわけですよね。その点についてはいかがお考えでしょうか。

冨高参考人 今回の様々な見直しについては、非正規の方が使いづらいとか、今言ったようなデメリットの部分があるということも含めて、融資のところもそうでございますけれども、これを利用すると、こういったメリットもあるけれども、こういったところに留意しなければいけないということは幾つかあるというふうに思いますので、その点、きちんと周知していく必要があると思います。

宮本(徹)委員 同じ点を大嶋参考人にもお伺いしたいと思います。

大嶋参考人 この手続のフローを考えたときに、労働者の方に今先生がおっしゃっていただいたようなデメリットがきちんと伝わらない可能性ももしかしたらあるかもしれないと思っていまして、私も、制度を利用する個人がその選択肢のメリット、デメリットをしっかり把握できるような手続を経ることが必要なのではないかというふうに考えます。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続きまして、秋山参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、労働行政の現場におられたわけですけれども、先ほどの意見陳述でも体制の拡充が必要だということを相当強調されておりましたが、実際は、二〇〇四年ぐらいからずっと現場の人は減らされるということが続いてきまして、その代わりに非常勤の皆さんがどんどん増えてくる、その非常勤の皆さんも三年に一度の公募というのが行われて不安定という問題があるわけですけれども、こういうことによってどういう課題がハローワークの現場で起きているのかということをお伺いしたいと思います。

秋山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 全国のハローワークにたくさんの非常勤の方が、窓口、第一線で頑張っていただいております。三年に一回の公募もあるということで、自分自身が勤めている仕事を公募によって、紹介してほしいというふうに求職者から言われて、自分の仕事のところに応募者を紹介するというようなことをしないといけないというようなケースで、それを理由にして、採用は、公募に応じて受かっていたんですけれども、その後にメンタル疾患で休んでしまったという例なんかがやはり聞こえてきます。

 非常勤で、不安定な雇用で職業をあっせんするというのは大変矛盾したところでもありますので、安定した雇用に是非していただきたいなというふうに思っております。最近は、少しハローワークの職員を増やす方向になってきていると思いますので、非正規の方の雇用安定に是非つなげていただきたいなということを思っております。

宮本(徹)委員 続きまして、冨高参考人と秋山参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、基本手当の水準、これが低いんじゃないかという話も私はよくお伺いします。そして、今回の法案とセットで、基本手当の下限額も引き下げるということになっていくわけですけれども、この基本手当の水準についてどう考えるのかということをお伺いしたいと思います。

冨高参考人 ありがとうございます。

 基本手当の水準でございますけれども、二〇〇〇年及び二〇〇三年の改正で様々な水準が引き下げられたという経緯がございます。

 我々としては、雇用保険の本来の趣旨であるセーフティーネットの充実という観点からすれば、こういった水準を二〇〇〇年の改正前の水準まで回復すべきであるというふうに考えておりまして、この点につきましては労政審でも申し上げてきたところでございます。

 以上です。

秋山参考人 基本手当の水準につきましては、引上げを図るべきだと、冨高参考人の方もおっしゃっていたとおりであります。コロナのときに、雇用調整助成金の関係で、給付の額を、上限を引き上げたということがありましたが、生活を支えるためには上限が低過ぎるというふうに思いますので、基本手当の水準は引き上げていただきたいというふうに思っております。

宮本(徹)委員 続きまして、今回の法案で、給付制限の期間が、教育訓練給付を受ける場合はなくすということがあるわけですけれども、それ以外のケースは、多くは一か月ということで、まだ給付制限期間が残るわけですけれども、私はもうすっきり給付制限期間は全部なくした方がいいんじゃないかと思うんですけれども、この点、五人の参考人の皆さんにお伺いしたいと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 そういう議論もあると思います。

 やはり、失業というものをどう捉えるのか、どういうふうな理由で失業に入ったということを考えるというのが、今の給付制限の一つの重要な要因だというふうに思うんですけれども、そういうことも含めて、失業が一体どういうふうな、雇用保険の中で失業をどう捉えていくのかということについては、これからやはり検討していかないといけない問題だというふうに私は思っております。

冨高参考人 労働者の立場からしてみれば、基本手当の受給制限を短縮するということは、収入がない状況を早期に脱出することができるということであったり、先ほどございました失業給付の受給者割合の向上にもつながるのではないかというふうに考えておりますので、望ましい方向性だというふうに思っております。

大嶋参考人 給付制限の措置につきましては、モラルハザードの防止の観点から設けられていると承知していますが、挑戦する人に対しても給付制限を行うことで、その挑戦をそいでしまうといった問題があると考えており、給付制限というのが本当に必要かどうか検討する必要があると思っています。

 その際には、給付後にモラルハザードを防ぐような措置と、給付前にモラルハザードを防ぐような措置のどちらが有効なのかといったことも含めて検討が必要であると考えます。

平田参考人 ありがとうございます。

 倒産、解雇等で離職された方と全く同じというわけにはいかないというふうに考えておりますので、今回の改正案というのは適正なんじゃないかというふうに思っております。

秋山参考人 ありがとうございます。

 給付制限につきましては、基本的にはなくすべきだというふうに思っております。退職理由によって給付日数に差異が設けられている現状にありまして、給付制限があることによって給付が受けられない期間があるということは、二重にちょっと差が設けられているというような感じを受けておりますので、給付制限についてはなくしていっていただきたいなということを思っております。

宮本(徹)委員 時間になりましたので、終わります。どうも、貴重な御意見、ありがとうございました。

新谷委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 今日は、参考人の皆様、ありがとうございます。大変に参考になりました。それぞれの皆様から、質問をしたいと思っています。

 私からは、教育訓練、そしてそれに係るリスキリングという視点で質問をさせていただきたいと思います。

 まず、求職者支援制度についてお聞きをしたいと思います。

 これは雇用保険者でない者に対する支援であるということで、給付と負担の対応関係がゆがめられているんじゃないか、また、雇用保険から支出することについての疑問という声もしばし出ていますが、まず冨高参考人に、雇用保険の被保険者でない者の教育訓練を支援するというこの求職者支援制度についてどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。

冨高参考人 求職者支援制度につきましては、今ほどございましたように、雇用保険が受給できない方を対象にしたものでございまして、第二のセーフティーネットとして、雇用の安定に向けて一定の役割を果たしているというふうには考えております。

 ただし、やはり、今ございましたように、この求職者支援制度につきましては、制度の利用者というものが雇用保険被保険者ではないということでございますので、将来的には、雇用保険制度から分離独立した制度として、全額一般財源で行うような見直しというのも必要なのかというふうに考えているところでございます。

 以上です。

田中(健)委員 その関連となりますけれども、雇用保険の被保険者でないフリーランスなどは、教育訓練を、支援を受けることができません。この被保険者以外を含め、人材育成について、労働者の立場からどのようにお考えになっているか、併せて冨高参考人に伺います。

冨高参考人 御指摘のように、フリーランスの方たちは雇用保険制度における支援は受けられないということでございますが、やはり人材育成というのは、雇用の安定とか安定した就労というところに、重要だというふうに考えておりますので、例えば、産業政策のような観点から、雇用保険ではなくて、業所管省庁の予算等も活用しながら人材育成を支援するような仕組みというものがあれば、そういったフリーランスや個人事業主の方も対象となるのではないかなというふうに思います。

 それから、現在の雇用保険制度で指定されているコースにつきましては、産業ごとの偏りみたいなものがございますので、そういったところの偏りの見直しというのは労政審の中でしていく必要があるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

田中(健)委員 教育訓練、これは最後になりますけれども、質問をさせてもらいますと、効果的に実施するには、労働者として、先ほど来、リスキリングが、企業の必要性ということも述べられておりましたが、どのように実施することが効果的に、教育訓練、果たせるのかということも、最後、冨高参考人にお伺いさせていただければと思います。

冨高参考人 ありがとうございます。

 教育訓練につきましては、非正規雇用の労働者も含めて、やはり一義的には企業の責任でしっかり実施していただくことが重要なのではないかというふうに考えております。いずれにしろ、どこかの企業や職場に所属をしているわけでございますので、まずそこの企業がきちんと責任を持つということが重要だというふうに考えております。

 ただ、二〇二一年のJILPTの調査ですと、教育訓練の課題として、指導する人材の不足であったり、人材育成の時間がないというようなことが上位に来ているというような実態もございましたし、正規雇用の方に比べて、先ほど申し上げたように、非正規の方については、教育訓練の実施率とか支援が低いというような状況がございますので、雇用形態にかかわらず、労働者が能力開発を行える時間を確保するということであったり、指導者を育成する、こういった視点も重要なのかというふうに考えてございます。

 それから、今回、法改正の中で、在職中に教育訓練のために休暇を取得した場合の給付制度が創設されますけれども、そもそも、教育訓練のための休暇制度がある企業自体が少ないという状況がございますので、そこを推進していくというようなこともあるかというふうに思っておりますし、ここで知識を身につけた場合には、その努力に見合った賃金の上昇などのインセンティブも重要だというふうに考えております。

 以上です。

田中(健)委員 今、労働者側から、企業の責任、また立場もお話をいただいたんですけれども、大嶋参考人に、その中で、先ほど、企業主導のリスキリングに対する支援の充実、拡充をお話をいただきました。また、リスキリングは、企業やあらゆる主体、社会の責任というふうに位置づけられているということも先ほどお話を聞きました。

 その中で、企業と労働者がこれからどのようにしてキャリアアップ、リスキリングを進めていくかということの中で、今までどうしても労働者の人たちは、賃金とか、どちらかというと雇用維持という役割が強かったと思うんですけれども、どのようにしてこれから、キャリアと若しくは技術とか能力というのを、労働者側そして企業側が企業の責任という名の下に共につくっていくというか、何が必要かなということを聞いていて考えたんですけれども、大嶋参考人のお考えがあれば、お聞かせいただければと思います。

大嶋参考人 企業と労働者双方が、リスキリングというものを起点に、お互いの成長を実現していくためにどうしたらいいかというふうに御質問いただいたと理解しています。

 その上で、やはり、そういった戦略をつくれるというのは経営者の責任でもあると思っています。ただ、いろいろな関係者の方にお伺いすると、やはり経営者の方が、人手不足であるとか、いろいろな問題に忙殺される中で、そういった新しい技術の情報を確保したり、そういった戦略を立てることが難しい状況にあるということも言われていますので、まず、経営者の方のリスキリングを進めるような政策というのも進めていく、その中で、従業員の方にリスキリングを行うことのメリットについても併せて周知していくということが必要ではないかと考えます。

田中(健)委員 企業側の必要性をお話しいただきましたけれども、企業と労働者が一緒になってリスキリングをしていく、そのためには、まず経営者側のリスキリングが必要だということなんですけれども、経営者の団体の、経団連の平田さんから、今のお話を聞きまして、企業が、リスキリングの必要性、そして労働者とどのように前に進めていくのかということについてお考えがあれば、お聞かせいただければと思います。

平田参考人 ありがとうございます。

 この問題は、企業と働き手とそれから政府ということが一体となって、それぞれすべき取組を進めていかなければならないと思っておりまして、政府の取組としての一つが今回の制度改正というふうに理解しておりますし、それから企業としても、働き手に対して、経済的な支援ですとかそれから時間的な支援を通じて学び直しを支援するということに加えて、学んだ知識とかスキルを次の仕事に生かせるように、仕事と学びの好循環と言っていますけれども、例えば社内公募制度を実施してみたり、それからFA制度という考え方もあろうかと思いますけれども、学んだものを会社で、仕事で生かせるように、そういった配慮も必要なんだろうというふうに思っております。

 以上です。

田中(健)委員 企業の中で、いい意味での好循環がそのように進めばいいんですけれども、やはり先ほども話が出ていましたが、リスキリングをすることで離職につながるんじゃないかというような懸念もあります。

 政府はこの間、人への投資ということで、リスキリングは、今回だけでなく、二〇二二年から、五年間で一兆円ということを目標に掲げて取り組んできまして、私たちはどうしても労働法制の中で給付と負担の話で今しているんですけれども、他の省庁を見れば、経産省なんかは目玉事業で、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業などということも行っています。これはあくまで転職が前提ということで、受講したら転職をするということが仕組みとなっているんですけれども、企業側とすれば、転職が前提であって、リスキリングをすると会社を出てしまうというのは、会社にとってはリスキリングはいいことなのか、それとも悪なのかというふうな発想につながりかねない、ないしはそれに消極的になってしまうんじゃないかとも思うんですけれども、そこについてはどのようにお考えになっているか、平田参考人にお聞かせいただければと思います。

平田参考人 ありがとうございます。

 確かに、そういう御指摘はいろいろと聞くところでございまして、せっかく投資をしたのに、転職をしてしまわれると回収できないということだろうというふうに思っておりますけれども、方向性としては、そういうことも、働き手のリスキリングに積極的でないと、そもそもその企業が魅力的ではなくて定着が望めないということでございますので、投資が回収できないという懸念もあると思いますけれども、企業としては、そういったことに今後積極的に取り組んでいかなければならないんだろうというふうに思っております。

 以上です。

田中(健)委員 その中で、守島参考人にお伺いしたいんですけれども、守島参考人、この間、会社と社員の関係に変化が起きているということを常々おっしゃっていらっしゃいます。フラット化、対等化が進み始めているという中で、リスキリングに関しては、あくまで今、企業が促しているな、やはり個人でのリスキリングというのがこれから必要だということを述べていらっしゃるんですけれども、今るる、労働者側、また企業側からのリスキリングの在り方や考え方をお聞かせいただきましたが、会社と社員の関係がどう変わり、そこの中の位置づけでリスキリングをどう考えればいいのかということを、お考えがあれば、お聞かせいただければと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 確かにそのとおりで、今のこのフェーズでは、企業がリスキリングをする、企業が主語になってやるということがメインだと思いますけれども、やはりこれからは労働者と、働く人たちが対等になって、働く人たちは自分のキャリアを自分で描いていく。それは、対等になるという中には厳しさというのも入ってくるわけですけれども、それも含めた上でだんだん対等になってくると思うんですね。

 先ほどの話にもありましたけれども、労働市場の流動性というのは高まっていますし、そういう意味でいうと、やはり働く人たちが自分で自分のキャリアをつくっていく、そういう時代に入っていく中でのリスキリングであって、人生百年時代、やはり、自分のスキルを何回か、人生の間、キャリアの間、変えていくということが重要になってくるので、リスキリングというのは、今はバズワードですけれども、だんだん一般語になってくるのではないかなというふうに思っています。

田中(健)委員 個人のリスキリングがこれから必要になってくる中で、今回、法改正の中では、ハローワークの中にキャリアコンサルタントが常駐をして、キャリア形成・リスキリング相談センターというのが四月一日からまさに四十七都道府県で始まりました。これは十九か所だったのを一気に増やしたということで、その意気込みは感じるんですが、実際、そのようにワークしていくかなということがまだまだ分かりません。

 その中で、やはり必要なのは、先ほど、大嶋参考人、リスキリングしても給料が上がらないというような現実もあるという中で、相談対応者が、どういった能力を身につければいいのか、どういった利点があるのかというのを相談支援の中で明確にすることが必要だと思いますし、そのためには、先ほど、企業のヒアリング等もあって、どのようなスキルを身につければ、人材に、また次の仕事につながるか、ないしはスキルアップにつながるかといった企業ニーズをどういうふうに把握するのかというのが大事かと思い、それをこのセンターで全てできるのかなというちょっと思いもあるんですけれども、企業のニーズと、そして相談支援というものがどのようにすればうまくワークしていくのかというのが、大嶋参考人のお考えがあれば、お聞かせいただければと思います。

大嶋参考人 ありがとうございます。

 冒頭で申し上げましたように、企業ニーズの把握というものは非常に重要だと個人のリスキリングを進める上でも考えておりまして、建設業界で進めているようなスキルの明確化という取組はほかの業界でもできることであり、まずは、仕事に根差してどのようなスキルが必要なのかといった情報を各業界団体が明確にしていくこと、それで、ハローワークだけでそういった情報を収集することはとても難しいと思いますので、そうしたハローワークと業界団体が連携していくことというのも重要だと考えます。

田中(健)委員 ハローワークの話が出ました。なかなかハローワークだけでは難しいという話がありまして、先ほどの質疑の中でも、秋山参考人の方からハローワークの現状も、大変な現状をお聞きをしました。ハローワークにいろいろな仕事、今どんどんと役割が増えている中で、どのようにして相談支援ということを充実させていけばいいのか。もちろん、非正規の人たちを正規雇用にしていくのも必要かと思うんですけれども、何かお考えやアドバイスがあれば、お聞きをさせていただければと思います。

秋山参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 ハローワークを充実させていくことは必要だというふうに思っていますが、ハローワークだけでできるものではないというものもたくさんあると思っておりまして、民間の職業紹介会社を含めて、いろいろなところと連携が必要だというふうに思います。

 ただ、情報をやはりどこかできちんと把握をしてコントロールするというか、政策的なことをするためには、中心となる機関としてハローワークが置かれるべきだというふうに思いますので、そこに情報がうまく集約されて共有化されていくというような仕組みがつくられていくことが重要ではないかなというふうに思います。

 その意味でも、今のところは本当に来られる方の対応だけで精いっぱいのところがあるので、そこらあたりを拡充させていくようなことができればいいんじゃないかなというふうに思っております。

田中(健)委員 時間となりました。

 参考人の皆さん、ありがとうございました。

新谷委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 無所属で四人の会派を、有志の会を組んでおります福島伸享と申します。

 五人の参考人の先生方、今日は本当にありがとうございました。

 守島参考人から、雇用を守るという意味が変わってきたというお話がありました。雇用保険は、新たな仕事に移動させるために備えることが役割になってきて、正規を守るから、非正規の支援強化、セーフティーネットに役割を変えているのかと、なるほどなというふうに思いました。

 私も、四回落選して、失業を四回しているんですけれども、そこは笑うところじゃないんですよ、その間、自分で稼がなきゃならないわけです。ただ、私の場合は自分で会社をつくって、妻と二人の会社になるわけですけれども、そうすると、ほとんどセーフティーネットというのは何もないし、私の地元の周りを見ても労働組合に加入している人というのはほとんどいないんですね。

 そういう意味では、今の雇用保険の制度にしても、労働者保護の仕組みにしても、現状にマッチしていない部分もあるし、恐らく変わっていかなきゃならないんじゃないかと私も思うんですけれども、そうすると、雇用保険だけじゃなくて、年金とか、労働者保護の制度とか様々なものを変えなきゃならないと思うんですけれども。

 今回の改正は、こうした雇用保険のそもそもの理念というかそういうものを変える可能性もあるものだという認識について、冨高参考人、秋山参考人、どのように認識をされているか、お伺いいたします。

冨高参考人 私は、労働者の立場からすれば、やはり、失業したり、まあ雇用の安定というところをしっかり図る、そのために支える制度というのはこの雇用保険だというふうに考えております。

 おっしゃるとおり、働き方は多様化しておりまして、雇用保険で救えない部分もございますが、その部分はまた、例えば曖昧な雇用の問題としてどういう支援をしていくかというところを考える必要はあるというふうに思いますけれども、雇用保険というものはやはり一義的には雇用の安定のためにいかに制度を充実させていくかということだというふうに考えておりますし、そのための教育訓練というのは重要だというふうに考えております。

 ただ、ちょっと、今のリスキリングとかそういったところについては、多少雇用保険の範疇を超えているのではないかというふうに考えているところでございます。

秋山参考人 ありがとうございます。

 一番の不安定雇用が国会議員の皆さんかと思ってしまいましたけれども。

 労働者を含めて、働く人たち、国民を含めて、生まれてから亡くなるまでの間にどういうふうな生活をしていくかでありますが、誰もが安心して老後を迎えられるような社会にするということが本当に基本的に大事だなというふうに思っています。その意味で、社会保険とか含めて様々な制度があって、それぞれの役割があるというふうに思っております。

 雇用保険は、被保険者、働いている人の保護をするという、生活の、雇用の安定ということでありますので、その趣旨、目的に沿った形が基本だというふうに思いますが、おっしゃられたように、昨今の少子化の問題とか対策とか含めて、いろいろなことが入ってきているというところがあります。

 改めて、その辺りの状況、社会の変化とかを見据えながら、理念等を含めて検討するということはあり得るだろうというふうには思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 次に、雇用保険の適用拡大についてなんですけれども、また守島参考人の言葉を引くようで恐縮なんですけれども、今後は十時間という要件もなくすべきじゃないかという話がありました。

 一方、今、十から十五時間ぐらいのところ、働いているところの会社というのは、三割ぐらいが社員三十人未満の零細企業であります。やはり、先ほど来ありますけれども、事務負担じゃなくて、そもそもの保険料の負担が重いわけでありますし、働く側も過半数が加入したくないと言っているんですよね。人集めになるんだったら、保険に加入しない分給料を上げますよと言ってあげた方が、もしかしたら加入してくれるかもしれないし、ちっちゃな中小零細企業に新たな負担が生まれるということを説明するのは難しいと思うんですよ。

 今まで議論がありましたけれども、今までの説明を聞いて、私自身中小零細企業の経営者として、うちは加入していますよ、それでも加入していますけれども、じゃ、それで加入しようとなるかといったら、ならないと思うんですね。

 その点、どういうふうに伝えていけばいいのか、守島参考人、そして平田参考人のお考えをお伺いしたいと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 先ほど申し上げたように、今回の適用拡大というのは、今までカバーされていなかった方々を支援していこうという取組であって、そういう意味でいうと、国家の一種の方針というか政策として重要な話だろうというふうに思っております。

 その上で、もちろん、中小零細企業がいろいろな意味でその中で苦しむであるとか、参加できないという状況があると思うんですけれども、そこの部分はやはり、長期的な流れの中でいろいろな意味で解決していく、そういう問題であろうというふうに思っております。

平田参考人 ありがとうございます。

 私も、繰り返しになってしまうんですけれども、加入のメリットも当然あるというふうに考えております。失業したときだけではなくて、教育訓練ですとか、それから育児休業ですとか、そういった給付も受けられるということですので、負担ばかりではなくて、働き方に中立的な制度とするよう、そういったメリット面も含めて丁寧に説明をして理解をしていただくことが大事なんだろうというふうに思っております。

福島委員 やはり、お二人の参考人の方を聞いても、中小企業の経営者の立場になったときに、国家の政策だから入れとか、失業とか、リスキリングのメリットがあるというと、それは働く側にはメリットはあるけれども、中小企業の経営者に対してのメリットというのはなかなか感じられないと思うんですけれども、その点、もう一度、守島先生、どう説得というか、御理解いただければよろしいと思いますか。アイデアがなければないでも結構なんですけれども、お願いいたします。

守島参考人 ありがとうございます。

 やはり、一つのメリットというのは人材確保だというふうに思っています。今、御存じのように、中小企業は特に、日本全体ですけれども人手が足りないという状況が多くなっておりますので、働く人たちを確保するというメリットは多分あるんだろうというふうに思っております。

 そういうふうなメリットを周知することでできるだけ多くの方々に入っていただく、もちろん、負担も軽減するという方向で考えていくことは重要だと思いますけれども、その両面からやはりアプローチしていくというのが重要じゃないかなというふうに思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 けちをつけるわけじゃないですけれども、私だったら、保険料を払わない分あなたの給料を上げますと言った方が人が集まると思うので、多分経営者はそういうふうに考えると思うので、ここはなかなか難しいのかなと思います。

 三番目、教育訓練支援給付金についてですけれども、教育訓練休暇制度があることが恐らく前提になっているんじゃないかと思うんですけれども、その制度がある企業は二割にも満たないという現状があります。

 大嶋参考人にお聞きしたいんですけれども、なぜ教育訓練休暇制度の導入が進まないのか、今回の給付金制度ができれば企業に、雇用保険休暇給付金の、制度導入のインセンティブに果たしてなるのか、なるとしたらそれはなぜなのか、その辺りについて教えていただけませんでしょうか。

大嶋参考人 教育訓練に関する休暇制度が企業で二割と導入割合が非常に低いということにつきましては、やはり、そこの休暇制度において学んでもらう内容と、企業の事業戦略上、従業員に学んでほしいことの接合が難しい場合が出てくるということがあるのかと思っています。

 ただ、この休暇制度自体は任意の制度ということなので、この制度を導入することで従業員のメリットを訴求するということに主に企業のインセンティブがあると思っておりまして、また、この制度をきっかけに休暇制度の利用が増えるかと思っていますが、ただ、企業が行うリスキリングというのは基本的には企業の戦略に沿って行われるものが中心だと思いますので、この休暇制度は、どちらかというと、福利厚生的な意味も私は大きいというふうに思っています。

 その辺の制度の意味づけとか、切り分けとか、再三になりますが、利用に当たってのデメリット等についてきちんと周知していくことが必要だと考えています。

福島委員 次に、介護休業給付の問題なんですけれども、これはなかなか実績が上がっておりません。今回、実績が上がらないから国庫負担も本則に戻さないということで、論理関係が逆なんじゃないか。国庫負担を本則に戻した上で、介護休業給付の実績を上げると。

 私の事務所でも一人、父親の介護が必要になって辞めざるを得なくなった秘書がいるんですけれども、これは恐らく、給付をしても辞めざるを得なかったと思うんですね。

 様々な理由があって、育児と介護ではまた全然別の事情があるんじゃないかと思いますけれども、なぜ介護給付が広がらないのか、これは守島先生と冨高参考人にお伺いをしたいと思います。お願いします。

守島参考人 ありがとうございます。

 現時点で広がらないというのは、やはり一つは、制度の在り方と、それから実際の、まさにおっしゃったような介護の実態というものが合っていないところというのはあるんだと思います。

 したがって、これからやはり、少し時間はかかりますけれども、何らかの形で介護給付の在り方というものを変えていって、もっともっと実態に合ったものにしていかないといけないんだろうというふうに思っております。

冨高参考人 私も若干似たような印象を持っておりますけれども、介護休暇につきましては、元々趣旨としては施設に入れるための時間ということですけれども、実際には面倒を見たいとか、そういった形で、少しそこのミスマッチなどもあるのかなというふうに思っております。

 例えば、休業制度だけではなくて、介護短時間であったりとか、柔軟な働き方と組み合わせて離職を防ぐような取組が必要なのかというふうに思っておりまして、そこを改善することで少しこの給付の方にも影響してくるかと思います。

 以上です。

福島委員 ありがとうございます。

 次に、育児休業給付が少子化対策につながるという説明がありました。

 今年の予算委員会の参考人質疑がありまして、私もそこで質疑に立ったんですけれども、多くの有識者の方が、子育て支援というのは少子化対策につながらないというのはもう学問上立証されていると。日本で起きている少子化というのは、一つのカップル当たりの子供の数というのは余り減っていないんですよね、結婚する数が減っているから少子化の原因になっていて、結婚する数が減っていることに対する政策は今まで世界で成功したためしがないんだという話がありました。

 先ほど守島先生から、育児休業給付が少子化対策にもなるんだという話をお聞きしたんですけれども、なぜ育児休業給付が少子化対策につながるのか、今お子さんがいる方にとってはいいと思うんですけれども、育児休業給付があるから、じゃ、子供をもう一人つくろうということにどういう理屈でなるのかということをちょっとお聞かせいただければと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 ただいま御説明にあったような考え方というのもあると思います。それは別に否定はしません。逆に言うと、育児休業給付で補える部分と、あとは、そうじゃなくて、もっと総合的な対策で補える部分というのは多分あると思います。ですから、それを両方やっていかないといけないと思うんですけれども、少なくとも雇用保険という枠内でいうと、現在のところは、やはり、育児休業給付が担っている役割というのは、少子化対策、不安というものを解消していくという意味ではある程度あるのではないかなというふうに私は思っています。

福島委員 ありがとうございます。

 そして、最後の質問ですけれども、冨高参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど資料の中で、教育訓練給付の地域や類型、科目の偏りがあるという話がありました。では、具体的にどこが問題で、どう見直すべきなのかということをもう少しお伺いをできればと思っております。よろしくお願いいたします。

冨高参考人 ありがとうございます。

 今、例えば地域によって、例えば東京で異常に講座が多いとか、それから、類型も幾つかありますけれども、類型のうちの一か所だけが突出している、例えば看護師とかですね、そういったところは非常に給付とかもあるんですけれども、なぜそういうふうにばらつきがあるのかとかそういったところをしっかり見据えた上でそのばらつきを少し是正して平均化するとか、そういったところも含めて見ていく必要があるのではないかなというふうに考えているところでございます。

福島委員 科目の偏りについてはいかがでしょうか。あした同じような質問をしようと思っていて、科目の偏りに問題点があれば、その点をちょっとお聞かせください。

冨高参考人 今、ちょっと一例を出しましたけれども、看護師とか准看護師とかそういったところは非常に使われているということがございますけれども、それ以外の部分が少ないというようなこともございますので、そういった少し細かい話の部分もしっかり見た上で検証していくべきだというように考えております。

 以上です。

福島委員 ありがとうございました。

 時間が来たので、終わりにいたします。どうもありがとうございます。

新谷委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史と申します。私たち第三会派になりますので、本来順番はもうちょっと前だったんですが、別の委員会での答弁がありまして、ちょっと順番を変えていただきました。ありがとうございます。

 参考人の先生方、大変貴重な御意見を賜りました。私、今日、だから、いつもと順番が違って最後なので、大体もう聞きたいと思っていたことがいろいろ出てしまうんだなということで大変戸惑っておるわけでありますが、せっかくの機会ですので、参考人の先生方も御専門の範囲をちょっと超えるかもしれませんが、ちょっと気持ちを緩めていただいて、有識者として忌憚のない御意見を賜りたい点が幾つかあります。

 一つは、今日も、今、福島委員からも、雇用保険とは何か、雇用保険ののりというか、カバーすべき範囲、あるいはほかの制度でカバーすべき範囲みたいなところ、雇用保険でどこまで拡張していくのか、そんな議論があったと思います。これは雇用保険だけではなくて、例えば今ほかの委員会で、ここでも大分話題になっている少子化対策法案、あれは医療保険料に支援金を乗せて少子化対策に出すという、そういう展開になるわけです。

 だから、何を申し上げたいかというと、今日のテーマだけではなくて、今、日本社会を支える様々な制度が、今の制度を何とか維持しながら、それを無理やり拡張しながらニーズに対応しているという、私に言わせると、バケツの水が漏れているのを、ばんそうこうを貼って何とか守っているみたいな感じ。

 しかし、本来、もっと政治に御期待いただく、私たちの責任なんですけれども、もうちょっと新しい制度とか、均衡点という意味でいうと、別の均衡点にジャンプするみたいな、それを私たち日本維新の会は大改革と言っていまして、修正ではなくて大改革が必要な時代ではないか、少子高齢化時代を乗り越えていくために、必要な時代じゃないかという問題意識を持っていますけれども、ちょっと御専門を超えますが、そういう政治への御期待、注文、苦言、お願いしたいと思います。

守島参考人 ありがとうございます。

 私も全く大賛成でして、今はやはり大改革の時代だと私も思っています。

 先ほどおっしゃったような少子化対策みたいなものは、やはり、単なる雇用保険の枠内でどうこうしているだけじゃなくて、もっと政府全体、政策全体でやっていかなきゃいけない側面というのはあるんだと思います。

 ただし、ちょっと難しいのは、特に労働政策に関しては、労政審という、労働政策審議会という枠組みがありまして、その中での審議を通じて、労と使用者側と、それからあとは私どものような公益が入って議論するという立場がありまして、そこの部分はやはり維持した形で進めていくということが重要だと思っていますので、そこの部分の折り合いは何らかの形でつけていかないといけないのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

冨高参考人 議員御指摘のとおり、先ほども少し申し上げましたけれども、今回の見直しでも、やはり、きちんとこれを改善するためには、ほかの年金制度であったりとか様々なものを全般的に見直していく必要があるのではないかというふうに思いますので、少し、そういった幅、大きな視点で議論をしていただくことは重要だというふうに思っております。

 今、守島委員からもございましたけれども、労働に関わる部分というのは、やはり当事者である労使が入った労政審で議論することが重要というふうに思っておりますので、その観点で、様々な目的に照らして、どういうことがふさわしいのかというのを議論していただければ幸いに存じます。

大嶋参考人 ありがとうございます。

 私も、いろいろな制度を見ていて、これは一から考え直した方がもしかしたらうまくいくのかもしれないと思うような場面は、個人としては非常にあります。

 私が専門にしておりますリスキリングに関しても、今、各省庁がいろいろな取組を行う中で、例えば、働く人の立場、企業の立場から、どういうところに何があるのか分からないといった状況にあって、もしかしたらそういった政策の組み直しが必要かもしれませんし、求職者支援に関しても、今、第二のセーフティーネットが導入されてしばらくたっているわけですけれども、例えば、働けないという状況に対してもいろいろな段階があるわけで、この一つの制度で、雇用保険のカバーされない、基本手当を受給されない人の支援として本当にいいのかということを改めて考えるような改革も必要かと思っています。

 少し細かい視点になってしまいましたが、大改革というのは、政策を見ていく上で必要な視点かと思っております。

平田参考人 ありがとうございます。

 非常に難しい質問ですけれども、例えば、これまで一般財源が入ったことがないからですとか、そういった前例にとらわれて思考停止をしてしまうとか、今日の議論に引きつけていうと、教育訓練、リスキリングの支援ですとか、それから少子化の対策ということで、日本全体の利益につながることは一般財源をもっと活用してもいいのではないかというふうに思っておりますし、そういったことを通じて、日本全体の生産性の向上につながるような政策を期待しているところでございます。

 以上です。

秋山参考人 難しい質問で本当に何か答えにくいんですけれども、おっしゃられるように、いろいろな制度があって総合的に見ていかなければならないというのは、変えていくような時代にあるのかなというのは、個人的には思ったりしております。

 政治の果たす役割は大きいと思っておりますので、改革というのは必要だと思いますが、改革するに当たっては、是非、視点として、弱者がどうなのかというところは押さえておいていただきたいというのと、厚生労働委員会は生まれてから死ぬまでのところを所掌するところですので、それを総合的に見て考えていただくということでお願いしたいなというふうに思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 もう一点、また可能であれば、もう意見はないという方はスキップしていただいて結構ですが、五人の参考人の先生にお聞きしたいのは、恐らく今回の雇用保険法の背景にもあるコロナ禍がありましたね、やはり、戦争とか疫病、感染症とかパンデミックとか、そういうことを今私たちは経験しているわけでありまして、まさにそういう、広い意味での緊急事態というものに国家がどう対応していくかというのは、今日の話の背景としてやはり考えていかないといけないテーマだと思っています。

 そうしたときに、緊急時にどうあるべきか、保険の分野とか、例えば雇用調整助成金とか、あるいは福祉もそうですけれども、例えば福祉の窓口に、コロナ禍のときは例の十万円か二十万円の貸付けとかで何百万人がそこに集まる、そういうことがあったわけでありまして、やはり、もうちょっと、緊急事態の仕組みは別の仕組み、何かそこでシステムAが、緊急事態になればシステムBに切り替わる、例えば国と地方の関係もそうですね、そういう緊急事態については、やはりもう少し、それこそ今の話で、抜本的な検討、それから準備、平時からの準備が必要だと思います。

 これはもうのりを越えるので、ちょっと俺は言いたいことがあるぞという方がいらっしゃったらでいいと思います。もうないという方はスキップでいいので、もしありましたら、五人の参考人の先生方、お願いします。

 その際、もう一つ、視点、私がちょっと感じているのは、今日も公費を入れるという議論がありましたが、私は保険の制度に公費を入れるのは余りやるべきじゃないと思っていて、やはり保険は保険だと。公費を入れるんだったら、もう全部公費でやったらいいと。だから、そこは純化させる形で、保険から切り離して、公費の仕組みをつくる、そこはそういう考え方で、先ほどの話もそうだし、緊急事態の話もそう考えていますが、いかがでしょうか。

守島参考人 ありがとうございます。

 非常に答えにくい質問なんですけれども、まず、緊急時と、それから平時と戦時というか、そういうふうな違いという意味でいうと、今回の雇用調整助成金の在り方というのは、やはり、平時のシステムを緊急時にそのまま当てはめちゃったということによって起こってきた問題というのは結構多いというように個人的には感じています。

 したがって、おっしゃるように全く二つ別々の制度をつくるかどうかというのはまたちょっと議論はできると思うんですけれども、やはり、違ったシステムがキックインするような、そういうふうなことを考えていくというのが重要だというふうに思っています。

冨高参考人 私どもも、雇用保険の話で申し上げると、平時にきちんと財政安定をさせて、緊急時につきましてはやはり柔軟に判断をするということは、これまでも申し上げてきております。ただ、労働者に関わることですので、それは労政審の中で柔軟に判断をするということが重要だというふうに思っております。

 それから、国庫負担、公費の在り方みたいなお話をしていただきましたけれども、雇用保険につきましては、やはり国の政策としてきちんと推進をしていくという意味合いがございますので、そこはバランスを取って入れていただくことが重要だというふうに考えております。

大嶋参考人 私の知識の範疇を超えることでもありますが、個人的な意見としまして、緊急時にうまく状況に適応できるか、対処できるかというのは、平時の対応によって決まっているとよく言われます。

 コロナも含めて、広い意味で緊急事態に大幅な制度変更のない中で対応を様々重ねてきたわけですけれども、そういったものの効果検証を行って、どういったやり方がほかにあり得たのかといったことを検討しておくことが、広い意味での今後の緊急事態によりよく対処していく上で重要なのではないかと考えます。

平田参考人 ありがとうございます。

 ちょっと、のりを越えるかどうか分からないんですけれども、システムAという雇用調整助成金というのがありました、コロナが始まる前の二〇二〇年度の予算は三十七億円でした、それが五兆円を超える支出が出てしまったということで、それをシステムAの中だけで解決しようとしているということであれば、こういった緊急時にシステムBを考えてもいいのではないかということを、冒頭でも申し上げたつもりということでございます。

 ありがとうございます。

秋山参考人 ありがとうございます。

 ちょっと先ほど申し上げ忘れたんですけれども、政策の関係でいくと、皆様がおっしゃっているように、労使協議というのはないがしろにしてはいけないということだけ申し上げておきたいと思います。

 あと、先ほどいただいた、本当に難しい問題だというふうに思いますが、国家としてどういうふうな対応ができるかということがありますが、やはり、地域で協力して皆さんもやっていけるような仕組みをつくっていくのが大事だというふうに思います。

 あと、公費、保険のバランスという問題があります。雇用保険の場合でいくと、公費とのバランスでやるというのが一番いいんじゃないかなというふうに思っております。

足立委員 ありがとうございました。

 最後に、大嶋委員に一つだけ。

 今日いただいたお話、大変貴重なお話で、勉強になりました。

 一点、実は、我が党、教育無償化というのを結構一生懸命やっていて、それは初等、中等だけじゃなくて、高等教育、特に高等教育の、専修学校とかも含めて、あるいはリカレント教育、要は、社会人になってまさにもう一回学び直しも含めて、学ぶということについてはもうそれは無償でいいんだという議論を党でしております。

 今日の大嶋委員のプレゼンとの関係でいうと、そうした教育無償化の仕組み、社会人まで含めた無償の仕組みなどが国として推進された場合、それはいいことなのか、余りぴんとこないのか、なじまないのか、ちょっとそこだけ、感想だけ教えていただければ幸いです。

大嶋参考人 こちらも専門を超えておりまして、個人的な意見になりますけれども、まず、昨今、教育費の公的な支援というか支出が増えてきたこともありますが、全体的に見れば、日本はまだ家計の教育負担が大きい国だと認識しております。そのような中で、教育費の負担というのが子供を育てる負担ということにも一つ関わってきておりますので、教育無償化、特に学校における無償化というのは、私は、財政的な問題もございますが、望ましい方向なのではないかと思っております。

 一方で、社会人の学びに関しては、やはり、社会全体に資するといった意義が必要であり、その内容については、どこを無償化するべきかということは精査が必要なのではないかと考えています。

足立委員 どうもありがとうございました。

新谷委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 貴重な御意見をお述べいただきまして、参考人の方々におかれましては、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、明十日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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